遊戯王とバンドリの異産物 (COM.A@美咲推し)
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プロローグ

初めまして。ミッシェル(美咲)推しのCOMと申します。バンドリにハマったのはWS_TCGが原因です。それまでは遊戯王と交互でハマってる感じです。

ハーメルン触るのは初めてでは無いのですがまともな投稿は初めてなのでご了承ください。
できるだけご期待に答えるように頑張るつもりです。よろしくお願いします。


さて、話が長くても申し訳ないので進めていきましょ。バンドリ?ゲームはもう引退しました。数ヶ月前にです。それではどうぞ


side ???

 

今俺は夢を見ている、子供の頃の夢を。

子供の俺は周りに色んな色鉛筆を置きながら絵を書いていて、その絵には4人人間が映っていた。

 

「(あれは、親父から貰ったカード)」

 

それぞれの絵にカードを乗せていく姿は、無邪気な子供そのものだった。

今となってはあの絵の題名や、どんな思いで書いたのかもわからないが、昔の自分にとってあの絵はきっと・・・

 

 

“あこがれ”だったのだろう

 

 

親父から貰ったカードも今となってはどこにしまったかも覚えていない。ゲームをやっていても、使ったことすらない。

 

「おに・・・ゃん!」

 

そんな昔のことを思い出していると、夢の先から引き戻されるような元気な声が聞こえる。掠れて聞き取れなかったが、女の子の声だった。

 

「(ん?女の子?)」

「おにぃちゃーん!?」

 

今度ははっきりと聞こえた。ついでに扉を叩くような鈍い連続音が聞こえる。今にも破られそうな。

というかいろいろおかしい。まず俺は普通の高校生にして自称天才ゲーマーの万年ぼっち野郎だったはずだ。同級生の友達は愚か、親しい人間なんかいないし、さらには女の子なんかと友達になれるような陽キャではない。自分は究極の陰キャなのだ。

 

「(あれ?俺は昨日ショップ大会に出て、それから・・・あれ?)」

 

覚えてる記憶を遡っていく。家に帰って布団に突っ込んだ所までは記憶に曖昧ではあったが残っている。しかし、そこからの記憶がない。普通なら朝の3時には起きて課題をやるはずだが・・・

 

ふとそう考えた時、今何時が無性に気になってしまった。ゆっくりと目を開けると、1人の少女がダイブし始めていた。

 

「お・に・い・ちゃんに!だーいっぶ!」

「はっ!?うっ!ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ちょっと!!!日菜!うるさいわよ!」

 

下からもう1人、女の子の声がしたがそんな状況ではない。俺は今、下に布団、上に女の子という禁断の状況に陥っている。上から女の子の凄い力に押しつぶされ、下からは布団の「こっちくるな」弾力が強く、すごい力で押し返されている。

 

押し潰す女の子、押し返す布団に阻まれ、俺の命は限界に達していた。

 

「おはよう!お兄ちゃん!」

「ブクブクブク・・・」

「お、お兄ちゃん!?」

 

俺の事を「お兄ちゃん」と呼ぶ女の子が俺の体を譲ってるのがわかる。俺の力が入ってない頭は上下にカクカクと振られているのがわかる。

 

そこにもう1人、先程大声で叫んでいた女の子が入ってくる音が聞こえる。

 

「日菜何をして・・・っ!?ちょ!聖!?大丈夫!?日菜!あなたは!」

「お兄ちゃん起こしに来ただけだよ!お兄ちゃん!お兄ちゃんー!!」

 

2人の女の子の可愛らしい声とともに、俺の意識は今消えようとしていた。

 

 

 

 

しばらく寝かされて意識が戻ったところでまず状況を整理したい。まず俺のことについてだ。

どうやら今までいた場所・・・というか世界とは違うようだ。まず元の場所なら俺に家族は・・・他界していないはずだし、兄弟なんてのは存在しない。

 

俺の横で介抱してくれた彼女 ー 氷川 紗夜(ひかわ さよ)は俺の事を弟として認識しているようだった。

 

あっ。俺の名前は ー 氷川 聖(ひかわ ひじり)と呼ばれるらしい。通り名は呼びやすく(せい)だそうだ。

前の世界では名字は別だったが呼びにくかったからこれもこれで悪くないが。1つ問題が発生した。

 

「聖?怪我はない?」

「大丈夫だよ。紗夜・・・姉」

 

弟として認識されてる以上。俺は彼女のことを「お姉ちゃん」と呼ばないと行けないらしく。何が恐ろしいのか凄い呼びづらい。わけであって今は慣れていない。

 

「昔みたいにお姉ちゃんでいいんです。固くなってしまって」

「う、うるさい・・・」

 

紗夜は拗ねたような事を言うものの安定のスルー。こういうのを親バカというのだろうか。

少しして紗夜は俺の部屋から退出していく。退出ぎわに「学校なので早く着替えて降りてくださいね?」と言ってくれた。

 

「学校ね・・・行くの何年ぶりかな」

 

前の場所でも学校には言ったことない。そもそも学校なんてものはテストが出来てれば成績のだいたいは占めてくれるのでそれだけをしっかりこなしていた。評価点なんてのはゲーマーの前では飾りなのだ。

 

さて。クローゼットを開けて俺はゆっくりと急いで着替えを始める。脱いだ服は洗濯へ出すことにする。男物・・・の制服なのだろうかベージュがメイン色でなんとも言えなかった。

 

「なんでベージュ・・・」

 

 

 

 

ん?そう言えば俺の行く学校の名前聞いてなかったな。

そう考えながらさっさと下へ降りていくと、紗夜ともう1人、俺の事を「お兄ちゃん」と呼ぶ少女、氷川 日菜(ひかわ ひな)は俺を彼女の隣の椅子へと招いているので座ると速攻で抱きつかれる。お兄ちゃん(お姉ちゃん)子なんだろうか。

 

「日菜ぁ?食事時は抱きついてはダメですよ!破廉恥です!!」

「でもお姉ちゃんも抱きつきたいんでしょ?」

「断じて違います!」

「とりあえずご飯食べよう?お腹空いた・・・」

 

マイペース過ぎた発言を反省しながら朝食を噛じる。

家庭的な味が口の中に広がって・・・なんというか。シンプルに美味しい。あれなのだろうか、漫画とかで言う隠し味は「愛情」みたいなものだろうか。

 

チラッチラッと紗夜がこちらを向いてくるが安定のスルー。きっと朝の件で怒ってるんだろ。気にしない気にしない。

 

「(そう言えばこっちの世界での俺って何してるんだ?さすがに、ゲーム・・・とかじゃないよな?)」

 

・・・と考えるが、ふとあることが引っかかる。

そう言えばこの場所での俺の姿を1度も眺めていない。さらに言えば前の場所から転生している・・・とかでは無いのか、など色んな疑問が頭に浮かんでくる。

 

「(でも彼女たちは俺の事を知っていた・・・まぁ、調べていくうちに聞いたりしてけばいいか)」

「ご馳走様!お兄ちゃん!途中まで一緒にいこ!」

「いいよ。一緒に行こうか(学校の場所わかんないからなぁ、あぶねぇ)」

「あっ!忘れ物取ってくるから待っててね!」

 

そう言うと日菜は階段を物凄い速度で上がっていく、たまにスカートの中が見えそうになるが俺は未だにスク○ア○ニックスの映像技術でスカートの中が真っ黒であることを信じている。

 

待っている時間スマホを確認すると見ない名前がいくつか出てくる。・・・デュエルモンスターズ様?

 

「(遊戯王だろ?なんでこの世界に・・・?)」

 

ぶっちゃけ言うが、ここはアニメ、BanG Dream!の世界だと彼女たちの名前を聞いた時点で理解していたが、アニメに興味が薄かった俺は内容は愚か、出てくるキャラの名前すら知らない。

ゲームは少し触ったぐらいだが音ゲーは苦手なのでパス。

 

「(湊さんに今井さん・・・?うへ、美竹さんって人からもLIONきてるわ)」

 

ゲームはやったとは言えキャラ自体に興味がなかった俺は覚えていなかった。しっかりやっておけば良かったなんて後悔してると上から足音が聞こえてくる。

「ごめんお兄ちゃん!待った!?」

「全然?準備できた?」

「できたよ!」

「じゃあ行こうか。早く行くことに損は無いし」

「お兄ちゃんと久しぶりの登校だぁ♪るんっ♪ってする!」

「未知の単位で測るのやめて」

 

そう言いながら、家を後にする。紗夜は何故か既にいなかったのでとりあえず鍵は閉めて後で渡すことにする。日菜はスペア持っているのを見せてくれた。

 

「行こう」

 

眩しい日差しが俺たちを照らす今日。何かが起こりそうで内心ワクワクしていた。

 

 

 

 

2人仲良く登校する姿はどこからどう見ても普通の兄妹だったが、1つ問題がある。それは俺と日菜の距離が非常に近いことである。

 

「えへへー」

 

スリスリと顔を腕に擦り付ける姿はまるで縄張りを確保する猫のようにも見える。周りの目が痛いなんて思わないが、これが意外と腕が痛い。それに女の子だからキレイな髪の毛が崩れないか心配になってしまう。

 

「日菜、せっかく髪の毛キレイなんだから・・・」

「ええー?でも嫌いじゃないでしょ?」

「・・・」

 

正直女性に関して関心のない俺だからどう反応すればいいのか。とりあえず肯定しておけばよいのか?と悩むが、日菜の悲しい顔を見て一択しかないと考えてしまう。

 

「嫌いじゃないよ」

「じゃあスリスリする!」

「どうぞ」

 

諦めて腕を日菜に渡すとご機嫌になって再びスリスリしだす。まるで居場所を得た猫のようだ。

 

さて、日菜が俺に執着してる間思考を巡らせる。

まずはこの世界の俺についてだ。

どうやらこの世界の俺はガールズバンドに関わってるらしい。と言うのも、部屋のパソコンを確認した時にそれら関連のデータがあったからだ。主に作曲にご集中していたらしい。

 

次に人についてだが、これは人を見ると思い出すトリガー式になっているようだ。要するに人に会えば記憶が勝手にその人だと認識してくれるらしい。なので人間については心配しなくてもいい。

 

最後に1つ、前の世界の俺についてだ。

これは布団の下にあるものが解決してくれたが、記憶はところどころ欠落していた。どこ、と言われても自分ではピンと来ないのが現状だ。

しかし、布団の下にあった物、「遊戯王」のカードたちが全て解決してくれた。前の世界の俺はこれで遊んでいたと言うことを改めて理解した。

今の俺はこの世界の俺であり、違う世界の俺・・・という理屈が正しいのか。未だに謎である。

 

「(無理に悩む必要は無いな、慣れればいい。要はいろいろ巡ってけばいいんだから)」

 

しばらく歩くと、学校が見えてくる・・・確か・・・

 

「花咲川か」

「むー・・・お兄ちゃんとの楽しい時間がー」

「そうか。日菜は向こうの羽丘だっけ?」

「うん。近いけどちょっと残念・・・しゅん」

 

明らかに落ち込んでいる表情を見せる日菜に「大丈夫だ、帰りに会いに行ってやるから」と告げ、優しく頭を撫でてやる。日菜の表情に笑顔が戻る。うん。やっぱり笑顔は可愛いな。

 

「じゃあお兄ちゃん!帰りにね!」

「あいよ」

 

日菜と別れ、1人寂しく花咲川の校門を潜ろうとしていたが、何故自分がこの学校に入るのか考える。

俺は数年前。日菜と紗夜が2年生の時に研修生、実際には実験台のような扱いでこの学校に編入された。

 

「(そうだ。共学化に向けての先駆けで俺が来たんだ。女子校は女子校でいいと思ったのになぁ・・・)」

「何がかしら?」

「んんん!!!!!????」

 

当然後ろから声が聞こえ、俺は思わず声の主と距離を取ろうとするが「捕まえた!」と声が聞こえると、俺は腕を掴まれる。

しかし、距離を取ろうとした時に腕を掴まれるとどうなるのか、当然掴まれた俺は姿勢を保てずそのまま倒れるように地面に落ちていく。

 

「「あーっ!?」」

 

一瞬金髪が目に入るが、倒れた衝撃で俺は少しの間、その意識が目覚めることは無かった。

 

 

 

 

紗夜 side

 

 

私は朝早くの風紀委員としての仕事を終えて、教室に戻るが、ふと気になったことがある。それは聖の事だった。

朝から少し様子がおかしい・・・身体の調子が悪いのでしょうか?そして今この教室に聖がいないのも疑問を覚えた。

 

「遅いですね」

「聖くん来ないですね・・・」

「・・・まさかどこかでナンパされてるとか?」

「聖くんなら有り得ますね」

 

同じクラスの白金さんこと、白金 燐子(しらかね りんこ)も似たような考えをあげる。

 

白金さんもそう思いますか・・・それもそうですね。なんと言っても聖は可愛いですし!この前なんか・・・ふふふふふふ。

頭でそう考えながら、心の中では聖のことが心配だ。白金さんもやはり仲間ですね。

 

気がついた時には教室を出ていた。恐らく日菜も羽丘に向かっている頃でしょうし、そろそろ聖は花咲川の校門に来るはずだと私は考えていた。

しかし、私や白金さんが着いていないと通れない子が・・・果たして1人で通れるんでしょうか?

 

「(いや!心配なら見に行けばいいんです!私はお姉ちゃんですから!それぐらいの権利はあります!)」

 

あれから1年が経つ。Roseliaもひとつに慣れたのも聖の仲介のお陰。彼には返しきれない恩があります。

Roseliaのメンバーから見ても聖は家族そのもので湊さんも今井さんも宇田川さんも姉妹のように見てますからね。いや。恋情でしょうか。

それはともかく・・・早く聖・・・を・・・?

 

その時、身体が嫌なものを見たかのように固まってしまう。空いた口が塞がらず「あ、あ・・・」と情けない声が上がってしまう。

 

「どうしたんです・・・か・・・」

 

遅れて白金さんも来たようですが場面は最悪、白金さんも直ぐに状況を察し、同じように固まってしまうのを想像出来ました。

 

「あれー?紗夜ちゃんと燐子ちゃんおはよー?どうした・・・の」

 

そこに偶然、アイドル兼アイドルバンド、Pastel*Palettesのリーダーである、丸山 彩(まるやま あや)が来てしまうが。状況が悪いのでしょう。彼女も私たち同様に固まってしまう。

 

それもそのはず・・・私たちの目の前には・・・、

 

「私の執事にならないと退かないわよ!いやー!」

「うるさいっ!それと早く退いてくれよ!身体を押し付けるな!あー!!!あー!!!!」

「いや!あと数分いましょ!」

「な、に、を、してるんですかー!!!!」

 

 

 

 

聖 side

 

 

「う・・・うぅ」

 

俺は今、人生最大のピンチと言うのに陥っている。HRが終わっての放課・・・人の居ない教室、何も起きないはずが無く。俺は、俺は・・・

 

「聖くん。どういうこと?説明・・・してくれるよね?」

「聖?お姉ちゃんに分かるように説明してくれるわよね?ね?まさか、付き合ってるとかではないわよね?」

「聖くん・・・私不安になっちゃうな?アイドル活動出来なくなっちゃうよ?迷惑かけたくないよね?ね?教えてくれる?」

 

正座をしながら目の前の美女3人による尋問を受けていました。隣には先程の金髪の女の子が同じく正座をさせられてしかも心が壊れていた。

 

隣の子は弦巻 こころ(つるまき こころ)と言う。抱きつかれた時に金髪とその・・・いい具合の胸が気になってしまった。というかこの子に恥じらいは無いのか。会った時に言われた執事の話だがどうやらだいぶ気に入られていた様子。

 

「さぁて、聖の話から聖本人には罪がありません。さて弦巻さん?ちょっとお話をしましょうか?」

「こころちゃん?お話しよう?」

 

やばい。燐子さんを除く2人の殺気が怖い。これはこころさんも気を失うのも無理はない。現に今俺もちょっと引き下がりたいからね。

その間に燐子さんが「大丈夫だよ?」って後ろから抱き着いてくるけどこれどうするんだ。

 

とりあえず姉さんたちの気を逸らさないとだめか。

「紗夜さん」

「聖?お姉ちゃんと呼んでと・・・」

「こころさんは下級生だよね?先輩としてどうかな?」

「うっ」

 

姉さんは殺意を抑えてくれた。先程までの人殺しのオーラが完全に引っ込んでしかも俺に「姉」と呼ばれないのと正論で怯んでいる。それを逃さず俺は追撃を入れる。

 

「彩さん。次から勉強教えないよ?」

「!?い、いや〜それだけはやめて〜お願い〜」

 

彩さんは観念して、泣きながら俺にすがりついてくる・・・やっぱり勉強嫌いなのか。LION見といて良かったぁ。

最後に背後にいる燐子さんに一言。

 

「燐子さん。離れてくれないともうゲームやらないよ?」

「!?い、いや・・・」

 

燐子さんは普通に泣きそうだったので俺は優しく頭を撫でてやる。普通に可愛いから躊躇しちゃうのは許して欲しい。

 

「うぅ、聖くんありがとぅ」

「いやいや。こころさん、ごめんね。注意してれば混んな・・・」

「いいのよ!答えを急ぎすぎた私が悪いもの!それとまた今度聞くから決めておいてね!」

「あっ!逃げないでください!待ちなさい!」

 

答えを聞くと残し、こころさんは颯爽と去っていく。まるで嵐のような人だと心で思いながらすがりついてくる2人を介護する。

なんか匂い嗅がれてる気がするけど気にしない気にしない。俺なんかが好かれてるわけないんだから。

 

その後無事に3人と和解し、自分の教室へと戻っていく。確か・・・B組だったか。

 

「えへへっ、聖くんと一緒♪」

「あんまりくっつかないでください。動きにくいですよ」

「なんか冷たくない!?」

「仮にもアイドルでしょ!?」

「本物のアイドルだよぉ!」

 

わいわいやり取りをしながら教室にたどり着く。あぁ、席が俺を離さないんじゃ〜。

彩さんは俺の前の席みたいだ。ニコニコしながら後ろ見るのやめてくれ。何か嫌だ。

 

チャイムが鳴り、授業が始まる。さぁ、集中するか!

 

 

 

 

 

 

 

 




RASの投入されてるアニメ、BanG Dream!のVOL.2を買おうか悩んでます。(スリーブとマットは買いました。)
友達が数日前のAfterglowのライブ行ったらしいので羨ましいです。モカちゃんのグッズ欲しかったなぁ。

見ていただきありがとうございました。


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1話

2話目です。
バンドリ3rd seasonの3話を見て泣いてしまいました。うん。あと2話はRASメインでやって欲しいね。友情までしっかり深めてこそバンドリだよ。
これを知ったPoppin’PartyやRoseliaの反応も気になりましたね。これは円盤買うしかねぇな。

それではお読みください。


学校で聞く最後のチャイムが鳴って皆が教室を出ていく。外を見ると夕日が上がっていた。もう夕方なのか。

俺はノートだけカバンに詰めて、スマホを開く。そう、帰りは日菜と帰る約束をしているので様子を見ようと思ったからだ。まぁ心配ないと思うが。

 

「(さーて。日菜は、おっ?終わってるのか。ん?生徒会の仕事で遅れます?)」

 

あー、そう言えば日菜は向こう(羽丘)の生徒会長だったか。なんて大変な仕事をやってるんだ。

さて、そうなると予定より少し遅れて行った方が暇も無くなるし新鮮な気持ちで日菜と帰れる。どこかで暇つぶしは出来ないものか。

 

そうだ。こっち(花咲川)の生徒会長は燐子さんだったか。手伝いに行けば暇つぶしできるのでは?

我ながらいい案と思いながらルンルン気分で生徒会室へと向かう。頭では姉さんの事を気にしながらやっとの思いで生徒会室に着く。

 

「失礼しまーす。3-Bの聖です」

「はーい・・・え?聖くん!?」

 

その直後。部屋の扉が思いっきり開けられると俺は吸い込まれる、いや、飲み込まれると言った方がいいのか、そんな勢いで生徒会室に入っていく。

一瞬のこと過ぎて俺は何が起きたか分からなかったが、今は燐子さんの腕の中に居る。

 

「すーっ・・・はぁ・・・///」

「すいませんくるしいです」

「ところで聖くん。お姉ちゃんに何か用?」

「暇だから手伝いに来ただけですよ」

 

嘘は言ってない。これがむしろ本音。誰も燐子さんの腕の中に入ろうなんて1ミリも思ってません。マイクロは思ってましたが。

と言うか離してと言っても離してくれないこの人何者?すごい力で俺の頭がロックされてるんですが。

あと燐子さん意外と大きいな・・・

 

「ふふっ。嬉しいな?聖くんの為に大きくなったんだよ?」

 

嘘をつくな。嘘を。

そしてなんでこういう時は感がいいんだ。なんだ、テレパス持ちなのか?この人は。

燐子さんに抱きつかれ始めて数分。沈黙が漂いエロい声が燐子さんから漏れ始める。

 

「ねぇ聖くん・・・いいよね?」

 

ダメですやめてくださいと言いたいけど。胸に頭があるので下手に声を出せない。「私・・・我慢できないな?」と言うと俺の手を取り下に・・・って!?

 

「(やばい!このままだとヤラれる!助けて!誰でもいい!ヘルプミー!ギブミー!ジャスミー!)」

「お疲れ様でーす!!あれ?聖くん!?」

 

心の中で助けを祈ってたその時、生徒会室の扉が開き、そこからわいわいと女の子たちの声が聞こえる。聞いた事のある。元気な声だ。

 

「あら戸山さん。どうしました?」

 

戸山さん ー 恐らく戸山香澄(とやま かすみ)の事だろう。自分たちの後輩で元気な少女だ。笑顔を絶やさない彼女はどこか日菜に似ていてつい可愛がってしまう。

そしてその友達である女の子たちも来ているのだろう。ありがてぇ・・・。

 

「いや燐子先輩。聖くんが苦しそうなんで」

「あら?聖くん、ごめんね?」

「ううっ・・・」

 

戸山さん達が来てくれたお陰で俺は燐子さんの豊満なところから解放される。名残惜しいなんて思ってませんよ?

 

さて。彼女達のことを紹介しよう。まずは感性多彩少女、彼女たちのリーダーシップの子がバンド、Poppin’Partyのリーダー、戸山香澄さん。

そしてツインテール巨乳ツンデレこと、見た目とは裏腹のインドア少女にしてPoppin’Partyのキーボード、市ヶ谷有咲(いちがや ありさ)

このメンバーの裏リーダーでこの子たちのまとめ役にして「やまぶきベーカリー」のパン屋少女でPoppin’Partyのドラム、山吹沙綾(やまぶき さや)

その「やまぶきベーカリー」の良き常連でチョココロネ大好き少女。引っ込み思案の子が、Poppin’Partyのベース、牛込りみ(うしごめ りみ)

そしてウサギ20羽を保有しているマイペース少女が、Poppin’Partyのギターで唯一の見た感じロングヘア、花園たえ(はなぞの たえ)

 

この5人はPoppin’Partyと呼ばれる人気のバンドになるが、正直ここにいる分にはそのことすら忘れてしまう。

 

「お久しぶりです。先輩」

「ありがとぅ・・・ぐふぅ」

「だ、大丈夫ですか!?」

「全く・・・いつものですかー?燐子先輩?」

 

沙綾の質問をしらーっと受け流すように知らんぷりをしてさっさと作業へと移っていく燐子さん。おい。あんたがやったんだよあんたが。

ともかく、助かったことには変わりないので彼女たちに改めてお礼を言う。

 

「ありがとう、助かったよ」

「もう助けるのは慣れましたよ?それよりもどうして先輩はこちらに?」

 

うわ。花園さん酷い・・・助けるの慣れたなんてやめてくれ。毎日やられてる訳じゃないんだ。多分。

 

「んー?暇つぶし?」

「わかった。日菜さんのお迎えでしょ?」

「なんでわかった」

 

山吹さんは超能力者か!?俺の思考を一瞬で読むなんて!まぁ、そんなことは置いといて、山吹さんの言う通りだ。と俺は彼女たちに告げると「シスコンだー」なんて言われるが心外だ。俺は日菜を大事にしたいだけだよ。

 

いや。むしろこういうところがシスコンって言われる所以なのかも知れない。気をつけよう。

 

「じゃあ、時間までここで暇つぶししてる感じですか?」

「そうだね。と言ってもすぐだと思うよ?」

「じゃあ私の所のパンどうですか!」

「もらおう」

 

山吹さんからホクホクのパンを頂く。うん!美味しいな。

パンを食べながらテキパキと生徒会の手伝いをこなして行く。戸山さんと牛込さんたちは完全に観戦してるなぁ。市ヶ谷さんが「手伝えよ!」と言うが多分あの子たちはダメだな。と思いながら事を片付けていく。

 

手伝いながら、カバンに入っているデッキを確認する。遊戯王だ。

 

「(うわぁ・・・向こうでも使ったことないカードだらけだ。なんだこれ。天使デッキ?)」

 

デッキ内容は光属性、天使デッキだった。補助カードが多く攻撃力自体高い訳では無いので技術で押していくデッキだろう。

 

カードを一通り確認してデッキ調整だけする。どんな戦術、どんな攻略、どんな召喚を・・・。

 

「仕事進んでる?」

「ふぁっわ!ん!?あ、あい!」

「・・・大丈夫?」

「大丈夫です・・・ごめんなさい」

 

突然顔を見せてくれた燐子さんに対して申し訳ない声が出てしまった・・・本当にごめんなさい。

冷静になったその時。スマホに着信が掛かる。掛けてきたのは日菜だった。

 

「(おっ?終わったのか。なら迎えに行かないとな)」

 

そう言うと荷物をまとめて、燐子さんに「また明日」と言うと生徒会室を後にする。戸山さんが「私もー!」と着いてきそうだったけど市ヶ谷さんが首のとこを掴んで引きずって行った・・・怖いね。女の子は。

 

 

 

 

花咲川と羽丘は距離こそ離れているものの、そこまで遠い訳では無い。いわゆる姉妹校みたいなもので、それこそお互いに仲の良い友人がいたりする。

 

「もう学校出たらすぐそこだもんな」

 

校門を抜けると直ぐに羽丘が目に入る。全く。どうしてこんな近くに学校を作ったんだ。競争目的か?教育機関の犬どもめ。

 

すぐそこの道路を抜けて、羽丘にたどり着くと容赦なく校門を潜る。

 

「さて。日菜を待ちますか」

 

そう言いながらスマホを眺めようとすると「あら、聖じゃない」と聞くだけでも美しい声が聞こえる。

声のする方を向けばそこには通称、面倒見のいいお姉さんと、クールで凛々しいお姉さんが立っていた。

 

面倒見のいいお姉さんの方は今井リサ(いまい リサ)、技術の高いバンド、Roseliaのベースで、普段のふわふわした態度からはその感じはないが、演奏する時はかっこよかったりする。まさに姉御。

そしてその隣の凛々しいお姉さんが湊友希那(みなと ゆきな)でRoseliaのリーダー、ボーカルでリサ姉とは幼馴染らしい。ちなみに猫が好きだったりする普段からは感じられない乙女である。やはり女の子なんだなぁって。

 

「友希那さんとリサ姉。お久しぶりです」

「あら。数日前会ったばかりよ?」

「え?」

「まぁまぁ。うん、お久しぶりだね」

 

何か選択肢を間違えたのかと焦ったが、リサ姉のカバーによって救われる。ナイスリサ姉!気が利くぜ・・・。

 

「・・・貴方、変わった?」

「へ?」

「いえ。前はもう少し私に対して耐性があったのにね。気の所為だったかしらね?」

 

変わった。と言われてもしょうがないのか。段々と前の自分という存在がわかってくる気がする。

そうだ。前の自分は堅物だったんだ。冷静な。物事に集中するようなクソ野郎・・・だったのかもしれない。

 

「いろいろ俺もあるんです〜仕方ないです〜」

「そうなのね。あっ。そう言えば作曲の方はできたのかしら?こちらで確認したいのだけれど」

「あーまだですよ。今、中途半端で終わってます」

「早く作ってよ〜見たいじゃん〜」

 

どれだけ早くしても1日じゃ作れないんだなぁこれが。

と言っても彼女達にとっては作曲が出来上がらないのも問題だろう。家に帰った時には進めておこうと決心した。

 

「ごめんなさいね。これからさーくるで打ち合わせがあるのよ」

「Roseliaでですか?」

「そうだよ。今度のライブの話でね」

「聖も来るかしら?」

「自分は大丈夫ですよ」

「そう、でもライブには来てくれるわよね?」

 

「それはもちろんです」と言うと「お兄ちゃーん!」と言う言葉と共に日菜が俺の腹に突撃してくる。後ろからはメガネを掛けた女の子が慌てて走ってくる。俺は日菜の衝撃波に耐えて、その場に立ちとどまる。

 

「お邪魔したわね」と言葉を残し、友希那さんとリサ姉は去っていく。日菜とメガネの子も2人に挨拶をし、改めて自分に向き合う。

 

「お兄ちゃんありがとう!来てくれたんだ!」

「妹との約束は守るからな?当たり前だろ」

「お兄さんお疲れ様っす!」

「麻弥ちゃんもお疲れ様。いつも日菜と仲良くしてくれてありがとうね?」

「いえ・・・お兄さんに会えるから・・・えへへ」

 

彼女は日菜の友達で、アイドルバンド、Pastel*Palettesのドラム、大和麻弥(やまと まや)ちゃんだ。普段はメガネをかけているが仕事の時はしっかりと外すらしい。

 

ちなみに俺は何度か彼女の家にお邪魔したことがある。機材の確認や運び込みの時に手伝いとして呼ばれるぐらいだが。

 

「お兄ちゃん、商店街いこ!」

「また唐突に・・・どうして?」

「麻弥ちゃんが久しぶりに遊びたいって言うから!」

「お兄さんも良ければ・・・と思いまして///」

 

麻弥ちゃんは人見知りなのか少し照れているようにも見える。ふむ。ここで断れば多分泣くだろうな・・・よし。ここは行こうか。この後予定もないしね。

 

「いいよ」と短く返すと麻弥ちゃんは日菜と手を繋いでぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ。そんなに嬉しいことなのか?これは。女の子の気持ちは分からんねぇ。

 

「じゃあ行こうか?」

「「はーい!」」

 

元気な声とともに、俺は花咲川の向こうにある商店街へと向かって行った。

 

 

 

 

麻弥 side

 

 

えへへ・・・やった!聖お兄さんを誘うことが出来たっす!

先程からニヤニヤが止まらなくて少し気を抜くと緩い情けない顔をお兄さんに見せそうで怖いです。でもお兄さん鈍感なところあるっすからね。仕方ないです。

 

ジブンたちは商店街へ、そこにある色んなお店を回りながら時間を潰していた。今手には日菜さんオススメのクレープが握られていました。日菜さんとジブンはお揃いの味を。聖お兄さんは違う味を。

・・・お兄さんの美味しそうですね。

 

ジーッと見てるとお兄さんと目が合ってしまう。不思議そうにこっちを眺める姿も可愛いです!

 

おや?山吹ベーカリー辺りに人が多いですね。何かあります?

 

「おや?聖じゃないか。ふっ。今日も私たちは運命の出会いを果たしてしまったようだね」

 

うわっ。出ました。お兄さんに軽々しく近寄って手を取るのはバンド、ハロー、ハッピーワールド!のギター、瀬田薫(せた かおる)さんです。見た目は完全に男性よりなのに女の子と言う謎の人です。ハロハピの三バカの1人だと美咲さんが言っていました。

 

時々ロマンチストなところがあるんですが、なんでしょう。ただ、ナンパしてるようにしか見えないっす。

 

「そうだね、薫。ところで千聖が最近ね」

「いやぁ!こんな所でどうしたんだい!?君がここまで来るなんて珍しいじゃないか!」

 

あっ。露骨に話題変えましたね。ジブンでもあれは分かるっす。薫さんと千聖さんは幼馴染で聖さんは千聖さんと仲良いですからね。そこら辺の会話全部してるんでしょうね・・・。ご愁傷さまです。

 

「何って・・・遊びに来ただけだよ。たまには悪くないと思ってね」

「妹とかい?ふっ、いいお兄様だね。聖は」

「ここであったのも何かの縁だし薫も来るか?」

「良いのかい?せっかくの兄妹の時間じゃないのかい?」

 

ん?あれ?もしかしてジブンのこと視界に入ってないです?

お兄さんはチラっと一瞬だけこちらを見ると、薫さんに「いや、麻弥ちゃんいるから」と言うとやっと理解したのか「なんだ、兄妹だけじゃなかったのかい?ふっ。なら遠慮なくお邪魔しようかな」とメンバーが増えたっす。

 

そして流れるように山吹ベーカリーさんへ。沙綾さんが来てくれてオススメのパン教えてくれるんすよね。

と、入店してすぐ、いつもの常連客が目に入りました。あれ?今日は2人なんですね。

 

「おやー?聖くんじゃないですか〜どうしたんですか〜?」

「・・・聖先輩。お久しぶりです」

 

反骨の赤メッシュことAfterglowリーダーの美竹蘭(みたけ らん)さんとマイペースすぎるパン屋(食べる専)少女の同じくAfterglowの青葉モカ(あおば モカ)さんですね。いつも通りの光景っすね。

 

「お久しぶり。・・・何してるの」

「いつも通りパンを選んでるんだよ〜」

「同じモン食うかと」

「モカちゃんのエネルギーはパン全般なんだよ〜?」

「要するに食べたいだけだろ」

 

す、凄いっす。あの独特の世界観を持ってる青葉さんにツッコミを完璧に入れてるなんて・・・。

 

「流石、聖だね。私たちと言う花がありながら新しい花を持つなんて」

「両手に花を超えてってか?やかましいわ」

 

聖さんが更に新たなツッコミを入れてるっす!2人相手にこれはプロの技っすね!

3人がわいわいとしてる間に日菜さんはパンを選んでお会計に向かってました。お兄さんはどんな味が好きなんすかね?今度日菜さんに聞きますか。

 

「沙綾ちゃんこれちょーだい!」

「はーい!お会計これね!」

「ちょうどあるよ!」

「そう言えば先輩ってここ来るの珍しいですよね。何かあったんですか?」

 

おっと。その質問、薫さんの時にも聞いたっすね。てかお兄さんがここに来る度に何かあるって考えるのなんなんでしょう?お兄さんは嵐だった・・・?

 

お兄さんが美竹さんに何を言ったのか聞こえなかったですが言ったあと、日菜さんから袋を受け取り、山吹ベーカリーを後にしました。お兄さんの手には作りたて買ったばかりのチョココロネ。

 

「うーん。やはり美味しい」

「聖はチョコが好きなのかい?」

「まぁね」

「意外とお子ちゃまなんだね。聖は」

 

あっ。お兄さんの怒りが静かに溜まってるっす。日菜さんが「だ、ダメだよ?お兄ちゃん!」って必死にセーブしてますね。お兄さんも行きそうで行かないライン保ってるっす。でも気持ちは分かりますけど・・・。

 

でもジブン見逃してないっすよ?お兄さんが笑顔なのを。

 

side out

 

 

 

 

しばらく歩いていると。ふとあるお店が目に入る。そこそこ人も多く、盛り上がっている声が聞こえる。

そこはカードショップだった。この場所にもあるんだなと再確認しながら何をやってるか気になって仕方なかった。

 

「おっ。氷川の兄ちゃんじゃねえか!」

「・・・何してるんです?」

「ちょっとした祭りみたいなもんだよ!」

「相変わらずですね」

 

この店長は昔からどこからネジが外れていることで有名で、毎日大会を開催している時もあれば、やらない時もある。気が向いた時にしかやらないという嵐のような店長である。

前の記憶が甦る。確かこの店長に付き合わされて大会に出たこともあったな。懐かしく感じてしまうのは気の所為だろう。

 

「おっ!?彼女さんかい?それとも浮気かい?」

「店長じゃあるまいしやめてください」

「酷くない?俺そんなふうに見えてるの?」

「見えますね。俺には」

 

店長は極度の浮気性でこの前うちの姉に浮気してるのをシバいた記憶があるぞ。その前は後輩を・・・。

 

「ま、まぁ、ともかく今度大会あるから来なよ!」

「遠慮しときます。仕事があるんで」

 

「つれないねぇ!」と店長は元気よく返してくるけどまぁ、遊んで見たい気持ちはある。現に今、デッキもあることだしな。

しかし、日菜や他2人をおいて自分だけ楽しむってのはなぁ・・・なんか申し訳ない気もする。

チラッと3人を見ると「大丈夫だよ」みたいなことを日菜が言っているのが伺えるので遠慮しないでおこう。麻弥ちゃんや薫も同様の意見みたいで日菜の一言に対しては反論はないようだ。

 

「じゃあ」と短く声をかけると店長は特設ステージへと案内してくれる。店の地下にある一見、怪しい部屋だ。

 

「意外と広いっすね・・・なんなんです?これ」

「店の地下だ、としか言えないね。普段なら案内しないし使う機会もないんだがな。聖くんは別でね。はい」

「腕にはめるんですよね?」

「そうそう。あとデッキさしてね」

 

店長が渡してきたのは少し古い「遊戯王」のお馴染みであり必需品であるデュエルディスクだった。俺のは青をメインとして店長のは黒になっていた。

デッキをさすと、ディスクの下部分が展開する。モンスターゾーンと魔法・罠ゾーンが改めて解放される。

 

俺は荷物を適当に置いて、店長の対面へと入る。実際にやるのは、これが2回目だ。

 

フィールドには風が吹き荒れる。日菜たちはそれぞれ髪やスカートを抑えて堪える。

妙な高揚感に襲われる。遊戯王に触れるのは初めてではないのに、なんだ、楽しんでいるのか。

 

「「デュエル!」」

 

ライフの表記がディスク表面に表れる。4000か。

手札をチラッと見る。「天使の施し」、「マジック・クロニクル」、「天空騎士(エンジェルナイト)パーシアス」、「時空の天使カマエル」、「聖騎士の槍持ち」の5枚だ。

天使の施しは安定して墓地、手札を補充できる貴重カードだ。使わない手はない。

パーシアスもまた、安定したドローソースを得れるカード。ただ、★5ながら攻撃力が低い。

聖騎士の槍持ちはリリースすることでデッキから装備カードを得れる補充要員。★2

カマエルは墓地には行かず。1度ゲームから除外され、さらに手札の天使族モンスターを墓地へ送ることで特殊召喚できるモンスター。召喚後も2つの効果から1つを選択する効果モンスター。★5

マジック・クロニクルは発動後カードを5枚選択し除外、カウンターが2つ貯まる度にカードを相手に選ばせ、手札に加えるカード。しかし、除外されている状態でこのカードが破壊された時俺は破壊されたカード×500ポイントのダメージを受けてしまう。リスキーなカードだ。

 

「俺が先行を貰うぞ?ドロー!」

 

店長が有無を言わさず先行を取る。仕方ないか、言ったもん勝ちだもんな。これは。

 

「永続魔法、補給部隊を発動!」

 

補給部隊、フィールドのモンスターが破壊されると1枚ドローすることが出来る補充カード。永続魔法だ。

 

「そして魔法(マジック)カード!融合!」

「融合!?」

「手札の2体のサイバードラゴンを融合!現れよ!サイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

その掛け声と共にフィールドに現れるのは2頭の電子の竜、サイバー・ツイン・ドラゴン。攻撃力2800の2回攻撃ができるモンスターだ。ドラゴンに見えるかもしれないが一応機械族だ。

 

「おおお!やばいっす!カッコイイっす!!!」

 

フィールドの外で麻弥ちゃんが子供のようにはしゃいでいるのを薫や日菜で抑えているのがハッキリと分かる。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

魔法・罠ゾーンにカードを差し込むと、1度地面に浮いて表れる。伏せたカードが何かわからないために注意が必要かもしれない。

 

「俺のターン」

 

カードを1枚ドローする。引いたカードは「レベル・スティーラー」、★1モンスターだが、シンクロ素材に多様できる優秀なモンスターだ。★5以上のモンスターのレベルを1つ下げることで墓地から特殊召喚できる。アドバンス召喚の素材にはできない。

 

魔法(マジック)カード!天使の施し!」

 

デッキからカードを3枚ドローし2枚を捨てるカード。デッキから3枚改めて引いてカードを確認する。

引いたカードは「レインボー・ヴェール」、「エンジェル・リフト」、「シャインエンジェル」の3枚だ。

「レインボー・ヴェール」は戦闘するモンスターの効果を無効にできる優秀なカード。しかし言ってしまえばそれ以外に効果がない。

「エンジェル・リフト」は罠で限定版のリビングデッドの呼び声だ。

「シャインエンジェル」は破壊後、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚できる展開力のある優秀なモンスターだ。

・・・ここは手札の高レベルモンスターを捨てておくとしよう。

 

手札からレベル・スティーラーとカマエルを墓地に送るが。ここで効果を発揮するのが新しい天使。

 

「手札から墓地へ送った時空の天使カマエルの効果発動、このカードが墓地へ置かれる時、1度だけゲームから除外することができる。さらに手札を1枚コストにすることでこのカードを特殊召喚する!」

 

「マジック・クロニクル」をコストに、除外してあるカマエルを呼び戻す。

攻撃力2000、守備力1800でサイバー・ツイン・ドラゴンには届かないが。しかし、出しておかなければ俺は次のターン攻撃されてしまうからな。

紅き鎌を持った天使が俺の目の前に降り立つ。もちろん守備表示だ。

 

「そして墓地のレベル・スティーラーの効果!カマエルのレベルを1つ下げてこのカードを特殊召喚する!」

 

さらにてんとう虫のようなモンスターが俺の目の前に表れる。攻撃力600、守備力0のモンスターだが生憎、サイバー・ツイン・ドラゴンには貫通能力はない。

 

「シャインエンジェルを守備表示で召喚し、カードを伏せてターンエンド」

「永続(トラップ)サイバー・ネットワーク!発動後、俺はデッキからサイバー・ドラゴンを除外する」

 

そういい、デッキから最後のサイバー・ドラゴンを除外する店長。そして「俺のターン」と言いデッキからカードを引く。

 

「サイバー・ドラゴン・コアを攻撃表示で召喚!効果でデッキからサイバー、サイバネティックと名のついた魔法・罠カードを1枚加える」

 

店長がそう言いながら手札に加えたのはサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー。「サイバー・ドラゴン」モンスターとその融合モンスターを墓地へ送ることで攻撃を無効にして、相手モンスターを破壊するカードだ。

 

「行くぞ!サイバー・ツイン・ドラゴンでカマエルを粉砕する!エヴォリューション・ツイン・バースト!」

「モンスター効果発動!フィールドのモンスターを墓地へ送ることでカマエルは戦闘による破壊を無効にする!」

 

レベル・スティーラーを墓地へ送り、カマエルの戦闘破壊を無効にするが、次の瞬間、シャインエンジェルが爆発する。

忘れていた。サイバー・ツイン・ドラゴンの効果だ。2回攻撃ができる。

 

「カードを伏せてターンエンドだ」

「シャインエンジェルの効果で、俺はデッキから新たなモンスターを呼び出す!」

 

出したモンスターは救済のレイヤード。攻撃力1400、守備力1500のカウンター罠への対策モンスターだ。

伏せたカードはサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー。先程引いたカードで。こちらの盤を大きく狂わせれるカード。

 

「(・・・サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーはサイバーモンスターを破壊し、こちらの盤面を破壊するカード。さらにサイバー・ネットワークもあるか)」

「サイバー・ネットワークの効果で、プロト・サイバー・ドラゴンを除外する」

「・・・俺のターン」

 

ドローして引いたカードは「天霊の守護域」と言うフィールド魔法。発動後、デッキからレベル4以下、天使族モンスターを手札に加えるが、発動コストとしてデッキから天使族モンスターを5枚墓地へ送る必要がある。

その時、俺の頭でカードが繋がる。モンスターからモンスター・・・そしてシンクロへと。

 

・・・見えた。一瞬だが、あのサイバー・ドラゴンを破る方法を。

 

「天霊の守護域を発動。発動コストにデッキから天使族を5枚除外する。その後、デッキからレベル4以下の天使族モンスターを手札に加える」

 

加えるモンスターは★2、天使族の、「見習い天使シーナ」だ。攻撃力200、守備力800のチューナーモンスターで、墓地から、手札からあらゆる召喚方法を持つモンスターだ。

そして流れるように救済のレイヤードを墓地へ送り天空騎士パーシアスをアドバンス召喚。そして手札のシーナを特殊召喚する。

 

「見習い天使シーナ」は手札からレベル5以上の天使族が召喚されると墓地のカードを新たに除外することで特殊召喚できるモンスター。

そして墓地のレベル・スティーラーを、罠カード、「エンジェルリフト」で特殊召喚する。これで条件は揃った。

 

「(・・・このカード。親父が送ったこのカードを使う時が来た・・・っ。力を貸してくれよ!)」

「やる気か!」

「行くぜっ!店長!俺はレベル5!天空騎士パーシアス、レベル1レベル・スティーラーにレベル2見習い天使シーナをチューニング!」

 

パーシアス、レベル・スティーラーの周りにシンクロ召喚を象徴するリングが纏わる。星が1つになり、新たな力を呼び覚ます。

 

「・・・光の龍よ。閃光の翼を羽ばたかせ、この戦場に舞い降りろ!シンクロ召喚っ!!ランク8!

光翼聖竜シャイニング・ドラゴン!」

 

★8、攻撃力2500、守備力3000の光り輝く龍が俺の元に舞い降りる。日菜たちからも、店長からも感激の声が漏れる。

 

「綺麗・・・」

「美しいね」

「ま、眩しいっす!」

 

聖天の龍はひと吠えする。分かってるさ。お前の効果を使えばいいんだろ。

 

「俺はシャイニング・ドラゴンの効果を発動!召喚成功時、手札を1枚コストに、デッキから天使族モンスターを墓地へ置き、墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚する!蘇れ!シーナ!」

 

再び、チューナーモンスター、見習い天使シーナを呼び戻す。攻撃力こそ頼りないが、このデッキでの俺の相棒だ。使わない手はない。

そして「天霊の守護域」の効果を使用する。手札の装備カードを墓地へ送り、デッキから新たな装備カードを手札に加える。

 

「攻撃力2500?そんなのではサイバー・ツイン・ドラゴンを越えれないぞ?」

「・・・天霊の守護域の効果。天霊の守護域を破壊することで、除外してあるカードを全て墓地へ送る」

 

・・・これで条件は整った。

伏せカードはサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー、補給部隊、サイバー・ネットワーク。この中で脅威なのはサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーだけだ。他はこちらに直接関与するものじゃない。

しかし、問題なのは破壊したあと。サイバー・ドラゴン・コアを残してしまうが・・・

いや。今しかない。

 

「バトル!シャイニング・ドラゴン!サイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!」

「馬鹿め!サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力はシャイニング・ドラゴンを上回る!返り討ちに合うだけだぞ!」

「シャイニング・ドラゴンの効果発動!」

 

シャイニング・ドラゴンの効果。それは墓地にある天使族、ドラゴン族モンスター一体につき、攻撃力を300ポイントずつアップしていくもの。墓地にはパーシアス、シャインエンジェル、救済のレイヤード、さらに天霊の守護域で墓地に戻した天使族モンスターたち。よって攻撃力は・・・

 

2500→4900に上がるわけだ。

 

「なにぃ!?」

「サイバー・ツイン・ドラゴンを粉砕するっ!行け!」

「くっ・・・なら!」

「店長?無駄だ。シャイニング・ドラゴンは天使族チューナーをシンクロ素材にしたとき、魔法・罠の効果では破壊されない!」

 

そのままシャイニング・ドラゴンの攻撃がサイバー・ツイン・ドラゴンを粉砕する。大きな爆発が辺りを巻き込んで発生する。大きな衝撃波が俺たちを襲う。

 

4000→1900

 

「くっ・・・補給部隊の効果で俺はカードをドローする」

「ターンエンドだ」

「ドロー!・・・見せてやる。進化したサイバー流の姿ってのを、魔法カード、強欲な壺!」

 

デッキからカードを2枚ドローする強欲な壺。引いたあと。ニッコリと顔が歪むのが見えた。

さらにサイバー・ネットワークで新たにプロト・サイバー・ドラゴンを除外。

 

「魔法カード、死者蘇生!これで墓地のサイバー・ツイン・ドラゴンを蘇生する!」

 

その声とともにフィールドに再び双頭の竜が蘇る。そしてさらに魔法カード、次元誘爆を発動させる。

次元誘爆は、融合モンスターをデッキに戻し、お互いの除外してあるモンスターを特殊召喚するもの。しかし、俺には除外されているモンスターはいない。

 

「蘇れ!サイバー・ドラゴンたち!」

 

除外してあるサイバー・ドラゴン、そしてプロト・サイバー・ドラゴンを呼び戻す。

さらに手札から融合回収を発動、融合のカードとサイバー・ドラゴンを手札に戻す。

 

「見せてやる・・・サイバー流の姿を!魔法(マジック)カード!融合!!手札と、フィールドのサイバー・ドラゴン三体を融合する!現れろ!サイバー・エンド・ドラゴン!!!」

 

三体のサイバー・ドラゴンが次元に飲み込まれると、そこから新たな三頭の翼を得たサイバー・ドラゴン。通称、サイバー・エンド・ドラゴンが現れる。

 

「おおおおお!カッコイイっすー!」

 

腕をぶんぶん振りながら麻弥ちゃんがこっち来ようとしてるのを2人が必死に抑えてるが、俺はそんな場合ではなかった。

シャイニング・ドラゴンの攻撃力強化は自分のターン。しかも自分のターンに1度だけ。それ以外では強化出来ないのだ。

 

「バトルだ!行け!サイバー・エンド・ドラゴン!」

「シャイニング・ドラゴンの効果!墓地の天使族以外のモンスター、一体をゲームから除外することで戦闘による破壊を無効にする!」

「だが戦闘ダメージは受けてもらう!」

 

サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃がシャイニング・ドラゴンに当たり、その余波が俺に直撃する。ダメージによってライフが減らされていく。

 

4000→1500

 

「お兄ちゃん!」

「・・・大丈夫。ライフは残ってる・・・俺のターン」

 

引いたカードは「ガードブロック」、戦闘ダメージを無効にして、カードを引ける優秀な罠カードだ。

 

「行けっ!シャイニング・ドラゴン!サイバー・エンド・ドラゴンに攻撃!」

「ぐっ!」

 

1900→1000

 

「カードを伏せて、装備魔法!ファイティング・スピリッツ!このカードをシャイニング・ドラゴンに装備する」

 

装備魔法、ファイティング・スピリッツ。相手フィールドのモンスター、一体につき、300ポイント攻撃力を上げ、さらにモンスターが戦闘破壊されるとき装備カードを破壊することで破壊を無効にするカードだ。

 

店長はカードをドローする。補給部隊の効果もあって今は手札が2枚だ。

 

魔法(マジック)カード!パワー・ボンド!」

「パワー・ボンド!?」

「墓地、またはフィールドから機械族の融合モンスターに必要な素材を除外して、融合モンスターを融合召喚する!俺は・・・墓地のサイバー・ドラゴン三体を除外!蘇れ!サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

再び三頭の竜が姿を現す。その姿は先程より、より大きくなって見える。

攻撃力はパワー・ボンドの効果がプラスされて8000にあがっている。

 

「カードを伏せ、バトルだ!行け!サイバー・エンド・ドラゴン!」

「罠カード!ガードブロック!戦闘ダメージを無効にして、俺はカードをドローする!そしてファイティング・スピリッツの効果でこのカードを墓地へ送り、モンスターの破壊を無効にする!」

「あっ!?」

 

攻撃が無効になって、パワー・ボンド対策をしないとどうなるか。パワー・ボンドの効果はエンドフェイズ時に特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けるというもの・・・つまり、

 

「4000のダメージ・・・」

「いやー・・・ミスミス・・・」

 

こうして、俺のこの世界での初戦は幕を閉じたのである・・・いやほんと・・・締まらねぇな。

 




サイバー・エンド・ドラゴン大好きです。闇ヨハンとカイザー戦はグッと来ましたね。闇に落ちてもカイザーはカイザーだったぜ・・・ふっ。

ちなみに俺はカイザーになりたくてデッキ作ったけど最後は校長寄りになってたおっさんです。


カード紹介

光翼聖竜シャイニング・ドラゴン
★8、光属性
ATK 2500 DEF 3000
ドラゴン族/シンクロ/効果
このモンスターのシンクロ召喚に成功した時、次の効果から選択して発動する。
①このモンスターのシンクロ召喚時、手札を1枚墓地へ送り、デッキから天使族モンスターを墓地へ送ることでで墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚する。
②フィールドの天使族、チューナーを墓地へ送ることでそのターンのエンドフェイズまでそのモンスターの攻撃力分、攻撃力をアップする。
このモンスターが天使族チューナーモンスターをシンクロ素材として召喚に成功した時、戦闘時、このモンスターを対象とする魔法・罠カードの効果は無効になる。
墓地の天使族、ドラゴン族モンスター、一体につき、攻撃力は300ポイントずつアップする。この効果は1ターンに1回しか発動できない。
このモンスターが戦闘で破壊された時、シンクロ素材となったモンスターと同名モンスターをデッキから特殊召喚する。


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2話

Q,前回のサイバー・ドラゴンは噛ませか?
A,いいえ。ちゃんと狙いがあるのでご安心を。てか好きなのでそんな扱いで済ませるわけがないんだよなぁ!

というわけで更新です。こうやってほのぼのと更新するのいいかもな。てか遊々亭さんの友希那(サイン)高杉。なんで1回、10万超えた?まじわけわかめ。
田舎の中古屋は優秀だぜ?それの2/1の値段なんだからよ。へっ。これがあるから田舎はやめらんねえぜ。

というわけで続きです。どうぞ。
D-HEROのデッキ難しいな。


「・・・眩し」

 

この世界に来て数日。こっちの俺の生活には大体慣れては来た。ただ、男友達が少ないってのは痛いな。

履歴を見たがいない訳では無いらしい。と言ってもだいぶ離れているから直ぐに会える訳でもない。

カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでくる。部屋の中には紛れ込んだ小鳥が、俺の頬をくちばしで突いてくる。

少しずつ目を開けて視界を慣らす。うん。今日もいい朝だ。

 

俺の日課は朝起きて直ぐのランニング。いつも通りのミュージックプレイヤーとイヤホンを掛けて、動きやすい服装へと着替える。机の上にあるジャンクフードを軽く噛じる。うん。やっぱブルーベリーに限る。レーズンが程よく美味しいんじゃ。

 

日菜たちはまだ起きていない時間だろう。なら今日はゆっくり走ってもいいかもしれない。

朝ごはんの下ごしらえだけして、とりあえず今日は商店街の方まで行くかな。

 

 

 

 

最近の朝は風が妙に涼しい。春も始まりなのに、こんな涼しく感じるのだろうか。

軽く走りながら呼吸を整える。体力が元々ある方では無いのでこればっかりは鍛錬の積み重ねかな。

途中で野良猫に構ってやる。こいつらはたまに友希那さんが連れてくるからな。毛並みぐらいは整えてやらないとね。

 

ちゃっちゃっと手に持ってた櫛で整えてやる。猫はお礼と言わんばかりに俺の足に顔を当ててくる。くすぐったいなぁ。

 

さて。今からどうしようか・・・。

 

さーくる方面へ行くのもよし。商店街へ行って顔を見せるのもよし。うーん。迷うね。

とりあえず今日の自分に任せることにする。明日のことは明日の自分。明日がいつもの自分じゃないからね。こればっかりは任せるしかないね。

 

とりあえず今日はさーくる方面へ行くことにする。たまには会えない人達と会えるかもしれないからね。

 

 

 

 

「ありがとね!聖くん!」

「いやぁ、大丈夫ですよ。まりなさん」

 

さーくるに到着して直ぐ。俺はさーくるの手伝いをしていた。重たい荷物を運ぶ仕事だったがまあ、楽だった。身体を動かすにはよかったかな。

さーくるはライブハウスだ。Roselia、Poppin’Partyなどと言った常連や、Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド!も使っているのを見る。ただ、たまに音漏れするのが欠点だ。

 

「今日はちょっとゆっくりしてく?」

「・・・ちなみに予約とかあります?」

「えーっと?予想は?」

「今日はRoseliaより、Afterglowのメンツが先に来るかな。美竹さんのソロに1票」

 

いつの間にか話を弾ませていると、入店を知らせる金属音が鳴る。そこにはギターケースを背負った美竹蘭が立っていた。・・・薄着かよ。暖かいのはいい事だが年頃の女の子が普段からそんな格好では困るだろ。

 

「・・・おはようございます。先輩」

「おはよ。・・・その服装大丈夫なの?」

「いつも通りだし」

「ライブ以外は辞めておけよ・・・」

 

なんというか。目のやりどころがない。肩のところが出ていて、ぶかぶかなのか、服の隙間からチラッとむ、胸のところが見えてしまう。太ももも妙に強調しているとしか思えない。わざとだろ。

 

その後でAfterglowの面々が入ってくる。青葉さんは相変わらずパンを両手に・・・、あっ。後ろの子がパンを抱えさせられてる。

 

「おー!聖じゃねーか!久しぶりだなー!」

 

Afterglowの精神的支柱、姉御肌でドラムの宇田川巴(うだがわ ともえ)。Roseliaの宇田川あこ(うだがわ あこ)のお姉さんだ。一応後輩なのだが、呼び捨てにされることが多い。と言うか、先輩って呼ばれた記憶が無い。

その隣がAfterglowのベース。バンドに必ず1人はいるマイペースっ子。たまに人形作ってくれるイメージの、上原ひまり(うえはら ひまり)。ふわふわした子でたまに遊びに来てくれる。

最後にパンを持たされてる可哀想な子が羽沢つぐみ(はざわ つぐみ)だ。努力家で、元気な子だ。・・・いいように使われてるなぁ。正直な子だ。

 

この5人は信じられないかもしれないが幼馴染だ。仲良しなのはいい事だな。

 

「青葉・・・君はまた」

「うん〜?なにかな〜?」

「・・・もう何も言わねぇ」

「あれ?先輩はどうしてここに?」

「散歩。暇だからこっちまで来た」

 

「元気だな!」と巴が評してくれるけど別にそんなものじゃない、ただ日課になってしまっただけで、今更スポーツにハマるとかそんなのではない。

・・・?美竹さんがこっちを睨んでる気がするけど何かしたか?気のせいかな。

 

「あたしらは練習だよ。次のライブがいつあるかわかんないしな!」

「聖さんも来ます?」

「残念。俺はAfterglow専属じゃないんだな。入る権利はないよ」

「えーっ!?でも来てくれたら楽しいんですけど・・・」

「練習だからって()()が入る訳にはいかないだろ?そういう事だ。じゃあな、あっ。まりなさん、お邪魔しました」

 

そう言うと俺はさーくるを後にする。まりなさんが「また来てね〜」と言葉を残して手を振ってくれるのには素直にてを振って返した。

 

「・・・振られたな」

「うっさい。行くよ」

 

 

 

 

家に帰る。鍵は開いているようで。誰かがまだいるようだった。しかし、リビングに来ても誰もいない。

 

「あれ?」

 

「おかしいな」と心の中で思いながら1階を捜索するも誰もいない。となると2階かな。

2階に上がろうとすると、日菜たちの声が聞こえてくるようになった。

 

「うぇ〜ん!今日は遊ぼーよーおねーちゃんー!」

「今日は練習があるからダメと言っていたはずです!ダメです!」

 

なんだなんだ。と、慌てながら部屋の扉を開けると、鬼神のような顔をした紗夜姉とその紗夜の足に引っ付いている日菜が居た。どうやら久々の休日だから紗夜姉と遊びたいらしい。

 

ただ、今日はRoseliaも練習があるらしく、紗夜はどうしてもそちらに行かなければならないらしいが・・・。たまには休みか無いとキツいだろ。

 

「・・・Pastel*Palettesは練習はないのですか?」

「今日は彩ちゃんがバイトだからないよー?」

 

なるほど、と納得するが、次の瞬間、紗夜は日菜を引き剥がしてしまい、そのまま部屋を出ていってしまう。日菜は悔しそうな顔で「ぶーぶー」と子供のように拗ねていた。こればっかりは日が悪いなと思った。

そのまま寝ているのはまずいので日菜の身体を起こしてやる。汚れた部分がないかもついでに確認してやる。

 

「聞いてよ、兄ちゃん!お姉ちゃんったら遊んでくれないんだよ!?」

「さっき見たよ。紗夜姉も大変なんだよ」

「でもー!」

「・・・?ちょっと待って」

 

そこで何かの天命なのか、スマホに着信が入る・・・差出人は、弦巻さん?なになに・・・?お茶会のお誘い?

どうやらハロー、ハッピーワールド!のみんなでお茶会をするみたいで、作曲をしてる俺が何故か誘われているみたいだ。邪魔じゃないなら行くけど。

 

『日菜もいるけどいいの?』

『全然大丈夫よ!というわけで迎えに来たわ!』

 

え?

 

「きゃーっ!?な、なんですか弦巻さん!」

「聖ー!来たわよ!」

「お兄ちゃん!?お兄ちゃん!!」

 

・・・ふっ。どうやら今日は嵐に攫われるみたいだぜ?

薫みたいなことを考えていると、部屋まで進入してきた黒服の人に俺は連行される。そして黒の高級車に乗せられて運ばれる。

 

弦巻家の総資産は俺も分からないが奥沢さんから聞いた。なんでも黒服の人達は過保護でこころの言葉は、次の日には何からしら起こる前兆だと・・・。

 

「今日はみんな来てるのよ!それで聖がこれば笑顔になると思って!」

「・・・俺はゲストかよ」

 

悪態つく言い方をしたけどさすがは弦巻さん。この言葉を無視して笑顔で俺の頭を撫でてくる。動物じゃねぇっての。

 

「(・・・ん?そういえば奥沢さんがミッシェルだってのを弦巻さんたちは知らないんだろ?・・・あぁ)」

 

だいたい察してしまった。こいつらは目の前の事しか受け入れないタイプの人間なのだ。ミッシェルは存在するものだと思ってる。つまり、この子達は残念なことにミッシェルを1人の生物だと思っているのかもしれない。

 

知っているのは花音さんだけだったか。彼女も彼女できっと大変なのだろう。あとでしっかり労ってやらないとな。

 

さて。そんなことを考えていると、あっという間に時間は過ぎたらしく、こころの家に着いてしまう。相変わらずの豪邸である。もう二度と入ることなんか無いと思っていたけど・・・まさか半誘拐的な形で連れてこられるなんて思ってもみなかった。

 

「ほらほら!こっちよ!」

「痛い痛い!引っ張るな!」

 

残念なことに俺の足は弦巻さんに劣る。それであって弦巻さんが全速力で走るとどうなるか。俺の足は半ば引きずられる形になるわけで痛い。

 

庭の広いところ(いやどこも広いけど)の中心には白い大きめのテーブルと優雅なティーカップ、そしてお菓子類、そこにいる4人のメンバー。ハロー、ハッピーワールド!の面々だ。

 

「おや、結局連れてきたのかい?」

「当たり前よ!聖は私たちハロー、ハッピーワールド!の一員よ!?」

「聖くん!コロッケいる!?」

 

身を乗り出しそうな勢いでコロッケを勧めてくるのは、お肉店の少女、北沢はぐみ(きたざわ はぐみ)ちゃんだ。俺はちなみにこの子のコロッケファンである。美味しいに罪はない。

 

「柔らかいやつなら是非」

 

早速ハロハピの三バカに出迎えられるが、はぐみちゃんのコロッケは好意として受け取っておこう。美味しいんだよねこのコロッケ。

薫は紅茶を片手に優雅にポーズを決めてみせる。うん。普通に絵になってるんだよな。

その二人の間にはこのグループ1の苦労人、ミッシェルの中の人こと、奥沢美咲(おくさわ みさき)だ。もう疲れてるのか額に汗が見える。

その対面には松原花音(まつばら かのん)さんだ。少し内気な子だが努力家である。常識人だが、突っ込めないのが奥沢さんの負担を増やしてるのかもしれない。

 

俺は空いている奥沢さんとはぐみちゃんの間に座る。コロッケを早速頬張る。うん。いつも通りの美味しさだ。いい感じ。

 

「たまにはハロハピのみんなでお茶会もいいものね!」

「そういえばミッシェルはいないんだ?」

 

ギクッと反応してしまう俺と奥沢さん。花音さんが「は、はぐみちゃん・・・」と、物言いたげだが間髪入れずにこころが「ミッシェルも来ればいいのにー」と言い、花音さんがさらに慌ててしまう、最後にトドメの一撃と言わんばかりに薫が「きっと照れ屋さんなんだよ・・・可愛いね」とトドメを刺す。この3人は・・・ほんとに。

 

「あー。いいですよ花音さん。もう諦めてるので」

 

奥沢さんがため息をつきながら花音へ言葉を送る。うん。確かにこの3人はもうダメだ。純粋な子供過ぎて別の意味で泣けてくる。多分サンタすら信じているのだろう。

 

「家が遠いのかな?」

 

はぐみちゃんの唐突な一言に嫌な予感が横切る。逃げようとするものの、隣の奥沢さんに服を掴まれる。やべぇ。道連れにするつもりだ。この人意外と悪ぃこと考えてるぞ!

 

「そういえば美咲、ミッシェルの家ってどこにあるか知ってるかしら?」

 

奥沢さんがビクビクしてるダメだ。下手なこと言えないから言葉を選んでるんだ。これは助けてやらないとな。

 

「ミッシェルランドとか・・・じゃないのか?ほら、アイツってなんか不思議の国から来た感じあるし?」

「「「ミッシェルランド・・・!」」」

 

あっ。地雷を踏んだ気がする。三バカが何か閃いたような反応を示す。

まぁ、間違ったことは言ってないと思う。ミッシェルの設定ってそんなのじゃなかったっけ?ほ、ほら、某ネズミーラ○ドのネズミみたいに。

 

キラキラと夢を見るかのような顔になる弦巻さん。はぐみちゃん・・・。これは嫌な予感するぞぉ?

 

「きっとミッシェルがいっぱいいるのね!」

「・・・ふっ。楽しそうだね」

「行ってみたい!行ってみたい!!!」

 

俺は人知れずキョロキョロと周りを監視する。するとどうだろう。1人の黒服さんが物陰で電話をしているじゃありませんか!あー、あー、あーーーー。

 

奥沢さんも何かを察したらしく。俺の服を握る手を強くする。・・・ごめん。ごめんって・・・。

 

 

 

 

「・・・ありがとうございました」

 

帰りは弦巻さん家の黒服の人にさーくる前で降ろしてもらった。弦巻さん家の黒服さんはほんとに便利だなぁ・・・。

 

さて。お茶会も終わったしどうしようか。ふと考えたのは日菜と紗夜のことだった。そういえば2人はどうしているのだろう。お昼ごろだし、紗夜姉たちはご飯に出ている頃だろう。日菜は彩の所へ行ったのかな?まぁ、心配だが。

 

まずは紗夜姉の所へ行こうか。ちょうどお土産もあるしね(コロッケ)。

 

さーくるの門をくぐると早速、電池が切れ掛けのまりなさんが目に入った。あとでコーヒーでもあげますか。このままだと病院行ってしまいそうだから。

部屋割りを見て、Roseliaの場所を把握する。部屋まであとは直球だ。

 

「お邪魔しま・・・うっ!?」

「あら。聖じゃない」

 

・・・部屋の中は、なんということでしょう。まだまだ元気な友希那さんと床に疲れたように倒れている他のメンバー・・・大体わかったぞ・・・。

友希那さんは相変わらず音楽に集中すると周り見えない癖が出るからな。これは事故だ・・・稀にある事故だ。

 

 

 

 





Roseliaの人は1回は死にかけてると思う。特にあこちゃんなんかは絶対無理に付き合わされてるはず。

個人的にミッシェルランドは夢です。もう行きたいね。うん。今のデ○ズニー解体してミッシェルランドにしようぜ。


カード紹介。

見習い天使シーナ
★2 光属性
天使族/チューナー/効果
このカードの効果は1ターンに1つしか発動出来ない。
手札からレベル5以上のモンスターの召喚、特殊召喚に成功した時、墓地のカードを1枚除外してこのカードを特殊召喚する。
フィールド上の天使族、ドラゴン族シンクロモンスターが破壊された時、このカードが墓地にある時、特殊召喚出来る。
フィールドにモンスターが存在しない時、このカードを特殊召喚できる。


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3話


更新です。最近になってルールを理解したと思ったらルール改定されるじゃないですか〜やった〜。

今1番欲しいのはジャンク・スピーダーです。はい。

それではお読みください。


「姉さん!あこちゃん・・・!もう!友希那さん!」

 

俺は今、さーくるの一室で介護に追われている。原因は歌姫こと、湊友希那がポンコツをやらかしたからだ。まさかお昼を抜いてもやるとは。

 

正直Roseliaのライブが近いのは知っているが、まさかここまでやるなんて予想外すぎた。今井さんや姉さんがしっかり止めると思ったのに。いや、姉さんは逆に便乗するのか。でも誰か止めると思ったのに・・・。

 

「ごめんなさいね。つい・・・」

「つい・・・じゃ!ないですよ!全く!」

 

とりあえず各メンバーを起こす所から始めるが唸ってばかりで目覚める気がしない。諦めずに声を掛けていると、先に起きたのは姉さんからだった。

 

「・・・聖?」

「紗夜姉!?よかった・・・死んだかと・・・」

 

その後、リサさん、燐子さん、あこちゃんと目を覚まして行くがまぁ、この状態じゃあ練習はとてもじゃないけど難しいだろう。あこちゃんに至ってはもう仰向けで寝ててとてもじゃないけど触れない。(介護できない)

 

ともかく。4人全員を起こしてやる。全く、体調管理も出来ないなんて何とも情けない。

 

「いやぁ。まさかいつの間にか気を失ってるなんてね・・・」

「いつものリサさんなら軽く言いそうですが、重大な問題ですからね。これは」

 

実際問題として倒れるということはそれなりに危険なことでもある。場合によってはそれで死んでしまうかもしれないからだ。

そういう事があるからに俺はRoseliaの練習をたまに見に来る。友希那さんが外れるとこのグループはマジで全部外れるからね。

 

ともかく。どんな活動にも必ず休憩というものは必要だ。どうか彼女たちを休ませれる方法は・・・?

 

「あっ。みんなでご飯行きません?ちょうどいい時間ですし」

「・・・いいんですか?」

「大丈夫。それにほら、皆さんバンドの活動頑張ってますしね」

「お兄ちゃんとご飯!?」

 

みんなが目を輝かせながら反応してくる。俺は「えぇ・・・」と半引きしながら対応はするものの、彼女たは何故か獲物を捉える目をしている・・・んん。怖いな。

ともかく身を守る用意はした方がいいかもしれない。

 

「・・・というわけでお店まで行きます?」

「はーい!」

「仕方ないわね。今日のところは甘えましょ」

「友希那さんのOKも出たので行きましょーか」

「待って。私達も行く」

 

そう言い、スタジオの扉を開けたのは隣で練習してるはずのAfterglowだった。美竹さんを先頭に何故かこっちに乱入してくる。

 

「あら、美竹さんじゃない。どうかしたかしら」

「要件があったから来るんでしょ。てかその話、あたし達も行くから」

「どうしてです?美竹さんには関係の無いはずですが」

 

紗夜姉と友希那さんが立ちはだかるように美竹さんの前に立ちはだかる。そうだ。あの二人(紗夜姉は別)は仲が悪かった?んだ。ライバルだか知らないけど。音楽やってるんだったらいい加減認めてあげてもいいんじゃないのかなぁ・・・いや、そういう訳じゃないんだろうけど。

 

てか会話聞こえてたのか。まぁ隣だから聞こえててもおかしくないけど。そこまで鮮明に聞こえるものかね。

 

「あたしは先輩に聞いてるの」

「まぁいいんじゃない?たまには親睦を深めるのも悪くないよ」

「ってことはいいのか!?」

 

巴さんが嬉しそうに声をあげる。まぁ正直俺は迷惑ではないしな。人が増えれば楽しいだろうと考えてるが、不安がない訳でもない。友希那さんと美竹さんの相性は悪いって理解した。

 

逆にリサさんと青葉さんはバイト仲間だし、あこちゃんと巴さんは姉妹、他もなんだかんだ相性合いそうだしな。そこは問題ないのだろうけど。この2人だけは犬猿の仲すぎてどうにも出来そうにない。リサさんをチラッと見るが「やれやれ」と言った様子だ。そこは時間が過ぎてくれるのを待つしかないのだろうな。

 

とりあえず意見は決まった。善は急げだ。

 

「よし。じゃあファーストフード店まで行きますか!ちょうど彩さんがバイトしてるはずだし」

「そう言えば日菜が言ってたわね」

「そうそう。だからちょうどいい機会かなって思って。差し入れもなんか持ってくかな」

 

働いてる相手には差し入れも忘れない。体調管理もしてもらって、さらには身体の細かいお手入れもする。アイドルは大事だからね。

 

 

 

 

 

「こちらどうぞーって!聖くん!?」

「やっほー。来たよー」

 

もうお昼ピークは過ぎたが。ファーストフード店に行くと案の定、彩さんがいた。いつものニッコリ笑顔でほんの少しだけほっとしてしまう。

ここで彼女たちと話してても迷惑なのでとりあえず注文する。そうだなー、軽く食べれるのがいいな。ハンバーガーにするか(病気)。ポテトは人数分頼んだ。

 

「おっ!相変わらず美味そうだな!」

「だね。んじゃあ席に・・・?」

「何か騒がしいね?」

 

俺たちが座るであろう席で手を振っているのはマイペースな青葉さんだったが様子がおかしい。なんか騒がしいと言うか、そこだけ明らかに人口密度がおかしい。なんというか・・・まるでアイドルがいるかのような?

 

「あら。聖じゃない」

「・・・千聖さんか。まさかPastel*Palettesのメンバーが揃いに揃いとはね・・・」

 

俺たちの席の向かい。そこにはPastel*Palettesのメンバーが揃いに揃っていた。金髪美女の女優、ベースの白鷺千聖(しらさぎ ちさと)。そしてドラム担当で趣味は機材、機械弄りの眼鏡女子、大和麻弥。そして有名モデルでキーボード担当、若宮イヴ(わかみや イヴ)そして俺の妹の日菜もいる。そして彩さんも含めてこの5人はPastel*Palettesと呼ばれている。事務所の意向で作られたバンドだが実力は高レベルだ。

 

「そうね。今日はいい日だわ」

「お久しぶりです!聖さん!」

「どうもです。お疲れ様ですー」

「みんなお疲れ様。今日はなんでここに?」

「お兄ちゃんは連れ去られるしお姉ちゃんは遊んでくれないから暇だったの!」

 

日菜が抱きつきながら泣き顔でものを言う。まぁ実際俺は連れてかれるし紗夜姉は練習で行っちゃうからな。日菜が寂しがるのも無理はないな。

 

んで同じバンドのこの子達が呼ばれたのか。納得だ。

 

「とりあえず聖。座りなさい?ほら、ここよ」

 

そう言いながら、友希那さんは自分の隣を空ける。Roseliaのみんなからも「来てー」とコールを受ける。行くしかないか。

 

「待って。先輩はこっちだから」

 

そう言いながら美竹さんが俺の服を引っ張ってくる。上原さんも腕に抱きついてくるし・・・暑い。

上原さんが抱きつくと周りから冷たい視線をいくつか感じる。うっ。気まずい。

 

「むー!お兄ちゃんはこっち!」

 

日菜が可愛く怒りながら俺を呼んでいる。他のメンバーも「こっちおいで」と手招きしている。特に千聖さんは目が怖い。見てられないぜ・・・。

 

見えないところで三者の火花が散る。全く・・・どうしてこんなにバンド間で仲が悪いのか。頭抱えながら俺はRoseliaのメンバーが座ってる席に同席する。

同時に友希那さんがガッツポーズしているのが見えた。そして美竹さんと千聖さんが何故かこちらを睨んでいた。

 

なんか悪いことしたか。そう考えながら彼女たちに『ごめん』と心の中で念じていた。

 

「どうして先輩はそちらに?」

「いや、ほらAfterglowとか何かと仲良い訳じゃないしさ。後輩の中に先輩がいたら気を使うだろ・・・って」

「では何故そちらに?」

「君たちはアイドルであり、女優であり、モデルだろ?一般の男がいたらダメだろ」

「今は女優という職業ではないわ」

 

そういう問題じゃないんだよな。「女優」という顔を持つ君の隣にいると君が後々迷惑に巻き込まれるだろって言いたかったんだが・・・通じなかったか。

それに彼女たちは全員何かと雑誌に載るぐらいには有名になったからね。なるべく関わらないのが吉とみた。さすがに関わっても学校だろう。外は人目が多いからね。

 

「そ、そうだ!つ、次のライブどうです!?皆さんの!」

 

ここで気が利く上原さんからの一言。そうだ。みんな次のライブがあるんだったな。

手回しはさーくるスタッフのまりなさんからだった。どうやら新しくできた会場を使ってやるみたいだが。

 

「(そういやまともに挨拶しに行ったことないな)」

 

名前は・・・ギャラクシー・・・だったか。

 

 

 

 

―――数日前―――

 

「聖くん。お客さんだよ」

「店長、今忙しいんです。また今度にしてください」

 

俺がいつも通りの暇つぶし。カードショップにてこの世界でのデッキ調整に励んでいた頃。店長から客人が来たと知らせが入るが、俺はスルーしていた。どうせPastel*Palettes経由か、それより酷い無粋な客人だろうと思っていたからだ。

 

しかし、店長は1つため息を着くと、あろうことか俺のいるところまで客人を連れてきた。見てみるが、どうやら俺の予想は外れたらしい。

 

「あのー・・・氷川 聖さんですか?」

 

そこに立っていたのは、眼鏡を掛け、黒のシャツを着ている、少しおどおどしている少女。手には1つの便箋を持っていた。

 

「君は?」

「えーっと、朝日 六花(あさひ ろっか)と言います!そ、それで・・・こちらを!」

「手紙ね」

 

手紙の内容までは分からなかったが。おおよそ事情は把握していた。だが1つ疑問が沸いた。なぜ彼女なのか?

 

俺にこの手紙を送る理由が『その件』ならばわざわざ俺じゃなくても彼女たちに会える『Circle』の方が良いのでは。むしろ向こう主催や、向こう経由の方が彼女たちも納得するだろう。

 

「・・・Poppin’Partyに?」

「はい。あとその他のバンド様にも渡してと店長が・・・」

「わかった。適当に彼女たちには話を通しとくよ」

 

 

 

 

「ギャラクシーってどんな所なんだろう?」

「詳しくは聞いたことないかな。商店街に出来た・・・ライブハウスだって話は店長から聞いたよ」

 

開店記念でライブをやりたいらしいって話が何故か俺に持ちかけられて、彼女たちにそれとなく伝えると「よし。やろう」みたいなノリで返事が返ってきた。それは他のバンドも同様だった。

 

俺もお世話になるから今度挨拶に行くか。またお世話になるかもしれない・・・からね。

 

ハンバーガーをかじりながらこれからの事を考える。みんなのパフォーマンスはプロそのものだ。未熟も出てくるかもしれないが、その部分をしっかり覆ってより良いものとしている。素人が文句を言うものじゃない。

 

「どんな場所だろうと。私たちはいつも通りの演奏が出来ればいい」

「人って環境変わると出来ないことがあるらしいぞ。わくわくと緊張でな」

「関係ないわね」

 

この2人はどうしてこんなに似てるのにお互いが嫌いなんだ?そう考えていると巴と今井さんに方を叩かれる。え?なんか悪いこと考えたのか?

 

「ともかく、商店街にできるのはいいことね」

「まぁね。これで自由、と言うよりはみんなが平日だろうと練習しやすくなったからな」

「さーくるは休日しか行けなかったからね・・・」

 

さーくるは学校からは意外と離れているので、楽器を持ちながらって言うのは弦巻家の家の力を借りないと無理だろう。

俺は静かにポテトを噛じる。まぁ、こういうワイワイとした休日もいいもんだ。

 

「ところで聖さんは来ないんですか?」

「どうして?」

「そうだよ〜聖くんも来なよ〜」

 

イヴちゃんが素朴に質問してきて、モカが手招きしてくる。みんなのライブは正直、俺のようなはぐれ者が見に来るものじゃないと思うんだが。

友希那さんに無理矢理連れられてRoseliaのライブに行ったことはあるし、弦巻さんに無理矢理囚われて特等席でハロー、ハッピーワールド!のライブを見たこともある。

 

まぁ、ハロー、ハッピーワールド!は世界が違いすぎてついていけなかったが。

 

「残念です、聖さんにブシドーのこと教わろうと思ったのに・・・」

「また今度教えてやるから・・・はぁ」

 

 

この子達はなんだ?俺に恨みでもあるのか?日菜に「助けて」とサインを送るけどウインクで返される。

なんでだろう。そう考えていると彩がいるレジの方がガヤガヤしてきた。何かあったのか?

 

「レジ側がうるさいね?」

「ちょっと見に行ってくる」

 

俺は心配になり、レジ側に向かうと、彩さんのレジにイカつい連中が居座っているのが見えた。ちょうど文句を言い合ってる頃か。彩さんは笑顔だが、少し焦ってるような汗が見える。

 

「ですから、私は今仕事中で・・・」

「いいだろ?ちょっとぐらい付き合ってくれよ」

 

新手のクソ野郎ってやつかな?とりあえず彩さんは助けて上げないとな。学校で色々お世話になってるわけだし。

 

痺れを切らして俺が助けに行こうとした時、その男たちの身体が吹き飛ぶ。先程まで立っていたところに、黒い半袖のコートに身を包んだ黒髪の少年が立っていた。

 

「迷惑だろうが。うるせぇな」

「んだと!テメェ・・・ぐっ!?」

「危ないな。大丈夫!?」

「ありがとな!油断してたぜ・・・」

 

俺たちは並ぶようにしてクソ野郎たちと向き合う。クソ野郎はいい歳した青年達みたいで。相当グレた奴みたいだ。

 

黒髪の少年は俺と対して年齢は変わらないように見える。もしかしたら同級生なのかもしれない。

 

「クソ野郎共が・・・邪魔しやがって!」

「ここはお店だぜ?もうちょい大人しくできねぇのか?」

「うるせぇな!こうなったら・・・!」

 

1人の野郎の拳が黒髪の少年に当たろうとしたその時、間に高速で人が割り込んでくる。

 

「待ちたまえ!優秀な決闘者(デュエリスト)が生身で戦うなんて勿体ない!」

 

そこにちょうど良く現れたのは商店街カードショップの店長だった。いつもの軽いノリで現れ、2人の間に仲裁しに来たと思ったが違うようだ。

 

2人にデュエルディスクを提供すると、お店の外を提示する。

 

「外にフィールドがある!そこで決着をつけてはいかがだろうか!?」

「俺はいいぜ?そっちのガキは!」

「・・・俺が「俺がやる」まじ?」

 

俺が出ようとしたその時。黒髪の少年が俺の前に出て、カバンからオリジナルのデュエルディスクを取り出す。てか持ってるのか。

 

デッキを差し込み。俺たちは店の外へ出る。外にはうわぁ・・・これは弦巻家ですね。その息のかかった執事たちがまるで工事をしているかのように沢山いました。当然のように道路は通行止めです。

 

「弦巻さんのお手を借りたんです?」

「店の地下のシステム見せたら「面白そうだわ!」って言われてなぁ・・・売り出すみたいだぞ?」

 

おいおい。遊戯王って凄かったんだな。前の世界でアニメ見ててやりたいって程度だったが世界規模で売り出されるともう日常化も視野に入れないと行けないなこれは。

 

2人はフィールドの中に立つ。俺たちは機材がごちゃごちゃ並ぶところに案内され、イヤホンを渡される。

 

「あの人は何者なんだ?」

「知らないのかい?うちの常連で夜の大会を制したこともあるプロだよ。人呼んで機械の戦術指揮官ってね!」

 

店長からその言葉が出る以上。それなりの実力者なのだろう。デッキを差し込み、不敵な笑みを浮かべている。

 

もう片方・・・黒髪の少年もデッキを差し込む。店長曰く彼のことは何も知らないらしい。つまり名もなき戦士ってわけだ。

 

「準備はいいなぁ!それでは・・・レッツ!」

「「デュエル!」」

 

ライフが4000で表示され、フィールドに風が発生する。正常に動いてるらしく。カード効果が実際に実態となって襲ったり、その場に現れたりするらしい。要するに現実になるってことだ。

ただ、肉体にダメージはないらしい。体に優しいシステムになっているようだ。

 

「俺の先行だ!ドロー!」

 

ヤンキーの男が先行みたいだ。実力を見ていこうじゃないか。聞いたところ、機械族モンスターのデッキを使うらしい。機械族デッキは幅が多い。それに機械族って括りのカードが多いものだから組み合わせも豊富なのだ。

 

「マシンナーズ・ギアフレームを攻撃表示で召喚!」

 

オレンジ色の機械の兵士が男の前に立ちはだかる。ATK1800、DEF0のユニオンと呼ばれるモンスターだ。召喚時、デッキから「マシンナーズ」モンスターを手札に加えれる。

ユニオンモンスターの中には装備して効果を発動するものが多いがこのモンスターは破壊無効効果が付与されるみたいだ。

 

「俺はマシンナーズ・カノンを手札に加えるぜ」

「マシンナーズ・カノン?」

「手札の機械族を捨てて効果を発動できるモンスターだ。その分攻撃力に加算されるんだよ」

「そして手札の機械族4体を墓地へ送り、マシンナーズ・カノンを特殊召喚!!」

 

砲台のような機械、マシンナーズ・カノンが男の前に立ちはだかる。4体捨てたので、攻撃力は・・・

ATK3200 DEF2200

1ターンで召喚するには十分すぎる火力が目の前にはあった。覆せるモンスターなんてのはそうそういない。

そしてユニオンモンスターを装備、効果、戦闘破壊を1度だけ無効にできる。

 

「俺のターンは終わりだ。さぁ?念仏唱えとけよ?」

「勝ったな」

「このターンでこの火力・・・強運の持ち主だね、これは1ターンじゃ覆せないぞ?」

 

確かに、この火力を覆すにはそれなりのモンスターを出さないといけない。しかし、上級モンスターは名前だけに出すのが難しい。

 

「俺のターンだな」

 

対面、黒髪の少年のターンだ。さて・・・お手並み拝見と行くか。

その時、デッキのカード・・・「シャイニング・ドラゴン」のカードが発光する。それと同時に腕に痛みを感じる。

 

「(んなっ!?これは・・・!?)」

 

右腕に感じた痛みの正体は痣だった。白い翼の痣が発光し、俺に痛みを与えていたのだ。まるで呪いのような痛みは俺の体温を激的に上昇させ、それに比例するかのように痛みを増していく。

 

しかし、この世界に来てからこんなことはなかった。あの時・・・店長と戦った時に、僅かに疼くぐらいの痣がまるで何かに反応するかのように光っている。

 

「まさか・・・?」

 

まるで近くにあるかのような光り方、まさかと思い、聖はフィールドに立っている少年を確認する。その少年の腕も、聖と同じように発光していた。色は・・・黒。

 

「・・・ふっ。お前のターンはもう来ねぇよ」

「何!?」

「まずは魔法(マジック)カード!暗黒界の雷を発動!」

 

手札のカードをお互いに1枚捨てて、1枚ドローする魔法(マジック)カードだ。暗黒界デッキか?相手は。

暗黒界デッキでは初歩的なカードだ。セオリー通りなら捨てるのはモンスター・・・。

 

と思っていたが、あいつが捨てたのは魔法(マジック)カード。どう言うわけだ?

 

「手札入れ替えただけじゃねえか!はったりか!?」

「・・・この効果で墓地に送ったカード。「深淵の氷結」の効果発動!」

 

 

 

 

???side

 

「深淵の氷結!?んだァそのカードは!?」

 

深淵の氷結の効果。手札にいるモンスター一体を墓地へ送り、そのモンスターと同じレベルのチューナーモンスターをデッキから特殊召喚出来るもの。

さらに別効果もあるが、俺はあえて1つ目の効果を選択する。

 

「俺は手札から☆5、「邪神・盲目のベヒモス」を墓地へ送り、デッキから☆5、「邪神・誘惑のリリス」を特殊召喚!」

 

俺の目の前にはいかにもエロい女の悪魔。俺のデッキの愛用カードの1枚。小柄なながら、魅惑の邪神の名を持つ悪魔、リリスだ。

攻撃力は1000、守備力は800の☆5モンスター。そして・・・

 

「こいつはダーク・チューナーとしても扱う。これはリリスのモンスター効果だ」

 

通常のチューナーモンスターでありながら、自身の効果でダーク・チューナーにもなれるモンスターだ。

ダーク・チューナー・・・それは禁忌にして最高の力でもある。

 

「絶望を見せてやるよ、深淵の闇をな。俺はリリスの効果発動!」

 

デッキからモンスターを選択、さらにそのモンスターと同名のモンスターをゲームから除外することにより、リリスはそのモンスターと同じレベルを得る。

除外するモンスターは「邪神・氷結のコキュートス」を選択、このモンスターのレベルは☆10。よってリリスはエンドフェイズまで☆10のモンスターとして扱う。

 

「さらに手札から☆2、邪神の使徒・ジャバウォックを召喚し!この2体でシンクロ召喚を行なう!」

「シンクロ召喚だと!?はっ!どんなモンスターを出そうが俺には勝てん!次のターンでお前は終わりだ!」

「・・・闇の誘い。負の衝撃・・・光はなく、あるのは闇だけだ。見せてやるよ・・・俺の力を!俺は!レベル☆2の邪神の使徒・ジャバウォックにレベル★10の邪神・誘惑のリリスをダーク・チューニング!」

 

ジャバウォックにリリスの星が入り込むと、中で闇が光を飲み込んで消えていく。そして残った闇のみが表へと出てくる。

 

「闇へと誘え・・・ダーク・シンクロ!現れろ!ランク8!暗黒喰竜・ダークネス・ドラゴン!」

 

レベル★8、攻撃力3000、守備力2500俺のエースモンスターが、4枚の綺麗な翼を広げて、地下の闇を開いて出てくる。1つ雄叫びを上げると、その周辺に大きな衝撃波が発生する。

その姿はまさに、見るもの全てに絶望を与える恐怖の姿だった。

 

side out

 

 

 

 

「攻撃力3000ぽっちかよ!そんなので俺のマシンナーズ・カノンに勝てるわけねぇだろ!?」

「さっき言っただろ?お前に次のターンは無いんだよ、バトルだ!ダークネス・ドラゴンで攻撃!」

 

ダークネス・ドラゴンの攻撃力は3000、今のままでは返り討ちにあうことはわかっているのにどうしてか。

それと同時に俺の腕にある翼の痣の光が止まらない。それどころか、さらに痛みを増してきている。俺は必死に痛みを抑え、感情に表さないでいるが普通なら絶対に無理だろう。

 

しかし、あの黒髪の少年の腕も同様に発光している。

左腕に刻まれている翼の証が黒く、発光しているのが見える。そしてさらにダークネス・ドラゴンのカードは黒いモヤの様なものを帯びていた。

 

ダーク・シンクロモンスター。5dsで敵側が使っていたカードだが・・・。

 

「(どうして彼が!?それにダーク・シンクロモンスターは公式にはなかったはず!)」

「ダークネス・ドラゴンには効果がある。まず1つ目、このモンスターがレベル★8以上のダーク・チューナーモンスターを素材としシンクロ召喚に成功した時、このモンスターの攻撃力は墓地にいる悪魔族モンスター、一体につき300ポイントアップする」

 

墓地には三体の悪魔族モンスター。よって攻撃力は900ポイントアップする。

3000から3900へ、マシンナーズ・カノンの攻撃力を若干上回った。

 

「なにぃ!?」

「だが、その程度ではこのターンには仕留めきれない!あいつの言うことはハッタリだぜ!」

「それはどうかな?とりあえず・・・目障りなモンスターには消えてもらう!」

 

ダークネス・ドラゴンの翼から、赤い針のような攻撃が繰り出されると、マシンナーズ・カノンは崩れていくかのように崩壊していく。ユニオンモンスターであるマシンナーズ・ギアフレームを装備していふにも関わらず・・・だ。

 

LIFE4000→3400

 

マシンナーズ・ギアフレームはモンスターに装備でき、戦闘による破壊を1度だけ無効にしてくれるモンスターなのだが、その効果が発動するということは・・・。

 

「そうだ。このダークネス・ドラゴンの2つ目の効果。このモンスターがシンクロ召喚に成功したターンのバトルフェイズ、相手のカード効果は無効になる」

「そんな!だ、だが・・・「まだだぜ?」!?」

「このモンスターが相手モンスターを攻撃し、破壊した時、墓地のコキュートスの効果を発動する。コキュートスは墓地に存在し、相手の墓地にモンスターが落ちた時に発動、そのモンスターの装備カードとなり、効果を無視して相手フィールドに特殊召喚する」

 

マシンナーズ・カノンの攻撃力変動は効果によるもの。それ以外で召喚されたマシンナーズ・カノンの攻撃力は0になる。

 

「そしてダークネス・ドラゴンの効果!墓地のダーク・チューナーを除外して、もう一度攻撃だぁっ!」

「うっ!?ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」

 

漆黒の爆炎。その中に最後に立っていたのは黒いコートを身にまとい、黒き竜を従えた少年の姿だった。

 

 

 



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4話

次話投稿します。

バンドリ様3周年おめでとうございます!
Morfonica実装と同時に金をつぎ込んで星3、星4コンプした人です。(使ってません)
揃うまでにましろちゃんがどれだけ出たことか・・・(白目)
チケット交換で美咲も揃ったので満足です!ありがとう!運営!

それでは3周年も頑張っていきましょ!


「ただいま」

「さて・・・今日のご飯は何にしましょうか」

「ポテト買ってきたからパーティにしよ!」

 

ファストフード店での死闘と混雑を終えて、俺たちはようやく家に帰宅。あの後は結局さーくるに戻って練習をしていた。Afterglow、Pastel*Palette、Roseliaの演奏を俺はだまーって聞いていた。(関係ないけどこの3バンドだけスペル書きづらいンゴ。パスパレのスペル誰かSimejiに追加して)

 

「お邪魔するよ〜」

「お邪魔します〜」

「お邪魔するわ」

「ふっ。私のために道をあけよ・・・」

「うん。いらっしゃい」

 

俺ら姉妹(1人男)の後に入ってきたのはRoselia、そしてPastel*Paletteのメンバーだった。紗夜の部屋と、日菜の部屋を使ってお泊まり会をするみたいだ。

俺の部屋は汚いからできるだけ入ってほしくはないが、何故か1部のメンバーが俺の部屋に行こうとしたので紗夜が慌てて止める。

 

何食わぬ顔で上がろうとしていた彼女たちはしぶしぶリビングに留まる。・・・白鷲さんと友希那さんは何故か悔しそうにしてたけど。そこは気にしないでおこう。乙女の秘密ってやつだろうな。ガチで悔しそうにしてたのは何故か燐子さんだった。

 

とりあえずご飯を作ることにする。俺とリサ、そして紗夜がキッチンに入り、テキパキと作業を進めていく。

流石2人は家庭的なだけはある。紗夜姉はいつも作っているので見慣れているが、リサさんが作るのはこの世界に来てからは初めて見る。

 

残りのみんなは談笑したり、テレビを見たりと独特の過ごし方をしながら待っていた。

 

「・・・」

「聖〜?どうかした?」

「あっ!?いや、なんでもないよ!それより早く作らないと!」

「・・・ほんとに?」

 

下に顔を向けたはずなのに、リサさんに顔を覗き込まれる。流石はRoseliaの良心で面倒見のいいお姉さん。隠していてもバレちゃう・・・か。

 

リサさんが心配しているのは恐らく今日の出来事。黒髪の少年で俺と同じ翼の痣を持つ黒き竜の使い。夕焼 夜弥(ゆうやき やみ)との事だ。

 

 

 

 

「・・・さぁ。罰ゲームだ。闇のゲームに負けたヤツには・・・死が下される」

 

黒の死神が大男の目の前にそびえ立つ。腕には黒の光を放つ翼の刻印が印付けられていた。

後ろの黒き竜がトドメを放とうとする。しかし、放たれた咆哮は瞬間で消えてしまう。

 

「なに・・・?」

 

何が起こったか分からない様子だったがすぐに理解。そしてその視線は同じフィールドに立っていた聖に向けられた。聖の後ろにはシャイニング・ドラゴンが召喚されていた。

 

その後、すぐにシステムが止まり、2体の竜は消える。しかし、彼らの腕に刻まれた刻印だけは、光を放ったままだ。しかし、その光は他の人間には見えない。強い意志の表れでもあった。

 

「へぇ・・・俺と同じ」

「お前は・・・何者だ」

「こっちのセリフだろ。まぁいい・・・決闘(デュエル)すればわかることだ・・・やるぞ」

「残念だな。俺はお前ほど暇じゃない。それに、その軽い挑発に乗るのは子供だぜ・・・」

「はっ!もうちょいマシな言い方をしろってか!?無理だね。こんなに面白い奴が目の前にいるのにそれは野暮ってやつだぜ・・・」

 

お互いに出方を伺う。鋭い眼光がお互いから放たれる。既にフィールドの周りは多くの人が集まっており、弦巻家の従者おろか、警察まで駆り出されてた状況だ。騒ぎに気づいてみんなも近くまで来ているがそんなことは気にもしてなかった。

 

この男が何者なのか、何故存在しない召喚が出来るのか。何故()()と同じ刻印があるのか、俺にはどれもが理解出来なかった。

 

「まぁまぁ!落ち着いたまえよ!」

 

そこに入ってきたのは店長だった。相変わらずのお気楽ステップで俺たちの中に割って入ってくる。しかし、俺たちの間にある緊張だけはほぐれない。

 

「・・・邪魔すんな。ここからは俺たちの喧嘩・・・だぜ?」

「まぁまぁ、単純にどちらが強いなんてのはつまらないんじゃないのかい?どうせなら・・・ここらで強いなんてのを証明したくないかい?」

「と言いますと?」

「今度。うちで大会があるんだ。小規模だけど人は結構集まる・・・それも、夜だから腕利きの連中しか揃わないレアな大会なんだよ。といっても怪しいものじゃないからね。そこだけは理解しておいてね」

 

店長の言うことは遠回しに大会に参加しろよって言い方だったが理にはかなっているかもしれない。自分の限界・・・それを調べるにはいい機会だと俺は思っていた。

 

しかし、向こうの奴がヨシとしないことには状況が変わらないのは目に見えていた。俺はゆっくりと相手の様子を見る。

 

「俺に利点があるのか?」

「グダグダ言うな。ここで暴れてもらっても困るんだよ」

 

店長の目が変わる。突然の尺編に俺たちは少し身構える。しかし、変わったのは僅かであってそこからは元のチャラい店長へと戻る。

 

「まっ。そこなら思いっきりやれるから来いよって話だ。出来ればお店も良くなるしな」

「・・・そうさせてもらうか。気は乗らないが仕方ない。おい、絶対俺と当たるまで負けるんじゃねえぞ」

 

そう告げるが最後、彼は名前だけ名乗っていく。

その後はみんなから説教を受けていた。白鷲さんといい、美竹さんといい、当たりが酷すぎる。俺が何をしたって言うんだ。

 

だが、心は不安でいっぱいだった。刻印の事といい・・・アイツには聞きたいことが山ほどあったからだ。また今度、しっかり聞いてみないとな。

 

 

 

 

しかし、俺が真に心配してるのは大会の日程だった。まさかのギャラクシーとのライブ被りである。これは失敗したと思ったが厄介事が決まってしまったので致し方ない。

 

「じゃあライブ来れないの?」

「かもって話です。もしかしたら行けるかもしれない・・・ですが」

「もしかしたらかぁ・・・不安だね」

「行けない分、今度の練習付き合うから許してって友希那さんには言ってるんですけど、如何せん話を聞いてくれないんですよね」

 

パスパレ、ハロハピ、Roseliaの3バンドのドン、湊 友希那、白鷲 千聖、美竹 蘭は俺が来ないことをよしとしないのだ。それどころか来ないとやらないとか拗ね始めた。なんて人達だ。

 

「まぁあれでもバンドの事しっかり考えてますもんね。忙しい人達だ」

「ほんと、真面目だけどちょっとズレてるよね」

「そういうリサさんはどうなんですか?」

「私は至って真面目だぞぉ?」

「真面目な人は俺に抱きついたりしませんよ」

 

てへへ、とリサさんが笑いながら照れるがスルー。紗夜姉さんは手に力が入りすぎて野菜が粉々になっていた。

・・・どうやったら野菜が砕けるんですかねぇ。

オマケにブツブツと呪文を呟いている。リビングの白鷲さんもめっちゃ睨んでくる。え?ほんとになんかした?

 

手際よーく料理を作ったあとはみんなでワイワイ食べてく。俺は1人で食べたいんで一足先に部屋に戻ろうとするが止められてしまう。

 

「あら、聖?どこへ行くのかしら」

「聖?あなたの居場所はこっちよ?」

「誰か助けろい」

 

やれやれと心の中で思いながら俺はこの時間だけは諦めることにした。

 

 

 

 

・・・お風呂の時間だが、俺は当然のように外を出歩いていた。

まぁ女子のお風呂の後に入りたくないし、男の風呂の後に女子を入れたくないのが本音だ。身体になんか1mmも興味無い。

生憎のゲーム厨がここでセンスを見せてきた。ゲーム厨が興奮するものはゲーム。はっきりわかんだね。

 

彼女たちは何故か俺を先に入れようとしていたが今回ばかりは悪い。出来ないんだ。

 

「さて・・・適当に温泉辺りに入りたいところ・・・」

 

その時、見慣れた人影を見つける。街灯に照らされて分かるが黒い服を身にまとった2回目となれば馴染んだ姿だ。

 

「夜弥か」

「よう、なんだやりに来たのか?」

「なわけないだろ。散歩だよ」

「・・・そうかよ」

「お前こそ何やってんだ」

「・・・最近ここに来たばっかりだからよ。あんまり場所知らなくてさ」

 

ここまで言われたら最後まで言わなくてもわかる。コイツの言いたいことは大体わかった。要するに迷子って訳か。・・・この街そんなに広くないんだがなぁ。

 

まぁライバルとはいえ人間だからな。そうなってしまうのは仕方ないというか。

 

「仕方ないな。どこまで連れていけばいい」

「マジかよ、いいのか?」

「構わないさ。お前と戦う前の戯れって思えば苦でもない」

「敵に塩を送るようなものだぜ?」

「そんなのでもないだろ」

 

俺はこのアホが指定した場所。駅までゆっくり連れていく。時間的には終電には間に合うだろう。

 

その間に色んな話をした。主に、家族の話、学校の話だ。夜弥の家族はやたら本人の進路にうるさいらしい。

似たような姉妹を知っているがな。

その家族は夜弥を高レベルの学校へと進学させたいらしい。見た目に反して夜弥は頭が良いみたいで、それこそ飛び級出来るぐらいの実力があるらしいが、本人は義務教育を終え、学校には言っていないらしい。

 

「学校はめんどくせぇからな。規則だの、時間だの。義務教育を嫌でも卒業すればそんなめんどくせぇ囲いに囚われないで済むからな。親父は反対してないみたいだが母親はそうもいかないらしい」

「その気持ち何となく分かるぜ。少しぐらいは自分の自由でいたいものだよな」

「なんだお前はエスパーか?」

「俺の考えを言っただけさ」

 

しばらく無言になる。お互いに敵なはずなのに、こうやって話してしまうのは何故だろうか。

 

「・・・お前はなんでこんなクソみたいな茶番に付き合ったんだ?」

「・・・さぁな。俺がそうしたかっただけかもしれん。実際のところはその時の俺にでも聞かないと分からないさ」

 

そう言いながら駅にしっかりと着いてしまう。時間の流れは早いものだな。

 

「ギリギリで終電には間に合った。文句ないな」

「・・・次会う時。俺たちはライバルだな」

「今は友達さ。またこの街に来たら・・・そうだな。美味いラーメン屋でも行こうぜ。奢りだ・・・」

「いいね。じゃあ、またその時にな」

「・・・次は敵だな」

 

その言葉を最後に夜弥は駅の中へと消えていく。少しだけ後悔の念があるものの、それだけだった。また会える。そう言い聞かせながら俺は帰路へと足を運んだ。

 

 

 

 

「ただいまーって・・・なんて地獄?」

 

帰宅。扉を開けたはいいものの、速攻で閉めたい欲に駆られてしまった。

理由は目の前の光景、2バンドがぶっ壊れかけて何故か口喧嘩をしていたからだ。正直近所迷惑。

 

「・・・何これ」

「えーっと。誰がお兄さんの隣で寝れるかの争いっす」

「はーん」

「興味無いですか?」

「興味なんてないですよ?一人で寝ますんで」

 

そう言いながら外に逃げようとすると、身体をしっかり拘束されてしまう。した本人達は悪魔的な笑顔で黒いオーラを出しながら俺の事を見ていた。

 

「あら聖?どこに行くの?」

「白鷲さん。俺は一人でねるので皆さんで仲良くガールズトークでもしてください」

「それは出来ないわね聖。今この争いはあなたがいなければ成り立たないのよ」

「よく言えるね。人の意思なんてさらさら無いくせに」

 

俺の抵抗は虚しく。みんなの真ん中へと連れていかれる。囲むようにしてみんなが俺に擦り寄ってくる。うへぇ・・・女の匂いだ。

 

「お兄ちゃんは私と寝るんだよね〜!」

「日菜さん!違いますよ!私たち、Pastel*Paletteと寝るんです!」

「あら日菜?そして若宮さん?聖は私たちRoseliaのものですよ?」

「そうだよ!お兄ちゃんはあこたちのものなの!」

 

モノ扱いすんなって言いたいけど問題はこの争いをどう終わらせるかだ。このままこのクソみたいな争いが続けば朝になりかねない。

頭が良さそうな紗夜姉やリサ姉、燐子さんに日菜、頭の良い連中が揃ってこういうことをしていたら塵も積もってただのゴミだ。はっきり言って馬鹿としか言いようがない。

 

俺の残された頼みである頭を回転させる。さぁてどうするか。ひとつはまぁみんなに諦めて貰う方法だ。最悪人質は取れる。それを犠牲にする故に諦めて貰うこと。

もうひとつは・・・。

 

「ならみんな俺から提案がある」

 

世界共通のバトル・・・じゃんけんだ。

 

 

 

 

 

「自分!お兄さんと寝れるなんて光栄です!」

「しっかりエスコートよろしくね?聖くん?」

 

じゃんけんの結果はまぁ大和さんと白鷲さんだ。

Roseliaのメンバーは全員揃って最初に負けていた。やっぱ仲良いんだよなあのグループ。

個人的には大和さんはもう一人の妹みたいな感じの子だ。問題は・・・白鷲さんだ。

女優にしてアイドルにして・・・いや。そこはまだいい。問題なのは・・・

 

「さぁ私の腕のなかで寝るわよ。来なさい」

 

この人が極度のド変態(ヤンデレ)であることだ。

 

「嫌ですよ。子供じゃあるまいし」

「えぇ。一人の男として見ているわ。撮影中も、演奏中もね、あなたの事を考えてるのよ。この身体をどうしたら渡せるか、ずーっと考えてるのよ?私たちで共有管理しようとかも考えてるの」

「そりゃ大層なことで」

 

この人が怖くて向いて寝てなんていられない。白鷲さんの方を見て寝てたら朝起きたらキスされてたなんてごめんだ。それこそ保護者兼姉の紗夜姉が黙っちゃいない。それ以上に友希那さんが火山の如く怒るであろう。

仲間意識のあるPastel*PalettesはモノにしたがるだろうがRoseliaは黙っちゃいない。

 

俺は大和さんの方へ身体を向けると胸辺りに大和さんが顔を押し付けてくる。ついでと言わんばかりにスリスリしてくる。「ふへへへへ・・・」と女の子が発しては行けない言葉が漏れてるのが聞こえる。嗚呼、この子も汚染されちゃってるのか。

 

大和さんの寝巻きは体操服だ。なんというか・・・そういうシチュエーションに見えてしまうのは自分だけだろうか。

 

「あら、麻弥ちゃんに発情してるのかしら?」

「なわけないでしょ。後輩に発情する先輩がいてたまるか」

「じゃあ私に?」

「それはない」

 

必死に抵抗するが突然、上に大きな影が俺を覆う形で現れる。その主は、先程まで俺をからかっていた白鷲さんだった。彼女は頬を赤らめながら俺の方を見下ろしていた。

 

「ち、千聖さん?」

「麻弥ちゃん・・・我慢出来ないと思わない?こんな・・・こんなに好きな人がいるのに・・・」

 

獲物を見る目をしている白鷲さんは俺の身体を仰向けに体勢を直すと、身体を思いっきり密着させてくる。彼女の程よく育った身体が俺の身体に押し付けられる。女性特有の感触が感じられる。

 

右側に彼女の顔が来て、「はぁ・・・はぁ・・・」とダイレクトに彼女の吐息が耳にかかってくる。

 

「た、確かにそうっすね・・・お、お兄さん・・・ごめんなさいっす」

 

そういいながら、大和さんも俺の身体に密着してくる。彼女も女の子だ。しかも今度は腕に彼女の感触が伝わってくる。

2人の女の子に迫られて絶対絶命だ。この状態をどう脱しようか悩んでいるがこの2人は真面目な人間だ。抜かりないのだろう。早く助けてくれと願うばかりであった。

 

この夜が早くすぎて欲しい・・・。心から俺はそう思っていた。

 



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5話


更新遅くなりました


「みんなの服を洗濯するのは俺なんだよなぁ」

 

千聖と麻弥ちゃんに抱きしめられながら寝た次の日。俺はみんなの洗濯物を洗濯していた。服から下着から・・・。正直、俺からすればみんなは家族なのだ。決して、断じて異性として見ている訳では無い。

 

が、それでもどうしても目に入ってしまう色とりどりのモノに、顔を赤くせざるを得なかった。というか何故か日菜と紗夜姉さんに至ってはいつもの可愛い下着では無いという。

 

(・・・いやだからなんだよ)

 

無駄な考えは消してとりあえず洗濯を簡単にこなして行く。その次にはみんなが起きる前に朝ごはんの準備だ。

リビングに行く前に日菜の部屋、紗夜姉さんの部屋を確認する。

 

日菜の部屋は可愛い統一だ。そしてベッドと床にそれぞれ毛布が引いてあるもののみんなベッドの上で寝ている。彩が可哀想な事に下敷きに・・・。

 

一方の紗夜姉さんの部屋は真面目だ。Roseliaのメンバーもちゃんと寝ているようで何よりだ。一番早く起きてそうな姉さんとリサさんもゆっくりお休みしている。

 

「お兄ちゃん・・・スヤァ」

「聖・・・そこ・・・撫でて・・・」

 

・・・何か2名ほど変な妄想をしている人達がいるが無視して俺は部屋の扉をゆっくり閉める。

さて。朝は何を作ろうか。

 

簡単にもやしとお肉の炒めにでもしようと思ったがもやしがない。ふむ・・・ならアスパラ巻きにするか。

フライパンを取り出し、油を敷いて簡単に調理を始める。

 

アスパラの鮮度は多少落ちているが食べる分には問題ない。それにお肉と巻いている分野菜嫌いな人がいようと食べやすいだろう。というか無理矢理でも食べさせてやろうってのが俺の考えでもある。

友希那さんもあこちゃんも野菜嫌いそうな顔してるもんな。無理矢理でも食べさせてやろうと俺は悪人面で料理を作っていく。

 

「おはよー。美味しそうな匂いだね」

 

そこにやってきたのはリサ姉だ。ラフなパジャマが目を引き、さらには崩した着方をしているからそっちにも目が奪われてしまう。一言で言うなら綺麗だ。

 

「おはようございます。もう少しでできますよ」

「アスパラ?あこたち食べれるかな?」

「食べれるように調理してるんですよ」

 

そう言うとリサ姉は俺の近くまで寄ってきて、俺の背中に身体を当てながら首から手を回してくる。この人は・・・困った人だ。

 

「ねぇ。二人きりだし・・・さ」

「断ります」

「断る速度早くない?そんなこと言ってると彼女出来ないよ?」

「残念。彼女を作る予定なんてのは皆無ですよ」

 

彼女を作る気はないというか。釣り合わないというか。こんな可愛い人達が俺の彼女になるなんて考えたくもない。そもそも、この世界の人間ではない俺にその資格があるのだろうか。

 

ちょうどお肉が焼けてきた所で丁寧にお皿に盛り付け、朝ごはんの準備はこれで大体終わる。次はあの人たちを起こしてこなければ行けない。

 

「さて。寝坊しないようにあの人たちを起こしてきましょうか」

「いいね、なら友希那たちは私が起こしてくるよ」

「ええ。なら残りの人達は自分が起こしに行きます」

 

先に俺の部屋の阿呆二人を起こしに行く。千聖と麻弥ちゃんはぐっすり寝ている頃だろうか。もしくは起きかけてるか分からないが起こしに行くには何ら問題にはならない。

 

まず俺の部屋に着くと嫌な音が聞こえる。

まるでごそごそと何かを漁っているような、散策しているような。そんな音が聞こえる。

耐えることなく部屋のドアを開けると、そこには俺の布団に顔を突っ込んでいたアイドル(二人)が視界に入る。

 

「あっ・・・」

「せ、聖さん!?こ、これはちが・・・」

 

ピシャッ

 

何も見てない。俺は何も見ていない。

 

全く・・・想像していた予想を通り越して凄いことをするもんだと考えていた。千聖は予想していた通りだが、麻弥ちゃんまでやるなんて予想していなかった。俺はあまりのショックに頭を抱えることしか出来なかった。だがまぁ、起きているならいいや。

 

さてそれでは次、今度は日菜の部屋で寝ているアイドルたちを起こしに向かう。日菜の部屋はすぐ隣で、移動するには困らなかった。

 

「日菜ー」

「お兄ちゃん・・・?」

 

部屋の扉を開けると日菜たちは案の定寝ていた。彩はアイドルとは思えないパジャマで。イヴちゃんは起きてはいるものの、寝間着が何か間違えているものを着ている。まるでイヴちゃんだけ戦国時代だ。

 

肝心の日菜は少し寝ぼけているのか目を擦りながら身体を起こす。髪には寝癖がついていた。

 

「ご飯だよ。目が覚めたら来てね」

「うん・・・」

「聖さん!日本の朝ごはんは味噌汁ですか!?」

 

眠たそうな日菜とは対照的に、イヴちゃんは朝からグイグイ俺に寄ってくる。キラキラとした眼差しは朝なのか、少し眩しく感じた。

 

「そうだね。味噌汁もあるし。ちょっとしたおまけをつけたから楽しみにね」

 

元気があるイヴちゃんはそのままリビングまで歩いていく。日菜は朝なのか少し寝ぼけながら歩いていく・・・珍しいな。いつもは朝から元気があるのに。そしてもう一人・・・。

 

俺の視線の先。ピンク色の髪の毛の女の子は気持ちよさそうに寝ていた。今でも寝言を唱えながら寝ている。

 

「気持ちよさそうだな」

「・・・彩ちゃんは可愛いから許されるのです!」

 

ハイハイそうですね。心でそう唱えながら今日という休日は始まる。

 

「あっ・・・俺の朝飯作ってない・・・」

 

ちなみに俺は大の野菜嫌いである。

 

 

――――――――――――

 

 

パスパレは練習の為、朝ごはんを食べ終わったら即帰宅してくれた。日菜は嫌そうにしていたが仕事は仕事だ。きっちりとこなして欲しい。

 

Roseliaのみんなは午後から練習するみたいなので朝はとりあえず姉さんと共にこの家に残るみたいだ。みんなきっちり服は来てるしこれはこれでなんかお嬢様方を見ているみたいだ。俺はこの場にはいない方がいいかもしれない。

 

「あら。どこに行こうとするのかしら」

 

部屋から出ようとしたところをRoseliaの一番お嬢様の湊友希那さんが俺の肩を掴んで止めてくる。優しい笑顔を向けてくるが俺にはこの笑顔が恐怖そのものでしか見ることが出来ない。後ろにいるRoseliaメンバーも似たような笑顔を見せてくるがごめん。どう見ても獲物を見る目にしか見えないんだよなぁ。

 

「どうしたんです?そんなに綺麗な笑顔見せて」

「あら。自分でわかるでしょ?さぁ、私たちを満足させて?」

 

うん。今日は胃薬を用意しておこう。そう思った時には既に遅く。俺は彼女たちの方へ引っ張られていった。

 

 

 

――――――――――――

 

 

「いらっしゃ・・・聖くん?」

「なんでしょう」

「何かに襲われたかい?」

「・・・放っておいてください」

 

お昼時、俺は軽いご飯を持って商店街のカードショップまできていた。あの後、結局Roseliaのメンバーにあれやこれやとやられて恥ずかしい思いだ。流石にもう思い出したくないほどトラウマを植え付けられた。

 

ちなみに今はデッキ調整をしている。店長オススメのカードたちと睨み合いっ子しながら細工を施すもののやはり難しい。トラップカードは数が多くてもアレだし、魔法カードもあんまり使わないデッキだからな。いきなり使えと言われても使えない時があるかもしれない。これがデッキ作る上で難しいことかもしれない。

 

しかし、店長のおかげでエクストラデッキは潤う。元々カードが少なかったからか。色んなモンスターカードを持ってくるのだけは助かる。

 

「大会は出れそうか?」

「明日の午後ですよね?大丈夫ですよ。その頃には学校も終わってると思います」

 

明日の午後、夜弥との決着が着けれる。その事を考えながらデッキ調整をしていた。夜弥の使うモンスターの全てが見れた訳では無いが、それでも戦うことだけは避けられなくなった。その理由となった痣は、今はその姿を消している。

 

・・・白い翼と黒い翼の痣。相反するように俺たちに植え付けられた痣は何を意味するのか、未だに分からなかった。元の世界の記憶を探るが・・・答えは一向に出でこない。が、一つだけ思い当たる節がある。

 

「・・・シグナー・・・か」

 

シグナー。遊戯王 5D’sで出てきたもので、別名「赤き龍の化身」で、その名前の通り赤き龍の痣を持つものたちのことを指すだそうだ。

5000年周期でダークシグナーと戦うもの達だそうだが、5000年・・・気の遠くなるような数字が俺の頭に疑問を残す。

 

5000年。もしこの世界がそのシグナーたちの戦いから5000年過ぎているのであればこの世界に再びダークシグナーが現れることになる。が、それは赤き龍の化身の話である。俺たちの腕に現れたのはそれぞれの龍を指すような色の痣。果たしてこれが赤き龍と関係があるのだろうか。

 

・・・考えるのは止めよう。そう思い、俺は一枚のカードをデッキの一番表にに持ってくる。「光翼聖竜シャイニング・ドラゴン」のカード。俺には・・・これだけあれば・・・。

 

「あっ。先輩」

「ぶへっ!?み、美竹!?」

「私もいるよ〜?」

 

突然馴染んだ声に俺は少しビビってしまう。いつの間に俺の後ろに美竹蘭と青葉モカが来ていた。そしてモカの手には相変わらずのパンが・・・。

 

ちなみに二人だけではなく巴、ひまり、つぐみのAfterglowが全員いるというなかなかに珍しい?場面に遭遇した。いやまぁ俺が普段からこの五人に合わないだけなんだけどなんか久しぶりに会うとめちゃくちゃ感動するな。

 

「でもなんで皆がここに?」

「・・・いちゃダメですか」

「蘭ー!聖実はな!お前が見えたから来たんだよ!」

「はぇーすっごい」

 

要するに後を追ってきた訳ね。なるほどなるほど。んでどうして俺は美竹さんに嫌われてるんだ。俺が何をしたって言うんだ。親父さんとたまに将棋してるぐらいだぞ許せ。お父さん返すから許して。それじゃダメですかじゃあ今度ご飯でも作ってやるからすいません何でもしますから許してください。

 

「あれ?今なんでもするって」

「言ってません」

 

Afterglowの小悪魔担当の上原さんは気づいてしまったか。ちっ。感の良い奴は嫌いだよ!小娘!。

同じく小悪魔担当青葉はニヤニヤしながら美竹と俺を交互に見つめる。なんだよ。何が面白いんだよ俺も混ぜろよ!(ぼっち)

 

「聖さん!これ家の割引です!」

「羽沢さんありがとね。また今度日菜とお邪魔するよ」

 

この五人は独特過ぎてこの世界についていけない。まぁ俺のランキングではハロハピ→ポピパ→Roselia→アフグロ→パスパレの順で世界が理解し難い。特にハロハピなんかはもうめちゃくちゃだ。彼女の話を聞いているだけでも俺の頭が痛くなる。頭痛薬を飲んでも痛みが治まらないのは不思議なものだ。彼女たちの言葉には魔力でも含まれているのかな。

 

沈黙が流れる。まずいな会話が続かない。適切な会話を見つけようとしてもなかなかに彼女たちと話す機会がないから分からない。こんなことなら普段からコミュニケーション取っておくべきだったな。

 

そんな俺を置いて、店長は彼女たちに近寄る。

 

「誰」

「いやぁ。君たち、聖くんのことが〜?」

「・・・っ!?」

「ストップストップストーップ!ちょ!向こうで話そうな!な!!」

 

気がついたら店長と共にアフグロのメンバーも消えてた。あれ?どこいった?

 

 

―――――――――

 

 

「なんだいなんだい。図星かい?」

 

店長は五人の美少女に引っ張られながら、お店の端まで連れていかれる。蘭は頬を赤らめ、他のメンバーも赤らめているようだった。唯一、巴とモカだけが頬を赤らめてはおらず、巴は慌てているようだった。

 

それもそのはず。Afterglowのメンバーは、聖が大好きなのだから。

 

遡ること一年前。バンドを初めで数ヶ月の時、彼女たちはネットの掲示板で作詞作曲を引き受けていると噂のサイトを見つける。

 

それは少し前まで天才アーティストたちの有名な曲を手がけたとも言われる人物による個人サイトだった。手数料無しでお願い出来るもの。自分たちの演奏具合での改造も可。手軽にお願いして欲しいとの事だった。

 

彼女たちはそんなサイトを通して依頼を頼む。ついでに会ってお話もしたい。そういい待ち合わせの羽沢珈琲店で待っていた。

 

そこで来たのが聖である。彼女たちとあまり歳の変わらない少年が作っていることに驚愕した。

 

それから彼女たちの付き合いが始まる。たまに演奏に来てもらっては注意点や課題点を見つけ指摘してもらったり、一緒に楽器を選んだりした。

 

また、数々の問題にも付き合って貰った。各メンバー間の問題でも。ライブの突如とした問題でもだ。

 

彼女たちは聖に「どうしてここまでやってくれるの?」と尋ねる。そして彼から返ってきた答えは

 

「ん?俺が楽しいからいいよ」

 

文句の一つも言わず手伝ってくれた。しかし、蘭たちは未だに彼に恩を返せてはいない。一人一人なら恩を返せるかもしれないが、バンドとして恩を返したいのが私たちのケジメだ。

 

「ふうん。なるほどね・・・」

「それで?何かいい方法でもあるんですか」

「気持ちを伝えるには正直がいいんだが・・・ダメなんだろ?ならこれはどうだ?」

 

そう言い、店長から一つの手が差し出される。その手の上には遊戯王のデッキが乗っていた。その唐突な申し出に彼女たちも理解出来ずに固まってしまう。

 

「これは?」

「・・・彼はデュエルにご執心だ。なら気持ちを伝えるにはデュエルが一番いい!」

「・・・デュエル」

 

初めは断ってやろうかと思っていた・・・が、もしかしたら、聖に勝ち、蘭たちの思いを届けられるかもしれない。店長が言っているのはそういう事だ。僅かな可能性を見越しての発言。少なくとも店長の目は真っ直ぐに彼女たちを捕らえている。

 

巴や仲間に押し出され蘭はこのデッキを取る。このチャンスを逃したら、もしかしたらもう二度と聖とまともに関わることも無くなるかもしれない。そうならないうちに自分たちの思いを伝える。蘭の頭ではこの考えだけが固まっていた。

 

 

――――――――――――

 

 

聖はお店を後にする。結局あの後Afterglowのメンバーは謎の高揚感に駆られていて一部のメンバーがウキウキしていたのを覚えている。そして店長がまるで嫌味を言うように俺を見ながらニヤニヤしているのを覚えている。まぁ何も無かったからよいが。

 

Afterglowのメンバーにニヤニヤの正体を尋ねたかったがさっさと帰ってしまいその正体を聞くことが出来なかった。

 

氷川家に一回帰ることにする。家のポストを確認しながら俺は部屋の前まで足を進める。

 

・・・ふと、扉の下に目をやる。特に理由がある訳では無いが感覚で確認してしまう。が、そこには謎の封筒がまるで待っていたかのように刺さっていた。朝にはこんなものはなかった・・・。

 

「・・・イタズラか?あるいは」

 

とりあえず封筒はカバンに入れ、リビングへと顔を出す。しかし、誰もいない。次に姉さんの部屋に顔を出すが誰もいないのを確認する。

 

リビングの机をよく見ると上には紗夜姉さんの置き手紙「練習に行くので遅くなります」とだけ書いてあった。今頃お昼ご飯はポテトを食べに行っている頃だろう。昨日といい今日といい困った人だ。

 

これでお昼は完全にフリーになってしまった。俺は先程の封筒に目をやる。特に何の装飾がある訳でもない封筒は逆に俺の不信感を煽っていた。気になって中身を開けてみると案の定手紙、そして写真が入っていた。写真には羽沢珈琲店が写っていた。

 

手紙の内容は「この時間にこの場所で待ってます」との事だった。随分ベタな誘い方だなとは思いつつ、その警戒を解くことは無かった。

 

「・・・困ったな」

「お兄ちゃんーーー!」

 

突然の叫び声に反応が遅れた。手紙に集中していた俺は部屋に帰ってきていたもう一人の住人の存在を完全に忘れていた。さらには完全に反応が遅れて受け身の体勢が取れなかった。声の主はリビングに来るなり、俺の身体目掛け飛んでくる。

 

いきなり抱きつかれ、姿勢を維持できない俺はそのまま後ろに椅子ごと倒れ込む。大声を上げて飛んできたのは日菜だった。離れたのが寂しかったのかいつも以上に顔をスリスリさせてくる。

 

「ん?お兄ちゃん?」

「大丈夫だよ日菜。ちょっと夕方出るかな」

「えぇ〜!?また!?」

 

日菜が明らかに嫌そうにするが構ってられない。

この手紙・・・凄い嫌そうな匂いがするからな。



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第6話


続き


―――次の日―――

 

 

「お兄さん!おはようございますっ!」

「おはよう麻弥ちゃん。予定の時間より早いね」

 

時間は朝の7:00、リビングには俺と麻弥ちゃんの二人だけだ。紗夜姉と日菜はまだぐっすりと寝ている頃だろう。今日は休日明けの学校ということで、麻弥ちゃん、そしてイヴちゃんの二人と学校に行く約束をしていた。麻弥ちゃんは予想より早く来てしまったが。

 

服装はしっかり整え、恥ずかしい姿を見せないようにする。うん。今日もしっかり整ってるな。

 

「聖?もう出るの?」

「姉さんおはよう。そうだよ、たまには早く行くのもいいと思ってね」

「そう。なら私も少し後に出るわね」

 

相変わらず姉さんは日菜と行こうとは居ないんだな。姉さんっぽいって言えばぽいが、たまには仲良く行って欲しいものだ。

 

「まぁ、姉さんもたまには日菜と行ってね」

「・・・善処するわ」

「ご飯は作ってあるし、弁当もあるからね!あとはよろしく!」

 

カバンを持ち、俺は玄関から外へ出る。さぁ、今週も楽しい楽しい日の始まりだ。

 

 

――――――――――――

 

 

「山吹ベーカリーさんにお邪魔するっす!」

「いらっしゃい!・・・先輩!?」

「おっ邪魔するよ」

 

登校中、いいとこに山吹ベーカリーがあるので寄ってみる。案の定店内は綺麗でしかもパンが芳ばしい匂いを漂わせている。

 

ちなみに俺たちの他にも青葉さんがしっかり店内に居た。姿勢を低くしてどのパンが良いか考えているようだ。

 

「あれぇ〜?先輩じゃないですか〜」

「ほっとけ」

「冷たいですなぁ〜前は構ってくれてたのに〜」

「んな事は忘れたよ」

 

昨日の友はなんとやらって言うしな。こればっかりは人が変わったと諦めて貰う他ない。まぁ、何回この子に奢らされたことか。まぁ簡単に騙される俺も俺で悪いんだろうがそれでも少しは距離を置きたい。

 

美竹さんの時もそうだが彼女たちが集まっている時にはあんまり入りたくないものだ。ほら、女の子の間に入るとろくな事ないって言うしな。まぁ、中には例外の人達も居るが・・・。

 

ただ青葉さんに関してはこれは私情だ。全く・・・こういう性格が無ければモテるだろうに。

 

「今失礼なこと考えた?」

「ノーコメントで。山吹さんパン頂戴」

「三人分ですか?」

「うん。おすすめよろしく」

 

「はーい」と言って山吹さんが準備している間にスマホを確認する。む。やはり弦巻さんのメッセージが多いなぁ・・・ことある事に誘ってくれるから退屈はしないけど・・・予定ある時に突然誘ったりするからなぁ。ちょっと困る時はあるが、奥沢さんのこと考えたら何も言えない。

 

あとは・・・市ヶ谷さんから?内容は多分見なくても戸山さんたちの事か、燐子さん経由の生徒会の手伝いの二択だな。これは学校に行ってから本人に聞くとしよう。そして次に目に入ったのはあこちゃんだった。ふむ。あこちゃんは多分お出かけかゲームだろうな。これも後で聞いて良さそうだ。そして問題なのは、丸山さんだ。彼女はハッキリ言うがバカの部類だ。だからたまにテスト勉強を一緒にしたりするのだが・・・「テスト勉強をしてない」か。彼女らしい。とりあえずこれも学校で解決しよう。

 

「はい!先輩頑張ってくださいね!」

「ありがとう。山吹さんも頑張ってね」

「いえいえ!あたしは先輩がいるから・・・」

「なんて?」

「ほらほら聖さん!行きましょう!」

 

照れてる山吹さんを他所にイヴちゃんに背中を押されて俺は山吹ベーカリーをあとにする。その時に見た青葉さんの獲物を見るような顔は今の俺には何を示すか全く分からなかった。

 

 

――――――――――――

 

 

「聖くんおねがぃだよぉぁぉぉあお!」

「分かったから泣くな!抱きつくな!スリスリするなァっ!」

 

丸山さんは案の定、俺が教室に入るや否や高速で接近、俺に抱きついてきて胸のところで顔を擦り付ける。勉強してないこの子が悪いと思うのだがまぁ仮にも彼女はアイドルだ。忙しいのは分かるから手伝ってやらなくも無い。

 

そして何より鬱陶しいのはこれを聞いて飛んでくる連中が他にもいるからだ。早く叫ぶのやめて欲しい。

 

「あっ!先ぁぁぁぁぁぁぁい!」

「先輩逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」

「だからお前らはどうしてくるんだァァァァァァ!」

 

二年生の教室から戸山さんが駆け込んでくる。その後ろからは止めるはずだった市ヶ谷さん、牛込さんが駆け込んでくる。が、その静止も虚しく、彼女の胸が俺の頭に来るように抱きつかれる。丸山さんには背中を取られ、戸山さんには前を取られる。はぁ。

 

市ヶ谷さん、牛込さんも「やれやれ」と言った様子だ。全く。こんな人がバンドやってるんだから凄いもんだ。でも惹かれる気持ちは分からなくもないかな。

 

「とりあえず離れてくれる?教えれるものも教えれないんだけど」

「「ごめんなさい!」」

 

速攻で離れてくれる二人。とりあえず俺はまず頭が首と繋がっていることを確認する。うん。首はあるな。じゃあ頭は?よし。あるね。

 

全くこの二人は手加減を知らないのか?今完全に助けが必要なのは俺だったぞ?もう少しで死ぬところだっての。

 

「彩ちゃんまた勉強してないのね?」

「はうぅ!千聖ちゃん・・・」

「全く・・・アイドルと学業も両立してとあれほど・・・」

 

叫び声を聞いて白鷲さんと白金さんが隣クラスからやってくる。また、それとはまた別のクラスから奥沢さんと弦巻さんが飛んでくる。全員俺の席の周りに集まるもんだから困ったものだ。まぁ女子高に一人男子がいたら普通はこうなるわな。

 

「課題やってないんですか?」

「この二人だよ。奥沢さんは?」

「昨日こころに手伝わされましたから・・・」

 

納得した。というか大体バンドのツッコミ役は苦労してる気がする。真面目な分他のみんなが甘えるって言うのもあるが・・・。まぁ、ご愁傷さまって言うしかないのかな。

 

でもRoseliaに関しては全員が、全員天然な気がする。なんでだろうな?バカは伝染するみたいだけどRoseliaは誰がバカなんだろうな?

 

「とりあえず勉強しようか?朝のHRにもまで間に合うし」

「「神様〜」」

「泣くな泣くな!まだ時間はあるからな!早くやろう!」

 

 

――――――――――――

 

 

「・・・はぁ終わったぁ」

 

お昼までの授業が全て終わった。特に家庭科実習は疲れるものだ。普段料理を作っているとはいえみんなの前で振る舞うのは疲れる。途中から関係の無い人達も来たしな。

 

教科書を片付けてお昼ご飯を食べようとすると隣の丸山さんがニコニコ顔でこちらを眺めていた。

 

「何?」

「えっと・・・お昼一緒に食べない?」

「別にいいよ?」

「じゃあ!」

 

・・・お昼を一緒に食べるのはいいんだ。いや、食べるのはいいんだよ。だけど・・・だけど・・・。

 

「どうしてこうなる」

 

場所は屋上、一応女の子の脚の心配をして持参したシートを轢いてお昼を食べているが・・・メンバーがメンバーだ。白金さんと姉さんは除いたメンバーが全員揃っていた。

 

それぞれがそれぞれの弁当を持ってお昼に参加していた。弦巻さんのは果たして弁当と言っていいものか・・・。

 

「聖くん私のコロッケ食べる!?」

「貰おうか、うん、美味しいよ」

「あたしの所のパンどうでした?」

「ふわふわで食べやすかったよ。今度はメロンパンでも貰おうかな」

 

聖を真ん中に二人の少女が詰め寄る。その顔はシンプルに乙女の顔だった。が、それを見ていた他のみんなは「むむむ」と難しい顔で唸っていた。

 

「むむむ・・・この二人はやっぱり強いね」

「普段から先輩と関わる回数多いから・・・仕方ないですよ・・・」

 

聖の周りは簡単に言えばハーレム状態だった。本人は気にしてはいないものの、普通の男から見たら恨みものだ。それを平然とした顔で居られるのは無我の境地に達しているのか本人はあまり意識しているようではなかった。

 

次々と出されるおかずに聖は食いつく、その代わりと言って少女たちは聖の弁当を食べていく。食べさせ食べさせの交換が続く。

 

「ん〜!やっぱり先輩のご飯は美味しい!」

「ありがと、そう言って貰えると作ってるかいがあるよ」

「先輩、お味噌汁貰いますね」

「いいよ。お好きにどうぞ」

「うわぁ・・・先輩の弁当があたし達のおかずで埋まってく・・・」

「心配性だな市ヶ谷さんは(ŧ‹”ŧ‹”)結局は食べればいいんだから(ŧ‹”ŧ‹”)」

 

市ヶ谷さんは遠慮してるけど比較的真面目そうな牛込さんと花園さんはガンガン俺のおかずを交換している。牛込さん。それおかずちゃうパンですよ。

 

話をしながらのお弁当タイムは盛り上がっていく。そしていつからか、話がギャラクシーのライブの事に変わっていった。

 

「先輩来れないんですか!?」

「そうなんだよ。予定が入っちゃってさ」

「なーんだ。機材の準備手伝ってると思ったけど」

「そこは素直に見て欲しいって言わなきゃ」

「先輩が見に来れないなんて・・・」

「ロックに録画頼もうよ」

 

俺が来れないって言うなりポピパのメンバーは心配性になり始めた。でもたまには俺がいないのもまた彼女達にとっていい効果かもしれない。毎回俺がいるようじゃ武道館いった時もだねられちゃ困るからね。

 

「聖来れないのね。残念だわ」

「ん〜聖くん来れないの〜?」

「仕方ないよ。先輩だって予定あるんだから」

 

それとは逆にハロハピはなんか、予想と反応が違った。必死に引き止めてくるかと思ったが彼女たちはあんまり気にはしていないようだった。だが、ライブの後嫌でも弦巻さんの家で聴かされそうで怖いな。まぁ、紅茶とかのお菓子食べれるから完全につまらないって訳じゃないけどね。

 

ちなみにパスパレ個人に改めて話したところ「なら今度スタジオで聴かせてあげるわ」と千聖、「大丈夫です!私たちはどこでもやります!」とイヴちゃん、「じゃあロックに録画撮ってもらうね!」と日菜、「ジブン個人的に聖さんに聴かせたいんで二人で会いません!?」と麻弥ちゃん、「じゃあ今度カラオケで聴かせてあげる!」と彩。と五人のそれぞれの反応だった。

 

アフターグロウは多分商店街のお祭りの時に聴けるからな。その時に埋め合わせをすると彼女たちには伝えてある。Roseliaは・・・うん。許して。許してください。

 

「まぁ何でもするから許して・・・ね?」

 

 

・・・その後のことはよく覚えてはいない。なんでだろうね?

 



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