どうしてこうなった?~聖女に拉致られた魔王軍の女幹部~ (花びら)
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魔王軍幹部、襲われる

初めまして、自分は花びらと言います。
花弁というより花びらと行った方が受け入れやすいかなと思ってこの名前にしました。
さて、この作品は百合展開がありますが主人公は否定してるつもりです。
ダメという方ならバックしてください。
いいよと言う方なら是非読んでください。
それでは、どうぞ!


 初めまして、私の名前はシオン。

 魔王軍の幹部をしていて、人間軍から『蟲姫』の二つ名で知られています。

 その理由は蟲を召喚して操って戦闘から情報収集までやることから付けられました。

 そんな私ですが、今何してるかというと…………

 

 「ハァ…ハァ…。こんな所で、死ぬのは……嫌だなぁ」

 「…………」

 

 勇者パーティの要である聖女に叩きのめされていた。

 召喚した蟲達は全部焼き払われて奥の手である全身蟲化も相手を追い詰めることはできたけど結局押し切れずに負けることになった。

 こうなった原因はよくわからない。

 ただ人間の国に用事があったからしっかり変装して人混みに紛れ込んでいたのに、近くにいた聖女に見付かってしまい現在にいたる。

 私は既に満身創痍で聖女は所々に傷はあるがどれも重傷ではない。

 状況は明確、これから私がどうなるのかなんて分かり切ってる。

 それに、負けた私に生きる資格は無い。

 魔王様の右腕と自負して魔族を導いてきたのに、このザマだ。

 だから私は聖女に言う。

 

 「殺せ。無様に痴態を晒すぐらいなら死んだ方がマシだ」

 

 魔王軍の幹部にはそれぞれ役目が与えられており、他の幹部は軍の整備や新薬の開発、税金の管理などだ。

 そんな私の役目は諜報だ。

 魔王、延いては魔族領に害となる情報をいち早く魔王様に伝えるのが私だ。

 諜報に必要なスキルは当然身に付けたし、極めた。

 その中には変装技術もあり、魔族の特徴である角や褐色肌は透明化させたりマスクを被って見えないようにした。

 服装も人間の国で一般的なものを着て髪の色も人混みに紛れても違和感が無いため、後進の指導に専念していた。

 そんな私が呆気なく見つかってしまったんだ。

 例え生き残れたとしても情けなくて魔族領には帰れない。

 はぁ………なんでバレたんだろう?

 人間の国で悪事は働いてはいない。

 そもそも私の目的は買い物だ。

 ここでしか買えないものがあったから、目的を果たしたらすぐに帰るつもりだった。

 元々諜報には小さい蟲達を使って各国へ潜り込ませていたから私が動くことはそんなに無かった。

 だから人間達に私の性別以外の姿形についての情報はバレて無いはずなのだ。

 なのに、何故この聖女は私が魔族だと気が付いた?

 おまけに対魔族魔法とも言える光魔法を何発も撃ってくる。

 ………今まで慢心してたツケが来たのかもしれない。

 もしそうだとすると情けないことこの上ない。

 悔しく思ってると、聖女がこちらへ歩み寄って来るのが見えた。

 終わったな…。

 あぁ…けど、最後にあの子たちの顔を見たかったなぁ。

 そんな時、異変が起こった。

 聖女は私の所へやってくるなり、私のことを横抱き―――俗に言うお姫様抱っこをしたのだ。

 

 「は!?」

 「殺しませんよ。貴女にはやって貰うことがあるんですから」

 

 くっ…!

 何をさせるつもりだ…!

 さては拷問か?

 ならばやってみるが良い。

 私は絶対に屈しないぞ!

 

 

 

       ■□■□■□■□■□

 

 

 

 ポツンと、とある宿の一室にあるソファに座る私。

 そして………

 

 「ハァハァ…。最高……」

 

 私のお腹に顔を沈めて匂いを嗅いでくる聖女。

 …………ん~?

 どうしてこうなった?

 とりあえず、あれからどうなったか教えよう。

 あの後お姫様抱っこされた後に聖女が自分自身と私に回復魔法掛けてくれたおかげでなんとか快復はした。

 だが、おかしなことに続けざまで透明化の魔法を掛けられた後聖女が急に物凄い速さで走り出したんだ。

 その後に街の中へ入ったと思ったら宿へ直行してそのまま部屋へ………。

 そしたらベッドの上に座らされて透明化の魔法を解いた瞬間に私のお腹へ突っ込んできて………現在に至る。

 ………どうしてこうなった?(二度目)

 ここに来る直前までの私の覚悟の意味が別の意味で無くなってしまったじゃないか。

 そして………なんで聖女が私のお腹の匂い嗅いでハスハスしてんの?

 面識?

 これが初めてだよ。

 初めて……だよね?

 

 「あの……なんで私のお腹に顔を?」

 「一目惚れしました!食べて良いですか!?」

 「どっちの意味で!?」

 「無論!性的な意味で!」

 「あなた聖女よね!?」

 

 聖女が私の言葉でガバッと顔を上げた途端、そんな事を言われると思わなかったから、ついツッコんじゃったけど何もおかしくないよね!?

 むしろ初対面で言う方おかしい。

 どんな積極的な男性でもそんなドストレートに言う人いないよ?

 

 「はい!“性”女です」

 「自分でイントネーション変えた!?自覚あるの?」

 「初めてですから………優しくお願いします」

 「話を聞け!赤面するな!もじもじするなぁ!!」

 「………えい☆」

 「ふぁ!?」

 

 瞬間、私ですら目で追えない速さでベッドの上で聖女に押し倒された。

 ここで、いくつかある嫌な予感の中でも最悪なものが私の脳裏で危険信号と共に浮かんできた。

 え…?

 いや、まさか………そんな、ねえ?

 ……。

 …………。

 ………………。

 やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 聖女の表情が獣の“それ”と一緒というだけでもヤバいのに、赤面しながら鼻息荒くしてるのも更にヤバい!

 逃げようにもお腹の上に乗られて両手を押さえられてるため、足は使えないし手を振り落とそうとしても異常に力が強くて全く動かない。

 逃げ場が………無い!

 嘘でしょ!?

 私の初体験の相手が同性とか誰が予想できた?

 同性愛主義者しか思わないよ!

 待て待て待て、唇を寄せてくるな聖女よ。

 ファーストキスすらまだな私に見せてはいけない表情を浮かべるのは刺激が強すぎるのだが!?

 なんで何もしてないのに顔がと蕩けてんの!?

 魔王様!助けて!

 この際勇者でも良い。

 誰でも良いからこのド変態“性”女をどうにかしてくれ!

 ……そんな時だった。

 ドアが「バン!」という音で開かれたのは。

 そこに現れたのは、最悪でも嬉しかった勇者だった。

 その光景が見えた時は内心で狂喜乱舞した。

 だって勇者の表情は必死そうで、このレズ地獄から解放してくれると思ったからだ。

 だが、その思いも一瞬で砕かれることになる。

 

 「…………失礼しました」

 

 そう言って、彼は開けたドアをそのまま閉めた。

 おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?

 部屋間違えてないから戻ってきて!

 今!私!襲われてるの!

 困ってる人を助けるのが勇者でしょ!?

 戻ってこい勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!




楽しんで戴けたでしょうか?
楽しんで戴けたなら私にとって幸いです。
続きが読みたいと言う方はブックマークと好評価よろしくお願いします。
正直に言えば、推してくれるとモチベが上がります。
それではまた会いましょう。


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聖女、ヤバい

 

 聖女とは、世界から選ばれた最も神聖な女性に与えられる称号だ。

 これは世間一般的に知られている聖女の情報だ。

 聖女は同じ時代に1人しか存在しなく、その時代の聖女が死んだ瞬間に新たな聖女が誕生する。

 それは老若に関係なく、世界に最も神聖だと認められたということ。

 昨日までの目の前の女の情報はまさしく聖女そのものだった。

 聖女の名前はグレース。

 平民の生まれで年は18、宗教関係の事には聖女になるまで一切関わりが無かったが、慈善活動や孤児院への募金などをしていた上に“聖女”という人格をそのまま生き写ししたような女性だった。

 そのため地元では誰もが次は聖女に選ばれるだろうと話題になったほどだ。

 聖女に選ばれてから右手の甲に光り輝く紋章が刻まれる“刻印”が現れ、彼女は自ら国の首都にある王城へ向かったという。

 それから既に王城にいた勇者と共に活動を始める。

 その間に犯罪に手を染めたことも男性と交際したという情報は一切無かった。

 そんな聖女に対して心の中で苦手意識を持っていた。

 私たち魔族は常に悪役として書物に描かれ、そのせいで何もしていないのというのに、いつの時代でも罪人のように何人もの魔族が殺されてきた。

 そうすれば人間達から英雄扱いされる人々がどうしても嫌いで、その代表格である歴代の勇者や聖女達は幼い頃から嫌悪していた。

 だが、今の時代の勇者や聖女は魔獣を倒すことはあるものの、魔族を殺すことは無かった。

 無論、その仲間達もだ。

 勇者のパーティーはリーダーの勇者、回復担当の聖女、後方支援担当の賢者、諜報や罠の解除等を行う盗賊、遠距離攻撃の弓兵、前衛特化の戦士。

 この6人からなる勇者パーティーは未だに魔族や罪人を殺したことはない。

 半殺しにすることは合っても命までは奪わないお人好し集団。

 だから少しは好感を持っていて、もしかしたら魔族と人間の対立を緩和するきっかけになってくれる存在なのかもと今まで認識していた。

 だが、今の状況は今まで集めてきた情報が何も頼りにならないものとなっていた。

 

 「さあ、私と一つになりましょう……」

 「ひぃ……!」

 

 幼い頃からの情報すら集めて、聖女がこんな性格だと誰が予想できる?

 というか聖女がこんなので良いのか!?

 勇者も勇者だ。

 私が性的に襲われてる光景を見て引き下がってんじゃ無いよ!

 助けてよ!

 勇者って勇敢な者の略だよね?

 その勇者が困ってる人を助けないってどういう了見だ。

 いや、今はそんな事よりこの状況をどうにかしないと……。

 時間を稼ぐか……。

 

 「何故、こんなことを?」

 「だから一目惚れです。同じ女性で魔族の貴女に惚れるのはおかしな話ですが、この胸の中で興奮が収まらないのです!」

 「というか何で私が魔族だと分かったのよ?これでもかなり準備したのだけど……」

 「『審眼』。私が産まれ持った魔眼の一種です。この眼がある限り“虚偽”と“真実”が分かるのです。貴女の姿が人間に扮した魔族だというのは一目で分かりました」

 「マジか」

 

 魔眼というのは一万人に一人との確率でしか宿らないと言われる特異な眼だ。

 眼が魔力源となっており、体内にある魔力とは別に魔力を消費してるので体内の魔力を空にしても扱えるという仕組みだ。

 だが、その全てが有用かと問われれば、答えはNOだ。

 寧ろ有用なのは全世界にいる魔眼所有者の内の約3割ほどのみ。

 使いづらいものの代表といえば、『ランダムに人の生死を占って死が出たら問答無用で死ぬ』という魔眼だ。

 強いとは思うが、これの最大の危険性は自分もその対象に入ってるためだ。

 一回発動して自分が選ばれて死が出た場合、自分は死ぬ。

 そのため、かなり使うのを躊躇う魔眼だ。

 それ以外にも自爆する魔眼、魔物に狙われやすくなる魔眼、制御が利かなくなるほどの速い足を持てる魔眼等々。

 この約7割の魔眼はどれも扱い難いものばかりだ。

 しかし、目の前の聖女はそんな物達より有用な魔眼を持っていた。

 虚偽を見抜いて真実を暴く。

 つまりこれは詐欺や幻覚等はこの聖女の前には効かないということだ。

 というか、何故私ですら掴んでない・・・・・・・・その情報をここで言った…?

 

 「なんでそれを魔族である私に…?」

 「貴女に私の秘密を知ってもらうためです。フフフ、愛人は秘密を共有する者だと聞きました。なら、貴女と愛人になるには秘密は共有した方が良いデスよねと思った結果です」

 

 おっふ…。

 愛が重たいし、顔が怖い。

 なんなのこの聖女…。

 普通そこまでやるかなぁ?

 私だったらやらないわ。

 ……あ、やば!

 気が抜けてたのか聖女の顔がもう数ミリとまで迫っていた。

 あの、待って本当に待って、話を聞いて……!

 しかし、

 

 「~~~~~~!!!」

 「はぁ……あぁ…」

 

 時既に遅し。

 聖女の唇が私のと触れ合った。

 わ、私の初めてが………。

 こんな所で、しかも聖女となんて………お嫁に行けない。

 だが、これはまだほんの始まりに過ぎなかった。

 次の瞬間、聖女が下を絡めてきた。

 ふぁ!?

 ちょ、ま、ダメェ!!

 ダメだ。

 反抗しようにも、体が、動かない。

 何……これ?

 は!

 まずい、脳が思考するのを放棄しかけてる。

 誰か、助けて!

 

 「ちょっと~。こんな所で押っ始めないでよね。ここはただの宿なんだから」

 

 そんな声が聞こえたと同時に目の前から聖女が引き離された。

 そこにいたのは私や聖女よりも一回り以上もの体格の持ち主で、その人はいつの間にか聖女を片手で持ち上げていた。

 当の聖女は首当てでもされたのか眼を回しながら気絶していた。

 その人が誰なのか見覚えはあったが、頭の中がぼやけていて真面に思考は出来なかった。

 しかし、服装から戦士ということだけは理解できた。

 魔王様、私はこれから戦士の人を崇めることにします。

 時代は勇者より戦士なのだと、この時の私の胸にしっかりと刻まれるのであった。



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解放された後

 

 「………さあ、詳しく説明して貰おうじゃないの」

 

 どうも皆さん、シオンです。

 私は今、両隣に勇者と聖女を置いて救世主である戦士さんの前にに正座させられています。

 聖女は私を襲い、勇者は私を見捨てたので戦士さんから拳骨を喰らってたん瘤ができてます。

 状況はというと、私、聖女、勇者が戦士さんの前にいて戦士さんの後ろにはソファで寛ぐ盗賊、私の前で私をジッと見つめてくる弓兵、私たちの後ろで何故か悶絶している賢者。

 逃げ場が……無い!

 いや、そもそも聖女に勝てない時点で逃げられるわけも無いか。

 というか、何故目の前に居る娘は私のことを見てくるんだ?

 思わず眼を逸らしてるけど、視線がずっと顔に刺さってるから気になってしょうが無い。

 後ろにいる賢者もそうだ。

 ベッドの上で転がってんじゃねえよ。

 「尊い尊い」ばっか言うな。

 うるさいし鬱陶しい。

 お前本当に賢者か?

 と、そんな事を考えてると、

 

 「とりあえず、魔族の貴女から。何でこの街に来たのかしら?」

 

 戦士さんからそんな事が聞かれた。

 私の目的か……。

 別に隠すことじゃないし話しても良いだろう。

 

 「私の目的は本を買うこと。この街の本屋が一番速く発売されると聞いたので、本を買ったらすぐに帰るつもりでした」

 「何の本かしら?」

 「コーチョ・バシー先生の『あっち向いてほい』です」

 「誰!?つかそれ題名!?」

 「はい。他にも『歌うなクソ野郎』、『あの教師速く転ばねえかな』とかもあります」

 「碌な題名がないじゃない!何を書いてんのかも想像が着かない……!」

 「え?全部恋愛ですけど?」

 「嘘でしょ!?グレース、これ本当?」

 「はい。全部本当ですね。というか、私もそれ全部読みました」

 「読者が仲間にもいた!?そんなに売れてる人なの…?」

 「この間大陸全てでの総売り上げ数五千部突破しました」

 「絶妙に人気無いじゃない!って、そうじゃなああああああああああああい!!」

 

 うわ。

 急に叫び出すから吃驚したじゃないですか。

 戦士、名前をオードリー。

 一応女性………だったのだが、今は男となっており、子どもも2人居るそうだ。

 その理由は夫との死別。

 夫は同じ冒険者で危険モンスターの退治の際に殺されてしまったらしい。

 彼女はその時2人目を妊娠中で1人目は母方に預けてたという。

 それから数年に渡って普通に育てるも子供達が学校に入学してから何を思ったのか、彼女の故郷では有名な魔女に男にしてくれと頼みこんだ結果………男となった。

 それから子供たちが成人するまで一緒に暮らし、それぞれが自立してから勇者のことを知って今までの冒険者時代の経験を活かそうと考えてパーティーに加わったらしい。

 しかし、いったい何を思って男になったんだろう…?

 調べてはみたが何も分からなくて今まで理由を聞けるチャンスが狙ってたが、今やっと回ってきたわけだ。

 けど、この状況じゃ聞けないし、時間は多分あるだろうから今はまだ様子を見よう。

 ………そう言えば、調査中に噂程度の怪しい情報があったな。

 なんでもオードリーさんは女の時の癖が抜けていないらしく、男を相手にヤると聴いたことがある。

 いや、まさかな。

 こんな常識人っぽい人がそんな事をするわけないでしょう。

 

 「アナタの目的は良いわ。それより何でアナタはグレースに襲われてたのよ?」

 「……街を散策中に見つけられて全力で逃げたんですが、追い掛けられて広い荒野で戦闘して、負けたんです。そしたらこの街に戻ってきてベッドに運ばれたんです」

 「……グレース?」

 「そう言えば、『ちょっと離れます』と言ってから戻ってこなかったっすね」

 「…………グレース?」

 「後悔はありません。接吻ができただけでも私は満足です」

 「グレース!?」

 

 この聖女言い切りやがった…!

 私の初めてを奪っておいてここまで清々しいと異様に腹立ってくる。

 

 「戦士さん、この女を()って良いですか…!!」

 「ヤる?ここでですか!?」

 「ちょっと黙れ聖女」

 

 ダメだ。

 脳内花畑聖女に今は何を言っても自分の良いように変換される気がする。

 なんで世界はこんな奴を聖女に選んだんだ…。

 こいつより私の方が聖女できる自信があるよ。

 あ、魔族だからダメか。

 って、そんな事じゃ無いんだよ。

 とりあえず、なんかのバグで聖女代替わりしないかな……。

 これが聖女とか私が認めたくない。

 

 「殺しちゃダメよ。けど、ごめんなさいね。この子には後で言っておくから勘弁して頂戴」

 「……とりあえず、今はそれでいいです。それよりこの子は…?」

 「…………(じぃー)」

 

 私はそう言って目の前でずっとこちらを見続ける弓兵のことを聞いた。

 さっきまで耐えれたんだけど、そろそろ我慢できなかった…。

 

 「その子は近眼でね。近くのものしか見れないのに眼鏡を掛けようとしないから、そうやって興味のあるものは近くで見る癖があるのよ」

 「…??弓兵ですよね?」

 「見たまんま弓兵よぉ。何度も眼鏡を掛けてっては言ってるのだけど、言うこと聞かなくてね。けど、感で射ってるのに絶対に当てるから強くは言えないのよ」

 「あらゆる弓兵の努力が今鼻で笑われましたよ」

 

 魔王軍(ウチ)が死者減らすために必死で弓兵部隊育ててるのが馬鹿みたいに見える爆弾発言でしたよ。

 確かに目の前の弓兵―――ミラについても調べたが、父が狩人で幼い頃から弓矢には触っていたらしく、父の弓矢を使っては山に住む鳥や獣を一撃で仕留めていたらしい。

 だから物凄く眼が良い上に命中率、集中力もある弓を扱う者にとってこれ程の逸材はいないだろうと思って魔王軍全体に勇者より彼女に対して警戒はさせていた。

 だと言うのに……!

 それが今まで感で射ってたとか嘘だろ!?

 私が必死で集めた情報は間違ってないはずなのに本能が無駄だったと否定してくる。

 ………うん、そうなんだろうな。

 既に賢者のイメージ像崩れ去ってるし、今更だな。

 私は未熟だった。

 完璧に出生からこれからの行き先まで調べたと思って慢心して生活事情を軽くしか調べなかった怠慢の代償が此処に来たか…。

 魔王様、私シオンは一から修業し直すことにします。

 そして、再び貴方様に正確な情報をお届けしますので、しばらくお待ちください。

 出来る限りここから脱出しようとは思ってるので待っててください。

 

 

 

 …………私が逃げ出せるように祈ってくれるとありがたいです。



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