メンヘラ男に転生 (sesamer)
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第一日目 赤牛と転生

 
 男は生まれて間もなく、自分の人生を分かった気になっていた。
 自分は前世と同じように生き、死んでいくのだろうと。
 だが、この世界はそのような甘いものではなかった。
 そして男は絶望した。



 

 死んで異世界に転生出来ます! それもあなたの好きな作品です! と言われたかどうかは覚えていない。

 だか実際に前世の知識や経験があり、その前世の自分が好きなアニメの世界にいるとなると、僕は異世界転生をしたんだろうと推測できる。

 しかしながら今の僕は第二の人生を楽しもう、とかハーレムを目指そうというような楽観的な気持ちにはどうしてもなれない。

 それもこれも転生先に問題がありすぎた所為だ。

 

 僕の転生した作品は「RWBY」という海外アニメで、ルビィ、ワイス、ブレイク、ヤンの4人の少女がアカデミーに通い、互いに成長しながら悪党やグリムという化け物を退治するハンター(女性の場合はハントレス)を目指すという王道の物語である。

 大筋は王道ではあるが、質の高いアクションバトルと緻密な世界観、甘くないシナリオでとても面白かった。

 

 別に世界の方には問題があった訳じゃない。まぁ敵が強大だが、今すぐに世界が滅ぶ可能性があったり、常識が崩壊していたりはしない。(僕はエロゲ世界にts転生が1番やばいと思う)

 転生先のキャラがやばかったわけだが、ここは多くの異世界転生の先駆者様に倣って日記でも書いて振り返るとでもしよう。

 

 

 

1日目

 僕の名前はアダム・トーラス。容姿は赤髪碧眼で原作では仮面を着けているが、今の僕は顔の左半分が隠れるような大きな眼帯をしている。

 ファウナスという所謂亜人獣人のようなもので頭に赤い角を持っている。これは雄牛の特徴のひとつなので牛のファウナスになるのだろう。

 RWBY世界ではオーラという気のようなものと、センブランスという異能があり、アダムのセンブランスは受けた衝撃を攻撃に変換するものである。

 

 僕が強い訳ではないが、原作での彼の戦闘能力はトップクラスで、射出機構のある日本刀を使い居合を得意とする。ゲームのキャラに例えれば、スタイリッシュな鬼いちゃんで有名なバージルだろう。

 

 それだけだと厨二だけどかっこいいキャラじゃんと思われるかもしれないがこのキャラに転生したのがやばいのには理由がある。

 

 このキャラは原作では悪役として登場し、主人公の1人ブレイク(クール系黒髪猫耳娘)の元パートナーとして彼女のストーキングをし、挙げ句の果てには他の主人公であるヤン(活発金髪巨乳娘)の片腕を切断してしまうのだ。

 

 最終的にはトラウマを抱えながらも2人は互いを支えながら打ち倒し、アダムは死に、キマシタワーが建った、というのが彼の最後だ。

 

 全世界のヤンブレ派が感動し、僕も放送終了後は片腕を無くしたトラウマを乗り越え、かつてのパートナーを殺したブレイクの悲しみを慰めるヤンの姿に後方親父面をしていた。

 

 そうなのだ、このままだと僕はレズカップルの当て馬になって死ぬのだ。

 まぁそれはそれで名誉ある気もするが、当然僕は死にたくないし出来れば本編で起こる不幸を少しでも無くしたい。(ていうかヤンの片腕を斬るとかマジあり得ない)

 

 それなら悪役をしなければいいじゃん、と思うかもしれないし僕もそう思うが、そう簡単にいかない事情がある。

 

 アダムやその元パートナーであるブレイクだが、彼女や僕はファウナス(獣人)でありこの世界では僕らは差別対象なのだ。

 そして僕らは差別撤廃を求めてテロ活動を起こす反政府組織であるホワイトファングに所属しているのだ。当然このままでは主人公になれない。

 

 彼女は、パートナーである僕をはじめとするホワイトファング全体が人間に対して非道なテロ行為をするようになったことに反発し、ホワイトファングを抜けハンター養成校であるビーコンアカデミーに入学して、ルビィ達と出会うのだ。

 

 つまり僕が悪役にならないと、主人公の1人が不在。最悪知らないやつがチームRWBYに入ってしまう恐れがある。それだけはファンとしては認めたくないよなぁ。

 

 現在原作開始まで10年以上あり、僕はホワイトファングに所属(ほぼ内定という形だが)している。だが主導者ギラ・ベラドンナ(ブレイクの父さん)は平和的で抗争も少なく、人を殺すようなことは無い。

 ブレイクもまだ7歳なので僕も悪役になる必要は無い。

 

 悪役になる、それはどれだけの悪事をすればなれるのだろうか? 

他人の物を盗む? 街を破壊する? そして、人を殺す? 

 ...駄目だ。元日本人の僕にとって殺人は忌避すべきものだし、なによりそこまでいくとメンタル弱者の僕は狂ってしまうという自信がある。

 

 ...ちょっと書きすぎて疲れたな。今日はもう寝て、2日目はもっと明るい内容を書くことにしよう。

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 夢の中彼は仮面を着けた大人姿の自分と対峙していた。

 少年は男の声から必死に耳を背けていた。

 

「奴らを殺せ! オレを嬲り、奴隷のように扱い、母さんを殺したニンゲンを許すな!」

(駄目だ! 僕はそいつらと同じになってはいけない!)

 

「そうして逃げ続けるつもりか? 奴らの奴隷のままでいいのか!?」

(そんなわけじゃない! だけど平和的に解決出来るはずのものを壊しちゃいけない!)

 

「そんな手段でニンゲンは差別を止めるのか?」

 

 少年は反論することが出来なかった。

 

 

それに、と男は自分の仮面を取った。その下にあったものは大きな焼印だった。

少年の眼帯も共鳴するように外れ、同じ焼印を晒した。

 

「オマエのまわりのファウナスは認められてもオマエは奴隷のままだろうな」

「他のファウナスもオマエの素顔を見たら見下してくるんじゃないか?」

(違う! ギラさんもカーリーさんも優しく接してくれた! 僕の居場所も用意してくれた!)

 

「それで他の者には? その顔を見せられるのか? 見下されない自信がないのか?」

(...きっと分かってくれる...!)

 

「強がったところで無駄だ、オマエの憎しみも不安もオレと同じ。それを晴らすためには、奴らに復讐するしかない!」

 

そうしないとオマエは壊れるだろうな、という言葉を背後に僕は体を揺さぶられる感覚に目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

「アダム! 起きて!」

 

 目を覚ますと猫耳の天使がいた。あれ? 僕もう壊れたのか? はやくね

 

「アダム! まだ寝ぼけてるの? 早く起きて!」

「天使に起こしてもらえるなんて光栄だな」

「何言ってるの! 今日はアカデミーの入学式なんだから遅刻しちゃ駄目!」

 

 昨日はこのキャラに転生したことを悲観していたが、幼馴染の家に居候してロリ美少女に起こして貰えるのだから僕はやっぱり恵まれてるな。

 

「はいはい。了解しました。ブレイクお嬢様」

「む、アダムのくせに生意気」

 

 原作のクールなブレイクも良いが、このブレイクもすごい(語彙消失)

 ブレイクの両親であるギラさんもカーリーさんも良い人だし美男美女やし、常に眼帯をした厨二隠キャ少年には肩身が狭くなるねんな。

 

「アダムはアカデミーが楽しみか?」

「はい、早く色々な人と出会って一瞬に学んだり強くなりたいです、ギラさん」

「アダムは賢くて強いから、アカデミーでも1番取れるでしょう」

「カーリーさんの期待に応えるよう頑張ります」

 

 本当に彼らは優しくてファウナスのリーダーとしてだけでなく親としても忙しいのに、僕なんかを拾ってくれて多大なる感謝と恩を感じている。

 彼らの為にも今は余計なことを考えるべきじゃない。今はアカデミーの事に集中しよう。

 

 アカデミーといえばルビィ姉妹は同じような初等アカデミーで戦闘訓練だけではなく武器の製作も習ったらしい。

 RWBYといえば、ロマンがある(変態的ともいう)武器が多数登場するのも特徴の1つだ。

 

 例えば、ルビィの武器はボルトアクションライフルと大鎌の2つの機能を持ち、変形までするクレセントローズである。

 原作ではアダムはライフルのギミックを持った日本刀を持ってたし、僕もカッコいい武器が持てるのは楽しみだ。

 

「アダムだけアカデミーなんてずるい!」

「じゃあ帰ってきたら一緒に教科書でも読んで勉強しようか?」

「ホント!? アダム大好き!」

 

 

 

 

はっ! 意識が飛んでいた。 スタンド攻撃でも受けたか!? 

 

「そろそろ行かないと船に乗り遅れるわよ」

「あっやばい。御馳走様でした、カーリーさん」

「入学式の感想を聞かせてくれよ」

「了解です。行ってきます!」

 

 あぁ本当に平和で彼らは愛すべき人たちだ。これを壊すことは許されない。彼らは絶対に守ってみせる。

 その為にも絶対に憎悪に負けるわけにいかない。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 ギラ・ベラドンナとカーリー・ベラドンナは出て行ったアダムを見ながら話していた。

 

「本当に良かったのかしら、アダムをアカデミーに行かせるなんて」

「あいつは賢いし強い。だがホワイトファングに所属するには早い。独り立ちできるようになってからだと2人で決めただろう」

 

 ベラドンナ夫妻はホワイトファングの活動中に彼を保護した。彼は人間によって母を殺され、シュニーダストカンパニーによって奴隷のように扱われていた。

 当初は孤児院に預ける予定だったが、本人がホワイトファングに所属したい、と強く主張したことでそのままベラドンナ夫妻が面倒を見ることになったのであった。

 

「だけどアカデミーには人間も通っているのよ! 彼が人間を憎んでいるのは知っているでしょう」

「大丈夫だ。あいつは憎しみなんかに負ける男じゃない」

「もし彼が何かあったらすぐに連れ戻しますよ」

 

 当初は彼は人間に復讐するため、ホワイトファングに入りたいのではないかと思っていた。その為、彼がホワイトファングに入り、その復讐心を育てることを2人は反対していた。

 

 しかし、彼は憎しみは争いの連鎖を引き起こすことを理解していて、ファウナスと人との共存のために彼は自分を抑えることも覚悟していた。

 その想いに2人は心を動かされ、アダムの義理の親となり彼をホワイトファングの一員として迎えるのだった。

 

 そして幼い頃からホワイトファングにいることでアダムの価値観が歪み、憎悪に囚われてしまうことを恐れた2人によってヘイヴンのサンクタムアカデミーに通い、卒業後にホワイトファングに所属することを認めたのだった。

 

(アダムが人間と向き合い、その上で人間とファウナスの友好を願えるようだったら、彼を俺の後継者として次代のホワイトファングの指導者にするのも良いかもしれない)

 

 彼らはアダムの心の奥底にある憎悪の深さまでは推し量ることは出来なかった。

 

 

 

 

 彼が原作と呼ぶ世界では少年はベラドンナ夫妻に拾われることも、アカデミーに通うことも無かった。

 彼はただ人間の悪意によって人格を歪ませ、その憤怒のままに体制の変わったホワイトファングに所属し、人間を殺していった。

 そしてブレイクを失ったことで彼女に執着し、周囲に悪意を振り撒き、最後に彼女達によって殺された。

 

 だが、彼は悪役ではあったが決して彼1人が悪いわけではなかった。

 彼はただ子供だったのだ。他者の悪意から自分を守るため、同じように憎悪を持っただけの。

 もし、彼が子供ではなくて悪意に立ち向かうことが出来ればどうなるのか? 彼と同じように憎悪に歪むのか? それとも...

 

 

 

 

 

──-

 

アダムについて容姿とホワイトファング活動中以外の設定が無いので捏造マシマシです。というかファウナス全体の詳しい設定を作者は知らないので、この世界のファウナスは

・メナジェリーという大陸に住む(人間が押し込んだ)

・メナジェリーにはアカデミーなどの施設は無い

・他の大陸にも住んでいるが差別による被害を受けている

・シュニーダストカンパニー(ワイスの家の会社)によって奴隷として働かされている

ていう感じです。

 

次回からは更に捏造、オリキャラが多くなると思いますのでご了承を。



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第二日目 赤牛と驚愕

 
 少女は不幸だった。
 母は死に継母達からは苛められ、幼い彼女が歪むのは当然だった。
 


2日目

 今僕はメナジェリーからミストラル行きの連絡船に乗っている。

 この世界の技術力は現代と比べても遜色なく、飛行機や列車などの輸送機関からテレビやゲームをはじめとする娯楽品まで開発されている。

 

 しかし、国として認められてないメナジェリーは他国との国交を開いていないこともあり、飛行機も通ってないので入学式の前日から船旅をすることになっているのだ。

 船上では娯楽も無いし、今日はこの世界 レムナントについてまとめとこうかな。

 

 レムナントにはヴェイル、ミストラル、アトラスそしてヴァキュオの4つの国がある。

 それぞれに特色があるわけだが、ここは原作での舞台であるヴェイル、それと今から行くミストラルについて説明しようかな。

 ヴァキュオのことは全然知らないし、アトラスには嫌な思い出しかないし。

 

 その前にグリムについても簡単に説明しないといけない。グリムとは人間やその製作物を襲う化け物のことで、奴らは闇から湧き、人間の負の感情によって引き寄せられるのだ。

 その為に人間も自由に生きることが出来ず、結果として人々は守りの堅い場所に身を寄せ合い、4大国が生まれることとなった。

 

 その代表例がヴェイルで、あそこは周囲を海と山に囲まれているので攻められにくい。そこに人々が集まり、大きな国となった。

 かつては起きた4大国間戦争では、ヴェイルの王が暴れまくって戦争を終結させ、ハンターを育てるアカデミーを創ったんだとか言われている。

 まぁ如何にも主人公が住んでそうな平和な国というわけだ。

 

 ミストラルはヴェイルの西にある、レムナントでもっとも広く、多くの人が住む国だ。現代で言えばアジアの国々をイメージしてもらえば分かりやすいかな。

 

 裕福な人々は高度な文化や豪華な芸術の恩恵を受け、それを受けられない人々は裏市場に集まり、犯罪の温床となってる結構アブナイ国だ。

 アカデミーは実力主義なので、試験さえ受かれば生まれは問われない。だから僕も入学できるという話だ。

 

 そのせいでヘイヴンアカデミーの学長は黒幕と繋がっており、留学生としてその配下がビーコンにやってるなんていう地獄みたいなことが起きたわけだが。

 まぁサンクタムアカデミーは主要キャラの1人であるピュラも無事卒業してたし、黒幕と内通しているとは考えられない(考えたくないともいう)

 

 黒幕は誰なのか?という話だが、黒幕であるセイラムは強大ではあるものの、話にはあまり出てこない上にその配下も現時点では行動しているとは思えないので、原作開始まではあまり関係の無い話ではある。

 まぁセイラムの直接の配下であるシンダー、ティリアン、アーサーには気をつけていた方がいいだろう。

 

 あと1人いるって?あんな良い人そうなおじさんが悪いことできるわけないだろ!(名前を忘れた)

 

 

 

 

 

「っと、もうミストラルに着くけど思ったより早かったな。下船の準備でもしとこ」

 

 ミストラルについてはさっき日記に書いたとおりの知識しか持ってなかったので、実際に見たのは初めてだが今まで見た中では1番良い街だった。

 

(まぁ今まで見たのがメナジェリーにマントルだからっていう理由もあるんだがな)

 

 中国のような建築様式の建物が並び、街には屋台もある。人々からは絶望でも諦めでもなく、日々を頑張って生きているという充実感を感じた。

 

 眼帯をしたファウナスの少年という異質さから目を引いてはいるが、それはしょうがないし、実際アカデミーに入学したらもっと奇異の目で見られ...最悪苛めにも遭うかもしれない。

 まぁ苛められるのは悲しいが、その程度で諦めるほど僕の覚悟は軟弱ではない。寧ろ前世の経験、この身体の能力も合わせてアカデミーでもトップで卒業してやるぐらいの気持ちで臨むつもりだ。

 

 入学試験では残念ながらトップは取れなかったらしい。

 少なくとも勉強も戦闘訓練もベラドンナ夫妻やホワイトファングの皆さんに教えられて、そこら辺のハンター志願者には負けないとは自負していたが、上には上がいるということか。

 

 

 

 はっ!今僕は慢心していたのか?モブに負けるわけがないと?その慢心は身を滅ぼすぞアダム。

 この世界では慢心した強キャラがあっという間に負けることだってあるのだ。

 レムナントは誰にだって厳しい、これを忘れないように胸に刻んでおこう。

 

「そうこうしているうちにサンクタムに着いたみたいだな。サンクタムの場所も把握したし、お次は寮を探すか」

 

 寮はすぐ近くにあったので一瞬で見つかったし、これで準備すべきことは終わってしまった。

 ちなみに初等アカデミーでは原作においてそうであったように、フォーマンセルであることはないらしい。

 その理由は分からないが、恐らく個人の才能を磨くことを優先しているのだろう。フォーマンセルではないので、寮も4人制ではなく3人1室となっている。

 

 相方が気になるところだが実は既にアカデミーの方から連絡はされていて、男女1人ずつらしい。

 その理由はファウナス同士の部屋にしないと問題が起こる可能性があるというわけだ。原作ではファウナスでも関係なく同じ部屋に入れられるので、恐らく初級アカデミーの入学生では何か起こる不安がある為の措置なのかもしれない。

 

「青少年少女の3人を1つの部屋に入れるだと!? うらやまけしからん!」と、かつての友人の声が聞こえてくるが、原作でも男女2人ずつなんて部屋もあったのでセーフ(僕はアウトだと思います)

 

 まぁそんなこと気にしないぐらいにファウナスと人との関係は微妙なのだ。

 元々奴隷同然だったファウナスが、権利革命を求めて戦争を起こした。

 それによってメナジェリーに封じ込められることは回避したが、それで差別が全て消えるわけじゃない。

 

 まぁ表立って差別をする人は少なくなったが、消えたわけではなく議員の中でも未だファウナス差別を奨励する政策を主張する人もいる(ファウナスにも参政権が認められている以上、それで当選するわけないのに)

 

 さらに近年はシュニーダストカンパニーのこともある。

 主人公の1人であるワイス・シュニーの実家の企業で、ダストという便利エネルギーに関する事業を展開する会社なのだが、その社長が変わったことによってファウナスへの扱いが酷くなってしまったのだ。

 

 ダスト掘削の為の奴隷、人道に反する実験台など、公にはなってないが確実に後ろ暗いことをやっている。

 何故言い切れるかって?それは僕がその被害者であるからだ。

 眼帯の裏の焼印はその時つけられたもので、あの時のことを思い出すと今でも疼くし、しょっちゅう悪夢も見る。

 

 勿論本当に悪いのは、新しい社長であるワイスの父親だけでワイスは悪くない(寧ろ被害者)のだが、かつてはワイスのことが大好きだったオタクが好きじゃなくなったと考えると、どれだけ酷い目に遭ったか想像しやすいと思う。

 

 なんか嫌なことを考えてたらお腹が空いてきたな。

 

 今の時刻は夕方過ぎ、入学式前なので相部屋の人はいない。この見た目で初見の人と仲良く出来るわけないので、今日の夜ご飯は街を散策して屋台で食べようかな。

 

 

 

 

 昼のミストラルも活気があったが、夜のミストラルはもっと活気溢れているな。居酒屋と思われる店に入る大人達、お店の呼び子に声をかけられる女性など人がたくさんいる。

 パッと目に入った屋台にラーメンの店があったのでそこに入ることにした。店主は異質な客の姿に少し驚いたものの笑顔で歓迎してくれた。

 

 寮生活1日目で屋台は贅沢な気がしないでもないが、お金はたくさん貰ったので(ベラドンナ夫妻には感謝だ)多少は贅沢しても大丈夫だと思う。

 

 ベラドンナ夫妻はファウナス全体のリーダーなのでかなりのお金持ちなのだ。僕がアカデミーに通えるのも彼らの力あってこそだし、卒業したら恩を返さないとね。

 その為にもサンクタムでは頑張るぞい。

 

 美味しかったラーメンによって明日へのやる気も補充され、満足した気分で寮まで戻っていると、大きな荷物を持った少女がチャラ男にナンパされているのが見えた。

 

「ヘイお嬢ちゃんその荷物重そうだね。お兄さんが持ってあげようか」

「必要ない」

 

 少女の思いの外強い語気にびっくりした男はそれでもしつこく声をかける。

 ちなみに僕も少しびっくりした。(どうでもいい)

 

「別に取って食おうなんて考えてないけど、ただお兄さんは可愛い子の助けになりたいだけだよ?」

「・・・」

「ちょっーとお礼してくれるなら喜んでやるのになぁ」

 

 困ってそうだけどどうしようかな。注意すべきなんだろうけど、寧ろそれもナンパと思われて迷惑なのでは?(隠キャ特有の思考)

 いや僕も立派なハンターになろうとしてるんだし(してない)、ここは助けなきゃ(使命感)

 

「なぁそのナンパ無駄だから諦めた方がいいぞ?」

「はぁ?なんだぁテメェ?」

「俺もいちハンター志望としては困っている人は助けないといけないんでね。それとも今ここで身体で理解しないと分からないのか?」

 

 そう言って構えると露骨に男は動揺した。

 背は低いものの、ファウナスと分かる角と顔の眼帯に威圧されたのだろう。男は言い訳しながら帰って行った。

 残った少女に話しかけるべきか迷ったが、これも立派なハンターになる為の修行だと思って話しかける。

 

「なんか怪我ありませんか?」

「逆に何故貴様は私が怪我をしていると思ったのだ?」

 

 ぐはっ! この少女なんか刺々しい!

 

「すみません。なんて声をかけようか分かんなくて」

「随分と頼りないハンター志望だな」

「まぁ明日サンクタムに入学だし、ギリギリハンター志望じゃないかもですね」

 

 ふぇぇ初対面なのに高圧的すぎるよぉ。(泣)

 この少女なんか怖いし早めに切り上げよう。

 

「そんな訳で明日も早いし僕はこれで」

「ハンター志望はか弱い女性が持っている荷物を持ちたくはならないのか?」

「え?」

 

 というわけで少女の荷物持ちをすることになってしまった。え?コミュ力が低すぎるって?寧ろ考えてみて欲しい。隠キャ童貞オタクくんが女の子に声をかけてコミュ力を発揮できるわけないだろ!?

 

 ごめんなさい全世界のアダムファンの皆さん。ごめんなさい原作のアダムさん。僕はこれからも情けない姿を見せることをお許しください!

 

 まぁ原作でもアダムは情けないとこあるしどっこいどっこいよ(全世界のファンに喧嘩を売るスタイル)

 

「ここまで来ればあとは自分で運んでやろう」

「別に最後まで持つけど」

「お前の耳は節穴か?」

「すんませんでした」

 

 最速の謝罪を見せた僕の姿に少女は初めて笑顔を見せた。可愛い子を笑顔にさせた僕はひょっとしたらモテる可能性が微粒子レベルで存在する...?

 笑顔じゃなくて嘲笑だろというツッコミはスルーで。

 

「まぁそんなに名残惜しくしなくとも明日以降は毎日私と会えるだろう」

「え?」

「入学式ではよろしくな」

 

そう言って彼女は消えて行った。

 

 

 

 え?あの子もアカデミー生なの?

 その問いに答える者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 入学式当日、昨日のせいで遅刻...なんてことは無く(ファウナスになってからは寝坊したことなんて無い!)僕は余裕を持って会場に着いた。

 昨日の少女に妙な既視感を感じ、探したものの見つけることは出来なかった。

 

 あの黒髪の子...どっかで見たことあるような気がする。

 うーんどこだったっけな? 原作?もしくは2次創作とかか?

 

「それではサンクタムアカデミーの入学式を始めます。まずは校長の言葉から」

 

 入学式が始まっても彼女は姿を見せず、僕は安心したような気になるような複雑な気分になるのであった。

 だけど、本当に彼女は何者なんだったんだ?これでモブキャラだったら流石に怒るぞ。

 

「次に新入生代表より挨拶を」

 

 新入生代表ということはこの人が試験のトップを取った人...どういう人なんだろう?と思っていたら舞台の裏から出てきた人はなんと昨日の少女だった。

 

 えー!?なんていうテンプレだよ!もし僕がブレイクみたいな猫耳や、サンみたいな尻尾を持ってたらジブリ映画みたいにさかだって面白いことになってたところだった。

 

 しかし僕はそんなこと鼻で笑える衝撃を彼女から受けるのだった。

 

「今日からサンクタムアカデミーにおいて学べることを誇りに思い、ハンターに向けて精一杯頑張ることを誓います。新入生代表シンダー・エイラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁセイラムの直接の配下であるシンダー、ティリアン、アーサーには気をつけていた方がいいだろう(ドヤァ

 

 なんでシンダーがここにいるんだよぉぉぉおおお!?

 

 僕の心からの叫びに目が合った壇上の彼女はこっちに笑顔を返した。

 

 

 

 

ーーー

 

というわけで恐らくこの小説最大のオリ設定をシンダー周りにぶち込みます。

なので早くルビィを出せよ!とか思った方は作者に言ってくださると早めにサンクタム編も終わるかもしれません。(早くルビィが出てくるとは言ってない)

 

アダムくんは見た目こそ原作相応の近寄りがたい雰囲気ですが、中身はコミュ障でかっこいいとは対極にあるので、シンダーのような自我の強い女性とは相性が悪いです。

 

彼が原作で1番好きなのはヤンですが(転生してからは当然ブレイク)多分相性は悪いでしょう。

 



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第三日目 赤牛と入学


 RWBYの世界観ですが、world of remnantという解説回が不定期で配信されてます。
 昨日それが更新されてて、独自設定と乖離するのでは?とヒヤヒヤしながら観てましたが、大丈夫だったので安心しました。
 というわけで第3話です。



 

 あまりに驚きすぎてで逆に冷静になった気がするので、ここはシンダーについてまとめとこう。

 

 シンダーはRWBY第1期から第3期までの黒幕を務めたキャラだ。その性格は不遜にして狡猾。

 セイラムの部下である彼女はアカデミーに封印されたレリックを狙い、彼女によって第3期ではルビー達の友達のペニーとピュラが殺され、ビーコンアカデミーは崩壊、世界に混乱と恐怖が振り撒かれた(ペニーはアンドロイドなので後に復活したが)

 戦闘能力はとても高く、秋の乙女という超人を打倒した事からもその強さは窺える。

 

 秋の乙女は何なんだよと思った方も多いだろう。RWBYは第3期までは有名なのだが、第4期以降の知名度は様々な理由で少ない。

 季節の乙女に関する詳しい説明は4期にあったのだ。

 なので詳しく知らない人に説明させて貰うと、この世界にはレリックと呼ばれる特別なアイテムがあり、それの番人としてオズという1人の魔法使いが4人の女性を選び、彼女らに力を渡した。

 彼女らは4季節の乙女として代々その力を受け継ぎ、4大国のアカデミーに封印されたレリックを守っていた。(本編中の乙女の殆どが乙女とは言えない年齢なのは言ってはいけない)

 

 レムナントに存在する魔法使いはそのオズとセイラムの2人しか存在しない。

 何故なら彼らは旧時代の人間であり、旧時代の人間は神様に反乱し滅ぼされたからだ(なお元凶のセイラムだけは生かされる模様)

 

 じゃあセンブランスは何なんだよと言われると解説に困るが、少なくともダストは魔法文明による産物だと言われている。(石炭みたいに結晶化したのだろう)

 ちなみに魔法使いである2人だが、勿論今も生きている。セイラムは元々神様に不老不死の呪いを受けているし、オズは彼女を止めるため神様によって遣わされ、その時に肉体が死んでも魂を転生させられるようになった。

 

 この辺はマッチポンプじみているが、レムナントには神様が2柱いて彼らの仲が良くないためにそう感じられるのだろう。

 

 話が二転三転してしまったが、要約すると

・シンダーさん強い!

・レムナント奪われる!

・乙女の危機は世界の危機!

 

っていう感じである。

 

「というわけで今日の授業は無いので、皆さんは寮に戻り荷物の整理をして、ルームメイトと親交を深めて明日の授業の準備をしてください」

 

 ようやくショックが抜け出した頃には入学式はもちろん、初日のオリエンテーションも終わったところだった。

 先生にも言われたので早めに教室を抜けて寮に戻ろう。こっちを見てるシンダーさんが怖いし。

 

 実際のところシンダーが何故ここにいるのか?バックにはセイラムがいるのか?など、分からない事だらけな現状で接するのは危険だ。

 

 もう遅い気がするって?それは僕も思ってるところだ。だからこれは一時退却的なあれだ。一旦寮に戻って落ち着いて日記でも書いて落ち着こう(支離滅裂)

 

 

 

 

 ルームメイトはファウナスということもあり個性的ではあるものの、原作に登場するキャラではないのでとても安心した。これで更に原作キャラが登場したら僕はパンクしてたかもしれない。

 

「アダムはもう勉強するの?やっぱ成績優秀者ともなると勉強熱心なんだね」

「今は日記を書こうとしているだけだ、カラバ」

 

 カラバ・シルバは猫のファウナスでブレイクみたいな猫耳(色は灰色だが)を持った少年だ。拾ってくれたご主人に恩を返す為に一流のハンターを目指しているらしい。

 なんだかシンパシーを感じるとても人が良さそうな子だ。

 

「この日記、読めないんだけど」

「ハンナ、人の日記を勝手に覗くな」

 

 ハンナ・イーゲルは見たところファウナスらしい特徴は見えないが、ハリネズミのファウナスらしい。かなりのマイペースだと思われる。

 

「この言語、暗号か何かかしら? それにしては複雑で文法からして違う気がする。所々には明らかに異なる種類の言語が使用されているし...」

 

 彼女もまた成績上位者の1人であり、日本語で書かれた日記から一目でその特徴に気付くレベルで賢いみたいだ。言語学者かなにか?

 

「サンクタムは思ったより才能ある生徒が多いな」

「まぁ腐っても大陸最大の都市だし、特にファウナスは風当たり強いんだから成績良くないと舐められるもんね、カラバ」

「うぐっ」

 

 ハンナがカラバの方を見て言った。コイツ結構イイ性格してんな。シンダー程ではないが。

 

「べっ、別に平均は超えてるもん! 寧ろ2人が凄すぎるだけだよ!」

「まぁこれからの頑張り次第で成績なんて変わる。カラバが頑張れば成績上位者にだってなれるさ」

「そうそう!アダムの言う通りだよ!」

「その言葉を自分で言えない時点でカラバはダメそうな気がするわ」

 

 ハンナのトゲのある言葉にカラバは撃沈した。

 あ、今のは言葉のトゲとハリネズミのトゲを掛けた高度なギャ

 

「おい、私から逃げるとは良い度胸をしているじゃないか」

 

 

 

 うわあぁぁ!ラスボスが来てしまったぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ハンナの客じゃないか?」

「アダムのでしょ(無慈悲)」

「ふん、貴様はアダムというのか。今の無礼は忘れてやろう」

 

 当然のようにシンダーは部屋に入って来た。僕...死ぬのか...?

 

「紹介が遅れてすまない。俺はアダム・トーラスだ」

「カラバ・シルバって言います。よろしくね」

「ハンナ・イーゲルよ」

「私はシンダー・エイラだ」

 

 あれ?そういえばシンダーの名字ってフォールじゃなかったか? それともフォールは偽名だったのかな。

 

「それでアダムとシンダーは知り合いなの?」

「昨日コイツが話しかけてきたのだ。あれはナンパか?私にナンパしにきたのか?」

「俺はナンパ男から君を助けた方だよ!」

 

 こ...コイツ明らかにこちらをおちょくってきてる...!

 

「アダムって思ったより良い人なんだね」

「貴方はさっきフォローして貰ったのをもう忘れたのかしら?」

 

 シンダーもハンナも毒が強すぎる(焦燥) やはりRWBY世界では女子が強くて男子はクソザコになる運命なのか!?

 ここはなんとかして話の主導権を握らないと...!

 

「それで?ここに来た用事はそれだけじゃないんだろう?」

「用事もなにも、挨拶以外に来る理由などないが?」

 

 原作でのシンダーは計画の上で無駄な行動や任務の失敗、遅延は許さない非情な人物だった。そんな彼女がやって来るということは何かがあるに違いない(疑心暗鬼)

 

「き...昨日の礼はまだ貰ってないぞ?」

「あぁ、あの時は荷物運び御苦労だった。お蔭で楽でき...助かったよ」

「今楽出来たと言わなかったか?」

 

 それにナンパ男から助けられたことは完全に忘れてやがる...!

 

「それじゃあ挨拶は終わっただろう。また明日な」

「...まぁ明日も早いし、今日はこれぐらいで勘弁してやろう」

 

 そう言ってシンダーは帰って行った。なんか授業も無いのに一気に疲れてしまった。

 

「なんというか個性的な人だったね」

「思ったより面白いわね、貴方」

「...お褒めに預かり光栄だよ」

 

 さっきまでは警戒していたが、実際に話してみた感じ今のシンダーは原作並みに傲慢さは溢れてるが、悪人という感じはしなかった。

 それに彼女が悪人でないと思う理由もある。

 

 原作の彼女は留学生と偽り、ビーコンアカデミーに潜入するのだが(そのためシンダーさんじゅうななさい、とか散々な渾名でファンから呼ばれる)その時の彼女はむしろ丁寧で礼儀正しい感じだった。

 それに比べれば、今の彼女は大分素の状態な感じがする。

 

 それにセイラムと内通していると仮定したとすると、サンクタムに来ている理由が分からないのだ。

 ミストラルにおいてレリックを封印されているのはヘイヴンアカデミーだし、恐らくそれはセイラムも予測できるはず。

 そういう意味でセイラムの配下がサンクタムに通う意味はないと言い切れる。

 

 まぁ100%信頼するわけではないが、普通に喋っても問題は無いだろう。

 もしセイラムと繋がっていたとしても、僕が彼女を知っている事がバレなければ何の問題も無い...きっと、多分、恐らく、メイビー。

 

 よくよく考えてみれば、この世界においての1番のイレギュラーは僕自身なのだ。僕はこの世界の真実にかなり近いし、ある程度の未来は予測できる。

 そう考えれば、今のシンダーにある程度の警戒心は抱いても恐れる必要までは無いはずだ。

 

 今日は疲れたし日記はお休みしよう。3日目に休むなんて典型的な三日坊主じゃん、っていうツッコミが聴こえてくるが逆に考えて欲しい。学校も仕事も休みがあるんだから日記にも休みがあってもいいだろう?

 

 はい、明日からは毎日しっかりやります。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 私はハンターになりたいとは思ってアカデミーに入学したわけではなかった。

 灰かぶりの女と家族に疎まれ、こき使われた私はただ逃げ場が欲しかった。

 アカデミーに行きたいと言った時には、血の繋がらない母からは帰って来なくていいと大いに絶賛され、グリムに殺されて死んじゃえと姉どもは言った。

 唯一血の繋がる父も虐めに遭う私を傍観するばかりで、そこで彼らは私にとって障害でしかないことに今更になって気付いた。

 

 そんな時に現れたのがあの男だった。最初はその辺のお人好しだと思い、そんな奴等が大嫌いな私は家族が私にするような仕打ちをした。

 そうすればヒーロー気取りの偽善の仮面は崩れ、怒って本性を表すだろうと思った。

 だがアイツは底抜けにお人好しで、そして見た目よりも愉快な奴だった。

 

 私はハンターやヒーローのことが大嫌いだ。奴等は偽善的な言葉や平和主義的な言葉を並べ、すぐ近くにある悲劇に気づく努力をしない。

 私がどれだけ助けを求めても、奴等が助けに来ることはなかった。

 

 だけど、もし、助けを求めたのがアダムだったらどうなっていたんだろう?

 昨日のように助けに来たんだろうか?

 

 

 

 ...何を馬鹿考えをしているんだ、私らしくもない。終わったことを考えるなんて無駄だ。

 なにより昨日会ったばかりの人間に期待するなんて、私の嫌いな人間どもとなにも変わらないじゃないか。

 

 大事なことはただ一つ。今のアカデミーの学生という弱い立場から私がどうやって這い上がり、自分の居場所を手に入れるかだけだ。

 そのためには何だって利用してやる、魔法だろうがセンブランスだろうが、もしくは...友人だろうが、私は自分のためなら喜んで差し出してやる。

 

 まぁ、暫くは学校生活に集中した方がいいかもしれない。幸い寮の奴等も先生どももお人好しばっかりで私の本性に気付いていない。

 アダム達の前では今更猫を被ることはしなかったが、どうせアイツ等が指摘したところでファウナスの言うことだ。私の成績に嫉妬して悪評を流したとでも思われるだけだ。

 

 まぁアイツ等は成績も良かったし恐らく戦闘能力もあるのだろう、利用価値があるから仲良くするのも良いかもしれない。

 

 

 ちょっと威圧的に接した所為でアダムには怯えられている気がする。

 明日からは少し優しくしてみるか。

 

 

 

 

☆☆☆

 

「なんか身体の震えが止まんないんですけど」

「アダムはメナジェリーから来たんでしょ?もしかしたらもうホームシックになったのかもね」

「まぁメナジェリーには人間なんて居ないし、あそこまで落ち着ける場所は無いものね」

 

 この震えはホームシックではないと思うが、そう言われるとメナジェリーに帰りたくなってきた。というかとてもブレイクに会いたいです(シスコン並感)

 この寂しさはカラバの猫耳を触ることで癒されるしかない! だけど会ったばかりの人が触って来るのは気持ち悪いと思われるし、なんか話の流れから触れないだろうか?(コミュ障チャレンジ)

 

「2人はメナジェリーに居たことが?」

「僕は聞いたことしかないなぁ」

「私は一時期は住んでたわ。だけど窮屈になって家族で引っ越したの」

 

 ハンナは自由な子だし、イメージがしやすいな。カラバは拾われる前まで苦労してきたんだろう。

 

「俺もカラバみたいに拾われてメナジェリーに住むようになった」

「そうなの!? なんか親近感わくね!」

「へー、じゃあその前はどこに居たのかしら?」

 

 この流れの時点でコミュニケーション失敗した感がするが、言わないのは不自然だし...まぁ自信を持っていえば大丈夫な気がする!

 

「マントルだ」

「あっ(察し)」

「貴方も苦労してきたのね」

 

 深い同情をされた上に会話も終わってしまった。やはり失敗か...(コミュ障チャレンジ)

 

「今はギラさん達に拾われて幸せだから気にしてはいない」

「えっ!ギラさんって?」

「ホワイトファング指導者にしてメナジェリー代表のギラ・ベラドンナのことかしら」

 

 あー、さらに墓穴を掘ったかもしれない。いや、遅かれ早かれバレるのは分かっていたし、今のホワイトファングは文字通り白(平和)の牙。

 別にバラしても問題ない気がする。ここにいるのはファウナスオンリーだし。

 

「...そうだ。俺もここを卒業したらファングに所属するつもりだ」

「へー、そのために力をつけてるんだね!」

「貴方がファングに所属する理由は何かしら?」

 

 カラバは俺のことを疑わない純朴少年だが、ハンナは僕がテロリストとして危険な人物じゃないかと疑っているのだろう。

 ハンナの気持ちは当然だ。それが分かるからこそ、ファングの構成員であるブレイクとも和解したチームRWBYの友情が凄いと思えるのだから。

 

「俺がファングに入りたいと思った理由は、ギラさん達に貰った恩を返し、彼らのような優しいファウナスが人と仲良くする光景を見たいからだ」

 

 そうだ彼らのような方がファウナスだから、という理由で人々から追い出されるのを、僕ははいそうですかと認めたくない。

 そしてファウナスと人間の友好に暴力は必要無いのだ。必要なのは対話、そして彼らの意思を継ぐ若者だ。

 

「今もファウナスは差別されている。だが、ファウナスの中にも素晴らしい者がいると分かれば、人々の見る目は少しずつ変わって来るだろう。そうなる上で暴力は1番やってはいけないことだ。憎しみの連鎖は僕らで終わらせないといけない」

 

 突然熱く喋った僕に2人は驚いていた。というかこれはドン引きされたのでは?

 拝啓尊敬するベラドンナ夫妻と愛するブレイクへ、僕の心は折れそうです。

 

「感動したよ!僕もホワイトファングに入りたくなってきちゃった!」

「私も貴方のこと見直したわ。疑ってごめんなさい」

 

 あぁ、良かったぁ。引かれてはいないみたいだ。流石に同族からも引かれてたら闇堕ちしてたかもしれない。

 

「それは良いんだが、これは俺達だけの秘密にしてくれないか?」

「まぁ他の人は貴方の事をを信じそうにないものね」

「うん!いいよ!」

 

 あぁ”〜2人の優しさが身にしみるわ〜。

 これは今日は安心して寝れるだろう。

 

「恩に着るよ。じゃあ明日もあるし寝ようか」

「うんおやすみ」

「おやすみなさい:

 

 こうして入学初日はなんだかんだ充実した1日になったのであった。

 あ、猫耳を触るのを忘れてた。まぁ次思い出した時に頼むとするか。

 

 

 

 





 アダムはホワイトファングのことになると早口になります。
だけどブレイクのことになるとその比ではなくなります。

 シンダーに関してですが2つ話の構成を考えているので、途中でファングルートとシンダールートのルート分岐があるかもしれません。
 ちなみにアダムは恋愛クソ雑魚ナメクジなので、どっちのルートになっても恋愛なんてものはありません(無慈悲)


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第四日目 赤牛と授業

 
 今回の前部分は解説回です。
 world of remnantをご視聴の方は既にご存知のものであると思います。



4日目

 今日からサンクタムの授業は始まった。

 授業は普通の学校と同じような数学や歴史がある一方、科学のかわりにダスト学やハンター学など僕には聞き覚えの無い授業もあった。

 さらにこれにハンターになる為の訓練もある。僕の前世の経験はあまり役に立たないだろう。

 

 まぁ今は歴史の授業の最中。レムナントの歴史は、大雑把ではあるが8割ぐらいは覚えているので、ノートを取るフリをして日記を書いているのだ。

 

「今のレムナントは人々が協力してグリムに対抗しているが、昔はそうであったわけではない。ヴェイル、ミストラル、マントル、ヴァキュオの4国が生まれ今に至るまでに一度、大規模な戦争があった」

 

「これが大戦と呼ばれる、レムナントの記録にある限り最も大きな戦争だ。そしてその原因は4大国の複雑な思惑にあった」

 

「元々安全な土地に根付いたヴェイルとヴァキュオとは違い、ミストラルとマントルは土地を征服、開拓して生まれた国だ。他国の支援が欲しい2国は同盟関係を結んだ」

 

「ミストラルは極寒のマントルでは手に入らない資源を提供、マントルはその進んだ技術をミストラルにもたらし、ミストラルはアニマ大陸の征服を完了した」

 

「だが、突然マントルは奇妙な法律を作った。それは芸術や自己表現を禁止するものだった。ではマントルがこの法律を作った理由が分かる人はいるか?」

「はい」

「ではアダム」

 

「グリムは人々の感情によって引き寄せられます。だからマントルは国民の感情を抑圧することで、グリムの脅威を減らそうとしたんだと思います」

「正解だ。マントルのこの法律は同盟関係にあるミストラルにも影響が及んだ」

 

「ミストラルはその時から優れた芸術の文化を持っていため、マントルの法律は国民には受け入れられなかった。そこでミストラルは法律の一部を受け入れる事を認めた」

 

 

 

 ここでは法律の一部を受け入れるとボカされた表現をしているが、実際のミストラルの所業は最低だと言っていいだろう。

 彼らは表向きには芸術を禁止し、裏では中央の権力者達が芸術を独占。ミストラルで元から根付いていた貧富の差はさらに広まった。

 ヴェイルやヴァキュオでは、そんなミストラルとマントルに反感を持つ者が多かった。既にこの時から戦争は避けられなかったかもしれない。

 

 

 

「ミストラルとマントルの同盟は続き、その勢いはヴェイルのあるサナス大陸にまで及んだ。そうして大戦は始まってしまった」

 

「ミストラルにはマントル、ヴェイルにはヴァキュオが味方し大戦は更に過激になった。グリムの侵攻も激しさを増し、人類は絶滅に向かっていた」

 

「その大戦はミストラル陣営の勝ちが予想されたが、勝ったのはヴェイルだった。ヴェイル側のダスト供給源であるヴァキュオのダスト鉱山が狙われた時、ヴェイルの王は自ら戦士として戦争に参加した。彼は敵を蹂躙し、その剣と笏によって多くの敵を葬った」

 

「...まぁ、歴史には多くの誇張がある。歴史家はミストラル側はヴァキュオの砂漠に慣れていなかったことが敗因である、と予想している」

 

「とにかく、ヴェイルは大戦に勝利した。世界はヴェイルによる支配を望んだが、王はこれを拒んだ」

 

「その代わりヴェイルの王は4大国が二度と互いに争いをしないように条約を締結、領土の分配や奴隷制の廃止、政府の再編をした」

 

「そして、最後には彼は各国にアカデミーを設立した。彼の信頼する部下によってアカデミーは運営されて人々は闇と闘う術を学び、今の平和な世の中となった」

 

 

 

 

 

 このように歴史に大きな影響を与えたヴェイルの王であるが、僕はオズか、彼に近い者がヴェイルの王ではないかと思っている。

 その一番の理由が彼の名前が伝わってないというメタ的な理由であるものの、彼の行動は一貫して平和主義的であることもそれに拍車をかける。

 

 本編を観ている人なら分かるかもしれないが、オズ(今代はオズピンという)は一見思慮深そうに見えるが、その行動は後に徹することが多く彼は人々の平和を疑っておらず、その中に脅威が迫っていることに気がつかなかった。

 

 それは彼の勝利条件がレリックを守ることにあることにもあったかもしれないが、彼の場当たり的な行動はヴェイルの王にも共通する。

 

 ヴェイルの王はミストラルがサナスに侵攻したときにも平和的な思想を崩さず、その土地をヴェイルとミストラルが共有することにこだわった。それが多くの国民から反対されたにも関わらずだ。

 

 結果的にその行動が身を結ぶことはなく、ヴェイルが滅ぼされる寸前に彼は動き、その力で戦争を終わらせた。

 僕の説ではミストラル陣営は不慣れな砂漠戦ではなく、オズを敵に回したのが敗因だと言える。

 

 そして戦争に勝利したオズは人々が二度と戦争を起こさず、グリムの脅威に立ち向かい、ついでに自分がレリックを封印する場所にする為にアカデミーを作った。

 そう考えると、アカデミーの地下深くにレリックがある理由としてしっくりくる。

 

 まぁそうなると四季の乙女に力を与えたタイミングが分からなくなるのだが、それはどうでもいいだろう。めっちゃ昔の話かもしれないし。

 

 

 そんな感じでオタク特有の考察を交えると歴史の授業はとても楽しく過ごせたが、次の授業は訓練。気合いを入れるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 RWBYの舞台であるビーコンやヘイヴンを中等部や高等部だとすると、サンクタムアカデミーは初等部...つまるところ小学校だと思えばいいだろう。

 ハンターの卵である生徒は、ここで戦いの基礎やハンターとしての心構えを学ぶ。次の授業は戦闘訓練だと聞いて少し不安だったが、最初の授業は基礎の基礎、オーラについて学ぶというものだったので安心した。

 

「オーラとは生命力のことであり魂の発露でもある。これは魂を持つ者なら誰にでも使え、ハンターの強さは自らの肉体、戦闘技術とオーラの力に因って決まると言っても過言ではない」

 

 だか、と先生は続ける。

 

「オーラを発現するためには訓練が必要であり、その一番の近道は瞑想だ。よってこの1週間の戦闘訓練は瞑想の時間とする」

 

「中には既にオーラを発現している者もいるだろう。その者は自由に過ごしても構わないが、瞑想は集中力の向上にも役立つということをアドバイスしておこう」

 

 素直に瞑想をしとけ、ということですね分かります。

 そんなわけで僕らは校庭の思い思いの場所で瞑想をすることになった。ちなみに今はハンナとガラバの3人で森に近い場所にいた。

 

「まぁ私はオーラは生まれた時から使えたんだけどね」

「生まれた時からって、そんなことがあるのか?」

「私のセンブランスはファウナスとしての能力を発揮するもの。だから生まれた時には既にセンブランスを持っていたらしいわ」

 

 そう言いながらハンナは自らの髪の毛を一本抜き、木に向かって投げた。髪の毛は木まで真っ直ぐ飛び、木に刺さった。あれは鬼太郎の髪の毛針...!

 

「カッコいいよ!ハンナ!既にセンブランスまで使えるなんて凄いね!アダム」

「そうだな...」

 

 僕も既にセンブランスまで使えるとは言いづらい...

 そんな感じでぐだぐだ瞑想をし始めてたらなんか3人の生徒がやって来た。(シンダーではないことに一安心)

 

「おいおい、ファウナスの皆さんは瞑想の意味も知らないのか?」

「...すまない。少しうるさかったかもしれないな」

 

 そう謝罪すると真ん中の男は調子に乗ったのか、

 

「あ?お前さっきの時間発表してた優等生くんかい?謝るんだったらどっか行ってくれない?ここ、俺たちが使うから君達がいると邪魔だわ」

「別に瞑想する分にはここはそこまで狭くないと思うが」

 

 よく見ると、左の男はサッカーボールを持っている。遊ぶ気だなコイツら。

 

「あぁ、お前達オーラも使えないのか。だったら親切な俺たちが目覚めさせないとなぁ?」

 

 

 真ん中の男はそう言うと、オーラを使ってこっちに殴りかかってきた。

 反射的にオーラを使ってガードしたが、それが気に食わないらしい。

 

「オーラが使える癖に瞑想してたなんて、やっぱ優等生くんともなると違うなぁ!」

「なんで攻撃するんだよ!アダムは何もしてないだろ!」

「はぁ?ファウナスを殴ってはいけないなんてルールあったっけ?」

 

 こっちには反撃の意志が感じられないからか、男の攻撃はさらにエスカレートしていく。

 男は別にそこまで強くないし、まともにやればこっちの勝ちは目に見えてる。

 だが、入学早々暴力沙汰なんて起こしたとすると、ファウナスの立場はもっと悪くなる。2人もそれが分かっているのか手を出してこない。

 

 そんなことを考えてると男が放った蹴りでガードごと吹っ飛ばされた。

 

「おいおい優等生くんは反撃はしないのかい?それとも喧嘩なんか怖くて出来ません〜ってか?」

「もうそろそろか」

「おい。ファウナスの癖に人間様を無視するのか?俺が教育してあげよう」

 

 

 

 そう言って男はアダムに殴りかかり、それは躱された。

 

「なっ!?消えた!?」

「この程度か?」

 

 アダムは男の後ろに回り込んでいて、男の首に手を当てていた。

 

「テメェいつの間に...!」

「これ以上の戦闘はお勧めしないが...続けるか?」

「くそっ!テメェら覚えてろよ!」

 

 男達は逃げ出し、森には平穏が戻ってきた。

 

「何だったの!?今の?」

「今の...間違いなくセンブランスね」

 

 

 ハンナの言う通り、僕はセンブランスを使った。前にも言ったが、僕のセンブランスは受けた衝撃を自らの力に変える。

 これはヤンのセンブランス、受けたダメージを力に変えるというものと似ているがその中身は大分違う。

 

 ヤンはダメージを受けることによって自身が強化されるので、それを活かす彼女の戦い方はダメージ覚悟で殴り合うというものだ。

 対する僕のセンブランスは、ダメージを受けずにガードしてもその力は僕のものとして扱える。そう聞くと上位互換に聞こえるがそういうわけではない。

 

 ヤンの強化は永続的なバフで僕のはあくまでそういう技だと考えれば分かりやすいかな?

 僕がセンブランスとして発揮できるものは受けた分だけで、一度使うと溜めた分は使われるし、どうしても発動にも時間が掛かってしまう。

 

 必然的に僕の戦い方は敵の攻撃をガードしたり受け流して力を溜め、強化した一撃でカウンターを狙うというものが一番良いのだろう(本編のアダムと同じ)

 

 さっきのは男の攻撃をガードし続けることでチャージし、それをスピードに変えることで男の背後に回った。

 

「え!? アダムもセンブランス使えるの?そうなると」

「オーラを発現していないのはガラバだけ...ということになるな」

「そんな〜」

 

 ガラバは崩れた。彼の活躍を見れるのは遠いだろう。

 

「そんなことしてる場合じゃないでしょ、私達より出来ないんだったらそれ以上に頑張るって昨日言ってたじゃない(アダムが言ったけど)」

「そうだった!今日の授業の内にオーラを使えるようになってやるぞー!」

 

 

 そう言ったガラバが瞑想に入った瞬間に授業終了の鐘が鳴ってしまった。

 ガラバはそのまま崩れた。現実はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだよな...

 

「うわーん!神様はなんで僕だけにこんな仕打ちを!」

「寮に戻ったら俺達も手伝ってやるから...」

「まぁ仕方ないわね」

「うう、ありがとう2人とも」

 

 そんな感じで立ち直ったガラバは驚く程の集中力を見せ、オーラを使えるようになったのだった。

 もしかしたらオーラの発現は幼少期の方が目覚めやすいのかもしれないなぁと、本編では苦戦していたジョーンと比べながらそう思ったのだった。

 

 まぁファウナス特有の差別に遭ったが、あれぐらいのちょっかいだったら可愛いものだ。

 平和な1日を日記にまとめ、明日の授業に備えて早めに眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は話す。

「アダムは危険です。あの歳にしてセンブランスを使いこなし、まともな教育機関の無いメナジェリー出身でありながら試験でもトップを取りました」

「彼は今は人間にも協調的な態度を見せていますが所詮ホワイトファング、人間に反旗を翻すのも時間の問題です。そうなれば彼はファウナスにとっての英雄になってしまうかもしれません。」

 

 それに対しては女の声が応える。

「だが、英雄を持つものはそれが崩れると脆い」

「それに...その男が抱えているものは間違いなく闇だ。その闇を刺激してしまえば間違いなくこちら側に都合の良い存在になってくれるだろう」

 

 その女の声に男は笑みを取り戻した。

 

「ベラドンナには感謝しないといけませんね。彼が望んで自分達の力を削ってくれるのだから」

「全ては私達のため、その犠牲となるがいい。若きファウナスの少年よ」

 

 

 





 前はRWBY見てたけど4期になってから見てないですって?
 まぁアクションが劣化したのは事実ですが、6期からの戦闘のクオリティは高いし、YouTubeやニコニコで日本語訳つきで観られるので是非見て下さい!
 ストーリーも終盤につき盛り上がって来たので満足していただけるかと...


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第五日目 赤牛と先輩

 今回は文章を書く上で初めてのことが多く、小説を書く人は凄いなぁと改めて尊敬の念を抱きました。
 ということで見難いかもしれませんが第5話です。



 

 アカデミーでは武器やその扱いについても学ぶ。

 ハンターにとって武器は必需品なのでそれは当然のことだと言えよう。

 

 オーラは防御にも攻撃にも使えるので、それを使えば直接グリムと殴り合うことも可能だ。しかしオーラとは実質的なHPであり、枯渇した状態では現実の人間と同じ耐久力となってしまう。

 よってハンターはオーラの消費には細心の注意を払い、オーラを使わない攻撃手段である武器を使うのだ。

 

 RWBYという作品は、登場人物が特殊な武器を使っていることが特徴の一つに挙げられる。何故わざわざ複雑な武器を、と思われる人もいるだろうがそれにも理由はある。

 

 グリムには沢山の種類がいて、陸海空全ての領域で出没する。そんなグリムに対抗するためには近接戦闘だけでなく遠距離にも攻撃出来る手段が必要、というわけだ。

 

 作中の武器は、使用者が自前で遠距離への攻撃手段を持っているケースを除き、殆どが銃火器としての機能も持ち合わせていた。

 ハンターとしては二つ以上の武器を持ち運び、同時に扱うのは不便なために遠近に対応する武器を使うのだろう。

 

 

「ということで、今日の授業の目的は自分の武器を決めることだ。模擬戦用の武器を持って来たので、自分の適正や戦い方に合わせて決めたまえ」

 

 

 ハンター学の最初の授業に集まった僕達の前にはいろんな種類の武器があった。どうやらこれらは武器の作成を習った先輩方が授業で作ったものらしい。

 剣や棍、ハンマーや小手などの人気な物は使っている先輩も多いらしく、数も多かったし、一見ただの板に見えるようなものもあった(どうやってこれで戦うんだよ)

 

 しかし、ここで僕は奇妙なことに気付いた。日本刀が一つしか用意されていなかったのだ。日本刀と言えば日本では勿論、海外でも人気な武器の一つだ。レムナントでも変わらず人気なんだろう、と思ってて意外だったので先生に聞いてみることにした。

 

 

「先生、サンクタムで日本刀を使う人は少ないんですか?」

「...あぁ。ここでそれを使う生徒は一人しかいない。その生徒の名前は、」

 

 

その時大きな音を立てて扉を斬り飛ばされた。僕らは何が起きたか分からずビックリしていたが、先生は何故か死んだ目をしていた。

 

そして扉を斬った人影は一瞬で僕の目の前に移動して呆然としていた僕の肩に手を置いた。

 

「少年は刀に興味があるのかい!?」

「え...」

「あぁ、来てしまったか」

 

突然現れた女性は周囲から視線を気にせず、僕に語り続ける。

 

「少年よ、日本刀はいいぞ。持ち運びにも便利だし、他の刀剣に比べて切れ味が高くグリムに効果的なダメージを与えやすい」

「は...はい」

 

それに、と続ける彼女の目からはなにか狂気的なものを感じた。

 

「日本刀には他の武器には感じられない美しさがあるんだ!曲線的なフォルムは対象を切断することに特化し、構えていない状態から即座に斬る武術まで編み出した。これは日常の中に於いても彼らが闘いに対しての心構えを持っていたことが分かるよね!」

「如何に優秀なハンターにも油断というものはある。だけど日本刀の技術を修めればその致命的な隙を居合によってカバー出来るんだよ!私だって今ここで君が攻撃しても即座に君の首を斬り飛ばせる!」

 

 

 

 この人はヤバイ。おそらく日本刀への愛が深いだけでなく、その戦闘力も尋常ではないのだろう。外見だけだと品行方正な生徒としか感じないのに、その凶悪なオーラからここにいる全員が恐怖している。

 

 なまじ顔が整っている分、歪んだ顔が他の生徒の教育に悪いのではないかと思えて来た(他人事)

 

 

「少年はこんなに素晴らしい日本刀を使わないわけないよね!」

「アッハイ」

 

 先生を含め周囲が可哀想なものを見る目で見てきたが、可哀想だと思うなら代わって欲しい。

 

「それならこの授業が終わったらグラウンドに来て!私が日本刀の使い方をみっちり教えてあげる!」

「」

「じゃあ私授業に戻るから絶対に来てね、約束だよ!」

 

 

 そうして嵐は過ぎ去った。

 わーい入学早々に美女と放課後デートだー

 

 

「我が校に日本刀を使う者がいないのは奴のせいだ。サンクタムに入学してからその圧倒的な力によって他の生徒を打ち倒し、本校最強ではないかと噂されるその名前はカナタ・スウォートだ」

 

「普段は大人しい生徒なのだが、日本刀が絡むと人が変わりああなってしまう。君が日本刀について言及したので止めるつもりだったが、どうやら遅かったようだ」

 

「彼女の訓練にいつまで耐えられるかは分からないが、君ならもしかしたら最後まで出来るかもしれないだろう。多分」

 

 そう言って先生は僕の肩に手を置いて慰めた。

 

「まぁ貴方なら頑張ればなんとかなると思うわ」

「そうだな、私は貴様が頑張る姿を遠くから見守ることにしよう」

「えっと、人生諦めなければなんとかなるよ。アダム!」

 

 我らが友人達(なんか混じってるが)は励ますのが下手なことが分かった。

 

 

 

 そして僕は...今日あったことは約束のこと以外忘れることにした。

 

 

 

 

 

 

 放課後、カナタさんとの約束がある僕はグラウンドに来た。サンクタムのグラウンドはそこそこ広かったので、カナタさんは見つからないのではと期待していたが、何故か彼女の周囲だけ人がいなかったのでそれは期待できませんでした(悲)

 

「よく来てくれたね、少年。今日は私のお下がりを少年にあげます」

 

 そう言ってカナタさんは持っている刀を渡してくれた。サービスが良いなぁ。(白目)

 

「あ、ありがとうございます」

「それでは今から私と打ち合ってもらいます。時間は1時間くらいにしましょうか。もしくはどっちかが動かなくなったらにしましょう」

 

 前言撤回。コイツ滅茶苦茶なスパルタだ。初心者がサンクタム最強と打ち合えるわけないだろ!

 

「あぁ勿論手加減はしますよ!悪くても病院送りになるぐらいだと思います」

 

 何一つ安心出来る要素が無いのですがそれは...?

 

「先輩!少なくとも構えは教えて頂きたいのですが!」

「それは私の真似をしながらでも出来るはずです。それでは始めましょう」

 

 

 

 そう言って先輩はとんでもないスピードでこっちに突っ込んで来た。はっや!

 ファングで鍛えられた動体視力でなんとか反応、彼女の一閃を避けることが出来た。

 

 

「私の攻撃を避けるとは!貴方は今までの希望者とは違いますね!」

「くっ!受け止めきれなっ」

 

 

初撃は距離が離れている為にアダムは反応できたが、以降はそうならない。

アダムが反応出来るのは、カナタの攻撃が到達する一瞬前。防御することは出来ず、その一瞬でなんとか刀が間に合っても、体重の乗らない刃では彼女の攻撃を受けきれない。

 

カナタの抜刀からの一閃を転んで回避し、返す刀をオーラを纏わせた腕で防御する。あまりの痛さにアダムの動きが一瞬止まってしまう。

そこにカナタの一撃をまともに受け、アダムは吹っ飛ばされ倒れた。

 

 

「あら、ついやり過ぎてしまったかも。少年、まだいけるわよね?」

(この状況でまだやろうとしてるのかよ!?こっちはもうボロボロだってのに!)

 

「...ダメかしら、せっかく期待させられたのに拍子抜けね、少し痛い目に遭わせれば立ち上がるかも」

 

 

「問題、無い!」

(なんでボコボコにされた挙句さらに痛い目に遭わなくちゃいけないんだよ!)

 

「そうよねまだいけるわよね!安心したわ」

 

(こうなったら奴に一泡吹かせるしか無い!)

「やああぁぁぁ!」

「今度はそっちからということね!いいわ乗ってあげる!」

 

 

居合とも呼ばれる鞘からの抜き打ちは受け流され、身体の回転を利用した回し蹴りは鞘によって防御される。

 

アダムから攻めたところで戦況が変わるわけが無く、直ぐに攻守逆転し先程と同じようになってしまった。

 

 

「ほらほら!攻め手が止まってるわ!それじゃいつまで経っても私に勝てるわけないじゃない!」

「くそっ!」

(だがこれでいい!彼女の攻撃はどうせ防御出来ない。ならば攻める姿勢を見せてトドメを刺さらなければいい...!)

 

 

外から見ればアダムはカナタによって滅多打ちにされているだけなのだが、カナタが感じたものはそうでは無かった。

 

 

 

(少年の目...少なくとも何かをするつもり、やられっぱなしにはならないというわけね。いいわその何か、真っ向から斬り破ってあげます!)

 

 

「私も貴方の努力に応じて、本気でいかせてもらいます!」

(ふざけんな!此処で本気なんて出されたら死ぬ!だがこの状態で上手くできるのか?いや、やらなければ死ぬ!)

 

 

アダムの突きを逸らしながらカナタはアダムの胴に一撃、それによって吹っ飛ばされるもアダムはオーラによってダメージを抑え、追撃の上段を峰で防御し両者は鍔迫り合いによって均衡を得る。

 

しかしそれも長くは続かず、斬り払いによって体勢を崩したアダムにカナタは今度こそ刃を振り下ろす。それを受け、敗北する筈だったアダムの目には赤い光が宿っていた。

 

 

(チャンスは一瞬にして一度。刀を使った事なんて無いし、こんな闘いだって一度も無い。だが僕は知っている!アダムは刀を使えるということを!)

(そしてセンブランスを使えば先輩に致命的な一撃を入れることが出来るはず!)

 

 

 

 

「ここだぁ!」

 

 

 

今までに受けた衝撃を自身の能力によって力に加えたアダムの一閃はカナタの刃と真っ向からぶつかり、それはカナタの手から刀を落とさせることに成功した。

 

アダムは直ぐ様後ろに下がり、動きの止まったカナタを警戒する。

 

 

(どうだ!これで満足したか!)

「ふふっ、すごいわ貴方!初めて日本刀を使って私に勝利するなんて!」

(この感じはまさか?)

 

「楽しくなってきたわ!」

そういうカナタの顔は狂気に歪んでいた。

 

 

 

 えーこの感じは、モブが好戦的な強キャラに反撃したことで、却って喜ばせて本気を出させてしまう、っていうパターンですかね?

 

「貴方なら私を超えられるかもしれない。さっきの訓練では全くもの足りない!今日は時間ギリギリまで模擬戦よ!」

 

 これは...アダム君の物語はこれでおしまいですね(諦め)

 

「待ってください!僕はもう動けません!」

「そうなの?うーん、それは仕方ないわね」

 

 まだだ!アダム君の物語は終わらないかもしれない(一筋の希望)

 

「じゃあ今日は素振りだけで我慢しましょう。勿論時間までね」

「分かりました!」

 

 アダム君の物語継続決定!皆さんこれからも宜しくお願いします(喜び)

 そんなわけで今日は日本刀の構えや足運びを学んで、先輩に調整してもらいながら素振りをした!(模擬戦の前にするべきだと思うんですが)

 

「うん!中々構えも様になったと思う!」

「ありがとうございます!」

「じゃあ明日も模擬戦から始めるから、授業後にグラウンドね!」

「えっ?」

 

 (悲報)アダム君の物語終了のお知らせ

 

「じゃあお疲れ様!明日の訓練を楽しみにしてるわ!」

 

 そう言って先輩は帰っていった。模擬戦の時にはいたギャラリーもすっかりいなくなってしまって、僕は暫くの間一人で呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タダイマ」

「あぁお邪魔しているぞ」

「大変だったわね」

「アダム、大丈夫?」

「ダイジョーブダヨ」

 

 友達(シンダーも含む)が天使に見える...此処が天国か。

 

「今日はもうお風呂入ったら直ぐに寝た方が良いと思うわ」

「まぁあんだけ頑張ったんだから休息を取った方がいい」

「僕もそう思うよ」

「アリガトウ」

 

 こうして僕は友達に感謝しながらお風呂に入って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アダムのお風呂長くないか?」

「あっ!アダムお風呂で寝ちゃダメだよ!」

「...それだけ疲れていたのね」

 

 

 お風呂から上がって僕は今度こそ布団で寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても模擬戦を見てて思ったが、コイツかなり強いな」

「そうね。既にセンブランスを戦闘に使ってるあたり、多分実戦は経験してると思うわ」

「まぁホワイトファングらしいし、そこで訓練してたとか?」

 

「まて、ホワイトファングだと?コイツはホワイトファングに所属しているのか?」

「カラバッ!」

「あっ」

 

そう言ってカラバは口に手を当てるが、それでシンダーが追求を止める筈がない。

 

「なんでホワイトファングの構成員がアカデミーに通ってるんだ?」

「うーん、それは」

「ホワイトファングといえば死者は出さないものの、その活動はテロリストと一緒だ。そんな奴がアカデミーに来るなんて、なんか企んでいるんじゃないか?」

 

「それは有り得ないと思うわ。第一ファングはただのテロ組織じゃない。信念に基づいて活動しているわ」

「それはファウナスから見た時の話だ。実社会においてホワイトファングがしていることはテロ以外の何者でもない」

「だけどアダムは拾ってもらった恩義があるって言ってたよ。多分本格的な活動はしてないんじゃないかな」

 

二人の話を理解しながらも、シンダーの表情は疑念を浮かべていた。

 

「それなら明日にでも直接聞いてみればいいんじゃない?」

「...そうだな。アダムに話があると伝えておいてくれ」

 

そうしてシンダーは自分の寮へと戻って行った。

 

「ねえハンナ、やっぱりファウナスと人間が手を取り合うのは難しいのかな?」

「個人同士で親しくなるのは出来る。けどファウナス全体の偏見を取り除くのは難しいかもしれないわね」

 

その返答にカラバは顔を暗くする。しかし、だけどとハンナは付け加える。

 

「それでもアダムには頑張って欲しいわね」

「何言ってんの?頑張るのはアダムだけじゃない」

 

カラバは立ち上がりながら言う。

 

「これはファングだけの問題じゃない、僕ら全員で頑張るんだよ。そうでしょ?」

「...そうね、その通りだわ」

 

そう言って二人は笑い合う、いつか来る未来を夢見て。

 

 

 

「だけどアダムの秘密を漏らしたのは貴方の所為ね」

「あっ!そうだった。ごめんアダム!」

「許して貰えると良いわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アダムがホワイトファングの構成員だと?あのお人好しがテロリストの一味?信じられないが私はアイツのことを知らない、否定する事も出来ない)

 

シンダーは考える。それが自分の力だと知っているからだ。

 

(だが、ホワイトファングということは人間を憎んでいるのか?人間を憎んで犯罪行為を行う低俗な奴なのかアイツは?)

 

そして彼女は辿り着く、真実の可能性へと。

 

(違う、低俗なのはホワイトファングではないとしたら?あくまでホワイトファングの活動には犯罪は無く、それに乗じて犯罪が行われているとしたら?そして、ミストラルはその全てをホワイトファングの所為にしていたら?)

 

「まずは明日直接聞いてからだ。そしてもし...」

 

(もし、予想通りだったならばミストラルは最低だ。それにそれだけじゃない。その毒牙は間違いなくアダム達にも...)

 

そこまで考えてシンダーはかぶりを振った。

 

(だから何なんだ?奴等がどうなろうが知った事じゃない。私が奴等と関わるのは私の役に立ちそうだからだ。そいつらの心配をするなど、私らしくない!)

 

「明日、もしアダムが私の役に立たないのなら奴等とは関わらない」

 

彼女は深く心に決め、自室で眠った。

 

 

 

 

 




 戦闘シーンをもっと上手く書けるようになりたい...(切実)


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第六日目 赤牛と修羅場


 オリキャラ、オリ設定も結構出てきました。キャラクター紹介とか必要ですかね?
 だけどRWBYってまだ完結してない分、あまり捏造すると公式と矛盾するかもしれないんですよね...



6日目

 今日は朝から衝撃的なことの連続だった。

 先ず寝起き一番にカラバに土下座された。どうやら僕がファングのメンバーであることがバレてしまったらしい。

 

 まぁ起きてしまった事を気にしてもしょうがないし、許してやるよォ!と思っていたら、シンダーが僕と2人で話がしたいらしいとハンナが言ってきた。

 ファング関連で話があるのかもしれないのだろう、2人きりは怖いが覚悟を決めて授業の準備をして寮を出た。

 

 そこからが問題だった。

 なんだか分からないが、通り過ぎる生徒が僕を見て噂をしているのだ。何があったのか聞こうとしても逃げられたのでカラバ達に頼んで聞いてもらったのだが、その内容がとんでもなかった。

 

 どうやらカナタ先輩が昨日の模擬戦での僕の勝利を吹聴しているらしく、その結果僕は先輩の弟子で、先輩にも勝ったヤベーヤツだと思われているのである。

 

 昨日の模擬戦は断じて僕の勝ちではない。確かに僕は先輩から武器を落とさせた。

 だがあの模擬戦は武器を落としたら負けなんて決まってなかったし、あの後先輩が武器を拾って攻撃してきたら僕は敗北しただろう。

 あれ以上戦闘が続かなかったのは僕が続行できないことが理由だったし、あれは僕の降参であると考えるべきだ。

 

 第一あれはセンブランスを使った初見殺しだ。実力差が圧倒的で細かいルールが無かったが、模擬戦でセンブランスを使った僕は卑怯者となるはず。

 まぁ問題は先輩がそう思ってなさそうなことだが...

 

 そう言った弁明も聞いてもらえず、授業が始まるまで悲しい思いをしてたら、なにやら不機嫌そうなシンダーが目の前に現れ、昼休みになったら来いと言われた。

 訓練に向けて休もうと思ってたので拒否しようとしたが、更に不機嫌になりそうだったので了解してしまった。

 

 そうして僕は授業中、今日の騒動を日記に書いたのであった。

 え、5日目の日記はどうしたって? そんなもの知りませんね(あの後書けるわけない)

 

 

 

 

 そうして、半ば休憩時間となりつつある座学を終え、僕は売店で昼食を買ってからシンダーの待つ中庭まで向かった。

 

 昼休みの中庭は遊ぶ生徒が多いが、皆今はご飯を食べているのか人は多くなかった。

 シンダーは中庭の端の方で木に寄り掛かっていた(なんだかシンダーらしい感じだ)

 

「待たせたか?」

「...少しな」

「お詫びと云えばなんだが売店でパンを買ってきた。好きな方をやるよ」

 

 そう言うとシンダーさんは無言でクリームパンを取った。普通昼食に菓子パンを食べないと思うんですけど(自分は普通じゃない人)

 仕方なくサンドウィッチを食べ始めると、シンダーは口を開いた。

 

「お前は気が利くのか利かないのか分からないな」

「え?僕が気が利かないと?」

 

 失礼な。前世ではワガママ姉妹達がいた分、気を遣うことには定評があった僕に気が利かないなんて!

 

「お前は飲み物を買ってきたのか?」

「あ。」

「...忘れてたみたいだな」

 

 そう言えばそうだった。まぁ近くに自販機もあるし問題は無い。

 

「買ってこようか、何がいい?」

「別にお前とお喋りをしに来たわけじゃない。さっさと本題に入るぞ」

 

 そっちから振った話だった気がするが、正直僕も腹の探り合いは苦手なので助かったところだった。

 

「お前がホワイトファングの構成員だという話を聞いたが、それは事実か?」

「...そうだな。実質的には僕はホワイトファングに所属している」

「実質的とはどういうことだ?」

 

 原作よりもシンダーが幼いのは確かだが、それでも目の前の彼女は確かなカリスマ性や、威圧感を放っていた。

 それに飲み込まれないようにしながら、僕は口を開く。

 

「サンクタムを卒業すること、それがギラさん達が提示した僕がファングに入る条件だった」

「ギラさん...そいつはホワイトファング指導者のギラ・ベラドンナか?」

「ああ、僕は幼少期に彼らに拾われた。その恩義を返すため、僕は入学を決意した」

 

 シンダーは目を細めて尋ねる。

 

「では、お前は将来テロ組織に加担する。そういう事であっているか?」

 

「...ホワイトファングはテロ組織じゃない。彼らは人間とファウナスの友好を目指すという信念に基づいた組織だ。」

「では貴様は信念が有れば幾ら犯罪をしても良いと言うつもりか?」

 

 ファングの皆が侮辱され、思わず内心苛立ってしまう。

 

「彼らは不当に差別されたファウナスを解放することが目的で、犯罪なんてしてないはずだ!」

「貴様は組織の活動に参加した事は無いんだろう、本当にそう言い切れるか?」

 

 ベラドンナ夫妻がリーダーだったファングは平和的だったと原作では言われていた。

 それに原作で人を殺した描写だって僕がメンバーを守るためやむを得ずっていうぐらいで、それにさえもギラさんは不満を言ったのだ。

 そう考えても今のファングが犯罪するはずが無い!

 

 

「ああ。僕は彼らが犯罪をしてないと確信している」

「そうか。では、貴様はどうなのだ?」

 

 

 

「僕?」

「貴様は恩義を感じたからという理由だけでそんな組織に入ることを決めるのか?」

 

 思いもよらなかった話の展開に僕は動揺する。

 

「僕にとっては十分大切な理由だ。彼らのような優しい人が不当な差別を受けるのを、僕は黙って見てられない」

 

 半ば自分に言い聞かせながら話すと、シンダーは納得したみたいだ。

 

「そうか、聞きたいことは概ね分かった。最後に一つ聞きたい」

「なんだ?」

 

 話も終わりそうなので食べ終わったパンを片付けながら聞く。微妙に時間が残ったし、戻って日記の続きでも書くかな。

 

 

 

 

 

「お前は本当にそう思っているのか?」

 

 

 

 

 

 僕は思わずシンダーの方を向く。目の前にいたはずのシンダーは消え、同じ場所にアダム(アイツ)、その足元には倒れて動かなくなった人間がいた。

 血のついたナイフを見せながら彼は言う。

 

「ファングに入る本当の理由は復讐だろう?」

「なんだと?」

 

「本当は人間に復讐したくて仕方ない。だが人を殺すのは悪い事、悪い事をしてはいけない。そう考えたお前は一つ思いついたんだ、ホワイトファングに入れば、悪い人間に正義の暴力を振るえることにな」

 

 徐々に近づく彼とは反対に僕は一歩づつ後ろに下がる。

 

「ち...違う!僕はお前みたいな理由じゃ、」

「俺か?俺はお前なんかより単純だ。同族に、そして人に認められたかっただけ。それに比べるとお前のは更に性質が悪いな?」

 

「なんせ、お前は自分が正しいと思って暴力を振るうんだ。その本質は復讐以外ではないのにな!」

「やめろ...やめろ!」

 

 後ろの壁にぶつかり、僕はこれ以上後退出来ないことに気付いた。彼は足を止めず、とうとう僕を捕まえる。

 

「もしお前が人間との友好を望んでるんだったら、あの時の人間どもが死ぬことは無かった筈なのに!」

 

 

 彼は僕の顔を掴んで目の前の光景を見せる。僕の目の前に映る彼らは全員死んでいた。

 

 

 

 

 

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ」

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!しっかりしろっ!」

 

 頬に衝撃を受け、気がついた僕の目の前には息を荒くしたシンダーさんが居た。あれ、僕シンダーさんに殴られたのか?

 

「いったい何が...」

「それはこちらが聞きたい。貴様が喋らなくなったと思ったら突然譫言を言い出して私から逃げ出したんだよ。」

「捕まえて殴ったら目覚めたみたいだが、いったいどうしたんだ?」

 

 

 幻影が蘇る。

 

 

 

 

「あー、あれだよ。昨日の地獄の訓練がトラウマになってさ。カナタ先輩が襲ってくる夢を見たんだよ」

 

 そう言うとシンダーは納得した様で、憐憫の目を向けてきた。なんとか誤魔化せたようだ。

 

「まぁ...あれは仕方ない気もするな」

「実は今日の放課後もあるんですね」

 

「まぁ...強く生きろ」

 

 シンダーさんに同情されるなんて、これは訓練で死ぬ可能性が濃厚になりましたね。

 

「それより、次の授業が始まる、さっさと行くぞ」

「ああ、それで?僕のことは信じてもらえたかな?」

 

 

 シンダーは微笑みながら僕の先を歩く。

 

「まぁ...お前がお人好しだってことは再確認出来たな」

 

「それだけでも分かってくれれば十分だよ」

 

 

 僕は目蓋の奥に見える幻影から目を逸らし、シンダーの背中を追っかけた。

 

 

 

 

 

 

 合法的に休憩(瞑想)しても良いという夢のような内容の午後の訓練は一瞬で終わり、地獄の訓練が始まろうとしていた。

 

 なのだが、

 

「あの後友達に説教されちゃってね。せっかくの後輩なんだから先輩らしい事をしなさい!って言われちゃったからさ、今日は訓練はお休みして私がここら辺の案内をしてあげるよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 カナタさんの友達はなんて良い人達なんだろう、こんな人の友達をしているってだけでも凄いのに。

 

「まぁ私もあんまり外で食べたりしないからたくさんお店知ってるわけじゃないけど。いつも行ってるお店があるから、今日はお姉さんがそこで奢ってあげよう」

 

「本当に感謝します!」

 

 カナタさんも戦わなければ素晴らしい人だ。彼女といる時にはその腰の日本刀を抜かせない様にしないと(フラグ)

 

 

 

 

 

「それで少年の名前はアダムって言うんだね、今まで聞きそびれてたよ!」

「確かに、名乗らないのは失礼でした。すみません」

 

 カナタさんの外面は長い黒髪で後ろで高く纏めていて(所謂ポニーテールってやつだな)長身の美形なので、今の僕はとても役得だ。

 まるで午前中の不運が精算されたみたいだぁ。

 

「アダム君はどこの出身なの?」

「僕はメナジェリーから来ましたね。メナジェリーは不便ですが、僕らファウナスにとっては心温まる良い町なんですよ」

 

 カナタ先輩は表情を綻ばせながら話を聞いてくるのでシンダーさんに比べると話してて楽しいなぁ(すごく失礼)

 

「へえー、そう聞くとなんだか安心するよ」

「安心、ですか?」

「うん、元々メナジェリーって人間が追いやろうとしたところでしょ。そんな場所に生まれたことで不幸になっていたなら、私は申し訳無くなっちゃう」

 

 う、先輩から後光が差していて直視出来ない。なんでこんな人間の鑑みたいな人がああなってしまうんだ。僕は世界の理不尽を恨んだ。

 

「先輩はどこ出身なんですか?」

「私?私はクロユリって言う村の生まれなんだ。聞いたことはないと思うよ」

 

 クロユリ?いや、それは聞いたことあるぞ。原作で登場した場所だったはずだが...どこだったかな?(記憶ガバ)

 いや、しょうがないんだ。原作の登場人物やストーリーは覚えているけど細かい舞台とかは思い出せないんだよ。オタクとしては本当に不甲斐ない。

 

 そもそも海外アニメだった分、名称とかはあんまり気にして無かったのも理由の一つかもしれない。映像としては思い出せるけど名称だけじゃ思い出せないみたいな感じよ(言い訳)

 

「どうしたの?考えごとかな」

「あぁー、先輩の強さの秘密はその村にもあるのかなって」

「私の強さの秘密ー?そんな嬉しいこと言われてもなぁ」

 

 先輩はとても嬉しそうだ。誤魔化して会話の内容的にもしかしたら豹変するかもしれないと身構えてたがそういうことは無くて一安心だ。

 

 

 

 

 

 

 平和な会話を楽しみつつ、先輩の行きつけの喫茶店に到着した。

 凄い都会って感じがする(田舎民感)

 

「マスター!今日は後輩を連れて来たよ!」

「これはこれはカナタさん。いつもありがとうございます」

「アダムと申します。よろしくお願いします」

 

 年齢は50代ぐらいか?壮年の男性がマスターらしい。喫茶店歴はスタバに何回か自習しに行ったぐらいだったので、勝手が分からない。取り敢えずお勧めを注文する。

 

「あ、あんまり苦くないものをお願いします」

「分かりました」

「私はいつものね!」

 

 マスターいつものをやった先輩は傍目にはカッコ良く見えるんだろう。僕はもう彼女は武器が絡まなければ純粋な少女みたいな性格なんじゃないかと思えてきた。

 

 彼女は例えるなら武器への偏愛がさらに強くなったルビーなんだろう。まぁ戦闘モードの時だって口調自体は明るかったんだから、多分自分が楽しいことは相手も楽しいと考えている故に起こる善意があの悪魔の正体なのだろうな。

 

 

「それにしてもアダムはなんで最初に日本刀が良いって思ったの?」

 

 貴方が言うセリフか?というツッコミは我慢して、原作のことは濁しつつ自分の考えを話す。

 

「昨日の模擬戦の最後を覚えてますよね?あの時は僕のセンブランスが発動したんです」

「あぁ!あの力はやっぱりセンブランスだったのね!」

 

「僕のセンブランスは受けた衝撃を自分の力に変換するものです。だから僕の戦い方は相手の攻撃を受け止め、吸収した力で敵を倒すというものが理想です」

「それで切断力があって一撃の威力が高い日本刀を選んだのね」

 

 流石に先輩なだけあって僕の考えはお見通しみたいだ。

 

「確かに新入生でセンブランスを使えるなんて思ってなかったからびっくりしちゃったよ。その君の戦い方は理に適ってると思うよ」

「ありがとうございます。因みに先輩のセンブランスとかは聞けます?」

 

 センブランスは他人に公言するものではないって考える人もいるから、この辺は気を付けないといけないのだ(これも個人性が強い初等アカデミー特有のものだろう)

 

「私のセンブランスは斬撃を放つことだよ!」

「斬撃...!」

 

 それって月牙天衝的なサムシングですか!?

 

「オーラを斬撃として飛ばすんだけど、普通にオーラを飛ばすのと違って当たったら斬ることも出来るし、消費オーラも少ないスグレモノなんだ!」

 

「それで先輩は刀以外の装備が無いんですね」

「そ、刀一本で遠い敵にも対応できるから便利なんだよ!」

 

 そして先輩はニヤっと笑いながら、

 

「それに刀を振るモーションで遠距離攻撃が出来るってのは遠距離で油断した敵に刺さるし、刀がギリギリ届かない中距離戦でも強さを発揮するんだよ」

「確かに、相手からしたら届かないと思った攻撃を受けるわけで、かなり精神的にキツいですね」

 

 もし昨日先輩がセンブランスを使っていたら、初撃がクリーンヒットして終わっていただろう。助かった。

 

「まぁセンブランスにも色々あるわけだし、今日は私の知ってるセンブランスとそれの対処法を教えてあげるよ!」

「本当ですか!ありがとうございます!」

 

 

 そんな感じで今日の放課後はとても楽しく過ごすことが出来た!

 

 

「今日はありがとうございました、先輩」

「明日こそはちゃんとした訓練をするから、楽しみにしててね!」

 

 あんまり楽しみにはなりませんね(正直な感想)

 お出掛けも終わり、寮に着いたのだが待っていたのは不機嫌そうな顔をしたシンダーさんと、それを宥めるカラバハンナだった。

 

「貴様、地獄の訓練とやらがあったのではないのか?随分と楽しそうだったが」

「う、訓練は中止してこの辺の案内をするってカナタ先輩が」

「シンダーはアダムの事が心配だったんだよ、だから謝らないとね」

「ごめん」

 

「まぁ心配というよりかはボロボロになった貴様を見に来ただけだったんだが」

「逆にそっちが謝罪すべきだと思う」

 

 あまりにも失礼な物言いに思わず真面目なツッコミをしてしまった。

 

「やっぱりアダムとシンダーは仲が良いね」

「まぁアダムって弄り甲斐があるし」

 

 そんな感じで夜もあっという間に更けていった。

 

 

 

 

 

 

 





 いよいよアダムがメンヘラっぽくなってタイトルに相応しくなります。
 どうしてもRWBYということで女性ばかり登場しますが、ハーレムなんてことにはならないと思います。
 というか、作者が恋愛描写を書けないのです。許して下さい。


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