白兎は【フレイヤ・ファミリア】へ!? (dsvfjkl)
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美神との邂逅
【フレイヤ・ファミリア】、そこは迷宮都市オラリオに置ける二大
そんな最強の
僕の名前はベル・クラネル、今日から【フレイヤ・ファミリア】に所属する事になった新米の冒険者です。
このオラリオに来て僕は運命の出会いをしました。
それは【フレイヤ・ファミリア】の主神であるフレイヤ様との出会いです。
僕はオラリオに来てから色んな
そこからは野宿を続けながらも
本当に諦めかけたその時、あの方は現れた。
「あらあら、貴方こんな所でどうかしたの?」
その声を聞いた僕が声の聞こえてきた方向を見ると、そこには女神様がいた。
その瞬間から僕の顔は途轍もなく熱くなった。
それは何故だかは分からないけど、目が離せなかった。
「じ、実は僕は冒険者になりたくてこのオラリオに来たんですけど、どこの
僕がそう言うと、女神様はこう言って来る。
「それなら私の
「えぇ、良いんですか!?」
女神様の突然の申し出に僕は驚きを隠せなかった。
「えぇ、その代わり・・・。」
「その代わり・・・?」
「私を愛してちょうだい。」
女神様は入団する代わりに自分を愛する事を言って来る。
そして、僕の言葉は既に決まっていた。
「僕ベル・クラネルは女神様に不滅の愛を誓います、女神様」
僕の言葉を聞いて女神様は無邪気で綺麗な笑みを浮かべながらこう言った。
「おめでとう、ベル。これで貴方は私の、【フレイヤ・ファミリア】の団員よ。」
そう言って来る女神様、フレイヤ様は僕の事を抱擁してくれる。
「【フレイヤ・ファミリア】ってオラリオの最大派閥の・・・!?」
フレイヤ様の言葉を聞いて僕は戸惑ってしまう。
「あら、気付いてなかったの?」
そう言って来るフレイヤ様に僕はこう答えた。
「すみません、僕フレイヤ様の事を初めてお会いしたので・・・。」
「そうだったの、まぁいいわ。行きましょうか、私達の
「はい、フレイヤ様!!」
フレイヤ様の言葉に同意し、後ろからついて行く僕は視線を感じて振り返る。
しかし、後ろには誰もいなかった。
不思議に思いはしたが、すぐにフレイヤ様の傍に行くとそのまま【フレイヤ・ファミリア】の
フレイヤとベルが完全に姿を消した後、二人が居た場所に一人の男が現れる。
その男の名はオッタル、この迷宮都市おける現最強でありlevel7の第一級冒険者である。
神々から与えられし二つ名は【
「あの者は俺の視線に気付いていたというのか・・・。」
影ながらフレイヤの護衛を務めていたオッタルは主神の接触したヒューマンの少年ベル・クラネルの行動を口にした。
そう、あの時フレイヤとベルが去る直前オッタルはベルに視線を向けた。
それはほんの一瞬だった。
しかし、ベル・クラネルという少年はこちらを向いた。
その事実にオッタルはその強面の口が僅かに吊り上がった。
「面白い」
その一言を最後にオッタルは主神の護衛を再開するのだった。
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洗礼
【フレイヤ・ファミリア】
「あら、これって・・・。」
恩恵を授かっている途中、フレイヤ様がそんな一言を漏らした。
「どうかされましたか、フレイヤ様。」
僕がそう声を掛けると、フレイヤ様はこう言って来る。
「大丈夫よ、気にしないでちょうだい。」
「は、はい、分かりました。」
フレイヤ様の言葉に僕は信じてこれ以上は何も言えなかった。
「はい、これで名実ともに貴方は私の
そう言って来るフレイヤ様から僕は自分の【ステイタス】を書き写した羊皮紙を受け取り、目を通す。
ベル・クラネル
level1
力I0 耐久I0 器用I0 敏捷I0 魔力I0
■■■■
■■■■
「あの、フレイヤ様スキルの欄が・・・。」
「ごめんなさい、ついうっかり失敗しちゃったの。」
「そうですか・・・。」
僕はもしかすると、スキルを持っているのかとフレイヤ様に聞こうとしたら失敗したという言葉を受けて
少し落ち込んでしまった。
「ベル、そのくらいで落ち込んでいてはダメよ。貴方は私の眷属なの、このくらいの事でへこたれてはダメよ。」
そう言ってフレイヤ様は僕の頬を優しく撫でてくれる、それに対して僕はこう言った。
「はい、フレイヤ様の寵愛に応える事を約束します。」
「いい子ね、ベル。」
僕の言葉を聞いて笑みを溢されたフレイヤ様は綺麗だと思った。
「オッタル」
すると、フレイヤ様が誰かの名前を呼ぶと部屋の中に
「お呼びでしょうか、フレイヤ様」
「オッタル、ベルの事任せるわ。」
「承知しました」
オッタルと呼ばれた
「着いて来い」
「は、はい!」
オッタルさんに付いて行くと、辿り着いたのは【フレイヤ・ファミリア】の武器貯蔵庫である。
「選べ」
ただその一言を発しただけでオッタルさんはそれ以上は口を出してこなかった。
僕は武器貯蔵庫の中に入り、自分が扱えそうな武器を見て回っていく。
そして、僕は最初に無難である片手剣と片手盾を手に取ってオッタルさんの元に戻るとオッタルさんはこう言って来る。
「準備はいいか?」
「はい、それでいったいこれから何をするんですか?」
「・・・。」
僕の問いにオッタルさんは無言のまま外に出ると、そこでは団員同士の「殺し合い」が行われていた。
「えっ」
「戦え、あの方の寵愛に応えたくばな。」
その一言を最後にオッタルさんは屋敷の中にへと戻っていき、僕は雄叫びが飛ぶ戦場に飛び込んでいった。
「うふふ」
先ほどまでベルのいた部屋では今もフレイヤがベルの
「・・・あの子ったら嬉しい事をしてくれるじゃない。」
そう言って笑みを浮かべているフレイヤの元にベルの案内をし終えたオッタルが戻ってくる。
「オッタル、ベルの様子はどうかしら?」
「今は何とも言えません。ですが、あの者がフレイヤ様の寵愛をどう受け止めているかに懸かってくるでしょう。」
主神の問いにオッタルはそう答える。
「うふふ、今のあの子はまだ殻に籠った状態だからそれを破った時が楽しみだわ。」
フレイヤは部屋に置かれていた瀟洒な椅子に座り、ベルの【ステイタス】が書き写してある羊皮紙をそっと撫でるのだった。
ベル・クラネル
level1
力I0 耐久I0 器用I0 敏捷I0 魔力I0
【
・早熟する
・
・
【
・全アビリティ常時超高補正
・
・
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成長
僕が【フレイヤ・ファミリア】に入団してから一週間が過ぎた。
その間、僕は【ステイタス】を更新する事は無かった。
理由の一つが僕に合った武器を選ぶ為だ。
あの後、剣と盾から槍・籠手など様々な武器を使っていく。
それは何故かというと色んな武器に慣れておけば戦いの選択肢が増えるとオッタルさんに教わったからこそ、早朝から手に
「ガアアアアァァァァァァァァッ!!」
顔に似合わぬ獣の様な雄叫びを上げながら自分以外の団員を相手に大立ち回りをする僕の右側から槍の鋭い一撃が襲い掛かって来た。
その槍の一撃を体を捻って躱そうとするも、それは叶わず肩に突き刺さった。
「ぐっ!」
突き刺さった瞬間、痛みに苦悶の表情を浮かべるがすぐに槍を放った団員に
目を覚ますと、僕は
「目が覚めたようですね。」
そう言って来るのはこの一週間で一番顔を合わせているであろう
「全く、貴方達には呆れてしまいますね。」
そう言いながら
それを受け取り、一気に呷って飲み干すと倦怠感が治っていくのを感じた。
日々殺し合いを繰り広げる団員達を治療する
「目が覚めたんならフレイヤ様が君の事を呼んでいたよ。」
「フレイヤ様が!?」
フレイヤ様が僕の事を呼んでいる、それを聞いた僕は
急いでフレイヤ様の部屋の前まで来ると、扉をノックした後こう言った。
「フレイヤ様、ベル・クラネルただいま参りました。」
「入ってらっしゃい」
「失礼します。」
そう言うと、部屋の中からフレイヤ様の許可が下りて僕は部屋の中にへと入っていく。
すると、部屋の中にはフレイヤ様とオッタルさんが居た。
「フレイヤ様、どうかされましたか?」
「ベル、貴方が私の眷属になって一度も【ステイタス】の更新に来なかったわね。」
僕がそう質問するとそう言って来るフレイヤ様に僕はこう言った。
「はい、そうですね。」
「何か考えがあってのことかしら?」
フレイヤ様のその言葉に僕はすぐに返答した。
「いえ、特には考えていなかったです。」
「あら、そうなの?」
「はい」
僕の答えを聞いてキョトンとするフレイヤ様に肯定の意思を伝えた。
「まぁ、いいわ。いらっしゃい、更新してあげる。」
「はい、よろしくお願いします。」
それに対してフレイヤ様は気にしてないという感じでそう言って来られるのに対して僕はそれを了承し、背中を晒した。
その際、オッタルさんは静かに部屋から退室していくのだった。
こうして、フレイヤ様に【ステイタス】の更新をして貰った僕は【ステイタス】が書き写された羊皮紙に目を通すと目を疑うような数値が記されていた。
ベル・クラネル
level1
力SSS1982 耐久SSS1910 器用SSS1935 敏捷SSS2996 魔力I0
■■■■
■■■■
魔力を除いてオールSという規格外の【ステイタス】が記されているのであった。
「フレイヤ様、これが今の僕の【ステイタス】ですか?」
声を震わせながらフレイヤ様に質問をすると、フレイヤ様は平然とした顔でこう言って来る。
「えぇ、そうよ。これは間違いでも何でもないわ。」
その言葉を聞いた僕は嬉しさで顔がにやけてしまいそうになったが何とか抑える事が出来た。
「これからも精進しなさい、ベル。」
「はい、フレイヤ様。」
フレイヤ様の言葉に僕はそう答えてから部屋を退室してもう一度競争に参戦するのだった。
ベルが退室した後、フレイヤとオッタルだけとなった部屋では思案を巡らせているフレイヤの姿があった。
「いかがされましたか、フレイヤ様」
珍しく考えを巡らせている主神の姿にオッタルは声を掛ける。
「オッタル、ベルの【ステイタス】を見てちょうだい。」
フレイヤはそう言ってオッタルにベルの【ステイタス】が書き写された羊皮紙を渡すと、オッタルの顔が驚愕の表情を浮かべる。
「フレイヤ様、これは・・・。」
言い淀んでいるオッタルに対してフレイヤがこう言った。
「成長速度が異常なほど早い、それもたった一週間という機関で魔力以外のアビリティオールSになる程にね。」
「はい。」
フレイヤの言葉に同意するオッタル。
すると、フレイヤがオッタルにこう言って来る。
「オッタル、そう言えばベルって冒険者登録って済ませてあったかしら?」
「いえ、ベルは入団してから一度もギルドに赴いてはいないのでまだかと。」
「そう。なら、今からギルドに行って冒険者登録をしてくる様に伝えてきてちょうだい。それと私は今からヘファイストスの所に行くわ。」
フレイヤの問いにオッタルが答える。
その後すぐにベルにギルドに向かうように伝言をオッタルに命を下し、自分のこれから向かう行き先を伝える。
「それでは、伝え次第陰ながら護衛を。」
「えぇ、お願いね。」
そうして、フレイヤはオッタルと共に【ヘファイストス・ファミリア】にへと向かうのだった。
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冒険者登録
僕が武器貯蔵庫で武器を選んでいると、オッタルさんがやって来る。
「あれ、どうかしたんですか?」
僕がそう質問すると、オッタルさんはこう言って来る。
「お前はまだギルドでの冒険者登録していなかったな。」
「あっ、そう言えばまだしてませんでした。」
オッタルさんの言葉に僕は肯定する。
「フレイヤ様が今から登録をしてくるようにとの事だ。」
「はい、分かりました。」
「待て」
オッタルさんからフレイヤ様の言葉を聞くと、僕は武器貯蔵庫から出てすぐにギルドにへと向かおうとすると、呼び止められた。
「どうしたんですか?」
「これを持っていけ」
そう言ってオッタルさんが手渡してきたのは【フレイヤ・ファミリア】の
「あの、これって・・・。」
「それはお前がフレイヤ様の恩恵を受けし者だという証でありギルドにも話は通る。」
そう言ってすぐにオッタルさんはフレイヤ様の傍にへと戻っていったと思いながらギルドにへと向かうのだった。
ギルドに着くと、僕はまっすぐ受付へと向かっていき、受付嬢に話しかける。
「あの、すみません。」
「はい、本日はいかがされましたか?」
僕が話しかけるとハーフエルフの女性職員が対応してくれる。
「それでは、この用紙にお名前と所属
「はい。」
そうして、僕は渡された紙にスラスラと名前と
「これって【フレイヤ・ファミリア】の・・・!?急いで済ませて参ります。」
短剣を見た女性職員の人は慌てて奥の方へと行くと、すぐに戻って来た。
「お待たせしました、これにて冒険者登録は終了です。」
「そうですか、それじゃあ僕は
僕はそう言って受付から離れようとすると、女性職員の人がこう言って来る。
「お待ちください」
「何ですか?」
呼び止められた僕はそう言うと、女性職員の人がこう言って来る。
「私はエイナ・チュールと申します、この度ベル・クラネル氏の専属アドバイザーを担当させていただきます。」
「そうですか、よろしくお願いしますエイナさん。」
新米の冒険者を
「それでですね、新米の冒険者の方々にはダンジョンの基礎知識を学ぶ為の講習を開かれていますが受講されますか?」
その申し出に僕はこう言った。
「はい、お願いします。」
「畏まりました、それではこちらにある講義室にどうぞ。」
「はい。」
そうして、僕はダンジョンを探索するための講義を受けて知識を蓄えるのだった。
三時間後、講義を終えた僕は
刀という武器を初めて使うにも拘らず手に馴染んでいた。
僕はその刀で同じlevel1の団員達を蹴散らしていった。
【ステイタス】が更新された身体は僕の予想を遥かに超えて動いた。
一週間前には反応出来なかった攻撃にも反応して、反撃を行えるようになっていた。
これが
その事を身を持って感じ取った僕は更なる成長をするために現時点での格上の団員達に戦いを挑んで行くのだった。
しかし、結果は想像に難くはない。
目を覚ますと顔は腫れ上がり、腕や足も動かない状態になっていた。
だが、そこまで傷つきながらも僕は考えた。
この『殺し合い』を勝ち抜く方法を。
ベルがギルドで冒険者登録と講義を受けている一方、フレイヤは【ヘファイストス・ファミリア】の
「貴女が私の所へ来るなんて珍しいわね。」
そう言って来るのは赤髪眼で男装をした麗神で右眼には眼帯をしているその女神の名前はヘファイストス。
鍛冶の神としては他の追随を許さないほどの技術を持っており、それに裏打ちされたヘファイストス・ブランドは冒険者の間で最も信頼が厚い。
その鍛冶神の隣には【ヘファイストス・ファミリア】団長であり
「そうね、ちょっとお願いがあって来たの。」
ヘファイストスの言葉にフレイヤは笑みを浮かべながらそう言った。
「お願い?それって
フレイヤの言葉に反応してヘファイストスがそう言うと、オッタルの方を見る。
「残念だけれど、そうじゃないわ。」
「じゃあ、何のお願いなの?」
フレイヤの返答に分からないといった感じで言い返すヘファイストス。
「新しく入った私の
「え?」
その申し出にヘファイストスは素っ頓狂な声を出した。
「あの子には武器や防具が必要なのだけれど、それを全て私が用意してしまってはあの子の為にはならないわ。だから、切っ掛けくらいは作ってあげないとね。」
そう言って来るフレイヤに対してヘファイストスはこう言って来る。
「なるほどね、分かったわ。それなら何人か選別しておくからこの話は後日になるわね。」
「そうね、それじゃあお願いね。」
そう言ってフレイヤは立ち上がると、ヘファイストスがこう言って来る。
「フレイヤ、その子が大切なのね。」
「えぇ、とっても。」
ヘファイストスの言葉にフレイヤは笑みを浮かべながらそう言って帰って行くのだった。
僕が身体が動くまでに回復して
浴場を出ると、僕は一人の団員からフレイヤ様がお呼びである事を伝えられ、すぐにフレイヤ様のもとにへと向かった。
フレイヤ様の
「フレイヤ様、ベル・クラネルただいま参りました。」
「入ってらっしゃい。」
「失礼します。」
フレイヤ様から入室の許可を貰い、僕は部屋の中にへと入ると昨日と同じでフレイヤ様の傍にはオッタルさんが居た。
「登録は出来たかしら、ベル?」
「はい、オッタルさんから借り受けた
フレイヤ様の言葉に僕はそう言った。
「そう、それは良かったわ。それじゃあ、今日の【ステイタス】更新をしましょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
僕はそう言って上着を脱いで背中をフレイヤ様に向けた。
オッタルさんは前回と同じで静かに部屋へと出て行った。
「ねぇ、ベルは武器を何しようとか決めているのかしら?」
「いえ、それはまだなんです。けど、さっきまでの競争で使っていた二本の刀という武器が今まで一番手に馴染んでいました。」
「そうなの。」
そうやってフレイヤ様との会話を楽しんでいると、更新が終わってフレイヤ様が【ステイタス】が書き写された羊皮紙を渡して貰った。
ベル・クラネル
level1
力SSS2772 耐久SSS2597 器用SSS2579 敏捷SSS3109 魔力I0
■■■■
■■■■
少しだけ参加しただけなのにこれだけも【ステイタス】はこんなにも上がっていた。
「ベル」
「何でしょうか、フレイヤ様。」
名前を呼ばれて僕は反応すると、フレイヤ様はこう言って来る。
「せっかくだから明日はダンジョンに行ってきなさい。」
「ダンジョンにですか?」
フレイヤ様の言葉に疑問で返すと、こう返って来た。
「えぇ、冒険者登録をしたのだからダンジョンに行かないと意味ないでしょ。」
「そうですね、そうします!!」
フレイヤ様の言葉を聞いて納得をした僕は同意する。
「装備は言わなくても分かるわね。」
「はい、装備は武器貯蔵庫から持っていきます。」
「いい子ね、それじゃあ今日はもう休めなさい。」
「はい、それでは失礼いたします。」
僕はそう言ってフレイヤ様の
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猛牛との一戦
フレイヤ様に【ステイタス】を更新して貰い、ダンジョンに潜る許可を頂いた翌日、僕は
ダンジョン最初の階層である一階層に足を踏み入れると、そこは地上とは全く別の空気に満ちていた。
何だろう、言葉では表現するのが難しい。
しかし、そんな事を気にしていたら何時まで経っても先には進めないと思い、先にへと進んでいくのだった。
すると、さっそく僕の前にゴブリンが一匹現れた。
「ギャアギャア!!」
そうやって声を上げながら襲いかかってくるゴブリンに対して僕は刀を抜刀すると同時に斬り掛かる。
そうすると、ゴブリンの首はあっさりと落ちて魔石にへと姿を変えるのだった。
初めてのダンジョンでの戦闘、多少なりとも緊張するのかと思っていたけれど全然戸惑うことなく冷静に対処する事が出来ていた。
「よし、この調子でどんどん進もう!!」
そう言いながら魔石をバッグパックに回収して僕は更にダンジョンの奥深くにへと足を踏み入れていくのだった。
なんだかんだと五階層まで降りてきた僕は何十体目か分からないゴブリンの魔石を回収すると、ある異変に気がついた。
「五階層に入ってから数えるくらいにしかモンスターに出会ってない気がするな。」
それはモンスターの数が少ないことだ。
ダンジョンでは下に降りていくほどにモンスターの出現率が増していくハズなのに指の本数で足りるほどの数のモンスターしか出会っていない。
その事に疑問に思っていると、僕から見てから次のモンスターの影が見えてきた為、刀を構える。
その現れたモンスターが吼える。
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオッ!!」
そのモンスターの正体は牛頭獣人のモンスター・ミノタウロス。
突如として現れた
その瞬間、ミノタウロスは僕に向かって腕を振るってくる。
僕は我に返った瞬間、迫り来るミノタウロスの腕と同じ方向に跳んだ。
しかし、それでも反応が遅れたせいで腕の一撃を食らい壁にへと叩き付けられてしまう。
「ぐはっ!!」
壁に激突した際、肺の中の空気が一気に吐き出されてしまう。
その後にとてつもない激痛が身体を襲ってくる。
痛い痛い痛い!!
治まることのない激痛に僕は動くことが出来なかった。
しかし、動かなければ結局死ぬ。
そう頭の中で思っていても、身体が言う通りに動こうとしない。
ミノタウロスから逃げられない、だから身体は死ぬ事を決めた。
死ぬ事は別に構わない、どうせ生きている者全てに死は存在するからだ。
だけど、
何から?ミノタウロスから?
いや、ダメだ!!
ここで逃げたら英雄になる所か、フレイヤ様を愛する資格すら失ってしまう、そんな気がする!!
嫌だ、そんなのは絶対に嫌だ!!
なら、僕はどうすれば良い?
この理不尽な死を乗り越えるには如何するべきか、そんな事はもう決まり切っている。
僕は言う事の聞かない身体を無理矢理動かして立ち上がり、ミノタウロスを睨み付ける。
ここでミノタウロスを倒す、それが僕がフレイヤ様の愛に応える僕の最初の愛だ!!
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
を上げながらミノタウロスに戦いを挑む。
二本の刀でミノタウロスの身体を斬り付けていく。
攻撃を食らったらダメだ、抱えている
だから、ミノタウロスの一挙一動を見逃すな。
見逃せばそこから更に
そうなれば僕は立ち上げれなくなり、死ぬ。
それを避けるために僕は冷静に見る。
腕を振るってくるミノタウロスに対して僕は躱して躱して躱しまくる。
そうしていると、躱すだけの僕に対して苛立ったのか突撃の体勢をとるミノタウロスはすぐに突っ込んでくる。
それに対して僕はミノタウロスの上を跳んでその突撃を回避する。
その結果、目標を見失ったミノタウロスはダンジョンの壁に激突し、動きを一瞬ひるませる。
その攻撃の好機を逃す訳にはいかない!!
そう思い、僕は二本の刀でミノタウロスの身体を傷つけていく。
しかし、止めどなく斬り付けているというのに一向に倒れる気配がない、流石に中層のモンスターだけナな事はある。
そんなことを思っていると、ミノタウロスが動き始める。
それを確認した僕はミノタウロスの動きを制限するために膝裏を斬りつける。
すると、ミノタウロスは体勢を崩す。
それを逃すことなく僕は攻撃に転じる。
しかし、ミノタウロスは僕が攻撃を仕掛けてくることを待っていた。
僕が近付いた瞬間、ミノタウロスは拳を突き出してきた。
不味い、これは食らってしまう。
そんなことが頭の中を過ぎっているその瞬間、戦いで動き続けていたためなのか足が縺れてしまい倒れ込んでいしまう。
しかし、そのおかげでミノタウロスの拳を躱す事が出来た。
倒れ込んだ僕はすぐさま立ち上がると、ミノタウロスがもう一度拳を振るってくる。
それに対して僕はわざとダンジョンの壁に追い込まれ、向かってくる拳に対して刀を突き刺す。
しかし、ミノタウロスの拳に刀は突き刺さることはなくそのまま押し切られてしまう。
柄先が間近に迫ったその時、僕は刀から手を離した。
すると、どうなるだろう。
渾身の力で振るわれたミノタウロスの拳は今更止まることが出来ずにダンジョンの壁に激突する。
その際、拳に刺さっている刀がそれと同時に拳に、いや腕にへと深く突き刺さる。
「ヴヴォオオオオオオオオオッ!?」
腕に走る激痛からか悲鳴じみた声を上げるミノタウロスに隙が生じた。
その隙を逃すことなく僕は刀での攻撃を畳み掛ける。
「ガアアアアアアアアッ!!」
手に持つ刀と背中に背負った予備の刀を手に取り、切り刻んだ場所を抉るように攻撃を仕掛けていく。
ミノタウロスも傷みを誤魔化すように暴れ回るが、僕には当たらない。
しかし、このまま戦い続けるのは僕にとっても危険だ。
なけなしの体力ももう無くなりそうだ。
だから、僕は一つの賭けに出ることにした。
それは策というにはあまりにもお粗末なもので、失敗すれば確実に死に、僕は天へと召される。
しかし、やるしかない。
フレイヤ様のお役に立つにはこの窮地を脱する以上の力がいる。
だからこそ、僕は今ここで冒険をする。
端から見れば無謀だと思われても仕方がない、それでもやるしかないんだ。
「フゥーーーッ、行くぞ。」
大きく息を吐き、そう呟いた瞬間ミノタウロスにへと向かって駆け出す。
それに対してミノタウロスは迎撃と言わんばかりに大振りの拳を放ってくるが、それを冷静に見切って僕はミノタウロスの懐にへと潜り込んだ。
潜り込んだ瞬間、僕は刀をミノタウロスの胸にへと突き刺したがしかし、ミノタウロスの肉が固く魔石のある場所まで届かない。
すると、両側から僕を捕まえようとミノタウロスの腕が迫って来るのに気付き、すぐさま後ろにへと飛び退いて距離を取る。
決定打に欠いた攻撃では今の僕では倒せない、そう思った瞬間次に狙う部位を決めた。
それは眼だ、いくら肉体が強靭であろうと
そう決めた瞬間、僕は走り出した。
それに呼応するようにミノタウロスも前のめりになりながら僕に向かって来る。
しかし、それは罠だった。
「!?」
まさか、この状況でそんな器用な事をモンスターがするとは思わなかった。
僕も急停止しようとしたけど、勢いを殺し切れずにミノタウロスの左側面に立ってしまった。
その隙を逃さず左の角で貫こうと突貫してくる。
グチャッ!!
迫り来る角を回避するために身体を捻るも間に合わず左肩を貫かれ、鮮血が舞う。
猛烈な痛みが僕の身体を襲ってくる、その痛みに手に握る刀を手放したくなってしまう、叫びたくなってしまう。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
それらを押し殺して激痛に耐えながら僕は右手の刀を死角からミノタウロスの左眼にへと突き刺した。
「ヴォオオオッ!?」
仕留めかかった獲物に思わぬ反撃を受けたミノタウロスは僕を振り落とそうとするけど、左肩に深々と刺さってしまっているせいで振り払えずにいる。
ミノタウロスが動く度に鋭い痛みが襲ってくるが、僕は突き刺した刀を更に奥にへと食い込ませようとする。
そして、最初の時よりも刀がミノタウロスの肉を抉り、首まで貫いた瞬間灰となって霧散した。
ミノタウロスが消えたことによって僕は重力に従って地面へと落下し、倒れ込んだ。
「勝った、僕が・・・ミノタウロスを・・・」
そう言いながら僕は左肩にある感触に違和感を覚えた。
何故なら、左肩にまだ何かが刺さったような感覚があるからだ。
ゆっくりと左肩の方を見ると、左肩にミノタウロスのドロップアイテムである「ミノタウロスの角」が貫かれた傷を塞ぐように残っていた。
これで肩からの出血が最小限に抑えられている、自分を殺そうとしていたモンスターのドロップアイテムで助かるとは皮肉だなと思いながら身体を動かそうとするが、指すら動く気配がない。
「くそっ、このままじゃ本末転倒じゃないか・・・!!」
這ってでも動こうとするが、それすらも叶わない。
ギリギリ保って意識もここに来て限界を迎えようとしていた。
「{もう・・・、意識が・・・}」
そうして、僕の意識は黒く染まった。
ベルが意識を失ってすぐの事、気絶をしているベルの元に一人の獣人の男が現れた。
「チッ、なんで俺がこんなクソガキを連れ戻すためにダンジョンに来なきゃならねぇんだ」
その獣人の男は銀の槍に軽装備を身に纏った黒髪の
アレン・フローメル、【フレイヤ・ファミリア】副団長にしてLEVEL6の第一級冒険者。
二つ名は【
「・・・LEVEL1でミノタウロスを倒しやがったか・・・」
そう言った後、ベルを荷物のように抱えてアレンは疾駆し、音を置いて姿を消す。
その疾さは正に最速である。
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外出
ミノタウロスとの死闘を制した後、意識を失った僕が次に目を覚ました場所は
首だけを動かして周囲を確認すると、机の上には魔石と
いつの間に僕は本拠まで帰ってきたのかという疑問に襲われたが、これについては早い段階で考えに至った。
どこかの冒険者に助けられてしまった、という事実に僕は拳を握った。
僕はフレイヤ様の眷族になって思い上がっていたのかもしれない、今回であの方の顔に泥を塗ってしまった。
そう頭の中で理解してしまった僕は強く願った、強くなりたいと。
そう頭の中で想った時、体が自然と動き出していた。
ミノタウロスに負わされた傷は治療を受けたのか綺麗サッパリと消えていて痛みも感じなかった。
そうして、服を着替え部屋の外に出ようとした時、フレイヤ様とオッタルさんが入ってきた。
「ベル、何をしているのかしら?」
ニッコリと笑みを浮かべながら問いかけてくるフレイヤ様の目は笑っていなかった。
「フ、フレイヤ様・・・」
「もう一度聞くわね、何をしているのかしら?」
「・・・ダンジョンに行こうとしてました」
フレイヤ様の謎の圧に僕は屈してしまった。
「ダメよ、ベル。貴方は昨日瀕死の状態でダンジョンから戻ってきたのだから」
「はい、でも・・・」
「でも、じゃないわ。今はゆっくり身体を休めることが貴方の仕事。どうしても行きたいと言うんならオッタルを倒していきなさい」
そう言ってくるフレイヤ様の目は
「大人しく、しています・・・」
「いい子ね、ベル」
そう言いながらフレイヤ様は僕の頭を撫でてくる。
すると、思い出したかのようにフレイヤ様がこう言ってくる。
「そうだわ、ベル。【ステイタス】の更新をしましょうか」
「【ステイタス】の更新ですか?でも、昨日はそんなにモンスターを倒せませんでしたし・・・」
「そんな事ないわよ、それに貴方はLv.1なのにミノタウロスを倒してみせたのだから【ステイタス】が上がっていることは確かよ」
「そういうものでしょうか?」
「そういうものよ」
僕の言葉にフレイヤ様は笑ってそう言ってくれた。
そうして、僕はフレイヤ様に【ステイタス】の更新をして貰った。オッタルさんはいつもの様に部屋か出ていった。
そして・・・・。
「おめでとう、ベル。
「え!?」
最初聞いた時、僕は自分の耳を疑った。
でも、フレイヤ様が僕に
「えぇ、本当よ」
「やったー!!」
冒険者になって初めての
でも、僕は・・・。
「それじゃあ【ステイタス】を・・・」
「フレイヤ様、まだランクアップはしないでもらえませんか?」
僕のお願いにフレイヤ様はキョトンとした顔をする。
「どうしてかしら?」
「確かにLevelが上がれば強くなれますけど、もう少しだけLv.1のままで【ステイタス】をギリギリまで上げておきたいんです」
「解ったわ。貴方が自分でそう決めたのなら私は背中を押してあげるわ」
「ありがとうございます!!」
僕の勝手な願いをフレイヤ様は許してくれた。
「それと、ベル今日は私についてきて頂戴」
「あっ、はい!フレイヤ様、どこかへお出かけなさるのですか?」
「えぇ、ヘファイストスに前に頼み事をしていたことがあったの。その事で話があるって言うからよ」
僕はフレイヤ様の口から出た神の名前に驚きを隠せなかった。
ヘファイストス、このオラリオで鍛冶系派閥の一つである【ヘファイストス・ファミリア】の主神であり、主神自身も神匠と呼ばれる鍛冶職人でもある。
しかし、疑問がいくつか浮かんだ。
鍛冶系派閥とはいっても武器や防具が専門の派閥にフレイヤ様はどんな頼み事をしたのだろうと興味が湧いた。
「わかりました、それではいつ参られますか?」
「そうね、ちょうどベルも着替えを済ませているみたいだから今から行きましょうか」
「はい、わかりました!!」
フレイヤ様の言葉に僕はそう言って最低限の装備を整えていくが、問題が生じる。
それは武器だ、昨日のミノタウロスの一件で刀の
すると、部屋の外にいたオッタルさんが入ってきて一本の刀を渡してくる。
「こいつを使うといい」
そう言割れて僕はその刀を受け取り、刃を確かめるために抜刀する。
そこには一切の飾りっ気をも削ぎ落とし、武器としての性能を押し出したかのような刀があった。
「本当に使ってもいいんですか?」
「好きにしろ」
そう言ってオッタルさんは再び部屋を出ていくのだった。
「それじゃあ、行きましょうかベル」
「はい、フレイヤ様!!」
こうして、僕はフレイヤ様の護衛として工業地区もとい【ヘファイストス・ファミリア】に向かうのだった。
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僕はフレイヤ様の護衛として【ヘファイストス・ファミリア】に所属しているとある鍛冶師の工房に訪れていた。
「いらっしゃい、ここまで来てして貰って悪いわねフレイヤ」
「あら、そんな事はないわヘファイストス。こっちだってお願いしている身なんですもの、当然の事でしょ」
フレイヤ様と話をしている赤髪の男装の麗人が【ヘファイストス・ファミリア】主神であるヘファイストス様だ。
すると、ヘファイストス様が僕の方を見て来る。
「へぇ、この子がフレイヤのお気に入りね」
そう言って来るヘファイストス様に僕は挨拶をする。
「僕はベル・クラネルと言います、今後ともよろしくお願いします」
そう言いながら頭を下げる僕に対してヘファイストス様はこう言って来る。
「えぇ、こちらとして長い付き合いがお願いしたいわ、
「はい!!」
そうして話していると、フレイヤ様がヘファイストス様に話しかける。
「それで、候補の
「えぇ、そうよ。腕はいい子だからきっと大丈夫なはずよ」
そう話した後、ヘファイストス様が工房の扉を叩き声を掛ける。
「ヴェルフ、一寸良いかしら?」
「何ですか、ヘファイストス様・・・」
扉が開き、中から赤髪の青年が出て来ると同時に僕とフレイヤ様を視界に捉えて顔を顰める。
「また魔剣の依頼ですか?」
「自分で聞いてみなさい」
顔を顰めながら自身の主神であるヘファイストスに問いかけ、それに対してヘファイストス様は青年にそう言った。
「僕の装備一式を作ってください!!」
「魔剣は作らねぇ!!」
「「え?」」
僕と赤髪の人が同時に言い、互いにキョトンとした顔をする。
それを見ていたフレイヤ様とヘファイストス様が笑いをこらえようとしていた、笑いを堪えようとしているフレイヤ様可愛いな~と思ってしまう。
すると、赤髪の人が話しかけて来る。
「なぁ、お前魔剣が欲しいから俺に会いに来たんじゃないのか?」
「いえ、別に・・・。というか、魔剣って何ですか」
「なっ・・・!!」
「「あはははははははっ」」
問いかけられた質問に答えると赤髪の人は顔を赤くして驚き、
「魔剣がなんなのかはあとで教えてやるよ、それよりもお前俺の作った装備が欲しいって言ってくれたよな?」
「はい、言いました」
「それなら任せてくれ、お前に俺が最高の装備を揃えてやる!!」
破顔させながらそう言って来る赤髪の人のその言葉に僕は嬉しくなった。
「ありがとうございます、僕はベル・クラネルと言います!!」
「俺はヴェルフ・クロッゾ、ただ家名で呼ばれるのは嫌いだからヴェルフって呼んでくれ、敬語も無しでな」
「うん、分かったよヴェルフ!!」
こうして、僕は鍛冶師のヴェルフと出会い、装備一式を注文するのだった。
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日常
ヴェルフに装備一式を注文した日の翌日、僕はフレイヤ様から念の為の療養を命じられてしまい手持ち無沙汰となっていて暇を持て余していた。
コンコンッ
「! はい、今開けます」
扉をノックする音が聞こえ、扉を開けるとそこには片眼鏡を掛けている
「返事から扉を開けるまでの一連の流れが遅いぞ、
初対面の
あの後、僕と
「これより、フレイヤ様の眷族である貴様に礼儀作法を叩き込む。これに関しては理由は解るな、愚兎」
「はい、フレイヤ様のご尊顔に泥を塗る真似などさせないためですね」
「そう、その通りだ」
ヘディンさんはそう言いながらメガネをクイッと上げ、たった一言…。
「始めるぞ」
そこから僕の地獄の
最初は品定めからの酷評が始まった。
「品性が足りん、所作も稚拙だ。洗練とは全くの対極の青二才そのものだな」
「ぐっ!!」
「言葉遣いですら聞くに堪えん、教養の無さが透けて見える」
「ぐはっ!!」
「何より、その間抜け面。こうして相対しているだけで苛立ちの種になるとはな」
「がふぅっ!!」
ダメ出しの嵐に僕はもう心が折れそうになっていた。
その後、一週間僕の姿を見た者は誰もいない。
襤褸屑になりながらもなんとか
香草焼きを食べながら僕は
その度に
食事を終えて身体の汚れを取った後、僕は一週間ぶりに自室にへと戻ると、そこにはフレイヤ様がいた。
「あら、お帰りなさいベル。この一週間、何処に行っていたのかしら?」
フレイヤ様の顔は笑っていても目は笑ってはいなかった、完全にお怒りになられている!!!
「申し訳ありません、フレイヤ様。敬愛する女神に心労をかけてしまった事いくら謝罪しようとも足しません!!」
土下座と共に謝罪の言葉を
そう言って頭を下げると、フレイヤ様はこう言ってくる。、
「うふふ、冗談よ。貴方の事はヘディンから聞いているわ、怒ってないから」
そう言って笑みを浮かべているフレイヤ様を見て僕は少しばかり安堵した。
「それじゃあ、【ステイタス】の更新をしましょうか」
「はい」
フレイヤ様の言葉に僕は素直に応じ上着を脱ぎ、丸椅子に座り【ステイタス】更新を始める。
その結果は…。
ベル・クラネル
Lv. 1
力SSS4124 耐久SSS5000 器用SSS4946 敏捷魔SSS5124 魔力I0
■■■■
■■■■
この結果を見て僕はまだまだ足りないという感情を思った。
すると、フレイヤ様が声を掛けてくれる。
「ベル、
「いえ、まだ控えておきます。今よりももっと【ステイタス】を上げておこうと思いますので」
「そう、解ったわ」
「それでは失礼します、フレイヤ様」
「えぇ、頑張ってねベル」
「はい!!」
フレイヤ様の私室を出た後、僕は鍛える為に「洗礼」へと挑んでいくのだった。
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新装備
僕は今、専属契約を結んだ【ヘファイストス・ファミリア】の鍛治師ヴェルフの鍛冶工房にやってきていた。
ここに訪れた理由は注文していた僕の専用装備が完成したという知らせを受けたからだ。
それを聞いた瞬間、僕は稼いでいたお金を持って
「おっ、待ってたぜベル」
「うん、ヴェルフ僕待ちきれずに飛んできちゃったよ」
僕に気づいたヴェルフがそう言い、僕も今の気持ちを伝える。
「ははっ、そう言って貰えるなら鍛治師冥利に尽きるぜ」
そう言いながらヴェルフが赤い炎模様の入った白鞘の刀と白い雷模様の入った黒鞘の刀、鈍色に輝く
「こいつがお前の新しい装備だ」
「わぁ・・・っ!!」
僕だけの装備、そう聞くだけで興奮してきてしまう。
そうやって感情を高ぶらせたまま黒鞘の刀の柄を握ると、手に馴染む感覚が感じ取れた。
「抜いてみてもいい?」
「もちろんだ」
ヴェルフの了承を得て僕は鞘から刀を抜いた。
すると、そこには処女雪のように白い刀身が姿を現した。
「凄く綺麗だな」
「あぁ、俺が打った刀の中では一際綺麗だな。ベル、もう一本の刀も抜いてみろ」
そうやって感想を互いに言っていると、ヴェルフがもう一本の刀を指差してそう言ってくる。
「? 解った」
疑問に思いながら白鞘の刀を握るとやはりこちらも手に馴染む感覚があるのを感じながら抜いてみると、さっきの白い刀身とは打って変わって荒々しく燃え盛る炎を思わせる程の深紅の刀身が姿を見せる。
「さっきの刀とは大分印象が変わるね」
「まぁな。だが、今の俺の武器の中では最高傑作と言ってもいいかもな」
ヴェルフがそう言いながら次に防具を見せて来る。
「次は防具だ、こいつも自信作だ!!」
そう言われながら手渡された防具は軽くて敏捷重視の僕の戦闘姿勢に合致した防具だった。
「この防具凄く軽い・・・」
「おう、こいつは出来る限り耐久力を維持しつつ軽くすることに拘ったからな」
「凄いよ、僕の要望に完璧に応えてくれてる!!」
「そ、そうか、そんなに喜んでくれたんなら俺も嬉しいぜ!!」
僕達はその後も雑談をして一日を過ごすのだった。
そして、そろそろ
「ベル、明日一緒にダンジョンに潜らないか?」
「えっ、急に改まってどうしたの?」
そんなことを言ってくるヴェルフに疑問に思った僕が問い返すとこう言って来る。
「実はな、俺は
そう言ってくるヴェルフに対して僕はこう言った。
「うん、いいよ」
「本当か!?」
「うん、だけど今僕はフレイヤ様にダンジョンに行くことを禁じられているから許してもらえたらで良かったらだけど・・・」
ダンジョン禁止のことを伝えると、ヴェルフはこう言ってくる。
「主神命令でダンジョン禁止って何やらかしたんだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・ミノタウロスとの一騎討ちかな」
「Lv.1でミノタウロスと一騎討ち!?つか、なんでミノタウロスと戦うことになってんだよ!?」
ミノタウロスの事を伝えると、ヴェルフが大声を上げる。
「中層で
「いやいや、それでなんとか逃げ切ったんだな」
そう言ってくるヴェルフに対して僕はすぐさま訂正する。
「ううん、ミノタウロスから逃げ切れないと思ったから戦って倒したよ」
「倒した!?」
それを聞いたヴェルフは驚愕の表情と声を出す。
「うん。でも、僕的には痛み分けかな。だって、あの時僕も瀕死の重症だったし」
「平然と言ってくれるが、普通なら逃げてもおかしくなかった状況だぞ」
僕の言葉を聞きヴェルフがため息を吐きながら額を押さえる。
「まぁ、運が良かったね」
「そうだな」
こうして、会話が終わりを迎えると同時に僕は
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借金
ヴェルフから新しい装備を受け取った僕は
フレイヤ様の神室の前までやってくると、身なりを整えてから扉を叩く。
「誰?」
「ベルです」
「入ってきて良いわよ」
「はい、失礼致します」
フレイヤ様から入室を許された僕は部屋の中に入ると、そこには椅子に座り
「お帰りなさいベル、今日は良いことあったようね。顔に出ているわよ」
「そ、そうでしょうか?」
フレイヤ様にそう指摘されてしまったが、うれしかったことに変わりないので否定はしない。顔に出ていたことに関してはちょっと恥ずかしかった。
そう話した後、椅子に座られていたフレイヤ様が立ち上がり
「フレイヤ様、この本は一体・・・?」
「これは
「ありがとうございます、フレイヤ様!!これからも御身により一層の忠節を捧げます!!!」
そう言いながら跪き、それを終えるとフレイヤ様の手から魔導書を受け取った。
「えぇ、これからも貴方の輝きを見せてねベル」
「もちろんです、フレイヤ様!!」
その話を終えると、僕はあの話を切り出した。
「あの、フレイヤ様お聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか」
「えぇ、何かしら?」
「僕のダンジョン禁止はあとどのくらいなのでしょうか」
「そうね明明後日から良いわよ」
「明明後日ですね、解りました!!」
僕の問いにフレイヤ様そう答えてくれた。
そうして、僕は神室を出て身体を休めるべく自室へと戻っていった。
翌日の朝、目を覚ました僕は新しい装備終えた僕はそれまでオッタルさんから借り受けていた刀を返しに行くことにした。
「オッタルさん」
「ベルか・・・、どうかしたのか?」
「あの、新しい装備が出来たので借りていた刀を返しに来ました」
「その必要は無い、その刀は元より俺は刀を使うことが無い。俺が持っているよりも武器として振るわれる方が良いと思ったからこそお前に渡した。それだけだ」
そう言ってオッタルさんは装備を整えてダンジョンへ向かっていくのだった。
その後を追って幹部のアレンさん、へディンさん、アルフリッグさん、ドヴァリンさん、ベーリングさん、グレールさんが飛び出していったが飛び出していった。
まぁ、目的は本拠でやっている
幹部の人達とは団長のオッタルさんと
ヘグニさんとは何度か対面はしているけど第一級冒険者の敏捷で避けられている。
そういえばオッタルさんを追う中にヘグニさんが居なかったけど如何したんだろう。
フレイヤ様のために何処かで行動しているとかかな?
そんなことを考えながらダンジョンに行く前になまった身体をたたき直すために洗礼に参加をする。
新しい装備にしてからの洗礼は今まで以上に苛烈だった。
常に多対一を余儀なくされ対処に追われる形になってしまっている。
それには僕も対処しきれずに負傷してしまうけれど、それでも僕はフレイヤ様の為に強くなるんだ!!
その一念で洗礼を受け続けた結果、新しい装備が受け取って十数時間後に整備行きになりました。
「たくっ、どんな特訓したらここまでボロボロに出来るんだよ・・・」
ヴェルフはそう言い呆れられながらも整備をしてくれた。
「それでヴェルフ、フレイヤ様からダンジョンに明後日からなら行って良いって許しが貰えたから行こうよ」
「行こうって言ったってお前の装備新調する必要があるぞ」
「えっ、そうなの!?」
「刀の方は刀身が損傷がデカすぎて新しく打つ必要がある。防具の方も同じだ」
「そ、そんなぁ・・・」
新しい装備は一日足らずでお釈迦になってしまった。
そう落ち込んでいる僕に対してヴェルフが質問をしてくる。
「・・・【フレイヤ・ファミリア】の洗礼ってのはそんなに激しいのか?」
「そうだよ、僕と同じLv.1からLv.4の冒険者が広場で
「そ、そうか」
質問に答えると、ヴェルフはなんでか退いていた。
まぁ、【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶派閥だしそう言うのとは無縁なのかな。
そんなこんなで僕は新しく装備をヴェルフに受注し
そして、決めたことがある。
ヴェルフとのダンジョン探索でローンを返済できる以上の成果を上げる、と。
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