Muv-Luv Alternative ハッピーエンドと退廃的な生活を目指す (白銀の勇者)
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番外編
『エイプリルフール』なので


この話はエイプリルフールとして書いたものです

それと、この話は本編と限りなく近い並行世界でのエイプリルフールの出来事なので本編とは一切合切関係は(多分)ありません

あと、なんか色々と可笑しい部分があってもスルーしてください

では、番外編、どうぞ


「では……明日、0000(まるまるまるまる)……と、言うより十五分後より作戦を決行したいと思います」

 

三月三十一日。暗い部屋の中、その人物はモニターをその場にいる二人に見せながらそう言った

 

「えぇ、構わないわ」

「俺もだ……と、言いたいがホントにこんな事していいのか?」

 

一人は構わないと言ったが、もう一人は不安そうだった

 

「それに、こんな嘘ついても誰も嫉妬とかの面白い反応はしないと思うが……」

 

頭を人差し指で小さく掻きながら言う

 

「……この鈍感は……」

「こいつの反応見るとあの子達が可哀想になってくるわ……」

「え?」

 

呟いた言葉を上手く聞き取れなかったからか、聞き返すが何でもない。と二人とも返した

 

「BETAも根絶やしにし終わって平和になったこの世界で誰も告白しないのが驚きましたよ」

「恥ずかしいんじゃないかしら?ウブよね~」

「全くです」

「誰だよそんなにモテてるやつってのは」

『お前は黙れ』

「理不尽!?」

 

BETAは数ヶ月前、なんやかんやあって滅びた

 

なんやかんやの部分は本編で語られる事になるだろう。だが、一応この話は限りなく近い並行世界での話である

 

「さて……面白くなりそうですね」

 

ニヤッと一人が笑い、モニターを消した

 

「では、皆さんの端末に0000となったと同時にメールを送信します」

 

午前0時まで、残り三十秒

 

そして、デジタル時計の数字四つが0になった。その瞬間、メールを送信した

 

「さぁ、後戻りは出来ませんよ?」

 

メールの内容はこんな感じだった

 

『私、武さんと付き合い始めました』

 

メールの送り主、ルリと協力者、夕呼はニヤニヤと不敵な笑いをずっと浮かべていた

 

そして、その中にいた唯一の男、武はそんな二人を見て溜め息をはいた

 

なんでこの話に乗ってしまったのだろうか……と

 

 

 

 

「た、武ちゃん!!」

「ん?よっ、純夏。おはよーさん」

 

朝、武が通学しようと家の外に出たら00ユニットである純夏が隣の家から飛び出してきた

 

武達はBETAを根絶やしにし終わった後夕呼の計らいで復学したらしい

 

「こ、このメールって本当!?」

 

純夏は武に携帯電話に写されたメールを見せてくる

 

写ってたのは数時間前にルリの送ったメールだった

 

「……さぁな」

 

ニヤッとわざと不敵な笑みを浮かべて歩き出す武

 

ルリに言われた事は、この件に関して一度も『本当』という単語を使わない事

 

本当と思わせる事でさらに面白くなる。とルリはその後に付け加えてた

 

「え、その笑顔ってまさか……!」

「さぁな~」

 

スタスタと歩いていく武

 

「う、うそ……」

 

カシャン。と携帯電話が落ちる

 

何だか面白くなってきたと思う武であった

 

そして、見えないように着けておいたイヤホンのスイッチを入れ、襟元に隠してあるマイクをそっと近付ける

 

「(こちら武。純夏が引っかかった。出てきてもいいぞ)」

『何言ってるんですか。冥夜さんが近くまで来てます。その後にそっちに合流します』

「(分かった)」

 

イヤホンのスイッチを切り、マイクを元に戻す

 

アニメとかだとバレバレだろ。とか思うけど案外バレないもんだな。とイヤホンのスイッチを切りながら思った

 

すると、

 

「武!」

 

横の路地から冥夜が飛び出してきた

 

「よっす、冥夜」

「武、これは本当か!?」

 

冥夜が携帯電話を武に見せてくる

 

やはり画面はルリからのメールだった

 

「……さぁ、どうだろうな?」

 

ニヤッと笑いながら武は歩き始めた

 

「た、武!本当か嘘かどっ……」

「武さ~ん、おはよーございま~す」

 

そして、冥夜から反対の方から銀髪の髪をした黄色い目の少女、ルリが武に声をかけた

 

手には手提げ鞄を持っている

 

「おっ、ルリちゃん」

「今日は早いんですね。折角起こしに行こうと思ったのに」

「なんか目が覚めたんだよ(ルリちゃんからの電話で叩き起されたんだけどな!)」

 

内心で文句を言う武

 

この後は二人で登校してルリの持ってる手作り弁当(一応本物)を武に渡し、ルリは一度退散する予定だ

 

武はその後も学校内で騙し続ける

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

と、言いながらルリが武の腕に抱きつく

 

「そ、そうだな(ルリちゃん!?ちょっ、こんなの予定には)」

「ほら、早く行かないと遅れちゃいますよ(演技ですよ。え、ん、ぎ)」

 

瞼を何度か閉じたり開いたりしてのモールス信号を高速で行う二人

 

そして、そのまま学校へと歩いていく

 

カシャン。と冥夜の携帯電話も地面に落ちた

 

そこに純夏が来た

 

「……これは誠か?」

「……かもしれない……」

 

二人はルリと武が見えなくなるまでその背中を見ていた

 

 

 

 

その後は順調だった。ルリが武に手提げ鞄に入った弁当を手提げ鞄ごと渡し、ルリは退散。武は教室へと入った

 

すると、既に教室にいた千鶴、壬姫が武に近寄ってきた

 

「白銀!」

「たけるさん!」

「おはよ、委員長、たま」

『このメール、どういう事!?』

 

千鶴と壬姫は同時に携帯を突き付けてくる

 

画面は言わずがな

 

「……さぁ、ご想像にお任せするぜ」

「ちょっ、はっきり言いなさいよ!」

「そうだよ……ってあれ?その手提げ鞄は?」

 

壬姫が気付いたのか、手提げ鞄に目を落とす

 

「これか?これはルリちゃんの手作りの弁当だよ」

 

ピキッ!と二人が固まった

 

「……ん?お~い、委員長。たま~?」

 

手を目の前で振るが、反応しない

 

仕方無く机に戻って鞄二つを机にかける

 

すると、ちょんちょんと肩を後ろからつつかれた

 

「ん?……彩峰と霞?」

「これ」

 

慧が携帯を突き付ける

 

そして、武の耳に顔を近付け、

 

「嘘でしょ?」

 

バレテーラ。心の中で呟いた

 

「今日はエイプリルフール。ついでにイヤホン見えてる」

「やっぱりか……霞もか?」

 

霞がコクン。とうなづいた

 

霞はリーディングで無理矢理慧と武の心を読んだから嘘だと分かった

 

慧はただの勘である

 

「……すまん、バラすのは止めてくれ。俺がルリちゃんに挽き肉にされる」

 

コソコソと慧と霞に話す

 

「焼きそばパン。天然の」

「分かった。なんとかする」

 

録音した。とボイスレコーダーを見せてくる慧

 

そこまでして食いたいか。と内心呆れた

 

「霞は?」

「……今度、二人で海に」

「海か?まだ夏じゃないぞ?」

「それでもです」

「……分かった。こんどの休みにな」

 

ピョコピョコとうさ耳が動いた

 

「それもボイスレコーダーに」

「なんで二つも持ってんだよ」

 

慧が霞にボイスレコーダーを手渡した

 

そして、二人でジーッと見つめ合い、ガシッと握手した

 

「はぁ……」

 

取り敢えず、マイクを口に近づける

 

「(彩峰と霞にバレた。流石にエイプリルフールだと気付いていた)」

『まぁ、彩峰さんは勘がいいですし、霞さんはリーディングがありますからね。純夏さんのはあのデッカイリボンで出来ないようにしてありますけど……で、口止めは?』

「(彩峰が天然素材の焼きそばパン。霞が二人で海に行きたいと)」

『分かりました。こちらで焼きそばパンは用意しておきます』

 

そこで通信を切り、イヤホンをこっそり外してポケットに入れた

 

一方ルリは

 

「霞さん……ちゃっかりとデートの約束しちゃってる……やるわね~」

 

と呑気にモニタリングしていた

 

そして、慧と霞に気付かれてから数分後

 

「タケル!」

 

窓から美琴乱入

 

「うぉっ!?美琴!?」

「これ、どういう事!」

 

武に携帯電話の画面を突きつけるのは最早お約束

 

ちなみに、美琴は軍の経験を生かし、校舎の壁をよじ登って来た。才能の無駄遣いである

 

「……さぁな」

「タケル!ちゃんと話して……」

 

と、言ったところでちょんちょん。と美琴は慧に肩をつつかれた

 

「彩峰さん?」

「事実」

 

慧の目を閉じ、首を横に振りながらの容赦ない一言でピキッ!と美琴も固まった

 

武が手を合わせて頭を下げる。慧は美琴のポケットに手を突っ込んで何故かあった小型ライトを使って武にモールス信号を送った

 

焼きそばパン、もう一個と

 

武は渋々マイクを近付け、もう一個追加。と小さく呟いた

 

その後、純夏と冥夜は遅刻ギリギリで教室に入り込み、千鶴、壬姫、美琴はHRが始まるまで固まったままだった

 

そして、慧と霞は無表情に見えたが、内心は上機嫌だった

 

 

 

 

時間は過ぎて放課後

 

ルリの手作り弁当を食べてる武を見てヒロインズ(慧と霞を除く)がぐぬぬ……としてたりしたが、放課後である

 

「ワリ、先に帰るわ」

 

武はそそくさと一人で教室を出ていった

 

この後は校門前で待っているルリと合流。そのままゲームセンターに行き、もし全員後ろから追って来てたら帰り際に公園へ行き、ネタばらし。来ていなかったらメールでネタばらしとなっている

 

何故ゲームセンターかと言うと、そのゲームセンターはここ最近に出来た物であり、二人ともそのゲームセンターに興味があったからである

 

「あ、待ってよ武ちゃん!」

 

純夏がそれを追うと同時にゾロゾロとヒロインズが武の後ろを追う

 

「この後用事があるんだよ」

 

決して、デートとは言わない。脈ありと思わせるな。ともルリから言われている

 

そして、ヒロインズを振り切るようにして下駄箱で靴を履き替え、校門へと走る

 

そして、暫く走ってから風で揺れる銀色の髪を見つけた

 

「ルリちゃん!」

「……あ、武さん。やっと来ましたね」

「すまん、待たせ……た……」

 

ルリの服は朝の私服とは違い、セーラー服だった

 

「ルリちゃん……?その格好は……」

「実は学校に通い始めたんですよ」

「マジで!?」

 

ルリは平和になってから本当にニート生活をし始めたため、まさか学校に行くとは夢にも思わなかったのだ

 

「うそウサ」

「くそっ!騙された!!」

「エイプリルフールですし」

 

クスクス。と笑うルリ

 

実はただのコスプレでした

 

「夕呼さんが送ってくれるみたいですからもうちょっと待ちましょうか」

「そうだな」

 

で、移動は夕呼が車で送ってくれる

 

途中経過を話すためだ

 

ちなみに、夕呼は軍属のため、結構忙しい身……なのだが、何故か今回は手伝ってくれた

 

「って、すぐに来ましたね」

 

ルリ達の目の前に夕呼の車が止まる

 

「ほら、さっさと乗りなさい」

「ありがとうございます」

「じゃあ、ゲーセンまでお願いします。先生」

「はいはい」

 

そして、夕呼の車が発進する

 

一歩遅れてヒロインズが駆け付ける

 

「どっち行った!?」

「あっちだ!」

「追うわよ!」

 

そして、全力で夕呼の車を追跡した

 

一方、車内では

 

「どうだった?」

「彩峰と霞にはバレました」

「彩峰と社……まぁ、確かに気付いても可笑しくは無いわね」

「一応ある程度はモニタリングしてあるので映像の記録は夕呼さんのパソコンに送っておきます」

「えぇ、後で爆笑させてもらうわ……さ、着いたわよ」

「では、後は公園で待機を。その必要が無ければなるべく早く連絡します」

「構わないわ」

 

夕呼の車から降りる。夕呼の車は公園へと向かっていく

 

「……さ、思う存分遊びましょうか。金はある」

「ふっ……俺もだ」

 

二人してジャラッと音が聞こえる財布を取り出す

 

伊達に軍で戦術機は駆っていない

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

と、言いながら武の腕に抱きつくルリ

 

「ちょっ!?」

「誰が見てるか分からないんですよ?さ、早く行きますよ」

 

その後はクレーンゲームで景品を片っ端からかっさらっていったり、格ゲーで対戦し合ったり、途中でヒロインズが監視してるのに気付いたけど放っておいたり、パンチ力を測るゲームで武がボクサー並の記録を叩き出したりと色々とあった

 

「それじゃあ、公園に行くか」

 

ゲーセンから出てきた二人

 

「えぇ……その後は」

 

ルリが武に微笑み、武もルリに微笑んだ

 

一方、ヒロインズは

 

「その後!?その後って何!?」

「そりゃ……既成事実?」

「ルリさんはまだ十三よ!?そんな事……」

「でも、恋人してます」

「まさかタケルってロリコン!?」

「あ、それならわたしにもチャンスが……」

「無いと思う」

「う~……」

 

なんか色々と誤解されてるが、武には丸聞こえだ

 

(ロリコンじゃねぇよ!!)

(あ~……人間って面白っ(笑))

 

小悪魔的な笑いを浮かべてるルリだったが、誰も気付かなかった

 

そして、件の公園へ着いた

 

既に夕呼の車が隠されており、夕呼自身も公園で隠れ、とある物を持ってきている

 

武とルリが公園の中に入る

 

そして、

 

「そろそろ出てきてもいいんじゃないですか?」

 

ギクッ!!となるヒロインズ(慧と霞を除く)

 

思わずさらに身を隠す

 

「……さて、じゃあ夕呼さん」

「はいはい。全く、大人を待たせるものじゃないわよ」

 

そして、公園の影から夕呼が出てくる

 

「はい、ちゅーもーく」

 

と、言いながらルリはそれを掲げる

 

「今日は何の日?」

 

と付け加える

 

すると、ヒョコッとヒロインズ(慧と霞を除く)が顔を出し、慧と霞は普通にスタスタと出てきた

 

そして、ルリが掲げた物に書いてあったのは

 

『……ドッキリ大成功!?』

 

そう。ドッキリ大成功!!とデカデカと書かれていた

 

「いえーい、ドッキリ大成功で~す」

 

パフパフパフ。と夕呼が手で音を鳴らすラッパを鳴らし、武がタンバリンを振りまくりながら叩きまくり、慧が何処から取り出したのかドラムスティックをクルクルと回し、時に打ち付け、霞はカスタネットをタンタン。と鳴らし、ルリは何処から取り出したのか鍵盤ハーモニカでチャルメラを演奏し始めた

 

純夏、冥夜、千鶴、壬姫、美琴は目を白黒させている

 

「いやー、こんなにもコロっと騙せれるとは」

「え……どういう事?」

 

純夏が聞く

 

「今日はエイプリルフールです。嘘をついていい日です」

「つまり私達……」

『騙された!?』

「ちなみに、私達は最初から気付いてた。ブイ」

 

そして、騙されたヒロインズの肩がワナワナと震えている

 

そんなヒロインズを見て武は一歩前に出て、

 

「さぁ、思う存分殺れ!!」

 

その日、公園に一人の男の断末魔が響いた

 

 

 

 

その後は自然に解散。夕呼も帰った

 

そして、残ったのは殴られた跡と切り傷と銃弾が掠った後と引っ掻き傷と火傷を体中に負った武とルリだけだった

 

「いたた……あいつら本気でやりやがって……鍛えてなかったら即死だった……」

 

むくり。と立ち上がる武

 

「いやー、面白かったですよ」

「まぁ、ボコボコにされるのはこの計画にのった時から分かってたけど……」

 

やれやれ。と武が手を横にして首を横に振る

 

「ってか、何であいつらあんなに怒ってたんだよ……俺の事異性として好きでもないくせに……」

 

あれだけやってまだ気付かないのか。と逆に感心する

 

「んじゃ、俺達も帰……」

 

そこまで言ったところでいきなりルリが武の足を膝裏から思いっきり蹴り、膝カックンさせた後に正面から思いっきりぶつかり、そのまま武を押し倒す

 

「ル、ルリちゃん!?」

 

想定外の事に驚く武

 

「動かないで」

 

ルリが武の目を見てそう武に言う

 

どういう事だと言おうとした瞬間、ルリの顔が自分に段々と迫ってくる

 

「武さん……」

 

ルリが武の名を愛おしそうに呼ぶ

 

そして、ルリの少し長い前髪が武の額に当たり、それでもルリの顔は迫ってきて

 

いきなり急接近され、ドキドキとなる心臓。女の子特有の甘い香りが鼻の奥を擽る

 

こうなったらままよ!とこれから来るであろう未知の感触に備え目を閉じる

 

目を閉じ、数秒。何の感触も無い

 

不意に、額に当たっていたルリの髪が離れた

 

「くすくす……」

 

そして聞こえたルリの笑い声

 

ゆっくりと目を開けると、自分の体に跨って口に手を当てくすくす。と笑っているルリがいた

 

「期待しちゃって」

 

トン。とルリの人差し指が武の額を押す

 

そんなルリの仕草は小悪魔的に微笑んでいるルリとピッタリで

 

まさに、目の前にいるのは美少女だった

 

「ル、ルリちゃん……?」

「さっきの続きがしたい?」

 

唇に手を当て、小さく首を傾げる

 

シャラン。とそれに応じて綺麗な銀色が揺れた

 

「い、いや……その……」

 

どう答えればいいのか。分からずに言葉が口から出てこない

 

「ふふふ」

 

スッ。とルリが立ち上がり、武の上からどいた

 

スカートの中にあるであろう布地はギリギリ見えなかった

 

そして、ルリは公園の出口へタッタッタ。と走っていく

 

「続きがしたかったら私を落としてからもう一度言って?武さん」

 

クルッと振り返ってそう言ったルリは歳不相応に見え、何より綺麗だった

 

そんなルリを見て、声は出なかった

 

そして、ルリは公園から去っていった

 

残ったのは静寂と、微かに残ったルリの香り

 

武は数分間、公園の出口を見つめたままだった




いやー、何とかエイプリルフールに間に合った今回の話です

何故か最後にラブコメが。そして何故書いてて楽しかったのか

ルリと武の間にフラグは建っているのか?それは分かりません

あれはルリの悪戯だったのか、それとも本当にキスをしようとして止めたのか

ただ、書いてて楽しかったとだけ言えます←オイ

それと、ゲーセンとかあったり武達が学校に通ってたりとかは突っ込まないでください。マブラヴでこんな日常物を書いてみたかっただけでもあるので

最後に一つ

この話は本編とは全くの繋がりがありません。なので、この話で生存していた純夏達は本編では死んでるかもしれませんし、武も元の世界に帰ってるかもしれません

なので、本編のネタバレ要素は転生者はルリという事だけです。もしかしたら本編では死ぬかもしれません

では、本編でまた会いましょう


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本編
唐突な『転生』


どうも、初めましての方は初めまして

またお前かよ、という方。また私です

今回からマブラヴの二次をやっていきますが、注意事項があります

作者はマブラヴオルタナティブは一通りやりましたが、結構前の事なので小説版を見ながら書いていきます。時間があればマブラヴオルタナティブをプレイして小説版に無い部分を確認していきます

次に、軍事関連等はあまり詳しくないので、ここが滅茶苦茶だ。という所がありましたらご指摘ください

あと、主人公の口調が安定するのに時間がかかると思われます

最後に。次回から前書きはTV版ナデシコのアバンみたいな感じになります

それでは、始まります


「あなたは死にました。なので転生してもらいます」

「ごめんなさい。何言ってるのかさっぱり分からない」

 

辺り一面が真っ黒で何もない空間。その中に二人の女性がいた

 

一人は何処か神々しい雰囲気を纏っているが、一人は何処にでもいそうな女性だった

 

何処にでもいそうな女性が何でこんなことになったんだと記憶を探る

 

確か、大学から帰ってる途中、道路に転がっていたボールを取ろうと飛び出して、大型トラックに轢かれそうな子供がいて……柄にも無くその子を突き飛ばして助けて……そこから先の記憶がない

 

で、先程の女性の転生と言う言葉

 

「え?何?私死んだの?」

「言ったじゃないですか。死んだから転生してもらうって」

 

まだ結婚どころか彼氏も一度も作った事ないのにぃぃぃ!と膝をついて頭を抱える女性

 

「あれ?でも死んだんだから天国か地獄に行くんじゃないの?」

「あ~、実は私が居眠りしてたらあなたに関する重要書類を釜茹で地獄の釜に突っ込んでたらしく……」

「何で釜茹で地獄!?」

「あそこあったかいんですよ……何時も火が付いてますし。仕事が捗るんですよ」

 

地獄で仕事すんなよ……と内心突っ込む女性

 

と、ここで一つ気になることがあった

 

「そういえばあなたは?」

 

さっきから地獄とかなんとか言ってたけど、そもそもこの女性は何者なんだ?と疑問が湧き出た

 

「神ですけど?」

「…………えっと、黄色い救急車は……」

「遠回しに精神病院に連れていこうとするのは止めて!」

 

何故かポケットから携帯電話を取り出した女性は黄色い救急車を呼ぼうとするが、羽交い締めにされて止められる

 

離せ!という声と離すか!という声が暫くの間交互に聞こえた

 

「証拠!証拠見せるから!」

「証拠……?」

 

羽交い締めから解放されたが、片手には携帯を持っている

 

(自称)神の女性は指先を自分の真横に向けた

 

その瞬間、そこからにょきにょきと木が生えてきた

 

「ま、まさか……ゴールド・エクスペ○エンス……」

「違います。スタ○ドじゃありません」

 

スタン○じゃないなら……と、一応信用した女性

 

自分が死んだ記憶もあるし、まぁ信じてみてもいいかな。と

 

「ごほん。え~、まずはあなたに転生してもらうのですが……転生する先はマブラヴ オルタネイティブ……痛い痛い痛い痛い!!コブラツイストは止めて!」

「マブラヴ!?しかもオルタ!?よりによってか!?死ねと!?生き返った瞬間食われろと!?」

 

グギギギギ!と骨が軋む音が聞こえる

 

「死なないように特典を五つあげるから!」

「じゃあいいや」

 

と言って神をポイ捨てする女性

 

「へぶっ!?」

 

そして顔面着地。10.0点

 

「あ、なんか特典に決まりとかある?」

 

顔面を抑えて蹲る神のよこに座ってよしよしと頭を撫でる

 

「えっと……ガンダムとかでコロニーが欲しいとか戦艦が欲しいとかの特典はおまけで弾薬、燃料、食料等は無限にしておきます」

「結構サービス精神旺盛ね」

「そりゃあ、こちらのミスで死んだんですし……それくらいは」

「そう……じゃあちょっと考えさせて」

 

女性はそう言うと、う~ん……と言いながらウロウロとし始めた

 

そして、数分が経った後

 

「決まった」

「案外早いですね」

「取り敢えず、ナデシコCとエステバリスを全フレーム含めて五機、それと──────を頂戴」

「……死ぬ気あります?」

「無い!」

 

死ぬ気はさらさらない様子である

 

「で、次に遺跡と演算ユニット無しでのボソンジャンプを可能にして、ついでにオモイカネでのナデシコCの自動運行を可能にして」

「え、それで一つですか?」

「これで一つ」

 

最近の人って欲張りだな~……なんてボソボソと呟いていた神だが、女性は構わず特典について話す

 

「で、私をA級ジャンパーとIFS強化体質にして」

「まぁ、それくらいならいいかな?」

 

これで三つの特典が決まった

 

「四つ目はナデシコCと──────、それとエステバリスから他のエステバリスを遠隔操作出来るようにして」

「はい、大丈夫です」

 

そして、次が最後の特典

 

「最後は私がマルチタスクを使えるようにして」

「なんだか二つ目が欲張りすぎて最後辺りが普通に聞こえる……ちょっと待っててくださいね」

 

そう言うと、神は何処かに消えていった

 

ポツン。と残された女性はどうしようかと悩んだ後、寝転がって寝ることにした

 

ぐっすりと夢の中に入って数分後、神が戻ってきて女性を叩き起した

 

「なに~……?」

「えっと、特典ですけど、ボソンジャンプについては遺跡と演算ユニット無しでも出来るっていうのは元からのサービスらしいのでそこはカットしますね」

「ほんとサービス旺盛ね……」

「昔、それで色々とあったようで……」

 

確かにボソンジャンプは色々と面倒だものね……と呟きながら目をこすって起き上がった

 

「あと、注意事項ですが、あなた以外の人物がボソンジャンプすると死にます」

「あ、そこは普通ね」

「くれぐれも注意してくださいね」

 

あ、と声を上げる神

 

「それと、弾薬やエステバリスと──────のバッテリー、食料は無限になってます。ですが、ナデシコCに関しては相転移エンジンの都合上、どうしてもグラビティブラストとディストーションフィールドは相転移エンジン頼りになるのでそこは注意してください」

「分かった」

「それの、エステバリスの銃火器の弾薬ですが、弾切れはしますので、弾が切れたときはちゃんとナデシコで補給してくださいね。ナデシコには弾薬は無限にありますから」

 

神が懐からカンペを取り出し、なんどか見る

 

「まぁ、これくらいですかね」

 

そう言うと、神は懐から何かを取り出した

 

「え、なにそれ」

 

黒光りして、何かが飛び出そうな穴がある

 

「転生用の拳銃です。最近、落とし穴とかはテンプレになってきてるので……あ、グラビティブラストの方がよかったですか?」

「どっちにしても死んじゃうから!当たったら死んじゃうから!」

「それでは、楽しい第二の人生を」

 

ターン。と乾いた音が響き、女性がスッとその場から消えた

 

「いや、実弾なわけないじゃないですか。転生用の特殊な弾丸ですよ」

 

そんな神の声は女性に聞こえる筈がなかった

 

「さて、後はあのヒゲオヤジにこの書類を提出しないと……あれ?容姿?歳?……あ、聞き忘れちゃった……まぁいいや。こっちで適当に決めておこっと」

 

神もその場から消えていった

 

その空間には誰も居なくなった




──────の部分は最後の最後で分かるようにします。──────は最後にしか出さない予定なので

一応、ナデシコ知らない方のために本編の方でも簡略化した説明が入ります

次回から本格的にスタートです


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『友好的』に接触しよう

なんか知らないけど私は神様とやらのミスで殺されたみたい。ほんと、迷惑な話よね

突発的にナデシコ系の特典頼んじゃったけど……

まぁ、為せば成る。ってな訳で行ってみよ~


「……ん?」

 

やけに近未来的なブリッジのような場所の中、少女が目覚めた

 

その少女は先程、転生したあの女性だった

 

「……何処?ここ」

 

ちょっとフカフカで座り心地のいい椅子から降りて周りを見渡す

 

そして、視界の中にふと手紙のような物が見つかった

 

「手紙?」

 

それを手にとって封を開けて中の便箋を取り出すと読み始めた

 

『おはようございます。どうですか?転生した気分は』

 

そうだ。マブラヴオルタネイティブの世界に転生したんだった。とようやく思い出した

 

『あなたがいる場所はナデシコCのブリッジです』

 

もう一度周りを見渡して、そういえばこんな感じだったっけ。と心の中でつぶやく

 

『そして、ナデシコCが駐在してる場所は地球と月の間辺りの宇宙です』

「えっ!?」

 

少女は真正面のガラスから外を見る

 

確かに下の方は青く、上の方は黒かった。黒の中にはいくつか光が見える

 

初めての宇宙にはしゃぎたいが、まずは手紙を読む事が先決だった

 

『現在は重力発生装置で無重力状態ではありませんが、あなたの声一つで切り替えが可能です』

 

それを見てから、試しに重力発生装置、オフ。と言った

 

すると、いきなり変な浮遊感に見舞われ、銀色の髪の毛が重力に逆らい始めた

 

「あれ?私の髪の毛……銀色だったっけ?」

 

転生する前は黒色だったけど……と思いながらも手紙を確認する

 

『あと、あなたの容姿ですが、機動戦艦ナデシコに出てくるキャラクター、ホシノ・ルリになってます』

「ルリルリ!?」

 

いきなり衝撃的な事が書いてあり、思わず飛び上がった

 

体がふわぁと浮き上がり、天井に当たって地面に跳ね返ったりと面白い事になってるが、気にせず手紙を読む

 

『歳は十三歳です。名前は自分で決めてください』

「なんともまぁ中途半端な……」

『これからどうするかはあなたの自由です。それでは、新たな人生をお楽しみください』

 

ここで手紙は終わっていた

 

取り敢えず取っておくことにしたので、個室に行こうとした

 

その時、目の前にモニターがあらわれた

 

「きゃっ!?」

『初めまして。おはよう、こんにちは、こんばんは』

 

そんなことが書かれていた

 

「えっと……もしかしてオモイカネ?」

 

今度はモニターに正解。私はオモイカネと表示された

 

「今は自動運行中?」

『そう。今は地球の周りをゆっくりと移動している』

 

オモイカネの返事を見ながらブリッジから出る

 

「あ、そうだった。よろしくね、オモイカネ」

『よろしく』

忘れていたオモイカネへの挨拶をする

 

「そうだ。地図だせる?」

 

すぐに目の前に地図が表示される……太陽系の

 

「いや、この船の地図」

『オモイカネジョーク』

 

コケっと器用にこけるが、オモイカネは気にせずナデシコCの地図を出す

 

「えっと……今はここで……ここね」

 

自分の自室に設定してある部屋を見つけてそこに向かって歩き始める

 

ナデシコの中は複雑ではなかったのですぐに覚えれそうだった

 

ナデシコCの全長は240メートルだが、重力発生装置を切ってあるため、壁を蹴ってスイスイと移動する事が出来た

 

息継ぎができるプールみたいでコツは早目に掴めた

 

「あ、ここだ……って止まれない!?」

 

だが、自室の前をそのままスルー

 

「お、オモイカネ!重力発生装置オン!……ってぴゃっ!?」

 

彼女の言葉で重力が生まれてドスン。と地面に落ちる。仰向けで

 

「いたたた……これからは重力発生装置はずっとオンにしておこ……」

 

顔も打ったのか、顔を手で抑えながら自分の自室に行く

 

「……開けかた分からない……」

 

勿論、開け方なんて分かるはずもなく、そのまま立ち往生

 

どうしたものか。と困っていると目の前にモニターが

 

『ポケットにマスターキー』

「え?」

 

ガサゴソとポケットを漁ると、一枚のカードが

 

そして、扉の横にはなんともスキャンしてくださいと言わんばかりについている機械

 

そこにカードをスキャンすると、ウィーンと扉が開いた

 

「おぉ」

 

感嘆の言葉を漏らして中に入る

 

中は洋風でベッドとテレビ、それとコンロ等の調理器具、それに椅子とテーブルがあった

 

「あれ?調理器具?」

 

食堂があった筈……と自分の右側にスライドさせてあった地図を見る。もちろん食堂はあった

 

「あ、小腹が減った時のためか」

 

地図をもう一度自分の横側にスライドさせておく

 

「お腹が空いたら食堂でいいかな」

 

ベッドに座りながら部屋を見渡す

 

「……さて、これからどうしようかな」

 

これからのこと。このまま宇宙で退廃的な生活をしてもいい。だけど、この世界の主要キャラは殆どが死んでいる

 

前の自分みたいに誰とも付き合ったり結婚したりする事なく

 

「……よし、目標は主要キャラを桜花作戦終了まで生き延びさせる。それにしよう」

 

簡単じゃないけどね。と呟く

 

あ、と声を上げる

 

「ついでに退廃的な生活がしたい!死ぬまで!」

 

究極の馬鹿がここにいた

 

 

 

 

そうと決まればこれからナデシコでどう立ち回っていくかが重要だ

 

宇宙からの支援は流石に無理がある。だからと言ってエステバリスだけで地球に行ったところでかなり無理がある

 

ナデシコが降りたら目立ちすぎる。そんな事したら追われる身になるだろう

 

「……あ、オモイカネ。今日は何月何日?」

『10月22日、午後6時』

「10月22日…………もう始まってる!?」

 

マブラヴオルタネイティブは10月22日、主人公の白銀武がこの世界に来ることで始まる

 

つまり、もう始まってるのだ

 

しかも午後6時と言うことは207Bの訓練兵達とは既に顔見知りだろう

 

「一体どうしたものか……香月博士とコンタクトを取れれば……ん?香月博士?」

 

暫く考え込んで……

 

「そうだ!香月博士!」

 

彼女とコンタクトを取れればナデシコの事も何とかしてくれるだろう

 

彼女はブリッジに向けて走り出した

 

「オモイカネ!ハッキングの用意を!」

 

目の前に合点、了解、分かった、へいへい等々、オモイカネのモニターが現れるが、片っ端から消していく

 

その際に地図も消してしまったが、後でまた出せば問題ないだろう

 

ブリッジに入って艦長席に座り、ナデシコに搭載されているハッキング機能をIFSで起動させる。右手にIFSの媒体が浮かび上がる

 

IFSとは、Image Feedback System(イメージフィードバックシステム)の略であり、その名の通り自分の頭の中でイメージした事を体内のナノマシンが機械に伝達するという画期的なシステムだ。これのおかげでエステバリスはOSでは不可能な軌道だって出来るようになった

 

だが、ナノマシンの注入が必要不可欠なため、この世界では彼女しかナデシコCは動かせない

 

「オモイカネ、ハッキング場所は香月博士のパソコン。私はやり方が分からないけど出来る?」

『問題ない。ばっち来い』

 

オモイカネのそんな返答にクスリと来るけど、オモイカネはそんなの知ったこっちゃないと言わんばかりにハッキングを開始する

 

『ちなみに、やり方はこんな感じ』

 

と、オモイカネが説明書のようなものを表示させる

 

彼女はそれを読み始めた

 

オモイカネと彼女が作業に集中してる間にナデシコCについて説明しよう

 

ナデシコCは『一人一戦艦』のコンセプトの元、作られた三機目のナデシコだ

 

相転移エンジンと呼ばれる真空からエネらルギーを取り出すエンジンを三機も搭載している

 

そして、その相転移エンジンから得られる莫大なエネルギーを使ったナデシコの武器、グラビティブラスト。別名、重力破砲

 

空間を湾曲させながら発射する重力破を叩きつけるほぼ一撃必殺の武器だ

 

そして、ナデシコの周りにはディストーションフィールドと呼ばれるバリアが張られており、これは光学兵器やグラビティブラストを防ぐ事が出来るトンデモバリアだ

 

しかしミサイル等に効果は薄いようで、被弾こそしないが、ディストーションフィールド越しにかなりの衝撃がナデシコを揺さぶる事になる

 

ナデシコの武装はこのグラビティブラストと少しのミサイルだけ

 

そして、一人一戦艦だが、ナデシコCは彼女一人だけで運行させる事が可能なのだ

 

IFSにより、一人で戦艦を動かすなんていう夢物語と思われた事も可能になったのだ。しかし、スーパーコンピュータであるオモイカネの補助が必要不可欠だが

 

『終わり』

 

おっと、ハッキングが終了したようだ

 

「ありがと、オモイカネ」

『どういたしまして』

 

丁度電源がついてたらしく、メッセージを打ち込むことにした

 

キーボードなんてものはないため、IFSで文をイメージしたらメッセージは送信できる

 

だが、どうせならリアルタイムで会話をしたいのでチャット形式で会話することにした。IFS様々である

 

「こちら、ナデシコC艦長……あ、名前決めてないや」

 

勿論、これは送信されなかった

 

う~んと唸っていると、あちらから先にメッセージを送信してきた

 

『あなた、何者?』

 

 

 

 

今日は色々と起こる日だと私、香月 夕呼は思う

 

シロガネタケル。戸籍を見れば既に死んでいる筈の男がこの基地にいきなりやってきて、自分は違う世界から来た後、未来から来たと言い出した

 

普通なら独房にぶち込む所だけど死んでいる人間がここにいるのなら少しは信用ができる

 

だから、あいつが言う、前の私がやったように207B訓練部隊に所属させた。明日には戸籍諸々、用意し終わる

 

それでパソコンを一度切ったすぐ後。またパソコンが一人でについた

 

もう一度消そうとしたけどマウスのカーソルが出ない。それどころか画面は真っ黒

 

暫く経っても何もないからキーボードで適当に文字を入力してみた

 

そうしたら画面に文字が映った

 

考えられる手段は数個ある。もしも、これがハッキングで、あちらから何か言ってくる予定だとしたら

 

ならばこっちから仕掛けてやろう。と考えた

 

結果

 

「あなた、何者?」

 

見る限り私のパソコンにしかハッキングしてないから私の事は知っているだろう。だから敢えてこんな風に聞いた

 

そして、暫くして一人でに文字が映し出された

 

『私はナデシコC艦長、ホシカワ・ルリです』

 

……ナデシコCって何よ

 

 

 

 

「と、言うわけで私の名前はホシカワ・ルリで決定で~す。ぱちぱち」

 

半分棒読みでそんな事を誰もいない空間で言ったが、虚しいだけだった

 

ちなみに、漢字表記では『星河 瑠璃』だ

 

「我ながら安直な名前……」

 

ただ、機動戦艦ナデシコに出てくるキャラの名前をくっつけただけだったりする

 

「えっと……私は今、大気圏外……衛星軌道上にいます」

 

IFSに慣れてないため声に出てしまうが、しっかりとチャットは出来ている

 

『なにが目的?私のパソコンにハッキングなんかして』

「地球に降りてもいいですか?あ、場所は横浜基地です」

 

香月博士なら上手いことやってくれる筈だと思ってこうやって頼んでいる

 

『勝手に降りればいいじゃない』

「アメリカや中国に見付かって鹵獲しようと追われるのは嫌なんです」

 

暫くの沈黙

 

『なんで追われると分かってるの?』

「こちらにはあなた方の技術では考えられない物を積んでいます。と、言うかこの艦を見れば分かります」

 

ブースター噴かずに浮いてる戦艦なんて誰が予想できようか

 

『で、目的は?』

「BETAの殲滅」

『そちらになんの得があるの?』

「見返りなんていりません。ただ、殲滅し終わった後の退廃的な生活を約束していただければそれだけでいいです」

『l5img6hc43'k'ie3#s03ano』

 

何事!?と叫びそうになった

 

『ごめんなさい。ずっこけたわ』

 

どういうこっちゃ。と声に出したくなった

 

『退廃的な生活……って』

「ぶっちゃければニートです」

『ニート?』

「無職です。無職ながら安定した生活がしたいです」

 

夕呼が苦笑いを浮かべてる姿が簡単に思い浮かべれた

 

「それさえ確立してくれればオリジナルハイヴだろうが落としてあげますよ」

 

垂直にグラビティブラスト撃ちまくっとけばその内あ号標的消せるだろうし。と内心でぶっちゃける

 

『取り敢えず、今日の夜の内に降りてこれるかしら?話がしたいわ』

 

よし!と内心でガッツポーズをする

 

「そうですね。じゃあステルス機能で……あ」

 

ここで一つ思い出した

 

ボソンジャンプしたらいいじゃん。と

 

「えっと、じゃあ今から横浜基地横の海の中に行きます」

『待ちなさい。今から?』

「はい。会談は明日にしましょう。ナデシコの位置はそちらのパソコンに送っておきます」

『……まぁ、他国に見つかるんじゃないわよ?』

 

そこでチャットを切った

 

まぁ、見つけようにも見つけることができないやり方で移動するからいいのだが

 

「オモイカネ。ボソンジャンプ出来る?」

『大丈夫だ、問題ない』

「ここでネタって……まぁいいや」

 

ボソンジャンプに必要なのはイメージ

 

イメージは海底。場所は横浜基地の真横の海

 

ルリの体にナノマシンの媒体のような物が全身に浮き出る

 

それと同時にナデシコCも揺れ始める

 

『ジャンプフィールド固定。ジャンプ可能』

 

オモイカネが報告する

 

「ジャンプ」

 

その一言と同時にナデシコCは宇宙空間から消えた

 

 

 

 

横浜基地横の海底。そこにナデシコCはいた

 

ボソンジャンプにより、五分後の横浜基地横の海底に出現したのだ

 

ボソンジャンプとは『瞬間』移動ではない。ボソンジャンプの前後には必ず時間差が生じるのだ

 

それは何分後か何分前か……はては数秒前後か週を跨ぐか……

 

ボソンジャンプとは便利そうで実はそうでもない移動法なのである

 

「えっと……五分後?」

『はい』

「……成功か……疲れた……」

 

オモイカネが艦内のチェックをする。問題は何処にもなかった

 

ボソンジャンプは生身、もしくは何かしらの機体に乗って使えば疲労は最低限に抑えれるのだが、ナデシコのような戦艦でのボソンジャンプとなればそうはいかない

 

それはかなりの疲労を伴う

 

勿論、ルリとて例外ではない

 

「オモイカネ、水圧で装甲が歪んでたりは?」

『大丈夫だ、問題ない』

「うん……一応何があってもいいようにディストーションフィールド展開。朝までこの海域に滞在しておいて。あと、香月博士にナデシコの位置を送っておいて」

 

ふわぁ……とあくびをしてブリッジから去る

 

明日、夕呼との会談が待っている。疲れきった顔で行ったら失礼だろう

 

「そういえば、今の服……ナデシコクルーの制服だ……」

 

しかもオレンジ色の

 

お腹がすいたなんて事はなかったからそのまま自室に一直線。中にあったクローゼットを開ける

 

中には寝間着や私服等々。服は大体揃っていた。艦長服まであった

 

明日は艦長服を着よう。そう思って服を脱ぎ、寝間着を着た

 

そのままモゾモゾとベッドの中に入る

 

疲れていたからか、すぐに夢の中に入った

 

 

 

 

「……五分やそこらで横浜基地の横の海に来てるなんて……信じられないわ」

 

見張り兵に聞いたけど、空中から何かが降りてきたり音がしたりはしなかったらしい

 

音速を超えてきたらソニックブームが来るから……ワープした……なんていうのは物理法則とかに喧嘩売ってるし

 

相手はもしかしたら現行で最新機の不知火や近衛の武御雷よりも高性能な戦術機よりもより一層、性能がいい何かを持っているかもしれない

 

……取り敢えず、ナデシコとやらを見たいし明日はあっちに出向くとしましょう

 

……あ、白銀も連れていきましょう。もしかしたら白銀と同じ異世界から来た人間かもしれないし




そんな訳で10月22日からスタートです。ナデシコとかの説明で違ってるところとかあったら教えてくれるとありがたいです

次回はキャラ設定を投稿します

オモイカネは思兼とも書きますが、この小説ではカタカナでオモイカネに統一します

それと、オモイカネはギャグ要因でもあります



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ホシカワ・ルリとナデシコC達の『設定』

え?今回は私のプロフィールの公開?

まぁいいけど……スリーサイズとか書いたらグラビティブラストぶち込むわよ?

ってな訳で始まりますよっと



名前……ホシカワ・ルリ

漢字表記……星河 瑠璃

 

性別……女

 

歳……十三

 

容姿……機動戦艦ナデシコのホシノ・ルリ

 

特典……ナデシコC、エステバリス五機、──────

ナデシコCをオモイカネで自動運行可能

A級ジャンパーであり、IFS強化体質

ナデシコC、エステバリス、──────から他のエステバリスを遠隔操作可能

マルチタスク使用可能

 

原作知識……有り

 

 

 

 

本作の主人公。神様にミスで殺されるというテンプレイベントで転生した元大学生

 

性格は基本的に来るもの拒まず的な性格……だが、自分が苦手だと思った人間は徐々に距離を置く

 

退廃的な生活をしてみたかったが、今の社会はそんな事してたら結婚もできないだろうから諦めてた。が、転生したことで、退廃的な生活が出来るかもしれないと思い始めた。と、言うか目指し始めた

 

家事は基本的にそれなりに出来る。生きるために色々な店でバイトをちょいちょいとした事も

 

乗り物には酔いにくいが、凄い揺れる乗り物には酔う

 

エステバリスの操作はIFSが有るため、それなりに出来、戦術機やBETA相手ならディストーションフィールドもあるので大抵負けない

 

ボソンジャンプも自分が飛びたい。と思った場所に自在に飛ぶ事が出来る。が、体力がないのでナデシコCをボソンジャンプさせられるのは一日に一度。エステバリスも二十回が限界。生身ならそれなりに飛べる。距離はエステバリスに乗った状態なら木星から火星までは一気に飛べる。地球上なら日本からブラジルまで行くことも容易い

 

頭の中でイメージし、その場の物を押し退けてジャンプするため、岩の中を想像したらリアルで岩の中にいる。になるが、すぐにボソンジャンプで抜け出せば死なない

 

 

 

 

エステバリスは操縦をIFSとEOS(イージーオペレーションシステム)の切り替えが可能で、EOSを使う場合、戦術機の操縦桿やペダルを取り付けて戦術機のように操作する事も可能

 

全機体に各フレームが一つずつある

 

エステバリス自体のバッテリーが常にマックスなため、グラビティブラストでも来ない限り、エステバリスは無敵とも言える

 

ナデシコCは食材やエステバリス用の弾薬が無限にあり、ナデシコC自体の補給はしなくても済む。が、相転移エンジンが破壊された場合は修理ができないのでナデシコCは飛ぶ事ディストーションフィールドを張ることもグラビティブラストを撃つことも出来なくなる

 

オモイカネによる自動運行が可能なため、ルリがエステバリスで発進しても勝手に何処か行ったりパクられたりはしない

 

ちなみに、食材とは全て天然素材である

 

食材と弾薬は他の弾薬から分裂するように湧くので、一応上限がある

 

エステバリスの予備パーツは最初に積まれてた物しかない




大体こんな感じです。ルリの名前はテンカワ・アキトとホシノ・ルリの名前を合わせただけです

追記する事があったらちまちまと追記していきます


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何だか色々と駄目だった『接触』

なんやかんやあって香月博士とコンタクトは取れることになったわ。オモイカネとボソンジャンプには本当に感謝ね

さて、取り敢えずはあのくそ野郎(BETA)の殲滅に参加できるように香月博士に頼み込むしかないわね。あわよくば退廃的な生活の確立も

ダメ人間?なんとでもいいなさい。楽して楽しく生きてけるなら本望よ


なんやかんやあって香月博士とコンタクトは取れることになったわ。オモイカネとボソンジャンプには本当に感謝ね

 

さて、取り敢えずはあのくそ野郎(BETA)の殲滅に参加できるように香月博士に頼み込むしかないわね。あわよくば退廃的な生活の確立も

 

ダメ人間?なんとでもいいなさい。楽して楽しく生きてけるなら本望よ

 

 

 

 

「では、ナデシコCを横浜基地横に着けておきます。ステルス機能もありますが姿が消える訳ではないので誰も来ないようにしてください」

『分かったわ』

「では、おもてなしの用意をして待ってます」

 

チャットを閉じ、一息つく

 

なんとかこちらが敵ではない。アイムフレンドリーだと分かってはくれてるようだ

 

だけど香月博士の事だし一筋縄じゃいかないだろう

 

「ナデシコC、浮上」

 

ナデシコCを操縦し、一旦浮上。ブリッジと出入り口の部分だけを出るようにして海岸につける

 

ガン!とぶつかったが、オモイカネは塗装も剥がれてないから問題ないと言ってくれた

 

「オモイカネ。この場で待機。香月博士達が来たら教えて」

『がってん承知のすけ』

 

本当は誰かがチャットしてるんじゃ?と思いながらも食堂に向かって歩いていく

 

「コーヒーでいいわよね?」

 

確かこの世界では天然食材は貴重品な筈

 

BETAのせいで作物を育てる余裕のないこの世界。このナデシコCからは食料がほぼ無限に出てくる

 

転生した際にセルフサービスとして神様が食料無限をつけてくれたのだが、案外おもてなしに使えそうだった

 

「武ちゃんにも何があげようかな」

 

多分天然食材での料理なんて久しぶりだと思うし。と、思ったが今日来るなんて思えないから止めたとさ

 

 

 

 

「そういう訳で午後から訓練を抜けます」

「香月博士から話は聞いている。特別任務だってな。気を抜くなよ」

「はい!」

 

一方、訓練兵は座学の時間

 

この世界の主人公であり、恋愛原子核という謎の原子核を持っている白銀 武は教官である神宮寺 まりもに午後からの訓練は抜けると伝えた

 

まりもはあらかじめ聞いていたらしく、最低限の注意だけ言い、武を座らせた

 

「特別任務?」

「あぁ。香月博士から直々のな」

 

同じ訓練部隊の隊員で口数は人と比べて少ない彩峰 慧が最初に口を開いた

 

武が夕呼から直々の特別任務だと言うと皆が驚いた

 

「香月博士からのか……凄いではないか」

「そうか?」

 

次に口を開いたのは同じく訓練兵でポニーテールの御剣 冥夜

 

「そうだよ!やっぱりたけるさんは特別なんだ~」

「まぁ、特別の前に自称が付かないように頑張ってるのが現状だが」

 

続いて同じく訓練兵で背が小さく、重力に喧嘩売ってるとしか思えない髪型の珠瀬 壬姫

 

「まぁ、香月博士に失礼がないようにちゃんとしなさいよ」

「分かってるって」

 

今度はこの訓練部隊の隊長で大きな三つ編みと丸メガネがかなり特徴的な榊 千鶴

 

「ほら、怒られる前にとっとと集中」

 

武は一つ疑問があった

 

この時期に夕呼に呼び出され、何処かに行くという事は無かったはずだ

 

何処に行くかも聞かされてなかったし

 

しかもナデシコCって知ってる?とか聞かれて……わからないと言ったら訓練に言ってもいいわよ。と言われた

 

が、取り敢えずは訓練に集中。くだらない事で怒られたらたまらない

 

 

 

 

お昼時。ルリは一人で昼食を食べていた

 

ちなみに、適当に作ったチャーハンだ

 

「うん。美味しい」

 

モグモグと食べ進めていると、目の前にモニターが現れた

 

それに驚いてチャーハンを喉につまらせるが、水を飲んで無理矢理流し込む

 

「はぁ……えっと……あ、もう来てるの?」

『ついさっき到着した』

「分かった。私が出入り口に行ったらそこを開けて」

 

ルリは立ち上がって出入り口に向けて歩き始めた。チャーハンとレンゲ片手に

 

 

 

 

「……なんですか?これ」

「私もわからないわよ……何これ」

「……」

 

一方、ナデシコの外

 

武、夕呼、霞の三人はナデシコ(ブリッジ部分)を見て唖然としていた

 

ちなみに、霞とは社 霞の事である

 

そして、ナデシコの一部が稼働し、三人の前まで橋みたいな物をかけた

 

「どうも皆さん。ナデシコC艦長、ホシカワ・ルリです。よろしく」

 

そして、そこからチャーハンとレンゲを持った少女が現れ、言葉を失ったのは言うまでもない

 

 

 

 

なんで驚いているのだろう。それがルリの思った事だった

 

白色の何処の制服かわからない物を着た少女がチャーハンとレンゲ片手に出てきたら誰だって言葉を失う

 

ちなみに、手にチャーハンとレンゲを持っているのは気づいてないようす

 

「(武ちゃん来てるじゃん……)どうぞ入ってください」

「えっと……そのチャーハンは?」

「え?……あっ」

 

ようやく気づいた様子

 

そして暫く沈黙

 

「……お昼ご飯食べました?」

「まだよ」

「俺もだ。お陰で腹へった」

「……」

 

霞は何も言わなかったが、コクン。と頷いた

 

ちなみに、さっきまでうさ耳がピーン。と跳ね上がってたりした

 

「ならお昼ご飯出しますから入ってください」

 

モグモグとチャーハンを食べながらナデシコCの中に戻っていくルリ

 

夕呼がルリの後をついて行くのを見て霞と武もナデシコに入っていった

 

 

 

 

「ナデシコCは全長240メートルの戦艦。基本的に陸、海、空での戦闘は可能です」

 

場所は移って食堂

 

食堂に行く前にルリと夕呼達は自己紹介を済ませ、ルリは夕呼を香月博士、武を武さん、霞を霞さん。と呼ぶ事にした

 

夕呼はルリの事をホシカワ、武はルリちゃん、霞はホシカワさんと呼んでる

 

「空?戦艦なのにか?」

「それは後で説明します。あ、何がいいですか?作りますよ?」

「あ、私と霞は何でもいいわ」

「俺は……鯖味噌で」

「分かりました。すぐに作ります」

 

食堂でそんなことを話している四人

 

ちなみに、ルリは転生前はレストランでバイトしてた事もあるので料理のスキルはそれなりにある

 

「あ、あと紹介しなきゃいけないのがもう一つ。オモイカネ」

 

ルリの目の前にモニターが現れる

 

ルリがそれに指を当てて三人の座ってるテーブルに投げるように指を動かす

 

モニターは三人の前で静止した

 

「うぉっ!?スゲェ!」

 

武は目をキラキラとさせて驚いていたが、夕呼と霞は普通に驚いている

 

「このナデシコCに搭載されてるスーパーコンピュータ、オモイカネです」

『オッス、オラオモイカネ』

 

モニターにオモイカネの自己紹介文が表示される

 

が、何処ぞのサイヤ人風だったため、武が笑いかけた

 

「このナデシコCは私とオモイカネだけで運航しています。人間は私だけです」

「待ちなさい。一人?そんなの無理に決まってるじゃない」

「この艦は一人一戦艦をコンセプトに作られた戦艦です。最も、私専用になっちゃってますが」

 

ジュージューと米が炒められる音をBGMに会話は続く

 

「一人一戦艦?」

「はい。それもこの後見せます」

 

ルリがトレーを器用に三つ持って、鯖味噌とご飯、味噌汁、漬物の乗ったトレーを武に。他のチャーハン二つを夕呼と霞の前に置いた

 

「食べてください」

「お、おう。いただきます」

 

武が鯖味噌をパクリ

 

その瞬間、目を見開いた

 

「う、美味い!!」

「あ、言い忘れてましたが、その食材は全部天然です」

「マジでか!」

「どれ」

 

夕呼と霞もパクリ

 

「あら、美味しい」

「美味しい……」

「話の続きですが……」

「あ、おかわり貰えるか?」

 

既に武の茶碗の米は空

 

「はい。で、この艦にはエステバリス……あなた達の言う戦術機が何機か積まれています」

 

武の茶碗に米をペッタペタと盛りながら話を進める

 

「後でそれも見せます。ただ、そちらに譲ることは出来ないのであしからず」

 

茶碗を武に渡すと武はまた米を口に運ぶ

 

「米が美味い……!」

(合成食材ってどれだけ不味いんだろう……)

 

武の様子を見て合成食材の事が気になったルリ

 

「……で、ホシカワ?あなたは何が目的?」

「先日も話したとおり、BETAの殲滅……」

「他には?」

「退廃的な生活」

「本当にそれだけなの?」

 

チャキッ。と夕呼が拳銃を取り出してルリに向ける

 

「はい。あ、撃っても構いませんよ?私が死んだらこの艦は爆破させますが」

 

これは建前。心の中では

 

(止めて!お願いだから!流石に死んじゃうって!そんな物で撃たれたら!)

 

結構ビビってた

 

「先生!なんで銃を……」

「黙りなさい白銀。で、本当にそれが本音なの?」

「早くその物騒な物しまってください。死んだら元も子もないので。いや、ほんと退廃的な生活を送りたいだけなのでいやホントに(はい。そうですよ。これ以上望むことはありません)」

『え?』

 

ここでまさかの心の中で叫んでた事と建前の逆転

 

「え?私何かおかしな事言いました?」

「……多分、心の中で叫んでた事が表に出てたと思う」

「え……オモイカネ?」

『録音しますた』

「ちょっと首吊ってきます。早くナデシコから離れてください。自爆させますので」

「落ち着け!!」

 

食堂から飛び出そうとしたルリを武が羽交い締めにして止める

 

背の関係か、ルリがそのままプラプラと宙ずりになる

 

「死んでも記録は残っちゃうから!俺達の心に!」

「ならあなた達を殺して私も死ぬ!!」

「それは解決になってないから!鮮血の結末と言う名のバッドエンドだから!」

 

ジタバタとするルリだが、そんなの鍛え続けてきた武には通用しない

 

その内息を切らして諦めたルリだった

 

「……まぁ、信じてあげるわ」

「え?」

「何か企んでる人間が本音と建前が逆転するわけ無いでしょ?と、言うか初めて見たわよ。そんな人間」

 

プラプラとしてるルリが暫くしてホッと息を漏らす

 

ちなみに、武は鯖味噌とかは食べ終わってる

 

「……では、皆さんが食べ終わったらナデシコを案内します。あと、武さん。下ろさないと痴漢で訴えて勝ちます」

「あ、悪い……って勝つのが前提かよ!」

「そのまま襲われかけたとでも言えば有罪でしょ」

「捏造すんな!」

 

そんな二人の漫才を見ながら夕呼と霞はチャーハンを食べ続けていた

 

シュール

 

 

 

 

「ここが格納庫です」

 

数分後。四人はナデシコの格納庫にいた

 

格納庫には陸戦フレームのエステバリスと空戦フレームのエステバリスが3:2の割合で並んでいた

 

そして、奥の方には真っ黒な機体が鎮座していた

 

「小さいのね。五メートルかしら?」

「六メートルです。操縦方法はIFSとマニュアル、EOSです」

「IFS?EOS?」

「イメージフィードバックシステムとイージーオペレーションシステムの略です。まぁ、その名の通りです」

 

そう言うと、夕呼はすぐに質問を出した

 

「待ちなさい。そうなると機体を頭の中のイメージで動かすなんて事になるわよ?」

「実際その通りです。体に注入したナノマシンがそれを可能にします」

「な、ナノマシン?」

「まぁ実際に動かせば分かります。武さん、こっちへ」

「あ、あぁ」

 

武を連れて陸戦エステバリスに乗り込む

 

ちなみに、ルリが武の膝の上に座っている

 

「……操縦桿とかペダルは?」

「ありません。言うならばこれが操縦桿です」

 

ルリが指をさしたものは黒色の球体状の物

 

ルリがそれに手を置くと、手にIFSの媒体が写り、エステバリスの電源がついてモニターに外の風景が映し出される

 

「マジか!」

「マジです。では、動かしますね」

 

ルリの声と同時にエステバリスが動き出し、シャドーボクシングを開始した

 

「これは私のイメージで動かしています」

「これだったらバルジャーノンのモーションの再現も……」

「バルジャーノンが何かわかりませんが出来ます」

 

何時の間にかエステバリスはラジオ体操をしている

 

「ちょっと俺にもやらせてくれ」

「動かせませんよ?と、いうかナノマシンが必要って聞いてました?」

「やってみねぇと分からねぇだろ」

「分かるから言ってるんです……まぁ、やってみればいいんじゃないですか?」

 

ルリが手をどけて、武が手を置く

 

武が最後にやったのが二年以上前のバルジャーノンのモーションをイメージする。が、動く筈はなく

 

「あ、あれ?」

「言ったでしょう?」

 

だが、諦めない武

 

「あ、そうそう。一ついい忘れてたことが」

「なんだ?」

「私はあなたと同じ異世界の人間です」

「え!?」

 

いきなりの告白に武が驚く

 

「香月博士があなたを連れてきた理由。それは私の事を知っているかも……もしくは異世界の人間かも知れない。と思ったからじゃないでしょうか?」

「ち、ちょっと待て。何で俺が違う世界の人間って……」

「Need to knowです」

 

知る必要がない。そう言われた

 

「だけど、俺にだって知る権利は……」

「私の目的は退廃的な生活を送る事……そしてもう一つ」

 

首だけを回して武の顔を見るルリ

 

「あなた達を助ける事です。この腐れきった世界から。ナデシコCとエステバリスで」

 

 

 

 

「ここがブリッジです」

「軍艦とは大違いね……」

 

エステバリスの披露が終わった後、ルリは三人をブリッジへと案内した

 

「ここが艦長席。私専用です」

 

スッ。と艦長席に座る

 

「ナデシコはここから操作します」

「そう言えば、この戦艦って空にも対応してるって言ったが……」

「はい。じゃあやってみますね。オモイカネ、操作を私に……あ、ついでに一人一戦艦というのも見せます」

 

手をIFSを認識する機械の上に置く。その瞬間、ナデシコCのブリッジから見える景色が下へと下がり始めた

 

「相転移エンジン異常なし。出力安定」

 

ルリの目の前には大量のモニターが映し出されていた

 

それらを適当に見て計器に異常が無いかを確認する。が、途中でナデシコCの浮上が止まる

 

「止まった……?」

「これ以上上げると横浜基地からナデシコが見えてしまいますから。このように一人で戦艦の操作をする事が出来ます」

 

だが、ナデシコは完全に宙に浮いていた

 

「じゃあ、もう一度着水しますね。オモイカネ、後よろしく」

 

艦長席から下りるルリ

 

「こんな感じです」

「そう……」

 

ナデシコが着水していくのをブリッジから見届ける

 

「あなた……何処でこんな物を?」

「あ、異世界人ですから」

 

さらりとそんなことを言った

 

「異世界人……?……まぁ、極秘裏に作ったとか言われるよりはまだ信用出来るわ」

「この世界の事はこのナデシコに記録されてました。BETAの事とかも」

 

霞がリーディングしているだろうからなるべく元から知っていたとかは考えないようにする

 

「私はこのナデシコとエステバリスを使ってBETAの殲滅を援護します」

「……駄目よ」

「えっ!?なんでですか!?先生!」

「他国にナデシコとエステバリスの存在がバレるから……でしょう?」

「そうよ」

「まぁ、止めても出ますが」

「人の話聞いてた?」

「じゃあ、オルタネイティブ4の失敗作。とかで出して貰えませんか?」

 

オルタネイティブ4。その言葉が出た瞬間、夕呼の目付きが厳しくなる

 

「あなた……本当に何者?」

「まぁ、オルタナティブ4の詳しい事は分かりませんが、駄目ですか?」

「……まぁいいわ。だけど、目立つのはやめなさい」

「私だって面倒ごとは嫌です。目立ちません」

 

ナデシコが着水した事をオモイカネがモニターで知らせる

 

それを人差し指と親指で摘むように動かして消す

 

「あ、それとそっちにも自由に出入り出来るようにしたいので隊員証とか色々とお願いできますか?」

「まぁ……それくらいならいいわ。ただ、これから私に少し付き合いなさい。あ、階級はこっちで勝手に決めるわよ」

「はい、構いません」

 

オモイカネにナデシコの警備よろしく。と言ってブリッジから出る

 

「あ、ルリちゃん。このナデシコCって戦艦なんだよな?武装は何がついてるんだ?」

 

武が前をルリに質問する

 

ルリはあ、言ってなかったっけ。と呟いて武装の説明をする

 

「ナデシコCにはグラビティブラストとミサイルが数門あります」

「グラビティブラスト?何よそれ」

「別名重力波砲。その名の通り重力波をぶつける武装です」

『……は?』

 

夕呼と武の声が重なる

 

「この世界にグラビティブラストを防げる物はこのナデシコC位です。まぁ、正面から当たれば流石に落ちますけど。あ、光線級と重光線級のレーザーは弾きますし突撃級の装甲は紙に等しいです」

 

その反則級な武装の説明に武は想像で目を輝かせ、夕呼は頭を抱えている

 

「あ、あとナデシコCにはディストーションフィールドという周囲の空間を湾曲させる一種のバリアが纏ってあります。これによって光学兵器……レーザーやビームはこの艦に当たることはまずありません。このディストーションフィールドはエステバリス単機でも展開することができ、グラビティブラストはこのディストーションフィールドがあってもそれなりの被害は受けます。あ、実弾兵器はそれなりに振動が来るので撃たないでくださいね」

「重力波砲に空間湾曲フィールド……まさにロマンの塊だな!」

「はい。ドリルとかはありませんが」

 

つまり、ディストーションフィールドを使えばエステバリスを上空に飛ばして光線級のレーザーを集中させ、その間にグラビティブラストでBETAを殲滅……なんてことが出来てしまう

 

だが、グラビティブラストは相転移エンジンのエネルギーを使ってるため、大気圏内だとグラビティブラストは一発発射すると数分から数十分のインターバルが発生してしまう。一撃必殺な分、インターバルも長いのだ

 

大気圏外だとそれなりに連射が可能である。相転移エンジンのエネルギーが続く限りは

 

「ナデシコCの武装はこれだけです」

「取り敢えず私の昨日までの常識をぶち殺してくれた事のお礼にあなたをぶん殴りたいわ」

「止めてください。子供に手を上げるつもりですか?」

「と、言うかあんた何歳よ。大人には見えないし。十六くらい?」

「十三です」

『え』

 

 

 

 

場所は移り時間も流れて戦術機訓練の筐体がある場所

 

武は訓練に戻ったため居ないが、夕呼と霞が起動中の筐体を見ている

 

しばらくして、デロン。とルリが中から出てきた。ちなみに、服は99式衛士強化装備だ

 

「ぎ、ぎぼぢわる……」

「戦術機の才能は皆無……ね」

 

顔面真っ青。口を手で抑えて這っている。見事に酔っている

 

エステバリスとは段違いの揺れとGに耐えられなかったようだ

 

「エステバリスだったかしら?あれでシャドーボクシングとか変な体操は出来てたのになんで戦術機は駄目なのよ……」

「あれ、中に振動とか殆ど来ないんですよ……何かぶつかったら揺れますけど……うっぷ」

 

エステバリスはそれなりに対G性能はよく、宇宙で全力で飛んだ所でGは殆ど来ないのだ

 

それはナデシコも同じだ

 

ちなみに、ルリはエステバリスを動かしたのは武と共に乗ったあれっきりだったりする

 

吐瀉物をまき散らしそうになるが、根性で抑える

 

「こんなエロスーツ着て酔って……最悪」

「なにがエロスーツよ」

 

フラフラと歩いてバケツを探すルリ

 

霞がトイレならあっちです。と指を指したので、それを見て走って出ていった

 

「……ほんと、何者?彼女。オーバーテクノロジーな戦艦と戦術機は持ってるわなのに戦術機には乗れないわ……」

「でも、考えてる事と言ってることは殆ど同じでした」

「……まぁ、今は信じてみようかしら」

 

うぇぇぇ……とトイレからルリの呻き声が聞こえ、呆れた夕呼だった




なんだかルリがギャグキャラになっているのは気のせいでしょうか?

あと、たまの髪型って完全に重力に喧嘩売ってますよね。冥夜にも言えますけど

武ちゃんを出したのは冥夜達も出したかったのと、ルリとの接点を作りたかったからです

99式衛士強化装備のルリルリ……見てみたいけどイラストなんてあるわけないし書けるわけもない

こんな感じでトロトロ進んでいきます



訓練に参加した初日に特別任務って……普通は有り得ませんよね。そこは大目に見てください



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長丁場の『特訓』

香月博士って結構丸め込むの大変ね。まぁ、なんとか信用してくれてるみたいだし結果オーライ。後は戦果を上げるだけ

そういえば、私の階級ってどうなるのかしら?やっぱり少尉くらいかしらね?

ま、行き当たりばったりでも退廃的な生活を送るために頑張るっきゃないわね


「あなたの隊員証と階級。その他諸々よ」

「ありがとうございます」

 

夕呼の研究部屋。そこでルリはこの横浜基地で必要になる物や戸籍謄本を渡された

 

「えっと……星河瑠璃。性別は女……歳は十三。合ってますね」

「えぇ」

 

渡された物はIDカードやドッグタグ。それと辞令と書かれてる紙や制服だった

 

「IDカードはこの部屋に来るのに必要よ。あと、ドッグタグは認識票にもなるわ」

「あ、制服は着た方がいいですか?」

「そうして頂戴」

 

ルリはその場で着替え始める

 

「なんでここで着替えるの?」

「女同士ですし。え?もしかしてロリコンですか?」

「歳上好きよ」

「ならいいじゃないですか」

「まぁ、白銀も来ないだろうし好きにしなさい」

 

ナデシコの艦長服を畳んで夕呼の机の空いてる部分に置いて基地の制服に着替え始める

 

その時

 

「先生、ちょっと報告……に……」

 

武が入ってきた

 

ルリが武を睨み、ハイライトの無い目になったかと思うと

 

「香月博士。拳銃貸して」

「はい、どうぞ」

 

ルリがニヤニヤしてる夕呼から拳銃を貸してもらい、弾丸が入ってるのを確認して銃口を武に向ける

 

「死ね!白銀武!!」

「ひぃぃ!!?」

 

躊躇なく引き金を引く

 

武がダッシュで後退し、自動ドアを閉める

 

カンカン!と弾丸が金属製の扉に当たる

 

「いや~、見てて飽きないわ~」

「白銀武が来るの知ってました?」

 

ポイっと拳銃を投げ返す

 

「いえ?知らないわ?」

 

パシッと受け取ってホルダーに戻す

 

ルリも急いで制服に着替える

 

「いいじゃない。下着くらい」

「よくないです」

 

制服を着終わった

 

「……えっと、終わった?」

「香月博士。拳銃」

「止めろ止めて止めてくださいお願いします!」

 

武が45度に頭を下げる

 

ルリは武に近付き

 

「ふんっ!」

「ふごっ……!」

 

武の男の象徴に向けて踵で蹴りを一発

 

武は股間を抑えて床に撃沈。幾ら体を鍛えようが股間に何か喰らったら男は誰だって撃沈する

 

女には分からぬこの痛み

 

「で、何で来たんですか?白銀武」

「ゆ、夕呼先生にほ、報告を……」

「で、何かしら?」

「と、特に前回と変わりは有りませんでした」

「そ」

 

蹲ってる武の上に乗るルリ。武の顔は土気色に

 

ルリはブーツの踵で蹴ったため、とんでもない痛みが武を襲っている

 

どりるみるきぃぱんちとどっちが辛い?と聞いたら瞬間的な痛さはどりるみるきぃぱんち、辛さ的には股間蹴りだと言うだろう

 

「ほら、男なんでしょ?立ちなさい」

「男だから立てないんです……」

 

立てないように蹴ったんだから当たり前。と呟きならドッグタグを首にかけて襟の中に入れる

 

「そういえば、何か世界に影響のある出来事ってなかったの?」

「え、HSSTが落ちてきます……」

「……まぁ、時が来たら来なさい」

「はい……」

 

芋虫のように動いて去っていく武

 

ルリは移動し始めた武から降りた

 

本当に男はにしか分からぬこの痛み。プライスレス

 

「私の裸見たんですし風穴位は覚悟して欲しかったですね」

「股間蹴られた位で大袈裟ね」

「なんか立てないくらい痛い……と、言うか辛いらしいですよ」

「まぁ、そんな興味はないわ」

 

ルリは辞令と書かれた紙を見て目を見開いた

 

見間違いかと思って目を凝らしたが、変わらない

 

「あの……私の階級……『少佐』になってるんですが……」

「そうよ?あなたは今日から星河瑠璃少佐。所属は今の所A-01特別遊撃部隊撫子って事にしてあるわ。隊員はあなただけ」

 

ルリの階級は少佐になっていた

 

夕呼が色々とやって無理矢理少佐にしたのだ

 

「ほら、襟元に階級証付いてるでしょ?それ、少佐って事を意味してるから」

「は、はぁ……」

 

まぁ、基地でも見てきたら?と夕呼が言ったので、夕呼の部屋から出て横浜基地を見て回る事にした

 

なんとなくグラウンドに出ると、現在訓練中の207B訓練部隊

 

どうやら、戦闘訓練をしているようで、武と冥夜が模擬ナイフ片手に戦っていた

 

ルリはそっち方面はお手挙げ状態なので、そこら辺の段差に座る事にした

 

時々武が動きを止めて冥夜と何か話してるが聞こえなかった

 

「やっぱり軍人……体力が凄いこと」

 

本当に日常で困らない程度の体力しかないルリからしたら二人の訓練は普通に凄いと思えた

 

「……あら?」

 

まりもがこちらに気付いたのか、歩み寄ってくる

 

「君、何処から入ったの?」

 

子供がこんな所に居るなんて普通は考えられないため、こう聞くのが普通だろう。もっと怖い軍人ならまりものように優しく語りかけてはくれなかっただろうが

 

「あ、私は今日からこの基地に配属された星河瑠璃少佐です」

「え……?あっ!し、失礼しました!私は神宮寺まりも軍曹です!」

 

襟元の階級証に気付いたのか、まりもが敬礼する

 

「私のことはお気になさらず。訓練を続けてください」

「はっ!」

 

まりもが歩いて戻っていく

 

暫くして、時間になったのか武と冥夜がナイフをしまう

 

ルリは武の元に歩いていく

 

「さっきぶりです。武さん」

「え?って、ルリちゃん!?」

「あ、私の階級ですが……」

「白銀!少佐殿を名前で呼び、さらにちゃん付けとはいい度胸だな?」

「え!?少佐!?」

「はい。本日付けで配属になった星河瑠璃少佐です。以後よろしく」

「敬礼!」

 

千鶴の号令に訓練部隊が従い、ルリに敬礼する

 

「あ、堅苦しい事は別にいいので」

 

敬礼を解かせるルリ

 

どうも敬礼はされるのは苦手らしい

 

「では、訓練頑張ってください。軍曹、訓練の邪魔をしてすみませんでした」

「いえ!とんでもありません!」

 

手をヒラヒラとさせて基地の中に戻っていくルリ

 

そういえばもうすぐ昼食だっけ。と思い、トイレに入ってボソンジャンプでナデシコCに帰ったのだった

 

その日の夕方

 

「そういえば、あの少佐……白銀とどんな関係なの?」

「やけに親しそうだったけど」

「あ~……知り合いかな?」

「でもちっちゃくて可愛かったよね~」

「確か十三歳だったか?」

『十三歳!?』

 

壬姫の言葉にツッコミを入れたくなった武だったが、スルーする

 

ルリの歳を聞いた冥夜、千鶴、壬姫が思わず声を上げる。慧も目を見開いてる

 

「その歳で少佐とは……」

「それよりも軍属なのが意外ね……」

「(今日から)軍に入ってたのは知ってたけど少佐ってのは知らなかったんだよ」

「そりゃ言ってないですし。知らなくて当然です」

「そりゃそうだ……あれ?」

 

一人、声が多い

 

武が横を向くとそこにはルリが

 

「うぉっ!?」

「やっはろ~。訓練お疲れ様です」

「け、敬れ……」

「しなくていいです」

 

ルリは一人で黙々と豚の生姜焼き定食(合成食材)を食べていた

 

味があまりなく、お世辞にも美味しいとは言えない食材なのは分かってたが、調理法だけでそれなりに美味しくなるのは意外だった。PXで食事を作ってる人達は凄いと思ったルリだった

 

だが、何時も食べてる食材よりも美味しくないのは確かだった

 

「私に会ったときは最低限の挨拶だけで構いませんよ。榊千鶴訓練兵」

「え?私、自己紹介……」

「調べました。御剣冥夜訓練兵、珠瀬壬姫訓練兵、彩峰慧訓練兵。後は入院中の鎧衣美琴訓練兵。おまけの変態武」

「ちょっと待て!俺が変態みたいじゃねぇか!」

 

自分の扱いに抗議する武

 

「変態でしょう?私の着替えを覗いたくせに。後変態だけは敬語使いなさい」

「見たくて見たわけじゃね……ないです!」

 

今にもゼロ距離で拳銃を発泡しそうなルリだったが、その前に他が動いた

 

「武?どういう事だ?」

「ちょっとあっちでお話しましょうか?」

「早く行くよ?時間なくなるから」

「強制連行……」

「え、ちょっ、なんか皆キャラがちが……助けてくれぇぇぇ!!」

 

武は四人に連行されていった

 

ルリは満足した顔で最後に残った味噌汁を飲み干し、呟いた

 

「ば~か」

 

 

 

 

ルリは食器を片付け終わった後、夕呼の部屋に出向いていた

 

一つ、貰いたいものがあるのだ

 

「戦術機のシミュレーターのデータが欲しい?」

「はい。出来たらヴォールク・データ等の仮想訓練用のを」

 

ルリの持つエステバリスとナデシコCにはハイヴ内のデータ等は入っていないのだ

 

その為、夕呼から貰ってナデシコの中で訓練をしようとしたのだ。ナデシコCの中にはエステバリスのシミュレーターもある

 

「いいけど……何に使うの?」

「エステバリスの訓練です。調整はこちらでします」

「そう……分かったわ。はい」

 

夕呼はUSBメモリをルリに手渡した

 

「早いですね……」

「バックアップはそれなりにあるのよ。あ、ヴォールク・データを使ったのならリプレイでも何でもいいからこちらに寄越しなさい」

「分かりました。では」

 

夕呼の部屋から出てボソンジャンプは使わず昼頃に使ったトイレに入ってボソンジャンプでナデシコのブリッジに移動する

 

時間差はルリがボソンジャンプをする二秒前。この瞬間、先程のトイレに行くとボソンジャンプ前のルリに会えるのだが、そうするとルリはこの先の時間軸から消失する

 

言うならば手の込んだ自殺だ

 

『お帰りんごジャム』

「ただいマンゴープリン……じゃなくてオモイカネ、これのデータをエステバリスで使えるようにして」

『了解』

 

あ、USB使えたっけ……と思ってるとウィーンとUSBメモリの差し込み口が出てきたのでそこに差しておいた

 

『ジョーカー!』

「仮面ラ○ダージョーカーにはならなくていいから」

『いいえ、Wです』

「じゃあサイクロンは何処なのよ……」

 

艦長席の側を漁ってコントローラーを取り出し、格闘ゲームを起動

 

キャラは何故か右、左の漢字と、ゲキガンガー3しかなかった

 

ゲキガンガー3とは、機動戦艦ナデシコの世界で人気だったアニメである

 

ルリはゲキガンガーを選択。コンピューターは左にさせておいた

 

ガチャガチャとコントローラーを動かして遊んでると、ゲームが強制的に中断。目の前に完了。とモニターが現れた

 

「ありがと、オモイカネ」

 

コントローラーをしまってIFS認証装置に手を置く

 

「シミュレーター起動。使用機体、ナデシコC、エステバリス各機。フレーム選択、エステバリス01から03は陸戦フレーム、04から05は空戦フレーム」

 

ルリをモニターが覆う。その状態のまま、艦長席が稼働、段々と伸びていき、もたれる事が出来るようになっていた席は座ること位しか出来ないようになった

 

モニターの中はナデシコCのブリッジ、そして各エステバリスのモニターの様子が写し出された

 

ルリの全身にIFSの媒体が現れる

 

「ヴォールク・データ起動」

 

エステバリスのモニターにはハイヴと呼ばれるBETAの本拠地のような物の内部が写し出された

 

ナデシコは外で待機となっている

 

「状況開始。エステバリス、遠隔操作モード起動」

 

五機のエステバリスが手に持ったラピッドライフルを構え、ディストーションフィールドを展開する

 

神が色々とやったお陰で、エステバリスの燃料……ではなくバッテリーは常にMAX。突撃級の突進によるGでパイロットが気絶、そのままディストーションフィールドが解除されない限り、エステバリスがやられる事はない

 

とは言っても、無人エステバリスも衝撃で何処かの回路がやられれば、その時点でただのかかしだ

 

エステバリス各機のモニターに様々なBETAが写し出される

 

戦術機から見ると、要撃級が同じくらいの大きさなのだが、エステバリスの全長はたった五メートル。戦車級よりも小さく、兵士級や闘士級の二倍程度の大きさしかないのだ

 

「目標、反応路の破壊」

 

エステバリスがBETAに向けて突進する

 

 

 

 

エステバリスとBETAの戦いは最早蹂躙とも言えた

 

闘士級や兵士級が群がればディストーションフィールドを展開しながら少し動くだけで挽き肉に。戦車級はその口で食らおうとすればディストーションフィールドのせいで顎を閉じきれず、蜂の巣に

 

突撃級はディストーションフィールドにより、突っ込んできたら逆に大穴を空けられるという始末。だが、それはエステバリスが踏ん張ってたらの話で、死角からの攻撃はエステバリスが吹っ飛ぶ。ある意味一番厄介だ

 

要塞級の自慢の衝角の溶解液もディストーションフィールドを貫く事は勿論適わず、ライフルで蜂の巣に

 

要塞級もその大きさ故、ただの的。ディストーションアタックと呼ばれるディストーションフィールドを纏った体当たりで体内に侵入、ぐちゃぐちゃに掻き回して絶命させる。中から出てくる残りの小型BETAもライフルで蜂の巣に

 

「はぁ……はぁ……」

 

その五機のエステバリスを操作するルリだが、初めてのマルチタスクの全力の行使に額から大粒の汗を流し、息が切れる

 

マルチタスクとは、思考を分割し、物事を何個も同時に考えるという技術だ

 

ルリは思考を六つに分割。一つをナデシコの制御、残りの五つをエステバリスの操作に当てている

 

六つの思考で全く別のイメージを思い浮かべているのだ。その集中力は生半可な物ではない

 

「全く減らない……BETAの物量、ナメてた……!」

 

周囲のBETAを殲滅(かんしょく)しても次から次へと増援(おかわり)がやってくるのだ。ドリンクバー?勿論無料でついてくる

 

しかも、時々ハイヴの上からも降ってくる。ハイヴは壁時々BETAだ

 

そして、とうとう各エステバリスのラピッドライフルの弾数がゼロになる

 

「こうなったらディストーションアタックで強行突破して反応路を破壊して帰還する……!」

 

エステバリス空戦フレームを前線に、各機がMの字に陣形を作る

 

「ディストーションアタック!!」

 

エステバリスがディストーションフィールドを纏いながら反応路に向けて突撃していく

 

道中のBETAは全て潰されるか挽き肉になり、突撃級の突進もエステバリスを止めることは適わず、風穴が増える

 

作戦時間は既に二時間を越している。ルリの集中力も限界だった

 

「見えた!反応路!」

 

そして、反応路を見つけた

 

「このまま壊す!!」

 

ルリがIFS認証装置をさらに強く握る

 

そして、反応路はエステバリス五機のディストーションアタックにより、五つの風穴が空き、活動を停止した

 

「後は帰るだけ……」

 

空戦フレームのエステバリスが陸戦フレームのエステバリスを持ち上げ、運んでいく

 

そして、ハイヴから脱出。光線級のレーザーをディストーションフィールドで弾きながらナデシコCに着艦。シミュレーターが終了し、モニターが全て閉じて艦長席が元に戻った

 

「はぁ……はぁ……疲れた……」

 

椅子と背もたれに全体重を預けて脱力する

 

着替えてなかったからずっと着ていた、夕呼から貰った制服は汗で冷たかった

 

「……シャワー浴びて洗濯して寝よ」

 

だが、立っても足がガクガクだったので、暫くは座っておく事にした

 

 

 

 

「問題は私の集中力かな」

 

シャワーを浴びながら自分の問題点を口に出す

 

「ハイヴ戦は長期戦になる……二時間程度じゃ駄目」

 

通常の戦闘なら特に問題はないだろうが、ハイヴ戦は違う。補給無し、休憩無しの戦闘

 

しかも自分はやられそうな戦術機を守りながら戦うことになると思われる。どうしようにも最低三時間は休憩無しで戦えるようにしたい

 

「毎日ヴォールク・データでのハイヴ戦を重ねて五機をなるべく長く動かせるようにならないと」

 

目的である主要キャラの全員生存

 

それを達成するので最重要な部分は桜花作戦でのオリジナルハイヴ戦

 

そこで207B訓練部隊の武を除く五人全員が死亡。00ユニットの機能停止と武の帰還は何をしても免れない。と、言うかこの二つは一セットなのである

 

この二つは諦める事にした。00ユニット……鑑純夏が機能停止しなければ武は彼女の再構成する世界に帰ることが出来ない

 

悔しいが、諦めるしかない。彼は帰らなければならない

 

この二人を除いて助けなければならない人物は何としてでも助ける。ナデシコCを沈めてしまっても。エステバリスを壊しても

 

それが、自分が作り出せる自分勝手なハッピーエンド

 

「そう。何としてでも」

 

シャワーを止めて髪の毛をタオルで拭く

 

体も拭いて下着を身につけ、寝間着を着る

 

「もうくったくた……」

『お客さんが待ってます』

 

いきなりオモイカネがモニターを出してきた

 

モニターにはナデシコCの前でウロウロしてる武の姿が

 

「……入れてあげて。ブリッジに誘導してね」

 

モニターが一人でに消える

 

疲労で歩くのもダルイ体を引きずってブリッジまで行く

 

時間は九時頃。消灯が何時かはしらないが、取り敢えず話だけは聞いてやろう。と思いながらブリッジに向かった

 

 

 

 

「こんな時間に何の用ですか?くだらなかったらエステバリスで挽き肉にしますよ」

「いや、それだけは勘弁してください」

 

ルリは寝間着のまま艦長席に座っている

 

「その……朝の事を謝ろうと思って……」

「……わざわざ股間蹴られに来たんですか?」

「ちげぇよ!なんで自分の息子蹴られに来なきゃいけないんだよ!」

「お望みならエステバリスのキャタピラでガリガリと」

「息子だけじゃなくて本体も死ぬわ!」

 

エステバリスのキャタピラなら武の息子を挽き肉にする事は容易い。勿論本体もおまけで挽き肉になるが

 

「その……ごめん!」

「あーもういいです。風穴空けさせてくれれば」

「死ぬって!」

 

45度に頭を下げた武だが、ルリのボケでツッコミに早変わり

 

「まぁいいです。散々仕返しはしましたから」

「やっぱあれは仕返しだったのね……」

「お望みとあらばロリコンって基地内に伝えますよ?」

「鬼畜か!?」

「鬼畜です」

「なん……だと?」

 

ボケとツッコミがしばらく続いた

 

「で、それだけですか?」

「いや、それだけじゃない」

「手短に」

「焼きそばパンを一つ作ってくれないか?」

「焼きそばパン……?何でいきなり?」

 

焼きそばパンと聞いてルリはあぁ、彩峰の事か。と理解した

 

EXTRA編だと焼きそばパン好きだったのを覚えている

 

「まぁいいですけど。自分でやってくださいよ?訓練で時間がないんです」

「いいけど……訓練?」

「ヴォールク・データの攻略を」

「ヴォールク・データ……確かハイヴ戦のシミュレーターだった筈だが」

「そうです。既に一回クリアしました」

「マジで!?」

「マジです。映像は記録してあるので見せてもいいですけど……二時間近くありますから見きれませんよ」

「二時間もやってたのか……?」

「BETAの物量を甘く見てたので。サーチアンドデストロイしてたらかなり時間がかかりました」

 

と、言うかちんたらやってたらそうなっただけとも言えますね。と追加する

 

「見ます?」

「見たいけど時間がなぁ……訓練のない休日に見せてくれないか?」

「分かりました」

 

武の返事に一言で返して席を立つ

 

「もう終わりですよね?」

「いや、もう一つ……」

「……疲れてるんで手短に」

 

立ったまま話を聞くことにした

 

「いや……俺もエステバリスを動かしたいからIFSってのを使えるようにして欲しい……って事なんだが」

 

イメージで動くロボット。戦術機のように自分で操縦桿を動かすのも良かったが、やはりそんなロマン溢れた機体は一度でも乗って動かしてみたいと思うのは仕方が無いだろう

 

「……別にいいですけど……」

「本当か!?」

 

肩を掴みかかりそうな勢いでルリに近づく

 

「ただ、辛いですよ?」

「え?」

「ナノマシン注入は不快感が凄いですしナノマシン処理中は精神が不安定になりやすくなります。場合によっては幻覚、幻聴を引き起こすトンデモマシンですけど」

「……マジ?」

「大マジです」

「……止めようかな」

「止めた方がいいと思いますよ。あ、ナノマシンは注射器でプスリと注入するので注射苦手だったらもっとオススメはしません」

「……ごめん、止める」

「その方がいいです」

 

あくびをしながら歩き、ブリッジから廊下に通じるドアを開ける

 

「あ、ナデシコの見学してても構いませんよ。ただ、私の私室に入って性的に襲ったりでもしたらオリジナルハイヴの中に生身で投入しますからね」

「やらねぇよ!ってか発想が怖すぎんだろ!」

 

ではおやすみなさ~い。と背を向けたままブリッジから去ったルリはそのまま自室に向かって熟睡した

 

武は興味本位でナデシコの中を見て回ってたら消灯時間がとっくに過ぎ、真っ暗な中、コソコソと自室に戻ったそうな




武ちゃんに発砲してsonを潰したのはやりすぎだと流石に思った。多分もうやらない

そしてルリも少佐はやりすぎだと思った。こっちは取り返しが付かないけど

ルリが途中から叫んでたのはナノマシンの闘争本能を高める作用のせいと言うことにしておいてください

次回もこんな感じでボケとシリアス(?)を混ぜていきます


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仲間の『退院』。だけど出番は殆ど無いぞ!

やっぱりIFSでのエステバリス遠隔操作はかなりキツかったわ。しかもナノマシンの闘争本能を高める効果でなんか無意識に叫び出したし

でも、最終決戦の桜花作戦ではこの遠隔操作は必要になってくる。だから桜花作戦までには遠隔操作を余裕で出来るようにしなきゃ

……まぁ、今のところは行き当たりばったりかしら?


「あいたた……昨日はやりすぎちゃった……」

 

フラフラと横浜基地を歩いていくルリ

 

ヴォールク・データのシミュレートデータを貰ってから数日が経っていた

 

やりすぎた……とはヴォールク・データのシミュレーションの事だ。そして、痛いのは頭の事。何か意味深な事を考えたあなた。グラウンド五週

 

マルチタスクをフル活用した訓練は幾らIFSを使っているとはいえ、脳にはかなりの負担になる

 

今日は訓練出来ないかな……なんて思いながらフラフラと歩く。何処かへ行くわけでもないので、ただ適当に歩いているだけである

 

ちなみに、初めての訓練からそれなりに日数は経っており、エステバリスの遠隔操作も十分は長く操作できるようになった

 

「……あ、星河少佐」

「武さんですか……二人きりの時はいつも通りで構いませんよ」

 

痛む頭を抑えながら偶然、バッタリ会った武にそう言う

 

「じゃあ……ルリちゃん。なんかフラフラだけど大丈夫か?」

「はい……訓練のし過ぎなので大丈夫です」

「いや、大丈夫じゃないだろ。ナデシコCまで送ってくぞ?」

「ほんと大丈夫です。お気持ちだけで」

 

まだ普通ならPXで朝食を食べている時間なのに、武は案外余裕そうだ

 

「PX、行きましたか?」

「いや、今から行くところだ」

 

どうやらまだ食べてなかったらしい

 

「早く行かないと時間なくなりますよ」

「あ、やべっ!」

 

武はそう叫ぶとPXに向かって走っていった

 

「叫ばれると頭痛悪化するからやめて欲しいんですがねぇ……」

 

武の声でさらに痛みが増した頭を抑えながらフラフラと歩く

 

朝食は食べる気にもなれなかったので、取り敢えずは夕呼の所にでも行こうと歩き始める

 

もう帰って頭痛薬飲んで寝てようかな……なんて思ってた時、何かにぶつかった

 

「ぁぅ」

「ひゃっ!?」

 

ぶつかった事で一時的に強くなった頭痛に顔をしかめながら下がる

 

「すみません、考え事してました……」

「こ、こっちこそボーっとしてて……ってあれ?」

 

ルリがぶつかった少女がルリを見て思わず声を上げる

 

「子供……?」

 

何で横浜基地に?と少女は考える

 

ルリもその少女の顔を見てあっと声を上げそうになる

 

(この人、美琴じゃん)

 

少女の名は鎧衣美琴。207Bのもう一人の訓練生で、入院中だった少女だ

 

今日退院なんだ……と思いながらも取り敢えず、何処かの軍人に引き渡されないように自己紹介をする

 

「あ、どうも。ついこの間からここに配属された星河瑠璃少佐です」

「え?少佐……?」

 

トントン。と階級証を叩いて美琴に見せる

 

「あっ!?し、失礼しました!」

「気にしないでください。あと大声出さないでください。頭痛が酷くなるので」

「は、はい……」

 

ガンガンと内側から頭を壁ドンされてるような痛みに頭を抑えて堪える

 

「退院、おめでとうございます」

「え?」

「鎧衣美琴訓練兵。香月博士の所には行かなくてもいいんですか?」

「……あ、そうだった!ボク、香月博士の所に行かなきゃ駄目だったんだ!」

「そ、そうですか……なら急いだ方がいいですよ」

「ありがとうごさいます!失礼しました!」

 

美琴が夕呼に会うために走っていく

 

美琴の声で痛さが2割増になった頭を抑える

 

「……帰ろ」

 

いつも通りトイレの個室でボソンジャンプをしてナデシコCに帰り、自室で着替えてから頭痛薬を飲んでベッドの中に入った

 

 

 

 

「ん~……殆ど治った」

 

ベッドから降りて伸びをする。頭痛はまだ少しだけあるが、我慢出来る位だった

 

もう一度制服に着替える

 

『忘れ物』

 

オモイカネが忘れ物がある。とモニターで知らせると、机の上にモニターは移動し↓と映し出された

 

そこにはUSBメモリが

 

「香月博士に渡すメモリ……忘れちゃ駄目じゃん……」

 

おっちょこちょいだなぁ。と思いながらUSBメモリをポケットに入れて歩いて横浜基地に向かう

 

行きは歩きだが、帰りはボソンジャンプである

 

そして、横浜基地に入って夕呼の部屋に向かう。そのまま部屋の前まで行ったらドアを開ける

 

「どうも、香月博士」

「あら、ホシカワ。いらっしゃい」

「あの時の約束通りエステバリスの訓練のリプレイ動画をこれの中に入れてきました」

 

ポケットからUSBメモリを取り出して夕呼の机の上に置く

 

確かに貰ったわ。と夕呼が受け取り、早速パソコンに読み込ませた

 

「もう見るんですか?」

「ずっと気になってたのよ」

 

ルリも夕呼の後ろに回り込んでパソコンを覗き込む

 

と、

 

「先生、ルリちゃん見ませんでした……って居たし」

「武さん?私に何か用ですか?」

「いや、朝に見た時は頭痛が酷そうだったから。もう大丈夫なのか?」

「帰って寝たら大分治りました」

「あ、白銀も見る?ホシカワの訓練のリプレイ動画ですって」

「本当ですか!?じゃあ、お言葉に甘えて」

 

武もルリの後ろに行ってパソコンを覗き込む

 

夕呼が動画を再生する。出てきたのは五機のエステバリスとハイヴの内部だった

 

「色違い?」

「いえ、エステバリスにはフレームというものがありまして。あ、止めてください」

 

映像のエステバリスが動き出す前に止める

 

「この青色は空戦フレームと言い、空中戦に特化したフレームです。そして、残りは陸戦フレーム。その名の通りです」

「これしかないのかしら?」

「他にも砲戦フレーム、重武装フレーム、0G戦フレーム、月面フレーム等があり、どの戦場でも最適な装備で出ることができます。今回はオーソドックスは陸戦と空戦で出ました」

「なるほどね」

 

カチッと再生を再開する

 

暫くして空戦フレームは飛び上がって持ち前の機動力でBETAを上空から蜂の巣にし、要塞級はディストーションアタックで体内に突入してぶち破る

 

陸戦フレームはラピッドライフルとディストーションアタックでBETAを挽き肉に変えていく

 

ディストーションフィールドにより、攻撃は全てエステバリスに当たらない

 

「……この、膜みたいな物は何?BETAを弾いてる様に見えるのだけど?」

「これかディストーションフィールドってやつか?」

「はい。これがある限りエステバリスは無敵とも言えます」

 

ディストーションフィールドはエステバリスのバッテリーが続く限り展開する事が出来る。そして、エステバリスはバッテリーが無限にされている

 

なので、エステバリスは半永久的にディストーションフィールドを展開する事が出来る

 

「あ、長くなるのでちょっと早送りを」

 

ルリが映像を早送りさせる

 

「それにしても……要塞級の体内に侵入して中から叩き潰すなんて……滅茶苦茶よ」

「ディストーションアタック……あ、ディストーションフィールドを展開したまま突撃する技なんですけど、エステバリスの最大火力の技がそれです」

「え?この突撃銃とかじゃないのか?」

「これ、確か36mmよりも口径小さかった気がしますよ」

 

エステバリスの持つ飛び道具の中で一番強いのはおそらくレールガンか120mmカノン砲である

 

Xエステバリスや月面フレームの持つグラビティブラストや対艦ミサイルを論外とするとこの二つが最も火力があるだろう

 

弾数は戦術機の物と比べると段違いだろうけれど

 

「攻撃は最大の防御……じゃなくて防御は最大の攻撃って感じの機体ですから」

「でも、適当に撃っておけば当たるんじゃないの?」

「私達の世界ではこのディストーションフィールドは標準装備でした。なので、ディストーションフィールドとグラビティブラストは必需装備。そして、ディストーションフィールドを無効化できるフィールドランサーが無いと話になりませんでした」

 

夕呼と武は想像した

 

自分の頭の中のイメージだけで動かせる戦術機が全てこのチート防御を持ち、それを貫通できる武装が必需装備となる世界を

 

「……夕呼先生。こっちの戦術機で勝てる要素は?」

「認めたくないけど0じゃないかしら?」

「グラビティブラストがあれば別ですよ~」

 

何時の間にか五機のエステバリスは陣形を組んで反応炉まで走り出していた

 

そして、反応炉をちょっと通りますよと言わんばかりに貫通。機能を停止させると空戦フレームが陸戦フレームのエステバリスを持ち上げて来た道を戻り、光線級のレーザーをディストーションフィールドで防いだままナデシコCに帰還した

 

「……疲れてるのかしら?なんかレーザーが弾かれてたように見えたのだけど?」

「ディストーションフィールドは光学兵器全てにおいても無敵です。まぁ、エステバリスの装甲にレーザーが効くとも思いませんが」

 

そして、リプレイ動画が終わる

 

「すげぇ……!これならBETAなんか敵じゃねぇぜ!」

「はい。ついでに戦術機も敵じゃありません」

「……ホシカワ。やっぱ殴らせなさい」

「え、ちょっ」

「私の常識を崩壊させた罰よ!」

「あぶっ!?掠った!?掠ったよ!?」

「子供だろうが関係ないわ!」

「ひっ!?こわっ!?お願いだから理性を取り戻して!!」

 

夕呼の拳を間一髪で回避しながら逃げるルリ。それを追う夕呼

 

武は他のリプレイ動画を見始めた

 

「ぐぎぎぎ……!」

「大人しく……殴られなさい!」

「頭痛もあるんで殴られたくないんですけど……?はっ!武さん!助けて……」

「うぉっ!すげぇ!レールガンだ!!」

「オイゴルァ!!聞けや白銀ェ!!」

「ふふふ……くらいなさい!男女平等パンチ!」

「どっせい!」

「へぶっ!?足を引っ掛けるのは反則でしょう!?」

「勝てばよかろうなのだぁぁ!!」

「ならばこっちだって本気でやらせてもらうわ!!」

 

ルリのリプレイ動画を見て目を輝かせて興奮する武と割と本気で喧嘩し始めた夕呼とルリ

 

そして、霞がちょっと開いたドアから中を見て

 

「……馬鹿ばっか」

 

と、小さく呟いた

 

数十分後、クロスカウンターで撃沈した夕呼とルリと他のリプレイ動画も見だした武と言う何ともシュールな光景が残った




次回は佐渡島ハイヴからのBETAからの防衛戦かな?

美琴はその内ちゃんとした出番作ります

最初は美琴をちゃんと書こうとしたんだけど……どうしてこうなったのか

では、気分転換にナデシコの次回予告風にしめます。ではでは



───次回予告───

なぁんと!次回はエステバリスがやっとこさ実戦に出てくるぞ!お相手は皆さんご存知BETA!!

エステバリスがBETAをあ、ちぎっては投げぇ、ちぎっては投げと戦い出す!?

そして、我等がナデシコCは!?

次回!初めての『実戦』にご期待ください!!


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初めての『実戦』!

香月博士達にシミュレーターのリプレイを見せた訳だけど、実戦で上手く戦えるのかしら?私って

まぁ、やるっきゃないわね


美琴が退院してルリと接触してから数日が経った

 

ルリはナデシコCの中の自販機で買ってきた大量のジュースをクーラーボックスの中に入れて夕呼の部屋に自分専用のデスクとパソコンを置いてそこで色々とやっていた

 

「なんでここに机とか置くわけ?」

「ここだと周りの目を気にしなくてもいいですから。あ、飲みます?」

 

ルリはクーラーボックスから缶コーヒーを取り出し、夕呼に投げ渡した

 

「まぁ貰っておくわ」

 

夕呼が缶コーヒーを飲む

 

「……あら、これも天然?」

「はい。普通に淹れるのよりは不味いと思いますが」

「合成の方がもっと不味いわよ」

 

もう一口缶コーヒーを飲んでまたパソコンでの作業に戻る

 

ルリのパソコンはナデシコCに直結してあるのでIFS仕様だ

 

「……何やってるの?」

 

気になった夕呼がルリに聞く

 

「戦術機用のレールガン……電磁投射砲を設計してます」

「はぁ!?」

 

夕呼がルリのデスクに行き、パソコンを覗き込む

 

「エステバリスには電磁投射砲を標準装備してるフレームがあります。それの表面上の大型化をして戦術機でも扱えるように設計してます……九割型オモイカネが」

「……なるほど。確かにこうなれば……」

「夕呼さん?」

 

先日の殴り合いから発展した謎の友情でルリは夕呼の事を名前で呼ぶようになった

 

夕呼はいつも通りだが

 

「ホシカワ、設計が終わったらそのデータ、こっちに頂戴。作ってみるわ」

「はい。わかりました」

 

夕呼がデスクに戻ってパソコンを弄り始める

 

カタカタカタ……とキーボードを叩く音と時々、IFSを認識する事で鳴る音が部屋を支配する

 

何分経っただろうか……いや、何時間なのか。扉が開く音が部屋に加わった

 

「先生……って、なんじゃこりゃ」

 

武が入ってきたが夕呼とルリが何にも話さずパソコンに向き合ってる光景を見て思わず声が出た

 

その声で二人が同時に武を見た

 

「あ、武さん。どうしました?」

「いや、先生に用事があってだな」

「私に?何よ」

 

夕呼が座ったまま武に聞く

 

「先生、11月11日に新潟にBETAが上陸します」

「ほぉ……何で?」

 

ルリはあっ。と声を出してカレンダーを確認し始めた

 

「分かりません。が、前の世界では11月11日の日曜日に新潟にBETAが上陸しました」

「ここでも11日は日曜日ですよ」

 

ルリがモニターを出してひゅっと二人の間に投げつける

 

夕呼が確かに日曜日ね。と声を出す

 

「で、私にどうしろと?」

「新潟に防衛ラインを張って欲しいんです」

「なんで?私達が何か害を受けるわけでもないのに?」

「BETAは新潟からここ、横浜基地に向かって進行してきます」

「もしここにBETAが来たら大損害待ったなし。それにナデシコCとエステバリスの存在もバレるかもしれないですよ」

「ふぅん」

 

ルリは簡易的に地図に新潟からここまで線を引いた地図をモニターに出して二人の間に投げた

 

「で、証拠は?」

「……え?」

「証拠が無ければそう簡単には動けませんよ。BETAの行動は予測できません」

「でも、俺は確かに……」

「私達がここに居ることで未来が変わり、BETAが来ない……何て事も考えられます」

「あら、言いたいこと全部言ってくれるわね。まぁ、軍はそう簡単には動けない。それはあんたも分かってるでしょ?」

「それは……」

 

ルリは遠隔操作でモニターを消した

 

「で、証拠は?」

「……ありません」

「なら諦めなさい。どうせここは助かるんでしょ?なら良いじゃない」

「まぁ、援軍を出したとします。それでも死ぬ人は居ますよ?」

「え?」

「どうせどっちにしても人は死ぬんです。諦めてもいいと思いますよ?」

 

パソコンを見ながら、冷静に答える

 

「ルリちゃん……?」

「世界を救うのにたった数人、数百人の犠牲が増えるか減るかです。しかも顔も名前も知らない人が」

「なんでそんな事が言えるんだよ……」

「だから、夕呼さん。私を出してください」

 

ルリの言葉に武が暫くフリーズする

 

夕呼もニヤッと笑う

 

「……へ?」

「ほぉ」

「五機のエステバリスをBETAの進行予測地点に配置。軍の周りをウロチョロします」

 

モニターを投げる

 

そのモニターにはエステバリスの配置が書かれていた

 

「成るほどね」

 

そのモニターを見ながら夕呼が声を出す

 

「軍が動けないなら正式な軍人ではない私が動きます」

「ルリちゃん……」

「でも、人は死にます。こっちの戦力はたったの五機です。守れる命と守れない命。それがあるのを覚えておいてください」

 

モニターを消す

 

「……そんじゃ、私もA-01部隊を援軍に出すわ」

「え!?」

「今回、A-01は私の作った試作機、エステバリスのテストの護衛を頼むわ。テスト場は新潟。BETAの攻撃も考えられるから武装はさせて……ね?」

「先生……ルリちゃん……ありがとうございます!」

 

武が礼をする

 

「理解したら戻んなさい」

「はい!」

 

武が部屋から出ていく

 

それと同時にルリが溜め息をはいた

 

「私が出なくても援軍は出すつもりでしたよね?性格の悪い……」

「まぁ、白銀が諦めたら出すつもりは無かったわ」

「でも、エステバリスを合法的に動かせるようにしてくれた事、感謝します」

「私もエステバリスの実戦記録を見たいもの」

「それじゃあ、一暴れしてきますよ。あ、フレームは空戦二、陸戦二、砲戦一で行きますから」

「光線級は大丈夫なの?」

「光学兵器ならディストーションフィールドは絶対に破られません」

「そ。じゃあ、楽しみにしてるわ」

 

 

 

 

そして、11月11日の早朝、ナデシコCの前

 

そこには陸戦フレームのエステバリスが二機、空戦フレームのエステバリスが二機、砲戦フレームのエステバリスが一機並んでいた

 

そして、その前にはルリと夕呼。そして早起きしてきた武がいた

 

「よく起きれましたね」

「気合いだ」

 

ルリはジャージ姿で、両方にパットみたいな物がついていた

 

「A-01は既に着いてるから」

「分かりました。では、行ってきます」

 

ルリが肩についてるそれを一回触る

 

すると、そこからパイロットスーツが展開され、ルリの体はすぐに女性用の赤色のパイロットスーツに包まれた

 

「うぉっ!?」

「そんなのでGとか大丈夫なの?」

「こう見えてもこれは衛士強化装備よりは高性能だと思いますよ。あと、武さん。珍しいからってペタペタ触らないでください。訴えますよ?」

「あ、ごめん」

「次やったら訴えます。207B分隊の皆さんに」

「有罪しか待ってねぇだろ!」

「白銀?あれだけペタペタ触れば有罪よ?」

「この場で男の象徴をエステバリスのキャタピラでガリガリされないだけでも有り難く思ってください」

「俺、危うく死ぬところだったの!?」

 

ちゃんと動けるか腕をぐるぐると動かし、ついでに展開されてない部分があるか、目視できる範囲で確認する

 

そして、陸戦フレームのエステバリスの装甲を上っていき、コクピットに入る

 

「それでは、ちょっくら駆逐してきます」

「頼んだぞ!」

「死なないでよ?あなたは利用価値があるんだから」

「退廃的な生活が確立するまでは死ねないので」

 

コクピットが閉じる

 

中でルリがIFS認証装置に手を置き、エステバリスを起動させる

 

そして、エステバリスは新潟方面に走り出し、途中でキャタピラ走行に切り替え、走って行った。他のエステバリスも同様にキャタピラで走ったり飛んでいったりした

 

「行ったわね」

「ですね……」

 

 

 

 

「ふっふふふ~ふん♪」

 

エステバリスの中、ルリは歌を歌いながら、悠々と新潟まで移動していた

 

陸戦エステバリスの装備はイミディエットナイフ、ラピッドライフル×二、フィールドランサー×二。持てるものは全て持ってきて装備させた。フィールドランサーは背中に装備させ、何時でも使えるようにしている。両手はラピッドライフルで埋まっている

 

空戦エステバリスはイミディエットナイフ、フィールドランサーとラピッドライフルは一つ。が、ラピッドライフルとランサーの代わりにミサイルポットが装備されてる

 

砲戦フレームはミサイルポットと120mmカノン砲。ついでにラピッドライフルとイミディエットナイフも無理矢理装備させた

 

「他の機体もちゃんと制御出来てる……うん。新潟位までならなんとか……」

 

勝手に取り付けたクーラーボックスからジュースを取り出して口に運ぶ

 

炭酸が舌と喉をピリピリと刺激する

 

「まぁ、そう沢山飲んだら衝撃で吐いちゃうかもしれないし、一本だけにしておきましょ」

 

レーダーで障害物が無いか確認してジュースを飲みながらエステバリスを移動させる

 

ボソンジャンプで行くというのも考えたのだが、A-01が何処に居るのか分からないし、体力も使うから走行で行く事にしたのだが、失敗だったかもしれない

 

「はぁ……空青いなぁ……」

 

飛ぶ事がタブーとなった空は青く澄んでいた

 

 

 

 

「そう。ホシカワが到着したのね。そのまま彼女のテストが終わるまで護衛よ」

 

A-01に指令を出しながら、パソコンを弄る

 

ルリのクーラーボックスから勝手に拝借した冷たい缶コーヒーが喉を潤す

 

少し休憩。と息を吐きながら椅子にもたれかかる

 

「……もっと盗っとけば良かったわ」

 

最後の一口を飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に投げる

 

壁に当たって一発でゴミ箱に入った缶コーヒーを見てちょっと笑いながらパソコンと再びにらめっこを始めた

 

 

 

 

「ふわぁ……早起きした分寝みぃ……」

 

朝のPX。武はPXに来ていた。が、早く起きた分、眠かった

 

「どうしたのだ?武。眠そうだな」

「寝付けなくてな……お陰で寝不足」

 

ルリを見送ってたとは言えずに声をかけてきた冥夜を誤魔化す

 

「今日が訓練じゃなくて良かったわね」

「全くだ」

 

千鶴の言葉に同意しながら、あらかじめ取っておいた定食を机の上に置く。冥夜と千鶴もそれぞれの朝食を机の上に置き、武の側に近寄る

 

「そういえば、彩峰とたまと美琴は?」

「彩峰と珠瀬は知らんが、鎧衣ならそこだ」

 

冥夜が視線で場所をさす

 

そこには美琴が何かを手に持ってウロウロとしていた

 

「……あ!いた!タケル~!」

 

美琴が武に向かって走ってくる

 

おいおい、そんな急いで走ったら転ぶぞ。と言おうとした時、美琴が転んだ

 

「へぶっ!?」

「だ、大丈夫か?」

「う、うん……って、あぁ~!!」

 

美琴が自分の手を見て悲鳴を上げる

 

手には赤色の紐

 

「傑作の動く蝶が~……」

「……は?ってか何だよそれ」

「あやとりだよ……うぅ~……」

 

既に朝食は済ませてたのか、美琴が武の横に座る

 

「あやとり……?」

「私は最初に見せてもらったのだが、中々の物だったぞ」

 

冥夜がうんうん。と頷く。が、美琴の顔は悲しさが100%だ

 

「もう一度作ればいいじゃねぇか」

「無理なんだよ~……朝起きたらこう……頭の中にピーン!ってきて……集中したかったから目を閉じてやってたんだけど……やり方忘れちゃって~……」

「目を閉じてたからじゃないの……?」

 

千鶴が呆れたように言うが、美琴はあう~と言いながら机の上に体を預けた

 

オモイカネなら知ってるかも。と武は口に出さず考えながら、せっせと朝食を口にかき込む

 

今日は昼から寝るか。何て事も考えていた

 

「そういえば、最近、少佐を見ないわね……前はよく訓練を見に来てたけど…… 」

「あぁ、ルリちゃん……じゃなくて星河少佐は最近忙しいらしいからな」

 

何時ものようにルリちゃんと言ってしまったが、何事もなかったかのように星河少佐と呼び変える

 

「ボクと最初に会ったとき、やけに頭を痛そうにしてたけど……」

 

大丈夫だったのかな?と呟く美琴

 

「……あ、あの時か。訓練のし過ぎだってさ」

「訓練……?やっぱりあの歳で少佐なんだし、凄い強いんでしょうね」

「香月博士の作った新型戦術機のテストパイロットやってんだってさ」

『テストパイロット!?』

 

三人が声を荒らげる

 

テストパイロットと言えばエリート中のエリート

 

衛士の中でもかなりの腕を持つもので無ければ成ることは叶わないのだ

 

「あの歳でそこまで……」

「まさに天才だったのかしら……白銀よりも」

「かもな」

 

確か戦術機のシミュレータ乗った時は吐いたって言ってたような……なんて事を思いながらもズズズ。と最後の味噌汁を完食する

 

「でも、何で私達の訓練を見に来たのかしら?」

「そこは少佐に聞かないと分からないな」

「今日もPXには見えないようだな」

「あの人、今日は試験機の演習だから」

「そうであったか」

 

トレーを返却台に返却して戻ってくる

 

ルリの作った天然素材の料理が恋しくなるが何度も食べに行くなんて図々しい真似は出来ない

 

慧への焼きそばパンを作って貰うついでに……なんて考えたが、そんな事言ったら挽き肉にされるかもしれない。なんて考えてしまい、諦める事にした

 

「そういえば、冥夜達は今日は何するんだ?」

「自主訓練だ」

「部屋で本読んでるわ」

「……何しよう?」

「おい」

「あはは~」

 

武が時計をチラッと見る。29分

 

「彩峰とたまは何するんだろうな?」

「案外一日中寝てたりして」

「日頃の疲労を回復するのはこういう日しかないからな。それも良いかもしれん」

「俺も寝不足だし昼寝するか……」

「ボクも昼寝しようかな……」

「昼寝連合~」

「いえ~い」

 

その時。警報が鳴った

 

 

 

 

「レーダーに反応。BETA確認」

 

テストと言う名の打撃戦をフレームを傷つけない様にさせて終わらせた後、レーダーを確認するとBETAが進行してくるのが見えた

 

『BETA!?』

『まさか、香月博士はこれを見越して……』

 

ルリはまだ声をA-01には聞かせていない。子供が乗ってるとなると何かと面倒になるかもしれないからだ

 

だが、ルリはオープンチャンネルを開いた

 

「これよりエステバリス五機でBETAを駆逐しにかかります。援護ヨロシク」

『子供の声!?』

『まさか、あの試作機のパイロットって……』

 

砲戦フレームに積んでおいた補給物資がぎっしり詰まった箱を地面に置き、砲戦フレームの脚部後方アンカーを展開する

 

そして、ミサイルハッチを開き、カノン砲をBETAに向ける

 

(光線級は誤射しない……なら、ミサイルを水平発射したら要撃級や突撃級が壁になって……!)

 

BETAが目視出来る範囲に来た瞬間、ありったけのマイクロミサイルを水平発射し、カノン砲とラピッドライフルを何発も何発も連射する

 

度重なる爆発と血肉の弾ける音

 

『ミサイル!?しかも超小型の!?』

『す、凄い……』

『見ろ!BETAがゴミのようだ!』

 

カチっカチっとトリガーを押しても乾いた音しか出なくなり、ミサイルも無くなったところで砲戦フレームを補給に入らせる

 

今ので突撃級の半分がミンチに変わった

 

「……ホシカワ・ルリ、突貫する!!」

 

そして、二機の陸戦エステバリスと空戦エステバリスが走り出し、陸戦はキャタピラでBETAに迫り、空戦は空を飛んで後方にいる光線級と要塞級の駆逐にかかる

 

『あの戦術機、光線級に撃たれるぞ!?』

『所詮は子供か……』

 

空戦エステバリスが完全に光線級の射程内に入り、高度を下げようとしないのを見てその場にいるルリ以外の人物が墜ちたと思った

 

そして、レーザーは発射された……が、

 

「ディストーションフィールド、出力安定。問題はありません」

 

レーダーはエステバリスに当たる直前、屈折した

 

『レーザーが曲がった!?』

 

A-01の全員が信じられない物を見た。といった表情をする

 

その間に空戦エステバリスは陸に降りて片っ端から光線級の駆逐に入る

 

そして、陸戦エステバリスは

 

「殺れると思うなぁぁぁぁ!」

 

突撃級に真正面から突っ込み、ディストーションフィールドで風穴を片っ端から空けていく

 

「うぐっ!ぐぅぅぅぅ!!」

 

突撃級と衝突する度にジェットコースターなんか目じゃない程の衝撃がルリを襲う。が、負けてられない

 

突撃級の壁を全て抜けたあと、反転して突撃級の柔らかい後ろの部分に片っ端からラピッドライフルを撃ち込んでいく

 

『突撃級を……真正面から?』

『信じられない……』

「はぁ……はぁ……A-01!惚けて無いで突撃級の駆逐を手伝え!」

『りょ、了解!』

 

初の実戦の緊張に息を切らしながらも両手のラピッドライフルで突撃級を次々と駆逐していく

 

そして、ラピッドライフルの弾が半分を切った所で突撃級の後ろから突撃し、ディストーションアタック(蹴り)で突撃級の体を抉りとっていく。そこに数発ラピッドライフルを撃ち込んで沈黙させる。そして、向きを変えて突っ込んでくる突撃級はその小ささを生かして突撃級の下に潜り込み、通り抜ける最中に突撃級の腹に向かってラピッドライフルを撃ち込む

 

そして、荒方突撃級の駆逐が終わる

 

さらに砲戦フレームの補給も完了した

 

「全機、BETA共の前から離れろ!FF(フレンドリーファイア)されるぞ!」

 

A-01がBETAの前から撤退したのを確認し、もう一度マイクロミサイルとカノン砲を連射する

 

数秒後、突撃級は完全に消し飛び、戦車級と要撃級、小型種が見え始めた

 

「A-01!損害は!?」

『中破が二機、軽く巻き込まれた小破が一機です!』

「中破は下がらせろ!小破機は死なない程度に頑張れ!」

『了解!』

 

砲戦フレームの補給をさせながらA-01の損害を聞き、指示を出す

 

少佐の立場を使いまくり、誰も死なないようにする。が、中破や小破が出ただけなのは少し安心できた

 

砲戦フレームの補給はこれを除き後一回が限度。次で要撃級と戦車級を片付け、最後で光線級と重光線級、要塞級を片付ける

 

ルリはラピッドライフルをフィールドランサーと変える

 

フィールドランサーは本来、ディストーションフィールドを無効化させるための武器なのだが、普通に槍としても使える

 

フィールドランサー片手に要撃級と戦車級の群れに突っ込む

 

「消え去れ!私の目的の為に!!」

 

戦車級をディストーションフィールドで吹き飛ばし、要撃級の上に乗ってフィールドランサーを突き刺し、そのまま走って大きく切り傷を与え、ラピッドライフルを取り出し蜂の巣に。すぐに後ろから飛びついてくる戦車級を振り向き様、フィールドランサーで切り飛ばし、遠くのBETAをラピッドライフルで撃ち殺す

 

が、要撃級の衝角がエステバリスのディストーションフィールドに当たる

 

「ぐっ!?このぉ!!」

 

衝角をフィールドランサーで切り飛ばし、ラピッドライフルで撃ち殺す

 

そこでラピッドライフルの弾薬が切れた

 

弾切れのラピッドライフルを腰に仕舞ってフィールドランサーだけを持って要撃級に突撃する

 

IFSに任せた体操選手顔負けの変態移動で衝角を全てよけて拳を振りかぶる

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

要撃級の体に大穴が空き、そこから血のようなものがエステバリスに向けて吹き出し、エステバリスの全身を赤く濡らす

 

「まだまだぁぁ!!」

 

背中のブースターを噴かし飛び上がり、片っ端から要撃級の首と思われる場所を切り取り、生首を量産する

 

「ワイヤードフィスト!ロック!!」

 

首の無くなったにも関わらずエステバリスに近付く要撃級をロックオンする

 

「いっけぇ!!」

 

ワイヤーで繋がれた腕が飛び出し、ロックオンした要撃級を片っ端から貫いていく

 

そして、フィールドランサーを背中にしまってワイヤードフィストを戻しながらラピッドライフルを取り出し、穴をあけた要撃級に向けて放ち、穴を大量生産する

 

「はぁ……はぁ……」

 

マルチタスクでの疲れと精神的な疲れで体中から汗が吹き出し、息が切れる

 

まだ要撃級と戦車級は二割ほど残っている。小型種は知らない内にミンチにしてる

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫にも聞こえる咆哮を上げながら要撃級と戦車級に向かって突撃する

 

血塗れのエステバリスはさらにその体を赤く染める

 

 

 

 

「ごほっ!はぁ……はぁ……うぇっ……」

 

要撃級と戦車級はA-01との協力で片付け終わった。そして、光線級と重光線級も空戦エステバリスで既に片付け終わり、残りは要塞級だけだ

 

「あと……はぁ……少しぃ!!」

 

ギュイイイン!!とキャタピラが回転し、陸戦エステバリスを加速させる

 

それと同時に砲戦フレームからの援護射撃が問答無用で要塞級に叩き込まれる

 

見えるだけでも要塞級は残り少ない。数えれる程度だ

 

「ディストーションアタック!!」

 

要塞級の体内に入り込み、中をラピッドライフルとフィールドランサー、さらにはワイヤードフィストでグチャグチャにかき回し、ディストーションアタックで要塞級から飛び出し、出てきた小型BETAを全てラピッドライフルで撃ち殺す

 

「はぁ……はぁ……勝った」

 

最後の要塞級が砲戦フレームのミサイルで消し炭になるのを確認してIFS認証装置から手を離した

 

「A-01の皆さん……演習は中止。各自横浜基地に帰ってください」

『了解』

 

戦術機が横浜基地に帰るのを見ながら、砲戦フレームに補給物資を担がせ、エステバリスを横浜基地に向ける

 

「はぁ……はぁ……けほっけほ……帰らないと……」

 

疲労で今にでも眠ってしまいそうだったが、IFS認証装置に手を置いて横浜基地へと進路を向けた

 

 

 

 

「……帰ってきたわね」

「はい」

 

ナデシコCの前。エステバリスが全機帰ってきてるのが見えた

 

そして、ナデシコCの前で止まり、真っ赤に染まったエステバリスからルリが出てきてフラフラとしながらも地面に降りた

 

「ただいま戻りました……」

 

そう言うと、ルリはそのまま地面に向かって倒れ始めた

 

武はすぐに動いてルリを抱きとめる

 

「ルリちゃん!?……凄い汗だ……」

 

一目でも凄い汗をかいてると解ったが、抱きとめるとそれは余計によく分かった

 

「確か……ここを触ると……」

 

武が肩の部分に手を置く

 

すると、パイロットスーツは無くなり、ジャージ姿のルリに戻った

 

ジャージは汗でしっとりとしていた

 

「白銀、ホシカワは私に任せなさい」

「え?でも……」

「体の汗拭いたり着替えさせたりするの……まさかあんたがやるの?」

「と、とんでもありません!」

 

夕呼がやれやれと言った感じで武を見る

 

「とりあえず、私はホシカワの部屋から下着と替えの服持ってくるから、あんたは私の部屋にホシカワを連れていきなさい」

「わかりました!」

 

武はルリを背負って横浜基地に走り始めた

 

軍人の武にルリ一人背負って横浜基地まで走る事は余裕だった

 

夕呼もオモイカネに話しかけてナデシコに入れてもらい、ルリの部屋を探して変えのジャージと下着を取り出して横浜基地に向かった

 

 

 

 

「ん?武か?どうしたのだ?そんなに急いで」

「冥夜か!悪い、急いでるんだ!」

「急いでるって……ちょっと待て!背負ってるのは少佐か!?」

「演習帰りに倒れたんだ!」

「そうか……目が覚めたらお大事にと言っておいてくれ!」

「分かった!」

 

横浜基地に入る途中に冥夜とバッタリ会ったが、なんとかやり過ごし、全力で夕呼の部屋に向かう

 

「あれ?タケル?どうしたの……ってうわっ!?」

「すまん美琴!急いでるんだ!」

「もう……って少佐ぁ!?」

 

美琴もスルーしたが、背負ってる人物を見て驚いていた

 

そして、すぐに地下に行き、夕呼の部屋に入る

 

「えっと……椅子に座らせておけばいいかな?」

 

背負ってたルリを何時もルリが座ってた椅子に座らせる

 

何かないか机の周りを見ているとクーラーボックスを見つけた。その中を漁ってスポーツドリンクらしきものを見つけて机の上に置いておいた

 

そして、すぐに夕呼が入ってきた

 

「ほら、野郎は出ていきなさい」

「は、はい!」

 

武があわてて部屋から飛び出して扉を閉める

 

夕呼がルリのジャージのジッパーを下にさげる

 

そのままジャージを脱がせて下着も脱がせて体を一通り拭いて新しい下着とジャージを着せる

 

下はジャージだけ脱がせてすぐにジャージを着せた

 

「……ここだけ見られたらただの変態ね。私」

 

要らない本を取ってきてそれにタオルを巻いて地面に置く

 

「あ、白銀。もう入っていいわよ」

 

武がおそるおそる入ってくる

 

「ほら、ホシカワをそこに寝かせて。布団は無いから」

 

長いタオルが一枚とタオルで包んだ本がある床にルリを寝かせる

 

暫く起きそうじゃないため、机の上に出しておいたスポーツドリンクらしきものをクーラーボックスにしまう

 

「くれぐれも私の目の前でホシカワを襲ったりとかしないでよ?死体が増える事になるわ」

「しませんよ!ロリコンじゃ無いんですから!」

 

もしそんな事をしたら本当にオリジナルハイヴの中に生身で投入されそうだし。と

 

「……そういえば、今回の戦いの死者は?」

「海の方で数百人。帝国軍もそれなりの被害を受けた。でも、A-01は入院が数人だけ。ホシカワが頑張ったおかげね」

「そうですか……よかった…………ふわぁ」

「なに?寝不足?」

「えぇ……朝早かったので……」

「そ。じゃあホシカワの隣で寝たら?」

「先生がそんなニヤニヤしてなかったら考えたんですけどねぇ」

「チッ、面白い事になると思ったのに」

「んーもう怒っちゃうぞー」

 

武が扉に向けて歩く

 

「そんじゃ、俺は自室で寝てます。ルリちゃんが起きたら知らせてください」

「分かったわ。そんじゃ、お休み~」

 

武はあくびをしながら自室に戻っていった

 

そして、部屋の中には静かに寝息をたてるルリとパソコンとにらめっこの夕呼が残った

 

 

 

 

何分、何時間か経過した頃、ルリが目を覚ました

 

「……ここは?」

「私の部屋よ。お疲れ様」

 

ルリが上半身だけ起き上がって夕呼を見る

 

「すみません、迷惑かけました」

「ほんと、いい迷惑よ。あと、戻ったらちゃんとシャワー浴びなさい。汗臭いわよ」

「分かってますよ」

 

ルリは自分の机のクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出して口に運ぶ

 

「コーヒー貰えるかしら?」

「あ、はい」

 

ルリがコーヒーを夕呼に投げ渡す

 

夕呼がそれを受け取って口をつける

 

「戦果は?」

「殺れる分は殺ってきました」

「そ」

「あ、パイロットスーツを発生させる装置は……」

「あんたがさっきまで着てたジャージにくっついたままよ」

 

そういえばジャージ変わってる。と今気がついた

 

そんでもって下着も

 

「……え?脱がせました?」

「えぇ」

「……ちょっとあれを挽き肉にしてきます。で、人肉ハンバーグにしてきます。なに、すぐに終わります」

「待ちなさい。私が白銀を追い出してやったからいいわ」

 

ハイライトの消えた目でエステバリスの元に行こうとしたルリを止める

 

そんでもって夕呼の言葉を信用したようでなんとか足を止める

 

「……下も変えました?」

「ジャージだけ」

「……ならいっか」

 

と、ジャージを持つ

 

「それじゃ、帰りますね」

「あ、白銀にも声をかけていきなさい。あんたを運んだの、あいつだから」

「分かりました。それでは、また明日」

 

ルリが夕呼の部屋を後にして武の部屋に行き、そっと扉を開ける

 

武は間抜けヅラのまま寝てる

 

「武さん。起きてくださ~い」

「ん……?ルリちゃん……?」

「目、覚めました?」

「まぁ……って、ルリちゃん!?体大丈夫か!?」

「お陰様で。あ、一応A-01の皆さんは無事です」

「そうか……よかった」

「それじゃ、私はナデシコに戻ってエステバリスの洗浄をして来ます」

「あぁ。気をつけてな」

 

ルリは何時ものトイレの個室に行ってボソンジャンプし、ナデシコに帰った

 

そして、シャワーを浴び、その日は床につきた

 

エステバリスはオモイカネが収容してたらしい

 

次の日

 

「落ないんだけど……BETAの血……」

 

ゴッシゴシとエステバリスの上に乗って血を洗い流そうとブラシを使っているルリの姿が武が様子を見に来るまで続いたそうな

 

あ、まる1日かかったけどちゃんと汚れは落ちました




特に書くことは無いかな?

あと、途中の戦闘は長くなるのでカットしました

カットすんなやゴルァ!!と言う方が居ましたら感想にて

ではでは


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南の島で『バカンス』!ポロリは無いぞ!

はいは~い、とうとう総合評価演習……でいいのよね?まぁ、それの始まりよ

とは言っても、私がやる訳じゃあないし、皆原作通りにやってくれるでしょ。やってくれないと困るわよ

ちょっと不安だけど、まぁ武さんに丸投げしちゃいましょそうしましょ


「今日の射撃訓練は以上とする。全員集合!」

 

グラウンドの演習場

 

まりもの掛け声で207B分隊が集まる

 

「今日は良く頑張った。だから、私なりに褒美をやろう」

 

武はあっ、と声を出しそうになったが、何とか抑える

 

「明日から一週間、南の島でバカンスだ」

 

まりもがニヤリとしながら概要を話した

 

「総合評価演習ですね」

 

武がまりもに聞く

 

そうだ。とまりもは武の言葉を肯定する

 

「基礎訓練の成果、期待してるぞ」

 

まりもがカツカツと歩いていった

 

一方、時を同じくして

 

「ホシカワ。明日から1週間、南の島でバカンスよ」

「総合評価演習ですか?」

 

南の島で1週間。だけで大方予想はついたが、念の為に聞く

 

「えぇ。強制連行よ」

「分かりました」

「ナデシコCは置いていくのよ?」

「分かっていますって。……う~ん、どうもレールガンの小型化が……」

「どれくらいの大きさなの?」

「これくらいの……」

「……まぁ、これで十分よ」

「え?いいんですか?」

「他の機体に積むわ」

「分かりました……じゃあ小型荷電粒子砲でも設計してます」

「もう何を聞いても驚かないわ……」

 

その日はパソコンが絶えず動く音だけが部屋を支配した

 

 

 

 

翌日

 

南の島と言う名の総合評価演習場にて

 

「それじゃあ、死なないように頑張ってくださいね。野垂れ死にかけた時は通信機を使って助けを呼んでください。助けに行きますが、テストは失格です」

 

夕呼に変わってルリが説明をしていた

 

ちなみに、ルリは普通に服着てるが、その下は水着だ

 

夕呼の方は言うまでもない。あの結構際どい水着だ

 

「なお、武さんは助けません」

「贔屓だ!裁判を要求する!」

 

緊急裁判(笑)が始まった

 

「香月裁判長、判定は?」

「白銀有罪」

「なんで俺なんだぁぁぁぁ!!」

 

結果、武が有罪となった。ツッコミが追いつかないのは言うまでもない

 

「まぁ、そんな冗談は置いておくとして、普通にみんな助けますので」

 

じゃ、神宮寺軍曹。後よろしく。と言うとルリと夕呼はバカンスに行った

 

冥夜達はずっと苦笑いだった

 

「あ、あれは少佐なりの気遣いだ。緊張したまま演習に行って本来の力を出せずに終わったら悔しいだろうからな」

 

一方、ルリは

 

「やっぱり武さん弄りは面白いですね~」

「えぇ。結構気晴らしになるわ」

 

まりもの言ったことはかなり外れていた。が、そんなの冥夜達は知るわけもなく、そうだったのか……と感心していた

 

ルリの知らぬところで評価が上がっていく

 

が、武だけは内心、いやいやいや、あの二人に限ってんなこたぁねぇって。と叫んでいた

 

そして、ベルトキットを渡され、武と美琴のベルトキットを交換して……

 

「では、各人時計合わせ!57、58、59……演習開始!」

 

かくして、総合評価演習は始まった

 

 

 

 

そんな207B分隊の事は知ったこっちゃないと言わんばかりに夕呼とルリは海岸でバカンスしていた

 

「……あ、そうだ。ホシカワ、ちょっとあっちの砲台を弄ってきて」

「え~……私がですか~?」

 

服に手をかけて水着になろうとしてたところに声をかけられたので余計嫌そうだ

 

「ナデシコC、持ってくんなって言ったけど持ってきてるんでしょ?エステバリスでちょっと弄ってきなさいよ。指示は出すから」

「海の中ですよ……」

 

現在、ナデシコはこの南の島付近の海底で待機している

 

ボソンジャンプで行くのは容易いが、夕呼の前で見せるのはまだ早いだろう

 

「はぁ……使えないわね」

「……分かりましたよ。ちょっと待ってください」

 

パソコンからナデシコCのオモイカネに通信を繋ぐ

 

「オモイカネ、エステバリスをこっちに持ってこれる?」

『大丈夫だ。問題ない』

「フレームは空戦。武装はなくていいから」

『了解した』

 

パソコンを閉じて暫く待つこと5分

 

ぷか~っと海から何かが浮いてきて岩肌に打ち上げられた

 

エステバリス空戦フレームだった

 

「こんなのってないよ」

 

そう言いながらせっせとエステバリスに乗り込み、パイロットスーツを展開。砲台まで移動する

 

勿論、水中を移動している

 

そして、砲台に到着する

 

『じゃあ、私の言う通りにやりなさい』

 

夕呼が通信越しに指示をする

 

その指示に従ってエステバリスを動かす事数分。やっと終わった

 

「帰還します」

『ご苦労だったわね』

 

そのまま一度ナデシコに帰還。忘れ物が無いか確認して、エステバリス空戦フレームで夕呼の元に戻った

 

「全く、人使いが荒いですね」

「そうでもないわ」

 

エステバリスを近くの林の中に隠してパイロットスーツを消す

 

そして、服を脱いで水着になる

 

ワンピース型の青色の生地に白色の水玉模様の水着だった

 

「……幼児体型ね」

「ま、まだ十三ですから!成長しますから!」

 

でも、映画版のホシノ・ルリは……と考えると軽く涙が出てきたが、海にダイブして紛らわしたとさ

 

「あら、元気ね」

「あははは!ちくしょー!!」

 

泣きながら笑ってクロールで泳ぐという器用な真似をしだしたルリであった

 

 

 

 

「で、夕飯は七輪囲んでの焼肉です」

「いい匂いね……」

「あの……なんで私まで?」

「二人だと寂しいですし。あ、肉焼けましたよ」

「あ、どうも……」

 

まりもの焼き肉のたれを入れた小皿にナデシコから持ってきた肉(ちょうどいい感じに焼けてる)を入れる

 

「ほら、夕呼さんも」

「あら、気が利くわね」

 

まりもが案外親しそうな二人を見ながら肉を口に運ぶ

 

「あ、美味しい……」

「そりゃあ天然食材ですし」

「て、天然食材!?も、もしかしてそこの肉や野菜も……」

「全部天然食材です」

 

天然食材なんてそうそうお目にかかれる物でもないし食べれるものでもない

 

そんなものを大量に持ってきたルリ

 

「207Bの演習が終わって合格したなら、今度は全員で食べましょう。七日分ありますし」

「……何者ですか?あなたは」

 

まりもの口から思わずそんな言葉が出た

 

ルリは特に焦らず、こう言った

 

「Need to knowです」

 

 

 

 

翌日。演習中の武と美琴ペアは何一つ問題無く目標の建造物までたどり着いていた

 

「美琴~、何かあったか~?」

「あったよ~!ほら、車!」

「高機動車か……エンジンは?」

「丸々無かったよ」

 

やっぱりな。と武は自分の記憶と合っていることを確認する

 

「あ、でもあったっちゃああったかな?」

「は?」

 

ここにはエンジンなんて無かったはず。そう思いながら美琴の指をさした方を見ると壊れて最早修理なんて不可能であろうエンジンの姿が

 

「……どっちにしても無理か」

 

その数時間前。武と美琴が就寝してる間

 

「エンジン取り外し忘れたとか……有り得ないでしょ……」

 

エステバリスで夕呼が指示のし忘れで付けっぱなしだった高機動車のエンジンを取り外して修理できないように壊しているルリの姿が目撃されていた

 

そして、時は戻る

 

(もしかして前にもあったのか……?まぁ、特に差異は無いだろうしいいか)

「んじゃ、シートだけ外していこうぜ。何かに使える筈だ」

「そうだね……よいしょっと」

 

美琴が高機動車のシートを外す

 

武はその間に周りを見渡した

 

すると、すっごい薄くだが、何か大きなものの足跡が

 

(……足跡?動物……いや、それにしては……あ、エステバリス)

 

もしかしてルリがエンジンを壊したのか?と考えたが、どうでもいいか。とすぐに思考を中断した

 

「そういえば、武は何か見つけた?」

「ん?あぁ。そこに軽油をな。あと何かの足跡」

 

武は軽油の入ったドラム缶を指さす。ついでにエステバリスの足跡も

 

「……まぁ、水を捨ててまで持っていく物じゃないよね」

「車も動かないしな」

 

水はこの演習ではかなり重要な物だ。それを捨てて軽油を持っていくのは愚策とも言えるだろう

 

「でも、足跡?」

「あぁ、人間の物じゃない……戦術機やBETAって線は薄いだろうけど、気をつけていくぞ」

 

武の言葉に美琴が頷く

 

「それじゃあ、ここを爆破していこっか」

「そうだな。爆破は任せた」

「任されたよ」

 

 

 

 

「夕呼さん、人使い荒過ぎですよ……眠い……」

「いいじゃない」

「全く……ふわぁ…………ナデシコCで寝てきます。今日は起きないと思いますのでよろしく~……」

「えぇ、お疲れ」

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォン!!と激しい爆発音が鳴り響いた

 

「おっ、爆発したな」

「急ごしらえの遅延発火装置も捨てたものじゃないね」

 

もくもくと黒煙が立ち込めている

 

この先、武が前のこの世界で蛇に噛まれてベルトキットまで落とした場所が来る

 

ついでに巧みにカモフラージュさせたトラップまである

 

そして、丁度その場所に差し掛かった

 

「ストップだ、美琴」

「え?」

「そこにトラップがある」

「え……?…………あ、ホントだ」

 

武が近づいてトラップを解除する

 

ついでに、と

 

「ベルトキット、切れそうじゃないか?」

「……うわっ、ホントだ……切れそうだ……」

 

これで美琴がベルトキット落として水が少なくなる……なんてことは無くなった

 

「どうして気付いたの?」

「トラップはたまたま。ベルトキットはさっきチラっと見えたんだよ」

 

美琴がジ~っと疑いの眼差しを武に向ける

 

「ほら、行くぞ」

 

その視線に動じず先に進む武

 

それについていく美琴

 

そして、それなりに歩いたところで

 

「ストップ。美琴」

「また?」

 

武が岩陰を指さす

 

「蛇がいる」

「……あ、確かに」

「捕まえるぞ」

「えっ!?な、なんで!?」

「貴重な栄養だ。肉だ」

「た、食べるの!?」

 

そういえば前の世界では彩峰が蛇を生で食おうとしたとか聞いたような……なんて考えた

 

慎重に蛇に近づいてサッと蛇を捕まえる

 

「よし!肉ゲット!」

「ぼ、ボクはキノコとか探して食べるから……だから近付けないで……お願いだから」

 

美琴って蛇嫌いだったか?と思いながら先に進んだ

 

 

 

 

「逃……げるやつは……訓練……しゃれたべーただ……逃げない……やつ……は訓練……されたべーただ……ひゃっはー…………この世は……ほんと地獄だじぇ~……zzzzz」

 

何だか物凄い寝言を言い出していたルリだった

 

 

 

 

「蛇うめぇ」

「グロ……」

「喰うか?カエルよりはイケルぞ」

「え、遠慮しとくよ……あはは……」

 

人の慣れとは恐ろしいものである

 

数年で現代社会で生きてきた青年が蛇を食べれるようになっている

 

だが、苦手な人間もいるようだ

 

 

 

 

「焼肉うめぇ」

「二日連続肉は飽きるわねぇ……」

(今の内にこの味を記憶に焼き付けておこう……)

「じゃあ明日は魚にしましょうか……よ~し、釣るぞ~」

(現地調達!?)

 

こっちは現代社会で生きてきた人にも優しい料理だった

 

肉は肉でもエライ違いである

 

 

 

 

「しかし、そなた達は流石だな」

「そうでもないさ」

 

合流する前に獲得した戦利品は千鶴と冥夜がロープ、彩峰とたまが対物体狙撃銃(アンチマテリアルライフル)を一丁。弾は一発だけ

 

戦果を報告した後は班ごとにローテーションを組み、休憩と睡眠、あと食事をとることに

 

千鶴達は晩飯を食べてないようだ

 

「あ、この実、美味しそう!」

「パンギノキには強い毒があるよ」

「……これは?」

「マチンは猛毒だね~」

「そう……」

「ちょっと、なんでこっち見たのかしら?」

「え?」

「え?じゃないわよ!」

「見てない」

「見たでしょうが!」

「あげる」

「いらないわよ!!」

「お前ら……」

 

武は何処から捕まえてきたのか蛇を焼いていた

 

「あ、冥夜。食うか?」

「いや、いい……」

「そうか……美味いんだけどな」

 

 

 

 

「今日は林檎や梨など果物を取り揃えてみました」

「甘い……美味しい……!」

「甘い物もいいわね」

「まりもちゃん、がっつかなくてもいいですよ。一杯有りますから」

「あ、すみません……早く食べるのはクセでして……ってまりもちゃん?」

「こういう時くらいは軍の事とか忘れましょうよ。私もルリで構いませんから」

「じゃあ……瑠璃ちゃん?」

「それでいいです。と、言うか何時もそれでいいですよ」

「それは流石に訓練兵達に示しがつかないと思いますので……」

「そうですか。それにしてもよく食べますね~」

「軍人なので」

 

 

 

 

「着いた!」

「まさか四日目で到着できるとはな……」

「もしかして、最短記録じゃない!?」

「後は発煙筒を焚いてヘリを呼んで終わりね」

 

ヘリポートに着いた207B達

 

武はこの先の出来事を知っているので、千鶴にこう言った

 

「なぁ、委員長。発煙筒、俺に焚かせてくれないか?」

「え?白銀が?」

「前からやってみたかったんだよ。こう……なんかロマン溢れてるだろ?」

「そのロマンは分からないけど……やりたいならやっていいわよ」

「おう。ありがとな」

 

武はヘリポートの端に向かう

 

「何で端に行くのだ?」

「何だか端で焚いてみたいんだよ」

「……変な奴」

 

武がヘリポートの端で発煙筒を焚く

 

すると、回収用のヘリがヘリポートに飛んできた

 

武はヘリを見ながら、チラチラと砲台のある場所を伺う

 

そして、ヘリが結構高度を下げたところで、銃弾が武のいるヘリポートに降り注いだ

 

「やべっ!逃げろ!!」

 

ヘリが逃げていく。武も全力で逃げていく

 

一方、砲台の方では

 

「ヒャッハー!!逃げる武はただの武た!逃げない武はよく訓練された武だ!ほんとこの世は地獄だぜ!フーハハハ!!」

 

キャラが微塵も残さず崩壊したルリがエステバリス重武装フレームのラピッドライフルを武とヘリに当てないように撃っていた

 

砲台も勿論弾は撃っている

 

一方、武は

 

(銃弾多くね!?なんか俺の記憶よりも倍以上の弾丸が地面に当たる音が聞こえるんですけどぉぉぉぉ!!?)

「武!こっちだ!」

「速く!!」

「たけるさん!急いで!」

「タケル!速くしないと当たっちゃうよ!?」

「……白銀の体が風穴祭り」

「彩峰!!テメェは後でお仕置きだコノヤロー!!」

 

だが、何故か自分の半径二メートルに銃弾が来ない事に疑問を感じる武だった

 

 

 

 

「あんた、何エステバリスではっちゃけてるのよ」

「すみません、柄にも無くはしゃぎ過ぎました。勿論一発も当ててません」

「当てたらそれこそ問題よ……」

「少佐……その強化装備は?」

「夕呼さんが作った試作品です。対G性能にも優れて持ち運びはこの肩の物だけでいいんです。ほら」

 

パイロットスーツを消して肩の部分だけ取り外してまりもに渡す

 

「あ、そうだ。夕呼さん。これを207Bに渡すというのはどうでしょう?」

「無理よ。全体的に規格が違うわ。あなたの機体は特殊だけど戦術機は衛士強化装備があって初めて動かせるような物なの」

「成程……そういえばそうでしたね」

 

それを適当な場所に置いておく

 

後でちゃんと持って帰るつもりだ

 

「あ、回収地点どうするんですか?」

「勿論変更よ。えっと……ここね」

 

夕呼が地図を取り出して一点を指さす

 

大体砲台の後ろの辺りだった

 

「それじゃあ、通信入れますか。まりもちゃんはあっちで待機してた方がいいのでは?」

「……そうですね。では、私は回収地点へ向かいます」

 

まりもが新しい回収地点へと歩いていく

 

夕呼とルリは207Bの持っている通信機に通信を入れる

 

「は~い、聞こえてる~?」

『…………はい、聞こえます』

 

通信機を取り出していたのだろう。物音が暫くしてから千鶴の声が無線越しに聞こえた

 

「ヘリポートが駄目になっちゃったので新しく回収地点Dを設けます」

「砲台は何でか今も稼働中だから、蜂の巣にはならないで頂戴」

 

ルリがメモ用紙に書かれた座標を無線越しに伝える

 

『ここ……砲台の真後ろじゃ……』

「そうです。まぁ、これだけ時間があれば余裕でしょう。健闘を祈ってます」

 

一方的に無線を切る

 

ルリはそのまま泳ぎに行き、夕呼は手元のトロピカルなジュースを飲み始める

 

圧倒的なツッコミ不足だ

 

 

 

 

「はぁ……香月博士らしいやり方だな……」

「全くだ……」

 

硬そうな岩の後ろに避難していた207Bの面々

 

穴ボコになったヘリポートを見て溜め息が出るのも仕方ない事だろう

 

「……溜め息ついてても仕方ない。先に進むぞ」

「……そうね。なってしまったものは仕方ないわね」

 

ちょっと意気消沈しながらも、先へと進む207Bだった

 

 

 

 

その後はまぁ色々とあった

 

雨で川が増水してロープをとるか対物体狙撃銃をとるかモメたり、レドーム見つけたり、回収地点に繋がる橋が物凄くボロボロになってたりと

 

そんな困難を乗り越えて夜中、回収地点に到着した

 

が、迎えのヘリは見えなかった

 

「へ、ヘリは……?」

「あっちには……なにも見えないよ……」

「こっちもだ……」

 

既に体力は限界。武もかなり焦っていた

 

オロオロとしていると、第三者の声がかかった

 

「状況終了!207分隊集合!」

「え?」

 

武が声を漏らしながら声のした方を見ると、そこにはまりもがいた

 

戸惑いながらも全員がキビキビと集合する

 

「只今を以って、総合戦闘技術評価演習を終了する。ご苦労だった」

 

武がホッと息を漏らす

 

「では、評価訓練の結果を伝える」

 

なっ……ここに来たら合格じゃないのか!?と武は叫びそうになった……が、心の中で叫ぶ事で我慢する

 

「敵施設の破壊とその方法、鹵獲物資の有効活用……何れも及第点といえる」

 

よし!と心の中でガッツポーズ

 

「最後の難関である砲台を、最小の労力と時間で無力化したことは、特筆に価する」

 

きたきた!と心の中で叫ぶのはお約束

 

「しかし……」

 

え?とさっきまでのテンションが下がっていく

 

「白銀と鎧衣は基地襲撃を日中に行ったな……なぜ、セオリーである夜明け前を選ばなかった?」

「退路の確保ができていないジャングルでの夜間行動は危険だからです」

「……ふん。周囲の地形を確認してから、夜間に襲撃することもできたのではないか?」

 

しまった……焦りすぎたか?そう武は考えた

 

なるべく早くこの演習を終わらせ、他の事に時間を当てる事を考えていた。それ故の焦りだと考える

 

「敵施設を迂回することもできたな? これらの減点は決して小さくないぞ」

 

それは……人間相手の場合だろう!?俺達の敵はBETAじゃないか!!

 

武はそれを声に出さなかった……が、

 

「……まりもちゃん!」

 

思わずまりもの事をそう呼んでしまった

 

「……まりもちゃん?」

 

しまった!と口を抑えそうになったが、もう手遅れ

 

「……まぁいい。白銀、今日の所は見逃してやろう……めでたい日だからな」

『……え!?』

 

全員の口からその言葉は思わず出た

 

「おめでとう……貴様らはこの評価演習をパスした!」

「……えっ……でも……それだけの重大なミスを……」

 

思わずまりもに聞いた

 

「榊、この演習の第一目的はなんだ?」

「脱出……です」

「実践に於いて、計画通りに事態が推移することは稀だ。それ故、タイミングや運といった要素も重要になる。それらを全て味方に付け、結果として目的を達成すれば『それが正しい判断だった』ということになるんだ。 セオリーはセオリーでしかない。結果として、貴様等を狙える位置に追撃部隊は存在しなかったし、砲台のセンサーはひとつだけだった。そして貴様等は、全員無事に脱出に成功した……違うか?」

「……いえ」

 

まりもの言葉を肯定する

 

そして、まりもがおめでとう。次は戦術機が待っているぞ。と言おうとしたとき

 

『おめでとうございま~す』

『え!?』

 

その場にいる全員がいきなりの拡声器による声で驚いた

 

拡声器の声がした方を見ると、

 

「ルリちゃん!?」

「星河少佐!?」

「次は戦術機が待ってますよ~」

 

ひらひらと手を振りながら拡声器をポイッと投げ捨てる

 

ちゃんと回収はしました

 

「け、敬れ……」

「あ~もう……良いって言ってるじゃないですか」

 

やめやめ。と手で敬礼しようとしたまりもも含めた七人を制す

 

「まぁ、総合評価演習は見事合格。しかも私達の余計な事が無ければ歴代最短と言えるかもしれない位の早さで合格してたんです。凄いものですよ」

 

あんたも一枚噛んでたんかい……と訓練兵達が心の中でツッコミを入れる

 

「ってな訳で堅苦しい事は終わり。明日の一日だけバカンスです。飲め!食え!遊べ!泳げ!と、言うわけです」

 

バカンスの準備は万全ですよ。と付け加える

 

「あ、後さっきドサクサに紛れてルリちゃんと呼んだ武さんは後でキャタピラで挽き肉です」

「死ぬぅ!流石に死んじゃうぅ!」

「はい、タメ口なので二倍」

「堅苦しい事は無しって言ってなかった!?」

「ただし武。テメェは駄目だ」

「理不尽だぁぁ!?」

 

二人のボケとツッコミの応酬に口を開いてポカーンとしている六人

 

「なんてことは冗談です。あなたの息子は挽き肉にしますが」

「俺のMy sonに何の恨みがあるの!?」

「裸見られた」

「それ、結構前の……」

 

ガシッ!と武の肩に美琴の手が置かれる

 

「タケル?どういう事?」

「あ、デジャヴ……」

「そうね……ついでに私達も……」

 

武が五人に担がれ、林の中に拉致されて行った

 

「……まぁ、下着姿ですし、一度粛清されてるんですけどね。あの人」

「は、はぁ……」

 

ほら、戻りますよ。とまりもの手を引いて夕呼の居る海岸に歩き出すルリ

 

数分後

 

「チョパムッ!!」

 

悲痛な武の断末魔(?)が響いた

 

 

 

 

翌日の海岸

 

「……ルリちゃん。俺、昨日、ルリちゃんが来た辺りから記憶がないんだ……何でだろう?」

 

武は体中にアザ作ってたが、命に別状は無かった

 

「息子でも挽き肉にされたんじゃないですか?」

「ルリちゃん、挽き肉ネタ好きだな!!」

 

が、なんか寒気がしたので股間を一瞬触る。ちゃんとあった

 

「お望みならマジで挽き肉にしますよ?」

「お願いなので止めてください。子供が作れなくなってしまいます」

 

頭を下げる武

 

「ケッ、ギャルゲー主人公が……」

 

明後日を向いて毒づくルリ

 

「どういう事!?」

 

ギャルゲー主人公という言葉に反応する武

 

そりゃあいきなりギャルゲー主人公とか言われたら誰だって戸惑う

 

「うっさい!恋愛原子核!!」

「理不尽に怒られた!?ついでに何で恋愛原子核って単語知ってんの!?」

 

あーやだやだ。と言いながら肉や野菜を焼いていくルリ

 

そして、焼き上がった串に刺さった肉を武に差し出す

 

「味見、お願いします」

「お、おう」

 

いきなりの態度の変化に戸惑いながらも肉を口に運ぶ武

 

「うめぇ……!この塩コショウっていうシンプルな味付けがまた……!しかもジューシー……!」

 

涙を流しそうになるが、ガツガツと肉を食らっていく武

 

海で遊んでる冥夜達訓練兵は何で泣きそうになってるんだか……と呆れている

 

「ホシカワ、野菜お願い」

「了解です」

 

焼き上がったピーマンや玉ねぎの刺してある串を二、三本皿に移して夕呼に渡す

 

「やっぱり合成食材とじゃ比べ物にならないわね~」

 

夕呼も食べ進めていく

 

ルリは肉の串を六本持って海で遊んでいるまりも達の元に行く

 

ちなみに、ルリも水着だ

 

「遊んでばっかりだとお腹が空くでしょうし、これどうぞ」

 

ルリが一本ずつ串を手渡していく

 

「あ、食べ終わったら串はこっち持ってきてください。こちらで処理するので」

 

手渡してからすぐにまた肉を焼きに行くルリ

 

「……一応言っておきますけど、それ、天然食材ですので」

『え!?』

「いいにおい……」

「少佐……一体どれだけ天然食材を……」

 

ルリは驚く訓練兵達に目を向けずに武に指示をして鉄板を取り出し、鉄板と金網を取り替える

 

よっこいしょ。と言いながら食材を入れた袋と別の袋から取り出したのは麺と野菜

 

「いやぁ、力持ちがいて助かります」

「こういうのは男の仕事だからな。あ、俺ちょっと霞のお土産探してくる」

「エステバリスと衝突しないように気を付けてくださいね~」

「あぁ、気を付けるよ。主にルリちゃんの行動に」

 

武は霞へのお土産を探しに行った

 

じゅ~……といい音と共に麺が焼けていく。同時に野菜も刻んで適当に焼いておく

 

暫く菜箸で焼いてから、一本だけ口に運ぶ。大分いい感じに焼けたところでソースをぶっかけ、焼きそばの完成

 

と、同時に慧がみんなの分の串を持ってやって来た

 

「焼きそば……?」

「はい。あ、串はそこに置いておいてください」

 

焼きそばを皿に移して袋からコッペパンを一個取り出し、真ん中を二分割しないようにそこに焼きそばを詰め込む

 

そして、またまた袋から紅しょうが(inタッパー)と青のり(inタッパー)を取り出し、紅しょうがの漬け汁をちゃんときって乗せ、青のりも乗せて焼きそばパンの完成

 

「彩峰さん、どうぞ」

「……ありがと」

 

そして、その焼きそばパンを慧に渡す

 

受け取って暫く眺めたあとガブッと豪快にそれを口に運ぶ慧

 

「……美味しい」

 

口調はそこまで変わってなかったが、心なしか目がキラキラしていた

 

「お代わりはまだありますから」

「……これも天然食材?」

「モチのロンです」

 

2個目の焼きそばパンの作成に取り掛かりながらそう答えるルリ

 

「ほら、皆さん待ってますよ?幸い焼きそばパンは見えてないみたいですのでちゃっちゃと食べて戻ったらどうです?」

「そうする。うまうま」

 

慧はモグモグと焼きそばパンを食べる

 

そして、その間に出来た二個目の焼きそばパンを自分の口に運ぶ。それなりに美味しかった

 

PXの京塚さんに作らせたらもっと美味しいんだろうなぁ……なんて思いながら、モグモグと二人で(無言で)焼きそばパンを食べていく

 

「慧さ~ん!早く……って、星河少佐が何か食べてる!」

 

美琴がルリが焼きそばパンを食べているのに気付く

 

「もぐもぐ……パンですよ。私だって人間なので食べ物食べますよ(早く行かないとバレますよ)」

「(分かった)ゴクン」

 

海にいるメンバーに聞こえないように話す二人

 

慧は焼きそばパンを食べ終わるとスタスタと海に戻っていった

 

きゃっきゃうふふ。とはしゃぐ冥夜達を見ながら、自前の椅子に座って半分程食べ終わった焼きそばパンを皿の上に置き、ジュースを飲む

 

(空が綺麗……でも、この空は今はBETAのあん畜生共な物……)

 

365日毎日日給なしで働いている太陽を直視しないように雲一つない空を見る

 

戦術機だって空を飛べる。が、それは無謀と言える

 

(エステバリスやナデシコなら飛べる……けど、戦術機は撃ち落とされる……)

 

今の人類はBETAという鳥籠に捕らわれた鳥だ。限られた空間でしか飛ぶことの出来ない鳥だ

 

対して、ルリは言わば鳥籠から脱走した鳥だ。しかも、鳥籠をこじ開けるための力まで持った

 

(私の求めるハッピーエンド……武さんを元の世界に戻し、冥夜さん達を全員助ける……それだけ?)

 

眩しい空を見ながら考える

 

(桜花作戦が終わった後は……?)

 

暫く考える……が、何も出てこない

 

(私がやろうとしてるのは『因果』への反逆……『あいとゆうきのおとぎばなし』への反逆だ)

 

BETAに頭から食べられたまりもを助け、S-11で自爆した千鶴と慧を助け、突撃級に押しつぶされ、下半身が無くなった壬姫を助け、同じく突撃級に潰された美琴を助け、あ号標的と戦い、凄乃皇四型に乗った武の苦渋の決断により、あ号標的と共に死んでいった冥夜を助け……

 

まだまだある。それをたった一人……たった五機のエステバリスとナデシコC、そして──────で成し遂げなくてはならない

 

口で言うのは簡単だ。だが、それを成し遂げれるのか?

 

(ぶっつけ本番……しかないよね)

 

何としてでも……例え、エステバリスを怖そうと、ナデシコCを沈めようと助ける……そう決めた。決めていた

 

(私のゴールは退廃的な生活の確立…………考えても分からないや。どうやったら確立出来るのか)

 

島一つ買う?ナデシコCを海底に沈めてその中で寿命が来るまで過ごす?普通に本土の土地を買って家を建てる?

 

方法は何個もある。が、もし自分が表舞台に立ったのなら。ナデシコCと共に立ったのなら。確実に軍のお偉いさん達がナデシコの技術を求めてルリを追うだろう。その中で退廃的な生活なんて確立出来るものなのか……

 

桜花作戦を死者無しでの突破はエステバリスとナデシコは必ずしも必要だ

 

(……死者無し?私は今死者無しと考えた?)

 

死者無し。それはほぼ無意識に出ていた

 

(私のハッピーエンドは……鑑純夏も助ける事?心の中ではそう思っている?)

 

無意識に出た死者無しという言葉について考える

 

(……駄目だ。それじゃあ武さんを元の世界に帰せない……でも、鑑純夏の犠牲によって得た元の世界への片道切符……それを武さんは喜ぶ?)

 

答えはすぐに出た

 

(そんな事ない。もし、私の立場に武さんが居たのなら、武さんは鑑純夏も救おうとする。皆で生き残る。きっと、それが武さんのハッピーエンド)

 

それを考えて、自分はどうする?

 

(なら、やってやる。武さんの目指すハッピーエンド……私も手伝ってみせる。武さんと私……そして、夕呼さんとオモイカネ。さらにナデシコCとエステバリス……負ける要素なんて一つもない)

 

そう。変態技術を持つ武、天才科学者の夕呼、死ぬ要素皆無のルリとオモイカネ、やられる筈もないナデシコとエステバリス

 

これだけいれば、勝てない筈がない。負ける筈がない

 

(何だか私のハッピーエンドじゃなくて武さんのハッピーエンド基準になってる気が……まぁ、皆が笑って終われるのがハッピーエンドなんだし、別にいいか)

 

すっかり温くなったジュースで喉を潤す

 

(…………で、退廃的な生活はどうしよう

……)

 

こっちは何にも解決してなかった

 

「なにさっきから難しい顔してんのよ」

「夕呼さん……いえ、ただ退廃的な生活ってどうやったら送れるのかな……って」

「……全部終わったら戸籍消して無人島にでも永住したら?」

「……はっ!その手があった!」

(あ、馬鹿ね。こいつ)

 

色々と問題あるでしょうが……と、トロピカルなジュースを飲みながら呆れる夕呼だった

 

色々と考え過ぎて頭がオーバーヒートしてるようだ

 

「はむっ……さて、次は何を焼きましょうか」

 

焼きそばパンの残りをジュースと共に胃に流し込んで立ち上がるルリ

 

そして、そこに武が戻ってくる

 

「あ、武さん。霞さんへのお土産は見つかりました?」

「あぁ、これが良いんじゃないかなって」

 

武が手に持った貝殻を見せてくる

 

そういえば、霞に渡してたのはこんな感じの貝殻だっけ。と思い出す

 

「良いんじゃないですか?」

「だろ?」

 

案外大きかった貝殻をマジマジと見ながらそう答える

 

と、そこに

 

「星河さ~ん」

 

壬姫が走ってきた

 

「どうかしました?」

「星河さんも一緒に遊びましょうよ!」

 

壬姫は堅苦しい事は無しと言われたからか、訓練兵達だけの時や二人きりの時は少佐とつけないようにしたらしい

 

そんな壬姫がルリを引っ張っていく

 

「え、ちょっ……って力強っ!?」

「鍛えてますから~」

「そうだった……って、あぁぁぁ!!」

 

バッシャーン。とルリが海に投げられる

 

ルリよりも遥かに重い装備を身につけてランニング出来る壬姫にルリ一人放り投げる事は容易い

 

その小さい体の何処にそんな力を蓄えているのだか

 

「いった!!プールで友達に投げ飛ばされた時より痛い!!」

 

足のつかない場所まで放り投げられたこた事に驚きながらも、痛さの感想を叫んでた。と、言うか素が出た

 

「あはは~」

 

バシャバシャと浮き輪を身に付けバタ足で泳いできた壬姫

 

イラッ☆ときたルリは潜ってボソンジャンプ。壬姫の後ろに回り込んで足を掴んで海に引き釣りこんだ

 

「わぷっ!?」

 

引き釣り込まれた壬姫とルリの目が合う

 

「がぼぼぼ、がぼ(何するんですか)!」

「ごぼぼ(お返しです)」

 

果たして会話は成立していたのか、二人は浮上する

 

「びっくりしたじゃないですか!」

「びっくりしたのはこっちですよ!海に投げ捨てられて!その小さい体の何処にそんな馬鹿力があるんですか!?」

「小さいって……そっちだって小さいじゃないですか!」

「馬鹿力は否定しないのかい!少なくともそっちよりは大きいですよ!」

「同じくらいでした!」

「じゃあ比べてみます?ここを」

 

つんつん。と壬姫の胸をつつく

 

「いいですよ!勝負です!」

 

一方、武は

 

「焼きそばパンうめぇ」

 

余った焼きそばとコッペパンで焼きそばパンを作って食っていた

 

「では、私から」

 

ルリが壬姫の胸に手を付ける

 

そして、次に自分の胸に……そこでニヤリと笑った

 

次に壬姫がルリの胸に手を置き、自分の胸に

 

「ま、負けた……」

「アイムウィナー」

 

ちょっとだけルリの方があったようだ

 

「珠瀬、何をしておる。死体の真似か?」

 

プカプカと死体のように浮いていた壬姫に声をかける冥夜

 

そして、壬姫とルリの視線は冥夜の大きな胸に一直線

 

「……なんだろう、さっきまでの事がただのお遊びに思えてきた」

「わたしも……」

「……何故私の胸を見ながら言うのだ」

 

だが、二人の視線は胸に行ったままだ

 

「胸なんてあっても肩は凝るし邪魔なだけだろう」

「持たざる物にしか分からないこの敗北感……!」

「もげろ!」

「もげぬわ!」

 

なんて事をギャーギャーとやってる3人

 

そして、離れた場所のまりも、千鶴、慧、美琴は

 

「……ぺったんこ」

「だ、大丈夫よ。その内大きくなるわよ」

「もう成長しないよ……」

 

まぁ、並行世界では男だったのだ。大きくなる要素は無いだろう。揉んだり寄せて上げた場合は別になるだろうが

 

「そういえば、揉んだら大きくなるって聞いたことあるわよ?」

 

ハッ!と美琴が何かを閃いた

 

「じゃあタケルに……」

「おっと、そうは行かないわ。私が揉んであげるわ?同性だもの」

「……珍しく同意見」

「ちょっ、止め、あ~~!」

 

沖合に引きづられていく美琴

 

まりもは頭抱えて溜め息をついていた

 

そんな中、武は一人で肉焼いて勝手に食べていた。何故泳がないか?あの中に野郎一人で入る勇気は欠片も無いからだ

 

「肉うめぇ」

「……愉快ね」

 

結局、最後はルリ&壬姫&美琴VS冥夜&千鶴&慧。審判はまりもと夕呼とでビーチバレーをやる事になった

 

武にとって冥夜達のジャンプやらレシーブやらは刺激が強すぎたため、ルリ達の方を向いてたそうな。そしたらその意図を察知したのか、ルリが弾丸サーブ(オーバーヘッドキック)により打ち出したボールを武の股間に寸分の狂いなく下から上へとヒットさせ、ノックアウトした後、壬姫と美琴と共に海に投げ捨てたのは皆の記憶に新しかった

 

結局、勝負は軍属ではないルリが居たチームが負け、冥夜達が買った

 

敗因は平均身長の低さとルリがまともに鍛えてない事だった

 

最後は何故か訓練兵組VS武&まりも&ルリとなり、武が目を逸らしてるため戦闘不能なのにルリの弾丸サーブとまりもの的確なブロックで勝利をもぎ取っていたのも記憶に新しい

 

それを見ていた夕呼は

 

「愉快ね~……あと、白銀。あんた、男なんだから乳揺れとかから目を背けたら駄目じゃない」

「もう何日もソロプレイしてないのでキツかったのが事実です。直視したら皆が引く現象が起こってました」

「そう。じゃあ、もう一度海に逝ってきなさい」

「え……」

 

ばっしゃ~ん!!とまた武は海に投げ捨てられたとさ




何だか武ちゃんが理不尽な扱い&ギャグキャラにされてますが、僕が武ちゃん嫌いだからこんな扱いをしてるとかじゃなくて、なんか気が付いたらこんな感じになってました。自分は武ちゃん、嫌いじゃありませんよ?好きですよ?

それと、挽き肉ネタは個人的に気に入ってるのでこれからもバンバン使っていきます

あと、ルリの考えるハッピーエンドに純夏も助けるが追加されました。かなりキツイ戦いになりそうですよね

そういえば、エステバリスの重武装フレームってガンガー・クロス・オペレーションで破壊されて以来アニメにもゲームにも出てきてませんよね。基本陸戦、空戦、0Gですし

次回はやっと戦術機の適性検査です。ゲームで言えばchapter4です

あと、武ちゃん達は凄いですよね。何百キロの装備担いで走れるんですから。自分は今日、学校の体育で四十キロのダンベル(でしたっけ?)を1回上げれただけで既に筋肉痛ですw


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いきなりの『模擬戦』!?聞いてねぇよ!by武

タイトルでネタバレ。今回は超いきなりですが、武ちゃんVSルリです

IFSというチート相手に戦う武ちゃんをご覧下さい。一応武ちゃん視点です


「……こんな感じかな?」

「あら、出来たの?」

「はい。エステバリスの荷電粒子砲は元々小型でしたので、戦術機用に少し大型化させてみました」

 

ピッ。とモニターを目の前に出して夕呼に投げる

 

夕呼はそのモニターに目を通す

 

「戦術機にとってハンドガンサイズに収まり、火力はエステバリスの物と大差ありません。まぁ、大型化が面倒だったってだけです」

 

エステバリスでも持てる程度の物をある程度大きくしただけの物だが、荷電粒子砲なのは変わりない

 

「ですが、電力をかなり食うので、こんな感じに……」

 

またモニターを出して夕呼に投げつける

 

「荷電粒子砲に電力供給装置を直接付ける……と、言うのを思い付いたんですが、どうでしょう?」

「……この荷電粒子砲一丁の為にねぇ……コストパフォーマンスは最悪よ?」

 

荷電粒子砲一丁賄う分の電力を生産する発電機を各荷電粒子砲に取り付ける

 

口で言うのは簡単だが、そうそう出来るものではない

 

「エステバリスはナデシコCからの重力波ビームでエネルギー供給を賄ってますからね……」

「……って言うかここのバッテリーを大型化させたら万事解決じゃないかしら?」

「あっ……」

「あと、このバッテリーを弾倉のように……こうしたらいいんじゃないかしら?」

「……負けました」

 

結局、荷電粒子砲はバッテリー部分を大型化させ、バッテリーは交換式にする事で落ち着きました

 

「無理矢理小型化させると戦術機じゃ積めないのよ」

「この大きさは?」

「バッテリーをこれだけ大型化させたらようやくって所ね」

「重量は?」

「大丈夫だと思うわ。まぁ、これを持たせた戦術機に後衛をさせれば……」

 

暫く、荷電粒子砲の設計の見直し等が続いた

 

 

 

 

「え?俺だけここに残れ?どういう事ですか?」

「少佐と香月博士からの伝言だから私にも分からない……何聞いてもNeed to knowと言われて……」

「まぁ……分かりました」

 

戦術機のシミュレーターでの適性検査を終えた武はまりもからそんな事を言い渡された

 

そして、解散となり、皆が更衣室に。まりもも出て行った

 

武の今の格好は勿論訓練兵用の衛士強化装備。そのままで待つこと数分

 

「白銀、待たせたかしら?」

「あ、夕呼先生……それと霞?珍しいな」

 

そして、入ってきたのは夕呼と霞だった

 

「それじゃあ、早速だけどあのシミュレーターに乗ってくれない?」

「え?いきなりですね……」

「私はちょっと調整があるからあんたへの指示は社が出すわ。あ、あんたの機体は吹雪よ」

(吹雪か……慣れない機体だけどやるしかないか)

 

夕呼がシミュレーターの前でノートパソコンを開き、なにかやっている。必要な事だけはパパッと伝えられた

 

霞と二人で取り残される武

 

「なぁ、何が始まるんだ?」

「……秘密」

「秘密か……まぁいいけど。そんじゃ、サポート頼むぜ」

 

武がシミュレーターに乗り込み、操縦桿を握る

 

そして、暫くして電源が着いた

 

『白銀。装備は何で行く?』

 

夕呼からの通信が入った

 

「じゃあ、突撃前衛(ストームバンガード)で」

『分かったわ』

 

夕呼から通信が途切れ、代わりに霞が映し出される

 

『今回は模擬戦』

「模擬戦……?誰とだ?」

『ホシカワさん』

「は?」

 

すぐに、シミュレーターに映像が投影される

 

そこはビル等が立ち並ぶ街の中で、今回武の乗る吹雪の目の前にはショッキングピンクのエステバリス、陸戦フレームが立っていた

 

「エステバリス……?」

『どうも、武さん』

 

武の網膜にエステバリスに乗り込んでいるルリからの通信が投影された

 

『今回、夕呼さんがエステバリスと戦術機の対戦を見たいとの事だったので私と模擬戦をしてもらいます』

「いきなりだな……」

『すみません。まりもちゃんや冥夜さん達に知られる訳にもいかなかったので』

 

確かに、適性検査受けたその日にシミュレーター使った模擬戦なんて普通は有り得ないしな。と納得する

 

「そういえば、ルリちゃんは何処にいるんだ?」

『ナデシコです。ここからそっちまで電波飛ばしてシミュレーター同士で夕呼さんに繋いでもらってます』

 

まぁ、そっちにエステバリスのシミュレーターなんて置けなかったって言うのも理由なんですけどね。と付け足す

 

ナデシコにはちゃんとシミュレーターが設置されている。しかも二台

 

その二台のシミュレーターで対戦するもよし、合体攻撃を開発するもよし

 

今回、ルリは夕呼との協力で横浜基地のシミュレーターとナデシコのシミュレーターを通信させたのだ

 

結構無茶な事だったが、案外なんとかなった

 

『では、夕呼さん。お願いします』

 

ルリの声と共に武の機体がどこかに飛ばされる。ルリのエステバリスも同様だ

 

『あ、今回私はディストーションフィールドは防御には使いません。あったらそっちがかなり不利ですので』

 

と、最後にルリの通信が入り、すぐに途絶えた

 

『……模擬戦、開始』

「霞、ルリちゃんの居場所をレーダーに表示できるか?」

 

武の問に霞は頷き、レーダーに赤い点が表示される

 

数百メートル離れた場所にいるのが分かったが、一直線にこっちへ向かってきている

 

が、ここで思い出して欲しいのはここはビル群がある街だということだ

 

(一直線……まさか!)

 

徐々に赤い点が近付いてきている。それと同時にガン!!ドン!!と何かを破壊する音も聞こえる

 

「ぶち抜いてるのか!?ビルを!!」

 

そして、ルリとの距離が三十メートルを切る

 

「くそっ!」

 

武は吹雪の腰に着いている跳躍ユニットを起動。飛び上がってビルの上に乗り、すぐにルリが来ている方に向かって飛ぶ

 

その直後、武が足場にしていたビルが倒壊した

 

そして、チラリと見えたエステバリスはバリアーのようなものを纏っていた

 

(攻撃は最大の防御ってか!?いや、この際は逆か!)

 

倒れているビルを足場に、右手に装備している36mm突撃砲を赤い点に向けて構える。そして、躊躇なく発射する

 

エステバリスはキャタピラで横にスライドするように動いて突撃砲をかわす。が、武は偏差射撃でエステバリスに向けてもう一度突撃砲を発射する

 

エステバリスは背中のバーニアを吹かして飛び上がり、空中で武に向き直り、一瞬でワイヤードフィストを放った

 

「ロケットパンチ!?」

 

武は跳躍ユニットを横に向けて吹かし、その場から離れ、エステバリスの手に向かって突撃砲を放つ

 

が、腕は一瞬でワイヤーにより巻き取られ、突撃砲を虚空を切る

 

武は突撃砲をルリに向ける。そして、突撃砲に着いているもう一つの弾薬、120mmの弾丸を一発発射した

 

ルリはそれをよけながら武へと近付く

 

(120mmをよけるかよ!?)

 

武は勿体無いが突撃砲を投げ捨て、74式近接戦闘用長刀を選択し、吹雪に握らせる

 

ルリはイミデュエットナイフを装備している

 

(的が小さいが……行ける!)

 

武は地を蹴り、跳躍ユニットを吹かせて一気にエステバリスの側面に回り込む

 

そして、そのまま横一閃に長刀を振るった

 

が、ルリは戦術機では考えられない反応速度でイミディエットナイフを長刀に向けて構えた

 

イミディエットナイフからディストーションフィールドが発生され、長刀を真っ二つに切断した

 

「なっ!?長刀を!?」

 

長刀を切断したナイフを構え、エステバリスか近づいてくる

 

武は突撃前衛の装備についている盾を無意味とわかりながらもエステバリスに向ける

 

エステバリスはナイフを一閃。盾をバターのように切り裂いた。幸い、貫通はしてなかった。エステバリスがナイフで戦ってた事が幸いした

 

吹雪の足でその場を蹴って後ろに下がる

 

使い物にならないであろう盾を投げ捨て、最後の長刀を構えた

 

(ルリちゃんの持ってる武器はナイフだけ……だとしても、あの切れ味……激震のような装甲ならともかく、吹雪の装甲で耐えられるかどうか……)

 

激震は厚い装甲が売りでもある。激震だったら、ある程度の装甲を犠牲に特攻したらエステバリスを長刀で一刀両断出来たかもしれない

 

が、吹雪は第三世代準拠の練習機。第一世代の激震から不知火への機種変換時に、練習用に使われる機体だ

 

だが、吹雪は実戦投入出来る位の性能はある

 

第三世代は第二世代で薄くなった装甲を新しい素材で軽量化させ、反応速度等を上げた機体だ。激震のような厚い装甲は無い

 

管制ユニットにでもナイフが直撃したらその時点でジ・エンド。長刀で受け止める事も出来ないのでかなりマズイ

 

しかも、長刀をナイフで一瞬で受け止めたところを見ると、反応速度はあっちの方が上

 

(……なら!)

 

武は横目でモニターに映っている突撃砲を見る

 

暫くして痺れを切らしたのか、ルリがナイフ片手に突っ込んできた

 

その瞬間、跳躍ユニットを吹かして横に飛び、突撃砲の前まで行く。そのまま突撃砲を吹雪の手に握らせ、長刀を背中に戻し、また突撃してきたエステバリスから逃げるように跳躍ユニットを吹かせて上へと飛ぶ

 

そして、エステバリスに突撃砲の雨あられを降らせる

 

ルリはエステバリスのキャタピラを起動させ、突撃砲の36mm砲を避ける

 

そして、あろう事か唯一の武器であるイミデュエットナイフを武に投げつけた

 

「うぉっ!?」

 

そのナイフを跳躍ユニットを横に吹かせてよけ、着地した……瞬間、エステバリスはすぐ目の前にいた

 

「速っ……!」

 

そして、エステバリスのディストーションフィールドを纏った拳が吹雪の管制ユニットを貫いた

 

 

 

 

「負けるかと思いましたよ……ラピッドライフルを持ってこなかったのは失敗でした」

「くぅ~……!突撃砲がもう一つあったら勝てたのに!それにもっと吹雪に慣れていれば!」

「ちなみに、エステバリスは何発か36mmもらってたけど、全部装甲を貫いてなかったわ。装甲は激震以上ね」

「何だよそれ~……」

 

ルリは模擬戦が終わった後すぐにナデシコを出て横浜基地へと行った

 

そして、更衣室で既に着替え終わっていた武と夕呼と霞と合流したのだ

 

「まさかIFSにあそこまでついてくるなんて……」

「やっぱIFSってやつ使ってみてぇなぁ……そしたらリアルバルジャーノンだって出来ちまうのに……」

「一応、コアブロックを戦術機の管制ユニットの中と同じようにしてEOSを使えば戦術機のようにエステバリスを動かすことが出来ますよ」

「マジ!?」

「マジです」

「また白銀語か……」

 

そうしたらあれをこうして……なんて考え出す武

 

だが、エステバリスの装備に刀は無いので、再現できる機体と出来ない機体は別れるだろう

 

「あ、そういえば先生!」

「なによ」

「俺達の吹雪が明日搬入されるんですよね!?」

 

午前の訓練が終わった時、まりもの口からそう告げられたのだ

 

「あぁ、そうだったわね。あんた、一日でも早く卒業したいんでしょ?」

「はい!」

「それに、現役で戦術機乗ってた衛士が居るんだし、腐らせるのももったいないじゃないですか……って事ですよね?」

「そういう訳よ」

 

ルリが夕呼の代わりに答えた

 

「……と、言うか何でいきなり模擬戦を?」

 

武が聞いた

 

「だから言ったでしょう?夕呼さんがエステバ……」

「こいつが暇だからって無理無理仕組んだのよ」

「ちょっ、バラさないでくださいよ!」

 

やっぱそんな感じか……と苦笑いする武

 

「まぁ、明日からの訓練も頑張ってくださいね」

「おう」

「じゃあ、夕呼さん。荷電粒子砲の設計の見直しでもしましょうか」

「そうね」

 

夕呼とルリが部屋に戻ろうとする。それに霞もついて行こうとする

 

「ちょっと待て。なんかロマン溢れる武器の名前が聞こえた気がした」

 

その3人を呼び止める武

 

「荷電粒子砲ですか?」

「そうそれ!」

 

ちょっと興奮気味に武が声を出す

 

「一応エステバリスに積んでありますよ?完成品が」

「マジで!?荷電粒子砲を!?」

「えぇ。それを戦術機用に再設計してたんですよ」

 

最近は使わなくなってきた元の世界でよく使っていた言葉がポンポン出てくる武

 

「まぁ、使いたいんでしたら実験機を武さんの機体に積むって事は……」

「取り敢えずは実戦に出れるようになったら、あんたの機体に付けてあげるわ」

「よっしゃ!」

 

それじゃあ、見直しに戻るんで……と、帰っていった夕呼とルリと霞

 

そして、武が戦術機のOSについて───後にXM3となる新OSの提案をしてくるのはこの翌日だったりする




武ちゃんの武装に荷電粒子砲が追加されるようです

荷電粒子砲はマブラヴでも大型なら作れるので、バッテリーとかを何とかしたら作れるんじゃないか……なんて馬鹿なりに考えた結果がバッテリーの大型化させ、さらにマガジン式にするという結果です

これなら弾数もある程度確保できますし……って、ある程度じゃBETAの物量に勝てないような……でも、120mmだって6発しかありませんし……

作者は理系志望の身ですが、馬鹿を体現させたような人間なので、こういうところの詰は甘いです。もし何かあったら後付けで理由を加える可能性もあります

次回はたまパパ襲来?それとも飛ばして207Bでの模擬戦?まぁ、どっちかになると思われます

でわでわ


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たまパパの『訪問』

荷電粒子砲の設計終わったし、やる事無くなっちゃったわ

訓練もやる気が起きないし暇ね~。まぁ、夕呼さんが武さんを元の世界に戻して理論取りに行かせるイベントまでは暇つぶしでもしてましょうか


とある日の夕呼の部屋

 

荷電粒子砲の設計を終えて暇になったルリはパソコンにコントローラーを繋いで例の格ゲーをやっていた

 

どうやらオモイカネが暇な時にキャラを作ってるらしく、エステバリスがキャラクターに追加されていた

 

『ゲキガンフレアー!!』

『うわぁぁぁぁ!』

 

ルリの操作するゲキガンガーが右を吹っ飛ばしKO

 

「ちょっと、音量どうにかできないの?」

「あ、すみません」

 

パソコンの音量を出来るだけ下げる

 

「そういえば、荷電粒子砲はどうなりました?」

 

ついこの間設計を終わらせた荷電粒子砲について質問する

 

あぁ、言ってなかったわね。と夕呼は呟き説明を始めた

 

「作れないらしいわ」

「作れない……?設計図はあるのに?」

「砲身とか、冷却装置とか……色々と問題が発生したらしいわ」

 

そこら辺考えてなかった……と頭を抱えたルリ

 

そこで一つ閃いた

 

「エステバリスの荷電粒子砲の予備パーツ使いますか?」

 

修理用に幾つか積んであった筈と付け足した

 

「……それだと一つしか作れないかもしれないわよ?」

「武さんにでも持たせれば無双してくれますって」

「……じゃあ、後で持ってきてくれる?」

「分かりました~」

 

どうやら荷電粒子砲は武機専用の装備になりそうだ

 

 

 

 

また暫く時間が経った

 

ボーッとしてるのも時間が勿体無いし、訓練してくるか。とルリが席を立ってナデシコに行こうとした時、武が入ってきた

 

「先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生!!」

「うっさいです」

「理不尽っ!?」

 

ルリの肘鉄が武の鳩尾に直撃する。が、鍛え抜いた武の鳩尾にか弱い少女(笑)であるルリの肘鉄が効くわけ無く、逆に腕が痺れてきた

 

「いっつ~~~~~……」

 

対して武はケロリとしている。流石軍人

 

「え、えっと……大丈夫か?」

「気にしないでください……」

 

皆は机の角に肘をぶつけた事があるだろうか。ルリはその時の痛みを人体を殴った事で味わっている

 

しかも思いっきり殴ったから余計痛い

 

「で、何の用?」

 

夕呼が呆れながら武に聞く

 

「そうだった!明日の事務次官の訪問の時、この基地が吹っ飛ぶかもしれません!」

「はぁ?」

 

いきなりの事に夕呼がまた呆れる

 

ルリはあぁ、たまパパか。と一人納得した

 

「じゃあ、今北産業」

 

ルリが3行で説明しろと言った

 

「珠瀬事務次官訪問

HSST降ってくる

狙撃しないと基地が吹っ飛ぶ」

 

武は3行で説明した

 

「はぁ?HSSTが降ってくる?」

「さぁ、今北産業」

「いや、これは無理だから。でも、人為的に仕組まれたっぽいです」

 

仕組まれたくさい……ねぇ。と夕呼が呟く

 

「オモイカネ。被害予測」

「あ、ついでに大気圏突入後加速するように仕組まれてたよ」

 

オモイカネが武の言ったことも含め計算をはじめる

 

結果はすぐに出た。流石スーパーコンピュータ

 

「う~ん……基地殆ど破壊されるらしいです」

 

へぇ~と夕呼が声を出した

 

「まぁ、前の世界では珠瀬さんに狙撃でもしてもらったんじゃないですか?」

「そうだが……」

「まぁ、その件はこっちで何とかしておくからあんたは戻りなさい」

「……じゃあ、頼みましたよ」

 

武が出ていった

 

「……さて、わたしはナデシコでトレーラーに荷電粒子砲の予備パーツ積んできますね」

 

ルリは何時ものクーラーボックス片手に夕呼の部屋から出ていった

 

そして、もう夕飯の時間なのでPXに行く事にした

 

そこには訓練兵達が勢揃い

 

「まぁ、珠瀬さん一日分隊長の件だと思いますけど」

 

あ、うどん一つお願いしま~す。と頼んで訓練兵達を見る

 

まぁ、自分は関係ないか。と考え受け取ったうどんを適当な席で食べるのだった

 

 

 

 

翌日のPX。訓練兵達は勢揃いでたまパパを待っている

 

ルリは現在、トレーラー(IFS仕様)で荷電粒子砲のパーツを運搬中

 

そして、PXにまりもが入ってくる

 

武は一緒にいる男が壬姫の父親だとすぐに分かった

 

その場の全員が立ち上がり敬礼する

 

「事務次官、ここが横浜基地訓練学校の食堂でございます」

「ほう」

 

たまパパがPXを見渡す

 

「ご紹介します。彼らが第207衛士訓練小隊の訓練兵です」

 

まりもが武達を紹介する

 

その後も順調に事は運んでいく。その最中、運搬を終えたルリがあ~、疲れた。と呟きながら霞と気づかれない様にPXに入って適当なところに座ったのは誰にも分からなかった

 

ちなみに、ルリはジャージだ

 

そして、色々とありテンパった壬姫は、偶然目に入ったルリ達に

 

「ぼ、ボーッとしてる暇があったらトイレ掃除でもして……ろ……」

 

途中でジャージの人物がルリだと気付き、サーッと顔色が真っ青になっていく

 

「……はい、わかりました」

 

ルリはそういうと席をキビキビと霞と共に立ち上がった

 

そして、ニコリと壬姫を見て、口を動かした

 

覚えてろ。と

 

ギギギギと効果音がつきそうな感じで武達に振り向く壬姫

 

合掌され、内心\(^o^)/になった壬姫だった

 

とうのルリ達は事務次官に敬礼をしてからPXを出ていった

 

その後、たまパパが武に近付いた

 

「君が白銀武君だね。先ほどから見てたが……うむ。なかなかの好青年だ」

「はっ、ありがとうございます」

「顔も悪くない。性格もいいと聞いている。優しくて力持ち」

 

何度も頷きながら事務次官は武の肩を叩いた

 

「おまけに成績優秀、頼りがいのあるクールなタフガイ。今のご時世、君ほどのおとこはそうそういまい」

 

なんだか褒めっぷりが前よりエスカレートしてるような……と考える

 

「君ならば……うむ、よかろう」

 

あ、前と同じだ。と考えるまで時間はかからなかった

 

「壬姫を任せたよ。これからもね」

 

これから、と聞いてもう逃げられないと思った

 

「いやぁ、そろそろ孫の顔を見てみたいものだ!ま、ご、の、か、お、がね!ハッハッハッ!」

 

後ろから殺気を感じで逃げようとしたら千鶴にガッシリと手を掴まれた

 

「あぁら、何処に行こうと言うのかしら?」

 

反対の手を冥夜に掴まれた

 

「お主は事務次官の前に居るのだぞ?」

「い、いや……トイレにだな……」

「そのまえにお話、しよっか。時間はとらせないよ」

 

ガシッと美琴が肩を掴む……ように見せかけて首を締め付ける

 

「捕獲」

 

さらに腰に彩峰が組み付き、武を持ち上げた

 

「ほんとすごく止めて下さいお願いします」

「連行」

 

四人が武を担いでPXを出ようとする

 

「止めろ!HA☆NA☆SE!!HA☆NA☆SU☆N☆DA!!」

 

そして、PXから武の姿が消えた

 

数秒後

 

「ギィヤァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

武の絶叫が響いた

 

壬姫はその間、顔真っ赤で俯き、たまパパはそれをパフォーマンスか何かだと勘違いしたようだった

 

 

 

 

男女共有トイレで掃除をしてたら武が絶叫が聞こえてから数分後、簀巻きにされてトイレに投げ込まれた。生き地獄を味わったと言っていた

 

「霞さん。武さんを踏むと喜びますよ」

「俺はそんな特殊性癖持ってねぇ!!」

 

霞に余計な事を吹き込もうとしたルリだった

 

結局、武の記憶の時間にはHSSTは降ってこなかった

 

そして、たまパパは武の知らないところで帰っていった

 

それと同時に掃除は切り上げた

 

「あ~……床冷て」

 

武は放置された。後で霞が救出しに来たが

 

ルリはたまパパが帰った後、すぐに壬姫を呼び出した

 

「ふふふ、じゃあ、じっとしてくださいね?」

「あうあうあうあう……」

 

誰もいない廊下でルリは何処から取り出したのか、手に持った物を壬姫の首に付ける

 

ついでに。とピンク色の長いもののついた物を腰につける

 

ニヤニヤとしながら、うんうん。と一人で頷いたルリだった

 

 

 

 

「……たま、そのデカイ鈴の着いた首輪とピンク色の猫の尻尾はどうした」

「星河少佐に罰ゲームだと言われて無理矢理着けられたの……恥ずかしい……」

 

大丈夫だ。武の世界では普通に装着していたから

 

それから暫くの間、大きな鈴のついた首輪とピンク色の猫尻尾を着けた壬姫が訓練時間以外で見かけられた

 

「ほら、鰹節食べますか?」

「わたしは猫じゃありませんよ~!!」

 

喉元を撫でられ、鰹節を差し出されるが、抗議する壬姫

 

首輪には平仮名で『たま』と書かれたプレートが着いているのは秘密だ

 

それを見た者は大体吹き出しそうになっている




今回は小説版をベースに書いてみました。小説版って美琴の出番少なくないですか?登場シーンもカットされてましたし。そしてこの小説でもサラリと月詠さんの初登場カット
月詠「解せぬ」

自分はギャグを書いてる時が一番楽しいと思えます。シリアス書いてる時も楽しいですが。なので、こういう話は普通に書いちゃいます

後、荷電粒子砲は感想で意見をくれた方々のアイデアを使いまして、武ちゃん専用、パーツはエステバリスの予備パーツを流用させます

あと、関係ないことですが、母親に後頭部を見られて毛が薄いとか言われました。これでもまだ16です。確かにイライラを我慢する事は学校で多々ありますけどね。うん


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残したイベントを『回収』

なぁんか私の知ってるシナリオの一部が少し抜けてる気がするのよね……気のせいかしら?

あと、更新を遅らせた作者は後で挽き肉にしておくから安心して


「お~、流石武御雷。カッコイイな~」

 

ルリは武達の吹雪が搬入された格納庫の中、一際目立つ紫色の武御雷を見ていた

 

紫色の武御雷は 政威大将軍専用機なのだが、冥夜の為に特別に持ってこられたのだ

 

月詠中尉達に見つかって文句言われないように遠目から見てるだけだが

 

「武御雷に惚れない男は居ないって聞いたけど……女の私も惚れるよ。これは」

 

触ってみたくなる衝動に駆られるが、ぐっと堪える

 

自分がこの基地に居るからなのか、記憶にあるイベントが所々飛ばされてる気がする。壬姫の一日分隊長の事について話してた時に武御雷の事を少尉が聞きに来なかったり、HSSTについて話してる時にこの基地の事について話してなかったりと……

 

必要な場所は自分が修正しよう。そう思い武御雷の元から去る

 

代わりに吹雪に触る

 

暫く触れた後に吹雪の元を去る

 

ちなみに、この日はたまパパ襲来の日。大体全部終わった後だ。ルリはPXに寄るついでに武御雷と吹雪を見に来ただけだ

 

ルリはPXで食事を取るために歩き出した

 

今日は……そうね。豚の生姜焼きの定食にしようかしら。と思ってPXに行く

 

さて、早速注文を……と思ったところでこんな会話が聞こえた

 

「───帝国斯衛軍の新型は誰のだ? お前らの誰か用だと聞いたが?」

 

その声の方を見ると、少尉と武が向き合っていた

 

そこに冥夜も向かっている

 

あぁ、今起きるのか……とちょっと面倒そうに溜め息をはく

 

とりあえずは注文をしようかな。と歩き出す

 

「あ、少佐!」

 

そこに鈴付き首輪と猫尻尾を着けた壬姫、千鶴、美琴が寄ってくる

 

「皆さん、どうかしましたか?」

 

あたかも何もなかったかのように聞く

 

「その……白銀を止めてもらえませんか?あのままだと」

 

まぁ、殴られますわな。と未来を知ってるルリは思う

 

こんなところで喧嘩してる暇あったらもっと訓練に時間割けよ……なんて思ってしまう

 

「……まぁ、何とかしてみま……」

 

バキィ!と痛そうな音が聞こえた

 

殴られたか……と額に手を当てるルリ

 

すぐに武の方に向かう

 

「なんだか穏やかじゃないですね。食事処で喧嘩はよしてくださいよ」

 

何時ものように階級章は髪と角度から少尉からは見えていない

 

「なんだ!……子供?」

「子供です。で、何かあったんですか?」

「何処から入り込んだのか知らねぇが、とっとと帰りやがれ!」

 

冥夜がルリが少佐だと少尉に教えようとするが、ルリが手で制す

 

「……武御雷の事ですか?」

 

イラッとしながら質問する

 

「お前が知って何になる」

「……一応、私の階級……」

「騒々しいな」

 

そこに帝国近衛軍の月詠真那、 神代巽、巴雪乃、戎美凪が現れた

 

「て、帝国近衛軍!?」

「あらま」

 

少尉達が予想外の人物に驚く

 

「……子供?失礼ですが、あなたの名前は?」

「国連太平洋方面第11軍少佐、星河瑠璃です」

 

敬礼してから、ちょっとだけ階級証を見せ付ける

 

「し、少佐……?」

「自分は帝国近衛軍所属、月詠真那中尉です」

「同じく、神代巽少尉です」

「同じく、巴雪乃少尉です」

「同じく、戎美凪少尉です」

 

一通り自己紹介を終わらせた

 

「わざわざありがとうございます。で、そこの少尉方」

 

ルリは二人の少尉に聞く

 

「武御雷をあんなモノと愚弄しその搭乗者を探すということ、誰に頼まれましたか? 月詠中尉、帝国軍では武御雷を愚弄した者はどのように処分しますか?」

 

なるべく軍人らしく、月詠に聞く

 

「武御雷の愚弄は我ら斯衛軍を愚弄するも同義。ひいては将軍殿下を冒涜する行為であります。更に今回の件に関しては武御雷の機体情報の漏洩の可能性もありえます故、全てを洗い出した上で処刑になるかと思われます」

 

月詠が答えた

 

「だ、そうですよ。……で、誰に頼まれたんですか?」

「お、俺達は……」

 

誰にも頼まれてないという事は分かっている

 

が、一応聞いておいた

 

「まぁ、今回の事は特別に不問とします。いいですか?月詠中尉」

「……まぁ、良いでしょう」

「武御雷に興味を持つのはまだいいです。私も興味を持ちましたから。ですが、苛立って八つ当たりはいけないと思いますよ。こんなところで力を使うのなら、BETA相手に使ってください」

「今後は国連軍の名を落とすようなことは避けるべきだな少尉」

『し、失礼しました!』

 

二人の少尉が離れていく

 

「……して、星河少佐。少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「……構いませんよ。ここで話すのも迷惑でしょうし、あっちで話しましょうか」

 

五人がPXの外に出て行った

 

「……嵐のように去っていったな」

「あぁ……」

「……見てないからとってもいいかな?」

「あ、たま。とったらバラすから」

「たけるさん!?」

 

 

 

 

「で、何でしょう?」

「……あなた、何者ですか?」

 

人目につかないところに月詠に連れてこられたルリ

 

「……何ってただの少佐ですよ。コネ使いまくって階級上げまくった子供です」

「戸籍を新しく作ってまで……ですか?」

 

やはり戸籍を夕呼に作らせたのがバレていた。まぁ、武がバレてるのだから当たり前なのだろうが

 

「ここから先はNeed to knowです。あなた達が知るような物ではありません」

「っ……」

 

下手に情報を漏らしてもマズイ。ここら辺で無理矢理に……と会話をぶった切った

 

「ですが、私も武さんと同じような感じですよ。生き返ってはいませんが」

 

ルリはPXに向けて歩き出した

 

「……今度は戦場で会いましょう。月詠さん、神代さん、巴さん、戎さん」

 

ルリは四人に背を向け、歩き出した

 

(……カッコつけてあんな事言ったけど、廊下でバッタリ会ったらどうしよう……)

 

何だか締まらなかった

 

 

 

 

「まさか暗い顔してるって言われて大盛りにされるなんて……食べられるかな……」

 

大盛りの生姜焼き定食を手に持って取り敢えず座れる場所を探す。ついでにおしぼりも貰っておいた

 

ルリは一回の食事でそんなに食べないため、大盛りでも食べれるか不安だった

 

並で十分足りるのだ

 

「……あ、武さん達だ。あそこ行こっと」

 

武達を発見しそこに歩いていく

 

「ど~も~。隣いいですか?」

「え?あ、はい」

 

壬姫の隣の椅子に座って定食を置く

 

「えっと……星河少佐」

「何ですか?武さん」

 

二人きりや夕呼や霞と一緒の時では無いので、ルリの事はちゃんと呼ぶ

 

「先程はありがとうございました」

「……触らぬ神に祟なし。とだけ言っておきますよ。御剣さんも」

「……」

「武さんが庇ってくれてたのにあそこで出て行ったら台無しじゃないですか」

「星河少佐!?」

「た、武が私を庇って……」

「じゃあ、お礼としておしぼりでもあててあげたらどうですか?」

 

ポン。とおしぼりを渡す

 

「いや、平気だから……」

「腫れてますから念のためですよ」

「そ、そうだ。念のためだ」

 

あ~甘い甘い。とボソッと呟きながら生姜焼きと米を同時に口の中に入れる

 

「そんじゃ、私はお暇しますね」

 

最後の一口を飲み込んで席を立ち、トレーを返却口に戻してPXを去った

 

そして、しばらく歩いて

 

「あ、まりもちゃ……じゃなくて神宮寺さん」

「星河少佐?なんでしょうか」

 

まりもとバッタリ出会った

 

「武さんが色々とやらかしたんですが、不問って事にしておいてください」

「え?ちょっ、どういう事ですか?」

「では」

「星河少佐ぁ!?」

 

マイペースに去っていくルリだった

 

 

 

 

「……開かない」

 

夕呼の部屋まで行ったら夕呼の部屋の扉は開かなかった

 

夕呼の部屋は夕呼が部屋の中にいる時でしか、外部からは開けられない

 

ボソンジャンプなら入れるけれども……どうした物か。と思って横を見ると霞が入り浸ってる脳みそのある部屋の入り口が目に入った

 

興味本位でそこに入ってすぐにシリンダーに入った脳みそwith脊髄を見つけた。そして、霞はそれを眺めている

 

「霞さん」

「……」

 

お取り込み中か……と思い部屋から出ようとする

 

「少し、待ってください」

 

霞がルリに呼びかけた

 

「いえ、急ぎの用事とかじゃ無いので構いませんよ。では」

 

霞にまた会いましょう。と声をかけて霞の部屋から出る

 

そして、夕呼の部屋で立ち往生する事数十分。武がやって来た

 

「あれ?ルリちゃん?」

「武さん?なんでここに?」

 

ルリは原作知識から武が千鶴と慧の吹雪にも新OSを積んで欲しいんだと理解した

 

「夕呼さんはここにはいませんよ」

「あ、そうなの?」

「……ナデシコに帰ろっかな……」

 

特に急ぎの用事も無いし。と内心で付け足す

 

「俺はさっきまで新OSの積まれたシミュレーターでテストしててな……」

「……207の吹雪にも積んで欲しいと」

「まぁ、厳密に言えばちょっと違うんだが……大体そんなんだ」

 

なんで分かったんだ?と不思議に思う武

 

「……そういえば、ここ、元々何があったか知ってますか?」

 

知ってないんだったら、教えておいた方がいい。この情報は後々大事になる

 

「え?何かあったのか?」

 

いきなりの質問に戸惑うが、知らないものは知らないので知らない。と返した

 

「……オモイカネ。ハイヴの分布図を」

 

ルリの声が聞こえたのか、夕呼の部屋からモニターが扉を通り抜けてきた

 

そこには、ハイヴの分布図が描かれていた

 

「これは……」

「世界のハイヴの分布図です。01がカシュガルハイヴ……通称、オリジナルハイヴ。地球に初めて出来たハイヴで、この地球では最大のハイヴだって事は分かりますよね?」

「あぁ、それくらいは……じゃなくて!」

「日本にはハイヴは二つ。佐渡島ハイヴ……そして、」

 

ルリは地面に向けて指をさす

 

「横浜ハイヴ。現、横浜基地です」

「ちょっと待ってくれ!ここが元ハイヴなのか!?」

 

武が声を荒らげる。自分達の基地が元敵の基地だと知れば動揺だってする

 

「えぇ。そして、ここはまだハイヴとしての機能を残しています」

「そんな……俺達はBETAの上で暮らしてるのか!?」

 

誰だってこの事実を知れば驚くだろう

 

「今までが大丈夫だったんですし、大丈夫じゃないんですか?居たら居たでパニック不可避です」

 

何かあったら地下を空洞にしますよ。と小悪魔的な笑みを浮かべながら言うルリ

 

「私が言えるのはこれくらいでしょうか?後はNeed to knowです」

 

口に指を当て、片眼を閉じる

 

「……そっか。分かった」

 

武は自分自身をなんとか納得させる

 

「……何してんのよ」

「あ、夕呼さん」

 

そこに夕呼が戻ってきた

 

「いえ、この世界のハイヴ事情を教えてただけですよ。ついでにこの基地が元ハイヴだった事を」

「あら、白銀。また言えないことが増えたわね」

「えぇ、お陰様で……」

 

夕呼がニヤニヤとして言ってくるが、軽くスルーする

 

「んじゃ、あんたら帰りなさい。私はやる事があるから」

「え?」

「あ、忙しいみたいですね」

 

夕呼が部屋の中に入っていく

 

なんかイライラしてます的な雰囲気がしたため、ルリは退散するらしい

 

「あ、そうだそうだ」

ルリはそそくさと夕呼の部屋に戻ってとある書類をひったくる

 

「武さん。これ、見覚えないですか?」

「え?」

「……無駄よ。白銀が知るわけ無いわ」

 

武は書類をジーッと見る

 

「……これ、見た事ある」

「はぁ!?」

「そう……確か……」

「吐きなさい!とっとと吐きなさい!さっさと吐きなさい!今すぐ吐きなさい!」

「ついでに」

「せ、先生!揺らさないで!ついでにルリちゃんは鳩尾殴るの止めて!」

 

ルリの攻撃は全く効かないが、流石に夕呼の方はそうは行かないため、手を掴んでなんとか止める

 

「教えなさい!今すぐ!」

「怖いです!先生、目が血走ってますから!」

(……武さんの要件、紙に書いて夕呼さんの机に置いとこ)

 

スッ。と夕呼の机の上に武の要件を書いた紙を置いておく

 

そして、スタスタと出口に向かって歩いていく

 

「これは並列処理装置の……」

 

と、聞こえたところで自動ドアが閉まった

 

「……訓練でもしてよ」

 

そして、何時ものボソンジャンプでナデシコに帰り、少しだけ訓練をしてから寝た

 

翌日から武を元の世界に返す装置を作るのに協力しなくてはならないなんてことはいざ知らず




かなり更新が遅れてしまいました……すみません

取り敢えず、前回までやらなかった武御雷に関するイベント、XM3搭載イベントをやりました

まぁ、一日くらいズレてもいいよね?

次回は……取り敢えず早く更新できるようにします

……あれ?なんかショッキングピンクの機体が……


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鎧衣課長の『訪問』

さてさて、今日は鎧衣課長が訪問する日ね。はてさて、私は一体何を言われるのやら……

とりあえず、なんかまずいことにならない事を祈るしかないわね


翌日のハンガーにて

 

武は元の世界の夢をよく見る事を疑問に思っていたが、それを頭の片隅に置きハンガーに来ていた

 

ふと、ハンガーに夕呼が居るのに気が付いた

 

先日夕呼にあの絵が並列処理装置理論の物だということを聞かされて思い出せなくて……とちょっとドタバタしたりしてた上、夕呼は武が帰った後も作業してたようだから少し心配だった

 

「夕呼先生」

「ん?あら白銀」

 

夕呼はいつも通り……若干テンションが高そうだが、いつも通りに武と会話を始めた

 

「あんた、社になんかした?」

「え?霞に?」

 

霞は武の部屋に武を起こしに来た時、ちょっと武を見つめていた

 

「なんか深刻そうな顔してたわよ?なんかしたんでしょ?」

「……いや、特には……」

「溜まってるのは分かるけど……ホシカワ程じゃ無いけど社に手を出すなんて犯罪よ?」

「ルリちゃんは子供なので比較対象にならないと俺は思うんです」

 

やけに冷静に夕呼に言葉を返す武

 

そのネタはルリがよく使うため、対応には軽く慣れているのだった

 

「ただ、最近元の世界の夢を……って関係ないか。霞は俺を起こした時から俺を見つめてましたよ?」

「そう……元の世界の夢はいつ頃から見るように?」

「え?……総戦技演習終わった辺りからですかね?よく覚えてませんが……」

「……ふ~ん」

 

なんですかと聞こうとした時、武の後ろから誰かが夕呼の方に歩いていった

 

「お、終わった……終わりましたよ……」

「お疲れさん」

「ルリちゃん!?」

 

歩いてきたのはヘロヘロになったルリだった

 

今にも死にそうな顔をしている

 

「あ、武さん……おはようございます」

「だ、大丈夫なのか?」

「あはは……丑三つ時過ぎたあたりに叩き起されてさっきのさっきまで作業してたんですよ……」

「えっと……お疲れ」

 

ルリは目を擦りながらあくびを噛み殺した

 

その後、まりもが合流し、武に演習の編成を伝え、夕呼が模擬戦のモニターをする事になったり新OSに少し不満を持ってる千鶴と慧を夕呼が丸め込んだりと色々とあった

 

そして、演習には何故かルリまで拉致されてモニターする事になった

 

結果は言わずがな。武が前にいた世界(時間軸?)で起きた千鶴と慧のいがみ合いは機体制御に集中したためか無くなり、冥夜達に圧倒した

 

武の変態機動がさらにキレを増したのだが、それは置いておこう

 

そして、演習が終わり、

 

「武!一体戦術機になんの仕掛けをした!」

「し、仕掛け?」

「そうだよ!いきなり戦術機があんな機動をするなんて!」

 

と、武は冥夜達に詰め寄られていた

 

「いや~、武さんの変態起動がさらにキレを増してましたね。香月博士」

 

いきなりルリが冥夜達にも聞こえるようにそんな事を口走った

 

一応冥夜達も居るので何時ものように夕呼さんと呼ばずに香月博士と呼んだ

 

「ホシカワ少佐、何かご存知なのですか?」

「まぁ、簡単な事よ。白銀達の戦術機のOSを換装しただけ」

 

その夕呼の言葉に驚く冥夜、壬姫、美琴、まりも

 

「その結果、白銀の目指す機動が再現可能になったのよ」

 

さらにその言葉に冥夜達は驚いた

 

ただでさえ馬鹿げた機動をしていたのに、さらにその上があるなんて思っても見なかったからだ

 

「香月博士?私、聞いてないんですが……」

 

と、呆れたような怒ったような声で夕呼に話しかけるまりも

 

「あら、言ってなかったかしら?実は榊のとこの戦術機に新OSを積んであったのよ。それだけよ」

「それだけって……」

 

まりもが軽く頭に手を当てる。最早諦めた感じの溜め息もはいた

 

「けど、戦術機にあんな機動をさせようって考えるのも凄いよね~」

 

と、壬姫が武に言った

 

「まぁ、あれです。普通の機動じゃ満足できない変態なんですよ」

「ホシカワ少佐、後で殴り合いません?」

『あぁ、成程』

「よし、全員殴り合おうぜ」

「冥夜さん、真剣の持ち込み許可します。壬姫さんはアンチマテリアルライフル、美琴さんはトラップ全般、千鶴さんは拳銃、慧さんはそうですね……メリケンサックを……」

「すみません流石にそれは無理です鬼に金棒です死んでしまいます」

 

速攻で土下座する命が惜しい人間の鏡、白銀武

 

「そんじゃ、私はこれにて」

 

取り敢えず、次のイベントの発生時刻である夜まではまだ時間がある

 

一度ナデシコで気分転換にシャワーを浴びてPXで夕食を食べてから夕呼の部屋に行こう。そう決めて今日は徒歩でナデシコへと帰るのであった

 

 

 

 

「……一人は結構さみしいものね」

 

ナデシコの中の自室。さっきまでワイワイと騒いでいたのが今は自分の声しか聞こえてこない

 

全自動でエステバリスを整備している音が遠く聞こえるが、そんな無機質な音を聞いても人の温もりは感じない

 

結局、シャワーを浴びた後、何もする気になれず部屋でゴロゴロとしていた。夕食もパパッと済ませた

 

「……そろそろ鎧衣課長が来る頃かしら。ボソンジャンプで何時ものトイレに……」

 

ルリの体に光の筋が浮かび上がりルリの意思に応じてルリの体が数秒先の何時ものトイレの個室へと誘う

 

「……誰もいない。コソコソっと」

 

コソコソとトイレを出てから堂々と夕呼の部屋へ向けて移動する

 

だが、不意に変な気配を感じた。訓練をしてない自分でも分かる気配

 

「……誰かいるんですか?」

 

最近武が自分にラッキースケベをした時の抹殺用に持ち歩いている拳銃に手をかける

 

ルリの声に応じてかコツコツ。と足音が聞こえた

 

「まさかバレるとはね」

(鎧衣課長!!?なんでここに!?)

 

出てきたのはこの先のイベントで出てくる筈の鎧衣美琴の父親、鎧衣左近だった

 

「ふむふむ……作り物にしては精巧だ」

「え、ちょっ」

 

いきなりルリの体を触り始める鎧衣

 

髪を触って手を触って肩を揉んだり頬をつついたり

 

「や、止めてください!」

「おっと、失礼、ホシカワルリ少佐?」

 

会ってわかった。この人とは気が合いそうに無い。と

 

「あと、作り物じゃありませんから。列記とした人間です」

 

ちょっと乱れた制服を正す

 

「ふむ……では、私はもう帰る途中なのでね。ここで失礼しよう」

「ちょっ、ま……」

 

ルリが呼び止めるために鎧衣は何処かへ行ってしまった

 

とりあえずどこか行ってしまった鎧衣を追う術はないため、夕呼の部屋に行く事にした。が、ここで気付いた

 

「……って帰る途中!?」

 

ちょっと来るのが遅かったルリだった

 

そして夕呼の部屋に入ると

 

「あれ?武さん、なんで寝てるんですか?」

 

武かソファの上でぐーすか寝ていた。その横には霞。手には小さなモアイ

 

「最近こいつが元の世界の夢を見るって言ってたからね。それを調べてるのよ」

 

夕呼の話を聞きながらルリは水性マジックを夕呼の机から取って武の額に肉と書いてから目尻から顔の一番下まで一本の線を書いた

 

「ちょっと~?何して……ぶっ!?」

「……~ッ!…………~~ッ!!」

「何か足りないわね……えっとさらにこうしてこうして……」

 

結果、額には横向きにキン肉○ンと書かれ、まぶたの上から目を書かれ、猫みたいな髭を書かれて顎には口に向けて↑と書かれ、その下にカモン!と書かれてある

 

「笑いをすっ飛ばして清々しいわねこれ。写真撮ってばら撒きましょ」

「止めてあげてくださいきっと自殺してしまいます」

「……~ッ!!…………~~ッ!!」

「って、なんか霞さんがツボに入ったそうなんですけど」

「社~?ちゃんと観測しなさいよ~?」

「は、はい……」

 

武の顔を見る度に顔を逸らして声を出さずに笑う霞と何やら色々とやってる夕呼

 

とりあえず、自分のやることはもう終わっているため、ルリは徹夜で作業したために発生している眠気を抑えられず、そこら辺に散乱していた毛布と本を手にとって床で寝だすのだった

 

「……って寝てやがるわねこいつ」

 

夕呼は何度も起こそうとしたが、ルリは起きないため、仕方なくルリの顔に猫っぽいヒゲを書いておくのだった。油性ペンで




すみません、かなり遅くなった上にかなり短いです

失踪は絶対にしないのでどうか命だけは、命だけはお助けくだされ

ルリ「ゆるさん」

あっ、ちょっとグラビティブラストは洒落になってな(ブツッ


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