ドレッドなツノが生えてきた (魚介(改)貧弱卿)
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リンカーネーション!

むん!!

ぬぁぁんもう!おまえ!

 

「おまえだよぉぉっ!

逃げるなアバドンっ!」

 

私は全力で走り去るアバドンを

ショートの↑+◽︎で追い詰めていた

 

 

「せぃ!やぁ!はぁっ!」

 

私の操るキャラ、データ2の主人公

タクトが軽快に地面を滑り

機械色の強い剣で、逃げる黒卵に少しずつ傷をつけていく

 

「よし!オラクル溜まった!…くらえぇっ!」

 

私は待機時間短縮型(シンプレス)メテオを解き放ち

 

巨大な銃口からペンタタイプ弾丸特有の循環光が閃く

 

オラクル節約だけでなく、威力のためには味方を巻き込まなくするBB(ブラッドバレッド)『識別』を抜いて害悪バレット状態で運用する必要があるので、私はそうしている

 

だって回転率が違うもん

 

〈ドゴォオォン!〉

 

天空から帰ってきたメテオが落着する瞬間、私はキャラに後ろを向かせて…

 

「うわぁあっ!」

「うわぁあっ!」

「うわぁあっ!」

 

三連爆発を利用して少しずつ進み

アバドンに近づく

 

猛ダッシュ中に爆発に巻き込まれたアバドンは狙い違わず爆死!ナムアミダブツ!

 

「よぉし!いただきぃっ」

私はキャラを立ち上がらせて

全力で走り、転がっている黒卵に

その剣の先端を向けて…

 

「がぶっ!」「喰らえっ…!」

 

タクトの声と、私の声がシンクロする

その瞬間、私の意識は途絶えた

 


 

 

……ここどこ?

 

吹き抜ける風が肌を撫で

照りつける太陽が私の頭を灼く

 

こんな体験は初めてだ

私は病院から出たことがないのに

明らかに天井がないし、

 

VRフィールドのような機械的な風もない、それに気温の差を立体的に感じる

 

それに、視界が広くてクリアだ

 

私の視界は半径3mだったのに

明らかにそれ以上遠くまで見える

それに無臭か、それでなくても徹底的に機械的な匂いだった病院とは違う

鉄のような匂いや、体験したことのない様々な匂いが感じられる…

 

…ん?

そもそもの話、

私の視点はこんなに低かったか?

ええっと

 

立ち上がってみようとしても、

感覚的にすでに立っているし

手を見ようとしてもできない

 

じゃあ足は?………!?

 

ギュジィィッ(どうなってるの)!?」

 

ギュジィギュゥアィ(いやなんて声だ)ッ!」

 

自分の声に驚いて悲鳴をあげた私は

一旦声を止めて、自分の現状を

冷静に、客観的に、把握することにした

 

大丈夫、生還率10%切ってる手術だって生き残った、心臓だって移植品(もらいもの)

私自身の死はいつだってそばにあったから

 

大丈夫、私は大丈夫

 

「……」

一旦呼吸を安定させて

ゆっくりと周囲を見渡す

 

何度見てもそこは、見慣れたステージ

『愚者の空母』

 

そして、私は体型的にどう見ても小型アラガミだ、腕、あるいは前足がない大型アラガミなどいない

 

世界観的にはここに集まるのは大型アラガミなんだけど…そういえば

 

テスカトリポカやヴァジュラ、プリティヴィー・マータと戦うステージだ

ルフス(紅の)カリギュラもここだったね

 

…どうも今は、私以外のアラガミはいないようだ

 

ギジュゥ(よぉし)…」

 

そっと空母の端まで足を運んで

水面を見る

そこに反射するであろう自分の姿を確認するつもりだ

 

「………」

 

嘘でしょ?

どう見てもこいつ、いや、私は

 

()()()()()()()

 

…アラガミにおいて、最強の個体と問われると、人は悩むだろう

世界を閉ざす者(てんてー)拓く者(隊長)を筆頭に、ルフスカリギュラ(トラウマ)ディアウス・ピター(セクハラジジイ)、様々な個体の名前が上がる

 

でも、最弱王を決めるなら

二種類に絞れるはずだ

その二種類とは

 

2で追加された種族、小型アラガミ

『ドレッドパイク』『ナイトホロウ』

この二種類は

それぞれ、近接攻撃と遠距離攻撃しかしてこない小型アラガミの中でも雑魚の中の雑魚

 

かつて最弱と名高かったコクーンメイデンだって、全方位攻撃も近接も遠距離もできたのに、こいつだけは動きも遅く遠距離に何もできないカモ、ランク7高難易度の時のコア狩りは忘れない

ドレッドパイク

 

 

もはや動きすらせず、近接に対応できない

コクーンメイデンより攻撃間隔が長く、曲射しかできないという大問題がある、小型アラガミ共通の全属性弱点の紙装甲を存分に活かした砲台

ナイトホロウ

 

…問題はその片方

個人的にナイトホロウより弱いと思うドレッドパイクに、私がなっていることだ

 

ギュィィ…(はぁ)

 

何もできない小型アラガミの中でも、ヴァジュラテイルのような強化体なら話も違う

…そもそもオウガテイルなら

上田の伝説を打ち立てた種族だ

 

ゴッドイーターだって倒せる、と示してくれた最強の一種でもある

 

「…」

とにかく、他の大型アラガミに見つかれば、鈍重なドレッドパイクには死あるのみ

移動をしなくては

隠れなくては

 

生まれてから病院を出たことのない私にはうまくわからないけど、確か愚者の空母の北側には鎮魂の廃寺がある、その中間地点なら

寒いかもしれないけど、

アラガミも…多分少ない

 

「…グァッ(よしっ)!」

 

とりあえず方針が決まった

何でこうなったのかはまるでわからないけど、それでも生きるために手を打つ必要がある

なら、考えるのは暇な時間にして

今は行動しよう

 

環境なんかに、絶対負けないっ!

 

……寒さには勝てなかったよ…

 

 

……んほぉぉ!暑いぃのぉぉ!………

 

 

よし、ここにしましょう

 

移動を繰り返して私が落ち着いたのは、結局『黎明の亡都』の植物園だった

 

元々が植物園だったと思わしき場所だけに、植物タイプのアラガミ、コクーンメイデンがいたのだが

私が来ると地面に潜って消えてしまった

 

…なんで?

 

考えてても仕方ないか

 

「グッガァ…」

とりあえず方針を立て直そう

比較的小型アラガミがいるこのエリアだが、もちろん大型も来る

マルドゥーク、クアドリガ、プリティヴィー・マータ、ガルム、ハンニバル、サリエル

とはこのステージで戦うのを覚えている

 

だが、グボロ・グボロくらいしか

初期にこの位置にいることはなく

マルドゥーク決戦時のガルムの位置は

図書館側の最奥地

 

したがって、鈍重なドレッドパイクでも、この位置ならば…禁忌種でも来ない限り、安心できると思う

 

なので私は

この場所を根城に、しばらくの間

生活してみようと思います

 

…無論、大型アラガミが来れば

討伐に来た部隊(ゴッドイーター )についでに狩られてしまうので、大型が来ないことを祈りながら

 

 

 

さて、ドレッドパイクって

進化できたっけな?

 

オウガテイル→ヴァジュラテイル→ヴァジュラ?

ザイゴート→サリエル→堕天→アイテール・ニュクス→ヴィーナス

のように、小型アラガミからの

進化らしき現象も確認されている

 

グボロは知らん

 

のだけれど…ナイトホロウとドレッドパイクは…どう進化するのか…?

 

大穴でナイトホロウがサリエルになる可能性もなくはないと思うけど

ドレッドパイクは…ボルグカムラン?

 

でもボルグの遠距離技である針飛ばしって、どう見てもオウガテイルの蛾眉峻だよね…ううん…どうなるんだろう

 

ちょっとわからない

どうせ朽ちるだけの人生だったんだし

アラガミになったならなったで

真っ当に動ける神生を楽しみたいし

 

色々実験して見ましょうか



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インテリジェンス

今回は主人公の賢さが出てきます



…あれから時はたち……たち……

 

 

経ってないよ!全然経ってないよ!

 

「…グリュ…」

「ギュ……」

 

ドーモ。ヴァジュラ=サン

サイジャクアラガミ、デス

 

アイサツ完了の0.02秒後(気分)私は跳んだ!

 

後悔は死んでからすれば良い!今は目の前のヴァジュラから逃れねばならぬ!

 

「グゥゥァァッ!」

 

私は決断的ダッシュでその場を離れる!

 

 

グギュギュッゥッ(どうなってるのぉっ)!?」

 

うら若き乙女に似つかわしくはないような濁った悲鳴をあげながら崖側へと走り

当然私以上の機動力で追ってきているヴァジュラを振り向き…

 

「ッ!」

 

ジャンプのように身を沈めて、

力を貯めるポーズを見せる

 

私自身はやったことないけど

ジャンプの時はアニメキャラはみんなこうしてたし、これで多分…!

 

「グラァッ!」

 

よし!

 

狙い通りにジャンプしたヴァジュラは私のはるか頭上を飛び越え…崖の下へと落ちていった

 

バカめ、といって差し上げますわ!

(豊乳感)

 

残念だけど、ヴァジュラと戦って勝てるほど私は強くない…そもそも

動きが違うのだから

勝てるわけもない

 

今しがた生まれたばかりの私がランク10並みの戦力を持ったドレッドパイクってわけではないだろうし

 

グゥギィァ(よっしゃあ)

 

とりあえず生存を喜びながら

ヴァジュラがいた地面あたりにかすかに残っているヴァジュラの細胞がないか探してみる

 

細胞って簡単に剥落するし、

ちょっと落ちてないかな?

 

「……ヴェ…」

ないなぁ…

 

…あっても細胞一つ二つじゃ足りないと思うけどさ…

 

ん〜この辺ちょっとヴァジュラ味する〜!

 

ヴァジュラ味なんて知らないけど、そもそも離乳食とかほぼ味のない糊みたいな謎の物体とか煮込まれすぎて不味い人参あたりの野菜?みたいなものしか食べた事ないからわかんないし

 

…でもヴァジュラ味なんだよなぁ

匂いがヴァジュラ臭いし

さっきあいつが足かけてたところだから、多分ヴァジュラの細胞だよね

 

ヴァ(はぁ)…」

 

ってか土舐めるのに何も抵抗ないとか、私人間性死んできてない?

 

まぁ、構ったものじゃないけど

 

 

 

地面をペロペロ(ギルのお仕事)しながらゆっくりと移動して(多分)

ヴァジュラの細胞を食べきる

 

そして、私は取りあえず

霞を食って生きる訓練を始めた

 

だって、オラクル細胞って

捕食するとき、なんでも食べるんでしょ?なら空気中の窒素とか酸素とか炭素を分解して再構成してるんじゃないの?

水と空気あれば

H2OとCO2揃うし、

 

炭化水素を合成すれば炭水化物作れるし、その気になれば分解と合成を繰り返してアルコールだって作れる

 

芳香族炭化水素(ポリフェノール)とかグリセリンとか合成できれば石鹸も作れるし

みんな大好きポリエステルだって所詮はジ カルボン酸と2価アルコールの縮合重合で高分子体を形成できる化合物

 

結局は水素H.酸素O. 炭素Cで記述できる物質に過ぎない

 

まさかとは思うが

活動原理自体は既存の細胞と同じである以上、尋常なアデノシン3リン酸の分解反応で熱を取り出してるはずだし、オラクル細胞でも同様の働きがあると考えれば

 

空中の水分や炭素から直接吸収したベンゼン環を分解して…とかは望めなくても

光合成の原理で分解できるとおもうし、『単独で生命活動を完結できる』単細胞生物であるオラクル細胞の群体生物たるアラガミならオラクル細胞単体での機能を発揮できて当然なはず

 

それにCO2+2H2O→2O2+C2+H2で光合成

(多分実際はもっと複雑だし炭素固定で生育する植物においては炭素は放出する物質としては出てこない)

が出来る植物の葉緑体がもつ技能を取得したアラガミもいるそうだし

 

結論、

霞を食っていれば大体生きられる

ということで、やってみよう

 

まずは水を飲みます

 

 

 

…………飲めない

 

どうしよう、自分が手のないドレッドパイクなの忘れてたよ、足のないナイトホロウとは本当に正対する性質なんだよねゴメンねナイトホロウ

ずっとバカにしてて

君の手をくれ、本当に

手がないって切実に不便なんだ

 

たすけて

 

 

諦めます

諦めてちょっと移動します

 

水の湧いてるあたりに直接潜って水を飲みます、

 

ゴボゴボゴボッ(やばい溺れる)!」

 

そもそも泳ぐ事がなかった私には水泳のことなんて全然わかんないけど

とりあえずヤバあので足をバタバタさせて

 

あれ?呼吸厳しくならない?

呼吸器官の損壊は体験済みだけどその時の苦痛はこんなものじゃなかったし

 

グゴボゴォ(どういうことぉ)…?」

 

本当にどういう事?

…いやまて、落ち着け

時間はある、苦しくもない

 

大丈夫、大丈夫

 

よし

 

とりあえず水が湧いてるところ

(ちょっと深い)から離脱して

水上に上がる

 

…タオル欲しいけど、ないよなぁ

 

ん、乾いた乾いた

多分水を全身の細胞が『喰った』んだとおもうけど、まぁいいや

次に深呼吸をします…すぅ…

 

グァァ(はぁ)…」

 

ゆっくりと深呼吸をして、オラクルを消費するような行動をし続ければ

枯渇したオラクル細胞を補充するために捕食を必要とする、と体が判断するはず

そのタイミングで水と酸素を与えてやればそこから栄養を取ろうとする筈だ

 

 

グギュゥギ(よぉぉし)…」

 

オラクルを消費するような行動ってあったかな、ドレッドパイクにそんな行動ないね

 

「………」

どうすればいいんだろう

 

 

ちーん

 

とりあえず運動すればエネルギーは枯渇するか、よし、走って走って走り回ろう

前世では走るどころか

歩くことさえ苦痛だったけど

 

今は違う、鈍重だけど真っ当に歩けるし、膝が悲鳴をあげたり、腿が動かなくなったりしない

 

あぁ、世界が広い

歩くのは、楽しいや



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バトル

「グギィィ…」

 

どうもありがとう、オウガテイル氏

氏は私の中で生き続けるよ

 

5秒くらいは忘れない

そんな気がする多分メイビー

 

さて、今食べてたのってなんだっけ?

 

グギュウォア(ごちそうさま)

 

一応だけど、私はオウガテイルを真正面から倒したわけじゃない

オウガテイルがGEから逃げてきたところを待ち伏せて、通路の角で奇襲を仕掛け

腹を突き破ってコアをぶち抜いたのである

 

奇襲はいいぞ!

なんたって実力がなくても不意を突けば殺せる可能性もあるからな

 

「…ギィッ(よし)!」

 

声を上げてながら食べ終わり、GEが来ないうちにさっさと逃げる

 

「…!」

鈍重だからアラガミの中でも機動力の低いドレッドパイクではあるが

自然色の迷彩を装甲に持ち

自身を自然に溶け込ませることで強敵を回避できるという、アラガミの中でも珍しい特性を持っている

 

なので私は、ある程度離れた藪に潜り

座り込んで隠れた

 

「……………」

 

「この辺に逃げたんだけどなぁ…」

 

走ってきたのは、コバルト色の制服を着た青年…

 

「ん?アレは…」

 

こっち見てきてる…?

 

「…」スッ

 

短剣型の神機を伸ばして…こちらに向けて……きゃぁぁっ!

 

「…」ツンツン

 

ちょっと!私のセクスィーなおしり突っつかないでよ!

 

「…」ツンツン

 

やめ、やめ、ヤメロォ!

 

「…」ツンツン

 

ひたすらに耐えながら不動をつらぬく

こういう時は先に動いた方が負ける

私は詳しいんだ

 

「…アラガミじゃ…ないのか?」

 

いいえ、アラガミです

なんて口が裂けても言えない(声帯)

 

「…突っついて悪かったな」

 

そっと背中の甲殻をなでてから

青年は走って行った

 

かっこいいかも(ナデポ)

 

ちなみにアラガミは全方向視界であるが、後方などはある程度注視しないと見えないという謎の性能を持っている、多分目に相当する器官以外の細胞を視覚に利用するのに集中が必要なのだろう

 

「…ギュァイ(わぁい)

ゴッドイーターとの初遭遇は

完全勝利に終わったと言えるだろう

 

「グギァァッ!」

 

向こうからアラガミの悲鳴が聞こえた

……聞かなかったことにしよう

 

 

「…ギュァイ」

 

再び藪に潜って目を閉じ

今度こそ全身を隠蔽するのだった

 

 

いない?よね?

 

 

ゴッドイーターが去った後?にこっそりと藪を出て、まだ消滅していなかったオウガテイルの尻尾を齧る

 

こんなせせこましい食べ方はチョット辛いが、それでもせねばならないのが弱者の悲しみ、早く強くなってオウガテイルくらい一突きで正面から殺せるようになりたいです(切実)

 

オウガテイル美味しい

 

「ケフッ…」

 

………してないよ?

そんな下品なことしてないよ?

 

「……」(じーっ)

 

 

ド、ドーモ、コンゴウ=サン

サイジャクアラガミデス

 

ギジャァァッ(いやぁぁぁっ)!」

 

「グゥァァっ!」

 

咆哮とともに殴りかかって来るコンゴウ=サン、しかしその狙いは実際粗い!

 

「ギュァイッ!」

 

ドレッドパイクのステップは定規めいて直角であり、その性質上真横に躱せる拳は当たらない!

 

そのまま反撃に転じたドレッドパイクは、決断的シャウトと共に角を突き出す!

「ギジャァァッ!」

 

おお!なんたることか

ドレッドパイクの角はコンゴウの甲皮に弾かれ、その威力を十分に伝えられていない!ダメージ微小!

 

「グァォガァッ!」

 

ゴウランガ!コンゴウの振り回す腕は横殴りにドレッドパイクを殴りつけ

遥か遠くへと吹き飛ばした!

 

 

…って、やってる余裕もないっぽい

ギッガァァ(いったたたぁ)…」

「ヴァォガァッ!」

 

体の細胞がいくらか奪われている

…だけど、まだやれる

構造は崩壊してない

 

やれる

 

大丈夫、大丈夫!

 

「グァォッ!」

 

コンゴウは自らの背中から圧搾した空気を発射するが、同時に私は自らの()()を走らせコンゴウが発射した空気砲を受け止めて…

 

オラクル混じりの風を接触した瞬間に支配する

 

アラガミなら自身のコアを使ってできることだし、コアから離れた部位は結合が脆い、四肢が結合崩壊の対象なのはその現れ

 

なら、体から離れたオラクルなら?

その答えはいま、私自身が証明した

 

「クォッ!」

 

「グゥゥ…」

 

数々の敵を退けてきたのだろう自慢の砲撃を受けて無傷の私に腹を立てたのか、コンゴウが唸り声を上げる

 

「………グァォェ」

 

しばらくにらみ合ったあと、コンゴウは急にやる気をなくしたように去って行った

 

「……」

生き残った…のか?

 

………

 

しばらく待っても、何も来ない

奇襲も来ない

 

ゴッドイーターも、当然来ない

 

なら問題ないなよし

 

ギギゴッギァ(生き残った)…!」

 

私は喜びながらも警戒した

ゴッドイーター において、この瞬間こそ最も危険だからだ、油断は即、死につながる

 

「…」

ごそごそと藪に戻り、座りこむ

しっかし、厄介なアラガミばかりを相手にするせいで疲れてしまった

 

…寝ようかな?



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薄氷

「…グギュェア…」

 

あくびを決めながら目を覚ました私は、朝日に照らされて輝く甲皮を背負って

 

……水の底にいました

 

どうしてって?

ほら、黎明の亡都って、エリアBの奥部分、その端が水辺じゃん?だから潜って見たんだけど、予想以上にアラガミどころか何もいない

 

…魚はいるし、水死体はあるし

元住宅だったらしいアパートもある

 

もちろん今日も静かに死体が暮らしている

 

「…グ…」

 

ゴポゴポと水の中に泡を吹きながら、私が周囲を見渡しても、やはりアラガミはいないし、動くものは魚影か藻くらいだ

 

我は安住の地を得たり…

………だと思いたいけど、グボロ・グボロとかウコンバサラとか水棲系アラガミかいつ私を齧りにくるかわからないので、正直、安住とは言えない

 

頑張らなきゃ…生きるために

 

まずはどうしよっかな…水飲みまくったら水出せるようにならないかな…?

 

水出すだけじゃ意味ないけど

 

…体内に砂鉄と水を保存して、それを混ぜた水を高圧で放出…放電…

 

うん、いろいろアイデアは出るけど、実現できなかったらただの妄想

まずは一つづつ…日課のランニングからやろう!

 

ズチャズチャと足音を立てながら、虫ならではの逆関節を鳴らして走るドレッドパイク

それはあまりに奇怪であったが

それでも、走り続けた彼女の体に

少しづつ、変化は生まれていた

 

 

4日後

私は相変わらず黎明の亡都のエリアB、北側の図書館前で待機していた…

 

「…グルッゥ…」

 

オウガテイルさんいらっしゃい

私最近何も食べていないの

どうかこのかわいそうな少女に食べ物を恵んでちょうだい?

 

死ね(無慈悲)

 

私はとりあえず走りながら

(ここ最近でオウガテイルより速く走れるようになった)オウガテイルの飛ばしてくる針を、()()()()()()()同時に捕食する

 

そして、

 

「グルガァァッ!」

 

噛み付いてきたオウガテイルに

先ほどの捕食で活性化した装甲をわざと噛ませて…その足に、渾身の一撃!

 

ギィァッ(どうだ?!)

 

いい感じに突き刺さったツノが

体から足を切り離す

 

バランスが取れなくなったオウガテイルが転倒するより前に、横に回り込み…!

 

倒れるオウガテイルの背中をかじり取って!んー美味しいっ

 

と!

 

「グルガァァッ!」

美人局スタイルの奇襲に怒り狂ったオウガテイルが、即座に足を再生してきた!

 

ヤバ…

 

なんてね、オウガテイルの牙は私の背中にしか当たらないし、そもそも背中は甲殻で覆われているんだから牙は滑るばかり、先ほどの光景を繰り返しているだけだ

 

それに、チマチマとオラクルを捕食しながら、私は活性化を維持しているのに対し

オウガテイルはオラクルを剥ぎ取られ続けて再生を繰り返し、すでにリソースが枯渇しかけている、この状態何ができるとも思えない

 

「ギジィッ!」

 

何度目かの齧り付きで、ついに再生が途切れる、オラクル細胞の枯渇だ

 

オウガテイルは再生能力を失い、そして私は依然活性化したまま、いかに遠距離攻撃を持たないドレッドパイクとて、オウガテイルよりも移動が速い以上は遠距離攻撃の間合いに逃げることはできない!

 

グギィァ(詰みだ)

 

私は、オウガテイルに死を宣告して…

その直後、蹴り飛ばされた

 

グギュゥ(むぐぅっ)!」

ごてん、と転がる私、当然、牙を受け流し続けていた甲殻は腹には無い

 

しかし、ドレッドパイクには起き上がるすべはない

 

「グルルルルゥ…」

 

よくもやってくれたなぁ…とでも言わん気に、ゆっくりと歩み寄ってくるオウガテイル

 

「グガアッ!」

 

オウガテイルは何度目かでついに結実するだろう努力…すなわち、牙による一撃を振り下ろさんとして

 

「プッ!」

私がとっさに吹いた糸に目を潰されてのたうち回った

 

『アラガミ紡糸』

虫型アラガミが吐く糸である

コクーンメイデンが捕食アイテムに持っているが、私はコクーンメイデンも食べている、そして私はドレッドパイク(虫型アラガミ)

 

「ギジィッ!」

 

糸を止めて、再度吐き、今度は胴体に着弾、その先端は壁に吐きつけて固定!

再度吐き、今度は頭に着弾!糸の先は天井につけて固定!

 

そして、私はジタバタしながら体を揺らして勢いをつけ…よっと!

 

グギゥギィジギィ(ひどい目にあった)…」

姿勢を戻すことに成功!ダメージはあるけど、オラクル的には損害はあんまりない

 

さて、オウガテイルさん

ハイクを詠め、カイシャクしてやる

「グルガァッ!」

 

水面下のアヒルのように足をジタバタしていたオウガテイルだが、天井の糸を切れないように、胴体の糸が付いている以上、十分な膂力は発揮できない

そして、私はそっと横を通り抜けて

通路の奥へ移動して…

 

ギジィィイッ(イヤーッ)!」

 

決断的シャウトとともに、突進しながらツノを突き出し、オウガテイルの胴体にあるコアを貫き…崩れゆくオラクル細胞を捕食、吸収する

 

…あぁ…労働(戦闘)の対価…

美味しい…

 

はっきり言って私は語彙(ボキャブラリー)が貧弱だから、芸術的な表現はできないけど、それでも美味しい…

 

コアをまるごと捕食できたのが良かったのか、かなり効率よくオラクル細胞を吸収できた、今度は遠距離攻撃が欲しいなぁ…ドレッドパイクの体は貧弱だし、構造上衝撃に弱いから

銃で撃たれたら終わりだから

 

ちゃんとそれに対する防御が欲しい

具体的には対抗できる遠距離攻撃が

 

はぐはぐ……美味しいんだけど…多いなぁ…昔は散々マナーがどう、食材がどう、作った人への感謝がどうって言われたけど、そんな御託こねてるならもうちょっと栄養が欲しいんだよ

 

結局必要最低限ギリギリのラインの養分しか入ってないクソマズ飯で何に感謝しろってのさ、まぁ足りない分点滴で入れるとかって言って金取りたいのはわかるけど

 

両親の遺産なんてもうすっからかんになっちゃったし、ね?

 

「グッン…」

 

よし、食べ終わった

 

実を言うと、私の両親は不仲で

結局は父の家にあった金で母を買ったような関係だったらしい

父が貢ぐ金が尽きれば、母はさっさと蒸発して、病弱な私の入院費に多量の金を注いでいた父もまた、家での立場が弱るに連れて

私に関心を示さなくなり、最終的には病死した、その途端に始まったのが

私の扱いについての話

 

誰が引き取るかじゃなく、誰が遺産を相続するかの話だ

 

もちろんそれには私の親権という大迷惑なデキモノが付いてくるので、どうにかしてそれを回避しつつ父の生命保険で出てきた大金を手に入れようか、という話だった

 

親戚みんなが寄ってたかって、私の知らないところで私に相続される遺産を奪い合い、私の親権を押し付けあう

そんな戦いが闇の中で繰り広げられているうちに、私自身の入院維持で磨り減っていた遺産は、結局父方の祖母が手にして…

 

それを弁護士が伝えに来たっきりだ

 

私はその祖母の顔も知らないし

知る気もなかった

 

いつ入院が打ち切られて死ぬのかもわからないし、いつ死んでも特に誰も困らないので、私自身の死には興味も関心もなかったから

 

「…グジィァ(そういえば)…」

 

ジュリウス隊長もそんな感じだったなぁ

 

まぁ、私はその状態でも楽しめてたし、となりのベッドの女の子とか、入れ替わるたびに友達になってたし

 

一番最後は八尋ちゃんだったや

コミュニティルームでよく話した神谷くん、一個年上だったけど、去年歳を追い越しちゃった玲ちゃんとか

 

エロ本を私のベッドに隠してくれとか言い出す大工の内蔵太さん

私に『もう目が見えないから』ってVitaとか色々くれた、私にゴッドイーターを教えてくれた達彦くん

 

退院してから髪飾りを贈ってくれた洋太くん、私に色々な場所の話を聞かせてくれた愛弓ちゃん、

ピンボケの写真しか撮れないのにカメラマンしてる門矢さん

 

足の骨折ったっていいながら普通に歩いてて怒られてた遠藤さん

いっつも平気平気って言って、笑ってたけど、いっつも怪我してる立花さん

 

限定されたコミュニティながらに

私自身が人を知らないわけじゃない

だからジュリウスよりはマシな環境だと思うけど、それでもやっぱり

『一般人的な生活』したかったって思うときもある

 

まぁ、今そんなこと言える環境じゃないけど…さて、日課のランニングでもやりますか



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選択

今回は本当に短いですが…デデン!

進化先は人型になりました
…大丈夫?アラガミの能力残ってる?


初!オウガテイル正面撃破

 

おめでとう私!オウガテイルに勝ったよ!

 

最雑魚脱却!と喜んでいる暇もなく、私は現場を離れるために、兼日課になっているランニングのために移動を開始した

 

「グッギィ…」

 

遠距離攻撃が欲しいなぁ!

と頭の中で叫びながら

 

まずとりあえず、私は死なないように立ち回ることにした

 

ヴァジュラさんちーっす

…もちろん全力で逃げた

 

シユウ師匠はじめまして

…とりあえず隠れた

 

コンゴウちゃんおはようデース

運が良かったから…不意をついてブッ殺した

 

これじゃ三つか

 

リンドウさんのマネってうまくいかないなぁ

 

とりあえず食べなきゃ勿体無いし、コンゴウの空気砲欲しいし…いただきます

 

…あ、中型アラガミ美味しい

 

あれから時は過ぎ…なんか原爆じみた爆発もあり、それから急にアラガミが増えて強くなり始めた

 

クアドリガの装甲とか速度とかを指標にしていたのだけれど、初期の3倍を突破したぐらいに差が大きい

 

なんか強くなったなぁ

とは思っていたけど、多分あれだよね

PVのアレ、

まだソーマ子供の頃なのかな

 

「い、いらねえよ!」

とか言っちゃう頃なのかな?

大人のお姉さんにドキドキしちゃう(ちっちゃい)ソーマとか可愛い

…なぁんで大人版がデフォルトなんでしょうねぇ

 

「ぎゅ?」

「ミュゥ?ピィッ!」

 

目の前に突然出現した黒いボール…

私はそれを目にして一瞬理解が遅れてしまったが、それはすべてのゴッドイーターが求めてやないアラガミ、幸運のアラガミにして

売却額50000fcのプラチナチケットを落とすアラガミ

 

そう、強欲なる奈落の王(アバドン)である

 

聖書においては『第五の天使による喇叭』が鳴らされたあとに出現する蝗の群れを率いる破壊者であるとされる

 

その姿は『馬に似て金の冠を被り、翼と蠍の尾を持つ天使』とされているが

このアバドンに共通するのは

『馬に似て早く』『金の冠(チケット)を持ち』『翼があるかのように空中に浮かぶ』『天使』である事くらいだろう

 

…なんだよ、意外と当たってるじゃねえか(団長風)

 

「ミュゥー?」「ギジィ…」

 

えっと…どうしようかな…

こいつ、正直レーダーに映らない性能と逃げ足以外は大した事ないし

…捕食、する?

 

「ニュッ?」(キラキラした瞳)

 

…どうしようかな…

本当は食べたいけど、初撃で殺さないと絶対に逃げられるし…

 

「ミューッ♪」

謎の声をあげながら私にすり寄ってくるアバドン

…本当に殺すのやめようかな

 

いや、私はやらなきゃいけない

鈍重な小型アラガミにして近距離オンリーな私には機動力を求める理由がある

そしてオラクル細胞は

捕食したものの特性を模倣する性質があるんだ、だから最高速のアラガミであるアバドンを食べれば!

 

「ぴぃ…」(罪なきものの瞳)

 

…………………………

 

うっ…(気圧され)



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熾烈な闘い(低次元)

「…ニュー…」

 

擦り寄って来るアバドンにそっとツノを向けて…そいやぁっ!

 

「ミュッ!?」

私渾身の一撃は、見事にアバドンの下を通り過ぎて、慌ててカチ上げに移行した私の背中を、アバドンが滑り落ちて行く

 

ギッ(あっ)…」

 

諸君は、『滑り台』という遊具を知っているだろうか?私は写真でしか見たことがないのだが『滑り台』実に直截的(ストレート)かつジョークセンスを感じるユニークな命名だと思う

 

ところで、滑り台の本質とは

重力に従った落下のスリルを安全、かつ低コストに味わう事であると判断している

 

視界が目まぐるしく変わり、重力が肉体にかける負荷が急減少する一瞬とは、フリーフォールやジェットコースターに通じるものがある、と私は考えた

 

ついでに…私のツノの先端から背中の甲殻までは非常になめらかだ、そこにアバドンが乗って、滑り落ちているのだけれど

そこのあたり、なにか感想をいただきたく思う

 

「ミュッ〜♪」

違うそうじゃない

 

楽しそうに擦り寄って来たアバドンに再び照準を合わせて…そいや!

 

「ミッ♪ギュ♪」

 

ジギギギィィィッ(だからさぁぁっ)!」

 

そうじゃないんだよ…私の糧になってくれよ…大人しく死んでくれよ…

 

「ニュ〜」

 

なにやら落ち着く場所を見つけたのか、私の背中に乗るアバドン

 

ニューニュー言っているのが少々腹立たしいけど、それもそれ、まずは

………もう殺すのは諦めよう

 

どうせ懐かれてしまった以上逃げることは不可能、殺そうとしても最速のアラガミの名に恥じない回避で躱されてしまうし、下手をすると付きまとわれる

だったら最初から同行した方が囮代わりにでも出来るというものだ

 

ギィ(はぁ)ギュッ(んっ)?」

 

そして唐突に出現するボルグ・カムラン様

我が目標にして進化系の遥先にいる存在…だと思いたいもの

 

なんだけど…

「ギジィィイッ!」

だからなんでこうなるのさ…

 

取り敢えず私は最近のトレンドに乗った(全力で逃げ出した)

 

「キュ?ミュ〜♪」

ジュグガギィギィ(もう黙ってよ)…」

 

なんなんだろう、アバドンを囮にしようとしても私についてくるだけで役に立たないし、建物の影や裏に隠れてやり過ごしたけど声をあげるし

足手まといにしかなっていない

 

なんならゲームにありがちなオプション『難易度+』のハンデキャラみたいに邪魔だ

 

…どうにかしないとそのうち私が死んでしまう

 

取り敢えず今日はこの辺の小型アラガミを狩って…いや、待ち伏せて飢えをやり過ごそう

 

はぁ…オウガテイル1.2匹なら確実にアイサツ前のアンブッシュからの一撃で殺せるのに…

 

アイサツ前の一撃(不意打ち)で死ぬようなアラガミは未熟であり、実際弱い

アラガミ同士のイクサはそんな未熟者を許しはしないのだ、サツバツ!

 

おっと、先方に見つかっちゃったみたい

「…グルガァァッ!」

「キュクルルルルッ!」

 

オウガテイル…堕天種だ、通常型と違って氷使いの火弱点、多分アラガミを狩っていて最初に属性を意識することになる相手だと思う

…ヴァジュラは除いてね?

 

普通に狩っていると氷装甲火バレットの組み合わせで通常種以上に雑魚なんだけど、無属性とかだと純粋に耐久が上がっているように感じると思う

 

一緒にいるのはザイゴート、通常種だが、これも油断ならない相手

一般人程度ならパックン!な上に(PVで軍人さんを一口にしている)遠距離攻撃が基本戦闘手段であり、アバドン並みの移動速度を持つ、さらには毒持ちという、これまた神機使いが最初に状態異常を意識することになるだろう相手

 

そして、早いし浮いてる

私の大敵といっても過言ではない

…進化先も大型や接触禁忌種が多い、勝利を約束された種族だ

 

なんだ!そんなにおっぱいがいいのか!?おっぱいの差が栄光と悲嘆を分けるのか?

私はそんな格差社会を許さないぞ!

 

「キュフw」

…これ食ってもいいかな?いいよね?よし食おう、売れた喧嘩は食う、これアラガミの常識、

 

「…ギジィ…」

視覚能力に優れるザイゴートに不意打ちは難しい、先にザイゴートを殺してから

改めてオウガテイルにアンブッシュを仕掛けるべきだろう

 

「ミュックルル」

ギュッ(黙って)!」

 

声を上げ始めたアバドンをつついて止め

私はオウガテイルと並走しているザイゴートに向かって走り…オウガテイル堕天の峨眉刺・凍をいつも通り甲殻で受け流す

 

ガチキィッ(冷たっ)!」

 

受け流した峨眉刺に視線を向けず、そのままザイゴートに突進して、オウガテイルの飛びかかりをステップ回避

 

そしてそのまま…空気砲っ!?

 

「ギュッ!」

ザイゴートの空気砲で無様に吹き飛ばされ、距離を開けられてしまった

そうか、ザイゴートは近接対応もできる…私のような片手落ち種族とはモノが違う

 

なめていた、ザイゴートが斬撃雑魚だからって、私が神機使いであるならノーダメが基本レベルの相手だからといって、今の私が欠陥だらけのアラガミであることを失念していた

 

これは失態だ、だけどまだ取り戻せる

 

「ギジィッ!」

一喝と共に姿勢を戻した私は、オウガテイルの尻尾回転を諸に受けて再度転がされ…体制を戻すために再びジタバタする羽目になった

 

「グルルルルゥ…」

 

オウガテイル堕天、その牙は氷を纏い、その爪は雪原に突き刺さる

過酷な環境での生存のために特殊な進化を遂げた強化個体、それこそが堕天種

原始個体(天に許された姿)より逸脱した形を持つそれは、より進化した種族が故に強力、油断ならない

 

「ジッ!」

だが、私もそれは同じ

なにせ、他のアラガミにはないだろう人格がある、野獣の本能しか持たないアラガミとは違うのだから

 

たとえそれが病室から出ない病弱な私であったしても

 

ジュウグガギギ(どうすればいい)…」

 

お腹に突き刺さる峨眉刺を気にせず、強制オラクル活性!お腹すいたお腹すいたお腹すいた!…よし!食べ終わり!

 

突き刺さっていた峨眉刺・凍(キマシタワー)が私の体細胞に食われて消滅、同時に私はオラクルを補給!

 

「ジッ!」

 

補充したオラクルを即座に消費して糸を錬成、それを地面に落として…

 

「グルルオゥッ!」

走り込んできたオウガテイルの足が急に固定され、つんのめって倒れる…私の上に

 

「ビビギジィッ」

…よし、転がされながらも戦闘態勢を取り直せた、リトさんなら出来なかった

アレがもし『結城 O(オウガテイル)リト・堕天』だったら今頃私は半脱ぎ状態で揉みしだかれていただろう

 

…まぁ、揉むほどないのだけれど

 

「…ジュァッ(そりゃぁっ)!」

 

声と共に、オウガテイル堕天に糸をぶっかけ、急いでその全身を固定する

 

完全かどうかはわからないけど

大量の糸を消費してしまったからどのみちこれ以上の糸を使うことはできない

 

ガギゴキュィ(ザイゴートォ)…」

 

ニタニタしていたザイゴートに不意打ち突進、当然のごとく至近距離空気砲で対応してくるが、今度は私だって対策した

 

()()()()()()()

 

ザィッ(ハァッ)!」「ギュルヴァ!?」

 

私を弾き飛ばさんと放たれた空気砲は、即座に、私が召喚したオラクル壁に弾かれ、その中をツノを固定した私が突き進む!

 

原理は不明だけど、多分長剣型神機(ロングブレード)BA『バリアスライド』と同じだと思う

 

攻撃の一瞬、全身のオラクルからかき集めたエネルギーで強烈に活性化したツノが周囲のものを捕食する性質をより強く反映したオラクル細胞の膜を展開、それが接触したオラクルを捕食吸収したのだと推測する

 

まぁ原理なんてどうだっていい

私が知る必要があるのは『食べたい』と願う必要がある事、そして無制限には使えない事、それだけだから

 

「ギュルルルルッ!」

 

人型の下半身を失ったザイゴートは、それでも声を上げながら体を修復して再び襲いかかってくる、

 

ガギザジュゾォ(まだやるの)!?」

 

「グルゥォゥッ!」

 

私の声に応えたのは、ザイゴートではなくオウガテイル堕天、糸を外せていない状況にもかかわらず、咆哮を上げてみせたのか

 

ダメだ、これはどっちかが死ぬまで、いや、食べるまで終わらない

生き残るためには…食う!

 

幸い、大規模に捕食したお陰でオラクルを補給できた、体には余裕がある

それに活性化の影響か、体が軽い

 

「ゴキュィ」

これなら…やれる

 

「ミュックルゥ〜ッ!」

「ギァっ!?」

 

その特徴的な声は、間違いなくアバドンで、それは聞こえてはいけないはずな声

 

どうして出てきたの?!

激しく混乱する私を置き去りにして、状況は動いた、いや、隙を晒した私こそが

私の不利へと状況を動かしてしまった

 

「ギクルルゥ」「ギュゥッ!」

ザイゴートが毒を使ったのだ

毒の煙を直接撃ち込まれた私は、全身の細胞が停止、喪失する感覚を味わい…

 

ギュルヴィァッ(ばぁ〜かっ)!♪」

そのまま空気砲と体当たりで吹き飛ばされた

 

「ゴガァッ…ギィ」

 

何度目かもわからない叫びとともに吹き飛ばされた…今度は身体中ボロボロだ

回復量をダメージが凌駕している

 

このままではいずれ細胞が形象を維持できなくなる、…そうしたら、どうなるの?

私は死ぬのか?それとも無数の細胞の中に分散した『私』がドレッドパイク種として拡散するのか?実験できない以上はわからないけど

 

それでも、今この場に『私』がいなくなるのはマズイ、だから私は勝たなきゃならない

…できるの?この磨耗した細胞で

小型ニ体相手に苦戦して、小型は数が多いのが強みなのに?

 

やる、それしかない

勝機はただ一つ、今この瞬間!

 

グジギジィォォ(限界を…超えろぉ)!」

 

叫びとともに、目の前が紅く染まる

怒り活性化(レイジ)状態へ移行

 

「ガァォァァァアッ!」

 

余裕な風に私に背を向けていたザイゴートは、叫び声に反応して背後を振り向き

跳躍した私と目を合わせる

 

そして

その瞬間、ザイゴートのとっさに出した人の手の様な部位ごと、女性体を貫き

裏の卵も貫通する

 

そして…そのコアを喰らい尽くした

 

ギジィィイッ(よしぃーっ)

 

ヴェノムは未だ抜けないけど

それでも体力補充はできた…よし!

 

そのままオウガテイル堕天(ついに糸を凍らせて破壊したらしい)に向けて突進し

…足に(オラクル)を込めて…

 

ジャァ(ハァッ)!」

 

声をあげながら突撃して、飛びかかりを受ける、そのまま甲殻が凍りつく!?

 

「ミキュウー!」

甲殻を凍りつかされて、そのまま連続の峨眉刺・凍で全身を凍り漬けにされ、動きが止まった私を、オウガテイル堕天が噛み砕こうとしたその瞬間

 

アバドンが体当たりしてきた

 

わたしに

 

「ギュン!」

速度の乗った体当たりとはいえど、アバドンのプニプニボディではさしたる威力にならず

凍りついたわたしの体を地面から引き剥がす程の運動エネルギーを供与してはくれなかった

 

弾性のあるアバドンの体は

私に衝突したエネルギーのほぼ全てを反発に転化して

 

オウガテイルの顔面に衝突

無論たいした威力はないだろうが

目に向かって高速の物体が飛来すれば、咄嗟に回避くらいはするだろう

 

かくして、当初の狙い?通り

噛みつきは阻止され…私は時間を得た

 

「ギュジィァッ!」

 

裂帛の一声と共に、全身を強制活性

自分の体内細胞が、隣人たる細胞と喰らい合い、無秩序な自己捕食を始める

 

強制的に活性化した肉体は

自己捕食で自壊する、その前にオウガテイル堕天を…捕食する!

 

「ギィッ!」

 

凄まじい勢いで細胞が流動し

体が形を不定形に崩していく

 

地面を捕食し、土を捕食し、空気を捕食し、発生した熱を捕食し、氷と溶けた水を捕食し、ありとあらゆるものを喰らい尽くしていく

 

この有様こそが

そう、原初のアラガミの形

 

万物を捕食するもの(パンフォノメフスィ)

 

破壊し捕食し吸収し淘汰し流転して

新たなる命を作る。それがアラガミの力

 

ギユルルグギィィッ(この私の力だっ)!」

 

オラクル細胞が変異し、増幅し

光が緑の甲殻に彩りを加える

 

七色に染められた甲殻からオラクルを噴射して突進し、オウガテイル堕天の峨眉刺・凍を捕食吸収、さらに加速して…ツノを顎の中に突っ込み…

 

ギッギュギジィ(活性かぁっ)!」

 

相手の体内から全てのオラクルを捕食吸収、即座に消化した

 

「…ゴギュィ…」

 

まだまだ全然足りない…もっと食べなきゃ…全部残さず…全部…食べなきゃ…

 

「ミキュウュルル〜」

 

ぽん、とアバドンが頭に乗ってきて

私は反射的に体内オラクルを活性化しようとして…倒れた




こんだけいってメンツは小型種三体…


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いけるって

………あれ……?

 

私、生きてる?

 

「ギジュ……」

 

声は…まぁ、いつも通りというか、もうなれたというか、金属をこするような声

 

視界には白いだけの無機質な壁ではなく、青く透き通った空が映っている

 

聴覚と嗅覚は問題ない、味覚は…わからない、少なくとも建材のコンクリートや土をおいしいとは思えない程度には人間的だと思う

 

「…ギュウ」

 

伏せていたらしい身体を起こし

立ち上がる

 

あんまり変わらないけど

 

「ミキュルクゥ♪」

ギュギ(なに)?…ガキュギジィ(アバドンか)

 

ドヤ顔で私の前を旋回するアバドン

ミャキュゥ(たべてぇ)

「ッ!?」

 

その口に咥えられていたのは

錆びた鋼らしきもの

…日本刀のカケラ?かな

 

間違っても黎明の亡都にはないアイテムだけど…って寒!

 

寒いし日本刀のカケラ?あるし

ってことはここは…鎮魂の廃寺かな?

 

…のまえにどうやって私を運んだのかすごく気になる

 

「ムュィ?ミャキュウ?」

ギジュ…ギュギイ(いや…いいの)?」

 

「ミュイニュゥ♪」

 

上機嫌なアバドンがコロコロと地面を転がりながら日本刀のカケラを地面に落とす

…って、よく見たらかなりの数ある

 

アイテム的に見れば

『玉鋼』であろう日本刀のカケラ?に『黒鉄』系統らしい金属の棒

『結晶』系アイテムっぽいもの、ジュラルミンケース

 

なんかもう雑多にかき集めた

みたいな感じだ

 

「キュウキュッ、ミキュルルウッ」

取り敢えずなにいってるんだかわからないアバドンの声に急かされて

 

その…アイテム類?の前に立つ

…私アイテム食べられるのかな

 

…少なくとも私の偏食因子はそれを食物と認識してはいないようだけど…

 

取り敢えず一番食べられそうな黒鉄?に近づき…

 

「ン…」

 

恐る恐るひとなめ…

ギュギジィィイ(くっさぁい…)

 

放置されているうちに塗布された油が腐っているらしい、酸性油の匂いが鼻を突き刺す

 

でも…この匂いは…

嫌いじゃない

 

ペロ…ペロ…ん、

 

やっぱり硬い…んんっ!

 

私はアラガミの捕食力を信じて一気に口に含んで…やっぱり無理…

 

「ミュッ!」

「ングッ!」

 

突然アバドンが鳴くと同時に、思いっきり棒を突っ込んできた

 

ギジュグゥ(鬼畜うっ)

「ミユリュッ♪」

 

「ギガュッギィ…」

口の中に捩じ込まれたモノをそのまま動かされて、無理な体勢のままの捕食を余儀なくされた私は、仕方なくそのままガンガン突っ込まれるその黒くて太くて硬い棒を舐める

 

口から全身にそのニオイが満ちてくる…あ、だめ、抜かないでっ

 

「ミキヒヒッ!」

「ギュィィ…」

 


 

あのあと鬼畜アバドンがいろんなものを突っ込んで来たので、息も絶え絶えである

…が、なんとか腰ガクガク状態からは回復した、

 

ゴギニュゥギロォ(覚えてろぉ)…」

 

無自覚鬼畜(アバドン)をにらみつつ、とりあえず立ち上がり…軽く歩く

しばらく使わないと機能が劣化してしまうから、楽なことに慣れてはいけない

 

「ギュァイ」

 

身体的な機能に劣化は見られない、ちゃんと以前通りだ

 

身体能力的には変わらないとして

………特殊技能はどう?

 

まずは糸を生成して…ふっ!

「ギュルッ!」

 

ドピュッ!と白く濁った濃厚な液体が飛び出して、瞬時に結膜、繊維化する

 

アラミド繊維とアラガミ紡糸、それに硬質なプラスチックのポリプロピレンの繊維構造を参考にして独自に変質しているらしい

 

というか、こんな濃厚な液体なのに空気に触れて即時硬化するとか、瞬着かな?

 

私の糸には二種類あって

敵を捕獲したい時に出る『粘り気のある捕獲糸』と移動や単純な攻撃に使う『表面ごと硬化する足場糸』が使い分けできる

 

確かめ方?足元にライターがあったから、それに糸を付けて固定、足でスイッチオン、すると溶けるのがアラガミ紡糸+アラミド繊維?の捕獲糸、展開した後も粘着性を持っているらしい

溶けないのがポリプロピレンとタンパク質の構造体の足場糸

 

いちおう足場糸も完全硬化までの一瞬の間は粘性があり、糸が当たったものを巻き込んで硬化することもある、

 

割と高性能な中距離攻撃を会得した、といっても過言ではないのだろう

 

相変わらずビームは使えないけど

…まぁ、中型もビーム使わないこと多いし、ヤクシャ・神機兵・シユウくらいしか明確に『光弾』と呼べるものは使わないから、気にするべきではないのかもしれない

 

スペックは万全とわかったところで、眠ることにした…いくら捕食したからといってすぐに体が回復するわけではないし、再生にだって時間はかかる、という訳で体調を万全にするために私は眠った

 

入院生活中に一日中ベッドの上にあるせいでまるで眠気がないときも消灯時間になったら眠る振りくらいはして来たし、経験則でどのくらいで眠れるかくらいは分かる

 

私が思うにもう…

 


 

はっ!私寝てたっ!

 

「ミュ〜…ミュ〜…」

 

アバドンも寝てる…可愛い…

 

「ォギジィ…」

 

足でアバドンをつついて起こし、移動に備える、もとより高頻度に出現する大型アラガミだけでなく、ストーリー的に大切な場所だが

それでも長居するには危険すぎる場所だ

 

逃げるに越したことはない

 

「…ジッ」「ミィ」

 

とりあえず休める場所としてここを選定したアバドンには感謝もするが危険すぎるので早めに撤退する

 

急げ急げ

 

「…ジジギィ…」

アバドン早いよぉ

 

 

 

さて、私は今、どこにいるでしょうか

 

正解は…あなたの後ろです

ドーモオウガテイル=サン

ドレッドパイクデス

 

ギジャァァァァッ(イヤーーーッ)!」

 

喚声一喝(カラテシャウト)と共に

私は体内オラクルを駆って走り出し…とおぉ()ぉおう()

 

「ガギュゥッ!」

「グブルルグゥウッ!」

 

二体のオウガテイルの片方を

空中からの落下刺突で一撃死させる

 

もちろんコアごと全部捕食する

色々食べたお陰か

体内の偏食因子が変異しているらしい私は今、このオウガテイルよりも上位の偏食因子を持っているはずだ

 

つまり私は…!

「グルガァァッッ!」

 

噛みつき攻撃を甲殻で受け、尻尾の叩きつけを受け止めて踏ん張る

 

ジャゥギュッ(勝負っ)!」

 

地面に跡を刻みながらも、叩きつけに耐えてツノをかまえたその瞬間

飛んできたのは峨眉刺の連射

 

「ガガガガッ!」

 

どうやら相手となったオウガテイルも、ただの無個性な一個体ではないらしい

峨眉刺の威力を下げる代わりに連射性をあげ、アサルトの銃弾のように連射してきている

 

制圧能力に優れた特殊個体(サプレッサータイプ)

 

「ガガガッ? 」

 

連射していた峨眉刺が急に途切れ、困惑したようなオウガテイルの声が聞こえて来る

 

何なのかはよくわからないけど

とりあえずチャンス

 

「ッ!」

 

空中に足場糸を放射して、硬質化した糸が贖罪の街エリアBに乱立する鉄骨に接着する

 

これで、私は

簡易的ながらに空中に足場を確保したわけだ

ギュギギィ(これないの)?」

 

「グルガァァッッ!」

 

オウガテイルをさりげなく煽りつつ、足場に登った私は、通常なら悪手である

ドレッドパイクが距離を取る

つまり自ら攻撃範囲外に出るという行動を起こしながらも戦況を有利に動かしていた

 

「グルルルルゥ」

 

恐る恐る、と言った様子ではあるが

私の掛けた足場糸に乗って、一本道に登ったオウガテイルが、私めがけて歩いてきたのだった

 

それが誰によって作られた

如何なるものなのかも考えず

 

そして、その道に立つ以上

私の射程範囲から逃れられないということもまた、知らないまま

 

「ジッ!」

 

都合二度目の糸放射

これで体内分は使い切ったけど

それに見合う効果はあった

 

そう、二度目に放ったのは捕獲糸

それを咄嗟にかわして落下したオウガテイルの尾を捉え、強力な粘着性を発揮して

 

オウガテイルを宙吊りにした

尾を搦め捕った以上、尾を起点とする峨眉刺は使えない!

 

「ビギィイィッ!」

「ガァァァゥッ!」

 

助走をつけた跳躍で糸から離れ、ツノを構えて落下する私に、オウガテイルは捨て身の一撃を以って応じた

 

自分の背骨を追って棘にして

それを峨眉刺の代わりに背中から放射したのだ!

 

「ギゴガッ!」

 

おお!なんたるカラテか!

本来オウガテイルには不可能である全身からの一斉攻撃!カラテだ!

 

「ジュッ!」

 

ドレッドパイクは身を捩りつつ緊急回避、攻撃は失敗…いや!

 

「ギイィムァァァッ!」

「ミュゥゥウッ!」

 

アバドン=サンのアンブッシュめいた突進がドレッドパイクに突き刺さる!

ゴウランガ!カラテ力学に基づいた軌道修正により再び角度を取ったツノがオウガテイルに直撃したのだ!

 

「ガァァァ…」

 

ハイクを詠むことも無くオウガテイル=サンは爆散!ナミアムダブツ!

 

グギィィグギュァ(ヤッツケター)

 

快哉を叫ぶドレッドパイクの背中にデスノボリが立つ!

 

「グルルルゥ…」

 

ラーヴァナ=サンのエントリーだ!



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閃光の果てに

「ギザギュゥガァ…」

 

いやさぁ、たしかに死亡フラグは立てたけど…さぁ?もうちょっと温情とか呵責とか命の価値の区別とか欲しいわけよ

 

私だって刺青燃やせば復活できるわけじゃないんだぞ?

 

「ガァァァッ!」

 

あ、見つかった

 

「ミキュゥツッ!」「ギギリィ!」

 

 

アバドンが逃げ足に任せて走り去っていく…そんな薄情な…

 

まぁ、アラガミだもん、

仕方ないよね、きっと…たぶん

 

「ギガァァッ!」

流石に小型アラガミの身で俊敏性と耐久力に秀でるラーヴァナは怖いが、カテゴリ上はコンゴウやシユウと同じ中型アラガミ

第2種接触禁忌種でありながら

素のヴァジュラと同じ程度の戦力しかない、GE無印〜バースト時間軸における禁忌種最弱とよばれるアラガミである

 

ちなみに、GE2の禁忌種最弱はチョウワンに更新された

 

「グガォォッ!」

ラーヴァナは一発吠えてから、駆け寄ってきて…パンチ!

 

「ガッ!」

ジャンプで躱した直後に体当たりを受けて転がされ、ゴロゴロと5回転半捻りを披露したところで追撃に飛んできた火炎弾を躱す…といっても同時発射はあらぬところに飛ぶので、ただ単に直進すれば当たらない

 

のだけれど、相手の圧倒的な火力は脅威だ、私には洒落た属性攻撃なんて持っていないし、頼みの綱の活性化も未だに自在とは言い難い

遠距離攻撃でチマチマ削るような耐久戦は体力のない私には向いていない

そもそも私は遠距離攻撃手段を持っていない、糸はあくまで捕獲であり、それ自体を攻撃手段にするほど強力ではない、硬化した足場糸を叩きつけてもあの装甲には弾かれて終わりだろう

 

…ごちゃごちゃと考えてはいるけど

結局『私にあいつを討ち取り得る火力は無い』って事だ

 

最優先は…①出来るなら逃げる

出来なければ②派手に物音を立てて

コンゴウ種、あるいは同じヴァジュラ種のアラガミを呼び寄せて、互いに争っているうちに漁夫って逃げる、

 

最悪だけど…③徹底抗戦

 

まずは…①を試そう

 

「…ギジィィイッ!」

 

派手に叫んで②のための布陣を残しつつ、足場糸を吐き出して、中央建物の屋根に引っかける

 

屋根には穴があるので、そこから中に入って…視界を遮ったら順次糸で吊り橋移動、それだけの作戦なんだけど…まずいねこれ

 

「ギガァォアァッ!」

 

え?ダメだから、あなたが乗ったら重量オーバーぁぁーっ!

 

「ジギュゥッ!」

しぬぅっ!…と危ない、空中でもう一本糸を出して着地できてよかったですまる

 

「ガァ?」

ガガァッ(ばかぁっ)!?」

 

私が出した足場を早々に破壊したラーヴァナは、再び形成された私専用(強調)足場に炎を吹きかけて焼き始めたのてでした

 

やむなく私は飛び降り体当たりを決行、ツノを向けて…

ゲェェェチィ(ぜぇぇぇい)

「グル…?」

 

背中の装甲に弾かれましたハイ…

でもオラクルはちょっと貰ったし

糸一発くらいは補充したし!

 

「ゴゴギィィオヴ!」

「ガガァ?」

 

私の大声にもまるで動じない

…というか、子供扱いされてる感が拭えないのだけれど、どうしようかな

 

「…ガァァァゥ!」

「グガァァッ!」

 

着地直後に連続ステップして

ラーヴァナのお腹に潜り込み

そのお腹の部分を、現状精一杯の衝角攻撃(ラムアタック)を仕掛ける!

 

やった!それなりに通じた!

 

腹部分の装甲は薄い!

今のうちにハムハム…ハムハム

といってもかじる訳じゃなく

装甲に突き刺したツノからオラクルを吸収してるんです、攻撃部位→非攻撃部位はやっぱり小型→中型でも攻撃判定が成立するみたい

 

囓るんだよオラッ!オラッ!

 

…ちょっとは痛がってよ…(泣)

 

「ガォァガァァッ!」

「ギジュッ!」

 

突然ジャンプしてきたラーヴァナに押しつぶされそうになる私…は

もちろん甲殻で耐える!

 

「…ガッ!」

お腹にプレスされて潰されながら

それでも耐える!

 

………今!

連続プレスの間に身をあげ、

低空ジャンプしたラーヴァナとタイミングを合わせて、私自身もツノを鋭角に立て

直角に近しいほどの角度で待ち受ける

 

果たして…ツノは、その重量に耐えきれずに砕けながらも、その甲殻を破砕して見せた

ついに攻撃手段無しにもダメージを通せる肉質を露出させたラーヴァナは

装甲を砕かれた痛みに悶えながらも力を失わず、反面私はツノを失い

最大の攻撃手段を無くしてしまった

 

だが、ダウン姿勢に入ったラーヴァナの腹を噛み破り、その甲殻を徐々に剥がしていく

 

そして装甲を多量に摂取したことで、私の体内オラクルも活性化し、

徐々にツノが修復されていく

 

「ガァァァッ!」

強い咆哮と共に立ち上がったラーヴァナは私を振り払い、オラクルを強制活性化

装甲を瞬時に再生させてみせる

これが小型と中型の、

オラクル細胞保有量の絶対的な差の現れ

 

ガゲギィガ(勝てないか)…」

 

オウガテイルの群れがヴァジュラを倒すこともあるという、だが私はドレッドパイク、群れを持たざる非力な虫だ

 

ゴゲギィゴオォ(それでもぉぉっ)!」

 

無謀にも直接攻撃を行うため、再び走り出した私は、活性化の応用で

身体内のオラクルを収束させ

一時的に密度を引き上げることで

ラーヴァナに対する攻撃…再生したツノによるラムアタックを強化する

 

そして…

「ガァァァッ!」

「ギィィィッ!」

 

負けじと声を張り上げながらぶつかり

()()()()()()()()()

 

だが、強引な活性化で力を引き上げすぎたのか、私を跳ね飛ばした後も勢いが収まらずに地面を滑走していくラーヴァナは

鍾乳石じみた材質の岩壁に頭から激突して、その物理的衝撃で頭部のキャノピーにヒビを作った

 

「グルルルゥ…」

脳震盪でも起こしたというのか、頭を振って姿勢を戻し、その直後に糸で壁に縫い止められるラーヴァナ

 

何度も言うが、こちらは小型

身軽さが売りなのだから、

火力で劣っても速度で負けられはしない

 

足場糸の効果は瞬間硬質化

それ単体ならまだしも、足場糸を複数展開して全身各所の『力の起点』を固定された状態にまで追い込んだらもう抜けられない

 

「ジギィ…ギムゥ」

 

再び力をチャージして跳躍

ツノから放出されたオラクルが

緋色の螺旋を描き、

そこから炎が溢れ出す

 

「ギィィィッ!!」

 

炎はツノ自体を焼く事はなく

それでも赤い輝きを放ってツノを覆い、ラーヴァナの前足装甲へと突き立った

 

「ガァァァッ!」

急所にはならないが、それでも貫通属性弱点の前足に思い切り刺さった一撃

重要なポイントを突き破ったような感覚と同時に、前足の装甲にヒビが入る

 

やった!

 

「グガァッ!」「ギッ!」

 

装甲に構わず、ラーヴァナは

自分の全身から炎を大放出

ラーヴァナ(炎の魔王)の名に似合わない冷静な対応で私を振り払うと同時に

私のかけた(努力)を灰へと還した

 

「アァッ…」

 

そう、私の糸は高熱に弱い、特に足場糸は容易に燃えてしまう

過熱性に分類されるアラガミ相手には相性が悪すぎる!

 

「ガァァァッ!」

 

自由を取り戻したラーヴァナは

たとえ一時でもそれを奪った封印を仕掛けた私に憎悪の目を向けて

前足を地面に対して叩きつける

 

「ニジュッ!」

瞬間-足元から火柱が上がり

それを回避するべくステップを踏んだ私に、突撃格闘が仕掛けられる

 

両前足による二連パンチ

叩きつけ、最後に毒爆発

 

……毒爆発が無ければ完璧にやり過ごせたのに、これじゃヴェノムが入っちゃうじゃない…ゴフッ…

 

「ゴゴギュィィィァ!」

 

声だけはあげながら、

必死に弱るオラクルを収束させる

 

 

結局①は諦めて、③に移行してしまっているけど、それもまぁ仕方ない

やるからには全力全開、

命を燃やして駆け抜けよう

 

「…………ギィチ…」

 

一つ、数えて

赤い光がツノ全体を彩る

 

「……ギゴ………」

二つ、数えれば

光が螺旋を描きながら、ツノの先端へと徐々に集まって行く

 

「ガァンッ!」

 

三つ、数えると同時に跳躍

ありったけのオラクルを収束した一撃で貫通攻撃を放つ、体勢確保は不十分

力の入りは不完全

だけどそれでも…この一撃は完璧に

 

 

 

相殺された

 

 

「ィ…」

「グルルルゥ…」

 

そう、毒爆発の直後に使ってくるアクション、背中の砲台を解放した最高威力の一撃

その直撃を以って威力を殺されたのだった

 

「ガァッ!」

 

圧縮プラズマ光弾を突き抜けて勢いを失った直後に、ベシィと体当たりされた私は

もはや身を躱す余力もなく

もろに吹き飛ばしを受けて…転がる

 

が、なんとか立ち上がる

正直、そもそも逃げられるとは思っていなかったけど、ここまで苦戦してやる気もなかった…

 

どうしようかな…オラクルも限界に来たし、私自身のメンタルも限界だ

最後に行っちゃうか?

 

全力で、もう一度…走る!

 

「ギィ……ィッ!」

 

「ガァァァッ!」

 

魔王に挑む勇者って、こんな感じのかな

絶対に勝てないと確信できる相手に

生きるために立ち向かう

 

それは私の居た病院では決してできない在り方で、私自身が憧れた

輝かしい生き方だった

 

私の足は既に弱り果て

最高速度は見る影もない

今までで最弱の一撃ですらあるだろう

 

しかし、そこには

たしかに立ち向かう意志が込められた

 

キィン

 

鳴り響く音はだにも聴かれず

ただ戦場に流れ行く

 

それは、未だ生まれざる赤子への祝福

それは、神の血を継ぐ者への声援

それは、神を滅ぼす者への囁告

 

強制活性化(コンバースト)したオラクル細胞が流動し、あらゆるものを喰い尽くさんと、私の形を超えて溢れ出し、同時に私の元へと収束する

 

オラクルは私の元より溢れ出し、万物を捕食し、私の元へと帰順する

 

その過程で放出されるエネルギーよりも、はるかに大きな力を湛えて

私の身へと還ってくる

 

力は拡散し、収束し

加速し、遅滞する

 

本来私の身には収まらないほどの

膨大なエネルギーは

しかし私自身を器として集い

私の心を樋にして流れる

 

「ギィィ…ガァァァッ!」

「ギィィィッ!」

 

 

私の捨て身のラストアタックに、ラーヴァナ(魔王)は己の最強の一撃を構えた

それはまるで、正々堂々たる勝負を望む戦士の様に、背に備えた真太陽核から

プラズマフレアが注ぎ込まれ

その砲身は莫大な熱を束ねて砲弾を成し

 

私も負けじと灼熱を纏った

先の攻防で奪ったラーヴァナ自身のオラクルから作り上げた、私の力が唸りを上げた

 

私のツノが真っ赤に燃える

 

魔王を倒せと轟き叫ぶ

 

ガァッギァア…(ばぁくねぇつ!)

 

轟咆と共に大きく踏み込み

地面を割り砕きながら超加速

 

赤熱したツノは更なる輝きを得て

ラーヴァナから放たれつつあったプラズマ弾に突撃した

 

ゴォッゴ…(ゴォット…)ギッガァーーッ(フィンガーーッ)!」

 

そして、閃光は瞬いた




死んだんじゃないの?


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たとえ傷付き倒れても

お久しぶりです


「………ギィ……」

 

二週間、それが体感で眠っていた時間

ずっとオラクル損耗を回復するために眠っていた…みたい

 

今度は別に嫌な感じはしないけど

 

「ギッ!」

すっかり鈍ってしまった感覚を叩き起こして、体を動かし、まずは起き上がる

 

「ギジギナキュウ」

 

深呼吸して、体の軋みや痛みを確認する、ゆっくり丁寧に体をほぐして

…といっても、私の体は丁寧な扱いを要するほど複雑な構造をしていないのだけど

 

体をほぐしてから視界を見回す

場所は…贖罪の街のエリアE

 

端っこの影に隠れるような位置に転がっていたらしい、よかった、GEに見つかっていたら即死だった

 

「…ミュー…」

 

この頼りない声は、

「ガガォン?」

「ニュッ!」

 

近寄ってきた黒い球に

アバドン?

そう呼んだら驚かれた

私はそんなに死体じみてたのか?

 

「…ギィ…」

 

ため息をつきながら

そっとそれに近づき、いつものようにツノを繰り出すと、やはりいつものように

アバドンは背中を滑っていく

 

こいつ、私が危なくなったらすぐ逃げるくせに調子いいなぁ

 

「ガガキィキッ」

「ピッニィ、ミミキュア?」

 

可愛く首を傾げても無駄やぞおまえ

 

「ヒニキュウ、ミュッミィ」

ガガゲ…(黙れ)

 

騒がしいアバドンを黙らせて

まずは状況を確認する

いつかもやったけど、自身の細胞が活性化した後は、休眠状態から復帰するのに

多量のエネルギーを必要とする、そのために補給を必要とするのだけど

…今回はそんなこともないみたい

 

なんでだろう?

 

まぁいっか、便利なことに変わりはないし、体が動くに越したことも無いだろう

 

「ガーガァガァ?」

ラーヴァナと戦っていたのは覚えているのだけど…最後の一撃のあと、どうなったのだろうか?

 

……まぁ、私より先に目覚めて帰ったと言う可能性が濃厚だな

 

「…」

「ミュッミィ」

「ジギィ」

 

心なしか低温に感じる空気を吸って

私は廃材を探し始めて…

「ミュァァ♪」

 

アバドンがどこかへ走り去って…しばらくしたら廃材…スタングレネードを咥えて持ってきた

 

ギョクゴクガ(競走か)?」

「ミュッ!」

 

「ガガゴンガッガギィ ゲッギィガケガィ!」

 

アバドンには勝てなかったよ

 

アバドン神属のアラガミはのちにハンニバルが出現するまで最速を誇ったアラガミ、鈍重で知られるアラガミであるドレッドパイクの私がアイテム回収競走で勝てるわけがない

 

勝とうとする事自体が間違いだったよ

 

いくら知識的にアイテムの落ちている場所がわかってもそこに辿り着かなければ意味はないのだ

 

「…ジュガァィ…」

「ミッツ!ミッツ!」

 

ドヤ顔しているアバドンが集めてきた(フィールド)系素材を齧って

空腹を満たししているうちに

状況はだいたいわかった

 

アバドンは私を置いて逃げた後

実は戻ってきて、ドーム状の屋根の上に登って、私のことを見ていたらしい

それで私が吹っ飛ばされて動かなくなってからすぐに私を引きずって

フィールドの端っこ(壁の隅)まで動かして、最大限発見されないように隠していたらしい

 

ちなみに、ラーヴァナはというと

あの戦いの小一時間後には目を覚まして、すぐにフィールドから立ち去ったらしい

 

それは嬉しいのだけど

…なんというか、少し悔しい

相手は一時間で目を覚まして

私は二週間以上眠り続けていたなんて、完全に負けている証拠だ

 

たとえ一撃報いたとはいえ、それではあまりにも不完全だし、結局ラーヴァナを倒してのオラクル捕食もできなかった

 

「…ガァ…」

 

軽くため息をついた私は、まずもっと小型を食べて力をつけることを誓った

 


 

一週間ほど時間がたったが

倒したアラガミの数は

 

ザイゴート堕天×2、オウガテイル通常種×1堕天種×1コクーンメイデン通常種×2

 

私としては高いスコアだと思う

 

オウガテイルとか、それこそ同類(ドレッドパイク)とか相方(ナイトホロウ)がいれば早いのだけど、残念ながらまだ生まれていないようだし、当面の間はコクーンメイデンが最弱種のようだ

 

そのコクーンメイデンの質も少しずつ上がっているし、極東種は基本強い

私自身も極東に適応している個体だけど、個体の強さ的に突出しているとは言えないレベルであって

 

結局のとこオウガテイルやザイゴート、コクーンメイデンなんかの小型種を一体一体狩るのが精一杯である、この子(アバドン)の分まで食料を調達するような余裕はないから、普段は私の分しか取っていないのだけど…私が倒した小型アラガミのコアだけ毟り取っていくのは本当にやめてほしい

 

正直、プレイヤー時代(前世)からの醍醐味であるコアの検分をパッと横から取られてしまうのは精神的にキツイ

 

コア捕食で倒したザイゴート一体しかコアを取れていない…

私のリザレクション知識からするに、アラガミの進化は新たなコアの捕食によって起こるというのに、その肝心なコアを取り込めないのでは

せいぜいヴァジュラテイルのような微妙な成長が天井だとおもう

 

「…ギァ…」

 

ちなみに、私の外見はというと

()()()()()()()

 

ラーヴァナ戦後に得られた特長として、少し足が速くなった事と体の重量が軽くなった事、および

 

ゴッゴ…ギッガァッ(ゴッド…フィンガー)!」

 

オラクルを込めるとツノが赤く輝いて、突進時に轟音を立てるようになった事

私はこの技を、かつて見ていたアニメの主人公の一人が使う大技をなぞらえて

ゴッドフィンガーと読んでいる

 

え?別にフィンガーじゃないだろって?……君のような勘のいいガキは嫌いだよ

 

「ガガォン」

「ミッツ!」

 

いつものようにアバドンを呼び、

贖罪の街の隅から出て

 

多少強化された視力で敵を探す

今日の獲物はどこかな?

 

どこのだれでもいいけれど

私たちが生きるために

糧になってよね



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拳で語る

ステージ黎明の亡都

 

「…ゴゴガ コガギィ…」

 

最近、極東のゴッドイーターだったり、外部居住の民間人だったら難民だったりする人間に出会う確率が低下している

 

以前だったら意外と昼間に走り回ったりしていれば見つけられたりしたのだけれど

最近はダメ、誰とも出会えていない

 

「…ガギジュゥ…」

 

ゴッドイーターはもしかしてもう『蒼穹の月』イベントが回収されてリンドウさん行方不明→捜索隊派遣の流れが行われて各地に散ってしまっているのだろうか?

 

いや、だとしたら逆に遭遇率は上がる…のか?

 

「ガァ…」

 

ため息をついて、

目の前のザイゴートを見やる

 

「…ギイイッ!」

 

すでに糸が付いており

絡まって動けなくなるのも時間の問題ではあるだろう

 

だが、そんな悠長にしていたら

誰かが横槍を入れてくるのは必定

 

というわけで

 

「…ギゲ」

 

アバドンに食われるより早く

コアを捕食すべく

ツノを突き刺し…

 

コア捕食じゃぁぁっ!

 

「ギジュゥゥウッ!」

「ビヤァァ…」

 

捕食完了(ごちそうさま)です(満腹)

 

さて、ザイゴート一体でお腹いっぱいとかいうクソ雑魚胃袋の私ですが

この後するべきことがあるので

お昼寝タイムはスキップだ

 

「ギジュッ!ギジュッ!」

 

ひたすらに糸を吐きます

 

ひたすらに糸を吐きます

 

ひたすらに糸を吐きます

 

………………………

 

 

ガギマジガ(やりました)

 

さて、あれから三日ほどザイゴート(原種)を食べて糸を吐くを繰り返した結果

糸以外に毒…ガス?を吐けるようになった、これは後々に必要になるので

絶対に取っておきたかった

 

早めに確保できてよかったです

 

「ママュゥ…」

「ガバガァガァ…」

 

頭おかしくなったのか?と言わんばかりにちょっと引いているアバドンに返事をしつつ

 

()()()()です

 

ガガガガ ガダゾン ビボゲス(あーあー アバドン 聞こえる)?」

「ニュウ?」

 

どうもザイゴートの喉には

人間の声帯と同じような構造があるらしい、数体捕食してから気づいた為、いまだ完全には程遠いが、それでも今までより遥かにマシなレパートリーのある発音に成功したのである

 

ビゾンゴ デデ ルズバギ ベベ(日本語 って むずかし いね)

 

「ミニュ?ミュウマァン」

 

ギジャ パバ サバギン ザベゾ(いや 分か らないん だけど)

 

 

まぁ発音自体には成功してるし

言語の再習得も近いとおもう

まだ声帯の模倣は完全じゃないらしくて、うまく発音はできないけど

 

そこは要努力…かな?

 

さて、例によって外見的な特徴はありませんが、それでもちょっとした成長はしている私、ドレッドパイクでございます

 

マギレコでは月夜ちゃんがイチ推しでした(突然)

 

まぁ前世での話です、現状のアラガミボディじゃプレイできないし

そもそもシャフトが生き残ってない

 

サービス終了してるんか?

 

「ガナギジジギガァ…」

 

おっデスラー総統…じゃなくて

面倒なのがきてくれましたね

 

 

コンゴウ堕天です、大型最有名と言われるアラガミヴァジュラが登竜門、壁なら

 

中型の中でも面倒な高耐久高火力のコイツはゴッドイーターが最初に躓く足元の起伏

コンゴウの堕天種にして

ゴッドイーター界もっとも出番の多い(当社比)中型アラガミです、迷ったらコイツ入れとけ感すらある

 

一応雑魚分類なのですが

初期はミッション対象になるくらいには強敵、よく取り巻きとして出現する中型の中の一体、もう一体はヤクシャです

 

なぜかシユウが取り巻きとして出てくることは少ないのに、コイツはよく群れる

ピルグリムは許さん

 

ギベ ゴンボグ(死ね コンゴウ)

 

射程に秀でる毒弾を発射して

空気弾の射程外から攻撃

 

続いてビーム弾を持たないコンゴウだからできるまさかの突進!

 

「ゴサァ!」

 

突進してきたわたしに驚いたのか

咄嗟にパンチの姿勢を取るコンゴウ堕天、しかし、その動作は

 

ゴゴギ(遅い)

 

別にわたしだって早いわけじゃないけど、コンゴウ種の動作は極めて遅い

一流のゴッドイーターなら

見てから装甲展開ジャスガ余裕でしたどころか、

見てからジャスガカウンター怯ませCC顔面破壊余裕でしたなんて人もいる

 

要するに

 

わたしだって見てから回避余裕

 

「ギジュッ!」

 

叫ぶと同時にコンゴウの腕を刺す

流石にヴェノムやスタンを込めて…なんてわけにはいかないけど

貫通属性弱点の腕なら

以前と違って刺すことができる

 

私だって成長しているのだ

簡単には負けはしない…はず

 

「シマャァ」「ガダゾン?」

 アバドンの方に視線を向けつつ回避

すると、アバドンは…

 

「ミュウ♪」

 

水辺に移る花を眺めていました

 

ガダゾン ゴラゲェェェッ(アバドン お前ぇぇっ)!」

 

叫んだ瞬間、私の意識からは

完全にそれが消えていた

 

そう、コンゴウのパンチである

 

「ギガァッ!」

 

派手に殴り飛ばされてしまったわけだ

 

私の装甲は形状の関係上、力点の収束する刺突などには強いが

面攻撃になる打撃には弱い

 

そもそも姿勢が低いからなかなか打撃なんて当たらないのだけど、それでも当ててきたコンゴウ堕天は見事である

 

「ガガァ…ギジュッ!」

 

しかし、往時のような無様は晒さず、空中で反転した私は、そのまま糸を吐き

地面から上に伸びる糸のアーチを形成、その上に着地してオラクルを溜め

 

「ゲギガァァッ!」

 

落下刺突(スパイクフォール)をしかける

 

それは無論

 

バァァク ベヅ! ゴゴゾ!(ばぁぁく ねっつ! ゴォッド!)

ジィンガガァァァァア!(フィンガァァァッ!)

 

多大なる熱を伴う必殺の一撃として

 

「グルゥゥウ…ガァァァッ!

 

しかし、ただ簡単にやられるほど

中型種は甘くない

 

コンゴウ堕天は、天からの紅蓮の一撃に向かって、己の拳に威信をかけて

鍛え上げられた豪腕を振りかざし

 

()()()()()()()()()

 

「グガァァァァッ!」

「ギジィィイィッ!」

 

互いの声は重なり、

そして互いの力を発揮して

 

炎と氷は爆ぜた

 

「ギジィィイッ!」

そして、それは大半のアラガミにとって

未知数の攻撃だっただろう

 

しかし、私はそれ(爆発)を経験している

故に、私の方が復帰が早く

コンゴウ堕天が私へと再び拳を放つよりも、明確に姿勢を崩しているコンゴウ堕天へとトドメの一撃を叩き込むほうが

一歩早かった

 

ザッガザ(勝ったか)…」

 

最後の一撃はゴッドフィンガー状態が解除された素の状態だったし

私の実力と言っても過言ではないだろう

 

これで、ようやく中型一体

しかも今の個体は堕天種とはいえ、そこまでの強者でもなかった

最初期のヴァジュラより上

 

現在のコンゴウ種の中では…よくて中の下?と言ったところだろう

基本的に攻撃対象を小型に絞っていた私の中では上々のスコアと言えるが

それが誇れるものかと言われると

 

かなり厳しいと言わざるを得ない

 

()…」

 

結局、毒使わなかった

 

いや、厳密には使ったけど、それは効果も出てなかったし…まぁいいや

誤差だよ誤差!

 

ガガオン、ギズゴ(アバドン、いくよ)

「ミユゥッ!」

 

とくに欲しいポイントである

パイプ部分を重点的に捕食して

空気砲ください!空気砲ください!と祈りつつ、アラガミ性能ドロップガチャを回すためにコアを咥えて…

 

ギダザビラグ(いただきます)

 

ごくん、と飲み込んだ

 

うぅ…あんまり美味しくない…

コアってオラクル量が多いからか

味は濃いのに一様じゃなくて

なんていうか…それ単体でアラガミの最小単位として完結している一個体といえる存在だからか、ただのオラクル細胞みたいに取り込めない

 

『オラクル細胞を支配する』オラクル細胞、『オラクルCNC』と呼ばれるもの

コレがアラガミのコア

それはもちろん私がかつて

コンゴウの空気砲にやったように

他のコアに支配されているオラクル細胞でも、強引に支配しようとする

 

オラクルCNCのもつ偏食因子の格(?)みたいなのが支配力に直結しているらしく

私の偏食因子がこのコアの偏食因子を凌駕しているのなら、コアを支配、分解してオラクル細胞として取り込むことができる

 

逆にコアに偏食因子の格が劣っていればそっちのコアにオラクルを奪われて

さっき捕食したはずのアラガミが

私の体内から『ぐぉー』する

 

もちろんその時に、『私』はとっくに分解されて、消滅してしまっているだろう

私だって、アラガミである以上

その思考はコアに依存している

 

………筈だから

 

まさか今更大脳がどうなんていうつもりにはならないし、多分そうだろう

 

さて、今回のガチャの結果は…?

 

【ローリングアタックを習得しました】

 

 

なんでや!?



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練習中

そもそも、ローリングアタックとは、なんぞや?

 

そう考えた時に思い当たる候補は2つ、いや、3つ

 

まず、コンゴウ神属全体の共通技=コンゴウ(原種)が用いる技である

前方への突進、回転体当たり

 

ガード可能、移動技不可、技移動可、技キャンセル不可、キャンセル技不可の比較的低脳な技、基本骨子としては

 

『質量はすなわち破壊力、E=mc二乗は伊達ではない』と『とりあえず回れば強い、遠心力こそ最強なり』という簡単な二つの理論に基づく高速移動、別名『肉弾戦車』である

 

続いて思いつくのは

拳を振り回す全方位殴り

近接型神機使いが背後に回った時に注意する一回転パンチだ

 

こちらはガード可能、移動技不可、技移動不可、技キャンセル可、キャンセル技可、若干の溜め動作が入るため見切られやすく、振り切った後に停止するタイミングでボコボコにさせるので、ほぼ確定で墓穴を掘る事になる、正直出さないほうが良い技である

 

そして最後に高ランクのコンゴウが使う(原種、堕天、禁忌、神融種を問わない)

一回転パンチの派生技回転連続殴り(ベイブレード)

 

これは一回転パンチと同じ動作でためを入れたあと、そのままの勢いで回転移動する

強襲技、背後にいると初期動作が同じ一回転パンチと誤認して回転中に突っ込んでしまいかねない技だが、回転中にもそこまで高速では移動しないため、二回ステップで余裕で逃げ切れる程度の距離が射程の限界

 

二番めの一回転パンチでなければどちらでも高いようはあるのだけど

 

さて、どれが出るかな…

 

ジャスバ ソソシングガダブブ(やるか  ローリングアタック)

 

ぐぐぐっと体に力を入れて

一気に加速…てやぁぁぁっ!

 

「ガァッ!」

 

振り切ったのは…綾鷹でした

違います、ナオキです

 

…いやどっちにしてもおかしいよ

 

なんで横回転でツノを薙ぎ払うの?それ私がいらないって言ってた技じゃん

どう考えても二番の一回転パンチじゃん!要らないんだよ!コンゴウ種のなかで三番手くらいにいらない技来たよ!

 

一番はハガンが使う範囲雷撃

あれは許さん、発生が早いからチャージ技がすぐ潰される、アレのせいで何度邪魔をされたか、私は例え何度転生してもハガンコンゴウになってもアレだけは許さない

 

二番目はエアボム、コンゴウのエアボムって風の模様で発生箇所わかるし

発生前にロングブレードの△とかショートブレードのR+□とかで簡単にかわせるし

正直あるだけ無駄な技ってだけだ

なお技全体が高速化したハガンは除く、やはりハガンは害悪、ハッキリわかんだね

 

「ガァァ……………」

 

長いため息をついて

ゆっくりと姿勢を戻して

 

使いこなすために連射を始めた

 

「ガァッ!」

「ガァッ!」

「ガァッ!」

「ガァッ!」

「ガァッ!」

 


 

何回撃ったかは分からないが

とりあえず射程、出だしの速度、溜め動作のそれぞれは把握したと思う

試しに空振りを壁打ちに変えてみる

 

「… セギレギ ン ボグド、ゲシガ ヂヂ(黎明 の 亡都 エリアB)

 

とりあえず、エリアAの道と

Bの広場エリアの間には高低差がある、B→Aの逆流を防ぐためのものだが

この壁を利用して壁打ちさせてもらう

 

そもそもこのポイント、著しく視認性が悪く、よほどのこと(広場での出待ち)がない限り

突然捕捉されたりはしない位置であるので、安全性も確保 

できていると思う

 

「ギルス…」

 

よし、一回素振りして…

 

はっ!

 

ツノを払った瞬間、一瞬強い抵抗を感じたものの、すぐに抜ける

 

「ッ!」

振り抜いた

 

岩壁にも受け止められる事なく、ゴリ押しでツノを振り抜く事に成功した

 

ゴヂッ(ヨシッ)!」

 

その出来栄えを見て快哉を上げつつ、横を見やると…

 

「ミ…ミ……ミ…」

 

寝ている…アバドンが寝ている…

 

そんなに退屈だったの?

確かにずっと放置してたけどさ

「ベゲ…ゴジゲ…」

 

相変わらずの濁音満載(グロンギ)語でアバドンを起こして…「ガ…」

 

今のうちに突き刺せばよかった

と後悔する

 

当初はコア取るつもりだったのに

まったく、なんてザマだか

 

「ガガ……」

 

ため息をつきながらゆっくりとアバドンを起こして、背中に乗せる

中型を食っても外観に変化なしとか逆にすごいぞこの体…変化を拒絶する機能でも付いてんのか?それとも私の偏食因子が強いのか?

 

「ガァー」

 

考えるだけ考えると、私は思考を放棄して、

 

ドーモ、オウガテイル=サン

サイジャクアラガミ デス

 

視界に入ったオウガテイルに向けて、ニンジャオジギを繰り出すのだった



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壁は白く高く

さらばオウガテイル=サン!

無警戒な貴様が悪いのだ!

死ね!

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」「アバーッ!」

「イヤーッ!」「アバーッ!」

 

連続でカラテシャウト(無論濁音満載(グロンギ)語でだが)をあげながら一方的にオウガテイルをボコり、突き倒して

腹をえぐり、コアを奪う

 

ギババジバヅ(イタダキマス)

 

まるごと一口でコアを飲み込み

一気に食べきる、最近の常食だったのと、中型のコアという一段上のステージを体験したからなのか、すぐに吸収しきることができた、さて、性能は…

 

【ファンブル!】

 

マジか…なにも取れなかった…

やっぱり中型のコアじゃないとダメなの?私の体はいつからそんなにグルメになったの?偏食因子の偏食ってそういう意味じゃないよね?

 

「…グギィ…」

 

しょうもない事を考えている私に

背後からかかる影

 

その姿は…天の羽衣を纏う死蝶

サリエル

 

「ッ!」

 

乱戦にならなかった分マシと考え

私は即座にアバドンを退避させる

そして、

 

「ジッ!」

 

わざと声を出してサリエルを引きつけ

糸を紡ぎ出す

 

「…ギジュム…」

 

蜘蛛の糸に掛かるは、死を告げる蝶

その水色の翅を絡め取る!

 

「ジュゥッ!」

 

糸を吐き出し、真っ直ぐに飛ばすが

するりと横回転(ターン)したサリエルに躱される、それと同時に

翅の上に、四つの光弾が出現し

連続で私に飛来する

 

「ギッ!ザジブ(弾く)!」

私はツノの前にオラクル防壁を展開して

射撃を防ぐ構えをとるが

サリエルの光弾は、大型でありながら遠距離特化のアラガミだけあって非常に強力

一発、一発と受けるたびに防壁が削られてゆくのを感じる、そもそも(ドレッドパイク)アイツ(サリエル)では出力が違いすぎる

大型と小型の差は大きい

サイズの壁は高いのだ

 

三発目、捕食しきれないオラクルが

私のオラクル防壁をついに破壊する

 

四発目、最後の一撃は私へと真っ直ぐに向かってきて…防壁を破壊された反動で動けない私を撃ち飛ばす

 

「グジュッ!…ギィィ…ヌ!」

 

アラガミの戦いとは

オラクルの戦い、オラクル細胞の支配力が高い方が勝つ、それを宣言するかのように

私の真正面に立ったサリエルは

 

そのまま羽衣を広げて

私を捕食しようとして

 

羽衣を食い破られた

 

「ギベ、ダガゴンバ」

 

口汚く罵りながら

反撃のレーザーを回避する

急所(尾状器官)を突くために背後に回ると、即座に反転して毒をばら撒いてくる

 

「ガッギジィィッ!」

「……〜〜……」

 

歌うような謎のポーズとともに

奇怪な音を立てて天を仰いだサリエルを中心として、光の柱が出現

私を弾き飛ばそうとする

 

だが、当然それは飽きるほど見てきた動作、対策も頭の中には入っている

…私の頭がかつてと同じとは思えないけど

 

ギズド(いくぞ)…」

 

低く声を発すると同時に

チャージ、サリエルを中心として円形に展開された光柱を突破するために、毒弾を発射し…自分に当てた

 

ギヅヅ(いっつ)…」

 

ノックバックすると同時に、

光の壁の中に滑り込む

 

「ッ!」よし!攻撃を受けてない

あの光の柱はゲーム通りだ

 

「ジジギァァッ!」

「ヒユッ!?ー」

光柱を展開しているサリエルは

僅かながら驚いたような声を出して

光柱を中断しようとするが

そんなことをさせるつもりはない

 

速攻でチャージを終えた私は

そのままツノの一撃を繰り出し

サリエルの足をどつく、どつく

思いっきりどつく!

 

オラっ!テメェ大根みてぇな脚しやがって!恥ずかしくないの?!

 

「ジジギァァッ!」

「ヒキュゥ!」

 

飛び上がって高度を上げることで四度目のどつきを回避したサリエルだが

脚には痛々しい痕が…痕がぁ…

 

消えました(絶望)

 

そう、ゲームと違って結合崩壊はそこまでの難易度がない代わりに、根本的にオラクルを枯渇させるか、コアに損傷でも負わせない限りすぐに傷を負った部位まるごと再生してしまう

 

「…ジギッチ…」

 

深く呼吸して、私の唯一有効打足り得る攻撃を…捕縛糸を発射する

 

「ゴガァァッ!」

 

当然回避しようとするサリエルは一回転の動作をとり、横にスライド、

ワルツでも踊っているつもりか?

 

そして、そんな動作も

私の記憶通りであり、それに対して無誘導弾を当てるコツも、心得ている

 

「ジュ!」

「ヒェァぇ〜ァァ…」

 

サリエルの腕に着弾した糸は捕獲用、粘性の強い糸だ、当然それを剥がそうと試みるサリエルだが、私の捕獲糸は連射可能、次々に付着する糸はついにサリエルの動きを制限し始め、必死にもがくサリエルに糸は絡み付く

 

「ヒキュ…ビュエァ!」

 

ついに動きを止めたサリエルは

光の壁を広範囲に展開して、糸を丸ごと薙ぎ払った!

 

ガザバ(バカな)…」

 

お返しとばかりにレーザーが連射され、ステップで回避を試みる私を追尾して

命中した直後、爆発する

 

「ッ!」

 

まずい、ひっくり返された

このままでは…やられる

 

「ギギィァァッ!」

 

私は足をばたつかせるが

当然ながら甲の裏までは足が届かず、空を掻くだけに終わり…サリエルは余裕の表情で私に近づいてくる

 

「ゴギ…ガァ…ラァゥ!」

 

私は意地で足をばたつかせながら咆哮をぶちかまし…そして、ついに私に噛みつこうとするサリエルの頭の邪眼をカチ割った

 

ローリングアタック

そう、先日習得したばかりの新技

本来は縦回転ではないが、ツノの一撃に回転を加えて加速させるスイングを応用し

オラクルを背中に向けて体を浮かせることで即時復帰を可能とすると同時に

接近してきた敵への奇襲を繰り出す

 

オラクルを大量に使ってしまったけど、それでもサリエルに食われる事態だけは回避できた、うん、コンゴウ堕天に感謝しよう…ありがとう

君のことはきっと多分5秒くらい忘れない

 

でも今はそんなことを考えてる場合じゃないからごめんね!

 

「ジジギァァッ!」

精一杯の咆哮とともに、頭を押さえているサリエルにツノを突き立てて

ヒートアップさせたツノで邪眼に追撃しつつオラクルを奪っておく

 

そして私は

 

ガジョバサ(サヨナラ)!」

 

全力で、(ありもしない)尻尾を巻いて逃げ出すのだった

 

大型には勝てない

もっと、偏食因子を強化しなきゃ

もっと、いろんなものを食べなきゃ

 

今はまだ、勝てない



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翼は空を飛ぶ為に

走って、走って、走って走る

ひたすらに先を求めて突き進んだ私は、そこで大きな壁にぶつかった

 

「…ガ?」

そう、それは青き翼を携え結晶の鎧を纏い、熟練の武道を身につけた鳥の神

銀翼の武人 蚩尤(シユウ)

俗称『師範』である

 

「…ガ…」

 

「ギジァァァッ!」

 

とりあえず方向転換して逃げようとした矢先に捕まえられてしまった

…こういう時、どういう顔をしたら良いかわからないの(真顔)

 

「グゴォッ!」

 

超速で突進してきた鳥の一撃に蹴り飛ばされ、芸術的なまでの放物線を描いた私は

空気抵抗を考えていないかのような軌道で跳ね飛ばされた後に胴体着陸(地面へのボディランディング)を決めた

 

…早い、あいつ、早いよ

動きが追えない

 

でも…飛行型(サリエル)を殺すんだから滑空型(シユウ)で事前練習ってのは

悪くない手だと思うよ

 

格闘主体のシユウなら サリエルと違って遠距離ハメ殺しってことは無いだろうし

高機動だけど、サリエル同様の追尾軌道の遠距離攻撃を持つってのは

なかなか珍しい特性だから

 

…うん、決めた、アイツを食う

私はアイツを殺して…食う!

 

「ギジュグゥウウッ!」

 

私は私なりの咆哮をあげつつ立ち上がり、地面を肌に抉りとりながら

地面の土からオラクルを生成

即座に細胞を形成して糸を紡ぎ出し、足場糸をシユウに向かって発射する

 

「ジュッ!」「カァッ!」

 

しかし、その糸は突然地面に叩きつけられた爆風によって振り払われ

逆にシユウが突進してくる隙を作ってしまった

 

「ガァァァッ!」

「…ッ」

 

突進してくるシユウの速度は極めて早く、視界にとらえるのが精一杯だ

…で、見事に直撃した!っ!

 

「グッ……ァァァァッ!」

 

吹き飛ばされて地面に転がった私は

すかさずローリングアタックを発動して横滑りすることでダメージを削って着地

そして

 

「ダァァブベッヅ! 

ゴォッゾゾ!ジィッガァァーッ!」

 

すかさずツノを赤熱化させて突進する、これで!…ハンニバルじみた動きでバク転しやがった!?

 

「クァァッ!」

突進を空振った私に向けて

特大の炎弾をチャージするシユウ

その炎弾を引き受けて躱すべく身を伏せていると、、、炎弾のチャージはブラフ!

 

「キゲェァァァッ!」

「ギジュッゥ!?」

 

炎弾を両腕に分割して背後に爆発させ、その勢いで超加速したシユウが

高速の踵落としを叩きつけてくる

 

地面に

 

ザンベン(残念)!」

 

横っ飛びで脚を一本犠牲に、踵落としを回避した私は、そのまま至近距離から

ゴッドフィンガーを翼の先端

『翼手』部分に叩き込む!

オラオラオラァッ!

 

乱打していると、やはりというかなんというか、クリティカル的な感覚と同時に

意外なほどあっさりと翼手の先端が壊れ、結合崩壊する

 

ヨシ!普通に壊れた

…再生しましたね…

 

「ガッ!」

 

適当にツンツンしているだけではダメなのはわかっている、ちょうどいいタイミングでデレなくては…いや、攻めなくては

 

「…ッ!」

 

突進してきたシユウの飛び蹴りをサイドステップで躱し、派生の爆発をオラクル防壁で防御する

その程度は誰にだって出来るだろう

 

余裕を持って防御した私はカウンターで足場糸を発射、硬化に巻き込んだシユウの脚に毒弾を連射する

 

「ガガガガガガガガガガガッ!」

秒間何発かはわからないが

とりあえず最速の連射で毒を打ち続け、ついにヴェノムを発動させることに成功した私は、そのまま顔面を削る為に飛び上がり、オラクルをゴッドフィンガーツノに注ぎ込む

 

見事に直撃した顔面は一撃で結合崩壊し

胴体にまで深く傷をつける

 

与えたダメージは大きいが

やはりすぐに修復されてしまう程度の範囲内…しかし、何度も言うが

私は人間だ、私には知恵がある

 

そう、傷がすぐに塞がってしまうなら

異物を押し込んで再生を阻害する

 

ちょうどいいことに、硬度の高い私の足場糸は発射待ちの状態だ

さて、諸君

腹を空かせたライオンの前に

ガゼルを放り出したらどうなるか

お分かりだろうか?

 

答えは…こうなる!(当然の成り行き)

 

 

私が吹き出した大量の糸が

シユウの再生中の傷痕を無理やり塞いで再生を止め、突然の異物混入に困惑したような声を上げるシユウの足に、ローリングアタックゴッドフィンガーが直撃

 

哀れなシユウは爆発で右足を抉り取られ、胴体に袈裟斬りのひび割れを残した状態のまま倒れる

 

そして、体を再生させる前に

最後の一撃でコア抉り出しが決まった

 

「…ガジョバサ」

 

銀翼の武人

地に臥せり




アンケート期限は5/31の午前12時まで
午後からはアンケートが別のものに変わります


午前アンケート終了
10票につき、すぐに人型になれるそうです

午後アンケート終了
3票追加に入っていたので、キャラ募集をやります…期限は6/6(土曜)まで
誰も来ないとかやめてよね…

活動報告に募集枠、質問枠を追加しました


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身体賦活

コアガチャ…何が出る…ガチャ!?

ガチャァア!!十連ガチャア!

いっぱいいっぱい回すのぉぉおっ!

 

とけりゅ!溶けちゃううっ!

 

……………失礼、人類悪(リヨぐだ子)夢幻召喚(インストール)されていたようです

 

「…ガォァギィアッ…カァァ!」

 

コアを飲み込んだ瞬間

やはり全身に激痛が走る

中型のコア二つ、短期間に取り込むようなものじゃなかったかも…

 

「グァァッ!」

 

絶叫を上げていると

その様子を心配したのか

アバドンが飛んでくる

 

お前、私が戦ってるときは逃げて

走ってる時は追いかけてきてたのかよ!

 

「グィァォァアズゥァァッ!」

 

全身に走る激痛はとても堪えられるレベルのものじゃない、例えるなら…無理!

 

痛みの例えとか高度すぎて無理!

「グァァアンノォォアッ!」

 

バキバキという音を立てながら

全身が硬化し、ひび割れては砕けて再生し、それを繰り返していると

私の叫びに呼び寄せられたのか

先にいたサリエルが近寄ってきた

 

最悪だ、今は隠密できる状態じゃない!

 

「ボンララジャァ!」

 

痛みに耐えながら私は無理矢理に体を起こし、オラクル防壁を展開しようとするが

コアの働きが万全じゃない状態では、そんなことはできない

 

咄嗟にサリエルのレーザーから逃れる程度のことしかできない

 

「…ジギァアッ!」

回避した先に着地すると同時に脚が砕けて砂になり、砂は泥のように蕩けてまた私の体へと戻り、粘土を捏ねる様に脚が再形成される

 

そんなことを全身で繰り返していく私は、次第に機動力が鈍り、激痛で動きが落ち

回避しきれなくなってくる

 

コンゴウ堕天のコアならもう捕食も終わっていたころだけど、無理に動いたりしているから捕食同化が進んでいない、結果、私は痛みもサリエルも解決できていない…

 

でも、死ぬわけには!

行かない!

 

「ヒキュァ〜…ァァ〜…」

 

レーザーを連射してくるサリエルにはそんなことはどうでも良い様だけど

私だってお前の事情なんか知らない

 

「…ガァガァギィイァァッ!」

 

絶叫を上げながらも私は頭の中で痛みを押し切り、全力で跳躍する

空中に跳んだ私は

そのままレーザーに甲殻を貫かれながらツノを繰り出し、空中から体を横に倒して

ローリングアタックのモーションを繰り出す

 

縦方向に向きを変えた連続空中回転が発生し、サリエルの邪眼を叩き壊す

 

 

その瞬間、ツノが砕ける

激痛の中でも使える唯一の攻撃手段であるツノを失った私は、そのまま着地…しない

 

邪眼を砕いた破片が

ツノを構成していたオラクルの再生に巻き込まれて、私の体へと流れ込んでくる

 

ツノが再生すると

私のツノは青いラインが入ったものへと変化していた

 

そして、激痛は薄れていく

私がサリエルを攻撃するたびに

サリエルの器官は破壊され、そして私の体の再生に巻き込まれて崩壊していく

 

そして、やがて再生のオラクルは枯渇し、私が最後の一撃を繰り出した瞬間

 

私は、大型アラガミ

【女神】サリエルを完全に吸収した

 

……

【かめはめ波(偽)を習得しました】

【女神の肉体(偽)を獲得しました】

 

「…バンセグ(なんでさ)…」

 

私の甲殻は毒粉を浴びて白く変色し、次第にひび割れて

 

砕け散った

 

……

私は死んでないよ?

ただ、サリエルの女神の本体部分?みたいな外見になった、ってだけ

 

うん、だいぶおかしいけど

今の私は…よし、とりあえず

ここの場所は贖罪の街だから

ビルのガラスに写ってる姿を確認しよう

 

「…ガザザギ(あっはい)…」

 

その姿は…足の装甲とドレスのレース裾と邪眼の無いサリエル…ロリ体形だけど

『ロリ体形だけど!』

 

ねえ本当にさぁ、

どうにかならないのかな?これ、サリエルコスしてるだけの私じゃん!?

流石に13歳のメスガキにこのドレスはまずいんじゃないかな!?

ねぇ見えちゃうよ?見えちゃうよ?

 

ソーマは大人の理性かなぐり捨ててロリコンになっちゃうんだからね!

(メスガキ)なんてそばに置いたらそれこそライオンの前にガゼルだよ!?

 

ねぇ本当にどうにかできないの?

 

…………できないかぁ…

ブラボ臭漂う人型ベースの怪物ならまだしも、完璧に人型のサリエルはダメだよ…

いくら露出枠が人だけとは書いていないからって…アラガミにまで扇情的な衣装を着せる必要はないと思うんだけど…ヴィーナス?あれは一周回って全裸じゃん、露出狂じゃん

 

あれに興奮するのは重度な変態(ハルオミ)だけだようん

 

とにかく、

虫卒業はいいとしてもだよ?

このままじゃ私

サリエル変異種とか呼ばわりされて

アーサソールとか極東の魔物たちにリョナられてコアもぎ取られて

コアを直接弄られてアヘ顔メス堕ちからの触手プレイしちゃうよ?(なお神機(仕掛ける)側)

 

…まぁ、なりたくないけど

 

こうなったからには(今更)

このクソッタレた世界を!

全力で、生き延びる!

 

…さて、どうやって飛ぶんだろ?




はい、無理矢理な展開だけど
これで人形の体を獲得しました

「シユウ」「サリエル」って、両方人型に近いアラガミですよね?…それ以前にも、コクーンメイデンとか相当食べてたから、人型に近い程度の形態にはなるかな?ってことで


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現状の確認

…なにはさておき、まず

私の体の現状を確認したんだけど

 

とりあえず

 

・人間だった「私」と同じ体型

・低空浮遊可能

・掌からビーム出る

・筋力はとりあえず十分

・ゴッド…フィンガーッ!

 

以上の点をご理解頂きたい

というか、これが私の現状そのものなのだから、理解する他にない

 

…どうすればいいのか

 

この状況で、どう行動するか

人型の体型を信じてサテライト拠点やフェンリル各地支部に向かうか、

さらなる潜伏の時を過ごすか

すなわち進むか、進まざるか、それが問題だ(to be or not to be)

 

…ハムレットと一緒にされても困るのだけど、こういう二者択一は大抵

どちらを選んでも後悔は付き纏うもの

思い切って選んだ上で

それを後悔せずに胸を張って生きられるような人間はほとんど(それこそ非現実的なくらいに)少ない

 

私としてはどちらでも良いのだが

流石にサリエルのコスプレをした少女が、突然なんの手土産も脈絡もなく訪れた程度で開くほどに軽い門戸ではない、少なくとも

ゴッドイーターの適合試験を受けさせられる筈だ

 

そうなったら私の細胞がオラクル細胞であることに気づかれてしまう

…ゴッドイーターがいない時代、第零世代神機を作ったのは偏食因子無きただの人間、すなわち、アラガミの捕獲、コアの摘出を行うための機材程度のモノは存在している可能性が極めて高い

 

ゲーム中では『コアを傷つけずに摘出し、回収する』事で、回収したコア=オラクルCNCを改造したアーティフィシャルCNC、すなわち『神機のコアが手に入る』とされていた

 

神機のコアはアラガミのコアを改造したモノである以上、その最初の段階に

アラガミのコアを神機以外の手段で摘出しているはずなのだ

 

私がノコノコとサテライト拠点やフェンリル支部に行ったら、

それでコアを摘出されてアヘ顔(ry

コース直行である

 

という訳で、雌伏の時続行!

 

デビドグ ビ ズスラグ(適当に振る舞う) ンパ ビベン(のは危険) ザバサ(だから)ギソギソ バンガゲ バギドベ(色々考えないとね)

 

やっぱりグロンギ語は継続っぼい

こりゃますますサテライト拠点には行けないかな

 

ラァギギジャ(まぁいいや)

 

まずは…そうだな

浮遊できるようになったから、アバドンを追いかけられるようにもなったし

そろそろ食べるかな…

いや、あれのおかげで助かった点もあるし

食べないでおこうかな

 

よし!

食べないでおく

…非常食がわりに、取っておこう

 

まぁ、冗談は置いておいて

とりあえずの確認も終わった事だし

食事にしよう

 

さてさて私の偏食傾向は〜?

 

………いままでと変わりないみたい

 

うん、鉄の塊とかコンクリートとか、ジュラルミンケースとか、どう考えても体に悪いけど、それはそれで食べられるらしい

 

…つくづく人間じゃないな

(アラガミ)って…

 

唯一の救いとしては

私の偏食傾向にヒトがそぐわない事かな?

とりあえず無惨様にはならずにすみそう

 

この生活長くなって、私が人間の頃の記憶とか無くしたら、そのうち

『Power!the unlimited Power!』(暗黒面の無限のパワーを喰らえ!)とか言い始めるんだろうか?

 

…そうはなりたくないな

 

「…サガ…」

 

アバドンを連れて適当に歩き回り

遭遇する小型を食おうと考えた私は

とりあえず黎明の亡都に向かい

 

道中で氷堕天のオウガテイル2体と

それ相手に格闘しているコンゴウを見つけて、狩ることを決めた

 

「…ギベ…」

 

まずは、御し難い方から潰す

 

そう考えた私は、

左掌をコンゴウに向けて

そこから手乗りサイズ(お手玉程度)の炎の弾を形成すると、即座に握り潰す!

 

「ゴォッゾゾ!…ギィッガァァッ!」

 

ゴッドフィンガーを発動、

抜き手状態で突進し、背後から急襲

そして、複数体のオウガテイル相手に、単独で戦って返り討ちにしていたらしいコンゴウは

野生の感覚とでもいうのか

即座に気づいて反転しようとする

 

が、圧倒的に、遅きに失した

 

「ガァァァッ!」

「ギベ」

 

そのコアはすでに抉られ

抜き取られているのだから

 

「… ジャボ ザダダバ(雑魚だったな)

 

コンゴウは最後の咆哮と言わんばかりに声を上げて、倒れ、そして霧散する

 

その霧散するオーラの中に

チラリと見えたオウガテイル堕天は

すでに逃げ出していて

そして、その足元に展開された

私の糸によるトラップにかかってもがいていた

 

ルザザジョ(無駄だよ)ボガダ ゼパ ボバセ サセバギ(小型では、逃れられない)

 

腕の発達していないオウガテイル神属の小型アラガミでは、強引な逃れ方はできない

炎熱系の能力を持つ中・大型のアラガミなら、糸を焼き払うことも可能かもしれないが、私の糸の冷却耐性は基本以上に高い

氷堕天のオウガテイルに

その糸から逃れる手段はないと言えた

 

「ガジョバサ」

 

そして、二体のオウガテイル堕天は

見事にコアを抉り抜かれて

…アバドンがかっさらって言った

 

…殺すよ?本当にさ

お前戦わないくせに食うなよ…

 

ゾンドグビ(本当に)… 」

 

とりあえずはコンゴウのコアひとつで我慢するか…いや、以前なら豪華だったんだけどね?

大型の体をのっとったからか

私自身の食事量や上がっているんだよ

 

オウガテイルの肉も消えないうちに食べよ…

 

あぁ、キンキンしてて歯に染みる…



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これだけは、格好良く

あれから、何日…とかでは済まない程度の時間がたった

 

私が転生してから、

最低でも五年は経っているはずだ

とにかく、私の知る限りのところである原作のイベントポイントは極東の魔境化が

時系列上では西暦2067年に起こっているということ、そしてそれが去年であること

つまりは現在の西暦は

2068年であるとおぼしい

 

かなりな月日が経っている、日数は数えているのだけど

私の覚えている限りである、転生時5月15日なのは当てにならないので

年はともかく、今現在が何日なのか

正確なところはわからない

そもそも四季があるのかも不明

 

暑い場所、寒い場所、ステージの中ではあるけどバラバラだから

異常気象を世界単位で継続している

と考えた方が良さそうだ

 

…うわ、エヴァかよ

 

というか、アラガミ出現から

既存の農作業が役に立たなくなったのって、これが原因じゃない?

みかんやお茶の葉の育成には

その夏の気温が重要って話を聞くし

 

…まぁ、病院暮らしのわたしからすれば、ほとんど関係のない話だけど

知る限りによると

作物の育成には、気温や日照時間、光量といった、環境依存の条件が必須になる

そして、それが前提から崩されてしまったのでは、そもそも成立しない農業が立ち枯れるのも当然だろう。

 

フェンリルの作ったアーコロジーだって、対アラガミ装甲壁で支部を丸ごと囲むという、どう考えても非経済的な造りをしているんだから、土地が不足するのも当然

 

土地が不足しているのに大規模な農業なんてできるわけもなく、しても成果はない

それでは産業として衰退して当然だ

さらにフェンリルは製薬会社

薬効ある植物の工業的栽培のノウハウくらい心得ていてもおかしくない

 

かくして、食料を工場で生産する

という一種倒錯的な、しかし現実でも起用されているあの世界環境が出来上がったわけだ

しかもオラクル細胞に由来する技術によって生産量を水増ししてギリギリの配給制

 

うん、アーコロジー(自己完結都市)としては必要最低限料の生産という環境管理の方法的にわからなくもないけど

自己生産しているように見えて決定的に破綻している、自給自足とすら言えないよねそれ

 

しかもオラクル細胞の補充はゴッドイーターの収穫…つまりはアラガミ頼り

もはやアラガミに依存した環境とすら言える

 

そう考えると、人間と、それに付随される現行の環境を滅ぼすための存在であるアラガミが

人類を生かしている

とすら思えるのだから笑い事だ

 

 

人類ってのは、本当に面白い

自分らを食おうという獣の

寄生虫まがいの存在に成り果ててなお自らの事を『気高き霊長存在』などと宣うとは

 

…かつて私もその一員だったのだけど

それは置いての話だ

そもそも、力持つもの、才あるものが生き残る世界、知性持つものがヒトだけではないこの世界、知性のレベルが絶対の秤にはならない

力も持たずに意味を示さない権力に縋る愚か者ほどに醜いもなはない

 

「…ビダ(きた)

 

待っていたものが、来た

思索に図っていたのは、何も頭の中の整理のためだけではない

待っていたのは、

中型アラガミ、ヴァジュラ種

第二種接触禁忌種である

【焔獣】ラーヴァナ

 

そう、あの時、

アバドンと共にやられた個体だ

私は長い時をかけてあの個体を探し出し

縄張りのエリアと巡回ルートを特定することに成功した、

 

それがここ、蒼氷の峡谷の奥側である

 

なぜラーヴァナが寒冷地に住んでいるのかはわからないけど、それでも

戦いを挑む価値はある

 

「… ジガギヅシ ザバ(久しぶりだな)

「…ゴァガァァッ!」

 

年を跨いだ再開は

咆哮から始まった

 


 

ギベ ゴンゼビ(死ね、怨敵) ラーヴァナ」

 

静かに、呟くと同時に

殺意を叩きつける

 

紫色の毒が舞う、霧のように広がったそのフィールドは、しかしラーヴァナの炎の壁に遮られ、本体への接近はできない

 

ボン デギゾ ゼパ ザレバ(この程度ではだめか)

 

「グルルルァガァっ!」

炎の壁を突き破って、

プラズマキャノン砲が飛んできた

かつては耐えることしかできなかった一撃、しかし、今の私なら

そんなものをわざわざ食らってやるような必要はない

 

浮き上がって射角から逃れ

羽衣を広げてオラクルを流す

 

ゴサ、ブサギバ(そら、食らいな)

 

私の浮かべた四発の拡散レーザーが

プラズマキャノン砲を放った直後のラーヴァナの顔面に突き刺さり、爆発

 

ちょうどよく砲塔を破壊してくれた

 

「ッ!」

ギビビビ ヅヅグ(一気につぶす)!」

 

レーザーをさらに展開

空中に光粒が浮かび上がり

それが光流となって放たれる

 

負けじと足元の地面から炎を吹き上げるラーヴァナと、真っ向からの火力で衝突する

 

「ゴァガァァッ!」

「フゥッ!」

 

ビームと炎の衝突は、炎に軍配が上がり

ビームが霧散する

 

しかし、私がそんな事を予測していないわけがない

 

炎の発動終了にあわせて

ちょうどのタイミングで上を取りつつ突進し…

 

「ヒュウウッ!」

 

毒の粉と毒ガスをまとめてぶっ放す!

 

「グウルウッ!?」

 

ヴェノムが入ったラーヴァナの呻き声に乗じて後ろを取り、手のひらから出る気弾でラーヴァナの横装甲を傷つけ、チャージした気弾の爆発で装甲を砕く

 

ゴァガァァッ(まだだぁぁっ)!」

 

「…ヒャ!ッ!クルゥッ!」

 

着地した瞬間に砕けた砲塔を展開、炎を玉として連射するラーヴァナ

炎の弾幕は並みのゴッドイーター程度なら退ける程の火力がある

ガンブジュガシ(サンクチュアリ)

 

オラクル防壁を広域展開した私は

その炎の弾幕を凌ぎ切って

 

体当たりしてきたラーヴァナに吹き飛ばされる

 

ドヅゲビゲンモグ(突撃戦法)!?」

 

体勢を崩して倒れ込む私に、マウントをとって炎熱攻撃を掛けようとするラーヴァナ

 

きゃー、けだものー!たすけてー

あついモノいっぱいかけられちゃう!

 

…なんてね?

 

ゴゾゾジンガガ(ゴッドフィンガー)!」

 

ゴッドフィンガーで左手にエネルギーを貯め、ラーヴァナの炎を受けるより前に、ゴッドフィンガーを至近距離から射撃する

 

「ハァッ!…ジジドゲンゾ(ヒートエンド)!」

 

本来なら、シャイニングフィンガーでしかできない爆発技、しかし、シユウのかめはめ波(偽)による爆発で形成されたそれがラーヴァナの炎を正面から押し切った

 

ビンゲンン ガギション ドブジョグパ(人間の最初の特徴は)

ゴグギ ブズグ ザ(創意工夫だ)

 

微笑みと同時に、私は再び

聖域(サンクチュアリ)を展開、私にのしかかるラーヴァナを弾き飛ばした

 

ザンレン ザダダバ(残念だったな)

 

 

右手の裂け目を開き、その中にエネルギーを貯め、拳を握る、

 

そして、体を背けて

ラーヴァナに後ろを向ける

 

「ゴグォァァ!」

 

突進してきたラーヴァナ

しかし、私の視界は後方にもある

その動きはあまりにも大雑把で

隙だらけで、誘っているようだけど

それでも私は待ち続け

 

サギザザ、グディング(ライダースティング)!」

 

減速する視界の中で

ローリングアタックを発動

体を反転させ

私の一番好きな平成1期ライダー

カブトのライダーキックを模した動きのザビー式パンチで迎撃する

 

電撃…?入ってないよ?

ごめんね、再現度高くなくて

でも、まぁ効果あったからいいよね?

 

代わりに私のできる最高濃度の特濃ヴェノム、針ごとお注射してあげたし

 

「グァァァァガァァァァッ!」

 

絶叫しながらのけぞるラーヴァナから離れ、力を再度チャージして、右足を地面に叩きつけ、左足を後ろに、両手は開いて、腰を落とす

 

体勢を取り戻せていないラーヴァナに向かって走り出し、足から炎を上げる

 

彼我の距離を見計らって、ジャンプ!

 

空中で一回転しつつ右足を出し

右手は膝に沿わせる形で、

左手は体の下側に、ななめに出し

ポーズを固めて、叫ぶ

 

「サギザザ…ビブブ!!

 

うぉぉりゃぁぁぁっ!」

 

起き上がったラーヴァナのキャノピー部分に直撃した私のキックは、

頭部キャノピーを結合崩壊させ

ラーヴァナを数メートル吹き飛ばし

そして

 

装甲は徐々にひび割れ

そこに白い紋様が浮かび上がる

 

 

紋様は徐々に色を赤く変え

そして、赤く染まり切ったその瞬間

ラーヴァナが爆発する

 

クゴァァァッ(ぬぉわぁぁっ)!」

 

「ガジョバサ…ラーヴァナ」

 

篝火は風と共に

揺らめいて、消えた




あんまり格好よく…ないかな?
ともあれ、これで一応ラーヴァナとの決着がつきました


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西暦2068年 3月27日 午前10:25

あ、まずいですよ…

 

あっあっあっあっあっあっ

 

あひいいぃ…なんてね、

大丈夫、催眠なんてかかってない

催眠なんて掛からないからぁっ!

 

 

本当だよ?

こう言ったからには掛からなきゃいけないような流れを感じるけど

そんなの掛かってないからね?

 

大丈夫

ただ虫型に戻っちゃっただけです

うん、大事件だよ、大事件

でも分かっていたことでもある

そう、いわゆる時間制限があるんだよね

その時間も…三分間!

ほどに短くはないんだけど、一時間!みたいに定量的に決められるものじゃなくて

かなり柔軟に前後するっぽい

 

…某Twitter小説的な意味での『前後』ではないけど…オラクル細胞、エネルギーの消耗、経過時間、捕食摂取したオラクル細胞の量や質

 

色々と勘案した上での総合的なゲージ?みたいなのが尽きると強制的に虫形態…オリジンフォームに戻ってしまうらしい

 

何もせずに人?型…オリジンフォームになぞらえて、偽りの姿(アナザーフォルム)としようか…への変身を維持できるのは約1時間

捕食を続けていれば何時間でも維持できるけど、消耗が限界を上回ったらその時点で解除されてしまうらしい

 

この前ヴァジュラに挑んだ時に

変身強制解除される仮面ライダーの気分を味わってきたから間違い無いだろう

 

ラァ、ゴンバ ロボゾ (まぁ、そんなものを)ガジパデデロ ゴロギソブ バギベゾ(味わっても面白くないけど)

 

ともあれ、強制解除に至ってしまったということは、それなりに消耗しているということ

あのラーヴァナにそれほどに追い込まれていたということだ

 

私も未熟か…

 

「ガガオン」「ミュゥッ!」

 

やってきたのはアバドン…なんだけど

なにか最近、

やたらと足が早くなっている

何故なんだかはわからない

…少なくとも、昔よりずっと早い!

 

いや、通常の三倍早い

と言った方が的確かもしれない

 

とにかく私の目がギリギリ追いつくレベルで動き回る、全力での戦闘機動(マニューバー)なら、私を振り切るどころか、全力のシユウすら撒く

 

それぐらい早い、いやヤバイ

煌く流星の如く最高速度でカッ飛んで、いつのまにか視界の遙か先へと消えてゆき

気づいた時には体当たりで吹き飛ばされている、まさにキングクリムゾン

体当たりされたという過程を飛ばして吹き飛んだという結果だけが残る

 

いや、アレはたしか

『スタンド使用者本人だけがその存在を感知できる時間に入る』とか『スタンド使用者本人が予知した未来の時間を[なかったこと]にしており

 

[なかった事にした]時間は他の存在には[なかった]ので関与出来ないが、時間自体は流れているため、その間に行われた行動は完了している』

という説明だったよね?

 

うん、複雑だね…

 

まぁ、いいか

とりあえず虫型に戻ってしまった以上、することは一つ…そう、

 

オラクル狩りじゃぁっ!

一狩り行こうぜ!

 

…うん、GOD EATERはハイスピードアクションハンティングゲームだから、

狩りで間違いないよ?

 

決して

(アラガミが)ハイスピード(アラガミが)アクション(ゴッドイーター)ハンティングゲームじゃないよ?

次々に襲いかかる過酷な運命を、理不尽な敵の数々をその実力で乗り越えていく

実力の問われるゲームというだけで

 

「ミミミミミッ!」

 

あ、アバドン!?

 

アイツまた行ったよ…

そのうち帰ってこなくなるんじゃないかと思っているけど、今のところ私の背中が

定位置なのは変わっていないようで

帰ってくると私の背中をひとしきり滑り台にしてからベッドへと変える、

 

私の背中に冠する素材名はきっと

【アバドンの寝床】だろう

 

…まったく、お昼頃には帰ってきてね?

 

 


 

「いくぞ!第08小隊!出撃だ!」

「「「応!」」」

 

俺は真田アラタ、フェンリル極東支部の第四部隊所属…要はヒラのゴッドイーターだ

 

当然安月給でうまいもんは食えないが

アラガミは食う、それは仕事だからだ

 

俺の神機はブレード型の第一世代

名前は『Raguel』(レギュール)っていうんだが、

刀身は『ブレード序』盾は『剛属性バックラー』

 

第一世代の神機はオラクル細胞の結合が固くて単純な作りをしている分、

『パーツの変更ができない』『遠近どちらかにしか攻撃力を持てない』

という問題がある、そのぶん

ブレードやシールドは強固かつ強化しやすく、人に適合しやすいらしい

 

まぁ、榊博士のお仕事みたいな難しい話は俺にはわからない、でも神機でアラガミをぶっ殺すのは俺にもできる、んで、才能がある人にしか神機は扱う事ができないらしい

だから俺は、神機を使う

 

アラガミをぶっ殺すのために

俺みたいに先のない人間を、

これ以上増やさないために

 

俺はゴッドイーターとして、俺の神機(相棒)を『レギュール』を振るう

 

ブレードは[序]なんてついてると、簡単とか、弱いって見えるかもしれない、でもこれ実はランク5相当の逸品だ

もちろん鍛えたんだ、こいつはゴッドイーターという職が定着する以前からの古い物で、今までで三回持ち主が変わっているらしい

 

その度に性能がリセットされているらしいから、鍛えたのは俺だけど

俺の前の持ち主はランク10まで鍛えていたっていうらしいし、俺も頑張るさ

でないと、ブレードの前の持ち主にも、相棒にも悪いしな!

 

「いくぞ、置いてかれたいのか!?」

「今行きますよ!」

 

「待ってるわよ?」

「早く来いよ!」

「こら急かすなよ、焦らすと悪いだろ」

 

先輩がたはみんなランク7.8に相当する実力者で、みんなヴァジュラやシユウくらいなら一人でも狩っちまうんだ、射撃型の神機なはずの紅一点、

『内藤 成美』(ナイトウナルミ)先輩が一撃でシユウを撃破して驚いたのは記憶に新しい

 

『ゼラール』が使用神機の名前で

氷の属性を持った狙撃銃を使っている

 

本人は運だ天賦だと言っていたけど

そんな簡単に起こるような物じゃない、つまりあのコア一撃破壊は実力だと思う

 

俺には到底できない

 

「先輩!いきましょう!」

「…お前調子いいな」

「だから不和を起こすなっての」

 

喧嘩売ってきてるのが半年分だけ先輩の『佐藤 敏雄』(サトウトシオ)で、止めてるのが神機使い歴3年のベテラン、『桜庭 秋人』(サクラバアキト)さんだ

 

トシオは封神属性という、特殊な弾を使えるアサルトライフルの神機『アーマース』

銃身名を『五十二型機関砲』を使って

ヴェノム、封神、ホールド

いろいろな状態異常と弾幕とトラップによる迎撃が得意で、戦線の構築がうまい

この前ヴァジュラを一人で30分引き回した挙句に倒していた

 

アキトさんは…論外だ

シユウ相手に拳で語っていた

神機忘れた、とか言ってシユウ相手に殴り合いながらアラガミのいない世界はどうこうと語った挙句にそのまま撃退していた

 

ちなみに神機はショートブレード型の第一世代、昔は第零世代の神機(ピストル型)

『サンダルフォン』を使っていたらしいけど、今はショートブレードの『メタトロン』で、『超発電ナイフ』と『剛支援シールド』を使っている

 

メタトロンは忘れられてしまって、神機保管庫に置きっぱなしになっていることが稀にあって、そういう時は俺が運んでいる

…起動していない神機は重いけど

ナイフ型は小型だから、そんなに重くないのだ…なにより、メタトロンは偏食因子がそんなに強くないのか、俺を捕食しようとしない

 

「さて、今回は…アラタ!」

「はい!」

「お前がソロでやるんだぞ、頑張れ」

「が、頑張るって、何をですか!?」

 

「おいおい、聞いてなかったのかよ

今回はお前の訓練だぞ?グボロ・グボロ単独討伐頑張れっての」

 

「…oh……」

 

俺が絶句していると

隊長は笑いながら肩を叩いてきた

「大丈夫大丈夫!本当に危なくなったら助けてやるから!」

 

「…それ、本当ですか?」

「間に合わない場合は保証できない」

 

「ダメじゃないですか!!」

「おい騒ぐなよ、見つかるだろ?」

「あ、はい」

 

今のは自分が悪かったから、

敏雄にも素直に謝る

 

「まぁ仕方ないわよ…そうなったら、最低限の援護はしてあげるからね

頑張って♪」

「はいっ!全力で!完膚なきまでに!叩き潰します!」

 

「「わかりやすすぎる」」

 

「あ、あはは…私はちゃんと見てるから、カッコいいところ、しっかり見せてね」

「はいっ!」

 

なんともやる気が出ることを言ってくれる成美先輩のエールで完全復活した俺は

単独で黎明の亡都のエリアAから飛び降り、ステージのエリアCに潜伏しているらしいグボロ・グボロの元へと向かった

 

「ぬごおぉぉっ!狙撃イィ!?」

 

長距離砲による狙撃を何度も回避しながら少しずつ近づき、ブレード序で何度も斬りつける、体の柔かい部分、硬い部分を把握して、闘い方の方針を立てるためだ

 

とりあえずグボロ・グボロの大体の斬り方は把握した、まずするべきは

 

「よぉぉっし!」

 

砲塔の破壊

刀身の横、『剣の腹』や『鎬』と称される部分で殴りつけ、グボロ・グボロに神機を刺したまま飛び上がり、ダイナミックシュート!

 

飛び蹴りでブレードを蹴り

刺した状態から柄をさらに押し込む!

 

「だぁらっしゃぁぁっ!」

 

上下半身を分割したグボロのコア目掛けて一閃!三枚おろしにしてやったぜ!

 

コアをブチ抜いて沈黙したグボロ・グボロに背中を向けて、いざ凱旋というその瞬間

 

「油断しないの!」

 

どこからか飛んできた小型アラガミ

コクーンメイデンの砲撃に腹を撃ち抜かれそうになり…それを氷の銃撃が相殺した

 

「こりゃあ研修やり直しかな…」

「やーい、油断してやらかしてやんの」

「もう、途中までは格好よかったのに、最後で台無しよ?帰ってくるまでが任務

リンドウくんだって分かってるのに」

 

あ、怒られる?

これ内藤先輩のアイスエイジ到来?

 

「…諦めろ、お前が悪い」

「いやだぁぁぁぁっ!」

 

「…俺はあれに比べれば大型アラガミの単独討伐の方が楽だと思う…」

「俺もだよ、まったくだ」

 

遠くで野郎どもが軽口を叩き合っているのを尻目に、俺は笑顔の内藤先輩に『手招き』されるのだった

 

この後滅茶苦茶説教された



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出会い

日刊ランキング18位 …だと…?


さて、アバドンも帰ってきて私の背中で寝ているけど、今から私がなにをするかと言うと…

 

ずばり、お食事…ではなく

最近発見したステージ、嘆きの平原に移動します…ちょーっと嫌な空気の漂ってるここだけど、最近はなんか頻繁にゴッドイーターが来てるっぽい

だったら別に、私がいってもおかしくはないのだろう?

 

遠い…ぁぁ…

足が早くなったのは別にいいんだけど、長距離の移動は時間がかかるし辛いな…クアドリガにでも乗ってこうかな…車輪ついてるし

 

足が棒になりそうな距離(比喩)

走って移動し、取り敢えず到着しました、嘆きの平原…そこ!私(達)の胸とはなんの関係もないからね!

 

わたしの胸囲は63センチです

しかしわたしのおっぱいはここからさらに二段階の変身を残しています…

さぁ!わたしを超えて見なさい!

(FのBGM)

 

でもサクヤさんとかさ

なに食ってどうすればあんなに大きくなるの?血統的にデカいのであろうアリサとかシエルは置いて、食性のはっきりしてる某猫娘も置いて

謎に超サイズのサクヤさんの謎に迫りたい

 

具体的にはラーニングのために

…うん、大きなおっぱいってのは、男だけじゃなく、女も惹かれるんだよ

尊厳的な問題で、

 

貧乳だと悲しくなるし

 

仮にだよ?仮に大きい()子と小さい()子、どっちと付き合うかという話になれば、男の視線というのはやはり顔、胸、脚の三箇所を比べる以上、小さい()方にはなんらかの特異的な利点がなければ勝てないんだよ

 

やめよう、悲しくなってきた

 

「ガァ…」

 

永木の平原ステージ

エリアEのあたりで草むらに隠れている私、実はこれ、ゲーム的には全く隠蔽効果はないのに、視界を遮れるとかジュリ公は言うんだよね

 

…そんなことできるのはスナイパーくらいだっての…それにブラストが出てからスナイパーは要らない子になってしまったし…

 

「ガギォ…」

 

とりあえず潜伏していた私は

そこに…うん、頭のおかしいシユウを見た

 

「ミュ?」「ギッ!」

 

頭を出したアバドンをサッと身をかがめることで隠し、そのまま藪に隠れる

シユウ観察日記の始まりだ

 

…私よりも看護婦さんのほうがよほど観察している植物観察よりマシか

 

あればもう心療科の先生に言われるがままに鉢植えを置いていただけだし

私は種〜枯れるまで一回も触ったことなかったし、ろくに様子見もしていなかったから、観察日記というか写真の貼り合わせ状態だったけど

 

…うん、食べられるものでも無いし

持続性のあるものでもなかったからね、枯れて消えるのは当然だよ

 

まぁともあれ今はシユウだ

 

 

あっ、ちょっとアバドン!

 

…………

 


 

シユウ視点

 

ヌッ!ヘァッ!ヌゥゥン!

 

…いや私はホモじゃ無いが

そうじゃなくて、普通に声を出そうとしたらギャァァっ!みたいな謎のシャウトしか出ないんだよ、手を見てみたら翼だし、足はなんか結晶?みたいなのが覆ってるし

 

なにより視点が高い

私は高所恐怖症なんだが

 

…どうにもならないか

 

とりあえず蹲ると立ち上がるのに(精神的に)苦労するので、それだけは避けてゆっくりと立ち上がる

 

そして、私は自分が『ゴッドイーター』の世界に転生?していることを悟った

 

「…………グ…」

 

あたりには草むら、蝶の一匹もいなければ虫の這いずる音もない、

羽虫の一匹たりとも残ってはいない

 

だが、それだけが問題じゃ無い

私がこのステージの壁となっているコンクリを見たときに、抱いた感想は

『食えそうだ』…いよいよ持って人外である

 

どうにかできないものか…

 

…「ギッ!ガァァァッ!(フッ!セイヤァァッ!)

 

これだもんな…体は動かせる

ナチュラルに翼も使える、蹴りも使える、それでもなお言語は使えるっぽい感覚がしない

 

それじゃぁダメなんだよ…

 

「ミュ?」

「グッ!?ガァァッ!」

 

何かが視界に入った

その瞬間、私はとっさに回し蹴りを放ち

 

何かが視界から消失したために空振った

 

「ガァッ!?」

ログ、ガヅバギ ゼギョグ(もう、危ないでしょう) ガダゾン(アバドン) ジャンド ビゾヅベ バガギ(ちゃんと気をつけなさい)

 

そう、ソレが視界から消えたのは

のちに友となる彼女の仕業だった

 


 

危ないからよせばいいのに…

アバドンは呑気なもの

 

こっちが心配になってくるわ

 

「… ゼ、ゴボン シユウ(で、そこのシユウ) ガガジュジュ セゼイィ(are you ready)?」

 

「…ゼンギン!」

 

変身、その掛け声とともに

私はオラクル細胞を暴走させ、肉体は拡大し、収縮し、急激に成長して再形成する

 

その瞬間、虫型の私は消失し

人型への変身を遂げていた

 

「…キャグドゴズ(キャストオフ)

 

「ッ!グァッ!?」

 

私のグロンギ語に、シユウが驚愕したような声を上げるが、そんなことは知らない

私のアバドンを傷つけようとした報いは受けてもらおうじゃ無いか

 

「パパン ドググ グシギ 

 

ザギザザ ビブブ!うぉりゃぁぁっ!」

 

1.2.3のカウントとともに

ゴッドフィンガーを発動した私は

駆け出し、飛び上がり

そのまま飛び蹴りに移行して

 

ーシユウの顔面に右足を叩き込むー

 

「ッ!ゼェゥアッ!」

 

その瞬間、シユウの右手が閃き

私の全力の一撃が受け流される

 

「ゴンバッ!?」

「ッ!」

 

私の足が受け流されると同時に

カウンターパンチで吹き飛ばされる

しかし、私も空中で停止してビームを放つ

 

「ギジィッ!」

「グッ!」

 

シユウは中国拳法みたいな構え

(例:武闘派の癒し系青トラマン)

を取って、謎の動きと共に

ビームを受け流していく

 

まずい、これは(砲撃型)に対して相性が悪い敵だ

 

でも、まだやれるわよね?

 

「ガァっ!」「ギジィッ!」

 

左手からかめはめ波を拡散連射

右手にゴッドフィンガーを収束

 

そのままぶっ放す!

 

「ゴォッゾゾ! ジィッガァァーッ!」

 

叫びとともに解放したゴッドフィンガーで突進し、当然ながら躱され…しかし

 

私の左手には

すでにチャージを終えた『かめはめ波(偽)』が待機している

 

「バレザレパ!」

 

撃発(Fire)

 

高度なオラクルのコントロールによってなされた奇跡的なコンボ攻撃が炸裂し

見事に敵の片腕を焼き払う

 

「グァァァァガァァァァッ!」

「ラザザ!」

 

敵の絶叫を聴きながら、

朝からオラクルを噴射

 

距離をとって、限界までオラクルエネルギーをチャージする…そして

脚から炎を吹き上げ

 

「ラギディ ビブブ!」

 

「ッ!」

 

体勢を整えた私が、再度蹴りを放ち

シユウは思いもよらない手段に出た

 

シユウの方から、威力が乗り切るまえの一瞬のタイミングに体をねじ込み

強引に受け止めたのだ

 

『炎』

 

同時に、紋章が浮かぶが

それは染まり切る前に紋章の刻まれた右の羽ごと引きちぎられ、爆発は小規模に終わった

 

「… バンデ バギボギ(なんて賢い)…」

 

初見で技の特性を見抜いてくるなんて

戦いなれてるのか…?

 

「…グ、グガ…ギザ」

 

「ギ?…グギィ!」

 

片腕がなくなったシユウが残った左の羽をパタパタ動かしながら何か発音し始める

…意味不明だけど、発話したいのか?

 

「…ギジュッ!」

 

まってて、の一言と共に駆け出して

空へと上がり、ゆっくりと四方を見渡して

 

 

………いた!ザイゴート!

 

「ダッ!」

 

細く調整したオラクル細胞の槍を使って、投げることで卵体を貫き、一撃で仕留める

全速力で高速移動して

その卵体を捕らえ、再度急降下してシユウの元へ向かい、それを渡して

 

ボセ、ダデデベ(これ、食べてね)

 

とりあえず、声帯を提供することにした

 

ザイゴートをいくつかそして、私自身の喉及び声帯を抉り取って与える、オラクル製故の再生能力に頼った方法だけど、これが最も数を稼げるから有利だと思う

 

体を維持できなくなるギリギリまで与えて、残さずにちゃんと食べてね、と言った直後に体が崩壊し、虫型に戻ってしまう、しかし

シユウも覚悟を決めたのか

ザイゴートと私の細胞を喰らうことで、一気に声帯を獲得して見せた

 

「… ボセゼ、ギギボバ(これで、いいのか)?」

「…グン、ロンザギ バギジョ(うん、問題ないよ) ジャンド ヅグジス(ちゃんと通じる)

 

これで世界初のグロンギ仲間の誕生…というわけだ、アバドンも戻ってきたし

シユウも戦うつもりもなさそうだ

とりあえずお互いに矛を収めることにして…

 

ベェ、バシビ ヅビガデデ(ねぇ、狩りに付き合って)

ショグバギギダ(了解した)

 

とりあえず話は通じた、よし

言語関係の第一目標達成だ

これからはまず、グロンギ語(聞き取りにくい発音)をどうにかすることを考えよう

 

がんばるぞい!



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リープ

ガァ、ギボグ(さぁ、行こう) シユウ」

「… バシ ドギダダ ベ(狩りと言ったね)バセデギス ボバ?(慣れているのか?)

 

パダギグ デンゲギ ギデバサ (私が転生してから)ズドド ボグギデビダ バサ(ずっとこうしてきたから)バセデスゾ(慣れてるよ)

 

グロンギ語で会話しながら

ずっと話していると、そろそろ体が慣れてきたのか、翻訳の手間がなくなってくる

グロンギ語はそのままだけど

ちゃんと真っ当に…少なくともアラガミ同士では…会話できるようになってきている

 

「… ガァ、ギブジョ(さぁ、行くよ)

 

ザイゴートはつい先ほどに、あたり一面に転がしてしまったので、今度狙うのは

小型アラガミのなかでも割と強いオウガテイル系、堕天がベスト、原種がベター

ハズレはヴァジュラテイル他の亜種

 

小型ならなんでもいいの精神だけど、とりあえず単体でも十分に戦えるヴァジュラテイル系や能力のわからない突然変異体を相手にするのはリスクが高い

 

「… ビベンパ ゴバガバギ ビ バギス(危険は犯さないに限る)

そんなのんびりとした声に

私は反論しようとして…やめた

 

それは性であり、格だ

私が危険(リスク)を恐れる事がないからと、他人の人格を否定するようなことを言いたくはない

 

バサ、ジュブブシド バセダ ギギ(なら、ゆっくりと狩ればいい)

ゴクザ…(そうだ)

 

アバドンを背中に乗せた私は

シユウの速度に合わせてトコトコと歩く

 

もちろん体格差があるから置いていかれないように早歩きで、

しかし足音を立てないように丁寧に

 

アラガミに転生してからというもの

もとより動かなかった体を動かせるようになった反動で運動に目覚めた私は、とことんまで歩きつめる事で歩法の奥義を習得したのだ

 

別に奥義ってほどのものじゃないけど、それでも学んだことに違いない

効率の良い歩き方であったり

音がならない歩法であったり

 

独学ではあれど、学んできたものはある…うん、ちなみに私の速度はどんどん上がっている、最終的にどうなるかはわからないけど、少なくともオウガテイルやコンゴウの移動速度では追いつかない程度のスピードを出せる

 

戦時最大瞬息がシユウの滑空キックを振り切るくらいの速度と言えばわかるかな?

…我ながら速さが足りてるな

 

…っ!

 

「ジギッ!」

 

オウガテイルを見つけたと同時に走り出し、即座にその背後を取る

同時にシユウが正面から立ち塞がり

単独のオウガテイルでは分が悪いと判断したか、オウガテイルは反転して逃げ出そうとして…その瞬間、赤熱化したツノによって

上下半身を分断された

 

「ジュッ…ジョギ(よし)

 

そのコアはアバドンに奪われたが

まぁ肉質は食べられた

…オラクル細胞の密度が低い、低レベルな肉質だったから、あまり量もなかったけど

それでもオラクル細胞の補充はできた

 

ヅギパ パダギロ ゲキョキョブ(次は私も、積極) デビビ ダダバグバサベ(的に、戦うからね)

ショグバギ、ギギョギョビ ジャソグサ(了解、一緒にやろうか)

 

一緒にやろう、その一言が心強い

病院はネット環境が貧弱だったせいでアドホック通信くらいしかできなかったけど

それでも強い人に手伝ってもらった時の討伐成功率は高い…そう、それの対策だけのためにソロ専ミッションなんてカテゴリーが作られたくらいに人がいるってのは違う

 

私はランク1神機でもランク7くらいまでは十分に戦えるし、真のエリートは神速ハンニバルだってランク1のクロガネセットで倒せる

それくらいは簡単とか言いながら神業神回避連発するけど…まぁ、NPCでは出来ないだろう技だってプレイヤーならできる

彼が一緒に来てくれるのは本当にありがたい

 

 

なにせ、私だけでは維持できない機動力がある、最終的には空を飛んで逃げるという新たな撤退ルートの開拓すら可能なのだから

 

…よし、次に行こう

 

「ギブゾ…オウガテイル!」

パダギグ ジャスジョ(私がやるよ)

 

オウガテイルを見つけた私の声に

彼が返事をして、即座に飛び上がる

 

ザベパ ヅバゲス ロンザギバギ(羽は使える、問題ない)ギブゾ(行くぞ)!」

 

空中に上がったシユウは

羽を後ろに、足を前に出し

大きく羽を煽ぐことで重力と推進力のベクトルを合成、斜め下へと飛び降り

 

ゲブギギゾジャジャジ(exceed charge)

 

機械音声のような声で宣言しながら

黄色いビームのような光条を飛ばし

流石に展開こそしなかったが、オウガテイルに突き刺さったそれごと

オウガテイルの体をブチ抜いた

 

ビダ バ カイザ (木場カイザか)

ビデダババ(似てたかな)?」

「… ゲゲ ドデデロ」

 

笑いながら似非ゴルドスマッシュを褒めていると、その瞬間、彼の下半身が消えて無くなる

 

「シユウッ!?」

「ゴガァ…」

 

そこにいたのは、機械色の強いブレード型の神機を構えた青年、そう

神機使い(ゴッドイーター)だった

 

「ギジッ!」

「シユウ一体、それと見たことのない虫型のアラガミがいるが…新種か?」

 

「…隊長、先走り過ぎです

いくらシユウが不意打ちに気付いてなかったとは言え、隊長は」

「イイんだよそんなこと…お小言は後で聴かせてもらうさ」

 

そんな声が聞こえた瞬間

私は全力で食欲を飛ばし

全身のオラクル細胞を暴走させて

彼のコアだけを咥えて走りながらそこら中を侵食、捕食、位相転換して爆破

を繰り返した

 

地を侵す脚と空を隷する背は

暴走レベルまで活性させながらも本来の捕食器官である口部分はオラクル活性を抑えて

彼のコアを呑まないように調整する

 

そんな高度なオラクルコントロールを続けながら走り出し、撤退を試みる

 

「なんだこりゃ…すごい火力だな」

「当たれば危険だけど、まぁ当たんないでしょ」

 

私の全速力にすら追いついてくるそのゴッドイーターたちは、幸にして旧型の神機、近接(ブレード)タイプだった

 

隊長と呼ばれていた方がショート、隊員の方がロングのブレード

そんなことはどうでもいい

重要なのはブレードの効きが悪いはずのシユウの足を一撃で切断できるほどの威力を持ったショートブレードを振り回す男が敵であることだ

 

 

「ギッ!」

 

背中に向けて振るわれるブレードを避け

どこからか飛んでくるスナイパーライフルの弾を捕食吸収し、アサルトの弾幕を

オラクル防壁に任せて突っ切る

 

そして、私は切り札を切った

 

生存のために、戦うために

私は私の心を燃やす

 

コンゴウ堕天を含めた幾多の氷属性アラガミの肉を食らってきた

ラーヴァナやガルムから、炎属性を奪ってきた

 

オラクル細胞の能力の一つ

学習再配列により、

肉体は際限なく形を変えていく

 

 

シユウのコアを咥えたままで

足を踏み締め、存在しない手を強くイメージする…夢想の手の左には炎、

右には氷のオラクルエネルギーを抽出し

 

先んじて右の氷を開放し、周囲の大気と地面を霜がつくほどに冷却する

続いて左の炎を解放し

一気に拡散させると同時に走り出す

 

冷却された空気と地面に

膨大な熱量が干渉し、熱が均質化しようとするエネルギーの流動が発生して

冷却されていた空気が白く濁り

局所的に発生した上昇気流に乗って吹き上がる

 

それは、熱と氷で構成された煙幕となって私を隠した

 

瞬間最高速度を更新する勢いで逃げながら煙幕を発生させ続ける私に

ついに追跡が限界を迎えたのか

追撃の気配が途切れる

 

 

………よし、逃げ切った

 

最初にオウガテイルを倒した地点に戻り、アバドンと合流すると、アバドンはシユウのコアを奪い取ろうとしてきたので避けて、ツノで牽制しながら雑魚アラガミを探す

 

バギヅヅゾロレ(怪物どもめ)…」

 

コアだけになってしまった彼にも

ちゃんと体を用意してあげないといけない…体がなくなったせいで進化レベルもリセットされました、とかにならないといいんだけど

 

…最低でもあのゴッドイーターは極東最強と称されるソーマ・リンドウ以下だし、

ソーマ・リンドウ・主人公(ツバキ)の極東三貴神に集中攻撃されても生き延びるくらいに強くなるためには、あの程度の一般通過ゴッドイーター程度、秒で無力化できなくてはならない

 

もっと進化を続けなければ



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それは夢のように儚い幻想

「シユウ…」

 

青と緑の複雑な光を放つコア(本体)を転がしながら、呟く

 

これ、どうすれば元の逞しいアラガミボディに戻せるんだろうか…

弦叔父さんみたいに、飯食って映画見て寝るだけじゃ流石にダメだろうし…

そもそもアラガミボディならなんでも食べると思うけど、コア単体じゃあ捕食もできないのか、(かつての)彼がジロジロ見てた私の肉とか食べさせようとしても食べてくれなかったし

 

どうすれば良いんだ…

 

「…ギジィ…」

「……………………」

 

なに? 私は彼のことで忙しいんだけど、どうかしたのコクーンメイデン

 

お前のコア()…いただくよ!

(by鎌っ娘)

 

正直に言えばマカの戦闘力はそこまで高くはない、特に対人戦においては苦戦や惜敗が多い…特徴としての『退魔の波長』=勇気が膨大なので

対魔系の存在との戦闘では有数の戦闘力を発揮するほか、終盤は覚醒ソウルとのユニゾンでカッ飛んだり、砲撃を切ったりするのだが

対人戦ではそう言った目立つポイントがほとんど有利にならないのである

 

…まぁ、そんなことは置いて

こっちにガン飛ばしているコクーンメイデンくんの事だよ、このショタめ

甘えさせてやるっ!

 

…おねショタできるほどの体型じゃなかったよごめんねコクーンくん

 

「ジュゥギ、じぎぃ?」

 

そうだ、前にコアを食べた時

コアに体を乗っ取られるって話があった…それを逆用しよう

 

賭けになるけど

このコクーンメイデンにシユウのコアを食わせて逆に取り込み返す

これでシユウ復活だよ!

ヨシ!(現場)

 

さて、コクーンメイデン

…てめぇクチ開けろやぁ

 

あーんしてやるよ!オラっ!

 

 

…だめ?

 

なんて言わせないけど

とりあえず強引にコクーンメイデンの前の…ハッチ?部分を開かせて

そのまま強引にコアを押し込む

ごめんねシユウ、コクーンメイデンのオラクルじゃあ満足な回復はできないかもしれないけど、まずは体を作ることを優先しなきゃいけないんだ

 

少なくともアバドンよりは遥かにマシな結果になるし、君もザイゴート使って女性型になるよりはマシだと思うでしょう?…女性型になったら禁忌種(セクメト)行きだけど

 

「ガグラグギィ…」

 

「ギュツクオォオォァァアッ!」

 

絶叫を上げるコクーンメイデンを見つめる、いつでも彼のコアをえぐり出せるように準備して、いざと言う時に助けられるようにする

そして、血?を吐きながら絶叫を繰り返して身をよじるコクーンメイデンに

やがて変化が現れる

 

全身がひび割れ、銀に近い色へと変色し

そして装甲が砕けて…その瞬間、コクーンメイデンは縦に裂けた

 

ハッチのとかじゃなくて、純粋に縦に割れて二つになった

 

そして、その右半分がシユウ(小型サイズ)へと変化して

左半分は銀の鎖?みたいなのが無理やりに引きちぎられた傷を塞いでいるような状態になって…しかしまだ生きていた

 

死ぬ様子もないし…仕方ない

殺すか

「matte!」

 

ん?

 

「korosaoaide!」

 

やっぱりこいつもなんか喋ってる?

なに?シユウのコアって特異点かなにか?それとも変な特種変異体でもつくる能力があるの?さっきまで普通のコクーンメイデンだったのに突然発話するとかおかしすぎるでしょ

 

どう考えてもコアを取り込んだから起こった変異だよね?シユウのコアって発話能力なんてついてないよね?そもそも私からコピーしたのはグロンギ語であって、こんな謎の言語喋ってないよね?

 

私が混乱していると

シユウが目覚めたのか、コクーンメイデンから離れて翼(小さい)をはためかせる

 

正直可愛いと思ったけど言わない

さすがにその程度の判別は心得ているよ

 

「henji site…」

 

「…ボセパ…」

ラゾラギゴ(まどマギ語)?」

 

ボン パバスン ゲンゴ?(この言語わかるの?)

ガガ パダギビパ パバスジョ(あぁ、私にはわかるよ)

 

シユウは翼をはためかせてコクーンメイデンに近寄り、メイデンに話しかける

 

tuuziteruka?

ボン ヅグジデ ギスバ パ ゲンゴ(この言語は通じているか?)

「tuuziteruyo」

 

最初から私たち自体が謎の言語で会話していた分、順応もしやすいのか

割と私にもわかるようになってきた

これ、『ドイツ語読み』の『アルファベットの発音で』『日本語をローマ字読み』してるっぽい

 

tsunami(ツナミ)』=津波みたいに日本特有の単語の外国語での扱いみたいに

そのままアルファベット変換して

その上でドイツ語発音にしてる…そう考えると大体わかる

 

tidal waveで十分代替が効く?

ダメだよ、それだと確かに『災害的な意味での大波』にはなるけど

潮波、嵐とかでの副作用としての高波の意味も混じってしまう、総合的な意味で『大きな波』だから地震限定の『津波』にはならないのでアウト

 

…あれ?そもそもなんの話だっけ?

 

あ、そうだった

このコクーンメイデンの言語だ

シユウの彼は会話できるっぽいし

ちょっとラーニングさせてもらおうかな?…いや、こんな感じか

 

…honyaku…yarouka?(翻訳…やろうか?)

シユウがこっちに話しかけてくる

 

mou jyubun wakarukara daijyobu(もう十分わかるから大丈夫)

 

全く、まっとうとは言い難い言語だけど、日本語の応用という点ではグロンギ語も同じ

グロンギ語→オーバーロード語→まどか文字(謎言語)が変換できるなら会話だって可能だろう

 

…odoroita-kimimo(驚いた、君も) hanaserunokai(話せるのかい?)

 

motironn watasimo (もちろん私も)siyuumo hanaseruyo (シユウも話せるよ)

 

私だって言語能力高めを自負している以上は、このくらいなら余裕です

 

ロドドロ パダギダヂパ ズザンパ(もっとも、私達は普段は)ヅバグゲンゴ ザベゾ グロンギゴ(使う言語、グロンギ語だけど)

 

私が言語をグロンギ語に戻すと

コクーンメイデンが慌てた?様子で理解できない的なことを言ってきたので

まずはシユウとコクーンメイデンのオラクルを回復させがてら、近くにいたコンゴウを狩りに向かうのだった

 

tyott dake matt (ちょっとだけ、待って)itesuguni katte kurukara(すぐに狩ってくるから)

 

それにしても、対話できるアラガミがこの調子で増えていったら

そのうち大型種とか超大型とかまで出てきて人類と対話(共存)できるアラガミで一つくらいエリア独占とかできそう

 

そうなったらサテライト拠点の建造効率上がるかもね…だってゴッドイーターとか呼ばなくてもその周囲は『特定のアラガミの根城』つまりは縄張りであって

中型や小型のアラガミは入ってくることもできないんだから、むしろ安全性としては聖域級かも

 

…アラガミが闊歩する聖域とか笑えないな…それで人類も共存できるってんだからまさに神話、カッコいい話だよ

 

クアドリガとかウロボロスとか

金ヴァジュラとかみたいな大型とか超大型が味方になってくれるといいんだけど



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最近流行りのおやつ

「ガッジギィィガァァッ!」

 

虫形態で全力で叫ぶ

 

コンゴウは音に強く反応するタイプのアラガミなので、これで引きつける

近くにコンゴウがいた事は確認済み

だからここで大声を出せば近くのコンゴウがやってくるっ!?

 

なんでラーヴァナが来てるんですかねぇ

 

 

あーっ!あーっ!困りますお客様!お客様!

 

紛う事なきガバです!

いや、ガバは、ガバはリカバリーしてこそです!今日こそラーヴァナ最速撃破を目指します!(淫夢要素はありません)(走者特有の挨拶)

 

ギブゾゴサァァ(いくぞこらぁぁ)!!」

 

こちらに向けて走ってくるラーヴァナに向けて、ヴェノム弾を連射する

Sサイズとはいえ毒爆発弾

そう簡単にはレジストさせないよ

 

なにせ私の特濃オラクルがたっぷり入ってる…なんか言い方がアレだな…

うん、まぁいいや

 

「じゅっ!」「じゅっ!」「じゅっ!」

 

毒を次々に発射するが

二発目以降は学習しているのか、全身の前後の動きに横軸を加えて下半身をグラインドさせる事で軌道を逸らし、跳ねる腰の躍動以外での着地点の見切りが難しい

ラーヴァナはガルム系と違って足を爆発させて跳躍距離を伸ばしたりはしないけど、これはこれで怖いな

 

ガンガンと地面を叩きながら飛び回り、私の毒弾を回避するラーヴァナ

 

動きは早いし上手い、

でもそれだけだ

 

ドン

 

という音と共に、私も駆け出し

毒弾を発射しながらゴッドフィンガーをチャージする

 

当然ながら炎属性のオラクルエネルギーは同じ炎属性のラーヴァナには属性効果が見込めない、どころかダメージダウンすら起こるのだけど

自分の背中側にだけ炎を噴射するジェットスタイルなら、純粋物理属性の刺突で攻撃できる!

 

ゴゾゾ!ジンガガァァッ!

 

全力のツノが空中のラーヴァナへと命中し、その体制を…崩さない

ラーヴァナは猫科動物特有の柔軟な動きで体を捻り、絶妙なバランス感覚で一回転すると

後ろ足から軽々と着地した

 

ボギヅ(こいつっ)!」

 

私の方は反動が死にきらないうちにローリングアタックでツノを回し、空中で姿勢を整えて落下、空中で糸を吐いて斜めに足場糸を走らせ、その上に着地した

 

私の持つ武器のなかで、ラーヴァナの装甲を打ち抜けるのはレーザーとゴッドフィンガーのみ、それを当てるには…どうする…

 

オラクルが残り少ない

使用自体は可能でも変身は1分と維持できない、飛び道具の使用回数もあまり多くは残っていない、使えて大技2、小技5〜6

 

消費できるオラクルはそれくらいだ

最低限の量ではあるけど

それだけでラーヴァナを狩り切るのは難しい

 

でもだからといって

やらないわけにはいかない

 

当初の予定通りに

中型アラガミ一体の刺身を調達してやろうじゃないか

 

コンゴウとラーヴァナじゃだいぶ違うけど、その辺は許してもらおう

私の預かり知るところじゃないし

不可抗力だし、ぐーぜんだから

 

「ン!」

 

行く!よ!

 

「ガァァァッ!」

 

ラーヴァナは方向をあげながら

私に向かって的確に拳を振り下ろし、ローリングアタックでツノを回すことで弾く

 

当然ながら上がってくる炎をジャンプ回避しつつツノで倒立し、その炎を吸収したらゴッドフィンガーをチャージ

 

そのままブースト!

 

「ゴサァッ!」

 

ツノではなく、背中から当たりにいくストライクショット方式でエネルギーを解放

やっぱ熱エネルギーは最高だぜ!

 

そして顔面に虫が衝突すれば

ラーヴァナとて反射的に払おうとするのか、身を浮かせて手を地面から離した、その一瞬を狙って

 

腹の下へと潜り込み

そこからレーザーだっ!

 

大技に分類されるレーザーを最大チャージでぶっ放し、一気に装甲に穴を開け

その中の肉質にツノを突っ込む

 

鎧をこじ開けて肉を食う

捕食しながら、吸収したオラクル細胞をそのままエネルギーに変換して、体内にため込んで…ツノが半分ほどラーヴァナの体に刺さったところで、ローリングアタック発動

 

ツノをラーヴァナの腹の中から思いっきり引き戻して、腹に一文字に捌き

 

ゼンギン(変身)!」

 

着地した直後に変身を決める

変身で肉体を再構成して、先ほどラーヴァナから奪ったオラクルを光へと変える

 

光の糸を紡ぎ、弦を結い

光の大弓が完成する

 

その後ろまで、弦を強く引き

 

「ヅサグト…メガッ!」

 

ペガサス、そう言い切る前に

肉体を再生させたラーヴァナが炎弾で攻撃を阻害してくる、オラクル集中の時間を喪失した私は、再度の試行を諦め、あふれたオラクルエネルギーを自らの体へと戻す

 

余剰分は運動エネルギーの確保のために使って、そのまま駆け出す

 

時間はない、集中ができない

一撃で完全な刻印を打ち込めない

 

なら、

 

グソソギング ビブブ(グローイング キック)!」

 

両足で一度、蹴り込む

着地して即座にもう一度右足で回し蹴り、反動を使って跳躍し

ラーヴァナの頭上へと回り込んで、そのキャノピーに最後の一撃

 

『撃』

 

無属性の衝撃が、

ラーヴァナの装甲を爆砕した

 

「=ジョギ…ドド、ゲロボゾ 《よし…っと、獲物を》ロデデ ビサ バキャベ(持って帰らなきゃね)

 

結局、戦うより運ぶ方が苦労した

次からは拠点近くにまで引き込んでから戦おうかな

 

いや、それだと拠点が戦闘の余波で壊されちゃうか




ラーヴァナの事ですよ


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会話

ひとまわりほど小さいとはいえ、ヴァジュラ種のサイズを持つラーヴァナを食べた事で

シユウはサイズを増し、

コクーンメイデンも傷を修復した

 

もちろん私もオラクルを回復した

 

そもそもなんでこんなことになったんだっけ?…いや、オラクル源として利用したコクーンメイデンはともかくだよ?…時系列を整理しようか

 

まず私はシユウと出会い系サイト…いや、出会い、意思疎通を可能にして

しかるのちに一緒に昼食を食べに行ったわけだ…女の子としては初対面の男と昼食とかだいぶ軽率だけど、今の私は虫なんだから構わない

 

…んでその後に

例のゴッドイーターと遭遇してシユウが一乙、私は逃げて来た、と…ダメじゃん

 

全く整理できてないよそれ

…いや、仕方ないんだけどさ

 

tonikaku mazuha (とにかくまずは)korekara no kotoyo kangaeyou(これからのことを考えよう)

 

そう、まずは先のことを考えなきゃならない、なし崩し的に新しく仲間になったコクーンメイデンとか、シユウとか、私自身とかのことも考えなきゃだし、方針も立てなきゃならないし、ゴッドイーターから逃げるのか、積極的に殺しに行くのか、ふてぶてしく不干渉非暴力で押し通すか

 

まぁ、全体的に元人間?っぽいし

私とて殺したいわけじゃない

積極的に殺しに行くのは

『アラガミ絶対殺すマン』と称される鬼畜、無印主人公の登場以後になるだろう

 

主…アニメ版か、ゲーム版か、それとも小説版かはわからないけど、最有名なのが

小説版無印男主『神薙ユウ』その影であんまり知られてないけど女主『霊代アキ』

 

両性具有の2主『神威ヒロ』

さらにはレゾナンス オプスの主人公

レゾ主『神木 レオorリオ』

 

まぁ誰にせよ神の名を冠する連中は頭おかしいくらい強いのはわかり切っている

 

ゼ、ボンゴ パ ゾグズズ(で、今後はどうする)?」

ラザ ガパデス ジョグバ(まだ、慌てるような) ジバンジャ バギ(時間じゃない)

ボボパ ギンジョグビ バスデビ ベ(ここは慎重になるべきね)

 

demo sinthyou tte ittemo (でも、慎重って言っても)

aiuura kara kitara (GEらから来たら)nlgeru sika naiyo(逃げるしか無いよ)

 

逃げるしか無いのはたしかなんだけど

そもそもコクーンメイデンは動けないでしょ?だから拠点を構えてそこを防衛するって言う考えを提示しておく

 

「boku ga ugokenai kara ka」

ギジャ、ビリン ゲギジャ バギ(いや、君のせいじゃない) パダギダヂン ビゾグショブパ(私たちの機動力は) ゲンバギグガス(限界がある) ザバサ ギズセパ(だから、いずれは) ドブデギン キョデンゾ ロヅバ(特定の拠点を持つか)ギブヅバン バブゾギダ グメメグポ (いくつかの確保したスペースを) デンデンド グス ジヅジョググガス(転々とする必要がある)

 

私はコクーンメイデンを見捨てるつもりはないし、コクーンメイデンは現場から動けない、ならその生息地点を拠点に指定したほうが早いだろう

 

…というか、まずコクーンメイデンと、私と、シユウ、この三人は自己紹介が必要だと思うのだけれど、なんでどちらも提案しなかったのだろうか

 

というわけで

 

やってみました自己紹介

 

「saisyoha bokukara 」

 

「bokuha Rio-nunobe 16 da 」

 

バギンド ゲズン(9+7) ガギ()

ジャガ(じゃあ) パダギジョシ(わたしより) ドギグゲザベ(年上だね)

 

私は実年齢13だし、

 

え?10越えたらもうロリじゃない?女として終わってる?失礼な

私はまだ…いやそもそも虫か

 

ゴグギゲダ、ルギン、(そういえば、虫の)ビリパギブヅ バンザギ(君は幾つなんだい)?」

パダギ パ(わたしは)

バギン(9) (+) ズゴゴ(4) ガギ()

 

ズギヅン パバギバ(ずいぶん わかいな)

ラザラザ ミヂヂミヂ(まだまだピッチピチ) () ソシボボ ザジョ(ロリっ娘だよ)」(死語)

 

「rorl ka douka ha tomokaku kimi namaeha?」

「… ブゾグギン リゲ(玖宝院 美衣)…」

 

あまり名乗りたくは無い

 

だってそれは、わたしにとって面倒なしがらみそのものなのだから

古くは天皇家に繋がるという公家の家系で、政治中枢に食い込む人間も多い権力者家系、当然ながら腐り切った連中だらけのお家柄

私にとってはこんな名前(モノ)は邪魔でしかない

だから

 

「…ギギゲ ドレッドパイク(いいえ、ドレッドパイク)

 

パダギン ダバゲ パ(私の名前は)ドレッドパイク」

 

かつての名前は、

この世界では意味を持たない

アラガミである以上は、

個体名なんて必要ない

 

そう、私は【甲蟲】ドレッドパイク

これで、病弱で虚弱な少女(わたし)とはおさらばだ

 

ゴグバ…グン(そうか、うん) パダギ ン(私の) ダバゲ パ(名前は)ゴグザバ(そうだな)ババラ バサパ(仲間からは) ジャダセデ ギダ タケ(タケと呼ばれていた)

 

「bokutatimo sorede iikai?」

ガガ ゴセゼ ギギジョ(あぁ、それでいいよ)

 

バサ ゴグ ジョダゲデ ロサグジョ(ならそう呼ばせてもらうよ)

 

「ミッュ!?ミュウ〜」

 

背中になったアバドンが(ラーヴァナのコアはわたしがいただいたが)ラーヴァナを食べ終わったのか、何か騒ぎ始めたので、一旦話を中断して

アバドンの方を見る

 

「ミュウッ!」

 

私のツノに飛びかかってきたアバドンは、そのまま背中に乗って目を閉じる

 

…何もしないのかよ…

 

「…naka iindane」

 

ズドドギギョギョビ ギダバサベ(ずっと一緒に、いたからね)

 

アバドンを背中に乗せたまま走る事だってできるし、このアバドンは通常個体より早いから戦闘時に先に逃せば注意を引く囮代わりにも使える

 

持ちつ持たれつという関係の体現であろう…やや一方的だけど

 

…どっかのアバドンみたいに彼女とか彼氏みたいになってくれないかな…

 

まぁわたしは恋愛経験ないけど



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ほのぼの

今回は繋ぎ回です


「隊長、さっきの虫型は…どうしますか?」

 

「んーぁー…そーだな、やっぱ一旦帰って報告、それだな、今無理に追いかけてもどうせ撒かれる気配がする…はい撤収!」

 

「了解」

「はーい」

「…追わねぇのか…」

 

アサルトを振り回しながら不満げにしている馬鹿が、内藤先輩に頭を叩かれているのを尻目に、撤退の用意を始める

 

「えっと、スタングレネードありましたけど、だいぶ錆びてますねこれ

…古い型のやつなのかな」

 

「いいよそんなもん、持って帰ってやれ、んで売ればそこそこ金になるから」

「え!?これ金になるんですか!

使おうとしてたわ…あっぶなぁ…」

 

「よかったな、まだ使ってなくて…分解して素材の方を売ると原価の四倍くらいになるから、効率いいぞ?」

「うおっしゃぁっ!」

 

取り敢えず今夜の飯は少しはマシになりそうなのです!HAHAHAHA!

それだけでも十分に嬉しいが!

なにより!これが持続的に収穫可能なモノってのが嬉しい!

 

古い型のスタングレネードなんて頻繁に転がってる…とはいわずとも3〜5日に一回は見つかるレベルで落ちてる物だ、これから毎日スタグレを拾おうぜ!

 

「ちなみにアラガミの撃破報酬の足しにするより、アイテム購入資金のほうに回した方が財源分けできて楽よ?」

「先輩!?」

 

慌ててスタングレネードを懐に押し込みながら一足飛びでその場を離れる

いつのまにか後ろから至近距離にまで近づかれていたことに驚愕していると

 

「まだまだね、真田くん」

 

離れたはずの場所に、銃弾が通り過ぎていく

 

「戦場では注意力を切らした人から死んでいく、どこに誰がいるかくらいはいつでも把握できるようにしなさいな」

「…りょ、りょーかいっす」

 

俺が目の前を通り過ぎる銃弾に震えていると、先輩が寄ってきて

 

「大丈夫よ、

私があなたを守ってあげるから」

 

そっと額を撫であげられる

 

「わ!?」

「ふふっ」

 

「おーいそこー、何やってんだー?帰るぞー!」

「あっ、隊長呼んでるわよ?早くいきましょ?」

「はい!」

 

我に帰ると、隊長の声が聞こえたので(内藤先輩に手を引かれて)走る

 

「次はアラタのヴァジュラ研修だな、これを超えたら一人前だから頑張れよ!」

「はいっ!」

 

ヴァジュラは大型アラガミ

ランク4以上が基本となる

俺のブレード序がランク5だから、これまでの傾向から考えると、おそらく隊長はブレードと同じランク5相当のヴァジュラを選ぶはずだ

同格の相手なら、十分に勝ち目がある

なにせ俺たち人間は、ゴッドイーターは、体の強さだけで戦ってるわけじゃない

文明を使って、頭を使って戦ってるんだから

 

「よぉっし!やってやりますよ!」

「その意気やよし!」

 

「なんでお前がいうんだよ!」

 

「はい帰る帰る!」

「あんま喧嘩ばっかりすんなよ?」

 


 

「…ズ・ドレド・バ」

「…?ゾグギダ ン?キュグビ(どうしたの?急に)

 

ギバ、バボスバサ ズグビ グロンギ(いや、グロンギ風に 名乗るなら)

ボセグ ギギババ ドゴロデデ(これがいいかな とおもって)

 

「…ラァ、ゴグバス(まぁ、そうなる) ンバロ ベ(のかもね)

 

「sono yokuwakaranai no dakedo osiete kuremaika?」

 

リオくんはグロンギに対しての知識はないらしい、よろしい、教えて差し上げよう

 

「グロンギ パ () バギキュグ ゴドビ(階級ごとに) バラゲ ガヅンスギ (名前が分類)ガセデ ギスン(されているの)

 

ゲンギン バギキュグパ グシギ(戦士の階級は3つ)ギダバサ(下から)、ズ・メ・ゴ ()

 

シユウ…タケの合いの手に乗って

話を続ける

 

「『ズ』()ジョパギ ムセギジャジャ(弱いプレイヤー) ガギギョン バギキュグ(最初の階級)

バラゲン ジュサギパ(名前の由来は) バ ブロンズ(青銅だ)

 

「『メ』パ ジュグバンギ ン(中間位の)ムセギジャジャ(プレイヤー) ドググダンレン バギキュグ(二番目の階級)ゲ」

「バラゲン ジュサギパ バ メタル」

 

ボンギバギ ビバスド(この位階になると) ドブギュバ ボグショブ ドバボ(特殊な能力とかを) ゾヅバグボドグ ゴゴギ(使う事が多い)

 

ズの基本ルールと比較すると

メのゲゲルの変化点は3つ

『ズに比べて期限が短い』『特殊能力を活かす制限が付く』『ノルマ人数が自己申告になる』この3つ

 

ズのゲゲルはゲームマスターであるラ・バルバ・デによって『ノルマ人数』『制限時間』を指定されてゲームスタートだが、メのゲゲルは『ムセギジャジャがノルマ人数を指定し』『それに見合った時間をバルバが指定する』ことでルール決定となる

 

その基準の中でメ・バチス・バはゲゲル一時中断後に再開するときクウガを27人分(バギング グシギ)と数える事にしていたが、その理由は彼が使用する能力である毒針を15分間に一度しか使えないため、時間切れになる可能性を残しつつもクウガを狩ればゲゲルをクリアできるようにバルバが難易度を調整した為である

 

ズの場合は基本的に

数さえ足りれば良いし、その殺し方にひねりはない

 

最もズ・バズー・バは2日で81人(バギング バギン)の数指定をされていたのだが

メへの昇格後を意識してか

自分でルールを付け加えていたという例外はあるけど、基本的には人数に満ちれば良いので、やり方はだいたい殴ったり蹴ったりである

 

そこからの変化として

「ゴ パ ゴクギ(高位)()ムセギジャジャ(プレイヤー)デ、ゾンズバギ(この位)ビバスド(になると) ビブダギ ゼザバブ(肉体ではなく) ヅビゾヅバグ(武器を使う) ゲゲル() ゴボバグ(行う)

 

まぁ、ズと違って肉体が強すぎて何人とかの単位じゃなくなってしまうから

それを制限するために敢えて使うんだけどね?

 

「ゴ ン ゲゲル パ

ゾブジュ バ スススグヅブ(ルールが付く)

 

ギバ()パ ゲゲルン ザバギ() デパバギジョ(ではないよ)

 

おっと、話が逸れてしまっていたようだ

 

「ザバギ ゾ ロゾグペ(を戻すね)

ン グロンギ(グロンギの)バラゲビパ(名前には)

バギキュグ(階級)ガガデデ(があって) ヅギビ(次に) 『レギギョグ(名称)」 ダギゾビ(最後に) 『ヅンスギ(分類)ゼゼビデスン(でできてるの)

 

私が話を戻すと、すかさず

タケが入ってくる

 

「『ガギギュグ』・『レギギョグ』・『ヅンスギ』ザ バラゲン バダダン ビバス」

パダギン ダガギパ(私の場合は)

『ガギギュグ』ザ『ズ』べ

『レギギョグ』ザ『ドレド』

『ヅンスギ』パ『バ』ザバサ(だから)『ズ・ドレド・バ』ビバスン(になるの)

 

「naruhodo arigatou」

 

わかってくれたならそれでいいよ

推し作品は布教するモノだからね



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これからの事

どうも読みづらいそうなので、今回は会話より主人公の思考を文のメインとしてます


ガデ、ギボグバ(さて、行こうか)

 

オラクルも回復したし、

そろそろ日が沈んでしまうから、もうここにいる意味もないだろう

タイミングがなかったから、今まで誰にも見せていなかったけど

私の現状の暫定的な拠点となっている場所である、ステージ『愚者の空母』へと二人を案内しようじゃないか

 


 

 

……行きと違って、帰りは早かった

何故って?

 

ここに(シユウ)がいるじゃろ?

これをな

 

こう(ヘイタクシー)じゃ

いや、ヒッチハイク?ってやつなのかもしれないけどね

…コクーンメイデンはどうしたのかって?それはね

 

実際のところ、コクーンメイデンというアラガミは、体のサイズだけで言えばそこそこ大きい部類に入る

小型種として認知されているのはその一番上の部分だけ、という事で

いわゆる『氷山の一角』みたいに、地下に体の大半が存在しているんだよ

だからその半分くらいが喪失しても、すぐに霧散して消えなかったんだね

 

…その、ですね

一回リオくんを置いて帰った後

道を教えたタケにお願いして、コクーンメイデンの『根』の部分を丸ごと引き抜いてもらって、それを丸ごと運んでもらいました

 

…私のような小型に力仕事を任せてはいけない(教訓)

 

まぁ、それはともかく

まずコクーンメイデンの『根』はコアを有さない末端部分で、多分結合崩壊させることも可能だと思うんだけど、さすがにそれを試そう!と言って切断できるようなチャレンジャーではなかった私たちは

切断を諦めて根ごと運んできたわけだ

 

大きい場所ではあるけど、3メートルくらいの身長があるシユウには少し足りないかな?

 

「ギジャ、ロンザキバギ」(いや、問題ない)

ゴグ?バサ ギギンザ ベゾ(そう?ならいいんだけど) キュグブヅ(窮屈) ジャガ バギ(じゃあない)?」

 

「ザギジョグヅザ、ロンザキバギ」

それ、絶対問題ある人のセリフだよね

一番いいのは頼まなくていいの?

 

maa.(まぁ)honninga (本人が)ii tteitterusi (いいって言ってるし)iindeshyo(良いんでしょ)

 

そういうものなのかな…

明らかに身長のせいで小型専用の通路に引っかかってるんだけど…無理しちゃダメだよ?

 

「…ジョギ(よし)

 

身をかがめてなんとか小型用通路を抜けるタケ氏、 あまりにもあんまりな光景に笑ってしまいそうになるけど、根を経由して地面から生えてきた(?)リオくんと一緒に耐える

 

なんというか…シュールだ

 

ちなみに、いま私が拠点にしている場所は『愚者の空母』のエリアC.D.Eの間、つまるところ大穴の下…あんまり知られてないけど愚者の空母は本当に空母の甲板上がステージなので、その穴から下の空母の艦体に入り込んでいる

 

私には元は何があった所なのかはよく分からないけど、司令室?っぽいところを寝室としている

 

地下なのでコクーンメイデンも人(神)為的に引っ張り抜かなければ出てこないし、ザイゴートとかもいない、もちろんオウガテイルも入ってこない

 

さらにいえばちょっと前にも話題に出てきた水中適合型アラガミであるウコンバサラはまだ存在しない

そう、アラガミは上には(ヴァジュラとかカリギュラとかボルグ・カムランとかバルファ・マータとか)出没するけど、下にはほとんどこないのです!

 

つまり私の拠点とするには十分!

ストーリー進行的には要所要所でミッションのステージになる『鎮魂の廃寺』を拠点とするのが一番なんだけど、あの寒さと立地では流石に拠点化するのは無理だと思うので、初期シオが歌っている、つまりここに来ることが確定している

 

『愚者の空母』で妥協した

 

そこ、諦めとか言わない

 

「…ドシガゲズ キョデンパ(とりあえず拠点は) ボボゼジョギ(ここで良い) ドギデロ、ザ(としても、だ)

 

zikeiretuno (時系列の)kakunin(確認)wo ()sinaito(しても) ne () three (3)ninattara(になったら) haininomaretyausl(灰に飲まれちゃうし)

 

そうなんだよねぇ…

2RBはまだいい、このステージは壊れていないし、ルフス・カリギュラとの決戦ステージにもなるから、ギルのイベントを見れば時系列の把握ができる…ランク2のイベントなんだし、私達でも多分介入できる

 

エリナのシナリオ、ジュリウスの宣言もここで行われるし、コウタやジーナ、カレルもここに用事がある

その点を考えれば、キャラクターエピソードの進行度合いもわりと把握できるだろう

 

でも残念ながら

レゾナントオプスに進んでしまった場合はブラッドメンバーもリンドウさん達クレイドルも去ってしまうので、基本的に地獄

 

さらに3に進んだ場合でも灰嵐の耐性などない上に、船自体には偏食因子もへったくれもないので、即破壊されてしまう

いくら鋼の壁であろうと、暴走する偏食因子の乗った嵐の爆進の前には遮る力を持たない

 

何故かは分からないが

灰域は人間や基本的な生態系の存在を許さないエリア、アラガミたる私達はその例外に当たるかもしれないが、最外壁の活性化、拡大現象である灰嵐にぶつかれば死亡あるのみであろう

 

ハリケーンの進行速度は時速120キロにも及ぶという、巨大アラガミとも呼べる灰嵐にそれが適用できるかは分からないけど、最低でもその程度の速度を振り切れるレベルでなければ逃げ切れないと考えよう

 

…うん、詰んだね

 

永続的に灰域に耐えられるようになるためには、灰域適応能力を得る必要がある

そのためには灰域に侵入する・灰域適応種の強敵アラガミを捕食する必要がある

ただでさえ生存自体が難しい領域(アウェー)で、しかも一般的な第一種接触禁忌種を超えるレベルの力を持った敵を討伐する必要があるのだ

 

それに最低でもそれだけのタスクをこなした上で、求められるのは時速120キロ以上の速度での移動、普通に無理だろう…ロケットエンジンでも付けるのか?

 

まぁそれは最低でも20年後の話

そこまで生き延びることを最優先にしつつ、スピード系のアラガミ

『カリギュラ』『サリエル』を取り込んで速度を上げることにしよう

 

ザギビ ヅギデザ(灰については) ゴンドビビ(その時に) バンガゲジョグ(考えよう)

 

私は暗い未来に対する絶望的な思考を放棄して、無印の鬼難易度世界を生き抜くために話を変えた



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羽は舞う

無印前の時点で約20年後の灰嵐を心配する怖がり主人公ちゃんは置いといて


これから、どうするか…一番の課題というか、向性だよなぁ

 

どうしよう?

 

ベェ、ゾググス(ねぇ、どうする)?」

ビゾグショブ ダンドグン(機動力担当の) ギジュグ ドギデ(シユウとして) ギパゲデ ロサグド(言わせてもらうと)

ゲキョキョブデビビ(積極的に) グデデゼス(打って出る) ボドゾ(事を) ググレスゾ(勧めるよ)

 

やはり、機動力のある中型は違うな

発想からして違う

最弱選手権してるコクーンメイデン+ドレッドパイクなんかとは違うわ〜

私もそう思うけど

 

なぜなら、他はいざ知らず極東においては…進化種や大群がポンポンと出てくるから

無印前〜2終了の約三年の間に

ハンニバル種の出現、感応種の発生、定着、多数の大型率いる大群が襲来

 

マルドゥークやらルフス・カリギュラ、スサノオなどの最強決定戦に名乗りを上げるような連中が週イチ感覚で襲ってくる、挙げ句の果てには

神機を取り込んで神融種やらなにやら、もう意味がわからない

 

とこんなレベルの魔境である

当然ながらレベルインフレに置いていかれてしまった雑魚アラガミなんてのはストーリーにすら出てこずに大型に食われるのが関の山

ドレッドもコクーンも同じ

そこには何の差もありゃしない

 

…と、こんな風にただ消費される側にはなりたくないので、私たちもインフレに先行するべく、多量の偏食因子を取り込んで

進化を開始する、というわけだ

 

 

まぁ、私たちの進化がハンニバル神速種のような新しい進化の呼び水になりかねないという問題もあるけど、最終的に進化しないなら死ぬだけであり

進化して生き残るなら戦うだけだ

 

問題を起こしてしまったらのならばそれは向こうの…今を生きる人間たちに何とかしてもらう他ないだろう

 

え?解決法がない?

大雑把すぎ?

良いんだよそんなの適当で、どうせGEの最強が極東から出てくるんだから

リンドウさんもそこらの第一種接触禁忌種如きに殺されるほど柔じゃないし

(ピターは奇襲+連戦)

特に問題にもならないでしょう

 

 

 

ブンパ ゾグゴログ?リオ(リオくんはどう思う?)

 

bokumo souomouyo(僕もそう思うよ) meni denakya (前にでなきゃ)yarareru(やられる)

 

やっぱりそう思うか…ヨシ!

じゃあ基本的な方針は

積極的にアラガミを捕食しながら人食わずに戦闘、進化!って事でいこう

 

ガブディヅビギボグ(アクティブに行こう)デデバンジン(って感じの) ゾグギンゼ(方針で)ジョギンザベ(良いんだね)

ゴゴ(おお)

iiyo(良いよ)

 

二人の了承を得て

立ち上がる…

 

その前にリオくんまた動かすのか…

 


 

私はいま、どこにいるでしょうか!

 

正解は…ここでーす!

ステージ『ジーナ』のエリアB

 

エリアAの高架線路(?)の欠けてる部分の反対側にいました!

 

(どやぁ)

 

「…何だアイツ!?虫型?」

「知らんけど新種だってんなら逃せねぇな」

 

知らないゴッドイーターさん方に追われてます(顔面蒼白)

 

たしゅけて♡

 


 

…なぜあの子は好き好んでゴッドイーターに追われているのだろうか…?

わたしには理解しかねるが

それが趣味だというのならば邪魔はするまい

 

それは生きる意味であり

アラガミとして転生した今

己の人間性を証明する唯一のモノであるのだから

 

「…」

とはいえ、助けに向かうべきであろうか

少女に逃げ切れる自信があるならばいざ知らず、あの様子ではただ追われているだけだろう、アレを撒けるほどの速度が出るとも思えない

現に距離は徐々に縮んでいく一方だ

…よし、介入しよう

 

「シェァァァッ!」

 

私は掌から爆発を起こし、その爆発の反動を生かして飛び上がる

そして、そのまま滑空体制に移行し

 

斜め下の方向に向けて爆発的に加速した

 

「死ねアラガミぃっ!」

「キェェェエイ!」

 

今まさに振り下ろされる瞬間の長刀…(長さが尋常ではない)を横から蹴りつけ

神機使いの手から離す

 

そして

「……ッ!」

 

左翼を出して、クイッと手招きする

挑発のポーズ

これで襲ってこなければ終わりだ

現状肉壁を張れるのが私一人だけである以上、彼女を守るためには私がこいつらを引きつける必要がある…ハハ、変わってしまったモノだ

以前はどう逃げるかを考えていたのに

今はどう守るかを考えるとは

 

ザガ、ゴセロラダ ジンゲギザ(だが、それもまた人生だ)!」

 

左手を戻し、構える

左手は拳、右手は開手

両腕は腰の高さに、右手を前に出し

左足を一歩下げる

 

狙いは左足で踏み込んでからの左正拳突き、それにつながる一手を防ぐために右手を盾にする

 

「なんだコイツ?」

「知らんけど、邪魔だから狩る!」

 

飛び出してくるゴッドイーター…金髪チャラ男と全体的に黒いチビ

私にはこれが原作キャラなのかは分からないが、構うことではない

 

真っ先に出てきたチャラ男の大剣(バスターブレード)を翼で受け止める

 

そして、

 

「グン!」

 

腕を擦り下ろして大剣を巻き添えにし、相手が剣を上げるまでは安全となる

 

 

その一瞬の空白に飛び込んだ

 

そして、腕と振り込みの勢いを利用して時計回りに一回転しながら右足で大剣の…金髪の方を蹴りつける

 

「ギェァッ!」

「ぜやぁぁっ!」

 

その瞬間、武器を失った戦力外として意識から外していた長刀使いの少年が異様なまでに鋭い突きで蹴りの軌道を逸らしてきた

「タカシ!」

「構うな!やれっ!」

 

少年の方に叫ぶ金髪、その返しは発破

 

それに表情を変えた金髪は、

その手にある大剣を振り上げる!

 

「うぉおぉっ!」

 

ただ持ち上げるのではなく、明確な攻撃として振り上げられた大剣は

私の紙装甲を打ち破って右手を抉り、大きな傷をつける

 

「せい!やぁっ!」

少年の方も振り下ろし、刃を返して振り上げ、再度踏み込んで袈裟斬り

共に身の丈に合わないほどの巨大な武器を使いながら、見事な連携で攻撃してくる

 

しかし、それは私の目には見えている

 

「ザブジョクザ」

 

大剣の方はどうやら雷が出るカラクリ武器らしいが、それだけだ

自分自身を加速するとか、電力を利用して磁力を発生させるとか攻撃した部位に電気エネルギーを蓄積させて雷撃を連鎖爆発させるとか雷の竜を呼んだりはしてこない!

 

「ゼェァァァッ!」

 

左手を地面に叩きつけ、そのまま爆発を起こして煙を立て、その中に身を伏せる

 

「なんだ?…隠れた?」

「油断するな!火球に備えぁぁっ!」

 

普段組んでいるだけの両腕(人型)を地面につけて、膝と腕でクラウチングスタートの姿勢を取り、翼の方の腕から爆発を起こして加速

大気の壁を切り裂き、風を踏み締めて翔ける

 

一瞬注意が逸れた隙と、自分の加速タイミングが重なり、金髪の方にクリティカルヒットを決める

 

そして、そのまま体ごとそいつを突き飛ばし、二対四本の腕全てを地面について

空力ブレーキと同時に上昇

体を一回転させて、ムーンサルトからの踵落とし

 

隠禅 哭汀(ギンゼン ボブデギ)!」

「うぐごぉぁっ!」

 

「ソウキ!!」

 

吹き飛ばされた金髪の方はソウキ、という名前らしい…別に構いはしないが

タカシというらしい少年の方と共に追い返してやろう

 

まぁ、右肩甲骨は駄賃がわりとでも考えておけば良いだろう、その程度

命に比べれば安いモノだろう?

 

「なんだてめぇ…ふざけたツラしやがって!死ねぇっ!」

ガラギ(甘い)

 

実は口が悪かったらしい少年に向かって振り返り、金髪の方の肩をゴリゴリと踏み締めながら舞い上がる

 

そっと火球を右手に握り、左手から風を放射しながら構えるのは

 

「東方不敗の構え…?」

 

そう、これこそ東方不敗マスターアジアが使う意味不明な技の根幹

よくわからない構えである!

 

実はこの構え、凄まじく不安定なのだが

恐るべき体幹によって精密に制御している…動かないように姿勢を保つのが精一杯だ

 

「いかせてもらう…っ!」

「ギィィ…….」

刀を引き、体の前で刃先を上にして構えをとる少年

 

刃を水平に戻して薙ぎ払いに入った少年が突進してくるのも同時に

片手に貯めていた風弾を開放

猛烈な爆風に翼を広げて乗り

そのまま突撃、そして

 

右手の炎弾を握り潰し、

爆発させながら拳を振るう

 

ソブソバヅド(轆轤兜伏鬼)!」

 

加速と炎熱を利用した海賊版だが、天童流戦闘術一の型三番 轆轤兜伏鬼を繰り出す

 

しかし、拳をぶつけた刀身から迸る冷気が拳の熱を急激に奪っていく

「凍て付け…氷刀(ヒタナ)!」

 

「ッ!」

反射的に腕を引き

薙払って少年を威嚇する

 

今のはまさか詠唱…?この世界は神の力を封じた武器を使うんだったか?

私は世代が合わないせいでやっていなかったが、確か狩猟ゲームは敵の素材を使うような武器も出てくるはず、そう考えるとその武器もそういう

神の力を宿しているということか

 

差し詰め氷神の神格と言ったところか?

 

いや、それについてはもう構うまい

今はそれよりもまず

 

「ジィゲラァッ!」

 

払いで距離を取り、火球を連発することを優先する

 

出力と消費的には問題ないが

こうも連発で火球を使うと少しエネルギー切れが心配になってくる

しかし、彼にはこれが一番有効らしい

 

「ぐぅぅっ…クソ!装甲がもたねぇ!」

「オレに構うな!逃げろっ!」

「誰が逃げるか!黙ってろ怪我人!」

 

無理やりに前進して金髪の方を回収したらしい少年が、金髪に謎の球体を投げつける

 

「立てるなら立て」「あかってんよ!」

 

その瞬間、金髪の方の傷が修復された

あれはどうも癒しの力があるらしい

人間側は便利だな…いろいろ使えて

 

そんなことを考えていると

 

「…ジケズゾ(逃げるよ)

 

戦場に響く落ち着いた少女の声と同時に、視界が白く染まる…煙幕!?

 

ボジジ、(こっち)タケ」

 

いつのまにか人形になっていた少女の柔らかい手に翼の先端を引っ張られ

今し方ついた傷から走る痛みに耐えながら、少女の先導に従って走る

 


 

全く…無茶をする

神機使い二人を相手取って真っ向から戦うなんて危険すぎる、分かってるよ?

その無茶させたのが自分だって事くらいは

 

でも、だからこそ

ここは私が責任を取る

 

ボボゼ ラデデギデ(ここで待っていて)

 

タケをエリアDの奥に隠し

私は空へと踊り出る

 

「…ヅサグド メガガグ(ブラストペガサス)

 

空中から、煙幕の中の相手に向かってペガサスの必殺技での狙撃を行う

 

射撃ライダーイチのエイム力

見せてあげようじゃないか

 

「っ!」

 

そこだ!

 

神機の首、刀身を押さえる固定パーツを射撃し、氷刀の刀身を吹き飛ばす

その直後に再チャージして、今度はバスターバレードの刀身中央に着弾

 

『風』

 

出現した文字は緑色に染まり

爆風が周囲を蹂躙した

 

神機、壊しちゃったかな?壊れてないよね、きっと多分そうであって欲しいお願いしますなんでもはしませんから!




はい、シユウにはクロムガウェインの大技を使ってもらいました
ブレード突進ってインパクトあるよね

隠禅・哭汀!


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西暦2068年 3月30日 午前11:45

刀身パーツを吹き飛ばした直後

私はタケの方に全力で駆け寄り

 

消耗したオラクルの回復のために空気や水を喰いながらタケに話しかける

 

バジギギデデ、タケ(先に行って、タケ)

 

この戦場では先に動いた方が勝つ

だから、先にタケは飛行能力で撤退させて、私はサリエル譲りの浮遊で空中に上がる

ヨルムンガルドが天空から襲ってこないことを祈る

 

 

そして、私は空中に上がって

そのまま射撃を繰り返す

 

今までのアラガミは曲射やら壁反射弾やらなんて戦術は使ってこなかっただろう?

認識があめぇんだよ(悪口)

 

ヅサグト ゲガガグ(ブラストペガサス)

 

光で形成されたボウガンからさらなる矢が放たれる、それは風の力を宿した爆発を起こし、次々に射掛けられる矢が視界を奪う

 

そして

 

「……!」

 

飛行速度を上げた私は、全力で空中をスライド移動して戦域を離脱するのだった

 

 

 

「……ガガ(はぁ)

 

エリアを離脱し、飛んだ先は

ステージ『鉄塔の森』

すなわち廃工場

その鉄塔の上である

 

別に私はサリエル種の特性があるからって廃液飲んで堕天する気なんてサラサラないし

そもそも雷属性でもないのに工場廃液なんて飲んでも仕方ないのだけど

とりあえず人型が維持できる時間の限界になってしまったので不時着である

 

ログヅバセダジョ(もう疲れたよ)…」

 

そっと腰を下ろした煙突の先から

遥か下のフィールドを見やる

 

忌まわしきエリック上田のオウガテイルが待機していた隠れ場所に当たりをつけて

その場所を視認することのできるポイントを頭に叩き込む

 

そして、それが終わった後

煙突から適当に飛び降りた私は

かなり強く地面に体をぶつけて転倒し、その衝撃をエネルギーとしてオラクルに転換する事で回復を図った

 

多分これが『ジャストガード時体力回復』スキルのアラガミ版なんじゃないかな?

 

え、都合が良い?

オラクル細胞なんてモノは大概都合いいんだよ、それ単体で世界の6割くらい説明できるレベルなオラクル細胞回りほどの都合の良さは珍しいけど

 

アラガミ=オラクル細胞集合体

ゴッドイーター=偏食因子を投与した(肉体改造を施した)戦士

神機=人工的に調整した制御されるアラガミ

ホールドトラップ=細胞の特性に干渉し、一時的に拘束する偏食因子投与装置

装甲材=偏食因子による忌避物質

回復アイテム=オラクル細胞の高密度凝縮体、または体内に強く作用する偏食因子(?)

↑ナナ曰く原料がオラクル由来

(ナンクルナイサー開発時に判明)

 

こんな感じで

この世界の不思議なことは大概オラクル細胞かそれに由来する偏食因子の力で解決している

 

私がそんな都合いいことをしてはいけないなんて言われてはいないし

別に縛るつもりもない

それで生存できないなんてのは嫌だからね仕方ないね

 

まずは一旦帰らないと

人型を維持できる時間の限界が来てしまったから、まずは虫型のまま移動か

やっぱり起伏の激しい地形は虫型のままだと辛い

 

一気に飛んでいけるのってやっぱりすごいよね、スパロボとかSDガンダムとかのシュミレーションゲームでの地形影響とか移動性質とかの計算は圧倒的に『空中』移動が有利だけど

それだけのアドバンテージと言っても確かに過言ではないだろう

 

 

さて、行こうか

 


 

これで何匹倒しただろうか?

俺は何匹目なのかもわからないザイゴートを切り捨ててステップを刻む

 

極東支部はかつて無いほどのアラガミの襲撃に遭い、神機使いは討伐班どころか防衛班も偵察班も救護班さえ狩り出しての全力で戦闘中なのだ

 

「クソ!数が多すぎてキリがない!」

「泣き言なんて言わないのっ

私まで泣きたくなるじゃない」

 

「はいっ!すいませうぉぉあっ!死ねやゴラァァッ!」

 

どこからか湧いてきたオウガテイルを惨殺し、そのまま突き刺して

大きく上に振り上げることで

刀身に突き刺さったオウガテイルを投擲する

 

そいつが飛んだ先にはこのエリアの群れのボス…ヴァジュラの顔面があった…狙って飛ばしている訳だが

 

「グァッ…ガァァァッ!」

 

こちらを向いたヴァジュラに突進し

ジャンプ、そのまま勢いを生かしてマントから背中まで一直線に回転切り

空中で変形させた神機で尻尾を捕食、食い千切って直後にシールドを展開

属性バックラーは雷だけでなく全属性に高い耐性を持つ小盾なので

全方位雷撃のダメージはほぼない

 

「先輩!使ってください!」

「了解っ!」

 

神機の刃の付け根部分から

先ほど捕食したオラクルを使った

オラクルアンプルが充填され

それが満ちたところでアンプルを外して投げる

 

「真田くん!これ返すわっ」

 

空になったオラクルアンプルが空中を舞い、俺の手に戻ってくる

俺はそれをジャンプで受け取りながら着地直後にダイブロールしてザイゴートの毒弾を躱し、姿勢を戻して再度走り出す

 

既にアンプルは神機に装填されていた

 

「隊長達が居なくたって…俺はァァァッ!」

 

再度斜め後ろから切り掛かり

ヴァジュラの後ろ足を切り刻み

正面に向き直ったヴァジュラに三連撃、そこからさらに続けたかったが、スタミナのためにゼロスタンスを取るその瞬間、俺は背後からコクーンメイデンのビームに背を焼かれた

 

「うぁっ」

 

「真田くん!」

「まだだぁぁっ!」

 

体勢を崩し、一息の挽回は不可能

目の前にはヴァジュラ

獣神の名を冠する雷の王

 

()()()()()()()

 

たとえ目の前にこんな紛いものじゃない本物の神がいようと、それが諦める理由にはならない!

 

「っ!」

 

充填したオラクルアンプルを外して、片手を神機から離す

ヴァジュラの前足が迫る

それが俺を叩き潰す前に

俺の手は、自分の首にオラクルアンプルを押し当てていた

 

「うおぉおおぁぁがぁあっ!」

 

視界は赤い、体温が上がっている

感覚は悪寒が占め、ノイズのような不快感が全身に走る

 

だが、体は動く!

 

「ぜぇぁぁっ!」

 

アンプルを放り捨てて

右の拳を振り上げる

同時に、ヴァジュラのパンチが繰り出され

 

拳はその威力を相殺する

気づけば俺の手は、いや全身は

金色の光を纏っていた

 

「真田くん!何があったの?!」

〈アルファ4、体内の偏食因子が急増しています!腕輪の損傷状態を確認してください!〉

 

「いや、問題ないよオペ子

んで先輩、ちょっと分かんないです

でも、やれることはわかる」

 

金色の光を纏って、神機使い(ゴッドイーター)躍進(バースト)する

 

「行くぞヴァジュラ、電気の貯蔵は十分か?」

ウォドオォァ(思い上がったな)ァァァッ!!」

 

ヴァジュラの体当たりをシールド展開体当たりで押さえ込む、そのまま脳天にブレードを突き込み、首へとL字の数を入れる

背中に飛び乗り、ブレードを傷に刺し込む

即座に修復されゆく傷口でも、それが確かに在る事には違いない

ブレードを更に深く押し込み

そして、そのまま胴体にあるコアへ

体内から捕食形態に変形させた神機が伸びる

 

『ゴグン』

 

剣は寄る辺なく

盾は志高く

銃などと言うものは無い

 

古の剣、それは神を貫く一振りとなる

 

百獣を統べる雷の王 獣神ヴァジュラ

戦いの中に死す



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交渉事は最初の1分で8割決まる

………………………

 

 

逃げ切った……かな?

 

…………ヨシ!(現場虫)

 

「ギィィィッ!」

 

--ザイゴートはこちらを見ている--

 

何見てヨシって言ったんですか!?

 

「ギィィィッ!!」

あ〜〜ダメみたいですね

戦闘開始です

 

「ジシェァッ!」「ギァッ!」

…タケ兄貴とリオ兄貴が一撃で潰したので戦闘終了です、タイムは1.919秒、

世界記録(ワールドレコード)です

や っ た ぜ

 

パガバガサ ビダバギ(我ながら 汚い)

 

そして世の中のホモ氏には残念な事に私にあのクソコピペを再現する度量はなかった

 

ボンゾボゴ…ジョギ(こんどこそ…ヨシ!)

 

周囲を確認して、OKを出す私に

タケニキは一つうなずいた

 

「…ミミュ!」

 

背中になったアバドンが飛翔し

上から何かを見ている

 

そういえばこのアバドン、動くのは速くなったけどそれ以外は普通なのよね

……べつに何も期待してないけど

 

「ミッ!」

飛び降りてきたアバドンは私の背中に戻り、また寝転がる

 

どうやら危険になるものは見つからなかったらしい…アバドン、特にこの子はなんというか…飛ぶのが早い・視界が広いというザイゴート的な性質を示していて、逃げ足が早く早期発見が得意なのである

 

ザイゴートばかり食べていたからかな?

 

「…ギジシュ…」

 

とりあえず、私も寝ようかな

私は(パダギバ) 見張りだな(リザシザバ)

 

「bokuha dou surebaiinda…」

 


 

あれから数ヶ月…というわけではないけど、結構な時間が経った…具体的には一ヶ月

 

その間は何をしていたかというと

 

ずっとあるアラガミを追っていた

…そう、ヴァジュラ種第一種接触禁忌種…セクハラ・オヤジー

 

違った『ディアウス・ピター』を

 

ゴソゴソ(そろそろ)ジビデビビパ(時期的には) ギスザズ(いるはず)バンザバゾ(なんだけど)…」

 

ギバビベ(いないね)ェ」

 

黒いヴァジュラ種、これだけで大体説明できるくらいにはアラガミの各神属は体型が似通っているけど、顔が変わるという唯一級の扱いをされる『最初の完成体アラガミ』ヴァジュラ

 

…の第一種接触禁忌種である

当然強いのだが、私たちがこれを探しているのは…弱点属性が『神』属性であることを私達しか知らないからである

 

当然新種のアラガミであるディアウス・ピターの弱点属性なんて判明しているわけがない

よって私たちがある程度これを攻撃して、ピターを弱らせておくことで

原作組によるすみやかな攻略を促す

 

…これならアリサの暴走→因縁発覚→アリサ再起の流れも少しはスムーズになる筈だ

 

GE無印のメインヒロインであるアリサのストーリーはその性質上『敗北と喪失の物語』『を終わらせる』

の二部構成であり、

前半部分はツンツンのアリサが『蒼穹の月』でのリンドウ離脱後はヤヤデレ、最終盤はデレデレとなるので

ストーリーがどの辺なのかわかりやすい……ではなく、長い下積みの苦境を経ての一発逆転のストーリーとなっているので展開に爽快感がある

 

だけではなく、過去に囚われていたアリサが、その呪縛を断ち切って未来へと踏み出すという物語性の強いストーリーである

 

そして、その展開のマクガフィンとなる両親の死亡とオレーシャ(同期の女の子)の死亡はすでに起きてしまっている筈だが、先に奴を弱体化してしまえば、序中盤の主人公達とリンドウならそう苦労もせずに倒せる筈だ

 

そうなれば目の前でトラウマ(ピター)が討伐されることになるアリサは自動的にピターの脅威と恐怖を乗り越えることになる

そうすればオオグルマの催眠術も効果を失い、リンドウ暗殺計画も頓挫

オオグルマ追放、人事責任の遡及で支部長も豚箱である

 

…完璧だな!ヨシ!

 

 

 

そしてさらに時は過ぎ

何回かゴッドイーターと会敵したり、その度に隠密で撒いたりしていたり

大型と出くわしたりしたのだけど

 

「………ガルルルゥ……」

 

今日は祝日(ホーリーディ)のようだ

人を待っていたらちょうど

中型アラガミ…シユウの禁忌種

『禁鳥セクメト』

 

が無警戒にもウロウロしていた

…率直に言ってランク7以上

 

な、筈なのだけれど

 

「グオォァッ!」

「ギジィィァアッ!」

 

炎弾は尽く相殺し、最後の一撃もツノの突撃で貫く、正直、手応えがない

 

ギベ(死ね)セクメト」

 

跳躍してローリングアタック、その一撃は翼手の爪先を捉えて、見事に結合崩壊を起こす

そして、それと同時にツノの先端が爆発、喪失する

 

「…!」

 

どうも少しは骨があったようだ

仮にも禁忌種が小型に一方的に負けるような醜態は晒さないということか

 

ゼロ(でも)ダシバギ(たりない)

 

ゴグザバ(そうだな) パダギダヂパ(私達は)ラベバギ(負けない)

 

炎を灯した両羽が、突如として天空から落下し、そして落着する先にあったセクメトの顔面を爆砕する

 

そこに立っていたのは、鋼色の両羽に銀色の外皮を纏ったシユウ…

どう見てもその進化種であった

 

たぶん、GE2RB(ゴッドイーター2レイジバースト)で解放される最低ランク12のアラガミ、クロムガウェインのなりかけである

 

まだ五年くらい早いはずだけど

 

ボングガダパ(この姿は) ラザバガブパ(まだ長くは) ダロダバギバ(保たないか)

 

すうぅっと体色が青に戻るタケ

そう、私のアナザーフォルムと同じように、タケもまた、強化形態を会得したのだ

 

タケの強化形態は体色の変化によって性質を流動的に遷移する特殊な変化

…いわばフォームチェンジ

 

なんか私よりタケのほうがカッコいいし、主役やってる気がする

 

ズスギ(ずるい)

「……ガガ」

 

 

あ、そうそう、この数ヶ月で起こった変化はそれだけじゃない

「…来たか」

 

ゴッドイーターの裏切り者(?)のモブと接触することに成功したのです

 

「…」

「そう怖い顔するなって…」

 

地面に神機を突き刺して、一歩下がるGE

 

「俺は別にお前を殺しに来たわけじゃない、ただ問いただしにきたんだ」

 

「…ゾグ(そう)

 

私は体内のオラクルを活性化、半暴走状態にまで引き上げて、人型を取る

背中の甲殻に皹が入り

光と共に脱皮した私は

オラクルから作り上げたサリエルのドレスを纏い、空へと浮かぶ

 

ゼザ ゴザバギド ギビ ラギョグ(では、お話と行きましょう)



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無価値な命

「では、お話と行きましょう」

 

「…なんってのかはよくわからんけど、とりあえず、これ」

 

首に掛けていたヘッドフォンを付けるモブゴッドイーター …ムービーで死にそうな顔してるわ

 

それは(ゴベパ)?」

「おっ、聞こえる聞こえる!

これはな、博士につくってもらった翻訳機なんだよ」

 

そう、それはすごいわね(ゴグ、ゾベパズゾギバベ)

 

「スゲェだろう?ウチの博士は…ちょーっと残念なところあるけど

そんでもすっげぇんだよ

…まぁ、とりあえず、だな」

 

「……」

 

タケが戦闘態勢を取ったのを目で制して、地下で奇襲に備えているリオくんに対しては左足で地面を軽く叩いて伝える

 

それで、それを話にきたの(ゴセゼ、ゴセゾザバギビビダン)?」

「いや、違うよ、そうじゃない

それだけじゃなくてな

お前さん達は他の同種と違って、明確な言語の使用が認められていたから

もしかしたら、意思疎通が出来るんじゃないかって言われててな?

そんで試してみたんだよ」

 

「…そう(ゴグ)

 

茶髪ロン毛のモブイーターは

ヘッドフォンをひけらかすが、どうもこちらを舐めているような表情をしている

これは…よくないかな

 

私達を(パダギダヂゾ)どうしようと(ゾグギジョグド)?」

「別に?意思疎通の証拠さえ取れれば、あとは知ったこっちゃないよ

別段討伐しろとも捕獲しろとも言われてないし、『俺が生還した』っていう事実が一番の証拠になるしな」

 

神機手放して帰ってきたGEなんて殆どいないしな〜と軽く笑うモブ

 

別に私達以外にも(デヅビパダギダヂギガギビロ)脅威はあるでしょう(ギョグギパガグゼジョグ?)

 

暗に『安全は保証しない」と言ってやってもやはり彼の表情は崩れない

 

「大丈夫大丈夫」

 

…何か策がある…か?

 

「俺は帰るアテがあるから

実は仲間が近くまで来ていてね」

 

そう(ボグ)

 

相変わらず神機から3歩以内の距離を維持しているモブは軽くいっているが

私はタケに目線で指示を送り

タケは腕を組んだまま爪先で軽く地面を叩く

 

2-2-3

 

最初の2が

GE、これが1なら緊急招集、3ならアラガミ

 

続いての2が

探せ、1なら攻撃、3なら全速力での撤退

 

最後の3が

人数を示す3

 

人数はGE部隊が四人1チームだから隠れているのは三人、という予測なのだけれど

問答無用で攻撃とはいかなくてよかった

 

見つけた返事は来るかしら?

 

さて、本題と行きましょう(ガデ、ゾンザギドギビラギョグ)

 

「あいよ」

 

モブは、いや

彼らゴッドイーターを走狗とするフェンリルらは、何を望むのか

何を行おうとするのか

それは原作の未来に通じるのか否か

 

私は知りたい

だからこそ、あんな罠にしか見えないメッセージに乗ってまでここに来たのだ

彼らの要求を聞いてみようじゃないか

 

話はそれからだ

 

 


 

今日、多分俺は死ぬ

なんかよく分からないが、俺はとにかく神機の適合係数が低くて、

うまく神機をあつかえてない

『弱いゴッドイーター』だ

多分支部長は俺を使い捨てる気なんだろう

 

最近はゴッドイーターの死亡率も、着任率も下がってきているとはいえ高い

俺が一人で任務を受けて、それで死んでもどうせ誰も不審には思わないだろう

 

クソッタレ、誰も気づかずにあの支部長の野郎にいいように使い捨てられるのが定めってわけか

 

だが、もし

『知性を持っている可能性がある』とかいう情報が本当なら、俺は生還する

それに賭けるしかないだろう

 

 

そう、思っていた

 

〈それで、貴方達は、私たちに、何を求めるのかしら?〉

 

翻訳機から聞こえる声は

10歳前後の少女のような声

相手のサリエルα(進化個体)の見た目通りだ

こんな声を持った少女がアラガミだなんて信じたくないが、その能力は疑いの余地なく高い

 

通信によると、ほぼ常にシユウと共にいて、たまにコクーンメイデンの群れと合流するらしいが

このシユウもまたα(進化個体)らしき能力を持っているそうだ

 

確認したところによると

どうも体がクアドリガ並みに硬いらしい

 

それだけであってくれるならまだマシな方だが

 

「俺たちフェンリルが求めるのは

アラガミの掃討、故に人類の生存圏からの退去を要請する」

 

〈軽く言ってくれるけど…拒否一択ね、それでは我々が生存できないもの…それに、私達は人類の味方ではないのよ?〉

 

「………」

 

相変わらず沈黙したままのシユウに目を遣り、奇襲を警戒しながら通信先へと意識を遣る

 

「だ、そうだが?」

 

《ならば仕方ない、穏当な手段で確保ないし排斥出来ないのなら、強硬手段を以って排除する他にないだろう

現在をもってサリエルα個体、及びシユウα個体を最優先攻撃対象に指定する》

 

支部長の声と共に、通信が途絶する

どうも俺は切り捨てられたらしい

 

「……だってよ、はぁ……」

 

一度深く、ため息をつき

神機を手にする

 

「…べつにやる気は無かったんだけどなぁ…」

 

〈私達だって、戦いたい訳じゃないのよ…それじゃあ〉

 

サリエルが宙に舞い上がり

シユウが震脚と共に手を開く

 

戦闘態勢に入った

 

その瞬間

 

〈またね〉

 

サリエルαの両手が瞬き

爆発音と共に水煙が視界を奪う

 

「!…クソッ!」

 

味方が来ているなんてハッタリは、やはりとうに見抜かれていたらしい

あの爆発なら自滅していてもおかしくはないが、まるで慣れているかのように滑らかな動きだった、その可能性は低いだろう

 

「…帰って報告書、上げるか」

 

俺は極東支部第5部隊、

偵察捜索隊のエータ3

 

神機の銘はBeilaru(ヴァラール)

ただのゴッドイーターだ



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えゔぉりゅーしょん

「…交渉は決裂した、か

こちらが一方的に要求するような形になっていたし、高圧的だった分

むしろあちらがすんなりと退いたのが驚きだったな」

 

「あぁ、しかも彼女は

間違いなく、最後に『またね』と言っていた、これはつまり…」

 

「「まだ交渉の目は有る」」

 

とはいえ、ここで俺達が勝手に会議していても仕方がない、可能性は上にあげなくてはならない

その上で叩き潰される可能性もないではないが、例のサリエルα個体はなんというか

 

『人類に対して明確に敵対的なスタンスを取っているというわけではなかった』というのが大きいだろう

 

顔が知れている俺なら

そうそうホイホイと攻撃はされないと思う

「俺はもう一度行く、あの翻訳装置は使わせてもらうぞ」

 

「…わかった、許可は取ってみせる

頑張ってくれ」

 

「どうせもう無い命、使い切ってやるよ」

 


 

で、これをどうしようかな?

 

私はいま、とりあえず

鉄塔の森でアラガミを食べて

…残存している機械部品なども食べています

 

いや、機械の特性を再現するアラガミっているじゃない?クアドリガとか、神機兵とか

そういうのを真似できないかな?と思ってさ

取り上えず食べてみたんだよ

 

モデルはノッキンオブ・ヘブンズドアのオオグルマが使っていた

偏食因子鎧(仮称)を想定して

常に相手の嫌う偏食因子を発揮するようにね

 

…それってつまりノヴァの性能なわけだけど

まぁ、高位のアラガミはみんなノヴァになり得る、というかノヴァ目指して進化してる最中っていう事だし、その形やベースがどうあれ

最終形態はみんな同じだ

 

どこに行こうが結局同じなら

最短距離を進むのが正解だろう

というわけで、アラガミとしての身体に不可欠な偏食因子を『偏食因子を変動できるアラガミ』にすることで、これをアラガミとしての特性にする、これを目指しているのです

 

だって全属性持ちみたいな変態アラガミはいないし、ありえないけど

『相手の使う属性に対するメタ属性』で攻撃を仕掛けるGE 相手になら

『メタ属性に対するメタ属性』を用意するのが一番効率的じゃない?

 

雷弱点、火・氷・神半減のアマテラスに、さらに上乗せで神弱点、火・氷・雷半減ヴェノム無効のウロヴォロス堕天

それに

火弱点、雷・神等倍・氷半減ホールド無効のカリギュラとかの偏食因子特性を持って

瞬時に変更できるなら

 

相手の属性射撃に対してメタ属性を取る事で常に半減できるわけだし

最低でも弱点撃ちはされないという有利がある

 

…まぁ、無属性にはどうしようもないけど

 

ガデ、パダギパ…(さて、私は)

ゾグギジョグバベェ(どうしようかねぇ)

 

むしゃばりと音を立てながら

なんらかの装置を食べるタケとリオを邪魔する気にはならないし、かと言って二人があらかた機械食べちゃったし、

私はさすがに電熱線(見たことがないから細かくは違うのかもしれないけど)まで食べる気にはならない

 

だってあれ、どう見ても周波数の変動とかに寄与してないでしょ?

 

ゴセバサジャママシ (それならやっぱり)ゲゲギギガザムダ(ACアダプタ) ドバグ デグドバンバロ(とかがベストなのかも)

 

交流から直流への電気の変換って

それはなんだが…こう

偏食因子の状態変化の鍵になるんじゃないかと思うんだけど…何か違うのかな?

 


 

(いた、あのサリエルαだ!)

 

通信機から聞こえた小声

それは監視対象発見の一報だった

 

「よし…ポイントに向かう」

 

通信機に声を吹き込み、同時にスナイパーライフルの機能、隠蔽を行使して

姿を隠しながら走る

 

1キロほどの距離を一気に走り切って

サリエルαが観測された地点に駆け込むと、そこにはヴェノム色の液溜まりと

山のように積まれた廃機材が転がっているだけだった

 

「…取り逃がしたか…?」

 

「…!佐々木!上だっ!」

「上…っ!?」

 

それは紛れもなく、幸運だった

唐突にかけられた声に反応が出来たこと

咄嗟に飛び退いた先に地面があったこと

ヴェノム色の液体に触れずに済んだこと

そしてなによりも発見が間に合ったこと

 

すべてが重なって、俺は命を繋いだ

 

 

それは…巨大な光の槍だった

全てを貫くと言わんばかりに研ぎ澄まされた尖槍は、俺へと飛来して

展開が辛うじて間に合った装甲に弾かれる

 

「なんだ…これ」

 

「うぉぉぁっ!」

バスターブレードを全力で払って

次の一撃を斬り飛ばす

 

「棚上!これはオラクルの槍だ!

神機でなら切り払える!」

「了解っ!」

 

次々に降ってくる槍をさばきながら

少しずつ前進し

 

そして、唐突に光が止んだ

 

「…ゴレンバガギベ(ごめんなさいね)

 

そして、風化した工場の二階から出てきたのは…やはり、サリエルα

 

「お前の仕業か、なんなんだこれは」

 

単なる防衛用装備よ(ダンバス ドグゲギジョグ ゴグヂ ジョ)

私たちは(パダギダヂパ)自衛をしないといけないから(ジゲギゾ ギバギド ギベバギ バサ)

こういうものも必要になるの(ボグギグ ロボロ ジヅジョグ ビバスン)

 

翻訳装置に通された声が届くよりも早く、山崎は微笑むサリエルαに剣を向ける

 

「攻撃性が確認された、討伐対象はサリエルα個体!戦闘を開始する!」

「まて山崎!下がれ!」

 

その声は届かず、剣から離された手は

ただ空を切る

 

その瞬間、俺は死を幻視した

「いかん!」

 

そして、槍は振り下ろされた

 

「っ!」

 

残酷なまでに正確に、巨大な光の槍が

天空から放たれ、そして

 

サリエルの羽衣を貫いた

 

「……な……に……」

危ない(ガツバギ) でしょう(ゼギョグ)

 

そう、サリエルは…自らに剣を向けた山崎を、殺すさなかった

身を挺してまで、山崎を槍から守ったのだ

 

「自動攻撃を…自分で防いだ…?」

怪我はある(ベガパガス)?」

 

「っ!」

 

山崎はその場から飛び下がり

俺は山崎と共に剣を構える

 

「山崎っ!」

「すまない…迂闊だった」

 

「そうじゃない!あのサリエルの反応!あれは明確に!」

 

()()()()()()動きだった

 

そういうより前に

突風が吹いて

 

俺達は神機ごと、吹き飛ばされていた



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西暦2068年 4月2日 午後1時02分

神機ごと吹き飛ばされた俺は、空中で体勢をとりなおし、反転して着地するも

そこからさらに追撃を躱すので手一杯になってしまう

 

「うごぁぁっ!」

 

神機を手放さなかった己を内心称賛しながらも、ようやく防御姿勢を取った瞬間

()()()()()()()()のだ

 

「なん…だ…と…」

 

先ほどまで影も形もなかったはずのアラガミ、コクーンメイデンが、背後に出現したのだ

 

「おらぁぁっ!」

 

反射的に神機を払い、背後の脅威を切り捨てる

しかし、その瞬間にはまた別の場所にコクーンメイデンが出現する

 

「クソ!」

「うるさい!」

 

そこら中に次々と生えてくるコクーンメイデンを撃破しているうちに

また突風が吹き、今度は姿勢を整えて耐え切る

 

寸前に、白い影が瞬き

二人ともゴミのように吹き飛ばされる

 

「このっ!」

 

ロングブレードとバスターブレード

ともに人の使うサイズ基準から逸脱した大剣達が振り抜かれ

白い影と黒い影

 

コクーンメイデンとシユウαを退ける

 

「うぉぉっ!」

 

短い咆哮と共に剣が振り抜かれ

連発される攻撃が嵐のようにシユウのオラクルを削ぎ取っていく

しかし、終わらない

 

どれほどの攻撃を叩き込もうと

一向にすり減り切らない

 

「クソ!キリがないぞ!」

バスターソードをいくら振っても

いくら当てても削りきれない

通常の接触禁忌種ならばもう羽の箇所くらいは結合崩壊してもおかしくないというのに

 

「この!」

 

剣を思いっきり張り切って

その慣性で体を振り込み

 

一気に翼の下を潜り抜け

その背中に拳をくれてやってから

走る

 

しかし、シユウを追い抜いたその直後

コクーンメイデンに視界を塞がれ

強引に跳躍して飛び越すが、やはりその先にもコクーンメイデン

 

抜き去れない

 

そう判断すると同時に

着地してバスターブレードを振り切る

 

最大限に体重を乗せた跳躍チャージクラッシュで一撃の元にコクーンメイデンを葬り去る

 

捕食はもったいないが無視し

ひたすら格闘戦を続ける

 

「…まずい…こいつらっ!」

 

山崎はロングブレードを弾かれたのか

空中に奴のロングが飛んでいるのが見えた

 

「山崎っ!」

「ぐぁぁっ!」

 

空に舞うロングブレード

俺の姿勢は悪い

棚上はシユウの拳とコクーンメイデンの砲撃にさらされている

 

何をどうするべきか

何が出来るのか

何をしたいのか

 

頭の中で光が走る

 

「う…ウォォォっ!」

 

この手に握る神機に命じる

 

ただ一言

 

“喰らえ”と

 

瞬時に膨張し、変形し

刃としてのあるべき形すら放り捨てた神機は、その御魂を荒ぶるがままに開放して

 

全てを喰らう大顎を顕現し

大顎は展開する端から天へと伸びて

いまだ空にあった白金の神機、シャムシールを噛み締める

 

「ゼァぁぁぁぁあっ!」

 

俺は、右手に握られた神機を

ただ一息に振り落とす

 

「!」

 

神機は黄金色の輝きを放ち

その輝きは、顎から繋がるロングブレードの刃へと伝播し

 

一撃で、

シユウの翼を切り落とした

 

「グァァァッ!」

 

血を吐き出して倒れるシユウに神機を離した大顎が食らい付き、その肉体を喰い千切る

 

「うぉぉっ!」

 

伏せたシユウの元に刺さったロングブレード、その持ち主である山崎は

何処か呆けたような表情でこちらを見て

その直後に鋭く動いた

 

「スタングレネード!」

「了!」

 

敵味方の動きが止まったブレイクタイム

その瞬間を最大限に活かすために

スタングレネードを起動し、一言叫ぶと同時にそれを地面に叩きつけたのだ

 

咄嗟に俺も腕で目元を覆い

放たれる閃光から身を守る

 

しかし、腕のないコクーンメイデンの群れにそんな芸当は敵わず

そして、ただ傍観していたサリエルに、それを防ぐだけの力量はなく

倒れているシユウにはそもそも防ぎようがない

 

よって、戦場全域を満たした閃光は、その場にいたアラガミ全員をスタンに陥れ

 

「どぅぁぁっ!」

「せらぁぁっ!」

 

再び、バスターブレードとロングブレードの二振りが、敵に埋め尽くされた戦場を切り開いた

 


なんか急に戦い始まっちゃったんだけど!

話が違うんだけど!

なんか行き違いとか起こってないかな?!

 

みんななんでそんなに殺意マシマシのガチmodeなの?期間限定なの?イベント掘り中の資材枯渇なの?

 

甲海域で毛根枯らすの?

 

みんなちょっと待って(リンバ ジョドド ラデデ!)

 

出来る限りに声を張り上げても

サリエルの声帯では大声を出せない

 

私の最大レベルの大声は

あっさりと戦闘音にかき消され

誰の耳にも届かなかった

 

私は別に怪我とかしてないのに(パダギパデヅビ ベガドバ ギデバギ ボビ)…」

 

いやまぁ、発端になってしまったのが私である以上、私が責任を取るべきだろう

 

…アレ?私が責任を取るとしたら

どういう形で責任を取るのだろう

 

私には特に権限とかあるわけじゃないし、書類上げるような組織もない

となれば金銭の類が有力?

いや、この世界での金銭は『fc』(フェンリルクレジット)に統一されているし、当然電子マネー化もされている、アラガミである私が入手することはできない

 

…いやそんな事考えている暇はない!

 

みんなやめて!私のために(リンバジャレデ! パダギンダレビ)争わないで(ガサゴパバギゼ)!」

 

 

咄嗟に叫んだのは

そんな月並みな内容だった



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急展開

「「「「「は?なに言ってんのお前?」」」」」

 

あ……何を言ってるのか分からないと思うけど安心して欲しい、私も分からない

 

いやまぁ、そんな二昔以上前の少女漫画のような台詞をブチかました私が悪いんだけど、

まさか分身コクーンとかまでみんな含めて全員から総ツッコミ喰らうとは思ってなかったの

 

「…やめて…こんな予定じゃなかったの…」

 

ガチで落ち込みんだ私は殻に篭りそうになりながら必死にそれは自重して

 

最後の一言を放つ

 

「けんかやめて…」

 

サリエルの声帯のせいなのか、やはり濁ったグロンギ語ではあるけれど

向こうには翻訳装置があり

私たちアラガミ同士でならば普通に通じる

 

涙目+上目遣い+胸チラ+泣きかけvoice

〆て4点、まとめ買いだ

 

「ダメ…?」

 

さらにダメ押しの一声で値を釣り上げつつ、ずいっと前に出る

 

鋼の精神か決意とかアラガミそのものに対する絶望的なまでの殺意でも持っていない限りはこれで終わると思う

 

「…………お前、それはずるいだろ…ー…はぁ…止めだ止め!」

 

地面にロングブレードが突き立てられ

バスターブレードが置かれる

 

同時にリオくんの分身コクーン達は一斉に霧散し、本体が出現して、シユウは片腕を再生しながら寄ってきた

 

「…ジャレビギジョグ(やめにしよう)

ボセギジョグパルザザ(これ以上は無駄だ)

heiwa teki ni (平和的に)kaiketu wo (解決を)kokoromiyou(試みよう)

 

流石にリオくんも飽きたのか、それとも分身を削られすぎてオラクルが枯渇したのか

とりあえず戦うのはやめてくれた

 

「……」

 

なんだかよく分からないけどヨシ!

(現場蟲)

 

「で、だ……この状況をどう収拾する?」

「普通に『資材拾いに行ったらサリエルαと遭遇した』でいいだろ」

 

「いやそれはダメだろう!?」

ガグガビ ジャレダ ゾググギギ ザソグ(流石にやめだ方がいいだろう)

 

あまりにも率直すぎる事実を述べると流石に証言としてはあまりに衝撃的すぎて信頼性が薄い、なので上手いこと信じられそうなことを捏造しなくてはならないのだけれど

 

「……じゃあどうすれば良いんだ?」

 

結局、こうなってしまうわけで

 

「そんなこと俺が知るかよ……」

「……そうね(ボグデ)、ヴァジュラとか(ドバ)ボルグ・カムランとかの(ドバゾ)大型(ゴゴガタ)アラガミに遭遇して(ビゴグググギデ)損害著しく(ゴンガギギヂジスギブ)撤退(デダダキ)これなら良いんじゃない(ボセバサジョギンジャバギ)?」

 

「……まぁ、その辺りが落とし所かぁ……」

 

ちょっとアレかもしれないけど

『邪魔されて本命にたどり着けなかった、でもそのアラガミのコアは回収したので成果はありました』これなら『手ブラで帰ってきました』よりはマシだと思う

 

というわけで

 

「撤退すんぞー……はぁ」

「結局、お前たちは人類に敵対する意思はないんだな?」

 

隊長さん?らしき人が

ゴリッゴリにパワー型調整をしているらしいバスターブレードを担ぎながら話しかけてくる

が、その内容は正直今更だ

 

私たち以前に人類から敵対された時点で終了している話、それを今更蒸し返してきても仕方ない

 

今更の話しね(ギラガサンザバギベ)積極的に(ゲキョキョブデビビ)攻撃されている(ボグゲビガセデギス)以上(ギジョグ)私たちは(パダギダヂパ)反撃するわ(ザンゲビグスパ)

 

「では!手を出さなければ!積極的に敵対はしないんだな!?」

 

「……それは、どうかしらね(ゴセパ ゾグバギサベ)

私達(パダギダヂ)()全ての(グデデン)アラガミ()統制者ではないし(ドグゲギギャゼパバギギ)

野良の(ボサン)アラガミ()被害は(ジバキパ)私たちの(パダギダヂン)せいにされても(ゲギビガセデロ)困るわ(ボラスパ)

 

それで一方的に攻撃されるとか

『街を守りきれなかったのはお前らのせいだ』とかゴッドイーターの世界ではありそうな話だし

 

そもそもGE自体が嫌われ者で

外部居住区の連中はフェンリルのイヌだなんだと石を投げるという

そんなモラルのない連中をいちいち守ってやる義理などないはずなのだけれど

なぜかGE達はそんな連中を守っている

 

私達にまでその理論を適用されたらたまったものではないから、ちゃんと、その線引きはしておかないとね

 

「……そうか、わかった

少なくともお前達は、積極的には敵対しない、という事だな?」

そうね(ゴグべ)

 

「その話、ちょっと待ってもらおう」

 

その頭上に、新たな影がかかった

 

「タケ!」

「ゴグッ!」

 

タケは瞬時に腕を爆裂させ

腕一本を犠牲にしてその一撃を防いだ

 

朦々と上がる煙の中に、敵の姿が現れる

 

それは オラクルバレットと言うには あまりにも大きすぎた

大きく ぶ厚く 重く そして大量すぎた

それは正に 砲弾だった

 

「なんだ……クアドリガ…なのか!?」

 

「私はクアドリガではない、

『志満』そう呼んでくれ」

 

突然の大型アラガミの乱入に

慌てて神機を構えた神機使いと、オラクルを活性化して肉体を修復するタケ

そしてアナザーフォルムのまま空に上がって、オラクルバレットのチャージを開始した私に、地面に潜って隠れたリオ君

 

全員が臨戦態勢に入った



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「私は志満、そう呼んで欲しい」

 

頭の中に直接響いてきた声

それは、間違いなく老境の男性の声で

 

「……オマエは……何だ?!」

 

明らかにアラガミから発せられている『声』に、ゴッドイーター達は警戒をあらわにする

 

当然だと思う、むしろ私も警戒している

アナザーフォルムを解除して蟲型に戻ったのが証拠です(大嘘)何してくれんの?

こっちはオラクル切れだぞ(半ギレ)

 

「敵、第三勢力を認識、撤退するぞ」

「応っ!」

 

流石に大型相手には二人では分が悪いと判断したのか、さっと撤退の算段を立てて

 

「スタングレネード!」

 

その場の()()が目を閉じて

対閃光防御の姿勢を取る

 

そして、閃光が放たれ

消えたときにはすでに私達は雲隠れしていた

 

どこにいるかというと

空中

 

「……ジギギィ……」

 

(危ない、オラクル推進でタケに飛びついていなければ即死だった)

 

ちなみに、唯一空を飛べないコクーンメイデンのリオ君だけは地中に隠れている

よくボコボコにされてしまう地面さんだが、今回だけは頑張って欲しい

 

「チッ!効いてねぇっ!」

「逃げるぞ!」

 

「逃しはしないさ、射程内だ」

 

超遠距離からの巨大ミサイル狙撃

神機の大楯すらも貫通するほどの威力を秘めたそれを躊躇もなくぶっ放したクアドリガは

のんびりと砲門を閉じ

 

-今……!-

 

突如として現れたスナイパーにその肉質を撃ち抜かれる

 

肉質を貫いた弾は、閉じかけていた装甲の中で乱反射し、皮肉にも堅牢な装甲がそのダメージを増幅する

 

「ぐぅっ……!」

 

思わずといった様相でうめきを上げたクアドリガに好機を見たか、二人のブレードが唸りを上げる

 

「乗れっ!」「!」

 

ロングブレードの方をバスターブレードの方が剣に乗せてそのままアッパースイングで射出して、空中からゼロスタンスを取ったロングブレード使いが見事な空中縦回転斬りを披露する

 

「オラァァァッ!」

 

装甲と装甲の合間にわずかに見える隙間へと正確に刃を通した男は

そのまま着地して刃を引き切り、そのまま捕食形態に神機を変形させて

一気にコアに迫り

クアドリガの方は全身を硬化させてそれに対抗したようで、ブレードの形状が変化するか否かのところで競り合っている

 

これに負けたら負けたでブレードを引き抜いてリトライすれば良いし、勝ったらそのままコア目前まで捕食して突破口を開ける、このまま競り合い続けても後方からバスターブレードと狙撃の支援が来て勝てる

 

なるほど、どう転んでも損がない

随分と思い切ったやり方でありながらも分の良い賭けを仕掛けることができている

 

これがゴッドイーターのやり方ってわけか

 

「うぉぉぉっ!」

「グアウゥゥッ!」

 

二人の咆哮は大きく、ブレードが変形体を現し始めて

 

弾かれた

 

ブレードが止まると同時に強引に弾き出され、駆け寄って来ていたバスターブレードの方がシールドを展開する

同時にロングブレードを弾かれた男は飛び上がってその盾の裏へと隠れて

 

それより一瞬早く、クアドリガは全身からオラクルエネルギーを解放し

同時に私はオラクル推進を全力で吹かして、発生した光の壁に突っ込だ

 

全身の細胞を強制活性化し

自分のツノの前に光の衝角を形成して

クアドリガの展開した光の壁へと衝突する

 

オラクルエネルギーの衝突で起こる現象は2つ、衝突して一方的に押し負けるか、衝突して互いを食い合い消滅するか

 

そして、私たちの攻撃は対消滅を起こし、私は壁に空いた穴の中をすり抜けて飛び込み、クアドリガが撒き散らした肉片のオラクル細胞へと突撃した

 

「なにぃっ!?」

 

クアドリガが何か言ったが気にしない

装甲は硬くて貫けないから、じゃあ腹の中をもらいましょうというだけだから

 

「ジッギィィィッ!」

 

瞬く間に周囲の細胞塊全てを吸収した私はオラクルエネルギーを増幅させて

再びアナザーフォルムを発動する

 

「ジギィ……ザブギョグザ(楽勝だ)

 

消滅したオラクルエネルギーを補給して、体を一気に成長させた私はそのまま飛び蹴りを放ってクアドリガの胸部装甲を軋ませ

 

突破できなかったのでそのまま飛び退いた

 

ギジャバビガ(いやなにが)ザブギョグバホバ(楽勝なのか)

 

迎えに来てくれたタケが私を抱えて飛び上がる

ザデデ(だって)ガセギギダバダダ(あれ言いたかった)ンザロン(んだもん)

 

そうか、とでも言わんばかりの呆れたような目でこちらを流し見ながら

私を抱えたタケは戦場を離脱した

 


 

「……まぁ仕方ないか」

 

ヒトにも逃げられ、似たような輩にも逃げられてしまった私は、いつものように思考を切り替えて、住処の洞穴へと引き返すことにした

 

 



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ライン

さて、拠点(愚者の空母)に帰ってきた私たちは各々の反省点を提示し、それを明確に認識することで対策を考えやすくするための会議

即ち、反省会を開いていた、のだけれど

 

「……ジャッジィ、ジュ」

 

だめだ、虫語しか出てこない

流石に声帯を酷使しすぎたか

 

damemitaidane (ダメみたいだね)

mou futaride hazimeyou (もう二人で始めよう)

 

ガガ(ああ)

 

諦めた私と、冷静な姿勢を見せる2人

この2人がシユウとコクーンメイデンでさえなければ格好良かったんだろうに

……私も(ドレッドパイク)

 

さて、冷静に考えると

私は攻撃を乱発しすぎたというわけでもなく、先行しすぎたわけでもない

いやクアドリガ戦に限っては絶対に先行しすぎたけど

 

……クアドリガはしばらく戦いたくないなぁ

 

 

 


 

その後俺たちは極東支部に帰還し

ひとまず神機を楠氏に預けて傷を癒していた

 

「……で、あれはどう報告するんだ?」

「いやどうしようもないだろう

……本当にどうすればいいんだ……」

 

サリエルとの対話の結果、明らかとなったのはそのスタンスと……別の恐るべき敵

明らかに俺達を殺りに来ていた

 

「クアドリガ……」

「あんなの見たらもうお腹いっぱい

しばらくクアドリガとは戦いたくないね」

 

ここから報告書を書かなきゃいけないというのに、あんな特大のイレギュラーが出現したとなったら大問題、むしろサリエルたちをそっちのけにしてでも大々的に取り上げるような話題となるはずだ

なにせ翻訳機に頼らずとも自力で発話するとかいうおかしなクアドリガである

明らかにサリエル達より格上

大型アラガミとしての脅威度もさることながら、論理的に発話し会話する知能からしてある程度の作戦も立てるだろうし巨大なミサイルやポッドからのトマホーク系の小型ミサイルも使えると考えると

【超長距離から大型ミサイルを連発する】

というような戦法をされたらそれこそ支部壊滅案件だし、近づけない

大問題そのものである

 

「あんなのどう対処するんだよ……」

「知らん、それこそ考えるのは支部長の仕事だ」

 

ため息をつく

仕事は山積みになっていた

 


 

さて、みんな

Minecraftは知っているだろうか?

1辺が1メートル、つまり1立方メートルの立方体(ブロック)を基準として草や土、石などのそれらを組み合わせて作られた世界だ

例外的な柵や厚板などはあるけれど

それらはあまり考えるべきではない

 

「ジュッ、ジュッ……ジュッ」

 

私は今、そのMinecraftと同じようなことをしている

 

どういうことかって?

つまり周囲のゴミを固めてブロックを生成しているのです(ドヤ顔)

 

これが案外楽しい

鉄の塊である自動車のボディやスチール空き缶

様々なプラスチック製品

均一な素材のそれらを組み合わせて取り込んで圧縮すれば見る間にブロック塊が出来上がっていく

流石に強度も上がるわけではないけれど

鋼鉄の塊であり、手酷く変形して硬化しているのは疑いようもないレベルの事実

 

偏食因子とオラクル細胞を練り込んで強度を上げてやれば神機みたいにもできるだろうけれど……流石に神機(鉄ブロック)を振り回すゴッドイーターは見たくない

 

「ジュ……」

 

ゴミを吸ってブロックを生成しつづける

気分はウォーリーかスティーブだ

 

「ジュ!」

 

なんでこんなことをしているのかというと

拠点構築である

今までの愚者の空母内の拠点は崩落の危険であったり襲撃を受ける可能性だったりととても安定的とはいえなかった、そこにさらに例のクアドリガの話が重なってしまった

なので急遽拠点機能を移転し、別の隠密性の保たれた場所に移動する必要が生まれてしまったわけで

そのために私は愚者の空母とタケは鉄塔の森で鉄集めをしている

鉄ブロックを作っているのは建築素材に使おうということです

オラクル細胞ってすごい

単に圧縮するだけの簡易ブロックではなく、ちゃんと純度99%以上の鉄を作ろうとしても屑鉄を捕食するだけで微粒子レベルまで分解消化して微粒粉末にしたそれらを体内一箇所に集めて内燃機関のように体内を高熱化して酸化鉄を還元、さらに融解させて固めてインゴットまで直で持って行ける

まるで天然の工場ラインのようでおハーブ生えますわ(お嬢様要素)



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西暦2068年 4月6日 午前10時30分

「任務任務任務〜任務ーをーうけーるとー……金が金が金が〜……金が〜もらーえる〜」

 

「うわぁ……なんだその最低な歌詞」

「お?やんのかお前、金は人生における最高のエッセンスだぞ

これを欠いた生活なんて出来ないくらいだ」

 

トシオが笑いながらアサルトライフルを振り回し……連射弾でオウガテイルを蜂の巣にする

 

今日はトシオと俺の二人っきりでの任務なのだ(絶対に嫌だったが)

先輩に頼まれては仕方ない

 

「いや金が大事なのはわかるけど

その選曲にその歌詞はひどいだろ……な!」

 

ブレードを幹竹に振り切って

飛んできたザイゴートを一刀両断した

 

出てきたコクーンメイデンにブレードを突き刺してそのまま体内を捕食しつつ後ろのザイゴートに向けて捕食形態のオラクル繊維を展開して振り返り

大顎を解放して丸ごと噛み潰す

 

「じゃあアレか、ジャズでもかけようか?

お前にゃ似合わねえけどな!」

 

トシオの方も飛来したシユウの口の中に左手を突っ込んで顎から胸までを引き剥がし

コアに直接炎弾をしこたま叩き込んでいた

 

「ジャズとか知らねえんだけど

なにそれ」

「1900年代にアメリカで出来たらしい音楽の形態、俺もよくしらねぇ

独特の曲調と明るさがあってクセになるってことだけはよーくわかる……ぜっ!」

 

極太レーザーを連射してきたサリエルの攻撃を躱して、反撃の爆弾を叩き込もうとバレットを切り替える、その瞬間

 

「上田!」

「は?……ぬぉぉらぁぁっ!」

 

異様な跳躍力で上から飛んできたオウガテイルがトシオを丸かじりしようとして

しかし囓れたのは銃口だけだった

 

体内に直でオラクルを流し込まれたオウガテイルは爆砕して霧散

その隙を狙ってきたサリエルの体当たりも

 

「ぜぁぁっ!」

 

シールドを展開した俺の突撃で相殺されて無惨な隙を晒すのみと成り果てた

 

「行け行け行け行けっ!」

 

シールドを閉じて着地と同時に捕食形態を展開した俺の神機がジェットのように余剰オラクルを吹き出して加速し

離れた地点から再度加速、一方的にサリエルへと飛び込んで

 

「おぶぇぁっ!?」

 

不快な衝撃とともにそのスカートに衝突する

「バッカみてぇなことしてんなお前」

「ふざけんなお前に言われたくねぇわ!」

 

スタングレネードを直接叩きつけてクリックリの瞳を焼き付かせつつ胴体を丸ごと縦に切り開いてやると、サリエルはぐったりとおとなしくなったので胸のあたりにあるコアを捕食して引き抜いてやる

 

「コレっていくら位になる?」

「サリエル原種なら100000fcくらいじゃね?

綺麗にコアとれりゃ神機作れるっていうしっ!?」

 

トシオの足元から唐突に生えてきたコクーンメイデンが飛び出てくると同時に針を凄まじい勢いで伸ばして

あわてて神機の横腹で受けるトシオ

 

銃形態の神機にはシールドはないが

銃オンリーの第一世代神機は流石に脆弱性を危惧したのか、横腹だけには簡易的な装甲がある

神機そのものを盾として横腹で受ければコクーンメイデンの腹くらいなら構うほどのダメージは無い

 

「っぶねぇな死ねやゴルゥラァッ!」

 

開いたままの前面部から特大の針を伸ばしたコクーンメイデンは

そのまま針自体での追加攻撃を図り

しかしその前にコアを氷漬けにされていた

 

《こっちは終わったから、援護に来たわ》

 

耳につけたインカムから流れるのは先輩の声

「助かった!死ねぇぇぇっ!」

 

バルカン砲か何かのように凄まじい勢いで弾を吐き出すトシオの神機を尻目に

俺は氷漬けにされた特殊個体コクーンのコアを綺麗に捕食するのだった

 


 

さて、拠点はだいたい完成した

高度に偽装された地表のアスファルトやコンクリート等の土類製防壁(オラクル細胞由来でない)と十分に精製された貴金属のスレート板、さらに抗オラクル性を持つ偏食因子を練り込んだ高強度鋼による多重ハニカム構造の内壁

以上の三層装甲(トリプルアーマー)を持つ地下拠点、

名をメガロポリス・ヤマト

手塚治虫の『火の鳥』に登場する

西暦3400年の未来に於いてメインステージとなる地下都市の名を借りたそれだ

……最終的に滅ぶとか言わない

 

ゴッドイーターの世界が基本的に時間軸上の未来の話で、荒廃した地上と驚異的な異生物が存在し、さらに厳格な管理体制を敷く閉鎖的社会の支配する一部生存領域にしがみつく愚かな人類という構図があまりにもぴったりだっただけ

 

最終的には2主人公による地球環境の再生が行われるのも、そこに至るまでに前主人公が報われずに道筋だけを残して終わるのもそっくりだ

 

ズガガ……(ふぁぁ……)

 

おおきくあくびをして

床の中で一段高くなっている畳ゾーンに乗る

畳と言っても民家から状態の良いのを取ってきた古いそれだけれど

私が初めて見た実物の畳だから、少し感慨がある

 

畳の上で思い切りゴロゴロするのは少し憧れていたから

 

やっぱり寝るのは気分がいい

 

「ミュー……」

 

アバドンも寝る?なら隣どうぞ

「ラミュ!キミュゥ〜……スピー……」

 

寝るの早いなコイツ



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アクシデントは突然に

 おはよう諸君、突然だがわたしは平穏が好きだ

……いや別に戦争ではない

本当に、一番尊ぶものは『平穏』なのだ

なぜそんなことを唐突に言い出したかと言うと。

 

「死ねッ!」

 

絶コロ少年(ソーマ)に追いかけられてるからなんだよなぁ!

 

「ギィィィィッ!」

 

ソーマのバスターブレードは少年時代でなおボルグ・カムランの装甲をブチ破るほどの火力を発揮していた

膂力の向上が期待出来る青年期でとなれば、アルダノーヴァ戦での決定打となるほどの火力を出すだろう

まだシオどころかエリックも戦死していない原作前の時間軸であるはずの現在でも

わたしの甲殻を破壊することなど容易いはずだ。

 

わたしにとっての『死』は遠いものではないけれど、だからといって

ホイホイと身を任せるようなものではない

 

今度こそ、死に方くらいは自分で決めたいのです!

 

「ぎぃァァァァッ!」

 

絶叫と共に跳躍し、空中に張った足場糸へと移動しつつネルスキュラのようなカサカサした動きで空中を移動して飛び降り様に角で糸を焼き切る

同時に支えを失った足場が落下し

工事現場の鉄骨さながらの勢いでソーマに迫る

これなら行けるか?

 

「フンッ!」

 

大きなバスターブレード

ノコギリ系統固有兵装、イーヴルワンが振り抜かれ、落下してきた足場糸を粉々に破壊した

アラミド繊維や有機繊維をいろいろ混ぜて硬度を高めた足場糸が丸ごとやられるなんて!

 

「手間を掛けさせやがって!」

「ギァァィィいッ!」

 

真面目にやってもこの始末☆

になるのは目に見えているので、徹底的に逃げ回っているのだけれど……

これはどうにもならなそうだ

 

「……ギゥォアアィイ!」

 

オラクルの臨界活性、普段なら絶対に使わないそれ、多少は時間を稼げるだろう

 

全身のオラクルを赤熱化するほどに活性させ

同時に角に熱を収束させ、そこからビーム!

 

正確にはオラクル細胞の射出(しょうねつゴッドフィンガー)ッ!!

 

「うぉぉっ!」

 

装甲タワーシールドを展開したソーマが熱線をはじき飛ばし、そのまま飛び込んでくる

より前に

上に跳び上がる

 

ソーマがタワーシールドを展開したその時

一瞬ながら視界の半分以上を失っている

その一瞬を利用して、わたしは人間の視界構造上確認しづらい上方向へと移動していた。

 

「チッ!どこ行きやがった!」

 

ソーマが見当違いの方をキョロキョロしているうちに、わたしはオラクルを活性化させ

肉体を書き換えてサリエル(アナザーフォルム)へと姿を変える

 

「そこかっ!」

 

わたしのオラクル活性を感じ取ったのか、上を見上げるソーマ

でももう遅い

 

ゴサァ(おらぁ)!」

 

急激に加速したわたしは足を赤熱化させ、彗星の如き鋭角軌道で地面に突き刺さるような片足飛び蹴りを繰り出す

イメージはウルトラマンゼロ!

 

「ぅおおおっ!」

 

ソーマのバスターブレードが振り抜かれ、装甲が凄まじい勢いで飛び出す

バスターブレード特殊アクション

『パリングアッパー』だ!

 

ガギイイィッ!

金属の擦れ合う音と同時に、足に伝わる激しい衝撃

受け止められた!?

 

「らぁぁあっ!」

 

体を一回転させたソーマが大振りのアッパースイングを仕掛けてくる

掬い上げるような一撃がわたしの足に直撃し、大きな音を立てて足がひしゃげた

おそらく、そう表現するのが正しいだろう

 

咄嗟に跳躍していなければ足を丸ごと砕かれていたことは想像に難くない

 

ポセザヂバサン、ソーマ(これがソーマの力)……!」

「俺の名前をッ!?」

 

通常、振り回し切った瞬間の刀身は勢いを失い、ただの重量物へと堕ちる

しかしその勢いが止まらない

凄まじい速度で振り回され、そのまま止まらずに振られ続ける

 

「死ね!」

ギブパベビパギババギ(死ぬわけにはいかない)

 

オラクル喪失を覚悟でやられた方の片足を自切し、そのまま爆弾へと変える

しかし爆発してもソーマの勢いはなお収まらず

そのまま突っ切ってきた

 

もう仕方ない、死んでも……文句言わないでよね…「…ソーマ」

「俺の名前を呼ぶなァァァァッ!」

 

バスターブレード2番目の特殊アクション、チャージクラッシュでの大剣状オラクル噴出

ノーモーションでチャージを一瞬にして完遂したソーマが暗赤の大剣を振り落とす

その一瞬

 

「ダギダン……」

 

一言、たったそれだけが聞こえた

 

響いた音は激甚に、一度

爆発のような音

鋼を叩く音、ありえないはずの音

 

ダキダン……ゾゾル(タイタンフォーム)!」

 

剣撃が、弾かれる音

 

「なにぃっ!?」

 

ダキダン、ン、ゴグボグバ(タイタンの装甲は)

ザデジャバギ(伊達じゃない)

 

わたしの体表に展開された超硬質の生体外骨格による装甲、剛力体(タイタンフォーム)にのみ許された鎧は高密度なオラクル細胞を激しく活性化し、ジャストガードを常時発生させるほどの勢いでエネルギーを消耗しながらもソーマのチャージクラッシュを防いで見せた

 

ツノの剛性を反映する硬質な脚に高熱を纏い、ゴッドフィンガー(足)を発動し

さらに全身のエネルギーをかき集めての膝蹴りを叩き込む!

 

バサリディダギダン(カラミティタイタン)ッ!」

 

神機の装甲を丸ごと貫通するほどの勢いでの跳び膝蹴りは刻印こそ完全ではなかったものの、強力な爆発を起こし、ソーマを吹き飛ばすことに成功する

 

「……」

 

ソーマを吹き飛ばした爆発の反動直撃で吹き飛ばされつつ、わたしはオリジンフォームへと戻り、そのままソーマから離れて逃げる

見失ってくれればそれでいい

感知されてもアラガミ特有の謎高機動がある、雪山に分け入ってしまえばこっちのものだ

 

それにわたしは並のアラガミよりもよほど早い

シユウの全速グライドにだって追いつけるランナー、それがわたしだ

 

「クソッ!……見失った!」

 

僅かに聞こえた声にほくそえみながら

わたしはとりあえず雪の中に隠れてソーマの帰投を待つのだった



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西暦2068年4月9日午前9時45分

「これより、目標クアドリガαの討伐作戦、最終ブリーフィングを開始する

目標は極めて高い耐久能力と火力、感知範囲を併せ持ち、さらには長距離精密狙撃の能力も持っていることが判明している

これに対し我々は、高機動型の戦闘ヘリ6機による一斉輸送作戦を展開、6カ所から同時突入を仕掛ける

推定感知範囲内に突入し次第ヘリから漸次降下し、突入ポイントから一斉に目標を目指す

接近しての戦闘においては従来のクアドリガと異なる戦闘能力は確認されておらず、また装甲強度も第一種接触禁忌種テスカトリポカ並ではあるものの『破壊不能』というほどではないという報告もある

接近さえすれば従来の手法での撃破も可能と推測される

追補として、事前にオラクル細胞の補充を行った上で専用バレット『ミスティックドレス』による感知撹乱を行うため、レーダーおよび通信はジャミングされて使用できなくなる、戦闘員は各自判断で戦闘・撤退するべし」

 

それは大型アラガミ『クアドリガ』

その変異種に対する攻撃として行われる極東第一・第六・第八部隊合同の強襲撃破作戦

ミッション名『ムーンライトソード』の作戦ブリーフィングであった

 

「なお現時点までで確認されている出現アラガミは『コクーンメイデン』『ザイゴート炎堕天種』『コンゴウ』『ボルグ・カムラン』および目標対象『クアドリガ・α』である、いずれも氷属性が有効であるため、使用属性の統一を推奨する」

 

作戦の打ち合わせは粛々と進む

各隊メンバーは戦闘員に

第一部隊隊長リンドウ(ロングブレード)をはじめとしてサクヤ(スナイパー)

第一部隊B分隊にツバキ(アサルト)ソーマ(バスターブレード)

第六部隊よりカツラギ(ブラスト)ユユコ(ショートブレード)

第六部隊B分隊にソウスケ(ロングブレード)エイジ(ブラスト)

第八部隊にアキト(ショートブレード)ナルミ(スナイパー)

第八部隊B分隊にトシオ(アサルト)アラタ(ロングブレード)

 

バックアップメンバーに医療班より

カノン、メイ

 

輸送ヘリのパイロットは

シンジ、コウ、ダイスケ、マミ、ナツカ、シイナの六人

 

オペレーターに第一部隊A-B担当ヒバリ

第六部隊A-B担当レイラ、第八部隊A分隊担当カズト、B分隊担当アスマの4人

防衛班や予備人員を除いた支部の殆どの人員を動員する大作戦である

 

「全員、作戦に異論はないな?

では総員出撃!」

《了解!》

 

出撃していく人員達

極東支部の中でも討伐班と呼ばれる第一部隊からの最精鋭を起用した以上

この作戦は絶対に成功させなくてはならない、そういう性質のものだ

 

「いつも通りやってくれ」

「お願いします」

 

「うっしゃ!……コマンドA

大門真司!発進ッ!」

 

 

「ブライト、頼む」「……」

「了解、コウ・ブライト、コマンドB発進します」

 

 

「俺のヘリに乗るなら、死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」「知ったことか」

「どうせみんなお金になる……!」

 

「ハハッ、なんてこった俺以上にイカれてやがる……面白え

コマンドC、この大森大輔がお前らを天国へエスコートしてやんよ!」

 

 

「マミさん、お願いします」

「シートベルトは締めた?」「もちろん」

「ならよし、それじゃあいきましょ?

何も怖くないわ!コマンドD、発進っ!」

 

 

「あいつら大丈夫かな……?」

「大丈夫よ秋人くん、私たちの育てた子達なんだから、信じてあげよう、ね?」

「そうだな……よし、お願いします!」

「相変わらずお熱いことで……コマンドE、皐月(サツキ)懐香(ナツカ)、出撃するよ!」

 

 

「よぉし……!」

 

ヘリに乗り込み、ケースに入ったままの神機を握る

 

「いつでも行けます!」

「頼んだ!」

 

「では行きますよ……コマンドF takeoffッ!」

 

トシオと俺の声に応え、この作戦の中核となるヘリパイロット、九沙良(クサリ)椎菜(シイナ)さんが武装ヘリを飛ばす

他の隊の乗ったヘリ達も次々に飛んでいく

 

「俺たちはAとEの間、六角形のこの辺に行くことになるんだっけ?」

「そう、忘れんなよ?……きたきた」

 

空中を飛ばすヘリに寄って来たのは高空を飛んでいたザイゴートの群れ

 

「よぉし……」

 

アサルトを構えたトシオは素早くヘリのタラップに出て、そのまま神機を起動

アサルトお得意の速射でザイゴートを撃ち落としていく、その数なんと15体

こっちはともかくスナイパーとかブラストは大丈夫だろうか

このレベルの群れにぶつかってしまったら戦闘前にオラクルが枯渇してしまうのではないだろうか?

 

「いけそうか?」

「よゆーよゆー、オレ舐めんな」

 

トシオは軽口を叩きながらでも余裕がありそうだ

 

「こっちはもともとザイゴートの群れが居るあたりです、敢えてこのルートにしたのはアサルト組を対空に回すため、砂組はステルスフィールドでアラガミの少ない場所を突っ切ってますよ」

 

「じゃあブラストは?」

「問題ないの一点張り」

 

「「なら問題ないな」」

 

俺とトシオの声が重なる

第六部隊はイカれたメンバーの集まり、その逸話はウロボロス単独討伐に始まり

曰く、セクメト3体を炎ショートブレードで5分

曰く、ボルグ・カムランをパイロで焼き払う

曰く、独自改造型の神機でスナイパーライフルを連射して支部を防衛

曰く、オラクルアンプルを爆発させて遠距離攻撃を行うバスターブレード使い

 

少し考えればわかるようなデマのように聞こえても実話なんだからしょうがない

 

「突っ切りますよ……『ミスティックドレス』展開ッ!」

 

ブシュウウウウッ、音としては物が破裂するときのそれに近い音が鳴る

それは瞬間的に高密度なオラクル細胞を幕状に展開し、霧のように戦場に漂わせ

レーダー上では巨大アラガミと同様の存在になる

 

「ミスティックドレス展開時間残り600秒っ!」

 

この後にクアドリガの索敵範囲へ突入することを考えれば許される使用時間は極少

僅かな時間も惜しまなくてはならない

 

豊富なオラクル細胞が放出された事で

周囲のオラクル細胞濃度が向上、それを餌と誤認したアラガミの集合を招き

同時に巨大アラガミが唐突に出現するというありうべからざる現象によって警戒を招く

 

「いっくぞぉぉっ!」

 

畝るレーザーが次々にザイゴートを貫き

空中型・飛行型アラガミ『ヨルムンガルド』『サリエル』を撃ち倒していく

普段なら即座にオラクルが枯渇するところだが、今は周囲のオラクル細胞が放出されたレーザーを強化してくれるため、その火力の底上げと同時に使用弾数の削減を為し、アラガミの一方的な殲滅を可能としていた

 

「残り550秒っ!」

「おーらい、片付いたぜ!」

 

「ミスティックドレス停止、残りは540秒です」

「1分も使っちまったのか……」

「まぁしょうがないだろ、経費経費」

 

トシオの方は若干落ち込んでいるが無視した



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それぞれの道

……なに?

 

何かが起こった、それはわかる

巨大なアラガミに似た反応、膨大なオラクルの噴出と固着を感知した

それ自体は大した問題ではない

大型アラガミが唐突に出現、なんてのは隠蔽能力(ステルス)持ちならば良くあること

しなし、さっきまでは多少の群れが屯している程度だった場所にそれが出現したという事実の方がよほどに重要で、かつ問題だった。

 

大型か……

 

どうにも薄く広がった気配

ステルス特有のふっと消える感覚ではなく、霧散したオラクルに近いそれ

……どうも罠臭い

だが、それは確かめなければわからない

原作に存在しないイレギュラーであるなら、それを取り除くのも考えるべきだ

たとえ些事であったとしても神機使いならざる民間人にならば十分な被害を出し得る

我々はアニメ版主人公のお姉ちゃんの死因を忘れてはいけない。

 

「……ギズザ(いくか)

 

私は単独で出撃し、地を駆け抜けて

目標地点へと急いだ。

 

 


 

「よし、よし、よし……」

 

安全と十分な効果のための指差し確認を終えて、第六部隊A分隊、葛城が発砲したのは

空中へと真っ直ぐに飛翔し、滞空する大きな球体型のバレット

例の悪名高き弾丸である。

 

空中にしばし留まり、周囲に供給されたオラクルエネルギーを吸い上げ

徐々に巨大化していく氷の球体が輝く。

 

「総員伏せろッ!耐ショック・耐閃光姿勢!」

 

その弾の発光を目撃した数人は直ちに退避し、または耐えるために身を隠し、衝撃に備え

そして今、実り育った果実が落ちる。

 

「メテオ」

 

地へと落ちた氷の球体から膨大なエネルギーが放出され、砕片諸共に爆発し

凄まじい衝撃波を放つ

その爆発半径は距離にして2000メートルを上回り、巨大なクレーターじみた地形を作るほどの力が解き放たれた。

 

「……ふぅ〜〜……」

 

大きく息を吐いた男は、粉微塵に消したんだコンゴウと小型の群れに視線を向けて。

 

「任務、完了」

 

群れの殲滅を宣言した。

 

 


 

「死にそう」

 

一方、任務開始早々にアクロバットじみた飛行を強いられた秋人隊長はロングブレードを勇ましく担ぐ余裕すらなく、空中で必死に吐き気に耐えていた。

 

「我慢してね、もう直ぐだから!」

 

「おぅ……」

「秋人くん、本当に我慢してよ?

ヘリで吐かれたら困るから」

 

副隊長である成美ですら扱いが雑になり気味である、隊長としての威厳というものが足りていない。

 

「はぁ……大丈夫かしら」

 

G耐性は成美の方が強かったようだ……。

 

 

ショボくれた隊長を乗せてヘリは飛ぶ

もうどこへ向かっているのかさえ、誰にもわからないまま。

 

 


 

「……ほう、来たか」

 

戦車(クアドリガ)たるそれは嗤う

戦士達への賛歌代わりに

戦いの神と呼ばれし者として

戦士達に敬意を評して。

 

 

 

霧のような気配の中で姿を探る

鷹の瞳(ケーロス)からの視線で見つめる

雑魚の群れを討滅しながら突き進んでくる威勢の良いもの、コソコソと走り回る狡猾なもの、一瞬だが凄まじい力を示したもの、

その力の群れの数は6つ

 

「こざかしい子らよ……さぁ来い」

 

濃霧のような茫とした気配の中に隠れながら近づいてくるそれらを

彼は容認した

どう動こうと見えている

狩人と獣、相対するならば正面からだ。

 


 

 

「うっし、行くか」

 

封印状態のロングブレードを担ぎ上げて起動し、雨宮竜胆は宣言した。

 

「ええ」

 

橘咲耶もそれに応じて、自らの狙撃銃型神機を神機封印ケースから引き抜く。

 

「じゃあオレはここで待機してる」

「あぁ〜……先帰った方が良いかもしんねぇな、その辺飛ばれると危なっかしくて困る」

「了解した、先行帰投する」

 

静かなローター音と共に、アナグラに10機しか存在しないオラクルエネルギー対応型ヘリコプターが飛翔し、キャビンが空になったぶん早く去っていく。

 

ヘリを帰して退路を自ら絶った二人は

しかしそれに対して怯える事はなく

前へ、見定めた敵の元へと進んでいく

クアドリガαへの道を遮る全てを薙ぎ払って。

 

「ビールがのみてぇなぁ……」

「もぅ、作戦中くらいそれやめてよね」

「あぁ〜わかったって、もう言わねえから

……っと、お出ましだ」

 

会話を打ち切るその言葉と同時に湧いてきた群れはコクーンメイデン、それも一般の個体ではなく炎属性に変異した堕天種だ

メイデン種の中でも攻撃能力に秀でる変異型である。

 

しかしもとよりサクヤの握るスナイパーライフルは氷属性、相性は有利

そしてリンドウの盾も炎属性には十分な耐性がある、二人の連携練度を鑑みるまでもなく、コクーンメイデン達の辿る運命は明らかだった。

 

「っしっ!」

 

横薙ぎに振るわれるブレードがコクーンメイデンを切り裂き、そのコアを抉り出し

反撃よりも早く霧散させる

群れの一体がやられたことで群れ全体が攻撃態勢に入り、幼児を象ったような頭部が奇妙に変形し、オラクルエネルギーを凝集したビームを放つ

よりも速く装甲が展開され、甲高い音だけを残してマグマの熱量は霧散した。

 

「こいつら大したことねぇな」

「油断しないの、ほら!」

 

パキン、ひび割れる音と共に凍結したコンクリート、その塊を盾としてコクーンメイデンの砲撃を受け止めたサクヤは狙撃弾を連射する。

 

「うぉおおぉぉお!」

 

神機から大顎を展開したリンドウが一体を丸ごと捕食して力へと変え

それをアンプルに封印してサクヤへと投げ、受け取ったサクヤが神機へと挿入れたと思えば全てを氷の弾丸へと変えて撃ち尽くす

気づけば20は居たアラガミの群れは無くなっていた。

 

 

「もう……油断も隙もありゃしないんだから」

「まったくだ」

 

全てのアラガミを根絶するまで、世に真の平和はない

この真理を噛みしめながら

二人はそれでも今の為に走り出した。



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西暦2068年4月9日午前10時15分

「うぉおおおぉおおおっ!」

 

ロングブレードを振り払い、コクーンメイデンを薙ぎ

その背後から出現してきたオウガテイルも纏めて叩き斬る、しかし遅い。

 

溢れるように出現してくる敵の数に対処が間に合っていないのだった

しかしここに湧いているのは雑魚ばかり、真打であろう大型は出てこない

つまりはそう、足止めされているのだ。

 

「クソッ!」「うるせえ!」

 

アサルトライフルの弾では火力が足りない

十分な威力が発揮できなければ狩るのには時間がかかる、そしてその時間はすなわち自分達の命そのもの、このまま遅滞戦闘を続けられたらその内に偏食因子が途切れてしまうし、そうでなくとも肉体的な限界が出てしまう

そもそも常に露出している腕輪という致命的な弱点を抱えた神機使いは長時間の連続戦闘に弱いもの

このままでは削り負けてしまう。

 

「あぁもう!どうすりゃ良いんだよ!」

「うるせえ俺にいうなっ!」

 

たとえ取るにたらない小物ばかりでも、津波の如き群れなれば即ち恐るべし

しかし、二人は同時にそれを狙った。

 

「スタンッ!」

「シャオラっ!」

 

スタングレネードのマグネシウムが爆発し、急激に燃焼して白炎を撒き散らして視界を奪う

それと同時にオラクルアンプルを連続で投入したアサルトライフルが、本来不可能な程の火力を発揮してコクーンメイデン達を焼き焦がした。

 

「「突破っ!」」

 

爆発性の弾を連射しながらアラガミの群れを突破していくなかでトシオはあるものを見つけ出した、オウガテイルが地面から出現した直後、僅かに覗く地中に煌めく橙を。

 

「おいアレ!」「あァ!?」

 

「やれ!」

「オラァッ!」

 

指差したそこに突き立つは血錆と鉄色のロングブレード、『ブレード序』だ

コンクリに覆われた灰色の地に突き刺さったブレードは、そのまま地面をこじ開けるように捻られ

そこにあった異形を露わにする

 

「なんだこれ!」

「んなもん俺が知るか!」

 

橙色の巨大な球体

彼らには知る由もないが、その正体はアラガミのコア

独自に進化した群体の大型アラガミ、仮称:コクーンヴァンプのコアだった。

 

「コレ壊せば終わるかっ!?」

「知らんっ!でも……」

 

「「試す価値はある!」」

 

剣を振り上げてゼロスタンスをとり、深く呼吸してスタミナを取り戻すアラタと

銃を構え直して弾種を各属性の基本弾へ変更するトシオ

二人の神機遣いが攻撃を再開した。

 

「まずは属性を!」

 

火・氷・雷・神、四種類の属性は大型アラガミならば必ずと言っていいほど、どれか一つは弱点となっている。

 

それは『属性特化』という現象で、どれかの属性に寄った偏食因子はその属性に対しては耐性を有し、反対にいずれかの属性を弱点とする事になるのだ

まれにこの原則に対して喧嘩を売るような輩もいるが、それにしても弱点が一切ないというわけではない。

 

「うぉらぁぁ!」

 

氷通常弾、炎通常弾が連射され

炎の赤と氷の蒼が橙色のコアを照らす。

 

「ダメだ!」

「ふんっ!」

 

裂帛の一声と共に突き出されたブレードがコア表面へと突き立ち

そのまま貫こうとするも、あまりに偏食因子のランクが違うのか跳ね返されてしまった。

 

「クソッ!」

 

今度はトシオが神属性の弾を連射すると、わずかに怯むような動きを見せたコア

それに味を占めて神属性弾をさらに撃ち込もうとしたその時

 

「トシオッ!」

 

それは唐突に背後から現れた。

 

 

剣のように鋭く、盾のように硬く、革のようにしなやかで

とても大きな、棘の群れ。

 

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

咄嗟に反転し、それを視認したトシオは身を翻してこれを躱すが、しかし遅い

鋭く硬く、大きな針が体をかすめ

致命的な傷を与えた。

 

「トシオォッ!」

 

ゴッドイーターの、ゴッドイーターたる所以

神機を握り、それに適合し

アラガミの力を制御する器官

即ち腕輪の破損、それはまさしく致命傷。

 

「クソ……やられた……ッ!」

 

右腕に繋がる枷であり命綱

ゴッドイーターたる証にして二度と外せない呪いの腕輪がひび割れる。

 

「トシオ……!腕輪がッ!」

「うるせぇ!」

 

スタングレネードを地面に叩きつけて爆発させ、そのまま隠れるようにして距離を取るトシオ

そう、彼はまだ諦めてはいなかった。

 

「そいつの弱点は神属性だっ!

情報だけでも持ち帰れ!」

 

腕輪を割られたまま、トシオは神機を握りしめて吼えた。

 

「俺がこいつを道連れにしてやる」

 

トシオの神機から神属性爆発弾が連射され、スタングレネードの影響から復帰してきた棘針を吹き飛ばす。

 

「早く行け!俺を無駄死にさせるな!」

 

その声に背を蹴り出されるように

俺は先を急いだ(トシオを見捨ててしまった)



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