主人公の告白を断ったら更に悪化したなんて・・・・ (手毬)
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序章 ~追憶~
告白


オレには思い出したくない程の過去がある。

トラウマと言ってもいいだろう。

それがあってからオレは親友を避け始めた。

 

思い出したくもないが今起きている事はあの日から始まったに等しいのである。

 

それは中学校終わりまで半ばを過ぎた頃のある一日の出来事である。

 

 

 

 

 

 

いつも通りの日常、親友(一夏)はクラスメイト(特に女子)に人気がある。

今日も朴念仁な親友そしてそんな親友に好意を持っている女友達と話していた。

 

今日はそんな日常でもいつもとは違うことがあった。

 

登校時に下駄箱で1枚の手紙を見つけたのだ。

親友の下駄箱と間違えたのかな?と疑問に思ったりしたがそれにはちゃんと名前が書いてあった。

親友の名前じゃなくて喜んでしまったのは余談だが・・・・

 

その手紙に書いてあったことはオレみたいな思春期の男子には期待せざる負えない言葉。

 

― 伝えたいことがあります。放課後、屋上に来てください ―

 

その日はどことなくずっと浮かれていた。

それも仕方ない事だろう。

 

あの朴念仁のフラグメイカーとずっといるに等しいのにその中で親友ではなくオレにそういう手紙があったという事だから。

何よりそういうことは初めてだったのだ。

 

それに常日頃こうも思っていた。

 

親友がモテモテなのにオレが一切モテないのはおかしい!

 

まぁ所詮モテない男子の僻みであるのは理解していたが・・・・

男友達とは親友意外とは意見が合っているので間違いではないだろう。

 

そして待ちに待った放課後。

 

親友たちに用事があるから遅れる、なんなら先に帰っててもいいぞと一言残し屋上に急いだ。

どきどきしながら一歩一歩進んでいく。

どことなく高揚していた。

そして心臓が張り裂けそうになりながら屋上の扉に手をかけ決め台詞。

 

すまない、待たせてしまったか?

 

尚、そこには誰もいなかった。

恥ずかしくなり思わず屋上から去りたくなる。

でも手紙の存在がそれを許さない。

 

数分時間が経ち屋上の扉が音を立てる。

 

手紙の女の子がついに来たか!と唯一屋上に出れる場所を見ればそこには親友の姿があった。

 

心配して来たのだろう。

 

親友に誰か来なかったかを聞く。

 

親友からは誰も来なかったぞとの返答。

 

遅くなるかもだから先に帰ってもいいのにとつぶやく。

 

俺も用事があるからなと返される。

 

用事?またいつもみたいに告白されたのか?と質問。

 

いつもみたいにってあれ荷物持ちが欲しいんじゃないのか?親友の一言に思わずため息。

 

それに今日は俺、告白しようと思ってるんだよ。

 

初めて見る親友のそんな姿。

 

じゃあ告白がんばれよ、一夏だからうまくいくよと励ます。

 

その一言を聞き親友は覚悟を決めた顔で爆弾を投下した。

 

俺、お前のことが好きだ。付き合ってくれ

 

その言葉を耳にした瞬間オレの頭は真っ白になった。

 

それから数分後のオレの様子は正しくこう言い表すしかなかった。

 

おれはしょうきにもどった

 

そう、未だに混乱状態であった。

でもなんとか返答した。

 

そもそもおれ達は男同士だろ。

 

性別なんて関係ない!お前だから好きになったんだ!

 

その一言を聞き思わずおれは逃げてしまった。

その時に残してしまった言葉がまさかあんなことになるなんて思いもしなかった。

 

お前はおれが女だったら惚れそうな行動してるけどおれは男だしそれに・・・・同性愛はおれには無理だ!!

 

それを聞いたあいつが不敵な笑みを浮かべてるのも知らずにおれは逃げ出した。




好評だったら続きがぽんっと置いてあるかも・・・・・?


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団欒

思ってたより好評みたいなのでぽんっ

あ、皆さまご期待の会は次回になります。
今回は主人公の名前やその他諸々の暴露になります()

あ、今回からキャラがちゃんと喋ります


あのあとオレは逃げるように帰り現実逃避するように眠った。

 

勿論の事だが眠っても問題が解決するわけもなく・・・・

 

朝になりオレは現実問題に直面していた。

幸運なことに今日は土曜日である。

でも出掛けることも遊ぶこともできそうにない。

今、オレの頭にあるのは一つだけだ。

 

―明日から一夏とどうやって接しようか・・・・―

 

あんな衝撃的な事実を知ってしまったオレは今まで通りに接することが出来そうにない。

 

そうやって朝から悩み続け2~3時間程。

 

ガチャと扉が開く音がする。

思わず音の方向を見るとそこには金髪の少女がいた。

 

空野(そらの)(みゆき)

オレの妹だ。

 

「兄さん起きてる?」

 

「ああ、起きてるぞ」

 

どうやら起こしに来たみたいだ。

 

「姉さんがご飯できたから降りてきてだってさ」

 

訂正しよう。朝ごはんの時間だった。

 

「そういえばそんな時間か・・・・」

 

「伝えたからね!兄さんも早く支度して降りてきてね!」

 

「分かった分かった」

 

朝から元気な妹に苦笑する。

 

家族にはこの悩みを打ち明けてもいいかもしれない。

きっと明朗快活な妹なら笑い飛ばすかもしれない。

ダウナーで悲観的な姉ならもしかしたら同情されるかもしれない。

それでも誰にも話さないで抱え込むよりはいい。

 

どうしようかと考えながら着替える。

 

というかなんでオレあいつに惚れられたんだろ・・・・

 

着替えを終え、降りていく。

キッチンには銀髪の女性がいる。

 

空野(まい)

 

オレが幼少のころに親に不幸が起きてしまってからずっとオレ達の面倒を見てくれた母みたいな姉だ。

 

「ゆうくん起きたのね。おはよう、ゆうくん」

 

「おはよう、姉さん」

 

「今日は遅かったみたいだけど何か悩み事?」

 

相変わらず姉さんは抜けているようで鋭い。

 

「昨日あったことだけどね。でも話すのは食べ終わってからでいい?」

 

「うん、いいよ。ゆうくんが話したいときに話してね」

 

「兄さんの話は私も気になるかな。昨日帰ってからすぐに部屋に籠ってたし」

 

「食べ終わってからな」

 

そして姉さんにお手伝いを申し出る。

 

「みゆきちゃん盛り付け手伝ってくれる?ゆうちゃんはテーブル拭いてくれるかな?」

 

姉の言葉でそれぞれ動き出す。

そしてそれぞれの作業が終わり机の上には姉さん作の料理が並ぶ。

オレも幸も涎を垂らすのを我慢しながら姉からのよしを待つ。

 

「じゃあお手を合わせましょう」

 

姉の言葉で手を合わせるオレ達

 

「いただきます」

 

「「いただきます」」

 

その言葉でオレ達はオオカミになった。

 

 

 

妹とご飯で戦い姉に注意されるといういつもの朝食が終わって数分。

オレは昨日あったことを姉達に話した。

姉はあらあらと笑い、妹はやっぱりか・・・・と苦笑していた。

 

「ゆうくんは可愛いから仕方ないかな・・・・」

 

「兄さんは綺麗だからしかたないよ」

 

オレは可愛くないし綺麗でもありません。

 

「一緒にお出かけするとよく三姉妹に間違えられちゃうのに?」

 

からかうように事実を言わないでくださいへこみます。

そう、実は1つだけ重大なコンプレックスがある。

よく女の子と間違えられるのだ。

初対面だと男の子だと思われない。

というか男装女子とかいう特殊なジャンルにするのだけはやめてください。

昔は背が伸びればそう見られることはないと思った。

でも背が伸びた結果がオレの心を折りに来た。

可愛いものを見る目だったのが憧れを見る目だったのだ。

中学でもそれは変わらない。

いや、むしろひどくなってるかもしれない。

何しろ一部の人はオレの事をお姉さまと呼んでくるのだ。

心が折れても仕方ない。

 

そして一夏との接し方の相談のはずがオレの可愛さの話題になっていた。

オレにとっては拷問のような時間だ。

 

「――だからゆうくんはやっぱりかわいいと思うの」

 

「私は凛々しい兄さんばっかり見てるからかな・・・・」

 

「あ・・・・」

 

ふと姉さんが思い出したように・・・・

 

「今日お客さんくるんだった」

 

「お客さん・・・・?私でも知ってる人かな?」

 

妹が不安がると姉は特大級の爆弾を落としてきた。

 

「うん、みゆきちゃんでも知ってると思うよ。たばねちゃんだし」

 

オレ生きて明日の朝を迎えられるのだろうか・・・・?




今回は「」を使用しての会話方式です。
前の「」無しがいい場合は素直に言っていただけると嬉しいです。








コミケンさん、兎山万歳さん、巡査補 ZMHさん感想ありがとうございます。

スギマルさん、趣味全開太郎さん、ぼるてるさん、ハーフシャフトさん評価ありがとうございます。

次はUA10000もしくはお気に入り100件までお休みします(流石にこの数なら結構休めるでしょ・・・・)


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天災

気がついたらお気に入りが100件超えてました。
ありがとうございます。

そして待望の方お待たせしました。
ついにTS回です(本人睡眠中)。




朝食後の団欒が終わり部屋に戻る。戻ったらまた悩みを解決しようと頭を働かせる。

 

ああでもない・・・・・こうでもない・・・・・と考えを巡らせているうちに時は過ぎ夕方になった。

 

夕日が部屋を照らす中、ふと影が差し込む。

ん?影・・・・・?窓を見る。

そこには窓を外側からどうにかして開けようとしている天災の姿があった。

 

それを見たオレは黒い瓶を片手に窓に近づく。それも相手からは見えないように持ってだ。

気がついた天災は頬を緩ませる。気づかれないように瓶の蓋を取る。天災が窓の隙間に工具を差し込む。

そして カチャッ という音。

 

―カウントダウン3秒前の合図―

 

天災が窓に手をかける。

 

―2秒前―

 

そして一気に開く。

 

―1秒前―

 

足場にしているものを蹴り飛び込む姿勢を取る。

 

―さあ、今だ―

 

飛び込もうと力を入れた瞬間に黒い瓶の中身を天災に目掛けて大量にばら撒く。

 

天災を囲む粉により視界が途切れ相手の手が離れた瞬間に窓を一気に閉める。

 

窓の向こうの天災を見る。小さく口を開いた。次第に大きくなる。

ちなみにだがこれは10回以上繰り返している。しかも毎回同じ結果で終わるのだ。つまりは・・・・・

 

ブェクションッッッッ

 

という大きな音と共に庭に落ちていった。

 

余談ではあるがあの黒い瓶は天災撃退用に日々改良を積み重ねているものだったりする。

 

姉に天災の回収を頼んだ後に来客用の服に着替える。

というかこの服を着ないと天災が力業に出てくるのだ。

酷いときにはもう一人の姉の友人まで登場する。

 

自分に暗示をかけながら着る。

 

私は女の子。私は女の子。私は女の子。

 

文化祭のときとか含めてこういう格好をさせたがる人が多すぎる。

文化祭でのミスコン飛び入り参加とか・・・・・優勝だったが。

 

友人からの言葉もある。

親友D曰く。お前産まれる性別間違えてるよな・・・・・初対面ときとか男装してるって思ってたし。

女の親友Rからは。多分だけど一夏の朴念仁で唐変木なところってあんたのせいなんじゃないの?主にその容姿。

最後に引っ越した幼馴染は。容姿も能力も完璧で性格も文句言いつつやってくれるところがあるからな・・・・・はっきり言えば女子としては一切かなわないと思う。男だけど。

 

似合ってしまっているのが分かるから辛いのだ。

しかも手馴れてしまった自分に落ち込むのもある。

 

鏡でおかしいところが無いかチェックする。

シャツにスカートとニーハイ、そしてネクタイが曲がってないかを確認し最後に髪のチェック。よしっ。

 

降りたとたんに天災こと束さんと姉にめちゃくちゃ可愛がられた。

束さんは撫でるだけで飽き足らず。舐めたいとも言ってきたときにはドン引きした。

妹も参加して収拾がつかなくなったころに姉が晩御飯を作り終えたみたいで次々と並べていく。

あれ・・・・・束さんも食べてくのかな?

 

「あ、伝え忘れてたけど。今日たばねちゃんお泊りだからね」

 

再び姉が爆弾を投下した。

自分の貞操を守る戦いも始まるのだった。なんか束さんの笑顔が怖いくらいになってるけど今日を乗り越えたらまた来週も頑張れる気がする。

 

いただきますと声を揃え一斉に食べ始める。

ちらちらと束さんからの視線が・・・・・あの・・・・・そんなにみられると食べづらいのですが・・・・・

それでもパクパクと食べていく。そして最後にお味噌汁。汁椀を持った途端に束さんの目が輝いた。

あ、これ束さんが作ったんですね。

まずは一口飲む。うん、美味しい。そして具を食べる。

パクパクパクゴクゴクゴクと全て食べ終えた頃には睡魔が襲い掛かってきていた。

 

妹と声を合わせてご馳走様でした。姉と束さんからお粗末様でした。

姉に眠たくなってきたから先に寝ると伝える。

そして部屋に戻る。戻った後は寝間着に着替えて電気を消しベッドに一直線。

今日はおやすみなさい。

 

 

 

 

 

そして彼が寝静まったころに3つの影が。

 

「うん、ぐっすりと寝てるよお姉ちゃん」

 

「じゃあ計画の第二段階始まりね」

 

「第二段階というか最終段階だね。とりあえずまーちゃんにはこれを」

 

「ん・・・・・これって注射器でいいのかな?」

 

「そうだね。針がないから痛みはないよ」

 

「じゃあ安心かな」

 

「みーちゃんにはこれね。私がやった後にやってね」

 

「うん」

 

「じゃあまーちゃんからいくよ」

 

 

プスッ

 

「次は私」

 

プスッ

 

「最後にみーちゃん」

 

プスッ

 

「そしてちょちょいのちょいっと」

 

3人で優に薬液を注入した後に束が端末を取り出す。

ピピピっと開始キーらしきものを入力した瞬間に優の姿が変わった。

 

「んー・・・・・やっぱり顔とか身長は一切変わってないね。でも・・・・・」

 

束が布団に手を置く。そしてそっと上からはだけさせて優の胸の部分に手を置き。

 

「ふへへ・・・・・置いただけで沈み込むとはなんという成長・・・・・」

「・・・・・んっ」

 

優が反応したことによりビクッと震える三人。そのまま優は寝返りをうつ。

 

「びっくりしたぁ・・・・・でもこれで計画終了だよ。明日のゆーちゃんの反応が楽しみだね」

 

布団を元に戻し三人は音を出さないように去っていった。

 

「それにしてもゆーちゃんもしかして男の子の時からああいう感じの寝方だったのかな・・・・・だとしたらなんかえっちすぎない?反応したときとか思わず襲いたくなったし」

 

優は貞操は奪われなかったがそれ以上に大事なものを寝てる間に失ったのであった。

彼のいや、彼女の本当の苦労はここから始まる。




蘭丹さん、兎山万歳さん感想ありがとうございます。

ゴリおさん評価ありがとうございます。








休めたの1週間だったのでぶっちゃけこれもう週投降でもいいような気もしてきました。
まぁ気分なので長くなったり短くもなったりしますがそこは大目に見てね()

ちょっとしたアンケートをやってみようかと思います。
内容ではないのでもしよろしければご参加をどうぞ。


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幕間① 私が壊れた日

本編じゃなくて過去編ですがどうぞ!!
※とんでもなく重たいので読むときはご注意ください。



姉の思い出 その①

 

ある日お母さんから突然「あなたは近々お姉ちゃんになるよ」と微笑みながら私に語った。

最初は「あなたはお姉ちゃんになるんだからしっかりしなさい」と遠回しに言われたのかとも思った。

困惑した、もちろん不安も抱いた。だって私がお姉ちゃんになるってことはお母さんやお父さんからの愛情が少なくなるってことだから。

少なくなった愛情は新しい家族に分け与えられる。でも私はその時独り占めしたかった。

だってお父さんもお母さんも大好きだから。

 

お母さんと一緒に病院に行った。女の人がお母さんの大きく膨らんだお腹に機械を当てていた。

女の人にテレビの画面を見るように促される。そこには白黒だけど確かに赤ちゃんがいた。

とても元気にお腹を蹴っている様子みたい。元気な女の子ですねと声を掛けられる。

お母さんは女の人から紙が入っている紙の袋を貰いそれを大事そうに抱え込む。

女の人にお礼を言ってお母さんとお家に戻る中私はお母さんのお腹に触れていた。

多分その時私は母のお腹に命が宿っている実感があまりなかったんだろう。

不思議だなーって思いながら擦っていたような記憶が微かにある。

遠い記憶の母は私に微笑む。「初めて妹を見たけどどうかしら?お姉ちゃんって感じしてきたかな」私に問いかける。

確かその時私はこう答えたはずだ。「わかんない。でも頼られるお姉ちゃんになりたい!」

 

 

いや、違う・・・・確かそれを答えようとしたとき・・・・

 

 

私は・・・・

 

 

目の前の地面に倒れこんだ人。

――アカイアカイ、アカアカアカアカアカ赤赤赤赤赤紅紅紅紅紅紅――

私の大切な人がアカクアカクソマっていタ。

 

 

・・・・大切な人を失う恐怖でただただひたすら泣いていた。

いや、泣けるものなら泣きたかった。

 

 

 

 

 

姉の思い出 その②

 

 

 

 

 

幸せな時間が崩壊するのは一瞬だ。

珍しくもない強盗事件。それの被害者となった私と母。世間では可哀そうという同情の目で見られた。

その事件は軽傷者20名そして重傷者1名の被害だった。奇跡的に(母のお腹にいた妹以外の)死者は出なかったみたいだ。

その重傷者が私の母だ。犯人が逃げるときに偶然通りかかった私そして母を邪魔だと思ったのだろう。

私にその牙を向けてきた。「どけ!クソガキ!!」その刃が私に迫る。

10

硬直する私。

私の頭に狙いを定める男。

私を呼ぶ母の声。

目の前に迫る男の姿。

目の前に黒い影。

強い力で後ろに倒され思わず瞳を閉じてしまう。

目を見開く。

母のお腹に深く突き刺さる男の刃。

ドサリと倒れこむ母の姿。

地面に広がる赤い液体。

目の前の光景から色が失われた。

音は聞こえるがそれが頭に入ってこない。

 

私は居もしない神に懺悔した。

 

 

 

 

 

姉の思い出 その③

 

 

 

 

 

母は一命をとりとめた。どうやら男が凶器を持って外に出てた時には既に警察と消防が駆け付けていたみたいで犯人逮捕の後すぐに救急車で大きな病院に運ばれたこの迅速な対応で助かったみたいだ。

大好きなお母さんが助かったのにわたしの心は一切晴れなかった。目の前の景色も白と黒の世界だ。

私は笑うこともできなかったみたいで駆け付けた父に心配された。

 

事件から数か月私の母の意識が戻った。明るかった母はとても沈み込んでいた。

母はお腹に手を当て寂しそうに微笑みの表情を作る。

 

そんな母に思わず私は禁忌を犯してしまう。

 

この状況では一番やってはいけないことだった。心に傷を抱えた母に私は言ってしまったのだ。

「わたしのせいで妹が・・・・ごめんなさい・・・・わたしが代わりだったら・・・・」

それを聞いた母が涙を浮かべる。「お願いそんなこと言わないで。私にはあなたが必要なの。お願い代わりになればよかったなんで言わないで。ね?お願いだからお願いだから」

私に言い放つ母。その様子が狂ったように見えた。わるいのはわたしだから・・・・

わたしがおかあさんをいもうとをふこうにおいこんだから・・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 

私と母で慰めあう。大事な妹を亡くしてしまったその場面を共有しているのだ。少し落ち着いた母が「おとうさんは?」と聞けば私は一緒に来てるよと答える。

そして父の方を向く。

一緒に来ていたはずの父がいつの間にか姿を消していた。

 

あれ?おとうさん?どこいったの・・・・?

 

母におとうさん探してくるね!と言い捜索を開始する。

6階、5階、4階、2階――そして総合受付。

受付のおねえさんにおとうさん見ませんでしたか?と質問。

「あら、舞ちゃんね。おとうさんならさっきそこから出ていったけど・・・・」

おねえさんの言葉に頭が真っ白になる。え?もしかしてわたしってすてられたの?わたしっていらないこなの?思考が暗くなる。

どんどん堕ちていく。闇に囚われそうになった時におねえさんの言葉が聞こえる。「お家にお荷物取りに行ったかもしれないね」走る。走る走る走る――

何度か転びそうになりながらなんとか家にたどり着く。ノブを回す。開かない・・・・お父さんから預けられたカギを使う。

 

カチャ

 

おとうさ――

家に父は居なかった。いや・・・・父が遠出するときの大きなカバンもなくなっていた。

え・・・・いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやぁああああああああああああ!

膝をつく。体が震える。これってそうだよね・・・・

わたしたち・・・・おとうさんにすてられちゃったんだ・・・・

わたしのせいでおかあさんにまでめいわくかけちゃった・・・・

あは・・・・あはは・・・・

 

それから父が帰ることはなかった――




幕間にて3人や関わる人達の過去話を上げていこうかと思います。
(勘違いタグあるのにいまだに仕事してない気がする・・・・)

しばらく感想を書いた人や評価者の紹介を取りやめようかと思います。
内容はちゃんと読んでいますのでご安心くださいね!!



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序章 ~変化~
代償


まずはアンケートの途中結果の発表です。

全票数      189 票

毎日投稿     106 票
一定期間での投稿  17 票
記録での投稿     5 票
気分投稿      60 票
削除         1 票


毎日投稿が圧倒的に多いですね。
時点で気分です。

後々にはヒロイン投票もしていきたいのでその時もご参加ください!


彼が彼女になって数時間後の早朝、姉妹たちは悩んでいた。

 

ちなみにだがまだこの時間に彼いや、彼女はまだ起きてこない。

普段の口調からして想像できないが彼はとても几帳面な性格をしている。

だがとても朝に弱いのだ。それこそ彼の目覚まし時計が特注品であるのが一番の証拠だろう。

そして今は彼が目覚ましをセットしている時刻から3時間ほど前である。

彼と束を抜きにして幸と彼女に変化した彼が学校に通うためにどうすればいいかを考える。

 

普通に考えて性別が変わるなんて思わないからそれをどう伝えようか、どのように説明してもらおうかと悩んでいるのだ。

束に任せればいいって?それだけはダメです。あの子の場合軽く伝えて投げるだけになるだろう。というか脅すだろう。

 

あ、ゆーくんがゆーちゃんになっちゃったからちゃんと普段通りに過ごせるようにしてね?

じゃないとお前どうなっても知らないよ?

 

みたいになってもおかしくない。

どうすれば先生方が困らないか・・・・・いや、どう伝えれば困惑が少なくなるか・・・・・

 

「あ、お姉ちゃん。確か学校なら休日でも教師いたよね」

 

「ええ、先生方は休日でもお仕事がありますからね」

 

「じゃあさ、今日は理由を話して明日もお休み貰えるようにしたらいいんじゃないかな?」

 

「明日も?それって問題の引き延ばしにしかならないような・・・・・」

 

「いや、そうじゃなくてね。お兄ちゃんがお姉ちゃんに変わったってことだからこのまま男子制服で学校に通う訳にもいかないでしょ?」

 

「そのまま通うとなると絶対に隠し通さないといけないしね」

 

「それもあるけどもしもの時のために先生には絶対に性別は言っとかないとだからさ」

 

「ええ、そうね」

 

「もういっそのこと女子生徒として通ってもらえばいいんじゃないかな」

 

確かに女生徒として通ってもらうのが一番無難なことだとは理解できる。でもそれだと一夏くんとも鈴ちゃんとも初対面を装わないといけなくなるからゆうちゃんにとってはつらいことを強いてしまうのではないか・・・・・

 

「どちらで通うにしても先生に連絡は必要ね。制服を用意してもらうとなるとサイズを測るためにも一度学校に行かないと・・・・・」

 

「役所で戸籍変更もしないとだけどそれは難しそうかな・・・・・」

 

確かに・・・・・それができないゆうちゃんはいわば世界のどの国の国民ではない存在、いわば存在してはいけない存在と言ってもいいのだ。

まぁでもお姉ちゃんそこら辺は束ちゃんに頼み込むんですけどね。

きっと束ちゃんも快く受けてくれるに違いないよね。

 

幸ちゃんに束ちゃんにお願いしてくると一言言い残し束ちゃんを叩き起こしに行く。

 

束ちゃんが寝ている部屋に着き、こっそりと中を覗き込む。

そこにはもちろんぐっすりと寝ている束の姿が・・・・・無かった。

あれ・・・・・?ふと嫌な予感。

 

あわててゆうちゃんの部屋にいき、音をたてないように慎重にドアを開く。

 

そこにはゆうちゃんに顔を近づけ唇を奪おうと襲い掛かる寸前の変態の姿があった。

 

「うぇひひひひ・・・・・やっぱりゆーちゃんはえっちぃなぁ~」

 

「んぁ・・・・・」

 

というか布団の上から寝ている彼女の胸を揉んでいた。それを認識した途端私は修羅となった。

 

あのエロウサギ今度こそ鍋にしてやろうか・・・・・!

 

長女による兎狩りが始まった。




コミケンさん、兎山万歳さん、rock 1192さん感想ありがとうございます。

真秋なむさん評価ありがとうございます。





返信できなくても感想は見てますので頂けるだけで励みになります。





というかアンケートはまだ途中結果にあえてしますが・・・・・
あれマジですか・・・・・?
毎日更新してほしいと・・・・・嬉しくて舞い上がって落下しそうなんですが・・・・・
できる限り更新速度は上げていきますので過度な期待はせずにお待ちください。
頑張って毎日投稿できるようにしますので優しい目で見守っててください。
いっそのこと応援してくれてもいいんですよ?


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発覚

アンケートは4月までやってますので気が向けばでいいので投票お願いします。


side 舞

 

 

私と束が争っている時にそれは起きた。

寝ているはずのゆーくんの声が聞こえたと同時に頭に痛みが走ったのだ。

だが不運はそれだけでは終わらない。ちょうどセットしてた時間だったのだろう・・・・

それは耳元で大きな音を奏でた。

 

ジリリリリリリ!!

 

思わず私と束は叫んだ。

そしたら今度は束の頭目掛け二つ目の目覚まし時計が飛来する。

耳を抑えてた束に避けれるわけもなく時計の角が当たり彼女は悶絶した。

 

「うるさい」

 

ゆーくんの冷たい声それも本日2回目である。

心なしか視線も冷たい気がする・・・・

 

「朝っぱらから騒がないで・・・・」

 

お叱りの言葉を貰ってしまう私と束。いや・・・・叫ぶ原因はゆーくんでしょ・・・・

とは言えず・・・・朝から必死に謝り続ける私と束なのでした。

 

 

side 優

 

 

朝から迷惑な叫び声で眠りから覚める。思わず目覚まし時計を投げつけてしまってたようで・・・・

でも私の怒りは収まらない。

 

「うるさい」

 

自分でも驚くほどの冷淡な声が出てしまった。

悶絶している姉と兎を発見する。朝から騒いでるのはこの2人で間違いないようだ。

姉が騒ぐのは珍しい気がするけどそれでも朝からは近所迷惑なので注意しないとね。

 

「朝っぱらから騒がないで・・・・」

 

はぁ・・・・なんで朝から身内と友人しかも両方年上を注意しないといけないの・・・・

思わずため息が出てしまう。この癖も直さなきゃかな・・・・

悩みも解決しないまま日曜日を迎えてしまった・・・・そりゃあため息も出ちゃうかぁ・・・・

 

目を覚ますためにグーっと伸びをする。10秒。

やっぱり寝てるときはずっとおんなじ体勢だからこれを起きてすぐにやると気持ちいいよね。

伸びた姿勢のまま手を左右に傾ける。左に10秒右に10秒。

そして最後に真上に戻しそのまま体を反らせる。これも10秒

ふぅー・・・・今日も一日がんばります。そして立ち上がる。

ふと違和感が・・・・なんか股がスース―するというか・・・・何か大事なものが無くなってる気がする・・・・

でも普通に考えてありえないよね。一旦着替えよう・・・・でも姉さんと束さんいるしなぁ・・・・人前で裸になるのはやっぱり恥ずかしいよね。

 

襟元に手を持っていきボタンを外していこうと手を第一ボタン付近に添えてから姉たちのほうへ一言。

 

「あの・・・・恥ずかしいからちょっと部屋の外に行ってくれたら嬉しいかなって」

 

言い終わった瞬間に2人は部屋の外へ向けてダッシュした。

あの・・・・なんかドンドンって大きな音がしてるけど大丈夫かな・・・・?

 

2人が出ていったことにより着替えを再開する。

第一、第二、と上から順にボタンを外していく。

第三・・・・あれ・・・・あるはずのない感触が・・・・

いや、待てよ・・・・股の違和感そして胸付近のこのやわらかくも弾力のある感触・・・・

 

え、まさか――いや・・・・

 

え――、ええええええええええ!?

 

想定外の事態に思わず叫んでしまった。

 

オレ――女の子になってる!?

 

叫び声によりなにかあったのかと2人どころか妹の幸まで部屋に駆け付けたみたいで・・・・

女子組により着せ替え人形にされた。いや、まずなんでこうなってるのかの説明をして・・・・

我を忘れた姉たちの拘束からは2時間ほどしてから解放された。普段からこういうことをしてくるが今日は一段と酷かった・・・・

 

そして姉たちいや・・・・愉快犯三人組にこうなったわけを話してもらい姉と妹からはそれの謝罪もしてもらった。

反省している姉と妹は説教を。流石にこれは怒っても仕方ないよね。

ゆーちゃんの為だから!!と一切反省の様子も見えないむしろいいことをしたと清々しい表情の兎はどうしてくれようか・・・・

仕方ない・・・・千冬さん直伝の変態兎撃退術を使うしかない。

 

「束さん」

 

名前を呼び近寄る。この時相手に違和感を持たれてはいけないので自然体でいるのが成功の秘訣だ。

手で相手の顔を掴める範囲に入れば相手に悟られないように素早く顔を掴む。均等に力を加えると引き剥がしにくくなる。

顔を掴めばあとは仕上げだ。めいっぱい力を入れる。すると・・・・

 

「――いたいいたいいたいいたいいたいよゆーくん!!

 

こうやって変態兎に対処できると千冬さんから教えられた。

更に少し力を入れる。

 

「――ぎゃぁああああああああああああああああ!!頭が割れるよ!?2つに綺麗に割れちゃうよ!!

 

「そう。左右で別の事を考えられるようになるからいいじゃない」

 

「――あ、確かにそうだね。今でも天才な束さんが更に賢くなっちゃ――」

 

言葉を最後まで発せずに変態兎は倒れてしまった。優 WIN! なんちゃって。

 

尚、姉が謝罪と共に優ちゃんが国籍もなにもない不法滞在のアウトロー状態になっちゃったけどどうしよう・・・・と悩んでいることを話された。

いや、今だと国籍くらいお金で買えるじゃん。昔は少ないけど今はほとんどの国のが買えちゃうからね?費用?そこの変態に出させればいいんじゃないかな。




松影さん、魔王ゲルマンさん、セヤナーさん感想ありがとうございます。

ERA棺桶さん、墓石さん評価ありがとうございます。





視点変更を入れてみましたが分かりにくかったり読みにくかったりする場合は遠慮なく言ってください。
どうにか分かりやすくする努力をいたしますので・・・・


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懺悔

遅れまして申し訳ございません!!

明日にも1話更新します!!(幕間ですが)





side 舞

 

 

これから私は優ちゃんに謝罪しないといけない。だって何の断りもなく彼の人生を大きく変えてしまったのだから。

でもそうしないと彼は生きれなかった。いいえ、生きることはできたけど彼は短命になる運命しかなかったはずなのだから・・・・

 

束のあの賭けにも等しい方法を聞くまでは

 

これは私の罪なのだから・・・・

私はどんな方法を使ってでも長い人生を歩ませなきゃいけない。

だって優も幸も私のあの時の事件が原因で生まれてきた兄妹なのだから。

 

 

父が失踪し娘が壊れた。そんな娘を見て母は病んでしまった。

 

父は母と娘を捨てたわけではないのだ。彼は母のお腹にいた命を蘇らせようと必死だった。人体に関するもの特にクローン技術を重点的に調べ書き上げそして実験した。その結果が優と幸。

部下であるあの人が言っていたのだ。

形になっただけの存在が優そして失敗を重ね不具合を一切許さずに作られたのが幸だと。

なので優には大きな欠点があった。

 

()()()()()()()()という致命的な欠点だ。

その欠点を補うために父が行ったのは自己修復型ナノマシンの投与である。

その結果起こったのが異様な速度での()()()()()である。とても負担の大きいそれを繰り返すようになった優は更にその命を燃やすことになった。

50歳まで生きれたであろう寿命の予測が大きく変化することになる。

研究所職員であるあの人から聞かされた予測を知った時から昨日行ったこの計画を考えていたであろう。

例え優から嫌われてもあの子を長生きさせなきゃいけない。結局は私もあの父の血が流れているのだ。

それからの行動は早かった。優のためになる人を集め動かしそれでも手伝ってくれない人は影から権力を使い脅した、その中には束もいた。

勿論足を引っ張る人もいた、役に立たなくなった人もだ、そんな彼らには闇に消えてしまうように細工をしドンドン切り捨てた。

最後まで残ったのが束だった。彼女が作り上げた救命装置は彼の命を100%助けられるというものではなくもし成功したとしてもとてつもない代償をもたらすものであった。

 

彼は生まれた時から全ての細胞を構築する遺伝子が不安定なのだ。だから遺伝子が多く組み込まれているその人体は細胞は自己崩壊を起こす。それを抑えようとしても無理があるなので再生機能に特化している自己修復ナノマシンを投与された。崩壊するだけ修復するそれは彼の体力を大きく奪っている。

その証拠に彼はよく入院しているのだ。それこそ学校では幻の美少女とも認知されるくらいだ。

それらもこの連鎖によって起きている。この連鎖を止めるためには彼の遺伝子情報を正さなければならないのだ。

そう妹のような遺伝子配列にしなければならない。だって元々は女児から作られたのが彼なのだから。

性別が違えば配列も違う。父は無理やり色々と弄った結果失敗作が出来てしまったと判断した。

遺伝子の配列を変えるということは多大な負担をかけてしまう。だから父が投与したナノマシン以上の性能を持つものを束は投与したのだ。

遺伝子を変えるという事は性別も変えてしまう。何が起きるのかもわからない。でも私は優には生きてほしい。

私も父と同じ外道なのである。でも助かる可能性があるならそれに賭けたい。それもできるだけ確実な可能性に。

 

束と作成した装置それを使用した場合の生存確率はどれだけ上げられても80%前後であった。

男性のままでは無理なの?と束に聞いても元となったものは女の子だから無理と言われる。

彼は彼のままだと長生きできない、彼女になってやっと普通の人間並みに生きられる可能性が出てくるのだ。

長女は悩んだ。特殊な生まれの妹は兄そして自分の誕生を知らないから相談もできない。

やっぱり束に相談するしかなかった。束は「それは私が決めるんじゃないよ、まーちゃんが決めるんだよ。まーちゃんはゆーくんが伴侶を見つけて幸せな生活を送ってる光景見たくないの?」

そう言われると私の答えは1つだけなのだ。たとえ賭けになるとしても可能性があるならそれにかけたい。

とっくに私の答えは決まっていた。

抑えきれない感情を言葉として吐き出す。

 

 

「――――優と幸は私のすべてなの、大切な人が短命に終わるなんて悲しい現実は否定したい」

 

 

今から言うのは倫理に反する言葉だ。生者への冒涜とも言える。それでも彼は・・・・・

 

 

「なにより私は家族が大好きなの!思い出ももっともっと作りたいだからまだゆーくんは死なせない!絶対に!!」

 

 

失敗したら例え協力者であっても無事では済まさないと最後に付け加え彼女は最終調整を開始した。

 

――来るべき彼への()()()()に――

 

大切な弟から恨まれてでも私は一緒に居たいから。




更新速度上げようかと思いましたがちょっと書いてみたいのもあるのでそちらをある程度書き上げてからの更新になると思います。
ですので毎日更新は暫く厳しいですが見守っていただけると幸いです。

ほかの作品を書き上げるという事情により匿名投稿を解除します。
興味があるからはそちらの作品もよろしくお願いいたします。

作品名等は恐らく次回更新にて発表になると思います。


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幕間② 作られた命

お待たせしました!!
(6時に投稿しようと思ってたら設定するの忘れてたなんて言えない・・・・)


狂気の父親①

 

 

 

 

 

妊娠中の妻を刺された上司。妻のお腹に宿っていた命を取り戻そうと禁忌に手を出した。いつしか彼は狂気が宿っていると当時の部下は感じていたみたいだ。そんな父がやっとの思いで人間としての形を保ったまま作り上げたのが優でありその失敗を受け研究を重ね作り上げた父にとっての成功作いや最高傑作が幸なのだ。

それこそ当初父は形は人であっても失敗作と定義していた優は廃棄しようとしていた。いや、廃棄したのだ。

そんな父と対立していた職員である彼が優を救い上げた。

例え短い命だったとしても彼は誕生した瞬間を見たのだ。カプセルに入っていた小さな命は確かにその目で彼を見たのだ、その目から感情があると彼は思った。そしてその命が廃棄処分されると聞き彼は抗議しに行ったのだ。上司の娘もしくは息子になるのだ、その命を簡単に捨てられるのは悲しいから。

上司は「・・・・・そうか」と一言漏らした。狂気に堕ちても上司である彼は一児の父でありもう1人生まれるはずであった命であったのがあの子なのだ、父としての情だろう。

でも彼の行動は遅かったのだ。すでにその赤子は廃棄処分として倉庫に運び込まれていた。数多の肉塊と共に。

 

 

 

 

 

研究員の苦悩①

 

 

 

 

 

私が抗議してから数日後、上司が彼に言いつけてきた。

「どうやら誤って成功作を廃棄処分として倉庫に入れてしまったみたいだ。処理ついでに探してきてくれないか?」

 

私は勿論頷いた。上司につい最近逆らったばかりだからまた逆らうのは恐らくできない。というかどこかに飛ばされるか私自身が処分されるかもしれないのだ。恐怖しかない。

上司からその成功作の特徴を伺うとその特徴はこの前に抗議しに行ったあの子の姿によく似ているものだった。

 

「もしかしてですが私が言ってたあの子ですか?」

 

「ああそうだ。やっぱり命は命だし短命だとしても私たちがそれを克服する手段を探せばいい」

 

やはり彼はいい親なのであろう。あれだけ膨れ上がってた狂気が今は全く見えない、彼にとっての最高の研究結果を作成しその目で見たからだろう。

 

「はぁ・・・・・はやく探しに行ってこい」

 

「はい、主任」

 

上司から急かされたので早速捜索にかかる。

 

 

 

 

 

研究員の豹変①

 

 

 

 

 

白銀の髪に菫色の瞳の男の子、あの時見た光景は忘れられない。培養液に満たされたカプセルの中であろうと圧倒的な美を見せつけられた。

漂う髪は部屋の照明により輝き、彼の白い肌はまるで彫刻を見ているかのような気分でもあったのだ。

あれほどの美を私は知らない。いや、知らなかった。

欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。

思わず欲望が溢れてしまう。はく製にして家に飾りたいなどというとても不謹慎な欲望だ。

ダメだダメだダメだダメだダメだ。

あくまで彼は上司のご子息になるのだ。そんな彼を勝手に連れ去り飾りにするなどできるわけがない。

欲望と戦いながら十数分その倉庫についた。中には肉塊が山の様に積み上げられていた。

その光景に思わず口を押える。これを処理するのか・・・・・

処理作業を始める。最初は選別作業であるとはいっても殆どがミキサー行きだ。だって人としての外見を保っているもの以外は切り刻んで魚の餌にするしかないだろう。

ぽいぽいぽいっとミキサー行きにしていく。中々人の原型をとどめているのは見当たらない。

 

――ぽいぽい、ぽいぽいぽい・・・・・ぽいぽい

 

埋もれていた腕らしきもの、ついに見つけてしまった。

これこそがあの上司の至高の研究結果の一つ――あのいけ好かない上司の一つの弱みなのだから笑える。

培養液に入っているころから私は魅入られていたのだ、正しく美の化身のような容姿を持つ幼い姿の彼に。

ああ、やっぱり上司に黙って連れ去るのがいいかもしれない。

 

私は暗い欲望に支配された。この研究結果を上司ではなく自分の研究結果にすれば自分には富と名誉そして莫大な資産が手に入ると、悪魔が囁いたのだ。

その腕を掴む。

 

やっとやっとやっとやっとやっと

これで私は・・・・・

掴んだ手を引きずり出す。

ははは、ふはははは――これで私は全てを手に入れる準備が整う。

あの上司を追い出すために私は悪魔に魂も売ろう。

 

はははははははははははははははははははは

 

ズルッ

 

彼はその腕を抱えて笑っていた。

 

どうやら比較的人型に似ている何かだったみたいだ。

 

「くそっ!!」と思わず叫んでしまった。

 

ああ、やっぱり大量の失敗作があると鬱陶しいな。でも私はもう一つ探す手段がある。生存するために、いや成長するためにあの男の子に埋め込まれたものを知っている。

 

そう、それは・・・・・ISのコア

 

世界に限られた数しかないそれの場所を探すのは簡単だ。

 

ふふふ、待っていろよ成功作。私が上手く使ってやるからな。

 

ふはは、あははははははははははははははははははは

 

狂ったように笑いながら私は装置を取りに戻った。




前回投稿での作品名が決定しました。
その名も・・・・

お嬢様は愛されたい

です。
4月から順次投稿しますのでご期待の程よろしくお願いします。

匿名は作品が投稿されてから解除したいと思いますのでそれまではお待ちいただけたら幸いです。


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