『さいきょー』の氷精女王目指して、チルノが頑張ります (松雨)
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『さいきょー』の氷精女王目指して、チルノが頑張ります

「また、弾幕ごっこに負けたぁーー!」

 

 白い霧が辺りを覆い尽くし、真夏でも肌寒い霧の湖と言う場所で、氷の妖精『チルノ』が手に持った草や木の枝などを凍らせたり、氷の剣を思い思いに振り回して遊びながら、そんな事を呟いていた。

 

 幻想郷の妖精たちの中では『最強』と呼ばれ、自身もそれを自称している程、彼女の内に秘めたる力は抜きん出ているし、それこそ相手が下級妖怪程であれば勝ててしまう位には強い。

 

 だからなのか、他の妖精に比べて好戦的かつ縄張り意識も強く、霧の湖に入ってきた者は勿論、それ以外の人妖たちにもちょくちょく弾幕ごっこ等での勝負を仕掛けている。

 

 しかし、最強のプライド故かは分からないが、彼女がいつも挑む相手は大抵霊夢や魔理沙、湖近辺に佇む紅魔館の吸血鬼姉妹と言った幻想郷で上位に位置する実力者たちばかりである。いくら最強であるとは言え、妖怪や異変解決担当の実力を持つ人間とでは大きな隔たりがあるため、敗北を積み重ねていくばかりとなっていた。まあ、本人は全く諦めてはいないが。

 

「チルノちゃん。どうしたの? また悩み事?」

「あ、大ちゃん……実はね、また弾幕ごっこで負けたんだ」

「……また霊夢さんか魔理沙さんに挑んだの?」

「うん。でも、前よりはほんの少しだけ長く戦えたんだぞ!」

 

 そんな風に、どうやって名実共に幻想郷最強になろうかとチルノが思案していると、彼女の親友とも呼べる妖精の1人『大妖精』が後ろから近づいて声をかけてきた。

 

 大妖精もチルノ同様、幻想郷の他の妖精とは隔絶した力を持っている。例えば、通常の妖精たちにとって冷気と言うのは毒であるのだが、そんなチルノが放つ冷気に耐える事が出来る位には力が強い。

 

「確かにそれは凄いけど、あの人たちの強さは次元が違うの。チルノちゃんは強いけど、今のままだと勝てないと思う」

「分かってるよ! だから、もっと頑張って練習して、いつかは霊夢や魔理沙を弾幕勝負で打ち負かして、名実共に妖精……いや、幻想郷さいきょーになってやる!! そして、大ちゃんを誰からも守れるような存在になるんだ!!」

「ふふ……相変わらずお人好しなのね。応援してるから、無理ない範囲で頑張ってね」

 

 圧倒的な力と技術で何度ねじ伏せられようが、自分のミスで負けようが決して無理だと諦めず、練習を重ねてしつこい位挑んで、貪欲に最強を目指すその姿勢は凄いものだ。

 

 普通、何回も何十回も負ければ並の意思ではすぐに砕け散ってしまうだろうから、このまま行けばいずれ本当に幻想郷最強の称号を名実共に得る日は来るだろう。

 

「もちろん頑張るよ! だから、見ててね大ちゃん!」

「うん。もちろんだよチルノちゃん。あ、それでね……」

 

 そんな微笑ましいやり取りをチルノと大妖精の2人でしていた時、2人の視線の先に白く輝く妖精らしき少女が突然現れた。チルノをはるかに超える冷気を放っているようで、妖精らしき少女が水溜まりに足を入れた時、2秒程度の短い時間で凍りつくと言う現象が発生する程である。

 

「チルノちゃん……寒いよぉ……」

「っ!! 大ちゃん!」

 

 当然周囲にも強力な冷気を放っていて、チルノの放つ冷気にある程度なら耐えられる大妖精ですら耐える事が出来ないようだ。そんな様子を見たチルノは『冷気を操る程度の能力』で大妖精を苦しめる冷気を遮断、彼女を守りつつ妖精らしき少女の元へ勇敢に近づいて声を荒げる。

 

「おい、オマエ! 何のつもりだ!」

「……」

 

 怒るチルノに対して妖精らしき少女は言葉を発する事はなかったが、気迫に圧されたのか少しずつ後ずさりし始め、背を向けて走って逃げ始めた。

 

「あ、待て!」

 

 それをチルノは飛んで追いかける。時折放たれる複数もの氷の球を弾幕ごっこの練習がてら避けるか、弾幕をぶつけて軌道を逸らすか砕くかして当たらないように防いでいた。

 

 何度も何度も霊夢や魔理沙たちに挑んでいた経験が、今の回避行動をスムーズに行える要因であったが、本人は敗北し過ぎているためか、それに全く気づく事はなかった。

 

 そうして少しずつ距離を詰め、遂に妖精らしき少女の肩を掴んで捕まえた……と思ったら、突如その少女が複数の白く輝く光の球と化してしまった。チルノが突然の出来事に戸惑っていると、その光球が彼女の身体に吸い込まれるようにして入っていき、2度と出てくる事はなかった。

 

「チルノちゃん! 大丈夫……あれ? さっき追いかけてた妖精らしき女の子は?」

「あたいの身体に入っちゃった……」

「え!? どう言う事なの?」

 

 さっきから衝撃を受ける展開ばかりで呆然としていると、後から追いかけてきていた大妖精が追いつき、チルノに声をかける。その際、あの妖精らしき少女が見当たらない理由を問いかけ、チルノから聞いた時に大妖精は驚くと同時に、彼女の身体を心配した。

 

「大丈夫なの? 体調は悪くない?」

「うん。まあ……あれ?」

 

 体調は悪くない。チルノがそう答えようとした時、不意に身体の力が抜けたらしく、地面に向けて倒れ込もうとしていた。しかしそれは、咄嗟の判断でチルノを抱えこんだ大妖精によって防がれた。

 

「大ちゃん、ありがとう」

「チルノちゃん……っ! いつもより遥かに冷たい!?」

 

 いつものチルノと比べると様子がおかしいものの、受け答えはしっかり出来ていて、魔力や妖力も大幅に減少している訳ではないようなので、呪いの魔法や術を受けている訳はない事はすぐに分かった。

 

「光球となって入ったあの子のせいなのは分かるけど、どうしたら良い――」

 

 大妖精がこの状況をどうしようか悩んでいると、突然辺りに謎の声が響いているのが2人に聞こえた。

 

『ふふ……この私を捕まえるなんて流石ね、チルノ! そんな貴女に敬意を表して、私の持つ力をあげる!!』

 

 そう謎の声の主が言った瞬間、再び2人の前にあの妖精らしき少女が姿を現した。

 




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異界の強き氷精

「さっきの妖精!! また大ちゃんを苦しめに……!」

「まあまあ、そんなに怒らないで。さっきは大ちゃん……にも悪い事はしたと思ってるから。本当に、申し訳なかったわ」

 

 妖精らしき少女が再び姿を現した瞬間、大妖精をまたあの強烈な冷気で苦しめに来たと思い込んだチルノ。氷の剣の切っ先を少女に向け、敵対心丸出しで激昂し、今にも斬りかかりそうな雰囲気である。

 

 それに対して、あくまでも冷静にチルノを落ち着かせようと話をしている妖精らしき少女。切っ先を向けられているにも関わらず、全くと言って良い程意に介していない所を見ると、彼女は相当な強者である事が伺える。

 

「チルノちゃん。私は大丈夫だから……許してあげてくれないかな?」

「……大ちゃんがそう言うなら、あたいはオマエを許す事にする!」

「ありがとう。寛大な処分に感謝するわ、2人共」

 

 このピリピリした雰囲気の中、冷気に苦しめられた本人である大妖精が許してあげてくれとチルノにお願いした事により、寸前で両者の衝突は回避されたようだ。

 

「それで、貴女は一体誰なの? どうしてチルノちゃんと私の名前を知ってるの?」

「えっと、私はリージア。幻想郷とは違う世界からやって来た氷の妖精。貴女たち2人の名前は、チルノに憑依した時に記憶から読み取ったわ」

「なるほど。後は……」

 

 チルノの興奮が収まった後、大妖精が妖精らしき少女に疑問に思った事を互いに自己紹介をしながら色々聞き、それに対して少女が答えると言うやり取りが始まった。幻想郷以外の世界の話はチルノや大妖精にはとても新鮮だったらしく、食い入るように聞いている。

 

「へぇ~。リージアちゃんって妖精なのに、そんなに強かったんだね。凄いなぁ」

「リージアって、前居た所じゃ『さいきょー』だったんだ!」

「うーん……でも、私よりも強い人は居たからね。正しくは()()()()()()()()()()かな」

「いやいや、それでも凄い……あ、それと何でチルノちゃんに憑依したのか教えてくれる?」

「分かったわ……」

 

『リージア』と名乗った彼女曰く、元々居た異世界で起きた事件によって、幻想郷に何故か能力と姿を保ったままの魂だけの状態でやって来たらしい。それで当てもなくさ迷っていた時に、自分以外で妖精の枠を大きく超えた力を持つチルノを発見し、興味を持ってちょっかいを出してみたら想像以上でビックリしたらしい。

 

 それで、この子なら夢半ばで遂に達成しきる事が出来なかった、自分のある夢を託したいと思って憑依したと、本人はチルノと大妖精の前で言った。ちなみにさらっと流されたが、リージアが魂なのに実際に触れる事が出来ているのは、チルノの妖精としての力を無理やり使って『召喚』と言う形でいるかららしい。

 

「それでリージアちゃんの夢、『他種族の強者を抑えて最強の座に君臨したい』って夢を勝手にチルノちゃんに憑依して託した……と」

「ええ。最初は勝手に憑依して託して悪いなと思っていたけど、記憶を覗いてたらチルノも最強になりたいって思ってたみたいで……安心したわ。それと同時に、最強の妖精になりかけた私がチルノをこの幻想郷って場所で、お詫びも兼ねて本当の最強に仕立てあげなければって使命感を強く感じて――」

 

 リージアが話をしていたその時、『最強の氷精』と言う言葉に反応したチルノが彼女に駆け寄り、肩を揺すりながら『あたいを弟子にしてくれ』と詰め寄った。

 

 最強になり損ねてはいたものの、自分が目指すべき位置に最も近いリージアから最強に近づくために何かを教えてもらえれば、幻想郷最強に1歩2歩と近づけると言うのを直感で感じ取ったが故の行動らしい。

 

「ねえ! どうなの!?」

「そんなに詰め寄らなくても、最初からそのつもりで居たから大丈夫よ、チルノ」

「本当に? やったぁ~!」

 

 そうしてあっさりと弟子入りを許可されたチルノは、大はしゃぎしながら氷の剣を生成し、切っ先をリージアに向けて構えた。敵意丸出しで構えていた時とは違い、霊夢や魔理沙たちと弾幕ごっこをやる時のように、真剣な表情をしている。どうやら、今の実力をリージアに知ってもらうため、早速試合をするつもりのようだ。

 

「じゃあ、リージア! 今のあたいの実力を知ってもらいたいから、今すぐ軽めの試合して!」

「ああ、そう言う事……じゃあ、早速やろうか」

 

 リージアも同じ事を考えていたらしくその頼みを了承、氷の薙刀を作り出して構えを取り、そして10秒経ち……近接格闘を含めた弾幕・魔法試合が始まった。

 

 まずは先手必勝とばかりに、チルノが多数の弾幕をばら蒔きながら接近し、氷の剣で斬りかかった。

 

 ただ、チルノの放った弾幕はリージアに全て避けられるか氷属性魔法で相殺されるかして対処され、剣擊も薙刀で受け止められて弾かれてしまうものの、諦めずに突貫工事で剣を作ってリージアに斬りかかる。

 

 しかし、それも右に避けられた後に腕を掴まれてから背負い投げされて吹き飛んだが、大してダメージは受けずに済んだようだが、それを見たリージアはやり過ぎてしまったかもしれないと思い、チルノの下に駆け寄って心配する様子を見せた。

 

「いてて……はぁ。あたい全然駄目だったなぁ……」

「いや、そんな事はないよチルノ。軽く試合してみて分かったけど……うん。練習さえ毎日頑張れば、そう遠くない内に化けると思うわ。それも、幻想郷の実力者たちとまともな戦いになる位にはね」

「そうかな? なら良かったけど!」

 

 こうして、実力を確かめるための軽めの試合は幕を閉じる事となった。

 

 

 

 




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チルノ最強化計画、始動

「チルノちゃん、お疲れ様。凄かったよ」

「えへへ、大ちゃんありがとう。でも、ししょーの方が圧倒的に強かった!」

「うん、リージアちゃんは凄く強かったよね。それこそ、本当に氷の妖精だったのかって思ったよ」

「あはは……まあ、()()私は氷の妖精よ。ここに来る前は妖精として見られてなかったけれども……それで話をぶった切るけど、チルノの実力は想像を超えてたわ。これを極みまで磨けば、余裕で私を超えると思う」

 

 実力を確かめるための軽めの試合を終えたチルノは、木の根元に寄りかかって休みながら、大妖精やリージアと楽しく会話をしつつ自分の実力に対する評価を聞いていた。

 

 彼女によるとチルノには眠っている力が膨大にあるらしく、それを全て解放する事が出来て上手く扱えるようになりさえすれば、幻想郷基準で考えると最低でもスカーレット姉妹と比べて、魔力や妖力と言った力でやや劣勢クラスまでには強くなるらしい。

 

 更に、リージアの考える『チルノ最強化計画』の全てが上手く行けば、そう遠くない内に幻想郷の神々クラスにまでのしあがる事が可能であるようだ。つまり、彼女はチルノを高く評価していると言う事は確実である。

 

「本当に? あたいってそんなに強かったんだ……」

「うん、確かにその通りよ。チルノは妖精としては技術とか力の面で規格外ね。氷の妖怪……いや、私があげた力を加算すると氷精たちの女神と言った方が正しいかもしれない。ただ、今の時点だと妖精最強止まりなのよ。力の通り道がとても狭いから」

「ん? ししょー、どう言う事?」

 

 しかしあくまでも容量が膨大なだけであり、それを放出するための技術が足りず、更に『力の通り道』が狭すぎてせっかく持っている力の3分の1も発揮出来ていないと、リージアはそう見立てているみたいだ。

 

「ふーん……じゃあ、ししょーがさっきも言ってた『チルノ最強化計画』ってやつをあたいが上手く達成出来れば、さいきょーになれるのか……」

「きっとなれるわ。もしかしたら、神格化されて正真正銘の女神になれるかもね。まあ、条件はあるだろうけども……」

 

 仮にリージアの言う通り、チルノが条件を満たして神格化されれば一介の『氷の妖精』ではなく、それらを束ねる『氷精の女神』となって種族としての格も大幅に上がり、能力も『冷気を司る程度の能力』に強化される事だろう。

 

 ただ、氷精の女神になると言うのは、妖精としての特性が激減ないし消滅してしまう事を意味する。もしかしたらそれによって、何らかの不都合が生じるかもしれない。

 

 しかし、チルノにとっては大妖精をどんな敵からも守れる『さいきょー』の存在になれればそれで良いらしい。女神だろうが何だろうが、どんな苦難が襲い来ようとも目指してやると、気合たっぷりに大妖精に誓っていた。

 

「だったら、あたいはそれを目指す! そして大ちゃんを誰からも守り通すさいきょーの盾になる!」

「チルノちゃん……ありがとう。もし妖精じゃなくなっても、私とお友達で居てね」

「そんなの言われなくても当たり前だよ、大ちゃん!」

 

 そしてそんな2人の様子を、リージアは少し遠くから羨ましそうに見ていた。前に居た世界で氷精としては強すぎた彼女は、同族どころか他の種族にも恐れられたが故、『友人』と呼べる存在が居なかったためだ。

 

 すると、そんなリージアの心の内を知ってか知らずか、大妖精が遠くで見ていた彼女を自分の下に呼び寄せた後、お友達になろうと声をかけていた。突然そんな事を言われたリージアはビックリして、嬉しいと言う感情とは相反する事を言ってしまう。

 

「まだ出会ってから全然経ってないし、初対面でいきなりあんな事した私とお友達なんてやめた方が……」

「良いからいいから、お友達になろうよ! チルノちゃんも、それで良いでしょ?」

「もちろん良いぞー!」

 

 しかし、そんな事など眼中にない大妖精。彼女の中ではもう既に、リージアが友達にする言う事は確定事項のようだった。チルノも大妖精の提案に即賛成したため、リージアは2人と友達になることが確定する。

 

 半ば強引ではあったが、前々から友達が欲しかったリージアがこの状況に思わず涙を流して喜んだ事により、そんな彼女に驚いたチルノと大妖精が焦りつつも何とか落ち着かせようと頑張ると言った事が、この後15分も続いた。

 

「ごめん。思わず嬉しくて泣いちゃったわ……よし! 気を切り替えて、今から貴女の最強化計画を説明するから聞いててね」

「おー!」

 

 そうして2人の努力によって落ち着いた後、気を切り替えたリージアによってチルノ最強化計画の説明が始まった。

 

 リージア曰く、まずは1度に出せる力を増やすためにひたすら魔法等を放って力の通り道を広げ、次に技術を磨くために彼女との試合を沢山経験する。

 

 で、ある程度まで強くなったら霊夢や魔理沙以外の誰かと弾幕ごっこをするか自分1人での訓練で経験を積み、魔導書等で新たな知識を取り入れ、自身の強さの糧とすると言う計画らしい。

 

「そして最後にどんな形であれ、あたいが霊夢と魔理沙に挑んでこれに打ち勝てば、計画が完全に成功する訳ね!」

「そう。確かにあの2人は強すぎるけど、最強化計画が上手く行けばきっと勝てると思うわ」

「うーん……そうだ! 大ちゃん、ししょー! 霊夢に魔理沙に挑む時、盛大に異変を起こそうと思う! あたいが凄く強くなったって所を見せてやるんだ!」

「チルノちゃん、流石にそれは無茶――」

「よーし! 頑張るぞぉーー!!」

 

 こうして、計画について聞いたチルノが凄い方向に気合いを入れ始めると言う不安要素があるものの、リージア主導の『チルノ最強化計画』が始動する事となった。

 

 




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最強への道筋

「氷の弾よ飛べ! 『アイスバレット』」

「そうそう。チルノ、良い感じね」

 

 チルノが凄い方向に気合いを入れた後、早速計画の第1段階である力の通り道の拡張を、リージアが湖の中央に作った氷の闘技場で行っていた。なんとなく試合をしている雰囲気を出すためと、仮に力が暴走したりする等して周りに被害が及ばないようにするためである。

 

 この段階でやる事はひたすら魔法なり弾幕なりを、休憩を挟みながら1度に出せる限界の威力でリージアに向けて放つと言う行為を繰り返すだけと言う、至極単純な訓練である。

 

 それ故複雑怪奇な事は何1つないものの、変化も見映えも殆んどない上、放った魔法や弾幕はリージアに全てあっさりと打ち消されてしまうせいで進歩している感じがしないため、楽しいとはお世辞にも言いがたい。そのためか、30分もするとチルノの集中力が切れ始めてくるのが良く分かった。

 

「ししょー……いつまでやってれば良いの? なんかもう飽きてきちゃったんだけど」

「まあ、確かに退屈だろうって言うのは分かるよ、チルノ。でもね、もしかしたら弾幕ごっこでも単調でつまらない戦いになるかもしれないの。そう言う時のために集中力を鍛える訓練でもあるからさ、早く最強になりたかったら申し訳ないけど、後1時間位我慢してね」

 

 そうリージアに言われたチルノは若干不満そうな顔をしていたものの、少し離れた所から見ていた大妖精に頑張れと笑顔で応援された事で集中力を取り戻し、再び訓練を再開した。

 

「食らえ!『氷符 アイシクルフォール』」

「凄い冷気を感じる弾幕……ちょっと不味い」

 

 すると、チルノはいきなりスペルカードを宣言し、リージアに向けて滝のように氷弾を向かわせて攻撃した。これに纏わせている妖力と冷気はかなり強く、並かそれ以下の敵であれば氷弾をまともに受けなくても、その冷気だけで倒せてしまうだろう。

 

 ただ、相手が同じ氷精かつ強さもチルノを遥かに上回るリージアである。先ほどの通常弾幕よりは多少手こずらせる事が出来たものの、ほぼ無傷で凌がれてしまった。これには流石のチルノも最強への道は遥か彼方であると、強く実感する事となる。

 

 まだまだ彼女には多数の技があるが、どれを使おうとも今のと殆んど同じ結果になる事だろう。

 

「これも駄目かぁ……ししょーのこの強さ、まるで霊夢や魔理沙、レミリアやフランと戦ってるみたい。正直言って、ししょーならあたいが今言った4人にも勝てそうな気がするんだけど、どうなの?」

「いや、善戦は出来るだろうけど結局は負けそうね。仮に私が全盛期の力を発揮出来るとしても……吸血鬼姉妹と1対1で何とか引き分けか、運が良ければ辛勝出来る位だと思う」

「と言う事は、ししょーに勝てなきゃ霊夢にも魔理沙にも勝てないのか。あたいももっと頑張らなきゃ」

 

 そんな雰囲気の中訓練をする事1時間、あまりやり過ぎるとかえって腕が落ちてしまうとリージアが判断し、初日である今日はここで切り上げる事に決めたようだ。チルノはまだまだやる気みたいだが、ここでも大妖精がちゃんと休むときは休まないと駄目だと、根気よく説得をした。

 

 大妖精を守るために最強を目指しているチルノが、当の守護対象である彼女から強く言われてしまえば従わざるを得ないと思ったのか、説得を受け入れて訓練を切り上げる事に同意した。

 

「大ちゃん。休むって言ってもずっと暇なのは嫌だし、この後どうしようか?」

「だったら、リージアちゃんを幻想郷の観光にでも連れていってあげるって言うのはどうかな?」

「あ……確かにそうかも! ねえ、ししょー! あたいたちと一緒に幻想郷を見て回ろうよ! 皆にも紹介したいしさ!」

「ええ、もちろん。チルノと大ちゃんの友達がどんな人なのか気になるし」

 

 その後、次の日の訓練までチルノと大妖精はここに来たばかりであるリージアのために、幻想郷を案内してあげようとして立ち上がった瞬間、辺りに3人以外の何者かの声が響いた。

 

「もう! お姉様はいつもいつも……あ! なんか変なの出来てる!」

 

 そしてすぐに、3人の目の前にある氷の椅子を粉砕しながら誰かが降り立ってきた。

 

「チルノ! 何だか面白そうな事してるけど、私も仲間に入れて……あれ? この妖怪……妖精さんって誰?」

「お、フラン! 別に良いぞ! それと、この妖精はあたいのししょーで、リージアって言うんだ!」

「チルノの師匠? ふーん……」

 

 その正体は、湖の畔にある紅魔館に住む吸血鬼『フランドール・スカーレット』だった。純粋な魔力や妖力の強さ、能力の危険度では姉をも凌ぐと言われている、幻想郷でも上位に位置する実力者だ。普段は館の誰かと一緒に居る事が殆んどで、今みたいに1人で外出する事はほぼないため、少し驚いた大妖精がフランにこう問いかけた。

 

「そう言えばフランちゃん、レミリアさんに1人での外出許可って取ったの?」

「ううん、取ってないよ。何回頼んでも全然許してくれないから、勝手に出て来たの。で、そうしたらチルノたちと知らない妖精さんが居たのを見て、面白そうだと思ったから来たんだ!」

 

 どうやらレミリアには無断で外出してきたらしい。何回頼んでもなかなか許可をしてくれないから、我慢出来ずにこっそりと出てきた所、湖の真ん中に出来ていた氷の闘技場に居た3人を発見し、面白そうだと思ってここに来たとの事。

 

「フランちゃん、大丈夫なの? 勝手に出て来て」

「うん。後でどうとでもなるからね……さて、そんな事よりも」

 

 すると、フランはリージアの方をじっと見つめ始め……

 

「ねえ、リージア。私と遊んでくれない?」

 少しばかり狂気を感じる声で、リージアに対してそう問いかけた。

 




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異界の氷精と悪魔の妹

「っ! チルノの記憶を見て知識だけはあったけど、実際この身で威圧と狂気を感じると……身がすくむわ」

 

 フランの放つ狂気と威圧に、さしものリージアも思わず震え上がった。全盛期の時でさえ運良く勝てるかもしれないと言うほどの強さなのに、さまざまな理由から全力が出せない今の彼女には到底敵う相手ではない。

 

「それでさ、リージア。私と遊んでくれるの? くれないの?」

「……私を壊さないでくれると約束するなら」

「ふふっ……チルノの師匠だからね、それは約束する。だけど、貴女なら私が本気で襲いかかっても、能力使わなければきっと壊れないよ!」

「えぇ……」

 

 なのに何故かは不明だが、フランはリージアを自分の本気にも壊れずに耐える程の『妖精』だと勘違いしてしまっていた。最初から本気モードのフランと戦う羽目になると言う地獄を、この身で味わうことになってしまったリージアだったが……ここで断ると後が怖そうだと直感したためか、彼女の()()()に付き合う事にしたようだ。

 

「ししょー、大丈夫なの? フラン、凄く強いからやめた方が良いよ?」

「心配しないで、もちろん大丈夫。勝てはしないだろうけど、消滅したりはしないから。それとチルノ、私とフランの戦いをしっかり見て学んでね。きっと最強になるための参考になると思うから」

「分かった。ししょー、無理しないで……」

「リージアちゃん、頑張ってね」

 

 リージアが、フランのお遊びに付き合うと聞いたチルノと大妖精。彼女のとんでもない強さを身をもって経験済みである2人は、いくらリージアが妖精の枠を外れているレベルの力と強さを備えているとは言え、無茶が過ぎると思っていた。

 

 そのため止めようとしたが、リージアの固い決意は揺らぐことはなかった。なので、チルノと大妖精もこれ以上は無理に止めるような事はせず、心配しつつも見守る事に決めたようだった。

 

「さて、私の準備は出来たからいつでも始めて良いよ、フラン」

「そう? じゃあ、行くよー!!」

 

 こうして、リージアとフランの戦いが始まり、最初に動き出したのはフランだった。まずは小手調べとばかり通常弾幕をばらまき、攻撃を仕掛ける。

 

 一撃一撃が下手な妖怪であれば消し飛ぶレベルの、弾幕ごっことは言えないような威力ではあったが、リージアはそれを見切って避けるか、強化した氷の薙刀で斬って防ぐかして乗り切った。

 

 お返しとばかりにリージアが『フリーズランサー』と言う、氷の小さな槍を高速で放つ魔法を使って反撃を仕掛けるが、持っていた金属棒で全てあっさりと砕かれてしまい、フランに届く事はなかった。しかし、その一瞬の隙を突いて放った氷の矢じりがフランの頬と腕を掠め、傷をつけた。

 

「フフッ! やっぱり私の思った通り、この程度じゃリージアを倒せないか。ならこれで行くね……禁弾『スターボウブレイク』!」

「うわぁ、凄く綺麗な……ってそんな場合じゃないわ!」

 

 すると、それによって刺激を受けたフランが全力でスペルを宣言し、リージアに向けて放つ。彼女の翼についている宝石のような形をした、色とりどりの弾幕を多数空に打ち上げてから雨のように降らせる技を見て、これはいよいよ不味いと思ったリージアがとある魔法を唱え、全力で迎え撃つ構えを見せた。

 

「ここが正念場ね……『()()彗星群(すいせいぐん)』」

 

 しかし、この魔法は発動するまでにタイムラグがあるのか、はたまた失敗したのか分からないが、リージアが魔法を唱えても何も起こる事はなかった。

 

 そうして魔法を唱えた後、フランが降らせた弾幕を避けながら強化された薙刀を持ち、避けきれない弾幕をそれで迎え撃つ。

 

「何て重い一撃な……しまった!?」

「ほらほら! リージア、もっと行くよー!」

 

 一撃一撃が通常弾幕とは比にならない威力を誇るため、斬りつける度に薙刀が少しずつ欠けていき、何回か防御に使ったところで遂に耐えきれなくなったそれが砕け散ってしまった。

 

 ただ、このタイミングで上空から光の尾を牽いた彗星が多数降り注いできたのをリージアが確認すると、彼女はようやく魔法が来たかと呟き、ガッツポーズをとった。フランもそれに気づき、思わず上を見ていた。

 

「何あれ……」

「私の今現在の最大級の力を込めた『彗星』だよ」

 

 こうして上空から降り注いできた彗星は、フランのスペルによる弾幕をそれなりな割合で相殺ないし軌道逸らしに成功したが、迎撃し損ねた弾幕が非常に近くまでやって来てしまっていた。

 

「くっ! 『多重凍障壁』――」

 

 もう防ぎ切れない。そう思ったリージアは防御魔法を発動させて迎え撃とうとしたが……

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

 その声と共に、彼女に襲いかかろうとしていた弾幕は目の前を通り過ぎた紅く光る槍によってほぼ打ち消され、残りの弾幕も遅れてやって来た小さな槍によって相殺され、リージアに当たる事はなかった。

 

「全く……勝手に外に出ていったかと思えば、こんな事をしていたとはね、フラン!」

「お姉様……! 邪魔しないでよ!」

 

 紅く光る槍を投げた人物の正体は、フランの姉で紅魔館の主『レミリア・スカーレット』であった。

 

 




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姉妹喧嘩、そして紅魔館へ

アンケートは本日の21時まで行いますので、よろしければ回答して頂けると助かります。


「ねえ、貴女。大丈夫だった? それにしても初めて見る()()ね。外の世界からやって来たのかしら?」

「まあ、お陰様で五体満足で居れてるし、それについてはありがとう……あ、それと私は()()異世界からやって来た氷の妖精、リージアって言うの」

「……フランとのお遊びでほぼ無傷な貴女が妖精? 冗談でしょ? 感じる力もチルノより遥かに強いのに?」

()()、だけどね」

 

 突然のレミリアの登場に、少しだけ安堵したリージア。何故なら、最大級の魔法を出し惜しみせずに発動させて何とかほぼ無傷で凌ぐ事が出来たが、もう既に魔力の残りが少ない所まで来ていたため、これ以上の攻撃が来てしまえば完全にアウトと言う状況に追い込まれていたからだ。

 

 フランが約束を守らずに、自分の意思で身体を破壊し尽くして来るとは考えてはいなかったものの、手元が狂うか力加減を間違えられて怪我をする可能性が大いにあった事も関係していた。

 

「ちょっとお姉様! 何で邪魔するのさ!」

「何でって、勝手に外出した上に……また暴走して、あそこの中級妖怪クラスの妖精を殺そうとしたでしょう? あれは明らかに弾幕ごっこで使う威力じゃないわ」

「……殺そうとなんかしてない!! チルノの師匠だって言うから、気を付けてた!」

「……」

 

 それに対して、フランはレミリアにせっかくのお遊びを邪魔されて、かなり苛立っていた。その上、ちゃんと彼女なりに本気を出しつつも、うっかり消し飛ばしたりしないように気をつけていたにも関わらず、()()()()()()()()と決めつけられた事も要因の1つだ。

 

 まあ、チルノの関係者じゃなければ悲惨な最期を遂げていたかもしれないから、あながちレミリアの怒りも間違いとは言い切れないが。

 

「……やっぱりししょーは凄いなぁ。妖精なのに、フランともあそこまで渡り合えるなんて」

「そうだね、チルノちゃん……あ、なんかフランちゃんとレミリアさんの姉妹喧嘩が始まりそうな雰囲気がするけど」

「確かに……あ、ししょーも逃げてるから大ちゃん、逃げるよ!」

 

 この状況をずっと見ていたチルノと大妖精は、リージアの戦闘を見て感心すると同時に、フランとレミリアの姉妹喧嘩が始まりそうなのを感じ取り、安全な場所まで同じく逃げてきたリージアと合流した瞬間、闘技場の上で本気の姉妹喧嘩が始まってしまった。

 

「「「……うわぁ」」」

 

 安全な場所から姉妹喧嘩を見ていた3人は、その光景に唖然としていた。何せフランの燃え盛る炎を纏う剣と、レミリアの妖しく光る槍が打ち合いになる度、周囲に魔力の波動が伝わる位の激しい喧嘩であったからだ。

 

 それで剣と槍の打ち合いが終わったと思ったら、リージアたち真っ青の、激しい魔法と弾幕の撃ち合いが20分と言う長い時間続いた。実力がほぼ互角の2人であるため結局決着がつかなかったものの、激しく戦った事で満足したフランとレミリアが、お互いに崩壊しかけた闘技場で謝った事により、姉妹喧嘩自体は無事終息した。

 

「チルノ、大ちゃん……迷惑かけてごめんね。それと、また今度弾幕ごっこ以外で遊んでくれるかな? リージア」

「あたいは怒ってないから大丈夫!」

「私も同じだよ」

「もちろん。手加減してくれるなら、弾幕ごっこも付き合うよ」

 

 すると、フランがチルノたちの元へ近づいていって色々迷惑をかけた事について謝り、少し経った後レミリア自身もチルノたちの元に向かい、迷惑をかけた事について謝り、これについては解決と言う風に決まった。

 

「お姉様、チルノたちを館に連れていって一緒に遊んでも良い? 図書館で本を読んだり、地下室で弾幕ごっことか他の遊びとかしたいんだ……」

「ええ、別に良いわよ。でも、皆にはちゃんと聞いたの?」

「あ……まだ聞いてない」

 

 その後、フランが館にチルノたち3人を連れて行き、色々な事をして遊びたいとレミリアに対してお願いをしたら仲直りした事もあって即了承し、チルノたち3人もそれを受け入れたため、紅魔館に休憩込みで遊びに行く事が決まった。

 

 館まで他愛もない話をしながら歩き、到着して館に入った後は最初に地下にある大図書館に本を読みに向かった。リージアはかなり、大妖精も割と本を読む事に興味があったが、チルノは本への興味が皆無である。それこそ、フランや大妖精と一緒でなければ、こう言う場所に殆んど寄らない程だ。

 

「パチェ、少しの間フランとチルノたちがここに居ても構わないかしら?」

「まあ、静かにしていてくれるなら、長く居ても構わないわ。で、そこにいる銀髪の妖精……にしては強すぎる力を感じる子は一体……」

 

 そうして大図書館に入ったレミリアは、本棚で魔導書を探していた『パチュリー・ノーレッジ』に声をかけ、チルノたち3人が大図書館に居ても大丈夫かと問いかけた。

 

 普通に許可はもらえたが、案の定リージアの存在が気になるようで、パチュリーは彼女に一体何者かと質問をした。

 

「私の名前はリージア。こことは違う世界からやって来た、一応妖精やってるわ」

「よろしくね、リージア。それにしても、貴女本当に妖精?」

「うん、妖精のはずだけど……前の世界でもここでも魔物だとか妖怪だとか皆が言うから、実はそうなんじゃないかって思い始めてる」

「なるほどね」

 

 そんな質問に対してリージアは普通に答え、無難に自己紹介を終えた後にせっかく紅魔館に来たのだから、魔導書を1冊だけでも借りることが出来ないか交渉をしようと思いたったらしく、パチュリーにお願いをしていた。結果、チルノや大妖精も一緒にお願いした事もあって、無事に借りる事に成功した。

 

 




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チルノの潜在能力の一片

「チルノが魔導書を使うのね……魔法使いにでもなるつもりなの?」

「いや、魔法使いになりたいと言う訳じゃないんだよね。実は……」

 

 あの後、リージアたち4人はチルノが訓練に使うための都合のいい魔導書を探すため、パチュリーと共に図書館をひたすら歩き回っていた。

 

 何故なら、1つの属性魔法ですらかなりの種類がある上、パチュリーは生粋の魔法使いだ。初心者でも取っつきやすい魔導書などと言う物は存在しないか、あっても興味本位で取り寄せた僅かな量だけなのが、安易に予想がついたからである。

 

「なるほど。霊夢や魔理沙に勝てるほどの最強の氷精になるために魔法も覚えようとしている訳ね。それにしても、異変を起こそうだなんて……無茶が過ぎないかしら?」

「ししょーが居れば全然問題ない!」

「へぇ~。面白そうだなぁ……よし、私もチルノと一緒に――」

「フラン、貴女はダメ。レミィの胃痛の種を増やす気?」

「えぇ……はいはい、分かりましたよー」

 

 そんな感じのやり取りをしながら、良さそうな魔導書を何冊か取っていくフランと大妖精だったが、チルノはどれが良いのか迷いに迷っていた。普段、こう言う類いの本を全くと言って良い程読まないが故である。

 

「うーん……しょうがないから、この『氷属性魔法大全集』を持っていって。魔法で容量圧縮してるから見た目がかなり薄くて小さな本だけど、最弱から最強までえげつない位の氷系魔法の解説が載ってるから、それさえあれば大丈夫よ。チルノ」

「そうか! ありがとう、パチュリー!」

 

 そんな感じで探すこと30分、結局決められなかったためパチュリーが渡してきた『氷属性魔法大全集』と言う、あらゆる世界の氷系の魔法がこれでもかと載っている魔導書をしばらく借りていく事にチルノは決めた。

 

「さてチルノ、早速中身を見てみようか」

「そうだね、ししょー!」

「私も気になる!」

 

 一体どんな氷属性魔法が載っているか気になるチルノとフラン。早速1ページ目を開いてみると、SF映画に出てきそうな、空中に浮かぶタッチパネルのような物が現れた。

 

 そこには、多種多様な世界の名前らしき言葉がリスト化され、順番にズラッと並べられていた。それを指で押してみると、押した世界のあらゆる系統の氷属性魔法についての解説が詳しく載っていたが、それらのほぼ全てが弾幕ごっこには使えるようなものではなかった。

 

 特に絶対零度の氷槍で串刺しにしつつ、周囲にも凍てつく冷気を放する魔法に、超巨大な氷塊を爆発させて周囲に氷塊と猛烈な冷気を撒き散らす魔法と言った、どう考えても完全に殺しに来ているものは当然、弾幕ごっこでは論外だと結論が満場一致で出たが……覚える事自体は賛成のようだった。

 

「使えるようになって損はないだろうけど……練習場所はどうしようか」

「それなら霧の湖の真ん中に闘技場があるけど、あれを強化して使えば良いんじゃないの? 結構広くて、私とお姉様が全力で暴れても崩壊しなかったしさ」

「ああ、私が作ったあれね……」

「へぇ~。リージアが作ったんだね、あの闘技場」

 

 その後はパチュリーと大妖精、訓練する本人であるチルノを差し置いて何故かフランとリージアが2人で盛り上がったり、何を思ったかチルノがとある魔法を興味本位で唱えてしまい、その上成功してしまったお陰で、全員の目の前に尖った小さな氷柱が多数落下してくると言った事が起きたりしたものの、図書館での魔導書探しは概ね無事に幕を閉じた。

 

「さて、次は私の部屋だね! リージアは知らないだろうけど、結構暗くて私とお姉様以外は周りが見えづらいんだよね。ただ、明かり自体はあるから真っ暗で見えないって事はないよ」

「なるほど。まあ、暗かったら私が照らすから大丈夫」

 

 次はフランが普段過ごしている部屋に向かい、中にあるどこからか流れ着いてきたボードゲームで遊んだり、軽めの弾幕ごっこをするはずであった。しかし、そうは行かなくなってしまった。

 

 何故なら、地下室に入って少し経った時にまたしてもチルノが魔導書を見ながら、雪を降らせる魔法を興味本位で唱えた事で、数cm積もった雪の後始末をする羽目になってしまったからだ。それだけならまだしも、この雪に触れた大妖精とフランが身体を動かしづらくなると言う効果までおまけでついてきてしまった。

 

 フランはそれを力業で無理矢理解除して動けたが、大妖精はそれのせいでまともに動く事が難しくなってしまった。これには流石のチルノも不味いと思ったのか、リージアに魔導書を渡して大妖精とフランの2人に対してちゃんと謝った。

 

「大ちゃん、フラン……ごめん。ししょー、この本持ってて」

「良いよ、チルノちゃん。興味があるのは良いけど……次は気を付けてね」

「私はこの程度全く問題ないから良いよ! て言うかさ、魔法初めてなのにそんなホイホイ唱えられるものなの? チルノって実は……その手の才能が元からあったんじゃない?」

「確かに、そうかもしれないわ」

 

 そうして全員で積もった雪の処理等を2時間程度で済ませて少しばかり休んだ後、ゆっくり遊ぶはずだった予定を変更し、流れでチルノの訓練をついでに軽めの弾幕ごっこをする事となった。

 

 




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氷翼の輝天使

少し遅れましたが、アンケートに回答して下さった方、ありがとうございました。結果は、物語の進む速度はこのままと言う事になりました。


「さあ、チルノ! 遠慮は要らないから、どんどんその本を見ながら魔法を使って良いよ!」

「え? 良いの?」

「うん! 地下室も魔法結界で強化してもらったし、私も防御の時は本気を出すからさ」

「……分かった。そう言ってくれるなら、あたいも頑張らないとな!」

 

 地下室に積もった雪を片付け、軽めの弾幕ごっことチルノの魔法訓練に耐えられるように、フランとパチュリーが魔法結界で周辺を囲って強化した後、2人は対峙していた。

 

 さっきは興味本位で唱えたりして反省していたチルノは、本当に良いのかとフランたちに聞いて許可をもらい、しっかり扱えるようになるため気合いを入れ、自分の持てる力を全て使いきる構えを取っている。偶然だろうが、その様子はまるでパチュリーが魔法を使う際に良く似ていた。

 

「えっと……じゃあ、今からやるぞ! 氷の矢よ、射抜け……『アイスアロー』!」

 

 そうしてチルノが最初に放ったのは、自分の周りに生成した小さな氷の矢を複数、攻撃対象に向けて放つ魔法だ。弾幕とかなりの点で似通っているため、フランは特に驚かずにこれを回避した。

 

 お返しとばかりにフランが弾幕で、今の倍くらいの密度でチルノを狙うも、再びアイスアローを発動させて迎撃し、それで半分程度は相殺する事に成功した。残り半分はそのままチルノに向かっていくが密度が落ちていたため、もう1度魔法を発動させるのではなく、回避する事を選択したようだ。

 

「手加減してもらってるのに……フランは強いな! でもあたいだって負けないから! 『ヒャダルコ』」

「チルノって下手な妖怪よりも強いんだけど……おおっ!」

 

 迫り来る弾幕を避けつつ本をチラ見しながら、チルノは凍てつく氷の刃で相手を切り裂く魔法を発動させて放つ。当のフランは多少油断していたらしいが、それでも手持ちの金属棒で氷で刃を全て斬り伏せる事に成功した。そして、反撃をするためにチルノを見た瞬間、目の前を光が覆ったために目を瞑ってしまった。

 

 少し経った後、反撃をするためにチルノを見るが、その時何らかの魔法を唱えようとしている彼女の姿を見て、反撃の手が一時的に止まった。

 

 何故なら、目の前に居たのは妖精とは思えない威圧感を放ち、天使のような氷の翼を生やし、水色瞳に白髪と言う姿に変化した『チルノ』が居たからだ。白く輝く冷気を伴うオーラを放つ彼女は妖精などと言うレベルではなく……例えるなら大天使、もしくは神そのもののように見える。

 

 そのお陰かただ、魔法詠唱に夢中なチルノは自身の変化に気づいてはいないようだが。

 

「フラン! これがあたいの全力――」

 

 そうしてチルノが魔法を唱えようとした瞬間、急に姿が元へと戻って下へと墜落し始めてしまうのを見たフラン。これは不味いと思ったらしく急いで落下地点へと向かい、何とか受け止める事に成功した。

 

「チルノちゃん! 大丈夫!?」

「……うん。急に力が抜けちゃっただけで、大丈夫!」

「元気そうで良かったけど……凄いわ、チルノ。あの姿になったときの貴女は私を遥かに凌駕して、フランに引けを取らない威圧感を放ってたよ。例えるなら、『氷翼の輝天使』かな」

「そうそう! あの時放たれる魔法を受けてたら、私が本気で防御したとしても厳しかっただろうし!」

「……?」

 

 その後、近づいてきたリージアや大妖精が口々にチルノの心配をしたりあの例の姿から感じた力を褒めるが、当の本人は気づいていないため、皆が何を言っているのかいまいち理解出来ていないようだった。

 

 ただ、少なくとも自分が魔法を唱えようとして失敗し、限界である事は理解しているらしい。元気そうではあったが、まだ魔法の訓練をしたいとは言わなかった。

 

「チルノ、歩ける?」

「うん。少しだるい感じがするけど歩けるから大丈夫だぞ、ししょー!」

「なら良かったけれど……」

 

 こうして軽めの弾幕ごっこならぬ、チルノの魔法訓練は幕を閉じる事となった。そして、当初の予定通り休憩するためにフランの持ってきたボードゲームで遊ぼうとした時、図ったかのようなタイミングで咲夜が全員分の紅茶と緑茶、各種和菓子に洋菓子の数々を持ってきたのが見えた。

 

「妹様方、飲み物に各種お菓子です。もしよろしければ食べていって下さい……えっと」

「リージア。これが、私の名前」

「分かりました。それと、私は十六夜咲夜と申します。これからも、よろしくお願いいたします、リージアさん」

 

 そうして2人が軽く自己紹介をした後、持ってきたお菓子や飲み物を置いて、咲夜はその場から消えた。

 

 およそ人間とは思えない動きを見せた咲夜を不思議に思ったリージアがフランたちにあの人は人間なのかと問いかけ、皆が一斉に人間だと答え、更に能力の概要まで話した事による彼女の驚き様に皆が笑いこける。

 

「いや、でも時間を操るってそれはもはや神の所業じゃないの? しかも彼女は人間とか今更だけど、幻想郷ってとんでもない魔境なのでは!? あ、でも私の前居た世界も大概か……」

「幻想郷が魔境……まあ、その気持ちも分からなくもないかな。特に霊夢とか魔理沙、本当に人間とは思えないほど強いからね~。私も負けたし」

 

 そんな感じで楽しく盛り上がりながら、運ばれてきたお菓子や飲み物を美味しく飲み食いした後、チルノたちは気晴らしに人里へ遊びに行こうとした。しかし、カップやお皿を指定された場所に持って行く際、廊下の数少ない窓から外の景色を見た時にもう既に日が暮れていた事が分かり、それは明日に回す事になった。

 

「あ、そうだ! 皆今日はここに泊まっていかない?」

「え? でも、フラン。レミリアに許可は取らなくても――」

「別に良いわよ。フランのお友達だからね」

「……て言うか、お姉様いつの間に後ろに居たの? まあ、許可ももらえてちょうど良かったけど」

 

 そうして指定された食堂に食器を持っていった時、フランがチルノたちに館に泊まらないかと提案をした。レミリアに許可を取らなくても良いのかとチルノが言おうとした瞬間、その本人がいつの間にか後ろに居て、ついでに許可をもらえたために館に泊まる事が決まった。

 

 食器を片付けた後再び地下室に戻り、少し時間を置いて寝支度をしてから、4人で寝れる位のやたら大きなフランのベッドに横になり、色々な話をしながら皆眠りについた。

 

 




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人里でお休み

「チルノちゃん、もうお昼だよ。起きて」

「……大ちゃんおはよう。起きたのはあたいが最後か」

「うん。でも、別に誰も気にしてないよ。特に急ぎの用事もないし、昨日限界まで魔法の訓練してたからね。それにしても、昨日天使みたいな姿になった時は本当に驚いたし、凄かったよ。流石、チルノちゃんだね」

「そうやって褒めてくれるのは嬉しいけど……昨日も皆そんな事を言ってたよね。あたいにはどう言う事なのか全く分からないんだ」

 

 次の日の昼近く、寝ていた4人の中で一番最後に目覚めたチルノが、起こしに来た大妖精とそんな会話をしていた。どうやら、昨日のあの急激な変化がどうしても気になっていた彼女は、チルノに対して再び質問をしたくなったらしい。

 

 ただ、当の本人があの時『氷翼の輝天使』とリージアに呼ばれるような姿に変化した事に気づいていないため、何回同じ事を聞かれても同じように答えていた。

 

「もしかして、無意識だったのかな? 本当に分からない?」

「うん。覚えてたら教えて、大ちゃん」

「なるほど、分かった。じゃあ説明するね」

 

 そうして大妖精がチルノに対し、昨日の姿の変化について覚えている限りではあるが、詳しく説明をした。威圧感や感じる魔力などもフランに引けを取らず、もはや『氷の妖精 チルノ』の面影が口調位しかなかった事も含めた全てである。

 

 大妖精から詳しく自分の変化について聞いたとき、チルノはまるで信じられないと言った様子であった。今までフランに対して手加減されても負けていた彼女が、信じられないのも無理はない。何より、変身などしたことが1度もないと言うのが大きいようだ。

 

「そうなんだ……あたいが一瞬でもフランに届いた……あはは」

 

 しかし、同時に嬉しくもあったようだ。大妖精の説明通りなら、チルノはフランに比肩する力を秘めていたことになり、最強が大きく近づいて来たと言う事だからだ。

 

「よぉーし! 頑張るぞー!」

 

 そうやって大妖精から聞いて、チルノが思い切り叫んで気合いを入れていた時、地下室にリージアとフランが入ってきた。どうやら、チルノが叫んだ声を聞いた事で起きたと判断したようであった。

 

「チルノ、おはよう! 寝起きであれだろうけどさ、今から皆で人里に行って1日訓練とかなしで、ゆっくりしようって話になってるんだけど、どうかな?」

「訓練なし? うーん……」

 

 自分がフランに比肩する力を秘めていたと言う事実を大妖精から聞き、今日も限界ギリギリまでやる気でいたチルノは一瞬『訓練したい』と言おうとしたが、やめたようだ。

 

 大妖精がチルノの方をじっと見つめていた事が、何だか『今日は絶対休め!』と言われている気がしたかららしい。

 

「分かった。確かに、無理しすぎたら逆に良くないからな!」

「そう。チルノは昨日のあれで結構無理してたから、今日は1日ゆっくり過ごして英気を養った方が、明日からの訓練の効果も少しずつ出てくるだろうし」

 

 こうして、今日1日は人里等で楽しくのんびり過ごす事となったため、若干寝ぼけているチルノであったが、手早く準備をして皆と一緒に紅魔館を出発した。

 

「で、人里って言っても何するの? 甘味処でお菓子を食べるか、みすちーの屋台がやってる事を期待して美味しい焼き鳥に八ツ目鰻を食べながらお話するか……」

「チルノちゃん、食べる事しか考えてない……」

「まあ、私はチルノの気持ちは分からなくもないな~。実際問題、幻想郷には娯楽が本当に少ないからね」

 

 そんな感じで楽しく会話しながらチルノたちが人里へとのんびり向かっていると、こちらに近づいて来る人の姿が見えた。

 

「よお! フランにチルノ、大妖精に……なあ、そいつは誰だ? 見た事ない妖精……いや、妖怪か」

「妖精で合ってるわ。えっと……私はリージア。最近、と言うか昨日幻想郷に来たばかりの氷精」

「なるほど。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ! よろしくな」

「ええ、よろしく」

 

 近づいてきた人の正体は、普通の魔法使い『霧雨魔理沙』だった。普段なら空を飛ぶような、それこそ気分転換でもない限り歩くことはない道を歩いていたのは珍しかったようで、リージアの自己紹介が終わった後すぐ、フランがどうしてここに居たのかと、魔理沙に質問していた。

 

「理由は特にないな。ただ、強いて言うなら気分転換って奴だ。たまにはこう言うのも良いかなって」

「ふーん。確かに、そんな理由でしかここを歩いて来ないもんねー。実際、私たちも魔理沙と同じような理由で飛ばないで歩いて来てるし」

 

 一言二言フランと魔理沙が言葉を交わした後、再び歩みを進める。そうしてのんびり歩いていると、目的の人里が見えてきた。

 いつも通り、里の入口付近で何かしている推定50歳のおじさんに元気良く挨拶し、チルノたちは人里へと入っていった。

 

 その後、最初に何をしようかと言う議論をしつつ、のんびり見慣れた景色を見ながら歩いていると、脇道にある家からフランやチルノよりも小さな男の子が、泣きながら出てくるのが皆の目に入った。




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チルノの人助け

「ねえ、大ちゃん。あの子どうしたのかな? 尋常じゃない泣き方してるよ……」

「私にも分からないよ。親子喧嘩でもしたのかな? フランちゃんとリージアちゃんはどう思う?」

「うーん……私にも分からないなぁ」

「確かに、私も分からない。ただ、少なくとも親子喧嘩のそれじゃなさそうな気がするんだよね」

 

 脇道に少し入った場所の家から泣いて出てきた小さな子供を見て、一体何があったのか思考を巡らしていたチルノたち4人。チルノや大妖精は声をかけようかとも思ったみたいだが、この状況でそれは悪手であるとリージアに止められたため、ひとまず静観を決め込む事になった。

 

 皆にあの子供を見守る義務は微塵も存在しない。里の誰かに対処か保護を頼むかして丸投げして、自分たちはのんびり人里を楽しんでも全く問題はない。

 

 むしろそのまま無視しても、それによって起こる事云々がどうなのかと言うのを考えなければ、誰も責める事は出来ない。ただ、チルノたちは何故か気になっているようだ。

 

「親子喧嘩じゃないとすると……どこぞの馬鹿な妖怪が、襲撃を仕掛けて来たとかかなぁ?」

「いや、多分それはないと思うよフランちゃん。もしそうなら、霊夢さんか慧音先生が聞きつけて来るはずだから。それに、人里の人間たちは全然パニックになってないし」

「そんなものな――」

 

 とその時、見ていた男の子の様子が時折おかしい事にフランが気づき、それに加えて一瞬見えた彼の左腕が赤く腫れ上がっているのも目撃した。この事から何らかの出来事によって腕が腫れてしまい、痛みが強いが故に泣いているのだろうと結論が、15秒程で出た。

 

「とは言え私たちの中で誰も回復魔法使えないし、技術もないから誰か呼んでおいて……あ」

 

 しかし、4人の誰も医者のように怪我を治す技術がなければ、回復魔法を使える訳でもなかった。自分たちが誰かに言って後は任せようと大妖精が言おうとした時、既にチルノがその子供に近づいて話しかけていた。

 

「どうした? 大丈夫か?」

「うでがいたいよぉ……」

「分かった。何があったか言える?」

 

 すると、小さな男の子は『熱いお湯が腕にかかって火傷した』と、泣きながらもそう言った。それを聞いたチルノは、火傷だったら冷やさないとダメだと思ったため能力でとても冷たい氷を作り、その部分に直に当てようとして………

 

「チルノちゃん!」

「ん? ああ、大ちゃん。火傷したって言うから冷やしてあげようと……」

「火傷……うん。それは分かったけど、そんな冷たい氷を傷口に直接当てたらダメでしょ? 冷やすなら布か何かで氷をくるんでからにしないと。それに、そこまで酷いなら冷やすだけじゃ……」

「あれ? そうだっけ?」

 

 大妖精に止められた。チルノがとんでもない事をしでかすのではないかと思ったためだ。その心配はチルノが火傷した腕を冷やそうとしてやろうとしたと聞いて消えたが、その後すぐに注意をした。チルノのやろうとした事が全て間違いと言う訳ではないが、所々抜けている所があったためであった。

 

 そんなようなやり取りをしつつ、いつの間にかリージアが人里の人からもらっていた布で細かくした氷を包んで、取り敢えずそれで冷やしていると、男の子の母親らしき女の人が慌てて近づいてきてチルノたちにお礼をした。同時に、1人で留守番させてしまった自身のの間違いを後悔していた。

 

「ごめんね……ごめんね……早くお医者様の所に」

「おかあさん……」

 

 そうして2人が人里に滞在中らしい、永遠亭の医者製作の薬を出張販売している人物の元へと行こうとしたその時……

 

「お待たせーー!! パチュリー連れてきたよ!」

「けほっ、けほっ……ちょっと、いきなり駆け込んできたかと思ったら首根っこ掴んで何するの!? 防御魔法かけなきゃ危なかったわよ……」

「あはは……ごめんねー」

 

 彼らの目の前に、いつの間にかパチュリーを連れてきていたフランが盛大に砂煙を立てながら着地した。どうやら、あらゆる魔法に精通している彼女ならば、男の子の怪我を何とか出来るだろうと踏み、全力で飛行して連れてきたとの事だった。

 

「なるほど。火傷を……ええ、これなら魔法で何とか出来るレベルね……」

 

 フランから説明を受け、納得したパチュリーは男の子の腕に向けて水属性回復魔法をかけ、火傷による傷口と痛みをなくして治癒させる事に成功した。その後、改めてお礼をチルノたちにしてから、母親と男の子は家へと入っていった。

 

「流石、パチュリーだね! あっという間に治しちゃうなんて」

「……それはどうも。で、私はもう帰って良いかしら?」

「うん、ありがとうね!」

 

 その後すぐに、フランに連れられて来たパチュリーは、館へと戻るために飛んで行った。

 

「さて、改めて人里でゆっくり過ごそう! とは言え、どこ行く? 無難に甘味処にしておく?」

「うん。そうだね、フランちゃん。チルノちゃんも行きたがってたし、リージアちゃんも案内したいし……って、勝手にそう言う話しちゃったけど、それでも良い?」

「まあ、私は構わない」

「あたいも同じく!」

 

 こうして、改めて人里でのんびり過ごす時間が始まる事となった。

 

 




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博麗神社の巫女

「やっぱり、人里の甘味処のお菓子は美味しいよね。チルノちゃん」

「そうだね大ちゃん。 何でも揃ってるから、本当に飽きないし!」

「とか言ってるけど、チルノっていつもかき氷しか食べないじゃん。あ、リージアもかき氷食べてる」

「ええ。チルノがあまりにも美味しそうに食べるから気になって」

 

 火傷した男の子を全員の協力で治した後、和菓子や洋菓子、紅茶に緑茶などを堪能するために人里の甘味処にチルノたちは行っていた。大体何を飲み食いしようかと言うのは、リージア以外の全員は決まっている。チルノはかき氷で大妖精は饅頭と緑茶、フランは紅茶とケーキでたまにカステラと言った感じだ。

 

「そう言えば、フランちゃん。本当にドカドカ頼んで大丈夫なの? お金とか……」

「うん! それなら私がどうにかするから皆は気にしないで、好きなだけ食べてよ!」

「まあ、フランちゃんがそう言うなら……」

 

 お金の問題は、フランが何らかの手段を使って解決すると言う事らしい。それでも若干遠慮がちな大妖精だったが、あそこまで自信満々に言われれば逆に断るのが悪いと思ったのか、再び饅頭を食べ始めた。

 

 そんな感じで盛り上がりながら皆で飲み食いする事およそ20分、流石にこれ以上は金銭面云々言う前に、食べきれなくなってきたと言う問題になってきたため、早々に切り上げて次の場所へ向かう事にしたようだ。

 

 で、次はどこに行こうかと言う話になったが、娯楽に乏しい幻想郷では他に行く場所がない。ミスティアの屋台もあるにはあるが、甘味処でお菓子を食べ過ぎたせいで、フラン以外の皆は八ツ目鰻や焼き鳥が食べる気が起きていない。

 

 なら祭りに行こうとも思い立つも、時期が悪すぎて何もやっていない。プリズムリバー3姉妹の音楽祭もタイミングが悪かったみたいで、ほんの10分前に終わってしまったと、男の人に聞いた事で判明してしまった。もう少し早く甘味処から出ていれば、僅かでも聞けたのにと思った。

 

「やる事がなぁーい……」

「うん、確かにないね。リージアはどう? ただ歩いてるだけだけど、楽しいかな?」

「私にとっては初めて見る風景だから、今はまだ楽しいけどまあ……流石に毎日これだと飽きるわ」

 

 そうして、見事にやる事がなくなったチルノたち一行。お菓子を食べる時間込みで、館を出てから2時間と少し位しか経っていない状況であり、時間が大幅に余ってしまう。チルノ最強化計画の一端である訓練を皆でしようかと言う話も出たが、今日1日はのんびり過ごす事が決定しているために、その話は立ち消える。

 

 とは言えこのままただ意味もなく辺りを歩いているのも、館に戻るのもつまらないと思っているフランとチルノは、さてどうしようかと考えに考えた。弾幕ごっこが出来ないのなら、まだ館には戻りたくないからである。

 

「うーん……そうだ! 博麗神社に押し掛けに行こうよ! 幻想郷に住む以上、リージアを霊夢にも紹介しておいた方が良いと思うからさ」

「なるほど! 確かにある程度暇潰しが出来そうだし、それが良いな!」

 

 見事なまでに大妖精とリージアを無視して勝手に2人で話を進めるフランとチルノ。ただ、目的地云々は置いておいたとしても、行きたい所がない上にこのまま歩き回るか帰ると言う選択はないため、勝手に話を進めた事については特に何も言わずについていく事にした大妖精とリージアであった。

 

 そうして会話を交わしつつ、綺麗な景色を堪能しながら神社前の階段に到着した。いつもは飛んで行くが、有り余る時間を潰すために歩いて登る事に決まった。

 

「ねえ霊夢ー! 居るー? れーいーむ!」

「はいはい、そんなに叫ばなくても……普通に呼んでくれればよかったのに、フラン。で、何しに来たの?」

「暇だから遊びに来たの! 良いでしょ?」

「はぁ……まあ、私の方も暇だから良いけど、食事は出ないわよ」

 

 階段を登りきり、神社へ着いたところでフランが大声で霊夢を呼んだ。あまりにもうるさい声で叫んだため、側に居たチルノたちは思わず耳を塞ぎ、中で作業をしていたらしい霊夢も若干不機嫌な感じで境内に出てきた。

 

 ただ、遊びに来る事自体は拒否するつもりはないようだ。気だるそうな感じではあるものの、チルノたちを神社へと招き入れて緑茶を全員分淹れて渡した。

 

「それで、そこの白髪の()()()()()()()()は誰? 見たことないけど、外の世界から?」

「そう。リージアって言って、外の世界……いや、異世界からやって来た氷の妖精だってさ」

「ああ、なるほど……チルノも大概だけど、あんたに至っては氷の妖怪って言われても驚かないわ。だって、明らかに感じる力が妖精の比ではないもの」

「やっぱり、そうなるか……」

 

 案の定、霊夢はリージアの事が気になるようで、そこの妖怪みたいな妖精は誰だと聞いてきた。それに対して、フランが指差しながら軽く紹介をし、紹介されたリージアは軽く霊夢に会釈をした。少しばかり怯えているようにも見えたが、チルノの記憶でも読んだのだろうか。

 

「まあ良いわ。それで、一応聞くけど……」

 

 すると、霊夢はリージアの方を見据え……

 

「元居た世界に戻る? それとも幻想郷で暮らす?」

 

 彼女に対して、そう聞いてきた。

 




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霊夢との約束

「霊夢さん、でしたか。それならもう、幻想郷に残る……いや、残らざるを得ないですね。今の私はチルノの秘めたる力の供給によって維持されている身、元の世界に戻ると言うのは、私の消滅を意味するので……」

「なるほど。言われてみて気づいたけれど、確かにあんたから感じる力の殆んどがチルノと9割9分一緒なのよね。となると、確かに良くて存在が極めて希薄になる、悪ければ完全消滅……分かったわ」

 

 リージアが霊夢に幻想郷に残るか元の世界に戻るか聞かれた時、『幻想郷に残らざるを得ないから残る』と、即答した。

 

 今のリージアはチルノの力を使用して身体を維持している。実は、リージア自身が憑依前に持っていた力を使えば、例えチルノが居なくとも魂であるはずの身体を実体化させ、維持する事など容易だった。

 

 しかし、彼女はその事実を完全にど忘れしていたらしく、憑依する際に必要な分を全て渡してしまったため、このような感じになってしまったのだ。

 

 彼女自身、その事に奇跡的に思い出したのは憑依して力を全て渡して少し経ってからであった。慌ててどうにかしようとするも時既に遅し、チルノの力と同化してしまったため、リージア自身の意思とは無関係に幻想郷に残る事は確定だったのだが。

 

「と言う事は、住む場所については問題なさそうね……」

 

 すると、霊夢が再びリージアの方を見据えながら……

 

「改めて……ようこそ、幻想郷へ。歓迎するわリージア」

「……ありがとうございます。霊夢さん」

 

 幻想郷へ住む事に対する、歓迎の一言を口にした。それに対して、何か長々しく感謝の言葉を言おうと考えたリージアであったが、結局思い付かなかったからしく、一言だけ言って頭を下げるだけになった。

 

「ところであんたたち、確か暇だから遊びに来たって言ってたわよね。自分で言っちゃなんだけど……本殿と境内しかないわよ、この神社。何をして遊ぶつもりなの?」

「大丈夫だぞ、霊夢! 遊びに来たと言っても、訓練の疲れを癒す良い休み場所としてここを選んだだけだからな!」

「あ、そう。なら別に良いけど……訓練って一体何をしてるのよ、チルノ」

「えっとね、例えば……」

 

 リージアとのやり取りを終えた後、霊夢が博麗神社に訓練の休憩を兼ねて遊びに来たチルノたちに対し、ここには娯楽がないに等しいけど大丈夫なのかと疑問を投げ掛けた。それにチルノが大丈夫だと答え、それについてはあっさりと解決した。

 

 ただ、話の途中でチルノの話した『訓練』と言う単語に引っかかるのか、普段なら聞かないような事を霊夢は聞いた。思わず、異変を起こして霊夢や魔理沙に勝負を挑み、打ち勝って見せると言う計画を『巫女の勘』とやらで見透かされたのかもしれないと内心ヒヤヒヤしつつ、当たり障りのない訓練内容をチルノは全部話した。

 

 その後も何故急に訓練なんて始めたのか、前よりも妖精の枠から遠ざかっているが、本当にやっているのはただの訓練なのか等、色々な事を事細かに質問を投げ掛けていた。

 

「ああ、霊夢さん。実はですね、チルノは元々かなり強い力を奥に秘めていまして、それを自由自在に引き出せるようにするのが目的の訓練なのです。決して非道な方法で力をつける事や、それでここの支配者になろうなどと言う馬鹿げた考えは()()()()()()()()持っていません」

 

 その光景を見ていたリージアがすかさず間に割って入り、霊夢が心配しているようなあらゆる想定通りにはならないと、プレッシャーに耐えつつ何とか言い切る。

 

「もし、()()()()()()()()が心配なら、明日霧の湖に来て力の使い方をご教授してもらえませんか? 何なら毎日監視の名目で『氷の闘技場』に来ていただいても構いませんよ。あ、3日やったらその次の日はお休みですけどね」

「まだ妙な違和感は感じるけど……そこまで言うなら分かったわ」

 

 結果、リージアの活躍によって霊夢の質問攻めからチルノは何とか解放される事となった。

 

 その後、時折出されるお茶を飲みつつ境内で何かをして遊んだり、縁側でのんびり話をしながらどんどん時は過ぎて行き、日が暮れるまで神社にずっと入り浸る事となった。これなら人里でウロウロしてようが、紅魔館でぐうたらしていようが変わらない気がしてきた大妖精たちであったが、過ぎた事を考えてても仕方ないと割り切ることにしたようだ。

 

「では、私たちはこれで戻りますね。今日は1日ありがとうございました」

「じゃあね、霊夢! また来るよー!」

「はいはい。その時に暇だったら相手してあげるわよ。それと……」

 

 そうして日が暮れたため、全員紅魔館に戻ろうとした時に霊夢がチルノに近づき、耳元で……

 

「強くなるのは構わないけど、妙な気を起こしたら……退治しに行く事になるわよ? せいぜい気を付けなさいな」

「……うん」

 

 何か厄介事を起こさないように釘を刺してきた。それに怯えつつも、()()()()厄介事を起こさないと約束をしてから、チルノたちは博麗神社を去っていった。

 

 




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氷翼の輝天使の再臨

「なるほど……近くで見てみると、随分立派な闘技場ね。造形も綺麗だし、これをごく短時間で作ったと言うのだから、リージアの『強さ』が相当なもので、下手な木っ端妖怪じゃ相手にならないだろうと言うのも理解出来るわ」

「あたいのししょーだからな! 前の世界では全員から最強になりかけるまでに強かったって聞いてるし」

「チルノも妖精と言うカテゴリーの中じゃ大概だけど、リージアに至っては正直、妖精じゃなくて妖怪だと思えるのよね」

「あはは……前の世界でも『お前が妖精でたまるか』って良く言われてましたからね。でも、私は妖精だと言うのは譲れませんよ、霊夢さん」

 

 チルノたちが博麗神社に居る霊夢にリージアの紹介をしに行き、厄介事を起こすなと釘を刺された翌日、彼女を含めた5人で氷の闘技場に居た。霊夢が居たのはリージアが彼女に対して、心配なら訓練の光景を見に来て、力の扱い方の教授をしてはもらえないかと言ったためである。

 

 しかし実際のところ、霊夢本人はチルノの力の暴走が心配で来た訳ではなく、彼女を見た瞬間に感じた妙な違和感の正体が掴めるかもしれないとの勘が働いたため、ここに来たに過ぎなかった。

 

「まあ、リージアが妖精かそうでないかは今は置いといて、早速チルノの訓練を始めましょうか」

「そうですね。チルノ、頑張って」

「頑張ってね、チルノ! あの氷天使形態出せればきっと勝てるよ!」

「うん! フランに大ちゃん、ししょー! あたい、頑張るよ!」

「氷天使形態? まあ良いわ。チルノ、行くわよ!」

 

 そうしてお互いに距離を取った後、訓練が始まった。先に攻撃を仕掛けたのは霊夢で、まずは小手調べとばかりに通常弾幕をチルノに向けて放つ。とは言え、前までのチルノであれば避けるのは厳しい位には密度も速度もあるが、リージアやフランとの訓練を経た事と、氷翼の輝天使と呼ばれる力が一瞬だけでも発現した影響で基礎的な力が増えたため、これをあっさりと避けきる。

 

 お返しとばかりにチルノが小さな氷柱を扇状に放ち、霊夢を驚かせた。彼女が見た事がない攻撃であると言うのもあるが、どちらかと言えば襲い来る氷柱の密度と速度がかなり速い上に僅かではあるが誘導弾まで仕込んである等、想定以上であったと言うのが大きい。

 

「……前に挑んできた時よりも遥かに動きが良い。弾幕の密度も速度も威力も桁が違う。もはやリージアと同じく、妖怪のような妖精と言っても過言ではないわね」

「この前までのあたいだと思ったら大間違いだぞ、霊夢!」

「そんなの、見りゃ分かるわよ。これまでの出し方だと厳しいって事もね……じゃあ、少し上げていくからついてきなさい!」

 

 霊夢がチルノの強さを認め、力の片鱗を見せ始めた途端に彼女は再び劣勢に立たされた。いくら強くなったとは言え、数々の異変を解決して幾多もの敵に打ち勝ち、天才的な才能に強力な力を秘めている幻想郷の守護者である霊夢には届いていないようだ。

 

 秘めたる力では何とか食らいつける程度の差で済んでいるものの、如何せんそれ以外の要素で圧倒的に負けている。特に戦闘の才能の差は激しく、霊夢はチルノのように努力して強くなろうとしなくても、()()()()()大抵の敵には勝ててしまうくらいである。

 

「むぅぅ……!」

「流石ね、チルノ。今までのあんただったらこの時点で……!?」

 

 戦い始めてからしばらく経った時、チルノが手持ちの魔導書を開き、霊夢に対抗できそうな強力な魔法を唱えようとした時、彼女の身体から強力な冷気が解放され、同時に強く発光する。寸前に霊夢は天性の勘で冷気と閃光を回避することが出来たため、これによる被害は全くなかった。

 

「くっ……! なるほど、違和感の正体が掴めたわ。『神』と対峙したかのような圧力、氷天使とは言い得て妙ね……本気で行かなければ不味いか……」

「霊夢! これが今のあたいの本気だぁーー!!」

「まるで魔理沙のマスタースパークみたいね……夢想封印!!」

 

 そうして光が収まってきた時、その場に居たのは氷翼の輝天使と化したチルノであった。掌を霊夢の方に向けて冷気をそこに集め、一点集中させて解放する『デュブリシアル』と言う魔法を発動させ、彼女に放つ構えを取っている。対して霊夢は『夢想封印』を放ち、真っ向から迎え撃つ構えを取った。

 

 あらゆる物を凍てつかせる冷気を収束させて放つ覚醒状態のチルノの魔法と、霊夢の放つ4色の光球が衝突して拮抗すると、周囲に力の波動が撒き散らされた。運悪く側を飛んでしまった妖精が巻き込まれて、1回休みにされてしまうほどの激しいものである。

 

 しかし、チルノの方が妖力や魔力を出せるだけ出しているのに対し、霊夢の方はまだ切り札をいくつも残している上に余力もあるため、時間が経つにつれて徐々に押していく。そして……

 

「終わりよ……!」

「っ! 霊夢が居な――」

 

 チルノの真上に瞬間移動し、追加の夢想封印を放って空中から霧の湖に叩きつけた事によって、この戦いは終わった。

 

「全く、これでも1回休みにならないとは……とんでもない力を隠し持ってたのね、チルノ。まさか、妖精相手にここまでの力を出すことになるなんて思いもしなかったわ」

「また負けた……大ちゃん、フラン、ししょー……あたい、頑張ったよ」

「チルノちゃん、良く頑張ったね」

「霊夢にあそこまで力を出させるなんて凄いよ、チルノ!」

「チルノ、流石私の弟子……と言うか、その内私が弟子になりそう」

 

 こうして、霊夢とチルノの訓練は幕を閉じる事となった。

 

 

 




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