転生サキュバスのお気楽生活 (やがみ0821)
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お気楽生活の始まり
サキュバスはただ単にサキュバスと一括にされがちな種族であるが、実のところその力の強さによって明確な階級がある。
最上級のサキュバスともなると魔王にも匹敵する魔力に加え、底無しの性欲を併せ持つ。
そんな最上級サキュバス――俗にサキュバスクイーンというカテゴリーに入る者達は例外なく快楽主義であり、また日夜新しい性癖の開拓に余念がない。
故に、とあるクイーン――未婚・子供無し・性経験膨大というよくいるタイプ――がとんでもないことを思いつくのも道理であった。
異世界転移者とかがいるなら、異世界から魂引っ張ってきてそれを自分の胎から産めばいいんじゃね?
自分の後継者問題も解決するし、異世界特有のエロも教えてくれそう!
そんなわけで、クイーンは仲の良い魔導士のデミアに話を持ちかけたところ、彼女の知的好奇心も大いに刺激されたのでやってみることにした。
しかし、魂を無理矢理引っこ抜くのは問題がある為、契約によって承諾した場合にのみ魂を引っこ抜いて転生させるという形となった。
この契約関連はデスアビスが協力する。
そして、クイーンが細かな条件をつけて――性欲が強いもの、サキュバスとなることに抵抗がないものなど――探すこととなった。
計画の立案・実行から20年くらいして、候補者はたくさん見つかったのだが全員に断られてしまった。
女になるのはちょっと――
宗教的に悪魔は無理――
サキュバスよりもエルフがいい――
サキュバスになったところで顔とかが残念になるかも――
クイーンは激怒した。
さっさと転生してくればエロいことができるのに、何を躊躇うのか!
そこでデミアは提案する。
さすがに顔の造形や体型を産まれる前から細かにイジるのは難しいが、性別くらいなら何とかなる。
また転生後の待遇面を教えたり本人の希望も聞いたほうがいいのではないか、と。
そして、クイーンは待遇面の提示や希望を聞くというようにしたところ――希望者が殺到した。
ゲンキンな連中だとクイーンは毒づくが、選ぶ余裕ができたのは喜ばしい。
クイーンはとある魂を選ぶ。
その魂は希望者の中で性癖の範囲がもっとも広く、そして深い。
本人の希望はたった一つのシンプルなものであった。
それは孕むことも孕ませることもできるふたなりにしてくれというもので、クイーンは非常に謙虚に思えた。
他の希望者達はノーマルプレイは問題なくてもアブノーマルプレイはNGか、OKであったとしても軽いものに限るのに、希望だけは一丁前であった。
ともあれ、クイーンは選んだ魂を胎に仕込み、魔法でアレコレして孕んで――そして産んだ。
エルメシアと名付けられた彼女はサキュバス的な愛情をたっぷり注がれて育てられた。
そして誕生から30年程が過ぎたときには膨大な魔力と底無しの性欲を持ち、次期クイーンに相応しい淫乱変態になっちゃったのである。
ゼルはスタンクと共に依頼でとある街を訪れていた。
別にそれ自体は珍しいことではないが、依頼以外の目的もあった。
「しかし、スタンク。本当にあるんだろうな?」
「確かな筋の情報だ。この街の郊外に激安サキュバス店があるとな」
「どう聞いても地雷じゃねーか? 明らかにやべーのが出てくるだろう」
「まぁまぁ、とりあえず行くだけ行ってみようぜ。依頼も終わったしよ」
「いいけどよ、具体的な位置は分からないんだろ?」
「聞き込みすればすぐだって」
そんなこんなで2人は激安サキュバス店を求めて、聞き込みを開始した。
幸いにもすぐに店のことを知っている住民に出会った。
人間の彼によれば最高の一言であり、オーナーが趣味でやっている店のようだ。
60分たったの2500Gという破格の値段でオプションも豊富、ただし基本的にオプションはマニアックなものが多い。
肝心のサキュ嬢については種族こそ様々であるがハズレ無しの美人揃いとのこと。
またオーナーが純正のサキュバスであるが、そこらのサキュバスとは格が違うらしい。
純正サキュバスがやっている店なら激安もありえると2人は期待を胸に、その店へと赴いた。
店舗の見た目はどこかの貴族の屋敷のようであった。
それなりに広い庭までついており、ゼルとスタンクはますます期待してしまう。
「一応確認だけど、間違っちゃいないよな?」
「表札は聞いていた名前の通り……淫乱の館だ」
「オイオイ、搾り取られちまうぜ……」
好色な笑みをスタンクとゼルは浮かべながら、いよいよ店内へと入った。
そこは店舗とは思えないエントランスホールだ。
赤い絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリアが吊るされており、本当に貴族の屋敷なのかもしれない。
しかし、店舗である証拠としてエントランスホールには看板が立っており、係の者が案内するのでしばらくお待ち下さいと書かれていた。
「金持ちサキュバスが道楽でやっているって感じだな」
「だな。漂うマナの残滓も強い……何だ? 何か変だぞ」
「どうした?」
「いや……何というか、芳醇で濃厚なマナに混じって、詰まりに詰まった下水道のような悪臭が微かにする」
「そんな臭いしないぞ?」
「マナが分からないと無理だろう。いやでも……まさかな」
2人が会話をしていると、やがて奥の扉が開いてその人物が姿を現した。
スタンクとゼルは思わず声を出して見惚れてしまう。
銀髪碧眼白い肌、頭にはヤギのような角、背中にはコウモリを思わせるような黒い翼があった。
彼女は豊満な胸を揺らしながら歩いてくる。
10代後半から20代前半くらいか――イケる。
マナの質も若々しい――イケる。
即座に判断したスタンクとゼルは互いに視線を合わせ、火花を散らし合う。
これは譲れない性なる戦いである。
「お客さんね? この店のオーナー兼受付兼サキュ嬢のエルメシアよ」
はいこれ、と彼女はスタンクとゼルのそれぞれにサキュ嬢名簿を渡してきた。
「おぉー!」
「……マジかよ」
名簿を見たスタンクは鼻の下をこれでもかと伸ばし、一方でゼルは物凄く嫌そうな顔をした。
「エルメシアちゃん、ここに書いてあるサキュ嬢達の経歴とかって本物なの?」
「本物よ。ちなみに私のハーレムの子達でもあるのよ」
「いい趣味しているな……!」
サムズ・アップするスタンク。
一方でゼルはすっかりと萎えてしまった。
「おいスタンク……お前には分からないだろうけどよ……俺のおかんどころか婆さん、ひいお婆さんと同じかそれよりも歳上のエルフとダークエルフとかだぞ? なぁ、考え直せ。会ったら下水道の悪臭よりもマナが酷いぞ……」
「バッカお前! 年齢なんて関係ねぇだろ!? しかもマジモンの女王や姫だぞ!? たぶん!」
「箱入り過ぎて歳ばっかり食って、貰い手がいなくなったっていうパターンだろ。偶にある」
ゼルはそう言いながら、エルメシアへと視線を向ける。
その視線を受けて彼女は豊満な胸を張って答える。
「見た目と実年齢の差があればあるほど興奮する。それも私の性癖なので頑張って口説いた」
「限度があるんじゃねーの? あんただってマナは分かるだろ?」
「ええ。だが、それがいい。ベッドの上では最高であること、それは約束するわ」
鷹揚に頷くエルメシアにゼルは肩を竦める。
「んじゃあ、俺はこのハイエルフの元女王様にするぜ」
「オプションはどう?」
エルメシアからオプションリストを受け取り、スタンクは吟味する。
横からゼルも覗き込む。
「おおう、こいつは良い意味でひでぇや……性癖のパレードだな」
「ハード過ぎるSM以外はOKっていうのがウチの売りね。全部私が仕込んであるから問題ないわ」
「じゃあおすすめにある奉仕コースで」
「はいはいっと。そっちのエルフは?」
問われてゼルはエルメシアに問う。
「あんたとヤりたいんだが?」
「私はふたなりよ。それでもいいなら問題はないわ」
「料金とかは?」
「変わらないわよ」
「ならいいぜ。オプションは無しで」
「分かったわ」
そう答えエルメシアが胸の谷間からベルを鳴らすと、扉が開いてエルフが現れた。
スタンクは名簿通りの美女にイヤラシイ笑みを浮かべる。
金髪ロング碧眼巨乳色白ハイエルフ――
立ち振舞いや纏う雰囲気は一朝一夕でできるもんじゃねぇ――
演技とかじゃなく、マジモンの王族だ――たぶん!
スタンクはすっかり臨戦態勢に入った。
ゼルはあからさまに顔を逸らして鼻を押さえた。
下水道の方がまだマシだと言わんばかりに。
「ルヴィラ、そっちの人間に奉仕してあげて」
「分かった……人間、ついて来るがよい。妾が特別に相手をしてやろう」
「おっさきにー」
ルヴィラと一緒にスタンクは歩いていった。
「それじゃ私達も行きましょうか。たっぷり抜いてあげるから」
「ああ、頼むぜ……」
エルメシアの言葉にゼルは力なくそう答えた。
とんでもねぇマナを見てしまったので、ヤル気が出なかったのだが――
60分後――
「あー最高だったわ」
スタンクは最高の気分であった。
お堅い感じのハイエルフの元女王様が自分に色々とご奉仕してくれたのだ。
支配欲とか征服欲とかそういうものを大いに刺激され、スタンクは盛り上がった。
非常に満足できたのだが、ついでに色々と裏話まで聞けてしまった。
ただのサキュバスではないという事前情報はあったが、まさかエルメシアがサキュバスクイーンの娘だとは思いもしなかった。
ともあれ重要なのはそこではない。
「エルメシアちゃん、今度はヤりてぇなー」
クイーンは基本的に広大な領地と多数のサキュバスを従え、更に気に入った者に次々と手を出して大ハーレムを築き上げているらしい。
クイーンが領地の外に出ることは滅多になく、都市伝説みたいな存在でスタンクも伝聞でしか知らない。
ましてやクイーンの娘となればサキュバスプリンセスとでも称するべき人物で、クイーンに溺愛されて育てられるらしく、クイーンよりも珍しい存在だ。
そんな超激レアな子がサキュ嬢として道楽とはいえ働いている。
ゼルが羨ましい、とスタンクが思ったそのときだった。
店舗からゼルが出てきたのだが、エルメシアをその横に侍らせている。
「じゃあ、ゼル。また来てね」
「ああ、エルメシア。また来るからな」
2人はまるで恋人のような熱いキスを交わして、それを目撃してしまったスタンクは血の涙を流さんばかりに悔しがった。
「へへへ、スタンク……」
「何だよ……?」
「自分のブツよりでっかいものを持つ子をイカせまくるって……良いよな」
「知らねーよ!」
「20cmは確実にあったな。日常生活では魔法で隠蔽しているらしいぞ」
「知らねーよ! コンチクショウ!」
新しい扉を開いたらしいゼルであったが、スタンクもふたなりっ子はイケるので素直に羨ましかった。
「ということが数年前にあってな」
「へーそうなんですかー」
ゼルの言葉にクリムはそう答える。
スタンクは面白くなさそうな顔だ。
「その店、去年に行ったら閉店してたんだよな。噂によると引っ越したとか何とか……くっそ! 俺もエルメシアちゃんとヤりたかった!」
「スタンク、お前はハイエルフと楽しんだからいいじゃないか」
「確かにハイエルフのサキュ嬢も激レアだが……エルメシアちゃんはなぁ、もっとレアで……いうなればスーパースペシャルレジェンドレアってところなんだ……!」
「なげーよ」
悔しがるスタンクにゼルがツッコミを入れ、クリムは苦笑する。
「はいはい、あんた達。クリムに注文を言ったの?」
「まだだわ。いつもので」
「俺もいつもの」
2人の言葉にメイドリーは溜息を吐き、クリムはその注文を受ける。
そのとき新たな客が店内へと入ってきた。
彼女は店内を見回して――
「あら、ゼル?」
呼ばれてゼルは思わず振り向いた。
そこにいたのは――
「エルメシアちゃん!?」
「マジで!?」
ゼルだけでなくスタンクにクリム、そして先程の会話を聞き耳を立てていた連中もまた思わず視線を向ける。
そして、スタンクとゼル以外の者達は生唾を呑み込んだ。
美しさと妖艶さを兼ね備えた女性がそこに立っていた。
彼女は微笑みながらゼルとスタンクに手を振る。
「やっほー」
「やっほーじゃないよ。いつの間に引っ越しを……」
「ごめんね、ママが帰ってこいって言うからさ……最近はずっとママの相手をしていたのよ。ママの領地に引っ越ししてそこでまあ、アレコレ」
「なるほどなぁ……」
ゼルはうんうんと頷いて、スタンクは前のめりに尋ねる。
「エルメシアちゃん、この街で店を!?」
「うーん、どうしようかな。基本的に店は私の道楽だし、数日前にここに来たばかりだし……」
「そこを何とか……!」
スタンクだけでなくゼルや他の客達も両手を合わせて頭を下げてきたため、エルメシアは肩を竦めてみせる。
「ま、気が向いたらね。あ、でも日雇いでどっかの店にいるかもね。ところで低級淫魔の詰め合わせの店って行ったことある?」
エルメシアの問いにスタンク達はトラウマが刺激され、暗い表情となる。
「さっき行ってきたんだけど、物足りなかったのよ……」
やっぱりサキュバスクイーンの娘なだけはある、と彼女の言葉にスタンク達は確信したのだった。
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お気楽サキュバス、レビューにデビューする
エルメシアが中央街にやってきた理由は簡単で、近年ここのサキュバス店は種類も数も豊富である為だ。
年齢種族性別を好き嫌いせずよくヤりなさい、というのが母親の教育方針で、それに基づいて見聞を広める為に彼女は旅をしている。
しかし、サキュバス的な意味での見聞を広める旅であり、早い話があっちこっちで色んな輩とヤリまくるのが目的だ。
そんな彼女は屋敷を購入しており、基本的にはそこでぐーたら過ごしていた。
もっとも今回はハーレムメンバーを連れてきてはいない。
何故ならばルヴィラをはじめとした1000歳超えのエルフやダークエルフなどはマナが公害レベルであり、人間以外のたくさんの種族に迷惑を掛けてしまうからだ。
さて、エルメシアの寝起きは早い日もあれば遅い日もある。
夜遅くまで飲んだり食ったりヤッたりした場合は大抵は昼過ぎまで寝ているが、ただヤッただけなら早起きをして朝からサキュバス街に繰り出すときもあった。
そして、今日の寝起きは早い方だった。
「超高齢でも見た目は美人。そんな美人が実はマナがあんなことになっているなんて……そのギャップが最高に良いのに……」
1人で朝食を食べながら、エルメシアは呟く。
母親ですらも理解し難い――とはいえ、母親も実年齢は相当なものであるのだが――エルメシアの好み。
以前にゼルが指摘した通りに箱入り過ぎて高齢になってしまい、恋人ができたことすらないというのはエルフやダークエルフに限らず長命の種族では割とよくいる。
エルメシアは母親の伝手を使ってそういう連中の情報を集めて貰い、ちょくちょく口説きに行ったのだ。
基本的に人間以外の種族の男にはマナ的な意味で相手にされないこともあって、口説き落とすのは難しいことではない。
何よりもエルメシアはマナが公害レベルだと分かりながらも、それでもなお熱心に口説く。
こんな私でも受け入れてくれる若い子がいるなんて、という具合にコロッと口説かれた側は堕ちちゃうのである。
「んー」
今日は何をやろうか、とエルメシアは考える。
よく食べよく遊びよくヤるというのが彼女のモットーだ。
とりあえず散歩でもいってみることにした。
通りを練り歩いて通行人達――大半の男と一部女性――の視線を釘付けにすることにエルメシアは満足感を覚える。
自分を見て興奮されると彼女自身も興奮するし、気持ち良いのだ。
とはいえ、公衆の面前で逆ナンパしてその場で致すと役人その他色んなところからめちゃくちゃ叱られるので、やってはいけないと母親からよく言い聞かせられていた。
なお、人目につかない場所なら街中でもセーフとのことだ。
店を開くかどうかは分からないが、サキュ嬢としてはサキュバスタワーに籍を置いている。
サキュ嬢であった方が客からの信用も信頼も段違いだ。
もっとも、まだこの街で客を取ったことはなく、あちこちのサキュバス店を客として利用する方が多い。
エルメシアの小遣いは非常に多く、また1ヶ月ごとどころか半月で届けられる。
高級サキュバス店に朝から晩まで1ヶ月ぶっ通しで通い続けてもなお半月分の小遣いが使い切れない程に。
前世の記憶とか知識や人間の感覚もあった為にエルメシアはこれまでに貯めた小遣いを元手に商売でも始めたいと思っている。
異世界特有の事情――特に魔素――もあって、飛行機とかそういうのは無理とはいかないまでも困難だ。
そんな技術的に大それたモノではなく、もっと庶民的なところで何かないかと常日頃――というほどでもないが、気が向いた時に考えるくらいはしている。
地球にあってここにないもの、魔素とかそういうのは関係ないもので――
「ギャルがいない……制服がない……」
エルメシアはピンときた。
エロ方面になってしまうのはご愛嬌だが、ともあれギャルという概念はまだ存在しなさそうだ。
ヤサグレ系ならいるのだが、ギャル系は見たことがない。
これは私がプロデュースするしかない、とエルメシアは使命感に燃える。
「そういやフェチに特化した店も見たことがないわね」
エルメシアは女体全般でイケる。
それこそ髪からつま先まで全部である。
しかし、彼女のような何でもイケるという輩は例外で、手や足、腋に膝、ヘソに髪など部位ごとに個々人の好みは分かれる。
そこに種族の好み――たとえばエルフの腋や足がいいとか獣人の膝がいいだとか――そういうものまで加わってくれば組み合わせは無限に等しいかもしれない。
更にサキュ嬢によってはそういった部位を触られたりするのは嫌がる子もいる為、マニアックでフェチなプレイができる店というのはまだ未開拓市場の筈だ。
「フェチなサキュ嬢はたぶん何とかなるし……制服もオーダーメイドでいける。ただし、ギャルは難しいかも」
行き過ぎたギャルメイクというのは流石に衝撃が強すぎるので、軽めな感じだとしても――傍目には人間の女性が日焼けして髪を染めたようなものである。
様々な種族が入り乱れるこの世界で受けるだろうか、そもそもあのノリを演じられるサキュ嬢がいるだろうか、とエルメシアの悩みは尽きない。
もっとも彼女がギャルを求めるのは単純に自分がヤりたいからである。
そんなことを考えているとスタンクとゼル、そしてクリムが歩いているのをエルメシアは見つけた。
何やら面白そうな予感がするので彼女は遠慮なく3人のところへ向かっていくと――
「エルメシアちゃん、今から火山地帯まで噂に聞くサラマンダーの焼肉店に行くけど……」
「違いますよ……エルメシアさん、僕達は火の魔石を取りに火山地帯まで行ってきます」
「エルメシアちゃんも来る?」
「行く行く行っちゃう」
エルメシアの返事にスタンクとゼルはイヤラシイ笑みを浮かべる。
「おいおい、エルメシアちゃん……イクイクイッちゃうなんてはしたないぜ」
「ぐへへ……あの時の情事をもう一度……」
危ない笑みを浮かべる2人にクリムはそれはもう深く溜息を吐きながらも、ちょいちょい視線がエルメシアに行ってしまう。
そんなクリムの視線にもエルメシアは気づく。
故に彼女は大胆にも胸の谷間から3枚の金属製のカードを3人へと差し出した。
「何だこれ?」
「単なる名刺じゃないようだな」
「紋章が刻まれていますね……」
しげしげと眺める3人にエルメシアは告げる。
「それあげる。サキュバスタワーに籍を置いているから、受付でそれを出せば私を呼び出せるわ」
スタンクとゼルの目の色が変わり、クリムも生唾を呑み込んだ。
「サキュバスタワーの通常料金と時間でいいのか? 特別料金とか無しで?」
「ええ、いいわよ。NGプレイはハードなSMのみ、恋人新妻幼馴染妹姉などなど色んなイメージプレイもOKだから」
スタンクは目を輝かせ、ゼルもまたニタニタと笑い、クリムは顔を真っ赤にする。
そこでスタンクが問いかける。
「ハードなSMってどんなのだ? 鞭とか蝋燭とか?」
「四肢切断とかかな。鞭とか蝋燭とか入門みたいなものなので問題ないわよ」
「エルメシアちゃんの基準でのハードSMって猟奇なやつだったか……」
スタンクもゼルもクリムも猟奇的な趣味は持っていない。
「というかよ、サキュバスタワーって慣れてくると容姿の指定は暗号みたいなことになるけど、プレイの中身までは指定できないよな……」
「そういやそうだな。最終的にサキュバスが搾り取る形になるからなぁ」
スタンクとゼルの会話にクリムは興味津々の様子だ。
「種族の本能なのよ……ちなみに私は責めも受けもどっちでもいいし、お客が満足したらそこから更に搾り取るってことはしないわよ」
確かに、とゼルは頷く。
「ゼル、前の時はそうだったのか?」
「言われてみれば最後まで俺のペースだったな……」
「よし、次は俺だぞ。いいな? 俺がまず指名だからな」
そう言い張るスタンクにゼルは肩を竦める。
「ところで料金は支払うから、オススメの店とかあったら教えて。嬢のレベルとかそういうのは気にしないから、単純にどういうプレイができるかとかの情報が欲しい」
「プレイ内容に拘るタイプか?」
「ええ。ママからは年齢種族性別を好き嫌いせず、よくヤりなさいって言われているからね」
なるほど、とスタンクとゼルは感心したように頷く。
いいことを言っているようであるが、別にそんなこともない。
クリムはツッコミを入れるべきか入れないべきか、困ってしまう。
「で、サラマンダーの焼肉って?」
「道中に話そう。たっぷりとな!」
スタンクとゼルは危ない笑みを浮かべ、クリムも内心では期待しちゃうのであった。
火の魔石を調達し、サラマンダーの女体で肉を焼いて食べるという焼肉店にスタンク達とエルメシアはやってきていた。
女体に次々と肉を置いて焼いているのだが、スタンクとゼルはシャツ一枚という格好であり、汗をかきながらの食事だ。
クリムは元々種族的な耐性により平然としており、エルメシアはというと――
「クリムは分かるが、何でお前まで平気なんだ……?」
スタンクの問いにエルメシアは胸を張って答える。
「色んな種族とヤる為に高位のサキュバスのみが使える耐性魔法があるのよ」
「掛けてくれ、今すぐ掛けてくれ」
「頼む」
スタンクとゼルの懇願にエルメシアは首を左右に振ってみせる。
「残念だけど、この魔法は自分にしか掛けられないの。単なる耐性魔法じゃないみたいで、効果を発揮するには血筋も関係しているらしくて他人に掛けるのは無理だって。前にデミアが言ってた」
「さらっとすげぇ名前が出てきたな……」
「デミアが言うなら仕方がねぇな……」
納得しながらも2人は焼肉を貪り食う。
一方でクリムはちまちまと焼肉を食べながらも、その視線は鉄板となっている女体へ釘付けだ。
「あ、ところでクリムもアフターにヤるなら、私は別の子を頼もうか?」
「え!? そ、そんな僕は別に……!」
「ヤらないの?」
エルメシアの問いかけにクリムは視線を逸らしながら小さな声で答える。
「……ヤリます」
「よし、クリム。レビューは任せたぞ」
「エルメシアちゃんもレビューを書いてくれないか? 報酬は弾むからさ」
「任せて。女体の隅から隅まで味わうから。というわけで女の子と肉も追加でー」
エルメシアはニコニコ笑顔で店員に注文をする。
たくさん食べた後、クリムとエルメシアはそれぞれ別室にてサラマンダーの子達を堪能することになったのだが――
エルメシアは気がついてしまった。
「焼肉の臭いが……」
「気にしない気にしない。もう私、我慢できないから……」
しなだれかかってくるサラマンダー。
だが、臭い。
女の子特有の匂いとか汗の臭いとかそういうものなら大好物のエルメシア。
だが、今ここにあるのは焼肉の臭いとべたつきである。
サラマンダーの子に水をぶっかけるなんてことはできず、かといってタオルで拭こうとしてもタオルが燃えるだけだ。
そもそもこの部屋には水もタオルも置いていない。
サラマンダー用の香水というかニオイ消しみたいなの、デミアに作れないか聞いてみようかな――
エルメシアはそんなことを思いながら、まずはサラマンダーの全身をくまなく舐めることから始めたのだった。
彼女はゼルに言った通り、女体を隅から隅まで舌で味わうことになった。
ふたなりサキュバス:エルメシア
8点
焼肉を食べた後に激しい運動もできる為、健康に良い気がする。
火加減の調整はできないそうなので、肉を焼く際は特に集中しなければならない。
鉄板となっていた子とヤる為、焼肉の臭いとかべたつきがあるが、全身を舐め回すことで何とかなった。
調子に乗って油をたっぷりと掛けたりすると後悔する。
なお、耐性が無いとこんがり焼かれて死ぬので注意が必要。
プレイの内容は情熱的で激しく、また尻尾を触ったりしゃぶったりもさせてくれる。
自分からガツガツいってもいいし、相手に任せても楽しめると思う。
ただし、耐性が無いと焼けて死ぬ(重要)
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