引退女神録・ネプテューヌ (ねぷ子の乳首開発小説書くよ)
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プロローグ

 

 

 

 

「ねぷぅっ!? ちょっ、もっ、もっと優しく……っ」

「……………じっとしろ。処置が出来ないだろ」

「ねぷぷぷぷっっ!!?」

 

 

 プラネテューヌの女神パープルハートことネプテューヌは、自らの意思で女神を辞めた。何を思って女神を辞めたかまでは分からない。それは自由気ままに振る舞う彼女の頭をカチ割ってゲームで知識で埋まった脳みそを解析して見ないと誰も分からない事だ。もっとも、そうしたところで誰にも分からないかもしれないが。

 なんやかんやあって、一人の人間としてこのゲームギョウ界で生きていくのを決めた彼女は大手を振って教会を離れ、そして行き倒れた。ちょっと考えれば分かることなのだが、日頃からゲーム三昧だった自堕落な少女が生身で家を飛び出したってどうにもならない。当面の生活費として渡されたお金は瞬く間に無くなって、宿のひとつも取れなくなってしまった。

 …………結果、急転直下でホームレス生活を余儀なくされたのである。ただ、彼女はとても運が良かった。たまたま通り掛かった手が足りない労働者に、捨てられた犬か猫かのように保護されたのである。それが、一ヶ月前の出来事。

 

「だ、だからもうちょっとだけ優しく……、ね? ね? 消毒液が染みっ! 染みっ……!!?」

「我慢してくれ。改善するかはともかく、消毒はしておくべきだろ」

「ねぷぅっ!? 鬼だよ鬼畜だよ! わたしがこんなに痛がってるのに乱暴するなんて〜〜っ!!?」

「静かにしてくれ。じゃないと手が滑って脇腹に指を刺しそうだ」

「……………」

 

 寝室。ベッドとタンスが置かれ、床に漫画やらゲームやらが散乱したお部屋の中央でネプテューヌは青ざめている。原因は、彼女の脇腹に出来たひび割れだ。長年女神として活動していた彼女が女神の力を手離した結果、肉体に幾つかの不調が起きた。身体能力と免疫力の低下。そしてそれらよりも分かり易いものが、右の脇腹に出来た赤いひび割れだ。肋骨の一番下、少し詳しく言うなら第10肋骨を中心としてひび割れたガラスのように肉が割れている。出血はしていない。しかし触れれば相応の痛みが走るようだ。

 今、男物のワイシャツを着た元・女神少女は裾を捲って腰や背中を人目に晒している。そんな彼女の後ろには消毒液が染みた脱脂綿を左手に持つ青目の男性。先のやり取りを見るに、ひび割れの手当てをしているのだろう。

 

「あ、あの、もう少し優しく……優しく、……ね?」

「口を閉じてろ。舌噛むぞ」

「あ、それは無理かな。だってわたしー、黙るの苦手だもんねーっ」

「…………………」

「ねっ、ねぷっ!? 冗談っ、冗談だからぁっ!!」

 

 背後の彼が眉間に皺が寄ったのを察知したのか、ネプテューヌは更に青ざめた。膝の上のやかましい少女を前に男はひとつ溜め息を吐いて、もう一度脱脂綿を、今度は優しく押し当てた。

 

「ねぷっ、ねぷぷっ……!」

 

 瞼をギュッと閉じた少女が悶える。ひび割れの痛みは結構なもののようで、 額やら首筋に大粒の汗が浮かんでいる。

 

「……終わりだ。後で包帯巻くから、それまで激しく体を動かすなよ」

「終わりっ!? 終わりっっ!? じゃあゲームの続きやっても良い!!?」

「……………良いぞ。プリンは?」

「いるーー! いやー、君ったら気が利くねっ」

 

 手当てから解放されるなり、彼女はベッドから飛び降りた。激しく体を動かすなと言われた直後にこの始末。人の話をまるで聞いていない。一応怪我人なのだから、もっと大人しくしたらどうなのか。

 しかし、元気に笑う姿こそプラネテューヌらしい。小さな体を目一杯動かして生きる姿は、可愛いを通り越してもはや尊いと言って良いだろう。

 

「コンパ先生にミイラにされたくないなら、もうちょっと落ち着け」

「分かってるって〜〜♪ あ、プリンお願いね!」

 

 本当に分かっているのだろうか。右手の指でVマークを作ったワイシャツネプテューヌは、小走りで寝室を出て行った。さっきまでの痛みに怯えた姿はどこに行ったのやら。お調子者のネプテューヌはコロコロと表情を変える。

 

「まったく。おいねぷ子、寝転がるなら左を下にしろよ」

 

 救急箱を片手に、男は立ち上がる。こうしてねぷ子の面倒を見ている辺り、どうやら彼は悪い人間では無いようだ。

 

 

 それでは、少しだけこの物語について記しておこう。

 これは別に、ネプテューヌが世界を救うような物語ではない。冒険の旅に出たり、アイドルになったり、異世界に飛んだりするわけでもない。

 

 女神を辞め、人間となった彼女がいつものように生きていく、小さな小さな物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ 引退女神録・プラネテューヌ ]

 





この物語が誰に需要があるかは分かりません。若干一名の為に書いたものですし、気力が続くかどうかは定かではありません。ただ書いた以上は続けていこうかなとは思います。こんなネプテューヌ二次も有るんだなと生暖かい目で見守ってくだされば幸いです。

えー、オリ主君の存在については詳しくは語りません。本文から察してください。次回から彼についての描写はなるべくしません。


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