陰キャによるSAO攻略日記 (アグナ)
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一ページ目
作風の実験も兼ねている。
なお、思いつきのため続くか続かないかはお察し。
エタ作者を信用してはならない……(戒め)
○月×日 晴れ ☆☆☆☆☆
今日という日を皮切りに日記を付けてみようと思う。
俺は飽き性なので日記なんて趣味じゃ無いのだが、我が身に起こった異変を忘れないためにも、自分の正気を確かめるためにも此処に初めて日記というものを記していこうと思う。
俺の名前は……まあヨシュアとでも名乗っておこう。
誰かに見られることを考慮するに本名を書くのは恐ろしい。
見るにしても家族だが、態々本名で記することもないだろう。
それに元はヨシュアから漢字付けしたと母から聞いているのであながち間違っては……。
おっと、早速話がどうでも良い方向に逸れた。
気を付けねば。
ともかく、俺ことヨシュアは今日を皮切りに此処に日記を付ける。
理由は我が身に起こったこととは言え未だ信じられないが、俺が転生したからである。
転生というのはいわゆる過去の記憶を保持したまま新しい生を受けるアレだ。
雑な説明で悪いが、現状を端的に現すならばそれが適切なのでそういうものとして此処に記す。
転生……正直、自分が一度死んで生まれ変わったなど信じられないし、知らないはずの記憶や知識があるのは若干気持ち悪い。前世と顔つきもだいぶ違うし、俺が錯乱しているだけっていうのも否定できない。
色々疑うと段々、気分が悪くなるので、この日記を気に俺が体験したことは転生ということにする。
そう。
俺ことヨシュアは二度目の生を受けた転生者なのだ。
○月×日 晴れ ☆
さて二日目。まさか飽きず日記を手に取るとは思わなかった。
前世の自分ならば日記など一日足らずで飽きるだろうに……。
というわけで記念すべき日記二日目。
今日は現状について話したいと思う。
俺が生きた時代はスマートフォンが全国的に普及し、皆が皆インターネットに通じて、色々と便利になり始めた情報時代などと呼ばれた時代だったが、俺が生まれた今世はそれ以上に進んでいる。
なんと、不可能だと歌われたフルダイブ型のVRゲームが存在するのだ!
それだけで情報化ひいてはITが進んでいるか、よく分かるだろう。
正直、二十年ほどの年代差で此処まで進んでいるなんて思いもしなかった。
VRの急激な発展は何でも茅場なんとかさんが関係しているようだが……。
ともあれ、生まれ育った世界よりもこの世界は近未来のようだ。
せっかくなので俺も進んだ時代とやらを体験するため、親に強請ってナーヴギア……フルダイブ型VRゲーム用のデバイスを買って貰う。
前世の記憶に引きずられ、普段我が儘など言わない反動からか、ナーヴギア他様々なゲームソフトも追加で買って貰ってしまった……しかも最新のVRMMOゲーム、『ソードアート・オンライン』のβテスト参加応募券までついて。当たるかどうかは分からないが、両親の気遣いには感謝の念が潰えない。
買ったゲームについては早速、妹たちと一緒にプレイしよう。
俺のついでに妹たちもナーヴギアを手に入れたことだし。
○月×日 晴れ ☆
VRゲームとは難しいものだと日々実感する。
やはりコントローラーを手で操作するのと実際に身体を動かすとでは全然違う。
アクション、スポーツ、格ゲー、リズムゲーム。
どのジャンルも一通り、試したが、どれも難敵だった。
まずどのVRゲームでも感じるのは『違和感』だ。
ゲームの中なのだから現実感に限界があるのは当然の話だ。
しかし、それにしても百十数メートル動いただけで壁にぶつかる箱庭的空間のものや、これ見よがしにこれは電子世界であると分かってしまうオブジェクトはどうしても、ゲームへ没入する感覚を削いでいく。
加えてフルダイブ型VRゲームという新ジャンル故か、どのゲームも手探り感が否めず、イマイチぱっとしない。
前世でイメージされていたフルダイブ型VRゲームとは全然違い、ちょっとガッカリ。
でも実際に身体を動かしてゲームをやる感覚はやはり新しいので、まあこんなものかと今は満足している。
……時に妹よ、兄ちゃんと同じ時期に始めたのに何でそんなゲーム強いの?
○月×日 晴れ ☆☆☆
レースゲームで妹に一周回分の周回差を付けられ敗北。
可笑しい……普通、こういうのは俺の方が強いのでは? 転生者補正的に。
上の妹に慰められるが……すまない、その慰めは俺のプライドに追撃なのだよ。
そういえば今日『ソードアート・オンライン』のβテスター当選者発表の日だったのだが、なんと俺は当選していたらしい。
応募者数数万と人気と注目を集めていたオンラインゲームなので楽しみだ。
我が妹たちもとても羨ましがっている。
なのでドヤ顔で自慢してみた。
……結果、テニスゲームでダブルスを強要され、無事ボコボコにされますた。
○月×日 晴れ ☆☆
遂に『ソードアート・オンライン』βテスト期間当日。
期待を胸に早速ログインする俺。
するとなんと言うことでしょう。
今までやってきたゲームと比べようもないほどめっちゃクオリティが高いでは無いか!
草原を抜ける風、地面を踏みしめる感覚、閉塞感の無いほど広いフィールド。
街の造りも一つ一つ細かで、現実感は今までやってきたどのゲームよりもヤバい。
期間は二ヶ月だったか。どうやら楽しい毎日になりそうだ。
因みに俺のアバターは髪をすみれ色にして目の色を赤にしただけの現実顔。
転生のこともあり、自分の顔をあんまり変えるのは嫌だった。
ということで最低限の変更だけ加えた。
目の色や髪の色が違うだけでもだいぶ印象が変わるからな。
同じくログインしてた他のβテスター達はだいぶ変えていたけれど。
それも全員揃って美男美女。
……この中に普段からイケメンに呪詛を吐く立場の人間は一体どれだけいるのだろう。
後、これオフ会とかやったら誰が誰だか分からなくなるのではないだろうか。
身長百八十センチぐらいのイケメン主人公っぽい人を見ながら思う俺。
キリトさんか……NPCに色んなパターンで話し掛けまくるゲーム慣れしている。
リアルではどんな顔をしているのだろうか。
○月×日 晴れ ☆
最近は『ソードアート・オンライン』こと『SAO』の事ばかり考えている。
妹たちにはもっと構えとせがまれる。
だが、すまない……オンラインゲームの魔力には耐えられなかったよ……。
ゲームでは街回りにいるイノシシモンスターを狩る日々。
他に良い狩り場があるのかもしれないが、俺のスタイルは初手で平均を上回るレベルアップをした上で、序盤の敵を無双するのが好きなのだ。
ということで取りあえず十レベ目指しイノシシ狩り。
そういえば前世では某国民的ポケットに入るモンスターアドベンチャーの最新作で実装化された野生なエリアでレベル上げすぎて四バッチ目ぐらいまで初手ワンパンの繰り返しだったことを思い出す。
ふむ、レベル上げすぎても後半味気なくなるのである程度上がったら次に進もうか。
それに街周りの平均レベルを上回っているせいか他のプレイヤーによく話しかけるようになる。
いやさ、オンラインゲームなのだから当然なのだが……。
でもそれは困る。かなり困る。
何せ、俺はオンラインゲームをやっている癖にコミュ障なのである。
前世から「はい」「いえ」「レシートは要りません」ぐらいしか、日常会話はしてこなかったのだ。妹たちの前ですら最低限の言葉しか言えないのだ。
どうも人を前にすると『何を考えているのだろうか』とか、『自分は気持ち悪くないだろうか』とか要らぬ懸念をしてしまうせいで緊張し、結果、言葉が少なくなるのだ。
なので悪いが他のプレイヤーを当てってくれまいか?
所詮俺は孤独な
あ、でも途中で出会った、ディアベルさんは陰キャにも優しい人で助かった。こちらが言葉にせずとも何となく察して他の人との仲介をしてくれたからね。
アレが陽キャのコミュ力か……俺にも転生特典でくれないだろうか。
……ってかフレンド登録しとけば良かった。
別れ際は「気にすることはない」なんて颯爽と立ち去ったからID聞けなかったのだ。
馬鹿め、
此処はコミュ力がモノを言う世界なのだよ。
今日は調子よくレベル二つほどレベルアップ。
スキルポイントどう割り振ろうか。
……何か虚しい。
これがソロの悲哀か。
『次のページに続いている』
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二ページ目
ある人を勝手にβ版プレイヤーに設定させていただきました。
○月×日 晴れ ☆☆
『ソードアート・オンライン』を初めてから一週間。
今日は迷宮区なるエリアに訪れてみる。
流石に平原やら森やらでエンカウントする野生のモンスターとは異なり、ボス戦前のエリアとあって中々に強敵揃いだ。
自分で動き回る戦闘にも慣れてきたが、慣れてくると同時に色々と自分の弱点という奴も見えてくる。
例えば、このゲーム、ソロプレイが向いていない。
……いや、そもそもオンラインゲームでソロプレイする方がうんぬんと、色々言いたいことはあるのだが、そういう意味では無く。
単純に一人で動き回るのが危ないのだ。
何故ならこのゲームは自分が動き回ることを前提にしたゲームだ。
故に視界やら動きやらは俺が現実で行っている活動と同じようになる。
超人的な身体能力こそゲーム内故に発揮できるものの、視界は正面百八十度、跳んだり走ったりの動きは俺の反応に縛られる。
つまりは戦闘でよくある『咄嗟に』とか『背後からの攻撃を~』とかそういった動きをそうそう出来ないのだ。しかも画面越しのRPGとは違い、エリアを俯瞰のマップで見ることは出来ないし、近づいてくる相手に俯瞰視点で気づけるということもない。
自分で確認し、自分で動き、自分で判断する。
それは日常的な動作だが、だからといって刹那の判断が生死を分ける戦場で同じようにはそういかない。
ゲームとはいえ、此処も戦いの場である。
振りかぶってくる剣や槍に当たれば死ぬし、素人なのだから荒事を前に緊張を覚えていつも通り動けないこともある。
痛みがない、と分かっていても相手に攻撃されることに慣れてないから思わず竦むことだってままあるのだ。
やることの多さや心の余裕を考えるに、一人でやるにはこのゲームはやるべきことが多すぎる。
とはいえ、だからすぐにフレンドを作ろうとは陰キャゆえにいかず、そのため最近は回避行動に磨きを掛けるため、ひたすら回避しまくる練習を積むことにした。
フハハ、当たらなければどうと言うこと無い理論を実現させるのだ!
被弾零なら回復する隙も出来ないし、不意打ちにも対処できよう。
幸い迷宮区は人型のコボルドが多い。
彼らを練習台に俺はソロでもやれる
……でも流石に剣の間合いは近すぎるから槍使いに転向する。
後、使ってみて分かったが、剣より槍の方がやりやすい。
中距離からやれる分、回避や攻撃に考える時間が出来るのだ。
すまなかった、槍キャラは二番って勝手に思っていて本当にすまなかった。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆☆
ははははは!! 圧倒的では無いかッ!!
そんな距離からソードスキルを打っても当たらんよ!
どうだ地味に遠い距離からチマチマ槍で刺される気分は!
これならボスにも勝つるッッ!!
……普通に負けました。
○月×日 晴れ ☆☆☆
昨日は若干テンションが可笑しかったのだろう。
単騎で一層のボスに挑んだが、呆気なくやられてしまった。
何だかんだで回避しまくりチマチマ攻撃しまくり、こりゃあ単騎撃墜ありかと思い始めた頃にボスが突然、ジャンプしてぐるぐるしてズパーンである。
なんやあの攻撃は……。
迷宮区から一番近い街でリスポーンした後、偶々再会したディアベルさんに話を聞いたら何でも《曲刀》のスキルかもしれないとのこと。
後、よく分からんがパターン代わりするまでよく追い詰めたな! とめっちゃ褒められた。『大したことはない』って言ったけど、嘘です。めっちゃ嬉しいです。ヤバいですね。俺、ディアベルさんについていくわ……。
それとディアベルさんと一通り語り合った後、女の子に声を掛けられた。
最初はネカマかと思ったが、
「まあオンラインゲーマーなら情報の秘匿は当然だナー」なんて言ってたけどすまない。そういう積もりじゃ無いんだ。ただ喋るのが苦手なだけなんだ。
だからそんなニヤリと訳知り顔で感心しないでくれ。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆
今日は一番下の妹の学校が授業参観の日だったらしい。
俺は当然行けないし、両親も行くことが出来なかったんだが、代わりに偶々学校が休みだった上の姉の方が出席したらしい。
いつもより張り切って授業でも積極的に手を挙げてたとのこと。
偉いぜ、ゲーム三昧の兄貴とは違って……。
なので折り紙で鳥を作って送ってやった。
ショボい贈り物だが、喜んでくれてこっちも嬉しい。
それと最近は『ソードアート・オンライン』に掛かりきりだったので久しぶりに、攻略を中断し、妹たちとゲームを楽しむ。
上の妹が持ってきた弓を使った的当てゲームだ。
作りは単純だが、妨害アイテムとかステージ環境とか、単に射撃力が優れていれば勝てるというものではないので、割とゲーム性に富んでいる。
しかし妹たちよ、知るが良い。前世では重度の型○厨であった俺は、学生の頃から弓道に熱心だったのだ……この手の的当てゲームでは遙かに有利!
その結果、順位は妹、妹、俺の順。
何故だ……。
弓の腕は俺が確かに勝っていたが、ゲームシステムを十全に使いこなす妹たちには叶わなかったよ。
ていうか最近、確信しつつあるんだが、うちの妹たちの方が俺よりゲームセンス上じゃね? 何てことだ。
俺にも転生特典とか、補正とか、そういうものは無いのか……。
○月×日 晴れ ☆☆
『ソードアート・オンライン』攻略に戻りました。
そして戻って早々耳寄りな情報を耳にする。
何でもスキルの中に《投剣》なるスキルがあるらしい。
街で雑談していたプレイヤーが言っていた。
戦慄とは正にあの時のこと。
『ソードアート・オンライン』は大胆に魔法的な遠距離要素を全て配した己が身と剣一つのRPGゲームだと思っていたのに遠距離武器があるとは……。
早速、一つだけ余分に空けていたスキル項目に採用。
使ってみたら射程は十メートルぐらい。
スキルを上げていけば射程範囲も広がるんだろうな。
ふっ……俺の中々良いスキルじゃ無いか。
回避しつつチマチマ攻撃のうざったい戦法の幅が広がる。
迷宮区のコボルド相手に練習しまくる。
一時間ほど練習すれば、すぐに百発百中。
後半はスキルを起こさなくても当たる始末。
くく、見たか。これが前世の経験値持ちの力なのだよ。
なんて油断してたら背後からバッサリやられた。
しかもコボルドかと思ったらプレイヤーだった。
ああ……そうね、ここ最近ずっとこの狩り場に居たものね。
アイテムは貯め込んでるし、ソロですもんね、俺。
そりゃあPKからしたらカモですわ。
あはは────野郎! ぶっ殺してやるッ!!
○月×日 晴れ ☆☆☆☆☆☆
プレイヤーに対する殺意の波動に目覚めた次の日。
俺は迷宮区に陣取りあらゆるプレイヤーを刺突しまくる。
いやさ、最初は例のPKを殺戮したら終わるつもりで、実際、PK返しをすることにも成功したのだが、その時プレイヤーと殺し合う過程で、これNPCより遙かに戦闘の連中になるぞと気づいてしまったのだ。
迷宮区のコボルドはNPC、当然、予め入力されたデータに準じた行動しか返せないのだが、同じ意識があり、心があり、考える頭があるプレイヤーは型に縛られた動きをしない。
つまりはこうすればソードスキルが飛んでくる、とか。
ここで必ず守るとか。
見切ってしまえば簡単なNPCの行動よりも遙かに自由度が高く予想が付きにくいのだ。回避を主体にしようと考えている槍使いとしては格好の練習台である。
しかも殺せば報酬はコボルドよりもウマ-。
これは……
というわけで死ぬが良い俺と同じ攻略ゲーマー。
一人で鍛えまくった回避能力と槍捌きに見惚れるが良い。
その心臓、貰い受けるッ!
グリーンのカーソルが浮かんでいる相手をPKするとペナルティーが科せられ街に戻るのに幾つか苦労があるのだが知ったことかと刺突しまくる。
最近は迷宮区籠もりのソロプレイヤーに怖いものなんて無いのだ。
特に友達とエンジョイしている奴は絶対にぶっ殺してやる。
でもソロプレイヤーには寛大に応対する。
何故なら彼らは同士だから。
とはいえ、ソロでも強い奴はやはり居て、特にキリトなるプレイヤーを辻った時は危うく逆に俺が殺されかけた。
なんやあの反応速度、チートやチーターや!
と叫び出したくなるぐらいの反射神経。
うちの妹か、妹並みか!
だが槍使いとして間合いの有利は俺にある。
行くぞ
激闘の末、勝利したのは俺。
やったぜ。
でも直後、漁夫の利PKを喰らってしまった……。
おのれ、例のPK……ッ!!
ジョニーブラックとか巫山戯た名前の分際でッ!!
『次のページに続いている』
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三ページ目
ゲームのSAOはプレイしてないので分からん。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆☆☆☆
今日はデュエル大会なるものに参加した。
あ、デュエルって言ってもモンスターカードを引きまくる方じゃ無くて『ソードアート・オンライン』内におけるプレイヤー同士の決闘のことだ。(ゲーム用語でPvPともいう)A
俺が普段行っているPKは一方的に襲いかかってスパスパやるものなので割と人によっては嫌われるのだが、デュエル方式の場合は両者が合意の下、行われるのでPKと違って受けが良い。その大会ともなれば、野球の試合観戦みたいに盛り上がるもので、それなりの参加者たちがチラホラと参加したり、観客したりしていた。
俺はそのデュエルする側として参加したのだが……。
何故か──悪役プロレスの選手気分を味わうことが出来た。
いざ、デュエル大会に参加するとなった第一試合。
俺が会場に入るなり観客たちからは「負けろ」だの「やっちまえ」だのブーイングの雨嵐。俺なんか悪いことしましたかね、と思ったが、そういえば俺前線でPKしまくってましたね。報酬ウマ-とかいって、荒稼ぎしてましたね。
という事情もあって知らぬうちに俺アンチが多数いた模様。
ただゲームの話、それも舞台が大会とだけあってがマジに恨むような声は少なく、どっちかというと茶化すような色合いが強かったように感じる。
加えて言うなら前線でPKをしまくっていたことで俺自身の強さが知れ渡っていたらしく一部では『対人戦最強』『キラーマシーン』『リア充殺し』等々、様々な異名が付いていたらしい。どれも大変遺憾な異名である。
ただ『神速の槍兵』という異名は気に入った。
俺今度からそう名乗るわ。
そして、ゆくゆくは『御身が『光の御子』か』って言われるぐらいに速くなろう。俺は型月世界に憧れている。
というかできればそっちに転生したかった。
おっと話が逸れた。
そういうわけで俺は悪役気分を味わいつつ、デュエル大会に参加したのだ。
第一回戦、第二回戦と観客の熱い
何故ならその回避にずっと没頭していたから。
《ソードスキル》は一見して発動させれば、自分の反応動作速度よりも速く敵にズパズパ当たってくれる便利な必殺技だが、それはあくまでAIを相手にしたときの話。
必殺技といっても内実は此処で振り上げ、此処で振り下ろしなどと流れや動作はパターンとして覚えられる。目で捉えるのが容易でなくともパターン化された動作ならば人間覚えるのは容易く、分かっていれば先に反応して回避可能。
ガチ勢のプレイヤーが少なかったのもあって《ソードスキル》を積極的に使うプレイターは俺にとってカモでしか無かった。
いやー気分はチート主人公か魔王でした。
く、くくくとか中二チックな笑みを浮かべつつ強者ムーヴするの超気持ちいい。
悪口を言われるのって時にあんなにも爽快なのね。
特殊性癖など無い筈だが、罵倒もそんなに悪くないぜ……。
そんな感じで気分良く勝ち抜くこと数度。
決勝の相手は何かと縁のあるキリトなるプレイヤー。
流石に決勝にまで上り詰めるだけあって、ガチプレイヤーらしく手強さも尋常じゃない。剣戟が奏でる壮絶な決勝戦は俺の悪役ムーヴとキリトのビジュアル勇者もあって大盛り上がり。俺のテンションもマックスになった。
結果は俺の負け。
どうやら前回のPKから俺の動きを学んでいたらしく、最後の最後で読み負けてしまった。つーか一回の戦いで対策立てるとは中々の廃人だなキリトくん。
とはいえ中々良い試合だった。
『ソードアートオンライン』は『VRMMO』であり、一応ジャンルはRPGに当たるらしいのだが、メインストーリーなるものの色が薄いため、RPG色を感じる機会は余りないのだが、デュエル大会の悪役ムーヴは何か物語の登場人物感が体験出来て楽しかった。
後は試合後のキリトくんとの「ナイスファイトだぜ」ってやり取り。
彼的には健勝を称えるといったただの挨拶だったのだろう。
しかし俺的にはこのやり取りがかなり気に入った。
何か主人公とそのライバルの試合後のやり取りみたいな感じで。
なので、「フッ、当然だ(ドヤッ)」とつい返してしまった。
やはりVRというゲーム世界に入ると男の子は皆中二病と化すらしい。
現実での性格との乖離が激しい件について。
○月×日 晴れ ☆☆
『ソードアート・オンライン』を初めてから約一ヶ月。
楽しい時間というものは早く、いつのまにはもう一月だ。
βテストも後、一ヶ月と考えると物寂しい。
そういえばテスト期間中のキャラはテスト後消されるんだよなぁ……。
このヨシュアくんもあと一ヶ月だけか……はぁ……。
散々レベル上げやらスキル上げをしまくったせいでレベルは五十と少しとそれなりに高くなっているのだ。それだけに惜しい。
畜生、本サービスの時は全力でレベリングしてやる。
ともあれ、一ヶ月経過だ。
そして一ヶ月も経過すれば攻略も中々に進む。
現在、はじまりの街から攻略をスタートさせて第五層。
プレイヤー自身のプレイヤーレベルの平均を考えれば中々に悪くない攻略速度なのではないだろうか。
このペースならサービスが開始されたときには一、二週間で第二階層まで突破してしまうだろう。……サービス開始に出遅れないようにしなければ。
それからスキルも中々充実してきた。
回避&チマチマ攻撃というバトルスタイルを組み上げた俺のスキル構成は主に初期スキルの《剣》と今のメイン武器である《両手槍》に関するスキル他、《探索》や《投擲》スキルなどを取得した。
その他にも色んなスキルを付けたり消したりして、日夜色々研究中。《体術》なるスキルが存在を噂されており是非とも欲しいのだが……一体何処へあるのやら。
後はどうやらプレイヤーとの戦闘経験が多いと出現するらしい《決闘》なるスキルを取得した。自己バフ系のスキルでタゲ集めやら防御力とダウンの攻撃上昇やらと中々に上級者向けの仕様だが、使いこなせば割と便利だ。
多対一で効果を発揮する《戦乱舞踏》などはよく使わせて戴いております。
そんなわけでスキル周りレベル周り、自分流の完成点が見える育ち具合になっている。まあだからこそ、失うのが惜しいわけだが……はぁ……。
データの引き継ぎとか実装してくれないかなぁ……。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆
本日はゲームプレイ封印日。何せ定期診断があるからネ。
今世の俺は諸事情で身体が弱いため、月に一度のペースで全身を隈無くチェックされる健康診断があるのだ。
前世ではあまり縁が無かったもの故に、面倒だと感じるのが本音なのだが、その辺、あまり適当だと、うちの妹たちが心配するのでキチンと受けておく。
全く、まだまだ俺は死なんぞ。多分。
そんなに心配しなくても良いだろうに。
あ、でも何か視力周りが悪いと言われた。
後ゲームのやり過ぎとも。
い、いやあVRゲームで視力は悪くならないんじゃ……。
あ、そっちじゃない?
携帯ゲームアプリの方?
……すいません。気を付けます。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆
病院でゲームのプレイ時間を注意されたので自重。
偶には無意味に街を探索してみる。
そしたらなんとNPCから隠しクエストらしきものを授かってしまった。
ほほう、この辺りでそんな情報は聞かなかったが……。
もしや俺が第一発見者なのだろうか。
これは………クリアするしかねえなッ!
そんなこんなでいつものプレイ時間超過。
先生の忠告を忘却の彼方にすっ飛ばして没頭すること三時間。
『トネリコの槍』なる武器とスキル《薬学》を入手する。
前者は攻撃性能こそ街で売ってる武器より低いものの、装備時に毒無効などといった耐性付き、後者は採取した薬草などからバフポーションを作れる。
……これは中々に良いのでは?
というか、かなり使えるのでは?
現状、ポーションは街での売買かドロップしかなかったはず……。
自給自足可能とはかなりのメリットになる。
ありがとう! 森の狩人ロクスレイ!
君のお陰で俺は更なる境地へとたどり着けそうだぜ!
あ、でももう少しプレイ時間は自重しますね、はい。
だからそんな睨まないでくれ妹たちよ。
ていうか君たちもゲームしまくってるじゃ無いか。
……それとこれとは話が別? 兄ちゃんは注意されてる?
そっすね。その通りッス。すいませんでした、はい。
○月×日 晴れ ☆☆☆
本日、自重につきゲームお休み。
くそぅ良いところなのに……。
仕方が無いので先日知り合った、お母さんの付き添いで病院に訪れていたらしい朝田ちゃんとお話をする。
かなりの読書家らしく、同世代では読んでいる人の少ない本の話題でも話が通じるので結構、会話が弾む。
それに俺も彼女も口数が多い方ではないので、その辺の波長が合うのか、時折、無言の間が出来ても不思議と気まずい気分にならない。
女友達など前世には居なかったが……こういう関係も悪くないな。
それと学校に関する話題と相談事をされてしまった。
何でも学校での居心地が悪いのと、でも行かなきゃいけないということで悩んでいるとか。
……君、相談相手間違えてない。その話題を俺に聞いちゃうかね?
とはいえ数少ない友人の悩みとあっては応えぬわけにはいかない。
そうじゃなくても前世と年齢合わせれば年上だしね。
二人の妹のお兄ちゃんでもあるしね。
つっても学校に関することで俺が言えることなんてたかが知れてるが。
精々、無理するなとか。頑張れとしか言えない件。
すまない、情けない友人で本当にすまない……。
笑顔でお礼を言われたもんだから尚のことそう思う。
でもそれはそうと向けられた笑顔は嬉しかったぜ。
やはり女の子の笑顔は良いものだ。かわゆい。
なので他意は無い、ないったらない。
そこ、上の妹よ。邪推するんじゃない。
下の方は嫉妬するんじゃない。え? お嫁さんになる?
ははははは、可愛い奴め。
ナイス、ジョーク。
○月×日 晴れ ☆☆☆☆☆
久しぶりにリアルでの友好やら家族愛を深めた翌日。
今度は仮想世界での友人関係に務めることとする。
というのもフレンドとなったディアベルに第五層のボス攻略に関して誘われてたのだ。ふふ、ディアベルさんの頼みとあれば断るわけにはいかないな。
攻略面子は三十人と少し。
ゲームといえどプレイ時間やセンスの有無で差は生まれるもので、第五層の最前線攻略ともなればどうしても人数は少なくなってしまう。
βテスト参加者は千人ほどと聞いているが、残りはまだ第一層や第二層辺りでゲームプレイを楽しんでいることだろう。
まあ別に急ぎ攻略するゲームでも無し、また攻略するだけがゲームでも無いのでそこに対して特に俺が言うべきことは無いのだが……。
第五層のボスは端的に言って「キモい顔」。
何でも仮面型のモンスターらしく、一定以上HPを削ると巨大ゴーレムに変形するらしいのだが、それはそうと第一形態の仮面状態がキモい。
見かけたら近づきたくないレベルでキモい。
なので俺としてはダメージ稼ぎ役として永劫後ろからぶっ叩くだけの役割を貰いたいのだけれど……打撃系弱点? 槍使いは前衛防御?
……え、ええ不満なんてありませんとも。頑張らせて貰います。
そういうわけで前衛の壁役に徹する俺。
うわ、やっぱキモい、近づきたくないし近づけさせたくない。
でもそうすると役割放棄になるのでチマチマ攻撃。
ついでにスキルでタゲ稼ぎ。
しかしキモい。やはりキモい。
あ、口開いた。うーわ、何かグロテスクだし。
てか、こっちくんなし。
内なる嫌悪感と戦うこと三十分、ようやくボスが討伐される。
長かった……何か夢に見そうだな、あのビジュアル。
マジで誰だデザインした奴、茅場なんとかさんか?
茅場なんとかさんの仕業なのか……?
あんな趣味の悪い者を作るなんて相当頭がイってやがるぜ。
それはそうとレイド戦楽しかったです。
また誘ってくれディアベルさん。
今度は仮面ボス以外で。
獣系のボスとかで。獣なら外れはないだろうし。
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