GOD EATER  mixed blood (98zin)
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プロローグ

初めまして
前々から小説作成を行ってみたいと思ってたのですが、自分で一から考えるのはまだまだだと思いゴッドイーターの世界観をお借りさせていただきました
いつか一から自分で小説を書きたいですね

この話は自分がお布団に入って眠る前に妄想してるものです
気持ち悪いですね
拙い文章ですが見てくれると嬉しいです

それではどうぞ


雨が降っていた

 

降りしきる雨はこの地の運命(さだめ)を嘆く空の涙か

 

その雫が落ちる先は荒廃した1つの小さな村だった

惨状、そう表現するだけでは足りないほどの有り様だ

家々は1つ残らず全焼し、道端には幼子の持ち物であったであろうウサギのぬいぐるみが酷く(すす)にまみれた状態で落ちている

まだかすかに上る黒煙、地面がいたるところで隆起し、村の中心にある赤子を抱えた人型の石像は首から上が無かった

 

そして、その石像の周りには住人たちの死体が転がっていた

あるものは石像と同じように首から上をはねられ

あるものは背中に無数の穴を穿たれ

あるものは自身の骨を灰の中へと沈ませている

 

死体は石像を囲うように静かに横たわっていた

最後の最期まで助けを乞うように

 

雨音が奏でる死者を慈しむ曲は静かに響きわたる

生あるものは存在しないと思われたその空間に

ガラッ

瓦礫の山から物音が聞こえた

「、、、、」

声は発さず、徐に立ち上がったソレは一歩踏み出そうとしたが

ガラガラ、、

「!?」

足元の瓦礫が崩れ、体勢を立て直す暇もなく転げ落ちる

体を強く地面に打ち付け息を盛大に吐き出し暫く地面に横たわる

体を引きずりながらなんとか立ち上がり、顔の無い銅像へと足を運ぶ

 

雨が降っていた

 

降りしきる雨はこの地の運命(さだめ)を嘆く空の涙か

 

その雫が落ちる先は荒廃した1つの小さな村だった

惨状、そう表現するだけでは足りないほどの有り様だ

家々は1つ残らず全焼し、道端には幼子の持ち物であったであろうウサギのぬいぐるみが酷く(すす)にまみれた状態で落ちている

まだかすかに上る黒煙、地面がいたるところで隆起し、村の中心にある赤子を抱えた人型の石像は首から上が無かった

 

そして、その石像の周りには住人たちの死体が転がっていた

あるものは石像と同じように首から上をはねられ

あるものは背中に無数の穴を穿たれ

あるものは自身の骨を灰の中へと沈ませている

 

死体は石像を囲うように静かに横たわっていた

最後の最期まで助けを乞うように

 

雨音が奏でる死者を慈しむ曲は静かに響きわたる

生あるものは存在しないと思われたその空間に

ガラッ

瓦礫の山から物音が聞こえた

「、、、、」

声は発さず、徐に立ち上がったソレは一歩踏み出そうとしたが

ガラガラ、、

「!?」

足元の瓦礫が崩れ、体勢を立て直す暇もなく転げ落ちる

体を強く地面に打ち付け息を盛大に吐き出し暫く地面に横たわる

体を引きずりながらなんとか立ち上がり、顔の無い銅像へと足を運ぶ

 

ようやっとたどり着いたソレは銅像を見上げ、雨の音にかき消されそうな声で呟いた

 

「、、タすケテ?」




一話一話の長さはどのくらいになるか分からないですけど、できれば続けていきたいですね
誤字脱字お許しを、、

不定期更新でお願いします


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ブラッド隊

とりあえず記憶の奥底から引っ張ってきたジュリウス達の口調ですが元作品との差異は気にしないでください




「あ~、疲れた~」

廊下に響き渡る声の主は腕を頭の後ろに組み

ズカズカと大股に歩いているカジュアルな服装の青年に

「もぉー、ロミオ先輩ってばさっきの作戦棒立ちじゃなかった~?」

ジト目でのぞき込むのは猫のような髪型をした少女だ

「ナナッ!そんなことないよ!俺のあの華麗な一撃をみただろうっ!?」

そんな2人に苦笑しながらブラッド隊長、ヒロは

「ほらほら2人とも、もうすぐ榊博士の部屋に着くよ?」

「ヒロも言ってくれよー、俺ちゃんと働いてただろ?」

「んー、そうだねぇ。シエルはどう思う?」

ピンッと背筋を伸ばしつかつかと歩いていた少女は不意に呼ばれたことに動揺せず

「はい。ロミオの動きは悪くなかったと思います」

「ほらぁ~!」

大げさにナナを指差し自慢げに言い張る

「ですが、ここ一番の誤射が目立ちましたね。ジュリウスのヘルプがなければ危ないところでした」

「うげっ」

ナナのさらなる深みを帯びたジト目を受け思わず後ずさるロミオ

「心配することはない、ロミオ。次はうまくいくさ」

さわやかな笑顔でフォローに入るジュリウスに続き、赤いフードをかぶった白髪の少女は

「ロミオ、今度はミスしないように後でミーティングしよう」

「お、おう。ありがとうリヴィ」

「おい、お前ら、さっさと報告に行くぞ。ねみぃ」

目をこすりポケットに手を突っ込み歩くギル

一行は榊博士の研究室の前にたどり着き、ヒロが代表してドアノブに手をかける

 

「「「失礼します」」」

 

ヒロたちが足を踏み入れるとカチャカチャとなっていたパソコンキーの音が鳴りやみ特徴のある声が響いた

「やぁ、よく来たね。相変わらず君たちはなかがいいね」

糸目の博士はニコニコしながらブラッド隊員を見渡す

「君たちの盛り上げはやっぱりロミオ君かな?」

「ええ、彼がいるといつも場が和みますよ。、、これが今回の作戦の記録です」

そう言いながらヒロは懐をごそごそとあさり、ある写真を取り出す

「ほう、、これまた面白い喰われ方をしてるね。明らかに人の歯形だよね」

その写真に写っているのは、アラガミの死体

だがその死体に残された捕食者の痕はまるで人の口サイズで噛み千切ったかのようだった

「でも食べるために殺したわけではなさそうだね」

やっぱりというのは、前回出撃したミッションでも同様の痕が残っていたり、四肢だけが無残に斬られたコンゴウだったり、とコアが搾取されていない状態で見つかる死体がここ最近頻出しているのだ

 

アラガミ同士がお互いを襲い合うことは珍しくもない

が、大抵はその「コア」が破壊、捕食され「オラクル細胞」が霧散し、姿形は跡形もなく消えていくはずなのだが

形が残る死体は珍しく、厄介なことに死体が残るとそれを捕食せんと複数のアラガミが集まり

コアを喰らい強化された個体が、群がったアラガミを喰らうという一種の食物連鎖が起きてしまう

こうなると一般のゴッドイーターには手に負えないアラガミが生まれてしまう

そしてつい先日この調査に抜擢されたのがブラッド隊というわけだ

 

「うーん、いったいどんなアラガミがこんなことをしているのかな?そもそもアラガミなのか怪しいとこだけどね」

確かにアラガミの犯行では説明がつきにくい証拠ばかりが挙がっている

「絶命したアラガミの処理を行っているときも、群れたアラガミの中にも特段見かけないアラガミや、強化されたアラガミは発見できませんでした」

シエルが淡々と報告を続け、もう一枚の写真を取り出す

「これを見てください。今回襲われていたシユウなのですが、噛みきり後のほかに右翼だけ引きちぎられた状態で発見されました。切断痕ではありません。これらは同一の作戦対象ではないのでしょうか」

隊長、副隊長、博士で議論がなされる中

「まーアラガミが減ってくれるんなら何でもいいんじゃねって俺は思っちゃうけどなぁ」

「そーだよねー、けど強くなっちゃうアラガミがいるのはこまるかなぁ」

ロミオとナナは能天気にそんな会話を繰り広げる

「とりあえずこの件については長丁場になりそうだから引き続き調査をお願いするよ。ブラッド隊」

博士は写真をまとめうっすらと目を開きそう告げた

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

後日、新しく発行されたミッションにより招集されたブラッド隊

ヒロがロビーに向かうとそこには極東支部所属のゴッドイーター、エミールとエリナがいた

「あ!先輩!これから一緒にミッションに行きませんか?」

エレベーターから降りてきたヒロを見つけるや満面の笑みで駆け寄ってくるエリナ

ヒロが事情を説明しこれからブラッド隊でミッションがあることを告げると

「むぅ~、じゃあしょうがないよね、、、」

頬を膨らますエリナに傍らにいたエミールが

「落ち込む必要はないさ、わが友ならすぐに帰ってくる。そうだろうっ!?」

いつものごとく物凄い声量のエミールにヒロはたじろきつつ返す

「う、うん。このミッションが終わったら今度行こうね、エリナ」

その言葉に膨らましていた頬をゆるりと綻ばせるエリナ

「やくそくだよっ!私の成長したところ見せてあげるんだからね!」

彼女たちとのやり取りを続けているとヒロは人影が視界に入りそちらへと目を向ける

そこには彼らが会話していた間に集まっていたほかのブラッド隊員がいた

「ほらぁーヒロー、行くよー」

ナナが手を振りながらゲートの場所で仲間たちと待っていた

「じゃあ行くね」

ヒロはおもむろにエリナの頭に手を伸ばし軽く撫でてからゲートへと歩を進めた

エリナは先ほどとは違った意味で頬を膨らまし尊敬する先輩たちを見送るのだった

 

 

 

 

 

ブロロロロ、、、

 

広い荒野の中、ブラッド隊を乗せた2台のバギーは砂煙を巻き上げ、低い重低音を響かせながら走りぬける

「なぁ、なんでコアを喰わないアラガミがいるんだろうな」

バギーの後部座席に乗っているロミオが彼の神機を抱えながらふと口にした言葉

「あぁ、大体アラガミは食べ残しをしない」

ガタガタゴツゴツの道を器用に運転しているジュリウスが返す

彼らがこの騒音の中会話が成立しているのは全員が装着しているトランシーバーのおかげだ

もう1台のバギーを運転するヒロはトランシーバーから流れてくる会話について黙考する

今回の調査は対象の正体が確定していない

アラガミを倒せるのはアラガミかゴッドイーターだけ

しかしアラガミにしては小さすぎる歯形や、食べ残し

ゴッドイーターにしてもコアの採取忘れなどあってはならない

榊博士もおそらくは人型のアラガミ、もしくはそれに近しい存在がいるとふんでいるだろう

極東支部では人型のアラガミ「シオ」、腕輪を失くしオラクル細胞に侵食され一時期アラガミとなってしまった「リンドウ」

どちらの例もあってしまうので、そういった判断もできるのだろう

ジュリウスも似たようなものだったしね

考え事をしながら運転していると思わぬ段差にハンドルを取られバギーを大きく揺らしてしまった

「どうかしましたか?」

隣、助手席に乗っているシエルから声をかけられヒロは苦笑いしながら答える

「ごめんごめん、何でもないよ。ロミオの言ってることについて考えてたんだ。ちゃんと集中して運転しなくちゃだね」

「そうですか、気を付けてください。いつアラガミがあらわれるか、、あ、言ってるそばから。北東5キロほど先にアラガミの群れです」

また無線機器を用いて支部のオペレーターと連絡を取りアラガミとの交戦許可を得る

ちなみに現在はオペレーターの支援をあまり受けることができない

バギーには最低限の電波装置しか設置しておらず、通信のみに限り行える

広い荒野の詳しい地形や、細かいアラガミ情報を得ることはできない

直接視認するほかないのだ

やっぱりすごい力だなぁ、「血の力」って

改めて自分たちに宿る力を認識したヒロ

「みんな、北東の方向にうっすら見える固まり、見える?」

トランシーバーを使い仲間たちに確認をとる

「みえるよ~。あれ全部アラガミ?いっぱいいるね!全部おびき寄せる?」

無線から響く元気な声の主は血の力「誘引」をもつナナ

「いやっ、!?あの量はシャレにならないからやめてくれ!?」

やりかねないナナの言動に慌てふためくは「対話」の力をもつロミオ

「お前の力なら仲良くなれるんじゃねぇの?」

シャレを飛ばすのは「鼓吹」の力を持つギル

「あぁ、そうだな。ロミオならできるさ」

言葉をつなげるのは「慈愛」の力を持つリヴィ

「あの量と友達になるのは骨が折れそうですね、ロミオ」

真顔で告げるはアラガミの群れを見つけた張本人で「直覚」の力を持つシエル

「冗談はそれくらいにして、どうするんだ?隊長?」

呆れた声で、しかし楽しそうな顔の「統制」の力を持つジュリウス

「じゃあ、ロミオだけあそこにおいてこようか」

こんな賑やかな家族のような空間に思わず笑みをこぼし返すのは

このブラッド隊をまとめる「喚起」の力を持つヒロ

「ちょ!ヒロまでそんなこと言うのかよ!」

ロミオいじりが止まらない彼らは目標を北東のアラガミに設定し進路を変え進んでいく

 

 

いよいよ目標との距離も近くなってきた辺りでヒロはトランシーバーに声をはる

「あの群れの先に「食べ残し」があるかもしれないし、あれを片付けたら周辺探索をするよ!今日のミッションは残り数時間だから手早くいくよ!」

そう言ってヒロはアクセルを強く踏み込む

「ジュリウス!二手に分かれて前後から挟み撃ちにするよ。そっちはナナの力でおびき寄せながら陽動してくれ!引き気味でいいからね。僕らが後ろからたたくから!」

「了解だ。ナナ、行けるか?」

「もっちろん!」

トランシーバーから聞こえてくる頼もしい声

「よし!じゃあ作戦開始!」

今までよりも豪快な音をあげ、二手に分かれたバギーはアラガミの大群の頭と尻尾にむかって進んでいった

 

 




誰がどのセリフ言ったか分かるようにとセリフの前後に説明入れるのは変ですかね
思ってたより文章書くのは難しくて頭の中の妄想を披露するには語彙力が足りないことを痛感する日々です
改行のタイミング、句読点の有無、、、なんかテストしてるみたい

ちなみにバギーの乗車の割合は
ジュリウスバギー ジュリウス、ロミオ、リヴィ、ナナ
ヒロバギー    ヒロ、シエル、ギル
こんな感じです

次は初めての戦闘描写
バトル小説とか読むと「袈裟切り」とは何ぞや、というレベルの筆者が書く戦闘を乞うご期待!


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戦闘

これから視点を一人称でいくか神様視点でいくか悩んでます
どっちかに決めたとこで文体がお粗末すぎるのでそのうちごっちゃごちゃになるんですけどね


「ナナ、準備はいいか!?」

バギーのアクセルを全開に踏み倒し、重たいハンドルを操るジュリウスが声を張り上げる

「もっちろん!いくよ~!」

バギーから振り落とされまいと手すりを握りしめながらナナは相棒である神機を持ち上げる

「フンッ!」

掛け声とともに放たれた紅い波動

ナナの血の力である「誘引」が発動された証だ

すでにアラガミの種類が分かるくらいまで近づいていたのだが、ナナの力に引かれる形で大量のアラガミがジュリウスバギーへ行進を始める

ヒロが運転するバギーはそれを尻目に大群の後方へと向かう

「よし!このまま撹乱するぞ!」

ジュリウスは器用にドリフトを行い、衝突必死だったバギーをアラガミの大群の先頭に位置付けた

後部座席に乗るロミオとリヴィはバギーに搭載されている対アラガミ用マシンガンや、スタングレネード、各々の神機を銃形態に変形させ応戦する

「うりゃうりゃ~!」

大量のOPを蓄積できるブラストガンの強みを生かしまるで砲撃のような攻撃を仕掛けご満悦のロミオ

「うひょ~、どこに撃っても当たるぜ!」

放たれたオラクル細胞の塊は群れの端にいたコンゴウの頭に直撃し、爆音とともに破裂し周りのオウガテイルもろとも爆散させる

「バカ、それだけアラガミが多いってことだ。気を付けるんだぞ」

お呼びですか?とばかりに物凄い勢いで滑空しながら突進してくるサリエルに、リヴィは神機を捕食形態へと変形させ攻撃する

「喰いちぎれっ!!」

ズオォォ!!と勢いよく伸びたプレデターはサリエルを頭から飲み込み体半ばでその顎を閉じ、体を喰いちぎる

上半身を失った体は血しぶきをあげながらバランスを失い急降下

地面に横たわって動かなくなったところに大群が通り、グチャグチャに踏みつぶされその形をなかったものへと変貌させた

「わー!これ楽しい!」

そんなグロテスクな戦場に合わない声音でマシンガンを乱射するナナ

撃ったそばから空になった薬莢(やっきょう)が宙を舞いバギーの中へと落ちる

そして放たれた弾丸はアラガミたちをハチの巣にして確実にその数を減らしている

その様子を見てロミオは呆れた声で呟く

「これ、なかなかヤバイ光景だよな、、」

その呟きはナナのヒャッホーイ!という言葉と、マシンガンの乱射音にかき消されるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、数を減らしてくれてるね」

アラガミの群れを少し離れた位置で追走するヒロたち

時折マシンガンの火薬の爆発の光とともに喜々とした声が風にのって聞こえてくるが聞こえなかったことにする

しかし減ったといってもアラガミの数は依然元の半分以上は残っている

ジュリウスのバギーの物資切れもそろそろだろうし早めに突撃を行いたいところである

「シエル、、見つけた?」

助手席で双眼鏡を覗きながら群れのリーダーを探す副隊長に声をかける

「はい、、おそらく、感応種。マルドゥークでしょう」

「はぁ~、まーためんどくさいのがいるな」

後部座席で出撃の準備をしていたギルがこぼす

感応種。今はない「赤い雨」の影響で狂暴化したアラガミ

原因は不明だが未だに現れ続ける感応種

その中でも厄介な周りのアラガミを集めるという力を持つマルドゥーク

マルドゥークを倒さねば継続的にアラガミを呼び出され長期戦はまぬがれないだろう

「シエル、大丈夫?いけそう?」

「はい、この距離なら」

そう言って座席の頭の上を身軽に飛び越し神機が置いてある後部座席へと向かう

「じゃあギルお願いするよ」

「あぁ」

シエルが神機を持ち上げバギーの中央にある狙撃台に腰かけ前方をスコープ越しに覗く

その横でギルは自分の神機を手に持ち力んだ

「ハァァッ!」

ここでも紅い波動が生じヒロとシエルにあつい高揚感を与える

ギルの血の力「鼓吹」

同行メンバーの力を底上げする力だ

シエルはその力の恩恵を確認すると引き金に手をかける

揺れるバギーの上、数百メートル先の白い巨体目掛け照準を合わせる

普通の人ならここで狙撃を命中させるのはなかなかに難しい場面だ

しかしシエルは違った

彼女は幼いころから戦闘訓練をうけてきた

不安定かつ、もっと視界が狭いところでの射撃も成功させてきた

(こんな狙撃余裕です、、)

照準の少し下に巨体が映りこんだ瞬間その指を引き絞った

凄まじいマズルフラッシュを発生させ、真っすぐに標的へと向かう弾丸

狙撃弾とはいえ大型のアラガミを一撃で沈めることは不可能だろう

だが彼女が撃った弾はただの狙撃弾ではなく「ブラッドバレッド」という改造が施された弾丸だった

マルドゥークの意識は完全に先頭のバギー、ナナへと向いている

そして放たれた弾丸は寸分の狂いなくマルドゥークの頭部へ命中し炸裂した

着弾後、炸裂した破片は麻痺属性を有しており余るほどの効果をもって巨体の動きを封じた

これはシエルがヒロと共同で作成した自信作

ただの麻痺弾ではなくナナが調理、というか配合、に失敗した作品の余りを用いるというエコさもありつつしっかり効果を発揮するという素晴らしいブラッドバレッドだ

さすがナナ印といったところか、巨体は一歩も動けなくなりその場でひどく痙攣しているのがスコープごしに確認できる

「隊長、目標の麻痺、確認しました」

「オーケー、さすがだねシエル。じゃあこれから全速力でマルドゥークのところに突っ込んで討伐。その後周囲のアラガミを掃討。いいね?」

 

「「了解」」

 

迷いなく帰ってきた返事に頼もしさを感じながらヒロも後部座席へと飛び移り自身の神機を手にする

手にした相棒の感触を確かめ声を張り上げる

 

「突撃開始!」

 

ギルの「鼓吹」の影響もあってか昂った気持ちとともにバギーを飛び降りマルドゥークへと疾駆する

マルドゥークは動けずにいるのでジュリウスバギーを追いかけまわしているアラガミたちに置いて行かれ、今や一頭でその荒野に佇んでいた

確実に狙える射程圏内へと入るとシエルは普通の狙撃弾を放ち牽制する

ようやく麻痺から解放されたマルドゥークに衝突する狙撃弾

マルドゥークは直接攻撃を受け標的を正面の動くバギーから、後方の鬱陶しい輩へと変え振り向いた瞬間

「ゼアァァ!!」

地面を力強く蹴り常人ではありえない高さまで跳躍したヒロが神機を振りぬいた状態でいた

彼我の距離、約十メートル

マルドゥークは当たるはずがない斬撃を無視してその堅剛な前足でヒロを払いのけようとした瞬間

「ガァッ!?」

飛来した紅い斬撃に顔面を引き裂かれた

思わずたたらをふむマルドゥークに追撃をかけたのはギルだった

先ほどとは変わって槍形態の神機を構え疾駆していたギルがこの隙を逃さずにチャージスピア固有の技、チャージグライドを発動させた

「ハァァァア!!」

さらにそれもただのチャージグライドではなく、赤紫のオラクルの棘を伴いマルドゥークへと突き刺さった

そう、これらはブラッド隊員がなせる業「ブラッドアーツ」だ

思わぬ猛攻を受け、柔らかい腹に無数の穴をあけられたマルドゥークは2人を睨み遠吠えをあげる

 

「アォォォォォォォン!!!」

 

赤黒いオラクル細胞がマルドゥークを取り囲み大きな渦巻きを生み出しマルドゥークを活性化させる

またマルドゥークに感応してジュリウスバギーを追いかけていたアラガミたちがヒロたちのほうに向かい始めた

 

 

「あいつらが来る前に終わらせるぞ」

ギルは槍を握り直しヒロへ声をかける

その目線の先は油断なくマルドゥークへと向いておりいつでも対応可能といった様子でいた

「そうだね、すぐに片付けるよ」

大勢のアラガミがこちらへ着くまで残り僅か

大型と小型の乱戦はなるべく避けたいヒロたちはここで一気に決めに行く

「もう一度行くよ!」

ヒロが声を張り上げ前のめりに倒れるか倒れないかの角度でマルドゥークへと走り始めた

後ろに続きギルはまたチャージを開始し隙があればいつでも打てる構えだ

怒りの眼光を受けるヒロだが怯むことは一切なくマルドゥークの懐へと一気に飛び込む

二度はやられまいとマルドゥークは真上へ跳躍し、その口から人を飲み込める以上の大きさの火球を真下に発射した

ヒロはそのまま走り抜けることでやり過ごす

後ろに着弾した火球は轟音と熱波を発生させた

「あちちち、、」

黒焦げになった地面が飛散しいくつか頬をかすめるが気にしている余裕はない

上から降ってくる白い巨体に押しつぶされないように急いでその場を離れる

着地したマルドゥークはそのまま転がりすぐにヒロを攻撃する態勢に入った

前傾姿勢になり右前足のガントレットを開放し赤橙に発光させた

次に来る攻撃を予想できたヒロはシールドを展開し防御の構えをとる

マルドゥークはそのまま右前足を振り上げ、そして地面を抉りとり先ほどよりも大きな火球を繰り出してきた

ヒロは予想通りの攻撃を、余裕をもって構えていた盾で受け止めた

「いや、熱いって!」

火球を盾で受け止めた瞬間にそのかかとを地面にグッと沈ませ耐える

端から漏れ出す炎に服を軽く焼き切られながら火球を受けきる

この隙を逃さずギルがチャージグライドを発動

後ろ脚に直撃かと思われたが、二度も同じ技を喰らうまいと即座に跳躍してそれを躱すマルドゥーク

「チッ!」

舌打ちを鳴らしてマルドゥークを見上げ落下に備える

マルドゥークは下に見える厄介な人間たちを焼き払うべくその口腔に高温の炎を蓄えた

上からの広範囲攻撃ヒロとギルに避けるすべはないと思われた

実際避けることは厳しかっただろう

マルドゥークはその獰猛な口の端を吊り上げ今にも溢れそうな炎を吐き出そうとした

「私のこと、忘れてないですか?」

その瞬間思いもよらぬ方向から狙撃弾がマルドゥークの口内目がけ放たれた

直撃した弾丸はマルドゥークの口の中で小爆発を起こし、炎を誘爆させた

「!?」

思わぬ攻撃に空中で体勢を崩し落下を開始する

そして落下地点には武器を構え迎撃準備万端のギルとヒロがいた

「「終わりだッ!」」

同時に振りぬかれた剣と槍はクロスの斬撃を形どり、身動きの取れないマルドゥークへと襲い掛かる

マルドゥークは死の直前、己を斬り刻むであろう刃の輝きを見ていた

落下の速度と上方向へ振りぬいた速度が合わさり一切の抵抗なくマルドゥークを四つの肉塊へと変貌させた

「目標の沈黙、確認しました」

うまく連携することでほぼ危なげなくマルドゥーク討伐したヒロたち

しかし息つく間もなく襲い来るのはマルドゥークが呼び出したアラガミたちだった

 

 

 

 

 

「群れのリーダーを倒した。あとは小型アラガミを駆逐するだけだよ」

通信からヒロの声が聞こえるとジュリウスバギーは進む向きを180度回転させ正面からアラガミの群れへと突っ込んだ

「ロミオ!ナナ!リヴィ!行くぞ!」

「「「了解!」」」

向かってくるバギー、突然のことに対応できないオウガテイル数匹を、ひき殺しながら進む

さらに後部座席から飛び出すのは3人のゴッドイーター

飛び降りざまにバスターブレードを担ぐロミオはその大きな刀身を振り上げコンゴウの顔面を粉砕する

続けて飛び出すナナはそのピンクのハンマーを大きく振りかぶり、ロミオと同じようにシユウの頭、いや上半身を粉々に砕いた

攻撃直後で隙だらけの2人はに襲い掛かろうとしているのは、6匹あまりのドレッドパイク

しかし2人は焦りもせずニタリと笑う

「まったく世話の焼けることやら、、」

そんな言葉とともに自身の武器ヴァリアントサイズをもって、死神の鎌のごとく一薙ぎでそれらを沈黙させるリヴィ

「ナイス!リヴィ」

「リヴィちゃんありがとう!」

リヴィの援護があると踏んでいた2人は余裕で体勢を立て直し感謝の言葉を白髪の少女に送る

「2人とも、無茶はしすぎるなよ」

そういってバギーを止め2人に声をかけるジュリウス

「あとは細かいのだけだ、存分に暴れるぞ」

各々神機を構えなおしアラガミへと向きなおす

彼らが発する雰囲気に圧倒され思わず後ずさるオウガテイル

しかし後ろに行っても群れのリーダーを倒した人間がいる

圧倒的な窮地に立たされた彼らは本能に従い喰らうしかないのだった

 

 

 

 

「ふぅ、どうやらこいつで終わりみたいだね」

おそらく群れの最期の一匹であろうコンゴウ

コンゴウが両腕を大きく振りかぶり、その背中のパイプから空気砲を射出した

それをヒロは跳躍することで回避し、さらに着地で曲げた膝の勢いを用いて前方へ駆け出す

攻撃をよけられたことと、まさかの突撃に動揺し対応できないコンゴウに、ヒロは勢いを殺さずすれ違いざまに真一文字に一閃

上半身と下半身を分かたれたコンゴウ、その中にあるコアごと破壊され即座に霧散する

完全に沈黙した

「おっつかれー!さすがだねー」

アラガミの群れの中心だったところでブラッド隊は集結した

「隊長、これからどうしますか?」

「うーん、この先に食べ残しがあってもおかしくないからそれを確認したら帰還しようか」

「了解です」

各員がアラガミのコアを回収しバギーへと持ち帰る

そうして先ほどと同じメンバーがヒロ、ジュリウスが運転するバギーに乗り込み、アラガミの進行方向だった方面に進んでいった

 

 

これから起きることなど、もちろん誰も知らずに

 

 




次でオリ主を登場させれそうです


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邂逅

オリ主登場?


ここはドコなんダロう

 

カラダが熱い、いヤ寒い?

 

イタイ?

 

なにもカンじなイ?

 

ピチャ

 

 

濡れてる、ナニデ?

 

あカイ、血?

 

ダレの、ボクノ?

 

ワカラナイ?

 

オレがダれかモ

 

イマ、食べテルモノが何だったカモ

 

ただ、食欲ダケがボクをシハいスル

 

 

「ここは、、」

 

「ひどい有り様だね」

 

「こんなところに村があったなんて、信じられないよ」

 

「おそらくフェンリルの保護下に入れなかった者たちが寄り添い集まったのだろう」

 

 

コエがスる

 

けどボクは喰らイツヅける

 

 

「隊長!あれっ、、」

 

「なんだ!アイツ!?」

 

「アラガミか?」

 

 

アラガミ?

 

 

「人を喰ってるぞ、、」

 

 

ヒトをクウ?

 

アラガミ、ヒト、クウ、、

 

、、ミンナ食べらレタ

 

アノ紅いアラガミに

 

「ゴァァァァ!!!」

 

カラだがカッテにウゴく

 

オレのチにマミレタ視界にウゴク人がウツッたシュンかん、ボクは走った

 

イヤ、オレじゃナイ

 

ホンライノおれじゃダセない速さデ地をカケル

 

ホンライノボク?

 

ボクって一体ナンなんダロウ

 

 

 

 

そんな朦朧とした意識は、目の前に迫りくる白銀の一閃ととともに斬り捨てられてしまった

 

 

 

 

 

ボロボロと崩れ落ちる外骨格、異形のアラガミだと思っていたそれの中から出てきたのは体中を真っ赤に染めた少年だった

「なっ!?人間!?」

中から出てきた白髪の少年は一切の抵抗なく地面に倒れこむ

土煙をあげ倒れ伏した直後、その少年の体からドクドクと血を流れだした

これは不味い、僕が斬りつけた刃が中の少年まで届いていたのだ

彼を治療しようと僕が動く前に躊躇い無く彼を抱き起し、治療を開始したのはリヴィだった

「傷はそこまで深くないが、消耗が激しい。このままでは命が危ないぞ」

テキパキと手持ちのポーチから包帯や薬を取り出し治療していく

「お、おいリヴィ。そいつ、アラガミじゃないのか?」

ロミオがビビりながら2人を見下ろす

「、、たとえそうだとしても、今はどう見ても人間だ」

もともとリヴィはゴッドイーターがアラガミ化した時の処理を担当していたので、今の彼はアラガミではないと踏んでの行動だろう

「そうだね、彼はアラガミなのか人なのか、今の僕たちじゃ何も分からない。かといって無暗に殺すことは違うとは思わないかい?」

僕はそういってリヴィを手伝う

背丈は150センチくらい、ほっそりとした体には血で染まっているにもかかわらず傷らしきものは先ほど僕が斬りつけた左肩の傷しか見当たらない

しかしその傷も目に見える速度で収縮しすでに塞がりかけていた

「、、、、」

アラガミ化した人間

人の姿をしたアラガミ

そんな単語が頭をよぎった

どちらも極東支部で前例がある、ひとまずサカキ博士の見解を聞きたい

 

「極東支部へ戻ろう」

 

僕達がバギーに乗り込んだ時、さっきまで降っていなかった雨が降りだした

 

 

 

 

 

 

~サカキ博士研究室~

 

「僕達が廃村に着いた時には彼以外の人は見当たりませんでした」

アラガミの群れを掃討した後、バギーに乗り込みしばらくすると見えてきた廃村

そこにたどり着くと辺りはまるで災害にでもあったかのような有様だった

バギーを降り警戒しながら進むと聞こえてきたのはクチャクチャという咀嚼音

音のほうへ向かうと現れたのが彼だった

とっさの対応で切り払ったのだがそれはアラガミなのか人間なのか判断しかねる存在だった

 

「なるほどね、、まず事実からいこう」

報告を終えて、サカキ博士から彼の検査の結果を聞いた

現在はサカキ博士の研究室の奥で深い眠りに落ちている彼

「彼はアラガミだよ。八割」

予想通り、、なのか分からない結果に声は出なかった

人間であってほしかったのか、はたまたアラガミであってほしかったのか僕自身分からない

「彼は体にはオラクル細胞が含まれている。君たちゴッドイーターのようにね。ただ違うのはその量と質だね。」

サカキ博士はそう言ってパソコンのデータを読み始める

「体の八十パーセントはオラクル細胞、残りはヒトの細胞。今はオラクル細胞の侵食は行われていないみたいだね」

「オラクル細胞がヒトの細胞を全部食べっちゃったらそうなるんですか?」

おそるおそるといった様子でナナがたずねる

「ん?もちろん完全にアラガミになって周りのものを喰らいつくすだろうね」

ニッコリ当たり前だろうといった顔で榊博士は返した

その答えにすっかり顔を青ざめさせるロミオとナナ

アラガミ化、どうしてゴッドイーターでもない人間が、、?

どこからオラクル細胞を得たのだろう

それにあの村にはなぜ彼だけ、、

様々な疑問にとらわれもう少しで頭がパンクしそうになっていると

「で、次は憶測。腕輪もついていない、ゴッドイーターでもない彼がオラクル細胞を持っている理由。まず考えたのがナナ君のようにゴッドイーターチルドレンである」

ゴッドイーターチルドレンとは親がゴッドイーターで先天的にオラクル細胞をその体に所有している者の呼び名

ブラッド隊ではナナがそうだ

青かった顔をさらに青くさせ悲鳴をあげるナナ

「え、じゃあ私もアラガミになっちゃうってこと!?」

ロミオと2人でギャーギャー騒ぎ出し、呆れたギルに頭を軽く小突かれる

「んなわけねぇだろ。俺たちゴッドイーターは調整された偏食因子を投与されて、体内のオラクル細胞を制御してるんだ。滅多なことがない限り大丈夫だろ」

「う、うん。そうだよね」

冷静な言葉に小突かれた額を軽く押さえおとなしくなる

「ギルバード君の言う通りだね。君たちゴッドイーターがアラガミ化することは滅多にない。そして彼がゴッドイーターチルドレンであるということはまずない。そもそもゴッドイーターが外部の人間として生活していくことがないんだ。引退後、というか引退するまでに殉職したり、引退しても各支部で後輩の育成にあたるからね」

「じゃあ、彼はいったい?」

「おそらく、アラガミを食べたのだろう。村がアラガミに襲われて極限状態に陥った。どうやって助かったかは分からないけどね、飢えた彼はそこにあったアラガミを食べたんだろう」

「そこにあった、、って、ゴッドイーターでもない人間がアラガミを倒せるのか?」

「憶測といっただろう?そして仮に彼がアラガミを食べたとしよう。摂取したオラクル細胞はヒトの細胞を取り込み、喰らい、増殖し彼の体を侵した」

「どうして最期まで喰われなかったんだ?オラクル細胞に」

初めての出来事に疑問が尽きないギル

同じことを思っていたので特に制することなく話を聞く

「これも憶測。満足したんだろう、単純に」

「え、お腹がいっぱいになったってことですか?」

「そういうことだね。これは私にも全く理解しがたいことだよ。ただ実際彼の体に対する侵食は今は行われていない」

有り得ない事象にサカキ博士も頭を抱えているようだ

今は彼の容態が回復してから会話を試みるしかない

「で、今回他に収穫はあったかい?」

「はい、こちらです」

そう言ってシエルが手持ちの袋から取り出したのは緋色の破片だった

「これは廃村のいたるところに落ちていたものです。明らかに建材などではなくオラクル細胞でできたものだと思います」

シエルが取り出したそれは光沢を放ち禍々しさまで感じる

「うーん、今回は食べ残しも見つからなかった、というか彼が食べていたかもしれないし、分からないことが多いからね。追々調べて何か分かり次第連絡するよ、ひとまずお疲れ様。今日はゆっくりと休んでくれたまえ」

博士に促され、僕達はわだかまりを抱えたまま研究室を後にした

 

 

 

 

 

各々休息をとるために自室へ帰り、僕も自室に戻り一息ついた

帰りに雨が降ったので体が濡れて少し冷えるのでシャワーを浴びようとバスルームへ足を運ぶ

濡れた上着を籠にいれ、上半身裸になった時ふと備え付けの鏡が目に入った

そこに映るのはもちろん自分の姿、人間だ

だけどその中身は?

半裸になってもなお身についている、いや外せない右腕の腕輪に目をやる

人工的にオラクル細胞を摂取して超人的な力を得たゴッドイーター

一般人からすればアラガミとゴッドイーターは似たような存在と思われてるかもしれない

姿形が違うだけ、実際に僕達ゴッドイーターはアラガミを殺すし、アラガミもゴッドイーターを殺す

中身は同じ

じゃあ発見された彼は?

始めの姿はアラガミ、今は人間の姿

今の彼を見てアラガミと言っても信じてくれる人はいないだろう

何か大事なことを考えているようで、しばらく思考の海に浸っていたが完全に体が冷えてきて

「へっくち!」

と情けないくしゃみが出たので急いで服を全部脱ぎすてシャワーを浴びに向かった

 

 

 

お風呂にお湯もはりゆっくり浸かってからホカホカの状態でバスルームをあとにする

着替えてから自分のベッドの上でゆっくりしようと腰を下ろした瞬間

ズキっと頭に鋭い痛みが走りベッドに横たわってしまう

「いたたた、、」

走った痛みは一瞬ですぐに何ともなくなったがなぜか懐かしいような痛み、、というか感覚だった

「、、疲れてるのかな。早く寝よう」

ここ最近「食べ残し」狩りなどで遠出が多かったのでいつの間にか疲労がたまってたのだろう

そうさ、ゴッドイーターだって人間だ、疲れもするさ

寝ようと決めた瞬間から瞼が急に重くなり直ぐに深い眠りについてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、、?

 

気が付くと僕は暗いところにいた

さっきまで自分が何をしていたか思い出せず、さらに動けないでいた

詳しく言うと動かそうと思っても、動かすものがない

腕、と思ったところを動かそうと思っても腕が無いのか何も成果は得られない

どうなってるの?

声も出ない

ていうか目も開いてないんじゃないかな

暗いのはそのせいかな

そんな何もできないただただ暗いと感じることしかできない空間にいるにもかかわらず、不安な気持ちはこれっぽっちも出てこなかった

まぁ、どうでもいいか

やる気というやる気を失い再び意識を手放そうとした時

 

「ヨコセ、、」

 

そんなどす黒い声が僕の中で響いた

 

 

「っ!?」

勢い良く体を起こし、ハァハァと肩で息をする

僕の体にかかっている布団に僕の顎やら髪の毛の先から汗がしたたり落ちるのが見える

、、見える?

汗を拭くために腕を持ち上げる、、

腕を、、持ち上げてその腕を凝視した

じんわりと毛穴から噴き出た汗が腕を覆いこの部屋の天井に付いている電灯の明かりを跳ね返す

手もあるし、目も見えるし、熱いし、汗ヤバイ

「じゃあ、さっきのは夢?」

声も出る

自分が生きていることを確認しつつ周りを見渡す

自分が乗っているのは簡素なベッド

壁には子供が描いたような落書きがあるのにところどころ壁が剥がれ落ちてたり、穴が開いてる

どんだけやんちゃな子がいたんだよ、、

天井にはスピーカーもありどこかの施設を思わせる作りだ

「とりあえず出るか」

真っ赤なドアを見つけ、布団をはがしてベッドを降りようとした瞬間

バンッとドアが勢いよく開き、銀髪で糸目で眼鏡をかけていて、いかにも博士な人が入ってきた

「どうやら起きたようだね!ふむ。安定しているようだし問題ないかな!」

スタスタとこちらに近づき僕を観察しだした

「あ、あのー?」

そのなめまわすような視線に耐えかねて、声を出す

「やぁ、私はサカキ。君の名前を教えてくれないか?」

ずいっと顔を近づけられ眼鏡の奥の瞳としっかり目が合う

知らない人に名前を教えちゃいけないんだけどな、言わなきゃダメかな

けど言わないとどいてくれなさそうだ

 

 

「ぼ、僕の名前は、シオンです」

 

 

その言葉にサカキと名乗った人の糸目がわずかに開いたように見えた

 




なんか、こうじゃ無い感しかない


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極東支部

「ここは、フェンリル極東支部。ゴッドイーターの最前線基地だね」

 

そう言ってベッドの周りをくるくるしながら説明を続けるのは、白髪のサカキという人

何かとしゃべっているが内容はよくわからない

その間僕はどうしてこんなところにいるかを振り返ることにした

ただ()()記憶が飛んでる

ここは村のどこでもないみたいだし、サカキって人の話も村長から聞いたこともない

ただ、フェンリルっていう言葉は村の倉庫にあった物資の名称と同じだ

最後の記憶は、、たしか、村にアラガミが数匹向かってきていると聞いてみんなで地下に避難して、、

そこから覚えてないや、、

どうしてここにいるか頑張って思い出そうと唸る、が無理だ

さっきまで意識を失っていたことでまだ少し、頭が混乱しているようだ

そんな僕を気にすることなくしゃべり続けていたサカキ、さんをつけたほうがいいかな?

そんなことを考えていると、コンコンと赤いドアからノックが聞こえてきた

「お、来たみたいだね。入っていいよ」

その言葉に続き、ドアノブがまわり黒い服やら、赤いフード付きの羽織を着た人たちがゆっくりと部屋に入ってきた

瞬間、僕の体は勝手にベッドを蹴り飛ばし、ガタン!と派手な音を鳴らしてドアの反対の壁まで跳んだ

入ってきた人たちとサカキさんは思わず腕で顔を覆い驚いた様子だった

それはそうだろう

壁に穴をあける勢いで跳んだ本人が一番びっくりしているんだから

入ってきた黒い服の人が

「大丈夫?」

と声をかけてくれるが、まったく大丈夫じゃない

その声に反応して足が少しブルっと震えた

「おびえてるのか?」

赤いフード付きの羽織を着た褐色の肌のお姉さんが首をかしげてたずねてくる

おそらくそうなんだろう

知らない人が増えたなー、と思うだけだったのに、体が勝手に動いたんだ

ただ、黒い服を着た人だけは、初対面にもかかわらず心のどこかで恐怖が見え隠れしている

強張る筋肉のせいでろくに声も出せずに入ってきた人たちを見つめる

「こんなに大人数の人が急にきちゃったら、ちょっと刺激があったかな?」

そう言ってサカキさんは戸惑う彼らを押し出して最初に入ってきた黒い服の人だけを部屋に入れた

えー、その人が一番嫌だったのに、、

「えーと、初めまして。僕の名前はヒロ。驚かしちゃってごめんね?名前を教えてもらってもいいかな?」

初対面にもかかわらずおびえまくっている僕に、戸惑いながらも丁寧に名前を聞いてくる

シオン、と言おうにも声は出ずただ足を震えさせて情けない体勢でヒロさんを見つめる、というか睨んでる

「んー、ヒロ君、彼に何かしたかい?」

「いや、何も、、あ、僕が斬りました」

「なるほど、じゃあ選手交代だ」

よくわからない会話をしてからヒロさんは申し訳なさそうな顔をして部屋を出た

少しして代わりに入ってきたのは褐色の肌のお姉さんだった

非常に失礼だが、ヒロさんがいなくなってホッとして、代わりに来たお姉さんに安堵を覚えている僕は駄目なんだろうか

「話は何となく分かった。安心しろ、私はお前の味方だ」

そう言ってつかつかと壁際でいまだに軽く縮こまっている僕のところに来て手を差し出してきた

「あ、ありがとうございます?」

思わず疑問形になってしまったが、差し出された手を握り返すとなぜかあたたかい気持ちになれた

「私の名前はリヴィだ」

「僕の名前はシオンです」

握手を交わしたままお互いの名前を認識する

「やー、どうやらアラガミの時に斬られた衝撃が残っていてヒロ君に怯えたみたいだね」

サカキさんがふんふんと1人納得している

え、

アラガミの時?

どういうこと?

あいかわらず意味の分からないことを言うサカキさん

首をかしげているとリヴィさんが

「どうした?まさか覚えてないのか?」

「う、うん。何のことやら、、」

リヴィさんは驚きと、悲しみの表情を浮かべて僕の顔を見る

口を開けては閉じてを数回繰り返し、発した言葉は

「シオン、お前はアラガミだったんだ、、、」

そんな、突飛なことだった

 

 

 

 

そこから僕はここ、村からフェンリル極東支部にいたるまでの経緯を説明してもらった

アラガミが人を食べていたこと

そのアラガミを倒すと僕が出てきたこと

村は災害にあったように荒れていたこと

 

 

 

 

そんなこと言われても、何も思い出せないし、納得もできない

僕が、あの、アラガミ、だった、、?

リヴィさんが嘘を言っているようにも思えず、サカキさんが言っていた僕がヒロさんに怯えている理由

それも、感覚的にあの人は危険だと心の中で感じている

混乱していた頭も現状を理解し始める

 

ヨコセ、、、

 

そんな声がまた聞こえた気がした

その声に心が急に不安になり体が震えだす

僕は訳も分からず頭を掻きむしり、頭皮が傷ついて血が出ていることにも気が付かない

気づいたら僕は大きな口を開けてひたすらに発狂していた

リヴィさんが何かを言いながら必死に僕の腕を押さえてくれている

けど、僕はそんなことお構いなしに頭を掻き、叫び、吐いて、狂った

見える視界はどんどん赤黒くなり次第に真っ暗になった

 

モット、ヨコセ、、

 

その声だけは鮮明に聞こえて、僕は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、そして今ここにいる」

 

 

幼い少年にここまで正確に現実を伝えていいものかと迷ったが、私たちは「食べ残し」の情報を得なければならない

彼が、彼の村がどういう状況にあったか少しでも把握したいと思ったが故の判断だった

しかし、それは間違いだった

今目の前の幼い少年は現実に打ちのめされ、狂ってしまった

「シオン!落ち着け!おい!」

頭を掻きむしるので、腕をとり押さえるが抵抗しながらも腕を振り回す

ゴッドイーターの力でさえもシオンの腕を押さえられないことに、彼がアラガミの細胞を持っていることを認識させられる

自分の早まった判断によって1人の少年を狂わせてしまった

「すまない、、!落ち着いてくれっ!」

暴れ狂う少年の体を抱きしめ、落ち着くように促す

少年の手が振り回され私の腕や顔をひっかき皮がめくれ血が滲む

さらにシオンの手の爪がはがれシオンが動くたびに赤い血が飛び散る

抱きしめていた体はしばらく抵抗を続けていたが次第に動きに力が無くなっていく

体を少し離しシオンの顔を見ると目は赤黒く染まり、焦点があわずどこを見ているかわからない状態だった

さらに腕や首に黒い痣が浮かんでいた

それはかつて人々を苦しめた黒蛛病の痣に酷似していた

そして不意にシオンの体から力が抜け体を私に預けてきた

「、、、」

彼が暴れている間このままアラガミ化してしまったらどうしようかと思っていたがその心配は必要なかったみたいだ

が、そのまま意識を失い体と心に傷を負ってしまった

これまで暴れるシオンをオロオロしながら成り行きを見ていたサカキ博士がふと疑問を口にする

「ここまで不安定になってもアラガミ化しないのはなぜだ?いや、もちろんここでアラガミになってもらっても困るが、ここまで感情が荒れて制御できない状況で、、」

ブツブツと独り言ちるサカキ博士をよそに私はシオンを抱きかかえる

さすがに外までシオンの叫び声は聞こえていたらしく、慌てた様子でブラッドの仲間が部屋に入ってきて心配してくれる

このとき私の心の中はシオンに対する申し訳なさと、幼い少年が狂ってしまえるこんな世界への怒りで溢れていた

 

 

 

 

 

 

僕は目を覚ますと真っ暗な部屋にいた

「、、、」

体は重く指一本も動かせそうにない

天井の電気は消えていて周りは真っ暗だ

そういえばこの部屋、窓はないんだ

おかげで今が昼か夜かは分からない

暗い部屋の中で僕は独り呟く

「アラガミ、、、」

僕はアラガミ、もう今はすんなりと理解できてしまう

夢の中で聞こえた声

きっと僕じゃない何かがいるんだろう

ここでいろいろ考えるとまた狂ってしまいそうで僕は考えるのをやめてもう一度深い眠りにつくことにした

 

 

 

 

 

僕達はシオンからいろいろなことを聞きたかったが、僕はシオンとの面会は絶望的、ほかのみんなも下手なことを聞いてまたシオンを暴走させてしまう恐れがあるので情報はゆっくり聞き出す方針となった

しかしいつ落ち着いた状態で話し合いができるか分からないシオンを待ち続けるほどの余裕はゴッドイーターたちにはなく、新たに発見された食べ残しやその周りに群れるアラガミたちの処理に追われる日々が続いた

ある作戦の帰り道

「なぁ~ヒロ~、いったいいつになったら食べ残しの張本人、いや張本アラガミさんは出てきてくれるんだよー。お母さんに食べ残したらダメって言われなかったのかよー」

口をとがらせこの作戦に疲れてきたロミオが不満をもらす

「確かにこれだけ長期にわたって作戦を展開しているのにこれといった手掛かりは見つかっていない、、おそらくその張本アラガミさんはただものじゃないってことが分かるくらいだね」

この日の作戦はほかのみんなとは別行動でロミオと二人だけだ

作戦も順調に終わりそんな無駄口をたたく余裕はあった

討伐したアラガミのコアも回収し終わり帰還の準備をしていると

「ゴァァァァァ!」

「「!?」」

少し離れた位置からアラガミの叫び声が聞こえた

「なんだなんだぁ!?この辺のアラガミは全員やっつけただろ!?」

「ああ。ヒバリさん!近くにアラガミの反応は!?」

「あ、ヒロさんお疲れ様です。先ほど全討伐対象の駆逐を確認したので周りにアラガミはいないですよ?」

「うっそぉ!?じゃあ今のは何なんだよ!」

思わず叫んだロミオの言葉に同意しながらありうる状況を考える

僕達の状況をみて冗談を言うことなんてヒバリさんがするはずないだろうし、オペレーターが冗談なんか言ったら現場のゴッドイーターの命に関わる

じゃあレーダーの故障?それこそ死活問題だ

整備のリッカさんの腕を疑う訳じゃない

現にさっきまでレーダーは機能していた

「、、、レーダーにうつらない、アラガミ、もしくはアラガミじゃない?」

出てきた答えに自分でも鼻で笑ってしまいそうだったが、今はそれくらいしか思いつかない

「ロミオ、確認に行くよ」

「うげっ、まぁそう言うと思ったけどさー」

神機を構え警戒態勢をとり、声が聞こえたほうに向かって進む

「ヒバリさん、作戦終了後、おそらくアラガミと思われる叫び声を確認しました。だけどレーダーにそれらしきものはないんですよね?」

「はい!アラガミの影は確認できません!」

「今から対象の調査に向かいますもしレーダーに変化があれば報告をください!」

「わかりました!くれぐれもお気をつけて!」

通信が切れ意識を現場に戻す

「あっちだな」

先ほど聞こえた声を頼りに神機を握りしめ向かう

「ガァァァァ!」

「まただ」

確かに近づいている

強い緊張感をもってじりじりと進む

「おそらくその角を曲がった先だ。ロミオ、一気に行くぞ!」

「ちょ、ヒロ!待てって!」

角を曲がった先に居たのは、

「、、ヒト?」

二足で直立し二本の腕が生え頭と思われる部位が胴体の上に乗っている

向こう側を向いており顔は確認できないが、その姿はヒトといって差し支えなかった

こちらの声に反応してバッと振り向く

その正面をみて僕たちは絶句した

ヒトならば顔があるはずの場所に、目も鼻も口もなくただただ肌色が見えるだけ

そして彼のお腹には大きな口が開いておりそこからはヒトの腕のようなものが出ていた

その腹の口は大きく咀嚼を繰り返し、その腕をすべて飲み込み尽くした

「な、なんだこいつ!?」

あまりに奇怪な姿に息をのむ

「ガァァァ!!」

こちらをどうやってか知覚しいきなり走り出す謎の生き物

腹の大きな口をあけこちらを喰らわんとするそれはアラガミのようで、、、

「ふっ!」

その突進をバックステップで避け、避けざまに一閃、腹の口を引き裂く

口がぱっくりと横に裂け赤黒いちをボタボタと零し腕でおさえる謎の生き物

「今だ!」

ロミオの手にある神機から放たれた弾丸は真っすぐそいつに向かって飛び命中かと思われた

いや、確かに命中した

だが効いていない、喰らってしまった

その大きな口ですべての弾丸を受け止め喰らってしまった

「喰った!?」

その出来事に戸惑いを隠せないロミオ

謎の生き物は弾をかみ砕き飲み込む

するとみるみる口の傷が治っていき何もなかったように口は元の形に戻った

「治った!?」

さっきから驚きの言葉しか出ないロミオを置いて僕は走った

弾は喰えるみたいだが、剣は届いた!

血の力、ブラッドアーツを発動し一気に加速する

紅く煌めく刃は絶対的な一撃になるはずだった

「なっ!?」

喰われた

謎の生き物を切り裂き通り過ぎたと思ったが僕の神機の剣先は無くなっていた

「ゴリッ、ボリッ」

後ろから聞こえる咀嚼音

「ゴフッ!?」

「ヒロ!?」

僕の口から血が流れた

どうして?

そう思って自分の体を見下ろす

脇腹が無かった

僕の脇腹は、謎の生き物の右手に収まっていた

そこでようやく痛みを感じ、僕は地面でのたうち回る

「ぐううぅう、、」

一気に脂汗が流れ、それ以上に血が脇腹から出ていく

「おい!ヒロ!」

ロミオの声もぼんやりとしか聞こえない

かすむ視界でこちらに駆け付けるロミオを見てかすれた声を出す

「、、う、う、、ろ」

うしろ

そう言いたかった

ロミオの後ろには口の両端を吊り上げたそいつが立っている

僕の判断ミスだな、、

朦朧とする意識の中自責の念と、反省が行き交う

ロミオがそいつの口に収まろうとしたその瞬間に、そいつの体は吹き飛んだ

なんで?誰が?

「大丈夫?」

それが僕が意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった

 

 

 

 



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