うちの暁は病んでるけどちょろ可愛い (鹿倉 零)
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うちの暁は病んでるけどちょろ可愛い

「提督ー!」

駆け寄ってきたのは島風。

「おっそーい!」

「焦っても間宮は逃げねーよ…」

提督の手の中には二枚の間宮券がある。

 

三回以上連続でMVPを取った艦娘は、

一つだけ、(できる範囲で)願いを叶えて貰える

そしてそれは、

連続で取れば取るほど、より難しい願い、

無理難題も叶えて貰えるようになるというのが

うちの鎮守府の方針だ。

とはいえ、勝負は時の運。

その上、あまり連続でMVPを取りすぎると、

その他が死に物狂いで連勝を止めてくるので

殆どの艦娘は、

三回目で小さな願いを叶えてもらうのだが。

島風も例に漏れず、

三度目のMVPの時点でお願いを行使。

"二人で一緒に間宮アイスを食べたい"

それが彼女の願いであった。

 

「ふんふんふーん♪」

鼻唄を歌い、

足をぶらぶらさせながらアイスを頬張る島風。

横目で眺めながら、提督もアイスを口に運ぶ。

「…流石は間宮だな。」

提督が思わず呟くと、

島風はムッとした表情を浮かべた。

だが、彼は気がつかない。

何故なら間宮アイスがあるからだ。

彼の手の中には間宮アイスがあるのだ。

そう、間宮アイス。

美味しいのだ。あまりに美味しいのだ。

「俺はこの為に生きてきたのかもしれん…」

アイスに夢中な男は、島風の表情を窺えない

瞬間、彼の目は強制的にアイスから離された

島風が彼の頬を挟んで固定したからだ。

「…島風?」

首をかしげる提督。

自分は何かしただろうか。

対して頬を膨らませる島風は、

やがて手を離すと、笑って言った。

「提督のアイスってどんな味~?」

「いや、同じアイスだが」

「ねーぇー!どんな味?」

質問の意図が分からない。

眉をひそめた提督は、

次に口を開けた島風を見て察した。

「……」

「…はぁ。」

一口掬い、スプーンを口に運んでやる。

俗に言う"あーん"という奴だ。

「…♪」

彼女が嬉しそうに口を閉じると、

提督はそっとスプーンを引き抜く。

「…提督ー!私のも!あーんっ!」

「いや俺は…んぐっ…」

無理やり口に入れられたので、

仕方なく咀嚼する。

やはり同じアイスだ。なんの変哲もない。

「同じ味だな」

「そうかなー?」

笑顔でもう1つスプーンを差し出される。

「…食べさせ合いなんて聞いてないのだが」

「…だめ?」

上目遣いでそう言われると、

提督は何も言えない。

アイスを交互に食べさせ合い、

やがてお互いの器が空になると、

島風は立ち上がり、振り向くと笑った。

「間接キスですねーっ!提督っ!」

「おまっ!」

一瞬で赤くなる提督。

提督の叫び声を聞くと少女は、

キャーという明るい悲鳴を

あげながら逃げていった。

「全く…」

提督は、今も赤い頬を撫でながら呟く。

それを影から見つめている一人の少女が居た。

 

「司令官。司令官。」

袖を引かれる男は、

足元にいる少女を見下ろす。

「…司令官。」

「どうした暁。目が死んでるぞ。」

彼女がこういう、暗い目をしているときは

大抵ろくな事を言わないと知っている提督は、

軽く暁の頭を撫でた。

だが、彼女は何時ものように子供扱いしないで

と怒ることもなく、暗い瞳のまま続ける。

「そろそろ解体をするべきじゃないかしら」

「…またその話か…今度は誰だ」

ため息をつく提督。

「島風に決まっているわ!」

「非常に困るんだが…」

「どうして?暁がいれば良いでしょ?

提督には暁がいればそれだけで良いの、

そうでしょ?暁だけが居れば良いのよ。

どうして?どうしてそんな事言うの?

ねぇ司令官?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?」

「いや、お前…島風を手に入れるのに

俺達がどれだけ苦労したと思ってるんだ…」

提督は建造運が無かった。

ビックリするくらいに無かった。

だが、島風はほしかった。

可愛いからだ。強いからだ。

どうしても欲しかった。

だから頑張った。

手に入ったときは、

躍り狂いながら土下座をしたものだ。

「私がいるじゃない!」

「それはお前の妹の…というか暁、

お前それを言うということは、

つまりどういう事なのかを理解しているのか」

低い声で提督は尋ねたが、

暁は怯まない。怯むはずがない。

彼女は彼が艦娘に、

本気で怒らないのを理解しているからだ。

「…島風は俺達の努力の結晶だ。

俺の運が悪かったわけではないことの証明だ。

それを解体すると言うことは。

そうか…暁…お前…そうか…」

「そ、それは違うわ?!司令官?!」

スッと無表情になる提督を見て、

慌てて暁は訂正した。

彼女は彼がこうなると、

本気で面倒くさいのを理解しているからだ。

「違う…?いやでもお前は今…」

「島風は汚れているわ。私はそれが許せないの

提督が解体したくないならもう良いわ!

私が消してあげる!」

「汚れているって何がだ」

「汚れているのよ!

その手で、その汚い手で汚いままで暁の提督に触れるのが暁は許せー」

彼女がまた熱くなってしまう前に、

提督は浮かんだ1つの疑問をぶつける。

「というか、それ、暁も汚れるじゃないか」

「…え?」

「いや、え?じゃないだろう…?

俺は勿論そんな事して欲しくないし、

そう思ってもいないが、

もし仮に、仮に島風が汚れているなら、

それを消すときに暁の手が汚れるじゃないか。

お前はその手で俺に近づくのか?」

「え、あ、いや…それは…」

下を向く暁。

やがて、ハッとしたように顔を上げ、

自信満々に言ってのけた。

「暁は手を洗うから大丈夫なのっ!」

「そうか!なら俺も手を洗えば良いよな」

「えっ」

「えっ」

お互いに見つめ合う。

「え、暁お前まさか俺が手すら洗ってないような奴だとずっと思ってたのか?」

「そ、そうじゃないわ?!でも…」

「手を洗えば平気なんだろ?

俺は毎日風呂に入ってるし、

毎日手だって洗う。

仮に、仮に島風が汚れていたとしても

別に大丈夫じゃないか」

「う…」

「う?」

「うぅぅぅぅぅぅ…」

目に涙を浮かべ、ふるふると震えながら

提督の服の裾を握る暁。

「ほら、行くぞ暁。

今日はまだやることが沢山あるんだからな」

 

提督は笑顔で暁の手を引く。

このやり取りも何回目だろうか、と考えながら



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うちの間宮は病んでるけどちょろ可愛い

「間宮さんー」

「あら…島風ちゃん?」

包丁を握ったまま、振り向くのは間宮。

エプロンをつけたその姿は、

正に正妻というか、奥さんそのもので。

そんな彼女が柔らかな笑みを浮かべているが

島風の表情は冷たいままだ。

「提督のアイスに

"余計なもの"入れないでくれる?」

「ふふふ…なんの事だか…?」

「…ふーん…警告はしたから。

あと、殆ど私が食べちゃった、ごめんねー」

鋭く一度睨み付けると、歩き去る島風。

彼女は相変わらず菩薩のような、

にこにことした笑みを浮かべながら、

手元の包丁をまな板に突き立てた。

 

「間宮ー!」

「!!!」

時にして丑三つ。

彼が閉店しているはずの甘味処に来たのは

単純に彼女に呼び出されたからである。

「わざわざこんな時間に

ご足労頂いてすみません…!」

駆け寄って頭を下げる間宮だが、

彼はそれを手で押し止めると機嫌良さそうに笑う

「大丈夫だ。新作の試食、だなんて聞いたら

誰もが喜んで飛んで来るんじゃないか?

しかしまぁ…どうしてこんな時間に…?」

「実は…提督専用のメニューを考えまして」

「へぇ…俺専用?!」

目を輝かせる彼と、

幸せそうに、にこやかに笑い厨房へ向かう間宮

彼女が持ってきた料理を眺めていた提督は、

少しずつ目の輝きを失っていた。

「…まみや、これは?」

「はい!まずは夏野菜のサラダです!!」

それは良い。それは良いが、

サラダの上に乗っている物が問題だ

「…これは何でしょうか。」

「髪の毛ですが…?」

「…うーん。そっかぁ…」

男は下を向くと、ポロポロと涙を溢した。

「提督さん…そんなに嬉しいのですね!」

「俺は間宮に嫌われてたんだな…」

「?!」

ぎょっとした顔で提督の顔を覗き込む間宮

慌てるようにして手を動かしながら、

彼女は必死に違うと否定する。

「提督さん?!いや、それは全然誤解ー」

「いじめとかで見たことがあるな…

でもな…間宮…お前が俺を嫌いでも…

俺は普通にお前のことは好きだったぞ…」

立ち上がる提督。

「ど、何処へ?!」

「転属届けを出してくる…もう二度とお前と会わないから安心してくれ…今まで悪かったな…」

「提督さん!!提督さぁん?!?!」

しがみつく間宮だが、

提督は引き剥がそうとする。

「離せ!!!もう良いんだよ間宮!!!」

「違います!!これは…その…」

頬を赤く染めながら、間宮は言う

「私の一部を提督が食べていただけたらと…」

「いじめだろ!!!俺は知ってるんだ!!」

「話を聞いてください!!!!!」

「俺は間宮の普通の、そんな余計なものが入っていない料理が食べたかった!」

「て、提督さん…」

彼の手を離し、間宮は下を向く。

「余計なもの…ですか…?」

彼女の手の包丁が揺らめいたが、

彼はそんなの気にしない。

「そうだ!!!髪の毛は食べるものじゃない!!

俺はお前のそのままの料理が大好きだったし、料理をしているお前も、その料理を運んでくるお前も、可愛くて素敵で憧れだったんだぞ!!

それがなんだ!!!今日もお前のありのままの手料理を食べられると期待してきてみれば!!!俺はお前の、お前の作る手料理を食べに来たのにも関わらず!!!」

「か…可愛い…っ?!」

両手を頬にあて、小さく間宮は呟いた。

「もう良い!!!お前にとって髪の毛は食べるものなのかもだが俺は髪の毛は食べられない!!!俺はお前の料理なしじゃもう頑張れない!!!さよなら!!」

「待って!!!!待ってください!!!」

「なんだ!!!!」

「わ、わかりました…!

もう一度作るので待っててはもらえませんか!」

「…またいじめるんじゃないだろうな」

「次はきちんとした食材で作りますから…!」

「お前を信頼していいのか?

どこでも売っているものか?

もし俺が食べられないものなら…」

「はい!!きちんとスーパーで

買えるののみで料理を致します!!!」

「そうか…?」

その方が、もしも戦争が終わって結婚した際の練習にもなりますよね。という言葉は無視する

「…あぁ、あとピーマンは避けてほしい…」

「ふふっ、子供っぽいんですね」

「こんなことお前にしか言えないんだからな

絶対誰にも言うなよ…」

「はい!!」

自分だけが彼の子供っぽい、

小さな秘密を知っている。

誰にも言えないことを

自分にだけは言われている。

それにより、間宮の心は少しだけ安定した。

 

「ふふ、確かにそうですよね…

あの人の胃袋をつかむのに、

こんな"不純物"は不要でした…」

彼女は白い粉をゴミ箱に捨てる。

最近彼のアイスにのみ混入させていた、

軽い依存性を持つこの"薬"は、もう不要だろう

だって彼は、私の、

"私の料理"を楽しみにしてくれているのだから

「さて、頑張りましょう…!

あの人の好きなカレーで良いかしら…」

彼女はいそいそと料理の支度を始める。

 

「あ、提督ー?スパイスに血を混ぜるのはー」

「断る!!!!!」



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うちの青葉は病んでるけどちょろ可愛い

「提督ぅーっ!!!!」

腹部に伝わるとてつもない衝撃。

「島風…お前なぁ…」

男は飛び付いてきた少女に、

呆れたような、窘めるような声をかけた。

「えへへー!」

すりすりと頬を擦り付ける彼女の頭を撫で、

彼は首をかしげる。

「ん…?間宮券か?」

島風の手に握られている物が気になったのだ。

彼は島風にそんなものを渡した覚えはない。

だが、いつもおっそーい、などと言い、

もらった瞬間に使いきる島風が、

間宮券を残していたとは到底思えないのだ。

「ん?んーん?ほら!」

ところが、手の中にあったのは二枚の…

「チケット…?」

映画館のチケットだった。

「はい!今日の演習相手の私に

貰ったんですよーっ!」

オッオー!と言いながら

男の周りをピョコピョコ跳ねて回る島風。

今日の演習は激戦だった。

最後には相手の島風と

此方の島風の一騎討ちになり

なんとか勝利したのだ。

その後はやけに意気投合していたと思いきや、

まさかこんなものまで貰っていたとは。

「あとでお礼を言っとかないとな…」

頭を掻きながら差し出されたチケットを眺める

「…え?」

「…ん?どうした島風」

「いや、はい、提督」

ずい、とチケットを差し出される。

「…へ?俺か…?」

「うん!提督さんにって渡されたから!」

「そうか…悪いな…」

久しく映画などは行かなかったが、

男は映画は好きな方だ。

大きなスクリーンで迫力のある映像を見ると、

なんともいえない感動が広がる。

「二枚、なぁ…。」

…恐らく、誰かと行け、ということだろう。

ところが、誰をつれていくべきだろうか。

「…て、提督?」

「うーん…」

慰労するのだとしたら、

恐らく主力のうちの誰か。

それもこれはホラー映画のようなので、

駆逐艦、目の前の島風などは除外する。

尚且つ、大井のように二枚ともあげた方が

喜ばれる艦も駄目だ。

自分が一緒に行けないから。

久しぶりに映画を見てみたいから。

「むむむむむむ…」

「て、提督…あの、その…ね…?」

島風が赤い顔でもじもじとし始めた。

ところが、考え事に、

どうすれば慰労と言う建前で合法的に執務をサボりつつホラーもある程度は平気そうでそれでもちゃんと一定数リアクションはしてくれそうな自分との外出でもそんなに嫌な顔はしない艦と映画に行けるのか、そもそもそんな艦はいるのだろうか。

という考えに耽っている彼は、

一向にそれに気がつかない。

「北上は…駄目だ…大井に殺されるし…

雲龍…いや…あいつはホラー余裕だろうな…

やはりある程度のリアクションを期待できる

…いやぁ、龍讓は駄目だな。

あれは駆逐艦と見た目がたいして変わらん。

絶対に職質される。

…他にはー…」

男は考え事をすると歩く癖があった。

今回も例に漏れずゆっくりと前足が前に出て行き

気がつけばスタスタと歩き始めている。

無論、島風に声をかけることも忘れてはいない

「助かったよ島風。俺はもう行くな。」

ところが島風は島風で

男の声が聞こえていなかった。

彼女は緊張すると周りの声が聞こえなくなるのだ

もじもじとしながら指先をくっつけては離し、

ようやくキッと耳まで赤く染まった顔をあげて

「だ、だからね、提督、私とー

ってもう居ない!!!!!!!!!!」

 

 

「いや…あいつは駄目だ…じゃあ…」

「しれいかぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

大きな声で呼ばれ、

男がそちらを見ると青葉がいた。

「…青葉?」

彼女なら見た目的にもセーフだろう。

なおかつ、ホラーを見た際の反応も

きっと悪いものではない。

そしてさらに、映画などは

きっと新聞の良いネタになるだろうから

誘いを断ってくることもないだろう。

衣笠と行きたがるかもしれないが…

仕方ない。晩御飯を奢ることにすれば

きっと喜んで食いついてくるはずだ。

これは必要経費というやつだろう。

身銭を切るのも致し方ない。

…ところが。

「司令官!見てくださいよこれ!

今人気な映画のチケット!

なんとか二枚入手したんです!」

その手に持っているものが問題だった。

 

「…ぁー」

「いやはやぁ…本当に苦労しましたよー」

ウンウンと頷きながら

ヒラヒラとチケットを見せる青葉。

「…そ、そうか。」

候補の一人が消滅したのを感じつつ、頷く

「それで…衣笠と行くのか?」

「あー…はいー…そう思ったんですけど!

提督って映画大好きだったじゃないですか

だから…そのー…何て言うか…」

視線を落とした青葉の視界に、

男の手の中のチケットが映った。

「…は?」

「ん?」

「え?司令官?なんですかこれ?」

「お?」

グイッと手を引っ張られる。

そしてチケットを奪い取ると、

彼女は濁った瞳で詰め寄った。

「これはなんですか?」

「映画館のチケットだが…」

「…ペアですね。」

「あぁ、そうだな。」

「誰とですか?」

「は?」

「誰と行くつもりだったんですか???」

既に手に握られたチケットは

クシャリと潰されている。

「おまっ…なに潰して?!」

「誰と行くつもりだったんですか?????」

「誰って…いや…」

ゆっくりと指が彼女の方向に差される。

「…え?」

ゆっくりと後ろを振り向き、左右を確認し、

周囲に誰も居ないことを確認すると、

彼女は真っ赤になった顔で

ゆっくりと自分を指差した。

「わ、え、な、わたっ…」

「その矢先嬉しそうに見せてくるから…

衣笠と行くんだろ?だから俺はー」

「うわぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!!」

彼女はそう悲鳴をあげると、

自分のチケットをビリビリに破り捨てた。

「うわあああああああああ!?!?!?」

男も同様に悲鳴をあげる。

さっき苦労したとか言ってなかったか?!

そして青葉はやりきったような顔で笑った。

「て、手が滑ってチケットが台無しに…!」

「嘘つけ?!お前?!嘘つけ?!?!」

「こ、こぉれは…

司令官についていくしかありませんねぇ…!」

目をぐるぐると回しながら、

息を荒らげ男の腕を掴む青葉。

「…まぁ…一緒に来てくれるなら

願ったり叶ったりだが…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「いやー!面白かったですねぇっ!」

「まさかメインヒロインがヤンデレで

彼女が設置しておいた隠しカメラが

あの場面であんな使い方されるとはな…」

「愛は勝つって奴ですねーっ!」

ほくほくとした顔で

目の前のパフェを食べていく青葉。

「いやー!美味しいです!」

「そうか。ほれ、ついてるぞ。」

「んぐっ…ちょっ、し、司令官?!」

口についたクリームを拭ってやると、

彼女は赤い顔で下を向いた。

やはりまだまだ子供だな、

何て考えながら、

先の映画のヒロインを思い出す。

「しかし、部屋に隠しカメラは無いよなぁ…

まぁ、映画だからそこは良いんだが…」

ピタリと彼女の動きが止まった気がした。

「え?なんでですか?」

無表情になった青葉が訊ねる。

「そりゃお前、プライベートはあるだろ」

「なんでですか?好きな人の全部を見ていたいと思うのはおかしいことですか?」

「おかしくはないかもだが…

…うーむ、勘弁はしてほしいよなぁ」

青葉は理解できない、といった表情を浮かべる

「ほら、青葉だって俺が隠しカメラをお前の部屋に設置してたら嫌だろ?」

「青葉は大丈夫ですけど」

「嘘だろお前」

この子は大丈夫だろうか、と心配になる男。

「え?え?提督は青葉が隠しカメラを司令官の部屋に置いてたら嫌なんですか?困るんですか?」

「いや、嫌だぞ?!

男なんて特に見られたら困ることがー」

「そ、それって…!」

赤い顔で片手で丸を作り、

上下にコスコスと動かす青葉。

「違うわッ!!!!

男にはな、意地とプライドがあるんだ。」

「…意地とプライド…?」

「他人には、そして好きな人には尚更、

自分の格好良いところだけを見て欲しいもんだ

気の抜けた姿は見られて嬉しいもんでもないし

ほら、恋人に釣り合うように

筋トレしたり勉強したり、な。

そういうのは見せないから格好良いんであって

影での努力なぞ知られた日には

俺は恥ずかしくて死ぬだろうなぁ…」

「あー…司令官、毎晩筋トレしてますもんね

あんな感じのことですか。」

「え?」

空気が固まる。

こいつ、なんで知ってー

「あ、いやぁー!

そんな噂を小耳に挟みまして…!」

「もう死にたい…」

「噂ですから!!

ほんとにやってるんですか?!」

両手で顔を覆って声を出す提督と、

慌てて手をワタワタと動かす青葉。

「や、やってないわっ!!そうだ!やってない!

断じてやってないからな!!!」

赤い顔で男は断言して、

ふぅーっと息を吐いて突っ伏した。

「まぁ…無断で盗撮は無いわなぁ…

俺だったらその時点で嫌いになるが…

あの主人公もよく持ったな…」

「…なるほど。」

そうこうして、

彼らは鎮守府への帰路へとつくのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「っぶねー…!!」

時は深夜。

殆どの艦が寝静まったこの時間帯に、

隠しカメラを回収し、汗を拭う青葉。

「いやはや…

もう映像を回収できないのは残念ですが…

嫌われるのはごめんですからねぇ…」

青葉は彼氏の意思を尊重するタイプなのです!

と笑い、スキップで部屋をあとにする。

「確かに言われてみれば、

彼氏さんのそういうところも可愛いですけど

見ないであげるのも愛ってやつですよね!」

彼の写真で埋め尽くされている、

彼女の個室に帰ると

満面の笑みを浮かべてベッドに飛び込んだ。

無論、このベッドにも

大きく彼の姿が印刷されている。

相変わらず窓の外は、

一切の月光すら差さない暗闇が支配していた。




ヤンデレのネタがねぇッ!!!!
いやはい!お久しぶりです!!!!
まだ!!!まだ失踪とかしませんから!!!
いやはや…ですがあまりにもヤンデレのレパートリーがなくなってきたと言うか…ヤンデレってなにするんだろうって考えてもシチュエーションがいまいち浮かばないんです…ヤンデレシチュエーション総集みたいのがあればいいのに…
ダメダメな作者で申し訳ないのですが、
どうかどうか暖かい目で…というかもしも余裕があればなんならこんなヤンデレはどう?とかアイディア下さると死ぬほど助かりますぅ…


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