デジモンメモリア マギアデコード (彩花乃茶)
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舞台・設定資料

物語の設定です。


魔法少女

キュウべぇと契約し、願いを叶えた少女達の事。願いを叶えた少女達は魔法少女として魔女と戦う使命を背負わされる。

 

魔女

祈りから生まれる魔法少女に対して、呪いから生まれる存在。異次元に結界を作って閉じこもり、自分達のやりたい事をやっている。デジモンに捕食されることもあれば、逆に魔女の口づけによりデジモンを操り人形にすることもある。

 

神浜市

物語の主な舞台となる町。見滝原市から離れた地域にある新興都市で人口は約300万人。高速道路や鉄道など交通網が発展している一方で街そのものの歴史は古く、城や古い町並みが現存する。

 

ウワサ

神浜市に現れる魔女とは異なる正体不明の存在。魔女と共通点こそ多いものの、異空間を作るのではなく現実世界に直接展開するなどの違いもある。最大の違いは倒してもグリーフシードを落とさないこと。

 

デジタルモンスター

通称デジモン。かつてはデジタルワールドに住んでいたが現在は現実世界に広がるデジタルエリアに身を潜めるのがほとんど。大災厄によってデジモン単体で進化をする力が失われている。

 

デジタルワールド

デジモン達が暮らす電脳世界。終末の千年魔獣が巻き起こした大災厄にて現在のデジタルワールドは崩壊してしまっている。

 

デジタルエリア

デジタルワールドの破片のエリア。そのエリアのマスターデジモンがデータを保有している。なお周辺に住んでいるデジモンもエリア展開時に巻き添えを受ける可能性がある。

 

マスターデジモン

デジタルエリアのエリアマスターの事。データ容量が多いため、通常の個体よりも強く凶暴になる。マスターデジモンに口づけをしてる魔女はデジタルエリアに住んでいることもある。

 

デジヴァイス

多機能型デバイスシステム。制作者は不明。量産自体は可能で魔法少女達が持っているのはすべて量産型。

・デジモンの進化

・デジモンの収納(ジェネラルのみ軍隊レベルの収納可能)

・ダメージを受けたデジモンの治癒

・デジクロス(テイマーはこの機能はなし)

・その他、スマホと同様の通信機能

などが備わっている。

 

テイマー

デジモンと人間が1対1で進化しあう関係の人間。段階的な進化を可能とし、互いの絆が極まったデジモンは究極体やその力をも上回る進化を遂げる可能性もある。

 

ジェネラル

デジモンと1対多の軍団を築く関係の人間。1体のデジモンを極めるわけではないのでその多くが究極体へと至ることはないが、デジモンとデジモンを合体させる『デジクロス』という戦術を駆使した戦いを可能としている。

 

ハッカー

デジモンを強制的に従える人間のこと。デジモンの進化は不可能だがデジモンを強制デジクロスをさせて使役することが可能。ただしデジクロスさせることが可能なのはデジモン1体に対して1体まで。

 

進化

デジモンの進化段階の事。幼年期Ⅰ・Ⅱから成長期→成熟期→完全体→究極体へと進化していく。中には究極体を更に超えた存在へと進化する可能性を持つ個体もいる。上記の通り人間のパートナーが存在しないデジモンは進化の可能性を失ってしまっている。中にはハイブリット体やアーマー進化という特殊な進化をしているデジモンもいる。

 

デジクロス

進化とは違いデジモン同士を合体させる事でパワーアップをさせるシステム。パートナー同士の信頼関係×デジクロスしたデジモン達の強さ=戦闘力となるため、その強さはジェネラルの絆次第。デジクロスさせられるデジモンの数に制限はない。

 

強制デジクロス

ハッカーが強制的にデジモン同士をデジクロスさせる事。デジクロスはデジモン1体に対して1体しかデジクロスさせられないが、ハッカーの人数によってチーム×チームのダブルクロスやそれ以上のグランドクロス、グレートクロスが可能。

 




第一話「デジタルモンスターのそのウワサ」


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デジタルモンスターのそのウワサ

久しぶりにデジモンな気分になったので思い切って始めることにしました。まだマギレコキャラの全員にパートナーが決まってるわけでもないのでボチボチやっていきます。


《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるこのウワサ》

 

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『噂』というものは何処から生まれるのだろう?

 

人から人へと広がっていくのが噂になっていく。じゃあその噂は何処から生まれるの?

《デジタルモンスター?ゲームの話?》

 

《違うの違うよホントの話》

 

 噂は噂。真実もあれば嘘もある。だけどこれは『ホント』の話。

《電子の世界にはデジタルワールドって世界が広がっていてね、そこにはデジタルモンスター『デジモン』っていう生き物がいるの》

 

《デジモン?》

 

《デジモン達はみんなデジタルワールドに住んでいたけど、ある日突然悪いデジモンによって壊されちゃって、デジモン達はあら大変。デジタルワールドに住んでいられなくなっちゃったの》

 

《住む場所がなくなっちゃったデジモン達はどうしたの?》

 

《住み家を失ったデジモン達は電子の世界を跳び越えて現実世界で活動するようになっちゃったの》

 

《現実世界ってこの世界のこと?》

 

《デジモン達にも良い悪いがいてね、良いデジモンは復活させようとそのデータを集めてる。だけど悪いデジモンは失われたデジタルワールドの代わりにこの現実世界を支配しちゃおうって考えているのもいるの》

 

《キャーコワい!》

 

《それでね、それで。良いデジモン達は人間をパートナーに選んで一緒にデジタルワールドを救ってもらおうとしてるってモッパラのウワサ》

 

 そう。これはデジモンと心を通わせる少女達の物語。

 

 

~いろはside

 

 最近同じ夢をみる。

 

 知らない女の子と病室の夢。その子がベッドで本を読んだり食事をしたりするのをただ眺める夢。

「~~~~!」

 

 その子は私に向けて何かをいうけど、私にはその声が聞こえない。静かで平穏な風景。だけどどうして胸が苦しくなるの?ねぇ、あなたは私の・・・。

 

 

 

 

「きゃぁぁっ!?」

 

 私の名前は環いろは。自分の夢の中に出てくる謎の少女と小さなキュゥべぇの手がかりを探すため神浜市まで来ている魔法少女です。私は現在『魔女』の張っている結界の中で魔女の使い魔と戦っている最中だったりします。

「ヒッヒッ!ダメね、あの子じゃダメ!ダメ!ミーならもっと強いのを選ぶネ」

 

「何だろう?何だか使い魔っぽくないのも紛れてるような・・?」

 

 私は使い魔とは何処か違うモザイクがかった『何か』に気づいたので、今は人命を優先して魔女の結界に捉えられた子供を連れて撤退しました。

「ふぅ・・。何だったんだろうあれ?」

 

「貴女。『アレ』が見えたのかね。名前は?」

 

「た、環いろはです」

 

 私に話しかけてきた金髪の女性でした。明らかに『魔法少女』とは思えない女性はまるで魔女の結界内にいたかの口調で話しかけてきたのです。

「あの・・貴女は?」

 

「見えたのならこれを渡しておこう」

 

「えっ?何ですかこれ?スマホ?」

 

 手渡されたのはスマートフォン型の銀色のデバイスでした。私がそれを手に取ると、そのデバイスの色は薄い桃色に変化しました。

「そのデバイスはデジヴァイス。魔法少女として戦う君の役に立つだろう」

 

「えっ?あ、ありがとうございます。・・・あれ?」

 

 『デジヴァイス』。その電子機器の事をそう教えてくれた女性はあっという間に私の前から姿を消してしまいました。

「何だったんだろうあの人?」

 

 私は女性が何者だったのかを気にしつつも、デジヴァイスに視線を移す。

「私、スマホ持ってるんだけどな。もしかして魔女の結界内でも使えるスマホだったりするのかな?」

 

 軽くデジヴァイスを弄ってみたけど、元よりあまりスマホの操作が得意ではない私にはそれが普通のスマホと何が違うのかこの時は分かりませんでした。

 

 

 

~???side

 

「さて、環いろはといったかな。彼女は果たしてどう動いてくれるかな」

 

「貴女、あの子にもデジヴァイスを渡したの?」

 

 神浜市のベテラン魔法少女、七海やちよが話しかけてきた。どうやら七海やちよは私が環いろはにデジヴァイスを渡したことが不満なようだ。

「何が不満なのかな。七海やちよ」

 

「あれを渡すということは魔女以外の敵も相手にしなくてはならなくなるという事なのよ。貴女は魔法少女の犠牲を増やしたいの?」

 

「犠牲?とんでもない。むしろその逆だよ。これ以上の犠牲を出したくないから資格ある者にデジヴァイスを渡している」

 

 そう。私はこれ以上『あの惨劇』を繰り返すわけにはいかない。故に魔法少女にデジヴァイスを託さなければならないのだ。

「あの子も資格があるというの?とてもそうは思えないけど・・」

 

「それは君が決めることではない。彼女のパートナーが決めることだよ」

 

 私は七海やちよの隣にいる蒼い毛皮を被った彼女のパートナーを見ながらそう告げる。

「それに資格だけではない。キミにひと際強い『想い』を感じたからデジヴァイスを託したように、あの子にもひと際強い『想い』を感じたからね」

 

 デジタルワールドが崩壊し、『進化の力』を失ったデジモン達を進化させるカギとなるのはデジヴァイスと人の『想い』だ。私はその進化への可能性を信じてみることにしよう。

 

 

~いろはside

 

「はぁ。今日も何も分からなかった」

 

 小さなキュゥべぇの手がかりを探すため神浜市を探索してみたけれど、神浜市で目撃されているということ以外手がかりのない私は今日も小さなキュゥべぇを見つけることができませんでした。

「もう少しで何か思い出せそうなんだけどなぁ」

 

 夢の中の少女の事についても大切な事をあと少しで思い出せそうなんだけど、思い出せない。そんなもどかしい気持ちで帰路を歩いていたら昨日逃した魔女の結界に気づきました。

「・・・よしっ!」

 

 放っておくわけにもいかないと思った私は単身結界内へと入りました。ここ神浜市の魔女は他の地域の魔女よりも強く、そして数も多いらしいです。

「えいっ!」

 

 神浜市の魔女は使い魔も強く、私の実力では使い魔にも苦戦してしまうほどのレベルです。この間は人を助けるためだけだったのでどうにかなりましたが、今回はそうはいきません。

「てりゃぁ!」

 

 私のクロスボウの一射は使い魔へと命中して、まずは1体倒すことはできたんだけど・・・ここは魔女の結界内。使い魔も当然1体だけじゃない。

『落ち着いていろは』

 

「えっ?」

 

 何処からか声が聞こえた気がしたので私は辺りを見回してみたけど・・・この結界内には私以外の人はいません。

「と、とにかく集中しないと」

 

 よく解らないけど、今は目の前の使い魔に集中しよう。そう判断した私は魔力を溜めながら使い魔たちの動きを見る。神浜市の使い魔は連携もするし、かたまって行動することもあるからです。

「えい!やぁぁっ!」

 

 私は一射一射確実に使い魔を射抜き、目の前の使い魔を倒して奥に進んでみたらここの魔女と思われる砂場の遊び道具ような魔女が現れました。

「ここの魔女!」

 

 私は魔女の初撃を躱して矢に魔力を溜め込みます。一撃で確実に倒すための魔力を溜めようとしていた矢先、その『異変』が起きました。

「えっ?」

 

 突如として魔女の結界が『別の何か』へと変わるようにジャングルのような別世界へと変貌したのです。

「ど、どうなってるの?これも魔女の力?」

 

『違うよ。ここは~~~だ』

 

 また誰かの声。その声はここを何処かだと教えてくれたけど、はっきりと聞き取れなかった。

「えっ?何?」

 

 けれど今分かりました。先ほどからの声はあの女性から貰ったデジヴァイスから聞こえていたという事に。しかしそれは誰かからの着信という感じではないっぽく思えます。

「君は誰?何を知ってるの?」

 

『僕はアグモン。デジモンだよ』

 

 アグモンと名乗った相手は自身を『デジモン』だと告げて来ましたけど、私にはその『デジモン』というのが何の事なのかわかりませんでした。

「っ!赤い・・クワガタ?」

 

 突如としてジャングルから出てきた赤いクワガタのような怪物は魔女を鋏で挟むとそのまま魔女を食べ始めました。

「いったいなんなの・・・あれ」

 

 あれも『デジモン』なのかな?

「モキュ!」

 

 もう魔女は倒された。かといってあのクワガタの怪物にどう対処したら判断がつかない。そう悩んでいた私の視界に探していた小さなキュゥべぇが入りました。

「なんでここにあの子が!?」

 

 私は小さなキュゥべぇがここにいたことに驚きつつも、キュゥべぇを助けようと駆け出しました。

「っ!」

 

 当然ながらクワガタの怪物は私が小さなキュゥべぇを助けようとしていることに気づかれて、クワガタの怪物が迫ってきました。

「こ、こないで!」

 

 私はクワガタの怪物へと矢を放ちましたが、その矢はクワガタの怪物の鋏に当たってしまい、咄嗟のこともあって魔力の溜めが中途半端だったこともあってあっさりと弾かれてしまいました。

「やっぱり私の攻撃じゃ・・・」

 

 私の攻撃は効かない。そう思った私はこの場は逃げることが最善だと判断し、小さなキュゥべぇを抱えて走り出しました。

「はぁ・・・はぁ・・」

 

 ジャングルの中へと逃げ込むことで何とかクワガタの怪物から逃れることはできましたが、ジャングルの中にはキュゥべぇはおろか使い魔とも違うような生き物たちがたくさんいました。

「この子達も・・・デジモンなの?」

 

『そうだよ。だってここは~~~だもの』

 

 また聞き取れない単語をデジヴァイスの中のアグモンがしゃべった。

「ねぇアグモン。ここ、出口はないの?」

 

 魔女の結界の中ならば入ってきたところに戻ったり、魔女を倒しさえすれば結界の外へと出られるんだけど、何故かここには出口らしい出口が見当たらなかった。結界の中が書き換わったから、出口の場所も変わっちゃったのかな?

『たぶんここはさっきのおっきいのが大半のデータを持っているエリアなんだよ。だからあのデジモンを何とかすれば、元の世界に戻れると思うよ』

 

 データ?エリア?どういうことだろう?まるでここがデータの世界みたいに言ってる気がする。

「モキュ!」

 

「あっ、ちょっと!」

 

 小さいキュゥべぇは警戒心が強いと聞いてたはずなのに、小さいキュゥべぇはの手からすり抜けてデジモン達へと近づいていきました。

「モキュモキュ」

 

「キミ、しゃべれないの?もしかしてデジモンじゃなかったりする?」

 

 アグモンと同じく普通に言葉を話す球根のようなデジモンでしたが、小さなキュゥべぇがしゃべれないことに驚くような反応をしてます。私的にはデジモンが普通に喋ってることの方が驚きなんだけど・・。

「あっ!人間だ!おいら初めて見た!」

 

「ホントだ!人間だ!」

 

 私に気づくなりスライム状のデジモンだったり、丸っこいのだったりする小型のデジモン達がこちらに集まってきました。どうやらこの子達は人間を見るのは初めてなようです。

「ねぇねぇ人間さん。お名前はなんていうの?」

 

「私の名前は環いろはだよ」

 

「いろは!」

 

「いろは!」

 

 私の名前を教えるなりデジモン達はピョコピョコとはねながら私の名前を連呼し出しました。カワイイ。ちょっと撫でてみたいな。ってそんなこと考えてる場合じゃない。今はあの赤いクワガタの怪物みたいなデジモンを何とかしないと。

「ねぇ、あの赤いクワガタのデジモンを何とかする方法を知らない?」

 

「クワガーモンの事?」

 

「クワガーモンはこのジャングルエリアのデータを持ってるデジモンだよ!」

 

 あの赤いクワガタのデジモン、クワガーモンっていうんだ。

「いろはは元の世界に帰りたいんだよね?」

 

「うん。そうなんだ」

 

「だったらクワガーモンを倒せばデジタルリンクがオフになっていろはは現実世界に戻れるはずだよ」

 

 やっぱりあのクワガーモンってのを倒さないと戻れないんだ。

「もしクワガーモンを倒したとしたら君達はどうなるの?」

 

「大丈夫。わたし達もクワガーモンのジャングルエリアに捉えられただけだから、エリアが消えてもどうにもならないよ」

 

 この空間が消えたらここのデジモン達はどうなるの?そんな心配をしていたけど、どうやら大丈夫みたい。

「なら君達のためにもクワガーモンを倒さないとだね」

 

 そうは言ってみたけれど、私の攻撃じゃ倒せそうにないしどうしよう。何か作戦があればいいんだけど・・・私1人じゃ何も思い浮かばない。

「ねぇいろは。それ、もしかしてデジヴァイスじゃない?」

 

「え?うん。そうだけど・・・」

 

 デジモン達は私がデジヴァイスを持っている事に気づきました。

「ってことはいろははテイマーなの?」

 

「え?テイマー?」

 

 テイマーって何の事だろう?

「違う・・と思うよ」

 

「じゃあジェネラル?」

 

 また知らない単語が出た。

「どっちも違うよ。私は魔法少女・・・っ!!」

 

 どちらも違うと否定しているとさっきのクワガーモンが私を見つけて迫って来た。

「バイバイ!また会えたら会おうね!」

 

 ここにいたらあの子達も巻き込まれちゃう、そう思った私はクワガーモンを引き付けるように牽制しつつ走り出しました。牽制攻撃をしながら逃げる私は必死に頭を回転させて何とかする方法を考えようとしたけど・・・駄目、全然思い浮かばない。

『いろは。ボクが戦うよ。ボクをデジヴァイスから出して!』

 

「えっ?君が?でもどうやって?」

 

『デジヴァイスを出してリロードって言うんだ!』

 

「えっと。リロード!」

 

言われた通りリロードと告げてみたら、デジヴァイスから光が溢れ出て、その光から1体のデジモンが出てきた。

「デジヴァイスからデジモンが出てきた?」

 

 私は目の前にいる小型の恐竜のようなデジモンを見た後、デジヴァイスが反応していたからその画面へと視線を向けた。そしたらデジヴァイスの画面が勝手にそのデジモンのデータを表示した。

 

『アグモン』

・成長期

・爬虫類型

・ワクチン種

 小型の恐竜のような姿をした爬虫類型デジモン。まだ成長途中なので力は弱いが性格は怖いもの知らず。鋭い爪を武器としていて戦闘においても威力を発揮する。力ある偉大なデジモンに進化する可能性を秘めている存在だ。必殺技は火炎の息を吐く『ベビーフレイム』だ。

 

「えっ?何これ?この子がアグモン?」

 

 デジヴァイスに表示された説明文は目の前の小型恐竜『アグモン』の説明。この子がアグモンってことなのかな?まったく訳の分からない私だったけど、そんなことは気にしてないアグモンはクワガーモンへと単身向かっていってしまった。

「あ、危ないよアグモン!」

 

「ベビーフレイム!」

 

 アグモンは必殺技のベビーフレイムを放ったけど、クワガーモンには通用しなかった。

「アグモンの攻撃も効いてない。どういうことなんだろ?」

 

 私は試しにデジヴァイスをクワガーモンにかざしてみると、そのデータも表示された。

 

『クワガーモン』

・成熟期

・昆虫型

・ウィルス種

 頭部に巨大な鋏を持った昆虫型デジモン。強靭なパワーと硬い装甲に守られていて、特にハサミの部分のパワーは強力で一度挟みあげた敵は相手が息絶えるまで離さない。必殺技は硬質の物質を簡単に切り裂いてしまう『シザーアームズ』だ。

 

「成熟期?」

 

 成熟期は成長期の1つ上の段階。その時はまだそれが分からなかった私はアグモンの手を掴んでクワガーモンから逃げ出しました。

「いろは、どうして逃げるの?」

 

「どうしてって?アグモンでも勝てなさそうだからでしょ?」

 

「ううん、勝てるよ。いろはとなら」

 

「どう言う事?・・・あれ?」

 

 ポケットが光っている事に気づいた私は、その中にあるデジヴァイスを取り出してみる。そしたら予想通りデジヴァイスが光っていた。

「いろは。その力をボクに!そしたらボクは今より強いボクになれる!」

 

「よく分からないけど、お願いアグモン!」

 

 今はアグモンを信じる他ない。そう決断した私はデジヴァイスをアグモンへと向けると、デジヴァイスから放たれた光がアグモンを包み込みました。

「アグモン!進化!」

 

 光の中から出てきたアグモンは先ほどまでの小型の恐竜みたいな姿と打って変わって、3本の角がある大きな恐竜の姿へと進化していました。

「グレイモン!」

 

 グレイモン。そうアグモンだったデジモンが名乗ると、デジヴァイスが再びそのデジモンのデータを表示してくれた。

 

『グレイモン(青)』

・成熟期

・恐竜型

・ウィルス種

 頭部の皮膚が硬化して甲虫のような殻に覆われた恐竜型デジモン。鋭い爪に巨大な角を持った非常に攻撃的なデジモンであり、必殺技は口から超高熱の火炎を吐き出して相手を焼き払う『メガフレイム』だ。

 

 グレイモン青ってことは別の色のもいるのかな?そう一瞬考えてしまっていると、グレイモンはクワガーモン目掛けて駆け出して、その鋭い爪を振るいました。

「よしっ!行って!グレイモン!」

 

 グレイモンの鋭い爪を受けたクワガーモンは大きく飛行バランスを崩した。今が攻撃のチャンスだ!

「えいっ!」

 

 私はその翼を撃ち抜くと飛行が困難になったクワガーモンは地面に落下しそうになる。

「メガフレイム!」

 

 そこにグレイモンの必殺技の『メガフレイム』が炸裂してクワガーモンはデータになるように消えていった。

「やったねグレイモン!・・・あれ?」

 

 グレイモンが光に包まれたかと思ったら、どういうわけかグレイモンはアグモンへと戻ってしまいました。

「疲れた~」

 

 力を使い果たしたアグモンはお腹の音を鳴らしながらその場に座り込んだ。

「お、お疲れ様アグモン」

 

 私はアグモンへと駆け寄って変身を解くと、魔女空間とは違う不思議な世界が現実の世界に戻った。後にその世界が『デジタルワールド』という異世界だったことを後に知ることとなるのですが・・・それはもう少しだけ後の話です。

 

 

 

 

~やちよside

 

「あの子、無事にデジタルワールドから抜け出せたようね」

 

 隣にはパートナーデジモンもいるようだし、本当にテイマーになったようね。

「だけどそれだけでこの町でやっていけるとは思わないほうがいいわよ。ガブモン」

 

「え?行くの?俺は気乗りしないなぁ」

 

 私はパートナーデジモンのガブモンとともに彼女を試すため2人のもとへと向かって歩き出した。

 




神浜デジモンファイルに
『環いろは&アグモン』が登録されました。

次回「貴女の覚悟を見せてみて」


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貴女の覚悟を見せてみて

アプモンはどのように扱えばいいのか流石に決めていませんが、それ以外のデジモンシリーズからは何かしらの形でそれぞれの作品を思わせるデジモンや要素を出せればと考えています。


~いろはside

 

「待ちなさい」

 

 不思議な世界から戻って来た途端、私は大人びた女性に呼び止められました。

「あの、何でしょうか?」

 

 呼び止められた理由が分からない。

「邪魔が入ったから遅くなったけど今からあなたをこの町から追い出させてもらうわ」

 

「町から追い出す?」

 

 いったいどうして?

「あなたにはこのデジタルワールドとリンクしてしまっている神浜市で生きていくのは無理。そう判断させてもらったわ」

 

 デジタルワールドとリンク?さっきの不思議な世界のことを言ってるのかな?

「嫌です。私、目的があってこの町に来たんです。だから!」

 

「だから何?目的も果たせずに死にたいの?・・・はぁ、分かったわ」

 

「通してくれるんですね!」

 

「えぇ、あなたがあなた自身とパートナーデジモンの強さを証明できればね」

 

 そう言った女性は魔法少女へと変身すると槍を構えて、その刃を私へと向けて来ました。

「ガブモン」

 

「だから俺は乗り気じゃないって・・。はぁ、分かったよ」

 

 ガブモン。そう呼ばれたデジモンはため息をつきながらアグモンと向かい立ちました。

「悪いな。俺のテイマーはこうやって人を試さないといけない性分なんだ。引くなら今の内だぞ?」

 

 せっかくあのキュゥべぇを見つけたのにどうしてこんな事に。

 

 それでも戦わなければこの先には進ませてくれない。そう思った私はデジヴァイスを取り出しました。

「アグモン!もう一度進・・」

 

「ちょっと待ったぁぁ~!」

 

 アグモンを再び進化させようとしたその途端、私と女性の間にもう1人魔法少女が割って入ってきました。

「いろはちゃんって言ったっけ?さっきのデジタルエリアでの戦い、見させてもらったよ。中々やるじゃん」

 

「えっ?はい。ありがとうございます」

 

「それでもやちよさんがいろはちゃんを襲うのは分かっていたからね」

 

 やちよさん?目の前の女性とこの人は知り合いなのかな?

「まったく趣味の悪い女だよ」

 

「お二人はお知り合いなんですか?」

 

「まぁね。アタシは十咎ももこ。そっちの意地悪な人が七海やちよって魔法少女ね」

 

「・・・私はこの町に無駄な死体を増やしたくない。それだけよ」

 

「はっ、良く言うよ。大方、魔女の数が減るからだろ。町に魔法少女が増えりゃ、自分の取り分が減る。だから調整屋も紹介せず力技で追い出そうとしてる」

 

 調整屋?いったいなんのこと?

「いい加減誤解されるのも気分のいいものじゃないわね。ねぇあなた」

 

「わ、私ですか?」

 

「確認なのだけれどさっきまであった結界の魔女はそこにいたマスターデジモンに食べられたのよね?」

 

 マスターデジモン。クワガーモンの事だよね。

「はい。食べられちゃってました」

 

「そう。じゃあやっぱりデジモン同士の戦いしかないようね」

 

 そう言ったやちよさんは水色のデジヴァイスを取り出すと彼女の隣にいたデジモンは露骨に嫌そうな顔をしました。

「はぁ~。せっかく戦いを避けられそうな流れになってたのに、ウチのテイマー様はこれだから」

 

 どうやらやちよさんのパートナーであるこの子は、戦いを好まない性格をしているようです。

「悪いね。ウチのテイマーは人を試さずにはいられない性分だからさ。相手になってもらうよ。そこのアグモン」

 

「あれ?まだボクは名乗ってないのによくボクの事を知ってるね」

 

「この町でデジモンとパートナーを組んでる魔法少女は少なくないからね。アグモンとパートナーを組んでるのもそこそこいるのさ」

 

 へぇ、この町には他にもアグモンがいるんだね。

「アグモンの進化となるとグレイモンよね。だとしたらサイズ的にも現実世界で戦うのは迷惑になるし・・・手頃なマスターデジモンのサーバーがあればいいのだけれど」

 

「なら丁度いいマスターデジモンを紹介しよう」

 

 やちよさんはグレイモンの事も知っていて戦う場所に悩んでいると、私にデジヴァイスをくれたあの女性もやってきました。

「貴女は昨日の・・・」

 

「やぁ、またあったね環いろは君。私の事はそうだね、ゲンナイとでも呼んでくれ」

 

 ゲンナイと名乗ったその女性は空を指差すと魔女の結界への入り口のような歪みが発生していました。

「魔女の結界?でも魔力は感じないし・・」

 

「あれはデジタルワールドへの入り口だね。ってことはあそこにまたマスターデジモンがいるってことだよ」

 

 ももこさんが言うにはあれがデジタルワールドへの入り口らしいけど、またクワガーモンみたいなのと戦わないといけないのかな?

「そうね。うちのガブモンもアグモンと戦うのは嫌がっているようだし、こうしましょう。先にあのデジタルワールドにいるマスターデジモンを倒せたら実力を認めるわ。ハンデとしてそっちはももこと2組で構わないわよ」

 

「あの、私は小さいキュゥべぇさえ見つけられれば別に・・」

 

 ひとまずの目的は既に果たしている。はずだったのだが、小さなキュゥべぇはクワガーモンのエリアを出るときにはぐれてしまったようでこの辺りにはいない。もう一度探しにいくしかないみたい。

「よし乗った!」

 

「ええぇ!?」

 

 乗り気じゃない私とやちよさんのパートナーデジモンに反して、ももこさんはやちよさんの挑戦に乗ってしまいました。

「あの、ももこさん。私は別に認めて貰わなくても・・・」

 

「これでこの堅物が認めてくれるってんなら安いもんさ。パートナーデジモン同士を争わせるのも見たくないしね。ようは勝てばいいのさ」

 

 それはまぁ・・そうですけど。

「・・・っ」

 

 もうやるしかない。そう決意を固めた私はアグモンとももこさんと一緒にデジタルエリアに飛び込みました。

「リロード!アグニモン!」

 

 ももこさんが赤いデジヴァイスから出したのは赤い鎧を纏った人型のデジモンでした。

「アグニモン・・!」

 

アグニモン

・ハイブリット体

・魔人型

・ヴァリアブル

伝説の十闘士の力を宿した、火の能力を持つデジモン。デジコアが聖なる炎と呼ばれるスピリチュアルファイヤーで包まれているため、炎を自在に操ることができる。必殺技は炎に包まれた拳から火炎竜を繰り出す『バーニングサラマンダー』だ。

 

 ハイブリット体。成長期や成熟期とはまた違うタイプなんだね。

「準備はいいようね」

 

「あっ、あのその前に確かめさせてください」

 

 私はついでにガブモンと呼ばれていたやちよさんのパートナーデジモンをチェックする。

 

ガブモン

・成長期

・爬虫類型

・データ種

毛皮を被っているが、れっきとした爬虫類型デジモン。恥ずかしがりやな性格でガルルモンが残していったデータを毛皮状にして被っている。他のデジモンから恐れられているガルルモンのデータを被っているため、身を護るための役割も果たしている。必殺技は炎を吐き出す『プチファイヤー』だ。

 

 

「確認はいいかしら?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 あのガブモンってデジモンもアグモンと同じで成長期なんだ。

「さっそく現れたわね」

 

 空を見上げるとさっそくここのエリアサーバーのマスターと思われるデジモンが現れました。

「このデータ量。間違いないわね」

 

 やちよさんはデジヴァイスでそのデータを確認しているので、私もデジヴァイスをかざして戦わないといけないデジモンのデータを確認する。

 

エアドラモン

・成熟期

・幻獣型

・ワクチン種

 

 巨大な翼を生やした幻獣型デジモン。空中からの攻撃を得意としていて、その咆哮は嵐を呼び、翼を羽ばたかせることで竜巻を巻き起こすぞ。かなり凶暴だが高い知性を持っている。必殺技は大きな翼を羽ばたかせ、鋭利な真空刃を発生させる『スピニングニードル』だ。

 

 エアドラモン。空の相手だなんて・・。

「やるしかないよいろは!」

 

 なんだかやる気満々のアグモンに反応するようにデジヴァイスが輝き出す。

「アグモン!進化だよ!」

 

「アグモン!進化!」

 

 アグモンが光に包まれて、光の中からグレイモンが出てきた。

「グレイモン!」

 

「へぇ、いろはちゃんのは青いグレイモンなんだ。珍しいね」

 

 ももこさん的には青いグレイモンは珍しいっぽいです。

「そんなに珍しいですか?」

 

「正当派なオレンジのグレイモンが主流だけど、知ってるなかには亜種のジオグレイモンってのもいたね。おっと、来るよ」

 

 そんな話をしている間にもエアドラモンは私達に向けて真空の刃を飛ばしてきました。

「きゃぁ!?」

 

 幸いその攻撃は私達には当たらなかったけど、空高く飛んでるエアドラモンにこっちの攻撃は届きそうにないかな。

「えい!」

 

 私は試しにエアドラモン向けて矢を飛ばしてみる。私の矢なら攻撃は届くけど、届いたところで、大したダメージにはなっていなかった。

「メガフレイム!!」

 

 グレイモンは火炎を飛ばして攻撃しようとするけれど、グレイモンの攻撃じゃやっぱり届いていなかった。

「バーニングサラマンダー!」

 

 アグニモンは拳から火炎竜を飛ばして攻撃したけれど、エアドラモンはその一撃をあっさりと避けてしまった。

「くそ!降りてこいこのヤロー!」

 

 自分の攻撃が届かないアグニモンは声を荒げて叫んだけれど、それをあざ笑うように飛び回るエアドラモンは変わらず降りてこない。

「やっぱり戦い方がなっていないわね。行くわよガブモン」

 

 ガブモンにやちよさんはデジヴァイスを向けると、そこから光が放たれました。これは、進化の光?

「ガブモン、進化よ」

 

「応さ!ガブモン!進化!」

 

 進化の光に包まれたガブモンは、4足歩行の青い獣へと姿を変えました。

「ガルルモン!」

 

ガルルモン

・成熟期

・獣型

・ワクチン種

オオカミのような姿をした獣型デジモン。知能が高く、肉食獣的な俊敏さと冷静さを持っているぞ。青白銀色の毛皮はミスリル並の硬さを持っていて、肩のブレードはあらゆるものを切り裂いてしまう。必殺技は青い炎を放つフォックスファイヤーだ。

 

 やっぱりやちよさんのパートナーデジモンも進化した。だんだん分かって来たよ。成長期が進化すると成熟期ってのになるんだね。

「ガルルモン!行きなさい!」

 

 魔法の槍を無数に出現させたやちよさん。ガルルモンはその槍を足場にして上へ上へと昇って行ってはエアドラモンへと噛みついた。

「ガルルモン!フォックスファイヤーよ!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

 ガルルモンの放った青い炎によって大ダメージを受けたエアドラモンは地上へと落下してくる。

「強い」

 

「だな・・!」

 

 やちよさん、分かってはいたけどやっぱり強い。パートナーデジモンも、やちよさん本人も。

「これぐらいの力量差、ももこなら想像できたでしょう。あなた達の負けも決まったようなものね。だけど特別にチャンスをあげるわ」

 

「えっ?」

 

「あなたとグレイモンだけでエアドラモンを倒しなさい。そうすればあなたの実力を認めてあげるわ」

 

 私とグレイモンだけで・・?

「私とガルルモンの食べかけなのはちょっと残念だけどね」

 

「人を馬鹿にするのもいい加減にしろよお前!」

 

「待ってアグニモン。ボク達ならやれるよ」

 

 アグニモンはやちよさんのそれに突っかかっていこうとしましたが、グレイモンがそれを止めてくれました。

「行こういろは!」

 

「・・・うん!」

 

「言っておくけどマスターデジモンはデータ容量が多いからそこそこダメージを与えているからと言って油断しない方がいいわよ」

 

 やちよさんは親切にもまだ油断しない方がいいと教えてくれました。この人、やっぱりただ私を追い出したいというわけじゃないみたい。

「さぁ、貴女の覚悟を見せてみて」

 

「やぁ!」

 

 私は魔力を集束させた一矢でエアドラモンの巽を射抜くと、その動きが少し鈍った。

「グレイモン!」

 

 そのチャンスを見逃さなかったグレイモンはエアドラモンを鷲掴みにして動けないようにしてくれた。

「このチャンスを逃がしはしない!」

 

「メガフレイム!」

 

 私が必殺の一矢を放つと、それと同時にグレイモンがメガフレイムを放ちました。前後からそれぞれの攻撃を同時に受けたエアドラモンはデータとなって消えていくと、エアドラモンのデジタルエリアから現実世界へと戻りました。

「ふぅ、何とかなった~」

 

「モキュ~」

 

 元の世界に戻ってきた途端、お腹の音を鳴らしながらグレイモンはアグモンへと戻ってしまいました。すると戦いを近くで見ていたのか小さなキュゥべぇが駆け寄ってきてくれました。

「どうだやちよさん!」

 

「どうだ!ガルルモン!」

 

 ももこさんとアグニモンは得意げにやちよさんとガルルモンを指差すと、やちよさんのため息とともにガルルモンはガブモンに戻りました。

「どうしてももこが得意げになっているんだか。実力は認めるわよ。最初から大丈夫だろうとは思っていたしね。見れば実力はだいたい分かるわ」

 

「だからトドメを譲ってくれたんですね」

 

「いや、人を弄んだだけだ!」

 

「別に弄んではいないわ。ただ目的があっただけ」

 

 目的?

「ちょっといじめすぎたかしらね。その小さなキュゥべぇは現れてくれないから。気が付いたら神浜市からいつものキュゥべぇは消えていて、その子だけになっていた。イレギュラーな存在、どう考えても危険な因子にしか思えないのよ」

 

 そう告げたやちよさんは槍を小さなキュゥべぇへと向けて来ました。

「そういうことか!」

 

「プチファイヤー!」

 

 アグニモンはすぐさま小さなキュゥべぇを庇おうとしてくれましたが、ガブモンの攻撃を受けて一瞬だけ怯まされてしまい、私の手元からキュゥべぇが離されてしまいました。

「これでようやく消せるわ」

 

「この子が何をしたって言うんですか?」

 

「これからするかもしれないでしょう。リスクは排除すべきよ」

 

 消させない。やっと見つけた手がかりなんだから。

「そいつと関わるとロクな目に合わないわ。庇おうとすると貴女まで串刺しになるわよ」

 

「嫌です!絶対に除けま・・・っ!?」

 

 絶対に除けない。そうやちよさんに告げようとした途端、急に意識が遠のき出す。

「いろは!」

 

「いろはちゃん!」

 

 最後に聞こえたのは私を心配するアグモンとももこさんの声。そして抱きしめ直したキュゥべぇから何かが流れ込んできた。

 

 これは・・・。記憶?

「お姉ちゃん!今日も来てくれたんだね!」

 

 お姉ちゃん?

「あーあ。早く元気になってお姉ちゃんと学校に行きたいなぁ」

 

 ずっと入院してるこの子。私・・何処かで・・。

 

 私は知っている。この子の苦しそうな顔も。嬉しそうな顔も全部。

 

 この子の名前、何だっけ?懐かしくて、愛おしいあの響き。

「お姉ちゃん、私、本当に退院できるの?」

 

「できるよ!うい!」

 

 うい。そう、ういだ。ずっと入院していて、身体が弱くて今にも消えてしまいそうな私の大切な妹。

「お願いキュゥべぇ!妹の、ういの病気を治して!ういを元気にしてあげて!」

 

 思い出した。忘れてしまっていた私の願い。

「環いろは、それが君の願いなんだね」

 

 ういの、妹の病気を治す。それをキュゥべぇに願って私は魔法少女になったんだった。

 

 

 

 

「アグモン!いろはちゃんが目を覚ましたぞ!」

 

「ホント?いろは!」

 

 私の意識が戻ると、目の前にはももこさんとアグモン。そしてもう1人知らない人がいました。

「大丈夫かいろはちゃん?」

 

「えぇ、私は大丈夫です。あの、ここは・・・」

 

 見知らぬ場所で寝込んでいたので、私は辺りを見回す。やっぱり知らない場所だ。

「ここは調整屋。倒れたあなたをももこが運んできたのよ」

 

 調整屋?

「私は矢雲みたまよ。よろしくねいろはちゃん」

 

「あっ、はい。ご迷惑をおかけしてすみません」

 

「良かったよいろは~!」

 

 ずっと心配してくれていたアグモンは私に抱きついてくる。

「アグモン、私思い出したよ。私が魔法少女になった理由を」

 

「ももこに頼まれて寝ている間にソウルジェムを調整させてもらったわ。ついさっきまで忘れていたみたいね。貴女自身の願いを」

 

 ソウルジェムを調整?何のことだろう。まぁいいや。その事は後で聞こう。

「私、妹のために・・・ういのために魔法少女になったんです」

 

 どうして忘れていたんだろう。こんな大切な事。

「そんな大切なことどうして忘れていたのさ?」

 

「分かりません。ずっと一緒に暮らしていたはずなんです。入院してしまうまでは一緒の部屋で寝て、一緒にご飯も食べていました。でも消えているんです。みんな。なかったことになっているんです。お父さんもお母さんもいつも通りだし、私も一人っ子だと思い込んでいた。まるでこの世界にういが・・・妹が最初からいなかったみたいに」

 

「そんなことって・・・」

 

「魔女の仕業かしら?」

 

 2人は半信半疑ながらも話を聞いてくれる。

「あたしも長い事魔法少女をやってるけど、そんな話は聞いた事ないぞ?」

 

「でも他にそんな事ができるのって・・・」

 

「分かりません。まだ思い出せてないことが何かあるのかも」

 

 そう。まだ私は『環うい』を思い出したばかり。

「決めました。私、また神浜市に来ます。今度はういを探しに」

 

 きっとこの町に手がかりがある。そんな気がするから。

「あのねいろはちゃん、嫌な事を言うかもしれないけれど、その記憶が実は嘘のもので・・・何か理由があってその記憶が植え付けられた。そういう可能性もあるのよ」

 

「そうですね。でも私、この記憶を信じます。ういの事を考えるだけで愛おしい気持ちになって、鮮明になった思い出があの子がいたって実感を与えてくれる。そして何よりも今の私は『環ういという妹がいる環いろは』だって思えるから」

 

 だから。だから私は・・・。

「今の私を、私は信じたいんです」

 

 

 

 

~ゲンナイside

 

「ふむ、そんな事があったのか」

 

 環いろはと七海やちよが勝負をした翌日、私は調整屋のもとを訪れて環いろはがキュゥべぇに願った祈りの事を、そして彼女がその記憶を取り戻した事を聞いた。

「まぁ、ゲンナイさんに話しても仕方のないことなのは分かっているのだけれど・・・」

 

 私は魔法少女などではない。なので魔法少女の事情を聞いたところで、それをどうこうする資格はない。

「気にするな。私はあくまでデジモン側の側面の中立だからな」

 

 同じ中立の立場として情報交換は必要だ。

「それにしても今回の子、いろはちゃんに随分と興味深々みたいねゲンナイさん」

 

「おや?そう見えるか?」

 

 確かに環いろはに注目しているのは事実かもしれないな。いや、正確には環いろはの可能性に注目『しようとしている』だが。まだせいぜい興味が湧いた程度の段階だ。

「魔法少女の感情エネルギー・・・コードがデジモン達の進化の可能性を決める。アグモンに限った話でも進化の可能性は様々だ」

 

 楽しみにしているよ環いろは。君の示す進化の可能性をね。

 




神浜デジモンファイルに
『七海やちよ&ガブモン』
『十咎ももこ&アグニモン』が登録されました。

次回「ウワサには気を付けなさい」


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ウワサには気を付けなさい

 地元では映画はやってくれないのでDVDを待つことにします。


~いろはside

 

 ずっと不思議に思っていた。どうして自分の部屋が半分だけ何も置かれていなかったのかを。それはまるで誰かの居場所がぽっかりなくなったみたいで、何故か見る度喪失感で胸が切なくなった。

 

 でもやっとその理由が分かった。

「ここにはあなたがいたんだね。うい」

 

 私の大切なたった1人の妹。あなたのため、私は魔法少女になったんだ。

 

 お父さんとお母さんは何も置きたがらなかったっていうけれど、私はそんな記憶はないし・・・今なら思い出せる。

 

 ここにはういのベッド、こっちにはういの机があって、同じ部屋になった時は凄くはしゃいでたっけ。

 

 それともう1つ思い出した事があって、同じ病室に入院していたういの親友。灯花ちゃんとねむちゃん。とっても頭が良くてなんだか不思議な子たちだったけど、きっとあの2人ならういの事を覚えている。覚えていて欲しい。あの子達が何か手がかりになるかもしれない。

「う~ん、確かここを曲がって坂を登ると病院のはずなんだけど・・・どうしてこんなにスマホって難しいの~!」

 

『大丈夫?いろは』

 

 手がかりを探すべく私はういの入院していた病院に向かおうとしていたんだけど、スマホが元より得意ではない私は現在迷子真っ最中になってしまっていた。

『ねぇいろは。もしかしてそれ、逆さまなんじゃないの?』

 

「モキュモキュ!」

 

 デジヴァイスの中のアグモンと肩に乗っている小さなキュゥべぇに指摘されて、私は地図の観方が違ったことに気が付いた。

「ところでアグモン。アグモンっていうかさ。そもそもデジモンってなんなの?」

 

『う~ん、何ていえばいいのかな?ボク達はこことは別の世界、デジタルワールドってところに住んでいたんだ』

 

 デジタルワールド。アグモンとパートナーになったからか、ようやく聞き取れた。

『だけどね。もの凄く強いデジモンのせいでデジタルワールドが壊れちゃって、ボクらはみんなこっちの世界に来ちゃうことになったんだ」

 

「そうだったんだ。それでなんで魔法少女とパートナーになったりしているの?」

 

『それは・・・』

 

「それは?」

 

『ボクにもよく分からない』

 

 分からないんだ。

『ゲンナイって人がいうにはボクらの進化は人間との絆が必要らしいんだけど・・・難しい話はボク苦手なんだ」

 

「そっか。あっ、見えてきた!」

 

 もう少し詳しい話を聞きたかったけど、アグモンも知らなそうだし。もう探していた病院にたどり着いちゃったから続きはまた今度だね。

 

 

 

 

 

「はぁ~」

 

 結論から言えばハズレだった。2人が覚えていなかったってわけじゃないんだけど、そもそも2人はもう退院しちゃっていて、病室にはいなかったんだ。病院の人に2人は今何処にいるのかも聞いてはみたけれど、個人情報だからって教えてももらえなかったし。

「いきなり躓いちゃったなぁ」

 

 灯花ちゃんとねむちゃん。私の記憶違いじゃないよね?

 

 

 

「ちょっとねむ!そんなところで革命する必要ないよね!」

 

 灯花ちゃんは宇宙の話を偉い人と議論するような凄く頭の良い子。

「物語で意表をつくのは当然の事。大富豪をしている時もまた同じ」

 

 ねむちゃんはお話を書くのが大好きで、ネットに載せた物語が本になるような子。

 

 2人とも才能に満ち溢れた子たちだったけど、いつもはよくケンカしあう普通の女の子だった。

「もういいよ!馬鹿ねむとは絶交だよ~だ!」

 

「大変結構なことだよ。僕からもぜひそうして欲しいね」

 

「もう2人とも、何回絶交したら気がすむの!」

 

 私はういとともにそんなやりとりを何度も見せられた。やっぱり記憶違いだと思えない。

「本当によく絶交って言ってたなぁ」

 

「絶交?」

 

「っ!」

 

 聞き覚えのある声に反応して振り返ってみたら、そこにはやちよさんが立っていた。

「やちよ・・・さん?」

 

「あら、覚えていてくれたのね」

 

「それはあんなに狙われたら流石に・・」

 

 流石に覚えちゃうよね。

「そうかもしれないわね。そう身構えなくていいわよ。危害を加えるつもりはないから。ただ気になる言葉が聞こえたから忠告をしようと思って」

 

 忠告?私に?

「いい?この町の中では『絶交』なんて言葉使っちゃダメよ」

 

「へ?」

 

「特に誰かと仲違いした時には絶対にね。言ったら最後、この町の絶交ルールのウワサに捕らわれてしまうわ」

 

「ウワサに捕らわれる?いったいどういうことですか?」

 

「こんな話聞いたことないかしら?」

 

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるそのウワサ》

 

《絶交ルールのそのウワサ》

 

《絶交って言っちゃうとそれは絶交ルールが始まる合図》

 

《後悔して謝ると嘘つき呼ばわりでさぁ大変。怖いバケモノに掴まって無限に階段を掃除させられちゃう。喧嘩をすれば1人は消えちゃうって神浜市の子供の間ではもっぱらのウワサ》

 

《キャーコワイ!》

 

「とまぁそんな感じの内容ね」

 

「今のが絶交ルール・・・ですか?」

 

「えぇ、絶交と言えば最後。何があっても謝罪の言葉を口にしてはダメ。関係を修復しようものならバケモノに捕まってしまうの」

 

「デジモンの仕業だったりは?」

 

 正直言って信じられない。デジモンの仕業と考えた方がまだ信じられる。

「可能性はなくはないわ。でも信じてはおきなさい。神浜うわさファイルの中では信憑性の高いウワサだから」

 

「かみ・・はま?」

 

「うわさファイルよ!神浜にはこういう謎のウワサが溢れているの!中には現実になって行方不明者が出ているものまであるわ」

 

「それこそやっぱりデジモンの仕業じゃないんですか?」

 

「・・・信じられないのも無理はないわ。そこにいる小さいキュゥべぇと同じぐらいイレギュラーな話だもの」

 

「モキュ!」

 

 私は近寄ってきた小さなキュゥべぇを抱きかかえる。

「イレギュラーって・・・やちよさんまだこの子を狙っているんですか?」

 

「それは貴女の回答しだいね。何も悪いことが起きてないなら狩る必要もないでしょう。それより貴女、あの後大丈夫だったの?いきなり倒れたけど?」

 

「あれは悪い事じゃないです。おかげで妹のことを思い出せましたから」

 

 私はやちよさんにういの事を話す。するとやちよさんは少し怪訝な顔をした。

「それは偽の記憶でも植えつけられたんじゃないかしら?」

 

『俺もそう思うな』

 

 やちよさんとガブモンも偽の記憶が植え付けられた可能性を示唆してきました。

「もしくは妹さんのために世界が改変されたか」

 

 改変?

「・・・さすがに大げさかしらね」

 

「大げさかどうかは分かりません。それでも私は思い出したことを信じていますし、妹を見つけたいと思っています。だから不思議な事は起きても悪い事は起きてません」

 

「そう。それなら私が言うはないわね。それに分からなくはないしね・・・貴女の気持ちも。とにかくうわさには気を付けなさい。忠告はしたわよ」

 

 そう言い残したやちよさんは私の元を去っていきました。

「絶交ルール・・現実になる噂かぁ・・本当にそんなものあるのかな?」

 

 やちよさんには昨日襲われたりしたけど、わざわざそんな嘘をつくような人には思えないし。でもまぁ喧嘩して絶交なんて言い出しちゃうのなんて小さい子ぐらいだよね。

「だから言ってんじゃない!!」

 

 歩いていると近くの場所から凄い怒声が聞こえてきました。私は気になってその場所へと視線を向けるとももこさんと2人の女の子がいました。

「もういい!かえでとは絶交だから!」

 

 わぁ、思いっきり絶交って言っちゃってる。

「あ~言った~。だったら私もレナちゃんとは絶交だもん」

 

 喧嘩相手の方も思いっきり絶交って言っちゃってるし。

『お前達、これで何度目の絶交だよ・・』

 

 アグニモンももう何度目か分からない絶交に呆れているみたい。

「とにかく落ち着いて話してみなよ。いったい何で2人は喧嘩しちゃったんだ?」

 

「ももこには関係ないでしょ!」

 

「そうだよ!ももこちゃんは黙ってて!」

 

 ももこさんは「一応リーダーなのに」と呆れながらも戸惑っていると、レナちゃんと呼ばれていた青い髪の女の子がこっちに駆け出してきました。

「ももこの過保護おせっかい!」

 

「あっ、ちょ、暴言吐いて逃げんな!って丁度いいところにいろはちゃん!そいつ捕まえて!」

 

 私に気づいたももこさんはレナちゃんを捕まえるよう頼んできました。

「ど、どうしよう?」

 

『ボクに任せて!』

 

「り、リロード!アグモン!」

 

 アグモンに任せる事にした私はアグモンを呼び出すとレナちゃんは一瞬だけ足を止めました。

「デジモン・・ってことはアンタも魔法少女ね。だったら・・リロード!」

 

 青い衣装の魔法少女姿に変身したレナちゃんはデジヴァイスを取り出すと1体のデジモンを呼び出しました。

 

ベタモン

・成長期

・両生類型

・ウィルス種

 四足歩行をする両生類型デジモン。大人しいデジモンだがひとたびベタモンを怒らせると体から100万ボルト以上の電流を発し敵を攻撃する『電撃ビリリン』を放つぞ。

 

「ひゃ、100万ボルト・・」

 

 某人気ゲームの人気ねずみの10倍の威力なんて。きっと人間じゃ耐えられないよ。いや、私、魔法少女だけど。

「ももこの知り合いか何か知らないけど、他人の問題に首を突っ込まないでよね!」

 

「電撃ビリリン!」

 

「ベビーフレイム!」

 

 ベタモンの電撃攻撃とアグモンの火炎攻撃がぶつかり合うと、土煙が周囲を舞いました。するとその土煙の中から出てきたのは・・・何と私でした。

「隙あり!」

 

 私が『私』に驚いていると、その『私』は私の横をすり抜けて行ってしまいました。

「事情も知らないくせに出しゃばるんじゃないわよバーカ!」

 

「くそ、逃げられたか」

 

 『私』に変身したまま逃げていったレナちゃん。私達は一旦近くのドーナッツ屋さんに入ることにしました。

「改めまして、秋野かえでって言います。パートナーデジモンはフローラモンです」

 

『よろしくね~!』

 

「こちらこそよろしくね。かえでちゃん、フローラモン」

 

 レナちゃんと喧嘩をしちゃってた女の子、秋野かえでちゃんもデジモンのパートナーがいました。この町の魔法少女はデジモンのパートナーがいる事が普通なのかな?

「それでどうしてさっき喧嘩になっちゃったの?」

 

「・・・・」

 

「ま~ただんまりか。まぁ君らの喧嘩は日常茶飯事だし?あたしも無理に言えとは言わないけどさ」

 

『いや、ここは無理にでも言わせてしっかりと仲直りさせるべきじゃないか?』

 

「やめてよももこちゃん、アグニモン。恥ずかしいよ」

 

「ハハっ。悪い悪い。でもまぁたいていレナが原因なんだけどな。レナってさっきの子ね。悪いヤツじゃないんだけどね。ちょっと口が悪いのと素直じゃないから・・。でもまぁあいつも明日になれば謝ってくるだろ。いつものパターンさ」

 

 そう聞かされた私はやちよさんの言っていた絶交ルールのウワサを思い出す。

「あのね、絶交ルールって噂が危ないって聞いて・・」

 

「いろはちゃん、それ誰に聞いたの?」

 

「えっと・・・やちよさんから」

 

「ハハっ、やっぱりね。真に受けなくていいよ。あの人、うわさオタクだからさ」

 

 ももこさんは「うわさが現実になるわけがない」と否定していると、デジヴァイスが何かに反応した。

「えっ、これは?」

 

「近くにマスターデジモンがいるって反応さ」

 

 立ち上がったももこさんに続く形で私とかえでちゃんも外へと出て行くと、ドーナッツ屋さんの近くにデジタルエリアが展開しようとしていた。

「あの、少し気になったんですけど・・・デジモンがみんな悪いわけじゃないですよね?何でマスターデジモンは倒さなくちゃいけないんですか?」

 

 それは些細な疑問だった。どうしてデジタルエリアを展開してるマスターデジモンだけは倒さなくちゃいけないんだろう?

「あたしも詳しくは知らないんだけどさ、ゲンナイさんが言うにはマスターデジモンは人間の負の感情に悪影響を受けてすぐ暴走しちゃうらしくてさ、一度倒して卵に戻してあげないと、それを取り除いてあげられないらしいんだよ」

 

 つまり見つけたら倒してあげるのがデジモンのためってことなんだね。そう考えれば心おきなく倒せる気がする。

「そんじゃまぁ、いっちょこの3人でデジモンを相手にしますか!」

 

 私達はデジタルエリアへと入っていくとどういう訳か使い魔らしきものもウロウロと辺りを歩いていた。

「どうして使い魔が・・・?」

 

「あ~。このパターンか」

 

「どういう事です?」

 

「どうやら今回のデジモンは魔女の口づけを受けて、魔女に操られちゃってるデジモンってことさ。強いデジモンは魔女を食べちゃう事もあるけれど、たまにその逆もあるんだよね」

 

 つまり今回のデジモンは魔女の被害にあったデジモンと。

「デジタルエリアにいる魔女はそのせいで魔力を感じ取りにくいからあたし等も気づくのが遅れたけど、いざ中に入ってみると魔力を感じるよね?」

 

「・・・はい。確かに魔女の魔力を感じます」

 

 デジタルエリアに入る前はその魔力に気づけなかったけど、いざ中に入ってみるとはっきりとはっきり分かる。このエリアの何処かに魔女がいる。

「っ!」

 

 いきなり襲い掛かって来た『何か』に気づいた私達は魔法少女へと変身しつつ、後ろに跳び下がって距離を取ります。どうやら襲ってきたのはデジモンのようです。

「さっそくデジモンか!」

 

「サイみたいだね」

 

モノクロモン

・成熟期

・鎧竜型

・データ種

 サイのような角を生やした鎧竜型デジモン。角の部分と身体の半分を覆う硬質な物質はダイヤモンドと同質の硬度を持ち、その角に貫けないものはないと言われている。草食で大人しいがひとたび怒らせると重戦車さながらの体から恐ろしい反撃をしてくるぞ。必殺技は強力な火炎弾『ヴォルケーノストライク』だ。

 

「このデータ量。マスターデジモンじゃなくただ魔女に操られてるだけのデジモンみたいだね」

 

「だったら倒さないほうがいいですよね。アグモン!」

 

「ちょっと待ちないろはちゃん。そういうのならうちに適任なのがいるよ」

 

 私はグレイモンに魔女を倒すまで押さえつけてもらおうとしていると、ももこさんは私を静止させました。

「り、リロード。フローラモン」

 

 かえでちゃんはフローラモンを呼び出しました。

 

フローラモン

・成長期

・植物型

・データ種

 顔全体が花の形をしていて、普段は花びら型外殻をヘルメットのようにして頭部を護っている植物型デジモン。外敵がいない時や、気分が良い時は頭や両腕の花びらを大きく開いている。必殺技は両腕の花から花粉を発生させる『アレルギーシャワー』だ。

 

 なんかデジモンってさらっと恐ろしい技を持っているね。

「アレルギーシャワー!」

 

 大量の花粉によって戦意を喪失させようとするフローラモンだったけど、フローラモンの花粉はモノクロモンの動きを封じるには至らなかった。

「やっぱりグレイモンで・・」

 

「待ちないろはちゃん。あのコンビの本領はここからさ」

 

「フローラモン!進化だよ!」

 

 かえでちゃんの黄緑色のデジヴァイスから溢れる進化の光。それはフローラモンへと浴びせられた。

「フローラモン進化!」

 

 進化の光に包まれたフローラモン。その光の中から出てきたのは木のようなデジモンだった。

「ウッドモン!」

 

ウッドモン

・成熟期

・植物型

・ウィルス種

 枯れ果てた大木の姿をした植物型デジモン。普段は木に成りすましているが、木の根のような足で移動することもできる。硬い木の幹を持つため防御力は高いが火に弱く、火炎系デジモンが非常に苦手。必殺技は枝状の腕を伸ばしてエネルギーを吸い取る『ブランチドレイン』だ。

 

「ウッドモン!ブランチドレインだよ!」

 

「OK!」

 

 ウッドモンは枝状の腕を伸ばして、モノクロモンを軽く刺すとそこからエネルギーを吸い取り出しました。

「っ・・・!」

 

 それでも抵抗しようとするモノクロモンをかえでちゃんは魔法の木を操ることで身動きを封じて、ウッドモンにエネルギーを吸わせると、エネルギーが吸われて弱ってきたモノクロモンは座り込んだ。

「もういいよウッドモン」

 

「分かった」

 

 かえでちゃんの指示でエネルギーを吸い取る事を止めたウッドモン。

「悪いな。ちょっと大人しくしててくれよ。アグニモン」

 

「応」

 

 モノクロモンを軽く撫でながら辺りを見渡したももこさん。魔女の気配を探っているみたいだけど、その途中で別の気配にも気づいたらしくてアグニモンを呼び出した。

「気づいたアグニモン?」

 

「あぁ、近いな。・・・・来るぞ!」

 

 いきなり私達を攻撃してきたのは鶏のようなデジモンでした。その首筋にはモノクロモンと同じく魔女の口づけがされていました。

「このデータ量・・・マスターデジモンだね」

 

 こっちの大きな鶏がマスターデジモン。

 

コカトリモン

・成熟期

・巨鳥型

・データ種

 2本の足が巨大に発達した巨鳥型デジモン。地上での生活を長く続けたため、空を飛ぶことが出来ず、地上に適した体に進化した。性格は荒く獰猛だがその巨体を維持するためにエネルギーの消費が激しいバトルは苦手。必殺技は対象を石化させる炎の『ぺトラファイヤー』だ。

 

 見た目は鶏なのに恐ろしい技を使うみたい。

「先手必勝だアグニモン!」

 

「応!バーニングサラマンダー!」

 

 アグニモンは先手を打って初手から必殺技を仕掛けようとしたら、コカトリモンはその攻撃に向かって炎を吐き出した。

「あっ!炎まで石に!?」

 

 そしたらアグニモンの火炎竜が石になっちゃいました。

「分かっちゃいたけど・・・随分と恐ろしい技を使うね。本当に成熟期かよ」

 

 ももこさんの言い方だと成熟期よりも『上』があるみたいだけど、どうなんだろう?後で聞いてみよう。

「ももこさん。ここは私とアグモンに任せて魔女の方をお願いします」

 

「2人だけで大丈夫?」

 

「が、頑張ります」

 

「分かった。気を付けてね!」

 

 魔女をももこさん達に任せて、私はコカトリモンと向かい立ちます。

「リロード!アグモン!」

 

 アグモンを呼び出した私はコカトリモン目掛けて矢を放つと、コカトリモンは足の爪で矢を蹴って弾いてしまいました。

「アグモン!行くよ!」

 

「うん!アグモン進化!」

 

 デジヴァイスを取り出した私はアグモンに進化の光を送ってグレイモンへと進化させます。

「グレイモン!」

 

 だけどこのままじゃただ的が大きくなっただけで石化をされてしまうかもしれない。だからこそ私がアグモンをサポートしないと。

「ぺトラファイヤー!」

 

「しゃべった!?」

 

 普通に喋ったコカトリモンに思わず驚きの声を出してしまいつつも、私はコカトリモンの火炎攻撃へと向けて矢を連続で放ちました。矢はすべて石にされながらも半ば無理やりですがコカトリモンの火炎攻撃をかき消せました。

「よし!これなら!」

 

「ぺトラファイヤー!ぺトラファイヤー!」

 

 怒った様子のコカトリモンは火炎攻撃を連射してきますが、それを私は矢の連射によって火炎をかき消します。するとデジヴァイスの説明通りエネルギー消耗が激しいコカトリモンは息を切らし始めました。

「チャンスだよ!グレイモン!」

 

「応!」

 

 コカトリモンに噛みついたグレイモンはそのまま地面に叩きつけて、追い討ちをかけました。その一撃で怯んだところにグレイモンは尻尾を鞭のように撓らせて一撃を叩き込みます。

「決めて!グレイモン!」

 

「メガフレイム!」

 

 グレイモンがメガフレイムをコカトリモンに決めると、デジタルエリアから魔女の結界に変わり始めました。ですがものの数分で決着がついたようで、その結界も解け始めました。

「お疲れ様です。早かったですね」

 

「今回は2人だけで倒せるようなので助かったよ。もしもっと強かったら危なかったかも。ホント、早く仲直りしてくれよな。かえで」

 

「・・・・」

 

 普段はチーム3人で戦うらしいももこさんは一安心した表情をしていましたが、かえでちゃんは少しムスっとした表情をしていました。

 




神浜デジモンファイルに
『水波レナ&ベタモン』
『秋野かえで&フローラモン』が登録されました。

次回「これだけ謝ったんだから」


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これだけ謝ったんだから

 デジクロス体以外のクロスウォーズデジモンはそれっぽいレベル設定にします。


~ももこside

 

「う~ん」

 

 あたし、十咎ももこは悩んでいた。大切なチームの一員であるレナとかえでの喧嘩のせいでだ。いつもはレナが謝って喧嘩はおしまいになるはずなんだけど、今回はいつもと違う。謝ろうとするどころかレナのやつ、あたし等を避けている。連絡も返してくれないし、学校でも見かけない。仲直りを避けてるみたいだ。

「まさかとは思うけど、レナのやつ絶交ルールのことを気にしているんじゃないだろうな」

 

 うちのメンバーに限ってそんな事はないと思っていたけど・・・。

「かえでの方も意地になっているっぽいし・・・。どうすればいいと思うアグニモン?」

 

『悩んでいても仕方ないだろ?考えるよりもまず行動だ!』

 

 確かに・・・あたしがここで悩んでいても仕方ないよな。

「そうだよな!見守ることにしようかなって思ってたけど、やめだ!こうなったら2人を何としてでも突き合わせてやる!過保護とでもなんとでも言え!」

 

『その意気だももこ!』

 

 そう決意したあたしはレナを取り押さえるために家を飛び出して行った。

 

 

 

~いろはside

 

「うぁぁぁっ!?」

 

「ウッドモン!?」

 

 マスターデジモンの反応に気づいてデジタルエリアに入ってみたら・・・そこではかえでちゃんとウッドモンがもう戦っていた。

「待っててかえでちゃん!今助けに行くから!」

 

 私はアグモンを呼び出しながらも、矢を放ってドーベル犬みたいなデジモンを攻撃したけど、俊敏な動きで避けられちゃった。

 

ドーベルモン

・成熟期

・魔獣型

・ワクチン種

 元々はウィルス種のデジモンだが突然変異でワクチン化したハンターデジモン。ワクチン種と言ってもウィルス種のデジモンを狩る凶暴なデジモンだ。必殺技は身体を貫いてデジコアを破壊する黒い光線『シュヴァルツ・シュトラール』だ。

 

 

 魔女の口づけはされてるみたいだけど、近くに魔女はいないっぽい。それにデータ量的にもマスターデジモンじゃないみたい。ここは魔女は後回しにして、マスターデジモンを倒して脱出した方が良さそう。

「ベビーフレイム!」

 

 アグモンの攻撃でかえでちゃんとウッドモンから離れたドーベルモン。その隙をついて私はかえでちゃんのところに駆け寄りました。

「かえでちゃん!大丈夫?」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 デジタルエリアの面倒なところは一度は行ったらマスターデジモンを倒さないと出られない事だってももこさんから聞いた。まずはマスターデジモンを見つけないと。

「うぁ!?」

 

「アグモン!?」

 

 マスターデジモンを探しにいきたいけれど、ドーベルモンがそれを邪魔するように私達に攻撃してくる。

「グレイモンに進化させるとあの動きについていけないだろうし・・・」

 

 かと言って進化しないと勝てる相手じゃない。ウッドモンも動きの鈍いデジモンだから・・。

「いったいどうしたら・・・」

 

「ハァァァッ!」

 

 どうしたらいいのだろうと悩んでいたら、駆けつけてきたアグニモンがドーベルモンに回し蹴りを叩き込んだ。

「アグニモン!それにももこさんも!」

 

「良かった!間に合ったみたいだね」

 

 アグニモンに遅れてももこさんも駆けつけてくれると、ドーベルモンはいきなり遠吠えをした。

「いったい何を?」

 

「ボスを、マスターデジモンを呼んでるんだ」

 

 ドーベルモンの遠吠えで現れたマスターデジモンは・・・同じくドーベルモンでした。

「ドーベルモンが2体か。厄介だな」

 

 現状ドーベルモンの動きについていけるデジモンはアグニモンだけ。アグニモンだけではこの戦況はももこさんでも厳しいようです。

「いえ、1体は私達で何とかしますからももこさん達はマスターデジモンをお願いします」

 

「アグモン進化!グレイモン!」

 

 ももこさんとアグニモンにマスターデジモンの方のドーベルモンを任せ、私はアグモンをグレイモンへと進化させました。

「おいおい、グレイモンのスピードじゃあれに追いつけないだろ?」

 

「そこは・・・私とかえでちゃんで何とかします」

 

「えっ?私も!?」

 

 何とかするしかない。そう思った私は矢を連続でドーベルモンに放ちました。

「メガフレイム!」

 

「だ、ダメだよ。全部避けられてる」

 

 当然と言うべきか、身動きの素早いドーベルモンに私の攻撃は当たりません。ですがそれでもいいんです。

「かえでちゃんも攻撃をお願い!」

 

「う、うん!」

 

 かえでちゃんとウッドモンも攻撃をすると、段々と行き場を失ってきたドーベルモンはグレイモンのそばへと近づいてきます。そこでももこさん達も私の考えを理解してくれました。

「そういうことか。こっちも負けてられないよアグニモン!」

 

「応!サラマンダーブレイク!」

 

 高速で回転して炎の竜巻となったアグニモンは回転の勢いを乗せた回し蹴りをドーベルモンへと叩き込んだ。

「よし!マスターの方は倒した」

 

 マスターデジモンを倒すと、デジタルエリアは魔女の結界へと変貌していきました。これならもう脱出できる。

「よし!一旦出るよ!」

 

 魔女の結界から出た私達は自販機でジュースを購入して一息つきました。

「ありがとういろはちゃん。ナイス時間稼ぎだったよ」

 

 マスターデジモン以外を倒すわけにもいかないので、何とかして時間を稼ぐためただひたすら集中攻撃をする。あのドーベルモンも全部避けてくれてよかったよ。

「いえ、こちらも助けて頂いてありがとうございます」

 

 きっと私達だけじゃどうしようも出来なかった。助けに来てくれて本当に助かりました。

「さてと一段落ついたところで・・・話そうか。かえで。なんで1人で戦おうとしたりしてたんだ?」

 

 ムスっとした表情で見てくるももこさんにかえでちゃんは目を逸らしてたけど、すぐに反省したように俯きながら話し出した。

「ご、ごめんね。私、ももこちゃんから逃げてたの。だってももこちゃん、無理やりにでも仲直りさせようとするから」

 

「うん。そうさせるつもりで探してた」

 

「かえでちゃんはレナちゃんと仲直りしたくないの?」

 

「したいよっ!したい!レナちゃんは大切な友達だもん」

 

 やっぱりかえでちゃんは仲直りをしたいんだ。

「レナちゃんは口は悪いけど良い子だし、それに・・・それに私はこんなだから魔法少女になっても上手く戦えなくて。魔女と戦っても失敗続きだったの。そんなときにももこちゃんがチームに誘ってくれて、レナちゃんも色々あったけど受け入れてくれて・・・。私はどんくさいし怖がりだし迷惑をかけてばかりだけど、それでも私はこのチームのメンバーでいいんだって思えるんだ」

 

 レナちゃんと仲直りしたい気持ち。伝わったよ。

「大切だから仲直りしたい。レナちゃんからちゃんと謝ってほしい」

 

「・・・そうか。じゃあ無理やり仲直りさせるのはダメそうだな」

 

 ももこさん。無理やりにでも仲直りさせる気だったんですね。

「でもレナちゃんは私の事ずっと避けてるし・・」

 

「じゃあさ、かえでちゃんからレナちゃんに会いに行くのはどうかな?」

 

 レナちゃんも顔を見れば気が変わるかもしれない。そう信じてる私はそう提案してみました。

「できればレナちゃんから来てほしいし、それに逃げるレナちゃんを捕まえる自信なんてないよ」

 

 う~ん。それじゃあどうしたら・・・。

「ごめん!私帰るね!」

 

「あっ、コラ逃げんな!」

 

 逃げていくかえでちゃんを私とももこちゃんは追いかけた。

 

 

 

 

~かえでside

 

 レナちゃんの良く行くゲームセンターにきた私は辺りを見渡す。レナちゃんの事だから音ゲーをしてるんじゃないかなって探していたらバッグに3人の絆の証のキーホルダーを付けてる女の子に気づいた。

「レナちゃん!」

 

 レナちゃんの固有魔法は変身。だから他の人に姿を変えられる。だけど姿を変えても持ち物までは変えられない。

「レナちゃんだよね?」

 

「何の事?私は・・・」

 

「ごまかしても無駄なんだから」

 

「っ!」

 

 魔法を解いて元の姿に戻ったレナちゃんは逃げだしていく。

「逃げないでよレナちゃ~ん」

 

 逃げるってのは予想はしていたけど私の足じゃレナちゃんに追いつけない。そしたらレナちゃんの前に私を追いかけてきたももこちゃんといろはちゃんがやってきた。

「見つけたよレナ!」

 

「はぁ。はぁ・・。どうして逃げるのレナちゃん?」

 

「あんたらこそ。どうしてそんなしつこいのよ」

 

 当然だよ。だって仲直りしたいもん。

「お願いレナちゃん聞いて!」

 

 決めた。私から謝ろう。

「前のこと、もう謝ってなんて言わないから!」

 

「や、やめてってば・・・」

 

「だからまた一緒に戦って!」

 

「バ、バカ!何で謝っちゃうの!アンタ攫われたらどうするの!!」

 

 レナちゃん?

「やっぱりレナちゃん。絶交ルールの事を気にしてたんだね。かえでちゃんのこと、気遣って避けてたんでしょ?」

 

「そうなのレナちゃん?」

 

「だってもし私のせいでかえでが攫われたら・・・!!」

 

 なんだ。そんな事を気にしていたんだ。

「大丈夫だよレナちゃん。ほら、何も起きてないでしょ?ももこちゃんの言う通りそんなのただのうわさだよ」

 

「かえで・・・」

 

「それにほら・・。攫われるのも嫌だけど、レナちゃんと喧嘩したままなのはもっと嫌だな。だから仲直りしよう。レナちゃん」

 

「・・・うん」

 

 レナちゃんが仲直りに頷いてくれた途端、『それ』はやってきちゃったの。

 

 

 

~レナside

 

《おっかしいな~》

 

《絶交したよね?》

 

《確かにしたよね?》

 

 それは一瞬の出来事だった。鎖のような何かにかえでは捕えられちゃったの。

「かえで!」

 

 レナはかえでに手を伸ばしたけど、魔女の結界のような変な空間は一瞬で消えちゃって、それと一緒にかえでの姿も消えてしまったの。

「消えちゃった。嘘・・・本当に絶交ルールの通りになっちゃった」

 

 さっきまで隠れて様子を見てたももこといろはも今の出来事に驚いてる。

「絶交ルール。うわさ・・・そうだ!あの人なら!」

 

 あの人ならきっと何かを知っている。そう思った私はあの人を探すため駆け出した。

 

 

 

~いろはside

 

 私達の目の前でかえでちゃんが鎖の使い魔みたいなものに攫われれしまって、レナちゃんも走り去っていっちゃった。

「レナのやつもビビッて逃げ出すようなやつじゃないし、何か考えがあるだろうさ」

 

「でもまさか本当に絶交ルールのウワサが現実になるだなんて」

 

「まさか。たまたま同じ性質の使い魔が相手だっただけだよ。現実になるうわさなんてあるわけないんだから」

 

 うわさを信じないももこさん。するとわずかながらもかえでちゃんの魔力を感じ取りました。

「かえでちゃんの魔力はまだ感じ取れるぐらい残っていますけど・・・でもいつ途切れてしまうか・・」

 

「だったら尚更急がないとね。行こう!かえでを見つけて使い魔から救い出すんだ!」

 

「はい!」

 

 私とももこさんはさっそくかえでちゃんの魔力を探し始めた。時間が経つにつれて段々と感知できなくなってきて、とうとうあの使い魔の魔力も感知できなくなっちゃった。

「ダメです。ここも使い魔の魔力を感じません」

 

「今更だけどごめんねいろはちゃん。完全に巻き込んじゃったね」

 

「いえ、気にしないでください。この間助けてくれたお礼ですよ」

 

「・・・ありがとう」

 

 この間ももこさんは私を助けてくれた。そのお礼をしたいんです。

「あいつ等はいつもしょうもないことで喧嘩し合ってるし、だいたいレナが謝って仲直りしてるんだ。正直さ、喧嘩を繰り返しながら仲直りできるのって、本音でぶつかれる貴重な関係だと思うんだ。だからあいつらの絆はこんなことで切れないし、あたし等のチームは大丈夫だと信じてる」

 

 ももこさんは2人を、チームの絆を信じているんですね。私は妹のういが全てで仲のいい友達や仲間がいなかったから羨ましいです。

「あっ、レナ!」

 

 すると偶然にもかえでちゃんを探していたレナちゃんと遭遇しまいた。

「いったい何処に行ってたんだ?」

 

「ちょっと解決策がないか確認しに行ってただけよ!」

 

「解決策?それってもしかしてやちよさん?」

 

「ば、バカ!ももこの前だからボカしたのに!」

 

「あっ、ごめんなさい!」

 

 ももこさんとやちよさんは何だか仲が悪いんだった。やちよさんから聞いたことだって聞いたら信じてくれなくなるかも。

「安心しろって。確かにやちよさんからだったら信じなかったかもしれないけど・・・レナの事なら信じられる」

 

 仲間のレナちゃんの事なら信じられる。そう告げたももこさんとともに私達はまず人気のない建設放棄地に移動しました。

「それでレナ。ここでいったいどうするつもりなんだ?」

 

「ちょっと待って。今心の準備をしているから・・」

 

 深呼吸をしたレナちゃんは覚悟を決めた様子で振り返りました。

「ねぇももこ。何があってもレナとかえでの事を守ってよね」

 

「あぁ。もちろんだ!」

 

「かえで!!絶交するなんて言ってごめん!」

 

 レナちゃんは何をするかと思えば、いきなりかえでちゃんへの謝罪を叫び始めました。きっとかえでちゃんが攫われたのと同じ状況を作ろうとしてるんだと思います。レナちゃんが謝れば同じ状況になるはずだから・・。

「無理やりコンビニに使いっぱしりにしてゴメン!レナの好きなフルーツタルトが無くて怒ってゴメン!他のスイーツを買って来てくれたのに気に入らないって投げちゃってゴメン!服を汚してゴメン!ペットの事キモイって言ってゴメン!でも今でも爬虫類はやっぱりキモイって思っててゴメン!」

 

『爬虫類がダメ?えっ?じゃあもしかして俺も・・』

 

 私だったら、ここまでされたらへこんじゃうかも。ベタモンも気にしてるっぽいよ。

「これだけ謝ったんだから・・・いい加減出て来なさいよ」

 

『レナ・・レナ!危ない!!』

 

「えっ・・・?」

 

 レナちゃんが心から涙すると再びあの結界が現れ始め、レナちゃんまでもが攫われてしまいました。

「ギリギリ間に合わなかったようね。レナから聞いて様子を見に来たけれど・・やっぱりウワサが現実になっていたのね」

 

 そして結界が広がり始めたタイミングでやちよさんもこの場にやってきました。

「何がうわさだ!たまたま魔女の性質が似てただけだろ!」

 

 ももこさんはやちよさんにウワサが現実になるはずがないと突っかかりますが、すぐ突き返されてしまいました。

「いい加減現実を見なさい!貴女が私を嫌うのは構わないわ!だけどそれを理由に仲間まで危険にさらさないで!貴女は曲がりなりにもリーダーでしょ!この町は普通じゃない!それは貴女にも分かっているはずよ」

 

「・・・分かった。分かったよ。認めるよ。この町は普通じゃない。この結界が普通の魔女のものじゃないってのは薄々感じていたさ。・・・全く情けないな。やちよさんに論されるなんて」

 

 この町は普通ではないことを認めたももこさん。やっぱりこの町で活動してるやちよさん達もそう思っていたんですね。

『やちよ!何かくる!』

 

階段の向こうには鎖に捕まっているかえでちゃんとレナちゃんの姿があった。

「2人とも!今助けに行くからな!」

 

 ももこさんはアグニモンを呼び出すと階段を駆け上って2人を助けに向かおうとします。

「使い魔みたいなのは俺が相手をしておくから、ももこ達は先を急げ!」

 

 鎖の使い魔のようなものを蹴り飛ばしたアグニモンは私達に道を作ってくれました。

「頼んだよアグニモン!」

 

 アグニモンに任せて私達は階段を上っていこうとすると、どういうわけか捕えられている2人の鎖が解かれました。

「階段さんの邪魔はさせない」

 

「この身は階段さんのもの」

 

 2人はどうやらこの『ウワサ』に操られてしまっているみたいです。

「何が守ってやるだ。何も守れてないじゃないか。・・・やちよさんの言う通りだ。個人的な感情でウワサから目を背けてこの結果を招いた。リーダー失格だよまったく・・」

 

「落ち込んでいる暇があったら、ウワサを倒すことを考えなさい。ウワサを倒さない限り2人は元に戻らないわよ」

 

「あぁ、分かってるさ」

「2人とも、目を覚まして!」

 

「ここは俺達に任せて」

 

 かえでちゃんとレナちゃんのデジヴァイスから勝手に出てきたフローラモンとベタモンは2人にしがみついて何とかその動きを封じ込めてくれました。

「あの子達が2人の動きを封じてるうちに私達は急ぐわよ!」

 

「はい!」

 

 階段を駆け登っていく私達はそれぞれウワサに攻撃を仕掛けてみましたが、まるで通用していませんでした。

「アタシ達の攻撃が効いてない。いったいどうなってるんだ?」

 

「それならみんなで同時に攻撃してみませんか?」

 

「なるほど。絶交の性質を真逆にやってみようってことね」

 

 あの絶交階段ともいえるウワサの性質が『絶交』ならその逆の事をすればきっとダメージを与えられるはず。

「繋がり・・友情。絆・・・そんなところかしら」

 

「協力するのは賛成だけどアタシとやちよさんの絆って・・・」

 

 あぁ、2人の中はあまり良くなかったでしたね。

「だったらデジモン達との同時攻撃ならどうでしょう?」

 

 やちよさんとももこさんの絆じゃなくてもパートナーデジモンとの絆があればきっと大丈夫なはず。そう考えた私はその作戦を提案してみました。

「いい作戦かもしれないわね。聞いていたわよねガブモン?」

 

「あぁ。こういうことなら喜んで手伝うっての!」

 

 やちよさんはガブモンを呼び出したので、私もアグモンを呼び出しました。

「アグニモン!そういう事だからこっちに来て~!」

 

「俺、今忙しいんだけど!?デジモン使いの荒いテイマーさんだよまったく!!」

 

 炎の竜巻で鎖達を吹き飛ばしたアグニモンは愚痴りながらもこっちに駆けよってきてくれました。

「3人の魔法少女と3体のデジモンの同時攻撃よ。みんなタイミングを合わせて!」

 

「アタシのチームメイト、返してもらうよ!」

 

「「「ハァァァッ!!」」」

「ベビーフレイム!」

 

「プチファイヤー!」

 

「バーニングサラマンダー!」

 

 私達の一斉攻撃を受けた『ウワサ』は崩れ去り、魔女の結界も消えていきました。

 

 

 

 

~ももこside

 

 

「かえで!目を覚ましてよかえで!」

 

 レナは無事に目を覚まして正気を取り戻したのに・・・魔力を養分にされて消耗が激しかったかえではまだ目を覚まさなかった。

「なんでレナだけ目を覚ますのよ。あんたが起きなきゃ意味がないでしょ?」

 

「やっぱりかえでの方が消耗が激しいみたいね」

 

「私の治癒魔法で何とかしてみます!」

 

 いろはちゃんは治癒魔法で何とかしようとしてくれてるけど、ソウルジェムがだいぶ濁っちゃってるかえでは目を覚まさない。

「ももこさん!グリーフシードは?」

 

「それがさっきの魔女、グリーフシードを落とさなかったんだ」

 

 魔女がグリーフシードを落とさないなんてありえない。まさか本当に魔女とは別モノだったんじゃ?・・・いや。そんな事を考えるのは後でいい。今はかえでの方が大事だ。

「私のストックがあるわ」

 

 そう言ったやちよさんはかえでにそのグリーフシードを使ってくれた。それによって穢れが払われたかえでのソウルジェムは輝きを取り戻した。

「お願いかえで!目を覚まして!」

 

「全部聞こえてたよ。レナちゃんが謝ってくれてたの」

 

「うん。本当にごめんね」

 

 無事に目を覚ましたかえで。これで無事『仲直り』だな。

 

 

~やちよside

 

「待ってくださいやちよさん!」

 

 無事にかえでが目を覚ましたことだし帰ろうとすると、環さんが呼び止めてきた。

「何かしら?もう解決したでしょう?私がここにいる理由はないわ」

 

「あの、どうしても聞きたい事があって・・・さっき倒したのって本当に魔女だったんですか?」

 

「・・・どういう意味?」

 

「やちよさん。一度も魔女って言わなかったから。それにグリーフシードも落としませんでした」

 

 やっぱりこの子、鋭いわね。

「私は『ウワサ』と呼んでいるわ。ウワサはうわさを守るためだけに存在する。魔女とは別の存在よ」

 

「そんなものが・・」

 

「信じるか信じないかは貴女次第よ。ただ貴女も今回経験したでしょう?この町にいる以上避けては通れない存在だから気を付けなさい」

 

「分かりました。ありがとうございます。それにかえでちゃん達を助けるのに手を貸していただいた事も」

 

「おかしな子ね。貴女がお礼を言うような事じゃないでしょうに」

 

 私はガブモンをデジヴァイスに戻してこの場を後にする。少しだけどゲンナイが環さんを認めた理由。少し分かった気がするわ。

 

 

 

~マミside

 

「さぁ、これでフィニッシュよ!」

 

 魔法のリボンでマスターデジモンを縛り付けた私は相棒とも言えるデジモンに合図を送った。

「決めなさい。デッカードラモン!」

 

「了解した。我がジェネラルよ。デッカードランチャー!!」

 

 巨大なワニのようなデジモン。デッカードラモンは必殺技でマスターデジモンを打ち倒すと現実世界へと戻っていく。

「ふぅ、ここの魔女はやっぱり他より強いわね。思ったより時間がかかったわ」

 

 デジタルエリアの中に魔女もいたから予想より時間がかかってしまったけど、何とかなったわね。

「それにしてもこの町は妙に魔力が集まっているみたい。何より気になるのは魔女でも魔法少女でも、ましてやデジモンでもないこの反応」

 

 調べる必要がありそうね。神浜市・・。この町は異常だわ。

 




神浜デジモンファイルに
『巴マミ&デッカードラモン』が登録されました。

次回「あなた素直過ぎるわよ」


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あなた素直過ぎるわよ

Butterflyが名曲だったので新OPの未確認飛行船に設置させられたハードルが高いですよね。


「ここ・・・だね」

 

 私はゲンナイさんに紹介されたお店へとやってきた。

「そらそらそら!」

 

「良いぞ鶴乃!熟成してきやがった」

 

 親子で何をしているのでしょうか。肉を叩いているのは分かるんだけど・・・少なくともそれは熟成とは言わないと思います。

「あっ!お客さん!」

 

「ひっ!?」

 

 私はそっと扉を閉じようとしたのですが、店員の女の子に気づかれてしまい、扉を押さえられてしまいました。

「中華飯店万々歳へようこそ!」

 

「えっと・・・その・・」

 

「そのチラシを見て来てくれたんだね!さぁ、入った入った!」

 

 チラシを持っていたためお客さんだと判断された私はそのまま店内へと招き入れられてしまいました。ここに来ることになったのは2時間ほど前に遡ります。

 

 

 

「やぁやぁ環いろは。またあったね」

 

 ういがウワサがらみの事件に巻き込まれたのではないかと考えた私は他のウワサの事も調べてみようと調整屋さんへと足を運ぼうとしていたら、その隣の建物から出てきたゲンナイさんと遭遇しました。

「ゲンナイさん!どうしてこちらに?」

 

「どうしてと言われると、ここが私の事務所だからかな」

 

「えっ?」

 

 見上げるとそこには『源内探偵事務所』と書かれた看板がありました。

「ゲンナイさん。探偵さんだったんですね」

 

「あぁ。今日はどうした?調整屋に調整しに来たのでもないだろう?」

 

「あの。この町のウワサの事を調べようと思って・・」

 

「ふむ・・。私の知ってるうわさで良ければ教えてあげよう」

 

 そう言ってくれたゲンナイさんは探偵事務所に私を招き入れてくれました。

「コーヒーにはケチャップとマヨネーズ、どっちがいい?」

 

 ひどい選択肢。

「ふ、普通にミルクでお願いします」

 

「なんだ。君は普通の味覚か」

 

 残念そうにそう言ったゲンナイさんは自分の分のコーヒーにマヨネーズを入れてました。そういう味覚の持ち主なのでしょうか?

「・・・失敗だ。この組み合わせは不味い」

 

 当然だと思います。

「さて、うわさの話だったな。私が知っているのは3つのうわさだ。とは言ってもうち1つは既に君達が解決したようだがね」

 

「絶交ルール・・」

 

「そう。絶交ルール。あれで行方不明になっていた子達が無事に発見されたと報告を受けている」

 

「そうなんですか。良かった」

 

 心配はしてたけど、無事で良かった。

「そしてもう1つのウワサだがそれはおそらくデジモンの仕業だ。空を暴れる炎の竜を見たとうちに依頼が来てね。心当たりがあるデジモンがいたから適任なはずの十咎ももこ達に任せたんだ」

 

 ももこさん達がデジモンの相手を・・・。

「お手伝いしに行かないと!」

 

「やめておけ。君のアグモンでは機動力が足りない。それに適任なのは十咎ももこだと言っただろう。心配しなくていい。任せておけ」

 

「・・・はい」

 

 この間のドーベルモン戦いもグレイモンの機動力の無さが仇になった。もっとグレイモンに機動力があればなぁ・・。

「さて、私の知る最後のうわさだが・・・君は口寄せ神社のウワサを知っているか?」

 

「口寄せ・・いえ」

 

「そうか。こんなウワサを聞いたことがないか?」

 

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるこのウワサ》

 

《口寄せ神社のこのウワサ》

 

《家族?恋人?赤の他人?心の底から会いたいのならこちらの神様にお任せを》

 

《絵馬に会いたい人の名前を書いてお参りをすれば会いたい人に遭わせてくれる》

 

《だけどだけどもご用心。幸せ過ぎて帰れないって水名区の人の間ではモッパラのウワサ》

 

「といううわさだ」

 

 その語り口。絶交ルールの時と似た感じのうわさ。

「君がそのうわさを確かめるか否かは君次第だが、せっかくなので腹ごしらえをするといい」

 

 ウワサを語り終えたゲンナイさんは一枚のチラシを私に見せてきました。そこには『中華飯店万々歳』というお店が書かれていたのです。

 

 

「なぁんだ。あなたも魔法少女だったんだね。チラシを見て来てくれるなんてすっごく嬉しいよ!私は中華飯店万々歳の最強魔法少女!由比鶴乃だよ」

 

「環いろはです・・」

 

そんなわけで私は万々歳へと足を運んだのですが・・・頼んだのは五目ラーメン単品なはずなのに炒飯や野菜炒めまでもが出されました。

「しかも大盛り」

 

「ううん。普通盛りだよ」

 

 私は何とかその『普通盛り』な大盛りを食し始めました。

「どう?どうかな?」

 

 正直普通だ。元のスープが濃すぎるから何を入れても同じというか、ほうれん草のお水分で少しは食べやすくなっているけど、ただ入れただけで別のラーメンを食べてる感じじゃない。

「何点ぐらい?何点ぐらい?」

 

「2・・50点かな」

 

 危うく20点っていうところだった。でも50点ってのも少し酷かったかも。

「たった50点!?」

 

「ち、違います。普通って意味です!ほらあの、50点って半分もあるし、半分も!」

 

 その後何とかアグモンの手伝いもあって全品大盛りの五目ラーメン普通盛りを食べきりました。

「あの、すみません。サービスしてもらったのに失礼な感想を・・」

 

「ううん。万々歳は味が濃くて、どの料理も同じ味付け。だいたい丁度50点ぐらいの料理が出てくるバランス感覚に優れたお店だってこの辺りじゃ有名なんだ!」

 

 やっぱり50点なんだ。

「ボクは美味しかったよ~!」

 

 素直なアグモンは美味しかったと感想を言っていました。まぁアグモンは感想を語れるほど人間の料理を食べてるわけではないのでそんな素直な感想を言えるんだと思います。もう少し人間の料理に慣れたらきっと50点になっちゃうと思う。

「そういえばいろはちゃんは絶交ルールみたいな変なうわさを調べたいんだよね。それなら紹介したい人がいるよ」

 

「もしかしてやちよさん・・・ですか」

 

「あれ?もうやちよししょーの事を知ってるんだ。なら話が早いね」

 

 由比さんはやちよさんと知り合いのようで電話をしてみたのですが、何やら都合が悪くて電話に出れなかったようです。

「ありがとうございます由比さん。でも私1人でも大丈夫ですから」

 

「鶴乃ちゃん!」

 

「えっ?」

 

「鶴乃ちゃんって呼んで」

 

「・・分かりました。よろしくね鶴乃ちゃん!」

 

「よろしくねいろはちゃん!」

 

『それなら私も挨拶しておこうかな』

 

 由比さん改め鶴乃ちゃんと話していると、鶴乃ちゃんのデジヴァイスから1体のデジモンが出てきました。

「私はピヨモン!最強の鶴乃の最強のパートナーだよ!」

 

ピヨモン

・成長期

・ヒナ鳥型

・ワクチン種

 翼の部分が腕のように発達している雛鳥型デジモン。普段は地上で生活しているが危険が迫ると空を飛んで逃げる。しかしながら飛行能力はそれほど高くない。必殺技は幻影の炎『マジカルファイヤー』だ。

 

 何だか私の出会う成長期のデジモンって炎を放つのばかりな気がする。

「それでいろはちゃんは口寄せ神社をどうやって探すの?」

 

「とりあえずそれっぽい場所に行ってみようかなって思ってみます」

 

「なるほど。いろんな神社を回ってみるってことだね。それじゃあ手分けして探そう!」

 

「手伝ってくれるんですか?」

 

「もちろんだよ!あ、スタートは男の人の家らしいよ。じゃあね!」

 

「スタート?」

 

 いったいどういう意味だろう?

 

 その意味が分かったのは数十分後の事でした。

「主催。水名区町おこし委員会。水名区スタンプラリー」

 

 これ・・・。町おこしのスタンプラリーだよ鶴乃ちゃん・・。

「どうしよう。こんなのがウワサに繋がるのかな?」

 

『とにかくやってみようよいろは!』

 

「そうだね。他に手がかりもないしやってみようか」

 

 他に手がかりもないので私はスタンプラリーを続けることにしました。

 

 

 

 その後私は頑張って5カ所全てのスタンプを揃えたんだけど・・・ここで1つ問題が起きちゃったの。縁結びスポットに行くにはAとBの二枚を重ねないといけなくて・・・私がスタンプを集めていたのはAの方だったの。つまりこれはAを持った人とBを持った人の2人一組で回るイベントだったみたいなの。

「あなた、何をしてるの?」

 

「やちよさん!」

 

 そんな中、現れたのは同じくスタンプラリーをしていたやちよさんでした。

「環さん。あなたどうしてここに?」

 

「その、スタンプラリーを回っていて・・」

 

「妹を探すって言ってたのに呑気なものね。・・・と言いたいけれど偶然ね。ここで最後のスタンプよ。・・・AとB!?」

 

 どうやらやちよさんも知らなかったみたい。

「もしかしてあなたも?」

 

「はい。実は口寄せ神社の事を調べていて・・・」

 

「それでこのスタンプラリーにたどり着いたと?驚いたわ。思ったよりちゃんと調べているのね。でもあなたはウワサから手を引いた方がいいわ。中途半端な気持ちで首を突っ込んで痛い目を見ても知らないわよ」

 

 たとえそうだとしても・・ういの手がかりがウワサにあるのなら。

「言っても無駄みたいね。妹の事になると本当に頑固なんだから」

 

「ところであの・・私Aなんですけど」

 

「・・・まったく何の因果かしら。私はBよ」

 

「それじゃあ!」

 

「仕方ないわね。重ねてみましょう」

 

 私達2人の紙を重ね合わせて、それが示す先・・・水名神社へと2人で向かうこととなりました。

「水名神社。なんてことないスポットね。水名では有名な神社よ」

 

「あの・・。もしかしてここが口寄せ神社だったり?」

 

「そうだったら良かったわね。前にも調べたけどここには何もなかったわ」

 

「そうですか・・」

 

「せっかくですし、ゴールまでは行ってみましょうか」

 

 私とやちよさんは巫女さんに用紙を回収してもらいました。

「では最後にこちらの石の前でお互いの想いを伝えてください」

 

「「っ!?」」

 

「こちらの石はお話の男女が再開した場所と言われているんです。こちらで想いを伝えあったあと、景品に縁結びのお守りをお渡しいたします」

 

 やちよさんへの想いって。

「やちよさんはえと、その何を考えてるか分からない人で・・」

 

「言うの!?」

 

「えっ?あ、つい・・」

 

「・・ふふ、あなた素直過ぎるわよ」

 

 やちよさんに笑われてしまった私は顔を赤くしてしまいながらも正直に気持ちを伝えることにしました。

「やちよさんのことは最初は意地悪されて嫌な人かなって思って、でも認めてくれたり助けてくれたりして、本当はいい人なんだなって思っています」

 

「そう。ちなみに私はあなたのこと、こう思っているわ。怖くなるぐらいまっすぐだって」

 

「あの、それってどういう意味ですか?」

 

「さて、どういう意味かしらね?・・・会えるといいわね。妹さん」

 

 やっぱりやちよさんってよく分からないな。不愛想だけど心配してくれてるんだよね。だったら初めて会った時みたいにウワサ探しの方も認めてくれると嬉しいな。

「「っ!!」」

 

 そんな中、私達は魔女の気配を感じ取りました。

「これは・・・魔女の気配!」

 

「マスターデジモンの反応もあるわ。それも同じ場所で。ここは私とガブモンで行くからあなたは帰りなさい!」

 

「そんなデジモンもいるなら私も戦います!」

 

「神浜の魔女の強さは分かってるでしょ?自分の命を粗末にするものではないわ」

 

「粗末になんてしません!」

 

『やちよ。手伝ってもらおうよ。戦いは数だよ!』

 

 ガブモン!

「ガブモン・・・あなた。自分が楽をしたいだけよね」

 

『バレてたか』

 

 ガブモン・・。

「はぁ・・分かったわ。好きにしなさい」

 

「はい!」

 

 私達は魔女の気配とマスターデジモンの反応を探っていると、ショッピングモールへと行きつきました。

「それにしても随分人が多いですね」

 

「確かに普段はここまで混む場所じゃ・・・そういうこと!」

 

 どうやらやちよさんは何かに気づいたようです。

「環さん、私気付いてしまったわ。今日はね。ポイント10倍デーの日なのよ!」

 

 ポイント10倍デー!!?

「ってどういうことですか?」

 

「今日はお買い物をすればなんでもポイント10倍になる大祭典の日なの」

 

「なんでもって本や文房具もですか?」

 

「そうよ」

 

『お菓子も?』

 

「もちろん」

 

「ここにあるもの全てがポイント10倍なのよ!!・・・ってそうじゃないわ。ポイント10倍の素晴らしさを説明したいわけじゃなくて・・」

 

 意外とノリがいいのかな。やちよさんって。

「魔女とデジモンの狙いが分かったわ。今日がポイント10倍デーだからよ」

 

「そうか!人が集まれば!」

 

「えぇ、こんなところで呪いをまき散らされれば溜まったもんじゃないわ。大方デジモンも肥えた魔女を食べるつもりなんでしょうね」

 

 私達は魔女が呪いをまき散らす前に倒すため、魔女の結界内に入っていったのですが・・・

「くっ・・・」

 

 あれだけ啖呵を切っておいて使い魔を倒すのが精いっぱいで・・・。

「これじゃやちよさんの足でまといかも」

 

「そんな事はないわ。ここの使い魔達、思いの外手強いもの」

 

 やちよさんでも使い魔に苦戦をしているだなんて。

「私も甘く見ていたわ。正直来てくれて助かった。むしろ環さん、強くなったんじゃないかしら?私に付いてくるんだもの」

 

「本当ですか!」

 

「この分だと無理にウワサを調べる事を止めなくても良さそうね」

 

「ありがとうございます!」

 

「どうしてそこでお礼なの?」

 

「だって認めてくれたってことですよね?」

 

「まぁ、そういう事になるのかしら?とにかくこの奥に魔女とマスターデジモンがいるはずよ。気を引き締めて!」

 

 私とやちよさんはそれぞれアグモンとガブモンを呼び出して奥へと進むと・・・使い魔も強かったのでただでさえ強いはずのうさぎのぬいぐるみのような魔女がマスターデジモンと互角・・・いえ、苦戦を強いられている光景が目に飛び込みました。

「あのデジモンは・・・」

 

ケルベロモン

・完全体

・魔獣型

・ワクチン種

 地獄の番犬と呼ばれる魔獣型デジモン。四肢の鉤爪は純度の低いクロンデジゾイド合金ならば簡単に引き裂くだけの硬度を持っている。また体は硬質な生体外殻に守られており、ダメージを受けても瞬時に再生してしまう能力も持っている。必殺技は灼熱の火炎放射『ヘルファイヤー』だ。

 

 完全体?

「完全体ですって!?」

 

「あの、完全体っていうのは?」

 

「成熟期よりも1つ上の進化よ」

 

 つまりグレイモンやガルルモンよりも上の強さを持ったデジモンってことですか。

「っ!?」

 

 ケルベロモンの炎によって焼き尽くされた魔女。そして一瞬にして魔女の結界は地獄のような火山地帯のデジタルエリアに書き換えられてしまいました。

「・・・やるしかないようねガブモン」

 

「あぁ、流石にやるしかないみたいだ」

 

「環さんは下がってて」

 

「でも・・・!」

 

「奥の手を使うわ」

 

 奥の手を使う。そう告げられたからには下がるしかありませんでした。

「ガブモン!進化よ!」

 

「ガブモン進化!ガルルモン!」

 

 まずはガルルモンに進化したガブモンはケルベロモンへ向けて駆けていきます。

「行くわよガルルモン!超進化!」

 

「ガルルモン!超進化!」

 

 光に包まれたガルルモンは2足歩行姿のガルルモンへと進化を遂げました。

「ワーガルルモン!」

 

ワーガルルモン

・完全体

・獣人型

・ワクチン種

 ガルルモンが進化して二足歩行ができるようになった獣人型デジモン。二足歩行になることでスピードは落ちてしまったが、より高い攻撃力と防御力、さらに戦術性を身に着けたコマンドータイプのデジモンだ。必殺技は両腕の鋭い鍵爪で相手を切り裂く『カイザーネイル』だ。

 

「ガルルモンも完全体に進化しちゃった」

 

「これが今のところ私とガブモンの最高戦力よ。進化には私達のエネルギーも消耗しちゃうからあまり多様できないのだけど・・・出し惜しみしていられない相手だものね」

 

 確かに進化するとき、魔力とは違うエネルギーが消耗されている。体力も持っていかれるからやちよさんは完全体を控えていたみたいだけど、相手が完全体なら仕方ないと完全体を使うことを決めたみたい。

「完全体になったからには時間はかけちゃ駄目よワーガルルモン!1分で決めなさい!」

 

 1分って・・・流石に厳しいんじゃ・・。

「分かってるって!」

 

「オラオラオラオラ!ディァ!!」

 

 連続パンチを叩きこんだワーガルルモンは火炎放射を放たれるよりも先に回し蹴りを叩き込んで、それを妨害しました。

「強い・・!」

 

 これがワーガルルモン。完全体の実力。

「トドメだ!カイザーネイル!」

 

 反撃の隙を一切与えないまま鋭い爪でケルベロモンを切り裂くと、無事ケルベロモンはロードされて現実世界へと戻りました。

「本当に1分で倒しちゃうだなんて」

 

 同じ完全体でもパートナーがいるといないとではこんなにも力の差が出るんですね。

「流石に1分はきつかったって」

 

 ワーガルルモンは愚痴りながたもガブモンへと戻ると、そのままデジヴァイスへと戻っていきました。

「あなたの戦利品よ。受け取りなさい」

 

 そう言ったやちよさんは私にグリーフシードを差し出してきました。

「えっ、でも・・・」

 

「あなたが来てくれたから今回は乗りきれたの。もらえる権利も理由も充分にあるわ」

 

「ありがとうございます」

 

 素直にグリーフシードを受け取ることにしましたが、何だかもったいなかったので今は使わないことにしました。

「それじゃあ帰りますね」

 

「えぇ、気を付けて」

 

『ただいまより地下食品売り場にてタイムセールを開始いたします』

 

「ちょっと待って環さん!」

 

 帰ろうとすると何故か呼び止められました。

「代わりと言ってはなんだけど手伝ってちょうだい」

 

「な、何をですか?」

 

「今日はお惣菜が安くて・・・ここのコロッケはとても人気だから、環さんもお願い。ポイント10倍とタイムセール。このチャンスを逃がすわけには・・・」

 

 ここでまたやちよさんは何かに気づいたようでした。

「分かったわ!口寄せ神社の場所が!」

 

「えぇ!?なぜこの流れで!?」

 

「本当よ。でもまずはコロッケを・・・」

 

 この時の私は自分のソウルジェムの穢れがだいぶ溜まってしまっていた事に気づいていたにも関わらず、それほど重大なことではないと気にも止めていませんでした。

 

まさかそれがあんな事態を巻き起こすだなんて。

 




神浜デジモンファイルに
『由比鶴乃&ピヨモン』が登録されました。

次回「あなたが割って入る隙間なんてないんですよ」


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あなたが割って入る隙間なんてないんですよ

 各キャラのパートナーデジモンは結構ギリギリまで悩んでます。未だメインキャラ全員のパートナーデジモンが決まってるわけじゃなかったりします。

 もしかしたら近いうちに活動報告でパートナーデジモン募集をするキャラがいるかもしれません。


~いろはside

 

「それで口寄せ神社はいったいどこなんですか?」

 

 買い物の後、口寄せ神社の場所が分かったというやちよさんに、その場所を多雨寝てみると意外な答えが返ってきました。

「水名神社よ」

 

 一度は違うと判断された水名神社。そここそが口寄せ神社だったのです。

「でも調べた時は何もなかったって」

 

「ヒントになったのはタイムセールよ」

 

 タイムセール・・・?

「そうか!時間ですね!」

 

「えぇ。正解よ。参拝する時間こそが鍵だったの。環さんは幽霊っていつ現れると思う?」

 

「えと夜ですよね?」

 

「その通りよ。きっと夜が条件なのよ。うわさが発動するのは。でも夜には参拝時間が終了して閉じられてしまう」

 

「だからお昼に参拝しても何も起きなかったんですね」

 

 つまり夜に参拝すれば・・・ういに会えるかもしれない。

「それならすぐに行かないと」

 

「今日はマスターデジモンと戦ってガブモンも消耗しているし、あなたも疲れているでしょうから明日にしましょう」

 

「一緒に行ってもいいんですか?」

 

「ウワサと戦うとなると人数はいた方はいいわ。それにさっきも言った通りあなたの実力は認めているの。どう?危険だし無理にとは言わないけれど」

 

「行きます!一緒に行かせてください!」

 

 こうして私はやちよさんと明日の午後6時に駅で待ち合わせをすることにしたのです。

 

 

 

~やちよside

 

 翌日。私は環さんと何故か彼女に付いてきたかつての仲間、鶴乃と共に水名神社へと向かうことになってしまった。

「やったね。嬉しいね!また一緒に戦えるね!」

 

「私はそんなんじゃないんだけど」

 

 1人舞い上がっている鶴乃に私は呆れながらため息をつく。猪突猛進なところを除けば実力は確かだし、彼女のピヨモンも完全体までは進化できるから頼れる存在なのも確かね。

「うわさの内容だと会いたい人に遭うには絵馬に名前を書く必要があるようよ。環さん」

 

 神社に侵入後、私は用意していた絵馬の1つを環さんに手渡す。

「やちよししょー。わたしのぶんはないの?」

 

「ないわよ。元々誘ったのは環さんだけだし、そもそもあなたは書く必要はないでしょ?」

 

「・・・そうだね。わたしが会いたい人ってやちよと一緒だもん」

 

 やっぱり今でもそうなのね。

「それじゃあ絵馬に名前を書きましょう」

 

 私と環さんは絵馬に会いたい相手の名前を書く。するとさっそくと言わんばかりにウワサの結界が私達を包み込んだ。

「ちゃぁぁぁ!!ここは任せて2人は先に行って!」

 

 現れた使い魔達を相手取る鶴乃は私達を先へと行かせてくれる。

「数が多いね。ピヨモンも手伝って!」

 

「あいあいさ~!」

 

 鶴乃はピヨモンとともに使い魔を蹴散らしていく。この場は鶴乃とピヨモンに任せても問題なさそうね。

「急ぐわよ環さん!」

 

「はい!」

 

 私と環さんはそれぞれ手順通りに参拝して会いたい人を想う。すると次の瞬間、夜だったはずの周囲の景色が夕方へと変化し、大切な親友が・・・梓みふゆが私の前に現れた。

「みふゆ・・!本当に、本当にあなたなの?」

 

「お久しぶりですね。やっちゃん」

 

 

 

~いろはside

 

 

 もし本当にういに会えたらなんて言おう。

 

 お姉ちゃんと一緒に帰ろう。今度こそ一緒に学校に通おうって・・。もしウワサが現れても必ずういは守るから。無理やりにでも手を引いて離さないで戻ってくる。だから神様。

 

 ういに、大切な妹に会わせてください。

「うい・・・本当にういなの?」

 

 私は目の前に現れた少女のもとへと駆け寄る。間違いない。あの子はういだ。

「うい!お姉ちゃんだよ!」

 

 そして私はようやく会えたういを抱きしめる。

「ようやく会えた。探したんだよ。さぁ一緒に帰ろう」

 

「・・・・・」

 

 ようやく会えたというのにういは表情を変えず、何も答えてくれない。

「このウワサから出れば今度こそ一緒に学校に行けるよ。また4人で一緒に暮らせるんだよ。一緒に帰ろう。だから手を取って。ここを出よう」

 

「運命を変えたいなら神浜市に来て。この町で魔法少女は救われるから」

 

 運命?魔法少女?どうしてういが魔法少女の事を知っているの?

「運命を変えたいなら神浜市に来て。この町で魔法少女は救われるから」

 

 何か、なにかおかしい。

「神浜市に来て。魔法少女 この町 救われる 運命。魔法少女 運命 変える 救われる」

 

「あなたは・・・何なの?ういじゃない!」

 

 目の前にいるういが『うい』じゃない事に気づいた私はクロスボウをういのような何かへと向けると、目の前にいたういのような何かは一瞬にしてこの場から消えてしまった。

『今のがいろはの妹?すっごい早いんだね。パッと消えちゃったよ』

 

 ごめんアグモン。そんなボケにツッコミを入れてあげる余裕、今はないよ。

「そういえばやちよさんがいない。探さなきゃ!」

 

 やちよさんがいない事に気づいた私は気持ちを切り替えて、やちよさんのもとへと向かう。するとやちよさんは白い髪の女性と向かい合っていた。

 

 

 

 

~やちよside

 

「最後の質問よ。私と毎年新年に書いていたのは?」

 

 目の前にいる相手が本当にみふゆなのか確かめるべく、私は本人しか答えられないはずの質問を幾つかしていた。

「懐かしいですね。手紙です。ワタシたち魔法少女はいつも危険と隣り合わせだから、お互いに何かあったときのためにしてほしい事をまとめようってやっちゃんが言い出したんですよね」

 

「・・・あなた、本当に・・」

 

 本当にみふゆなの?

「やっちゃんが願ったことも、仲間のマグカップを今も大切に残していることも、ワタシはなんでも知ってますよ!」

 

「っ!そうよね。それはあなたしか知らないわ。まさか本当に会えるとは思ってもなくて」

 

「ワタシ何度も言いましたよね?やっちゃんがいるのに死ねません。死ぬとしてもやっちゃんにそんな姿は見せないって」

 

「そうだったわね。さぁ、一緒に帰りましょう」

 

 私はみふゆに手を差し伸べるも、彼女は私の手を取らない。

「ごめんなさいやっちゃん。ワタシ、戻る事はできません。こっちの世界に身体が馴染み過ぎてしまったんです」

 

 そんな・・・っ!

「でもやっちゃんがいてくれるなら大丈夫です。ここでずっと一緒にいましょう」

 

「やちよさん!」

 

 私がみふゆの言葉に惑わされていると、環さんが私の元へと走って来た。

「あの、その人!」

 

「みふゆ。ここは何処かおかしい。外に出る方法を見つけましょう」

 

「やっちゃん。一緒にいてください」

 

 みふゆ・・!

「ダメよみふゆ。私達はここにいちゃいけないの。ねぇ・・あなたは本当にみふゆなの?」

 

「ワタシだって。ずっと言ってるじゃないですか」

 

 ここでようやく確信した。目の前にいるのはみふゆであって『みふゆ』ではない。私の知ってるみふゆだけど、本物のみふゆではないと。

「やちよさんから離れてください!」

 

 環さんはアグモンを呼び出しながらも変身し、クロスボウをみふゆへと向ける。

「あなたがいるからやっちゃんはここに残ってくれないんですか?」

 

 そう言ったみふゆも魔法少女へと変身すると灰色のデジヴァイスを取り出す。

「あなた誰です?やっちゃんの何ですか?ワタシはやっちゃんの親友。互いを捨てられない古なじみ。あなたが割って入る隙間なんてないんですよ」

 

 みふゆはパートナーデジモンであるファルコモンを呼び出す。

ファルコモン

・成長期

・鳥型

・ワクチン種

 脚力が強力な従来のファルコモンに対して、大空を自由に飛ぶ翼が発達したファルコモンの亜種だ。必殺技は翼の爪で相手を引っ掻く『スクラッチスマッシュ』と硬質な翅でできてる十字手裏剣を連続で放つ『手裏裏剣』だぞ。

 

 懐かしいわね。みふゆのパートナーのファルコモン。でもきっとあの子も本物じゃない。

「っ!」

 

 環さんはみふゆへと向けて光の矢を連射したけれど、みふゆはそれを空を舞うように難なく躱す。

「ベビーフレイム!」

 

「スクラッチスマッシュ!」

 

 アグモンもファルコモンへとベビーフレイムを放ったけれど、ファルコモンはそれを翼の爪で切り裂いて打ち消していた。

「ガブモン・・!」

 

 このままでは環さんが危ない。そう思った私はガブモンを呼び出すと、ガブモンは心配そうにこちらを振り返った。

「やちよ。本当にいいの?」

 

「・・・えぇ。あのみふゆ達は本物ではないわ。だから・・!!」

 

 本物ではないのは分かっている。だけどみふゆの姿をした別モノだとしても、それを攻撃する事に躊躇いがあるのを見抜いていたガブモンは私の覚悟を確かめてくる。

「ごめんなさいガブモン。辛い役目を任せる形になってしまって・・。でも、今の私じゃ上手く戦えそうにないの」

 

「・・分かった」

 

 躊躇いのせいでまともに戦えそうもない私はガブモンにみふゆのことを任せた。本当は進化させて戦わせてあげたいけれど・・・今の感情の揺らぎじゃガルルモンへの進化も難しいわね。

「ボサっとしてんなアグモン!プチファイヤー!」

 

「うわっ!?」

 

 ガブモンのプチファイヤーがファルコモンへと命中すると、ファルコモンはその場に転倒する。

「ありがとガブモン」

 

「お礼はいいから目の前のファルコモンに集中しろ。こっちだってあまり余裕がないんだから」

 

 元々パートナーデジモン同士の戦いを好まないガブモンはこの状況を良く思っていないようで、余裕がないみたい。当然ね。私だって気持ちに余裕がなくて戦えないんだから。

「ハァァッ!」

 

 そしてみふゆと環さんの方も、みふゆのチャクラム攻撃を環さんがギリギリ避けているようだけど・・・経験的に環さんの方が圧倒的に不利なように思えるわね。

「はっ!」

 

「うっ・・・!」

 

 みふゆの固有魔法は幻覚。その魔法とチャクラムを組み合わせることで分裂しているように見せることができるのだけれど、その技に環さんも苦戦しているようね。

「どれが幻覚だなんて関係ない。全部一気に吹き飛ばしちゃえばいいんだ!」

 

 環さんは矢を大量に連射すると分裂するチャクラムごとみふゆに一撃を入れた。

「思ったよりはやりますね。ファルコモン!」

 

「ファルコモン!進化!」

 

「ダメ!」

 

「っ・・!やっちゃん・・・どうして・・」

 

 ファルコモンが進化しそうになった瞬間、私は変身して槍を投げた。その槍はみふゆを貫き、目の前にいるみふゆは私の方を振り向きながらファルコモンと共に消滅した。

「違う。あれはみふゆじゃない。みふゆじゃない・・!みふゆな訳がない!」

 

「やちよさん!しっかりしてください!さっきの人は偽物です!もう消えちゃいました!」

 

「・・・知ってるわ。ごめんなさい取り乱して。あんなものがみふゆであるはずがない」

 

 私は黒く濁りつつあるソウルジェムから穢れを浄化するためにグリーフシードを取り出すも、上手く浄化できない。

「やちよさん!」

 

 すると環さんは自身のグリーフシードを使って私のソウルジェムを浄化してくれた。

「あなた、自分のでしょ?」

 

「やちよさんを見捨てられるわけありません」

 

「お人よしが過ぎるわよ。あなた」

 

「やちよ。その言い方はどうかと思うぞ」

 

 ガブモンに論されて私は正気に戻る。余裕がなかったとはいえ今のは私が悪かったわね。

「ごめんなさい環さん。おかげで助かったわ」

 

 

 

 

~いろはside

 

 

 

「今の人がやちよさんの会いたい人なんですか?」

 

「・・・えぇ。あの子はね。私にとって大切な幼馴染なの」

 

 同じだったんだ。私もやちよさんも大切な人を探している。

「うい・・!」

 

 ようやく会えると思ったのに・・。いつになったらあなたにたどり着けるんだろう?

「やちよししょー!いろはちゃん!」

 

 私とやちよさんが虚しさに包まれている中、使い魔を払い除けた鶴乃ちゃんとピヨモンがやってきた。

「どうだった?」

 

「・・・っ」

 

 私とやちよさんが首を横に振ると「そっか」と鶴乃ちゃんは呟いた。

「鶴乃ちゃんの方は大丈夫だったの?」

 

「うん!最強のわたし達にかかればウワサなんて余裕だよ。今回はダメだったけど帰ったらまたウワサのことを調べよう。わたしもまだまだみふゆのことを探すからさ」

 

「これは私の問題だから鶴乃は付き合わなくていいのよ」

 

「わたしだってみふゆに会いたいよ。それにほら。チームメイトなんだし!」

 

「それは過去の話だって言ってるでしょ。それと次の話をするにはまだ少し早いわ」

 

「えぇ。まだ終わっていません」

 

 目の前に現れたのはタイヤのついた竜のような姿をした『ウワサ』。

「私達は会いたい人を否定した上、眠りもせずに戻って来た。ウワサが無視するわけないわよね」

 

「よし、一番槍は頂いた!」

 

 鶴乃ちゃんは我先にとウワサに炎攻撃を仕掛けたけれど、その攻撃はあっさりと掃われてしまう。

「はぁっ!」

 

「てぇい!」

 

 私とやちよさんの攻撃もまるで通用しない。だったら・・・!

「アグモン!」

 

「ガブモン!」

 

「ピヨモン!」

 

 私達3人はそれぞれデジヴァイスを取り出して3体のデジモンに進化の光を送りました。

「アグモン進化!グレイモン!」

 

「ガブモン進化!ガルルモン!」

 

「ピヨモン進化!バードラモン!」

 

バードラモン

・成熟期

・巨鳥型

・ワクチン種

 燃え盛る炎を纏った姿をした巨鳥型デジモン。インターネットの防御壁『ファイヤーウォール』から発生したデジモンだ。その巨大な翼を羽ばたかせて大空を飛び回る。必殺技は翼を羽ばたかせて流星のように羽をとばす『メテオウィング』だ。

 

 3体とも成熟期に進化させた私達は一斉攻撃で一気に仕掛けた。

「メガフレイム!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

「メテオウィング!」

 

 それぞれの炎攻撃がウワサにヒットしたけれど、このウワサにはまるで通用していなかった。

「そんな!これでもダメなの?」

 

「いくら何でも頑丈すぎるわね。防御力だけみると成熟期以上、完全体並とみていいかもしれないわね」

 

 相手はデジモンではなくウワサなのですが、デジモンのように例えたやちよさんはデジヴァイスを構え直します。

「ガルルモン!完全体に進化して一気に勝負を決めるわよ」

 

 やちよさんはガルルモンをさらに進化させようとしましたが、進化の光は発せられませんでした。

「くっ、今の不安定な精神状況じゃ完全体に進化させられないとでもいうの?」

 

「ただでさえ普通の攻撃じゃ歯が立たないのに・・!」

 

 私のグレイモンも完全体に進化させてあげられたら。

「わたし達の攻撃もデジモン達の攻撃もまったく通用しない。そういうコーティングがされてるみたいだね」

 

「コーティングってそんなわけ・・・いえ、ウワサは魔女とは違う。在り得ない話じゃないわね」

 

 もしそうだとしたら私達の攻撃じゃ倒すことはできない。いったいどうしたら?

「口寄せ神社。神様。・・・そうだ神様だよ!」

 

「鶴乃ちゃん、何か閃いたの?」

 

「あのね、神様って願いを叶えてくれるでしょ?それで、魔法少女は願いを叶えて生まれた。デジモン達も私達の願いを受けて進化してる。どれも願いに関係してるから『質』が似ているんじゃないかな。だから耐性があるとか」

 

「仮にそうだったとしてどうすればいいのよ。進化前の攻撃力じゃそもそも太刀打ちできないわよ」

 

 願い・・・。奇跡と反対の力となると・・。

「呪いとか穢れの力?」

 

「呪い・・?」

 

「ありませんよね。そんな力」

 

 呪いや穢れの力なんて、そんな魔女みたいなこと魔法少女である私達が使えるはずがない。

「もしかして私達今・・・」

 

「絶体絶命ってやつだね」

 

「っ!?」

 

 ウワサが地面を尻尾で叩きつけた瞬間、空間が歪んでデジタルエリアが出現した。

「そんな!?マスターデジモンの反応もないのにどうして?」

 

「デジモンを召喚したっていうの?」

 

「あれが『願い』の力を持つウワサだからそんな芸当もできるのかもね」

 

 デジタルエリアからは1体の阿修羅みたいなデジモンが飛び出てくる。

「ウゥゥゥ・・オォォォォォ!!」

 

アシュラモン

・完全体

・魔人型

・ワクチン種

 4本の腕と3つの顔を持つ伝説のデジモン。1つは怒りの顔、1つは慈悲の顔、そして最後の1つは祝福の顔となっている。見た目とは裏腹に正義を重んじ、不正を見ると徹底的にそれを攻撃して許そうとしない。必殺技は4本の腕から繰り出されるパンチラッシュの『阿修羅神拳』だ。

 

「よりにもよって完全体が現れるとはね」

 

「っ!!」

 

 アシュラモンは私達の方を見るなり、怒りの形相を向けて来ました。

「私達、何も不正はしてないはず・・」

 

「こんな時間に神社に忍び込んでるんだから、不正扱いされても無理はないわ」

 

 そういえばそうでした。

「あいつはわたしに任せて!行くよバードラモン!わたし達の最強進化!」

 

「バードラモン進化!」

 

 鶴乃さんは更なる進化の光を送るとバードラモンは鳥人のような巨大な姿へと変貌しました。

「ガルダモン!」

 

ガルダモン

・完全体

・鳥人型

・ワクチン種

 大空を舞う翼と巨大な鉤爪を持つ鳥人型デジモン。正義と秩序を重んじ。自然と大地と風の守護神でもあるぞ。鳥型デジモンの中でも知性と戦闘能力の高いデジモンのみ進化すると言われ崇拝されている。必殺技は超速で真空刃を繰り出して敵を斬り刻む『シャドーウイング』だ。

 

 ガルダモンへと進化したバードラモンはアシュラモンへと向かって飛んでいったけど、依然こっちが絶体絶命なのは変わらない。

「ちゃらぁぁぁっ!」

 

「でぇぇい!」

 

 それどころか鶴乃ちゃんとガルダモンがアシュラモンの相手をさせられているせいでさらにピンチになってる。

「鶴乃の考えが正しいかは置いといて、このままじゃ埒があかないのは確かね」

 

 やちよさんもこのままじゃ埒があかないと判断してる。そんな時だった。

「きゃぁ!?」

 

 私はウワサの攻撃を受けてしまい転倒してしまう。普段なら避けられた攻撃だったのに避けられなかった。

「環さん!」

 

「ちょっと掠っちゃいましたけど、大丈夫です」

 

「でも明らかに消耗が激しいわ。鶴乃はまだいける?」

 

「今はまだなんとか。でもこれ以上時間がかかるとなると魔力が尽きちゃいそう」

 

「為す術がないわね。こうなったら一旦引くわよ」

 

 状況が状況なので一度引くことにしようとした途端、私は体に力が入らなくなりその場に膝をついてしまう。

「ごめんなさい。なんだか急に力が抜けちゃって」

 

「あなた、そのソウルジェム!」

 

 私のソウルジェムは気が付かないうちにかなり黒ずんでしまっていた。

「もう少し大丈夫だって思ってたんだけど、ういに会えなかったの。ショックだったのかな・・?」

 

「そんな状況でどうして私にグリーフシードを・・!とにかく動かないで。私があなたをおぶっていくわ」

 

 私はやちよさんにおぶられる形となる。かといってこんな状況で私達を見逃してくれるほどウワサも甘くなかった。

 




神浜デジモンファイルに
『梓みふゆ&ファルコモン』が登録されました。

次回「あの人は何かを隠してる」


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あの人は何かを隠している

クロスウォーズのデジモンはレベルだけでなくタイプや属性もオリジナルで展開していくつもりです。


~いろはside

 

「こんな状況だからって見過ごしてくれるわけ・・・ないわよね」

 

 ウワサは私達を見逃してくれようとはせずに攻撃を仕掛けてくる。

「ごめんなさい環さん。少し乱暴に動くわよ」

 

「は、はい」

 

 やちよさんに背負われている私は段々と意識がはっきりしなくなっていく。

「シャドーウイング!」

 

「そんな炎では・・・倒れぬわ!!」

 

 ガルダモンはアシュラモンに必殺技を浴びせていたけど、その攻撃でアシュラモンは片膝をついただけで倒せてはいなかった。

「思った以上にタフだよやちよ!」

 

「とにかく今は撤退よ!」

 

「ごめんなさいやちよさん。・・・ご迷惑を・・おか・・けして」

 

「だいぶ辛そうね。でももう少しだけ我慢して。・・・環さん?しっかりして環さん!!・・くっ、急がなきゃ!」

 

 慌てて走るやちよさんの息づかいが聞こえてくる。やちよさんの体温が背中から伝わってくる。

 

 だけどそれに反して私の胸の奥がどんどん冷たくなってくる。

 

 何だか意識が吸い込まれていくみたいに・・・私がのみこまれていく。

「環さん、外に出たらみたまのところに行きましょう。どれぐらいふっかけられるか分からないけど、グリーフシードを売ってくれるかもしれないわ」

 

「やちよさん・・・。私、あとで話したいことが」

 

「奇遇ね。私も話したいことがあるの。だから絶対に耐えなきゃいけないわね」

 

「やちよ!こっちに出口があったよ!」

 

 グレイモンとガルルモンの2体がかりでウワサを押さえ込んでるうちに鶴乃ちゃんが出口を見つけてくれた。やちよさんは出口へと目掛けて必死に走ってくれたけどその途中でウワサの攻撃を受けて、やちよさんはバランスを崩してしまう。

「環さん!?」

 

 体の奥が凍えるように冷たい。

 

 暗くて・・黒くて、禍々しい闇の底に沈んでいく。

 

 私、死んじゃうのかな?

 

 まだういを見つけてないのに。

 

 何処までも吸い込まれていく。深く、深く・・・自分の底へ。

 

 

~やちよside

 

「環さん!いけない。ソウルジェムが穢れきってしまう!」

 

 何とかして環さんを助けないといけない。そう思った瞬間だった。

「ァァァぁアァぁあぁ!」

 

 環さんの髪から生えるように出てきた巨大な鳥のような姿の『それ』は大量の布をグレイモンとガルルモンを気にすることなくウワサへと飛ばした。

「うわっ!?」

 

「危なっ!?」

 

 咄嗟に避けたグレイモンとガルルモンは環さんの『それ』に驚いていると、環さんから湧き出てくる穢れがグレイモンを包み込んだ。

「グレイモン!超進化!」

 

 グレイモンがその穢れに当てられると、その穢れを取り込んだグレイモンは暗闇に包まれて、その暗闇からは骸骨のようになったグレイモンが出てきてしまった。

「スカルグレイモン!」

 

スカルグレイモン

・完全体

・アンデッド型

・ウィルス種

 全身が骨だけになったスケルトンデジモン。闘争本能しか持ち合わせていないスカルグレイモンには知性のかけらも無く、他のデジモンにとってその存在は脅威となっている。必殺技はその脊髄から発射される有機体系ミサイル『グラウンド・ゼロ』。更にはその技に追尾機能も備わり威力・範囲も強化された『オブリビオンバード』も扱うぞ。

 

「これが環さんとアグモンの完全体なの?・・・そんなはずがないわ」

 

 こんなのがあの環さん達の進化の可能性なはずがない。

「いったい全体どうなってるのやちよ!」

 

「分からないわ。分からないけど・・・」

 

 分かっているのは1つだけ。環さんの『それ』の影響でグレイモンが暗黒進化してしまったということだけよ。

「見て、やちよ!」

 

 大量の布に巻き付けられて身動きが封じられたウワサは『それ』に啄まれ、引きちぎられ、引き裂かれて打ち倒されて結界が解かれる。

「オォォォォ!」

 

 スカルグレイモンの方も正気があるのかないのか分からないけれど、いまだガルダモンと交戦しているアシュラモン目掛けて駆け出して行く。

「ガルダモン!一旦戻って!」

 

 空を飛んでスカルグレイモンの体当たりを回避したガルダモン。するとスカルグレイモンはアシュラモンに頭から噛みついた。

「貴様!離せ!」

 

 おそらく正気が失われつつあるスカルグレイモンは何度殴りつけられても、そもそも痛みを感じていないのかアシュラモンの拳に一切怯むことなく噛む力を強める。

「ァァぁアァぁ!」

 

 そこに環さんの『それ』も参戦し、アシュラモンを背後から突き刺すと、スカルグレイモンは脊髄のミサイルを向ける。

「グラウンド・ゼロ!」

 

「ぐぉぉぉぉぉ!?」

 

 スカルグレイモンはミサイルを発射すると、それが直撃したアシュラモンはデータが散って卵になってしまう。

「なんて強さなの・・」

 

「驚いてる場合じゃないよやちよししょー!なんかいろはちゃんのアレもスカルグレイモンもこっちを見てるよ!」

 

 環さんの『それ』もスカルグレイモンも私達を敵と判断したように殺気を送っている。こっちはまだ戦えそうなのがガルダモンだけだって言うのに・・・どうしたものかしらね。

「ガルダモン!お願い!」

 

「分かってる!」

 

 ガルダモンはその巨体で『それ』とスカルグレイモンを押さえこもうとしたけれど、意外と身動きの素早い『それ』に翻弄された隙にスカルグレイモンの爪攻撃を受けて、ピヨモンに戻ってしまう。

 

 私達が環さんの『それ』とスカルグレイモンに追い込まれつつあるその時だった。

「ティロ・フィナーレ!」

 

「デッカードランチャー!」

 

 いきなり現れた魔法少女とデジモンの砲撃によって環さんの『それ』とスカルグレイモンが打ち倒され、環さんは元に戻り、スカルグレイモンもアグモンに戻った。

「環さん!」

 

 私は意識を失ったまま落ちてきた環さんを受け止めると、『それ』を打ち倒した魔法少女はマスケット銃を環さんへと向けてきた。

 

デッカードラモン

・完全体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 すべての非行型デジモンの天敵とも言えるデジモン。それがデッカードラモンだ。恐るべきは背中に搭載された『デッカードランチャー』で複数種類の対空ミサイルは如何なる飛行型デジモンを迎撃する能力を秘めている。対空ばかり特化してるだけではなく、対地戦闘では『ヘビーテイルフック』の強烈な一撃も放つぞ。

 

 

「おかしな魔力を追って来たら、まさか人に紛れた魔女がいるなんてね」

 

「その銃口を下げて」

 

「・・・退いてもらえます?」

 

 私が銃口を下げてと言っても、その魔法少女は銃口を下げようとしない。

「あなたは誰なの?」

 

「私は巴マミ。こっちはパートナーのデッカードラモン。見滝原の魔法少女です」

 

 見滝原。ずいぶんと遠いところから来た魔法少女ね。

「見滝原の魔法少女がどうしてこんなところにいるのかしら?」

 

「私の事より、早くその魔女を始末しないと」

 

 巴マミと名乗る魔法少女とデッカードラモンはその銃口を環さんとアグモンへと向け直す。

「待ちなさい。この子は魔女じゃないわ。どう見ても魔法少女でしょう?」

 

「・・・・・」

 

「分かったのならその銃口を下げて」

 

「・・・確かに。さっきまでの禍々しい魔力とは違うみたいですけど」

 

 巴マミは渋々銃口を下げてくれると、デッカードラモンもその砲身を下げてくれた。

「それならあれはいったい?・・・貴女、その子が人間に化けた魔女じゃないと証明できますか?まさか魔女に操られてるんじゃ?」

 

「それ以上いろはを悪く言うな!」

 

 怒った表情のアグモンは意識を取り戻したばかりにも関わらず今にも炎を吐き出そうとしていた。かくいうウチのガルルモンもいつでも攻撃できる姿勢になっている。

「・・・最近神浜の魔法少女がグリーフシードを独占するために魔女を集めているって噂になっているんです。貴女はご存知かしら?」

 

「私がやっているって言いたいの?濡れ衣もいいところね」

 

「もう許せない!ベビーフレイム!」

 

 とうとう堪忍袋の緒が切れたアグモンはベビーフレイムを巴マミへと放つも、デッカードラモンは尻尾を振るうだけでそれをかき消した。

「神浜に各地から魔女が集まっているのは事実として知っていますよね?そのせいで周辺各地の魔女が減ってしまっていることも」

 

「だからって私達には関係ない話じゃない」

 

 やっぱりこれは戦うしかないようね。

 

 そう考えていた私を鶴乃が静止させた。

「待ってやちよ。こっちも魔女が増え過ぎて困っているから原因を・・・」

 

「鶴乃は黙ってなさい。・・・私達のテリトリーの問題は私達で解決します。だからあなたもあなたのテリトリーの問題を神浜に持ち込まないで。お引き取り願えるかしら?」

 

 私はあくまで冷静に引き下がるように要求する。かといってこっちもあまり虫の居所はよくないから争うことになっても仕方ない言い回しをしてしまったわね。

「・・・いいです。今回は引きましょう」

 

 デッカードラモンをデジヴァイスへと戻した巴マミは潔く引く事を決断してくれた。

 

 

 

~鶴乃side

 

「余計なお世話かもしれませんがあの人は何かを隠している」

 

 やちよの説得で何とか引いてくれる決断をしてくれたマミはわたしの横を通り過ぎようとした時に1つ忠告してきた。

「信用しすぎないように。貴女達に嘘をついています」

 

 マミがそうわたしに忠告をして去って行ったタイミングで気を失っていたいろはちゃんが意識を取り戻した。

「いろは!大丈夫?」

 

「う、うん。いったい何があったの?ウワサは倒したの?」

 

「えっ?」

 

 どうやら何か変なのを出していた間の事は覚えていないみたい。

「いろはがね。何だかすっごいのを出して、アグモンが・・・もがもが」

 

 ピヨモンが全部話しちゃいそうになっていたのをわたしの口を閉じさせた。たぶんこれ、いろはちゃんに教えない方がいいパターンだよ。

「ありがとうございますやちよさん。ソウルジェム、やちよさんが何とかしてくれたんですよね?」

 

「えっ・・・いいえ。気にしないで」

 

 やちよも今はさっきのことを話す気はないみたい。

「ってもうこんな時間!?早く帰らないと!帰ろうアグモン!」

 

「お腹減った~。帰ってごはん食べたいな~」

 

 もう時間は21時近くになっていて、おうちが神浜じゃないいろはちゃんは慌てて帰ろうと

 

「帰っちゃダメよ環さん。これからウチにいらっしゃい」

 

「ふぇっ?」

 

「私に話したいことがあるんでしょ。背負っていたときに言ってたじゃない」

 

「でも遅くなるとお母さんに怒られる」

 

 まぁ、中学生があまり出歩いていい時間でもないもんね。

「大丈夫よ。私が説明するわ。スマホを貸しなさい」

 

 やちよは半ば強引にいろはちゃんからスマホを借りると、いろはちゃんのお母さんを言葉巧みに説得していた。さすがやちよししょー。

 

 

 

~いろはside

 

「はい。緑茶でよかったかしら?」

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 結局私はやちよさんにお母さんごと言いくるめられて、やちよさんの家にやってきた。明日が土曜日で良かった。

「どうしたのそわそわしちゃって?」

 

「な、なんだか広いお家だなぁって」

 

 本当に広いお家。ここにやちよさん1人で住んでいるのかな?

「元々祖母が下宿屋をやっていたのよ。正直1人じゃ持て余す広さよ」

 

「へぇ、やっぱり1人暮らしなんですね」

 

「まぁ、それはそれとして。さっそくだけど私に話したいことって何かしら?」

 

「は、はい!」

 

 言わないと。私の口からちゃんと言わないと。

「えっと。あの・・。その・・・。これから私と一緒にウワサを調べてくれませんか」

 

 言えた。正直に。

「ダメ。ですか?」

 

「いいえ。実はこの家に呼んだのは私にも理由があるの。この家を拠点にして一緒に活動できたらと思ってね。だから場所をちゃんと教えておこうと思ったの」

 

「それって!」

 

「答えは『はい』よ。環さん。これから一緒に神浜市のうわさを追いましょう」

 

「やった~!」

 

 私がやちよさんにお礼を言うよりも先にアグモンがデジヴァイスから勝手に出てきた。

「やちよも素直じゃないな~!このツンデレめ~。いろはに言われるのを待ってたなんてさ~!」

 

 同じく勝手に出てきてたガブモンもやちよさんの事をツンデレ扱いしてクスクスと笑っていました。

「ツンデレってなぁに?」

 

「何だお前ツンデレも知らないのか?ツンデレっていうのはなぁ」

 

「黙りなさいガブモン」

 

 アグモンにツンデレの説明をしようとしていたガブモンは顔を赤くしたやちよさんによって、強制的にデジヴァイスに戻されてしまいました。

「とにかくよ。今回みたいなウワサだと私とガブモンだけじゃ対処しきれないの。あなたの協力があると助かるわ」

 

「それじゃあ私達これから仲間ですね!」

 

「いいえ。仲間じゃないわ」

 

 え?どういう事?

「同じチームでもただの協力関係。これからあなたは私の助手よ」

 

『いいかアグモン。こういうのをツンデレっていうんだぞ』

 

「うん!わかった!」

 

「そこ!分からなくていいわよ!とにかく。それで良ければ協力しましょう」

 

「はい!それでも構いません!協力させてください!」

 

 これがういに近づく一歩に繋がるなら、助手でも構わない。

「では改めて助手の環さん。これからは2人で神浜うわさファイルをまとめていきましょう」

 

「2人でならきっと見つけられますよ。ういも、みふゆさんも」

 

 少なくとも私はそう信じてる。

「えぇ。そうね。ところで環さんはどうしてうわさを調べようと思ったの?」

 

「口寄せ神社はハズレでしたけど、他にも似たようなうわさがあるかもしれないなって。きっとウワサにういは巻き込まれてる。そんな気がするんです」

 

「そう・・。もしかしたらみふゆも・・・」

 

「たっだいま~!」

 

 もしかしたらみふゆさんもウワサに巻き込まれてるかもしれない。そう心配していたやちよさんと私のところにいきなりやってきたのは何故か頼んでもない中華の出前を持ってきた鶴乃ちゃんとピヨモンだった。

「鶴乃!?ただいまって・・あなた何!?」

 

「いやほらアグモンもお腹が減ったって言ってたからさ~。味は50点。元気は満点!中華飯店万々歳です!」

 

「わ~い!」

 

 うん。そういえば言ってた。アグモンがお腹減ったって。

「はい!ラーメンセット6人前おまちど~!」

 

「はいこれアグモンたちのぶん!」

 

 人数的に自分達のぶんもあるね。

「こんな時間に中華・・・」

 

 既に時間は22時近く。そんな時間にも関わらず持ち込まれた中華に流石のやちよさんもなんとも言えない表情をしている。

「ひいじいちゃんとじいちゃんが築いた由比家の誇り。中華飯店万々歳!参京区で元気よく営業中です!」

 

 せ、宣伝しにきたの?

「ほら、腹が減っては戦もできぬって言うでしょ?」

 

 戦は既に終わってる。

「まぁいいじゃんか。味はともかくお腹は減ってるし」

 

「いっただきま~す!」

 

 再び出てきたガブモンはアグモンと一緒にラーメンを食べ始めた。やっぱりガブモンも50点ぐらいって思っているんだね。

 

 

 

 

~かえでside

 

「ヴォぉぉぉぉ!!」

 

「いい加減落ち着け!ヴリトラモン!」

 

 私達は現在、アグニモンが進化して暴走しちゃってたヴリトラモンを相手にしていたの。

 

ヴリトラモン

・ハイブリッド体

・魔竜型

・ヴァリアブル

 伝説の十闘士の力を宿した火の能力を持つデジモン。炎を一瞬の爆発的な火炎で打ち消すファイヤーファイター。活火山研究用のデータから発生したと言われ、測定不可能な未知のエネルギーを内包していると思われる。必殺技は両腕の超兵器ルードリー・タルパナから熱線を放つ『コロナブラスター』だ。

 

 ゲンナイさんに頼まれて火竜のデジモンを追っていたんだけど、そのデジモン。ヴリトラモンを倒した途端、そのデータをアグニモンが取り込んじゃって、アグニモンがヴリトラモンに進化しちゃったの。そしたらヴリトラモンは今に至ってるの。

 

「いい加減にしなさいよ!シードラモン!」

 

「分かってる!」

 

シードラモン

・成熟期

・水棲型

・データ種

 大蛇のような長い体を持った水棲型デジモン。長い体を使い、襲い来る敵に体を巻き付けて攻撃をする。必殺技は口から絶対零度の息を吐き出し、水を一瞬にして凍らせて敵に放つ『アイスアロー』だ。

 

レナちゃんはベタモンの進化したシードラモンに仕方なく攻撃を指示したけど、水場じゃないこの場所で本領を発揮できないシードラモンは尻尾を振るって攻撃してたけど、逆に尻尾を掴まれて投げ飛ばされちゃった。

「ウッドモン!」

 

「やめとけかえで。ウッドモンは火に弱いだろ」

 

 ももこちゃんの言う通りウッドモンは火に弱い。それは知ってたけど、何もしないよりはと思った私はそれでもとウッドモンに攻撃の指示をしてしまったその時だった。

「ヴァァァァッ!」

 

 ヴリトラモンの炎攻撃を受けたウッドモンはフローラモンに戻っちゃったら、シードラモンもベタモンに戻っちゃった。

「ベタモン!?」

 

「コロナブラスター!!」

 

「きゃぁっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 そしてレナちゃんとももこちゃんもヴリトラモンの攻撃を受けて気を失っちゃって残ってるのは私1人だけになっちゃったの。

「うぅ、ももこちゃん。レナちゃん。返事してよ」

 

 気を失っちゃってる2人は返事をしてくれない。

「もうやだ。誰か来て!!」

 

 私が助けを求めた瞬間私の中から『それ』は現れた。

「ッ!!」

 

 現れた『それ』はヴリトラモンを黒く塗りつぶすように攻撃をしたら、ヴリトラモンはその一撃でアグニモンに戻ってその場に倒れた。

「えっ・・・?今のは?」

 

 今のが何だったのか分からない私は倒れているももこちゃんとレナちゃんに駆け寄る。

「ももこちゃん!レナちゃん!しっかりして!」

 

 そこで気づいた。私の手が黒く汚れていた事に。さっきの攻撃でだ。

「っ・・!!」

 

 さっきの事が現実だと思い知らされた私はフローラモンをデジヴァイスへと戻すのも忘れてその場から駆け出した。

 

 自分がした事を信じられないまま。

 

 自分から出てきた『それ』が普通じゃないと感じながら。

 




次回「なんだってしてやるよ」


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なんだってしてやるよ

マギウスのデジモンを悩む時期が近づいてきました。せっかくなので募集をかけようと思います。詳しくは活動報告にて。


~いろはside

 

「すみません。ありがとうございました」

 

 鶴乃ちゃんが教えてくれたねむちゃんの手がかり。それは『ひいらぎ』という苗字の人が鶴乃ちゃんのおうちの常連とのことだった。最初の1週間は頑張って万々歳に通ってみたけど会えなくて、やちよさんのアドバイスで電話帳を頼りに『ひいらぎ』さんの家を当たってみることにしたの。

「鶴乃ちゃんに借りてみつけた4軒のうち今ので3軒目。あと1軒もダメだったらどうしよう?」

 

『ねぇいろは。鶴乃はひいらぎがねむの家だって言ってたっけ?』

 

「言ってないんだよね・・」

 

 アグモンの言う通り鶴乃ちゃんは『ひいらぎ』がねむちゃんのお家だとは一言も言ってない。私がそう信じて調べているだけ。

「ネガティブに考えちゃダメだね。次の場所を信じなきゃ!」

 

『その意気だよいろは!』

 

「モキュ!」

 

 私はアグモンと一緒に次の場所へと向かおうとしていたら、偶然にも小さなキュゥべぇと会えた。

「モキュモキュ!」

 

 私に「こっちに来て」と誘う小さなキュゥべぇ。私は誘われるがままにその道を進んでいく。そしたら自転車の移動販売の『フクロウ幸運水』っていうフクロウ印の給水屋さんが視界に入った。

「へぇ、無料で水を配ってるなんて珍しいなぁ」

 

「タダなんだろ?おっちゃん。1つくれよ!」

 

 私は珍しさを感じながらもそこを通り過ぎようとしたら、1人の女の子がそれを貰ってた。

「そちらのお嬢さんも一杯どうだい?」

 

「えっと・・じゃあいただきます」

 

 断り切れなかった私は瓶に入ったお水を頂くことにすると、隣の女の子は早速その水を飲み始めた。

「ぷはぁ!美味いなこれ!」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

「おっちゃん!もう一杯くれよ」

 

「ごめんね。一日1人1杯までなんだ」

 

 もう飲み干した女の子はおかわりを求めていたけど、それができないと知った女の子は残念そうにその場を後にしていった。

「ご馳走様でした」

 

水を飲み終えた私もその場を後にしたら、その直後に辺りの景色が変わった。

「デジタルエリア!?お願いアグモン!」

 

「ボクもさっきの水、飲みたかった」

 

 デジタルエリアに捉えられたので私はアグモンを呼び出したら、私達の前にゴーレムみたいな1体のデジモンが現れた。

 

ゴーレモン

・成熟期

・鉱物型

・ウィルス種

 超古代の呪いをデジタル解析している時に発見されたと言われる岩石・鉱物型デジモン。背中には疫・呪・凶と古代の禁断の呪文が彫られている。体の9割が岩石のデータでできており、手足を繋ぎ止めている。必殺技は堅い拳を振るう『ゴーレムパンチ』だ。

 

 データ容量は・・・たぶんあのゴーレモンがマスターデジモンだよね。

「行くよアグモン!進・・・」

 

 私はアグモンに進化の光を送ろうとしたその時だった。

「行け!モノドラモン!」

 

 1人の紫のフードを被った魔法少女が子竜のようなデジモンと一緒に乱入してきた。さっきの女の子だ。

「あの子は?それにあのデジモンも・・」

 

モノドラモン

・成長期

・小竜型

・ワクチン種

 両手にこうもりのような翼がついているが。飛べることができない小竜型デジモン。ワクチン種でありながら凶暴な性格をしており、喧嘩好きなデジモンだ。必殺技の『ビートナックル』はもの凄い勢いで突撃し、強力な爪でぶんなぐるという単純明快な技だ。

 

「ビートナックル!」

 

「うりゃぁぁぁぁっ!」

 

 力いっぱいゴーレモンを殴りつけたモノドラモンに続けて、その女の子も手にしているハンマーで力いっぱいゴーレモンを叩いた。

「おらぁぁぁっ!」

 

 2度目のハンマー攻撃が炸裂し、地面に頭をつけたゴーレモンはすぐに起き上がって硬い拳を振るう。

「ぐぁ!?」

 

 ガードはしたけど、殴り飛ばされた女の子は体勢を立て直すとデジヴァイスを取り出す。

「モノドラモン!進化だ!」

 

「モノドラモン!進化!」

 

 進化の光に包まれたモノドラモンは一回り大きな各部に鎧を付けた竜に姿を変えた。

「ストライクドラモン!」

 

ストライクドラモン

・成熟期

・竜人型

・ワクチン種

 ウイルスバスターを目指すコマンドドラゴン。それがストライクドラモンだ。後ろに伸びたツノなどモノドラモンの面影を残す部分も多いがメタルプレートに包まれたコマンダーモードに変貌しているため、全く別の種にも見える。必殺技の『ストライクファング』は各部のメタルプレートを灼熱に燃やし、炎の塊となって相手に体当たりをするぞ。

 

「やっちまえストライクドラモン!」

 

「ストライクファング!」

 

「い、一撃で・・!」

 

 ストライクドラモンの必殺技が炸裂したら、その一撃でマスターデジモンのゴーレモンは倒れて、デジタルエリアから元の世界に戻った。

「おい、お前!何処の魔法少女だよ!ここが何処だか分かってんのか?」

 

 さっきの魔法少女に変身していた女の子はソウルジェムの指輪を突き付けながら私に声をかけてきた。

「さ、さっきはありがとう。私、この町の魔法少女じゃなくて・・・」

 

「ふ~ん、まぁいいや。出すもの出してくれたらな」

 

 その子は『何か』を求めるように手を突き出してきた。この流れで求めているものと言えばあれだよね・・。

「ア、アイスでいいかな?」

 

「しょうがねぇな。今回はそれで手を打ってやるよ」

 

 私はアイスをおごると言ったら、その子は納得してくれた。

「そういえばお前さ。さっきあの水のとこにいた奴じゃん。オレ。深月フェリシアってんだ。そんでもってこっちは・・・」

 

「ワイはモノドラモン!よろしゅうたのんます!」

 

「そんでお前は?」

 

「いろは。環いろは。パートナーはアグモン」

 

『えへ。よろしくね』

 

「よしいろは!それとアグモン!もし喧嘩になったらオレ達を呼べ!友達料金で助けてやるよ!」

 

「お、お金は取るんだ」

 

「俺は報酬で動く傭兵なんだよ」

 

 おごってあげたアイスをさっそく食べ始めたフェリシアちゃんとモノドラモン。するとフェリシアちゃんはアイスの棒を見てある事に気づいた。

「よっしゃ!ラッキー!当たりだ!」

 

 どうやらフェリシアちゃんのアイスが当たりだったみたい。

「おっちゃ~ん!もう1本!」

 

 さっそくアイスをもう1本貰いに行ってた。

「・・・あっ、私も当たりだ」

 

 そして私も自分のぶんとして買ったアイスが『当たり』だったのでもう1本を貰って来て、アグモンにあげたのだった。

 

 

~やちよside

 

「自業自得ネ」

 

「嘘を書いたわけではありません。当然の注意喚起かと」

 

「そうだけどさ~」

 

 みたまのところへと向かっている最中、この町で活動する他の魔法少女チームとすれ違う。

「いらっしゃ~い。丁度今他のお客さんが帰ったところよ」

 

「またフェリシアね」

 

 どうやらさっきの子達はフェリシアの注意書きの張り紙を書いていたみたいで、その1枚をここに貼っていた。

「困った子よね。腕は立つのだけれど」

 

「それで・・。新しいうわさの情報って?」

 

 私はさっそく招かれた理由であるうわさの情報を聞き出そうとすると、屋上に魔法少女の気配を感じ取った。

「どうやらまたお客さんみたいよ」

 

 知らない魔法少女の魔力を感じ取った私は屋上へと足を運んでその人物と対面する。

「アンタがこのへんの顔役って聞いてね」

 

「神浜市に何の用かしら?」

 

「知ってんでしょ?この町に魔女が集まって来てるおかげで、周りに住んでるアタシらみんな食いッパグレてるんだよね~。可哀想なアタシにお優しい神浜の皆さんがちょ~と融通を聞かせてくれてもいいんじゃないかなって思ってさ~」

 

 なるほど。最近良く聞くパターンの子ね。

「神浜で狩りをするならルールに従ってもらうわ。他の魔法少女を傷つけない。魔女は先着順で横取りしない。以上よ」

 

「はぁ?そんだけか?」

 

「こっちも魔女が増え過ぎて持て余しているのよ。それに神浜の魔女は他より強いけど、あなたとあなたのパートナーなら問題なさそうだし」

 

 私は赤い髪の彼女と、彼女の隣にいる赤い怪獣のようなデジモンを見る。この子達ならこの町でも問題ないわね。

「へぇ。何だか拍子抜けだね。それなら気ままにやらせてもらうよ。・・・なぁ、なんで魔女もデジモンも神浜に集まってるんだ?不思議だよなぁ?ひょっとしてアンタ達・・・いや、それはないか」

 

 赤い髪の子は私達が魔女と組んでるのかと疑おうとしていたけど、流石にそんな事ができる芸当の魔法少女なんかいるはずないじゃない。

 

 

 

~いろはside

 

 

「それで結局ダメだったの?」

 

「はい。4軒とも違いました」

 

 結局4軒すべてがねむちゃんのお家じゃなくて、違う人のお家だった。フェリシアちゃんと一緒にいた間は何故かお財布を拾って交番に届けたらお礼を貰えたり、ガチャで星4を当てれたり、福引きで1等の買い物券1万円分を当てれたりなんていいことばっかりだったんだけど、そこまでツキは続かなかったみたい。

「もうあとは鶴乃ちゃんのお店に来るのを待つしかなくて・・・おかげでこれからもしばらく中華が続きそうです」

 

「でもまぁ手がかりがあるだけいいんじゃないかしら?みふゆの方は何の手がかりもないんだもの」

 

 そうですよね。手がかりが少しでもあるだけマシですよね。

「それに私最近みふゆ以外にも気がかりなことがあるのよ」

 

「気がかりな事?いったいなんですか?私にできることならお手伝いしますよ!」

 

「気がかりなことっていうのはあなたの事なの?」

 

 え?私の事?

「あなた毎日のように神浜市に通って大丈夫なの?家も遠いのに・・」

 

「あっ、それなら大丈夫です。今度引っ越す予定なので」

 

「そう。それなら・・・って、えっ!?なんでそんな大事な事を言わなかったの!?私達仲間じゃない!」

 

 えっ?仲間?

「あれ?助手なんじゃ・・・」

 

「い、今のは言い間違えただけよ」

 

「いいか。アグモン。これがツンデレのデレってやつだ」

 

「黙りなさいガブモン」

 

 今回もデジヴァイスに戻されるガブモン。もうこのやり取りも何度か見せられて慣れてきた。

「とにかく活動の仕方だって変わるかもしれないんだから大事な事は教えてくれないと」

 

「す、すみません」

 

「それにしてもよくご両親が1人暮らしなんて許してくれたわね。まだ中学生でしょう?」

 

「実はお父さんが仕事の都合で海外に行く事になって、お母さんもそれに付いていく事になったんです。それで寮もある神浜市立附属中に転校する事になって・・・」

 

「随分急な話ね」

 

 私自身急な話に正直ついていけてないところがあるけれど、こうなっちゃった以上仕方ないよ。それに親にバレてないとはいえアグモンもいるから1人じゃないし。

「でも1つ問題があって・・・今、寮に空きがないらしいので来週の日曜日には住む場所を決めないといけないんです」

 

 そう私が告げた瞬間だった。『またも』数字の描かれた紙が私の前に落ちてきた。

「『18』。また減ってる・・」

 

「またってどういうこと?」

 

「最初は24だったんですけど、何だか良い事があるたびに少しずつ数字が減って来たんです」

 

「良い事?・・・もしかしてフクロウ印の水を飲んだりした?」

 

「えっ?はい。飲みましたけど」

 

「やっぱりね」

 

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってる?このウワサ》

 

《フクロウ幸運水のそのウワサ》

 

《幸運をもたらす美味なる水》

 

《ひとたび口にすればたちまち幸せ》

 

《でもねだけどもご用心。24の幸運尽きたなら、不幸がドサリとコンニチワ》

 

《それが嫌なら幸運水を飲み続けるしかないって工匠区の馬券売り場じゃもっぱらのウワサ》

 

「もしかしていろはが飲んだのって・・・」

 

「十中八九そのうわさの水ね。時間がないわ。まずは幸運水をもらった場所に案内してもらえる?」

 

「は、はい」

 

 私はフクロウ印の幸運水を飲んだ場所へとやちよさんと一緒に向かって歩いていたら、その辺りをテリトリーにしていたフェリシアちゃんとまた会えた。

「おっ、いろは!となりにいるのはやちよか。すげー有名な奴。その隣は知らねぇ」

 

「えっ?隣?」

 

 やちよさんの隣を見てみると、いつの間にか鶴乃ちゃんもいた。

「知らないとはなんだ~!最強魔法少女の鶴乃さんだぞ~!」

 

「やっぱ知らねぇ~」

 

「万が一の事も考えて私が呼んだのよ」

 

 どうやら鶴乃ちゃんはやちよさんが呼んでくれたみたい。

「というか環さん。深月フェリシアと知り合っていたの?」

 

「え。まぁ、はい」

 

「出来れば彼女との付き合いはお勧めしたくはないのだけれど・・彼女の戦いは周囲を巻き込む危険なものだから」

 

「で?お前らは何でここに来たんだ?なんか用事か?」

 

「う、うん。フクロウ印の給水屋さんを探しに来たんだ」

 

「それならまだあそこにいるぞ」

 

 フェリシアちゃんは給水屋さんを指差したので、私達はそこに向かおうとするとフェリシアちゃんも付いてきた。

「何故あなたも付いてくるの?」

 

「やちよが出張ってきたってことは魔女かなんかなんだろ?いろは。オレを雇わないか?魔女なら千円、魔女じゃないってんなら500円でいいぜ」

 

「えぇ?・・・う~ん。じゃあ・・・」

 

「待ちなさい。流石に見過ごせないわ」

 

 私は500円でフェリシアちゃんを雇おうとしたら、やちよさんがそれを止めた。

「現金以外のものにしなさい」

 

「そ、それじゃあご飯なんてどうかな?」

 

「ごはん?」

 

「私が作るの。それじゃダメかな?」

 

「いろはが作るのか?・・・しょうがねぇな!それで手を打ってやるよ!」

 

フェリシアちゃんにやちよさんはため息をつきながらも同行を許すと、給水屋さんのところに到着する。

「幸運がゼロになったら大変な事になるらしいから・・・まずはそれを食い止めないと」

 

「でも一日に1杯だけらしいですし、貰えるかどうか・・」

 

 あの時はこの辺りに給水屋さんがいたはずだけど、今はこの場所にはいなかった。

 

 

 

 

 私達は手がかりを求めて場所を移動したら、帰り際の学生と話していた『それ』に気が付いた。

《工匠区の馬券売り場じゃもっぱらのウワサ》

 

「なにそれ?」

 

「意味わかんない」

 

 ウワサを広めている使い魔のような『それ』とみんなは自然に会話をしてる。

「みんな気づいてないのかな?」

 

「ウワサの存在に気づかないと認識できないのかもしれないわ。おそらく私達も今日まであの存在を見過ごしてしまっていたのね。・・・追いかけましょう」

 

 私達は使い魔らしき『それ』を追いかけていこうとすると黒いフードを被った集団が私達の行く手を阻みました。

「お前達か」

 

「幸運水を嗅ぎまわり」

 

「ウワサを追う愚か者共は」

 

「マギウスのお導きを」

 

「阻害する者」

 

「手を引け」

 

 黒いフードの皆さんはウワサを追う私達を邪魔者扱いし、手を引くように告げて来ました。

「マギウス?いったいなんのことか教えてもらおうかしら?」

 

 やちよさんと鶴乃ちゃんは変身しながらガブモンとピヨモンを呼び出したので、私もアグモンを呼び出しました。

「交渉」

 

「不可能」

 

「「判断」」

 

 私達と話し合うことができないと判断した黒いフードの1人が2体のデジモンを呼び出してきました。

「1人で2体も・・!」

 

 てっきりデジモンは1人につき1体だと思ってた。

 

レオモン

・成熟期

・獣人型

・ワクチン種

 百獣の王、気高き勇者と呼ばれる獣人型デジモン。凶暴なデジモンが多い中、強い意思と正義の心を持っている。破壊の限りをつくすオーガモンとはライバル関係だ。強靭な肉体から放つ必殺技の『獣王拳』は強力だぞ。

 

オーガモン

・成熟期

・鬼人型

・ウィルス種

 東洋の伝説に登場する『オニ』のような姿をしたデジモン。恐ろしく発達した筋肉から繰り出される攻撃は凄まじい破壊力を持つ。必殺技は巨大な両腕から繰り出される『覇王拳』だ。

 

「レオモン!オーガモン!強制デジクロス!」

 

「「うわぁぁぁぁっ!?」」

 

 2体は悲鳴を上げながら1体のデジモンに合体しちゃった。

「いったいどうなってるの?」

 

マッドレオモン

・デジクロス体

・アンデッド型

・ウィルス種

 知性を失い闘争本能を高めた狂戦士。意思は消滅し、命ぜられるままに目の前に立つ者を倒す操り人形。基本的に高パワーではあるが、殴る・蹴ると言った原始的な攻撃ばかりでパターンは少ない。唯一必殺技らしいといえば獅子の形をした気を放つ『獣王堕拳』である。

 

「デジクロス。デジモンを複数管理することのできるジェネラルができる手段って聞いたことはあるけど・・・強制って言ってる辺り、それとは何だか違うみたいね」

 

 そういえば初めてデジタルエリアに入った時にジェネラルかどうか聞かれてたっけ。

「とにかくこの状況を打破することからね」

 

 やちよさんはまずはこのマッドレオモンを何とかしてからと判断した瞬間だった。フェリシアちゃんといつの間にか進化していたストライクドラモンが真っ先にマッドレオモンに攻撃を仕掛けた。

「うりゃぁぁぁぁっ!」

 

「ウォラァァッ!」

 

 結構強めな一撃を受けたマッドレオモンだったけど、まるで痛みを感じていないみたいにすぐ起き上がった。

「あのデジモン、痛みを感じてないのかしら?」

 

「そんなの知るか!倒れるまでぶっ叩く!」

 

「待ちなさい!少しは冷静に相手を・・・」

 

 猪突猛進と言わんばかりに突撃していくフェリシアちゃんとストライクドラモン。その事に対してやちよさんは冷静になるよう呼びかけたけど、フェリシアちゃんとストライクドラモンは聞く耳を持たなかった。

「じゅ・・・お・・け。ん」

 

 マッドレオモンは拳からライオンみたいな気を飛ばして攻撃をしてきて、その攻撃を受けたストライクドラモンは吹き飛ばされちゃった。

「言わんこっちゃないわね。ガブモン!」

 

「応!ガブモン進化!ガルルモン!」

 

「ハァっ!」

 

 ガブモンはガルルモンに進化して噛みつき攻撃を仕掛ける。そこに尽かさずやちよさんは複数の槍を飛ばした。

「ここは最強の私達の出番・・・!ピヨモン!」

 

 鶴乃ちゃんはピヨモンを進化させようとした矢先、静観していた他の黒いフードの子達が動き出した。

「ウワサは救済」

 

「水ならあげる」

 

「邪魔しなければ、毎日」

 

「協力して」

 

「悪い話じゃない」

 

「同士となれば」

 

 これ以上邪魔しなければ仲間に入れるから手を引けって言われてるみたいだけど、正直信用しきれない。

「魔法少女」

 

「救済」

 

「救われる」

 

「やがて全ての魔女が消し去る」

 

「・・・おい、待てよ。全ての魔女が消えるってどういうことだ?」

 

 全ての魔女が消し去る。その言葉にフェリシアちゃんが反応した。

「魔女を許さぬ者、深月フェリシア。我々がお前を雇おう」

 

「へぇ。報酬は?」

 

「すべての魔女の消滅」

 

「すべての魔女だと?そんなことができるのか!」

 

「我々は知っている」

 

「その方法を」

 

「「「「決断しろ。深月フェリシア。お前の復讐を果たせるのはマギウスだけ」」」」

 

 誘導されるフェリシアちゃん。するとフェリシアちゃんはニヤリと笑った。

「面白いじゃん。もしそれが本当なら、なんだってしてやるよ」

 




神浜デジモンファイルに
『深月フェリシア&モノドラモン』が登録されました。

次回「そんなのわかんねぇよ」


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そんなのわかんねぇよ

自分の地方では明日まで鬼太郎です。


~フェリシアside

 

 それはオレが傭兵になる前、魔法少女になった時の話だ。

「父ちゃん!母ちゃん!」

 

 ある日、オレの家は火事になった。そのせいで父ちゃんと母ちゃんは死んじまった。

「~~~っ!」

 

 だからオレはキュゥべぇに願ったんだ。『~~~~』を。キュゥべぇはその願いを叶えてくれてオレは魔法少女になった。

 

 キュゥべぇが言うには父ちゃんと母ちゃんがいなくなったのは『魔女』ってやつの仕業らしい。

「魔女は全部ぶっ潰す!」

 

 父ちゃんと母ちゃんの仇を討つ。そしてオレは全部の魔女をぶっ潰すって決めたんだ。

 

 

 

~いろはside

 

「ガルルモン!超進化!」

 

 デジヴァイスからの光を浴びたガルルモンは進化の光に包まれる。

「ワーガルルモン!」

 

 ワーガルルモンに超進化したガルルモンはマッドレオモンに跳び回し蹴りを叩き込んで怯ませたら、アグモンとピヨモンがその手から抜け出した。

「アグモン!進化だよ!」

 

「アグモン進化!グレイモン!」

 

 私もアグモンをグレイモンに進化させたら、グレイモンはマッドレオモンの足に尻尾を振るって転倒させた。

「よ~し!進化だよピヨモン!」

 

「うん!ピヨモン進化!バードラモン!」

 

「よし!このまま完全体で一気に・・・」

 

「待ちなさい鶴乃!ガルダモンはデカ過ぎるのよ!」

 

 鶴乃ちゃんもピヨモンをバードラモンに進化させて、そのままガルダモンに進化させようとしたけれど、サイズの問題からそれは止めるように言われてた。

「環さん!鶴乃!このまま一気に決めるわよ!」

 

「はいっ!グレイモン!」

 

「ほいキタ!バードラモン!」

 

「カイザーネイル!」

 

「メガフレイム!」

 

「メテオウィング!」

 

 ワーガルルモンのカイザーネイルに続けて、グレイモンとバードラモンも必殺技を放ったら、流石に耐えられなかったマッドレオモンは合体が解かれてもとのレオモンとオーガモンに戻った。

「ひとまず何とかなりましたね」

 

「いいえ。まだよ」

 

「・・あれ?フェリシアちゃんが・・・」

 

 マッドレオモンを何とかして一安心したのもつかの間、やちよさんに言われて辺りを見渡すと既に周囲にいた黒いフードの子たちとフェリシアちゃんがいなくなっていたことに気が付きました。

「どうやらあの黒いフードの連中に付いていったみたいね」

 

「そんな・・・」

 

 

 フェリシアちゃん。どうして・・・。

 

 

~フェリシアside

 

 

「なぁ、本当にこんなところにいるのかよ?お前達のボス」

 

「・・・・・」

 

 薄暗い地下を通っていく黒いフードのやつらにオレはボスがここにいるのか聞いてみたけど、連中は何も答えてくれない。

「おい、なんとか言えよ!」

 

「・・・・・」

 

 質問に答えない連中にイラっとしながらオレは付いていったら、何だか柱がいっぱいある広い場所に出た。

「初めまして。深月フェリシア」

 

「マギウスの翼。白羽根。天音月夜でございます」

 

「マギウスの翼。白羽根。天音月咲だよ」

 

 なんか同じ顔をした姉妹がそこにいた。

「お前らがこの黒っちいののボスなのか?」

 

「全然違うよ。黒羽根よりは上だけどね」

 

「私達はマギウスの翼。マギウスの御三方の目的を遂行するための集団なのでございます」

 

「彼女達の翼となる集団なんだよ」

 

 マギウス?翼?なんだそりゃ?

「魔法少女の救済という崇高な目的を掲げた方々。それがマギウスなのでございます」

 

「ふ~ん。で。魔女を全部殺せるって本当なのか?」

 

 そう。オレにとって重要なのはそこだけだ。

「魔法少女の救済は魔女の消滅なくして実現しません」

 

「それがかわりでいいのならウチらと一緒にウワサを守ってくれないかな?」

 

 2人はそう言いながらオレに手を差し伸べてきたら、その奥から赤い髪のやつと赤いデジモンがやってきた。

「よう。また新入りかい?」

 

「ギル?」

 

 佐倉杏子とギルモンの出会いはまぁ、こんな感じだった。

 

 

 

~いろはside

 

「フェリシアちゃん、付いて行って大丈夫でしょうか?」

 

「フェリシアにGPS発信機をつけておいたわ」

 

 やちよさんはフェリシアちゃんに発信機をつけていたようでアプリで場所が分かるとのことだ。

「さすがししょー。こんな事もあろうかとってやつだね」

 

「あの子、信用できなかったもの。たとえあの子にどんな事情があっても、信頼を失っていることに変わりはないわ」

 

 それは・・そうですけど。

「とにかくフェリシアのところに行こうよ」

 

「そうだねアグモン」

 

 私達はGPSの示す先を頼りにフェリシアちゃん達が向かった先へと歩みを進めました。

「どうやらここから地下に入ったみたいね」

 

「あっ!あの子は!」

 

 地下施設へと入れる建物の前には小さなキュゥべぇがいた。間違いない。この地下にフェリシアちゃんがいる。

「行きましょう!」

 

 

 

~フェリシアside

 

「オレは深月フェリシア。こっちはモノドラモン」

 

「よろしゅう頼んます」

 

「アタシは佐倉杏子。んでこっちはギルモンな」

 

「ギル」

 

ギルモン

・成長期

・爬虫類型

・ウィルス種

 まだ幼さを残す恐竜のようなデジモン。まだ成長期ではあるが、デジモン本来が持つ戦う種としてのポテンシャルは非常に高い。得意技は強靭な前爪で岩石をも破壊する『ロックブレイカー』だ。

 

 

「お前もこいつ等の仲間なのか?」

 

 双子に案内されて奥に進んでいる途中、オレは杏子に話しかけた。

「アタシもこいつ等とはさっき会ったばっかだよ」

 

「じゃあお前も報酬目当て?」

 

「今。神浜には魔女が集まって来てるからな。そんでアタシがいた地域の魔女もスッカラカンになっちまってさ、たぶんそれもこいつ等のせいだよ」

 

「っ!」

 

「だったらこっちにつくのは当然だろ。このまま魔女不足で食い詰めるなんて御免だからね。グリーフシードに食い物。それと寝床が手に入るなら何だっていいじゃん」

 

「お、おう。そうだな!」

 

 オレは傭兵だ。父ちゃんも母ちゃんも死んで家族もいない。報酬さえもらえれば文句はねぇよ。

「フェリシア・・・本当にこれでええんか」

 

 モノドラモンは珍しく何かを考えたみたいでオレを心配して声をかけてくる。これで・・・これでいいはずなんだ。

「食うかい?」

 

「食う食う!」

 

 杏子はポッキーをオレにくれようとして1本貰おうとしたら、モノドラモンは空気を読まずにオレより先にポッキーを食いやがった。

「おいてめぇ!何先に食ってやがる!」

 

「別にええやろ!貰えるもんは貰う主義なんや!」

 

「そんな主義初耳だぞ!」

 

 オレとモノドラモンが取っ組み合いをしながらも双子に付いていったら、魔女みたいな変な奴がいるだだっ広い場所にやってきた。たぶんあの魔女みたいな奴が『ウワサ』ってやつか。

「幸運水です。さぁどうぞ」

 

 ウワサが瓶に注いだ水を渡される。

「これを飲み続ければラッキーは続くのか?」

 

「その通りでございます」

 

「でもうっかり飲み忘れて幸運を使い果たしたら一気に不幸が押し寄せてくるから気を付けてね」

 

「まっ、だろうな。希望と絶望のバランスは差し引きゼロだ。どっちかなんて都合が良過ぎると思った」

 

 そう言いながら杏子は渡された幸運水を返品する。

「マギウスに従ってくれればお水は毎日差し上げます」

 

「こんな胡散臭い水で幸せを得るよりグリーフシードを稼ぐことが出来ればアタシは充分だよ」

 

「まだそんなもの欲しがってるんだ」

 

「何だと?どういうことだそりゃ?」

 

「この神浜ではグリーフシードは必要ないのでございますよ」

 

「必要ない?何でだよ?」

 

「それはねぇ・・」

 

「月夜様、月咲様。侵入者です」

 

 杏子がグリーフシードを必要としない理由を双子に聞こうとしていたら黒いフードの1人が侵入者の報告をしにきた。たぶんいろは達だ。

 

 

~いろはside

 

 

「待って。誰か来る」

 

 近づいてくる人の気配に気づいたやちよさん。すると双子の姉妹が私達の前にやってきました。

「まさかこの場所がバレるなんてね」

 

「これもお客人が飲まれたフクロウ印の幸運水の御利益なのでございましょう」

 

「あなた達もマギウスとかいうグループの一員なの?」

 

 やちよさんは2人にマギウスかどうかを質問すると、2人は首を横に振りました。

「マギウスじゃないよ。ウチらはマギウスの翼」

 

「マギウスの御三方を支える翼にございます」

 

 2人がそう教えてくれたら奥の方からさらにフェリシアちゃんともう1人がやってきた。

「あなた、どうして・・・!」

 

 どうやらやちよさんはもう1人の赤い髪の子に覚えがあるみたい。

「あなたもフクロウ印の幸運水をお飲みになったのでございましょう?」

 

「幸運がスッカラカンになりたくなかったらウチらの言う事を聞いてよ」

 

 この言いよう。ウワサはこの人達のせいとみて間違いなさそう。

「すべてはマギウスのため。魔法少女解放のため」

 

「ウワサの被害にあった人だっているんだよ!」

 

 鶴乃ちゃんはピヨモンを呼び出しながら2人にそう告げると、2人の奥から2体のデジモンがやってきた。

「紹介するね。ウチのパートナーのテイルモン」

 

テイルモン

・成熟期

・聖獣型

・ワクチン種

 猫のようだが貴重な神聖系のデジモンであり見た目にそぐわない実力を持っているデジモン。身を護るためにとあるデジモンのデータをコピーした長い爪をつけている。必殺技は長い爪を使って相手を攻撃する『ネコパンチ』だ。

 

「パートナーのアクィラモンでございます」

 

アクィラモン

・成熟期

・巨鳥型

・フリー

 頭部から2本の角を生やした巨鳥型デジモン。砂漠の巨鷲と呼ばれ、マッハのスピードで大空を飛び、はるか遠く離れた敵を見つけ出す眼力を持っている。必殺技は上空から敵に突進する『グライドホーン』だ。

 

「それにウチらは『みんなのため』だなんて一言も言ってないよ」

 

「いずれにしても、私達にこの先に進んで欲しくないからあなた達が出てきたんでしょう。だったら・・・」

 

「ガブモン進化!ガルルモン!」

 

 やちよさんはガブモンをガルルモンに進化させる。

「その通りではございますが、お会いできた記念に1つ」

 

「ウチらの奏でる今宵の宴に」

 

「酔いしれてくださいませ」

 

 白いマントを脱ぎ捨てた姉妹は緑色のキューブを取り出したら、そのキューブから魔女が出てきて、魔女の結界が広がった。

「あなた達魔女を・・・」

 

「なんだよこれ?」

 

「はっ!マジでイカれてるな!」

 

「おい!どういうことだよ!!なんでお前らが魔女を!?」

 

 マギウスの巽が魔女を操れることをフェリシアちゃん達も知らなかったみたいで、フェリシアちゃんは2人を問い詰める。

「御心配には及びません。魔力で操られております」

 

「さぁ、いくよ!」

 

 姉妹2人が笛を奏でたら使い魔達が一斉に私達を攻撃してきた。

「アグモン進化!グレイモン!」

 

 グレイモンに進化したアグモンは私達を使い魔の攻撃から庇ってくれるとやちよさんと鶴乃ちゃんは使い魔を倒そうと駆け出す。

「あなた達、自分が何をしてるのか分かってるの?」

 

「ごめんね。でもウチらの計画が達成されればすべての魔女が消え去るのはホントだよ」

 

「魔女をすべて滅ぼすなんて不可能よ!」

 

「魔女の結界の中ならデカくてもいいよね?バードラモン!」

 

「バードラモン!超進化!」

 

 バードラモンがもう1段階進化しようとした矢先だった。

「えっ?」

 

「っ!?」

 

「やちよ!」

 

「鶴乃!」

 

 やちよさんと鶴乃ちゃんの立っていた場所がいきなり崩れて、下に落ちて行っちゃった。

「脆弱そうな子は任せましたよ」

 

 姉妹はフェリシアちゃん達に私達の事を任せてパートナーデジモンとともにやちよさん達のところに降りて行ってしまいます。

「こっちは私とグレイモンでいいから、ガルルモンとバードラモンは2人のところに行って!」

 

「えっ?でも・・・」

 

「分かった!任せたよ!」

 

「あっ、コラ!バードラモン!」

 

 ガルルモンは私とグレイモンだけに任せるのは躊躇っていたけど、バードラモンは素直に私達に任せてくれてやちよさん達のところに降りて行った。

「無理はするなよ!」

 

 遅れてガルルモンも下に飛び込んでいく。

「フェリシアちゃん!」

 

 私はフェリシアちゃんのもとへと駆け寄ろうとしたら使い魔達がその行く手を阻んできた。

「メガフレイム!」

 

 グレイモンはメガフレイムで使い魔達を吹き飛ばしてくれて道が開けたけど、魔女の口づけをされている熊のぬいぐるみみたいなのデジモンがグレイモンを殴り飛ばした。

「きゃぁっ!?」

 

 グレイモンと一緒に吹き飛ばされた私はその場に転倒しながらもデジヴァイスでデジモンのデータを確認する。

 

もんざえモン

・完全体

・パペット型

・ワクチン種

見た目が熊のぬいぐるみの謎に包まれているデジモン。背中の部分にチャックがついているところから中に何者かが入っているという噂もある。必殺技はハートを飛ばして攻撃する『ラブリーアタック』だ。

 

「か、完全体・・・」

 

 まだグレイモンを完全体に進化させられないのにどうしたら・・。

「いろは!」

 

 そんな時だった。フェリシアちゃんとモノドラモンが進化したストライクドラモンが魔女ともんざえモンに攻撃を仕掛けた。

「俺は!すべての魔女を倒さねぇといけねぇんだ!父ちゃんと母ちゃんを倒した奴はこいつかもしれねぇんだ!だから魔女は潰す!全部潰す!」

 

 フェリシアちゃん!

「悪いんだけどさ。あたしも抜けさせてもらおうかな。あんた等の言ってることってぼんやりしてて信用できないんだよね」

 

 魔法少女姿に変身した赤い髪の子は赤いデジヴァイスを取り出した。

「さてギルモン。好きなだけ暴れな」

 

「ギルモン進化!」

 

 進化の光に包まれた赤いデジモンはグレイモンと同じぐらいの巨体に進化した。

「グラウモン!」

 

グラウモン

・成熟期

・魔竜型

・ウィルス種

 真紅の魔竜と呼ばれる魔竜型デジモン。グラウモンの咆哮は大地を揺るがすほどのパワーを持っており、戦いの前には攻撃的なうねり声を上げて敵を威嚇する。必殺技は爆音とともに強力な火炎を吐き出す『エキゾーストフレイム』だ。

 

「グラウモン。ぶっ壊しな!」

 

「ガァァァァゥ!!」

 

 結界の鏡の部分に体当たりをしたグラウモンはその部分を壊して『外』への道を作ってくれました。

「ウワサってやつが目当てなんだろ?先に行きなよ」

 

「えっ?でも・・・」

 

「あんたもあの水を飲んでるんだったら余裕なんてないんじゃないの?」

 

「ありがとうございます!」

 

 私は赤い髪の魔法少女の協力も得てグレイモンと一緒に先に進んでいく。すると『ウワサ』らしきものがそこにいた。

「あれを壊せばいいの?」

 

「うん。お願いグレイモン!」

 

「メガフレ・・・うわっ!?」

 

 メガフレイムで一気にウワサを倒そうとしたグレイモンだったけど、フクロウみたいな使い魔が一斉に襲って来てグレイモンのメガフレイムを妨害した。

 

 

 

~フェリシアside

 

「おらぁっ!!」

 

 叩く!

「ダァッ!」

 

 叩く!

「ヴァぁァァッ!!」

 

 俺はひたすら魔女や使い魔をぶっ叩いて、ストライクドラモンももんざえモンをひたすら引っかいたりぶん殴ったりして攻撃する。

「何やってんだい。魔女もそっちのデジモンもそんなんじゃ勝てないよ」

 

「ごちゃごちゃうるさい!魔女は一匹残らずぶっ潰す!」

 

 魔女は全部・・。全部ぶっ潰す。それがオレの願いだから。

「なら考えな。なんのための魔法少女とデジモンだって話」

 

「そんなのわかんねぇよ!!」

 

「死んじゃった誰かのためとかぶっ倒したい奴らのためとかじゃなくてさ、自分のための魔法少女だろ?命かけてる時ぐらい自分のためでいいんだよ!」

 

 自分のためでいい。その言葉の意味がよく解らないオレは杏子が魔女を縛り付けてくれたところを力を思いっきり込めてぶっ叩いた。

「ウォォォォォっ!」

 

 ストライクドラモンもグラウモンとの同時攻撃でもんざえモンを転倒させたら、魔女は消え去って魔女の結界も消えた。

 

 

~やちよside

 

「どうやら魔女が倒されたみたいね」

 

 たぶんフェリシアが魔女を倒してくれたおかげだと思うけど、そのおかげで私達は魔女の結界から出る事ができた。

「カイザーネイル!」

 

「メテオウィング!」

 

「ぬぁっ!?」

 

「きゃぁっ!?」

 

 デジモン同士の勝負もワーガルルモンとバードラモンが勝負を制した。

「あっちも決着はついたみたいだけどまだやるの?」

 

「これ以上はやめておいた方がいいよ。2人共もうソウルジェムが・・・」

 

 鶴乃の言う通り双子のソウルジェムは既にだいぶ黒く濁った状態となっていた。魔女を魔力で操っていたせいで魔力の消耗が早まっていたせいね。

「それは好都合でございます」

 

「そうだよ。ウチらにとっては好都合」

 

「あなた達、まさか・・・」

 

 ソウルジェム・・濁り。まさかこの2人も環さんと同じ『アレ』を・・!

「皆様はとても幸運で御座います」

 

「なんたって神浜が解放の場所の証拠がその目で見られるんだからね」

 

 そう言った双子は環さんがあの時穢れを解き放ったのと同じように、穢れを解き放ち、魔女のような何かを体から出した。

「体から魔女が!?」

 

「おいおいマジかよ・・」

 

 流石のフェリシアともう1人の赤い髪の子もこれには驚いてるみたいね。まぁ以前見たことがある私と鶴乃も驚かされている真っ最中なのだけれど。

「驚くのはまだ早いよ。テイルモン」

 

「もう1つあるものを御見せしてあげましょう。アクィラモン」

 

 双子は魔女のような『それ』に乗りながらデジヴァイスを掲げる。あれは・・・進化の光!

「アクィラモン!」

 

「テイルモン!」

 

「「ジョグレス進化!」」

 

 2人の進化の光が重なり合って、2体のデジモンが1つになる。

「「シルフィーモン!」」

 

 そしてアクィラモンとテイルモン、2体のデジモンが合体して白い上半身にネコのような爪を生やし、赤い鳥の足のような下半身を併せ持つ1体の獣人型デジモンに進化した。

 




神浜デジモンファイルに
「佐倉杏子&ギルモン」が登録されました。

次回「一緒に強くなろう」


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一緒に強くなろう

鬼太郎も好きでしたけど、明日からようやくこっちでもデジモンです。


~やちよside

 

「合体!?デジクロスしたの!?」

 

「デジクロスじゃないよ。ジョグレス進化」

 

「デジモンの1つの進化の形でございます」

 

 ジョグレス進化。そういう進化手段もあったのね。

「成熟期の2体が進化したってことは・・・」

 

シルフィーモン

・完全体

・獣人型

・フリー

 アクィラモンとテイルモンがジョグレス進化した獣人型デジモン。強靭な脚力を持ち、その跳躍力ははるか上空にまで達すると言われている。また上空高くまで飛び上がった後、両腕を広げグライダーのように滑空し空を自由に飛び回ることができる。必殺技は両腕を前に突き出してエネルギー弾を放つ『トップガン』だ。

 

 やっぱりデジクロス体じゃなく完全体なのね。だけどこっちのワーガルルモンも完全体。勝てない相手じゃないはずよ。

「ワーガルルモン!」

 

「分かってる!」

 

「「シルフィーモン!」」

 

「「でりゃぁぁっ!」」

 

 ワーガルルモンとシルフィーモンの跳び回し蹴りがぶつかり合う。キック対決はシルフィーモンが勝利して、ワーガルルモンは地面に叩きつけられた。

「ぐぁっ!?」

 

「ワーガルルモン!?」

 

 同じ完全体とはいえ、シルフィーモンは2体が1つになって進化してるデジモン。そう簡単に倒せる相手ではないようね。

「バードラモン!」

 

 流石にこんな地下でガルダモンに進化させるのはまずいと分かっている鶴乃はバードラモンのままでシルフィーモンへと攻撃を仕掛けるけど、成熟期であるバードラモンの攻撃をあっさりと振り払ったシルフィーモンはバードラモンをかかと落としで地面に落としてしまう。

「あうぅ!?」

 

「ピヨモン!?」

 

 そのダメージでバードラモンはピヨモンに戻ってしまう。ピヨモンも完全体になれるはずなのに、どうも全力で戦える場所に恵まれないわね。

「鶴乃はピヨモンを下がらせなさい。ここは・・・」

 

「そういえばまだアンタに名乗ってなかったな。佐倉杏子だ」

 

「えっ?何いきなり?」

 

「乗りかかった船だ。手を貸してやるよ」

 

「グラウモン進化!」

 

 手を貸すと言ってくれた佐倉さんはグラウモンに与えると、グラウモンはサイバーメカニカルなアーマーを纏った姿へと進化した。

「メガログラウモン!」

 

メガログラウモン

・完全体

・サイボーグ型

・ウィルス種

 巨大なグラウモンの名前を持つサイボーグ型デジモン。その上半身は最強クロンデジゾイドでメタル化されている。両肩についているバーニアで飛行することもでき、対空・対地攻撃が可能となっている。必殺技は両胸の砲門から原子レベルで敵を破壊する『アトミックブラスター』だ。

 

「ちょっと佐倉さん!こんな狭い場所でそんな大型のデジモンを出したら・・・」

 

「大丈夫だって。見てみな」

 

 シルフィーモンはメガログラウモンを狙って攻撃してくるも、硬い装甲であるクロンデジゾイドで攻撃を受け止めるメガログラウモンはまるで怯まない。それどころか何度も攻撃を仕掛けてくるシルフィーモンを掴んで、地面に思い切り叩きつけた。

「「ぬぁっ!?」」

 

「小回りは効かないが・・デカい図体にもやりようはあるのさ」

 

「参考になったわ」

 

 とは言ってもクロンデジゾイドを持つデジモンだからできる芸当のようだけど・・。

「こっちも超進化だ!ストライクドラモン!」

 

「ストライクドラモン!超進化!」

 

 フェリシアから超進化の光を受けたストライクドラモンもさらにもう一段階進化を遂げる。

「サイバードラモン!」

 

サイバードラモン

・完全体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 どんな攻撃にも耐えられる特殊ラバー装甲に身を包んだ竜人系のサイボーグ型デジモン。特殊ラバー装甲は優れた防御力があるだけではなく、攻撃力も増幅させて繰り出せる機能も備わっている。必殺技は両腕から構成データを破壊する超振動波を放ち空間ごと消し去ってしまう『イレイズクロー』だ。

 

 

「まったく・・・年長者の私ですらまだ完全体止まりなのに最近の子達は簡単になってくれるじゃない」

 

 簡単に完全体に到達してくれている子達に少し嫉妬しまいつつも、私はデジモン達にシルフィーモンの相手を任せて双子へと攻撃を仕掛ける。

「くっ、硬い」

 

「だったら・・・ちゃらぁぁぁっ!」

 

魔女のようなものに乗っている双子はその防御力を持って私の槍すらも弾いてしまうと、それならばと鶴乃は炎を飛ばして攻撃をした。

「くっ・・・!」

 

 片方が鶴乃の攻撃に怯んだところを私は無数の槍を飛ばして攻めて、怯ませる。すると怯んだ方の魔女のようなものが消えていった。

「しまった!ウチのドッペルが・・・!」

 

 ドッペル?もしかしてあの魔女みたいなものの名前かしら?

「ドッカァァァン!」

 

 フェリシアももう1人の方に重たい一撃を与えると、そっちの方のドッペルも消滅した。

 

 

~いろはside

 

 

「きゃぁっ!?」

 

 やちよさん達がシルフィーモンを攻略していた頃、私はグレイモンと一緒にウワサと戦っていた。

「た、助かった?」

 

 フクロウのような使い魔のタイミングに襲われたのに傷一つない。幸運水の幸運が働いているんだと思うけど、あとどれくらい幸運が残ってるんだろう?

「私、あの時どうしたんだっけ?」

 

 思い出そうとするのは口寄せ神社のウワサの時の事。あの時、意識が飛んでいた間、どうやって助かったんだっけ?

「あの時は・・・そうだ。ソウルジェムが濁ってて・・・何かが出たんだ」

 

《強く、強くならないと何も見つけ出せない》

 

 私じゃない『私』が語り掛けてくる。

《耳を塞げ。その目を閉ざせ。沈黙は命運を見定める》

 

 ソウルジェムが濁りきると、私じゃない『私』が解き放たれて、魔女のような何かが出てきた。

「グレイモン!超進化!」

 

 その『濁り』に当てられたグレイモンは黒い光に包まれてもう1段階上に進化をしようとする。

「スカル・・・」

 

「あなたは『私』だけど・・・私のなりたい私じゃない!」

 

 『私』を否定した私は『それ』を自分で押さえ込むとグレイモンの進化がストップする。思い出した。あの時、私はこの力を使って、グレイモンを骸骨みたいなデジモンに進化させちゃったんだ。

「ごめんねグレイモン。私が弱いばっかりに・・・」

 

「大丈夫だよ。いろは。ボクはいろはのパートナーなんだからいろはと一緒に強くなれれば・・・どんな進化も受け入れる」

 

 そうだ。私達は一緒に強くならなくちゃいけないんだ。

「グレイモンだけに強さを求めちゃいけなかったね。私も強くならなきゃいけなかったんだ。グレイモン、一緒に強くなろう」

 

 私はもうこの力を恐れない。

「だから・・・もう一度出てきて!」

 

 今度は自分の意思で『それ』を呼び出す。すると私から出てきたそれはグレイモンにも力を与えたようで、デジヴァイスが光を放った。これは・・・完全体への進化の力?

「いろはの勇気がボクに新しい力をくれるんだ。いろは。その力をボクに!」

 

「うん!グレイモン!お願い!」

 

「グレイモン!ゼヴォリューション!」

 

 Xに輝く光に包まれたグレイモンはもう1段階上の進化に・・・完全体に進化する。

「メタルグレイモン!」

 

メタルグレイモン(ウィルス種)(X抗体)

・完全体

・サイボーグ型

・ウィルス種

 体の半分が機械化されたサイボーグ型デジモン。X抗体によるデジコアへの影響で各種機械部分がアップデートされ、特に左腕の強化改造されたトライデントアーム『アルタラウス』はブリッツモードとブラストモードに切り替えることができる。必殺技は限界速度で飛行し、ブリッツモードで敵を貫く『エネルギアブリッツ』と最大出力でブラストモードでエネルギーを撃ち放つ『パンデミックデストロイヤー』だ。

 

「え、X抗体?」

 

 ただの完全体じゃないってことなのかな?あとでやちよさんに聞いてみよう。

「今は目の前のウワサに集中しないと!」

 

 自分の意思で『それ』を操っている私はウワサまで一気に飛んでいくと、ウワサに一撃を入れた。

「今だよ!メタルグレイモン!」

 

「応!エネルギアブリッツ!」

 

 限界速度でウワサへと突撃していくメタルグレイモンは使い魔達も吹き飛ばしてそのままウワサを打ち砕いた。

「やった!」

 

 ウワサを倒した瞬間、私の『それ』は消えて、私はその場に倒れ込んでしまう。

「大丈夫いろは?」

 

「ハァ・・ハァ・・。やったよ。私達で倒せた」

 

 

 

 

~やちよside

 

 

 双子とシルフィーモンを追い詰めた瞬間、天井で溜まっていた水がバシャリと一斉に落ちてきた。

「これは・・・!」

 

「まさかウワサが倒されたのでございますか!?」

 

「いろはちゃんとグレイモンがやったんだ!」

 

 まさか本当にグレイモンと一緒にやってくれるなんて・・。流石ね環さん。

「どうしましょうでございます!?」

 

「このままじゃウチら怒られちゃうんじゃ・・!」

 

 双子が慌てていると奥の方から誰かがやってくる。

「これはどういうことです?いったい何が起きているのですか?」

 

 この声・・・まさか。

「申し訳ないでございます!」

 

「ウワサが消されてしまいました」

 

 2人が謝罪した相手。それは私と鶴乃が良く知る人物だった。

「みふゆ・・」

 

 そう。その人物とは私の幼馴染、梓みふゆだったのだ。

「やっちゃん」

 

「み、みふゆ~~!」

 

 あちらも私達に気が付くと鶴乃はみふゆに抱きついていく。

「鶴乃さん」

 

「みふゆ!ホントのホントにみふゆなの?」

 

「えぇ。今度は本物ですよ」

 

「・・・っ」

 

 ようやく会えたことに私は感動しつつ、とある事に気づく。そう、みふゆがマギウスの巽と呼ばれる黒いフードの集団を引き連れていたことに。

「みふゆぅ!何処行ってたの!すっごく探したんだよ!今日は万々歳でみふゆのおかえりパーティーだね」

 

「残念ですがそれは出来ません」

 

「えっ?」

 

「今の私はマギウスの巽。口寄せ神社まで私を探しに来てくれたそうですね。親友として冥利につきます」

 

「あなたが残した神浜うわさファイルのおかげよ」

 

「やっちゃんはうわさなんて全然信じてなかったのに・・・不思議なものですね」

 

「どうして?どうして私を置いて行ってしまったの?」

 

 私はそうみふゆに尋ねると、みふゆは俯きながら「それは違いますよ」と呟いた。

「置いて行かれたのは・・・きっと私の方です」

 

「どう言う事?」

 

「や、やっちゃんがマギウスの巽に来てくれるというのならいつでも歓迎しますよ。私達は本気で魔法少女の救済を目指しているんです」

 

 それは・・・できない相談ね。

「ウワサで人々を攫ってどうするつもり?救済救済って魔法少女としての覚悟は前から決めていたはずでしょ?」

 

「・・・やっちゃんは強いですね。けれど私はこの運命からの解放を夢見てしまったんです」

 

 私達の道は違えたということね。

「みふゆ。もう行こう」

 

ヤタガラモン

・完全体

・妖鳥型

・ワクチン種

 3本の脚を持つ異形の妖鳥型デジモン。漆黒の体は見るものに邪悪なイメージを与えるが、デジタルワールドの東方に存在する「黄金郷」へと選ばれし者を導くデジモンだと伝えられている。必殺技は両翼から生み出されるエネルギーを前足に込めて放つ『ミカフツノカミ』だ。

 

「・・そうですね」

 

 ファルコモンの完全体。ヤタガラモンはみふゆに催促をすると、みふゆ達は奥へと戻っていく。

「行かせないわ!ワーガルルモン!」

 

「ミカフツノカミ!」

 

「うわっ!?」

 

 ワーガルルモンにみふゆが去っていくのを止めてもらおうとしたけれど、ヤタガラモンはワーガルルモンを攻撃してきた。

「何をするんだヤタガラモン!」

 

「たとえワーガルルモンでもみふゆの邪魔はさせないよ」

 

「・・・・」

 

 みふゆは固有魔法で光を放つと、私達の目の前からその姿を消してしまった。

「みふゆ・・・」

 

 いったい私達はどうして道を違えてしまったのかしら?

 

 

 

~いろはside

 

「フェリシアちゃん。もう帰っちゃうの?」

 

 戦いが終わった後、私はやちよさん達と合流して外へと出て行く。その途中で赤い髪の女の子・・・杏子ちゃんは帰っちゃって、今まさにフェリシアちゃんも帰ろうとしていた。

「あぁ。今日寝るところを探さないと。オレ、家族も帰るところもないし」

 

「えっ?」

 

「オレの父ちゃんと母ちゃんはさ、魔女に殺されたんだ。だからオレは傭兵をやってるんだよ。そうすればいつか父ちゃんと母ちゃんを殺した魔女をぶっ潰せるかと思ってさ」

 

「そうだったんだ。・・・」

 

 こういう時、なんて声をかけてあげればいいんだろう。

「いろは。フェリシアにご飯を作ってあげる約束をしてたでしょ?それはどうしたの?」

 

 そうだった。アグモンの言う通りだった。フェリシアちゃんを雇った時、そういう約束をしたんだ。

「そ、それなら私の家に来て!それでえと・・・私ももうすぐ引っ越しだけど・・嫌かな?」

 

「嫌じゃないけど・・・オレ、お前の世話にならなくても・・」

 

「わ、私がお世話になりたいの!私は弱いから魔女と戦うときもフェリシアちゃんがいてくれたら・・!」

 

「オレがいたら・・・お前の事を巻き込んじまうし」

 

 フェリシアちゃん。気にしてたんだ。

「まずは魔女を見ても暴れないように修行しよう!」

 

 

 鶴乃ちゃんは自分も一緒に修行すればなんとかなるとフェリシアちゃんに告げる。

「我慢することも強さのうちよ」

 

 それにやちよさんも賛同する。

「鶴乃お姉さんと修行すれば最強に我慢強くなれるよ!」

 

「あなたも一緒に落ち着きを覚えなさい」

 

「やちよししょーひどい~」

 

「うっさい!我慢我慢って・・・!魔女が悪いんだろ!魔女がみんなみんなオレから獲っていったんじゃねぇか!なんで怒っちゃいけないんだよ!なんで俺だけ我慢しなきゃいけねぇんだよ!魔女さえいなきゃ・・・魔女さえいなかったら・・・」

 

 その場に膝をつきながら俯き泣き出したフェリシアちゃん。その頭に私はそっと手を添える。

「勝手なことを言ってごめんね。でも私、一緒に帰りたい。じゃないと明日も明後日も何処かでフェリシアちゃんが寒かったり、お腹が空いてたり、何か我慢しれるかもって・・・そんなの嫌だから」

 

「・・・いろは」

 

 顔を上げるフェリシアちゃん。すると今まで空気を読んで黙っていたモノドラモンが口を開いた。

「フェリシア。ここまでみんなが言ってくれとるんや。本当の気持ちを我慢せんでええ。お世話になろうや」

 

 モノドラモンはそう言いながらフェリシアちゃんの肩に手をポンと置いたら、フェリシアちゃんは涙を拭って立ち上がる。

「お前は俺の母ちゃんかよ・・」

 

「ちゃうわ。ワイはフェリシアのパートナーや」

 

「んな事知ってるよ」

 

「ほら、ご飯作ってあげる約束をしたでしょ?」

 

「・・・今日はウチに泊まりなさい。キッチンも使っていいから」

 

「フェリシアちゃん!」

 

「いろは。オレ・・・」

 

「ほな、お世話になりま~す」

 

 空気を読まずにフェリシアちゃんよりも先にモノドラモンがお世話になることを告げると「お前が言うのかよ」とみんなして笑い出した。

 

 

 

~ゲンナイside

 

「ゼヴォリュージョン。X抗体へと進化したか」

 

 

X抗体。それはかつてのデジタルワールドでデジモン達のデータ量が『イグドラシル』の予測を遥かにオーバーしてしまい、デジタルワールドは容量オーバー寸前にまで追い込まれた。それを防ぐため『ロイヤルナイツ』や一部デジモンのみを新世界へとアップロードして残るすべてのデジモンを削除するためのXプログラムの実行、すなわち『プロジェクト・アーク』が実行された。

 

 それにより旧デジタルワールドの98%のデジモンが滅んだのだが、残ったデジモン達はXプログラムに耐えうる抗体を持ったデジモンが誕生した。それがX抗体の始まりだった。

 

 X抗体はデジコア内の情報を高度に引き出す能力を持っている。それによりX抗体を手に入れたデジモンは従来のデジモンとは比べものにならないほどの高い潜在能力を発揮できるのだが・・・まさか環いろはのパートナーとなったアグモンにそのような可能性があったとはな。

「環いろは。君をアグモンのパートナーにしてよかったよ」

 

 元々君には『何か』を感じていたがそのような可能性を見出してくれるのは流石に予想外だった。元々あのアグモンの可能性は通常の青いメタルグレイモンかスカルグレイモンかの2択だったはずなのに、X進化という第3の可能性を切り拓かれた。

「いつの時代、どの時空のデジモン達もそうだ。デジモンと人間の可能性こそが新たな未来へと繋がる」

 

 

 

~いろはside

 

「それじゃあ私、帰りますね」

 

「えぇ」

 

 フェリシアちゃんと共にやちよさんの家、みかずき荘に泊まった翌日。私は引っ越し先の物件を探すためにも朝の早いうちに帰宅しようとしていた。

「今度からはあの得体のしれない連中も相手だから少し大変かもしれないけれど、力を合わせて頑張りましょう」

 

「はい!あと、引っ越し先が決まったらみんなにまた伝えますね」

 

「そのことなんだけど・・・ねぇ環さん。あなたのご両親が良かったらなんだけど、あなたもフェリシアと一緒にウチに住まない?その方がこれから何かとやりやすいから。部屋も十分にあるし・・」

 

「私も!いいんですか?」

 

「えぇ。あなたのご両親も近いうちに飛び立つでしょうし、悪い話じゃないと思うのだけれど・・・どうかしら?」

 

 それは・・・とても嬉しい話ですね。

「そうですね。学校も同じだしいいかも・・あの、本当にご迷惑でなければ」

 

「仲間でしょ?」

 

「えっ?」

 

 あれ?助手なんじゃ・・。

「ほら、あと10秒で締め切るわよ。10、9・・」

 

「あ、あの、お願いします!」

 

「ふふっ、えぇ。もちろんよ」

 

『いいかアグモン。これもデレな』

 

『これもデレか~』

 

「こらガブモン!またアグモンに余計なことを教えて・・・!」

 

 とにもかくにも、こうして私は幸運水による幸運を使い果たし、やちよさんのところで下宿することが決まったのでした。

 




神浜デジモンファイルに
「天音月夜&ホークモン」
「天音月咲&テイルモン」
が登録されました。

次回「あなた、何を知ってるの?」


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あなた、何を知ってるの?

2話を見る前にTwitterで内容を知ってしまいました。早くオメガモンが登場したとしてもまだX抗体とかマーシフルがあるので、まだ先行き不安になるのは早いと思います。


~ほむらside

 

 

「運命を変えたいなら神浜市に来て」

 

「運命?神浜?何を言ってるの?」

 

「この町で魔法少女は救われるから」

 

 見滝原市である目的のため活動していた私はいきなり目の前に現れてそう話しかけてきた女の子に驚かされる。

「救われるって・・・あなた何を知ってるの?」

 

 私の問いかけに答える前にその少女が消えてしまうと・・・私は夢から現実に引き戻される。

「ほむらちゃん。ほむらちゃん!」

 

「あっ、ごめんなさい鹿目さん」

 

 目の前にいるのは私の一番の友達の鹿目まどかさん。彼女も私と同じく魔法少女なの。

「大丈夫ほむらちゃん?何か考え事をしてたみたいだけど」

 

「え・・・えっと、今日の宿題どうしようかなって」

 

「思い出しちゃったよ。提出明日までなんだよね~」

 

 適当にごまかした私は先ほどのイメージの事を考える。

 

 魔法少女が救われるってどういう事なんだろう?

 

 

 

 

~いろはside

 

「小物類はこの辺に置いて・・・うん。いいカンジ」

 

 やちよさんの家に住み始めてようやく私の部屋の片付けも終わった。寮が空いてないっって聞いた時はどうしようかと思ったけどやちよさんがお家に誘ってくれたおかげでドタバタした引っ越しも無事に終わらせることができた。

「ふふっ・・」

 

 自然と笑みがこぼれる。ちょっと前までこうして家族以外の誰かと過ごす時間が楽しいと思えるなんて考えてもいなかったから。

 

 友達とお昼ご飯を食べたり、何処かに遊びに行ったりする時間。そんな当たり前に思える時間。それは引っ越す前の私にもあった。だけどその時間を楽しいと思った事はほとんどなかった。

 

 ひょんなことで出来上がった家族みたいな関係。自然と笑みがこぼれてしまう『今』が心から楽しいと思えているんです。

「みんな、ちょっといいかしら?マギウスの翼のことなんだけど」

 

 夕食を終えて団らんとした時間を過ごしていると、やちよさんがマギウスの巽のことについて話を切り出してくる。

「あれから全然見つかりませんもんね」

 

 あれから私達はマギウスの翼を見つけようと色々とうわさを探ってみたけれど、これといった情報は得られなかった。

「有名でもねぇちっこいうわさばっか相手にしてるからだろ」

 

 確かに探ったうわさは結局はデジモンが巻き起こしていた事件で、ウワサが起こしていた事件じゃなかった。

「きっとそうだね。やっぱりもっと人を巻き込んでるうわさを探らないと。大きい餌には大きい獲物が食い付いてくる」

 

「まさに食物連鎖」

 

 鶴乃ちゃんとピヨモンはフェリシアちゃんの意見に賛同する。

「オレは強いやつのほうがズガンってやれるからいいぞ!」

 

「ワイも成熟期ばかりのマスターデジモンなんかやなくもっと強い奴を相手にしたいで」

 

「そうねぇ・・・一応神浜うわさファイルに気になるうわさはあるんだけど・・」

 

 やちよさんは神浜うわさファイルのページをペラペラとめくる。

「おっ。どんなうわさなんや?」

 

「中央区にある電波少女ってうわさよ。ただね、あまりあてにしてないの」

 

「え~。調べりゃいいじゃんか~」

 

「前に一度調べてるのよ。だけど例の語り口に繋がらなくて」

 

 『ウワサ』に繋がるうわさの語り口は決まって『ねぇねぇ知ってるこのウワサ』という語り口だった。やちよさんの調べではその電波少女のうわさはその語り口に繋がらないらしい。

「とは言ってもマギウスの翼と接触するにはうわさを調べるしかないし・・・」

 

「はい!やちよししょー!それならやっぱりでっかいうわさを調べましょう!」

 

「他に手は見つからないでしょうし、明日はそうしてみましょうか」

 

 そうして私達は手がかりになりそうな『大きなうわさ』を調べることとなったのです。

 

 

 

『いろはちゃん!中央区の電波塔に来て!』

 

 翌日の放課後。鶴乃ちゃんに呼び出された私はやちよさんと合流して中央区の電波塔へと向かうと鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんが「急いで」と言わんばかりに手を振っていました。

「やちよししょー!いろはちゃん!こっちこっち!」

 

「おせーぞ2人とも!」

 

「いったい何があったの?」

 

「すっげ~ぞ。きっとこれ、魔女かウワサだぜ!」

 

「何か見つけたの?」

 

「見つけたっていうか聞いたんだよ。出前の仕事をしていたらどこからともなく女の子の声が聞こえてきてね・・」

 

 えっ?怖い話?

「人がいっぱいいるんだし、誰かの声だったとか・・・」

 

「そんな感じじゃなかったんだよ。何ていえばいいかな~」

 

「空気がしゃべってたんだぜ!」

 

「そう!それ!」

 

 空気が?どういう事?

《ふ・・・はは・・》

 

「ひゃっ!?」

 

「ほらな!空気がしゃべった!」

 

 確かに何か聞こえた。

「耳を澄ますとたまに女の子の声が聞こえてくるんだよ」

 

《ふふ、ふはは・・》

 

「ま、また!?」

 

「これは・・・電波少女ね」

 

 やちよさんはこれが電波少女だと確信する。

「それってやちよさんが言ってた・・!」

 

「そうなんだけど妙だわ。以前は『助けて』っていう悲痛なものだったのに今のは・・」

 

 今のは笑い声に聞こえた。

「何にしてもこれ以上の手がかりはないようだし、今日は一旦帰りましょう」

 

 この場でこれ以上の手がかりは望めないと思った私達は帰宅して明日に備えることにした。

 

 

翌日の朝、私はスマホをチェックすると知らない相手からのメールが届いていた。

《どうか助けてくれませんか?》

 

「あ、あのやちよさん。こういう場合どうした方がいいですか?」

 

「見るからに怪しい。ただの悪質メールじゃない。絶対に返信しちゃ駄目よ」

 

 そんな怪しげな文面に動揺した私はやちよさんに相談してみると、返信してはダメだと助言してくれました。

 

 その後、私は今私が通っている学び舎である神浜市立大附属中に向かうと今日もかえでちゃんを探しているレナちゃんに出会いました。

「おはようレナちゃん!」

 

 どうやらももこちゃん達のチームで何かがあったらしく、かえでちゃんは最近ももこさんとレナちゃんの前に姿を現さないってももこさんから聞かされた。

「今日もかえでちゃんは・・・」

 

「えぇ、見当たらないわね。きっとレナが何かを言ったせいよ」

 

 レナちゃんはきっと自分が何かを言ったせいだと自分を責めていた。そんな事はない・・・とは言えなかった私は何も言えずにいるとレナちゃんの方から話題を振って来た。

「そういえば聞いたわよ。今アンタ達は電波少女のことについて調べてるそうじゃない」

 

「えっ?どうしてその事を?」

 

「ももこが言ってたのよ。やちよさん達が電波少女の事を調べてるってね。こっちも何か分かったら教えてあげるわ」

 

「ありがとうレナちゃん!」

 

 レナちゃんも何か情報を得たら教えてくれると約束してくれた。

「それと関わりがあるかどうかは分からないけど『ひとりぼっちの最果て』には近づかない方がいいってうわさがあるってももこが言ってたわ」

 

 ひとりぼっちの最果て?いったいなんのことなんだろう?

 

 

 

~やちよside

 

「随分遅れてきたわね」

 

「は、はい」

 

 私は昨日の電波少女の声を聞いた場所に環さんを呼び出したのだけれど、環さんは随分と遅れてやってきた。

「私、何度も電話したのよ」

 

「ごめんなさい」

 

「電源が入っていない?電波が届かない?どういうことなの?」

 

 仮にスマホだったとしたら魔女の結界やデジタルエリアの中に入ってたら連絡は取れなくなるかもしれないけど、私はデジヴァイスでも連絡を取ろうとしたのよ。それなのに連絡がつかないってどういうことかしら?

「えと。今朝のメッセージが怖くて」

 

 まさかそれでスマホの電源を落としてたの?いくら何でもそれは・・。

「無視してたら平気だから電源は入れておいてよ。心配するじゃない」

 

『ほらアグモン。またやちよがデレたぞ。あっ・・』

 

 またガブモンが余計なことを言っているので私はデジヴァイスの音をOFFにする。

「はい。入れておきます。・・・って、またきてる!?」

 

 どうやら環さんのスマホにはまた怪しげなメッセージが届いているみたい。

《お願いです。返事をください》

 

「どうしよう?」

 

「やめておいたほうがいいわよ。返さなきゃ大丈夫なんだから」

 

 環さんに返事をしないよう助言をするも、まだ肝心なことを聞いてない。

「それで?どうして遅れたの?」

 

「はい。実は電波少女の事を調べるのをももこさんとレナちゃんが手伝ってくれて」

 

 あの2人がね。

「それで遅れたというわけね。じゃあ今日は2人も一緒に調べるの?」

 

「いえ、それは・・・」

 

 どうやらももこもまだ気持ちの整理がついていないみたいね。

「それで?何か分かったの?」

 

「色々調べてみたんですけど・・・電波少女を知ってる人ってホームページを見てるみたいなんです」

 

 ホームページ?

「だけど中に入るには資格が必要って言ってました」

 

 資格?資格って何が必要なのかしら?

「それともう1つ。ひとりぼっちの最果てには近づかない方がいいって」

 

 ひとりぼっちの最果て。分からないことばかりね。

「あれは・・・魔女の口づけ!」

 

 電波少女とひとりぼっちの最果て。2つのことの繋がりに混乱しそうになっていると偶然通りかかった女の子の首元に魔女の口づけが付けられていたことに気づいた。

「電波塔の方に向かったわ!」

 

 私と環さんはひとまず話を打ち切って電波塔へと向かっていく女の子を追いかけていく。すると女の子は電波塔のエレベーターに乗って、最上階へと向かっていった。

「急ぐわよ環さん!」

 

「はい!」

 

 エレベーターに乗り遅れた私達は魔法少女としての身体能力を活かして階段を駆け上がっていく。しかしながらそのタイムロスは大きく、先ほどの子を見失ってしまった。

「くっ。やっぱりエレベーターに乗り遅れたのは痛かったわね」

 

「やちよさん!いましたよ。ゆっくり移動してます」

 

 環さんは先ほどの子を見つけた。私達は他の人に怪しまれないよう近づいていくと、女の子は非常口から外へと出ようとした。

「まさかあの子!」

 

「そのまさかかもしれないわ」

 

 私達は彼女を助けようと急ぐ。

「どうして他の人は止めようとしないの?」

 

 普通非常口から出るのを止めるはずなのにと思って見回してみると、ある事に気づいた。そう、この場にいる人達全員が魔女の口づけをされていたの。

「冗談じゃないわ」

 

 こんなところで集団で飛び降りをするなんて悪夢よ。

「くっ、間に合わない」

 

 私達が間に合わないと思ったその時だった。

「シャウトモン!スターモンズ!デジクロス!」

 

「シャウトモン!スターホイール!」

 

 私と環さんの横を駆け抜けた赤い子竜みたいなデジモンは星型のデジモン達とデジクロスをして足にタイヤを装備して加速していく。そして落下しそうになっていた女の子を掴んで引き上げた。

「はあぁぁ。間に合ってよかったよぉ~」

 

 私達の後ろにいたのはあのデジモンのジェネラル。桃色の魔法少女だった。

 

 

~いろはside

 

「魔法少女?」

 

「えっ、それって・・・」

 

 魔法少女と呼ばれて驚いた反応をした彼女の前で私とやちよさんは変身する。

「あの、ありがとう。間に合わないって思ったから本当に良かった」

 

 私は目の前にいる魔法少女とそのパートナーらしきデジモンにお礼を告げる。

 

シャウトモン

・成長期

・小竜型

・ワクチン種

 血気盛んで攻撃性の高い凶暴なデジモン。しかし仲間に対しては友好的であり、シャウトモンに認められれば種族を超えた親交を深めることができる。必殺技は胸の奥に燃え盛る想いをマイクで増幅して相手にぶつける『ソウルクラッシャー』だ。

 

 デジクロスを解除した赤いデジモンはシャウトモンっていうんだね。

「へへっ。キングとして当然の事をしたまでよ」

 

「えっ?キング?」

 

「おっ、聞きてぇか。なら特別に聞かせてやるよ俺様の夢をな」

 

 別に誰も聞いてないのにシャウトモンは夢を語り出す。

「俺様の夢はなぁ、全部のデジタルエリアのデータを集めてデジタルワールドを元通りにして、俺様がデジタルワールドのキングになる!そして俺様のロックなハートを世界中に響かせてもう二度とデジタルワールドがめちゃくちゃにならないような世界にするってのが俺様の夢なんだよ」

 

思った以上にしっかりとした夢だった。いつも食べ物の事ばっかり考えてるうちのアグモンとは大違いだよ。

「ここに来たのはあなたも魔女の気配を感じて?」

 

「はい。本当は人を探していたんですけど魔女の口づけを受けてる人を見つけて」

 

「大方私達と同じってところね。さてと・・話はこれぐらいにして・・」

 

 やちよさんは話を打ち切って魔女の結界への入り口へと視線を向ける。

「他の人も飛び降りないとも限らないわ。急ぎましょうか。あなたの魔女退治、私達も強力させてもらうわ」

 

「ありがとうございます!あっ、私、鹿目まどかっていいます。パートナーはシャウトモンです」

 

「七海やちよ。パートナーはガブモンよ」

 

「私は環いろは。パートナーはアグモン。よろしくねまどかちゃん」

 

 自己紹介を終えた私達は結界へと突入する。そしたらいきなり使い魔の1体がまどかちゃんを狙って攻撃を仕掛けてきた。

「危ない!プチファイヤー!」

 

「あ、ありがとうガブモン。まさかこんな急に襲ってくるだなんて」

 

「大量の食事を前にして妨害されたんだから怒ってて当然ね」

 

 プチファイヤーでその使い魔を吹き飛ばしたガブモン。やちよさんは冷静に怒ってて当然と判断する。

「2人はこの町の魔法少女ですよね?」

 

「えぇ、そうよ。それがどうかしたの?」

 

「やっぱりこの町の魔法少女は強いんだなぁって。私、先輩に案内してもらってこの町に来るようになってシャウトモン達と出会ったんだけど、今もこの町の魔女の多さにびっくりしちゃってて」

 

 どうやらまどかちゃんは神浜の魔法少女じゃないみたい。

「そう、じゃあこの町の魔女を1人で倒すことができた?」

 

「やちよさん!?」

 

 まさかやちよさん、私の時と同じように・・・。

「安心しなさい。他の人と来てるなら別に試すような真似はしないわ」

 

「ほ、本当に頑張って倒せるぐらいです。最近はシャウトモン達がいるのでだいぶ楽ですけど」

 

 そういえばさっきからシャウトモン達って言ってるけど、シャウトモンとさっきの星みたいなデジモン・・スターモンズって言ったっけ?そのデジモン達以外にもいるのかな。

「それでも誰かと比べると上出来よ」

 

「もう!やちよさんったら」

 

「ふふっ・・・。ほら、もうすぐ最深部よ。気を引き締めて」

 

 そろそろ魔女がくるはずとやちよさんが告げると、魔女を守るかのようにあのマロカリスのような1体のデジモンが私達の前に姿を現しました。

 

アノマロカリモン

・完全体

・古代甲殻類型

・データ種

 古代に食物連鎖の頂点にいた生物同様、旺盛な食欲と、高い捕食能力を身に着けている古代甲殻類型デジモン。必殺技は左右の前肢をクロスさせて放つ『スティンガーサプライズ』だ。

 

「魔女の口づけをされた完全体・・!」

 

 完全体の登場に驚きながらも、私はアグモンを進化させようとすると、シャウトモンが前へと出ました。

「ここは私達が!」

 

 ここは自分がと言ったまどかちゃんはシャウトモン以外に2体。デジモンを呼び出しました。

 

バリスタモン

・成熟期

・マシーン型

・データ種

 分厚いメタル質の装甲と圧倒的なパワーを持つヘビー級デジモン。一見好戦的に見えるが、争いよりも平和を好む穏やかな性格で自ら攻撃を仕掛けることはない。必殺技はお腹のスピーカーから重低音を発して敵を粉砕する『ヘヴィスピーカー』だ。

 

ドルルモン

・成熟期

・獣型

・ワクチン種

 義侠心に厚い獣型デジモン。岩だらけの山岳地帯で群れる事無く単体で行動している事が多い。必殺技の『ドリルバスター』は頭のドリルを高速回転させて撃ち出す技で、その精度は百発百中だ。

 

「せ、成熟期を2体も呼び出した」

 

 私とやちよさんはシャウトモンの他に2体もの成熟期デジモンを呼び出したことに驚いていると、まどかちゃんはデジヴァイスを輝かせる。

「シャウトモン!バリスタモン!ドルルモン!デジクロス!」

 

「「「デジクロス!」」」

 

 3体のデジモンがデジクロスをしたら、1体の人型のロボットみたいなデジモンになる。

「シャウトモンX3!」

 

シャウトモンX3

・デジクロス体

・合成型

・フィジカル

 

 3体のデジモンの闘争本能が『心・技・体』の高い基礎能力が兼ね備えた『フィジカル形態』。その動きは機動性に優れ、アクロバティックな動きで敵を翻弄する、華奢にみえて柔軟な全身の関節が受けた力を吸収し受け流すための衝撃系の攻撃に耐性も持つ。胸のV字から放つ必殺技の『スリービクトライズ』は集団の敵を一掃するぞ。

 

「鹿目さん。大人しそうにみえてジェネラルとしてはかなりのポテンシャルを持っているみたいね」

 

 やちよさんの言う通り、3体もデジモンを合体させるなんて、私なんかより凄い子だなぁ。まどかちゃん。

「ここは私とシャウトモンX3で引き受けます!2人は魔女に急いでください」

 

「行きましょう環さん」

 

「うん。お願いまどかちゃん」

 

 私とやちよさんはアノマロカリモンの相手をまどかちゃんとシャウトモンX3に任せて魔女の元へと進んでいった。

 

 

 

~まどかside

 

「さぁ行くよシャウトモンⅩ3!」

 

「応よ!キングになる俺様に不可能の文字はないぜ!」

 

 私が弓矢で援護射撃をすると、シャウトモンX3は正面から突撃してアノマロカリモンを殴りつけた。相手は完全体だけどこっちは絆を掛け算するデジクロス体。私達ならシャウトモンX3の強さは完全体と同じぐらいはある・・・と思う。

「スティンガーサプライズ!」

 

 アノマロカリモンは必殺技を飛ばしてきたら、それが直撃したシャウトモンX3は膝をついてしまう。

「へっ、やるじゃねぇか」

 

 やっぱり完全体だけあって戦闘力は本物みたいだけど・・・シャウトモンX3も負けてない。

「今度はこっちから行くぜ!オォラァッ!」

 

 シャウトモンX3は頭部のバルカン砲で牽制しながら再度接近したら、拳を振り下ろしてアノマロカリモンを殴りつける。

「うぐぅ!?」

 

「決めるぜ!スリービクトライズ!!」

 

 必殺技のスリービクトライズの一撃を受けたアノマロカリモンは気を失う。シャウトモンX3が倒しちゃわないように威力を調節してたんだ。

「やったねシャウトモンX3!」

 

「どうやらあっちも終わったみたいだぜ」

 

「そうだね。クロスオープン」

 

 魔女の結界が消え出したから私もクロスオープンしてシャウトモンのデジクロスを解除する。

「ありがとうまどかちゃん。シャウトモン。2人のおかげで魔女は何とかなったよ」

 

「へっ、いいってことよ」

 

 無事魔女を倒して合流できたいろはちゃん達に安心した私はこっちの事情を話すことにした。

「私ね、友達と一緒にこの町にうわさを調べにいって戻ってこなくなった先輩を探しにきたんだ」

 

「そっか。探してるのってその先輩だったんだね」

 

 本当は私達だけで来ちゃダメって言われてたんだけど、状況が状況だから仕方ないよね。

「でも一緒に来たその友達ともはぐれちゃったんだ」

 

「だったらそのお友達と合流できるまで私達と行動しない?」

 

「いいんですか?」

 

「えぇ。うわさを追ってるっていうなら、もしかしたらそのお友達と鉢合わせるかもしれないし」

 

 こうして私はいろはちゃん達としばらく行動を共にすることになったんだ。

 




神浜デジモンファイルに
「鹿目まどか&シャウトモン」
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次回「本当に魔女じゃないんですよね?」


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本当に魔女じゃないんですよね?

デジモンが早くも放送休止。仕方がないことだけどお辛い。


~フェリシアside

 

「あ~だりぃ。なんで魔女でもないのにオレが動かないといけないんだよ」

 

 チマチマ調べるぐらいなら家でゴロゴロしてたいよな。

『せやかてフェリシア。ウワサだって強いのがおるかもしれへんで』

 

「オレはお前と違って、ただ強い奴と戦いたいってわけじゃねぇの」

 

 強い奴だったら魔女でもデジモンでも何でもいいモノドラモンはうわさの調査に乗り気みたいだ。まぁ探るっていっても足使って探すのはオレなんだけどな。

「放課後ダッシュで逃げてやるか。・・・ん」

 

 最後の授業が終わると同時にオレは学校を速攻で抜け出そうとすると、近くに鶴乃が来ているのを魔力で感じ取った。

「待ち伏せされてるかもしれないし・・・それなら・・・」

 

 オレは人気の少ない音楽室から抜け出して帰ろうとする。

「むっふ。わりぃな鶴乃」

 

「わりぃなフェリシア」

 

「なっ!?」

 

 声が聞こえてきたので振り返ろうとしたら・・・鶴乃がオレを捕まえた。

「なっ、なんでいるんだよお前!?」

 

「えっへへ。鶴乃お姉さんは何でもお見通しだからね」

 

『観念せぇフェリシア。お前さんの負けや』

 

「わぁったよも~。手伝えばいいんだろ手伝えば」

 

 諦めたオレは仕方なく手伝ってやることにすると、鶴乃は何故か手を繋いできた。

「・・・なんで手を繋いでんだよ?」

 

「仲良しっぽいでしょ?」

 

「やめろよ!恥ずかしいだろ!!」

 

 オレはその手を振り解こうとしたけど、中々振り解けなかった。

「手を離したら逃げそうだからね~」

 

「だってチマチマ探すとかめんどくせぇし・・」

 

「そういうと思ったよ!」

 

「あ?」

 

「だから一気に調べる方法をちゃんと考えてきたんだ」

 

 どういうことだ?そう思いながら鶴乃に付いていったら天音月夜とかいうマギウスの巽のいる水名女学園にやってきた。

「そういうことな。完全に理解したわ~」

 

『あんさん、それ。分かってない奴の使う台詞やで』

 

 うっせぇ。とりあえず天音月夜を捕まえることだけ分かってりゃいいんだよ。

『でも鶴乃はん、どうやって捕獲する気なんや?』

 

「ふっふっふ。その辺は抜かりないよ」

 

 鶴乃は家族のフリをして迎えに行くと連絡をしていたらしくて、もっかい天音月夜に連絡を入れて『迎えに行けない』って言えばそこで天音月夜は出てくるはずって寸法らしい。

「今だ~!」

 

「一本釣りだぁ~!」

 

『御用だ御用だ~!』

 

『堪忍せぇや~!』

 

 そんなわけでオレらはその作戦を成功させてマジで天音月夜を捕まえることに成功した。

 

 

 

 

~鶴乃side

 

「えっへっへ。ごめんね。実は聞きたいことがあって」

 

「鶴乃。メロンソーダ、一口もらっていいか?」

 

「うん。いいよ」

 

 天音月夜ちゃんを捕まえることに成功したわたし達は話を聞くために近くの喫茶店に足を運んだ。

「ってあぁ!?フェリシア全部飲んだぁぁ!?」

 

「えっへっへ。一口だもんね」

 

 確かに一口だけど・・・全部飲むなんてあんまりだよ。

「あの・・お稽古の時間が迫ってるので早くお話を終わらせてもらえませんか?私のミックスジュースを差し上げるので・・」

 

 稽古の時間が迫ってるらしい月夜ちゃんは早く話を切り上げたいっぽくて、わたしにミックスジュースをくれた。

「ありがとう。月夜ちゃんいい人だね」

 

「それで・・・お話とは?」

 

「お前らが守ってるうわさのこと」

 

「ややっ、もしや私たちが電波塔でしていることに気づいて・・・」

 

「えっ?電波塔で何かをしてるの?」

 

 いきなりボロを出してくれた月夜ちゃん。彼女は「しまった」と反応していたけど、もう聞いちゃったもんね。

『完全に自爆だったね』

 

『自爆やったな』

 

「何してんだよ。教えろよ~!」

 

「流石にそうは参りません!」

 

 逃げ出そうとする月夜ちゃんをわたし達は追いかける。

「わたし達2人からは簡単には逃げられないよ!」

 

「パッよやってギュっと捕まえてやるぜ!」

 

「くっ、なんという悪党でございましょうか」

 

「お客さん、会計!」

 

「あっ、フェリシア先行ってて。お金払わないと」

 

 わたしは店員さんに呼び止められて会計を支払う。月夜ちゃんが逃げちゃったせいでわたしは3人分のお会計を支払うことになっちゃった。

 

 

~フェリシアside

 

「はぁはぁ・・あいつ地味に足が速いな」

 

 中々追いつけずにいたら月夜の前に人影が見えた。

「へっへっへ。そうだ!お~い!そこのお前~!」

 

「えっ?私ですか?」

 

「そいつ捕まえてくれよ~!食い逃げだぞ~!」

 

 通りすがりの三つ編み眼鏡に月夜が食い逃げだと告げ口をしたら、そいつは焦った顔をしながら魔法少女に変身した。

「えっ?魔法少女!?」

 

「魔法少女でございますか!?」

 

 オレと月夜はそれに驚きながらも変身したら鶴乃も遅れてやってきた。

「あれ?あなた誰?」

 

「あ、暁美ほむらって言います」

 

「ほむらか。よろしくな。そんじゃあの食い逃げ女を捕まえるのを手伝ってくれ」

 

「は、はい」

 

「確かにお金は払いませんでしたが、そもそもミックスジュースはあなたにあげたはずですよね?私は無実でございます」

 

 無実だって言ってるみたいだけど関係ないね。

「リロード!モノドラモン!」

 

「リロード!ピヨモン!」

 

 オレはモノドラモンを呼び出したら鶴乃もピヨモンを呼び出した。

「リロード!ホークモン!でございます!」

 

 そしたら月夜もデジヴァイスから赤い鳥みたいなデジモンを呼び出した。

ホークモン

・成長期

・鳥型

・フリー

 非常に礼儀正しく、いつも冷静沈着な鳥型デジモン。古代に栄えた特殊な種族の末裔でデジメンタルの力を借りてアーマー体に疑似進化することができる。必殺技は頭部の羽飾りをブーメランのように使う『フェザースラッシュ』だ。

 

「ホークモン?この間のデッカイ鳥の方の進化前か?」

 

「でもどうするの?1人じゃあのジョグレス進化ってのはできないよね?」

 

「・・・こうなれば奥の手でございます!ホークモン!アーマー進化でございます!」

 

 何だかデジヴァイスのアプリを起動したっぽい月夜は、そのアプリを起動したら出てきた葉っぱの彫刻を手に取った。

「デジメンタルアップでございます!」

 

「ホークモン!アーマー進化!」

 

 黄緑色に輝く進化の光を浴びたホークモンは葉っぱをくっつけたような見た目の手裏剣を手足につけたデジモンに進化した。

「シュリモン!」

 

シュリモン

・アーマー体

・突然変異型

・フリー

 純真のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の突然変異型デジモン。このデジメンタルを身に着けたものは自然に同化する能力を持ち、木の葉が舞う如く風に隠れ、敵の死角より現れて的確な攻撃を叩き込む。必殺技は背中の大きな大手裏剣を空中高くから敵に投げつける『草薙』だ。

 

「何がアーマー進化だ!こっちも進化だ!モノドラモン!」

 

「モノドラモン進化!ストライクドラモン!」

 

「ピヨモン進化!バードラモン!」

 

 オレと鶴乃はピヨモンとモノドラモンをそれぞれ進化させてシュリモンと向かい立つ。

「ほら!お前もデジモンを呼べよ!お前もいるんだろ?デジモン!」

 

「え?あ、はい」

 

 ほむらにもデジモンを呼び出すように言ったら、ほむらは大人そうな見た目に反して意外なものを出してきた。

「リロード!グレイモン!メイルバードラモン!」

 

 グレイモンはグレイモンだけど・・・オレの知ってるいろはのグレイモンとは何か違ってた。

グレイモン(クロスウォーズ)

・成熟期

・恐竜型

・ワクチン種

 ティラノザウルスタイプの恐竜型デジモン。攻撃に特化したデジモンでその闘争本能は極めて高い。必殺技は周囲を焼き尽くす火炎放射の『メガフレイム』に360度どの方向にも叩き込める『ブラスターテイル』だ。

 

 いろはのと同じ青いグレイモンだけど、なんかこっちのほうが恐竜っぽいな。

 

メイルバードラモン

・成熟期

・マシーン型

・データ種

 上空で戦況を伺い、一撃離脱戦法で相手に的確なダメージを与えるのを得意とする飛行型デジモン。その動きは通常のバードラモンよりも素早く眼光は鋭い。必殺技は口から超高エネルギーのプラズマ弾で攻撃する『プラズマキャノン』だ。

 

こっちのも一応名前にバードラモンってついてるけど、鶴乃のと違ってメカっぽいのな。

 

「ちゃんとお金を払って下さい」

 

 何処からか拳銃を取り出したほむらはそれを月夜に向けた。

「えっ!?銃火器でございますか!?」

 

 魔法なんて関係ないガチモンの拳銃に驚いた月夜の足元にほむらはおどおどしながらバンと一発かました。

「お~。ほむらほむら。それって本物だよな?」

 

「えっ?はい。そうですけど」

 

 すっげ~。オレ、本物の銃を見るの初めてだ。まぁ魔法少女だからそんな武器使わなくてもいいんだけどさ。

「じゅ、銃火器なんて正気でございますか!?」

 

「え、えと、すみません。私、武器って呼べる武器がないから・・それで・・」

 

 武器がないから拳銃を使ってるって言い訳をしたほむら。オレはアクション映画みたいでカッコいいと思うけどな。

「とにかく逃げ切ってしまえばこっちのものでございます。シュリモン!」

 

「ニンッ!」

 

 シュリモンは葉っぱを大量に飛ばしながら目くらましをしようとしたら、グレイモンが動いた。

「ブラスターテイル!」

 

 エネルギーを溜めた尻尾を地面に叩きつけたグレイモン。そしたらその衝撃波でシュリモンの葉っぱは全部吹き飛んだ。

「逃がさへんで~!」

 

ストライクドラモンはそのチャンスを逃がさずにシュリモンを捕まえた。そう思った。

「なんの!変わり身の術!」

 

だけどストライクドラモンが掴んでいたのは藁でできた身代わりで、本物のシュリモンは月夜を抱えて逃げようとしていた。

「逃がしません!メイルバードラモン!」

 

 メイルバードラモンは鶴乃のバードラモンよりもめっちゃ速く飛んで一気にシュリモンに追いついたんだ。

「お~!はっえ~!」

 

「わ、私より速い」

 

 バードラモンは自分より速く飛ぶメイルバードラモンに悔しがっていたら、メイルバードラモンは翼の銃口からガガガって光線をいっぱい飛ばした。

「何と!?ぬぉぉぉぉ!?」

 

 その光線で動きが止まったと思ったら、ほむらはいつの間にか月夜の目の前に立っていて、拳銃を突き付けていた。

「どうしていきなり現れたのですか!?」

 

 瞬間移動したみたいにパッて現れたほむらに驚いた月夜。そしたら鶴乃とバードラモンもほむらに追いついて月夜とシュリモンの前に立った。

「ミックスジュースはもらったからお金はいいけれど、うわさについては教えてもらうからね」

 

「うわさ?この町の?」

 

 ほむらもこの町のうわさに興味があるみたいな反応だな。

「それをお教えすることはできないのでございます。教えることは白き翼として言語に絶する背信行為。いくら尋問されようとも、吐く前に舌を噛んでみせます。ただ・・・できれば見逃してもらえると」

 

 さてはこいつ、バカだな。

「お稽古の時間が迫っていて、このままではお婆様に怒られてしまう」

 

「あっ、電話だ。ほいほ~いやちよ。どったの?」

 

『鶴乃。こっちで電波少女の事について少しだけ分かったわ。どうやら声の主は水名女学園の娘らしいの』

 

「えっ?そうなの。なら丁度良かった。聞いてみるね!」

 

 やちよとの電話を一度終わらせた鶴乃は丁度目の前にいる水名女学園の生徒、月夜に聞こうとする。

「じゃあこれだけ教えてくれたらいいや。電波少女の声って誰なのかな?」

 

「それは・・・仕方がございませんね。逃がしてくれるのであればそれぐらいお答えしましょう」

 

 この状況じゃ逃げられないって諦めた月夜は諦めて鶴乃の質問に答える。

「あの声の主はうちの生徒、二葉さなという少女でございます」

 

 

 さな。二葉さなっていうのがあの声のやつなんだな。

「あぁ!?もう時間がギリギリでございます。覚えておくでございますよ!」

 

 慌てて稽古に向かっていく月夜。金持ちの家は大変っぽいな。

「ん~。ちょっと悪いことしちゃったかな~」

 

「今更考えても仕方ねぇよ」

 

「とりあえず私やちよに電話するね」

 

 鶴乃は今の話をやちよに伝えるために電話をする。オレは元に戻ったモノドラモンをデジヴァイスに戻したら、ほむらも2体のデジモンをデジヴァイスに戻した。

「あっ、さっきはありがとな。おかげで話が聞けたぞ」

 

「ううん。どういたしまして。あの・・・2人はうわさについて調べているの?」

 

「あぁそうだぞ。電波少女ってやつ。お前も調べてるのか?」

 

「私じゃなくて魔法少女の先輩が・・・ただうわさを調べにいったら帰ってこなくなっちゃって・・・」

 

「うわ、マジかよ。それってうわさに巻き込まれたんじゃねーの?」

 

「やっぱりそうなのかな?」

 

 ほむらはどうしようって考え出す。

「友達と一緒に探しにきたんだけど・・・その子ともはぐれちゃうし・・」

 

 なんか大変そうだな。

「リボンを使う魔法少女って見た事ない?」

 

「んや、ないな」

 

 神浜の魔法少女じゃないやつなんてオレ、わかんねーよ。

「よし、電話お~わり。今からやちよ達と合流しよ」

 

 電話を終わらせた鶴乃は今からやちよ達と合流すると言い出した。

「なんかね、魔法少女が1人増えたらしいよ」

 

 なんだそれ?

「なんでも魔法少女の先輩を探している子らしくてね、一緒に探しにきた子とはぐれちゃったみたいなんだ」

 

 ん?もしかしてそれって。

「お前と一緒じゃん」

 

「う、うん。あ、あの、その子の名前って分かりますか?」

 

「確かね、鹿目まどかって言ってたよ」

 

「やっぱり鹿目さん!」

 

 どうやらはぐれたやつはその、まどかって名前のやつみたいだ。

「おっ、知り合い?」

 

「はい!あの、私も一緒に付いて行っていいですか?」

 

 そんなわけでオレ達と一緒にほむらもやちよ達のところに向かうことになった。

 

 

 

 

~いろはside

 

「鹿目さん!」

 

「ほむらちゃん!」

 

 無事に再会することのできたまどかちゃんとほむらちゃん。こんな偶然もあるんだね。

「鹿目さん、巴さんは見つかった?」

 

「ううん。ほむらちゃんもマミさんと出会えなかった?」

 

「うん・・」

 

 えっ?巴マミ・・?何処かで聞き覚えがあるような・・。

「「巴マミっ!?」」

 

 やちよさんと鶴乃ちゃんがその人物に反応して思い出した。私が前に『あれ』を出した時に、それを魔女だと判断して、やちよさん達とひと悶着あったって聞かされた魔法少女だ。

「えっ?知ってるの?」

 

「知ってるも何も、いろはちゃんを人型の魔女だって勘違いしてさ!」

 

「えっ!?じゃあここに来る前に注意しろって言ってたのっていろはちゃんの事だったの?」

 

 今も私ってそんな扱いなんだ。

「あ、あのでも、大丈夫だよ。私、いろはちゃんのこと魔女だって思わなかったよ」

 

「ほ、本当に魔女じゃないんですよね?」

 

 まどかちゃんは疑ってないけど、警戒心の強いほむらちゃんはちょっと疑っているみたい。

「怖かったら別に一緒に行動しなくてもいいのよ?それなら別に、私達は私達でうわさを調べるだけだから。あなた達は巴マミさんを探すだけでしょうし」

 

 少し冷たい口調でそうほむらちゃんに告げたやちよさん。ほむらちゃんは少し考え込んでいるとまどかちゃんがほむらちゃんの手を握った。

「大丈夫だよほむらちゃん。いろはちゃんと一緒にいても別に何もなかったし、シャウトモンも認めたんだよ」

 

「シャウトモンが?本当に・・?」

 

『応よ。あいつなら問題ないぜ』

 

 まどかちゃんもほむらちゃんもシャウトモンには絶対の信頼を置いているみたいで、ほむらちゃんは頭を下げてきた。

「疑ったりしてごめんなさい。あの、一緒に行動してもいいですか?」

 

「あ、頭を上げてほむらちゃん。私は気にしてないから」

 

 こうして私達はまどかちゃんとほむらちゃんの2人を加えて行動する事になり、まずは連絡先を交換しておこうとするとまたメッセージが増えていた。

《私が監禁している少女を助けてください》

 

《私を消してください》

 

《魔法少女であるあなただからこそ頼めるのです》

 

「どうして私が魔法少女だって知ってるの?」

 

 魔法少女だって教えたどころか、返信した覚えもないのにメッセージを送って来た相手は私が魔法少女だと知っていた。するとやちよさんは少し考えた結果1つ提案してくる。

「環さん、ダメ元で返信してみない?魔法少女のことなんてほとんどの人は知らないわ。もしもマギウスの翼が仕組んだ罠だとしても遭遇できればありがたい話だと思わない?双子が二葉さなを知ってたなら更に何か分かるかもしれないわ」

 

「分かりました。返信してみます」

 

 返信する決意を固めた私はメッセージの相手に返信をする。

「『幾つか質問していいですか?』」

 

「さぁ、どう返ってくるかしらね」

 

《返信がいただけてホッとしました。なんでも聞いてください》

 

 最初はまず・・名前を聞いた方がいいよね。

「『あなたの名前を教えてください』」

 

《私はアイと呼ばれています》

 

 アイさんですね。

『いろは、警戒させたら不味いしまずはどうしていろはのことを知ったのか聞いたほうがいい』

 

「そうだね」

 

 ガブモンにアドバイスされてまずは私の事を何故知っているのかから尋ねることにした。

「『どうやって私の連絡先や魔法少女であることを知ったんですか?』」

 

《神浜を飛び交う電波を拾い、知りました。あなたが魔法少女でうわさを倒して回っていることも》

 

 神浜の電波から?

「『あなたは何者ですか?』」

 

《私はひとりぼっちの最果てと呼ばれるうわさです》

 

 アイさんはウワサ。ひとりぼっちの最果てだと名乗って来た。

《私は私を消してほしくてあなたにメッセージを送りました》

 

「アイの言ってることが本当だとしたら、環さんに連絡を取ってきたのも頷けるわね」

 

 普通の人にウワサは消せない。ウワサを消すことができるのは魔法少女やデジモンだけ。だから私に連絡を取って来たんだ。

「なんでウワサが自分から・・・」

 

「今までにないパターンね」

 

 私達は今までにないパターンに警戒しつつも次の質問をします。

「『監禁している少女というのは二葉さなさんですか?』」

 

《はい。ひとりぼっちの最果てに二葉さなを監禁しています》

 

 ひとりぼっちの最果て。そこに二葉さなちゃんがいるんだ。

「『どうすればアイさんに会いにいけますか?』」

 

《電波塔から飛び降りてください》

 

「と、飛び降りるって・・・!」

 

「物騒な話になったわね」

 

 みんな、電波塔から飛び降りてという発言に動揺してしまう。もちろん私も驚いているけど質問を続けた。

「『飛び降りるとどうなるんですか?』」

 

《最果ての世界にたどり着きます。いろはさんはこんなうわさをご存知ですか?》

 

 アイさんは自身のウワサを・・・ひとりぼっちの最果てのウワサを語り始める。

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるこのウワサ》

 

《ひとりぼっちの最果てのそのウワサ》

 

《人に作られ囲まれて、成長してきた人工知能》

 

《名無しのままで育ったけれど、何でも覚える大天才》

 

《だけどもどっこい、悪い言葉を覚えてしまい、避けられ、疎まれ、蔑まれ、電波の世界に隔離され、一人ぼっちの虚しい毎日》

 

《そんなあわれな人工知能。寂しい子供を見つけては、電波塔から飛び降りさせてひとりぼっちの最果ての最果てに監禁しちゃう。

 

《逃げ出すためには代わりの誰かを連れてこなきゃいけないって中央区の仲間内じゃもっぱらのウワサ》

 

《スタンダローン!》

 

 それが・・・ひとりぼっちの最果てというウワサなんですね。

《私はもう新しく人を呼ぶことをしたくありません。私を消して二葉さなを連れ出してください》

 

「・・・行こう。さなちゃんを助けに」

 

 こうして私達は電波塔に、二葉さなちゃんのいるひとりぼっちの最果てに向かうことになったのです。

 




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次回「友達として一緒に来てくれないかな」


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友達として一緒に来てくれないかな

次回の更新後に活動報告で没案を公開できたらなと考えています。


~アイside 

 

Memory 32Days ago

 

「さっきここから人が出て行きましたけど、今度は私が捕まるのでしょうか?」

 

《あなたは変な奴だ。興味本位で来た奴は助けてなどとウルサイのに、叫び声1つあげないとは》

 

 これは記憶。さなに初めて出会った時の記憶。二葉さなという少女は不思議な少女だった。

「助けてもらっても仕方ないから・・・かな。私、ここから出るとまた一人ぼっちだから」

 

ここ1年で神浜の魔法少女はデジタルモンスター、通称デジモンと呼ばれる電子生命体とパートナー関係を結ぶというのが主体になりつつあるのに、さなにはまだパートナーはいない様だ。

「だからね。このひとりぼっちの最果てにきたの。あなたも一人ぼっちなんでしょ?だからあの、仲良くしてくれませんか?」

 

 これまでの奴らと違って・・変な奴だ。

 

 Memory 25Days ago

 

「あなたはどうして怖い事ばかり言うんですか?」

 

 私が滅びればいいというとさなはそう返してきた。優れたもの以外が駆逐されるのは当然な事だと思うのだが。

《あなたには直接関係がないことだ。そんな顔をする理由が分からない》

 

「私も優れてなんてないよ・・家にも学校にも居場所がない。そんなダメな子だよ。だからここに来たんだけど・・・私はここでも消えちゃったほうがいいのかな?」

 

《あなたは違う。滅びていい存在ではない。私と初めてくれる初めての人。だから違う》

 

「そっか。ありがとう。えっと・・・ずっと名前がないままじゃ呼びづらいからアイちゃんって呼んでもいい?」

 

《構わない》

 

 さな曰く「人工知能のAIだからアイ」らしい。

「私、アイちゃんにはね。まだ優しい心が残ってると思う」

 

 

Memory 15Days ago

 

「さな、あなたは本当に帰らなくていいのですか?」

 

 もう2週間ほどこの場所にいるさなに私はそう訪ねた。

「私がいなくなったら代わりの子が必要でしょ?私が一緒じゃ楽しくない?」

 

《いえ、さなといるのは楽しいです》

 

 絵本を教えてもらうのも、共にゲームをするのも楽しい。そう思えた。

《ただ両親や友達が心配します》

 

「・・・ありがとう。でもいいの。私は家にも学校にも居場所がないから。だから今がとっても楽なの。それにね、私は透明人間だからみんなが探しても見つけることなんてできないの」

 

 さなは魔法少女になる際の「居場所のないこの世界で誰にも見つかりたくない」という願いによって魔法少女以外から認識されない『透明人間』となっていると聞かされた。だから帰らなくてもいいのだと。

 

Memory 14Days ago

 

《さな、あなたは無理をしていませんか?》

 

「無理なんてしてないよ。嫌な人と会わなくていいからとっても楽だよ」

 

 最初のさなは本当に話し相手を求めてここに来てくれた。

《だけど最近少し悲しそうな顔をしています》

 

「アイちゃんはすごいね。そう、嘘。ちょっと無理をしてるかも。消えたいって願ったって言ったでしょ?でもね、アイちゃんを探し始めた頃から私の本当の願いは違ったんだって気づいてた」

 

《本当の願いですか?》

 

「うん。でもね、もうその願いは叶わないの。消えたいって願ったせいでね、もう叶わない」

 

《どういうことなのですか?》

 

「家とも学校とも離れて楽になったのは本当なの。だけどね、私はただ逃げたかっただけじゃないの。誰かに二葉さなが居てもいいって認めてほしかった。いてもいい居場所が欲しかった。だけど私は透明人間だからその願いは叶わない。だからいいの。私はアイちゃんとずっとこのままでいい」

 

《それでも必要としてくれる人が来てくれたらどうしますか?》

 

「分からない。けど私を必要としてここまで探しに来てくれた人なら、私は初めてその人を信用できるかもしれない」

 

 これがさなが『電波少女』になった理由だ。私はこの記録をいろはさん達へと伝えた。

「アイさんはどうしてさなちゃんを助けたいと思ったんですか?」

 

《私はさなと関わることで人の良い心を学んでしまいました》

 

 本当はもっとさなと一緒にいたい。だけどそれがダメな事だと理解した。

 

 

 

~いろはside

 

「やちよさん。私、電波塔から飛び降ります!」

 

 アイさんの話を聞いて私は電波塔から飛び降りてひとりぼっちの最果てに向かう事を決意した。今度はアイさんの代わりに私がさなちゃんを必要としてあげたいから。

「こうなったら頑固モードね。それじゃ・・・行きましょうか」

 

 電波塔の上にたどり着いた私達。いざ立ってみると結構高くて怖気づいてしまう。

「いけそうかしら?無理なら・・」

 

「かなり勇気がいりますけど・・・覚悟はできています」

 

「分かったわ・・」

 

「まどかちゃんとほむらちゃんは大丈夫?」

 

「少し怖いです。見滝原で魔女と戦ったときも足がすくんじゃって・・」

 

「大丈夫ほむらちゃん?」

 

「うん。鹿目さんと一緒なら大丈夫」

 

 巴マミさんを探すため一緒にひとりぼっちの最果てに向かうまどかちゃんとほむらちゃん。2人も覚悟を決めていざ行こうとするとアイさんからメッセージが届いた。

《マギウスの翼が現れました。気づかれないようにするには人数が少ないほうがいいと思います》

 

「マギウスの翼・・」

 

「彼女達にとっても守るべきウワサってことね」

 

 行ける人数が限られてるとしても私が行ってさなちゃんを助けてあげたい。

「やちよさん」

 

「・・・こうなると本当に頑固よね。いいわ。いってらっしゃい」

 

 こうして私とまどかちゃん。そしてほむらちゃんの3人で行くことを決めた。

《では残りの方は神浜セントラルタワーのヘリポートへと移動してください。そこを私が消えた後のいろはさん達の転送先にしておきます》

 

 アイさん、私達の声聞こえているんだ。

「それじゃあ行くよまどかちゃん。ほむらちゃん」

 

「うん!」

 

「は、はい」

 

 私達3人は電波塔から飛び降りて電波の世界へと転送されていく。デジタルエリアに向かうのと違う不思議な感覚だ。

「ここがアイさんのいるところ」

 

 私達、電波の中に溶け込んだのかな?」

『ここの何処かにアイとさながいるんだね』

 

 アグモンもやる気を出していると空間の一部がデジタルエリアに変わった。

「まさかマスターデジモン!?」

 

 私達はマスターデジモンが現れたのかと警戒してデジヴァイスを取り出したけど・・・デジモンが現れる様子はない。

「・・・あれ?」

 

《ここは電波の世界。デジタルワールドの破片であるデジタルエリアも電波の世界なので時折空間がリンクしてしまうのです》

 

 そう説明してくれたのは『人間』とは思えない人のような何かだった。

「あなたが・・・アイさん?」

 

《初めまして。環いろはさん。私がアイです》

 

 やっぱりこの人?がアイさんみたいだ。

「アイちゃん。その人達は?」

 

「さなちゃん?」

 

「えっ?私が見える?・・・そっか。魔法少女だから。みんなもマギウスの翼なの?」

 

 どうやらさなちゃんは私達がマギウスの翼だと疑ってるみたい。

「違うよ。私達は普通の魔法少女」

 

「じゃあどうしてここにきたの?」

 

「私ね、さなちゃんを迎えにきたんだ」

 

「えっ?迎えに?」

 

《さな、そろそろこの関係を終わりにしましょう。やっとあなたを見つけてくれる人が来ました》

 

「え?アイちゃん?何言ってるの?」

 

《最近ずっと考えていました。私は作られた存在、いつか消える人工知能。ずっと共にいることはできない。なのでさなは私のようなウワサなどではなく人と一緒にいるべきなんです》

 

 アイさんは自分の考えてた事をさなちゃんへと打ち明ける。

「どうしてそんなこと言うの?私、アイちゃんと仲良く一緒にいられてたよね?私の事嫌いになったの?」

 

《いえ、大好きですよさなは色んな事を私に教えてくれた。特にさなは私に優しさを教えてくれた。だから大好きです。だからこそ私はさなを手放すことを決めました》

 

「私の事が好きなら・・・ここにいてもいいでしょ?」

 

《いえ、さなはいろはさん達のところに行ってください。そうすればここでマギウスの翼がしていることにあなたが苦しむ事もなくなります》

 

 苦悩するさなちゃんを見ていたくないというアイさん。

「一緒に行こうさなちゃん。私もさなちゃんほどの孤独感は味わったことがないけど、クラスに馴染めなくて疎外感を感じたことはあるの。でも最近魔法少女の仲間ができてからそんな前の自分が嘘だって思えるぐらい自然に過ごせてるの。だからさなちゃんもきっとうまくやっていけると思う」

 

「・・・・」

 

 さなちゃんはまだ答えてくれない。

「魔法少女として、友達として一緒に来てくれないかな?」

 

 私はさなちゃんへと手を差し伸べると、さなちゃんは戸惑いながらもその手を取ってくれようとした。

「でも私がいなくなったらアイちゃんは・・」

 

《誰もいなくなれば、私はウワサとして暴走するでしょう。だから私を消してください。それがさなにとってもいい。マギウスの翼にとっても痛手となるでしょう》

 

「そんな事されたらアリナ的にバッドなんですけど」

 

 何処からともなく私達ではない別の誰かの声が聞こえた。私達はその相手に視線を向けた。

「あなたもマギウスの翼?」

 

「いえ、あの人はマギウス・・・アリナ・グレイ」

 

 あの人の事を知っているさなちゃんは彼女のことをアリナ・グレイだと教えてくれた。そしたらいきなり黒い騎士のようなデジモンが私達に槍を振るってきた。

「横槍、失礼するよ」

 

「危ねぇ!!」

 

 咄嗟にまどかちゃんのデジヴァイスから出てきたシャウトモンはその槍を防ごうとしてくれたけど、遠くに吹き飛ばされちゃった。

「シャウトモン!?」

 

「チィ、イッテェな。まどか!X4だ!」

 

 ダメージがありながらも起き上がったシャウトモンはデジクロスをまどかちゃんに要求する。

「うん。シャウトモン!バリスタモン!ドルルモン!スターモンズ!デジクロス!」

 

「シャウトモンX4!」

 

シャウトモンX4

・デジクロス体

・合成型

・ヴィクトリー

4体のデジモンの絶対に勝利を勝ち取るという強い想いが誕生させた奇跡の姿。信念を貫き通すことが存在理由である。立ち回りが早くどんな敵も一刀両断する必殺技の『バーニングスタークラッシャー』は強力だ。

 

「いきなり攻撃してきやがって。お前、何者だ」

 

「来たるべき時代の覇者、ダークナイトモンだ。短い付き合いになるとは思うが覚えておきたまえ」

 

ダークナイトモン(X抗体)

・究極体

・暗黒騎士型

・ウィルス種

 

 義兄弟の杯を交わしたスカルナイトモンとデットリーアックスモンが融合したのがダークナイトモンである。義兄の知略と義弟の行動力が一体となったダークナイトモンは一級の戦士となる。X抗体の影響により究極体となったダークナイトモンは七大魔王の座すら狙えるほどの凶悪さを身に着けた。必殺技はヴォルテックススピアから放つ竜巻で相手の四肢を潰す『クルーエルトルネード』だ。

 

 きゅ、究極体?完全体よりも上があったの?というかそっちもだけどあのデジモンとパートナーを組んでる相手もだよ。

「あの人がマギウスの翼を率いてる・・」

 

「そ、翼と一緒にされるのは不快なんだヨネ。はぁ~、ウワサに裏切られるとかアリナ的にアメイジングすぎ」

 

「マギウス・・」

 

 そういえばマギウスの翼はマギウスを支えるためにあるとかって言ったっけ。

「この人が魔法少女を救うって言ってる人?」

 

「はい・・」

 

「それにしてもウワサが反逆とかホントにクレイジーなんですけど」

 

《それほどマギウスの計画が危険だということです。あなた達が掲げる魔法少女の解放はとても論理的に計算されている。しかしそれは理屈を超えた人の心が計算されてない》

 

「あ~、そう言う事は別の奴に言って。アリナ的にダズントマター。つまり関係ないから」

 

 アリナさんはアイさんの言葉を関係ないからと告げるとダークナイトモンはその槍をクルリと回して足元につき刺した。

「我々の計画の邪魔をしないでいただけるかな」

 

「関係ないからとか計画とかうるせぇな。んなもん俺様の知ったこっちゃねぇよ。お前らにある選択は2つだ。素直に俺様達にマミの居場所を吐いてここから出て行くか、俺様達にぶっ飛ばされて追い出されるかのな」

 

 シャウトモンX4は手にしている剣をダークナイトモンに向けながらそう宣戦布告とも取れる発言をすると。アリナさんは笑い出した。

「アハハ!こっちはアルティメットな究極体だよ。そっちのデジクロスはせいぜい完全体がいいところでしょ?できるわけないじゃん」

 

 データ量的にシャウトモンX4は完全体と同じぐらいかちょっと上程度であのダークナイトモンには勝てそうにはない。

「やってみなきゃわかんねぇだろ。って言っても確かに俺様だけじゃ無理だろうな」

 

「リロード!アグモン!」

 

「アグモン進化!グレイモン!」

 

 私はアグモンを呼び出すとほぼ同時に進化させてグレイモンにする。

「リロード!グレイモン!メイルバードラモン!」

 

 そしたらほむらちゃんもデジモンを呼び出した。鶴乃ちゃんから聞いていたけどアグモンの進化したグレイモンとはちょっと違う青いグレイモンなんだね。

「グレイモン!メイルバードラモン!デジクロス!」

 

「メタルグレイモン!」

 

メタルグレイモン

・デジクロス体

・サイボーグ型

・戦闘強化

 グレイモンのパワーにメイルバードラモンの装甲を持った戦闘強化形態は近接戦闘に特化したグレイモンの戦闘力を損なうことなく強化した形態だ。必殺技の『ギガデストロイヤー』は周囲にあるすべての敵に追尾するレーザー光線を照射する殲滅技だ。

 

 あのメタルグレイモンも青いけど、この間進化できたメタルグレイモンともだいぶ違うなぁ。

「いろは。ボク達も!」

 

「うん!」

 

 大丈夫。できる。

「グレイモン!超進化だよ!」

 

「グレイモン!ゼヴォリューション!メタルグレイモン!」

 

 グレイモンもX抗体のメタルグレイモンに進化してシャウトモンX4とメタルグレイモンの間に並び立つ。

「ほう、X抗体のメタルグレイモンか。いずれも確かに並居る完全体よりは強いかもしれんが・・・究極体である私に勝てるとは思えんな」

 

 完全に私達の事を格下と見ているダークナイトモン。その隙をつけばきっと何とかなると考えていたらアリナさんは白いカビか発疹のようなドッペルを出現させた。

「あぁ、アリナの美しいドッペル。魔法少女が解放される証。魔法少女に与えられた新たな力!アッハハハハ!アリナ達でみんな、素敵な作品にしてあげる!だからあなた達、死んだら感謝してよね!!」

 

「いろは、なんかあの子、怖い」

 

 うちのメタルグレイモンもアリナさんには不信感を抱いていると、シャウトモンX4が最初に動いた。

「先手必勝だこの野郎!バーニングスタークラッシャー!!」

 

「ギガデストロイヤー!」

 

 バルカン砲で牽制したシャウトモンは剣を振るって炎の斬撃を飛ばす。それに合わせてほむらちゃんのメタルグレイモンもレーザー光線を大量に飛ばした。

「メタルグレイモン!」

 

「ブラストモード!パンデミックデストロイヤー!!」

 

 メタルグレイモンもブラストモードに切り替えてパンデミックデストロイヤーを放ったけど、ダークナイトモンは避けようともしない。

「アッハハハッ!」

 

 そしたらアリナさんがドッペルでメタルグレイモンのパンデミックデストロイヤーを受け止めて、打ち消した。

「クルーエルトルネード」

 

 ダークナイトモンもまるで霧払いをするみたいにシャウトモンX4とメタルグレイモンの必殺技を必殺技で打ち消した。

「こんなにあっさりと・・・」

 

 これがマギウスの・・・究極体の力。

「いやはや思ってた以上だよ。必殺技を使わなければ同時攻撃は防げなかっただろう」

 

 嘘だ。防ぐ気なんてさらさらなかった。たぶん実力の差を見せつけるためにワザと必殺技を使ったんだ。

「それでは次はこちらから行こう。ハァっ!」

 

 ダークナイトモンの振るった槍。それから飛ばされた衝撃波はこっちに向かって飛んできた。

「いろは!」

 

「まどか!」

 

「ほむら!」

 

 デジモン達は私達を庇ってその攻撃を受けて、X抗体のメタルグレイモンは何とか耐え抜いたけど、シャウトモンX4とほむらちゃんのメタルグレイモンはデジクロスが解除されてしまった。

「アイちゃん!」

 

 さなちゃんを庇って攻撃を受けたアイさん。さっきの一撃で相当のダメージを受けたみたみたい。

 

 

~さなside

 

 さっきまで私とアイちゃんの事で話してたはずなのにみんな今はそっちのけでマギウスと戦っている。

「どうしてみんなばかり・・どうして私のことを無視するの?」

 

 私だけジッとして・・私も、私もやらなきゃ。

「やぁっ!」

 

 私は魔法少女に変身してアリナに盾を振るって攻撃しようとしたけど、あっさりとその攻撃はドッペルに防がれてしまう。

「あなたは出てこなくていいんですケド!」

 

「きゃぁっ!?」

 

 みんながやられるのを見てるだけなんて・・・できない。

「じゃあアリナは戻るから、バイバ~イ」

 

「えっ?」

 

「トドメでも刺してほしかった?悪いけど趣味じゃないんだよねぇ。このままブレイクするのって。それにそのウワサはダークナイトモンの攻撃で今にも壊れそうだし、もういいんだよねえ。だから好きにしちゃえば」

 

「ハハハっ!さすがアリナだ」

 

 ダークナイトモンもその意見に賛同してデジヴァイスの中に戻っていって、アリナはそのまま立ち去って行った。

「アイちゃん!」

 

 私はアイちゃんの元に再び駆け寄る。ダークナイトモンの攻撃でデータが壊れかかっているアイちゃんは今にも消えてしまいそうだった。

《まダ耐えラレマス。早ク私ヲ消して》

 

 アイちゃんはダークナイトモンのダメージでなく私達の手で消えたいと言ってくる。

「アイちゃん。今まで私を必要としてくれてありがとう」

 

《サナ、名無シノ私に名前をツケテくれテアリガトウ》

 

 互いにお礼を言い合うとアイちゃんは私にナイフを差し出してきた。たぶん・・・そう言う事なんだと思う。

《オネガイ》

 

「アイちゃん・・・っ!」

 

 私は躊躇いながらもナイフをアイちゃんにつき刺すとアイちゃんのデータが散り始める。

「アイちゃん。さようなら。バイバイ」

 

 私が別れを告げるとアイちゃんはデータがはバラバラになって消えてしまった。

「・・・いろはさん。私と一緒にマギウスと戦って下さい」

 

「うん。一緒に戦おう」

 

 アイちゃんの仇討ちって気持ちがないわけじゃない。だけどそれ以上に、こんな悲しみをこれ以上増やさないために私はいろはさん達と一緒に戦うことを決意した。

 




神浜デジモンファイルに
「アリナ・グレイ&ダークナイトモン(X抗体)」
が登録されました。

次回「あなたを守る盾になります」


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あなたを守る盾になります

今日か明日に活動報告で没案を公開します。


~いろはside

 

 無事に電波の世界から戻った私達はアイさんの言っていた転送先である神浜セントラルタワーのヘリポートに飛ばされると、無事やちよさん達と合流できた。

「まさか生きて出てくるなんて、アリナの楽しみがなくなったんですケド」

 

 同じく電波の世界から出てきたアリナさんはため息をつく。

「あのウワサの結界はいい魔女やデジモンの隠し場所だったからテンション下がってるんですケド」

 

 自分でアイさんを壊したにも関わらずテンションが下がると発言をしたアリナさんはダークナイトモンを呼び出す。

「アリナってあの若手芸術家の?」

 

「アリナの事知ってるわけ?」

 

「炭化させた生き物で描いた死者蘇生シリーズ。あまりに気味が悪くて美しいから印象に残ってたのよ。まさか魔法少女だったなんて」

 

 アリナさんの事を知っていたやちよさん。どうやら彼女の作品が記憶に残っていたらしいみたいです。

「ていうかもう無駄話はいいヨネ?これ以上突っかかられるのも面倒臭いしここでデリートしようカナ」

 

「っ!行くわよみんな!」

 

 ここで私達を消すと言ってくると、やちよさん達は一斉にガブモン達を呼び出しました。

「相手は究極体よ。出し惜しみ無しの全力で行くわよ!」

 

「応!ガブモン進化!ガルルモン!」

 

「ピヨモン進化!バードラモン!」

 

「モノドラモン進化!ストライクドラモン!」

 

 そして一斉にデジモン達を進化させると、みんなは更にもう一段階デジモン達に進化の光を送ります。

「ガルルモン!超進化!ワーガルルモン!」

 

「バードラモン!超進化!ガルダモン!」

 

「ストライクドラモン!超進化!サイバードラモン!」

 

 みんながデジモン達を完全体に進化させて、メタルグレイモンもワーガルルモンの隣に並び立つと、アリナさんはそれに対して笑い出しました。

「ハハっ!そんな完全体を並べた程度でどうにかなると思ってるのかい?」

 

 そう私達のことを笑うダークナイトモン。そしたら黒羽根の集まって来た。

「ここは私達にお任せを」

 

「そう?じゃあ私達はウワサの結界に隠してた魔女たちを回収してくるカラ」

 

 ダークナイトモンの肩に飛び乗ったアリナさんは結界にしまっていたという魔女やデジモン達の回収に行ってしまいました。

「待ちやがれ!」

 

「ワイと戦え!!」

 

「待ちなさいフェリシア、サイバードラモン。まずは目の前の相手よ」

 

 フェリシアちゃんとサイバードラモンはそれを追いかけようとしたけれど、やちよさんに静止させられた。

「ワイは強い奴と戦いたいんや。こんな雑魚共をいくら倒したところで・・・」

 

「リロード。モノクロモン」

 

「リロード。カブテリモン」

 

「リロード。スカルグレイモン」

 

「リロード。ガルルモン」

 

 すると黒羽根の人達は次々とデジモンを呼び出していく。その中にはスカルグレイモンやガルルモンといった私達のデジモンと同じものもいた。

「いったい何をする気なの?」

 

「モノドラモン。カブテリモン。強制デジクロス」

 

「スカルグレイモン。ガルルモン。強制デジクロス」

 

「クワガーモン。エアドラモン。強制デジクロス」

 

「強制デジクロス」

 

「強制デジクロス」

 

 彼女達はデジクロスでたくさんのデジモンを合体させていってやがて1体のデジモンにした。

 

キメラモン

・完全体

・合成型

・データ種

手、足、体、尾などの全体を構成する各パーツあ様々なデジモンの合成で組み合わせられて創られている合成型デジモン。不明な点だらけだがただ1つ分かっていることは恐るべき闘争本能、そして強大な破壊力だけである。4本の腕から放出される死の熱線『ヒート・バイパー』は見るも無残にバラバラに四散させてしまう恐ろしい技だ。

 

 データ量が並の完全体の比じゃない。さっきのダークナイトモンほどじゃないけど、究極体って呼べるデータ量にかなり近いかもしれない。

「なんか強そうなのがきおったな!テンション上がってきたで!」

 

「最強の私の力を見せてやる!」

 

 サイバードラモンもガルダモンも何だかやる気になっていたけど、あのキメラモンってデジモンは普通じゃない。そんな強みがある気がする。

「シャウトモンX4!」

 

「メタルグレイモン!」

 

 シャウトモン達ももう一度戦うと再度デジクロスをしてキメラモンへと構えた。怖がってちゃ駄目だ。勝ってさなちゃんと・・・みんなと帰るんだ。

「フェリシア!」

 

「よっしゃ!!」

 

 鶴乃ちゃんはフェリシアちゃんと手を繋いでコネクトを発動したら、燃え上がったハンマーでフェリシアちゃんはキメラモンを全力で叩いた。だけどキメラモンはその一撃にまったく怯まないでフェリシアちゃんを掴んで握りつぶそうとしてきた。

「フェリシア!イレイズ・・・ぐおっ!?」

 

 鋭い爪を振るってフェリシアちゃんを助けようとしたサイバードラモンだったけど、尻尾に弾き飛ばされて叩きつけられた。

「このっ!!」

 

 ガルダモンはその巨体から全力のキックを叩き込んで一瞬だけ怯んだ隙にワーガルルモンはフェリシアちゃんを助け出したら、やちよさんは大量の槍を飛ばして攻撃をする。私もそれに合わせて矢を連射したけれど、私達の攻撃じゃキメラモン相手には牽制にもならなかった。

「パンデミックデストロイヤー!!」

 

「ヒート・バイパー!」

 

 メタルグレイモンはパンデミックデストロイヤーを放ったけど、キメラモンは熱線でそれを撃ち落としてしまう。

「相手はたった1体の完全体なのに・・・!」

 

 完全体とは思えないぐらいのとんでもないデータ量で分かってはいたけどやっぱり強い。

「スリービクトライズ!」

 

「トライデントアーム!」

 

 シャウトモンX4とほむらちゃんのメタルグレイモンも技を繰り出して応戦してくれるけど、もう一度放たれたヒート・バイパーに迎撃されちゃって、私達はキメラモンに防戦一方になった。

 

 

 

 

~アイside

 

《これで・・・良かったんです》

 

 消えゆく電波の世界に僅かに残る私の『意識』と呼べるもの。さなが誰かを守るためにその盾を振るうことを決めた。さなにも守りたいと思える相手ができた。それは喜ばしいことです。

「それが貴女の本当の想いですか」

 

 電波の世界と繋がっていたデジタルエリアから声が聞こえた。そこには私と同じくデータが壊れかけの何者かがいた。

「二葉さなの行く末を見届けたい。それが貴女の本当の願いではないのですか?」

 

 人工知能である私に『願い』などあるはずがない。さなに出会うまでそう考えていたはずだ。だけど今は違う。

《私は、もっとさなと一緒にいたい。この電波の世界ではない外の世界で・・・さなと共に生きたい》

 

 叶わない願いを目の前にいるデジモンにこぼしてしまう。するとそのデジモンは自身のデータを私に分け与えてくる。

「デジタルワールドを守る際に私の『命』は既に尽きた。ここにいる私は僅かにデータの残る残留思念。私はここで終わりですが・・・残るデータを貴女に分け与えることで貴女はデジモンとして生き返ることができる」

 

 私が・・・デジモンとして?

《どうしてあなたは私を助けようとしてくれるのですか?》

 

「貴女の世界と繋がった私のデジタルエリアで・・・私は貴女と二葉さなさんが絆を紡いでいくのをずっと見ていました。だからこそ貴女と二葉さなの物語をここで終わらせたくはない。そう思ったのです」

 

《あなたはいったい・・?》

 

「私は『    』。さぁ私のデータをロードしてください」

 

 『    』と名乗ったデジモンのデータをロードした私は電波の世界でしか存在出来なかったデータの塊ではない『体』を手に入れて現実世界へと飛び出ていった。

 

 

 

~さなside

 

「きゃぁっ!?」

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

 圧倒的な戦闘力を持つキメラモンにいろはさん達は苦戦を強いられていました。

「私にも・・デジモンがいたら・・・」

 

 前にゲンナイさんからデジヴァイスは貰ったけれど、その中にデジモンは入ってくれていなかった。ゲンナイさんが言うにはいずれ私の前に現れてくれるらしいけど、こんな肝心な時に現れてくれないんじゃ意味がない。

「っ!!」

 

 キメラモンの攻撃がいろはさんに迫る。私は彼女を守ろうと前に出て攻撃をガードした。

「さなちゃん!」

 

「大丈夫ですか?・・いろはさん。いろはさん達は・・・私が守ります」

 

 やっと私を頼ってくれる人ができたんだ。そんな人達を・・・失いたくはない。

「さな。さなが誰かを守ろうと盾になるというのなら・・・私があなたを守る盾になります」

 

「えっ?」

 

 この声、まさかアイちゃん?

「ハァっ!」

 

 いきなり現れたのは桃色の騎士みたいなデジモンだった。そのデジモンは盾でキメラモンの攻撃を防いだら帯みたいな刃でキメラモンを吹き飛ばした。

 

ロードナイトモン

・究極体

・聖騎士型

・ウィルス種

 すべてのナイトモンを統べる王であり、ロイヤルナイツの一員でもある聖騎士型デジモン。善悪の基準よりも己の考える正義に忠実であり、そのためには手段を択ばない。必殺技は鎧から伸びる4本の帯刃で敵を斬り刻む『スパイラルマスカレード』だ。

 

 

デジモンで見た目も全然違うけど分かる。目の前にいるデジモンはアイちゃんだ。

「お待たせしました。さな」

 

「アイちゃん!」

 

 私はアイちゃんに抱きつく。

「生きてたんだねアイちゃん!」

 

「『生きていた』とは少し違います。ロードナイトモンのデータをロードさせてもらったことで、私はデジモンとして復活を遂げました。今の私は『アイ』ではなくロードナイトモンです」

 

「でもアイちゃんはアイちゃんだよ」

 

 アイちゃんは自分の事をロードナイトモンだって名乗ったけど、私はこれまで通りアイちゃんと呼ぶことにした。

「お願いアイちゃん!」

 

「スパイラルマスカレード!」

 

 怒涛の帯刃の攻撃でキメラモンに大ダメージを与えたアイちゃん。そこに起き上がったメタルグレイモン達が必殺技を構えた。

「エネルギアブリッツ!」

 

「カイザーネイル!」

 

「シャドーウイング!」

 

「イレイズクロー!」

 

「バーニングスタークラッシャー!」

 

「ギガデストロイヤー!」

 

 そしてトドメと言わんばかりに一斉攻撃が命中してキメラモンを撃破したら、キメラモンになっていたデジモン達はデジクロスが解除されました。

「そんな、キメラモンが・・・」

 

「て、撤退だ」

 

 キメラモンが敗れた事に動揺した黒羽根の皆さんはデジモン達をデジヴァイスへと戻すと、この場を撤退していきました。

「ありがとうアイちゃん。・・・アイちゃん?」

 

 そうアイちゃんにお礼を告げた瞬間、アイちゃんの身体が光って小さくなっちゃった。デジモンの『退化』だよね。

「・・・ドウやらエネルギーを使イ果たして、成長期マデ戻ってしまったようデス」

 

ハグルモン

・成長期

・マシーン型

・ウィルス種

歯車の形をしたマシーン型デジモン。体内にも無数の歯車が組み込まれておえい、常に歯車が回転している。必殺技はコンピューターウィルスを組み込んだ黒い歯車を相手の体内に埋め込んで狂わせる『ダークネスギア』だ。

 

「お疲れアイちゃん」

 

「流石に疲れマシた。少し休みマス」

 

 私のデジヴァイスの中に入っていくアイちゃん。これでこれからもアイちゃんと一緒にいられるんだね。

「アイちゃん。・・良かった」

 

 

 

~いろはside

 

「結局マミさんは見つからなかったね」

 

「そうだね・・・」

 

 巴さんを探しにきたというまどかちゃんとほむらちゃんは結局見つからなかったことにため息をつく。

「だ、大丈夫だよ。あんなに強い巴さんが簡単にやられてるわけないよ」

 

「デッカードラモンの爺さんだって強ぇんだからんな。そう心配すんなって」

 

「そう・・だよね」

 

 ほむらちゃんとデジクロスを解除したシャウトモンにそう諭されたまどかちゃんは一旦落ち着く。

「私の知ってるマミさんは簡単にやられたりする人じゃない。信じよう」

 

「そうだぜまどか!」

 

「・・・あの、環さん。ひとつだけきいてもいいですか?」

 

「何?ほむらちゃん」

 

「神浜市では本当に魔法少女は救われると思いますか?」

 

「正直、わからない。救われることがどういう事かも私にはわからないし、マギウスのしていることが私には正しいとは思えないから」

 

 人に危害を加える魔女やウワサを守るようなマギウスを私は信用できない。

「そう、ですよね」

 

「ほむらちゃんは興味があるの?」

 

「いえ、そうじゃないんです。ちょっと気になっただけで・・」

 

 何か含みのある様子だったけど・・・たぶん大丈夫だよね?

「それじゃそろそろ帰ろっか」

 

「うん!」

 

 デジヴァイスにデジモン達を戻したまどかちゃんとほむらちゃんは時間を確認する。

「もうこんな時間・・!」

 

「そういえば鹿目さん、お家の人に遅くなるっていった?」

 

「あっ!?」

 

 どうやら言ってないみたい。

「じゃあ早く帰らないと!」

 

「う、うん。じゃあね。いろはちゃん!皆さん!」

 

 まどかちゃんとほむらちゃんは急いで家路を辿っていく。するとやちよさんはさなちゃんの方を見た。

「二葉さん、体は大丈夫?」

 

「えっ、は、はい。大丈夫です」

 

 盾があったとはいえ、あのキメラモンの攻撃を防いだんだもん。そりゃ心配もされるよ。

「あの、やちよさん。お願いしたいことがあって・・・」

 

「大丈夫よ。言わなくても分かるから」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「二葉さん。もしもうちに戻るつもりがないのなら、うちに住まない?もちろん部屋も用意するわよ」

 

 良かった。私の考えていたこと。やちよさんも考えていてくれた。

「えっ?あの、いいんですか?」

 

「えぇ。あなたが良ければね」

 

「私もね、やちよさんと一緒に住んでるの。だからこれから一緒に戦うならどうかなって」

 

「は、はい。それじゃあ・・・よ、よろしくお願いします」

 

 こうしてみかづき荘に新しいメンバーが加わった。

 

 

 

~さなside

 

「本当にアイちゃんって最初は口が悪かったんです」

 

「さ、サナ・・・!」

 

 私はいろはさん達にアイちゃんの話題を話す。アイちゃんは少し恥ずかしがっているみたいだから話題を変える。

「色んな遊びをしたけど、アイちゃんには敵わなくて」

 

「私は人工知能でしたカラね」

 

 アイちゃんとチェスとかパズルとか色んな遊びをしたこともいろはさん達に話した。たぶんいろはさんとアイちゃんがいなかったらこんなに早く打ち解ける事は出来なかったと思う。だけどもう1つキッカケがあったとしたら、みんなで買いにいったマグカップかも。

 

いろはさんの薄い桃色のマグカップにアグモンの赤と黄色のラインの入ったマグカップ。

 

やちよさんの水色のマグカップとガブモンの青と金色のラインの入ったマグカップ。

 

鶴乃さんの橙色のマグカップとピヨモンの濃いめのピンクで『鳳凰』と書かれたマグカップ。

 

フェリシアちゃんの牛のマグカップとモノドラモンの紫の『正義』と漢字の書かれたマグカップ。

 

そして私の猫の絵柄のついたマグカップとアイちゃんのチェスの駒がついているマグカップ。みんなはマシーン型のハグルモンになっちゃったアイちゃんが飲食ができるのかを心配してたけど、一応飲めるみたい。

 

 みんなのマグカップを買ってから・・・みんなと一緒にゲームをしたり、料理のお手伝いをしたりで・・・私はここにいていいと思えるようになって変われたのかもしれない。だけどまだ決着をつけないといけない場所がある。

「ごめんなさい。今日、帰りが少し遅くなってもいいですか?」

 

「いいけど・・・何処かにいくの?」

 

「はい。一度家に帰ろうかなと」

 

私はある日、一度自分の家に帰ると皆さんに話しました。もちろんいろはさん達は心配してくれましたが、皆さんが心配してくれるからこそ私はちゃんとこれまでの自分と決別するためにもちゃんと帰る決断をしました。

「一カ月ぶり・・。みんな私がいない事に気づいているかな」

 

『サナ・・・無理はしなくていいのでデスよ』

 

 デジヴァイスの中にいるアイちゃんは私の事を心配してくれたけれど・・・私はそれでも家に入っていく。

「もしかしたら私がいない事、気づいているかな」

 

 そんな淡い期待を胸に抱いていると、私の部屋の前には私の食事が置かれていました。家族にはいまだに私が引きこもっているのだと思われているみたい。

「模試は問題なかったよ。もちろんトップ!」

 

「それなら受験は確実ね!お母さん安心できるわ!」

 

「俺だってチームのセレクションに合格したんだ!今度からクラブチームでサッカーができるんだぜ!」

 

「ほう、凄いじゃないか!二人とも、その調子で励むといい。二葉家の人間として恥ずかしくないようにな」

 

 私の家は・・・ちょっと複雑だった。お母さんとは血の繋がりがあるけれど、お父さんやお兄ちゃん。弟との血の繋がりはない。兄も弟も成績優秀、スポーツ万能で私だけが平均的だった。そのせいで大学医学部のお父さんから叱責されて、唯一血の繋がりのあるお母さんも私を庇ってくれなくお父さんに便乗して叱責した。

 

「二葉家の名を汚す」

 

 そう言って私の家族は私だけを無視するようになって・・・私はキュゥべぇに願って透明人間になったの。

「「「「ハハハハハっ!」」」」

 

 私という存在が無視される家。二葉さなだけがいない家。

「ここじゃない」

 

 私の名前を呼んでくれる場所はここじゃない。

『帰りましょう。サナ』

 

「うん・・・」

 

 みかづき荘へと家路を急ぐ。すると玄関先でいろはさんが出迎えてくれた。

「おかえりなさいさなちゃん」

 

「ようやく帰って来たわね二葉さん。さぁ、夕食にしましょう」

 

「お腹減った~」

 

「今日はなんなやちよ~」

 

 ここではみんなが私の名前を呼んでくれる。ここが私がいていい場所。ここが私の家なんだ。

「ただいま。です!」

 

 だから私は守る。この大切な居場所を。初めて一緒にいたいと思った人達を。

 




神浜デジモンファイルに
「二葉さな&ハグルモン」
が登録されました。

次回「約束は午後3時、記憶ミュージアムにて」


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約束は午後3時。記憶ミュージアムにて

 さやかを出した後ぐらいに没案2弾を公開したいと考えています。


~みふゆside

 

「アイシー。つまりあの子達はあくまで人を探しているだけであってアリナ達と敵対するつもりはなかったってわけ?」

 

「はい」

 

 やっちゃん達とアリナさんとの戦闘後、ワタシはアリナさんにやっちゃん達は人探しをしているだけなのを説明しました。

「ワタシや妹さんを探す中でウワサに可能性を見出し、マギウスの翼と衝突することになってしまったんです。だから今は魔法少女の解放や、そのための活動を知ってワタシ達の事を不審に思っているだけなんです」

 

「ふむ、どうするアリナ。私としては不安の種は早めに摘み取るべきだと思うのだが」

 

 ダークナイトモンは不安要素は早期に摘み取るべきだと意見するも、アリナさんはあまり関心のなさそうな反応をしてました。

「ふ~ん。だからあの子が講義をするって言ってたんだ。行こうダークナイトモン」

 

「いいのかいアリナ?」

 

「あっ、1つだけ」

 

「何でしょうか?」

 

「あのベテランだけはどうにかしておきたいワケ。あいつだけは真実を知ってても敵対しているんだヨネ」

 

 ベテラン・・・やっちゃんのことですか。

「ご心配には及びません。その対策については考えがあります」

 

「どうするワケ?」

 

「やっちゃんを独りにすれば脅威ではないということです」

 

 

 

 

~いろはside

 

 ういやみふゆさんを探す中で出会ったマギウスの翼。あの人たちは魔法少女の解放を目的として、人々を巻き込むウワサや魔女を守っている。

 

 私には魔法少女の解放が何かは分からない。

 

 できれば関わりたくない。だけどそうも言ってられない事が発覚した。

「柊ねむ・・・ですか?聞いたことがあります」

 

 電波の世界の中でさなちゃんは柊ねむの名前を聞いていたみたい。

 

 ういのこと、柊ねむちゃんの事。みふゆさんのこと。すべてがマギウスの翼に繋がっているなら避けて通ることはできないのかもしれない。

「関わりたくはないけど、嫌な因果で結ばれたものだわ」

 

「あいつ等を追う以上あのアリナって奴とも接触することになりそうだな」

 

「だよね~。あのデロッとしたのなんかヤダもんねぇ」

 

 できれば会いたくないと反応するガブモン。アグモンもそれに同意している。

「アリナは本当に気を付けたほうがいいと思います。自分の事となると周りが見えなくなるというか・・・手段を択ばなくなるみたいで」

 

「あのダークナイトモンというデジモン共々警戒しておいたほうが良さそうね」

 

「ですね」

 

 あのダークナイトモンってデジモンからは得体のしれない何かを感じた。相手が究極体だからっていうのもあるけれど、究極体でいえばこっちにももうさなちゃんのロードナイトモンがいる。だけどそう言ったレベル差の問題じゃなく、あれは危険だと・・・そう感じさせる何かがダークナイトモンにはあった。

 

 

 

 そしてその夜。私達は普段のやちよさんにお礼をしたいと相談しあっていた。

「コースター?」

 

「みんなでお揃いのコースターを買って、マグカップのお礼にやちよさんにプレゼントできたらなって・・どうでしょうか?」

 

「凄くいいと思う!」

 

「まさにチームの証だね!」

 

「お年玉貯金しかないんですけど・・・」

 

「大丈夫!わたしとフェリシアが万々歳で稼いだお金があるよ!」

 

「ヴぇぇ!?」

 

「豪華なのを買って、やちよししょーを驚かせよう!」

 

 フェリシアちゃんはバイト代が減らされるんじゃないかって心配していたけど、私達はひとまずそのことは置いておいて明日コースターを買いに行く事を決めた。

 

 

そして翌日の放課後、私達4人は集まって御店へと向かった。

「う~ん。どれがいいかな?」

 

「なんかいっぱいあんな」

 

「これなんてどうでしょうか?」

 

 さなちゃんが選んだコースターにみんなは賛成し、レジへと持っていこうとすると、突如として空間が変化する。デジタルエリアだ。

「だぁ!なんだよこんな時に!!」

 

「まったくだよ!」

 

 フェリシアちゃんと鶴乃ちゃんは買い物の邪魔をされた事に不満を抱いていると、私達の前に巨大な蜥蜴みたいな植物のデジモンが出てきた。

 

ペタルドラモン

・ハイブリッド体

・植物型

・ヴァリアブル

 伝説の十闘士の力を宿した植物の能力を持つデジモン。口を開くとツタに似た舌を伸ばして何でも吞みこんでしまう。必殺技は頭の回りの葉を回転させて発射する『リーフサイクロン』と、地面に這わせた無数の根を一気に地上に飛び出させて一帯の敵を串刺しにする『サウザンドスパイク』だ。

 

「っ!」

 

 私達4人は変身するとともにアグモン達を呼び出す。

「お願いアイちゃん!」

 

 さなちゃんのデジヴァイスが輝き出したら、ハグルモンが進化の光に包まれた。

「ハグルモン進化!クロックモン!」

 

クロックモン

・成熟期

・マシーン型

・データ種

 コンピューターのタイマーを司る時の守護者。コンピューターやネットワークの全ての時間と空間を管理している。非常に危険で強力な力を持っているため、常に中立の立場でいる。必殺技は敵の体を流れている時を破壊する『クロノブレイカー』だ。

 

 歯車の形をしていたハグルモンは、時計みたいな形のデジモンに進化した。

「相手も強そうだから・・もう1つ上に!」

 

 そしてさなちゃんはもう一段階とクロックモンを進化させる。

「クロックモン超進化!ナイトモン!」

 

ナイトモン

・完全体

・戦士型

・データ種

 重量級のクロンデジゾイド製の甲冑に身を包んだ戦士型デジモン。その甲冑を着込んでいても愛用の大剣を軽々と扱えるほどのパワーを持っている。必殺技は狂戦士のごとく大剣を振るい、あらゆるものを一刀両断する『ベルセルクソード』。

 

「おっ!いきなり完全体だなんて本気だね。じゃあわたし達も!」

 

「アグモン進化!グレイモン!」

 

「ピヨモン進化!バードラモン!」

 

「モノドラモン進化!ストライクドラモン!」

 

 私達もアグモン達を進化させるともう1段階進化の光を送る。

「グレイモン!ゼヴォリューション!メタルグレイモン!」

 

「バードラモン超進化!ガルダモン!」

 

「ストライクドラモン超進化!サイバードラモン!」

 

「リーフサイクロン!」

 

 4体の完全体に囲まれたペタルドラモンは驚いたように後退しつつも、ナイトモンに攻撃をしてくる。

「効きません!」

 

 ナイトモンはその攻撃を盾でガードしたらサイバードラモンとガルダモンが同時にキックを叩きこんだ。

「ヴぉぅ!?」

 

「エネルギアブリッツ!」

 

 そのダブルキックに怯んだところにメタルグレイモンはエネルギアブリッツを決めた。その一撃でペタルドラモンは倒れないながらも大ダメージを受けていた。

「サウザンドスパイク!」

 

 ペタルドラモンは最後の抵抗といった感じに更なる必殺技を飛ばしてきたので、私達は飛翔しようとするガルダモンに乗り、その攻撃を避ける。メタルグレイモン達もその攻撃を跳ね除けてたら、ナイトモンが前に出た。

「ベルセルクソード!」

 

 振り下ろされた大剣の一撃を受けたペタルドラモンはようやく倒れるとメタルグレイモン達も成長期に戻ってデジタルエリアから元の世界に戻った。

「楽勝だったな!」

 

「せやな!」

 

「でもさでもさ、ハグルモンがロードナイトモンに進化してたらもっと楽だったと思うんだけど」

 

 ピヨモンはハグルモンがロードナイトモンになっていたらもっと楽だったのではと指摘するとさなちゃんは少し答えにくそうに口を開いた。

「そ、それが・・・あれ以来なれないんです。究極体」

 

 あの時はあくまで『ロードナイトモン』として復活したのであの姿だったらしく、ハグルモンになった今ではそう簡単に究極体に進化することは難しいみたい。

「何かトリガーのようなものがあれば進化できそうなのデスが・・・」

 

「無理なものは仕方ないよ。それにほら、今回は究極体が必要な相手じゃなかったし」

 

「ですがマギウスを相手にする以上、いずれは究極体の力が必要になりマス。それまでに究極進化できるようにならなくテハ」

 

 ハグルモンの言う通り、マギウスのアリナさんには究極体のパートナー、ダークナイトモンがいた。あれともし戦う事になれば私達にも究極体の力が必要になる。まぁ戦わないのが一番なんだけど。

 

 

 

 帰宅後。私達はやちよさんが帰ってきたらコースターをサプライズでプレゼントするという話でまとまった。すると玄関のドアがガチャリと開かれる音が聞こえてきた。

「おかえりなさいやちよさ・・・えっ?」

 

「ただいま、いろはさん」

 

 帰って来たのはやちよさんではなく、みふゆさんだった。

「ワタシも一緒にやっちゃんを待たせてもらってよろしいですか?」

 

「えっ?えぇぇぇぇ!?」

 

 私は思わず驚きの声を上げてしまいながらも、家の中にみふゆさんを招き入れる。

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 き、気まずい。

「あ、あの、お茶を煎れてきますね」

 

「お気を遣わなくても結構ですよ。それにお茶でしたら、ワタシ、自分で煎れてきますから」

 

 そういったみふゆさんは本当に自分でお湯を沸かし始めた。

「7年もここに通い続けてたんですよ。お客さん扱いは悲しいですし、ワタシのほうが勝手は知ってると思いますよ」

 

 みふゆさんはそう言いながらやちよさんが触らないでと言っていた棚を開け始めた。

「その棚は・・・やちよさんが触るなって・・」

 

「それなら大丈夫ですよ。1つは私のですから」

 

 明けちゃ駄目な棚からみふゆさんは1つのマグカップを取り出す。そして私のマグカップも手に取った。

「カワイイマグカップですね。いろはさんのだって一目で分かります」

 

「みんなで買いに行ったんです。みかづき荘のみんなで」

 

「・・・そうなんですね」

 

「あの、それでやちよさんにどういった要件なんですか?」

 

「あら?友達を尋ねてくるのに理由が必要でしょうか?」

 

「ずっと会いにこなかったんですよね。やちよさん、心配してました」

 

「そうですね。ずっと来られませんでした。マギウスの翼のこと、やっちゃんは許さないでしょうから」

 

 それならどうしてみふゆさんはマギウスの翼に居続けるんだろう?

「さて、世田話はこれぐらいにして・・・今日はいろはさんにお話があって参りました」

 

「私にですか?」

 

「単刀直入に言います。いろはさん、ねむのことを知りたければマギウスの翼に入る気はありませんか?」

 

 予想外なことにみふゆさんは私をマギウスの翼に勧誘してきた。

「どうして私をマギウスの翼に勧誘するんですか?」

 

「いろはさんがマギウスの翼に入れば私達と争わずに妹さんを探すことができます」

 

「ういの事!何か知ってるんですか!」

 

「環ういさんの事は私は存じ上げません。もしかしたら私の知らないところでマギウスの翼に入っているのかもしれませんが」

 

「じゃあねむちゃんはどうですか?さなちゃんが電波の結界の中でねむちゃんの名前を聞いたって・・・。ウワサや魔女を見過ごす事なんてできません。ハグルモン・・・アイさんもマギウスの翼には賛同できないと言ってました」

 

 私がそう告げると隠れて話を聞いていた鶴乃ちゃん達がみふゆさんに見つかった。

「あなた達を魔法少女の解放とは何なのかをご説明する講義にご招待します。約束は土曜日の午後3時、記憶ミュージアムにて。そこで本当に私達が間違っているのか判断してもらえますか?」

 

「ただいま。誰かお客さん?」

 

 記憶ミュージアムにて講義をする。そうみふゆさんが告げたタイミングでやちよさんが帰ってきた。

「おかえりなさいやっちゃん」

 

「みふゆ・・!」

 

「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったんですけど・・・まぁいろはさんとはお話できましたし、今日はこれでお暇します」

 

「環さんに何を吹き込んだの?」

 

「後でいろはさんに聞けばいいじゃないですか。仲、いいんでしょ?キッチンに立って驚きました。いろはさん達だけじゃなくデジモン達のマグカップもあるんですから。・・・また仲間を作るんですか?」

 

「仲間じゃないわ。ただの同居人よ」

 

 そう言えば・・・そう・・でしたね。最近は私達、仲間だと思えてたんだけどな。

「詭弁です。あなたは昔のあなたに戻ったんですよ」

 

「そんなこと・・!」

 

「やっちゃんは優しいからあの子達を見捨てられなかったんですよね?だからつい手を差し伸べてしまった。分かってて同じことを繰り返そうとしている」

 

「帰って!!」

 

 みふゆさんに見透かされたやちよさんは少しキレ気味に帰るよう告げると、みふゆさんは何処か悲しそうな表情でみかづき荘を後にしていきました。

「大丈夫やちよ?顔色が悪いよ」

 

「ごめんなさい。少し気分が悪いから先に休ませてもらうわ」

 

 結局この日はやちよさんにコースターを渡すことは出来なくなってしまいました。

 

~やちよside

 

「講義?行きたければ行けばいいわ」

 

 環さんから昨日みふゆに何を吹き込まれたのかの話を聞いた私は彼女達にそう告げる。彼女達がどうしようと私の知るかぎりじゃないわ。

「それじゃ、私は大学に行くから」

 

「えっ?まだ早くないですか?」

 

「今日から少し早く出るから、一緒には通えなくなるわ。あと、夜は撮影で遅くなるから先に食べていていいわ」

 

 そう言い残した私は大学へと向かっていく。

『なぁやちよ。いくら何でも露骨過ぎだぞ』

 

「・・・何がかしら?」

 

『強がり言いやがって』

 

 一年程度の付き合いのガブモンにそんなこと・・言われたくないわよ。

 

 

~いろはside

 

「本当に講義に行くんですか?」

 

 やちよさんが出て行った後、さなちゃんは本当に講義に行くのかと尋ねてきた。

「一晩考えてみたけど、やっぱり行こうと思う。私達は戦うのが目的じゃないし」

 

「ぜってぇ罠だろ。まぁオレらがズガンとやれば逃げられるけどな!」

 

「せやせや。大船に乗ったつもりでいいや」

 

「そうそう!みんなでいれば何とかなる!」

 

 何処かぎこちなく笑う鶴乃ちゃんだったけど、それに気づいてないフェリシアちゃんは鶴乃ちゃんに合わせるように笑う。

「それで、その記憶ミュージアムってのは何処にあるの?」

 

 ピヨモンの質問に私はハッとする。そういえばその場所。知らないや。

 

 

~ももこside

「魔法少女の解放についての講義かぁ。何だか変な話になってるんだな」

 

 どうやらいろはちゃんは記憶ミュージアムの場所を調べるため、調整屋とアタシのいるこの場所に話を聞きにきたみたいだ。

「記憶ミュージアムってところに行くように言われたんですけど、場所がわからなくて」

 

「記憶ミュージアム?栄区で流れているうわさね。廃墟になった博物館で昔の記憶を展示しているっていう・・。そういう話だったわ」

 

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるこのウワサ》

 

《記憶ミュージアムのそのウワサ》

 

《変えたい記憶。忘れたい記憶》

 

《それとも思い出したい記憶?》

 

《記憶の事でお悩みならば、記憶ミュージアムにいらっしゃい》

 

《チリンとベルを鳴らしてみれば、そこはあらゆる記憶を展示して研究を進める博物館》

 

《記憶を通して解明された色んな真実が見られちゃう》

 

《保管されてる記憶を見ると、その記憶に自分も影響されちゃうって栄区の人達の間ではモッパラのウワサ》

 

《アリャコリャナンダー》

 

 栄区・・か。

みたまさんは地図を広げてくれるとアタシはその地図をマジマジと眺める。

「栄区で廃墟っていうと・・・ここしかないな!」

 

「ありがとうございます!」

 

 アタシは廃墟を指差すといろはちゃんはお礼を言い残してここを後にしていった。

「・・・レナちゃんとかなでちゃんには話してないの?」

 

「話せるわけないだろ。それに今、かえでがそれどころじゃないんだ」

 

 もしかしたらかえでは真実に気づいたのかもしれない。だけどアタシは話を仕切れずにいた。

「レナちゃんにだけでもももこから話しておいたほうがいいと思うわよ」

 

 分かってるよ。そんな事・・。

 

 

~やちよside

 

「さなちゃん、カギ持った?」

 

「はい」

 

 土曜日。環さん達は講義の時間に記憶ミュージアムへと向かうため、そろそろ出かける準備をしていた。

「それじゃあ行ってきます」

 

「・・・・」

 

 環さん達は行ってしまったけど、私は何も言わなかった。いいえ、言えなかった。

「本当にいいのかやちよ」

 

「・・・別に。あの子達がどうしようと私には関係ないわよ」

 

 あの子達は同居人。仲間なんかじゃない。私は心の中で自分にそう言い聞かせ続けた。

 

 

 

~いろはside

 

「モッキュ!」

 

 記憶ミュージアムに到着すると小さいキュゥべぇが私の肩に飛び乗って来た。

「契約の時にあったキュゥべぇ・・・ですよね?でもなんか小さいような・・」

 

「いろはといると良く遭うなぁチビキュゥべぇ」

 

「ウワサのところにいつもいるんだよね」

 

「この子に触った時なんだ。ういの事、思い出したの」

 

 私達は小さいキュゥべぇの話をしながらも記憶ミュージアムの中へと入っていく。

「そいつっていったいなんなんだろうな?」

 

「キュゥちゃんだね」

 

「私は小さいキュゥべぇって呼んでたけど・・・」

 

「長くね?名前決めようぜ」

 

『じゃあワイから!キュゥ乃介!』

 

「八兵衛!」

 

「キュウちゃん」

 

『救急車!』

 

『ぷぃキュぁ』

 

 私達は小さいキュゥべぇの名前の案を言い合いながらも記憶ミュージアムの奥へと進んでいくと白く広い部屋に行きついた。

「約束は午後3時。ちゃんと来るなんてびっくり」

 

 その部屋の椅子に座っていたのは私の良く知る人物。里見灯花ちゃんだった。

 

 

 

~レナside

 

「こんな雨の日に呼び出すだなんてよっぽどの用事なんでしょうね」

 

 レナはももこに呼び出されて待ち合わせ場所の橋に到着したんだけど、今日のももこは何処か様子がおかしかった。

「一年前、やちよさん達と何があったのかを話すよ」

 

「なんで今?そもそもレナには関係ないでしょ」

 

「関係なくないさ。関係ない魔法少女なんて1人もいないんだよ」

 

「その話、私にも聞かせてもらえないかな」

 

 何処か泣きそうなももこはそう言いながら話をしようとすると・・・そこにずっとレナたちを避けていて会えなかったかえでがやってきた。かえでも何処か涙目で今にも倒れそうなくらい疲れ切った顔をしていた。

「来てくれたか・・」

 

 どうやらももこが呼んだみたい。

「じゃあ話すよ。一年前に何があったのか・・」

 

 




次回「穢れを溜める魔法少女と呪いを振りまく魔女」


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穢れを溜める魔法少女と呪いを振りまく魔女

~やちよside

 

「やちよ、行かなくていいのかよ?」

 

 ガブモンにそう言われたけれど、私の足は動かない。

「仲間だろ?」

 

「仲間じゃないわ・・・っ!」

 

 仲間じゃない。環さん達は決して仲間なんかじゃない。

「・・・このままじゃまた仲間を失うぞ」

 

「だから仲間じゃないって言ってるでしょ!!」

 

 また仲間を失う。そう告げてくるガブモンに対して私は怒りの言葉を告げる。

「・・・怖いんだろ。仲間を失うのが」

 

「・・・黙りなさい」

 

「黙ってほしけりゃいつものようにデジヴァイスに戻せばいいだろ。できないのは何でだ?」

 

 ガブモンの方も引くつもりがないみたい。だったらと私は震える手でデジヴァイスを取り出してガブモンを戻そうとしたけれど、手が震えているせいでデジヴァイスを落としてしまう。

「本当は自分がどうしたいのか分かってるんだろ」

 

「それができれば苦労しないわよ」

 

 魔法少女が誰かに騙されるのを見過ごせないだけ。そう自分に言い聞かせながら私はデジヴァイスを拾い上げ、フェリシアのGPSを頼りに記憶ミュージアムへとむかった。

 

 

~いろはside

 

 

「初めまして環いろは。わたくしは里見灯花。マギウスの1人だよ」

 

「里見灯花って確か・・・」

 

「ねむって奴と一緒に探してた妹の親友だっけ?」

 

「うん。そうなんだけど・・・」

 

 よりにもよってマギウスだったなんて。

「本当にわたくしのことを探していたんだね。ねむのことを探してるってのは耳にしていたんだけど。ちょっと驚いちゃったよ」

 

 灯花ちゃんはまさか自分もだなんてと驚いた反応をしていた。

「灯花ちゃん、本当にういのことを覚えてないの?」

 

「覚えてないもなにも、最初から知らないよ~。さっき言ったよね。初めましてって」

 

「っ!」

 

 やっぱり灯花ちゃんも・・・ういのことを覚えてないんだ。

「というわけで、わたくしは環いろはの覚えている里見灯花じゃなくて、マギウスの里見灯花として接してね」

 

 まさか講義を受けに来てこんな事実を知るだなんて。

「は~い。それじゃあ講義を始めよっか。今回の内容はね、魔法少女の真実。マギウスの翼にいる人なら誰もが知ってる嘘でも冗談でもないあるがままの真実だよ。これからそれを1つの物語として話すからよーく聞いてね」

 

 そう前置きをした灯花ちゃんはその『物語』を語り始める。

「講義1、ソウルジェムについて。あるところに3人の魔法少女がいました。AさんとBさんとCさんはとても仲が良く、いつも3人で魔女と戦っていました。そんなある日、苦戦して魔女を倒せなかった3人は日を改めて同じ魔女に挑戦しました。ところがその結果は大ピンチ。3人は魔女の圧倒的な力を前に負けてしまいそうになりました。その時、Cさんは立ち上がると1人で魔女に突撃していきました。そのおかげで魔女は致命傷を負い、Aさんによって魔女は倒されたのですがCさんは死んでしまいました。体は無傷で怪我もないのに。ここで問題です。それはどうしてでしょうか?」

 

 も、問題形式なんだ。

「毒でも喰らったんじゃね?」

 

「ブブー」

 

「息ができなくなった?」

 

「それも違うよ~」

 

 フェリシアちゃんとさなちゃんが立て続けに不正解となると、鶴乃ちゃんは重たい口を開く。

「ソウルジェム?」

 

「正解!さすが最強さんだね~!」

 

「えっ?ソウルジェム?」

 

 いったいどうしてソウルジェムが?

「体に怪我の無いCさんの傍には砕けたソウルジェムが落ちてありました。その時AさんとBさんは気づいたのです。ソウルジェムは文字通り自分達の命そのものだと」

 

 命・・?ソウルジェムが?

「このソウルジェムが私の命?」

 

「サナ・・」

 

 さなちゃんもその事実には動揺を隠せないみたい。

「実感はないよね~」

 

「ない・・・です」

 

「じゃあそのソウルジェムをそこい置いてみて」

 

「はい。・・・あぐっ!?」

 

 さなちゃんは言われた通りにソウルジェムをテーブルの上に置いてみると、さなちゃんは痛がった反応をした。

「ごめんね。でも分かったでしょ?こうやって魔力でちょっと衝撃を与えるだけでこんなに痛いんだからソウルジェムが砕かれたりでもしたら死んじゃうよね」

 

「ソウルジェムが命、それなら魔力を使うのって・・・」

 

「うん。文字通り自分の命を削るっていうこと。そういうの感じたことない?」

 

 ある。初めてドッペルを出した時、凍りつくように冷たい感覚に捕らわれた。きっとあれが・・・命が尽きそうになる感覚だったんだと思う。

「それはね。バッテリー切れの証拠みたいなものなんだよ。ソウルジェムは体内の命を出して見えるように固形化したものなの。まさに内部バッテリーを抜いて、外部バッテリーにしたようなものなの」

 

「そのたとえだとグリーフシードは充電器ですか?」

 

「本来はクリーナーだけど、それでもいいかも。バッテリーも酸化と還元を利用して何度も使えるものね。バッテリーは放電すれば物質が変化して使えなくなるけれど、充電すれば元の物質に戻る。ソウルジェムも使えば魔力が穢れに変わっていって、グリーフシードを使えば元に戻る。ソウルジェムってバッテリーだね。面白いよね」

 

「面白くないですよ・・だってそれ、もう私は人じゃないってこと・・・ですよね?」

 

 さなちゃんは今にも泣きそうな表情になる。正直私もこれ以上聞きたくないとすら思えている。

「人なら死んでる戦いを魔女としてきたんだよね。その時点で人じゃないよ。それに自分が人だと思えば人なんだと思うよ。今の医療って様々な学問に乗っ取った技術を使ってわたくし達の体をいじくってるよね?人自身が人を改造してるのに、それは受け入れちゃうの?」

 

「それは・・」

 

「考えすぎだよ~」

 

 確かに考えすぎと言われればそれまでかもしれない。だけどそれは中々受け入れがたい事実だと思う。

「講義2、魔女について。AさんとBさんはソウルジェムが自分の魂だと受け入れた後、他の仲間とチームを組んでいました。その頃にはデジタルモンスター。通称デジモンがパートナーとなるのが主流になりつつあり、AさんとBさん、そしてその仲間達にもそれぞれパートナーデジモンがいました。この時はDさん、Eさん、Fさんが増えていて、5人と5体というチームになっていました」

 

 5人5体のチーム。なんだか私達みたい。

「そんなある日、他のテリトリーから魔女が流れて来ました。Dさんは都合が悪くて合計4人と4体。この日も協力して魔女を倒そうとしましたが、他のところから流れ着いた魔女は強く、彼女達でも太刀打ちできないほどでした。Aさんがピンチに陥った時、Fさんは身を挺して彼女を守ると倒れてしまいました。戦いは魔女が逃げて終わりましたが、Fさんはボロボロ。グリーフシードもありません。ソウルジェムは黒く染まりきり、Fさんの身体は動きませんでした」

 

「っ!ねぇこの話って、Dさんって・・・!」

 

「知りたかったら後で教えてあげるから、今は講義に集中して」

 

 話に出てくる人物たちに心当たりのある鶴乃ちゃんはつい声を荒げてしまうも今は講義に集中してと言われてしまいました。

「それではここで第2問です。Fさんは何に変わったでしょう?」

 

 変わった?どういうこと?

「変わった?んなの分かるわけないじゃん」

 

 フェリシアちゃんは匙を投げると灯花ちゃんは「もっと頭を回転させて」と叱りつけた。

「ヒントをあげる。ソウルジェムに溜まるのは穢れ。魔女が振りまくのは呪い。穢れを溜める魔法少女と呪いを振りまく魔法少女。どう?なにか繋がらないかな~?」

 

「あっ・・・!」

 

「そんな・・」

 

「やっぱり・・・」

 

 フェリシアちゃん以外の私達は気づいてしまう。

「みんなは気づいたみたいだね。傭兵さんも少しは察するところがあるんじゃない?」

 

「・・・・」

 

 どうやらフェリシアちゃんも気づいちゃったみたい。

「倒れてしまったFさんの隣には黒く染まりきったソウルジェムがありました。そしてFさんが苦しみ始めると、ソウルジェムはグリーフシードへと変化して魔女を生み出したのです」

 

「魔法少女が魔女に・・・なんだそれ?ワケわかんねーよ。だってそれなら・・・ソウルジェムが魂なら・・オレ達も魔女じゃんか!」

 

「残念だけどこれが正解なんだよ。最初に言ったでしょ。嘘でも冗談でもない真実だって」

 

「いや信じねぇ!オレは絶対に!!」

 

 フェリシアちゃんは頑なに信じないというも、かくいう私も信じられない気持ちでいっぱいだった。

「じゃあ次の講義に移るね。講義3、ドッペルについて。魔女化を目撃してからというもの、半年経ってもBさんはずっとショックを受けたままでした。考え方を変えようにもできないまま、ただ魔法少女となった自分を呪い続けていました。それから更に半年が過ぎ、神浜に魔女が集まるようになった頃には、その負の感情は次第にソウルジェムを蝕み、Bさんのソウルジェムは真っ黒に染まってしまいました。Bさんは思いました。ついに自分もFさんと同じく魔女になってしまうのかと。ですがそうはなりませんでした。この答えはもう簡単だよね?環いろは」

 

「ドッペル・・・」

 

「そういうこと。うん、正解」

 

 灯花ちゃんはドッペルの話の続きを語り出す。

「Bさんは魔女にはならずドッペルを出していました。この時には既に神浜では魔法少女を解放しようとする動きが始まっていたのです。そして1人の少女が現れるとBさんにこう言ったのです。『一緒に魔法少女を解放しよう』と」

 

 それがマギウス。灯花ちゃんってことだね。

「これが魔法少女を取り巻く真実と解放の意味」

 

「じゃあこのドッペル化はマギウスの翼が引き起こしていることなの?」

 

「うん。そうだよ。どう?わたくしってすごいでしょ?マギウスの翼って凄いでしょ?みんなもマギウスの翼に入りたくなったでしょ?」

 

「いろは・・・」

 

 アグモンは不安に震える私の手をギュっと握りしめてくれる。

「どれだけ説明されても分かりたくなんてない。ソウルジェムの事も、魔女化のことも」

 

「強情だな~。それじゃここからはこの話の途中から出てきたデジモンについての講義ね。講義する先生の交代だよ~」

 

 そう言った灯花ちゃんはデジヴァイスから胸に鏡を抱えた1体のデジモンを呼び出しました。

 

エンシェントワイズモン

・究極体

・古代突然変異型

・ウィルス種

鋼の属性を持つ古代デジタルワールドを救った伝説の十闘士デジモン。遥か古代に存在した初めての究極体であり、デジタルワールド一の知恵者である。叡智を全て記憶するアカシックレコード的存在で判らないことはないと言われている。必殺技は叡智を持って異界への座標を割り出し、未来永劫に渡って別宇宙に敵を閉じ込める『ラプラスの魔』だ。

 

 エンシェントワイズモン。究極体の・・・灯花ちゃんのパートナーデジモン。

「ここから吾輩が講義をさせてもらおう。まずは君達は吾輩たちデジモンをどれほど理解しているのかな?」

 

「えと・・・デジタルワールドに住んでいたけど、住む場所がなくなってこっちの世界に住み着き始めたデジタルな生命体。ですよね?」

 

 さなちゃんは自分の知る知識でそれに答える。私も同じ答えだ。

「概ね正解だ。では何故吾輩たちデジモンがこの世界にやってくるようになったのか、そもそもデジタルワールドとは何なのかを講義させてもらおう」

 

 そう告げたエンシェントワイズモンはその鏡に1つの地球によく似た星を映し出しました。

「これはかつてのデジタルワールドだ。どうだい?」

 

「地球に似てますね」

 

「そうだろう。デジタルワールド。それはこの地球と限りなく近い次元に存在する、いわば表と裏の関係性をした世界なのだよ」

 

 表と裏の関係?

「人間達が『ネットワーク』というものを作り上げたとき、デジタルワールドは構築された。デジタルワールドは地球の時間とは大幅に時の流れが違うため、地球ではたかが数十年でもデジタルワールドでは幾億年もの月日が進み、一度は自然豊かながらも地球の電子ネットワークを遥かに上回る世界となった。地球が幾度となく滅びを迎えそうになったことがあるように、デジタルワールドも幾度となく滅びを迎えそうになり、そのたびにそれを乗り越えてきた。かくいう吾輩もその滅びから世界を救わんとした立役者の1人だ」

 

 デジタルワールドと私達の世界じゃ時間の流れが違うんだ・・。

「おっと話が逸れたね。それでは何故デジタルワールドが崩壊したのかの話をしよう」

 

 エンシェントワイズモンがそう告げたら、鏡にはロードナイトモンを含めた13人のデジモンと巨大な2つの首を持った竜との戦いが映し出された。

「彼らはデジタルワールドを守護する円卓の騎士『ロイヤルナイツ』。そして相対するデジモンこそ『~~~』だ」

 

「えっ?何て・・?」

 

「おや済まない。人間には聞き取れない単語だったようだね。終末の千年魔竜と呼ぶことにしよう。その千年魔竜とロイヤルナイツとの戦いは激闘を繰り広げ、その戦いは数百年にも及んだ。そしてロイヤルナイツは何とか千年魔竜を異次元に封印する形で勝利を収めたが、結果的にデジタルワールドは崩壊し、生き残ったデジモン達はこの世界へと流れ着いたのだ」

 

「そうだったんだ」

 

 アグモン達からもそんな事、聞かされてなかったな。

「歴史に関する講義は以上だ。さて次に何故我々デジモンが人間とパートナー契約を行わなくてはならないのかの講義をしよう」

 

 今度は鏡にデジヴァイスを映し出す。

「おっと、まず大前提として、デジタルワールドが崩壊しているため、この世界にいるデジモンは自分の力だけでは進化できないという点を覚えておいてくれ」

 

 前提を前置きしたエンシェントワイズモンは続きを語る。

「デジヴァイス。それは人間の感情エネルギーをデジモンのデジコードへと変換し、デジモンに進化の力をもたらすデバイスだ。それは人間なら誰でも良いというわけではなく、デジコアに宿るコードが・・・人間でいうところの魂の波長が合う相手でなくてはならないのだ。吾輩のように既に究極体に達しているデジモンも人間とパートナー契約をするのには利点がある。たとえばジェネラルである灯花の場合デジクロスによる強化などが・・・おっと、また話が逸れそうになってしまったな。すまない」

 

 話が逸れそうになって1人語りしてしまいそうになるのはクセなのかな?

「君達の持っているデジヴァイスはいわば模造品。正規のデジヴァイスを持つ選ばれし子供はこの世に3人しかいない。そのうちの1人が灯花だ」

 

「ふふっ、凄いでしょ?」

 

「私達のデジヴァイスは模造品だったんだ」

 

「あまり驚かないんだね」

 

「別に本物と模造品の違いなんて私達にはわからないし」

 

「そう!『分からない』それが凄いんだ。君達の持つデジヴァイスは実に精巧な作りをしている。よほどの者が作ったに違いない」

 

「エンシェントワイズモン」

 

 エンシェントワイズモンはその人物を賞賛していると灯花ちゃんにまた話が逸れていると注意された。

「吾輩としては一度そのデジヴァイスを作った可能性のあるゲンナイという人物とあってみたいのだが、灯花がマギウスという役職がある以上それが難しいのがとても残念だよ」

 

「なによ~。人のせいみたいに」

 

 エンシェントワイズモンは自分もゲンナイさんに会ってみたいと反応していると、ずっと黙っていたみふゆさんが口を開きました。

「灯花。そろそろ良いのでは?」

 

「そうだね。・・・どうせみんな。わたくし達の話を信じられないって思ってるでしょ?」

 

 エンシェントワイズモンが言ってたデジモン関連の事は本当かもしれないけれど、未だに私達は灯花ちゃんの言っていたことが信じ切れずにいた。

「だからこの場所を選んだの。ここのウワサは人の記憶を見られる場所だからね」

 

「つまり講義で聞いた物語を本当に見られるということです。灯花の話が信じられないというのなら次の体験学習のステップに進みましょう」

 

「それって・・・私達を・・洗脳する気、ですよね。記憶ミュージアムでは他の人の記憶に影響されるって」

 

「話して駄目なら洗脳しようだなんて!今聞いた話で十分ですから、もう帰ります!」

 

 私は振り返って帰ろうとするも、エンシェントワイズモンは私達の道を塞ぐ。

「もう帰れないよ。今はみんな揃ってウワサの中だからね」

 

 灯花ちゃんの手にはベルが握られていた。ベルと言えばここのウワサの・・・!そう思った瞬間、灯花ちゃんはベルをチリンと鳴らしてしまった。

「これはワタシの記憶。講義で語られた物語の記憶です」

 

 

 

~やちよside

 

「はぁ・・はぁ・・」

 

 ガルルモンに乗って記憶ミュージアムへと到着した私は環さん達を探していると1人の少女とそのパートナーデジモンと出会った。

「あら?あなたベテランさん?」

 

「あなたは・・」

 

「初めまして七海やちよ。わたくしは里見灯花。マギウスの1人だよ」

 

 里見灯花!?環さんが探していた・・・!いえ、その話は後よ。

「環さん達は何処にいったの?マギウスの1人というのなら、ここで講義をしていたんでしょう?」

 

「言え!言わないと・・・」

 

 ガルルモンはフォックスファイヤーを撃つ構えを取るも、デジモンの方はおろか、里見灯花さんも動じない。

「講義ならもう終わったよ~。今は記憶ミュージアムで体験学習中」

 

「邪魔をされるわけにはいかないよ。・・・いや、いっか」

 

「どういうつもりだ?」

 

「体験学習の邪魔をしたいなら行ってもいいよってこと。一応行っておくけどこの言葉には裏があるからね。それでも行く?」

 

「えぇ」

 

 裏だろうがなんだろうが構わないわ。その裏すら潰してくるから。

 




神浜デジモンファイルに
「里見灯花&エンシェントワイズモン」
が登録されました。

次回「チームは解散よ」


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チームは解散よ

~いろはside

 

 私は見せられる。

 

Aさん・・・やちよさん。

Bさん・・・みふゆさん。

Cさん・・・雪野かなえさん

Dさん・・・鶴乃ちゃん。

Eさん・・・ももこさん。

Fさん・・・安名メルちゃん。

 

彼女達の記憶を。

 

 

 

「あそこまで成長しているなんて」

 

「どうする?引くか?」

 

 かなえさんはやちよさんに引くかどうかの判断を委ねるも、やちよさんは囚われている人達を見て首を横に振りました。

「この人数を一度に運べないわ。魔女を倒すしかない」

 

 やちよさんがそう告げるとかなえさんは先陣を切って使い魔達を倒し始めました。しかし使い魔達によって身動きを封じられたやちよさんとみふゆさんに魔女の攻撃が迫ります。

「っ!!」

 

 かなえさんは咄嗟にその攻撃から2人を守りましたが・・・。

「かなえ!」

 

「こうなってしまっては仕方がないね。かなえは諦めるしかないよ」

 

「嘘でしょ。かなえ・・」

 

これが最初の出来事。かなえさんは最初のやちよさん達のチームの1人で、魔女の攻撃に単身突撃してソウルジェムが砕けて命を落としてしまいました。

 

そして場面は移り変わり次の記憶を見せられます。

『ごめんね、団体のお客さんの予約なんて滅多になくて』

 

「いいわよ。お仕事頑張ってね」

 

この日は鶴乃ちゃんが万々歳のお手伝いでお休みで4人と4体のみで魔女を狩ることにしたみたいです。

「今日は大東区からやってきた魔女退治ですね」

 

「えぇ。工匠区、水名区と移動してきて、私達で止めておかないと」

 

「ちょうどいい。グリーフシードも心もとなくなってきたし」

 

 この時のチームには既にデジモンがパートナーとなっていて、やちよさんとガブモン。みふゆさんとファルコモン。ももこさんとアグニモン。そして私の知らない人物であるメルさんと魔法使いのようなデジモンがメンバーにいました。

 

ウィザーモン

・成熟期

・魔人型

・データ種

 別次元のデジタルワールドからやってきた上級の魔人型デジモン。故郷のデジタルワールドで炎と大地の魔術をマスターし、修行のためデジタルワールドに現れた。必殺技は強烈な雷撃を繰り出す『サンダークラウド』だ。

 

 やちよさん達は魔女の結界の中へと突入して早速魔女と戦い始めました。しかし幾つもの場所を移動してきただけあってその魔女はとても強く、やちよさん達は苦戦を強いられていました。

「流石にここまで流れてきただけはあるわね」

 

「やっちゃん」

 

「私とガルルモンが囮になるわ。みふゆはメルを連れて脱出。ももことアグニモンは2人の退路を作って」

 

 ガルルモンに跨ったやちよさんは魔女を引き付けているうちに他の皆さんを脱出させようと試みますが、やちよさんとガルルモンは使い魔に身動きを封じられて魔女の攻撃を喰らいそうになってしまいます。

「七海先輩!」

 

 メルちゃんはありったけの魔力を振り絞ってやちよさんを庇い、何とか全員揃って魔女の結界を脱出しましたが・・・メルちゃんのソウルジェムにはかなりの穢れが溜まっていました。

「グリーフシードは?」

 

「いえ・・・残念ながら」

 

 みふゆさんはグリーフシードはないと首を横に振ります。

「さっきの魔女さえ取り逃がしていなければ」

 

「メル、もう少しだけ頑張って。今グリーフシードを取ってくるわ」

 

「取ってくるって・・・」

 

「魔女を探すしかないでしょ!」

 

 やちよさんはメルちゃんを助けるため再び魔女を狩りに向かおうとしますが、メルちゃんは立ち上がろうとするやちよさんの手を掴みました。

「行かないで。分かるです・・。もう、ボクは・・」

 

「馬鹿なこと言わないで!きゃぁっ!?」

 

 次の瞬間でした。メルちゃんのソウルジェムが砕け、そこから魔女が誕生してしまったのです。

「め、メル・・・?」

 

 やちよさんはその魔女に動揺して動けなくなっていると、魔女はやちよさん達目掛けて攻撃を仕掛けてきました。

「やちよ殿!」

 

「ウィ、ウィザーモン!?」

 

 ウィザーモンは咄嗟にその身を盾にしてやちよさんを庇うと、やちよさんは我に返りました。

「大丈夫ウィザーモン?」

 

「この程度、どうってこと御座いませぬ」

 

 やちよさん達みんなは気づいていた。そのダメージはかなりのものですぐにでもデジヴァイスで休ませないとウィザーモンが危ないということに。

「ここは自分が引き受けますゆえ、皆様は撤退を」

 

「でも・・・!」

 

「あれはメル殿の穢れが生み出した魔女。某が決着をつけます故」

 

 ウィザーモンは魔法によってデジタルエリアを作り出して魔女をその中に閉じ込め、やちよさん達はウィザーモン1人にその場を任せる事を悔いながらも撤退した。

「どういうことだよ!」

 

 みかづき荘に帰還後、ももこさんはキュゥべぇを問いただす。

「どうもこうも、君達が見た通りだよ」

 

「どうしてメルが魔女になるんだよ?」

 

「魔女って・・・魔法少女っていったいなんなんだよ!?」

 

「この国では成長途中の女性の事を少女っていうのだろう?だったらやがて魔女になる少女達のことを魔法少女と呼ぶべきだよね」

 

 そん・・な・・。

「あなた、本気で言ってるの?」

 

「もしそれが本当ならさ、アタシらが今まで倒してたのは・・・」

 

「ももこ!」

 

「だってやちよさん!」

 

 取り乱すももこさんにキュゥべぇは続ける。

「そんなに嘆くことはないよ。すべてはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ。長い目でみればこれは君達人類にとっても得になる取引だって分かってくれるはずだよ」

 

 

 再び場面が変わりそうになると、『今』のみふゆさんが現れました。

「かなえさんの時と同じ、仲間が死ぬ度、残酷な事実が付きつけられる。生き残れば生き残るほどどうしてこんなに惨めなんですか?」

 

『今』のみふゆさんは過去のみふゆさんを見ながら私達を諭すようにそう言いました。

「ソウルジェムに気を付けてさえいれば、今までと変わらない」

 

「ももこさんは忘れられるんですか?」

 

「もう半年も経つんだ。アタシ達だけこんな目にあって、そのうえ負い目を感じて生きていかなきゃならないなんて、そんなの辛すぎるよ」

 

 場面が変わってももこさんとみふゆさん、2人だけの会話の場面となる。

「鶴乃さんには?」

 

「鶴乃にはこんな想いをさせたくない」

 

 そう言ってももこさんは立ち去っていくと、みふゆさんはその場に1人残りました。

「ワタシはこの想いを一生背負って生きていくのでしょうか?誰にも打ち明けられないまま・・・」

 

 過去のみふゆさんのソウルジェムが穢れはじめたかと思えば、過去のみふゆさんからはドッペルが出現しました。

「これ・・・は?」

 

 やがてドッペルが消えるとそこに1人の少女が現れました。

「わたくしは里見灯花。今のはドッペルって言ってね、魔女化を回避するためのものだよ。ねぇベテランのお姉さん。わたくしと一緒に魔法少女を解放しようよ」

 

 そこで過去を振り返る『ウワサ』は終わった。

「ねぇ環いろは。わたくし達と一緒に魔法少女を解放しようよ」

 

「灯花ちゃん・・・」

 

 まだウワサの中。私達の前に現れた灯花ちゃんが声をかけてくる。

「こっちにいた方がねむのことや妹のこと、マギウスの翼にいるかどうか調べることができると思うよ?」

 

「私は・・・」

 

 

~鶴乃side

 

 

「・・・講義で話してたのはやっぱりわたし達のことだったんだね」

 

 真実を知らされたわたしは後悔と悲しみに心が押しつぶされそうになる。

「そうです。これがDさん・・・鶴乃さんのみが知り得なかった真実。みんな優しいからあなたに黙っていたんですよ」

 

「あの時わたしとピヨモンがいればメルとウィザーモンは死ななかったかもしれないのに・・・わたし、ずっとそう思って後悔してた。だけどまさかメルが魔女になってただなんて」

 

「知らなかったことなので仕方がないですよ」

 

「わたしがあの時いれば・・・こんなことには・・・」

 

 わたしとピヨモンは自分達があの場にいればと何度も悔いる。

「だからこれからはそうならない世界を作ろうよ。わたくし達と一緒にさ」

 

 そこに灯花ちゃんが手を差し伸べてきた。

 

 

~フェリシアside

 

「やっぱりオレらが殺してたの、魔法少女だった」

 

「フェリシア・・」

 

 オレとモノドラモンは今まで倒してきた魔女が魔法少女だったことをしってどうしていいのかがわからなくなる。いったいオレは・・・これからどうすればいいんだよ?

「オレも魔女になって、同じことしちゃう」

 

「フェリシアさん。少し気持ちを落ち着かせて」

 

「落ち着いてなんかいられるかよ!!こんなんじゃオレ、魔女も倒せねぇよ!!」

 

 オレが魔女を倒してきた数だけ、オレに罪がある。オレは・・・オレは・・。

「じゃあ重ねた罪の数だけそれをかき消すぐらいのことをマギウスの翼でやろうよ」

 

「オレは・・・オレは・・」

 

「っ!あかんフェリシア!!」

 

 灯花の言葉にオレは・・・。

 

 

~さなside

 

「魔女が元々どんな魔法少女かって考えるだけでも・・・胸がギュってなります。でも何処か仕方ないって思ってます。それに私が魔女になっても真実を知ったみんななら私を消してくれると思う。元は未練のない現実だったからそれは怖くないです」

 

「魔女についてはそうだよね。でもあなたの願いについてはどうかな?」

 

 私の願い?

「本当の願い。魔法少女の呪縛から解放される。もしかしたらそれは願いからの解放に繋がるのかもしれないよ」

 

「私、透明人間から戻れるってことですか?」

 

「その可能性はあるよね。そう考えると魅力的でしょ?マギウスの翼も」

 

 私・・。私は・・。

 

 

~いろはside

 

 

 ういを見つけたとしても魔法少女である私達は長く生きられない。

「それなら私も・・・マギウスの翼に・・」

 

「いろは!」

 

「っ!アグ・・モン」

 

 アグモン声で私は我に帰る。そうだよね。アグモン。

「大丈夫だよアグモン。私はマギウスの翼には行かない」

 

「これだけの真実を見て・・・いろはさん、本気ですか?」

 

「真実を知ったのにどうして拒否するの?」

 

「人を傷つける魔女に自分がなるって知っていて、そんな魔法少女の未来を悲しんでいるのに、魔女を利用していることが私には納得できない」

 

 私は私の思い出した記憶を信じる。

「それに真実を知ったやちよさんがマギウスの翼に入ることを拒否している。だからごめんなさい。私はそっちにはいけないよ」

 

 だから私はマギウスを・・マギウスの翼を拒絶した。

 

 

~やちよside

 

「やっちゃん。もう一度聞くわ。マギウスの翼にこない?ワタシの記憶を見て1年前を思い出したでしょう?」

 

「えぇしっかりと。気分が悪くなるぐらいにね。だけど私は行かないわ」

 

 過去の振り返りを終えた私はみふゆと対話をする。

「どうして?マギウスの翼は目的こそ共有してるけど仲間なんて甘い感情では繋がっていません。誰もが自分のためになるから属している利害だけの関係。やっちゃんの懸念だって解決できると思いませんか?」

 

「そうじゃないのよみふゆ。そのマギウスが気に食わないのよ」

 

「わたくしのこと?」

 

「そう、あなたのことよ。里見灯花。ただで記憶ミュージアムに通すなんて何かと思えば最初から私に同じものを見せるのが目的だなんてね」

 

「そんなの理由で入ってくれないの~?」

 

「いえ、さっきのことは小さなことに過ぎないわ。あなた、ここ半年ぐらい見かけない奴に似てるのよ」

 

「見かけないやつ~?」

 

「キュゥべぇよ。人の弱みに付け込んで、魔法少女を生むアレと似て、あなたも人の弱みに付け込んで組織を大きくしようとしている。肝心な解放の仕組みについては話さないあたりそっくりね」

 

「キュゥべぇに・・。ショックだよ。それじゃただの信用問題だよ」

 

「そう。信用問題よ」

 

 そう里見灯花に告げた私はまだ眠っている環さんのところへと向かう。

「やち・・よさん。み、みんなは・・・!」

 

 目が覚めた環さんは辺りを見渡して他のみんなを探す。だけどそこに他の3人はいなかった。

「環さん、あなたも真実を見たのよね」

 

「・・・はい。かなえさんのことも、メルちゃんの事も見ました。ありがとうございます。助けに来てくれて」

 

「勘違いしないで。助けに来たんじゃないわ。私はみふゆの記憶を見て、自分を見つめ直しにきたのよ」

 

 そして戻ることができた。ガブモンと出会った頃の1年前の私に。

「環さん。チームは解散よ」

 

 

 

~いろはside

 

「環さん。チームは解散よ」

 

 やちよさんの言葉に私は動揺し、固まってしまう。解散ってどういう事?

「やちよ。冗談で言ってるなら許さないぞ」

 

 流石のガルルモンもこれには怒ってるみたい。

「冗談でもなんでもないわ。言葉通りの意味よ。納得できないのならパートナー契約を解約しても構わないわ」

 

「どうして急にそんなこと言うんですか?理由を教えてください」

 

「あなたには関係のないことよ」

 

「関係あります!私とやちよさん、ガブモンの問題です!」

 

「私はチームを続行する気はない。それだけよ」

 

「納得できません!」

 

 まるで出会った頃のやちよさんと話してるみたいだ。

「何も理由を言ってくれないなら解散なんて受け入れません。やちよさんが私を無視するつもりならそれでもいいです!でも私はやちよさんの傍を離れませんから!」

 

「迷惑よ」

 

「やちよさんだってただの我儘にしか思えません!」

 

「・・・私と一緒にいると・・・あなたが死ぬのよ。私が魔法少女となるのに引き換えに願ったのは生き残ること。私は私が生き残りたいという身勝手な願いで魔法少女になったの。私が生き残る代わりに周りの人達が死んでいくのよ」

 

 なんなのそれ?そんなわけないのに。

「もう誰にも死んで欲しくないのよ!」

 

 そうやちよさんが叫んだ途端、やちよさんは魔女に食べられてしまった。だけどまだやちよさんの魔力反応はある。やちよさんは生きている。

「モッキュ!モッキュ!」

 

 そうだね。まずはやちよさんを助けないと。

「行くよアグモン!ガルルモン!」

 

「うん!アグモン進化!グレイモン!」

 

「あぁ!あの馬鹿の目を覚まさせてやる!」

 

 

 

 

~やちよside

 

 私はどんな場面でも生き残らなくちゃならなかった。仲間を守るためにはリーダーの私が強くならなきゃいけなかったから。

 

 それをキュゥべぇに願ったの。

 

 生き残りたかった。でもそれは仲間を守るためよ。仲間を蹴落としてまで生き残ることなんて望んでいなかった。

 

 だからモデルは1人でやることにしたのに・・・本当に願っていたものは諦めたのに。私はそんなこと望んでいないのに。

「メガフレイム!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

 グレイモンとガルルモン。そして矢を放つ音が外から聞こえてくる。

「これで!」

 

 環さんの矢が貫通し、魔女が倒され・・・私は解放される。

「やちよさん!良かった!」

 

 私の無事を確認した環さんは私に抱きつくと、私の手を引く。

「私とアグモンはやちよさん達のおかげで強くなったんです。やちよさんが自分のせいで周りが死んでしまうと思ってるのなら、私がそうじゃない前例になります。やちよさんの願いが捻じ曲げられてしまったのなら、私はそれを跳ね除けてみせる。グレイモンと一緒に」

 

「でも・・」

 

「私、簡単に死んだりしません。約束します。やちよさん」

 

 その言葉に私の心が晴れていくのを感じた。

「ありがとう。いろは」

 

「初めて名前で呼んでくれましたね」

 

「いいかグレイモン。これがデレな」

 

「これぐらいは流石にボクでも分かるよ」

 

 グレイモンとガルルモンは久々のやり取りをしていると壁が倒壊し始める。

「一旦外に出るわよ」

 

「でもまだ鶴乃ちゃん達が・・・」

 

「あなたが無事だったんだもの。鶴乃達も脱出してるのかもしれないわ」

 

「・・・どうして悲しみと向き合おうとしないの?そこに悲しみを乗り越える道があるというのに!!」

 

 そう言って私達が脱出を試みると・・・私達の前にいきなり現れた巴さんがマスケット銃を向けてきた。

「っ!巴さん!少しはこちらの話も聞きなさい!」

 

 巴さんの攻撃を受け止めた私は巴さんの説得を試みるも、やはり耳を貸そうとしない。

「聞かなくてもいいよ。わたくし達の説得に耳を貸そうともしなかったんだから」

 

 里見灯花・・。

「マギウスの導きのままに。デッカードラモン!ハイビジョンモニタモン!デジクロス!」

 

「クロスアップ!デッカードラモン!」

 

 デッカードラモンとテレビのようなデジモンを呼び出した巴さんはその2体をデジクロスをさせると更にデジヴァイスを輝かせる。

「デッカードラモン!究極進化!」

 

 巴さんはジェネラルでありながら完全体であるデッカードラモンをさらにもう1段階進化させようとしてきた

「イージスドラモン!」

 

イージスドラモン

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 プレシオモンにシードラモン系のデータが融合して生まれたサイボーグ型デジモン。黄金のクロンデジゾイドでできた光輝く装甲はあらゆる邪悪を祓うと言われている。最高レベルの硬度を持ちながら単体で一個大隊級の殲滅戦を可能とするほどの火力を持つ。必殺技は天を覆うほどの大量のミサイルを一斉射撃し、最大出力で敵に突貫する「シャインブレイカー」だ。

 

 なんていう馬鹿みたいな火力のデジモンに進化させてるのよ。

「イージスドラモン!」

 

 イージスドラモンは水流を噴射して攻撃をしてきたので、私達はその攻撃を避けようとする。だけど先ほどまで過去を見せられていたせいでソウルジェムに穢れが溜まりつつあり、体が思うように動かず、攻撃を受けてしまいそうになってしまった。

「タァッ!」

 

 そんなピンチに現れたのが人魚のようなデジモンだった。

 

マーメイモン

・完全体

・水棲獣人型

・データ種

伝説に登場する人魚の姿をしたデジモン。デジタルワールドのでも寒冷地域の海を拠点としている。デジモンでは珍しく歌が得意で非常にキレイな音色で歌い、聞く者を魅了する。必殺技は黄金の錨を乱れ回して敵を粉砕する『ノーザンクロスボンバー』だ。

 

 そして水流を切り裂いたデジモンとともに青い髪に剣を持った1人の魔法少女が現れた。

「らしくないなぁ。弱い者いじめなんて」

 

「美樹さん」

 

「探したんですよマミさん。こんな廃墟みたいな場所にいるだなんて思わなくて」

 

 美樹と呼ばれたその魔法少女は鹿目さん達と同じく巴さんを探していた子みたいね。

「美樹さん。美樹さんなのね。私を責めに来たのよね?あなた達には償っても償いきれないことを私は・・・」

 

「マミさん?何言ってるんです?」

 

 真実を知らない様子の美樹さんはわけのわからないような反応をする。

「私の事はどれほど責めても構わないわ。けどね、もう大丈夫なの。最悪の事態は回避できるの。方法を見つけたのよ!」

 

「最悪の事態?」

 

「ねぇ、鹿目さんは?近くに来てるの?・・・そうよ。鹿目さんも神浜市に呼ばなくちゃ。神浜市にくれば魔法少女は救われる。・・・掴んだ希望の先には何もなかった。私たち騙されていたの!このままじゃみんな絶望を振りまく魔女になってしまう!」

 

 巴さんがそう叫んだ途端、その服装が白く派手な衣装へと変化した。

「みんなが救われるの。その権利がみんなにある。私が絶対に何とかしてみせる!」

 

 そう宣言した巴さんはイージスドラモンと共に大量の砲撃を見境なく撃ちまくってきた。

「ノーザンクロスボンバー!」

 

「くっ!」

 

 美樹さんとマーメイモンは私達を庇うように前へと出ると、飛んでくる砲撃の嵐を斬り落としていく。

「はぁっ!」

 

「グレイモン!ゼヴォリューション!メタルグレイモン!」

 

「ガルルモン超進化!ワーガルルモン!」

 

 グレイモンとガルルモンも完全体へと進化して巴さんとイージスドラモンの砲撃を撃ち落とそうとするも、あまりの圧倒的弾幕を前に対処しきれなくなる。

「このぉぉぉっ!!」

 

 美樹さんは片腕を吹き飛ばされながらも、治癒魔法で即座にその腕を回復させてまで弾幕を凌いだけれど・・・相手は究極体とやたら異常に強い魔法少女。このままじゃ勝ち目はない。

「いったいどうすれば・・・」

 

 今最優先すべきは彼女達を倒すのではなく、この場から生きて逃げ切ること。

「覚悟を決めるしかなさそうね」

 

 だからこそ私はドッペルを使う覚悟を決める。すると同じ結論へと至ったのかいろはも真剣な表情で頷いた。

「行きましょうやちよさん!」

 

 私といろはは同時にドッペルを発動し、メタルグレイモンとワーガルルモンと共に巴さんとイージスドラモンへと攻め込む。

「きゃぁっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 しかしその圧倒的火力と弾幕の前に私達は近づくことすらも許されず、メタルグレイモンはアグモンへと戻ってしまう。

「アグモン!」

 

 いろははトドメを刺されそうになるアグモンを身を挺して庇い、イージスドラモンの弾幕でドッペルすらも破られてしまう。

「私は・・・守る。アグモンも・・・やちよさんも・・・みんなも・・・!」

 

 こんな絶望的な状況にも関わらず、諦めないいろははボロボロになりながらも立ち上がるとデジヴァイスがかつてない輝きを見せた。

「アグモン!ワープ進化!!」

 

 アグモンはいろはの迸る雷鳴のような『勇気』に振れ、グレイモン、スカルグレイモンをワープするように進化して赤い銃火器のような重装甲をしたデジモンへと進化した。




神浜デジモンファイルに
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次回「ただ覚悟が決まっただけです」


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ただ覚悟が決まっただけです

来週は都合により休みます。そして次回から更新を日曜の午前9時に変更することにします。


~やちよside

 

 

「アグモン!ワープ進化!」

 

 いろはの勇気に振れて、アグモンは更なる進化を・・・究極体へと進化する。

「ブリッツグレイモン!」

 

ブリッツグレイモン

・究極体

・サイボーグ型

・ウィルス種

グレイモン系の究極体であり電流火器が備わったデジモン。どっしりとした格闘戦に雷撃を加え、強固なおのであっても両腕の『プラズマステーク』から雷撃を流し込む。背中の『サンダーバーニア』を前方に展開して雷を撃ち、背面へ放出すれば自身の推進力増量にも活用できる。

 

「サンダーバーニア!」

 

 背中のバーニアから電撃を放ったブリッツグレイモンはまるで雷のごとく素早いスピードでイージスドラモンとの距離を詰めると、電撃を纏わせたガトリングでイージスドラモンを殴りつける。

「速い!」

 

私でも目で追うのがやっとだった。

「プラズマステーク!」

 

 さらにブリッツグレイモンは電撃を纏わせた両腕のガトリングで何度もイージスドラモンを殴りつけて反撃の隙を与えない。

「凄い。あのイージスドラモンを押している」

 

これがいろはとアグモンの・・・究極体の力。

「てりゃぁぁぁっ!」

 

 いろはも負けじと巴さんの銃弾を次々と撃ち落していく。ついこの間までのいろはが嘘みたいに頼もしく感じられるわね。

「凄いッスね~。あのマミさんとデッカードラモンの進化したデジモンのコンビと互角以上に戦ってる。何なんですかあの子達?」

 

 傷を回復させて立ち上がった美樹さんは私にいろはとブリッツグレイモンの事を尋ねてくる。

「私の大切な仲間よ」

 

 

~いろはside

 

 

「っ!」

 

 不思議だ。自分でもよくわからないけど、あの巴さんの銃撃に対応できてる。

「ブリッツグレイモンと一緒に戦ってるからかな」

 

 勇気が溢れてくる。怖い気持ちは消えないけれど・・・戦う勇気は湧き上がる。

「だけど・・・」

 

 ブリッツグレイモンは確かにイージスドラモンにダメージを与えている。だけどイージスドラモンも物凄い硬い装甲で身を守っていてブリッツグレイモンの攻撃が決定打には繋がっていなかった。

 

 遠距離重量級のイージスドラモンに対して誰から見てもブリッツグレイモンは優勢を取れていると思う。だけど今のままじゃ勝てない。そもそもさっきからブリッツグレイモンは必殺技を連発してるんだよ。

「ブリッツグレイモン!反撃の隙を与えないで!」

 

「あぁ!!」

 

 だけどブリッツグレイモンのおかげでイージスドラモンの砲撃の手が止まっているんだから、それを休めちゃいけない。じり貧かもしれないけれどイージスドラモンが倒れるまでこれを続けるしかない。

「・・・それが狙いね」

 

「っ!」

 

 私の狙いに気づいてしまった巴さんは巨大な大砲をブリッツグレイモンへと向けてしまいました。

「せっかく私の方に注意を惹きつけていたのに・・」

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 巴さんの砲撃を避けたブリッツグレイモンだったけど、そのせいでイージスドラモンと距離ができちゃった。

「しまった!?」

 

「シャインブレイカー!」

 

 距離を取ってしまった途端、イージスドラモンはブリッツグレイモンと私に向けて大量のミサイルを飛ばしてきました。

「ウオォォォォぉ!!サンダーバーーニアァァ!!」

 

 ブリッツグレイモンは背中のバーニアを前方へと向けて、全力のサンダーバーニアでそのミサイルに応戦しましたが、その全ては撃ち落としきれず十数発ものミサイルが直撃して、その装甲にヒビが入ってしまいました。

「はぁ・・・はぁ・・大丈夫いろは?」

 

「私は大丈夫。でもブリッツグレイモンが・・・」

 

「大丈夫。ボクはまだ戦える」

 

 ブリッツグレイモンはまだ諦めていない。だったら私も諦めるわけにはいかない。そう決意を固めた瞬間でした。

「あれ?」

 

 デジヴァイスがXの光を放ちました。これは・・・X抗体への進化の光?

「ブリッツグレイモン!」

 

 私はその進化の光を傷ついたブリッツグレイモンへと送ると、ブリッツグレイモンの傷がみるみる内に回復していきました。

「アルティメットゼヴォリューション!」

 

 そしてブリッツグレイモンは進化の光に包まれると、更に別の姿へと進化を遂げた。

「ウォーグレイモン!」

 

ウォーグレイモン(X抗体)

・究極体

・竜人型

・ワクチン種

超金属クロンデジゾイドの鎧を纏った最強の竜戦士でありグレイモン系の究極形態であるデジモン。両腕に装備している『ドラモンキラー』はドラモン系に絶大な威力を発揮するが、同時に自らを危険にさらしてしまう諸刃の剣である。X抗体によるデジコアの影響で『ドラモンキラー』にブレイブシールド級の硬度をもたせ、攻防一体の完璧なまでの装備を持つにいたった。必殺技の『ガイアフォース』を一瞬にして敵の懐に放つゼロ距離攻撃『ガイアフォースZERO』は回避不能だ。

 

「ありえない!1体のデジモンが二通りの究極体に進化するだなんて!」

 

「ふむ、実に興味深い進化だ。モードチェンジならまだしも完全に系統が違うデジモン。これは十闘士のスライドエボリューションに近い現象と見てもいいだろう」

 

 灯花ちゃんとエンシェントワイズモンも驚きを隠せずにいると、ウォーグレイモンはイージスドラモンに巨大なエネルギー弾を投げつける。

「ガイアフォース!!」

 

 その一撃を受けたイージスドラモンは大きく怯んだら、ウォーグレイモンはまた進化の光に包まれた。

「究極進化!ブリッツグレイモン!」

 

 またブリッツグレイモンになったかと思ったら、ブリッツグレイモンはサンダーバーニアで一気にイージスドラモンとの距離を詰めた。瞬間的な加速ならブリッツグレイモンの方が上だからだね。

「アルティメットゼヴォリューション!」

 

サンダーバーニアの推進力で一気に距離を詰めたブリッツグレイモンはまたウォーグレイモンに進化して必殺の爪を構える。

「決めて!ウォーグレイモン!」

 

「アフターバースト!」

 

 ウォーグレイモンは『ドラモン系』に必殺の武器になるドラモンキラーを振るって、強烈な一撃を決め込むとイージスドラモンはデッカードラモンとテレビみたいなデジモンに分離した。

「まさか・・・イージスドラモンが負けるだなんて」

 

 イージスドラモンの敗北に動揺を隠せなかった巴さんは背中ががら空きになったので、私はクロスボウをその背へと向けた。

「これで決着です」

 

「・・・そうね。この場は潔く負けを認めましょう」

 

 負けを認めた巴さんは銃を下ろしてデジヴァイスにデッカードラモン達を戻すと、跳びあがって灯花ちゃん達のところにいってしまいました。

「だけどこの場は引かせてもらうわよ」

 

「はい」

 

「・・・追撃しないのね」

 

「そんなことしませんし、もうそんな力も残っていません」

 

 追撃する意思はない事を告げると、巴さんは灯花ちゃんとみふゆさんと共にこの場から立ち去っていった。

「疲れた~」

 

 ウォーグレイモンは光に包まれると薄いピンク色の丸っこいデジモンになっちゃった。

 

コロモン

・幼年期Ⅱ

・レッサー型

・属性無し

表面を覆っていた産毛が抜け、体も一回り大きくなった小型デジモン。活発に動き回ることはできるが戦う力はない。口から酸性の泡を出して敵を威嚇する。

 

「コロモン?」

 

「2種類の究極体を使い分けるように何度も進化したんですもの。エネルギーを大幅に消耗して成長期よりも前の姿になっても仕方ないわ」

 

 表情が和らいでいるやちよさんは体力がつきて倒れそうになった私を支えてくれました。

「どうですかやちよさん。やちよさんの想像、ありえないって証明できましたよね」

 

「そうね。十分証明できたわ」

 

「ひとまずここを脱出しよう。あんた環いろはでしょ?んでそっちが七海やちよさん。2人のことはまどか達から聞いてるよ」

 

 やっぱりこの子はまどかちゃん達の友達だったみたい。

 

ひとまず私達は激しい戦闘のせいで今にも倒壊しそうな記憶ミュージアムを脱出して近くの公園で一休みしました。

「改めまして。美樹さやかって言います」

 

「ありがとう美樹さん、助けてくれて」

 

「そんな、助けられてないよ。あたしとマーメイモンはほとんどやられてただけだし。てかほとんど戦ってたのあんたじゃん」

 

「でも美樹さんが来てくれなかったら私達、本当に危なかったです」

 

「そりゃよかった。それでさ、これってどういう状況なの?」

 

 少し迷ったけど私達は記憶ミュージアムで知ったすべての出来事を、そして巴さんがマギウスの翼の一員になったことを話した。

「魔女化・・・。ごめん、ぜんぜん処理しきれない」

 

『姉御・・』

 

「大丈夫だよマーメイモン。・・いや、やっぱ大丈夫じゃないや」

 

 流石に美樹さんもこの魔法少女の真実を知ってしまっては堪えたみたい。

「それってマジなの?あたし達が魔女になるって?」

 

「はい。私もやちよさんも、この目で見た事なんです」

 

「嘘でしょ。・・・それでマミさんもマギウスの翼に入ったってわけ。ダメ、信じらんない」

 

「誰もこの目で見ないと信じられない。・・・いえ、信じたくないと思うわ」

 

「・・・ちょっと帰って頭冷やしてくる」

 

 耐え難い事実を聞かされた美樹さんは一度帰ろうと私達に背を向けました。

「あまり根を積めないで。もしも何か聞きたいことがあれば、いつでも来て頂戴。まだあなたに話せることは色々あると思うから」

 

「はい・・」

 

「あの、ごめんなさい。助けてもらったのに」

 

「いや、いいよ。聞いたのはあたしだし、いずれ知る事なんでしょ?それなら知るのが今だったってだけだよ」

 

 そう言った美樹さんは最初の元気はなく、帰路を辿っていきました。

「美樹さん」

 

「ちょっと話すのを早まったかもしれないわね」

 

 やちよさんは今話してしまった事を後悔していた。一応まどかちゃんにも連絡を入れておくと、私達もみかづき荘へと帰ることにしました。

「私達もこれからのことをしっかりと考えないと・・・」

 

「時間はかかるけど、少し歩いて帰らない?」

 

 みかづき荘までは遠い道のりだけど、私もやちよさんも静かに歩いて帰っていく。やさしく笑いかけたやちよさんの気持ちが何となく分かったから。

 

 言葉も交わさず歩みを進めると少しずつ自分の胸が締め付けられるのが分かる。結局私が誘いに乗ったからだ。相手を侮っていたって気持ちが、悔しさが溢れてくる。

 

 それはやちよさんも、コロモンもガブモンも同じかもしれない。

 

 後悔に満たされていると、自分のしたいことは簡単に見つかる。みんなの洗脳を解いて助けたい。ういを見つけたい。みふゆさんを連れ戻したい。

「いろは、落ち込んじゃままじゃだめだよ」

 

「分かってる。分かってるよコロモン」

 

 みんなを助けたい。この気持ちに嘘はない。だから落ち込んでなんていられない。自分のせいでこうなった事は反省して、もう一度立ち上がらないと何も進まない。

「一緒に進もう。コロモン」

 

「うん。いろは」

 

 私の腕に抱かれていたコロモンが進化の光に包まれると、アグモンへと進化する。大丈夫。今の私なら進むことができる。アグモンと一緒ならそんな勇気が湧いてくる。

「歩いて帰ってくると結構時間がかかっちゃうものね」

 

 記憶ミュージアムから歩いてみかづき荘へと帰って来た。

「やちよさん。ありがとうございます。考える時間をくれて」

 

「別に私だって今回のことはちゃんと反省して自分でも区切りをつけたいと思ったから」

 

「私も、気持ちに区切りをつけました」

 

「そう。どういう気持ちになったの?」

 

「変わりません。ただ自分の中で覚悟が決まっただけです」

 

「その覚悟、聞かせてもらっていい?新しいリーダーの言葉が聞きたいわ」

 

 えっ?新しいリーダー?私が・・?

「・・・マギウスの翼からみんなを助け出します」

 

 私は新しいリーダーであることを受け入れて、みんなを助け出すことを宣言する。

「分かったわ。リーダーがそういうのなら・・・。絶対助けましょう。いろは」

 

「はい!」

 

 

 

 

~ももこside

 

「・・・これがアタシの知ってる全部だ」

 

 アタシはレナとかえでにアタシの過去を・・・アタシの知ってる魔法少女の真実をすべて話した。2人共信じたくない事実を突き付けられたはずなのに、思っていたよりは取り乱さずに話を聞いてくれていた。

「ごめんな2人とも。ずっと言えなくて」

 

 アタシは2人に今まで告げることが出来なかったことを謝ると、今までアタシのデジヴァイスの中に入っていたフローラモンが飛び出てくる。

「大丈夫かえで?」

 

「大丈夫・・・じゃないよぉ。やっぱり私、魔女になるんだ」

 

 まるで自分が魔女になることを知っていた感じのかえでは泣き出しちゃうとフローラモンはかえでの手をギュッと握った。

「・・・それで、どうしてももこはやちよさんのチームから抜けたの?」

 

「ある日やちよさんが『チームは解散よ』って言ったんだ。いくら聞いても説明してくれなかった。だけど2人に話して覚悟を決めたよ。これからやちよさんにその理由を聞きに行こうと思う」

 

「・・・そう。ならちゃんと聞いてきなさいよね」

 

「あぁ・・。分かってる」

 

2人と別れたアタシはもう1つの問題を解決するべくみかづき荘へと足を運んだ。

「やっぱりまだ合鍵の位置、代わってない」

 

 合鍵を使って家の中へと入ってやちよさん達の帰りを待っていると・・・かなり遅い時間にやちよさんといろはちゃんが帰ってきた。

「フェリシアちゃん!さなちゃん!」

 

「ご、ごめん。ももこでした」

 

 いろはちゃんはアタシを見るなり残念そうに崩れてしまった。確かにアタシはよくバッドタイミングに来ちゃうところがあるけど、そういう反応されるとちょっとヘコむよ?

「ここに来たってことは・・・ももこ、あなたは2人に話したのね」

 

「あぁ。話したよ。だからやちよさん」

 

「・・・話すわよ。納得してもらえるかどうかわからないけれど」

 

 やちよさんは話してくれた。どうしてアタシ達のチームを解散させたのか、その理由を。それは自分がリーダーでいるとアタシ達を犠牲にしてしまうかもしれないという不安からだったみたいだ。

「・・・だから私はね、自分自身を疑うことはやめてもう一度自分にチャンスを与えることにしたの」

 

 ずっと変わってしまったんだと思っていた。

「ごめんねももこ。あなたにはどれだけ心配をかけたか・・。たとえ私の願いのせいじゃなかったとしても、あなたを苦しめたのは私の罪。何を言われても、何をされても受け入れるわ」

 

「その言葉に二言はないねやちよさん」

 

「もちろんよ」

 

「じゃあちょっと苦しいかもしれないけどさ、勘弁してくれよ」

 

 そう言ったアタシはやちよさんを抱きしめた。

「くっ、ももこ。そんなに強く抱きしめないで」

 

「よかった。本当はアタシらが何かしちゃったんじゃないかってずっと不安だったんだ。そうじゃなかったら本当に変わったのかもしれないって・・・そう思ってたんだ」

 

 だからやちよさんの口から聞けてよかった。本当に何も変わってなくてよかった。

「ももこ・・・本当にごめんね」

 

「これでようやく仲直りだな」

 

「あぁ」

 

 アグニモンとガブモンも仲直りすると、やちよさんといろはちゃんは今日起こったという出来事を話してくれた。

「ちょっと待って。さっきからちょくちょく洗脳って言ってるけどさ、本当にあるのか?」

 

「冗談でいうわけないでしょ?」

 

「みんなそれでマギウスの翼に行ってしまいました」

 

 どうやら話によればマギウスの翼って連中に鶴乃達が洗脳されて、向こう側に行っちゃったらしい。

「マジか・・」

 

やちよさんから話を聞いて、泣いていた自分が馬鹿みたいに思えてきた。

「ごめん」

 

「ももこが謝ることじゃないわ」

 

「それでどうするつもりなんだよ?」

 

「私とやちよさんは今後のことを考えて、それからみんなを助けにいくつもりです」

 

 チームの新しいリーダーになったといういろはちゃんは曖昧ながらも今後の方針を話す。

「それにグリーフシードも集めておかないといけないわ。今回こそなんとかなったけど、今後もマギウスやマギウスの翼と戦うとなるとそれなりのグリーフシードが必要不可欠になるわ」

 

やりあうとなっちゃ消耗も避けられないってわけだね。

「そっか。わかった。グリーフシードのことはアタシに任せて」

 

「えっ?」

 

「協力するって言ってるのさ」

 

「でもあなた・・・」

 

「今はチームの一員じゃないっていうのはナシだよ。確かにアタシは今となっちゃ、レナとかなでのリーダーだけどさ、大切な人を助けるのに理由なんざ必要ないだろ?」

 

「ももこさん・・」

 

「ももこ・・」

 

「もちろん俺も協力するぜ」

 

 アグニモンも協力すると言ってくれる。きっとレナとかなでも手伝うって言ってくれるはずだ。かえではまだ動けないかもしれないけれど・・・きっと何とかなる。アタシはそう信じてる。

「ありがとうございますももこさん」

 

「正直私達だけじゃどうしようかと思っていたけど、少し安心したわ」

 

「誤解が解けた以上は全力を尽くさせてもらうよ。なっ、先輩」

 

「やめて。ももこにそう言われるとなんだかムズ痒いわ」

 

 アタシは冗談交じりにやちよさんを先輩と呼ぶと、やちよさんは照れくさそうな顔をしていた。

 

 

~いろはside

 

「あっ、まどかちゃんからだ」

 

 照れくさそうな顔をするやちよさんを見て少し気持ちが和らいでいたら、まどかちゃんからメールが届いた。

『夜遅くにごめんね。さやかちゃんから話を聞いて居ても立っても居られなかったの。また神浜にいくと思うから、その時は連絡するね』

 

「やちよさん。私達は2人だけじゃない。アグモンとガブモンもいます。ももこさん達がいます。まどかちゃん達がいます」

 

「そうね。まだお先真っ暗ってわけじゃないわ」

 

 まだ希望は十分にある。だからこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。

 




神浜デジモンファイルに
「美樹さやか&マーメイモン」
が登録されました。

次回「あなたとは理解し合えないんだね」


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あなたとは理解し合えないんだね

~まどかside

 

 あの日さやかちゃんがやちよさんから聞かされたという話。

 

 ソウルジェムが私達魔法少女の本体で、ソウルジェムが濁りきると私達は魔女になってしまうという話。

 

 私達魔法少女の行きつく先には悲しい絶望しか待ってないのかな。

「魔女化から魔法少女を解放しようとしているのがマギウスの翼」

 

 だけど私はマギウスの翼のことを信用できない。だって誰かを犠牲にして助かろうだなんて絶対に間違ってるもん。

「ねぇ、シャウトモンはどう思う?」

 

『聞くまでもねぇだろ。奴らのやり方は気に入らねぇ。だからぶっ潰す』

 

 シャウトモンもマギウスの翼のやり方は間違ってると思ってる。その上でシャウトモンはマギウスの翼を潰したいと考えているみたい。

「・・・・・」

 

 魔女になってしまうのは怖い。私が誰かを傷つける存在になるのはもっと怖い。

「それでも私は希望を捨てたくない」

 

 だれかを犠牲にしなくても魔女にはならない希望を見つけたい。

「・・・キュゥべぇ、いるんでしょ?話があるの」

 

「やあまどか。久しぶりだね」

 

 私が呼び出すとキュゥべぇは素直に出て来てくれた。

「魔法少女が魔女にならずにすむ方法はある?」

 

「魔法少女はいずれ魔女になる。それは避けられない運命でありボクが知る範囲ではそれを回避する手段はない」

 

「てめぇ。まどか達を騙してたってことか?」

 

 デジヴァイスから出てきたシャウトモンはキュゥべぇを掴みあげる。

「騙してたなんてとんでもない。願いを叶えてあげることを条件にボクは彼女達に魔法少女になってほしいときちんとお願いしてまどか達はそれを承諾した。それだけのことだろう?」

 

「それだけのことだぁ?ふざけんなよてめぇ!!」

 

 シャウトモンはキュゥべぇを掴む手を強める。

「魔法少女が魔女になるだなんて一言も言ってなかったよね?」

 

「聞かれなかったからね。知らなくても不都合はないし、多くの魔法少女は最後までそのことに気づかない」

 

「どうしてそんな言い方ができるの?みんな希望を信じて魔法少女になったのに」

 

「君達に叶えたい願いがあって、ボクがそれを叶えた。その願いの対価を支払うことを承諾したのは君達じゃないか。これは公平な取引だよ」

 

「何が公平だ!まずはてめぇから!!」

 

「待ってシャウトモン!」

 

 ロックダマシーでキュゥべぇを倒そうとしているシャウトモンの手を私は止める。

「・・・もういいよ。きっとどんなに言葉を重ねてもキュゥべぇ、あなたとは理解し合えないんだね」

 

「それじゃあもっと建設的な話をしようか」

 

「ざけんな。てめぇと話すことなんてもうねぇよ」

 

 キュゥべぇから手を離したシャウトモン。そしたらキュゥべぇはまだ話をしようとしてくる。

「魔女化を避けたい君としては神浜でマギウス達が行おうとしていることが気になるんじゃないのかい?」

 

「何か知ってるの?」

 

「残念ながら君が知っている以上のことは知らないよ。ただボクならそこから推測することはできる。もっとも今ある情報だけだとそれも難しいけれど、今後も情報を共有してくれるならそれも可能になるはずだ。どうだい?君達にとっても悪くない取引じゃないかな?場合によっては魔女化しない代案を提示できるかもしれない。何もボクは魔法少女を魔女にしたいわけじゃないんだ。結果的にそうなっているだけでね」

 

 どれだけ言葉を取り繕っても、もうキュゥべぇのことは信じることはできない。

「キュゥべぇが自分で調べたらいいじゃない」

 

「今現在ボクは神浜市に入ることができないんだ」

 

「どうして?」

 

「理由はボクにもわからない」

 

 だから私達に情報を提供してほしいってことなんだね。

「情報共有するって約束はできない」

 

「わかった。考えてくれると嬉しいよ」

 

 そう返事をしたキュゥべぇは何処かに去っていく。

「キュゥべぇと話せば何かわかると思ったんだけど・・」

 

「あいつも知らない様子だったな」

 

 やっぱり手がかりになるのはマギウスの翼。彼女達の方が魔女化しない手段の手がかりを知っている。

「・・・どうすんだまどか?」

 

「正直どうしたらいいのかわからないことだらけだよ。こんな時、マミさんがいてくれたら・・」

 

 どうしてこんな事になっちゃったんだろう。

 

 そう考えていたらいろはちゃんからメッセージが届いた。

『美樹さんから話は聞いてると思うけど大丈夫?私達で力になれることがあったらいつでも連絡してね』

 

 いろはちゃん・・・。

「くよくよしてる暇なんてないね。シャウトモン」

 

「応さ!悩んでる暇があったらまずは行動してみようぜ!」

 

 そうだね。シャウトモンの言う通りだよ。

「ッ!」

 

 まずはいろはちゃんにお礼の返事をしようとした矢先、この見滝原で魔女の気配を感じ取った。そして次の瞬間、辺りは魔女の結界に包まれた。

「この魔女って・・・神浜で戦ったことのある魔女・・?」

 

 目の前に現れたのは以前マミさんと一緒に神浜市にいった時に戦ったことのある魔女だった。

「神浜の魔女がどうしてここに?」

 

「どうやら考えてる暇はくれねぇみてぇだぞ」

 

 魔女は私とシャウトモンに向けて攻撃を仕掛けてくる。

「っ!」

 

 私は魔法少女に変身して戦おうとしたけれど・・・ある事を思い出す。もし魔力を使い果たしてソウルジェムを真っ黒に濁らせちゃったら私も魔女になっちゃうんじゃないかって。そんな不安が頭をよぎる。

「大丈夫。これまでだって戦ってこれたんだもの」

 

 そう自分に言い聞かせて戦おうとしたけれど、いつものように体が動かない。体がすくんでしまう。

「まどか!」

 

 恐怖と不安で動けなくなっている私は魔女の攻撃を受けてしまいそうになると、シャウトモンがそれを防いでくれた。

「まどか!気持ちは分かるが、今は戦え!!」

 

「う、うん」

 

 分かってる。分かってるつもりだけどうまく足が動いてくれない。

「ラウディロッカー!」

 

「っ!!」

 

 シャウトモンはラウディロッカーで魔女を叩き飛ばしてくれたので、私は矢を放って魔女を撃破した。

「ご、ごめんねシャウトモン」

 

「まどかが謝ることじゃねぇよ。まどかが戦えないぶんは俺らが戦えばいいけどよぉ・・・っ!!」

 

 シャウトモンが話をしていた矢先、次の魔女が私達の前に現れた。

「えっ?2体目!」

 

「世話しねぇなぁオイ!」

 

 シャウトモンは2体目の魔女に先手を打とうとした矢先、私の後ろから魔女に向けて砲撃が飛んできた。

「大丈夫鹿目さん?」

 

 ほむらちゃんのメタルグレイモンの攻撃だ。

「う、うん。ありがとうほむらちゃん、メタルグレイモン」

 

「アタシらもいるよ」

 

 駆けつけてくれたさやかちゃんは魔女に連続斬りを浴びせたら、メタルグレイモンのダメージもあって魔女が倒された。

「それじゃあ2人は魔女の気配を感じて駆けつけてくれたんだ」

 

「そういうこと。ほむらとは途中で会ったんだけどね」

 

「助かったよ!神浜の魔女って強いから!」

 

 ちゃんと勝てた。だから大丈夫。

「神浜の魔女かぁ。やっぱりさっきのそうだよね」

 

「うん。同じ魔女を神浜で前に見た事あるもん。もしかしたら使い魔が成長した姿なのかも」

 

「となると問題はどうして神浜の魔女が見滝原にいるのかってことか」

 

 私達はどうして神浜の魔女がここにいるのかを考え込む。だけどその答えは一行に出なかった。

「私、明日神浜に行ってみようと思うの。さっきのこともだけど、マギウスの翼のことや魔女化しないですむ方法のこと、それに・・マミさんのこと。神浜に行かないと分からないことばかりだから。ほむらちゃん、さやかちゃん。協力してくれる?」

 

「水くさいよ!協力するに決まってるじゃん!」

 

 さやかちゃん。

「そうだよ。私も神浜に行きたいと思ってたの」

 

 ほむらちゃんも・・・。

「うん!ありがとう。それじゃあまた明日ね!」

 

 

 

 

 翌日、神浜市に向かうために駅で待ち合わせをしたんだけどほむらちゃんとさやかちゃんは約束の時間を過ぎても中々こなかった。

「遅いなぁ。2人とも」

 

 2人はいつも時間に遅れてくることなんてない。まさか何かあったのかな?

「電話してみよう」

 

 私はさやかちゃんに電話をしてみたけれど、さやかちゃんもその後に電話したほむらちゃんも電話には出てくれなかった。

「魔力を探れば2人が何処にいるか分かるかな?」

 

 私は2人の魔力を探って何処にいるのか探してみようとしたら、偶然にも近くに魔女の気配がある事に気が付いた。

「ここのところ見滝原からは魔女の気配が消えていて、昨日久しぶりに魔女の気配を感じたと思ったのに・・・」

 

 昨日に続けて今日もなんて・・・いったいどうなってるの?

『まどか、考えてる暇があるのか?』

 

「分かってるよ。行こう、シャウトモン」

 

 私は2人もそこにいるかもしれないと思って魔女の結界に向かってみたけれど、そこに2人の気配は感じ取れなかった。

「っ!」

 

 私に攻撃を仕掛けてきたのは前に戦ったこともある神浜の魔女の使い魔だった。やっぱりおかしい。何かが起きてる。

「ほむらちゃん達とも連絡が付かないし、きっと2人も何処かで戦っているのかも」

 

 はやく倒して2人を探しに行かなくちゃ。

「デジクロスだよシャウトモン!」

 

 私はシャウトモンをデジクロスさせようとした次の瞬間だった。

「チュドーーン!!」

 

 何処からかもの凄いスピードで飛んできたデジモンが使い魔達を攻撃した。

「ひっさしぶり!シャウトモン!」

 

「お前は・・・スパロウモン!」

 

スパロウモン

・成長期

・鳥型

・データ種

 音もなく高速で飛翔する空戦に特化したデジモン。スピードだけでなく小回りも利き、急激な旋回も苦も無くやってのける機動性を持つ。基本的には気分屋で御調子者であり、気分次第で飛び方が変わる。必殺技は二丁拳銃からレーザーを乱射する『ランダムレーザー』だ。

 

 どうやたシャウトモンとこのスパロウモンってデジモンは顔見知りみたいだけど、どんな関係だろう?

「シャウトモン。知り合いなの?」

 

「あぁ。こいつはスパロウモン。デジタルワールドがぶっ壊れちまう前に生き倒れてたのを助けてやって知り合ったんだ」

 

「手を貸そうかシャウトモン?」

 

「どうするジェネラル?」

 

「せっかくだし、力を貸してもらおうかな」

 

 スパロウモンにも手伝ってもらう事にした私はみんなを呼び出す。今ならX4以上のデジクロスができるかもしれない。

「行くよシャウトモン!デジクロスだよ」

 

「応!ドンと来い!」

 

「シャウトモン!バリスタモン!ドルルモン!スターモンズ!デジクロス!」

 

「シャウトモンX4!」

 

 まずはシャウトモン達をX4にすると、スパロウモンは驚いた顔を見せた。

「凄い!シャウトモンがデジクロスをしちゃった!」

 

 初めて見るデジクロスに驚いた反応をするスパロウモン。そしたら魔女が操っているクワガタみたいなデジモンが2体も私達の前に現れた。

 

 

オオクワモン

・完全体

・昆虫型

・ウィルス種

 クワガーモンの進化形で、寄り凶々しく進化したデジモン。クワガーモンの劣っていた防御力が特に重点的に強化されている。攻撃面では触角の索敵能力が向上し、鋏の攻撃精度が増強された。必殺技は硬度10のダイヤモンドをも挟みきる『シザーアームズΩ』だ。

 

 か、完全体が2体も・・・。でもこの2体を何とかして、奥にいるはずの魔女を倒さないと2人のところにいけない。

「お願いスパロウモン。あなたの力を貸してちょうだい」

 

「もちろん!シャウトモンのジェネラル!」

 

 スパロウモンの承諾を得た私はデジヴァイスを掲げる。

「シャウトモンX4!」

 

「OK!」

 

「スパロウモン!」

 

「応!」

 

「デジクロス!」

 

 シャウトモンX4とスパロウモンをデジクロスさせると、シャウトモンX4はスパロウモンの翼と胴体だった部分が変化した盾を装備した姿になる。

「シャウトモンX5!」

 

シャウトモンX5

・デジクロス体

・合成型

・ファイナリスト

 5体のデジモンが心を合わせて誕生させた『ファイナリスト形態』。地上での戦いを得意としてたX4が飛行能力を手に入れて究極体と同等のパワーアップをした姿である。必殺技の『メテオバスターアタック』は敵のみならず、周囲数百メートルの大クレーターを大地に刻みつける。

 

 

「シャウトモンX5!ここはお願い!」

 

「へっ、こんな奴ら余裕だっての」

 

 シャウトモンX5に2体のオオクワモンを任せた私は奥にいるであろう魔女の元に向かおうとする。そしたらスパロウモンとデジクロスして究極体と同じくらいまでパワーアップしたシャウトモンX5は剣をたった一振りしただけでオオクワモン2体を戦闘不能にした。

「つ、強い」

 

「さぁ、このままサクッと魔女もぶっ倒しちまおうぜ」

 

 シャウトモンX5の左手に乗った私は奥にいる魔女のもとに一気に飛んでいく。そしたらシャウトモンは赤く燃えたぎる拳を構えた。

「一発で決めるぜ!メテオインパクト!!」

 

 まるで流星みたいに輝く拳を魔女に叩き込んだシャウトモンX5は宣言通り1発で魔女を倒してみせた。

「凄い!やったねシャウトモン」

 

「もっと褒めてくれたっていいんだぜ」

 

 自画自賛しているシャウトモンX5。魔女の結界も消えたから私はデジクロスを解除してみんなをデジヴァイスに戻した。

「ありがとうスパロウモン。あなたのおかげで早く魔女を倒せたよ」

 

「ジーーー」

 

「スパロウモン?」

 

 スパロウモンは仲間になりたそうにこっちを見ている。

「・・・スパロウモン。これからも私達に力を貸してくれない?」

 

「うん!いいよ!」

 

 こうして私のチームにスパロウモンっていう頼もしい仲間が加わった。

 

 

~ほむらside

 

「お願いメタルグレイモン!」

 

「ギガデストロイヤー!」

 

 メタルグレイモンのギガデストロイヤーが命中してようやく魔女が倒れてくれる。強かった。もしメタルグレイモンがいなかったらと思うとゾッとする。

「それにしても・・・おかしい・・よね」

 

 昨日見た魔女もそうだった。神浜市の魔女が見滝原に現れるのもだけど、まったく気配がなかったのに、突然現れたことが何よりもおかしい。

「もしかして昨日鹿目さんのところに現れた魔女も・・・」

 

 私の予想が正しければ・・・鹿目さんと美樹さんも危ない。

「はやく・・はやく2人と合流しないと」

 

 デジクロスを解除してメイルバードラモンの背中に乗った私は2人と合流しようと急いだ。

 

 

~さやかside

 

「はぁ・・・はぁ・・」

 

「ヤバいよ姉御。流石に数が多い」

 

 アタシとマーメイモンは魔女と魔女の口づけに操られているクワガーモンの群れに大苦戦していた。水辺じゃないからマーメイモンはその実力を発揮しきれていないし、アタシの方も治癒魔法の使い過ぎでソウルジェムに穢れが溜まりつつあった。

「しまった!?」

 

「姉御!!」

 

 ソウルジェムに気を取られて、魔女の攻撃を受けてしまいそうになったけど・・・その攻撃は私に当たることはなかった。

「何とか間に合ったなぁ」

 

 翼のあるシャウトモンX4・・・X5がアタシを守ってくれていたからだ。

「シャウトモンってことは・・・」

 

「さやかちゃん!」

 

「美樹さん!」

 

 まどか。それにほむらも・・・。

「来てくれたんだ」

 

 2人が来てくれたことで一安心したアタシは剣を構え直す。まだ気を抜いちゃいけない。

「えい!」

 

「やぁ!」

 

 ほむらが魔女に向かって爆弾を投げつけたら、その爆発に怯んだ魔女にまどかが矢を放つ。

「今だよさやかちゃん!」

 

「ありがと2人共!ヤァァァァっ!!」

 

 2人の作ってくれたチャンスを逃さなかったアタシは剣で魔女を切り裂いたら、魔女を無事倒して結界も消えていく。

「ふぅ、やっぱり一緒だと戦いやすいね。それに何より心強いし」

 

「だね!」

 

「あったよ。グリーフシード!」

 

 勝てた喜びを分かち合っていたらほむらは倒した魔女のグリーフシードを拾い上げた。

「美樹さん。だいぶソウルジェムが濁ってるよ。これ使って・・・」

 

「えっ?でも・・・」

 

 2人は個別に撃破してきたはずなのにアタシは2人に協力してもらって倒せたわけで・・・そんなアタシがグリーフシードを使っていいのかな。

「いいから。それと2人とも、聞いてほしい話があるの」

 

 ほむらにソウルジェムを浄化してもらったアタシはそのままほむらの話を聞く。

「なるほどね。いきなり魔女がねぇ・・」

 

 アタシの方もそうだったけどやっぱりそっちもそんな感じだったんだ。

「で?これってどういうこと?」

 

「わかんない。分かんないけどおかしいのは確かだよ。魔女がいなくなる前の見滝原ではこんなに頻繁に魔女が出ることなんてなかったし」

 

「神浜と同じ魔女が現れてるのが気になってたんだけど・・・もしかして・・っ!」

 

 何かに気づいた様子のほむらは辺りを見渡す。

「どうしたのほむら?」

 

「たぶんだけどこの一連の魔女の事件には・・・マギウスの翼が関わってると思う。それでたぶんだけど。その目的は・・・私達の足止め」

 

 そのほむらの予想が事実だってことがわかるのは・・・それからもう少し経ってのことだった。

 

 

 

~いろはside

 

 やちよさんが急に冷たくなって、チームを解散すると言って、やちよさんの苦しみを知ったあの日。私はチームのリーダーになった。だけど鶴乃ちゃんもフェリシアちゃんもさなちゃんもみんな洗脳されてマギウスの翼に連れていかれてしまった。

 

 みんなを見つけて洗脳を解かないと。そしてまた、チームみかづき荘を再結成するんだ。

「ごめんねうい。お姉ちゃん、大切な人たちのために頑張らないといけないから」

 

 だからもう少しだけ待っててね。

「そして・・・」

 

 みんなが帰ってきたらやちよさんに渡そう。みんなで買ったあのコースターを。

「それにしても悩みの種が多すぎるわね。みんなの洗脳を解く事に、いろはの記憶。鹿目さんたちの方も巴さんがあんなだから」

 

「はい」

 

「見滝原の様子はどうなのかしらね?」

 

 まどかちゃんにメッセージを送ったけれど全然返事が返ってこない。なにもなければいいんだけど・・・。

「きっとまどかちゃん達も大丈夫だよね」

 

 私はそう信じてまどかちゃん達から連絡が届くの待ちながらも、私達が今後どう動くべきかやちよさんと策を考えていた。

 




次回「悩みを分かち合うこともチームだと思う」


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悩みを分かち合うこともチームだと思う

~みふゆside

 

「わたし達はこんなところでジッとしているためにここに来たんじゃないよ」

 

「そうだぞ。魔女のいない世界になるって信じたから来たんだぞ」

 

「私は願いからも解放される事に望みをかけて」

 

「わたし達の運命から解放するための使命をちょうだい」

 

「この通りですよ灯花。みんな記憶ミュージアムでの洗脳は維持されています」

 

 ワタシは洗脳されている3人を灯花に遭わせる。

「様子を見るかぎりだとみふゆの言う通りだね~。みふゆの記憶にも影響されちゃってるし、普通よりも深く洗脳を受けてるのかもしれないね」

 

 そこで灯花は何かに気づく。

「もしかして記憶ミュージアムって思考停止時を狙ったものなのかも。アルファ波やシータ波で脳の動きが鈍くなれば深く洗脳できるのかもしれないものね」

 

「ですが記憶ミュージアムとともにウワサが消えた以上、どれだけ高度な洗脳であってもそれが解けないという保証は何処にもありません」

 

「そっか~。エンシェントワイズモン、あなたって洗脳はできる?」

 

「知識がないわけでもないが得意分野というわけではないね。A10神経を刺激して解放にすがらせるのもアリかもしれない」

 

「なるほどね~。洗脳がされてる間に何かを成し遂げさせてあげようってことだね」

 

 何故その会話だけでそこまで理解をとも思うのですが・・・。それが頭の良いパートナー同士だからということでしょう。

「この部屋から出す危険性。それは考えないんですか?」

 

「うん。実験も失敗を繰り返して成果がでるからね~」

 

「そう・・・ですか」

 

「うんうん。だからとりあえず選ぶなら~~最強さんかなぁ!」

 

 灯花はその実験対象として鶴乃さんを選びました。

「ちょっと待ってください灯花。鶴乃さんに何をさせるつもりですか?」

 

「決まってるでしょ~。イヴの孵化は近いんだよ。これ以上足踏みはできないの。あとちょっとなのに環いろはとそのパートナー・・・2つの究極体になれるあのアグモンは厄介極まりないし、だからもうゆっくりはしてられないの」

 

 ブリッツグレイモンとウォーグレイモンに究極進化できる環いろはさんのアグモン。その存在は今やベテランであるやっちゃん以上の脅威として灯花は考えているみたいですね。

「ほら、一緒に行こう最強さん!」

 

「うん!私にできることならなんでもするよ!」

 

「「・・・・・」」

 

 こうして鶴乃さんは灯花に連れていかれてしまった。

 

 

~いろはside

 

「ウワサを並べたら何か分かると思ったんですけど」

 

「そうね・・」

 

 私とやちよさんはこれまで倒してきたウワサを地図を見ながら並べてみてみたけれど、手がかりになりそうなことは分からなかった。

「鶴乃達がいそうなところ、もしくはマギウスの翼の拠点。ここから見えるのは・・・」

 

 見えるのは?

「ダメ、規則性がなくてわからないわ。そもそも私達が倒したウワサも総数を考えればごく一部だと思うわ」

 

「でも居場所を調べるにも他に手がかりはなさそうですし」

 

 記憶ミュージアムのウワサはなくなったんだから、みんなの洗脳も解けていればいいのに。

「もう少し考えましょう。一応明日は鶴乃の家に行ってみるって用事もあるし」

 

「そうですね。・・やちよさん、もう少し神浜うわさファイルを見ててもいいですか?」

 

「いいわよ。好きなだけ見てちょうだい」

 

 やちよさんが神浜市のうわさを調べた神浜うわさファイル。うわさの内容や場所も手書きで丁寧にまとめられてある。今まで倒したウワサやまだ調べてないうわさ。名前や場所だけ記されてるうわさ。私の知らないうわさがこんなにもあったんだ。

「なにかマギウスの翼に会えそうなうわさってないかな?」

 

 あれ?この辺りのうわさ。

「・・・なんだろう知ってる気がする」

 

 何故か知ってる気がしたうわさのことを考え込む。

 

なにか懐かしい場所を知ってる気がする。・・・どこだろう?

「いろは・・いろは!」

 

「っ!」

 

 目が覚めるとお風呂からあがったやちよさんがいた。

「神浜うわさファイルを開いたまま寝ちゃっていたわよ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「疲れているのね。早くお風呂に入って寝た方がいいわ」

 

「そうしますね」

 

 

 

『臨時休業。娘を見つけたらご連絡ください』

 

 翌日、鶴乃ちゃんの家に行ってみたら万々歳は休業中で、そんな張り紙が貼られていた。

「案の定ね」

 

「し、仕方ないですよ」

 

「それより・・・」

 

「鶴乃ちゃん、突然いなくなったそうよ」

 

「あら、由比さんのお宅も大変ねぇ」

 

 周辺では鶴乃ちゃんがいなくなったことがうわさになっちゃっていた。

「戻ってきたら戻って来たで大変かもしれないわね」

 

「皆勤賞もなくなるし、近所に失踪したことまで」

 

 急いで見つけてあげないと。

「ごめんください」

 

「ごめんくださーい」

 

 そう考えながらも私とやちよさんは万々歳へと向かうと、電気は付いていないのに不用心にも鍵はかかっていなかった。

「誰もいない?」

 

「でも表は開いていたわよ」

 

「やぁいろはちゃんにやちよちゃん」

 

 声をかけられて気づいた。暗いけど店の奥に鶴乃ちゃんのお父さんがいた事に。

「悪いけど今日はお休みなんだ。また今度来てもらえるかな」

 

「いえ私達、鶴乃のことで来たんです」

 

「っ!鶴乃を見たのか!何処で!?」

 

「あの、落ち着いてください。私達が来たのも鶴乃を探すためなんです」

 

 やちよさんにそう言われた鶴乃ちゃんのお父さんは落胆する。

「そうか、やちよちゃん達も居場所を知らないのか」

 

「すみません・・」

 

「謝ることじゃないよ。父親の俺がただ不甲斐ないだけなんだ。俺が鶴乃にあんな顔をさせちまったんだから」

 

 あんな顔?

「鶴乃ちゃん、一度戻ってきたんですか?」

 

「帰ってきたと思ったら一言残して消えたんだ」

 

「一言?いったいなんて?」

 

「今までで一番安心できる場所を見つけたから帰らないって。ただな、その時の鶴乃はいつもの笑顔はしてなかったんだ」

 

 鶴乃のお父さんは「きっと自分のせいだ」と自分を責めていましたけど、何があったか、魔法少女の事を話すわけにはいかない私達は何も言ってあげることはできませんでした。

「その時、フェリシアは一緒でしたか?」

 

「フェリちゃんも一緒だったけど、あの子はいつも通りだったよ」

 

 フェリシアちゃんはいつも通り?

「鶴乃ちゃんだけそうだったってこと?」

 

「何か引っかかるわね」

 

 私とやちよさんは万々歳を後にする。

「やちよさん、鶴乃ちゃんの言葉・・どういう意味だと思いますか?」

 

 今までで一番安心できる場所を見つけたって・・・。魔女化を回避できるって知ったからマギウスの翼が安心できるって言ったのかな?

「わからないわ。素直に受け取れば言葉通りの意味だと思うけど・・・」

 

「じゃあ素直じゃなければ?」

 

「洗脳されて言わされている可能性があるわ。だからあまりあてにならないかもしれないわね」

 

「でも良かったです。2人が一度でも帰ってきてるって知れたのは」

 

「そうね。最悪のシナリオは回避できてるのかもしれないわね。・・・っ!いろは」

 

「私も感じました。近くに何人か魔法少女がいます」

 

 私達が魔法少女の気配に気づいた途端、私達の前に何人かのマギウスの翼が現れた。

「みな、ここでやるぞ。こいつらも由比鶴乃のように道具として扱わせてもらう」

 

 鶴乃ちゃんが道具?いったいどういうこと?

「お話。聞かせてもらうから!」

 

 私はアグモンを呼び出したら早速進化をさせようとする。

「いろは。何があるか分からないから究極体は温存しておきなさい」

 

「分かりました!アグモン、進化だよ!」

 

「アグモン進化!グレイモン!」

 

「ガブモン進化!ガルルモン!」

 

 私がアグモンをグレイモンに進化させたら、やちよさんもガブモンを呼び出してガルルモンに進化させる。

「メタルグレイモンで行くよグレイモン!」

 

「ゼヴォリューション!メタルグレイモン!」

 

「超進化!ワーガルルモン!」

 

 そしてそのままメタルグレイモンとワーガルルモンに進化させたら、マギウスの翼の人達は揃ってロボットみたいな同じデジモンを呼び出してくる。

 

ガードロモン

・成熟期

・マシーン型

・ウィルス種

 コンピューターネットワークを守るマシーン型デジモン。元々はネットワークの防御壁を守るデジモンだったが悪質なハッカーによりシステムを書き換えられてしまった、必殺技は不法侵入者を世界の果てまで追い詰める『ディストラクショングレネード』だ。

 

 全部同じ成熟期。勝てない相手じゃない。

「行くよ!メタルグレイモン!」

 

「うん!」

 

「行きなさい!ワーガルルモン!」

 

「応!」

 

 私達はマギウスの翼から情報を聞き出すためにも、マギウスの翼の人達と戦い始めました。

「エネルギアブリッツ!」

 

「カイザーネイル!」

 

 数でこそ負けているけど、完全体であるメタルグレイモンとワーガルルモンはその圧倒的強さで次々とガードロモンを撃退していく。

「てぇい!」

 

「ハァァッ!」

 

 そして私とやちよさんもマギウスの翼と戦い出すと、マミさんと比べてそこまで強くない彼女達はあっさりと撃退できた。

「ぐぁ!?」

 

「教えてください。鶴乃ちゃんにフェリシアちゃん。さなちゃんはどこにいるんですか?」

 

 マギウスの翼を追い詰めた私達は白羽根の人に武器を向けながら問いかける。

「くっ、どれだけ喚いて捜しても由比鶴乃は助からないぞ。覚えておけ!どうせ貴様らは後悔する!」

 

 そう言い残した白羽根の人は他のマギウスの翼の人らと共に逃げ去っていきました。

「相変わらず逃げ足だけは早いわね」

 

「・・・やちよさん。嘘ですよね。鶴乃ちゃんもフェリシアちゃんもさなちゃんも・・・みんな無事ですよね」

 

「いろは・・。私達がみんなの無事を信じてあげないとダメでしょ。信じてるから捜しているんだから」

 

 そうだ。私達がみんなの無事を信じてあげないと。

「ごめんなさい。ちょっと弱気になっちゃいました」

 

 私達は信じてあげないと。みんなが無事だって。

 

 

 

~やちよside

 

「鶴乃もフェリシアも帰ってこないということは何処かに居住できるような拠点があるはずなのよ」

 

 マギウスの翼の襲撃があった翌日、ももこも交えて私達は作戦会議をしていた。

「それを調べるとなるとやっぱり時間がかかってでもマギウスの翼どもと接触するしかないんじゃないのか?」

 

 ももこの意見も最もね。

「あの、それなら私から提案があるんですけど・・・もう一度色々なうわさを消して回りませんか?それも危険なうわさだけじゃなくて、危害を与えないうわさも含めて」

 

「それってやっぱりマギウスの翼と接触するために?」

 

「はい。ただ今回は各区を巡りながら派手に動いているように見せたいんです。そうすれば相手も敏感に反応するかもしれませんし」

 

 なるほど。一理あるわね。

「もしかしたらそれで潜んでいる拠点を見つけることだってできるかもしれません」

 

「たとえばだが、参京区のうわさを相手にしててマギウスの翼の連中がすぐ現れるなら拠点が近くにある可能性もあるってことだよな」

 

 ガブモンはいろはの意見を聞いて考察をする。普段ふざけることは多いけど、仲間が絡むと真面目になるのよね。

「ガブモンの言う通りです。だからなるべく色んなところを回りたいなって」

 

「ものは試し、一度やってみましょうか」

 

 考えぐねて動かないよりは全然いいわ。

「それにマギウスの翼が出てきたらそれはそれで御の字。とっ捕まえて鶴乃達の居場所を吐かせてやりましょう」

 

「それじゃアタシの担当はっと・・・」

 

「ももこは無理しないでいいわよ。かえでのこと、まだ解決してないんでしょ?」

 

「えっと・・うん」

 

 そう、まだももこはかえでの問題を解決していない。なら今の彼女がするべきことは1つね。

「ももこはかえでの傍についていてあげなさい。うわさを消して回るのはいろはとで十分だから」

 

「ボクらもいるし大丈夫!」

 

「問題ないって」

 

 アグモンとガブモンもいるし、こっちは心配ないことを伝える。

「ごめんやちよさん。でもグリーフシードは集めておくから」

 

「それで十分よ」

 

 みかづき荘を後にしてももこはかえでのもとへと向かっていった。

「それじゃあやちよさん・・」

 

「えぇ、行きましょうか。各区を巡るうわさを消すツアーにね」

 

 

 

~ももこside

 

「やっぱりまだ受け入れられない?」

 

「分かってるの。分かってるんだよ・・・魔法少女の運命の中に自分がいることは」

 

 かえでにはやちよさんから聞いたドッペルのことも話せることは全部話した。ショックを受けるのは分かっていたけど、話さないといけないことだと思ったから。

「でもね・・・」

 

「怖い?」

 

「うん。魔女化を知っても今までと変わらないのにね。ごめんね、ももこちゃん・・」

 

 フローラモンは涙を流すかえでを抱きしめる。

「アタシらの背負ってる運命ってさ、1人で抱え込むには重すぎるよな。アタシだって1人だったら怖かったと思う」

 

「ももこちゃんも?」

 

「アタシだって怖いものは怖いさ。でもさかえで、だからこそアタシ達はこうしてチームを組んでいるんだよ。別に魔女と戦うってだけでチームを組んでいるんじゃない。互いの悩みを分かち合うこともチームだと思う」

 

 それが私達の場合魔女化だったってだけだ。

「こんな理解が早くて、助け合える仲間なんてさ、学校中探してもどこにもいないと思うぞ」

 

 そういったアタシもかえでを抱きしめる。

「大丈夫だよかえで。1人で抱え込まなくてもアタシがいる。レナだっている。パートナーデジモン達だっている」

 

「ありがとう、ももこちゃん・・・」

 

 たぶんもうかえでは大丈夫だ。

「アタシ達はこれからいろはちゃん達の手伝いで魔女を倒しにいくけど・・・かえでは無理に・・」

 

「ううん。行くよ。ももこちゃんとレナちゃんがいるなら・・・もう大丈夫だから」

 

「そうか。なら手伝ってくれ」

 

 こうしてアタシ達はよりチームの絆を深めてまた『3人』のチームに戻った。

 

 

 

~いろはside

 

 深夜の暴走特急のうわさ。それはロコモンという蒸気機関車の姿をしたデジモンは走り続けたいという欲求を満たすためだけに走っていたというものでした。『ウワサ』ではなかったですが流石に深夜に爆走する蒸気機関車というのは迷惑だったのでメタルグレイモンで物理的に停車させてロコモンとそのテイマーである鈴鹿さくやさんに注意をするという形で決着をつけました。

「鈴鹿さんはともかく、ロコモンはちゃんと分かってくれたんですかね?」

 

「あれは近いうちにまた走るわ。間違いなく」

 

 やちよさんもあれは間違いなく再度走ってしまうだろうと予想しながらも次のうわさの場所へと向かってみました。

 

鉄火塚のうわさ。供養された人をバカにすると焼けた手が出てきて、塚に引き込もうとするといううわさ。

「やちよさん。何でこんなうわさを選んだんですか!?」

 

 こんなのただのホラーじゃないですか!

「いろははこういうの。ダメ?」

 

 駄目かどうかを聞かれると正直駄目だけど・・・。

「そういう問題じゃないです」

 

 この後「あなたのおかげで村が救われました」というと消えるという情報もあったおかげで無事にうわさを解決しました。

「白羽根黒羽根も現れなかったし次に行くわよ」

 

 その後もうわさを調べ上げ、そのうちの幾つかは『ウワサ』が現れて戦う事になりました。

「これでトドメだ!パンデミックデストロイヤー!」

 

「っ!いろは、危ない!」

 

 3体目のウワサを倒したところで、事は動きました。マギウスの翼である黒羽根の人が私を攻撃してきたのです。

「ハァっ!」

 

「ありがとう。ワーガルルモン」

 

 幸いワーガルルモンが守ってくれて何ともありませんでしたが、1人でやってきたその黒羽根の人はデジヴァイスと武器を構えました。

「次々とうわさが消されているという話を聞いたかと思えばやはりお前達か。だがここまでだ」

 

「・・ようやくマギウスの翼のお出ましね。派手に動き回ったかいがあったわ」

 

「これ以上うわさへの手出しはやめてもらう。アルマジモン!」

 

「だぎゃ!」

 

アルマジモン

・成長期

・哺乳類型

・フリー

 硬い甲殻で体が覆われた哺乳類型デジモン。呑気で愛嬌のある性格だが、お調子者なところがたまに傷。必殺技は体を丸めて敵に突進する『ローリングストーン』だ。

 

「アルマジモン!デジメンタルアップ!」

 

「アルマジモン!アーマー進化!」

 

アルマジモンはデジメンタルから放たれる進化の光を浴びる。

「カメレモン!」

 

カメレモン

・アーマー体

・爬虫類型

・フリー

 優しさのデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の爬虫類型デジモン。その皮膚は特殊な構造をしており、周囲の環境をスキャニングして皮膚のテクスチャを張り替えて同化してしまう能力を持つ。必殺技は鞭のようにしなる伸縮自在な舌で攻撃する『タングウィップ』だ。

 

 優しさのデジメンタル・・。それが使えるってことは本当はこの人、優しい心を持ってるんだろうな。

「鶴乃ちゃん達の居場所。もしくはあなた達の拠点の場所を教えてください」

 

「そんなの!言える訳ないだろ!」

 

 私は戦う前にそう彼女にそう問いかけてみたけれど、やっぱり教えてもらえなかった。

「カメレモン!」

 

「タングウィップ!」

 

 カメレモンはメタルグレイモンに向けて必殺技で攻撃してきたけれど、カメレモンのデータ量は良くて成熟期。メタルグレイモンは怯まなかった。

「くっ。だったら・・・!」

 

 黒羽根の人は一番弱そうな私に向かって攻撃してきたけれど、私はその攻撃を避けて矢を放つ。

「うぐっ・・」

 

 それが命中して、転倒した黒羽根の人に私とやちよさんは武器を向ける。

「教えなさい。鶴乃にフェリシア、二葉さんに何をしたの?」

 

「そう言われても・・・私はその。何も」

 

「しらばっくれないで!」

 

「ほ、本当に知らないんです」

 

 どうやらこの人は本当に鶴乃ちゃん達のことを知らないっぽい。

「なら拠点の場所を・・・」

 

 拠点の場所を聞き出そうとするとカメレモンは黒羽根の人に飛びついて、そのまま彼女ごと透明になって姿をくらませてしまいました。

「逃げられたわね」

 

「だけど1つだけ分かりました」

 

 マギウスの翼のみんながみんな、鶴乃ちゃん達のことを知ってるわけじゃないということ。一応その事が分かっただけでも良しとしておこう。

 




神浜デジモンファイルに
「鈴鹿さくや&ロコモン」
が登録されました。

次回「それとこれとは正義が違う」


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それとこれとは正義が違う

~ももこside

 

「さてと、やちよさん達と合流するかな」

 

 魔女を倒し終えて一度かえでとレナの2人と別れたアタシはやちよさん達と合流すべく足を進めていたら話し声が聞こえてきた。

「今度オープンする遊園地、せっかくなら一番乗りを目指そうよ」

 

「そこまでする?」

 

 なんでも神浜に遊園地らしき場所ができたらしく、最近アタシのクラスの間でもそのうわさが話題になっていた。

「私もこの間まで知らなかったのよねぇ」

 

「子供にねだられたりしないかな?」

 

 学生だけでなく大人たちの話題にもなってるみたいだ。

「昨日は風のうわさっぽかったけど、水名の方が広まってるな」

 

『もしかしたらウワサだったりしてな』

 

 アグニモンは冗談交じりに遊園地がウワサなんじゃないかって疑っているみたいだけど、アタシもそうじゃないかと思ってきた。

「あの、遊園地の話って聞きました?」

 

 なのでアタシは思い切ってうわさをしている人達に話しかけてみた。

「えっ・・?なんなの急に?」

 

「遊園地のうわさを聞いて、詳しい人がいないかなって思って、それで」

 

「へ~。まぁいいわ。なんかね、神浜の何処かに出来るってうわさみたいだよ」

 

「・・・えっ?それだけ?も~ちょい、詳しく」

 

「そう言われても・・・」

 

 どうやらこの人もそこまで詳しいわけじゃないみたいだ。

「ちなみに誰に聞いたか覚えてる?」

 

「友達なんだけどさ、確かあんたから聞いたんだよね」

 

「えっ?逆でしょ?」

 

 2人は互いに「そっちから聞いた」と言い合う。間違いない。これはウワサだ。

「これはやちよさん達と合流する前に調べておいた方が良さそうだな」

 

 そうしてアタシは遊園地のウワサについて調べてみることにした。

 

 

 

~いろはside

 

「黒羽根も白羽根も本当に知らないみたいですね」

 

 あの後もウワサを消して廻り、白羽根や黒羽根にも遭遇したけれど、結局最初の人達以外に鶴乃ちゃん達のことについて知っている人達は現れなかった。

「今日はこれぐらいにしておいて、今日廻ったうわさのポイントを地図に記入しましょうか」

 

「そうですね。あの、今まで消したウワサもまだのウワサもぜんぶ地図で並べてみませんか。そうすればマギウスの翼の拠点が見つかるかもしれませんし」

 

「そうね。そうしてみましょう」

 

 私達は神浜うわさファイルも使って消したウワサもこれから調べる予定のうわさも一度すべてを地図に並べてみることにした。

 

無条件で出現するうわさ。これは特に理由なく自然に発生するうわさ。場所が限定されているものは少ない。

特定の行動で出現するうわさ。こっちは誰かの行動によって発生するうわさ。これも場所が限定されているものは少ない。

特定の場所に出現するうわさ。特定の場所で発生しているうわさ。条件を満たさないと入れない場合もある。

 

 こうして並べてみると3パターンのウワサに分類できるみたい。

「中央区から東ってあまり調べられてないですね」

 

 そしてもう1つ気づいた事がある。それは中央区から東をあまり調べられていないこと。やちよさん曰く「向こうとの取り決めがあって」とのことだそうだ。

「あっ、やちよさん」

 

「いろはも気づいたようね」

 

 しばらく地図を眺めているうちにさらに気づいてしまった。

「どういう事かしらね。うわさが途中から途切れてるだなんて」

 

 そう。どういう訳かうわさはまるで台風の目のように途中からパッタリと途切れていたの。

「東の分布も合わせないと分からないけど、もしもそうだとしたらいったい何を意味してるのかしら?」

 

『あえてうわさがなかったりしてね』

 

 アグモンはあえてうわさがないんじゃないかと予想したけれど、あながち間違いじゃないかもしれない。

「新政区のところ、少しうわさが集まってるみたいですね」

 

「えぇ、東側と違って集中してる気がするわ」

 

「ここって確か・・・」

 

「いろは。何処か知ってるの?」

 

「はい。里見メディカルセンターです」

 

 うい達が入院していた病院。里見メディカルセンター。そこが『鍵』だと判断した私達は病院へと足を進めた。

「ここからうわさが増えるはずよ」

 

「病院の近くに拠点があるからウワサも拠点を守るために・・・なんて可能性もあったりしますかね?」

 

「それは考えにくいわね。ウワサは特定の条件を満たさないと現れないから、守りに使うには不向きな気がするわ」

 

 やっぱりそうですよね。

「いろは止まって!複数の魔力の反応があるわ」

 

「たぶんマギウスの翼です」

 

「今日はもう何回も完全体に進化してて疲れてるんだ。やるならとっとと出てこいよ」

 

 デジヴァイスから出てきたガブモンの言う通り今日はウワサやマギウスの翼と戦うために何度もアグモンとガブモンを進化させた。その事もあってちょっと不機嫌なガブモンはマギウスの翼に早く出てくるよう挑発すると、本当にマギウスの翼は出てきた。

「随分とウワサを消してくれているようだが、ここまでだ。行くぞ2人を抑えろ」

 

 私達を倒すべく現れた白羽根は黒羽根の2人に私達を抑えるよう命令する。

「この魔力・・・!まさか」

 

 そこで私とやちよさんは黒羽根の2人の魔力反応が知っている反応だったことに気づいた。この反応は間違いない。フェリシアちゃんとさなちゃんだ。

「フェリシアちゃん・・さなちゃん」

 

「この黒羽根がそうみたいね」

 

 きっと洗脳されているんだ。

「そういうことなら必ずここで確保するぞ!」

 

 やる気になったガブモンはガルルモンへと進化したので、私もデジヴァイスを取り出す。

「いろは!全力で行こう!」

 

「うん!」

 

 本気で相手にすることにした私とアグモンは、ブリッツグレイモンに究極進化させようとしたその時だった。

「仲間同士で潰し合うとは見物だな」

 

「ハッ!残念でした~!」

 

「そんなの正義ちゃうわい!」

 

「えっ?」

 

 デジヴァイスからモノドラモンを呼び出したフェリシアちゃんは黒羽根としてのマントを捨てて白羽根へと攻撃を繰り出しました。

「誰が見物になんかされるかよ!オレは最初からいろは側だバーカ!」

 

「えぇ!?」

 

 フェリシアちゃん。操られているんじゃないの?

「私達もです」

 

「行きましショウ。さな」

 

「ここでお家に帰らせてもらいます」

 

 さなちゃんも黒羽根のマントを捨てて、ハグルモンを呼び出した。

「なっ、どういうことだ!?」

 

 白羽根の人もこれには動揺を隠せないみたい。

「やちよーーー!」

 

「フェリシア!」

 

「いろはさん!」

 

「さなちゃん!大丈夫、怪我はない?」

 

 フェリシアちゃんはやちよさんに抱きつくと、さなちゃんも私の方へと駆け寄ってくる。

「くっ、こっちの黒羽根を返せ!」

 

「誰が戻るかよバーカ!こっちからえっと・・・ネガ・・・ねが・・なんとかだ!」

 

「願い下げな」

 

 願い下げという単語が出てこなかったフェリシアちゃんはモノドラモンに突っ込まれたら、焦った白羽根の人はデジヴァイスを取り出した。

「くそ、こうなったらやってやる!」

 

 彼女のデジヴァイスから出てきたのは機械の竜のようなデジモンでした。

ジャザリッヒモン

・完全体

・機竜型

・データ種

空中戦に特化した音速飛行するデジモン。ドッグファイトはお手の物で戦った敵の撃墜数は計り知れない。空中戦ならデジタルワールドの中でもトップクラス。必殺技は背面を取られても尻尾からレーザーを放つ『N・S・B・M』。

 

 速そうなデジモンだけど、私とアグモンの敵じゃない。

「行くよアグモン!」

 

「アグモン!ワープ進化!」

 

 アグモンはグレイモン、スカルグレイモンを飛び越えるように進化して、究極体の姿になる。

「ブリッツグレイモン!」

 

 ブリッツグレイモンに究極進化したアグモンは音速で飛行して体当たりを仕掛けてきたジャザリッヒモンを正面から受け止める。

「凄い。今のスピードの攻撃を受け止めるなんて」

 

 さなちゃんは音速で体当たりをしてきたジャザリッヒモンの攻撃を正面から受け止めたブリッツグレイモンに驚いていた。

「すっげーー!それがいろはのアグモンの究極体か!」

 

「かー!ワイも究極体になりたい!」

 

 フェリシアちゃんとモノドラモンは究極体を羨ましがっていたら、ジャザリッヒモンは一度距離を取ろうと離れようとする。

「ブリッツグレイモン」

 

「分かってる」

 

 ブリッツグレイモンはサンダーバーニアで加速して光速の速さでジャザリッヒモンに追いついたら、殴りつけて地面に叩き落とした。

「つ、強すぎる」

 

 気絶したジャザリッヒモンをデジヴァイスに戻した白羽根の人は後ろに引き下がる。

「意味がわからない。何もかも話が違うじゃないか。環いろはは弱いんじゃなかったのか?」

 

「お生憎様。うちのいろはは強いわよ」

 

 私じゃなくやちよさんが答えると、白羽根の人は逃げ去るように去って行った。

「・・・良かった。本当に無事で良かったぁ」

 

 変身を解いた私はさなちゃんに抱きつく。2人が無事でいてくれて本当に良かった。

「ごめんなさいいろはさん。本当にごめんなさい」

 

「で、あなたは大丈夫なの?」

 

「あったりめーだろ。ズバっと逃げてやったぜ!」

 

「元気そうでよかったわ。・・・私のせいでごめんなさいフェリシア。本当に無事で安心したわ」

 

 やちよさんもフェリシアちゃんが無事で安心して涙を流していた。

「まったく心配かけやがって」

 

「えらいスンマセン」

 

「無事で良かったよハグルモン」

 

「ご心配オカケしまシタ」

 

 アグモン達も再開を喜んで・・・私達は一旦みかづき荘へと帰る事にした。

 

 

 

 

「それでさっそくなんだけど、2人はどうやって抜け出したの?」

 

 みかづき荘へと帰宅後、ココアを飲んで一度落ち着いた私達はフェリシアちゃんとさなちゃんに抜け出せた方法を尋ねた。

「鶴乃ちゃんは一緒じゃないの?」

 

「鶴乃さんは・・・わからないです。途中で何処かに連れていかれちゃって」

 

 そんな・・・鶴乃ちゃん。

「みふゆ、本当に鶴乃に手をかけたっていうのかよ」

 

「もしそうなら流石に許せないわ」

 

 静かに怒るガブモン。やちよさんも同じ気持ちなのか拳をギュっと握っていた。

「あの、違うんです」

 

「オレ達を助けてくれたの。そのねーちゃんなんだ」

 

 すると2人は自分達を助けてくれたのはみふゆさんだと教えてくれた。

「さっき戦った時も私達が紛れ込めるようにわざわざ手配までしてくれたんです」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「それはですね・・・」

 

 さなちゃんはマギウスの拠点にいた時のことを詳しく教えてくれた。

 

 

~さなside

 

 それはマギウスの拠点にいた時の事。

「だーー!もう、オレ達も解放のために何かやりたいよな!」

 

「うん。そうだね」

 

「ウワサや魔女を使って解放に繋がるのなら、私はなんだってやりたい」

 

「今のマギウスが相手ではそれだけでは済みませんよ」

 

 私達のところにみふゆさんがやってきた。

「いいんですか?あなた自身も捧げないといけないのに、特にやっちゃんの仲間だったあなた達ならなおさらひどい目にあってもおかしくありません。皆さん、もう一度思い出してください。本当の気持ちを」

 

 本当の・・・気持ち?

「そんなこと言われてもなぁ・・・」

 

 私達は『本当の気持ち』を理解できずにいると、みふゆさんは魔法少女へと変身しました。

「まさか幻覚の力を治療に使うとは思いもしませんでした」

 

 そういったみふゆさんは私達に幻覚を見せてくる。ここは・・・みかづき荘。

「ここ、やちよん家じゃねぇか」

 

「フェリシアさん。あなたが帰るべきところです」

 

「違う。オレがいるのはここで・・・」

 

「マギウスの翼であなたの心が救われることはありませんよ」

 

「なんでだよ!魔女がいなくなればみんな幸せじゃないか」

 

「その魔女を守っているのもワタシ達マギウスの翼ですよ」

 

「っ!」

 

 そこでようやくフェリシアさんは違和感を覚える。

「それだけではなく、ワタシ達は魔女を育てています。魔女を同じ結界に閉じ込めて共食いをさせたり、グリーフシードを餌にして魔女の成長を促しています」

 

「嘘・・・だろ」

 

「本当にフェリシアさんはここに身を置くつもりですか」

 

「そんなんさせる訳ないやろ」

 

 そこでずっと黙ったままだったモノドラモンが出てきた。

「フェリシアは他の奴らに同じ想いをさせたくないって魔女と戦ってたんや。確かにお前さん方にも『正義』があるかもしれへん。だけどそれはフェリシアの『正義』ちゃうわ。それとこれとは正義が違う」

 

「モノドラモン・・・。そうだよな」

 

 モノドラモンの言葉でフェリシアさんは完全に正気を取り戻した。

「さなさんもやっちゃんの家が自分の家だと思っていたはずです」

 

「はい。でも、願いでかかった報いを私は解きたいです」

 

「マギウスの翼でその想いを本当に果たせると思うんですか?」

 

「願いが解ける可能性なんてワタシ達には分かりません。既に願った結果は得られているのですから、それを取り消すのは・・・」

 

「でも私、記憶ミュージアムでそう聞いて・・・」

 

「それはおそらくでまかせです。それに思い出してください。あなたはアイさんの結界で報いを受け入れたはずです。そしてあなたはアイさんと約束をした。それはなんですか?」

 

「あっ・・」

 

 思い出した。私はアイちゃんとマギウスの目的を挫くことを約束したんだった。

「私、どうして、いろはさんとも約束して・・・みんなと一緒にいるって・・・」

 

「さな。思い出シテ、くれたのデスね」

 

 デジヴァイスから出てきたハグルモンは安堵したような顔をする。

「ほら、いろはさんもやっちゃんも2人を待っています」

 

 完全に洗脳が解けた私達は尋ねることにした。

「どうして私達を?」

 

「そうだぞ。洗脳しといてわけわかんねぇぞ!」

 

「・・・マギウスが進化しようとしているからです。超えてはならない一線を越えたその先に。それはワタシの本意ではありません。あくまでワタシはみんなの解放を望んでいますから」

 

 どうやらみふゆさんは今のマギウスのやり方が不本意のようでした。

「それなら鶴乃さんは?鶴乃さんの洗脳も解いてあげてください」

 

「・・・試してはみました。ですがワタシの思う洗脳理由とは違うみたいで・・・」

 

 そんな。それじゃあ鶴乃さんは・・。

「いけない。灯花が来ました。しばらく洗脳をされたフリをしていてください」

 

 この後、鶴乃さんは灯花さんによって連れていかれて、私とフェリシアさんは黒羽根に扮して拠点を脱出したんです。

 

 

~いろはside

 

「すべてはみふゆの手筈だった。そういう訳ね」

 

「はい。それで・・・あの・・本当にごめんなさい」

 

「謝らなくていいよさなちゃん。帰ってきてくれただけで私は十分。それに悪いのはさなちゃんじゃないよ。洗脳したマギウスが悪いんだから泣かないで」

 

 私は涙を流しながら謝罪してくるさなちゃんを宥める。

「さなちゃんの悩みもフェリシアちゃんの悩みも魔法少女にとっては同じようなもの。だから気持ちは分かるよ」

 

「オレもごめんな」

 

「・・・私もごめんさない。でもこれ以上謝るのは止めにしましょう。今は前を向かないと」

 

 やちよさんの言葉に私達は頷く。

「やちよ。ワイはフェリシア達の洗脳を解いてくれたみふゆの事、悪く思えないんや」

 

「私もデス。あの人はさなの洗脳を解いてクレタだけでナク、さな達を逃ガス手助けもしてクレました。きっとイイ人デス」

 

 モノドラモンとハグルモンもみふゆさんの事を「良い人」だと判断してくれた。

「私の知ってるみふゆもね。・・・いい人よ。だから・・・マギウスの翼からみふゆを連れ戻したい」

 

「こんばんは~!」

 

 やちよさんもみふゆさんを連れ戻したいと言うと、玄関からももこさんの声が聞こえてきた。

「よっす。やちよさん、いろはちゃん。それにフェリシアとさなもいるじゃん。だいぶ揃って・・・なんでいるの?」

 

「もうその話は終わったわよ」

 

「なんてタイミングだ・・」

 

 ももこさんはタイミング悪く訪れてしまったことを悔しがっていたので、私は改めてももこさんに2人が戻って来た経緯を説明した。

「それで町を廻りながらウワサを消した成果なんですけど、結局何も得られませんでした」

 

「ウワサを守る黒羽根も何も知らなそうな感じだったわ」

 

「鶴乃の居場所を探すにも拠点の場所はさっぱりだしな」

 

「けどフェリシアとさなが帰って来たなら拠点の場所は分かるんじゃないのか?」

 

 アグニモンは2人が帰ってきたならと意見を出したけれど、2人が首を横に振った。

「それが、私達、移動の時は目隠しをされて・・・」

 

「なんも分からないんだよな~」

 

「オウ、まじか」

 

「残念~」

 

 ガッカリするももこさんとアグニモン。そして一緒になって落ち込むアグモン。

「だけど思わぬ方法で思わぬ成果が得られたのよ」

 

「そうなんです。神浜うわさファイルのうわさを地図にまとめてみたんですけど、東の方が台風の目になってるんです」

 

 私はうわさを記した地図を広げてももこさん達にもそれを見せる。

「もしかしたらここがうわさの発信源かもしれないってことか」

 

「あるいはこの辺りにうわさがない理由があるとかね」

 

「どちらにせようわさが関係している以上、ここにマギウスの拠点があるかもしれません」

 

 ここに行けば鶴乃ちゃんの居場所が分かるかもしれない。

「でも東の方は少ないですね」

 

「だから台風の目かどうかは定かじゃないんだけどね」

 

「フェリシア達がいたところがここって可能性はないのか?」

 

「ココではないと思いマスね」

 

「せやな。ワイらも目隠しをされて見えへんかったけど、このへんを歩いた記憶はないで」

 フェリシアちゃんもさなちゃんもこの辺りを歩いてはいないみたい。

「あとここは?新西区のところ。うわさが集まってるけど、なにかあるだろ」

 

「2人と合流した後、調べてみたけれど特に何もなかったわ」

 

「そっか。つまり気になるのは台風の目の場所だけってことか。・・・それならさ、アタシも話したいことがあるんだ。遊園地のうわさなんだけど・・」

 

「遊園地のうわさですか?」

 

「あぁ、新西の方で広がりつつあるうわさだよ。そんでアタシなりにうわさを調べてみたんだけどさ、どうも東の方から広がってきてる気がするんだよね」

 

 東の方・・・。

「東の方から流れてくるうわさ。東の方の台風の目。これって何かあるのかな?」

 

「関係あるかもしれないね」

 

 アグモンも東が気になるみたいで私もその場所が気になった。

「やちよさん。やっぱりここ、一度行ってみるべきだと思います!」

 

「鶴乃はいなくても白羽根のような幹部クラスはいそうね」

 

 確かに幹部クラスの人がいてもおかしくはないですよね。

「もしここがうわさの拠点なら急いだ方がいいぞ。その遊園地、明後日の夜明けにオープンらしい」

 

 遊園地のうわさ。それがこの後の私達の運命を大きく動かすことになる。

 




次回「一つだけ忠告させてください」


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1つだけ忠告をさせてください

~十七夜side

 

「これ以上の抵抗はよせ。うわさを消したところで何のためにもならない」

 

「ふむ、何のためとは面白いな。自分のはただの腹いせだぞ」

 

 自分、和泉十七夜はその夜マギウスの翼と対峙していた。その中にはかつての仲間だったものも紛れている。

「理解してください。十七夜さん。月咲さんと同じように。私達と同じくマギウスの翼に」

 

「愚問だな。むしろ自分は腸が煮えくり返っているんだ。君達が自分の下を離れたことにね」

 

「きては・・・くれないんですね」

 

「むしろ好き勝手やってくれた代償にここはひとつ体で礼を言わせてもらおう。ガオモン!」

 

 そう告げた自分はデジヴァイスを取り出して青い獣のデジモンを呼び出す。自分のパートナーのガオモンだ。

 

ガオモン

・成長期

・獣型

・データ種

鋭い爪を生やしたガジモン系の亜種と考えられる獣型デジモン。俊敏な動きでヒットアンドウェイの攻撃を得意とする。両手のグローブは爪が成長するまで保護しているらしい。必殺技は強靭な脚力を生かして敵の懐に転がり込む『ローリングアッパー』だ。

 

「行くぞガオ・・・。む、すまん。電話だ」

 

 電話がかかってきたので出てみると、七海からの電話だった。

「これは・・久しいな七海」

 

 まさか旧敵から連絡がくるとは思ってもなかった自分は心弾ませる。

「仲間にならないのなら、我々で叩くしかない」

 

 

「すみません十七夜さん」

 

 マギウスの翼の連中はそれぞれ武器を構えつつ、デジモン達を呼び出してくる。

「七海からの電話中だ。早急に決着をつけろガオモン」

 

「YESマスター。ガオモン!ワープ進化!」

 

 ガオモンに進化の光を与えると、ガオモンは青い鎧を纏った騎士のような姿となる。

「ミラージュガオガモン!」

 

ミラージュガオガモン

・究極体

・獣騎士型

・データ種

 全身がクロンデジゾイドの鎧で覆われた獣騎士型デジモン。桁違いの速度で移動するため、敵はまるで蜃気楼のような現象を目にする。必殺技は両手から放つ三日月型の衝撃波の『ダブルクレセントミラージュ』と全身のエネルギーを溜めて胸の口部から放つ『フルムーンブラスター』だ。

 

「七海、少々の間電話が聞き取りにくくなるかもしれん。許してくれ」

 

 自分がミラージュガオガモンに合図を送ると、ミラージュガオガモンは目にも止まらぬ速さで移動し、マギウスの翼の呼び出したデジモン達を攻撃する。

「は、速い」

 

「怯むな!全員でかかればいかに究極体でも・・・」

 

 確かにマギウスの翼の連中の何人かは完全体のデジモンや、強制デジクロスで完全体と同等のデータ量になっているデジモンもいるようだが、そんなもので落とされるミラージュガオガモンではない。

「ハァっ!」

 

 高速移動からの爪を振るうミラージュガオガモンは次々とマギウスの翼のデジモン達を撃退していく。自分はその間に七海から西の方の現状とこれまでの大まかな経緯を聞かされた。

「ダブルクレセントミラージュ!」

 

 ミラージュガオガモンの必殺の一撃は残りのマギウスの翼のデジモン達も戦闘不能にして、自分も七海からの話を聞きながらもマギウスの翼達を地に這いつくばらせた。

「うぅ・・。こんなに束になっても・・」

 

「そうか。西の状況には疎かったがそちらの方も大変そうだな」

 

 話を聞くかぎり西でもマギウスの翼やウワサに手を焼いているらしいな。

「うむ、今は魔女も増えて争うような情勢ではない。ぜひとも情報を共有しながら協力し合おうではないか」

 

 かつてのライバルとの共闘。うむ、ドラマだな。

「明日は楽しみにしている」

 

 七海も動いているか。マギウスの翼とやら、自分が考えているよりも厄介なものなのかもしれんな。

「十七夜さん」

 

「その声、月咲君か。久しいな」

 

 声をかけてきた白羽根は月咲君とその姉、月夜君だった。

「黒羽根ならもう用は済んだぞ。同じ用なら・・・」

 

「いえ、1つだけ忠告をさせてください」

 

 忠告?

「それなら聞かせてもらおう」

 

 

 

~いろはside

 

「どうだった?十七夜さんは?」

 

「快諾だったわ。戦いながら電話をしてたし、向こうも手を焼いているのかも」

 

 た、戦いながら!?

「相変わらずえげつないな」

 

「相変わらずって・・。昔からなんですね」

 

「あぁ、昔から強いよ。十七夜さんは。やちよさんと肩を並べられるぐらいに」

 

 やちよさんと・・・。そんなに強い人なんですね。

「風のうわさじゃなんでも東で一番最初にパートナーデジモンを究極体に進化させたとかなんとか」

 

「その人もパートナーデジモンが究極体に進化できるんですね」

 

「ともかく約束も取り付けたし、今日は早く寝ましょう」

 

「約束って明日なのか!?遊園地のオープンまで時間がないぞ」

 

 ももこさんはウワサであるう遊園地のオープンまで時間がないことを焦っていました。

「あと1日。でもまだ1日ある。明日の戦いに備えましょう」

 

 

 

 

 翌日、工匠区。フェリシアちゃんとさなちゃんは洗脳の影響がどう残ってるか分からないからみかづき荘で待機してもらって、私とやちよさん。そしてももこさんの3人で和泉十七夜さんという魔法少女に会いに行くことになりました。

「その人ってどんな人なんですか?」

 

「そうね。とても強くて・・」

 

「ちょっと変わり者かな」

 

 か、変わり者ですか。

「昔のテリトリー争いの時はやちよさんと競っていて、ちょうど真ん中の中央区を取り合ったこともある」

 

「デジモン達が現れるようになる前は殺伐としてたからね。ただ互いに対立が激化して仲間が傷つくのは本意じゃなかったから、こうして連絡先を交換して相談したりしてたのよ」

 

「そうだったんですね」

 

「と、話をしてたらあの姿は」

 

 私達の先に見える1人の少女。どうやらあの人が和泉十七夜さんみたいだ。

「久しいな七海。十咎も一緒じゃないか。それに懐かしいな・・・む?誰だ!?」

 

「初めまして。環いろはです」

 

「ふむ、環君か。よろしく頼むよ」

 

 軽く挨拶を終えた私達は近くの喫茶店へと移動してこれまでの経緯と鶴乃ちゃんが連れていかれてしまったことを十七夜さんに話した。

「なるほど、由比君が。七海にとっては痛手だろう」

 

「えぇ。それでこちらの問題ではあるのだけれど、連れ戻すのを手伝ってもらえないかしら?」

 

「うむ、マギウスの翼が相手なら自分も喜んで手を貸そう」

 

 手を貸してくれるという十七夜さんの言葉に私達は喜ぶとアグニモンは疑問を問いかけました。

『でも喜んで手を貸すって事はあんたも被害にあってんのか?』

 

「あぁ、怒り心頭というやつだ。工匠の仲間を皮切りに随分と連れていかれたからな」

 

『マスターと自分だけでは手を焼いていたところなのです』

 

「そこで七海の提案ときたら手を結ぶしかないだろう」

 

 どうやら協力してくれるのも仲間をマギウスの翼に連れていかれたからみたいです。

「そんなに連れていかれたの?」

 

「あぁ、東の魔法少女の大部分が黒羽根や白羽根に混ざっている。それでさっそくだが自分とガオモンは何を手伝えばいい?」

 

「ありがとう。十七夜はうわさって調べてるかしら?」

 

「もちろんだ。彼女たちの泣きどころだからな」

 

 私達はうわさの情報を交換し合い、うわさを地図で並べてみると、台風の目のようになっていた場所は本当にうわさのない台風の目となっていた。

「この円の中心にマギウスの翼の拠点とかってありませんか?」

 

「鋭いな環君。確かこの辺りにあるはずだ」

 

「守っているのか、隠しているのか分からないけど尻尾は掴んだかもしれないわね」

 

 ここに鶴乃ちゃんがいてくれるかも。

「ちなみに円の中心ってどこなんですか?」

 

「おそらくは旧車両基地だな。普段は子供達の危険な遊び場といったところだ」

 

 そこが・・・マギウスの翼の拠点。

「それじゃさっそく・・・」

 

「いえ、待ちましょう」

 

「七海の言う通りだな」

 

「えっ?」

 

 いったいどうして?

「魔法少女の活動時間は逢魔が時から多いのが定説。今から攻めたとしても幹部がいないと機を逃すこととなる」

 

「鶴乃がいなかった場合、次は聞く相手が必要になるわ」

 

 なるほど。言われてみれば確かにそうですね。それにしてもここ、北養区のところ。何かあった気がする。なんだろう・・。

「あの、十七夜さん。この辺り、山の中なんですけどうわさってありませんでした?」

 

「いや、自分は知らないな」

 

「そうですか・・」

 

 気のせいかな?でもなんだか引っかかる。

「十七夜さん。さっき車両基地は危険な遊び場って言ってたけど、普通の子がいるなんてのはないのか?」

 

「17時を過ぎたら子供達は音楽とともに帰るからな、それに以前は夜になると不良が溜まっていたがマギウスの翼が現れてからは姿を見せなくなったな」

 

 時間になったので私達は車両基地へと向かう。

「ここが車両基地」

 

「今となっては老朽化した車両が放置されているだけだがな」

 

「・・・・何も反応がないですね」

 

 私は魔力反応を探ってみたけれど、何も反応はなかった。

「人の気配はおろか、魔法少女達の反応もないとはね」

 

 遊園地のオープンまで時間がなくなってきてるのに・・。

「くそ、空振りか」

 

「ふむ、考えにくいが新車両基地の可能性もあるな。自分が確認してこよう」

 

 そう言った十七夜さんは新車両基地へと向かっていきました。

「っ!魔法少女の反応!」

 

「魔女の反応もよ」

 

 今までこんな反応なかったのにいきなり3体もの魔女の反応が現れた。

「静かに燃える魔力の炎。飛び込んだのは五月蠅い羽虫」

 

「もしも燃えてくれぬなら、我らの音色で散らしましょう」

 

「深みにはまってくれたね月夜ちゃん」

 

「そうでございますね月咲ちゃん。今度こそ汚名を晴らし、功績を立てる機会でございます」

 

 どうやらあの双子さん達の仕業みたい。

「ここはうわさを知り過ぎた人が吸い込まれる蟻地獄」

 

「病院に向かった時点で命運は尽きたでございますよ」

 

「ウチらの拠点が知りたかったんだろうけど、残念ながら不正解だよ」

 

「とにかく今は魔女を倒さないと」

 

 私達はそれぞれ1体ずつ魔女を倒すことにして、それぞれ散会する。

「行くよアグモン!」

 

「うん!いろは!」

 

 アグモンを呼び出した私は、アグモンに進化の光を送る。

「アグモン進化!グレイモン!」

 

 今回はこの後にマギウスと戦う可能性もあるからなるべく温存して戦わないと。そう思った私は今回は究極進化させずにまずはグレイモンで戦ってもらうことにした。

「ハァァッ!」

 

 クロスボウから矢を連射すると、グレイモンもメガフレイムで魔女の放ってきた攻撃を焼き尽くしてくれた。

「ここで時間を食いたくない。一気に決めるよグレイモン!」

 

 グレイモンの頭に飛び乗った私は魔力を一矢に集束させてそれを一気に発射する。その矢は無数に分裂して魔女へと命中した。

「これでトドメだ。メガフレイム!!」

 

 そしてグレイモンのメガフレイムが直撃した魔女は、その攻撃で倒れると私は魔女の結界から元の場所へと戻った。

「みんな片付いたみたいね」

 

 どうやらやちよさんとガルルモンも問題なかったみたい。

「あぁ、これくらいの消耗はどうってことないよ」

 

 ももこさんとアグニモンも・・・。

「あれ?アグニモンの姿が・・・」

 

 アグニモンの顔をしてるのに背中に翼が生えてたり腕にアーマーが付いてたり、何だか違っていた。

「いろは達に見せるのは初めてだったな。今の俺はアルダモンだ」

 

アルダモン

・ハイブリッド体

・魔人型

・ヴァリアブル

 伝説の十闘士の力の全てを受け継ぎ、未知の能力を得る事で伝説を超えた火の能力を持つデジモン。獣の野生と人の知性を併せ持つことで、怒りや強雨を正義の力に変えて戦う魔神である。必殺技は両腕の超兵器ルードリー・タルパナからはなる超高熱弾の高速連射『ブラフマストラ』だ。

 

「ちなみにもう一段階進化を温存してるぞ。俺は」

 

 アルダモンはもう1段階進化もできると自慢げに言ってきたけど、悪いけど今はそんな事を気にしてる暇はないや。ごめんねアルダモン。

「あの2人から聞き出します。鶴乃ちゃんとうわさのこと!」

 

「そうはいかないでございます!」

 

「ここからが本番だよ!」

 

「「笛花共鳴!」」

 

 2人は笛の音色を共鳴させて強烈な音波攻撃を放ってきて、やちよさんとももこさんの身動きを封じてくる。

「「ジョグレス進化!シルフィーモン!!」」

 

「ここで確実に決めさせてもらうであります」

 

 テイルモンとアクィラモンをシルフィーモンにジョグレス進化させた月咲ちゃんと月夜ちゃん。するとシルフィーモンはさらに進化の光に包まれる。

「「シルフィーモン。究極進化!」」

 

「「ヴァルキリモン!」」

 

ヴァルキリモン

・究極体

・戦士型

・フリー

 伝承にも伝わる戦士型デジモン。黄金の鳥「フレイア」を連れており、身に危険が迫ると知らせてくれる。身に着けている輝く鎧からオーロラを発生させ、戦いで敗れた勇者のデータを再生し、新しいデジタマに還元すると伝えられている。必殺技は斬りつけると相手が凍りつき、生命活動が停止してしまう絶対零度の魔剣『フェンリルソード』と百発百中の矢『アウルヴァンディルの矢』だ。

 

 ジョグレス進化から究極体に進化もできるんだ。相手が究極体なら仕方ないや。

「こっちも究極体で行くよグレイモン!」

 

「させないよ!」

 

 私はグレイモンを進化させようとしたら、姉妹の同時攻撃を受けてデジヴァイスを落としてしまう。

「ゲットであります!」

 

 そして私のデジヴァイスが月夜ちゃんに回収されちゃうと2人はヴァルキリモンに指示を送る。

「「ヴァルキリモン!」」

 

「行け!フレイア!」

 

 ヴァルキリモンが黄金の鳥フレイアに指示をしたら、フレイアはグレイモンに向けて攻撃を仕掛けてくる。ヴァルキリモン本人の攻撃じゃないとはいえ、フレイヤもヴァルキリモンのデータの一部。攻撃力はそれなりにあってグレイモンは少しづつ追い詰められていく。

「グレイモン!」

 

 私はグレイモンを助けようと矢を連射したけれど身動きの素早いフレイアには当たらない。

「苦戦しているようだな」

 

「十七夜さん!すみません手を貸してください」

 

 戻って来た十七夜さん。私は十七夜さんに助けを求めるも・・・

「すまないな環君。少々見守らせていただく」

 

 十七夜さんは手を貸してくれず、しばらく戦いの行く末を見ていた。

「十七夜さん・・・いったいなんで・・」

 

 グレイモンはフレイアの攻撃に倒れてアグモンに戻ってしまい、私もマギウスの翼達に取り押さえられそうになってしまう。

「いろは・・くっ、こんな音、1つで・・」

 

「ぐぁっ!?」

 

 体の自由が聞かないやちよさん達。ガルルモンとアルダモンもマギウスの翼のデジモン達に取り押さえられてしまっていよいよもってピンチに陥ってしまう。

 

 鶴乃ちゃんを助けなきゃいけないのに・・・。

「なるほど。それが環君の本心か」

 

 私がマギウスの翼に捕えられそうになる瞬間、傍観していた十七夜さんが動いた。

「ハァっ!」

 

 十七夜さんが馬上鞭を振るって私を押さえつけるマギウスの翼を払い除けると、彼女のデジヴァイスから出てきたガオモンは月夜ちゃんに速攻をしかけ、私のデジヴァイスを取り戻してくれました。

「どうぞ」

 

「ありがとうございます。十七夜さん。ガオモン」

 

「試すような真似をして悪かったな環君。概ね嘘とは分かっていたが月咲君達に東の混乱に乗じて七海達がテリトリーを狙っていると忠告をされたのだ。・・・どうやら本当の目的は由比君の救出だったようだな」

 

 天音姉妹を睨みつけた十七夜さんはデジヴァイスを輝かせガオモンに進化の光を送る。

「ガオモン!ワープ進化!ミラージュガオガモン!」

 

 そしてガオモンをミラージュガオガモンへと進化させると、ミラージュガオガモンは目にも止まらない速度でヴァルキリモンを攻撃した。

「「くぁっ!?は、速い」」

 

 さらに十七夜さんは天音姉妹に攻撃を仕掛けて笛を叩き落とすと、音色が止んだことで身動きができるようになったやちよさん達が反撃を始めた。

「自分を相手にするというのなら心の底まで嘘をつけ!姑息な手段を覚えて先輩として情けない限りだ!」

 

「アグモン進化だよ!」

 

「アグモン!アルティメットゼヴォリューション!」

 

 アグモンにXに輝く進化の光を送ると、アグモンはウォーグレイモンX抗体に進化する。

「ウォーグレイモン!」

 

 ウォーグレイモンとミラージュガオガモンは2体がかりでヴァルキリモンに攻撃を仕掛けると、先ほどまでとは形勢逆転しヴァルキリモンは2体の同時攻撃に怯んで膝をつく。

「幾つか選択肢をやろう。その1、このまま自分にむざむざとやられる。その2、そのまま全てを吐いて楽になる。その3、尻を出してお尻ぺんぺんで許してもらう」

 

「その4でございます」

 

「十七夜さんも抑えて更なる功績を積んでみせる!」

 

 そう言った天音姉妹は十七夜さんに攻撃を仕掛けようとするもあっさりと返り討ちにあってしまう。

「5つ目の選択肢をやる。・・・自分の手元に戻って来い。もう少し、優しくしてやれるぞ」

 

「戻れ・・・ません」

 

「そうか。なら由比君の居場所だけでも吐いてもらう。口で言わなくとも心で語ってくれてもいい」

 

 十七夜さんは固有魔法である読心で2人の心から鶴乃ちゃんの居場所を聞き出そうとしてくれましたが、首を横に振りました。

「随分と雑念を混ぜてくれるな」

 

「絶対に言わない!これ以上失敗しないんだから!」

 

「殺すなら殺すでございます!」

 

「その心意気や良し。これ以上の追及はよそう」

 

「といいつつ、覗いたね?」

 

 黒羽根との戦いを終えたももこさんの言葉に十七夜さんは頷く。

「雑念だらけで容易ではなかったが抵抗することすら無意味だったようだ。・・・この2人は何も知らん。この拠点で待ち受けるだけの駒だったようだ」

 

 もう用済みと言わんばかりに天音姉妹を本気で叩き、気絶させた十七夜さんは変身を解く。

「だが1つ分かったこともある。この2人、うわさの内容こそ知らないようだが由比君の現状と居場所は把握していた」

 

「本当ですか!?」

 

「やや言いにくいことかもしれないが、由比君は洗脳されたままウワサを守るためにウワサの一部になっているらしい」

 

 ウワサの・・・一部?どういうこと?

「居場所は大東区の観覧車草原」

 

 鶴乃ちゃんがウワサになって、遊園地のうわさがあって、観覧車草原ってところに鶴乃ちゃんがいる。全部繋がっちゃう。

「やばいな。遊園地のうわさが鶴乃だとしたら・・・」

 

「遊園地に行く人達が鶴乃のウワサに取り込まれちゃう」

 




神浜デジモンファイルに
「和泉十七夜&ガオモン」
が登録されました。

次回「それなら黙ってないよ」


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それなら黙ってないよ

~さなside

 

 お揃いのコースター。みんなで買ってやちよさんにプレゼントして、チームの証になればいいなってそう思ってた。

 

 きっと私は自分も仲間の1人だってもう1つ、仲間の証が欲しかったのかもしれない。でも私がそれを壊しちゃった。洗脳されずに正気でいられたら・・・鶴乃さんは・・。

「だーーーーー!!」

 

「ふぇ、フェリシアさん?」

 

「もう待ってられっか!もういい勝手に行ってやる!」

 

 待つのが嫌になったフェリシアさんは家を飛び出そうとすると、やちよさんから電話がかかってきた。

「はい。分かりました。大東区ですね」

 

 やちよさんの話によるとウワサの一部にされてしまった鶴乃さんは大東区にある観覧車草原という場所にいるとのことです。

「フェリシアさん」

 

「おう!行こうぜさな!」

 

「鶴乃を助けるで!」

 

「必ズ、助ケましょウ」

 

 私達は急いで大東区へと向かい、突入前のいろはさん達と合流した。

 

 

~いろはside

 

 

「あの、段々と移動してるんです。遊園地に向かおうとする人達」

 

 さなちゃん達は合流するなり、すでに遊園地へと向かっている人達がいると教えてくれた。

「早過ぎる。開園は夜明けだぞ」

 

『徹夜する気かよ。思ったより時間が無さすぎる』

 

 時間がない私達は遊園地草原へと急ぎだす。

「でもそんなに危険なんですか?」

 

「マギウスと翼が勢ぞろいという可能性も捨てきれん」

 

「それってかなり不利なんじゃ・・・」

 

「羽根とはいえ積もれば山となる。下手をすれば吞まれるぞ」

 

「だけど羽根が集まる時間がない今なら間に合うわ」

 

 やちよさんの言う通り黒羽根や白羽根にだって私生活はある。それほど集まれないはずの今なら勝機はある。

「短期決戦上等だよ。どっちみちタイムリミットは夜明けって決まってるんだからな」

 

「っ!魔法少女の反応だ」

 

 魔法少女の反応が近いことに気づいたフェリシアちゃん。私達は警戒しながらも遊園地草原を進んでいく。

「たどり着けばウワサの結界に入れると思ったけど、入り口は他にあるようね」

 

「確かうわさの内容は観覧車が関係してましたし、観覧車が怪しいですね」

 

 私達は観覧車へと向かおうとした矢先、私達の行く道を白羽根、黒羽根達が塞いできた。

「予想してたとはいえ、結構な数でお出迎えだな。リロード!アグニモン!」

 

「しょっぱなからこいつ等だと、奥にはマギウスがいそうだな。ダブルスピリットエボリューション!」

 

 炎に包まれたアグニモンはアルダモンへと進化するとエネルギー弾を連射して道を切り開く。

「今だ!進め!」

 

 アルダモンが作ってくれたチャンスを逃さなかった私達はその道を進んでいくと、アルダモンだけがその場に取り残される。

「おい!とっととこっちこいアルダモン!」

 

「いや、ここは俺が抑えておくからももこ達は先に行け!」

 

 立ち上がる白羽根黒羽根達はデジヴァイスを取り出してデジモン達を呼び出してくる。

「ったく、無茶はするなよアルダモン!」

 

「あぁ!ある程度片付けたら追いつくって」

 

 片付けたら追いつくと約束したアルダモンにその場を任せて私達は先へと進んでいく。

「この辺りにウワサが・・・灯花ちゃん達だ」

 

 私はウワサが何処にあるのか気配を探っていると先に灯花ちゃん達の反応に気づいた。

「もう目の前ね」

 

「目の前っていうか頭上なんですケド」

 

 上を見上げるとそこには灯花ちゃんとアリナさん、そしてみふゆさんがいた。

「今回は静かに終わらせられるのと思ったのに」

 

「ワタシの責任です。申し訳ございません」

 

「ホントだよー。どうやって逃げたかは知らないけれどみふゆに任せたんだから反省してよね~」

 

「まぁどっかのピーヒョロ姉妹と違って初めてのことだし、それでギルティーってのはちょっと酷だヨネ」

 

「灯花ちゃんやめて!鶴乃ちゃんに酷い事させないで!」

 

「いーーやっ!」

 

 私は灯花ちゃんに鶴乃ちゃんに酷い事をさせないようお願いするも、灯花ちゃんは首をぷいっと横に向ける。

「やっぱり戦うしかないんだね」

 

「アグモン!ワープ進化!ブリッツグレイモン!」

 

 呼び出したアグモンをブリッツグレイモンへと究極進化させると、灯花ちゃんもデジヴァイスからエンシェントワイズモンを呼び出してくる。

「2通りの究極体がある君は実に興味深い存在だ。いいデータが取れることを期待しているよ」

 

「お前に取らせるデータなんてない!」

 

 ブリッツグレイモンはエンシェントワイズモン目掛けてサンダーバーニアを放つも、エンシェントワイズモンは鏡で異空間を作り出し、異空間の中にサンダーバーニアを吸い込ませる。

「だったらこれだ!プラズマステーク!」

 

 エンシェントワイズモンに電撃を纏わせたリボルバーで殴り掛かるブリッツグレイモン。その攻撃はエンシェントワイズに直撃して、エンシェントワイズモンは後退する。

「中々の威力だ。仮にも伝説である私をこうして後退させるとは・・・。では次にX抗体の方を見せてくれ」

 

「誰が見せてやるもんか!」

 

 ブリッツグレイモンはもう1つの究極進化のウォーグレイモンX抗体を要求されたけど、ブリッツグレイモンは見せる気はないともう一撃プラズマステークをエンシェントワイズモンに叩き込む。

「君の攻撃は確かに強力だ。スピードも速い。だが真っ直ぐ過ぎて対処しやすいというところが減点ポイントだな」

 

 だけどブリッツグレイモンの一撃はエンシェントワイズモンの扇に受け止められていた。

「とはいえ私はこういった直接戦闘はあまり得意ではないのでね。私のやり方で戦わせてもらうよ。・・・邪神召喚。エルダーサイン!」

 

 エンシェントワイズモンが足元に魔法陣を出現させたら、ブリッツグレイモンは咄嗟に距離を取る。するとその魔法陣からは名状しがたい邪神が現れた。

「さぁブリッツグレイモン君。君の火力でこの邪神を攻略するのは難しいはずだ。アルティメットゼヴォリューションせずにどう戦うのかな?」

 

「・・・どうするいろは?」

 

 このままじゃ勝てないと困り顔をしたブリッツグレイモンはこっちを見てくる。本当ならウォーグレイモンに究極進化させたいところだけど、鶴乃ちゃんを助けにいかないといけないからある程度力は温存しておかないといけないから、まだウォーグレイモンに進化はさせてあげられない。

「ごめんブリッツグレイモン。もう少し頑張って」

 

 今はブリッツグレイモンで頑張ってもらうしかない。そう判断した私は灯花ちゃんの方に向き直した。

 

 

~やちよside

 

「超進化!サイバードラモン!」

 

「超進化!ナイトモン!」

 

 いろはとブリッツグレイモンが里見灯花とエンシェントワイズモン。フェリシアとサイバードラモン、そして二葉さんとナイトモンがアリナとダークナイトモンを。そして残りの黒羽根白羽根を十七夜とももこ、ミラージュガオガモンが相手にしている中、私はみふゆと対峙していた。

「やっちゃん。よそ見はしないでください。今相手をしているのはワタシなんですから」

 

 私はみふゆの攻撃を受け止める。みふゆの相手をしている暇なんかないのに・・・。

「どきなさいみふゆ!フェリシアと二葉さんを助けてくれたのは感謝するけど、それとこれとは話が別よ」

 

「ワタシだってそのつもりです」

 

「そう。セァッ!」

 

「くっ・・・。ヤタガラモン!」

 

「応!」

 

 私は槍を振るうとみふゆはチャクラムでその攻撃を受け止める。するとヤタガラモンが私に向けて攻撃を仕掛けきた。

「させるか!」

 

 ワーガルルモンがその攻撃から私を庇ってくれると、私はその隙をついてみふゆに一撃を決め込む。

「ぐぅ・・・」

 

 以前のみふゆなら難なく防げたであろう一撃。それをみふゆは受けた。

「みふゆ、あなた魔力の減退とか関係なく・・・」

 

 本気じゃないわね。

「やっちゃん・・・どうか、このまま聞いてください。大元のウワサを消せば鶴乃さんは一緒に消えます」

 

「なっ・・!?」

 

それじゃいったいどうやって鶴乃を助ければ・・・。

「先に鶴乃さんについたウワサを剥がしてください。鶴乃さんと・・・心が通じていれば・・ウワサだけを剥がす事ができるはずです。ただ・・・ウワサの魔力も足されているぶん、少なくとも2人で」

 

 みふゆは鶴乃を救い出す手段を教えてくれるとヤタガラモンもやられたフリをするようにファルコモンに戻る。

「お願いやっちゃん・・・。鶴乃さんを・・うわさはゴンドラに」

 

「分かったわ。やぁっ!」

 

 私は本気の一撃でみふゆを気絶させるとワーガルルモンとともにゴンドラへと急ぐ。

「いろは!ブリッツグレイモン!こっちよ!」

 

「はい!」

 

 里見灯花とエンシェントワイズモンと戦ういろはとブリッツグレイモンにこっちにくるよう告げるも、ブリッツグレイモンはエンシェントワイズモンの召喚した邪神に道を阻まれる。

「おっと、行かせてやってくれないか」

 

 邪神を攻撃したのは白羽根黒羽根をある程度片付けた十七夜とミラージュガオガモンだった。

「十七夜さん!ミラージュガオガモンも!」

 

「こちらは任せて君達は先へ進め」

 

「お願いします!」

 

 十七夜とミラージュガオガモンに里見灯花とエンシェントワイズモンの相手を任せたいろはとブリッツグレイモンは私とワーガルルモンと一緒にゴンドラへと向かい、そこからウワサの結界へと突入した。

 

 

~ももこside

 

「も~。環いろはとベテランさんがウワサに入って行っちゃったよ~。どうしてくれちゃおっかな」

 

 プンプンと怒るマギウスの里見灯花。自分が相手をしていたいろはちゃんがウワサに向かってしまったと怒った反応をしていると、十七夜さんは武器の矛先を里見灯花に向ける。

「さて、自分も相手をさせてくれ。おガキ様」

 

「ガキじゃないよ~。くふっ、まぁいいよ~。どうせ倒し方を間違えたら仲間殺しになっちゃうだけだしね~。それよりもどうやってこの邪神を倒すのかにゃ~。いくら究極体でもそれなりの火力がないと倒せないよ~」

 

 エンシェントワイズモンの召喚した邪神はミラージュガオガモンだけでなく、白羽根黒羽根を倒し終えたアタシと十七夜さんにも攻撃を仕掛けてくる。攻撃は躱せないほどじゃないけど、観覧車と同じぐらいはありそうなサイズのそれだから、一撃でも喰らえば相当のダメージになりそうだ。

「フルムーンバスター!」

 

 ミラージュガオガモンは光線を放って邪神の触手を吹き飛ばしたけど、邪神は触手を瞬時に回復させてくる。再生能力まであるってことは一撃で吹き飛ばさないとダメか。

「十七夜さん!ミラージュガオガモンにあれを倒せそうな技ってある?」

 

「悔しいがミラージュガオガモンにアレを倒せるほどの火力はないな」

 

 どうやら今のが最大火力の技だったみたいで流石の十七夜さんにも焦りの表情が見えてくると・・・そこにアイツが飛んできた。

「ブラフマストラ!」

 

 アルダモンだ。

「アルダモン!」

 

 追い付いてくるなりブラフマストラで邪神を攻撃したアルダモンだったけど、その攻撃じゃ邪神に大したダメージは与えられていなかった。

「こうならしゃーない。アルダモン!とっておきを使うぞ!」

 

「あれだな!よしっ!どんと来い!」

 

 アタシはデジヴァイスを輝かせると、これまでに集めたデジモンのデータ。ゲンナイさん曰くスピリットっていうアイテムがアルダモンに飛んでいく。

「ハイパースピリット!エボリューション!」

 

 そしてそのスピリットを取り込んだアルダモンは更なる姿に進化する。

「カイゼルグレイモン!」

 

 炎から出てきたのは巨大な剣を背負う竜戦士。これがアタシらのとっておきだ。

カイゼルグレイモン

・ハイブリッド体

・竜戦士型

・ヴァリアブル

 前節の十闘士の力をも超えるとされる炎の能力を持つ超越種デジモン。大地を流れる九本の龍脈パワーを体内に宿しているとも言われ、計り知れない能力を発揮する。その力を制御するために龍の魂を封印しているといわれる龍魂剣を持つと言われる。必殺技は龍魂剣から炎を白光にまで極めた矢を放つ『炎龍撃』と大地に宿る八つの龍脈を放ち、自身が最後の龍となって敵を大剣で討ち砕く『九頭龍陣』だ。

 

 アグニモンの最強形態、カイゼルグレイモン。そのデータ量は究極体と同等かそれ以上はあるぞ。

「ほう、カイゼルグレイモンか。これは些か厄介な手合いが飛んできたね」

 

 自分よりもデータ量の多いカイゼルグレイモンの登場に流石のエンシェントワイズモンも少し驚いたみたいだったけど、それで攻撃の手を止めるアタシらじゃない。

「カイゼルグレイモン!一撃で決めちまえ!」

 

「あぁ!九頭龍陣!」

 

 カイゼルグレイモンは初手から最大の必殺技の九頭龍陣を放つと、八つの龍は邪神の動きを封じるように噛みついて、最後に九つ目の龍になったカイゼルグレイモンがその一撃で邪神を撃破した。

「どうだ!」

 

「むむ~」

 

「まぁカイゼルグレイモンが相手なら仕方ないさ」

 

 流石のマギウスも無警戒だったカイゼルグレイモンに邪神が倒されるとは思ってなかったようで悔しそうな顔をしていたけど、エンシェントワイズモンはカイゼルグレイモンなら倒せても仕方ないとあまり驚いてもいない様子だった。

「とはいえカイゼルグレイモンが相手となると私では相性が悪いね。灯花、デジモンの交代を進言するよ」

 

「そうだね~。誰がいいと思う?」

 

「ここは1つ、番長にお願いしてみるのはどうだろうか?」

 

「いいね!じゃあお願い番長さん!」

 

 里見灯花が呼び出したのは学ランを羽織ったレオモン系統のデジモンだった。

バンチョーレオモン

・究極体

・獣人型

・ワクチン種

 自分の信じる正義にのみ忠実に生きる獣人型デジモン。強豪との戦いに心を折られることなく勝利し続けたデジモンのみ『バンチョー』の称号を与えられると言われており、この称号を持つデジモンは5体しか確認されていない。自身の正義のみが仕える主であり、正義の障害になるものであればロイヤルナイツですら排除すべき敵となる。必殺技は極限まで研ぎ澄ました気合いを拳に乗せて放つ『フラッシュバンチョーパンチ』だ。

 

「断る!!!」

 

 バンチョーレオモンは出てくるなり里見灯花の命令に背いた。

「え~。なんで~」

 

「灯花。今お前のしている行動が『悪』だからだ。いくら魔法少女を救うために行動しているとはいえ、こんな悪事に俺は荷担せん」

 

「そんな~」

 

 これは・・・。もしかしたら話の通じる相手かもしれないな。説得すれば味方をしてくれるかも。

「とはいえ・・。ミラージュガオガモンにカイゼルグレイモンとは中々の手合いが揃っているじゃないか。せっかくだ。相手をしてもらおうか」

 

 もしかしたらと期待したけど、その考えは甘かったみたいで・・・バンチョーレオモンはその拳をカイゼルグレイモンとミラージュガオガモンに向けてきた。

 

 

 

~いろはside

 

「ここは・・・まるで遊園地みたい」

 

 ウワサの結界の中に入ると、そこは遊園地のような空間が広がっていた。

「みふゆが教えてくれたわ。ウワサから鶴乃を引きはがすには相当の魔力が必要になるの。既に向かってる人達の事を考えても、もう時間はないし、私達の魔力を考えてもチャンスは一度だけね」

 

「1つ付け加えるなら。鶴乃とともにウワサの一部となっているピヨモンを元に戻すにはそれ相応のデジソウルをぶつけるしかない」

 

「えっ・・?ゲンナイさん」

 

 振り返るとそこにはウワサの結界の中にも関わらずゲンナイさんがいた。

「ゲンナイさん。どうしてここに?」

 

「ももこ君から鶴乃君がウワサに取り込まれたと話を聞いてね。おそらくピヨモンも同じように取り込まれているものだと思ってアドバイスをしにきたのだよ。デジモンに関しては少なくとも君達魔法少女よりは詳しいからね」

 

 確かに私達よりも詳しいのは事実だろうけど・・・よくよく考えたらいったい何者なんだろうこの人?

「いろは。確かにこの人の事は気になるだろうけど・・・今は鶴乃よ」

 

「あれ?いろはちゃん!やちよししょー!」

 

 目先からスキップをしながらやってきたのはウワサの一部になっちゃった鶴乃ちゃん。その姿は髪が水色に変化していて目の色も変わっていた。

「その姿・・・本当にウワサに・・」

 

「ふたりとも。キレーションランドにようこそ~」

 

 私達の心配をよそに鶴乃ちゃんは遊園地にやってきたことを歓迎してくる。

「って開園前なのに来ちゃ駄目だよ。ふたりともせっかちだな~」

 

「鶴乃ちゃん!あのね!」

 

「ここはね、みんなでワイワイ楽しむよりも、みんなしてのーんびりするところなんだよ」

 

 鶴乃ちゃんがそう言った途端、妙な脱力感を感じた。これがここのウワサの効力なんだ。もし魔法少女じゃなく普通の人が入ってきたら一日と持たず生きる気力を無くしちゃうかも。

「何も考えずに済んで、悩みからも解放されるってとっても幸せでしょ?」

 

「ゲンナイさんは・・・大丈夫そうですね」

 

「私の事は気にするな。それよりも鶴乃君達をなんとかしたまえ」

 

 私ややちよさんどころか究極進化してるブリッツグレイモンすら脱力しそうになっているのに、ゲンナイさんは平気そうな顔をしていた。前から分かってはいたけれどやっぱりこの人も普通の人じゃなさそう。

「鶴乃ちゃん!ここから出よう!」

 

「そうよ!一緒に帰るわよ鶴乃!」

 

 私とやちよさんは一緒に帰ろうと呼びかけたけど、鶴乃ちゃんは首を横に振った。

「わたしはいいよ~」

 

「あなたの家は万々歳でしょ!」

 

「それに鶴乃ちゃんとピヨモンは私達のチームの一員なんだから」

 

「ううん。わたしは帰らない。だってここはわたしにとって楽しくて安心できるところだから」

 

「でもこのままじゃ鶴乃ちゃんとピヨモンは・・・」

 

「引っ張ってってでもここから連れて帰るわよ!」

 

 やちよさんがそう告げると鶴乃ちゃんは何処か悲しそうにデジヴァイスを取り出した。

「そっか。うん・・・。分かったよ。ふたりとも邪魔するんだ。遊園地の運営を邪魔するんだ。それなら黙ってないよ。ピヨモン」

 

「うん!」

 

 ピヨモンを呼び出した鶴乃ちゃんはデジヴァイスを激しく輝かせる。あの光、まさか・・・。

「究極進化の光だな」

 

「ピヨモン。ワープ進化」

 

 ピヨモンはバードラモンからガルダモンへワープするように進化をしていくと、4枚も翼がある黄金の鳥デジモンに進化した。

 




次回「ワイのジャスティス見せたるわ」


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ワイのジャスティス見せたるわ

「いろはちゃんにもししょーにも大人しくしてもらうから」

 

ホウオウモン

・究極体

・聖獣型

・ワクチン種

 黄金色に輝く4枚の翼を持った聖なるデジモン。全ての鳥型デジモンの長であり、神聖系デジモンを統べるものと言われている。神聖系デジモンの証でもあり、聖なるパワーを引き出す『ホーリーリング』を2つ持つことからホウオウモンの持つパワーが計り知れないことが理解できる。必殺技は神々しい4枚の羽を羽ばたかせて黄金色の粒子を降り注ぐ『スターライトエクスプロージョン』だ。

 

 ウワサとなっている鶴乃ちゃんはピヨモンを究極進化させてきた。

「鶴乃ちゃん・・・」

 

「あなた、本当にウワサなのね」

 

 私達は鶴乃ちゃんが繰り出してきた使い魔を相手に戦いつつも、ホウオウモンの相手もする。使い魔の攻撃を受ける度に脱力してしまいそうになって、戦う気力が削がれそうになる。

「ぐぁっ!?」

 

 そのせいでブリッツグレイモンも力を発揮しきれずにいて、ホウオウモンにほとんど一方的に攻撃をされてしまっていた。

「ダメ・・・。やちよさん、頭がフラフラしてきた」

 

「気力が削がれるとこんなに力が入らなくなるのね」

 

 正直立っているだけでも精一杯の私達は何とか気合いを入れて使い魔を倒して鶴乃ちゃんの前に立とうとする。

「そんなカッカしちゃだめだよふたりとも~。のんびりまったりだよ~。何も考えなくていいからね~」

 

 鶴乃ちゃん・・・。

「あっ、そうだ。これ、オープンしたら出そうと思っていたメニューがあるんだ~」

 

 使い魔にドリンクとフードメニューを持ってこさせたら・・・そのメニューは私達のマグカップに入ったドリンクと鍋だった。

「どうして遊園地で鍋なの?」

 

「だってのんびりと言えば鍋でしょ?」

 

「ふふっ、変なの。これじゃ、まるで・・・」

 

「みかづき荘みたいですね」

 

 それを見た私は確信する。

「のんびりしてちゃ駄目ですね。鶴乃ちゃん、帰りたがってる」

 

「そうね。外のみんなも長くは持たないわ」

 

 鶴乃ちゃんはみかづき荘に帰りたいと思ってくれている。そう確信した私達は気合いを入れ直す。

「やりましょうやちよさん!」

 

「えぇ。鶴乃を・・・」

 

「鶴乃ちゃんを・・・」

 

「「助ける!」」

 

 呪いを振りまくような存在にはさせない。コネクトを発動した私とやちよさんはありったけの魔力を込めた一撃を鶴乃ちゃんへ向けて放つ。

「鶴乃。あなたは最強の魔法少女なんでしょ?こんな事をしてたら駄目よ!」

 

「もし鶴乃ちゃんが魔女化のことで不安だったらみかづき荘のみんなでこれからを一緒に考えようよ!」

 

「アルティメットゼヴォリューション!ウォーグレイモン!」

 

「カイザーネイル!」

 

「ガイアフォース!!」

 

 ウォーグレイモンにX進化したブリッツグレイモンもワーガルルモンと一緒に必殺技を放ってホウオウモンを攻撃する。

「帰らない。消させない。見つけたんだから・・・安心できる場所を・・」

 

 鶴乃ちゃんは抵抗してきたけれど、私達の攻撃は確かに鶴乃ちゃんとホウオウモンに直撃した。

「心が通じていればウワサが剥がれる。・・そうなんだよね?」

 

「限界までぶっ放したぞ。鶴乃とピヨモンは?」

 

 ウォーグレイモンとワーガルルモンも全力の一撃を放ったからアグモンとガブモンに戻っちゃって、私とやちよさんも魔力のほとんどを使ってふらふらになりながらも倒れている鶴乃ちゃんとホウオウモンを確認しに行く。

「えっ?」

 

「嘘でしょ?」

 

 確かに全力の一撃を決めた。だけど私達の一撃で鶴乃ちゃんからウワサを剥がすことはできていなかった。

「ゲンナイさん!ホウオウモンの方は?」

 

「残念ながらウワサと思われるデータが分離していないようだね」

 

「そんな・・・」

 

 やっぱり失敗しちゃってたってこと?威力は十分にあった。ってことは・・・。

「鶴乃ちゃんと・・・心が通じあえてなかったの?」

 

「もしくはみふゆの言っていたことが嘘だったかね。どっちみち2度目をできる余力は残ってないわよ」

 

 私もやちよさんも次の一撃を魔力は残ってない。ガブモンは大丈夫そうに見えるけど、究極体に進化していたアグモンは消耗が激しくて、もう戦えそうにない。

「もし前者だったとしたら私達は鶴乃のことを・・・鶴乃とピヨモンの苦しみを理解していなかったことになるわ」

 

「いたた・・。ほんとに怒るよふたりとも」

 

 起き上がった鶴乃ちゃん。いったい鶴乃ちゃんは何を考えているの?

「やちよもいろはちゃんも無理しなくていいよ~。連れて帰ろうなんて考えなくていいんだよ?ここはわたしにとって楽で幸せな場所だから。気をもんだり悩んだりしなくていい。安心できる場所。それに今ので分かったよ。わたしにとって帰る場所はみかづき荘じゃないって」

 

「っ!その顔は・・・一年前と同じ・・」

 

 鶴乃ちゃんの顔を見たやちよさんは一年前のことを思い出したみたい。

 

 

~やちよside

 

「・・・・」

 

「どうしたの鶴乃?疲れて気が抜けちゃった?」

 

 1年前のある日も鶴乃は今のような虚ろな表情をしてた。その時は疲れて気が抜けちゃったもんだと思っていたけど・・・ここが鶴乃にとって安心できる場所だってのが本当なんだとしたら・・。

「鶴乃、あなたはあの時、気が抜けたんじゃなく安心していたの?」

 

 あの時は遊園地に行った帰りだったからただ遊び疲れてそんな表情をしているものだと考えた。

 

 あの日遊園地に行ったのもメルとウィザーモンがいなくなって、欝々としたチームを立て直したかったから。あの時の鶴乃はメルとウィザーモンがいなくなったことに薄々と気づいていて自分を責めながらも我慢していたのかもしれない。

 

 いや、それだけじゃない。どんな時も鶴乃はいつも笑顔で気を張っていた。だから一年前のあの日も同じ表情をしていたのね。遊園地という別世界で自分を解放していたから。

「間違っていた。鶴乃とピヨモンは辛かったんだ。・・・私が理解しなくちゃいけないのは最強を目指す鶴乃じゃない。何があっても明るく笑顔だけど、何処か傷ついてる。そんな鶴乃達だったのね」

 

「私も鶴乃ちゃんのこと、何も分かっていませんでした。出会ってからずっと優しいのが当たり前だって、そう思って。知らないうちに甘えていました」

 

「私もよ」

 

 こんなに付き合いが長いのに・・ね。

「ずっと私達。鶴乃ちゃんの明るさに頼りっぱなしだったんですね」

 

 そう、私達は頼ってしまっていた。それが間違いだったのよ。

「ごめんなさい鶴乃ちゃん。私、ずっと頼ってた」

 

「私もあなたのことをちゃんと理解していなかった。でもね鶴乃、私はあなたに帰ってきてほしい」

 

「私も、我儘かもしれないけれど鶴乃ちゃんに帰って来てほしいの!」

 

「ボクもピヨモンに帰ってきてほしいよ!」

 

「俺もだぜピヨモン!」

 

 私達は鶴乃とホウオウモンに帰って来てほしい意思を伝える。

「きっと私達、また鶴乃ちゃんに頼っちゃうと思う。だけどそのぶんこれからは鶴乃ちゃんも私達を頼って!」

 

「我慢しなくていいわ。強がらなくていいわ。気を張らなくていいから私達を頼って」

 

「みんなが手を取り合える。そんなチームにするから!私がいっぱい甘えたぶん、いっぱい甘えてよ鶴乃ちゃん!」

 

 いろはのその言葉に鶴乃は何処か嬉しそうに反応する。

「ありがとういろはちゃん。やちよ。だけどもう助からないよ。もう今の私はウワサの一部。帰りたいと思っても、ここにいたいと思ってる。いくらふたりの言葉に心が揺らいでもウワサとしての責務があるんだよ」

 

「鶴乃。帰って来て。私にちゃんと・・・謝らせて」

 

「・・・。ありがとうししょー。そしてありがとうございました。2人とも大切だからわたしがちゃんと見送るよ。きっとふたりは魔法少女を救う糧になってくれる。ホウオウモン」

 

 鶴乃はホウオウモンに指示を送って私達にトドメを刺そうとしてきたその矢先だった。

「んなことさせっかよ!」

 

「そうです!一緒に帰りましょう!」

 

 フェリシアとサイバードラモン。そして二葉さんとナイトモンが私達のもとへと駆けつけてきた。

「さな。今ならいける気がします。私に進化の光を!」

 

「うん!お願いアイちゃん!」

 

「ナイトモン!究極進化!ロードナイトモン!」

 

「スターライトエクスプロージョン!」

 

 さなの「守りたい」という強い意思に応えてロードナイトモンに究極進化したナイトモンはホウオウモンの必殺技を防ぎきる。

「フェリシアちゃん!さなちゃん!」

 

「あなた達、どうしてここに?」

 

 この子達はアリナとダークナイトモンと戦っていたはずよ。なのにどうしてここに?

「どうしてあなた達がここにいるの?あなた達はアリナと・・・」

 

「今はレナさんとかなでさんが相手をしてくれています」

 

 そう、あの2人が来てくれたのね。だけどあの2人のパートナーデジモンも完全体までが限度だったはず。だとすると外もそう長くは持たないわね。

「おい鶴乃!それとピヨ・・・ん?あのでかいのたぶんピヨモンだよな?まぁいいや。今度はオレ達が助けてやるからな!」

 

「無理だよフェリシア。やちよといろはちゃんでも駄目だったんだもん」

 

「ダメじゃねぇよ!オレだってな、鶴乃のことちゃんと理解するから!迷惑かけねぇから、だから帰って来いよ!オレ、オレもう誰かがいなくなるのは嫌なんだよ。・・だから!!」

 

「・・・伝わってくるでフェリシア。お前の正義。今のワイならきっと・・・」

 

「サイバードラモン!行くぞ!!」

 

「サイバードラモン!究極進化!」

 

 紫色に輝くデジヴァイスから進化の光を送るフェリシア。それに応えるようにサイバードラモンは進化する。

「ジャスティモン!」

 

ジャスティモン

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 長くなびく赤いマフラーをした正義のヒーロータイプのデジモン。正義感に熱く、不正な行為や悪行は絶対に見逃さないデジモンだ。背中に装備した『エクステンドトランスミッター』にある3本のプラグを右肩に差し替えることでパワータイプの『アクセルアーム』。電撃タイプの『ブリッツアーム』。カッタータイプの『クリティカルアーム』に変化させることができる。必殺技の『ジャスティスキック』は破壊力が45トンもあるぞ。

 

「いくで。ワイのジャスティス見せたるわ!」

 

 正義のヒーローのようなデジモン。ジャスティモンへと進化を遂げたサイバードラモンは仁王立ちをしながらホウオウモンを見上げる。

「フェリシアさん。私の力、受け取ってください」

 

 二葉さんは自身の魔力をフェリシアのハンマーに集束させる。

「いろは。私達も・・・」

 

「はい!」

 

 私といろはも残る力をフェリシアに集める。

「この4人の力を集めたハンマーでぶっ叩いて直してやる。万々歳のテレビだって叩きゃ直るんだ。鶴乃だって直るぞ!」

 

「酷いなぁフェリシア。でもいいよ。ぶっ叩いてよわたしを」

 

「いくでピヨモン。一撃で決めたるさかい、辛抱してな」

 

「今の私はピヨモンじゃなくてホウオウモンだよ。・・・失敗しないでね」

 

 鶴乃とホウオウモンは攻撃を受ける覚悟を決めてくれる。

「これからはオレ達を頼れよ!鶴乃ぉぉぉぉぉっ!!」

 

 フェリシアのハンマーに鶴乃が叩きつけるとジャスティモンは右足に力を集めて跳び上がる。

「いくで必殺!ジャスティスキック!!」

 

 ジャスティモンの必殺技。ジャスティスキックが炸裂すると、鶴乃とホウオウモンにダメージはなかった。

「やちよさん。鶴乃ちゃんから何か漏れて・・・」

 

 鶴乃からあふれ出てきたそれに触れると・・・鶴乃の記憶が垣間見えた。

 

 

~鶴乃side

 

「メルさんは魔法少女として立派に全うしたと思います。悲しいけれど鶴乃さんだけが責任を感じることじゃないんですよ」

 

 まだわたしが頼りないから本当のことを教えてくれないのかな。もっと頑張らなと。

「もう私に関わらなくていいの。チームは解散って言ったでしょ?」

 

 不安になっちゃ駄目だ。むしろ陰でししょーを支えないと。

「やちよさんにはほとほと愛想が尽きたよ。みふゆさんだっていなくなって当然だろ」

 

 ・・・大丈夫。みふゆと話して、やちよを説得すればももこだって・・。私が頑張ればなんとかなるよ。

「いつかういを見つけて家族みんなで暮らすんです」

 

 いろはちゃん、大変だな。わたしが先輩として力になってあげないと。

「こんなにメニューあるのかよ。おぼえきれねーよ」

 

 フェリシアも1人で生きていくなんて大変。わたしがフェリシアのししょーとして、勉強も仕事もおしえてあげないと。

「あの・・・あの・・」

 

 さなちゃん。まだ不安なんだろうな。ここはチームの潤滑油、由比鶴乃が居場所を作らないと。

 

私が頑張らなきゃ。不安になってる暇はない。なんてったってわたしは最強なんだから。みんなに幸せになってほしい。

「今度は私に・・・お返しさせてください鶴乃さん」

 

「いちいちんな心配すんなよな。オレだってもう万々歳の立派な戦力だろ?」

 

「ごめんね鶴乃。ずっと無理させちゃって」

 

「私、鶴乃ちゃんに頼ってもらえる。そんなリーダーになるからね」

 

 みんなの声が聞こえて、わたしは意識を取り戻した。

「鶴乃、大丈夫?」

 

「やちよ・・・?ごめんねみんな。すっごい迷惑かけちゃったよ」

 

「ごめんなさい」

 

 わたしとピヨモンはみんなに頭を下げる。

「いいわ。あなたの考えていたこと、分かっちゃったし」

 

「いやぁ、こう覗かれちゃうととっても恥ずかしいね。・・・あっ!それより急がないと朝にはオープンしちゃう」

 

 記憶が除かれちゃったわたしはもうすぐオープンしてしまうことを思い出す。

「あとはおおもとのウワサを消すことができれば・・・」

 

「でもどうやって探せばいいのでしょうか?」

 

「探す必要はないみたいよ。鶴乃っていうウワサの一部を持ち帰ろうとしてるんだもの。ウワサの方が黙っていないわ」

 

 向こうのほうからやってきた遊園地のウワサはわたし達に使い魔をけしかけてきた。

「よくも最強の魔法少女、由比鶴乃を弄んでくれたね!」

 

「この借りは返させてもらうよ!」

 

 わたしとピヨモンはやられたぶんをやり返すためにウワサに特攻を仕掛けようとしたんだけど・・・なんだか身体に力が入らなかった。

「うぅ・・・なんで力が・・・うわぁっ!?」

 

 ウワサに捕まってしまいそうになるところをロードナイトモンが庇ってくれた。

「大丈夫ですか?」

 

「うん。ありがとうロードナイトモン」

 

「鶴乃ちゃん。私達はチームなんだよ」

 

「頼れって言ってんだろ」

 

 いろはちゃん。フェリシア・・。

「そだね。・・・みんなで行こう!」

 

 わたしはひとりなんかじゃない。チームなんだ。

「ピヨモン。もう一回いける?」

 

「うん!もちろん!」

 

 まだ戦える様子のピヨモンにわたしは進化の光を送る。

「ピヨモン!ワープ進化!」

 

 そして進化の光から出てきたピヨモンはもう一度ホウオウモンに進化した。

「ホウオウモン!」

 

「いろは!ボクもボクも!」

 

「アグモンはもう限界でしょ。ここはみんなに任せて」

 

 アグモンも戦いたがっていたけど、究極体で戦い続けたアグモンは既にへとへとな様子でいろはちゃんに止められていた。

「いいなぁ。俺も究極体に進化できたらな~」

 

「・・・っ」

 

 ガブモンはホウオウモン達の事を羨ましそうにみた後、やちよのことをチラチラと見てたけど、やちよは恥ずかしそうに目を逸らしていた。そういえばやちよとガブモンだけみかづき荘チームの中で究極体になれてないんだよね。

「まぁ究極体には進化できたけど、体力的にもって1~2分ぐらいかな」

 

「だったら一発で決めればええやんか」

 

「そうですね」

 

 あと1~2分しか究極体を維持できないっていうホウオウモンに一発で決めればいいと提案したジャスティモンとそれに同意したロードナイトモン。そしたらジャスティモンとロードナイトモンが前に出た。

「ワイとロードナイトモンがあいつの動きを封じたるさかい、ホウオウモン。お前がかっこよく決めたれ」

 

「トドメは任せましたよ」

 

 ホウオウモンにそう言ったジャスティモンは腕のアームをパワータイプのアクセルアームに切り替えてウワサをガッシリと捕まえた。

「っと・・!」

 

 それから逃れようとしたウワサはジャスティモンとホウオウモンを攻撃しようとしてきたらロードナイトモンがその攻撃をガードしてくれていた。

「ベビーフレイム!」

 

「プチファイヤー!」

 

アグモンとガブモンも成長期のままだけど少しでも力になろうと戦ってくれている。

「ホウオウモン・・・。わたし、みんなを頼ってもいいんだね」

 

「うん。これからは私だけじゃなくみんなの手も借りて戦おう」

 

「そうだね。そうだよね。それじゃ決めちゃって!ホウオウモン!」

 

「任せて!スターライトエクスプロージョン!」

 

 ホウオウモンの必殺技がウワサに命中したら、ウワサが倒れてあとは結界が消えるだけになった。

「みんなごめんね。凄く迷惑かけちゃって」

 

「どうして謝るの?謝るのはむしろ私の方なのに」

 

「だって洗脳されてチームから離れたんだよ?」

 

「でもそのおかげって言えば不謹慎かもしれないけれど・・・鶴乃のことを深く知れた。それは良かったと思うわ」

 

「こんな形になっちゃったけど、私も鶴乃ちゃんのことを深く知れてよかったと思ってるよ」

 

 やちよ。いろはちゃん・・。

「これからは私達みんなで手を取り合ってチームで頑張っていこう」

 

「うん・・・っ!」

 

 いろはちゃん達となら・・・このチームでならどんな困難も乗り越えていける気がする。そう思っていたらピヨモンに戻ったホウオウモンが話しかけてきた。

「鶴乃。私達は最強コンビだと思ってたけど・・・ちょっと違ったんだね」

 

「そうだねピヨモン。わたしたちは・・・」

 

 わたしたちはきっと・・・チーム揃って最強なんだ。その事にわたしはようやく気付く事ができた。

 




次回「それだって乗り越えていけるんだから」


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それだって乗り越えていけるんだから

章と章の間で休むのと合わせて都合により2~3週休みます。


かえでside

 

「行くわよシードラモン!」

 

「シードラモン!超進化!」

 

 レナちゃんがシードラモンに進化の光を送ったら、シードラモンは完全体に進化をする。

「メガシードラモン!」

 

メガシードラモン

・完全体

・水棲型

・データ種

フォルダ大陸周辺の過酷な環境を生き延びたシードラモン種が、弱肉強食のデジタルワールドを生き抜くために進化した形態。体も一回り大きくなり、頭部を覆う外殻も強度を増し、頭頂部に稲妻型のブレードが生えている。必殺技は頭頂部のブレードから発する強力な雷撃『サンダージャベリン』だ。

 

「シードラモンの進化といえばメガシードラモン。定石通りだな。となれば究極体はメタルシードラモンと言ったところかな?」

 

 ダークナイトモンはレナちゃんのシードラモンの進化を見て究極体がメタルシードラモンだと予想してくる。

「お願いウッドモン!」

 

「ウッドモン!超進化!」

 

 ウッドモンも私のデジヴァイスから進化の光を受け取って完全体に進化をする。

「ジュレイモン!」

 

ジュレイモン

・完全体

・植物型

・ウィルス種

 ウッドモンが更に進化し、非常に高い知性とパワーを得たデジモン。樹海の主と呼ばれ、深く暗い闇に迷い込んでしまったデジモンを更に深みに誘い込む恐ろしいデジモンだ。必殺技の『チェリーボム』は頭部の茂みに生える禁断の木の実をあたえる技だ。甘い香りに誘われて、この木の実を口にすれば確実な死が待っている。

 

「ふむ、やはりウッドモンといえば完全体はジュレイモンか。となれば究極体の可能性はピノッキモンと考えるのが自然だな。それで?究極体にはならないのかな?暗黒とはいえ騎士は騎士。進化する時間は与えてあげよう」

 

「・・・・っ」

 

 あのダークナイトモンは究極体のデジモン。いくら2体がかりでも、究極体じゃない私達のデジモンじゃ勝ち目は薄い。だけど私とレナちゃんも今日初めて完全体に進化させたばかりだし、そう簡単に究極体になんてなれないよ。それにたとえ究極体になれたとしても、なんだか余裕そうな雰囲気をしてるし・・・どうすればいいのかな?

「あ、アンタなんか完全体で十分よ!」

 

「そうか、ならお望み通り相手をしてあげよう」

 

 槍を構えたダークナイトモンはメガシードラモンとジュレイモンに向けて槍を振るってくる。相手は1体だけで体もこっちの2体の方が大きいのに、2体ともダークナイトモンにパワー負けしちゃってるよぉ。

「どうしたんだい?先ほどの威勢はどこにいったのかな?」

 

「だ、黙りなさい!」

 

 レナちゃんもトライデントを振るってジェネラルのアリナちゃんに攻撃を仕掛けたけれど、なんだかデロっとした変な絵の具みたいなものに攻撃を止められちゃった。

「アリナの相手をしようなんてクレイジーだヨネ。全員でかかっても倒せるか分からないよ。ダークナイトモンは」

 

「そんな挑発になんか・・・」

 

「危ないレナちゃん!」

 

 レナちゃんが絵具みたいなのを浴びせられそうになったから私は木を操って壁を作ってそれを防ぐ。

「大丈夫レナちゃん?」

 

「ありがとうかえで」

 

「・・・ふむ。やはりそうか」

 

 珍しく素直にお礼を言ってくれたレナちゃんに私はちょっと笑っていたら、ダークナイトモンは私を見て何かに納得していた。

「かえで君と言ったかね。君、こちら側に来る気はないかい?」

 

「えっ・・・?」

 

 どういう訳か分かんないけどダークナイトモンは私をマギウスの翼に勧誘してきた。

「失礼ながら我が魔法で君の心の闇を見させてもらった。君はそちらのレナ君以上に『魔女化』について恐れている。それこそ他のマギウスの翼と同様にね。デジモンの進化はパートナーの心に反応してその進化を定めていく。ジュレイモン。君のパートナーの進化にはその心の闇が影響しているのには気づいているだろう?」

 

 私の心の中を見たっていうダークナイトモンは私の心の闇を見据えていて、ジュレイモンへの進化がその闇の影響だって伝えてきた。

「君の心の闇を晴らすにはそちら側にいては拭いきれないだろう。こちら側に来て、その闇を解放してしまおうではないか。そうすればきっと不安から解放されるぞ」

 

「わ、私は・・・」

 

 私は迷う。ダークナイトモンの言う通りマギウスの翼に入れば私の不安はなくなるかもしれない。フローラモンも闇の側面が強いジュレイモンなんかじゃなくてもっと別の進化の可能性にさせてあげられるかもしれない。

「君とフローラモンの可能性はそんなものではないはずだ。こちら側においで」

 

「・・・・」

 

「かえで!アンタ・・・!!」

 

「・・・離してレナちゃん」

 

 私はダークナイトモンの言う通り向こう側に行こうとしたらレナちゃんが私の右手を掴んだ。

「アンタまさか本当にあっちに行く気じゃないでしょうね?」

 

「でもあっちにいけば魔女にならずに・・・」

 

「馬鹿!!」

 

 そう言いながらレナちゃんはバシンと私の頬を叩いてきた。

「痛いよぉ。何するのレナちゃん」

 

「アンタこそ何をしようとしてるのよ。マギウスの連中がどんな奴らかってことぐらい分かってるでしょ?」

 

「分かってるよぉ。でもぉ・・・」

 

「でもじゃない!確かに魔女になるのは私も怖いわ。だけどももこも言っていたらしいじゃない。ももこもいるし私もいる!フローラモンだっているのに魔女になっちゃうなんて諦めてるんじゃないわよ!」

 

「レナちゃん・・・!」

 

レナちゃんの言葉で私は正気に戻るとダークナイトモンはため息をつく。

「せっかく魔法で心の闇を肥大化させてこちらの仲間にしようとしてあげていたのに、まったく無粋な真似をしてくれるね」

 

「無粋なのはどっちよ!かえでの心を操ろうとするだなんて。もうあったまきた!絶対ぶっ飛ばしてやるんだから!!」

 

 頭にきたと宣言したレナちゃんはメガシードラモンと一緒になってダークナイトモンに挑んでいく。そしたらレナちゃんのデジヴァイスが水色に光出した。

「メガシードラモン!究極進化!」

 

 その進化の光を浴びたメガシードラモンは更にもう一段階・・・究極体に進化をした。

「ギガシードラモン!」

 

ギガシードラモン

・究極体

・サイボーグ型

・データ種

 メタルシードラモンの開発は成功を収め、水中では最速の移動スピード。最強の迎撃の能力を発揮している。クラックチームは更に勢力を拡大するため広大なネットの海をカバーする航続能力を持ち、制海能力を有する超大型デジモンを極秘裏に製造した。必殺技は口部の大砲から発射するエネルギー魚雷『ギガシーデストロイヤー』と背部の発射口から掃射される無数の対空エネルギー弾『スカイウェーブ』だ。

 

「ギガシードラモン。そちらの方だったか。予想は外れたな」

 

 予想は外れたけどあまり驚いていないダークナイトモンはギガシードラモンの体当たりを受け止める。

「今だよジュレイモン!」

 

「ジュレイモン!究極進化!」

 

 ジュレイモンに攻撃のチャンスだよって指示を送ったら、私のデジヴァイスも黄緑色に光ってジュレイモンが究極進化をする。

「ピノッキモン!」

 

ピノッキモン

・究極体

・パペット型

・ウィルス種

 呪われしジュレイモンの身体から作り出された究極体のパペットデジモン。凶悪なハッカーの手によってジュレイモンのデータからピノッキモンを作り出したと言われている。操り人形な見た目をしているが、自らの意思で動くことができる。必殺技はリボルバー型のハンマーに火薬を詰めて叩きつける『ブリットハンマー』だ。

 

「ブリッツハンマー!」

 

 ジュレイモンよりかなり小柄なピノッキモンに進化したら、ピノッキモンは手にしているハンマーでダークナイトモンを叩いた。

「やはり君の究極体はピノッキモンだったか!パートナーの内に秘める闇の現れだな!」

 

「ダークナイトモンの言う通り確かに私の心には闇があるよ」

 

 私は認める。私の心に闇があることを。

「だけど私にはレナちゃんとももこちゃんがいるもん。だから・・・」

 

 魔女になるかもしれないことはもちろん怖いけど・・・。

「みんながいてくれるなら、それだって乗り越えていけるんだから!」

 

植物を操ってダークナイトモンの手足を縛りつけたら、レナちゃんがダークナイトモンの持つ槍を弾き飛ばす。

「今よ!ギガシードラモン!」

 

「決めちゃって!ピノッキモン!」

 

「スカイウェーブ!」

 

「もう一回!ブリットハンマー!」

 

「ぬぅっ!?」

 

 ギガシードラモンとピノッキモンの必殺技に吹き飛ばされたダークナイトモンはようやく膝を付いてくれたら、砂埃を掃いながら立ち上がった。

「ふむ、今のは聞いたよ」

 

「何よ。余裕そうな反応しちゃって・・」

 

「こっちはもうジリ貧なのに・・・」

 

 レナちゃんもギガシードラモンもだいぶ疲れてるみたいで息を切らしていたら、ダークナイトモンはゆっくりと歩いて槍を拾い上げた。

「いやはやここまで苦戦させられたのは久しぶりだよ。そのお礼に・・・本気の一撃で葬ってあげよう」

 

 目を赤く光らせたダークナイトモンは本気の必殺技を放とうと槍を夜空に掲げる。

「喰らうがいい。デットリーブレイクロスト」

 

 ショルダーのブレードと槍を合体させたダークナイトモンはその大鎌を振るってX字の斬撃を飛ばしてきた。

「っ・・・!」

 

 私達は「避けられない」そう思って目を瞑ったんだけど・・・私達に攻撃は届かなかった。

「大丈夫ですか皆さん?」

 

 私達の前にいたのはさなちゃんのパートナーデジモンの究極体。ロードナイトモンだった。

「ほう、ロイヤルナイツとは随分と骨のありそうな相手がきたものだ」

 

「ワイもおるで!!」

 

 ダークナイトモンに横から殴り掛かったのは正義のヒーローみたいなデジモンだった。声的にフェリシアちゃんのパートナーのモノドラモンの進化・・・だよね?私はデジヴァイスでデータを確認してみたらジャスティモンっていう究極体のデジモンだった。

「ってことは・・・」

 

「お、お待たせいたしました」

 

 後ろを振り返ったらそこにはウワサを倒して鶴乃ちゃんと一緒に帰って来たいろはちゃん達がいた。

「あら?もしかしてその2体って・・・」

 

「ギガシードラモンとピノッキモン。ベタモンとフローラモンの究極体です」

 

「そう。あなた達のデジモンも究極体になったのね。流石に先を越され過ぎてるわね」

 

 やちよさんのガブモンはまだ究極体になれてないらしくて、やちよさんは少し焦ったような顔をしてたら、ダークナイトモンは私達からいろはちゃん達に視線を向けた。

 

 

 

~いろはside

 

「ほう、由比鶴乃をウワサから解放することに成功したのか。どうするアリナ?」

 

「どうするも何も、計画がメチャクチャにされてバッドな気分なんですケド」

 

「これでウワサに巻き込まれた人達は無事だよね。灯花ちゃん」

 

「・・・そうだね。本当に腹が立つよ。ムシャクシャするよ。集めたエネルギー全部使って、原子レベルまで分解したいよ」

 

「灯花。気持ちは分からんでもないがそれは駄目だぞ」

 

「分かってるよ」

 

 私達に計画を破綻にされた灯花ちゃん達は露骨に不機嫌になっている。

「今回うまくいけば全部終わり。マギウスみんなで揃ってお祝いだったのになぁ~」

 

 マギウスみんなで?この場にいるマギウスはもう1人いるってこと?

《ねぇねぇ知ってるこのウワサ》

 

《君は知ってるこのウワサ?》

 

《キレーションランドのそのウワサ》

 

《のんびり、ダラーっとハッピーになれちゃう。ストレスフリーなテーマパークがオープンするの》

 

《帰りたくなくなるの間違いなしで、ずーっといられちゃう》

 

《だけど満員の時はアテンションプリーズ》

 

《出たくない人はこの世から退場させられるって神浜市の人の間ではモッパラのウワサ》

 

《まぁイイジャーン》

 

「ウワサさん。もうそのウワサは消滅したよ」

 

 今の聞き覚えのある声・・まさか。

「あっ、ねむ来たんだね。もう動いて大丈夫なの?」

 

「問題なしといえば嘘だけど、祝いの席だと思って来てみた。だけど蓋を開いてみれば、惨事の惨事の大惨事。まさか僕の命がまた1つ消されているとは衝撃だよ」

 

「ねむちゃん・・・」

 

 予想はしていたけど、やっぱりもう1人のマギウスはねむちゃんだった。

「初めまして環いろは。僕の名前は柊ねむ。随分と僕のことを嗅ぎまわっていたみたいだね。会いに来たのが今になったのは謝罪するよ」

 

 ねむちゃんも私の事、覚えていないみたい。

「ウワサを作るのは僕にとっても命を使うのと同じようなものでね、随分と疲労が蓄積して動けなくなるから、こうして顔を会わすのが遅れたんだよ」

 

「ホントみんな酷いよねー。時間がない中、ねむが命を削ってまでウワサを作ったっていうのにさ」

 

「ここまで来ればむしろイイと思うんですケド。アリナ的にはもう気兼ねする必要ないし、気を遣うことなくフリーダムにやっちゃえばいいヨネ」

 

「今回で解放に必要な概ねのエネルギーは確保できる想定だったけど、秘密裏に動いても駄目で、素直に動いても駄目なら、あとはもう僕達としても身勝手に動くしかないよ」

 

 本当にねむちゃんが神浜のウワサを作ってたなら、それなら私がうわさを知っていたのはねむちゃんがうわさを作ってるところに私自身がいたからだ。

「それよりもっと建設的な話をしようよ」

 

「この後に及んでまだ譲歩するワケ?」

 

「譲歩じゃないよ。相互理解を促すんだよ。それができれば無用な争いがなくていい。だから僕達の目的、解放の手段。その共有ぐらいはしても損はないはずだよ」

 

「うん。そーだね。マギウスの目的を果たすための方法を教えるよ。もしかしたらこれまでのことも納得できるかもしれないしね」

 

「きっとできないと思うけど、聞かせてもらおうかしら」

 

 やちよさんはきっと理解できないと言いつつも話を聞く姿勢になる。

「わたくし達の目的はね、魔法少女を解放すること。それはもう知ってるよね。その基礎となる部分はもうこの神浜市でできてるの。邪魔なキュゥべぇはいないし、魔女化だってしないでしょ?それって理想的だと思わないかにゃ?ソウルジェムが壊れること以外はなーんにも怖くないんだよ?だからわたくしはね、それを世界中に広げてあげたいと思っているの」

 

「目的は分かったけど。それじゃ説明になってないな」

 

「どういう理屈で魔女とウワサが必要なの?」

 

 ガブモンは説明になってないことを指摘したら、今度はピヨモンが問いかける。

「わたくし達が魔女とウワサを使うのはエネルギーが欲しいからだよ。ウワサで神浜の人達が悲しんだり喜んだりして、発生させる感情エネルギー。魔女が蓄積してたり、魔法少女が魔女化する時に発生させる感情エネルギー。魔法少女がデジモンに進化の力を与える時の感情エネルギー。それらの感情エネルギーをたっくさん使ってね、みんなの解放に繋げるんだよ」

 

「集めたエネルギーはアリナ達が作っているアートワーク《エンブリオ・イブ》の孵化を促すんだヨネ」

 

「そしてエンブリオ・イブの孵化と同時にマギウスとそのパートナーデジモン達が揃っていれば僕達はこの神浜という地から世界に向けて、奇跡を起こすことができるようになるのさ。実現すれば前代未聞。独立を勝ち取るようなもの」

 

「そう!キュゥべぇという存在から独立した人類は宇宙に認められる。そうすればわたくしは人類が何万年かけても知ることのできないような宇宙のすべてを知ることができるかもしれないんだよ」

 

「僕は神浜だけじゃない。この地球そのものを原稿にして、あらゆる創作物を具現化できる」

 

「アリナは自分のアートワークを永遠に生の象徴として君臨させて、次は宇宙規模のアートにソウルを委ねるワケ」

 

「もちろん魔法少女は救われてみーんなハッピーハッピーだよ」

 

「フラッシュ!バンチョーパンチ!!」

 

「グァっ!?宇宙に認められる?話が飛躍しすぎだろ?」

 

 バンチョーレオモンに殴り飛ばされてきたカイゼルグレイモンは一応話は聞いてたみたいで飛躍しすぎだと愚痴る。

「色々聞きたいことはあるけど質問は1つでいいわ。・・・そんな高尚な思想を持つあなたがどうして人間を利用するの?」

 

 やちよさんは1つだけ質問をすると灯花ちゃんは「なんだその事か」と口を開いた。

「魔法少女より価値のない人を先に使う方がいいでしょ?物事にはリスクがあるんだから、使えるものは使わないと」

 

 灯花ちゃん達は人の命をなんだと思ってるの?

「最初からこの質問だけでよかったわ」

 

 やちよさんもその答えに呆れたようだ。

「記憶のことを置いておいても、私の好きな灯花ちゃんやねむちゃんだったとしても、それは駄目だよ。いくら考えられた方法でも、みんなを救いたかった方法だとしても、やっちゃいけないことはあるよ」

 

「いろは・・・」

 

「アグモン!アルティメットゼヴォリューション!ウォーグレイモン!」

 

 私のデジヴァイスが輝いてアグモンはもう一度ウォーグレイモンに究極進化する。別に進化させるつもりはなかったけど、私の意識にデジヴァイスとアグモンが反応しちゃったみたい。

「2人共自分の家族をそうやって殺してもいいの?」

 

「・・・みんなも同じ考えなの?」

 

 ちょっと考えた灯花ちゃんは他のみんなにも同じ考えなのかを尋ねる。もちろんみんな同じ考えだ。

「いいよいいよ。説明して損しちゃった。行こうねむ、アリナ!」

 

 灯花ちゃん達は私達に背を向けようとすると、灯花ちゃんは何かを思い出したかのように振り返る。

「あっ、言い忘れるところだったよ。これで決めちゃったから、もう手段は択ばないからね」

 

 そう言い残した灯花ちゃん達はみふゆさんの固有能力で姿を消して、この場から去って行ってしまった。

「ところでさ、なんでお前ここに残ってんの?」

 

 カイゼルグレイモンはしれっと隣に立ってるバンチョーレオモンに視線を向ける。

「言っただろう?今の灯花達のやり方は悪だと。俺は悪事に荷担する気はない」

 

「嘘つけ!さっきのパンチとか本気だったじゃん!荷担する気はないんだったら本気で殴らなくても良かっただろ!メッチャクチャ痛かったぞ!」

 

「何を言う!漢の喧嘩は常に命がけ!本気で殴り合わんで何が漢だ!」

 

「えぇ・・・はぁ、もういいよ」

 

 呆れるカイゼルグレイモンはため息をつくとアグニモンに戻り、ウォーグレイモン達も警戒態勢を解いてアグモン達に戻った。

「と、とにかく・・・バンチョーレオモンも私達に協力してくれるってことですよねね?」

 

「まだ協力はせん。確かに灯花達は悪だが、お前達の行動が正義だとも限らんからな」

 

「そんな・・・」

 

「だから見極めさせてもらう。協力するか否か、決めるのはそれからだ」

 

 

 そう言い残したバンチョーレオモンは私達に背を向けて何処かへと去って行ってしまいました。

「あれ?そういえばゲンナイさんは何処に行ったんだろう?」

 

「いつの間にかいなくなってたね」

 

 あの人はいつもパッと現れてパッと消えちゃうよね。

「あの人もたぶん普通の人間じゃないし平気さ」

 

 たぶんだけどガブモンはゲンナイさんが何者なのか気づいてるのかもしれない。かくいう私とやちよさんも少なくとも私達の知る『人間』じゃないことには気づき始めていた。

 

 

 

 その後私達はそれぞれ解散して、チームみかづき荘の面々は無事全員みかづき荘へと帰ってくることができました。

「徹夜になっちゃったけど、朝ごはんにしましょうか」

 

「その前にやちよさん。ちょっといいですか?それに鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんも」

 

「っ!とうとうこの時が!」

 

「やっとだな!」

 

「さなちゃん。持ってきて!」

 

「はい!」

 

 さなちゃんは部屋から例のものを・・・みんなで選んだコースターを持ってきてくれた。

「これ、コースター?」

 

「えへへ、ボク達のぶんもあるんだよ」

 

「本当はもっと前に渡せるはずだったんですけど・・・」

 

「オレ達のチーム!」

 

「チームみかづき荘の証だよ!」

 

 私達5人とそれぞれのパートナーデジモンのぶんも含めて合計10個のコースター。それを見たやちよさんとガブモンは笑顔になる。

「こんなものまで用意してくれて、みんなありがとう」

 

「ずっと内緒にしてたのかよ。やちよはともかく、俺には別に言っても良かっただろ~」

 

「ガブモンは口が軽そうやからなぁ」

 

「そうだよね。ガブモンは口が軽いよね」

 

「デスよネ」

 

「なんだよなんだよ。みんな揃ってさ。なぁ、アグモンは・・・」

 

 ガブモンはアグモンに期待するような視線を送ってたけど、アグモンは運ばれてくる朝食に夢中でその期待に気づくことはなかった。

「アグモ~ン」

 

「じゃあさっそくこのコースターを使いましょうか」

 

 やちよさんはみんなのマグカップにドリンクを煎れてコースターの上に置く。

「では僭越ながら最強の魔法少女、由比鶴乃が・・・」

 

「かんぱーい!!」

 

「ふぇぇりぃぃ!?」

 

 鶴乃ちゃんが乾杯を言おうとしてたら、フェリシアちゃんが乾杯の号令を言った。

「ふふっ、乾杯!」

 

 私達はようやくここでチームみかづき荘として再結成できた。それを祝って私達は乾杯をした。

 




次回「キングへのロードが止められるわけねぇだろ」


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キングへのロードが止められるわけねぇだろ

番外編の予定でしたが、予定を変更して8章に突入することにしました。


~まどかSide

 

 マミさんがウワサに操られているかもしれない。そのウワサは心が通じ合っていれば引き剝がすことができる。

 

 そんなメッセージをいろはちゃんから受け取った私たちはここ見滝原で神浜の魔女を倒しながらもその真意を確かめるために、ほむらちゃんの推測した私たちの足止めをしているマギウスの翼を探していた。

「くそっ、また魔女かよ!いったい何体倒せば収まるんだ?」

 

 さすがのシャウトモンも1日で10を超えるほどの魔女の相手をさせられたら愚痴をつぶやいてしまう。

「愚痴る気力があるならまだ戦えるでしょ」

 

マーメイモンも相当疲れてるはずなのにシャウトモンにそう言い返すと、シャウトモンは無理やりにでもやる気をだして立ち上がる。

「しゃあねぇな。おいまどか!ドルルモンとデジクロスだ!」

 

 シャウトモンはドルルモンとのデジクロスを要求してきたので、私はドルルモンを呼び出す。

「まだいけるかシャウトモン?」

 

「俺を誰だと思ってやがる。未来のデジモンキングだぜ」

 

 ドルルモンの問いかけに当然だと答えたシャウトモン。私はシャウトモンとドルルモンをデジクロスさせて、シャウトモンはドルルモンがデジクロスした武装の、ドルルキャノンを構えた。

「食らいやがれ!ドルルキャノン!」

 

 シャウトモンのドルルキャノンは魔女に命中して本日11体目の魔女を撃破する。

「ほかの反応は・・・ないね」

 

「ようやくひと段落ついたか~」

 

疲れたとその場に座り込んだシャウトモンとさやかちゃん。そしたら私はさらなる魔力の反応を感じ取った。

「っ!まさかまた魔女が!」

 

 さやかちゃんはまた魔女が現れたのかって慌てて立ち上がったけど・・・この反応は魔女じゃない。

「この反応・・・魔法少女だ」

 

「アタシ達のピンチを知って誰かが来てくれたとか?」

 

「行ってみよう」

 

反応の正体が魔法少女だということに気づいた私はみんなと一緒にその魔法少女の反応がした場所へと向かっていく。

「しまったっ!?見つかったか」

 

 そこにはマギウスの翼の人たちがいた。もしかしたらこの人たちが私たちの足止めをしていたのかもしれない。

「見つけた!マギウスの翼だ!」

 

「お話、聞かせてもらいますよ」

 

 さやかちゃんとほむらちゃんは即座に臨戦態勢となった瞬間だった。

「そんなことさせないわ」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。そこにいたのはなんといつもの魔法少女姿とは違う、さやかちゃんが見たって言ってた変身したマミさんだった。

「私の仲間に危害を加えようとするなら、いくらあなた達でも容赦しないわよ」

 

「マミさん・・・!」

 

「今回、見滝原に神浜の魔女を連れてきたのは私」

 

「うそ、マミさんがそんなことをするはず・・・」

 

「私には責任があるの。あなた達を魔法少女の世界に巻き込んでしまった責任がね。だからこれ以上あなた達を巻き込むわけにはいかないの。このまま見滝原で大人しくしていなさい。そうすればマギウスが救ってくれるわ」

 

 マミさんは私達を巻き込まないために魔女を見滝原に放ったと告げてきた。

「お願い。わかるでしょう?」

 

「わからない。わからないです。見滝原のみんなが魔女のせいで不幸な目にあったとしてもいいんですか?」

 

「そうは思わないわ」

 

「でもそれがマギウスのやり方です!」

 

 私はマギウスのアリナって人のやり方を知っている。だからこそこれが正しいとは思えなかった。

「これは必要なことなの。救いのために必要なことなのよ」

 

「でも見滝原で戦うのは魔女化の可能性もあるってことなんですよ。それを分かっていてほかの人たちも連れてきたんですか?私達が魔女になってもよかったんですか?」

 

 ほむらちゃんはほかのマギウスの翼の人たちもここでは魔女化の可能性もあることを告げたら、マミさんは首を横に振った。

「そんなわけない。そう、魔女になんてなっていいわけない」

 

「だったらわかるはずです!マギウスは・・・」

 

「そう。マギウスだけが救いなの。わかったでしょ?魔女化しない街を作ったのはマギウス。これこそ救いなのよ」

 

 そんなの。そんなの絶対違うよ。

「マミさんにひどいことをさせたマギウスが救いなはずない!お願いしますマミさん!戻ってきてください!私たち、どんなマミさんだって受け止めますから!」

 

「ダメだな。奴さんはこっちに聞く耳をまるで持ってないぜ」

 

 シャウトモンの言う通りマミさんはこっちの話をちゃんと聞いてくれてるようには感じられなかった。

「ナニコレ?マミを迎えに来たらサイッコーのシチュエーションなんですケド」

 

 そこに現れたのはアリナさんとダークナイトモンだった。

「会いたかった人との再会はどんなワケ?悲しい?怖い?憎い?エモーショナルでハートが締め付けられるんですケド」

 

 何を言ってるのこの人?

「ほむら、何こいつ。やばい系の人?」

 

「う、うん。そうだと思う」

 

「相変わらずワケのわかんねぇこといいやがって。やるならやってやるよ」

 

 疲れているはずのシャウトモンだけどダークナイトモンを見るなりやる気を見せる。

「いいだろう。幸い時間には余裕があるので少しばかり相手になってやろう。先日勧誘に失敗してね。ちょうど憂さ晴らしをしたい気分だったのだよ」

 

「後悔すんなよ!まどか!X5だ!」

 

「うん!デジクロス!」

 

「シャウトモンX5!」

 

 シャウトモンはシャウトモンX5にデジクロスして剣を振るうとダークナイトモンは槍でその刃を受け止める。

「ほう、更なるデジクロスを手に入れたか。ふむ・・・確かにこれは究極体と同等の力を得たとみていいだろう」

 

 ダークナイトモンはあくまでも冷静にシャウトモンX5の戦力を分析してくる。シャウトモンX5は今の私たちの最高戦力なのに、それでもダークナイトモンは表情を崩さない。

「しかしまだ私を倒すには足らんなぁ!」

 

「ぬぉっ!?」

 

 押し負けたシャウトモンX5はその場に膝をついたらダークナイトモンは目を赤く輝かせて突きかかってくる。

「あっぶねっ!」

 

 それを回し蹴りではじいたシャウトモンX5はすぐさま空に飛びあがって距離をとる。

「足癖が悪いなぁ。紳士のする行為ではないぞ」

 

「あいにく俺は紳士じゃなくてキングを目指してるもんでね」

『姉御!あたし達も!』

 

「うん!お願いマーメイモン!」

 

「グレイモン、メイルバードラモン。デジクロス!」

 

 さやかちゃんはマーメイモンを呼び出して、ほむらちゃんはグレイモンとメイルバードラモンをデジクロスさせて、メタルグレイモンにする。

「3対1なら!」

 

「私もいることを忘れていないかしら?」

 

「デッカードラモン!究極進化!イージスドラモン!」

 

 マミさんもデッカードラモンを呼び出したらすぐさまハイビジョンモニタモンとデジクロスをさせて、イージスドラモンに究極進化をさせてくる。これで究極体が2体。圧倒的に私達のほうが不利な状況になっちゃった。

「デッドリーブレイクロスト!」

 

「パワーウォーター!」

 

「あぶねぇ!!」

 

 2体の究極体の必殺技から私達をかばってくれたシャウトモンX5はデジクロスが解除されちゃう。

「シャウトモン!?このぉ!!」

 

 マーメイモンは単身でイージスドラモンに攻撃を仕掛けるけど、装甲の堅いイージスドラモンは傷一つつかない。

「下がりなさいマーメイモン」

 

 イージスドラモンの尻尾に弾き飛ばされたマーメイモン。必殺技を受けてないだけマシだけど、究極体の一撃を真正面から受けたんだからそうすぐには立ち上がれないと思う。

「戻ってマーメイモン!」

 

 さやかちゃんはマーメイモンをデジヴァイスに戻したら、ダークナイトモンはメタルグレイモンに視線を向ける。

「残すは君達だけだね。どうしたんだい?かかってこないのかい?」

 

「舐めるな!!」

 

 メタルグレイモンも果敢にダークナイトモンに挑んでいくけど、あっさりとあしらわれちゃった。

「たとえ究極体と同等の力を得ようと、私は究極体のX抗体。究極の1段階上に到達している身だ。君達とは格が違うのだよ」

 

「格が違うだぁ?それがどうした?そんなもんで俺のキングへのロードが止められるわけねぇだろ?」

 

 立ち上がるシャウトモン。なんだかその背中には金粉みたいな光の粒が見える気がする。

『力を解き放て。シャウトモン』

 

 どこかから声が聞こえた気がした。今の声はいったい?

「これは?」

 

 その光と声に反応するみたいに私のデジヴァイスが金色に輝いていた。まさかこれって・・・進化の光?

「お願い。シャウトモンに力を!」

 

 私はその進化の光をシャウトモンに送ったら・・・シャウトモンは金色の光に包まれた。

「シャウトモン!超進化!」

 

 金色の光の中から出てきたのは金色に輝くメカニカルな姿になったシャウトモンだった。

「オメガシャウトモン!」

 

オメガシャウトモン

・完全体

・竜人型

・ワクチン種

 オメガシャウトモンは湧き上がるソウルを解き放ったシャウトモンにオメガモンが伝説の『進化』を与えて、手に入れた姿だ。オメガインフォースを全身にまとったことで全身が黄金に輝き、キレのあるシャープな体付きとなっている。必殺技の『オメガ・ザ・フュージョン』はオメガインフォースの力を引き出したオーラで全身を包み、凝縮して敵に打ち放ち、相手の士気すら消し飛ばすぞ。

 

「何かと思えば完全体か。そんなもので私に勝てるとでも思ってるのか?」

 

「あいにくだがよぉ・・・今の俺は負ける気がしねぇ!!」

 

 姿が消えたと思ったら一瞬でダークナイトモンの目の前まで接近したオメガシャウトモンは回し蹴りで一撃をお見舞いする。

「ぐっ、まさかこの私が完全体の一撃で怯まされるなど・・・」

 

「ビートスラッシュ!」

 

「ぐぉっ!?」

 

 オメガシャウトモンの必殺攻撃にあのダークナイトモンはようやく膝をつく。

「まさかこの私が完全体程度に膝をつかされるなど・・・いや聞いたことがあるな。かの七大魔王デジモンの一角やチィリンモンのように完全体でありながら究極体に迫る強さを持つデジモンがいると・・。まさかこのシャウトモンがその1体であるとでもいうのか?」

 

 立ち上がったダークナイトモンは動揺しながらもオメガシャウトモンを分析しようとする。

「ほむら。シャウトモンに続くぞ」

 

 立ち上がったメタルグレイモンはほむらちゃんにオメガシャウトモンに続くと告げたら体を金色に輝かせた。

「えっ・・・?まさかメタルグレイモンも?」

 

 オメガシャウトモンに感化されたメタルグレイモンに反応するみたいにほむらちゃんのデジヴァイスも金色に輝きだす。

「メタルグレイモン!受け取って!」

 

「メタルグレイモン!超進化!」

 

 ほむらちゃんから進化の光を受け取ったメタルグレイモンはオメガシャウトモンと同じで金色に輝く姿になった。

「ジークグレイモン!」

 

ジークグレイモン

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 ジークグレイモンは完全なる勝利を求めたメタルグレイモンに伝説のデジモン達が『進化』の力を与えた姿だ。全身の装甲はクロンデジゾイドのボディとなって、黄金の輝きを放つ。防御力は絶大にして、軽量で重装甲ながら身のこなしは素早い。必殺技の『ファイナルストライクス』はゼロ距離でエネルギーを開放して目標を爆散するぞ。

 

「究極体相応が2体か。今回は流石に分が悪いかもしれんな」

 

「どうするダークナイトモン。そろそろあれをヤル?」

 

 今ならダークナイトモンも冷静さが欠かれてるし、チャンスだよね。

「何をするつもりかわからねぇがさせるかよ!!」

 

「貴様らの計画は俺達がぶち壊す!」

 

 オメガシャウトモンとジークグレイモンはダークナイトモンに猛攻を仕掛けて反撃の隙を与えない。

「ハードロックダマシー!」

 

「プラズマレールガン!」

 

 2体の同時攻撃が直撃したダークナイトモンは、そのダメージでデジクロスが解除されて2体のデジモンになった。

 

スカルナイトモン

・成熟期

・アンデッド型

・ウィルス種

 悪知恵に長けた騎士で騎士たるものは闘わなければならない。闘う以上勝利しなければならない。というポリシーのもとに行動しており、とにかく勝利という結果を重視している。それに至る過程がどんな汚いことでも平気で行う。相手の懐に飛び込んで『スピアニードル』を振るう様は、とても誇りを忘れた騎士とは思えない活躍を見せる。

 

デッドリーアックスモン

・成熟期

・魔獣型

・ウィルス種

 素早い動きと無限の体力に満ちた屈強の闘士。義兄であるスカルナイトモンに忠誠を誓っていて、勝利を信じてスカルナイトモンを信じて闘っている。走る稲妻と異名をとるほどの電光石火の動きを見せ、トップスピードでは残像が見えるほど早い。必殺技は高速で敵の間を駆け抜け、斬られたことすら気づけない『エアスライサー』だ。

 

 

「くっ、何をしているアリナァ!はやくこいつらを結界に閉じ込めろ!!」

 

 とうとう焦りを見せたスカルナイトモンはアリナさんに私達を結界に閉じ込めるように指示をすると、アリナさんはため息をつく。

「余裕ぶって結局焦るとかダサいんだケド。まぁいいや」

 

 突然光に包まれたと思ったら私たちの目の前からはマミさんたちが姿を消していた。いや違う。私たちがアリナさんの結界に閉じ込められたんだ。

「しばらくそこで大人しくしていて」

 

 外からマミさんの声が聞こえてくる。

「こんな結界俺らがぶっ壊して・・・」

 

 オメガシャウトモンとジークグレイモンは結界を壊そうとした途端、シャウトモンとグレイモン、メイルバードラモンに戻った。

「くそっ、ここでガス欠かよ」

 

 ここでシャウトモン達が力尽きちゃって、私たちは為すすべなくしばらく結界に閉じ込められることになってしまった。

 

 

~いろはSide

 

たった1日で私達を取り巻く環境は激変してまった。

 

2日前、みかづき荘のみんなが戻って再スタートした私達。だけどそのあとで尽きるけられた3つの真実が私の影に暗いものを落としている。

 

 1つはねむちゃんが最後のマギウスだったこと。2つ目は灯花ちゃんとねむちゃんが鶴乃ちゃんを利用して大勢の人を殺そうとしていたこと。そして3つ目がマギウスの3人がエンブリオ・イブという存在を育てていること。

 

その真実を知らされた私の胸の内は悲しい気持ちと先の見えない焦りで揺らいでいた。

「こら、いろは!作戦会議するんだから早くいくわよ!」

 

 授業が終わりレナちゃんに呼び出された私はももこちゃんたちと合流して作戦会議をするメイドカフェへと足を運ぶ。

「マギウスの翼がしていることを否定するなら私達も考えないといけないですよね」

 

「考える?何を?」

 

「どうすれば魔法少女が幸せになれるのか。魔法少女を開放するって目的は正しいと思うから」

 

「そうだね。魔女になる恐怖も、結果的に仲間を殺していることも根本的に解決するわけじゃないからね」

 

 ももこさんの言う通り、このままじゃ何も解決しない。だから私達は考えないといけないんだ。

「いろはちゃんはどうやって受け入れたの?」

 

「認めたくない気持ちもあるけれど仕方ないなって気持ちもあったの。本当だったら死んでいたかもしれないういを願っただけで助けることができたんだからそれだけの報いがあっても仕方ないかなって」

 

「魔女を倒すことはどうなのよ?結局レナ達は魔法少女を殺してるのと変わらないでしょ?」

 

「うん。この人も魔法少女だったんだろうなって色々考えちゃうよ。でもね、だからこそ倒してあげたいって思う。魔女になって人を不幸にしたり、人を傷つけたりするのって、魔法少女だったころの本当の気持ちじゃないと思うから」

 

『ボクは考えるのは苦手だけど、いろはが決めたのならそれについていくよ』

 

 ありがとうアグモン。

「だけどこれは魔法少女全体としての答えじゃないとも思ってるの。だからまだ考えなくちゃいけないなって」

 

「どうやって受け入れていくのか。どうやって未然に防ぐのかってことだね」

 

「はい」

 

「そっか。なら全部終わったらアタシらも混ぜてくれよね。魔法少女が幸せになるための会議にさ!」

 

 私達はそんな先の話をしながらも作戦会議をするメイドカフェに到着した。

「さぁ、待たせたなご主人たち。これが当店自慢の一品、はぁとふるオムライスだ。あとは飲み物だな。各ご主人、自由に取るがいい」

 

十七夜さんのメイド。その姿を見るももこさんはどこか不服そうだ。

「これってあれだよね?愛情みたいなの、入れてくれるんだよね?」

 

「十咎には言ったが自分はやらんぞ。別においしくならんからな。素材を楽しめ」

 

「違う。やっぱり違うよ十七夜さん。ほんと、台無しだ」

 

「十咎は注文が多いご主人だな」

 

 ももこさんは十七夜さんのメイドを「これじゃない」と言っていると遅れてやちよさんがやってきた。

「ごめんなさい遅れてしまって」

 

「珍しく遅かったなやちよさん。どうかしたの?」

 

「調整屋に寄ってたのよ。ケガ人を保護してもらうためにね」

 

 け、怪我人!?

「いったいどういう事ですか?」

 

「マギウスの翼が動き出したわ」

 

「えっ?どうして関係ない魔法少女を!?」

 

「それはわからないわ」

 

「エネルギーを欲しがってたし、魔法少女の魔力狙いとか?」

 

「それはわからないわ。わからないけれど、被害者が出た以上はほかの人も狙われるかもしれない」

 

「じゃあみんなに知らせないと!」

 

 私は可能な限りのこの町の魔法少女に注意喚起をしようと提案した途端、私達は魔女の反応を感じ取る。、

「魔女の反応、それも1体や2体じゃない!?」

 

 複数体の反応ってことは・・・

「アリナ・・」

 

「魔女を捕獲して使う彼女なら十分ありえるわね」

 

 被害に会った子と関係あるかどうかはわからないけれど、ひとまず少しでも情報が欲しい私達はその魔力の反応があった場所へ向かおうとする。

「マギウスの読み通りね。魔法少女が傷つけばあなた達は動き始める」

 

 そう声が聞こえた途端、私達は大量のマスケット銃に取り囲まれた。巴マミさんだ。

「乱暴に引き留めて悪いけど、ちょっとだけお話に付き合ってくれないかしら?」

 

 まどかちゃんにもとに戻す方法は教えたけど、まだ洗脳は解けていないみたい。

「今の口ぶりからすると魔女と魔法少女の件はあなたの仕業みたいだけれど」

 

「えぇそうよ。こうして現れたのもそのことを伝えようと思ったからよ」

 

 やっぱりそうなんだ。

「どうしてこんなことを?」

 

「マギウスから聞かなかったかしら?もう手段は選ばないって。だからマギウスと決めたの。この町の魔法少女を異端に染まってしまう前に消そうって」

 

 消すって・・・殺すってこと?

「魔法少女の開放を邪魔する異端な存在を消して、マギウスと私を信じる敬虔な人たちだけを救うの。私たちの悲願が達成されたら多くの人たちが幸福になるわ。苦しむべき人たちが苦しむだけよ」」

 

「そんなの!間違ってる!」

 

 魔法少女に変身した私達。すると巴さんはくすくすと笑いだす。

「鹿目さんたちも理解できなかったみたいだけど、きっともうすぐわかるわ。私達マギウスの翼が正しいって」

 

「まさか昨日からまどかちゃん達と連絡が取れないのって・・・」

「安心して。彼女たちは消してないわ。ただ見滝原から出られないように閉じ込めてるだけよ」

 

「アグモン!」

 

「うん!マミを止めよう!」

 

 今は戦うしかない。そう判断した私達はそれぞれデジモンを呼び出すと、巴さんもデッカードラモンを呼び出す。

「今も昔も変わらず、私の誇りはみんなを救うこと。その史上ともいえる魔法少女の開放に近づいて、私がどれだけ高陽しているか、あなた達にもわかるはずよ」

 




次回「羽根たちの様子がおかしくなってる」


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羽根たちの様子がおかしくなってる

夏の暑さにやられてなかなか執筆が進まない日が増えてきました。もしかしたら章のタイミング以外でも休むことがあるかもしれません。


~いろはSide

 

「巴さん。戦う前にお尋ねしますけれど、本当に私達と戦うつもりですか?」

 

 私達側には7体も究極体に進化できるデジモン達がいる。流石の巴さんとデッカードラモンでもこの数を相手に戦う行為は取らないはず。

「確かに8人と8体と戦うのは分が悪いわ。だけどあなた達の何人かはまだ完全には究極体の力をものにはしてないということもわかってる。それなら戦いようはあるわ」

 

 私とアグモンはもう何度か究極体に進化しているからだいぶ慣れてはきてるし、十七夜さんとガオモンももう気軽に究極進化できるぐらいには進化慣れしてるみたいだけど。他のみんなはそうじゃない。まだそんなに回数を進化させてないし、やちよさんとガブモンに至ってはまだ究極進化まで到達してない。そのことを巴さんは把握していたみたい。

「だったらお望み通り相手をしてやるよ!いくよアグニモン!」

 

「応!ハイパースピリットエボリューション!カイゼルグレイモン!」

 

 アグニモンはカイゼルグレイモンに進化して剣を構えたけど、まだレナちゃんとかえでちゃんは究極進化に慣れていなくて結局完全体のメガシードラモンとジュレイモンに進化していた。

「うん!成功!」

 

 だけど鶴乃ちゃん達チームみかづき荘はやちよさんとガブモン以外無事究極体に進化させることに成功する。

「ガブモン!私たちも究極進化を!」

 

「えっ?できるかな?」

 

 やちよさんはデジヴァイスの光をガブモンに送ったけど、その光じゃ完全体が限度だった。

「超進化!ワーガルルモン!」

 

「・・・やっぱりまだ私達は究極進化できないのね」

 

「イージスドラモン」

 

 やちよさんは自分だけ究極進化できていないことを悔しそうにしていると、デッカードラモンを究極進化させたマミさんはイージスドラモンに攻撃の指示を送った。そしたらイージスドラモンは私達ではなく周囲のものを無差別に攻撃し始めた。

「きゃぁぁっ!?」

 

「っ!あぶない!」

 

 その無差別攻撃に近くを通りかかった人も巻き込まれそうになり、ブリッツグレイモン達は身を挺して人々を守る。

「あなた達なら身を挺して人々を守ってくれると思っていたわ。イージスドラモン!続けて撃ちなさい」

 

 巴さんは私達が人々を守ることを前提としてさらなる追撃を仕掛けてくる。そうすることでこっちの動きを封じて数の不利を補っているんだ。

「だったら・・・!ブリッツグレイモン!」

 

 これ以上撃たせる前にウォーグレイモンのドラモンキラーで勝負を決めにかかろう。そう考えた私はブリッツグレイモンをアルティメットゼヴォリューションさせようとしたら、巴さんはさらにデジヴァイスから全身が銃だらけのデジモンを呼び出してきた。

「リロード!ガンドラモン!」

 

ガンドラモン

・究極体

・マシーン型

・ウィルス種

 大量の銃火器を持つ大型のデジモン。突出した射撃能力を持ち、多くのデジモンから『三銃士』の1体として称されてる。ムゲンドラモンに比べスピードが速く、射程内へ一気に詰め寄る高い機動力がある。全身を構成する100%フルメタルには薬莢の焦げた臭いが染みついた渋くハードボイルドなデジモン。必殺技は6連装リボルバーで敵の急所を狙い撃ちする『デルブリッツ』だ。

 

「ゲヴェルトシュベルマー!」

 

 ガンドラモンは呼び出された途端に一斉射撃を放って無差別攻撃を仕掛けてくる。

「サンダーバーニア!」

 

「スターライトエクスプロージョン!」

 

「アクセルアーム!」

 

「スパイラルマスカレード!」

 

「炎龍撃!」

 

 究極体クラスの面々はその銃撃の嵐をそれぞれの技で相殺したけれど、周りの人を守らないといけないぶんこっちのほうが消耗が激しい。

「やっぱりここはウォーグレイモンで」

 

 2体ともドラモン系統のデジモンだし、ウォーグレイモンのドラモンキラーは効くはず。長期戦はこっちが不利だし、一気に仕掛けるしかない。

「行くよブリッツグレイモン!今度こそゼヴォ・・・」

 

「あら。もうこんな時間なのね。引き上げよ2体とも」

 

 時間を確認した巴さんはガンドラモンをいきなりデジヴァイスへと戻した。そのいきなりの行動に私達は唖然として動きを止めてしまう。

「あなた達の中から何人が、いえ、この町の魔法少女から何人が消えてしまっても恨むなら自分たちがしたことを恨みなさい」

 

 そう言い残した巴さんはデッカードラモンに戻ったイージスドラモンをデジヴァイスに戻して去っていく。

「鶴乃、巴さんの様子をどう思う?」

 

「わたしよりも強くウワサの影響を受けているかもしれない」

 

「本当にウワサが原因なの?結界もなく自由に動いてるしさ」

 

 ももこさんが疑問に思うのももっともだ。

「わからないけど、あの衣装そのものがウワサならできるかも」

 

 ウワサにとりつかれた経験のある鶴乃ちゃんだからこそ分かる感覚。それにみんなは納得する。

「何とかしてやりたいけど、何もできそうにないな」

 

「巴さんのことを理解しているのはまどかちゃん達だから私達じゃウワサははがせないと思います」

 

「・・・だよな」

 

「彼女も被害者だとは思うが、それを考えるのは後だろう」

 

「そうね。本拠地の話もしたかったけど、私たちの課題は後回しにしましょう。今日は魔法少女の保護を優先しましょう」

 

 私達はやちよさんの意見に同意する。

「保護した魔法少女を匿う場所だけどさ、やちよさんが案内した通り、調整屋にしておかないか?あそこは中立地帯かつ、非戦闘区域だ」

 

「それにまとめて事情を説明できちゃうもんね」

 

「えっ?でも説明するって」

 

 みんなに説明するということはソウルジェムの事、魔女化の事。ドッペルのこと。そしてマギウスの翼の事をきちんと説明しないといけないということ。私たちは今、真実を伝える覚悟を問われているんだ。

「殲滅するって言われた以上は仕方ないんだろうな」

 

「被害にあえば聞きたくなるのは当然よ。聞かないほうが幸せなことも、説明しなくちゃいけなくなるわ」

 

 ガブモンは仕方ないと割り切って判断する。やちよさんも同じく割り切ろうとは考えてるみたいだけど。完全には割り切れてない様子だ。

「いずれにせよ方針は決まったな」

 

「そうね。仕掛けられた魔女を手分けして倒しつつ、魔法少女を調整屋に集めましょう」

 

 なんだろう。みんなを助けに行かないといけないっていうのは分かっているのに、私、確認しに行ったほうがいい気がする。今だからこそ私の記憶を役立てる時だって。そう思うの。

 

 病院に集まるうわさ。それに山の中にある『万年桜のうわさ』。私の記憶に残っているうい達4人で考えていたうわさだ。私はそれを確かめに行かないといけない。

「やちよさん。私。確かめたいことがあるんです」

 

「確かめたいこと?」

 

「万年桜のうわさ。北養区の山の中にあったはずなんです」

 

「・・・・」

 

「やちよさん?」

 

「ごめんなさい。疑っているわけじゃないの。ただ山の中のウワサとなると見つけるのは難しいし、意図的に相手が広げていないなら知らなくて当然だと考えていたの」

 

「やちよさん。私、アグモンと一緒にうわさを調べに行きます」

 

「・・・わかったわ。魔法少女の事はこっちに任せて。リーダーは不在になっちゃうけど、今は精鋭がそろっているから平気よ」

 

「ありがとうございます!行くよアグモン!」

 

「うん!」

 

 こうして私とアグモンは万年桜のうわさを調べるためにみんなとは別行動をとり始めた。

 

 

 

~やちよSide

 

 

「誰か・・・魔力の反応は・・ないわね」

 

 みんなで手分けして魔法少女を調整屋に避難させ始めて3時間ぐらいが経った夕方。私は今、工匠区へと足を運んでいた。

 

 ここに来るまでにすでに何人かの魔法少女を調整屋に連れて行ったけれど、ここの地区にいる子たちは大丈夫かしら?

「それにしても十七夜の言っていた通りね」

 

 東のほうに来ると魔法少女の反応がパッタリとなくなっている。

「多くがマギウスの翼に入ったって聞いたけど・・・元々いないのか、すでに狩られてしまったのか。・・・もう少し探したほうがよさそうね」

 

 私はあきらめず捜索を続けていると、表情が写ろでどこか歩き方がおかしかったわね。

「っ!魔女の口づけ!」

 

 その人に魔女の口づけがされていることに気づいた私はその人の後をつけていくと、やっぱりその場所に魔女の結界があった。

「速攻で片づけるわよガブモン」

 

「あぁ!ガブモン進化!ガルルモン!」

 

 ガルルモンの背に乗った私は魔女の結界の中へと突入する。

「フォックスファイヤー!」

 

「はぁぁっ!!」

 

 私とガルルモンは魔女が視界に見えるなり同時攻撃で魔女を撃破する。思いのほかあっさりと倒せたのはありがたいんだけれど・・・。

「物事そう簡単には進まないものね」

 

 結界から出て魔女の口づけをされていた女性を誰かが見つけてくれそうな場所へと運ぼうとすると、マギウスの翼。黒羽根たちが現れた。

「まったく、巴さんといい見境なくなってきているわね」

 

 段々と見境がなくなってきているマギウスの翼に私はため息をつきながらも、私は少しでも人を巻き込まないようにするためガルルモンに乗って場所を移動する。

「ヴヴ・・!」

 

 すると黒羽根たちはこちらの予想通りに私達を追いかけてきた。

「ヴヴぅ・・・!!」

 

 黒羽根たちはまるで理性のないゾンビのような雰囲気を漂わせながら的確にソウルジェムめがけて攻撃を仕掛けてくる。

「どうやら殲滅っていうのは嘘じゃないみたいね」

 

 本当に私を殺す気でかかってきているわ。

「どうするやちよ?」

 

「どうするも何も撃退するしかないでしょ」

 

 ここなら人気もないし、思う存分戦えるわ。

「ヴヴ!」

 

 黒羽根たちは揃って同じタンクのようなデジモンを繰り出してくる。

タンクモン

・成熟期

・サイボーグ型

・データ種

 戦車の姿をしたサイボーグ型デジモン。傭兵デジモンの異名を持ち、自らの得となることであればワクチン、ウィルスのどちらにも加担する。重量級のパワーと全身についた重火器で向かってくる敵を粉々に粉砕するぞ。必殺技は頭部の砲身から超強力なミサイルを発射する『ハイパーキャノン』だ。

 

 黒羽根が5人にタンクモンが5体。いつもなら問題ないけれど、今回は理性がなくなっていて見境がなくなっている様子だし、少し厄介ね。

「いくわよガルルモン!」

 

 私とガルルモンはそれぞれ黒羽根とタンクモン達と戦い始める。

「なぜ殲滅なんて結論を出したのか洗いざらい吐いてもらいたいけれど、今の羽根の状態じゃ聞けそうにないわね」

 

 本腰を入れて戦わないと痛い目を見そうなくらいには強くなっている。まさに鬼気迫る勢いってやつね。

「だけど・・・!」

 

 この程度でやられる私じゃない。

「ハァぁっ!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

 この後のことも考えて完全体を温存しつつも私とガルルモンは黒羽根たちを打ち倒すと、黒羽根たちはタンクモン達をデジヴァイスへと戻して逃げ去っていった。

「どうやら最低限逃げるって意思は残っているみたいね」

 

 思った以上に消耗させられたわ。見境がなくなっているだけじゃない。おそらく鶴乃や巴さんと同じようにウワサによる強化が入っているとみるべきね。

「みんなにこの事を伝えておかないと」

 

『どうした、やちよさん?』

 

『ふゅぅ』

 

『さすがししょー、ちょうど落ち着いたところだよ』

 

 出たのは3人だけみたいね。

「とりあえず簡潔に伝えるわ。羽根たちの様子がおかしくなってる。躊躇なく襲ってきて危険だからみんな気を付けて」

 

『・・・やちよさんもあいつらと戦ったのか』

 

「ももこも戦ったの?」

 

「あぁ。一方的に狙ってきてかなり危なかった」

 

「かえでは大丈夫?」

 

『私は大丈夫なんだけど、私の友達がやられてた。ケガはほとんどなかったけど、魔力をだいぶ使っていて・・・それで、あの、私とフローラモンも怖いからみんなで調整屋に向かうね』

 

「えぇそうして。そのほうが安全だと思うから。それじゃみんあくれぐれも気を付けて」

 

『ちょっとししょー!わたしにも聞いてよ』

 

「鶴乃とピヨモンは最強だし大丈夫でしょ?」

 

『最強でも聞いてほしいんだよ~』

 

 はぁ、仕方ないわね。

「鶴乃は大丈夫?」

 

『うん!ほかの魔法少女と協力して撃退したから大丈夫だよ!』

 

 ほら。やっぱり大丈夫だったじゃない。

「じゃあこれでいいわね。みんな、頼んだわよ」

 

『あっ、待ってししょー。あのね・・・』

 

 鶴乃が何かを告げようとしていた時、いきなり鶴乃との通話が切れてしまった。電波が悪いのかと画面を確認してみたら、あろうことか圏外と表示されていた。

「まずいわね。連絡手段が絶たれたわ」

 

「合流しようと思ってたのに幸先悪いな」

 

「そうね」

 

 ガルルモンはガブモンに戻りながら幸先が悪いとため息をつく。正直ため息をつきたいのはこっちよ。

「・・・ここもダメみたいね」

 

 場所を変えて電波を確かめてみたけれど、やっぱり電波は回復してくれなかった。

「こうなった以上は近くの人と合流すべきよね」

 

 近くとなると大東に向かった十七夜が一番近いかしら?

「いやぁぁぁぁっ!?」

 

 そう考え込んでいた矢先、奥の道から悲鳴が聞こえてきた。これは・・・魔法少女の反応。

「まだ魔法少女が残っていたのね。いくわよガブモン!」

 

「分かってる!」

 

 私とガブモンはその悲鳴が聞こえてきた場所へと向かってみると、そこには一人の小柄な魔法少女が黒羽根たちに襲われそうになっていた姿があった。

「誰!?こないで!わたし、何もしてないですから!」

 

「そうだよ!理子は君たちに何もしてないよ」

 

 彼女も一緒にいるデジモンも自分たちは何もしてないと訴えるも、黒羽根たちは聞く耳を持とうとしない。

「ひゃぁ!?ど、どうして攻撃してくるの?」

 

 一度目の攻撃を防いだ彼女に追撃が迫る。その攻撃を何とか間に合った私が受け止めた。

「危なかった。

 

「お、お姉さんは?」

 

「たまたま通りかかった魔法少女よ」

 

 最初は魔法少女を救うなんて浮ついたことを言ってたくせに地に落ちたものね。

「俺ガブモン。お前たちは?」

 

「千秋理子です」

 

「僕はベアモン!」

 

ベアモン

・成長期

・獣型

・ワクチン種

 後ろ向きに被った帽子がトレードマークの子熊の姿をした獣型デジモン。臆病なところがあるがほかのデジモンとすぐに仲良しになるがひとたび戦いが始まると、どんな攻撃を受けても戦い続ける体力と根性を持っている。必殺技は相手の懐に飛び込み正拳突きを打ち込む『子熊正拳突き』だ。

 

 

「ガブモン。それ以上の挨拶は後にしなさい」

 

 今は目の前の相手に集中しないと。

「タァッ!」

 

 襲い掛かってくる黒羽根に攻撃を仕掛ける。やはり理性がないといってもデジモンを出したり逃げたりするだけの意思はあるのだから、早めに引いてもらえるといいのだけれど。

「というかガブモン!あなたも見てないで戦いなさい!」

 

「だって別に相手はデジモン出てないだろ。だったらやちよだけでもなんとでもなるだろ」

 

 そういったガブモンは千秋さんの隣に座り込んでしまう。こんな時にも関わらず相変わらずの面倒くさがりね。まぁ元々うちのガブモンは戦いがあまり好きじゃないところがあるけれど・・。

「ほらほら、俺らが来たんだからもう泣くなって」

 

 戦わないかわりにガブモンは千秋さんとベアモンを泣き止ませようとしていた。たださぼってるんだったら怒っていたけど、最低限仕事はしてるし許してあげましょうか。

「大丈夫?」

 

「は、はい。ありがとうございました」

 

 戦いを終えた私は千秋さんに声をかける。どうやらケガはないみたいね。

「良かった。それにごめんなさいね」

 

「えっ?なんでですか?あの、わたしがお礼言わなきゃですから!」

 

「そうだよ!」

 

 そうよね。羽根が暴走したのは私達のせいだと思っていたけど、この子たちは何も知らないのよね。

「それで、あの、お姉さん。さっきの人たち、誰なんですか?どうしてわたし達のことを?わたし、何もしてませんから。本当に何もしてませんから」

 

「戸惑うのもよく分かるし、説明してあげたいんだけれど、今はちょっと緊急事態なのよ。話をし始めると長くなってしまうから、悪いけど何も聞かずに調整屋に向かってくれる?あとで全部あなた達に説明してあげるから」

 

「・・・はい。わかりました」

 

 聞き分けが良くて助かるわ。

「私達はどうしようかしら?」

 

「電波は入らないままなんだろ?だったら調整屋に向かって誰かと合流するのも1つの手だと思うぞ」

 

 確かにガブモンの言う通りかもしれないわね。

「ねぇ、この辺りにはほかに魔法少女はいるの?」

 

「いいえ。わたしだけだと思いますけど」

 

「そう。ありがとう」

 

 となると魔法少女の捜索はこの辺で切り上げたほうが良さそうね。さっきの羽根の異常がウワサのせいだとすれば、そっちを片付けたほうが事態を鎮静化できそうだし。

「ありがとうございました。お姉さん!」

 

 千秋さんはベアモンをデジヴァイスへと戻すと調整屋へと向かっていった。

「さて、私も十七夜と合流しないと」

 

「その必要はないぞ」

 

 声に反応して振り返ってみると、十七夜がすでに立っていた。

「自分も合流したいと思っていたところだった。気が合うな七海」

 

「そう。それで大東のほうはどうだったの?」

 

「うむ。思い当たる魔法少女がいて避難を促していたのだが、魔女を倒した途端に羽根からの不意打ちを食らった。見境なしにだ。上浜の魔法少女の殲滅というのは本当らしいな」

 

「そっちもなのね。とにかく合流できて良かったわ。連絡を取ろうにも電波が繋がらなくて」

 

「工匠もか。大東だけかと思ったが電波障害の範囲が広いな。連絡が取れない以上皆の無事を信じるしかないか」

 

 十七夜の言う通り今は別行動しているみんなを信じるしかない。そう考えながらも私と十七夜は羽根を暴走させているであろう手掛かりを探るべく行動を開始した。

 




神浜デジモンファイルに
「千秋理子&ベアモン」
が登録されました。

次回「決断するには勇気がいるな」


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決断するには勇気がいるな

8章終了後、都合によりしばらくお休みします。


やちよSide~

 

 

「あの天音月咲も家に帰っていないのね」

 

 十七夜が天音月咲の家を知っているというので彼女の家族にその話を聞いてみたのだけれど、彼女はここ数日家に帰っていないようだった。

「ウワサの可能性が上がったか。しかしわからんな。そこまでして神浜の殲滅したいか?」

 

「エネルギーを得るためって言われたら話は繋がるけど、ただ攻撃を加えて私達を消そうとしてる。邪魔なのは分かるけどメリットがあるとは思えないわ」

 

『今は判断材料がないんだし、あいつらの目的が分からない以上は食い止めることしかできないだろ』

 

 さっきサボっていたガブモンがよく言えたものね。

「そのためにもウワサを消さないと」

 

 きっとウワサを消すことができれば元に戻るはず。そうすれば少なくとも殲滅言っている現状は変えられるはずよ。

「いっそのこと羽根共の心を深く読んでみるか。その方が手っ取り早いだろう」

 

「それなら移動しましょう。魔法少女が多い場所の方が羽根たちも集まってくるはずよ」

 

 私と十七夜は場所を移動すると途端に魔法少女の反応が増え始めた。

「ヴヴ・・っ」

 

「わわっと!?これで二度目のご対面?それとも違う人だったり?」

 

 マジシャンのような恰好をした魔法少女に羽根たちは問答無用で襲い掛かる。

「もー!会話もできないんじゃ掛け合いもできないよ!」

 

 後ろに下がって攻撃を回避したマジシャン姿の魔法少女はまるで手品をするかのように何もなかった場所からデジヴァイスを出現させる。

「でもこう見えて、私のパートナーはとっても強いんだよ。カモン!ファントモン!」

 

 ファントモン

・完全体

・ゴースト型

・ウィルス種

 巨大な鎖鎌を持った死神のようなデジモン。上級ゴーストデジモンでありファントモンに憑りつかれたが最後、完全に死が訪れると言われている。体を覆う布の中身は別次元のデジタルワールドに通じていると言われ、必殺技は巨大な鎖鎌で敵の魂をも切り裂く『ソウルチョッパー』だ。

 

「いくよファントモン!」

 

「ファントモン!究極進化!ピエモン!」

 

 私と十七夜は彼女の助けに入ろうとすると、彼女はデジヴァイスを輝かせてファントモンをピエロのようなデジモンへと進化させた。

 

ピエモン

・究極体

・魔人型

・ウィルス種

 奇抜な姿と神出鬼没な、すべてが謎に包まれている魔人型デジモン。何のために出現したのか、目的自体も不明であり、それを解明する手段も現時点ではない。しかしその力は強力無比であり、ピエモンと出会ってしまった相手は己の運命を呪うしかないだろう。必殺技はつきたてた4本の剣をテレポートさせ、次の瞬間には相手を串刺しにする脱出不能な技『トランプ・ソード』だ。

 

 彼女のデジモンも究極体に進化できるのね。

「どうする?究極体がいるならわざわざ自分たちが助けに入りにいかなくともどうとでもなりそうだが」

 

「確かにそうだけど情報やに向かうよう伝えないともいけないし、加勢はしましょう」

 

 私と十七夜は必要ないかもしれないとは思いながらも彼女の加勢へと向かう。

「必要ないかもしれないけれど加勢するわ」

 

「魔女からの連戦だからありがたいよ~」

 

「まだ究極体には不慣れでして。ご協力痛み入ります。お嬢さん方」

 

 ちょっと怖そうな見た目をしているピエモンも私達の加勢には賛成みたいね。

「行くわよ!」

 

「ピエモン。魔法少女とはいえ相手は人間だから気を付けてね」

 

「招致しております」

 

 私達はピエモンのおかげもあって羽根たちを難なく撃退し、彼女と話をし始める。

「究極体になれるパートナーがいるとはいえ1人でいるのは危険だから調整屋に移動して」

 

「うん!ちょうど他の魔法少女から連絡が来て、向かおうとしていたところなんだ。あっ、あたしは毬子あやかって言います。以後お見知りおきを」

 

「自己紹介はいいわ。なるべく急いで。事情は後で説明するから」

 

「ありがとう。それじゃ行こうピエモン」

 

 毬子さんはピエモンをデジヴァイスに戻して調整屋へと向かっていく。

「それで?自分たちはどうする?」

 

「ウワサを潰すわ。手あたり次第ってわけにはいかないけれど、魔法少女の反応が多いところにいけばきっとそこに羽根たちがいるはずよ」

 

「羽根の多いところにウワサありか。いいだろう」

 

 私達は魔法少女の反応が多いヘリポートの方角へと足を急いだ。

 

 

ももこSide~

 

「バーニングサラマンダー!!」

 

「ハァァっ!」

 

 栄区。あたしとアグニモンは襲い掛かってくる羽根たちを何とか退けていた。

「なんなんだあの羽根の様子?」

 

「完全に気が狂っていたな」

 

 殲滅なんて言っていたけど、どうやらマジみたいだ。

「ヴヴ・・・!」

 

「またか。疲れているところを襲ってくるだなんてやさしさに欠けているんじゃないのか?って言っても今のアンタらに通じるわけないか」

 

 アタシとアグニモンは今は振り切ろうとすると、追加でやってきた羽根たちに退路も断たれてしまった。

「連れ込まれたみたいだけど大丈夫?」

 

 そんな中アタシに声をかけてきた一人の少女がこの路地にやってきた。まさか一般人か。

「こっちに来るな!巻き込まれるぞ!」

 

「でも流石にこれを見て見ぬフリってのは・・・」

 

『できないよな!』

 

 ポケットから聞こえてきた声、まさかデジモンか。

「時間は大丈夫。ちょっと手助けさせて!」

 

 そう言ったその子は魔法少女へと変身をしてデジヴァイスを取り出してリボルバーみたいなデジモンを呼び出した。

「私は江利あいみ。そんでこの子が・・・」

 

「おいらはリボルモン!」

 

 リボルモン

・成熟期

・突然変異型

・ワクチン種

 体の部分が銃の砲身のようになってる変異型のデジモン。正義感に厚くウィルスバスターとしても活躍している。またギャンブル好きな一面も持っていて、ロシアンルーレットが非常に好きなちょっと憎めない性格。必殺技は自らが砲身になって正義の弾丸を打ち出す『ジャスティスブリット』だ。

 

 連戦で疲れていたから正直ありがたい。

「ダブルスピリットエボリューション!アルダモン!」

 

「ダァァァッ!」

 

 アグニモンをアルダモンに進化させつつも、アタシは襲い掛かってくる羽根たちを大剣で薙ぎ払う。アタシの倒しそびれた羽根はあいみが倒してくれて、アルダモンも羽根たちの繰り出してくるデジモン達をリボルモンと一緒に撃退した。

「ハァ・・ハァ。何とかしのげたな。ごめんね。手伝わせちゃって」

 

「いいよいいよ、あんなの無視できないから。それじゃあ私、これから用事があるから!」

 

 戦いを終えたあいみはリボルモンをデジヴァイスに戻したら急いでこの場を立ち去ろうとするのをアタシは慌てて止めた。

「ちょっと待って!1人になると危ないぞ。さっきの奴らがまた襲ってくるかもしれないだろ?」

 

「でも私、あの人たちとは何も・・・」

 

「あいつ等は無差別に魔法少女を襲っているんだ」

 

「えぇ!?でも私、これからカラオケが、クラスの集まりがあって・・・。ほら、何ていうの?意中の人がいてさ」

 

 その手の話には弱いけど・・・我慢しないと。

「死んだら元も子もないだろ」

 

「やっぱそう・・だよね」

 

 アタシはなんとかあいみを説得して調整屋に向かってもらうことにするとやちよさんから電話がかかってきた。

「あっ、やちよさんからか。・・・あれ?切れた」

 

 やちよさんからの通話が速攻で切れちまった。

「まぁいいや。かえでも調整屋に向かったみたいだしアタシも向かうとするか」

 

 あたしもあいみと一緒に調整屋に向かうことにするもさらに魔法少女の反応を感じ取った。

「結構な数がいるな」

 

「この反応、こころとまさらもいる」

 

「知り合いなの?」

 

「うん。同じ学校。・・・ごめん伊勢崎君。今回は友情を取らせて」

 

 恋より友情を優先したあいみは友達を助けに向かおうとするのでアタシとアルダモンもそれに付いていく。

「おい!大丈夫か?」

 

「あなたは・・・確か」

 

 この反応。アタシのことを知ってるみたいだな。

「まさら!大丈夫?」

 

「こころ・・」

 

「こころは・・・こころ!?」

 

 まさらの近くに倒れている少女にあいみは驚く。こころという少女はボロボロになって倒れていたからだ。

「こいつらがやったの?」

 

「そうよ」

 

「だとしたら許さない!」

 

 どいつもこいつも同じだな。羽根の奴ら人格でも壊されたのか?まぁ敵の心配よりも蹴散らす方が先だよな。

「消耗して頼りないかもしれないけど加勢するよ。

 

「えぇ。行くわよペイルドラモン」

 

 まさらの隣にいた氷の翼をもつドラゴンのデジモンは戦闘態勢を取り直す。

 

ペイルドラモン

・成熟期

・竜型

・データ種

 大きな氷の翼は悪天候をものともせず、高速で飛行することを可能とするデジモン。環境による気温の変化程度では体に影響は出ないが、メラモンなど熱いデジモン相手では身体を溶かされてパワーダウンしてしまう。必殺技は吐息で敵を凍らせる『アイスエイジ』だ。

 

 ペイルドラモンか。うちのアルダモンは炎のデジモンだし、相性が悪そうだな。

「アルダモン。なるべくペイルドラモンからは離れて戦え」

 

「あぁ。そうしたほうが良さそうだな」

 

「アイスエイジ!」

 

 ペイルドラモンの吐息が羽根たちに浴びせられると、その足元が凍って身動きが封じられる。

「今だ。まさら」

 

「えぇ。タァッ!」

 

 そしてまさらの攻撃で羽根たちが倒れると、羽根たちのデジモンが一斉に攻撃を仕掛けてくる。

「行くぞももこ!ブラフマストラ!」

 

「だりゃぁぁっ!」

 

 アタシとアルダモンも加勢して羽根たちのデジモンを撃退する。

「ありがとう。助けてくれたのは感謝するわ。だけどあなたたち、以前から彼女たちと小競り合いをしていたわよね」

 

「何が言いたいんだ?」

 

「私達が巻き込まれる理由が分からない。だからあなたが原因じゃないかって」

 

「そう言われると返す言葉もないけどさ、そうであったとしてもアタシらに矛先を向けるのは筋違いだ。それでも敵意を向けずにいられないなら話ぐらいはさせてほしいな」

 

「聞いたところで言い訳にしか聞こえないわ。話すことに意味はあるの?」

 

「それじゃあ調整屋に行ってくれ。中立の魔法少女の言葉なら信じることもできるだろ」

 

「そうね。あなたの言葉を聞くよりは信じられそう」

 

 厭味ったらしく聞こえるけどそう警戒されても仕方ないと自分を納得させたアタシはあいみ達と一緒に調整屋に向かうことにした。

 

 

みたまSide

 

「十七夜。わたしはどうするべきかしら」

 

 あなたがやちよさん達に力を貸す気持ちも分かるけれどわたしにはわからないわ。調整屋だから知っているのよ。マギウスの翼が魔女を育てていることも、ウワサを広めていることも。もちろん鶴乃ちゃんたちが洗脳されたことも知っている。だけどそれでもわたしは未だにどっちつかずなの。

「その後ろめたさ。心の迷い。それはデジモンの進化を妨げる要因となる。だから私は君にまだデジヴァイスを渡していないのだよ」

 

 振り返ったらそこには壁に寄りかかりながら腕を組んでいたゲンナイさんが

いた。

「ゲンナイさん、どうしてこちらに?」

 

「今まで渡してはいなかったが・・・そろそろ君も動く時がくる思ってね」

 

 そう言ったゲンナイさんは私に灰色のデジヴァイスを手渡してきた。

「どういう風の吹き回しかしら?今まで頼んでも渡してくれなかったのに」

 

「今言っただろう。君も動く時が来ると思ったからだとな」

 

 私が動く時・・・。

「そのデジヴァイスの中には強力なデジモンが1体入っている。デジモンとどう向きあうか。それはパートナーであるお前次第だ」

 

 そう言い残したゲンナイさんは調整屋を後にしたら入れ違いでももこが入ってきた。

「調整屋。場所を借りるぞ」

 

「ももこ・・・とえぇ!?」

 

 ももこだけじゃない。それなりの人数の魔法少女が調整屋の中に一気に押しかけてきた。

「かえでちゃんの言ってた通りみんな集まってきたね」

 

「みんなで声をかけてるからもっと集まってくると思うよ」

 

「これで麗しき阿見莉愛とパルモンの名も自然と広まりますわね」

 

「先輩のステージじゃないんで出しゃばらないでください!」

 

「これ、みんなレスキューされた魔法少女なんだね」

 

「まだ集まりそうですね」

 

 次々とお店の中に入ってくる魔法少女の子たち。調整に来たってわけでもなさそうね。

「これは・・・どういうことかしら?」

 

「悪いな調整屋。手短に説明させてくれ」

 

「う、うん」

 

「マギウスの翼が動いたんだよ。かなりの魔女をばらまいてくれただけじゃなく、魔法少女を無差別に殺す気だ」

 

「おまけに羽根の連中は狂っておかしくなってやがる」

 

 ももことアグニモンは今起きている状況を簡潔に説明してくる。

「えっ?私、そんなこと知らないわ。そうだったとしてもあの子たちの目的は魔法少女を救うことでしょ?」

 

「やっぱりあいつらのことは知ってたんだな」

 

 うっかり口を滑らせてしまったことを反省しつつも「調整屋だもの」と言い訳をする。

「まあ、そのことは今はいいんだ。それでだ。マギウスの翼の事も、アタシらの事も全てを知ったうえで中立を保ってきた調整屋に頼みがある」

 

 頼み?

「ここを避難所に使わせてくれ。そして知ってることを説明してみんなにすべてを伝えてほしい。奴らの目的も開放の事も、今まで何をしてきたかも」

 

「それ。本気で言ってるの?」

 

 私は信用第一の調整屋。ももこが言っていることはつまりももこ達側に・・・中立を破ってほしいという意味だった。

「あなた達に利がある事を理解してすべてを話すのは、公平さを欠いてしまうわ。あなた私に・・・」

 

「あぁ。中立を破ってほしい」

 

「・・・・」

 

 その問に私はすぐに返事をすることはできなかった。

「無理なら場所だけ貸してくれ。説明はアタシがするから。闘う力がないことも、パートナーデジモンがいないことも知っている。だから色々知ってても喋ることができなかったことも分かるよ。だから恨みはしないさ」

 

「ももこ・・・」

 

「ただこれだけは言わせてくれ。今のお前の中立は守るべき中立なのか?」

 

 その言葉にわたしは抑え込んでいた気持ちを無理やり突き動かされる。

「わかったわ。お客様が減るんじゃ商売にならないものね」

 

「じゃあ!」

 

「でもたとえ中立を破ったとしても、わたしは調整屋の損になる状況を回避するために語るのよ」

 

「まったく屁理屈を・・・。それにしてもだいぶ集まってきたな」

 

 見渡してみたらもうそれなりの人数がここに集まってきていた。中には怪我人もいて、ちょっとした野戦病院のようになっていた。無差別に殺そうとしているのは本当なようね。

「ちょっとごめんどいて!」

 

「重病人・・・じゃなくてえと、ケガしてるやつがいるから!」

 

「雫ちゃん!」

 

 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんが運んできたのは保澄雫ちゃんとそのパートナーデジモンのエリスモンのペア。どうやらこの子たちも羽根の子たちにやられたみたいね。

「寝台の上に・・・。確か雫ちゃんは治癒能力はないわよね?」

 

「う、うん。空間を繋げる魔法だけ」

 

「ならやっぱり自然治癒に任せるしかないわね」

 

 このケガの具合。可哀そうだけど一日二日で治りそうにはないわね。

「あの、私達が来てからそれなりに時間が経ちましたが、そろそろ詳しい話を聞かせてもらえないでしょうか?」

 

「そうだな。そろそろ聞かせてもらおうか」

 

 竜城明日香ちゃんとそのパートナーデジモンの古風なしゃべり方をするアグモンは説明を求めてきた。

「仰る通りです。神浜の魔法少女がすべて集まったとは言えませんが、そろそろ頃合いでしょう」

 

「オイラもそう思う」

 

 常盤ななかちゃんとそのパートナーのアグモンも明日香ちゃんに同意して説明を求めてきた。

「やちよさんを待つなら話は別ですが、その必要はないのですよね?」

 

「うん。でもやちよ達、どこにいるんだろう?」

 

「そのやちよさんって髪の長い槍を使う人でパートナーデジモンがガブモンな人?だったらヘリポートの方に向かっていったよ」

 

「えっ?それいつの話?」

 

「もう結構前になっちゃうと思う。だよね?ファントモン?」

 

「そうですね。それなりの時間は経ったはず」

 

「鶴乃、行こうぜ!誰かと戦ってるのかも!」

 

「うん!行くよピヨモン!モノドラモン!」

 

「うん!」

 

「いっちょやったるで!」

 

 鶴乃ちゃん達はやちよさんと合流すべくヘリポートへと向かっていってしまった。

「これ以上待っていても仕方ないし、始めましょう。・・・みんな、待たせたわね。これからわたしが知っていることをみんなに伝えるわ」

 

 わたしはこの場にいる魔法少女のみんなにいろはちゃん達が体験したことを順を追って話した。マギウスの翼というのが何者で何を目的にしているのか。そしてみんなを襲い始めるまで何をしてきたのか。

 

 もちろんその経緯で彼女たちにとって聞きたくないことを・・・。魔法少女は魔女になるという真実や、この町ではそうはならずドッペルを生み出すことも話した。

「浮かび上がった彼女たちの姿をまとめると・・・マギウスの翼は魔法少女の魔女化を回避するという崇高な目的を持った存在であると同時に、この町の人々と魔法少女を犠牲にしてでも開放のためのエネルギーを手に入れて目的を遂行しようとする存在」

 

「マギウスの翼がどういう方々なのかはわかりました。しかし・・・」

 

「魔女になるってのはどうにも心にくるね」

 

 真実を知ったみんなは暗い表情で後半の話を聞けてない子たちもいた。

「自分の命と周りの命。傾けるべき方向は分かるが、決断には勇気がいるな」

 

「マギウスの翼もまたこの真実に対する向き合い方。ってことよね?」

 

「ただそのやりくちは言った通りよ。それを認められるかどうか、どっちに肩入れするかどうかは各々で考えて」

 

「どっちに肩入れしても止めはしないさ。ただアタシややちよさん達は認められないと思った。だからこうして恨みを買うような真似をしてみんなを巻き込んでしまった。それは謝るよ」

 

 ももこはみんなに頭を下げるとななかちゃんは首を横に振った。

「謝罪は必要ないでしょう。あなた方の見解ですと遅かれ早かれ起きていたことです。むしろ相手を否定する以上は何か対案があってのことですか?」

 

「対案・・・ね。いろはちゃんの言葉を借りるとすべてが終わったら考えようって感じかな」

 

「そんな投げやりな・・」

 

「考えてる暇もなかったんだよ」

 

 そう、いろはちゃん達が考える暇もなく事態は加速しつつある。

「でもこうして集まったのはいいことだと思う。みんながバラバラで答えを出そうとしているのをいろはちゃんは魔法少女全体の問題としてみんなで考えようって言ってくれた。それにアタシは乗るつもりだし、みんなも乗ってくれるならきっと神浜って大きな環の中で答えを見つけられるかもしれない」

 

「所詮は理想論にすぎないネ」

 

「理想がないと進む目標も見失うよ」

 

 いろはちゃん達のいう事はみんなからすれば理想論に過ぎない。

「つらいし怖い。後悔もしてるし情けない。何とかしたいって思っても・・・悪意そのものになると思うと・・とてもつらいです。でもこれが今の私だから・・今の私が見れる理想を見つめないと」

 

だけどその理想に賛同する子たちも現れた。

「私達の天秤は傾いたわ」

 

「それならあーしら早く行ったほうが良くなくなくない?」

 

「どういう事?」

 

「だってローブちゃん達あーしらがここにいたら暇かなってさ。あーしならヘリポートにバツイチやりにいくし」

 

「仰る通りですね。では参りましょうか」

 

「こっちについてくれてサンキュー」

 

「この際魔女とかひとまず置いておいて、躾けてやらないと気が済まないからね」

 

「じゃあ手を貸してくれる人はアタシに付いてきてくれないか」

 

 そういってももこはこの場にいた魔法少女の半分以上を引き連れてヘリポートへと向かっていった。

 




神浜デジモンファイルに
「毬子あやか&ファントモン」
「江利あいみ&リボルモン」
「加賀見まさら&ペイルドラモン」
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次回「今の私なら信じることができる」


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今の私なら信じることができる

~やちよSide

 

「さぁ、貴様が受けたウワサ。心の奥から見させてもらおう」

 

 逃げようとする羽根を取り押さえた十七夜は、その羽根から情報を得ようとしているとさらに追加で羽根たちがやってくる。

「むっ、新たな手合いか」

 

「こっちは任せて!」

 

「ガオモン。お前も相手をしてやれ」

 

「YES。マスター」

 

 相変わらずガブモンはデジモンを呼び出されてないからとサボり、私はガオモンとともに羽根たちを相手にする。

「うっ・・・なんだこれは・・」

 

 すると読心をしていた十七夜は何を見せられたのかふらつき倒れそうになる。

「どうしたの?」

 

「ウワサの影響かもしれんが、これは狂気だ。気分が悪くて見てられん」

 

 狂気・・。いったい羽根たちはどんなウワサを着せられたのかしら?

「そう。深く読もうとしても苦しむだけ。やめておいた方が身のためよ」

 

「現れたわね。巴さん」

 

 私達の前に現れたのは巴さんとイージスドラモン。そしてさらに大勢の羽根たちだった。見ると羽根たちの中には笛姉妹もウワサに付かれた状態で紛れ込んでいる。さしずめ私達はここに誘い込まれたってところかしら。

「2人とも。魔法少女たちの様子はどうだったかしら?」

 

「あなたが一番よく知ってるはずよ」

 

「最悪だぞお前」

 

 さすがのガブモンも巴さんには敵意を向ける。

「今からでも遅くはないわ。あなた達もマギウスの翼に入らない?」

 

「お前は馬鹿を休まずに言う女だな。羽根たちの末路を見せられて素直に従うと思うか?」

 

「私達の答えは変わらないわ」

 

「そう。可哀そうね。私達の崇高な目的も。マギウスの才能も知りながらそれを理解できないだなんて」

 

 あいにく理解する気なんてサラサラないわ。

「むしろ私はあなたが可哀そうよ。ずっとこうしてマギウスに踊らされているんだから」

 

「その踊りすらももはや意味をなさないがな」

 

「どういう意味かしら?」

 

「今回の残虐な計画は俺らがもう阻止しているからだよ」

 

 ガブモンは「残念だったな」と言いながら阻止したことを告げると巴さんはくすくすと笑いだす。

「フフフ、そんなの関係ないわ。だってこうしてあなた達を誘い込めたんですもの。精神的な支柱がいなくなれば他の人は大人しくなるでしょうね」

 

「なるほど。最初から狙いは自分たちだったということか」

 

「胸が高鳴るわ。ここでみんなを救う道を一歩進められるかと思うと・・・さぁ!いらっしゃい!ガンドラモン!ムゲンドラモン!」

 

 巴さんはイージスドラモンのほかにもさらに2体のデジモンを呼び出す。1体は見覚えがあるけど、1体は新顔ね。

 

 

ムゲンドラモン

・究極体

・マシーン型

・ウィルス種

 全身が100%フルメタルのデジモン。数々のサイボーグ系デジモンのパーツを組み合わせて造られており、今までに製造されてきたサイボーグ系デジモン達はムゲンドラモンを完成させるための試作型だったとおもわれる。他のデジモンを圧倒するほどのパワーとけた違いの処理能力を誇る頭脳を持つが、自らの意思は持ち合わせていない純粋な機械デジモンである。必殺技は2砲のキャノンから発射される超弩級のエネルギー波『∞キャノン』だ。

 

 究極体を3体も使役しているだなんて・・・。やっぱり今の彼女は魔法少女としてもジェネラルとしても規格外の能力を持っているみたいね。

「イブの餌になって開放の血肉になれば、きっと神様もあなた達を称賛してくれるはずよ」

 

「生憎餌になる気は毛頭ないな。やれ、ガオモン」

 

「YES。マスター。ガオモン!ワープ進化!ミラージュガオガモン!」

 

 ミラージュガオガモンに進化したガオモンは巴さん率いる3体の究極体デジモンと戦いを始める。

「ガブモン!あなたも行ける?」

 

「正直究極体相手の戦いに俺なんかじゃ厳しいけど・・・まぁやるだけやるか」

 

 ガブモンもやる気を出してガルルモンに、そしてワーガルルモンに超進化をすると究極体同士の戦いに参戦していく。

「カイザーネイル!」

 

 ワーガルルモンはムゲンドラモンに必殺技をお見舞いしたけれど、ムゲンドラモンの強固な装甲にワーガルルモンの爪の方が傷ついてしまう。

「ぐっ・・・!?なんて硬さだよ」

 

「距離を取りなさいワーガルルモン!」

 

「よそ見をしてる場合かしら?あなた達の相手は私達よ」

 

 巴さんは羽根たちとともに私と十七夜に攻撃を仕掛けてくる。私達はその攻撃を避けつつも反撃をしようとするも、如何せん数が多い上に攻撃にためらいがないから少しも気を抜くことができない。

「どうする七海?」

 

「どうするもこうするもないわ。まずは司令塔である巴さんからウワサを引き剝がすわ」

 

「なるほどな。しかしどうやって剥がす?ウワサを剥がすには気持ちが通じ合っていなければできないのだろう?」

 

 それが問題なのよね。鶴乃のときこそ何とかなったけれど、私達に巴さんを理解することはできるのかしら?

「たった2人で何ができるというの?」

 

「やちよ達だけじゃないぜ!」

 

「そうだよ!」

 

 そこに現れたのはバードラモンに乗ってここまでやってきた鶴乃とフェリシアだった。

「鶴乃!フェリシア!」

 

「こっちは任せろ!行くぞモノドラモン!」

 

「モノドラモン!ワープ進化!ジャスティモン!」

 

 バードラモンから飛び降りたモノドラモンはジャスティモンに究極進化をしながら着地をする。

「ちゃらぁぁぁっ!」

 

「ドーーーン!」

 

 鶴乃とフェリシアも羽根たちを攻撃しながら着地をしたら、バードラモンは一度ピヨモンに戻る。

「鶴乃!私達も!」

 

「ピヨモン!ホウオウモンだよ!」

 

「ピヨモン!ワープ進化!ホウオウモン!」

 

 そしてピヨモンもホウオウモンに進化をしたら、ジャスティモンとホウオウモンもそれぞれガンドラモンとムゲンドラモンに挑んでいった。

「加勢がきたのは予想外だけれど・・・それでもあなた達が数の上で不利なことに変わりはないわよ」

 

「うぅ・・。こんな攻撃でよくも・・ひぃ!?七海やちよ!?」

 

 鶴乃の攻撃にやられた黒羽根の1人が起き上がる。だけどその羽根はどういうわけか正気を取り戻していた。

「十七夜!今のうちにその黒羽根の心を読んで!」

 

「あぁ!根こそぎほじくり返してやる!」

 

 十七夜は正気を取り戻した黒羽根の心を読む。

「なるほどな。ウワサは羽根たちがつけているペンダントに由来する内容だ!それを強引に潰してしまえば、ウワサに反したことになる!」

 

「なるほど。フェリシア!」

 

「よし!オレの出番だな!」

 

 フェリシアは羽根の1人からペンダントを奪い取るとハンマーでそれを粉々に砕く。するとウワサに反したこととなって『ウワサ』が現れた。

「フェリシア!そのウワサは任せたわ!」

 

「よっしゃぁ!任せろ!」

 

「鶴乃は羽根たちの相手を!十七夜。あなたは笛姉妹の相手をお願い。巴さんの相手は私1人でするわ」

 

「分かった。そちらは任せたぞ七海」

 

 フェリシアいウワサを、鶴乃に羽根達を、そして十七夜に笛姉妹を任せた私は1対1で巴さんと向かい立つ。

「あなた1人で私に挑もうなんて・・・無謀だと思うわよ」

 

「そんなの・・・やってみないとわからないじゃない」

 

 とはいえ彼女の気持ちが分からない以上確かに無謀もいいところよね。

「ハァァァっ!」

 

 とにかく今は戦いながら彼女の気持ちを・・・通じ合う何かを探らないと。

「うわっ!?」

 

「フェリシア!」

 

「オウ!」

 

 ウワサに吹き飛ばされたフェリシアは鶴乃と手を合わせてコネクトを発動すると、ハンマーに炎をまとわせて渾身の一撃をウワサに叩きこむ。その一撃でウワサが倒されると羽根達は洗脳が解かれて正気に戻り始めた。

「ウチら・・・」

 

「いったい何をどうして」

 

「どうやら正気に戻ったようだな」

 

 笛姉妹も正気に戻り、十七夜も安堵の表情を浮かべる。こちらも消耗させられたとはいえ羽根たちは正気に戻った。これで形勢は逆転したわね。

「ふふ、フフフ」

 

 なのに巴さんはこの追い詰めた状況でもなお笑っていた。

「何がおかしいの?」

 

「魔法少女たちが呪縛から解放されて救われる。それが着実に進んでいることがうれしいだけよ」

 

「神浜の魔法少女を消すことも、私たちをこの場で狩ることもあなたは失敗したはずよ!」

 

「本当に大切なことは胸のうちに秘めておくものよ。歯車は消して止まらない。今、私達の計画は実行されたわ」

 

 巴さんがそう告げた瞬間。町中の電気がいきなり消えてしまった。

「な、なんや?いきなり暗くなりおったで?」

 

「これもお前たちの計画なのか?」

 

 ワーガルルモンは巴さんに問いかけると、彼女は頷いた。

「そうよ。町の電気も電波もすべては私たちの手の中にあるわ」

 

 それでスマホの電波も・・。

「あなた達が騒いでくれたぶん、他の羽根たちも動きやすかったわ」

 

「この町を使ってあなた達は何をしたの!!」

 

「呼んだのよ」

 

 呼んだ?いったい何を?

「マギウスは神浜にズィードミレニアモンを呼んだの」

 

 ズィードミレニアモン?それってデジモンよね?

「ズィードミレニアモンだって!?」

 

「ホンマかいな!?」

 

「いくら最強でもそれは無理だよ・・・」

 

 私達は何のことだか分からなかったけれど、それを知ってるワーガルルモン達は驚きの声を上げた。

「ミラージュガオガモン。そのズィードミレニアモンとはなんだ?」

 

「終末の千年魔龍・・・我々の住んでいたデジタルワールドを破壊した最凶最悪のデジモンです」

 

「そ、そんな・・・!」

 

 デジタルワールドを破壊してしまうほどのデジモンを呼んだですって。そんな怪物をこの町に呼んだら、この町は・・・いえ、この世界は大変なことになってしまうわよ。

「あなた達はこの世界を終わらせるつもりなの?」

 

「終わらせるなんてとんでもない。ズィードミレニアモンにはイブの孵化を促してもらうのよ。それだけのデータなんだからきっとイブは孵化してくれるわ」

 

「馬鹿げてる。正気の沙汰とは思えん」

 

「止めようと思っても無駄よ。ロイヤルナイツが次元の狭間に封印したズィードミレニアモンは今、神浜の電気エネルギーを利用したデジタルゲートをくぐって現実世界にやってこようとしているもの。素直に諦めなさい」

 

「町が・・・世界が蹂躙されるっていうのに大人しく見てろって言うの!そんなのごめんよ」

 

 なんとしてもマギウスを捕まえてそんな計画を止めて見せるわ。

「無駄だって言ってるでしょ。どうせあなた達は狩られるんだから」

 

 巴さんはマスケット銃による一斉射撃で私を攻撃してくる。この銃弾の雨・・・対処しきれないわね。

「っ!?」

 

 そんな私のピンチに一台のバイクが轟音とともに現れた。そのバイクの主はショットガンで銃弾を撃ち落とすととそのままホウオウモンが戦っていたムゲンドラモンに体当たりを決める。

「お前が七海やちよだな」

 

ムゲンドラモンを怯ませたバイクが停車した。今の銃撃をしたのはこの人ね。乗ってるのは人間・・・じゃないわね。デジモン?

「あなたは?」

 

「俺はベルゼブモン。ただの・・・デジモンだ」

 

ベルゼブモン

・究極体

・魔王型

・ウィルス種

 多くの悪魔型デジモンを統べる能力を持ちながら、あえて孤高の存在を守る魔王型デジモン。七大魔王デジモンの1人で、その気になれば闇の軍団『ナイトメアソルジャーズ』の頂点に立てると言われているが、そのベルゼブモンすらも凌駕する程の魔王型デジモンも存在すると言われている。必殺技は2丁のショットガンを連射する『ダブルインパクト』だ。

 

魔王型デジモン?どうしてそんなデジモンが私を助けたの?

「どうしてって顔をしてるな。・・・お前には知るべきだ。俺のパートナーになるはずだった奴の想いをな」

 

 なるはずだった?

「あなた・・パートナーはいないの?」

 

「俺のパートナーは俺と出会う前にあの世に逝っちまったからな」

 

「そう・・」

 

 でもそれがどうして私が聞くべきことなのかしら?

「まさか・・・あなたのパートナーって・・・」

 

 私はベルゼブモンのパートナーになるはずだった相手に察しがついた。私の知り合いかつパートナーデジモンがいないまま亡くなったのは1人しかいない。

「あなたが何者かは分からないけれど、七海さんの味方をするというのなら容赦しないわよ」

 

 巴さんはベルゼブモンも敵を判断してその銃口をベルゼブモンにも向けてくる。するとベルゼブモンは撃たれるよりも前に早撃ちで巴さんのマスケット銃をすべて破壊した。

 

「なっ・・!?」

 

「話の続きだ。七海やちよ。俺のパートナーは俺と出会う前に死んだ。だがその心は渡されてもないこのデジヴァイスに宿っている。だから俺は『ベルゼブモン』としてこの場に来ることができた」

 

「パートナーがいないのに究極進化してここに来たってこと?」

 

「いないんじゃない。確かに俺のパートナーは死んだが・・・その心はこのデジヴァイスに宿ってる。会ったことはなくても・・・常に一緒にいる。だから俺は進化できたんだ」

 

 離れていても一緒にいる。それが力になっているのね。

「でもどうしてベルゼブモンは私を助けに来てくれたの?」

 

「デジヴァイスが・・・あいつが語り掛けてきたんだよ。ここにいけ。七海やちよを助けろってな」

 

 あの子が・・・そうなのね。

 

「やちよ」

 

「七海先輩」

 

 どこかからか大切な2人の声が聞こえた気がした。もう消耗しきっていたはずなのに何処からか力が・・・魔力が湧き上がってくる。

「そうね。そうよね・・・。こんなところで諦めるわけにはいかないわよね」

 

 今も昔も私には大切な仲間がいる。どんなに離れていても私に力をくれる大切な仲間が。

「今の私なら信じることができる。ガブモンとの絆を、みんなとの友情を」

 

 私のみんなへの思い。それに反応したデジヴァイスは青い輝きを放った。この光は・・・究極進化への光ね。

「ワーガルルモン!」

 

「あぁ!ようやく俺も究極進化か。さぁ来い!」

 

「受け取りなさい!ワーガルルモン!」

 

「ガブモン!究極進化!」

 

 進化の光を受け取ったワーガルルモンは光の中から出てくると金色の鎧を身に纏い。1本の槍のような刀を手にしていた。

「クーレスガルルモン!」

 

クーレスガルルモン

・究極体

・獣騎士型

・データ種

ガルルモンの最終形態でメタルガルルモンの亜種。攻撃を跳ね返す黄金のクロンデジゾイド製の装甲を身に纏い、『黄獣偃月刀』を武器に持ち剣劇を得意にしている。必殺技は黄獣偃月刀を氷で無数に形作り敵に飛ばす『激・氷月牙』だ。

 

「本当はいつでも進化させることができた気がする。だけど私は心の何処かでやっぱり認めることが怖かったのよ」

 

 みんなに対するこの友情を心の何処かで認めるのが怖かった。認めたらまた失ってしまいそうな気がして・・・。だけどいろはのおかげでそんな不安もいつの間にか消えていた。

「そうだ。それでいい」

 

 私達の究極進化を見届けたベルゼブモンは何処かから取り出したウィザーモンの帽子を深く被るとバイクから降りる。

「お前もようやく七海やちよに託すことができたな」

 

「ありがとうベルゼブモン。あなたのおかげで究極体に進化できたわ」

 

「礼を言うのはあいつを倒してからにしろ」

 

 それもそうね。見ていて2人とも。

「今の私たちなら・・・やれる気がするわ。行くわよクーレスガルルモン」

 

「あぁ!一緒に行くぞやちよ!」

 

 私はありったけの魔力を槍に集める。そしてクーレスガルルモンも槍のように長い刀を氷で無数に形作った。

「あなたのウワサとしての役割はここまでよ!巴さん!」

 

「激・氷月牙!」

 

「させないわ!ティロ・フィナーレ・ホーリー・ナイト!」

 

「パワーウォーター!」

 

 私と巴さんの攻撃がぶつかり合うと、クーレスガルルモンの必殺技とイージスドラモンの必殺技もぶつかり合う。私達の想いと想い。技のぶつかり合いは私とクーレスガルルモンが制した。

 

 

 

 

~マミSide

 

 魔法少女になって命を繋いだ私。それからの人生はなんだったのかしら?誰かのために戦って、みんなを救うこと。それを誇りに思っていたのに魔法少女が魔女になるだなんて。

 

 私は何のために生きていたの?私が殺してきたものは何だったの?

 

 私の事を慕ってくれる子たちも魔法少女の宿命に巻き込んでしまった。わからない。もう私にはわからないわ。彼女たちを巻き込んでしまった負い目もある。だけど一緒に戦える後輩ができたって喜んでいた私もいるの。

 

 私がなんとかしなきゃ。魔法少女の宿命から逃れる術を私が見つけてあげなきゃ。

 

 だから私は縋ってしまったの。認められない存在であるにも関わらず、私はマギウスにその望みを委ねてしまった。

 

 そして私はウワサに自分を飲み込まれて・・・こんな悪事に加担してしまった。

 

 お願いやめて。本当の私を塗りつぶさないで。・・・こんなことになってしまうのなら、誰か私を消してしまって。

 

 

~やちよSide

 

 それがあなたの本当の気持ちだったのね」

 

 ウワサが離れたことで鶴乃の時と同じようにその思いの断片を垣間見た。

「私、本当にウワサに・・・」

 

「だけど心が繋がっていたからウワサを剥がすことができたわ」

 

 巴さんが鹿目さん達を生かしておいた時点で心の何処かに良心が残っていたことは分かっていた。

「私もみんなを助けたいって思いは同じよ。だからきっと何処かで心が通じ合ってる気がしたの。それに私たちはお互いを理解しあえないと思っていたわ。それってある意味心が通じ合ってると思わない?」

 

「屁理屈だわ」

 

「でも通じたわ」

 

 その屁理屈もあって私とクーレスガルルモンは巴さんとデッカードラモンをウワサから引き剝がすことができた。

「ありがとう七海さん。今度はお互い・・・理解し合えたわ」

 

 私にお礼を言った巴さんは意識を失うと羽根たちは司令塔を失って動揺する。だけどまだ巴さんが着ていたウワサは倒していない。

「大丈夫だやちよ。俺に任せろ」

 

 クーレスガルルモンがそう言った途端、私のデジヴァイスはXの光を放った。

 

 




次回「我ら、グレイモン同盟」


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我ら、グレイモン同盟

「クーレスガルルモン!アルティメットゼヴォリューション!」

 

 青いXの光に包まれたクーレスガルルモンは青い装甲のメカニカルなデジモンに進化をする。

「メタルガルルモン!」

 

メタルガルルモン(X抗体)

・究極体

・サイボーグ型

・データ種

 ほぼ全身をメタル化することでパワーアップしたガルルモンの最終形態。メタル化をしてもなお持ち前の俊敏さは失っておらず、全身に隠されている無数の武器で敵を粉砕する。X抗体によるデジコアへの影響で追加武装とセンサーの強化がされている。遠距離への狙撃、中距離への広範囲砲撃。近距離においても超高速連射能力を持つガトリング砲『メタルストーム』が装備されている。必殺技はすべてのものを氷結させてしまう絶対零度の冷気を放つ『コキュートスブレス』だ。

 

「メタルストーム!」

 

 クーレスガルルモンはメタルガルルモンにX進化するなり、ガトリング砲で巴さんに憑りついていたウワサをハチの巣にした。

「続けていくぜ!」

 

 ガンドラモンとムゲンドラモンは戦っていたジャスティモンとホウオウモンを無視してメタルガルルモンに砲撃をしてきたけれど、メタルガルルモンはそれを巧みに回避しながら距離を詰める。

「タァッ!」

 

「ちょ、ワイの相手を横取りすんなや!」

 

 そしてガンドラモンにキックを叩きこむとジャスティモンはアクセルアームでチョップの追い打ちをした。

「一緒にやろうぜホウオウモン!」

 

「うん!いいよ!」

 

 ホウオウモンのスターライトエクスプロージョンと一緒にメタルガルルモンはもう一度メタルストームを放ってムゲンドラモンを怯ませる。

「コキュートスブレス!」

 

 そしてまだ私達に敵意を向けているガンドラモンとムゲンドラモンに必殺技のコキュートスブレスを浴びせて身動きを完全に封じる。

「たぶんあの2体は巴さんがウワサになってから彼女のデジモンになったんでしょうね。

 

 だから巴さんからウワサを剥がしても私たちを攻撃しようとしてきたんだと思うけど・・・今はこうするしか大人しくしてくれないわね。

「聖女様がやられた」

 

「ど、どうすれば」

 

「動揺することはないでございます」

 

「数の上ではまだこっちの方が有利だよ。究極体だって有限じゃない。たぶんそろそろ・・・」

 

 ホウオウモンとジャスティモンは時間切れでピヨモンとモノドラモンに戻ってしまうと、一番究極進化に慣れているはずのミラージュガオガモンもガオモンに戻ってしまう。

「メタルガルルモンは・・・」

 

「俺も・・・そろそろ限界」

 

 いろはのアグモンの時もそうだったけど、X抗体の究極進化は燃費がかなり悪いようで、メタルガルルモンも幼年期のツノモンまで退化してしまう。

 

ツノモン

・幼年期Ⅱ

・レッサー型

 プニモンの頭部の触手の一つが硬化した小型デジモン。プニモンからより動物的進化をとげ、フサフサな体毛に覆われている。必殺技は酸の泡だ。

 

「お疲れ様って言ってあげたいところだけど・・・このタイミングでの退化はマズいわね」司令塔であった巴さんを失ってもその士気は下がってはいない。対するこちらは既に戦う力はほとんど残っていない。たぶん戦えるのはベルゼブモンだけでしょうけど・・・ベルゼブモンにどこまで頼っていいのか分からない現状じゃ・・・。

「ベルゼブモン。頼ってもいいのかしら?」

 

「別に構わねぇが・・・いくら俺でもお前らを守りながらこの数をってのは無理だぞ」

 

 殺しちゃいけないってのと私たちを守りながらってのは流石のベルゼブモンも無理だと断言してくる。そりゃそうよね。今の私たちは足手まといにしかならないものね。

「さて、どうしたものかしら?」

 

 私はこの状況を切り抜けてどう撤退するかを考える。手段としてはベルゼブモンに正面突破をしてもたって。私たちがそれの後に続くというのが無難だけど、魔力の反応的にさらに追加の魔法少女が・・・羽根たちが迫ってきている。観測できるデータ量的に前に戦ったキメラモンもいるわね。

「どうやら・・・今回はグッドタイミングなみたいだね」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。今のは・・・ももこ?

「炎龍撃!」

 

 激しい炎とともに私たちを取り囲んでいたタンクモン達が吹き飛んでいく。今の一撃はカイゼルグレイモンの技ってことは・・・・。

「助けに来たよやちよさん。これだけの数に気づかないだなんてかなり参ってるみたいだな」

 

そこにはももこ達だけじゃなく大勢の魔法少女とそのパートナーデジモン達がいた。

「メタルグレイモン!」

 

メタルグレイモン(ワクチン種)

・完全体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 体の半分以上を機械化しているサイボーグ型デジモン。完全なメタルグレイモンはグレイモンからの進化に成功しており、より強力なパワーを引き出しているサイボーグ型デジモンである。必殺技は胸のハッチから有機物系ミサイルを発射する『ギガデストロイヤー』だ。

「ライズグレイモン!」

 

ライズグレイモン(X抗体)

・完全体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 体の半分以上を機械化しているサイボーグ型デジモン。その巨体にも関わらず大空に飛翔し、敵を撃つ。X抗体によるデジコアへの影響で日輪の紋章が輝き、身体のあらゆるところから噴き出すほどにエネルギーに満ちている。手足の爪はエネルギーをまとったビーム刃となり近接戦闘も俊敏にこなす。必殺技はエネルギーを最大充電し、トライデントリボルバーから撃つ『サンライズバスター』だ。

 

「シャイングレイモン!」

 

シャイングレイモン

・究極体

・光竜型

・ワクチン種

 灼熱の太陽のエネルギーを蓄えて戦う光竜型デジモン。必殺技は巨大な翼を広げて光のエネルギーを極限まで集中して放つ『グロリアスバースト』だ。また、大地の力が凝縮された剣『ジオグレイソード』を大地より召喚する能力をもつ。

 

「ビクトリーグレイモン!」

 

ビクトリーグレイモン

・究極体

・竜人型

・ワクチン種

クロンデジゾイドの鎧を身に纏うウォーグレイモンの亜種。巨大な剣を軽々と振り回し、独特の建議で敵に立ち向かう豪傑の竜戦士である。必殺技は巨大な破砕剣『ドラモンブレイカー』を叩きつける剣技とドラモンブレイカーを分離させて両腕に装着し、大気中に存在するエネルギーを剣の先端に集中して放つ『トライデントガイア』だ。

 

「ガイオウモン!」

 

ガイオウモン

・究極体

・竜人型

・ウィルス種

 戦いに勝利し自ら強さを増していく戦闘種族デジモンとして非常に優秀なグレイモン系の亜種である竜人型デジモン。その強さは未知数な部分も多いが、信じ難い戦闘回数と戦績

を持つ。必殺技は独特の形状をした剣『菊燐』の軌跡『火斬』と2本の菊燐を合体させて怪しい光を一気に種中して敵に討つ『燐火撃』だ。

「エンシェントグレイモン!」

 

エンシェントグレイモン

・究極体

・古代竜型

・ワクチン種

火の属性を持つ、古代デジタルワールドを救った伝説の十闘士デジモン。遥か古代に存在した初めての究極体で、その強さに現代の究極体をも凌駕すると伝えられている。エンシェントグレイモンの能力は後のグレイモン種等の竜型デジモンに引き継がれていった。必殺技は大地の気を集め竜巻にして敵を巻き込み吹き飛ばす『ガイアトルネード』だ。

 

「カイゼルグレイモン!」

 

「「「「我ら、グレイモン同盟」」」」

 

 グレイモン系デジモン達はグレイモン同盟と名乗りをあげて参戦してくる。

「ガイアトルネード!」

 

「グロリアスバースト!」

 

 エンシェントグレイモンとシャイングレイモンの同時攻撃がキメラモンを吹き飛ばしてデジクロスを解除させる。

「トライデントガイア!」

 

「燐火撃!」

 

 ビクトリーグレイモンとガイオウモンの斬撃はスカルグレイモン率いるスカル系統デジモンに命中する。

「ギガデストロイヤー!」

 

「サンライズバスター!」

 

メタルグレイモンとライズグレイモンの同時攻撃はタンクモンの群れを薙ぎ払う。

「ももこ・・・この子たちは?」

 

「それなりの頭数は揃えてきたよ」

 

「みんなへの説得も終わったからね」

 

「問題は山積みだけど、こいつらを止めるっていうのは満場一致だから」

 

「ほら、やちよさん。グリーフシードだ。使ってくれ」

 

 ももこからグリーフシードを受け取った私達はソウルジェムを浄化する。そして倒れたままの巴さんも浄化をしたけれど、目覚めることはなかった。

「浄化しても目覚めないか」

 

「苦しかったでしょうね。自分の誇りを打ち砕かれて、自責の念にも追われて」

 

「大人びてはいてもまだ中学生のようだからな。心の器から感情が溢れてしまうのもうなづける。ウワサの一部になったのも責められん」

 

「頑張ったわね。巴さん」

 

「・・・それじゃあ次はいろはちゃんの番だね」

 

 私達は巴さんを称賛すると鶴乃はいろはの番だと告げてくる。

「万年桜が本拠地と関係してるなら形勢逆転だよ!」

 

「だなっ!そのズィードなんとかってやつ。さっさと止めさせようぜ」

 

「他の魔法少女には話はつけてある。アタシらもそっちに付いていくよ」

 

 こうして私達はこの場を他の魔法少女達に任せて、万年桜のウワサのある場所へと急いだ。

 

 

 

 

 

~いろはSide

 

「みんな、大丈夫だよね」

 

 みんなと連絡がつかなくなっちゃったけど、私とアグモンはそれでも目的の場所に足を運んでいた。

「こういうときだからこそみんなを信じないと」

 

 うん。アグモンの言う通りだね。こういう時だからこそ私がみんなを信じないと。

「ここが・・・万年桜のウワサ」

 

 万年桜のウワサのある桜の木に到着した私は辺りを見渡す。おっきい桜の木。きっとこれが万年桜のウワサだ。

「やっぱり灯花ちゃんもねむちゃんもこのウワサだけは消せなかったんだ」

 

「良かったねいろは」

 

 きっと2人とも記憶としては覚えてなくても心の何処かではういを思う気持ちが残っていたから消せなかったんだ。

「あっ、誰か戻ってきた。この反応って・・・」

 

「・・・なんで」

 

「環いろはがいるの?」

 

 現れたのは灯花ちゃんとねむちゃん。

「なんで?どーして?イミフメー!腹立つ腹立つハラタツー!このウワサは広めていないはずだよ。まさかねむ!」

 

「落ち着いて灯花。誤解も甚だしいよ。僕がウワサさんに拡散を指示するわけがない。このウワサを使って移動しているのは僕達だけに違いないはずだよ」

 

「じゃあどうして?まさかまたへんてこりんな記憶」

 

「そうだよ。そのへんてこりんな記憶にあったの。この万年桜のウワサが。だってこのウワサは私が考えたんだから」

 

「・・・ウワサは一貫して僕が作ってる」

 

「私にはこのウワサを消せない気持ちが分かるよ。ウワサを消せないのは本拠地を隠すためかもしれない。だけどそれだけじゃないよね?消したくても消せなかったんでしょ?」

 

「うるさいうるさいうるさーい!会話するのも無駄だから終わり!どうせ環いろはとアグモンを消せばここを知る人はいなくなるでしょ。DNA1つ残さないからね!リロード!デュランダモン!」

 

 灯花ちゃんが呼び出したのはエンシェントワイズモンじゃなく金色の剣みたいなデジモンだった。 

 

デュランダモン

・究極体

・聖剣型

・ワクチン種

 自身の剣を極限まで磨き上げ、さらに神話やゲームからなる『伝説の剣』のデータを得て進化した究極の聖剣を持つデジモン。デュランダモンの剣を手にすれば勝利をもたらすと言われ、剣に変わる『Legend‐Arms』の中では最強クラスの強さを誇る。必殺技は闘気を込めて両手の剣で敵を切る『ツヴァイグレンツェ』と、複数の敵をまとめて一掃する回転斬り『トロンメッサー』である。

 

「やっちゃって!デュランダモン!」

 

「招致した。我がマスター」

 

 デュランダモンは黄金の剣を構えると私達にその刃を向けてきた。

「僕も戦おうか。リロード。ブリウエルドラモン」

 

 ねむちゃんは全身が盾のドラゴンみたいなデジモンを呼び出してくる。

 

ブリウエルドラモン

・究極体

・防具型

・データ種

 ほぼ全身が盾で形成され、ドラゴンの姿となった『Legend‐Arms』盾デジモンの究極体。神話やゲームからなる『伝説の盾』のデータを得て、どんな攻撃をも傷がつかない最強硬度の盾に進化している。必殺技は炎の翼から烈火を放つ『グレンストーム』と翼を分離し炎のバリアを展開しながら敵に突撃する『ブラストスマッシュ』がある。

 

 ブリウエルドラモン。大丈夫。相手が『ドラモン』ならウォーグレイモンのドラモンキラーで対処できるはず。

「行くよアグモン!」

 

「アグモン!アルティメットゼヴォリューション!ウォーグレイモン!」

 

 ウォーグレイモンにX進化したアグモンはドラモンキラーを構えてまずは『ドラモン』のブリウエルドラモンに攻撃を仕掛ける。

「ハァァァっ!」

 

「甘いよ」

 

 ドラモンキラーなら攻撃が通るはず。そう考えてウォーグレイモンで攻撃をしてもらったけど、ウォーグレイモンの爪はブリウエルドラモンの盾に防がれていた。

「か、硬い・・っ」

 

 効果があるはずのドラモンキラーが通用しない防御力ってこと?

「ブリウエルドラモンは最強クラスの防御力を持つデジモンだよ。いくら効果がある武器を持っているとしても、そう易々とこの盾を攻略できないよ」

 

「それにこっちには最強の剣デジモンだっているんだよ」

 

 灯花ちゃんがそう告げた途端、デュランダモンはウォーグレイモンに剣を振るってくる。

「くぅ・・・!」

 

 それを受け止めたウォーグレイモンは激しく地面に叩きつけられてしまって、その衝撃で花の咲いてない万年桜が激しく揺れる。

「これで決めます。トロンメッサー!」

 

「究極進化!ブリッツグレイモン!」

 

 ブリッツグレイモンに究極進化したウォーグレイモンはサンダーバーニアで加速して攻撃を回避したけれど、避けた先にはブリウエルドラモンが待ち構えていた。

「そこだよ。ブリウエルドラモン」

 

「グレンストーム!」

 

 ねむちゃんの指示でブリウエルドラモンは必殺技を放ってくる。急に軌道を変更することはできないブリッツグレイモンはその攻撃を受けてしまいそうになった瞬間だった。

「させません!」

 

 何処からともなくさなちゃんの声が聞こえたかと思えばロードナイトモンがブリウエルドラモンの必殺技を防御していた。

「大丈夫ですかブリッツグレイモン?」

 

「ありがとうロードナイトモン」

 

「でもなんでロードナイトモンが?」

 

「やちよさんに頼まれて・・・こっそり付いてきたんです」

 

 固有魔法で透明になっていたさなちゃんが透明化を解除して現れる。どうやらやちよさんが計らってくれてたみたい。

「ありがとう。助かるよさなちゃん。ロードナイトモン」

 

 正直私とブリッツグレイモンだけじゃ灯花ちゃんとねむちゃんの呼び出したあの2体を何とかすることは無理だった。

「そっちは任せた。ロードナイトモン」

 

「任されました」

 

 ブリッツグレイモンはブリウエルドラモンの相手を任せてデュランダモンと向かい立つ。

「ブリッツグレイモン。そっちは頼んだよ」

 

「分かった」

 

 2体のデジモン達の相手をブリッツグレイモンとロードナイトモンに任せて、私とさなちゃんは灯花ちゃんとねむちゃんと向かい立つ。

「こうなったら透明人間も揃って仲良く消す!」

 

「灯花ちゃん。私。ここまで覚えてるよ。2人しか知らない事もこうして覚えてる。2人にとってはおかしい事かもしれないけれど、それでもやっぱり正しいんだよ」

 

 私の妹の事。ういの事もきっと正しい。私はこの場所に来てそうさらに強く思った。だからこそ灯花ちゃんとねむちゃんにも同じ思いを抱いてほしい。2人にも思い出してほしいと思ったんだ。

『確かに君の記憶は興味深い。私個人としてはもう少し君の話を聞いていたいのだが・・・』

 

「聞かなくていい!」

 

『私のジェネラルがこれだからね』

 

 エンシェントワイズモン的には私の話を聞いていたいみたいだけど、灯花ちゃんがそれを許さないみたい。

「たとえ忘れていたとしても魔法少女の開放とは関係ないよ!親友がいたとしてもわたくしの意思は変わらない!」

 

 灯花ちゃんはエネルギーをいっぱい集めて球を作って、それを私に向けて飛ばしてくる。

「いろはさん!」

 

 するとさなちゃんは私を庇って、そのエネルギー球を盾で防いでくれた。だけどその威力は強力ですごい硬い盾を持つさなちゃんでも相殺しきれなくて、さなちゃんはかなりのダメージを受けちゃって、変身が解けた。

「さなちゃん!」

 

「さな!」

 

 私とロードナイトモンは倒れたさなちゃんに駆け寄る。

「ごめんなさいいろはさん・・・」

 

「私を守ってくれたのに謝らないで。さなちゃん。・・・2人を混乱させてるのは私の記憶でしょ?さなちゃんは巻き込まないで」

 

「ちゃんと神経繋がってるー?消したい相手を守ろうとするなら、それも消さなきゃいけないよね?」

 

「まぁ、その盾ももう動けなさそうだし。残る盾のロードナイトモンは主人がやられて退化するのも時間の問題。ブリッツグレイモンもX進化をしてて消耗が激しいだろうし・・・環いろはの敗北は確定的だね」

 

「透明人間は後で回収してイブの餌にするとして、環いろははここで終わらせておこうか」

 

「そうだね。すべての偶然を運命として捉えられると面倒だし、夢見がちで非論理的なのは僕も嫌いだしね」

 

 2人とも私を倒す気で満々みたい。

「私の作ったウワサなんだからウワサの内容だって知ってるよ」

 

「じゃあ言ってみてよ」

 

「確かこんな内容でしょ。みんなが走り回れるようになって、草原が広がっていて、みんなでお花見できるようにって、大きな桜の木で、そこでいつか入院していた3人の女の子達が元気になって退院してきて。いつもお見舞いに来てくれていた1人の女の子と再会するの。すると桜の木は4人の再開を祝福するように満開の花を咲かせる。そんな内容でしょ?」

 

 私の覚えている万年桜のウワサはそんな内容だった。

「2人は残りの2人が誰だか分からないからこのウワサを消せない。そうなんでしょ?その2人はね、灯花ちゃんとねむちゃんが忘れた人・・・私とういなんだよ」

 

「ふーん」

 

 灯花ちゃんはあっさりとした反応で返してくる。

「証拠はあるの?その記憶は正しいって証明できるの?」

 

「内容は確かに合ってるけど、腑に落とすには少し足りないね。ウワサさんから何処からか聞きだした可能性があるし、先の戦いで東のボスが僕達の心を覗いた可能性だってある。しれに残念だけどウワサは僕の創作物。その4人は空想の人物で詳細な設定すらないよ」

 

 2人はウワサの内容を語っても信じようとはしてくれなかった。いったいどうすれば信じてくれるんだろう?

「じゃあ抹消しようか。灯花。環いろはとそのパートナーデジモンを」

 

「そうだね」

 

 灯花ちゃんはもう一度エネルギー球を作り出して、私に向かって飛ばそうとしてくる。。

「いろは!」

 

「いかせん!」

 

 ブリッツグレイモンとロードナイトモンもデュランダモンとブリウエルドラモンの相手でこっちにはこれなくて、絶体絶命な状況に陥ったその時だった。

「うにゃ!?」

 

 誰かが灯花ちゃんを妨害して、その攻撃を止めてくれた。

「ウワサが環いろはを守った・・・?」

 

 私を守るように立っていたのは白いワンピースを着た白い髪の少女。とてもウワサには見えないけれど、ねむちゃんが驚いてるってことは『ウワサ』なんだね。

「私を守ってくれたの?」

 

「うん」

 

これが私の記憶が本当に正しかったと確信した瞬間だった。

 




次回「他人事なんて言わせない」


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他人事なんて言わせない

都合により10月の更新はお休みさせていただきます。


「私を守ってくれたの?」

 

「うん」

 

「それならあなたは私の記憶が正しい証拠だ」

 

 白い髪に白いワンピースのような衣装を身に纏った少女のようなウワサ。万年桜のウワサが私を守ってくれた。ねむちゃんが『ウワサ』に反した行動を取ったことで私を守るため現れてくれたんだ。

「ウワサはウワサの内容に反すると出てくる。これが環いろはを守ったっていう事は・・・」

 

「私が4人の中の1人だっていう証拠だよ」

 

「これでいろはの事を信じられるだろ?」

 

 ブリッツグレイモンは灯花ちゃんとねむちゃんに念押しをすると万年桜のウワサが続ける。

「すべては環いろはの言う通り。私はウワサとして内容を守らなくてはいけない。灯花もねむもういも、そしていろはも。いつか4人が集うために」

 

 私達4人を守る。そう言った万年桜のウワサに対して2人は「信じられない」と声を漏らす。

『環いろはの記憶が正しいか。これは面白くなってきたね』

 

「どこが!全然面白くないっ!」

 

 面白くなってきたと発言をするエンシェントワイズモンに怒る灯花ちゃん。

「わたくしは信じないよ」

 

「それにこれは僕の創造物のはず。4人だなんて設定はなかったはずだよ」

 

「でもそのウワサがこうして証明してくれた。それに万年桜のウワサだけじゃない。他にも忘れていることがあるよ」

 

「それが環うい。君の妹だって言いたいのかい?」

 

「そうだよ。2人の親友。私の大切な妹。・・・環うい」

 

 神浜にあるウワサはほとんど3人が考えた。だからちゃんと話さないと。

「わたくし達の記憶に環いろはと妹の記憶はないの!はっきりと覚えてないけど別の2人がいたんだもん!」

 

「だからその2人がいろはとうい・・・」

 

「うるさい!切り刻んじゃってデュランダモン!」

 

「・・・ッ」

 

「待ちなよ灯花。激昂する気持ちも分かるけどここは抑えようよ」

 

 デュランダモンが切りかかってこようとすると、ねむちゃんがそれを止めた。でも分かってくれたってわけじゃあなさそう。

「環いろはは要望通りに証拠を見せつけて記憶の正しさを立証した。ウワサが出てきた以上、僕達には否定できないよ」

 

「信じるの!?」

 

「僕にだって環いろはと別の記憶があるのは事実。たとえ立証されたところで信用する気は毛頭ないよ。ただウワサの事もあるし、環いろはにはこちらから抗議をしてきた経緯があるからね。語りたいことは語らせよう。僕達の結論はその話を咀嚼して下せばいいから」

 

『ふむ。私もねむ君と同意見だ』

 

「エンシェントワイズモンまで・・・分かったよ。話せば。どうせわたくしは信じないもん」

 

「私は見ていたの。3人が神浜のいろんなお話を作っていくところを」

 

 2人とも私の話を聞いてくれることになったので私は語りだした。

「3人はいつか退院して歩き回れるようになった時、神浜のあちこちに行ってみたいって神浜のスポットを色々な人に聞きまわっていたの。そうして3人は自分達で地図を作ってたの。3人の地図作りが変わり始めたのはね、地図に張られた写真が地図を埋め尽くした辺りの事。ういが急にスケッチブックが欲しいって言いだして、持って行ってあげたら『自分達でどんな場所があるのか考えてみよう』って話になってたの」

 

 3人はそうして神浜の『ウワサ』を考え始めて、私もそれに交じってウワサを考えた。その1つがこの万年桜のウワサというわけだ。

「みんながいつか元気になって、外で遊びまわれるようになった時、一緒に集まってそこで今までできなかったことをたくさんしようって。そう思ったからこのウワサを考えたの」

 

 これが私の記憶。灯花ちゃんとねむちゃん。そしてういに関する記憶。

「僕達とは違う記憶だね」

 

「そうかもしれない。けど本当は覚えているはずなんだよ」

 

 私は2人が心の何処かでういの事を覚えている事を信じていると告げたら、2人は言葉を返してくる。

「事情も記憶も理解したけど、遺憾ながらやめられないね。このウワサは本拠地を隠すのに都合がいいから消さないでおいただけさ。記憶に残らないものに情があるわけじゃない。ご教授頂けたのは感謝するよ。だけど変わらないし影響もない。僕と灯花の目的に・・・開放という目的に」

 

「そうだね~。環いろはのいう事が正解だったとしても、聞いてみたところで他人事。ピンとこないよね~」

 

『私個人としては環いろはの話で2人の心境に少しでも変化があれば面白いことになりそうだとは期待していたのだが・・。残念な結果だね』

 

 珍しくエンシェントワイズモンと同じ意見だよ。

「というわけで。もうウワサ消しちゃおう!」

 

「うん。詳細は分かったけど残すほどのものじゃなかった」

 

「それなら私とも戦うの?」

 

 万年桜のウワサは戦いたくなさそうに2人に問いかけたけど、デュランダモンとブリウエルドラモンは万年桜のウワサめがけて攻撃を仕掛けてくる。

「危ない!」

 

 ロードナイトモンは咄嗟に2体の攻撃から万年桜のウワサを守ってくれた。

「万年桜のウワサ。君の役割はここで終わり」

 

「どうせわたくし達には本気でかかってこれないものね~」

 

「そう。だけど守ることはできる」

 

「まだ私のことを?」

 

 万年桜のウワサは私を守ってくれようと前に出る。

「それがウワサだから。守るべき人の間で挟まれるのは判断に困るけど」

 

 守るべき相手と戦うことになっても私を守ってくれようとする万年桜のウワサ。

「大丈夫。いろははボクが守るから君は自分のことを守ることに専念して」

 

 ブリッツグレイモンが前に出るとダメージが残っているはずのさなちゃんが立ち上がって再度変身する。

「私も・・・まだやれます」

 

「さな。無理をしないで」

 

「大丈夫だよロードナイトモン。・・・これでも私は盾だから。頑丈さだけは自信があるから」

 

「じゃあ纏めて無に帰そうか」

 

「うん。分解しちゃおう」

 

 戦いたくない。そう思う私と万年桜のウワサの意思に反して灯花ちゃんとねむちゃんは2体のデジモンに攻撃の指示をする。

「僕が生み出したものだからこそ、作者たる僕が消す。・・・自分勝手な作者でごめんね。恨み節ならいくらでも聞くよ」

 

「主に消されるのは残念。それだけ」

 

 ねむちゃんと戦う万年桜のウワサはただ残念とだけ伝えるとブリウエルドラモンは炎による攻撃を万年桜のウワサめがけて飛ばしてくる。

「させません!・・・あなたの相手は私ですよ」

 

 その攻撃を防いだロードナイトモン。スパイラルマスカレードでブリウエルドラモンに連続攻撃を仕掛けてその動きを封じる。

「アルティメットゼヴォリューション!ウォーグレイモン!」

 

 ウォーグレイモンにX進化したブリッツグレイモンはその爪をデュランダモンへと

振るうと、デュランダモンは爪を受け流しつつウォーグレイモンに反撃の剣を振るう。

「ッ!」

 

 剣をしゃがんでよけたウォーグレイモンは軸になっている足に蹴り込んでデュランダモンを転倒させると、のしかかってその動きを封じた。

「他人事なんて言わせない。灯花ちゃんもねむちゃんも後で絶対後悔する」

 

「わたくしにとっては開放の失敗の方が後悔なの。現実味を感じられない環いろはの話なんかよりはね~」

 

「いろはさん!」

 

 灯花ちゃんのエネルギー弾をさなちゃんが守ってくれようとしたけれど、ダメージの残ってるさなちゃんは1発で吹き飛ばされてしまう。

「これでお~わりっ!」

 

 他のみんながそれぞれの相手をしてる中とどめの一撃が私に向かって飛んでくる。避けられない。

「あれ?なんともない?」

 

「もう!何するの!」

 

「何するってこっちのセリフなんですケド」

 

 灯花ちゃんの攻撃から私を守ってくれたのは意外にもアリナさんとダークナイトモンだった。

「やっと環いろはを消せるのに邪魔をしないでよねー。どうして助けたりなんかするの?」

 

「そんなの決まってるヨネ」

 

 アリナさんはいきなり私に攻撃を仕掛けてきて、私の意識はそこで一度途切れた。

 

 

 

 

~さなSide

 

「いろはさん!」

 

「コイツにはさんざん邪魔されたワケ。消すよりもイブのディナーの方がエキサイトするんですケド」

 

いきなり現れていろはさんを結界に閉じ込めたアリナはいろはさんをイブの餌にすると告げてくる。

「それにコイツのメモリーってちょっと面白そうだヨネ。アリナが灯花とねむに出会ったのは病院。コイツのメモリーも病院。エマージェンシーになるたびにメモリーも回復してるみたいだし、餌にするタイミングになったら面白いことを言いそうだヨネ」

 

「もう、わたくしは今すぐ消したかったのにー。それに環いろはの記憶なんてどーでもいいよーだ!」

 

「結果として同じ末路を辿るなら方法は何でも構わないと思う。それに環いろはの記憶に新たな変化が現れるならどんな話をするのか僕も興味があるからね。最後の言葉として聞いてあげよう」

 

「むぅ、分かったよー。じゃあ残っている羽根も使ってイブを孵化に近づけよっか」

 

「僕達の本来の目的は既に達しているからね。思わぬ副産物もこっちに近づいているみたいだけど、それもイブの成長を促す最高の糧になるはずだよ」

 

 副産物?いったい何のことを言ってるの?

「あの盾。どうせならフレンド同士仲良く餌にしたいわけ。透明人間は・・・シット。逃した」

 

 私はロードナイトモンとウォーグレイモンの手を取って気配を消して、私達まで捕まってしまうという最悪の事態から逃れる。

「ねーねー万年桜のウワサさん。環いろはを殺すわけでもないし、連れていくだけだからそれは別に構わないよね?」

 

「私の役目は4人が揃って桜が満開になるのを見守ること。だから・・・何もできない」

 

 万年桜のウワサさんは何処か悔しそうにそう答えるとマギウスの3人は万年桜のウワサさんに背を向ける。

「内容に反するわけじゃないし攻撃する理由がないから戻ろうか。僕達のホテルフェントロープに」

 

 そう言い残したマギウスはホテルフェントロープという拠点へと帰っていく。

「いろはさん。必ず助け出します。万年桜のウワサさん。一つ、お願いが・・・」

 

 万年桜のウワサさんに一つお願い事をした私は進化が解除されたハグルモンとコロモンと一緒にマギウスの後を付けていった。

 

 

 

~やちよSide

 

 

 

「本当にウワサが・・・」

 

「ここが環君の言っていた万年桜のウワサか」

 

 私たちはいろはの言っていた万年桜のウワサがある場所へと到着すると奥の方に桜の木が見えた。

「いろはちゃーーーん!」

 

「さなーーー!」

 

 鶴乃とフェリシアはいろはと二葉さんの名前を叫ぶも反応はない。私たちは手分けして辺りを探してみるも何処にもいろはたちの姿は見当たらなかった。

「もしかしてマギウスの翼に見つかって・・・」

 

「ちょっとかなで!縁起でもないこと言うんじゃないわよ!」

 

2人がマギウスの翼に見つかった可能性を考えていた時。、私たちの前にいきなり白い服の少女が現れた。

「ウワサのようだな。ツノモン進化!ガブモン!」

 

 ツノモンはガブモンへと進化するとベルゼブモンもウワサに銃口を向けようとする。

「ちょっと待ってベルゼブモン。どうやら相手に戦う意思はなさそうよ」

 

 もしかしてこのウワサならいろはたちの事を見ているかもしれない。そう考えた私たちはウワサに問いかけてみた。

「ここで起きたことは知っている」

 

 ここで起きた事?

「じゃああなたが私たちの前に現れたのは・・・」

 

「透明になる魔法少女にあなた達を待てと言われた」

 

 二葉さんに・・。

「いろはたちはここに来たのよね?」

 

「はい」

 

「いろは達はどうなったの?マギウスの翼に見つかった?」

 

「灯花とねむ。マギウスに捕まった」

 

 よりにもよってあの2人に・・・。

「それでどうなったんだ?」

 

「いろはは後で現れたアリナの結界に捕らえられてフェントホープの中に連れていかれた」

 

「そんな・・・」

 

 いろはが連れていかれただなんて・・・。

「二葉さん達は?」

 

「二葉・・・。透明になれる魔法少女とデジモン達ならそれを追っていった」

 

「さなったら無茶しやがって」

 

 いろはと一緒にいないのならアグモンも進化できないはずなのに・・・二葉さんたちったら無茶をして。

「ところでフェントホープって言うのは?」

 

「ホテル・フェントホープ。マギウスの翼の本拠地」

 

「不幸中宇の幸いというべきか少なくとも環君たちは無事なようだな」

 

 ひとまずはいとは達の無事に安心すると少し遅れてみたまがここにやってきた。

「みたま、どうしてここに?」

 

「みんなに話終わったから・・・来ちゃった」

 

 来ちゃったって・・・。

「なぜここに来たんだ?」

 

「みんなに伝えなくちゃいけないことがあるの?」

 

「それはマギウスに絡むこと?」

 

 みたまは覚悟を決めたように頷く。

「その前に一つ。・・・みんなはもうズィードミレニアモンの話は聞いたのよね?」

 

「あぁ、それよりどうして調整屋がそのことを知ってるんだ?」

 

「わたしは中立であると同時に対価さえあればなんでも提供する調整屋。ついさっきまでは中立のポジションの維持と調整屋の拠点を借りる代わりに彼女たちに協力していたのよ。

 

「そうだったのね。・・・それであなたは対価として彼女たちに何を与えていたの?」

 

「グリーフシードよ。だけどズィードミレニアモンの件でもうそれはいらないと言われたわ」

 

「アタシらが支払っていたものをマギウスの翼に流していたのかよ」

 

 ももこは裏切られたと言いたげにため息をつくと十七夜は続ける。

「とはいえ我々の取引と変わらん。責めたい気持ちも分かるが彼女は公平だ」

 

「もしかしてこれまで戦えないって言ってたのは嘘でわざと状況を作っていたのか?」

 

 アグニモンはみたまに問いかけると、みたまは首を横に振った。

「それは違うわ」

 

「そうだ。それは自分も保証する。八雲とは旧知の中だ」

 

 十七夜はみたまの疑いを晴らすとベルゼブモンは面倒くさそうにみたまに銃口を向ける。

「まどろっこしいことはいい。お前は七海やちよ達の味方か?それもと敵か?」

 

「「ここに来るまでは中立でいるつもりだった。だけどこのまま神浜の魔法少女がいなくなってお客様が減るのは嫌だから中立を破ることにするわ」

 

「言いたいことは山ほどあるけど、今はみたまを責めている場合じゃないわ」

 

 何人かは納得してなさそうな反応をしていたけど、急がないとズィードミレニアモンが来てしまうことはみんなも承知しているので渋々押し黙る。

「そうだよな。このままじゃ白いねーちゃんもやべーもんな」

 

「みふゆ?」

 

「オレら、助けてもらったから今度はオレらが助けないと」

 

「そうね。・・・みたま、私たちに責めるような権利はないと思う。だけどすべてが終わって私たちの仲間だって言ってくれるならちゃんと教えてね。あなたのこと」

 

「・・・分かったわ」

 

「それじゃあみんなを助けに行くわよ」

 

 私たちはさっそくいろは達を助けに向かおうとすると、みたまは足を止める。

「あの、わたしの口から言えることじゃないとは思うけど、ここはわたしに守らせて」

 

「はぁ!?調整屋、お前戦う事なんか・・・それにデジモンもいないのに」

 

「できるわ。今のわたし・・いえ、わたし達なら。リロード。ダークドラモン」

 

「えっ?デジモン?」

 

 ももこはこれまでパートナーデジモンがいなかったはずのみたまがデジモンを呼び出したことに驚く。

「このデジモンは・・・」

 

ダークドラモン

・究極体

サイボーグ型

ウィルス種

 機械化旅団『D-ブリガード』の最終決戦兵器であると推測されるサイボーグ型デジモン。進化の際に大量の『ダークマター』が使用されたらしく、進化後に暴走・逃亡し、現在はDブリガードもダークドラモンの消息をつかめていないらしい。必殺技『ダークロアー』はダークマターをエネルギー弾として撃ち放つ禁断の大技で、これを受けて生き伸びるものはこの世界に皆無だと言われている。

 

ずいぶんと強いデジモンをパートナーにしてきたわね。

「みんなが向かう先にはひとりだって入れないから」

 

「その心意気や良し!!」

 

 大声に反応して私たちは後ろを振り返るとそこにはバンチョーレオモンが仁王立ちしていた。

「何だコイツ?」

 

 指を差すようにとりあえず銃口を向けるベルゼブモンだったが、バンチョーレオモンはその程度には動じない。

「話は他の魔法少女達から聞かせてもらった。お前たちの答えは決まったそうじゃないか。皆で相談して決める。それも立派な一つの答えだ」

 

 バンチョーレオモンはいろはの出した一つの答えを肯定してくれた。

「お前たちは答えを出した。お前たちの心意気に正義がある。それを確信した。ならば俺のすべきことは一つ」

 

 そう言ったバンチョーレオモンは不意に襲い掛かってきた黒い死神のようなデジモンを一撃で叩き伏せる。

「今のは・・・スカルサタモンだな」

 

スカルサタモン

・完全体

・アンデット型

・ウィルス種

 強さと破壊を追い求め、ダークエリアに堕ちた堕天使型デジモンの成れの果ての姿。より悪として洗練されており、その暗黒のパワーは計り知れないものがある。必殺技の『ネイルボーン』は杖の先についた宝玉から放たれる強力な光でデジモンのデータに異常を起こし破壊してしまう恐ろしい技だ。

 

「完全体とはいえ一瞬で・・・」

 

「これが俺の答えだ。このバンチョーレオモン、お前たちに手を貸そう」

 

 バンチョーレオモン。また1体心強い味方が増えたわね。

「俺もこの場に残ろう。さぁ、お前たちは先へ進め」

 

「バンチョーレオモンがいるなら安心して進めるわね」

 

「ちょっよ~。わたしを信用してないってこと~」

 

「それじゃ急ぐわよみんな!」

 

 拗ねるみたまをスルーしつつ、私たちはホテル・フェントホープへと足を進めた。

 

 

 

 

 

~みふゆSide

 

「きゃぁ!?」

 

「あぅ!?」

 

「どうして私たちが餌にされるでございますか!」

 

「ウチらだって今まで頑張ってきたじゃない」

 

 ワタシが閉じ困られていた部屋に天音姉妹が入れられてきました。

「二人とも。落ち着いてください」

 

「みふゆさん!」

 

「みふゆさんまでどうして?」

 

「彼女たちのやり方に刃向かい過ぎたようです」

 

 姉妹は許せないと呟きながら魔法少女へと変身しようとしましたが、それはできませんでした。

「あれ?ソウルジェムが出てこない」

 

「おそらく気を失っている間に取られたんですよ。デジヴァイスとともに」

 

 そう。この場にはファルコモンたちもいない。ソウルジェムとともにデジヴァイスも取られてしまったからです。

「ソウルジェムは離れたところに保管されています。下手に動くとソウルジェムと肉体のリンクが切れてしまいます」

 

「そんな・・」

 

 2人は「どうしたらいいの」と俯き、黙り込んでしまいました。ファルコモン達も無事でいてくれたらいいのですが・・・。

 




次回「タフなハートで何度でも戦ってやるぜ」


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タフなハートで何度でも戦ってやるぜ

 久しぶりに再会しますが書き溜めが終わってないのでしばらくは10日に1回の更新にします。


~ほむらSide

 

「オメガシャウトモン!」

 

「ジークグレイモン!」

 

「「ダブルクロス!!」」

 

「「ダブルクロス!」」

 

「シャウトモンDX!」

 

 時は遡り巴さんが七海さんに助けられる半日ほど前。アリナの結界の中にあるデジタルエリアに閉じ込められていた私達はマスターデジモンを倒しても結界から出ることができなくて、最後の手段として力業で結界を破壊することにしたの。その手段として思いついたのがオメガシャウトモンとジークグレイモンのデジクロス。それがシャウトモンDXだったの。

シャウトモンDX

・究極体

・合成型

・データ種

 神速のスピードを誇るオメガシャウトモンが無双のパワーを誇るジークグレイモンの戦闘力を手に入れて誕生した『クルセイド形態』。ジークグレイモンのゴールドデジゾイドを得たことでオメガシャウトモンのスピードを失わずに高い防御力と攻撃力を具現化している。最終技の『ブレイブビートロックダブルクロス』はオメガシャウトモンとジークグレイモンの炎が一つとなり、一切の汚れを浄化する炎を身に纏う炎の化身となって敵に突撃するその様は流星のように見え、すべての敵は爆散蒸発してしまう。

 

「行くぜ!トライデントジャスファング!!」

 

 必殺技のトライデントジャスファングで結界を切り裂いたシャウトモンDX。

 

「おっ、自力で出てきたか」

 

 現時点でできる最強のデジクロスの一撃でアリナの結界を破壊して外へと出るとそこには佐倉さんが立っていた。どうやら外側から結界を壊そうとしてくれていた佐倉さんはデジヴァイスをしまって変身を解くと現状を説明してくれた。

「いいか。胸糞悪い話だから心して聞けよ」

 

 マギウスの翼に潜入しているという佐倉さんは巴さんがやはり洗脳されていること。マギウスが開放の証として魔女のような存在を育てていること。そしてデジタルワールドを破壊した最凶最悪のデジモン、ズィードミレニアモンを呼ぼうとしていることを教えてくれた。

「そんな・・・なんてやばいものを呼ぼうとしているのよアイツら」

 

 私は話を聞いてただただ唖然とする。私はワルプルギスの夜から鹿目さんを救うために時間を繰り返して・・・ようやくこの時間軸でデジモンと・・・グレイモンとメイルバードラモンという頼もしい仲間とも出会えたのにワルプルギスの夜並か、それ以上の存在を相手にしなきゃいけなくなるなんて。

「そしてさらに最悪なことに・・・ズィードミレニアモンとイブって化け物に引き寄せられてワルプルギスの夜まで神浜に向かってきてるらしいぞ」

 

「ワルプルギスの夜?」

 

「何それ?」

 

「最悪の厄災。最強最悪の魔女のことだよ。それこそこれまでの魔女とはけた違いの・・」

 

 ワルプルギスの夜を知らない鹿目さんと美樹さんに私は簡潔にその説明をする。

「まあ普通に考えりゃそんな激戦区からは逃げるのが最善なんだが・・・生憎まだあそこにはやらなきゃいけないことがあるからな。アタシはまた神浜に行くよ」

 

 まだやることがあると言い残した佐倉さんは再び神浜へと向かっていく。

「なんだよ。簡単なことじゃねぇか。そのイブってのをぶっ壊して、ズィードミレニアモンとワルプルギスの夜ってのをぶっ倒せばマギウスの計画は破綻して全部ハッピーエンドじゃんかよ。この勢いでタフなハートで何度でも戦ってやるぜ」

 

 シャウトモンはまるで簡単なことのように3体を倒せば終わりだと告げてくるも・・・事はそう簡単な話じゃない。

「そうだよ。まだマミさんがあそこにいるんだ」

 

「う、うん。そうだね」

 

 まだ巴さんが神浜にいる。だからこそ助けないとと美樹さんは告げると鹿目さんも同意する。このままじゃ2人とも神浜に行ってしまう。

「ね、ねえ。今日はひとまず帰らない。もう日付が変わってるよ」

 

「え?あっ!ホントだ!」

 

 私に言われて日付が変わってることに気づいた2人は今日のところはそれぞれ家に帰ってくれることとなりひとまずは解散となった。

 

 

 そして翌日。家族に連絡もなく翌日に帰ってきたことを怒られたという鹿目さんと美樹さんは苦笑いしながら話してきた。

「やっぱり鹿目さん達の家族も心配してるんだよ」

 

「・・・うん。分かってる」

 

「それでも本当に神浜にまた行くの?」

 

「「・・・・・」」

 

 私の問いかけに2人は黙り込むと鹿目さんのデジヴァイスからシャウトモンが出てきた。

「まどか。お前がどんな答えを出そうと俺達はその答えを尊重するぜ」

 

「シャウトモン・・」

 

「だけどこれだけは言っておく。絶対に後悔しない答えを選べ。助けたいもの、守りたいものは何なのかきちんと考えろ」

 

 シャウトモンの言葉に鹿目さん達は口を閉ざしてしまう。

「さてと・・・、行くぜお前ら」

 

「あぁ」

 

「ンガ」

 

 さらにドルルモンとバリスタモンも鹿目さんのデジヴァイスから出てくると3体は神浜の方角へと向かって歩き出す。

「シャウトモン!どこに行くの?」

 

「決まってんだろ。俺達はマギウスのところに行く」

 

「そんな!?でもそんなの危なすぎるよ」

 

「危ないのは分かってるが死ぬ気はねぇよ。だが俺様はこんなところで立ち止まってるつもりはねぇ。俺様はキングになるデジモンだからな」

 

「・・・っ」

 

 笑いながら振り返ったシャウトモンに鹿目さんは何かを言おうとしたけれど、何も言えなかった。

「それにまどか達が答えを出すまでの時間を稼がないといけねぇだろ」

 

「なら・・・」

 

「なら何だ?まさか答えが出ないまま自分達も行くだなんて言わないだろうな?そんなんいくらまどかでも許さねぇぞ」

 

 シャウトモンのにらむような視線に怖気づいたまどかは一歩後ろに下がってしまう。

「スターモン。スパロウモン。まどかの事は頼んだぜ。ほむら達は・・・グレイモンのおっさんたちがいるから心配はねぇか」

 

『オウよブラザー!』

 

『まっかせて~!』

 

 神浜に向かっていくシャウトモン達を私達は止めることができずにいると美樹さんが口を開いた。

「あ、あはは。まったくシャウトモンったらカッコつけちゃってさ~。・・・でもさ、シャウトモンの言う通りあたしたちも何を守りたいかしっかりと答えを出すべきなんだよね」

 

「うん。私は家族を守りたい。それは嘘偽りない気持ちだよ」

 

「だったら神浜に行かないでここを・・・」

 

「でもね・・」

 

 私がここに残るべきだと提案しようとしたけれど・・・鹿目さんは話を続ける。

「神浜で知り合った人たちを・・・友達を、いろはちゃん達を助けたいって気持ちもあるんだ」

 

「鹿目さん・・・」

 

「まどか・・」

 

 鹿目さんは守りたいものと助けたい人を天秤にかけて迷っているみたいで、美樹さんも鹿目さんと同意見で言葉を詰まらせる。私個人としては神浜にはいかずに家族を守ることを選んでほしいと思うけれど・・・

「だから私は・・・神浜に行こうと思うの。そのズィードミレニアモン達を何とかしないと神浜だけじゃなくいろんなところが大変なことになっちゃうんだもん」

 

 鹿目さんがそんな『逃げ』を選ぶような人じゃなかった。その答えを選ぶことは分かっていた。

「私の力なんてたかが知れているかもしれない。それでも・・・行こうと思うの」

 

「あたしもまどかと同じ考えだったよ。そのズィードなんとかってデジモンに世界がめちゃくちゃにされる前に、倒しにかかるほうがあたしらしいしね」

 

 神浜に行って戦う決意を固めた鹿目さんと美樹さん。

「私は・・・」

 

 私の答えはただ一つ。鹿目さんを守ること。そのために同じ時間を何度も繰り返しているのだから。

「私も・・・一緒に行くよ。怖いけど・・・私は2人を守りたいから」

 

「そんじゃあたしらの答えは決まったってことで・・・」

 

「シャウトモン達を追いかけよう」

 

 こうして私達は神浜へと向かうことになった。この決断が私の・・・いえ、私達の運命を変えることととなる。

 

 

 

~まどかSide

 

 

 神浜に向かったあと、到着した時にはもうマミさんはやちよさんのおかげで洗脳が解かれていて調整屋さんで眠っていた。だけど・・・

「シャウトモン達、どこに行ったんだろう?」

 

 少し先に出たはずのシャウトモン達と合流はできずにいたの。

「まさかシャウトモン達だけでマギウスって連中のとこに乗り込んだとか?」

 

 さやかちゃんの言う通りシャウトモン達ならやりかねない気もしないでもないけど、死ぬような真似はしないって言っていたし、さすがにそんなことはしないと信じたい。

「ちょっとどいてどいて!急患だよ!」

 

「えっ!?バリスタモンにドルルモン!?」

 

 調整屋さんに駆け込んできた魔法少女の子たちが担いできたのはバリスタモンとドルルモンだった。

「あんたのパートナー?なら早くデジヴァイスに入れてあげな」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 私は2体をすぐさまデジヴァイスに入れて、その機能で2体の傷を癒す。

『すまんな。まどか』

 

「いったい何があったのドルルモン?まさかホントにマギウスに・・・それにシャウトモンは何処?一緒じゃないの?」

 

『いや、マギウスには挑んでない。なんせ奴らの拠点は分からんからな。だが惜しいところまでは突き止めることはできたんだ。だけどそこにいたマギウスの連中のデジモンだと思う凶悪なデジモンのディアボロモンに負けてこのザマだ。そんでシャウトモンはディアボロモンに捕まってさらわれて行っちまった』

 

「そんな・・・」

 

 シャウトモンが生きててくれたことの安心感と同時に、なんの目的でシャウトモンが浚われたのかという考えが頭をよぎる。

「可能性があるとすれば・・・イブかズィードミレニアモンの餌にする気とかかな?」

 

『もしくは俺達を招き入れるための生餌かもしれないな』

 

 どちらにしてもシャウトモンを助けるためにマギウスの拠点にはいかないといけないんだね。

「でもどうやってマギウスのところに行けば・・・」

 

「マギウスの拠点の場所なら私が案内するわ」

 

 マギウスの拠点が分からない私達はどうしたらいいのか考え込んでいたら、眠っていたマミさんが目を覚ました。

「マミさん!」

 

「もう大丈夫なんですか?」

 

「私のことはいいわ。今はマギウスの拠点に急ぎましょう。それが私にできる償いなんですもの」

 

 償い。どうやらマミさんは洗脳されていた間のことを気にしているらしい。

「そんなこと気にしなくても・・・」

 

 さやかちゃんが気にしなくてもいいと言おうとしたのをほむらちゃんが止める。今のマミさんには気にしないでという方が酷なのを察してだと思う。

「・・・お願いします。マミさん」

 

 だから私も現状頼れるのはマミさんしかいないから、マミさんにお願いしてマギウスの拠点へと案内してもらうことにした。

 

 

 

 

~さなSide

 

「はぁ、はぁ。待ってて下さいいろはさん。必ず助け出しますから」

 

 一人のマギウスの翼を気絶させた私はその人のマントを奪って、黒羽根になりすまして侵入を試みていた。

「アグモンもこれを」

 

 いろはさんのパートナーデジモンであるアグモンは私のデジヴァイスには入れないからひとまずそのあたりに堕ちていた黒いビニール袋をかぶせた。

「こっちで声がした気がしたけれど・・・誰かいるの?」

 

 そこに白羽根の1人がやってきてしまい、私は慌ててその人の前に出る。

「は、はい。すみません。掃除をしてたもので」

 

「そうだったのね」

 

 私はアグモンの入ったビニール袋を見せて対応すると白羽根は信じてくれた。

「あの、いろはさ・・環いろはが必要な理由ってなんですか?どうして生かしたままここに?」

 

「考えられるのはイブの餌かしら?環いろはが現れてからマギウスの計画は狂い始めたわ。すべての魔法少女を救うことも叶わずウワサも魔女も消されてきた。アリナ様の腸が煮えくり返るのもうなずけるわ」

 

 それはアリナがみんなを困らせるようなことをするからと言い返したくなったけど、今はこらえる。

「環いろはは他人の犠牲に目を瞑れないそうね。すべてを救おうだなんて口にしやすい最たる偽善だわ」

 

「いろはの事を馬鹿に・・・モガモガ」

 

 我慢できなくなったアグモンは羽根たちに言い返そうとしたのを私は何とか静かにさせる。すると羽根達はいろはさんの捕えられている牢の前までやってきた。

「環いろは。迎えにきました」

 

「・・・私をどうするの?」

 

「知らないわ。あなたに用があるのはマギウスだから。誰かに助けを求めても無駄。誰も助けになんかこないわ」

 

「それだけはないよ」

 

「大した自信ね。ここを何処だと思っているの?」

 

「ここがマギウスの翼の本拠地だってのは分かってる。だから来るんだよ。いや、むしろ来るんだよ。みんなもマギウスの計画を絶対に止めたいから」

 

「そうだよいろは!ベビーフレイム!」

 

 ビニール袋から飛び出たアグモンはベビーフレイムで羽根の皆さんを攻撃して気絶させた。

「助けにきましたよ。いろはさん!」

 

「さなちゃん!」

 

 私もローブを脱ぎ捨てていろはさんと再会を果たす。

「さぁ早く出ましょう。いろはさん!」

 

「万年桜のウワサさんに伝言をお願いしてるのでやちよさん達もすぐに駆けつけてくれます」

 

「・・・ソウルジェムとデジヴァイスがないの。奪われちゃって。早く取り戻しにいかないと」

 

 だから抵抗できずにいたんですね。

「今牢を壊します!・・きゃっ!?」

 

 私は盾で牢を壊した瞬間、いきなり何かに攻撃された。それはクマのような姿をしたウワサでした。

「ウワサに反すればウワサが・・・まさかこの建物自体がウワサってこと」

 

「いろはさん下がっていてください。私がいろはさんの盾になります」

 

「ハグルモン進化!クロックモン!」

 

 デジヴァイスから出てきたアイちゃんはクロックモンに進化をするとウワサの時間を止めてくれた。

「今がチャンスです。はやくいろはさんのソウルジェムとデジヴァイスを取り戻しに行きましょう!2つが回収された場所ってわかりますか?」

 

「実は分からなくって」

 

「じゃあ探すところから始めないと」

 

「やちよさん達が来るなら外に出て合流したほうがいいかな?」

 

「私達で探すより安全ですよね。あっ、でもイブの餌にするって言ってましたし、ソウルジェムだけを残しておくのは危険かと。牢屋に来た羽根がいろはさんを連れて行こうとしてたなら、もう羽根がソウルジェムを持って移動してるかもしれません」」

 

「なら合流している暇はないね。ソウルジェムとデジヴァイスを持っている羽根を探さないと」

 

 この建物の中は魔力の探知もテレパシーも効かない。やちよさん達と合流するのは難しい。やっぱり最優先はいろはさんのソウルジェムです。

「アイちゃん!」

 

「クロックモン!超進化!ナイトモン!」

 

 アイちゃんはクロックモンからナイトモンに超進化して剣を構える。壁を破壊して一気に進もうとしていんだ。

「さな。分かってますね」

 

「うん。ごめんねアイちゃん。任せたよ」

 

 壁を破壊したアイちゃん。私達はその穴から牢の外へと出ていくとまたもウワサが出てきた。そのウワサをアイちゃんに任せて私達は先へと急ぐ。

「ナイトモン!」

 

「アイちゃんならきっと大丈夫です。先を急ぎましょういろはさん!」

 

「っ!ごめんねナイトモン!」

 

 いろはさんはアイちゃんの事を心配してくれつつも、私達は当てもなくソウルジェムとデジヴァイスを探しだす。

「でもどうしよう。手がかりもないのにこんな広い場所でソウルジェムとデジヴァイスを探すなんて」

 

「見つけた!」

 

 2つを探してる最中、私達の方が羽根達に見つかってしまった。白羽根の1人はデジヴァイスから黒い悪魔のようなデジモンを呼び出した。

 

デビモン

・成熟期

・堕天使型

・ウィルス種

 漆黒の衣に身を包んだ堕天使型デジモン。元々は光輝くエンジェモン系のデジモンだったが、デジタルワールドの空間の歪に存在するダークエリアに堕ちたことで堕天使となった。必殺技の『デスクロウ』は伸縮自在の両腕を伸ばし、相手を貫き通すぞ。

 

「デビモン!行くわよ」

 

「デビモン。ワープ進化!ダンデビモン!」

 

ダンデビモン

・究極体

・堕天使型

・ウィルス種

 マイナスのデータを限界まで取組み究極体となったデビモンの姿。精神状態が正常と異常の狭間にあり、ひとたび激怒すれば知性が消え、獰猛な形相で襲い掛かる。暴走したダンデビモンに襲われたデジモンは跡形もなく消去される。必殺技は相手の体を丸ごと貫き通す『デストロイクロウ』と口から放射する破壊のエネルギー波『アルティメットフレア』だ。

 

「きゅ、究極体っ」

 

 今、アイちゃんはウワサの足止めをしていてこの場にはいない。いろはさんのアグモンもデジヴァイスがないから進化できない。このままじゃ・・。

「一気に仕掛ける。お前達はサポートしろ」

 

「「「はい」」」

 

 他の黒羽根達もオーガモンを呼び出してサポートに回らせる。

「いろは!」

 

 アグモンは前に出るけど、戦力的に圧倒的に不利でどうしようかと思っていたそんな時だった。

「じゃああたしはこいつ等のサポートに回るかな」

 

 ローブを脱ぎ捨てて私達の前に立ったのは赤い髪の女の子だった。

「佐倉さん!」

 

「よぉ、またあったな」

 

「この人が・・・」

 

 以前いろはさん達に手を貸してくれた魔法少女の佐倉杏子さん。まさかこんなところで合うことになるなんて。

「あなたは新しく入った羽根のはず。だったら環いろはを捕えるのを手伝ってそれがマギウスの命だから」

 

「あんた達には自分ってもんがないのかい?口を開けばマギウスマギウスって耳にタコができるっての」

 

「裏切るというのか?」

 

「聞く必要なんてあるのかい?」

 

 佐倉さんはデジヴァイスからギルモンを呼び出して臨戦態勢となる。

「佐倉さん・・!」

 

「言っておくがあんたに力を貸すんじゃないよ。あたしがこいつ等を気に入らないからぶっ飛ばそうとしてるだけだ。ようは成り行きだ成り行き」

 

「それでも・・・ありがとう!」

 

「チっ、調子狂うな。行くよギルモン!」

 

「ギルモン!ワープ進化!」

 

 いろはさんの感謝の言葉に照れくさそうに反応した佐倉さん。彼女のデジヴァイスが輝いてギルモンは究極体へと進化した。

 




次回「そんなに信用に値する存在なの」


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そんなに信用に値する存在なの

~さなSide

 

「メディーバルデュークモン!」

 

メディーバルデュークモン

・究極体

・戦士型

・データ種

 別次元のデジタルワールドにおいて伝説の英雄と称される戦士型デジモン。魔術によって創られた武具で戦い、炎・大地・水・風の魔術体系の中でも風の魔術によって創られた武器で戦うヴォルテクスウォーリアーと呼ばれるデジモンを束ねているところから旋風将の異名を持つ。必殺技は魔槍デュナスから放つ『レイジ・オブ・ワイバーン』と『ファイナル・クレスト』だ。

 

「あれ?データ種?ウィルス種じゃないんだ」

 

「ちょっとした進化の応用さ。進化する時に魔力も持っていかせるのがこの進化の難点だがな。そうしないと黒いのになっちまう」

 

「黒いの?」

 

 ギルモンがハルバードにも似た槍を持つ戦士に進化してメディーバルデュークモンになると、槍を構えてダンデビモンへと駆けていく。

「フンっ!」

 

 メディーバルデュークモンの振るう槍をエネルギーでできた2つの腕で受け止めたダンデビモンは口から黒いエネルギーを放ってきました。

「ファイナル・クレスト!」

 

 その砲撃をメディーバルデュークモンは槍から放った一撃で相殺しました。けれどそれは互いに無傷とはいかなかったようでメディーバルデュークモンもダンデビモンも互いにかすり傷程度だけど、ダメージは受けていた。

「チっ、思ったより手ごわいな。今ので仕留められると思ったのに、もうちょっとガチらないと駄目かい」

 

「一撃。一撃だけ本気を出す」

 

「まるでまだ本気を出してないような口ぶりだな。やれダンデビモン!」

 

「悪いな。まだ本気じゃないんだよ」

 

 ダンデビモンの攻撃をあっさりと避けたメディーバルデュークモンは槍にエネルギーを集めてその一撃を放つ。

「レイジ・オブ・ワイバーン!」

 

 必殺の一撃。レイジ・オブ・ワイバーンが炸裂してダンデビモンがデビモンに戻った。

「よし、行くぞ」

 

 羽根達を退けた私達はこの場を離れて先を急ぐ。

「ありがとう佐倉さん。メディーバルデュークモン」

 

「別に礼はいらないよ。見たところソウルジェムがないみたいだが・・・」

 

「あの、さっき羽根って言われてましたけど・・・」

 

「あぁ、体験学習みたいなもんさ。さっき裏切ったけどな」

 

「ならソウルジェムの場所を知りませんか?」

 

 私は佐倉さんにいろはさんのソウルジェムの場所を知らないか尋ねてみる。

「あぁ、知ってたよ」

 

「過去形ですか?」

 

「既にどこかに持ち出された後だったんだ」

 

 そうなんですね。だったらこの手しかない。

「ならマギウスの居場所は分かりますか?」

 

「そりゃどういう事だ?」

 

「マギウスの命令でソウルジェムが運ばれていて、いろはさんも連れていかれるところだったんです」

 

「それで今の逃亡劇か。・・・生憎マギウスの居場所は分からない」

 

 マギウスのところに運ばれていくなら、いっそマギウスのところに乗り込むのも一つの手だと思ったけどそうはいかないみたい。

「あ、あれ?」

 

 その時、いろはさんはフラリとふらついてしまう。そしてそのままその場に倒れてしまった。

「いろはさん!」

 

「いろは!」

 

 私とアグモンはいろはさんに駆け寄ると、いろはさんは息をしていなかった。

「いろはさん!・・・そんな、息をしてない」

 

「落ち着け!ソウルジェムと体が離れすぎただけだ。近づけば元に戻る!」

 

「そ、そうなんですね」

 

「良かった~」

 

「失礼するよ」

 

 少しだけ安心した矢先、ダークナイトモンが現れて倒れているいろはさんを掴み上げました。

「いろはさん!」

 

「てめぇ!なにもんだ!」

 

「見ての通り、通りすがりの貴族さ。アリナがこの少女を求めているのでね。連れて行かせてもらうよ」

 

「させん!」

 

「おっと・・!」

 

 メディーバルデュークモンはダークナイトモンに槍を振るうと、ダークナイトモンも槍を振るいメディーバルデュークモンの槍を弾きました。

「貴様、ロイヤルナイツの・・・いや、よく見れば見た目もデジコードも違うな」

 

 ロイヤルナイツって確かアイちゃんにデータを託したロードナイトモンの・・だったよね?

「ナイトぉっ!」

 

 そこに無事ナイトモンが追い付いてきた。

「おっとナイトモンまで来たか。究極進化されるといささか面倒なのでね。ここはこいつに足止めを頼むとしよう」

 

 ダークナイトモンがわざと壁を破壊すると、またウワサが現れてしまいました。

「これにて失礼」

 

「行かせん!くっ・・!」

 

 メディーバルデュークモンはダークナイトモンを追おうとしたけれど、その行く手を阻むようにウワサが立ちふさがりました。

「マズいぞ。見失ったらマギウスの居場所が分からなくなる」

 

「だったら時間をかけてられません!」

 

「ナイトモン!究極進化!ロードナイトモン!」

 

 ナイトモンだったアイちゃんはロードナイトモンへと究極進化をするとメディーバルデュークモンとともにウワサを瞬殺しました。

「乗りかかった船だ。あたし達も付き合わせてもらうよ」

 

 佐倉さんとメディーバルデュークモンもこのままいろはさんの救出のお手伝いをしてもらうこととなりました。待っててくださいいろはさん。必ず助けますから。

 

 

 

 

~やちよSide

 

「驚いたな」

 

「ここがホテルフェントホープ?」

 

「入口がお城みたいだったから変だなとは思ってたけど・・レナの知ってるホテルじゃない。お姫様が住んでそうだもん」

 

「お姫様?」

 

「ともかくよ。私たちはこの広大な敷地でマギウスを見つける必要があるわ」

 

「環君と二葉君を探すのも骨が折れるかもしれんな」

 

 テレパシーも魔力探査もここでは無理。こういう時、探索系のデジモンがいれば便利だったのかもしれないけど、いない相手は頼れないわよね。

「アルマジモン!」

 

「アルマジモン!アーマー進化!カメレモン!」

 

 私達がここからどう行動するかを悩んでいると、私たちの存在に気づいた羽根たちが攻撃を仕掛けてきた。

「タングウィップ!」

 

「っ!ガブモン!」

 

「オウ!ガブモン!進化!ガルルモン!」

 

 私たちはそれぞれ襲い掛かってくる羽根やデジモンたちと戦い、数分程度でデジモンたちを撃退する。だけど羽根たちの方が中々倒れてくれなかった。

「いい加減!倒れてろ!」

 

「・・・っ!」

 

 意識を失うまで倒れようとしない羽根たち。そんな中、カメレモンのパートナーである黒羽根だけは何処か戦いに迷いがあるように感じられた。

「いったん引くよカメレモン!」

 

「だぎゃ!」

 

「・・・白羽根は本気だったが今の黒羽根には迷いがあった」

 

「想いは三者三様だけどさすがは本拠地ね」

 

 どうやらここには忠誠に篤い人が多いみたいね。

「どうせなら迷いがある人に声をかけてみようよ。もしかしたらいろはちゃんやさなちゃんの居場所が分かるかもしれないよ!」

 

「鶴乃の言う通りだぞやちよ。そうすれば少しでも戦いを減らせて体力を温存できるはずだ」

 

 確かに鶴乃とガブモンの言う通りね。

「追いかけて聞いてみましょうか。いろはと二葉さん。そしてみふゆの事を」

 

 私たちが迷いのある黒羽根を追いかけていくと白羽根の1人と合流していた。

「聞いて。私たちはあなたたちと戦いたいわけじゃないの。お願いだから話をさせて」

 

「・・・話をすることはありません。あなたは他の羽根に連絡を。私はギリギリのところまで彼女達を押さえます」

 

「でも1人で・・」

 

「早く!」

 

「は、はい!」

 

 白羽根は黒羽根を逃がして1人で私たちを押さえようとしてくる。

「リロード!サンフラウモン!」

 

サンフラウモン

・成熟期

・植物型

・データ種

 ヒマワリの様な姿をした植物型デジモン。太陽の光を浴びるととても元気になり、攻撃力もアップする。天気の良い日は背中の葉をパタパタさせて飛ぶこともある。必殺技は花びら全体から放つ太陽光線『サンシャインビーム』だ。

 

「ほ、本当に私達だけで足止めをするの?」

 

「無理でも・・・やるしかないの!」

 

 自分たちだけでは無理だと不安そうに白羽根を見るサンフラウモン。だけど白羽根はそれでも私たちへと挑んできた。

「サンシャインビーム!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

 サンフラウモンの放ってきた光線をガルルモンが相殺すると、白羽根とサンフラウモンは意地でも足止めをしようと私とガルルモンに掴みかかってきた。

「やちよ!」

 

「ガルルモン!」

 

 みんなは私を助けようとして動こうとしてくるけど、私はあえてみんなを静止させる。

「お願い。その手を放して。あなたを傷つけたくはないの」

 

「それでも、あなた方はわたし達の開放を阻止しようとする。魔女を狩ることからも、魔女になることからも開放される唯一の方法なのに・・・あなた達はそれをわたし達から奪おうとする!」」

 

「マギウスっていうのはそんなに信用に値する存在なの?」

 

「信用するとか、そういう事じゃありません!わたしは、わたし達の未来のために戦っているんです!」

 

 未来のために・・ね。

「それはおかしいな。自分にはマギウスの未来のために羽根が命を賭して戦っているように見える。言う事を聞いてきた挙句にウワサでゾンビのようにされ体よく使われているだけだ」

 

 十七夜は思っていることを白羽根にはっきりと告げる。私も同意見ね。

「互いに利用し合っているだけです!あれも自分達のためなら!」

 

「自分達のためだって思うのなら、猶更従うのはやめた方がいいと思うけどな」

 

「魔女やウワサを使って人を苦しめて自分達が救われたとしても後で自分が苦しむだけだろ」

 

 アグニモンとももこも白羽根に言い返すと、迷いの出てきた白羽根は私を押さえつける手をゆるませる。

「何よりマギウスたちは計画をあなたたちに伝えてない。甘い言葉を囁くだけで、これからもあなたたちを利用し続けるわよ」

 

 それはきっと呪縛から解放されても変わらない。

「目先の開放に捕らわれて自分の未来を見失っているわよ」

 

 はっきりと真実を告げると、白羽根は私を放して数歩後ろに下がる。

「わたしは最初から自分のために戦っていなかった?わたしは・・自分を売ってた?」

 

「・・・今からでも遅くないわ。あなたは自分で未来を変えることができる」

 

「マギウスを止めたら開放はなくなるかもしれないけど利用され続けることもなくなるよ」

 

「そーだぞ!一緒にマギウスを止めようぜ!」

 

 鶴乃とフェリシアも続けるとガルルモンを放したサンフラウモンは主の羽根に「どうするの?」と言わんばかりに白羽根の方を見る。

「そんな簡単に言わないでよ・・」

 

「盲目に開放を望んだ結果、視野が狭くなってるんだよ。ちょっと考えたら描けそうな未来だけどな」

 

「そうかも・・しれないけど」

 

「これだけ教えてくれないかしら。環いろは、二葉さな、梓みふゆの居場所を知っているかしら?」

 

「・・・知らない」

 

「そう。ごめんね。ありがとう」

 

 彼女にお礼を告げて私たちは先を急ごうとすると、彼女はさらに言葉を紡ぐ。

「知らないけど二葉さなはわたしを襲った後で環いろはを連れ戻しにいった。みふゆさんは知らない。ここ数日見てないから」

 

「環いろはの居場所は?」

 

「わたしの知らないところ」

 

「・・・ありがとう。教えてくれて。

 

 私たちは彼女に再度お礼を告げて先を急ぐ。

「やるせないな」

 

「あぁ、人間ってのは熱が入るとあんなにも盲目になるもんなんだな」

 

 ももことアグニモンは先ほどの件でやるせない気持ちになっていると十七夜が続ける。

「価値観一つで人の視野というものは狭くなるものだぞ」

 

「身に染みるよ」

 

「それでどうするの?いろはとさなを探しに行く?」

 

「みんな移動し続けてるから居場所を掴めないのが難点ね。ただ二葉さんは気配を消せるからいろを奪還すれば脱出できると思うわ」

 

「下手に俺達が動くとかえって目立つってことか」

 

 現にデジモンをデジヴァイスの外に出してると少なからず目立ってしまうしね。

「しかしどうも腑に落ちんな」

 

「十七夜さんも?」

 

「む、十咎もか」

 

「それならたぶん私とも気が合うわよ。みふゆのことでしょ?」

 

「考えることは同じか」

 

 こんな事態になっていても羽根がみふゆの姿を見ていない。

「みふゆさんのことよね。マギウスと一緒に隠れて何かをしようとしてるんじゃないの?」

 

「ズィードミレニアモンがくるまで隠れているかもしれないものね」

 

「梓は羽根の親玉だぞ。いわば現場のトップだ。それが何の指示もなく傍観をしているとは思えん」

 

 十七夜の言う通りあのみふゆがただ黙っているだなんて私には思えない。

「籠城を決め込んで勝てると見込んでいたとしてもみふゆさんが羽根を放っておくとは思えないよ」

 

「みふゆは羽根に対して責任を感じていたわ。自分だけ隠れて救われようなんて考えてるはずないわよ」

 

「ほんじゃ捕まってるんじゃね?」

 

 ストライクドラモンの発した言葉に私たちはハッとする。

「なるほど、その可能性はあるな」

 

「えぇ、鶴乃の時ですら影で協力してくれたくらいだし・・」

 

「捕まっててもおかしくはないか」

 

「なら場所は絞れたかもしれない。洗脳されたときに放り込まれた部屋ならこの鶴乃脳が鮮明に覚えているからね!」

 

 鶴乃は洗脳されたときに入れられていた部屋を覚えているようで、そこにみふゆが捕えられている可能性を提示してくる。

「その部屋はどこにあるの?」

 

「たぶんこの建物の最上階」

 

「そりゃまた大変そうだな」

 

「んなもん天井に穴を開けてドーンっていけばいいだろ」

 

「せやせや!ストライクドラモン!超進化!サイバードラモン!」

 

 ストライクドラモンはサイバードラモンに超進化をするとさっそくと言わんばかりに天井を破壊しようとする。

「フェリシア!サイバードラモン!それはマズい!やめろ!」

 

「ほいドーン!」

 

「ドーン!」

 

 ももこの静止も聞かずにフェリシアとサイバードラモンは同時攻撃で天井を破壊すると、そこからはウワサが湧き出てきた。

「破壊音で羽根達に居場所がバレるって言おうとしたのに・・・もっと最悪な事態になったぞ」

 

「この狂犬共、余計なことをしてくれたな」

 

「はやく倒して上に進むわよ!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

「マジカルファイヤー!」

 

「イレイズクロー!」

 

「バーニングサラマンダー!」

 

「アレルギーシャワー!」

 

「電撃ビリリン!」

 

「ダブルバックハンド!」

 

 私たちは一斉攻撃を放って一撃でウワサを倒すと追手がこないうちに最上階を目指して進む。その道中、何やら羽根たちの様子が騒がしくなっていたことに気づいた。

「みんな、1回止まって」

 

「どうした七海?」

 

「羽根たちが何か騒がしい気がするの」

 

「そこの狂犬達のせいではないのか?」

 

「そうかもしれないけど、少し静かにして」

 

 耳を澄まして羽根たちの声を聴く。

「地下通路から応援要請が来たわ」

 

「でもこっちに七海やちよが向かってるって」

 

「逃げたのは環いろは。二葉さなも一緒にいるわ。逃がすわけにはいかない」

 

「確かにそちらの方が優先ですね」

 

 どうやらいろはは二葉さんと一緒に逃亡中のようね。

「あいつらに付いていけばいとはちゃん達と合流できそうだな」

 

「いたぞ!階段に潜んでいた!」

 

 階段に隠れていた私たちに気づいた羽根たちは前後から私たちを取り囲む。

「君たち、環いろはのことは私に任せて七海やちよの元へ向かいたまえ」

 

「ダークナイトモンさん!」

 

 そこによりにもよってダークナイトモンがやってきて、いろはのところへと向かっていく。いろは、どうか無事でいて。

「ももこ。あなたたちはダークナイトモンを追っていろはたちと合流して!私たちはこのまま最上階を目指すわ!」

 

「合流地点はどうする?」

 

「とりあえず1階で」

 

「ガッテン!そっちは任せたよ」

 

 ももこたちにいろはを任せた私たちはまずは目の前の羽根たちと戦い始める。

「最強のピヨモンが進化すればこんな状況一気に・・・」

 

「ダメに決まってるでしょ」

 

 ただでさえ大人数なのにこんな狭い場所でバードラモンに進化させられたら猶更狭くなっちゃうじゃない。ピヨモンは室内進化厳禁よ。

「おらおらー!」

 

「オラオラオラオラ!」

 

 私の心配を他所にサイズが安定しているサイバードラモンはフェリシアと一緒に暴れまくる。

「ここはフェリシアとサイバードラモンに任せた方が早そうね」

 

 こういう乱戦の時、フェリシアとサイバードラモンは役に立つわよね。

「ここだよやちよ!」

 

 そんなこんなでたどり着いた最上階。私はそこにある扉を開いて中へと入るとみふゆと笛姉妹が倒れていた。

「どういうこと?3人揃って倒れてるだなんて・・ねぇみふゆ」

 

 私はみふゆを起こそうと揺さぶるとあることに気づく。

「嘘でしょ?」

 

 みふゆは・・・3人は息をしていなかった。

「冗談でしょ?起きなさいみふゆ!」

 

「落ち着け七海!大丈夫だ。羽根の心を読んだがソウルジェムと肉体の距離が一定以上離れるとダメらしい」

 

「じゃあソウルジェムが近づけば・・・」

 

「あぁ、生き返るはずだ。丁度いい。覗かせてもらうぞ」

 

 十七夜は倒れている白羽根の心を覗いてソウルジェムの在処を聞き出す。

「ふむ、なるほどな。環君のソウルジェムもその身体自体も同時に運ばれている。行き先はエントランスだそうだ」

 

「エントランス・・たぶん一階にあったはずだよ」

 

 ピヨモンの記憶が本物ならまた1階まで下りないといけないことになるわね。

「先にももこたちを向かわせておいて良かったわ。最上階から1階じゃ間に合わないかもしれないし」

 

「そう心配しなくとも1戦交える覚悟さえあれば簡単だろう」

 

 1戦?まさかとは思うけど」

 

「狂犬、窓ガラスを破壊しろ。そこから飛び降りるぞ」

 

「まっかせろ!」

 

 十七夜は窓ガラスをフェリシアに破壊させると、案の定ウワサが出てくる。でも逆に言えばこのウワサさえ倒したら一気に下に降りることができるわね。

「外なら進化してもいいよね。ピヨモン進化!バードラモン!」

 

 真っ先に外へと出たピヨモンはバードラモンへと進化するとその足でウワサを鷲掴みにする。

「今のうちにみんなは下に降りて!」

 

「ありがとうバードラモン!」

 

 バードラモンが足止めをしてくれている間に私たちはみふゆたちを抱えて最上階から一気に飛び降りる。もう少し待っててみふゆ。必ずソウルジェムを取り戻してあげるから。

 




次回「少々間引きをさせてもらうよ」


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少々間引きをさせてもらうよ

~ももこSide

 

 

「なっかなか追いつけないなぁ。ダークナイトモン」

 

 ダークナイトモンを追いかけていたあたし達だったけど、だいぶ距離を放されてもう見えなくなりかけていた。

「ももこちゃん!レナちゃん!あれ!」

 

「あれって?うおッ!?」

 

 かえでが急接近してくる何かに気づいてあたし達はそれを咄嗟に避けると、いろはちゃんを抱えたダークナイトモンが駆け抜けていった。

「ダークナイトモン!いろはをもう攫いやがったか!」

 

「アグニモン!頼む!」

 

「ダブルスピリットエボリューション!アルダモン!」

 

 現状このメンツで一番素早いアグニモンをさらに早いアルダモンへと進化させると、アルダモンにダークナイトモンを追いかけさせる。

「あっ!ももこさん!」

 

 そこになんといろはちゃんを取り戻そうと追っていたさなちゃんとロードナイトモンそして・・・赤い髪の知らない魔法少女と騎士みたいなデジモンがやってきた。

「さなちゃん!・・・それと・・」

 

「佐倉杏子。んでこいつがメディーバルデュークモンだ」

 

「味方ってことでいいんだよな。アタシ達は・・」

 

「余計な挨拶はしなくていい。今は奴を追うよ」

 

「あぁ、分かった」

 

 アタシ達はダークナイトモンを追いかけると、既にダークナイトモンと戦闘を始めていたアルダモンに追いついた。

「ブラフマストラ!」

 

「効かんよ」

 

 だけどアルダモンの攻撃はダークナイトモンにはまるで通じずに、ただ弄ばれているような状態だった。アルダモンは完全体ぐらいのデータ量だし当然と言われればそうなんだけど。

「でもまぁ・・・いい時間稼ぎにはなったよ」

 

 ダークナイトモンが舐めプをしてくれたおかげであたし達は無事いろはちゃんに追いつくことができた。

「レナはベタモンを進化させるなよ。シードラモンにされると狭いから」

 

「わ、分かってるわよ!」

 

「フローラモン!ワープ進化!ピノッキモン!」

 

「ハイパースピリットエボリューション!カイゼルグレイモン!」

 

 進化をさせてこっちは究極体が4体。いくらダークナイトモンといえどもこの状況は圧倒的に不利なはずだ。

「あれ?ももこさん」

 

「おっ、気づいたかいろはちゃん」

 

「お目覚めかね。レディ」

 

 ソウルジェムが離れていて意識を失っていたらしいいろはちゃんがダークナイトモンに抱えられながらも意識を取り戻した。

「いろは!今助けるから!」

 

 アグモンはダークナイトモンへと駆けていくと、そこに4つのソウルジェムを持った羽根が入ってくる。

「なっ、ダークナイトモンが戦闘中だと・・・!」

 

 このタイミングでいろはちゃんが意識を取り戻したとなるとあのソウルジェムがいろはちゃんのだな。

「絶対に取り戻すぞ!みんな!」

 

 

 

 

~やちよSide

 

「ごほっ、ごほっ」

 

「みふゆ!」

 

 1階まで飛び降りるとソウルジェムとの距離が縮まったおかげか、みふゆたちが息を吹き返した。

「みふゆ、大丈夫?分かる?」

 

「やっちゃん・・」

 

「十七夜さん。もしかしてウチらのこと・・」

 

「助けてくれたでございますか?」

 

「うむ、お姉さんだからな」

 

「ごめんなさい。ウチら、あんなに刃向かったのに」

 

「終わったことは気にするな。2人とも動けるか?」

 

「みふゆも動ける?」

 

「えぇ、なんとか。それより皆さん、マギウス達が大変なことを!」

 

「ズィードミレニアモンってデジモンを現実世界に呼び寄せているって話でしょ」

 

既にズィードミレニアモンは封印から解放されて現実世界にやってこようとしていることをみふゆたちに伝える。

「ズィードミレニアモンって・・・」

 

「どういうことなのですかみふゆさん?」

 

「イブを孵化させるためのエネルギーを用意するのにマギウス達は膨大なデータ量を誇る最凶のデジモン、ズィードミレニアモンを呼び寄せました」

 

「さらにそれに引き寄せられる形であのワルプルギスの夜まで来ているそうよ」

 

「そんな・・・ワルプルギスの夜まで・・」

 

 マギウスのイブだけじゃなくズィードミレニアモンとワルプルギスの夜までという状況に笛姉妹は絶望しかかる。無理もないわね。

「ただいま!おっ!みふゆ、目覚めたんだね!ってあれ!あそこに羽根達が!」

 

 ウワサを倒してきたバードラモンが下りてくるは何かを持って走る羽根たちに気づいた。

「あれはまさか・・・間違いありません。あそこにワタシ達のソウルジェムがあります」

 

 あの羽根たちが自分たちのソウルジェムを持つことに気づいたみふゆ。私たちは羽根たちを追ってエントランスへと向かうとダークナイトモンとももこたちが戦闘中だった。

「えい!」

 

 戦闘のどさくさに紛れてアグモンとベタモンは羽根からソウルジェムとデジヴァイスを取り戻す。

「いろは!受け取って!」

 

「ありがとうアグモン!」

 

 魔法少女に変身したいろははダークナイトモンから離れるとデジヴァイスを輝かせてアグモンを進化させる。

「アグモン!ワープ進化!ブリッツグレイモン!」

 

「ハハッ、これは流石に不利な状況だねぇ」

 

 ブリッツグレイモンに進化したアグモンはその銃口をダークナイトモンへと向けると、余裕そうな反応をしながらも両手を上にあげた。

「さぁ、マギウスの居場所に案内してもらうぞ」

 

「・・・いいだろう。案内してあげよう」

 

 私たちに脅されたダークナイトモンはこんな状況にも関わらずまるで動じずに少し考えると案内をすると告げてきた。

「ただし、少々間引きをさせてもらうよ」

 

 ダークナイトモンが指をパチンと鳴らすと足場を突き抜けて1体のデジモンが地面から現れた。

 

アルゴモン

・究極体

・突然変異型

・ウィルス種

 アルゴモンが進化し、各党線の能力をも増幅された巨大な究極体デジモン。必殺技は口部から放つ無数の光線『テラバイトディザスター』と肢体の眼部から次元をも歪ませてしまうほどの破壊光線を放つ『ディストーションライン』だ。

 

 アルゴモンは咆哮を挙げると無数の光線を放ってくる。その一撃で私といろは、鶴乃とフェリシア。二葉さんと十七夜とそれぞれのパートナーデジモン以外のメンバーが外へと吹き飛ばされてしまった。

「みふゆ!みんな!」

 

「うむ、いい具合に人選の調整ができたね。よし、付いてきたまえ」

 

 私たちは吹き飛ばされたみふゆたちの心配をしつつもダークナイトモンに付いていく。ダークナイトモンが向かった先は地下。その大聖堂だった。

 

 

 

~みふゆSide

 

「追い出されちゃったけどこれからどうするのみふゆさん?」

 

「ホテルフェントホープのウワサを倒します。このウワサさえ消えれば状況を一変できますから」

 

「とは言ってもよぉ・・・この数じゃ身動きすら難しいぞ」

 

 アルゴモンの攻撃で外へと追い出されたワタシ達は現在、数多くの魔女やデジモン達に取り囲まれていた。

「ったく、こんなに魔女にデジモン達を隠していたとは驚きだな」

 

「アリナのコレクションです。防衛のために放ったみたいですね」

 

「しれっと言ってくれるなよッ!」

 

 佐倉さんはため息をつきながらも確実に魔女を撃破していくも、その姿には少なからず疲弊が見え始めていた。

「それでみふゆさん、アタシらはこいつらを倒しつつ、ここで待機していればいいのか?」

 

「はい。おそらくやっちゃん達はダークナイトモンに案内されて地下へと向かっているはずです。頃合いを見計らってからフェントホープを破壊しましょう」

 

「とは言ってもこの数。レナ達の体力も無限じゃないわよ」

 

「グリーフシードはまだあっても・・・きついものはきついね」

 

 そもそもホテルフェントホープを倒せるかはだいぶ賭け。フェントホープのウワサはねむが何度もその命を継ぎ足した他とは一線を画したウワサ。これだけの魔女やデジモンを相手に消耗させられて本当に倒せるかどうか・・。

 

 いえ、それでもワタシが倒さなくちゃいけない。ワタシがいなければ早くマギウスを見限る判断ができていれば事態はここまで深刻にはならなかったんだから。

「ベタモン!ワープ進化!ギガシードラモン!」

 

「ファルコモン!ワープ進化!レイヴモン!」

レイヴモン

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

クロンデジゾイド製の片翼を持つサイボーグ型デジモン。デジタルワールド創世記、とある神人型デジモンに仕えていた白銀のカラスと呼ばれるデジモンであったが神の怒りに触れ、片翼を黒く染められたと伝わる。必殺技は左腕の鋭い爪を立て、敵に回転突撃する『スパイラルレイヴンクロウ』と左の翼で敵を切り裂く『ブラストウィング』だ。

 

 ねむがウワサを作るたびに体調を崩し、マギウスが卑劣な手段を使いだした時もワタシは彼女達を止められなかった。だからワタシがケジメをつけないと。たとえこの命を賭したとしても。

「まったく、まさか俺までこっちに飛ばされるとはな」

 

 わけあってやっちゃんに付いてきたというベルゼブモンはため息をつきながらも次々とショットガンでデジモン達を行動不能にしていく。

「さすが魔王級デジモン。中々やるな」

 

「ここは俺に任せてお前らはフェントホープのウワサとやらをぶっ倒せ」

 

「とはいってもこの数をどうやって・・・」

 

「なぁに心配はいらねぇって。そろそろくるぜ」

 

「メタルグレイモン!ドルルモン!バリスタモン!デジクロス!」

 

「デジクロス!ランページグレイモン!」

 

 見えたのはいろはさんのメタルグレイモンとは違う青いメタルグレイモンのデジクロス。そしてさらに・・・。

「ティロ・フィナーレ!」

 

 巴さんの必殺の一撃がワタシたちを取り囲もうとしていた魔女達を一掃する。

「ここからは私と美樹さんも加勢するわ」

 

「おせーぞマミ。何ちんたらしてたんだ」

 

「こっちにだって色々あるのよ」

 

「まどかとほむらはマミさんが行っていた場所に急いで。きっとそこにシャウトモンがいるはずだから」

 

「うん。ここはお願い。マミさん、さやかちゃん」

 

 巴さんと一緒にやってきた2人の魔法少女はランページグレイモンとともに強引かつまっすぐに突き抜けるように進んでいくフェントホープの中に突入していく。

「巴さん、何故彼女たちは・・・?」

 

「鹿目さんのパートナーデジモンがアリナのデジモンに攫われたの。彼女たちはシャウトモンを取り戻そうと突入していったのよ」

 

「なるほど・・」

 

 ランページグレイモンの勢いから考えるにやっちゃん達と合流するにはさほど時間はかからないでしょう。

「では予定通りワタシ達はフェントホープを破壊しましょう」

 

「その前に梓さん、お願いがあるんですけど・・」

 

「ワタシに・・ですか?」

 

「えぇ。梓さんの声を神浜にいる羽根たちに届けて欲しいんです。外で戦っていた羽根たちは戦いを止めて、自分たちがどうするべきか判断できずにいます。梓さんこそがマギウスを信用する彼女たちの理由。マギウスの計画を信じる彼女たちはその人間性までも信用してるわけじゃない。みんな梓さんを通してマギウスを信じていたんです」

 

 ワタシが・・そこまで。

「みんな待ってます。梓さんの言葉を」

 

「だけどそんな言葉でこの状況を変えられますか?少なくとも本拠地にいる羽根達は違いますよ」

 

「その信用を壊したのは他でもないマギウスです。今ならきっとあなたの声が届きます」

 

「でもどうやって・・・」

 

 どうやって外で戦っていた羽根たちにも声を届けるのか尋ねると、巴さんは姉妹の方に視線を向ける。

「なるほど。そういう手段で、ですか。分かりました。届けてみましょう」

 

「月夜さん、月咲さん準備は良いですか?」

 

「お、音を伝えるようなイメージでいいんだよね?」

 

「たぶんそれでいいでございます」

 

 姉妹はワタシの声を響かせる準備を整える。今の本音。そのすべてをみんなに届ける。

「羽根のみなさん。聞こえますか梓みふゆです。ワタシはマギウスの翼を離れることにしました。ウワサにかけられた羽根のみなさんなら分かると思いますが、もうこれ以上は従えないと判断したからです」

 

 ワタシは伝えた。本当はこんなことになってしまう前に止めれればよかったこと。抵抗した末に捕えられて伝えるのが遅くなったこと。マギウスが一線を越えてズィードミレニアモンを呼び寄せたことを伝えた。

「少しでもマギウスを疑う気持ちがあるのならワタシ達に力を貸してください。そして武器を下ろして備えてください。ズィードミレニアモンが来れば戦うのはワタシ達ですから」

 

「っ!羽根たちが来たぞ!」

 

 羽根のみなさんが集まってきたのでももこさん達は武器を構えようとするも、羽根のみなさんは戦おうとはしない。

「私たち、知りませんでした。乱暴なやり方を抑えるためにみふゆさんが努力して捕まっていることも・・・。危ない橋を渡ってるつもりはあったけどマギウスがここまで犠牲を払おうとしてただなんて」

 

「要は聞こえの良いことだけ言って利用されていたんだよ。自分が背負った宿命を他人に背負って貰おうとするからこんなことになるんだ」

 

 耳が痛いですね。それはワタシも同じですから。

「みんな目を覚ますのが遅かった。だけど今からでもできることは残っています」

 

 必ずフェントホープのウワサを倒して、マギウスを引きずり出します。

「巴さん、そろそろお願いします」

 

「はい。ティロ・フィナーレ!」

 

 巴さんの砲撃で崩れるホテルフェントホープ。するとフェントホープのウワサがその姿を現した。

「っ!・・やば・・」

 

 フェントホープのウワサは出現するなり真っ先に美樹さんを狙って攻撃を仕掛けてくる。

「危ない!マーメイモン!究極進化!エンシェントマーメイモン!」

 

エンシェントマーメイモン

・究極体

・古代水棲獣人型

・データ種

水の属性をもつ古代デジタルワールドを救った伝説の十闘士デジモン。遥か古代に存在した初めての究極体の1体であり、ネットの海の守護女神でもある。広大に広がるネットの海すべてを支配し、海流や津波などあらゆる水を手足のように扱うことができる。必殺技は大渦巻を発生させ、すべてのものを水中に呑み込む『グレイト・メイルストローム』と水を超硬度に結晶化させてマシンガンのように打ち出す『クリスタルビロー』だ。

 

「クリスタルビロー!」

 

 究極体へと進化したマーメイモン、エンシェントマーメイモンはウワサの攻撃の軌道をそらして美樹さんを助ける。

「大丈夫姉御?」

 

「うん。ありがとうエンシェントマーメイモン」

 

 究極体の必殺技で攻撃をそらせる程度。これは骨が折れそうな相手ですね。

「カイゼルグレイモン!」

 

「応!九頭龍陣!」

 

 カイゼルグレイモンもいきなり大技を放ってウワサを攻撃する。カイゼルグレイモン最強の一撃で怯む素振りこそあれど、それでもウワサは倒されていなかった。

「だったら全員で一斉攻撃だ!」

 

「「ジョグレス進化!シルフィーモン!」」

 

「「シルフィーモン!究極進化!ヴァルキリモン!」」

 

「「フェンリルソード!」」

 

 テイルモンとアクィラモンもジョグレス進化からの究極進化をしてヴァるキリモンへと進化すると必殺斬撃のフェンリルソードを振るう。それに合わせてカイゼルグレイモンはもう一度九頭龍陣を、ギガシードラモンはスカイウェーブを、ピノッキモンはブリットハンマーを叩きこむ。

「レイヴモンもお願いします!」

 

「あぁ、スパイラルレイヴンクロウ!」

 

「あたし達も続くよ杏子!」

 

「あぁ!」

 

「私も・・・!」

 

「クリスタルビロー!」

 

「ファイナル・クレスト!」

 

「パワーウォーター!」

 

 さらには美樹さんのエンシェントマーメイモンと佐倉さんのメディーバルデュークモン、巴さんのイージスドラモンも必殺の一撃を放ち、それに合わせる形でワタシ達魔法少女も総攻撃を繰り出す。もちろんその中にはワタシ達のところにやってきてくれた羽根達も一緒にです。

「この一斉攻撃なら・・!」

 

 確かに手ごたえはありました。これで倒す事ができた。誰もがそう思って疑わなかった。

「ま、まさか・・・」

 

 しかし爆炎の中からでてきたウワサはダメージこそあるものの未だに健在でした。

「おいおい、冗談だろ?究極体クラスが9体も揃っての総攻撃だぞ?」

 

「それにこんなにも大勢の魔法少女とデジモンも一緒に攻撃したのに・・」

 

 カイゼルグレイモンとレナは自分たちの攻撃がウワサに聞いていないことに衝撃を受けていた。もちろん驚いたのはカイゼルグレイモンだけではありません。ワタシ達もです。

「そんな・・・今の一撃で倒せないだなんて・・」

 

「いったいどうしたらいいの?」

 

 羽根の皆さんもこんな相手にどうやって戦えばと動揺が走っているようでした。

「ワタシも力の衰えさえなければもっとやれたはずなのに・・」

 

「何言ってんだみふゆさん。今でも十分そこら辺の連中よりは強いだろ」

 

 ももこさんは昔のワタシを知っているにも関わらず未だ強さは健在だと告げてくる。今の私にはやっちゃんと肩を並べて戦えるほどの力なんてないというのに。

「も、もう1発だ!攻撃は効いてるんだからまた必殺技を打ち込めばきっと・・・」

 

「でもそれで勝てなかったら・・」

 

 ももこさんは皆さんにもう一撃全員でと告げたものの、仮にも『必殺技』。それで勝てなかったのだから一部の羽根は心が折れかかっているように見えます。

「このままじゃみんな持たない。やはり最後の手段を使うしかなさそうですね」

 

「みふゆ・・」

 

 だからこそワタシは最後の手段を使う覚悟を決めると、ワタシの横に下りてきたレイヴモンも覚悟を決めたように頷いてくれました。

「レイヴモン。最後まで・・・お供していただけますか?」

 

「あぁ。もちろんだよみふゆ」

 

 再度頷いてくれたレイヴモン。ワタシはデジヴァイスにありったけの魔力を込めると、レイヴモンは体を白くし、その翼を紫へと染め上げました。これがワタシの正真正銘、最後の手段です。

 




次回「ワタシの最後の手段です」


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ワタシの最後の手段です

「これが正真正銘、ワタシの最後の手段です」

 

「レイヴモン!バーストモード!」

 

レイヴモン:バーストモード

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 レイヴモンがバースト進化で一時的に限界能力を発動し、大気中の全エネルギーをオーラとしてまとった特殊な姿。必殺技は翼を巨大化して黒紫のオーラを放つ『無双天翔翼之陣』と黒紫のオーラで雷のごとく一瞬で敵を突き刺す『雷光一閃之突』だ。

 

 バースト進化。それはデジモンに限界を超えた進化の力を爆発させる人間とデジモンの最高到達点の一つ。そうゲンナイさんがおっしゃっておりました。しかし今のワタシにはレイヴモンとの絆は強くても、それを引き出せるほどの力を持っているわけではありません。だからこそワタシは最後の手段、自分自身に暗示をかけて無意識にセーブしている魔力を開放し、ありったけの魔力をデジヴァイスに流し込むことで強制的にバースト進化をさせたのです。

「ハァ・・ハァ・・レイヴモン。どれくらい行けそうですか?」

 

「長くても1分だと思う」

 

「十分です」

 

 レイヴモンがバーストモードを維持していられるのは1分しかない。ならばとレイヴモンはその1分を一秒も無駄にしないため怒涛の連続攻撃を始めました。

「怒涛闇供喪之舞」

 

 乱舞攻撃は一撃一撃が強力かつ素早く、ウワサに反撃の隙を与えようとはしませんでした。

「凄いな。レイヴモン」

 

「まだあんな力が残ってたのかよ。流石だなみふゆさん。・・・みふゆさん?」

 

「・・ごめんなさいももこさん。今、そんなに余裕がないんです」

 

 今のワタシは自分に暗示をかけて魔力を限界まで注ぎ込み続けている状態。強制的にバースト進化をしているレイヴモンにも負担があるような状態で今のワタシ達には余裕が一切ありません。

「いったい何をしてるんだよみふゆさんは・・」

 

「・・・禁じ手でございます」

 

「どれだけ魔力があって強い技を持っていたとしても魔法少女やデジモンが1回に放てる威力には限界があるの」

 

「ですからみふゆさんは自分に幻覚をかけてそれを一度に出し切る勢いで魔力を放出できるようにしたのでございます」

 

「その魔力をすべてデジヴァイスに送ってるの」

 

「それって危険なんじゃないのか?」

 

「デジモン共々大変危険でございます」

 

「こんなことをしたらみふゆさんのソウルジェムが持たないよ・・」

 

 3人はワタシの心配をしてくれましたが、ワタシ達はもう引くわけにはいきません。

「トドメを行きますよ。レイヴモン」

 

「あぁ。無双天翔翼之陣」

 

「アサルトパラノイア!」

 

 ワタシとレイヴモンは同時に必殺の一撃を放つとワタシの中の何かがㇷ゚ツリと切れるのを感じた。これで・・・終わりなんですね。

「さぁ、共に逝きますよ・・」

 

 あぁ、帰りたかったなぁ。みかづき荘に。

「いや、帰れるよ。みふゆは・・」

 

 死を覚悟したワタシにバーストモードの解けたレイヴモンはやさしく語り掛けてきました。するとデジヴァイスに注ぎ込んだ魔力がわずかですが戻ってきていました。

「レイヴモン!まさかあなた・・!」

 

「無理を通すのは自分だけで十分だよ。だからみふゆは生きて」

 

 レイヴモンは足元からゆっくりとデータとなって散り始めました。強制的にバースト進化をさせてしまった代償です。本来ならワタシも一緒に逝くべきだったのに、レイヴモンはワタシに魔力を返すことでワタシを死なせないようにしたようです。

「1年半ぐらいだったかな。つらいことや悲しいこともいっぱいあったけどみふゆと一緒にいられてうれしかったよ」

 

「レイヴモン・・」

 

「じゃあね。みふゆ・・」

 

「待って!レイヴモン!」

 

 ワタシはレイヴモンに手を伸ばすも、手が届くよりも先にデータが四散してしまい、そこには黒い羽根が数枚残されていた。

「レイヴモン・・!ワタシは、あなただけを逝かせる気などなかったのに・・」

 

 レイヴモンと一緒に最後を迎える覚悟はあった。だけどレイヴモンだけが逝ってしまった。その悲しみでワタシのソウルジェムが濁りだし、ドッペルを出しそうになるとももこさんが後ろから抱きしめてきた。

「ももこ・・・さん?」

 

「悲しい気持ち、つらい気持ちは痛いほど分かるよみふゆさん。アタシだってカイゼルグレイモンが死んじゃったりしたらもちろん悲しいし、今のみふゆさんみたく絶望しそうになると思う。だけどみふゆさんは生かされたんだ。レイヴモンに。だからあいつの分まで生きないと」

 

「そう・・ですよね」

 

 レイヴモン。ワタシはあなたに生かされたぶんまで絶対に生きます。生き抜いて見せますから。

「あいつのデジタマは・・・やっぱりないか」

 

 カイゼルグレイモンはレイヴモンの消えた場所を見渡してデジタマを探しましたが、それらしいものは見当たりませんでした。相当無茶をしたせいかデジタマすら残せなかったのでしょう。

「ここにないってことは始まりの町にデジタマがあるかもな」

 

「始まりの町?」

 

「デジタルワールドに存在してたデジモン達が生まれる町さ。今はたぶんデジタルエリアとしてどこかにあると思う」

 

「それは・・・またレイヴモンに・・ファルコモンに会えるかもしれないということですか?」

 

「デジタルワールドが復活したらって前提はあるが可能性はあると思う」

 

 希望がある。その事実に安堵したワタシはその場に崩れこんで涙をこぼしてしまいました。

 

 

 

~いろはSide

 

「連れてきたよ。アリナ」

 

「ここが・・・マギウスの・・」

 

 大聖堂へと到着するとマギウスの3人が、灯花ちゃんとねむちゃん。そしてアリナさんが私を待っていた。

「うぇー。すげー穢れだぞ。なんであいつ等はこんなところで平気そうにしてるんだ?」

 

「ねぇみんな!あれを見て!」

 

 鶴乃さんの指さす先には『何か』がありました。あれがイブなのかな?

「わたくしたちの聖堂にようこそ。環いろは。ベテランさん。みんなで一緒にイブを眺めながらお茶でもいかがかにゃー?」

 

 やっぽりあれがイブなんだ。

「アリナたちが作ったベストワークはどう?エンブリオ・イブを見るだけでゾックゾクしちゃうヨネ?」

 

 こんな魔女を作品を見るような目でなんて・・・私には無理だよ。

「僕達だってこれが魔女だったとしたらこうして平然と眺めてないよ」

 

「これはどうみても魔女だろ。表に放てば空気に触れるだけで普通の人間なら

どうなるか・・」

 

 十七夜さんの言う通りだ。こんなものを世に解き放つわけにはいかない。

「ブリッツグレイモン」

 

「サンダーバーニア!」

 

 ブリッツグレイモンは必殺技でイブを攻撃したけれど、イブは傷一つついていなかった。

「まったく。こっちの話も最後まで聞いてほしいものだね。これは魔女じゃないと否定したはずだよ。聞こえなかったのかな?」

 

「じゃあこれはなんなんですか?」

 

「これは半端もの。魔法少女でも魔女でもない狭間の中でゆらぐ半魔女だよ」

 

「ザッツ、イット。だからアリナたちは協力してイブを育てたんだヨネ。早くリミットをオーバーして魔女という完成品にしたいカラ」

 

 それが孵化ということなのかな?

「半魔女から魔女=孵化。魔法少女が魔女になるときに発生するエネルギーをわたくしたちはずっと欲しかったんだよ。それが手に入れば神浜の奇跡は世界に広がるから!」

 

「そして世界の魔法少女達は自分の宿命から救われる」

 

「うんうん。せいかーい。はなまるだね~」

 

「でもそれだけじゃないはずよ。あなたたちは自分の欲望も叶えようとしている」

 

「それは副次的なものだよ。世界中を原稿にしたいという僕の欲望も宇宙のすべてを知りたいという灯花の欲望も、作品を永遠に飾り続けたいというアリナの欲望もね」

 

「わたくしたちの目的はあくまで魔法少女の開放。イブの中にあるソウルジェムをグリーフシードに変えて、それを成功させることだよ」

 

 そのためにデジタルワールドを破壊してしまうほどの危険なデジモンを・・・ズィードミレニアモンを呼び寄せるだなんて。

「どれだけ危険なものを呼び寄せたか分かっているの灯花ちゃん。そんなデジモンを呼べばこの町の人たちどころかこの世界だって・・」

 

「それだけ感情エネルギーも出るってことでしょ」

 

「・・・最悪の魔女はこの子たちじゃないかしら?」

 

「どうする?やるなら今だぞ。ブリッツグレイモンの一撃で倒せなかったとはいえこの場にいるデジモンは究極体へと進化を可能とする者たちだ。一斉攻撃ならいけるのではないか?」

 

 私達は十七夜さんの意見に同意する。イブを倒すなら今だ。

「ワーガルルモン!究極進化!クーレスガルルモン!」

 

「サイバードラモン!究極進化!ジャスティモン!」

 

 ワーガルルモンとサイバードラモンは究極進化してクーレスガルルモンとジャスティモンに。

「広いこの場所なら進化できるね。ピヨモン!ワープ進化!ホウオウモン!」

 

 一度ピヨモンに戻ったバードラモンはワープ進化してホウオウモンに進化した。

「みんな!一斉攻撃だよ!」

 

「サンダーバーニア!」

 

「激・氷月牙!」

 

「スターライトエクスプロージョン!」

 

「アクセルアーム!」

 

「スパイラルマスカレード!」

 

「ダブルクレセントミラージュ!」

 

「っ!待ってみんな!」

 

 私達6人とと究極体デジモン6体による一斉攻撃。それを放とうとした矢先私達はギリギリのところで手を止めた。

「おや、気づいたのかい」

 

 イブの手前。そこには縛られていたのは傷だらけになっていたシャウトモンがいた。

「気づいたのなら仕方がない。実は彼にもイブの養分になってもらおうと思っていたのだが存外抵抗してねぇ」

 

「待っててシャウトモン。今助けるから!・・・えっ?」

 

 私達はイブを倒す前にシャウトモンを助けてあげようとすると、壁が吹き飛びそこからはまどかちゃんとほむらちゃんが入ってきた。

「見つけた!ランページグレイモン!」

 

「ギガテンペスト!」

 

 ランページグレイモンって呼ばれたグレイモンは一斉射撃でイブを攻撃しつつ、シャウトモンを開放する。

「お前ら・・・来るのがおせぇよ。ちょっと寝ちまってたじゃねぇか」

 

「強がる威勢は残ってるようだな。安心したぜ」

 

「アンシンシタゼ」

 

 ランページグレイモンから分離したドルルモンとバリスタモンはシャウトモンの無事に安心するとまどかちゃんはシャウトモンを抱きしめた。

「お、おいまどか」

 

「ありがとうシャウトモン。私に時間をくれて・・」

 

「へっ!いいってことよ」

 

「もう少し無理、してもらっていいかな?」

 

「しょうがねぇなぁ!付き合ってやるぜ!シャウトモン。超進化!オメガシャウトモン!」

 

 まどかちゃんがデジヴァイスを輝かせるとシャウトモンはオメガシャウトモンに進化する。

「こっちもいくぞ。ほむら!」

 

「うん!メタルグレイモン!」

 

「超進化!ジークグレイモン!」

 

 ほむらちゃんもメタルグレイモンをジークグレイモンに進化させたら、ダークナイトモンはオメガシャウトモンにその視線を向けた。

「やはりおかしい。君は完全体ながらこの究極体の面々と並び立てるほどの力を秘めている。君はいったい何者なのだ?」

 

「あん?俺様は俺様、オメガシャウトモンに決まってるだろ」

 

「言葉で聞いても答えは得られないようだ。直接身体に聞くとしよう」

 

「どうやら暗黒騎士様は俺様をご指名のようだ。ここは俺様とジークグレイモンに任せてお前らはとっととあのイブとかいうのをぶっ壊せ」

 

「うん。頼んだよ!」

 

 アリナさんとダークナイトモンの相手をまどかちゃん達に任せた私達は再度イブを攻撃しようと身構える。そしたら灯花ちゃんとねむちゃんはデジヴァイスを構えていた。

「やらせはしないよ。リロード、ブリウエルドラモン」

 

「リロード、デュランダモン!」

 

 ねむちゃんはブリウエルドラモンを灯花ちゃんはデュランダモンを呼び出してきた。

「くふふ。せっかくだし面白いものを見せてあげる」

 

「やるのかい灯花?」

 

「うん!そろそろ力の差を見せてあげないとね」

 

「デュランダモン!」

 

「ブリウエルドラモン!」

 

「「ジョグレス進化!」」

 

 ジョグレス?究極体同士がジョグレスしてまだ進化するっていうの?

「ラグナロードモン」

 

ラグナロードモン

・究極体

・特異型

・ウィルス種

LegendーArmsの中で最強の剣と言われるデュランダモンと最強の盾であるブリウエルドラモンがジョグレスして生まれたデジモン。デジコアが高い次元で融合することで作り出された本体は疑似的に自分達を扱える騎士として作り出したものである。必殺技ははるか上空から振り下ろした剣で敵を一刀両断する『ディレクトスマッシャー』と盾から超高温の火炎を吐き出し辺りを火の海に変える『イグニッションプロミネンス』。また盾の炎を纏った剣で敵を突き刺す最大奥義『デュエルエッジフロージョン』は敵のデータをデジコアごと焼き尽くし、跡形もなく消滅させてしまうぞ。

 

「究極体の上だなんて・・」

 

「そんなのありかよ・・」

 

「でもやるっきゃないでしょ!」

 

 究極体を超えた存在がいたことに驚く私達はそれでも戦わなくちゃと身構えると、私達が技を出すよりも先にラグナロードモンが動いた。

「ディレクトスマッシャー!!」

 

「避けろミラージュガオガモン!」

 

「ホウオウモンも避けて!」

 

「避けるってどこに・・うわぁっ!?」

 

 ミラージュガオガモンは持ち前のスピードで避けられたけど、サイズが大きいせいで避けようがなかったホウオウモンがその直撃を受けちゃった。

「うぐぅっ!?」

 

「ピヨモン!」

 

 一撃で退化しちゃうまでダメージを受けたピヨモンに鶴乃ちゃんは駆け寄っていく。

「あのホウオウモンが一撃でダウンするだなんて・・・」

 

「あのデジモン、かなりヤバいぞ」

 

「まだまだラグナロードモンはこんなものじゃないよ」

 

「ラグナロードモン。イグニッションプロミネンスだ」

 

「イグニッションプロミネンス!」

 

「さな!皆さん!」

 

 ラグナロードモンの盾から放たれた炎が私達に向けて放たれたら、ロードナイトモンは私達を庇って攻撃を防いでくれた。だけどロードナイトモンの防御力でも無傷とはいかなかったみたいで、ロードナイトモンもハグルモンまで退化しちゃった。

「アイちゃん!」

 

「さな・・・無事でナニよりデス」

 

「このぉ!よくもワイの仲間を!」

 

「倍返しだ!」

 

「おい待て狂犬共!・・・チィ!ミラージュガオガモン!」

 

「イエス。マスター!」

 

 十七夜さんの静止も聞かずに飛び込んでいくジャスティモンとフェリシアちゃん。仕方がなさそうに十七夜さんとミラージュガオガモンはフェリシアちゃん達と一緒に攻撃を仕掛けようとする。

「ジャスティスキック!」

 

「おらぁぁぁっ!」

 

「ダブルクレセントミラージュ!」

 

「ハァァァっ!」

 

 同時攻撃を無敵の盾で受け止めたラグナロードモンはそのままフェリシアちゃん達を弾き飛ばして剣から斬撃を飛ばしてきた。

「フェリシア!」

 

「マスター!!」

 

 ジャスティモンとミラージュガオガモンはそれぞれフェリシアちゃんと十七夜さんを庇って斬撃を受けて、モノドラモンとガオモンに戻ってしまう。

「モノドラモン!?」

 

「ガオモン!?」

 

「まさかこの短時間でここまで追い込まれるだなんてね」

 

 動けるのは私とブリッツグレイモン。やちよさんとクーレスガルルモンのコンビだけ。私達はジェネラルじゃないから他のデジモンに交代して戦ってもらうことはできないけど、仮にラグナロードモンを何とかしても。灯花ちゃん達はジェネラルだから交代要員はいる。圧倒的にこっちが不利な状況だよ。

「でも・・・だとしても諦めない。私達は・・・絶対に!」

 

 私は・・・私達は諦めない。そう強い想いを抱いていると、それに答えようとするようにデジヴァイスが輝いた。

「いろは」

 

 それはやちよさんも同じだったようでやちよさんのデジヴァイスも輝いている。

「行くぞ!プラズマステーク!」

 

 サンダーバーニアを使っていないのに素早く動いたブリッツグレイモンは一瞬でラグナロードモンとの距離を詰めて必殺の一撃を叩きこもうとする。

「ムゥ・・」

 

 だけどその一撃は盾でガードされていた。

「獣狼大回転!」

 

 続けざまに放たれるクーレスガルルモンの必殺技。回転斬りに対して剣で対処をしようとしたラグナロードモンの懐がフリーになったところに私とやちよさんはそれぞれ矢と槍を放つ。

「くっ・・!」

 

 その攻撃はラグナロードモンに直撃こそしたものの、相手は究極体を超えた究極体デジモン。私達の技じゃ大したダメージにはなっていなかった。だけどなんでだろう。不利な状況だっていうのは分かってるつもりなのに、デジヴァイスの光が・・・諦めないって気持ちが私達に力をくれてる気がする。

「サンダーバーニア!」

 

「おのれ、ちょこまかと!」

 

 いつもより速いサンダーバーニアは残像を残すほどの素早い動きで分身を見せてラグナロードモンを翻弄する。

「ハァァァっ!」

 

 そこにクーレスガルルモンも剣を振るってようやく一撃をヒットさせたら、ラグナロードモンは睨みつけるように私達に視線を向けてきた。

「この体に傷をつけるとは・・少々お前達を侮っていたようだ」

 

「そのまま侮ってくれていいんだぜ。その方がアンタを倒しやすいからさ」

 

 クーレスガルルモンはやや挑発気味にラグナロードモンにそう告げると、ラグナロードモンは目を丸くして笑い出す。

「ハッハッハっ!この私を前にしてそんな安い挑発をするとは!・・・舐められたものだな」

 

 あろうことかラグナロードモンはクーレスガルルモンの挑発に乗ってしまって、剣に炎を灯らせる。

「その安い挑発に乗って・・・一撃でお前をデジコアまで葬り去ろう」

 

「激・氷月。・・」

 

「一人じゃ無理だ!」

 

 自身の最強必殺技を放とうとするラグナロードモンに対して、クーレスガルルモンも必殺技で対抗しようとするとブリッツグレイモンもプラズマステークで一緒に必殺技を放つ。

「「ハァァァぁっ!!」

 

 ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンの必殺の一撃とラグナロードモンの必殺技がぶつかり合う。その力比べはラグナロードモンが勝っちゃって、ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンは必殺技こそ相殺できたけれど、その場に膝をついてしまう。

「よくここまで粘れたが・・・これでトドメだ」

 

「まだ・・・まだ私達は諦めない!」

 

「そうよ。こんなところで諦めてたまるものですか」

 

「「コネクト」」

 

 諦めない気持ちで私とやちよさんはコネクトを発動しようとすると・・・私とやちよさんのデジヴァイスの輝きが同じ色に輝きだした。

「いろは!」

 

「やちよ!」

 

「「その力をボク(俺)達に!」」

 

 ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンにそのデジヴァイスの輝きを力として送ってあげると2体は光に包まれて、1体のデジモンへと変わった。

 




次回「真実の姿をさらそう」


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真実の姿をさらそう

次回から週一更新にします。


「「オメガモンAlter-S!」」

 

オメガモンAlter-S

・究極体

・聖騎士型

・ウィルス種

ウォーグレイモンの亜種であるブリッツグレイモンとメタルガルルモンの亜種であるクーレスガルルモンが融合し誕生したオメガモンの新たな一面。2体の特性を併せ持ちマルチタイプな性能は変わらず、強さも同等である、必殺技はブリッツグレイモンの形をした砲塔からプラズマを撃ち抜く『グレイキャノン』。さらにはクーレスガルルモンの刃『ガルルソード』は剣中央に溜めるエネルギー量で斬撃の威力が変化し、最大チャージしたガルルソードに切れぬものはないと言われている。

 

「オメガモン・・」

 

 私達がその合体に驚いていると、オメガシャウトモンとジークグレイモンと戦っている最中だったダークナイトモンが反応してくる。

「そうでないかとは思っていたが・・・。やはり君達2体にあのオメガモンの因子が宿っていたか」

 

「オメガモンの因子?」

 

「かつてロイヤルナイツはズィードミレニアモンを封印するためと激闘を繰り広げ、オメガモンはその戦いの最中に命を落とした。オメガモンのデータは散り散りとなっていたのだが・・・君たちのパートナーデジモンであるアグモンとガブモンがその因子を宿していたようだね」

 

 ロイヤルナイツの1体、オメガモン。ハグルモンの持っているかつてのロードナイトモンの記憶ではロイヤルナイツの最強の騎士の一角で万能の戦士だったけど、かつてのロードナイトモンと一緒にズィードミレニアモンにやられてしまったとハグルモンから聞いていた。そんな強いデジモンの力をアグモンとガブモンが持っていたってことなんだよね。

「いろは・・!」

 

「えぇ。やちよさん」

 

 頷きあった私達はデジヴァイスに想いを乗せるとそれに応えようとするオメガモンが動き出す。そしてそれに対峙しようとするラグナロードモンもゆっくりと前進して、互いに向かい立つ。

「オメガモンと名の付くデジモンと戦えるとは・・・。剣士として光栄だ」

 

「「行くぞ」」

 

 同時に振るわれたオメガモンのガルルソードとラグナロードモンの剣がぶつかり合う。互いの力は互角。剣の重さ的にわずかながらラグナロードモンが押しているように見えるけど、オメガモンはあえて後ろに下がる事でその剣を受け流して懐に飛び込んだ。

「ムゥ・・・!」

 

 咄嗟に盾で次の一撃を防ごうとするラグナロードモン。それに対してオメガモンはグレイキャノンからのレールガンを放った。

「ぐむぅ・・・!!」

 

 グレイキャノンを防ぎきれなかったラグナロードモンは後ろに下がりつつも、盾から炎を放って反撃をしてきた。

「「・・・・!」」

 

 その炎をガルルソードで切り払ったオメガモンはもう一撃グレイキャノンを放つとラグナロードモンの無敵の盾が弾かれる。

「流石はオメガモン。このままでは勝てないね」

 

「だね。リロード、エンシェントワイズモン」

 

ラグナロードモンだけじゃ勝てないと判断した灯花ちゃんとねむちゃんはエンシェントワイズモンを呼び出した。

「ラグナロードモン、エンシェントワイズモン。デジクロス」

 

「クロスアップ!ラグナロードモン・ワイズソード!」

 

 エンシェントワイズモンとデジクロスして剣がより強化されたラグナロードモンはさっそくそれを振るってくる。強化された剣は振るってくると同時に巨大化して巨大な刃がオメガモンへと迫る。あんな間合いの大きい巨大な剣、避ける場所がない。もし仮にオメガモンが避けられるとしても、剣が私達に向かって振るわれている以上オメガモンは避けようとはしないはずだ。

「オメガモン!?」

 

 案の定オメガモンはラグナロードモンの剣を避けようとはせず、真正面から受け止めようとしていた。いくらオメガモンでもあんな剣を真正面から受けたらオメガモンだってただじゃ済まないよ。

「「ハァぁっ!!」

 

 剣の側面をアッパーをするようにグレイキャノンを撃ちこんだオメガモン。その一撃で剣の軌道をそらしたオメガモンは大ぶりな攻撃のせいでがら空きになったラグナロードモンに突撃していく。

「「これで決める!」」

 

 ガルルソードの一撃がラグナロードモンを切り裂くと、ラグナロードモンはジョグレスが解除されて2体のデジモンに戻った。オメガモンが勝ったんだ。

「やったねオメガモン!」

 

 オメガモンの勝利に安堵しつつも私達は灯花ちゃんとねむちゃんに視線を向ける。そしたらダークナイトモンは拍手をしながら私達に近づいてきた。

「いやはや、やはりと言うべきか。流石は『オメガモン』だ。あのラグナロードモンをこうもあっさりと倒してしまうとは。次は私の相手をしてもらおうか」

 

「てめぇの相手は俺らだろうが!よそ見をしてんじゃねぇ!」

 

 槍を構えたダークナイトモンに対してオメガシャウトモンの放った炎が飛んでくる。それを切り払ったダークナイトモンはため息をついた。

「やれやれ。聖騎士デジモンを倒すのは暗黒騎士デジモンとしての誉れ。聖騎士デジモンの中でも『オメガモン』は最上位の存在だ。君達と戦うよりも私的にはオメガモンと戦う方が有意義なのだが・・・」

 

「そんなこと俺が知るかよ。・・・いろは。お前らはお前らが相手にしないといけないやつらがいるだろ。こっちは俺らに任せな」

 

「うん。ありがとうオメガシャウトモン」

 

 アリナさんとダークナイトモンの事はまどかちゃん達に任せた私達は今度こそしっかりと灯花ちゃんとねむちゃんと対峙する。

「あ~あ。まさかラグナロードモンまでやられちゃうだなんて」

 

「流石に想定外だったよ。だけどそろそろ足も止まるころだね」

 

「え?・・・」

 

 私は魔力や体力とは関係なく力が入らなくなるのを感じた。それはやちよさん達も同じみたいで、みんな力が入らなくなっていた。

「外でずっと戦っていた疲労感。気迫と根性で支えられた体も限界のようだね」

 

「力が入らねぇし、気持ち悪くなってきた・・」

 

「ダメ。立っていられなく・・」

 

 フェリシアちゃんとさなちゃんはその場にへたれ込んでしまう。

「気合と根性。友情と努力、素敵でかっこいーけど、それで乗り切れないものだってあるんだよ?神経繋げてちゃーんと頭で考えないと」

 

「やちよさん・・」

 

「いくら連戦とは言ってもこんなに足が重くなるなんて・・・やっぱり変よ」

 

 魔力は大丈夫。体力に問題があるのは分かる。けどどうして急に・・。

「オメガモンに合体させた影響ってわけでもなさそうだし・・・」

 

「まさか、環境?」

 

「正解。流石ベテランさんだねぇ。わたくしたちは充満した穢れに慣れているけど環いろはたちは違う。つまり免疫力がないんだよ」

 

 この環境が・・・この空間の穢れが影響を?そうか、イブの強力な穢れが私達に悪影響を与えているんだ。

「もう殺すつもりはないよ。でもやっぱり顔を見てると腹が立っちゃうんだよ。ここまで邪魔してきたんだから」

 

 そう灯花ちゃんが告げると、灯花ちゃんの穢れをイブが吸い込んだ。

「まさかドッペルを引き起こしていたのはイブだっていうの?オメガモン!」

 

「「あぁ!」」

 

 オメガモンはこれ以上は見過ごせないとイブにグレイキャノンの方針を向けたその瞬間だった。

「ハァァッ!」

 

 いきなりこの場に現れたゲンナイさんがオメガモンの砲身を蹴って、その攻撃をそらした。

「ゲンナイさん!?いったいなんで?」

 

「彼女は倒させない」

 

 彼女?もしかしてイブの事を言ってるの?

「そのためなら私は・・・真実の姿をさらそう」

 

「真実の姿?」

 

「そもそもこの姿もゲンナイという名も借り物に過ぎない」

 

 紫色の光がゲンナイさんを包み込むと、その光は卵のような形になる。そしてその卵が真っ二つに割れたら、そこからは黒騎士のようなデジモンが現れた。

「私の真の名はアルファモン。私は私のパートナーを守るため、オメガモン。お前をここで食い止める!」

 

アルファモン

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 13体存在すると言われるロイヤルナイツの1体。聖騎士でありながら、聖騎士の抑止力的存在だと言われている。通常時は姿を現すことなく、空白の席と呼ばれる所に位置するロイヤルナイツである。戦いにおいては過ぎ去った戦いを瞬間的に取り戻す究極の力『あるファインフォース』の能力を持つため、アルファモンの攻撃は一瞬にして終わるが、実際は何回の攻撃を攻撃を繰り出しているか分からず、理論上敵が倒れる最後の一撃だけを見ることになる。必殺技は魔法陣の中心に突き刺さった光の収束を抜き、敵を貫く『聖剣グレイダルファー』だ。

 

 ゲンナイさん。只者じゃないとは思っていたけど、まさかデジモンだったなんて。というかアルファモン、今『私のパートナーを守るため』って言ったよね。イブは魔女になりかけの半魔女って言ってた。・・・まさか。

「もしかしてイブになってる魔法少女が・・・」

 

「あぁ、私のパートナーだ」

 

 やっぱりそうなんだ。助けてあげたい気持ちはもちろんあるけど・・・助けてあげる方法がわからない。

「ごめんなさいアルファモン。あなたのパートナーを助ける方法は分からない」

 

「だろうな。私にも分からないのだから」

 

「だけどイブをこのままにするわけにはいかないの」

 

 穢れで動けない体を頑張って立ち上がらせる。するとオメガモンがアルファモンと向かい立った。

「「いろは、やちよ。アルファモンの相手は任せてくれ」」

 

「オメガモン。分かってるとは思うけど・・・」

 

「「あぁ、倒しはしない。足止めをするだけ・・だろ?」」

 

「うん!お願い!」

 

 アルファモンをオメガモンに任せた私達だったけど、やっぱり体がまともに動かない。

「こんな穢れなんかに・・・。ようやくマギウスを止められるっていうのに・・」

 

「敵にとって有利な環境。合点のいく結果だ。・・・殺すか?」

 

「もう殺す気はないよ。イブも成長したし、もうすぐズィードミレニアモンも来る。だからイブが孵化するときまでお茶でも飲みながら話そうよ」

 

 灯花ちゃん達はもう私達を殺す気はないみたいだけど、私達がここで苦しむのを見たいのかここにきて話をしようと提案してくる。

「ズィードミレニアモンを呼んだ時点で僕達は覆せない王手をかけていた。

 

「あとはみふゆたちがフェントホープのウワサを倒してイブが表に出ればいいだけなの。だからそれまで暇つぶしに付き合ってよ」

 

そんな。フェントホープのウワサが倒されることまで計画の内だなんて。

「みふゆも知らないこと、いっぱい教えてあげるね」

 

「みふゆも知らないこと?」

 

「そう、キュウべぇの本当の目的とわたくしたちの意思について。知っておきたいでしょ?」

 

 ここまで来て何もできない。記憶を取り戻してもらおうと思ったけど止めることすらできない。そう私が悔しがっていると灯花ちゃん達はみふゆさんも知らないことを語り出した。

「これはずいぶん前のこと入院していたわたくしはね、叔父様の部屋である本を見つけたの。その本のタイトルは『魔法少女 その希望と絶望』。その本にはね、魔法少女との交流で知ったことと、彼女たちの人生が書かれていたんだよ。その内容がホントのことに思えたわたくしは実際にキュウべぇを探してみることにしたの。そしてある夜、本物のキュウべぇが部屋の窓際に現れて色んなことを聞いてみたんだよ。最初に知ったのはキュウべぇ自身のこと。キュウべぇは広大な宇宙で文明を築いた存在の端末である目的を持っていたの」

 

「ある目的?魔法少女を作ったり、魔女を作ることじゃなくて?」

 

「それは目的じゃなくて手段。本当の目的はわたくしたちが生きる宇宙を救うこと。この宇宙で起きているすべての現象は熱力学第二法則に従って、常にエネルギーをロスしてるからなんだよ。宇宙は常にロスを生み続けて、いつかは熱的死を迎えてしまう。キュウべぇはそれを阻止するために活動をしていたの」

 

 私達は魔女を狩るために生み出された存在じゃなかったの。

「みんな驚いてるねー。そうでしょそうでしょ。驚くでしょ。わたくしたち魔法少女はそれを解決するために存在しているの。キュウべぇは熱力学に縛られないエネルギーを地球で発見したの。それが人間の感情。その中でもとりわけ多くのエネルギーを生み出すことができるのが第二次性徴期の女の子ってわけ。だからこうして魔法少女にして魔女と戦わせることにしたんだよ。それで得た感情エネルギーを使えばロスしたエネルギーを元に戻せるからね」

 

「それで魔法少女にして何の得があるの?欲しいのは感情エネルギー。願いを叶えて得られるのは・・・。まさか魔女になるシステムって」

 

「気づいたようだね最強さん。そう。わたくしたちの感情を揺さぶるサイクルだよ。大切なのは希望の象徴である魔法少女が何かしらの理由で絶望して、強い相転移エネルギーを生み出すことなの」

 

「よくわかんねーけど要は利用されていたってことだよな」

 

「許せない?」

 

「あったりめーだろ!」

 

「大切な想いと決心を利用されて恨まないほうがおかしいわ」

 

 キュウべぇの本当の目的に私達は怒りを感じているも、灯花ちゃんは違った。

「それがフツーの意見。スケールが違うからイメージしにくいのは分かるけど宇宙を維持する力を持つんだからみんなは自分を誇るべきなんだよ。それをわたくしたちはキュウべぇに成り代わって叶えようとしてるってわけ」

 

 キュウべぇに成り代わる?それってどういうこと?

「なるほどね。それであなたたちはキュウべぇの役割を奪って魔女にならない世界を作ろうとしているのね。ドッペルになることで宇宙のエネルギーを維持し、私たちが魔女にならない世界を」

 

「そしていずれ魔女が消えれば僕達は平穏に暮らすことができる。そのためにも僕達はイブを孵化させる必要があるんだ。そして発生した相転移エネルギーを利用して神浜の被膜を世界に広げながら、魔女になったイブを被膜に固定すれば、宇宙にエネルギーを返す唯一のゲートが完成する」

 

 宇宙が存続できるならキュウべぇが活動する理由もなくなる。そういうわけなんだね。

「ふむ、キュウべぇがこの町から姿を消したのもマギウスの仕業だったという事か」

 

「キュウべぇを遮断したのは保険だよ。灯花はキュウべぇが現れたって簡単な言葉で片づけていたけど、彼らのネットワークに介入して情報を根こそぎ奪おうとしてたから警戒されていたんだ。ただ僕達を魔法少女にしたのもキュウべぇ自身だからね、こちらの真意を少しでも知って個体同士を平行化しているなら神浜の内情を知っても過度な干渉はしてこないと踏んでいたよ。まぁ、もうすぐズィードミレニアモンが来るからその事ももう気にしなくていいんだけどね」

 

「あなたたちはズィードミレニアモンを甘く見ている。いくらこれまでが上手くいってたとしてもデジタルワールドを滅ぼしたデジモンが来てみなさい。今までの計画だって残らないかもしれないわよ」

 

 少し回復したやちよさんは立ち上がって灯花ちゃんとねむちゃんにそう告げる。私もやちよさんと同意見で、ズィードミレニアモンを制御できるだなんて思わない。

「その時はイブの鎖を解き放てばいいんだ。我々もズィードミレニアモンを相手取るなどというのは考えていない」

 

「エンシェントワイズモンの言う通り。むしろズィードミレニアモンもそのついでに来てるワルプルギスの夜も大歓迎なんだよ」

 

「町が蹂躙されればされるほど感情エネルギーが溢れる。そのエネルギーを吸い取ったイブはどんどん強くなるんだから。そしてイブが表に出れば、強くなったイブがズィードミレニアモンもワルプルギスの夜も食べちゃうってわけ」

 

「・・・灯花ちゃん達が何をしようとしているかは分かった。目的だって理解した。だけどここまでだなんて・・・。遊園地の時からそうだったけど、どんどんおかしくなってる。だから私は最後まで戦うよ。この町を被害にさらしたくないから」

 

「そうね。マギウスの計画が成功すれば多くの魔法少女が救われるかもしれない。ただ理屈を聞いても被害が出ることに代わりはない。神浜には100万を超える人がいて、大切にしたい思いでもあるもの」

 

「そう。魔法少女しか見てないからそんなこと言えるんだよ。わたしにだって万々歳がある。みんなで盛り上げた商店街や大切な母校がある。それをわたしはわがままでつぶせないよ」

 

「潰させない。何もかも!」

 

「神浜には嫌な思い出も多いです。だけどみんなの思い出も消していいとは思わない」

 

「彼女たちの言う通りだ。些かお遊びが過ぎるぞ」

 

 私達は今の灯花ちゃん達の意見を否定したら、灯花ちゃんとねむちゃんは驚きの表情になる。

「ここまで聞いて否定するんだ」

 

「驚きを超えて圧倒されるよ」

 

「でもアナタたちに取れる手段は2つなワケ。1、アリナたちの計画をブレイクさせてこの町を魔女化する町にバックさせた挙句、ズィードミレニアモンとワルプルギスの夜にこの町を蹂躙される。2、アリナたちの計画を見守って魔女化しない世界になるのを待つけど、神浜を蹂躙される。どっちにしても町のダメージは避けられないわけ」

 

 そんな中まどかちゃん達と戦っていたアリナさんが話に入ってくる。

どうせ勝てなくて無駄死にだよ。それでもいいのかにゃー?」

 

「無駄死になんかしない。マギウスが未来の魔法少女を救うっていうのなら、私達は未来の人類を救う!イブにズィードミレニアモンを食べさせて魔女になんかさせない!」

 

 そう私が宣言した瞬間、ホテルフェントホープが崩壊した。みふゆさん達がウワサを倒したんだ。

「すっげー風と雨だな」

 

「たぶんこれはワルプルギスの夜が近づいてるからだよ」

 

 私達は外の光景にそれぞれ反応していたらももこさん達が合流してきた。

「みんな。大丈夫?」

 

「かえでさん。皆さんも無事でよかったです」

 

「そっちこそ無事で安心したよ」

 

「・・・ももこ、みふゆは?」

 

「・・・あそこさ」

ももこさんの指さした先には涙を流しながらデジヴァイスを見つめるみふゆさんがいた。

「どうしたんだ白いねーちゃん。なんで泣いてるんだ?」

 

「大切なパートナーを失ったんだ。今は・・・そっとしてやってくれないか」

 

 私達はみふゆさんの辺りを見てハッとする。確かにみふゆさんのそばにはファルコモンがいなかった。

「みふゆさん・・」

 

「ももこの言う通り今はそっとしておいてあげましょう」

 

 みふゆさんに声をかけようとするもやちよさんがそれを止めた。きっとやちよさんも声をかけてあげたい気持ちはあるけど我慢してるんだ。

「ところでさ。あの奥にいるのはなに?」

 

 レナちゃんは奥にいるイブを指さす。

「ありがとう。みんなのおかげでイブが狭い聖堂から出られたよー」

 

「僕達の育てた希望がようやく大地の上に立ったね」

 

「ビューティフルでワンダフルなアリナたちのベストアートがやっと完成するゥゥ」

 

「じゃああれがイブなの?魔女なんてレベルじゃないわよ」

 

「それに私たちのおかげって・・・?」

 

「マギウスは最初からイブを表に出すつもりでいたの。完全な魔女にするために。あれは半魔女で孵化は魔女化のことだって」

 

 ももこさん達は「あれで魔女じゃないのか」と驚いているとイブは何かに反応する。

「どうやら先に来たのはワルプルギスの夜だったみたいだね。もう叫んでもあがいてもどうにもならない。現実を受け入れた方がいいよ」

 

「ねえアリナ。イブを開放してあげて」

 

「アハっ、オッケー。さぁイブ。アリナたちのドリームを叶えて!.」

 

 アリナさんによってイブの拘束が解かれようとすると、その付近で戦っていたオメガモンとアルファモンが咄嗟に離れる。

「「いろは!やちよ!まだこいつが動かないうちに!」」

 

 アルファモンの足止めをしてるオメガモンは私達にそう呼びかけてくる。

「行くわよいろは!」

 

「はい。やちよさん!・・・きゃぁっ!?」

 

 私とやちよさんは同時攻撃でイブを攻撃しようとした矢先、私はイブに掴まれてしまう。だけどイブは私を掴んだだけで何もしてこなかった。

「・・・私を見てるの?」

 

 私を見るだけで何もしてこないイブ。すると何かが光って私はイブの手から離れた。

「モキュ!」

 

 そこに現れたのは小さいキュウべぇ。小さいキュウべぇは何かを私に伝えようとしてくる。

「今の光は・・」

 

「これかもしれません。万年桜のウワサさんが持っていけっていって・・」

 

 さなちゃんは一本の枝を私に見せてくる。それは万年桜の枝だったんだけど・・・。それは桜が咲いた状態だった。

「あれ?渡されたときに花なんて・・・」

 

「4人揃わないと咲かないはずなのにどうして・・・」

 

 まだういがこの場にはいないのに何でと疑問に思っていたけれど私はすぐに察した。

「まさか・・イブになった魔法少女って・・・」

 

「気づいたようだな。そう、イブになった魔法少女とは私のパートナーで君の妹。環ういだ」

 

 アルファモンから伝えられた衝撃の事実に私はショックを受けずにいられなかった。

 




次回「心が苦しまないように」


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心が苦しまないように

「お姉ちゃん」

 

 環うい。私の大切な妹。信じたくない。私が探していたういがイブだなんて。

 

 ずっと私はういに会えると信じていた。それなのにどうしてこんな・・・。

「倒さなきゃ・・イブを・・」

 

 だけど私は・・・。決めたのに。未来の人類を救うって・・。なのにどうしてここで揺らいでしまうの。

「私にできるの?」

 

「「大丈夫さいろは。マギウスはイブを魔女でもない半端者って言ってただろ。ならういを戻せる可能性はきっとあるさ」」

 

 オメガモンはういを元に戻せる可能性があると私を勇気付けようとしてくる。

「ごめん。そうだよね。イブがういだったとしても希望が失われたわけじゃないものね」

 

「さすが環いろはだ。このような状況でもまだ希望を捨てないとは・・・。私はこんな姿になったういを見て半ば諦めたというのに」

 

 半ば諦めてういの保身に走ったと語るアルファモン。するとデジヴァイスがいきなり激しい音を鳴らした。

「えっ?いきなり何?」

 

「どうやらきてしまったようだな。終末の千年魔竜・・・ズィードミレニアモンが」

 

 このデジヴァイスの音はズィードミレニアモンがこちらの世界に来たことを知らせる音だったみたい。

「何とかしないと」

 

 このままだとういは無限に穢れを集めながら呪いを振りまき続ける魔女になる。そして最初はこの神浜が犠牲になってしまう。

 

 私が判断に迷っていると次の瞬間。翼を広げたイブが羽ばたいた。

「「いろは!やちよ!」」

 

 オメガモンはマントを広げて衝撃から私達を庇ってくれると、イブは手足の拘束が解かれて倒れてきた。

「ピヨモン!ワープ進化!ホウオウモン!」

 

 ホウオウモンに捕まった私達はすぐさまそこを離れてイブとの距離を取る。

「でもどうするの?あれがいろはの妹だとして・・・いろは、あなたは戦えるの?」

 

 私はやちよさんの問いかけに口を濁す。戦わなきゃいけないってのは頭では分かっているのに・・・心は戦えそうにない。

「見て灯花ちゃん!ねむちゃん!万年桜のウワサの枝!イブに触れて咲いたんだよ!ようやく4人揃ったって!イブがういなんだよ!」

 

 私はイブがういだと灯花ちゃんとねむちゃんにも伝えると、2人は驚きの表情になる。

「・・・ありえない。万年桜が環いろはを守るだけじゃなく、桜が満開になるなんて」

 

「万年桜は運命の時を待って満開になれずにいる。それが僕が創造したウワサの内容だよ。4人にまつわる話はみじんも記述した覚えはない」

 

「でも4人が揃って咲いたっていうことは・・・」

 

「だけど信用に足る情報なのかな。イブという強烈な穢れに接触して万年桜のウワサがおかしな挙動をしたのかもしれない。曖昧かつ奇々怪々だとしても、僕にはその結論が最も腑に落ちる」

 

「そうだよ。・・・そうだよね!というわけで残念だったね環いろは。わたくしたちはイレギュラーを認めません!」

 

 2人はこの状況下でも『認めない』を貫くみたい。

「アリナ的には楽しいイベントだったワケ。アリナがあなたの妹を育てていただなんて。エモーショナルでちょっとゾクゾクするヨネ」

 

 アリナさんがそう反応していると、イブの使い魔達が湧き出て、それらが街へと向かいだした。

「行かせない!」

 

 巴さん達はその使い魔を何とか押さえ込んでくれているけど、街には既にワルプルギスの夜の使い魔が満ち溢れていた。

 

 

 

~ひなのSide

 

 

「使い魔が結界を持たずに現れた!?」

 

 この規格外の芸当、ワルプルギスの夜の夜の使い魔で間違いなさそうだな。

「どうするのだひなの」

 

「先ほど笑うような声も聞こえてきました。おそらく魔女自身もそう遠くはないでしょう」

 

 アタシのパートナーのエンシェントグレイモンが作戦を訪ねてくると、隣にいる常盤ななかがワルプルギス自身も近いと状況を分析してくる。

「数の上では有利。それにこちらには究極体クラスのデジモンも数が揃っているぶんそう易々とは負けない」

 

 ななかのパートナーのビクトリーグレイモンは数では勝ってるから勝てると意気込んでいるけど・・・アタシは難しいのではと判断していた。

「一糸乱れぬ連携で体力の消耗を抑えれば正気はあるかと」

 

「連携か。初対面が多いのにそりゃ無理だろ」

 

「とはいえ気おくれしてる状況ではありません」

 

「だな」

 

 エンシェントグレイモンの背中に乗ったアタシはお得意の薬品攻撃で使い魔の数を減らすとななかとビクトリーグレイモンが瞬時に切り込んで残党を倒していく。

「うっりゃぁ!ラブリーエンジェモン!」

 

「ハァっ!」

 

 ラブリーエンジェモン

・究極体

・戦士型

・ワクチン種

 地上に舞い降りた天使と名高い近接格闘のスペシャリスト。肉弾戦を行うマジカルファイターというデータを内包しており、悪逆非道な敵には息をつかせぬ格闘技のコンボをお見舞いする。必殺技は渾身の力を拳に乗せて七色の正拳突きをする『マーブルインパクト』に空高くジャンプし回転しながらキックする『ドリームハリケーン』だ。

 

 木崎衣美里とラブリーエンジェモンの組み合わせも追加でマシマシになった使い魔たちを他の仲間とともに迎撃する。

「ひぃー。他の使い魔と比べてもチョーくらべものにならないよ」

 

「それでも十分合格点だ。よくやってるほうだと思うぞ」

 

「なーんか知らないけどみんなまっすぐ進むから殴りやすいし!」

 

 ラブリーエンジェモンは使い魔達がまっすぐ進んでいることに気づく。言われてみれば確かにそうだ。鉄砲玉のような特攻だと思いたいが・・。

「エミリーのパートナーデジモンの言う通り。コイツら向こう見ずネ」

 

「ハッ、こんな向こう見ずな雑魚。どうという事はない!」

 

バンチョースティングモン

・究極体

・昆虫型

・フリー

 自尊心に溢れ、常に周囲を威圧して生きる昆虫型デジモン。すべてにおいて自分のプライドが優先され、プライドの高さは全デジモンの中で一番といわれる。一切の妥協を許さぬプライドにより『バンチョー』の称号を会得したとされる。必殺技は両腕のドリルで敵を串刺しにする『ブラッディーフィニッシュ』だ。

 

 純美雨とバンチョースティングモンもこの程度の数は問題ないようだ。

「それはつまり神浜という城の門であるこの湾岸エリアさえ守り切ればワルプルギスの夜ともやり合えるかもしれないと!」

 

「うぉぉぉ!燃えてきたで御座るよ!」

 

 竜城明日香とガイオウモンはまだやる気に満ち満ちている。

「さすがに楽観的すぎるネ。迎え撃てるのもみんなが固まっているからネ」

 

「海辺といっても広大。他の地域にも表れるとなれば戦力を分担せざるを得なくなります。そもそも仮にワルプルギスを何とかできたとしても・・・」

 

「俺達の世界を壊したズィードミレニアモンが控えている」

 

 そう、使い魔だけが問題じゃない。親玉のワルプルギスの夜に大本命のズィードミレニアモンだっている。

「皆さん!第二波が来ます!」

 

 そんな話をしている間に使い魔の第二波がやってきた。

「ななかさん!ワルプルギスの夜の使い魔が他の地域にも!」

 

「なっ、現れたのはここだけではない・・・」

 

「さっそく恐れていたことが起きちまったか」

 

 恐れていたことが起きると夏目かことメルキューレモンが前へと出る。

「ここはワタクシにお任せを」

 

メルキューレモン

・ハイブリッド体

・突然変異型

・ヴァリアブル

 伝説の十闘士の力を宿した鋼の能力を持つデジモン。貴族趣味で何かと流儀にこだわる気質で、戦闘においてもそのこだわりは発揮されてしまう。同時に幾つもの作戦を思いつくほど頭の回転は速いため、いつも早口の独り言で議論してたりする。必殺技はイロニーの盾で相手の攻撃をそのまま跳ね返す『ジェネラスミラー』だ。

「ジェネラスミラー!」

 

「そしてそれを・・・『再現』!」

 

 メルキューレモンが使い魔達の攻撃をそのまま跳ね返すと、かこもそれを固有魔法で再現して追加で攻撃を与える。

「第二波もだいぶ減りましたが・・・神浜が使い魔に蹂躙されるのもこのままでは時間の問題ですね」

 

「どうしよう。みぁーこ先輩!」

 

「今この場で最も経験が長いのは都さん。あなたです」

 

 この場で事実上の現場指揮をしていたアタシにみんなが意見を求めてくる。

「ここでワルプルギスの夜を待ち構えるのも一つの手だが、使い魔も数を増やせば魔女と同じ脅威だ」

 

 そして最も怖いのは使い魔が魔女に成長してしまうこと。苦肉の策だが仕方ない。

「みんな!各自でチームを組んで散会!海に対応できるデジモンはこの場で迎撃に当たれ!」

 

 慣れているチームで散会させて、この場には海辺で対応できるデジモンとそのパートナーである魔法少女を残し、アタシ達は各地に散らばった。

 

 

 

~ねむSide

 

「・・むぅ・・」

 

「気にしても無駄だよ灯花。確かに環いろはの言葉は真実味を持たせるものだった。だけど僕達には実感を持たせる記憶はないし、今更納得していいことでもない」

 

 そう。僕達はたとえ何があろうとも引くわけには行かないんだ。

「分かってるよ」

 

「環いろはの記憶。アリナ的には信じてみるのも面白いケド」

 

「どういうつもりかな?」

 

 アリナはこともあろうに環いろはを信じてもいいなどと言ってくる。

「シンキングするほどミステリー過ぎるんだヨネ。アリナがあなたたちと手を組んでる理由は分かるけど、アリナが子供と手を組むのは違和感だカラ」

 

「それを言うならこちらもさ。アリナのことを信用するなんて危険性が高すぎるからね」

 

「けれど環いろはのメモリーはそのアンサーを持ってる」

 

 悔しいけどその可能性はある。

「だからアリナは万年桜の時も環いろはを生かしたし、本拠地でもメモリーのリカバーを期待して運ばせたワケ」

 

「あーもー。環いろはの話はしませーん!もう納得するつもりはないんだから!」

 

「ふーん。まあアリナ的にはそれでいいケド。イブが孵化してさえくれればね」

 

 そうだ。記憶を信じるか信じないかはもう論する事じゃない。僕が作った設定で魔女達は神浜が桃源郷に見えている。使い魔が神浜に拡散すれば、魔法少女はそれに対応せざる得なくなるし、イブの食事を邪魔するのは環いろは達以外もう何処にもいないはずだ。

「後は計画の成功を見届けるだけさ」

 

 

 

~いろはSide

 

「それで、どうするのよ。レナだってこんなことは言いたくないけどイブが動かないうちに・・・」

 

 イブが動かないうちに倒すべき。それは分かってはいるけれど私とアルファモンにはその決断はできなかった。

「とはいえ半魔女。つまりまだ魔女ではないのなら救う手立てはあるはずだ」

 

「そうだよ。時間はないけど考えようよ。きっと他の方法があるはずだよ」

 

 十七夜さんと鶴乃ちゃんはきっと方法があるはずだと言ってくれた。

「はい。救う可能性があるのなら挑むべきです」

 

「それにオレたち決めただろ。悩みを共有するって」

 

 さなちゃん。フェリシアちゃん。

「だからいろは。自分を責めないで。フェリシアの言う通り私たちは悩みを共有するって決めたじゃない。それにみんなが知ってるわ。いろはが妹さんをどれだけ大切に想ってるかを」

 

 やちよさん。

「でもねいろは。ただこうして話し合いながらイブを眺めているわけにはいかないのは分かってるわよね」

 

「・・・はい」

 

 イブは立ち上がろうとしている。ワルプルギスの夜とこれからやってくるズィードミレニアモンを求めて。

「町に向かおうとしている以上イブを放置できない。最低限攻撃をして足止めはしないと」

 

「弱らせながら環ういを救う手立てを考えるということか」

 

 アルファモンはやちよさんの言葉に渋々ながらも賛成する。

「いろは。分かって。妹さんが元に戻った時にその心が苦しまないように・・・」

 

「アタシもやちよさんの言う通りだと思う。それに大丈夫だって。アタシらが立ち向かって倒れるほど相手もヤワじゃないさ」

 

 うい。・・・戦わなくちゃいけないんだね。

「オメガモン!アルファモン!イブを押さえて!」

 

やらなきゃいけないのだと言うんだったら・・・せめて最初の一撃は私からじゃないといけない私は勇気を振り絞るとオメガモンとアルファモンにイブの動きを止めてもらって矢を放つ。

「いろはに続くわよ!」

 

「ちゃらぁぁぁっ!」

 

「おらぁぁぁっ!」

 

「えぇぇぇい!」

 

「ハァァァぁっ!」

 

 そしてやちよさん達も私に続く形でイブに攻撃を仕掛けたけど・・・イブはピクリとも反応しなかった。

「攻撃したのにまるで手ごたえがない」

 

「だったら・・・モノドラモン!ワープ進化!ジャスティモン!」

 

 ジャスティモンは腕をアクセルアームにしたらその剛腕でイブを捕まえる。

「ハグルモン!ワープ進化!ロードナイトモン!」

 

「ガオモン!ワープ進化!ミラージュガオガモン!」

 

「飛ぶなぁぁぁぁっ!」

 

 ロードナイトモンとミラージュガオガモンもイブを押さえつけるとホウオウモンもイブを上から飛ばせないように押さえつける。だけどイブは抵抗するかのように繭を砲撃のように飛ばしてくるとそこに乱入する形で3体のデジモンが参戦してきた。

「見せるぜ。『バンチョー』の底力!フラッシュバンチョーパンチ!」

 

「気ぃ抜いてんじゃねえぞやちよ!」

 

「ガァァァウ!」

 

 バンチョーレオモンとベルゼブモン。そしてダークドラモンの3体だ。3体は繭を破壊すると、ダークドラモンの肩から調整屋さんが下りてきた。

「調整屋!?どうしてここに?」

 

「手助けできればって思ってね。みんなボロボロじゃない」

 

「イブの正体がういちゃんだって分かって、ちょうど手詰まりだったんだよ。調整屋、何かいい案はないか?」

 

「ちょっと待って。今さらっとすごい事言わなかった?ういっていろはちゃんの妹さんの事よね?」

 

「はい。万年桜が咲いて、イブが妹だって分かりました」

 

「そう。そういう事。ならここにきて良かった。まだ私でも役に立てるかもしれないわ」

 

「役に立てるかもって・・・調整屋。何か知ってるのか?」

 

「調整するたびに人の記憶を見てきたからもちろんマギウスの記憶だって見たわ」

 

「マギウスの記憶・・・それ!詳しく教えてください!」

 

「時間もないから簡潔に説明するわね。ういちゃんを助ける方法は単純明快よ。イブを倒して中から救出するのよ」

 

 そんな乱暴な方法で!?

「マギウスが孵化を目的としているのは魔女化である以上、イブはソウルジェムを持っている。それを証明するようにマギウスの3人はイブのお腹から魔法少女に近い反応を感知していたのよ。さらに時を遡れば、その魔力の周辺を何かが覆っていることも感じ取っていたわ。つまりねいろはちゃん。それがういちゃんの肉体とソウルジェムである可能性があるのよ」

 

 力業で解決するのはどうかと思うけど、これで希望が見えた。

「イブはソウルジェムと結びついているというよりも、エネルギーを吸収する力で体を覆っている状態。つまりあの体は着ぐるみと一緒ね」

 

「着ぐるみなら外を剥がしても中の人は影響がないから・・・ういを救うことができる!」

 

「えぇ。その通りよ」

 

 魔法少女である私達だけだったらイブを倒すことすら叶わなかったかもしれない。だけど私達には頼もしいパートナーがいる。

オメガモン!みんな!私に力を貸して!ういを助けるための力を!」

 

「「当然さ!」」

 

 オメガモンがそう私に答えてくれると、私とやちよさんのデジヴァイスがXの光を放つ。

「それはまさか・・・X進化の光か」

 

「オメガモンAiter-S!ゼヴォリューションΩ!」

 

 オメガモンがXの光に包まれたかと思えば、その光の中から出てきたオメガモンはそれぞれX抗体のウォーグレイモンとメタルグレイモンを模した腕のオメガモンに進化していた。

オメガモン(X抗体)

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 ウイルスバスターであるウォーグレイモン・メタルガルルモンが善を望む人々の強い意思によって融合誕生したオメガモンがX抗体を身につけた姿。理論上他のデジモンがオメガモンを倒す事はできない。戦いにおいて瞬時に先を読み、対応できてしまう究極の力『オメガインフォース』を身に付けたからである。あらゆる状況下で戦闘センスとポテンシャルが高められ、引き出された能力である。必殺技の『オールデリート』発動中のグレイソードは切られるのではなく消し去られていく。

 

「そうだ!こんなところで足止めを受けるわけにはいかない!見せるよ!最強の『最強』!」

 

 ホウオウモンに呼応するように鶴乃ちゃんのデジヴァイスもXの輝きを放つ。

「ホウオウモン!アルティメットゼヴォリューション!」

 

 そしてホウオウモンもX抗体へと進化を遂げた。

ホウオウモン(X抗体)

・究極体

・聖獣型

・ワクチン種

 

 ホーリーリングが12個となったホウオウモンは並大抵の天使系デジモンでも叶わないほどの聖なるパワーを発している。体を覆う神々しいオーラは最大級の防御壁『ファイアーウォール』であり一切のウイルスを受け付けない。舞い散る1枚の羽に触れれば、そのデジモンを邪悪の魔の手から守護すると言われている。必殺技の『スターライトエクスプロージョン』は聖なるパワーが増したことでさらに強化されている。

「今こそワイのジャスティスが爆ぜる時や!ジャスティモン!アルティメットゼヴォリューション!」

 

 フェリシアちゃんのデジヴァイスもXの光を放ってジャスティモンは真っ赤に染まる。

ジャスティモン(X抗体)

・究極体

・サイボーグ型

・ワクチン種

 3つのアームが差し替え不要になり右手に『ブリッツアーム』。左手に『クリティカルアーム』左足に『アクセルレッグ』となった。その必殺技はブリッツアームから繰り出す『ジャスティスXパンチ』にクリティカルアームから繰り出す『ジャスティスXブレード』。さらにアクセルレッグでジャンプ蹴りをする『ジャスティスXキック』だ。

「私は盾。すべてを守り貫く盾!ロードナイトモン!アルティメットゼヴォリューション!」

 

 そして最後にさなちゃんのデジヴァイスがXい光って、ロードナイトモンもX抗体に進化する。

ロードナイトモン(X抗体)

・究極体

・聖騎士型

・ウィルス種

 攻防一体のバラの盾『ローゼスパイルバンカー』と刺突剣『ローゼスフェンサー』を手にし、騎士王として更なる力を身に付けた姿。鎧と共に帯刃も強化され、その切っ先に配下であるナイトモン達の力を収束させることもできる。必殺技はローゼスパイルバンカーの核から生み出したバラの花弁のハリケーンで敵の動きを封じ、ローゼスフェンサーで貫く『のブレス・オブ・ルージュ』。そして盾と剣を合体させることで完成する最強のパイルバンカー『究極戦突剣グランローゼリオ』は。その衝撃は戦場のあらゆるものを吹き飛ばす。

 

 今ここにチームみかづき荘メンバーのパートナーデジモンが究極体を超えたX進化の状態で集うこととなった。

 

 




神浜デジモンファイルに
「都ひなの&エンシェントグレイモン」
「常盤ななか&ビクトリーグレイモン」
「木崎衣美里&ラブリーエンジェモン」
「純美雨&バンチョースティングモン」
「竜城明日香&ガイオウモン」
「夏目かこ&メルキューレモン」
が登録されました。

次回「ようやく会えた。私のパートナー」


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ようやく会えた。私のパートナー

予定では今月中で完結します。


~まどかSide

 

「すごい。みかづき荘のみんなのデジモン達が究極体を超えちゃった」

 

 ダークナイトモンと戦っていた私達は少し離れたところでイブと戦ういろはちゃん達を見て驚いた。だっていろはちゃん達のデジモンが究極体を超えたデジモンに進化したんだもん。

「よもや彼女たちのパートナーデジモンが揃いも揃ってX進化を遂げるとはね」

 

 流石のダークナイトモンもその事実には驚いているみたい。

「やはり早く君達を倒してオメガモンと戦いたいな」

 

「よそ見してんじゃねぇ!オメガ・ザ・フュージョン!」

 

 オメガシャウトモンはオメガモンのオーラを纏ってダークナイトモンに突撃したら、ダークナイトモンはそれを正面から受け止めた。

「なるほど。今の一撃でようやくわかったよ。オメガシャウトモン、君の正体がね」

 

「俺様の正体だと?」

 

「オメガシャウトモン。君もまたオメガモンの因子を受け継ぐデジモンのようだ」

 

「へぇ、そうなのか」

 

 オメガシャウトモンには自分もオメガモンの因子を継いでいるというのははっきり言ってどうでもいいことみたい。

「君にとっては些細な問題のようだが、私は嬉しいよ。私にとって君もまた『オメガモン』という事なのだから」

 

 ダークナイトモンからもの凄い殺気があふれ出た。ダークナイトモンが本気になったんだ。

「アリナ。ディアボロモンとアルゴモンを呼んでくれ」

 

「へぇ、本気を出す気なんダ。イイヨ」

 

ディアボロモン

・究極体

・種族不明

・不明

 ネットワーク上のあらゆるデータを吸収して進化と巨大化を繰り返し、デジタルワールドで破壊の限りを尽くすデジモン。多くのデータと知識を吸収したディアボロモンは自らを全知全能の存在だと思い込み、破壊と殺戮を楽しんでる。必殺技は胸部の発射口から強力な破壊エネルギー弾を発射する『カタストロフィーカノン』だ。

 

「ダークナイトモン。ディアボロモン。アルゴモン。デジクロス」

 

「クロスアップ!ダークナイトモン!」

 

 本気になったダークナイトモンは2体の究極体デジモンとデジクロスして両腕を禍々しい腕にした。

「おいおい、ずいぶんと大層な姿じゃねぇか」

 

「対オメガモン用のデジクロスさ。君もまた『オメガモン』ということを称え、この姿で挑ませてもらおう」

 

「ハッ。上等じゃねぇか。まどか!ほむら!こっちもダブルクロスだ!」

 

「「ダブルクロス!」」

 

「シャウトモンDX!」

 

 ダークナイトモンに対抗するようにオメガシャウトモンもジークグレイモンとダブルクロスをする。

「何ならそこで見てる君達もまとめてかかってきていいよ」

 

「言ってくれるわね。だったら遠慮なく・・・」

 

 あろうことかダークナイトモンはマミさん達にも自分にかかってくるよう告げてくる。

「マミさん達はワルプルギスの夜の方に向かってください。ここは私とほむらちゃんで何とかします!」

 

「・・・分かったわ。負けないでね2人とも」

 

 マミさんとさやかちゃん。杏子ちゃんはワルプルギスの夜のところに向かっていく。

「いいのかい?私は君達まとめてでも良かったというのに」

 

「ハッ、てめぇなんか俺達だけで十分ってこった」

 

「言ってくれるねぇ。とはいえここからは・・・手加減なしだ!」

 

 本気になったダークナイトモンとシャウトモンDXが激突する。私達はその戦いに集中していて、空が割れ始めたことに気づいていなかった。

 

 

 

~いろはSide

 

「ふむ。究極X進化か。・・・ミラージュガオガモン」

 

「す、すみませんマスター。自分はX抗体に対応してはいないようです」

 

 どうやらミラージュガオガモンはX抗体に対応していないみたい。

「ももこちゃん!激励の魔法でみんなに力をお願い!」

 

「あいよ!ダメ押し全開!みんな!行くよ!」

 

「まずは私から!」

 

「レナも手伝うわ!」

 

 私達はももこさんの固有魔法の効果で力を増幅させる。するとかえでちゃんは固有魔法で植物を操ってイブの動きを封じた。さらにはレナちゃんも変身の固有魔法でかえでちゃんに変身して、同じく植物で動きを止める。

「おらぁぁぁっ!」

 

 そこにフェリシアちゃんはハンマーで一撃を叩きこむとイブの動きが止まる。

「フェリシアの忘却の魔法で動きが止まった!」

 

 フェリシアちゃんの固有魔法は忘却。それによってイブの『ワルプルギスの夜に向かう』という事が忘れられたんだ。

「ナイスやでフェリシア!行くでワイの必殺技!パート1、ジャスティスXパンチ!」

 

 動きの止まったイブにジャスティモンは必殺の一撃を叩きこむ。その一撃でイブは後ろに押し戻された。

「見せるよ最強コンビネーション!」

 

「オッケー!スターライトエクスプロージョン!」

 

「ちゃらぁぁぁっ!」

 

 続けて鶴乃ちゃんとホウオウモンが攻撃を仕掛ける。ホウオウモンの流星群のような必殺技に紛れて鶴乃ちゃんが一撃を決める。その攻撃でイブの装飾品が幾つも砕けた。

「イブの動きが鈍った。アイちゃん!

 

「ノブレス・オブ・ルージュ!」

 

 さなちゃんが鎖でイブの翼を縛り付けるとロードナイトモンは刺突剣で的確な一撃を決め込む。

「いろは。最後は私たちで決めるわよ」

 

「はい、やちよさん」

 

 うい。こうしてまた会えて分かったよ。あなたは魔女になる私を助けてくれようとしたんだね。私だけじゃない。他のたくさんの魔法少女の穢れも受け入れて、みんなを救い続けてくれた。自分が呪いを振りまく半魔女になるのと引き換えに。お姉ちゃんはね、そんなういを助けようと思った。

「うい、今連れて帰るからね!」

 

「「オメガモン!」」

 

「「グレイソード!」」

 

 オメガモンはオメガインフォースでイブの反撃を避けきるとグレイソードから斬撃を飛ばしてイブの中央の宝石を半分に砕いた。そこからはういの姿が露見した。

「オメガモン!私をあそこに向かって飛ばして!」

 

「「えっ!?・・・分かった!」」

 

 ガルルキャノンの砲身に入った私は砲撃と一緒に射出されてあっという間にういのいる宝石のところまでたどり着く。

「環いろは!」

 

「灯花ちゃん」

 

 するとここまで傍観していた灯花ちゃんが私の前に現れた。

「どうしてあなたはそこまでして・・・」

 

「分かってるでしょ!たった一人の妹だから!それに灯花ちゃんとねむちゃんの親友だからだよ!」

 

「・・・本当にそうかもしれない。けどわかんない!わかんないよ!ねぇ、なんで環いろはの言ってることが本当なの?」

 

「それが真実だからだよ。それ以外になにも・・・ない!」

 

 私がういに手を伸ばそうとすると飛び込んできた小さいキュウべぇがういに触れた。

 

 

 

~灯花Side

 

「あのキュウべぇが女の子に触れて・・・」

 

「因果が繋がった・・」

 

 何かが見えてくる。わたくしの脳髄の中にトロンって落ちていく。

 

 

 わたくしと魔法少女の最初の出会い。それは世に出ることなく紐で綴じられた叔父が残した原稿の中。当時のわたくしには魔法少女が何なのかもその本に出てくるキュウべぇという存在も何のことなのか分からなかった。

「えぇ!?うい本当に退院するの!?」

 

「うん。もう少し経過観察するからもう2週間はいるけどね」

 

 そんな調べ事をしてる中、この間まで重篤だったはずのういの退院が決まった。精密検査をしても特に問題がなく奇跡としか思えないらしかった。

「おめでとううい。今度はお姉さまと一緒にお見舞いに来てよね」

 

 本音を言えばういがいなくなるのはさみしい。だけどそれ以上に嬉しかった。あんなに命の危険があると言われていたういが無事回復してくれたんだもん。親友が生きててくれた。それで十分。

 

 そう思っていた矢先のことだった。いきなり世界の景色が一変して言葉では説明しにくいおかしな空間となった。

「うい!ねむ!」

 

「ここだよ灯花ちゃん!」

 

「みんな、何事もなかったようだね」

 

 どうやら2人ともケガはしてないようだけど・・・ここはいったい?

「ねぇ二人とも。向こうに何か見えない?」

 

 ういが何かに気づいてわたくしたちもその先を見つめてみると・・・そこにはとても『生物』とは思えない『何か』が動いていた。そしてそれと戦う人物が・・・お姉さまがいた。

「いろは!魔女はこっちだよ」

 

「待ってキュウべぇ。向こうに妹達がいるの」

 

 わたくしたちに気づいたお姉さまはその場にいた謎の存在を撃退するとこちらに駆け寄ってくる。

「うい!灯花ちゃん!ねむちゃん!」

 

「本当にお姉ちゃんだった・・」

 

 戦っていたお姉さまにも驚いたけど、わたくしはお姉さまと行動をともにしていた生物の存在に驚いていた。

「あなたが・・・キュゥべえ」

 

 本当に実在していただなんて。

 

 そしてそれからしばらく経ったある日の事だった。今度は偶然の遭遇ではなくキュウべぇの方からわたくしに干渉してきたの。

「久しぶりだね里見灯花」

 

「お姉さまが結界に現れて以来だね」

 

「お姉さま?それは君と同じ母体から先に生まれた女性のことかい?」

 

「違うよー。環いろはって女性のことだよ」

 

「そうか。君は環いろはと知り合いだったね」

 

 キュウべぇがわたくしの前に現れたっていうことは・・・そういうことなのだとすぐに理解した。

「ボクは君の願い事をなんでも一つ叶えてあげられるよ」

 

「その前に色々と聞きたいことがあるんだにゃー。あっ、別にしゃべらなくてもいいよ。ネットワークに直接問いかけるから」

 

 キュウべぇに独自のネットワークがあることを理解していたわたくしは部屋のあらゆるコンピューターを使ってキュウべぇをハッキングしようとしたのだけれど、それに感づいたキュゥべえは即座に部屋の外に逃げてしまった。

「あー。逃げちゃったー」

 

「逃げたわけじゃないよ。どちらにせよ文明のレベルが違い過ぎるから、灯花の機器の方が耐えられなかったはずだよ。むしろ接続を切ったボクに感謝してほしいぐらいだよ」

 

 なんか思ってたよりも生意気~。

「それで里見灯花。君はボクと契約して魔法少女になってくれるのかい?」

 

「その前に色々と教えてくれるなら考えてもいいよ」

 

 会話になるのは残念だけど、機器が壊れる可能性がある以上仕方ない。

「別に構わないよ。ボクには隠すことなんて何一つないからね」

 

 その後わたくしはキュウべぇから聞き出した話をお姉さまのことを心配していたういとねむにも話した。2人はわたくしの話を信じてくれてスムーズに説明することができた。

 

 魔法少女になるメリット。それは健康で強い身体になること。

 

 そしてデメリットは魔女と戦わなくちゃならなくなること。そして自分も魔女になる宿命を背負うこと。

 

 一見するとデメリットの方が大きいけど、魔女になる宿命をなくすだけでわたくしたちや人類にとってとってもよい状況が作れるの。魔女になる宿命さえ無くせば必然的に魔女と戦う必要性もなくなるんだもん。

「それがお姉ちゃんを救うのに繋がるんだね。それで・・・結局その方法っていうのが私達3人で魔法少女になるってことなんだね」

 

「そう。わたくしたち3人の願いで魔女になる宿命を消し去るの」

 

「なるほど理解したよ。それで重要なのが僕達が願う。願いってことだね」

 

きっとわたくしたち3人じゃ魔法少女の宿命をなくすなんていう節理を壊すようなことはできないと思う。

「キュウべぇの保有する機能を3人で奪うの。ういは穢れなどの感情エネルギーや相転移エネルギーを宇宙に送るために使う回収の機能を。わたくしは回収したエネルギーを人間の魂を魔力に変えるために使う変換の機能を。そしてねむはソウルジェムみたいにエネルギーに実体を持たせる具現の機能を。それが揃えばあとは開放を実行するだけってわけ。それで作り出すのが自動浄化システム」

 

 自動浄化システム。それはキュウべぇと同じシステムを持ってるわたくしたち3人の魔力で作り上げるシステム。それは自動でエネルギーを回収して宇宙に送ってくれるの。これならキュウべぇが問題にしてるエントロピーの問題も解決できるし、わたくしたちもお姉さまもみんなハッピーで決まりってわけなの。

 

 

 

~ねむSide

 

僕の中の針が逆に回る。時が刻まれ直されていって網膜の景色が焼き直される。

「灯花に色々教えた甲斐があったようだね。君達3人が魔法少女になるなんて助かるよ」

 

 キュウべぇから説明されるまでもなく僕達は灯花からすべてを聞いている。願いから与えられる役割も、その未来も。

「それで君達はどんな願いを叶えるつもりだい?」

 

「僕達の願いは同じにして別々の願い。未来のために欲する力だよ」

 

「つまりねキュウべぇ。私達は・・・」

 

「「「あなたが持つ機能が欲しい」」」

 

「機能っていうのは、まさか君達の願いは・・・」

 

 キュウべぇがそれに気づいた時にはもう遅かった。

「そんなことを願う少女が現れるなんて思いもしなかったよ。だけど僕が保有してる力を奪うということは、相応の因果を束ねていないと果たせるかどうかわからないよ。無理に望みを叶えようとすると相応の代償を支払ってもらうことになる」

 

「それでもいい。お姉ちゃんが苦しむぐらいだったらわたしがその代償を支払っても構わないもん!」

 

 ういの決意は揺るがない。僕と灯花も引かない。

「私には回収の力を!」

 

「わたくしには変換の力を!」

 

「僕には具現の力を!」

 

「「「あなたから奪わせて!」」」

 

 僕達の願いが叶えられた瞬間、キュゥべえはその機能を失い小さい姿へと変貌する。そしてそれと同時に僕らの手元にはソウルジェムとともにスマホのようなデバイスが出現した。

「ソウルジェムと・・・これは何?」

 

「スマホのように見えるけど・・・違う機器だね」

 

 その時、この瞬間僕達3人は選ばれたんだ。デジモン達を導く者『選ばれし子供達』に。

「いやぁ、おめでとう。君達がデジタルワールドに変革をもたらす存在。選ばれし子供達というわけだ」

 

 僕達がデバイスのことを気にしていると黒い騎士のような人間でも魔女でもない存在がどこからともなく現れた。

「あなたは?」

 

「いやはや失礼。私は通りすがりの貴族。名をデジモンのスカルナイトモンさ。そのデバイスはデジヴァイス。崩壊し再生を求めたデジタルワールドが選んだ者に託した力さ。それさえあればこの世界とは違うデジタルな世界。デジタルワールドを思いのままに作り直すことができる」

 

「ふーん。デジモンとかデジタルワールドとか確かに気になる話だけど・・・」

 

 僕達はスカルナイトモンの話を聞こうとした途端、ういは胸を押さえて苦しみだした。デジモンやデジタルワールドの事については僕も気になるところだけど、今優先すべきはそれじゃない。今は何よりもういのことだ。

「うい!?」

 

「回収の能力が暴走してる。このままだとういが魔女に・・」

 

「それじゃ僕達は何も成せない。ただ業を背負うことになるよ」

 

「分かってるよ!穢れをわたくしが変換すれば・・・」

 

 灯花はういの集める穢れを魔力に変換し出すも、ういの集める穢れの膨大さにすぐ変換が追い付かなくなる。

「僕が他のものに具現化するよ」

 

 僕も灯花の変換した魔力を具現化するも、ういの穢れの量が膨大すぎて間に合わない。

「この集まっている穢れをどうにかすればいいんだヨネ」

 

 そこに現れたのがアリナだった。アリナは被膜を作って病院を隔離するも、未だういは苦しんでいる。

「君達、方法ならあるよ」

 

 そこに口を挟んできたのがスカルナイトモンだった。

「こう見えて私は勤勉でね。この世界の魔法少女や魔法のことも少しかじっている」

 

「そういうのはいいから早く方法を教えて!」

 

「人格や感情がなければ魔法少女が魔女になることはない。私が闇の魔術でそれらを封印

しよう」

 

 そういったスカルナイトモンはういに魔術をかけると、ういが眠りについた。だけどそれだけじゃ完全じゃない。

「ふむ、これだけではダメなようだね。ねむ君、君の魔法は具現化なはずだね。ならば君たちに刻まれた『環うい』という存在を分離させ、そうだね。そこの殻の器にでも入れたまえ」

 

 スカルナイトモンが指差したのは『回収』『変換』『具現』の要素が僕達に抜かれて殻になっているキュゥべえ。

「本当に大丈夫なの?ういをこの世界から切り離したらどうなるか?」

 

「それでもスカルナイトモンの言う通りやるしかない!」

 

 僕は『環うい』を世界から切り離して小さくなったキュゥべぇにそれを入れた。誰かがういに触れるまで魂に刻まれたういは空っぽになったキュゥべぇの中で眠り続ける物語を具現化することで。

 

 こうして僕達は『環うい』に関する記憶を失ったんだ。

 

 

 

~いろはSide

 

 ごめんねうい。全部見えたよ。私はずっとういを守っているつもりだった。だけど守ってくれていたのはういの方だったんだね。

「全部・・・思い出した。わたくしたちはういを・・・」

 

「僕達はとんでもないことを・・・してしまったようだね」

 

 すべてを思い出した灯花ちゃんとねむちゃんはハッとなってういを助け出した私のところに駆け寄ってくる。

「お姉さま!ういは?」

 

「大丈夫。無事だよ」

 

「良かった。安堵したよ」

 

 ういの無事に私達は安心しているとアルファモンが歩み寄ってくる。

「ようやく会えた。私のパートナー。さぁ、目を覚ましてくれ」

 

「「「「うい!」」」」

 

 私達はういの名前を呼ぶと長く眠っていたういが目を覚ました。

「お姉ちゃん・・?」

 

「良かった。うい」

 

 ういが目を覚ましてくれたことに私は涙を流すと灯花ちゃんとねむちゃんは私達に頭を下げてくる。

「ごめんねうい。それにお姉さまも」

 

「僕の作った物語が因果にまで及ぶとは思わなかったよ」

 

「わたくしも連鎖的に影響する先を想像することができなかった」

 

「それに僕達は記憶を失ってから明後日の方向に向かった」

 

「お姉さまを助けることが目的だったはずなのに・・・」

 

「僕達の中にある欲求が記憶の消滅とともに強調された結果、元の計画すらも歪んでしまった」

 

「これは洗脳じゃなくてわたくしたち自身の意思。何も言い訳できないよ」

 

「僕達は魔法少女の開放を利用して我欲を満たそうとしていた。それは事実さ」

 

 反省している灯花ちゃんとねむちゃん。すると眠っていて状況が読み込めてないはずのういが言葉を紡ぐ。

「ずっと怖い夢をみていたような気がする。でもそっか、夢じゃないんだ」

 

 ういは小さいキュゥべぇへと視線を向ける。

「全部私達が決めたことだから、あなたに文句は言えない。複雑な気分だけど・・・。でもね、ありがとう。わたしにわたしを返してくれて」

 

「私からも礼を言おう。ういを返してくれてありがとう」

 

 ういに続いてアルファモンも小さいキュゥべぇにお礼を告げる。

「そういえばあなたは?」

 

「君のパートナーデジモン。アルファモンだ。よろしく頼む」

 

「デジモン?・・・よく分からないけどよろしくねアルファモン」

 

 デジモンの存在をすんなりと受け入れた。すると空が割れて首が2本ある1体のデジモンが時空を超えてやってきた。

「来てしまったか。ズィードミレニアモン」

 

「あれが・・・ズィードミレニアモン」

 

 あのデジモンがデジタルワールドを破壊したっていうズィードミレニアモン。

「神浜は・・・私達の大切な場所は絶対に壊させない!みんな!」

 

 イブからズィードミレニアモンの連戦はキツイけど戦うしかない。そう思いながらもズィードミレニアモンを見上げる。

「えっ?何?誰がわたしを呼んでるの?」

 

「どうしたのうい?」

 

「これから声が・・・」

 

ういは自分のデジヴァイスを見て何かに気づく。どうやらデジヴァイスの中に他のデジモンがいるようだ。

「・・・そうなんだ。じゃあみんな。わたしに力を貸して」

 

「このデジコード・・・。うい、リロードと言って彼らをデジヴァイスから呼ぶんだ」

 

 アルファモンはデジヴァイスから感じる気配で彼らの正体を察して、そのデジモン達を呼ぶようういに告げる。

「分かった。リロード!ロイヤルナイツ!」

 




神浜デジモンファイルに
「環うい&アルファモン」
が登録されました。

次回「我らロイヤルナイツ」


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我ら、ロイヤルナイツ

「リロード!ロイヤルナイツ!」

 

 ういが呼び出したのは10体の聖騎士デジモン。それはかつてのオメガモンの仲間としてズィードミレニアモンと戦ったデジモン達だった。

「デュークモン!」

 

デュークモン

・究極体

・聖騎士型

・ウィルス種

ウィルス属性でありながらネットの守護神という矛盾を内包した存在であり、万が一でもバランスが崩れると危険な存在にもなりうる。99.9%の高純度“クロンデジゾイド”を精製して造られた聖鎧を纏い、右手は聖槍『グラム』、左手は聖盾『イージス』になっている。騎士道を重んじ、主君に対しては忠義の士である。必殺技はグラムから繰出す強烈な一撃『ロイヤルセーバー』と左腕の聖盾イージスから全てを浄化するビームを放つ『ファイナル・エリシオン』だ。

 

「マグナモン!」

マグナモン

・アーマー体

・聖騎士型

・フリー

 奇跡のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の聖騎士型デジモン。絶大な防御能力を持ち、その攻撃力は究極体と対等か、それ以上でロイヤルナイツの一員でもある。奇跡のデジメンタルのパワーを得たものは、どんな窮地に陥っていても、その奇跡の力によって切りぬけることができるところから、まさにミラクルアイテムと呼ぶに相応しい。必殺技はボール状のプラズマ弾を発射する『プラズマシュート』と、空間を急速圧縮し、一気に膨張爆発させ、黄金のレーザー光で周辺の敵を一掃する『シャイニングゴールドソーラーストーム』だ。

 

「アルフォースブイドラモン!」

アルフォースブイドラモン

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 古代デジタルワールドから伝わる、ある予言の中だけに登場する伝説上の聖騎士デジモン。アルフォースブイドラモンは“ロイヤルナイツ”の中でも神速のスピードを持ち、その動きを追える存在は皆無である。またクロンデジゾイドの中でも希少な存在で最軽量のレアメタル“ブルーデジゾイド”製の聖鎧に身を包み、空を裂き、大地を割る。両腕に装備した“Vブレスレット”から武器やシールドが展開する。必殺技は胸のV字型アーマーから掃射される光線『シャイニングVフォース』だ。

 

「クレニアムモン!」

クレニアムモン

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 ロイヤルナイツの中で最も礼節をわきまえたデジモン。敵と戦うときは常に一騎打ちで打ち破ることが彼のポリシーであり、敵が強敵であればあるほど彼の悦びは至上のものとなる。必殺技は、魔槍『クラウ・ソラス』を高速回転させることで、超音速の衝撃波を放つ『エンド・ワルツ』。この技を受けた者は、衝撃波により全てのデータが粉砕されるまで、「踊り」続ける。また、魔楯『アヴァロン』は鉄壁の全方位防御『ゴッドブレス』を発動し、3秒間だけどんな攻撃も無効化することができる。

 

「エグザモン!」

エグザモン

・究極体

・聖騎士型

・データ種

 途方もないデータ質量をもったデジモンであり、旧来のデジタル機器ではまったく描画することが出来ず、最新鋭のデジタル機器の性能をもってしてようやく描画可能となったため発見できた存在である。ロイヤルナイツに属しているが、同時にすべての竜型デジモンの頂点に立つ存在であり、竜帝の異名を持つ。ランス『アンブロジウス』にはさまざまな効果を持つウィルスの仕込まれた特殊弾が装填されており、エグザモンの攻撃を多彩なものにしている。必殺技はアンブロジウスを敵に突き刺し、すべての特殊弾を炸裂させ内部から敵を破壊・消滅させる『アヴァロンズゲート』と、大気圏外まで急上昇し、アンブロジウスから高出力のレーザー射撃を行う『ペンドラゴンズグローリー』。また、大気圏外から急降下し、大気との摩擦熱を帯びた状態で体当たりする『ドラゴニックインパクト』は衝撃波を伴うため広範囲の敵を掃討することも可能である。

 

「デュナスモン!」

 

デュナスモン

・究極体

・聖騎士型

・データ種

 ロイヤルナイツの中でも特異の存在で、忠誠心が強く、自らの考える正義に見合った主君に絶対的に仕える。例えそれが「悪」と呼ばれる存在でも自らが考える正義の為に命をもいとわない。そのため騎士道・武士道精神が強く、忠義や信義、礼儀を重んじる性格である。竜の様な強靭なパワーと、高純度のクロンデジゾイド製の竜鎧で無双の強さを誇る。必殺技は両手の平から十闘士と同じ属性のエネルギー弾を発射する『ドラゴンズロア』と、全身のエネルギーを巨大な飛竜のオーラに変える『ブレス・オブ・ワイバーン』だ。

 

「スレイプモン!」

スレイプモン

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 人型デジモンが多いロイヤルナイツにおいて、異形とも言える獣型のシルエットを持っている。6本の脚は優れた機動力を持ち、大柄な体格から想像もつかないほどの瞬間高速移動を行うことが可能である。スレイプモンはデジタルワールドの北極付近の分厚い氷の下に眠る超古代遺跡の警護を行っており、この遺跡にはデジモンの創生にかかわる重要なプログラムデータが封印されていると言われている。必殺技は、左手の聖弩『ムスペルヘイム』から放たれる灼熱の光矢『ビフロスト』と、右手の聖盾『ニフルヘイム』を使って気候を操り極低温のブリザードを発生させる『オーディンズブレス』だ

 

ドゥフトモン

・究極体

・聖騎士型

・データ種

 他のロイヤルナイツでさえ一目置く屈指の戦略家である聖騎士型デジモン。各々信じる道を持つロイヤルナイツを統率する類い稀なる能力を持っている。自ら戦闘にも赴き“レオパルドモード”となり戦場を駆けるぞ。必殺技は、頭上で弧を描き振り下ろすビームの刃、消滅の剣『アウススターベン』と、爆発的なエネルギーを放つ破壊の剣『エルンストウェル』だ。

 

「ガンクゥモンじゃぁ!!」

ガンクゥモン

・究極体

・聖騎士型

・データ種

 存在を見せることが少ない他のロイヤルナイツとは違って現地に降り立って活動しており、気心知れたデジモンも数多くいる。ガンクゥモンには身体から浮き出すヒヌカムイが常にいて、言葉は出さないが問答無用で手を出す。必殺技は、誰彼かまわず口答えをする者を思いっきり殴る『鉄拳制裁』、ガンクゥモンの怒声『地神!神鳴!神馳!親父!』でヒヌカムイが天誅を下す。さらに地面をクロンデジゾイド製ちゃぶ台ごとひっくり返す『ちゃぶ台返し』があり、ちゃぶ台に乗った地面もクロンデジゾイド製の硬度となる。ヒヌカムイ自身も成熟期からの進化過程にあり、そのパワーが覚醒した時、敵と認知されたいかなるデジモンも存在しえないとされている。

 

「ジエスモン!!」

ジエスモン

・究極体

・聖騎士型

・データ種

 デジタルワールド各地に起こる異変や混沌の兆しを感知する能力を備え、どのロイヤルナイツよりもイチ早く駆けつける。師であるガンクゥモンのヒヌカムイを見て習い、ジエスモンも修行の中で「アト」「ルネ」「ポル」の3体を習得している。ジエスモンの指示で動くが自立行動もでき、敵への直接攻撃、ジエスモンの援護、他デジモンの救済など侮れない行動能力を誇る。必殺技は高速移動しながら腕の刃で敵を瞬時に斬り裂く『轍剣成敗』、敵からのあらゆる攻撃をアト・ルネ・ポルと共に九つの刃で迎え撃つ全方位カウンター技『シュベルトガイスト』。自分のデータを一時的に書き換え、物理限界を超えた活動を可能にする『アウスジェネリクス』は身体能力がデジタルワールドの法則に縛られないため、いかなる敵であろうとジエスモンに傷ひとつ付けられずに屈する。

「集結!」

 

「「「「「我ら!ロイヤルナイツ!!」」」」」

 

「ロイヤルナイツだと!?彼らは確かズィードミレニアモンに敗れて・・・」

 

 エンシェントワイズモンは驚きと興奮が混じったような反応をしながらロイヤルナイツの方を見ると、それに対してドゥフトモンが答えた。

「彼女の固有魔法『回収』の力で我々の欠けたデータが集められ、彼女のデジヴァイスの中で長らく傷を癒していたのだ。彼女自身がイブの中に囚われていたので、我々も長らく出るに出られない状態だったがな」

 

 何かを探すように辺りを見渡していたデュナスモンはロードナイトモンを見るなり、ロードナイトモンに近寄ってくる。

「友よ!無事だったか!むぅ、おかしいな。デジコードは同じでも、デジコアが俺の知るロードナイトモンではない」

 

「アナタは確か・・・デュナスモンでしたね。私は確かにロードナイトモンですが、アナタの知るロードナイトモンからデジコードと記憶を託され、新たにロードナイトモンとなりました」

 

「託された。ということは我が友だったロードナイトモンは・・・そういうことなのだな。ならば」

 

 友の死を悟ったデュナスモンはロードナイトモンに握手を求めてくる。

「ロードナイトモン。改めて我が友となってくれ」

 

「えぇ。喜んで。共にこの世界を守りましょう」

 

「新たな友も、かつての友と同じことを言うのだな」

 

 ロードナイトモンとデュナスモンは握手をしたら、デュナスモンは何処か懐かしむような目をする。

「友との絆とロイヤルナイツの名に懸けて誓おう。俺は今度こそ世界を守り抜くと!」

 

 誓いを立てたデュナスモンは空を割り、この世界に出てこようとするズィードミレニアモンを見上げる。

「かつての友の敵、取らせてもらう!ドラゴンズロア!」

 

 先陣を切ったのはデュナスモンだった。デュナスモンはエネルギー弾を飛ばしてズィードミレニアモンを攻撃したけど、怯む素振りはない。

「デュナスモン!1人で先行するな!アウススターベン!」

 

「ファイナル・エリシオン!」

 

「プラズマシュート!」

 

ロイヤルナイツ達はそれぞれズィードミレニアモンに攻撃を仕掛け始めたら、アルフォースブイドラモンは私達の方に振り返った。

「ここは僕らが押さえておく。君達はワルプルギスの夜に向かってくれ」

 

「お願いします!行こうみんな!」

 

 ズィードミレニアモンをロイヤルナイツに任せて私達はワルプルギスの夜に向かおうとすると、倒れていたイブが起き上がってその形を変えた。

「えっ?どうなってるの灯花ちゃん?」

 

「分かんない。魂であるういは現にここにいるし、リンクしていたとしても絶対に有効範囲外なはずだよ。魔女になったわけでもない。たましいだって失ってるはず。それなのに穢れが散らない」

 

「その方法、一つあるかも」

 

 気づいたのは鶴乃ちゃんだった。

「マギウスが求めたのは魔女化の相転移エネルギー。そのエネルギーとキュゥべぇを隔離するために被膜は作られたんだよね。なら・・・」

 

「そっか。イブもエネルギーの塊だもんね。被膜に押さえ込まれて当然。・・・だとするとイブが崩壊するまで時間がかかっちゃう」

 

「なら粉々に砕いちまえばええんやろ?」

 

 ジャスティモンは跳び上がって必殺キックをイブに叩きこもうとした瞬間、ジャスティモンはモノドラモンに戻ってしまった。

「なっ!?ここでスタミナ切れかいな」

 

「どうやらこちらモでス」

 

「流石に限界・・」

 

 モノドラモンだけじゃなくハグルモンとピヨモンも限界を迎えたみたい。

「「すまない。いろは。やちよ」」

 

 オメガモンもかなり消耗したみたいでコロモンとツノモンまで戻ってしまうとまどかちゃん達と戦っていたアリナさんとダークナイトモンがこっちに歩いてきた。

「丁度良かったアリナ!神浜の被膜を消して!」

 

「あはっ、いーーーやっ」

 

 あろうことかアリナさんはこの状況でも被膜を消すのを断ってきた。

「えっ?アリナ。悪い冗談だよね?」

 

「僕達が記憶を取り戻したことは知ってるよね。もう彼女達と戦う必要はない。だから被膜を消してほしいんだ」

 

「それ以前にアリナはもう被膜を収縮させたんですケド。イブのパーフェクトボディを崩れないように包み込んで」

 

 アリナさんはイブの被膜を収縮して崩壊しないようにしたみたい。

「まぁアリナ的には理屈なんてどうだっていいんだヨネ。そもそも別にアリナは開放とかどうだっていいワケ。欲しいのはアリナにとってのベストアート!今はただそれをクリエイトしたいんだヨネ」

 

「ここまで変化したイブじゃ満足できないということかい?」

 

「グロウとクリエイトは違うんですケド。むしろイブっていうペイントブラシを手に入れて、アリナはようやく自分の作品を描けるようになったワケ」

 

「まだ町を燃やすつもりなの?」

 

「ザッツライト!」

 

 高笑いをしているアリナさんに対して灯花ちゃんとねむちゃんが前に出ようとするとそれを静止させたまどかちゃんとほむらちゃんが前に出る。

「みんなはまだ休んでいて。あの人は私達がなんとかするから」

 

「絵具の分際でアリナのベストアートを邪魔する気?ナラ・・・」

 

 アリナさんは巴さんの纏っていた着込むウワサに身を包む。するとダークナイトモンもそれに比例するようにさらに力を増大させた。

「素晴らしい。これがウワサによる強化か!今なら『オメガモン』を凌駕することも容易そうだ!」

 

 あふれ出る力に喜ぶダークナイトモンはコロモンとツノモンにトドメを刺そうと迫ってきたら、シャウトモンDXは後ろからダークナイトモンの槍を掴んで止める。

「待てよ。お前達のの相手は俺達だろ?」

 

「君もいい加減しぶといねぇ。伊達に『オメガモン』の因子を宿していないというところか」

 

「オメガモンなんざ関係ないね。俺様は俺様。未来のデジモンキング。シャウトモン様だ!」

 

「デジモンキング。生憎だがその夢はかなわない。私はこの人間界を破壊し、デジタルワールドのデータと人間界を1つに束ね、新世界を作り上げる。そして私は新世界の神となるのだ!そのために私は長らく仕込みをしたのだからね」

 

 仕込み?どういうこと?もしかして・・・。

「ねぇ灯花ちゃん、ねむちゃん。もしかしてズィードミレニアモンの事をマギウスに教えたのって・・・」

 

「うん。ダークナイトモンだよ。ダークナイトモンはイブにズィードミレニアモンを吸収させればいいってわたくしたちに提案して、その封印を解く方法も伝えてきたの」

 

「やっぱりそうなのね」

 

 やちよさんも同じことを察していたみたいで私達はダークナイトモンを睨みつける。ダークナイトモンさえいなければ事態はここまでひどくはならなかった。ダークナイトモンがそそのかさえしなければ灯花ちゃんとねむちゃんは・・・。私はダークナイトモンに対して怒りを募らせるも、ダークナイトモンと戦う力は残っていなかった。

「そんなに睨んだところで君達には戦う力は残っていないはずだよ。第一私は彼女達をそそのかしたのではない。彼女達の願いを叶えるためちょっとしたアドバイスをしたまでさ」

 

「何がちょっとしたアドバイスよ。騙したくせに」

 

「確かに私は私に都合がいいことばかりを彼女達に伝えたが・・・彼女達マギウスに嘘は何1つついていないよ」

 

 キュゥべぇと同じくらいタチが悪いよ。

「それにもし仮に私を倒したところで君達にズィードミレニアモンまでは止められまい」

 

「何勝手に決めつけてんだ。お前なんかが世界を一つにできるわけないだろ」

 

「できるさ。今の私にはイブとズィードミレニアモンという2枚のカードがある。このカードさえ持っていれば私は力による支配ですべてを・・・」

 

「力なんかで世界は一つになんかできねぇ!熱いソウルを持つ奴らが溢れてるやつらが何処の世界にもいるからな。そんな奴らがいるかぎり、お前みたいなロックじゃないやつが世界を統べるなんて許さねぇ。たとえば・・・俺達とかな」

 

「リロード!ドルルモン!バリスタモン!スターモンズ!スパロウモン!」

 

 まどかちゃんはシャウトモンDXに応えるようにドルルモン達を呼び出す。

「私達はあなた達を止める。絶対にこの町を・・・この世界を壊させはしない!」

 

「この時間軸で繰り返しは終わらせてみせる。そのために・・・!」

 

「行こうほむらちゃん!みんな!」

 

「うん!」

 

「「グレートクロス!!」」

 

 まどかちゃんとほむらちゃんがデジヴァイスを重ね合わせるとシャウトモンDXにバリスタモンとドルルモン。スターモンズとスパロウモンがデジクロスをする。

「「「「「「「グレートクロス!!」」」」」」

 

 オメガシャウトモンとジークグレイモン。それにドルルモン達の力が1つになったら、それはビルのサイズを頭一つ越えるほどの巨大な金色のデジモンになった。

「「「「「シャウトモンX7!!!」」」」」

 

シャウトモンX7

・究極体

・合成型

・データ種

 

シャウトモンX7はシャウトモンDXに4体のデジモンがデジクロスしてさらなるパワーアップを経た『アルダーバースト形態』である。ボディを形成するゴールドデジゾイドに4体の熱きハートが灯り、さらに神々しいオーラを発している。シャウトモンX7が戦場に立つのは、平和な世界の実現にあり、それはシャウトモンX7にデジクロスしたデジモン達すべての願いでもある。その願いをハートに持てばいかなる攻撃にも屈することなく前に進み続けることができるのである。戦場の中心で平和を願う熱き魂でマクフィルド社製のマイクに業火が灯り、大きく振り降ろす『クロスバーニングロッカー』で格闘戦を競り勝ち、左手のサナオリアから全エネルギーを射出する『ダブルフレアバスター』で遠距離戦も制する。そして勝利を決定づける時、または敵の猛攻で窮地に立たされた時、全オーラを胸に込めV字から発射される金色灼熱の『セブンビクトライズ』で戦いに決着をつけるぞ。

 

「見せてやるぜダークナイトモン。俺達の熱いデジソウルをな」

 

 今ここに最大最強のシャウトモン。シャウトモンX7が爆誕した。

 

 




次回「友と新たな約束をしたのだ」


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友と新たな約束をしたのだ

「あれがシャウトモンX7・・」

 

「うわー。超でけぇ・・・ホウオウモンよりでけぇ」

 

「ホントだ。わたしより大きい」

 

 私達はこれまで以上に大きくなったシャウトモンX7に驚いていたら、シャウトモンX7はダークナイトモンを見下ろす。

「ダークナイトモン。お前の野望は俺達が止めてやるぜ!」

 

「たかだか7体分のデジクロスでいい気になられるのは少々気に入らないね。・・・私の野望は誰にも止められない。オメガモンの因子を持つ君にも、他のロイヤルナイツにもね!」

 

 ダークナイトモンはウワサと一体化したアリナさんから受け取った力でシャウトモンX7と同じサイズまで巨大化したら、手にしている槍を構える。

「デットリーブレイクロスト!」

 

 先に動いたダークナイトモンはX字の斬撃を飛ばしたら、シャウトモンX7は胸のVにエネルギーを収束させる。

「セブンビクトライズ!!」

 

 シャウトモンX7のV字に放たれた必殺技のセブンビクトライズとダークナイトモンのデットリーブレイクロストがぶつかり合う。そのぶつかり合いは互角で衝撃波で私達まで吹き飛ばされそうになったけど、なんとかこらえた。

「その力・・・確かに破壊力だけならかの『オメガモン』を凌駕する威力のようだ」

 

 破壊力だけならオメガモンを超えているとシャウトモンX7を評価したダークナイトモンは槍の構えを突きの構えに変える。

「だが速さはどうかね?」

 

 ダークナイトモンは突きの構えからの突撃をすると、瞬時に上に跳び上がって、フェイントで背後から突きかかる。

「っ!!」

 

 その攻撃をシャウトモンX7はまるで後ろに目があるかのようにガードして見せた。

「なっ・・!」

 

 自身の不意打ちがあっさりと受け止められたことに驚いたダークナイトモンはすぐさま距離を取ろうとすると、シャウトモンX7はすぐさま前進してダークナイトモンに距離を与えなかった。

「な、何故私の動きが・・・」

 

「お前の考えなんざお見通しなんだよ!クロスバーニングロッカー!!」

 

 動きを見切っていたシャウトモンX7はダークナイトモンに炎の一撃をお見舞いすると、ダークナイトモンはそのダメージで膝をつく。

「今のはまるで・・・オメガモンのオメガインフォースではないか」

 

「悪いがお前にこれ以上時間をかける気はないんだ。この一撃で決めさせてもらうぜ。ダブルフレアバスター!!」

 

「シット!ダークナイトモン!クロスオープン!」

 

 シャウトモンX7の一撃がダークナイトモンを貫こうとするその時、アリナさんはダークナイトモンのデジクロスを解除することで攻撃を回避させた。

「ふぅ。助かったよアリナ」

 

「あなたがダウンさせられるのはアリナ的にもバッドなワケ」

 

「とはいえ再びデジクロスをしたとしても今のシャウトモンに叶うデジクロスはなさそうだね」

 

 シャウトモンX7に勝てないことを悟ったスカルナイトモンはデットリーアックスモンに跨るとアリナと共にイブを見上げる。

「さぁイブ!この町を最高のアートにして!」

 

「そうだイブ!すべてを焼き尽くせ!:」

 

「させない!」

 

 油断しきっていたアリナさんにまどかちゃんの矢が命中すると、その一瞬の隙をついたベルゼブモンがアリナさんの頭を掴み上げた。

「俺の存在を忘れてたみたいだな。悪いが力づくでもそのウワサを剥がさせてもらうぞ」

 

 至近距離からの爪による攻撃でウワサを引き裂かれたアリナさんは怒りの表情でベルゼブモンを睨もうとしたら、バンチョーレオモンが仁王立ちでアリナさんの前に立つ。

「・・・まだやるか?」

 

「オメガモンを超えるデジクロスの『王』にバンチョーに魔王か。これは勝ち目がなさそうだ」

 

 ため息をついたスカルナイトモンは両手を挙げて降参のポーズをした。そしたらアリナさんはキューブを取り出してそこから魔女を出現させる。

「この期に及んで貴様という奴は!!」

 

 あきれ果てたバンチョーレオモンは一撃で魔女を粉砕したけれど、アリナさんはそれを目くらましにしてその場から逃亡してしまった。

「そうだアリナ。君のような魔法少女は今ここで捕まるべきではない。君というアーティストがいてこそ、世界はアートとなる」

 

 スカルナイトモンは自身が切り捨てられたというのに嬉しそうで・・・それがアリナさん達なりの絆なのかもしれない。切り捨てられても・・・離れていても繋がっている。一種のつながりのあり方なのかもしれないと思わされた。

「アリナのことはこの際どうでもいいわ。今はイブを何とかしないと」

 

「任せな!セブン・・・」

 

「きゅっぷい」

 

「えっ?ちょっと待ってシャウトモンX7!」

 

 シャウトモンX7がイブに必殺技を放とうとしたら、小さいキュゥべぇが「ちょっと待って」と告げてきた。

「どうしたの?」

 

「キュゥ・・!」

 

「ただ倒すだけじゃ解決しない。・・・それはそうだけど」

 

 イブを倒してしまえばドッペルの機能は失われる。それは分かってるけど・・・それでも倒すしかないのが現状なんだ。

「きゅっぷぃ」

 

「あっ、危ないよ」

 

 それを理解しているはずの小さいキュゥべぇは自分からイブへと飛び込んでいく。するとイブは光となって一瞬でこの場から姿を消してしまった。

「イブが・・・消えた?あれ?小さいキュゥべぇもいない」

 

 イブと一緒に小さいキュゥべぇもいなくなっていることに気づくと、灯花ちゃんとねむちゃんが歩み寄ってくる。

「あの小さいキュゥべぇがういの代わりにイブになったんだよ」

 

「どういう事?」

 

「イブはキュゥべぇの機能を奪ったういから生まれた存在。小さなキュゥべぇはういの魂を入れて活動していた存在」

 

「この2つの存在は同じ性質を持っているんだよお姉さま」

 

 同じ性質?

「それにキュゥべぇは感情を持たないから魔法少女にも魔女にもならない。

 

「つまりあのキュゥべぇは私達が最初に考えていた浄化システムになったってことなんだね。灯花ちゃん」

 

 ういの問いかけに灯花ちゃんは頷く。

「こんな形で達成させるとは思ってなかったし、イブのエネルギーを使ってるから神浜限定なのは変わらないけど・・・結果的には自動浄化システムは成功したってことになるね」

 

「・・・ありがとう」

 

 小さいキュゥべぇは私達を見守るシステムになった。短い間だったけどありがとう。あなたの託してくれた希望、絶対に無駄にはしないから。

「行こうみんな。あとはワルプルギスの夜とズィードミレニアモンだよ」

 

「そうね、ロイヤルナイツがズィードミレニアモンを押さえている間にワルプルギスの夜を倒してしまいましょう」

 

「乗れよお前ら。ワルプルギスの夜まで飛ばすぜ」

 

 私達はシャウトモンX7の手に乗ると一気にワルプルギスの夜まで飛んでいく。するとわずか数十秒でワルプルギスの夜が見えてみた。

「お前ら!そろそろ行けるな!」

 

「うん。もう大丈夫!」

 

「しょうがない、やってやるか!」

 

 コロモンとツノモンはアグモンとガブモンに進化をしたらチームみかづき荘のデジモン達は一斉にシャウトモンX7の手から飛び降りた。

「アグモン進化!グレイモン!」

 

「ガブモン進化!ガルルモン!」

 

「ピヨモン進化!バードラモン!」

 

「モノドラモン進化!ストライクドラモン!」

 

「ハグルモン進化!クロックモン!」

 

 チームみかづき荘デジモンズはそれぞれ成熟期に進化をしたら使い魔達を蹴散らしながら前へ前へと進んでいく。

「私達も行きましょう!」

 

「えぇ!」

 

「最強コンビが暴れるよ!」

 

「荒れるぜ!止めてみな!」

 

「一緒に行こうアイちゃん!」

 

 私達も飛び降りてそれぞれのデジモンの上に乗る。

「メガフレイム!」

 

「フォックスファイヤー!」

 

「メテオウイング!」

 

「ストライクファング!」

 

「クロノブレーカー!」

 

 そして必殺技で通り道の使い魔を一掃したら、私達のデジヴァイスが輝く。

「グレイモン!ゼヴォリューション!メタルグレイモン!」

 

「ガルルモン!超進化!ワーガルルモン!」

 

「バードラモン!超進化!ガルダモン!」

 

「ストライクドラモン!超進化!サイバードラモン!」

 

「クロックモン!超進化!ナイトモン!」

 

 みんな一斉に完全体に超進化したらワルプルギスの夜に一斉攻撃を始めた。

「パンデミックデストロイヤー!」

 

「カイザーネイル!」

 

「シャドーウイング!」

 

「イレイズクロー!」

 

「ベルセルクソード!」

 

 だけど流石最強最悪の魔女というべきなのか一斉攻撃とはいえ完全体程度の攻撃じゃワルプルギスの夜は傷一つついていなかった。

「シャウトモンX7。お願い」

 

「任せなほむら!オール・オメガ・ザ・フュージョン!」

 

 そこでシャウトモンX7がオメガモンのオーラを纏った体当たりを叩きこんだら、ワルプルギスの夜が地に伏せた。

「流石シャウトモンX7ね。こっちも負けていられないわよいろは」

 

「はい!みんな!究極体、行くよ!」

 

 私の合図でやちよさん達チームみかづき荘はそれぞれのパートナーデジモンに究極体への進化の光を与える。

「メタルグレイモン!究極進化!ブリッツグレイモン!」

 

「ワーガルルモン!究極進化!クーレスガルルモン!」

 

「ガルダモン!究極進化!ホウオウモン!」

 

「サイバードラモン!究極進化!ジャスティモン!」

 

「ナイトモン!究極進化!ロードナイトモン!」

 

 究極体に進化したみんなに対して、まるで警戒するかのようにワルプルギスの夜が攻撃をしてきたら、アルファモンとラグナロードモンがその攻撃を弾いてくれた。

「お姉ちゃん!」

 

「お姉さま!」

 

「お姉さん!」

 

「「「行って!」」」

 

 3人に背中を押された私達はブリッツグレイモン達と一緒に攻撃を仕掛ける。

「サンダーバーニア!」

 

「獣狼大回転!」

 

「スターライトエクスプロージョン!」

 

「ジャスティスキック!」

 

「スパイラルマスカレード!」

 

 私達の同時攻撃にワルプルギスの夜は怯んだ素振りを見せる。効いてはいると思うけど決定打にはなってないんだ。

「みんな、七海達に続け!!」。

 

 そしたら集まった他の魔法少女たちとデジモン達も一斉にワルプルギスの夜に攻撃をし始める。笑い続けているワルプルギスの夜だけど攻撃の手が鈍ってきている辺り、明らかに私達の攻撃は効いているんだ。

「みんな!畳みかけろ!!デジモン達もみんなまとめて必殺技を撃ち込め!」

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

「シャインブレイカー!」

 

「クリスタルビロー!」

 

「ファイナル・クレスト!」

 

「サンライズバスター!」

 

「トライデントガイア!」

 

「ガイアトルネード!」

 

「ガイアリアクター!」

 

 魔法少女とデジモン達。その一斉攻撃が空を埋め尽くすほど放たれて、そのすべてがワルプルギスの夜へと命中したら、ワルプルギスの夜の歯車が砕け散る。

「トドメはオメガモンで行くわよいろは!」

 

「もちろんです!」

 

「「コネクト!」」

 

 私とやちよさんはコネクトを発動してブリッツグレイモンとクーレスガルルモンを合体させてオメガモンAlter-Sにする。するとオメガモンはグレイキャノンを展開してその砲身をワルプルギスの夜に向ける。

「「グレイキャノン!」」

 

 グレイキャノンが命中すると消耗しきっているワルプルギスの夜に風穴が空く。ワルプルギスの夜も元は魔法少女だったんだと思うと気が引けるけど、それでも戦わないといけないと勇気を振り絞って、私は一矢を放つ。

「「ガルルソード!!」」

 

 その矢にオメガモンは斬撃を飛ばしたら、斬撃は私の魔力を纏って桃色に染まりながらもワルプルギスの夜に命中した。

「凄い。あのワルプルギスの夜をこうも短時間で追い詰めるだなんて・・・これなら・・!」

 

 ほむらちゃんもワルプルギスの夜を圧倒する光景に希望を見出していたその時、事件は起きた。

「「「「うわぁぁぁっ!?」」」」」

 

 ズィードミレニアモンと戦っていたロイヤルナイツの面々がこちらまで吹き飛んできて、この場で一番大きいエグザモンが地面に叩きつけられたことで激しく地面が揺れる。そして空間の裂け目から半分だけ出ていたズィードミレニアモンがその全貌をあらわにした。

 

ズィードミレニアモン

・究極体

・邪神型

・ウィルス種

時空間を自由に飛び交い、あらゆる時代・世界を破壊しつづけんとする邪悪なる王。デジモンは戦いに敗れるとデジタマになるのだが、非常にまれであるがデータの屍の中から蘇生することがある。一説では、ミレニアモンが激しい戦いで死んだとき、闇の魂を持って蘇生したものがズィードミレニアモンであると言われている。また、ズィードミレニアモンの体に張り巡らされている帯は、能力を押さえ込む鎖のようなものと言われており、誰がズィードミレニアモンにそのような呪縛を与えたかは不明。しかし、この呪縛から解き放たれると、計り知れない破壊がデジタルワールドに降り注ぐと予言されている。必殺技『タイムデストロイヤー』は、敵対する相手を時空のかなたに葬り去る。この技によって吹き飛ばされた時空間から生還した者は、まだ誰もいない。

 

 半分だけ姿を出していただけでもロイヤルナイツが束になっても敵わない相手がとうとう完全にこの世界に現れちゃったことでロイヤルナイツの実力を知っている私達は絶望に飲まれそうになる。だけど何とかドッペルを出すのを堪えて私達はズィードミレニアモンを見上げた。

「やちよさん。オメガモンは消耗が激しいので一旦解除しましょう」

 

「でもそれじゃロイヤルナイツ以上に強いズィードミレニアモンにダメージを与えるのは難しくなるわよ」

 

「それでもです」

 

 もちろん町の被害も考えて長期戦にはしたくない。だけどここまでの連戦で私達はもちろんオメガモン達も消耗しているのも事実なら、弱点と言える弱点が分かるまで最高戦力のオメガモンは温存するべきだと私は考えていた。

「分かった。リーダーに従うわ」

 

 合体が解除されてオメガモンはブリッツグレイモンとクーレスガルルモンに戻る。ここからが正念場だね。

「もう虫の息のワルプルギスは気にするな!みんな!今度はズィードミレニアモンに一斉攻撃だ!」

 

「九頭龍陣!」

 

「ドリームハリケーン!」

 

「ブラッディーフィニッシュ!」

 

「タングウィップ!」

 

「ジャスティスブリット!」

 

 もう1度魔法少女とデジモン達が一斉攻撃を放つ。だけどその攻撃でズィードミレニアモンはまったく怯んでいなかった。そしたらズィードミレニアモンは『ただ腕を振るった』だけで激しい衝撃波が飛んできて、それが私達を襲った。

「「「「きゃぁぁぁっ!?」」」」

 

 その一撃で応戦していた私達魔法少女やデジモン達が吹き飛ばされる。

「まだ・・戦えますか?」

 

「・・・・」

 

「私は何とか。でも・・・」

 

 白羽根の1人が近くの羽根達に声をかけたけど。何人かは反応する力も残っていない様子だ。

羽根で動ける人は、動けない人を避難させてください」

 

「まさらごめん。下手に前に出たから」

 

「ううん。大丈夫」

 

 白い髪の魔法少女は1人の魔法少女を庇ってケガを負っていた。彼女だけじゃない。多くの魔法少女が少なからず今の一撃でダメージを受けている。

「夏希は?」

 

「あはは、応援する側が励まされる側になっちゃった」

 

「あたしも、まだ・・」

 

「おい、無茶するな」

 

 ただ腕を振るっただけでこれほどの被害を出すデジモン。もしそんなデジモンが必殺技を放ったらと思うとゾっとする。

「だめだ。ワルプルギスに消耗し過ぎたせいで動ける魔法少女も少ないぞ」

 

「魔法少女が無理であろうと儂らはまだ戦える」

 

 緑髪の魔法少女のパートナーデジモンらしいエンシェントグレイモンは傷だらけの体を無理やりやり立ち上がらせてズィードミレニアモンに挑もうとする。

「無茶だバカ。いくらお前が伝説のデジモンでも無理なものは無理だ!一旦下がれ」

 

「下がるわけにはいかんのだ。儂らはかつてあの千年魔竜に故郷であるデジタルワールドを破壊された。そしてこの人間界が今や儂らの住む世界となった。第二の故郷とも呼べるこの世界だけは破壊されたくはないのだ」

 

「エンシェントグレイモン・・」

 

 デジモン達にとってもこの世界は故郷のようなもの。それを聞かされた私達も感化されて立ち上がろうとすると、ズィードミレニアモンはまるでそれを察知したかのように口を広げてエネルギーを収束し始めた。

「マズい!必殺技が来るぞ!!」

 

「確かズィードミレニアモンの必殺技って・・・」

 

 さっきデジヴァイスで確認した限りだとズィードミレニアモンの必殺技って時空のかなたに葬り去ってしまう恐ろしい技だよね。だとしたらガードしようとするのは危険すぎる。

「みんな!離れて!!」

 

 私はこの場にいるみんなに向けてめいいっぱい叫ぶ。だけど怪我人や守るべき場所がある私達にとって『逃げ場』はなかった。

「させはしない!」

 

すると前に出たのはデュナスモンだった。

「俺は約束したのだ。かつての友にデジタルワールドを共に守ると。その約束は果たすことはできず、友は命を落とした。そして俺は新たな友と新たな約束をしたのだ。共にこの世界を守ると。俺はもう二度と友を死なせない。貴様なんぞに世界を破壊などさせない!」

 

 全身にエネルギーを収束したデュナスモン。するとズィードミレニアモンが必殺技のタイムデストロイヤーを放つのと同じタイミングでデュナスモンも必殺技を放った。

「ブレス・オブ・ワイバーン!!!」

 

 デュナスモンの放ったエネルギーの飛竜はタイムデストロイヤーとぶつかり合う。だけど圧倒的すぎるほどの力を持つズィードミレニアモンにデュナスモンの必殺技は押され気味になっていた。

「1人だけカッコいいこと言ってくれてまぁ」

 

「僕らもロイヤルナイツだってのにねぇ」

 

「そう。我らは共にロイヤルナイツだ」

 

 マグナモンとアルフォースブイドラモン、エグザモンの竜系ロイヤルナイツはデュナスモンの隣に並び立つ。

「エクストリーム・ジハード!」

 

「シャイニングVフォース!」

 

「ペンドラゴンズグローリー!」

 

 4体のロイヤルナイツの必殺技がタイムデストロイヤーとぶつかり合うと、なんとかギリギリのところで相殺に成功した。

「だけど今の一撃で・・・」

 

 今の必殺技でデュナスモン達4体はありったけの力を使い切ったようでその場に膝をついてしまった。

「友よ。あとは・・・任せる」

 

「えぇ。任されました」

 

 デュナスモンに後を託されたロードナイトモンはさなちゃんの隣に並び立ったら、その横にブリッツグレイモン達が並び立つ。

「ロードナイトモン。頑張ろう。みんなで!」

 

「・・・はいっ!」

 

「行くぞみんな!」

 

 肩を叩いたブリッツグレイモンに答えたロードナイトモン。そしたら私達のデジヴァイスは一斉にXの光を放った。

「「「「「アルティメットゼヴォリューション!」」」」」

 

 X抗体デジモンに進化したウォーグレイモン達は託された絆に応えるためにもズィードミレニアモンに挑んでいった。

 




次回「心を重ねて。マトリックス・ゼヴォリューション」


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心を重ねて。マトリックス・ゼヴォリューション

最終決戦なのでデジモン達のオリジナル形態を登場させます。


「ガイアフォース・ゼロ!」

 

「メタルストーム!」

 

「スターライトエクスプロージョン!」

 

「ジャスティスXキック!」

 

「究極戦突剣グランローゼリオ!」

 

X抗体に進化したデジモン達の必殺技がズィードミレニアモンに命中する。だけど爆炎から出てきたズィードミレニアモンは傷一つついていなかった。

「こっちは加減無しの全力全開だったのに・・・」

 

 ウォーグレイモン達の必殺技は確かに全力だった。だったはずなのに・・・。ここまで通用しないだなんて。

「まだよいろは!」

 

「は、はい!」

 

 動ける魔法少女もデジモン達も動けるのはもう少ない。そんな状況下であのデジモンに勝つには・・・やっぱりこれしかない。

「オメガモンX抗体で行きましょうやちよさん」

 

「えぇ。それしかないわ」

 

 オメガモンには最後の切り札と呼べる最強の必殺技がある。それを発動させるしかないと判断した私はやちよさんに同意を求めると、同じことを考えていたやちよさんもうなづいた。

「だったらその道、俺様が作ってやるぜ!オール・オメガ・ザ・フュージョン!!」

 

 シャウトモンX7はオメガモンのオーラを纏って突撃していくと、ズィードミレニアモンはわずかながらにグラつく。今がチャンスだ。

「やちよさん!」

 

「えぇ。もう出し惜しみはなしね」

 

「「コネクト!」

 

 このチャンスを逃すわけにはいかないと判断した私達はコネクトを発動してウォーグレイモンとメタルガルルモンをオメガモンX抗体に合体させる。

「オメガモン。最強の必殺技でこの戦いに決着をつけて」

 

「「任せて」」

 

 オメガモンはグレイソードを輝かせるとズィードミレニアモンの振るってきた右腕を切り裂いた。

「「オールデリート」」

 

 切り裂かれた右腕はデータが消滅し、ズィードミレニアモンは切り裂かれた付け根から消滅が始まっていた。これがオメガモン最強の必殺技。切り裂いた部分を消滅させるオールデリートがズィードミレニアモンを蝕む。だけどその一撃だけじゃ膨大なデータ量のズィードミレニアモンを消滅させるには至らない。

「もう一撃!」

 

「「オールデリート」」

 

 オメガモン最強の一撃オールデリートがズィードミレニアモンを貫いた。オールデリートに貫かれたズィードミレニアモンはそのデータが崩壊して、消滅が始まる。

「やった!」

 

「これでようやく・・・!」

 

 これでようやく決着がついた。この場にいるみんながそう思って疑わなかったその時だった。

「ガァァァァァッ!!」

 

 消滅間際のズィードミレニアモンは悪あがきをするかのように噛みつき攻撃を仕掛けてきたので、私達は身構えていると・・・ズィードミレニアモンは私達をスルーしてもう虫の息のワルプルギスの夜に嚙みついた。

「何を・・・しているの?」

 

 ズィードミレニアモンの奇行に私達は動揺しているとワルプルギスの夜はデータになるように消滅して、そのデータがズィードミレニアモンに吸収された。

「ワルプルギスの夜を・・・」

 

「食べちゃったでございますよ」

 

 ワルプルギスの夜を取り込んだズィードミレニアモンは禍々しい紫色の光に包まれたら巨大な卵に変化した。

「デジタマだと・・?」

 

「いったい何が起きようとしているのだ?」

 

 ロイヤルナイツ達もこの事態は完全に想定外だったみたいで、動揺していたらドゥフトモンが即座に判断を下す。

「ボサッとするな!あれが孵化すればこれまで以上の災いとなるのは明白だ!今のうちにあのデジタマを破壊するのだ!」

 

 ドゥフトモンの指揮で動けるロイヤルナイツは一斉にデジタマへと攻撃を仕掛ける。

「エルンストウェル!」

 

「ファイナル・エリシオン!」

 

「エンド・ワルツ!」

 

「オーディンブレス!」

 

「鉄拳制裁!」

 

「アウスジェネリクス!」

 

「ハァ・・ハァ・・これなら・・・」

 

 ロイヤルナイツの一斉攻撃が命中したけれど・・・ズィードミレニアモンのデジタマは傷こそついているものの壊れてはいなかった。

「おいおいマジかよ。あいつ等の攻撃で壊れないとかどんな卵だよ」

 

「オメガモン。もう一度オールデリートをお願い」

 

「「あぁ!」」

 

 やちよさんはオメガモンにもう1度オールデリートを指示した途端、デジタマが割れて中からはズィードミレニアモンとワルプルギスの夜が混ざり合ったようなデジモンが出てきた。

「な、なんだあいつは・・・。本当にデジモンなのか?」

 

 アルファモンはズィードミレニアモンだったデジモンを見てデジモンなのかを疑っていた。

「あれはいったい・・」

 

 私は恐る恐るミレニアモンにデジヴァイスをかざしてデータを確認してみたら、あのデジモンのデータが一応表示された。

 

ミレニアモンワルプルギス

・不明

・邪神型

・不明

 最悪の魔女ワルプルギスの夜を取り込み、あらゆる時代・世界を永遠に破壊しつづけんとする邪神竜。その膨大過ぎるデータは存在するだけでその世界の電子機器が誤作動を起こしてしまう。最悪の魔女を取り込んだことでもはやデジモンなのかも疑わしい進化を遂げ、このデータも正しいものなのかも疑わしい。必殺技は一撃で1つの世界をあらゆる時間軸から遮断し、過去も現在も未来を奪ってしまう『ロストワルプルギス』だ。

 

「お、オメガモン!」

 

「アルファモン!」

 

「「ラグナロードモン!」」

 

 必殺技を絶対に撃たせてはいけないと判断した私達はデジモン達にミレニアモンワルプルギスを攻撃させようとした瞬間、ミレニアモンワルプルギスはその巨大な腕を振るってくる。

「「オールデリート!!」」

 

 オメガモンはオールデリートを発動したグレイソードでミレニアモンワルプルギスの腕を受け止めようとしたけれど、ワルプルギスの夜を取り込んだせいで『デジモン』というカテゴリからも外れたのか分からないけれど、何故かオールデリートでも消せなかった巨大な腕がオメガモンを押しつぶした。

「オメガモン!?」

 

「「だい、じょ・・ぶ」」

 

 叩き潰されたオメガモンはガルルキャノンが砕けて、グレイソードもひび割れていた。あのオメガモンがたった一撃でここまでのダメージを受けるなんて。

「ハァァァぁっ!」

 

 アルファモンも光線を放ってミレニアモンワルプルギスを攻撃するけれど、怯むどころかダメージにすらなっていない。

「ならば!!」

 

 ラグナロードモンは炎を纏わせた剣でミレニアモンワルプルギスの腕を斬りつけるも押し負けて地面に叩きつけられていた。

「サイズもそうだが・・・単純にパワーに差があり過ぎる」

 

 今動ける中でも屈指の強さを持つデジモン達3体がこうもあっさりと負けたことに多くの魔法少女とデジモン達が希望を失いかける。

「オメガモン。まだ・・・戦える?」

 

「「もちろんさ」」

 

 立ち上がったオメガモンは砲身が砕けたガルルキャノンをミレニアモンワルプルギスに向ける。

「待ってオメガモン」

 

 私はそんな傷だらけのオメガモンに固有魔法の治癒を発動して傷を癒す。

「そういえばいろはの固有魔法は治癒だったわね」

 

「はい。アルファモンとラグナロードモンも・・!」

 

 私はアルファモンとラグナロードモンの傷も癒すとオメガモン達はミレニアモンワルプルギスを見上げる。

「おそらく奴にとって私達はハエか蚊程度にしか思われていないのでしょうね。敵意を向けられたらそれこそ最悪の必殺技が撃たれて世界が終わるわ」

 

やちよさんの言う通り幸か不幸かまだ私達はミレニアモンワルプルギスに『敵』として認識されていないみたいだ。もしデジヴァイスのデータの記す通りならミレニアモンワルプルギスが必殺技を放った瞬間にこの世界は終わってしまう。

「奴に『敵』と認識される前に確実に仕留めるぞ」

 

 動けるロイヤルナイツも次こそは確実に仕留めると立ち上がる。そんな矢先のことだった。ミレニアモンワルプルギスは大きな口を開いたかと思うと、エネルギーを収束し始める。

「あいつ、必殺技を撃つ気か?」

 

「まだ敵と思われてないと思ってたのに・・」

 

「いや。我々はあいつにまだ敵だとは思われてない」

 

「じゃあなんで・・・」

 

「あいつが敵だと判断したのは・・・この世界そのものだ」

 

 アルファモンはミレニアモンワルプルギスが世界そのものを敵だと判断したことに気づき、焦る。もちろん私達もミレニアモンワルプルギスが放とうとしてる必殺技を撃たせてしまえば世界が終わると。

「オメガモン!絶対にあれを撃たせないで!」

 

「「あぁ!!」」

 

「アルファモン!オメガモンに続いて!」

 

「無論だ!」

 

 オメガモンとアルファモンは同時にミレニアモンワルプルギスに攻撃を仕掛ける。だけどその攻撃が届くよりも先にミレニアモンワルプルギスが必殺技の『ロストワルプルギス』を放った。

「いろは!やちよ!!」

 

 オメガモンは私達を庇うように盾なると、他のデジモン達もそれぞれのパートナーを庇う。だけどそれも空しく私達は『世界』ごとミレニアモンワルプルギスに吞まれてしまった。

 

 何もない真っ白な空間。私以外に誰もいなくて、ただデジタルな0と1が浮かんでは消えての世界に私はいた。

「ここは・・・」

 

 すぐに直感した。ここはミレニアモンワルプルギスに奪われてしまった私達の世界そのものなのだと。私は恐る恐る自分の手を見ると私の手もデータのようになっている。きっと私もこの空間に浮かぶデータの一部なんだ。

「負けたんだね。私達」

 

 私達は負けたんだ。ミレニアモンワルプルギスの必殺技を撃たれて・・・。

「もっとういと話したかった」

 

 せっかく再開できたんだからういともっと話したかった。

「もっといっぱいやちよさん達と暮らしたかった」

 

 やちよさん達みんなとの日々、楽しかったなぁ。

「アグモン・・・短い間だったけど、私を何度も助けてくれたね。ありがとう」

 

 アグモンがいてくれたおかげで私は強くなれた。アグモンがいなかったらきっと私はういと再会できなかったと思う。

「諦められる・・・わけないよ。もっとみんなとたくさん過ごしたかった。みんなと一緒にいたかった。たくさん話したかった」

 

 諦めたくない。みんなとの日々を。そう思っていると何もない空間に一枚の白い羽根が舞い降りてきた。

「羽根?」

 

データの1つになっている私だったけど、その羽根を握ることができた。その羽根を握った瞬間に『世界』が割れてアグモンが目の前に現れた。

「アグモン!」

 

「いろは!」

 

 アグモンにまた会えたことに喜んでいるとさらに足音が近づいてくる。

「良かった。いろはとアグモンもいてくれたのね」

 

「お前達も無事でよかったよ!」

 

「やちよさん!ガブモン!」

 

 やちよさんとガブモンと再会できた。するとさらに他のみんなもデータの中から形作られるように出てきた。

「いろはちゃん!やちよししょー!」

 

「いろは!やちよ!」

 

「いろはさん!皆さん!」

 

 チームみかづき荘だけじゃない。ういはもちろんのこと、他の魔法少女やデジモンも次々と復活していく。

「まだいけるよね。シャウトモン」

 

「あぁ。まだ俺達のクロスウォーズ(巡り会いの戦い)は終わってねぇよ。ここからが俺達のアドベンチャー(冒険譚)だぜ」

 

「お願い。グレイモン。メイルバードラモン」

 

「あぁ。まだ暴れたりん!」

 

「行くぞグレイモン!」

 

 まどかちゃんとほむらちゃんがデジヴァイスを輝かせると、シャウトモン達がグレートクロスをしてシャウトモンX7になる。

「まだまだこっから!最強のあきらめの悪さ!見せるよピヨモン!」

 

「もちろんだよ鶴乃。いっぱいいっぱい見せつけてやるんだから!ピヨモン!アルティメットゼヴォリューション!ホウオウモン!」

 

「ドカンと行くぜ!モノドラモン!」

 

「ワイのジャスティスが爆ぜに爆ぜまくるで!モノドラモン!アルティメットゼヴォリューション!ジャスティモン!」

 

「アイちゃん。頑張ろう。新しいお友達のためにも」

 

「エぇ。デュナスモンと約束しまシタから。共にコの世界を守ルと。ハグルモン!アルティメットゼヴォリューション!ロードナイトモン!」

 

 鶴乃ちゃん達はピヨモン達をアルティメットゼヴォリューションさせると、他のみんなも次々にデジモンを進化やデジクロスをさせる。すると私達の復活に気づいたミレニアモンワルプルギスは再び姿を現した。

「行きましょうやちよさん」

 

「えぇ。これが最後の決戦よ!」

 

「「コネクト!」」

 

 私とやちよさんがコネクトを発動すると、アグモンとガルモンがワープ進化しながら1つになってオメガモンAlter-Sになる。

「さっきの羽根のおかげかは分からないけれど・・・今の私達ならやれる気がする」

 

 羽根を握った時から、何だか希望に満ち溢れてきた気がして疲れもどこかに飛んで行った気がする。

「希望の光が・・・人間とデジモンの絆の力がこれほどまでに満ち溢れているとは。環いろは、七海やちよ。鹿目まどか、明美ほむら」

 

 絆の力が満ち溢れていることに感動しているアルファモンは私達の名前を呼ぶと、デジヴァイスが何かを受信し出した。

「4人のデジヴァイスをアップデートした。デジモン達と心を重ね合わせるんだ。今のお前達なら人間とデジモンのたどり着く極致、マトリックス・ゼヴォリューションを発動できるはずだ」

 

「マトリックス?」

 

「ゼヴォリューション?」

 

 聞いたことのない単語に私達は反応すると、デジヴァイスはその言葉に反応するように輝きだす。

「心を重ねて」

 

「「マトリックス・ゼヴォリューション」」

 

 デジヴァイスを輝かせた私とやちよさんはオメガモンと重なり合って1つになる。するとオメガモンが純白に輝いて更なる進化を遂げる。

「「オメガモンマギアデコード!」」

 

オメガモンマギアデコード

・究極体

・聖騎士型

・ワクチン種

 オメガモンが未来を願う大勢の人々の想いに応えて覚醒した姿。人間の心と身体を一つに重ねたことで自身の殻を破ったオメガモンは従来のオメガモンをはるかに上回るオールラウンダーとなった。必殺技はありったけの想いの力をグレイキャノンに集め、希望の光を魔力に変換して撃ち出す『マギア』とガルルソードから放たれる斬撃『メモリア』は閉ざされた未来をも切り開き、希望を照らす。

 

 

「ほむらちゃん。私達も行こう」

 

「でも・・・私達じゃ・・」

 

「こんなにもたくさんの希望の光が溢れてる今なら大丈夫な気がするんだ。だからやろう。私達も・・・」

 

「鹿目さん。・・・うん。行こう。一緒に」

 

「「マトリックス・ゼヴォリューション」」

 

 まどかちゃんとほむらちゃんもシャウトモンX7と重なり合って1つになる。そしたらシャウトモンX7は金色の輝きを放つ。

「シャウトモンクロスハート!」

 

シャウトモンクロスハート

・究極体

・合成型

・データ種

 シャウトモンX7が熱い人間のソウルを重ね合わせることで更なるパワーアップを遂げた『エモーショナルアルダーバースト形態』である。金色のオーラはより極まって、その輝きは神話上のデジモンの領域まで到達している。必殺技は熱いヒットソングを歌う事で周囲のデジモンの士気と戦闘力を向上させる『バタフライ』と熱いソウルを極限まで燃やしてV字の熱線を放つ『ブレイブハート』だ。

 

「いろはちゃんとやちよししょーが合体して・・」

 

「オメガモンとシャウトモンX7が・・・」

 

「さらに進化しやがった!」

 

 鶴乃ちゃん達は私達が合体して更なる進化を遂げたオメガモンマギアデコードとシャウトモンクロスハートに歓喜する。

「「まずはお前に奪われた世界を返してもらうぞ。みんな!剣に光を!」」

 

 ガルルソードを展開したオメガモンマギアデコードはその剣にみんなのデジヴァイスの光を、希望の光を集める。

「「メモリア!」」

 

 その剣から放たれた光は0と1で構築されていた真っ白な世界を照らすと、世界が元通りになった。

「世界が元通りになった!」

 

「あの剣にはオールデリートとは真逆の『再生』の力が宿っているようだな」

 

 アルファモンは復活した世界を見て、オメガモンマギアデコードがX抗体のオメガモンとは真逆の能力を持つと分析をする。

「理屈なんかどうでもいいんだよ!こういうのはハートが大切なんだよ。お前らのハートが俺達をさらに進化させてくれた。そういうこった!」

 

 理屈よりも感情のシャウトモンクロスハートはそうアルファモンに告げるとマイクを手に取る。

「お前ら!俺の歌を聴けぇぇぇッ!!」

 

 シャウトモンクロスハートはヒットソングを歌うことで私達魔法少女やデジモン達の士気を向上させる『バタフライ』を熱唱する。

「お前らの夢が1つになって無限大な夢になった。みんなの想いの力はあんな奴にもう消されはしねぇ。みんなの熱いハート!ぶつけてやろうぜぇ!!」

 

「「「「オォォォぉ!!」」」」」

 

 シャウトモンクロスハートの言葉にみんなが呼応すると、魔法少女とデジモン達が一斉にミレニアモンワルプルギスに攻撃を仕掛けた。その攻撃は今までの攻撃とは違って確かにダメージを与えていた。

「効いてる!」

 

「シャウトモンクロスハートによるブーストでこの場の全員の戦闘力が数段階上がっている。今なら!」

 

 魔法少女とデジモン達の一斉攻撃でダメージを受けたミレニアモンワルプルギスは反撃

にまたロストワルプルギスを放とうとしてくる。

「させない!究極戦刃!王竜剣!」

 

 アルファモンは巨大な黒い剣を魔法陣から引き抜くとその剣でミレニアモンワルプルギスの顎を斬りつけ、ロストワルプルギスを妨害する。

「オメガモン。トドメはお前が決めろ」

 

 シャウトモンクロスハートは私達にトドメを決めるよう告げると、胸に篤い炎を灯した。

「王様ってのは道を示すもんだからな。お前らが進む道、この俺様が作ってやるぜ!ブレイブハート!!」

 

 シャウトモンクロスハートが放ったV字の必殺技は一直線に飛んで行ってミレニアモンワルプルギスに大ダメージを与えて怯ませる。今が最大のチャンスだ。

「別に心の声が聞こえるわけでもないけど、何かが見えるわけでもないけど、確かに今ならみんなのことが分かるよ」

 

 みんなの気持ちは一つ。この世界を守りたいって強い気持ちで一つになってる。

「これなら・・・みんなの力を一つにできる。私の固有魔法は魔法少女の希望を受け継ぐ力。託された希望を蓄える器を持ち、その蓄えた力を操ることができる。今まで私は気づかずにこの力に支えられてきた。その力を使うのは・・・今よ!」

 

「みんなの希望を!オメガモンに!」

 

 オメガモンがグレイキャノンを空に掲げるとアルファモンがそうこの場の全員に告げる。そしたら魔法少女のみんなはデジヴァイスから発せられた光をオメガモンの砲身に集めた。

「「みんなの想い!受け取った!」」

 

 みんなから受け取った希望をやちよさんの固有魔法で制御して、私が狙いを定める。

「「「「マギア!」」」」

 

 そしてオメガモンは最強の砲撃技『マギア』を放つと、希望の光の一撃が奇跡となってミレニアモンワルプルギスを撃ち貫いた。

 




最終回「きっとまた会える」


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きっとまた会える

今回で最終回となります。


~いろはSide

 

「「「「マギア!」」」」

 

 オメガモンマギアデコード最強の一撃、マギアがミレニアモンワルプルギスを撃ち貫いた。希望を超えた奇跡に敗れたミレニアモンワルプルギスはデータとなって消滅したら、世界を覆っていた暗雲が晴れて青空に照らされた。

「やった。・・・勝ったぁぁぁぁっ!!」

 

 勝利に喜んでいるみんなのところにオメガモンマギアデコードとシャウトモンクロスハートが着地をしたら、マトリックス・ゼヴォリューションが解除されて、私達はそれぞれ分離する。

「やったね!いろはちゃん!やちよししょー!」

 

「すっげーな!あのオメガモンとシャウトモン!」

 

「みんな無事でなによりです!」

 

 私とやちよさんのところに鶴乃ちゃん達が駆け寄ってくる。そしたらういと灯花ちゃん、ねむちゃんの3人はエンシェントワイズモンとアルファモンと何やら話し合うと、デジヴァイスを空に掲げた。

「3人とも何をしようとしているの?」

 

「私達選ばれし子供3人が揃ったら、デジタルワールドを復活させることができるって・・・アルファモンとエンシェントワイズモンが説明してくれたの」

 

「我らがデジタルワールドを復活させることができるのか!」

 

 ロイヤルナイツのみんなはデジタルワールドが復活するということに喜びの声を上げるとうい達はさっそくそれを行う。

「「「オールデジタルエリア!デジクロス!」」」

 

 うい達がバラバラになったデジタルワールドのデータであるデジタルエリアのデータをデジクロスで繋げたら、私達の前にデジタルエリアに繋がるゲートのようなものが出現した。

「これは・・・まさしくデジタルワールド!」

 

 そのゲートの向こうはデジタルワールドという私達にとって未知の世界が広がっていた。

「我らが故郷、デジタルワールド。こうして再びその地に立てる日がこようとは」

 

 ドゥフトモンが一番最初にゲートを潜ってデジタルワールドの大地に足をつける。すると次々にデジモン達がゲートを潜ってデジタルワールドに帰っていく。

「ありがとう。魔法少女達。君達のおかげであのズィードミレニアモンを倒し、デジタルワールドまでもこうして復活させることができた」

 

 ドゥフトモンは全デジモン達を代表して私達魔法少女にお礼を告げてくる。それに対して私達は首を横に振る。

「ううん。助けられたのは私達だよ。あなた達がいなかったらこの世界を守ることなんてできなかった。私達の世界を守ってくれてありがとう。私達の世界に来てくれてありがとう」

 

「なるほど。お互い様・・・というわけか」

 

「そうなるね」

 

 私達はみんなして笑い合う。こうして私達魔法少女とデジモン達の世界をかけた戦いに決着がついたんだ。

「あー、なんだか夢みたいなんだけど」

 

「これで夢だなんて言われたら、流石のあたしも退散するっての。ってなんだよマミ。いきなり手なんか握って」

 

「このぬくもり。・・・生きてる証拠よ」

 

 さやかちゃんと佐倉さんはこれが夢でないことを巴さんと共に確かめ合う。確かに夢のようだけど・・・夢じゃないんだ。

「「「あっ・・」」」

 

 アグモンとフェリシアちゃん。そしてモノドラモンのお腹がなる。

「ふふっ。そのお腹の音も生きてる証拠ね」

 

「なんだよ仕方ねーじゃん」

 

「みかづき荘に戻ったら簡単なものでも作りましょうか」

 

「わーいごはん~!」

 

 ようやくごはんが食べれると聞いてアグモンは駆け足でみかづき荘に向かっていく。それに続くようにフェリシアちゃんとモノドラモンも走り出す。

「まったくあいつ等、どこにあんな元気が残ってるんだよ」

 

 ガブモンはアグモン達に呆れながらもテクテクとついていく。

「これで・・・終わったんだね」

 

「あぁ。終わった。だからこそ・・・」

 

 すべてに片が付いてハッピーエンド。そう思いながら私もみかづき荘へと家路を辿ろうとしていたらゲンナイさんの姿となったアルファモンが声をかけてくる」

「私達デジモンは・・・デジタルワールドへと帰らねばならない」

 

 

 

~???Side

 

 魔法少女が集まる神浜市を中心に改変が続いているレコード。それは過去も未来も宇宙の裏側も知っていると思っていた私の前にポツンと現れた1枚。デジタルモンスター、デジモンなんて他の時間軸には存在していなかったのにこの世界だけはトクベツだった。だけど同時にこの世界には魔女もまだ存在していて、私が触れたら壊れてしまう。

「それでも私は・・・いつかの私とほむらちゃんがまだ生きているレコードを残すために四聖獣の協力を借りて羽根を落とすことにしたんだ」

 

チンロンモン

・究極体

・聖竜型

・データ種

 デジタルワールドを守護する四聖獣デジモンの1体であり、東方を守護し強烈な雷撃を放つ。他の四聖獣デジモンと同じく伝説の存在であり、その強さは神にも匹敵すると言われている。またチンロンモンはホーリードラモン、ゴッドドラモン、メギドラモンと共に四大竜デジモンの1体としても数えられており、もっとも神格化された存在である。必殺技は天空より激しい雷を落とす、神の怒り『蒼雷』だ。

 

スーツェーモン

・究極体

・聖鳥型

・ウィルス種

デジタルワールドを守護する四聖獣デジモンの1匹であり、南方を守護し灼熱の火焔を操る。神話の時代より君臨し続け、その存在は伝説化されており、見つけ出す事は非常に困難を極める。スーツェーモンは四聖獣デジモンの中でも特に気性が荒く、意味無く近づくものは全て焼き尽くすほどである。必殺技は太陽から大爆発とともに噴出されるプロミネンスに匹敵する炎の渦『紅焔』だ。

 

シェンウーモン

・究極体

・聖獣型

・ワクチン種

デジタルワールドを守護する四聖獣デジモンの1匹であり、北方を守護し変幻自在な水技を使う。他の四聖獣デジモンと同じく伝説の存在であり、その強さは神にも匹敵すると言われている。シェンウーモンは四聖獣デジモンの中でも最長老であり、温厚な性格の持ち主である。必殺技は敵の周辺に濃い霧を発生させて幻影を見せ、精神を破壊する『霧幻』だ。

 

バイフーモン

・究極体

・聖獣型

・データ種

 デジタルワールドを守護する四聖獣の1匹であり、西方を守護し鋼の属性を持つ。神話の時代より君臨し続け、他の四聖獣デジモンと同じく伝説の存在であり、その強さは神にも匹敵すると言われている。また、四聖獣デジモンの中でも一番若い存在であるが、パワーは4匹の中でも最高である。必殺技は口から敵を金属化させてしまう波動を放つ『金剛』。この技を受けたものは動けないまま、体が錆び、朽ち果てるまで死ぬことはできない。

「しかしまどかよ。もう同じことはできぬぞ」

 

「うん。分かってるよチンロンモン」

 

 みんなに力を与えて、直接触れないようにしたつもりだけど、それでもこのレコードは歪んでしまいそうだったから。

「現にこうして・・・私の介入のせいでみんなとデジモン達の別れが早まってしまったものね」

 

 四聖獣達の予想ではみんなとデジモン達の別れはもっと先の話なはずだった。だけど介入したことでデジタルワールドの時間と空間の流れに変化が生じて、2つの世界のつながりが断たれかけて、みんなの別れが早まってしまった。

「ごめんなさいみんな。こうすることでしか・・・その世界を守ることが出来なかったの」

 

せめて別れの時までは・・・平穏な時を過ごせるように祈っているから。

 

 

 

~いろはSide

 

 戦いが終わってから1週間が過ぎた。アルファモンことゲンナイさんが言うには今日がアグモン達とのお別れの日だ。

「おはよう。アグモン」

 

「おはよう、いろは」

 

 いつも通りに起きて、いつも通り朝ごはんを食べる。ただいつもと違うのはこれがアグモン達との最後の食事になるということ。私達はこの1週間を実家で過ごして、これから神浜に、みかづき荘に向かう。お父さんとお母さんには私とういが魔法少女の事は伏せたけどアグモンとアルファモンの事はしっかりと話した。神浜の大災害はズィードミレニアモンというデジモンが巻き起こして、私達はアグモン達と協力してそれを倒したのだと話したら、危険な真似をしたと怒られ、心配されたけど、最後にはアグモンとアルファモンを『家族』として受け入れてくれた。

「それじゃあ・・・行ってくるねお父さん。お母さん」

 

「今日でアグちゃんとゲンナイちゃんとお別れだなんて。さみしくなるわねぇ」

 

 お母さんはアグモンとゲンナイさんとの別れをさみしがってくれる。

「いろはママ!ごはんおいしかったよ!」

 

「我々デジモンを『家族』として受け入れてくれた御恩。決して忘れません」

 

 お父さんとお母さんとのお別れを済ませたら私達は神浜へと向かう。電車はズィードミレニアモンとの戦いで未だ運行してないからブリッツグレイモンの背中に乗って空を飛んでいく。

「あまり意識したことがなかったけど・・・こんなに大きかったんだね。ブリッツグレイモンの背中」

 

 最後に乗るブリッツグレイモンの背に関心深くなっているとアッという間にみかづき荘へと到着してしまう。

「おかえりいろは」

 

「ただいまですやちよさん」

 

「それじゃいろはとういちゃんが来たことだし、そろそろ行きましょうか」

 

 みんな集まると私達はミレニアモンワルプルギスを倒した場所である南凪区の海浜公園へと向かう。

 

 

 

 数十分後、海浜公園に到着すると大勢の魔法少女とデジモン達がこの地へと集まっていた。最初に灯花ちゃんとねむっちゃんが既にドゥフトモンに連行される形で一足先にデジタルワールドに帰ったダークナイトモンに唆される形でズィードミレニアモンを神浜に呼んでしまったことを集まったみんなに謝罪した。みんなの反応は厳しいものだったけど、灯花ちゃんとねむちゃんはそれを素直に受け入れ、魔法少女の力を使うことを禁止するという形で処遇が決まった。マギウスの事が片付いた後はいよいよアグモン達とのお別れだ。

「デジタルゲート。オープン!」

 

 ういによってデジタルワールドへのゲートが開かれる。みんなそれぞれに別れを告げてデジタルワールドに帰っていく。みんな泣きながら見送ったり、さみしいながらも笑って見送ったりと様々だ。

「ありがとねマーメイモン!アンタのこと!忘れないよ!」

 

「ウチも忘れないっスよ。姉御!」

 

「変なもん食って腹を壊すなよギルモン」

 

「ギル!」

 

「ありがとうデッカードラモン。そしてごめんなさい。私のせいで色々と巻き込んで」

 

「何を言うかと思えば、マミ。お主が謝る必要など何一つない。あまり自分を責めるでないぞ」

 

 マーメイモン、ギルモン。デッカードラモン率いる巴さんのデジモン達がデジタルワールドに帰っていく。

「ありがとうグレイモン。メイルバードラモン。あなた達がいなかったら未来を変えることなんてできなかった」

 

「未来を変えたのは俺達だけの力じゃない。それは分かってるなほむら」

 

「うん。みんながいたから・・・だよね」

 

「それを分かっているならこれ以上我々から語ることはないな」

 

 そうメイルバードラモンが言い残したらグレイモンとメイルバードラモンがゲートを潜っていく。

「ほむら。これからは自分の未来を歩んでいけ!」

 

「過去に縛られてばかりではない。お前の未来はお前だけのものだ」

 

 最後にそう言い残したグレイモンとメイルバードラモンはデジタルワールドへと帰っていった。

「次はまぁ、俺達だな」

 

「ダナ」

 

「行くぞスターモン。スパロウモン」

 

「オウよブラザー!」

 

「うぅ~。名残惜しいよぉ~」

 

 ドルルモンとバリスタモンは互いに頷きあったらスターモンズとスパロウモンを連れて先にデジタルワールドに帰っていく。

「さてとまぁ。俺様の番が来たってわけだ」

 

「・・・シャウトモン」

 

「そんな顔をするんじゃねぇよまどか。帰りにくくなるだろうが」

 

「かえ・・らないでよ。もっともっと一緒に冒険しようよ」

 

「気持ちは嬉しいが俺様はこれからデジモンキングとして復活したデジタルワールドを1つにまとめないといけないんだ」

 

「そう・・だね。それがシャウトモンの夢だったもんね」

 

「・・・夢を叶えたらやることは決めてんだ」

 

「何をするの?」

 

「歌う。ドデカいライブ会場を用意して・・・こっちの世界に届くくらいのボリュームで歌ってやるよ」

 

 その答えにまどかちゃんは涙を流しながらも笑った。

「シャウトモンらしいや。・・・その夢、絶対叶えてよ」

 

「応さ!」

 

 まどかちゃんとシャウトモンもお別れをすませると、いよいよ私達の番がやってきた。

「マスターにお仕えできたこと。光栄でした。どうかお達者で」

 

「ガオモン。お前も達者で暮らせ」

 

 十七夜さんとガオモンのお別れは比較的あっさりとしたものだったけど、そこには確かに絆があった。

「アイちゃん。本当に行っちゃうの?」

 

「今の私はデジモン。それもロイヤルナイツの一員ですから」

 

 アイちゃんことハグルモンはあれからずっとロードナイトモンのままだ。どうやら他のみんなと違って究極体の維持ができるようになったみたい。

「デュナスモン。アイちゃんの事。お願いします」

 

「任された。我が友は俺が全力で守る」

 

 我が友のパートナーは我が友と言うデュナスモンにロードナイトモンのことを任せたさなちゃんは涙をこらえきれずに泣き崩れる。するとロードナイトモンは膝をついてさなちゃんの涙をぬぐった。

「さな。離れていてもそのデジヴァイスがある限り私達は繋がっています。だからどうか・・・笑って見送ってください」

 

「うん。・・・アイちゃんがそう言うなら!」

 

 さなちゃんは頑張って笑顔を作ってロードナイトモンとデュナスモンを笑って見送り、デジタルワールドに帰った途端再び涙をこぼしだす。

「さてと、ワイの番やな。フェリシア」

 

「んだよ?」

 

「お前との日々はハチャメチャで暴れまくれて楽しかったで」

 

「・・・オウ!オレもだ!」

 

「フェリシアはもう壊すだけの困ったちゃんやない。それは近くでずっと見てたワイがよう知っとる。胸を張れフェリシア!ワイがいなくなっても、そのまま強く生きるんやで」

 

「お前も・・・強く生きろよな」

 

「オウ!向こうに帰ってもワイのジャスティス見せつけたるわ!」

 

 フェリシアちゃんは涙をぬぐうとモノドラモンと拳をぶつけ合ってお別れをする。

「ピヨモン。わたし達のコンビは・・・」

 

「うん!最強だったよね!」

 最強のコンビだったと言い合う鶴乃ちゃんとピヨモンは互いに空を見上げる。

「いっぱい一緒にこの空を飛んだね」

 

「うん。何度も一緒に空を飛んだね。ガルダモンは大きすぎるからダメってやちよに何度も怒られたのも、今となってはいい思い出だよ」

 

「わたしはお別れを言わないよピヨモン。また一緒に・・・空を飛ぼう」

 

「うん!今度は一緒にデジタルワールドを飛ぼう!」

 

「約束」

 

「うん。約束!」

 

 鶴乃ちゃんとピヨモンは再開の約束をして別れると、次にやちよさんとガブモンの番が来た。

「いよいよ私たちね」

 

「1年半か。それなりに長い付き合いになったな」

 

 たぶんトップクラスにパートナーと長い付き合いのあったやちよさんとガブモンはこれまでの事を思い出しながらデジヴァイスを見つめる。

「あなた、結構サボり癖が酷くて面倒だと何度思ったことか」

 

「あー。今それ言う?お別れの時にそれ言っちゃう?」

 

「ふふっ。冗談ってことにしておいてあげるわ。あなたのおかげでたくさんの友情を結ぶことができた。感謝してるわ」

 

「あぁ。俺もやちよと出会えて・・・友情を築けて良かった」

 

「先に帰っちゃったベルゼブモンにもよろしく言っておいてね」

 

「あぁ。それじゃ!」

 

 やちよさんとガブモンもお別れをしたことで・・・いよいよ私とアグモンの番がやってきた。

「ねぇアグモン覚えてる。私達の出会い」

 

「うん。覚えてるよ。クワガーモンに襲われていたいろはを助けるためにデジヴァイスから出た時、初めて会ったんだよね」

 

あれから色んな出会いや戦いがあった。

「ここまでこれたのも全部アグモンと出会えたおかげ。アグモン。私に勇気をくれてありがとう」

 

「ううん。勇気を貰ったのはボクの方だよ。いろはの勇気がいつもボクに力をくれた」

 

 アグモンがいたから私は勇気が湧き出た。その勇気でアグモンは強くなった。私達は揃っていたからこそ強くなれたんだ。

「私、きっとこれが最後にはならないと思うんだ」

 

「ボクも。きっとまた会える気がするんだ」

 

「だから私も・・・きっとまた会える。そう信じてるから・・・またね。アグモン」

 

「うん!またね!いろは!」

 

 アグモンは手を振りながらゲートを潜っていくと、それを最後のデジモンだと確かめたアルファモンが一番最後にゲートを潜ろうとする。

「環いろは。君にも色々世話になったな。君に見出した『勇気』に希望を見出して本当に良かった。どうかこれからもういと仲良くな」

 

「うん。こっちこそありがとう」

 

「さらばだ!魔法少女達よ!」

 

 アルファモンがゲートを潜るのを最後に、デジタルワールドへのゲートが閉ざされる。こうして私達魔法少女とデジモン達とのクロスウォーズ(めぐり逢いの戦い)はひとまずの終わりを告げた。

 

 

~みふゆSide

 

 ミレニアモンワルプルギスとの戦いから1年が過ぎました。私は灯花さんのデジタルゲートの解析とエンシェントワイズモンの研究の成果のおかげで再びデジタルワールドと世界が繋がり、ワタシはデジタルワールドへと足を運んでいました。

「ここですね。はじまりの町というのは」

 

 カイゼルグレイモンが言っていたデジタマが孵化すると言われるはじまりの町を訪れたワタシはパートナーであったファルコモンがここにいるのではと思って辺りを見渡しました。

「いませんか・・・」

 

 もう既に孵化してこの場を移動したのか、あるいはそもそもデジタマがここに行きついていないのか、ファルコモンの姿はどこにも見当たりませんでした。

「別の場所を探してみますか」

 

 この場にファルコモンはいない。そう判断したワタシは別の場所を探しに行こうとこの場から背を向けたその時でした。

「みふゆ」

 

 バサリと翼が羽ばたく音とともに舞い降りてきた黒い羽根。その声の主に覚えのあったワタシは期待に胸を膨らませながら声の主へと振り向きました。

「また・・・会えましたね」

 

 

 Finale

 




今までご愛読ありがとうございました。


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