俺のまちがった青春はガンプラバトルと共にあり (前虎後狼)
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始まりは穏やかな日常と共に

小説の書き方を忘れてしまった·····

一先ずリハビリがてら温めていたネタをどうぞ。


 

 

「高校生活を振り返って」

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。

自らを取り巻く環境の全てを肯定的に捉える。

何か致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。

例を挙げよう。

彼らは万引きや集団暴走という犯罪行為に手を染めてはそれを「若気の至り」と呼ぶ。

試験で赤点をとれば学校は勉強するためだけの場所ではないと言い出す。

彼らは青春の二文字を都合のいいように掲げては、自分の非を棚に上げて自己の正当性を押し通す。どんな罪科も失敗も、彼らにとっては青春を彩る絵具でしかないのだ。

だからといって、失敗が忌むべきものであると思っているつもりない。

今の時代に至るまでに多くの偉人たちが挫折や失敗を味わい、それすらも利用して偉業を打ち立てたように、失敗から生まれる物もある。

日常にありふれた何気ないものなら、遠い過去の思い出として笑い話にもできるだろう。

だからこそ学生の時分の失敗を、青春の断片であると彼らは主張するのだろう。

決して無駄ではなく今の自分を構成する要素であるとして、それを誇りとしているのだろう。

しかしながら、それは先にも言った自分自身の行いに正当性を見出すための方便でしかなく、

他者の失敗は青春ではなくただの失敗であり敗北なのだと断じるのだ。

仮に失敗することが青春の証なのならば、

友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。

ガンプラバトルという一世代前の人間からしてみればなんだそれはと目を剥くに違いないカルチャーが生まれ、いまやそれが世界的人気を博しあまつさえ世界大会が開かれるほどの規模に発展したのだ。もともとコアな文化だったものが世界に受け入れられているのだから、上記のような人間も同じように受け入れられるべきなのだ。

それでも彼らは認めないだろう。

なぜなら、すべては彼らのご都合主義に過ぎないのだから。

なら、それは淘汰されるべき欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術も糾弾されてしかるべきものだ。

彼らは悪だ。

度し難い俗物だ。

ということは、逆説的に青春を謳歌していない者の方が正しく真の正義である。

結論を述べよう。

 

 

 

 

「リア充爆発しろ」

 

「ハチマン君、そんな怖い事言ってもどうにもならないんじゃないかな」

 

どこかの学校のとある教室で、机の上に突っ伏しながら呪詛を吐いた男子生徒と、その傍で長々と男子生徒の語った論理を最後まで聞いていた女生徒の二人が机越しに話していた。

 

「もう、平塚先生に怒られるって分かってたのにそんなこと書いて」

 

「本当のことを書いただけだ。俺の高校生活を振り返ったところで劇的な変化も何もないわ。青春の定義のくだりも事実を書き綴っただけだしな。つまり俺は悪くない」

 

素知らぬ顔で言ってのける少年に、少女はため息をついた。

筋金入りのねじれ曲がった感性、とでも言うべきか。

どこか達観したようにものを言う同級生の語りには、なぜか納得させられてしまう不思議な力があった。

そうかもしれないと考えてしまうあたり、あながち間違いではないのかもしれない。

人間とは感情の生き物であり、そして欲望に忠実だ。

理性で抑え込める欲望を解き放ってあれこれと好き勝手。

追い詰められれば楽な方へと逃げようとする。

どうにか助かろうと意地汚くあがき続ける。

いざ上げ連ねようとすれば人間の悪性はこれだけぱっと思いついてしまうのだから、なおのことそうなのだろう。

その感性は捻くれていると呼ばれてしかるべきものだが、少女はそんな悪癖ともいえるレベルのそれを決して悪いとは思わない。

少女もその悪癖に助けられた身であるし、人の性格は十人十色。みんな違ってみんないいと信じているからである。しかし邪な考えや卑劣な輩には一切の容赦を加えないタイプだが。

 

「それに」

 

少年が用紙に書きなぐった犯行声明ともとれそうな作文をつまみ上げる。もう一度その内容に目を通して、ふと目が止まった一文を見つけて、少し残念そうに言葉を漏らした。

 

「友達が居ないって、私はハチマン君と友達じゃないのかな」

 

「·····え」

 

少女のつぶやきが、少年ハートにコロニー落としを打ち込んだ。

 

「えーといや、カミキはその普通に知り合いというかなんというか、ただのクラスメートというか」

 

「それは友達とは違うの?」

 

「いや、その·····」

 

「そっか·····」

 

場所は普通に教室の中。周囲には特に話したこともないクラスメート達の目。

そして少年が話している少女はクラスどころか学園のアイドルといって差し支えないポジションに位置している存在。少年に言わせればトップカーストの人間だ。

さて問題です。この状況の最悪の顛末を答えよ。

 

(勝手知らないクラスメート達からの私刑待ったなし!)

 

「あーいや今のはあれだ言葉の綾というかなんというか」

 

「そっか·····」

 

少女の笑顔に翳りが指す。

周りから突き刺さる視線が更に鋭くなった気がした。

 

「·····と、友達だと思いまひゅ·····」

 

「本当に?」

 

袋小路に追い詰められた少年には最早抵抗できるだけの気力も無かった。

 

「·····勘弁してくれ。カミキみたいなトップカーストの人間と·····その、なんだ。友人なんて畏れ多いんだよ」

 

「友達ってそんな複雑なものだったかしら·····」

 

「そもそも何処からが友達って定義になるのかが俺には分からねぇよ。ちょっと話したら友達扱いになんのか?それなら知り合いとの区別の境界線は何になるんだって話で」

 

「もう、ああ言えばこう言うんだから」

 

今に始まったことでは無いが、このクラスメイトはとにかく独特の論理で煙に巻くのが異様に上手い。しかも彼が話す言葉の一つ一つにどこか納得させられる部分があるの分余計に質が悪い。

そうしてまた、少年は見えない心の壁で遮って、人と距離を置こうとする。

少女はその理由を知らない。人に怯え、人から必要とされたい彼の抱く複雑怪奇な心の内を。

聞いたところで、彼はそれを教えてはくれない。

 

「じゃあ改めて、ハチマン君。私と友達になってくれる?」

 

だからこそ、少女は挫けることなく伝えるのだ。

他のクラスメイト達とはどこか違う、冷たくも優しい不器用な少年に。

 

「俺なんかでいいのかよ」

 

「ハチマン君なんかじゃない。ハチマン君だからなりたいの」

 

「お、おうそうか。まあ、それなら·····」

 

さっきとは打って変わって晴れやかな笑顔を浮かべて、臆面もなく言ってのけた少女に戸惑いながらも、少年は少女の問いかけに答えを返した。

 

「··········程々によろしく頼む」

 

「うん!」

 

これは聖凰学園高等部のとある日常の風景。

カミキ・ミライとヒキガヤ・ハチマンの何気ない会話の一幕だった。

 

 

 




ヒキガヤ・ハチマン

ビルドファイターズ世界の形式に則りカタカナ表記となったハチマン。
HACHIMANじゃないよ、ハチマンだよ。
設定の都合で時々お前誰だってぐらいにキャラ変するけど誓ってメアリースーの落とし子にするつもりは無いよ。
ちなみに彼も立派なガノタです。原作でもそれっぽそうだけど。

カミキ・ミライ
ハチマンのクラスメイト。隣りの席のカミキさん。
ハチマンからすると欠点の無いパーフェクト陽キャと捉えられているが結構抜けてる部分もある。
ハチマンへの第一印象はやる気のないぬぼっとした人という認識。実際話しかけても適当な返事しか返されなかったが、根気よく話しかけていくにつれて段々と人柄を把握していき、最低でも20秒くらいは会話が続くようになった。
今のところは一番仲が良い男子のクラスメイトとという認識。
因みに一回間違いでハチマンに蒼天紅蓮拳でヒートエンドしてしまったことがあったりするが、それはまた別の話で。




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