探偵紛いの偽装 (長門 ゐをり)
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一日目(1)

誤字報告など待っております。


曇天の空の下、小型バスの窓から見える田んぼの景色に雪が映りはじめた頃に

「ねぇみんな、宇宙旅行って行ってみたいと思う?」

 

誰しもが一度は聞かれたことのある質問を、僕の右斜め前に座る茶色い髪の女の子が脈略もなく言い出した。

“言い出した”というのもこのバスには僕の他に全部で六人が乗っているからだ。

 

さっきの問いに昔の僕がどう答えていたかは覚えていないが、今の僕ははっきり言って宇宙なんて地球に危害がないなら知らなくてもいいことことだし、どうでもいい。前提としてこういう質問はもっと知的好奇心の強い知りたがりにするべきだと思っている。ところで変な話、僕が現在進行形で行っているこのスキー教室も宇宙旅行の様なものだ。違いといえば、『自分と同じ人間と地球で旅行に行く』か『宇宙人みたいな連中と旅行をするか』の違いで、結局のところ環境か同伴者かなんて大した問題じゃないし些細なことだ。

 

『宇宙人みたいな連中と旅行』というのも、僕は今、僕とは違い表情をコロコロと変え、感情表現を得意としている様な連中と裾ヶ峰スキー場という場所で行われる三泊四日のスキー教室に来ている。いや、向かっている。

 

スキー教室は応募者をA班からF班に分けて行われる。班ごとにバスも宿泊先も変わってくるので、実質他の班と関わりをもてるのは、スキー場だけになる。まぁ、他の班と関わりをもとうなんて気は毛頭ないけど。ちなみに僕を含めた七人でつくられたこのF班だが、宿泊先がスキー場から一番離れた山上という辺鄙なところにある、一番損な班だ。

 

そんなことをいっている間にどうやら僕が意見を言う前にさっきの『宇宙旅行がどうちゃら』っていう話は終わっていたらしい。

 

別に悲しくもないけど、なんとなく惨めな気分だ。例えるなら、バレンタイン二、三週間前に女子から「そんなチョコ欲しいならバレンタインのときチョコあげるよーwww期待して待っててwww」みたいなことを言われてその二、三週間をニヤニヤしないように「前もこんなことあっただろ俺、期待なんてするな!」なんて思うモテない男の葛藤の中過ごしていたけど、結局その女子からはバレンタイン当日にチョコなんてもらえず、かといって「チョコちょーだい」なんて思いきったことも言えずにいつもよりゆっくり帰りの支度を進めているときの気分に近い。

 

それと今みたいな話をするとあれ、こいつって感情のないクールキャラじゃなかったかみたいな、勘違いされて困るので言っておくと、僕は別に感情がないわけではない。感情表現が苦手なだけだ。まぁ、それでも人より感情の上がり下がりは少ないけど。

 

話は変わってこの連中と数十分前にした強制参加の自己紹介によれば、僕の左隣に座っているこのリア充オーラ満載の男が“鈴野 悠翔”というらしいが、なぜだろうか殺意が湧く。あぁ、殺したい。むかつく。そして通路を挟んで右側にいる黒い超☆エキサイティング!!あ、違った。黒い超☆立体マスクをつけている男が“坂田 智也”らしい。さらにその奥にいる天パの男が“宮崎 文也”というらしい。なんかさっきコード付きのイヤホンを持っているのがこの班内で彼だけ、みたいな話をしていてその時に鼻の下を伸ばしていた。んで、右斜め前の茶髪の宇宙少女は“斎藤 優奈”といい、その隣にいる幼馴染みかなんかの“半田 ノボル”とかいう男にべったりとくっついている。最後に僕の前の二席を我が物顔で使っている黒髪ロングの女が“野田 日南”というらしかった。別に一人で居れていいなぁなんて思っていない。思っていないから。

 

まぁ、それはさて置き、僕の名前は“相川 慎也”っていう。“長門 ゐをり”なんていきった名前でもないどこにでもいる平凡な名前だ。

 

それに、どうせこの連中とはこのスキー教室が終わったら関わることもないだろうから連中にとっても僕にとても名前なんてどうでもいい情報だ。

 

しかし皮肉なことに人間という生き物は大事なことこそすぐ忘れるが、下らない、どうでもいい、といったこと長々と覚えているものである。例えば、僕が初めて生き物(といっても雀だが)を殺したときのことを鮮明に覚えているように。

 

なんだか、あのなんとも言えない生物特有の体温の温かさが手のひらにべったりとへばりついて離れないような気がする、がどうでもよかった。



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一日目(2)

先日、ギルキスのライブビューイングに行って来ました。ギルキスって素晴らしいと思いますよね(威圧
それはさて置き、ギルキスを知らない方はこんな駄文を読む前にYoutubeでもなんでもいいので「guilty kiss」と調べて下さい。
それと今回はクソ話が飛びまくります。


バス移動も終わり、宿舎に着いた頃にはデジタル腕時計の液晶は現在時刻を14:24と表示していた。微妙に高い山の頂上にあったので、ここに着くまで十五分弱歩かされた。明らかに腐っている木の板に書かれた文字は消えていて、壮という漢字しか読めなく。なっていた。名前を知ったところでなんの役にも立たないけど。さて、準備してスキー場に向かうとしよう。

 

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結局、僕にスキーの才能は無かったらしくて、周りのリア充に笑われて隅の方で大きい雪玉を転がしていた。昔、本当にきめの細かい粉雪は冷たくないとか聞いたけど全然そんなことは無く、指先が脈打つようにドクドクジンジンとても痛い。特に風呂に入る時間に指定は無く好きなように過ごしてよかったと記憶しているからさっさと風呂に入ってしまおう。

 

部屋に戻り、茶色の大きいバッグからタオルと部屋着を取り出していると

「大浴場に行くのかい?ぼくもついてっていいかな。」

とリア充オーラ満載の鈴野から言われた。

「あぁ、別に構わないけど僕なんかと風呂に入っても面白いことなんて何もないけどそれでもいいか。」

内心、ついて来るなと思っていたけどそう答えた。人間は空気を読まなければいけないから窮屈だ。

「うん。ありがと、それとごめんね、」少し寂しそうに鈴野は言った。

「何が?」

「いやぁ、別に同じ部屋に泊まる訳でも無いのに勝手にこんなこと言っちゃって。」

本当だよ。僕は心の中で呟いた。その時なんて口に出したかは、覚えていない。

あぁ、何故だろうこいつを殺したい。

 

大浴場は昔ながらの銭湯みたいな感じで、タイル貼りの角ばった浴槽に二人、僕と鈴野は隣あって座っていた。

こういう角ばった風呂に入ると、滑って転んだとき角にぶつかってしまうのではないかと一人想像し少し肝が冷えるのは僕だけだろうか。

 

「なぁ、生きる意味ってなんだと思う?」

前髪をあげた鈴野が僕に聞いてきた。

「そんなもんないだろ。」僕は答えた。

「すごいな、君は。」ピチョンとどこかで音が聞こえた。

褒められたのはいつぶりだろうか。

「勝手に親に生み落とされて、理不尽だよなぁ。」

親と最後に話したのは、中学生の頃ぐらいだったか。それからほとんど人と話すことも無かったから……

「やりたくないことのために勉強とかやりたくないことをする。」

「「詫びしい。」」

 

あぁ、こいつを殺したい。

何故だろう、多分……同族嫌悪というやつだろう。

 

お互いに無言のまま脱衣場を離れる。のれんが頭に掛かり、床板は木製のはずなのに、コンクリートのように無機質な冷たさを孕んでいた。

僕はそれが妙に心地良く感じていた。

窓は、光の反射で僕らが写っていた。どちらもお世辞にもいい表情だったとはいえなかった。

 

「なぁ、この後ぼくの部屋に来て少しお話しないかい?」

 

「……あぁ、別に構わないよ」

僕は少しだけ間を置いてそう答えた。

 

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ふと、我に返る。

見馴れない部屋。

あれ、僕は何をしていたのだろうか。

 

あぁ、鈴野を殺していたのか。

 

月明かりに照らされた自分の姿が見当たら無かった。

 

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか。

 

 

 

 




私自身、スキーの経験がないので、スキー場の場面はカットしました。
少し飛ばし過ぎてしまったような気がするので、後で増やすかもしれません。


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