刀使ノ巫女RTA 綾小路武芸学舎フリーエディットAny% (滑落車博士)
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第一回
刃が交わり心を通わす美少女剣戟RPGはっじまーるよー。
このRTAを走る前に、偉大なる先人走者兄貴の記録を拝見したのですが、なーぜーかー先人走者ニキのルートが前人未到の新規ルートを開拓してしまい絶賛有志wikiにて検証班総出の全容解明に当たるという珍事に発展したため、僭越ながら私が本編準拠シナリオを完走してやるぜ! というコトになりました。
先人走者兄貴のレギュレーションと異なり、こちらはPC版(全年齢ver)環境での記録となります。ご了承ください。
さて、各走者のみなさまにとっては常識かもしれませんが、剣戟アクションRPG『刀使ノ巫女』は全二十四話のアニメーション作品、漫画、小説、スピンオフアニメ、ソシャゲ及びOVAと各媒体で展開するマルチメディア『女子中高生×刀』作品です。
今なお新キャラが追加され新規テキスト追加及び新ルートが開拓されていく。ゲームとしても自由度は非常に高く、RTAに挑んだ走者が未知のルートに直面するなんて日常茶飯事。女心と秋の空は変わりやすいなんていいますが、チャートをガン見していた筈が好感度調整を少ーし失敗して修羅場に!なんてことも多々あります。ヤンデレ怖いでしょう…。
しーかーしー、それを補ってあまりある独特の魅力がある作品なのも事実です。各剣術流派ごとに設定された緻密なアクション、勝敗が一瞬で決まることもある白熱したバトル、心と感情がぶつかり合うシナリオ、そして可愛らしく魅力的な少女たち…と、語り尽くすには余白が足りない作品です。
プレイヤー人口が一人でも増えてほしい。とじともの輪が広がってほしい。そういった思いで私も走ろうと思いました。これだけははっきりと真実を伝えたかった。
キャラクリエイトから開始していきます。
外見は速度を優先してランダム生成、名前は入力速度を考慮して『
有志wikiによるとキャラクターの名前に入っている漢字の属性…『日、月、星、神に代表される神話系』、『春夏秋冬の季節系』『花や鳥といった動植物系』『織田、武田、上杉など武将系』…等、ネーミングパターンによって初期ステータスの変動、各種イベントの発生率及び主要キャラクターへの好感度補正があるようです。詳細はググってもらえればと思いますが、攻略キャラが決まっている場合には重要となる要素ですのでしっかり考えて入力しましょう。
さて、次に決定することになるのは全国に五校ある刀使養成学校、通称『伍箇伝』の選択です。
現在のバージョンはver1.2なので、詳細設定を行ってから開始します。所属校および主人公の年齢によっては本編キャラクターとの接点等が追加されます。また、周回要素にはなりますが、『最初から親衛隊ルート』『舞草工作員ルート』『ダブルスパイルート』などを選べますので、今回のアップデートによって選択できるルートは三倍超との噂も耳にしますね。政治闘争や組織間の謀略合戦ができるようになったのも見所さんです。
が、しかし! 今回私が選択するのは、王道『本編シナリオ』ルート! 新規追加されたシナリオ群とは違い、信頼と実績のある堅実なチャートを進んでいきます。有志wikiによる検証データも多いので、不安定要素はありません。この私に精神的動揺による操作ミスは決してない と思っていただこうッ!
と、いうわーけーでー。所属は『綾小路武芸学舎』、流派は『巌流』、学年は『中学三年』を選択します。
詳細設定ですが、「所属組織」に『柳瀬グループ』、「交友関係」に『柳瀬舞衣』を選んでおきましょう。組織としては本編ストーリーにあまり関わらない柳瀬グループですが、政財界にもパイプのある巨大組織の一つです。ここでコネを確保しておくことにより、暗札未遂事件発生後に舞衣さん経由でのパーティー合流がスムーズになります。
続いて、ステータスですが、ここは攻勢一点伸ばしにします。
え、敏捷を伸ばさないの? という疑問をお持ちの視聴者もおられるでしょう。これについては後述します。
(……刀使饅頭乙女生成中……)
オープニングムービーは省略だ。
本編開始前、中学三年の春からスタートです。
おはようございまーーーーす!
流れるように起床し、ベッド横の机を調べずに廊下へ出ます。
うっかり机を調べるとスペクトラム計(旧)を入手してしまい、そのままシナリオを進めると漫画版ルートへ分岐するので注意が必要です。RPGにありがちなタンスや壺をマメに確認するプレイヤー心理を利用した姑息な罠を許すな(十五敗)
一瞬だけステータス画面を開いて、ランダムで設定される初期スキルを確認しておきます。……『一本気』ですか。交渉や謀略が苦手になる代わりに、意志力を強化するスキルです。組織間の暗闘に巻き込まれると致命的な弱点になりかねないスキルですが、今回は戦闘さえできれば問題ないのでこのまま進めます。
ちなみに御刀は『鬼神大王波平行安』でした。波が平らでイクに安い。RTAに相応しい御刀と言えるでしょう。これは幸先が良さそうです!
そのまま中等部の教室に直行します。このタイミングで高等部に向かうとアプリ版のメインキャラクターの一人である木寅ミルヤお姉さまにエンカウントできますが、その場合はアプリ版シナリオ『刻みし一閃の灯火』寄りのイベントが発生しやすくなるため、狙わないのであれば避けましょう。……個人的には水科絹香お姉さま関連のイベントを進めるのも好きなのですが、完全にサブイベントの寄り道になってしまうので泣く泣く無視します。
教室に入ると、クラスメイトの鈴本葉菜ちゃんがいるので話しかけましょう。彼女は成績優秀、品行方正、極めて優秀な真面目さんです。刀使としても優秀で、しかも僕っ娘です。 なんだこの完璧超人!? ですが、彼女には秘密があって…というのが一部ルートでは開示されるのですが、それについては省略します。
「おはようございます。紅葉」
おっはよー。元気にしてたぁ?(気さくな発言)
朝のホームルー厶が開始するまでの間、積極的に話しかけて鈴本さんの好感度を稼いでおきましょう。お前中々……可愛いじゃねぇか…(ねっとり)
好感度は、本ゲームのRTAにおいて重要なポイントになります。『刀使ノ巫女』ではキャラクター間の絆、感情によってステータスに大幅な補正が入ります。代表的な所では、糸見沙耶香ちゃんが人の心の温かみを知ってパワーアップしていくイベント等ですね。まいさや尊い…尊くない?
通常ですと他のクラスメイト(モブ)と談笑したり、校内探索してアイテムを入手するのですが…、今回のRTAにおいてはそういった要素はフヨウラ! 御前試合までの僅かな期間、つまりホモちゃんが学舎を出る前に、可能な限り鈴本さんの好感度をグイグイ上げておきましょう。下手に中途半端な訓練するよりもステータス上昇が見込めます。ホモちゃんはレズ、はっきりわかんだね。
さて、時間になったのでホームルー厶が開始されます。ここからは先生からのありがたいお話、もとい各種チュートリアルおよび世界観説明が続きますので…。
み な さ ま の た め に ー
綾小路武芸学舎スタートのメリットについて詳しく解説します(11倍速)
まず、他校スタートの場合、いわゆる本編での主要キャラクターイベントが発生しなくなる、あるいはしにくくなる、という問題があります。
というのも、プレイヤーが美濃関学院、長船女学園、平城学館の代表選手に選出された場合、メインキャラクターから柳瀬舞衣さん、益子薫さん、古波蔵エレンさん、岩倉早苗さんのいずれかが御前試合に出場できなくなります。これは、基本的に各校二名しか代表選手を出せないからです。仕方ないね。
その場合、彼女らがシナリオ上で参戦するタイミングは本編アニメでいう第4話以降となる可能性が出てきます。
長船の益子、古波蔵ペアはシナリオの展開からほぼ確実に登場するのですが、クッキー☆お嬢様こと柳瀬さんは大会前のフラグ管理によっては御前試合の前後で接触できなくなり、岩倉さんに至ってはエンディングまで登場することなくシナリオが進行してしまいます。
一方、鎌府女学院は極めて自由度が高くフリーエディットで進めるには最適…と思いきや、学長がヒステリーおばさんこと高津雪那であるため、シナリオの要所要所で強制イベントが入り、西に東に振り回される破目になります。なんだこのオバサン!?(驚愕)
先人ニキのように、鎌府スタートの場合は離反前提で親衛隊や糸見沙耶香ちゃんの好感度を上げて行くのが定石ですね。
さて、ここからが本題です。
綾小路武芸学舎スタートで折神家御前試合に出場する場合、相棒たるバディは『山崎穂積』さんになります。「え、誰?」とお思いの視聴者さんも多いのではないでしょうか? 私は思いました。えー、御前試合第一回戦で十条姫和さんと戦って初戦敗退していた娘さんです。
つまり、綾小路武芸学舎スタート最大のメリットは、『プレイヤーキャラクターが参戦する事による他メインキャラクターの登場イベント、成長イベント発生を阻害しない』 これに尽きます。
本編シナリオ準拠ルートを進んだ場合、主人公の干渉しない場所で成長イベントがオート消化され、可奈美さんや姫和さんが順当にパワーアップしていくので、プレイヤーキャラクターは比較的低レベルのまま攻略が可能なんですね。そのため、他ルートで必要となる経験値、アイテムやフラグを無視し、自力ではなく他力(大正義主人公な可奈美さんパゥワー)でイベントボスを頃していこう!という戦略になります。
……おっと、説明している間にチュートリアル戦闘に入ったみたいですね。
このシーンはアニメ本編1話のアバン、荒魂戦のオマージュになっています。
機動隊によって封鎖される道路、荒れ狂う『荒魂』、それに立ち向かう日本刀を持った女子校生…という、この作品が描きたいテーマをババーンと提示したようなシーンになっています。ほーいいじゃないか、こういうのでいいんだよ、こういうので!(少年の心)
まあ親の顔より見たチュートリアルなので、操作方法の説明を全スルーしつつスルッと撃破します。(激ウマギャグ)
ここでは自機の体力無限、奥義技を含めた各種アクション動作の練習が可能、中盤以降で活躍するSスーツの挙動確認といった細かな場所に手の届く良ステージなのですが、これはあくまでRTA。無被弾ノーダメージでムカデ型荒魂をコロコロします(王者の風格)
ここでSランククリアをしておくと、初期に保有している人間関係が一段階上昇し、更に成長補正が乗るなど良い事尽くめです。おそらく、既に刀使として相応の経験を積んできている、という演出になるみたいです。
難易度も周回プレイヤーにとっては余裕のよっちゃんさんなので、最後は華麗に奥義にてテーレッテーしましょう。さくっと御刀の錆になってくれよな〜。
奥義モーションは数秒のロスでは?と思うかもしれませんが、ちゃんと内部処理で戦闘の評価点に加算されているので、うま味です。数秒が貴重な経験値になると思えば、序盤はむしろメリットになります。本編ルートだとレベルアップを狙える機会も少ないですからね。雑魚戦では流石にタイムロスになるのですが、ボス一体のみの戦闘では積極的に狙いましょう。
はい。ホモちゃんが奥義をヒットさせたので今回はここまで。
ご視聴ありがとうございました。
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「おはようございます。紅葉」
「おっはよー、葉菜。元気にしてたぁ?」
朝、いつものように紅葉と挨拶を交わす。
僕、
隣の席になったのが縁の始まり。そこから他愛もない話をするようになって、いつの間にか友人になり、気がつけば親友になっていた。そんな間柄だ。
「あー、そろそろ校内選抜も始まるんだったかぁ。葉菜は代表狙ってるの?」
「ん? 僕は、それなりに…かな?」
なんだよぅそれなりってー、と。紅葉が朗らかに笑い飛ばすのを、僕は目を細めて観察する。
彼女は、基本的に陽の人間だ。明るく笑い、感情表現は明瞭で、喜怒哀楽がはっきりしている。そして、適度に真面目で、時々不真面目だ。つまり、友人としては非常にありふれた存在。一緒に撮ったプリクラを手帳に貼って大事にしてしまう程度の、放課後に繁華街へ遊びに行ってタピオカミルクティーを飲んで笑い合う程度の、限りなく普通の友人だった。
それは、『とある事情』で綾小路武芸学舎に通っている僕にとって、小さな幸運だった。
優秀であることと、目立ちすぎないこと。
極めて微妙に相反する2つを要求されている僕にとって、本多紅葉は誂えたような人材だった。彼女は謙遜するだろうが、同学年で彼女の剛剣を止められる生徒はいない。彼女は順当に校内選抜を勝ち抜き、御前試合に出場する切符を手に入れるだろう。それくらい、彼女は普通に強かった。
対して、僕はそこまで強くはない。
成績優秀、品行方正。
そうであるように振る舞っている僕は、剣の才能としては秀才だろう。それで良いのだし、『武勇の紅葉に知略の葉菜』『綾小路中三の
目立つ人間が隣にいると、色々と便利だ。
けれど、だからといって、この友情に偽りは無い。
思っていたよりも校内で注目される立場になってしまった、という問題もあったものの、そこは最終的に理想的な立ち位置を確保できたので問題はなかった。僕の『任務』はあくまで鈴本葉菜という個人に結びついているのであって、隣にいる本多紅葉が優秀な刀使であることとは関係がなかった。もし彼女が目立つ人間であってもなくても、僕が仮に普通の一生徒だったとしても、この友情に変わりはなかっただろう。
だから、僕の胸の裡にある小さな罪悪感以外は、問題無かった。
友人に嘘を吐いている。親友を騙して利用している。
そして、それを決して告げられないこと。
告げればきっと許してもらえるのを判っているから、この秘密は墓まで持っていかなきゃなぁ、なんて思ってしまうこと以外は。何も問題無いのだった。
「ーーーねぇ。葉菜、聞いてる?」
ふ、と意識が戻ったら、紅葉の顔が目の前にあった。
顔が近い。この愛すべき友人は、妙にパーソナルスペースが狭い部分があって、時々ドキリとしてしまう。背が高くて、高校生に充分見えるほど大人びていて。でも浮かぶ表情は子供っぽくて。話題は他愛のないテレビや雑誌の話ばかり。それなのに御刀を抜けば人一倍に真剣な表情をする…そんな紅葉は、可愛いと美人と格好良いのどれでも無い、紅葉だなぁという表情をしているのだ。
「校内選抜、楽しみだねぇ。今年こそは勝ちたいねぇ」
「―――勝てますよ。紅葉なら」
彼女に笑って言えば、「そうかなぁ、去年は準決勝で負けたからなぁ」なんて答えが返ってきて。それでも、僕は、本多紅葉が校内選抜戦で優勝するのを信じて疑わなかった。
―――だって、僕の親友は、強い。
荒魂相手に、写シを傷つけられたのを見たことが無い。
彼女の御刀、三尺余の『鬼神大王』で断てない荒魂は居ない。
今だってそうだ。
緊急招集された荒魂戦で、事も無く百足型の荒魂を受け止め、その巨大な図体を斬り伏せ、止めを刺そうとしている。
その顔は、教室で見せている明朗快活な表情とは違う。
「―――、―――」
真剣。
必死では無く、揺れず乱れず、ただ只管に斬る。
御刀そのものが飛び回り敵を討つかのような、邪念も迷いも感じられない太刀筋。
たしかに、彼女に速度で勝る刀使なら居る、技術で勝る刀使も居る…けれど、躊躇い一つ無く飛ぶ剛剣を、腕脚よりも迅く伸びる剣閃を、正面から撃ち落とせる刀使は殆ど居ない。
そして。
「―――せめて、奥義にて仕る」
驚くほど低い声。
別人のような声色で告げた彼女は、その御刀を上段に構える。
それは、奇怪な構えだ。
相手に僅かに背を向けて、御刀を担ぐようにする。霞の構えのように切っ先は曖昧となり、八双のように振り降ろされる斬撃は激烈となる。……その構えは、我流なのだと微笑んでいた紅葉は、奥義なのだから格好つけたいなんて笑っていた彼女は、その瞬間だけ悪鬼羅刹もかくやという冷たい眼になるのだ。
「……奥義、二連斬」
せめて、もう少し良い名前が思い浮かべばよかったのに。
そう笑っていた『奥義』は、一瞬で荒魂を二回斬りつけて倒していた。
―――僕の親友は、強い。
それは、どこか誇らしくて。どこか憎らしくて。
けれど、それで別に良いと思っていた。
自分は、鈴本葉菜は、優秀で秀才で。
自慢ではないけれど、才媛として声がかけられる存在だ。
だから、隣にいる本多紅葉に、蟠る気持ちを抱える必要などない。無いのだ。
―――本当に?
『武勇の紅葉に知略の葉菜』
『綾小路中三の双葉コンビ』
そう渾名されて嬉しかった気持ちの幾許が、彼女と並び立てる僕にあっただろう。
想像してしまうのは、校内の代表として選ばれるのは二名だけだということ。
その一人は、紅葉だ。それは、友人であり親友である僕にとって確信だ。わざと手を抜きでもしない限り、紅葉は代表に選ばれる。そして、御前試合に向かうのだ。
そして、もう一人。誰か知らない女が紅葉の隣に立って、綾小路武芸学舎の代表として出場する。校内予選を準優勝で突破した誰かが、紅葉と一緒に御前試合に向かうのだろう。紅葉と一緒に新幹線に乗って、紅葉と一緒にホテルに宿泊し、同じモノを食べて笑って肩を並べて、刀使として貴重な経験を積むのだろう。
……僕以外の、誰か、が?
「―――っ!?」
「えっ、葉菜? 大丈夫、どこか怪我でもしたのっ!?」
顔が近い。
紅葉は、荒魂を討伐して元の表情に戻ったと思えば、ぼうっとしていた僕を心配してあわあわと表情を動かしている。
僕は努めて平静を装ったまま、心の中で思いがけず深く刺さった棘に驚いていた。
・・・そっか。僕は、別に代表になりたい理由はないけど。
紅葉の隣に居たい、なんて気持ちはあったらしい。
「いや…、今の紅葉の動きを覚えておけば、代表決定戦で当たったときに勝てるかな? って思っただけだよ」
「……! 葉菜がやる気になっちゃうなんて、珍しいねぇ」
「負けてばかりじゃいられないからね。たまには、刀使としても頑張らないと」
「それじゃあ、双葉コンビで代表狙っちゃう?」
「―――負けないよ?」
「それはこっちの台詞だよぅ!」
それは、僕の『仕事』には不必要な感情だったけれど。
同時に、どうしても無視はできないのが自分で理解できてしまった、そんな淡い執着心なのだった。
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第二回
斬り合いと書いてコミュニケーションと読む美少女攻略ゲーム(配点:剣術)、はっじまーるよー。
さて、チュートリアルも終盤、校内代表決定戦ですね。
ここまでは、特殊なムーブをしない限りルート分岐はありません。淡々と校内戦を勝ち進んで、鎌倉行き折神家御前試合への片道切符を手に入れましょう。難易度も最序盤のため楽チンなのですが、全試合でS評価を獲得しようとすると走者でも時々ガバるので油断大敵です。(21敗)
最大の理由は、校内代表決定戦での試合相手は特殊な乱数で決定されている所為で、パターンが固定できないという点が挙げられます。苦手な流派が相手になった場合、うっかり一太刀浴びてしまうこともあります。油断一瞬、ガバ再走という言葉もあります。慎重かつ大胆に攻めて行きましょう。
次で準決勝ですね。相手は……お! 桐生葉月さんじゃないですか! これは良い引きだぁ…(恍惚) 彼女はアニメ15話で益子隊の副隊長をしていた娘さんで、かなりの隠れ実力者です。
数多くの剣術流派が登場する『刀使ノ巫女』でも、雖井蛙流の実力者というと彼女くらい。流派コンプリートを目指す際には対戦必須といっても過言ではありません。
特徴としては返し技が鋭く、中途半端な牽制を不用意に打つと容赦なく斬り込まれる点が挙げられます。ボケに対するツッコミが鋭い彼女の性格を反映しているのでしょう(適当)
さて、試合開始と同時にホモちゃんから突きかかります。続いて上段振り下ろし、桐生さんが擦り上げてカウンターを返してくるのを更に読んで、振り下ろした体勢から後退しつつ半月に斬り上げて仕留めます。
……微妙に分かり辛いですが、リーチ差でイイカンジに首元にヒット(寸止め)し勝利します。やっぱり武器が三尺超えると有利を取りやすくて良いです。・・・勝負味としては、昔懐かしいブシドーブレード弐が近いですかね? アレをもっとスピーディーかつスタイリッシュにした操作感だと思ってもらえれば間違いありません。油断すると対人戦で一撃死するのも同様です。
あくまで予選は木剣による試合なので、一撃を当てた時点で試合終了。Sランク勝利の経験値美味しいです。
ここでレベルアップしたので、パラメータと技能を調整します。
今回のRTAでは、ホモちゃんは基本的に一刀で敵を粉砕していくストロングな闘法を採用しています。キャラクリ時にポイントを攻勢に全ツッパしたのもそのためです。
手数が多いとHPを削りきれずに事故ったり、連撃の途中で割り込まれたりするリスクもあります。なので、個人的にはRTAでは一撃型が最適だと思っています。もっとも、一口に一撃型といっても、『神速の居合』『後の先カウンター』『防御ごと叩き潰す』等など、選ぶ流派と御刀によって複数の戦略があるので、試行錯誤するのも楽しいかと。
某動画サイトで見た『こや目当ての折神紫ではなか 誤チェスト最速を目指す』はある種の境地に達してるのでオヌヌメです。折神紫以外の全ての固有ネームドを一撃で叩き斬る、まさに爽快感といって過言ではないプレイングを見ることができます。シナリオは完全に崩壊してましたが。
閑話休題。
ステータス調整の結果、獲得ポインヨは身体に振り、技能として『抜刀術』『暗札剣』を取得します。
ステータス:身体は攻撃力と防御力の両方にまたがるパラメータで、あまりに攻撃偏重だとシナリオ後半にガード値不足になるのを見越して多少伸ばします。生命(HP)は貧弱でも、ガードが破られなければ即氏はしません。氏ななきゃ安いの精神でいきます。
抜刀術は、他走者も愛用している強スキル。暗札剣は、名前に反して斬撃速度上昇が主な効果となります。付随する特殊効果もあり、本走ではそれが鍵となるシーンがあるのですが、それはまたの機会に。
さあて、次は決勝戦なんですが…。
「―――本気で行くよ、紅葉」
・・・、・・・。
えー、何だかクラスメイトの僕っ娘こと鈴本葉菜さんが目の前に居るんですが…。幻覚かな?(すっとぼけ)(チャートガン見)
おかしい…。綾小路の校内選抜決勝では、ヘンなフラグを立てなければ山崎穂積さんと対戦する筈なのですが…。
ーーーーー
…ホモちゃんが大会遠征に出発する前に、可能な限り『鈴本さんの好感度』をグイグイ上げて行きましょう…
…ここでSランククリアをしておくと、『初期の人間関係が1段階上昇し』…
ーーーーー
あっ、これかぁ…。これは調整ミスですね…。
『刀使ノ巫女』では、キャラクター間の好感度、絆や感情値によってステータスに影響が発生します。特に、人間関係の段階…『友情』や『親友』といったパラメータが変動した場合、段階に従って戦闘能力が大きく変動します。これは、必ずしも正の方向に限りません。レズがクレイジーサイコレズに進化した場合でも戦闘能力は強化されます。愛は、希望よりも熱く絶望よりも深い感情。はっきりわかんだね。
現実逃避は横に置いて、これは多分、鈴本葉菜ちゃんの好感度をうっかり上げ上げしすぎたことに起因するパラメータ上昇。
結果、葉菜ちゃんが予想外に頑張ってしまい勝ち進んだ、というものでしょう。マスクデータなので確定はできませんが、今の葉菜ちゃんからホモちゃんへの人間関係は『親友』ですね。なんだ、美しい友情じゃないですか(曇りなき眼差し)
多少ガバりましたが、特に大きな影響は出ないはずなので再走はしません。このまま続けます。
ですが、親友だろうと容赦なく沈めるのが走者の宿命です。さきほど習得したばかりの『抜刀術』で、踏み込んできた葉菜ちゃんの先手を取りまして、木刀を抜くと同時に斬りつけます。抜刀術は御刀でなくても発動可能なんですね。原理はワカンニャイ…。
これで葉菜ちゃんの体が一瞬硬直するので、あとは左右から休まずボタン連打のオラオララッシュ。ガードの耐久値が削れたら葉菜ちゃんはこちらの背後を取ろうとしてくるので防御。防御からのパリィで、そこからカウンター気味に一撃入れれば、あとは間合いを読み勝つだけの試合になります。
・・・単純な行動パターンを覚えるだけの荒魂戦と違い、どうしても対刀使戦は瞬発力と運要素が絡みますが、そこは慣れてください。命は投げ捨てるものではない…(ウィーントキィ)(2敗)
そのまま相楽学長から優勝の賞状を貰いまして、シーンカットになります。次回は鎌倉に向かいます。
短いですがご視聴ありがとうございました。
ーーーーー
・・・武道場は、一種異様な熱気に包まれていた。
刀使同士の試合時間は、一般的にいって極めて短い。
それは『迅移』と呼ばれる加速術に拠るものであり、運足や斬撃の悉くが目で追えぬほどの高速で行われることに起因する。
しかし、
「い、一本! それまで!」
これは御刀を用いない木刀による試合、ある種の模擬戦である。八幡力や金剛身…御刀による身体能力の強化も使えない。超常の力ではなく、あくまで剣士としての純粋な技量が問われる試合だ。
にも関わらず、ただ一刀を振り下ろし、それで試合の全てが一瞬に決するというのは、尋常の試合からも遠かった。
対戦した相手の構えが、一撃で斬り崩され、呆然とした表情のまま審判の号令で我に返るというのも、およそ異様であった。
「―――また強くなっているね」
去年の準決勝は、未だに語り草になっている。
この一刀両断の怪物が、それでも十合と撃ち合って倒せなかった刀使がいたのだ。
上には上が居る、当然の事実ではある。だが、その上というのが折神家親衛隊に加わる才媛だったというのだから、昨年時点でさえ本多紅葉の刀使としての実力は最高ランクに近かったのだ。
そして、それから一年を経て、剣閃はより鋭く重くなっていた。
それは、準決勝で戦うことになった桐生葉月をして、『本大会で初めて本多紅葉と正面から技の応酬ができた』という事実だけで伝わるだろう。他の生徒では、相手にならないというのが正確だった。
「本気で行くよ、紅葉」
綾小路武芸学舎、校内代表選抜。決勝戦。
鈴本葉菜は…僕は、息を整えて正面を見詰めた。
紅葉は、荒魂と戦うときと同じ、どこか透明な表情をしている。
ここまでくれば、勝敗がどうなっても御前試合には出られる。紅葉と僕が校内代表になるのは確定だ。
けれど、当初の目標は僕の頭の中から消え失せて、ただ紅葉の一挙一足だけが全てになる。自分でも意外なほど、僕は紅葉に勝ちたいらしい。
立会いとは、刀を合わせる前から始まっている。
それは文字通り、歩んで立ち、向かい合った場所から全てが戦いだ。
どう動くのか、どう攻めて守るのか。指先の動き、膝の曲がり。目線、表情。あらゆる手がかりから相手の動きを読み、己の刀にて勝たねばならない。
紅葉は、その点で少しだけ有利な特徴を持っている。
集中するほど顔から表情が消えていくのだ。
ただ真剣に、透明な表情になっていく。
決して意識的なものでは無いらしい『それ』は、対戦相手にとっては不気味に映る。
表情が読めない、剣筋が判らない。出掛かりが何処にあるのか、出方を待ち受けているのかすら見えない。
本多紅葉という人間を知らない対戦者からすれば、それは悪夢的といっていい特質だった。
それでも、僕は紅葉の親友だった。
近くで毎日を過ごした。剣を隣で見てきた。
笑う顔も、怒った顔も、戦いの表情も。全て。
立ち姿を見て、僕は理解した。会場の誰よりも先に理解できたという自負と、誰よりもその選択肢に意表を突かれたという困惑が綯い混ぜになる。
(……先には抜かない。それが、紅葉の選択なんだね)
紅葉の剣は、攻めの剣だ。
そして、長く鋭く重く疾い。
……その紅葉が、あえて後手に回る。
『双方、構え』
僕は木刀を青眼に構える。
対して、紅葉は抜かない。三尺超えの木刀に手をかけて、そのまま緩やかに体を沈めるのが見て取れた。
居合の構えだ。
どよめく会場のさざめきが、少しだけ遠く思えてしまって、僕は場違いだけれど可笑しく思えた。
紅葉も、透明な顔が少し緩んだような気がした。
『―――始めッ!』
開始と同時に踏み込んだのは、それしかないと思ったからだ。
来ると理解していても避けられない一撃というのは、確かにある。極まった居合とは正しくそれで、斬撃の方向と抜くタイミングがおよそ固定されても猶恐ろしい。
僕が考える対策は大きく二つ。『先に抜かせる』もしくは『決して抜かせない』だ。
前者を採ったのは、単純に間合いの差。三尺刀の射程の内側に這入るのは、度胸云々ではなく不可能だ。
抜く前の手を押さえる技法は確かにあるが、まさに最速の斬撃が飛んでくるのを前にして、平然と手を取り押さえるのは神業としか表現できないだろう。
だから、僕は踏み込みの緩急で間合いを擦らし、必殺の一閃を先に抜かせる。
剣術において、攻めと守りは表裏一体だ。攻撃のための踏み込みで一閃を誘う。果たして、等速で進んでいたら自分が存在していたであろう三寸先の空間を木刀が通過する。
「――――、っ!」
抜かせた。
横薙ぎの一閃は、しかし必勝を期するが故に大きく振りぬいている。
つまり、紅葉の片腕は伸び切り上体が開いたままの姿勢だ。
対して、僕の構えは青眼のまま。そのまま再度踏み込み、突き込めば勝負は決しそうに見えて。けれど僕は次の瞬間には歩みを止めることになる。
眼前を通過した切っ先が、まるで巻き戻したかのように同じ速度で返ってきたからだ。
「ふ、っ―――!」
「―――はぁッ!」
ギリギリで弾く。正面から受け止めずに逸らす。それで僕は前に出られずに足を止められる。
右に左に、互いの木刀が打ち合わされて流される。
波濤のように押し寄せる斬撃は、それ以上は踏み込ませまいと止むことなく繰り出される。
それは紅葉の得意な形だった。膂力に任せて刀を弾き、生まれた隙を返す刀で斬る。極めてシンプルだが、単純ゆえに腕力差が物を言う。
僕は、その力任せの連撃を足を止めて受け流す。
怯んで大きく後退するのは悪手だ。そのまま追撃され、大上段からの斬り下ろしで真っ二つになる未来が待っている。故に、引き退がらずに食らいつくしかない。
一合、二合。木刀を通じて伝わる衝撃に、臆さぬように正面を見据える。
紅葉は透明な表情のまま、ただ二本の腕で此方を攻め立ててくる。
何度目かの交錯の後、僕は右斜め前方に体を転じた。
力で劣る僕が斬り結んでも、やがては剣を逸らしきれずに負けてしまう。
勝機があるとするならば、それは僕が紅葉よりも速く走れるという点に他ならない。
幾度目かの剣を受け流し、そのまま力の流れに乗って一歩踏み込む。
加速した。
背後に回り込み、がら空いた背中に袈裟に斬り下ろせば、振り向いた紅葉は鳥居に構えて受け止める。
それは、紅葉の今大会初の明確な『受け』だった。
今度は僕が、と。袈裟斬りから鍔競って、間を詰めながら胴を薙ぐ。
紅葉の剛剣の恐ろしい遠心力は、一度守勢に回るとうまく機能しない。
あれは連続する回転軌道から繰り出される連撃だ。
懐に潜り込めば間合いが縮まっただけ一撃は軽くなり、再び強烈な一撃を繰り出すには隙が生じる。
「たぁぁあぁっ!!!」
故に、ここが攻め時だった。
横薙ぎからの突き。追いすがって面を打ち、仕切り直されぬように、間合いを取られぬように刀を振るう。
僕に勝機という物があれば、それはこのタイミングにしかなかっただろう。
故に、この瞬間に勝負は決していた。
確かに上段から斬り下ろしたはずの木刀が、強引に上へ弾かれて姿勢を崩す。
見れば、脚を広げたまま体を深く沈めた紅葉が、刀を引くようにして受け止め、僕を弾いていた。
それは、間合いを水平ではなく垂直方向に確保するという工夫の技。
互いの距離が詰まっても、腰を落とし背で跳ね上げる。横への移動ではなく、膝と腰、手首の回転と腕の伸縮の連動によって、大刀を振るのではなく回すのだという。
ーーー故に、長い木刀が下段から伸びて飛んでくる。
(……あ、負けたな)
冷静な頭の片隅が、どこか他人事のように判断する。
一度くらい勝ちたかったな、と思う僕と、勝てないのを最初から理解していた僕が、スローモーションのようになった世界で納得していく。
やっぱり、僕の親友は強かったらしい。
綾小路武芸学舎 校内代表選抜
優勝 本多紅葉
準優勝 鈴本葉菜
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第三回
新幹線に乗って東に向かうRPG始っじまーるよー。
さておき、京都から東へ新幹線で向うことになりますので、鈴本さんと仲良くおててつないで一緒に京都駅に向かいます。若干ゃ倍速でお送りしておりますが、スタッフの中に鉄っちゃんな方がいるのか駅舎のモデリングや新幹線の内装、駅弁に至るまで妙に細かく作り込まれてるのが印象的です。初プレイ時には本当の旅行のごとくドキをムネムネさせて新幹線に乗り込んだものです。
鎌倉に向かう際の新幹線乗車時には駅弁を購入することが可能で、これは特に意味のないフレーバーな要素なのですが…。各学園によって乗車駅が異なるのを反映して、購入可能な弁当の種類が細かく変わるという謎の拘りを見ることができます。何が製作スタッフを駆り立てたのか…(困惑) 此花寿々花さんの『コンビニでレンチンした格安弁当の熱々漬物が好き』という設定といい、妙な場所でニッチな作り込みがあるんですよねぇ…。謎だ…。
見所さんもないので加速です。
車窓から流れる風景を楽しみつつ、葉菜ちゃんとキャッキャウフフして過ごします。ちなみに駅弁はチキンライス弁当を選びました。美味しいよねチキンライス弁当(唐突な主張)
余談ではありますが、この新幹線移動シーンで各校の代表二人組には互いの好感度アップが発生します。可奈美ちゃんと舞衣さん、益子さんと古波蔵さん、あと判りにくいですが姫和さんと岩倉さんの関係性が深まるのは、このシーンを挟むのも一因らしいですね。鎌府の沙耶香ちゃんは学校が地元で移動シーンを挟まないからか、このタイミングで好感度イベントを発生させられないという差別化がされています。
(鎌倉駅に)着きました。
ぬわああああん疲れたもおおおおん(長旅の疲れ)
鎌倉駅から小町通りを抜けつつ、本日宿泊することになる折神家の屋敷までトコトコ歩いていきます。可愛い制服の学生がたくさんいますが、それは無視だ無視! なんだそのミニスカートはけしからん! 実際、ここでの会話イベントは特に何の好感度上昇もフラグも立たないのでさっさと進みます。
折神家に到着すると、すぐにお風呂シーンに突入します。旅の疲れを風呂で癒やしなさいという折神家の粋な計らいです。これにはノンケも大満足。
残念ながら全年齢仕様とはいえ、女子中学生の入浴シーンをしっかり入れてくるサービス精神ッ。ぼくは敬意を表するッ! 当然のようにバスタオル着用ですが、各キャラクターの3Dモデルの素晴らしさを噛み締めましょう。体のラインの造形美は……なんという見事な肉体!わしを捧げても良い! うほおお!(突如興奮する患者)
……なお、このお風呂シーンは強制でスキップ不可なので、RTA的にはイライラタイムです。葉菜ちゃんと一緒に温まりながらぼーっとします。…葉菜ちゃんも中々のナイスなボディなんですよね…恋煩いしちゃうよぉ…。
風呂を出たら浴衣に着替えて夕食を食べます。これも折神家の粋な計らいです。なんだ、折神紫って良い奴じゃん!(手のひらクルー)
入浴と夕食を済ませると、あとは就寝まで自由時間…もとい、交流タァイムとなります。可奈美さんルートや姫和さんルートを邁進する場合、このタイミングで交流を持っておくと後々のフラグになります。
ですが、今回は運命に翻弄される女の子たちとの淡い想いを育むルートではなく、あくまで速度が優先です。葉菜ちゃんと軽くお話して、早めに就寝するとしましょう! ここで夜更かししても会話埋め程度の価値しかなく、あまりに睡眠時間が足りないと翌日のステータスに下方修正が入ってしまいます。何時だと思ってんださっさと寝ろ!(21時)
就寝時の夢は、『特殊な出生』フラグが立っていない限り見ないので、早めの睡眠からの即起床でタイム短縮になります。……可奈美ちゃんを操作キャラにした場合、全自動斬月ママおねえさんこと藤原美奈都さんとのイベントがちょくちょく挟まるせいで、場合によっては鎖要素になるんですよねぇ…。強化イベも兼ねているので、回数によっては最終的な収支でプラス要素になるんですが…。
おはようございまーーーーす!
布団を飛び出したホモちゃんは廊下に飛び出して手当たり次第に挨拶していきます。このタイミングでの会話は若干の好感度上昇効果があり、さらに余計なフラグを立てないことが確認されています。ガンガン話しかけて友好の輪を広げておきましょう。
特に大事なのは岩倉早苗さんへの接触、次点で長船の二人組への接触です。試合前に馴れ馴れしいヤツだな、と思われている可能性もありますが、臆することなく話しかけましょう。ここで顔を覚えてもらうと、後々の展開がスムーズになります。へい嬢ちゃん!今日のパンツは何色だい?
朝ごはんを食べ、再び舞台は移動して折紙家の武道場です。
ここから、いよいよ御前試合がスタートです。
各試合前にセーブポイントおよびステータスの強化確認を挟みますが、ここは最初に一度だけセーブをして、ステータスは確認しません!成長も必要無しです! なぜならば折神家御前試合は基本的に負けイベントであり、よほどの無理をしない限りは二回戦以上に勝ち進むのは不可能だからです。
これは、可奈美ちゃんに勝利することがこの時点のレベルとステータスでは逆立ちしても不可能なこと。また無理をして可奈美ちゃん又は姫和ちゃんに勝利してしまった場合、その後のチャートが大規模崩壊することに起因します。メリットも少ないので、プレイヤーが御前試合を勝ち進んで折神紫暗殺ルートを狙わない限りは無駄でしかありません。
対戦相手がランダム選出なので祈るしかありませんが、最善なパターンは初戦で鎌府代表(モブ)を瞬殺し、二回戦で可奈美ちゃんと試合して敗退する展開です。ここでの戦績が沙耶香ちゃんと舞衣ちゃんの成長フラグにもつながるため、ここの対戦相手は重要です。
………と、初戦の相手は岩倉さんですか。…まずまずの良運といえるでしょう。さくっと鬼神大王の錆になってもらいましょうかね〜。経験値おいてけ! なあ、対戦相手だ! 対戦相手だろう!?
岩倉さんは念流の遣い手で、平城学館の代表として恥ずかしくない強さを持っていますが……まだゲーム序盤という事もあり、固有スキルの『続飯付』や『切り割り』も使用率が低く、速攻を意識すれば安定します。
ただ、岩倉さんは地味にガード値が全キャラクター中でも屈指なので、連撃でも削り切れずに反撃を食う可能性があります。十分に注意しましょう。(8敗)
1試合目が終わったらリザルトとセーブ画面を挟みますが、ここはセーブせずに進みます。
葉菜ちゃんは…ダメだったみたいですね。ヒヨヨン・ザ・ナイペッタンこと姫和ちゃんに敗れてしまったようです。優しく慰めてあげましょう。大丈夫だって安心しろよ~。ヘーキヘーキ、ヘーキだから!
…さて、第二試合では可奈美ちゃんとホモちゃんの試合になるようです。ああ、これは負けイベントですね…(確信)
ここでホモちゃんが負けるのは確定なのですが…。少し面倒なことに、可奈美ちゃんは極まった剣術バカなので試合で手を抜くのを許してくれません。
具体的には、あまりに杜撰なプレイングでわざと負けると、シナリオ後半まで内心引きずって「なんであの時、本気で戦ってくれなかったの?」とハイライトの消えた目で詰問されます。可奈美ちゃんヤンデレルートはガチのホラーなので回避しましょう。ホモちゃんとの約束です(4敗)
なーのーでー、可奈美ちゃんに許してもらえるギリギリのラインまで善戦し、最終的にイイカンジに斬られて敗退します。ここが序盤最大のリセポイントといっても過言ではないでしょう。シビアな調整が求められます。(53敗) 相手を満足させつつ接待プレイであることを気づかせない、これが お・も・て・な・し というヤツです。
可奈美ちゃんに斬られ、ホモちゃんの写シが解除されたのを確認して試合終了。敗北リザルトを確認して今回は終わりになります。
ご視聴ありがとうございました。
ーーーーーーー
(ーーーすごい、すごいすごい!)
やっぱり、御前試合に出られて良かった!
さっきの一刀流の子の隠剣もだけど、やっぱりいろんな流派の子がいるから見ててすごい楽しい!
今の試合の子、念流…だよね? あの特徴的な上段の構えと撞木足! 鍔迫り合いに持ち込まれたら厳しいんだろうなぁ…! 対戦してた背の高い子も、古流だと思うけど…中条流の系統かな? にしては御刀が長い気がしたけど…。
「楽しそうだね、可奈美ちゃん」
「うんっ!」
決勝戦まで数試合しかないのが信じられない。もっともっとたくさん戦って、色々な流派の技を見てみたいのに!
新当流、一刀流、薬丸自顕流にタイ捨流! ちょっと判別のつかない子もいたけど、ああ、あと何試合か見させてもらえればきっと判ったと思うのに! たぶん、構えたときの重心が高めで青眼の切っ先の高さがああだから…。
『第六試合 綾小路武芸学舎・本多紅葉。美濃関学院・衛藤可奈美。前へ!』
「呼ばれたよ可奈美ちゃんっ!」
「はいっ!」
行ってくるね!って舞衣ちゃんに言って、会場の中央に向かう。
相手は、さっきの試合で見た、背の高いお姉さんって感じの子だ。先輩なのかもしれない。名前は本多紅葉さん。朝食のときも、試合前にも、色んな人に声をかけてて、なんだかすっごく社交的な人な気がした。でも、こうして向き合ってると何だか空気が違う気がする。わからないけど。
『これより第六回戦を始めます。礼ッ!』
お互いに向かい合って、礼をする。
ーーーそれは、このあとに御刀を交えれば、もっと
鞘から御刀を抜いて構える。
まずは良く見ること。御刀の長さは三尺と少し。対して私の千鳥は二尺もないから、それだけで間合いが違ってくる。手足の長さも違うし…本当にすらっとしてるんだなぁ。まるでモデルさんみたい。
『写シ。ーーー始めッ!!!』
号令がかかると、動いたのはお姉さんだった。
正面から迅移で飛び込んできて、八双から袈裟に振り下ろしてくる。受け流してみて、見た目の速さよりも太刀筋が鋭いことにびっくりする。ああ、やっぱり。なんとなく小太刀みたいな遣いをすると思った。定寸より長い御刀なのに、くるくると手の内で器用に回すのは流派の特徴なのかな。
(一つ、二つ! 三つッ!)
剣戟に耳を澄ます。打ち鳴らされる音にはリズムがある。
顎先、側頭部、脳天。飛んでくる三つを防いで、次は……下っ! 胸元を狙って鋭く突いてきたのを鎬で逸らす。
……うん、わかってきた! お姉さんが引いた刀が、今度は脛斬りを狙ってくる前に、迅移で後ろに下がる。
やっぱり面白い。
御刀を通じて、打ち込まれるごとに伝わってくる。
これは流派の特徴…じゃあないのかな。お姉さんは、剣を振る速さの割には迅移が得意じゃないみたい? 斬りかかるのはすっごく速いのに、前に後ろに進むときに少しズレてる。剣を振る速さで、中々そうは見えないけど…。…あと、じっくりと手を読み合うのは苦手なのかな…止まらずに、攻めて寄せようとするんだね。焦ってないのにヘンに急ごうとしてるから、なんだろ、不思議なカンジ。
でも。ああ、やっぱり。私は剣術が好きだ。
勘違いかもしれないのに。見当外れかもしれないのに。
初めて出会ったお姉さんが、こんなにも近く感じられる。
それが楽しくて、嬉しい。
「……っ!?」
お姉さんの動きが一瞬鈍った。うん、足が追いついてないのに攻め続けて、下段から上段に振り上げるのが少し遅れるんだよね。呼吸が乱れてたから。
千鳥で、それを撥ね除ける。お姉さんの上半身が完全に流れて、完全に死に体となる。あとは、このまま小手を……。
「ーーーそれまで!」
一瞬だった。
小手を切り裂かれ、そのまま蹲るお姉さん。写シが剥がれ、御刀を取り落としたのを見て、審判が声を上げる。
私の勝ちだ。
残心を取ったまま、やがて立ち上がったお姉さんの表情を見る。さっきまですごく真剣な表情をしていたけれど、試合が終わってみれば清々しいような、なんだか大仕事を終えたような顔になっていた。
私が刀を下ろすと、ニコリと笑ってくれた。
『双方、礼!』
「「ありがとうございました」」
会場のざわめきが耳に戻ってくる。
すごく集中して、それから世界が戻ってくるような感覚が私は好きだ。試合が終わって、舞衣ちゃんのとこに戻る。
(でも、さっきの一瞬…)
振り返る。
お姉さんが、最後の一瞬に見せた、腕の動き。
痙攣にも似た、わずかな震え。
(たぶん、まだ最後に一太刀…出せたんだよね。きっと)
でもそれは、お姉さんにもどうしようもなかったのかも。
だって、これはあくまで試合で、荒魂との戦いでも本当の斬り合いでも無いから。
真剣であっても、真面目に取り組んでも。
本当の意味で必死になることはできないから。
写シがあるから、斬られても怪我をしないから。
相討ち覚悟で、本当にギリギリの死線で繰り出すような決死の一撃を、こういう試合で見たいなんて、そんな贅沢なことは言えないもんね。
ーーーだから、これは仕方無いんだ。
ひょっとしたら、危なかったかもしれない、なんて。
お姉さんの『本当の全身全霊』なら負けてたかも、なんて。
そんなのは、確かめようにない「
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第四話
折神家の庭に設置された試合会場と観客席。
そこは、いよいよ始まろうとしている決勝戦への期待で、静かな熱気に包まれていました。
「ーーーとうとう決勝戦だねぇ、舞衣ちゃん」
「あ、紅葉さん…!」
決勝戦が始まろうとする時刻。その直前になって、本多紅葉さんがやってきました。
「……準決勝、惜しかったねぇ」
「いえ…。可奈美ちゃんは強いですから」
苦笑しながら伝えると、紅葉さんはふにゃりと笑いました。彼女も初戦を突破したものの、私と同じく可奈美ちゃんに敗れています。…わざわざ他校の観戦席にまで様子を見にきたのは、その所為でしょうか?
「いやぁ、まさか舞衣ちゃんがここ一番で居合を見せるなんて思わなかったからねぇ。面白いものを見せてもらったなぁ、って」
「負けちゃいましたけど、ね」
「舞衣ちゃんはじゅーぶん強いんだからさぁ、もっと自信を持ったほうが良いよ? 相手が…衛藤可奈美ちゃん、だっけ? その子が強すぎただけだよぅ」
それは慰めなのか、純粋な評価なのか。
紅葉さんの眼は、正面の決勝戦の舞台に向けられています。
ーーー可奈美ちゃんの強さは、とても判りにくい強さです。美濃関の刀使でも、その強さが圧倒的である、ということを確信している子は少ない筈です。でも、紅葉さんは一度対戦しただけで、随分と深い所まで理解しているようでした。
「・・・いやはや、紅葉がこんなに他人を評価するなんて、ちょっと予想外でしたね。少し妬けてしまうかもしれません」
「貴女は…綾小路の?」
ひょこり、と紅葉さんの背後から、一人の女の子が顔を出します。たしか、第一試合に出場していた子です。
「あぁ、紹介が遅れちゃったねぇ。こちらは鈴本葉菜さん、あたしと同じ綾小路の代表で、クラスメイトだねぇ。そして、こちらが柳瀬舞衣さん。美濃関の代表さんだねぇ」
ぺこり、と挨拶をしたのは紅葉さんと同じ制服を着た女の子でした。サイドテールが印象的な、真面目そうな印象の子です。
「ーーー柳瀬さん、と言ったね。ひょっとして、あの柳瀬グループの?」
「舞衣ちゃんはねっ、すっごいお嬢さまなんだよっ」
「い、いえ。確かにお父様は柳瀬の総帥ですが……その、お嬢様と言われるのは、」
面と向かって「お嬢様」だなんて言われてしまうと、苦笑することしかできません。
柳瀬の家は、たしかに政財界にも影響力がありますし、十二分に裕福なのは理解していますが…だからといって知人からあからさまにお嬢様扱いをされても、どう反応していいか困ってしまいます。
「だってぇ、お家に執事さんとかいるんだよー。あたし、執事さんって舞衣ちゃんのとこで初めて見たもん」
……紅葉さんは、私のお父様の会社…柳瀬グループの関係で、幼いころからお付き合いのある本多家の娘です。傘下の企業の関係者、と聞かされています。
社交界というのでしょうか、そういった世界のパーティや会合でも何度か話したことがありました。
同じくらいの年齢で刀使になって伍箇伝に入る子も少ないので、パーティーの会場で出会うたびに共通の話題に花を咲かせたのを覚えています。
「…でも、そういう所に出入りするってことは、紅葉もそれなりのお嬢様なんだね」
「うんにゃ? お父さんの会社の色々で、無理矢理引っ張り出されるだけだよ? 似合わないドレスを着させられて、知らない人に挨拶したりされたりするだけだもん。別に楽しくもなんとも無いからねぇ」
「いえ、普段の様子からは全然そんな風には見えなかったもので。意外だな、というのが正直な感想です」
「むぅ…。そりゃ、あたしはお嬢様って柄じゃないけどさぁ…」
鈴本さんのどこか揶揄うような口調に、紅葉さんはむくれて目を逸してしまいます。クラスメイトとおっしゃってましたし、きっと気のおけない間柄なのでしょう。
「ほ、ほらっ! そろそろ試合も始まるみたいだよっ!」
露骨に話題を逸らすような紅葉さんに、私と鈴本さんは顔を見合わせてクスクスと笑いました。
彼女の言葉の通り、決勝戦に進んだ可奈美ちゃんと、対戦相手である平城学館の十条さんが会場中央に歩みを進めます。
私は、その姿を見て、胸の中で応援します。
(可奈美ちゃん、頑張って…っ!)
ーーーーー
急転直下のジェットコースターな展開が続くRTA、はっじまーるよーー!
さて、いよいよ序盤終了のお知らせ、折神紫暗札未遂事件の瞬間がやってまいりました! 今回でアニメ第一話の範囲が終了することになります……改めて、あの第一話は内容が山盛りの濃い三十分間だったんだなぁ…と思いますね。
キャラクターオリエンテッドな萌えアニメだと思っていた初見さんを若干ゃ置いてけぼりにする展開の速さなのですが、見返すと無駄なシーンが殆どないという第一話になっております。動画配信サイトでも第一話は無料配信されてますので、みんなも見よう、刀使ノ巫女!(ダイレクトマーケティング)
今回、姫和さんが三段階迅移による『一の太刀』で、折神家当主である折神紫を(正面から)暗札しかけるイベントが発生します。
ここで事件を手助けする方向で動いた場合、可奈美ちゃん姫和さんと共に逃亡することになり、鎌倉から東京のスカイツリー周辺へ、更にそこから原宿と明治神宮、立川駅を経て最終的に伊豆は石廊崎へとダイナミック逃避行することになります。シーン移動にかかる時間がもったいないので、お二人には自力で現場から脱出をしてもらいます。シーン数と長さの割に、プレイヤーにはあまり経験値が入らないのも美味しくありません。
ここでは、プレイヤーが積極的にテコ入れををしない限り、姫和さんが試合開始と同時に暗札を決行し、そして失敗するのが基本路線です。
このタイミングで折神紫もといタギツヒメ暗札を成功させることも可能だという噂もありますが…。…私では何度挑戦してもできなかったので、安定ルートを進みます。そちらのルート開拓は他の走者さんに託します。
決勝戦が始まる前に舞衣ちゃんの所に行き、会話進めつつ時間を潰します。なぜか葉菜ちゃんが同行してますが問題はないでしょう。複数人での会話イベントは一度の会話で双方の好感度が上昇するのでうま味です。ヤンデレや依存といった関係性を所持していない限り、基本的には一石二鳥です。
さて、舞衣さんの好感度を一定値以上稼いでおくと、このあとの捜索イベントに一緒に同行することができます。すると逃走中の二人を発見時に『折神紫=大荒魂』という情報が入手できますので、その後の舞草へ加入するための布石に繋がります。キャラクリ時の詳細設定により既に面識設定があるので、次のシーンで同行するのは問題なく行えるでしょう。
試合開始の合図と同時に、姫和さんが消えた(ように見える)瞬間から動き始めます。
ホモちゃんの立っている観客席側からでは、折神紫が虚空から二刀を取り出したところも、その背後に大荒魂が存在することも視認することは基本的に不可能です。
明眼スキルをレベル3まで上げておくか更に上位スキルの浄眼を所持していれば感知できるらしいですが、そこまでピーキーな尖らせ方をすると戦闘能力が不足し、たとえ感知できてもクソザコナメクジになって役に立たないので一連の凶行に関与できません。
なーのーでー、ホモちゃん自身は何も理解していないままですが、メタ知識を利用して後々への仕込みを行います。
「な、何? 消えた…?」
「可奈美ちゃん…?」
おっそうだな(適当)
ここでは誰かに話しかけることによりフラグが立ち、ホモちゃんは暗札未遂事件が発生したのだと気づくことができます。建物内での凶行は殆ど見えていない筈なのですが、これで会場警備が厳しくなる前に動き始めることが可能です。
ここで『迅移を使う』『御刀を抜く』『会場から出ようとする』等の行動を取ると、怪しい行動、不審な行動と見なされ、事件の共犯者と疑われてしまいます。アプリ版で警備隊に追いかけられた安桜美炎ちゃんと同じ状態ですね。タイムを縮めたいばかりに迅移で移動すると、不審者と間違われて斬られます。疑われるような行動は慎みましょう。(8敗)
さて、BGMが完全に切り替わったのを確認したら、脇目も振らずに走りだします。
ここでの移動で、前々回に取得しておいた技能『暗札剣』が活躍します。
この『暗札剣』という技能は斬撃速度上昇の他に、所持していると『非戦闘状態かつ正対していないキャラクターに対し、固有モーションで超短距離ダッシュする』というアクションを使うことができるようになります。油断してる相手に急接近して辻斬りをするようなイメージですね。これを括用して移動します。
この固有接近モーションは敏捷値ではなく攻勢値を参照しているので、攻勢をガン上げしているホモちゃんが使うと極めて極短距離ですが速度が出ます。移動スキルではなく攻撃スキル扱いなんですね。
迅移による高速移動が封じられた今回の状況だと『通常ダッシュ→適当な位置のモブに対して暗札モーションで接近→居合の構えキャンセル→ダッシュ再開→』…を繰り返すと通常ダッシュの約1.3倍ほどの速度で走れます。
うっかり移動モーションから派生斬りに繋げてしまうと現行犯タイーホされてしまいますので(18敗)、しっかり居合の構えをとって即キャンセルします。御刀は抜いていないので問題ありません。セウトです。『抜刀術』を取っておくと、この『居合構えキャンセル』で面白い動きがいくつか可能です。
閑話休題。ホモちゃんの全力ダッシュで移動しましょう(コッチジャッ!)(ユクゾッ!)
向かう先は平城学館の観客席、岩倉さんの所です。彼女は突然の事態に酷く混乱しているので、ここは会話することで落ち着かせましょう。
だいじょーぶ、だいじょーぶだよー…。落ち着いて……落ち着けッ!
なんで岩倉さんの所に移動したのかといいますと、彼女は姫和さんの若さ故の過ち()によって、このあと共犯者ではないかと疑われてしまうからです。親衛隊による取り調べ中は、接触が制限されてしまうので交流することができません。
ですが、ここでホモちゃんが最速で移動し会話することによって、事件直後に何も不審な行動をとっていない、というアリバイを立証できるため、推定無罪であるというケツ論が早期に出されて拘束から開放することができます。
……。
……? 岩倉さんが落ち着くまでに必要な会話数が、何故か通常よりも多かったですね…。
岩倉さんの表情グラが最後まで『不安』のままでしたし…ままええやろ。
ここまで進めると、時間経過で会場警備が次のフェーズに移行します。出入り口が完全封鎖され、駆け付けた隊員によって警備が厳重になります。
この段階になると、これ以上の自由行動ができなくなりますので、さっさとセーブして次に進みましょう。
短いですが、今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
ーーーーーーー
「ーーー柳瀬舞衣はおそらく何も知らないな」
「岩倉早苗も同じでしたわ」
折神屋敷の廊下、親衛隊の獅童真希と此花寿々花は、簡単な事情聴取を終えて嘆息していた。
十条姫和による突然の凶行と、衛藤可奈美による逃走幇助。
親衛隊として会場警備にあたっていた二人にとって、それを未然に防げず、あまつさえ逃走を許したのは大きな失態だった。
身の至らなさを悔やむ気持ちもある。だが、まずは反省よりも先に、打てる手を打つしかなかった。
「柳瀬舞衣は、衛藤可奈美と友人関係…だが、この襲撃が計画的なものであったとしても、関与している可能性は低い、か」
「岩倉早苗も、事件発生直後に身柄を確保されてから、不審な動きを見せてはいませんわね。今のところは、共犯者と疑うに足る証拠もありませんし…」
十条姫和による突然の凶行に際して、会場内で大きな動きが二つあった。一つは、一部の混乱した生徒による会場の脱走。こちらは警備隊及び親衛隊による追跡、捕縛が実施されている。事情聴取はこのあとにも行われることになるだろう。
そして、もう一つ。
「ーーー寿々花は、随分と優秀な後輩を持ったものだね」
「本多さんのことですの? ーーーええ、まさか彼女が動くとは思いませんでしたけれど、お陰で平城学館の観客席から動いた生徒は居なかった、と伺ってますわ」
綾小路の代表選手であった本多紅葉による、平城学館の生徒への威圧行為である。
事件発生当時、真希と寿々花は折神紫の下に急行した。結果として下手人を取り逃がすことにはなったが、紫の安全を確保するのが最優先だった為だ。
しかし、会場内は一時騒然とした。
当主を狙った凶行などという前代未聞の事態が発生するなど、誰も想像していなかった。即座にそれが緊急事態だと判った人間など、警備にあたっていた隊員ですら半分もいなかったのである。時間にして一分ほどの間隙ではあるが、誰もが混乱し、その動きを止めていた。
だが、本多紅葉は走っていた。
警備隊員が体制を整えるよりも早く、場内アナウンスが流れるよりも早く。紅葉は単身で平城学館の観客席に乗り込み、そして最前列にいた岩倉早苗を確保したのである。
『ーーー動かないでね?』
『あの、大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて?』
『えっと、急いでるの、だから、言うことを聞いて』
『だから、落ち着いて……落ち着けッ!』
斬られるかと思った…とは、平城学館の複数の生徒の談である。御刀を鞘に納めてはいたが、それでも次の瞬間に斬られるのではないかと錯覚した、と。
突然、疾風のように走ってきて、岩倉さんはどこ!?と、鋭い剣幕で尋ね、彼女の姿を捉えるが早いか確保し、『ここから動かないで』『落ち着いて』と、据わった目で繰り返すばかりだったという。
曰くーーーまるで辻斬りのような恐ろしい剣気だった、と。
「ーーーただの学生としては越権行為なのしょうけれど、結果として平城学館の観客席からは誰一人として席を離れませんでしたし…。…それに、十条姫和の共犯者として最も疑わしいのは、同じ学校の代表選手であった岩倉早苗であることも事実ですわ」
「だが、反応がいくら何でも早すぎる。鎌府の警備隊員も事態を十全に掴めていなかったんだぞ? 彼女が…本多紅葉が共犯だという線は?」
真希の反駁に、寿々花はそうですわね、と髪の毛を手で玩びながら考える。
「この事件が何らかの集団による計画で…十条姫和と衛藤可奈美が実行犯だとして。計画の失敗を察した共犯者が取る行動は……二人の逃走の手助けをする、というのが一つ。あるいは、二人が逃げたのを確認した後、別口で暗殺を試みる可能性が一つ」
そして、
「ーーーもしくは、計画の失敗を悟って、保身の為に仲間を売る、という可能性もあるかもしれませんわね?」
「それで」
「可能性は低いと思いますわ」
寿々花は、もし彼女を擁護しているように聞こえたら御免なさいね? と断りを入れて。
「綾小路の後輩だから、と肩を持つ心算はありませんけれど、あの子の性格は悪巧みに全く向いていませんもの。良く言えば素直で真っ直ぐな一本気、悪く言えば思い込んだら頑固で不器用。ついでに言えば、嘘や腹芸も得意ではありませんわね」
「随分と詳しいね?」
「ーーー去年と一昨年、綾小路の代表選抜戦で腕を競った仲ですの。それ以上の説明が必要かしら」
「なるほど、可愛い後輩という訳か。寿々花の見立ては信用に値するけれど・・・無条件に信じる訳にはいかないからね。本多紅葉の事情聴取は、ボクがしよう。それでいいかい?」
「ええ、ではそのように」
二人は話を終えると、それぞれに歩みだす。
ここからは時間が勝負だ。
人の口に戸は立てられない。会場内に居た人間の出入りを禁止し、箝口令を敷き、情報を統制し…それも、確保できるのは、二三日といったところだろう。
一刻も早く、容疑者である二名を見つけ、捕まえなくてはいけない。折神家親衛隊の矜持をかけて、二人は動き出すのだった。
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第五回
展開はどこ…ここ…?
暗札未遂と逃走幇助から始まるガールミーツガール、はーじまーるよー!
御前試合が前代未聞の事態に中断させられた所から再開です。
ここから本格的に各チャートによって展開が分岐していきます。微妙なガバによって大きくチャートが変動してしまうので、走者にとっては腕の見せ所さんです。
選ぶルートに拠っては、『二人と一緒に逃走する』『裏で舞草に離反する』『逃走した二人を追跡する』等、ここでプレイヤーが選択できる行動は多いです。そして、ここでの行動が今後の展開を大まかに決定します。
その最たるものは『荒魂ルート』ですね。本編主要キャラクターとの関係性が『敵対』に変化します。難易度は高いのですが、本編キャラクターとガチで対決できるルートは少ないので人気のルートの一つです。メインストーリーよりも大幅に強化された各キャラクターとの歯ごたえのある戦闘を楽しむことができます。
―――さておき、状況を整理しましょう!
事件発生後、各校生徒は会場からの外出禁止令を受けており、外に出ることはできません。事件を起こした二人の母校…美濃関学院と平城学館の学長は緊急招集され、現在進行形で鎌倉へと移動中。舞衣さんと岩倉さんは重要参考人として呼び出され、絶賛事情聴取中で面会謝絶。
ついでに何故かホモちゃんも拘束されて屋敷の個室に閉じ込められています。
―――、―――。
―――な、ナンデ?
御刀も抜いてないし迅移も使ってないし警備を突破しようともしてないのに!
アイエエエエ!? こんなのテストに出ないよう…。
椅子に座らされたまま、無駄にボタンを連打してビクンビクンと痙攣するホモちゃんをしみじみとご覧ください。おお、跳ねる跳ねる。……こういうのを専門用語でロスといいます。なんたるうんち! このロスが挽回できそうにない場合、残念ながらリセットです。
ーーーあ、真希さん! 親衛隊第一席の獅童真希さんじゃないっすか! は、早くここから出して! ホモは罪じゃありませーん! 無実でーす!?(必死)
「……本多紅葉、か。お前は何故あんな行動をした?」
そりゃ急がなきゃマズいからですよ!!! 一分一秒の遅れが致命的なんです! 何の為に全力で走ってると思うんですか! この瞬間だって貴重な時間が過ぎ去ってるんですよ? ホモちゃんには立ち止まってる暇なんて無いんです!
「ふむ。それは、この状況を早く終わらせたいということかい?」
そりゃ(RTA的に)そうでしょ。
(走者的に)当たり前だよなぁ?
「では、岩倉早苗に向かって走った行動も、その為なんだな?」
そうだよ?(半ギレ) だって、岩倉さんは姫和さんと同じ学校の代表選手で疑われる立場でしょ? 親衛隊だって岩倉さんと舞衣さんを絶賛疑ってるじゃん! だから、多少はね?
・・・え、なんですか、その微妙な表情…。
初めて見る表情グラフィックなんですけど…なんかヘンなこと言いました?
「―――お前はあの瞬間、紫様が殺されたと思ったのか?」
・・・は?
いやいやいや。姫和さん単独では紫さんじゅうななさいは頃せないでしょ? そんな無謀、100%失敗しますよ~(原作準拠ルート) もし暗札するんなら、もっとこう…姫和さんだけじゃなくて、事前に色々な人と協力して用意周到に準備してないと駄目でしょ多分(幻のいきなりタギツヒメぬっ頃ルート)
(物語の展開的に)あそこで紫さんが氏ぬわけないじゃないですか〜 だから、二人が失敗して逃げ出すのを前提に動いただけですよ~。
「まさか、あの一瞬でそこまで読み切って動いただと…!? おい、お前、本当に連中と仲間じゃないんだろうな…!」
ち、違うっす! 信じて欲しいッピ!(技能:暗札剣)
―――なんとか信じて貰えたようです。
もう既に致命的なロスな気がしますが、このあと挽回できる可能性が微粒子レベルで存在するので続行します。
開放されたら、舞衣さんと岩倉さんの所在を確認します。ホモちゃんの行動が上手くいっていれば、事情聴取から無事に開放されて話しかけることができる筈ですが…。
……あ、大丈夫みたいですね。二人とも廊下で話をしているようです。
良かった! 無事だったんだね!(曇りなき瞳)
「ひっ…!」
「も、紅葉さん? えっと…」
あ、あるぇー?
ここは、互いの無事を確認して胸をなでおろすシーンの筈なんですが…。…駄目みたいですね…。表情グラを何度じっと見つめて確認しても、『不安』のままです。
あれれ~おかしいぞ~。序盤から二人への好感度稼ぎは入念に実施していたのですが…まさかの乱数に嫌われたのでしょうか。走者特有の屑運が発動してしまったようです。
よくわからないですが、とりあえず謝っておきましょう。
さっきは疑っちゃってゴメンね! でも、二人は無関係だって信じてたからっ!
・・・。
・・・、・・・。
どうしましょうか。好感度は確かに十二分に稼いであるはずなんですが…(チャートガン見)
知らない間にガバが重なって、もうそろそろ取り返しのつかない段階に来ています。
このままだとリセ案件、再走です。
ーーーふむ…。
よし、ここで決断的にオリチャー発動!
一旦、二人の好感度調整は横に置いておきます。このまま固まってても何も判りませんので、先ずは動きましょう。現状分析なんて走ってる途中ですれば大丈夫だ問題無い。どうせチャート通りに進行していても「だって私達みんな・・・仲間だもんげ !」って再確認するだけです。ヘーキヘーキ、誤差だよ誤差! ただちょっとパーティー加入するメンバーが不安定になりますが……最悪のパティーンでも舞衣さんと沙耶香ちゃんと岩倉さんが未加入になるだけで…よし、イケるな!(錯乱)
二人の前から立ち去って、長船女学園の代表二人に接触しましょう。場所はさっきまで御前試合が行われていた会場です。観戦していた生徒は、基本的にここに集められて待機させられています。
「あの二人、まだ捕まってないみたいデスねー」
「俺達はいつまで放置されるんだ…」
益子、古波蔵ペアは、このタイミングでは事件に関する詳しい情報を所持していません。…勿論、裏では舞草の一員である彼女らは薄々察する部分もあるのでしょうが、今回の事件は基本的に姫和さんの若さゆえの暴走なので…。二人に話題を振っても、「……さあな?」「突然でビックリしたデース!」とはぐらかされます。
あんまり踏み込むと不信フラグが立つので、話を切り上げて立ち去りましょう。とりあえず話しかけて少しでもリカバリーに努めます。
ーーーちなみに、刀使ノ巫女の癒やし淫獣、ねねちゃんによる成長可能性チェックはダメでした。(ホモちゃんの将来性は)無いです。
(あいつはーーー黒か?)
(綾小路の動きは読めませんネー)
(ねねー?)
よし、次だ次!
あ、糸見の沙耶香ちゃんじゃないっすかー。今日も良い天気だねー。え、そうでもない? そう……。
沙耶香ちゃんは舞衣さんに懐いてもらわないと困るので軽く様子だけ見てスルーします。舞衣さんが本編通りに動いてくれれば順当にパーティー加入しますが、それらのイベントが消化できないと少し手間なんですよね……たしか、力ずくで奪って言うことを聞かせるルートもあった筈です。無表情のまま言いなり人形として動き続ける沙耶香ちゃんを、その目で確かみてみろ!(邪悪)
ダッシュで折神屋敷に戻って廊下を走ります。すると、廊下を走っちゃ駄目でしょ!とばかりに燕結芽ちゃんがエンカウントして斬りかかってくれるのでバトルです。
現時点のホモちゃんでは当然勝てないのですが、このバトルはちゃんと経験値が入るので発生させておきます。発生させて即敗北で構いません。弱ーい!つまんなーい!と結芽ちゃんは暇そうで退屈そうですが、ホモちゃんは忙しいので立ち去ってイベントを終わらせます。じゃあの! あんまりヤンチャしてると此花パイセンに叱られるっすよ!
……可能な限りのリカバリーは取れたでしょうか。
広く浅く会話を進めて多少なりと交流を確保してみました。
ちょっと加速して時間を進めて……あ、舞衣ちゃんが学長に掛け合って可奈美ちゃん捜索に向かうイベントが発生しましたね。良かった良かった。これで一安心です。公衆電話の電話音声から位置を割り出してストーカーできるお嬢様怖い…怖くない?
ここで話しかけて『捜索に同行する』を選びましょう。表情グラは相変わらず『不安』のままでしたが、所属組織:柳瀬グループでゴリ押せば100%でついていけます。
(……少女饅頭刀使移動中……)
黒塗りの高級車は追突することなく東京へ。
既に空になっている潜伏先ホテルを確認したら、あとは車内でぼーっとしつつ荒魂発生まで待ち、出現したと同時に迅移で加速して明治神宮に直行します。この荒魂は最速で向かうと可奈美ちゃん姫和さんがトドメを刺す前に到着できるので経験値になります。
後ろから超スピード!?で接近して荒魂を斬り倒すと、ムービー演出が入りシーンエンドです。セーブをして次に進みましょう。
……何か忘れてるような気がしますが、アドリブが多かったのでまぁ良いでしょう。不手際が目立ちましたが、今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
ーーーーーーー
「ーーーですから………。
……はい、ではこのまま………ますね」
連絡用のスマートフォンの通話を切り、溜息を吐く。
一人きりになった部屋は、酷く広かった。
贅沢に空間を専有してのんびりする…という気分にはとてもなれない。昨日まで共に過ごしていた親友は、どこかに出かけてしまっている。温泉も食事も、共に時間を過ごす相手がいなければどこか虚しいものだ。
あの事件が起きた直後から、紅葉はおかしかった。
見たこともない表情で、信じられない行動をした。
親友だと思っていた。自分は理解していると思っていた。だというのに、たった数時間程度で本多紅葉のことが判らなくなった。
彼女を怪しんでしまう自分自身が嫌になる。
でも、頭の中の冷静な思考は、本多紅葉が敵になるかもしれないと訴えている。ーーーまさか、紅葉は舞草の事を知っている? 僕と友人になったのも、最初から狙っていた行動? 僕の正体を知っているの? 今、不在にしているのは親衛隊の命令によるものなの? 紅葉が、僕の敵になるの?
わからない。
ただ、舞草にとっても予想外の事態が発生している。
そして、僕は怪しまれるわけにもいかず動けない。
対して、紅葉は飛び回っている。各学校の生徒に声をかけ、情報を集め、外へ捜索に向かってさえいる。
何もわからなかった。
誰も信じられなくなりそうで、鈴本葉菜は目を閉じた。
時計の秒針だけが、部屋に響いていた。
ーーーーーーー
明治神宮。
原宿駅、竹下通りとも隣接するその社は、都会にあって一種の静謐な空気を漂わせている。正月などは参道を人の海が埋め尽くすが、そうでなければ人影も疎らだ。大都会の中にも、ぽっかりと空いたエアポケットのようにその空間は在る。
そこに現れた荒魂は、二人の刀使によって倒されようとしていた。
「ーーー可奈美!」
「うんっ!」
片方が弾き、片方が止めを刺す。
それは、訓練も打ち合わせもない即席の連携としては上等なものだった。息が合っている。攻撃を凌がれて上空へと逃れようとした荒魂は、そのままであれば数瞬の後に可奈美の御刀に斬り裂かれていただろう。
そこに、横槍が入った。
二人の死角から飛び出した影は、長尺の御刀を鞘走らせると、すれ違い様に一閃する。振り抜いた姿のまま着地をすれば、その背後で割断された荒魂の巨体が地面へと激突した。
「ーーーやぁ。数時間ぶりかなぁ?」
影は、極めて普通の調子で声をかけた。
微妙に舌足らずな稚気のある口調。身長は高めで目鼻といったパーツは大人びているのに、どこか子供っぽさを感じさせる表情。
本多紅葉は、御刀を肩に担ぎ直して笑いかけた。
「追手か…ッ!」
十条姫和は、小烏丸を車に構えた。
追いつかれるとは思っていたが、予想外に動きが早い。どこかの誰かが公衆電話から連絡しなければ一日二日は猶予があった筈だが、今更それを怒っても詮無い話である。
(紅葉ちゃん…?)
可奈美は、内心で困惑していた。
だって、
だから、目の前の現状に困惑した。
「ーーー可奈美ちゃんっ!」
息を切らせて追いついた舞衣も御刀を抜き、挟み撃ちの格好で相対する。
たとえ此処から逃げるにしても、どちらか一方を斬らねば逃走は叶わない。回復したとはいえ、写シを張るのが精一杯の姫和は、冷静に勝率を天秤にかける。
「その制服、綾小路と美濃関の刀使か…!」
姫和は重心を落とし、肘を曲げた構えで息を吐く。そして吸う。
人を斬る覚悟は既に出来ていた。
だが、この隣にいる少女は…可奈美は。おそらく度が過ぎるほどお人好しで、底抜けの馬鹿であるコイツは、人を斬ることはできないだろう。……良い機会だった。逃げるにしても、捕まるにしても。己一人が全て背負うだけのこと。勝手についてきたコイツは、ここで置いていけば良い。
それで良い筈だ。
姫和は覚悟を決めると、目の前の『敵』を睨みつけた。
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第六話
『話は聞かせてもらった!
つまり、折神紫こそが大荒魂だったんだよ!!』
『『『な‥‥なんだってーーー!!』』』
『オレ達はとんでもない考え違いをしていたんだ…。
二十年前、あの″相模湾岸大災厄″
あれは、大荒魂を封じてなんかいなかったんだ!!』
『どういうことだ それは・・・』
『おれたちは……何もかも……
何もかも遅すぎたんだ…………!
折神家が主導となって集めた大量の"ノロ"
記録から抹消された二名の刀使…
まさか・・・そうか・・・
そういうことだったのか・・・!!』
『!?』
『教授!!』
『これは一体!!』
『大荒魂のタギツヒメだよ!!』
『そう―――人類は滅亡する!!』
・・・なRTA、はっじまっるよー!
前回、二人を追い詰めた後、イベントムービーで『折神紫=大荒魂』という重要情報を手に入れました。今更感がありますが、ホモちゃんは情報を持っていなかったので今までは完全にフィーリングで動いていました。『走者の真似とてチャートを走らば、即ち走者なり』とはケンコー=ホーシも書いています。まあRTA者的にはいつものことですね。
いくつか会話を挟んで、舞衣ちゃんが可奈美ちゃんにクッキー☆を渡すのを確認しておきましょう。ごく稀に、ここでクッキーイベントが発生しない場合があり、その時には二人の逃避行が迷走する可能性があります。(3敗)
東京のネカフェに潜伏したままだったり、何故か独力で舞草の里まで脱出してたり………逃げたのか?自力で脱出を!? うっかり足取りが判らなくなった場合は諦めてリセットしたほうが賢明です。ガチで居場所を調べるのに時間がかかってロスです。…ここの乱数調整が可能であれば、移動方向を誘導して大幅短縮の可能性もあるらしいのですが…今後の学会での研究に期待です。
あ、舞衣ちゃんがクッキーを渡すのに合わせて、ホモちゃんからもプレゼントを渡しておきますね。渡すのは現金です。お金、マネーです。面白みも何もありませんが、ぶっちゃけこれが一番姫和さんの好感度を稼げます。資本主義バンザイ! 実際、お金がないのは大変ですからね…(遠い目)
「敵からの施しは受けぬ!」とばかりに姫和さんが可愛く睨みつけてきますが、無理矢理にでも万札を数枚渡せば好感度が上昇します。姫和さんは表面上はツンツンしてるようにみえますが、真面目で義理堅くて「死ぬのは私一人でいい…」と思い詰めてしまうような娘さんなので…。…心理的に貸しを作っておくと、それだけで合流後に好感度が確定アップします。その時にでも、雑談の中でチョコミントアイスの話を振ればコロッと落とせます。チョロいモンです。ついでに打算100%ですが岩倉さんの無事を伝え、彼女も心配してたから無理しないでね?なんて言葉をかけておきましょう。
ややあって。舞衣さんとホモちゃんは動揺のあまり二人を取り逃がしてしまいます。決してわざとではありません。荒魂退治と避難誘導およびノロの処理を優先しただけです。嘘は言ってません(強弁) 市民の安全が最優先、はっきりわかんだね。
―――さて、実はここからしばらくは、特に消化しないといけないイベントはありません。
というのも、沙耶香ちゃんの高級マンション襲撃、長船組の追撃戦、親衛隊の伊豆山狩り…とイベントは目白押しなのですが、ぶっちゃけシナリオ進行としてはホモちゃん不在でも進むからです。
何にも関与しないと流石に本編パーティーに合流できないので、舞衣さん&沙耶香ちゃんが離脱するときに便乗して鎌倉を離れ、舞草の里に合流するのが一番早いと思います。あと、地味に経験値大量獲得ポインヨがあるので狙っていきます。ヒントは、『荒魂を斬るよりも経験値が美味しい』です。
さて、折神屋敷に戻ってきました。
相変わらず折神家のおもてなしにより、高級旅館と見紛うサービスを受けられます。中学生なのでお酒は出てきませんが、なんとも至れり尽くせりです。
さあって、一度部屋に戻って着替えの準備をして風呂に…。
「ーーー紅葉」
あ、鈴本葉菜ちゃんが部屋の中に居ましたね。
同じ学校の代表選手は同部屋に宿泊しているので当然なのですが…って…、あ゛っ! すっかり葉菜ちゃんのことを忘れてましたね…。通常周回だと葉菜ちゃんは代表に選ばれてないので、うっかりしてました。
……えーと。怒ってます…?
「怒る? 僕が? 何でそう思うんだい?」
嘘つけ表情グラは『笑顔』だけど絶対に怒ってるゾ。
美少女を攻略しようとするノンケ兄貴は覚えておきましょう。麗しきレディが口にする『大丈夫』『平気』「怒ってないよ』といった言葉のニュアンスは非常に繊細です。日々の安寧に甘んじて、ぬるい湯のような関係性を惰性で続けていると、突然『もう、別れよっか』なんて言葉が飛び出します。注意しましょう。
え、っと。無断で飛び出しちゃったから。
あと、夜帰らなかったのに連絡もしなかったから。
ーーーその、ごめんなさい…。
「殊勝にされても困るんだけどね…。
いきなり走り出したかと思えば、そのまま拘束されたっていうし。その後も全然戻ってこないし、連絡も一切ないし…」
そ、それはそのぅ…。て、テヘッ (・ω<)
「テヘッ!…じゃあない! 全く、僕がどれだけ心配したと思ってるんだい!」
これは…おこですね…。ムカ着火ファイヤーってカンジです。女子校生の怒り表現としては割と上位です。因みに次の段階がカム着火インフェルノォォォォオオウらしいです。
ーーーって、ファッ!?
「待って、紅葉。
……何か、僕に言うことがあるんじゃないかい? それとも、隠さなくちゃいけないことでもあるのかな?」
突然、葉菜ちゃんが乱心し、ホモちゃんに迫ってきました。
葉菜さん!?ちょっと、まずいですよ! やべーぞ壁ドンだ!! なんか今まで見たことない表情差分なんですけど! 目からハイライトが消えてるのに薄い笑顔なのが逆に怖いんですが!?
「話してくれないんだったら…僕は……」
(ピッ)
〉全てを話す
〉嘘を吐く
〉……、……(何も言わない)
……。あー。はいはい、選択肢ですね。
ーーーん?
……。
選択肢のカーソルが動かせない?
あ、あれっ?(ガチャガチャ)
(無言のキー連打)
あ、ああああああぁああ!?
あああああァ!? ちょ、ちょ、ちょっと待っ待って! 助けて!待って下さい! ンンッ… マ゜ッ!ア゛ッ!?↑
選択肢が選べない!カーソルが動かせない! すわバグか?とパニックになっている走者ですが、これには理由がありました。録画後に気づいたのですが、初期スキルで『一本気』を取得してしまっていた弊害です。それでホモちゃんは嘘を吐くことができなかったんですね(白目)
冷静に考えれば焦らなくてもいいはずなのですが、顔が良い親友に密室二人きりで迫られるという状況に、無駄に動揺してしまっています。
葉菜ちゃ、きょ、距離が近い近い!
せ、せめてお風呂に入ってからの方がいいと思うの!(錯乱)
ヤメロー! ヤメロー! アッ! ……ンアーッ!
ーーーーーーーーーー
・・・顔が近い。
それはよくあることだった。紅葉は妙にパーソナルスペースが近いから、話している途中で急に顔を近づけられてビックリすることも多かった。
なのに、この違和感はなんだろう。少し考えて、ああ、と腑に落ちた。答えは簡単……僕の方から近づいて、こんな至近距離に踏み込んだことは殆ど無いのだ。強いて言うなら、木刀で斬り結ぶ時には鍔迫り合いながら接近するけれど、あれはまた少し別物だろう。
「は、葉菜…? どうしちゃったの…?」
僕は片腕を壁に押しつけて、紅葉の体を壁に追いやる。逃げられないように、離れていかないように。俗にいう”壁ドン”というモノらしいが、勿論そんなロマンチックなモノでは無い。
視線を上げた先に、困惑した様子の紅葉の顔がある。僕も身長が低い訳ではないのだけれど、彼女の方が10cm以上も背が高いのだ。自然、軽く首が上向く姿勢になってしまう。三流小説とかだと、こういうシチュエーションでは相手の睫毛の長さや香水の香りに気付くことが多いのだろう。生憎と、鼻孔には薄い汗の匂いくらいしか感じられないが。
「紅葉、昨日は何をしてたんだい?」
問う。口調が厳しくなっているのが自分でも判る。
「何を…って言ってもねぇ…」
紅葉は、少し言い淀んで答えを返す。
「……えっと、舞衣ちゃんに着いていって、それで逃げてる二人を追いかけて…。そして、原宿のあたりで見つけただけだよ。結局、逃げられちゃったけどねぇ」
じっと見詰めると、困ったような表情で目を反らされる。
嘘だ。いや、今の発言はたぶん嘘では無いんだろうけれど、たぶん何かを隠してる。
「紅葉。ーーー君はやっぱり御前試合の後から変だよ。突然走り出して他人を事件の共犯者だと疑った事といい、妙に犯人探しに積極的な事といい……僕が知っている『本多紅葉』は、そういう人間ではなかった筈なんだけどね」
「い、いやぁ…。なんて言うか…こう…風の吹き回しってヤツ?」
目線が泳ぐ。相変わらず嘘が下手だ……いや、ひょっとしてこれも演技? だとしたら、とんでもない稀代の詐欺師か悪女だろう。親友を信じたい僕と、彼女を疑っている僕が半々のまま、更に追求する。
「平城学館の生徒から聞いたよ。随分と大立ち回りをしたらしいじゃないか。それは、一体何故なんだい? 君が動かなくても、場内の警備に任せておけばよかっただろう?」
「うう…。今思うと、ちょっと先走って余計な事をしちゃったとは思ってるんだよぅ…。つい体が動いちゃったっていうか、最悪を考えて咄嗟にやっちゃったっていうか…」
「最悪、かい?」
うん、と。
その問いに、紅葉は素直に頷いた。
「誰か、殺されたかな、って」
「ーーー、ーーー」
それは、
「それで、あそこで狙われるなら間違いなく折神のご当主様だろうって。
いやぁ、冷静に考えた訳じゃなくて一瞬の直感みたいなモノなんだけどさぁ…。それで最悪を考えたら、できるのはアレくらいだったからねぇ」
「それだけで、あんな事を…?」
「だからあんまり説明したくないんだよぅ…。親衛隊の獅童さんにも滅茶苦茶聞かれたんだもん…」
だもん、では無い。
が、この発言は嘘ではなさそうだ。少しむくれて「そのせいで、あたしも共犯者だと疑われるとは思わなかったんだよぅ…」と呟く表情に、邪気は無い。何故、その瞬間にそんな突拍子もない事を直感し、それを確信して行動したのか…という問題はあるものの、とりあえず悪意や企みによる行動では無いらしい。
ますます、訳が判らなくなってくる。
「それで、その後も犯人を探したのはーーー」
「いや、えっと。葉菜? あたしがヘンな行動をしたのは悪かったからさ…もう許してくれない? 全部、あたしが悪かったんだからさっ、もうそれでいいでしょ?」
ほら、早くお風呂入りに行かなくちゃだし! なんて、おどけて話題を変えようとする紅葉に、僕は少し笑ってみせる。
「紅葉、君はまだ何か隠してるよね?」
「ふぇっ!?」
動揺の声は随分と可愛らしい。背が高くてしっかりしてそうな外見なのに、そういうとこだけ妙なギャップがあるのは狡いと思う。
「その隠し事は、僕には言えない内容かい?」
・・・ここが、分水嶺だ。
もし仮に、本多紅葉が折神紫や親衛隊の手先だった場合、これ以上追求すれば僕の正体も勘付かれる可能性がある。
いや、今までの質問だって相当に危うい。僕が慎重策を採るのであれば、何も詮索することなくやり過ごすことは可能だった筈だ。無駄にリスクを抱え込む必然性は無いのだから。
ただ、僕は紅葉を親友だと思いたかったのだ。それは、『任務』を考えれば決して賢い選択ではなかったけれど、偽りだらけの毎日を過ごしている僕にとっては、本来なら表に出してはならない『本心』だった。
「ーーー言わなきゃダメ?」
「……強制はしないよ」
無理に言わせるということは、背後に何かしらの意図があるということだ。お互いに、…もし隠し事や後ろ暗いことがあったとして…逃げ道を完全に塞いでしまえば、あとは詰まらない結末しか迎えられない。臆病かもしれないが、最後まで知らぬ存ぜぬを言い張れる余地は残しておきたかった。
紅葉は、うぅ、と呻いて声を絞り出す。
「言いたくは無い、かな。
でもーーーえっと、言わなきゃ駄目…だよね」
紅葉は、悩んでいるようだった。ある種、苦しんでいるようでもある。しばしの葛藤の後、紅葉は言葉を継いだ。
「話してないことが、二つあって。その内の一つは話せる…と思う。うん。 ……でも、もう一つは、言えない。言ったら、葉菜を巻き込んじゃう。だから、言えない」
「巻き込む、って…」
「言ったら、葉菜を困らせちゃう」
それは…。
「ごめん。…あたしも混乱してて…。暗殺事件だと思って追いかけてたら、まさかこんなことになるなんて思ってなくて…っ。
その、さっきね、追いかけてた二人にご当主様に斬りかかった理由を聞いたんだよ。暗殺なんて、どうしてそんなことをしたの?って。 それで、その理由を聞いたの」
その答えは。
「ごめん…。葉菜にも、ううん、葉菜だから絶対に言えない。もし言っちゃったら、葉菜を巻き込んじゃう…! もし知っちゃったら大変なことになっちゃうんだよ…っ!」
その情報を、僕は既に知っていた。
……蓋を開けてみれば、随分と呆気ない話だった。舞草の人間であれば、それは既知の情報だからだ。しかし、何も知らない紅葉にとっては、知らぬ間にとんでもない大事件に巻き込まれてしまった心境だったのだろう。刀使を司る折神家の当主が大荒魂にすり替わっているなど、容易に他言できる内容では無い。言っても信じてもらえないと考えるのが普通だ。紅葉の言い募る言葉は、段々と涙声になっていく。
「ごめん…これだけは、言えない。もし言っちゃったら、葉菜が危ない目に遭っちゃうかもしれないのっ。だから…秘密にさせてっ」
頭が、少し冷える。
涙目になった紅葉の顔を見て、ゆっくりと息を吸い込む。ーーーよし、大丈夫。思考は回っている。まずは落ち着こう。
まず、暫定的な結論として。紅葉は敵ではない。
おそらく、『折神紫が大荒魂である』という情報を知ってしまって、酷く不安定になっているだけだ。紅葉の認識の中では、僕はあくまで『何も事情を知らないただの親友』なのだ。
「ーーーなんだ。安心した」
「は、葉菜…?」
知らず、抱きしめていた。
全然己を律せていない自分が馬鹿みたいだけれど、ぎゅっと抱きつく。紅葉は、僕をちゃんと親友として慮ってくれたのだ。単独行動をしていたのも、秘密を抱えていたのも、平気なフリをしていたのも、全部。
顔がにやけてしまいそうになる。自分でも心の振れ幅がさっきから大きくて平静を装えていない。ただのクラスメイトや友人なら、こんなに気持ちが揺れ動かないだろう。やっぱり、僕にとって紅葉は親友なのだ。いや、ひょっとしたら、それ以上のーーー。
逸れた思考を打ち切って、紅葉に語りかける。
「大丈夫。ーーー大丈夫だよ。
だから、泣かないで。僕も、結論を急ぎすぎた。落ち着いて、ゆっくり話してくれれば、それで良いから…」
壁に押しつけられたまま静かに泣き始めた紅葉と、うっかり貰い泣きしそうになった僕は、そのまま暫く身を寄せ合っていた。
ーーーーー
……まだ比較的に早い時間だから、風呂場は空いていた。
先に風呂に入って、夕食を食べてしまおう…話の続きは、その後で…と。一旦お互いに落ち着くために決めたものの、結局、風呂にしても食事にしても同行するのだから、微妙に気まずい雰囲気になっていた。
いや、悪い空気ではないのだけれど、なんだか距離感を測りかねてしまうというか。勘違いとはいえ腹の探り合いのような事をしてしまったし、詰問して少し泣かせてしまったし、このあと話さなくちゃならないこともあるし……。
何というか落ち着かない。
そわそわとして、心と体が逸ってしまう。
何故だか蟠っていた熱が外に出ようとする。
「そうだ。体を洗い合おう」
「か、体を?」
「うん。友達の背中を洗うくらい、普通なんじゃないかな」
ーーー普通か?
友人としての距離感が微妙に狂ってしまったような気がしないでもない。戸惑ってる紅葉を押し切って背中を向かせ、僕はスポンジを手に取った。
紅葉の背は広い。あんまり弄ると拗ねるので言わないが、肉体的にはバスケットボールのような球技に向いていそうな体型なのだ。もう少し背の低いほうが良かったのに、なんて零していたこともある。本人的には、もっと小さくて華奢で線の細い女の子になりたかったらしい。つい先日聞いた話ではあるが、それなりの家格の生まれだということを加味すれば、まぁ深窓の令嬢然とした容姿に生まれつきたかった、というのは分からぬ話ではない。
スポンジにボディーソープをとって泡立てる。
そっと泡を背中に塗りつけて洗い始めると、紅葉はくすぐったそうに身を捩った。
「く、くすぐったいんだけどっ」
「我慢して」
「う、うん…っ」
「ーーー、ーーー」
互いに黙ってしまう。いつもなら気にならない筈の沈黙も、どうしてか意識してしまう。あまり時間をかけても変だろうから、手早く泡立てて背を洗って、湯をかけて流してしまう。
「え、っと。じゃあ、次はあたしが…」
「ん…」
今度は逆に、僕が紅葉に背を向ける。
姿が見えない、というのは心理的な不安を呼び起こすもので、しばらくして背に泡の感触が触れると、反射的に体を震わせてしまう。
「はーい。どこか痒いとこはありませんかーっ」
「……なんか、それも違うような…美容室?」
「アレって、痒いとこあります!って伝えたら掻いてもらえるのかなぁ」
「…さぁ…?」
他愛のない言葉を重ねながら、ふわふわの泡で包まれるように洗われる。思っていたよりも丁寧に、しっかりと洗われた気がするのは自意識過剰だろうか。鋭敏になった感覚が、泡を暖かな湯で押し流していくのを心地よく感じ取る。
「ーーー部屋に戻ったら、全部話すから」
湯船の中で、肩を寄せ合って。
湯煙に包まれながら、紅葉は小声で囁くように言った。
「あたしが知っちゃったことと、黙ってた理由と……あと、ついでにうちの家の話とか流派の話とか…とりあえず、もう全部話しちゃうねっ。うん。やっぱり、黙ってるのも良くないだろうしっ」
それは、いつもの紅葉らしい表情だった。
ヘンに押し黙ったり、一人で抱え込んだり、拙い嘘で塗り固めていない、とても素直な表情。いつもの紅葉の顔だ。それを見て、僕は安心する。
やっぱり、紅葉に嘘は似合わない。
元に戻った親友の姿に、僕はようやく安心して笑い返せたのだった。
「ーーーこないだも思ったんだけどさぁ。葉菜、また少し大きくなったよねぇ…」
「そ、その手の動きは何だい? 別に、背は伸びていないよ?」
「そうじゃなくてっ! 胸っ! あたしは背ばっかり伸びてそっちは全然なのにっ! 葉菜ばっかりズルいっ!」
「いや、狡いと言われてもね…。って、うわっ…!?」
このあと風呂場で無茶苦茶いちゃいちゃした。
あと個室に戻って、しっぽり(と互いの秘密について密談)しましたとさ。
完全に余談ですが、作中の相模湾岸大災厄が1998年で、本編がその20年後なので…『時空を越えて あなたは一体何度ーー 我々の前に立ちはだかってくるというのだ!! ノストラダムス!!!』ってカンジです。大荒魂の復活は予言されていた…?
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第七話
そしてなによりもォォォオオオオッ速さが足りない!RTA、はーじまるよー!
前回、目からハイライトが消えた可愛い葉菜ちゃんに「問い詰め」されて画面暗転した所から再開です。突然、デデドン!(絶望)と目の前が真っ暗になったら翌日朝になっていたのですが……(ステータス確認) あ、情報項目が増えてますね。『鈴本葉菜の任務』『舞草』についての情報が手に入ったようです。
入手した経緯は闇の中ですが…いったいナニがあったんですかねぇ…(すっとぼけ)
「―――おはよう、紅葉」
葉菜ちゃんも機嫌が随分と良いようで、昨晩とは打って変わって朗らかな笑顔を見せてくれています。うっかり関係が拗れて破綻して、あわや再走か!?と思われましたが、何とかセーフだったようです。
走者的には完全に未知のイベントだったんですが、とりあえず様子を見る限りでは問題なさそうですかね…。葉菜ちゃんが代表選手に選ばれた時のイベント発生条件や内部フラグ処理などは、今後検証が必要でしょう……ここ、ちょっとメモっておきますね。
・・・さて、時系列としては、この朝に観戦に来ていた一般通過生徒が開放。そして夜には、沙耶香ちゃんが高級マンション襲撃を実行する日になっています。
よく考えると、まだ暗札未遂発生から二日しか経っていないんですよね…イベントが…イベントが多い…! 走者的には走りっぱなしなので体感時間がえらい長いのですが、このあとも過密スケジュールが続きます。
更に整理しておくと、翌日には長船組の追撃戦、平城学館の岩倉さんが(本編準拠だと)帰校、ついでにホモちゃんと葉菜ちゃんにも京都への帰還命令が出てしまいます。ここは調整ポインヨなので忘れないように注意しましょう。(7敗)
そして、翌日未明にかけて親衛隊の山狩り。更に次の日の昼間に再び親衛隊の追跡を退け、その夕方には石廊崎で舞草の潜水艦に搭乗。そして、同夜に舞衣さん沙耶香ちゃんが鎌倉を脱出します……こうして並べると判りますが、イベント密度がかなりヤバいです。視聴者の皆さんにも、ホモちゃんが二人についていかなかった理由の一端が判ってもらえるのではないでしょうか。このイベントラッシュをどれだけ省略できるかが本編ルートでのチャート構築の肝です。
今回のホモちゃんは戦闘回数や説明イベントを多少キングクリムゾンしてますので、伊豆への逃避行イベは画面外にすっ飛ばします。明後日の沙耶香ちゃん出奔までは、折神屋敷周辺でちまちまと進めます。
……しかし、このタイミングで『舞草』の情報を入手してしまいましたか……。走者にあるまじき不見識ですが、本来のチャートでは舞草の里に到着してから入手する予定の情報だったので…葉菜ちゃんの予想外のムーブにより、走者のアドリブ力が要求されています。
んー、と。
とりあえず朝一でバカンス()に向かおうとする長船組に接触しておきましょう。
・・・何処にバカンスに行くのかは知らないけど…もしまた会えたら、その時はよろしくね? きっと、予想よりも早く、また会う機会があると思うからっ。
「―――。おう」
「なるほど! レディ本多も、ではまた会いまショウ! シーユーアゲインです!」
「ねねー!」
長船組は、規定路線ならこのまま湘南行き伊豆経由潜水艦コースです。あとは乱数のイタズラでルートが迷走しないことを祈りましょう(1敗)
それが終わったら、皆さんお待ちかね、鎌府の学長、高津雪那さんによるヒステリック説教タイムです(白目) 舞衣さんと一緒に叱責を受ける破目になります。無駄にフルボイスですがチャート上は何のメリットもありません。怒られ損です。RTA的にもプレイヤー的にもイライラタイムです。
「何故すぐに応援を要請しなかった! ーーーまさか、奴らの逃走を幇助したのではあるまいな!?」
は?(威圧)
ちゃんと逃走経路を予測して、僅かな手がかりから前日の宿泊先を特定して、しっかり発見して交戦した舞衣ちゃんを言葉攻めするとか許されないんだよなぁ! はーつっかえ! 辞めたら学長? こっちは荒魂退治までしてんだぞ!?
・・・とは言えないのがツラいところです。因みに、刀使は特別司法警察職員に相当するらしいですね。年端もいかない中学生を公然とパワハラしていいのかはさておき、反論を微塵も許さないあたりに宮仕えの厳しさが染み渡ります。公務員に準ずる扱いなので、労働三権は無いし出張は多いし超過勤務の手当ても出ません。…よく考えたら人体実験や洗脳を平然とやる連中に、世間の常識を期待してはいけないんだよなぁ…。刀使の人権はどこ…ここ…?
この時点で既に初見プレイヤー並びに視聴者のヘイトを集めまくる高津おばちゃんですが、何度も周回プレイをすると一種の癒やし枠みたいな存在になるのでご安心ください。ある意味で刀使ノ巫女世界における愛され枠ですからね。嘘は言ってません。刀使ノ巫女/ZEROでは超カワイイ犬系後輩雪那ちゃんと戯れることが可能なので一度はプレイしてみることをおススメします。
・・・さておき、報告を終えて退出すると、突然キレたナイフのごとく結芽ちゃんが抜刀して斬りかかってくるので応戦します。ここでホモちゃんが斬りかかられる理由は特に無い筈なのですが、まあ結芽ちゃんは暇を持て余していたので仕方ないね(寛容の精神) 場所は折神屋敷の廊下ですが、向こうが先に抜いたので抜刀しても特に問題ありません。ここでは本格的な戦闘には発展しないのですが、僅かに経験値が入るので軽率に御刀を抜きましょう。そして即座に敗北します(露骨な調整)
「おねーさん弱っわ〜い!」
は? 負けてないが?(敗北リザルト)
結芽ちゃん、ちょっと触れるもの全て傷つけるギザギザハートすぎませんかね…。いやまあ、そのつけた傷跡で少しでも誰かの記憶に残りたいという気持ちの表れなのかもしれませんが…。美人顔の12才幼女に煽られる……最高やな!
「おねーさんたちさぁ、せっかく見つけたのに逃げられちゃったんだって? それって、本当? それとも、ワザと? …でも、どーせ、おねーさんたちの実力じゃ、そもそもあの人たちに勝てなかったかなー」
かなり挑戦的じゃないそれぇ?
このメスガキ…もとい、結芽ちゃんはほんへでも貴重なメスガキ成分なので大事にしてあげましょう。初見さんは「このメスガキ…っ!懲らしめてやる…!」と思うかもしれませんが、ほんへの結芽ちゃん(11話)を見たら言えなくなるってそれ一番言われてるから。
さて、ここまで消化したら、あとは自由時間です!
仕様上、あまりサブイベントを消化する余裕はないので、ここは岩倉さんに再度アタックしに行きます。前回、原因不明の理由で好感度がマイナス方向に反転してしまったのですが、今回は秘策があります。見とけよ見とけよ~各校でキャラエディットしてルート検証した走者のケツ論、見とけよ~。
ーーーーーー
・・・私には、紅葉さんの考えていることが判りません。
昨日、可奈美ちゃんを追いかけて、十条さんから話を聞いてから……紅葉さんは、何も言わないままでした。
私が二人を見逃した時も……学長には『ノロの処理を優先した』と説明しましたが、実際には二人の逃走を黙認したも同然です……紅葉さんは「舞衣ちゃんの決定に従うよ」と、言葉少なに言うだけでした。
『―――大変なことになっちゃったねぇ』
ポツリ、と。現場に散乱したノロを処理班が回収するのを眺めながら、紅葉さんが小さく漏らした言葉は私の心を代弁していました。
どうすればよいのか、と思案してみるものの、できることといえばとりあえず報告を誤魔化すのが精一杯。でも、それ以上に何ができるかというと、ただの学生でしかない私たちには荷が重い話です。
国家だとか、組織や陰謀といった…規模の大きな話になってしまうと、ただの学生個人の力では役に立たないのではないか。そう思えてなりません。
夕方、折神家のお屋敷に帰ってきてからも、今日になって正式な報告をした時にも、紅葉さんは何も言いませんでした。
口裏を合わせた訳ではないのですが、彼女は彼女なりに考えて可奈美ちゃんの事を黙ってくれているようです。その理由までは判りませんが……折神家に対する不信、あるいは現体制に対する疑いの目、そういったところでしょうか。鎌府の学長が声を苛立たせている時にも、無言のまま凄い目で睨みつけていましたし……。
・・・ただ、紅葉さんの行動には幾つか不可解な点があります。
事件直後の突然の行動と、その後、二人を追いかける時に半ば強引に私に同行してきたこと…。…そもそも、二人が東京方面へと向かったことが確認できたのは、私が可奈美ちゃんからの電話を受けて、その録音した音声データを執事の柴田さんに解析してもらってからです。学長に進言するまでは誰にも相談していませんし、超能力でもない限り行動を予測できるものでは無かった筈です。
可能性があるとしたら、あるいはーーー。
「柳瀬さん」
報告を終え、私が部屋を辞すると、羽島学長が言葉をかけてくれました。
羽島学長の顔にも薄っすらと疲れの色があります。普段よりも、少しだけお化粧が厚くて、目元や頬に赤みを差しているのが見て取れます。
羽島学長は、口を手で隠すようにして、私の耳元で囁きました。
(……二人は無事よ)
驚いて学長の顔を見返せば、普段通りの澄んだ表情でした。その表情は、まさに大人の女性といった趣で、私の動揺を察して優しく微笑を浮かべます。
(学長は、私が二人を見逃したことを把握してる…?)
……私は、つい背後の人影を振り返ってしまいました。
そこには、先程まで同室で一緒に報告をしていた紅葉さんがいます。今の言葉は、紅葉さんにも聞こえていた? それとも、小声だったから聞こえなかった…? 一応、数歩分は距離は離れていましたけれど…。
「ーーー、ーーー。」
こちらを向いた紅葉さんの顔は、表情の消えた能面のような色をしていました。あ、と私の口から声が漏れるよりも早く、彼女は御刀を抜きました。
それは、私が御前試合で使った技と同じく、抜くと同時に斬りつけるものです。違うのは、立ったままの姿勢から抜刀と同時に大きく踏み込んで、此方に飛び込んできたことでしょうか。
戸惑いに身が竦んだ瞬間に、全ては終わっていました。
動きは二つ。
一つは、抜刀した紅葉さんが私と学長の横を擦り抜けて斬りかかったこと。
もう一つは、私の背後から突然飛んできた斬撃が、紅葉さんに撃ち落とされたことです。
「ーーーあは…っ!」
「こ、んのォ…ッ!」
紅葉さんは大刀を構え直そうとして、そのままピタリと動きを止めました。彼女の喉元に、弾いた筈の御刀の切っ先がピタリと当てられていたからです。
「おねーさん弱っわ〜い!」
「・・・はぁ?」
背後から突然襲撃してきたのは、年下の背の小さな女の子でした。表情も声色も年相応のもの。ただ、その身に纏っている制服が、彼女の所属を明確に示していました。
「親衛隊、第四席…っ」
「ーーー燕さん。御刀を収めなさい」
「はーい」
折神家親衛隊の一人。燕結芽さん。
彼女は刃を二合と合わせずに紅葉さんを下すと、羽島学長の言葉にあっさりと応じました。喉元に突きつけていた御刀を降ろすと、挑発的な口調で続けます。
「おねーさんたちさぁ、せっかく見つけたのに逃げられちゃったんだって? それって、本当? それとも、ワザと? …でも、どーせ、おねーさんたちの実力じゃ、そもそもあの人たちに勝てなかったかなー」
だって、御前試合でもあの子に負けたんだもんね?
…と、酷く揶揄うような口調で、彼女は私たちに言いました。それは、年下の子から投げかけられた言葉とは思えないほど、侮蔑の色が含まれていました。
紅葉さんは、じゅ、十条さんには負けてないもん…っ!?と何故か激昂していましたが、それも微妙に怒る場所がズレている気がします。何れにせよ、燕さんは一通り挑発的に煽ると、そのまま立ち去ってしまいました。
「・・・何だったんでしょう」
「さぁねぇ。暇だったんじゃないかなぁ…」
紅葉さんは御刀を納めつつ、ぼんやりと呟きました。
その姿からは、先程一瞬だけ見せた酷薄な表情は見て取れません。おそらくは、背後から斬りかかられた私を庇うように動いた彼女の行動ですが、それがどのような行動原理に基づくものなのか、私は判じかねていました。
私が何年も前から知っている、素直で明るい紅葉さんだったら、私が困っている時には当然の様に手助けしてくれていたでしょう。・・・いいえ、手助けというより、ごく自然に『困ったねぇ。どうしようねぇ』なんて言いながら、まるで自分のことのように考えてしまうのが彼女です。知り合いが目の前で襲われたのなら当然助ける、知り合いが事件に巻き込まれたら咄嗟に動いて追いかけて心配してしまう…それは、私の知っている本多紅葉という女性の像からも外れてはいません。
しかし、最近の彼女には、どこか違和感があります。
連続撮影したフィルムを重ねてみたら、ごく僅かにズレているような違和感。素直な赤心と善意で動いているように見えて、その実、どこか隠れた目的があるように思えてしまいます。単に心配だから、気になるから、という以上の理由があるのではないか…そう思えてなりません。
「親衛隊もねぇ、どう動いてるんだか判らないねぇ…。本当、嫌になっちゃうよ」
立ち去っていく燕さんの背中を目で追いながら、紅葉さんはぼんやりと呟いていました。
ーーーーーーーーーー
さて、再びやってきました、折神家の武道場です。
ここでは、時間を消費することによって訓練という名のステータス上昇イベントを発生させることができます。結構な時間を消費しないといけないのと、ステータス上昇幅が割と運ゲーになるのが偶に傷ですが、成長手段が限定されている局面では大事なイベントです。
今のホモちゃんは外出が制限されてるので、『(荒魂を)一狩りいこうぜ!』とはいきませんからね…。
今回採用したチャートでは、所々で自由に動ける時間はあるのですが、別マップに移動できなかったり荒魂エンカウントができなかったり…と、微妙に融通が利きませんからねー。
『刀使ノ巫女』は自由度がウリのゲームではありますが、全て自由に動き回れるワケではないのが面白いところ。所属や年齢などによって採用できる行動選択肢が増減するのがチャート構築を複雑化させています。
例えば、『不良少女』であれば学校の授業をサボっても問題になりませんが、『優等生』だったら授業や荒魂退治イベントから逃げられない、というような違いが出てきます。その代わり、風評が良いキャラクターは人間関係の構築やコネクションの利用に上方修正が入りますし、一長一短といった具合です。風来坊の一匹狼を気取っても良し、組織の狗として東へ西へ飛び回っても良し、自由とはそういうものです。
余談が長くなりましたが、この武道場では訓練を実施します。同行者は、岩倉早苗さん、柳瀬舞衣さん、鈴本葉菜ちゃんです。ぶっちゃけ前々回で好感度調整をガバったフォローアップになります。岩倉さんとか、今も表情が『不安』のままですからね(白目) 岩倉さん非参戦でも何とかなるとは思いますが、中途からでもパーティー加入してもらえた方が戦力的に嬉しいので狙っていきます。
「あれ、岩倉さんって明日帰っちゃうんだっけ?」
「そう・・・ですね。明日には、奈良に戻ります。本当は、十条さんと一緒に帰りたかったんですけど…」
「私は、羽島学長がここに居られる間は…」
「そっか。他の観戦に来ていた生徒は宿泊所の関係で帰らされていましたけど、僕たち代表選手は屋敷に泊まっているから、学校によって帰るタイミングがバラバラなんだね。僕たちも、どうやら明日以降に帰ることになりそうだけど」
雑談をしつつ、訓練を開始します。この際、同行者の人数や能力上の得手不得手によってステータスが変動します。岩倉さんの場合、守勢や上段技。舞衣さんだと居合技やパーティー全体を強化するスキル、葉菜ちゃんは精神や戦闘外でのスキル…といった具合に、それぞれ得意分野が設定されています。つまり人数が多いほど、満遍なく強化を狙うことが可能です。
つーまーりー、ホモちゃんの強化もできる、一緒に汗をかいて好感度の調整もできる、ビキビキビキニ1、2、3というワケです。加えて、葉菜ちゃんの好感度は『親友?』、舞衣さんはコネクション持ちなので、一人だけマイナス好感度になっている岩倉さんを挟んで堕とします(暗黒微笑)
ねぇ、岩倉さん…。十条さんのこと、心配だよねぇ…。
「え、ええ…」
まずうちさぁ、十条さんと・・・一昨日会ったんだけど・・・話聞きたい?(迫真)
岩倉さんは天使なので『ああ^〜いいっすね^〜』とは言いませんが(重要)、十条さんの話題を振るとほぼ確定で食いついてきます。流石、十条さんを心配することに定評のある岩倉さんです。岩倉さんの天使っぷりについては、ここで紹介するには紙幅が足りないのでアプリ版の個別エピソードを決断的に見てください(直球)
さておき、『逃げられちゃったけど、十条さんも元気そうにしてたよ』『事件を起こしたのも、何か理由があるみたい』『お金渡しといたから、お腹は減ってないんじゃないかな多分』というような話を伝えておきます。
この辺りは、出身校によって多少差異が出てきますね…。平城学館ルートだともう少し踏み込んだ話ができるのですが…難しいかな? 岩倉さん本編参加ルートは、中々に運ゲーなので本走だと厳しめです。
とはいえ、参戦してくれなくても訓練でステ上げしておくに越したことはないので、このまま日暮れまで訓練を続行します。
……あ、守勢が上がったので、これからは攻勢一点伸ばしに戻って大丈夫そうですね。ホモちゃんは一撃だけは充分に耐えられる紙装甲、低耐久を手に入れたので、あとは相手を一撃で屠ることだけを考えれば大丈夫そうです。ここで成長ポイントを振る前に一回セーブを挟みます。
っと、明日に備えて成長ポイントを割り振りました。ステータスでは攻勢に全振り。スキルは『隠密剣』を取得しました。詳細は明日夜のイベントで説明します。
ホモちゃんにできるのは、恐らくここまでですね…。あとは、乱数との戦いです。訓練を終えたら、葉菜ちゃんとお手々繋いで部屋に帰り、翌日の帰還命令に対する仕込みを行います。お祈り要素が多いですが、最悪を引かない限りは続行します。
お布団を敷いてスヤァしたら本日はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
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第八話
経験値が稼げると思った私は悪くない。
ステンバーイ...
ステンバーイ...
時系列計算に必死になるRTA、はーじまーるよー。
さて、本来ならばホモちゃんも京都に呼び戻される日がやってまいりました。ここは本編準拠ルートを走る走者にとって頭を悩ませるポイントです。何とかあと一日だけ滞在期間を延ばせればいいのですが、ここで走者が採れる方法は何通りか存在します。
まず、一番簡単に採用できるルートを、仮に『出奔』ルートと呼称します。これは、『帰ってきて♡』→『嫌です…』とばかりに自由行動を取るルートです。青春の無軌道な暴走というヤツですね。俺たちに明日はない的なサムシングです(適当) これは通常の綾小路代表の場合は割と使うルートですね。色々とデメリットはあるのですが、実行条件が緩いので簡単に採用することができます。
次によく使われるのが、『舞草』ルート(仮称) これは、アプリ版での調査隊に近いムーブですね。それぞれ所属の学長経由で、『云々という理由で滞在すべしor活動せよ』という言質を引き出し、学校に戻ることなく活動をするルートです。これは、長船や美濃関を出身校にしていると便利なルートです。どちらも学長が裏で舞草側と足並みを揃えていますからね。平城学館でも、意味深な台詞を伝えられはしますが、まぁ可能です。ただし、名目によっては御刀捜索や二人の追跡など、余計なイベントが挟まってしまうのがデメリットです。一応、メリットとして某所にいるスルガさんに会いに行ったりとか、その辺りのイベントを消化するのに向いていると思います。
あとは…親衛隊に協力的に振る舞っていると、そのまま追跡班として活動続行できる『親衛隊』ルートとか。実は今回のホモちゃんはやろうと思えば親衛隊ルートに入れたのですが、ほぼ確実に伊豆山狩りに連れて行かれてしまうのと、そこから舞草側に離反するタイミングが難しいこと、主要キャラと一時的に敵対してしまうため好感度が下がってしまうのが美味しくないので採用していません。濃厚なまきすず成分を摂取したい方にはオススメしておきます。
……他にも色々選択肢はあるようですが、主なルートとしてはこのあたりでしょうか? 今回は『出奔』ルートに多少アレンジが入ったものを選んでいます。
具体的には、コネクション:柳瀬グループを使用します。「またか!」と思われる視聴者の方もいるでしょう。実際これはかなりイレギュラーなムーブなので、たぶん走者多しといえどもこんなにコネクション:柳瀬グループを使い倒してる走者は私くらいなんじゃないですかね? 多くの場合、舞草や折神家、親衛隊、あるいは日本政府や米軍といった組織のコネクションを利用するのがドラマチックな動きができて面白いのですが、今回は柳瀬パパの
まず前提として、コネクションは所有しているとサブイベントを見ることができたり、組織経由で本筋とは関係無い依頼を受注することができます。いわゆるオープンワールド系のゲームでいう「おつかい」イベントですね。
所属が親衛隊だったら各キャラクターとの心温まる日常交流イベントを見ることができたり、アプリ版の調査隊にコネクションがあったら、南无薬師景光捜索やスルガさんを倒しに行くイベントに関与できたり。政府や軍にコネがあると、荒魂事件の裏側で蠢く様々な思惑の中で暗躍…など、本編ストーリーと同時進行で別視点を見ることができるのですね。これによって、刀使ノ巫女世界の断片を多視点から垣間見ることができます。
ですが、組織にも大小があり、例えば特別祭祀機動隊(綾小路武芸学舎)作戦本部とかにコネクションを持つと、ほぼ参謀である水科絹香お姉さま関連のイベントが中心になります。まあ私は別のキャラで走った時に、お姉さまの右腕として当然イベントはコンプリートしましたが(唐突な自分語り)
大組織だと大きな動乱や陰謀に間接的に関与できるのですが、比較的小さい組織、または人数の限られた組織だと発生イベントが限定的になってしまいます。絹香お姉さま関連のイベントだと、妹さんである綿花ちゃんにあげるプレゼント選びに付き合ったり綿花ちゃんに着せる服を一緒に選んだり綿花ちゃんの誕生日を一緒に祝ったり、そんな微笑ましいサブイベントばっかりですからね。
時々、荒魂退治をしたり、部隊長をしてた木寅ミルヤお姉さまと話したりもしましたが…絹香お姉さまがシスコン拗らせてるのを眺める以上に萌えるイベントは無かったので…(性癖吐露)
閑話休題。
所属する組織、関係している組織によって発生するイベント、受注可能な依頼が異なる、というところまで説明をしました。
では、今回、ホモちゃんがコネクションを所有している『柳瀬グループ』はどういった組織なのでしょうか?
ここで、昨晩確認した依頼のリストを眺めてみましょう!
・依頼1『柳瀬舞衣の動向調査』
依頼主:柳瀬孝則
内容:柳瀬の娘である柳瀬舞衣が家に帰ってこない。刀使としての守秘義務があるとは承知しているが、無事でいるのか、元気にしているのかを確認してほしい。
・依頼2『柳瀬舞衣の安全確保』
依頼主:柳瀬孝則
内容:執事の柴田から伝え聞いているが、鎌倉の折神家で事件があったそうだな。それに関して、娘があらぬ疑いをかけられていると聞く。柳瀬の娘に万一があってはいけない。身の安全を確保することは当然だが、事実無根の疑いを晴らすよう手を回して欲しい。
・依頼3『柳瀬舞衣の身辺護衛』
依頼主:柳瀬孝則
内容:舞衣が荒魂と交戦したそうだな。滅多に我儘を言わない愛娘の願いとはいえ、危険な任務に就くこともある刀使になることを許してしまったのは…いや、それは言うべきではないか。だが、親としては心配なのだ。それとなく護衛し、危険が迫る前に対処してほしい。
ーーーはい。どう見ても親馬鹿です。本当にありがとうございました(生暖かい微笑み)
時々、政財界の大物の護衛任務や、明らかにブラックな依頼が舞い込むこともあるのですが……少なくとも、このタイミング(舞衣ちゃんが鎌倉から戻ってこない)では、ほぼ100%で舞衣ちゃん関連の依頼が発生してくれます。……親馬鹿かな?
なーのーでー、ここで任務受注をしておくことで、鎌倉から京都に帰還しない理由を作ることができるんですねー。ほら! うちって柳瀬グループの傘下だから! あたしが断ったらパパとママが困っちゃうから! だから仕方ないの!
ーーー余談ですが、柳瀬グループ関連の依頼は、総じて報酬がかなり良いので金策としてはオススメです。純粋な刀使としては御刀の拵えを奢るくらいにしか使い道のないお金ですが、覚えておいて損は無いかもしれません。
さて、これでホモちゃんは依頼名目で鎌倉に残留することができた訳です(無敗) 各校で試走を繰り返して見つけた柳瀬グループルートなのですが、これはコネクションさえ所持して依頼受注しておけば安定するのでうま味です。強いて言うなら、今夜から折神屋敷に宿泊することができなくなりますが、どうせ明日夜には鎌倉を脱出するので問題ありません。駅前の安ホテルでも確保しておきましょう。
ーーーーーーーーーー
「それじゃあ、結局、岩倉さ…じゃない、早苗ちゃんも帰っちゃうんだねぇ」
「うん…。本当は待ちたかったんだけど。でも、こうなったら先に帰って、十条さんが戻ってきたときに迎えてあげられたらな、って思って」
鎌倉駅までの道すがら、いくつかの制服が混じり合う中を歩いていく。紅葉は、岩倉さんと距離を縮めるのに成功したようで、いつの間にか呼称も変えているようだった。互いが同級生だと判ったのも大きかったらしい。どことなく幼げな印象になってしまう平城の制服姿と、白系で統一された綾小路の制服。身長差も相まって、遠目では同級生に見えないだろう。尤も内面は、紅葉はフランクというか砕けた喋り方をするし、岩倉さんは柔和さと気丈さの両方を持っているから、岩倉さんのほうが大人びているけれど。
「葉菜は…何だっけ。学長からの呼び出し? だっけ?」
「それは本来、紅葉も一緒なんだけどね。戻ってくるように、って話は来ていたんだろう?」
「あ、あはは…。そこは、うちの家の事情というヤツなんだよぅ…」
目を逸し、言葉を濁す紅葉の姿に、僕は嘆息した。
お互いの秘密や、隠していたことを打ち明けあった夜から、『そういったこと』については隠さないようにしようと、僕と紅葉は決めていた。言えないことについては、『それは言えない』ってちゃんと伝えること。でも、嘘は吐かないようにしよう…それは、親友の間で結ばれた小さな約束だった。
隣で「家の事情…?」と、きょとんとしてしまった岩倉さんを見て、僕は顔に薄い笑顔を浮かべる。
「ほら、
「いやぁ、えっと…。それで、ちょっと、ね」
ぎこちなく笑みを浮かべる紅葉に、僕はニヤリと表情を作ってみせる。
「なんだい、他人を『お嬢様』呼びして揶揄う癖に、自分が言われるのは嫌なのかな?」
「もう…。あたしはお嬢様って柄じゃないもん」
口先を尖らす紅葉に、僕はごめんと笑いかける。……これくらいを誤魔化すには、別に嘘なんて必要ない。紅葉がそれなりの家の令嬢なのも真実、その関係で一緒に京都へ帰れないのも本当。学長から帰還するよう言われていたのも確かだし、今の数言に偽りは何一つ無い。ただ、全てを岩倉さんに話してはいないだけだ。
きっと、むくれてしまった親友は、少しも気づいていないのだろうけれど。
「ーーーじゃあ、一緒にいれるのもここまで、かなぁ」
鎌倉駅の改札前。
そこまで辿り着くと、紅葉はくるりと回ってこちらに向き直った。彼女は感情表現が素直だ。楽しかったら笑うし、不機嫌になったら頬を膨らます。だから、別れる段になって急に寂しくなったのも見て取れた。
「あ、そうだっ! 早苗ちゃんも連絡先、交換しよっ! こっちで何か判ったら連絡したいしっ、そうじゃなくても
思いついたようにスマートフォンを取り出す姿に、僕と岩倉さんは顔を見合わせて、そして笑ってしまった。ここ数日、非日常的な出来事が多かったからか、紅葉のあまりに日常じみた言動が微笑ましかった。
「……うーん。あとは、沙耶香ちゃんかー…。沙耶香ちゃん、ちゃんとスマホ持ってるのかなぁ…」
「あれ? 柳瀬さんとは昨日交換したんですか?」
「うんにゃ、舞衣ちゃんのは元から知ってたからねぇ…」
ぶつぶつと呟きながらスマホを凄まじい速度で叩いていく紅葉を、岩倉さんが不思議そうに眺めていた。ついで、というのも変だけれど、僕も話の流れに沿って連絡先を交換する。…学生としての身分で持っている私用のスマートフォン、つまり任務で使っている物とは別の連絡先になってしまうけれど。
「ーーーそれじゃ、またねっ! 何かあったら連絡するからっ!」
大げさに手を振る紅葉に背を向けて、僕は京都への帰路に就くことになった。……また会える、そう言っていたものの、再会が予想外の場所と時になってしまうことを、この時の僕らは想像もしていなかったのだった。
ーーーーーーーーーー
はい、葉菜ちゃんと岩倉さんを鎌倉駅で送り出しました。今回は岩倉さんを残留させることができなかったので、それによる変動ポインヨを思考しながら、とりあえずコンビニに直行します。
購入するのは「ユンユン刀帝ローヤル(栄養ドリンク)」「カロリーフレンド(シナモン味)」です。ここから丸一日半、ホモちゃんの食事はこの二種類だけです。購入したら鎌倉駅前のホテルに直行します。ホテルは、旅館、ビジネスホテルと選べるのですが、今回はラブホテルに向かいます。
……あ、訂正です。今回の環境は「PC版(全年齢ver)」なので、正確には「怪しい格安ホテル」ですね。
流れるような移動で格安ホテル()に入り、最上階の部屋を確保します。無意味に高い場所を確保した訳ではありません。一応理由はあります。
部屋に入ったら、速攻でステータス画面を開きます。限りなく地味ですが、順序よくテンポ良くボタンを押していきましょう。完了した依頼の報告、食事、テレビを見る、等、とにかく時間を先に進めるイベントを発生させます。この時、時間帯によっては非常階段を調べると「屋上に登ってみる?」と選択肢が出ます。夕方、夜、朝、昼と鎌倉の街並みをいつもと違う視点で見下ろすことができます。少し遠くに折神屋敷があるのも視認できますね。はぇ~すっごいおっきい…これは立派なお屋敷だぁ…。
茶番をしている時間はないので、屋上から降りて部屋に戻ったら、時間をスキップするためにあちこちを調べます。部屋の中にある大きなベッドを調べると、「運動」と「休憩する」のコマンドを選べます。あとゲーム内で24時間ほど進めないとイケないので、とりあえずホモちゃんには上限の六時間ほど運動して貰います。
……刀使饅頭少女運動中……
あ、筋トレの結果、筋力が少しだけ上がってくれたようです。ここで実行できる運動は、武道場や模擬戦に比べると経験値の獲得量が少ないのですが、無為に時間を潰すよりは有用です。
さて、あとは似たような動作の繰り返しになります。ホテルの一室で食事して運動して寝て休憩して、時々屋上に登ったり、テレビを見たり。夜が明けたら葉菜ちゃんに電話してみたり、そういった行動で時間を進めます。大きなイベントはありませんが、ステータスウィンドウの操作ミス等をすると「短縮できたのに…!」みたいな悔しさに包まれるパートなので、慌てず冷静にボタンをポチポチしましょう。ボタン押し間違えをしてしまっても、ロスは大きくないので焦らない精神が大切です。(21敗)
翌日夕方になるまでは加速です。(15倍速)
はい。再び動き出す直前に、ユンユン刀帝ローヤル(栄養ドリンク)を飲んでおきます。部屋を出たら、屋上に登り、すぐ戻って非常階段を駆け下りてホテル外へ向かいます。一度屋上に出るのは、「鎌倉市街マップ(夜)」を読み込ませるためです。これにより、「沙耶香ちゃん出奔」の関連イベント…アニメ本編でいう第七話後半に突入します。
ーーーさて、視聴者の皆様には「なんでこんな面倒な時間調整したの? 本編イベントに関与して進めればええやん! まいさや成分が足らん!」とお怒りの方もいらっしゃるでしょう。まま落ち着いて、アイスティーでも飲んでください。
ここで面倒な時間調整を入れたのは、何度か過去の動画でも存在を匂わせていた『経験値大量獲得ポイント』が存在するからです。ここで経験値を獲得するには、舞衣ちゃんと沙耶香ちゃんに接近しすぎてもダメ、しかし鎌倉市内に留まっていて、アニメ7話でのイベントを発生させる必要があります。
本走で採用したチャートは、ある意味で極めて汎用性の無いルートです。本編準拠シナリオなのに汎用性が無い? そうです、これは誰でもチャートに組み込めるような短縮要素ではなく、「この短縮要素を採用したいのでチャートを1から考える」といった類のモノになります。
わかりやすく書くと、「舞衣ちゃん沙耶香ちゃんが結芽ちゃんに敗北し、高津学長が神社エリアに移動した瞬間にプレイヤーが介入する」 アニメのセリフでいうと、高津のおばちゃんが『何をしている、結芽ッ!』と怒声を上げる瞬間を狙います。ここのタイミングで乱入します。与えられた猶予は、結芽ちゃんの『はいはい、わかりましたー」の台詞が表示されるまでの間です。
この瞬間だけ、経験値を一瞬で稼ぐことができます。
さて、ここで問題です。
現在のホモちゃんの状態は、スキル込みで接近していったため『隠密』状態です。
目の前には、背中を向けた鎌府のモブ刀使(5名)がいます。
ちなみに、ホモちゃんが今まで取得したスキルは『抜刀術』『暗札剣』『隠密剣』です。
はい、答えは簡単ですね!
モ ブ を 斬 っ て 経 験 値 に し ま す
ーーーーーーーー
それは、時間にすれば数秒の出来事だった。
糸見沙耶香の追跡に動員された鎌府の刀使達は、決して練度の低い人員では無かった。必要であれば武力で沙耶香を捕縛することも想定し、各員は一定水準以上の技術と連携を身につけていたのである。御刀こそ抜いていないものの、写シを身に纏った臨戦態勢であった。ーーー故に、彼女らが不覚をとった理由は、あまりにもその一撃が予想外の方向から飛んできたという事実に尽きるだろう。
「ーーーな…っ!?」
最初に倒れた隊員は、自分が背後から突き刺されたのだと理解しないまま意識を失った。次に倒れたのは、その隊員が突然崩れ落ちるのを視認し、けれど脳が認識せずに身動き一つ取れなかった隊員だ。背後からの刺突、闇を滑るような逆手袈裟斬り、斬り降ろしの体勢から更に斬り上げて…これで三人倒れた。
残りの二名は、事態は呑み込めないまでも咄嗟の判断で御刀を抜いた。そこまでの判断は正しかった。だが、抜いた刀を向ける敵を見失っている。
あらぬ虚空に突き出しただけの剣尖は、奇襲者にとって何の障害にもならない。己の身を守りたいならば、正面に構えるのではなく、背後に振り向いて切り払わねばならなかっただろう。結果、抜いた刀は一度も振るわれることはなく、二名とも背中から斬られ昏倒した。
「おっそいなぁ」
薄闇の中から、声がした。
声は女のものだ。少女と呼んで差し支えない、稚気の残る声色。だが、口振りからは苛立ちが漏れていた。
遅い、遅い、と。
「ーーー本当に、自分の動きが遅くて嫌になっちゃうねぇ。こういう大事になる前に先に動くのが仕事なのに、結局は後手になっちゃうんだよねぇ。…仕方ないっちゃ、仕方ないんだけどさぁ…」
「貴様…! 本多、紅葉…ッ!」
一人だけ無傷のまま放置された高津学長が、憎々しげに吐き捨てる。目の前には、白と灰色を基調とした綾小路武芸学舎の制服姿がある。
手に握られているのは鬼神大王波平行安。刃長は三尺余、柄が一尺三寸。大太刀にも近い拵えの御刀であるが、持ち主である刀使の長身によって、不思議と長さを感じさせない。
刀の担い手は、五人を斬った後とは思えない平然とした表情で口を開いた。
「どうも、一日ぶりだねぇ。……まさか、こんなことになるとは思わなかったけど。 大丈夫? 舞衣ちゃんと…沙耶香ちゃん」
紅葉は、背に二人を庇うように構える。
柳瀬舞衣と糸見沙耶香は、紅葉が乱入する前の戦いで消耗しており、石畳の上に崩折れたままだ。このまま戦いとなれば、守り通すのは至難だろう。増して、目の前に残っている戦力は、生半可な刀使などでは無くーーー。
「なぁんだ。おねーさん、今まで本気出してなかったんだ?」
「いやぁ、折神の屋敷で本気で斬り合う訳にもいかないでしょ。任務でもないのに刀を抜くほど、あたしはバトルジャンキーじゃあ無いし」
折神家親衛隊、第四席。燕結芽。
その目が、隠しきれぬ戦意に爛々と輝いている。神社の境内の暗闇を、隅々まで射抜く燃える瞳。燃えているのは好奇の色、宿るのは危ういまでの無邪気さ。目の前に蝶々が飛び込んできた虎のように、燕結芽は再び刀を抜こうとする。
「くっ…」
瞬間、結芽の表情が僅かに歪んだ。
柄を握ろうとしていた右手が、反射的に左胸に伸びる。宿痾となった息苦しさと疼痛が、これ以上は身体を動かせないと知らせていた。
もちろん、動くことはできるだろう。己の命を燃やし尽くして、結芽は身体を動かすことができる。肉体が悲鳴を上げても、それを捩じ伏せて刀を振るうことはできる…でも…。
「ーーー守りながらじゃ、おねーさんも本気で戦えないでしょ?」
こちらも不調だが、あちらも万全では無い。
結芽が望むのは一対一の真剣勝負、本気の死合いであって、足手まといを庇いながらの戦いなどではないのだ。それに…今まで手の内を見せずにのらりくらりと躱してきた相手が、素直にこの状況で立ち合いに応じるとも思えなかった。大方、二人を逃がすための時間稼ぎだとか、途中で逃走に切り替えるだとか…そういった、酷く詰まらない展開になってしまうことだろう。
だから、結芽は言う。
見逃してあげる、と。
高津学長が煩く喚いていたが、結芽にとってはそんなことはどうでもよかった。ただ、今戦っても何の意味も無い。結芽には、無駄なことをしている時間も余裕も無いのだ。次の機会、そう次があれば、その時は…。
「ーーー次は、本気で戦ってよね?」
ああ、自分の身体が保つうちに、早く次の機会が来てほしい。そう、結芽は心の裡で呟いた。
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幕間
―――二十年前。
駿河湾。江ノ島。
湘南の砂浜から突き出すように伸びたその土地は、島と呼ばれてはいるものの、実際には地続きの陸繋島である。堆積した砂州により海岸から伸びる独特な地形は古くから景勝地と知られ、また長年の浸蝕によって形成された岩屋や洞穴は信仰の対象ともなっていた。また、江戸時代には既に観光地として知られており、庶民から将軍まで幅広い身分の人々が訪れる名所となってきた歴史がある。開国に前後して多くの外国人が江ノ島を訪れ、ある者は動植物を、ある者はその特異な地形を、それぞれ研究したことでも知られている。
多くの人々に愛されてきた土地。
そこが、今、戦場となっていた。
後に『相模湾岸大災厄』と呼称されることになる未曽有の事態は、逃げ遅れた市民や誘導にあたった機動隊、自衛隊を含め夥しい数の死傷者を出していた。事件終結後の最終的な死者数は三千を超え、負傷者は二万人にも及ぶ。それは正しく『災厄』と呼称するしかない暴威であり、渦中の只中は戦場もかくやという壮絶な様相を呈していた。
見上げる空には、禍々しく胎動する大荒魂。
その周囲を飛び回っているのは、無数の飛行型荒魂である…まるで烏の群れのように飛び回る一体一体が、複数人の刀使でなければ応戦できぬほどの力を持っている。全てを相手取るとするならば、果たして全国の刀使を集結させても足りるかどうか。そして、被害が拡大している現状では悠長に構えているだけの猶予は無かった。
そして、少女たちは駆けていく。
少数精鋭の特務隊が編成され、まさに死地と化した江の島へと斬りこんでいく。
それは絶望的な状況下にあって、ほんの僅かな希望であった。
誰もが死を覚悟する状況にあって、なお誇りと御刀を以って進む少女たち。
それは一つの希望。それは一つの光。
荒ぶる神に対峙して、折れず曲がらず斬りて進む。
その姿は、人々がそうあれかしと願った英雄の姿。
―――戦後、彼女らは英雄として語られることになる。
警察庁・特別刀剣類管理局 局長 折神紫
刀使養成学校『伍箇伝』の学長となる五名の才媛
だが、そこには語られなかった者たちがいた。
記録から抹消された二名の刀使。大荒魂を封印したと伝えられる公的な顛末の裏にあった『真実』のために、語られることも無く消えた二人…柊篝と藤原美奈都。
そして、もう一人―――。
これは、語られなかった『一つの可能性』―――。
急傾斜の石階段を、登りながら荒魂と交戦する。
江ノ島は階段が非常に多い。島の最高地点の標高は60mほどであるのだが、島全体が傾斜地なのではと思うほどに斜面が続くのである。平時でさえ、多くの観光客が階段と斜面に悩まされる。年配者や子供では登るのも一苦労、そういった土地なのだ。
あと少し、もう少し戦えば大荒魂の下へと辿り着ける―――そう多くの刀使は己を奮い立たせたが、しかし、その『少し』が恐ろしく遠い。途中の道筋には何名もの刀使が力尽き、そのまま倒れ伏している。登って踏破するのも困難であるが、負傷者を救護し後方へと連れ帰るのも難題である……何しろ、階段と斜面に阻まれて、車両や担架が通行することも困難なのだから……。
故に、その瞬間。
相模雪那は死を覚悟した。
ふっ、と力が抜けて倒れ込む。
立ち上がろうとしても足に力が入らない。写シは剥がれ、いくら気力を振り絞っても再度張ることは叶わない。手に握っている筈の御刀、妙法村正も持ち上がらないほどに、腕の力も尽きてしまっている。
ああ…。ここで死ぬのだ、と。
奇妙に冷静になった思考が結論を出す。
もはや戦えず。既に足手まといだ。
なら―――ここで死ぬしかない。
「あぁ……。紫、様……ッ!」
嗚呼、それでも。
自分の遥か先を征くあの人は、あの人には勝ってほしい。生き残ってほしい。たとえ、己の命が尽きるとも、あの憧れの方にだけは、こんな場所で果ててほしくない……!
雪那の脳裏には、走馬灯のように幾百もの想い出が駆け巡った。お姉様、紫お姉様。それは、大きな背中だった。凛とした横顔だった。見事な太刀筋だった。至らない自分を導いてくれた、必死に追いかけるばかりの私の憧れだった。
憧れ、なんて陳腐な言葉では表現しきれない万感の想いを、相模雪那は抱いていた。少女めいたロマンチックで感傷的な言い方をするならば、折神紫は彼女の全てだった。大げさでは無く、事実として相模雪那は折神紫のために死ぬことができた。こんな小さな命でいいのならば、雪那は躊躇うことなく神にでも悪魔にでも捧げてしまうことができた。それは、とても純粋な素直な想いだった。
―――なのに。
「どうして……私のせいで撤退なんて……! お願いです、どうかこのまま見殺しに……ッ!」
それは、此処で死ねと命ぜられるよりも嫌だった。
足手まといになるくらいなら死んでしまいたかった。
こんな、自分が未熟なばっかりに、紫お姉様に迷惑をかけて、先輩たちに迷惑をかけて。それで、自分一人がおめおめと生き延びるというのか。それでもし、紫お姉様が死んでしまったとしたら、そんな世界でどうして生きていられるだろう?
力になれない自分が恨めしい。お役に立てない自身が不甲斐ない。特務隊の一員として目を掛けていただいたというのに、荒魂と刺し違えることさえできない己自身が、相模雪那にとって世界で何の価値もない塵芥に思えた。
「もう、これ以上―――」
だから、相模雪那には。
この瞬間の折神紫の呟きが理解できなかった。
「―――犠牲を出したくない……ッ!」
それは、ある種超然としていた折神紫の見せる、極めて人間的な内心の吐露だった。折神の家に生まれ、多くの刀使を率いて荒魂と相対する役目。折神紫は優秀な人間で、そして多くの者たちから慕われる善良な人間である……が同時に、まだ齢十七の乙女でもある。目の前の可愛らしい後輩を、単なる捨て駒と見做せるほど心は擦り切れておらず、組織の長として傲然と振る舞うには些か情愛が在り過ぎた。
「しかし、戻ると言っても……!」
「そうですよ! 行くも茨、戻るも茨! だったら……!」
隊員たちも、紫の言葉にすぐ肯定を返すことができない。怪我人を連れてこれ以上進むことができないのは理解る。しかし、来た道を戻るにしても、戦力を分散した上で一人を庇いながら延々と続く石階段を降りねばならないのだ。どちらがマシか、と判断するならば……ある意味で、雪那が主張する「私を見殺しにして欲しい」という主張は、大局的な正解ではあったのだ。
彼女たちは才媛である。一刻一秒を争う現状と、どちらを選択しても困難極まる判断。全てを救う最善が存在しない以上、何かを切り捨てて進まねばならない。それは頭では理解している。だが、それを理詰めだけで実行できるほどに彼女たちは無情ではなく、それ故に短い猶予の中で次善を模索する。
「いえ……大丈夫です」
「
呟いたのは、色白の肌が印象的な一人の刀使だった。
問い返したのは、蓬髪を後ろで一つ結びに結わえた刀使。
大丈夫とはどういう意味なのか、言葉を重ねるよりも先に、篝と呼ばれた少女が虚空へと呼びかける。
「出てきなさい。『
瞬間、影が落ちてきた。
忍者めいた気配の薄さと、風のような捉えどころのなさ。
数瞬前には誰も存在していなかった位置に、その少女は呼びかけに応えて出現していた。
平時ならばともかく、今この瞬間は誰もが殺気立った鉄火場である。言葉を交わし、どう進むか思案していたとしても、特務隊の誰一人として気を抜いていた訳では無い。周囲を警戒し、荒魂の気配を探している最中にあって―――その少女は、平然と最精鋭たる刀使たちの間合いに入り込んでいた。
「はーいっ☆ 呼ばれて飛び出て楓ちゃんですよーっ☆」
……場にそぐわない素っ頓狂な声がした。
「ようやくあたしの出番ですかっ出番ですねっ☆ もー、篝さまったら焦らしプレイがお好きなんですから…☆ で・もっ! この楓ちゃんが来たからにはご安心くださいっ☆ 篝さまのおやすみからおはようまでを見詰める楓ちゃんが、篝さまの
影は、緊張感のない声で捲し立てる変人だった。
背は高く、顔はまぁ美人と呼べる造りをしている。
しかし、その頬は緩み切っており……例えるなら、飼い主にじゃれつく柴犬のような……緊張感の欠片も存在しない表情をしていた。更に言えばその声は媚びたアニメ声である。
その変人は、格好も奇妙だった。着ている服こそ学生服だが、掌には黒色のオープンフィンガーグローブ、所々にシルバーアクセサリ、怪我をしていないのに巻かれた包帯、そして何故か頭部に装着されたホワイトブリム・・・奇矯、と云って差支えない風体である。サブカルチャーに詳しい人が見れば『中二病』と表現される中々に痛いファッションセンスであった。
「そ・れ・でっ☆ 篝さまは何をお望みですか? 篝さまのお望みならば、この不肖の楓ちゃん、たとえ火の中水の中、あるいはベッドの中から煉獄まで、何時何処へだって年中無休の24時間営業ですからねっ☆ あ、お代は篝さまのスマイルでお願いしますっ☆ 篝さまの笑顔はプライスレス、お金で買えない価値がありますからっ☆」
あまりに空気の読めない胡乱な物言い。
しかし、篝は優しく微笑みかけると言葉を継いだ。
「うん。楓ちゃんには、彼女たちの護衛をお願いしたいの」
「えぇー。そこは『最後の最後まで着いてこいッ!』とか『私の為に戦って死ねッ!』とか、そういうカッコイイ命令が欲しかったんですけどねぇ」
「・・・楓ちゃん?」
「うー。わ、わかりましたぁ篝さま…。
……こほんっ。―――確かに。その命令、承りましたっ☆」
きゃぴ☆と、態々口で擬音を出して、楓と呼ばれた変人の影が掻き消える。
同時、疾風と共に三尺余の御刀が閃く。
下り坂の退路を確保するために、篝の願いに応えるために、影が奔っていった。
―――――――――――――――――――――――――――
「―――あの日の事はまるで昨日のように思い出せる…。
私が今こうしてここにいられるのはお前達の母親のお陰だ」
和風の広間に、昔を懐かしむ声が響いた。
様々な因縁に引き寄せられるように、舞草の里に集うことになった刀使の少女たち。彼女たちを前にして、今や長船女学園の学長となった真庭紗南は二十年前の真実を語っていた。
「大災厄のあの日、大荒魂を鎮めるべく奥津宮へ向かった三人。一人は私の姉、折神紫。一人は姫和さんのお母さん、柊篝。もう一人は・・・可奈美さんのお母さん、藤原美奈都」
言葉を継いだのは、折神紫の妹であり真実を知る当事者の一人である、折神朱音だ。
その昔を思い出す声色には、過去に対する後悔の念と、目の前の奇縁に対する複雑な想いが乗っていた。
「相模湾大災厄の大荒魂を鎮めた本当の英雄は、貴女たちの母親です」
「そして。そんな英雄に……我々は何も報いることができなかった」
過去を詳らかに語る大人たちの表情は、険しいモノだ。それは、自分たちが救われたということ、そして、救ってくれた彼女たちを犠牲に生き残ってしまったも同然だということに起因している。朱音の実姉である折神紫は大荒魂と同化し、柊篝と藤原美奈都は共に早逝している。加えて、二十年前の因縁が、目の前の少女たちに巡り巡っているのだ。それは責任ある大人になってしまった紗南や朱音にとって、苦々しくも背負わねばならぬ業のようなものだった。
「でも・・・おかしいデスね? 元々、特務隊は全部で8人だったんデスよね? 姫和ママと可奈美ママの存在が、公的に『居なかった』モノにされたのは今聞きましたが、その場にいた『もう一人』のコトは誰も知らなかったし、そもそも記録上にそんな刀使はいなかった、と。・・・その『楓』とかいう刀使、一体何者だったのデス?」
「彼女は、『柊篝』の……いえ、『柊家』に関わる縁者だったと思われます、が」
「篝先輩からも詳しい話を聞けず仕舞いでな。おそらく、荒魂を鎮める儀式にまつわる、何かしらの『役目』を抱えていた家の者だとは予想がつくが―――」
一通り語り終えた辺りで、話題は横道に逸れていた。
二十年前の大災厄の際、突然に渦中へ現れた一人の刀使。『楓』と呼ばれたその少女は、篝の指示に従うように退路を確保し、撤退する少女たちの支援にあたっていた。だが、その少女が何者であったのか、なぜ篝だけは面識があったのか……その詳細を知る者はいない。
だが、真庭紗南は視線を僅かにずらすと、一言も発さずに黙っている少女を見遣った。
正確には、その少女が座る横に置かれた御刀を見た。
銘は『鬼神大王波平行安』
刃長は三尺余、柄が一尺三寸。大刀と見紛うような、特徴的な拵え。
「―――真相は、闇の中さ」
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