いつか2人が見た宇宙 (みん提督)
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プロローグ 宇宙へ…

初めまして。みー提督です。
初めて二次創作を書いてみました。

拙い文章ですが、よろしくお願いしますm(__)m


2198年12月 地球極東管区日本州静岡県富士宇宙港

 

「総員!敬礼!」

 

士官の掛け声と共に敬礼をする。

 

こうして艦隊を見送るのもこれが最後だろう。

 

誰もがそう思っていた。私もその一人だった。そうだ、あの艦隊は恐らく一隻も戻っては来ないだろう。

 

暗黙の了解というやつだろうか、それを口に出すものはいない。

 

別段、あの艦隊に家族がいるわけでも、親しい友人がいるでもない。なのに、何故か泣きそうになってしまう。

 

アレが最後なのだ。あんなにたくさんあってまさしく、地球の誇りであった宇宙艦隊がいまや、20隻ぽっちの艦隊だ。

 

そう思うと未だに夢を見ているような感覚になる。

 

何かとてつもなく長くて、悲しい悪夢を。

 

_____________

 

「元気…無いね…」

 

上を向くと彼女がいた。幼なじみの岩元奈美だ。

とはいっても表情はいつもと変わらない。何も考えてなさそうな間の抜けた顔だ。

私はその顔がおかしくて食べていた食事を吹き出しそうになった。

いくら不味くても栄養価が高く、空腹を満たすものだ。吹き出すのは流石にはばかられた。

 

「元気そうだね」

 

ぶっきらぼうに奈美は言う。

 

「そうだね。奈美の顔見てると元気でるよ」

 

「ありがとう」

 

奈美はまた、表情を変えずに固形食料を口に運ぶと途端に苦い顔をした。

 

「やっぱり?」

 

私が聞くと南美は小さな声で、

 

「…嫌い」

 

とだけ呟いた。奈美は固形食料が大の苦手なのだ。ただでさえ好き嫌いの多い奈美にとって戦争で疲弊し、食料の配給が滞ってる現状は何よりも耐えがたき苦痛であったのだろう

 

「もっとお肉食べたい…」

 

食事に関しては文句たらたらである。

 

「仕方ないよ。肉は特に配給量が少ないし、次の配給までは我慢しなきゃ」

 

そういうと決まって奈美は、

 

「最悪…」

 

と呟くのであった。このやり取り自体何度目かわからない。

だが、私はそれで良かった。絶望的なこの現状で彼女と一緒にいると和んだ。

 

食事が終われば短い休憩を挟んですぐに勤務に入る。

といっても、基本的には画面とにらめっこしている。

戦争末期の疲弊している状況でもやることは平時とあまり変わらない。

 

また短い休憩がはじまる。そしてその後はまた画面とにらめっこ。

 

同じことの繰り返しだ。だが、ふとした時に同僚の会話が聞こえた。

 

「なぁ、聞いたか?」

 

「何をだ?」

 

「イズモ計画がそろそろ本格的に始動するって」

 

「はぁ?!マジで?!」

 

近くで聞いていた私も驚いた。まさか、もうそんな段階に入っているとは。

言うまでもないが、イズモ計画とは地球を脱出するという、文字通りの最終手段である。

同僚たちの会話は続く。

 

「なんでそんな急に?」

 

「イズモ計画の選抜メンバーが近い内に集められるらしい」

 

彼は話を続ける。

 

「おまけに、脱出船もほぼ完成しているんだと」

 

「じゃあ、本当なんだな…」

 

一人はひどく落ち込んでいるようだった。

それもそのはずだ。故郷の星を見捨てようというのだから。

 

私は静かに退室した。まだ仕事が残っていたが、とてもそんな気にはなれなかった。

 

極東管区司令部中央棟の非常階段。ここは、折からのエネルギー不足で薄暗い照明が付くのみで監視システムも切られていたため、サボるには格好の場所であった。

 

案の定、奈美がいた。彼女はサボり魔で有名だ。

 

「八島が来るのは珍しい」

 

彼女はいつもの眠そうな目でこちらを見つめた。

私は少し笑って見せて、

 

「2人の時は楓でいいってのに」

 

「わかった。楓」

 

相変わらず愛想がない。だが、彼女はそこがいいのだ。

 

「吸う?」

 

彼女が煙草を差し出した。

 

「いいの?」

 

煙草は今や貴重品だ。地表が干からび、農業生産が壊滅した現在ではこういった嗜好品は特に希少なものだった。

しかも彼女が差し出したのは2193年製。つまり、本格的な遊星爆弾攻撃がはじまる前の最後の天然物だ。

彼女曰く、最後の1箱らしい。

 

「うん」

 

なんて長ったらしく思考していたが、彼女は短く返事をしたお礼を言って一本貰う。

彼女は古いタイプのライターを取り出すと慣れた手つきで自分の煙草に火をつけた。

その後、私に煙草を咥えるよう指示すると私が咥えた煙草に自分の煙草を押し付けた。

いわゆる、シガーキスだ。少し面食らってしまったが、ともかく、煙草に火をつけてもらったわけだ。

 

久しぶりに吸ったが、やはり、不味い。

少し吸い込むとすぐに咳き込んでしまった。

 

「不味い?」

 

「うん」

 

私は正直に答えた。彼女はまたボーっとしながら煙草の煙を見つめ始める。

 

「いつまで続くんだろ」

 

彼女がポツリと呟いた。

 

「らしくないね。弱音なんて」

 

私は煙草で咳き込みながら彼女に言った。

私も同じことを考えていた。

 

―いつまで続くのか―

 

誰にもわからない。私にも、奈美にも。軍人だろうが、研究者だろうが、わからない。

 

いつまで続く?

 

考えないようにしていたが、やはり気付くとこのことばかりだ。

 

私たちはいつまでこの地下都市に閉じ込められるのだろうか?

 

不安しかない。本当の意味での青い空と、美しい海をもう一度見ることは出来るのだろうか?

 

私にはわからない。

 

もう家族もいないし、友人と呼べる人物も奈美だけだ。

 

それにこんな赤錆た星に今さら愛着は湧かない。

 

イズモ計画は悪くないものだと思っていた。

だが、私と奈美は選抜メンバーではない。

地球残留は決定事項だ。

 

だが、滅び行く地球に取り残されることに何故か嫌な気分はしない。

むしろ清々しくもあった。

 

だがやはり、私たちにはたった1つだけ気掛かりがあった。

 

「フネに乗れなかった」

 

携帯灰皿に煙草を押し付けたあと、奈美はポツリと言った。

 

そうだ。私たちはお互いに約束をしたのだ。

 

―フネに乗ろう。私が艦長で、奈美が副長―

 

そんなことを言っていた。煙草の火を消した後、私は奈美に質問した。

 

「もし、もしも、地球が救われて、またフネに乗れるとしたら、貴女は乗る?」

 

奈美は短く答えた。

 

「うん」

 

「そう。安心した」

 

私はそう告げた。

 

「楓も?」

 

「もちろん」

 

私は頷いた。

 

「その時が来たらいいな」

 

奈美が呟いた

 

「きっと来るよ」

 

何故か私は自慢気に言った

 

「なんでそう言いきるの?」

 

奈美が質問する

 

「わかんないけど、そんな気がする」

 

「変なの」

 

奈美が少し笑った。彼女の笑顔を見るのは久しぶりだった。

 

「じゃ、また」

 

そう言って彼女は私のほっぺにキスをした。

こういうのを然り気無くしてくるのが彼女の意外なところで、私が彼女を好きな理由だ。

 

「うん。また」

 

彼女が行った後、煙草の匂いが残る非常階段でしばらくぼーっとしてた。

 

「いつか、宇宙(そら)へ…ね…」

 

私も奈美も、まだ知らない。

私たちは数年後に、地球、いや、宇宙の命運に大きく関わる重要なある出来事に出会うことを。

 




ここまで読んでくれてありがとうございます(*`・ω・)ゞ

一応、シリーズモノなのでこれからも続編をちびちび書いていきます。

ただ、不定期かつ、他のシリーズ始めたりもするので投稿は遅れるかもです。

気長に待ってもらえると幸いですm(__)m

あと、オリキャラの2人は21歳で成人済みです。

最後に、ここまで読んでくれてありがとうございました!


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第1話 第8浮遊大陸奪還戦 前編

プロローグに続き第1話です。

舞台はとんで2202年。楓たちが初めて実戦に参加します。

本編の第8浮遊大陸奪還戦を自分の解釈を交えて構成してます。
それと、階級は本編の自衛隊式ではなく、通常の軍隊式にしてます。

何卒ご了承下さいまし。



西暦2202年12月6日。

 

地球からおよそ420光年のある宙域にて。

 

漆黒の宇宙空間に小さな揺らぎが起こった。それは瞬く間に大きな揺らぎとなり、その中から薄氷に包まれた物体が姿を表した。

 

薄氷は瞬時に砕け、その中から寒色系の塗装の宇宙戦艦が姿を現した。

 

その一隻を始めとし、次々と揺らぎの中から艦隊が出現していった。

 

そうして集まったのは100隻以上の大艦隊。

 

それは、ガトランティスに占領された第8浮遊大陸基地を奪還するべく派遣されたガミラス軍辺境警備第38任務部隊を支援するために編成された地球連邦防衛軍特別混成艦隊であった。

 

その内の一隻にある宇宙巡洋艦がいた。

それは八島楓少佐が指揮する村雨改級宇宙巡洋艦〈ながしの〉であった。日本の戦国時代の戦の名前に由来する本艦は復興後の地球にて建造された新型の宇宙巡洋艦であった。

 

新型とはいっても外観は旧村雨級と変わらない。

ただし、機関は最新式の波動エンジンになっており、主砲も陽電子衝撃砲に換装され、魚雷もヤマトの空間魚雷と同じものを積んでいる。

 

能力的にはガミラス艦にも引けをとらず、仮想敵であるガトランティス艦にも十分に対抗可能となっていた。

 

「ワープ終了。全艦異常なし、データリンク正常」

 

「了解。ガミラス艦隊との合流に備えよ」

 

航海長の報告に黒い艦長コートを着込んだ女性が答える。

彼女が八島楓少佐である。

 

ガミラス戦役時には一介の本部附き士官であったが、戦後行われた艦長選抜会にて優秀な成績を残したため、26歳の若さで巡洋艦の艦長に抜擢されたのである。

 

しかし、艦長を含めたクルーのほとんどは戦闘未経験者であった。

 

それは他艦も同じであり、ガミラス艦隊もそうであった。

 

これには両国に事情があった。

 

地球はガミラス戦役にて壊滅した艦隊を再編するべく、旧型艦艇をグレードアップし、早期に戦力を再編しようとしていた。

しかし、同時期に始まった〈波動砲艦隊構想〉によって優秀で経験豊富な者が皆、優先的にこちらに回された。

結果、新地球艦隊は主に実戦経験の少ない新兵によって構成されたのである。

中にはかつてのヤマトクルーである古代大尉が指揮する〈ゆうなぎ〉などの艦もあったが、それは極少数であった。

 

一方のガミラスはデスラー体制の崩壊により、各地で混乱が生じた。

これに便乗し、政権奪取を試みる者、火事場泥棒的に対抗勢力と抗争を起こす者など、武装蜂起が多発。

国内が不安定になっていた。

"バランの悲劇"による主力艦隊の戦力ダウンもあり、これらの蜂起を鎮めるのにガミラス軍は宇宙を奔走していた。

 

結果、手薄になっていた辺境領土に位置する第8浮遊大陸基地が奪われる結果となったのである。

 

辺境警備の要衝である第8浮遊大陸基地が敵にも占領されたとなれば、他の交易路も連鎖的に占領されかねない。

その懸念から、ガミラス軍はこれを奪還するべく第38任務部隊を中心に本土からの援軍を合わせた連合艦隊を編成しようとするも、上記の理由により思うように行かず、結局各戦線から余剰戦力を集めるもガトランティス艦隊の半分程度の170隻が限界であった。

 

そこで、ガミラスは同盟国である地球連邦に支援を求めたのである。

地球連邦はこれを快諾し、艦隊を派遣することとなった。

しかし、条件としてある新鋭艦の実地運用試験を行うことを提案したのだ。

ガミラス側は当初この提案を了承しかねてたのだが、戦力的に見ても地球艦隊の参戦は必要不可欠であるのは明白で結局了承された。

 

かくして、地球政府の思惑が多分に絡んだ作戦が始まったのである。

 

――――――――――――――――

 

「ガミラス艦隊8時の方向より接近」

 

船務長の報告を聞きその方向を見ると見慣れた緑色の艦が見えた。

 

「あれか」

 

「はい。ガミラス帝国軍辺境警備第38任務部隊です」

 

通信長が答える。彼も含め、艦橋クルーは私を除き男性だ。

 

別段、女性クルーが珍しいわけではないが、女性艦長は比較的少ない。

後続の駆逐艦には友人が艦長の艦もあるが。

 

「旗艦ワイオミングより入電。作戦宙域に達した。各艦、ガミラス艦隊との連携を密にし、前進せよ」

 

通信長の報告を聞き横を見るとちょうど、ガミラス艦隊が合流した所だった。

地球艦とは全く違うシルエットをもつガミラス艦隊だが、ひときわ目立つ艦があった。

ゼルグート級装甲突入型一等航宙戦闘艦だ。

 

「にしても、相変わらず装甲突入型は派手なタトゥーを入れてますな」

 

砲雷長が言うように3隻のゼルグート級には特異な紋様が入っていた。

 

「あの紋様と、前方に展開している巨大な盾が特徴ですからね」

 

副長が答える。装甲突入型の最大の特徴である艦首前方に展開している盾〈臣民の盾〉のことだ。

大層な名前が付いているが元々は貴族座乗艦を守るべく装備されているモノで云わば、ガミラス貴族の闇の一つである。

これを製造させるために臣民に重税を課し、さらには臣民は身を呈して貴族を守るべしという身勝手な考えに基づき命名されたという代物で本来は貴族を解散させた際、本艦もろとも解体されるはずだったのだが、この盾がガトランティスの決戦兵器〈火焔直撃砲〉を防ぐのに有効であると判明したのだ。

そこで、貴族専用艦であったゼルグート級をそのまま対火焔直撃砲用の盾艦として運用することにしたのだ。

因みに特徴的な紋様は古代アケーリアス文明の遺跡に多く遺されているモノで〈守られるもの〉の意味があるとされ、貴族たちの間で弾除けの願掛けとして流行っていたのだ。

 

そんなことを考えていると警報音が鳴った。

敵艦隊を捕捉したのだ。

 

「前衛ガミラス艦隊、ガトランティス艦隊を発見。交戦距離まであと5分です」

 

「総員、第一種戦闘配置。砲雷撃戦に備えよ!」

 

地球・ガミラス両艦隊の全艦が臨戦態勢に移った。

本来ならば高機動力を持ってして三方からの突撃戦法が定石となるのだが、上記するように練度不足の艦隊では高度に連携がとれることが前提のこの戦法には無理があった。

しかし、臣民の盾に隠れて火焔直撃砲を耐えながら前進する以上、結局は正面火力のぶつかり合いである進航戦をとるしかなかったのだ。

 

しかし、数で言えば敵が僅差で多く、片やこちらは新兵ばかりの艦隊。

 

苦戦を強いられるのは目に見えていた。

 

しかし、艦隊将兵たちの間ではある不穏な噂があった。

 

それは、

 

「本当に…この作戦に参加するんでしょうか」

 

少し俯きながら通信長が独り言のように言う。

 

「"あの艦"ですか?」

 

副長が尋ねる。

 

「そうです…でも本当に"あの艦"が来るなら…"アレ"を使うというなら…俺たちは一体…」

 

「そこまで。戦闘が直に始まる」

 

私は彼を制止した。それ以上は聞きたくなかった。

 

「ハッ!申し訳ありません」

 

彼はすぐさま謝罪すると自分のコンソールにまた目を向けた。

(わかっている。きっとこの作戦には別の意図がある)

 

私を含め全員がわかっていることだ。

 

だが、今は考えない。

 

目の前に集中しよう。

 

私は帽子を被り直した。

 

そして目の前をキッと見つめる。

だが、ふと私は怖くなった。次の瞬間にはあることを祈っていた。

 

(奈美…どうか、どうか…死なないで)

 

後続の駆逐艦TB-105の艦長である友人の無事をひたすらに祈った。

 

次の瞬間、右舷に見えていたゼルグート級が火焔に包まれた。

 

こうして、第8浮遊大陸奪還戦が始まったのである。

 

それは、後戻り出来ない暗い未来へと地球が踏み出した戦いとなった。

 




というわけで1話終了です

こんな感じでキリがいいところで分けます

大体10~15話くらいのストーリーになる予定です



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