オーダー、アバウト、ガーリーエアフォース (弧蒼 ソタ)
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変異と胎動。
薄暗くまるでウイスキーの瓶の底に沈んでいるかのような室内に一人の男が漂っている。
不意にドアが開かれ、男は自分の名前を呼ばれる。
「明日把さん、準備できました。後はあなた次第です。」
運ばれてきた輸血用の機材を見て俺は少しためらった、だがここでみすみすこの大地から大空を黙って見上げるのは御免だ。
「やってくれ、準備はできている。」
俺の首筋に輸血用のチューブが刺さり麻酔が流れ込んでくる、おそらく忌々しいあいつらの成分も流れ込んでいるのだろう。
「手術室に運んでくれ、プロジェクトR、実験開始だ、、、、、ありがとう、明日架橋、アンタが進む道を決して見放さない。俺たちは付いていく。」
ご苦労様なこって、そう言おうとして自分がもう口元すら動かないことに気づいた瞬間、記憶と意識をなくした。
そして、俺は人間でなくなった。
俺の名前は明日架橋(あした、かけはし)と言う、ま、珍しい名前だとは自分でも思うけどね。
ただの隠居しようとしてた元パイロットだよ。
一か月前、俺は中国にいた。
「やっぱりプロペラ機はドイツを思い起こさせるなぁ。」
黄色のプロペラ機を丘の上から見降ろしながらつぶやく、三機編成のプロペラ機の翼に書かれた玉免表演隊の文字が誇らしそうに光っていた。
「それはあなたが世界二次大戦好きのオタクだからです。はい、頼んでたコーラですよ。」
遠くの方に見えるウイグルの飛行場で開かれているプロペラショーをパイプ椅子に座って離れた高台から望遠鏡をのぞいて観察していた俺はコーラを受け取った。
コーラを渡した彼女の呼び名はクロウ、長年付き合ってきた相手だがよく知らないし知る必要もない、ただの偶然居合わせた同業者、協力関係にも敵対関係にもなる、そんな適当な相手だ。
「で、この辺に衛星で巨大な黒い物体が見えたってのは本当なの?黒い物体なんていったって雲の影も黒いし、たまたまなんかの事故で何かが落ちただけじゃないの?それを横取りするだけの価値があるものだって断定できたわけじゃないでしょ?」
「そうですね、しかしその物体は日々拡大しているそうです。しかも一日半径5キロの速さで。虎穴に入らずんば虎子を得ずというやつですね、世間には陰謀論を騒ぎ立てたい連中がいるだけなんでしょう。」
元パイロットと謎の女(こんな女、チョイ役の謎の女で十分だ)がなぜこんな地に来たのかと言うとUMAの雑誌を書くための元ネタが必要だったからだ。で、中華何万年のロシアに侵入した謎のUFO、その秘密に迫る、とかなんとか書きたいがためにグーグルでマップを調べたら奇妙な物体が見えたんで謎の女一号が派遣されたのである。が、問題は中国のウイグル自治区の奥の奥にあるがため、飛行機で行かねばならない。そのためパイロットを募集していたところに俺が募集したわけだ。まあ、俺の免許は日本のものしかとってないから偽造したものなんだがね。
「本当になんなんだ?その物体、まさか宇宙人の、
そう言いかけたとき飛行場の方で爆発が起こる。
俺たちは顔を見合わせて望遠鏡をのぞき込み状況を確認する。
謎のガラス細工のような透き通った機体が次々とプロペラ機を食いつくしていく。
「な、、、なんなんだ一体!?」
俺はガラス細工をよく見ようとした。しかしあまりにも高機動な動きで双眼鏡を合わせることもかなわない。しかも心なしか近眼のようにぼやけて見えているような、、、
「あ、あれはいったい!?」
「わからん、ただ一つ言えるのは緊急事態ってことだ。逃げるぞ!」
荷物をワゴンに積みあげ車を思いっきり急発進させる。
「どうするんです?まだあの物体の調査がありますよ?」
「んなこと言うな!ゴシップより自分の命が優先だろうが!!」
車を急発進させとにかく距離を取る。
のちに天災(ザイ)と呼ばれる正体不明の飛行機型エイリアンの侵略である。
ザイとは何か。
1、戦闘機はめっちゃ速くて変態機動を取る。
2.大体のザイがレーダーとか目視でとらえられない。
3、放っておくと人工物を分解(?)するか人工物からザイを作り出す。
2016年12月メモ 明日架橋
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変異の前触れ(前編)
ハートブレイク=オードリクセン、隊長
ダイハード =サマジャ、 フィリピン人
サム =そのままサム、 アメリカ人
ポーター =明日架橋 日本人、19歳
アムリ =
フィリピン領、マニラ近海。
「OK、みんな集まったな?」
クーラーの利いた暗い部屋の中、独立対ザイ部隊隊長のオードリクセンが話す。
「聞こえないやつは手を挙げろよ?」
俺はジョークを言う、若干の苦い笑い声が聞こえた。
隊長は右手で隊員たちを制し、落ち着ける。
「おいおい、今は冗談を言っている暇じゃないだろ?よし、場の空気もあった待ってきただろう、今回の作戦を伝える。つい最近、ポーターに対ザイ用の投与プログラムが実行されていることは皆知っているな?」
体長がポーター、すなわち明日架橋のあだ名を言いながら情報共有のレベルを確かめる。
「何が投与だ、俺たちを研究者たちがイカレた実験のモルモットにしようとしているだけじゃねえか。」「まったくだ?俺たちを何だと思ってやがる。」
やり切れない様子でアメリカ人のサムとフィリピン人のダイハードが愚痴る。
「だが誰かがやらなければいずれはアメリカやフィリピンだって飲み込まれてしまう。目には目を歯には歯を。わかってくれ、これは苦渋の決断だ。志願したものにしか行わん。」
ダイハードが前のめりになって話す。
「違う違う。そこじゃねえんだよ、得体の知れないものはまだいいとして、最悪味方に襲われる危険だってあるんだろ?その投薬。」
「ああ、ザイが強いなら人間をコントロール装置としてザイに近づければいいというある意味神を侮辱するような行為だ。当然許されることではない。しかしアニマ、ドーターと言ったものに任せられるようなことじゃない。数も足りてない、第一、何もわからずに神に頼るようなものだ。それは人間としてのプライドが許さない。」
全員が深くそれぞれの態度で肯定する。
「人間は英知をもって道を切り開いてきた。今回も勝てる。絶対にだ。」
「..........作戦を説明する。まず台湾を目指す。台湾は現在ザイによって北部を制圧されている。ザイの基地建設は辛うじて南部から捨て身の総火力をもって何とか妨害できている状態だ。我々ヨルムンガンド隊は南部の基地より出撃、対ミサイル用のビーム施設、対地用の防壁と武装を破壊し、地上部隊による火炎放射部隊を援護する!いいか、この作戦は地上部隊がザイの施設を破壊後、その土地を制圧できなければ意味がない。各機は地上部隊と援護の対地ミサイルが攻撃できるようなたたき方をしてくれ。ザイの施設は大きく分けて三つのエリアに分かれているようだ。中央の通信塔、右側の膨らんだ建物、左側のミサイルと思わしき突起物が並んだ建物だ。このうち右側の施設は切り立った断崖の上に立っている。吹きあがる風に惑わされるなよ。」
作戦開始まではまだ時間がある。この熱帯のいつ今度食べられるかわからない食事を食べるのも悪くないだろう。ブリーフィングが終わり、俺は食堂へと足を向ける。食堂に入ってメニューをみて少し悩んだ後、コックにガーリックライスを頼む。ライスと言っても世界の80パーセントを占めるインディカ米だ。さらっとしていて飲むように食べることができる。
どうしたものかと俺は思考に耽る。天涯孤独の俺は生き抜くためにかなり荒々しい方法をとってきたこともある。かといって生き抜くことに執着してるわけじゃない。俺はちょっと誤解を恐れないのであれば周囲に振り回されることを楽しんでいたのかもしれない。だから今回のザイ関連の事に少なからず楽しいと思うこともあった。ザイの力を手にするという英雄、もしくは歴史の文章から消されるような選択をした今、これからはその無責任な風来坊のような生き方はもうできないかもしれない。、、、、いつもまにか憂鬱に浸っている自分に気づきふっと笑う。そうだ、俺がそんなことでどうする。俺は明日架橋。明日なんて知らない、ただ進めばそこに道はできる。カツンと音がした。どうやら自分は空の皿にスプーンを運んでいたらしい。コックの元へ行き皿を片付け、挨拶とともにおいしかったと感謝を述べ食堂を後にする。
数十分後、
ハンガーには作戦を遂行する5人の隊員が集まり待機準備をしていた。
俺も機体の外回りのチェックを済ましコックピットに乗り込み計器類のチェックをする。一番よし、二番よし、システムオールグリーン。各手順を済ましエレベータを待って甲板上に上がる、、気温40度、日本なら外出禁止令が出る程度だがここら辺では一般的な気温だ、カタパルトから発進するのに速さが必要なため、
少し出力を上げる準備をする。
タキシング後、カタパルトへと移動し固定する。
エンジンの出力が上がるのを耳と体で感じ取る。発進。いつものすさまじいGがかかり海原を滑るように走り出し、やがて大空へと機体が持ち上がっていった。
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変異の前触れ(後編)
楽しい台湾軍人の皆様=多分モブ。後からキャラ出すかも
空母を発進してしばらくたった後、不意にハートブレイクが話しかけてきた。
「なあ、ポーター?一つ、お前に話があるんだが。」
面倒だが俺は隊長の呼びかけに答える。
「なんです?改まって、そんなキャラではないでしょう?」
「ああ、実はな、この作戦が終わったらお前を「遠回りですね。俺がどういう処分を受けるかってことでしょう?」「ッ」
話のペースを取られ、ハートブレイクが戸惑った。俺はきちんと覚悟を決めたということを話す。
「ザイの断片を取り込んだんです、モルモットとして今、この任務が研究機関へ輸送するためのものだったとしてもおかしくない。でもこれは俺が決めたことです。あなたが気を回す問題じゃない。ただあなたは俺に指示をください。俺は俺の空を飛ぶと決めましたから。そのために姿が変わろうともありのままの自分をさらけ出していくだけです。」
「そうか、、、、、そうだな、お前はそういう人間だったな。ああ、気を回して損したよ。ポーター。お前が門前払いを払うような奴だったとはな、知ってるぞ、こないだメリー人形に対して」
「それ以上言ったら殺す、今すぐ殺す。」
「あいあい」
軽口をたたこうとする彼に対して少しばかり安堵を覚えた。
確かに俺がこの隊にいたいとも思う、だが賽は投げられたのだ、この隊に居付けただけでも幸せだったのだ。
飛行時間をかみしめるように体に染みつけた。
やがて台湾が見えてくる、計画ではいったん台湾の基地で給油したのち総攻撃を開始するはずだ、目標は台湾北部を奪取すること、そして人体実験の結果どこまで人間はザイに近づけるか、つまり俺がどこまでザイに近づけるかと言うことを調査することだ。
台湾には二機特殊な機体を用意してある、何でもF-4に特別なチューンを施した高機動の化け物らしい。
システムオールグリーン、機体をシャットダウン。俺はコックピットから降りる。
一行は台湾の台南基地に着陸し補給を受けていた。
俺はそのチューンされたF-4を待っていた。なにせ60年前の旧式の機体をチューンしてまで戦おうというのだ。面白いじゃないか。その勝負乗った。と、勝手に盛り上がっているととある隊員が近づいてきた。
「ひょっとして、アンタ、あの実験の実験体か?」
「ああ、そうだ」
聞いてきた隊員は身じろぎし、まるではれ物に触れるがごとく、それでいて慎重に質問してきた。
「なあ、本当にあいつらの破片を体に取り込んで、、本当に大丈夫なのか?」
俺はそっぽを向いて俯く。ああ、面倒くさい、そんなの平気じゃないに決まってるだろ。
大丈夫なわけねえよと言うわけにもいかず、ああそんなところだな、と誤魔化す。
隊員たちが群がりそいつらはじろじろと俺の身体を見てくる。まるで動物園のパンダだな。まあ、化け物になっちまったら途端に逃げていくだろうよ、そう、あのスラムの路地裏でもあった出来事だ。俺は化け物、今更本当に化け物になったとしてもあまり変わらない。自由に吹き回しやがて朽ち果てる風だ。
「あ、あのすいません」「?」
顔を上げると一人の若い整備士らしき青年がスマホを差し出してきた。
「よかったら友達になりませんか?おれ..いや、僕あなたが大丈夫でいられるように応援したいんで、つまらないことでも駆け付けます!よろしくお願いします!」
なんだラインのフレンド申請か、なかなか度胸があるというか厚顔無恥と言うか、俺はその友達申請を許可する。
「おう、ハンガー野郎。よろしくな。化け物になっちまったら一番に襲いに来るからよろしくな。お前の童貞は俺が奪ってやるよ。」
からかい目的で鼻を鳴らし脅かす。
それにつられて取り巻きがおい、よかったな!その年で童貞卒業だぜ?相手が男だけどな!とかうっわー柴君ホモだったのかぁ、これは知り合いに広めないといけないなぁ、とか言い出し始める。
「おいおい、やった俺も俺だがそうやって言ってやるな、お前、柴っていう名前なんだな。ありがとうよ、俺の心配してくれて。」
「いえ、僕は自分のしたいと思ったことを頭で考える前にしてしまっただけですよ。」
不意に通信が入りF-4の慣らしをしたいから来てくれ、と言う通信が入る。
「柴、悪いがこの続きは今度だ。五番ハンガーにいってくる。」
「はい、パイロットさんもどうかご無事で!」
そういえばあいつに名前教えてなかったな、と思いながら五番ハンガーへと走った。
最初にそのファントムを目にしたとき最初に思ったのは可変機にするとはずいぶん思い切った改造だ、と言うことだった
「これがF-4?ずいぶん手を加えられているんだな。」「ええ、可変型の高機動機ですから」
通常、可変するといえば聞こえがいいがバランスが大きく崩れる、と言うことだ。例えるならサッカーボールの上でさらにサッカーボールをリフティングするようなものだ、よろけた姿勢を直すだけで精一杯なのにそのうえで戦闘機動を取れとはずいぶん無茶を言う。
「これはどこまで可変するんだ?と言うか可変なしでもっといい機体はなかったのか?」
「すいません、F-18ライノが一機あったんですが現在ミサイルの制御部分を直すので精いっぱいでして、その上台湾のザイが通常の航空機では不可能な機動を取るとの報告が上がっているんです。ですからこの高機動機に慣れてもらった方がいいかと。」
「通常の航空機では不可能な機動を取る?」
「ええ、話によるとティルトローターのようにその場でホバリングしたり、追い詰めたと思ったらコブラ(飛行機全体を垂直に立てる事)をした後、そのまま後ろへ倒れて逆方向に進みだすなどの変態機動を取るんです。これからこういった”異常種”が出てくるとも限りませんしそれであればトップクラスの高機動な機体をと言うことで研究者たちが魔改造していったF-4を使おうかと。」
「なるほど、仕様はどうなっているんだ?」
「ほとんどF-4と仕様は変わらないですが、基本的には操縦桿にニューラルネットワーク式の操縦機能を付けておきました。翼はそこで可変できます。」
「ニューラル、、、、、、、確か自分の体の一部になるってことか。便器につけたら自分のクソを食ってる感覚になるあれか」
「なんです、その発想、俺が実験体になったら絶対やられたくないですねです。まあ、その発想であってます。」
「前傾翼、後退型デルタ翼、後退翼、たいてい出来ますよ。」
「翼が変形したときのバランスはどうやって取ってるんだ?」
「主にを重りの液体をパーツに入れるスペースを作ってバランスをとる方式ですね。この構造だと被弾即炎上または爆発しますけど、そもそも当たらなければどうでもいいの発想なんで当たらないように気を付けてください。」
俺はそんな実験機を作るひまがあるのか、と突っ込みたくなった。しかしおそらく研究者たちのザイにかこつけたやりたい放題研究したいという気持ちとザイになり果てる研究に反対した勢力の妨害工作が合わさった結果なのであろう。何も言わないことにした。最悪飛んでくれればいい。通常のF-4 のウィングの位置なら何とか戦えるはずだから。
「それではシミュレーターの実験にうつります。」
「わかった。それじゃあ慣らしと行きますか。」
俺はマニュアル通りシミュレーターのテスト手順の通りに実行、滑走路へとタキシングする。
「ユーハブコントロール。」
「OK、アイハブコントロール、ハートブレイク02、クリアード・フォー・テイクオフ!」
瞬間シュミュレーター内のGが10GというとんでもないGを示す。
ファントムは驚くほど短距離で高速に達し滑走路の先の樹木に激突。シミュレーターが停止した。
「は?」
「ああ、やっぱりですか。」
「いや、やっぱり、じゃないだろ!?どういうことだ?普通にスロットル開いたらあんな加速しないだろ?え?マジで今の実践でもああなるのか?」
「ええ、まずはニューラル操縦かんに慣れてもらう必要がありますね、今のはかなり大雑把にいじってる感じでしたので。ニューラル操縦かんなら細かいエンジンの調整ができますから。」
恐るべし、ニューラルネットワーク。あれを扱うのか?俺が、できるのか?
「あ、これから24時間食事とトイレ以外はシミュレーターをいじってくださいね。作戦決行までにあと二日しかないので。」
..........マジか。
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変異
用語解説
ロール(機体を機首と噴射口を軸に回転させること)
ヨー (機体を傾けずに左右に向きを変える動き、機体を傾ける行動と一緒に行うことが多い)
ピッチ(操縦かんで言う上や下に倒すことで機首を上下させること)
いよいよ、台湾奪還作戦の日。
「よし、みんな大丈夫だろうな?特にポーター。あのじゃじゃ馬の制御はついたか?」
「大丈夫です、一応。前日たっぷり寝だめしたので。」
正直に言えばファントムはもう見たくないほどの地獄をもってコントロールできるようになった。
翼の形、迎え角(翼の角度)フラップ、すべてをコントロールしたうえで操縦桿と各種スイッチを押すことは常人には無理な話だった。それを無理やり頭にインプットしたのだから俺の努力は押して図るべしだ。、、、自分で言うのもなんだが。
「これより作戦行動を開始する。時計合わせ!.........今!」
作戦が始まった。人類の人類によるアニマを伴わない切り口の反逆が始まるのだ。そう思うと俺は自分が最初に宇宙に出たガガーリンか月に行ったニール・アームストロングのような感覚に陥った。
戦闘機たちを起こし、飛び立って台北上空。
「いよいよ上空だな。ポーター、ココからは戦闘機動だ、俺たちも援護するひまはねえ。」
「わかってます。一つ、お願いが。」
「なんだ。」
「もし俺が死んでも、俺の事を忘れないでください。」
「バッキャロイ、死ぬのは年寄りからって決まってるんだ。俺より早く死んだらレンジャー訓練五回だ、死んでもたたき起こしてやる!」
「.......ハハッ、やっぱりそう来ますか。だからこういう湿っぽいのは嫌いなんだ。」
「そうか、じゃあ行くぞ!」
「ダイハード、エンゲージ!」
「各機、戦闘態勢に着け!」
各機が戦闘機動を行う中、俺は翼の可変を行う。まずは機動力の高い前進翼にする。
上からザイが振り落ちるように攻撃を仕掛けてくる、ほどほどに上昇してスピードを落としながら左右に振って機関銃を避ける、ザイが下に降りたのを見て、宙返り(一回転)して急降下、後ろに回り込んで1・2機落とす。そこで3機が急減速を行ってくる、続けて上昇、普通ならここで異常な加速力でザイが追ってくるがこちらも化け物マシン、機関銃の射程外を維持しながら上昇する。ロールしながらピッチを起こして回転しながら渦巻きを描きつつ目標を観察する。目標の地上3メートルあたりが細くて倒しやすそうだ。そう思いながら通信に耳を傾ける。
「各機、聞こえるか?とりあえずミサイル機構をつぶしてくれ!、一番射程が長い武器をつぶすんだ!」
ザイの建造物の合間を縫って左に曲がるように左にロールしてピッチを上げて上を見上げノーロックでミサイルをぶつける位置に機体を持っていく。ミサイルと爆弾を落とし、半回転してその遠心力で爆弾を放り投げる。右側に傾けた機体を戻しつつピッチを上げて高度を取る。と、不意に操縦かんを倒し、その一撃を避ける、後ろを見ると中央の建物からビームを打ちまくっている施設が見えた。
それと同時に高度を上げたからか、ミサイルが次々に打ちあがってくる。この場合上下してミサイルを蛇行させ速度を落とさせて揚力を失わせるのが普通だが、ザイのミサイルはそんなことでは落ちないだろう。安定した矩形翼に変形し、必死に左右に振ってまず様子を見る。よくついてくるミサイルとあまりついてこないミサイルを見分け地上へと真っ逆さまに落ちながらミサイル同士がぶつかるようにできるだけ大きく蛇行しながらフルスロットルをかける。
「上がってくれよ、、、」「グッ、、、ギギギギ、、」
きしむような音とともに渾身の力で操縦桿を起こし、眼前に広がる青一色の壁面から少しだけ薄い青色の空へと浮き上がり、Gを耐えながら安定させる。それでもよく食いついてくるミサイルはまだ追いすがる。
あ500メートル、あと200メートル、20メートル、起爆しないギリギリまで近づいた瞬間爆弾を切り離しミサイルどもに水の大瀑布をプレゼントする。爆弾とミサイルが誘爆して爆風を機体を振るわすが、事前に矩形翼にしておいたおかげか難なくバランスを取り戻す。海上からスロットルを上げ上昇し、インメルマンターン(機体が背面飛行するまでピッチを上げてUターンする方式)で目標側へと戻る。
「もってけ、全部だ!」
中央の建物に全段ロックオンし、目標に向かったことを確認して右側のミサイル施設をバルカンで徹底的に破壊する。
「ハートブレイク、シグナルロスト!」
「なんだって!?」
あの人が、死んだ!?いや、いまはこの基地を落とすことが最善だ。そうすればまだ、助けに行ける。
上からバルカンで最後のミサイルを撃破して一息つく、どうやら中央の建物も機能停止したようだ。
「聞こえるか?ハートブレイク02!OKだ、上々だよ、ジャパニーズボーイ!これなら進撃できる!地上部隊!前進せよ!この基地を焼き尽くせェ!」
おおおおおおおという歓声、いや鬨声とともに火炎放射戦車が基地に突っ込んでいく。
俺はハートブレイクのことが気ががりでしょうがなかった。
その時。
「中国方向から不明機一機!」
「え?」
見れば水色の機体が一機、近づいてきている。F-18のような機体だ。その機体にマウントされているのは―――――――――ヘルファイヤーミサイル!?
「HQマズイ!あいつヘルファイヤーミサイル(対戦車ミサイル)を積んでいる!まずいぞ!」
「わかってる!だがあいつを止められるのはお前だけだ!ハートブレイク小隊は全機撃墜された!」
ドクン、自分の心臓が止まったかと思えた。全滅?あいつらが?二度と会えない?そんな、、、そんな、、、、、
「おい、英雄!どうにかしてくれ!おい!?聞いてるのか!」
自分の手が震えて止まらない。何も感じない。それならばいっそ、英雄としてここで死んでもいい。そうだ、英雄なんてくそくらえだ。自分は、英雄になんてなりたくない。ただ自由でいたいんだ。
そのどうしようもない怒り、嘆き、どうしようもなさを、、、、、、、、、水色の機体にぶつける。
「落ちろおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
撃った破片が自分の機体に当たるのを無視してひたすらにガトリングをたたきつける、。小規模な爆発が連続して起きる、最後に大きな爆発が起こった。
その時、キャノピーが割れて青い破片が飛んでくるのがはっきりと見えた。その破片はすぐに見えなくなり、代わりに赤色の視界を手に入れる。キャノピーを貫通して破片が自分の頭に突き刺さったのだ。
記憶がシャットダウンして、遠くがよく見えるようになったかと思った矢先閃光とともに意識を手放した。
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ライノと明日
閃光とともに爆風が俺を軽々と放り投げた。よろけながらなんとか一歩、一歩、立ち上がる。香港タワーの最上階、二人の影がこちら側に伸びていた、一人は隊長、オードリクセン、もう一人は、早期に中国に香港が迎合するのを防ごうとした民主運動を指揮した隊長、両方とも俺を育てくれたといってもいい親だ。
「お前はやりすぎたんだ。お前は、、、、お前は、、、」
銃口を振るわせてなおその銃口をオードリクセンが突き付ける
「撃てよ、俺たちは懸命に戦った。未来のために戦った、その結果なら本望さ。撃たないのは男の約束に反する。」
「撃てよ」
「撃てよ」
「撃てよ!!!!お前の信念を貫け!!!!!!」
パン、とその結末には軽すぎる音とともに彼は倒れ落ちた。
ただ、俺はその結末を見届けることしかできなかった。
いや、ここからが隊長、オードリクセンの信念の原点とも言ってもいいかもしれない。
深い黒い水ともとれない空虚な空間に沈んでいく。深く、深く、自分すら見えないほどに。
突如自分の体が光りだす。
今まで指一つ動けなかった自分が動けるようになっていることに俺は驚く。
?今何か遠くで光ったような気がした。目を凝らす、見間違いだろうか?目を凝らして何度も何度も確かめて気づく。遠くから水色の光が近づいてくる。青髪の少女が近づいてくるのだ。
今まで見えなかったのにはっきりと彼女の唇の動きまでまで見えるようになってきた。
何か複雑な表情をしていた。悲しいような、うれしそうな笑った表情を張り付けているようにも見える。
彼女がはっと何かに気づいたのだろうか。つきものが落ちたような表情をした。猛烈な勢いで近づいてくる!彼女はもがいている。だがそれにあらがえずこちらへと突撃してくる。慌てて俺も逃げよう下へ潜った。だが彼女は下へ下へ、潜るような軌道を取り、こちらへと近づく、まるで衝突したがっていると取れる軌道で。何者かの力がそうさせているのではないか。なにか、とんでもないことが起きるのではないか。そんなことを思いながら逃げていたがもう逃げられない。俺は背中に
「ふはっ!」
汗がダラダラと流れ落ち、はは、ワーストな夢も見るもんだね。と言ってみる。
パチリ、え?瞳を何回も瞬きして今自分が何をしたか、たどる。
自分らしくない声に自分らしくない思考。それに――――――――
冷静に考えれば起き上がったときに自分の下半身は見えるのだがその下半身もなぜか頼りない。まるであたしが女子高校生でないとおかしいような足つき。
あまりに奇想天外な話だが、そうとしか思えない。だったら―――――――――
ベットから飛び出し台湾で宛てられた部屋の鏡を見る。
そこにはとろんとした眼つきで幼さの残る、髪がサファイヤブルーに点滅する女の子が立っていたのだった。
「あ、、、、、あ?どういうことだ?俺は台北であいつらの基地を徹底的に破壊して、そのあと、、、、、サファイヤブルーの戦闘機と戦闘に入ったはずだ。それで破片をもろに食らって気絶した。なんでだ?なんで制御がなかったのに墜落してない?なんで俺がこんな姿になっているんだ?落ち着け、もう一度記憶を呼び起こしてみよう。あたしは任務に就いていたんだ。だからあの戦車を撃破しようとして、慧たちにやられた、ううん、拒絶された気持ちのやり、え?いや、あたしはあの戦闘機を撃破しようとして、いや俺はザイの基地を守ろう、、、、と?
自分が自分でない、もしくは何かが間違った感覚。あの破片が何か脳の異常とか体内のザイ粒子の変化をもたらしたのか?ならば今すべきことは。
「ドクターが来るまでベットの中でぐだぐだしていよう。」と、いう何とも拍子抜けな結論であった。
アタシもいつも飛び起きて基地が起きるのをゆっくり観察する派だけどたまには、ほんのたまにはベッドの中でぬくぬくするのは嫌いじゃないしねと付け足す。
..........だからあたしって誰だよ?
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明日はどっちだ
よく寝た。あたしにしては遅寝になっちゃったかな?
、、、、、また今日が始まっちゃったんだよね。あの部屋はもう嫌だよ。
あれ?今どうなってるんだっけ?今基地にいるよね?でもあたしはもう自由になって、、、、
あ。俺は何を言っていたんだ。今、誰かに乗っ取られていたな。
さて、起き上がって、って起き上がれない!?
懐を見てみれば鎖でがんじがらめにされていた。
「起きたか、化け物。」
「たた、隊長!?」
「お前のような奴に隊長呼ばわりされるような顔は持ってないんだがな。」
嘘だろ......?起きたらこの仕打ちはないだろう。多分間違いなく俺の姿が変わって身元不明の女の子になってるのが原因だろう。どうする?さすがに人権は尊重されるだろう、いや、この光る髪を見ればアニマだと間違いなく思われる。そうすれば敵国のアニマ扱いされることは想像に難くない。オードリクセン隊長の拷問は見たことがないが拷問された捕虜の声は聞いたことがある。それはそれはとんでもない声を上げていた。どうする!?どうすれば俺だと信じてもらえるッ!?
「話を聞いているのかッ!?」
「ヒィィィッ!?」
どうやら考えているうちに何か話が進んでいたようだ。なにか、何か答えなければ。
「な、何の話をしていたんです?」
「黙れや!このスパイ!いっぺん往生するか?アアッ!?」
......あの鬼瓦のような猛烈な怒顔でにどやされることだけは確かだ。ここはどうにかして何の話をしていたのか確かめなければ。
「ええっ!?そんなこと言われても困りますよ!?」
「何が困るってんだ。」
低い声でうなるような声をひりだす。ヤバい、この受け答えはまずかったか?
「いやー本日はお日柄もよく、集まってくださった皆様には大変お世話になっております。」
「何の話だ。」
「あっ!あそこにザイの大群が!」
「なんだって!?」
よし!今のうちに逃げてしまえ!
しかし俺は自分ががんじがらめに束縛されていることを思い出す。何とかもがいてほどこうとするが悲しいかな、金属がこすれるばかりで一向にほどける気配がしない。
「仮にもお前軍人だろ?そんな方法で逃げられると思っているのかよ。」
「い”や”あ”あ”あああ!!!人体実験はいやだー!!!シニタクナアアアアイ!人体実.....へ?
いま、あたしの事、軍人って.....?
「何の話をしているんだ明日架橋。」
えっ!?隊長は俺の事が誰だかわかっているのか!?それじゃ俺の今までの醜態何だったんだ。なんかちょっと恥ずかしくなってきたぞ。
「一応話を最初から聞いてなかったようだから言うが、食事はいるかと聞いただけだぞ?」
「じゃあなんでこんな椅子に縛り付けるような真似を?」
「そこなんだが......実はお前がアメリカ軍が失ったアニマ、ライノにそっくりなんだ。」「俺が?」「そうだ。」
「えっと、、、つまりあたし、引き渡されちゃう感じですか?」「そういうことになるな。」
「やめてくれ!!アメリカだろ!?エイリアンを人体実験しちゃうところだろ!?死にたくないからな?あたし童貞のままとかいやだからな!?」「お前童貞だったのか。しかも一人称がアタシ、になってるからな。どう見たってその姿に引っ張られてるだろ。とにかく俺たちはこの事態を良しとしない。戦友であり自分から任務にその身をささげたお前をみすみすアメリカに引き渡すわけにはいかないさ。脱出の準備ができてる。向かう先は日本、独飛だ、そこに俺の日本の友人がいるんだ。そいつがお前を開発したことにする。そうしなきゃどこに向かってもお前がつかまる予想しか立てられなかった。みんなはお前が誰か知らない。俺の独断でやろうとしてるんだ。予定は明日。その時計画は知らせる。」
「ありがとうございます。隊長。あと、」
「なんだ?」
「なんで俺が明日だとわかったですか?」
「...............お前の寝言はいつもうるさい上に根に持つことが小さいんだよ。ちょっと脅かした事とかちょっと本を借りてただけで怒ることじゃないだろ?」
「うっさいっし!あたしの思い出の本なんだよ!?ロイヤリティあふれるものなんだけどな~?あたしが怒らないと思ったら大間違いなんだよ!」
「引っ張られてる引っ張られてる。」
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明日は日本だ
F-16 ファイティングファルコン ?????
夜がふけてきた。手筈通りなら審問官が来てそのあとアニマ研究の先進国に”輸送”(やっぱりモノ扱いされてる)して研究を進めるはずだ。緊張することはない。ただ公式に物事が進むだけでいい。それだけでいつの間にか安全が確保されるはずだ。香港での路上野宿よりかなり平和だね。うーんでも、あたしがやったのは慧とグリペンちゃんとの”なんちゃって野宿”だったからあたしの記憶は当てにならないかな。
今日昨日でなんとなく出来たことがある。あたしと俺の意識自体は完全に自分の意図で分離することはできないけど記憶はどっちの記憶なのかわかるようになってきた。ありがたいことにとりあえず混乱することもなくなってきた。さて、あたしの方の記憶を思い出そう。、、、、、、、、、確か最初に記憶していたことはどこかの培養器の中の事だ。そこで、、、、かなり、、、、、オウェッ!あの事を思い出すのはやめよう。昨日や過去の事は振り返らないのが一番!えーっと、確か慧とグリペンあたりが一番鮮明に思い出せるな。俺は、慧に恋してたんだろうか?そこがわからない。そりゃサイドランスするのは駄目だけど。この感情は何だったんだろう。俺が混じった今でもわからないよ。うーんやっぱり人間は不思議だ。でもちょっと退屈はしないってかな。あの子たちは元気にしてるかなぁ?慧は俺から見たら会ったことはねえけど真面目そうなやつだから抱え込んでるだろうな。うん、やっぱり会いに行こう、ザイにいた頃も面白かったけど”俺”からしたらただの同調圧力だ。あたしがどんなに焦がれてもこの感情だけは譲れない。譲ってくれなかった。さて、どうしたものか。審問官はまだなのだろうか。俺はシーツの下から隊長に手渡された日本側の情報を見ることにした。
ファントムは、、、、、、、、、、、、、、、、いたずらっ子らしい、、、隊員の心理を掌握し、隊の治安を秘密警察のごとく、、、、、、、、これいたずらっ子の範疇超えてませんかねえ?
イーグルは、、、、、、、、ただのあほっ気の強いワンコロ。ふむふむ、、、、、俗世に放たれたらお酒が大好きな駄目なお姉さんと化しそうだな。
バイパーゼロ、、、、、、、ん?データがない?まあ、戦歴が優秀だからまともな性格してるんだろう、、かのルーデル閣下やハルトマン、ちょっと畑違いだけどシモシヘイヘもいたって健康な性格だったから。
で、、、、、問題なのがグリペンか、、、、、、、慧がいないと死んじゃう性格してるのね、、、、見方を変えれば要介護認定もらった彼女と付きそう彼氏のギャルゲーできそうな状態なのね。さて、問題なのが八代通だな。なんだか巨人が星を取る野球漫画みたいな名前しやがって。キッツい冗談に頬舌でデブときたもんだ。俺の嫌いな要素満載じゃねえか!?パイロット学校の教官を思い出すなあ、、あたし状態なら別につらいと思わないんだけど、、、、そううまくいったら人生苦労しないね、、、、うん、コンフォートで笑顔しなきゃ!張り付いてても笑顔は笑顔!あたしの専門分野だもんね!
あれ?外が騒がしくなってきた?そろそろ審問が始まりそう。さてと。
扉が開き、兵士が入ってきた。立て、と言ってるしおとなしく立つ。そのまま隣の部屋に移動させられて入口から奥の席に座らせられる。片眼鏡をしたいかにも教授でもやってそうなおばさんだ(おばあさんだと年齢が上すぎるけど失礼か。)
「さて、あなたにはいくつかの質問と証明が求められます。決して嘘をつかないように。あなたには人権はありません、どんな拷問が待っているかわかりませんからね?私はエルビスグリズリー。尋問を始めましょう。」
「まず一つ目。あなたはどこ所属のアニマですか?」
「わかりません。記憶喪失です。」
「嘘をついていますね?」
瞬間痛みが走る。電気椅子か。
「もう一度言います。あなたはどこ所属のアニマです?」
「、、、、、、、隊長に聞いてください。名前はオードリクセンです。あの人の下で指揮でうごいていることだけは確かです。それ以外は記憶がありません。どちらにしろ身内なら信頼できる情報源でしょ?」
にらむ沈黙がつらい。しかし本当の事を言っても信じてもらえそうにないもんな~このひと。
「いいでしょう。次に..............
はあ、疲れた。あのおばさん疲れる、、、、、、俺もあたしもさすがにあれは経験したことないぞ、、、、
とにかく、隊長をまとう。
そうこうしているうちに足音が近づいてきた。お、隊長だな。
しかし、ドアが開いてやってきたのは隊長ではなかった。
どす黒い、まがまがしい色をした髪の毛と細めの目をした危険な笑みと言った言葉が似合う少女がそこにはいた。
「こんにちは、ライノはん?いや、明日架橋はん?こんにちは~」
全身のザイの結晶がささやく。こいつはかかわったらいけないタイプのアニマだ。
「そんなに警戒することあらんよ?うちはA-6イントルーダー。ちょっと近くに用があったから寄っただけよ?あ、関西弁はそんなに習ってないから突っ込まんでよ?」
なんだ?攻撃機?確かに対地目標なら有効だけど、それなら「人間でいい、言いたいんですな?ライノはん?」
え?いま、思考を読まれた?こいつには何か特殊能力があるのか?
「言い忘れましたがA-6はA-6でもEA-6の方ですわ、愛称はプラウラー。電子戦機でいわゆる全部積みの実験機ですわ」
「うちはザイ側の計画を支持する派閥です。」
「何が言いたいんだ!?」
「言いたいことは簡単。こちらにつく気はありまへんか?」
「ない」
「即答ですか。」
刃が俺の首元で光った、、、、、、、パイロットの動体視力をもってしても見えない速さで刃を突き付けられても俺は揺らがない。絶対にここは譲れない。あたしが意見をねじ込む余地もない。
「そうですか。なら死んでもらってもええんですよ、、、、、、、、まあ仕方ないから今回はここまでにしておきますわ。ファイティングファルコン。行きますよ。」
「ああ、ここにはもう何も残っちゃいない。いこう。」
ドアを素早く閉められた。彼女たちのあとを追おうとドアの外を見ると忽然と彼女は姿を消していた。
何だったんだ、一体。こりゃ日本に行ったらまたひと悶着ありそうだな。だが、隊長はまだかかりそうか、いつになったら船にのれるんだ?
なんか作者がスキーにハマって3日間休むって!
アタシのこと蔑ろにしないでよ!
ん。ちゃんとその間に貯め書きするんだな?するんだな?(迫真)
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身体が変わっても
やっと隊長が来てくれた。長いよ。
アタシロンリーガール状態だったんだよ!
あ、とうとう意識と一人称が一致しなくなった。
「遅れたな、俺が来るまでいろいろあったらしいな。お疲れさん。取り合えずこれのめ、鎮静剤のさらに劇薬版だ。」
「さらっと動物扱いになりましたね。」
「アニマなんだからモノ扱いされないだけましだ。」
「それでちょっと聞きたいことがあるんだ。そのね、、、、、トイレってどうするの?」
「どうって、、、、、、座ってするしかないだろ。」
やっぱりかぁ。俺いま女の子だもんな。さっき触ったけどツルツルだったし、無いし、穴しかないし。何処がとは言わないけど。
もうちょっと胸あったほうがよかった!!
ん、なんか自分で言っててイライラしてきた。ライノからすれば酷評されてるんだから当然か。感度は良かった!あ、やばい。余計怒らせた。
とりあえず隊長の監視のもと、トイレに俺は向かう。俺は今この隊での最重要人物なので特別に隊長は女子トイレの個室の前で待ってもらい用をすます。あ、気持ちいい。いや、そんなこと言ってる場合じゃないけど、解放感と言うか、、、、、はい、変態ですね。
「トイレは済んだな?」「ええ、とりあえず残尿感はありませんでした。」
トイレの前で待っていた隊長に声をかけ、俺たちは船へ向かう車があるガレージへと向かう。
ガレージでは警察用の囚人を収容するような鉄格子入りのバスが停車していた。
背中を押されながらあたしは車に乗り込んで顔を見た覚えがない軍人たちがこちらを監視するような向きで乗り込んでバスが発車した。あたしの苦手な部類の沈黙が車内に充満しているなか、何事もなく湾港に到着した。
そのまま隊長とともに押し込まれるようにタンカー船へと押し込まれた。あたしたちが押し込まれた部屋は鉄の雰囲気を”生かした”、”湿度を保てる”部屋で二段ベッドと机がある(おまけとばかりに大量の日記帳がついている)。えーっと、、、、、あははは、これは笑うしかないね、いつも笑う事でしか解決できなくてワンパターンだけどこれは怒っても嘆いても解決しそうにない。とりあえず、隊長と一緒に待遇を掛け合ってみようかな。
「ふんぬー!92回!にぃやぁー!93回!」
拝啓、お父様、お母さま。(顔も知らんけど。)あたしはいまパイロットをやっていて実験に協力したらなぜか女の子になってしまい、わけあって船で日本へと出荷されています。
「ねこぉぉぉぉ!100ッ回!」
え?さっきから何をやっているのかって?懸垂してるの。
この体になってから、筋肉や体重の付き方が変わってしまったので格闘戦が全くできなくなっちゃったんだよねぇ。あたしはかまわないんだけどなんか俺としては落ち着かない。
とにかく戦いの基本は体から。香港にいた頃のオードリクセンじゃない方の隊長の座右の銘だった。
何度も何度も教えられた。その習慣は今の体になっても身についているよ。隊長。
フィー。疲れた疲れた。親の趣味に付き合うのも楽じゃない。
とにかく疲れたので短編になります。
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黒船来航
「ふっ!」「ほっ!」「ッ!」
湿度のある暗い部屋で一人、明日は踊る。
四連ジャブ、二連ストレート、キック、回し蹴り。サンドバックに対して裏拳、反動を作った掴み膝蹴り。きれいな白い肌に汗とともに青い髪が暗闇で光り、振り回される。そう長くはないが邪魔をしないようにさらに割りばしでまとめられた髪はどこか和の雰囲気をもたらしていた。振り回されるたびに汗は幻想的なプリズムの役目を果たしプラネタリウムのような風景を貨物船の中に作り出し、見るものの心をつかむ。
「おーい、明日。もうご飯ができたとよ。」
「はーい。」
あたしはほぼいらないけれどブラジャー、衣服・ドックタグを腕でかき集め、急いで着用してドアを開ける、通路の床を足で轟音を響かせながら駆け、突き当りの階段も駆け上がる。
「来たよー、今日のご飯はなんなのかな?」
「聞いて驚くなよ、、、、、、肉なしチンジャオロースだ。」
「また!?ココの人たち疑問を抱かないのかな?うーん、まあ、いただけるものはいただこうかな…….」
フォークで一つ一つ肉を取っていくと突然オードリクセン隊長は笑い出した。
「何がおかしいのかな?どうしたんだよ?」
「いや、まるで昔見たアニメそっくりだと思ったのさ。カウボーイビバップ。いつか日本に行ってみたいと思ったからこの際だから俺もお前についていく言い訳を作ったんだ。あーそうだ、なんで日本に行きたかったのか思い出した思い出した。いやーすっきりしたよ。」
と言うか必要に追われてきたんじゃないんだ。アニメのためって、、、、、、、、ちょっと軽率過ぎない?あ、そうだ。あたしの部隊は全滅したって言われてたけどどうも無事に脱出してたみたい。心配して損した。ダイハードの容態だけちょっと難ありらしいんだけど、今日中に日本にたどり着けるはずだ。
突如船が揺れる。
「え?今何か揺れなかった?」
「ああ、何か揺れたな。ちょっと上に確認を取ってくる。」
しばらくしたのち、艦内が大騒ぎしだした、しかしあたしは重要参考人みたいなものなのでうろつくわけにもいかない(と言うか、銃持った付き添いがずっとそばにいるしな。)、そうこうしているうちに隊長が帰ってくる。
「その、、、なんだ、、、、なんでも飛行機が突っ込んできたらしい、幸い、船には当たらなかったし水没したらしいがいま、水没した機体を引き上げてる。しかも聞いてくれ!アニマらしいぞ!」
「は?色は?」
「黒!しかもSu-25UTG!」
「名称で言われてもわからん。なんだそりゃ?」
「ロシア版廉価A-10だ!ま、今回のは練習機をさらに水上で使えるようにフロートを現地回収で付けたタイプらしい!」
「はぁ........」
そんなこと言われても訳が分からない。なんでロシアの機体が、日本にいるのだ?それもアニマ。少なくともわかるのは。
「また厄介事が増えるんだな..........」
「はーい!Su-25UTGだよー!愛称はグラーチュ!好きなものはあやとりとゲーム!嫌いなものはサッカーとアイスホッケーでーす!あははははははは!」
「なにわろてんねん」
「あははははは!どうしても緊張しちゃってねー!!」
「アホかこいつは。」
「まあそういうな、お前。どこの所属だ。」
「中国!」
「中国.............?しかし、それはおかしいじゃないか?ザイは”中国が謎の侵略を受けて”認識されたはずだ。中国が壊滅状態なのにアニマを作る余裕も予算も、ましてや最も惜しい研究時間もなかったはずだ。おまえ、なんなんだ?」
「そそそそ損なこと言われても困りますよだってそういえって記録に残ってるしそもそも私は訳が分からないんですよなんで笑って緊張が解けるんですk
.......早口すぎてわからない。とにかく聞き取れたのはこの子は所属を求められたら中国で作られたと言えと条件付けされていること。そして全く飛んでくるまでの間すら記憶がないこと。そして。
「あ、でも一つ覚えてることがあるよーーー!!!」
「なんだよ。」
「革命は永遠に。勝利とはつまり戦い続ける事。この身潰えどわが革命終わらず。」
この言葉は俺の上司、香港の革命隊長のイノセンスと呼ばれた男の掲げたものだ。つまり俺たちは彼にまたかかわることになるのか?この時、俺の記憶には東京の朝は奇妙なまでに暑いことが印象に残っていた。
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小松道中(と言う名の青森ディスり)
(ひょっとしたら0時までにまた一本出せるかも)
グラーチュ Su-25UTG 練習機、中国で秘密裏に量産中だった(らしい)。
量より質でとりあえず片っ端からアニマにしてしまえ理論で安いやつから開発された、、、、、らしい。
(本人供述のため真偽不明)
さて、いろいろと面倒な事になったがドクヒに行かなければ始まらない。ところで.......
「ドクヒってなんだ?」
「あー。確かにまだ説明してなかったな。独飛。独立混成飛行実験隊だ。とりあえず実験しながらアニマたちを集中管理することで兵力を薄くまんべんなくの”盾”ではなくいわゆる”槍”になるわけだ。」
「なるほど、守ったら負ける。攻めろ!って精神なんだな。」
「で、なぜ独飛に行けばお前を作ったことにできるか。八代通、デブの天才だ。」
「言い方がひどいな。まあ”あたし”もそういってたな、タヌキさんだの。ま、あいつは覚えやすいから言ってたんだろうが。」
「何の話だ?まあいい、彼によくしてやれ。あいつは悪いやつだが悪人ではない。」
しかも、と続ける。
「強く当たるとこっちが弾けるようなやり手だしな。」
「うーん悪質な気がしてきた。」
さて、申し訳ないのだが、俺が勘違いしていた、そして重大な事実がある。小松は石川県、そう、日本海側なのだ。ここにタンカーで日本海側を通ってくると確実に死ぬのでどうしても太平洋側を通らなければならない。
つまり、陸路で自衛隊の護衛を受けながらトラックに揺られることになるのだ。
「どなどなどーなーどーなー♪」
「うるさいぞ、化け物。」
「へーい」
重苦しい雰囲気を醸し出すなかとりあえず何か雰囲気をどうにかしようとしてみたところ見事に大失敗した。
なんだか日本ではあまりアニマは好かれていないみたいだね。まあ、アメリカ軍でのあたしが社交性が良すぎたのと日本人の単一文化だからってのもあるんだろうね。アメリカは黒人も白人もいるから多少の事では騒ぎを起こせない。と言うかアメリカは差別との付き合いが長いから異物をおいそれと騒ぎ立てない資質があるんだと思う、、、、、、、ここら辺はあたしじゃなく俺の知識だから自信が少しない。
小松につく頃にはすっかりあたりが暗くなってきていた。
「おー娯楽がジャスコだけの三沢空港とは違うな。」
「なに?そのジャスコって。」
「あーイオンモールだ。ゲームセンターと洋服店、スーパーがついてる。」
「なんだか三沢ってところが何にもないって感じに聞こえるんだけど?」
「だいたいそれであってる。あとタケダスポーツがあるだけだ。」
「うーん、ゲームもインターネットもない。ものすごく健康優良児が育ちそうだね?」
「ああ、実際あそこの連中は何を楽しみに生きてるんだろうな。テレビ以外なくても生きていけるだろ、あそこのやつら。(本当にテレビとジャスコとスポーツ以外青森中心にいかないとない。なにせ星野リゾートが”閑静”な住宅街に建てられるくらい娯楽が三沢周辺はない。唯一作者が楽しみにしてたラーメン屋が危うく人手不足でつぶれるところだった。)某飛んで埼玉が顔負けするレベルで何もないぞ。海あっても引き換えに娯楽がない。そして青い森鉄道程度しか移動手段がない。かなり観光客に優しくない。特に免許ないやつ。」
小松の基地の中に入ると騒がしく、ペールピンクと緑色の二機体が離陸していくのが見えた。スクランブルで取り込み中のようだ。こりゃしばらく受け付けてもらえそうにないね。
ところであの子はどうしたんだろう?
目が痛いよ――――!!(という言い訳をして投稿ペースを遅らせる原因にする。)
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グラーチュ事件の顛末と仕組まれた罠
編集者としてこの小説を読んだが大体推測が立った。
、この事件は仕組まれたものではないのか、と言うことだよ。
そして君が性転換の独白にさらに加えて面白くできそうなのは仕組まれたものなら誰が裏で操っているかを書いていくのが面白くなるコツと言うわけだよ。ワトソン君。
いつの時代も人間は味方同士で争いあう生き物なのさ。
それをわかっていればオーディエンスは大いに喜ぶ。
ところで、、、持ってきてくれた小説の量ががいつもより多いな。いったい何を仕組んだのか教えてくれないかい?
とりあえずファントムとグリペンが帰ってくるまで八代通も対応することができないと言われてしまったので、第6格納庫、と呼ばれるところに詰められるらしい。アニマだからね。モノ扱いは仕方ない。
さて、兵隊さんたちはピリピリしていて取り付く島もないので一人グラーチュの事を振り返ることにしよう。
あの後グラーチェは自衛隊に確保されることになった。しかし、不明な機体として一旦調べを受ける事となった。しかし、出てくるのは謎のアメリカの企業がそこで横やりを入れたらしい。クロノスオブザーバーとか言ういかにも怪しい企業からだ、
ただ取り上げたりすることはなく解析したデータをよこせ、そして解剖系の拷問やら実験やらをするなとのこと。いかにも怪しい企業が出てきたが、、、、、、、、、、干渉してきたのがデータだけと言うところが余計に不気味だ。
それでグラーチェに話を戻すと別段使う気もないらしいし、勝手に発進されても困るので府中にアニマを立川にドーターを置いておくらしい。(アニマは人形のほう、ドーターは飛行機の方、、、、覚えてると思うけど一応)
グラーチェ本体の話に話を移すと刻印IDは確かに中国だったらしい。(まあ、正規軍が使ってたならそれでいいけどあの革命隊長が絡んでるとなると正直、、、、信じられないね?)なんでも中国からの噂程度の情報だと早期にザイ対抗しようとしてノウハウを積むための実験機だったらしい。実際量産されてカンボジアでの中国産グラーチェが数十機レベルで目撃されている(これもらしい情報)。能力は基本的に攻撃機としてのそれ。戦闘機動を取っても6G程度しか取れないと計算できたそうだ。ただ、謎に各所が管状の肉抜きがされており何か対ザイ用の取り付ける部品をいくつか欠損しているのではないかとの声が研究者たちの中で上がってるみたい。
そして一番大事な伝言として肝心な記憶について一つ本人は思い出したことがあり、隊長から一つ、死んだ時には伝えてほしいことを預かっていたのだ。
「明日よ、もしも手がかりがないならアメリカへ行け。」と。
何故アメリカなのか?なにがあるのか?
しかし人類が人類でありながら戦う術は自分の中にある。まだまだ戦場を離れるわけにはいかないが、もし本当に行き詰まった時。思い出さなくてはいけない。それまではそっと忘れぬように心の底に留めておくことにしてある。
それはそれとして、もう一時間も経っていたらしく流石に来客を待たせるような真似はしたくなかったようで手にイボのある、おそらく整備士であろう人がやって来ていた。
「ほう、君が明日架橋君かな?」
やや空白があって緊張しながら答える
「ええ、俺が明日です。まあ、こんな姿じゃ説得力ないと思いますけどね。」
「俺は船戸。みんなからはフナさんと呼ばれている。」
「へえ、じゃあ、よろしくお願いします。フナさんは整備士なんですよね?俺はそういう人とも付き合ってましたからひょっとして俺に配慮して優しくしてませんか?そういうのあんまり苦手なんで、もしそうじゃなきゃいいですけど、、、、、、俺は荒い言葉の方が好きなんで。」
「ふむ、まあ、、、、、、、、そうだな、、、、俺も言葉遣いが荒れてる方だしぼろが出るといけねえ。堅苦しいのは抜きにしようや。」
「そうしてもらえると助かります。俺も言えば何ですが、上官とは殴り合いで優劣を決めるような荒れた性格してるので。」
「そうか、、、、そんなんにやんちゃしてるのか、男の子だねえ。」
頭を掻いて船戸は笑う。
「まあ、あんたがライノそっくりになったってのもあらかじめ聞いてなきゃウチの馬鹿どもがナンパするとも限らないからなぁ、そういう雰囲気の方が社内恋愛じゃないがいざこざがなくて助かるさ。まあ、俺は直接会ったことがないが慧とグリペンちゃんは相当混乱するだろうからな,,,,,,,ま、仲良くできるように何とかしてやるさ。それはそれとして俺が宿舎の方に案内しよう。アンタ、記憶があるとか言ってたがここに来たことがないだろう?」
「そうですね、ほんと、助かりますよ、理解が早い人がいて。」
しばらく、小松の基地を回った後、とある通路を通る。
ある隊員とドンと肩がぶつかった、、、、、、こいつあえてぶつけてきたな?
「おい、なんのマネだ?」
「あ?気のせいじゃないですかねえ~?俺たちは天下のアニマ様にはちゃーんと優しくしてますよ?それとも何か?俺たちに何か非があると?」
「テメエ?今、俺に喧嘩を売ったな。いいだろう。やってやるよ。来いよ、自分の力も出せないようなガキが、イキるんじゃねえ。お前のこぶしはただブンブン振ってるだけの一生マザコンの子供だよ、ベイビー。ママのおっぱいでもしゃぶってな。」
「何を、、、、、、、、、」
「おいおい、、、、、やめるんだ、お前ら!」
船戸の制止を無視して、ジャブで相手の姿勢を崩す。イキったガキはこれを避けることくらい容易いと勘違いして避ける。思いっきり足を踏みつけて下に注意を集めたあと、手刀で首を軽く打ち、体全体をしびれさせる。そのまま寄りかかって倒れさせ素早く腕ひしぎの姿勢にもっていく。
「ギャアアアアアアアアア!!!!い”ったたあたあたたたったあああ!!!!!!!イッタアアアアアア!!」
「どうだ、俺の腕ひしぎは?そしてお前にはどうでもいいかもしれないが俺はまだ、人間の意識がある。勘違いするな。俺が死んだら、人類が人類自身でザイに立ち向かうすべをまた失うんだからな。覚えてろ。そして隊の全員に俺の強さを広めろ。わかったな!?邪魔するんじゃねえぞ!」
「わかった!わかったから!」
素早く組み伏せた状態から立ち上がり素早く、あのガキは逃げて行った。
「もう二度といざこざ起こすんじゃねえぞ!いいな!」
「おいおい、お前さんが最初に起こしたんだろ.........」
!)*$%
ライノ?ふーん、あたしの破片を埋め込まれちゃった彼もうまくいってるんだね。
なんだかおもしろいことになりそう。ふふ。
クリスタルに囲まれたザイの巣窟の中、彼女はいつもの笑みを浮かべた。
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八代通との邂逅
用意されたミーティングルームでコーヒーを飲んで待っていたら
船戸がちょっとあいつらが帰ってきたようだから、迎えに行ってやらんとな。ちょっと待っててくれ。
と言ってどこかへ行ってしまった。どうやらスクランブルも終わったようだ。、。
ふむ、事前にちょっと情報は手に入れてあるが心配だ。なにせ俺はそのアニマとやらに本当の意味で一回もあったことがない。本当に人間と一緒の扱いでいいのか?っていうかあたしの記憶を正直に鵜呑みにしていいのか?
そして何よりあたしの立ち位置がものすごく微妙だ。言うまでもないけど。
なんてったってアニマでもない。そして人間でもない。そしてザイと人間を混ぜるという初めての実験でこういう風に姿が変わる事故を起こした以上この実験も取りやめになる可能性が高い。そうなるとまたアニマ頼りの戦場に逆戻りだ。そうなると正直ザイに勝てる気がしない。詰みゲーと化して大混乱したのちアイアムアレジェンド状態になる。そうならないようにそもそもその実験がなかったことにしてしまえばいい。ここで開発された特殊な機体。実際その事実で臨時に結成された南アジア連合は
(ちなみにタイとインドがこの手の組織がありがちな覇権争いを起こさずにとりあえず2権力主体で結成した。いかにザイを脅威と認識しているかがわかる)
また、”初”の実験としてザイと人間を混ぜる実験を行うらしい。
緊張の時間だ。最初は幻聴として聞こえていた足音が徐々に聞こえ、近くなってくる。
扉があき、写真で見た、こわもてのデブと言うにはあまりにも威厳として、ガタイがいいと表現できるおっさんが入ってきた。
「お前が明日架橋か?」
「ええ、そうです。ミスター。俺が実験の被験者であり、ライノに”憑依されている”明日架橋です。」
「ほう、美人だな。ちょっと美人局でもして俺をもうけさせてほしいものだな?」
ニヤニヤと冗談を吐く。ああ、この手の先輩方は見てきたが、どうもうまく良い返しが思いつかない。だから嫌いなんだ。
「御冗談を。それならあなたがさしづめ竿役ですか?確かにぴったりだ。ああ、ぴったりだ。」
「まあ、冗談は良い、レポートを見た。お前はどうも脳に破片が刺さってるようだ。しかも大量に。ふん、これで死なないのが不思議なくらいだ。おそらくザイが混ざったのが原因だろう。よくもまあそんな乱暴なことをするもんだ。」
「そうですね。でもうちの研究者たちは大喜びしてましたよ。これで俺たちの研究が進められるって。みんなこれにかこつけて普段できない実験や予算額を取り付けるために奪い合ってます。」
「俺は国に良いところを見せる奴が大っ嫌いだがここまでくるとさすがに国を憐れむな。ふん。研究者なら予算に文句をつけず努力と工夫でどうにかするのが筋だろうに。」
ああ、そうだってな。と彼は続ける。
「俺の研究品として扱ってほしいとか無理難題をほざいてたそうだな?」
「そうですね。よかったじゃないですか。家族が増えて、マザコンごっこがはかどるようになりますよ」
「チッ。まったく、返しがうまいじゃないか。俺の一番嫌いな奴だな、お前は。」
「話に聞くと鳴谷慧とか言う子をおもちゃにして時々遊んでるそうじゃないですか俺はそうされたくないので。」
「安心しろ、レディファーストしてやる。」
「(戦場にレディファーストじゃないですかとうまい事言いたいのをこらえて)ありがとうございます。」
「それで一つ気になってることがあるが、、、、、ライノの人格はあるのか?」
「ええ、ありますよ、慧って子の前では演じた方がいいならそうします。精神的に慧と言う子にとっては亡くなった奴が帰ってきたようなもんでしょうから。別人が同じ顔してたら部隊に悪影響でしょう。」
「ほう?話が早いじゃないか?話が早いやつはまあ、嫌いじゃない。点数を上げておこう。」
(あたしはなんの点数なのかな........?ちょっと気になるな、と思った。)
「さて、お前の待遇だが当然アニマと同じ、物扱いだ。文句は言うなよ。」
「大事にされてるのはオードリクセン隊長から聞いてます。」
「それと勘違いするなよ。俺は人命と一緒にしていない。容赦なく切り捨てる。」
「武器は大事に、そして時に捨ててでも任務を達成する。俺の隊長もそうしてたんで慣れっこだよ。それが戦場だぜ?アンタこそ切り捨てられないように注意するんだな。俺はどんな手を使ってでも任務を達成する。それが職業軍人としてのルールだ。自分のルールを命程度を惜しんで守れないやつは生きている価値がない。それが俺の生き方だ。」
「ほう、なるほどな。なら明日からこき使わせてもらうからな。」
とりあえず八代通との交渉は成功した。これで南アジア政府が実験を続けられる。まあ、それは大したことじゃないが、義理は立てておかないとな。
こうなったら明日に備えておかねば。必要なのは寝床の準備、あいさつ回り、荷下ろし、、、は荷物がドックタグと写真くらいしかないからいらないとして、とりあえずやるべきなのは鳴谷慧とグリペンと会うことだろう。あれはこの部隊の弱点とも特異点とも呼べる存在だ。彼らには俺と言う存在がいることでミスってもらわれては困る。
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