この素晴らしい小説に続編を! (Nail Clipper)
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6部1話

6部

1話

 

「4人で旅行なんて久しぶりだな」

 

「そうですね。こんな風にのんびり馬車に揺られるのもいいですね」

 

「おい二人とも、今回はただの旅行じゃないんだ。くれぐれも無礼のないように頼むぞ」

ダクネスが黒い鎧をピカピカにしながら言った。

 

 

「それにしてもこの馬車すごいわね。このVIP感」

何やら高そうなウイスキーを飲みほしながらアクアは言った

 

「本当にすごい馬車ですね。でもすごく落ち着くというかなんというか」

めぐみんの言う通りだ。この馬車の中は本当にすごい。ソファといい、テーブルといい、絨毯といい、素人目でもわかる別格感を醸し出している 。だか、落ち着いた雰囲気も持ち合わせている。

 

「ああ、そうだな。この馬車は国家間の会合の時に使われる最高の馬車だ。普通は貴族でも乗ったことがない」

 

そんな馬車に俺たちが乗っているのは理由がある。

 

「それにしても、このソファからなんだか心地よい魔力の流れが…なんだかすごくリラックスできます。」

めぐみんが目をトロンとさせて言った。

 

 

「すいません執事さん、このソファってなんか違うんですか?」

 

「はい、そちらはドラゴンの革でできておりまして、強い魔力を秘めているので魔法使いの方々にとても喜ばれております。そちらのソファだけで1億エリスほどする王族御用達の品になっております。」

 

「えっ!」

めぐみんが飛び上がった。

どうやらそのソファの価値は魔法使いにしかわからないらしい。

だって俺何も感じないし、アクアもダクネスも特にわからないという顔をしている。

 

もしかしてあのアクアがグイグイ飲んでいるウイスキーはとてつもないお値段が…

 

「じゃあ、アクアが飲んでいるウイスキーはどのような物なんですか?」

俺が恐る恐る聞いた

 

「あちらは職人が手作りで一年に3本しか作らないもので、さらにそちらは60年ものは最高級のものでございます。」

執事さんはサラッと言う

 

今度は俺とアクアが飛び上がった。

 

「その…お会計はおいくらで?」

「そちらは一本2000万エリスとなっておりますが、今回は無料で差し上げます。魔王を倒した勇者様にとてもそんな額は請求できません。むしろあなた方にはいくら感謝しても足りません。」

ああそうだった。今回の料金は全て国が支払ってくれるんだった。

忘れていたので内心ホッとした。

まあもし請求されてもアクアにつけるのだが。

 

「この度は我々の勝手な要望に応えていただきありがとうございます。カズマ様方に会えると聞いてアイリス様がとても喜ばれておられました。」

 

「じゃああの手紙は本当にアイリス様が書いたのですか?」

期待を込めて聞いてみる

 

「実はそうなんですよ。アイリス様があんなに真剣に手紙を書かれていたところは見た事がないです。何回も書き直されておりました。」

 

やっぱりこんな俺にもモテ期って来るんだな

 

 

ああ、今から胸が踊る気分だ。

またアイリス様に会えるなんて。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

魔王討伐から1週間、俺たちは屋敷に戻り今まで通りの生活を取り戻していた。

 

 

 

…いや戻ってないな。

この頃はみんな怠けっぱなしだ

 

俺とアクアはもちろんのこと、めぐみんとダクネスまで。朝から晩まで食っちゃ寝の生活をしている。この俺でさえうんざりするレベルに。

 

今もアクアは外で昼寝、ダクネスは手紙を取りに、俺とめぐみんはボードゲームに講じていた。

俺だって知力と運は高い。めぐみんには負け越してはいるがいつもいい試合をしている。

 

「なんですかカズマ、今日はものすごくいい試合をしてきますね」

めぐみんが考えてこみながら言う

 

「まぁ、俺だって知力と運は高い方なんだ今日は頭が冴えてる気がするんだよ」

 

「それは私もです。ですが今日のカズマはものすごく手強いですね」

 

なんだろう。

なんだかものすごくハイレベルな試合を繰り広げている気がする。

 

「なぁめぐみん、冒険者カード見せてくれ」

 

「いいですが、いじらないで下さいよ?スキルポイントは全部爆裂魔法に費やしていますからね?それとカズマのも見せてください」

 

「お前こそ俺のカードいじるんじゃないぞ?」

二人はカードを交換する。この世界では、冒険者カードを渡すのはスマホを見られるようなもの。相当信頼している相手じゃないと普通は貸し借りはしないらしい。

 

やっぱり2人とも知力がものすごく上がっている。

前回の戦いで2人は大量の経験値を獲得していた。

 

めぐみんのレベルは62

俺のレベルは76だ

 

魔王の持ってる経験値がものすごかったらしい

おそらくアクアとダクネスに見せたら絶句するだろう。

 

あれ?めぐみん?

 

「あわわわわわ…カズマが…爆裂魔法を習得してる…」

喜びと驚きを隠しきれない表情をしている

 

「魔王を倒す時に使ったんだ。まぁ魔力強化とマナタイトがないと使えないけどな。」

少し照れながら言う

 

「良かったです。なんだかすごく嬉しいです。爆裂魔法のペアルックですね。これからも2人で爆裂道を歩もうじゃないですか!」

 

「それもいいかもしれないな、アクアに支援魔法かけてもらってマナタイトを持って出かければ」

 

「いいですね、爆裂デートですね!」

めぐみんが喜々として言っている

 

 

そんないい雰囲気の中ダクネスの悲鳴が屋敷中に響き渡った。

 

 

みんなで玄関に走って行くと、ダクネスは手紙を持っておどおどしていた。

 

 

「おい、その手紙誰からだ?」

 

「あああ………どうすれば………。」

 

「まぁ見せろ」

ダクネスから手紙をひったくり中身を確認した。

 

 

 

 

 

カズマ殿御一行へ

 

カズマ様方は魔王討伐という偉大なる功績をおさめられました。よって近々城で祝勝会及び証書授与などの儀式を行うこととなりました。そこで貴方を招待するためにお手紙を送りました。この手紙から3日ほどで我々の馬車が到着いたします。準備を整えておいてください。カズマ様方にはいくら感謝しても足りません。またお会いできることをとても喜ばしく思います。城で待ってます。

 

アイリスより

 

 

 

 

 

 

そうだ俺たちは魔王を倒した英雄だった。王都から呼び出されない訳がない。そもそもアイリス様に会えるのなら理由なんていらないだろう。

もちろん俺はロリコンではない。

 

「よしみんな、各自準備を始めて、無礼のないようにしておけよ。」

カズマはみんなに向けて言った。

 

「ちょっと待てカズマ。王族にお会いするのは二度目だが前のようにクレアのパンツをひん剥いたりしないか?」

 

「そういえばあいつに逆襲してねぇや!今度はパンツとは言わず全部ひん剥いてやる」

 

「やめろカズマ!そういうプレイはいつでも私が受ける。でもクレアにはダメだ本当にダメだ」

 

「なんでダメなんだよ」

 

「前回お前がクレアの下着を取った時私達は家を挙げて謝罪に行ったのだぞ。そしたら[その件はいいですけどもう私はカズマ殿と会いたくはないです、あの変態とは顔を合わせたくありません]って言ってたぞ」

あいつ…人がいないところで変態だのなんなの言いやがって、今度会ったら、あいつは全部脱がして街に飾っておこう。

 

「わかったから、もうしないって」

 

「わかった、まぁ今度こそは無礼のないように頼むぞ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「そういえば、ミツルギ達とゆんゆんも呼ばれているんですか?」

とめぐみんが聞いた。

 

確かに今回は二人の活躍が大きい。ぶっちゃけこいつらがいなかったら死んでただろうし

 

「はい。ミツルギ様方とゆんゆん様にはご都合をつけていただきました。それぞれ馬車でお城に向かっております。おそらくお城で合流することとなるでしょう」

それぞれ…それぞれか…ゆんゆんは一人でこんな馬車に乗っていると知るとなんかすごくかわいそうになってきた。

 

「またゆんゆんの世話をしなければならないのですか。城にまでついてきて面倒くさいですね」

少し顔を緩ませながらめぐみんが言った。

 

「お前ほんとは喜んでるだろ」

 

「別に嬉しくないです!変なこと言わないで下さいカズマ!」

 

…おっと、ツンデレ発動ですか

 

「そういえばカズマ、ゼル帝はどうしたの?」

 

「店に預けといた」

 

「なんでリッチーの店なんかに預けたのよ!ゼル帝の教育に悪いじゃない」

あの鶏をいつまで育てるつもりだよ、ゼル帝とは我が家の由緒正しき鶏のことだ。

 

「そういうだろうと思ってさ、別な店に預けてきた。」

俺がニタッと笑う

 

「焼き鳥屋に預けといたぞ」

 

「嘘でしょ?嘘って言ってよカズマ…」

 

めぐみんもニヤリとして、

「本当ですよ、タレ味にするって言ってました。」

 

 

アクアは冗談だと伝えても馬車に乗ってる間は口を聞いてくれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで半日ほど馬車に揺られ、やっと城が遠目に見えてきた

 

「では皆さん、まもなく到着いたしますので荷物をまとめて下さい。」

 

懐かしいあの城がだんだんと大きくなって来るのを見て、興奮が湧き上がってきた。

 

 

 

 

 

 

俺巨大な門をくぐり、城の中に入った。内装はこの前と変わっていないみたいだ。

 

 

俺たちは待合室のようなところに促され、中に入るとゆんゆんとミツルギ達がいた。

 

そういえばゆんゆんは一人で来たんだっけ。可哀想だから話しかけてやろうか。

 

「よう、ゆんゆん。久しぶり」

 

「ああ皆さん、お久しぶりです。お城でみんなで食事だなんてとっても嬉しいです。あ、めぐみん久しぶりね!今日こそは決着をつけるわよ!」

 

「………………。」

めぐみんは、完璧すぎるスルーをしながら置いてあったお菓子をパクパクと食べ始めた。

 

「おい、少しかまってやれよ。」

「そうよ、せっかく会えたんだから話くらい聞いてあげましょうよ」

「そうだぞ、ゆんゆんに少しは合わせてあげるべきだぞ」

めぐみんにヒソヒソと話してやったつもりが、ゆんゆんの反応を見る限り聞こえていたらしい。

 

「ねぇめぐみん、お願いよ無視しないでよぉ」

 

「……………………。」

 

「ひ、ひどい!」

 

ゆんゆん可哀想、今度友達紹介してあげよう。

 

「やあサトウカズマ、魔王に一対一で勝つなんてすごいじゃないか一体どんな手を使ったんだよ?」

ミツルギが明るく話しかけてきた。

後ろの二人の反応を見る限り俺への印象は変わったらしい。

 

「まぁな。やっぱり頭脳だよな、まず魔王をダンジョンの奥までテレポートさせt 」うぐっ…

 

「カズマ、冒険話はあまり話すもんじゃない。」

俺はダクネスに口を塞ぐと、小声で

「あいつと話すと面倒だ」

と言った。

 

まぁ一理あるかもな、あいつならアクアの事を持ち上げまくるに決まっている。俺はうなずくと、ダクネスは俺を解放した。

 

そんなこんなでしばらく談話を楽しんでいると、今度は着替えをするために、更衣室に連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 

俺とミツルギが更衣室から出ると、着替え終わった女性陣達と合流した。

 

俺とミツルギは白と黒のスーツ、めぐみんとゆんゆんは黒のドレス、アクアは水色、ダクネスはいつも通りの礼服、取り巻きの二人はそれぞれ赤と黄色のドレスを着ていた。こうやってみると俺らのパーティーは美人揃いだよな

 

「どう?こんなに美しい私たちのドレス姿、思ったこと素直に言っていいのよ?」

 

「我の大人の魅力を引き出すこの漆黒のドレス。破壊の王たる私にふさわしい!!」

 

「この露出の多いドレス…見るなカズマ!そんなにエロい目線で私をみるなぁぁ」ハァハァ

 

やっぱ前言撤回する。

黙ってれば美人だ、どうしてこんなに残念なところをさらけ出してくるんだろう。ゆんゆんとか、ミツルギのお供みたいに黙ってればいいのに。

 

「どうしたのよカズマ?ほら感想を聞かせないさよ」

 

言わせていただきます

「黙ってろ、黙ってれば美人だから。」

 

「何が黙ってたらよ!」

 

まぁ、こいつらだもんな

 

 

「皆さま夕食の時間でございます。どうぞこちらへ」

 

 

 

 

 

 



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6部2話

6部2話

 

俺たちは執事に促されて長テーブルのある部屋に入ると、そこにはアイリス様とクレアとレインがいた。

アイリス様は俺と目を合わせると笑顔を返してくれた。俺も笑顔を返す。

クレアとレインは俺と頑なに目を合わせようとしない。俺はガンを飛ばしておいた。

 

そういえばクレアをいたぶってなかったな。俺は危険なポーションを無理やり飲まされたことを安易に許すほど心の広い人間ではない。あとで泣き叫ぶまでいじめるつもりだ。

 

俺の席はアイリス様と一番近い席だ。

なんだかアイリス様の綺麗な青い目を見ていると、怒りが収まってくる。

 

全員がそれぞれ席についた後クレアが言った。

「皆さま、この度は魔王討伐という偉大な功績を称え我が城にお招きしました。本日は夕食を共にし、勝利を祝いましょう。また、今日は特別にアイリス様との会話が許可されておりますが、くれぐれも無礼のないようにお願いいたします。」

 

今日初めてクレアと目が合った。

あいつしばこう

 

「それでは皆さん、魔王討伐を祝い 乾杯!!!」

 

「「「「かんぱーい!!!」」」

 

 

アイリス様とめぐみんとゆんゆんはぶどうジュース

その他みんなはワインで乾杯した。

 

 

「お兄様、本当にお疲れ様でした。」

アイリス様が俺の手を握り、満面の笑みを向けてくれた。こう言う時は勇者らしくかっこいい言葉を…

 

「アイリス様、お手紙ありがとうございます」

 

「もう、そんなに堅苦しくならないでください。全然友達のように話してください」

 

「いやいや、そういうわけには…」

 

「いえいえ、むしろ今後は気まずくなってしまうので、兄弟のように接していただければ嬉しいです。」

 

今後?

 

その後は魔王討伐の話をしてあげた。妹はその話を目を輝かせて真剣に聞いてくれている。時折「まぁ!」とか「すごいわ!」とか反応してくれるのでとても話すのが楽しかった。

 

「素晴らしいですお兄様、どうやったらそんな方法を思いつくのかしら、でもどうやってそんなにスキルポイントを稼いだのですか?」

 

それは聞かないでもらってもいいかな?

 

「それは…企業秘密でして…」

まさかリッチーと悪魔に手伝ってもらいながらダンジョンを進んでレベルが上がったらレベルを下げていたなんて言えるわけがない。

 

「そこをお願いします、お兄様」

妹は目を輝かせながら言ってきた

 

知的好奇心から聞いているのだろうが今回は本当に言えない。英雄から一転し犯罪者になりかねない

 

「申し訳ないですが、それは言えないです。」

 

アイリス様は少し悲しそうに

「わかりました、無理に聞くのは良くないことです。あなた方から学びましたからね」

 

 

もしかしてあれって違法なのかな?

 

「お兄様、もっと話を聞かせてくださいませんか?」

 

「喜んで」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

アイリス様に冒険話をしながら夕食をとっていると

 

「カ、カズマ殿。あの、折り入ってお話したい事があるのだが…」

いつも通りの白スーツを着たクレアが恐る恐る話しかけて来た。

 

いい度胸だな。こいつをどうしてやろう

 

「なんだ白スーツか」

サラダにフォークを突き刺しながら無愛想を装って言ってみた。

 

「ク、クレア様と呼べ!その…話があるからこっちへ来てくれないか?」

ビビりながらも高圧的な態度は変えないらしい。貴族って本当にめんどくさい奴が多いな。

 

「あ?」

とりあえず俺も威圧的な態度を取ってみると、少しビクッとして、

「だ、だからこっちに来てって言っているんだ」

と、変に上ずった声で言ってきた

 

「はいはい」

無愛想を装ったまま言った。

 

「で、ではこちらへ」

 

クレアについて行こうとする俺の袖を掴んでアイリス様が耳元で言った。

 

「クレアは昨日からとてもお兄様のことを怖がっていまして、反省もしています。どうかクレアを許してあげてくださいませんか?」

 

可愛い妹の言う事なら仕方ない。少しいじめるくらいでゆるしてやろう。

 

俺たちは宴会場を出て、廊下を歩き、少し離れた部屋の中に促された。

 

 

クレアが扉をガチャっと閉めて、ランプをつけてふうと深呼吸すると、

「こ、この度の魔王討伐は誠にご苦労であった」

クレアが冷静を装って、俺の後ろの壁を見ながら行った。

 

「そりゃどうも」

ぶっきらぼうに言ってみた

 

「あの…もしかしてこの前のことを覚えているか?」

 

「ポーションのことだろ?鮮明に覚えてますけど?」

 

「やはりそうか、あの、その、その件については水に流してくれたら嬉しいかなって思って…」

最後の方をゴニョゴニョと言った。

まぁアイリス様にも言われてるし何もしないつもりだが、少し楽しむくらいはいいだろう。

「へぇ、記憶を消すはおろか脳をパァにしかけた人に対しての言葉がそれですか、俺はけっこう怒ってるんですけどね。俺は今バインド用のワイヤーとマナタイトがここにあるんですが。」

脅すようにワイヤーとマナタイトをチラつかせると、それを確認したクレアが一歩後退りしながら、

「そのワイヤーとマナタイトをしまえ!しまってってば!」

とガタガタ震えながら言った。

 

 

「俺は爆裂魔法を習得してまして、この城の一部ごとあなたを消し飛ばす事ができるようになっちゃったんですよ。まぁそれが嫌ならスティールで全裸にして街のオブジェにするくらいで許してあげますよ?」

俺は伊達にクズマなんで呼ばれているんじゃないんだ。俺は人が嫌がる事を的確に見つけ出す才能がある。

 

「わ、我が名高いシンフォニア家の長女である私にそんなことできるわけないだろう?ないよな?それに仮にも私も女なのだ、女なのだぞ…カズマ殿にもそれくらいの良識はあるだろう…」

涙目のクレアがすがるように言ってくる。そんなクレアを見て若干意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「俺は真の男女平等を掲げる者、さぁどっちにするか選べ!答えないなら爆裂魔法放つぞ」

自分に魔力向上の支援魔法をかててマナタイトを持つとクレアは足の力が抜けたようにヨロヨロし始めた。

 

「まさか本当にやるわけないよな?そうだよな?謝るからやめてくれ…」

 

 

「黒より黒き闇より深き漆黒に、我が真紅の混淆を望みたもう…」

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ、まって、や、やめて、ごめんなさい!すいませんでしたっ!!何もしないでください!お願いします!」

クレアが涙ながらに言ってきた。これを見て楽しんでいる俺はS属性持ちなのだろう。

 

貴族とニートの立場が逆転した瞬間だった

 

「まぁ何もしないですけど」

変な抑揚をつけながら言った。

 

その悪感情、美味である。

 

 

「こ、殺す!」

クレアが泣きながら掴みかかってきた。こいつといいダクネスといい貴族って意外と口悪いのかもしれない。俺の胸ぐらを掴み、揺さぶってきた。

 

「ごめんごめん、わかったから離せ!」

 

 

5分後

 

 

 

「何もしないって言ったのに…」

ドレインタッチで魔力を吸われたクレアが地面にうずくまりながら泣いている。

 

少し罪悪感がないわけでもないがこれでも足りないくらいだろう。

「俺も悪かったよ」

 

「何もしないって言ったのに…」

クレアが消え入るような声で言ってきた

 

「わかったからごめんって」

 

少し魔力を分けてあげるとクレアはヨロヨロと立ち上がったが、クレアが泣き止むまでしばらくかかった。

 

「そういえば話ってなんだよ?謝罪だけ?」

 

「いやまだあるんです、でもあとで、落ち着いてからにしましょう」

 

 

クレアは俺を宴会場まで連れていくと、そのままどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「遅かったじゃないカズマ、メインが冷めちゃうわよ」

アクアがリスみたいな顔をして言ってきた。

 

「お疲れ様です、お兄様。お話聞かれましたか?」

なんだか答えがとても気になるような顔をしていた。だが俺は謝罪しか受けていない。多分、今アイリス様が気になっているのはさっき聞きそびれた話だろう。

 

「いや、その 世間話で時間がかかり過ぎてしまいまして。まだ全部は話を聞かせてもらってないんですよ」

 

するとアイリス様は

「そうですか」

とだけ言い自分の食事に戻った。なんだか思ってた反応と違うと言わんばかりの反応だ。もしかして俺が聞きそびれた話はとても重要な話だったのかもしれない

 

宴会はとても楽しかった。

料理も美味しかったし、その後はアイリス様も普通に戻り、宴会芸の神様は本領を発揮し大受けだった。

 

しかし、どこか引っかかるものがある。あの話の内容はなんだったのだろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宴会も終わり俺たちには豪華な部屋が一人一部屋割り当てられた。

プールほどもある風呂に入り、今はなぜか8人全員が俺の部屋に集まっている。

 

「なぁ、なんでみんな俺の部屋なんだよ?」

 

「なんとなくです、不服ですか?」

めぐみんはゆんゆんをボードゲームでボコボコにしながら言う。

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど」

3人とゆんゆんはまだいいとしても、なんかミツルギ達はなんだか場違いな気がする。

 

「ならいいじゃないか、こんなに大人数で遊ぶのも楽しいだろう」

ネグリジェ姿のダクネスが、俺からもらった鎧をピカピカに磨きながら言った。

 

「なぁサトウカズマ。お前ボードゲーム強すぎないか?」

これでミツルギに6戦6勝。もう紅魔族以外は相手にならん。

 

そんな楽しいこと時間からを過ごしているとクレアがやってきた。

「カズマ殿、さっきの話の続きだ」

 

俺はまた別の部屋に連れられて中に促された

 

なぜ毎回部屋に入る?

盗聴されたくない話なのだろうか

 

「早く話をしてくれよ、すごく気になるんだけど」

 

「うん、わかった」

 

少し間を置き一息で言った

「実はアイリス様がカズマ殿を側室に置きたいとおっしゃっている」

 

 

 

 

 

 

 



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6部3話

エロ描写あり

苦手な方は後半にご注意ください


6部3話

 

 

 

人生にはモテ期というのがある。

 

その間の人生は楽しい限りだ。特に何もしなくても女の子からモテるという、いわば人生の黄金期だ。

 

元ニートの俺にも今それは訪れていた。

 

だが、俺ほど極端な例はないだろう。俺はこの世界に来るまでで、告白されたのは小学校の頃の一度だけ。そんな色恋沙汰とは無縁だった俺が今王女様の側室にだと?

 

やっと異世界転生らしい展開じゃないか

 

いや、待てよ。普通に考えてこんな事があるはずがない。確か王女様は大きな戦果を挙げた勇者と結ばれるとか言ってたな、つまりこれは政略結婚のようなもの。そうだそれだ。

 

「あ、あのこれは形式的な奴ですよね?」

 

きっとそうだ。それならアイリス様も望まないハズだ、断ろう。あの子には望む人と結ばれて欲しい。

 

「私も初めはそう思った…だが違うそうだ。アイリス様は本当にお前の事が好きらしい。将来的には結婚もしたいとまでおっしゃっていた。」

 

……結婚?

 

今俺は、ものすごく大きな決断を下さなければならないらしい。

 

俺はアイリス様と結婚するならば、俺は一生ベッドに寝転がっていても大丈夫だ。そしてあのアイリス様と一緒になれる。俺は人生の勝ち組だ。

 

でも俺にはめぐみんが……いや、めぐみんだけじゃない。アクアやダクネス、あの屋敷、ギルドのみんな、あの悪魔とリッチーが経営する魔道具店…。今までのあの生活はもう戻ってこなくなる。

 

そもそも俺はなぜこの世界にいるんだ?あの時日本で裕福な家庭と理想の配偶者を手に入れることもできた。それでも俺はこのロクでもない世界で生きることにしたんだ。それはあいつらと楽しく暮らすためじゃないのか?

 

いやでも、王女様の告白なんて断る理由がどこにある?人間は誰もが楽で楽しい生活を送りたいはずだ。その欲求に従って何が悪いんだ?

 

もしあいつらに伝えたらなんて言われるだろう?背中を押してもらえるだろうか?それとも愛想尽かされるだろうか?早く出て行けと言われるだろうか?

 

まぁ、そしたらあいつらにもう会う事もない。別に良いのだろうか?そもそもダクネスだって一回結婚を理由にパーティーを抜けようとしたじゃないか。それも権利じゃないか。

 

でもあの時はみんな心配したよな。あいつ一人のために色々やったよな…もし俺がいなくなったらあいつらも同じだけ心配するんだろう。

 

いや、心配してくれるのだろうか?みんな俺のために色々手を打つのだろうか?逆にしてくれなければ少し悲しいような気もしてきた。あそこまで深い関係になってしまった以上俺がパーティーを抜けるというのも…

 

いや、今回の結婚相手は悪徳領主じゃない。一国の王女で良識のある可愛い女の子だ。俺がダクネスに行って欲しくなかったのはあの豚領主だったからじゃないか?それならあいつらも文句はないだろ?

 

でも俺にはめぐみんが……いや、別に俺とめぐみんは付き合ってるわけじゃない。友達以上であるが恋人未満だ…別に今の俺は誰を選んでも構わないだろ?

 

でも…

 

…どうすればいいんだ

 

恋愛経験に乏しい俺には難しすぎる…

 

どちらの方が後悔が少なくて済むか…

 

 

 

ずっと頭を抱えて考えている俺を見たクレアは、

「まぁ…決断を急ぐ事はない。明日の夜までにじっくり考えておいてくれ」

クレアが優しい笑顔を向けてくれた。

 

 

…さっきは本当に悪いことをしてしまったと思う

 

「それと話はまだあるんだ。一回落ち着いて聞いてくれ」

 

「うん…」

 

「これも大事な話だ、よく聞いておいてくれ。」

 

俺が落ち着いたのを見て一呼吸置き、囁くような小さな声で言った。

 

「魔王討伐に参加した者に対する莫大な報酬金が出ている」

 

 莫大な報酬金…まぁ一度20億エリスを手にした俺がそう簡単に動揺するわけないだろう。マナタイトの元が取れればそれでいい。

 

「ちなみにおいくら?」

 

「1兆エリスだ。」

 

  いっちょうえりす?

 

「そしてその他メンバーに3億エリス。ミツルギパーティーに1億エリス。ゆんゆん殿には5000万エリスだ」

 あれ?なんか少なくない? いや決して少なくはない。もちろん超多額だ。でも… 俺の分が多すぎる気がするんですけど

「なんでそんなに配分が偏ってるんです?」

 

「魔王を倒したのはお前だ。その他は幹部や指定凶暴モンスターを倒した分だけだ。魔王には超多額の報酬金がついていたがその他はそうでもなかったらしい」

 なんか申し訳ないな

 

…いや、いくらなんでも高額過ぎないか?

 

「いくらなんでも高額過ぎませんか?国家予算並ですよね?」

 

「まぁ、そうだ。だが報酬金は魔王から苦しめられていた人達からの寄付だ。その額は感謝の大きさというわけだ。遠慮せずに持って行け」

 

…ああ、人助けっていいことだな

 

「ああ、わかった。大切に使うよ」

「そうしてくれ」

 

「もう話がないなら帰っていいか?」

「ああ、いいぞ。おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったじゃないカズマ、何をそんなに話込んでたのよ?」

 アクアはかなり酔っている様子だ、宴会場から持って帰って来たワインを抱えながら言った。

 

 ミツルギ達とゆんゆんはもう戻ったらしい

部屋にはジャージの俺と寝巻きの3人だけだ。

 

「聞きたいか?」

 出来るだけアイリス様のことは話さないようにしょう。

この事は俺個人の問題だ。

「早く聞かせてくださいよ、そのために3人で待ってたんです。」

 

 3人とも眠そうだしお金の事だけ言って早く返そう

「いいか?聞いて驚くなよ?」

 全員前のめりになりながら聞いてくる

 

「俺たちには一兆エリスが入ってくる。」

 

「「「いっちょうえりす!?」」」

 全員が声を揃えて叫んだ。

「い、いっちょうえりすですか?なんですかその額は、一生遊んで暮らせるどころじゃないですよ」

 いつもはお金に興味を示さないめぐみんも今回ばかりは違うらしい。

 

「オホホホホ、さぁ、これから私たちはセレブよセレブ。バスローブ巻きながら毎日美味しい料理食べて、高いお酒を飲むのよ。どう?夢みたいじゃない」

 

 そういえば俺がこの城に残ることになったらお金はどうなるのだろうか?まぁその時にはこいつらに半分くらいくれてやろう。

「そんなことより屋敷に戻ったら4人で旅行に行かないか?」

 ダクネスがニコニコしながらみんなを見渡した。

 

 

 4人で旅行…4人か…

 

「いいですね、みんなでいきましょう!みんなはどこに行きたいのですか?」

 

「そうね…私はアルカンルティアに行きたいわね」

「嫌です」

 

「私はショッピングの街、エンポリアに行きたいな」

 

「ショッピングですか、いいですね、今度いきましょう!」

 

「ちょっと、アルカンルティアにいきましょうよ、お願いよ、いきましょうよ」

 

「嫌です、絶対行かないですからね」

 

「わ、私も行きたいな、あの街は恥辱のレベルが高いからな」ハアハア

 

「私は行きませんよ?カズマも嫌ですよね?」

 

 ん?なんも聞いてなかったわ。

「あ、ああ 俺はお前らが行きたいところに行きたいな、お前らで決めてくれよ」

俺は慌てて取りつぐろったように言った。

 

 

「「「…………………」」」

 

 

「なぁカズマ、私たちはかれこれ長い付き合いじゃないか。隠し事があることくらいわかるんだぞ?」

 ダクネスがドMモードを切り替え、真剣な表情になった。

めぐみんも赤い瞳を俺に向けながら、

「そうですよ、今さら私たちに対して隠し事なんて無駄なのです。さぁ、早く教えてください」

と真剣な表情で聞いてくる。

「そうよ、悩みならこの私が聞いてあげるわ」

アクアも女神らしい顔になって聞く。

 

 3人の真剣な表情を久しぶりに見た。

 

…どうしよう、これは断れなくなるパターンだよな。この事は俺1人でじっくり考えたいところだ。

言ってはダメだ…でも今言わなかったら言うタイミングないよな

 

 さぁどうしたことか

 

 

「いや…これは俺個人の問題でさ、まぁ話す時が来たら話すことにするよ」

 そうだよ、これは俺個人の問題だ、こいつらとは関係ない。俺がどんな人生を歩むかなんて俺が決めるものだ。3人とは仲間であっても家族ではない。自分で決めても文句はないだろう。

「カズマ?今が話す時です。それに今回の話は私たちに大いに関わることですよね?それなら私たちにも知らされる権利があると思うのです」

めぐみんがこんな時だけ高い知力を発揮する。

 

「そうだな、大切なことはみんなで決めるべきだぞ」

  ダクネスがお母さんのようにニコッと笑い俺の顔を覗く。

「そうよ、勝手に判断しちゃダメよ?」

 

「おいお前ら、アルダープに体差し出しに行ったり、魔王城に1人で行ったりしたお前らに言われる筋合いはねぇからな?」

 

「そ、それは…その…私が悪かったと思うが…」

 

「ま、まあね、あの件については私なりに結構反省してるのよ?」

 

2人には相当図星だったらしい

 

「まあ、これは本当に個人の話だから。いくら仲間にもプライバシーってのがあるだろ?まぁ、そういうことだ。わかったらもう部屋に戻ってくれ」

 

「わ、わかったわよ2人とも行くわよ、おやすみカズマ」

 そう言うと3人は各自自分の部屋に帰った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……………カズマ…………カズマ……起きてください」

 

 俺がゆっくり目を開けると、月明かりに照らされた腰のあたりには座っているめぐみんがいた。紅魔族のローブは外しているらしい。可愛いピンク色のパジャマを着ていた。

「なぁめぐみん、とりあえずそこから降りようか」

 俺のアレがめぐみんのアレと当たってすごい雰囲気になっている

 

「別にどこに座ってもいいじゃないですか」

 そう言うとめぐみんは少し腰を動かし始めた。童貞の俺のエクスカリバーはすぐさま反応した。微かにめぐみんの体温が伝わってくる。

 

「何しに来たんだよめぐみん?これは子供を作る時にする体位だって事をわかってやってるのか?」

 よく見るとめぐみんも少し火照っている。この体位はアレだ。騎○位だ。

 

「言ったじゃないですか、アクアを連れ戻したらすごいことしようって。でもここでやるとなるとシーツを変える人に悪いので今日はこれだけです」

 めぐみんがますます早く動かしてくる。

俺のアレにもめぐみんの熱が伝わってきて2人の吐息がだんだん荒くなってくる。

 

「ああ………っ!、カズマのが当たってます…………!硬いのが当たってます…………!」

 

 俺もめぐみんの腰に手を回し、動かす。うっすらとめぐみんが顔を火照らせて声をを我慢しているのが見えた。腰を動かして声を我慢しているめぐみんはとてもエロかった。俺の下半身は人生で今最も膨らんでいるに違いない。

 

「うっ……! めぐみん………! めぐみんすごく熱くなってるよ………! 」

 

「はあ…はあ…そんな事言わないでください………! すごく恥ずかしいです………………!」

 

俺とめぐみんは激しくアソコを擦り合わせ、お互いの熱を感じ合った。

めぐみんは腰をくねらせ、俺はめぐみんのアソコに擦らせ続けた。めぐみんは耐えられずに少し声を漏らし始めた。

「あっ…………あっ………ああっ…………」

 

「めぐみん………声抑えて……バレるから………これバレたらまずいから…………」

 

「ああっ……そんな事言われても…………ああっ……」

 

 

 

 

 

 

バタッ

 

 

 ドアが開けられた先には口をあんぐり開けているアクアとダクネスがいた。

 

 

 

 



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6部4話

6部4話

 

俺とめぐみんは尋問を受けている最中だった。

 

「それで?どこまでやったのか説明してみなさい?」

アクアとダクネスは少し怒っているのか?べつに今回は俺のセクハラじゃないからいいじゃないか。今回はどちらかと言うとめぐみんが悪いだろう?まぁここは俺のせいにしといた方が穏便に済むかもしれないから適当に流そう。

 

「はい、服の上から擦り付けただけです」

 俺の言葉を聞いて2人は意地悪く笑った。

 

「じゃあどのような経緯で行為に至ったのですか?」

 なんでそこまで聞くんだよ。別にいいじゃん。経緯とかどうでもいいから。

 

「私がカズマにさっきの話を聞こうと行ったら。カズマがぐっすり眠っていたので、起こすために馬乗りになったら、変な雰囲気になったのでそのまま、やりました…」

めぐみんが顔を真っ赤にして俯きながら答えた。

 今のめぐみんは嘘をついているのだろう。普通なら紅魔族のローブを脱いで来た時点でもやる気満々だったはずだ。

 

 まぁ今はそんな事言わない方が俺としてもいい。黙っておこう。

 

「じゃあ今回はカズマのセクハラじゃなくて、同意の上なのだな?」

 

「「そういうことです」」

 2人は俯きながら答えた。

 

「まぁもういい、未遂で済んだならよしとしよう」

今度はダクネスが優しく笑ってくれた。なんだかダクネスの母親のような笑顔を見ると急に罪悪感が湧いてくる。

「「すいませんでした」」

 

「謝らなくてもいい。同意の上なら構わん」

口ではそう言ったが、ダクネスは内心混乱しているだろうな。

 

「まぁいいわ。じゃあみんな帰りましょう」

 

「そ、そうですね。帰りましょう。おやすみなさいカズマ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝

 

 

 

 

 

 

俺はどうするかまだ決められずにいた。

 

 

ああ…どうしよう…決められねぇ。

 昨日のめぐみんとの行為が頭に残っていて少し頭がぼんやりしている。あんな事を同意の上でやるって事はもう恋人同士なのか?確かに互いに好き同士な事は確かだが…付き合っては無いんだよな。

 よく考えたら昨日のめぐみんの行為は俺にパーティーに残って欲しいという意思表示なのか?

 いや、紅魔族とはいえ、話の内容までわかったらもう悪魔だ。そんな事はバニルじゃないと到底わかりはしないだろう。

 

でもきっとみんなに関わる事だという事は気づかれていたかもしれない。

 

ああ、どうしよう。いくら考えても決められねぇ。せめて相談相手が欲しい。でもあいつらじゃダメだ。誰がいる?

 

…そうだ!ゆんゆんだ!あいつなら頭も良いし物分かりも良さそうだ。きっと俺の事もメンバーの事も気遣ってくれる筈だ。

 行動あるのみ、俺はゆんゆんの部屋にまっすぐ向かった。

 

 

 

 

俺は今ゆんゆんの部屋に向かっている。ゆんゆんの部屋は確かあの角を曲がったところだ。

 

すると、俺が角を曲がる前に聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「おはようございます、ゆんゆん、話があるのですが扉を開けてもらえませんか?」

 めぐみんだ。きっとめぐみんは俺の隠し事をゆんゆんと探るするつもりなのだろう。

「わかったわよ、今行くから待っててね」

 

ガチャりとドアが開けられ、めぐみんが中に入った。

俺は潜伏スキルを使い、バレずにゆんゆんの部屋に入る事に成功した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「おはようめぐみん、それで話ってなに?」

ゆんゆんがお茶を準備しながら訪ねた。

 

「それが…カズマの事なのです。聞いてくれますか?」

めぐみんが二対に向かい合ってるソファに座り、ゆんゆんがもう一方のソファに座った。俺は少し離れたところであぐらをかいて座った。

 

「もちろんよ、困った時はお互い様なんだからね?」

 ゆんゆんは頼ってもらえて嬉しそうだ。俺は昨日無視された相手に対してこんなに優しく接することができるだろうか?俺も見習うべきだろう。

 

「助かります。では本題に入るのですが、昨日の夜からカズマが変なのです。昨日、カズマが途中で白スーツに連れて行かれたじゃないですか。その後から何かボーっとして何か考えているようなのです。」

 

 

「クレアさんから聞かされた事が何か引っかかっているんじゃない?考えているって事は何か決断を迫られているんだと思うの。何も話してくれないの?」

 

「そうなのです。個人の問題だと言って話そうとしないのです」

 

「カズマさんもめぐみんが好きならちょっと強引に聞いてみたらいいんじゃない?」

 

「それは…多分それでもカズマは話してくれないと思うのです。ああ見えてカズマは譲らないものは絶対に譲らないのです」

 俺は昨日のめぐみんの行動の意味をやっと理解した。女ってのは恐ろしい。

 

「ほかに変なところはあるの?」

 

「いつもならカズマはお金の話の時や旅行の話の時は嬉々として会話に入ってくるのですが、カズマは昨日私たちが旅行の話をしてたらなんて言ったと思います?[あ、ああ 俺はお前らが行きたいところに行きたいな、お前らで決めてくれよ]って言うんですよ?おかしいと思いませんか?」

 

あいつ、俺にどんなイメージを持っているんだよ…

 

「確かにカズマさんらしくありませんね…その他に変化はあるの?」

 

「カズマは個人の問題だと言っていましたが、私はパーティー全体に関わる問題のような気がしてならないのです。いつもカズマはメンバーの事を考える時にそれぞれの顔を見る癖があるのです。」

 

えっ?マジで?そんな癖あるんだ。直しておこう。

 

「さすがねめぐみん、何しろめぐみんはバレないようにずっとカズマさんの事を見てるもんね?」

ゆんゆんが少しニコニコしながら言う。

 

そ、そうなのか。なんか嬉しいような恥ずかしいような…

 

「な、なんですか、そんな事ないですよ?私はカズマが粗相をしないか見守っていただけですから」

 めぐみんは持っていた紅茶をガチャっとテーブルに置きながら言った。

「本当?じゃあ王女様がカズマさんの手を取った時に少し顔が引きつったのはなんで?」

今はゆんゆんが少し勝ち誇った顔をしている。

 

「わ、私はそんな事はないと思います。まぁいいですよ、話を戻しましょう」

 こんなガールズトークを俺が隠れて聞いている事がバレたら相当キレられるだろうな。

「そうね…私も力になるわよ、めぐみん達のためにがんばるわ!」

 

  ほんといい子…

 

「ありがとうございます、それで、まとめるとカズマがメンバーの事について悩んでいる事は確かなのですが、その悩んでいる事の内容が気になるのです。それと、おそらくカズマは今日か明日くらいまでに決断を出さなければいけないと思うのです。カズマはかなり先の問題はあまり考えないのです」

 

「今日か明日…きっとこの城にいる間に決める必要があるのよ。急いで突き止めないと、大変な事になるかもしれないわよ?」

 

「もしかして…問題は城に関わる事、もしくは城の関係者に関わる事でしょうね…」

 

 二人とも探偵でも始めたら?

 

「なるほど…それは一理ありますね。カズマがこの城に関わる事といったら………ご褒美としてこの城に住んでいいだとかですかね、でもそしたらカズマならここに住むと即答するハズです」

 

「もしかしたらこの城に住むにあたって何か制約があるとかじゃないかしら?例えばここに住むなら冒険者を辞めるとか、パーティーメンバーを連れてきちゃダメとか…」

 

「まぁこの城に住んでいいと言われたかもわかりませんし、もっとしっかりくるのはないんですか?」

 

「そうね……この城の人に関わるとしたら…」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!わかりました!あのロリ王女ですよ!!あいつがカズマに色目を使っていたのはそういう事だったんですね!わかりました、わかりましたよ。あいつがカズマに結婚でも申し込んだんですよ!」

 

「確かに!筋が通るわ!王女は大きな戦果を挙げた勇者と結婚するのよ!!それだわ!」

 

「ちょっとあの王女に爆裂魔法撃ち込んでくるので待っていてください」

めぐみんが怒りをあらわにしながら立ち上がった。

 

「ま、まってめぐみん!カズマさんを説得させて終わりでいいじゃないの!まって落ち着いて!」

 ゆんゆんがめぐみんをソファに戻そうとしたがレベルが上なめぐみんに力負けし、走って飛び出していった。

 

 めぐみんの後を続いてゆんゆんも飛び出して行った。俺もゆんゆんに続いて廊下に出る。

 

俺はゆんゆんと別行動をすることにした。もし見つけたらゆんゆんも上手くやるだろう。

 まぁ、めぐみんはアイリス様の部屋を知らないと思うが、城ごと吹き飛ばすとか言い出したら大変だ。あいつはたまにバカになる。

 

あいつはどこに行ったのだろうか。

そして俺はいつ潜伏を解こうか。

 

 

 

三分後

 

「おい、そこを通してもらおうじゃないか。」

 

なんとめぐみんはアイリス様の部屋がどの辺りにあるかを突き止めたらしい。剣に手をかけているクレアと、眼帯を付けて杖を構えて魔力を溜めているめぐみんがいた。

 

「ここから先は通さん。もし行こうとするならば容赦無く切りつけるぞ」

鬼の形相のクレアが言った。

 

「いいでしょう。じゃあここから城ごと吹き飛ばしてあげましょう。」

 

「させてたまるか!死ねっ!」

 

 

 

「ストーップ!!!」

 

俺は潜伏を解き、2人の間に入った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「サトウカズマさん、お久しぶりです。」

 

 また死んだのか、もう慣れたよ。

 俺はもうすっかりコンビニ感覚の天界にやってきていた。

 

「エリス様、久しぶりです。」

 

「もう、魔王を倒した勇者が簡単に殺されてどうするんですか、今はもう修羅場ですよ。そろそろアクア先輩が蘇生してくれるので、少しだけくつろいで行ってください。」

頬を掻きながら優しい笑みを浮かべながら言った。

 

 エリス様を見ていると心が穏やかになる。

 

「そうさせてもらいますね……………。エリス様?俺思ったんですけど天界でスキルとかって使えるんですか?」

 

「いえ、使えませんよ。身体能力も人並みに下がります。使えるのは私たちが許可した場合のみです。そうでないと暴れ出す人が出てくるものでして。もちろんスティールも使えませんからね?」

エリス様がパンツを抑えながら言った。

 

「しませんよ、まだ根に持ってるんですか?クリス様?」

パンツを抑えているエリス様とクリスがどことなく似ている。なぜみんな気づかないんだろう。

 

「別にそういうわけではないですよ?でも、なんでそんな事聞くんですか?」

 

「いや、俺がここにテレポートしてくる時に帰れなくなったらどうしょうって思って」

 

「そうですね…私が許可しない限りは帰れませんよ?でも体がある状態で天界にこられても私たちはどうする事もできませんからね…」

 

「天界も大変なんですね。毎回仕事増やしてしまってごめんなさいね」

 

「まぁ、できればあまり仕事を増やして欲しくはないですけどね。あっ、準備が整いましたので今門を開けますね。」

 

「ありがとうございました。失礼しまーす」

 

「では幸運を!」

 

 

 

 

 

 

 

穏やかな天界とは違い城の中はエリス様の言う通り修羅場だった。

 まず、めぐみんは護衛に押さえ付けられ、ダクネスはクレアに向かって怒鳴りつけ。アクアは青ざめていて、アイリス様は泣いていた。

 

「おいクレア!!カズマに斬りかかるとはどういうつもりだ!!」

ダクネスは大声で怒鳴りつけている。

 

「あの…悪かった。私があちらの魔法使いに斬りかかろうとしたら急にカズマ殿が間に入ってきて………」

 

「なぜめぐみんに斬りかかろうしたんだ!!!!」

 

「いや、あの魔法使いはアイリス様に魔法を打とうとしていて私が道を譲らんと言ったらこの城ごと吹き飛ばすとか言い出したので。」

 

「そうなのか?めぐみん?」

 

ダクネスにキッと睨まれためぐみんは

「後で理由は話します…」

とバツの悪そうな声で言った。

 

「でも、その女はカズマに切り掛かったのですよ?それだけで爆裂魔法を放つ価値ありです。」

 

「そんな事より早くカズマ様を、早く治療室に連れて行ってください!」

アイリス様が泣きながら言った。

 

「うるさいですね、打ちますよ?」

 

「まあまあ、お前ら落ち着けよ、俺は無事だったからいいって」

俺はムクッと立ち上がり、何気なく言ったつもりだったが、クレアとアイリス様は唖然としていた。

 

「カズマ殿…あれだけ深く斬り込めば致命傷のはず…」

 

「深く斬り込んだとかいうなよ。想像したくないわ」

自分が切り込まれたところを想像して具合が悪くなりながら言った。

 

「恐るべし自然治癒力だ…」

「まぁそういうことだ」

 

 そういう事にしておこう。何度でもアクアが蘇生できるなんて知ったらまた面倒な事になる。今回はアクアも物分かりがいいらしい。黙ってうなずいてくれた。

 

「カズマ様…すいませんでした」

 アイリス様が複雑な表情でこちらを見ている。

 

めぐみんがアイリス様を強烈に睨んでいた。

 

「まぁ…俺はもうなんともない。大丈夫だからダクネスも許してやれ、めぐみん、絶対暴れるなよ?」

 

めぐみんは諦めたようにうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 




展開が遅くてすいません。

5話の中でカズマ達の屋敷に帰ろうかと思っています。


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6部5話

6部5話

 

俺は血がついたジャージを着替え。4人で俺の部屋に集まった。全員は絨毯の上に腰を下ろし、円を作る。

 

「じゃあめぐみん、話を聞かせてくれ」

ダクネスは真剣な表情で聞いた。

 

「…私は何も言えません」

 

「「え?」」

俺とアクアは唖然とした声を出した。

「なぜ言えないのだ?」

ダクネスは鋭く聞き返す。

 

「これを言うと困る人がいるのです…」

俺は理解した。今ここで俺とアイリス様の話をすると、俺が断るしかなくなる事をわかっているのだ。だから言わないのだろう。

 

「その人は誰なの?」

アクアも鋭く聞く

 

「それも言えません…」

 

「頼む、言ってくれ。返答によってはクレアとアイリス様に謝罪をしなければならない」

ダクネスは少し怒った口調で言った。

 

「言えません…私は絶対に言いません」

 

「それでは困る。早く教えてくれ」

 

「お願いです、何も聞かないでください。私にはとても言えないです、その人の人生に関わる事なのです」

めぐみんが涙を目に浮かべながら言った。

 

 

仕方ない、どうにでもなれ。

 

「しょうがねぇなあ、俺が全部話してやる。3人ともよく聞いとけ」

これだけ秘密を守ってくれるめぐみんのためにも言うしかない

 

 

 

 

 

 

俺は全てを話した。 

 

 

「し、信じられないわ…カズマさんがそんなリア充みたいな問題を抱えていたなんて…」

「ああ、私もだ。だか、王女は戦果をあげた勇者と結婚するのが昔からのしきたりだ」

ダクネスは若干動揺している。

「それを突き止めためぐみんは王女にイラッときて爆裂魔法を打とうとしたのね?」

 

めぐみんが下を向きながら小さくうなずいた。

 

「まぁ、もうそんな事はどうでも良くなった。そんな事よりカズマ、お前は本当にアイリス様と結婚してしまうのか?」

ダクネスが精一杯焦りを隠しながら言う

 

ほら、こういう雰囲気になる

 

「わ、私は嫌よ?カズマは私たちと一緒にいてくれるわよね?」

アクアも上擦った声で言う

 

俺は黙って下を向く。

 

「カズマ、私は認めないからな?夜這いに行ってでも連れ戻すぞ?」

ダクネスは焦りを隠すのをやめた

「そうよ?意地でも行かせないんだから」

 

「それはダメです。カズマの権利を侵害してはいけません」

めぐみんは俯きながらもはっきりと言った。

 

「そんな事はわかっている!でも聞いてしまった以上は全力で妨害するからな?」

 

 

「そうよ?じゃあ、めぐみんはカズマかパーティーから外れてもいいと思ってるの?」

アクアが強く言った。

 

「そういうわけではないですが…今回ばかりは…」

 

 

「めぐみん、後悔するぞ?いいのか?」

ダクネスが半泣きで訴えかけるような顔をして言った。

 

 

「カズマ……」

涙を流しながら俺の方を向いた。

 

 

めぐみんは俺の首筋にバッっと抱きついて強く抱きしめてきた。

 

「カズマぁ……カズマぁ……」

 

 

 

アクアとダクネスが少し顔を赤くして、俺を見るとクスっと笑った。

 

なんだかすげー恥ずかしい。

けど嬉しい。

 

 

しばらく経っただろうか。

 

めぐみんがゆっくり離れ、

「もう後悔はありません」

と言った。

 

 

 

長い沈黙

 

 

 

 

「カズマ、本当に行ってしまうのか?」

ダクネスが少し勝ち誇ったような顔をして言った。

 

 

 

「行くわけないだろ?これからもよろしくな!!」

 

三人は満面の笑みで俺に飛び込んできた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺たちは式服に着替え、会場に入場するところだ。

 

これから、俺たちは国内外のお偉いさん達と夕食をとり、表彰状が渡されるらしい。

 

 

場内からアナウンスが聞こえてきた。

「皆さま、本日はお集まり頂きありがとうございます。それでは勇者様方の入場です。大きな拍手をお願いたします。」

 

大きな扉が開けられ、俺たちは中に入った。その中はとてつもなく広く、体育館の3倍はあるだろう。丸テーブルがいくつも置かれ、それぞれの席に豪華なテーブルクロスが引かれてある。

大きな拍手に迎えられ、俺たちは一番前の表彰台の近くの席についた。

俺たちが席についた事を確認して、アナウンサーが続けた。

 

「本日、夕食会及び表彰式にご出席いただきありがとうございます。今夜は人類の勝利を祝い、親交を深めましょう。それではグラスを持ってご起立願います。」

 

ガラガラガラ

 

 

「では皆さま、人類の勝利を祝って乾杯!!」

 

「「「「「乾杯!!」」」」

 

夕食会では豪華な食事が振る舞われた。

 

夕食会はとても楽しかった。

たくさんの貴族と会話ができたり。モテまくってるダクネスをおちょくってみたり。アルダープの悪口を言ったりした。

 

でも、俺は心から夕食会を楽しめない。

理由はわかっている。アイリス様の求婚を断らなきゃいけない。

 

俺は表面上は楽しんでいるが、内心はその事しか考えられない。

表彰式での感謝の言葉の嵐もほとんど耳に入ってこなかった。

 

 

そして、ついにその時は訪れてしまった。

 

 

俺は肩をトントンとされ、振り返ると、緊張した様子のアイリス様がいた。

 

「カズマ様、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

アイリス様はやはり緊張しているらしい。声が少し震えている。

 

「ええ、いいですよ」

「ありがとうございます。ではこちらへ来てください。」

 

アイリス様は俺の手を引っ張って行った。

みんなの顔は見ないようにしておこう。

 

 

 

 

俺は会場から離れたベランダのような所に連れられた。

ふぅ、と深呼吸をして、アイリス様が話し始めた。

「カズマ様…この世界に平和をもたらしていただきありがとうございました。あなたは間違いなく後世に語り継がれる英雄です」

 

「あ、ありがとうございます」

 

どうやったらこんな綺麗な目ができるんだろう。

 

「それで…昨日のクレアからの話…覚えていますか?」

 

俺は黙ってうなずく。

 

「その……今回の話は政略結婚のようなものでは決してありません。私は、私は本当にカズマ様に惚れてしまいました。カズマ様が城を去った日のあの喪失感、日に日に増すあなたへの思い…私はカズマ様が魔王を倒したと聞いた日。これで晴れて求婚ができると思い。嬉しくてたまりませんでした。」

 

アイリス様は俺の手を取り、

「側室などと回りくどい事は言いません……………カズマ様、私と結婚してください!」

頭を下げ、空いている手を俺に差し出してきた。

 

 

ああ、苦しい……

辛い、悔しい、悲しい…。色々な感情が押し寄せてきた。

 

「ご、ごめんなさい…本当にごめんなさい…俺も本当は断りたくない…でも…俺には仲間が…」

苦しい、絞り出すような声で断った。

 

「やはりそうですよね……すいませんでした。カズマ様は仲間を大切にする優しい方です。」

アイリス様は涙目になりながら言った。

 

それでも俺の手を離そうとはしない。

 

 

「悩ませてしまってすいませんでした……本当なら私が胸の内にしまっておくべきだって事はわかっていました。でも、でも…」

アイリス様は堪えきれずにポロポロと涙を流した。

 

 

俺だって泣きたいよ…なんで俺が女の子を泣かせなきゃいけないんだ。

 

 

アイリス様はしばらく泣いていた

 

「カズマ様…もう一つわがままを許してもらってもいいですか?」

空いた手で涙を拭いながら言った。

 

「ええ、なんでもします。」

 

アイリス様は少し恥ずかしそうに顔を赤らめると、

「あの…キスしてください」

と言った。

 

「あ、あの…それは…だってアイリス様きっと初めてですよね?いいんですか?俺なんかで…もっとこの世界にはいい男がたくさんいるんですよ?俺が初キスをもらうわけには…いや、もちろん嫌じゃないですよ?でもアイリス様は本当にそれでいいのかなって思って…」

 

「初めてだからカズマ様とがいいのです。もし今してくれなかったら私は望まない人とする事になってしまいます…だからお願いです…」

 

「ああ、本当にいいんですね?」

 

アイリス様は無言で目を閉じた。

 

俺はアイリス様の頭に手を回し、アイリス様の柔らかい唇に俺の唇を押し付けた。するとアイリス様は俺の唇をチロっと舐めた。

 

まさに映画のワンシーンのようなキスだった。

 

俺がアイリス様から離れると、年相応の笑みを向けてくれた。

 

「ありがとうございました。すごく幸せです。」

 

「俺もだよ」

 

「カズマ様?私はまだあなたの事を諦めてませんよ?これからも積極的にアタックしますからね?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後は特に何事もなく夕食会は終わった。

 

 

 

みんなは着替えて俺の部屋に集まっていた。

 

3人は何やら俺の方を見て、ヒソヒソと話をしている。ミツルギ達は何やら楽しそうな話をしていた。ゆんゆんは、めぐみんがかまってくれないので、例の如くぼっちだ。

 

俺はというと、さっき殺された時に着ていたジャージに付いている血を洗い流している最中だった。

 

俺はジャージをティンダーで乾かし、アクアにジャージを縫ってもらうように頼んだ。

 

「私が縫おう。私だって女なのだからこれくらいできて当然だ。それに…手に針が刺さる感覚もまた……いい」

まぁ今回はこのドMに任せる事にするか。

 

ダクネスは裁縫道具を持ってくると、せっせと縫い始めた。

 

「ねぇカズマ、ちゃんと断れたの?」

アクアが心配そうに聞く

 

「まぁな、でもまだ諦めてないってさ」

 

「お望みなら消して差し上げましょうか?」

 

「やめろ」

こいつらと話しているとアイリス様がいかに常識人かわかる。

やっぱり結婚しておくべきだっただろうか?

 

 

 

 

時間も経ち、ミツルギ達とゆんゆんは部屋に戻り、3人も戻ろうとしていた。

 

「じゃあカズマ、これは明日の朝までに仕上げておくからな」

 

「ダクネス?カズマのジャージの匂いを嗅ぎながら自己処理とかしちゃダメですからね?」

 

ダクネスは顔を赤くし、

「そ、そ、そんな事はしない、つもりだ」

とボソボソ言った。

 

図星だったのかよ…

 

 

「じゃ、じゃあまた明日ね」

 

アクアが若干ダクネスから引きながら言った。

 

 

 

 

3人が出て言った後、ランプを消してベッドに入った。

 

 

 

 

次の日の朝

 

俺たちは城を出る準備をしていた。

と言っても俺もほとんど手ぶらで来たわけだし持って帰るものと言ったら表彰状と1000000000000エリスくらいか。

 

 

…一兆エリスってどうやって持って帰るんだろう?

 

そんな事を考えているとクレアが部屋を訪ねて来た。

「カズマ殿、失礼する」

 

俺がドアを開けるとクレアはソファに座った。俺も対になってるソファに座る。俺とクレアはこの城の滞在中にすごく仲良くなったみたいだ。

「カズマ殿…王女様の求婚を断った人を私は初めて見たなな」

 

「まずかったか?」

 

「いや…まずくはないんだが、アイリス様が気の毒でな…」

 

「そうか…悪いことしたな…」

2人で暗い雰囲気になっていると、クレアがその雰囲気を脱出するように、

 

「まぁいい、別な話なんだかあの額を全部持って帰るのは大変だろう?だから必要な分だけ持って行ってこの城に保管しておくのはどうだ?好きな時に取りにこればいい。」

クレアは明るく言った。

 

「なるほど…名案だ」

 

「アイリス様の提案だ。金庫の鍵は自分が持ち歩くと言っていた。」

なるほど…頭のいいやつだ。

 

「話はこんなところだ。カズマ殿今回は色々と迷惑をかけてしまって申し訳ない」

 

「まぁ前回も掛けられましたけど」

 

俺とクレアは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはアイリス様とクレア達に見送られ城を出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




途中ラブコメみたいになってしまいました。

次回からはしばらく日常回です。



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6部6話

ああ、平和だ。

 

なんて平和な日々なんだ…俺はもう何もする必要がない。屋敷もある。お金もある。平和もある。美女が3人も一つ屋根の下で暮らしている。俺はこの世界に来て本当に良かった…

 

 

 そう思いたかった

 

あのロリガキは馬鹿なのか?本当に何考えてるんだ?

 

めぐみんが爆裂散歩から帰ってこない。早朝に出かけてからもう半日は経った。もうすでに太陽は西に傾いている。

 

俺の予想はこうだ。めぐみんはレベルが上がって爆裂魔法の威力が上がった事に気付いていない。そんなめぐみんが魔力を使い果たして動けないのだ。

 

今は俺達3人で捜索隊を要請し、めぐみんがいそうなところをくまなく捜索しているところだ。俺達は岩場を回ったり、草っ原を回ったり、ベルディアのいた城を回ったりした。

 

「あいつ。マジでふざけんな!!馬鹿だあいつ!!なんでそんな事にも気づかない?あいつは欲に忠実な思春期の男か?マジでふざけんな!!」

 俺は怒りと焦りが限界に達している。アクアとダクネスは飛び上がる。

 

「お、おい。そんなに叫ぶな。気持ちはわかるがそんなに怒るな。」

 ダクネスも少しうんざりしているのがわかる。

 

「あのやろう!!見つけたら剥いてやる!なんであいつのためにここまでしなきゃいけないんだ!!」

 温厚な俺でも今回はイライラが募る。少なくとも行くなら場所くらい伝えとけっつんだ。あいつは欲に忠実なただの馬鹿だ。

 

「まぁ、気持ちはわからんでもない…私だって今日は暇じゃないんだ」

 

「まぁ今は見つけてあげるのが優先よね?早く見つけてから怒りましょう?」

 今日のアクアは少し女神らしい。そんなアクアを見て一旦は冷静さを取り戻し、捜索を続ける。

 だか100人規模の捜索を行なってもめぐみんはなかなか見つからない。どうしたのだろう?もっと遠くに撃ちに行ったのか?俺達はもう少し歩き、少し離れた場所に岩場を見つけたので、そこを探してみる事にした。また俺の怒りメーターはぐんぐんと上がってくる。

 

「あぁぁぁぁ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 だんだん怒りが漏れてくる俺を気遣う二人のためにも怒りは抑えるべきなのだろうが…少し落ち着こう。二人と話して気を紛らわせるか。いつもなら話していてストレスが溜まる奴らだが、今は二人が精神の支えのようなものだ。

 

「なぁダクネス」

 

「は、はひっ………!」

ダクネスはビクッとして変な声を出した。

 

「まぁ落ち着け、今の俺は全然怒ってない。ただ落ち着くために話しかけただけだ」

ああ、だめだ。顔の筋肉の緊張が解けない。どうしよう…

 

「わ、わかった…」

 

「今日したかった事って何?」

 俺は普通に聞いたつもりだった。しかしダクネスはかなり驚いた様子で、俺の事をちらちら見ながら、

「そ、それは…プライバシーだ」

と言った。アクアも睨んでくるし、今は聞かない方がいいのだろう。

 

 結局この岩場にもめぐみんの姿はなかった。

 

俺達はさらに奥に進む、もう三時は回っているだろう。あいつお腹空いてるだろうな…朝ご飯の前に出て行ったし、今日は何も食べていないはずだ。少しだけ心配にもなってくる。

 

「なぁ、アクア。今日はお前は暇なのか?」

 

「そうね…今日やるべき事は朝のうちに済ませて来たし…特にないわね…」

 アクアは朝にゼル帝をバニルの店に迎えに行ったくらいしかやってないな。そもそもこいつに予定なんてあるわけないか。

 

 

 

またしばらく歩く。

 

途中でダクネスの顔色が悪くなってきた。

「どうしたダクネス、トイレならあっちの草むらでしてこいよ」

 

「違う!!少し嫌な想像をしてしまってな…」

 

「嫌な想像って何よ?」

 

「あのな?めぐみんはモンスターに向かって魔法を撃つのが好きだろう?そしたら、撃ち漏らしたモンスターの群れに喰われて…」

 

「「あああああああああああああ……!!」」

 

「変な想像をさせた悪かった。あくまで最悪の場合だ。多分そんな事はない…たぶん…」

俺もアクアもダクネスのように青白い顔になってしまった…本当にどうしよう…もしあいつが喰われていたら…想像したくない!!エリス様…俺とめぐみんに幸福を…吐き気がしてきた。それはアクアも同じらしい。

 

「どうしよう…本当にめぐみんが喰われていたら…アクアも喰われてたら蘇生できないだろう?」

 

「多分無理よ………まぁ体の大部分が残ってたらできるだろうけど、……」

 

「あああああああああ……!!言うな、想像もしたくない!!!!やめろ!! そうだ!俺も死んで先回りして待っていよう!エリス様に頼んで体を作り直してもらおう!!ダクネス!その剣で俺の首を跳ねろ!」

 

「そんな事はできるわけないだろ!私は嫌だ!!」

 

「つべこべ言うな!!早くしろ!!」

 

「お、落ち着いてカズマ!!それに体は作ってもらえないと思うわ。今までで体を作ってもらえたのはカズマだけよ?」

 

「じゃあ俺が天界にテレポートしてめぐみんをこの世に連れて帰ってくる!」

 

「そしたらめぐみんはアンデッドになっちゃうわよ?」

 

「めぐみんのアンデッドならいいだろ?人形にでも取り憑かせて…」

 

「だめよ?私たちの屋敷には結界が張ってあるから、霊は入れないわよ?」

 

「じゃあいっそ俺が魔王になってこの国を滅ぼして…」

 

「おい、落ち着けカズマ!言動がおかしいぞ?今はまずめぐみんを探すのが最善だろう?」

 それもそうだな…俺たちは必死になって探した。3人とも声が枯れるまで叫び、アクアに何度も喉にヒールをかけてもらった。

 

 

 

それでもめぐみんは見つからなかった。夕方になり、空も暗くなり始めた。全員の顔からも焦りが読み取れる。

 

「また明日にしよう、このままでは私たちまで遭難しかねない。」

 ダクネスの声が震えている。

「嫌だ、俺は見つけるまで帰らない、見つけ出してからなず文句を言ってやる…」

 

「気持ちはわかるけど、ミイラ取りがミイラになるって言うでしょ?また明日にしましょう?」

 

 散々言い争った挙句、俺が折れる形で捜索を切り上げた。捜索隊には夜の間も働いてもらう。今はお金なんてどうでもいい…

 

俺たちはとぼとぼと家に向かった。誰も一言も喋らない。ただ地面を見て歩いていた。

 長い、長い帰り道。屋敷が遠くに見える頃には、もう太陽はほとんど沈み、空はめぐみんの目のような深い赤に染まっていた。

 

 

俺たちは屋敷のドアを開けて中に入った。

 

 

 

「遅かったですね。どうしたんですか?」

 さっきの空の色のような目をしためぐみんが、エプロンを付けて玄関に顔を出した。

 

 

 

「「「めぐみんてめぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」

 俺たち3人は喉が枯れていることも忘れて叫んでしまった。

 

「うわぁ!いきなりどうしたんですか?」

 

「どうしたもこうしたも、お前が爆裂散歩から帰ってこなかったから心配で捜索隊も派遣して探しに行ってたんだよ!!なんでお前が家にいるんだよ!!ふざけんな!!どこに撃ちに行くかくらいは伝えとけっつうんだよ!!」

 

「そうよ!!私たちすっごく心配したんだから!!何時間歩いたと思ってるの?」

 

「私だって今日はやりたい事があったのに!!勝手な行動して、なんのつもりだ!!」

 

次々に不満をぶつけられためぐみんは、気まずそうな顔をしながら、

「あ、あの…私が何も言わないで出て行ったのは謝ります…」

と、申し訳なさそうに言った。でも俺の怒りは簡単には収まらない。

 

「じゃあ昼も帰ってこないで何やってだんだよ?少なくとも何時に帰るかくらいは置き手紙でもしとけってんだ!!」

 

「ごめんなさい…でも…今日はやりたい事が…」

 

「お前もダクネスもやりたい事ってなんなんだよ?」

 

「カズマ?今日が何日か知ってますか?」

今日は…2月14日か…まさか?

 

「この前カズマが教えてくれたじゃないですか。カズマ、バレンタインチョコですよ…」

めぐみんは、少し赤くなり、目を逸らしながら、俺に箱を渡してきた。俺の怒りメーターがスーっと下がってくるのを感じる。

「あ、ありがとう」

 

「まぁ義理チョコ以上本命未満ってとこですかね、でも手作りなので味は期待しないでください」

 俺の背後でダクネスとアクアも少し赤くなっていた。すると、アクアはいきなり階段を上り、しばらくして箱を持ってきながら降りてきた。

「実は私も作ってのよ?まぁこれはいつものお礼というか、友チョコみたいな感じかしらね」

 アクアが喜々として俺の胸に箱を押しつけてきた。

「ありがとう」

俺はニコッと二人に笑ったが、一人少ない。ダクネスが背後で小さくなりながら言った。

「わ、私は今日の昼に作る予定だったのに…」

泣きそうになりながらダクネスが言った。

 

「みんなありがとな」

 

 

俺はこの世界にこれて本当に良かった。

 

 

 

後日、ダクネスは大きめのチョコレートを渡してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すいません、私情で1ヶ月ほど休ませてください。






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