この聖女な転生者と竜と化せる神様に祝福を! (餓鬼振り大佐)
しおりを挟む

この聖女に興味がある優等生に転生を!

ジクジャンが好きなので唐突に書いてしまいました。皆さまに喜んでいただけると幸いです。それでは本編をどうぞ!


「……えっ?こ、ここは?」

 

 目が覚めたらそこは、訪れたことも見たこともない場所だった。まるでチェス盤のような白黒の市松模様の床が広がり、壁も天井も無いように見える薄暗い空間。目覚めたその人物は、眼前に広がる景色を見て目を疑っていた。

 ふと目線を下ろして今の自分の状態を確認したその人物は、緩く結わえた長い金髪。凛と見据える薄紫色の眼。日差しに照らされたかのような純白な肌の女性。服装は青色の長袖ブレザーに少々長めの白いフリフリのスカートと、普通の高校生の制服を着ていた。その女性はいつの間にか茶色い木製の椅子に座っている状態であり、何故自分がこんな状態で眠っていたのだろうか。そんな事を考えていた、その時だった。

 

「目が覚めたか」

 

 声が聞こえる。それも少々至近距離で。女性が自分のことだろうとふとおもむろに見上げると、そこにいたのは、男性。毛先が墨をつけた筆のように黒く染まっている、緩やかなカーブを描く銀色の髪。黄昏刻を示すような紅玉の瞳。太陽を知らないような白い肌。服装は白いワイシャツの上に黒いブレザー、さらにその上に黒がかった灰色のローブと白い羽衣を纏っていた。そして彼が座っているのは玉座のような大きな椅子。その姿と座っている玉座からして、ここは王室か何かだろうか。それにしては部屋の幅が王室よりも狭く、空間も薄暗い。一体ここはどこなのか、そして彼は何者なのだろうか、女性がそれについて彼に問いかけようとすると───

 

 

 

「──ジャンヌ・ルーラーさん、ようこそ死後の世界へ。俺は貴方に新たな道を案内する神・ジークです。貴方はつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、貴方の生は終わったのです」

「……えっ?」

 

 彼女にとって想像がつかない真実が、告げられた───

 

 

 

 

 

♢side:ジャンヌ

 

 みなさんはじめまして、私の名はジャンヌ・ルーラーです。16歳、自分と同じ名前だからとジャンヌ・ダルクに興味を示している女子高生です。ジャンヌ・ダルクだけでなく様々な歴史人物について色々と知るために歴史同好会に入ったり、地域のボランティアに参加したりと自主的に行動していたら、周囲はいつも私を遠巻きに眺めて、何やら噂話に花を咲かせていました。それだけじゃない、私はどういうわけかとても賢かったそうです。定期的に勉強してみたら、上から数える方が早いほどの順位に並んでいました。私、そんなに頭が良かったらしいです。無自覚でした……

 いや、今気にするところはそこではないですね。このジークさん?という神様らしい方から聞いた話によると、どうやら私は死んでしまったようです。しかし、一体何故……?あ、後……顔がかなりの好みです///どうしましょう、私、恋愛経験がないのですが……

 

「……やっぱり死んでしまったなんて信じられないか。突然の事だからな、無理もない」

「あの、何故私は死んでしまったのですか?」

「待ってくれ、それは今からこれで説明する」

 

 神様はそう言うと、胡座をかいたまま右横に設置されていた机に手を伸ばしました。机上には1枚の紙とホチキスで止められた紙束があり、彼は紙を右手で取ると顔の前に移し、しばらくしてふっと上空を見上げながら左手を翳しました。すると、私の前にモニターのようなものが一瞬で現れました。

 

 

 

 

 モニターの中では、ブレザー服の少女が畑の多い道路を歩いていました。しかも緩めに結んでいる金髪に白い肌……間違いありません、どう見ても今この場にいる私でした。その時の私は下校途中、ある女の子とすれ違いました。その子は誰かとメールを送り合っているのか、スマホの携帯画面を見ていました。歩きスマホですねこれ、危ない。

 少し行ったところでふと振り返ると、横断歩道を渡るさっきの彼女に、角張った大きな影が迫って来ていました。陽炎で歪んでよくわかりませんでしたが、あれは……

 

『……⁉︎トラック⁉︎』

 

 女の子はメールに集中していて気づいていない。このままだとあの子はトラックに轢かれる。もしそうなったらどうなるのか、想像がつかない。そう悟ったモニターの中の私は、咄嗟に全速力で走りだしました。今の私もあの光景を見たら、モニター通りの行動をしてたと思います。死ぬかもしれない人間を見て見ぬ振りなんてできるわけができませんから。

 

『危ないッ!』

『えっ?』

 

 モニターの私は喉の奥から声を出し、それに女の子が反応した。トラックらしき影はもう寸前まで迫っていたので、その時の私は考える時間なんてなかったようです。

 

 そしてモニターの私は女の子の振り向く余地を見る間もなく、思いっきり力の限り突き飛ばしました。そしてトラックらしき影の高さを超えて映ったのは、私が背負っているであろう藍色の鞄でした───

 

 

 

 

「思い出したか?」

「……はい。私は、死んでしまったんですね……」

 

 映像と私の記憶はそこで途切れましたが、これでやっと思い出しました。ここに来るまでの事を、全て。最期の最期まで、私は善良の限りを尽くしたのですね。我ながら自分の行いには驚かされますね。自分の身を投じてまでして誰かのための事をして……あ、そういえば。

 

「……あの子は、どうなりましたか?」

「心配いらない。左足を骨折する怪我を負ったが、彼女は君の命がけの行いに感謝しているようだ。君が助けなかったら死んでいたとか……」

「そうですか、よかった……」

 

 怪我を負ってしまったとはいえ、何にせよ生きていたのならよかったですね。もし彼女まで死んでいたら後味ありませんから。

 ……ってアレ?神様、何故か罪悪感を感じているかのように表情に影を落としているのですが……

 

「大変、言いにくいのだが……彼女に迫ってたのは、トラックじゃなくてトラクターなんだ」

「……えっ?」

 

 トラクター?トラックじゃなくてトラクター?あの畑を耕す縦幅の短い車?そういえば、通学路の近くに田園地帯があったような……もしかして、私はトラクターに轢かれたと⁉︎

 

「さらに言いにくいことだが……君はトラックに轢かれて死ぬと思い込んで、恐怖に耐えられずにショック死したんだ」

「もっと酷い死に様じゃないですかッ⁉︎」

 

 盛大な勘違いして無意味な死を遂げただなんて……わ、私の今までの行いに何かが良くなかったと……?

 

「その……すまない。俺は人の生死を決める神ではないから、君のその最期に関してはどうすることもできなかった」

「あ、いえ、神様は気を落とさないでください……」

 

 逆にその優しさが私の罪悪感に触りますし……とにかく、今はここから先の事を聞くべきですね。死んだということがわかった今、私は何をすればいいのか聞かないと。

 

「あの、私はこれから先、何をすればいいのですか?」

「そうだったな、今からそれについて説明しないと」

 

 そう言って気持ちを切り替えた神様は、咳払いをしてから再び私と向かい合い、これから先のことについて説明してくれました。

 

「良き働きをした者には、永遠の日向ぼっこと言われている天国に行くか、記憶をリセットして同じ世界に新しく生まれ変わるかのどちらかを選ぶことができる。悪い人は地獄に行って自由の無い贖罪を受け続け、浄化されてから転生される。君はいつも善良の限りを尽くしていたから、天国に行くか生まれ変わるかを選べるぞ」

「天国か輪廻転生、ですか……」

 

 むぅ、どうすればいいでしょうか……何もない天国に行っても退屈しないのでしょうか?赤ちゃんになっても今の私みたいに善良な人になれるのでしょうか?どちらにせよ、これは厳しい選択肢になりますね……

 

 

 

「だが、君にはもうひとつの選択肢がある。異世界に行くことだ」

 

「……えっ?」

「君がいた世界とは全く異なる場所……異世界に行って、そこにいる魔王を倒すという、冒険者としての道だ」

 

 その言葉を聞いて、私は耳を疑いました。ここでまさかの第二の選択肢が出てくるなんて思いもしませんでしたから。しかも異世界に行ける?何でしょうかそのRPGみたいな展開は?

 

「その世界は、魔王の侵略で人口が減っているんだ。最近は減少傾向にあるらしいが……ともかく、現状を見かねた天界のトップは他世界から若くして死んだ者を転生させ、移民させると同時に魔王を討つ冒険者を募ることにしたんだ」

「な、なるほど……あ、あの、ところで、記憶は引き継げますか?」

「以前はできなかったな。稀に前世の記憶が残っている人もいるが。けど、全消去は嫌だという人がいっぱいいた。そのせいで異世界転生の話を持ちかけても、断る人が多かった。だから記憶も力も姿も、何もかも引き継いだ状態での異世界転生を特別に許可したんだ。その世界の言語がわかるようになる翻訳機能付きでな」

「ワォ……」

 

 今の時期はそこまでハイテクになるほどの機能がつくとは……

 いやちょっと待ってください?この展開、なんか見たことがあるような……あ、そうだ!図書館で興味本位で読んだ小説にこんな話がありました!一度死んで、神様の力で異世界に転生させてもらって、そのチート能力で無双したり逆にそのチート能力に苦悩したりとする感じですよね⁉︎それを私も体験できると⁉︎こんなチャンス滅多にないのでは⁉︎

 

「で、君はどうする?」

「もちろん異世界に行きます!」

 

 私の答えは即答だった。それもそのはず、こんな夢のある機会は何時待っても訪れるわけありませんし、死んだのだから今度こそ後悔のない最期を生きたいですし!

 

「わかった。早速だが、ジャンヌ・ルーラー」

「ジャンヌでいいです」

「……そうか。ジャンヌ、これを見てくれ」

「なんでしょう……って、うえぇ⁉︎」

 

 神様は先程まで持っていた紙を机上に再び置くと、次に紙束を手に取り、フワフワと浮かせながら私のもとに移動させました。いや浮いてきた⁉︎紙が⁉︎神様だというから何かしら普通じゃないことをしてくるだろうとは思っていましたが、実際にそれやるとやっぱりびっくりしますよ⁉︎

 

「異世界行きを決めてくれた君に、俺からのプレゼントだ。強大な敵を倒せる剣や鉄壁とも言える鎧など、ひとつだけ異世界に持っていける物を、何でもいいから選んでくれ」

「え、あ、はい!」

 

 神様の力に驚きながらも、私はその紙束を一通り見ました。リスト内には、先程神様が口にした強力な剣や鎧を始め、野太いチャージバスターが撃てる銃、強い格闘家になれる赤いハチマキ、狩りのオトモから主人のお世話まで何でもやってくれる猫など、単純明快なものから特殊な物まで、様々な種類のものが書かれていました。聞いたことのある武器とか、身体強化とか、魔眼とか……なんか、色々あるんですね。あ、魔剣グラムという物は『SOLD OUT』って赤い印鑑が打ってありますね。これは既に先着がいたのでしょう。しかし、種類が多すぎて悩みますね……

 

「あの、神様……?」

「ジーク」

「えっ?」

「最初にも言っていたと思うが、俺はジークだ。神かつほんの僅かな時間でとはいえ、死者とは君達人間みたいに友好的になりたいんだ。だから俺の事はジークと呼んでくれ」

「は、はい……」

 

 人間と友好的になりたい神様、ジーク様ですか。なんか新鮮味があっていいような……

 

「えっと……ここに書いている特典じゃないとだめなのですか?」

「それなら心配いらない。思いついて実現可能なら、こちらで作成してから渡す。だがそのリストには載っていない、生態系を大きく壊すようなものを生み出すことや多数の他者を操るようなもの、何でも産み出せる力などはダメだが」

 

 さすがにチート能力はダメですか。しかし、作成させるものと言っても何にすればいいのか……

 ん?ちょっと待ってください?彼、神様ですよね?死んだ人間の魂をすくい上げて、特典付与するくらいの力を持っているんですよね?それに、私達人間みたいに友好的になりたいと……

 

 その時、私は咄嗟に決まった特典を、彼にリクエストした。今すぐに実行しないといずれ後悔する、そう思いながら。

 

「決めました!

 

 

 

 貴方にします!」

 

「わかった」

 

 ジーク様は即答した。どうやら神様を連れていく特典は大丈夫のようですね。よかったよかった……

 

「……えっ?今、なんて言ったんだ?」

「……アレ?ダメでした?」

 

 ジーク様の顔、青ざめてますが……な、なんか私、言ってはいけないことを言ってしまいました?神様を連れていくのも厳禁?あ、これはダメですね。仕方ありません、別の方に……

 と、次の瞬間。床には青い魔法陣が映し出され、私達の周りが半透明な青い壁で覆われ、私達の足元は微かに浮きました……ってこれ、私が言ってはいけないお願い事を言ったから裁きが下るやつですか⁉︎しかもジーク様まで巻き込んで……彼は被害者ですよ⁉︎

 そう焦っていると、そこへ純白の衣を纏った愛らしい顔立ちの天使が降りてきました。良かった、ジーク様を助けて……

 

「わかりました。今後のジーク様の仕事は、私が引き継ぎます」

「えぇ⁉︎」

 

 ちょ、貴方多分神様よりも下の階級の方ですよね⁉︎上の人の承諾なしに勝手に決めちゃっていいんですか⁉︎ってジーク様、何『決まってしまったのなら仕方ない』って顔してるんですか⁉︎天界で大問題になりますよ⁉︎諦めないで⁉︎

 

「それではジャンヌ・ルーラーさん、あなたが魔王を討ち取る勇者となれることを祈っています……あなたの異世界冒険者生活に祝福を」

「あ、あの、一回待ってくださ────」

 

 私がその天使の子を静止しようとするのを待たずに、私達の体は天へと昇っていきました。そして真上にだけいつの間にか空いていた丸く白い光の穴に入った瞬間、私の視界は真っ白になり、意識を手放してしまいました。

 

 困惑したことにより、うっかりとあるリストのひとつに触れてしまったことにも気付かずに─────




皆様、記念すべき(?)第1話はいかがだったでしょうか?ジャンヌが転生者、ジーク君が神様と、なかなか新鮮味があっていいのではないのでしょうか?自分が今までに投稿している小説同様まだまだ良いになれるとは思いませんが、それでも精一杯この小説の投稿にも気合いを入れていきたいと思います!次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この女子高生と神に衝撃?な展開を!

申し訳ないとは思っていますが、先輩ユーザーの物語の展開を参考にしてしまいました!誠に申し訳ございません!だが参考になってよかったという本心が強くて何故か私は謝れない。


 最悪な死を迎えて、死者に新たな道を案内する神・ジーク様の勧めで魔王を倒すために異世界に行く事になった私、ジャンヌ・ルーラー。転生時にもらえる特典でうっかりジーク様を選んでしまい、天使の子によって2人一緒に異世界に飛ばされてしまいました。その時私は取り返しのつかない事をしてしまったのだなと感じ、罪悪感を持ってしまいました……

 

 異世界に送り込ませるために私達を包み込んだ光は消え、景色がガラリと変わってきました。上を向いていた私の視線の先にあったのは、澄み切った青い空。私は顔を下げて辺りを見渡しました。

 

「こ、ここが……異世界……」

 

 どうやらジーク様の話は本当でした。周りには赤い屋根と茶色い壁でできたレンガ製の家が立ち並んでおり、耳をすませば川の流れる心地よい音が聞こえてきます。彼と対面していた薄暗い空間とは打って変わり、まるで中世ファンタジー作品にありそうな街──その中の人気のなさそうな場所に、私は立っていました。

 思わず私は圧巻しました。本当に私は異世界に来たのだという事に。やっぱりこんな機会は滅多にない、異世界転生を選んで正解でした。ただ、ひとつだけ不正解なことがあります。それは、冒頭でも仰いましたが……

 

「まさか俺まで異世界に飛ばされるとは……こんな異例は初めてだとみんなが騒然とするだろうな」

 

 彼を、神様であるジーク様も連れてきてしまった事です。私が神様の力に思わず惚れてしまい、転生特典として選んでしまったのが原因です。ホント何やってしまったのでしょう、私……あ、よく見るとジーク様、ローブと羽衣がありませんね。この世界に飛ばされた時に落としたのか、消えたのか、それとも魔法でしまったのか……とりあえず、何か言わないと。

 

「あの、嫌なら帰っていただいても……」

「そうはいかない。異世界に送り込んだ人を特典なしにさせるという後味が悪いことはしたくないんだ。だから、君がミッションをクリアさせる……つまりは魔王を倒すまでは帰るつもりは一切ないということだ。そこはきちんと全うする」

「そ、そうですか……」

 

 えっと、それってしばらく私と共にこの異世界にいるということでしょうか……?ということは、早く魔王を倒さないといけないのでは⁉︎じゃないと天界のバランスが崩れそうで……!

 

「焦りは禁物だ。それに、俺と同じ神は何人かいるから6・7人ぐらいここに飛ばされても問題はない。あまり気にしないでくれ」

 

 か、勘が鋭い……と、とりあえず天界の方は問題ないようですね。よかった……

 

「ついでに言っておくが、一応俺はこの世界ではそこそこ信仰もある。神気は抑えてるけど、ここにいることがバレるとどうなるのかわからないのだから君も口実しないようにしてくれ」

「あ、はい、ジーク様……」

 

 なんか、シュールさを感じますね……

 

「──呼び捨てでいい」

「えっ?」

「飛ばされる前にも言ったが、俺は死者とは君達人間みたいに友好的になりたいんだ。もう君は死者じゃないが、それでも人間と仲良くなりたいことに変わりはない。それに、天界から降りた今の俺は自分が神であることを伏せている。だから遠慮せずに呼び捨てで呼んでくれ」

 

 て、天界にいる時と地上にいる時とできちんと立場をわきまえているのですね。たしかに、地上に神が降りるなんてあり得ませんものね。そもそも地上に降りて自分は神だと言っても他人からは変な人だと思われるだけですし……とはいえ、神様を呼び捨てはやはり気が引きますね。でも人と友好的になりたいという彼の願いを蔑ろにするわけにもいきませんし、どうすれば……

 あ、いいこと思いつきました!これは私的にはいい案だとは思いますが、後は本人がいいのかどうか……聞いてみる価値はありますね。

 

「じゃ、じゃあ、ジーク君って呼ばせていただいてもよろしいでしょうか……?」

「……えっ?ジーク、『君』?」

「あ、はい。友好的に貴方と話せるようになるために、親しみのある呼び方を考えてみたのですが、よろしい、でしょうか……?」

「………」

 

 だ、黙り込んだ……表情はわかりませんが、どう思っているのでしょうか……?

 

「──ジーク君、か。悪い気はしないな。ありがとうジャンヌ、その呼び方、気に入った」

「ど、どういたしまして……」

 

 よ、よかったァアァアァア!どうやら問題はないようですね!本人は内心ではどう思っているのかは詳しくは分かりませんが、とにかく気に入っていただけたのなら問題ありませんね!

 

「それでジーク君、これからどうするのですか?」

「どうするって……魔王を倒すということは、まず冒険者にならなきゃいけないんじゃないのか?だがまずは冒険者になる資格が必要だ。着いて来てくれ、少なからずとも冒険者登録ができる場所はわかる」

「あ、はい!」

 

 なるほど、まだ私は冒険者になってはいないようですね。でしたら今すぐに魔物を退治しようにも、返り討ちに遭ってすぐに第二の人生が終わってしまいそうだから、準備とかしなくては。少なくとも私にはこの世界の知識は皆無ですから。それにしても、冒険者登録には何か必要なこととかあるのでしょうか……?免許とか試験がいるのですかね?

 ところで何でしょう?このガシャンガシャンとした音は?私が歩く度にそれは毎回発生するし、よく思えば私、いつの間にか何か持っていますね。何でしょう?こういう感覚がこの世界では当たり前なのでしょうか?

 

「……ところで、そろそろ言わなければならないのだが」

「あ、はい!なんですか?」

 

 いけないいけない、考え事をしていた。何やらジーク君が言いかけようとしているみたいですが、一体何でしょうか……?

 

 

 

「君の格好、思いっきり変わっているのだが気づいていないのか?」

 

「……えっ?」

 

 この人今なんて言いました?私の格好が変わってる?まさか、私が今感じている不思議な感覚と何か関わりがあるとでも?と、ふと私が自分の状態を確認するために視線を落とすと──

 瞳孔に映ったのは、清貧を示す黒い服に、清純を主張する白銀の鎧。右手には柄の先端部分が尖っている、何らかの紋章が描かれた大きな白い旗。咄嗟に触れた前髪辺りにも純白の額当てが。これはどう見ても別人の姿。でもこれはどう見ても私の今の格好……えっ?なんでこんな姿に?

 

「えっ?なんでこうなったのですか?」

「多分だが、異世界に転送される時に咄嗟にリストの『裁定者セット』に触れたのだろう」

「うえぇ⁉︎」

 

 嘘ッ⁉︎いつの間にッ⁉︎あ、よく思えば飛ばされる前に、不意に何かが右手に触れていたような……

 

「そのセットにはその格好と武器だけではなく、兵士の士気を極限まで高める、魔術を逸らす、旗を使って味方を守護する結界を張るということができるんだ」

「け、結構豊富なのですね……」

 

 ど、どう見ても防御的にチートですね。うまくこの力を使い慣れれば擬似的な無敵状態に……ん?アレ?旗?兵士の士気を極限まで高める?それって……

 

「ファンタジー版のジャンヌ・ダルクそのもの、ですか?それを私が特典で?」

「そうなるな、多分」

 

 やっぱり!ジャンヌ・ダルクと言ったら、旗で兵士を奮い立たせる女騎士!雰囲気だけでもそれを実感できるなんて、実に嬉しいことじゃないですか!……ってアレ?でもそれだと……

 

「特典がふたつあるから、ひとつは返しておくべきなのでは?」

「返却はできないな。うっかりで必要以上の特典を受け取ったとしても、異例さえなければそれらはもう所有者のものになる。だが不慮な事故で二つ以上特典を受け取ったのならば処罰は下されない。だから今後のことは考えなくていい」

「あ、はい……」

 

 結局もらった物は返却不可ですか……というか、単にすぐには帰りたくないだけなのでは……?

 

「まぁ、この世界を満喫してみたいという下心もあるのだがな」

 

 予想的中ッ⁉︎勘が鋭いですよ神様⁉︎まずい、これ以上変なことを考えない方がいいのでは……

 

「き、気を取り直して!冒険者登録ができる場所へ案内してください!」

「む?そうだったな、すまない。こっちだ」

 

 いけないいけない、本題から思いっきりずれてしまいました……早く冒険者登録をしないと。

 

 その時、私達は知る由もしませんでした。私達のうちどちらかが痛恨のミスを犯してしまったことに──

 

 

 

 

「着いたぞ、ここが冒険者登録ができる場所・ギルドだ」

 

 しばらくして、私達の目の前には、他の建物よりは目立つ外装の、紋章らしき物が記されている建物がひとつ見えた。扉からは多くの人間が出入りしており、みんな装備を固めていたので、恐らく冒険者登録をすでに済ませていた者達でしょう。ここなのですね。

 ジーク君が扉を開けて中に入ったので私も続けて入った瞬間……

 

「(酒臭っ⁉︎)」

 

 こ、ここがギルド。昼間なはずなのにもう酒の臭いが強く……あ。正面に騎士が剣を地面に突き立てている石像が飾られていますね、カッコいい。冒険者のみなさんは木製の席に座っており、他愛もない世間話をしながら楽しそうに仲間と酒を交わしていました。クエストが貼られているであろう掲示板の前では、何人かの冒険者がそれら(クエスト)を物色しているみたいですが……

 

「おい、そこの銀髪の黒い兄ちゃんに金髪のギンギラ甲冑の姉ちゃん」

「ん?」

「はい?」

 

 視線の先にいたのは、出入口付近の席に座ってビールみたいなシュワシュワとした泡が出ている黄色い飲み物を飲んでいた、上半身裸の上に肩パッドとサスペンダー、そしてモヒカン頭でヒゲと、かなり世紀末感溢れる漢の人。恐らく冒険者の1人なのでしょう……って、あの人どう見ても『北○の拳』に出てくる人っぽくないですか⁉︎怖い、なんか怖い!

 

「アンタら、冒険者かい?」

「今からなるつもりだ」

「へっ、そうかい命知らず。ようこそ地獄の入口へ!ギルド加入は、そこの奥にあるカウンターだ!」

 

 ジーク君が正直にそう答えると、険しい表情で睨みつけていた世紀末の方はニヤリと笑い、大声で歓迎の言葉を告げてくれました。アレ?なんか見た目と違って結構優しそう……

 と、その男の人が親指で指した方向へ目を向けると、そこには確かに受付らしき窓口がいくつかありました。受付係らしき金髪ロングヘアーの女性の方が、クエストの紙を持ってきた冒険者の相手をしていました。

 

「ありがとう。助かるよ」

「あ、ありがとうございます!」

「おうよ!」

 

 本当に優しかった……と、とりあえず何人かが受け付けで並んでいるようなので、早速ジーク君と一緒に並ぶとしましょう。にしても他の受付が空いていますね……なのにこれだけ人が行くってことは、あの人はそれなりの腕利きなのかもしれませんね。

 

「はい、次の方どうぞ。今日はどういったご了見で?」

 

 あ、やっと私達の番ですね。

 

「私達、冒険者になりたいのですが」

「冒険者志望の方々ですか。では、登録手数料の千エリスをお支払い願えますか?」

 

 ……えっ、登録手数料?えぇっ⁉︎お金を払わなければいけないのですか⁉︎しかもエリスってこの国の通貨ですよね⁉︎円とかドルとかもダメですよね⁉︎どうすれば……と、焦っていた私にジーク君が肩を優しく叩きました。

 

「俺が出す。最初から手数料も渡すつもりだったからな」

「ジ、ジーク君……」

 

 優しい……流石神様優しい!よかった、路頭に迷いそうでした……

 

「すみません、千エリスですよね?今から出しま……」

 

 と、ジーク君が懐に手を入れた瞬間、硬直してしまいました。ど、どうしたのでしょうか?

 

「………」

 

 するとジーク君は何も言わずに、私の腕を優しく引っ張ってそのまま列から離れていきました……ってうえぇ⁉︎///腕を引っ張られてる⁉︎しかも手首ら辺を掴んで……!無意識にやっているだろうとはいえ、これはもう恋愛映画とかでいうアレではないでしょうかッ⁉︎は、恥ずかしい……!いやそれよりも、何故急に列から外れたのか聞かなければ……

 

「ど、どうしたのですか急に?」

「……落とした」

「えっ?」

 

「ギルドへ向かう途中で、財布落とした……」

 

「……嘘ぉ……」

 

 まさかの神様のうっかりミス⁉︎神様が財布落とすことってあるのですか⁉︎どうしましょう、これじゃあ冒険者になれません……!

 

「で、でしたらジーク君は財布を探しに行ってください!私は念のため、貴方の信仰者だからといって冒険者の方々にお金を貸してもらうように頼み込みますので!えっと、何教ですか?」

「ジーニアス教。だがそれは3ヶ月前に後輩の神に勧められて布教を始めたばかりなんだ。だから、この国の国教は女神エリスを信仰するエリス教が多い。俺を信仰してるのは寧ろ少数派なんだ」

 

 エェ、何それェ……それなら簡単にお金貸してなんて言えませんね……仕方ありません、一緒に来た道に戻って財布を探さなければ。と、その時でした。

 

 

 

「ねぇこれ、君達の落し物?」

 

 私達の前に1人の冒険者の方が現れました。その人は銀色の髪に、白く透き通った肌。右頬には戦いの中で負ったであろう傷跡が一つ。上半身は胸元しか隠していない黒のインナーに緑色のマントと浅葱色のマフラー。下半身は膝下にも届かないスパッツとホットパンツのみという、露出度の高いラフな格好をした少女の方でした。

 と、その人はふと何かをジーク君に投げ渡しました。それは、メンズが使うであろう革仕様の財布でした。どうやらそれはジーク君の財布らしいですね。ジーク君はその財布の中身を咄嗟に確認し、ホッと一息つきました。中身は無事のようですね、よかった……

 

「すまない、ありがとう」

「いいっていいって。財布は冒険者にとっては必須アイテムのひとつなんだから、さ……?えっ⁉︎」

「………?……⁉︎」

 

 突然、その少女は視線に映ったものを見た途端、声を失い茫然とした。その視線の先にいるのは……私の隣にいる、ジーク君でした。ジーク君もその少女を見た端に同じように口を開けっ放しでポカンとしていました……えっ?ジーク君の知り合い?でもジーク君、この世界に来たばかりなのでは?

 

「え、ちょ、え?な、なんでここに……」

「……ちょっと場所を移そう」

 

 ジーク君はそう言うと、私と少女の腕をとって急いでギルドを出て行きました……って⁉︎また腕を引っ張られて……⁉︎///どうしましょう、私の心臓、持つのでしょうか……⁉︎

 

 

 

 

 ジーク君に連れられてやってきたのは、見渡すだけでも人気がないとわかる路地裏。頭上では干された洗濯物がはためき、日の光を遮っていました。ジーク君は周りに誰もいないことを確認すると、冷や汗を流しながら少女に訊ねてきました。その少女も同じく冷や汗が出ているようです。

 

「……で、何故君までここにいるんだ?()()()

「……それはこっちのセリフですよ、ジーク()()

 

 少女のさっきの軽い口調は、打って変わって穏やかで丁寧な口振りになったようですね。しかもジーク君の事を先輩と呼んでいたようですが、彼と何か関わりが……?ん?ちょっと待ってください?先程ジーク君が彼女の事を、エリスって呼んだような……ハッ⁉︎

 

「エリスって……もしや貴方が、この国で信仰されている、女神エr」

「声が大きいよ!」

「むぐぅ⁉︎」

 

 必死な様子を見せた少女、いえ……女神エリス様に口を押さえられました。しかし、こんな凛としてどこか幼さを感じる少女が女神様だなんて……想像が全くつきません。

 

「というか先輩、この子は一体誰ですか?何故貴方と一緒に……」

「順を追って説明する。実は──」

 

 ジーク君は今までの経緯について、詳しく、分かりやすく説明しました。私が死んだあの恥ずかしい経緯を、誤ってジーク君を特典にしてしまったことを、不慮な事故で私が2つ目の特典を手に入れてしまったことを、全て。

 

「それは……災難でしたね」

「別にそうでもない。異世界に一緒に飛ばされてその生活を楽しむのも悪くないと思ったからな」

「……それでもホント、申し訳ないと思っております」

 

 いやジーク君が実際に何を思ったのか分かりませんが、どうであれやっぱり罪悪感というものはありますね。神様を連れて行くとかチート以前に異常かと思われるでしょうから……

 

「次は俺から質問させてもらう。何故君がここにいるのか、教えてくれ」

「やっぱりそうなりますよね……」

 

 エリス様は物憂げな困り顔でそう呟くと、渋々語り始めました。

 

「まぁ、なんといいますか……その、ある冒険者の祈りに応え、一時的に正体を隠して降臨してるんです」

「そうなのか。その冒険者は、今はどうしているんだ?」

「丁度その子を受け入れてくれるパーティーを探してたんです」

「ちゃんと仕事はしているみたいだな」

 

 なんか、このやり取りを見ると、お二人は先輩後輩というより兄妹みたいに見えますね。ジーク君がきちんとエリス様の仕事を賞賛しているみたいですし、エリス様褒められて少しだけ照れてましたし。それにしても、その冒険者って一体どんな人なのでしょうか?

 

「あの、エリスさ──」

 

 話が一段落したところで私がそのことについて聞こうとすると、突然エリス様が人差し指で口を押さえる仕草を見せてきました。あ、可愛い。

 

「ジャンヌさんストップ。ここではあたしのことは、エリスじゃなくてクリスって呼んでよ。正体がバレると厄介事になるからさ」

 

 口調も変わり、エリス様……ではなくクリスさんとしての振る舞いをしてきたみたいですね。ジーク君といいこの人といい、神様ってあまり自己主張しないのですね。以前神を主張した方が何かやらかしたのでしょうか?

 

「それは失礼しました。で、ではクリスさん、その冒険者とは一体──」

「あっ!そういえばこれから大事な用があるんだった!忘れてたァ!」

「えっ」

 

 何故かか表情が引きつっているような表情を見せたクリスさんは、慌ててその場を去ろうと後ろに回れ右して走り去ろうとする様子を見せてきました。いや、大事な用がある割にはさっきまで大分ゆったりのんびり話してましたけど、おとぼけなのですか?

 

「すみません先輩、また今度会いましょうね!」

「あぁ、エリ……クリスも気をつけてくれ」

 

 クリスさんはジーク君に一言別れの挨拶をすると、流石盗賊といった具合の電光石火の足で走り去って行きました。あの人に祈りを込めた人の事、聞きたかったです……

 

「……あ、彼女に祈りを込めた冒険者、どんな人なのか聞くの忘れてた」

 

 あ、ジーク君も同じ心境だったのですか。なんか似てる部分がありますね、私達。

 

 まぁ聞けなかったのは仕方ありませんね。この事は、また次の機会にしましょう─────




このすば本家ではいきなりクリス参戦はしないのですが、逆にこういうのもいいのではないかと思ってついやっちゃいました。次回はやっとジャンヌとジークが冒険者登録、そして初クエストに挑戦します!次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この2人の駆け出し冒険者に初クエストを!

いざ行かん、闘いの聖地へ!的な?とうとう今回はジャンヌとジークの初クエストです!果たして初日でクリアするのでしょうか?それでは本編をどうぞ!


 うっかりヤバい転生特典を2つ手に入れてしまって、これだと下手すれば無双してしまいそうな予感がしてしまった私、ジャンヌ・ルーラー。『裁定者セット』でいきなり強くなったことを知った後、ギルドで冒険者登録をしようとしましたが、神様・ジーク君がまさかの財布を落とすという非常事態を招いてしまい、路頭に迷いそうになりました。

 しかし、盗賊冒険者のクリスとなってこの異世界に現存していたジーク君の後輩神様・エリス様がその財布を拾ってくれました。感謝しかありません。ですが、彼女曰く『ある冒険者の祈りに応え、一時的に正体を隠してこの世界に降臨している』と言っていた事ですが、その冒険者がどんな人なのかは分からずじまいになりました……

 

 それはそうと、冒険者登録をすることになった私達。先程の受け付けの方……『ルナ』と書かれた名札を付けているその人は私達の登録手数料を受け取った後、まるで隠されたお宝の場所が記されているかのような古びた紙に見えるカードを手に受付から出てきました。身分証明書か何かでしょうか?

 

「このカードは冒険者の身分証明書となるカードで、冒険者には必ずこれを所持してもらうよう義務付けられています。このカードがなければクエストを受けることはできません。冒険者カードには様々な情報が記載されており、冒険者様の名前からレベル・職業・ステータス・所持スキルポイント・習得スキル・習得可能なスキル・冒険者になってからの経過日数・過去に討伐したモンスターの種族・数などが自動的に更新され、表示されます。偽造は禁止しておりますのでご注意ください。また、紛失された場合はギルドに申し出てください。お金はかかりますが、再発行いたします」

 

 な、長い……説明がここだけでも長いですね……とにかく、私達の記録はそのカードが勝手に更新してくれるみたいですね。でしたら偽造もできないはず、これは不正を防ぐのにいいシステムです。

 

「全てのモンスターには魂が宿っており、人はモンスターを倒せばその魂を吸収し続けます。そして、ある一定の量まで吸収したところで人は急激に成長することがあります。これを俗にレベルアップと言います。レベルを上げるとスキルポイントがたまっていき、こちらを消費することで新たなスキルを覚えることができます。なお、素質次第ではレベル1の時点で多くのスキルポイントを取得できます。新たにスキルを獲得する際には、冒険者カードを操作し『習得可能スキル一覧』に出ているスキルを押してください……冒険者カードについての説明は以上です」

 

 なるほど、最初からスキルを獲得できる場合があるのですか。しかも実感的にレベルを上げることもできると……なんかRPGの世界にリアルに入ると、私の元いた世界とは歴然とした便利さを感じさせます。

 

「では、まずこちらの書類に必要事項を記入していただけますか?」

「「はい」」

 

 早速冒険者登録の準備に取り掛かりましょうか。そう思いながら私達はペンを取ると、書類に自分の名前・身長・体重等々、必要事項を記入していきました。どうやら体重は私もジーク君も45Kg前後みたいですね……出身地を聞かれた際はどうしようかと考えましたが、どうやら必要なかったようです。もしあったらどう誤魔化せばいいのか悩みましたが……

 

「はい、お名前は……ジャンヌ様とジーク様ですね。ではお次に、こちらの水晶に手をかざしていただけますか?」

 

 書類を受け取り内容を確認したルナさんは、カウンターに置かれていた水晶の下に冒険者カードを置いたみたいですね。あ、綺麗な水色に輝く水晶が。綺麗ですね。そしてその周りには、見たこともない機械が取り付けられていますが、何でしょうこれ?

 

「ジャンヌ、最初は君が」

「あ、はい!」

 

 ジーク君に促されながら、私は水晶に右手を翳してみました。すると水晶はひとりでに輝き出し、周りについていた器械が動き始めました。そして、下に置いていた冒険者カードにレーザーを放ち始め、何やらの世界の文字を記していってますね。おぉ、どういう意味なのかわかる……翻訳機能すごいですね。これが付く前の異世界転生者はこれを翻訳するのにどれだけ苦労したのでしょうか……?カードの冒険者氏名欄に私の名前が記されると、次にレーザーはステータス欄へ移り、続けて文字を記し始めました。私のステータスはどんな感じでしょうか?

 

「はい、結構で……ッ⁉︎こ、これは……⁉︎」

「?」

 

 あ、アレ?ルナさん目を見開いていますが、私何か異常なところがあるのでしょうか?

 

「貴方、なかなかの数値をお持ちになっておられますよ⁉︎筋力・生命力・幸運は平均値並みですが、知力・魔力・器用度・敏捷性・魔力容量は平均値をほぼ大きく上回って……!しかも見たこともないスキルもあって……貴方、一体何者なんですか⁉︎」

「いや、ただの新米ですが……」

 

 わ、私のステータスってそんなに高いのですか……多分『裁定者セット』のおかげでそうなっているだけかと思われますが、とにかくその数値ならクエストに困ったことはしばらくなさそうですね。ギルド中の冒険者のみなさんが私のことを見ていますね。『美人で聖女っぽいのにステータスも高いなんて』という声も上げる人もいるようですが、なんか照れますね。

 

「つ、次はジーク様のステータスも測りますね」

「はい」

 

 ざわめきが止まぬまま、ジーク君のステータスも測るらしいですね。神様は一体どんな数値を……

 

 

 

「なっ──なんですかこれェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエッ⁉︎」

「「⁉︎」」

 

 エッ⁉︎すごい食い入っているじゃないですか⁉︎しかもあまりにも大声だったのかギルド内にいた冒険者のみなさんも何事かとカウンターに集まってきましたね。い、一体何が……

 

「運は平均値ですが……そ、それ以外のステータス全てが、大幅に平均値を超えてます!というか、こんなにも高い数値初めて見ました!特に知力・器用度・敏捷性・魔力容量が半端じゃないです!それ故に貴方にまで見たことのないスキルが……ホ、ホントに貴方、ただの新人ですか⁉︎」

「……はい、ただの田舎者です」

 

 嘘ッ、私以上の数値を持っている……⁉︎か、神様ってそれほどまでにすごいのですね、完敗です……

 

「マジかよ⁉︎こりゃスゲェな!」

「先程のお嬢ちゃんに続いて2人目か!」

「これなら魔王討伐も夢じゃねぇな!」

 

 突然の大型ルーキー登場かというように、酒場にいた彼らは歓喜の声を上げていますね……なんか、私達初日からとんでもない注目を浴びてしまいましたね……

 

「お二人とも、このステータスなら最初から上位職はもちろんのこと、どんな職業にだってなれますよ!こちらからお選びください!」

 

 提示された職業一覧には色んな職業が書いてありますね。アークウィザード・ソードマスター・戦士・盗賊・クルセイダー・アークプリーストと……

 

「ア、アレ……?」

「?どうかしましたか?」

 

 突然何やらルナさんが困惑していますが、どうしたというのでしょうか?

 

「いやその、何故かジャンヌ様の冒険者カードの職業の欄が、最初からアークプリーストになっておりまして……一旦外そうとしても何故か拒絶されて……」

「えっ?」

 

 それって、私はアークプリーストにしかなれないと……?えっ、何ですかそれ?もしかして、この『裁定者セット』のせい?

 

「で、ですが!アークプリーストは回復職の中でも上位のクラスです。蘇生魔法も使え、前衛に出ても問題ない強さを誇る万能職ですよ!この職業のままでも損はないかと!」

「な、なるほど……」

 

 で、でしたら問題はなさそうですね。回復もできて攻撃も良し……それなら上手くパーティーメンバーのタメになりますね!

 

「ではそのままでお願いします」

「かしこまりました!ジーク様は如何なさいます?」

「俺はルーンナイトで」

 

 ルーンナイト……?説明欄によると、ルーンナイトは剣術と魔法を匠に使って戦う魔法剣士らしいですね。魔法も使えて剣術もすごいというこの職業……それも中々の職業じゃないですか!すごいですジーク君!こんな職業結構強そうですよ!

 するとクラス決定の手続きが終わったのか、ルナさんは私達に冒険者カードを返却し、満面の笑顔で言った。

 

「冒険者ギルドへようこそ、ジャンヌ様、ジーク様!今後のご活躍を期待しています!女神エリス様のご加護があらんことを!」

 

 ま、また賞賛されましたね。なんか、悪い気はしませんね……

 

 

 

 

 その後私達はクエストを受ける前にスキルを習得することにしました。私は『ヒール』『ピュリフィケーション』『ターン・アンデッド』など、様々な魔法を覚えることができました。後、『料理スキル』も。ジーク君は『フリーズガスト』『ウインドガーデン』『ファイア・ボール』といった魔法と、『ライト・オブ・セイバー』といった剣術?のスキルを習得したようです。そして彼も『料理スキル』を……

 

「よし、早速初クエストといこう」

「はい!ルナさん、今承っているクエストは何かありますか?」

「あ、はい。少々お待ちください」

 

 ルナさんはそう言うと、ダッシュで掲示板の前へ行き、クエストを探し出し始めました。いくら高ステータスといえど、私達はまだレベル1。モンスター討伐となれば受けられるクエストは限られてきますね。あ、条件に見合うクエストが見つかったのでしょうか?掲示板から1枚の紙を引っ剥がしてダッシュで戻ってきましたね。

 

「では、こちらのクエストはどうでしょうか!3日間でジャイアントトード5匹の討伐!3日間以内であれば5匹以上討伐しても問題ありませんし、その分報酬が増えますよ!また、3匹以上討伐したのなら1日目、2日目でクエストクリアの報告ができます!初めての方にはオススメです!」

「ではそうしましょうか、ジーク君?」

「そうだな、それに……それらを討伐できれば、他の人達のためにもなるからな」

 

 えっ?それは一体どういう意味なのでしょうか?ともかく、私達はそのクエストに挑戦することにしました。ルナさんは私達のクエスト承諾を受けると、せっせとクエスト受注の準備を進めました。

 

「準備ができました。壁外へはギルドを出て真っ直ぐ進んだ先です。幸運を祈っております」

 

 

 

 

 

 

 街から少し離れた、ひらけた草原地帯。どこまでも続いていそうな緑色の地面に、澄んだ青い空と白い雲が広がる晴れた空。どこを写真で収めても芸術品になりそうな場所を、美味しい空気を吸いながら私達は歩いていました。歩いているだけでこれほど清々しさを感じるなんて、滅法ないことだと思いますね……あっ、そうだ。そろそろあの事についてジーク君に聞かないと。

 

「しかしジーク君、ジャイアントトードを討伐することが他の人達のためにもなるというのは、どういう意味なのでしょうか?」

 

 私がそう尋ねると、ジーク君は険しい表情をしながら先程自分が言ったその言葉の意味を説明してくれました。

 

「……ジャイアントトードは巨大な蛙。モンスターの中では下級に分類されているが、巨体だからどんなものでも丸呑みしてしまうらしく、毎年ジャイアントトードが活発になるこの時期、家畜や農家や子どもが多数行方不明になるらしい。先輩神様から聞いた話によると、だがな」

「……えっ?」

 

 Say what?何ですかその恐ろしい情報?下級の敵キャラであるクリ○ーやス○イムどころか、ゴーレ○ですら顔真っ青じゃないですかそれッ⁉︎まずい、これは気を引き締めなければ……!

 

「──いたぞ」

「……!」

 

 しばらく歩いたところで、ジーク君がそう知らせたので私達はピタリと足を止めました。歩く先に、草原の上に1匹だけポツンと立っている、遠くから見てもわかる巨体。四本の足を地面につけ、喉元を膨らませている怪物──かなりの巨大な緑のカエルがいました。アレが私達が探していたクエスト討伐対象モンスター……まさかの蛙そのままの姿の巨大モンスターだったとは……

 ん?ピョンピョンと飛び跳ねてこちらに向かってきましたね?って、いけないいけない!構えないと!揺れがッ!跳ねる度に地面の揺れが大きくッ!

 

「いくぞ、ジャンヌ!まずは1匹だ!」

「はい!」

 

 私達がそう気合いを入れた瞬間、ジャイアントトードは突然止まって口を開け、長い舌を私達に向けて伸ばしてきました。私は強く力を込めている両手に持った旗でその舌をはたき、地に伏させました。恐らく舌を伸ばしたのは、私達の体を巻きつけ引き寄せ、そのまま口の中に放り込んで飲み込もうとしたのでしょう。ですが私は簡単に飲み込まれるわけにはいきません!初日ですぐに死ぬのもたまったものではありません!

 そのまま私は駆け上がり、体を捻って一回転しながら再び旗を振るいました。

 

「ジャ、ジャンヌ⁉︎」

「お返しです!」

 

 そう叫びながら、ジャイアントトードの巨大な体を吹き飛ばそうとしました。しかし、現実は甘くありませんでした。弾力性豊かなジャイアントトードの身体は私の旗による攻撃の衝撃を吸収し、ぶよんぶよんと波打っただけでした。

 

「そ、そんな⁉︎……ッ!」

 

 私は咄嗟に後ろに下がり、旗を右手に持ち替えて左手を旗に翳しました。もちろん、魔法を発動させるために。

 

「『パワード』!」

 

 右手から放たれた淡い光を浴びた旗は強化され、少しは威力が増したと思います。しかし同じ攻撃手段は使いません。衝撃を吸収するあの体と言えど……

 

「これならッ!」

 

 先端の尖った部分によって貫かれるはず!そう思った私は再び掛け、旗をジャイアントトードの体に思いっきり刺すように前方に突き出しました。その予想は見事に当たったのか、物理攻撃を吸収したその体にその先端が突き刺さり、ジャイアントトードは耳がつんざくほどの悲鳴を上げました。よし、効いた!

 と思った矢先、何かねっとりとした感覚のものが私の体に巻きつかれ、私の体を捉えてました。それは、先程のジャイアントトードの舌でした。

 

「しまっ……キャア⁉︎」

 

 呆気なく私の体は宙に釣り上げられ、口の中に入りそうな位置まで上げられたところで巻きついた舌を緩め、私を落としました。ヤバい、飲み込まれる───!

 

 と、何かが私の体を抱えて瞬時に移動し、瞬時に地面に着地しました。咄嗟に目を閉じていた私はそっとその目を開くと、その視界に入ったのは……

 

「──大丈夫か、ジャンヌ」

 

 他の何者でもない、ジーク君でした。しかも私の足を担いでいた左手には先程ジャイアントトードの体に突き刺さった旗が。ジーク君が私を助けてくれたのですね……って、うぇええええええ⁉︎///こ、これって、お、お姫様抱っこなのでは……⁉︎こ、これはかなり恥ずかしい……ッ!

 

「すまない、手荒な真似をしてしまった」

「い、いえ……///」

 

 ど、どうしましょう、か、顔を直視できません……いやそれよりも、よく思えば突っ走りすぎましたね。謝らなければ……

 

「すみませんジーク君。私、1人でに動いてしまいました……」

「無事ならいいんだ。それに、戦いというのは何が起きるのかわからないもの。予想外な事態が起きるのも無理はないさ」

「ジーク君……」

 

 彼のこの温かみのある言葉に共感していると、先程私を飲み込もうとしたジャイアントトードが、『今度こそ』や『さっきの突きつけのお返し』などというように一度巻いて口の中に戻した舌を伸ばそうとした、その時でした。

 

「『アイスアロー』!」

 

 ジーク君が旗を地面に置いた左手を上空に掲げた瞬間、吹き出た水の塊が出てきてその塊の周囲を白く冷たい冷気が包み込みました。するとその塊は一瞬にして三角錐状の鋭く巨大な氷となり、ジーク君が左手を振り下ろした瞬間に発射。その氷はジャイアントトードの弾力性のあった体を貫き、地に伏せさせました。どうやら1匹目を倒したみたいです。

 

「初級魔法『ウォーター』を、中級魔法『フリーズガスト』で固めて氷柱に変えたんだ。魔法は魔法同士で重ねて新たな魔法を完成させることができるんだ」

「す、すごい……」

 

 私は体を優しく起こしながら、初日ながらも魔法を上手く活用したジーク君に圧巻しました。さすが神様、飲み込みが早い……

 

 と、次の瞬間。上空は暗くなりだしました。ふと上空を見上げた瞬間……私の視界は完全に真っ暗となりました。

 

「えっ?」

 

パクンッ

 

 

 

「………」ベトォ−

「えっと……大丈夫か?」

「だ、大丈夫、です……」

 

 私を別のジャイアントトードから、柄に青い宝玉が填め込まれている白銀の剣で助けてくれたジーク君はそう優しく気にかけてくれましたが、今の私の体はジャイアントトードの粘液でベトベトとなっていました。ウゥ、蛙の口の中ってこれほどまでに生暖かったなんて……ちなみに彼の剣によって斬られたジャイアントトードはその場で力尽きた状態で寝そべっていました。これで2匹目、ということでしょうか。

 

「と、とにかく、これで少しは戦い方が分かったかもしれません。ただ、まだジャイアントトードは出てくるかと思いますし、今日はこのくらいにさせていただけませんか……?その、先走ってしまいましたし、敵なしでの自主練もしたいですし……」

「そうだな。異世界での初クエストでこんな状態は仕方ない。心のケアも兼ねさせたいし、ここは撤退して明日3匹倒すとしよう」

 

 ジーク君はそう言って、私と同じようにギルドに戻ることにしてくれたようです。しかし……なんてザマですか私!ジャイアントトード1体討伐できなくて、その上で神様に手間をかかせるなんて、何が冒険者ですか!明日はこんな目には遭いません!今日の自主練を兼ねて戦いにさらに慣れて、リベンジに……!

 

『ゲ〜コゲコ』

「「えっ?」」

 

パクンッ

 

 

 

 

 

 

「………」ベトォ−

「………」ベトォ−

 

 結局2人揃って粘液で体がベトベトとなり、その代わり2人で偶然ながらも力合わせて3匹目を倒すことができました。ウゥ、まだベトベトします……で、今私はどうしているのかというと……

 

「えっと、その……本当にすみませんジーク君」

「気にする事じゃない」

 

 ジーク君におんぶされてもらっています……///えっ?何故そうなったのか、ですか?それは私が『チェーンバインド』という鎖を呼び出して相手を拘束する魔法を発動しようとした瞬間、思わず足を滑らせて挫いてしまったからです。お恥ずかしい……

 

「とりあえず、今日はもう風呂に入ろう。しかし、君は本当によかったのか?」

「え?何の話ですか?」

「寝床、馬小屋にしたのだろう?俺は構わないしいくら節約して様子見とはいえ、女の子の君が寝るのに適していないとは思うが……」

 

 あぁ、その事ですね。ジーク君の財布の中には数十万?もの札束がありましたからきちんとした部屋を借りれそうではありますが、この世界にはまだ来たばかりなので不本意にお金を多く使うわけにはいかないと考え、宿代を取られない馬小屋で睡眠をとることにしたのです。その代わり布団代わりが草ですし、臭い。もちろん寝る時もジークと一緒。異性に抵抗がないわけでもありません。でも……

 

「一回そこに行ってみたんですけど、やっぱり懐かしい臭いがして」

「懐かしい臭い?」

「はい。私、中学2年の時に日本一周の旅を友達と一緒にしまして。その途中で寝る所がなくて困っていた時に、競馬をやっていた女性の方が『馬小屋で寝泊まりしているけど良かったら』とそこを寝床として貸してくれたんです。そこで寝泊まりしていたとは驚きましたが、その時と同じ臭いがあそこでもしていたので……」

 

 ちょっとばかしは正当な理由を言えたでしょうか……?でも嘘をついているわけではないので、少しばかりは分かっていただけるといいのですが……

 

「……そっか、その時の優しさを思い出したのだな。それなら俺もそこで寝泊まりしてみよう」

「……!ありがとうございます!」

 

 分かっていただけたみたいですね!よかった……よし、シャワー浴びてご飯食べたら早速そこへ……

 

 

 

 

 

 

 と思いましたが中々安眠できていません。だって相手は神様とはいえ異性ですよッ⁉︎異性と一緒に寝るだなんていつ寝取られ……性的に襲われるかどうかわからないですよ⁉︎いや、出会ってばかりであろうとなかろうと人を襲うとか神様はしないと思いますが……

 

 後、近いッ!顔近いッ!///やっぱりジーク君の顔は私好みでイケメンでカッコ良すぎます……ッ!ど、どうしましょう、ぐっすり眠れそうに……

 

「──眠れないのか?」

「うひゃあ⁉︎///」

 

 起きてたッ!ど、どう言い訳すれば──

 

「やはりここでは寝づらいのか?それか俺と寝るのが……?」

「い、いえ!そういうわけでは!ただ、心臓がバクバクしていて……すみません、睡眠魔法とか出せますか?」

「睡眠魔法か、分かった」

 

 その時でした。ジーク君がゆっくり私の顔に翳した右手から加減が優しく淡い光が放たれ、私の体を優しく包み込みました。ア、アレ?自然と眠気が……

 

「『ジェントルスリープ』。対象に不安な感情を持たせずにゆっくり睡眠をとらせる魔法だ。これならいい夢も見れるだろう」

「むにゅ……あ、ありがとう、ございます、ジーク君……おやすみなさい……」

「あぁ、おやすみ」

 

 こんな便利な魔法があったとは思いませんでした。ありがとうございますジーク君、これで安心してぐっすり眠れます……

 

 この時、私は気付きませんでした。瞼が完全に閉じる前に、その瞳に少々恥ずかしそうに、頰を少し赤らめながら照れているジーク君が映っていたことに─────




ヌルヌルのジクジャン……悪くない(殴
いくらステータスが高くても苦労しないわけがないということが分かりましたね。次回は2人に新たなパーティーメンバーが加入されます!次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この新米パーティーにドM剣士を!

ドMの扱いってドS以上に大変そうじゃね?って感じを表現した回となります。物語の展開がいろんな意味でアレなのですが、大目に見てほしいです。


 高いステータスが出て嬉しく思いながら、アークプリーストとして冒険者デビューしたものの異世界の現実を思い知った私、ジャンヌ・ルーラー。昨日はジーク君がジャイアントトードを3匹(3匹目は私と協力して)倒し、シャワー浴びたりジャイアントトードの照り焼きのジューシーな味を堪能したり……う、馬小屋で、ジーク君と添い寝してしまったりして1日を終わらせました///

 翌日は資金を稼ぐために、午前でジーク君は土木系の仕事、私はギルドの酒場での給仕をしました。そして昼食を摂った後、私はジーク君にとある提案を出しました。

 

「パーティーメンバーの募集をしましょう!」

「仲間集めか、いいなそれ」

 

 当然ジーク君は私の言葉に興味を示してくれました。昨日は冒険者ギルドのある街──アクセルの街に帰った時はみんな私達を気の毒そうに見つめたり、何やらひそひそ噂話をしていたので結構恥ずかしかったです。受付嬢のルナさんは、今までに見たことのない程の苦笑を浮かべて大浴槽に行くよう促してくれましたが、やっぱり恥ずかしかった……

 そんな思いをもうするわけにはいかない、というわけで仲間を増やすことにしたのです。

 

「私達は新人でよくわからないことも多いですが、経験豊富な冒険者に力を貸してもらえれば、クエストもスムーズになると思います。それにその冒険者と会話すれば、私達の知らない情報を得られたりコミュニケーション力を伸ばしたりできて一石三鳥です!」

「そこまで考えていたのか。しかし、募集をしたとしてそう簡単に希望者が来るのか?」

 

 正論ですねジーク君。ですが心配いりません、この募集は成功します!その理由は私達にあるのですから!

 

「こっちは新人とはいえ2人とも上位職。昨日あれだけギルドを騒がせた期待の駆け出しと呼ばれたのですから、きっと仲間にしたいという人もいるはずです!」

「そうか、それなら納得がいくな。なら早速貼ってくる」

 

 どうやら賛同してくれたみたいですね……ってえ?もう求人募集の紙を作ったのですか⁉︎早ッ!まぁとにかく、私達は求人募集の張り紙を出すことにしました。ジーク君がもっとみんなとフレンドリーになりたいということで、条件は特になしにしました。

 

「あ、先輩!ジャンヌさん!昨日ぶりだね!」

 

 ふと張り紙を貼り終えて席に戻った私達の前に現れたのは、昨日出会った冒険者──女神エリス様という身分を隠している盗賊のクリスさん。

 

「どぉ?無事冒険者登録出来た?」

「はい。私はアークプリースト、ジーク君はルーンナイトとして」

「へー、2人揃って上位職なんてすごいね!クエストは受けたの?」

「一応……でも、これが意外と大変なんですよ」

「わかるよ、だから仲間を募集してるんだもんね」

 

 クリスさん、もう既に求人募集の紙を拝見していたのですね。ですがクリスさんは既に他のパーティーメンバーがいるはずでは……?あ、ジーク君の前の席に座った。ふと、私はちらりとエリス紙幣を確認し、そしてクリスさんの顔を見ました。えっ?何故こんなことをしているのかですって?決まってます、エリス様の時の姿とクリスさんの時の姿とで比較するためです。紙幣に描かれた女神エリス様は儚げな美少女のようですね。姿は獣耳のような物がついているベールで頭を隠し、長袖に膝下まで隠されたスカートという露出度の低い服装をしていました。髪も腰より下まで伸びているようです。しかし、クリスさんは明朗快活で男前な女の子って感じがします。というか男の娘ゲフンゲフンッ……似ているのは銀髪くらいですかね。結構変装とか上手いですね。だから職業を盗賊にしたのでしょうか?……ところで胸部の大きさの違いが分かりやすい気がするのですが何故でしょうか……?

 

「ならいいのがいるよ。少なくとも2人の役に立てるだろうから」

「それって、仲間を貸してくれるってことですか?」

「まぁそんな感じ……あ、来た!こっちこっち」

 

 クリスさんが顔を右に向けて手招きすると、私達の席に歩み寄ってくる冒険者らしき人が1人。歩み寄ってきた人は、金髪のポニーテールに碧眼。黒いインナーの上に白と黄色を主としたデザインの鎧を身に纏い、腰元に剣と思わしき物を付けた……まさに正統派騎士のような女性の方でした。あ、金髪に鎧って、髪型とデザインは全くもって異なっていますが私と似てますね。

 

「……貴殿らが、パーティーメンバーを募集しているという冒険者なのか?」

 

 凛然とした佇まい、よく通る綺麗な声。本物の正統派女騎士って感じの、真面目でお堅そうな美女でした。あ、なんかそれだけで負けた感がするような……あ、いや、彼女の方が冒険者歴が長そうなので当然でしょうか。というか声が……Fat○のアル○リアっぽいですね。それかスカ○ハ師匠?

 

「はい。私はアークプリーストのジャンヌと言います。こちらにいるのがルーンナイトのジーク君。あ、もしかして貴方も私達が貼っている紙を?」

「あぁ。私はクルセイダーのダクネスだ。クリスに勧められて、ここに入ろうと思ったのだが……」

 

 もしかして、この人がクリスさんの言ってた、祈りに応えた冒険者なのでしょうか?そういえば昨日、『その子を受け入れてくれるパーティーを探していた』って言ってましたね。もしやクリスさん、ダクネスさんのために良かれと思って身分を隠してこの地に降り立ったのでしょうか?すごいです、さらにファンタジー感を感じます!

 

「クルセイダーは前衛職で、最強の防御力を誇るパーティーの盾。ダクネスはその中でも群を抜いた防御力なんだよ」

「あまり褒めないでくれクリス。たしかに私は耐性系スキルばかりを向上させている。だが、その反対に不器用すぎて攻撃が全く当たらなくてな……」

 

 そう言って自分の職業のデメリットに対して苦笑するダクネスさん。なんて謙虚な人でしょうか、私も見習いたいです。それにしても攻撃が苦手な代わりに防御を中心とする職業ですか……中々サポートにいい職業だと思いますね。

 

「ジーク君、これは……!」

「あぁ……ダクネス、俺達はまだ駆け出しだからモンスターを狩るのにも手間を取ってしまう。だから貴方にはモンスターを引きつけたり、後方支援役のジャンヌを守ったりしてもらいたいんだが、やってくれるか?」

「もちろんだ。それに私もそうレベルが高いわけではない。同じ駆け出し同士、これからよろしく頼む」

 

 ダクネスさんに握手を求められ、私とジーク君はそれに当然と言うように応じました。よく見るとダクネスさんの腕は細いように見えて、結構がっしりしていますね。流石はクルセイダーです。

 

「あっ、あたしもついてっていいかな?ダクネスのことが心配だし」

「……別に構わないが……」

 

 するとジーク君はクリスさんのところに寄り、顔を寄せて耳打ちし始めましたね。ダクネスさんに聞かれないためでしょうか?私は3人に気づかれないようにそっと耳を澄ませてみました。

 

「君は天界の仕事とか、そういうのは大丈夫なのか?」

「それならご心配なく、いつも頼まれた仕事は全部終わらせてから下界に来てますから。あ、ジーク様の仕事は今のところ私が引き継いでますので」

「それは、すまない……」

「いえいえ」

 

 あ、時に天界に戻って仕事を済ませてからまた下界に降りるというのを繰り返していたのですね。というか引き継ぐとか、なんか天界って普通の会社みたいですね。天界にそんなシステムがあったなんて、ちょっと意外です。

 

「とにかく、今日もジャイアントトードの討伐です。最低目標とか関係なく、たくさん倒しておきましょう!」

 

 とりあえずみなさんの士気を高めるために、私は立ち上がって旗を掲げながらそう叫びました。我に返ると羞恥さを感じますね……クリスさんは『おー!』と言ってノッてくれましたが。ちなみにジーク君は小さく拳を上げてくれて、ダクネスさんは小さく微笑んだだけでした。やっぱり私の今のノリは悪かったのでしょうか……

 

 

 

 

 

 

 街から少し離れた草原地帯に再び訪れた私達は、岩陰に隠れながらジャイアントトードの群れを警戒していました。相変わらず普通の蛙と変わらない鳴き声を上げていますね。すぐそばでジャイアントトードは跳ね回っていていましたが、みんな私達に気づいていないみたいです。これはクリスさんの盗賊スキル『潜伏』によるものだそうです。

 

「盗賊じゃない俺達にまで影響させるとは……すごいな盗賊は」

「フッフーン!盗賊は成り手が少ないけど、ダンジョン探索には必須なんだよ。ダンジョンは見通しが悪い上にモンスターの巣窟だからね。どこに敵がいるか、どこにお宝があるか、察知して効率的に探索する必要があるんだ」

「えっ、敵やお宝の場所まで分かるのですか⁉︎」

 

 すごいというか、便利ですねそのスキル。私達もほしいくらい。

 

「それじゃあ、まずは私がジャイアントトードに突っ込んで囮になろう。その隙にジーク達は岩陰から攻撃を仕掛けてくれ」

「わかった。ジャンヌ、君はダクネスに支援魔法と回復魔法かけてくれ。後はあまり動かないでほしい。なるべく戦闘はしないで観戦していってくれ」

「はい、わかりました」

 

 遠くから援護しながら戦い方を見て学べ、ということですね。わかりました。そう応答した私はダクネスさんに支援魔法をいくつかかけました。

 それから機を窺って、ダクネスさんは威勢良く岩陰から飛び出しました。ダクネスさん、お願いしますね……

 

 

 

「さぁこい蛙ども!その膨れた肉を思う存分私に叩きつけるがいい!なんなら私を舌で捕らえて口の中に含んでぐちょぐちょの粘液まみれにし、私を哀れもない姿にしてから思いっきりのしかかっても構わない!」

 

 ダクネスさんはそう言いながら啖呵を切っていってますね。なんだか勇ましくて頼もしい……ん?アレ?何かおかしいような……

 

「いいか!私はどんな責め、いやどんな攻めにも屈しない!何故なら私は皆を守る高潔な聖騎士だからだ!そんな私をパーティーのメンバーの眼前で、好きなだけいたぶって辱めればいいのだ!来い、ジャイアントトード!」

 

 ……なんでしょう、なんか威勢良く言ってる言葉に、そこはかとない違和感を感じるのは……まるで自分がいたぶられ、いや辱められるのを望んでいるかのような発言ばっかりしていますが……

 何やら危なっかしいなと感じていると、ジャイアントトードの1匹がダクネスさんに向かってドタドタ地面を揺らしながら迫ってきました。そして巨体にも関わらず素早く飛び跳ねて、あっという間にダクネスさんを押しつぶそうと……

 

「『ウインドソード』!」

 

 する前にジーク君が、『幻想大剣(バルムンク)』と呼ばれる剣に渦巻く風の宿して、ジャイアントトードの懐へと搔い潜って腹部を勢いよく切り裂きました。そのまま生力が尽き地に伏せたジャイアントトードを、ダクネスさんはそれに押し潰されずに済んだはずなのに何故かポカンとした表情で突っ立っていました。いや貴方は今助けられたのですよ?

 

「いい引きつけだったぞダクネス、この調子で次も頼む」

「あ、あぁ……で、でも、もう少し引きつけてから攻撃してくれてもいいんだぞ。私は耐久力には自信がある。ヤツらが私に群がってる隙に薙ぎ払えばいい」

「ダメだ、そういうわけにはいかない。メンバーたった1人のダメージがクエストに影響を及ぼすことも少なくはないんだ、だから貴方にも損害を与えるわけにはいかない」

「むぅ……」

 

 な、何故でしょう。ダクネスさんの表情が結構残念がっているように見えるのですが……ジーク君はかなりきちんとしたまともなことを言ったのに、『どうしてそんなつまらないことを言うんだ』みたいな表情を浮かべているのですが……

 

「そ、それではまた行ってく──」

ズシンッ 「キャアッ⁉︎」

 

 その時でした。突然ジャイアントトードの群れが一斉にこちらを向いて、猛烈なスピードで跳ねてきました。激しい地響きで立っていられなかったので、私達は必死に岩に掴まりました。気づかれた?しかし、クリスさんの潜伏スキルは今も効いているはずなのですが……

 

「い、一体何が……?」

「……!大きな敵が来てる!敵感知にビンビン来てるよ!」

「ということは、ジャイアントトードはその敵から逃げているということなのか……?」

 

 クリスさんの言葉に様々な意味を考察しながら岩陰に隠れていると、ジャイアントトード達は皆揃いも揃って私達を無視して向こうへ逃げていきました。私達のことを気づいてはいるのかもしれませんが、それでも襲う余裕はないってことでしょうか?

 

「ジーク君、どうしましょう?」

「俺達のレベルでそのモンスターを倒せるのかどうかは分からない。ここは『テレポート』を使って逃げるべきだろう……ッ⁉︎」

 

 何かに気づいたのか、話していた途中で目を限界にまで見開いて驚愕した表情を浮かべたジーク君が、言葉を詰まらせました。一体どうしたと……

 その直後、頭上に巨大な影が現れ地面に着地しました。轟音と共に逃走中のジャイアントトードの群れを、それは一瞬にして踏み潰してしまいました。

 

「なんてことだ、こんなのが出るとは予想外だ……ッ!」

 

 それは、全長20もある異常なほどに巨大な蛙──ジャイアントトードでした。今まで見てきたどのジャイアントトードよりも大きく、その図体に私達は言葉を詰まらせてしまいました。

 

「な、なんですかアレ⁉︎どう見てもジャイアントトード界の王様じゃないですか⁉︎」

「こんなのが街のすぐ近くにいたなんてね……」

 

 巨大なそのジャイアントトードは、何を考えているかわからないつぶらな瞳でジッと私達を見つめてきました。まずい、『潜伏』のスキルが切れた……⁉︎

 

「走って逃げてもさっきみたいにすぐジャンプして追いつかれそうだな。テレポートの詠唱してる暇はなさそうだ……いや、仮に逃げることができたとしても、今度はアクセルに現れて街の人達を混乱に陥れるだろうな。ここは──ジャンヌ!束縛魔法を!」

「は、はい!『チェーンバインド』!」

 

 私が両手を巨大ジャイアントトードに翳した瞬間、地面からボコッと巨大な鎖が飛び出し、ジャイアントトードの体に巻きついて硬直させました。ッ、重い……ッ!しっかり足を踏み入れないと逆に振り払われそうです……ッ!

 

「長くは効かない……今のうちに仕留めて──」

「後は任せろッ!」

「えっ、ダクネスさん⁉︎」

 

 また特攻⁉︎いやアレをおびき寄せて何の意味が……と思いきや、力強く地面を蹴って飛び上がり、巨大ジャイアントトードの頭に降り立ちました。す、すごい……クルセイダーは筋力が強いのですね。

 

「今なら攻撃が当たる!これでも喰らえ、ジャイアントトードッ!」

 

 そして剣を思い切り振り翳し、巨大ジャイアントトードの頭の脳天部分を貫いた──

 たちまち巨大ジャイアントトードの瞳孔が開き、大口をだらしなく開けてきました。流石の巨体でも剣で脳を一突きされたら堪ったものじゃない。防御力はそこまで高くなかったのでしょうか?……とにかく、勝った、勝ちました。最後の1匹がこんなにも巨大だったとは予想外でしたが。一時はどうなるかと思いましたが、ダクネスがパーティーの盾として、ジャイアントトードの上位互換的なボスモンスターを倒してくれた。これはさらなる報酬が得られるのではないのでしょうか?後できちんとダクネスさんに報酬の一部を分け与えないと。いくらなら受け取ってくれるのでしょう?

 

「案外早くクエストが終わりましたね」

「あの特攻グセは直してほしいが……騎士らしいから仕方ないとしよう」

「ダクネスー、帰るよー」

「わかっている!少し待っていろ……」

 

 と、次の瞬間。

 

「あっ」

 

 蛙の表皮は、当然だけどヌメヌメで。ダクネスさんはそのヌメヌメに足をとられて、滑らせて──そして、見事に開きっぱなしの巨大ジャイアントトードの口の中へ。

 

「「「………………エェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエ⁉︎」」」

 

 ちょ、えぇえぇえぇ⁉︎こんなに上手い具合に口の中に落ちるものなのですかッ⁉︎

 

「ダクネスさん、大丈夫ですか⁉︎」

 

 とにかく、急いでダクネスさんを助けないと!私が『チェーンバインド』を解いたことで重力に従い地面にズシィィィンと崩れ落ちた巨大ジャイアントトードの口から、唾液と共にデロリとダクネスさんが出てきました。あぁ、正統派女騎士が哀れもない姿に……早く回復魔法を……ん?

 

「……ハァ、ハァ、こっ、これが、ジャイアントトードに食べられかける感覚……ッ!あぁ、ぐちょぐちょに濡れた私を皆が見ている……!んっ、くぅっ!た、たまらない……!しゅごい、こんなのはじめて……!」

 

 ……何故でしょう。何故恍惚とした表情をしているのでしょう……しかし、そんなダクネスさんを見て、私は察しました。きっとジーク君も同じことを考えているのでしょう。どうしましょう……この人多分、変態だ。被虐趣味……いわゆるドMですね。

 

「ハイハイ、ゴチャゴチャ言ってないで早く立ってダクネス!もう帰るよー」

「す、すまないクリス」

 

 ダクネスさんはこのままクリスさんに肩を担がれましたね、もうそのまま連れて帰ってください本当に……とにかく、これで初クエストクリアですね。しかし、巨大ジャイアントトードの討伐金はいくらでしょうか?普通のは1体5000エリスですが……

 

『ゲ〜コゲコ』

「「「「えっ」」」」

 

 あ、デジャヴ。恐る恐る振り向くと、すぐ後ろに色彩豊かなジャイアントトードの群れが、じっとこちらを注視していました。いや帰って来るの早くないですか⁉︎ってちょ、逃g

 

パクンッ

 

 

 

 

 

 

 それから私達は一心不乱にジャイアントトード達を討伐することになりました。包囲してから魔法を放ったり、物理を吸収しなさそうなところに近距離攻撃したり、こまめな『チェーンバインド』を私がしたりと……結果、ジャイアントトードは大きいのを除くと合計10体以上、ですかね?異常な程の数を撃破した代わりに私達の体はベトベトになりました……今日も今日とて粘液でヌルヌル、服や鎧にへばりついてしまいました。まさか昨日と全く同じような目に遭うとは……

 

「なんで今日に限って最悪な気分になるのでしょう……たくさん倒して討伐金を多く儲けたはずなのに、冒険者になって2日目なのに……」

「気を落とすなジャンヌ、冒険者になりたての時は精神的に気分が悪くなることはおかしくない」

「すみません、意外と私以上にベトベトになっている状態で説得されましても……」

 

 よく見たらジーク君も粘液で……あぁ、『幻想大剣(バルムンク)』も……

 

「ハァ……ハァ……しゅごかったぁ……」

「いやすごいのは貴方ですよ⁉︎いろいろとツッコむべきトコがわんさかあるじゃないですかッ⁉︎」

 

 あの後も、ダクネスさんはガンガン特攻し、案の定ひどくやられて満面の笑みで帰ってくる、をずっと繰り返してきていました。本人の申告通り、剣戟はほとんど当たっていませんでした。ぬるぬる具合も、パーティーメンバーの中で一番ひどい。異常なほどに嬉しそうな顔をしていますが……

 

「なんていうか……ダクネスは、ちょっと変わってるけどすごく良い子だから」

「ちょっと……?」

 

 頬を掻いて苦笑するクリスさんは、なんとまさかのほぼ無傷。どうやら潜伏スキルを駆使して流れるようにジャイアントトードを狩っていたそうです。流石は幸運の女神ですね……アレ?ちょっと待って?でしたら何で私たちはこんな酷い目に遭っているのでしょう?なんで幸運の女神の隣にいるのに限って……

 

「それにしても今日はたくさん狩ったな……今日はジャイアントトードで肉の盛り合わせでも作ってみようか」

 

 えっ⁉︎肉の、盛り合わせ⁉︎そうですね、これほどの数のジャイアントトードを倒したのですもの!料理に使わない手はありません!

 

「そうですね!お肉食べたいです!そうと決まれば、みなさん帰って体の疲れを癒しましょう!」

「肉と聞いて元気になるなんて、単純すぎるんじゃないのか……?」

「ははは、まぁ早くごはん食べたいしね」

「そうだな。私もパーティーの一員として、明日のクエストに備えて腹拵えをしなくては」

 

 あ、そうだった。この人、正式に私達のパーティーに入るのでした……

 ちなみにクリスさんとダクネスさんの寝床はきちんとした部屋だそうです。私達はお二人同様にたくさん報酬を得ましたが、やはり誤って持ち金を使い果たしそうで怖かったので結局今日も馬小屋で寝ることにしました。やっぱり恥ずかしい……

 

 防御力が高くも代わりにドMな部分が露わになってしまうクルセイダーの方を仲間にした私達。明日も異世界ライフは続く───




なんでダクネスはドMになったのだろう……
誠にご勝手ながら、次回きらは投稿スピードが遅くなる予定です。他の小説投稿にもそろそろ気合いを入れておかないと……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

このキャベツ祭に爆裂魔法を!

厨二病って、どんな時になるんだろう?って思ってしまうだろう今回は、ついにあのロrじゃなくて若い魔法使いが登場します!それでは本編をどうぞ!


 パーティーメンバーを募集してみたら防御力が高くも代わりにドMな部分が露わになってしまうクルセイダーのダクネスさんと、いつの間にか彼女と一緒にパーティーメンバー入りしたクリスさんの4人で見事初クエストをクリアした私、ジャンヌ・ルーラー。この日はクエストクリアの報酬が換金されたということで、給仕後、早速その金額を確認することにしました。その金額はなんと……

 

「合計215000エリスですって!」

「それはすごいな。まさかここまで出るとは」

 

 1体5000エリスを19体倒して95000エリス、報酬金10000エリス、そして巨大ジャイアントトード討伐で20000エリスといった金額を合計したら先程の私が言った金額に。4人で分けると53750エリスと結構高い金額が手に入りました!これなら中々の装備とかが買えるのではないのでしょうか⁉︎

 

「でも、何を買えばいいのでしょうか……?剣?それとも弓?」

「念のための回復薬も買った方がいいのだろうな。後、余裕があれば趣味用のも」

 

 趣味用にも使ってもいいのでは、ということでしょうか。しかし、そんな余裕が生まれるのでしょうか?ジーク君が最初から所持している金額のこともあるから問題ないとは思いますが、もう少しマシな部屋に余裕で行けるように貯めておきたいですね正直。

 

「そういえば、クリスさんとダクネスさんは?」

「報酬で買い物に行くと言っていた」

「そうですか。私も余裕が出来たらなぁ……」

「まぁここに来てまだ3日目だからな、そう思ってしまうのも無理はない」

 

 そう、私達がこの異世界に飛ばされてまだ3日程しか経っていない。まだまだこの世界のことについては知らない事だらけ。やはり無理にはっちゃけたりはできませんね。そう思いながら、私がリンゴジュースのような飲み物を飲んでいると……

 

「パーティーメンバーの募集の張り紙を見てきたのですが、面接はここで良いのですか?」

 

 と、私の背後から話しかけてきた人が。振り返ってみるとそこにいたのは、マントに黒ローブ、トンガリ帽子と典型的な魔法使いの格好をした、黒髪に赤い目を持ち、左目を眼帯で隠している12~3歳ほどに見える少女でした。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の魔法・爆裂魔法を操りし者────!」

 

 赤い瞳をキラリと輝かせ、マントをバサッと翻しながら、ビシッとしたポーズをとって自己紹介してきためぐみんさん……ん?めぐみん?

 

「……それって、あだ名ですか?」

「いいえ、本名です」

「えっ?」

 

 嘘?めぐみんが本名?でしたらあだ名ではどう呼ばれているのですか?えっ?

 

「どうやら彼女は紅魔族のようだ。紅魔族は大抵変な名前が多いとの事らしい。まさか本当にいたとは……」

「おい、私の名前に何か文句があるなら聞こうじゃないか」

「すまない、少なくとも俺は不思議な名前だなと思っただけだ」

 

 う〜ん?逆にまともな名前の紅魔族っているのでしょうか……?

 

「そもそも紅魔族とは……?」

「紅魔族は総じて知力と魔力に長けている種族。紅い瞳と黒髪が特徴だから普通の人間とはすぐ見分けがつくんだ」

 

 ……知力が高いのに、何故名前があだ名なのでしょう?先祖の趣味か何かでしょうか?

 

「その通り!そして私は紅魔族随一の天、才────」

 

 その瞬間、めぐみんさんが何故か膝から崩れ落ちました。突然の事に驚きながらも、私達はすぐさま彼女の元に駆け寄りました。

 

「ど、どうしたのですか⁉︎」

「……はん」

 

 えっ?『はん』?

 

「すみません……図々しいお願いですが、何かごはん食べさせてくれませんか……?もう数日ほど何も食べてないんです……」

 

 あ、『はん』ってご飯の『はん』でしたか……めぐみんさんはそう言いながら、段ボールの中からこちらを見つめる子犬のような目で見上げてきました。ウッ、可愛い……ッ

 

 

 

 

 めぐみんさんはあっという間に私が注文したオムライスを平らげると、ぺこりと私達にお辞儀をしました。礼儀正しくていい子ですね。

 

「ありがとうございます、お陰で飢え死にせずに済みました」

「そこまでになる程に食べていないとは……気にしないでください、困った時はお互い様ですよ」

「しかし、君はアークウィザード……上位職なのだろう?自分1人の力で適当なクエスト受けて稼いで、それで何か食べれたのじゃないのか?何か問題があったのか?」

 

 あ、アークウィザードは上位職なのですか。私のアークプリーストと一緒ですね。

 

「わ、私、単独でモンスターを狩るのが苦手でして……」

「だったら誰かとパーティーを組めばいい。紅魔族で上位職は引く手数多じゃないか?」

「それは、その……」

 

 めぐみんさんは明らかに狼狽えていますね。さっきまでオムライスを頬張って幸せそうに笑ってたのに、今は額に汗を滲ませて目がバタバタ泳いでいます。

 ……いや、ちょっと待ってください?この子、爆裂魔法を操りし者と言いましたよね?もしかして、その魔法が何かしら問題があるとでも?そう思いながら、私はすぐさまめぐみんさんにその事について聞いてみることにしました。

 

「めぐみんさん、爆裂魔法とは一体……」

 

 と、その時でした。突然、ギルド内に設置されていたスピーカーからサイレンが鳴り響いたのです。

 

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 冒険者の皆さんは至急正門に集まってください!』

 

 受け付け嬢をしていたルナさんのアナウンスと同時に、緊急クエストの知らせを聞いた冒険者達が慌ただしくギルドから出ていきました……ってえっ⁉︎何事ッ⁉︎

 

「そうですか、もうそんな時期でしたか……緊急クエストですよ、聖女?さん。急いで正門へ行きましょう!」

「ジャンヌでいいです……って早ッ⁉︎ジーク君も早ッ⁉︎」

 

 めぐみんさんがそう私へ呼びかける。いつの間にかジーク君やダクネスさん達も既に外へ出ており、声をかけためぐみんさんも外へと走り出していきました。一体何があったのでしょうか……?まさか、強大な敵がッ⁉︎それならば撃退しなければ……!すぐに後を追いましょう!

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、正門前。既にアクセルの街に住む冒険者達が集まっており、鬼気迫る表情で前方を見ていました。その先には、山の方から物凄い速度でこちらへ向かってくる──『緑色の雲』がありました。アレは一体……?

 

「皆は私が守る。ジャンヌも私から離れないように」

「あ、はい……」

 

 昨日のヤバい素性をさらけ出した顔とは打って変わり、ダクネスさんは真剣な顔つきで私達や周りの冒険者に呼びかけてました。やっぱり正統派騎士はそうでなくては。しかし……街にいる冒険者が総出しなければならないほどの事態。もしかしたら、やはり自分たちが束になっても敵わない強大な敵が現れたのではないのでしょうか……?

 

「今年は荒れるぞ……」

「嵐が……来る!」

 

 冒険者のみなさんの言葉で、私の緊張はさらに高まり、心臓がたちまち波打ちを立ててきました。それほどまでに危険なクエストだと……

 ……いや、ちょっと待ってください?何故何人かの冒険者の方々が木でできたカゴを抱えているのですか?ってジーク君まで持っていますし。中には何故かマヨネーズも……何この状況?

 雲のように見えていたのは、敵の群衆だった。まるで大群をなす虫のように舞いながら、こちらへ向かってきていた緑色のモンスター……

 

 

 

『キャベキャベキャベキャベ……』

 

 ────否、目がついたキャベツでした。

 ……って

 

「アイエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエ⁉︎」

 

 キャベツゥ⁉︎キャベツナンデッ⁉︎

 

「そういえば言ってなかったな。このクエストは……空飛ぶキャベツの収穫の時期に合わせたクエストなんだ」

「いやなんでキャベツが飛ぶのですかッ⁉︎」

「味が濃縮してきて収穫の時期が近づくと、簡単に食われてたまるかとばかりに……街や草原を疾走する彼らは大陸を渡り、海を越え、最後には人知れぬ秘境の奥で、誰にも食べられず、ひっそりと息を引き取ると言われているんだ」

 

 つまり、野菜なのに生物みたいに意志があるとッ⁉︎

 

「ちなみにこの世界ではサンマが畑で穫れる」

「変わってるどころの話じゃないですよね⁉︎」

 

 私がそうツッコんでいると……

 

「収穫だァアァアァアァアァアァアァアァア!」

「マヨネーズ持ってこーい!」

 

 空飛ぶキャベツ達が目前に迫った時、冒険者のみなさんは大声を上げて一斉にキャベツ目掛けて走り出しました。奇しくもその光景は、生前にネット上の写真や動画で見かけた『コミケ』と呼ばれるイベントで、目的の物を得るために己の全てを懸けて走るコミケ参加者の勇姿と一致していました。あ、実を言うと私もコミケに行ったことがあります。まどマ○とか戦○BA○○RAとかの様々なイベント品があって面白かったです。

 

「みなさーん!今年もキャベツ収穫の時期がやってまいりましたー!今年のキャベツは出来がよく、1玉の収穫につき10000エリスです!できるだけ多くのキャベツを捕まえ、この檻におさめてください!くれぐれも、キャベツの逆襲に遭って怪我をなさらないように!」

 

 食べられまいと飛んでいくキャベツ達を、冒険者のみなさんは全力で狩りにいってますね……緊急クエストが発令された時のレイドボスを前にしたかのような緊張感はどこへ行ったのでしょう……

 ……今更ながら思うのですが、この世界はいろいろとおかしいって気がします。キャベツが飛ぶし、サンマは畑で獲れると聞くし、ダクネスさんはドMだし、紅魔族は変な名前だし、何よりよく思えば私はまだそんなに活躍していませんし……ホント何この世界。

 

 様々なことが脳裏からよぎってきていると、突然めぐみんさんが私の後ろに立ってきました。

 

「ここは私の出番のようですね……我が爆裂魔法で、キャベツなど全て焦がしてやりましょう」

 

 めぐみんさんがそう言った瞬間……彼女の紅い瞳が輝きを放ち、周囲に熱風と炎の渦を吹き荒らし始めました。そして私はすぐに気づきました。彼女は自身に宿るその魔力を今、徐々に高めていっているのだということに。

 

 

 

「輝きを秘めしこの力───」

 

 

 

「不可視を我が元へと導き───」

 

 

 

「混沌より接触せんとす───」

 

 

 

「今、爆裂魔法が誘う───!」

 

 

 

 おぉ、今までに感じたことのないプレッシャーが……!爆裂魔法の詠唱を行なっていくうちに、熱風と炎の渦はさらに強く吹き荒れ、杖の宝玉も爆炎の魔力を溜め込んでいきました。そして、彼女の魔力が最高潮に高まった時、めぐみんさんは空飛ぶキャベツの集団を見据え──声高らかに唱えた。

 

 

 

 

 

穿(うが)て───エクスプローション!

 

 

 

 

 

 瞬間──空飛ぶキャベツの集団のいる場が光り、つんざく音を立てて爆発し、灼熱の炎に包まれました。これが、めぐみんさんが持つ魔法にして最強魔法『爆裂魔法(エクスプロージョン)』……!その名に相応しき、巨大な爆発を起こす魔法。その時に私の瞳孔にはっきりと捉えた時の威力も侮れませんでした……!

 

 しばらくして爆裂魔法の爆風が収まると……『爆裂魔法(エクスプロージョン)』が放たれたその場所は、クレーターができるほどの焼け野原に変わり果て、キャベツの大群はみんな地面に転がっていました。

 

「す、すごい……」

 

 私がそう驚嘆の言葉を漏らすと、再びキャベツの大群が飛んできました。第二波、ですか。そう簡単にレイドクエストが終わるわけありませんか。

 

「めぐみんさん、私がサポートに回ります!だから貴方はその内に2発目、を……?」

 

 ……ア、アレ?1発放っただけなのにめぐみんさんが倒れ伏せていますが……というかその様子、さっきも見たような……

 

「ふ、ふふふ……我が爆裂魔法は、威力も消費魔力も絶大……つまり今は魔力枯渇で体力まで持っていかれましたので、身動き一つとれません……ガクッ」

 

 ワォ、結局デメリットはおありですか……息絶え絶えに爆裂魔法のデメリットを言い切ると、めぐみんさんはがくりと眠りに落ちてしまいました。

 って、アイエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエ⁉︎大群がッ!近くにまで大群がッ!私は必死に旗を振るって何個かキャベツを叩き落とすと、めぐみんさんを背負って安全な場所である後衛に引き下がりました。

 

 

 

 その後も、キャベツ収穫クエストの冒険者のみなさんのやる気は凄まじく、見る見るうちにキャベツは狩られていきました。

 ジーク君は魔法の力を加えた剣を優雅に振るってキャベツを切り落とし、クリスさんは潜伏や窃盗のスキルで効率良くキャベツを収穫、ダクネスさんは前衛に立って皆を守っていました……嗚呼、また恍惚とした表情をしている……

 私の活躍は言わずもがな。時に旗を掲げながら勝利宣言みたいなことを叫んで士気を上げたり、時に前衛でキャベツを旗で()()き落としたり……あ、狙って言ってはいませんよ?後、時に回復魔法や遠距離からの魔法で後衛からサポートに回ったりと、出来る限りアークプリーストとしての役割を担いました。つ、疲れる……

 

 

 

 この緊急クエストが終わった後、皆やり切った笑顔をしていました。キャベツがたくさん食べれるor資金が稼げると思って満足しているのでしょう。けれど、ダクネスさんのそれは種類が違う気がしました。まぁ、そうでしょうけど……

 

 そして私は今、めぐみんさんを背負ってジーク君達と一緒にギルドに戻っていました。

 

「ジャンヌ、俺も代わった方がいいか?」

「大丈夫です、私の魔力はジーク君より多く残っていますから。それに同性で担いだ方が効率的に良いと思いますし」

「なら私が代わろうか」

「ダクネスさんは鎧の部分が多いのでダメです」

 

 むう、と何故かちょっと落ち込むダクネスさんを、ぽんぽん肩を叩いてクリスさんが慰める。また被虐妄想でもしていると。

 

「すみません、おぶってもらって。爆裂魔法を使用した後は歩くこともまともにできないので」

「爆裂魔法は威力が高い分デメリットも多いからな。今後は緊急時以外は使わない方がいい。めぐみん、今回は助かったが次からは違う魔法を使ってくれ」

「……使えません」

「……えっ?」

 

 この子今なんと?思わず私を含めその場の全員が足を止めました。構わず彼女は発言を続けました。

 

「私は、爆裂魔法しか使えないのです」

「え?なんで使えないんだ?あのエクスプローションとやらはスキルポイントが異常な程に高いのか?」

「そういうわけではないと思いますが……ただ、私は……爆裂魔法しか、愛せないのです。火とか爆発系とかじゃない、爆裂魔法が好きなんです。1日1発しか撃てなくとも、こうして使用後ぶっ倒れても、爆裂魔法のみを使い続けるのです。それこそが暴虐と爆焔の一本道爆裂道。我は爆裂道を突き進むのみ!」

 

 その言葉に思わず、全員が呆然かつ唖然としてしまいました。私は彼女の言葉をじっくり咀嚼して呑み込んで、理解して……ごくりと、息を呑みました。正直に言ってなんて馬鹿馬鹿しいことでしょう。馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しいほど……

 

「逆に素晴らしいことですよ、めぐみんさん!」

「えっ?」

 

 思わず賞賛してしまいます。

 

「利便性も効率も無視して、どんな苦しいことがあろうと、誰に何と言われようと、ぶれずに自分の進みたい道を極める……そんな精神を持った人、職人らしくて誇らしいですよ!」

「で、でも私、1日1発しか撃てませんよ?」

「それでも、いやそれでこそです!ただただ地道に技を放つ私達とは違って、ただ一度の魔法に全身全霊を込めるアークウィザード……逆に尊敬します!」

 

 私の言葉に嘘はありません。ただただ、正直な事をダイレクトに伝えているだけです。めぐみんさんを励ますために、さらに自信をつかせるために。

 そして、私のその賞賛の言葉に心が動かされたのか……

 

「……めぐみん。もし君や俺達の仲間が良いのなら、パーティーに入らないか?」

「えっ⁉︎い、良いんですか?」

「正直に言って爆裂魔法しか使えないアークウィザードがどのような形で使えるかどうかはわからない。狭いダンジョンなら尚更だろう……だが俺達がそのデメリットをカバーすれば、きっとより良い結果で爆裂魔法を成功させれるはず……つまり君は、俺達のパーティーの切り札だ」

 

 ジーク君……そこまで考えてまでして彼女を仲間にした時の今後のクエストの方針を考えたのですね。しかもめぐみんさんのことを『切り札』、ですか……なんという褒め言葉でしょう!

 

「で、ですが、他の方々は……」

「私は構わないぞ。詠唱中の盾は任せてくれ」

「爆裂魔法なんて使う人初めて見たよ。面白いね、君」

「もしもの時は私が回復させます。だからご心配なくうちのメンバーに入ってください」

 

 ダクネスさんもクリスさんも、めぐみんさんを優しくフォローしてくれました。後は彼女の答え次第ですね。

 

「……あ、ありがとうございます!嗚呼、まさかこんな私を受け止めていただける方々がいるとは……そこまで言われたのならば、このアークウィザードのめぐみん、これからはみなさんのために、毎日私の素晴らしい爆裂魔法を披露させていただきましょう!」

「いや、あの……出来れば無茶しないでくださいね?」

 

 何やともあれ、めぐみんさんをパーティーメンバーに加えることになった私達。これから先の異世界生活、きっともっと楽しくなることでしょうね!

 

 

 

 

 

 ですがこの時、私達は知りませんでした。

 

「期待の新人冒険者2人、スキルを最適かつ上手に使いこなす盗賊、被虐を求めるヘンテコ性癖のクルセイダー、そして爆裂魔法のみを愛するアークウィザード……こりゃあ面白いパーティーメンバーに出会っちまったねぇ。なぁ?○○○────」

「えぇ。正に貴方の目に狂いはないようだね、我が○○────」

 

 こんな私達を、不敵な笑みを浮かべながら興味深く見物していた2人が木陰から目視していた事に───




最後に出てきた2人は一体何者なのでしょう?あ、ネタバレはやめてくださいね?それはともかく、次回からもだんだんと投稿速度が遅くなる可能性がございますので、ご注意ください……それではまた次回ッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この聖女に浄化クエストと邂逅を!

原作にはミツルギ編とベルディア編があるようですが、様々な先輩ユーザーの方の小説を見て『あ、便乗しよう』と思って入れ替えをすることにしました。本当はミツルギに出会うところで話を区切ろうとしましたがさすがに短いと思って対決まで書いた結果、10000字超えちゃいました……テヘペロ☆


 緊急クエストだというので何事かと思ったら、まさかのキャベツの大群が現れて思わず呆然としてしまった私、ジャンヌ・ルーラー。新しくパーティーメンバーに加入されたいと希望してきたアークウィザードのめぐみんさんの爆裂魔法『エクスプローション』に圧巻し、さらにはその魔法しか愛せないという揺るぎない思いに心を動かされ、全員一致で彼女をパーティーに加えることにして異世界生活をやっと満喫できそうと思うようになりました。

 そして、私は今……

 

「ど、どうでしょうか……?」

「うん、似合っている。本物の聖女のようだ」

 

 攻守が上昇できる銀色の十字架ペンダントをジーク君に買ってもらいました。これで本物の聖女のよう、ですか……そんなつもりはないのですが、照れますね。

 

「し、しかしジーク君、本当によろしいのですか?いくらキャベツの収穫で500000エリス、キャベツを50個も収穫したというのに……」

「君が収穫したのは大半がキャベツじゃなくてレタスばっかりだったと聞いて、落ち込んでいたのだろう?だからそれを買ってあげて元気づけようと思ったんだ」

「ウッ……」

 

 昨日嘆いていたのを見ていたのですね……は、恥ずかしいです。それにしてもこのペンダント、3000エリスもしたのですね……この恩は必ず返さないと。それはそうと、めぐみんさんやダクネスさんは杖や鎧を新調したようですね。まぁ、ダクネスさんはキャベツの体当たりを異常なまでに受けていたら、ねぇ……?あ、めぐみんさんは杖に頬ずりしていますね。新調したおかげで威力が増したとか言っているようですが……幹部1人をワンパンできるでしょうか?

 

「とりあえず、次のクエストを探しましょうか」

 

 私がポツリとそう呟くと……

 

「ならジャンヌさんにとっておきのクエストがあるよ。はいこれ」

 

 あ、クリスさんが新しいクエスト依頼書を見せてくれました。ジーク君達も覗かせていますね。なになに……?

 

『タルラン湖の浄化依頼。街の水源の一つであるタルラン湖の水質が悪化し、ブルータルアリゲーターなどの凶暴なモンスターが棲みつきはじめたため、湖の浄化を依頼したい。水質が改善すればモンスターは他の場所に移動するので、モンスター討伐はしなくても構わない。※要浄化魔法修得済みのプリースト。報酬は30万エリス』

 

 なるほど、浄化クエストですか。それはいいですね。最近浄化魔法の練習も兼ねていましたから、実践してみたいと思っていたところです。早速引き受け……

 

「あ、これはどうやって浄化すれば?」

「規模なら呪文を唱える程度で済むが、大きな湖だと水に手を触れて浄化魔法をかける必要がある。浄化中に襲われるとなると……」

 

 たしかに浄化魔法は水に触れてかけた方が効果は高いでしょう。しかしその間に餌の匂いを嗅ぎつけたブルータルアリゲーターとやらが襲ってきて、喰われたら……そう思うと、私の背中に悪寒が走ってきました。この間のジャイアントトードの時は丸呑みされただけですから助かったのですが、ワニは鋭い牙を持っている。あんなの突き立てられたら死ぬ。あ、詰みました。どうしましょう……

 

「なら浄化中は私が盾になろうか?」

「ブルータルアリゲーターは群れで行動するそうです。全てのモンスターをダクネスが引きつけるのは無理があると思うのですが……」

 

 うげっ。群れはヤバいですね……

 

「じゃあモンスターが集ってきたらめぐみんが一掃するか、私とジーク先輩で迎撃……は難しいか」

「俺やめぐみんの魔法だとジャンヌが巻き添え、クリスは水中じゃ動きにくいからな。難しいな、これは……」

 

 むぅ、この浄化クエストはかなりの難題ですね。なんとか安全にクエストを進行する方法は……ん?アレは……ハッ!もしかすると!

 

「──いい案が見つかりました!アレならなんとかなるでしょう!」

「「「「?」」」」

 

 

 

 

 

 

 というわけで、私は今……湖に浸かって水面に触れ、浄化魔法をかけております。衣装は防水効果があるから正座して膝まで浸かっていること自体は問題ありません。湖は一面茶色く濁っており、周りに広がる美しい風景とは相反していますが、そこも問題ありません。そして1時間が経過しているところです。ここまでは順調。後はこのまま浄化魔法をかけていけば、問題なくクエストをクリアでき……

 

「いや、何故君が檻に入らなければいけないんだ?」

 

 あ、やっぱりジーク君に指摘されますか。そう、今の私は檻の中に入っております。だって何かに囲まれてもらわないと、もし襲われたらたまったものではありませんし、他に最適なものがないのですから……

 ちなみにこの檻は、ギルドに常備されているモンスター捕獲用のもので、大層堅牢だからブルータルアリゲーターくらいなら壊れることもないらしいです。万が一に備えて檻には鎖がついていて、もし私に危険が迫ったらジーク君達に鎖で檻を引っ張ってもらうことになっています。ただ、ひとつだけ誤算が。それは……

 

「高かったなぁ、これ……」

 

 この檻、200000エリスもしました……でも、100000エリスを手に入れれるだけでもまぁいい方だと思うのですが。

 

「なんだか、ダシをとられてるティーバッグみたいだな……」

 

 ジーク君、それを言わないでください!と、私が心の中でツッコミを入れていると……

 

「!来たよ!」

 

 クリスさんが敵感知したため、私は前方を見ました。そこには、元いた地球のワニとは外見が何ら変わらないブルータルアリゲーターという件のワニ型モンスターが檻の周囲を囲んで徘徊していました。数は……15匹ですね。とりあえず、そのワニに気にせず浄化魔法を……

 

 ガシャンッ!ミシミシギシギシ……

 

「ホワァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎」

 

 人を簡単に丸呑みできそうな大きな口をカパッと開き、檻を噛み砕かんと噛み付いてきました。何匹ものブルータルアリゲーターが噛み付き、盛大に檻が揺らされ始め……って!落ち着いている場合ですかッ!すごい勢いで!すごい勢いでガジガジ噛み続けてきてますけどッ⁉︎

 

 

 

 

 

 2時間経過

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション!ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」

 

 私は浄化能力だけでなく、アークプリーストが覚える浄化魔法『ピュリフィケーション』を一心不乱に使いまくってブルーアリゲーターを檻から引き離そうと必死になっております。だって想像以上のヤバさですよこのモンスター⁉︎檻が壊れかけていますし!必死に檻を壊そうとブンブン振り回したり、檻を咥えて身体をスクリュー回転させたりしていますしィ!

 

「ジャンヌ!ここは一旦引き上げるぞ!このままだと檻がもたないかもしれないぞ!」

「そ、それはダメですゥ!ここで諦めたら一からやり直し!今までの時間が無駄になるじゃないですかッ!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」

 

 そう、ここでやめたら今まで恐怖に晒されながらも浄化をし続けた甲斐がないのです。だから浄化を続け……イヤァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア⁉︎メキッって!今メキッって!諦めたくない!諦めたくないけど……本当にヤバい状況にィイィイィイィイィイィイィイ!

 と、私が心の中で叫んでいた、その時だった。

 

「ちょ、ジーク⁉︎何やっているんですか⁉︎」

「ま、まさか、ジークもあのブルーアリゲーターの猛攻を受けようと……⁉︎ず、ずるいぞ!私も連れて行って……」

「そんなこと言っている場合じゃないよ⁉︎先輩、一体何をやって……⁉︎」

 

 えっ?ジーク君が何をしていると……?と、私がふとその方に考えを寄せていると、何かが湖の中に入ってきました……って⁉︎

 

「ジ、ジーク君⁉︎何をして……⁉︎」

 

 なんと、ジーク君が湖の中に入ってきたのです。い、一体何の真似を……

 

 

 

「ジャンヌから離れろ────!」

 

 ジーク君が怒りじみた声を上げた、次の瞬間。彼の背から突如、黒い幕のようなものが広がった。しかし、よく見るとそれは幕ではなく……

 羽でした。鱗に覆われた無骨な表面。関節の先には鋭い鉤爪が生えていました。ゴツゴツとした表皮とは裏腹に薄い皮膜が骨と骨の間を張っていて、その姿はまるで……『竜』。

 その『竜』の羽が生えたジーク君を見た瞬間、全てのブルーアリゲーターが『恐怖』と『死』を直感し……皆檻から離れて岩陰へと引っ込んでいきました。す、姿を変えただけで……神様、恐ろしい……

 と、そんなことを考えた瞬間。恐怖から解放されて力が抜けたのか、私はその場でバタンッと倒れてしまいました。

 

「……⁉︎ジャンヌ!」

 

 それに気づいたジーク君が檻の中に入り、私の元に駆けつけてきてくれました。そしてクリスさん達に檻を引き上げてもらうよう手で指示を出そうとしましたが、それを私が腕を掴んで制止しました。

 

「後、少しなんです……だから、止めないで、ください……!」

「し、しかし……」

「お願い、します……!」

 

 私は必死に続けてもらうよう頼み込んだ。せっかくジーク君が助けてくれて、ブルーアリゲーター達も引いてくれたんです。このチャンスを逃さないで、いつ浄化を続けるというのですか……!

 

「……わかった。ならここからは俺も支える。だから君は浄化魔法を続けていけ」

「……!はい!」

 

 私の想いに応えてくれた……!なら私もその意思に応えなければ……!その一心で私は立ち上がり、浄化魔法を再開させた。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」

 

 

 

 

 

 

 本来なら6・7時間で浄化が終わるこの浄化クエスト。魔法を連発したことにより、4時間で終わらせることができました。湖は最初に見た時とは見違えるほどに綺麗になっており、湖の底も見えるぐらいに透き通った水で満たされていました。

 そして、かなりボロボロになった檻の乗った台車を馬に引っ張ってもらっています。その横を近い順にジーク君・クリスさん・ダクネスさん・めぐみんさんの順に歩いています。えっ?私はどこにいるのからって?それは……

 

「……ジャンヌ、もう大丈夫だから出てきていいぞ?」

 

 檻の中で、泣きながらぺたんと座り込んでいます。

 

「こ、腰が抜けて立てません……なのでそのままにさせてください……」

「わ、わかった……」

 

 ジーク君、誰よりも私の事を気にかけてくれているのですね。正直、照れます……

 

「ところでジーク?貴方は先程ドラゴンのような羽を生やしていたみたいですが、アレは貴方の能力なのですか?」

「そこは私も気になるな。能力ではないとしたら、貴殿は竜人か何かか?」

「いや、アレは俺の固有スキルによるものだ。何故それが俺の中に秘められているのかもわからないんだ」

 

 ジーク君はそう言って竜と化せたワケをめぐみんさんとダクネスさんに説明しました。ですが、それが嘘に聞こえますね。神様だったら竜になれるのもおかしくありませんから……

 

 

 

 

 

 その後は、行きと同じく緑のジャケットを着た人達に運んでもらいながら、街の中へと入っていきました。ジーク君がおんぶをしようと持ちかけてくれましたが、さすがに辛いだろうということで断りました。後、初日の事を思い出しそうで恥ずかしく感じましたし……あ、街にも入りましたね。抜けた腰もそろそろ大丈夫でしょうし、そろそろ檻の中に出ましょうか……

 そう思いながら檻の中から出た、その時でした。

 

 

 

「神様⁉︎神様じゃありませんか!」

 

「「「「「ん?」」」」」

 

 突然、聞き覚えの全くない男性の声が前から聞こえてきました。何かと思ったジーク君は馬を止め、みんなで声が聞こえた方向に顔を向けてみました。

 そこには、青と金色でできた鎧と黒いマントを纏い、腰元に剣を納めている茶髪の爽やか系イケメンが立っており、傍には緑色のポニーテールで腰元に剣を装備した露出度の高い服を纏った美少女と、同じく露出度高めの服を纏う赤髪の三つ編み美少女を侍らせていました。えっ、何このドラク○感の高い組み合わせは。私がそう唖然としていると……

 

「……!き、君はたしか!」

 

 ジーク君が声を張り上げてきました。えっ、知り合い?

 

「『魔剣グラム』を渡した……!」

「お、覚えてくれていたのですか⁉︎」

 

 『魔剣グラム』?もしかして、私がこの世界に飛ばされる前に見た特典リストで『SOLD OUT』と刻まれていた……もしかして、彼がその魔剣の所持者⁉︎

 

「……すまない、誰だ?」

 

 ズコォ──────ッ!

 

 思わず『グラム』を持った男性の仲間の方含めて全員がずっこけてしまいました。いや名前は覚えていないんですか⁉︎

 

「だ、誰って、僕です僕!御剣(ミツルギ) 響夜(キョウヤ)です!」

「……あ、ミツルギだったのか!すまない、どうやら名前だけ思い出せなくて……」

「いえ、思い出していただけてくれて何よりです」

 

 ミツルギさん、ですか。まさか日本からの転生者がこの世界にも来ていたとは……しかもジーク君に自分の事を思い出してくれて喜んでいるのか、ミツルギさんは嬉しそうに笑っていました。

 

「本当に久しぶりだなミツルギ。魔王討伐に向けて、順調に強くなっているのか?」

「はい。貴方の仰せのままに、僕は魔剣グラムを手に魔王討伐を目指しています。何度か危険な目に遭いましたが、この魔剣グラムと……そして、素晴らしい仲間達が助けてくれました。ホラ、2人とも挨拶を」

 

 ミツルギさんは心臓に手を置き、ジーク君のために魔王討伐のため日々努力していることを報告すると、隣にいる仲間の2人に紹介を促しました。にしてもそこまでジーク君に忠実とは……まさか、彼はジーニアス教の方でしょうか?

 

「私はクレメア!職業は戦士よ!アンタがキョウヤの言ってた神様って人?男とはいえ、いくら神様でもキョウヤは渡さないからね!」

「は……?」

「わっ!?やめろよクレメア!よりにもよって神様の前で!?」

「いいじゃん別に」

「むー……あっ!私はフィオ!職業は盗賊!みんなはなんて名前なの?」

 

 緑色のポニーテールの女性──クレメアさんは名乗ると、ジーク君に見せびらかすようにミツルギさんの腕に抱きつきました。ミツルギさんを渡さない宣言をしてきたクレメアさんの発言に対し、ジーク君は思わずポカンとしてしまいましたね。まぁ、当たり前でしょうが。

 そんなクレメアさんを赤髪の三つ編み少女──フィオさんは羨ましそうに見ながらも名乗り、私を含めた5人に名前を尋ねてきました。

 えっ、ミツルギさんモテモテ?

 

「俺はジーク、ルーンナイトだ。君達がミツルギの仲間なのか?とりあえずよろしく」

「あっ、やっと喋れる感じですかね。スゥー……我が名はめぐみん!この街随一のアークウィザードであり──」

「ジャンヌ・ルーラー、アークプリーストです」

「あたしはクリス。職業は盗賊だよ。ま、気軽に仲良くしましょ」

「私はダクネスだ。職業はクルセイダー。3人ともよろしく」

「え、ちょ……ジャンヌ!私の名乗りを邪魔するとはどういうつもりですか!?爆裂魔法で爆裂四散したいんですか!?」

「長い上に相手が引くと困るので……」

 

 自己紹介を促された私達は、各々の名前と職業を口にしました。めぐみんさんの自己紹介は色々とアレなので途切れさせましたが。

 

「しかし、何故神様がこんなところに……?」

「あぁ、それは……ジャンヌの転生特典としてこの世界に連れてこられたからだ。だから帰るためには、魔王を倒さなきゃいけなくなって」

「……はっ?」

 

 ……アレ?なんか嫌な予感が……

 

「……君、それは本当なのか?」

 

 ……えっと……

 

「……はい、興味本位で頼んでしまいました。すみません……」

「このど畜生がァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

「ホウァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎」

 

 ぴぎゅっ⁉︎胸ぐらッ!胸ぐら掴んできたッ⁉︎そしてブンブン揺らしてきたッ⁉︎ちょ、ヤバいヤバい!吐きそう!吐きそうです!

 

「やめろミツルギ!」

「は、はいぃ⁉︎」

 

 あ、ジーク君が怒鳴ってくれたおかげでミツルギさんが私をブンブンと揺らしたのをやめてくれました……よかった、一旦助かりました……

 

「ミツルギ、その件に関しては俺が望んだことなんだ。発案したのはジャンヌだが、彼女は実行するのを躊躇していた。決めた時にもやっていけなかったのかと罪悪感を持っていた。彼女に悪気はないんだ」

「し、しかしジーク様、今の扱いはどう考えても不当です。第一今はどこに寝泊まりを……」

「馬小屋だが?」

「はい?」

 

 あ、また地雷が……

 

「それも2人でだ」

「女ゴルァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

「ギャアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎」

 

 またブンブンッて!またブンブンッて!この人どれだけジーク君を溺愛しているのですか⁉︎どれほど信仰しているというのですか⁉︎ちょ、ホントに、吐きそう……とその時、ミツルギさんの腕をダクネスさんが掴み力づくで私から引き離し、めぐみんさんが杖を彼に突きつけました。これにはクレメアさんとフィオさんも戦闘態勢を整えてきましたが、ミツルギさんが一旦待てというように手で制止しました。ま、また助かった……

 

「おい、いい加減にしろ少年。ジークとは知り合いらしいが初対面のジャンヌに対して礼儀知らずにもほどがあるだろう」

「貴方がその態度を取るなら、こっちも撃っていいですか?爆裂魔法撃っちゃっていいですか?いいですよね?」

「ッ……」

 

 うわぁ、2人ともブチギレ寸前……一方、私の背中をさすってくれているジーク君とクリスさんはというと。

 

「ど、どうするんですか先輩……あの子性格はアレな感じですけど、本人は全く悪気ない感じですよ……?」

「一番厄介なタイプだな……ハァ、まさか俺の判断がこんな結果を……ジャンヌは悪くないというのに……」

 

 と、そんな会話をしていました。なんか、お二人とも面目無いです……

 

「……とにかくジャンヌ・ルーラー、君のような鬼畜外道にジーク様を預けるわけにはいかない。ジーク様、魔王討伐が目的ならば、こんな女から離れて僕と一緒に行きましょう。他のパーティーメンバーの方もどうです?僕は彼女のように冷酷無比なことはしないし、仲間を大切にします。僕と一緒に冒険へ行きましょう」

 

 えっ、私が鬼畜外道?さすがにひどいです……どうやら彼は私の側に自分の崇拝する神様を置いていては、いずれあんなことやこんなことをされて汚されると考えたのでしょう。いずれ他のパーティーメンバーも私から非道なプレイを受けてしまうだろう、そう危惧したのですね。失礼な、私はそんなことをするつもりは毛頭ありませんよ。

 って、うえぇ⁉︎///突然ジーク君が腕を引っ張った⁉︎しかも手首ら辺を掴んで……!これ、前にも……⁉︎と、突然のことで頭の中が混乱していると、ミツルギさんは焦った様子でまた私達の前に立った。うわぁ、懲りない……

 

「ちょ、神様⁉︎一体どこへ⁉︎」

「残念だが、みんな満場一致で君のところに来るつもりは一切ないようだ。それに、このパーティーと同行したことのない君に俺のパーティーのことを侮辱されると不愉快だ。ここを通せ」

 

 ア、アレ?ジーク君、怒ってます……?すごい形相をしているのですが……

 

「……そうですか、しかし申し訳ございませんジーク様。いくら貴方の頼みでも、それだけは聞き受けられません」

 

 うわぁ、ミツルギさんも真剣な表情をしている……どうしましょう、ホント嫌な予感がします……

 

「ジャンヌ・ルーラー……悪いが、ジーク様がこんな境遇に置かれてると知りつつ放っておくわけにはいかない。ジーク様は僕と一緒に来た方が絶対に良いはずだ」

「ミツルギ!俺はついて行きたいなんて一言も言ってないし、言うつもりもない!君主観で勝手に話を進めるな!」

 

 な、なんか嫌な展開が……ジーク君の忠告をも無視し、ミツルギさんは剣を抜いて私にこう告げてきました。

 

「だから……君にひとつ提案だ。僕と勝負しろ。僕が勝てば、ジーク様と後ろのめぐみんさん、ダクネスさん、クリスさんをこちらに貰う。君が勝ったら、ジーク様達の勧誘は諦める。いいな?」

 

 デスヨネ-。むぅ、ここまで彼がしつこく迫ってくるということは、それほどまでに揺るがない精神がおありなのですね……ならば、と私は旗を優雅に振るい、構えた。

 

「ジャンヌ⁉︎」

「大丈夫ですジーク君、私は負けるつもりは一切ありません。それに、ここまで引き下がらない彼の精神に答えないと、私は冒険者として名乗れませんから」

 

 正直冒険者との実践は初めてですが、それでも私は勝つ、絶対に!

 

「中々の勇姿だ、そこは褒めてあげよう……では、始めるぞ」

「えぇ……いきます!」

 

 私がそう叫んだ瞬間、地面に足を大きく踏み入れて、瞬時に彼との距離を詰めました。後はこの旗を振るうのみ!

 しかし、さすがは上級冒険者。その隙を許してはくれませんでした。瞬時に腰から引き抜いた剣で私の旗を弾き、私に隙を作らせながら後方へと下がらせました。

 

「虚を突いたつもりだろうが、残念だったな!」

「ッ、『チェーンバインド』!」

 

 振ってきたミツルギさんの剣が迫る。態勢を崩されたままながらも私が彼に右手を翳した瞬間、地面からボコッと巨大な鎖が飛び出し、ミツルギさんの腕と脚を縛り付けて硬直させました。後は───!

 

「ッ⁉︎しまった、動けない……ッ⁉︎」

「ハァ!」

 

 私は旗を振るってミツルギさんの右腕を攻撃、その時の反動で剣を叩き落しました。そして追い打ちをかけるように……

 

「『ウインドストライク』!」

「うおぉ⁉︎」

 

 鎖を解除させた瞬間に『ウインドブレス』を放つ右腕に『パワード』を加えて、一気に風圧で敵を押し出す合体魔法。それによりミツルギさんは風力に従って屋敷の壁に激突。すぐに起き上がろうとしますが……

 それを私が許しませんでした。旗の尖った先端部分を瞬時に彼の首元に突きつけ……

 

「──勝負ありです」

 

 決着がついたことを告げました。ミツルギさんは思わず腰が抜けてドサッと腰掛けてしまいましたね。ま、今回ばかりはどうでもいいとは思いますが。とりあえず私は彼に背を向けて、あの『魔剣グラム』に手を取りました。

 

「これは中々良さげな剣ですね」

「えっ……?あぁっ⁉︎」

 

 こんなチートそうな剣、他人を批評する人にはもったいない物ですね。

 

「か、返せ!それは僕の剣だ!頼む!返してくれ!」

「申し訳ありませんが、勝手にいろいろと解釈しながら会話を進めた貴方が悪いです。なのでこの剣はしばらく貸していただきます。しばらくしたら返しますので、ご心配なく」

 

 急に弱腰になっても無駄ですからね?元はといえば貴方が悪いのですから。とはいえ、剣を持つのに向いた職業の人はジーク君以外にいるのでしょうか?クリスさんにこの大きさの剣はどうかと思いますし、ジーク君は既に持ってますし。あ、ダクネスさんがいるの忘れてました。だってあの人自分から攻撃を受けに行ってばっかですし……

 

「ジャンヌ……それ、本当に魔剣なのですか?その剣からは何の魔力も感じられませんよ?」

「……えっ?」

 

 嘘?ミツルギさんがこれを散々魔剣魔剣と言いながら、魔力を感じない?し、しかし、闘ってみた時には魔力は感じていましたし?『魔』と名前がついているぐらいならこの剣自体に魔力が宿っていてもおかしくはないはず……

 

「それは僕にしか使えないようになっているんだ!僕以外の人が持っても、『魔剣グラム』に宿る力は扱えない!」

「えっ、そうなのですか?」

「そうだ!君が持っていても意味はない!だからお願いします!その剣を僕に返してください!何でもしますから!」

「いや、そう言われましても……」

 

 なんか、敬語を使って頭を下げながら返してもらうよう頼み込んできたのですが……うぅん、なんでもしますと言われましてもねぇ……?

 と、そんな事を考えていると、突然ジーク君が私とミツルギさんの間に入るように、弱腰になっているミツルギさんの前に立ちました。一体何を考えているのでしょうか?自分の前に出てきたジーク君を、神様を、ミツルギは見上げる形で目にした瞬間……

 

 

 

「──見損なったぞ、御剣(ミツルギ) 響夜(キョウヤ)!

 

バキッ

「ガフッ⁉︎」

 

 突然叫んでは、ミツルギさんの鳩尾に強烈なパンチを入れ込みました……って、ゑゑゑゑゑゑ⁉︎まさかのジーク君が暴力ゥ⁉︎暴力ナンデッ⁉︎ミツルギさんの後ろにいたクレメアさんとフィオさんどころか、私達も思わずビクッと驚いてしまいました。そして、ジーク君のパンチを鎧越しでありながらもモロに食らったミツルギさんは、ジーク君が手を離した瞬間、その場にうつ伏せで倒れてしまいました。

 

「キョッ……キョウヤ!?」

「キョウヤ⁉︎しっかりして!」

 

 クレメアさんとフィオさんは気絶したミツルギさんにすかさず駆け寄り、彼の身体を揺らしましたが、ミツルギさんは依然気絶したまま。ノーガードだったとはいえ、鎧越しにパンチを食らわせて気絶させるなんて……神様が本気で怒るとあそこまでの威力のパンチが打てるのですね……

 って、ちょっと?なんで魔剣を取ってそのまま何も言わず立ち去ろうとするのですか?クレメアさんがミツルギさんに暴力を加えた貴方に文句を言おうと睨みつけていますよ?せめて魔剣は返してあげた方が……

 

「ちょっとアンタ!いきなり何してんのよ!?いくらキョウヤが崇拝している神様とはいえ、怪我でもしたらどう責任取るつもり────」

 

 

 

「黙れ──」

 

「「ヒッ……⁉︎」」

 

 冷淡で無慈悲な声を発したジーク君の、人を見ているとは思えないほど冷徹かつ酷く怒りのこもった目で睨んできたため、クレメアさんとフィオさんは小さく悲鳴を上げる。彼女達だけではない。その後ろにいた私達でさえも、ジーク君の目を見て恐怖を覚えていました。あ、あのジーク君があんな怖い顔をするとは思いませんでしたから……怯え切った2人を見たジーク君は、何も言わず目線を前へ向け、私達の元へと再び歩き出しました。しばらくしてクレメアさんとフィオさんはミツルギさんを抱えると、逃げるようにこの場から去っていきました。

 

「ジ、ジーク君……?」

「もう行こう」

「えっ?し、しかし──」

「いいから」

 

 ジーク君はそう促すと、馬車を再び動かしてギルドへと向かっていきました。彼の様子に不安を感じながらも、私達は彼の後を恐る恐るついて行くこと自体出来ませんでした。正直、怖い……

 

「わ、私が勝負を受け入れたのか、浄化クエストの時に続けようとしたから、怒りが浸透してミツルギさんにぶつけたのでは……?」

「えっ⁉︎そ、そんなわけないんじゃないかな⁉︎それだったら先輩はもう先に怒っていたし、無理矢理にでも止めに入ったと思うよ⁉︎」

「たしかに、ジャンヌの態度が嫌なら、もっと早くキレてもいいはず……私には、あのミツ……ミツ……なんとかさんが出てから怒ったように見えましたが……」

「私もあの男には少々怒りを覚えはしたが……あそこまでではなかったな……正直、あの目では見て欲しくないな……」

 

 取り残された私達は、ジーク君が歩いて行った方向を見たまま、しばらく動こうとしませんでした。彼の背中からひしひしと伝わってきた、怒りと悲しみのオーラに縛られていたのですから───




竜人になったりミツルギ君を殴ったりと、なんか今回はジーク君が目立つ回となってしまいました……そしてミツルギ君ェ……

次回はこの回の後のミツルギ君を中心とした回を出そうかなと思っています。次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この元・魔剣使いに試練を!

ミツルギファイト!今回から2・3話ぐらいジャンヌ達の出番が少なくなります、ご了承ください……


 浄化クエストに挑戦することになり、クリアしたもののブルーアリゲーター達の猛威が異常にヤバかったことを知り、その時にジーク君が竜になれることも知った私、ジャンヌ・ルーラー。そのクエストが終わった後に一度放心し、さらにはジーク君が私よりも先に転生させたという男性・ミツルギさんに出会いました。彼は何故この世界にジーク君がいるのかと本人に直接問いかけた時、その原因である私を鬼畜外道のアークプリーストだと本気で思い込み出してきました。あ、アークプリーストまでは言ってなかったのでした。そして色々あって私のパーティーメンバーを賭けて勝負しろと申し込まれたものの、『魔剣グラム』の剣撃を受ける前になんとか白星を挙げることができました。そして私が『魔剣グラム』を取り上げたことで突然弱腰になったミツルギさんを……ジーク君が思いっきり殴りました。その時は彼を怒らせると怖いということを知ることができました。あの時は、本当に怖かった……

 

 それから時間は経ち──翌日の朝。アクセルの街に住む冒険者達が集まるギルドにて。私達はギルドでシャワシャワというものを飲んでいました。すごく、シャワシャワします。現在は水の浄化の依頼の報告も終わり、ギルドから報酬をもらったところです。結局報酬は檻代から差し引いて100000エリスとなってしまいましたが、それは檻の修理費によるものでした。勘違いテヘペロ☆

 ただ、ひとつ気がかりが。それはジーク君の様子です。ミツルギさんの件以来、ずっと落ち込んでいるかのような様子を浮かべていました。やっぱり彼のことで色々と気に食わないと思っているからなのでしょう。そういえば数分前にどっかの質屋に行っていたとか言っていましたが、そこで一体何をしていたのでしょうか……?とりあえず、機嫌を取らせないと。

 

「あの、ジークく──」

「ここにいたのか、ジャンヌ・ルーラー!」

 

 ん?この声は……そう思いながら私が振り返ると、そこには昨日私とジーク君に魔剣グラムを貢いたミツルギさん。そしてちゃっかり一緒にいたミツルギさんの取り巻きであるクレメアさんとフィオさんまでいますね。するとミツルギさんは、昨日と同じようにバッと頭を下げて私に用件を話してきました。いや、いい加減弱腰にならないで……

 

「頼む!昨日君が奪った魔剣を返してはくれないか!?その代わり、店で1番良い剣を買って──」

「──ミツルギ」

「は、はい?」

 

 突然、ジーク君がゆっくりと席から立ち上がり、ミツルギさんに面と向かう。彼は少し怒っているせいか体から魔力が漏れ、淡くも黒い輝きを出していました。ま、また暴力とか勘弁してください……

 

「俺やジャンヌのパーティーを勝手に景品にした上に、いい剣を買うから魔剣を返してくれとは……さすがに虫がよすぎるんじゃないのか?」

「か、神様……ぼ、僕は別に貴方を安く見ているわけでは……」

「それに、あの剣を授けた時に俺は言ったはずだぞ?『これは与えられた力であり君の力ではない。欲望のままに力を振るってはいけない』と」

 

 ワォ、重い……魔剣を授けた時のその言葉は重い……ジーク君、そんなこと言ってミツルギさんに魔剣を渡したのですか……

 

「なのに今の君は何様のつもりだ?聞いていない上に俺達も伝えてもいないとはいえまだ冒険歴の浅い冒険者に決闘を挑み、そしてグラムを奪われたら決闘の内容も放り投げて返してくれ。あまり、こういうことは言いたくないのだが……失望したぞ」

「ウッ……アァ……」

 

 も、もうやめてあげてくださいジーク君……とっくにミツルギさんのライフはゼロですよ……

 

「──ともかく、あの魔剣を今返せと言っても返すことはできないぞ」

「「えっ……?」」

 

 もうないって、一体どういうことですか?と思いながら私はミツルギさんと一緒にジーク君の懐をジーク君が装備している物には、昨日ミツルギさんから奪った魔剣グラムの姿は、影も形もありませんでした。

 ……⁉︎ま、まさか⁉︎察しがついて仰天した私の今の思考と同じ、最悪のビジョンが見えたミツルギさんは、恐る恐るジーク君に尋ねました。

 

「か、神様……あの、魔剣グラムは……?」

「……あの魔剣は」

 

 

 

「売った」

「うわァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア!」

「「キョ、キョウヤー!?」」

 

 ふくよかになったジーク君の財布を見せられたミツルギは、涙を流しながらその場を全速力で走り去っていきました。取り巻きの2人も慌ててミツルギさんを追いかけました。泣きながらギルドを出て行くミツルギさんとその取り巻きの方々を見て、周りの冒険者のみなさんも困惑の色を見せていますね。にしてもジーク君、転生者に授けた魔剣を売るとかひどい仕打ちを……

 

 終始情けない姿を見せる羽目になった彼でしたが、それでもアクセルの街ではかなりの有名人らしく、魔剣グラムの力のおかげもありますが、その人の良さから多くの冒険者達から好かれていたようです。主に女性から。ルナさんからそう聞きました。そんなミツルギさんが泣いてどこかへ行く姿は珍しいもので、酒場にいた冒険者のみなさんは何があったのかと彼を心配していますね。みなさん優しい。

 

 そして、ミツルギさんが泣きながらギルドを去っていったのを最後まで見ていたジーク君は静かに席に座ると……

 

「ハァ、結局ひどい態度を取ってしまった……」

 

 そう呟きながらまた落ち込んでしまいました。先程も昨日の自分の態度が良くないと思って落ち込んでいたのでしょう、可哀想に……

と、ふと視線をめぐみんさんとダクネスさんに向けると2人はぽかんとした顔をしていた。

 

「どうかしましたか?」

「いや……昨日からジークが神様と呼ばれていたから気になってな」

「先ほどの放出された魔力もびっくりするぐらい凄まじく清らかだったもので……もしかして、本当に彼は……」

「……ッ!」

 

 あ、ジーク君も『しまった』という表情を⁉︎まずい、誤魔化さないと……!

 

「そんなわけないでしょ、だったらなんでジャンヌと一緒にいるというの?本当に先輩が神様なら、あたしは先輩を先輩と呼ばないし、なんで私達なんかと一緒にいるんだって話になるよ」

 

 ク、クリスさん……フォローありがとうございます!

 

「そ、そうですよ!神様がそう簡単に地上に降り立つはずがありませんし、気軽な態度を私達にするはずがありません!」

「ジャンヌ……クリス……」

「そ……そうですよね!ごめんなさいジーク!変な想像をしてしまいました!」

「あぁ、よく考えたら建てられている神ジーニアスの銅像とも違う姿だからな」

「そ、そうか。分かってくれたなら幸いだよ」

 

 とりあえず、なんとか誤魔化せましたね。よかった……

 

 

 

 

 

「──おい、俺今いいこと思いついたぜ?夜、あいつの精神を鍛えてやろうぜ」

「我が○○が、そう望むのなら」

 

 

 

 ん?今、どっかで聞き覚えのあるような声が……気のせいでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢side:第三者

 

 時間は過ぎ──夜となった。その時間帯でのアクセルの、人気のない通路にて。

 

「グスッ……ジーク様に失望された……もうだめだ……戦えない……冒険者失格だ……」

 

 人っ子1人も通らない通路の脇にヘタリと体育座りで座り込み、子供のように泣いている冒険者──ミツルギ。彼の傍にはパーティーメンバーであるクレメア・フィオがおり、必死にミツルギを泣き止まそうと励ましている。

 

「そんなことないって!剣ならまた買えばいいじゃない!幸いまだお金はあるわけだし、私達と一緒に良い武器を探しましょ!」

「そうよ!キョウヤなら魔剣グラムがなくったって大丈夫!私達も頑張ってサポートするから!ねっ!?」

「ダメなんだ……魔剣グラムじゃなきゃ駄目なんだよぉ……」

 

 それでもジャンヌに魔剣を奪われたどころか自身が崇拝していた神によって売りさばかれたダメージはかなり深刻なものだったためか、一向にミツルギが回復する兆しが見られない。

 しかし、彼がここまでメンタル精神を崩されてしまうのも無理はない。ミツルギはジークに魔剣グラムを授けられた時、彼はジークの神々しさ・偉大さ・向き合う人によらず友好的に接する優しさを感じ、彼を溺愛する程に崇拝していた。そんな優しい神との約束を自分は無意識に裏切り、その上で自分も神に裏切られたのだから。

 ひとまず今日は、2人でミツルギを抱えて寝床まで帰るしかない。そう考えた2人はミツルギを立たせようと屈み込もうとした──その時だった。

 

「──おぉい、魔剣グラム使い」

「ん……?」

 

 不意に、ミツルギを呼ぶ男性の声が3人の耳に入った。しかしそれはジークの声ではない。一体誰なのだと思った3人は、共に声が聞こえた方向を見る。通路の先にある暗闇から現れたのは──

 

 2人の男性だった。1人は四方に分かれた緑色のざんばら頭に砂漠の中の旅人のような薄茶色のボロボロなローブマントを羽織っていて白黒の鎧を纏っている青年。もう1人は黒をイメージさせる衣服に長いストールを巻いた青年だった。しかし、ミツルギ達は2人が一体何者なのか全く知らない。果たして2人の正体は一体?そんなことを思っていると、マントを羽織っている鎧の青年が口を開いた。

 

「ここではなんだし、ちょっとツラ貸せや」

「へっ!?えっ、いや……」

「いいからこいっつってんだよ、早よしろやアホンダラ」

「早く来たまえ。でないと……殺されるかもよ?」

「「「は、はいィッ!」」」

 

 鎧の青年とストールの青年は3人にそれだけを言うと、クルリとスタイリッシュに背中を向けて来た道を戻ろうとする。突然見知らぬ2人に場所を移動するぞと言われ3人は戸惑ったが、少し声を低くしてつべこべ言わずついてこいと鎧の青年とストールの青年に脅され、3人はすぐさま立ち上がった。一体どこに連れて行かれるのか。今朝の件があるのだから下手したら殺されるのではないのだろうか。3人は酷く怯えながらも、謎に満ちている2人組の後を静かについていった。

 

 

 

 

 為すがままについていくと、謎の2人組はそのまま街から出て、星が点々と輝く星空が上空に広がる夜の平原に出た。アクセルの街周辺は安全かつ、夜にクエストへ出る冒険者も少ないからか、ミツルギ達がいる場所には人どころかモンスターさえいないらしい。ゆるやかな夜風が5人に吹く中、ミツルギに肩を貸していたフィオが恐る恐る声を上げた。

 

「あの……私達に何か用でしょうか……?」

「用件を話す前に、まずは自己紹介しないとな」

 

 鎧の青年がそう呟くと、クルリとミツルギ達の方を向いて、突然左目を隠しながらビシッとポーズを取ってきた。

 

「俺様の名はタイラー!『正義の魔王となって、この世界の魔王と敵対する者になる』というふざけた夢を持つ冒険者だァ!」

 

 鎧の青年・タイラーが自己紹介を済ました後に起こったのは、呆然。ミツルギ達は『何言ってるんだろうこの人』とでも思っているような唖然とした表情で彼を見つめている。しかも彼は冒険者の職業の中で最弱職である『冒険者』だと自分から名乗ってきたため、ふざけているのかとも感じてしまっている。しかし、彼のキリッとした表情からして嘘は見られない、むしろ嘘というものを感じさせていなかった。タイラーはポーズを解くと、今度はストールの青年が口を開く。

 

「私はウォズ、預言者だ。職業はアークウィザード、とでも言っておこう」

 

 ストールの青年・ウォズは自分のことを預言者と名乗ってきた。タイラーとは違ってふざけたポーズは取っておらず冷静に、職業も上級職だと言っているのに、ミツルギ達は何故か彼が一番怪しい人物だと思い込んでしまっている。根本的理由はわかってはいないらしいものの、彼の雰囲気が何故か怪しさを伺わせる。と、フィオと同じくミツルギに肩を貸していたクレメアがハッと我に返り、恐る恐る声を上げた。

 

「えっと……その正義の魔王様と預言者さんが、私達に何か御用でしょうか……?」

「魔剣グラム、売りに出されたそうだな」

「は、はい、奪っていったあの女の付き人である神様、のような人が……」

 

 突然、魔剣グラムが売られたことを確認してきたタイラーに、フィオは正直に答える。どうやら彼は今朝のジャンヌやジークとのやりとりの一部始終を見ていたようだ。その横で、魔剣グラムという言葉を聞いたミツルギは、魔剣を奪われた挙句売られたショックを思い出したのか、独り顔を俯かせる。

 

 ──すると、タイラーの口から信じられない言葉が飛び出し、さらには信じられない光景まで見せてきた。

 

「その剣って、これの事か?」

「「「………⁉︎」」」

 

 そう、タイラーが腰元から取り出してミツルギ達に見せつけてきたのは、なんと魔剣グラムだった。もう手元に戻るはずのない魔剣が、赤の他人の手によって再び拝められる時が来たのだ。

 

「ど、どこでそれを⁉︎」

「俺が興味本位で適当に探し回ってあげてやったら、とある質屋で無属性の耐久性がとても高い剣として1000000エリスで売られていたから、購入したんだよ」

「わ、わざわざそこまでしていただけるとは……!すみません、お礼に立て替えとかをしますので……!」

 

 思わず聞き返すと、タイラーはどうやって魔剣を取り戻したのかも話してくれた。思いもよらない転機を前に、ミツルギは思わず笑顔を見せる。一度手放してしまったあの魔剣が、再びこの手に取れる。再び魔王討伐に向けて歩き出し、神様のために戦えることを喜んでいた。

 

 しかし、金品交換で手に入るような、うまい話ではないらしい。

 

「ただぁし!金とかでは渡さないぜ?ひとつだけ条件があるんだよ。おいウォズ」

「了解した、我が魔王」

「「「………?」」」

 

 タイラーに促されたウォズは、懐からどうやって納めているのかわからない剣を取り出し、それをミツルギの前に放り落としてきた。一体何のつもりなのだろうかと3人は不審に思うと、ウォズはさらに懐から何かを取り出した。それは時計の針が無い内部機構だけ透けて見える懐中時計、あるいはストップウォッチにも見える物だった。そしてウォズはその時計のようなそれを半回転させ、スイッチを入れた。

 

『Cú Chulainn』

 

 スイッチを押して機械式な音声を発生させて起動させたそれをウォズが自分達の目の前に放り投げた瞬間……それは淡く発光した。ミツルギ達3人は思わず目を塞ぎ、タイラーとウォズは見慣れているのか平然としていた。

 淡い光が収まり、ミツルギ達が目を見開くと──

 

 そこには先程までこの場にはいなかった1人の男性が。藍色の長髪と深紅の瞳、美青年というよりは荒々しく野生感のある男らしい顔立ち。筋骨隆々な肉体には少々不釣り合いと思われる、魔術師然としたローブ姿。

 冒険者というよりも、冒険者の亡霊といった雰囲気を漂わせている男性が、5人の前に突如として現れたのだ。

 

 一体何処から現れたとでもいうのか。ミツルギ達がそう困惑していると──

 

 

 

「祝え!」

 

「「「⁉︎」」」

 

 突然、ウォズが高らかに叫び出した。しかも祝福しろと言うように。

 

「魔術師として、我が魔王の従者として蘇りし、とある世界のケルト神話で祀られた、太陽神を父に持つ半神半人の英雄!その名もクー・フーリン!少年の魔剣を賭けた試練の執行人として、この地に降り立った瞬間である!」

「……前々から思ってたんだけど、お前それをいちいち言わないと気が済まないのか?」

「えぇ、大切な儀式なので」

 

 高らかに語り合えたウォズに対してタイラーがそうツッコむと、当の本人はそう即答したため溜息をついた。

 

「やっと出番か?魔王様よぉ」

「おうそうだ。昼間の話の通りに動けよ?キャスター:クー・フーリン」

「あいよ」

 

 何処か軽い口調で語る魔術師(キャスター)、クー・フーリン。もう動いていいのかとタイラーに尋ねると本人は『もちろん』と伝えてきたため、クー・フーリンは能天気に杖を振るい、それをミツルギ達に向ける。彼は既にやる気満々なのだなと察知したウォズは、これから何をするのかをミツルギ達に告げた。

 

「ルールは簡単だ。私が今()び出した、我が魔王の部下の1人であるクー・フーリンと闘い、見事勝ってみせたら魔剣をタダで差し上げよう。それも3人がかりでだ」

「「「────!」」」

「ただし君達が負けたら……魔剣は諦めてその剣で我慢してもらおう」

 

 ウォズの冷たい声を聞き、タイラーとクー・フーリンの不敵な笑みからの眼差しを見て、クレメアとフィオは再び怯え、ミツルギも思わず気圧されてしまう。しかし──この戦いに勝てば、魔剣グラムが返ってくる。戦う理由はそれだけで十分だし、自分に勇気をもたらしてくれた。

 

「いいですよ。その勝負──受けて立ちましょう!」

 

 魔剣が戻ってくると知ってすっかり元気になったのか、ミツルギはニッと笑うと、ウォズが渡してくれた剣を拾い、鞘を抜いてクー・フーリンに剣先を向けた。魔剣グラムと同じぐらいの大きさを持つ両刃剣。魔剣グラムのような力は出せないが、剣を振るう面では問題ないだろう。

 

 そして闘うべき相手──クー・フーリンは時計みたいな物から突如として姿を現した、今この場で自己紹介されるまで知らなった無名の魔術師。にしてはやたら凄腕のアークウィザードの風格があるように見えるが、それでも様々な場所で冒険をし、数多の強力なモンスターを倒してきたこちらの方が場数を踏んでいるはず。剣の扱いも、こっちが先を行ける。加えて対決の形式は3対1。本当は1対1でもいいのだが、これは魔剣グラムを取り戻すための戦い。つまり、今後の冒険者生活を左右するターニングポイントだ。ここは相手の言葉に甘え、遠慮なく3人で行くのがベストだろうと、ミツルギはそう思い込んでいるようだ。

 

「うぅ……正直怖い……けど!キョウヤとならたとえ火の中水の中草の中森の中!どこまでも一緒についていくよ!」

「私達3人なら大丈夫!一緒に魔剣を取り戻そう!」

「あぁ!僕達の力を見せてやろう!」

 

 勝負を受ける意志を見せたミツルギを見て、横にいたクレメアとフィオも意を決し、各々の武器を構える。魔剣を奪われた時のテンションとは打って変わって、ミツルギは自信に満ち溢れた顔で剣を強く握る。

 今にもミツルギ・クレメア・フィオの魔剣奪還戦が始まろうとしていた時、前で武器を構えていたミツルギを、タイラーは自分の部下の後ろから見て……

 

「(()()を甘く見るなよ?魔剣の力に囚われていたお馬鹿さんよぉ)」

 

 今日最大の不敵な笑みで、ミツルギを見下していた。

 

「威勢がいいのはいいことだな。さてと……始めようじゃないかァ!」

 

 クー・フーリンがそう高らかに叫んだのと同時に……3人と1人が、激しくぶつかった────




パク……パ、パ、パ、パク、リ……(恐怖)

じ、次回は、ジャンヌ達パーティーの出番は、ない、と、思います……ご了承、を……(恐怖)

え……?何、急に、怖がっている、様子を、見せて、いる、のかって……?察してくださいよッ!それではまたッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この魔術師に転生者の意地を!(シリアス注意)

ミツルギ組vsクー・フーリン戦、勃発!今回はジークとジャンヌの出番はなく、シリアスな回となっております。シリアスアレルギーに弱い方は避難する準備だァ!


 とある所業により、自分が崇拝していた神・ジークの怒りを買い、魔剣グラムを奪われるどころか売りさばかれてしまった転生者・御剣(ミツルギ) 響夜(キョウヤ)。自分が長く所持していた魔剣が手の届かないところまで行ってしまったことによるショックは非常に大きく、彼の冒険者生活を破綻させるには十分過ぎた。もう二度と魔王を倒すための旅に出ることはできない。そう落ち込んでいた時──思いもよらぬ形でチャンスが訪れる。

 

 自称『正義の魔王となってこの世界の魔王と敵対する者になる男』と名乗る謎の青年・タイラーとその従者らしき青年・ウォズから、自分達の部下の1人に勝てば魔剣グラムを返してくれるという、3対1の勝負を挑まれた。武器はウォズから渡された両刃剣しかないが、こちらは3人。何より、再び魔剣を手にするためには戦うしかない。ミツルギはこれをすぐさま引き受け、剣を取った。相手がモンスターならまだしも、3人に囲まれるのは、杖を持った魔術師然としたローブ姿の──人間。そばから見れば、3人側が非常に有利なものに見えるだろうし、決着も早々に着くだろう。ミツルギはそう悟っていた。

 

 

 

 しかし───

 

 

 

「ハァ、ハァ……クソッ!」

「おいおい、もう息切れかよ?魔剣を取り戻したかったらもっと奴に根性見せろよな」

 

 現実はそう甘くはなかった。ミツルギは肩で息をし、剣を握る力を強めて前方を睨む。両隣にいるクレメアとフィオも同じく疲れが見えており、悔しそうな顔で前を見ている。そんな彼らを見ていたタイラーは煽りと言ってもいいような気合いを入れさせる言葉を投げかけ、ウォズは鼻で笑いながら不敵な微笑みを浮かべている。彼らの視線の先にいるのは……ミツルギ達とは対照的に、涼しい笑顔で3人を無言で指をクイクイッと動かして挑発している1人の男性。藍色の長髪と深紅の瞳、美青年というよりは荒々しく野生感のある男らしい顔立ち。筋骨隆々な肉体には少々不釣り合いと思われる、魔術師然としたローブ姿。アークウィザードらしき男──クー・フーリン。

 その1人の男に対して、3人は幾度となく攻撃を仕掛けた。1人だけの突撃だけじゃない。2人、3人同時に仕掛けた。しかしこの男は、3人の攻撃をものともせず杖1本で防ぎ、避け、蹴り飛ばしていた。

 勝負を始めてから今まで、一切その場から動いておらず、()()()1()()()使()()()()()

 

「(なんだ、この男……⁉︎レベルが違いすぎる……ッ!)」

 

 時計みたいな物から突如として姿を現した、無名の冒険者……否、冒険者にすらなっていないのではないのかも不明なたった1人の男に、傷一つすら与えられずにいた。そして彼と闘っているうちに、ミツルギは悟ったのだ。

 

 ──この男は、ただの人間ではない。と。

 

「どうしたあんちゃん達、もう終わりか?」

「こんのっ……舐めるなぁあああ!」

「ッ!クレメア!」

 

 退屈そうに杖を肩に乗せながら耳をかっぽじるクー・フーリン。そんな彼の態度を見て怒りを覚えたクレメアは叫びながら彼に向かって走り出す。1人では危険だと判断したミツルギも、彼女の後を追うように走り出した。クレメアは走りながら、スキル『身体強化』を使い、自身の俊敏性を高める。一気に加速し、その勢いで装備していた片手剣をぶつける。しかし、クー・フーリンはこれを難なく杖で受け止めた。クレメアは惜しまず続けて連撃を仕掛けるも、クー・フーリンは杖で弾きつつ、余裕な様子で彼女の剣をかわし続ける。後から来たミツルギも斬りかかって2対1に持ち込むが、クー・フーリンはそれらを回避・回避・そして弾く。自分の体に傷を与えることを許さなかった。

 

「やっぱ威勢がいいし、武器やスキルの扱いにも慣れてるな……けどまだ甘ェ!」

「うあぁっ!」

 

 しばらく2人の攻撃を受けていたクー・フーリンは、ミツルギを後ろへ押し出すように剣を弾き、彼と距離を取る。強い力で押され、ミツルギが体勢を崩している内に、クー・フーリンは横から仕掛けてきたクレメアの攻撃を杖で受け止め、彼女を蹴り飛ばした。クレメアはそのまま彼の左真横方向に飛ばされ、草原の上を転がる。

 

「さてと……次はどう来るんだい?」

「ッ……!」

 

 クー・フーリンは蹴り飛ばしたクレメアから視線を外すと、ミツルギに視線を向ける。蹴り飛ばされたクレメアを心配しながらも、ミツルギは負けじとクー・フーリンを睨み返した。

 

 彼の背後に忍び寄るフィオを、決して見ないようにしながら。クレメアの猛攻撃とミツルギによる攻撃でクー・フーリンが2人に注意を向けている間、フィオは盗賊スキル『潜伏』で気配を消し、彼の目を盗んで彼の背後に回っていたのだ。2人が注意を引き付け、フィオが背後に回る。それが彼らのコンビネーション攻撃のひとつなのだ。

 まだクー・フーリンがフィオに気付く素振りは見せていない。フィオは息を殺し、腰元に据えていた短剣を逆手に持つ。そして、決して声は出さずに彼の背中めがけて斬りかかった。

 

 

 

 しかし、クー・フーリンは一切振り返ることなく、咄嗟に背中へ杖をまわしてフィオの攻撃を防いだのだった。

 

「「「なっ⁉︎」」」

 

 まさか防がれるとは思っていなかったのか、斬りかかったフィオ、そして仲間のミツルギとクレメアは思わず声を出して驚く。するとクー・フーリンは顔をフィオの方に向けながら───

 

「俺、暗殺者のような奴らとも闘ったことがあるからなぁ。何処に誰が忍び寄っているのか、なんとなく察せれるんだよ」

 

 そう呟いた瞬間、杖で短剣を軽く弾き、素早く回し蹴りでフィオの右脇腹を蹴りつけた。後方に蹴り飛ばされ、先程のクレメアと同じく草原の上を転がったフィオは苦しそうに咳き込む。倒れたフィオから目を離したクー・フーリンは、再びミツルギを睨む。ミツルギはさっきと打って変わり、彼の睨みを見て思わず尻餅をつきそうになっていた。

 

「彼、3人で遊んではいないかい?魔法を1回も使っていないようだし」

「あれでいいんじゃね?でないと、魔剣使いのテストにならねぇから」

 

 まるでクー・フーリンが一切の本気を出してないような会話をしているタイラーとウォズ。そう、ウォズの言う通りクー・フーリンは魔法を一切使っていない。つまり……彼はまだ、一度も全力を出していないということである。

 ミツルギ達にはまだコンビネーション攻撃のバリエーションがある。だがクー・フーリンは最初に立っていた場所から一歩も動いていない。杖も3人の攻撃を防ぐ時にしか使っておらず、蹴りでしかダメージを入れていない。彼は本気でミツルギ達しかし、その蹴りのダメージも侮れない。何度か蹴られたことでダメージは積み重なっており、このままではミツルギ達が体力を消耗し、負けてしまう。

 どうにか打開策はないかと、ミツルギは必死に頭を回す。もう1回仕掛けるか、自分の影にクレメアを潜ませ近付き、ギリギリでクレメアを飛び出させるか、フィオのスティールで刀を奪ったところを狙うか。様々なパターンを思い浮かべる……が、どれもクー・フーリンに止められるような気がして他ならない。何をしても無駄ではないかと。それほどまでに、彼は強かったのだ。

 

「もう終わりかい?小僧」

「クッ……!」

 

 ミツルギを睨んだまま、クー・フーリンは挑発する。ミツルギは何とか形成を逆転させたいところだが、その方法を思いつかずにいた。クレメアとフィオが痛みに苦しむ表情を見せる中バージルを相手に何もできずにいる自分の無力さを痛感し、思わず俯いてしまった。まるで殻の抜けた、戦意を喪失した獣のように。

 そんな拍子抜けた様子を見せるミツルギを見て、クー・フーリンは溜息をつきながらこう呟いた。

 

 

 

「──所詮、テメェは魔剣グラムがないとただの臆病者でしかないってことか」

 

ピクッ

「なんだと……?」

 

 彼の今の煽りの言葉が、ミツルギの堪忍袋の尾を切らした。

 

「魔王様から聞いたぜ?テメェ、神様から『魔剣を欲望のままに力を振るってはいけない』って言われていたのに、その約束を破ったせいで神様から失望を受けたって」

「ッ……!」

「情けないねぇ。神様から授けられた魔剣を愛用していたせいで神様の約束を忘れ、しかもそれ失ったらダメ人間にすぐ早変わり。これを世間が知ったらどうなるか……」

 

 クー・フーリンの言っていることは正しい。彼の口から淡々と発してきた言葉を耳にしながら、ミツルギは認めたがらずも肯定しなければならないといけないと思ったのか歯軋りをする。ミツルギは今まで神様に授けられたその魔剣を愛用し、まるで自分の力の一部のように使い慣らしていた。その魔剣を失った瞬間、自分がどれだけ魔剣(それ)を頼っていたのかを酷く痛感していた。そんな心境がこの闘いにも響いている、その現実を受け入れなければならないのかという自分自身に対する怒りが、クー・フーリンの言葉によって湧き上がった。

 

「うるさい!うるさいうるさい!たしかに僕は魔剣にばっか頼っていた!けど、たとえそれがなくても──」

「ならひとつ、アドバイスをやるよ」

 

 頭の中では現実を理解している。けど敵の前ではそんな心境を見せたくない。その一心で力強く剣のグリップを握りしめてクー・フーリンに目掛けて走りだそうとした瞬間、クー・フーリンは右手を翳した。その直後、ミツルギの頭上にオレンジ色の文字が浮かび上がり、そしてその文字は赤く熱を帯び───

 

「所詮、力のねぇやつはすぐ滅びるんだよ──」

 

 

 

 人を見下すほどの冷徹な声が響いた瞬間、ミツルギの体が、炎の柱によって包まれた。あまりもの一瞬の、ミツルギに降りかかった最悪な事態を目の当たりにしたクレメアとフィオは、驚愕と恐怖のあまり思わず目を見開く。

 天空から降り注がれた、全てを焼き尽くさんとする灼熱の業火。空間が歪んでいるように見せているその業火は、かなり頑丈なはずの胴体の鎧を剥ぐようにほとんどを全て灰と化させて散らし、露わとなったその肌を黒く焦がし、火傷の域を超えた激しい痛覚を彼の体に酷く染み込ませる。しかし、ミツルギは今受けているこの惨状を、一体自分の身に何が起きたのか理解できなかったのか、悲鳴ひとつすら言葉に出来ずにいた。

 やがて業火の柱は消え、体力を猛威に削られたミツルギがその場で膝をついた瞬間、いつの間にか彼の目の前に立っていたクー・フーリンに蹴り倒される。何が起こったのか理解出来てはいないものの、何も抵抗しないわけにはいかないと地面に手をついて、もたれかかった状態となったその体に───

 

 

 

 自身の腹部に、死を運ぶ槍のように杖を……いや、槍そのものを深く突きつけられた。矛先がクリスタルのストーン状に鋭い形状となっている全身真っ赤な槍が、ミツルギの腹部に突き刺さったのだ。

 

「ガハッ……⁉︎」

「愚かすぎるんだよ、あんちゃん」

 

 刺されている部分が血で生暖かくなった瞬間、業火を受けた時にすぐ体に襲いかかるはずの痛覚とともに、激しい痛みがミツルギの全身を駆け巡り、口から濁った呻きが──真っ赤な体液……血とともに吐き出された。その血は腹部から溢れる同類のものと共に、下の草原を赤く染める。

 

「やっぱテメェは……」

 

 淡々と言葉を続けようとするクー・フーリン。その冷たい声がさらにミツルギの体に悪影響を及ぼしてきたのか、腹を刺されているはずなのに、ミツルギはまるで心臓を刺されたかのような感覚に陥った。そして、クー・フーリンが彼の胸部を右足で踏みつけ───

 

「他人からの力に溺れた、その力でないと誰かを守れない、愚かなバカだったみたいだな」

 

 その足でミツルギの体を蹴り倒しながら、同時に槍を引き抜いた。

 そしてミツルギは、力なくその場に仰向けで倒れた。辛うじてまだ意識はあるのか、痛みを感じる腹部に手を当てながら──まるで自分以上の貧弱な戦士を殺した残虐な悪魔のような目で、自分を見下ろしているクー・フーリンを見た。

 

「キョ……キョウヤァアァアァアァアァアァアァアァアァッ!」

「そ……そんな……」

 

 草原に倒れ血を流すミツルギを見て、クレメアは悲鳴を上げる。フィオも信じられない、信じたくない光景を目の当たりにし、身体を震わせていた。

 

「あ……あの馬鹿⁉︎約束と違うじゃねぇか⁉︎」

「驚いた……まさか彼が我が魔王の命令に背くとは……」

 

 残虐な手をミツルギに対して使ってきたクー・フーリンの行動を見たタイラーは、彼のその行動を予測していなかったのか目を大きく見開きながら怒声を上げ、ウォズはタイラーの命令には忠実だと思っていたクー・フーリンがその命令に違反する行為をしたことに対して、冷静ながらも驚きを感じていた。

 ミツルギの血で赤く染まった槍の先端から血が滴り落ちる中、クー・フーリンはニタリと口元に不気味な弧を描きながら口を開いた。

 

「……で?ここまでやったのに、あんちゃんはもう抵抗しなくていいのか?ホントにもう、何もしなくてもいいのかい?だったら……仲間を守れず殺されるのを見て、無力な自分を悔んで、嘆きながら死ねばいいんだよ。愚か者にはそういった最期がお似合いだ」

「………ッ!」

 

 彼の言葉を聞いて、ミツルギは思わず閉じかけていた目を見開く。そう、この男はその口からたしかに言ったのだ。今ここで、自分の目の前で──仲間を殺す、と。

 

「よくも……よくもキョウヤをぉおおおおおおおおおッ!」

「ッ……やめろ……クレメア……ッ!」

 

 ミツルギが刺されたのを見て、怒りのあまり我を忘れたクレメアが、クー・フーリンに向かって走り出す。ミツルギは掠れた声で呼び止めるが、今の彼女にその言葉は届くはずがなかった。クレメアは再び自身の速度を上げ、素早くクー・フーリンに斬りかかるが、先程のソレとは違い、今度は策もなく無闇に突っ込んだもの。そんな攻撃が、彼に通用するはずもなかった。

 

「──次はテメェだ」

 

 そう冷徹に呟いた瞬間、クー・フーリンはヒラリと横にかわすと、クレメアの腹部に膝蹴りを入れる。うめき声を上げ、動きを止められたクレメアに、今度はかかと落としで地面に叩きつける。そのまま草原の上にうつ伏せで倒れるクレメア。その背後に回り込んだクー・フーリンは、ニタリと微笑みながら未だ血に濡れた槍の矛先と、左腕に持っていた杖の尖った下部を下に向け───

 

「おいッ!やめろ筋肉バカッ!」

 

 

 

 タイラーの、主人の指示を無視し、ミツルギの目の前で、クレメアの右足に槍を、左足に杖を深々と突き刺した。

 

「ッ⁉︎アァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!?」

「クレ……メア……ッ!」

 

 複数の刃物が心臓に突き刺さってきたかのような激痛が走ってきたのか、クレメアはたまらず悲鳴を上げる。それをミツルギは、刺された痛みを伴いながら、彼女を助けられず、ただ見ることしかできなかった。しばらくして、彼女の叫び声がおさまる。クー・フーリンが左足の次に右腕、左腕を交互に刺したところで……クレメアは声を発さなくなったのだ。

 

「まだ死んでねぇから安心しろよ。まぁ、どうせしばらくしたら心臓を突き刺すがな」

 

 またもやクー・フーリンのまるで本物の狂った殺人鬼のように開かれた口から出た、極悪非道な殺害予告。その言葉がまたミツルギに戦慄を走らせ、一分一秒ごとに彼を絶望の淵へと叩き込ませようとしている。

 恐怖で目を見開いたミツルギの表情を見向きもせずに、クー・フーリンは血で濡れた槍と杖を横に振り、草原に血を飛ばし落としてから杖を魔法で引っ込ませるように消し、右手に持っている槍を肩に乗せる。そして独り草原で座り込んでいたフィオに顔を向け、そちらへ向かって歩き出した。

 

「お、おいッ!筋肉バカッ!ガリガリッ!槍フェチッ!命令だからやめろっつってんだろッ!」

 

 さすがにこれ以上クー・フーリンを放っておくと、いずれこの状況以上の惨事は免れない。そう悟ったタイラーは彼に対する様々な悪口で注意を引き殺戮を止めようとするものの、当の本人はその悪口に聞く耳を持っていないのか、主人の声を横に受け流すように一歩一歩フィオへと近づいていく。

 

「あっ……あぁっ……」

「に……げろ……フィオ……!」

 

 このままでは彼女まで殺される。ミツルギは逃げるように声を絞り出して告げるが、フィオは恐怖のあまりに腰が抜け、立つことができずにいた。クー・フーリンは不敵な微笑みを浮かべたまま無言のまま歩き、フィオの前で足を止める。彼女は涙を流して怯えていたが、クー・フーリンはそんなこと気にも止めずに右手を伸ばし……彼女の首を絞め、そのまま片手で持ち上げた。

 

「グッ……アッ……!」

「お嬢ちゃんには、こいつだけで充分だな」

「やめろクー・フーリン!魔王の……いや、主人の俺の言うことが聞けないのかッ⁉︎」

 

 地に足がつかず、宙ぶらりんのまま吊るされたフィオは苦しそうにもがく。クー・フーリンの手をバンバン叩こうとも、主人のタイラーが怒声を浴びせようとも、彼は手の力を一切緩めようとしない。

 

 クレメアが刺され、フィオが絞め殺されそうになっている──それなのに、ミツルギは何もすることができない。

 

 このままでは仲間の2人が殺され、最後は自分も死んでしまう。それなのに、今の自分は何もできない。そんな自分を情けなく思いだした。

 

「(クソッ……!やはりこの男の言うとおり、僕は魔剣グラムがないと何もできないのか……⁉︎)」

 

 ふと、クー・フーリンから告げられた正論の言葉を思い出し、さらに今の自分を嘆く。せめて、せめて魔剣グラムがあれば、幾多のモンスターを狩ってきた、無敵の魔剣がありさえすれば、2人を助け出せるのに。あの男を倒せるのに。

 だがその魔剣は、今はもうない。たとえ心の底から願おうとも、運良く神様が持ってきたり、突然ここに現れることはない。ましてや自分が裏切ってしまった神様なんかが、この場に……

 

「(……いや……)」

 

 魔剣グラムがなければ、モンスターを倒す力もない。クー・フーリンの言う通り、誰かを守ることもできない。2人を守ることが───

 

「(違う……ッ!)」

 

 だが、魔剣グラムがないことは、2人を『守らない』理由にはならない───

 そう考える頃には、既に身体が動いていた。ミツルギは右手に持っていた剣を再び握り、傷を抑えながら立ち上がる。穴の空いた鎧から血が流れ落ちてはいるが、彼は構わないと言うように前へ歩き出した。クレメアは未だに起き上がる様子を見せない。クー・フーリンに首を絞められているフィオも抵抗をやめ、両手を力なく垂らしている。

 もしかしたら、もう手遅れなのかもしれない。しかし、そうとも限らない。まだ2人を助けられるのなら……どこまでも、自分を信じてついてきてくれた、2人を守れるのなら……そんな一心で、ミツルギは目の前の敵に歩み寄っていく。

 

「いい加減にしろっつってんのに……ッ!おいウォズッ!あのバカにお灸を吸わせるぞ!これ以上あいつが惨事を起こす前に!死人が出る前に!」

「了解した、我が魔王!」

 

 部下の、クー・フーリンの行動に痺れを切らした主人・タイラーと従者・ウォズ。これ以上最悪な事態が広がる前にと強行行為で彼を阻止しようとした───

 

 

 

「やめ、ろ……」

「「………?」」

 

 ふと、微かな声が2人の動きを静止させる。残虐行為を続けているクー・フーリンに続いて2人の視界に新しく入ってきたのは……今にも満身創痍で生き絶えそうな体で突っ立ちながらクー・フーリンを睨んでいるソードマスター……否、1人の勇敢な青年・御剣(ミツルギ) 響夜(キョウヤ)であった。

 ミツルギが近づいているのに気付いたのか、クー・フーリンはフィオの首から手を放し、向かい来るミツルギに身体を向ける。彼の背後で横たわるフィオは、目を開ける様子を見せない。そしてクー・フーリンは今もなお微笑みを浮かべている。が、今のその微笑みには不気味な雰囲気はなく、何かを期待していたのかのような笑みであった。

 

「お、おい魔剣使い……?」

「これ以上……2人に……手を出すな……」

「ったく懲りないなお前。力を持たないお前に、今更何ができるってんだ?」

 

 不気味さも殺意もいつの間にか感じさせなくしているクー・フーリン。今の彼が何を思っているのかは誰も指摘・予測出来ていないものの、その挑発的態度に、何か裏があることは間違いなかった。それでもお構いなしと、ミツルギは強気な姿勢を崩さない。

 

「守る……僕が……守るんだ……」

「言ったはずだぜ?所詮、力のねぇやつはすぐ滅びる、と。他人からの力に溺れ、その力でないと誰かを守れない愚かなバカなあんちゃんじゃあ、もう何も守ることはできねぇよ」

 

 敵の無慈悲な言葉が、ミツルギに重くのしかかる。たしかに、前までの自分は他人から授けられた力ばかりを振るっていた。それを奪われ、力なく深手を負った今の彼には誰かを守れるほどの力はない。むしろこっちが足でまといになるだろう。当の本人も、それは頭の中では理解していた。

 

 しかし、それでも───

 

 

 

「それでも……僕が……守るんだァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

「ッ──⁉︎」

 

 ミツルギは力を振り絞るように叫び、足に力を入れて地面を踏みしめる。腹の傷が一層痛むのを感じながらも、ミツルギはクー・フーリンに向かって駆け出した。

 揺るぎない精神・諦めるわけにはいかないという嘆きからの闘志。それらが合わさった叫びが、今まで平然で余裕をかましていたクー・フーリンの体を、『威圧』で怯ませた。が、それでも防御態勢に立つのには容易だった。ミツルギが彼に向かって力のままに振るってきた剣をいとも簡単に槍で止めた。しかし、ミツルギは構わず目の前の敵へ何度も斬りかかる。力む度に傷が痛むが、ミツルギは気合でそれを跳ね除ける。

 

「(もう動けない程に身も心もボロボロなはずなのに、急に威勢が戻ってきやがっただと?いや、それどころか……俺を押そうとしているッ⁉︎)」

 

 なんだこの違和感は。力の差はこちらが歴然としているのに、何故こちらが押されていると感じてしまうのか。そんな考えが頭の中でよぎりながらも、クー・フーリンはミツルギの剣を次々と槍で弾いていく。6回目・7回目・8回目・9回目・10回目───

 

 

 

 次の瞬間、クー・フーリンは左脇腹に違和感を覚えた。

 

「ッ⁉︎……⁉︎おいおい、マジかよ……ッ!」

 

 左脇腹にチラリと視線を向けたクー・フーリン。彼がそこで目にしたのは……その部分に切り傷がつけられ、赤い血が一瞬吹き出る瞬間であった。その後その血はたらりと体から下へ垂れ込み、自分が踏み込んでいる草原の一部分が赤色に変わっていく。

 

「お、おぉ……⁉︎」

「驚いた、まさかあの体で……」

 

 この一瞬を、タイラーとウォズも逃さなかった。今までクー・フーリンに当たることのなかった攻撃が、初めて傷口を作らせた瞬間であった。そして、今まで余裕の笑みを見せていたクー・フーリンの表情が、余裕な様子を見せれない強張った表情に変わった瞬間も逃さなかった。

 油断をしていたとはいえ、自分の体に大きな傷が作られた。そんな瞬間に遭い今度は自分に痛みが襲いかかってきたことに目を見開いているクー・フーリン。しかし、これ以上敏感にその感覚を気にしているとまた目の前の攻撃をその身に受けてしまう。それを避けるべきだと感じたクー・フーリンはミツルギの剣をすぐさま呼び出した杖で受け止め、弾き返し、槍でミツルギの身体を突きつける。肩を掠った程度だが、既に受けている傷が重なりミツルギは顔を歪ませるが、彼は決して手を止めなかった。自分に降りかかっている痛みを気にせず、彼はめいっぱいの力で斬りかかる。それをクー・フーリンは真正面から槍と杖で受け止めた。

 

 そして、クー・フーリンが杖と槍を交差させながら剣を弾き返していく中、また彼の体にミツルギの剣が斬り付けられた。それも一閃だけでなく、二閃・三閃と続けて。

 

「ッ────! ……ヘッ!」

 

 連続で吹き出す体内の血液、それと同時に体全体に襲いかかる痛覚。だがそれでもクー・フーリンは惜しまず、怯まず、彼を憎まず……むしろ、ニカッと微笑みながら槍で剣を弾き、杖から火の玉を放つ。その火の玉が熱とともにミツルギの体を押し飛ばし後退させるが、それでもミツルギは地を踏んで踏ん張り、再びクー・フーリンに斬りかかる。

 2人の鍔迫り合い。交差する剣・槍・杖は火花を散らし、お互いに睨み合う。クー・フーリンを止めようと考えていたタイラーもウォズも、何故か一歩すら動こうとすることが出来ずにいた。まるで2人の鍔迫り合いから発生でもしたかのような気迫に、縛られたように。

 

「それ以上の力を発揮できるほどの体力は、もう残されていないはず……なのに何故テメェは剣を振るんだ?いずれ力尽きて倒れる、だから勝てるはずがない。それをわかっていながら、何故テメェは立ち向かうんだ?もう限界だろ?」

 

 武器を交えながら、クー・フーリンはミツルギへ問いかけてきた。どうして今剣を振るうのか。無謀だと知っていながらも、どうして戦い続けるのか。

 彼の問いに、ミツルギは感情のままに……魂の叫びを放った。

 

「2人が……大切な、仲間だからだ……!その仲間が、殺されそうになって……黙って、られるわけ……ないだろ……!」

「……ッ⁉︎」

 

 ミツルギの剣が、クー・フーリンの武器を押し始めた。これにもクー・フーリンは予測していなかったのか、少し目を見開いている。

 

「守るんだ……!僕が……僕が、守るんだァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

 

 そして──ミツルギは魂の咆哮と共に、クー・フーリンを後方へと押し出した。攻撃を受けている間は今まで一歩も動いていなかった彼の足……いや、体が、初めて後方へと押し出されたのだ。

 だがそれで彼に隙を作られることがないのはわかっている、まだ押し出す力が足りないのもわかっている。だから手は一切緩まない。クー・フーリンが地を踏んでそのばに踏みとどまったのと同時に、ミツルギは彼に目掛けて走り出し、これが最後なのかもしれないのにも構わず力を振り絞りながら剣を突きつけようとした。

 その彼の攻めに対し、クー・フーリンは───

 

 

 

 構えを解き、前方に向けた自分の胴体で受け止めて、それに答えた。

 

「────⁉︎」

「………」

 

 弾き返されるであろうその攻撃を、突然もろに受け止めてきたクー・フーリンのその行動を予測しなかったのか、ミツルギは思わず目を見開く。

 心臓部に突き刺されたことによりクー・フーリンに襲いかかる、ミツルギが腹部に槍を突きつけられた時以上の激烈な痛み。その痛みにより、反射的に彼の口から吐き出され、腹部からも垂れ出されていく、大量の血。しかし、そんな死に直面しそうな激痛を受けても尚、クー・フーリンはそれを感情に出さず、むしろ満足したかのような笑みを見せてきた。

 

「な……な……ん……で……」

 

 何故わざわざ自ら死に行くような真似を、突如としてしてきたのか。それを理解出来ず、意識が朦朧とし始めたミツルギの身体が、後ろに傾く。もはや踏ん張る力すらも残っていなかったミツルギは、再び草原の上で仰向けになり──その眼球に映し出されていた、クー・フーリンが自分とともに仰向けで倒れていくのを見ながら、草原に触れた感触を受けながら倒れ込んだ。

 何故あんな真似を?まるで自分から贖罪でも受けにいったような真似をしたのか?そんなことを問いかけようにも、今の自分には、剣を握るどころか、再び立ち上がる力も、口から声を出す気力すらもう残っていない。

 もはや意識を保つ力もない。クー・フーリンに対する幾多の疑問を抱きながら、それと同時に、彼の意識は、途切れた───




ここでネタバレ……まだミツルギ君死んでないよッ!

次回で今回並みのシリアス感は消える、かと思います。そして少しばかりながらもジークとジャンヌの出番が戻ってきます!

ジクジャン「やっとだ……ッ」

それでは次回も見てね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この元・魔剣使いに決意を!

意外な結果で戦いが終わって突然前回の話も途切れましたが、果たしてミツルギ君達はどうなったのやら……?


「……?」

 

 ふと気がついたミツルギは、閉じていた瞼をおもむろに開いた。しばし目の焦点が合わず瞬きを2・3回して見えたのは、小さな光が点々としている真っ暗な空。

 ゆらりと上体を起こし、下には緑が生い茂る草原が広がっていたことに気付く。『正義の魔王』を名乗る男が喚び出したアークウィザードらしき男、クー・フーリンと戦い、最後に意識を手放した時の場所と、全く同じ所だった。

 

「生きて、いるのか……?僕は……」

 

 あの時の自分には立ち上がる力も残っていなかった。もしや既に自分は死んでいて、霊体にでもなっているのだろうか。

 そんなことを考えていた、その時───

 

 

 

「「キョウヤァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」」

「ゲボフッ!?」

 

 突然女性の声が耳に入ってきたかと思うと、背後から下手すれば猫背になりそうな程のかなりの衝撃を受けた。あのクー・フーリンの蹴りといい勝負かもしれない、そう思いつつ背中の痛みに耐えながらも、一体何事かと思いミツルギは後ろを見る。

 

「……ク、クレメア?それに、フィオ……」

「よかった……よかったぁああああああっ!」

「私達、キョウヤが死んじゃったんじゃないかと思って……」

 

 背後にいたのは、目から涙をこれでもかと流して目元を赤くしているクレメアとフィオ。2人ともあの魔術師に気を失うほどの傷を負っていたはずなのに、今はピンピンとしている。力尽きたため守れなかったと思っていたはずの2人。泣きながら自分の心配をしてくれている、彼女達の姿を見たミツルギは───

 

 2人を包み込むように、両腕で強く抱きしめた。

 

「キ、キョキョキョキョ、キョウヤッ!?」

「ど、どどどどど、どうしたの!?」

「……えっ?あっ!ご、ごめんッ!」

 

 無意識の内に2人を抱きしめてしまったミツルギは、慌てて2人から離れる。突然抱きしめられた時は2人とも顔を真っ赤にして慌てたが、いざ離れられると名残惜しそうな顔を見せる。そしてふと、ミツルギは彼女達の後方に見知った壁があるのに気付く。モンスターから街を守るために、囲うように作られたアクセルの街の城壁だ。ここは天国でもなければ地獄でもない……紛れもなく、自分達がいた世界だった。

 

「僕達、死んでない……のか?」

「多分……武器もちゃんと触れるし……」

「クレメアなんてあんなに酷い傷だったのに、いつの間にか癒えてるし……ホラ、キョウヤもお腹刺されたけど、綺麗に塞がってるよ?」

「えっ?あっ、ホントだ……」

 

 フィオに腹の傷のことを指摘され、ミツルギはようやく自分の傷が綺麗サッパリなくなっていたことに気付く。クー・フーリンの魔法によって鎧が燃え散ったため露わになっている腹部や腕の肌。なのにクー・フーリンから受けた時の傷は微塵も見当たらず、まるで回復魔法をかけられたかのように塞がっていた。一体誰が治したのかと、ミツルギは辺りを見渡すと───

 

 

 

「……お、起きたか。その……ホント悪かった、な……」

「昨夜の件は私達の不注意だった、誠に申し訳ない」

「よ、よぉ……あの時は、さすがにやりすぎ、た……」

 

 自責の念を背負っているのか顔に影を落としている自称『正義の魔王を目指す男』・タイラーと従者のウォズ、そしてミツルギ達と闘ってミツルギの剣に心臓部を刺されたはずの、服がボロボロの状態でうずくまるようなポーズを取っているクー・フーリンの姿があった。何故悲惨な状態で倒れていたはずのクー・フーリンがシュールなポーズで血だらけにならずに倒れているのか、ミツルギは思わず目を見開いた。

 

「えっ……ちょ、はっ?」

「ん?あぁ、お前達とこいつの傷は俺が回復瓶で治しておいてやったんだ。だから今のとおり、昨日の深い傷はもうねぇよ」

 

 タイラーはそう言いながら、右手に持っている空の瓶を4本見せてきた。体力回復や魔力回復の粉を入れる時に使われる瓶だ。どうやらタイラーはそれで、ミツルギ達の傷を治したようだ。ならば何故クー・フーリンはボロボロになっているのだろうか、ミツルギはそう疑問に感じた。

 

「あ、ありがとうございます……あ、でも、何故彼は……」

「俺との約束を破ったからだよ。『3人と闘う時は、あいつらの命の危険を晒すような真似をするな』という約束をな。だからキツく制裁してんの」

「あっ、なるほど……」

 

 その言葉を聞いてミツルギは納得した。たしかに自分達は気を失うほどに彼によって苦しめられていた。しかも主人の命令に背いて……それならば、タイラーとウォズによって袋叩きされたのも無理はないだろう。

 

「まぁ……こいつが俺の命令を背いたのにも理由はあるんだよ。それをそこの2人にも教えたが……お前の方は、俺達が口にしなくてもなんとなくは察しただろ?」

「……ハッ⁉︎」

 

 クー・フーリンがタイラーの命令に背いた理由。それは言葉にしなくても、昨夜の闘いで自然と理解していたミツルギ。クー・フーリンがあの闘いからしてミツルギに教えたかったこと、それは……

 

「まぁとにかく、お前は合格だ。今のお前なら、力に溺れずに済むだろうな」

 

 タイラーはニカッと笑いながら、腰に収めていた剣をミツルギに差し出すかのように地面に突き刺した。黒光りの刀身の長剣──ミツルギがジャンヌとジークによって一度奪われた剣・魔剣グラムだった。

 

「それと、こいつらは俺達からのお詫びだ。クー・フーリン……次の主人の命令は絶対守れよ?自分の命とかに関わるやつは除くけど」

「お、おう、魔王様……」

 

 次の瞬間だった。突如としてクー・フーリンの体が、彼がタイラーによって呼び出された時に発生したのと同じく淡く発光した。その発光が止んだ瞬間……彼の、クー・フーリンの姿が見当たらなくなった。その瞬間を見たミツルギ達3人は目を見開き、彼の姿がなくなった代わりに、ウォズの右手には時計なのかストップウォッチなのかわからない物が握られていた。ウォズはミツルギに近づき、そのウォッチと紅い紋章が描かれたウォッチを彼に手渡してきた。

 

「このウォッチを半回転に回してスイッチを押し、適当な場所に放り込めば彼は姿を現す。そして紅い紋章が入ったこのウォッチはスイッチを押せば、1日に3回だけだが彼は君の命令を絶対に聞き受け入れてくれる。昨夜のお詫びとして、受け取ってほしい」

「えっ……えっと……」

 

 保険付きとはいえ、自分達を異常なほどに痛めつけた男を、生命的に自分達を危機に陥れた魔術師を下につけるのにはさすがに抵抗がある。ミツルギはふと、自分と同じくクー・フーリンに傷つけられた仲間・クレメアとフィオの方を振り向く。一方は刺し殺しかけられ、一方は締め殺しかけられたのだ。この件を彼女達は却下するだろう、そう思っての判断であった。

 しかし、2人の答えはいつも信頼していたミツルギ任せだった。たしかにクー・フーリンは自分達を傷つけた。だがそれと同時に、仲間に大切なことを教えてくれた。それに自分達よりも力が勝る敵を味方につけれるのは心強い。後はミツルギの判断に任せる、そんな真剣な眼差しをしていた。それを理解したミツルギは、決心した表情でウォズの方に向き直し───

 

「──お受け取りします。もちろん、彼ばっかりに頼ったりはしませんので」

「うむ、その決意は中々だ。それを忘れないでくれたまえ」

「はい!」

 

 決意を新たにした表情を見せてきたミツルギ。その表情を見て心配する必要がないと判断したタイラーとウォズは、静かに微笑みながらサムズアップしたり手を軽く振ったりしながら、アクセルの街へと去っていった。2人が視界から遠ざかっていくのを見送ったミツルギは、再びクレメアとフィオの方を見て───

 

「決めたよ。僕は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢side:ジャンヌ

 

 こちらはお久しぶりという感じはしないかと思いますが、とりあえずお久しぶりを言わせてください。お久しぶりです、ジャンヌ・ルーラーです。ジーク君が一昨日ミツルギさんから魔剣グラムを奪い取り(というか最初に彼から魔剣を奪ったのは私ですが)、さらにはその魔剣を売ったという衝撃の事実を知ったその翌日。ジーク君は今日もミツルギさんにひどい態度を取ってしまった自分を責めていました。なんか、話しづらいですね……

 

「ジーク先輩、まだあの様子みたいだね……」

「自分そっくりの神様を崇拝していたあのミツ……なんとかさんに対して『失望した』とか言ってしまったのですからね」

「さすがに私も2人には同情するな。ジークは昨日の態度を望んでいなかったようだし、ミツルギも人が変わるほどショックを受けていたみたいだからな」

 

 どうやらクリスさん達も、私と同じ心境になっているようですね。というかめぐみんさん、まだミツルギさんの名前を覚えていないのですか。むぅ……しかし、いつまでもあんな調子のままにさせるわけにはいきませんからね。ここは一肌脱ぎましょうか。

 

「ジーク君。ここは一度、ミツルギさんに会いに行きましょう。宛はわかりませんが」

「ジャンヌ……いや、しかし……」

 

 まだ抵抗はあるようですが、このままミツルギさんとの関係を悪くさせるわけにはいきませんね。ここは半ば強引に……

 

「──ジーク様!」

「「⁉︎」」

 

 こ、この爽やかな声は──⁉︎と、私達が振り返ると、そこには青と黄色の装飾の鎧を身に纏い、腰元に1本の剣を付けた茶髪の男性・ミツルギさんでした。さらには取り巻きであるクレメアさんとフィオさんも、必ずと言っていいかのようにいるようですね。

 ……ん?アレ?なんか1人増えていますね?しかも男性……藍色の長髪と深紅の瞳、美青年というよりは荒々しく野生感のある男らしい顔立ち。筋骨隆々な肉体には少々不釣り合いと思われる、魔術師然としたローブ姿……職業はアークウィザード、なのでしょうか?

 

「ミ、ミツルギ……」

 

 あ、ジーク君が苦い表情を浮かべてきましたね。やはり彼と会うのは抵抗心があるのでしょうか。しかし、このまま2人の関係を悪化しているままにさせるわけにはいきませんね。何故ミツルギさんがジーク君のところに来たのかはわかりませんが、ここは仲直りさせなければ……

 と思った、その時でした。

 

「ジーク様、ありがとうございました。そしてジャンヌ・ルーラー……今までの無礼な行動を謝罪する。すまなかった……!」

「「えっ?」」

 

 なんと、ミツルギさんが感謝の言葉と謝罪の意を述べながら私とジーク君に頭を下げてきたのです!これには私達も仰天し、ジーク君も思わず目を見開きました……どういう風の吹き回し?

 

「ジーク様……貴方に魔剣を没収されて、一度とある冒険者の方と闘って、その時に身の程を知りました。いかに自分が魔剣に頼っていたかも思い知って……まともに戦える力も無しに、仲間を守るだなんて言い張って……貴方に魔剣を取られていなければ、僕は冒険者として大切なことを知ることができたのはもっと先になったかと思います」

「ミツルギ……」

 

 頭を上げたミツルギさんは、どこか清々しさを見せていました。昨日の彼に何があったのかは当然私達は分からなかったのですが、その時私は、ミツルギさんが自分がいかに無力であったかを、自分に言い聞かせるように話しているんだということに気づきました。ミツルギさん、今まで魔剣の力を自分の力だと過信していたようですね……

 

「なので、今日からまた……この街から、新しく加えた仲間──クー・フーリンさんとともに、4人で旅をやり直そうと思っているんです。武器も防具も見直して……本音を言えばレベル1からやり直したいんですけど、『レベルドレイン』なんてスキル持ってる味方キャラなんて、この街にはいないでしょうし」

 

 再び駆け出し冒険者からやり直すと、ジーク君の前でミツルギさんは宣言しました。そう話した彼の顔は、以前見た時とはまるで別人になっており、どこか清々しさを見せてきました。たった1日でそこまで人が変わるとは……

 ん?ミツルギさん、何かを取り出してジーク君に差し出してきましたね?……って⁉︎それ、『魔剣グラム』じゃないですかッ⁉︎売られたはずなのに、何故……⁉︎

 

「クー・フーリンさんの知り合いの方がわざわざ僕に渡すために買ってきてくれたんです。でも、僕はもう魔剣の力には頼りません。これはお返しします」

 

 あ、新しいお仲間の知り合いからもらったのですね。それをわざわざジーク君に返すなんて……それほどまでに覚悟を決めたということなのですね。そしてミツルギさんはその魔剣をジーク君に半ば強引に手渡し、また一礼をしました。

 

「……改めてジーク様、本当にありがとうございました。またいつかお会いしましょう」

 

 ミツルギさんは再び頭を上げると、別れの言葉を告げて私達に背を向けました。そして仲間の方達と一緒に去ろうと……

 

「待ってくれ」

「えっ?」

 

 ん?突然ジーク君が短く言葉を発し、ミツルギさんを呼び止めましたね?呼び止められるとは思っていなかったのか、ミツルギさん達もどうしたのかと疑問に思っているかのような表情で後ろを振り返りましたし、一体何事かと……

 

「忘れ物だぞ?この剣は元々俺が君に渡したものなんだ。置いていってしまうと、こっちが困る」

 

 えっ?ジーク君、魔剣グラムを返そうとしていますね……ミツルギさん達もまさか返却拒否されるとは思っていなかったのか驚いた表情をしていますが……

 

「えっ⁉︎い、いいんですか!?いやでも、僕は魔剣に頼らない力を身に付けると誓って──」

「その代わり、この魔剣に呪いをかけておいたんだ。それも、厄介な呪いを」

「えっ?呪い……ですか?」

 

 ミツルギさんは魔剣を受け取るのを断ろうとしましたが、代わりに呪いをかけたと聞いてミツルギさんは目を見開きました。仮に受け取るにしてもタダでもらうのは悪いと思っていたのでしょう。

 

「真の強者しか認めない狂った戦士の魂が宿った呪いだ。この剣を扱う者がその戦士の気に入らない者だったら、魔剣は一切力を貸さないどころか、逆に魔剣を扱う者の意思を乗っ取り、身体を支配してしまうだろう」

「ウッ……」

「「ヒッ……⁉︎」」

「へぇ……」

 

 ウワァ……なんて恐ろしすぎる呪い……語り手っぽく言うと、ジーク君がミツルギさんに渡そうとしている剣は、使用者の意思を取り込み、肉体を奪ってくるという、謂わば呪いの剣と化している──ということですね。こんなのミツルギさんが受け取れるとは思いませんね。クレメアさんとフィオさんも可愛い悲鳴を上げて引いていますし……クー・フーリンさんは何故か感心していましたが。

 

「だから、決して魔剣の力に溺れるな。自分の力に変え、その力を支配するんだ。その時にこそ、この魔剣は力を貸してくれる。今の君なら、それができるはずだ。冒険者としてだけでなく、人として大切なことを知った君なら、きっと」

「………!」

 

 ………!そ、その発言はッ!語り手っぽく例えると、魔剣を扱える力がなければ強くなればいい。魔剣が身体を奪おうとするなら抗い、逆に乗っ取ればいい──という意味なのですね!なるほどなるほど!でも、なんか遠回しに言っているような気がしますね……何故でしょう?

 

「……はい!お受け取りします!」

「「えぇっ⁉︎」」

 

 あ、そうこう考えているうちにミツルギさんが決心をついたみたいですね。意を決して魔剣の柄を握り、ジーク君にイケメンスマイルをしてきましたね……ジーク君の次にカッコよく……ハッ⁉︎私、今一体何を考えてッ⁉︎///

 

「ちょ、ちょっとキョウヤ⁉︎ホントに受け取っちゃうの⁉︎」

「そ、それ呪いかかっているのよ⁉︎

「か、神様の目の前で言うのもアレだけど、多分それヤバイやつだよ⁉︎他の剣にしようよ⁉︎」

「いや、説明した通りヤバイやつだが……」

「ハハ……まぁ、ヤバイといえばヤバイかな……でもこれじゃなきゃダメなんだ。()()()が、強くなるためにも」

「ま、俺はマスターがそう言うのだったら簡単には咎めたりはしないけどな」

 

 クレメアさんとフィオさんの指摘にもめげない程の覚悟を決めていたのですね。ミツルギさん、本当に一夜明けただけで人が結構変わりましたね……本当に昨日一体何が?

 

「……頑張れ、御剣(ミツルギ) 響夜(キョウヤ)。もう力に溺れないように、自分を磨いていってくれ」

「はい!」

 

 ジーク君に激励の言葉をかけてもらったミツルギさんは、お仲間とともに頭を下げるとそのまま去っていきました。そしてふと私がジーク君の方に視線を向けると───

 清々しい笑顔を、浮かべていました。

 

「なんか急に清々しい顔になってますね、ジーク君」

「まぁ、そうかもな。俺今、正直言って嬉しい気分だよ」

 

 これは、お二人の仲が戻った様子ですね……頑張ってください、ミツルギさん。私達も腕を上げていきますから。

 ()()()()()()()()()()()───




ミツルギ君リスタートって感じで終わりました第8話。次回からジャンヌとジークメインに戻り、シリアスもストップさせます。次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この駆け出し冒険者のパーティーにもシリアス(?)を!

シリアスをストップさせると、前回の後書きで言ったな?あれは嘘だ。

今回からベルディア編になりますが、そのベルディアの性格が……?それでは本編をどうぞ!


 私と同じ転生者のミツルギさんから魔剣グラムを取り上げて売ってしまったことに自責してしまうものの、逆にそれに対して反省・感謝してきたミツルギさんの変わり様を嬉しく思っているジーク君の笑顔を見れて安心した私、ジャンヌ・ルーラー。その時に私はミツルギさんの成長に心を動かされ、彼を目標として改めて日々のクエストに挑戦していく毎日を送っております。後、とある特訓も兼ねて──

 

 

 

 あれから1週間が経過しました。とある特訓を終えてめぐみんさんを連れて帰って休ませた後、私は財布の中身を確認してみました。むぅ、大体100万エリスですか……多いのか少ないのかわかりませんね……ジーク君達の持ち金のこともありますし、ここはもっとクエストを承るしか……

 

「ジャンヌさん、どうかしたの?」

 

 と、後ろから声をかけられたので振り向きました。そこにはクリスさんが。今週の天界の仕事を終えたのでしょうか?

 

「クリスさん……いえ、もう持ち金を結構稼いだかなと思いましたので、そろそろ家を買うのを本格的に検討してもいいのでは?と……」

「うぅ〜ん……賃貸ならまだしも、いざ買うとなると300万エリスだと精々小さな家が精いっぱいだろうね」

「えっ」

 

 少なくとも300万エリスって……それで家賃を含めるとなると結構大変そうな気がしますね……

 

「ということは、またしばらく馬小屋生活になりますね……」

「……ジャンヌさんはさ」

「?何ですか?」

「その言葉と声からして、何やらジーク先輩を意識しているような感じを見せているんだけど……

 

 

 

 もしかして、前から先輩に惚れてた?」

 

「ブフゥッ⁉︎///」

 

 む、むせた……思わず飲んでいたジュースを吹き出してしまいました……し、しかも表情も表に出てしまっているのでは……⁉︎と、とにかく……

 

「きゅ、急に何を言い出すのですかクリスさん⁉︎」

「いやだってさ?ジャンヌさん、ジーク先輩と話している時はよく良い笑顔を先輩に見せてくるし、冒険に出る時は決まって先輩の隣を確保しているし、寝床が馬小屋だからなのか起きた時にはいつも顔を真っ赤にしているし、何より先輩の話となると喜色の笑みを浮かべたりしているし……もしかすると、と思ってね」

「ウッ……」

 

 バ、バレてる……⁉︎これはバレてるのでは……⁉︎と、とりあえず、誤魔化さないと……!

 

「そ、そそそそそ、それは単なる、ぐ、偶然ではないでしょうか⁉︎い、いくらなんでも、い、い、一般の人が、かかかかか、神様に、し、真剣に、こここここ、恋しちゃったら、そ、その神様や、す、崇拝者にし、し、失礼かと……」

「いやその喋り方だとバレバレだから」

「ウグッ……」

 

 ど、どうしましょう……とうとう言い逃れができなくなってしまいました……こ、このまま私はジーク君への想いを伝えるべきでしょうか……?いや、やっぱり人前でそれを言うのは……!

 

「……まぁ、ジャンヌさんのプライバシーもあるんだし、深くは聞かないでおくよ。その代わり、いつか自分から教えてくれないとまたしつこく聞くかもよ?」

 

 ……あ、た、助かりました……やれやれ、ヒヤヒヤしましたよ……

 

「──ジャンヌ、特訓は終わったのか?」

「あ、ジーク君」

 

 おっと、ここでジーク君が帰って来ましたね……って、なんか右手に巨大な黒いコウモリの死体?を引きっているんですけど……

 

「も……もしかしてジーク君、クエストを終えたところなのですか?」

「あぁ。最近洞窟に潜むブラックバットの討伐に行ってきたんだ。そこで女王も倒してブラックバットは全滅・クエストをクリアしたんだ。それにこのブラックバットの肉はヘルシーで絶品だというからな、後で調理しようと思っているんだ」

 

 ク、クエストをクリアしてお金を調達、その上で食料も調達するとは……やっぱりジーク君はすごいですね……

 

「……?ジャンヌ」

「?どうかしました?」

「何か顔が赤いようだが、大丈夫か?」 ピトッ

「エッ、ウヒャア⁉︎///」

 

 えっ⁉︎えっ⁉︎私の顔、まだ赤かったのですか⁉︎ひ、額に手が……!というか近い!顔近い!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイッ!やっぱりジーク君の顔ものすごくイケメンすぎるッ!

 

「熱はないようだが……あっ。すまない、気に障ったか?」

「あ、い、いえ、大丈夫、です……///」

 

 アウゥ、またこの感情を表に出してしまいました……これだとクリスさんに察しがつけられても無理はないじゃないですか……って、当の本人が隣にいますし……

 

「……ま、先輩も先輩かな」

 

 ……ん?今、クリスさんが何か呟いたみたいですが……

 

 

 

 

 

『緊急! 緊急! 全冒険者のみなさんは戦闘態勢で街の正門に集まってください!』

 

 その時、キャベツ祭の時にも聞いた、けたたましい警報音が酒場内に鳴り響き、ルナさんのアナウンスが冒険者達に伝えられてきました。もちろん、私達にも聞こえてくるように。

 

「え、またキャベツですか?いくらなんでも飛びすぎなのでは……?」

「いえ、キャベツ収穫祭は年に1度のはず。しかも戦闘態勢が前提とは……ジャンヌ、これはホントにホントの緊急事態が起こっているかもしれません」

「キャベツ収穫祭などのイベント以外で起こる緊急クエストは……大概が強力なモンスターの襲来だからな」

「……えっ?本気でヤバイ奴ですか?嘘?」

 

 えぇ、こんな退屈せず楽しそうなこの世界でも本気で危険な緊急クエストなんてあるのですかぁ……?とにかく、戦闘態勢で来いというのでしたら急がないといけませんね。あ、ですがなんか本当に異世界ファンタジーっぽい展開が来ました。やっぱりこうでなくては。

 

「こうしちゃいられません!私達も急ぎましょう!」

「そうだな」

 

 緊張とは裏腹に高ぶる気持ちを抑えながら、私達も冒険者達の後を追おうと走り出しました。

 

 しかし、この時私達はまだ知りませんでした。この出来事が、私達に最悪な運命を振りかけてくることに───

 

 

 

 

 

 

 アクセルの街正門前。そこにはキャベツ祭の時と同じように、街の冒険者達が勢ぞろいしていました。あ、中にはミツルギさん達も。ただ、キャベツ祭の時と違うところは、城壁近くに捕獲用の檻がないことと……前方を見ている冒険者達が、強ばった表情を見せていたことですね。まぁ、当然でしょうが。

 私達も視線を前に向けた瞬間──あまりにも危険なオーラの漂う敵を目撃し、思わず息を呑みました。

 

 冒険者達の前方──積み上げられた石の上に立っているのは、2人の鎧の騎士。闘牛のような鋭く太い角の光沢が煌めく黒光と純白の兜をそれぞれ被っており、それぞれの兜の色の配色をした鎧を身につけていました。で、共通するところは、風にたなびく青いマントと顔。そこだけ見れば冒険者かと勘違いしそうですが……明らかに異質なところがひとつだけありました。それは──兜越しの顔が、()()であることでした。

 

「「……俺達はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の手下の者だが……」」

「魔王軍の……幹部の……仲間……ッ!?」

 

 冒険者達が目の前の敵に恐怖を覚えている中、2人の骸骨の騎士は不気味な和音の声で自ら話し始める。彼の言葉を聞き、私達は酷く驚いた。とんでもない敵が現れるとは予想してはいましたが、まさかこんなところで中ボス並みの敵が2人も現れるとは……!しかも幹部と大きな関わりがあるとは……!

 早く追い払わなければという焦りと衝動を抑えながらも、私達は骸骨の騎士の言葉を待つことにしました。全冒険者が静かに待機している中、2人の骸骨の騎士は骨の顔から見える青い目を光らせ、大声で私達に告げました。

 

 

 

 

 

「「毎日毎日毎日毎日!我が主人の城に爆裂魔法を撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は誰だァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!!!!」」

 

「………」

 

 あっ(察し) ヤバイ、これ当てはまる部分大アリですね。あの2人も激おこですし……

 

「爆裂魔法……?」

「爆裂魔法を使える奴って言ったら……」

 

 魔王軍の幹部の手下である彼らが口にした『爆裂魔法』という言葉。それを聞いた正門前の冒険者達そのは条件に当てはまる人物を連想し始めましたね。

 この世界に来て少しは慣れてきただろうこの私も、誰が犯人か検討がつきますねこれは。まず魔法を放てる時点で、職業はウィザード系に絞られる。加えて爆裂魔法なんて上級魔法を扱うなら、上位職のアークウィザードでなければ不可能。そして、レベルの低い駆け出し冒険者が集まるこんな街の中で、爆裂魔法を覚えているアークウィザードは──1人しかいませんね。嗚呼、やっぱり、そうなりますよね……(プレッシャー)

 

「……ギクリッ……」

「(口に出てますよ)」

 

 デスヨネ–、やっぱりめぐみんさんしかいませんヨネ–。私達を含めた冒険者達が一斉に彼女へ目を向ける中、めぐみんさんはまるで自分じゃないですよとアピールするかの如く、近くにいた赤髪の魔法使いの方に目を向けました……ってコラ。

 

「な、なんで私が見られてんの!?爆裂魔法なんて使えないよぉッ!私まだ駆け出しで……信じてください!まだ死にたくない!小さい弟達だっているのに……うわーん!」

「むぐぐッ……」

 

 他人に罪をなすりつける作戦は失敗したようですね。そりゃそうなりますよ……赤髪の魔法使いの方はわんわんと泣き出し、めぐみんさんに集まっている周りの冒険者達からの視線は外れることはありませんでした……ってちょっと?何私達に目で助けてアピールしてるのですか?ダメですよ、自分から撒いた種を誰かに渡しちゃ……あ、いや、人のこと言えませんが……

 

「……ジャンヌ。毎日めぐみんを連れて背負って帰ってきていたようだが、まさか……?」

「(ギクッ)」

 

 やっぱり表に出てました……

 

「……実は、キャベツ祭が終わった後、めぐみんさんに半ば強制的に付き合わされましてね?1日1回爆裂魔法を撃たなきゃ夜も眠れないって言われまして。まぁコントロールの特訓としては悪くなさそうと感じたので協力することに……で、何かいい的がないかなぁと思っていたら、遠くの人のいなさそうな古城を見つけたもので……」

「……ハァ、的代わりなら俺が用意してやるのに……」

 

 カミングアウトするのが怖かったんです、本当にごめんなさい……

 

 結局……というより、最初から逃げ場などなかったとは思いますが。追い詰められためぐみんさんは、覚悟を決めるように両手で自身の頬を叩くと──果敢にも、自ら魔王軍のもとへ歩いて行きました。

 ……あ、でもどうしましょう。彼女、今日はもう爆裂魔法を撃っちゃったんですよね……

 

「お?兄貴、どうやらこいつらしいぜ?」

「あぁん?テメェが……」

「………」

 

 魔王軍の者達から少し離れたところに立っためぐみんさん。彼らは憎しみがこもりにこもった目でめぐみんさんを睨みつける。怖っ。あまりの威圧感と恐怖がこちらにも肌で伝わってきますね……めぐみんさんは尻もちをつきそうになっているようですが、負けじと睨み返しました。そうでなくては。

 そして、新調したマタナイト製の色艶を見せる杖を、魔王の幹部に向けながら口を開いた。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードにして爆裂魔法を操る者!気高き紅魔族の者にして、この街随一の魔法使いである!」

「「………」」

 

 めぐみんさんは強気な姿を見せ、私達やミツルギさん達の前で見せた時のように自身の名を名乗ました。しかし、2人の骸骨の騎士はポカンとした表情を見せた途端───

 

「「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」」

「めぐみんって!おま、めぐみんって!」

「何お前⁉︎自分で自分を馬鹿にしてんの⁉︎カワイソー!」

「ち、違わいッ!」

 

 ウワァ、大ウケ……まぁ、誰が聞いても女子高生の友達がつけるようなかわいい系のあだ名にしか聞こえない本名を発したらそりゃあそうなりますよ……

 

「……まぁいい!お前!俺達が魔王軍だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてこいよ!その気がないなら街で震えてろよ!」

「ねぇなんでこんな陰湿な嫌がらせするのォ⁉︎どうせ雑魚しかいない街だと思って放置していれば調子にのってポンポンポンポン撃ち込みに来て!頭おかしいんじゃないのかテメェ!」

 

 まぁ普通、みんなそう思いますよね……ん?誰が城をターゲットにさせたのかですって?……キニシマセ-ン。

 

「誰が頭のおかしいアークウィザードですか!それに、いくら上位職でも私は駆け出し冒険者!そんな私が、爆裂魔法の練習をするのがいけないと言うんですか!?初心者が強くなるために練習するのを、貴方達は禁止するのですか!?」

 

 いやさすがに度があります。

 

「練習だったらもっと他の場所でしろよ!?なんでウチらなの!?百歩譲って7日に1回ぐらいなら我が主人だって許してくれるよ!俺達も『あぁもう1週間過ぎたのか』って目安にもなるし!」

 

 許してくれる度はあるのですねその幹部さん……

 

「けど1日1回クッソデッカイ音の爆裂魔法を放たれてみろ!?そりゃノイローゼにもなるわ!我が主人が魔力で固定してるからいいものの、それがなかったら城がブレイクオーバーになってたぞ!?」

 

 いやカッコよくブレイクオーバーって言わなくても……

 

「7日に1回!?それは無理です!アークウィザードは1日1回は爆裂魔法を撃たなきゃ夜も眠れない身体なんです!」

「「流れるように嘘を吐くな!そんな話聞いたことないぞ!?」」

 

 まぁこのように、数多くの冒険者達が心配そうにめぐみんさんを見つめている中、当の本人は魔王軍幹部と醜い言い争いをおっぱじめています。といっても、めぐみんさんが苦し紛れの言い訳を言い、魔王軍がぐうの根も出ないド正論で返すという、本当に醜いものでしたが。なんかもう、申し訳ないです……

 

「信じられないのなら信じなくても構いません。どちらにせよ貴方達は……ここで倒される宿命なのだから!」

「サラリと話をすり替えるな!」

「まずは謝罪しろ謝罪!」

 

 めぐみんさんはあくまで強気の姿勢を保ったまま、魔王軍幹部に挑発を見せ続けていますね。そんなことよりも謝罪しろ求める魔王軍でしたが、めぐみんさんの耳には一切届いていないようです。

 

「私が貴方の城に爆裂魔法を放ち続けていたのは、貴方達を指揮する幹部をおびき出すための作戦……その幹部が来ていないのは残念ですが、こうしてまんまと中ボス並みの貴方達2人で出てきたのが運の尽きです!」

「「さっき練習のためって言ってたよなお前!?」」

「それも兼ねてです!」

 

 いやちょっと?何今まで古城に爆裂魔法を撃ち込み続けていたのは、全ては魔王軍幹部をここへ引きずり出すための作戦だったと言い張っているのですか?バレバレですよ?即座に突っ込まれてますよ?ニヤリと笑わない。その後ろ姿を見て……ジーク君とダクネスさん、クリスさんは終始呆れ顔を見せていました。ウゥ、罪悪感……

 

「……今、彼女はサラッと作戦だったことにしていなかったか?」

「よくもまぁ咄嗟にそんな嘘が吐けるよね……」

「逆に誇らしいと思うが……」

「………」

 

 もう、罪悪感で頭がいっぱいです……早く、早くこの場から去らないと……そう思いながら、私はこっそりと背を向けてアクセルの街へ向かおうと───

 

 

 

 

 

「──そうやって強気になっていられるのも今のうちです!今こちらには、攻撃と防御のふたつの力を兼ね備えた対アンデットのスペシャリストと、運動神経抜群で高度な魔法と剣術を扱うルーンナイトがいるんですからね!駆け出しでありながらも、魔王に届きうる刃となりえる冒険者2名!彼女にかかれば、貴方達のような魔王の下っ端など塵に等しい!」

「「ほほぅ?」」

 

「………えっ?」

 

 えっ?ここで巻き添え?しかもジーク君まで?えっ?ちょっと……?なんてことしてくれるのですか貴方?まぁ城に撃てという事の発端を作ったのは私ですけど……ジーク君は無関係ですよ?

 

「フフフ……アークプリーストにルーンナイト、そしてこの私、爆裂魔法を持つアークウィザード……いくら魔王軍と言えども、上位職3人を相手取るのは不利と言えるでしょう。逃げるのなら今のうちですよ?」

「「……で?その2人どこにいるの?」」

 

 めぐみんさんは私達が来ると信じて先程よりも更に強気な姿勢を見せていますね……虎の威を借る狐とはこのことでしょうか。しかし、そんな私達が来ていないことを2人にツッコまれましたね。どうしましょう、私1人だけでも出るべきでしょうか?事の発端は私ですし……

 

「……指名されたら仕方ない。強気になっている彼女をあのまま放置するのも危険すぎる……いこう、ジャンヌ」

「えぇッ⁉︎ジーク君、完全に被害者になっているというのにめぐみんさんに付き合うのですかッ⁉︎」

「そうでもしないとめぐみんは助からない。それにもし、偶然にも冒険者が魔王軍幹部の城を訪れてしまったとしたら……だったらここで敵戦力を減らすべきだ」

「……なんか、本当にすみませんでした」

「気にすることじゃない」

 

 ジーク君も乗り気でしたら仕方ありませんね……とにかく、彼らが魔王軍の者達ならば───!

 そう思いながら、私達は2人の骸骨の前に立ち……

 

「テメェらがそうか……俺達はスカルナイト・ブラザーズの黒スカルと白スカル!俺達と闘って生きて帰った冒険者は1人もいない!」

「ここで会ってしまったが運の尽き!すぐさまお前達の息の根も首ごと──」

「──すまない」

「「えっ?」」

 

 

 

「──『シャイニングソード』ッ!」

 

ズバッピカァッ

「「ギャアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎」」

 

 『幻想大剣(バルムンク)』に眩い光を宿したジーク君は即座に、スカルナイト・ブラザーズの黒スカルと白スカルと名乗る2人の懐へと掻い潜り、一回転して彼らの鎧を斬りつけました。凄まじい威力の剣撃を受けたことにより作られた傷跡から眩い光が2人の骸骨から漏れ出た瞬間、2人はもがき苦しみ出しました。

 あのジーク君が不意打ちとか珍しいですね……しかし、あの2人には慈悲はありません!私も2人の懐へと掻い潜り───

 

「こ、この野郎、いきなり不意打ちとか……」

「ちょ、黒スカルの兄貴?またなんかが……」

 

 

 

「──『ターンアンデット』ッ!」

 

バシュウゥウウウ……

「「ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ッ⁉︎」」

 

 私がその傷跡にそれぞれ手を当てた瞬間、骸骨達の全身は強く、淡く発光した光に包まれ、さらにもがき苦しみ、そして───

 

「「我らの魂は魔王軍と共にありィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイッ!!!!」」

 

 どっかの特撮映画からネタとして引っ張られたかのような台詞を叫んだと共に、2人の骸骨はその淡い光と一緒に天へと昇りながら消滅していきました。さらばだ、スカルナイト・ブラザーズ……なんちゃって。

 

『………』

 

 呆気なく魔王軍の中ボスが撃退されたことに唖然としたのか、冒険者達はただただ呆然と私達を見ていました。あっさりと敵を倒した私達の強さに圧巻されていたのでしょうが、今のは私達が不意をついたから今のような結果が出ただけなのです。本当ですよ?

 

「びょ、秒で倒すほどにまで2人があそこまで強くなったとは……」

「うわぁ……ジーク先輩もだけど、ジャンヌさんも成長スピードが異常な気がする……」

 

 ちょっと?何故ダクネスさんとクリスさんは引き気味なのですか?今のはまぐれの勝利なんですよ?変な思考やめてくれません?

 

「ハ、ハハハ……だ、だから言ったのですよ。逃げるのなら今のうちですって」

「めぐみんさん、何もしてませんよね?」

「……とにかく、次に爆裂魔法を撃つのなら俺が的を用意するからそれで我慢してくれ。帰ろう、ジャンヌ」

「あ、はい。そうですね」

 

 とりあえず、これで緊急事態は収まったと思います。なんか、今日は疲れましたね。早く街に戻って、疲れを癒して───

 

 

 

 

 

見事だ。不意打ちとはいえ、まさかこの俺の部下を秒殺するとは

 

「「「………⁉︎」」」

 

 突然でした。街に戻ろうとした私達を、重く低い声が金縛りを私達にかけるかのように無理矢理引き止めたのです。そして恐怖に怯えながらも、私達は咄嗟に後ろを振り返りました。あの2人の骸骨の騎士がいたところには───

 

 黒い身体に赤い毛を持つ馬に乗っている、灰色の甲冑とマントで身を纏い、浅葱色の大剣を持った騎士───そして、その相対する馬と騎士には、首から上がなく、騎士に至っては頭を左手に抱えていました。その姿……まさに『デュラハン』……ッ!

 

『俺は先程の骸骨の騎士、スカルナイト・ブラザーズを仕えている、魔王軍幹部の者だ。その2人の気配を感じなくなったことを悟り、この場に来た』

「………⁉︎」

「幹部、だと……⁉︎」

 

 私達は『恐怖』という方向性で目を見開きました。まさかこんなところで、しかも中ボスの2人を倒したところで正真正銘のボスの一人と対面することになるとは思っていませんでしたから。

 

『そう案ずるな。俺は先程の部下のように人殺しをする気で来たわけではない。そこの爆裂魔法を毎日撃ち込みに来る馬鹿に注意をしに来ただけだ。2人も最初はそのつもりなのだが』

「んなっ⁉︎だ、誰が馬鹿ですか誰が!」

「君に決まっているだろ」

「酷い!?」

 

 今の自分に戦う気はないと伝え、ついでにめぐみんさんを馬鹿にした魔王軍幹部・デュラハン。まぁ、めぐみんさんが馬鹿にされるのも仕方ないことですが……

 いえ、気にするところはそこではありません。スカルナイト・ブラザーズとは只ならぬこの邪気……一瞬でも気を緩めたら、死ぬ。それしか考えられません。

 

『だが、先程の貴様らの力を見た時には驚かされた。アークプリーストの対策も取っているし、この街の低レベルのアークプリーストどころか上位職の冒険者に遅れを取るつもりはなかったが……これは』

「「………⁉︎」」

 

 こ、この殺意は……⁉︎まずい、即座に彼を攻撃しないと、本当に……不意にデュラハンの警戒が解け、私達から少し視線を逸らした瞬間。私は幹部に右手を向けました。範囲を最小限に……威力と濃度を上げて……

 

 

 

 ここで、奴を倒すッ!

 

「『セイクリッド・ターンアンデット』ッ!」

 

『むっ!』

 

 スカルナイト・ブラザーズに当てたのよりも淡く、度合いも強く、さながらも範囲が狭い、強烈な光を持つ『ターンアンデット』を放った。ものの……私が叫んだと同時にデュラハンが大きく馬ごと体を逸らしたため、鉄製の物質が一瞬焼けた音と共に肩に僅かながらのダメージしか与えることが出来ませんでした。ッ、なんて危機回避能力の高い……ッ!

 と、次の瞬間。私の視界に突如として入ってきたのは……瞬時に幹部の背後に回って『幻想大剣(バルムンク)』を振るおうとしたジーク君でした。

 

「『カースド・シャイニングソード』ッ!」

 

 体を右回転しながら捻らせ、『シャイニングソード』以上の眩く強い光を宿した『幻想大剣(バルムンク)』を振りかぶろうとしたジーク君でしたが……

 

『──フンッ!』

「ッアァッ⁉︎」

「ジ、ジーク君⁉︎」

 

 デュラハンは右手だけで大剣を軽々と持ち、力強く振るってジーク君の剣を弾き、そのまま近くの大木まで離してしまいました。な、なんてパワーを……ッ!しかし、その大剣も肩と同様に微かながらの傷を受けていますね。僅かなダメージとはいえ、何度も当てれば……!

 

『……不可解だ』

 

 デュラハンが首を傾げるような仕草をしてそう呟いた瞬間、黒い瘴気のようなものが現れて、肩と大剣の傷を覆い尽くすように治してしまいました。そんな⁉︎治ってしまうのでは意味が……ッ!

 

『たしかに俺は神聖魔法に弱い。だが魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗を持っている。だが掠っただけでこのような傷が出来た。我が愛剣も、先程のルーンナイトの攻撃で一瞬の傷を生んだ。この街のレベルでは考えられるほどの神聖さを2人して持つとは、貴様等は何者だ?……いや、この魔力は……』

 

 な、何をぶつぶつと呟いて……⁉︎とにかく、また一瞬の隙ができることを願いたいのですが、もう一回『セイクリッド・ターンアンデット』を撃てるかどうか……

 と、デュラハンは固まっている私達を見てニヤリと笑った気が……ッ⁉︎

 

『……ちょうどいい。言葉による注意だけでは、そこの貴様等の仲間がまた忘れた頃に爆裂魔法を撃ちにくるだろうという考えが出てきたところだからな……

 ここはひとつ、キツイお灸を据えてやろう!』

 

 そう言いながらデュラハンは大剣を背中に背負い、頭を抱えていない右手の方を上げてきました。すると、その手に禍々しい色を見せる魔力が集まり始め、そして恐怖で私の隣に突っ立っていたままのめぐみんさんを睨みつけ……

 

『“我がベルディアの名に置いて命ずる! 汝に死の宣告を!”』

 

 赤い目を光らせ、めぐみんさんめがけて右手を突き出し、右手に溜まっていた魔力の塊を発射させました。魔力の塊は目まぐるしいスピードでめぐみんさんに向かっていく。それに加えて、お互いの距離がかなり短い。まずい、回避などの余地を与えられずにめぐみんさんはその塊に当たってしまう……!

 

 

 

 

 

 彼女の命の危機を悟った私は、めぐみんさんを思いっきり力の限り突き飛ばしました。元いた世界で死ぬ前に行った、咄嗟の行動と同じように。

 

「キャアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

 

「ジャ……ジャンヌッ!」

「ッ……⁉︎ジャンヌッ!」

 

 ッ、アァ、グゥウウウ……く、苦しい……ッ!その苦痛によって私は呻き声を上げながら、片膝を地面についてしまいました。左胸からは先程デュラハン……いや、ベルディアと名乗る魔王軍幹部が放ったのと同じ、禍々しい色をした煙が立っていました。

 

「ジャンヌさん!」

「大丈夫か⁉︎」

 

 突然私がめぐみんさんを庇うような形で、ベルディアが放った魔力の塊をもろに食らった私の身の危険を悟ったのか、ジーク君とめぐみんさんだけでなく、ダクネスさんとクリスさんも私の元に駆けつけてきました。迷惑、かけてしまいましたか……

 

「……⁉︎そ、その痣は一体……⁉︎」

 

 えっ?痣?私は咄嗟に首元を確かめてみた瞬間……戦慄したような感覚がしました。そこには黒い痣のような模様が現れていました。その痣の周りには7つの文字のような跡が。

 

「な……何ですか、これ……ッ⁉︎」

 

 私がそう絶望したかのようにその痣を見て怯え震えていると、ベルディアはフッと笑っているような様子を見せてきました。

 

『まさかこのような結果になるとは思っていなかったが……まぁいい。よく聞け、そこのアークウィザードよ。今貴様を庇ったそこのアークプリーストが受けたのは、我がスキル【死の宣告】……断言しよう。そこのアークプリーストは1週間後に死ぬ。貴様の大切な仲間は、死の恐怖に怯え苦しむことになるのだ……貴様のせいでなッ!』

「──ッ!」

 

 『死の宣告』……⁉︎それって、呪いの類のものということですか……⁉︎ベルディアから衝撃的な事実を告げられた瞬間、この時私は多分今世紀最大の落胆した表情を見せていたのでしょう。表情筋に違和感を感じたので、きっと。と、ふとチラリと私がめぐみんさんの方に視線を向けると、めぐみんさんは絶望した顔を見せて俯いていました。自分のせいで私が死ぬことになってしまった、その事実に絶望したのでしょう……

 ッ……いや!私はアークプリースト!こんな呪い、すぐにあのスキルで……!

 

「ッ、『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!」

 

 私は旗を地に突き立て、自身の体に眩い光を包ませました。『セイクリッド・ブレイクスペル』。それは、対象にかけられた魔法や呪いを解除するアークプリーストのスキルのひとつ。自身のレベルが高ければ高いほど確実に解除できるようになるのですが……逆に魔法や呪いをかけた者のレベル差が自身より高いとこのスキルは無効化されてしまいます。普通なら、並みのアークプリーストでもベルディアがかけた死の宣告を解くのは難しいはず……ですが、やらないでめぐみんさんを自責させるわけには……!

 

 ───しかし、現実は甘くありませんでした。

 

「キャアッ⁉︎」

「危なっ⁉︎ジャンヌさん、大丈夫⁉︎」

 

 突然、黒く禍々しい瘴気が私の体から放たれ、被弾するように『ブレイクスペル』の発動を妨害してきました。クリスさんが壁となって私が吹っ飛ばされるのを防いでくれましたが、まさかこれほどの強力な呪いを受けてしまったとは……ッ!

 

『愚かなッ!俺の【死の宣告】は、いくら高威力の【セイクリッド・ターンアンデット】を放った貴様の【ブレイクスペル】でも通用せん!言ったはずだ、俺には魔王様の加護があるとッ!辛いだろう?苦しいだろう?しかし、もう【死の宣告】は止められない……アークプリーストよ!この呪いに苦しみ絶望し、呪いを解けなかった自分の無力さに悲嘆するがいいッ!そしてアークウィザードよ!その仲間の苦しむ姿を見て、自らの行いを悔いるがいいッ!クハハハハハハァッ!』

「ッ────!」

 

 絶望する私達を見て高笑いをしてきました。この世界に来て初めて人を憎く思った瞬間でした。しかし、憎んでも私の死が決定的となったことに変わりはない。悔しい……ッ、これほどまでに私達が無力だなんて……ッ。そんな悔しさが込み上がってきたのか、私の目が一瞬歪み、何かが零れ落ちた感覚がしました。

 

 

 

 

 

 その瞬間、只ならぬ気迫が至近距離で伝わってきました。しかし、それはベルディアが放ったものではありませんでした。ふと、私が顔を上げてみた途端……

 

 そこには、淡くも黒い輝きを持つ、神々しい魔力を湧き出させているジーク君が、怒りの表情を露わにしながら立っていました。しかも、鱗に覆われた無骨な表面を持つ黒い羽が。その関節の先には鋭い鉤爪が生えていました。ゴツゴツとした表皮とは裏腹に薄い皮膜が骨と骨の間を張っていて、その姿はまるで……『竜』。

 その『竜』の羽が生えたジーク君を見た瞬間、ベルディアは一瞬後方に下がりました。先程までの彼とは比べ物にならないくらいの気迫を感じたのでしょう。

 

『姿を、変えれるだと……⁉︎そんな馬鹿な、そのようなスキルを持つ冒険者はいないと聞いたのだが……』

「……お前は、お前自身に罪を犯していない彼女を泣かせた……元は俺達の仲間のせいであるとはいえ、お前は罪のない彼女に絶望を浴びせた……お前は、絶対に許すわけにはいかない────!」

 

 ジ、ジーク君……私のために怒ってくれるなんて……いくら私が転生特典として連れていかれたとはいえ、そこまでになるほど私のことを想ってくれていたとは……

 『幻想大剣(バルムンク)』のグリップを強く握りしめるジーク君。そして今にもベルディアに斬りかかろうと構え始めた───

 

「──待て、ジークッ!」

「⁉︎ダクネス……⁉︎」

 

 それを制止したのは、ダクネスさんでした。ってちょっと待ってください⁉︎何故ここでジーク君を止めるのですか⁉︎……あっ。もしかして、『私にかけられた呪いは変えられないが今は冷静になれ。でないと逆に相手の思うツボだ』という助言なのでしょうか……?それなら分からなくもないような……

 

「そこの魔王軍幹部……

 

 

 

 つまり貴様は、私の仲間に死の呪いを掛け、呪いを解いて欲しくば俺の言う事を聞けと……そう言いたいのだろう!?」

『……は?』

「ひ?」

「ふ?」

「へ?」

「ほ?」

 

 ……えっ?そっち?何シリアスブレイクしてるんですか?予想の斜め上過ぎるトチ狂った言葉を口走ったダクネスさんを見て、私達は思わず変な声を上げてしまいました。同じく、ベルディアも。

 

「見ろ!奴の兜の下から見えるいやらしい目を!あれはジャンヌをこのまま城へと連れて帰り、『呪いを解いて欲しくば黙って言う事を聞けこのメス犬が』と、凄まじいハードコア変態命令を要求する変質者の目だ!仲間に……私達の仲間になんと卑猥なことを!」

『何あらぬ誤解を口走ってんだ貴様はァアァアァアァアァア!?そして後ろにいる冒険者達は信じるんじゃない!そんな目で俺を見るな!?』

 

 えぇ……?呪いを受けたのは私ですのに、なんでしょうそれを感じさせないこの冷ややかな気分は……ジーク君も怒りを忘れるほど呆然としてますし……

 

「くっ……!ベ、ベルディアと言ったな⁉︎か、彼女にかかっている呪いを、今すぐ私に移せ!そして私をメス犬にさせてみろ!このような展開を望んでいない聖女を痴女にさせるわけにはいかない!そこまで痴女が欲しいなら私を痴女にしてみせろ!どんな仕打ちでも、どんな変態命令でも受けて立とう!」

『何故その発想に至るゥウゥウゥウゥウゥウ⁉︎いやたしかにそうすればそこのアークプリーストは助かるが、何逆に自分がそうなることを望むんだ⁉︎頭イかれてるのか⁉︎』

 

 ……なんでしょう。先程まで冷酷無慈悲な態度を取っていたベルディアがここまで荒れるとは、もう違和感しかありません……

 

「だ、だが……わ、私は、呪いなんかでは屈しない!私の身体は好きにできても、彼女の体と私の心までは自由にできると思うなよ!」

『(な、何だこの女騎士は……⁉︎異常な程に嬉しそうに笑いながら言ってる……この俺が恐れる程に……ッ⁉︎)』

「ぐっ!行きたくはない、行きたくはないが……仕方ない!全てはジャンヌを救うためだ!ギリギリまで抵抗してみせるから、ジーク達は邪魔をしないでくれ!では……行ってくりゅゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウッ!」

『話を聞けよ変態女ァアァアァアァアァア!?こっち来るなァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!?』

 

 ダクネスさんは恍惚に満ちた表情で、ベルディアのもとへ意気揚々と駆け寄っていきました。この女に近付かれるのは危険だ。本能でそう感じた彼は大声で止まるよう訴えるが、それでもダクネスさんは止まろうとしませんでした。

 ……形はどうであれ、私を助けようとするその意思は嬉しいですよダクネスさん。でも、だからこそ……

 

ガシッ

「うぉおおおッ⁉︎」

『⁉︎』

 

 だからこそ、今この場で犠牲を作らせたくないんです。私は静かにダクネスさんの襟元を掴み、彼女を制止させました。

 

「うぐぐ……何をするのだジャンヌ!私は今、奴によって城に囚われ、魔王の手先に理不尽な要求をされる女騎士という予想外に燃えるシチュエーションに飛び込もうとしているのだ!それにこれはお前を呪いから解放させるために私ができる術なのだ!だから邪魔をしないでくれ!」

「だからこそです。だからこそ、貴方にまで苦しい思いをさせるわけにはいかないのです。こんな呪い、必死にレベルを上げたり『セイクリッド・ブレイクスペル』よりも高い解除魔法を覚えたりすればきっと治るはずです。何より……」

 

 ダクネスさんを放り投げるように無理矢理後ろに下がらせると、私はベルディアを強く睨みました。私達は屈しない、それもフラグとかエロ同人みたいなとか、そんな馬鹿馬鹿しい考えではなく、本気で。

 

「彼を倒すことも呪いを解く術となる。だからもし、何日か経っても解除出来そうになければ、その時は装備やアイテムをたくさん集めて、レベルもたくさん上げて……」

「ジャンヌ……」

 

 正直言って、怖いです。これから先、彼と闘うことになるという現実も、1週間後に死ぬという現実も。でも、だからと言って今考えもなしに解決しようとして私だけでなくジーク君達の死を早めてしまうのがもっと怖いです。だから……だからこそ、『セイクリッド・ブレイクスペル』よりも高い解除魔法を覚えるか、万全の状態になってから彼と闘うかしかないのです。

 

『……フ、フンッ。その心意気は褒めてやるぞ、アークプリーストよ。では、【死の宣告】を解きたくば1週間以内に俺の城へ来るがいい。俺は城の最上階で待っているぞ……さらばだッ!』

 

 ベルディアはそう言って私達に背を向け……()()()()()()早々とこの場から消えていきました。まぁ、あぁなる程に去っていくのはダクネスさんのせいではありますが。とにかく、私達は貴方に負けはしません。最速で強くなって、魔王軍幹部である貴方を、絶対に倒す───!




……シリアスって、何でしたっけ?めぐみんと骸骨達の会話と、ダクネスの暴走のせいでそれが薄れてしまった気が……

後、ベルディアは初っ端からクールなキャラでもいいじゃないッ!

とにかく、次回はベルディア戦に向けてジャンヌ達が修行に励みます!果たして呪いが解ける日は来るのか……?次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この駆け出し冒険者のパーティーに修行を!

また出たよ仮面ライダー要素……しかもよりによって何故こいつ……?って、仮面ライダーを知っている方ならそう思いそうな回となっております。それが苦手の方は逃げるんだよォオォオォオォオォオォオッ!


 私、ジャンヌ・ルーラーは今、冷静な様子を見せているとは思いますが、こう見えて危険な状態にあります。何故そんなことを言うのかというと、魔王軍幹部・ベルディアのスキル『死の宣告』によって、1週間後に死んでしまうという呪いを受けてしまったからです。魔法や呪いを解除するアークプリーストのスキル『セイクリッド・ブレイクスペル』を自分にかけてもそれは効かず一度は絶望しましたが、私のために怒ってくれたジーク君と、被虐妄想が含まれてはいたものの私にかかった呪いを自分に移すようベルディアに強く語りかけたダクネスさんによって心を動かされ、私はベルディアと闘うことを決意しました。みなさんの意思にも、答えるために───

 

 

 

 

 

 そして今。ベルディアが自ら立ち去ってくれたことで、ひとまずはなんとかこの街を脅威から守ることはできました。1人不服に思っている者はいますが。

 

「ウゥ……せっかくの女騎士なら誰もが憧れるシチュエーションが……」

「いやそれは女騎士どころか誰もみんな憧れないと思うよ?」

 

 魔王軍幹部に拉致監禁される機会を逃したと思っているのかダクネスさんは体育座りをし、いじけるように地面にのの字を書いていました。そんなダクネスさんをポカンとした目で見ているジーク君と彼女を宥めているクリスさん、ベルディアの呪いがかかっている状態だというのにダクネスさんを見て苦笑いしている私。

 

 そして──ひとり俯き、悲しそうな表情を見せているめぐみんさんがいました。彼女はベルディアに言われました。『【死の宣告】を解きたければ、自分達が住む城に行かなければならない』、と。魔王軍幹部が住む城──つまりは敵の巣窟。そこに爆裂魔法を1回しか使えない自分が行くのがどんなに危険なことか……それがわからないほど彼女も馬鹿ではないことは、私達も知っています。

 

 するとめぐみんさんは溢れそうになっていた涙を腕で拭うと、意を決した顔で前を見、立ち上がりました。

 

「……ちょっと城まで行って、あの魔王軍幹部に直接爆裂魔法をぶち込んで、呪いを解かせてみせます」

 

 めぐみんさんは力強く、怯える自分を隠すように私達にそう告げました。やっぱり、そう決断するのですね。ですが……

 

「私も行きます。私のために貴方1人を行かせるわけにはいきません。貴方は爆裂魔法しか使えない、雑魚キャラに撃つだけで終わってしまいます。そもそも、私も毎回一緒に行きながら幹部の城だって気付かなかったマヌケですし、何より自分の事ですし」

「ジャンヌ……」

 

 自分も行く──私の口からその言葉を聞いためぐみんさんは、嬉しさのあまりか少し頬を染めながら笑ってくれました。やっぱりみんな笑顔が一番です。

 

「ですが、今行っても返り討ちに遭うだけ……なので何日か修行してからにさせてください。でないと元も子もありませんから。そもそも貴方、今日はもう爆裂魔法を撃ちましたよね?」

「ウッ……」

 

 私はそう言って今にも突っ走りそうなめぐみんさんを落ち着かせました。まずはランクアップ、それが敵討伐にとって一番大事なことですから。

 

「修行なら俺も一緒にやるよ。俺がもう少ししっかり動けていたら、今回のようなことにはならなかったかもしれないしな」

「私も付き合うぞ。3人だけだと辛そうだし、やはり放っておけないからな」

「もちろんアタシも。何より同じパーティーメンバーだしね」

 

 ジーク君……ダクネスさん……クリスさん……嬉しいです。みなさんが私のために一緒に修行に手伝ってくれるなんて……

 

「ありがとうございます、でしたら早速……」

「──待ってくれ」

 

 と、ふと私達を呼び止める者達が。私達が振り返ると、そこにいたのは錆びた銀でできた鎧を纏い、腰元に剣を納めている茶髪の爽やか系イケメンの人……間違いありません、ミツルギさんですね。そして傍には緑色のポニーテールで腰元に剣を装備した露出度が前会った時より控えめな服を纏った美少女・クレメアさんと、同じく露出度控えめになった服を纏う赤髪の三つ編み美少女・フィオさん。さらには藍色の長髪と深紅の瞳、美青年というよりは荒々しく野生感のある男らしい顔立ち。筋骨隆々な肉体には少々不釣り合いと思われる、魔術師然としたローブ姿の男性、クー・フーリンさんもいました。って、彼だけ格好が変わってませんね。それはそれで違和感が……

 

「ミツルギさん、何かご用で……?」

「ジーク様と一緒に修行すると聞いたから、僕達にも協力させてほしくて来たんだ。もちろん、僕達もあの幹部を倒すために」

 

 ミツルギさん、もしや私のために尽くそうとしているジーク君のことを心配して?しかし、だからといってさすがにミツルギさん達を巻き込むわけには……

 

「あの日の罪滅ぼしとしてでも、困っているジーク様のためというわけでもない。ただ……同じ冒険者として放っておくわけにはいかない、それだけなんだ」

「ミツルギさん……」

「ミツルギ……」

 

 一からやり直しをしているからか、たったの短い言葉だけでも、ミツルギさんが冒険者としてどれだけ本気で私達のためのことをしようとしてくれるのかが伝わってきていました。ミツルギさん、冒険者として助け合いをすることは当たり前だと言うほどに立派な感じになっているというか……

 

「……もう前のように思い通りにグラムは使えないかもしれない。それでも俺達に協力してくれるというのか?」

「はい、覚悟の上です」

 

 巻き込みたくない、けど彼の思いを無駄にしたくない、そんな感情を持ちながらもミツルギさんを信じようとするジーク君。すると小さく息を吐き、ミツルギさんに手を差し伸べてきました。これって……

 

「……わかった、一緒に強くなろう」

「……はい!」

 

 協力を頼み込んだジーク君の手を嬉しく取るミツルギさん。やはり自分が崇拝している神様に信頼してもらえて嬉しく思ったのでしょう。その後ミツルギさんは再度私達に謝り、クー・フーリンさんの自己紹介などを済ませました。ジーク君に少しだけながらも近い高ステータスを引き立てたアークウィザードとして活躍していたとか、すごすぎません?そして私達は気合を入れ直し、修行としてまずは組手を始めようとした、その時でした。

 

 

 

『──話は聞かせてもらった』

 

 ふと、私達を呼び止める高潔そうな声が。ふと私がその声がする方向に振り向くと、そこにいたのは……

 L字型の金色の角が十字架の意匠を表現している赤い双眸の金と純白の仮面で、中央に紅玉の様なコア、側面にはホイッスルの様なアイテムが幾つも挿し込まれているナックルダスターのような形をしているバックルを腰に巻いている西洋の中世時代の騎士……聖職者(エクゾジスト)を連想させるようなフォルムをした方でした。白い鎧の胸部には太陽を思わせる円形のマークが描かれて……

 

 ……この人、どう見ても『753(なごさん)』とか『妖怪ボタンむしり』とか言われている、仮面ライダーイクサこと名護さんにしか見えませんが。

 

「……⁉︎あ、貴方は……!」

「アドベンチャーロイド……!」

「No.193 イクサ……!」

 

 ……はい?誰ですかその馬鹿げてそうなネーミングは?しかも193(イクサ)って名前?にありますし、何故かロボットっぽいですし。

 

「ミツルギ達、知ってるのか?」

「は、はい……定年のため冒険者を卒業した科学者のDr.ウェイルスが、過去の経験を元に作り上げてやっとのことで完成したアンドロイド。機械なのに高潔な人間そのものの性格を持っていて、2年前のステータス診断でジーク様同等の高ステータスを叩き出したにもかかわらずそれを無理矢理伏せてもらったとか……デビューして間もなく特別指定モンスターを狩った超大型新人で、冒険者になってたったの半月でアクセルの街の切り札とまで呼ばれるようになり、レベル80以上の戦績を持つソードマスターへと劇的に成長した強者と言われています。今では『素晴らしき青空の会』という団体を結成したとか」

 

 ……ウェ?ウェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエッ⁉︎2年前からいた超強者の冒険者ァ⁉︎ミツルギさんは1カ月でアクセルの切り札になったと聞いたことがありますが、まさか彼はたったの半月で……⁉︎しかもロボットォッ⁉︎なんか世界観間違えてません⁉︎

 

『君達の打倒魔王軍幹部討伐に私も心を動かされた。呪いをかけられたというのに前向きになれる新米冒険者に、その冒険者のパーティーメンバーでもないのに冒険者として当然だというようにその手伝いをしようとする青年……そんな君達を見て、私も……いや、私達も手を貸したくなってきた』

「「「「「「「「えっ……?」」」」」」」」

 

 名護さん……じゃなかった、イクサさんがそう言うと、『素晴らしき青空の会』の団員であろう複数の冒険者達がイクサさんの元に来ました。黒光りする鎧を着込んでいるクルセイダーのエルフらしき赤髪の男性に、黄色の十字架が描かれた青く縦に長い帽子を被っている青い法衣のプリーストらしき銀髪ロングヘアーの女性など、様々な強そうな外見の冒険者達が多くいました。何人かがイクサさんの元に集まった瞬間、彼はこう口にしました。

 

『──私達の弟子になりなさい』

「「「「「「「「……はい?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかよくわからないまま半ば強引な形でイクサさん達の元で修行をすることになった私達。とは言っても、組手以外で最適そうな修行方法が見つからなかったもので結局受けるようになったって感じですが。

 

 そして今。めぐみんさんはクー・フーリンさんと一緒にパミールさんというアークウィザードの方から魔法のコントロールの仕方、ダクネスさんはミツルギさんとクレメアさんと一緒にコニさんという戦士の方から剣術、クリスさんはフィオさんと一緒にデモールさんという盗賊の方から盗賊としての戦い方を伝授してもらっています。ジーク君はなんとイクサさんと組手をしてもらっています。なんかすごい。ちなみに初日のめぐみんさんは、爆裂魔法をサポートするための強化魔法の伝授だけをすることになったそうです。まぁ、既に撃っちゃいましたしね……

 そして、私はというと……

 

「リラックスリラックス。もう少し落ち着いて、魔力を集中させて自分の思うような形を作って……」

「は、はい」

 

 メルティさんという銀髪ロングヘアーのアークプリーストの元で、手の中にある魔力の塊の形を整えています。今私が行っているのは魔力の制御、これをすることで魔力の質の向上を上げることができ、目的で同じ魔力で威力がかなり変わるそうです。とりあえず、今はその形は壊れてはいませんね。

 

「そうそう、その調子よ。心境の変化も重要になってくるから、気が荒ぶったりすると上手く扱えなくなるから気を集中させて……うん、だんだん人の形になってきているわよ」

 

 なるほど、今の自分の心によって魔力のコントロールができるかどうかが大事なのですね。集中、集中、今自分が何を思っているのかを形にして……ん?人の形?

 

 と、私がそんなことを考えていると、魔力の塊は形取られ、そして───

 

 

 

 手のひらサイズのジーク君となった。

 

「アラァ♪」

「ワァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎///」

 

 何を作っているんですか私はァ⁉︎ってアッ⁉︎崩れたッ!ちょっと残念……じゃなくてェッ!

 

「まさか男の人を想像して形取るなんてねぇ、もしかして彼氏?」

「ち、違います!ただ、その、適当に作っていたらこうなってしまっただけで……」

「でもぉ、想いを馳せている人であることには変わりないでしょう?」

「まぁそうですけどッ!……アッ、いや、その……///」

 

 し、しまった、思わず口にしてしまいました……まぁ、たしかにジーク君の事は初クエストの時から想っていたということに変わりありませんが、まさかこんな形でバレるとは……しかも初めて会った方に……

 

「──よかった。ちょっと安心したわ」

「……えっ?」

 

 はい?『安心した』?どういう意味ですかそれは?まさか女の子は絶対に恋しないといけないという考えを……?

 

「貴方には、好きだと思えるほど頼れる仲間がいたのね」

 

 あ、そういう……なんか安心しました。

 

「イクサ会長はね、最初はソロで幾多のクエストを攻略していっていたの。パーティーへの勧誘も加入希望も、全て断っていたらしいのよ。それも1年間」

「えっ、1年も?」

「なんかね?最初は弱者の上に立って気持ちよくなりたいだけの非常に慇懃無礼で、自分より弱いと見た者は露骨に見下す傲慢な性格の人みたいだったの。陰湿な性格じゃないけど、他者の価値観を決して認めようとしないで己の正義と力こそが絶対と信じ、それを否定されると逆上して……その正義観も非常に主観的で、どんな些細な間違いであろうと容赦なく追及するんだって」

「ウワァ……」

 

 怖っ……そんな人が誰かを弟子になんて無理がありますよ……してもお弟子さんが滅法苦労してすぐに辞めちゃいますよ……というかそれ、もう完全に前期の名護さんじゃないですか。

 

「でも……魔王軍幹部との闘いで、彼は折れちゃったの。あ、デュラハンの方じゃないけど。その時の彼を見た時は驚いちゃったなぁ。その幹部に自身の弱さを指摘されたらしくて街の隅っこで号泣、まるで自分よりも強い者に虐められたいじめられっ子かDVを受けた子どもみたいで、可哀想だった」

 

 あ、やっぱり挫折を経験していましたか。でないとこんな団体はできないと思いますし……

 

「でも、私達が些細な感じで何気なく話しかけたり、ちょっとしたことでも優しくしたりしていくウチに、他者にも目を向けるようになっていくといった良くも悪くもノリが良く、温厚な性格に変貌しちゃったのよ。で、今に至って3ヶ月前にこの『素晴らしき青空の会』を作ったの。ある意味ホントすごいと思うわ、イクサ会長は」

 

 立ち直って完全に中・後期の名護さんになっちゃったんですね……オリジナル感がないというか、何というか……あ、でも自主的に団体を作ることにしたというところは違いましたか。

 

「で、結成した時にイクサ会長は言ってくれたの……

 

 

 

 『この団体が出来たのは私達のおかげだ』って。そう言ってくれた時は嬉しかったわ、私達は彼に信頼されているんだってことを知って、本当に……」

「………!」

 

 その言葉を口にしたメルティさんの声は、喜色のトーンが含まれていた。表情も嬉しそうに、さそがしどこか楽しそうに。

 

「だから、貴方も大事にしてね。貴方が信頼を持っている、そして貴方を信頼している仲間達を」

 

 メルティさん……

 

「……はい!必ず!」

 

 

 

 

 

♢side:第三者

 

 一方、イクサと組手をしていたジークは……左膝をついていた。しかも息を切らしており、額には幾多の汗が。『幻想大剣(バルムンク)』を握っている手には、イクサとの闘いで出来たであろう傷も見えていた。

 彼の前に立っているイクサは側面に赤い紅玉と黄金の両翼で飾られ、赤いサーベル状の刃が付いたグリップ下にロングマガジンが装備されている銃器を握っており、ジークの動けるタイミングに合わせるために佇んでいた。ロボットのため汗ひとつも出ていない上に息も切らしていないが、故障しかけているロボット特有の錆びた音等は微塵も発していなかった。

 

『仲間を救うためにもっと強くなりたい、その思いから焦りが出てくるのは分からなくもない。だが焦りは逆に自分を見失い、下手をすれば仲間を傷つける羽目になる。少しは落ち着きなさい』

「す、すみません……」

 

 そう、ジークはこの時焦りを見せていた。早くベルディアに負けない程のレベルにまで強くなってジャンヌを呪いから解放させたい。その迷いが闘い方に影響しているらしいのだ。

 

『君は身体能力の基礎が出来ているな。普段から鍛えているのが分かる。だが、まだまだ精神的に未熟だ。先程も言ったように、君には焦りが見える。その焦りが出来ているせいで動きに粗が出て隙が出来やすい。それがなければ隙もなく動けているだろうが、今は精神を集中させながら攻撃することに専念しなさい』

「……はい」

 

 ジークの良かった点と悪かった点を指摘するイクサ。的外れな指摘でなかったせいで、彼はたったの一言でその指摘に対して肯定するしかなかった。そして自分の未熟さを責めるように悲しげな表情を浮かべているジークを見て、イクサは優しく彼の肩を叩きながら言葉を発する。

 

『だが、仲間のことを誰よりも思う君の気持ちは強い。その気持ちはいつか、最高の形で報われるだろう』

「………!」

『それに、冒険者なんて死ぬか生きるかだ。ジャンヌという少女もそれは覚悟して修行に励んでいる……最高の結果にするためにこうして頑張っているんだ。君も、そんな彼女の意思に答えるために、今はこの修行に精一杯励むんだ』

「イクサさん……はい!ありがとうございます!おかげで目が覚めました!」

『うむ、その意気だ』

 

 ジークの意志を褒め、ジークの心の荷を軽くさせるイクサ。まさに激励と言ってもいいその言葉に何を思ったのか、ジークの顔は明るくなり、いつもの彼に咄嗟に戻ってきた。その彼の心境の変化を良く思ったのか頷くイクサ。と、ふとジークの服が汗でへばり付いているのを双眸から確認した。

 

『服に大量の汗が染み付き始めているな……これに着替えなさい』

 

 イクサがそう言って芝生に置いていたバックから取り出した物を手渡してきた瞬間……ジークはそれを見て絶句した。

 

 

 

 青い布地に白い文字で『193』。そのシャツは非常に──センスが様々な意味で独特すぎた。

 

「(えぇ……)」

『さぁ、私から君への贈り物だ。着なさい』

「あ、はい……」

 

 着たい気持ちが微塵も湧かないシャツに苦悩するジーク。しかし自分には代わりの服装がないため、渋々着るしかなかったジークであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢side:ジャンヌ

 

 修行をして4日後。私達全員のレベルは、なんと10以上も上がりました。すごっ。感覚だけでも、前よりもだいぶ強くなれたと思います。そういえば、ジーク君がイクサさんにひとつ、何らかのスキルを教わったようで何度もそのスキルを練習したと言ってましたが、一体どんなスキルなのでしょうか?気になりますね……

 

『今日で終わりだ。明日はしっかり休んで、あのベルディアってやつに挑むぞ。修行したばかりのボロボロの体では返り討ちに遭う。しっかりと休みなさい』

「「「「「「「「はい!ありがとうございました!」」」」」」」」

 

 イクサさん達『素晴らしき青空の会』の方々にお礼を言った私達は一度ミツルギさん達と別れ、ギルドへと向かうことに。

 

「いよいよか……」

「フッフッフ……爆裂魔法のコントロールもだいぶ上がりましたよ。これなら室内でも撃てます……!」

「とりあえず明日は体をしっかりと休めましょう。イクサさんの言うように、いざという時に動けないといけませんからね」

 

 魔王討伐への誓いを新たにした私達。翌日は特筆することはありませんでしたが、イクサさんが当日のベルディア戦に向けてと装備品やアイテムを集めてくれており、それの分配をしてくれました。私も純白で硬質性の高い剣を頂きました。大事に扱わなければ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、決戦当日。ギルド内で私達の前にイクサさん、隣にはメルティさんとエルフのクルセイダーであるガイスさんが立っていました。私達の周りにはミツルギさんや他の『素晴らしき青空の会』の人達が集まっていました。私達を入れて合計60人前後……すごい数ですね。

 

『本日、私達はベルディアの城へと向かう』

「会った人達は知っているかもしれないけど、ベルディアは強いわ」

「それに確実に罠があるだろう……だが、俺達は罠ごと噛み砕くまでだ!」

『これは私達【素晴らしき青空の会】だけではない、ここに集まっている全ての冒険者達の結束の力が重要となる!皆の者、覚悟はいいかッ!』

 

オォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオッ!

 

 と、とてつもない程の気迫……ッ!これが『素晴らしき青空の会』会長・イクサさんの指揮力……ッ!

 

『よし……では皆の者、気を引き締めていくぞッ!』

 

 そして、イクサさんの掛け声とともに、私達はベルディアのいる城へ───




名護さんではないけど、何やってんの名護さん……次回はついにジャンヌ達がベルディア城に乗り込みます。お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この魔王軍幹部の城にて決着を!(後半シリアス)

原作の小説もアニメも見ていないので、オリジナル展開をやってもいいじゃない!タグにもあるし!
後半は突然シリアス度が高めになります。それでもいい人は突撃せよ。


 魔王軍幹部・ベルディアのスキル『死の宣告』を受けてしまった私、ジャンヌ・ルーラーは今、ジーク君達と一緒にベルディアのいる城に進軍しています。私達に修行をつけてくれたイクサさん達『素晴らしき青空の会』の皆さんも、私達を全力でサポートするために共に進軍してくれています。ただ……

 

「ぶるぁあああああああああッ!」

「ウェーイ!」

「全速前進DA☆」

「汚物は消毒だー!」

「魔法をアンデット集団に向けてシュゥゥゥトッ!」

「イヤッッホォォォオオォオウ!」

「無ゥ駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

 

 叫び声がどれもコミカル感が漂っていました。しかもどれも私のいた世界のアニメで聞いたことのありそうなものばっかり。シリアス感が仕事していません。

 

「みんな!魔王軍はいつ時どこに出てくるかわからないわ!だから残る時は人数を考えてね!」

「なるべく相手を見極め、ジャンヌ達をベルディアのいる部屋に辿り着けれるようにせよ!」

 

 メルティさんとガイスさんがそう指揮を高めていますが、やはりみんなの叫び声のせいでネタっぽく見えてしまいますね……

 

「……あっちはギル○ィギ○のバル○ドスで、あっちは遊○王の海○のセリフかな?そっちはジョ○ョの奇○な冒○」

 

 クリスさん、セリフの元ネタを見破ろうとしないでくださいよ……

 

『この邪気の反応……ベルディアのいる部屋まで後もうちょっとだ。気を引き締めていくぞ』

「「「「「「「「はいッ!」」」」」」」」

 

 ……アレ?今、8階にいるんでしたよね?もうそこまで登っていたとは……さすがは超強力な冒険者であるイクサさん率いる『素晴らしき青空の会』の皆さん、すごすぎます……!

 

「待てッ!」

「待たれよッ!」

 

 突然私達を呼び止めるのは、2人の鎧の騎士。闘牛のような鋭く太い角の光沢が煌めく紅色と藍色の兜をそれぞれ被っており、それぞれの兜の色の配色をした鎧を身につけていました。で、共通するところは、風にたなびく青いマントと顔……ってアレ?スカルナイト・ブラザーズじゃないですか?私が成仏させたはず……あっ、鎧の色が前のと違うのを見ると、なんとなく……

 

「我らはスカルナイト・ブラザーズの1人、紅スカルと藍スカル!兄者達の無念を晴らしに来た!」

「ここで会ったが百年目!兄ちゃん達の敵討ちのため、今すぐその首を──」

 

 

 

「邪魔だ」

ザシュ

「「グギャッ⁉︎」」

 

「成仏しなさい」

バシュウゥウウウ……

「「ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ァ ゙ア ゙ッ⁉︎」」

 

 ガイスさんが紅スカルと藍スカルと名乗る2人の懐へと掻い潜り、一回転して彼らの鎧を斬りつけました。た、たった一振りで鎧に大きな斬り傷を……そしてメルティさんが杖を彼らに向けた瞬間、骸骨達の全身は強く、淡く発光した光に包まれ、さらにもがき苦しみ、そして───

 

「「我らの魂は魔王軍と共にありィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイィイッ!!!!」」

 

 どっかの特撮映画からネタとして引っ張られたかのような台詞を叫んだと共に、2人の骸骨はその淡い光と一緒に天へと昇りながら消滅していきました……ってアレ?これ、どっかで見たことがあるような……というかこちらがやったことがあるような……

 

『よし、これでまた突破口が開いた。後はこのまま……』

 

 と、ここでイクサさんの言葉が止まる。私達の目の前には……また別のスカルナイトが現れたのです。しかし今までのスカルナイトと違う部分が分かりやすく見えてきました。全長が3メートルもあって、しかも鎧の色が虹色って、違いすぎるにもほどがありますよ……

 

「ゥ我はァ!スカルゥナイトォブルァザァーズのォ!ァ長男のォ!虹スカルだァ!ォここをォ通りたかったラァ!ゥ我を倒して見ろォ!」

 

 しゃ、喋り方に独特さが……と、突然虹スカルの前に立って私達の道を開こうとする者達が。ミツルギさんとそのパーティーメンバーであるクー・フーリンさん達でした。

 

「ミツルギ……?」

「……ジーク様、みんなと一緒に先に行ってください」

「し、しかし……」

「僕達が最優先すべきことは、ジャンヌ・ルーラーとジーク様達をベルディアに向かわせること。少人数で目の前の強敵を食い止めないと、その敵は追いかけてきてこの後の敵との闘いに支障が出ます。だったらこいつは、僕達4人で……」

「………」

 

 ミツルギさん、もしものことを考えてパーティーであの中ボスを止めようとしてくれているのですね。彼の言っていることは正しい気がします。でしたらここは、彼の言葉通りに任せておけば……

 

「ジーク君、ここは……」

「……わかった。ミツルギ、絶対に勝ってくれ」

「はい!」

 

 ミツルギさんの力強い声に押されながら、私達は虹スカルを通り越してベルディアのいる部屋へと向かうことにしました。虹スカルは私達の行く手をさらに阻もうとはしなかったみたいですね。どのみちミツルギさん達が邪魔する思ったのでしょう。残っているのは、私・ジーク君・めぐみんさん・ダクネスさん・クリスさん・イクサさん・ガイスさん・メルティさんですか……ですが、それでも上級職が5人もいます。怯むわけにはいきません、このままベルディアのところへ!

 

「……よし。いくよみんな、こいつを倒すために!」

「えぇ!こんなやつ、私達でコテンパンにしましょ!」

「修行した私達の力、見せてあげるんだから!」

「マスターも結構気合い入っているし、やるとしますかァ!」

「ゥ我と闘おォうとする、その意思ィ!褒めてやるぞォ!だがァ!ォお前達にィ!ゥ我は倒せぬゥ!」

 

 

 

 

 

 

 ギィィッ、と扉の開く音が響き渡る。縦に長い真っ黒な部屋の奥には、ベルディアだろう騎士が堂々と座っているであろう王座が。どうやらここが、玉座の間へ繋がる唯一の扉なのですね。

 

「こ、ここが幹部の部屋……な、なるほど、これは女騎士の憧れ感が……」

「出ない。変なこと考えるな」

 

 ダクネスさんの被虐妄想の言葉をバッサリと切り捨てるガイスさん、ナイスですよ。

 

「えぇ、コホンッ!ベル……ベル……なんとか!約束通り来てやりましたよ!」

「いや名前散々言ったのに覚えてないの⁉︎ベルディアでしょ!」

 

 めぐみんさんの記憶の曖昧さにツッコむメルティさん、その時の目がギャクマンガっぽくまん丸にして可愛いですね。

 

「随分と偉そうに立っているね……」

「奴を倒せば一件落着というわけか……」

「そうみたいですね……ベルディア!今日が貴方の命日となります!貴方を倒し、私に憑いている呪いとともに成仏させてあげましょう!」

『冒険者に絶望を与える、不死のアンデッドを束ねる騎士よ──その命、神に返しなさい』

 

 死を恐れず、決意を固めながら、ベルディアに宣戦布告をしながら歩み寄っていく私達。一歩一歩、彼に近づいていく……

 

「……アレ?返事しない……?」

「こちらが喋りながら近づいているというのに、余裕を見せているのか……?」

 

 私達の言葉には興味はない、早くここに来いと言っているかのように、ただただ静かに玉座に佇んでいるベルディア。こ、これがボスの風格……隙を見せようとはしないみたいですね……

 そう考えているうちに、ついに私達は王座に座り込んでいるベルディアの目の前にまで来ました。そして武器を構え、彼を警戒し……アレ?何か違和感が……

 

 

 

 

 

『……スヤァ( ˘ω˘ )』

 

「「「「「「「『いや寝るなァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」」」」」」」』

 

ドゴォッ

『グハァッ⁉︎』

 

 思わず私達は、渾身の飛び蹴りをベルディアにかましました。いやそれはそうですよ!敵が進軍しているのに寝るとかどういう了見ですか!

 

「せっかくの緊迫感を、何台無しにしてくれるのですかァアァアァアァアァアッ!」ドカドカ

「普通敵が自分の城に攻めてきたのなら、襲撃に備えて起きて待機するのが普通だろ!」ゲシゲシ

「私達を馬鹿にしてェ!もう撃っちゃっていいですか⁉︎爆裂魔法かましていいですか⁉︎」ドカドカ

「早く起きて何かセリフを言え!そしたら私が【お前には負けない】というフラグを立てるから!」ゲシゲシ

「ダクネスちょっと黙ってて!そしてアンタ今また寝たでしょ!いい加減起きてェエェエェエェエッ!」ドカドカ

「寝て待機するぐらいなら、さっさとジャンヌとやらに憑いている呪いを解けアホンダラがァアァアァアッ!」ゲシゲシ

「もう何⁉︎真剣に修行していた私達は何⁉︎なんか馬鹿馬鹿しくなってきたんだけど⁉︎」ドカドカ

『おのれ魔王軍幹部がァ!私はこんな間抜けの仲間に負けたというのか!侮辱すぎるわァ!』ゲシゲシ

すまん!ホントすまん!昨日眠れなかったから寝てた!だからもう蹴らないでくれェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエッ!

 

 激おこぷんぷん丸な私達がドカドカと蹴っていくうちに、ベルディアが悲痛叫び声を上げてきたため咄嗟に後退しました。まぁとりあえず、これでベルディアに少なくとも精神的ダメージは与えられたでしょうね……なんか、この下り銀○っぽい気がしますが。

 

『ハァ……ハァ……よ、よくぞ来たな冒険者達よ』

「いや寝てた後に言っても説得力は見当たらないよ?」

『………し、しかし、ここで俺と出会ったのもまた厄日……そこのアークプリースト含め貴様らの命日が早まるだけだぞ?』

「寝てて隙を見せていた奴に言われたくない」

「もう闘うのが馬鹿馬鹿しくなりました。さっさと私に憑いている呪いを解いてください」

『………』

 

 もうホント馬鹿馬鹿しいです。こんな腑抜けてそうな騎士に最悪な呪いをかけられていたなんて、なんか侮辱さを感じます。最初に私達の前に現れた時のプレッシャーはなんだったのやら……

 

『……あぁ……ゴホンッ。お前達がここまで来るまでに寝ていたことについては謝ろう。しかし、お前達がここに来たのなら俺がすべきことに変わりはない……今ここで、お前達を排除しよう』

『排除されるのは……いや、成仏されるのはお前だけだ』

 

 私達の指摘の言葉を無視するようにボスっぽいセリフを投げかけるベルディア。いや何紛らわそうとしているのですか。イクサさんはカッコいいセリフを言って合わせてくれたみたいですけど。

 

『フンッ、まぁいいだろう……ともかくだ。今、この日を持ってお前達は俺の手によって命日を迎えることになる。言葉を変えてもう一度言おう……俺の手によってお前達は、死ぬ』

 

 ベルディアはそう言って横に立てかけていた巨大な剣を右手に持ち、その剣を私達に向けてきました。来る……ッ!そんな恐怖と緊迫感を感じた私達はそれぞれの持つ武器を構え、ベルディアを迎え撃つ準備をする。そして───

 

 

 

 

 

『いざ──勝負!』

 

 私達に向かって飛び出して来ました。すぐさまイクサさんが前に立ち、側面に赤い紅玉と黄金の両翼で飾られ赤いサーベル状の刃が付いたグリップ下にロングマガジンが装備されている銃器を左下段斬り上げで振るってベルディアの剣を受け止めました。その瞬間、ベルディアの鎧や剣の重みによるものなのか剣が交えた時の風圧が強かったのか、2人が立っているところに大きなクレーターが出来たのが見えました。な、なんて力……ッ!

 

『ほほぅ……この俺の剣を、スキルも使わず細い剣1本で受け止めるとは』

『一度腐ったことがあるとはいえ、私も冒険者の端くれだ。甘く見るな』

 

 そう言いながらベルディアを睨むイクサさん。その威圧感はロボットのため表情が見えないとしても、気迫でこちらにも伝わってきていました。

 

「『ワイヤートラップ』!」

『むっ⁉︎』

 

 この隙を狙ったクリスさんが蜘蛛の巣のようなワイヤーの格子を作り、ベルディアの足元に密着させました。

 

「これで動きは鈍くなるはず!」

『戦略はいい……だが!』

 

 ア、アレェ⁉︎足を上げて無理矢理引きちぎったァ⁉︎

 

「嘘ッ⁉︎そんなのアリ⁉︎」

「ならば……『サンダーソード』!」

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

 ジーク君が目で周囲に合図を送りながら稲妻を宿した『幻想大剣(バルムンク)』を地に突きつけ、私が初級魔法『クリエイト・ウォーター』で発生させた水を波のように展開させました。そして私とジーク君、ベルディア以外はみんな私達の周囲から即座に離れた瞬間、ベルディアの周囲に広がった水が感電し、その電撃がベルディアの体を襲いかかりました。その電撃が効いたのか小さく呻き声を上げているのがわかります。

 

『ッ……舐めるなァ!』

 

 しかし、やはりベルディアも一歩も引きませんでした。自身の剣を地に叩きつけた瞬間に水は蒸発し、発生した電撃も収まってしまいました。ッ、そう簡単にはいきませんか……!ですが!

 私達の本当の狙いは、ベルディアの隙を作ること!彼の背後に気配を消すように回り込んだイクサさんとガイスさんがそれぞれ剣を振るい、ベルディアに迫る。しかし、まだ甘かったのか2人に気づいたベルディアは振り返りながら剣を横一閃に振るい、2人の剣を受け止めました。

 ですが、左側がガラ空き。その方向に『潜伏』で気づかれないように回り込んだクリスさんが2本の短剣を両手に持ち、『身体強化』を使って自身の俊敏性を高め、息を殺しながら一気に加速し、ベルディアの背中目掛けて斬りかかりました。

 

『……そこか?』

パシッ

「ッ⁉︎」

 

 なっ⁉︎見向きもせず、『潜伏』で気配を殺していたクリスさんの攻撃を、彼女の右腕を掴んで止めたッ⁉︎まさかの瞬間に誰もが驚く中……

 

 

 

 ベルディアの背後に回り込み、それぞれの剣を突きつける2人の冒険者が。

 

「もらったッ!当たれェ!」

「『カースド・シャイニングソード』!」

 

 いつも防御役だったダクネスさんが自身の剣を、ジーク君が眩く強い光を宿した『幻想大剣(バルムンク)』を、ベルディアの背中を突きつけました。そして……ついにベルディアの鎧に、傷跡がついた。淡い光の残照が一瞬眩くのと同時に。

 

『ガハッ……⁉︎な、に……ッ⁉︎』

 

 ベルディアが以前、自分は魔王から特別な加護を受けている、苦手な神聖魔法どころか、レベルの高い冒険者の攻撃でさえものともしないと言っていました。ですが、こちらは貴方と同じ幹部と闘った経験がある上にレベルが80以上もあるイクサさんの元で修行を受けたのです。最初の時とは比べ物にならないとは思いますよ!

 

「「『セイクリッド・ターンアンデット』!」」

 

 ジーク君達がベルディアから離れたのと同時に、今度は私とメルティさんの2人で淡く眩く発光した魔術『ターンアンデット』の強化版魔法を放ち、ベルディアに命中させました。少し彼の体から邪気が浄化するように漏れ出ていましたが、やはり魔王の加護を受けたからか、これらを受けても倒れてはくれませんでした。

 

「……まだ撃たないでねめぐみんちゃん。合図があるまでは、魔力の強化に集中して……」

「えぇ、分かっています……」

 

 今にも爆裂魔法を撃つべきかと苦い表情を浮かべるめぐみんさん。そんな彼女に気づいたのか、メルティさんが小声でベルディアに気づかれないようにめぐみんさんを宥めました。たしかに焦りは禁物です、もう少し慎重に……

 

『「(このままではやられる……仕方ない、『アレ』を使うか)………思ったよりもやるではないか。貴様らの良きコンビネーションに称して、少し本気を出すとしようか!』

 

 突然ベルディアがそう叫んだ瞬間──左手に持っていた自身の頭を、真上へと放り投げました。投げ飛ばされたベルディアの頭は、丁度自身の真上で止まると甲冑の下から見える赤い目を光らせ、このフロア全体を覆うように黒い幕がベルディアの頭から広がっていきました。これは、彼の闇の力の象徴というべきでしょうか……?まるで天井からこの部屋を見下ろすように浮かんでいるベルディアの頭。それに私達は警戒していると……

 

『余所見とは余裕だなッ!』

「──!」

 

 いつの間にか接近してきたベルディア。私は咄嗟に旗を使ってベルディアが振るってきた剣を防ぎました。ッ、重い……ッ!なんて力……ッ!これは、ベルディアの魔力が上がっている証拠……⁉︎まずい、押される……ッ!

 

「させるか!『カースド・ウィンドソニック』!」

 

 私の危機を感じたのか、ジーク君が『幻想大剣(バルムンク)』に宿した風を深緑色の刃の形をしたエネルギー波に変え、それを発射させてベルディアを押し出しました。ベルディアがそれを受けて一瞬吹っ飛ばされたの機に私は後退し、体勢を立て直しました。にしても、なんて一撃だったのでしょうか……ッ!

 

『むぅ……だが!今のを受けただけでどうってことはない!』

 

 同じく体勢を立て直したベルディアは、その場で一回転しながら大剣を振るう。それによって激しい風圧の波が彼を中心に発生し、私達を回避・防御させる隙を与えず吹き飛ばしました。吹き飛ばされた私達は壁に激突しましたが、なんとか気絶せずに済みました。肝心のめぐみんさんはメルティさんが発動した光の壁を作る魔法によって守られていました。よかった、切り札に何かあったら困りますしね……

 すると、誰よりもいち早く立ち上がったガイスさんがスキル『身体強化』を使って自身の俊敏性を高め一気に加速し、ベルディアの周囲を撹乱。浮遊している頭の赤い目をギョロギョロと必死に動かしているのを見ると、今のやり方は効いているみたいですね。そしてガイスさんはその勢いで剣をベルディアにぶつけるものの、当の本人はそれを左手で掴むだけで防御しました。アレだけでは無謀だということはガイスさん自身も理解しているみたいですが、だからこそ……

 

「ガイスさん、そのまま動かないでくれ!『カースド・アイシクルソード』!」

 

 −300℃?もありそうなほどの冷却な温度もある氷の力を宿した『幻想大剣(バルムンク)』を振るい、横一閃に振るわれてきたベルディアの剣とぶつかったジーク君。しかしやはりベルディアは強い。あの一撃で凍てついたりはしませんでした。それでも、私達攻撃をやめませんでした。

 

「少しは大人しくしてろ……!『チューン・ライトニング』!」

『………⁉︎な、なんだッ⁉︎身体が……ッ!』

 

 必死な形相でベルディアを威嚇しながら、彼の右腕を左手で掴んだジーク君。すると彼の左手から胎動するようにバチバチと電流が流れ込み、ベルディアの鎧の中へと入り大きく漏れ出してきた電流。その威力が凄まじかったのか、それともベルディアの皮膚が弱いのか、ベルディアは小さな悲鳴を上げていました。これは、チャンスですね……!

 

「『チェーンバインド』!」

「『ワイヤーストーム』!」

「『アイスロック』!」

 

 私の地面から突き出た鎖が、クリスさんの嵐のように旋回する蜘蛛の糸が、そしてメルティさんの杖の水色の淡い光から放たれた氷結の縄が、腕・胴体・脚元をそれぞれ縛り付けました。これでベルディアはしばらく身動きが取れないはず。後は一気に決めるだけ……!

 

『終わりだ……ベルディアッ!』

 

 そう叫びながらベルディアの前に立ったイクサさん。するとバックル側面の金色のホイッスルを取り出し、ナックルダスターのような形をしているバックルに挿し込んで押し出しました。

 

イ・ク・サ・カ・リ・バ・ア・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ

 

 胸部に仕込まれたエンジンがフル稼働し、胸のマークが赤く輝く。エンジンによって生み出されたエネルギーはイクサさんの持つ剣へ流れ込み、剣身を灼熱に染め上げました。同時にイクサさんから太陽の如き白光が発せられ、ベルディアだけでなく私達もその眩しさに思わず視界を閉じてしまいました。

 そして──

 

『ハァッ!』

 

 尋常じゃないほどのエネルギーが溜め込まれた剣を左斜め一直線に振るい、ベルディアの鎧を斬りつけ、大爆発という名の火花を起こしました。爆炎をたたえながら発生した豪快かつ膨大な爆発の衝撃によって吹き荒れる爆風。その爆風を切り裂くように剣を振るうベルディア。まだ生きているみたいですが、全身の鎧はボロボロ、そしてイクサさんの渾身の斬撃によって出来た跡が大きく見えていました。

 

『今のは……効いたぞ……ッ』

 

 少しだけ掠れた声を上げるベルディア。しかし前を向くと、イクサさんは彼の目の前ではなく私の隣に移動していました。ベルディアから離れた理由、それは……

 

 

 

 

 

『今だッ!』

「今こそ、終焉の時です!──エクスプローション!

 

 

 

 

 

 瞬間──ベルディアのいる場が光り、つんざく音を立てて爆発し、灼熱の炎に包まれ、爆発しました。めぐみんさんが持つ魔法にして最強魔法『爆裂魔法(エクスプロージョン)』が、増強魔法によって何段階にも強化された状態で放たれ、的確にベルディアに直撃したのです。

 

 悶々と玉座の間に漂う、爆発による黒い煙。その煙は闘いに終着を告げた合図なのでしょう。これは、勝った、ということでしょうか……?

 

『敵反応、なし……助かったぞジーク、私から教わったスキルを上手く活用してくれたようだな』

「いえ、ガイスさんの咄嗟の攻撃のおかげでベルディアの動きを止める機会が出来たんです。お礼は俺がガイスさんに言うべきです」

「よせ、俺は仲間達のために最善を尽くしたまで」

 

 ……勝った、のですね。ベルディア、かなり厄介な相手でしたね。私達が気配を殺してもどこに攻撃が来るのかを見通してきましたし、防御力も硬かった。ですが、あまり彼の攻撃が当たらなかったのが運の尽きでしたね。さてと……メルティさんが私の代わりにめぐみんさんを担いでくれていますし、後はこの城の残党を倒すだけ……

 

「……?ちょっと待って」

「ん?どうしたんですか?クリスさん」

「まさか、アレであっさり終わるわけがないのでは言うのではないだろうな?イクサさんも敵反応がなくなったと言ったんだ、悪い考えはやめてくれ」

 

 まぁたしかに、あまり彼の攻撃が当たりませんでしたし、思ったよりも早い決着だと思いますが。

 

「いや、アタシもアレで勝ったとは思っているよ?めぐみんの『エクスプローション』をまともに喰らったんだから……それ、なのに……」

「「それなのに?」」

 

 

 

 

 

「何故、ジャンヌさんの首元の痣が消えてないの……?」

 

「……えっ?」

 

 私は咄嗟に、首元を確認しました。ホ、ホントだ……7つの文字のような、黒い痣らしき模様は私の首元に残ったままでした。ア、アレ?ベルディアを倒したのだから、呪いは自動的に解かれたはずなのでは?まさか、倒しても強大な呪いの力が普通にまで弱まるだけ?そんな疑問に焦っていると───

 

 

 

 

 

 

 

ゾゾッ

 

 只ならぬおぞましい気迫が、私達の身の危険を察知しました。咄嗟に煙の方向に向くと、そこには……

 

 倒されたはずのベルディアが、かなりボロボロの状態で立っていました。しかもいつの間にか左手に魔力を溜め込んでおり、バチバチと音を鳴らして彼の手に魔力の塊が形成させ───

 

『ハァッ!』

 

 ベルディアが私達に向けて左拳を突き出した瞬間──目にも止まらぬスピードで魔力の塊を射出されました。

 ベルディアから放たれたソレは、目にも止まらぬスピードで私達の目前まで迫ると──つんざくような音を立てて爆発しました。

 何が起きたのか分からず、今の魔力の塊をもろに受けて身体を宙に飛ばされた私達は、そのまま落下して倒れ込んでしまいました。

 

『ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ぜ、全開のその全開の力を使ってしまったか……だ、だが、あまり動けないわけではない……ッ!』

「ッ……アッ、アァ……ッ」

 

 この『裁定者セット』の守護力のおかげなのか、朦朧ながらもなんとか意識はあった私は、先程受けた魔力による激痛を抑えながら顔を上げました。痛みを伴っている今の私には立ち上がる力が残っていないのか立ち上がることが……

 ッ⁉︎ま……まずいッ、ベルディアが私の目の前に……ッ⁉︎私はふと周囲を見回すと、めぐみんさんもダクネスさんも……それどころか、みんな気を失っているのか起き上がる様子を見せていませんでした。

 まさか……私、達は……ここで、死ぬ……⁉︎

 

『まずは意識のある貴様からだ……ッ!』

「ヒッ……⁉︎」

 

 浅葱色の大剣が、目の前で振り翳された。もうダメ、避けれない───ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───……ヌ。……ンヌ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………?」

 

 私は今、身体を一刀両断にされたはず。なのにそんな感覚が一向に迫って来ない。死ぬとそんな感覚など忘れるでしょうけど、その前にはそういった感覚が身体全体に伝わってくるはず……なのに、その感覚もありませんでした。一体、何が……?そういえば、聞き覚えのある声が、微かに聞こえたみたいですが……

 

 

 

 

 

「………⁉︎」

 

 咄嗟に閉じた目をゆっくりと開いた瞬間、私は絶句しました。そこに立っていたのは……

 

 私を庇うように、ベルディアに背を向けて私の壁となるように立っていた、ジーク君でした。口から濁った呻きを──真っ赤な体液……血とともに吐き出しており、背中から下に流れるように真っ赤な液体が流れていました。彼が立っていた玉座のコンクリートの地面は赤く染まっており、その面積は広がっていました。

 

 その光景を見て、私は絶望感を受けながら察しました。ジーク君は今……私をベルディアの攻撃から守ったのだということに。

 

「ジ、ジーク君ッ!!!」

 

 私は思わず悲鳴そのものというように叫びました。信じられない、信じたくない光景を目の当たりにし、身体を震わせながら。するとジーク君は、私に気づいたのか辛そうな表情で微笑み……

 

「ジャン……ヌ……無事……だったのか……よか……った……」

 

 そう呟いて、意識を手放したのか、その場で膝をつき、そのままゆっくりと倒れてしまいました。そんな……ッ私のせいで、ジーク君が……ッ

 

『……何故だ。何故たった1人の人間だけに、ここまでのことができるのだ……()()()()

「………⁉︎」

 

 今……なんと……⁉︎ジーク君の正体を、何故貴方が……⁉︎

 

『……なに、ただの勘だ。此奴が本当に神なのかの確信など俺にはない。ただ、あの時俺に攻撃を仕掛けてきた時と姿を変えてきた時の普通とは違う何かを感じたのでな……しかし、仮に神だとしても、何故たった1人の人間だけにこんな真似が出来るのか……理解に苦しむ』

 

 ………

 

 嗚呼、そうか。そうでしたか……

 

 やっと理解できました。

 

 何故ジーク君が、私のために今まで優しい対応をしてくれたのかを。

 

 何故ジーク君が、私を庇ったのかを。

 

 それは、私がうっかり転生特典に選んだからでも、

 

 転生特典としての務めを果たすためでも、

 

 神としての務めを果たすためでもなく───

 

 

 

 

 

「私が……仲間だから……」

『む?』

 

 あの時、ジーク君は私に言ってくれました。私を異世界に送り込む前、私がジーク君の事を神様と呼ぼうとした時、死者とは私達人間みたいに友好的になりたい、と。そして、私がうっかりジーク君を特典に選んだことに罪悪感を持っていた時に、魔王を倒すまでは帰るつもりは一切ない、とも言っていました。

 

 それは、1人の人間らしく、私を助けたかったから。私と共にいたかったから。そして何より───

 

 

 

 

 

 

 

 仲間である私に、生きていてほしかったから……そういう事なのですね?ジーク君。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、ジーク君の、想いは……」

 

 そして私は、今にも満身創痍で生き絶えそうな体を、意地で無理矢理起こし……

 

「仲間を、私を守りたい、揺るぎない、その想いは……!」

 

 震えている腕で、自身の象徴である旗を強く握りしめ……

 

「絶対に……!」

 

 ベルディアを強く睨みつけ……

 

 

 

「無駄に……したくないッ!はぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあッ!」

 

 力を振り絞るように叫び、足に力を入れて地面を踏みしめる。傷が一層痛み悲鳴を上げているのを感じながらも、私はベルディアに向かって駆け出した。

 この特攻が大抵無駄なことだとは、自分が唯一わかっていた。けど、私の意志によって、身体が勝手にそう動いていた。このまま何もしないわけにはいかない、その一心によって。

 私がベルディアに向かって力のままに振るってきた旗をいとも簡単に剣で止めるベルディア。それでも、私はベルディアを睨みながら必死に旗を振るう。力む度に傷が痛むものの、構わず振るい続ける。

 

『──愚かな行為だッ!』

 

 ベルディアはそう叫び、自身の剣で私の旗を弾き、そのまま私の身体を斬りつける。一瞬ながらも斬られた身体の部分から吹き出し地に飛び散った血飛沫。堪えようとする口が反射的に開き、血反吐も出してしまった。痛い。痛い。今までに受けた感覚の中でも、一番に。その痛覚が腕にも染み渡ってきたのか、思わず旗を落としてしまう。そして、その痛覚に身体が麻痺したのか後方へとよろめいてしまうも……

 

「──それでも、止まるわけにはッ!」

 

 地を踏んでなんとか踏みとどまった。今までに感じたことのない痛みが襲いかかってきたからといって、諦めるなんて洒落になりませんから。そして私は左腰に巻いてある物に手を取り、引き抜いた。それは、何色にも色褪せていない、無属性の純白の剣。これは出撃前日にイクサさんからもらった剣。ピンチの時に使っておこうと決めていた、奥の手というべきでしょうか。いや、そんなことはどうでもいい。今度はこれを使ってベルディアに挑むのみ。私はその剣のグリップを右手で強く握りしめ、また駆ける。ベルディアが縦一直線に振るってきた剣を左前方に回避し、懐の鎧に付けられている斬り傷に剣を振るってぶつける。

 

『ッアァッ⁉︎ア、ガァアアア……ッ!お、おのれェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエッ!』

 

 自身の大きな傷にさらなる痛覚を与えてきた私に対して怒りを覚えたベルディアは、すぐさま私の身体を斬りつける。それも一閃だけでなく、二閃も。また一瞬吹き出す血飛沫。今の斬撃による痛みが先程まで受けていた傷の痛みと重なり、私の体力を二重で奪う。

 そして、ここで私の意識は朦朧とし始めました。もう、身体が限界だと多大な悲鳴を上げたのでしょう。このままだと、私はベルディアを倒せず気絶……あるいは、死んでしまうのでしょう……

 いや、違うッ!私は生きるッ!生きて帰って、またジーク君達をこの異世界生活を過ごすッ!それが、私の今の想いッ!

 

「ッ、アッ、アァッ……ッ……まだまだァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

 

 負けじと、私は剣を振るう。振るう度にベルディアの剣を弾き、弾かれ、弾き、弾かれ、弾き、弾かれ……ここから剣と剣のぶつかり合いとなった。剣を振るう度に私の身体が悲鳴を浴び、徐々に体力を消耗する。しかし、確証はありませんがそれはベルディアも同じこと。彼の剣を振るう動作に鈍りが見られ、私の方が剣を弾く回数が増えているような気がしだした。

 

『ッ……!』

 

 するとベルディアは突然、私の振るう剣を弾いた瞬間に跳躍して後退する。一体何をする気だと思いながらも、すぐさま再び間合いを取るのは無策だと思い、私は剣の穂先を向けながら構え、ベルディアを睨みつけました。

 

『………フッ、フハハハハッ!驚いた!レベルが低いだろうに、まさかこの俺にッ!貴様1人でッ!そこまでの傷を負いながらも対等にやり合うとは!』

 

 自身も深手を負っているはずなのに、深手を負わせた私を憎いと感じているはずなのに……私と闘えていることに誇りに思いながら、高らかにに嗤うベルディア。今まで強敵と戦った経験がないからなのでしょうか、表情が分からなくても声や笑い方で喜色の様子を見せていました。そう、死を前にして狂い始めた笑いでもなければ、乾いた笑いでもない。彼は……心の底から、()()()()()笑ったのだ。

 

『本当に、まさかここまでやるとは思っていなかった……もう手加減はせんッ!魔力を全て開放し、貴様をたたっ斬るッ!』

 

 ベルディアは演技で発しているのかどうか分からない怒りに声を震わせ、まだ隠していた魔力を開放し始めました。この場にいる者どころか、城の外にいても感じられるほどの巨大な魔力。これが、ここまで表に出すことのなかった、彼の全力……!

 

『この一撃……貴様は耐えられるかッ⁉︎』

 

 尋常ではない程の魔力を解放しながら剣の穂先を私に向けるベルディア。すると、何か考え事をしているのか首を一瞬、傾げ、声のトーンを普通の状態に戻して私に語る。

 

『………いや、名を聞いた方がいいな。貴様、名前は?』

「………ジャンヌ。ジャンヌ・ルーラーです」

『そうか……では、いくぞジャンヌ・ルーラー!これが、正真正銘、貴様と俺の闘いの終着点だッ!』

 

 ベルディアは高らかにそう話すと、高めていた自身の魔力をさらに──最大限に高める。まるで、ここが最後の戦場だと言わんばかりに。

 私はベルディアのその誇らしい意志に答えるべく、剣を腰に納め、足元の近くに転がってきていた旗を拾って佇む中、彼は右手に持っていた大剣に力を込め……

 

『この一撃を受けてみろッ!ジャンヌ・ルーラァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!』

 

 そして、大剣にありったけの魔力を溜めたベルディアは、悪魔に向かって一直線に飛び出した。けど、私は臆さない。今こちらに迫ってきているベルディアを倒すためにも。そして、後ろにいる仲間達を……ジーク君達を守るためにも。

 

 すると、気づいた時には、私は何かを詠唱し始めました。

 

「我が旗よ。我が同胞を守りたまえ───」

 

 その詠唱と共に、旗を掲げた私を中心に神々しい光が溢れ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が神はここにありて(リュミノジデエテルネッル)──────」

 

 

 

『………⁉︎』

 

 力を込めて大剣を私の頭目掛けて振り下ろそうとしたベルディアを、黒い鎧の光沢ひとつも残さずに包み込んだ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢side:第三者

 

『……フ……フフ……見事だ……』

 

 ボロボロになった古城。その最上階に位置する玉座の間。そこにいた魔王幹部──ベルディアは、掠れた声で満足そうに話す。

 

 彼の自慢の鎧は、今の古城のようにボロボロになっており、近くの床に突き刺さっている大剣の横に転がっている。左手で持っていた頭は手から離れ床に転がっており、甲冑の下からは赤い目の光が弱々しく光っている。

 

 もはや戦う気力など残されていないベルディアを、自身の転がっている足元の近くで両膝をついているジャンヌが、意識が朦朧としている表情で見下ろしていた。

 

『魔王様の……加護を持った俺に……あそこまでの……神聖な光を……浴びせることが……出来るとは……思わなかった……』

「ベルディア……」

『満足した……久しく……満足な戦いだった……最後に……貴様のような者と戦えて……誇りに思う……』

「……えぇ……私も……ここまで貴方と張り合えるとは……思いませんでした……貴方のような人と戦えて……誇りに思っているのは……こちらも同じです……」

 

 弱々しくもどこか安らいだ声で、ベルディアは満足そうに笑って話す。その様子を、ジャンヌは苦し紛れの笑みで見つめていた。彼は自分や自分達の仲間を傷つけた死の騎士。それを分かっていながらも、ジャンヌは彼と戦えた事に損は一切感じていなかった。

 赤い目の光が次第に弱まっていく中、ベルディアはジャンヌを真っ直ぐ見つめて、口を開いた。

 

『……最後に1つ……聞かせてくれ……』

「なん……ですか……?」

『貴様の勇気を……奮い立たせた……そこの……ジークという男……奴は……本当に……神……なのか……?』

「………」

 

 それは――ジークがジャンヌをベルディアの大剣の一振りから庇って意識を手放した時に、ベルディアがふと呟いた問い。

 ジークは本当に神なのか。もしも本当に紛れもなく本物の神なのだとしたら、何故この地に降り立っているのか。そんな疑問がベルディアの心に残っていた。

 

 彼の問いに対して、しばらく口を閉じているジャンヌ。ジークが神であることは、自分の他に彼の後輩ながらも今は冒険者として身分を隠しているクリスと、彼を崇拝しているミツルギとその仲間達、『素晴らしき青空の会』のイクサという、ごく僅かな者達しかこの世界で知っている者はいないのが現状である。

 

 今、気絶している仲間達の他にまだこの最上階に上ってきている者はいない。ならば今のうちに、ベルディアにだけこの真実を話すべきか。しかしそれだと、ジークの想いは意外な形で無残に散ってしまうのかもしれない。

 そう悟ったジャンヌは、苦し紛れながらも決心した表情でベルディアを見つめ、こう口を開いた。

 

 

 

「彼が……この地に……立っている限り……ジーク君は……私達と同じ……人間です……」

『………』

 

 ジャンヌのこの返答に、ベルディアは思わず耳を疑い、少しだけ黙り込んだ。いい加減な答えだとは思うが、彼女の真剣な表情からしてそうなのではないかという発想に至ったかのような笑みを零した。

 

『フフッ……そうか……それも……そう……だろうな……』

 

 今にも命が尽きそうな掠れた声でそう小さく笑ったベルディア。そして彼は最後に──ポツリと呟いた。

 

 

 

『……いい夢を……持って……いる……よう……だ……な……』

「えっ……?」

 

 ベルディアの呟きを聞き、ジャンヌは思わず聞き返す。しかし、ベルディアから声は返ってこない。

 甲冑の下から見えていた赤い目は──二度と光を放つことはなかった。

 そしてしばらくして、ベルディアの身体は、大剣とともに淡い光に包まれる。暗闇のように強調されていた黒い鎧も淡い色へと変化していき──徐々に身体の一部一部が光の水泡となって消えていった。

 

「………」

 

 ただただ、光となって天へと昇っていったベルディアを、無言で眺めるジャンヌ。その光ぎ消えたのと同時に、糸が切れた人形のように意識が途切れ、そのまま地面に向かうように倒れ込み始めた。

 

 バッ

 

 そんな彼女を、両手で優しく包み込むように受け止めてくれた者が。ジークである。ベルディアが力尽きたのと同時に意識を取り戻し、倒れ込もうとするジャンヌを咄嗟に受け止めたのだ。安らかな表情で気絶している彼女を見て、ジークは……

 

「ありがとう、ジャンヌ」

 

 一粒の水滴を目から零しながら、ポツリと呟いたのだった───




最後の最後で、少しは原作のジャンヌらしく宝具を発動できたのではないでしょうか?ベルディア……強化されたのかそうでもないのかわっかんないな前半だけ見ると……
さてと、次回はベルディア戦後のお話となります。どんな感じになるのか、次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この聖女と優神に告白する勇気を!

ついに……ついにジャンヌとジークが……⁉︎

今回は前回と比べて文字数が少ないです。そんな気はしないとみなさんは思うのでしょうが、大丈夫という方はどうぞ。

P.S.前回の話で誰1人と感想をくれなかった事にガッカリ感が出てしまいました……


♢side:ジャンヌ

 

「……ん……んん……?」

 

 目を覚ますと、そこには見覚えのある天井が。木製感が強く、新鮮さを感じる天井……あぁ、そうですか。私はギルドのとある一室で眠っていたんですね……

 

 ……アレ?どうして私、眠っていたのでしたっけ?たしか、私達はミツルギさん達のパーティーメンバーとイクサさん達『素晴らしき青空の会』のみなさんと一緒に、私にかかっている呪いを解くためにベルディアの城に乗り込んで……

 

 ハッ⁉︎そうでした、私はそこでベルディアを倒した後、その場で気を失ったはず……!ほ、他のみなさんは⁉︎ジーク君は⁉︎

 

「──ジャンヌ」

「………!」

 

 その時、聞き覚えのある声が私の耳に響きました。爽やかで優しい声、その声がする方向に私は振り向きました。毛先が墨をつけた筆のように黒く染まっている、緩やかなカーブを描く銀色の髪。黄昏刻を示すような紅玉の瞳。太陽を知らないような白い肌。白いワイシャツの上に黒いブレザー……その格好……その姿……間違いありません、彼でした。

 

「ジーク……君……」

「目が覚めたんだな、ジャンヌ」

 

 ジーク君が、生きていた。その事実を知って、私は思わず涙を流しました。そして、嬉しさのあまり私を縛っていた何かが途切れ、思わず私はジーク君に抱きついていました。そして彼の胸の中で子どものように泣きじゃくる私。そんな私を、ジーク君はそっと優しく抱きしめてくれました。

 

「ジャンヌ……?」

「ヒッグ……ジーク君……生きて、いたんですね……グスッ、よかった、です……」

「ジャンヌ……あぁ、心配いらない。メルティさんや『素晴らしき青空の会』の人達が俺達を回復してくれたんだ。もう大丈夫だ」

 

 そう言って私の頭をそっと撫でてくれたジーク君。やっぱり、彼はいつの時も優しいですね……アレ?今、私、抱きしめられているんでしたよね……?

 

「……あっ」

「ん?」

「アァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎///」

バンッ

「へぶっ⁉︎」

 

 ……ハッ⁉︎し、しまった⁉︎あまりの恥ずかしさに思わずジーク君を突き飛ばしてしまいました……!いや、その、思わずジーク君に抱きついた私も悪いですが……

 

「す、すみませんジーク君!傷が治ったばっかりだというのに……!」

「いたた……いや、魔法や回復瓶で完全に傷が治ったのだから、あの時の痛みが再発したりはしないさ。それよりも、君が大丈夫そうでよかった」

「そ、そうですか……」

 

 そうでしたね……回復の術は私のいた世界とは大きく変わっているんでしたよね。瓶の中の薬だけだったり魔法だったりで傷や病気を治せるなんて、本当にすごいですよねこの世界は。あの時の傷もあっさりと治っているようですし……

 あっ……

 

「……ジーク君」

「ん?」

「あの時は、本当に申し訳ありませんでした。あの時はいくらみなさんが気絶してからとはいえ、私が怖がっていたばっかりに……」

 

 私が、あの時もっと勇気を持っていたら、あんな事にはならなかったはずなのに……あの時の自分が情けなくて仕方ありませんでした。

 

「……たしかにあの時は、さすがの俺でも死ぬかとは思っていた。本当は俺も怖くて足がすくんでいたんだ。助けたくても助けられない、助けに行っても逆にどちらかが死ぬかもしれない、そう思っていた……」

 

 ジーク君、本当は怖かったんですね。動きたくても動けない、そんな心境なはずなのに、あの時……

 

「……けど、気づいた時にはその足が勝手に動いていた。君を助けたいと強く思っていたら、体が言うことを聞いてくれたんだ」

「……私を、助けたい一心が……」

 

 死ぬかもしれなかったのに、動けという程に体を奮い立たせてまでして、私のことを助けようと……

 

「……そして、だな……」

 

 アレ?ジーク君、突然口ごもりしだしましたね?一体どうしたのでしょうか……?

 

「えっと……実を言うと、その……あの時、君を、助けて……初めて、気づいたんだ……」

「え……?」

 

 え、ちょ、何ですか?何に気づいたとでもいうのですか?いや、なんか怖いのですが……

 

「その、だ……」

 

 

 

 

 

「俺は、君の事が……」

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す……好きになったんだ……///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………〜〜〜〜〜〜〜〜〜⁉︎///」

 

 えっ⁉︎えっ⁉︎今、なんと⁉︎///え、ちょ、えっ⁉︎す、好きッ⁉︎えっ⁉︎あ、あの、あのジーク君、が、わ、私の事を、す、好きにッ⁉︎えっ⁉︎えぇっ⁉︎これ、本当⁉︎本当の事なのですか⁉︎嘘……じゃないですよねッ⁉︎ゆ、夢でも、ないですよね⁉︎と、とりあえず頰を引っ張ってみましょう……あ、痛い……えっ⁉︎正夢ッ⁉︎

 

「あと、えと、その、あお、えお、はお、えの、アウゥ……///」

 

 ウゥ、あまりにも恥ずかしくて、にわか信じ難くて、思わず口ごもってしまいました……正直、私には恋愛的感情がないのかと思ってましたから……は、恥ずかしい……

 

「……いや、そもそも前から好きになっていたのかもしれない……」

「ハゥゥ⁉︎///」

 

 えぇっ⁉︎ま、前からァ⁉︎///ちょ、え、あ、えぇっ⁉︎お、追い打ち、追い打ちしないでください……ッ!あぁもう、心臓に悪い……ッ!

 

「いや、その、だ……最近、俺はクエストの時とかで君を何度も助けようと色々なことをしていたのだろう?最初は、考えなしにやっていたんだが、繰り返していくうちに……その……何故か、少しずつ心臓がバクバクと動いているような感覚がして……」

「………///」

 

 ま、まずいですね……こ、言葉が出なくなってしまいました……だ、だって、信じられると思います?自分の本心もあるとはいえ、私のうっかりで、転生特典として、選ばれて、仕方なくな感じで、この世界に、過ごしている、はず、なのに……そ、そんな私に、好意を持って……

 

 でも……

 

 あのジーク君が……

 

 私のことを……

 

 そこまでなるほどに……

 

「お、おかしいよな?神様が、1人の人間に、恋しているなんて……」

 

 

 

おかしくありません!

 

 

 

「ジャ、ジャンヌ……?」

 

 だったら、早く言わないと……ジーク君の想いに、答えないと……!

 

「人間の恋愛に縛りがないのと同じように、規則でもない限り、神様にも恋愛に縛りがあるはずがありません!あったなら他のことでも自由権なんてなかったはずです!む、むしろ……ジーク君が、こんな私に……こ、恋してくれるなんて……その……嬉しい、限り、です……」

「え……?」

 

 そ、そろそろ恥ずかしくなってきました……で、ですが、今言わないと、いずれ後悔してしまいます。だったら、すぐに告白しないと……!

 

「そ、その……ですね……わ、私も……」

「えっ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もッ!ジーク君の事がッ!好きですッ!好きなんですッ!貴方に、恋しているんですッ!///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?///」

 

 ……い、言えた……やっと、言えました……あまりにも恥ずかしかったのですが……やっと、愛する人に、告白できました……ッ!この言葉に、悔いはありません。私はジーク君の事が好き。私が人間だとか、ジーク君が神様だとか、そんな事は関係ありません。私はジーク君の事が好きになったんです。嘘である要素は何一つありません。たとえ、これでジーク君に嫌われていてもこの想いは絶対に変わらない……いえ、変える気はありません。私にとって、ジーク君はこの世界の全てですから。

 

「………」

「………」

 

 あ……ジ、ジーク君が、顔を真っ赤にして固まっている……え?アレ?もしかして、両想いになるとは思わなかったのでしょうか……?ア、アレ?なんか、こっちもさらに恥ずかしくなってきたような……

 

「………ジャンヌ」

「は、はい!」

「……こ、こんな俺で、本当にいいのか……?」

 

 ………!ジ、ジーク君、その言葉は、まさか……!

 

「……もう、ジーク君でしかいません。ジーク君以外の誰か付き合うだなんて想像できない、なんて馬鹿馬鹿しい人になってしまいましたから……」

 

 な、なんか変なこと言ってますね私……これじゃあ私がヤンデレっぽく見えるような……

 ……あっ。ジーク君、今、涙を……

 

「……あ、すまない。あまりにも嬉しくって……人に自分の感情をありのままに受け止めてもらった時って、こんなにも嬉しくなるものなんだな……」

「ジーク君……」

 

 あまりにも嬉しかった、ですか……それは私も同じです。きっと、私もいつの間にか涙を流していたでしょうね……

 

「……ジャンヌ。こんな不束な俺だが、よろしく頼む」

「………!はい!こちらこそッ!」

 

 ついにお互いの想いを尊重し合った私達。

 

 気づいた時には私達は抱きしめ合っていて……

 

 やがて、お互いの顔がゆっくりと距離を縮めていき……

 

 

 

 互いの唇が、優しく重なっていました。

 

 

 

 遂に恋人同士として繋がった私達。数秒という短くも長く感じさせる時が過ぎた後に唇を離す。ジーク君は顔から耳まで真っ赤になっていました。もちろん、私も同じく顔を耳まで真っ赤になっているでしょうね……やっと、繋がったのですね、私達……

 

 

 

 

 

ガタガタガタッ

 

「「「「うわァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎」」」」

 

「「⁉︎」」

 

 えっ⁉︎い、今、何が……⁉︎

 

 ……あっ。この部屋のドアが開いて、めぐみんさん達が雪崩れ込むようにして入ってきてしまったのですね……って、え?

 

「あっ……い、いえ、ジャンヌにジーク……これは単なる偶然でして……」

「その、だ、特にといった理由はないんだ……」

「私達、今ここに来たばかりだから……」

「だから、ジーク様がジャンヌ・ルーラーをずっと看病していたことも……」

「ちょ、違うでしょキョウヤ……いや、今、でしてね……?」

「偶然2人が部屋にいることを知っただけで……」

「ホントのホントに偶然発見しただけでよぉ……」

「2人が告白しあったことも……」

「キスしたことも知らないからな……?」

『いや、バレてるぞ2人とも……』

 

 ………………………

 

「………ジーク君」

「………あぁ、わかっている」

 

 誰が私の様子を見ようと勧めようとしたのか、誰が止めようとしたのかは分かりませんが……

 

「「「え………?」」」

「「「「ちょ………」」」」

「「『何を………」」』

 

 とりあえず、私は旗を、ジーク君は『幻想大剣(バルムンク)』を持って……

 

「「これより、神からの裁きの時間です」」

 

 レッツ、制裁タイムですッ!

 

「え、ちょ、2人ともすごい形相にッ⁉︎」

「ま、まずい⁉︎逃げるぞッ!」

「ちょ、ま、先輩にジャンヌさんやめてッ⁉︎」

「ももももも申し訳ありませんジーク様ァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ!」

「ギャァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎怖い怖い怖い怖いッ!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい悪気はないんですゥッ!」

「いやちょ、俺はホントッ!ホントに偶々見かけただけでッ⁉︎」

「やめて!ホントやめてッ!私達が悪かったからァッ!」

「すまなかった!本当にすまなかったァッ!」

『ま、待てッ!私は偶々通り越しただけで……』

 

 この後、部屋の中での大きな爆発音とめぐみんさん達の耳がつんざく程の悲鳴が上がりましたが、私はそんなこと知ったことではありませんでした。せっかくのムードを……ッ!許しませんよ本当にッ!

 

「「チェストォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオッ!」」

 

【ギャアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ⁉︎】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして騒動が収まり、ギルド。私達はベルディア討伐を記念して、『素晴らしき青空の会』主催で記念パーティーを開くことにしました。ちなみに均等に配られていたはずのベルディア討伐の御礼金ですが、何故か私だけみんなよりも5割多い金額を受け取ることになりました。まぁ、たしかに最後にベルディアにトドメを刺したのは私ですが……

 

「遠慮しないで好きな分食べていいわよ。今日の主役は貴方なんだから」

「あ、はぁ……」

 

 メルティさんがそう言ってくれたので、少しは遠慮するという気持ちは薄れました。たしかに、主役が積極的にパーティーに参加しないのは変だと思いますし、遠慮がちになるのは私らしくありませんからね。

 

「違う意味でも主役になっているみたいだしね……」

「……また制裁を受けたいのですか?///」

「……ごめんなさい」

 

 全く……アレを見られた時は結構恥ずかしかったんですからね?メルティさんもそれをわかってくれて謝っていただけたのでまぁいいのですが……

 にしても、みなさんすごい食べっぷりですね。めぐみんさんは相変わらずですけど、クリスさんに少々強引に勧められたからとはいえジーク君も中々……一番すごい食い意地を見せていたのは、『素晴らしき青空の会』の戦士・コニさん。重要かつ大変なクエストを行った後でも自主訓練を欠かさなかったためかたくさん体力を使っていたらしく、それが食欲へと繋がっているみたいです。や、焼きそばみたいなものを5皿・肉の盛り合わせ3皿食べる程とか、どれ程大変な訓練なのでしょうか……

 それにしても、みなさん楽しそうですね。ワイワイガヤガヤはしゃいでいます。イクサさんの性格がアレっぽい感じがするので、意外だなって思っちゃいました。

 

「ジャンヌちゃん。突然だけど、貴方に聞きたいことがあるの」

「はい?」

 

 あ、突然メルティさんに話しかけてきましたね。一体何の話をしてくるのでしょうか……?

 

 

 

「もし、ひとつだけ願いを叶えられるとしたら何を願いたい?」

 

「………えっ?」

 

 何ですかその危なっかしい訪問販売みたいな聞き方は?

 

「いやね?これは単なる噂なんじゃないのかって話だけど、もし魔王を倒すことが出来たら願いを叶えられるって話なの」

 

 え?そんな噂があるのですか?いや、まぁ……魔王は強そうなので倒せば願いが叶いそうな気がしますが……

 

「だからもう一度聞くけど、もしひとつだけ願いを叶えられるとしたら、ジャンヌちゃんは何を願う?」

「えっ?えっと……」

 

 何を願うか、ですか……特に考えたことはなかったのですが……

 

「ジャンヌ、一体何の話をしているんだ?」

「あ、ジーク君。実はですね……」

 

 ふとジーク君が私達のところに来てくれたので、私はジーク君に何を話していたのか説明しました。ジーク君は魔王を倒したら何を願うのでしょうか?

 

「魔王を倒して願いが叶うとしたら?そう、だな……」

 

 と、ジーク君は顎に手を当てて考え込みながら、私の方をチラチラと見ました。な、なんか、恥ずかしいですね……

 

「俺は、そうだな……」

 

 

 

 

 

「いつまでもジャンヌと一緒にいたい……と願いたいかな」

 

 えっ……?

 

「ふぅ〜ん、なんかロマンチックねぇ」

「当たり前なことだと思うのかもしれないが、これは今の俺にとっては一番望みたい願いで……」

 

 あっ、そっか……そうですよね……私とジーク君はやっと結ばれたとは思うのですが、ジーク君はあくまで私に転生特典として選ばれてこの世界に来ている……つまり、私達が魔王を倒すと、もしかするとジーク君は天界に帰ってしまうのかもしれませんね……

 そう思うと、私……

 

「……あ、あれ?ジャンヌちゃんどうしたの?涙、出てるけど……」

「ジャンヌ……」

 

 ……えっ?あ、本当だ。なんか、目が潤んで……あぁ、そうか。私も、きっと……

 

「す、すみません。ジーク君の言葉を聞いたら、私、嬉しくって……」

 

 本当は、嘘なんですけどね。これは嬉しくて泣いているんじゃなくて、ジーク君ともう会えなくなっちゃう未来が見えるのが怖くて泣いているんです。魔王を倒せば世界は平和になりますが、もしかすると、その代償として……

 

「私、決めました。魔王を倒したら叶えたい願いを」

「ジャンヌ、まさか……」

「はい……」

 

 

 

 

 

「私も、いつまでもジーク君と一緒にいたいです。魔王を倒した後も、ずっと」

 

 やっぱり、ジーク君と離れ離れになるのは嫌です。いつまでもジーク君の側にいたい、これからもずっと……って、私なんか危なっかしい女になってますね。私、どうやらジーク君に毒されたみたいです。

 

「そうか……一緒だな」

「はい、そうですね」

「アラアラ、微笑ましいこと……あっ」

 

 またメルティさんにからかわれました(本人もそれを自覚してくれたみたいです)が、今は気にしないでおきましょう。私とジーク君の想いも一緒になって、今嬉しいと思っていますから。

 

「ジーク君、これからもよろしくお願いしますね」

「あぁ。よろしく、ジャンヌ」

 

 私と結ばれた神様と、素晴らしい仲間の方々と過ごす素晴らしい異世界生活。そんな楽しい日は、明日も続く───




ついにジャンヌとジークが結ばれました!これでジクジャン成立ゥ!

で、最後はいい加減な最終回って感じを出してしまいましたが、まだ最終回になるには早いのでまだまだ投稿していきます。ですが、実は最近ネタが思い浮かんでこなくてストップしております。なので他人を頼る形になってしまいますが、誰か感想とかでいいネタを教えていただけると幸いです。どうかこの小説に救いの手を差し伸べてくださいお願いします(アニメこのすばを見る機会がなくて……後、本音を言うと他の小説の方々とコラボしてみたい)

それでは、また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この2人にドジっ子な店主と預言者との邂逅を!?

もう失踪覚悟でオリジナル全開に突っ走ろうかなと思っている時期に入っています。今回はあの店主が出ます。後、『この元・魔剣使いに決意を!』以来の登場であるあの預言者も……?それでは本編をどうぞ!


 最悪な死を迎えて、死者に新たな道を案内する神・ジーク様……いや、ジーク君の勧めで魔王を倒すために異世界に行く事になった私、ジャンヌ・ルーラー。転生時にもらえる特典でうっかりジーク君を選んでしまい、天使の子によって2人一緒に異世界に飛ばされてしまいました。

 

 うっかりもうひとつの転生特典として獲得してしまった『裁定者セット』でいきなり強くなったり、盗賊冒険者のクリスとなってこの異世界に現存していたジーク君の後輩神様・エリス様に出会って翌日ちゃっかりパーティーに入れちゃったりと、さらに色々な体験を短い間にいっぱいしました。

 

 エリス様ことクリスさんだけでなく、防御力が高くも代わりにドMな部分が露わになってしまうクルセイダーのダクネスさんと、爆裂魔法『エクスプローション』一本で茨の魔法道を歩むことを心に誓っているめぐみんさんもパーティーに加えたり、ジーク君に導かれて転生者になって打倒魔王を目指すミツルギさんと戦ったりと、様々な出会いもありましたね……

 

 そして、魔王軍幹部の1人であるベルディア討伐のために『素晴らしき青空の会』の皆さんの元で修行し、ベルディア城に乗り込んで最後大苦戦しながらもなんとか勝利。その後は……その……ジーク君とお互い告白を交わし合い、ついに交際することになりました……なんというか、その、恥ずかしかったです……

 

 そんなこんながありながらも、今でもこの素晴らしい世界で楽しい毎日を過ごしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなある日。私はジーク君と一緒にギルドとは方角が異なる場所にある住宅街を歩き回っていました。ギルドの場所や、本屋とか、雑貨とか、後は工事現場に、草原と森……そういったところをゆっくり回っていなかったので、今こうしてジーク君と一緒に回ることにしたのです。持ち金に余裕が出来ましたし、最近ベルディアとの闘いの後もクエスト受けてばっかりで落ち着けませんでしたから、今すっごく幸せです。あ、後、ジーク君と一緒に歩いているので……な、なんか……デートっぽくって、いいと思ってますし……というか、私達実際に付き合っていますけどね……///

 あ、ちなみにめぐみんさんは同じ紅魔族の知り合いに会いに、ダクネスさんとクリスさんもどっかに行ってしまいました。一体、何の用事があるのでしょうか……?

 

 で、私達は今、とある草原のベンチで休憩・昼食をとっています。こうやって日向ぼっこしながら2人でご飯を食べるなんて、私達は幸せ者です……♡

 

「しかし、ここ最近街は平和だな」

「えぇ、そうですね」

 

 と言ってもベルディアの襲来ぐらいしか非常事態は起きていませんけどね。まぁとにかく、異世界関係なく世の中は平和が一番ですよ。こうして誰かと食事したり、誰かと些細な会話をしたりと、くだらなくも楽しい時間を毎日過ごせてこそが理想の世の中なのですから。

 

「……む。このサンドイッチは中々だな。ぎっしりと具が詰まっている」

「え、本当ですか?あっ、たしかに肉とか野菜とかがぎっしりですね」

 

 うん、たしかに美味しそうですね。なんか、こういう美味しい食べ物を食べていると異世界に来ているって感じがしませんね。

 ……ん?アレ?えっと、何故かジーク君が私の方を見ているのですが……

 

「………ジャンヌも食べるか?これ」

「ふえぇ⁉︎///」

 

 え、ちょ、えぇっ⁉︎ジ、ジーク君⁉︎じ、自分の食べかけを私に食べさせるなんて……つ、つまり、それって、間接キスになるのでは⁉︎

 

「あ、いや、その……つ、付き合っているのだから、こうした方がいいんじゃないのかって思っていただけなのだが……駄目、か……?///」

 

 あ、ジ、ジーク君も照れていますね……こ、ここはいかないと、こ、恋人としての自分が、廃るのでは……?

 

「い、いただきます……」

 

 恥ずかしくも、私はジーク君が差し出してきたその食べかけのサンドイッチをそっと手に取り……その……その、食べかけの部分に、齧り付きました。ウゥ、やっぱり食べるだけで恥ずかしい……

 

「その……美味い、か?」

「……は、はい。とっても……」

「そ、そうか……」

 

 すみません、嘘です。羞恥心が込み上がっていたので味が全く分かりませんでした。でも意識すればすごく美味しいでしょうからそういうことにさせてくださいお願いします。

 

 ……そこ、『何初々しくなってんだ、もっと積極的になれ』と言っているのですか。私達まだ付き合って1・2週間なんですよ?そりゃあまだ初々しいままになるに決まってるじゃないですか、察してください。

 

 と、私達2人以外に周囲に誰もいないはずの赤の他人にツッコミを入れていると、突然私の隣にちょこんと何かが座っていることに気がつきました。

 

「どうしたジャンヌ?」

「あ、いえ、何か私達の方をジィーと見ていたもので……」

「ん?……あ、猫だ」

 

 そう、今私達の目の前にいたのは、黒い毛をしたどこにでもいるような猫。ですが、やはり異世界だからでしょうか、普通の猫とは違った部分はやはりありました。それは……その猫の背に、黒い羽が生えているところです。何でしょう、この猫……私達が昼食として食べているこれらが欲しいのでしょうか?

 

「えっと……食べます?」

 

 私はそう言って、その黒猫にサンドイッチを差し出そうとしますが……

 

「な〜お」

「「えっ?」」

 

 突然、黒猫はベンチに飛び降りて尻尾を横に振ってきました。何でしょう、そのジェスチャーは?まるでついて来てとでも言っているような……あ、走っていった。

 

「……付いて来い、と言っているのか……?」

「と、とりあえず追いかけてみましょう」

「そうだな」

 

 そして私達は、心惹かれたその黒猫を追って路地に入って行きました。一体、何なんでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから3分が経過しました。未だに黒猫に追いついていません……この路地、どこまで続くのでしょうか?時折黒猫は、まるで私達が付いてくるのを確認するかのように後ろを見てきましたがすぐに走っていきますし、それを何回か繰り返していますし……なんか、あの黒猫に誘導されてるみたいな気分になってきましたね。ですが、私もジーク君もあの黒猫の様子が気になりますし、このままついて行ってみることにしましょう。

 

 そしてやっと路地から出ると、私達が最初に見たのは、少し薄暗い、いかにも怪しい感じのある店でした。扉の上に吊るされる形で出ている看板に書かれていたのは、『ウィズ魔道具店』という名前でした。

 

「魔道具店……?」

「魔法に関係ある物やポーションを売っている店の事を言うんだ。そういえば、よく考えたら魔道具店のような異世界に行かないと見れないような店を見たのは、これが初めてだな」

「あ、よく考えたらそうですね。ここが魔道具店ですか……」

 

 そして私達は、その店の中が気になってきた上黒猫がその店の中に入っていったのを確認したので、これも何かの縁だと思い入ってみることにしました。棚にある商品を物色してみると、やはりRPGみたいに魔道具やポーションが至るところに並んでおり、まさに魔道具店って感じがしました。しばらく店の中を見渡していると……

 

「「………⁉︎」」

 

 店のカウンターに、頭を付け伏せているような形で倒れている女性の方を発見しました。

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

「気をしっかり!」

 

 私達は咄嗟にカウンターの中に入り、その女性の肩を軽く揺さぶりました。するとその女性は、唸るような声を小さく上げ……

 

「………た……」

「「『た』?」」

「おなか……すきました……」

「「………あぁ……」」

 

 事の状況を理解した私達。そして自分達の手元にあるサンドイッチの入っているバスケットと焼き鳥の入っているトレーを確認し……

 

 

 

 

「ありがとうございました!見ず知らずの方に助けて頂いただけに飽き足らず、貴方達の昼食までいただいて!」

 

 はい。まぁこの女性の言葉通り、私達は先程までカウンターに倒れていたこの人にサンドイッチと焼き鳥を渡しました。ペコペコを頭を下げるこの女性の方は、なんて礼儀正しい方なのでしょうか。

 

「いえいえ、そこまでお気になさらないでください」

「俺達、目の前で困っている人を放っておくわけにはいきませんので」

 

 私達はそう当たり前な発言をして女性の方を落ち着かせました。よく見るとその女性の方は、片方の目を隠している長く茶色い髪に、紫色の大きめなローブを身に纏っており、白い肌が印象を受けさせていました。

 そして何より、私の視界に一番目がいっているのは……その人の、胸。ダクネスさんよりも、メルティさんよりも、ルナさんよりも、そして私よりも……豊潤としていました。むぅ、負けた……ここまで嫉妬してしまうのは初めてです……

 

「申し遅れました。私はこの『ウィズ魔道具店』の店主を務めているウィズといいます」

「店主さんでしたか。私はジャンヌ・ルーラー、アクセルのアークプリーストです」

「ジーク、ルーンナイトです」

 

 店主さんだったのですねこの人。こんな美貌の高くて性格の良い方が魔道具店の店主でしたら、結構儲かっていそうですね……と、言いたいところなんですが。

 

「何故お腹空かせて倒れていたのですか?店をやっているのでしたら、それで稼いだお金で……」

「う……うちは魔道具の種類は豊富なんですが、なぜか買う人がいないんですよ、お恥ずかしい話。実はもう5日ほど何も食べてなかったので……」

「「えっ」」

「こうして固形物を口にできたの5日ぶりなんです……アハハ……」

 

 そう言って苦笑するウィズさんですが、貴方ではありませんよ?下手したら誰にも手を差し伸べられずに餓死してしまうかもしれないのですよ?う〜ん、魔道具の種類が豊富なら何故……

 

「な〜お」

「あ、さっきの……」

 

 と、ふとさっき店の中に入って行った黒猫が出てきました。

 

「猫ちゃん!」

 

 あ、ウィズさんの黒猫でしたか。ウィズさんが黒猫に近づくと、黒猫は彼女に飛び乗ってきて、ウィズさんはそのまま黒猫を抱き上げました。あ、黒猫がウィズさんの胸を肉球でつっついて遊んでいる……これ、他の男子に見せたら恥ずかしいやつですね。というか見せられない……

 

「この子、数日前に店の近くにボロボロになっていたのを保護したんです。それからこの子、店から離れないのでこうして住み着いているんですよ」

「だから懐かれているのですね……」

「……あっ」

 

 ん?ジーク君、何かを察したのでしょうか?

 

「……?どうかしました?」

「実はこの子、昼ごはんを食べようとした俺達に鳴いたかと思ったら路地に行くからついて行ったんです。何度か、俺達を見ながら路地を進んで行って、この店に着いて……もしかしたらこの猫、俺達をこの店まで連れて行きたかったんじゃないかって思ったので……」

「え、そうなのですか?」

「まぁ、はい。この猫は多分、自分を助けてくれたウィズさんに恩返しがしたかったんだと思います」

 

 おぉ……猫が恩返しをするって、ひと昔前の映画にありそうなのが現実にもあるんですね。尊い。

 

「……そうだったんですね……ありがとう、猫ちゃん」

「な〜お」

 

 『気にしなくていいよ』と言わんばかりに鳴いている……可愛い……ッ

 にしても、この魔道具店は色々な物がありますね。どれも気になるものばかり。商品名はまだ見てませんが。

 

「せっかく来たのですし、商品を見て回りましょうか」

「そうだな」

「本当ですか⁉︎ありがとうございます!」

 

 ……まさか、商品を見てもらうことも久しぶりだとでも?とりあえず、ツッコまないでおきましょう。

 

「これは何ですか?」

 

 ふと、ジークさんが棚に飾ってあった商品を指差しながらウィズさんに尋ねました。たしかに、これは気になりますね。

 

「それは、衝撃を与えると爆発するポーションですね」

「えっ、怖ッ……これは何ですか?」

「水に触れると爆発する釣り餌です」

「……これは?」

「手で触れると爆発する置物ですよ」

「……ここって、爆発物専門店なのか……?」

「ち、違いますよ!?そこが爆発コーナーなだけであって、ちゃんとした物は売っていますから!」

 

 どれもが爆発する物ばかりって。どこぞの爆裂狂が喜ぶか、こんなのは生温いと辛口レビューをしそうですね……役に立つ物もちゃんと売っていると主張しているみたいですが、どれどれ……?

 

・『走る速度が上がるポーション』(注意)速くはなるが、息切れも速くなる

 

・『衝撃吸収のスクロール』(注意)3000メートルの高さからじゃなきゃ効果は発揮しない

 

・『体力を回復するポーション』(注意)体力は回復するが飲んだ次の日は、二日酔いになった時くらい気分が悪くなる

 

・『相手を捕縛する魔道具』(注意)相手を捕縛したら自分も捕縛されたように動けなくなる

 

 こ  れ  は  ひ  ど  い

 

「……ウィズさん、貴方商売センス皆無なのでは?正直そこらの子供達の方がまだマシな商品を考えると思いますが……」

「ウッ……そんなにひどいんですか?私……」

「……自覚していなかったんですね」

 

 ジーク君の言う通り、どれも使いづらい物ばかりで、余程の物好きでない限り買わないような珍品揃いじゃないですか……これならば赤字経営になるのも納得ですね。

 

「……ん?これは?」

 

 と、ふと私はとある物に目をつけました。前の棚に置かれてあるのは、綺麗な色彩を放つ掌サイズの水晶が1つと、横に合わせて置かれている、同じ色彩の小さな水晶が5つ。私はこれは何だとウィズさんに問いかけると、彼女はそれがオススメ商品の1つだったのか、ちょっと嬉しそうに私が見つけた商品の説明を始めました。

 

「それはですね!ワープ結晶を元に開発された、大ヒット間違いなしの商品『テレポート水晶』です!付属している小さな水晶を任意の場所で砕くと、大きな水晶へその場所が登録され、いつでもどこでも大きな水晶を使うことで、登録した場所にテレポートできるんです!つまり!魔法使い職以外の方でもテレポートを使うことができる、超便利アイテムなんですよ!」

 

 け、結構まともな商品見つけちゃいました……こういった商品ならみなさんが買いそうな……

 

「「って高っ!?」」

 

 しかし、そこに貼られている値札にゼロがいくつも書かれていました……突然ですがみなさん、よく考えてみてください。ここは駆け出し冒険者の集まる街。つまり、そんなに金を持っていない者がほとんど。そんな街に上級冒険者さえも迂闊に手が出せない額の商品……誰が買うと思います?なんとかみなさんが分け合って払えば問題ないとは思いますが、後は誰が使うのか……ウィズさんは何の根拠があって、こんな高額商品がアクセルの街で売れると考えたのでしょう?この商品は誰にも買ってもらえないまま、ずっとこの店に残り、埃を被って棚に飾られ続けるのでは……?

 

 ですが、その未来予想図は大きく外れました。

 

「あの、実は、これを2つ予約していた者がいまして……」

「「……えっ?」」

 

 嘘ッ⁉︎なんか億をいきそうな値段のこれを買おうとしている人がここに来るというのですか⁉︎しかも2つぅ⁉︎ど、どうやってお金を貯めておいたのでしょう……?

 

 と、次の瞬間。この店のドアがまた開きました。

 

「失礼するよ」

「あ、いらっしゃいませ……って、ウォズさんじゃないですか⁉︎」

 

 ん?誰かこの店に来ましたね?店に入ってきた人物は、黒をイメージさせる衣服に長いストールを巻いた男性の方でした。ウィズさんが彼のことをウォズさんと言いましたが、常連客か何かでしょうか?というかウォズって。ウィズさんと名前がほとんど一緒で紛らわしいですね……

 

「む?珍しいじゃないか、新顔の客が2人も来ているだなんて」

「あ、いえ……この2人は私がお腹を空かせていた時に、見ず知らずの私にご飯を分けてくださった方々で……」

「そうなのかい?君達、この店の店主を助けてくれて助かるよ。彼女が倒れたら店が成り立たないからね」

「「あ、いえ……」」

 

 店員ではないとはいえウィズさんを助けてくれたお礼の言葉を述べたウォズさん。そんな彼のかしこまった態度に私達は思わず動揺してしまいました。れ、礼儀正しい……

 

「私はウォズ、職業はアークウィザードだ。以後よろしく」

「あ、はい。アークプリーストのジャンヌ・ルーラーです」

「ルーンナイトのジークです」

「ほほぉ、君達上位職だったのか。これは奇遇だね」

 

 たしかに、上位職同士がギルドやクエスト以外で初対面するのは珍しいですよね。にしてもウォズさんもアークウィザードですか……めぐみんさんが彼と出会ったらどう思うのでしょうか?

 

「ん……?」

 

 ふと、突然ウォズさんは私達をまじまじと見つめてきました。な、なんでしょう?私達何かやらかしたのでしょうか?そして『テレポート水晶』までも見て……

 

「……フム。君達は店主の恩人でもあるからね……よし、ひとつ提案がある」

「「………?」」

 

 

「今からこの予約しておいた『テレポート水晶』を買うことになっているのだが……そのひとつを賭けて私と勝負してみないかい?」

「「「………えっ⁉︎」」」

 

 この人今なんて⁉︎『テレポート水晶』を予約していた⁉︎しかもそのひとつを賭けて勝負しろ⁉︎まるで意味が分かりません……

 

 

 

 

 

 

 そして流されるまま、私とジーク君はウォズさんに連れていかれて『ウィズ魔道具店』の近くの広場でウォズさんと模擬戦をすることになりました。どうしてこうなった……ちなみにウィズさんは店で待機しています。まぁ、来てくれそうな人を待たないといけませんしね……

 

「ルールは特にない、が……ダメな攻撃は、人を殺しそうな真似は絶対にしないって事ぐらいだな」

 

 勝手にルール説明してますし、何なのでしょうかこの人……

 

「……あの、こちらは2人いるのですが、大丈夫なのですか……?」

「ん?あぁ心配いらないよ。私は負けるつもりは一切ないのだから」

 

 ムッ、なんか甘く見られているようでムカつきますねそのセリフ。多分私はムスッとした表情を浮かべていたのでしょう。よく見ると、私の隣に立っているジーク君も同じ表情を浮かべていますね。なんか甘く見られていますね……私達はあの魔王軍幹部・ベルディアを倒した実力者ですよ?そう簡単に負けるものですか。そう思いながら、私は旗を、ジーク君も『幻想大剣(バルムンク)』を構えました。

 

「……やはり、少しは楽しませてくれそうだ」

 

 ウォズさんはニヤリと笑いながらそう言うと……何やら異質な物を取り出し、下腹部に当ててきました。それは黒色の長円形で中央は出っ張った造りになっており、若緑色の枠で囲まれ透明の板が填め込まれていました。さらに右端には挿し込む為の溝が作られた円形のスロットとハンドルが一体と化した装置が付けられており、左右非対称の見た目をしていました。

 ……えっ?何ですかあのアークウィザードどころか魔法使いからかけ離れているようなアイテムは?

 

Beyondriver!

 

 異質な物体そのものが何物であるかを告げ、『ビヨンドライバー』と呼ばれる物から射出された若緑色のベルトがそれを固定しました。続けて取り出したのは、長方形の時計の形をした、何やらイラストが描かれた何か。また魔法使いからかけ離れた物を……

 

Woz!

 

 するとウォズさんはその時計みたいな物の上部にあるスイッチを押した瞬間、彼と同じ名前をそれが叫び、彼はそれをドライバーに設けられたスロットに差し込みました。

 

Action!

 

 スロットにその時計みたいな物がセットされることで、ドライバー中央にある顔の無い鏡像が浮かび上がりました。ウォズさんは、再び時計みたいな物のスイッチを押しました。するとその時計みたいな物が左右に開閉され、その内部から何らかの胸像が現れました。えっ?ホント何ですかアレ?

 すると、ウォズさんの背後に正方形の薄緑色の光で作られたパネルの様なものが出現。そのパネルから光の線がいくつも伸びてきました。えっ、ホント何ですかアレ。怖い、なんか怖い。けど未来感漂ってすごすぎます……異世界感じゃなくて未来感が伝わってくるって何この違和感。

 

 

 

 

 

「__________変身

 

 

 

 

 

 掛け声と共に、ウォズさんはスロットと一体となっているハンドルを前に倒す。すると時計のような物の内部の何らかの胸像が、ドライバー中央側面に填め込まれました。

 

Touei!

 

 その声が示す通り、時計みたいな物の内部の情報が光となってドライバー内部に送られ、ドライバー中央に浮かんでいた顔の無い胸像に、時計みたいな物に描かれている胸像が重なりました。

 

Future Time!

 

 背部パネルから飛び出す文字。同時に、情報となった光の帯が幾つも重なってウォズさんを包み込み、その情報を物体化させ、彼の体を銀のスーツで覆いました。えっ、何ですかアレ?ここ、特撮映画の撮影現場ではないと思いますが?さらに各角度から薄緑の光がウォズさんに向かって放たれ、その光は途中で形を変え、装甲を形成しました。

 

Sugoi! Zidai! Mirai!

 

 装甲がスーツに装着され、飛び出した文字『ライダー』がウォズさんの顔に収まり……

 

Kamen Rider Woz! Woz!

 

 ウォズさんの姿が、全体的に変化しました。両肩には薄緑で縁取られた正方形の黒い装甲。装甲中央には『カメン』という文字がマークとして刻まれていました。さらには手・足・胸部にも同配色の装甲が。額には『カメン』のマークを中心にして長針、短針の形のヘッドパーツが備わっており、また、顔もそのマークを中央に黒い円が同心円状に広がり、その曲線に合わせて水色の『ライダー』の文字が双眸の代わりとして填め込まれていました。

 

 ……ここ、ファンタジー世界(ワールド)ですが。

 

 

 

「祝え!」

 

「「⁉︎」」

 

 突然、姿を変えたウォズさんが高らかに叫び出しました。しかも祝福しろと言うように。ちょ、急にどうしたと……

 

「過去と未来を読み解き、忠き歴史を記す預言者。その名も仮面ライダーウォズ!新たなる歴史の1ページを、勇敢な若き2人の冒険者に刻ませようと公開した瞬間である!」

 

 何かもう訳が分かりませんが、理解したことはただひとつ……

 

「さぁ、始めようか」

 

 今のウォズさんは、只者ではないということだけでした───




最後のこのすば要素とFate要素どこいった(自問)
次回は原作感無視しやがったウォズ戦となります。次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この預言者との戦いに激戦を!

ウォズ、アンタホント何やってんの。って感じの回です。そしてこのすば感どこいった。ウォズ目立ち過ぎ(自分で書いといて何言ってんだ)


 ジーク君とデートしていたところ、黒猫に連れられて『ウィズ魔道具店』を訪れ、そこでウィズさんと出会った私、ジャンヌ・ルーラー。ウィズさんが営んでいる魔道具店の商品はどれもひどい物ばっかりで全く売れなかったとのこと……『テレポート水晶』というまともな商品はあったみたいですが、それも結構高くて……

 

 で、何故かここを訪れてきた常連客らしきアークウィザードのウォズさんという方から何故かその水晶の1つを賭けて勝負しろと言われ、流されるがままに挑むことになった私達。で、そのウォズさんが何やら『仮面ライダーウォズ』というファンタジー何処いった感満載な姿になって……訳わかめって感じになってます。

 

Jikandethpia!

 

 ウォズさんが右手を上げた瞬間、彼のドライバーが輝き、光が具現化し形を得ました。黒い柄に4つのタッチパネル式の入力装置が付き、柄の先端は円形となっており、そこから金属とは違う物質で出来た若緑色の刃が出ている。円形の部分には文字が描かれており、その文字は『ヤリ』の二文字。

 

Yarisugie!

「ッ!来る!」

 

 ジーク君がそう叫んだのと同時に、ウォズさんが駆けてきた。槍を横薙ぎに振るってきたので旗の柄の部分を盾代わりとして前に出してその持ち手でガード、すぐに押し出しました。そのまま背後からジーク君が『幻想大剣(バルムンク)』を足元に振るって横転させようとしましたが、踏みとどまったウォズさんはすぐに槍の穂先を地面に突き刺し、柄の上で倒立。『幻想大剣(バルムンク)』の穂先をその突き刺さった槍の穂先で防ぎました。ジーク君が穂先を払ったことで、ウォズさんはその反動を利用し空中で体勢を変えながら彼の頭上に倒れ込む様に斬りかかってきました。そこで私がすぐさまジーク君の前に立ち旗の柄で防ぎましたが、間一髪でしたね……

 

「ッ……!」

「悪くないコンビネーションだ。しかし、まだまだではないかね?」

 

 すぐさまウォズさんがまた槍で斬りかかろうとしました。なのでジーク君が前に出て『幻想大剣(バルムンク)』で弾き、また振るってきたら今度は私が出て旗の柄で弾き、前に出て弾き、前に出て弾きとローテーションで繰り返していき、彼の隙を狙うことにしました。あ、槍を振り降ろすまでの間が少し長い……今ですね!

 

「『フラッシュ』!」

「ッ⁉︎」

 

 私が右手を翳した瞬間、そこから光を発光させ、ウォズさんの目を暗ませました。ウォズさんは咄嗟に槍の装置で顔を覆い、その光をなんとか遮ろうとしましたが、その瞬間だけでも十分。私の背後からジーク君が前に出て、魔法を放つ。

 

「『フリーズ』!」

 

 彼の右手から放たれた冷気がウォズさんの左腕を覆い、凍らせる。そのまま『幻想大剣(バルムンク)』を振るい、その凍った部分に斬りかかりました。ウォズさんは咄嗟に避けたみたいですが、左腕に擦りの攻撃を与えられたみたいです。というか、血が出たらどうしようかと今更思ったのですが、飛び出たのは血ではなくまさかの火花。どう私達が攻撃したらそうなるのやら……

 

「ハァ!」

 

 しかし、私は攻撃する手を止めませんでした。旗を横薙ぎし、先程の攻撃で怯んでいたウォズさんの横腹を殴り吹っ飛ばしました。ウォズさんはしばらく芝に転がりましたがすぐに起き上がり、何事もなかったのように立ち上がりました。なんか……ムカつきますね。

 

「さらにマシになったか……では、次はこのウォッチでいこう」

 

 そう言いながら、ウォズさんは右手に新たな時計みたいな何かを握りました。あれ、ウォッチって言うのですね。紫の面、黄色の目、額と顔には手裏剣。それは忍者を連想させていました。ウォズさんはそのウォッチのスイッチを押す。

 

SHINOBI!

 

 音声とともにドライバーに既に嵌め込まれていたウォッチを外し、そこに新しく起動したウォッチを差し込むウォズさん。

 

Action!

 

 もう一度ウォッチのスイッチを押すウォズさん。ウォッチが開き、中から新たな胸像が現れる。

 

Touei!

 

 ハンドルを前に倒し、ドライバー中央にその胸像部分を填め込む。

 

Future Time! Dareja⁉︎ Oreja! Ninja!

 

 ウォズさんの両肩、胸部の装甲と顔の『ライダー』の文字が消え、四方から伸びる紫の光がウォズさんの周囲に新たな装備を作り出す。

 

Futuring SHINOBI! SHINOBI!

 

 光が実体となり、ウォズさんへと装着されました。両肩の正方形の紫の装甲は、角に鋭利な刃が突き、装甲の中心には手裏剣のマーク。胸部装甲中央にも大きな手裏剣が付けられている。首には長く伸びた紫の布をマフラーの様に巻き付け、額に手裏剣型のパーツを付け、顔の文字は『シノビ』へと変わる。

 

 ……なんか、歌舞伎か時代劇に出てきそうな姿ですね。

 

 ウォズさんは槍の柄にある入力装置を指で押す。すると刃が九十度倒れ、『ヤリ』の文字が『カマ』に変わる。

 

Kamashisugi!

 

 そしてウォズさんはすぐさまベルトのハンドルを引き、再び前に倒しました。い、一体何を……?

 

Beyond The Time!

 

 ドライバーで発生した力がウォズさんの手を通じて鎌となった槍に流れていきました。って、アレはなんかヤバイのでは……⁉︎

 

「ッ!『シールドバリア』!『シールドバリア』!『シールドバリア』!『シールドバリア』!」

 

 お、思わず1つのスキルを4連呼してしまいました……けど、これぐらいしないといけないということは分かりました。私が右手を私自身、そしてジーク君に向けて翳した瞬間、丸状の障壁が私達を囲むようにブゥゥゥンッと生み出され、防壁となりました。

 

「ほぅ……?」

Nlnpou Jikanshibari no jutsu!

 

 ウォズさんが刃を地面に突き立てる。紫の光が蜘蛛の巣の様に広がっていき、その上に立つ私達の動きは時間が止まったかの様に動かなくなってしまいました。バ、バリア張ったのに……ッ!

 

「ア、アガガッ……!」

「か、体が……ッ!」

 

 すると突然、ウォズさんの体がぶれ、そこから何体ものウォズさん達が飛び出し、止まった私達へと向かう。

 

Strong Nlnpou!

 

 分身の1体が紫炎を生み出し、私のバリアの1つを覆う。

 

Megaton Nlnpou!

 

 分身の1体が鎌を切り上げると竜巻が発生し、ジーク君のバリアの1つを捩じ切る。

 

Finish Nlnpou!

 

 最後に紫の光を纏った蹴りが私のバリアを、同じ光を纏った手刀がジーク君のバリアを砕きました。砕かれた時の風圧が私達を襲い、吹っ飛ばしてしまいましたが、なんたか地に踏みとどまって難を逃れた。か、間一髪でした……もし『シールドバリア』を4回使わなかったらどうなったことやら……

 

「なるほど、頭の回転は上手いようだ。ならば早くも予定変更だ、今度は君達の知識力を試してあげよう」

 

 新しくウォズさんが取り出したウォッチ。えっ?まだ何かあるのですか?額に大きなクエスチョンマーク。両眼もまたクエスチョンマークの形をしていました。

 

Quiz! Action! Touei!

 

 忍者の力を持ったウォッチを外し、クイズ番組と何か関係ありそうな力を持つウォッチをドライバーへ投影させるウォズさん。

 

Future Time! Fashion! Passion! Question!

 

 『シノビ』の文字が外され、黄色の光が新しい力を具現化させてきました。

 

Futuring Quiz! Quiz!

 

 右肩は赤。左肩は青の装甲。胸部装甲赤と青のラインで縁取られ、中央にクエスチョンマークが縦に連なっていました。額には大きなクエスチョンマーク。顔に填め込まれた文字は『クイズ』。

 

 すると突然、クイズ番組と何か関係がありそうな力を纏ったウォズさんは右手の人差し指を立て、私達に向かって口を開きました。

 

「問題。基本職かつ最弱職である冒険者は、他の職業のもつ全てのスキルを自由に習得することができるが、その時はスキルポイントを少なくとも1.5倍を必要とする。〇か? ×か?」

「「えっ?」」

 

 ウォズさんからいきなり出されたクイズに、私達は思わず呆けた声を上げてしまいました。だってよく考えてくださいよ?名前がクイズであり、その名の通りクイズを出すことにおかしい点は無いとは思いますが、それを戦いの最中に出してくるとなると流石に疑問を持たざるを得ないじゃないですか?こんなのに答えて何の意味が……

 

「………〇か?」

「えっ⁉︎」

 

 答えちゃうのですか⁉︎いきなり問題出してきて怪しいと思わないのですか⁉︎私と我に返ったジーク君はそれぞれが持つ武器を構え、何処から攻撃を仕掛けてくるのかを警戒しました、が……

 

 ピンポーン!

 

「……はい?」

 

 音と共にウォズさんの右肩の装甲が開く。装甲の裏には〇が描かれていました。

 ……で、何も起きませんでした。えっ?それに何の意味が?

 

「……正解。もし不正解の方を選ぶ・または無回答だったら、君達にどのような影響が及んだか……」

 

 えっ?正解しないと私達は危なかったのですか?ま、まさかジーク君、積極的に問題に答えようとしたのはもしものことを予想して……?

 

「問題。爆裂魔法『エクスプローション』の習得に必要なスキルポイントは40ポイントである。〇か? ×か?」

 

 ま、また問題を出す気ですか⁉︎しかもそれは微妙に難しい問題じゃないですか!たしかに『エクスプローション』は覚えるためのスキルポイントが多いというのは知っていますが、40ポイントなのか30ポイントなのかが分かりません……ジーク君も微妙な様子を見せていますし……って、ウォズさんが挑発する様に開いた五本指を見せてきて、一本一本指を折っていっていますよ⁉︎こ、ここは私が答えないと……ッ!

 

「ば……×ッ!と、見せかけて〇ッ!」

 

 ブブー。

 

「答えを変えちゃったね?正解は×、30スキルポイントを必要とする」

「………/(^o^)\」

 

 ウォズさんの左肩が開き、×印が現れた瞬間……突如として黒雲が生まれ、その直後に黒雲から雷が発生してそれが私の頭上に落ちました。

 

「アガガガガガガガガガガガガッ⁉︎」

 

 痛い痛い痛い痛い痺れる痺れる痺れる痺れるッ!頭から足元まで雷は駆け抜き、私の体を白く発光させました。こ、これって、ギャグ漫画とかでいう電撃を受けると骨が見えちゃうというアレでは……ッ⁉︎

 

「ッ!ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 や、やっと収まりましたか……あ、私の体から焦げや煙がプスプスと……冒険者になって鍛えていなかったら、今の一撃で即死ですね……というか……

 

「ジーク君……」

「な、なんだ……?」

「……私の骨、見ました?」

「いや、見てない。何も見てない」

 

 必死に否定していますね……でも、その反応は明らかに怪しいですよ?本当は見てしまったんじゃないですか?……なんか、見せてはいけないもの見せてすみませんでした。

 

Tsuesugi!

 

 突然、ウォズさんは鎌の入力装置のボタンを指先で触れました。その瞬間、刃の部分が円形部分に折り畳まれ、『カマ』の文字は『ツエ』という文字に代わり、鉤状の刀身が先端となりました。

 ……さっきからなんであんなに変形自在なのですかあの武器は。私達も1つはほしいですよ本当に。

 

「問題」

「またですか……」

 

 いけませんね欲を出していては。闘いに集中しないと。

 

「君達は私に攻撃を当てることが出来る。〇か? ×か?」

「……今度は運も含まれるか。なら……ッ!」

 

 するとジーク君が駆けていきました。5秒以内に攻撃を当てる……中々難しい条件ですが、こちらは2人で戦っている。ならば、私は……

 

「『チェーンバインド』!」

 

 ジーク君の攻撃が当たるようにカバーするのみ!私の呼応によって地面から突き出た鎖がウォズさんの体を縛りつけ、身動きが取れない状態にさせる。この鎖は強固なので、そう簡単に外れたり壊れたりはしません!

 

「ほぉ……?」

「答えは……」

 

 そして、ジーク君がウォズさんに向かって飛び上がり……

 

「〇だッ!」

 

 『幻想大剣(バルムンク)』を振り翳した。よし、まだ時間もある!これで……

 

 ガキンッ

 

「なっ⁉︎」

「えっ⁉︎」

 

 嘘……ッ⁉︎()()()()()()()()()()()()()()()()……⁉︎

 

「いい判断だった。だが残念……」

 

 ブブー。

 

「×だ」

「………ッ!」

 

 しまったッ⁉︎今のジーク君はガラ空き状態になっている……ッ!助けないとッ!

 

「『シールドバリア』!」

 

 本日5回目の『シールドバリア』。その防壁がジーク君を守り、黒雲が発生し、雷を落としてその防壁を破壊しました。

 

「か、間一髪だった……助かったよ、ジャンヌ……」

「いえ……ハッ⁉︎」

 

 しまった⁉︎『シールドバリア』の発動に集中力がいってしまい、ウォズさんを縛っていた鎖が緩くなって……!

 

「これで、終わりかな?」

 

 ジーク君が『幻想大剣(バルムンク)』の柄を盾代わりとしてウォズさんに向けている中、彼は杖の入力装置にある『カメン』と描かれた文字を指で触れる。

 

Finish Time!

 

 必殺を告げる音声の後、入力装置を指でスワイプするウォズさん。これは、忍者になった時みたいに危険な香りが……

 

Fushigi Magic!

 

 杖の先端から無数に飛び出すクエスチョンマーク型のエネルギー。そしてウォズさんが杖を振るうことで、宙に浮かぶクエスチョンマーク達が前方へと移動し、柄を向けていたジーク君の『幻想大剣(バルムンク)』に直撃した瞬間、クエスチョンマーク達は輝きだし……

 

 

 

「無茶ではあるが、やむを得ないか……ッ!『カースド・シャイニングソード』ッ!」

「むっ⁉︎」

 

 ジーク君が『幻想大剣(バルムンク)』に眩く強い光を宿したのと同時に、ジーク君とウォズさんを巻き込む形で大爆発を起こしました。

 

「うぁあッ!」

「くっ!」

「きゃあッ!」

 

 爆風で飛ばされる私達。私はなんとか空中で体勢を立て直し、膝をつきながらも地面に足から着地しました。

 

「ッ!」

 

 ジーク君も空中での原理に逆らって体勢を立て直し、『幻想大剣(バルムンク)』を地面に突き刺して衝撃を受け切りましたが、爆発を受けた時と地面に着地した時の衝撃を受けきれることが出来なかったのか、思わず倒れ伏せてしまいました。

 ウォズさんはジーク君と似た形で、杖を縦に構えてそれを受けたみたいですが、威力を押し殺すことが出来ず、ウォズは足底で地面を削りながら数メートルほど移動させられていました。

 

「くっ、無茶しすぎたか……ッ!」

「………なるほど、結構やるみたいだ」

 

 今度は赤い瞳をした金色の鋼鉄(くろがね)の仮面が描かれたウォッチを……まだ他にも持ってたのですか。

 

Kikai! Action! Touei!

 

 クイズ番組関連の力を持ったウォッチを外し、今度は機械の力を持つウォッチをドライバーへ投影させるウォズさん。

 

Future Time! Dekai! Hakai! Goukai!

 

 『クイズ』の文字が外され、金色の光が新しい力を具現化させてきました。

 

Futuring Kikai! Kikai!

 

 ウォズさんの周囲に金色の光が当てられ、その光が物質を形作り、メタリックな金色のパーツと既存のパーツが置き換えられました。頭部にはスパナ型のアンテナ。両肩にはスパナとレンチの意匠が施された厚みのある両肩の装甲。胸部装甲はシリンダーなどの機械が付いた物へと変わり、『キカイ』の文字が顔に嵌め込まれました。

 

 そしてウォズさんはすぐさまベルトのハンドルを引き、再び前に倒しました。あの仕草、また必殺技ですか?こ、今度は何を……

 

Beyond The Time! Full Metal Break!

 

 ウォズさんのスパナ状のアンテナから大量のスパナ型のエネルギーが発生し、天文台のパラボナアンテナ、周囲の木々、草花と同化しました。えっ、何この怪奇現象?すると、パラボナアンテナはレーザー砲となり、木々からは葉っぱ型のカッターが射出され、草花からは種型の爆弾が飛び出てきました。有機物、無機物問わず兵器へと改造するなんて……ボス顔負けですよ何ですかそのチート⁉︎ってちょ、こっちに向かって……ッ⁉︎

 

 その瞬間、私は咄嗟に()()()()()を詠唱し始めました。

 

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ───!」

 

 その詠唱と共に、旗を掲げた私を中心に神々しい光が溢れ───

 

 

 

 

 

我が神はここにありて(リュミノジデエテルネッル)───!」

 

 

 

 

 

 その光は大柱となって私を包み込み、レーザー砲・カッター・爆弾を弾き、大空で爆破させました。あ、あの時の固有スキルがまた上手くいった……!って、慢心している場合ではありませんね。次に彼がどんな行動をするのか、警戒しないと……!

 

「………」

 

 しかし、次の彼の行動が私達の想像を遥かに空回りさせました。

 

 ウォズさんはドライバーを装填していたウォッチを外し、光に包まれると……元の姿へと戻ってしまいました。

 

「「………えっ?」」

「実にいいものを見せてもらった。君達の勇気も賞して、降参だ」

 

 はい?それって降参って意味でしょうか?いやでも、悔しながら私達、貴方を追い詰めた感じを出していませんが……

 

「実は君達の闘いには目を見張る者がいてね、なんでも君達はアクセルの街の切り札とも呼ばれていたミツルギ君達のパーティーや『素晴らしき青空の会』と共に魔王軍幹部・ベルディアを倒したらしいじゃないか」

「あ、噂にはなっていたんですか……」

「幹部を倒したとなるとそりゃあ噂されるさ」

 

 えっと……つまりウォズさんは、どこからか流れ込んでいた私達の噂を嗅ぎつけて私達に勝負を挑んできた、と……

 

「さてと……これは『テレポート水晶』を賭けた対決だからね、約束は守らなければ」

 

 えっ?あぁ、そういえばこの闘い、『テレポート水晶』をゲットするための勝負でしたよね。すっかり忘れていました。まぁ、私達は乗り気ではありませんでしたが……

 

 

 

 

 

 

 しばらくして『ウィズ魔道具店』に戻ってきた私達は、早速ウォズさんから『テレポート水晶』を受け取りました。

 

「すみません、高値で買ったこれを私達が無償で頂いて……」

「2つ買おうとしたのは予備のためにと買った物だから構わないさ。それに、金ならまたいくらでも貯められる。私()なら尚更ね」

 

 な、なんか、自信満々にいくらでも無駄使いしても大丈夫だと言っているみたいでムカつく気がするのですが、気のせいでしょうか……?

 

「ウォズさん……もしかして、難易度の高いクエストをいくつもクリアしていらっしゃるのですか?初耳です……」

「そういえば店主には稼ぎの経緯を話していなかったね。『テレポート水晶』を2つも買ったのだから当然だよ。ま、私はただの付き添いでだがね。実質的に稼いでいるのは、私が仕える1人の男性……私が忠誠を誓っている者の1人なのだ」

 

 付き添い?忠誠を誓っている?何故でしょう、何故か彼の言っている意味が分からなく感じます……

 

「さて、パーティーを待たせていると思うので私は失礼するよ」

「あ、ありがとうございました!」

 

 ウォズさんはそのまま手を振りながら去って行きました。アークウィザードどころか冒険者と無縁な物を使っていたあの人、結局なんだったのでしょうか……?

 

「あの、体動かしたばっかりで申し訳ないのですが……」

「「ん?」」

 

 ウォズさんの事で色々と考えようとしたのですが、ウィズさんに呼ばれたので中止しました。やっぱりウィズさんとウォズさん、名前が紛らわしいですね……

 

「考え直したのですが、もうちょっとマシな魔道具を作りたいなとは思ったのですが、皆さんが模擬戦?している中でも中々思い浮かばなくて……」

「「………手伝います」」

 

 この後、私達はウィズさんのために新商品のアイデアを次々と出すことにしました。これで少しはマシになるといいのですがね……

 

 ……また、ウィズさんに昼ご飯を持っていきましょうか。




どんな終わり方しているんだろう……(自問)
そして現在、話の続きが思い浮かばなくてある意味遅延状態です誰か話のネタ頂戴ワイはできれば失踪したくないんや……(ひっつき泣き)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。