ベルが陰陽師なのは間違っているだろうか (クロウド、)
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プロローグ

この作品でのベルは7歳からオラリオで戦っています。
貴人の天馬もそれくらいで既に御膳試合で戦っていたらしいので。


「盾、構えぇーーー!!」

 

 小柄な少年ーーー小人族が無数のヒューマン、亜人の軍団を指揮する。彼の名は『フィン・ディナム』。迷宮都市オラリオ、2大派閥《ロキ・ファミリア》団長。《勇者》の二つ名を持つ者だ。

 

「ティオナ! ティオネ! 左翼支援急げ!」

 

「あ〜んっ! もう体がいくつあっても足りない〜!」

 

「ごちゃごちゃ行ってないで働きなさい」

 

 フィンの支持を受けた二人のアマゾネスは三体のモンスター一気に切り伏せる。

 

 しかし、戦況はロキ・ファミリアの劣勢。どこからともなく現れるモンスターの大群、一体一体がファミリアの人間の数倍の巨躯で攻め入ってくる。一種の悪夢だ。

 

「リヴェリア〜ッ! まだぁ〜!?」

 

 アマゾネスの少女が前衛組が守るその背後控え、『詠唱』を紡ぐエルフへと声を上げる。

 

「【ーーー間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れ得ぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

 

 その一撃をなんとしても無事に放つために前衛達は歯を食いしばり交戦する。

 

 しかし、向こうも突進の勢いを衰えさせることはない、盾の一角を団員もろとも薙ぎ払う。

 

「ーーーベート、穴を埋めろ!」

 

「ちっ、何やってやがる!?」

 

 遊撃に向かっていた銀髪の狼人の青年が悪態を吐きながら、盾組をカバーするためにそこへ向かう。そこへ、山羊のように捻れた角を持つ馬面の巨体、『ファモール』が一人のエルフに狙いをつけ手に持った混紡を振り上げる。

 

「ーーーぁ」

 

 彼女はその赤い目に萎縮し、動けなくなる。今まさにその攻撃が放たれようというときだった。

 

 ガキンッと言う音ともに何かがモンスターの間に塞がった。それは半透明な光の盾で、奇っ怪な文字が刻まれていた。

 

「らぁぁぁぁ!!」

 

 その間に先程の青年がファモールの頭を蹴り飛ばした。

 

「……間に合ったか」

 

 フィンは隣で印を組んでいる銀髪黒衣の少年を見て、ホッと息を吐く。

 

「『陣の亀盾(きじゅん)絶禍(ぜっか)』、全範囲発動完了」

 

「どれくらい持つ、()()?」

 

「もって、十分そこらですかね。あと、流石に纏神呪(まといかじり)なしでこの範囲のオート防御はキツイんで集中したいから話しかけないでください」

 

 いつもは温厚な話し方をする少年なだけに目を細めて真剣な表情でなかなか失礼な口調の少年の姿にフィンの口元には苦笑いが浮かぶ。

 

 その間に少年は懐から水の入った瓶を取り出し、そこに呪を込める。そして、瓶の蓋を外してそれをゆっくりと地面に向けて傾ける。

 

「『焼亡は柿の本まで来れども赤人なればそこで人丸

 陣の亀鏡(ききょう)殲魄(せんばく)』!」

 

 呪を込められた水は地に落ちる前に不規則な動きでバリアーの一つへと向かっていき、凄まじい勢いで次々とバリアーに反射されマッハを超える速さで何十体ものファモールを貫いた。

 

「相変わらずエグいっすねぇ……。」

 

「玄武の呪は陰陽五行で言うところの【水】。水が圧力を増しながら超高速で反射され、その切れ味は特殊武装(スペリオル)に匹敵する。だったかい?」

 

 少年、ベル・クラネルの術について詳しく知らされているフィンが術に集中していて手が離せないならぬ、口が離せないベルに変わってその術について解説する。

 

 ベルの一族に代々伝わる術、陰陽道。魔力を失う代わりに祖先を自身の守護霊とし、呪力という力を借り受けて戦う。ベルはその一族の開祖、その血を引く唯一の存在であり、陰陽道を受け継ぐこの世界最後の人間なのだ。

 

「【ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを】」

 

「アイズ、戻りなさい!」

 

 詠唱が終盤になると前線で戦っていた少女剣士が自分を呼ぶ声に振り向く、そして、その視線の先には印を組むベル。ベルは自動防御の盾を解除し、それを足場になるように少女の頭上に並べる。

 

「っーーー!」

 

 剣士は自身の身軽さを活かして盾に飛び乗り、そのままジャンプで本陣まで戻る。

 

「【焼きつくせ、スルトの剣ーーー我が名はアールヴ】!」

 

 その瞬間、弾ける音響とともに魔法円(マジックサークル)が拡大し、《ロキ・ファミリア》、フォモール、両陣営の足元に広がる。

 

 戦場全域が彼女の魔法の効果範囲。

 

 白銀の杖を掲げ、エルフの魔導師リヴェリアは己の『魔法』を発動させた。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

 魔法円から吹き出した幾本の炎柱がファモールの全身を飲み込み、無数の絶叫が鳴り響く。

 

 やがて、その声も消え。残ったのは《ロキ・ファミリア》の面々とフォモールだった燃えカスのみだった。

 

「ふぅぅぅ……。」

 

 ベルが盾を解除すると、それが数珠となってベルの腕に巻き付いた。

 

 

 

 

 ーーーこれは、正史とは違う力を得た少年の物語。

 

 ーーーこれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




鋼殻顕符 玄帝武鬮……十二天将の一角、玄武の霊符。
呪力のバリアーを展開し、攻撃よりも防御に適した呪装。双星の陰陽師ではそろばんに呪をかけていたが、ベルは数珠にかけている。

陰陽五行……木火土水金の相克、相生というお互いに影響を与えるという考え方。


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ルーツ

 ーーー始まりは何だったか……。

 

 ーーーああ……そうだ。単純な『願い』からだったか。

 

 ーーー生まれたときからこのクソッタレな力を継承することが決まってて……()()()()()()()勝手に決められてることが嫌で……おじいちゃん(ジジイ)に言われたんだっけか。

 

『方法はある……。嘗て、お前と同じように己の運命に抗った人間がいた。そやつは神から恩恵を受け、己の器を昇華させることでその運命を乗り越えた』

 

『その恩恵ってのはどこで手に入る?』

 

『……オラリオに行け。そこでしかお前の望みは敵わんだろう』

 

 そう、おじいちゃん(ジジイ)に言われて、()は村を飛び出した。だが、迷宮都市オラリオ(そこ)()が望んでいたものなんざ……何一つありゃあしなかった。

 

 ーーー自分が他の人間と全く違う場所に存在していることが気持ち悪かった。

 

『お前、私の眷属にならないか?』

 

 ーーー気持ち悪い。

 

 神だかなんだか知らねぇが気安く話しかけてくんじゃねぇ。

 

『恩恵もないのに、凄いな!』

 

 ーーー気持ち悪い。

 

 ウゼェ。

 

 

 

 

 

 

 気持ち悪い気持ち悪気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーああ、きっとここは。

 

 

 

 

 

『……地獄だな』

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ、ジブン』

 

 

 

 

 

 

『ウチの家族(眷属)にならんか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ル…ま、べ……様! ベル様ッ!」

 

 瞳が開くとともに、過去へと飛ばしていた意識がゆっくりと現在へと戻ってくる。視線の先には心配そうに自分の顔を覗き込んでくる小人族(パルウム)の少女。

 

「んん? どれくらい寝てた、リリ?」

 

「一時間程でしょうか。……酷くうなされていたように見えましたが。

 悪い夢でも見まれましたか?」

 

「……ああ、まるで()の人生みたいな……クソッタレな夢だったよ」

 

「…………団長が、明日の確認をするのでベル様を呼んでこいと」

 

「ん〜、今行く」

 

 ()は近くに放り投げておいた刀を腰に戻して、立ち上がる。

 

 あと、5年……いや、3年あれば良いほうが……あの糸女神(糸目神)への借りも返さなくちゃいけねぇからなぁ……。家族ごっこにも少しは真剣に参加してやるとするか。

 

 

 

 

 まっ、()の死でアイツらに残してやれるものなんてたかが知れてるだろうけどな



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