異世界凡人記 (かまかろん)
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プロローグ

あまり上手く伝わらない部分も多いと思いますが、生暖かい目で見て頂けると嬉しいです。


 異世界転生。

 

 それは、創作物の世界に出てくるジャンルの一つである。事故などにより転生した主人公が強い能力を貰い活躍したり、異世界で恋愛したりなどをするジャンルだ。

 

 もちろん、これだけではないのだが夢が詰まっているジャンルと言えるだろう。

 

 そのようなジャンルの小説や漫画を読むなどして異世界に憧れるものも少なくないだろう。実際、俺もその一人ではある。

 

 けれど、実際はそこまで楽に異世界生活を送ることはできない。

 

 なぜ断言できるんだ!と思った者もいるかもしれないが、それは俺が直接体験したからである。

 

 ここからは、俺の地獄の異世界生活をお送りしよう。

 

 

* * *

 

 

 異世界に転生した。

 

 唐突で驚いたかもしたらないが、正直俺も驚いている。

 

 アニメやら漫画やらでは事故にあったり、床が急に光ったりなどの前兆があった。しかし、俺の場合はなかった。

 

 じゃあなぜ異世界だとわかったのかと言うと、周りに知らない化け物がいるからだ。地球では見たことのない、明らかにヤバイ化け物。大きさは俺の倍ぐらい、そして目はなく大きな口とエゲツない爪を持っている。毛などは生えておらず、表面はヌルヌルしている。

 

 今はなぜかこんなに落ち着いているが、数十秒後に状況を理解して焦りだすだろう。

 

「…は?」

 

 思わず声が出た。

 

 あまりの恐怖に腰が抜ける。

 

 妙にリアルな夢、だがこの化け物の息づかいなどは鮮明に聞こえる。

 

 この化け物、目がないため音に敏感なのか腰を抜かし地面に座り込んだ俺の方を見る。

 

 目の前まで化け物が歩いてくる。本当に目と鼻の先。距離にして数十センチ。

 

 気持ち悪い夢。だが危機感を感じる。今すぐに逃げろ。逃げたほうがいい。全力で逃げろ。頭が俺に命令を下すが体は動かせなかった。

 

 すると唐突にその化け物が爆発する。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

  声のする方向を向くと、そこにはRPGに出てきそうな兵士がいる。そしてその先頭には可愛らしい女の子がいた。

 

 その女の子もドレスを着ていて、何かのコスプレのようだった。

 

「先ほどの怪物、爬虫類型のモンスターと見ました。お怪我はありませんか?」

 

 先頭の女の子が俺の近くに来て、手を差し伸べる。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 現状を全く理解できていないが、一応手を掴んで立ち上がった。

 

「あ、あの…これは一体…何かのコスプレとかですか?」

 

「コスプレ…?一体何のことでしょうか?」

 

「いや、この化け物も…何かのフィギュアとかなんですよね⁉︎」

 

「フィギュア…?」

 

 コスプレもフィギュアも通じない。じゃなかったらさっきのは一体…それにこの女の子達も誰なんだ。

 

「コスプレ、それにフィギュア…よく分かりませんが、記憶障害でしょうか…?私達を知らないならまだしも、モンスターについても知らないとなると…」

 

 女の子は俺の方を見ながら兵士と話し始めた。

 

「いえ、姫様。もしかすると迷い人かもしれません」

 

「まさか…でもコスプレなどの言葉、それは聞いたことがありません。もしかすると…」

 

「あの、迷い人って何ですか?」

 

 迷い人。その言葉に疑問を抱いた。

 

「迷い人。それは異界からの来訪者のことを指します。異界からの来訪者は通常は召喚という手段を用いて呼び出すのですが…ごく稀に召喚を介さないでこの世界に来る者がいます。その方を迷い人と言います。貴方も、そうなのでしょうか?」

 

「召喚に異界というのはイマイチわかりませんが、もしかしたら俺…その迷い人なのかもしれません…気づいたらあの化け物がいて…」

 

 実際ならこんな話すぐに信じることはできないかもしれないが、今の俺は気が動転していた。

 

「やはり…一度、私の城に来て頂けますか?ここではまたモンスターが出る可能性もゼロではありません」

 

「わ、わかりました」

 

 了承すると俺は彼女の城に向かった。

 

 

* * *

 

 

 姫様と呼ばれていたのでもしやと思ったが、本当にお姫様だったらしい。

 

 連れてこられた場所には城があった。

 

 城の中に入り、RPGのゲームに出てきそうな王座の前まで案内された。

 

 そこで少し待たされ、数分後、中年の男性が現れた。

 

「君が迷い人か…?」

 

「は、はい…」

 

「色々と状況が掴めていないだろうが、まずは自己紹介から始めるとしよう。私はラドナー・ハイダーという。この国では一応王だが、気楽に接してくれて構わない」

 

 この男性は王様らしい。さっきの女の子に比べても豪華な服を着ているため、若干勘づいてはいた。

 

「俺は有馬 光です…あの、いきなりで失礼かもしれないんですけど…俺って帰れるんですか?」

 

 こんな化け物のいる世界。夢でも不安になる。一刻も早く目覚めたい。

 

「残念だが、現状帰る手段は見つかっていない。しかし、れは迷い人だけじゃなく、召喚者も帰る手段は見つかっていないんだ。お主には申し訳ないが、今までの召喚された者たちもこの世界で暮らしている」

 

 帰れない。その言葉は今の俺にとって一番の攻撃となった。

 

「そ、そんな…俺、これからどうしたら!これ、夢なんですよね!」

 

「いや、気持ちは分かるが…夢ではない。現実だ」

 

「そんな、こと…あるんですか…?」

 

「ああ」

 

 失礼な態度をとってしまっていたが、そこまでに気遣える程の気力はなかった。

 

 化け物がいる世界。

 

 さっきは運良く助かった。けどこれからは…あんな化け物がいるのに生きていけるのか。一気に不安が押し寄せる。

 

「今は不安だろう。君には部屋を用意してある。今日は取り敢えず、ゆっくり休んでくれ」

 

 顔面蒼白の俺の近くに兵士が来る。肩をポンポンと叩かれながら、俺は部屋に向かった。

 

 

* * *

 

 

 部屋のベッドに座り、ぼーっと壁を見つめる。

 

 あれから数時間が経ったが、一向に夢から醒めない。夢から醒めないせいでこの現象が夢なのかもしれないという希望は打ち砕かれた。

 

 恐怖と不安で涙が溢れる。

 

 さっきの化け物も本物。そしてあの時自分は死んでいたかもしれないという事実が俺の心を潰してくる。

 

「クソッ…なんで…こん、な…」

 

 一人不安に潰され涙を流しているとドアがノックされる。

 

「失礼します」

 

 ドアが開き、俺を化け物から助けてくれた女の子が入ってきた。

 

 俺は涙を見せたくないと反射的に女の子に背を向けた。

 

「自己紹介がまだでしたね。私はフィナ・ハイダーと申します。あの、名前の方を聞いてもいいですか?」

 

「あ、はい…有馬 光って言います。この世界的に言うなら、コウ・アリマですかね…?」

 

「コウさん…ですね!夕食の準備ができました。一応皆と食べることもできますが…この部屋の方が楽だと思い、持ってきました」

 

 そう言うと、フィナは俺の近くのテーブルに夕食を置く。その時、急にフィナは俺の顔を覗いてきた。

 

「やっぱり、不安ですよね。急に知らない世界で生活しなきゃいけないなんて」

 

 優しい声音で話しかけてくる。そして、俺の隣に座る。

 

「この世界、魔法があるんですよ。コウさんの世界にはないんですよね?本で読んだことがあります。魔法って色々使い方があるんです!貴方を助けた時に使った爆発も私の魔法です。でも、私の魔法はこんなこともできるんですよ」

 

 そう言って彼女は俺の手を握った。

 

「回復魔法です!ただの回復魔法じゃないですよ、心も軽くしてくれます」

 

 彼女が握った手から暖かい何かを感じた。

 

「どうですか?少しは落ち着きましたか?」

 

 数分間彼女は魔法を使ってくれていた。

 

「ありがとうございます、大分落ち着きました」

 

「それならよかったです!」

 

 そう言ってニッコリ笑う彼女に少し見惚れていたのは気のせいだろう。

 

 落ち着きを取り戻した俺は彼女と夕食を食べた。

 

 その時間も彼女は様々な話をしてくれた。この世界の話、魔法の話、召喚者の話。そして、これからの話。

 

「コウさんのことはこの国が守ります」

 

「えっと…この国に居させて貰うのは嬉しいですけど、なんでそこまで助けてくれるんですか?」

 

 人の好意に難癖をつけるようで申し訳なかったが、単純に疑問だった。

 

「困っている人を助けるのは当たり前ですよ!」

 

 また優しそうに彼女は笑った。

 

「これからは何かあったら私を頼ってください!色々と不安な部分も多いと思うので…」

 

「は、はい…お言葉に甘えさせて頂きます…!」

 

 そんな彼女に少し頼りきってしまっていたが、今はそうせざるを得ない状況だった。この状況を変えなければいけないことに変わりはない。

 

 

 

 

 




よかったら感想など頂けると幸いです。


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進歩

二話目の投稿となります。

まだまだ至らない点は多いと思いますが、よかったらお楽しみください。


 この世界に来てから数日がった。

 

 ここ数日は本を読んだ。しかし、ここで少し疑問が湧いた。

 

 それはこの世界の言葉を理解できていることだ。

 

 普通に日本で暮らしていた俺は若干の英語なら分かるものの、基本は日本語しか分からない。

 

 けれど、この世界では普通に日本語が通じる。更に、文字も何故だか理解ができる。

 

 フィナは「あ、確かにそれは不思議ですね。でもそれくらいはこの世界からのプレゼントだと思っても良いんじゃないですか?」とあまり深くは考えていなかった。俺もその意見に乗ろうと思う。

 

 

* * *

 

 

 話は戻るが本で学んだこともある。

 

 フィナが言っていた魔法。この世界では魔法は六種類になるらしい。炎、水、風、土、光、闇の六種類だ。これが基本らしい。

 

 それぞれ得意不得意があり、それはゲームと似ていた。イメージはゲームやじゃんけんと同じだ。

 

 炎は水に弱いなどのバランスがある。

 

 異世界人の俺には残念ながら魔法は使えなかった。

 

 また、迷い人やこの世界の文化についても学んだ。

 

 迷い人は前に説明された通り、異世界から突発的に召喚された人を指す言葉だ。気づいたらこの世界にいた俺のような人のことを指す。詳細は不明らしい。

 

 文化については地球と比較的近かった。

 

 食生活も洋食が中心で味付けも似ていた。

 

 そして、今俺がいる国。ここはハイダー国と言うらしい。

 

 他国に比べて小さい国だが、農業などにも力を入れている。更には劇場などもあり、文化的にはかなり発展している国らしい。

 

 このような知識を本で詰め込んでいた。

 

「勉強熱心ですね」

 

 本を読んでいるとフィナが話しかけてきた。

 

「あ、うん。まだまだ分からないことも多いしね…これ以上フィナにも迷惑は掛けられないから、必要最低限の知識ぐらいはないとね」

 

「いえいえ、私もコウさんの世界の話を聞けて楽しいですし、今も楽しいですよ!」

 

 随分と嬉しいことを言ってくれた。

 

「あ!急に話が変わってしまいますが、近々召喚者がこの国の近くまで来るんです。ここ最近はこの近くもモンスターが多いので調査をするとのことで…あの、そこで何ですがコウさんも少し外へ出てみませんか?」

 

「そうだね、ここに来てからはずっとこの部屋に篭りきりだから外に出てもいいかもしれないね!分かった、ちょっとだけ出てみようかな?」

 

 フィナからの提案を受けて外に出てみることにした。

 

 まだまだ精神的に安定していない俺だが、たまには良いのかもしれない。

 

「分かりました!危ないことがあっても私が守りますので安心してくださいね!」

 

「うん、ありがとう。あ、そういえばさ、俺も話を変えちゃうけど、フィナの魔法は凄いよね…!前に助けてもらった時の爆発みたいなのもカッコよかったしさ。その…手を握ってくれた時も、凄い落ち着けたし…」

 

 俺に魔法は使えないがフィナの凄さには興味があった。

 

「魔法、ですか?えっと、コウさんは冒険者を知っていますか?」

 

 冒険者。一応ではあるが知っている。

 

 この世界にはモンスターがいる。それは、俺が身をもって体験している。そのモンスターの中にも人間も共存できるタイプと無意味に人を殺してしまうモンスターもいる。

 

 そのモンスター達を狩るのが冒険者だ。もちろん、それだけではないのだが。

 

「うん、一応知ってるよ」

 

「私、冒険者の資格を持っているんです。生まれつき魔法のコントロールが得意だったので、これが誰かの役に立てばと思って冒険者になりました。それが魔法の練習に繋がってるのかもしれませんね!」

 

「え?フィナって冒険者の資格持ってるの?」

 

 これは純粋な疑問だった。姫という身分で冒険者になれるのかが疑問だった。

 

「はい。それに、それなりの依頼も熟るんですよ!」

 

 どんどんとフィナが遠い存在に見えるのは気のせいだと思いたい。

 

 けれど、フィナが冒険者と知って少し自分も行動を起こさなきゃいけないと思えた。

 

「そっか、俺も何かしないとね!」

 

「はい!先ずは自分にできることから少しずつしていきましょう!」

 

 

* * *

 

 

 自分にできること。

 

 俺はここまでフィナに支えられてきた。だから、彼女に何か返すことができればいいと思ってる。

 

 先ずはこれから一人でも生きていけるようにしていこう。フィナのように冒険者になるのもいいかもしれない。

 

 モンスターとの戦いなどはできないが、簡単な雑用はできる。異世界に転生っていう経験を活かしてできることも少なくはないだろう。

 

 冒険者になるにはそこまでの技能や知識は要らない。普通に動けて、必要最低限の知識があればなれる。しかし、冒険者はその名の通り冒険をすることもある。そんな時に一方的にモンスターにボコボコにやられては意味がない。そこで多少の戦闘力が計られるようになったらしい。

 

 フィナのように魔法の才能があるとそれだけで普通にクリアできるらしいが、残念ながら俺にはそれがない。

 

 それ以外の方法で冒険者にならなければならない。

 

 正直、俺も男だから剣を持って戦おうとかも思った。しかし、重かった。アニメでは結構軽々に振られている剣。触れないことは全然無いが、金属バットなんかよりも普通に重いものをもって戦い、しかも走ったりもするのは流石にキツいと思う。

 

 それに鎧やらの防具などを着るとなると…正直無理だ。

 

 だからナイフを持つことにした。別に冒険者が絶対に戦わなければならないなんて規定はない。キャンプに行くときに持ってれば安心、くらいの心持ちでナイフを持っていれば護身用にもなるし大丈夫だろう。

 

 

* * *

 

 

「はい、冒険者には戦闘を軸にしてる人もいますが、もちろんそれ以外の人もいますよ」

 

 一応不安だったのでフィナに冒険者事情を聞いた。

 

「ですが、一応身を守れるアイテムの所持が義務付けられています。私の場合は魔法で突破できましたが、コウさんの場合は魔法がありません…どうするおつもりですか?」

 

「うん。別に俺は戦闘をメインにするつもりはないから簡単なナイフとか持ってればいいかなって…」

 

「そうですね、確かに薬草採取などの依頼はナイフなどの護身用のものがあれば十分ですのでそれで大丈夫だと思いますよ!」

 

「ここまで頼ってきて本当に申し訳ないんだけどさ…あの、ナイフだけ用意してもらうのって大丈夫、かな…?」

 

 普通は自分で用意するものなのだが、俺は一文無しだ。この世界に来てから仕事などはしていないでひたすら本を読んでいた。

 

「それぐらいなら全然大丈夫ですよ!」

 

 フィナが快く受け持ってくれたのは助かった。

 

「それにしても、同じ異世界人でもコウさんは謙虚なのですね!王都に召喚された異世界人達は色々な装備やアクセサリーなどを身に付けてましたよ?」

 

 俺とは違う異世界人。まだ会ったことはないが、かなりの有名人らしい。

 

「いや、俺だって結構お世話になってる方だけどね…」

 

 女の子のフィナに色々と世話になっている現状に中々恥ずかしさを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読み頂きありがとうございます!

よければ感想やアドバイスしていって頂けると幸いです。


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