夜のソラ [完結] (ちびっこ)
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第1話

初めましての方もお久しぶりの方も……ども、ちびっこです。

全8話+おまけです。
書き上がってるので連続更新です。
最終話とおまけは同じ日に投稿する予定です。気をつけて。
投稿時間は作者の気分。
あらすじの注意には目を通しましょう。
この作品を書いた経緯などは活動報告にて。

相変わらず文の初めに空白ないです。嫌いな人ごめんなさい。
少々殺伐としてますが、読み終わった時には私らしい作品と思います。
尚、私の作品なので恋愛要素ありです。
とても読みにくい作品だと思いますが、間違ってない限り直すつもりはありません。私も書きにくかったです。

では最後に私の合言葉を。
『無理と思えばすぐUターン!ストレスが溜まるだけですよ!』


痛い、痛い、辛い。

 

「あああああ!!!」

 

自分の声なのに、遠く感じる。

 

このまま、わたしは死ぬのかもしれない。死んじゃったら、もう見れなくなるんだ。せっかく夢が見れるようになったのに。わたしじゃない、わたしに似た人の話。面白くて楽しかったのに。

 

ああ。

 

いきたかった、生きたかった、行きたかった。わたしだって……!!

 

ずるい、ズルイ、狡いよ!!

 

どうしてわたしは違うの……?

 

わたしは彼とどこが違うの……?

 

どうしてわたしはここに居るの……?

 

……そっか。そういうことだったんだ。

 

にくい、ニクイ……憎い!!

 

腐ってる、こんな世界消えちゃえばいいんだ!!!

 

「まずい、何が起きてる!?」

「死なせるな、こいつだけは死なせるな!」

 

何かが変わっていく。ああ、でも制御できないね。

 

『何やってんだ。死ぬ気でやれ』

 

もう無理だと諦めかけた時、ふと頭に浮かんだ。

 

こんな姿を見られちゃリボーンに怒られちゃうのかなぁ……?もう少し、もう少しだけ……。

 

「うぁあああああ!」

 

わたしの中の何かが訴える。わたしじゃだめだ。でもわたしじゃなくて、彼なら……。

 

 

 

「ふぅ。なんとか落ち着いたな」

「ああ。一時はどうなるかと思った」

 

はぁはぁと肩で息をしながらも、オレは周りを見渡す。白衣を着た男達がいて、手術台、それに拘束具。……どう考えても真っ黒じゃん!

 

「流石、わしの娘じゃ、よくやった!」

 

どちら様ですか?オレ、こんな太ったおっさん知らない。……それなのに、知ってる。

 

「父様……?」

「そうじゃ、そうじゃ。すぐに外してやるからの」

 

……ああ、違う。オレが違うと言ってる。こんな酷い奴、父親なんかじゃない。

 

拘束具を外された瞬間、流れるようにオレの手は近くにあったメスに手を伸ばし、父親の目に突き刺した。周りが騒ぎ出したから、見慣れない色の炎を使って左手を飛ばし首に斬りつける。もちろん父様と呼んでいた奴の首も。

 

「……何してんだろ、オレ」

 

幾度となく、オレは死体は見てきたつもりだし、自らの手で殺したこともある。けど、こんなに心を動かさず殺したのは初めてだ。

 

「そうだ、子ども」

 

他に子どもがいたことを思い出す。でも記憶が曖昧で場所がわからない。あ、でもオレの超直感がこの隣の部屋と訴える。

 

死ぬ気の炎で身体を強化して、壁を殴る。ガラガラと崩れると、なぜか見覚えのある白衣をきた大人達が見えた。……抑えられないや。

 

せめて苦しまずに逝ってほしいというオレの意思で、さっきと同じように左手で持ったメスで首をかききる。……うん、静かになったよ。

 

「……えっと、大丈夫?」

「クッ、クフフフ」

 

相変わらず変な笑い方だな。……って、なんで!?

 

「あなたも一緒に来ますか?」

「行くわけないだろ」

 

思わずオレはいつものように返した。オレの言葉に驚いているよ。コイツのそんな顔、珍しいななんて思う。

 

って、そうじゃない。オレがチビなのも、性別が……多分女なのも、さっきまで気にしてなかった。死ぬ気の炎や超直感がつかえた時点で気付けって話だけど、本当に何も疑問に思ってなかった。ちょっと前世の記憶が蘇ったぐらいにしか思ってなかった。だって、コイツみたいな奴……輪廻をまわったっていう骸がいたし。

 

「……そうですか。では僕達は行きます」

「あ、ちょっと待って」

 

オレが引き止めると骸は警戒した。そういや、骸から見たら今のオレはよくわかんない存在なんだろうな。特別待遇だったのもあって、直接話したことはなかったけど、存在は絶対知っているはずだから。……あれ?そんなことなんで知ってんだろ。まぁ今はいいや。

 

「多分、大丈夫?」

 

なんで疑問形なんだろうね。口にしたオレでさえ変だと思ったんだから、聞いていたコイツはもっと変に聞こえたんだろうね。笑ってるよ。……まぁおかげで近づけたんだけど。

 

「逃げないで。痛みはないと思う」

「……わかりました」

 

骸の右眼に左手をそえて、微かに残ってる本来の炎を絞り出す。ん?本来の炎?

 

とにかく今のオレでは骸の右目に宿るドス黒いものを全部飛ばすことは出来ない。けど、少しは効果はあるはず。……骸、お前は一人じゃないんだぞ。

 

「わっ、るい、もう、むり、だ」

 

超直感が訴える。もうオレはこの色の炎を出すことは出来ないって。オレの炎が……なんて、ちょっと感傷に浸りながら、オレの身体は無理したのか崩れ落ちていく。けど、その前に骸がオレを支えた。

 

「……あなたは、いったい」

 

なんだろうね。オレは沢田綱吉だけど、この子は誰だろう?

 

「うーん……ソラ。うん、オレのことはソラって呼んで」

「そういう意味ではありません」

 

やれやれって顔をしてるんだろうな。オレ、今骸に支えられてるから見れないんだけど、なんとなくわかる。でも……。

 

「それでいいんだよ」

「……そうですか。では、僕は……六道骸としましょうか」

「ん」

 

返事できたかなと思いながら、限界だったオレは眠りに落ちた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

次に目をあけると、オレはベッドの上だった。っていっても、埃っぽかったけど。多分、空き家だな。

 

「……ったく、オレのことまでみる余裕なんてないだろうに」

 

枕元に置かれた札束をみて、思わずツッコミする。もちろん返事はない。オレは一緒に行かないって言ったから。

 

ラッキー、水出るじゃん。なんて呟きながら、シャワーを浴びにいく。井戸水でも繋がってるんだろうなー、あいつ気が利きすぎて怖い、冷てぇとかブツブツいいながら現実逃避する。いやだってさ、オレの身体、女だったんだよ!わかってたけど、わかってたけど!

 

何も考えてなかったから、素っ裸でいることになった。オレ、相変わらずすっげーバカ。野生に戻った気分、自然乾燥って……。

 

「とにかくオレん家、行くかなぁ」

 

今ボンゴレに行くのは怖い。そうなると、やっぱオレん家なわけで。一般人の家に行っても何も出ない気がするけど、多分あたり。超直感って便利だよね、ボンゴレの関係者から逃れられないってことだけど。

 

……それにどう見ても、オレなんだよなぁ。

 

オレの顔なのに女の身体だったんだよ……。骸とも同じぐらいの歳だったし、やっぱオレって沢田綱吉なのかな。でもなぁ、なんつーか骸には名乗っちゃダメだろうなぁと思ってソラって言っちゃったし。

 

「あー、わっかんねぇ」

 

ボリボリと爆発頭をかく。髪が長い分、まだましだけどね。ぴょんぴょん跳ねてるだけで。

 

「うーん、うん。ちょっとは変装しよう」

 

スパルタの中になんで女装があるんだよ!とかいろいろ思ってたけど、やっぱあいつはオレの天使だったよ。歩き方とか仕草とか細かいところですっげー助かる気がする。

 

日本でも目立たないような服にかえて、メシくったらさっさと移動しよう。骸にこんな感謝したことないかもと思いながら、オレは行動にうつした。

 

ってことで、やってきたよ。オレの家。もちろん炎をつかっての移動。見慣れない黒だけど、使って思ったのはすっげー便利の一言。あんま使いすぎると目をつけられそうだけど。いや、もしかしたらもうつけられてるかもね。夜の炎だからねぇ……。

 

「ツッ君〜〜、ご飯できたわよー」

「はーい」

 

……はい、ちっこいオレが居ました。意味わかんねぇ!!

 

「……母さん」

 

ポトっと流れ落ちるのは、なんでだろうね。相変わらずクソ親父はいないけど、2人でも幸せそうに過ごしていた。

 

電柱の頂上で暗闇に紛れてオレはしばらく2人の話し声を聞いていたけど、いつまでもここに居るべきじゃない。調べることがあるしね。

 

……いってきます。

 

この後、オレはいろいろと調べた。この時代はそこまでパソコンの普及が進んでなくて助かった。使うことは出来たけど、入江君みたいに詳しいわけじゃなかったから。後、ヒバリさんがまだ小さくて助かった。人目を忍んで探ってるけど、病院とか侵入してたからいつかバレただろうし。

 

調べた結果、オレは死んでいたことがわかった。ボンゴレに全部消されてるかもって思ったけど、1つだけ書類が残っていたんだ。双子でこの子……うーん、わたしにしよう。わたしは死産だったって。まぁでもこうしてオレは生きてるわけで、どこからかマフィアの手が伸びたんだろうね。

 

「なんて名前だったんだろうなぁ」

 

クソ親父しっかりしろよとか、母さんと……変な感じだけどオレまで被害がいかなくて良かったよ、とか。後からはいろいろ浮かんだんだけど、最初に思ったのはコレだった。……死産だったからさ、名前がどこにも書いてないんだ。やっぱ歴史上の人物に寄せてるのかな。それとも綱吉に寄せるかな。もしかしたら女だから母さんが考えていたかもしれない。

 

「オレは誰なんだろうね……」

 

オレはオレじゃなくて、わたしは名無し。この炎のことを考えると、今さら戻るわけにもいかない。……オレん家なのに、屋根の上で2人の声を聞きながら過ごすしかなかった。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

特に何もやることもなくて、けど家からは離れる気はならなくて、ただ意味もなく並盛をうろうろする。いや、意味はあるかな。明らかにガラの悪そうな人の財布からはお金とってるし。もちろん変装はしている。といってもそこまで過剰にはしてないけど。たまに女の格好もするけど、基本ボーイッシュ。かわりに髪は伸ばしてる。後は伊達メガネと偽ボクロぐらい。案外これで問題ない。子どもの世界は狭いしね。

 

……なんて思ってた時期もありました。クソ親父め。

 

明らかにテンションが高くなった母さんに気付いたオレは、父さんが帰ってくることがわかった。もちろんオレは海外へ逃げた。超直感のことを抜きにしても、近くで隠れているのは無理。暇だったオレは嫌な予感もしないし、ボンゴレへ遊びにいった。

 

何してるって思うかもしれないけど、あそこはオレの庭みたいなもんだし。まぁ9代目は気付いてるかもしれないけど、わざわざ見にくることはないね。オレもそうだったけど、よくあることだから見に行ってたらキリがないんだよ。誰か来たぐらいならイコール、途中で罠にかかってるか、誰かに見つかってるってことだから。別にオレはお邪魔しただけで、ボンゴレに不利になるようなことはしないから絶対大袈裟に超直感の反応はさせていない。断言できるね。

 

それでも顔をみられちゃまずいから、オレは買った仮面をつけたり、手袋とか、まぁかなり怪しい格好していた。……それはいいんだよ、別に。期間限定みたいなもんだと思ってたから。

 

父さんがいつごろ帰るとかわかんないから、どうしよっかなーと思ってたんだ。調べたりまですると9代目の超直感に引っかかるからさ。これを機に家から離れるっていうのも1つの考えだったし。

 

けど、オレの超直感が反応したんだ。慌ててオレは並盛に帰った。一瞬だからやっぱ便利。すると……なんと母さんとオレを狙った殺し屋とご対面。まじふざけんなって思ったよ。もちろん殺した。

 

それから殺し屋が度々やってくるようになった。家がバレたみたいだけど、クソ親父は気づいていない。殺し屋達はオレがここを守ってると知れ渡ったのか、回数は減ったからまだ良かったけど。でもたまに来るから、オレはその怪しい格好でウロウロするハメに……。

 

しばらくしてから、オレがここに居るから9代目とクソ親父の超直感に引っかからないことに気付いた。オレはやっぱりバカでした。一番悪いのはもちろんクソ親父ね。

 

ちなみに死体処理は復讐者がしてくれる。夜の炎を使って捨てていたら、回収してくれるようになった。多分あんまりオレに夜の炎を使って欲しくないんだろうね。

 

それでだよ。そんな怪しい格好でいると、ヒバリさんに探されるよね。……いや、これはオレがバカなんだけど。

 

お兄さんが京子ちゃんを人質にとられてボコられてたからさ。そんなの見ちゃったら、助けるしかないじゃん。イラっとはしたけど、もちろん殺してはない。オレもその分別はついてる。そこからの情報でヒバリさんが気にしてたっぽい。オレがそのことを知ったのはかなりたってからだけど。

 

完全に興味をもったのは、オレがその格好でヒバリさんの前に出たから。……はい、オレが悪かったです!

 

でもさ、でもさ、あの人絶対体調崩してたんだって!だから気絶させて家に運んじゃった。……そう、気絶させて運んじゃった☆

 

怖い怖い、超怖い。めっちゃ探されています。現在進行形です。けど、裏の世界を知らないヒバリさんに見つかるわけがなくて。これでもオレ、マフィアのボスだったからね。そして現役のヒットマンです。オレってやるじゃんって思っていたら、監視カメラの数がどんどん増えていって笑えなくなった。まじあの人なに、凄く怖いんだけど。

 

おかげで夜の炎をつかった早着替えを覚えたよ。会うたびに復讐者になんとも言えないような目で見られてる気がする。や、目は見えないんだけどさ。それに怒られないし、オレは使うのをやめないよ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

時々困ってる人を助けたり、体調の悪いヒバリさんを寝かしつけたり、監視カメラ増やされたり、ヒットマンしていると、いつの間にかオレが中学一年生になっていた。つまり羽のない天使がやってきます。……絶対オレの存在バレるし、屋根の上で寝ることは出来なくなる。それはとっても悲しい。

 

必死に考えた結果、隠さないことにした。どうせバレるし怪しまれるんだったら、いつものように寝てみた。

 

「ちゃおっス」

 

オレはチラっとリボーンを見るだけで、返事はかえさない。そういや、オレが最後に声を出したのはいつだっけ。

 

「おめー、何もんだ?」

 

少し悩んで地声で話す。声の変え方はリボーンに習って出来たけど、多分こいつは気付くだろうし。

 

「……さぁ。一応、ソラって名乗ってるよ」

「そうか」

 

それだけ言ってリボーンはオレん家へ入っていった。それからフラっとオレを見に行ってることにも気付いてるだろうけど、リボーンからは特に何もない。獄寺君をふっかけてくるかなって思ってたのに、ちょっと拍子抜けした。

 

夏休みに入ったぐらいに、リボーンが来て初めて殺し屋がやってきた。いつものようにサクッとメスで首を斬って戻ろうとしたら、オレをリボーンが見ていた。特に声をかけることもなく、復讐者に死体を渡して、いつものようにオレは屋根で寝る。ただリボーンが来たとバレたのか、殺し屋の来る回数が少し増えた。ちゃんと殺してるのに情報が漏れてるってことはボンゴレ内部に裏切り者が居るんだろうね。

 

あまりにも来るからか、またリボーンがオレに声をかけてきた。

 

「おい。ソラ、いつからだ」

「えっと、彼が小学2年生ぐらいだったかな。詳しく覚えてないや、ごめん」

「……おめーが謝ることじゃねぇぞ」

 

すっげー変なの。リボーンがオレを庇ったよ。それぐらい覚えとけって、いつもは蹴っていたのにね。実際、家の中にいるオレは蹴られている。

 

「ああでも、最近は特別。オレがいるって知れ渡ってるたみたいで、月に一回ぐらいだったから」

 

ピクリってリボーンが反応した。オレと同じ考えなんだろうね。9代目にちゃんと対応するように伝えといてねって心の中でお願いする。声に出さないのは、リボーンはちゃんと動くと知ってるから。

 

「……ソラはなんでここを守ってんだ?」

「あったかいから?」

「そうか。情報提供助かったぞ。ちゃおちゃお」

 

この日から、毎日ちょっとずつリボーンと話すようになった。雨の日も来たのはびっくりした。リボーンからすれば、雨の日でもオレがいることの方が驚いたらしいけど。

 

夏休みが終わったころ、ついに接触したのか、ヒバリさんのことも聞かれるようになった。たいていは家の中にいるオレの話だけど。

 

オレ自身のことはあまり聞かない。会話の流れで聞くこともあるけど、基本オレが話せることはあまりない。隠してるというより、ここに居座ってるぐらいの話しかないから。

 

最近はもっぱら母さんがサイフをすられた事件の話。知ったその日のうちにオレが捕まえて、近くにいた風紀委員に突き出したから。ヒバリさんがオレのこと知ってるよね?ってめっちゃリボーンに聞いてくるんだってさ。家にいるオレも被害うけてるみたい。だからなのか、リボーンが言ったんだ。

 

「ツナと会ってみるか?」

「わざわざいいよ」

 

いつかは聞かれると思っていたのもあって、動揺もせずにあっさりと断った。だってなぁ、オレと会ってもなぁ。

 

「それにさ、いつかどこかのタイミングで会うでしょ」

「それもそうか。おめー、ツナには本気で隠す気ねぇみてぇだしな」

 

そうそう、と軽く頷く。裏の世界を知らない母さんには気をつけて動いてるけどね。

 

「ツナのファミリーにならねーか?」

「……ここの家族になら、なりたいかな」

「ふむ」

 

暗くなるとほぼ間違いなく屋根にいるオレは事情を全部知っていると、リボーンはわかっている。だから聞いてきたんだろうけど、オレは仲間や部下じゃなくて、家族になりたいんだよね。

 

「ソラはどこにも所属してねぇだろ。なら、簡単に足洗えるぞ。裏稼業の時はずっと仮面つけてんだろ?」

「まぁね。でも無理無理。オレの弱点バレてるし」

「ツナはオレが鍛えるからいいとして、ママンのことはボンゴレが勢力をあげてちゃんと守るぞ」

 

すっげぇ魅力的な提案だけど、今更波風たててもなぁ。それに……。

 

「……やっぱ無理だよ。もしもの時、オレあの人の前でも殺してしまうだろうから」

 

オレの返事を聞いたリボーンは、何も言わずにポンっとオレの背を叩いた。……だよね、母さんの前でそれをやっちゃダメだよねぇ。オレはハハハ……と心の中で乾いた笑いをしていたんだけど、本当にそれを証明するような事件が起きた。

 

その日は初めてディーノさんがオレに会いに来た日だった。そんな日でも変わらずオレは暗くなると屋根の上にいた。ディーノさんが気付いても、リボーンが説明するだろうし。

 

「そーいや、ツナおまえファミリーはできたのか?」

「今んとこ獄寺と山本。あと候補がヒバリと笹川了平とソラだぞ」

「友達と先輩だから!後、ソラって誰だよ!?」

 

聞こえてきた大きなツッコミに思わずプッと笑う。にしても、オレに断られたからって名前出すなよな。

 

キャバッローネのボスであるディーノさんが家に泊まるのもあって、暗殺者は来ないだろうってオレはどこか油断していたんだと思う。

 

「きゃあああ!!」

 

母さん!?聞こえてきた悲鳴に反応し、オレは二階の窓から家に入る。階段から腰の抜けた母さんの姿がみえたオレは、すぐに母さんを背に庇ってメスを取り出した。

 

「やめろ!!ソラ!!」

 

リボーンの声に反応し、後一歩でメスを投げて仕留めようとしたオレの手が止まる。……エンツィオ?

 

「だれーー!?」

 

オレの声で我に返ったオレは、母さんに見られないように慌ててメスを隠す。オレが武器を直したのをみて、リボーンがエンツィオを眠らせていた。母さんは水を吸ったエンツィオに驚いて悲鳴をあげただけみたい。

 

「ちょ、リボーン、またお前の知り合いかよ!」

「……なんだツナ、知らなかったのか。並盛でヒーロー活動をしているソラだぞ」

 

リボーン、なんだよその設定。と頭の中では浮かんでるけど、オレは一ミリも動けなかった。

 

「この人がヒバリさんの探してる人ー!?」

「ん?そんな有名なのか?」

「あ、はい。確か不良とかに絡まれたりして困っている人のところに現れて、すぐに退治してくれて颯爽と去っていくって噂があって。京子ちゃんも会ったことがあるみたいで……。まぁオレはまだ助けてもらったことはないんですけど……いでーっ!!」

 

見なくてもわかる、オレをリボーンが蹴ったな。……まぁ断トツで助けてるもんな。

 

「こら、ツナ。失礼なことを言うんじゃないの。今、母さんを助けてくれたじゃない。ありがとうね、ソラちゃん」

 

声をかけられて、慌てて振り返る。勢いよく振り返ったものの、母さんの顔があんまり見れなくて、ただ頷くことしか出来なかった。

 

「せっかくだわ!握手してもらおうかしら!」

「あ、それならオレも……」

「ヒーローとかおめーの好きそうな憧れだもんな、ツナ」

「うわぁ!リボーンそういうこと本人の前で言うなよ!?恥ずかしいじゃん!」

「なるほど。だからツナが会ったことねーのに、ファミリー候補だったのか」

 

そうだよ、オレはヒーローになりたかったんだ。ヒーローみたいに。……正反対じゃないか。

 

「……すみません。オレ、手が汚れてるんで」

「あら、大丈夫よ。気にしないわ」

 

違う、そうじゃないんだ。母さんが思ってるような汚れじゃない。この汚れは……。

 

「本当に汚いんで、ごめんなさい!……か、帰ります!!お邪魔しました!!」

「あっ……」

 

オレがテンパった割には、まだマシだったと思う。ドジも踏まなかったし、死ぬ気の炎を使ったりしなかったから。

 

だから見逃してよ、リボーン。……まぁオレがどんなに願っても逃がさないよな、お前は。

 

「ぐずっ」

 

それでも公園の遊具の中に入って泣いてるオレの背を蹴ったりしないだけマシだよな。……なんだよ、明日槍でも降ってくるかもしれない。死角からハンカチをオレに差し伸べたら、さっさと遊具から出ていくなんて。てっきりオレの顔でも見ようとしていたのかと思ってたのに。

 

「女に優しくするのはオレのモットーだぞ」

 

……オレの性別、気付いていたんだな。なんて、軽口を叩ければいいのに、鼻をすするしか出来なくて。

 

結局、リボーンはオレが泣き止むまで遊具の外で待っていてくれた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

情けない逃げ方をしたのもあったし、ほんの昨日まで一切姿を見せなかったのに、次の日にオレを助けるハメになった。

 

普段はこれぐらいなら絶対助けないんだけど、超直感が反応してさ。多分オレが怪我したことで起きる不幸の連鎖だろうな、オレだし。その日の夜にリボーンに聞かれたから、不幸の連鎖の序章な気配がしたってそのまま答えたよ。納得されたのがちょっと悲しかった。

 

んで、さらに次の日にヒバリさんが体調不良で入院した。不幸の連鎖はこれだな。せっかく回避させてあげたのに、オレはリボーンの命令でお見舞いに行かされていた。起こしてしまって咬み殺されていたけど、助けなかったよ。オレがボロボロになりながならも帰った後、オレは寝ているヒバリさんの病室に侵入。そこまで顔色が悪くなさそうだったから、花瓶に一本花を増やしてそのまま退散した。

 

次の日、めっちゃキョロキョロ探してた。……監視カメラまた増やしてた。怖っ。

 

流石にもうしばらくオレとは顔を合わせることはないだろうと思っていたら、1ヶ月もしない内にみんな揃って遭難していた。仕方がないから、姿を見せるハメに。エンツィオは一度天日干しした時に念のためオレが回収して、肩にのせての道案内だった。

 

いろいろあってグダグタな引率だったけど、オレの相手はほとんどハルだった。オレにインタビューしたかったみたい。といってもね、身長や体重は計測してないから知らないし。ちゃんと答えたのって、名前と誕生日ぐらいだよ。オレと同じ誕生日だったから、みんなビックリしてた。

 

そういや、血液型も知らないんだよね。オレとオレはそっくりなのに性別が違う。ってことは二卵性。血液型も一緒とは限らない。というか、二卵性でよくここまで似たよね。不思議。

 

基本的な質問に答えれなかったけど、そこはハル。他にもグイグイと質問がきた。ご飯とかどうしてるのかって。口のところがあいてる仮面をするか、仮面をとって着替えて普通に出かけると答えれば驚かれた。いや、これ、暑いんだからね。夏とか拷問だから。

 

ふと思い出した、あの企画を。

 

オレがご飯や風呂へ入りに行く時とか、伊達メガネスタイルで動くんだけど、その状態でなぜか山本と話をした。その時の山本はすっげーアタフタしてた。オレだと思って声をかけちゃったみたい。せっかくだから、ご飯は山本のところの寿司にした。相変わらず美味しかったし、割引してくれた。ラッキー。

 

山本がその話をオレにしたみたいで、獄寺君が10代目と間違えるなんて!って怒ってたみたい。オレがリボーンにグチってたのを屋根の上で聞いたから、一周まわったなってちょっと笑った。

 

数日後、なんと今度は獄寺君と会った。会話はなかったけどね。なんせオレが不良に路地裏へ連れて行かれそうなところを見て、ダイナマイトを投げてきたから。もちろん逃げました。監視カメラがないところで良かったよ。いやまぁ、無い方へ誘導してたんだけどさ。その日の内に獄寺君はオレの家に突撃して、めっちゃ泣いていた。煙が晴れたらオレがいないから、心配と不安だったみたい。……ごめんね、獄寺君。

 

ちなみにこのスタイルの時に一番会うのは、お兄さん。あの人めっちゃ走ってて、よくすれ違う。だからなのか最初のころ、家にいる方のオレが女だと思っていた。お兄さんだからと流されたけど。だから山本の話を聞くまではリボーンすら気にならなかったのが笑える。

 

このスタイルでは会わないのはヒバリさんとランボ。ヒバリさんは野生の感が怖くてオレが徹底的に避けているから。ランボは会いそうになったら早着替えしてる。普通に話しそうだからね。たまに家まで送る。あいつの行動範囲が広くてたまにビビる。……なんで隣町で迷子になってるんだよってことがある。

 

あ、もちろん守護者の中で、だよ。オレとかリボーンは怖すぎだからね。絶対会いません。だから面白がってそっくりさんを探すゲームとか企画しないでほしかった。絶対に見つからないからね!……ずっと見つからないっていうのもまずいから、遠くの方で出没はしたり、獄寺君か山本の視界にチラッとうつったりはするけど。最終的に化粧をして目の印象とかもかえた。オレ何やってんだろって思ったからさぁ……。

 

「はひ。気付かれないんですか?」

 

って、思い出してる場合じゃなかった。

 

「オレが女と思われてないみたいだから、割といける」

「「「えー!?」」」

 

めっちゃ驚かれた。ディーノさんも驚くとは思ってなかったよ。……リボーン、おまえオレの性別隠してくれてたんだな。女に甘すぎだろ。

 

その日の夜、リボーンにオレがあそこまで答えるとは思わなかったと言われた。

 

「調べても意味ないし」

「ウソなのか?」

「多分あってるよ。オレ戸籍ないからさ。誕生日はたまたまわかっただけ。子どもの時、いろいろ調べたけど、これ以上わかんなかったんだ」

 

双子じゃなかったら、誕生日もわからなかったかもね。あの資料が偽物で双子じゃなかったら、誕生日も間違ってることになっちゃうのかな。いくらリボーンやヒバリさんが調べても、あの資料も正規のルートでもう処分されてるだろうしね。

 

って、そんなことより。

 

「……偽造しなくていいからな」

「あった方が便利だろ。ヒバリの方でもボンゴレの方でも用意出来っぞ」

「ボンゴレは嫌な予感しかしない。あっちはエンドレスのバトル付き、どっちもやだよ」

「ちぇ」

 

可愛く舌打ちしてもダメ。オレは引っかからないから。

 

●●●●●●●●●●

 

 

殺し屋は来たりするけど、何事もなく過ごしている。すると、天気のいい夜の日にリボーンがフゥ太を連れて屋根に登ってきた。ランキング星と交信させてオレのステータスを知りたいのね。フゥ太はつい危なっかしくて手を貸すと嬉しそうな顔をした。相変わらず人懐っこいなー。

 

まぁ最初の時以外はオレがマフィアを追っ払ってるのを知ってるのもあるんだろうけど。ちなみに最初の時はリボーンに止められたから。オレを鍛えさせるからって。可哀想なオレ。

 

「じゃ僕に任せて!」

 

ぶつぶつ呟くフゥ太をみて思った。……オレが降りればよかった。これ、瓦飛んでいかない?

 

「……うぅ」

 

急にうるうるし始めたフゥ太に驚いた。ランボじゃないのに、ついぶどう飴を食べさせてしまった。ビックリして止まったから正解だった。良かった良かった。

 

「で、どうしたんだ?」

「ソラ姉のこと、何も浮かばないよー!」

「偽名なのか?」

「いや、前に言ったじゃん。誕生日しかわからなかったって」

「僕のランキングは本人がその名前を自覚してるなら問題ないんだよ。この世界じゃ名前を捨てることも多いから。それに僕は本人が目の前にいれば、名前もわかるんだよ」

 

へぇ、そうなんだ。フゥ太のランキングは結構融通きくんだ。知らなかったや。

 

「なら、残念だけどオレは無理だよ。オレ、自分が誰なのか知りたくて、資料とか探し始めたから。戸籍もないから名前もない。オレが一番誰かわかってないんだ」

 

そして今もここから離れられないってことはまだ諦めてないってこと。だからソラって名前の自覚もない。

 

「ソラ姉……」

「おまえ、結構頑固だな」

「んなの、オレが一番わかってるっての」

「……ぷぷっ。ツナ兄みたいな反応」

 

リボーン、ナイス。オレのこと気にしてたフゥ太が、うまく切り替えられたみたいだ。

 

窓までフゥ太を送ってあげれば、オレにめっちゃ驚かれた。……違うからな。最初に窓から連れてきたのはリボーンだからな。緊急事態は別だけど、オレは窓を出入り口にしません。ヒバリさんや骸と一緒の扱いにしないでよ、頼むから。……まぁ屋根はベッドにしてるけど。

 

オレの常識が……って頭を抱えたくなってると、リボーンが言った。

 

「ママンにつけてもらうのはどうだ?」

「……そりゃすっげー嬉しいけど、多分それは違うんだろうなぁ」

 

母さんのことだから、絶対亡くなった娘と同じ名前をオレにつけようとはしない。違う名前はいらないや。どっかで母さんが自ら話してくれたらいいんだけど。……無理矢理聞き出すなんて出来ないし、悲しませたくないから。

 

「オレ、彼女のこと大好きかも」

「今更か?」

「いや再確認」

「ママンは家族みんなを虜にできる良い女だからな」

「ははっ、確かに。お前も頭上がらなさそう」

「否定はしねーぞ」

 

声を落とすのも忘れて笑ってしまったら、もしかしてソラが屋根の上にいるのー!?ってオレが叫んでいた。いや、いい加減気付けよ。夜に居ない方が珍しいから。

 

生徒の実力不足に頭が痛いのか、リボーンは帽子を被り直していた。最低でもオレぐらいにはなるから、頑張って、先生。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

相変わらずオレの周りは破茶滅茶だけど、時間は過ぎていく。雪合戦なんかは第三者目線でみると、爆笑だった。危うく逃げ遅れるところだったぐらい、笑った。

 

花見の時はヒバリさんとの勝負を付かず離れずの距離で見ていたら、Dr.シャマルからウインクが飛んできた。……ついメスで空気を斬った。シャマルは笑ってたけど、ヒバリさんにも気付かせずに飛ばしてくる腕だけは凄いよ。

 

もちろんサクラクラ病にかかったヒバリさんは、オレ達から見えなくなったところで気絶させて家まで運んだ。体調不良なんだから、大人しく寝ましょうね。次の日のヒバリさんの機嫌は今までで見たことがないくらい悪かった。あー、怖い怖い。

 

そんな感じで懐かしくもあるし、新鮮な気持ちも感じながら過ごしていると風紀委員が襲われる事件が発生した。

 

今まで話したことも仮面をつけた顔すらまともに見せなかったオレだけど、この事件を耳にして初めてヒバリさんの前に出た。話すのも初めてだからちょっと緊張する。

 

「……嫌がらせかい?僕が忙しい時に姿を見せるなんて。ずっと君を咬み殺したいと思ってるのに」

「オレは犯人じゃないって言いにきた」

「そんなの言われなくてもわかってる、君バカなの」

 

……どうせオレはバカですよーだ。

 

「まぁちょうどいい、これは僕が買ったケンカだから。ヒーロー気取りかなんだか知らないけど、君は手を出さないでよ」

「……犯人、オレの知り合いな気がすると言っても?」

「へぇ。それは楽しめそうだね」

 

かける言葉間違ったよ。注意を促せただけ良かったって思うことにしよう。

 

 

次の日にはお兄さんがやられてオレが病院に行くころになるとリボーンがこの事件の狙いを突き止めた。調べごとがあるリボーンとオレは別行動。もちろんオレはオレについていくけどリボーンに呼び止められた。

 

「おめーは何か掴んでるのか?」

「うん、多分犯人知り合い」

「……だからまだ手を出さなかったのか」

「まぁいろいろあるんだよ」

「そうか」

 

ほんと女に甘いよな、オレから情報搾り取ったらいいのにね。聞かずに調べにいっちゃったよ。

 

オレを見つけた時には一緒にいる獄寺君が毒の針をくらってしまっていた。けど、オレは無防備なのに千種の手は止まっていた。……顔、忘れないでくれたんだ。

 

「男?……めんどい」

「か、帰ってく……?」

 

やっぱ千種は面倒くさがるけど頭いいよね。一度骸に報告しにいったみたいだ。……でもあいつは止まらないよな……。それにオレがあんなところに居た理由も気付く。まぁそれはいい。

 

問題は骸が一般人の振りをしてオレに接触しそうなこと。あなたがいると安心しますね、血の繋がったご兄妹が居ませんか?とか、胡散臭い顔でオレに質問しそう。つーか、絶対そうするよな。オレの名は出さずに聞き出すだろうし……。そしてオレがオレの存在を知っていても、知っていなくても、さらにどんな解答をしても、あいつがもっとマフィアを恨むのは変わらない気がする。

 

オレが出会ってしまうよりも先に、接触した方がいいのか?

 

こんな時にオレの超直感は何も反応してくれない。……ううん、多分最善の選択なんてないんだ。

 

「おい、ソラ!」

「……リボーン?」

「さっきから呼んでたんだぞ」

「ごめん、全然気付かなかった」

 

ここは並中か。ほぼ無意識に行動してたよ。そういえば、あの後すぐに山本が合流して獄寺君を運んでたかも。うっすら覚えてる。

 

「9代目の指令でツナが六道骸達を捕まえることになったぞ」

「……そう、だよな」

「ああ。流石に見逃せねぇ」

「うん、わかってる。大丈夫、わかってるよ」

「だからおめぇにはママンの警護を頼むぞ」

 

聞こえた言葉が信じられなくて、リボーンを直視する。いや、母さんの守りが必要なのはわかってる。オレの時は京子ちゃんとハルだったけど、母さんが人質になる可能性だってあったんだから。でもオレをリボーンが渦中から遠ざけようとするとは思わなかったんだ。

 

「おめーはボンゴレじゃねーんだ。この件に深入りする必要はねぇ。ママンをよろしく頼むぞ」

 

 

結局何も言い返せなかったオレはいつもの場所で母さんに危害が来ないように見張っていた。

 

「良かったら、お茶しない?」

「へ?えっ、えーーーー!?危ないですよ!?」

「あら、大丈夫よ。ちゃんと固定したもの」

 

いや、ほんと何してんの、母さん。梯子を使って屋根まで顔を出すなんて思ってもなかった。母さんが落ちないかハラハラしながら見届けた後、オレはなんでか知らないけどリビングでお茶をご馳走になってる。ちゃんと仮面は口元があいてるのに換えたよ。

 

「ふふ、驚いたかしら。実はリボーンちゃんから何度か話を聞いていたの。家の屋根に住み着いてる子が居るって」

「……えっと」

「あ、勘違いしないでね、怒ってるわけじゃないのよ。普段は夜にしかいないって聞いてはいたのだけど、今日はお昼から居るってリボーンちゃんが教えてくれてね。せっかくだからお茶でも誘おうと思ったのよ」

「そ、そうなんですか……」

 

あのやろう……!余計なこと喋りやがって……!

 

「何か悩み事でもあるのかしら」

「え……」

「あら、ごめんなさいね。うちのツナと同じような雰囲気をしていたから、なんとなくそう思っちゃったの」

 

母さんって超直感もってたっけ……?いや、本当に母さんといった通りで、オレに似てるから気付いたんだろうね。

 

「えっと、本当はオレ悩んでないんだと思います」

「あら?」

「自分の中ではもう答えは決まってるんです。けど、誰かに背中押されないと動けなくって」

 

昔はリボーンや友達に押されていたけど、今のオレにそんな人いないから。

 

「じゃ、おばさんが押してあげるわよ」

 

パンっと手を叩いて、いい提案だわと機嫌良さげな母さんにオレはついていけない。

 

「ほら、立って立って」

「は、はい……」

「ソラちゃんなら大丈夫よ、いってらっしゃい」

 

ポンっと背中を押されて、涙腺が一瞬で緩んだ。

 

「……いって、きます」

 

頑張ったけど、多分鼻声だっただろうなぁ。母さんは気付いてるだろうけど、笑って送り出してくれた。

 

外に出ると、Dr.シャマルが居た。

 

「おじさん、一仕事終えて疲れてるんだけどなぁ」

「はぁ……?」

「あいつからの伝言だ。もう残りの敵はあっちに全員いるから、離れてもかまわないってよ」

 

どこまで読んでるんだよ、あいつ。……敵わないなぁ。

 

「助かった、Dr.シャマル!」

「いつかその仮面の中、おじさんに見せてね」

 

またウインクされたけど、今回は斬ることはしなかった。にしても、仮面の中ねぇ……。

 

「もう見たことある顔だよ!」

 

え?そうなの?なんて言ってるシャマルに笑いながら、オレは急いで人気のないところへ向かった。今、骸とちゃんと会わないと、オレ……違う、わたしは多分後悔する。

 

 

死ぬ気の炎をつかって移動して黒曜ランドの建物に入ると、憑依弾を使われてちょうどオレが追い詰められてるところだった。

 

「ひぃ!って、痛くない……、ソラ!?」

 

オレが来て助かったって顔をしてるオレには悪いけど、オレは……ううん、わたしはオレの味方をしにきたわけじゃないんだよ。ただ敵ってわけでもないから、咄嗟に引っ張ってオレの後ろに隠したけど。

 

オレはわたしのためにここへ来たの。後ろにいるオレのためなら、来ないのが正解。

 

「骸、もうやめよ。犬も千種もすっげーボロボロじゃん!」

「え?知り合いなの?」

 

いや、ほんとオレちょっと黙ってて。

 

「……やめる必要なんてどこにありますか。腐った世の中です。僕が世界をかえてあげますよ」

「腐ってるのは否定しないよ!でももっと他のやり方だってあるし!」

「僕からすれば、あなたの方がよくわかりませんよ。どうしてマフィアなんかと一緒にいるのですか。まだ何もかも忘れて生きている方が理解できますよ。よりによってボンゴレと共にしてるとは……」

 

いや、それはお前だって気付いてるだろ。同じ顔をしてるのがいるんだから。

 

「……こいつは何も知らない。マフィアのことも一年ほど前にやっと知ったんだ。だから……」

「見逃せと?クフフ、やはりあなたはおかしな人だ。……あなたが一番許していないくせに」

 

ドキッと心臓がはねた。

 

「もう一つの人格を作って仮面で隠している、せいぜいそういうところでしょう」

 

……いい線いってるよ、ほんと。

 

わたしは多分オレよりボンゴレリングの適合者だった。本来なら過去から未来に継承されるものを、薬の影響なのか、わたしは未来の記憶と経験を継承した。けど、これも薬の影響か、それともわたしの未来が無かったのか、継承した内容は双子のオレの未来だった。

 

「それでも、そう望んだのは……わたしだよ」

 

世界への恨みも、マフィアへの恨みも、ボンゴレに対する恨みも、沢田綱吉の倫理観でおさえたかった。そうして出来たのはもう一人のわたし。

 

「だから……わたしはお前を止めるよ」

「残念です」

「やりたくないからやめない?」

「奇遇ですね、僕もです」

 

口ではそう言いつつ、わたし達は戦闘態勢に入る。

 

未来で培った沢田綱吉の記憶と経験、ボンゴレの血筋、薬の影響による身体能力の高さ、夜の炎をつかわなくても、今の骸じゃ絶対わたしには敵わない。憑依されている彼らの神経をマヒさせ、骸本人を引き摺り出すのは簡単だった。

 

「……久しぶり」

「ええ。お久しぶりです、ソラ」

「お前じゃわたしに勝てないよ。だから……」

「あなたもわかってるはず。僕を止めるには殺すしかありませんよ」

 

……骸、おまえ。

 

「あなたはあの時僕の手を取らなかった。そして僕は今あなたの手を取らない。それだけですよ」

「……バカだなぁ」

 

わたしは今まで出さなかった武器、メスを取り出す。ほんとバカだよ。わたしになら殺されてもいいなんて……。わたしにできることは苦しませずに殺してあげるだけだ。

 

「さよなら、骸」

 

血が舞った。けど、わたしが思っていた人物の血じゃなかった。わたしも骸も動きが止まる。

 

「ダメだよ、ソラ」

 

わたしが唖然としている間に、軽く抱きしめられてポンポンとオレはわたしの背を叩く。

 

「殺しちゃダメだよ」

 

……ああ、オレはそうだよな。

 

ふふっと笑いが出る。うん、オレだったら殺さないよな。

 

ズキっと頭が痛む。……ああ、思い出した。思い出したくないあの頃のことを。

 

痛くて、辛かったから、人体実験をやりたくないと泣いたわたしを父様は何度も殴って、教育だといってわたしを子ども達の部屋に入れた。わたしは殺してはいけないから、いつも部屋は綺麗なところだった。だからとにかく嫌だった、「父様、わたしが悪かったです。出してください」と何度も叫んだ。けど、うるさいと言われてまた殴られた。わたしは部屋の隅に逃げ込んだ。子ども達の目が怖かった。わたしは彼らをこんな環境に置いてる人物を父様と呼んでいたから。

 

そんなわたしの隣に誰か座ったんだ。わたしは怖がった、とても怖がった。けど、彼はわたしに何もしなかった。話しかけることもなかった、ただ側に居ただけ。でもわたしを見る子ども達の目が少し優しくなった。あれは……骸だった……?

 

「っ、……わたし、骸を、殺したく、ない」

「うん。知ってたよ。……大丈夫、オレが止めてみせるよ」

 

光が覆う。レオンの羽化だ。何度もオレが世話になる毛糸の手袋が上から落ちてくる。わたしが知った未来では骸は何度も邪魔をしたはずなのに、特殊弾をリボーンに渡す時もオレの邪魔をしなかった。

 

いつのまにかオレはわたしから離れて、わたしはリボーンの側でグズグズと鼻をすすっていた。

 

「……わたし、ここに来た意味あったのかな」

「充分あっただろ。それにおめーだけじゃねーぞ」

 

そう言って、リボーンはオレと骸が戦ってる姿を見ていた。

 

 

わたしがつけた怪我があったから心配だったけど、オレは骸のどす黒いものを浄化してくれた。……それを出来なかった、今日もう一度試そうとしなかったわたしはオレとは違うんだなと思った。そして、わたしが作ったもう一人のわたしともまた違う。

 

骸が倒れて、犬から人体実験のモルモットだったとオレは知った。

 

「もしかして……ソラも……?」

「わたしはエストラーネオファミリーのボスの娘として育てられたから、骸達とはちょっと違うかな」

「……骸様は一緒だと言っていた」

 

千種の言葉に、わたしの隣に座ったのは骸であってると確信した。そして多分千種もわたしがなぜあそこに居たのか気付いている。

 

「ほんと、骸はお人好しというか、バカだよなぁ……」

「骸さんはバカじゃないびょん!」

 

ふふっと笑いながら、わたしは立ち上がり骸に近づく。犬と千種は止めなかった。そしてあの時のように骸の右眼に触れる。

 

「……ああ、よかった。ありがとう。わたしも骸についてるドス黒いものを取りたかったんだけど、無理だったんだ」

「ツナ、おめーに言ってんだぞ」

「えっ。あ、えっと……じゃぁ、どういたしまして?」

 

そこはもっと誇っていいと思うぞ、オレ。なんて心の中でツッコミしていると、復讐者がやってきて骸達の首に錠がかかる。

 

「……待って」

「ソラ、やめろ。おめーもよく知ってんだろ。マフィア界の掟の番人だ。逆らっておめーが捕まることをこいつらは望まねぇ」

 

犬と千種の眼を見て、わたしは伸ばそうとした手を下ろす。そして、その手をオレが掴んだ。

 

「大丈夫。また会えるよ」

「ツナ、そんな甘くねーぞ。下手すりゃ一生出れねぇことをこいつらはした」

「ゔっ、そうなんだ……。でも会える気がするんだけどなぁ」

 

……うん、そうだよね。知ってるよ、わたしもまた会えるって。これが最後じゃない。

 

「みんな、またね!」

 

今から裁かれるところに行く骸達にかける言葉じゃなけど、わたしはこの言葉を選んで見送ったんだ。

 

この後すぐにボンゴレの医療班が到着して、みんな病院に連れて行かれた。わたしは怪我をしてなかったから、いつものようにオレん家の屋根で眠った。

 

次の日、オレはオレとヒバリさんの見舞いにいった。獄寺君は無理とわかっていたけど、山本も厳しそうだったから行くのは諦めた。こっそり病室に入り2人が眠っている間に花を一本ずつ花瓶にいれて帰る。……監視カメラの数がまた増えた。オレの方はなんとなくオレからとわかって嬉しそうにしてたよ。

 

 

1ヶ月後、伊達メガネスタイルで出かけていると、すれ違った子どもから骸の気配がした。慌てて振り返ろうとしたけど聞こえた言葉で動きを止める。

 

「またお会いましょう」

 

今じゃないんだなって思ったから。後、犬と千種から聞いたのか、ちゃんと返事をかえしてくれて、オレの中のわたしは凄く喜んでいた。




キャラ設定

ソラ(わたし)
沢田綱吉と双子。
自分のことを『わたし』と呼び、作った人格は『もう一人のわたし』・『この子』と呼んだりする。
ツナのことは心の中では『オレ』と呼ぶが、本人には『君』と呼ぶ。
口調は捨てたので、作った人格とほぼ同じ。少し柔らかいかもしれない。
マフィアは大嫌い、もちろんボンゴレも大嫌い。この世界も嫌い。
狂ってる。けど、ギリギリでもう一人の人格を作ったので狂いきってはない。

ソラ(オレ)
沢田綱吉を模範しつつも、ソラ(わたし)が混ざり合って出来た人格。
自分のことを『オレ』と呼び、もう一つの人格を『わたし』・『この子』と呼んだりする。
ツナのことは心の中では『オレ』と呼ぶが、本人には『君』と呼ぶ。
マフィアは嫌い。ボンゴレも嫌い。世界までは嫌いじゃない。
わたしの最後の砦。基本こっちが表に出る。

というわけで、二重人格者です。
骸と出会ったことで、互いの存在を認識しました。
正確には今まで気付いてたけど、気付かないフリをしていただけ。
次回からはとっても読みにくいでしょう。

すぐさまボンゴレのところに行かなかったのは、わたしが暴走するとオレが判断したから。
あと、殺し屋が来てるのはエストラーネオファミリーの残党が情報を売ったから。
家光のせいではないけど、元々は彼のせいなので間違ってはない。
この設定のためにアンチ・ヘイトタグをつけた。もう一人不憫なキャラがいるけどね。


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第2話

「ランラーンラン♪」

 

いつものように暗くなったから屋根でいると、母さんの鼻歌が聞こえてきた。……この感じ、クソ親父が帰ってくる。

 

だからその日、リボーンが屋根に登ってきてすぐに言った。

 

「オレしばらくこの家に近寄らないから、よろしく」

「なんかあんのか?」

「わたしが帰ってくる人が大嫌いだから。抑えるのに苦労する」

「……そうか」

 

クソ親父がマフィア関係者だとオレが知っていたことで納得したのか、すぐに話題をかえてくれた。こういう気遣いはほんと助かるよ。

 

 

 

確かオレがみんなと買い物に出かけていた時にスクアーロがきた。これからのオレのことを思うと、放置しよっかなー。なんて思いながらも、オレの足はショッピングモールに向かってる。……わたし、オレに甘くない?

 

獄寺君と山本がやられるのを見てから、オレはメスをスクアーロの足元に投げた。

 

「誰だぁ!!」

「ソラーーーーっ!」

 

神様、仏様、ソラ様、なんてオレは思ってそう。両手で手を組んで祈ってるし。

 

「念のため聞くけど、この人ボンゴレ。殺してもいい?」

「この人ボンゴレなのー!?って、殺しちゃダメだって!」

 

いやでも今までオレを狙ってきた殺し屋は、リボーンに手を出すなと言われない限りみんな殺してるよ?オレは知らないだろうけど。

 

「どうしても?」

「どうしても!!首傾げてもダメなものはダメだから!!」

 

なんて会話をしていたら、スクアーロがキレて斬りかかってきた。相変わらず沸点が低い。

 

オレが殺しちゃダメっていうから、メスを使わずに相手をする。死ぬ気の炎を身体強化に使って、何度か殴ったり蹴ったりしてるけど、流石暗殺部隊隊長殿。気絶するほどの良い一発が入らない。うまくズラしている。

 

「くそっ。てめぇナニモンだぁ!」

「さぁ?一応ソラって名乗ってるよ」

「聞いたことねぇぞぉ!」

 

そうだろうね。噂ぐらいはあるだろうけど、オレどこにも所属してないし。

 

「オレを殺すには、最低でも君のところのボスを連れてこなくちゃ」

「クソが!!」

 

オレが殺すなと言ったから殺してないだけとスクアーロは気付いてる。だから割と大人しく帰っていった。偽のボンゴレリングは取られてないけど、まぁ大丈夫だろうね。だってオレをバジル君が連れていったのを見てたし、ソラの情報集めとXANXUSを説得するまでの時間は稼げたから。

 

「これでよかった?」

「ああ、充分だぞ」

 

念のために残っていたリボーンに確認したらお墨付きをもらえた。やったね。オレの役目は終わったしと去ろうとしたら、リボーンがついてこいだって。マフィアが多いと落ち着かないから行きたくないんだけどなぁ。

 

距離を取りつつ、ついていった先でみんなが揃ってた。ディーノさんもいるね。バジル君は気絶してるみたい。

 

「ソラ!!無事でよかったー!」

「ちゃんと殺さないで追い返してあげたよ」

 

オレの言葉に獄出君と山本の空気は重い。そんな悔しかったんだな、オレはオレに感動してないで気付いてあげなよ。ちなみにその横でディーノさんの頬は引きつっていた。スクアーロの実力を知ってるからしょうがないかな。

 

リボーンにあっさりと戦力外通告された山本と獄寺君をこの場に残し、オレ達はバジル君のために病院へ移動した。そこでディーノさんがリングの存在を見せたことによって、リボーンは状況把握したみたい。その後にすぐオレは逃げちゃったけど。

 

「ソラ、おめーはこれからどうすんだ」

 

今気づいた。リボーンが連れてきたのは、オレ達のためだったのかもしれない。意思確認だ。

 

「わたしよりはマシだけど、オレもマフィア嫌いだし、関わりたくないよ。でも彼がどうしても助けてって言ったら助けるよ」

「相手を殺してか?」

「オレはよくても、わたしが許さないからねぇ」

 

これでも抑えてるんだよ?と続けて呟けば、リボーンは軽く溜息を吐いた。苦労かけてごめんね。

 

 

数日後、また迷子になったランボ達を家に送っていると殺し屋がやってきた。チビ達に気付かれないように殺して復讐者を待たずに隠蔽。待ってたらチビ達が気付いちゃうかもしれないしね。チビ達にはわたしは優しいよねなんて思う。……まぁ子どもの時にあんなことがあったしね。

 

それにしても物騒だなーなんて思ってると、お兄さんが極限と言いながら殴りかかってきた。もちろん避けたよ、間違って殺してないよ。なんか嫌な予感がするけど。

 

「お兄さん、その人味方ーー!!」

 

オレ、ナイスツッコミ。すぐに誤解が解けて和解が成立。ボクシング部には入りません。あと、あまり近づかないでください。落ち着かないから。

 

「にしても助かったよ!ソラがランボと一緒に居てくれて」

 

オレの言葉にオレが軽く首を傾げてる間に、獄寺君と山本もやってきた。……すっげー嫌な予感する。

 

「おい、ソラ。ヴァリアーは来てねぇだろうな」

「…………」

 

オレはリボーンの言葉に黙秘権を使った。オレ達の不穏な気配を感じ取ったのか、オレが恐る恐る確認する。

 

「もしかして、ソラやっちゃった……?」

「……正当防衛を主張したいなぁ」

「ひぃ!絶対、この人やっちゃったよー!」

 

そんなことを話してると、レヴィがやってきた。オレの部下をやったのはお前達か、なんて言われて濡れ衣を着せられるオレ可哀想。

 

「……やったのはオレだよ。彼らは関係ないから。というか、オレ言ったよね。オレをやるならボス連れてこいって。……そうだよ、それぐらい強かったら問題なかったんだよ!オレ、悪くないよ!」

「開き直っちゃダメだから!!」

 

ガクガクとオレはオレに揺らされる。というか、オレはオレを怖くないんだ。ヒバリさんより物騒なことしてるのに。

 

「オレが悪かったから、そろそろ離して。本当にボス来たっぽいから」

「まじでーー!!」

 

なんて漫才している間に、ヴァリアー勢揃い。邂逅一発目から憤怒の炎がオレ達にむかって飛んでくる。仕方がないから、夜の炎を使って憤怒の炎を飛ばす。……オレ、復讐者より使いこなしてる気がする。

 

「え……今のって、死ぬ気の炎……?」

「おお、正解」

 

オレよく見てるじゃん。初めてオレの前で使ったけど、一発でわかるとは思ってなかったから素直に驚いた。そりゃ身体強化で使ったことはあるけど、それは外からじゃ見えないようにちゃんと留めてるし。

 

そしてXANXUSからは面白いという感想を得たので、スクアーロの評価も戻ったみたい。暴君を説得するのは大変だっただろうね、お疲れ様。

 

「そこまでだ」

 

一触即発ってところで、クソ親父がやってきた。チラっとオレを見たけど、それどころじゃないからお互いにスルー。

 

クソ親父により同じ種類のリングを持つ同士の対決と説明される。リングを貰ってないオレはもちろん不参加。

 

「頑張れ」

 

そう言ってポンっとオレの肩を叩いてあげた。流石オレ、すぐに察した。

 

「も、も、もしかして……ソラはリング持ってないの……?」

「うん」

「なんでーーー!?」

「簡単なことじゃない?強いだけでオレは君を守護するのに相応しくないし」

 

ガーンガーンガーンっていう顔をオレはしていた。うーん、ちゃんと説明してあげないといけないかな。

 

「ボンゴレには守護者の使命というものがあって、オレはどこにも当てはまらない。君にわかりやすく説明すると、オレはトランプのジョーカー。有益でもあるし有害なの」

「有害?」

「うーん、かわった方がわかりやすいかな。……久しぶりだね。教えてあげればいいのかな?わたしは君と君のお母さんを気に入ってるよ」

「え。あ、ありがとう」

「わたしは君らが大切なもの以外はどうでもいいんだ。例外は骸達ぐらいで。さっきだって君が怒ったから悪いともう一人のわたしは思ったよ。けどね、わたしは何も悪いと思ってないの。君がいいよと一言いえば、ここに居る人達みんな喜んで殺すよ?みんなだよ」

 

もう一人のわたしはオレを模範しているから気にはしてるけど、わたしは獄寺君達のことだってどうでもいいんだよ。だから死んじゃっても怒ったり泣いたりはしない。見舞いなんて行く必要を感じない。だってマフィアだし。今もこの場に残ってるのはオレが困ってそうだからっていう理由なだけ。

 

「君の父親とリボーン、後は骸ぐらいかな。この人達はわたしの異常性に気付いてる。だから君の守護者には相応しくないから選ばれなかった」

「全部そのまま受けとるんじゃねーぞ、ツナ。間違っちゃいねぇが、合ってるわけでもねぇ。オレからみれば、裏の世界に無理矢理染められておかしくなった泣き虫な女だぞ」

 

……そりゃリボーンの前ではよく泣いてるけどさ。こんなところで言わなくていいじゃん。そしてオレも確かにみたいな顔しないで。

 

はぁとオレが首を振ってるとチェルベッロがやってきた。にしても、よくXANXUS達は手を出さなかったね。痺れを切らして攻撃してきそうなのに。それだけ父さんが凄くて、オレ達に興味あったのかな。

 

「最後に……ソラ様」

「ん?」

「ソラ様は9代目と家光氏に後継者として認められなかったため、この争奪戦の参加資格はございません。ご了承を」

 

ピリッと空気が変わった気がした。もちろんオレの中のわたしも。

 

「それでは明晩11時……」

「ちょ、ちょっと待ってぇー!」

「なんでしょうか?」

「ソラは後継者候補だったの!?」

「はい。ソラ様は、っ!」

 

流石にチェルベッロの首元にメスを突きつければ黙ったね。でもつい夜の炎を使って移動しちゃったなぁ。何人かにはっきり見られたよ。まぁオレが見破ってたし、別にいいかな。

 

「君達の言う通り、わたしは参加しない。だからもういいよね?」

「……失礼しました」

「わかってもらえて良かったよ」

 

なんて口では言いながら、気分は最悪。もう帰ろ、わたしが離れてチェルベッロが口を滑らしたら……諦めよ。諦めるついでに争奪戦もぐちゃぐちゃにするけどね。

 

ふぅと疲れて息を吐いたオレは、ここから離れることを優先して夜の炎でとんだ。わたしが落ち着くところに来たけど効果は微妙で、メスを左手でクルクルと回す。

 

……オレは僅かに残った死ぬ気の炎を、たいした効果がないとわかっていながらも、骸に使ったことには後悔していない。けど、無くなってほしくなかったのも、オレの本音だ。

 

いや、あの時はわたしだね……混ざり合ってたから。

 

「あっ、ほんとに居た……」

 

リボーンが現れると思っていたのに、オレが顔を出した。最悪じゃん、オレを差し向けてリボーンと父さんが盗み聞きする気だもん。

 

……つーか、父さんオレの正体に気付いてなさそう。双子だったことすら知らないオレの超直感が反応しないのはまだわかるんだけどなぁ。意外と父さんの持ってる超直感は弱いのかも。強かったらオレの前に父さんが継いでたのかな?その方がスムーズだし。

 

そんなことを考えてたら、オレがなんとか屋根に登ってこれた。ドジ発動しなくて良かったよ。

 

「えっと……」

「オレに泣きついても意味ないよ。人体実験がきっかけでオレの死ぬ気の炎は変質しているから。資格はとうの昔になくなってる」

「そうなんだ……。って、泣きつかないよ!?」

 

いや、どうだか。もしオレがやる気だったら、オレは最初の頃はすっげー喜ぶだろ。なんだかんだ言って、最後は覚悟決めるだろうけど。

 

「あのさ、ソラはもしかしてさ……、ボンゴレのこと恨んでる……?」

「どうして?」

「……骸がそんなこと言ってたから。よりにもよってボンゴレにって。オレはさっきまで、一番大きなマフィアって意味だと思ってたんだ。けど……」

 

言葉を止めたけど、今は違うと思ってるってオレは確信していた。

 

「……わたしの家はさ、父親がボンゴレの関係者で、母さんは本当に何も知らない一般人」

「オレんとこと一緒……?」

「そ。父親がミスったみたいで、わたしが連れ去られ、あんなところにいたの」

 

オレが何とも言えない顔でわたしを見ていた。

 

「わたしがボンゴレを好きになる要素ないよ。君には悪いけど」

「オレのことはいいよ。というか、オレもその話聞くだけでもボンゴレ嫌いになったし……。って、違うよ!元々好きじゃなかったよ!オレはマフィアなんか嫌いで、ボンゴレなんか継ぎたくないの!」

「知ってるよ。君、何度も叫んでるから」

 

それは恥ずかしかったらしい。男心だね。

 

「……君の家族を見てると、わたしもそんな人生を歩めたのかなって思えるんだよ」

「ソラ……」

「まぁ君とわたしの性別が違うから、君の歩む人生とはまったく違うものになる気がするけどね。母さんと買い物に出かけたり、一緒に料理作ったりさ。…………この話はやめよっか。たらればの話とか、全く意味ないし」

 

あー、バカなこと話した。

 

「全く、なんてことはないんじゃないかな……?亡くなったソラのお母さんも想像してくれたら喜ぶと思う」

「……待った。わたしの言い方が悪かった。生きてるから、わたしの母さんは生きてる」

「え!?そうなの!?ごめん!!」

「ああ、うん、それはいいよ。運が良かったのは事実だし」

 

ほんとに。母さんも今わたしの前に居るオレも死んでいたかもしれないんだから。

 

「えっと、それならまだ諦めなくていいんじゃない?その、買い物とか料理とか……」

「母さんはわたしが死んだと思ってる。わたしの死を乗り越えて、今は元気に生きてるからそれでいいよ」

「でも……!」

「無理だって。母さんはマフィアのこと何も知らないだよ?巻き込まずに説明して納得なんて出来る親なん……て……」

「ソラ?」

「……居ないって断言しようとしたんだけど、居たなと思って。君んところのお母さん」

 

しばらく沈黙が流れた。私たちの母さんは一般人だけど、一般常識を持ってなかったんだよ……。

 

「結局、わたしが意気地なしってことか……」

「えっ、や、オレの母さんはかなり特殊で珍しい方だから……」

 

フォローしてるつもりなんだろうけど、わたしにめっちゃ刺さってるよ!オレも母さんならいけると思ったってことだろ!?

 

「どうせわたしは泣き虫で意気地なしですよーだ」

「スネちゃったー!?ソラー!?」

 

オレがあまりにも叫ぶから、わたしは思わず笑った。つられてオレが笑ったのをみて、まだやり直せるのかなってちょっと思ったんだ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

XANXUSを刺激するのもなぁと思って争奪戦を見に行ってなかったら、リボーンに明日の試合は見に来いよって誘われた。日数で考えたら明日は霧戦だった。オレの中のわたしのテンションが急上昇。今日は殺し屋こないかな?一撃で殺しちゃうぞ☆……いつもと一緒じゃん、とオレが心の中でツッコミして落ち着かせた。

 

オレが体育館に行くと、獄寺君にケンカ売られた。10代目の座は狙ってません。というか要らない。チェルベッロも資格ないって言ってるじゃん。そろそろまずいなぁと思っていたら、いい加減にしろってリボーンが獄寺君を蹴って終了させた。もうちょっと早く助けてよ、ほんとに。

 

そうこうしている内に、気絶したオレが起きて、犬と千種の姿が見えた。けど骸と違ってどういう顔をして会えばいいのかわからず、オレの後ろに隠れる。……や、仮面してるんだけどね。オレは前も後ろもいろいろあって忙しそう。

 

「六道骸じゃ……ないよ……」

 

クロームを見て、オレはそう呟いた。そうそう合ってるよ、なんて思いながらもオレの後ろから動かない。

 

「いや……あの……なんとなくだけど……。それに、ソラが……。六道骸だったらもっと喜んでそうなんだよね」

 

気付けば、理由の一つにされていた。まぁいいけど……。

 

オレがラッキースケベという名の挨拶をもらったり、アルコバレーノのコロネロがやってきたりしてると試合が始まる時間がきた。観覧スペースに閉じ込められる時に、チラッと犬と千種を見れば、うっとおしいびょん!と怒られた。普通にすれば?と千種にも言われ、オレは恐る恐る2人に近づく。一度飼い主に捨てられたペットのようだぞとリボーンに言われた。……ほっとけ。

 

クロームも頑張ってるけど、マーモンには敵わない。ついには内臓の幻覚も保てなくなった。

 

「あ……骸……」

「六道骸が!!骸が来る!!」

 

わたしの呟きはほとんどオレにかき消された。

 

「クフフフ。随分いきがってるじゃありませんか。マフィア風情が」

「骸!!」

「……お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ」

 

ちょっと呆れながらわたしを見ないで。……喜んでるのはわたしだけみたいで恥ずかしいじゃん。

 

戻ってきた骸は絶好調でどんどん幻覚のレベルがあがっていく。当然マーモンも幻覚レベルもあがって、床が歪んでしまった。わたしはそっと犬と千種の服の端を握る。チラッとわたしを見たけど、2人は振り解かなかった。

 

そしてそんなわたしをジッとXANXUSが見ている。……わたしが幻覚にかかってないからだ。その視線を遮るかのように火柱が立ち上がる。……ごめん、骸。気をつかわせた。

 

わたしが心の中で謝ってる間に、骸は涼しい顔でマーモンのリングをとって終わらせた。……記憶より随分はやかった。そんなこと骸は知らないから、これについては謝れないけど……。や、でもやっぱごめん。気を遣わせて。後、あんな短い時間の中でオレが骸の現状を把握したのは幸い?だったよ。

 

「君の考えてる恐ろしい企てには、僕すら畏怖の念を感じますよ」

「……骸っ」

 

なんか骸がXANXUSと話してたみたいだけど、我慢出来なかったわたしは骸に飛びついた。

 

「骸さんに何してるびょん!?」

「……ソラ、骸様はまだ喋ってる」

「むー」

「しばらく見ない間に、知能が低下してませんか。まったく……」

 

呆れながらも、わたしを剥がさないじゃん。

 

「……ソラ」

「ん?」

 

君はゴーラモスカに近づくのはよしなさい。と、骸はわたしだけに聞こえるように言った。

 

「んー……わかった。いいよ」

「やれやれ」

 

ちょっと真面目な話をしたのもあって、いい加減骸から離れる。

 

「……オレ、もう行くね。また」

「ええ。また会いましょう」

 

わたしがもう充分満足したみたいだから、オレはあっさりと帰った。

 

次の日、オレは骸に言われたとおり雲戦には近付かなかった。元々リボーンに誘われなきゃ行かなかったし、誰も変に思われない。ただ昨日骸がわたしに何を言ったかは気にしてるだろうけど。でもリボーンは見に来てよかったろとしか言わなかったから、そこまでかもしれない。それとも、オレを気にいってると言ったわたしを信じてるから聞かなかったのかな。

 

今ごろ9代目がモスカの中から出てきてるかな。オレには関係ないけど。……うーん、骸は標的になる可能性があって危ないからモスカに近づくなって言ったのかな。それとも9代目と接触して心を乱す必要はないと思ったから言ったのかな。どっちにしろ、わたしのために遠ざけようとしてくれたのは変わりないから嬉しい。まぁ全部わたしはオレを通して知っちゃってるんだけどね。

 

 

こんな日でもリボーンはオレと会話するために屋上へやってきた。リボーンはオレの修行の話はするけど、争奪戦のことは話さない。唯一例外だったのは霧戦の時ぐらいで。だから今でもオレもわたしもこの時間が好き。

 

だったんだけど、今日は邪魔が入った。オレには関係ないと思ってリボーンに対応を丸投げしていたら、チェルベッロはオレに用があったらしい。それでも反応しないオレの代わりにリボーンが用件を促した。

 

チェルベッロ曰く、ほぼほぼオレの勝利で決まりだったけど、9代目の弔い合戦として大空戦をすることになったから、オレにも参加資格が出てきたらしい。だから明日の大空戦に参加してもいい、だって。

 

言うだけ言うとチェルベッロはすぐに去っていった。ずっとオレが左手でくるくるとメスをまわしていたからかもしれないけど。

 

「……ボンゴレなんか大っ嫌い」

 

ポツリと呟いたわたしの言葉は、夜なのもあって響いた気がした。

 

結局オレになっても朝までに発したのはその一言だけだったけど、リボーンは部屋に戻らずオレの側にいた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

大空戦当日、わたしはギリギリの時間に並盛中学校へとやってきた。守護者はもう配置に向かってるらしい。

 

「お待ちしてました、ソラ様」

「……守護者、居なくてもいいの?」

「かまいません」

 

ただ6つのリングを集めた方が勝ちで、守護者がいなくても不利になるだけの話。そしてわたしの場合、9代目とあいつに選ばれなかったから、大空のリングの片割れもない状態でスタートというのがハンデらしい。

 

「如何なさいますか?」

「参加」

「かしこまりました」

 

オレからツッコミが来ると思っていたけどなかったよ。リボーンに何か言われてるのかな。オレのことなのに、わからないや。

 

守護者に毒が注入され、オレがはやく始めようと焦ってるとXANXUSが攻撃してきた。オレには左手で殴りかかり、わたしには右手で憤怒の炎。わたしの方が警戒してるのか、殺傷力が高かったね。もちろん無傷だよ。ただ今回は死ぬ気の炎で飛ばしたわけじゃなく、わたし自身が移動。

 

2人の戦いがよく見える位置の屋上に到着した。

 

「特等席」

 

なんて呟いて、わたしはフェンスに座り足をプラプラする。XANXUSは完全にわたしに意識がいってるけど、オレとリボーンの存在を忘れてはいけないよ。ちゃんと特殊弾は間に合っている。

 

「ひゅ〜♪カッコいい♪」

「ソラ、そのまま下がってろ」

 

オレはわたしが見届けてるためにここに居るだけだと気付いていたみたいだ。守護者のことも頼もうとしなかったし。……違うね、わたしに頼んだらヴァリアーを全員殺すとわかっているから頼まないんだ。

 

XANXUSもとりあえずはわたしの存在は無視したらしい。今はまだわたしは動くつもりがないと察したから。後何よりオレをすぐ殺せると思ってるから。

 

「〜♪」

 

さっき口笛を吹いたのもあって、なんとなくその流れで並中の校歌を吹く。

 

ちょうどわたしが2番まで吹き終わるころ、銃を出してオレの相手に余裕が出来たXANXUSは守護者のポールを倒すついでにわたしにも撃ってきた。物騒だなぁなんて思いながら、夜の炎で飛ばす。

 

そのままXANXUSがわたしにいる屋上へと着地したのもあって、慌ててオレがやってきた。XANXUSはオレとわたしに銃口を向けたから、わたしは口をひらく。

 

「気にしなくていいよ」

「……ああ」

「2つの意味で、だよ」

 

わたしの一言で少し焦っていたオレが気付く、ヒバリさんが自力でポールを倒して解毒していることに。

 

「……それで、校歌だったのか」

「彼にとって1番の応援歌だと思って」

 

実は守護者の中ではわたしは割とヒバリさんのことは気に入ってる。もちろん断トツは骸だけどね。理由は単純でオレがヒバリさんに憧れてて、骸がヒバリさんをライバルとして認識しているから。2人に認められてるヒバリさんにわたしは少し興味がある。それとマフィアに入ってるつもりがないとこがいいよね。まぁもう一人のわたしはいい顔してなさそうだけど。でも見舞いに行こうとするのはもう一人のわたしの方なのにね。

 

「本当に規格外で面白いよね、彼」

 

わたしの言葉に思うところがあったのか、戦いの最中なのに珍しくオレの眉間のシワが緩んだ。

 

「おい、いつまで余裕の態度でいやがる」

「彼を未だ倒せない君を?警戒?」

 

ボスがこんなんだから部下も沸点が低いんだよ。でもまぁわたしに銃を突きつけて撃とうとするのは評価するよ。まだまだ移動速度が遅いから簡単に移動出来るけどね。何事もなかったようにわたしはフェンスの上をバランスをとりながら歩く。

 

「んー、超直感をフル稼働すれば、わたしの動きは見えるかもしれないね。もしくは何年も培った経験とか?あとはもっと純度の高い炎が必要だろうし。……あれ?わたしを倒せる人いるのかな」

 

オレとバミューダとの戦いを参考にして話してみたけど、わたしの肉体は朽ちていないしまだ伸び盛り。そして超直感も持ってる。今のところ炎切れも起こしたことがないし。

 

「ああ、生粋の地球人なら大丈夫だね」

「……生粋の、地球人?」

「そ!随分数は減ったみたいだけどねぇ。っと、これぐらいにしよっか。それは君たちが知るにはまだ早いだろうし。わたしの炎についてもおしまい。これ以上はバミューダが困っちゃうもんね」

 

なんて言ってたらイェーガーが来ちゃったよ。復讐者が来たことで空気がさらに重くなる。

 

「掟には違反してないよ?」

「……その炎には大いなる責任がともなうのだ」

「んー、まっそれで納得してあげるよ。もう一人のわたしももう止めろって言ってるし」

 

もう一人のわたしの方を信じたのか復讐者は帰っていった。わたしはこれ以上2人の邪魔をしないように、屋上からダイブ。これをきっかけに仕切り直ししてね。

 

「ソラっ!」

 

なんて思ってたけど、オレが焦って追いかけてわたしを抱き上げた。そんな大きなスキを出したオレにXANXUSが狙い撃ってきたから、仕方なく飛ばしてあげる。

 

「危ないじゃん」

「…………」

 

さっきは緩んでいたのに、オレの眉間は今すげぇシワを寄せていた。これぐらいのわたしの行動なら、普段のオレはそこまで必死にならないのに。今何を思ってるんだろう、オレなら……。

 

「……怖い?」

「ああ」

 

……これはわたしを仲間と思ってるのもあるだろうけど、双子の片割れが居なくなることに恐怖しているのかもしれない。オレは無意識に感づいているんだろうね。

 

わたしをおろしたオレはすぐにXANXUSに向かっていった。けど、わたしがさらに危険な存在と判断したXANXUSはギアをあげてしまって、オレは零地点突破を試すことも出来ない。

 

「しょうがないなぁ」

「っソラ!?」

「……おい、なんの真似だ」

 

わたしが急にオレの背に乗れば、XANXUSの手が止まった。別に止めなくてよかったのに。

 

「手助け?」

「はっ」

 

XANXUSに鼻で笑われ、オレがめっちゃ焦ってた。

 

「ほら、集中しないとわたしが死ぬよー」

「……もしかして、オレへの手助けなのか?」

「どっちにも取れるよ。しばらくの間、わたしは君から離れず炎を使わないから。だからわたしを殺したいXANXUSには千載一遇のチャンスで、守るべき人がいる方が君は力を発揮できるからチャンス」

 

オレが口を開こうとしたけど、ニヤリと笑ったXANXUSはすぐさま撃ってきたから話す余裕はあまりなさそう。わたしはオレに捕まってるだけだから、余裕で話せるけどね。

 

「試してみなよ。リボーンと修行したんでしょ」

「っ、あれはっ」

「危険すぎるから、わたしを背負ってる状態で使いたくない、そうだよね?」

「そ、うだっ!」

「本当に?君の直感はそう言ってるの?」

 

オレは軽く息をのんだ。わたしは心の中でやっぱりね、と呟く。だって、こんなにもわたしはオレと同調している。互いの心だけじゃない。以前、レオンが羽化した時も恐らくそうだった。オレの未来を知って還元された経験則が、わたしを通してオレにも影響を与えている。

 

「やってみなよ、失敗したら君と一緒に死ぬだけ。たとえそうなっても案外悪くないってわたしは思えるんだ」

「……ああ。不思議だが、オレもだ」

 

ほら、リボーンに習った構えじゃない。

 

「零地点突破・改」

 

キレイ……とわたしが呟くと、オレが微かに笑った気がした。争い事が大っ嫌いなのに。……これも少し同調しているんだね。

 

「残念、君と死ねなかった」

「……オレはもっとソラと過ごしたいからな」

 

わたしも一緒に過ごしたいよ。と心の中で返事をして、わたしは移動する。向かった場所は、観覧席の近く。

 

「スパルタ過ぎた?」

「ツナにはいい薬だろ」

 

……あいかわらずスパルタで、もう一人のわたしがゲンナリしていた。もう一人のわたしもわかってるんだけどね、いつか取りこぼすことになるかもしれないから。ただなぁ、今のオレでは無理。そこはまぁ先生の腕の見せ所ってことで。

 

そんなことを話してる間に、ディーノさんに連れられてスクアーロがやってきた。XANXUSの怒りにはわたしあまり興味ないかな。

 

「そんなことより、止めなくていいの?」

「んなことだとぉ!?」

「止めるって何をだ、ソラ」

 

わたしの一言が多く話がズレそうになったところをリボーンが戻してくれた。

 

「わたし、あのリング絶対はめたくないんだよね」

「確かソラっつたよな。悪い、話が見えねぇ。ボンゴレ10代目になりたくねぇって意味じゃねーんだろ?」

「もちろん。あのリングは怖いよ、わたしがはめたら間違いなく悪いことが起きるね」

 

あー怖い怖いってわたしが言っても、リボーンですら意味をまだ考えていた。

 

「わたしの超直感が最大に警戒しているよ。下手すりゃ死ぬんじゃない?」

 

唖然としたような顔で、リボーン以外のみんながわたしを見ていた。唯一違うリボーンは真剣な表情をして口を開いた。

 

「……もう一人同じ目にあうんだな」

「あのリングは本物しか認めないみたいでさ。選ばれるのは一人」

 

なんて軽い口調で言ってる間に、XANXUSが氷漬けにされていた。

 

「一人だけ出してあげる」

「なりません!」

「ふふっ、どうやってわたしを止めるの?後継者の資格の取り消し?……んなの、はなから興味ないんだよ。勝手に過去をほじくり返された時点で、わたしは君達を殺したくてたまらないんだ。もう一人のわたしに感謝しなよ、殺してないのはこの子がわたしを止めるから。それだけだ」

 

一言でも話せば殺すと視線でわかったのか、チェルベッロはもう邪魔しなかった。

 

「じゃ、誰が出る?」

「う゛お゛ぉい!!オレを出せぇ!!」

「いいよ。早い者勝ち」

 

てっきりオレの味方だけと思っていたのかディーノさん達が驚いていたけど、わたしは無視してスクアーロを連れてXANXUSの元へと飛んだ。

 

「やめろぉ゛!!ベル!!」

「スクアーロじゃん。何言ってんの」

 

わたしのヒントでスクアーロはちゃんと答えがわかっていた。たださっきまで参加できず、重傷だった彼には止めることは難しかったみたい。

 

「がはっ!!」

「ボス!」

 

それでも血を吐いたXANXUSにかけより、スクアーロはすぐさまリングを抜いた。そしてボスと素直に彼が呼ぶのはとても珍しい姿で、わたしに何か聞きたそうな人も居たようだけど声には出さなかった。

 

「……XANXUS様あなたにリング適正があるか協議する必要があります」

「ついでにわたしもする?血筋だって問題ないけど、わたしも拒絶されると思うよ。随分身体イジられたし」

 

薄々XANXUSがボンゴレの血を引いていないとみんな察している。けど、わたしという特殊な人物がいるんだから、表に出さないことはできる。彼もわたしと一緒でボンゴレの被害者だよ。ただ彼はわたしと違ってボンゴレという組織を愛してるだけ。

 

「はぁ。僕が証明しますよ。彼女がボンゴレの血筋を引いているのは間違いありません。ですが、リングは拒絶するでしょうね」

「……骸」

 

一瞬だけ出てきた骸に、ありがとうと心の中で呟く。

 

「では、ソラ様は棄権とします。よって……」

「クソが!!同情なんているか!!」

「同情?何言ってんの、君はリングに選ばれなかった、これにどこにそんな感情があるの。……そもそもまだ選ばれた彼ですらボンゴレリングに認められていないのに」

「なっ!?どういうことだよ!?」

「そのままの意味。ボンゴレの業が深すぎて…………」

「えっ、ちょ、何、そこで止めないで!?ソラ、なんでオレから目を逸らすの!?」

 

いやだってさ、指輪に拒絶されたら死にかけて、極限状態の試練で認められなかったらそのまま死んじゃうだよ?……ボンゴレ怖っ。そして最低っ。やっぱ大っ嫌いだ。というか、さっさと滅べ。

 

「……ふぅ。わたしが棄権したなら、オレは帰るね。後は君たちで決めなよ。オレはボンゴレじゃないし」

 

血筋の件も表に出すのかも任せると含ませて、オレは移動した。超直感には引っかからないし、一悶着あってもなんとかなるよ。オレの叫び声はきっと気のせい。

 

●●●●●●●●●●

 

 

その日は疲れたのもあって寝ていれば、リボーンはオレを起こすことはなかった。次の日の夜にはいつものようにやってきた。寿司の差し入れ付きで。

 

「読み通り!オレもボンゴレ嫌いだけど、この超直感だけは最高だね」

 

なんて言いながら、食べ始める。今日は口のあいてる仮面だし、食事を抜いて大正解だった。リボーンは呆れていたけど、女に優しいから怒らない。これだけでも女に産まれてよかったと思ったね。

 

「んで?」

「ソラが帰った後のことや、XANXUSの処遇には興味ねぇだろ」

「ないね。それにだいたいわかるよ」

「おめーの精度、ツナや9代目より強いんじゃねーか?」

「わたしはオレからみても才能の塊だよ」

 

それなのにオレはオレと違って逃れてラッキー。

 

「オレが聞きたいのはそれだぞ」

「ん?」

「そのオレは誰なんだ?作った人格にしては明確に基準があるみてーだからな」

 

これはオレを警戒しているのかな。……半分正解で半分外れ。オレの性格には信頼している。けど、大空戦でわたしが話したの情報は、オレが掴んだ内容と勘付いている。けど、復讐者が絡んでいる内容だから迂闊に聞けなくて。リボーンはただオレがわたしのことをどう思ってるか知りたいってところだね。

 

「まどろっこしいから飛ばすよ。話長くなるだろうし、聞きたいのはこっちだろうから。オレはわたしをかわいそうな子だと思ってるよ。ボンゴレがちゃんとしていたら、継承の問題は起きるだろうけど、わたしが一番欲しいものは得れただろうから。オレとしてはわたしに大事なものが出来て欲しいよ、危うすぎるから」

「……ツナやママンじゃダメなのか?」

「惜しいね。オレの予想じゃ、たとえば2人が殺されたとしたら、わたしはすっげー悲しむと思うよ。けど、それで終わり。激昂とかないよ。偶然犯人に出会ったりその現場にいれば殺すだろうけど、わざわざ探したり追いかけたりしないよ」

 

執着してるけど、2人がいなくなったら、その時点で執着も消えるんだよね。骸達が殺されても一緒。まぁコイツもそれはわかってたみたいだけど。

 

「オレが感じた限りでは、わたしは人を殺したり憎んだりするのが本当は嫌いなんだ。けど、おかしくなって僅かに残った理性が働いて、オレで抑え込んだ。……おかしいだろ?僅かにしか残ってないのにオレで抑えられるって」

「……おめーの方が精神年齢が上なのか」

「うん、それであってるよ。オレはさ、わたしが育つまでに大切なものが出来ないと、この子がのまれちゃう気がするんだ。でもバランスがすっげー難しくて……。あー、そう。ちょっと前の獄寺君に似てるね。自分の命が見えてないというか、興味がないというか……、うーん」

「ガキの時に大事にされなかった弊害だな……」

「そうだろうね。これでも良くなったよ。骸と再会するまでは、気持ち悪い感じに混ざってたから。どっちの心が反応してるのかもわかんなくて、制御していたようにみえたけど実際は出来てなかったよ。狂わなかったのはオレの方が精神年齢が上だったのと運が良かっただけ。今は別人格だとわかって、入れ替わってもオレの言葉は聞こうとしてくれてる」

 

あとリボーンには教えないけど、わたしが作り上げたオレと、家にいる方の未来のオレは一緒だとわたしは思ってたんだよね。わたしの中のオレはオレで、わたしに影響受けてるから全くの別人。一番わかりやすいのが、殺しても心が動かないところ。家の中に居るオレじゃそんなのありえないね。

 

「抑えるためにオレを作り出したのもあって、わたし自身がオレに主人格をあげる気でいるんだけど、ひょんな所で結局わたしが出ちゃうんだよね。本当はわたしの方が主人格だから。そしてオレはわたしを消すなんて考えてもないし、指針にしてる」

 

基本的にオレはわたしの気持ちを優先させて動いてるからね。本当にヤバそうなところは抑えてるけど。

 

「骸の前で出てくるのはわかったけど、他の時にいつ入れ替わるかオレにもわかんない。だからわたしに大事なものがないと、いつかオレの声が聞こえなくなっちゃうかもしれない。それはわたしも不本意だと思ったんだ」

「霧戦のこともあって、大空戦にわたしで参加したってことか……」

 

そ!とオレは頷く。霧戦は骸と会って落ち着くまで、わたしが出てきちゃってたからね。あれも一種の暴走だった。だから大事なものを作らせようとしたり、少しは慣れさせるために参加したんだよね。

 

「オレも流石にヒヤヒヤしたよ。余計なことはいっちゃうし。まぁちょっとは得るものはあったよ。ただ方向性が違うというか……わたしらしい気もするけどさ」

 

なんでオレと一緒に死ぬならいいって考えてんの!?って本気で思ったね。超直感で大丈夫という確信もあっただろうけど。それと何故かヒバリさんに興味を持ってて、XANXUSに親近感をもった。特にXANXUSの方はヤバイ。オレの胃がキリキリしちゃうよ……まじで。や、わたしがそう思ったなら、オレは止めないけどさ。後、オレはみんなの見舞いに行きたいの。オレは特別枠として……ヒバリさんだけ許可したのはわたしの方だから。

 

「でも一言いいたくなる。わたしの男の趣味悪すぎない!?って」

「骸を好きな時点でわかってただろ」

 

そうだけどぉ〜と情けない声を出しながらオレは項垂れる。女に優しいリボーンはそっとオレの背を叩いて慰めてくれた。

 

「……あ、それと。わたしはお前のことも好きだよ」

「オレはよくモテるからな」

 

こいつ、ナチュラルに自分だけは趣味の悪い男の括りから外そうとしやがった……。リボーンのことをよく知ってるオレはスルーを決め込んだ。絶対にツッコミしないからな!

 

●●●●●●●●●●

 

 

次の日からリボーンはオレに会いにこなくなった。理由はわかってるけど、わたしが寂しがってると感じる。

 

オレが何か知らないかとオレを探してるけど、姿は見せない。すぐにオレも居なくなっちゃうし、余計にわたしが寂しがりそうだから。

 

ちなみにオレは未来に行く気はない。10年後のオレがいるのに、わざわざ当たる必要ないよ。正一君もオレをメンバーに入れないだろうし。だってね、子どもの正一君がオレを当てれるわけないもん。

 

だから寂しいよ、早く帰ってこないかなぁと思っている内に大きな地震が起きた。

 

オレの記憶があるから違和感を覚えてるけど、アルコバレーノの力はやばすぎ。わたしの記憶じゃオレが消えてから1日もたってないんだけど。歴史がしれっと改竄されてる。こわっ。

 

なんて戦慄しながらも顔には出さない。昼間だったのもあって、伊達メガネモードの状態でオレは寿司を食ってたから。もちろん山本ん家の店。

 

未来の記憶は今日の夜にでも届くんだろうなぁと思ってるとオレの超直感が反応した。すっげー嫌な予感が急にし始めた。え、本当に急すぎない?オレ、今変装中だって。普段なら寿司屋に入る前に警告があるんだけど!

 

「ソラ、発見!!」

 

ガラッ!!と凄い勢いでパンツ一丁のオレが扉をあけた。山本のお父さん、いらっしゃいじゃないよ。この人も結構天然入ってるよね、なんてオレは思考を現実逃避する。いやだってさ、伊達メガネモードのオレの前にオレが来て、さっきのセリフ。そして死ぬ気から戻ったオレはちょっと泣きそうな顔でオレを見ている。……絶対バレてるよね?

 

「ソラぁぁ!!」

 

飛びかかってきたオレを避けるのはかわいそうで、仕方なく大人しく抱きしめられる。そしてオレが泣く必要ないんだよと良い子良い子と頭を撫でる。

 

……けどさ、オレは声を出して言いたいよ。誰か情報ください、お願いしますって。

 

その後、山本が部屋から降りてきて「この頃もそっくりなのな!」と言われて、ある程度は察した。けど、やっぱ詳しい情報ください、まじで。

 

「リボーン、助けてー……」

「諦めろ」

 

オレの助けはいないのか、なんて思いつつ、結局ずーっとオレが離れなかったので、このまま山本の家に泊まることに。山本に世話になるけど流石に今回はわたしも許したよ。

 

ちょっと気になるのはこの時のオレ、母さんと久しぶりに会えてめっちゃ喜んでたよね?母さんはいいの?……口になんて出せる雰囲気じゃないから我慢するけど。

 

オレと手を繋ぎつつ、就寝。

 

……長い長い夢を見たオレは起きた途端に頭を抱えた。大まかな流れはオレの知ってる通りだったよ。わざわざオレが殺されたとしても、わたしが白蘭を殺しにいったりしないと思ってたから想定範囲。わたしが危ういのも想定範囲。未来のオレのせいで、オレ達が関わるようになったのも……まぁまだ想定範囲。プリーモと話したのも……驚いたけど、大丈夫。

 

問題は基本的にオレがこの件に関わってなかった理由が衝撃的すぎて、言葉が出ない。

 

「アル、可愛かったなぁ」

 

ちょ、オレが油断したタイミングでわたしが出てこないで。その呟きで起きたオレが複雑な顔をしているから。いや、オレもすっげー複雑だけどね!アルが可愛いのは事実だから、オレ達は否定しにくいし!!

 

「……すげー気まずいんだけど」

「……オレも」

 

流石双子だよね。ため息のタイミングも完璧だった。そして、まずは家族関係からやり直しかなと、顔を見合わせて思ったんだ。多分、オレも。

 

「改めてよろしくね」

「こちらこそ」

 

2人で笑い合って一旦落ち着いたオレ達は、泊めてくれた山本にお礼を言いにいったんだ。




次から未来編で10年後のソラが主人公です。
サクサク進んで42巻分を8話におさめてますが、流石に飛ばしませんw


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第3話

日本に行きたいとお願いされ、オレはイタリアから日本支部へ飛んだ。こっちの方が安全だろうという判断もあったしね。まだ嫌な予感もしないし。

 

「カレーの匂い!」

「あーほんとだね」

 

ランボとイーピンもだったけど、身体能力おかしいよね。なんでそんなに走れるのかなぁと思いながらも、慌てて追いかける。カレーにしか目が行ってないからね。無かったら、作んなきゃ泣くだろうなぁ。

 

「僕たちの分もある!?」

 

ガラッと勢いよくあけたのはいいけど、想定外なことが起きたのか泣き出した。忙しないなぁ。

 

「うわーん、ママーー!!」

「はいはい。ママはここにいるから」

 

なんて言いながらオレはアルを抱き上げて、なにが起きたんだろうと部屋を覗き込む。……ちっこいオレ達がいたよ。え、この世界ってこの世界なの?

 

……おかしくない?あれでもボンゴレ匣は作られてたからおかしくはないのかな?オレが居るせいで新たに分岐された未来だと思ってたよ。

 

「「「ええええーー!?」」」

 

あっぶな。みんな声デカすぎだよ。なんとかアルの耳を防げたからよかったけど。

 

「小さい黒髪のツナさんがいます。それにママって……ということは……はひぃ……」

「ハルちゃん、しっかりして!?」

「う、うそだよね、そうだよね、だって……仮面つけてるし……。相手は……ソラ……?」

「ははっ、ツナにそっくりなのな」

「10代目のお子さんということは……11代目!?」

 

頭痛くなってきた。けど、とりあえず優先はアルだね。でも後で獄寺君にその呼び方は変えてもらおう。アルには夢があるし。

 

「怖くないから。ほら、よく見たら知ってる顔だろ?あーこの顔だったら流石にわかるだろ?」

「アルフレード坊ちゃん、お久しぶりです、ジャンニーニです」

 

ジャンニーニの前にアルを持っていけば、ちゃんと合わせてくれた。ほんと助かった。アルはきょとんとした後、知ってるーと叫んだから。

 

「じゃ、彼は?写真で見たことあるだろ?」

「リボーン!」

「ちゃおっス。正解だぞ」

「なら、この人もわかるだろ?」

 

リボーンの後にオレの前に持っていけば、ゴクリと喉を鳴らしていた。……悪いな、オレ。優先はアルだ。

 

「んーっと、わかった!パーパ!」

「えらいえらい」

 

アルを褒めながらも、バタンと倒れたオレにごめんと心の中で謝った。

 

 

なんとか周りが落ち着き、どこから話せばいいの?とオレは頭を悩ませる。アルはカレーに夢中で可愛いんだけどなぁと現実逃避したい。

 

「……アルがびっくりするから、叫ばないでよ」

 

そういってオレは仮面をとる。過去のわたしには悪いけど、これを取らないと話が進まないんだよ。オレが仮面をとった瞬間、みんなが目を見開いていた。オレの注意はちゃんと頭の片隅に残ってくれてて助かった。

 

「お前はずっと本心を言ってたんだな……」

「あはは」

 

全て繋がったらしいリボーンはいろいろとのみこんだ表情をしていた。

 

「えっと、ツナ君のお姉さん?」

「オレも知らなかったのな。姉ちゃん居たんだな」

「野球バカ、そんな単純な話じゃねぇ。ここは10年後の世界だ。そもそもこの仮面はソラだろうが」

「……ハル、覚えてます。ソラさんはツナさんと同じ誕生日って」

「ソラはオレと双子……?」

 

みんなの力を借りたけど、オレはちゃんと正解にたどり着いたよ。オレの顔色悪すぎるなぁなんて思う。まぁオレの過去も知ってるからしょうがないか……。

 

「細かいことは後で説明するよ。ちょっといろいろあって、アルには君をパーパと呼ばせているんだ」

「……未来のツナはソラの正体を知っていたんだな。じゃねーと、ツナは納得しねぇぞ」

「ここまでそっくりだと黙ってること出来なくってねぇ。アルもなんとなくわかってるみたいで、父親にはちゃんとパパって呼んでるよ、そこは安心して」

 

オレがもっと詳しく聞きたそうにしていたけど、京子ちゃん達の前だから何も言えなくなっていた。

 

「ママぁ……」

「ご飯食べて眠たくなったんだね。よかったよ、時差があったから心配だったんだよね」

「お風呂入って寝るー……」

 

はいはいとオレはアルを抱き上げて、しばらくお邪魔するつもりだからと声をかけて出て行った。……リボーン、オレのこと頼むよ。

 

アルを寝かせた後、オレは食堂へと向かう。そこにオレがいる気がするから。

 

予想通り、オレとリボーンがいた。そして獄寺君と山本も。この時期にマフィア関連のことをよくわかっていない山本がいることに正直オレは驚いた。けど、オレの顔色を考えれば理解もできる。

 

「酷い顔してるね」

「っソラ!!」

 

オレはアルにするように、オレの頭を撫でながら語り出した。

 

「察しの通り、オレ……この場合はわたしって言った方がいいかな。わたしは君と双子。何があったのか知らないけど、骸と同じ場所で育った。骸と一緒に殺して逃げ出した後は、超直感に従って向かった先に君たちの家があった。そこから病院とか調べて、わたしは死産という記録だった。わたしは家にも戻れないから、並盛に住み着いたってところかな」

 

正確には並盛じゃなくて、オレん家の屋根だけど。そしてしばらくすると殺し屋が来て、ますますわたしは離れなくなった。

 

「一応このことを知ってるのは、君と君の守護者、わたしに害がなく君が信頼しているリボーンのような身近な人物、後は9代目とヴァリアー」

「ヴァリアーだと!?」

「妊娠中のわたしの警護はヴァリアーだったから」

 

チラッとリボーンがオレをみた。……うん、察し良すぎ。軽く息を吐いて、リボーンは違うところにつっこんだ。そこもやめて欲しいんだけどね。

 

「CEDEFは入ってねぇんだな」

「うん、今でも父さんはわたしのこと知らない。もちろん母さんも」

 

カバっとオレが立ち上がったけど、結局何もいえなくなって、オレに抱きついた。なんでオレがそんなに傷つくのかなぁ。

 

「そうだなぁ、ちょっと愉快な話?をしよっか。オレが打ち明けた時、君はすっげーキレたよ。ボンゴレの歴史に残る親子喧嘩だったね」

「ツナがキレたのか。オレもみたかったぞ」

「みてたって。父さんが氷漬けにされてたのをみて満足そうにしてたよ」

「尚更みたかったぞ」

 

ニヤリとリボーンは笑っていた。獄寺君と山本はちょっと引いていたけど。

 

「えーっと、父さんを氷漬けにしてる間に、君はオレのためにボンゴレじゃない組織をつくって、オレをそこにいれたよ。CEDEFもトップがいなくて大混乱中だったから、同じような組織を作られてるのに誰も止めれなくてさ。9代目も事情が事情だったしねぇ」

「ツナはキレたらこえーもんな!」

「オレは笑えねぇ……。いやでも、さすが10代目っス!」

 

獄寺君、正解。ボンゴレも大混乱が起きてたよ。

 

「だから一応オレはボンゴレじゃないけど君の直属。命令なんて何にもなかったけどね」

「目に浮かぶぞ」

「だよね。オレをもうマフィア関係の煩わしいことに関わらせたくなかったんだと思う。あとはアルの顔をみて、勝手に周りがオレが君の愛人と思われて、跡継ぎがいるなら何にも言わなくなった感じ。実際、君はアルのことを可愛がってたしね。親子喧嘩と言われるようになったのは、父さんに結婚を反対されたって、これも勝手に周りが納得しちゃってさ」

「それで10代目をパーパと呼ばせることにしたのか」

 

そ!とオレは頷く。実はほんの一瞬だけ父さんとの子どもという噂もたったけど、またオレがキレて氷像がたったからすぐに消えた。父さんだって身に覚えが無いから、自由になってすぐに否定してたし。もう一個を完全に否定できなかったのは冗談半分で見合いの釣書をオレに持って行ってたから。目撃者も多数いたらしいし。自業自得だよね。

 

「きな臭くなってからも、君はオレに何も頼まなかったよ。オレはボンゴレじゃないから関わっちゃダメと言われたぐらいでさ」

 

一言、白蘭を殺してって言えば済んだのにね。……あ、でも一つだけ頼まれたことがあったね。約束だから黙ってるけど。

 

「それにボンゴレ上層部だけじゃなく、ヴァリアーとも意見が一致しちゃったんだよ。君が子どもを作ってないから、アルが必然的に11代目。そしてオレの炎の特性を考えれば、何があっても逃げることはできるから。血筋を残すためにオレは戦いの中に出さないって、アルはまだちゃんと自分の身を守れないしねぇ」

 

オレもそれに乗っかったんだよ。アルが可愛いから。

 

「……結局、ソラはボンゴレから離れられてないじゃないか」

 

やばっ、オレがちょっとキレてない?

 

「えーっと、そこまで怒んなくていいよ。実はわたしが暴走して関わってることになっちゃったから。止めれなかったオレが悪いというか……、そもそもきっかけを与えてしまったのはオレだし……暴走したのはわたしだけど」

 

……未だにオレもよくわかってないんだよ。わたしの暴走に気絶しかけてたし。オレがわたしの行動を思い出して遠い目をしていれば、オレが心配しはじめた。

 

「……うん、君はすごく良いところにわたしを落ち着かせたよ。的確だった」

 

これ以上の正解はないね。オレでもここまでうまくやれるかわかんないよ。

 

「ツナ、未来のお前の采配に口出す権利はねぇぞ。んなことより、今しか相談できねぇ問題があるだろ」

「えっ?」

 

オレもよくわからなくて、首を傾げる。タイミングが揃ったよ。やっぱ双子なんだなと獄寺君と山本がオレ達をみていた。

 

「ラルについてだぞ」

「ラル?」

「彼女がここにいるのか?」

「正解だぞ」

 

そうだった、ラルはCEDEFの人間だったね。オレの中でのイメージは困った夫婦だったから忘れていたよ。

 

「アルには悪いけど、違うところに行くかぁ」

「なんで!?」

 

ヤダと言うようにオレがオレの腕を掴んでいた。しばらく見つめあって、オレはうなだれた。……わたしはオレに甘すぎる。

 

「京子とハルに口止めするよりは、ラルに口止めした方がマシだな。オレからも頼んでやるぞ」

「そうしてくれると助かるよ」

 

京子ちゃんとハルは親しみを持って接してくるだろうしね。マフィアのこととか全部話さずに合わせろなんて言えないよ。外だけならまだしも、このアジトの中までなんて今の2人の精神状態では無理だ。

 

リボーンがなんとかしたのか、次の日の朝にラルと顔を合わせても何も言ってこなかった。それどころじゃなかったのもあるけど……。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

 

次の日、オレは夜更かししたのもあって警報アラームで飛び起きた。

 

「アルー?」

 

音にビックリしてオレに飛びついてきそうなのに、アルはいなかった。泣いてなきゃいいんだけど。警報アラームの正体を知ってるオレは無視して、アルを探すことにした。超直感に従って歩いてると、出口に辿り着く。

 

「うそーん」

「って、ソラ!?ここで何してるの!?」

「今そんなこと言ってるヒマはないぞ!沢田!」

「や、でも」

「アルがここから外に出たみたいなんだ!」

 

揉めそうな2人を遮るような形で事実を伝えた。オレは魂が抜けそうになってた。オレも似たような顔をしていると思う。

 

「くそっ、お前もついてこい!」

 

頼むから無事でいてくれてよとオレは2人と一緒に外へ出た。もちろん早着替えしてからね。

 

どこへ向かってるか予想できる京子ちゃんの話をまずオレから聞いて、そのあとはアルの話。心当たりはあるのかって。

 

「……あるね」

「ほんと!?」

「多分アルは彼女を追いかけた。アルはまだ小さいけど、超直感はちゃんと機能している。彼女が出て行くところを見て追いかけた方がいいと判断したんだ。君のアルバムを見ていたから彼女のことも知っていたし」

「アルフレードのところへ飛べないのか!?」

「無理だ。オレは人じゃなくて地点で飛ぶ」

 

それに今飛べば、ミルフィオーレにこの炎を感知されて気付かれる。アルがどこに居るかわかってるなら使ってもいいけど、わからない状態だとリスクが高い。アルはボンゴレ狩りの筆頭候補なんだから。……せめてアルが止まって方向が定まってくれれば、賭けに出るのに。

 

「彼女の家には飛べるが、オレの超直感ではハズレだ。恐らくまだついていない」

 

こうなったら黒川の家に先回りするしかない。オレはオレの超直感を信じているようだし、うまく誘導する。ラルはオレが付いていくなら、付き合うしかない。

 

オレ達が黒川の家に着いた時、ちょうど京子ちゃんと黒川が合流したところだった。アルは黒川と顔を合わせない方がいいと思ったのか、隠すように京子ちゃんにしがみついていた。

 

「ソラちゃん怒らないであげて。勝手に飛び出したわたしが悪いの。アル君はずっとわたしを守ってくれたんだ」

「……わかってるよ、大丈夫。アル、よく頑張ったな」

 

黒川から見えないように気をつけながら手を伸ばせば、アルはギュッとオレに抱きついてきた。……怒られるとも思っていたんだな。オレを呼ぶ声が涙ぐんでる。

 

ポンポンとあやすようにアルの背を叩き、黒川に彼女を匿ってもらうようにお願いする。一般人にオレの炎は使えないからね。一瞬オレが何か言いかけるもとどまって、黒川に頼んでいた。

 

「後、オレの正体は彼女にはヒミツだよ」

「え?」

「ヒーローは正体を隠さないとね」

「ふふっ、そうだね」

 

自分が助けてもらった時のことを思い出してるのかもしれない。純粋な京子ちゃんの反応にオレはちょっと仮面の中で苦笑いする。本当はそんなカッコいい理由じゃないし、アルがピクッと動いたから。……聞きたいのを我慢してるんだろうなぁ。

 

オレはオレ達とも別れ、アルを連れて移動する。京子ちゃんの面倒までは見ないけど、ここから出来るだけ離れた場所から、炎を使う分別ぐらいはある。

 

せっかくだし、アルのご褒美も兼ねてケーキでも用意しようかなとオレはイタリアにとんだ。ついでにお兄さんから伝言でも預かってこよーと。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

用件をすませて日本支部に戻れば、オレにめっちゃ心配されていた。ごめん、のんきにご飯食べてから来たよ。後、作ってくれるっていうからケーキ待ちしてた。向こうが早朝って忘れてたんだよ。やっぱ一瞬で移動すると、時差のことが抜ける。

 

「ママ、ママ」

「アルが渡したいの?」

 

グイグイと強請るようにオレの服を引っ張るから、USBを渡す。嬉しそうに京子ちゃんへ持っていったよ。可愛いなぁ。

 

ただ京子ちゃんはアルの話をちゃんと聞いてくれているけど、どうしたらいいかわからないよね。この時代にもこのアジトにも慣れてないし。まぁ見かねたビアンキが手助けしてくれたから助かったけど。オレが手を出すと、スネそうだったから。一人で出来るもんってね。

 

ビアンキはネット回線に繋がない方がいいと判断して、それ用のパソコンを起動した。みんなも興味があったのか一緒に覗いている。

 

『京子、アルとソラから聞いたぞ!オレのことを心配してくれたんだってな。オレはこの通りピンピンしている!!オレが帰るまで、沢田を頼りにするんだ。極限に頼りになる男だぞ!!うおおお!!』

 

……音量を下げるように言うの忘れてたよ。この動画を撮った時も思ったけど、お兄さんの声大きすぎ。

 

感動している京子ちゃんや一緒に喜んでいるハル達の横で、オレと獄寺君の顔は引きつってた。山本は笑ってたけど。……まぁお兄さんの後ろで、アルがスクアーロの髪を引っ張ってた姿が映り込んでたからね。めっちゃ痛そうだけど、アルの大のお気に入りでオレは慣れちゃったよ。誰も止めないし。

 

この後オレがルースリア作のケーキを出したら、ついにオレもスルーし始めた。というより、ツッコミしたいけど怖くて出来なくなっただけだね。

 

……オレよ、そのままいろいろ諦めた方が楽だよ。XANXUSとベル以外、アルのおしめをかえたことあるから。大丈夫、オレも通った道だよ……。わたしの暴走ってやっぱ凄いよねとオレは遠い目をした。

 

●●●●●●●●●●

 

 

この数週間、アルは思いっきり遊んでいた。同じ年頃の子と遊ぶことも少ないからね。楽しそうだった。

 

京子ちゃん達もそろって遊んでくれた方が楽だろうし、オレが基本的にランボとイーピンの面倒をみていた。いつの間にか、ランボにママンと呼ばれるようになったのはびっくりしたけど。アルが怒らなかったから、好きにさせた。母さんみたいに見えてると思うとちょっと嬉しかったしね。

 

けど、ヒバリさんがこのアジトに顔を出したとアルが知ると、すぐにオレの修行場に突撃した。

 

「恭弥!」

「やぁ。元気そうだね、アルフレード」

 

ヒバリさん名を呼び捨てにして、さらに普通に話してるアルにオレはひいていた。気持ちはわかる。……ほんと、このコミュニケーションの高さは誰に似たんだろうね。

 

「今日こそ勝つよ!」

「きなよ、咬み殺してあげる」

 

なんであんなにウキウキと匣から銃を出して、向かって行くのかな。オレがびっくりしすぎて倒れそうになってるよ。もうちょっと手加減してあげて。ラルも唖然としてるじゃん。

 

そして容赦のないヒバリさんは本当にアルを咬み殺した。もちろんヒバリさんは手加減してくれてるよ。アルが伸びる程度にはボコるけど。これの何が怖いって、数分後にはアルがピンピンしてること。……血って凄いよね。

 

今日も完全にのびちゃってるなーとアルを抱き上げる。ヒバリさんはオレの相手に戻ったよ。オレがアルを心配してる余裕があるの?って感じで。

 

「アルの武器は銃なのか?」

 

ちゃっかりと見にきていたリボーンに言われた。やっぱコイツは気付くよな。

 

「アルの死ぬ気の炎、封じ込めてるんだ。……封印したのはリボーンだよ、鍵はオレが持ってるけど」

 

そう言って、弾を見せる。コイツがわかりやすく難しい顔するなんて珍しいよね。まぁリボーンがそう判断するぐらい、アルの死ぬ気の炎の量は多かったよ。自分の身体を痛めさせるレベルだったから。

 

「だから武器はグローブが正解。けど、封じ込めてる状態だと気持ち悪いんだって。アルはほとんどの武器を使いこなせたから、今はまだ本人が気に入った銃をメインに使ってるんだ。……アルを守るのにオレが選ばれたのはそういう意味もあるんだよ」

 

アルの身体が出来上がってからが本番だから。手加減してもらってるとはいえ、今の状態でもヒバリさんに時間を割いてもらえれるレベルには達してるんだよね……。

 

「初めての生徒がアルなんて、ハードル高すぎと思わない?」

「腕の見せどころじゃねーか」

 

……お前と一緒にしないでよ。オレ、この才能を殺しちゃったら後悔どころじゃ済まないよ!?

 

「っ、また負けたー!!」

 

そんなことをリボーンと話してる間に、アルが起きてさっそく悔しがっていた。なんでこんなに向上心も高いのかな。……これは絶対わたしやオレ似じゃないよ。

 

「前よりは手応えあったよ」

「ほんと!?」

 

ヒバリさんの一言でコロッと機嫌が直るところはまだまだ子どもだよね。って、アルは確かランボより小さかったよ、慣れって怖っ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

アルのついでにランボとイーピンの面倒はみても、今までこの件には関わっていなかった。けど、今日は骸の情報を得たと小耳に挟んだ。だから盗み聞きしようとしていたんだけど、リボーンにバレた。

 

オレもまだまだだなぁなんて思いながら、オレに誘われたから入る。草壁さんは一度確認してたけどね。聞かせてもいいのかって。ちなみに草壁さんもオレ達が双子とは知っている。そもそもこのアジトの中じゃ、オレは仮面つけてないしね。ただ骸とわたしが仲良いからさ。難しい立場だとオレもわかっていたから盗み聞きしようと思ったわけで。バレちゃったけど。

 

草壁さんの話は、オレの知っている情報よりは少なかった。けど、劣ってるわけじゃない。変わってなかったから。や、ちょっとは変化はあったよ。まぁそれはわたしが起こした騒動だからね。草壁さんも理由を察してるから流してたけど。まぁわたしと骸が会ってただけの話だしね。そしてオレも骸の情報を流す気はないから説明はしない。

 

そんな中、黒曜ランドからリングの反応が出た。本物かどうかと話し合ってるけど、情報を聞き終えればもう用がないので退散する。

 

「ソラ、どこに行くの!?」

「アルのところ。わたしには関係ないからね」

 

獄寺君の叫ぶ声にかぶせるように、リボーンからサンキューなと礼をもらった。まぁ充分ヒント与えたもんね。わたしが興味ないんだよ、黒曜ランドに居るのは骸と犬と千種ではないって言ってるようなものだから。ハズレかクロームの二択のどっちかと教えたわたしは、本当にオレに甘いよねぇ。

 

 

騒動が落ち着いて油断している頃、みんなの目を掻い潜ってオレはクロームがいる病室へとやってきた。クロームが寝ているのを確認して、フクロウをそっと撫でる。

 

「久しぶり、骸」

「……お久しぶりです、ソラ」

「そっちは順調?」

「ええ、と言いたいところですが、気付かれていますね」

 

バレちゃってるのに嬉しそうだね。わたしとしては心配しかないんだけど。

 

「ですから、僕はもう戻りますよ。あまり力を使うわけにはいきませんから」

「はぁい」

「余計な手出しは無用ですよ。では、またお会いましょう」

「はぁい……、またね」

 

うーん、うまく隠してたつもりだったけど釘刺されちゃったよ。ほんと、昔っからそうだよなぁ。

 

はぁと大きなため息を吐いて切り替えてから自分の部屋へと飛ぶ。けど、大人しく待っててくれてたアルに元気ないの?と心配されてしまった。

 

「ママは愛されてるけど、寂しくもあるんだよ」

「パパに会いに行く?」

 

うーん、会ってもなぁとわたしとオレの心が一致した。

 

…………えっ、そこで引っ込むの!?アルへの返事はオレに投げるの!?やっぱ、これだけはわたしのことわかんねーとオレは頭を悩ませながらも口を開いた。

 

 

 

わたしが骸と会ってから数時間後にクロームの容態が急変した。少し悩んだけど、オレはアルを途中に出会ったハルに預けて、会議室へと向かう。ちょうどヒバリさんも会議室に入っていくところだったみたいで、目があった。

 

「へぇ。君が来るってことは話す気になったんだ」

「ヒバリさん?……っソラ!!」

 

骸の情報を少しでも欲しいから、会議室に入った瞬間に視線が集まった。

 

「先に言っておくけど、わたしだってあんまり知ってるわけじゃないよ」

「それでもいいよ!」

「骸はミルフィオーレの本部に侵入していたよ。数時間前に話したけど、もうバレてるって言ってたから何かしらあったんだろうね」

 

わたしの言葉にいろんな視線が突き刺さる。骸の心配がほとんどだろうけど、中には数時間前に話していたという点が気になってる人もいる。今はそんなことを言ってる状況じゃないから言わないだけで。

 

「ソラ、おめーはどうするんだ」

「いかないよ。アルのことを抜きにしても、骸はわたしの手を絶対にとらないから。……昔っからね」

 

わたしなら復讐者と交渉だって出来るのにね。感づいているのに、絶対言わないんだよ。

 

「骸は……ソラに幸せになってほしいんだよ」

「……うん、わかってるよ。大丈夫」

 

骸は自分の都合でわたしの手を汚すことが許せないんだと思う。わたしの手は汚れきってるのにね。最初にわたしが骸の手を取らなかった。ただそれだけの理由で……。

 

「まっ、それでもわたしも骸の安否は気になるからさ。ちょっと行ってくるよ」

「へ?今いかないって」

「ミルフィオーレのところにはね。復讐者に生きてるか確認しに行くぐらいなら、骸も怒らないよ」

 

呆れはするかもしれないけどね。一瞬で早着替えし、わたしは飛んだ。なんかオレが叫んでた気がするけど、気のせいだよね。

 

ミルフィオーレが待ち伏せしているかもしれないから、わたしは牢獄の門の中に飛んだ。予想通りイェーガーがやってきたよ。

 

「悪いね、答えを聞きたらすぐに帰るからさ」

「……六道骸は生きている」

「そっか!ありがとう」

 

復讐者もわたしの行動に慣れつつあるよね。なんだかんだ言いながら付き合い長いし。といっても、まだ長居するほどの関係じゃないけど。宣言通り、またねと声をかけてすぐに帰ったよ。

 

「ただいま」

「……ソラ!!」

 

戻って早々、オレに飛びつかれた。……オレは心配症だなぁ。ヒバリさんの機嫌悪くなってるから、離れた方がいいと思うんだけど。とりあえず肩をツンツンして、ヒバリさんを指したんだけどオレはぐりぐりと抱きついたまま動かない。……オレ、幼くなってない?まぁわたしも骸には似たような態度とるしなぁ。仕方ないからそのまま報告する。

 

「骸は生きてるって。彼女への幻覚が途絶えたから弱ってるのは間違いないだろうけど」

 

一先ずホッとしたような空気が流れた。ただクロームは5日後に戦えそうにないことはリボーンがきっちり釘をさしたけど。

 

ラルが代わりに出るといったけど、非7³線の影響の話へと流れていく。オレもこの時ラルが体調が悪いとはわかっていたけど、非7³線のこととかはさっぱりだったからなぁ。流石に空気が悪くなったからオレもわたしから離れたね。助かったよ。

 

「非7³線を放出しているのはミルフィオーレで間違いないよ」

 

再び視線がわたしに突き刺さる。もう一人のわたしが頭を抱えてるけど……許してよ。

 

「わたしも似たようなことするだろうから。……その前に君がわたしを殺すんだよ」

「ソラ……?」

「っ、悪い。オレからもよく言っておくから。アルがいるし、そう簡単に道を外れることはないよ。だけど、わたしの言った言葉は覚えておいて。過去のわたしはまだ危ういから」

 

未だ戸惑ってるオレの頭を撫でる。過去のわたしがこれ以上狂わないように、オレが出来る最大限のアドバイスを贈る。

 

「だから過去に戻ったら、抱きしめてあげて。そして出来れば……家族になってあげてよ」

「当たり前じゃないか!!」

 

うん、オレがそう言ってくれるだけで、わたしは大丈夫だとオレは笑ったんだ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

あの後、部外者のオレがこれ以上居てもと思ったから会議室から出て行った。といっても、盗み聞きはしたけどね。リボーンとヒバリさんは絶対気付いていたけど、何も言わなかったよ。多分、オレにも聞く権利はあっただろうけど、姿は見せない方がいいと思ったんだろうね。

 

いろいろと理由は増えていたけど、5日後に殴り込みする決断は変わらなかった。

 

その日の夜、お兄さんに話しかけられた。やっぱりボンゴレ上層部の決定は変わらなかった。幼いアルを戦いの場に出すぐらいなら、生き残らせて再編にかけた方がいいからねぇ。

 

「ソラ、お前はそれでいいのか?」

「アルはそれでいいと思いますよ。けど、オレに命令出来るのは一人だけです」

「……だな。沢田にはいつ聞くのだ?」

「今日新技の完成が見えてきたみたいだから明日のうちには聞きますよ」

 

そうかと返事と共に、お兄さんに肩を掴まれた。え、ちょっと待って!?

 

「よし、ここからは大人の時間だな。極限飲みにいくぞ!」

「……オレにはアルが待ってるんで」

「心配いらーん。京子に任せた!アルも楽しんできてねと言っていたぞ」

 

そういう根回しはいらないよ!?けど、完全に掴まれてるからズルズルと引きづられるだけ。

 

で、ついた先はヒバリさんのアジト。飲みに行くってそこなの!?

 

「ヒバリィー!飲みに来たぞー!」

「うるさい。何群れてるの、咬み殺すよ」

 

言うと思った。オレはもう来ちゃったし、諦めて飲むよ。ヒバリさんはうまいお酒持ってるだろうしね。

 

「それで何です?」

 

草壁さんに用意してもらったお酒に口をつけた途端、オレは本題に入った。連れ出した理由を教えてくれないと酔っちゃうからね。オレは弱くはないけど、強くもないの。

 

「なに、深い理由はない。沢田とは飲んだことがあるが、お前とはなかったと思ってな」

「……そうですか」

 

チラッとオレはヒバリさんの顔色をうかがう。お兄さんはそれで納得できるけど、ヒバリさんもその気になるには弱い気がする。

 

「顔だけじゃなく、そういうところもそっくりだよ。小動物」

「……双子なんで」

「君に聞いてみたいことがあったんだ」

 

ヒバリさんがオレに?と首を傾げると、お兄さんにも確かにそっくりだと笑われた。……オレを酒の肴にするのはやめてよね。すぐに謝ってくれたし、悪気のないお兄さんだからいいけど。

 

「いくら僕が探しても出てこないのに、ある時に限って現れるんだ。それはどうして?」

 

……なんて答えればいいんだろ。中学生になったオレが気にする人だったからなんて言えないし。

 

「まぁいいけど。一度、君と本気で戦いたいな」

「あ、オレはそういうの結構なんで」

 

ムスっとしているけど、無視する。オレはオレと違うんで、優柔不断じゃないし、ヒバリさんに頼み事なんてしないしね。アルのことも頼んだわけじゃないし。アルは自分から突撃したんだよ。

 

「ぶっ!フラれたな、ヒバリ!」

「諦めたつもりはないよ」

 

はいはいとオレは流す。ヒバリさんが戦闘に関してしつこいのは知ってますから。

 

「……でもわたしはヒバリさんのことを気に入ってるんで、機会があれば付き合ってくれると思いますよ」

「へぇ。会ってみたいな」

 

そういや、ヒバリさんはわたしとは滅多に会わないもんね。いやまぁオレだってオレに打ち明けてからじゃないと、ヒバリさんの前にまともに現れなかったけど。お見舞いとかしても、出会わないようにしてたし。どんどん感覚が鋭くなって、この人どこ目指してんのと思ってた。いやまぁ咬み殺したかったんだろうけど。打ち明けからは落ち着いてくれて助かったよ。まぁオレが基本その場にいたし、オレは子どもを抱いてたのもあるよね。

 

「おお、極限よかったではないか!と言いたいところだが、その機会が来るのはいつになるんだろうな……」

 

お兄さんの一言で少ししんみりする。オレは仮死状態で生きてるけど、落ち着くまで随分かかるだろうなぁ。そしていつもなら何か言い返そしそうなヒバリさんは口を開かなかった。この世界以外、攻略されちゃってるだろうから。

 

なんとなくそのまま朝までコースの流れに。オレは当然途中でお茶に切り替えました。許してくれなかったら帰ったのにね。結局、お兄さんは途中で眠ちゃったけど。草壁さんは下がらせていたから、正直気まずい。たまに極限って寝言を言ってくれて助かるぐらいだよ。

 

「君は……どこまで知っているんだい?」

「……全部です」

「そう」

 

顔には出さなかったけど、急に質問してくるからビビったー。よく考えたら、わざとだよね。草壁さん下がらせたのも、お兄さんをハイペースで飲ませたのもこの人だったよ。

 

「なら、沢田綱吉から託されてるでしょ」

「……多分そんな大層な考えじゃないですよ。オレとわたしがボンゴレを嫌いで、ボンゴレじゃないから信頼できた、それぐらいの理由ですよ」

 

相変わらず怖い人だね。なんでもお見通しで誤魔化しは無意味だったよ。にしても、それならよく大人しくしてたね。まぁオレとヒバリさんが面と向かって二人きりになることなんて、今までなかったけど。アルは伸びても、すぐ起き上がっちゃうからねぇ。

 

「過去から来る僕がうらやましいな」

 

え、これ、オレ謝った方がいいの?まぁ謝らないけど。決めたのはオレじゃないし。後、戦うことを考えてる時に色っぽくなるのは本当にやめてください。一応オレ女なんで、反射で身の危険を感じます。……口には出さないよ、咬み殺そうとするきっかけを与えることになるからね。今日のわたしは乗り気じゃないみたいだし。いやどっちかというと、戸惑ってる?

 

ふわぁぁとヒバリさんが欠伸をしたから、ここでお開きに。お兄さんはそのまま転がしておいていいんだって。オレが飛ばしてもよかったけど、ヒバリさんがいいならいいや。

 

「アルに会いに行こうっと」

 

多分ランボとイーピンと一緒に寝てるだろうし。予想通りの場所にいて、オレはアルの寝顔をみつめる。……いったいオレはどういう気持ちでオレ達に託したんだろうね。もしこの作戦が失敗したら、判断はオレ達に任せるつもりだったのかな。

 

次の日、オレにオレの行動について聞けば、殴り込みには不参加で、もしもの時の判断はオレに任せると言われたよ。……やっぱりそうなんだとちょっと笑った。




10年後なので、マフィアでも正体バレしている人なら一緒に過ごせるぐらい、わたしは落ち着いています。


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第4話

殴り込みの日はほとんどの時間をアルとの修行に付き合っていた。多分落ち着かないんだと思う。それにほとんど歳の変わらないランボとイーピンが向かったのに、アルは行けなかったから。アルは頭がいいから自分が行けない理由はちゃんと理解しているけど、悔しかったんだろうね。

 

そのアルも作戦が成功したと知った途端、眠っちゃったけどね。度々休憩は取っていたけど気が抜けちゃったみたい。オレはアルをベッドに寝かしつけ、リボーンに声をかける。

 

「ちょっとの間、アルのこと頼むよ。オレの超直感には何も反応ないから大丈夫だと思うけど」

「ああ、いいぞ。向こうに行くのか?」

 

これは行くことはわかってるけど、理由を知りたいんだろうな。ちょっと気になることがあるだけだよとオレは軽く答えて飛ぶ。もちろん仮面で顔を隠してだよ。まぁ別に白蘭には見られてもいいんだけどね。今オレが知られたくないのは父さんと母さんぐらいだし。

 

オレが現れると周りが一瞬の警戒していた。まぁ炎を使っての移動だしね。気にせず周りを見渡しているとオレが突進してくる。……やっぱ幼くなってない?

 

「ソラ、どうしたの?」

「救急箱かしてくれない?」

「へ?もちろんいいけど……」

 

不思議そうにしながらも、オレは離れてすぐに持ってきてくれた。悪いねといい、オレの頭を撫でてから歩き出す。オレが追いかけてくるからちょっと笑った。目的の人物の前に立てば、めっちゃオレたちを交互に見てたけど。

 

「選んでください」

 

ヒバリさんはムスッとしながらも、大人しく怪我をしている手を出した。まぁ拒否すれば、オレが気絶させるだけだもんね。にしても、この頃のヒバリさんはまだまだ可愛いよねぇ。今じゃ夜の炎を使わなくちゃ無理だもん。流石に子どもが出来てからはやらなくなったけど。

 

後ろでオレが衝撃を受けてるからか、周りにも伝染していく。見せ物じゃないよとしっしと手を振ったけど、効果があったかは微妙。

 

「ソラとヒバリさんってどういう関係……?」

 

鬱陶しいだろうに、ヒバリさんはオレの呟きが聞こえても我慢していた。いや、ヒバリさんも知りたいのかもしれないね。未来のヒバリさんも気になってたみたいだし、オレがどういう目的で現れるか。……あれからいろいろと考えたんだよ、オレも。

 

「ほっとけない人?」

「えっそれって、も、もしかして!?」

「うるさい」

 

そう言ってヒバリさんはオレが掴んでない方の手で、オレを殴っていた。もちろんトンファーを使っていたから、痛そうだった。

 

「ただオレがほっとけなかっただけだって」

 

模範したオレが幼くて危なっかしいヒバリさんを見て、なんとかしたいと思ったんだよ。あの頃は変にオレとわたしが混ざり合ってたから、よくわかってなかったけどね。あれはわたしじゃなくて、オレが反応した心だ。幼いころに獄寺君が並盛にいれば、同じようなことをしてただろうし。まぁ大きくなったら獄寺君の面倒はみれなかったけど。マフィアだからね。

 

「わたしは彼のことを気に入ってる程度だろうね。君の勘ぐり過ぎ」

 

殴られた箇所が痛いのか頭を押さえながらもオレは、オレの顔を覗き込んできた。仮面してるから目ぐらいしか見えないのにね。見えた顔は心配しているのか、すげー眉間にシワがよっていたから思わず吹き出すように笑う。

 

「へ?」

「や、ごめん、笑って。でもさ、わたしがアルを産んでるのを忘れてるでしょ」

 

あっ、とオレが声をあげた。どれだけ修行で疲れてても毎日オレ達とアルに会いに来てたのに、なんで抜けるんだろうね。まぁ理由はわかるけどさ。

 

「君がオレのことを気にしてくれてるのはわかったけど、オレはそういうの興味ないの」

「そうなの?」

「ウソかどうかは君ならオレの顔を見なくてもわかるでしょ」

 

オレがそう言うと、すぐに納得したみたいで眉間のシワがなくなった。ほんと、顔に出やすいね。

 

「はい。おしまい」

 

我慢の限界だったのか、ヒバリさんはすぐオレ達から離れた。まぁかなり鬱陶しい視線だっただろうしね。オレに気絶させられて浴びるより何十倍もマシだから大人しくしてただけだし。あと、本当にうるさかったよね。どんどん機嫌が悪くなってたよ。

 

用事が終わったから去ろうとしたら、ちょうどXANXUSが敵の大将を倒したという情報が入ってきた。……喜んでるねぇ。

 

白蘭のホログラムが浮き上がって完全にタイミングを逃しちゃった。もちろんアルに何かありそうならさっさと去るけど。

 

「あれ?ソラちゃんが居るよ。めっずらしーね。でもちょうどよかった、一度君と話してみたかったんだ♪」

「オレと?」

「うん。君なら僕のことわかってくれるだろ?」

 

……まぁオレよりはわかるだろうね。

 

「僕のゲームに絶対入ってこない君だからこそ、僕の創る世界に登場するのに相応しいんだ」

「生きたキャラクターとして?」

「やっぱり僕が見込んだ通り、ううん、それ以上だ」

 

はぁとオレは首を振る。そんな熱のこもった目で見られても、オレもわたしも興味がない。……オレはそのままの意味だけど、わたしはお前と位置がかぶるっていう意味だからね。コイツ、本当にわかって誘ってんの?

 

「うーん、つれないなぁ。でも考えといてよ、君ならいつでも大歓迎♪」

 

これ以上はわたしに悪影響だと思ったオレは、アルのいる部屋へと飛んだ。

 

しばらくの間、ただアルの寝顔を見ていた。するとリボーンがやってきて、疲れたぞとオレにもたれかかるように眠った。……ったく、寝るならここじゃなくてもっといい場所があるだろうに。なんて思いながらも、オレも休むかなと目をつぶったんだ。

 

●●●●●●●●●●●

 

 

白蘭が10日後まで手を出さないという話だったから、オレはアルへの状況報告も兼ねて、お兄さんへの説明を手伝った。獄寺君はアルの方がすぐに理解したから、キレるのを通り越して頭を痛めてた。最後にはアルが教えてたよ。お兄さんは子どもの感覚の方があったらしい。難しい言葉とか使わないもんね。

 

その後はイタリアへ飛んだ。状況を理解したアルが行きたいって言ったからね。オレがバジル君が来てからは仮面を外さなくなって、近寄らなくなったのもあったと思う。オレも今回は引き止めなかったよ。だから京子ちゃん達には説明しても、バジル君には正体は教えないだろうね。バジル君は父さんに憧れてるのもあって報告しそうだから。

 

 

チョイス当日もそのままイタリアで過ごしたよ。一応確認しに行ったら、参加しなくていいとオレに言われたしね。まぁ結局、日本に向かうことになったから、わたしとアルも飛行機に乗せてもらったけどね。アルが興味津々だったんだ。わたしと一緒にいると乗る機会ないもん。もちろんわたしの力は借りる気がないのはわかってたから、声なんてかけてないよ。そもそも昨日わたし寝させてもらえなかったから、飛行機でちょうどよかったの。おやすみなさい。

 

 

並盛についたら別行動になった。アルは行きたそうだったけど、そういうわけにもいかないし。まぁ戦いが見える位置にはいるけどね。オレが居ればすぐ逃げれるから。

 

「よく見ておくんだよ、アル」

 

オレがかけれる言葉はそれしかない。幼いアルの心にどう影響を及ぼすのかはわからないけど、目をそらすことは良くないことはわかる。

 

「ママは悔しくないの?」

「ないね。薄情だと思っていいんだよ」

「思わないよ。それに僕は11代目にはなりたくないけど、僕がするべきことには変わらないもん」

 

まぁねとオレも頷く。アルの将来の夢を考えたら、白蘭を倒す以外に道はないからねぇ。……なんとなくだけど、白蘭に攻略された世界でも、大人になったアルが白蘭を倒す未来があったと思う。まぁその場合は夢は叶わず、アルが11代目になってるんだろうけど。

 

「……アル」

「ママ?どうしたの?」

「最後までこの件に関わらずにいたかったんだけど、そうはいかないみたい」

「え!?」

 

驚いてるアルを落ち着かせるように頭を撫でる。

 

「多分そうじゃないかと、どこかで思ってたんだ。それに、ママはジョーカーだから」

「ジョーカー?」

「そ。有益でもあるし有害でもあるの」

 

結局、気付いたのはヒバリさんだけだった。……ほんとオレの頼み事は厄介だよ。わかっててオレ達に押し付けるんだから。

 

「滅多にない上司からの頼みごとだから、アルも我慢してね」

「……パーパだから我慢する」

 

スネちゃって可愛いなぁ。連れて行けなくてごめんね、ちゃんと帰ってくるよと伝えるようにぎゅーっと抱きしめる。……ああ、もう時間だ。大事にしまっていた匣がガタガタと震えだす。

 

「アル、あっちに送るから。パパと一緒にいるんだ!」

 

返事すら聞かずにオレはアルを飛ばした。そうしている間に、結界がうまれてしまった。夜の炎を使って飛ばしてみるけど、新たに結界がうまれる。

 

「やっぱり、匣が中心か!」

 

クソっ!とオレは思わず悪態をつく。……うわ、ちょっとうつっちゃったし、わたしがめっちゃ笑ってるよ。

 

オレは頼まれたものを守るために、仕方なく結界の中に入る。

 

「あーもう、最悪だよ……」

 

オレが入れるぐらい結界に余裕があったのは良かったけどさ。合流しちゃったら、白蘭だけじゃなく、みんなにバレちゃうんだよ。……絶対に返品しよ。

 

「ママ!」

 

良かった良かった、ちゃんと言いつけ守ってたし、守ってくれてたよ。オレがそれだけでも助かったとホッとしていたら、結界から出そうと悪態をつきながらも銃をぶっ放してくれた。……やっぱあいつがパパなんだよな。なんて自分のことなのに他人事のように思うオレがいる。いやまぁ昨日のこととか考えたらわかってんだけどね。でもな、やっぱオレじゃないし。わたしが幸せみたいだからいいけど。アルも可愛いし。

 

頑張ってくれたけど残念ながらそう簡単に破れる結界じゃないし、オレも大空3人組のところに合流してしまった。

 

「ソラさん!?」

 

ユニが驚いてる横で、白蘭も目を見開き、次の瞬間には声を出して笑っていた。この戦場には似つかわしくないね。……オレは気を失ってて、ユニがアルコバレーノが復活させようとしていることもバレちゃってる感じか。

 

「ハハハっ。すっかり騙されちゃったよ。……まさか、この時代のボンゴレリングをソラちゃんが持っていたなんて」

 

オレは諦めて、覆っていた手を開く。ボロボロになった匣から、全てのボンゴレリングが出てきた。あーあ、壊れちゃったよ。特別製って聞いていたんだけどなぁ。特別製だから今まで保っていたのかも知れないけど。

 

「この世界の綱吉クンは、どうして過去から来た綱吉クンに託したんだろう?それを使えば良かったのに」

「……君は彼のことを知らなすぎる」

「そんなことないさ。僕以上に綱吉クンを知らない人はいないよ。たとえ君であっても、ね♪」

 

はぁとオレはため息を吐く。そりゃまぁどの世界のオレと対峙してるから自信があるみたいだけど、オレの本質を理解していない。ユニは気づいているのに。……お前が気付くのはオレに倒されてからだろうな。

 

「彼はこの世で一番の頑固者だよ。7³の役割をオレが教えたから砕かなかっただけで、ボンゴレリングを使わないと決めたなら、死んでも使わない。そういう男だ」

「ふーん、それで僕に殺されちゃったら意味がないのに」

「意味はあるよ。彼が彼でいられる」

 

そんなこと?と白蘭は首をかしげているけど、オレにとっちゃ重要なことだよ。そしてそんなオレだから、わたしは抑え込むのにオレの人格を模範した。

 

「まっいいよ♪それで綱吉クンの代わりにソラちゃんが僕の相手をしてくれるの?」

「しないよ。オレは関係ないから。頼まれたから預かっただけで、そういう命令はされてないし」

「そーこなくっちゃ♪やっぱり君は僕の世界にふさわしい住人だよ♪」

 

はいはいとオレは流すけど、オレの周りを白蘭が鬱陶しいぐらいにまわってるから口を開く。

 

「オレにかまってないで、彼の相手しなよ」

「もう綱吉クンは完全に壊したよ」

 

本当に?とオレが首をかしげると、リボーンが叱咤して、オレは目をあけた。ガタガタと震えるオレに声をかける。

 

「もう帰る?この時代の君のわがままで、過去からの君にかけた。けど、元々君が背負うことじゃなかったんだよ」

「帰すつもりはないよ。でも本当だよね。この時代のボンゴレリングはあるんだから、死ににきたようなものだ♪」

「白蘭うるさい。オレは彼に帰るか帰らないか聞いているんだ。……いや、違うね」

 

……よく見ててね、アル。ジョーカーの意味をちゃんと理解するんだよ。

 

「わたしに命令すれば叶えてあげるよ。白蘭を殺してほしい?帰りたい?新しい世界がほしい?それとも……ユニを生かしてほしい?」

 

チラッと視線を向ければ、ユニは一歩さがった。

 

「怖がらなくたっていいのに。まぁ君は自分の命を使ってでもアルコバレーノを復活させたいみたいだから、阻止されたら困るもんね」

「どうしてそれを知って……」

「ふーん、そうなんだ。それはやめさせなきゃね。ユニちゃんの命は僕のためにあるんだもん♪」

 

白蘭のせいでますますわたしにも怯えちゃったじゃん。

 

「もう。白蘭と一緒にしないでよ。わたしはユニの願いを叶えた上で、生かすことだって出来るんだよ?」

 

みんな驚いた顔をしているけど、わたしの発言で一番反応したのは白蘭だった。

 

「ウソはついちゃダメだよ。希望を持たせて、ユニちゃんがかわいそうだよ」

 

どの口がいうんだよと思わずもう一人のわたしがツッコミしていた。もちろんわたしの中でね。

 

「成功例があるのに?」

「……そんな世界なかったはずだよ」

「君が知らないだけじゃない?まぁ確かに今回の場合は時間がシビアだけど、わたしの超直感があればなんとかなるよ」

「……やめろ」

 

ふふっとわたしは笑い、オレを見ながら問いかける。

 

「何を?」

「……全部だよ。ソラは関係ない、未来のオレも、関係ないんだ。これはオレの問題だ。……ソラは何もしないで」

「うん、いいよ」

 

あーあ、残念だなぁなんて言いつつ、オレが表に出る。

 

「オレもわたしの暴走に疲れちゃったよ。後は任せていいんだね?」

「うん。……任せろ」

 

再びオレに死ぬ気の炎がともった。少し心配だったけど、オレの心がかわったわけじゃないから、ちゃんとプリーモが現れてくれた。

 

ただオレの枷を外した後、オレが持ってるボンゴレリングの方にもプリーモが現れるとは思わなかったよ。

 

「……なるほど。面白い使い方をしたな」

「面白いで済ませていいのかなぁ……」

「それでいいだろう。お前の役に立ったなら」

 

それだけ言ってプリーモは消えた。本来の持ち主がいなから、もちろんこのリングはそのまま。……にしても、相変わらず寛容というか、大空だよねぇ。わたしは絶対本来と違った使い方したのにね。

 

「ソラ」

「オレのことはいいから、早く終わらせなよ。せっかくプリーモが枷を外してくれたんだから」

 

気にはなったようだけど、オレは白蘭に向かっていった。そしてオレはユニに視線を向ける。

 

「ソラさん……」

「許可がおりなかったからね。何もしないよ」

「……ありがとうございます」

「うん、それが正解。オレに生かされても地獄でしかないからね」

 

……まったくオレはどこまでわかってて許可しなかったんだろうね。

 

オレが何もしないからか、結界を壊す動きが外であった。ボンゴレリングが増えたから難しいかなと思っていたけど、アルも匣兵器を出して参加してたよ。

 

結界の中に入ったγはチラッとオレを見たけど、何も言わずにユニを抱きしめた。

 

「復活するまで白蘭からおしゃぶりは守ってあげるよ。わたしが余計なことを言ったしね」

「はい。ありがとうございます」

 

ユニとγが消えた。オレが悲しんでる横で、約束通り守るようにおしゃぶりを抱きかかえる。それを見届けたオレは頼むと声をかけてから白蘭に向かっていった。

 

「何も出来なかったなぁ」

 

ポツリと誰にも聞こえないような声で呟いて、次には言葉をかえる。

 

「……何もしなかったなぁ」

 

オレなら……アルコバレーノの呪いの解き方を知ってるオレなら、何がなんでも解いていた気がする。必死に未来をかえて、こんな未来にはならなかった。

 

後悔している……?ううん、後悔していないことに驚いている。

 

それに……どうしてオレはあんなに悲しんでるのに、オレは悲しくないんだろう。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

白蘭が倒され結界がとけたから、太猿と野猿の元へと向かう。残ったユニとγの服を持っていたからね。普通に渡そうとしたけど、ひったくる勢いでおしゃぶりと共に取られた。

 

それは……悲しいから?いっぱい泣いてるもんね。でも……よくわかんないなぁ。

 

「おい」

 

呼ばれたから振り向けば、チッと舌打ちとともに担がれ、オレの方へと歩いていく。うーん、わたしは荷物じゃないんだけどなぁ。あと仮面がズレそうで怖い。

 

「ドガス、受け取れ」

「んなっ!?ソラ!?」

 

ポイっと落とされちゃったよ。ちゃんと痛くないように落とす時は気をつけてくれたからいいけど。仮面もズレなかったし。

 

「ちょ、怪我ない!?というか、ソラに何してんの!?XANXUS!!」

「るせぇ」

 

こういうことだろうなぁとオレの首に手をまわす。

 

「ソラ?」

「君はわたし達の精神安定剤でもあるから。ちょっと白蘭に感化されて変みたい」

「えええっ」

 

慌ててオレが抱きしめ返してくれた。

 

「ママー!」

「アル!よかったぁ。無事で」

 

オレとわたしが抱き合ってたら、アルも突撃してきたよ。……そういや、アルも怖がらなかったよ。大空って心広すぎない?

 

「パパが守ってくれたもん」

「うん、そうだね。ありがとう、XANXUS」

「え゛」

 

ん?なんかオレから凄い声が聞こえたような……?不思議に思ってるとガバッとオレに肩を掴まれた。

 

「ソ、ソ、ソ、ソ、ソラ……、アルの父親って……」

「え?えええ……もしかしてまだ気付いてなかったの?」

 

結構ヒントあったと思うんだけど……。アルの髪色とか、武器とか、スクアーロで遊んだりするところとか、イタリアで過ごしてたりとか。リボーンなんて、妊娠中の警護にヴァリアーが出張ってくる時点で察したのに。産まれたアルの顔を見たから、オレに正体教えたんだよ?その前からヴァリアーが守ってるのはおかしいでしょ。というか、わたしが結界に閉じ込められて合流するまでは、雑だったけどアルを抱いてたじゃん。まぁドタバタしてたから見逃したとしても、さっきの行動で察しないのはオレぐらいだよ。

 

「んー、アルの将来の夢を教えてあげたら?」

「パパみたいにヴァリアーのボスになりたい!」

 

それがトドメだったのか、オレは気絶した。まぁアルコバレーノが復活したら、リボーンに起こされていたけど。

 

●●●●●●●●●●

 

 

残念ながらドタバタしている内にXANXUSは帰っちゃったらしい。まぁまた行くからいいんだけどさ。どうせオレにわたしが会いに行きたいと訴える前に、アルが行きたいって言うだろうし。……いやまぁわたしが気にしてないみたいだからいいんだけど、一言もなく帰んの?とオレは思うわけで。

 

それに今は珍しく骸がアジトに居るから、そっちに突撃するのが優先らしい。いやまぁこっちはオレもわかるんだけどね。XANXUSとの空気感が読めなくて。オレは奥底でいるけど、通訳ちょうだいってオレはいつも思うの。わたしはなんで通じてんの?あいつ目つぶってるだけじゃん!とオレは思うわけで。そんな高等テクされたら、オレには理解不能なの。かといって、わたしが悲しい時に会いたいわけじゃないみたいだし。……なんでわかんないの?と不思議そうに言われても、オレにはわかりません!

 

……もういいや、骸だよ、骸。オレもわたしが骸に会いたい気持ちは理解できるし。急ぐから大人しくしてね。

 

アルは過去に戻ってしまう人達のところに行っておいでと声をかける。もう会えなくなっちゃうから。オレも後で行くよ、ちゃんと。

 

 

「骸!!」

「ったく、君はいつになっても変わりませんね」

 

子どもがいるというのにとブツブツ言いながらも、骸はわたしを引き剥がさないよね。

 

「あんた骸ちゃんの何!?」

「ん?誰?」

「それはこっちのセリフよ!」

 

記憶ではM・Mだったっけ。骸から紹介されてないし、別にいいかな。犬と千種もわたしが抱きつくだろうと予想してたのか気にしてないしね。またやってるとかは言われてるけど。

 

「ね、たまには会いにいっていいよね」

「断っても押しかけてくるのでしょう?君一人なら、かまいませんよ」

 

アルはやっぱりダメなんだね。そんな気がしてたけど。それにしても後ろでムキーっていう声が聞こえてるよ。骸、モテモテじゃん。離れた方がいいのかな。

 

「かまいませんよ。僕からみても、君は……危うい」

「うん、ごめん」

「謝る必要はありませんよ。ソラ、あなたは何も悪くないのですから」

 

……そうだね、骸はマフィアが悪いっていうよね。だからわたしも甘えられるんだよ。

 

ちょっと周りが煩かったけど、骸はわたしの気が済むまで付き合ってくれた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

別れの時、オレが預かってるボンゴレリングは一応保存タイプの匣に入れた。未来のオレが用意した入れ物じゃないからあんま意味がないかもしれないけど、多分大丈夫だろうね。本来の世界に戻ろうとする力が発生するだろうから。……絶対、返そう。バレちゃったからXANXUSに会いに行きにくいと言えば、多分オレは折れる。自分で管理して使わなきゃいいだけだしね。

 

「ソラ……その、最後に顔みたいなって」

 

そう言われてもねぇとオレはバジル君をチラッと見る。……うん、絶対話すね。何のためにあの騒動の中でも仮面付けてたのって話になるしねぇ。

 

アルはオレとXANXUSの子どもとバレるぐらいはいいんだよ。オレと顔がそっくりだなとは思われてるだろうけど、それぐらいなら父さんに報告しても気付かれないと思う。誰もバジル君の前でアルを11代目なんて呼んでないし。アルがオレのことをパーパと呼ぶのも、あだ名とか言ってみんなで誤魔化してそうだし。まぁウソではないしね。愛人と思われてるのを知らないから違和感がないだけで。

 

9代目は夢を見たらしいけど、無粋なマネというかオレに申し訳ないと思うだろうしリボーンからも止めるだろうから大丈夫。アルコバレーノもないね。父さんと関わってる人がいないもん。ラルはまぁ中身は大人だし、こっちもリボーンが釘を刺す気がする。それになんだかんだ言ってラルは優しいから、バジル君が余計なことを言わないように誘導するぐらいやってくれそう。父さん側からの暴露だと修復不可能というのも察すると思うし。

 

白蘭は……論外で。ユニに救われたら言わないだろうし。たとえコロッと口がすべっても、信じてもらえるかも怪しい。ジッリョネロもわざわざ告げ口しないと思う。まだボンゴレと同盟でもないしね。

 

後はディーノさんとヴァリアーぐらいでしょ。言わない、絶対この人達は言わないよ。……ヴァリアーはいろんな意味で反応が怖いけど。過去のオレ、頑張って。そして2人ともオレからの突撃頑張って。

 

やっぱ問題は父さんを尊敬しているバジル君だけだね。

 

「ツーナ、任せとけって」

 

そう言って山本がバジル君の肩を組み、後ろを向かせていろいろと話しかけていた。さりげなく獄寺君も振り向いても見えない位置に移動してた。オレの顔が山本、獄寺君ありがとう!ってなってる。……オレ、わかりやすすぎ。

 

まぁここまでお膳立てされたら、オレも仮面を外して別れの挨拶をする。……そういえば、ヒバリさん知らなかったね。視界の端で目を見開いたのが見えたよ。まぁそこはバジル君が来るまでにアジトへ一切顔を出さなかったヒバリさんが悪い?し。

 

「えええ!?」

「正一、空気読みなよ」

「それをスパナがいう!?って、ごめん!邪魔してごめんよ!」

 

……あれ?正一君も知らなかったっけ?そうなるとスパナもなんだけど、動じなさすぎて逆に驚いたよ。まぁ正一君が落ち着いたみたいだから、オレに向き合う。

 

「ソラ、ちゃんと約束守るからね!」

「うん。過去のわたしを頼んだよ。未来のわたしよりも危ういだろうしね」

「大丈夫。オレ、絶対離さないから!」

 

ありがとうと感謝を込めてわたしから抱きつく。

 

「ぶっ」

 

……なんかごめん。そんな大きくないけど胸の感触はちゃんとわかったみたい。そういや過去のオレはいつも腰に抱きついてたっけ。XANXUSには気にする必要ないし、骸は身長高いし。未来のオレとでは僅かにわたしの方が低いぐらいだもん。でもまぁ双子なのにね。意識したのは過ごした時間が短いから仕方ないかぁ。

 

「しまらねぇな」

「……そんなつもりはなかったんだけどねぇ」

 

リボーンのツッコミに苦笑いしつつオレは仮面をかぶる。アルがキョトンとした顔をしつつ、オレ達にティッシュを渡していた。……うんうん、優しい子だね。ヴァリアーのボスになりたいらしいけど。いやまぁわたしとXANXUSの子だから不思議でもないんだけど。

 

「元気で」

「ソラもね。もちろんアルも!」

「うん!パーパ、バイバイ!」

 

タイムワープスタート!!という入江君の声を聞き、過去のオレ達が消えるのを見届けた。

 

そしてオレが最初に目の前に現れた。

 

「パーパ!!」

「よかった、アル。元気そうで」

 

慣れた手つきでオレはアルを抱き上げ、その上でわたしを抱きしめた。

 

「……ごめん、随分無茶させちゃったみたいだね」

 

骸とXANXUSに怒られるなぁなんてボヤきつつ、一緒に地上を見にいかない?と誘われた。

 

「デートのお誘い?」

「えっ。じゃぁ……エスコートするよ」

「オレは愛人だもんね」

 

プッと同じタイミングでオレ達は笑いだす。アルを抱いたまま、伸ばされたその手をオレは掴んだ。

 

「そうだ。君、早く結婚して子ども作ってよね。このままだとアルの夢、叶えられないじゃん」

「そうだよ!僕は11代目にならないよ!」

「いやでも……それは……オレだけの問題じゃないというか……。それに産まれた子どもが嫌がるかもしれないし……」

「えー!パーパの子なのにー?」

「むしろオレの子ならそうなるよ、絶対!」

「大丈夫。君の子なら、アルに押し付けられて渋々継ぐよ」

 

ありえそう……なんて呟くオレの反応に笑った。




長い。

アルフレード
わたしとXANXUSとの子ども。4歳の男の子。
XANXUSの血はどこに行ったんだというぐらい、容姿は母親似。まぁ男の子は母に似るというしね。
欲しいご飯がないと癇癪起こしたり、負けず嫌いなところ、頭の回転などは父親の血。
ツナも一緒に育ててるので基本的に大空気質でいい子。
名前はXANXUSの匣ベスターの由来から少しいじってつけた。パスタ料理にちゃんとある名前。作者なりにこだわってつけた。
出番はチラッとしかなかったが、匣はリアルタイプのライオン。お昼寝に使う時があるので、カットしたけど日本で騒動を起こしてる。食われそうで見てる方は怖い。銃と匣はXANXUSから貰った。

わたしの暴走と奮闘記。
オレがボンゴレはどうでもいいけど、今後起こる騒動からリングを継げる人が居ないのは、7³のことを考えるとあんまり良くないよねぇと思ったら、わたしが子ども産めばいいじゃんと軽いノリでかえされ、そのままの勢いでXANXUSのところに突撃。銃をかまえられながらも「子種ちょうだい」とわたしが言い放ち、オレは奥底で気絶しかけていた。話し合い?の末、ボンゴレの存続がかかってるのもあり、悪くねぇという判断。ツナはどう考えても疎そうだったので。わたしはこの理由なら断らないでしょ、大空だしちょうどいいとの理由だけでの行動。ガッツリ身体から始まった関係。実は本気になったのはXANXUSの方が先。利害の一致だったのに仮面の中の顔を見たいと思ったから。中身を知っても態度が変わらなかったからわたしも好きになった。
ちなみにどの世界でも産まれてる。それでも白蘭はソラが関わらない理由はアルの存在ではないと確信していた。嫌なところで通じ合ってる。

他のヴァリアーはボスがお楽しみ中なのは気付いていたけど、相手は誰か知らなかった。誰かが連れ込んできてあげたと思って何度も放置してた。ふとした時にボスのお気に入りの話題になり、この時にやっと誰も連れ込んでないと発覚。侵入者?と騒然。当然スクアーロが乗り込もうとしたら、超直感で気付くソラも当然帰る。たとえいいところでも。XANXUSはブチギレた。以後、お楽しみ中は誰も寄り付かなくなった。
妊娠発覚後、お金とツテないから医者の手配はそっちでしてねとわたしが言い、XANXUSが命令。お気に入りとはわかっていたが、ガチだったことに全員驚愕。スクアーロがなんとか聞き出し相手がソラと知る。隊長として毎回警備の見直しや侵入経路を調べてたのに。つらい。さらに仮面の中の顔は教えてくれなかった。そりゃね、説明するのに手っ取り早い同じ顔がいるけど彼が言うわけない。
諦めてスクアーロは並盛に行く。必死に探し回って見つけて、野宿生活を知り叫ぶ寸前に近所迷惑だからとイタリアに飛ばされる。XANXUSにうるせぇと酒瓶投げられた。理不尽。
何度か繰り返し、いい加減声量を落としてよとソラに怒られる。器用に小声で野宿生活について怒る。雨の日は流石にやってないよとソラは言う。違う、そうじゃない。しかし聞く耳をもたない。うるさいと思われるとすぐに飛ばされる。酷い。
なりふり構ってられないとヴァリアー総出(XANXUSは除く)でクロームを探し出しはじめる。骸に説得してもらうしかなかった。ツナに協力してもらうのはXANXUSが嫌がる(ブチギレる)とわかりきっていたので。尚、ツナの母に近づけば、妊娠中なのも忘れたかのようにソラが動くので手が出せなかった。ボンゴレ本部では骸は何をやらかしたと騒動になった。クロームはやらかさないという信頼があった。
仕方なく姿を見せたら理由が理由で頭が痛くなった。どうして僕が……と言いつつも、身体に悪いのはわかりきっていたので協力。もちろんツナに報告しなかった。ソラは抱きつきながら骸の優しい言葉に納得。実際は無理とわかっているが、お前の子どもじゃねーだろうな?とスクアーロは思った。
やっとヴァリアーで保護出来ると思ったらソラが消えた。骸は説得したからと帰った。スクアーロは叫んだ。
飛んだソラはボンゴレ本部にいるツナとリボーンに家からしばらく離れることを伝える。日本にいる守護者に頼むから大丈夫だよと言ってくれた。理由を聞かれ、妊娠したからと伝えて消えた。ツナは驚き叫んだ。リボーンも驚いて逃してしまう。そのまま消息不明になり、詳細は一年後に知る。のちにリボーン本人がミスしたと認めた日になった。もちろんツナも。
戻ったらスクアーロが居なかった。ソラは首を傾げつつ、ヴァリアーのアジトへ。ちゃんとスクアーロのことを伝えたが、放置された。ソラは探しに行こうとするが、ボスの子どもの方が大事なので必死に引き止められる。定期連絡があるからとなんとか納得してもらった。
数日後、ちゃんと定期連絡で教えてもらえたスクアーロはやっとアジトに帰宅。XANXUSの横でツナがうたた寝していると思い驚愕し叫び、うるせぇと憤怒の炎を放たれた。もちろんソラは起きたが、寝てろと言われ素直に目を閉じる。家から離れて寝付けず、見かねた(舌打ちした)XANXUSが側にいてやっと眠ったところだった。そりゃ怒られる。

ソラが一方的に話してても会話になってることはみんな驚愕している。同じ単語でも違いがわかるから通訳として優秀。ソラがいる間は基本物が壊れない。ただし邪魔などをしてキレた時のレベルがあがるので修繕費は変わらなかった。


かなり端折ったのに長くなりました。すみません。
多分ちゃんと書けば一つの物語になるぐらい、いっぱい騒動は起きてます。もちろんR18になる。スクアーロの奮闘を書いたけどレヴィも頑張ってたよ、ボスのために。まったくソラには響かなかったけど。スクアーロはわたしの身も心配してたので多少は効果あった。じゃなきゃ、声量を落としても話すら聞かずに飛ばす。骸には全く敵わなかったけどね。あとソラが頑なに動かなかったのは眠れなくなるとわかっていたから。XANXUSが側にいるとわたしは寝れたので解決。
ちなみにソラが不幸になってるわけじゃないのでツナの超直感には引っかかってません。知った時にはもういろいろと終わってます。ツナは超嘆いたよ。怒りは父親に全て向かった。リボーンもゴーサインを出した。まだ事情を聞かされてない守護者達とボンゴレは10代目の暴走に大混乱。10代目にそっくりな赤ちゃんがいて更に大混乱。……ある意味平和かな?


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第5話

未来から帰ってきたオレはオレ達に過保護になった。

 

オレは母さんに会わせたいみたいだけど、もうちょっと待ってと言えば、渋々納得してくれた。わたしの心が優先だから。

 

……そこまでは良かったんだよ。ふとした時に、オレに会いに行くから住んでる場所を教えてと言われたんだ。だから教えたよ。母さんだって知ってんだし。

 

「へ?」

「だから君ん家の屋根」

「本当だぞ。雨の日もいるから、おめーからもなんか言ってやれ」

「なんだってーー!!」

 

オレはショックを通りこし暴走した。

 

一応さ、明らかにヤバそうな人からお金を巻き上げてるけど、お金だってたまに山本ん家の寿司を食べるぐらいの贅沢ぐらいしか出来ないし、そもそも戸籍もないし、野宿一択になるじゃん。とちゃんと説明したんだよ。

 

その結果、オレがヒバリさんのところに突撃した。もちろんオレも慌てて追いかけたよ。

 

応接室に入って早々、オレは頭を下げていた。ノックもせずに入ってきたから、咬み殺そうとしたヒバリさんが、ポカーンとするぐらい素早かったよ。そしてオレは言った。

 

「将来、オレが絶対にお金返すんで、ソラの住む家を貸してください!!」

「……いやだから、オレはあそこでいいって」

「ソラは黙ってて!!」

「あ、はい」

 

という感じで、すぐに止めたんだけど頑固だからね。とにかくオレは必死にヒバリさんに頼み込んだ。ボンゴレの力を借りるという気はオレもなかっただろうし、そもそもオレもわたしも絶対嫌だからね。ヒバリさんに頼むしかないんだろうけど、オレってヒバリさん苦手じゃなかったっけ?まぁ憧れてはいるだろうけど。

 

「いいよ。君に貸しを作るのも悪くないけど、タダで用意してあげる」

「ちょっと待ってぇぇ!!ソラを咬み殺すならオレにしてください!!」

 

……オレ、その発言ヤバいから。ヒバリさんもなんか嫌そうじゃん。いやまぁ代わりにバトルとか言いそうだから、伝えたいことはわかるけどさぁ。そもそもオレ、そんな弱くないから咬み殺されないよ?

 

「……君の居場所がわかるなら、僕に利益がある」

「へ?」

「あ、そっか。これ以上、監視カメラが必要なくなるもんね」

 

オレはそれで納得したんだけど、オレがなんのこと!?と肩を掴んで揺さぶるから説明した。オレがヒバリさんの前に現れるたびに増えていくんだよって。

 

「ひぃ!この人、そんなことしてたのー!?はっ、咬み殺されてない!?」

「咬み殺せないから、増えていったんだって」

「よかったー!ヒバリさんよりソラが強くって」

「……君達、そろそろ怒るよ」

 

すみませんと思わずオレ達は揃って謝る。未だヒバリさんがキレてないのは奇跡というレベルだから。

 

その後、ヒバリさんが物件の資料を出してくれて、オレは一番小さいワンルームを選んだ。オレん家からも近かったし。そして今日の夕方にはもう住めるように手をまわしてくれるらしい。あまりにも早いからオレ達は驚いたんだけど、集団転校生のためにいくつか候補を用意してたんだって。

 

「そういえば、君も通うの?」

「ああ!そうだ!学校!!」

「や、顔は出さないから。双子ってバレるだろうし」

 

君が近寄ってこないなら他人の空似ってことにできるから考えてもいいけど?とオレが言えば、絶対やだ!だってさ。オレとは家族だからってことなんだろうね。

 

「それなら、仮面をつけた君が学校に来ても止めないように、風紀委員へ通達しておいてあげる」

「ヒバリさん……!」

 

オレがめっちゃ感動してるけどなんか裏が絶対あるって。何かがわかんないところがまた怖い。超直感には引っかからないから大丈夫と思うけど……多分。それにと、チラッと横目でみるとオレがすげー喜んでるしなぁ。

 

結果は察してほしい。わたしはオレに甘いの。

 

その日の夜、屋根の上で寝ていたらいつものようにリボーンがやってきた。

 

「ヒバリに用意してもらったんだろ?ツナが知ったら怒るぞ」

「ちゃんと使ってるよ。雨の日ぐらいは……使うと思う」

 

はぁとリボーンはため息吐いた。お前はオレに甘いよな、オレに告げ口しないみたいだし。

 

「いい部屋だったよ。手をまわしてくれたのか、いろいろ……うん、いろいろと置いてくれてたし」

 

食糧や家具、他にも電化製品やら服やらほんと何から何まであったよ。……ただ下着まであったのは、ちょっとどうかと思ったけど。確かに最低限の物しか持ってなかったけどさ。丸投げされただろう草壁さんのことを思うと申し訳なさすぎる。でもヒヨコ柄はないと思うよ。もったいないから使うけどさぁ。というか、ヒヨコグッズめっちゃ多くてビビったぐらいだし。草壁さんの女の子のイメージってそうなの!?と新たな発見をしたぐらい驚いた。

 

……ちょっと待った。どうやってサイズ知ったの。……こいつが関わってる気がする。

 

「ピッタリだっただろ?」

「やっぱり、お前か!」

 

裏切り者!というリアクションしつつも、どこかオレは冷めていた。

 

「……せっかくの好意だしありがたく使うよ。特に風呂とかすっげー嬉しかったしね。けど、やっぱオレの部屋じゃないんだよ」

「最初のうちはそういうもんだぞ。住んで馴染んでいくもんだからな」

 

オレの言いたいことわかってるくせに。まぁそれを拒絶してんのはオレなんだけどさ。……わたしじゃなくて、オレか。

 

「……リボーン、お前には話しとくね」

「なんだ?」

「未来の夢を見て、ユニの炎にも触れたのになんも感じなかったんだ。……違うね。うーん、こう言っちゃ悪いけど酷くなった気がする。わたしじゃなくて、オレがね」

「お前がか?」

「そ。わたしは少し落ち着いたかな。正体知った人達にはマフィアでもそれほど嫌悪感がないよ」

 

わたしの時に好んで一緒に居ようとは思わないだろうけど、オレの時に出会っても嫌がりはしなくなった。

 

「問題はオレの方。作りあげた人格の時に、わたしの影響があったのはわかってるつもりだったんだ。けど、客観的に見た影響かな、オレがオレにすげー違和感を覚えてる」

 

多分未来のオレも感じたと思う。オレの状態なのに、ユニが死んでもなんとも思ってなさそうなんだもん。それなのに隣ではオレが泣いて怒ってるんだよ。一瞬、オレが何なのかよくわからなくなった。

 

だからXANXUSがオレのところに放り投げたのもわかる気がする。オレとオレを同調させようとしたんだ。でもそれはいろんな経験をした大人のオレだから効果があって、今のオレにはどれぐらい効果があるんだろう。そりゃゼロではないと思うけど、悪化する可能性だってある。

 

もしオレという存在が意味をなさなくなった時、抑えきれなくなったわたしの復讐心が向かう先は……。

 

「ソラ!」

「っ、ごめん。ちょっと気持ち悪くなった」

「ツナを呼ぶか?」

「や、大丈夫。……大丈夫と、思う」

 

今日はもう寝ろとリボーンに言われてオレは素直に目を閉じた。リボーンがそばにいてくれる気がしたから、オレはすぐに眠りに落ちることができた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

今日もいつものように寝転ぶと、オレん家にエンマが来ていた。ヒバリさんから集団転校生の話を聞いていたのもあって、いつ来てもおかしくないと思ってたから驚きはないけど。

 

母さんがズボンを縫っておくねと言っていたから、またドジでもやったんだろうね。

 

……殺しちゃおっかなぁ。シモンとの関係も知ってるしエンマとの思い出もあるけど、響かないんだよね。骸が牢獄から出れるチャンスがなくなるのは勿体無い気もするけど、骸ならなんとかするでしょ。わたしもそう思ってるみたいだし。

 

クルクルと左手でメスをまわしていると、またどこからか知らないけど殺し屋がやってきた。もちろんサクッと殺した。けど、まだ視線を感じる。

 

「……消えた?」

 

いや、誤魔化されたが正しい。一瞬だけ幻覚の気配がして、オレが違和感を覚えたスキに逃げた。この頃からリングの力が強くなって、術士のレベルもあがる。……けど、オレを一瞬でも誤魔化せる術士はそう居ない。

 

「ソラ、さっきの奴になんかあったのか?」

 

考えながら戻っていたのもあって少し遅かったみたい。リボーンがオレの帰りを待っていた。心配はしてないから、サクッと殺したことはわかってるみたいだけど。

 

「違うやつがいて、逃げられたんだ」

「……オレの方でも警戒しておくぞ」

 

オレが逃がしてしまったレベルだからね。それが正解だよ。

 

そういえば……集団転校生は来たけど、リボーンからボンゴレの継承の話は聞いてない。オレに気を遣って黙ってる感じでもなさそう。それにリボーンならオレの精神状態のことを思って、ちゃんと向き合って話す気がする。ってことは、9代目がオレの存在を知って、簡単に提案できる問題じゃないと判断したかな。

 

つまり根本から間違っていた……?

 

「ソラ」

「ん?」

「エンマはマフィアなのか?」

「シモンファミリー」

 

未だにオレが手の中でメスを転がしているから気付いたらしい。他の人がみれば警戒という風にも取れるけど、この行動はわたしの精神安定の意味があるからね。そういや、リボーンが気付いたきっかけってエンマが招待状の手紙を落としたからだったよ。届いてないものから気付けないよね。

 

「サンキューだぞ」

 

リボーンはシモンのことを調べに行ったみたいだ。精神状態を考えて、これ以上オレからはマフィアのことは聞かないことにしたらしい。

 

……デイモンは何を考えてるんだ。継承式が行われないなら『罪』を手に入れることは不可能に近い。覚醒していないシモンリングでぶつける気なのか?それならオレが勝つと思う。それにオレもいるしなぁ。ふつーにオレはシモンも殺せるし。

 

オレに対抗する手段としては母さんとオレが効果的に見えるけど……。未来のオレ達は母さんから離れることは出来ていたし、どこまで効果があるんだろうね。オレはまぁ……オレに動くなって言って、死んだらしょうがないよね。冷たくはないよね、だって止めたのはオレだもん。

 

あとは骸がいるけど……オレ達の関係ってちょっと変だし。足を引っ張るぐらいなら死んだほうがマシだと思ってる、互いにね。それに前は殺し合うのを躊躇したけど、それは骸だからであって、骸じゃない人物になったら殺すよ。犬と千種も似たような感じだろうし。

 

「あーダメだ。こういうのは骸が担当だよ」

 

陰湿な考えはオレに向いてないんだよ。骸に言えば失礼ですねっていいそうだけど、あいつなら考えつくだろうし。わたしがやりたいことは血生臭いけど、殺すなら殺すってだけだしね。かなり単純。

 

いっその事、会いに行っちゃう?……ダメだった。デイモンは骸の身体を狙ってたんだよ。クロームのところに行っちゃ相手の思う壺だ。復讐者の牢獄に行っても骸は話せないし……。

 

やっぱ殺した方がはやいよなーなんて思いながら、今日のところは眠った。

 

●●●●●●●●●●●

 

 

 

次の日、なんか嫌な予感がしたから仮面をつけたまま行動。つい殺しちゃいそうだから学校には近付かないつもり。絶対今頃ヒバリさんとアーデルハイトの争いは起きてるだろうし。

 

……殺そ。

 

母さんの幻覚が歩いてる姿を見て、オレもわたしも殺す一択だった。だけど、超直感が警戒を促している。どう考えても罠だろうなぁ。人気のないところへ進んでいくし。わかってていくのも嫌だけど、そのまま放置なんてできない。連絡する手段があれば、リボーンぐらいには報告したのに。でも携帯なんて持ってないし。や、いらないけど。

 

最大限に警戒しつつ、後を追う。オレが幻覚と簡単に気付いたから、そこまで術士の腕がないはずなのに超直感からの訴えはどんどん強くなっていく。だからクオリティをあえて落としてオレの警戒を下げようとしている。……一度、引くべきかな?犯人は十中八九デイモンだろうし。

 

けど、わたしがそれを嫌だという。最低でも母さんの幻覚は壊したいみたいだ。

 

……オレがヤバいと判断したなら、壊せなくても逃げるよ。

 

うん。と素直に返事をもらえたから、オレは壊すつもりで動こうとしたその時、見てしまった。

 

「っ」

 

オレとわたしが入れ替わる。入れ替わってしまう!飛べ!!

 

仮面が落ちた。

 

「ああああっ……」

 

とにかく離れることを意識したから、オレ自身どこに飛んだかもわからない。問題は、わたしだ。オレの声すら届いてるかも怪しい。幻覚だ、幻覚だとわかってる。オレでさえわかっていたのに、一瞬憎しみにのまれた。わたしがどう感じたなんてわかりきっている。

 

「ソラっ!!!」

 

オレの声がする。オレを求めて飛んだ?屋上にいるのがわかっていたから。けど、今はダメだ。

 

「危ねぇ」

「ぎゃ!!」

 

わたしが投げた……殺そうとして投げたメスをリボーンがオレを蹴ってかわしてくれた。助かった。周りが何か言ってる気がするけど、今はわたしを止めないと。

 

「……来るなっ、止め、れなく、なる」

「ソラ!!何があったの!!?」

 

オレの声にわたしが反応し、悲鳴のような叫び声が出た。クソっ、声もダメか。身体から夜の炎が溢れ出す。シモンがわたしを危険人物とみなして殺すべきだと発言した。

 

「ふふっ。わたしを殺す?……やめっ」

 

ああっ、くそっ。止まれ!リボーンが防いでなければ、とっくに死人が出ている。オレが一瞬わたしの動きを邪魔しても、メスを投げることは止められない。

 

「待って!違うんだ!普段はこんな感じじゃないんだ!それにこんな炎じゃないよ!」

「マフィアなんか滅べばいいんだよ、ね、そうだよね?……ダメっ……ボンゴレが、マフィアが、わたしをこんな風にしたんだよ!……それ、でも、ダメだっ!!」

 

オレとわたしが入り乱れる。いや、身体の比重はわたしに偏ってる。心は……オレとわたしが分裂しそうだ。それでも消えてないだけマシだ。オレの声はまだ聞こえてることを意味するから。

 

「ヒバリさん!?」

 

オレの声に反応し、わたしが顔をあげた。ヒバリさんがわたしに近づてくる。動きが、手が、止まった。

 

「ああ、やっぱり。僕は一度もそれに入ったつもりはないからね」

「……ヒ、バリ、さんっ」

「うん。小動物、あれらは遠ざけてあげるからそのまま抑えときなよ」

 

すみません、助かります。そう言いたいのに、オレの声が聞こえて、心配する声なのに、わたしを抑えるのに必死だ。けど、ヒバリさんとリボーンが力技ででも説得してくれるはず。

 

「まったく君達は何をやってるのですか。ソラ、来なさい」

「む、くろ……?」

「邪魔する気?」

「やれやれ、決めるのは彼女ですよ。僕ですよ、ソラ」

 

違う!骸じゃない!とオレが叫んでいるのに、わたしは骸の偽物に抱きついた。わたしもどこか変だと気付いているはずなのに、止められないんだ。くそっ、混乱中で誰も偽物だと気付かない。コイツの術士としての腕は本物なのもあるんだろうけど!

 

「かわいそうに、何があったのです?」

「ち、父親、あの、男が、母さん、を、殺した、幻覚」

「また厄介なものを見せられましたね」

 

届かない。オレの声が届いてない。見せたのはお前だろ、デイモン!

 

「アルコバレーノ、あなたならわかるでしょう。幻覚だと頭では理解しているのに、彼女の心は否定出来なかった。彼女は父親にそういう仕打ちを受けましたからねぇ……」

「骸、ソラはっ!」

「黙りなさい。彼女の憎しみの先に君も居るということを自覚しなさい。……おや、まだ気付かないのですか?君はもっとも彼女が羨む存在でしょうに」

「むくろ、たす、けてっ……」

「……しばらく僕が彼女を預かりますよ、文句は言わせません。ソラ、あなたは眠りなさい」

 

ごめん……とわたしの声が聞こえて、オレ達は眠りに落ちた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

「ここはどこだ……?」

 

周りを見渡したところ、城か?とオレは首を傾げる。

 

「おや、目覚めましたか」

「……お前は骸じゃないだろ」

 

骸でもないし、本体でもない。ヌフフフという声を共に、姿が変わる。

 

「D・スペード……」

「ええ、あなたとは初めましてと挨拶しましょうか」

 

苛立ったオレは消そうと手を伸ばす。けど、死ぬ気の炎が出ない。

 

「っ!」

 

慌てて引っ込めて、自分の手を確認する。……わたしがいない?

 

「私も少々想定外でしたよ。マインドコントロールをしたはずが、篭ってしまったようで……。もっともその代償は大きい。あの炎を生み出してるのは、もう一人のあなたですから当然と言えば当然でしょう」

 

オレはオレを模範している分、復讐心まではないんだと思う。かといって、身体はわたしのものだから、大空の炎は出ない。……絶体絶命かも。オレだから超直感は使えるのが救いかな。

 

「オレはわたしを……守るために生まれた存在だよ。そう簡単にマインドコントロールなんて出来ないよ」

「ヌフフ。かまいませんよ。それと……第8の属性の炎が出せないあなたなんて、粋がっても可愛らしいだけですよ」

 

私を殺せもしないでしょうと耳元で囁かれ、ゾクッとしたオレは反射で殴った。もちろん幻覚だから意味はないけど。炎も纏ってないから消せもしないし。本当は蹴ったり距離も取りたいんだけど、足首に鉄のような冷たさを感じるんだよね……ハハハ……。なんとかして壊すとしても、コイツがいる今は無理。

 

「デイモン、お前の目的は……骸の身体か?オレを人質にしてのっとる気なのか?あいつはオレのために来るとは限らないよ」

 

そう言ったけど、間違いなくあいつは来る。あいつの姿を使ってわたしがいなくなったと知れば、すげーキレると思うから。

 

「……ボンゴレの超直感でしょうか。もっとも、私の計画の全てを理解してはいなさそうですね」

 

デイモンが笑ってる姿に、オレは思わず身を縮める。……なんでこんなにコイツが怖く感じるんだろう。もちろんピンチなのはわかってるけど、過剰な反応をしている気がする。

 

そんなオレの反応に気を良くしたのか、デイモンは企てを語った。

 

やっぱりデイモンはシモンとオレ達を仲違いさせようとしていた。オレがわたしを心配してクロームに尋ねた時に、初めて骸じゃなかったことを知る。いや、もう知った段階らしい。そしてデイモンは加藤ジュリーの姿でわたしを連れて行く姿の記録を残していた。……監視カメラいっぱいあるもんね。こんなところで役に立って欲しくなかったよ。

 

それを知ったオレは加藤ジュリーに詰め寄るが、今現在加藤ジュリーを乗っ取ってるデイモンは知らないと答えたらしい。

 

……もうこの段階でモメるね。今オレはオレ達に過保護だから。いやまぁわたしのことでショックは受けてるだろうけど、オレだしな。リボーンに追い立てられ、すぐに向き合おうとするだろうし。というか、そうじゃなきゃクロームのところに行ってない。そしてシモンは仲間思いだし、知らないと言ってる加藤ジュリーを庇うよ、絶対。

 

オレがその光景を目に浮かべてると、今からデイモンはシモンに更なる爆弾を投下すると言った。実際はデイモンだけど、エンマの家族を殺したのは父さんって教えるんだって。……父さん、すっげー悪人じゃん。わたしの件は許さないけど、ちょっとかわいそう。

 

双子の一人が狂ってしまったのを見ちゃってるし、エンマは絶対信じ込むよね。そしてオレも否定出来ないかも。……頑張ってね、リボーン。父さんのことはどうでもいいけど、オレは立ち直らせてよ。

 

シモンは過去の因縁と濡れ衣、父さんという爆弾で怒らせ戦わせるらしい。そしてオレの居場所を唯一知ってるだろうシモンとの戦いは避けられない。けど……覚醒していない状態なら……。

 

「シモンは勝てない、よ」

「私としては共倒れを望みたいところですが、この際どちらでもかまいません」

 

……シモンを捨て駒にしたんだ。

 

「クローム髑髏では私に敵いません。六道骸は必ず現れるでしょう。その時に六道骸の肉体を手に入れれば、私の計画は達成する。あなたも役に立ってくれたましたよ、第8の属性の炎のことを理解できなければ、シモンリングを覚醒しなければならないところでしたから。随分計画を早めることができた」

 

もしかして、骸の身体を手に入れる手助けしちゃった感じ……?最悪じゃん!

 

「ヌフフ。では、六道骸の肉体を手に入れた後、お迎えにあがります」

「え……」

「第8の属性の炎を使えないあなたはこの島から決して逃れません。あなたが頼みの沢田綱吉もシモンの相手が終わってからでは到底間に合いませんよ。その頃には私は第8属性の炎を手に入れてますから」

 

サーっと自分の血の気が引いたのがわかった。そうだよ、ここがどこかはまだわからないけど、絶対並盛からは遠いよね!?つーか、島なの!?

 

「心配ありませんよ。少しぐらい歩きまわる余裕はもたせてますから」

「ひっ!」

 

こいつ、鉄の上からだけどオレの足首も撫でやがった!またオレの反応に気を良くしたのか、デイモンは笑いながら消えた。その前になんとか殴ったけど。残念ながら意味はなかったよ。わかってたけどね!

 

「変態じゃん!」

 

とりあえず思ったことを大声で言って、オレは少しスッキリした。何かできることはないかとオレはちゃんと周りを見渡そうとして気付いた。気付いてしまった。

 

「……絶対、変態だよ!なんでオレ着替えてんの!?」

 

なんでドレス姿になってんだよ!……下着はヒヨコのままだったからセーフだね。え、セーフだよね?

 

ほっとけない問題だけど、今は後回しにする。相変わらず夜の炎は出せないね。わたしの反応もない。それで足首の鎖はベッドの枠に繋がれてる、と。……やっぱ、変態じゃん!

 

「あーもう、進まないっての!」

 

ブンブンと頭を振ってオレは切り替える。ベッドの枠も鉄だから、壊すの大変そう。死ぬ気でやるけどさ。ベッドからおりれば、ハイヒールがあった。……つっこまないよ、オレは。

 

眉間を揉みながらも、冷蔵庫が目に入ったから食料はありそう。口にする時は超直感を頼りにするけど。トイレもあった。いつ戻れるかわからないから、数日は持つようにしたのかもしれない。や、何日もここにいる気はないけど。

 

廊下に続きそうなドアまでは届かなかったけど、窓の近くはいけた。外の景色を見てオレは気付いたよ。ここ、シモンの聖地だ。

 

……ボートがないと厳しいよ。鍛えてはいるけど、この身体はオレよりも弱い。特に体力がないから、泳いで行くなんて無理だ。

 

まぁ鎖をどうにかしなきゃそれ以前の話だけど……最優先はこっちだね。

 

「復讐者、聞こえてる?」

 

反応はないね。じゃ、しょうがないよね。こっちは切羽詰ってるの。

 

「えーと、バミューダ、イェーガー、ジャック……やっぱ聞こえてたじゃん」

「……何のようだ」

「見てたくせに。まぁいいや。助けて欲しいなぁって」

「それは出来ぬ」

 

だと思った。イェーガーが説明してくれてるけど、オレもそうじゃないかと予想していた。ボンゴレとシモンによるマフィアの掟に関わるからね。その争う原因の発端はオレだから。オレを助けたら、復讐者は介入したことになっちゃう。

 

「その掟はわかったよ。だったらさ、その戦う場所をここにしてよ。ここなら、この島ならオレしか人はいない。全力で戦う場所には、この島は最適だよ。少なくとも並盛よりはね」

 

ジッと見つめ合う。掟のために動いてもらうよ。

 

「……いいだろう」

「ありがとう!イェーガー!」

 

オレがお礼を言ったから、またなんとも言えない目をされるかなと思ったんだけど、少し笑った気がした。や、相変わらず顔は見えてないけどさ。そこはなんとなく、ね。

 

相変わらずオレは絶体絶命な状況だけど、気分は上昇した。

 

●●●●●●●●●●

 

 

後は時間が勝負とオレは動きにくいドレスに切れ目を入れ、鎖を必死に引っ張る。どこかの継ぎ目が伸びて外せればいい。この際、場所はどこでもいいから。って思ってれば、ベッドの根元の近くの部品が壊れた。

 

……そりゃどこでもいいとは思ったけど、すっげー邪魔。それも取れた時に勢い余って頭をぶつけた。久しぶりにそんなドジをしたよ。かなり痛くて泣きそうだった。……ごめん、嘘。ちょっと泣いたよ。すぐ切り替えて走り出したけど。

 

「っ!」

 

さっきから戦う気配はしていたけど、ついに一つ目の鍵が頭に流れた。というか、遠いよ!復讐者!

 

わかるよ、オレと近い場所なら介入したことになるもんね。わかるけどぉ……と走りつつも泣き言をいいたくなる。そんなオレのところに、救世主が現れた。まさかの動物だったけど。

 

「ヒバード!」

「ヒバリ、ヒバリ」

 

え、こっち来てくれないの?と思ったけど、ヒバリさんに報告へ行ったみたいだからいいや。つーか、ヒバード有能すぎ。未来ではSOS信号の役割も担ってたし。

 

オレより賢くない?なんて思いながらも走る。一つ目の鍵がきっかけになったのか、二つ三つ四つと鍵が続く。戦いの気配でわかってたけど、みんなは同時に争ってる。じゃないと、オレが間に合っちゃうもんね!わかるけど!

 

そして五つ目の鍵が届いた時、オレの超直感が反応した。

 

「骸っ」

 

間に合わなかったとギュッと目をつぶる。そして合流よりも逃なきゃ、となんでかわからないけど思った。ここまで頼りにしてきた超直感を信じてオレは動く。

 

しばらくすると、ロールの増殖で足場をつくったヒバリさんがやってきた。あと、獄寺君しとぴっちゃんが一緒にいた。一緒に居るまではいいんだけど、獄寺君おんぶされてない?……や、オレのためなのはわかってるけど。しとぴっちゃんの装備を使って上から探そうとしてくれてるみたいだし。ちょっと格好が気になっただけで。

 

そのあとすぐにオレとエンマもやってきて、リボーンを乗せた山本、らうじさんも来た。お兄さんの姿は見えないけど、声は聞こえるから近くにいるみたい。

 

出て行きたいのは山々なんだけど、嫌な予感しかしないんだよね。必死に呼んでくれてるから行きたいんだけど……。

 

「やっと見つけました」

「骸っ!」

 

ぎゅーと抱きつく。残念ながらフクロウだったけど。クロームも後ろから来ていた。って、そうじゃない!とオレは骸から離れる。

 

「お前、身体は!?」

「……少しは状況がわかっていそうですね。細かいところは省きます。ボンゴレとシモンの掟に従い争っていましたが、僕が加藤ジュリーにD・スペードが乗っ取っていると気付きました。まさか自身の武器を模様したもので見破ったのは皮肉がきいて、とても愉快でしたよ」

 

た、たしかに……。

 

「シモン側も予期せぬ事態で、まだ決着がついていない戦いは一時休戦状態になりました。しかしD・スペードは加藤ジュリーを乗っ取った状態だったので、掟で僕以外には手を出せません。その後、僕が勝ったまではよかったのですが……」

 

戻れなくなったんだね。それもちょうど骸が勝った時の鍵でプリーモの守護者が間に合ってるのがわかっちゃったし、戦う空気じゃなくなって獄寺君があんな感じだったんだね。

 

「察しの通りです。僕の肉体を使って復讐者の牢獄を暴れ回り脱獄したようです。復讐者はボンゴレで処理しろと……」

 

オレの話を聞いてるから、その可能性は高いと復讐者もわかっていたと思うんだけどね。これはオレ達を試しているんだろうなぁ。そしてその暁には今まで捕まった仲間の解放だった。

 

「ですから、あなたを見つけて我々はD・スペードを探しにいかなくてはならないというのに、あなたは出てこない」

 

うげっ、こいつちょっと怒ってるじゃん。……気持ちはわかるけど。身体を使われちゃってるし。

 

「違うんだって。なんかすげー嫌な予感したんだ。それにデイモンのマインドコントロールがきっかけで、わたしが篭っちゃって炎出せないし、オレも大変だったんだよ!?」

「ああ、それで……奇抜な格好だったのですか」

 

ガーンとオレはショックをうけた。クロームがすっげー後ろでオロオロしてるよ。ごめんね、オレ達だけで喋ってて。

 

「オレの趣味じゃないっての!」

「知ってます。それにそういうことを言いたいわけじゃありません」

 

そういって、骸はオレの足首に視線を向けた。……確かに、これを見たらいろいろ思うところあるよね。オレも叫んだし。

 

「……とにかく合流はできましたから、D・スペードが向かう場所に心当たりはありませんか?会ってるのでしょう?」

「えっと、オレの片割れの方に行かなかったの?」

「来ていれば、そこで飛びまわってるわけないでしょう」

 

だよね、とオレは頷く。みんな探してくれてるみたいだけど、オレが一番必死そうだもんね。別れ方があんなだったし。

 

「んーっと、そういえば……骸の肉体を手に入れたら、オレを迎えに来るとかなんとか」

「……あなたはやはり沢田綱吉と同じですね。バカです」

 

いやまぁ、オレだからね。バカだと思うよ。

 

「ソラ、あなたのところに現れると言っているじゃありませんか」

「いやでも、復讐者に頼み込んで戦いの場はこの島にしたから、別に迎えは来なくても困らなくなったし」

 

うわ、フクロウなのに呆れた目で見られてるのがわかった。

 

「……クローム、アルコバレーノに今の会話を伝えなさい。もちろん気付かれないように」

「はい、骸様」

 

えっ、ちょっと待って、クローム。オレ、今こいつと2人っきりはやだ。怒られそうな予感しかしないもん。

 

「はぁ。ソラ、僕はこれほど頭が痛いと思ったことはありません」

「えーと、ごめんね?」

「理解してから謝りなさい。……いえ、謝らなくて結構です。危機感を持ちなさい」

 

フクロウに説教されるって変なのと思いながらも、オレは目を合わせる。だって骸はオレのことを思って言ってくれてるから。

 

「言葉の端々にD・スペードが望むようなボンゴレを目指していると感じ取れました」

「うん、そうだね。だから相性のいいお前の身体を欲しがったんだろ」

「欲した身体は僕だけではありません」

 

へ?とオレは首を傾げる。

 

「ここまで言ってわかりませんか。……ソラ、あなたは未来で11代目候補を産んでいたではありませんか」

 

血の気が引くってこういうことなんだ……と、オレは知った。今まで顔色が悪くなったと思ったことがあったけど、それの比じゃないよ。

 

「あ、あのさ、今更信じてもらえるかわかんないけど、デイモンが近づくたびにビビってた。あと、変態って何回も思った」

「……危機感があったと喜ぶべきか悩むところですね」

 

うわああ!としゃがみ込む。いやさ、お前は教えなかったけどさ。オレだってもう気付いてるよ。骸、お前もすげーとばっちりじゃん。オレとお前の身体の危機じゃん!

 

「こっそり逃げたり出来ない?」

「……この島に連れてきたのは復讐者です」

 

終わった。復讐者がそのことに理解してるから、絶対出さないよ。……今ならオレでも夜の炎を出せるかもしれない。って、なんで無理なのーー!?

 

オレに今できることって……。

 

「……骸、オレお前のこと好きだよ。わたしはもっと好きだよ。ううん、愛してると思う」

「……やめなさい、縁起でもない」

「ゔ、悪い。でもオレが今伝えとかなきゃ、わたしがこのまま消えちゃう気がしたから」

 

今はオレしかわたしの心を伝えることが出来ないんだ。

 

「わたしは骸じゃないと気付いていたよ。でも止めれなかったんだ。お前に会いたくて、会いたくて。最後にいった言葉はお前に助けて、だった。あいつにじゃない、絶対に違うから。本当のお前に来て欲しくて、お前の名を呼んで、助けてって言ったんだ」

「……まさか、僕が……ーーと同じことをするとは思いませんでしたよ」

 

え?なんて言った?途中聞こえなかったんだけど。オレがキョトンとしていると、骸はオレに目を合わせて言った。

 

「遅くなりましたが……助けに来ましたよ、ソラ」

 

まったく、よりにもよってなぜこの姿なのですか……と骸はブツブツと文句を言っていたけど、それはオレが泣いたからであって。ううん、この涙はわたしだ。

 

「……むくろっ、ごめん。わたしっ」

 

言いたいことがいっぱいあったのに、喉がつっかえてうまくいえなくて、わたしを止めようとしたもう一人のわたしにも謝らないといけないのに。……うんっ、ただいま!

 

「ボンゴレが、マフィアが、世界が憎いのでしょう。腐ってますからね、僕もわかりますよ」

「ゔん。嫌いで嫌いで、大嫌いなんだ」

「あなたはよく我慢していますよ。この僕が呆れて情けをかけるほどですから」

 

ぎゅっと抱きつく。ポタポタと涙がかかっているけど、骸はため息を吐くだけでわたしの好きにさせてくれる。もうしばらくこのままでわたしは居たかったけど、後ろから炎の気配がして振り向く。

 

「ここに居ましたか、約束通り迎えにきましたよ」

「D・スペード……」

「ソラ!」

 

骸の声にハッとして、わたしは死ぬ気の炎だしてオレのところへ逃げようとしたけど、惚けていた時間が長かったせいで腕を掴まれた。

 

「骸が好きなのでしょう?愛してあげますよ」

「「どの口で……」」

 

苛立ってわたしが言えば、骸と揃ってさらに同じところで止まった。さっきまで動揺してたけど、落ち着いたよ。わたしは炎を使ってメスを取り出して斬りつける。慌ててデイモンはわたしの手を離した。

 

「骸、ごめん」

「かまいませんよ」

 

だよねとわたしは笑う。骸ならわたしに殺されても文句は言わない。わたし達の愛は歪んでるんだよとメスを握った。

 

「死ね……?」

 

その口からは何も聞きたくないと終わらそうとしたら、デイモンが消えて動きが止まる。第8属性の炎を使ったわけじゃないよ、それならわたしは動きを止めなかったし。……すごい勢いでぶっ飛んで行ったんだ。

 

「ソラ、無事!?」

「う、うん」

 

やっぱりわたしの見間違いじゃなかったよ。あれ、骸の身体なんだけど……。オレ、躊躇無くぶっ飛ばしたよね。え?本当にオレ?

 

「……それの、どこが、無事……?」

 

あまりの怒気にビクリとオレは一歩下がる。……って、なんでオレになってんの!?わたし、オレにオレを押し付けないで!?

 

「えっと、ちょっと炎が出せなくなって……。そ、それはさっき出せるようになったんだけど、逃げるために必死で……?」

「……そう」

 

怖っ。オレは目だけ動かし、リボーンに助けを求めようと姿を探す。……あいつ、すげー嬉しそうだった。だよね、マフィアのボスらしいよね!

 

獄寺君と山本、お兄さん、シモンのみんなは顔が引きつってた。多分オレも似たような顔してる。ヒバリさんはギラギラした目でオレをみてたよ。……戦いたいんですね。

 

ボンっとオレの足首についていた鎖がとれた。……うん、オレの身体には一切傷が入らない量の死ぬ気の炎を放ってくれたみたい。超直感のおかげかな、すごいよね!……無理だ、ノリで誤魔化せない。

 

「骸。お前の身体、凍らせるから」

「え、ええ」

 

これ、凍らせるのを反対したら、どうなってたの。骸の声もちょっと引きつってたじゃん。

 

「あ、あのさ……」

「ソラはお兄さんに治してもらってきなよ。お兄さん、綺麗に治してくださいね」

「おおっ!も、もちろんだぞ、沢田!」

 

副音声で傷を残せば許しませんって聞こえたよ。

 

「はぁ。こうなったら仕方ありません」

「骸?」

「彼女、変態と思うようなことをされたらしいですよ」

 

おまえー!とオレは骸に驚愕の視線を向ける。オレを生贄にして、さっさと凍ってもらってダメージを減らそうとしたな!?

 

ブチッという音が聞こえた気がしたね。さっきのより上があるのをオレは初めて知ったよ。

 

この後の展開は察して。超直感がフルで働いていたオレにデイモンが勝てるわけないじゃん。まぁ最後は凍った身体から魂だけでも逃げようとしたところを復讐者に抑えられていたけど。骸の身体に一切気を遣わなくていいオレはぶっ飛ばしたよ。ボンゴレギアとか誓いの炎はどこにいっちゃったんだろ……。

 

それでもやっぱオレなんだなと思ったのは、デイモンの魂は救ったこと。オレにしたことは許さないって言ってたけど。それはそれ、これはこれ、らしい。

 

ちなみにオレはその間大人しく治療を受けてました。終わった時に治ってなかったら怖かったからね。あとちょっと驚いたのが、ヒバリさんが上着をオレにかけてくれたこと。ドレスなだけあって、腕が出て寒かったから嬉しかったよ。一番最初に気付いたのがヒバリさんだったのも驚いたね。でもヒバリさんは寒くないの?オレに貸したから半袖なんだけど。ちょっと悩んだけど、炎で服を取るのはやめた。なんとなくそういうことじゃないと思ったから。

 

復讐者は報酬として、みんなの解放だけじゃなく全部の鍵を見せてくれた。相変わらず復讐者がオレを見る目は微妙な感じだったけど。……うん、オレがこんなにキレるなんてオレも予想外だったよと目で訴えたよ。伝わったかはわからないけど、帰っていった。

 

だからシモンとは完全に和解したよ。一応、父さんの汚名はオレがすすいであげた。なんとも言えない顔をみんなしていたけど。オレにフォローされるってどうなのってね。……オレはデイモンが話していたことを伝えただけだし。

 

そういや、みんなも復讐者とオレが同じ炎を使ってると気付いてるみたいだけど、そこはスルーしてた。いやさ、終わったらすぐにオレがオレの身体の心配してたからさ。そんな空気じゃなかったんだよ。オレとしては先に骸の身体をとかしてあげなよって思ったけど。声には出さないよ、怖いもん。

 

やっとオレが落ち着いたころ、オレがみんなを送る。復讐者は帰っちゃったしね。もう暗くなっちゃったし、みんな並中でいいってさ。送った後、オレも部屋に飛ぼうとしたんけど、それをオレが引きとめた。

 

「ソラ、家まで送るよ。ランボはらうじさんと帰るみたいだから安心して。仲直りするんだって」

 

一緒に帰るのは口実でオレと話したい……仲直りしたいってことだよね。でもオレ、靴ないし。……話したいのは同じみたい。

 

「……わたし、重いよ?」

「大丈夫」

 

おんぶだからと言い訳し、わたしは後ろからギュッと抱きしめる。わたしの行動にオレが少し息を飲んだ。

 

「……ごめんね」

「ソラはなにも悪くないよ」

「未来のわたしも言っただろうけど、もしもの時は……わたしを殺してね」

「絶対やだよ」

 

困ったなぁとわたしは息を吐く。

 

「だからさ、ソラが言うもしもの時になったら、真っ先にオレを殺しに来て」

 

えっ……とわたしは息をのんだ。

 

「そしたらさ、オレが止めてみせるから。絶対に止めてみせるよ」

「……いい、の?」

「うん。オレがいるよ。抑えきれなくなっても、大丈夫。オレがいるから」

 

やっぱわたしはリボーンの言うとおり、泣き虫なんだなぁ。すぐにポロポロ溢れるよ。

 

「約束、する。その時は、君を殺しに行くよ」

「絶対破っちゃダメだからね」

「ゔん!」

 

話している内容は物騒なのに、視界は歪んでいたはずなのに、今日の夜空は今までで一番綺麗だと思ったんだ。




シスコン、爆誕!!

……まぁそうなるよねと思いながら作者は書いた。
クロームが報告しリボーンから狙われた理由を教えてもらったからね。ブチギレ案件でした。
オチはちゃんと最初の一文に書いてたしと開き直る。
キレた未来のツナも似たようなことをしたとちゃんと本編で書いたしね。
そして今回の一件で彼はさらに過保護になるでしょう。

この作品ではD・スペードはもしかしたら家光より不憫かもしれない。
ちなみにソラをジョーカーと例えたのは、トランプを使うD・スペードが欲しがるという意味もありました。
もちろん彼はエレナを愛してますので、ソラのことは道具としか思ってません。ツナにぶっ飛ばされるのも仕方ないね。

未来を知った結果、いろんなところに余波が出てきてます。
ツナもそうですが、9代目だってね。
夢を見てボンゴレを継いでくれなんて、すぐ言えるわけないね。ツナの答えはソラの件で決まってますし。時間を置くのは当然です。あと9代目はXANXUSとソラのフラグを折りたくない。彼は孫が見たい。

多分、ソラがよく関わってる人の中で余波を受けてないのは骸ぐらい。夢を見る前から、汚したくないぐらいソラを愛してますから。その愛が歪んでるのは本人達も自覚済み。


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第6話

念のためオレに声をかけた方がいいよな?と思って教えたら、ポカーンという顔をした後に詰め寄られた。

 

「ちょ、ちょっと待って。デートってなに!?」

「引っかかったのはそこなんだ」

「当たり前だよ!だって相手は骸だよ!?」

「そういう誘い方をされただけだって。犬と千種も一緒に出かけるし」

 

オレがすげーホッとしてた。相変わらず過保護だね。

 

「ごめんってば。それに骸のことは大好きだけど、わたしも骸も互いにそういう風にはみてないよ。……多分」

 

多分ってなに!?とオレは揺さぶられる。いやだってさ、オレはわたしがXANXUSのこともどう思ってるのかもよくわかってないし。後この前の一件でわかった、オレは鈍い。

 

「わかった、わかった。ちょっと変わるから待って」

 

明日出かけるという話だけなのになんでこうなったんだろうと思いながらも、入れ替わる。

 

「わたしも骸もそんな感じじゃないよ。ただの言葉遊びだよ」

「よかったー」

「でも骸だったらいいよ。……ってそこで変わるの!?」

 

オレ、白目向いてない?オレはオレでタイミングでびっくりしたよ。というか、アルに会えなくなっても骸ならいいと思えるほど好きなんだ。まぁまだXANXUSにそこまでの感情がないんだろうね。未だに会ってないのもあるかも。や、わかんないけど。

 

「……ちょっと話し合いしてくるよ」

 

ちょっと待ったと慌ててオレはオレの肩を掴んだ。話し合いならグローブと死ぬ気丸はいらないよね!?あと、行っても骸はもう飛行機の中じゃないかな。わたしは現地集合だからここにいるけど。だから出かけるって言っても実はその日のうちに帰ってくる。場所が海外だから報告しただけだから。

 

「えーと、わたしの恋愛には優しい感じで見守ってほしいかな」

 

ほら、オレの中のわたしもうなずいてるし。って、出てきてよ。オレにオレを押し付けないで!?

 

「そうだ、今度ディーノさん紹介するよ!あんまり話したことないよね?」

 

ダメだ。オレが思うカッコいい大人の人を勧め出したよ。

 

「ツナ、ちっとはドシっとかまえろ。そんなんじゃソラに嫌われるぞ」

「ゔ。で、でもさ……相手は骸だし」

「XANXUSかもしれねーぞ?」

 

おい、リボーン。急に出てきてオレで遊ぶなよ。また白目むいてるから。後、オレも表情筋の維持が大変だから。わたしが動揺したのか、心臓がちょっとドキドキしてるんだよね……。やっぱXANXUSのこと好きなのかなぁ。この後すぐに話題がかわって良かったよ、ほんとに。

 

その日の夜、リボーンにちゃんとお礼をした。ほんといい男だよ。あまり突っ込まれたくないと察してくれてるから、またすぐ話題を変えてくれたし。それもわたしにも興味がある内容だった。

 

リボーンも骸から話があったみたいで、明日からクロームのことを頼まれていたんだって。なんかタイミングが違う気がしたけど、まぁいいかな。家にいるオレがなんとかするでしょ。

 

あ、そうだ。行く前にヒバリさんの上着返しとかなきゃ。クリーニング終わっただろうし、菓子折りつけて応接室の机の上に置いとけばいいよね。

 

●●●●●●●●●●

 

 

フランスに飛んだわたしは今日も元気よく骸に抱きつく。後ろでM・Mが怒ってるけど、骸が気にしてないからいいや。

 

「骸。実はさ、なんか嫌な予感がするんだ」

「ほう」

「あ、でも命の危機まではいかない感じだよ」

 

ふむと少し考えた骸は、念のため急ぎましょうかと声をかけた。残念、わたしの癒しは終わりみたい。

 

 

フランを確保しに行ったら、ヴァリアーと会った。……そう、ヴァリアーと会った。XANXUSは居ないようだけど、超直感はこれに反応していたらしい。

 

骸が気の毒と思ったのか背に庇ってくれた。聞こえてくる内容が内容だったから。

 

「ししっ、ボスの女じゃん。連れて帰ろうぜ」

「ボスの未来のために!」

「そうねぇ。ボスあの夢を見てから機嫌悪いものね。やっぱり会いたいのよ」

 

ないわーとオレは引いたよ。XANXUSの機嫌が悪いのは絶対お前らのせいだよ。お前らがXANXUSのこと大好きなのは知ってるけど、それ逆効果だから。リボーンを見習ってよね。

 

「骸。悪いけど、オレ帰るよ」

「……そうしなさい」

 

スクアーロが叫んでるけど無視して、オレは飛んだ。骸、押し付けてごめん。けど、気付いてたみたいだし、わたしには怒らないよ。ヴァリアーには知らないけど。

 

部屋に戻ったオレは大きなため息が出た。骸が牢獄から出れたし、わたしの精神安定にちょうどよかったと思ったんだけど、悪化したよ。……あれはない。鈍いオレでも思ったよ。本人達の意思は無視しちゃダメだって。特に女心は難しいんだからさぁ。

 

まぁでもオレもここまで傷つくとは思わなかったけど。……守るのが遅くなって本当にごめん。

 

わたしに引っ張られグズグズしていると、部屋の扉が開いた。かまえていたら、ヒバリさんだったよ。家の鍵持ってたの!?とか思ったけど、よく考えたらヒバリさんが払ってたよ、ここの家賃。あと生活費もポストに入れてくれてる。おかげで巻き上げなくなったし、文句なんて絶対言えない。

 

「……泣いてるの?」

 

そこはつっこまないでよとオレはゴシゴシと袖で拭う。けど、その手を取られて、肌を傷めるからってハンカチを貸してくれた。……ヒバリさんが幻覚かと思うぐらい優しくてオレはビックリだよ。でもその優しさでわたしが落ち着いたみたいだから良かった。

 

「ありがとうございます、ヒバリさん。洗って返しますね」

「今度からは僕に直接返してね」

 

別にそれはいいんだけど、ヒバリさん嫌じゃないのかな。今日だって行く前にこっそり置いていったんだけど。というか、夜に学校行ったんだ。気づくのは明日の朝だと思ってたよ。

 

「群れるの嫌いだし、嫌だと思ってました」

「僕が許可出したのに?それに……君の方は群れないよね」

 

君の方ってことはオレのことだよな?

 

「……ほんとだ。オレ、基本ぼっちでした。一緒にいても片割れか、リボーンぐらいですもんね」

 

そういうこととヒバリさんは頷いていた。わたしが嫌がってたし、今もマシになっただけで好んで一緒に居たいとは思ってないもんね。そしてオレはわたしと違って骸に抱きつかない。まぁこの前は感極まったからしたけど、すぐ離れたし。そもそもわたしが居ないとか状況が特殊過ぎだよ。

 

「えっと、それで用件はなんですか?」

「君に会いにきたかな」

 

へ?とオレは首を傾げる。用件がオレに会いに?

 

「君はいつも僕に姿を見せない。……今日だって」

 

……スネてる。この人、スネてるよ!

 

「あははっ」

「なに笑ってるの」

「すみません。なんか可愛いなぁと思って」

 

ダメだ。幼いころから知ってるから、特にそう思っちゃうよ。声に出して笑うのは我慢できるけど、ヒバリさんの新たな面を見たとオレはニコニコするのを止められない。

 

「……未来の僕は知らないけど、僕は肉食動物だよ」

「なんですか、いきなり。それぐらい知ってますよ」

 

というか、ヒバリさんが肉食動物じゃなかったら、何になるの。小動物好きの肉食動物だよね。

 

「君はわかってないよ」

 

それ以外ないでしょとオレが思ってると、視界がぐるりと回ってヒバリさんの顔が目の前にあった。こんな近くでヒバリさんの顔を見るのを初めてだ。相変わらずキレーな顔で獄寺君達とまた違ったイケメンだなぁなんて思う。

 

「いつまで僕を弱いと思ってるつもり?」

「……すみません、ちょっとナメてました」

 

まさかひっくり返されるとは思わなかったよ。そりゃ殺気があれば反応したけど、ちょっとこれは反省しないと。ヒバリさん相手に油断しすぎだった。

 

「子どもの頃からずっと君を捕まえたかったんだ」

「そんな気がしてました」

 

あの監視カメラの数を考えたら、誰も否定しないよね。

 

「僕は狙った獲物は逃がさない」

「はぁ、わかりました。一度ぐらいは相手しますよ。場所と日にち教えてください。行きますから」

「……君、今の態勢わかってる?」

「近いなーとは思って……ま、す……」

「うん、やっと理解したね。小動物」

 

オレ、食われる寸前だよ……。鈍いのはわかってたけど、本当に鈍かった。わたしも呆れてないで教えてよ。面白そうだからいいかなって?軽い!もっと身体を大事にして!後、出てくる気ないよね?相手をするのはオレじゃん!いいと思うなら入れ替わってよ!?

 

「……ヒバリさんはその、興味がないと思ってました」

「君のことずっと探していたんだ、興味しかないよ。でもまぁそういう意味なら……他の男が手にしたと知って苛立ったから、そういうことかなって」

 

未来に行ったから興味を持ったんだ……。行かなかったら、気付かなかった、そういうことだよね!?

 

「君達が応接室にこの部屋のことを頼みに来た時、鴨がネギを背負ってきたってこういうことを言うのかなって思ったよ」

「……機嫌がよかったから、咬み殺さなかったんですね」

「うん。君と会える手段がなかった僕にはこの部屋は都合がよかった。あの小動物が僕に頭をさげて用意した部屋を君が捨てるとは思えないしね。そして今でも君はそう思ってる」

 

……否定できない。こんな状況になったのに、オレはこの部屋を捨てる気はない。たとえ使う回数が少なくても。

 

「もしかして今日はたまたまタイミングよかっただけでした?」

「勝手に触れたりはしてないよ。座って飲み物ぐらいは飲んだかもしれないけど、僕のお金だし問題ないよね?」

 

まぁそれぐらいならと返事しつつ、気付かなかったなと思った。結構な頻度で来てたみたいだし。

 

「ねぇ、もういいよね。いい加減、この態勢飽きたんだけど」

「そうですね。オレもそう思ってました」

 

返事と共に殴ろうとしたけど、ヒバリさんもわかっていたみたいで避けてトンファーを出した。

 

「やっぱり君はいいね」

「……喜ぶのはどうかと思いますけど」

「君が簡単に僕の手に落ちてきたら、つまらないよ」

「えっ、もしかしてオレ、選択間違いました?」

「一度で満足したかもね」

 

一回は食べるんですね……とオレの笑みは引きつった。

 

「でもまぁ今日のところはこれで満足かな」

 

そう言ってヒバリさんは帰っていった。帰るんですか!?とつい喉から出そうになったけど、必死に我慢したよ。だってね、言ったら喜んで残って朝まで戦ってた、絶対。

 

衝撃的なことがありすぎて頭がまわってないオレでもこれだけは気付いた。

 

「……オレが想像していたモテ期と違う」

 

言ってて悲しくなったオレはイジけるように寝た。もちろんオレん家の屋根でね。

 

●●●●●●●●●●

 

 

ヒバリさんに見つかったら、並中で勝負するというルールができた。……出来てしまった。

 

あの部屋狭いから、絶対物が壊れるし片付けるのはオレなの!お金はヒバリさんが出すけどさ。気持ちの問題でオレが言い出した。オレはいつでも逃げれるから時間制限つけたけど。それでもヒバリさんの思う壺な気がする。オレ、損しかしてないじゃん。

 

ちなみにオレ達が戦ってることを知ったオレは抗議に行ったよ。オレも止めなかったし。けど、ヒバリさんは楽しそうに戦っていたから意味がなかった。こっちのオレも損しかしてない。これもヒバリさんの思う壺でした……。

 

リボーンはオレが止めなかった時点で察したみたいで、やるなヒバリと楽しそうだった。お前、人の恋愛みてもウゼーと思うタイプじゃん。なに楽しんでんの!?って思ったけど、こういう展開はリボーンの好みっぽいよねとも思った。

 

あ、もちろんオレは気付いてないよ。オレが鈍いんだから、経験が少ないオレも鈍いに決まってる。これ以上ヒバリさんを喜ばせる必要はないよねと黙ってる。……本当は恥ずかしいだけ。どんな顔して報告したらいいの。無理だってば。

 

どうしてこうなったと頭が痛くなるような状況の中、クロームの幻覚が切れかけた。この時、オレはやっぱ日付おかしいなと思うぐらいで、オレが必死に走り回って無事に解決していた。骸が結末に満足そうだったから、わたしは喜んでいたよ。

 

落ち着いて日付の問題を考えたら、継承式もしなかったし、シモンとの揉め事も短かったことに気付いた。オレが目が覚めてから1日で終わったもんね。アルコバレーノの寿命が近づかないと始まらないから、ズレるのは当たり前だった。

 

代理戦争どうしようかなと悩む。いろいろ問題はあるけど、全部後回し。今オレが悩んでるのはどのチームに入ろうかなということ。それだけしか今は考えてない。ううん、考えられないが正しいね。

 

だってクソ親父が参加するから。

 

もうわたしがメスを磨いて準備しているよ。殺す気満々です。もちろんオレは止めないよ?周りに止められる可能性が高い気もするけど、それはそれ。せっかくマフィア界で殺しても許されるタイミングなんだよ。絶好のチャンスじゃん。母さんには悪いとは思うけど、本当のことは伝わらないから気にしない。

 

わたしがその時を楽しみにしていると、リボーンが夢を見たっぽい。ディーノさん達がきてるからほぼ間違いない。ほぼなのは明るくなったらオレは屋根から居なくなるからまだ本人から聞いてないんだよ。まぁ今から盗み聞きするけど。オレがくるのを待ってたのか、話は食後だったから。

 

「ソラ、おめーもこっちで聞け」

 

呼ばれたから、ひょいっと窓から顔を出す。

 

「もしかしてまた屋根にいたのー!?風邪引くから!!夜はもう寒いし!!」

「仮面があついから、ちょうどいい感じだよ」

「そういう問題じゃないよ!!」

 

えー……言ってることと違う……。話が進まないから、オレがリボーンに蹴られていた。その間に、ペコっとディーノさんに頭を下げ挨拶する。

 

「仮面とったところを見たいって言えば、嫌か?」

「大丈夫です」

「……本当にそっくりだな、お前ら!」

 

いろいろ思うところはあるみたいだけど、ディーノさんはオレ達を喜ばせる言葉を選んだ。わたしがすごく喜んでるから、入れ替わる。

 

「そんなにわたしたち似てます?」

「ああ。そっくりすぎて驚いたぐらいだぜ」

「そっか。ありがとう、嬉しい」

 

テレたのか、戻っちゃったよ。オレが胸に手を置いたことで、みんなわたしが戻ったことを察したみたいだ。すげーみんながニコニコしてたから、オレもちょっと恥ずかしいんだけど……仮面しよ。

 

柔らかい空気が流れてるし、このままじゃリボーンが話しにくいかなと思ったオレは先を促したよ。

 

「それでお前がオレを呼んだんだから、大事な話なんだろ。さっさと話してよ。マシになったって言っても、マフィアに囲まれてる状況じゃ、落ち着かないってお前も知ってるだろ」

 

オレの言葉に慌ててディーノさんが家の周りにいる部下をさげてたよ。今度からもオレがいる時はそうしてください。言わなくてもやってくれるだろうから口には出さないけどね。

 

リボーンは夢の内容を語って、ボスコンビに代理として戦ってくれと誘った。2人とも手伝ってもいい、といいつつ視線はオレを見ていた。オレが誘われてないから気になるんだろうね。

 

「ソラ、オレはおめーを代理にしねぇぞ」

「そんな気がしたよ」

「そうか」

「ちょ、ちょっと待って。や、オレもソラを巻き込むのは反対だからそれはいいんだけど、それならなんで話したんだよ、お前」

「オレ……というより、わたしと君のため?」

 

察し悪いね、オレ。ディーノさんは難しい顔になったから気付いたっぽいのに。

 

「ある人物が代理として参加する可能性があるから、リボーンはわざわざ呼んだんだよ」

「……可能性高いのか?リボーン」

「アルコバレーノの一人が頼みに行くのは間違いねぇぞ。後はあいつが参加するかどうかだ」

「じゃオレは寝るから。明日から忙しいし」

 

屋根に戻ろうとオレは立ち上がったんだけど、未だにオレはどういうことかわかってなかった。

 

「君も心構えしときなよ。君の父親が帰ってくるかも知れないんだから」

「と、うさん……が……?」

 

混乱しているオレの頭を撫でてからオレは窓から出て行った。オレは本当に寝るから、リボーンとディーノさん頑張ってね。

 

●●●●●●●●●●

 

 

いつもは太陽が出れば去るんだけど、今日はオレの様子をみるために残った。一応、学校には行くみたいだ。ちょっと顔は暗いけど、前は向いている。すぐにその理由はわかったよ。オレを止めるために獄寺君と山本に頭をさげていたから。もちろんリボーンの呪いのことも話してるけどさ。ちょっとズレてるよね?

 

「主旨、変わってきてるけどいいの?」

「問題ねーぞ」

「よくやるよ、全部利用して彼を鍛える気なんだから」

「オレはツナの家庭教師だからな」

 

そういうと思ったよ。なんてリボーンと会話してたら骸がオレに宣戦布告しに来たっぽい。

 

「骸!」

「……ソラ、君は本当にどこからも現れますね」

 

普通に移動しただけじゃん。死ぬ気の炎もつかってないし。骸にぎゅーっと抱きついていたら、オレが引き剥がそうとしてきた。むー、過保護すぎる。それでも仕方ないなぁと許しちゃうんだよね、わたし。

 

「じゃ、君にする」

「うん」

 

昨日とは逆でオレがわたしの頭を撫でていた。骸は呆れてたけど、話を進めたよ。やっぱり宣戦布告だってさ。クロームも骸のチームみたいで、オレに謝っていた。

 

「ね、骸。わたしもそのチームに入れてよ」

「ソラ!?」

「君が口出す権利はないよ。その権利があるのは骸とヴェルデだけ」

 

わたしがそういうと、オレがショックをうけていた。

 

「ふむ。君はこのような話に興味がないと思ってましたよ」

「だってさ、沢田家光が出るかもしれないんだよ。サクッと殺しちゃいたいなって」

「ああ、なるほど。どうしましょうか……」

 

オレ、すっげーうるさい。何度も耳元で叫ばれるのはいくらわたしでも嫌だから離れる。

 

「待て、六道骸。この女、リボーンと敵対する気がないようにしか見えん」

「ポイントはそこじゃありませんよ。ヴェルデ博士がどれほど真剣に呪いを解きたいか、それ次第です」

 

えーもしかしてダメなの?

 

「リボーンが目障りで参加しただけでしたら、彼女が他のチームに入っても影響はでませんよ。その理由で参加したいのなら僕を殺そうとはしませんから」

「……二回もわたしに殺されかけたのに、よくそう言えるよね。そういうところも好きだけど」

「んなーーーっ!!」

 

だからオレうるさいって。オレが思ってるような意味じゃないから。それに骸はわたしのためにヴェルデに言わなかったこともあったんだよ。むー……もういいや。

 

「……はぁ。ちょっとは静かにしなよ。君の反応がうざったくなったのか、わたしが引っ込んだ。押しつけられたオレも頭が痛い」

 

あ、静かになったよ。ショックを受けすぎてだけど。

 

「オレは言ったぞ。ウゼーと嫌われるってな」

 

追い討ちかけやがった、コイツ。とオレがリボーンに戦慄していると、ヴェルデにそこまでじゃないからと断られた。うーん、第一候補だったのに残念。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

困った。どのチームにもまだ入れてない。エンマにはオレが怖いからって断られた。まぁあんなキレてるところを見ると無理だよねと思わず納得しちゃったよ。

 

本当にどうしよう。今ごろ、腕時計が配られるのに。オレがディーノさんと食事に行ってるし間違いないね。

 

ちなみにオレもディーノさんに食事を誘われた。この時にXANXUS……ヴァリアーと会ったことを知ってるオレは当然断った。オレが必死に誘ってきたけど、嫌な予感しかしないと言ったら引き下がったよ。うそじゃないよ、実際にしたし。まぁオレが嫌な予感がするって言ったから、オレも行きたくなくなってたけど。そこはリボーンが無理矢理ね。オレ、頑張ってね。すげー気まずいと思うけど、ほんと頑張って。

 

ユニは平和主義だし絶対断られるんだよなーとオレは不貞寝する。残ってる人を考えるとね……そうなるんだよ。

 

夜中に人の気配がしてオレはメスを取り出したけど、やってきた人物を見て部屋に飛ぶ。帰ってきやがったよ、あのクソ親父。……念のため、明日の朝は行くべきだよなぁとオレはベッドに寝転がった。

 

 

早朝、オレん家の近くの家の屋根にいるとラルが隣にやってきた。

 

「久しぶり?」

「……ああ。コロネロには口止めをしておいた」

「やっぱいい女だよね。ラルは」

 

カッとテレて、銃口を向けられた。うん、そうそうそんな感じがラルにはあってるよ。オレが全く気にしてないとわかったら銃を元に戻した。……そういや父さんにはオレを見張ってくるとでも言って、こっちに来たのかな。まぁそれはいいや。

 

「でも裏切りになるんじゃないの?」

「ふんっ。お前がそうなったことに関係ないとは言えんからな」

 

CEDEFの一員だからってことだね。相変わらず真面目だね。そうこうしてる内にオレが起きたみたいで、二階から飛び降りてぶん殴ってた。うわ、死ぬ気になってないのに今のオレでもそんな動きできたんだ。

 

「……評価できるのは一発目だけだな。まったく腰が入っとらん」

「厳しいねぇ。あーちょっと涙目になってるじゃん」

 

何度か殴ってるけど、どんどん力は弱くなってるし、泣きそうになってるし、そんなオレの様子に父さんは戸惑ってるみたいだ。まぁ不満とかいろいろ溜まってるだろうとは考えていただろうけど、その反応は予想外だったんだろうね。

 

「ちょっと止めてくるよ。あれじゃ拳を痛めるだけだ」

「オレも行く」

 

ひょいっと飛び降りて移動すると、父さんがオレを警戒した。あ、その反応にオレがキレて、また殴ろうとしてたよ。仕方なく、わたしはオレの腕を掴む。

 

「……どうして止めるんだよ!ソラっ!」

「君が大切だから。あーもう炎を出してない状態で殴ちゃダメだよ。せめてわたしみたいに体内からの強化ぐらいはしないと」

 

痛そうだなーと拳を見つめてると、オレはオレに抱きつき泣き出した。……収拾つかないじゃん。父さんも戸惑うしかないだろうし。

 

「あら、ツナ起きていたの?まぁ!ソラちゃんじゃない、久しぶりねぇ」

 

母さんが来たからか、オレは慌てて離れて涙をふいた。

 

「ご無沙汰しています」

「もう、そんな畏まらなくていいのに。……ツナ、どうかしたの?」

「なんでもないよ、母さん」

 

うーん、オレは笑って言ったけど母さんは気付いてるよ。え、この空気どうすんの。助けてくれそうなリボーンも呆れた感じで黙ってるし。……わたしもオレを止める時しか出てこなかったし。

 

「そうだっ!良かったら、ソラちゃんも朝ごはん食べて行かない?」

「うん、そうだよ!一緒に食べようよ!」

 

はぁとオレはため息を吐いて、2人に付き合うことにした。マジックのように仮面を入れ替えてると母さんがすごいと喜んでくれてちょっと空気がよくなったよ。そのあと母さんがお客様がいらっしゃるのでしょうと話をふって、父さんにCEDEFのメンバーを紹介してもらっていた。まあ母さんはただの父さんの仕事関係と思ってるけどね。リボーンとコロネロはいつも通り挨拶していた。

 

「……父さん、やっぱボスウオッチつけてるんだ……」

「ん?ああ。もっと驚くと思ったんだけどなぁ」

 

チラッとオレを見るのをやめなさい。仮面してるし、仮面をしてなくても顔には出さないよ。CEDEFのメンバーは朝食がいらないみたいで、母さんは増えたオレの分を作りにいった。その後すぐに、オレの超直感が反応して、続いて家に戻ろうとしたオレの肩を掴む。

 

「やっほー。会いに来ちゃった♪」

「お前、空気読むならもっと早く来いよ。オレもうお腹いっぱいだよ」

「あははっ、ソラちゃんってば、なんのこと〜?」

 

普通に会話をし始めたことにオレが驚愕していた。そしてその後オレを揺さぶり始めた。白蘭と馴れ馴れしくしちゃダメって。

 

「待った、待った。ふぅ……そういう君も驚いたけど彼と話せそうだろ?」

「……あれ?ほんとだ。え?白蘭なんでここに居んの?」

「さっき言ったよ?会いに来たんだ、2人に♪」

 

顔を見合わせてから、白蘭に視線を向けた。代表でオレが聞くってわかったから、黙って耳を傾ける。やっぱり白蘭はユニの代理でオレと同盟を組もうという誘いだった。

 

「ええっと、みんなと相談するから、すぐに返事はできないよ」

「うん♪それでいいよ♪」

「それでソラには何の用事だよ」

「……綱吉クンが冷たくて僕悲しくなるよ」

「そういうのいいから」

 

過保護だねという目で白蘭がオレを見ていたから、やっぱお前もそう思う?とオレは目で返す。それに気付いたのか、オレはフンッと手で視線を切ろうとしていた。……意味ないからね?オレもシャマルに対して似たようなことをしたけど。

 

「綱吉クンはやっぱり面白いね♪それでユニちゃんがね、申し訳なさそうに謝っていたよ、代理を頼めなくてごめんなさいって」

「……彼女の性格はわかっていたからそれはいいんだけど、意味が違うように聞こえたなぁ」

 

白蘭は笑っていた。お前も察してるのかよとオレはゲンナリした。

 

「どういうこと?」

「ソラちゃんがこの代理戦争に参加するには、もう頼める人が限られてるんだよ♪」

 

必死にオレが誰だろうと考えてるけど、気づかないでいいよ。

 

「ん?なら、うちのチームに入るか?」

 

……多分、オレのことをよく知りたいと思って声をかけたんだけど、空気が凍ったね。オレの中のわたしがすげー笑顔だよ。

 

「ソラ、母さんのご飯食べに行こう」

「そうする」

 

ラルとリボーンから一発ずつもらってるし、オレ達はもう存在すら無視して歩き出した。白蘭は空気が凍ったタイミングで帰ったし。

 

もちろん母さんのご飯はすっごく美味しかったよ!泣きそうになったのを我慢するのに苦労したぐらい。そんなわたしをオレがすげー優しい目で見ていたんだ。

 

あ、あいつはきっちりリボーンが気絶させてくれてたよ。おかげで他のマフィアもいたけど、気にならなかったよ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

オレは吹っ切れたのか、なんとか家で過ごせているらしい。バジル君達が居るのもあるんだろうけど、とりあえず母さんの前では出してないみたいだ。というのを、リボーン経由で聞いた。クソ親父がいるから家に寄り付かなくなったから、教えてくれてる。

 

ちなみにリボーンはわざわざオレを探していない。部屋で過ごす時間が増えたからヒバリさんに会う確率もあがって、屋上で勝負してるからね。毎日どこかのタイミングでそこに居る。

 

そして代理戦争、前日の夜。ついに動いた。

 

……こんな時間なのに応接室にいるって、どれだけ学校が好きなんだろうね。

 

「ヒバリさん」

「ワオ、君から会いに来るなんてどうしたの?」

「よかった、間に合った!」

 

ちょうどフォンがヒバリさんにボスウォッチを渡していたところだったよ。超直感ってすごい。

 

「実はお願いがあって」

「へぇ。君が僕に?」

「はい。でもその前にまず……フォン、バトラーウォッチでいいんでオレに一つください!」

「私は構いませんが……」

 

そう言って、フォンはヒバリさんを見た。まぁそうだよね。ヒバリさんの条件の一つに多分バトラーウォッチを壊すことも入ってるだろうから。

 

「ヒバリさん、どうしても欲しいんです!お願いします!」

 

お願いしたら、ヒバリさんは悪戯っ子のような顔をした。そしてチラッとフォンを見るだけで、アタッシュケースごと置いて下げさせたよ。以心伝心だね。

 

「あげてもいいけど、条件があるよ」

「ゔ。……オレと勝負じゃダメですか?」

「うん」

 

おずおずとヒバリさんの近くに寄って行く。

 

「その、最後までは……」

「仕方ないね。これでいいよ」

 

仮面をとって唇をちょんと触られただけで、それ以上ヒバリさんは動かない。……こっちからしろってことだね。

 

「し、失礼します」

「うん、間違いないね。ちょっと待ちなよ」

 

止められると思ってなかったから、コテンと首をかしげるとヒバリさんは口を開いた。

 

「君、いつも僕と会わない方でしょ」

「……ふふっ。よく気付きましたね!」

 

うわぁとわたしは感動する。もう一人のわたしのマネをしたつもりだったんだけどなぁ。……もう一人のわたしは、わたしの行動にゲンナリしてる状態だった。もう仕方ないなぁ。

 

「僕に近づいたぐらいから違和感あったよ」

「えー、そんな前からですか?」

「僕の提案にあっさりと乗ったからね。君を大切にしているからもう一人の君はこんな簡単に折れてくれないよ」

 

本当ですねとわたしは笑う。そしてよく見てるなーなんて思う。

 

「わたしじゃ不満ですか?」

「僕は君にも興味あるよ」

「……へぇ。どうせなら最後までしちゃいます?わたしはそんな出てこないですし」

 

そう言いながらわたしは座ってるヒバリさんの上に乗る。確かにあの子がいうように綺麗な人だよ、この人。

 

「君がいいならいいよ」

「じゃ遠慮無く。………って、ダメだよ!!」

 

あっぶな、本当にキスするとこだったよ。オレは今までの最高速度でヒバリさんから離れたよ。……すっげー顔があつい。

 

「君って本当に鈍いよね」

「へ?」

「今隠れてる方の君が、君のために動いてやっと変化が起きたよ」

 

言ってることがわからなくて何度も首を傾げていると、ヒバリさんがため息を吐いて教えてくれた。

 

「未来にいた君はもう一人の君に全部任せたみたいだけど、違うと思ったんじゃない?もう一人の君は君にも選ぶ権利があると伝えたかったんだと思う」

「いやでも、オレそういうの興味ないし」

「もう一人の君は僕のこと気に入ってる程度だから、あのまましても変化はなかったよ。でも今の君の顔は真っ赤。本当にギリギリまで君は僕のこと意識すらしてなかったんじゃない?」

 

もごもごとオレは口を動かすしかできない。今回はオレが意識したから身体が反応したんだ……。

 

「未来へ行って僕が君への気持ちに気付いたように、未来の記憶を得たもう一人の君もそれは変だと思った。もう未来は変わっている」

「…………わたしがオレに伝えたいことはわかりました。でも多分わたしが好き……までいくかはわかんないけど、気になる人はXANXUSですよ?骸のことは愛してますし、互いに歪んでるとわかってるから発展しないだけかなーと」

 

うわ、機嫌悪くなちゃったよ。いやでも伝えた方がいいと思ったし。結局ヒバリさんはため息を吐くだけで、その機嫌の悪さも消した。これにはオレもびっくり。

 

「ヒバリさん?」

「君の発言にムカついた。けど、まだ僕に教える気があることがわかって安心もした」

 

教える?安心?と首を傾げる。

 

「君はもう一人の君を優先する。だから僕の知らないうちに、君がもう一人の君に譲って全部終わる可能性もあったんだ」

「えーと?」

「はぁ。だから君が僕に返事すらせず、他の誰かが手に入れてから知る。それが僕にとって最悪の事態」

「流石に返事はしますよ!?」

「本当に?」

 

……多分。ちょっとヒバリさんが怖くて行きたくないなとか思うかもしれないけど……。

 

「そもそも僕はもう一人の君とまともに話したのは今日が初めて。君からみて、もう一人の君が僕を好きになる要素はどれぐらい?」

「……嫌いではないとは思いますよ?」

 

気に入ってるみたいだし、マフィアの括りにヒバリさんは入ってない。見舞いとかしてもわたしは嫌がらなかった。まぁ夢を見てからは大丈夫な範囲は増えたけど、暴走の時に攻撃しなかったことから、他の人より一線を画す。

 

「まぁね。君が止めなかったら、最後までする気だっただろうから。でもそれだけだ。それじゃ意味がないから僕は最後までやる気はなかった」

 

……しれっと言ったよ、この人。どこまで食べる気だったんですか。絶対に聞かないけど!

 

「もう僕はそんな気分じゃなくなったし、バトラーウォッチ、持って行きなよ」

「え?いいんですか?」

「ただしもう一人の君と定期的に会えることが条件」

 

うん、鈍いオレでもわかったよ。わたしに好きになってもらわないといけないもんね。

 

「……念のために言うけど、僕がどうしても欲しいと思ったのは君だから」

「え!?」

 

オレが驚いたら、ヒバリさんがオレが鈍すぎて頭が痛いと言った。す、すみません……。

 

「ずっと僕を気にかけていたは君の方だ。もう一人の君じゃない。どうして君じゃないと思うの」

「あはは……。すみません……」

「僕はもう一人の君に好かれようとは思ってるけど、それは君を手に入れるため。僕が執着したのは君だ。……ここまで言えば理解したようだね」

 

……人の顔をみて判断しないでください。熱いけど、仮面しよ。

 

「バトラーウォッチください。帰るんで!」

「いいけど、もう一人の君に伝えといて。君に興味があるのは本当だよって」

「ふふっ、光栄です。わたしも興味ありますよ」

 

……また言うだけ言って戻ったよ。オレ、この2人の関係もよくわかんないんだけど。女心は難しい……。

 

 

クソ親父がいるけど屋根の上で寝ようとしたら、リボーンがすぐにやってきた。まぁ何かないと戻ってこないから心配するよね。

 

「ごめんごめん。オレがここに来たくなって、わたしに頼んだんだ」

「そうか」

 

満足そうな顔してるから、お前にもバレてたんだなぁ。

 

「もうさ、大丈夫だと思ったんだよね。彼がわたしを止めてくれるっていうし、オレが奥底で狂わないように守って、たまにアドバイスぐらいでさ。オレが表に出る必要はないって。……でもダメだって」

「当たり前だぞ。おめーが普段表に出てるから、うまくまわってんだ」

「だよね。冷静になればわかるのにね」

 

オレが止めるって言ったから、オレはもう必要ないって思っちゃったんだよね。

 

「もうすげースパルタだった。初めてわたしの危機じゃないのに押し除けて出てきちゃったよ」

「仕方ねーだろ。おめーも結構頑固だからな」

 

そりゃね、オレを模範してるし。結局オレはスパルタじゃないとわからないんだろうね。

 

でもまさかわたしがヒバリさんを利用するとは思わなかった。オレ自身が意識してることを自覚してなかったのに、本当にわたしはよく気付いたよ。それにヒバリさんはオレを……その、想ってくれてるみたいだから、一番効果がある相手だった。

 

「まっ、これからもオレとわたしでうまくやっていくよ。たまにはオレがわたしにワガママ言ったりしてね。ってことで、今日はここで寝るんだ」

「オレも付き合うぞ」

「ありがとう、リボーン」

 

リボーンが側にいれば、父さんは警戒しなくて済むだろうしね。さすがにずっと感じてたら、わたしが参っちゃう。だから実はリボーンが付き合ってくれると思ってた。

 

「なぁリボーン」

「なんだ?」

「今からオレがお前にわがまま言うから。オレが、わたしにじゃなくて、お前に」

 

もう寝る体勢に入ってたけど、チラッとリボーンがオレを見た。まぁオレの独り言と思ってくれていいけど。オレはわたしには頼む気はないし。わたしがどうするかは知らないけどね。……XANXUSのことだってあるし。まぁ今は父さんの抹殺計画で忙しそうだけど。

 

「……諦めんなよ。生きることを諦めんなよ」

 

お前にどこまで届くかはわかんないけど、伝えただけで満足したオレは返事も聞かずに眠った。




まぁそうなる(2回目)
弱ってる時に現れるとか相手を落とす初歩中の初歩テクニックだから。

ただヒバリさんもかなり鈍かった。
そういうことに自分が興味あると思ってないので、失恋するまで気付かない。
なので、未来のヒバリさんはかわいそうな感じです。やっとまともに現れた時には腕の中に子どもがいて、その時に自分の気持ちが気付き、同時に失恋確定。……え?本当につらくない?
唯一の救い?は好きになった相手の心が奪われなかったこと。諦め切れないともいう。
アルに笑いかけ愛情を向けてる横顔をずっと見てる感じ。自分には一切向けられない。……つらっ。
最初にアルがヒバリさんに突撃したのはそれを感じ取ったからです。パパと同じような目でママをみて、自分の幸せを壊そうとする人だと思ったから。ママはママでも、ママ(オレ)の方だし、そんなつもりはないようだから懐いた感じ。ヒバリさんは身体を共有とか絶対嫌だしね。
ちなみに未来のヒバリさんの気持ちをお兄さんは気づいてます。だから飲みに連れて行った先はあそこだった。いい加減、踏ん切りをつけろというのもあった。諦めないよという返事とハイペースで呑ませようとした時点でまだ無理かと諦めましたが。咬み殺したいという方向だけでおさえてるとわかってるのもあった。ヒバリさんに仕方なく付き合いますが、一応やらかすなよと目で訴えてから呑みました。もちろんソラ(オレ)はそのやり取りにまったく気付いてません。
そりゃ過去のヒバリさんが羨ましいよね。だってこの時点で顔がわかるだろうし、自分の気持ちに気付いてチャンスがあるんだよ。実際まだ何もしてないのに、ツナが届けに来たし。

まぁやっと意識をしてくれましたが、ソラ(オレ)を落とすのはかなり難しいです。間違いなくゲームなら隠しキャラで一番攻略難易度が高い。なお、落とせたらソラ(わたし)もノリノリで付き合ってくれるので超エロい展開もある。見返りはヤバい。
でもバッドエンドが全部他の男と付き合ってるとか、心折られそう。作者はそういう系の小説は読んでも、ゲームはやったことないんで心折られるほど酷いものなのかはわかんないんですけどねw案外ふつーなのかな?

あと、時期がズレてるのにヴァリアーと出会ったのは骸達がフラン確保に動いている情報を掴んで動いたから。なので出会った場所は違いますし、ソラはフランと今回会えてません。ソラ(飛んたことで知ってる未来のオレの情報で)はここで出会ってることを知らないので、会ってしまった感じ。

そして、やっとソラはある程度落ち着きました。わたしは前回で、オレが今回で、です。よかった、よかった。
あと、今回の話は作者のお気に入りシーンがある。わたしがメスを磨いて張り切ってるところです。ママンそっくりだよね!(違っ


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第7話

バトラーウォッチをつけるぐらいで、オレは普段通りに過ごす。といっても、仮面をつけた状態での普段通りだけど。記憶じゃ放課後だったけど、念のためにね。

 

まぁ結局アラームが鳴ったのは放課後で制限時間は10分だった。

 

「ふふっ」

 

わたしはオレの教室近くの廊下へと飛ぶ。すると、オレが教室に戻ろうと慌てて向かってるところだった。

 

「ソラ!?……その腕につけてるのって!!」

「昨日、手に入れたんだよ」

「そうなんだ……」

 

なんて会話していたら、バトル開始の合図がなった。

 

「ってことで、ごめんね。大丈夫、壊すのはボスウォッチだけだから」

「……ええええ!?」

 

なんで驚いてるんだろうとわたしは今回のルールを説明する。

 

「ボスウォッチが壊れれば、参加資格を失うんだよ。わたしの邪魔をしそうなのは、君のチームでしょ。もちろんヒバリさんがこの場に居れば、譲ったけどさ」

「ヒ、ヒバリさん……?」

「そ!だってヒバリさんがくれたから」

 

そう言ってわたしはバトラーウォッチを見せる。

 

「ほら、死ぬ気になるのを待ってあげる。1分だけね」

「む、無理だよ!オレはソラと戦えない」

「じゃそれを壊すだけだよ。わたしを止めるんじゃないの?」

 

ハッとしたオレは毛糸の手袋をつけ死ぬ気丸をのんだ。骸、悪いね。先に出会ったのはわたしだから許してね。まぁズルしちゃってるけど、骸は……許してくれる。

 

なんて思ってると超直感が働き、視線を向ける。爆風が起きた。

 

「よぉ、困ってるようだな。父さんが助けてやるぞ」

「なっ!?」

 

うわー、そういうことするんだ。わたしは思わず声を出して笑ったよ。ほんと、最高だよ……リボーン。

 

「父さんの助けはいらない!というか、こっちに来るな!」

「そういうなって。父さん、悲しいぞ。それに……これも仕事だ」

「仕事?」

「ちゃおっス。オレがコロネロに頼んで、同盟を組んでもらったんだぞ」

「はぁ!?お前なにやってんだよ、リボーン!!」

 

まぁオレからすれば、わたしが殺そうとしている人物が目の前にいるから何やってるのとは思うだろうけど、リボーンからすればこの同盟は必要だ。オレを鍛えることも出来ず壊されるよりはマシだから。でもあのリボーンが最初からコロネロに頼むとは思わなかった。それだけわたしの強さを認めてるってことなんだろうね。

 

「わたし、彼と違って壊すよ。あなたも」

「オレはあんま殺りあいたくねーんだけどな。どんな危うい思考をしていたとしても、ガキの頃からツナと奈々を殺し屋から守ってくれていたらしいからな。つっても、お前は手加減して勝てる相手じゃない、ましてお前はオレを恨んでるだろう。だから全力で相手をする、それが礼儀ってもんだ」

「え……」

「悪い、ツナ!オレがミスったみたいで、家にわんさか殺し屋が来てたみたいなんだ!」

 

カッとオレの目が見開いて、そのあとわたしに視線を向けた。わたしの口からも聞きたいみたい。

 

「……今考えたら、来てくれてよかったと思う。当時は苛立ちしかなかったけど」

 

オレはわたしの言葉にぐっと堪えて、あいつに殴りかかった。死ぬ気の炎の量が増えてるけど、ダメだね。

 

「まだまだ弱いな、ツナ。お前はまだコイツの相手は早い。正直父さんもキツくってな、お前を庇ってやれる余裕はないんだ」

 

怒ったオレの一撃と確実に気絶させるための渾身の一撃、まず音が違った。そしてオレは怒りに任せて直線的すぎた。随分ぶっ飛ばされたなぁ。まぁオレだから大丈夫かな。

 

「さて、始めるか」

「では、死んでくださいね」

 

メスを取り出し、こいつに左手でメスを投げる。交わされたり起動を逸らされて、わたしとの距離を詰めようとした。けど、わたしの攻撃はまだ終わってないよ?

 

掴むか、床に叩き落とさないとね。私の投げたメスは夜の炎で永遠にあなたの周りを飛び続ける。

 

……ああ、もちろん刺さっても止まるよ?

 

「くっ」

 

残念。逃げ道がないと瞬時に判断されて、床を壊して一階に逃げちゃった。

 

「あーもう。あんまり壊さないでよ。それとCEDEFが払ってよ、修理代。わたしお金ないよ」

「よっと。すまんすまん、壊したところはCEDEFが責任をもって直す」

 

二階にもどってきたけど、頬に傷がついた程度かぁ。本人はピンピンしてるね。

 

「ね、次はどう踊ってくれる?」

「いや、踊るのはお前さんだ」

 

手から炎だして一気に距離を詰めてきた。瞬時に移動するけど、そこに死ぬ気の炎が迫る。けど、たいした威力じゃないからそのままメスで斬り裂く。その隙をついて、わたしを殴ろうと拳が迫っていた。

 

「……確実に決まったと思ったんだがな」

「もっとスピードあげなきゃ、遅いよ」

 

何ごともなくわたしは教室で立っていた。夜の炎の恐ろしさはこれだよね。ワープでの移動が、人の速度では追いつかない。

 

「さすが……オレと母さんの娘だな」

 

……気付いていたのか。いや、違うね。今の攻防で気付いた。

 

「わたしにはあなたみたいな父親がいた記憶ないよ。彼女には世話になった記憶はあるけどわたしの母親じゃない」

「いいや、間違いないさ。一度も抱きあげたこともない、育てられなかった可愛い娘だ。……前言撤回はしない。全力で相手になる」

「……そこは評価してあげる」

 

特に謝らなかったことを、ね。

 

「でももうわたしの相手にはならないよ。弱すぎて話にならない」

「父さん、まだまだ頑張れるぞ」

「……。さっき、床を壊して逃げたよね。今度はあなたの移動に全部合わせてあげる。そしてメスもどんどん追加してあげる」

 

ああ、やっと顔色が変わったね。わたしはその顔を見たかったんだ。死を想像した青ざめた顔が。

 

「ひとつ忠告、炎を放って壊そうとするのは悪手だよ。自分に戻ってくるから。じゃ、楽しんで踊ってね」

 

メスを移動させるだけの量じゃない。全身を覆うような炎の量だ。ねぇ、この闇の景色からあなたは生きて帰って来れるかな?

 

 

 

 

戦闘終了の合図を聞いて、炎を消す。

 

「うわぁ、まだ生きてたよ。それにボスウォッチも壊れてないや」

 

でも誰に聞いてもボロボロって答えるだろうね。致命傷のところにも刺さってないけど、このままだと出血死しちゃうぐらいは負傷している。

 

「頑張ったご褒美に、良いこと教えてあげよっか」

 

わたし達の戦い……ううん、戦いにすらならなかったね。最後まで手を出さずにわたしの行動を見守っていたリボーンとコロネロ、そして何とか倒れまいとしている目の前の男に語りかけるように話す。

 

「わたしって規格外の強さかな?なんて思うんだ。けどね、わたしなんてたいしたことないんだよ。ふふっ、あの子優しくてね。ずーーーっと手加減してくれてるの。わたしが負けをあっさり認めるぐらい、普段表に出ているわたしは強いんだ。よかったね、わたしが相手で。生き残れたよ」

 

じゃわたしは後は任せるねーと引っ込む。もう一人のわたしはまた頭を抱えてたよ。怒っていいのに、ほんと優しいよねとわたしは笑った。

 

「……オレ、そんな強くないってば」

 

はぁと首を横に振る。そもそもオレだけじゃ夜の炎出せないんだよ。なんでオレの方が強いってなるの。

 

「家光の治療をしてもいいか?」

「あーうん、どうぞ。わたしも割と気が済んだみたいだし、いいと思うよ。こういう機会があれば、またやるだろうと思うけど、今回はもういいみたい」

「そうか」

 

オレなんもしてないのに疲れたよ。バトラーウォッチ、ヒバリさんに返そうかな。……うーん、まだ捨てない方がいい、かな?

 

「ちょっと彼の方へ行ってみる。結構飛ばされちゃったみたいだし」

「頼んだぞ」

 

はいはいとオレはピョンっと二階から飛び降り、オレを探しに行った。

 

 

完全にノビてるオレの頬をペシペシと叩く。

 

「んっ……ん、ソラ!!!!」

 

うわ、すごい。飛び起きたっていう表現がまさしくピッタリだったよ。

 

「おはよう」

「へ?うん、おはよう。って、おはようじゃないよ!!その、どうなったの……?」

「殺してないよ。すっげーボロボロだったけど、なんとかなるんじゃない?オレがみたところではちゃんと治療すれば、後遺症もなく動けるよ」

 

ホッと息を吐いていた。けど、すぐにオレに不安そうな視線を送った。……オレが今わたしをおさえるのが大変じゃないのかなって感じかな。

 

「今回わたしは本気で殺す気はなかったよ」

「ほ、ほんと!?」

「うん、死んじゃったらそれでいいとは思ってただろうけど」

「……そうだよね」

「ただ殺すだけなら幾らでもやりようはあったのに、それをしなかったからね。多分会話して気が変わったんだと思う、君がわたしの口から聞きたいと望んだ時に」

 

キョトンとオレはしていた。今のオレはこっち方面も鈍いよね。察し悪すぎだよ。

 

「君は何も知らなかったから、さっきいろんな感情が渦巻いたと思う。けど、もしあの時に殺し屋が来なければ、君の目の前に現れることはなかったよ。全部調べ終わって、あの家から踏ん切りをつけようとしたところだったんだ」

「だからあの時……」

「うん、ちゃんとわたしの本音だったよ。だから君は止めたよ、わたしを」

 

あーあ、泣き虫だなぁ。ブーメランな気もするけど、オレは優しく抱きしめてあげる。

 

「っと、そうだ。泣いてるところ悪いんだけど、ひとつ報告。オレの正体が君の父親にバレた」

「な、なんだってーーー!!」

 

驚きすぎて涙も止まったよ。そのことにこっちがビックリした。

 

●●●●●●●●●●

 

 

「骸ー!」

「……急に出てくるんじゃありません」

 

抱きつくのはいいんだとわたしは笑う。

 

「結果みたよー、凄いね!」

「当然です」

 

まさかユニチームが後2人になってるとは思わなかったよ。まぁクロームもいるし、当然といえば当然かな。

 

「師匠、誰ですかー?」

「そういえば、フラン、あなたはあの時会えなかったですね」

「一応ソラって名前で活動してるよ。こうやって骸に飛びついてるだろうけど、ほっといていいよ」

「わかりましたー」

「おや?君にしては随分素直ですね」

「ミーは殺されたくありません」

 

この子、良い直感持ってるね。じゃ遠慮無くとぎゅーっと抱きしめる。騒いでるのはいつもの人とヴェルデだし問題ないよ。というか、わたしスパイじゃないってば。

 

「それでどうやって雲雀恭弥からバトラーウォッチを貸してもらえたのです?」

「ヒバリさんから借りれたのは、もう一人のわたしの功績だよ」

「……ああ、そういうことになりましたか」

 

パッと骸から離れ、オレは隅っこに蹲る。……なんでこいつ気付いてんの。え、本当にオレ鈍かっただけなの。

 

「なんだ、この女?」

「気にする必要はありませんよ、ヴェルデ博士。ただ人格が入れ替わっただけです」

「ふむ。こう間近で見ると面白いな」

 

面白くないっつーの。見世物じゃありません!……ごめんね、骸がいる時になのに急にオレが出ちゃって。もう満足してるから大丈夫?ほんと?……うん、ありがとう。

 

「じゃ、オレ帰るね」

「……ソラ。いえ、あなたのままで」

 

入れ替わった方がいいのかなと思ったけど、オレの方に用事があったらしい。でもなんだろうね、わたしを通しても聞けるのに、わざわざオレを引き止める意味って。

 

「あなた方が決めたことに、僕はどうこう言う気はありません。ですが、あなたは鈍い」

「……知ってる」

 

反発する気はないよ。コイツがわざわざ言うんだから意味があるんだろうし。ただ、ちょっとオレの心にグサっと刺さっただけ。

 

「あの男にはまずあなたが会いなさい」

「わかった」

 

いや、あの男が誰かわかってないけど。でも骸がこれ以上ヒントくれると思えないし。どういう意味かは帰ってから考えよ。仮面をつけたオレは飛んだ。

 

部屋に戻ると、ヒバリさんが居た。ちょっと驚きつつも、すぐにヒバリさんが並中へ行こうとしなかったから、バトルは後でいいみたい。

 

「君、壊さなかったんだね」

「はい。でも用事はもう終わりましたよ」

「ふぅん。じゃぁもういらないの?」

「まだ持っていた方がいい気がして」

「そう」

 

ヒバリさんは気にしてないみたいだから、このままでいっか。……そうだよな、この疑問もあったよなぁ。

 

「悩み事?」

「そうですね。なんで、ちょっと寝転がります」

「……君、僕に押し倒されたこと忘れてない?」

「油断してないんで、問題ありません」

 

ヒバリさんがイラッとしてる間に、仮面をとってベッドに寝転がる。帰るかなと思ったけど、残るみたい。オレはクルクルとメスをまわす。

 

「君って左利きだった?」

「どっちもいけます。正確にいうと、オレが右でわたしが左です」

「へぇ。もう一人の君の悩み事なんだ」

「違いますよ。うーん、癖になっちゃったのかな、わたしが落ち着かない時にやっていたから」

「君はそんな癖つくらないよ」

 

チラッとヒバリさんを見る。この人がそういうとそうなんだろうなという信頼がある。ってことは、わたしが落ち着いてないのか。……返事はないし、間違いないね。

 

「……あ、わかった。ヒバリさん、ありがとうございます!じゃオレ行きますね!」

「僕との時間は?」

「わたしのためにも急いだ方がよさそうなんです。終わったら応接室に行きますよ」

「そう。待ってるよ」

 

ヒバリさんの返事を聞いた途端、オレは仮面をつけて飛んだ。XANXUSの元へ。

 

「……いや、オレだしいいんだけど。お前が物騒すぎてビックリした」

 

炎で移動をしたのもあるんだけど、いきなり銃をぶっ放してくるとは思わなかったよ。もちろん飛ばしたけどさ。炎を感じ取ったのか、ヴァリアーの面々が集まってくる。

 

「オレ今バトラーウォッチつけてるから。次からは失格になると思うよ。……ほんと、今の見逃されてよかったね」

 

とりあえず先にこの場にいる全員に注意する。マーモンがXANXUSの行動にショックを受けてるよ。一番呪いを解きたがってたしね。

 

「なんだ」

「あー待って。先に謝るよ。わたしの方じゃなくってごめん」

 

イラついてまた銃を握るかなと思ったけど、そんなことはなかったよ。にしても、静かだね。何この見守り体制、そりゃXANXUSがイラつくわけだ。

 

「お前なら言わなくていいかなって思ったんだけどさ、念のためにオレが来たんだ。わたしを守るためにオレが居るからさ。……未来は変わったよ。オレ達が夢で知ってしまった時点で、変わっちゃった」

 

ヴァリアーの面々がうるさくなった。……もしオレが今バトラーウォッチをつけてなかったら、うるさくなるだけで済んだのかな。

 

「実際!!……オレ達は夢を見たやつに一度狙われたよ。11代目を産める存在という理由で」

 

……静かになっちゃったな。一瞬でも、一度でもそう考えたことがあったから黙った。その反応にXANXUSが悪態をついたから、本人はそういう風に考えてなかったのが救いだけど。後はマーモンぐらいかな。この騒動が面倒だと思ってそうだし。

 

あの時、オレは鈍くって全然わからなかったけど、わたしは感じ取ったんだ。だからあんなにも悲しんでいた。

 

「……今オレが出てるから普通に話せるけど、多分未来の経験を継承されたお前なら気付いてるだろ。わたしは悲しんでるって。けど、XANXUSの名前が出れば動揺するぐらいは好きなんだと思う。……今のでも心臓がはねたし」

 

ふぅとオレは大きく息をはく。わたしの心にオレも釣られそうだから。

 

「夢をみてから、いろいろあったんだ。未来はかわったと、オレもわたしも実感してる。お前にも関係あるから言っておくけど、選ぶ権利がオレにもあるようになったから。……オレ、お前のこと嫌いじゃないけど、好きでもないから。それだけはハッキリ言っておく。で、お前らは最悪」

 

視線と共に殺気をおくれば、何も言わなかった。文句を言ってたら、多分オレはキレてた。

 

「とりあえず邪魔だからどこか行ってよ。オレはわたしを守るためにいるから、お前らが居たらわたしが出せない」

「退け」

 

XANXUSが協力するような言葉を発するとは思わなかったなぁ。やっぱかなり鬱陶しかったのかも。出て行ったのをみて、やっとわたしを出せるよ。……大丈夫だよ、XANXUSはバカなこと考えてなかったよ。出てきなよ。

 

「……ごめん。もう一人のわたしがいろいろ言って」

「おい」

 

あまり気にしてないのかな。普通に呼ばれたし。

 

「なに?XANXUS」

「取れ」

「……嫌いな顔だよ?」

「るせぇ」

 

嫌だなぁなんて思いながらも、わたしは仮面をとった。

 

「似てねぇ」

 

それだけ言って寝る体制に入るのはズルいと思う。

 

「あのさ、本当にいろいろあったんだ。……あの子はわたしを優先するから何も言わなかったけど、あの子を好きって言う人だって現れたよ」

 

怒ったりするかなと心配したけど、目をつぶったまま。でもちゃんと聞いてる。それがわたしにはわかるんだ。

 

「いろいろあったのに、わたしは進めなかった。会うのが怖かったんだ。だって、よくわかんないから。急に意識するようになったし……」

「くだらねぇ」

「うん。そう、くだらないことだよ。未来のわたしの気持ちに振り回されて。でもXANXUSも振り回されてるよね。わたしにはわかるよ」

 

……無視しないでよ、もう。負けず嫌いなんだから。アルはそういうところを似たんだよ、絶対。

 

「似てないって言ってくれて嬉しかったよ。他の人に言われたら悲しかっただろうけど、XANXUSに言われるとすごく嬉しい」

「チッ」

 

舌打ちやめてよね。言わなくていいこといったとか思ってるんだろうけどさ。まぁ振り回されてる証明みたいなもんだし。

 

「XANXUSは大丈夫でも、わたしがよくわかんないからさ。それにもう一人のわたしを好きと言った人も現れたのもあるから、互いに認めた人にしようってわたしが提案した。もう一人のわたしはさっきハッキリいったでしょ、信頼できるんだ。……そっち方面には鈍いけど」

 

ふふ、スネないでよ。ともう一人のわたしに声をかける。

 

「だからさ、ちゃんとやり直し?したい」

「勝手にしろ」

「うん、じゃぁまた来るよ」

 

今のXANXUSの勝手にしろは、全部わたしの好きにしろってことだもんねと笑う。本当になんでもわかっちゃうんだなぁなんて思いながら、わたしは飛んだ。

 

向かった場所は応接室。もう一人のわたしがあわあわしてるけど、放置。だってねぇ、話さなきゃちゃんと。

 

「やぁ」

「あの子は黙ってたけど、XANXUSに会ってきたよ」

「ふぅん。それで?」

「わたしの好きにしろって言われたから、たまに会いに行くことにしたよ。けど、わたしが進むかの判断はもう一人のわたしに頼んだから」

 

さっきもう一人のわたしが黙って向かったことには機嫌悪そうだけど、決まった内容は悪くないとは思ってそう。だって、条件は一緒だから。

 

「怒っちゃダメですよ。わたしのために向かったんですから」

「……わかった」

「ふふ、ありがとうございます。では、変わりますね」

 

ひぃ!とか言ってるけど、大丈夫だよ。だって怒ったら、わたしに好かれないってことだから、ね?

 

「……す、すみませんでした!!」

 

わたしはそう言ったけど、オレには無理だって。謝る以外に道はないんだよ!堂々と居るなんてオレには出来ません!!オレが悪いとわかってることには普段通りなんて出来ないって!!

 

「はぁ、もういいよ」

「ゔ、すみません」

 

気まずくて必死に話題を探す。……あ、そうだ。

 

「これ返します。もう要らなくなったみたいで」

 

そう言ってオレがバトラーウォッチを差し出すと、ヒバリさんはまたため息を吐いた。……まぁヴァリアーへの牽制に使ったってわかるよね。

 

「壊すよ」

「はい。オレがそれをつけることはもう無いんで。好きにしてください」

 

バキッと音が鳴った。……トンファー使わなかったんですけど。この人、オレに対する怒りを全部そこに込めた気がする……怖っ。

 

「って、怪我してないですか!?」

 

慌ててオレはヒバリさんの手を掴んで調べる。多分、大丈夫かな?血とかは出てないし。オレがホッとしたら、すぐさま手を引っ込められた。あ、嫌だったかな?

 

「すみません」

「……嫌とは、思ってないよ」

 

本当かな?とオレはヒバリさんの顔を見て、なんとなくわかった。多分ヒバリさんも戸惑ってるんだろうなって。本当に未来に行くまではそういうことに興味とかなかっただろうし。そこはオレと一緒だから流石にわかったよ。……その割にはオレを食う気満々だけどね、この人。

 

「ええっと、屋上で戦いますか?」

「別に僕はかまわないけど……」

 

ん?なんかヒバリさんの反応が変だよね。いやまぁ戸惑ってたのはわかってるけど、バトルに関しては別で喜んでしそうなのに。というか、今日の分だってまだだよね?

 

「……君、もしかして勝負していた理由を忘れてるとか言わないよね」

「へ?」

「君が意識するようになったんだから、僕としては次に進みたいんだけど」

 

……そうでした。別にバトルしなくていいじゃん。あれはオレが食われないためにやってたんだ。いや別に今は食われていいなんて思ってないけどさ。それにヒバリさんにしてはまともな提案だった。

 

「そ、そうですよね。でも次に進むって?」

「僕のペースでいいの?」

「……なしで」

 

そんな残念な顔をしないでください。というか、それ絶対また戻るから、バトルに。……この人、本当に戸惑ってんの?

 

いろいろ提案した結果、ヒバリさんに見つかったら食事に連れてってもらえることになった。……オレが損してない!と衝撃をうけたよ。や、今までがおかしかったんだけどね。

 

あーでもなぁ、お金は完全にヒバリさんに依存してる状態だよなぁ。戸籍ないけど、バイトって出来るのかな?




家光、死す!!とは、ならなかった。
まぁツナが止めたからですし、ソラ(オレ)が言ったようにこれからも機会があればします。その度にツナが頑張るでしょう。もちろんソラ(わたし)のためにね。

そしてある意味、大本命のXANXUS。
前提条件が未来と違いすぎました。
未来の経験に振り回されて、先にお互いが意識してる状態です。
XANXUSなんてちょっと前に何としてでも殺そうとした相手ですよ。それがたった一夜で愛してる女にランクアップだよ。それも決着次第では最期になる前日に寝かさなかったぐらい愛した女。……え、何段階アップしたの?そりゃ整理つかないわ。思わずぶっ放すのもわかる。当たらないのはわかってますし。ましてまだ相手はガキって言えるぐらい年下です。同じぐらいの歳ならまた違ったのにね。ヴァリアーの面々が思ってる以上にXANXUSは混乱してます。イラついている程度にしか見せなかったのは彼のプライドでした。

未来編の後書きに長々と二人が結ばれた流れを書いたのはこの話のためでもありました。本当は本編に入れたかったんだけど、本編に入れて説明しちゃうと継承されちゃうから後書きにしか書けなかったんですよね。
割り切って身体の関係から始まってるなら、わたしはヴァリアーの態度に傷つかないんですけど、意識してる状態だったんでね。もう最悪でしたね。あんな事件の後でしたし。
でもXANXUSのことが好きな彼らは一瞬でもそう考えてしまったのはわかるんですよね。実際未来のXANXUSは悪くねぇという判断から関係を持ちましたし。そんなこと今のXANXUSとソラは知らないからややこしい。

で、2人が出した結論はやり直しでした。
2人っきりで会う時間がもっと必要と判断した感じ。
ヒバリさんが入り込む余地を与えてるのも、ソラ(オレ)に判断されるのも仕方ないという考えですね。だってね、本人らもよくわかってないんですから。
ゆっくり歩んで整理していくしかありませんね。


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最終話

次の日、オレ達は散々話し合って飛んだ。……墓ぐらい作ってあげなよ。まぁそんな心の余裕がないんだろうけど。わたしだってオレを作らなきゃ、危ういってレベルじゃないだろうし。

 

「やあ、ソラ君」

「驚いてなさそうだね、バミューダ」

「ずっと現れる気がしていたんだ。君は僕たちのことをよく知ってそうだからね」

「わたしがオレの好きにしていいって言わなきゃ来なかったよ」

 

オレはわたしに頼む気はなかったのにね。まさか好きにすればいいよって言われるとは思わなかった。それにあれを言われたらね、オレも折れるしかなかったよ。

 

「場所の提供してくれる?」

「もちろんさ」

 

バミューダの後についていくと、オレが知っている場所にたどり着いた。けど、戦う気はないみたいで椅子と机があった。まぁバミューダは机に立ってるけどね。オレは座らせてもらう。

 

「単刀直入にいうよ、オレはお前らの復讐に協力してもいいと思ってる」

「……本当かい?」

「ウソではないよ。でもお前らが思ってるような結末じゃないけど」

 

そう言って、オレは記憶にあるおしゃぶりの外し方を説明する。

 

「オレはいつか死んじゃうから、おしゃぶりの命運と7³の主導権をお前らが管理することになる。これでお前らの目的は達成する。チェッカーフェイスに復讐したいだけであって、殺して復讐したいわけじゃないんだろ?」

 

……返事はなしか。復讐心ってそう簡単に抑え切れるものじゃないしね。それは抑えてるオレが一番わかる。

 

「それとお前らに選択肢はないから。この提案をのんでもらうよ」

「……なぜだい?」

「お前が一番わかってんじゃない?オレは復讐者のことをよく知ってる、もちろん弱点も。さらに呪解したお前でもオレは勝つよ。対抗手段として人質をとるっていうなら、オレにも考えがある。さすがにオレはそこまで温厚ではない」

 

ここで手を打てとオレはバミューダを見る。

 

「……僕は今までもう一人の君がクレイジーと思っていたけど、君の方がよっぽどクレイジーだ。まさか僕と同じことをしようとするなんてね」

「お前がやらないならオレがするしかないだろ。空のおしゃぶりさえあれば、出来るのはわかってんだし。そりゃわたしを巻き込むのは悪いけど、オレの好きにしろって言った時点で納得済みだったよ。どんな姿になるかもわかんないのにね」

 

こういう考えがあったからオレはわたしに何も言うつもりなかったんだけどなぁ。まぁバミューダが諦めたみたいだから良かったけど。

 

「あ、そうだ。どうせ乱入するんだろ?参加してないと勝手に終わっちゃ困るし」

「もちろんそのつもりさ。君の提案でも、最後の2組に残らないとね」

「オレが説明して譲ってもらえるのが一番いいんだけどなぁ」

「あの男のことだ、それだと僕達の参加を認めないね」

 

だよなぁ。みんなと敵対するから許可した感じがするんだよ。

 

「そういや、オレにも時計くれるの?」

「フハハハ、ソラ君がボスウォッチがつければいい。そしてこの茶番を終わらせなよ。方法は任せるさ」

 

オレの提案をのむんだから、オレが一人でやれってことね。まぁいいけど。

 

●●●●●●●●●●●

 

バミューダと一緒に乱入するから、オレは合図が来るまでここで待機しろって。つーか、その映像とかどうやって見てるの?って疑問に思ったら教えてくれた。掟に違反したマフィアの技術の応用だって。……そういやお前らが回収してたね。

 

「始まりそうなら呼んで、オレちょっと墓作ってくる」

「物好きだね」

 

そう言いながらも、バミューダが気持ちに一区切りついたから止めないんだろうね。そしてオレがせっせと掘っていたら、途中からイェーガーが手伝ってくれて、それがきっかけになったのか徐々に他の復讐者も集まって、みんなで供養した。

 

「バミューダのことよろしくね。7³の管理は責任重大だし、また悲劇が生まれないように守ってあげて」

「ああ。任せておけ」

 

オレがありがとうと笑えば、恐る恐るだったけどイェーガーがオレの頭を撫でてくれた。照れ臭くてちょっと恥ずかしかったよ。オレの小さい頃から知られてるから特にね。

 

「お前ぐらいだ。オレ達を人として扱うのは」

「うーん、まだ出会ってないだけじゃない?他にもいるよ、絶対」

 

特にオレとか。出会い方があれだったし、包帯の中を見てビビるかもしれないけど、普通に話とか出来ると思うよ。

 

なんて話をしていたら、始まったみたい。いそいそと覗きに行く。

 

「ギリギリに行くの?」

「余計な横槍は防ぎたいからね」

 

やっぱバミューダって慎重派だよね。いったいどれぐらい年数をかけたんだろう。まぁその計画をオレという存在で、初っ端から断念するハメになったんだけど。……そう思うと、オレは本当にジョーカーだよね。一瞬で状況がひっくり返る。まぁ今回は良い方向に転がりそうだからいいけど。

 

狙い目はやっぱエンマ達だった。他のチームと戦闘をしてないからね。特にオレのところは3チーム居て大変そうだった。……クソ親父まだ動けてるよ。コロネロがぶっ放すのはいいけど、そのあとオレとの攻防どうするつもりなんだろ。いやでも、怒ってるオレの動きは読みやすいだろうし何とか出来るかな。デーモン時みたいにキレてたら話は別なんだけどなぁ。

 

そう思ってる間に、コロネロのマキシマムライフルが放たれた。うーん、いつ見ても凄い技だよ。残ったのはオレのチームと白蘭、骸、フランだけだったよ。フランは幻術で最初から認識をズラしていたから残ったメンバーに入るのはわかるんだけど、正直もうちょい残ると思ったんだけどなぁ。クソ親父が負傷中だからもっと気合いが入ったのかも。コロネロはラルが大好きだし。

 

ちなみに視界の端でヒバリさんとヴァリアーが出会ってるけど、オレは反応しないよ。面白そうだからって、バミューダもオレをイジらないで。実況中継はいりません。……ほんといい性格してるよ。

 

父さんと同盟を破棄して、というか怒りMAXだったオレは即座に破棄してコロネロに狙われた。結局ユニに頼まれたのかオレを白蘭が庇ったよ。……ユニはどこまで見えてるんだろうね。バミューダとちょっと気になるよねと確認し合う。ユニがみんなを説得して、優勝を譲ってくれるならそれでいいんだけど。だってね、乱入するオレからは頼みにくいし。まぁやるけどさ。

 

あー……オレ知らないっと。コロネロ相手だからブレーキかかってただけっぽい。正体を知られてオレ達に気を遣う必要なくなったし、白蘭がやられたことでキレたね。これは氷像たつね、間違いない。白蘭は喜ぶだろうし、別に悪いことじゃないよね。……うん、他のみんながサッと目を逸らしたのは気のせいだよ。

 

オレもちょっと視界から外して、ヒバリさんとXANXUSの戦いを見る。昨日の夜の時点でオレが時計を持ってないということをリボーンが知ってるから、ヒバリさんの味方にディーノさんをつけたらしい。オレを鍛えるのにちょうどいいライバルだしね。ディーノさんがいるし大丈夫だと思うけど、ちょっと気になるなぁ。まぁ時間だからオレとバミューダは移動するけど。

 

「誰!?」

「悪いけど、その時計もらうね」

「ソラさん!?」

 

動揺してる間にオレはシモンファミリーを気絶させる。やっぱ夜の炎って便利。

 

「な、なんなんだ……。お、お前たしか、ソラだろ!炎真が代理を断ったからって……」

「違うよ。ちょっとアルコバレーノウォッチがいることになってさ。快く譲ってくれると嬉しいんだけど?」

「んなわけあるか!ぐはっ」

「……バミューダ、やりすぎ」

「彼がもろいだけさ」

 

はぁとオレはため息を吐いて、エンマの腕からボスウォッチをとって腕につける。そしてバミューダがアルコバレーノウォッチをつけたのを確認して、他のバトラーウォッチを壊した。

 

「ふむ、問題なさそうだね」

「じゃ帰ろうよ。ちょうどいい感じの目撃者もいるし」

 

そこに隠れてるのはわかってるよとオレ達は視線を向ける。何か言ってくるかなと思ったけど、ちょっと脅しすぎちゃったのかな。でも殺気は出してないんだけどなぁ。

 

「バミューダの炎が禍々しすぎるからかな」

「僕じゃなく、ソラ君の炎が変なのだよ。少し調和してるんじゃないのか?」

 

その言葉にオレもわたしも衝撃をうけた。もう完全に出せなくなったと思ってたけど、禍々しさをおさえてたのかもしれない。そういえば、わたしが暴走仕掛けた時はオレがいつもと炎が違うって言ってたっけ?……ちょっと嬉しい。わたしも喜んでいた。

 

バミューダの炎で帰ったオレは、ヒバリさんとXANXUSがどうなったのかなと確認する。やっぱヒバリさんは無事で、自分でボスウォッチを壊してた。XANXUSはみんなに止められてるっぽい。

 

「なんか嫌な予感がする」

「本当かい?」

 

うーん、なんだろね?と命の危機とかじゃないっぽいんだけどなーと思ってたら原因はすぐに判明し、オレは飛んだ。わたしもオレの中で叫んでるよ!!

 

「オレも、わたしも、キスしたことはないから!!」

 

ぜーはーしながら、なんでオレはこんな宣言しなくちゃいけないの!?オレもわたしみたいに感情のまま叫びたかったよ!

 

オレのくっそ恥ずかしい宣言でXANXUSはのせられたと気付いたのか、舌打ちと共に冷静になってくれたみたいで良かったけど。……というか、お前本当に未来の記憶に振り回されてんだなって思ったよ。あと、振り解いて何事もないようにドカッと椅子に座ったけど、ブチギレしかけてたのを誤魔化すのは不可能だと思うよ。オレもなんか他のヴァリアーと一緒に見守り体制したくなったもん。……わたしはすっげー嬉し恥ずかしいみたいだから良かったね。おかげでオレもわたしも動揺して顔は超真っ赤。

 

「……うらむよ、ディーノさん」

「オ、オレなのか!?」

「絶対ヒバリさんに余計なこと教えたでしょ!怒らせるのが手っ取り早いとか!この人、強い人と戦えるなら割となんでもするからね!?」

「……すまん」

 

オレはツーンとしてるヒバリさんをキッと睨む。オレ、結構怒ってんのわかってる?ねぇ?

 

「僕はウソをついてない。君の唇は柔らかかった」

「だから言い方!!指先で触っただけでしょうが!!それも一瞬!!」

 

はぁぁぁと深くため息を吐き、次に顔を上げた時にはニッコリ笑った。謝ったらまだ許してあげたのにね。

 

「オレ、ガキの頃とかにヒバリさんの前に現れた時と今の状況似てると思いません?」

 

バッと慌ててトンファーを構えたね。そうだよね、こんなところでオレに気絶させられたら屈辱だろうね。でもね、オレもう許してあげない。ヒバリさんがボスウォッチを壊してくれてて本当によかったよ。

 

「オレに勝とうなんて10年はやいから。怪我人は大人しく寝てろつーの」

 

ドスっという音と共にヒバリさんは倒れた。オレが腕だけを飛ばして鳩尾にくらわせたから、周りがぎょっとしてたよ。そんなことも出来たのかって。ふんっと鼻をならしたオレは、ディーノさんに回収して面倒見ろと視線を送る。ペコペコとディーノさんは謝ってたよ。リボーンに女性の扱いを叩き込まれてるはずだし、ヒバリさんの家庭教師として失格だと思ったんだろうね。まぁまさかヒバリさんがそんな発言するとは、この人も想定外だったと思うけど。

 

「あー、XANXUS。わたしがごめんって謝ってる。その、触られた時はオレじゃなかったんだよ。いやまぁ原因はオレにあったんだけど。だからえっと……って、それはもういいや。お前の反応が嬉しかったみたいで、恥ずかしがって出てこないってだけ知っておいて。じゃぁね」

 

オレはバミューダの居るところへ飛んだ。オレが勝手な行動をしたけど、まだ機嫌が悪いとわかってるみたいで何も言ってこなかったよ。流石長生きしてるだけあるね。まぁオレが強敵として充分価値があると思われるようなことしたってのもあるんだろうけど。にしても……ふんっだ、ヒバリさんのばーか。

 

通信が入る部屋でオレは新しく入れてもらった静かにお茶を飲んでいた。おかげでかなり落ち着いたよ。今チェッカーフェイスとやりとりしてるけど、バミューダを特別に認めてもらえるかっていう話で、オレの出番はないしね。そして今認めてもらえた時点でオレの大勝利が確定した。

 

「はぁ!?ちょ、なんでソラが一緒にいるの!?」

「お呼びだよ、ソラ君」

「え、オレも話すの?ちょっとバミューダを優勝させる必要ができたんだ。だからさ、譲って?」

 

……チェッカーフェイス酷いよね。なんでこのタイミングで通信を切るんだよ。強い人物を知りたいから、あっさり譲られたら困るんだろうけど。にしても、見事な氷像だね。すっげー笑える。

 

とりあえずオレ達は時計を外して、またさっきの部屋へと移動。ユニがどこまで見えてるかの確認をしたいし。

 

 

「フフッ」

「……ユニ、それはどうなの」

 

盗み聞きしたオレは撃沈した。まずユニはこうなる可能性は知っていたらしい。でもバミューダからはチェッカーフェイスのイメージが出ると心がえぐられるように痛む。だからオレを予知しようと試したんだって。けど、元々わたしとオレの心が混ざり合ってすごく読みにくいみたい。特にわたしの心はバミューダと似ているから踏み込みにくくて、唯一読めるのはオレの恋関係だって。……そりゃないって。まぁだから申し訳そうに謝っていたんだね。

 

あとユニはギリギリまでこの未来になるかわからなかったらしい。というのも、バミューダの隣にいるのがオレじゃなくて復讐者が来るという未来も見えたんだって。まぁオレも今日わたしに言われるまで動く気なかったからね。わたしの未来に踏み込みにくいから読めなかったのかな。

 

「まぁだいたいわかったし、今日中にオレはタルボじいさんのところへ行ってくるよ」

 

今のバミューダなら場外乱闘なんてしないだろうしね。みんなの説得はこの後になるね。作るのに時間がかかるから。

 

という訳で、オレはタルボじいさんが居るだろう屋敷に飛んだ。超直感も肯定してたのもあって、やっぱり居たよ。

 

「待っておったわい」

「……初めましてですよね?」

「お前さんと会うのはそうじゃの。じゃが、ある日胸騒ぎがしての、9代目にボンゴレリングを見せてもらったんじゃ。その時から小娘に会うのを楽しみにしてたのじゃ」

 

そういや、タルボじいさんってリングからいろいろ読み取れるんだったっけ。未来でプリーモもわかってみたいだし、そういうものなのかな。

 

「えーっと、その、遅くなってすみません」

「気にせんでよい。わしが勝手に楽しみにしてただけじゃからの。それよりわしに作って欲しいものがあるんじゃろ。さぁ遠慮せず話してみろ」

 

タルボじいさんがいいならとオレは早速お願いした。元々オレのヒントだけで考えたのはタルボじいさんだったから、すぐにオレが作って欲しいものを理解してくれて、作ってくれることになった。

 

「ありがとうございます」

「かまわん。昔からアルコバレーノは不憫でな、理論ができておるのじゃ、あとはわしに任せておけ」

「助かります。費用は沢田家光に請求してください。CEDEFに送りつければ問題ありません。あ、ちゃんと個人に請求してくださいね!」

「……まぁよかろう」

 

はい!とオレは笑顔でうなずいた。イタリアで死ぬ気で働け。日本に帰ってくんな。

 

●●●●●●●●●●

 

 

バミューダのところへ戻って、いそいそと時計をつける。危ない危ない、12時になるところだった。というか、氷像は作ったのに時計は壊さなかったんだね。別件だからやめたのかな、オレだしねぇ。

 

「んー眠い」

「帰ればいいじゃないか」

「オレよりチェッカーフェイスの性格知ってそうなのに、気付かないんだ」

 

まさか……とバミューダが呟いた途端、合図がなる。やっぱり強さを知りたいから説得させる時間なんて与えたくないんだよ。オレは時計をつけてなかったけど、他のみんなはつけてるしね。まだオレが話し合えてないことに気付いている。

 

「まっ、行ってくるよ。次に来る時にはその怒りは抑えといてね」

 

オレも当てられて感化されそうだよ。夜の炎は便利だけど、厄介だよねぇ。

 

誰のところに行こうかなと悩んで、オレは骸のところにした。やっぱ誰からってなると骸になっちゃうんだよね。あの切れ方は変だったしコイツもちょっと読んでたのかな、公園に一人でいたよ。それに武器もかまえてないし。

 

「ごめん、待たせた?」

「かまいませんよ」

 

あぁ、やっぱりオレを待ってたんだ。なんて会話してたら、オレのチームも到着。骸のチームも来ちゃったよ。うーん、これはうるさい。わかってたけど、選択ミスしたかな。

 

「ソラ、どういうこと!?ヒバリさんからバトラーウォッチもらったって言ってたのに!」

「初日で返したよ、必要だったのはわたしだったし。これをつけてるのはオレが必要だったの」

 

混乱中のオレを放置して、オレは骸と向き合う。

 

「なぁ、骸。悪いけど、譲ってくれない?」

「わかりました」

 

さすが骸だよ。説明もしてないのにバキッと壊してくれたよ。周りは絶叫してたけど。犬と千種……あとリボーンはしてなかったけどね。助かると言って、次は……と、オレへと視線を向ける。

 

「ゔ……説明してくれないの……?」

「うーん、したいけど場所がなぁ。今ちょっとバミューダが怒ってんだよねぇ。聞かれても大丈夫なのかな?」

 

あの人も悪い人じゃないんだけど、ユニが説得しなきゃ最初断ったんだよね。そのユニが未来がみえてない状態だからなぁ。多分みんなが協力体制にならないと無理なんだよね。

 

「うん、いいや。君はそのままで。そのかわり、君が頼んでちょっとコロネロの方に協力してもらってきて。オレはXANXUSに頼んでくるから」

「ええっ!?って無理だよ。オレ、コロネロとの同盟切っちゃったから」

「そこは頑張ってよ。オレ、あっちに行きたくない。まして頼み込むのは嫌」

 

オレも嫌なんだけどという顔してるよ。オレの方がもっと嫌ってわかってるから文句は言って来ないね。

 

「あーもう、とにかくこのままじゃ誰の呪いもとけないから。オレ、それを防ぐために動いてんの。そしてみんなの協力がいる。わかった?」

「わ、わかった」

 

オレ、頭悪すぎない?骸なんて呆れてため息ついてるよ。

 

「生きるの、諦めなくていいよ。それとオレじゃなくてわたしに感謝してね。わたしがオレに付き合って覚悟してくれなきゃ、バミューダを説得させることなんて出来なかったから」

「……今度からは、勝手に命かけんじゃねーぞ」

 

バレちゃったよとリボーンの言葉にオレは笑う。なんて油断していたら、オレにガクガク揺さぶられるハメに。ちゃんと意味わかってないのに、命って言葉だけで反応したよ、絶対。

 

「ソラ、僕の力が必要なのでしょう。また声をかけなさい」

「ちょ、骸。今、助けて」

 

あいつ、帰りやがった……!まぁ多分ちょっと怒ってるんだろうね、骸も。

 

結局、リボーンも止めてくれることなく、獄寺君と山本が慌てて助けようとしてくれた。けど、眠かったのもあって、気持ち悪くなったオレは意識を飛ばした。もうちょっと早く助けて欲しかったよ……。

 

●●●●●●●●●●

 

 

「おい」

「ん、なに……?XANXUS」

 

わたしが起きると、目の前にショックを受けた顔をしたオレが居た。……もしかして起こそうと何度か声かけてた?

 

「………あーごめん。オレもちょっと昨日重労働して疲れてたみたい」

 

また丸投げされたよ……。いやまぁXANXUSの声に反応して起きちゃったから、オレの反応がめんどくさいのはわかるけどさ。

 

とりあえず、機嫌が直るようにオレの頭を撫でつつ、周りを見渡す。うわー、オレ達がぐっすりしてる間に、オレ頑張ってたんだね。みんな集まってるよ。ただアルコバレーノもいるから、敗退したのも含めた各チームのボスだけみたい。人数が多すぎるとわたしが落ち着かないしね。気を遣ってくれたみたい。

 

あ、ヒバリさんも群れるのダメだから屋根にいるよ。顔を合わせたら怒りが振り返しそうだったからちょうど良かったよ。そしてクソ親父は廊下にいるっぽい。部屋に入れてもらえないのが笑える。

 

ここまで手をまわしてオレがオレのベッドを占領していたから、多分寝てない。ほんと頑張ったね、オレ。

 

「そういえば、重労働って?」

 

あ、本当に機嫌戻ったのね。オレって単純。なんて思いながらみんなの腕を見ていると時計をつけてなかった。その視線がわかったのか、リボーンがつけてると話せねーんだろって言ったよ。そして念のため骸がヴェルデの装置で電波やらテレパシーを遮断する遮断する空間を作ってるって。あとはオレのだけだって。うん、話が早いね。オレにメモ紙をもらって、オレがつけてるボスウォッチに『説得中』とはりつけ、バミューダのところへと飛ばす。これで察するでしょ。

 

「昨日は墓を作っててね。放置されてたから埋葬してた。まぁそれより話をしようよ」

「う、うん」

 

アルコバレーノは今まで世代交代があったことを話す。ちょっと闇の部分はボカしつつ、今回の争奪戦は新たなアルコバレーノを見極める戦いだと教えた。

 

「え、じゃぁ今のアルコバレーノはどうなっちゃうの……?」

「……ちゃんと考えてる。昨日、バミューダが参加できた時点で大丈夫。オレ達が一番恐れたのは、関われないようにされて終わっちゃうことだったから」

「それで強奪という手を使ったんだな。おめーらしくねぇから驚いたぞ」

「強敵として現れないと参加の権限がもらえない可能性があってさ。でも……ごめん」

 

炎真はすんなり許してくれたけど、スカルは結構痛かったみたいでぐちぐち文句言ったけど、リボーンにボコられて終わった。……いろいろリボーンありがとうね。多分全部気付いてるけど、合わせてくれて。

 

「えーと、おしゃぶりを外すシステムに夜の炎が絶対に必要でね。バミューダがそれを引き受けてくれたんだ」

 

そういって、オレは簡単にワープホールの実演をする。特にオレは見たほうがわかりやすいだろうしね。

 

「今はメスをつかってるけど、ここに7属性の炎を通過させるんだ。すると、こうやってどんどん速くなって、7属性のエネルギーを増幅もできて補給しなくて済むんだよ。だから一昨日はこの技を使えば、避けれなかっただろうね」

 

オレの顔が引きつってたよ。避けれず死んでたのはクソ親父だからね。嫌いだし腹立ってるしキレたけど死んでほしいとまでは思ってないだろうし。

 

ちなみにクソ親父に使った技はわたしが回収するたびにどこへ飛ばすか調整してた。これだとクセが出て読めやすいし、ワープホールを直線上に配置してそこを通らせてからクソ親父に撃てば避けれなかったよ。まぁそれはわたしもわかってるだろうけど、あの景色を見せたかったんだろうね。

 

「成功させるには最初に大きな火種がいるから、みんなが手伝ってくれたらちゃんと呪いは解けるよ。ここまで話したら、未来が見えたんじゃない?」

「……はいっ」

「ごめん、読みにくかったんだよね。泣かせずに済んだのに……」

「これは嬉し泣きですよ、ソラさん」

 

やっぱユニは笑顔が似合うよね。オレ、満足した気がするもん。……全く何も思わないわけじゃなかったみたいだね。人の死に疎いのは間違いないだろうけど。

 

「アルコバレーノの呪いを解くことには協力しましょう。それで……あなたは一体どんなバカなことをしようとしたのですか」

 

うわ、こいつまだ根に持ってたよ。今、ほんわかしてたじゃん。そこで終わりでいいじゃん。……なんて思ってたら、いろんなとこから視線が来る。絶対届かないはずなのに、屋根からも感じる。あと、目の前のオレも怖いです。

 

「せっかく付き合ってやったのに、無意味だったな」

「……お前、こうなること読んでただろ」

 

オレ、さっきリボーンに感謝したのに。お前見逃してくれたわけじゃなかったのかよ!?

 

「ソ・ラ。話して」

「……はい」

 

結局オレは何から何まで話したよ。だってオレが超怖かったんだよ。バミューダがなにを考えていたとか、アルコバレーノがどうなっちゃてたかとか、最悪オレが永久に7³を管理したらいいと考えたこととか。特に最後の内容を話した時は怖かった、まじで。いやまぁリスクも話したのはオレだけど。言わない方が怖いってわかっちゃったんだよね……。

 

「ここまで話したんだ。いい加減、おめーがなんでここまで知ってんのかも話せ」

「……薄々察してんだろ、もういいじゃん」

「ソ・ラ。話して」

 

オレ、怖すぎ。絶対こんな怖くなかったよ、オレ。

 

「はぁ。オレがここまでいろいろ知ってるのは君の未来をみたから」

「オ、オレの未来!?」

「僕みたいにリングに適応しちゃったんだ♪……ああ、やっぱりあの僕のことを理解できたのは君だけだった」

 

うわ、ちょっと白蘭が怪しい笑みを浮かべたら、即座にオレが枕を投げつけた。やられた本人は酷いなぁと笑ってるからいいけど。ユニにも怒られてるし。

 

「……まぁ人体実験の影響なんじゃない?縦の時間軸っていっても、なんか歪んでるし、双子の君の未来へ飛んじゃったのはどう考えてもおかしいし。まぁそれはリングに適応しなきゃわたしが死んじゃって、未来がなかったからだと納得出来なくもないけどさ」

 

ハッとオレがこっちを見たから、よしよしと頭を撫でる。今生きてるんだからいいの、と伝わったみたいで何も言ってこなかったよ。

 

「で、わたしはのまれる直前に、未来の君を参考にして人格を作った。それがオレ」

「んなーっ!?」

 

……こんなに接してて気付いてないのオレぐらいだよ。骸とリボーンは当然として、多分XANXUSとヒバリさんも気付いていた。

 

「全然違うよ!それにソラは女の子だし……」

「わたしは、だろ?」

「え?でもオレって言ってる時でもソラはちゃんと女の子だよ」

 

……前言撤回、よく見てるよ。オレの前じゃ騒動起こしてなかったのに。

 

「まぁわたしが作ったからそうなんだけどさ……。説明するから怒んなよ、前の事件の時にマインドコントロールから逃れるためにわたしが奥底に篭っちゃっただろ?……言ってなかったっけ。まぁ炎出せなくなったっていうのはそういうこと。あの時に骸に解いてもらって今は問題ないから」

 

伝え忘れもあったみたいでオレがイラっとしたよ。まぁそれはいいよ。オレが気になるのはXANXUSが舌打ちしたこと。オレお前の機嫌の直し方はよくわかんないから、やめてほしいんだけど。

 

「そん時、オレだけでさ。触られて気持ち悪いなと思ったことがあったんだけど……君がブチ切れてもうぶっ飛ばしただろ、それと幻覚だったから。実際には触られてないし足首だから。つーか、ちゃんとオレも殴ったし、幻覚で本体は居なかったから意味なかったけど」

 

……ヒバリさんもイラッとするのはやめてください。殺気もれてるし。それとオレは機嫌直しにいきませんからね。

 

「話を戻すけど、骸に言われるまでピンと来なかったんだよ。オレの身体が狙われてることなんて。すっげー気持ち悪かったと思ったのに、そういうのは意識外にあるんだよ」

 

だからオレが鈍いのもちゃんと理由があるの。

 

「性別が違うからオレと君は違うって言われると、オレ自身は首を傾げたくなるんだ」

「えっと、ごめん」

「や、いいんだけどね。実際、オレは女だし。意識したり警戒するのは男の方だし、怒るポイントとか女だなってオレも思うもん。ただそういった事件が起きた時とか、ワンテンポ遅れることは多いし……最悪、指摘されても繋がらない可能性があるんだよ。男の君を参考に人格を作ったから」

 

別に君のせいじゃないからねと頭を撫でる。というか、前は本当に特殊過ぎた。わたしは鈍くないからうまく回ってるんだよ、オレ達は。わたしと仲良く頷きあってると、何か思い立ったのかオレに肩を掴まれた。

 

「大丈夫!オレが男からソラを守るから!」

「……それ、ちょっと意味が違うでしょ、絶対」

「そんなことないって!!オレに任せて!!」

 

頭痛くなってきた。白蘭、お前笑いすぎ。キレたところをみたエンマは顔が引きつってるのに。骸は呆れてるよ。……XANXUSが何考えてるかオレにはわかんないね。ヒバリさんは喜んで相手してくれるよ、見なくてもわかる。クソ親父は知らね、見たくもないし。

 

「あー、うん。とにかく性別問題を抜きにしても君が全然違うって感じるのも正しいよ。オレも君を見てて違和感あるから。オレの時でもなんの感情も抱かずに殺せるし、人が死んでもそんな悲しまないもん。わたしが憎しみに呑み込まれる寸前に作ったから、いろいろ欠落してんの。わたしに引っ張られることも多々あるし。未来で培った君の経験のおかげで、そんな表には出さないようにしてるけどさ」

 

慌ててオレがオレを抱きしめてくれようとしたけど、グイッと肩を抑えて距離を取る。すっげー、ガーンって顔をされたよ。

 

「あー、悪い。わたしにやってあげて、そういうのは」

「でも……」

「それも違和感あんの。オレの時に君からやられると、ちょっと微妙な気分になる。君を慰める時とかは気にならないんだけどさぁ。なんか変な基準があるみたいなんだよ。だから同調させようとする時は、わたしにかわってからして。それで問題ないから。それにわたしはすっげー喜ぶ」

「わ、わかった」

 

そうしてとオレは頷く。というか、オレにはリボーンが居るしね。オレの相棒はリボーンだから、オレにも落ち着く効果があるの。あいつもわかってオレが不安定になったら必ず側にいてくれてるもん。だよねとオレが視線を向けると、ニッと笑っていた。やっぱわかってて側にいたんだね。

 

「それより問題は、オレ達の影響受けて君も変わってきてるからね」

「えっ!?そうなの!?」

「わたしは君の未来を参考にしたから知ってるはずなのに、怒ってる時の君が怖すぎて、君の対応をオレに押し付けるぐらいだから。そしてオレも出来れば遠慮したい。あと君が過保護過ぎてオレもわたしも引いてる」

 

あ、オレがショックを受けすぎて倒れたよ。こういうところも違うよなぁ。嘆いたり文句言いそうなのにね。そしてめげずにまたやるとことか。

 

●●●●●●●●●●

 

 

あれからチームのボスが各々のメンバーに説明して、みんなの協力のもとアルコバレーノ呪いは無事にとけた。やっぱユニの言葉でチェッカーフェイスも納得したしね。つーか、ここまでお膳立てしてて解けないとかないから。まぁオレは安定するまでバミューダのところに居たけどね。

 

そしてやっといつもの日常を取り戻した。クソ親父もイタリアに戻ったよ。オレと会えるまで粘ろうとしてたみたいだけど、ラルに引きずられていったらしい。今頃、請求書を見て顔が真っ青になってるんじゃないかな。ちょー笑える。

 

だから今日も屋根で寝ていると、リボーンがやってきた。ヒバリさんから詫びの品を預かってたみたいで、真っ先に渡されたよ。……本気で逃げるのはもうやめてあげよっかな。まさかリボーンに預けるとは思わなかったし。まぁ何度か部屋に戻った時に置いてあったのは気付いていたけど、無視してたからね。

 

「ソラ、一つ聞いていいか?」

「ん?なに?」

「おめー、なんで今回動いたんだ?」

 

どうすんの?とわたしに語りかける。ちゃんと自分で答えるみたいだから交代する。

 

「もう一人のわたしと一緒に歩んでいくって決めたからだよ」

「それは否定しねーが、他にもあるんだろ?あいつはお前を危険には晒さねぇ。まずおめーが説得しなきゃ、実行しねぇぞ」

「ふふっ、よくわかってるね」

 

わたし達のこと、ほんとよく見てるよね。考えて動いてくれたのはもう一人のわたしだけど、助けようと声をかけたのはわたし。……XANXUSのこともあったけど、1番の理由じゃない。

 

「最初は未来の夢を見たのがきっかけかな。まぁ見た時はなんも思わなかったけど。それからいろいろあって、ほんの少し落ち着いたのかな。わたしはちょっと後悔したんだよね。リボーンの呪いはといてあげればよかったなぁって」

「オレの?」

「そう。『何やってんだ、死ぬ気でやれ』って君に怒られたんだ。そして生まれたのがもう一人のわたし。恩人なんだよ、君は」

 

まぁリボーンからすれば何もやってないのに恩人って言われても困るよね。それでもリボーンは言ってねぇぞと否定しなかった。否定されれば、わたしが頑張った意味がない気がして悲しくなるってわかったのかな。

 

「飛んだ世界で彼は君と楽しそうに過ごしててさ、すごく羨ましかったんだ。それなのにわたしは痛くてつらくて……最初は飛ぶのが楽しみだったのに、超直感が反応したのか真実がわかっちゃってね。悪い感情にのみこまれていって、わたしの身体が変わっちゃったんだ。でも制御できなくて……諦めたら怒られちゃった。……だからね、助けてもらったんだから、永遠に生きるぐらいいいかなって思えたんだよ。わたしは一人じゃないしね」

 

もちろん一緒だよともう一人のわたしがすぐに返事をくれて、ふふっと思わず笑う。

 

「だからわたしもこの時間が好きだよ。でもわたしはもう一人のわたしと君が一緒にいるのを感じるのが好きなんだ。……ちょっと変わってるでしょ」

「いいじゃねーか。どこも変じゃねぇぞ」

「ふふっ、ありがとうね、リボーン」

 

入れ替わったオレはふぅと少し息を吐いた。感情の揺れで抑えるのが少し大変だったと気づいてるコイツは落ち着くまで待ってくれる。そういうところもわたしは好きなんだろうなって思う。

 

「……なぁ、リボーン。今日一緒に寝ない?」

「ああ、いいぞ」

 

なんて話してたら、オレが叫んだよ。

 

「リボーンがいないってことは……ソラ、屋上にいるの!?ちゃんと部屋で寝なきゃダメだから!!」

 

目で会話したオレ達は、オレに悪いけど居留守を使ったよ。今日はこれでいいの。

 

●●●●●●●●●●

 

 

その日は朝から超直感が鳴り止まなかった。すげー嫌な予感がする。だから仮面をつけて臨戦態勢。どこいっても消えないから、人気のない場所に移動したよ。その方が気にせず動けるからね。

 

「ちゃおっス」

「お前か!なに企んでんの!?」

 

にやにやと口元が緩んでる顔を見て、濡れ衣しちゃったかなというオレの気持ちはすぐさま消えた。犯人は絶対、リボーンだよっ!

 

「おめーの実力を見ようと思ってな。声をかけたんだ」

「……オレの気のせいかな?ユニ以外のアルコバレーノが勢ぞろいなんだけど」

「あってんぞ」

 

パスっとオレは夜の炎でさっさと逃げようとしたら消された。正確には炎を握り潰された、イェーガーに。

 

「え!?ちょっと待って。なんでイェーガーも!?」

「声をかけられた」

「あ、そうなんだ。って、リボーンの遊びに付き合わなくていいよ!?」

「否」

 

……うそーん、なんでヤル気なの。え、寂しいならオレが遊びにいくよ?だからさ、ちょっと今日はいいかななんて。

 

スカルは察した。ヴェルデはモスカに乗るんだね、使うタイミングがなかったからって試運転にちょうどいいだって。いや、違うでしょ。それにマーモンはお金が絡んでなきゃやらないでしょ。フォンとコロネロは割とこういうの好きそうだから納得できる。や、したくないけど。

 

「なにこれー!?ソラ、どうなっての!?うわあああ!!」

 

オレが必死に避けてたら、いつの間にかオレが巻き込まれていた。リボーンに呼び出されたな、相変わらず不運だね。

 

「こっちです」

 

ユニの声がした。え、やっぱアルコバレーノ全員集合なの。あと、ユニの方からすげー嫌な予感する。

 

「ふふ。この歳になってから探険するとは思わなかったわ」

 

聞こえた声に動揺してオレは一瞬固まった。そんな隙をコイツらが見逃してくれることもなく、仮面がリボーンに奪われた。

 

「母さん!?」

「あら?ツッ君、みんなと遊ん……で……」

 

まずいまずい、見られた。……ううん、違う。目を逸らせなかった。

 

「……ーーちゃん」

 

呼ばれた名に気付けば声を出して泣いていた。わたしが泣いたのか、オレが泣いたのかも、わからない。

 

ただただ、その日は母さんに抱きしめられて泣いたんだ。




〜あとがき〜

勝者、ママン!!

まぁ冗談は置いといて、みんなが望むような展開がこの作品のラストには相応しいかなーと。私の作品の中では上位に入る大円満でしょう。たまに私は意地悪するからねw

ソラの本当の名前は悩んだんですけど、みんなが想像出来る方がいいかなとあえて伏せました。私が確定させると余韻がないなぁと。好きな名前をつけてあげてくださいw

最後はアルコバレーノからのお礼です。
離れられないバミューダのかわりにイェーガーが来た感じ。イェーガーを含めた復讐者を地味に攻略してるというのがポイント。ちゃんと第1話から出してました。
同じ炎なのにそこまで禍々しくないのも興味の対象かな。ツナが初めてみた時に警戒せず普通に過ごしてたのは、少し調和していたからです。
初めて違うとハッキリ明言したのはシモン編ですが、オレを作ることに成功した時に残ったので最初からです。成功したタイミングだから、ちょっとだけ出せて骸に使うことが出来た。たとえあの時に使わなくても出せなくなってました。

あとは……最終話で説明したように組み合わせに気をつけて書いてました。リボーンの時には出来るだけオレと一緒に居るようにしたり、ツナと同調しようと抱きついたりしてる時はわたしにしたり、など。
自分でその設定にしたのに、書いてて混乱してましたw

最後に。
ソラ(わたし)の大事なものはソラ(オレ)です。
このラストは決めてました。


おまけについて。
ソラの恋模様をほんの少しね。
本編と入れると余韻とか消えちゃうし、ちょっと違うかなと思ったので、おまけ扱いです。文字数は7千ほど。
本日の夕方ごろに更新するかな?
おまけのあとがきも長くなりそうな予感が今からしますw

では、お読みいただきありがとうございました!


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おまけ

本日、2話目です。
最終話を読んでない人はそちらを先に。


結局泣きすぎて寝落ちしてる間に、オレやリボーンがうまく説明したみたいで母さんは家族として受け入れてくれた。あと二重人格なことも普通に受けいれた。……まぁ母さんだしね。

 

「でも案外かわらないもんだね」

「おめーの気持ちを優先したからな」

 

まぁねと返事しつつオレはリボーンといつものように過ごす。母さんとオレには悪いけど、屋根の上に落ち着いたんだ。食事ぐらいならいいけど、それ以上はダメだった。雨の日はちゃんと部屋に戻ることを条件につけられたけど。

 

……そう、部屋にね。ヒバリさんが用意してくれた部屋。いざ家で寝ようとしたら、寝れなくてね。前はオレが気絶してたからいけたっぽい。だから二人も諦めたんだよ。勝手に抜け出して屋根に行くのもあったんだろうけど。

 

「うーん、満足しちゃったのかな。結局名前だってソラを使ってるしね」

 

まぁそれは真名ってことで納得はできなくないもないけど。ただなぁ、あれだけオレもわたしも拘ってたのにね。

 

「オレは前に言ったぞ、住んで馴染んでいくもんだってな。名前も一緒だっただけだぞ」

「そういうことなのかな」

「それにでけーのが変わるじゃねーか。忘れてねーだろうな、明日からだぞ」

 

あーもうやだ、言わないでよ。憂鬱なんだから。

 

「つーか、本当に彼に言わなくていいの?」

「ママンもノリノリだったしな」

 

そうだよねーとオレは遠い目をする。この家では誰も母さんに勝てないんだよね。あ、オレはちょっと特殊だから身体が拒否反応したら許してくれるよ。……明日、拒否反応でないかな。

 

 

 

 

次の日、ため息を吐きながらオレは扉をくぐる。わかってたけど、オレうるさい。……や、クラス中うるさいかな。まぁそっくりだもんね。

 

「転校生を紹介する、沢田ソラ。苗字と顔をみればわかる通り、沢田と双子だな」

「……家庭の事情で別々に住んでたんで、あまり深く聞かないで。あと、オレちょっと人に酔うタイプだから近寄らないで」

 

牽制してみたけど効果なさそうだなぁとオレはゲンナリする。みんな、興味津々みたいだし。

 

「ちょ、オレ聞いてないんだけど!!」

「犯人は母さん。君の家庭教師も悪ノリして、ヒバリさんに手をまわした」

「母さん……」

 

ぐでーっとオレは項垂れてた。やりそうだし、文句言いにくいって思ったんだろうね。

 

「ハハッ。でもよかったじゃねーか。ツナ」

「……そうスね。10代目、喜んではいかかですか?多分こいつもその方が喜びますよ」

「はっ、そうだよね!」

 

わかりやすいぐらい嬉しそうになったよ。まぁ確かに悪い気はしないかな。

 

「ってか、なんでお前服違うんだよ」

「あ、ほんとだ。なんでなの?」

 

気付かなくて良いのにね。……って、無理か。だってね、セーラ服だし。でもこれを言ったらあんまり寄ってこなくなるかな。

 

「さぁ?ヒバリさんの趣味じゃない?」

 

うん、大正解。静かになった。先生もオレから距離をとったよ。

 

「んなっ!?どういうことなの、ソラ!!!」

 

……周りは静かになったけど、オレはさらにうるさくなったよ。

 

「や、知らないし。渡されたのがこの制服だっただけ」

「もしかして風紀委員に入ってるの!?」

「腕章はもらってないよ。……つーか、今更じゃない?君がヒバリさんに頼み込んだからオレは並盛に住んでんの」

 

正確には並盛じゃなくて部屋にだけど、そこはオレでも通じたみたいで、そうだねと頷いていた。……周りがギョッとしてるよ。まぁオレがそんな行動しているとは周りは想像してなかっただろうし。オレも思わなかったよ。

 

「家があったらそれで終わりじゃないから。光熱費とか食費、生活必需品とか服代とかほんといろいろあるの」

「そうだった!今までソラどうやってたの!?」

「……察し悪すぎ。ヒバリさんが全部出してくれてんの。オレ今、金銭面はヒバリさんに依存中だからね」

 

クソ親父が出そうと手を回そうとしたらしいけど、握り潰したのもヒバリさんだし。オレもわたしも絶対世話になりたくないっての。つーか、そんなことなったら殺しに行く。そもそもなんで手を回そうとしたんだよ、バッカじゃねーの、さっさと死ね。……いろいろ察したのか、オレはなんにも言えなくなったね。

 

「母さんがどうしてもって言うから、オレはここに居るの。だから制服も教科書もヒバリさんが用意してくれたんだよ。文句なんか言えるわけないじゃん」

「ご、ごめん……。オレが最初に頼んだからだ……」

 

いやまぁそこまでションボリされるのも困る。あの人、善意で動いてるわけじゃないし。

 

「君が気にする必要ないって。オレが学校に通えばヒバリさんにも利益があるから動いてくれただけだし」

「えーっと、あれ以外にもなんかあったの?え、まさか……」

「咬み殺されるとかじゃないから。ただの追いかけっこ。見つかっても、オレに損はないよ。一応、逃げるけどさ。それはなんとなく?」

「なんか随分平和だね」

 

でしょと流す。どうせ名物になるだろうから教えたけど、オレの反応がめんどくさそうだから全部は説明しない。……恥ずかしいのもあるけど。

 

これで納得したみたいだからオレは空いてる席に座る。ヒバリさんの名前をいっぱい出したから、誰も近寄ってこないし、なにも言ってこないと確信したオレは寝た。昨日、憂鬱で寝れなかったから眠いんだよ。それに最初はこれぐらいがちょうどいいし。なんとなくわかってるオレも起こさないだろうしね。

 

 

 

「ん、来る」

 

ガバッと急に起き上がったオレに視線が集まるけど、無視だよ無視。や、オレが心配して声かけてくれるからそれは答えるけど。

 

「この感じ、ヒバリさんが来るね。朝に説明したでしょ、オレは逃げるから」

 

窓から出て行こうとしたらオレに腰を掴まれた。……やっぱオレに対しての反応速度あがってない?

 

「ここ二階だから!」

「知ってるって。どこに問題があるんだよ」

「ゔ、確かにソラはいけるだろうけど、パンツ見えるから!!」

「短パン履いてるに決まってるじゃん」

「そういう問題じゃないよ!?」

 

なんて漫才をしていたら、扉開いちゃったよ。

 

「あーもう、見つかちゃった」

 

はぁとオレが窓から逃げるのを諦めたら、ヒバリさんにオレがすみませんと頭を下げてたよ。変わり身はやくない?

 

「群れてるけど咬み殺すのは許してあげるよ。引き止めてくれたみたいだから」

「へ?」

「うん、似合ってるね。制服」

「はぁそうですか。ありがとうございます」

 

褒められてもそんな嬉しくないんだよね、オレって。まぁヒバリさんの機嫌がいいならいいけど。

 

「えーと、オレ母さんからの弁当あるんですけど」

「夜でいいよ」

「無理ですね。今日の夜はXANXUSのところ行くんで」

「……君、言うようになったね」

 

いやだって、オレが黙っててもわたしが言っちゃうじゃん。今日は慣れない環境だったから、わたしのために絶対行くつもりだし。もちろん骸のところも行く予定。それは言わないけど。

 

……さっきの機嫌良さそうな感じどこいったんだろうね。や、いくら鈍いって言っても理由はわかってるよ。ただどこへいったのかなぁと疑問に思っただけで。

 

「ちょっと待ったーー!!さっきから何の話!?あとXANXUSってどういうこと!?」

「XANXUSはそのままだって、会いに行くの。ヒバリさんとは食事に行く日で揉めてる」

 

ショックで気絶すると思ってたのに、オレとヒバリさんを交互に見てたよ。……どうやって誤魔化そうかなー。

 

「なに、まだ言ってなかったの。僕が君を口説いてるって」

「……サラッといったよ、この人」

 

仮面がないんだから、ほんとやめてよね。あーもう絶対顔赤いよ。

 

「ど、どどどどいうことですか、ヒバリさん!!」

 

……オレより動揺してる人がいたよ。うん、なんか落ち着いた。

 

「欲しくなったから。彼女、他の男にやるなんて勿体無いと君は思わないの?」

「……そうですね。ヒバリさんにも、ソラはあげませんから!!」

「知らないよ、邪魔をするなら咬み殺すだけだ」

「受けて立ちましょう」

「いや、それ、ヒバリさんの思う壺だから」

 

あ、ダメだ。キレかけてるオレに聞こえてないから行っちゃったよ。

 

「……さぼろ」

 

やだよ、オレ。この空気の中で教室に居座るなんて。オレは弁当を持って窓から出て行った。

 

 

 

 

人気のないところで飛ぶ。向かった先は骸のところ。

 

「骸ー!」

「……なんですか、その制服は」

「今日から並中に通うのは知ってたよね。ヒバリさんが用意した制服がこれだったんだ。よっぽどもう一人のわたしが取られるの嫌みたい」

「クフフ。あの男が牽制ですか」

 

驚いてるよ、これもわかんないんだ。あと、趣味って言い方もやめといた方がいいよと伝えとく。普通に言っちゃったからびっくりしたよ、わたしも。どういう意味に取られるかは自分で考えてねと伝える。これも勉強だよ。

 

「それならば、君がここに居るのも相当愉快ですね」

「片割れとバトルを楽しんでるからいいんじゃない?」

「……僕を巻き込まないでくださいよ」

「乗っ取れるかもしれないよ?」

「あの状態の沢田綱吉は少々……いえ、かなり面倒です」

 

だよね、わたしも面倒だもん。喜んで相手をするヒバリさんがおかしいんだよ。それも今回は自ら煽ってたし……。まぁこっそり来たから大丈夫だよと骸に教える。わたしも骸を巻き込むのは不本意だし。それをわかってるから、もう一人のわたしは名前を出さなかったんだよ。

 

「あ、そうだ。母さんの弁当ここで食べてもいい?」

「ええ、かまいませんよ」

 

優しい目で骸が見てるから、わたしも嬉しくなって笑った。

 

弁当を食べ終わったら、珍しいことが起きた。今日は骸以外に人がいないからかな?

 

「なぁ骸。オレなんだけど、もうちょいここに居てもいい?」

「かまいませんよ」

 

即答だったよ。まぁ骸にとってはオレもソラなんだろうね。なんとなくわかってたけどさ。改めて実感。

 

「それで?理由がないわけじゃないんでしょう?」

「ああ、悪い。精神的に疲れるのはわかってたから、教室ではほとんどの時間寝てたんだけど、やっぱわたしはピリピリしてたんだろうね。今オレの中でスヤスヤ寝てる」

「それ、大丈夫なのですか?」

「多分大丈夫。オレとお前に甘えてる状態なだけだと思うから」

 

そうですかと流してるように言ったけど、ホッとしてるっぽい。まぁオレもちょっとビックリしたしね。無理しすぎて身体と精神が分離しかけてんのかとオレも一瞬思ったぐらいだし。悪い予感はしないから多分そういうことなんだと思う。

 

「こんなとこと滅多にないからさ、ちょっと聞いてもいい?」

「……まぁいいでしょう」

 

警戒されちゃったよ。あってるけど。コイツも良い直感持ってるよね。まぁ術士だしなぁ。

 

「お前は参戦しないの?」

「しませんよ」

 

はぁとオレは大きなため息が出た。なんでこう自分から幸せになる道を捨てるかなぁ。お前ら絶対互いに初恋相手だろ。鈍いけど、流石にわかるっての。そもそもコイツが抱きつかれても引き剥がそうとしない時点で、異常だからね。どんだけ、わたしを愛してんだよ。

 

「やっぱお前はバカだよ」

「……そうかもしれませんね」

 

あーあ、こいつが認めるぐらいなんだよ。そんなにわたしを汚したくないのかよ。そのくせ、死に方を選べるならわたしに殺されたいなんてさぁ。ほんと歪みすぎ。

 

「お前がそれでいいならオレはいいけど。わたしのことを大事にしてくれるのは変わらないだろうし」

「ええ。僕なりに大事にしますよ」

 

僕なりにねぇ、とオレは空を仰ぐ。わたしは未だスヤスヤと寝ててこの会話を聞いてないのに、別にオレがフラれたわけじゃないのに、泣きそうになったよ、ほんとに。

 

 

 

 

夕方になったから着替えて予定通りにXANXUSの部屋へと飛ぶ。こっちだと朝だしまだ寝てるかなと思ったけど、起きてたよ。

 

「おはよう、XANXUS」

 

相変わらず返事はないけどね。けど、わたしがこの部屋に居ても文句は言わないし、機嫌も悪くならない。

 

XANXUSの部屋にある本を読んだり、食事もご馳走になるけど会話はなし。一方的にわたしが話して、たまに返事はすることはあるけどね。

 

うーん、なんだろうね。もう一人のわたしはヒバリさんと程よい距離でいて、わたしは骸だと抱きついたりするけど、XANXUSとはただ同じ空間に居る感じなのかな。でもお互いの姿は認識してるし気にはならないけど。みんな雰囲気が違って変なの。

 

ちなみにXANXUS以外のヴァリアーだと、マーモンとルッスーリアとは話す。マーモンは最初から興味なかったからで、ルッスーリアはちゃんと謝ったからもう一人のわたしが許したんだ。まぁここに滞在してるときに困るってのもあるんだろうけど。実際、XANXUSの食べたい物を伝えたりする時とか助かってる。向こうもそう思ってそうだけど。スクアーロはたまに部屋に乱入するから会うことはある。けど、話さない。XANXUSもすぐに追い払うし。他は知らないよ。基本、わたしはこの部屋から出ないしね。

 

「あ、そうだ。何か暗殺の仕事とかない?お金欲しくって」

 

今でもマフィアとは関わりたくないけど、手っ取り早く稼げるのはこれだし。多分XANXUSならその辺もわかってくれるかなーなんて思って。早速、引き出しに向かったからいい仕事あるみたい。けど、わたしの想像と違ったものを投げてきた。

 

「好きにしろ」

 

つまり売れってことなんだろうけど、売りにくいって……。というか、なんで引き出しの中に宝石入ってんの。結構雑な入れ方だったし。もう一人のわたし曰く、かなり良い石らしい。金銭感覚とかいろいろツッコミしてる。

 

「ふふっ、綺麗」

 

せっかくだし置いとこうかなー。XANXUSは好きにしろって言ったしね。……結局、お金稼げなかったけどまぁいいかと思ってたら、今度は札束をポンっと投げられた。

 

「ありがとう。助かるよ」

 

もう一人のわたしだったら絶対どっちかは返してそうだけど、わたしは素直に受け取るよ。だってね、わたしが綺麗って言ったから本来の目的であるお金をくれたんだし。

 

ただ問題は……。普通にバイトとかして稼いだ方がいいんじゃない?ともう一人のわたしと会話する。だってね、ヒバリさんにこれ以上世話になるのはって思ったのと、何かお返ししたいっていう気持ちで聞いたからね。でもこれ、ヒバリさんからXANXUSになるだけだよ。同じことを思ったのか、頭が痛いって言ってた。わたし達の周りって金銭感覚おかしいんだよ、絶対。

 

 

 

 

イタリアの時間で昼前にはオレん家に帰る。ちょうど夕食終わりぐらいだと思って。わたしはXANXUSと一緒に朝ごはんという名の晩ご飯を食べてきたから。

 

母さんに弁当のお礼をして、並んで食器を洗う。……母さん、とっても嬉しそう。わたしも嬉しい。学校のことを聞かれてそこは言葉を濁したけど。

 

ふわふわした気分でいたら、オレが帰ってきた。……食べ終わって、部屋にいると思ってたよ。ってことは、今までヒバリさんの相手をしてたんだ。母さんは遅かったわねぇなんて言いながら、オレの分を準備してた。

 

「って、ソラ!よかった、無事だったんだね!」

「……無事ってなんだよ。ただ会いに行っただけだって。後またわたしが引っ込んじゃったから、ちょっとは落ち着きなよ」

「ゔ、ごめん……」

 

さすがにわたしと母さんの時間を邪魔したことは悪いと思ってるみたいだね。

 

「というか、そっちの方がよく無事だったね」

「面白かったぞ」

「お前はみてるだけだからな!」

 

いや、受けて立ったのは君の方だろとツッコミする。めんどくさいから言葉にはしないけど。オレがご飯を食べてる時間はオレも座って話に付き合う。ヒバリさんのこととかは何度か誤魔化したけど。あ、でもちゃんと見つかったら食事に行くことを教えたから今度からは邪魔しないだろうね。

 

そしてそのままお風呂を借りた。……だってね、部屋にヒバリさんが待ち伏せしてそうだもん。そんなとこ行かないよ、怖いし。でも明日朝から校門に居そうだなぁ……。密閉した空間で会うよりはいいはず。オレの身体の危機がありそうで。その場合はそのままバトルに発展するだけだけど。オレはここで寝たいからまた明日。朝食、一緒に食べるつもりでいようっと。

 

というわけで、いつも通りオレは屋根に寝転ぶ。そしてオレが風呂に入ってる間にリボーンがオレと話に来る。最近はだいたいこんな感じ。まぁリボーンの来るタイミングが違う時もあるけどね。オレも部屋で風呂に入ることもあるし。

 

「リボーン、悪いけどさ。宝石の加工できる店とか紹介してくれる?オレそんなツテなくて困ってんだ」

「いいぞ。XANXUSか?」

「そ。わたしが貰ったものだから、大事に扱うならみてもいいよ。身に付けれるように加工してあげたいんだけど、すげー値段するから普通の店だと怖いんだ」

「……加工するのにも結構すんぞ」

「あーうん、だろうね。お金も多分足りるよ」

 

そう言って、これを貰った経緯を説明する。お金を追加でくれたのはいいんだけど、この宝石を加工できる金額だった。ほとんどそれに使えば残らない感じ。1ヶ月の食費ぐらいは残るけどさ。どうせくれるんだったらもうちょっとちょうだいよ!ってオレは思ったんだけど。わたしの話では会いに来いって意味らしい。……オレにはさっぱりだったね。

 

「案外あいつとうまくやってんだな」

「それはオレも思った。XANXUSだけなら問題ないかも。周りがうるさくなるから、そういう意味では大変だろうね」

 

未来のわたしがどういう経緯でそうなったかは知らないけど、子どもが産まれるまで黙ってたみたいだしね。結局オレとの愛人で押し通してたみたいだし。オレが正体隠してたのを抜いても、いろいろとあった気がする。

 

「ヒバリとはどうなんだ?」

「え、お前それ聞くの?オレに。というか、ウゼーと思うタイプじゃん」

「同じ奴を好きなら、オレも聞かねーぞ」

 

……まぁそういう意味では心配かけてるよね。こいつが首を突っ込むなんてよっぽどだ。

 

「うーん、好きだと思う。二人で食事してたら、オレを見る眼とか優しいんだよね。たまに狙われてる感じはするけど……や、結構するけど。まぁでもヒバリさんみたいに、どうしても!って感じじゃないんだよ、オレは。でもそれはわたしも一緒みたいでさ」

 

……なんか最後は譲り合いしてたりして。

 

「まっまだ子どもだし、後数年はあるからね」

 

アルの年齢から逆算してもね、まだ猶予はあるはず。オレがヒバリさんに食われない限り。いやそんなヘマはしないけど。……あれ、XANXUSは大丈夫だよね?あいつそんな雰囲気出さないけど、あいつの方が年上じゃん。もしかしてわたしがまだ子どもだから手を出そうとしないだけなの?そんなことないよね?

 

「ごめん。オレ、わかんなくなってきた……」

「おめーが子どもなのは事実だぞ。だからそれまでに他の男が出てくるかもれねーぞ」

「なにそれ、こわい」

 

もう手一杯なんでそんなことありませんように!とオレは拝んだよ。そんなオレの必死さに、わたしも仕方ないなぁと一緒に拝んでくれた。




〜あとがき、恋バージョン〜

気付いてる人もいたかなーと思いますが、骸とソラは互いに初恋相手。
骸ルートは初めて書いたんですが、成就させるのは本当に難しいキャラです。あの時にソラが手を取ったら、愛さなかっただろうし。まぁ骸なりに愛して大事に扱ってくれるでしょうね。
骸がフォローしてもソラが疲れ果ててしまったら、手を伸ばすかもしれない。ソラは喜んでその手を掴んで飛び込む。
一番ソラを愛し、ソラ(わたし)が一番愛した人。もし何かあってその時がきたらソラ(オレ)は止めない。


そしてXANXUS。こちらのルートも初めて書きました。
ボンゴレのためや身体から入らないといけないので、R15で彼ルートを書くのはなかなか難しい。大人だし、そんな話すキャラじゃないしね。
本人同士より、周りが障害になる感じ。こっそり子どもを作るのも難しいのは未来の記憶からわかってますし。ソラはボンゴレに関わりたくないし、特にパートナーとしてボンゴレ開催のパーティに出るとか無理。XANXUSもそんな出てないと思うけどね。でもボンゴレのためにふてぶてしい態度で最低限の顔出しぐらいはしてる気がする。
あとソラと結婚するからと担ぎ上げられるのもXANXUSは嫌だろうし。XANXUSはソラのためでもボンゴレを捨てることは出来ない。
未来のツナがやったように、別機関を作ってソラをそこにいれないと超めんどくさいことになるかな。問題はシスコン化したツナがどこまで協力してくれるんだろうね?9代目が頑張るのはソラが嫌がるし、ほんと周りが障害。


作者の趣味で、ほぼ常連となってる雲雀さんルート。他作品と少し雰囲気が違うから作者は書くのが楽しかったですw
ソラ(オレ)の攻略は一番難易度が高いはずなのに一番現実的でもある。ただ雲雀さんもまだまだ子ども。他の男にやるのは嫌で、食べたいし欲しいとは思ってるけど、本人は恋とかよくわかってない。家庭教師としてのディーノさんの腕次第かな。


超大穴。隠れ過ぎて気付かないリボーンルート。
身体が成長し大人になった時、XANXUSと雲雀さんが未だにくすぶっていたら、彼が掻っ攫う。シスコンツナでも気付かず止められないスピードで奪うでしょう。
作中でツナの家にいるのにビアンキの登場が異様に少なかったのはこのため。家庭教師の仕事でもないのに、明らかに特別待遇なので、実はビアンキも納得済みだった。納得してないと、一緒に寝るとか怒り狂った状態で本編に登場している。また負けたと思うため、出来るだけ顔を合わせないようにしている。気付いた人、居たかな?
ソラの「なにそれ、こわい」は超直感が反応してるから。リボーンの本気は多分怖い。鈍感ではないソラ(わたし)にも気付かせない忍び方をしている。流石超一流のヒットマン。


さて、誰がソラを幸せにするんでしょうね?


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蛇足


ネタを思いついたから書いた。
蛇足と感じる人も多い気がしたから章のタイトルにした。
暇つぶし程度かな。


ちゃんと通ってると言えるか微妙なところだけど、少し学校生活に慣れてきたかな。ってことで、オレは動く。

 

「あのさ、悪いんだけど、次の授業だけ席かわってくれない?」

「えっ、ええ!?……も、もちろん」

 

基本的にオレとしか会話しないからか、すげー驚かれた。けど、目的は達成。まぁ断るわけないよねとオレも思う。だってね、毎日のようにヒバリさんと追いかけっこしてるし。それにさらっと初日にあの人衝撃発言しちゃったからね。すぐさま噂は広がってオレの友達以外誰も近づかなくなったもん。や、それはいいんだけどね。オレがちょっと気恥ずかしいだけ。

 

「あれ?ソラ?」

 

視線を集めながらもガタガタと机を移動させる。ちょうどオレの席にふっつけ終わったところでオレが帰ってきた。相変わらず3人組で行動してどこか行ってたんだろうね、仲良いね。

 

「一緒に授業受けさせてみようかなって」

 

パァァとオレの顔が輝いた。ちょっとでもオレが面倒な表情すればやめたけど、そんなことはなかったね。まぁそんなことはないとわかりきってたから、相談すらせずに動き出したんだけどさ。

 

「ちゃんとオレが抑えてるけど、君の方でもわたしを落ち着かせてね」

「うん、わかった」

 

獄寺君と山本もさっきの会話でわかったのか、周りにちょっと離れるように声をかけていた。いやまぁ、獄寺君はガン飛ばしてるようにしかみえないけど。やらないよりはいいよねと放置。にしても、すげードキドキしてるなぁなんて思いながら、出ておいでとわたしに声をかける。

 

「……本当にいいの?」

「もちろん!ソラ、おいで」

 

オレが腕を広げて待ってくれてるから、わたしはそこに飛び込んでぎゅーと抱きつく。けど、すぐに周りの視線が気になった。わたしがピリッとしたのがわかったのか、オレがよしよしと頭を撫でながら声をかけてくれた。

 

「大丈夫。悪い人がいたらオレが倒すよ」

「ふふっ。相変わらず過保護だね。でも今回はありがとうかな。実は一度でいいから君と一緒に受けてみたかったんだ。もう一人のわたしにはバレちゃってたみたい」

「そうだろうね。いくら母さんの頼みでも、ソラがそう思ってなかったら、もう一人のソラは断ってたよ」

「えー、君にもバレバレだったのー?」

「だってオレ達双子だよ?」

 

じゃ、しょうがないね。とわたしが納得していると授業が始まるチャイムがなった。それをきっかけにオレから離れて席に座る。まぁ座った途端に、オレの左腕に抱きついたけどね。邪魔かなと一瞬思ったけど、すぐに感じたのかまた頭を撫でられちゃった。周りも会話で二重人格って察したみたいで、視線が減ったよ。ちょっとは息がしやすくなったかな。

 

先生って呼ばれる人が来て、わたし達をみて一瞬驚いたけど何も言わなかったよ。ヒバリさんってやっぱ凄いねともう一人のわたしと会話する。そうなんだけどさぁ……とどこか納得できないような返事がかえってきたよ。素直になればいいのに。

 

わたしを気にしつつも、オレは普通に授業を受けていた。それをわたしが望んでるからね。まぁわかんねぇ……って顔をしてるけど。

 

「しょうがないなぁ」

「へ?」

 

勝手にオレの筆箱からペンをとって、この問題の解き方をノートに書き込む。オレに2度見されちゃったよ。

 

「ソラはわかるんだ……」

「そりゃね。わたしにはもう一人のわたしがいるし」

「あ、そっか」

「まぁもう一人のわたしが出来ることは、君も出来るようになるってことだけどね」

 

みるみる内にオレの顔が青ざめた。まぁ気持ちはわかんなくもないけどさ。それだけスパルタがこれから待ってるってことだしね。当然リボーンも気付いてるから手を緩めることはないね。もう一人のテストの点数をみてそれを最低限の基準にするだろうし。ほら、可哀想なオレってわたしの中で呟いでるよ。

 

「んー歴史とか理科は苦手だって。覚えてないって言ってるね。やろうと思えば出来るらしいけど」

「やらないで!?お願いだから!!」

 

オレ、声大きいよ。みんなこっち見ちゃったじゃん。まぁいいいや、返事してあげよ。

 

「いいよ。わたしも興味ないし、勉強する時間があるなら遊びに行くよ」

 

ヒクっと先生と呼ばれる人が頬を引きつらせてるね。真面目にやりません宣言だもん。相手がわたしだから何も言えないけど。

 

「ちょっと待って!?遊びに行くってどこに!?」

「骸とか骸とか、骸とか、XANXUSとか、骸とか?」

「ほとんど骸じゃん!?や、XANXUSならいいっていうわけじゃないけど!!」

「あ、もう一人のわたしはヒバリさんのところへ行くから、そこもだね」

「そういうことじゃないよ!?」

 

んー相変わらず過保護だね。後、やっぱ声大きい。

 

「もう。わたしと授業うけてくれるんじゃないの?」

「ゔ。……わかったよ」

 

渋々納得してくれたけど、後で大変そう。よろしくねーなんて丸投げする。……ゲンナリしてるよ、怒っていいのにね。

 

「あ、噂をすればだね。ヒバリさん来るっぽいよ」

「……いつも思うけど、なんでわかるの?や、直感が凄いのはわかってんだけどさ。それでも凄いなって」

「あの人は特別かな。獲物を狩ろうとする気配がビシビシ感じるんだもん」

「え、獲物って……まさか……」

「うん、もう一人のわたしのことね。最近までは咬み殺そうとしてだけどさ。でもすごい執念だよね、追いかけっこも6年ぐらいやってるんじゃない?」

「んなっ!?そんな昔からやってたの!?」

 

なんて話してると、扉が開いた。誰ももう動じなくなってるよ。初日以外ずっと逃げてたからこんな感じになってるなんて知らなかったなぁ。

 

「……君の方ね」

 

ふふっと思わず笑ってしまったよ。ついに逃げなくなったと一瞬喜んじゃったんだろうね。まぁみんなには驚いたようにしか見えなかったと思うけど。……気付いてあげなよ。なかなかこの鈍さは直んないねーなんて会話しつつ、ヒバリさんに視線を向ける。

 

「せっかくだし、今日のお昼はわたしと食事しましょ?」

「いいよ」

「天ぷら食べたいなぁ」

「……僕にそんなこと言えるのは君ぐらいだよ」

 

はぁとため息を吐きつつも、すぐに電話かけてるよ。まぁ命令するだけで草壁さんが全部するんだろうけど。それでも隣でオレが衝撃受けてるよ。まぁ衝撃を受けてるのはオレだけじゃないけどさ。……この子はモジモジして可愛いね。わたしの表情に出さないところは流石の一言だけど。今は表にわたしが出てるから、迷惑かけちゃうとか思ってるんだろうね。頬ぐらい赤くしてもいいのに。この人は喜ぶよ、絶対。

 

「あ、そうだ。あの子は言いにくいみたいだから教えるね。もう生活費はいらないよ」

「……理由は?」

「察してるでしょ?」

 

ムスッと機嫌悪くなったよ。わたしはこの反応が面白いとしか思えないんだけどね。もう一人のわたしはあわあわしてるけど。

 

「ソラ、どういうこと??」

「えー、察し悪いなぁ。まぁいいよ、教えてあげる。調べたみたいでさ、わたしが彼に依存状態なのが気にくわなかったみたいで、会うたびに札束ぽいぽい投げられるの。しょうがないから、生活費だけ抜き取ることにしたの」

「…………XANXUS?」

 

うんとわたしが肯定すると、オレが頭を抱えたよ。まぁお金ほしいってわたしが言っちゃったのが、調べようとしたきっかけなんだけどね。それは言わないけど。だってわたしはどっちでもいいし。

 

「そこで手を打っときなよ。彼はそれで満足したみたいだし。喧嘩なんて売ったらあの人はとことんやるよ。あの人も負けず嫌いだもん。多分あの部屋ぶっ壊して、屋敷とか、ホテルとか建て始めるよ。先に底をつくのはヒバリさんだからね。まず親が親だしねぇ」

「……そうだった。あいつ、あの人の息子だった……」

 

や、君のおじいちゃんでもあるんだよ。現実逃避しないの。わたしは絶対認めないけど。

 

「まぁ親とは仲悪いから絶対頼らないだろうけど。わたしだって拒否するし。素直に受け取るのはさ、あそこのトップの地位を勝ち取ったのは、間違いなくXANXUSの実力だから。王様気質だから滅多に働かないけど、部下が稼いでくるからお金には苦労してないし。というか、あそこヤバイよね。真面目に働けって一番文句言ってる人がさ、一番せっせと働きながら世話焼いてXANXUSが住みやすい環境を整えてんだよ。あれはもう手遅れだね」

 

誰のことかわかったのか、山本と獄寺君は噴き出した。オレは現実逃避中だから、遠い目をしてたけど。

 

「やる気を出したら誰よりも成果をあげるってわかってるから、許されてるのもあるんだけどさ。でも普段はなんもしてないのに、世界でもトップクラスの収入をずっと得てるし、まったくお金には困ってないんだよ。だけど、普段生活するのはあの子の方だから、手をまわさずに札束だけぽいぽい投げてくるだけにして生活費を受け取ったら満足したの」

 

ちゃんと意味わかってる?とヒバリさんに視線を向ける。あの部屋を選んだのはあの子だからね。ヒバリさんがもっといい部屋を用意できるのはXANXUSだってわかってるよ。生活費を抜き取る時だって、そんなもんで足りんのかという目は向けられても、鼻で笑うようなことはしなかったよ。

 

「でもなんでわたしたちの周りは金銭感覚おかしい人ばっかりなんだろうね?普通はさ、簡単に家とか用意できないのにね」

「本当だよ……。って、そういう話じゃないよ!?なんでそんなことになってんの!?」

 

あ、オレが復活したよ。

 

「さぁ?でも大丈夫じゃない?リボーンが言ってたよ。どっちもケチくさいこと言わねーから問題ねぇだろって」

「そういう問題!?」

「えー、大事なことだよ。もう一人のわたしは気にしてるけど、わたしはくれるっていうなら貰うもん。貢いだ金額で選べとか、選ばれなかったら使った金額を返せとかいう男なら、最悪じゃん」

「そんなこと言ったらオレが払うから!!」

「ほら、君もすぐ貢ごうとするじゃん」

「オレは家族だから!!」

 

そりゃ家族だけどさぁ。別にオレが払う必要ないじゃん。わたしが裏家業でもして払えばいい話だもん。やらせたくないからオレが払うって言うんでしょ。

 

「まぁ間違いなく負ける勝負だよ。だからそんな勝負仕掛けたら、もう一人のわたしはもう会わない道を選ぶだろうね。だってあの子はヒバリさんのことが大事だもん」

 

最後の言葉が決定打になったのか、ヒバリさんはため息を吐いて全部のみこんだよ。

 

「苛立ちを抑えたヒバリさんに良いこと教えてあげる。さっきも言ったけどあの子は気にするタイプだから。XANXUSはわたしのためにだから受け取れるけど、ヒバリさんはあの子のためだから素直に受け取れないんだよ。だからあの子は自立を目指してるよ。わたしはそんな表に出ないけどさ、わたしが会いたいと思う家族や骸、XANXUSとの時間から削ると思う?」

 

なんで言っちゃうのー!?って叫んでるね。でも言わないとさ。XANXUSから生活費をもらうことになった時点で前提が変わっちゃったし。ヒバリさんからは何一つ受け取らないつもりとか、悪手だよ。

 

「ヒバリさんはもうちょっと女心を学んだ方がいいよ。わたしなら良い手でも、あの子には合わない手を何度か打ってるよ。まぁあの子自身が鈍いから、読み取るのは難しいのはわかるんだけどね。けど、あの子が本気出したら追いかけっこが成立するわけないんだよ。この前、それを学んだでしょ」

 

あの子怒っちゃって、会わないように動いてたもんね。それを思い出したのか、ムスッと機嫌悪くなっちゃったよ。そういうところとか、ダメだよねーなんて思う。勝ちたい気持ちをすぐ優先するんだもん。特に問題は強い人とバトルが出来るなら、あの子の扱いが雑になるところは本当にダメ。……でもそれがヒバリさんだし、じゃないの。もう鈍いね、ほんとに。

 

「あの子はわたしが幸せなら、それでいいんだよ。一生表に出ないことだって考えるぐらいバカな子だし」

「え……どういうこと……?」

「そんなの無理ってわたしがちゃんと伝えたよ。XANXUSでも数日しか持たないよ、その後はずっと君か骸に抱きついてないとおかしくなるだろうね。というか、それでもキツイよね」

 

みんな殺しちゃったらいけるだろうなぁ。なんて考えてたらオレに抱きしめられちゃったよ。伝わっちゃったみたいだね。

 

「んーもう戻るね。天ぷらはあの子と食べに行って。あの子は疲れてるだろうから、優しくしてあげてよ」

 

さっさと戻ろうとしたんだけど、オレに待ってって呼び止められたよ。

 

「なに?早く言って」

「また一緒に授業受けようね!絶対だよ!」

「君の頼みでも無理だよ」

「ソラ!!」

「そりゃ君との授業は楽しかったけど、一瞬でもチラついただけで、必死にあの子がダメだよって止めてくれてるんだよ?わたしはさ、君の望むような普通の生活はできないよ」

 

抱きしめられてるから顔は見えないけど、涙流すのを耐えてるんだろうなぁ。わたしじゃなくて、あの子だったら泣く気がする。

 

「わたしはあの子を通してで充分だよ。じゃ、またね」

「……うん。またね、ソラ」

 

ふぅと大きな息を吐いたオレは、抱きしめるのは継続しつつもオレの頭を撫でながら言葉を探す。……泣いちゃったよ、やっぱり。

 

「あーうん、悪い。ちょっと早かった……という話でもないか」

 

遅かれ早かれ起きた問題だしねぇ。夜の炎を得た時点で無理だったんだよね、表社会で生きることなんて。薄々察してたけど、まさか一度でわたしが無理って判断するとは思わなかったなぁ。もうちょっと早く変わればよかったよ。……でもオレも止めることに必死だったからなぁ。もうちょっとでメスを出すところだったし。

 

うーん、やっぱ詳しい事情を知ってるのか京子ちゃんとクロームも泣いちゃったね。オレにつられたのもありそう。

 

「母さんは天然でだけど、君と一緒に奮闘してるのはわたしにも伝わって喜んでるよ。まったく無駄とかじゃないから。………ええっと、君と授業うけて楽しかったのもあの子の本音だからね。すごく楽しそうだったよ。…………うん、だからオレの方からももう一回誘ってみるよ。なんとかなるって。………その、ごめん、オレもっと頑張るからさ、元気出して」

 

静かに泣くだけでオレの反応がなくて、この教室の空気が気まずいなぁなんて思いながら必死に考えながら話してると、近づいてくる気配がして顔をあげる。怖っ、機嫌最悪じゃん。

 

「え、ちょ、離れた方がいい気がする。すげーヒバリさんが怒ってる。や、群れてるのはわかってるんだけどさ」

 

なんてアタフタしながらも早口でオレに伝えてたら、ヒバリさんが目の前にいるオレの首根っこを捕まえてぶっ飛ばしたよ。無理やり引き剥がされてちょっとオレも痛かった。咬み殺されるよりはマシなんだけど。ぶっ飛ばされた方のオレは背中とかに机ぶつけて超痛そう。まぁそんなことされたら獄寺君はキレるだろうなぁと思ったら、すごい眉間に皺を寄せてるだけだったよ。山本も似たような反応だし。それにオレも相変わらず静かに泣いてるだけで、痛いとかも言わないね。……えっと、オレはどうしたらいい感じなの?

 

「君がショックを受けてるのはまだいい。けど、彼女に今何を言わせたのか、わかってる?」

「えっ、なんか言っちゃまずいこと言っちゃいました?」

「……もういいよ。天ぷらだっけ、食べに行くよ」

 

や、でもオレが変みたいだし、オレがまずいこと言っちゃったみたいだしさぁ……とオレを見ていると、痺れを切らしたのかヒバリさんに手首掴まれて動く羽目に。

 

「君がいるのは逆効果だよ。あの小動物にとってもね」

 

そういうもんかなとオレはヒバリさんと一緒に大人しく出て行ったよ。リボーンが出てくるだろうし、大丈夫でしょ。オレだしね。

 

 

その後、ヒバリさんはわたしが言ったからなのか、すげー優しかったよ。なにが一番凄かったってさ、オレがバイトでもしようと考えてることを怒らなかったこと。もちろん何も言われなかったわけじゃないんだけどさ。怒るんじゃなくて、僕からじゃ受け取れないのってスネたような態度とられたんだよ。可愛いなぁと思った時点でオレの負けでした。思わず頬が赤くなって、そんなことないですってニコニコしながら言っちゃったもん。

 

……あれ?オレもしかしてこういう態度に弱いの?え?ヒバリさん狙ってやってないよね?え?違うよね?流石に。ヒバリさんだよ?

 

若干混乱しつつも、天ぷらは美味しかったよ。流石ヒバリさん、良い店を知ってるよね。もちろんヒバリさんの奢りでした。……いくら鈍いって言ってもやらかさなかったよ。それぐらいはわかる。

 

食事の後はオレがわたしのために行動するとわかってたのか店で別れたよ。向かう場所にイラっとはしてるだろうけど、まったく態度には出さなかったね。ほんと、今日のヒバリさんは優しかったよ。

 

ってことで、わたしにどこに行く?と聞いたらXANXUSのところがいいという返事がきた。今日は骸じゃないのねとオレは人気のないところで飛んで移動。

 

「……あれ?」

 

睨むのやめて。オレ、お前の考えてることほんとわかんないから。や、こっちはやっと陽が出てきたぐらいの時間だから、お前寝てたっぽいし悪いとは思ってるけどさ。あとわたしじゃないからイラっとしたのもわかる。けど、それ以上はわかんないからね。お前、睨みだけでいろんな意味込めすぎなんだよ。

 

「ま、待った。わたしがここに来たいって言ったんだよ。それは間違いないから」

 

どうしたの?出てこないの?なんて声をかけるけど、返事はないだよね。

 

「チッ」

 

いやだから、通訳頂戴。機嫌悪そうに起き上がってきたけどさ、これ逃げた方がいいんじゃないの?あ、それはダメなのね。やっと返事がかえってきたよ。って、かわってよ!?

 

「ええええ!?」

「るせぇ」

 

だって、荷物担ぎするなんて思わないじゃん!?いやまぁこれ以上叫ぶのはダメなのはわかったから、口は押さえてるけど。そのままボフンっとベッドに落とされました。はぁ!?

 

「ま、待った。オレ、お前とは絶対無理だから。かわるから、ほんと待って」

 

……違ったよ。バカだろコイツ、みたいな目で見られたのはわかった。すげー恥ずかしいじゃん。穴があったら入りたい……。

 

オレが百面相してる間に、XANXUSは寝る態勢に入ってもう目をつぶってたよ。もちろんオレもベッドに居るから隣で。……わっかんねぇ!?とオレが叫びたいのを我慢してると、助かったよとわたしが言った。出てくる気になったみたいだね。よかったよかった、ほんとに。

 

「XANXUS、ごめんね。でもありがとう」

 

返事はないけど、絶対起きてるね。このままわたしが起きるまで、ベッドから出ずに付き合ってくれるんだろうなぁなんて思いながら目を閉じた。

 

 

 

「う゛お゛ぉい!?」

 

……まさか目覚めがスクアーロの声とは思わなかったなぁ。XANXUSが銃をぶっ放したのか凄い音したし、起きようっと。

 

「おはよう、XANXUS」

 

もういいのかって顔されたけど、もういいよ。わたしはお昼寝だったし、結構寝ちゃったけどさ。ちゃんと伝わったのか、動き出したよ。暇つぶしに本は読んでたみたいだけど、やっぱベッドからは出てなかったね。

 

うーんっと身体を伸ばして、わたしもベッドから出る。あーやっぱり銃だったんだね。綺麗に壁が貫通してるよ。スクアーロはよく避けたね、あとよく抗議する元気があるよね。絶対手遅れだよ、どっちも。

 

XANXUSのようにわたしも聞き流し、洗面所を勝手に借りる。うーん、制服が皺だらけだなぁ。帰ってからアイロンかけないとダメだろうなぁ。

 

「ね、シャワー借りるよー?」

 

チラッと見れば好きにしろって目をされたよ。あとスクアーロも部屋から追い出してくれたね。髪の毛もボサボサだったから借りれてラッキー。まぁ飛んだらいいだけなんだけどさ。そこは気分だよ。

 

スッキリして服をどれを取り出そうかなと思ってたら、服がかかってたよ。……絶対高いよね?あ、やっぱり。見ただけでわかるぐらい高いんだねと思いつつ、袖を通す。XANXUSというよりルッスーリアっぽいよねと2人で会話する。そういうことに気が付いて、ボスの部屋に置こうする勇気があるのはあの人ぐらいだもん。

 

まぁ目に入ってても燃やさずにこうしてかけてくれただけ、もう一人のわたしには衝撃らしいけど。XANXUSの美的センスに制服はないと判断されたんだよ、絶対。会うたびにわたしの私服にもうちょっとマシなものはないのかというような目をしてたし。……ああ、違う違う。子供っぽすぎて嫌って意味だよ。ヒバリさんは小動物好きだし、あれでいいんだよ、今はね。今ってなに!?とか言ってるけど、放置。自分で考えなよ、勉強だよ。

 

子どものわたしでもやっぱ黒のワンピースってだけでちょっと大人っぽくなるね。意外と似合うじゃんと鏡の前で納得。せっかくだしと炎で道具とって、髪をいじって化粧する。うんうん、いい感じ。

 

「悪くねぇ」

 

ほらね、XANXUSに見せたら褒められたよ。……これで褒めてんの!?って叫んでるね。どう考えても褒めてるじゃん。まぁヒバリさんみたいにわかりやすく機嫌は良くなってないけどさ。

 

そのあと、XANXUSの遅めの朝食に付き合った。遅めになったのはわたしのせいだしね。わたしはお茶だけにしたよ。今日は食べてくると母さんに言ってなかったしね。あ、その時にルッスーリアに会って、わたしを着飾ることに燃えだしたから服が増えることが決定した。XANXUSもうるさいとか言わなかったから、間違いないね。ほんとみんな貢ぐの好きだよね。

 

 

 

 

このまま家に帰ったら、オレに二度見されてガーンって顔をされた。その瞬間にめんどくさいからなのか、オレになってたよ。いつものことだよねとオレは遠い目をする。……まぁ立ち直ったみたいで良かったよ。

 

「まぁ!とっても似合うわ!普段とは違って大人っぽくていいわねぇ」

「わたしがやったんだよ。オレも出来なくはないけど、こういうの気後れしてダメなんだよね」

 

というか、オレの技術でやってるし。リボーンに習った変装スキルがこんなところで生かされるとはねぇ。……あいつ、チェックしてるよ。可哀想なオレ。

 

母さんにこういうのは慣れよと言われたよ。まぁわたしがこれからもするだろうから、確かにちょっとは慣れるかななんて思う。……ああ、やっぱりやるんだ。XANXUSに褒められて嬉しそうだったもんね。

 

今日はオレのままで家族揃って晩ご飯。もちろんクソ親父はいないよ?

 

化粧したしともう一回風呂に入ってる間に、皺だらけの制服が綺麗になってた。後で自分でしようと思って置いていたんたけど、なんか嬉しい。わたしもホワホワしてるね。

 

母さんにお礼を言って、そのままの良い気持ちでオレの部屋へ向かう。家から屋根に登るのはそこからだしね。

 

「ソラ」

「ん?」

「ごめん!!」

 

謝られてコテンと首を傾げる。えっと、変わった方がいいのかな。と思ったけど、わたしは出てこないね。

 

「君が謝るようなことしたっけ?」

「うん、したよ。ソラ、君に甘えちゃった」

「……うーん、うん。別にいいんじゃない。オレの方が精神年齢は上だし」

 

そういうことだよな?とちょっと不安になりつつ、返事をかえす。XANXUSのところでもミスったし、超不安……ほんとに。や、未だにあの時のわたしの行動はよくわかってないんだよ。オレやっぱそっち方面はダメだよなー。

 

「そうだとしても、甘え過ぎてたんだ。ヒバリさんだけじゃなく、みんなにも言われたよ。ソラはいっぱい頑張ってるのに……オレがもっと頑張らせようとした」

「うーん?まぁそれがオレの役目だし」

「違うから!!」

 

あれ?またミスったのかな?今日はダメダメな日かもしれないね。

 

「オレはどっちのソラも好きなんだ。2人とも家族なんだよ。2人とも幸せになってほしいんだ。なのに、君にばっかり甘えて負担をかけようとした。そんなことしたら、ソラがソラじゃなくなっちゃうのに……」

 

……やっとヒバリさんが目の前のオレに怒った理由がわかったよ。無理をすれば無理をするほど、オレがわたしに引っ張られておかしくなる。わたしと一緒に共倒れする未来しかないんだ。

 

「うん、わかった。ほどほどに頑張るよ。オレもわたしにまた授業受けさせてあげたいのは本音だし。今度はもうちょっと時間を短くするとか、一緒に考えよ?」

「うん!」

 

あ、オレに抱きつくのはやめないのねとよしよしとオレの頭を撫でる。わたしも嬉しそうだし、やっぱなんとかなるよ、絶対。

 

 

 

ごろんと屋根に寝転がると、すぐさまリボーンが現れた。まぁ今日はすぐ来ると思ってたよ。

 

「おめーはツナじゃねぇんだぞ」

「……それをお前がいうの」

「だからこそだぞ」

 

そう言われるとオレなんも言えないよ。オレがつい無茶したり頑張ろうとするのはコイツがそう育てたから。といってもさ、オレを育てた記憶はないんだから、リボーンには一切責任はないんだよ。でもコイツは背負って、正しい道に導こうとするんだもん。文句なんか言えるわけないじゃん。

 

「……わかってるよ、オレはソラだ。この子を守るんだ、絶対に。だからこそ、無理はしちゃいけない」

「おめーの幸せのためにもだぞ」

「あー……」

 

わかってたけど、すげーバランスが難しい。

 

「オレとしては、わたしが幸せなら充分幸せなんだよ。無理してるとか自己犠牲とかじゃなくて、ほんとにさ。でも……それはダメなんだろ?」

「ああ」

 

なんかマフィアのボスになる方が簡単な気がしてきたよ。オレはオレに無茶振りしすぎじゃない?や、オレのために言ってくれてたのはわかってんだけどさ。

 

もうちょっとオレは外の世界にも目を向けないといけないなぁ。オレの幸せを見つけなくちゃダメみたいだし。……あー、やっぱすげーバランスが難しい。わたしは世界が嫌いだし、やり過ぎるとおかしくなるよ、絶対。

 

「悪いけど、おかしくなってたら声かけて。多分オレ、自分で気付けないから」

「心配すんな。側にいてやるぞ」

「……やばっ、めっちゃ感動した。女で良かったって、これほど思ったことないよ」

「オレのモットーだからな。おめーに優しくするのは当然だぞ」

 

そりゃお前モテるわ、と思わず言っちゃったよ。あいつはニッと笑うだけだったけど。にしても、ほんとリボーンさまさまだよね。昼寝したし寝れないかなって思ったのに、オレ安心して眠くなったもん。おやすみーっと。




この話の真の楽しみ方は、2-Aのモブ生徒達!
あのヒバリさんが口説こうとしてる人だし……と何回流したんでしょうねw
察し能力もどんどん身につくよ!
きっと先生は通信簿の一言欄に、どんな環境でも過ごせる心の強い子ですと書いてくれるでしょう。
これがバクマン。のいうシリアスな笑いでしょ!(違う)

まぁ冗談はこれぐらいで。

間違いなく現時点でツナの手から零れ落ちてしまう可能性が一番高いのはソラです。けど、ツナは頑固なんでね。ソラに2人とも幸せになる道を求めます。白蘭がいれば、そういうところが綱吉クンの怖いところだよ♪って言いそうだなーと思いながら書きました。
おかげでソラ(オレ)は大変。周りに目を向けるようになったから、進んではいるよ。正しい方向かは本人もわかんない状態だけどね。リボーンが見てくれるなら、なんとかなるかな?という感じ。

今回の雲雀さんは割と不憫。
XANXUSに対抗するために、手段を選んでられなかった。
ソラ(オレ)の性格上、雲雀さんが仕事を与えて報酬って形が一番良かった。けど、それをするとXANXUSに負けた気がして出来なかったのです。未だ女心がよくわかってないので、今まで一番ソラ(オレ)が自分に笑いかけてくれた手しか打てなかった。優しくしないとソラ(わたし)に間違いなく嫌われれるしね。……が、がんば。
まぁ頑張った甲斐はあったはず。前と違ってキュンキュンしてテレてたし。雲雀さんはプライドの問題で2度とやりたくないだろうけど。でも多分またやる羽目になる。かわいそう。
ちなみに正解は、ソラ(オレ)は鈍いのでストレートな言葉に弱い。頬を染めるところは意識して書いてるよ。行動の意味を理解したら、割とモジモジする。
あと、根本にソラ(わたし)に譲る精神があるので、ソラ(オレ)を口説き落とそうとする人が放置するのはマイナスでしかない。ソラ(オレ)の精神安定にとってもマイナス。だからおまけでツナとバトル出来るならと放置したことはソラ(わたし)はないなと本気で思ってる。そりゃ骸のところに行くわ。

XANXUSは大人な対応。
最初の睨みは何があったと問いかけも入ってる。ソラ(オレ)に説明を求めてた。ギリギリだけど正解をだした。超直感万歳。
ソラ(わたし)は甘えたいけど、確実に未来の経験に流されるからソラ(オレ)を盾につかった。察したXANXUSはやらねぇという意味を込めて目をつぶった感じ。超大人。
ソラ(オレ)にバカだろと視線を向けるのも当然だよね。盾が盾の役割を果たしてない……。
多分ソラの寝顔とか見て、また未来の経験にXANXUSも振り回されてるだろうね。大人になっても事後だと幼い顔してそうだし。やらねぇといったらやらねぇというプライドの勝利。寝てると思ったら本を読んでんだよ、スクアーロもビックリするわ。
ちなみに、舌打ちはツナに対して。ソラ(わたし)がXANXUSに癒しを求めるとか、甘い考えを持つツナ以外に原因はありえない。骸はそういう意味では信頼があるからね。次に会ったら開口一番に銃がぶっ放される、確定。

リボーン
忍びすぎて怖い。


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あれから一度も学校でわたしを出せず、オレ達は中3になった。今日が始業式で体育館の集まりはサボったけど、教室ぐらいはと思って出席中。自己紹介とかやってるけど、聞いてないけどね。というか、必要なの?オレの……っつても、片割れの方ね。オレの友達はみんな同じクラスだよ。まぁリボーンとヒバリさんが手を回したんだろうけど。

 

そういや、ヒバリさんとの追いかけっこはどうなるんだろうね?相変わらずあの人は年齢不詳だけど、オレの記憶では学校に来る回数は減ってたはず。や、よく居たけど。以前と比べたらって意味ね。気付けば、風紀財団が出来てたから忙しいと思うんだけどなぁ。まぁいいや、なんかあったら電話かかってくるでしょ。

 

そう、オレの方は少し変化があって、ケイタイを持つことしたんだ。いきなり人と接触を増やすのは無理だなと思ってさ。というか、連絡先交換しただけでリボーンからストップかかったんだよ……。

 

だからそんな返事かえさないことにしてる。みんなもわかってたみたいで、写真とか送ってくるぐらい。ハルが一番マメだね。オレが必ず写ってるから、わたしは嬉しそうだよ。流石ハル、わかってると思ったね。

 

電話はヒバリさんが一番多い。何度も用もなくかけてきたら着信拒否したけど、良い食材が手に入ったみたいだから食べに行かないと誘われるんだよ。あとはケーキくれるって言うからさぁ。……や、違うからね。わたしが食べたがるんだよ。あの子、貰えるものは貰う主義だから。最初はわたしが食べて途中で交代するか最後までずっとわたし。オレは拘りはないからね、ファーストフードとかも好きだし。ケーキはわたしが母さんと一緒に食べたいみたいでね。釣れてるのはわたしの方だから、追いかけっこは終わらない……。

 

次にかかってくるのは白蘭。ちょっと鬱陶しいから途中でよく切るけどね。それでも着信拒否しないのはこのケイタイを用意したのは白蘭だから。お前もオレらに貢ぐのかよと引いたけど。まぁあいつ曰く、こうでもしないと連絡先交換してくれないからだって。聞いた瞬間に、だろうねと思ったもん。だって交換する予定の人物に入ってなかったし。もちろん正一君が改造してくれたものだから安心安全。

 

骸とXANXUSからは未だ何一つない。ちゃんと教えたのにね。リボーンがストップするわけだ。わたしが悲しいだけだもんね。まぁちょっとは楽しみが増えたみたいだから良かったけど。……というか、オレより楽しんでるかも知れない。オレ、白蘭の相手してるだけじゃん。え、おかしくない?

 

「ソラ」

「ん?」

「ソラの番だよ」

「え?オレもすんの?この学年でオレのこと知らない人は居ないでしょ」

「そうだろうけど……。せっかくだからやろうよ」

 

主席番号順だから後ろに居るオレに言われ、渋々立ち上がる。

 

「……なに、言ったらいいんだっけ?」

 

聞いてなかったの!?というオレにツッコミをされつつ、名前と趣味と特技でいいんじゃない?とアドバイスをもらった。

 

「えーと、沢田ソラ。趣味はヒバリさんとの追いかけっこ?特技は……ヒバリさんから逃げ切れること?」

「ヒバリさんばっかりじゃん!?」

「や、だってさ。オレ、学校だとほとんどあの人から逃げ回ってるぐらいじゃん。授業もちゃんと聞いてないし」

 

君のためでもあるんだよ?と見れば、オレが真剣にやったら自分のハードルがあがるから何も言えなくなったね。

 

「あーうん。後、二重人格だから。彼にべったりしてる時は今以上にほっといてね」

 

オレにキラキラした目で見られたよ。オレがまだ諦めてないって宣言したからね。軽く頭を撫でて座ろうとしたら、わたしもすると言われて驚いた。

 

「ちょ、ちょっと待って、入れ替わるよ」

「ええ!?」

「出てくる気になったみたい」

 

オレが腕を広げて待ってくれてたから、わたしはそこに飛び込む。

 

「ソラ!」

「ふふっ。自己紹介するんでしょ?だったら、わたしもした方がいいかなって」

「うん!うん!」

「わたしも沢田ソラね。趣味はお手入れかな。もう一人のわたしは適当なんだもん。ちゃんと磨いてくれないから、いつもわたしがするの。まぁ楽しいからいいんだけどね!それで特技はね、それを使っての暗さ、っ」

 

慌てて入れ替わって、口を押さえたけど遅かったよ……。オレにガクガク揺さぶらてるし。特技が暗殺って何!?って視線を向けられてるし。というか、手入れってメスのことだったのね!オレ、美容関係だと思ったんだけど!

 

……オレ以外にも気付いた人がいたみたいで、磨いてるのは凶器なの!?という視線もきたよ。だってわたしの自己紹介でしょ?じゃないよ!絶対わざとでしょ!オレが力なく項垂れたら、オレも不憫に思ったのか揺さぶるのはやめたよ。そのかわり、すげー縋ったような目で見てくるけど。え?オレ一人でなんとかするの?無理だよね。

 

……助けてください、すみません。

 

「えーっと、うん。一般人には手は出さないから、安心して」

「開き直っちゃダメだから!!」

「だってもう手遅れじゃん。それに最近はやってないし。変なの来ても、ヒバリさんが咬み殺しちゃうんだもん」

「なんで残念そうなの!?というか、ヒバリさんも何してんの!?」

「あの人、並盛の風紀に命かけてるから」

 

それでみんな納得してくれた。でも本当にそうだよね……。だから今までオレが処理してたことを知った時、すげー怖かったもん。大量にある監視カメラが有効活用されて、今では超一流ぐらいしかオレんとこまで辿り着かない。……やっぱ、あの人どこ目指してるんだろうね?おかげで助かったけど。

 

有耶無耶にしたオレは席に座る。あー疲れた。ヒバリさんの力を借りてなんとかなったよ。今日は途中で見つかってあげよーっと。

 

わたしが出てきた時に立っていたから、そのままオレの自己紹介に。

 

「えっと、沢田綱吉です。趣味はゲームかな。音楽ゲーとか落ちゲーが好き。特技はないかなぁ。っと、そうだ。ソラに手を出したら……わかってる、よね?」

「君も物騒だな!?」

 

ちょっとマフィアのボスっぽかったよ!?普段と違いすぎて、シーンとなってるじゃん。

 

「言っとくけど、オレは誰も認めてないんだからね!ヒバリさんも、XANXUSも!!食事とか行き過ぎだよ!」

「今更!?」

「ソラは自分が強いって過信しすぎなの!男は狼、ううん、ケダモノなんだからね!」

「……その理屈なら君もだけど」

「オレはそんな勇気ないもん。けど、あの2人はどう考えても肉食系じゃん!」

 

まぁそれは否定出来ないね。

 

「あーもう、すげー心配なの!わかる!?ヒバリさんはまぁまだわかりやすいからいいけど。や、良くはないけど。あいつ……XANXUSはほんと何考えてんの!?」

「それはオレもサッパリ」

「ダメじゃん!」

 

そう言われてもね。わかんないものはわかんないし。というか、あの2人は熟年夫婦の域だよ。めんどくさいから教えないけど。

 

「つーか、君はちょっと前にホテルで会ったんじゃないの?ディーノさんにオレも一緒にってご飯誘われたけど断った時にさぁ。あの時どうしたの?」

「……あいつ、ほんと何考えてるんだろうね。オレ、ソラと双子なんだよ!?すげー殺気送ってくんだけど!!」

「そりゃXANXUSだもん。双子だからって、仲良くしようとかありえないでしょ。それぐらいオレにもわかる」

「そうなんだけど!気遣いとか、いろいろ欲しいわけ!」

「無理でしょ、XANXUSだよ。というか、ただ仲の良いだけの骸でもそうじゃん。この中だとヒバリさんが一番マシって時点で、そういうのは諦めなよ」

 

ああああ……とオレは崩れ落ちるように席についた。とりあえずオレ達の心配をしてるのはわかったから、頭を撫でてあげる。その、元気出して。クラスのみんな、オレに同情してくれてるよ。だってね、あのヒバリさんが一番マシなんだから。

 

「……やっぱオレはディーノさんが良いと思うんだ!」

 

復活はやいね。もう起き上がってオススメしてきたよ。というか、まだ諦めてなかったんだ。

 

「君の中でカッコいい大人ってことで、ディーノさんをススメるのはわかるけど、あの人ヒバリさんの味方だからね?」

「なんでーー!?」

「や、考えなくてもわかんじゃん。ヒバリさんは頑なに認めないけど、あそこまで鍛え上げたのは間違いなくあの人だからね。ディーノさんにとってヒバリさんは一番弟子だし、愛弟子でしょ」

 

そうだったーー!という表情をオレはしてたよ。このクラスにとっても衝撃だったみたいだけど。ディーノさん、一時期先生やってたもんね。あの感じじゃ強そうに見えないし。

 

「そんな……ディーノさんがヒバリさんの味方なんて……」

「まぁ味方って言ったけど、本当のところは心配なだけかもね。会うたびに申し訳なさそうに聞いてくるだけだよ。ヒバリさんがやらかしてないかって。前科あるし、フォローするぐらいじゃない?あの人、君にも肩入れしてるしねぇ」

「よかったぁ。というか、前科って……なに?」

 

怖っ。雰囲気変わりすぎ!クラスのみんな引いてるからね!?オレなんで余計なこと言っちゃったのー!?

 

「き、君も二重人格みたいになってるからさ、落ち着きなよ」

「ソ・ラ、話して……ね?」

 

無理だ、怖すぎ。最後のね?がヤバイって。ドンドン怖くなってる気がする……。

 

「その、ちょっと教え方が悪くって、ディーノさんがオレにペコペコと謝るぐらいのことをヒバリさんがした、というより言っちゃったんだよ。……ちょっと待った。キレなくていいから。ディーノさんにガッツリ説教されたのか、素直に詫びの品を送ってきたからね。ディーノさんからも別で届いたし。そ、それにさ、オレ自らヒバリさんに鉄拳制裁したよ!」

 

ほんと?とオレに目で問われ、ほんとほんととオレは何度も頷く。一応それで納得したのか、オレは落ち着いてくれたよ。よかったよかった、流石にXANXUSの前で一撃で伸して、しばらく無視ったなんて説明までしたら可哀想だからね。……やったオレが思うのはアレだけど。

 

オレ達双子のせいでグダグタになったけど、なんとか無事に終わったと思うよ。途中でヒバリさんが来る気配がしたからオレは知らないんだよ。まぁオレ一人なら大丈夫だよ……多分。

 

あ、ちゃんと途中で見つかってあげたよ。明らかに手を抜いたからヒバリさんはムスッとしたけどね。それでもオレとご飯行くと機嫌よくなるんだよね。まぁ狙われてる感じもすげーするけど。オレはもう油断しないから、いい加減諦めたらいいのにね。……やだ、だってさ。その言い方は可愛いすぎてズルくない?オレが思ってることがバレたのか、機嫌悪くなっちゃったよ。失敗、失敗。今度はこっそり楽しまなきゃ。あれ、ヒバリさんの術中にハマってない?気のせいだよね?

 

 

 

 

その日、噂をしたからなのかディーノさんが家に居た。いつものことだから聞かれる前に、何もやらかしてないよと手を振るとあからさまにホッとしてたよ。やっぱディーノさんにとってもあれはないって思うことだったんだろうね。そっち方面の信頼度はゼロだよ。

 

「ソラ、聞いて!」

「ん?」

「ディーノさんが旅行連れてってくれるって!家族旅行だよ!!」

 

オレがすげー嬉しそうな顔をしていた。あれだな、家族旅行が嬉しいのもあるけど、ディーノさんがオレの味方でもあるのがわかって嬉しいんだね。にしても、旅行ねとチラリとディーノさんに視線を向ける。

 

「……やっぱダメか?」

「んー……ギリセーフかな」

 

家族旅行という言葉が、マフィアの嫌悪感を上回ったね。まぁディーノさんが気をつかってくれなきゃ、そんな機会なかなか来ないしね。オレもわたしもクソ親父のお金で行きたくないもん。この家で住めないのはクソ親父のお金で建ってるのもあるし。いやまぁ長時間居るのがキツいってものあるんだけどね。母さんがキレイすぎて……さ。

 

とにかく家族旅行が実現するにはお金稼がないといけないんだよ、オレがね。裏稼業で稼いだもので母さんを連れて行きたくないし、それこそバイトしかないんだよ。バイトとなるとわたしがキツいし。内職ぐらいじゃない?そんなことしてるのがバレたら、再びポイポイ札束投げてくるね、間違いない。そしてそのお金では行きたくない。あれ?そうなるとヒバリさんもやりそうじゃない?実現不可能?

 

ま、まぁ……オレがオッケーを出したから、オレは超喜んでいたよ。行くタイミングはGWだってさ。それもわたしのために宿を貸し切ってくれたらしい。いつから計画してたんだろうね。それも断る可能性もあったのにね。相変わらずマフィアっぽくない人だよ。や、ガッツリマフィアだけどさ。

 

 

 

いろいろ準備や根回してドタバタしていると、すぐにGWがやってきた。今回のメンバーはオレとオレと母さん、リボーン、ディーノさんとロマーリオさん、以上。チビ達はどうしたかっていうと、ビアンキが気を遣ってくれたのか面倒みてくれるんだって。まぁオレはオレから聞いて知ったんだけどね。獄寺君と山本も昼間に遊んでくれるという話らしい。すげーみんな気を遣ってくれてるよ。

 

ディーノさんの運転で旅行に出発。もちろん助手席にはロマーリオさんが固定。じゃないと、事故る。オレらは固定せずに休憩のたびにグルグルまわったよ。リボーンとペアになった時は、なんでか知らないけどオレの膝に座ってた。それを見たオレとディーノさんが衝撃を受けてたけど。オレも気になってたから理由を聞いたら、気分だぞだってさ。そう言われると誰も何も言えなくなるのがリボーンだよね。母さんは甘えたいのねって言ってたけど。や、こいつ見た目通りの年齢じゃないからって思わず言いたくなったよ。

 

休憩の時に、店の前でどれに食べようかなーとうんうん悩んでたら、ディーノさんに声をかけられた。

 

「欲しいもんあんのか?奢ってやるぜ?」

「や、それはいいです。そこまでは世話になるのは嫌っぽいですし。それに旅行用の小遣いもらったんで」

「……誰にだ?」

「XANXUSですね」

 

なんとも言えないような顔された。うん、わかるよ。わたしが旅行に行くと嬉しそうに報告してたら、またもや札束がポイっと投げられたんだよ。それもわたしの話では必要な分を抜き取るのはダメで全部持っていけ、だって。おかげでかなりある。お土産買うつもりだけど、そんな高いものは置いてないだろうし、ふつーに余る。

 

「あ、そういえばヒバリさんすげームカついてましたよ。ディーノさんに対してですけど」

「げっ、まじかよ。オレなんかしたのか?」

「旅行中にヒバリさんの誕生日」

「……やっちまった」

 

でしょうねとオレは頷く。2泊3日で6日に帰宅だったからね。5日が誕生日のヒバリさんからすれば、日程が最悪だもの。まぁオレもすっかり忘れてたけどさ。おかげで超機嫌悪かった。オレだからそれですんだけど、ディーノさんは対しては知らないよ。オレはオレで機嫌取りのために食事に何度か付き合ったし。

 

悩むに悩んでソフトクリームに決定したオレは、ずーんってなってるディーノさんの横でぺろぺろ食べてた。それをオレが見つけて、何があったの!?って叫んでたよ。オレは何もやってないよ、ディーノさんがやらかしただけだよ。旅行当日に教えたのはわざとだけど。だってすげー機嫌取るの大変だったんだもん。

 

いろいろと覚悟を決めたらしいディーノさんの運転で、無事に温泉街にたどり着いた。温泉、温泉とわたしと母さんはウキウキとついてすぐに家族風呂に入りに行った。家族風呂なのは、貸切らしいけど温泉巡りはやってるから。夜になれば時間外になって完全貸切になるから、その時に行くことにしたの。もう1人のわたしは夜でいいんだって。母さんと狭い空間で2人っきりで入るのはちょっと恥ずかしいみたい。

 

ふふっ、いい湯だったねと母さんとわたしがさっぱりして、家族風呂のところから出たらクロームと会った。お風呂グッズを持ってたから温泉巡りにやってきたのはわかるけどさ。わたしがなんでここに居るの?と首を傾げてると、クロームが説明してくれた。

 

「フランも行きたいと言って、骸様が連れてきてくれたの」

「……骸も居るの!?」

「骸様は多分お土産屋さんに居る」

「チョコ!」

 

コクンはクロームが頷いた。骸は温泉よりもそっちだもんねとわたしも何度か頷いた。って、こうしては居られない。多分骸はわたしのためにも来てくれたんだよ、絶対。わたしが眠れるかなって不安そうに言ったから。

 

「母さん、友達と会ってくる!」

「よかったわね。母さんはゆっくり行くわ」

「うん!」

 

わたしが走る気だったからね。そりゃ母さんはゆっくり行くよね。ってことで、こっちだ!とわたしの超直感を頼りに走る。ただちょっと嫌な予感がするんだよねともう1人のわたしとも会話する。なんでだろうね?

 

「んなーーーーっ!?」

 

さすがオレ、こういうフラグは確実に回収するよね。なんて思いながらもテンションは最高潮。なんか凄い音したし、叫び声も近かったし、慣れ親しんだ殺気も渦巻いでるからね。ほら、後ろ姿が見えた。あの特徴的な髪型は間違いないよ!

 

「むーくろっ!!」

 

骸に一直線だったわたしは、掛け声と共に飛びついた。わたしがいつもと違った感じに呼んだからか、骸も気づいてくれたみたいで振り返ったよ。だから結局いつもみたいに正面から抱きつく感じになった。

 

「……ソラ」

「骸、大好き」

 

ぎゅーっと抱きつくついでに、スリスリと頬をふっつける。

 

「僕は振り向きたくないと今ほど思ったことはありません」

「ん?」

 

なんか変なのっと思いつつ、抱きついたまま後ろを覗き見る。

 

「…………悪い、骸」

「まったくです」

 

だよな、いくら骸でもこれは嫌だよな。オレも今まで何度も押し付けられたことあるけど、これほど嫌だと思ったことないよ。……オレが居るのはわかってたよ、声が聞こえてたしさ。問題はさ、なんでXANXUSとヒバリさんが居るのって話なの。や、一応泊まる日と場所は教えたよ。けど、来るとは思わないじゃん。

 

わたしは骸にしか不安だって言ってないよ。もちろんオレもヒバリさんには言ってない。え?もしかしてXANXUS察してきちゃったの?まじで?あ、わたしがそうかもって肯定しちゃったよ……。じゃ、ヒバリさんは?この人が並盛から離れるなんて思わなかったんけど。えっもしかして誕生日?あんな機嫌取ったのにまだ諦めてなかったの!?

 

というか、そりゃオレも叫ぶよな。状況的に交差点でバッタリこのメンバーが会ったっぽいし。オレだって叫びたい。ちなみにXANXUSはヴァリアーのみんなが揃って来てて、引き攣った顔してる。そしてオレも怖い。ディーノさんも引き攣った顔をしてた。この2人は大好き発言が一番まずかった。ヒバリさんはオレに変わったことに気づいたからか、機嫌最悪になった。まだ抱きついたままだもんな。

 

そーっと覗き見るのをやめて、どうする?と骸と目で会話する。お前らだけでも逃がそうか?と。まだ視界に入ってないけど、多分犬と千種もいるはずだし。あいつらも多分引き攣った顔をしてる。けど、骸は結構ですという風に目を伏せたよ。……お前、ほんと良い奴。さっきだって、抱きつこうとするわたしを避けることだって出来ただろうに。

 

とりあえず、何事もなかったようにオレは骸と離れてみた。これだけでヒバリさんは少しマシになるはず、なってほしい。

 

「ソラちゃん、この方がお友達?」

「「母さん!?」」

 

オレと声がそろったよ。そうだった、ゆっくり行くって言ってたじゃん。母さんのおかげでオレがいつもの雰囲気に戻った。そして友達発言もよかった。母さんは救世主かもしれない。

 

「えっと、そう!友達の六道骸。オレもわたしも仲良いんだ」

「まぁ!2人のソラちゃんと仲良いのね!これからもソラちゃんと仲良くしてくださいね」

「ええ、もちろん」

 

とっても好青年で爽やかそうな骸がいたよ。オレは思わず驚愕の視線を向ける。これしかありませんでしょう?と目でかえってきたよ。そりゃそうだ。

 

ピリッと殺気が届いて、オレは思わずヒバリさんを見る。え?目で会話したのもダメだった?や、嫌なのはわかるけど、この場合は仕方ないと思うんだけど……。

 

「こちらの男の子も友達?」

「えっ、あ、うん。ヒバリさんだよ。オレがすげー世話になってる人。わたしも結構世話になってるかな。ほら、よくわたしに母さんと食べればって、ケーキくれる人だよ」

「あら、男の子だったのねぇ。ふふっ、母さんに話すの恥ずかしかったの?」

 

母さん、すげー。今一瞬ヒバリさんの機嫌が悪くなったけど、コロッと良くなったよ。いやまぁオレが動揺して頬が赤くなったのもあるんだろうけど。

 

「おい」

「うぇっ!?……ああっ、そうか!わたしがすげー世話になってるXANXUS。オレも世話になってるよ、うん」

 

ヒバリさんの時と違って、オレは生活費だけだけどね。他はなんも思いつかない。そう思うと、ヒバリさんはどっちもちゃんと相手してくれてるんだなぁ。他にないのかって視線がヴァリアーのみんなから届くんだけど、ないものはないよ。生活費はありがたいけど。あいつ、オレの機嫌とったことないじゃん。

 

「ふふっ。もう一人のソラちゃんが急に大人っぽくなったのがやっとわかったわ」

 

今度はわたしがテレたみたいで、頬が熱くなった。ただ、お前のその当然だみたいな態度はどうなの?わたしと母さんが気にしてないからオレはいいけどさ。

 

「ちょっと待ったーー!母さん、受け入れちゃダメだって!こいつら、みんなヤバイ人達からね!?」

 

オレよ、思っててもそれを母さんに言っちゃダメだって。そんなこと言ったら、母さんが何言うか決まってるじゃん。

 

「こら、ツナ!ソラちゃんの大事な人達なのよ、仲良くしなさい!」

「え゛っ。こいつらと……?」

 

母さんに言われたオレは1人ずつ順番に見渡して、無理だ……って顔に書いたね。オレもそう思う。そして各々もオレの反応を見て当然というような顔をしたよ。この空気どうすんの……となったところで、リボーンがひょっこり現れた。え、お前このタイミングで出てくんの。

 

「ママン、心配すんな。こいつらこう見えて仲良しだぞ」

「あら?そうなの?」

「そうだぞ。ツナとソラは双子だからな。ツナは仲良くするのが当たり前だと思ってるし、向こうからも仲良くしようとするのが当然の流れとツナが言ってたからな」

 

……うわぁ。みんな、視線が集まったね。殺気も集まったね。すごく仲良いと思うよ。

 

「リ、リボーン……?」

「そんなこと言ってただろ?」

「い、言ってないよ!気遣いが欲しいって言っただけじゃん!!」

 

あ、これはもうアウトだな。面白いことをいいますね、どうして君に?、ドカスが。って言ってないのに聞こえたもん。

 

「母さん、オレちょっと湯冷めして気持ち悪くなっちゃった」

「まぁ大変!」

「ソ、ソラ……」

 

悪いな、オレ。優先は母さんだ。わたしもそう言ってる。

 

「彼は今からみんなと遊ぶみたいでさ。オレ、1人はさみしいから宿まで付いてきてほしいな」

「もちろんよ。ツナ、楽しんでらっしゃい」

「えっ、ちょっと待って。オレもそっちに……」

 

無理無理。この3人が逃がすわけないじゃん。ディーノさんは味方してくれると思うよ、頑張ってね。

 

うん、オレはしーらないっと。

 




作者の中ではギャク回。前の話がちょっと暗かったしね。
最終巻でツナがお見舞いに行った時ようなイメージで書きました。
白蘭がいないよ、よかったね。その代わりにガス欠状態じゃないけどね。

まぁツナは大変な目にあったけど、この後にソラも大変な目にあうんだけどね。
察してる骸は来なくていいと思ってるんで、2人に挟まれる。
あまりに酷いとリボーンが助けてくれて、好感度をちゃっかりあげる。
そして2人にはおめーら女の扱いがなってねぇぞ、みたいな感じであくまでも女だから助けたというスタンスを崩さない。
誰にも気付かせない。こわい。

書き忘れ。ちゃんとツナと会った時にXANXUSは銃をぶっ放してるよ。慌ててマーモンが幻覚で壊れたところを誤魔化しました。


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GWの話で出かけてる話を書いてるけど、外出自粛に協力しましょう。


楽しかったGWが終わってしまったのか、クラスの雰囲気が憂鬱そうだよ。オレも違う意味でゲンナリ中。せっかくの家族旅行だったのに、あれは酷かった。旅行から帰ってから骸にはちゃんと謝りに行ったよ。旅行中にいっちゃあいつの迷惑になっちゃうからね。本当はあいつの好きなチョコとか贈りたいけど、生活費はXANXUSが出してるからね。そういうことも出来なかった。まぁ呆れながらも許してくれたよ。オレらに激甘だよなって本当に思った。

 

リボーンがとりなしてくれたから、ヒバリさんとXANXUSの一触即発はさけられた。……あと片割れの方のオレともだね。本当にリボーンが味方してくれて助かったよ。もうどうなるかと思ったもん。オレというより……わたしの行動が悪かったからね。けど、わたしは全然反省してないんだもん。あとXANXUSも。いやまぁあいつはそのために来てくれたみたいだから、そうするのもわからなくはないけどさ。

 

 

あの日、リボーンの言葉がきっかけで交差点でバッタリあったメンバーでバトルしていた。オレは母さんを優先してたからどうなったんだろうとは思ってたんだけど、夕食の時間にはオレがボロボロになりながらも帰ってきた。家族旅行だからってことで、ディーノさんが逃がしてくれたんだって。本当にマフィアなのにマフィアっぽくない人だよ。まぁオレが居なくなったなら、お開きになっただろうね。戦ってる理由がなくなっちゃうし、ヒバリさんには付き合わなくちゃいけないかもしれないけど。そこはディーノさんも織り込み済みでしょ。

 

けど、オレの予想に反して明日はヒバリさんの誕生日ってのもあって、ディーノさんは日付がかわる前には帰ってきた。明日わかってるよね?という不吉な伝言を預かってきてたけど。というか、オレ何度も言ったよね?家族旅行だからね?ディーノさん、すまんって手を合わせてるけどオレ無視するよ?ほら、オレも珍しくヒバリさんに反抗してオレの味方してくれてるし。母さんはヒバリ君も一緒でいいじゃない?っていうけど、それがダメなんだってとオレ達はみんな揃って目をそらした。

 

家族旅行だからってことで、血縁者のみで就寝する。お前も居ないの?とオレはリボーンに視線を送ったんだけどね。努力はしろとコソッと言われた。相変わらず母さんに弱いよな。まぁオレもニコニコの母さんとオレに何も言えないから人のことは言えないんだけどさ。ただリボーンは女のオレにも甘いから別の部屋の鍵を渡してくれたけどね。

 

3つ並んだ布団をみてちょっと憂鬱だ。双子なのもあって気付かれるかなと思ったけど、オレは昼間のバトルの疲れがあったのかバレてない。わたしに変わったら気付かれるかもしれないけど。オレの経験が継承されてるって言っても、感情を抑えるのはやっぱ苦手みたいだし。

 

ニコニコの2人に真ん中で眠ることを勧められ、オレは大人しく寝転んで目をつぶった。しばらくすると2人の寝息が聞こえてきてオレはムクリと起き上がる。予想通り、落ち着かなくて眠れる気がしなかった。というか、ちょっと気持ち悪い。身体が拒絶してると判断して部屋から出ようと立ち上がる。

 

「ソラちゃん……?」

「ご、ごめん。起こしちゃった?」

「いいの。……眠れないのね」

 

気配は殺してたんだけどなぁ……。こういう時、夜目も効く自分が嫌になる。母さんの顔がハッキリ見えちゃうからさ。

 

「その、母さん」

「ソラちゃんは謝っちゃダメよ」

 

……だよなぁ。いくら母さんが天然でもおかしいとは思ってるよね。それでも母さんは何も聞かない。あの時わんわんと泣いたオレとわたしに、必死に誤魔化してオレらを庇ったオレには絶対詰め寄ろうとはしない。だってそれが母さんだから。……まぁ父さんには知らないけど。だってね、オレらが父さんを嫌ってるのは察してるみたいだし。家光さんに知らせなきゃってウキウキした母さんの前で、わたしが真っ青な顔になっちゃったから。そしてしばらく家に寄り付かなくなったし。オレに大丈夫だからと説得させられて戻ってきたからね。いくら鈍い母さんでも何かあったとわかっただろうから。……必死に言い訳考えろ、オレらは知らね。ざまぁ。

 

「風邪、引かないようにね」

「……うん、おやすみ」

 

謝っちゃダメっていわれたけど、わたしは心の中でごめんねと謝る。多分それも母さんは察したと思うけど、笑顔でおやすみなさいって返事を言ってくれた。

 

もう1人のわたしと会話しながらフラフラと散歩する。ちょっと寝る気分じゃなくなっちゃったから。にしても、道路とか荒れてないね。流石に場所が悪いと思ったのか移動したっぽい。気にしたのは多分オレとディーノさんだね。リボーンの挑発で矛先はオレだっただろうし、うまく誘導できたっぽい。 もう1人のわたしも気にしてたっぽいから、やっぱそこはオレだよねって思う。わたしはそこまで気にしないし。一般人をちょっと脅して逃げたら?ぐらいはするかもしれないけど。わたしがわざわざ移動することはないね。

 

並盛以外でもそういう考えだし、やっぱわたしは普通の生活は生きにくいなぁと思いながら歩いてると酔っ払いに話しかけられた。典型的なナンパだよ。それも身体目的だね。

 

「んー、いいよ。誰でも良い気分だし、わたしと遊んでくれる?」

 

ふふっとわたしが笑いかければ、舐めるように身体を見たよ。もう1人のわたしが止めるから、メスで服を縫い付けるぐらいにしてあげる。頼んでもないのに誰かが隠すんだろうなぁ。なんて思ってると、濃厚な殺気を感じて驚いた。といっても、いつも通りなんだけどね。もう帰ったか、宿に居ると思ったから驚いたの。一般人にはちょっとキツイみたいで、無意識に一歩下がったね。

 

「もっと良い男がいたみたい」

 

じゃぁねとわたしが手を振ったら、プライドを傷つけられて得体の知れない恐怖より怒りがまさったみたい。手を伸ばそうとしたけど、姿が見えたのかピタッと止まったよ。目つき怖いものね。でも睨んでないよ、彼はこれが普通なの。睨んだらもっと迫力があるもの。

 

固まってる男を無視して、XANXUSはクイっと視線で促した。わたしのことも無視するかなってちょっと思ったんだけどね、くだらねぇことしてる暇があるなら来いだってさ。ちょっと悩んだけど、XANXUS自ら迎えに来たからわたしはついて行くことにした。もう1人のわたしはすげー叫んでるけど。いいじゃん、別に。わたしが決めたことなんだから、あの人の機嫌が悪くなるだけだよ。

 

ギリギリなのによく借りれたねと思いながら宿に入るともう1人のわたしが教えてくれた。ボンゴレが持ってる内の一つって。だから融通が利いて、明らかに違う宿の浴衣を着たわたしが通っても止められないんだね。相変わらずスクアーロはうるさいなぁと思いながら素通りする。まぁ面倒なことになるのはわかりきってるもんね。もう1人のわたしが深く同意してたよ。無視して泊まるけど。

 

それにしてもこういう宿でも格を落とさないよねーと思いながら、部屋を見渡す。XANXUSは座ったから、飲み直すことにしたみたい。だから勝手に布団を使えだってさ。

 

「ふーん、じゃ借りるね。おやすみっと」

 

絶対機嫌悪いけど、無視して眠る。……や、見ればわかるじゃん。今すげー機嫌悪いよ、この人。わたしが頼らなかったことにも苛立ってるし、わざわざ迎えに行かなきゃ来なかったことにも苛立ってるね。部下に命令しても来ないってわかってるから、XANXUSが動いたの。放置すりゃいいのにって本人は思ってるけど、継承しちゃった記憶のせいで無視出来なかったんだろうね。振り回されて更にイラッとしてる感じ。それでもわたしが付いてきたから、まだ良くなってるよ。ただ良くなっちゃったからまたイラッとしてるんだろうね。

 

コイツ、そんなめんどくさいことなってんの!?ともう1人のわたしが叫んでた。だから無視して寝るんだって。わたしが機嫌とろうとすればもっと機嫌悪くなるし。だから、おやすみなさい。

 

 

 

ドタバタと大きな足音が聞こえ、わたしは意識を浮上させる。目を開けるとXANXUSと視線が合った。

 

「おはよう、XANXUS」

「……ああ」

 

珍しい、返事があったよ。なんて思いながら、一緒の布団で眠っていたことに気付く。や、手は出されてないよ。その場合はもう1人のわたしが起きるだろうから。ただ昨日の感じだと、あのまま座って眠ると思ってたの。ちょっと酔ってたのかもね。

 

XANXUSが視線をそらさないから、ジッと見つめ合う。こういう風に見つめ合っても、嫌じゃないんだよね。というか、好き。ただこれがわたしの気持ちなのか、未来のわたしの気持ちなのかがわからない。それは多分XANXUSも一緒。

 

さっきから近づいてくる足音は多分オレだよねぇと思いながらも、わたし達は動かない。XANXUSも察してると思う。面倒なことになると分かりきってるのにね。……もう1人のわたしは諦めモード入ってるよ。押し付けられるのはわかってるからさ。悪いとわたしも思ってるんだけどね、でもギリギリまでこうしていたいの。

 

スパンッと勢いよく襖が開いて、んなーーっ!!とオレが叫んだ。チッという舌打ちと共に視線を逸らして、XANXUSは身体を起こしたよ。仕方なくわたしも起き上がって恐る恐るオレを見る。……白目向いてたよ。XANXUSの時の方がショック大きいよね、いっつも。またねとXANXUSに視線を送って入れ替わる。

 

そそくさとオレは布団から退散する。XANXUSも嫌だろうし、オレも微妙だから。

 

オレの目の前で何度か手を振ると、意識が戻ったのか抱きしめられた。地味に力が強くて痛い。我慢するけどさ。オレの後ろにリボーンとディーノさんも居たよ。朝からオレが騒がしかったんだろうね。困ったようにディーノさんは頬をかいてたけど、リボーンはため息を吐いてたよ。オレもため息を吐きたい。

 

「んっと、戻ろ。母さん、待ってるんでしょ」

 

何か言い返してくるかなと思ったけど、オレはオレの手を掴んで歩き出したよ。一緒の布団で眠ってたことはダメと思ってるだろうけど、わたしの意思でXANXUSのところに向かったことを察してるから言えないんだろうなぁ。オレも本気で止めようとはしなかったし。だから下を向いたままなんだよね。どうしよっかなぁとオレが悩んでると、ドカスと後ろから声がかかった。え、お前この状態のオレに声かけちゃうの!?

 

「いつまで甘ったれた考えでいやがる」

 

ギリっとオレが歯を食いしばったけど、それでも顔は伏せたまま。

 

「その女はこっち側の人間だ。てめぇのくだらねぇ理想を押し付けんじゃねぇ」

「……るさい。わかってるよ、そんなこと!!それでもオレは普通の生活を味あわせてあげたいんだ!!ボンゴレがしっかりしてたら、ソラは普通の生活を知ることができたんだよ!!お前が……お前が言うな!!」

「ハッ。てめぇもボンゴレだろうが」

「……はい、そこまで」

 

流石に間に入ったよ。思いっきりオレが傷ついちゃったからね。XANXUSには睨まれちゃったけどさ。

 

「あのさ、オレもわたしも君の気持ちはちゃんとわかってるから。だからあの子もオレを通して普通の生活……なのかはちょっと怪しいけど、まぁ楽しんでるよ。そりゃちょっとしんどいと思って、お前に甘えてるのは事実だよ。オレは装って生きていける可能性があるけど、あの子は無理だろうし。でもそれでお前がオレを追い詰めるっていうなら、わたしはお前のところには行かなくなるからね」

 

骸だって居るんだからさ。あいつは邪険にしないし、わたしの件ではここまでオレには言わない。そりゃわたしが参ってたらちょっとは言うだろうけど、イヤミの範囲。

 

「で、君は過去に囚われすぎ。もう起きたことはしょうがないんだからさ。あの子は頑張ったの、頑張ってオレを作って君のところにたどり着いたの。言っとくけど、すげー君に甘いよ、あの子。でも君と一緒に過ごしてたら、そうなったかはわからないからね。君が側にいるのが当たり前だろうし。君に執着することはなかったと思うよ。未来のオレらは親離れは出来たのに、君には出来なかったみたいだし」

 

そりゃ母さんと比べたら扱いは雑だよ。けど、最後まで捨てれないのは目の前にいるオレの方だから。許せるのは間違いなく母さんよりオレの方なんだよ。もちろんクソ親父は論外。

 

「2人ともちょっと反省……は無理か。仲直りとかもっと無理だね。えーっと、あの子にはオレが居るから、どこでも生きていけるの。あんまり酷いと、雲隠れしちゃうよ」

「へぇ。面白そうな話になってるね」

 

ヒバリさん!?とオレは思わず二度見した。なんでここに居るの!?や、多分オレが探し回ったから気付いたんだろうけど。

 

「あの呼ばれ方は嫌いだったけど、初めて良いと思ったよ」

「へ?」

「雲隠れ。僕のところに来るんでしょ」

 

違うよ!?とオレは驚愕の視線を向ける。行方をくらますっていう意味だからね!?とオレは視線で訴えるも、ヒバリさんは自分の都合がいいように捉えるから無視された。ひ、酷い……!

 

「……いつも思うんだけど、ソラってさ、ヒバリさんに甘いよね」

 

オレがガクッと項垂れてると、いきなりオレが言い出した。というか、今その話する?つーか、その話をやりだすとオレはヒバリさんに厳しいからね。XANXUSには全然抗議しに行かないじゃん。や、理由はなんとなくわかるけど。未来がそうだったからね。すげー嫌なんだけど、諦めがちょっと入ってる。

 

「ガキの頃から、目立ってたし。ガラの悪そうな大人の群れにトンファー持って突っ込んで行くんだよ。ほっとけないじゃん」

 

ほら、ディーノさんもまじかよ……って感じで引いてるよ。危なっかしくてオレは超心配だったの。まぁオレがこんなこと言っちゃったからヒバリさんは機嫌悪くなっちゃったけど。

 

「そりゃ子どもの頃ならオレもわかるけどさ。ソラは今もじゃん。ヒバリさん、すげー強いからね!?それにヒバリさんだけマフィアの括りに入ってないみたいだし、オレとXANXUSにはハッキリ言ったのに、ヒバリさんには仕方ないって許してる。どっちのソラもヒバリさんに甘いよ」

 

ワオ。ヒバリさんじゃないけど、言いたくなったよ。だって、オレがスネてる。代わりにヒバリさんの機嫌が良くなったみたい。……XANXUSは機嫌悪そうな気がする、多分だけど。

 

「今その話はいいじゃん。関係ないし」

「ほら、否定しない!!」

「あのね、君が知らないだけでオレは結構ヒバリさんにも言ってるよ。わたしは他人事なのもあって楽しんでるけど。本当にダメなところは言ったら改善してくれるよ。でもそれは君達みんな一緒でしょ」

 

別にヒバリさんが特別じゃないよとオレは説明する。オレに教えるとヒバリさんの機嫌が悪くなるから言わないだけなの。オレが言っても聞かないなら、ディーノさんに詰め寄るからオレが知る機会は少ないの。

 

「オレ、ソラに看病されたことない」

「や、ヒバリさんにもしたことないから。そりゃ見舞いは行ったことがあるけど、君にも行ったことあるでしょ。つーか、XANXUSの見舞いなんて行ったことないよ?わたしがそんなことするとは思えないし、XANXUSも来るなって思うタイプでしょ。……って言ったけど、オレはあいつのことはよくわかんないからあってるかはわかんない。でもわたしが行かないのは間違いないね。オレが行ってどうすんのって話だし。そもそもXANXUSはそんな怪我なんて簡単にしない」

 

当然だって顔をXANXUSはしていた。多分だけど。

 

「でもヒバリさんの怪我をみてたもん。オレ、包帯とかしてもらったことない」

「……それ、オレじゃない。未来のオレだから」

「違わないよ。ソラは絶対する。それにやったことないって言える?」

 

……あったかも。でもここでイエスって答えたらヒバリさんの機嫌が悪くなるし、スネてる状態のオレの対応もいい加減面倒になる。

 

「ツナ、その辺にしとけ」

「リボーン!!」

「ソラはボンゴレに産まれたことすらなかったことにされたんだぞ。そんな中、ヒバリはずっと……それこそ何年もの間ソラを探し続けてたんだ。対応が甘くなるのもわからなくねぇ」

 

お前、それを言うなよ……。またオレが傷付いちゃったじゃん。というか、気付いてたのかよ。オレらだって最近だよ、気付いたの。

 

「ええっと、とにかく母さんのところに行こうよ。部屋で待ってるんでしょ?」

 

あ!とオレが思い出したことで、この話は終わったと帰ろうとしたらヒバリさんに捕まった。……やっぱりまだ諦めてなかったらしい。

 

「……オレもう何回も断りましたよね。誕生日の代わりってことで何回も食事に付き合いましたし。それに初めての家族旅行なんで、いくら普段世話になってるヒバリさんの頼みでもダメです」

 

オレがはっきり断ったところを見たオレは感動するように見てたよ。ムスッとしたヒバリさんにまた食事付き合いますからって言ったら、オレが甘いってムスッとしちゃったよ。まだXANXUSがスルーしてるだけましだけどね。ここで昨日みたいに参戦されたら面倒くさいどころの話じゃない。

 

「君がそこまで言うならわかったよ。その代わり、今日は僕の泊まってる宿で寝泊まりするならね」

「んなーっ!!!!」

 

さすがオレ、反応がはやい。オレは驚きすぎて声が出なかったよ。

 

「あの男がいいなら、僕でもいいはずだ」

「んなわけないでしょう!!」

 

ぎゅーっとオレがオレを抱きしめながら抗議し始めた。オレはいっぱいいっぱいで気付いてないみたいだけど、XANXUSから殺気がビシビシ突き刺さってるよ。仕方ないから、ディーノさんにヒバリさんをどうにかしてと訴える。まじか……みたいな顔してるけど、ヒバリさんの家庭教師はディーノさんでしょ。

 

「恭弥、そういうのはやめとけ。普段から警戒持たれてるんだろ?悪化するしかないからな。ちゃんと手順を踏め」

「……君の肉親、ちょうど居たよね」

「待て待て待て。飛ばしすぎだ」

 

ディーノさんがツッコミしてる間に、オレはオレと顔を見合わせ声を出さずに会話する。ヤバイよねって。もしヒバリさんが行っちゃったら、母さんは絶対信じ込むタイプだよねって。オレとオレの意見が完全に一致したから、目の前のオレの顔がが真っ青になった。……オレ、わかりやすぎぃ!

 

炎が迫ってくる気配がしたから、オレはオレを引っ張って避ける。……だよな、お前もオレの顔を見たらわかったよな。行かせちゃマズイって。ヒバリさんは有効ってわかっただろうし。オレらの直線上に居たヒバリさん達はなんとか避けてたよ。

 

結局今日もこうなるのかぁとオレが遠目をしていると、銃をぶっ放した音がして驚愕の視線を向ける。さっきと違って銃を使ったのはリボーンだったから。

 

「ソラ、こいつらのことはほっとけ。ママンとおめーの邪魔をするなら、オレが相手してやる」

「え、いいの?」

「ああ。オレは女を泣かす趣味はねーからな」

 

リボーン、お前カッコ良すぎ!オレが感動したようにリボーンに視線を向けてると、昨日はお前が唆したじゃんってオレが小声でツッコミして蹴られていた。や、昨日はちゃんとオレが母さんを連れて行くのも織り込み済みだったから。巻き込まれたオレは男だから容赦なかったけど。

 

「それと今日はオレと寝とけ。オレとなら、落ち着かねぇことはねーだろ」

「あ、うん。じゃぁそうする」

 

リボーンとなら……とオレは渋々オッケーしていた。まぁオレの許可はなくてもリボーンは実行するけどね。リボーンの中身が大人と知っている2人も、まだまだ赤ん坊の姿なのもあってキレる雰囲気はなかった。まぁヒバリさんの機嫌は悪いけど。

 

結局このまま有耶無耶になった。ヒバリさんの機嫌が悪いままだからディーノさんが相手するハメになったけど。ディーノさんはそこはリボーンじゃないのか!?って顔をしてたけどね。母さんのところに行くなら相手にするって言ってたから、ヒバリさんが行かない限りリボーンはしないよ。ヒバリさんはリボーンと戦いたいはずだけど、オレが泣くと聞いて一応止まってるし。その間にディーノさんはヒバリさんの教育しなきゃいけないから。ちゃんと手順を教え込んでください。もしオレらが知らない間に母さんとヒバリさんが話を進めていたら、ディーノさんをまた恨むからね。その日にヒバリさんが母さんに突撃することはなくなったから、ちゃんと教え込むことは出来たらしい……多分ね。

 

 

 

……思い出してみたけど、やっぱ酷いGWだった。でもやっぱオレの言う通り、ヒバリさんに甘かったかな。結局可哀想で、夜だけ一緒に食べてあげたからね。いやまぁ流石に母さんを蔑ろには出来ないから2人が風呂に行ってる間に行った。だから二食分食べてオレが苦しいって唸ってるのをリボーンは呆れて見てたし。リボーンと2人になった途端に態度に出したのもあるんだろうけど。

 

オレは酷いGWだったなぁと思ってたけど、クラスの雰囲気はまだもっと遊びたかったという空気だった。それが予想済みだった学校はさっそくHRで進路相談の紙を配ってきたよ。一気に現実に戻されてすげー空気が重くなってた。進路希望先を書かなきゃいけないみたいで、オレはどうしようかなと用紙をジッとみつめる。

 

後ろから見てて気付いたのかオレが補足してくれた。オレは居なかった2年の時にもあったらしい。これを元に保護者と三者面談をするんだって。大体自分の成績でどこへ目指せるかは教えてもらってるみたい。そういうこともあったねとオレは軽く頷く。オレはもう並高一択だったからね。ちなみに受からなかったらボンゴレを継げとリボーンに言われて必死だった。目の前にいるオレはまだ言われていないっぽい。……やっぱわたしのことがあるから、慎重になってる気がするね。9代目から継承の話もまだないみたいだし。

 

オレから話を聞いて理解したオレは手をあげる。恐る恐る先生にどうかしましたかって聞かれた。

 

「ヒバリさんから伝言預かったりしてます?」

 

ブンブンと首を横に振られた。ってことは聞きに行かなくちゃいけないのかとオレが思ってると、オレにヒバリさんがどうしたの?って聞かれた。

 

「や、考えたらわかるじゃん。オレの教育費とか払ってるのはヒバリさんだから。この場合のオレの保護者はヒバリさんになるでしょ」

「……そうだったーー!」

「とりあえず聞いてみるだけ聞いてみる。どうするかはわかんないけどね。わたしはダンマリだし、高校にそこまで興味ないのはわかってるけど」

「そうなの!?」

「一応達成したもの。君と授業を受けてみたいってのはさ。だからオレはわたしがあいつのところに行きたいって言い出しても、不思議じゃないと思ってるよ」

 

あの時XANXUSに言われてもまだ目をそらしていたオレは、現実に気付いたのかみるみると青ざめ始めた。オレは必死に家族との思い出を作ろうとしてるけど、実は作れば作るほどわたしは満足して執着が薄れてるんだよね。もしこのままオレがボンゴレボスの座から逃げ切ったなら、会うことはないんじゃないかな。変なのがきて超直感が反応すれば殺しに行くぐらいはするだろうけど、顔は合わせない道を選ぶだろうね。そしてそれをオレらは出来る力があるんだよ。

 

あと多分その場合はXANXUS一択になる。ボンゴレのことはどーーでもいいけど、表の世界で生きることを選んだオレにごちゃごちゃとボンゴレが来るなら、わたしがさっさと子どもを産む。未来の記憶と経験があるからわけわかんなくなってるけど、お互いに嫌じゃないんだよ。踏ん切りがついて結ばれるんじゃないかなってオレは思ってる。とりあえず後継ぎが居るならボンゴレも落ち着くだろうし。別に1人しか産んじゃいけないってわけじゃないし。誰か1人ぐらいは継いでもいいよっていう子が出来るでしょ。ボンゴレを愛してるXANXUSの子なんだから。まぁさっさと滅べっていう子も産まれるかもしれないけど、それはそれでいいし。

 

まぁこんなことをオレに話しちゃうと、覚悟もなく嫌々継いじゃうから言わないけど。覚悟もないまま継げば、簡単に死んじゃう未来しかないし。リボーンもわかってるから、そこには触れない。だからXANXUSがキッツイ言葉をかけたけど、実は黙ってても良かったことなんだよね。それはあいつもわかってただろうけど。わたしがボンゴレが嫌いだから、あいつなりの気遣いでしょ。積極的に関われば、どこかで歪む可能性も高くなるし。そうなればあいつはボンゴレのためにわたしを殺す判断を下すだろうね。勝算がどれほどあるかわからないし、そもそもそういう未来は望んでないから、あの時に現実を突きつけたんでしょ。だから冷たいとは思わないよ、オレもわたしも。その時はオレらもXANXUSを殺そうとするだろうし。

 

引き止めるつもりなら、何かいい案考えとけば?とオレはオレに丸投げして席を立つ。ヒバリさんに聞きに行くとわかったのか、先生も止める気配はなかった。まっ、ヒバリさんと追いかけっこしてなくても普段からサボりの常連だしね。

 

応接室に向かったけど閉まってたから、屋上で寝っ転がる。1日一回はここに来てるでしょ。ケイタイ持ってるけど、わざわざオレからは連絡しない。そこまで急いでるわけじゃないしね。

 

オレがボーッと空を見上げてると、ガルッ……と寂しそうな鳴き声が聞こえたからこっちにおいでと手招きする。

 

「ナッツをつかうのは卑怯でしょ」

 

軽くため息を吐いてオレはナッツを撫でる。オレの言葉に不思議そうな顔をしつつ、スリスリと甘えるように擦り付けてるから無自覚で出したっぽいね。まぁそうだろうと思ってたけど。ちょっと文句を言いたくなったんだよ。

 

「そんなにオレらが居なくなったら寂しいの?」

 

オレがそう質問すれば、ウルウルと潤みだして離れないというかのようにナッツはオレにへばり付いた。……ライオンの要素はどこ行っちゃったんだろうね。ナッツはオレの心を表してるから、これはオレが悪いんだけどね。完全に甘えた状態のナッツを抱きつつ、わたしにどうすんの?と投げかける。返事はなかったけど、すげーグラついてるのはわかった。わたしはオレに激甘だもんね。

 

しばらくナッツと遊んでいると、ヒバリさんがやってきた。甘えた状態のナッツを見て一瞬眉をひそめたけど、何も言わなかったよ。相変わらず小動物には優しいね。ナッツは肉食動物だけど。

 

進路相談の紙をどこのポケットに入れたかなぁと探ろうとしたら、ヒバリさんが紙束を渡してきた。さすがヒバリさんだね。オレと違ってちゃんと準備万端だったよ。オレを引き止めるプランを何通りも考えたみたい。まぁ一番最初提案にヒバリさんと結婚というのがあって噴きそうになったけど。もちろん速攻無視して、次のページをめくったよ。ムスっとしてるけど、破らなかっただけ優しいと思ってください。そもそもなんで入れたの。今の状態でオレがのむわけないでしょ。

 

いろんな案を作ってくれてるけど、ビビッとくるようなものはない。オレもわたしもそんな欲がないんだよね。ヒバリさんの誇りからして、母さんの安全で交渉をするはずもないしね。まぁ気になったのはこのうちの二つかな。

 

一つ目は風紀委員との同盟。要約すると、昔みたいにオレが並盛でヒーロー活動っぽいものをしてもいいという案。並盛の風紀に命をかけてるヒバリさんが提案するとは思えない内容でもある。けど、オレとわたしの性格を考えてギリギリ譲れたのが同盟だったんだと思う。オレらが群れることはないのも譲れた要素かな。オレはオレを模範した性格なのもあって、本質は人との繋がりを欲しいタイプなんだよ。けど、わたしはそれが無理で。間をとって無意識にやったのが、困ってる一般人を助けてさっさと去る方法だった。今はもうやめてるけど、ヒバリさんはこれがオレにとって一番安定する方法だと気付いたみたい。そしてヒバリさんの部下になるという提案は絶対にのまないとわかっているから、同盟という提案をした。……ほんと、よく見てるよ。

 

二つ目は並高の三年間の保証。今とそんなに変わらない。ただ高校からは義務教育じゃなくなっちゃうから、出席日数や成績とか関係なく進級の保証は大きい。でもこれは片割れのオレが縋り付いて来たらそうなるのもあって、ヒバリさんの提案に乗ったと言ったらちょっと違う気がする。だから案として入れて来たことに違和感があった。オレが並高に行きたいって言えば、ヒバリさんは進んで準備するはずだよ。三年間は並盛を生活拠点にするってことだから。

 

「……なに企んでます?」

 

この並高の三年間の保証は最後のページだったのもあって、警戒するようにオレはヒバリさんを見る。まぁそんな警戒するような視線を送っても、オレの膝にはナッツが甘えたように居るから迫力は全然ないんだけどね。

 

「不可侵規定」

 

ヒバリさんの声はそんな大きくなかったのに、オレの耳に残った。

 

「僕が提案したものに乗るなら、いずれ作るだろう僕の施設に必ず君の部屋を用意すると約束するよ。その部屋は君の許可なく僕も入ることはない。たとえ緊急事態が起きた時でも、僕が生きている限りそこには誰も通さない」

「怖いなぁ……」

 

思わず漏れたオレの感想にヒバリさんは笑った。もちろん獲物を前にした時の笑みだよ。

 

オレはまだしも、わたしはボンゴレを信じきることが出来ない。たとえあの子が10代目を継いだとしても。だからこその提案だ。ヒバリさんの性格上、必ずボンゴレと不可侵規定を結ぶ。ボンゴレでも手を出せない場所を作ると約束した。たとえ三年後にオレらがXANXUSを選んだとしても、だ。いやまぁヒバリさんは三年間にオレを落とすつもりなんだろうけどね。どんな結果でも作ると約束したんだよ。オレの性格上、その場所はとてつもなく魅力的だ。わたしなんて、ヒバリさんやるねって感じですげー笑ってるよ。

 

「……持ち帰っても?」

「うん、いいよ」

 

見つかったことには変わらないから、今夜一緒に食べる約束をしてオレはヒバリさんと別れて飛んだ。

 

また時差のことが抜けてたけど、XANXUSはふつーに起きてた。まぁわたしじゃなくてオレだし、ナッツを抱えてる状態だから機嫌悪そうだけど。オレもナッツは置いて来たかったんだけどね、離れなかったの。

 

「日本だと、この時期に進路相談っていうのがあってさ。ほとんどの人は高校に進むの。個人差はあるけど三年間ね。もちろん途中でやめることも出来るんだけど、ヒバリさんが出した条件がすげー良くてさ。や、内容は教えないよ。公平じゃないし」

 

良かったと教えただけ優しさだと思ってよ。だから睨むなよ。……あ、違うのね。オレに良い条件だったと言わせたヒバリさんにイラッとしてるんだ。通訳してくれないとほんとわかんない。

 

「日本のシステムをそこまで知らなかっただろうし、しばらく待つよ。けど、お前でもひっくり返せないと思う。それだけ」

 

言うだけ言ってオレは帰ったよ。言い逃げっぽいけど、事実だし。オレがXANXUSに宣言した時点で、わたしもヒバリさんの提案をのんでいいって考えてることだもん。それぐらいヒバリさんをオレらは信頼してるんだよね。そして独立してるといってもボンゴレの括りから出ないヴァリアーには用意できないものだ。いやぁお見事だよ、ほんと。

 

まっ、約束通りしばらく待つかな。オレがここまでハッキリ言っちゃったからXANXUSは提案しないかもね。それはそれでいいんだけど、オレはどうするつもりなんだろうね。ヒバリさんのおかげで棚からぼたもち状態だからこそ、しばらく教えてあげるのやめよ。わたしのためにも真剣に考えて欲しいしね。可哀想じゃないよ、だってオレだもの。

 




XANXUSがかなりリードしてるはずなのに、雲雀さんが逃さない。
方向がおかしい時もあるからディーノさんの教育は必須だけど、やっぱ有能。
本気で動き出したらXANXUSも怖そうだけどね。

一番のほほんとしてるのはやっぱりツナ。
情に訴える作戦しかなくて、ヒバリを見習えとリボーンに交渉のやり方を教育される。
それでも浮かばないから、情に訴えるヴァリエーションが増える。
ある意味恐ろしい結果を生み出す。……かもしれない。

ちなみにソラの予想通り、ナッツは無意識です。


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