EDFこれくしょん (本に付いてる帯を栞にする侍)
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プロローグ
「巫山戯るな」
「そこを何とか!」
目の前で綺麗な土下座を披露する女神を、俺は冷めた眼で見つめる。
「俺はもう世界を救った。それで十分だろうが」
「……ええ、はい。その面は本当に感謝しております。貴方のお陰であの世界は安寧を得る事になりました」
そもそも、ことの発端は俺が前世で死に、女神から世界を救って欲しいと頼まれたのが始まりだ。それがEDFの世界と知り、『ゲーム知識で無双できる!』と昔の俺は甘い考えで転生し、直ぐに後悔した。
そこからは幾度も死にかけ、文字通り死に物狂いでコマンドマザーシップと銀の人を撃破した。原作通り、世界を救う事ができた。
すると、今度は死んでもいないのに女神に呼び出されたという訳だ。
「俺はもう世界を救うなんて懲り懲りだ」
「お願いします!貴方しか居ないんです!」
どうやら異世界転生するには、魂の才能が必要らしい…と前回会った時に言われたことを思い出す。そん時は選ばれた存在に感じて、喜んでいたが今では貧乏くじを引いた気分にしかならない。
……しかし、「世界の危機なんです!」と言われて見捨てられるほど俺は外道にはなれなかった。EDFの荒廃した世界を既に見ているのもある。
「……その世界も異世界人に襲われているのか?」
「いいえ…海から生まれた侵略者です。人々の活動は内地と少域の海に制限されています」
「コマンドシップの様な奴はいるのか?またソイツを倒せばいい?」
「それは……教えられません」
「なんだと?」
侵略者と聞いて、EDFの世界を思い出す。共にエイリアンらと戦った戦友の顔が浮かんでは消える。確かに、俺が居たから救われた命は確かにあっただろう。だがそれは事前知識があったからだ。全く知らない世界で、初見の敵に対応できる程俺は器用ではない。
女神曰くそこもゲームの世界らしいが、生憎俺は知らなかった。女神にゲームの内容を聞こうにも、世界について具体的に話過ぎるのは盟約違反らしい。俺はゲームの方を聞いているんだが?
「…事前知識無しは無理だ。何かお前ができる事はないのか」
「『お前』呼ばわり………いえ、なんでもありません。…逆に貴方に何か望みはありますか?出来るだけ力になります」
「そうだな……」
俺がEDFの世界で生き残れた理由……ゲーム知識の次に大切だったのはあれだろう。
「武器をくれ」
「武器を?」
「ああ、EDF隊員の頃使用していた武器だ」
向こうの世界の難易度はよく分からなかった。強かったり、弱かったり個体差が激しかった。変異種もいる時やいない時があった。
その中で、希望を持てたのは武器が最上級まであった…いや、俺が見つけ出したからだ。ゲームでは行けなかった基地内を勝手に捜索すると、レンジャーの武器庫らしき場所にTZストークやスローターEZ、スーパーアシッドガンといった最上グレード武器から、スレイド、フラクチャーなどのDLC武器を見つける事ができた(流石にブレイザーはなかったが)。それらは基地が占領された時に埋もれてしまったのだろう。数は少なかったが、それを俺や軍曹らに持たせる事ができた。勿論武器だけで如何にかなる様な敵では無かったが。
それらが次の世界でも使えるとは限らないが、無いよりはマシに思い、そう言った。
「……分かりました。ですが…2つまでです。それ以上は盟約に反してしまいます」
そして交渉の結果、俺は2つまで向こうの武器を持って行けることになった。武器の見た目や威力も向こうの世界に合わしてくれると言う(てかそうしないといけないらしい)。ならば、俺が選ぶ武器は向こうでも活躍してくれるだろう。
しかし、それ以上は無理と言われた。EDFの世界でも感じたが、無茶ぶりが酷い女神だ。
また前回と同様に、向こうの世界の主人公(EDFではストーム1)に憑依させられるらしい。そして世界を救った後は憑依を外して此処に戻ってくるようだ。……これは前回聞いていないが。
「それでは……世界をどうかお願いします」
「はいはい。今度は乗り気じゃねぇから期待はするな」
だが、自分が救えるなら救いたいのも事実。自分しか出来ないなら尚更だ。
「よし──」
──もう一丁、世界を救うとしますか
これはEDFの世界を知り、戦場を知ったストーム1が、艦これの世界に波紋を起こす──そんな話
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1-1
EDF隊員の恐ろしさを味わえ()
「駆逐艦吹雪、この鎮守府への着任を歓迎する」
──気がついたら何処かの部屋で、露出髪長巨乳美人と卓の後ろに座る飄々とした男性と対峙していた。憑依が完了したのだろう、前回も警備員先輩()にいきなり話しかけられていたので、急なストーリー開始も動ぜす受け止める。……俺の反応見て「ハハハっ面白いね君」とか馬鹿にした様に笑いやがった先輩(個人の主観)を結局、最後の最後に助けた俺は聖人だと思う。
とりあえず自分の名を把握、目の前の巨乳曰く「吹雪」というらしい。巨乳は睨む様な目付きで俺を見るが、恐らくアレは常時なのだろう。佇まいも歴戦の戦士を感じさせ、服装も含め、2の隊長を思い出した。(胸を除く)
俺は前回と同様、ゲーム主人公っぽく無口キャラで行く予定なので、巨乳に目線を向け、黙って先を促す。
「………まだ任務を与えるのは先になるだろう。同室の駆逐艦に鎮守府を案内するよう頼んである」
同室…って言うことは寮に住むのか?後半ほぼ根無草だったあっちに比べたら格別な待遇だ。勿論これがいつまで続くかは不明だが。
「異例の異動で不安だろうが、不明なことがあれば周囲の艦娘に訊ねると良い。質問はあるか」
ふむ…流れ的に、吹雪は何処かから異動してきた兵士という所か?何故異動してきたかは後々知れば良いだろう。巨乳には首を横に振っておく。
「そうか、ならば部屋に向かえ。荷物は既に届けている」
どうやら同行はしないようだ。先輩ポジションではなかったか。EDFと全く同じストーリー展開だとは流石に思わないが、いつ何処で戦闘が起こるのか今回は分からない。海からの侵略者故、陸地から現れるとは思えないが、これから常に警戒すべきだろう。もう既に戦場にいる心持ちはできている。
「…おい」
巨乳に一礼し、背後の扉から出ようとすると、背後から呼び止められた。喋らないと不味かったか…と思いきや、巨乳に怒っている様子はない。
「吹雪は出撃経験が無いと聞いたが……本当に無かったのか?」
……これは答えにくい質問だ。流石巨乳猛者。俺の纏う戦場の気配を感じたのだろう。だが、まさかこの体を乗っ取りましたと言うわけにもいかない。首を横に振って応える。
「そうか…呼び止めて済まない」
いやいや気にすんな(上から目線)。強者の余裕を纏わせ、俺は今度こそ部屋から出て廊下を歩き始めた。
……やべぇ、部屋の位置わかんねぇ(バカ)。完全に聞くのを忘れていた(アホ)。
☆☆☆
(吹雪が出て行った後の部屋内の会話)
吹雪が出て行った扉をしばし眺めていると、提督から声を掛けられた。
「…長門」
「はっ。なんでしょう提督」
「先程の質問はどう言った意図だい?」
やはりと言うべきか、提督は吹雪との会話の意味を尋ねてきた。
「ただの勘に過ぎません」
「それでも良い」
断りをいれ、私は感じたことを話し始めた。
「己の直感ですが…先程の駆逐艦、吹雪は戦場を経験している雰囲気を纏っていました」
最初、部屋に入って来た時は緊張が取れておらず、初々しい駆逐艦そのものだった。
雰囲気が変化したのは、私が着任の歓迎を告げた時。何処かで吹雪のスイッチが入ったのか、それまでが演技だったのかは不明だが、まるで彼女は何度も戦場を経験した歴戦の猛者の様な雰囲気を纏っていた。
対峙したイメージとしては、妙高型の那智が近いだろうか。少なくとも、実戦経験の無い駆逐艦が纏うものではない。
「長門が言うなら間違いないだろう」
「然し、吹雪に出撃経験はありません」
「それで確認を?」
「はい」
提督は少し考え、結論を出した。
「吹雪の艦歴をもう一度調べよう。場合によっては配属を考えなければいけない」
「分かりました」
その後、大淀にも調べさせたが…吹雪の実戦回数はおろか、演習回数含め0回であった。
しかし……先程の吹雪のオーラを気のせいと思うことは、私には出来なかった。
「やはり…あの夢は……」
提督がポツリと漏らした独り言は、考えに集中していた私には届かなかった。
主人公は元レンジャーです。あとドジです。具体的に言うと、フェンサーになっていた場合高高度ミサイルで自☆爆していただろう位にはドジです。(既にゴリラで死にかけました)
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