仗助に双子の姉がいたらというもしも パート4  第五部へGO! (蜜柑ブタ)
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黄金から奪ってしまったソメイヨシノの花

第二部と第三部タイムスリップした前提なので、他の混部シリーズをお読みにならないと分からないかも。



第二部編で、シーザーを生存させているので、この時間軸で生きています。(この話ではまだ未登場。名前のみ)

シーザー→東方ミナミ描写有りです。注意!!


 2001年。イタリアにて。

 

「ちょっと早かったかな?」

 腕時計を確認し、東方ミナミはオープンカフェの席で、フウッ…とため息を吐いた。

 

 彼女は待ち合わせをしていた。

 イタリアを故郷とするシーザー・A・ツェペリ(70越え。※波紋使用)から誘われたのだ。旅行券が手紙と共に送られてきて、一緒に入っていた地図に従ってこのカフェにやってきた。

「…にしても……。」

 観光地として有名なのは知っているが、観光客の多いこと。あと、イチャコラしているカップルも多い。

 それに自分にさっきからチラチラと目線を向けてくる男も多い。

 ミナミは、自分が人目を引く容姿であることは自覚しているが、しつこいのは嫌いだし、安易にナンパしてくる男はもっと嫌いだ。

 

「ヘイ、彼女。お一人かい?」

 

 そうこうしているといかにもな男が話しかけてきた。

「待ち合わせしてるんです。」

「イタリア語お上手だね。旅行に来たのかい?」

「関係ありません。」

「まあ、そう言わずに。」

 相席に座ってニヤニヤしてくる男に、ミナミはムスッとする。

「アナタみたいなタイプは嫌いです。」

「オウ…、気の強い女性は嫌いじゃないぜ? 今から一緒に観光地でも回らない? 俺地元民だからガイドブックに載ってない美味しいお店知ってるぜ?」

「どっか行ってください。そして……、そこの不届き者!!」

 ミナミは、テーブルに置いてあったカップを掴み、後ろに向かって剛速球で投げた。

 非常に美しい金髪の少年の後頭部にカップが命中。

 青年はミナミの旅行鞄を持ったまま倒れた。

「アワワワ!」

 いきなりのことに驚いたナンパ男は慌てる。

 ミナミは立ち上がり、ズカズカと倒れている少年から旅行鞄を奪い返す。

「…っ……。」

 頭を押さえながら起き上がる少年を、ミナミは見おろす。

「ふ~ん、どえらい美少年ね。」

 顔を見てミナミは、まずそう思った。

 美しい金髪だけじゃなく、顔立ちも良かった。美少年という他ないほどの逸材だ。なんていうか、キラキラした光りが見えそうなほどだ。

「さっきの男とは共犯?」

「…違いますよ。」

 少年期から青年期へ変わっていく過程なのか、声も高くなく低すぎない。

「あっそ。じゃあ、カップ代は取らないからそれでチャラしてあげる。」

「けど、隙だらけですよ。」

「それ、玩具のお金。」

「!」

「アハハハ! まんまとダマされてやんの!」

 一瞬のすきにミナミの鞄から財布を抜いたジョルノだったが、してやったりという顔をして笑うミナミに唖然とした。

「観光客だからって舐めてたら痛い目みるよ?」

「やれやれ…、狙った相手を間違えたな。」

「そういう日もあるよ。」

「あなたは…随分と変わってますね? 置き引き犯にそんな笑い顔見せます?」

「なんだろうね…。不思議とアナタには、悪い気を感じないの。奇妙だけど。」

「それは、褒め言葉として受け取っておきますよ。」

「じゃあね。」

 苦笑しつつも爽やかな空気を醸し出す美少年が去って行き、ミナミはその後ろ姿に手を振って見送った。

 その時だった。

「…………………あれ?」

 さっき少年が倒れた場所に、小さな花を付けた小さな枝が落ちていた。

「あ…………!」

 慌てて拾い確認して、ミナミは、ザーーっと青ざめた。

 

 それは、ソメイヨシノの花だった。花を10個ほど付けた小さな枝だった。

 アスファルトからニョロリッと、自身のスタンドである、鮮血色の植物の根っこの姿をしたブルー・ブルー・ローズが姿を見せる。

 

「あ、あ…、ああああああああああああああ!!」

 周りを大慌て見回しても、もうあの少年の姿はどこにもなかった。

「店員さん!」

「は、はい!?」

「この写真の人が来たら、ちょっと遅れるからって伝えといてください! あっ、これ依頼金。」

「えっえっ?」

 ミナミは、シーザーと撮ったツーショットの写真とお金を渡し、旅行鞄を担いで全速力で走って行った。

 

 

「マズい! 非常にマズいって! なんでよりにもよってソメイヨシノ!? なんで桁単位で寿命取っちゃってるのよ、私のスタンド!!」

 

 

 

 スタンド、ブルー・ブルー・ローズ。

 

 東方ミナミのスタンド。

 

 生命の寿命を奪い取り、1年分を青いバラの花。一桁をソメイヨシノの花に変えてしまう能力を持つ。

 

 生死を操る、その強大な力故に本体であるミナミにも制御困難で、勝手に動くため、今回のようなうっかりがたまにある。

 

 

 つまり、一人の人間の寿命が90年としたら、ソメイヨシノの花として一桁の寿命を奪われた美少年……、ジョルノ・ジョバァーナは、現在、10年以下の寿命しか残っていないのだ。最長でも9年以内に花を戻さなければ、9年過ぎに確実に死ぬ。

 青いバラの花と違い、ソメイヨシノの花は、本来の持ち主が死ぬと散ってしまい、二度と戻らないのだ。

 

 

「どこにいるのーーーーーーーーーー!!」

 

 ミナミの絶叫がイタリアの町の中で響き渡った。

 

 

 

 

 これは、康一が承太郎に頼まれてイタリアに来る1日前のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 




以下、ブルー・ブルー・ローズの新設定。



ソメイヨシノの花(↓)


・桁単位で寿命を縮めさせる、ブルー・ブルー・ローズのもう一つの能力。

・第二部編で判明した能力で、究極生命体となったカーズを、ウィルス・細菌レベルまで退化させた。これは、究極生命体となって死を超越してしまったため寿命での死が無くなり、代わりに縮められた寿命の中で永遠に輪廻を繰り返すこととなったため。

・他の生命体に使うと、桁単位で寿命が縮まる。(10→1)

・なお、どれだけ桁を縮められても0にはならない。1以下の短命にはなるが。

・本体であるミナミの手で戻さない限り縮まった寿命は戻らない。また他人に与えることはできない。ミナミ以外が戻そうとしても戻らない。

・持ち主が死んでしまうとソメイヨシノの花は散ってしまい消滅する。


つまり、ソメイヨシノの花を奪われてしまったジョルノは、現在10年以下の寿命状態。最長で9年以内に戻さないとどうあがいても死ぬ。

ここから、ミナミが必死になってジョルノに寿命を返すために探し回ります。


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康一と合流

勢い大事。
とりあえず書けるところまで行く。


ジョルノがブチャラティと戦ったところはカット。


1日が過ぎて、ジョルノに荷物取られた康一と合流します。


 

 

「お姉さんどうしたの? 泣いてるの?」

「…心配してくれてありがとう。泣いてるわけじゃないの…。ほら、ママの方に帰りなさい。」

 町の街灯の根元辺りで顔を両手で覆ってしゃがみ込んでいるミナミに、子供が心配そうに話しかけてきた。

 ミナミは、顔を上げ微笑んで見せた。

 子供がいなくなった後、ミナミは、ハ~~~っと息を吐いた。

 実は、あの美少年からソメイヨシノの花をうっかりで取ってしまってから、24時間以上が経過していた。つまり翌日なのだ。

 あの改造した制服のような格好からするにもしかしたら学生という可能性を考えたが、学生ならば動く時間帯は日の出ている午前から午後頃のはずだ。

「はあ…、まだ花は散ってないから生きているのは間違いけど…。」

 置き引きをするような人間だ。理由はどうあれ、社会的には良くない分類の人間なのだろうことは容易に想像できる。

 しかし、それにしてもずいぶんと爽やかな空気を纏った美少年だった。なんというか…、美しい金髪も相まってキラキラと金色に光っているような…そんな印象だった。あんな綺麗な人間はそうそういるものではない。

「どうしよう…。」

 自分のブルー・ブルー・ローズが導いてくれないし、完全に手詰まりだった。

「SPW財団に頼む? いやいや、こんなことで頼ったら確実に承太郎さんに説教されちゃう…。なんとかしないと…なんとかしないと…。寿命が減ったせいで彼が死んじゃったら目覚めが悪すぎるよ。」

 

「ミナミ…さん?」

 

「えっ?」

 顔をあげると、そこにいたのは、友人の広瀬康一だった。

「康一君!? なんでここに!」

「それはこっちの台詞だよ!」

 その時、康一の腹の虫が鳴った。

 カーッと赤面する康一。

「…なんか事情があるみたいだけど、とりあえず何か食べる?」

「僕…今お金が無くって…。」

「奢るよ。」

「すみません…。」

 すぐそこのオープンカフェでサンドイッチを買い、康一はやっと腹を満たせた。

 そしてお互いにどうしてイタリアにいるのか話した。

「シーザーさんが? でもひとりだよね、今。」

「ちょっとね…。それにしても承太郎さんがその汐華初流乃(しおばなはるの)って男の子の皮膚をね…。」

「あ、ミナミさん。金髪で改造した学生服を着てる、なんか爽やかな感じの奴見なかった?」

「金髪で、改造学生服…、爽やか…? あれ? なんかすっごい心当たりが…。」

「知ってるの!?」

「昨日、そいつに置き引きされかけた。ま、頭にカップぶん投げて倒したけど。」

「僕、そいつに荷物も全部持ってかれちゃって無一文なんだよ~。パスポートも無くって帰れないし…。」

「うわ、災難…。」

 康一は何かと災難に巻き込まれる体質しているんじゃないかという疑惑が浮上してくる。

「あのミナミさん、お金、帰ったら返しますから。」

「いいよ、別に。こういう大変なときはお互い様だよ。」

 ミナミがそう言って笑ったときだった。

 

「あっ……。」

 

「へっ?」

 康一の後ろの方のテーブル席に、あの美少年がいた。なんか手元に札束。

「! ああーーー、お前!!」

 振り返った康一が叫ぶ。

「わぁお、こんな近くにいたなんて…。」

「僕の荷物を返せ!」

「すまない…。もう売りさばいてしまってね…。頼むから追って来ないでよ。これ以上は。」

 そうすまなさそうな顔をして立ち上がる美少年は、背を向けて逃げどうしたが。

 直後、康一がエコーズAct3を発動させて美少年の右手をテーブルの上に叩き付けさせた。

「こ、これは!」

「ナーイス、康一君。そのまま拘束しといて。」

 ミナミは懐からソメイヨシノの花のついた小さな枝を取り出し美少年に近寄ろうとしたが、直後エコーズAct3の重たくなる能力によりテーブルが倒れ、美少年がタイルのような歩道に倒れ込もうとした。

 その瞬間。

 

「ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)!!」

 

 一瞬。一瞬だったが、何かスタンド像らしきものが現れた。それは康一にも見えていたらしく、それに気を取られた隙に美少年がその場から消えた。

「み、ミナミさん…、い、今…。」

「うん。スタンド? 彼はスタンド使いなのかな?」

 

 スタンド使いは、引かれ合う。

 

 それは、まるで小指の赤い糸のように。

 

 荷物を奪われたことによる怒りもあり先に正気づいた康一が美少年を探してすぐそこの曲がり角を曲がっていった。それに気づいたミナミも後を追った。

 そこには誰もおらず、けれど、一本の木が立っていた。

 とてもじゃないがむき出しの地面も、路上に植えられた植木も無いこの町に不自然な木だった。

 見上げると、そこにあの美少年がいた。まるで木の枝に持ち上げられ守られているように。

「……もういっぺん言うけど、追って来ないでよ。本当は一度言ったことを二度も言うのは嫌いなんだ。なぜなら二度言うことは無駄だからだ。君の人生のために言うけど、無駄はやめた方が良い。」

「叩き落とせ! Act3!」

「待って! 康一君!」

 ミナミが止めに入ろうとした遅く、エコーズAct3が美少年が乗っている木を攻撃した。

 その瞬間、康一の身体が倒れ、タイルのような歩道にめり込んだ。

「えっ? な……なんで? これは、僕の…?」

「康一君!」

 ミナミが康一を助け起こそうとしたが、Act3の重たくなる能力によりとてもじゃないが起こせなかった。

 そうこうしている内に、木の上にいた美少年が屋根の上に移動した。

「同じような能力…。しかし僕に対するその攻撃…。僕は君の荷物を盗んだのに、手加減していたことが君のダメージを見ると逆によく分かる。君は…『いい人』だ。」

「待って!」

「そして、アナタも…。」

「待ってよ! 私はアナタに…。」

 しかし、美少年は去って行ってしまった。

「あーーーもう…。無駄なことが嫌いなのは分かったけど、人の話ぐらい聞けっての! あなたの為なのに!」

「あの、ミナミさん? いったい何が?」

「…うっかりやらかしちゃったのよ。」

 そう言ってミナミは、ソメイヨシノの花のついた枝を見せた。

「あっ! まさか、それって!?」

「そう…、やっちゃったの…。さっきの彼の…一桁分の寿命だよ。」

「ジョルノ・ジョバァーナから取っちゃったの!?」

「…じょるの?」

「さっき話したよね? 汐華初流乃のこと…、彼はイタリアではジョルノ・ジョバァーナって名乗ってるみたいなんだ! 名前の雰囲気が似ているからもしかしって思ったけど…、それに髪が黒から金髪になってるみたいだし、最初は本人だって分からなかった。」

「はるの…、しょるの? …じょるの? ……なるほど。」

 なんて無理矢理感がある改名だ…っとミナミは思った。

「承太郎さんに連絡しないと…!」

「私は、ジョルノを探しに行く。」

「えっ!? 待って、ミナミさん! 危険だ! さっきも見ただろ! 僕のスタンド攻撃をそのまま返してきたんだ! どういう能力かは分からないけど危険すぎる!」

「返すだけだよ。返せばすぐ帰るから。シーザーさんも待たせてるし。」

「じゃあ、せめて僕も着いていくから、単独行動はしないで!」

「ありがと。」

「じゃあ、一旦あそこの電話ボックスで承太郎さんに連絡するから待っててくれる?」

「分かった。」

 そして電話ボックスへ。

 康一にお金がないのでミナミが電話代を払い、承太郎に繋げる。

 康一が電話に出た承太郎に、“結果”を話していく。康一がイタリアに来た最大の目的である汐華初流乃の皮膚を一部取ってくる任務だったが、偶然にも到着初日の空港で、金髪の姿へと変じていたことや、そして名前の発音のせいでジョルノ・ジョバァーナという名で通っていることなどで本人だとすぐに分からなかったこと。

 そしてなによりスタンド使いであり、その能力はまったくの未知数であったことなどを伝えた。

 康一は、ヤバいことならもう帰りたいと伝えていた。調査のついでにバカンスということでイタリアに来たのだがこんなことになってはたまったものじゃない。

「あ、あと、イタリアにミナミさんがいます。偶然出会えて今ここに一緒にいます。」

『なに? なぜいる?』

「シーザーさんから誘われて送られてきた旅行券で来たそうです。昨日。それでちょっと問題が起こったらしくって…。」

『問題? 何をしたんだ?』

「汐華…、ジョルノ・ジョバァーナの寿命を取っちゃったそうです。一桁分。」

『! まさか返そうとしているのか?』

「そうみたいです。」

『悪いことは言わない。ミナミにこう伝えてくれ。汐華初流乃…、ジョルノ・ジョバァーナには接近するなと。』

「どうしてです?」

『日本国外に出ないだろうと勝手に思っていたこちらのミスだ。ミナミに代わってくれ。』

「えっ? あ、はい。ミナミさーん。…あれ? い、いない! あっ。」

『どうした!?』

「……お金が入った小袋とメモ書きが…、えーと…『ブルー・ブルー・ローズが導いてくれそう。もしもの為にお金半分渡しておきます。もしシーザーさんに会ったらもうちょっと待っててねって伝えといてね』…って書いてありますけど…。す、姿はもうどこにも…。」

『…すぐにSPW財団にミナミの保護を依頼する。君はこれから手配するホテルに行ってくれ。』

「で、でも…!」

『もしジョルノ・ジョバァーナに接触することになっては君の身に危険が降りかかる可能性がある。……現時点で彼が敵なのか味方なのか分からない以上はな。』

「どうしてそこまでミナミさんとジョルノ・ジョバァーナを接触させたくないんですか?」

『……ジョルノ・ジョバァーナは、DIOの息子である可能性がある。』

「…DIOって…、あの弓と矢と関係している?」

『康一君、君にジョルノ・ジョバァーナの皮膚の採取を頼んだのは、彼が本当にDIOの子であるかどうか、そして少なからずDIOの肉体の要素を受け継いでいるかどうかを調べるためだ。』

「でも、確かDIOの首から下は、ジョースター家の血統だったはずじゃ? つまり…。」

『康一君。もしジョルノ・ジョバァーナがDIOの意志を少なからず継いでいて、人伝いにでもミナミの能力のことを知っているのだとしたら……、分かるね?』

「あっ……。」

『知らない可能性もあるが、悪い可能性が否定できない以上、ミナミをジョルノ・ジョバァーナに近づけさせるわけにはいかない。』

「それなら余計に早く見つけない! ただホテルで待ってるなんて…。」

『康一君! こういうときぐらい言うことを聞くんだ!』

「分かってます! でも、今ミナミさんは単独行動状態なんですよ!? せめて財団の応援が来るまで守りますから! 切りますね! 急いで迎えをよろしくお願いします!」

『康一く…。』

 そして康一は一方的に電話を切った。

 康一は、フウッと息を吐き、己を落ち着かせようとする。

「危険だってことは、十分承知の上! 仗助君から聞いてる…。DIOがかつてミナミさんの力(スタンド)を狙っていたことも! 生と死を操り、絶対的な死を回避できる力を持ったスタンド、ブルー・ブルー・ローズを悪用させるなんてあっちゃいけないんだ!」

 康一は、ミナミが残したお金が入った小袋を拾い上げ、走り出した。

 

 

 

 




ミナミがイタリアにいたのは承太郎も想定外。
ブルー・ブルー・ローズの力を悪用する可能性を危惧してミナミを止めようとしたが遅く……、ブルー・ブルー・ローズの導きに従ってミナミ単独行動。
康一は、ミナミを守るため意を決して探しに行く。



次は、ブラック・サバスとの戦いになるかな?


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影のスタンド

ブラック・サバス戦。


あと、オリジナル展開な戦いかも?


でも清掃員のお爺さんは死ぬ……。


 歩道をピョコピョコとちょっと出ては引っ込み、一メートル程度の間を開けて前でまた出てくるを繰り返すブルー・ブルー・ローズ。

 やがて広い学校らしき場所に来た。

 生徒達がチラホラおり、門の所にいるミナミに視線が集まる。

「あの。」

「へ!? は、はい? なんですか?」

 近くにいた男子生徒に聞いた。

「ジョルノ・ジョバァーナって生徒さん、ここにいる?」

「ジョルノ? ああ、いますよ。アイツになんか用で?」

「ええ、とても大切な。どこへ行けば会えるかな?」

「さあ? アイツ今日授業に出てないからな…。」

「そう…。じゃあどこかで待ってれば帰ってくるかしら?」

「そうですね。」

「じゃあ、待つわ。ありがとう。」

 そしてミナミは待つことにした。

 それからしばらくして鐘の音が鳴り、授業が終わったことを告げる。そして寮に住む生徒達と実家暮らしの生徒達が別れて下校し始める。

「……遅いなぁ。」

 なにかあったのだろうか?っと、自分の勘が告げる。

 

 ジョルノに会えると思いちょっとホッとして気が抜けたミナミは、自分の容姿が悪目立ちすることを若干忘れていた。

 なので遠目で見つけたジョルノが自身のスタンドで学校の塀を越えて別の場所から寮に戻ったことを知らなかった。

 

 ギャング組織・パッショーネに入団するための試験で、ライターの炎を24時間消さずにいなければならないという試練を受けていた。

 なので炎を消さないために必死である。だからミナミと接触を避けた。なんで自分をここまで追ってきたのかその理由を考える余裕は無かった。

 

 ギャングスターになること。それがジョルノの夢だから。

 

 やがて生徒達がいなくなり、日も徐々に落ち始めた時間帯。

 さすがに帰ってこないジョルノについて不信に思った

 そして校門から中を覗くと、ピョコッと地面からブルー・ブルー・ローズが出てきていた。

「…そっち?」

 ミナミは、自身のスタンドの導きに従い学校内に入った。

 人目を避けて寮らしき場所に入り、ある一室の前に来た。

 扉の向こうに人の気配がある。ジョルノだろうか?

 とりあえずノック。

 しかし、直後ガチッと鍵を掛けられた音がした。

「ちょっと! 待ってよ! 用件が済んだらすぐ帰るから!」

 

『……しつこいのは嫌いなんだ。』

 

「誰が好き好んで置き引き犯をストーカーなんてしないわよ!」

『悪いが、今は誰とも会いたくないんだ。できたら明日にしてくれよ。』

「明日死んでも知らないからね!」

『…どういうことです?』

「じゃあね。もう知らないから。」

『ちょっと待ってください。』

 扉の向こうから声が聞こえる。扉のすぐ向こうにいるのだろう。

「話してもいいけど、ここを開けて。あなたに直接戻さないといけないから。」

『なにを?』

「いいからここを開けて。それですぐに終わるから。そしたら私はアナタの前から消える。」

『…アナタは変な女だけど悪い人じゃない。けれど、僕も僕で色々とあるんだ。ここを今開けるわけには…、?』

「どしたの?」

『なんだ…コレは? 文字?』

「えっ?」

 

 直後、ビュオオオオオオオオオオオ!っという凄まじい風が扉の向こうから聞こえた。部屋の中でガタンだのゴゴン!だのと酷い音が聞こえた。

 

「ジョルノ!?」

 

「ミナミさん!」

「えっ、康一君!? まさか康一君が…。」

 文字と音。これが意味することが、正しければ、これは、康一のエコーズAct2の能力だ。文字の擬音を張り付け、その擬音の現象を起こす能力だ。

 そして…、走ってきた康一の横には、エコーズAct2が浮いていた。想像は当たったらしい。

「ミナミさん、無事!?」

「えっ? どういうこと? っていうか、ジョルノ? だいじょうぶ!?」

「早くココを離れよう!」

「えっ…えっ? で、でもまだ…。」

「いいから!」

「あっ!」

 ミナミは、康一に手を掴まれ引っ張られていった。

「待ってよ!」

「ミナミさん、ダメだ! アイツに…ジョルノ・ジョバァーナに近づいたら…。」

「理由はどうあれ、返さないと寝覚めが悪いのよ!」

 ミナミは、康一の手を振り払ってジョルノの部屋の扉を開けた。

 中は豪風によりちょっと小物や小さい家電、本などが飛んでしまっていて汚くなっていたが、そこにジョルノの姿は無かった。その代わり、窓が開いていた。

 慌てて窓の下を見ると、二階下の通路に降りて階段から降りようとしていたジョルノが、清掃員の老人に水を掛けられてしまったのか濡れていた。

「じょ…。」

 なぜかぼう然と立ち尽くしている様子を訝しみながら名前を呼ぼうとしたとき、見かねたのか老人がジョルノが手にしていたライターを点火した。

 その瞬間、黒いスタンドが出現し、影へと身を隠したのを見た。

「今のは…。」

「ミナミさん!」

「康一君…いま…。あっ…。」

 少し目を離し視線を戻したとき、あの黒いスタンドが老人から魂を引きずり出し、口の中の矢らしき物で貫いたのを見た。

 

『これは、選ばれし魂ではなかった。』

 

 黒いスタンドはそういうと、老人を投げ捨てた。

 ジョルノがその老人を受け止めて声を掛けたが、老人は死んでいた。

『お前も、再点火したな。チャンスをやろう! 『向かうべき二つの道』を!』

 黒いスタンドが今度はジョルノに手を伸ばした。ジョルノは飛び退き、手すりの上に逃げた。

 すると黒いスタンドは、ジョルノの影に触れ、それを掴み、ズルズルとまるでシーツでも引っ張り上げるようにジョルノからスタンドを引きずり出した。

「あれは!?」

「なにかマズい状況だ! 早くここを離れないと…。」

 やや遅れて窓の下を見た康一がそう言う。

「でもジョルノが…。」

「今はミナミさんの身の安全が第一だよ!」

「ねえ、どうしてそこまでして…。」

「う、ぉおおおお!」

「ジョルノ!」

 強力な力で首を押さえつけられたジョルノのスタンドが、黒いスタンドの口から飛び出している矢を掴むと焼けるように崩れるようにジョルノのスタンドの手にダメージが行っていた。

「本体を探して! ブルー・ブルー・ローズ!」

 その瞬間、通路や手すりから鮮血色の植物の根っこの姿をしたミナミのスタンド、ブルー・ブルー・ローズが出現する。

 ブルー・ブルー・ローズは、黒いスタンドの本体を探すのではなく、黒いスタンドに巻き付いてジョルノから離させようとする。だが相手はまったく気にしている様子が無い。

「パワーがアイツの方が強いんだ! ブルー・ブルー・ローズじゃ太刀打ちできないんだ!」

「本体は…、本体は…どこ?」

 ミナミは、目をつむりブルー・ブルー・ローズの広範囲に出現できる能力を探知してみる。

 すると、約5キロ先にある建造物内に本体らしき反応を見つけた。

「あんな遠く!? じゃあ遠隔操作型!? でも青いバラが出てないってことは、繋がってない…。つまり自動操縦型!」

 これは割と最近になって判明したことだが、ブルー・ブルー・ローズは、傷つけた相手から寿命を奪えるが、自動操縦型などの、本体との繋がりが皆無なスタンドからは寿命を奪えない。つまりあの黒いスタンドが自動操縦型なら、ブルー・ブルー・ローズじゃ倒すことはできないのだ。本体そのものを直接叩く以外には…。

「でも…。」

 ミナミは、ドッと汗をかく。

 ブルー・ブルー・ローズで無意識に命を奪ってきた。だが自分の意志で全てを奪い尽くしたことはない。

 ミナミが迷っていると、ブルー・ブルー・ローズが同化したことで脆くなっていた通路の手すりが崩れて、ジョルノが身体ごと落下した。それに引っ張られる形でジョルノのスタンドも落下したのだが、ジョルノのスタンドを掴んでいた黒いスタンドは、急に手を離し影の中にぼう然と立った状態になった。ジョルノの身体は下に生えたブルー・ブルー・ローズがクッションになってダメージは無かった。

「あれは…?」

 自動操縦型には特性はある。

 それは、単純な行動しか出来ないことだ。ロボットのように。

 そしてスタンドには、決定的な弱点があるものもいる。ジョルノのスタンドを押さえ込んでいて急に手を離すのはおかしい。

 そういえばあの黒いスタンドは何か言っていなかった?

 『再点火』。

 そういえばジョルノは火が消えたらしきライターを持っていたが、それを死んでしまった老人が生きているときに点火し直した。

 もし、それがあの黒いスタンドが出現する条件なのだとしたら……。

 さらに、今あの黒いスタンドは、影の中に立っている。光に照らされている場所には移動しようとしていない。

 これらのことから……、あの黒いスタンドの正体は、ライターの火から生まれた影そのものであり、影であるため影の中でしか活動できないと見た。

 だから弱点は……。

 閃いた瞬間、それに反応したブルー・ブルー・ローズが伸びて影を生み出す。

 すると影の中に引っ込んだ黒いスタンドがその影の中を移動しているのだろう、その瞬間に、ブルー・ブルー・ローズが消えて黒いスタンドが光に照らされたレンガ造りの路面に放り出された。

『ギャアアアアアアアア!!』

 黒いスタンドがジュージューと光に焼かれ悶え苦しむ。ジタバタと暴れていると近くの影に触れたためそのまま吸い込まれるように影の中に消えた。

「ああ、惜しい!!」

「今のは…、あなたが?」

 ジョルノがブルー・ブルー・ローズの上からどきながら窓を見上げる。

「ーーハッ!? ミナミさん、横だ!」

「あっ!」

 影を伝って黒いスタンドがミナミを掴もうと手を伸ばしてきた。

『再点火したな!? チャンスをやろう! 向かうべき二つの道を!』

「Act3!!」

 康一がエコーズAct3で黒いスタンドを重たくし、ミナミを掴むのを防いだ。

「ごめん、康一君! 舌噛むから口閉じて!」

「えっ? うわわ!?」

 ミナミは、康一を抱えて窓から飛び降りて綺麗に着地、ジョルノのいる光りの方へ走った。

 影から出てきた黒いスタンドが、ミナミの影を掴む。しかし…。

「私を狙ったのは…、不正解だったね。」

 掴んだ影と入っていた影がブルー・ブルー・ローズへと変化して光りが黒いスタンドを襲う。

 苦痛の叫びを上げる黒いスタンドが影に逃げ込もうとすると。

「Act3!!」

 康一が重たくして拘束し。

「関係のないあの爺さんを巻き込んでしまったのは僕の行動が原因だ…。だが……。」

 凄まじいラッシュをジョルノのスタンドが放ち、拘束されて動けないでいる黒いスタンドを襲いボロボロに砕いた。

 そして黒いスタンドは、塵になって消えた。

「ミナミさんのスタンドが物質同化型だったのが功を奏した。まさか影まで無機物判定だなんて…。ミナミさん?」

「…ごめん……、無理…しすぎた…。」

「ミナミさん!」

「どうしたんだ!?」

「彼女のスタンドは本体である彼女の身体に負担が大きいんだ!」

「…そうなのか。」

「……君は、この人を知らないのかい?」

「知らないもなにも、昨日ちょっとしたことで出会ったっきりだよ?」

「そういえば、置き引きされたって言ってたなぁ。……知らないならそう伝えるよ。それより、早く矢のことも伝えなきゃ! またあの町のようにスタンド使いが増えて犠牲者が増えるなんてことがあったら…。」

「待ってくれ。まさか電話でどこかに電話を?」

「そうだよ。何か問題でもあるの?」

「それは…困る。」

「どうして?」

「さっきやっつけただろう? スタンドを…。」

「君はどうやら知らないらしいね。あれは自動操縦型だ。ああいうタイプは、本体に全然ダメージがいかないんだ。それにスタンドがやってることも本体は何も知らないし、何も感じてない。」

「それは本当? 僕らがすでにスタンド使いだと言うことも?」

「しつこいなぁ。例えなにか感じたとしても、せいぜい右手が重くなったってぐらいにしか感じないよ。僕らがスタンド使いだなんて知らないんだ。」

「……つまり本体はまったくの無傷?」

「だからそう言ってるだろ?」

「…分かった信じるよ。でも電話はやめてくれないかい? 敵は個人じゃない。組織なんだ。電話なんてしたらどこからバレるか分からない。危険だ。」

「!」

 

 

 その後、ライターの炎を消さないよう注意しながら、ジョルノは気絶したミナミを運ぶため、タクシーを手配してくれた。(助けて貰ったお礼にということで代金も肩代わり)

 タクシーが来るまでの間、ジョルノは自分の夢がギャングスターであることを語ったものの、無関係の老人を巻き込み死なせてしまったことを心から悼んでおり、その姿と眼差しに、康一は、かつて出会ったジョースター家の黄金の精神を見出したのだった。

 ジョルノが去って行った後、ミナミが目を覚ましたが、ソメイヨシノの花を返し損ねていたことを知って、やっちゃった!っと頭を抱えて叫ぶのであった。

 

 




康一は再点火を見てないが、ミナミの方が見てるので攻撃対象に。
でもブルー・ブルー・ローズは、影をも物質同化で消し、ブラック・サバスを光の下に引きずり出す。

このネタ辺りの時間軸では、ミナミ、少しだけブルー・ブルー・ローズを操作する術を見出しているような、ないような……?
でも相変わらず負担は大きい。


なお、この後、カプリ島に行く船でのイベントは、カットで、カプリ島までミナミが追いかける予定。
もしくは、出港時に無理矢理乗ってくるとか?
まだ決めかねている……。

ところで、ジョルノの目って何色?
ジョナサン似で翡翠か、ディオ(人間時代)似で青か(だったっけ?)。もしくは金色?

アニメ画像見る限りでは、緑っぽい…。


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消えた矢

今回は、オリジナル展開。


第二部と第三部にタイムスリップした前提なので、そのシリーズを見てないと分からないでしょうが、原作キャラが一部生存していて、5部でのポルナレフの状況が違います。


 

 

 手配したホテルに保護していたはずのミナミが消えた。

 その報は即、承太郎の耳に入った。

「あの馬鹿伯母め…!」

 杜王町で一件から時間は経過していて細かいことは知らなかったが、どうやらいつの間にかシーザーから修行をしてもらって肉弾戦能力の強化と共にほんの少しだけブルー・ブルー・ローズの制御を体得したということだった。

 もっとも制御といっても、承太郎らのように戦闘本能によって制御するのではなく、呼びかけるように願って意思のあるブルー・ブルー・ローズに動いてもらう方法を見つけたということらしいが。今まで暴走状態だったことを考えるとかなりの進歩と言えるだろう。

「ミナミ…、お前の力は、人の運命を良い方向にも悪い方向にも覆し変えうる究極の力だ。誰にも独占させるわけにはいかない…、だが、かといってお前だけが抱え込んでもいい力でもない。その力の使い方を決定するのはお前の意思だけじゃダメだぜ。」

 承太郎は、自分のデスクの上で拳を握った。

 

 康一には、探しに行くことを禁じ、承太郎はSPW財団を通じてある人物達に電話を繋げた。

 

『オース、久しぶりだな、承太郎。』

「久しぶりだな、ポルナレフ。すまないが急を要する仕事を頼みたい。」

『…実はよぉ、俺らの方もお前に急報があってな、連絡しようとしてたところだった。』

「なんだ?」

『“矢”が消えた。』

「なに?」

『俺らがイタリアで回収した例のスタンドを生み出す矢だ。国外に持ち出したあと、SPW財団の研究機関に移送中に飛行機の荷から消えた! 防犯カメラに、見覚えがある赤い根っこが一部映ってやがったぜ!? それが意味することは分かるよな!』

「…ブルー・ブルー・ローズか。」

『アイツは今どこにいる!? あの根っこがブルー・ブルー・ローズなら…。』

「ミナミは、今、イタリアにいる。ブルー・ブルー・ローズの出現範囲から考えて、上空で飛行機がすれ違った際にブルー・ブルー・ローズが盗んだ可能性があるな。」

『俺らがメチャクチャ苦労して回収したってのによ! って、イタリアにいるのかよ、ミナミ!?』

「ああ…。」

『もしかして、急用ってのは…。』

「そうだ。ミナミを保護して欲しい。日本国外に出ないと勝手に思っていたこっちのミスだ。さっきの財団からの調査報告であったが、スタンド使いが急増している土地にミナミがいる。」

『ゲッ!? ってことは、俺らを追い立ててきたスタンド使いだらけのギャング組織が絡んでやがるのか!?』

「その組織にブルー・ブルー・ローズの能力がまだ流れていないはずだが、もし知られれば狙われるのは間違いないだろう。日本に連れ戻せなくても、せめてその組織の手の及ばぬところまで連れ出すなりしてもらいたい。財団の迎えを寄越す。」

『ミナミの奴…、なんか年々危機感が無くなってきている気がするぜ!?』

「おそらく焦っているのだろうな。…やらかしてな。」

『なにやらかしたんだよ!? 獅子の尻尾でも踏んだか!?』

「とある少年から寿命を奪ってしまったらしい。」

『あー、そりゃアイツなら焦るわな。どんだけ奪っちまったんだ?』

「一桁だ。」

『それってブルー・ブルー・ローズのもう一つの能力の方を使っちまったってことか!? どんなうっかりだよ!』

「事故なのか過失なのかは分からん。あるいはブルー・ブルー・ローズの一種の導きか…。矢を盗んだこともそうだが、おそらく盗んだことさえミナミ本人はまったく知らないことだろうな。康一君も、盗まれた矢については知らない様子だった。」

『その言い分だとまだ別に矢があるって感じるぜ?』

「ああ、どうやら矢を所持する、いや…矢を身体の一部としていたスタンドがいたらしい。そのスタンド使いはポルナレフ達を襲撃してきた組織のメンバーかどうかは分からないが、ギャングで間違いないだろう。」

『なるほどな。その矢を使って次から次にスタンド使いを量産してたってわけか…。だからあれだけスタンド使いがいたってわけか。』

「スタンドの覚醒は、悪人の方が覚醒しやすい。腐敗した人間達の跋扈する土地ならこれ以上無いだろう。」

『分かったぜ。ミナミの保護もだが、矢の回収もする。もちろん、そのコーイチくんってのが目撃した矢もな…。』

「すまない…。」

『謝ることないぜ。イタリアで一暴れしてきたからよぉ、こっちの方が土地勘がある。頼ってくれ。』

「ああ…。」

 承太郎はそこで一旦言葉を止めた。

 ミナミが、ジョルノ…、つまりDIOの息子である可能性のある人物から寿命を取ってしまいそれを返すべく追っていることを話すべきか悩んだのだ。

 もし、仮にである。もしジョルノがこちら側にとって味方であるとしたら、なんの罪もない未来ある少年を殺すことになってしまう。

 康一の話では、ジョルノは、ミナミのことをまったく知らない様子であったことが分かっている。つまり父親であるDIOからは何も聞かされていない可能性が高かった。

『承太郎?』

「あ、ああ、すまない。アヴドゥルとイギーによろしく頼んでおいてくれ。」

『ああ、分かってるぜ。じゃあな。』

 そして電話が切れた。

 承太郎は受話器を置き、長く息を吐いた。

 

 その後、間もなく、イタリアの刑務所で収容されていたギャングの一人が拳銃自殺し、その部屋から破壊された矢らしき物が見つかったという情報が入ることになる。このことから、康一が見た矢を持つスタンドの問題は解決し、あとはブルー・ブルー・ローズが盗んだらしき矢の回収とミナミ自身を保護することが優先されることとなった。

 

 

 




承太郎が行くって選択肢もあったのですが、イタリアの隣国にいるポルナレフ達に頼む形にしました。
パッショーネから睨まれているという危険を承知の上で、矢とミナミの保護のためイタリアの地へ再び彼らは足を踏み入れる。
花京院はどうするか悩んでます……。さすがに現地にスターダストクルセイダーズ(ジョセフ抜く)を集合させるのは、なんか無しだな…って感じがして。


いや、そもそもひと暴れしているのに舞い戻ってくること自体おかしいか?
これ書き直すべきか?
いや、逆に暴れた分、警戒されて手を出してこないって可能性も…無きにしろ非ずか?

いずれにせよ、こっから先、色んな思惑が衝突することになる。

康一は、前回の話から以降は、もう出ませんので。
シーザーは出します。


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ヨットの上で

カプリ島に向かうジョルノ達に、ついにミナミが……?


あと、5部キャラとミナミにフラグが?


あと、オリジナル展開。


 

 

 ミャアミャアと、ウミネコが鳴いている。

「……で? なぜ私は縛られているのでしょうか?」

「そりゃお前…、いきなり俺らのヨットに飛び乗ってくるからだろうが。」

 ミナミは現在海の上。

 正確には船…ヨットの甲板の上だ。

 そして現在、ジョルノを含めた若い男達に囲まれている。

「いや、だって…出航寸前だったんだもん。焦って…つい…。」

「だったもんじゃねぇよ! あの距離を飛ぶか普通!?」

「走り幅跳び選手でもあそこまでの距離は飛べませんよ。」

「ジョルノを見つけたから仕方なくだよ!」

「知り合いか? ジョルノ。」

「……まあ、なんというか…。」

「用件だけ済ませたら泳いででも帰るから、とりあえずこのロープを外してほしいんだけど。」

「だからその用件について聞いているんだ。なぜ話さない?」

「面倒くさいから。」

「このアマ~! 舐めてんのか、あぁん!?」

「いいから聞けっての、この分からんちんめ!」

「なんだとコラァ!!」

「……。」

「ナランチャ? どうしたんだ?」

「…なに?」

 ジーッとミナミを見ていたナランチャがミナミのすぐ傍にしゃがんで…。

 いきなり胸を掴んだ。

「んぎゃ!?」

「ちょっ、なにやってるんですか!?」

「えー、だって本物かどうか分かんなかったからさ~。」

「で? 本物か?」

「ビックリ! 本物!」

「おお~! これ何カップだよ!?」

「悪かったわね…。育ちすぎで…。」

「それで? 僕を追ってきた理由は何です? それぐらい話してくれてもいいじゃないですか。ここまで追ってきたのなら。」

「まずは、私を解放して、じゃないと終わらない。返せない。」

「だから、なにを返すと?」

「いいから。」

「話になりませんね。」

「……分かったわよ。言えば良いんでしょ?」

「最初からそうしてください。」

「返したいのは、あなたの…寿命だよ。」

「じゅみょう? 僕の?」

「そう。あなたの生きられる年数。」

「……つまりお前もスタンドが使えるのか?」

 アバッキオがふと聞いた。

「そうだよ。」

 ミナミはあっさりと白状した。

「私のスタンドの能力は、生命から寿命を奪い、花の形に変える能力。ジョルノ、あなたが置き引きしたとき、私はうっかりであなたから一桁分の寿命を取っちゃったの。」

「ひとけた!?」

「えーと、ひとけたって、どんだけの数だっけ?」

「一桁は、10円以下の1円って言えば分かるか、ナランチャ?」

「ジョルノ。あなたの寿命は、もし90年生きられるのだとしたら…最長で9年しか生きられない状態なんだよ。9年を過ぎたらどうやっても死ぬ。」

「それで……戻そうと?」

「そうだよ。ほとんど飲み食いも、寝もせず、ずっと!! あなたを追いかけてたんだよ! やっと追いついたと思ったらこの通りだし…。」

「…どうすればいいんです?」

「私の手であなたの寿命をソメイヨシノの花にした物を返す。それしかないの。だからロープを外して欲しい。」

「……分かった。」

「おい、ジョルノ。」

「不審な行動はさせませんから、ご安心を。僕の寿命を戻す以外のことをすればすぐに海に…。」

「別に何もしないわよ。それは神に誓っていい。」

「そうですか。では、外しますね。」

 ジョルノがミナミからロープを外した。

 ミナミは、立ち上がり、懐からソメイヨシノの花を取り出した。

「これがあなたの寿命を凝縮した花。今から返すからジッとしてて。」

「早くしてください。」

「はい。終わり。」

 スッとジョルノの胴体にソメイヨシノの花を押しつけるとパッと光りとなって消えた。

「えっ? もう終わりですか?」

「ジョルノ、身体はなんともないのか?」

「ええ、なにも…。」

「そりゃそうよ。寿命を取られた段階で気がついてないんだもん。自覚症状は無いんだから。じゃ、終わったから私は陸地に帰るわ。」

「待て、まさか本当に泳いで帰る気か?」

「そうだけど?」

「まあ、待て。どうせだ、このまま乗って行けばいい。そこで降ろしてやる。」

「ブチャラティ? 何言ってんだよ?」

「そうだぜ、今から俺ら何処に行くのかは教えて貰ってねぇのによぉ。」

「そうだな…、陸地ももう遠く離れた。」

 そこからブチャラティは、ポルポが自殺したことを語り。そしてその遺産を回収しに行くことを彼らに告げた。

 

 その資産額は、100億リラ(約66億)だと。

 そしてその隠し場所は自分が知っていること。(自分が命令されて隠したから)

 その遺産があるのは、今から行くカプリ島であること。

 その金で組織の幹部の座を取ると。

 

「……えっ、お兄さん達、なに? 悪い人?」

「ギャングですよ。」

「わー…、それ私聞いちゃったけど、いいの?」

「良くは無い。だがあえて聞かせたんだ。」

「はっ?」

「旅行客のようだが、こうなってしまってはもうイタリアからは…。」

 

 次の瞬間、ミナミの身体が後ろのヨットの甲板の囲いの後ろへ倒れた。

「あっ!」

「お、おい、マジか!」

 それを引っ張り上げようとしたがミナミの姿が消えていた。

「消えた!? 馬鹿な!」

「おい、見ろ! なんだこの赤い植物は!?」

「スタンドか!?」

 

『ギエエエエ!?』

 

 甲板のあちこちから、鮮血色の植物の根っこが出現したことに驚いていると、どこからか、ジョルノ達以外の悲鳴が聞こえた。

 そして、メリメリと船が変形を始める。

「これは…、船が二隻だと!?」

 まるでペラペラの紙のようにペッちゃんこになっていたもう一隻のヨットが出現した。そして、そのもう一方から赤い根っこがブワッと飛び出し、一人の男が転がり出てきた。

 その手に、ペラペラになったミナミを抱えて。

「貴様…、組織の人間か?」

「ハッ!?」

 男がハッとし顔を上げた。

「なるほど、ポルポの遺産を狙って俺達をつけてきた口か。けど、欲を出してその女に手を出そうとして失敗したわけだ。」

「あ…あぁ…。」

 男、ズッケェロは、ガクガクと震えた。

 

 その後のことは、もはや言葉に出来ない大惨事。

 あとズッケェロが倒されたことで、ズッケェロのスタンド、ソフト・マシーンによりペラペラにされたミナミも元に戻った。

 なお、ミナミは、ジョルノに寿命を返せたことで気が抜けそのまま深い眠りについてしまった。

 

「ブチャラティ? なにを考えて…。」

「ほんの風の噂程度だが……、奇妙な能力を持つ娘が極東の島国にいるとな。その娘の力は、死人すら蘇らせられるそうだ。」

「まさか?」

「真実かどうかは定かじゃない。だが…、寿命を操るというのがどうにも気になった。確かめる必要はある。」

「確かめてどーすんだ?」

「その力が事実なら…、他のギャングや組織が見逃すとは思えない。利用の仕方じゃ、とんでもないジョーカーになるかもしれない。」

「わざと話を聞かせたのは、逃がさせない口実のためですか。」

「おい、ブチャラティ!」

 その時、アバッキオがブチャラティを呼んだ。

 アバッキオのスタンド、ムーディー・ブルースにより再生(リプレイ)されたズッケェロの行動が再現されていた。

 ズッケェロは、ミナミを襲う前に無線機を使って他の仲間に100億リラのことと、その在処を話していたのだ。

 そして無線機の相手は、高速艇で先に島に向かうから、ズッケェロに船上でのブチャラティ達のことを任せると伝えていた。

 ブチャラティ達は、ドッと汗をかいた。

 高速艇なら30分も早く島に着く。そして100億リラの遺産を先に奪われる可能性があることと、ズッケェロが到着しなかった場合その無線の相手が不信を感じて他の組織の仲間を応援として呼び寄せる可能性、そうなってしまったら金以前にネアポリスに帰れるかどうかすら怪しい。

 そんな中、ジョルノが提案した。

 先に島に上陸し、ズッケェロの仲間を始末することを。

 だが問題がある、相手の顔が分からないことだ。男だということはムーディー・ブルースにより再生により声のみが再生されており、分かっている。

 するとミスタがジョルノの提案に賛成意見を出し、自分の能力が暗殺向けだと語って、ジョルノと共に魚にした浮き輪で引っ張って貰って島に先に上陸した。

 

 ミナミは、ヨットの寝室の方で寝かされ、身体を丸めてグッスリと眠っていた。

「……。」

 ナランチャは、その寝顔を膝立ちで眺めていた。

「ナランチャ、彼女の顔を眺めてどうしたんです?」

「…う~ん。わかんね。なんか…見ていたい感じ?」

 ベッドの端に腕を乗せ、その上に顎を乗せて眠っているミナミを見つめるナランチャ。

「ん…。」

「っ…!」

 ミナミが微かに呻いたのを聞いて、ナランチャは、ドキッとした。

 その後、スースーと安らかな寝息を出し、グッスリと眠るミナミ。

「…フーゴぉ…、俺おかしい。」

「確かに今日のあなたはおかしいですよ?」

「……胸の辺りがよぉ…、なんか変な音する!」

「どんな?」

「ドキドキっての? なんだこれ?」

「……まあ、確かに美人ではありますけどね。」

 フーゴは、少し呆れたように言ったのだった。

 

 

 




実は、3部編での仗助の蘇生で、ミナミに関する噂話が少しだけ広まっていた。
けど真実味がないため、信じる人はほとんどいないし、能力の詳細も知らないためブチャラティは、確かめるためにわざとミナミを縛る手として遺産の話を聞かせる。

ミナミは、ジョルノにやっと寿命を返せてホッとし疲れで眠ってしまう。

ナランチャは、ミナミに……?


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ギャング、強制入団!?

タイトル通り。

ジョルノ達と行動させるため、強引な理由付けで同行することになります。





ナランチャ→ミナミ要素有り。注意!!


あと、トリッシュに胸揉まれたりしてます。


 

 ミナミは、目を覚ました。

 しかし、自分が置かれた状況についてジョルノから知らされ、固まった。

 決定的なのは、ブチャラティから。

 

「お前は、人間を蘇らせられる力の持ち主だろう?」

 

 っと聞かれて、ダクッと汗をかいちゃったのが運の尽き…。

 汗の味で相手のウソホントを見破れるという特技を持つブチャラティに汗を舐められ、ブチャラティの言葉が真実だと知られてしまったのだ。

「風の噂程度で聞いていた、極東の島国に、死んだ人間を蘇らせられる力を持った娘がいるという噂をな。お前だったのか。」

「なにそれ! すごくね!?」

「なんで…。」

「さっきの汗の味は、本当だという味だったぜ?」

「なにその特技…。」

「えーと、これは、ファミリーネームは、ヒガシカタ…、名前はミナミですね。」

「ほーん、日本人なのか。その見た目で。ハーフか?」

 旅行鞄に入っていたパスポートを見られて身元も判明させられた。そのあとパスポートは、燃やされて海に捨てられた。

 目が覚めた後、ヨットから引っ張り出されて公衆便所に連れてこられたかと思ったら、小便器からファスナーで金銀宝石を出しのを見せられ、それを背の低い老人に渡す過程と、幹部に昇進させるという手続きをしたのを見せられ……。

 なんかヤバい?っと思った時にはすべて手遅れだった。

「何も関係ない旅行者を巻き込むのは正直心苦しいが…、これからは俺達の手持ちのジョーカーとして動いてもらう。ああ、パスポートの再発行には少なくとも1週間はかかるはずだ、それまでにうちの組織から逃げ隠れするのは組織の管轄の土地じゃ無理だろう。」

 ニッコリと、それはそれは綺麗な笑顔でブチャラティに言われ、ミナミは、顔を両手で覆って嘆いた。

「まあまあ、これも運命と思ってください。きっと僕の寿命をうっかりで取ってここまで追うことになったのも、運命ですよ。」

「思えるかーーーー!」

 ポンポンっと肩を叩いてくるジョルノに、ミナミは、掴みかかってウガーーっと怒った。

「えっと…ミナミっつったっけ? 俺らと一緒に行くのか?」

「ああ、そうだ。」

「うっそ! やりーー!」

「……なんで、あなたが喜ぶの?」

「えっ…、あっ、そりゃ…。」

 喜ぶナランチャに、ミナミがジトッと睨んだ。

「あーもう! なんでこうなるの! 私はただ寝覚めが悪いから返しに来ただけなのに!」

「諦めろって、ほら、こういうだろ? 旅は道ずれ世は情けってな。」

「全然違う!」

「ミナミさん。聞いてください。」

「なに…?」

 ジョルノに肩を掴まれて耳元で囁かれるように言われた。

「あなたの力については、おそらく知っているのは僕らだけです。もし組織内…あるいは別組織や政治家に知られれば、イタリア全土が焦土になるほどの戦争になる。あなたには、それだけの価値があるんですよ。ま、下手すると世界戦争もありえますが。」

「!」

「あなたはいい人だ。大人しくしていることが無関係な人間を死なさいことをよく知っているはずです。」

「………君は、悪い人。」

「ギャングですから。」

 涙を浮かべるミナミに、ジョルノはハンカチを渡してあげたのだった。

「……ところでさっきから、そっちの可愛い女の子…、私のこと見てきてるけど?」

「ねえ…、それ、本物?」

 ピンクの髪の少女が指差してくる。ミナミの胸に。

「えっ? う…うん、そうだけど?」

「何食べたらこうなるの?」

「……さあ?」

「来て。」

「えっ?」

「いいから。他の人は来ちゃダメよ。もちろん聞くのもね。」

 少女に手を握られて引っ張られ、船室に連れて行かれたミナミ。

 ベットに腰掛けた少女に椅子に座るようにさせられた。

「それで…なに?」

「えいっ。」

「んぎゃ!」

「あーもう信じらんない! 何食べたらマジにこうなるわけぇ!?」

 少女に胸をわしづかみされてミナミは、ビックリして声を上げた。

「いや、そんなこと言われても! 気がついたらこんななってたわけで!」

「ウソよ! 私だって上げてるのにコレは無いわよ!」

「うーん…、強いて言うなら、遺伝と牛乳?」

「ぎゅ~にゅ~?」

「良く食べて、良く動いてたからかな…? 私、赤ちゃんの時、吸いが悪くって発育が危険だったらしいから大きくなるよう牛乳いっぱい飲んでた。」

「私も牛乳飲んでればいけるわけ?」

「個人差はあると思うけど…。」

「なによ…、馬鹿にしてるわけ?」

「馬鹿にしてはいないよ。」

「ホント~~?」

「ホントだってば。こんなに可愛いのに。」

「自分が?」

「違うよ。あなたが。」

「そ~お? ホントに可愛いって思ってる?」

「私が知る限りじゃ5本の指に入るほど可愛いよ。」

「やだ、一番じゃないの?」

「それは、さすがに…。」

「酷い。」

 少女は、プウッと拗ねた。

「なんか雰囲気違うね? あの島で見た時とは。」

「弱いとこ見せたら何されるか分からないじゃない。…えーと。」

「ミナミ。ミナミ・ヒガシカタ。」

「私は、トリッシュ。お互いとんでもないことに巻き込まれた者同士、仲良くしましょ。」

「トリッシュちゃんもそうなの?」

「ちゃん付けしないでよ。これでも、もう15歳なのよ?」

「でも私より年下ね。私、17。」

「…もっと年上かと思った。」

「老け顔で悪かったわね。」

「身体の成長が早いのね。」

「急激に育ったから成長痛で痛いし、胸がすぐ大きくなったせいで地元の服屋じゃバストが合うブラがないし…、下着もね…。良いこと無いよ…。」

「それは…恵まれてない人に言わない方がいいと思うわ。」

「ごめん…。」

「あー、でも良い感触! えい!」

「ふぎゃ!」

 バフッとミナミの豊かな胸にトリッシュが飛びついて顔を埋めてきた。

 

 

 

 

「なー、フーゴぉ…。あの二人なに喋ってんだろうな~?」

「知りませんよ。気になるのかい?」

「べ、別に…。女同士、じゃないと喋れないことあるだろうし…。」

「あの様子じゃ、テメーの女にするのは難しいんじゃねぇの?」

「そんなこと! まだ…。」

「彼女の嫌いなタイプは、ナンパ男と、悪い人らしいですよ?」

「なっ!? ジョルノ、てめー、どっからその情報…。」

「彼女の手帳です。自分の好き嫌い書いてますよ。」

「他には!? 他にはなんか書いてあるか!?」

「さあ? 自分で読み解いてください。これ日本語で書いてありますから。」

「ケチーーー!!」

「悪い人ってことは…、ギャングは、恋愛対象外ってことじゃねーの? 残念だったな~、ナランチャ。」

「そうと決まったわけじゃねーだろーが!」

「けど、ミナミは、今回の件で僕らに対して相当な恨みは持ったはずですよ? なにせ故郷に帰らせてもらえなくさせられたんですから。」

「あっ!!」

「ナランチャがギャングであることと、そのことを踏まえた上で口説くのは……。」

「……。」

「ま、まあまあ! 俺らもできる限り手伝ってやるからよぉ! そう気を落とすなって!」

「そうですよ、まだ諦めるのは早い!」

 さっきまでナランチャをからかっていたミスタとフーゴが慌てて、ズ~ンと暗くなってるナランチャを励ましたのだった。

 

 

 




ブチャラティが果たしてこんなことする人かどうかは別にして……、ブルー・ブルー・ローズの能力の価値を考えると目の前にあったら手を伸ばしてくる可能性がある。
使い方次第じゃ、それこそ世界や世界の理とかそういうのをひっくり返せるからね。
それにこの時点でのブチャラティとジョルノは、ボスに近づくためなりふり構わずって感じがするので。

けど、まだその力の詳細は知らない。青いバラのことや、青いバラだと1回だけ死んだことが無かったことになるとか、蘇生できてもやったミナミ自身が命を失う可能性が高いこととか。(※3部後半で仗助を蘇生に成功しているが、その後ミナミはジョセフの波紋でなんとか助かっていた状況だった)

あと、ミナミは同性ということでトリッシュに懐かれる。
たぶん、ミナミ、良い匂いがする。

さて……シーザーは、いつ出そうかな?(護衛チーム、ボコボコの予定)


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ミナミとナランチャのお買い物

ミナミ、ナランチャと買い物に行かされる。


オリジナル展開かも。


 

「……なあ…。」

「……。」

 話が続かない、というか返事をしてくれない。

 ナランチャは、買い物をしながら、ク~っと、悔しんだ。

 せっかく気になっているミナミと二人きりだというのに、こちらが話しかけてもミナミはまったく返事をしてくれないのだ。

 無理もないとは、頭が余り良くないナランチャでも理解しているつもりだ。故郷に帰れる術を奪われ、無理矢理に嫌いな悪い人(ギャング)と一緒に行動させられることにさせられたのだ、心を許して貰えるだなんて思えない。

「なあ、好きなの買って良いって言われたからさぁ、なんか好きなの買って良いぜ?」

「……。」

「さすがに…傷つくぜ…。」

「っ…。」

「?」

 がっくりと肩を落とすナランチャに、背中を向けていたミナミが微かに反応した。

 お会計の時、ミナミがこっそりとクリープとグラニュー糖、あとインスタントコーヒーを籠に入れた。

「ミナミ、コーヒー好きなのか?」

「……別に。」

 やっと返事してくれた。

「やっと返事してくれたな! 嬉しいぜ!」

「……いいからお会計早くしないと、怒られるよ。」

「えっ? あ、ああ!」

 そしてお会計。

 それから車に荷物を乗せるが……。

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」

「えっ?」

「逃げないから安心して。」

「ん…、ああ…。」

 そうどこか切なげに言葉を残して店のトイレを借りに行ったミナミの後ろ姿をナランチャは見送った。

 口説くとか以前の問題だ。彼女は今傷ついている。ボロボロに。日本からの旅行客だったのに、その能力(スタンド)の運命により、嫌いな悪い人(ギャング)の仲間入りを強要されて喜ぶ感性が普通の人はいないだろう。何かしらの信念を持ってギャング入りしたわけじゃないのだから。

 

「ありゃぁ、逃げられるなぁ?」

 

「いや俺は彼女をしんじ…、って、誰だよ!?」

 聞き覚えの無い男の声が聞こえたので、ビックリして振り返ると、ナランチャとミナミが乗っていた車の後部座席に一人の男が座っていた。

「俺の名は、ホルマジオ。組織の一員だぜ。なあ、ナランチャ、お前いつの間にあんな美人さん引っかけたんだ? ポルポの葬儀の場で紹介してくれりゃいいのによぉ。」

「降りろ、テメーー!!」

「なあ、ナランチャ。なんでおめーら幹部の葬儀に来ねーんだ? しかもおめーらの上のだぜ? そうそう聞いたか? ポルポの死体…、火葬屋がどう火葬するか困ってるらしい。あの巨体だぜ? …切り刻まなきゃ! 燃やせねぇなぁーーー!!」

 ウヒャヒャヒャ! アヒャヒャヒャ!っと愉快に腹を抱えて笑う男だったが、それを不気味に思っていたナランチャの眼前に突如スタンドと思しき物が出現してナランチャの右頬を傷つけた。

「しょーがねーなぁ。デート中のところだったのによぉ、わりぃが、色々と喋って貰うぜ!! ポルポが死んだ翌日からいきなり消えた理由と、おめーらが今何をやっているのか色々となぁ!!」

「グググ…! てめぇ…。」

 血があふれ出る頬を押さえ、ナランチャが男を睨む。

 その時、ナランチャの頭上に、小型のプロペラ機が出現した。

「ま、まさかおめーら、全員!?」

「『エアロスミス』!!」

 小型の戦闘プロペラ機の形をしたスタンド、エアロスミスが弾丸を放った。

 ホルマジオは、椅子に隠れ身を守るが、椅子をも貫通しそうな弾丸の嵐に車が瞬く間に破壊されていく。攻撃精度は低いが、しかし小型の戦闘機という機動性も相まって器用に割れた車の窓ガラスから侵入しホルマジオを狙った。

 車の天井へと軌道を変えたエアロスミスが小さな爆弾をホルマジオに向けて落とす。

「うおおおおおおお!!」

 そして爆弾が椅子に落ちて片方の後部扉が破壊されるほどの爆発が起こった。

 ナランチャは、頬を傷つけられた怒りから車が破壊されることもせっかく買った荷物も無視して攻撃をしていた。あと自分自身も車を蹴って激情を露わにしていた。

 やがてナランチャが蹴っている拍子に落とした靴のせいでもろに鋼の車に靴下しかはいてない足で蹴ってしまったため、その傷みで正気付き、車の中を見た。

「い、いねぇ!? 野郎、どこに行きやがったんだ!?」

 

「……ナランチャ?」

 

「ふぇ!?」

「何しているの?」

「み、ミナミぃ?」

「…逃げないって言ったでしょ? 逃げたと思った?」

 腰の後ろに右手を置いているミナミが聞くと、ナランチャは、そんなことない!っと慌てて弁解した。

「それよか、さっき車ん中に、ホルマジオとかいう奴が…。」

「いないよね?」

「あ、ああ…、確かにいたんだけど…、逃げられたかも。わりぃんだけど、ミナミ、俺あいつ探すから…どっか適当にぶらついててくれていいぜ!」

「…分かった。」

 ミナミは、そういうと方向転換する瞬間に右手を前に戻して歩き出し、建物の隙間に入った。

「逃げないって思ってるのかな~? なんか悪い気がする。隠し事って…。」

「だ…だったらよぉ、放してくれねぇか?」

 ミナミの右手には、人形サイズにまで小さくなったホルマジオが握られていた。

 スタンドは出しているが、服から伸びたブルー・ブルー・ローズの根っこに刃を阻まれ身動きが取れなくなっていた。あとミナミの手から伝わるピリピリとした電気に近い感覚に身体の身動きを奪われていた。

「小さくなったのが仇になったね。このままナランチャに渡しても良いんだけど、ちょっと聞きたいことがあって。」

「なんだ~?」

「ナランチャ達って、悪い人?」

「……なんでまたそんなこと聞くんだよ…?」

「ちょっと聞ける人がいなくって。」

「そ~だな~。ギャングの一員だぜ? 心の清い善人がなるか。って話だ。ところで、あんた…まさかとは思うが連中とは無関係なとか言うんじゃね~だろ~な?」

「無関係っちゃ、無関係だけど?」

「なんだそりゃ?」

「私はただの旅行客だよ。パスポート燃やされたけど…。」

「ほー、そりゃ災難だな! ってことは、ブチャラティ達は、あんたを囲ってるってことか?」

「違う。一応言っとくけど、経験は無いから。」

「は~~、そりゃまた! その見てくれでまだってか? 災難続きっぽい見たいだしよぉ、なんだったらうちのチームで保護してやってもいいだぜ?」

「ちーむ?」

「そうだぜ、うちの組織は幹部の下にいくつかのチームを置いてんだ。ブチャラティ達は、元々はポルポって奴の下にいたチームだ。それが指示者のポルポの葬儀に出ず、こんなところでおめーさんみたいな美人囲ってなにやってんだ? あんたソレ知ってんじゃねーのか? 教えてくれよ。」

「そう言われても…。」

「例えば、おめーさん以外の女がいるとかな。」

「そんなこと聞いてどうするの?」

「実はよぉ、俺らのボス…トップに最近娘がいるってことが分かってなぁ。それで色々と調べてる真っ最中なわけだ。」

「パッショーネだっけ? そこだけは聞いた。」

「そりゃ組織の名前だ。けど、誰もボスの正体は知らねー。指示はあっても逆探知もなにもできねーのさ。」

「そのボスに近づきたいの?」

「まあ、早い話がそうだ。」

「ふーん…、なんか色々とあるんだね。」

「おう。そうだぜ。組織も一枚岩じゃないからな。で? その様子じゃ、何も知らされてないって口か?」

「そうだよ。私は、巻き添え食っただけの旅行客だよ? 組織云々のことなんて何も知らない。」

「それだったらよ、俺をこうやって拘束している意味も無いんじゃねーのか?」

「そうだね。そろそろ…。」

「お…おい…。」

「えっ?」

「おめー、無関係じゃなかったのかよーーー!!」

「えっ?」

 

「隠し事は無しだぜ、ミナミぃ。」

 

 アスファルトを伝って建物の壁に生えていたブルー・ブルー・ローズにしがみついた、小さくなったナランチャがエアロスミスを構えていた。

「ナランチャ!」

「『リトル・フィート』!!」

「エアロスミス!!」

 ハッとしたミナミがホルマジオを手放そうとした直後、エアロスミスの弾丸がホルマジオを貫いた。

 そしてあっという間にホルマジオとナランチャがもとの大きさに戻る。ダメージにより能力が解除されたのだ。

「しょ、しょ~がね~な~~~、ナランチャ…、おめーの女にはすっかりダマされたぜ…。」

「わ…私は…。」

「けど…、もうどっちでもいいぜ…、んなこたぁよぉ。知っていようが知っていまいが…。どっちにせよ…、“悪い人”に加担しちまったんだからな? もうマジで逃げられねぇなぁ?」

「っ……。」

「しょおおがねーなああ~~、たかが、買い物くんのもよぉ~、楽じゃあ……なかっただろ? ナランチャ…、これからはもっと…、しんどくなるぜ?」

 ホルマジオは、壁にズルズルと血を残しながら息絶えた。

 ミナミは、その様を見ていて、ガタガタと震えた。

「ミナミ。」

「触らないで!」

「っ…、そいつの言うことなんざ気にすんなよ。ブチャラティは、あんたが思ってるほど悪い奴じゃ…、むしろ俺にとっては…。」

「そんなの…関係ない。私には。」

「ミナミ…。」

「……どーせ逃げられやしないんだから。逃げないよ…。例え、あなた達が死ぬような目に遭っても、関係ない。」

 ミナミは、そう言い捨てると半壊した車の方に歩いて行った。

 ナランチャは、それ以上何も言えず、黙ったまま半壊した車の運転をした。

 そのあとは、尾行を防ぐため、フーゴから言われた手順で車を乗り換え、ブドウ畑の隠れ家に帰るのであった。

 

 

 




ミナミは、生まれつき波紋使いだったが修行も何もしてなかったし、スタンドに素質を持って行かれているため非常に微弱だったが、シーザーから所業をしてもらって波紋が強くなりました。さすがにジョセフレベルじゃないし、ハッキリ言って戦闘潮流までの波紋使いと比較したら圧倒的に弱いですけども。

ホルマジオのような経験豊富な暗殺者でも、ミナミがトリッシュのことを知っていることを見抜けなかったのは、ミナミがトリッシュの置かれている状況について聞き流していたためです。ただお互いに波乱に巻き込まれた者同士という認識しか無いです。

小さくなっていて波紋で拘束された状態のところを、小さくさせられたナランチャのエアロスミスにもろに急所をやられて、ホルマジオ退場。
ナランチャを導いたのは、ブルー・ブルー・ローズであって、ミナミの意思ではありません。


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ポンペイでの乱闘

満を持して、シーザー(82歳。波紋呼吸してる)登場!


とりあえず、謝っておきます。


イルーゾォ…、ごめんね!! 見せ場無いよ!!


 

 すでに敵に把握されていること。

 それは、ブチャラティチームに衝撃を走らせた。

 カプリ島でトリッシュの護衛を任されてから、まだそこまで時間が経っていないのだ。それがあっさりとバレたということは、組織のチームでも相当な実力者達が関わっている可能性が高かった。

 この危険な状況にブチャラティチームに凄まじい緊張が走る。なにせ敵に殺される可能性もあるが、それ以上に任務に失敗した場合の罰を考えるそれ以上に恐ろしいからだ。

「ナランチャから聞きました。敵を倒せたのは、あなたが敵を拘束していたからだそうですね。」

「違う…!」

 コーヒーとサンドイッチを持って来たジョルノに、膝を抱えて座っているミナミが否定した。

「しかし、安易に敵と会話していたのはいただけませんね。今後は注意してください。」

「敵だの味方だの…、私はあなた達に味方した覚えはない。」

「でも、ミナミ、あなたは僕らを頼るほかないんです。選択肢なんてない。僕が言うのもなんですが、ブチャラティは信用して良いですよ。あなたに対し悪いようにはしないはずです。これが他のチームだったなら……その容姿も相まって何をされるか分かったものじゃない。イタリアに来ていたあなたを先に見つけたのが僕らで…本当に良かった。」

「……あなた達は、酷い人だ。」

「ギャングですから。ところで、グラニュー糖とクリープ。どっち入れます? 両方ですか?」

「……両方。いっぱい。甘くないと飲めない。」

「苦いのが苦手なんですね。」

「悪い?」

「いえ、馬鹿にはしませんよ。イタリアでは、カフェで飲むコーヒーと家で飲むコーヒーは別物ですからね。イタリア家庭のコーヒーは濃くて苦く、さらに底に砂糖が残るほど甘くもするんですよ。コーヒーを飲む干し、最後に底に残った砂糖をスプーンで掬ってチビチビ舐めるんです。」

「ふーん…。」

 ミナミは、ムスッとしながら、クリープとグラニュー糖をたっぷり入れたインスタントコーヒーを飲んでサンドイッチも食べた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「…っというわけで、彼女は甘いコーヒーが好物みたいですよ。逆に苦いコーヒーが苦手みたいです。それ以外は食べ物に好き嫌いは特に無しみたいで。」

「へ~。なあ、じゃあ俺のことでなんか言ってた?」

「さすがにそれを聞くのは野暮ですよ。目の前で敵とはいえ、人を殺しているのを見させられているんですから。」

「う…。」

「あれは、気を許してはくれないでしょうね。僕の見立てでは。」

「うぅ~、俺、ナンパはしたことあるけど、デートとかしたことねーからさぁ! あーしたらいいとか、こーしたらいいとかわかんね~!」

 ジョルノからの言葉にナランチャは、頭をガシガシと掻き毟った。

「あ~ん? そうだったか? ナランチャ?」

「そーだよ!」

「ってことは、お前…童て…。」

「うっせぇよ! ぶっ殺すぞミスタ!」

「ああん!? やれるもんならやってみやがれ!」

「てめーら!! 屋内で、しかも喧嘩ごときでスタンド出すんじゃねーよ!」

「あいでぇ!!」

 外に置いてある車から戻って来たアバッキオに二人は頭にげんこつをくらった。

 そのすぐ後にボスからの指令により、ポンペイに安全に移動するためのモノの鍵を隠したから取りに行けという命令が下った。

 そこで、ジョルノ、アバッキオ、フーゴが行くようブチャラティが指示を出した。残る面子はトリッシュを守るためこの隠れ家に残る。

「…だいじょうぶ?」

「うん…。」

 2階に移動したミナミは、同室にいるトリッシュから声を掛けられ、元気の無い声で返事を返した。

「あいつらに何かされたの?」

「……別に。」

「ウソ。あなたウソ付けないタイプでしょ?」

「……癖は直したつもりだったけど。」

「なにされたの? ……まさか答えられないことされた?」

「…目の前で人を…殺された。私が捕まえてたから、その人は死んだ…。」

「…知り合いだったの?」

「違う。敵だった、……らしい。」

「じゃあ、私のせい?」

「トリッシュ?」

「私が組織のボスの娘だからそんなことに…。」

「誰も生まれ育ちを選べないよ。トリッシュは、たまたまそうだっただけ。だから責めるなんてお門違いだから。」

「……ありがとう。」

 トリッシュは、そうお礼を言うと、ギュッとミナミに抱きついてきた。

 トリッシュの身体が微かに震えていることに気づいたミナミは、トリッシュの頭を撫でた。

 15歳だぞ。15歳。まだ花も咲きかけの幼い少女にはギャングのボスの娘だったという事実は重すぎるだろう。

 

 その時。ミナミの目の前が暗くなった。

 

「えっ?」

 抱きついていたトリッシュの温もりも消え、気がつくと、堅いレンガの上に投げ出されていた。

「ここは…?」

 

「ミナミ!? なぜここに!?」

「…ジョルノ?」

「お、お前! どうして…、いいからお前も離れるぞ!」

「えっ?」

 焦っているジョルノとアバッキオにぼう然としていると、グルルル…っという獣のようなうなり声を聞いた。

 ハテナっと思いつつ二人の間からその声がした方を見ると。紫色のスタンドらしきモノがいた。うなり声はそいつが上げていた。

 

「ヒィイイギャアアアア!!」

 

 そしてどこからか別の男の悲鳴が聞こえた。

 するとボロボロのレンガの壁の上から放り投げられてきたのは、一人の男。

 ドシャッと落ちてきた男は、どう見ても暴行を受けたとしか見えない傷でボロボロだった。

「ぅうぐ…。」

「あなたは…。」

「てめーか! フーゴを隠しやがったのか!?」

「ひっ、ひいいい…、て、てめぇら…、あんな伏兵がいたなんて聞いてな…。」

「はっ? ふくへい?」

 

『きゅ~~』

 

 すると甲高い動物の鳴き声が聞こえた。

 ボロボロの男の横に、ホワンホワンっと輪っかの形をしたシャボン玉のようなモノが近づいていった。

「ひっ! マン・イン・ザ・ミラー!!」

 男はスタンドを出した。

「やはり、敵!」

 男がスタンドを出したのでここに待ち受けていた敵の仲間だと分かった。だが…。

 マン・イン・ザ・ミラーがシャボン玉のようなモノを割ろうと拳を当てた瞬間、シャボン玉のようなモノが割れ、マン・イン・ザ・ミラーの腕が固結びに捻れた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアア!? う、うでがあああああああああああ!!」

 ダメージフィードバックで、男の腕も固結びに。

 男が悲鳴を上げていると、紫色のスタンドが立ち上がり、男の首を掴んだ。

「ひっ!?」

「捕まえたぞ!! パープルヘイズ!!」

 別の壁の曲がり角から傷だらけのフーゴが現れ、自身のスタンドであるパープルヘイズに命令する。

 そしてその拳が男、イルーゾォの腹部に突き刺さり、30秒とせずグズグズになって溶けて死んだ。

「あ…、ああ…。」

 あまりに酷い死に様に、ミナミは口を押さえた。その場から逃げたいが、なぜか足に力入らない。

 そしてパープルヘイズが消え、フーゴが足早にミナミの傍に来て胸ぐらを掴んだ。

「ミナミ! お前か!? お前なのか!?」

「えっ、えっ?」

「お前がいつの間にあんな“奴”を…。」

 

「ミナミ!!」

 

「えっ?」

 その声は、ミナミにとってよく知っている声だった。

 イルーゾォが放り投げられてきた壁の向こうから人影が飛び降り、スタッと着地する。

 ジョルノとは色合いが違う、金色の髪の毛。目の下の変なアザ。

「シーザー…さん?」

「やはり…! 知り合い!」

 

「ようやく見つけたぜ。ミナミ。」

 

 ミナミをその目で確認し、シーザー・A・ツェペリは、安堵の笑みを浮かべた。

「誰です?」

「いいから、二人とも、逃げるぞ! アイツはヤバい!!」

「待て、フーゴ! 鍵は…。」

「僕が取ってきた! ミナミを連れてこのまま車まで…、ブゲッ!?」

「フーーゴォ!?」

 あっという間に距離を詰めてきたシーザーが飛び蹴りでフーゴの頭を蹴り飛ばした。フーゴはガラガラゴン!っとそこらに転がるレンガの欠片や石にぶつかりながら壁まで転がった。

「て、てめぇ…!?」

「……あぁ?」

「っ…!」

 アバッキオが咄嗟にムーディー・ブルースを出して攻撃しようとして、飛び蹴りで着地してからゆらりと立ち上がり下から睨んできたシーザーのあまりの迫力と殺気に圧された。

 そして次の瞬間には、アバッキオの無防備な腹にシーザーの拳がめり込み、その後ろにいたジョルノを巻き込んで壁まで吹っ飛ばされ叩き付けられた。

「かっ、ハッ……。」

 アバッキオは、胃の内容物を吐き出しながら腹を押さえて悶えた。

「……ゴールド・エクスペリエンス!」

 アバッキオの下にいるジョルノが吹っ飛ばされる直後に、シーザーの近くにあったレンガの欠片などを触媒に、毒蛇を生み出していた。

 その蛇たちは、一斉にシーザーを咬んだ。

「シーザーさん!」

 ミナミが悲鳴じみた声を上げた。

「……ふんっ!」

 しかしシーザーは、落ち着いた様子で力むと僅かな血液と共に毒液を体外へ出した。それを見たジョルノは、馬鹿な…っと驚き小さく声を漏らした。

「だいじょうぶか? ミナミ。」

「シーザー…さん…!」

 ミナミが涙で顔をぐしゃっとさせ、シーザーに近寄ろうと立ち上がりかけた。

 だがその身体をパープルヘイズが掴んで小脇に抱えた。

「あぁ!」

「ミナミ!」

「う……動くな! 動けば…、パープルヘイズのウィルスを…。」

「まだ動けたか! スタンド使いは肉体的には弱いと思って油断したぜ。」

 ヨロヨロのフーゴがシーザーに向けてそう警告し、シーザーはパープルヘイズのウィルスを警戒して飛び退いた。

「ガキだと思って舐めてもらっちゃ…、困る…! アバッキオ! ジョルノ! ミナミを連れて車へ!」

「!」

「い、いやぁ!!」

 なんとか起き上がったアバッキオとジョルノがスタンドを使ってパープルヘイズから、ミナミを受け取りその場から離れていく。

「大人しくしろ!」

 アバッキオがミナミの首に手刀をして気絶させた。

「てめぇら…、このクソガキ共が!!」

 シーザーが憤怒の表情を浮かべ、ミナミを運ぶ二人を追いかけようとするが。

「パープルヘイズ!!」

「お前は邪魔だ!!」

 拳を振るってきたパープルヘイズから高く跳躍して避けたシーザーがシャボン玉をフーゴに向けて放つ。

 そのシャボン玉がヤバいことは、イルーゾォとの戦いの際に乱入してきたシーザーの攻撃により分かっていたので、フーゴは咄嗟に足下の石を拾って投げつけシャボン玉を割ろうとした。

 だが波紋を流され、そして何より特別製に調合された特性のシャボン玉はその程度じゃ割れなかった。

 シャボン玉に当たり、流れた波紋の衝撃によってフーゴの身体が吹っ飛び、再び転がる。

「ぐ…ぅう…。」

「喋ってもらおうか。ミナミをどこへ連れて行ったのかをな。」

「しゃ、喋ると思っ、てるのか…?」

「喋らせる。知ってるか? 催眠って…な。」

「!?」

 フーゴの頭を掴んで波紋を流そうとするシーザー。

 直後、大きなヘビがシーザーの身体に巻き付き、フーゴを手放させた。

「なっ!?」

「そこの柱を、アナコンダに変えました。フーゴ、立てますか?」

「ジョルノ…?」

「くっ、そ…!」

 シーザーは、アナコンダに締め上げられながら、フーゴに肩を貸して逃げていくジョルノを見ていることしか出来なかったが、輪っか型の泡がアナコンダに当たると、アナコンダはビクッと震えてシーザーから離れて、ちょうちょ結びになって転がった。

 シーザーは、全速力でジョルノ達を追ったが、ジョルノ達を乗せた車が走り去っていくのを見ただけだった。

 シーザーは、近くに止めていた自分の車(ジープ)に乗り、追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 片道、約1時間後……。

「ブチャラティ!! 急いで逃げるぞ!!」

「どうした?」

 ブドウ畑の隠れ家に逃げ帰ったジョルノ達が出迎えたブチャラティに早く乗れっと促した。

「来たーー!」

 かなり後方からシーザーが乗っているジープがすごい速さで迫ってきているのを見て、事態を把握したのか急いでトリッシュを呼び、ナランチャとミスタを乗せて、車を走らせた。

「ナランチャ! ミスタ!」

「エアロスミス!」

「おおう!」

 車を発進させた直後、二人にシーザーが乗るジープを攻撃させた。

 エアロスミスによる弾丸で窓ガラスが割れ、ミスタの銃弾が車輪を割った。

 シーザーは、車の扉を開きつつ、扉を足場にしてブチャラティ達を乗せている車に飛び乗ろうとした。その手と足が車の上に乗ろうとした直後、ジッパーにより足場部分が消え、シーザーは、地面に転がり落ち、ブチャラティ達を乗せた車はそのまま全力発進で去って行った。

 転がり落ちたシーザーは、身を起こし、その去って行った車を睨み付けながら地面を殴った。

 

 

 

 

「シーザー…さ、ん……。」

「…泣いてるわ。」

 トリッシュが後部座席に寝かされているミナミを心配する。

「……シーザー…、さっきの男の名前か…?」

「尾行されてんじゃねーかよ! どーいうこった!?」

「分からない…。敵なのか味方なのかさっぱりなんだ…。ホルマジオという男の仲間らしき男を攻撃した。だから組織の者じゃない。たぶん、間違いない。」

「お前らに攻撃してきたんなら、敵で間違いねーだろーが!」

「シーザー・A・ツェペリ。」

「はっ?」

「ミナミの手帳のカレンダーに書いてありましたよ。シーザーという人物とイタリアで会う約束をしていたようです。おそらく彼女が来ないので探していたのでしょうね。そして僕らが攫ったことを知って……。」

「あの眼光……、ありゃどこまでも追って来るぜ? 例え世界の端でもだ。どーすんだ、ブチャラティ? そいつは…、ミナミは、俺達のジョーカーどころかとんだ疫病神じゃねぇかよ。」

「えーーー!? 会うって!? それってまさか、彼氏じゃ…。」

「いや、どう見てもアイツのが年上だった。もしかしたら知人か親戚って可能性がありますよ。」

「そっか…、よかったー。」

 ジョルノの言葉に1度は焦ったナランチャだったが、フーゴの言葉にホッとしたのだった。

「彼氏だったらどーすんだ? えっ?」

「えっ!?」

「あそこまで執念深く追いかけてくるってこったよ~、やっぱその線が濃厚じゃね?」

「えーーー!? ミナミ年上好き!? 俺勝ち目なしなのぉ!?」

「てめーら! そんなこと言ってる場合か! 命かかってる時によぉ!!」

 色恋沙汰云々でギャオギャオしているナランチャ達に、アバッキオが怒ったのだった。

 

 




ギャングのブチャラティ達に冷や汗かかせるほど怖い描写を目指したかったが……、うまく書けたかな?


ポンペイでなにが起こったかというと……。

シーザーは、SPW財団の情報と自分の勘や目撃情報でポンペイに。
そこでフーゴとイルーゾォを見つける。そしてイルーゾォにより護衛チームと間違われて鏡の中へ。
ただ波紋の修行により鍛え抜かれているシーザーの戦闘能力にイルーゾォ一方的に負けて鏡の世界が解除、結果追い打ちをくらって壁の向こうに放られ、そこをパープルヘイズにやられて死ぬ。
なお、鏡の世界でシーザーがシャボン玉の波紋を使っているのでフーゴは、シャボン玉をスタンド能力と誤認している?

スタンドが登場してから、3部以降は、波紋戦士レベルの身体能力を持った人物っていなかったような気がして……、そりゃスタンド能力に頼ってる奴らからしたら、敵対したらメッチャ怖いと思う。

そしてなぜミナミが突然隠れ家から、ポンペイに移動してしまったのか……、それはブルー・ブルー・ローズのみぞ知る…?


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ひまわりの花言葉

ネアポリス駅でのやりとりとかはカット。


ミナミの夢から、カメの中からスタート。


オリジナル展開。


 

 顔の見えない男の人がひまわりの花をくれた。

 

『ひまわりの花言葉を知ってるか?』

 

 ミナミは、ソファーのような椅子に座って、“赤ん坊”らしきものを抱えていながら、その相手とひまわりの花を見ていた。

 

『憧れ。太陽の恵み。崇拝。敬慕。愛慕。人情。偽りの富、にせ金貨……。』

 

 ひまわりの花を顔の見えない男がミナミに差し出す。

 

『そして……、“私の目はあなただけを見つめる”…だ。でな…、本数にも意味がある。1本は、一目惚れ。3本は、愛の告白。99本は、永遠の愛。108本は、結婚しよう。999本は……。』

 

 そして、男は、ミナミの口に顔を近づけ……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「わーーーーー!!」

「きゃっ!」

「ハーハー…、と、トリッシュ?」

「やっとお目覚めだよ。」

 知らない部屋だった。そこに、ブチャラティ達と、トリッシュがいた。

「ミナミぃ。」

「っ…。」

 ナランチャに話しかけられ、ミナミはビクッとなった。

「あ…、ごめ…。」

「……なに?」

 ミナミは、額ににじんだ汗を手で拭いながら聞いた。

「その手に、あんの…花か?」

「えっ? あれ、いつの間に?」

「ヒマワリだわ。でも、造花ね。」

 トリッシュがミナミが左手に握っていたヒマワリの花を見てそう言った。確かに造花だった。精巧に作られているが、よく見ると人工物だ。

「いつの間に…、ミナミは、どうも変な力があるようですね。隠れ家からいきなりポンペイに現れたことといい…。」

「お前さ、なんか他に隠してんじゃねーの? あのシーザーとかいう男もそうだけどよぉ。」

「ミスタ!」

「は?」

「……シーザーさん…。」

「ああ、泣かないで。目ぇ擦ったらダメよ。赤くなっちゃうわ。」

 途端にボロボロと泣き出したミナミに、トリッシュが焦ってハンカチを渡しつつ肩を抱いて慰めようとした。

 ミスタは、あちゃ~っとなり、ミスタの迂闊さに他の面々はため息を吐いた。

 いきなりギャングチームに同行させられて、張っていた気がシーザーと再会できたことでプッツンと切れてしまったのだ。後に残るのは、17歳という、幼すぎず、けれど大人からはまだ遠い年齢の精神の脆さのみ。同じぐらいでも色々とあって今ギャングのナランチャ達とは人生経験の違いから脆さが際立つ。

「もう…、帰りたいよ…。家に帰してよ…。」

「……。」

「弟と母さんとお爺ちゃんのいる日本に帰りたいよ…!」

 ミナミは、グズグズ泣きから、火がついたようにワーワー泣き出した。

「チッ。あー、うるせぇ。ビービー泣…。」

「いいから…、好きなだけ泣かせてやれ。」

 舌打ちして立ち上がりかけたアバッキオを、ブチャラティが掴んで止めた。ナランチャはオロオロしていた。

「しかし、どうします? あのシーザーという男…、あの怒りようだと、どこまでも追ってきそうですよ?」

「さ、さすがによー。ココまでは来れねーって。カメだぜ、か・め。」

 

 そう、今いるこの部屋は、カメの中なのだ。

 ポンペイに隠されていた鍵。それは、スタンド使いのカメのスタンドを使うための鍵だった。理屈は分からないが、鍵はカメの甲羅にぴったりとはまる仕組みになっていた。もしかしたら最初からハマっていたのだが、外すとスタンドが起動しないという仕組みだったのかもしれない。(※スタンド使いを量産する矢(ポルポが所持していたもの)があったのでカメをスタンド使いにした可能性はある)

 ボスが用意したという安全な乗り物とは、身を隠しながら移動する手段として用意された、ネアポリス駅の水場にいた、このスタンド使いのカメのことだったのだ。

 そして、カメの中に入ったブチャラティ達は、今列車に乗って移動中だ。カメは隙間などを好むため、そう簡単には見つからない。実際にこのカメは、今で座席の下に潜り込んで身を隠している。

 カメの中は、非常に快適な環境になっており、おそらく能力を利用して後入れしたと思しき冷蔵庫やソファー、テレビに棚、絵画まであり、どこの高級ホテルの一室だいうぐらいだ。驚きなのは家電製品が動いていることだ。電気がちゃんと通ってるらしい。室温も良いときたものだ。

 ただ…たったひとつだけ不便があるとしたら、出るときだろう。なにせ今狭いところにカメが入っているのだ、出ようとすると思いっきり頭を強打することになる。(さっきナランチャが頭を強打)

 

 その後、しばらく大泣きしたミナミは、泣き疲れて、ふて寝。トリッシュは冷凍庫の氷と水で氷水を作りハンカチを冷やしてミナミの腫れてしまった目元に当ててあげていた。

 ミナミは、ギュッと造花のヒマワリを握りしめていた。

「なあ、ジョルノー、本物のヒマワリ作ってくれよ。」

「それをどうするんです? ミナミにあげる気ですか?」

「ダメ?」

「あんな握りしめてたら本物の花では枯れてしまいますよ。造花の方が良いでしょう。」

「…ちぇっ…。」

 ジョルノから断られ、ナランチャは本棚の方に行った。

「ヴェネツィアまで、安全に行けますね。このカメなら。」

「しかし、ブチャラティ…。俺はどうにも信じられないぜ?」

「なにがだ?」

「このミナミって女が、死んだ人間を生き返らせられるってことがだ。」

 アバッキオが胡散臭そうにミナミを見て言う。

「おそらくは…、真実だ。だが、何かしらの制限はあるかも知れない。」

「例えば?」

「……そんな都合の良い力が、好き勝手に使えるとは思えんということだ。」

 すると、ミナミがビクッと反応した。

「…どうやらそうらしいな。ミナミ?」

「…うぅ…。」

 ミナミは身体を丸め、背中を向けて呻いた。

「ったく、つくづく嘘のつけねー女だな、お前。」

「普通の一般人にそれは酷ですよ、アバッキオ。」

「おめーの意見は聞いちゃいねーよ、ジョルノ。」

「あー!」

「どうした、ナランチャ?」

「花の図鑑がある!」

「そんなことで大声出すんじゃねーよ。」

「えーと、ヒマワリ…ヒマワリ…。あった! フーゴぉ、この花言葉ってなんだー?」

「花言葉は、文字通りその花に込められた言葉の意味ですよ。」

「ふーん。えーと、ヒマワリの花言葉は…、憧れ? 太陽の恵み…、人情…崇拝……、ゲッ、にせ金貨って意味もあんのかよ。あっ、本数で意味が変わるって! えーと、1本が一目惚れ……?」

 ナランチャは、ハッとしてミナミが握っている造花のヒマワリを見た。

「アレは造花ですから、花言葉に該当はしないかもしれませんよ。」

「で? 他にはあんのかー?」

「えーと、3本で愛の告白…、んで、108本が……。」

「なんで恥ずかしそうにしてんだよ?」

「……け、結婚しよう、だって。」

「んじゃ、夏のヒマワリ畑にでも連れて行くっきゃないんじゃね? そんで太陽の下で指輪渡しってか? 季節も季節だからあっちーな。」

「けど、今は…どだい無理な話でしょうが…。」

 フーゴが、ふて寝しているミナミを見て呟く。

 それを聞き、そしてミナミの様子を見たナランチャは、がっくりと項垂れたのだった。

 

 キをツケロ

 

「ん? なんか言ったかぁ?」

「いえ、何も。」

 

 テキが来ル

 

「敵?」

「なんだ今の声は…?」

 

 ハナ

 

「はな?」

 

   ヲ、見ロ

 

「花…花? お、おい…? なんかおかしいぜ。さっきまでそこの花瓶で咲いてた花が…。」

 異変はすでに起こっていた。

 さっきまでテーブルの花瓶に飾られていた花が、ボロボロに枯れていたのだ。

 

「んん~、なんか言ったかぁ? 身体がぁ…なんか、だりぃ重てぇ…。手が…手が…? シワシワだぁ…?」

「な、ナランチャ? お前…!」

 少し目を離した隙に、ナランチャは、数十歳もの年月を過ぎたような老人になっていた。

 

 ミナミは、この異常事態でも、ふて寝を続けた。

 彼女が握りしめている造花のヒマワリは、何も変化もなく、不気味に咲いているように見えた。

 

 

 




容赦なく襲ってくる暗殺チーム。
ザ・グレイトフル・デッド発動。

ウソが下手くそなミナミは、あっさりと死者蘇生にはリスクが伴うことをブチャラティに知らしめてしまう。(※死者蘇生には、ひとりを蘇生するのに1000本の青いバラの花が必要)


最初にミナミが見ていた夢は、未来の正夢なのかなんなのか…?


なお、ヒマワリの花は、シーザーの好きな花です。
花言葉や本数の意味合いは、ネットで調べました。


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純粋なる邪悪を宿す眼(まなこ)

すっげー、調子良いので勢いで書けるだけ書く!


とある、フリーゲームに登場した、怪異(迷信)を思い出して取り入れてみました。


ほぼ、後付け設定ですが、造花のヒマワリの花を活かすには?っと考えた末にコレ。


展開は、オリジナル展開。

戦闘は無いけど、プロシュートとペッシは出てます。(この時点ではまだ死んでません)


 

 ザ・グレイトフル・デッド。

 

 それは、暗殺チームのプロシュートという男のスタンド。

 

 無差別にあらゆる生命を老化させる能力を持つ。その射程距離は、現在走行中の列車全体に及ぶ。

 

 しかし、条件はある程度ある。

 

 それは、温度だ。

 

 男と女は、その体質の違いからか、温度が微妙に違う。

 

 それゆえにザ・グレイトフル・デッドの力は、温度が低い方が老化しにくいという弱点がある。そして氷のような急冷をすると老化は止まり、若さが戻る。

 

 花のような弱い命はあっという間に枯れて朽ちるほど早く死に行く。それは命であれば逃げられない。人間もまた枯れ木のように老いて朽ちて死ぬ。能力を解除しない限り、老いて死ぬ。

 

 

 

 

 その無差別攻撃に気づいた時には、すでに仲間は老いる攻撃をもろに受けていた。

 氷の入ったジュースを飲んでいたトリッシュや、ブチャラティ、ミスタは、老化が遅かった。だが、男女の違いかトリッシュとミナミに大きな変化はなく、ブチャラティとミスタは少し老い始めていた。

 ブチャラティは、冷凍庫の僅かに残った氷をミスタに持たせ、敵を暗殺するためにカメから外へ送った。

 

「だから…なんだっていうのよ。」

「ミナミ…。」

「トリッシュ、あんたを捕まえるためだけに、ここまでするなんて、正気の沙汰じゃない…。」

「…そうだね。」

「トリッシュを責めてるわけじゃない…。トリッシュの責任でもない…。悪いのは…、ここまでのことをやらせることをしている、あなたのお父さん…。」

「……うん。ミナミ、私、怖いわ。」

「うん…。」

「あなたの言うとおりだと思う。でも……。」

「分かるよ。その気持ちは。分かってる。」

「うん…。」

「と、トリッシュ…、余計なことはしなくていい! その氷とグラスの冷えたジュースは君とミナミが使うんだ。」

 そうブチャラティが言うが、この中で一番老いているのはナランチャだ。このままでは、ナランチャが一番最初に死ぬのは目に見えている。

「ナランチャも、俺達も…覚悟の上でボスの命令に従っている。君もミナミも、自分の安全だけ考えるんだ。それが俺達の仕事だ。君もミナミも好き好んでこんな所で、こんな目にあっているわけじゃないんだから。そして…、この老いの攻撃は…、ミスタが……。」

「彼は…。」

「?」

「……死んでるかも…。」

「えっ!?」

「なに…?」

「ひとりじゃない。敵は…、スタンド使いは、二人いた…。」

「待て! なぜそれが分かる?」

 ブチャラティが老いでしんどい身体を起こしてミナミの肩を掴んだ。

「分からない…。なんで……“見える”の……? 片目が…、右目が…。これは、どこから見て…?」

 ミナミは、左目を思わず手で隠し、右目に映っている映像を確認した。その右目が鮮血色に変わり始めていることに気づかず。

「ミナミ! 敵は二人! そしてミスタは…、失敗したって事だな!?」

「ううん…。でもまだ…、スタンドが…彼のスタンドが、いる。これってまだ意識があるってこと?」

「セックス・ピストルズか…。ならまだ希望はある。敵の動向は分かるか!?」

「あっ。」

「どうした!?」

「ひろわれた…。これは……。なに?」

「???」

 分からないことだらけで混乱するミナミであったし、ブチャラティもトリッシュもそれどころじゃなく気づかなかった。

 

 ミナミがさっきまで握っていた造花のヒマワリの花が、カメの部屋の中から消えていたことに。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「?」

「何を拾った、ペッシ。」

「花だ。これ作り物の花だぜ、兄貴。」

 ペッシとプロシュートは、運転席に行く途中だった。ペッシが造花のヒマワリの花を拾った。

「んなもん拾ってる暇があったら……、? ペッシ…、そいつを捨てろ。」

「えっ?」

「さっさと捨てろーーーー!!」

「えっ?」

 突然顔色を変えたプロシュートの様子にペッシは、思わずその造花のヒマワリの花を見た。見てしまった。

 

 

 ギョロリ

 

 

 っと動いた、ヒマワリの花の中心に生じた鮮血色の瞳の一つ目とペッシの目が合った。

「ぁ…、がっ!?」

 その瞬間、ペッシの身体がコンクリートにでも固められたかのように硬く動かなくなった。

「ぁあ…ああああああああああああ!?」

「チッ!!」

 固まって動けないペッシの手からプロシュートが造花のヒマワリの花を叩き落とした。そしてザ・グレイトフル・デッドによってヒマワリの花を潰した。

「おい! ペッシ、動けないのか!?」

「ああぁぁぁ、兄きぃぃいいい、か、かかかかか、身体が…、まるで…石みたいに…。さっきの目…めめめめめめ、目が…。」

 ガチガチと歯と歯を震わせて鳴らしながらペッシが泣きながら助けを求める。

「気合い入れろ! 気合いで吹っ飛ばすんだ!」

「うううううううぅぅぅ!! む、無理! 無理ムリムリムリムリ!!」

「このマンモーニが!!」

「ゲボッ!?」

 プロシュートは渾身の力でペッシを殴り飛ばした。

「…これで気合い入ったろ? ペッシぃ? まだ気合いいるかぁ?」

「……イダイ…、でも、な、直っだ…。けど、今の目は何だったんだ? 兄貴…そんなスタンド使いがブチャラティのとこにいたっけ?」

「いいや、情報じゃそんな奴はいないはずだぜ。けどな…、新たに介入した女が一人いる。そいつかもな?」

「マジでかよぉ!?」

「だが…今のはスタンドじゃない。」

「えっ? け、けどぉ…。」

「…“邪視(マロッキオ)”って聞いたことぐらいはあるだろーが。」

「えっと、メデューサとか、あんな奴だっけ?」

「そいつは神話に伝わる、その一例だ。迷信だが、大昔から世界中のあっちこっちで伝わる民間伝承って奴でな、希に邪視を宿す人間がいるとされている。さっきお前を見たあの目は、その類いで間違いないだろう。」

「で、でも、今のは人間じゃなくって、作り物の花…。」

「分かってねーな。この手の迷信ってのは、胡散臭いうえに、存在自体があやふやだ。だからこそ、実在したとき付け入られちまうんだよ。さっきのようにな。澄み切った純粋なる邪悪ってのは簡単に心の弱さに入り込んで来やがる。メデューサは、その顔のあまりの恐ろしさに恐怖した相手を無差別に石化させるようにな。」

「俺、石になるとこだったってこと!?」

「石化するかどうかは別にしてもだ、あのままあの目を見続けていればいずれ何かしらの形で命を失ってただろうぜ。邪視ってのは、そういうもんだ。」

「ひえええ~~。」

「そんなことより、とっとと運転席に行くぞ。」

「ま、待って、兄貴~。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一方、カメの中では…。

「…い……。」

「ミナミ? あっ! 目から血が!」

「いぃ、痛い……痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイ!!」

「ミナミ!」

「なんで…私は…、わたし…は……、『ワタシ』…は…?」

 

 ミナミは右目を押さえのたうち、やがて力が急激に抜けていき、意識を失った。

 

 

 

 




邪視(じゃし)は、世界の広範囲に分布する民間伝承、迷信の一つ。悪意を持って相手を睨みつける事により、対象者に呪いを掛ける魔力。
イーヴィルアイ(evil eye)、邪眼(じゃがん)、魔眼(まがん)とも言われる。
(※pixiv大百科より)



なぜ、造花のヒマワリの花に邪視が現れたのか……?
そしてなぜミナミは目にダメージを?

そして、意識を失ったので、ここからの戦闘は、ブチャラティvsプロシュート&ペッシとなります。

本当はカットしたくないけど……!

邪視という謎の力という形で介入してもいいかな?
ご意見求めます。(活動報告、及び、メッセージでお願いします。消されちゃうから)


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誘(いざな)う

まず謝っておきます。





覚悟を決めたカッコいいペッシは……、いません!



オリジナル展開です。


 

 ソロリ、モゾリっと蠢くソレは、ゆっくりと、確実に運転席のある先頭車両へ向かっていた。

 その途中でプロシュート踏み潰されたが、形を保っている造花のヒマワリの花を、手として辛うじて機能している手のようなモノで掴み上げる。

 

『うぇぇぇん! なんだ、ありゃ~~~!?』

 

 小さな声を聞いて、ソレが振り返る。

『モジャモジャした、赤い根っこの塊だ~~!!』

 倒れているのは、頭から血を流したミスタだった。プロシュートに直接掴まれたことで急激に老化させられ、衰弱したところに頭に弾丸を受けたのだ。だが弾丸の軌道を操れるスタンド、セックス・ピストルズのおかげで脳まで弾丸は達さなかった。

『老化するスタンドが発動してる中で、なんで枯れずにいるんだ!? じゃ、じゃあ、コイツはスタンド!? 誰の!? 他にスタンド使いがいたのか~!?』

 しかし敵じゃないと判断したのか、その根っこの塊は、方向転換して運転席のある先頭車両へ向かいだした。

『ああ! 行っちまう! 先頭車両に行っちまう! 敵なのか味方なのか!? どっちだ!? けど、ヤベェ気がする! アイツは…、アレは……。』

 小さなスタンド、セックス・ピストルズ№5がガタガタと震え上がる。

 

 ゆっくりと歩き出すソレが握っている造花のヒマワリの花から、ぽたりぽたりと血が垂れていたが、徐々に垂れる量が減っていき、やがて垂れなくなった。

 

 

 

 先頭車両の出入り口にさしかかったとき、プロシュートとペッシが物陰に隠れていたカメを見つけ出していた。

 そしてザ・グレイトフル・デッドで、トリッシュとミナミ以外にトドメを刺そうと拳を振ろうとした。

 

「う…? うわあああああああ!?」

「!」

 ペッシがソレの存在に気づいて悲鳴を上げた。

「なんじゃこりゃーー!? 根っこ? 植物!? 海藻みたいなモジャモジャの塊だ!」

「…さっきの邪視があったヒマワリの花を持ってやがるな。」

「あっ!」

 プロシュートがいち早くそれに気づき、ペッシもそれに気づいた。

「どっちかだ。どっちかの女がボスの娘だ。だが、どっちだろうと今はいい。てめぇらを始末してから調べりゃいいからなーーー!!」

 

「っ!」

 

 天井にジッパーで穴を空けて潜んでいたブチャラティに、プロシュートがザ・グレイトフル・デッドの拳を振るった。ブチャラティは、咄嗟にスティッキー・フィンガーズで防ぐ。

「ペッシ! 邪視に気をつけて、お前にソイツを任せる!」

「け、けど…さ! もしコイツがトリッシュのスタンドだったら…。」

「んなこたぁ、いい! とにかく半死状態で構わねぇから、やれ!」

「分かったよ! 兄貴!」

 ペッシが自身のスタンド、ビーチ・ボーイを出し、素早く釣り針を根っこの塊に突き刺す。

「ん…? んんんん?」

 ペッシは、ビーチ・ボーイから感じる手応えに疑問を持つ。

 そして釣り針の先が、何か硬い物に当たった。人型で言うと、心臓当たりだろうか。小さな…硬い物。

「かた…、っ!?」

 ハッとした瞬間、辛うじて頭らしき部位に造花のヒマワリの花が移動していて、そこに邪視がありペッシを見ていた。

「やべっ!」

 咄嗟に片手で目を覆った。

 その手を根っこの手が掴んだ。

「うっ!」

 それにビックリして思わず目を開けると、眼前に邪視があった。

「ひぃいいあああああああ!!」

 目が合った瞬間、身体が凄まじい金縛りにあう。

「おい、そっちの仲間がヤバいようだぞ? 助けなくて良いのか?」

「それよりも自分の心配をしたらどうだ? 身体が温まってきただろ? これだけ動けばな。」

 スタンドによる戦いが一方で行われていた。

 下半身のない異形の姿をしたザ・グレイトフル・デッドだが、格闘能力が低いわけじゃない。そのため、精密性もあるスティッキー・フィンガーズにも負けてなかった。

『やべぇ! 氷が効かない!』

 ミスタのスタンド、セックス・ピストルズの№6が氷をブチャラティに当てていたが、体温が高くなってきたせいで老化のスピードが氷でも止められなくなっていた。

「うぅぐぐぐぐぐぐ! き、きききき、気合い、気合いだああああああああ!!」

 ジーッと邪視に見つめられていたペッシだっが、血管を浮かせ、必死に抗おうとする。

 徐々に身体が冷えていくような感じがした。まるで大量出血で身体から温度が無くなっていくような…、そんな恐怖が芯から伝わってくるような奇妙で不気味な感覚が襲ってくる。

「はヒュー、はひゅー……、ぁ……。」

 ペッシの脳内を、美しい花畑のような光景が駆け巡った。そしてまるでジェットコースターのようにそれまでの人生の走馬灯が駆け巡る。

 それがいわゆる、死へ向かう際に見ると言われる臨死体験であることに、ペッシは偶然にも気づいた。

「ハッ! あっぶねーーーー!!」

 意識を気合いで戻したペッシは、掴まれている腕を振り払い根っこの塊を蹴り飛ばした。グシャン、ドダンっと、脆い根っこの塊が転がり倒れる。しかしすぐにギリギリの人型になって立ち上がる。そして今度はゾンビのように両手を前に出してペッシに掴みかかろうとしてきた。

「来るんじゃねー!!」

 ドゴン!っと、腹の辺りにペッシが蹴りを入れて吹っ飛ばそうとしたが、足が触れた直後。またもフワッとした浮遊感と共に、暗闇に投げ出されたような映像が脳内を駆け巡った。

『またーーー!? ちくしょうカラクリが分かればすぐに…、すぐに…?』

 ペッシはおかしいことに気づいた、自分の視界がおかしいことに。

 ふと下を見ると、見覚えがある靴とズボン…その足が自分の足だと気づいた時には…。

『兄貴ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』

 大きく開いたジッパーからプロシュートを抱えたブチャラティが車両のと外へと飛び出すのを、白目を剥いて口から泡を吹いて倒れている自分自身も見つけながら、ペッシは赤い根っこの塊の内側から叫んだ。

 そして車両の窓に、ベシャッと血が飛び散って汚し、ブチャラティだけがジッパーを開けて戻って来た。

「これで…、老化させるスタンドは止まった…。しかし、コイツは?」

『ビーチ・ボーイ! ビーチ・ボーイぃいいい!! なんでなにもできねーんだよぉおおおお!?』

 自分の亡骸を前にしても、自分が赤い根っこの塊の内側にいることに気づいていないペッシは、自分のスタンドを呼ぶがスタンドは来ない。

「……死んでるな? お前のおかげか? そもそもお前は…、なんだ? スタンドか?」

『ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!! 兄貴ぃ…兄貴ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! ごめん、ごめんよぉおおおお!!』

 赤い根っこの塊の内側にいるペッシは、ただただ号泣する。

「………? う、うわああああああ!?」

『……?』

 するとブチャラティが突如悲鳴を上げ身体を硬直させた。

「なんだこの目はーーーーー!?」

 それを聞いたペッシは、思い出す、赤い根っこは、邪視を宿した造花のヒマワリの花を持っていた。そして自分はその目を見て……。

『コイツ(赤い根っこの塊)…! ブチャラティの味方じゃない!』

 それに気づいた。

『ついてるのか? 俺達は? いや、ダメだ…! 俺は死んじまってる! せめて、せめてブチャラティだけでも始末できりゃ…。兄貴の仇を!』

 

 

 痛ミは 無イ

 

 

『?』

 

 

 安息ヲ

 

 

『…ここ…! 俺は…、まさか! ここはあの赤い根っこ塊の中か!!』

 

 

 永遠ノ

 

 

 安ラギを

 

 

『誰だか分からねーーーが!! ブチャラティどもを殺せーーーー!!』

 自分があの赤い根っこの塊の中にいると理解したペッシはあらんばかりに叫んだ。

 その背後にブラックホールのような黒い穴が迫ってきているのに気づかずに……。

 

 

 

 

 

「邪視(マロッキオ)…!! なのか…?」

 一方ブチャラティは、邪視の視線の力により強力な金縛りにあっていた。

「だが、この根っこは見覚えがある! そうだ、カプリ島のヨット! あそこで見たんだ! なら、これは…、ミナミのスタンドか!?」

 造花のヒマワリの花に宿る邪視が、ジーッとブチャラティを見つめている。

「ぐぅうううううううううううう!! フンッ!!」

 老化させるスタンドの力が無くなったことで力が戻ったブチャラティは、気合いで金縛りを破った。

 金縛りから解放され、尻もちをついた際に、再び邪視を見かけてしまうが、咄嗟に視線を外し、カメを掴んで運転席から飛び出した。赤い根っこの塊は、ブチャラティを視線で追っていたが、やがて運転席の操縦桿を見つめた。そして手を伸ばす。

 緊急停止ボタンに。

「うおおおおお!?」

 突然止まった列車の衝撃でこけたブチャラティ。

 老化から回復した生き残った乗客達が更にパニックになる。だがブチャラティは構わず別の車両へ移動した。

 しかし、次の車両の出入り口で、横からヌッと赤い根っこの塊の手が伸びてきた。

「スティッキー・フィンガーズ!」

 ブチャラティは、咄嗟にスタンドを発動させてその手を弾こうとした。

 だが触れた瞬間に、浮遊感と共に脳内を臨死体験のような凄まじい情報が駆け巡り意識を失いかけた。

「ーーーハッ!」

 後ろへ倒れそうになったことで赤い根っこに触れていた箇所が離れ、ブチャラティはすぐに正気に戻った。

 

 コイツの目と、身体(根っこ)に触れたら死ぬ!

 

 そう本能が告げてきた。

 ブチャラティは、方向転換し、車両の横にジッパーで穴を空け、外へ飛び出した。

 

 赤い根っこの塊は、追って来なかった。

 

 慎重に車両の窓から中を見たが、赤い根っこの塊はどこにもいなかった。どの車両にも。

 

「…あとでミナミに聞くしかないな。」

 

 あれが本当にミナミのスタンドだとしたら、自分達はジョーカーどころかとんだ爆弾を連れて歩いていることになる。

 死者蘇生の力があんな邪悪だとは……。

 確かに自然の摂理を捻り曲げるその行為が許されることで無いことは理解できるが、なにかおかしいとブチャラティは、考えた。

 そう…、ミナミの意識ではない、全く別の意思を感じるのだ。

 

 それは、あの邪視のような澄み切った純粋なる邪悪。

 

 いや…、邪視はその意思が生み出したモノか?

 

 

 ウシロ

 

 

「!?」

 

 カメの中で聞いたあの声が再び聞こえ、振り向いた時、そこには赤い根っこの塊と邪視があった。

 声も出せないほど急速な金縛りが来てブチャラティは、呼吸が止まる思いがした。

 

「エアロスミス!!」

 

 ブンッとエアロスミスが現れ、邪視を撃ち抜いた。

 するとボロボロという風に赤い根っこの塊は崩れ落ち、地面に吸い込まれるように消え、あとにはボロボロに穴が空いた造花のヒマワリの花だけが残された。

「ナランチャ…。」

「だいじょうぶか、ブチャラティ!」

 カメの中から出てきたナランチャが、金縛りから解放されて大量の鼻血を出しながらへたり込んだブチャラティを心配した。

「危なかった…。あと一歩遅かったら死ぬところだった…。」

「さっきのなんだよ!? 敵か!?」

「おそらくだが…、ミナミのスタンドだ。」

「えっ!?」

「……あとで、本人に聞く。まずは別ルートからヴェネツィアへ向かうぞ。」

「う、うん…。」

 ナランチャは、カメの中に戻り、ブチャラティは、カメを抱えて線路に辿るように歩いた。

 

 

 




謎の赤い根っこの塊というイレギュラーに襲われ、ブチャラティも暗殺チームも大変なことに。
プロシュートがブチャラティに一緒に外へ放り出された時に、ペッシが助けられなかったのでプロシュートは、障害物にぶつかって……です。
そして、二人が死んだ後、赤い根っこ塊は、矛先をブチャラティに向けてきたため、ブチャラティ、危うく死ぬところだった。


この後、ミナミに聞いても分かりません。


そろそろ、ポルナレフ達も出さなきゃな……、シーザーも再登場させたいし。


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銀と炎と砂

ごり押しで申し訳ないです……。



ポルナレフ達、登場。


オリジナル展開です。


 

 分からない。

 

 それだけが答えだった。

 

「ウソ言ってんじゃねーぞ、コラァ!!」

「アバッキオ落ち着け!」

「ミナミは、嘘のつけない女です。間違いなく本当でしょう。『自分のスタンドについて、分からない』というのは。」

「…チッ!」

 アバッキオは、ミナミの胸ぐらから手を放した。

「だが、再度聞かせてくれないか? 君のスタンドについて。」

「……私のスタンドは、いつも勝手に動くから。でも、何かがおかしいのは確か。」

 ブチャラティが聞くと、胸元押さえたミナミが答える。

「最近になってやっと、少しだけ言うことを聞いてもらえるようになったけど、少しだけ…。」

「どうやって?」

「お願いするだけ。ブルー・ブルー・ローズには、私じゃない、意識がある。だからお願いしてるだけ。」

「だったらよぉ、なんで止めなかったんだ? 危うくブチャラティが死ぬところだだったのによぉ!」

 ミスタが怒鳴るとミナミは、ビクッとなり萎縮した。

「いじめないで。」

「あ、ああ、い、いじめてるわけじゃないっすよ?」

 ソッとトリッシュが庇うようにミナミに寄り添ったので、ミスタは慌てて訂正しようとした。

「そんなの…分からない…。ブルー・ブルー・ローズは、いつも私にとって害になるモノを排除しようとする傾向があるから……。」

「害? つまり敵だと判断したと?」

「たぶん…。」

「さっきから『たぶん』だのなんだの言いやがって、ハッキリしろ!」

「落ち着け!!」

 ミナミを掴もうとしたアバッキオを、ブチャラティが止めた。

「分からないものは…分からない…! 私だってこんなスタンド(力)を好き好んで持ったわけじゃないのに! 4歳の時に目覚めたらしいけど、それ以降15歳にになるまでずっと知らなかった、分からなかったスタンドだもの! 言い訳なんてしようもないし、どうしようもない!」

「落ち着けよ、ミナミ!」

「触らないでよ!」

「わっ!」

 ミナミがナランチャの手を払うよりも早く、ブルー・ブルー・ローズの根っこがミナミの服から現れ、ナランチャを引っ掻こうとしたためナランチャは後ろにのけぞって避けた。

「お前、今、自分の意思で出したんじゃ…。」

「違う違う!」

「落ち着いてください!」

「うわわわ! 部屋中の家具から根っこが!?」

「なにこの植物みたいなのは!?」

「トリッシュ、お前見えてるのか!? これは物質と同化したスタンドか!」

「なんで…、私は…お願いだから…もうやめてよ…。誰の命も奪いたくない…奪いたくなんてないのに…!」

 ミナミが顔を両手で覆って泣き出し、ヒッグ、エグと泣いていると、徐々に赤い根っこは消えていき、部屋は元に戻った。

「……危ないところだった…。」

 ブチャラティは、ブルー・ブルー・ローズのヤバさにようやく気づいた。だが後の祭りである。

「…ミナミ? …寝てるわ。」

「スタンドが身体に相当負担になっているようだな。しかし、何かがおかしい…。それだけは理解できるが、なにがおかしいのかが分からない。」

「悪いことは言わねぇ、ブチャラティ。ミナミをその辺にでも捨てた方が良い。このままだと俺達がコイツのスタンドにいつか殺されることになる!」

「それはできない。他の組織の者や、ましてや別の組織に奪われれば最悪の事態になるのは目に見えている。いいか、お前達! ミナミというジョーカーであり、爆弾を引き入れたのは他でもない俺だ! 責任は俺にある!」

「あの…。」

「なんだ、ジョルノ?」

「…ミナミを、シーザーに渡すという選択肢もあります。僕としては、ミナミを同行させることについては賛成ですが。シーザーがどこから追跡の末に僕らにたどり着くか分からない以上、示談という形で話し合いの場を設けるのもいいかもしれません。」

「…忘れてた。あの男のこと…。」

 フーゴはポンペイでのことを思い出して、ゾッとした。アバッキオも大汗をかいている。それだけシーザーが恐ろしいからだ。

 

 

 

『すまない。この女性のことを見なかったですか?』

『いや、知らないな。』

 

 

 カメ越しに聞こえた声に反応したのか、ブルー・ブルー・ローズが突然ツタのように壁を這い上がろうとした。

「ゲッ!? やべぇ!」

「止めろ、ミスタ!」

 ミスタが登っていくブルー・ブルー・ローズを掴んで止めた。

 

『ワンワン!』

 

「犬!?」

 

『どうしたイギー?』

『何かいるのか?』

「マズいぞ…!」

『あ? コレ…カメぇ? なんでこんなとこに…、ん? 鍵かコレ?』

『グルルル! アオオーン!』

 次の瞬間、カメの部屋の天井からスタンドが飛び込んできた。ネイティブアメリカンのような装飾と仮面に、後ろ足がタイヤの奇妙なスタンドだった。

「スタンドか!? しまった!」

 トリッシュと眠っているミナミ以外が迎撃しようとスタンドを出す。

 それぞれのスタンドが攻撃しようとした直後、そのスタンドが砂状になり部屋中に蔓延した。

「うわ!」

「め、目がぁ!」

 

「ミナミ! ミナミなのか? しっかりしろ!」

『構うな、そのまま彼女を抱えてカメから脱出しろ!!』

 聞き覚えのない男の声がいつの間にかカメの部屋に侵入していたらしく、砂嵐のように舞い上がっている中、一人の男がミナミを抱えて天井に跳び上がったのが微かに見えた。そして男が消えた後、砂が舞い落ち視界が良好になった。

「ミナミ? ミナミがいないわ! さっき男がいた!」

「やられた! ミナミを追っていたのは、シーザーだけじゃなかったか!」

「どうするんだよ!?」

「相手の顔が見たい! 追え!」

「了解!」

 ナランチャが先陣を切って飛び出していった。

 線路の先にあった駅だったが、人はほとんどおらず、視線の先に、ミナミを抱きかかえた銀髪の男と、褐色の肌に黒髪の男、そしてボステリアンが一匹、背を向けて走って行くのを見つけた。

「エアロスミス!!」

 ナランチャは走りながらスタンドを発動。

「ワン!」

 それにいち早く気づいたボステリアンが振り向き様に砂のスタンドを発動させる。

 犬のスタンド使い!? っとナランチャは驚いたが、カメのスタンド使いがいるのだから、犬がいても不思議じゃないかっと思い直した。

 エアロスミスが弾丸を放つ、ボステリアンのスタンドが再び砂嵐を発生させ視界を悪くしたが…。

「エアロスミスのレーダーをなめんなーーー!」

 砂の壁を越え飛び出したエアロスミスが弾丸を乱射し、ミナミを抱えている男の肩を狙ったが炎の壁がそれを遮断した。

「なっ!?」

「ほう…、若いな。だが…まだ青い子供だ。」

 背後に炎を纏った鳥の頭の人型のようなスタンドを出現させた褐色の肌の男が振り返る。

「先に行け、ポルナレフ!」

「おう!」

「させると思っていますか?」

 ジョルノもカメから飛び出し、舞い上がってる砂をゴールド・エクスペリエンスで蜂に変え、ミナミを抱えている銀髪の男に襲わせようとする。

「面白い能力だ。」

 しかし自在に動き回る炎が蜂を全て焼いた。

「相当な手練れですね。ですが…。」

 

「本命はこっちだ。」

 

「うお!」

 ジッパーを使って地面を移動したブチャラティが銀髪の男の前に飛び出し、スティッキー・フィンガーズで攻撃しようとした。すると銀色の騎士のスタンドが現れ、その拳をいなす。

「ん? お前は…! J・P・ポルナレフか!? まさかイタリアに舞い戻ってきていたとは!」

「パッショーネか! てめぇらに構ってる場合じゃねぇんだよ! さっさと道を開けな!」

「彼女を…ミナミを返して貰うぞ!」

「そいつはこっちの台詞だ!」

 スティッキー・フィンガーズと、銀髪の騎士のスタンド、シルバー・チャリオッツの使い手、ポルナレフの戦いが始まる。

「むぅん!」

 炎のムチがジョルノとナランチャを襲う。

 トリッキーさはないが、純粋なスタンドパワーが圧倒的に強いアヴドゥルのスタンド、マジシャンズ・レッドに逆の意味で奇策が通用しない。それは、アヴドゥルが歴戦の戦士であるが故だろう。ジョルノとナランチャの二人がかりであるがまったく太刀打ちできていなかった。ブチャラティを援護しに行けない。

「ワンワンワン! アオーーーン!」

 さらにそこに砂のスタンド、ザ・フールの使い手の犬、イギーまで加わっているのだ。

「ポルナレフ! なぜミナミを!?」

「こっちが聞きたいぜ! なんでてめーらギャングが、ミナミを攫った!?」

「くっ…、強い!」

「若造のくせにてめーもやるじゃねーか!」

 ミナミひとりを抱えていて不便な状態なのに、戦闘能力が劣らないポルナレフの戦闘能力に、ブチャラティもまた押されていた。

「砂が固まって…う、動けねぇ!?」

「うぅ!」

「ナランチャ、ジョルノ!」

 イギーのザ・フールにスタンドを固められ、身動きを奪われた二人に気を取られ、ブチャラティは、シルバー・チャリオッツの突きを身体のあちこちに受けることになった。

「命までは取らねーよ。そのつもりはない。ミナミさえ返して貰えればな。」

 ポッタポタと血を流し、膝をつくブチャラティの横をポルナレフが通り過ぎようとしたとき。

 ガクンッとポルナレフの足が地面に吸い込まれた。ジッパーが空いており、そこに足を取られたのだ。

「なっ!?」

「かかったな。」

 その隙を突き、ブチャラティがスティッキー・フィンガーズでポルナレフの腕をジッパーで解体してミナミを奪い取った。

「やらせるか!」

 凄まじいスピードでシルバー・チャリオッツが迫る。

 すると軌道を変えてきた銃弾がポルナレフの肩を貫いた。

「ぐっ!」

「いまだ、ブチャラティ!」

 カメから上半身を出し銃を構えているミスタが、叫ぶ。

「させんぞ!」

「スティッキー・フィンガーズ!!」

「アオオオン!?」

 炎を身体をジッパーで割ってギリギリで回避し、砂で固めていたジョルノとナランチャのスタンドが、ジッパーで解放された。そしてジョルノとナランチャをカメに飛び込ませ、ミナミを押し込み、ちょうど通りがかったトラックの荷台にカメを抱えたブチャラティが飛び乗った。

「……ぅう…。」

 ブチャラティは、カメの中に入りすぐに手当てしてもらった。

「ミナミ。」

 トリッシュがミナミを心配した。ミナミはうなされているのか険しい顔をして寝ている。

「あれだけのことがあって、まだ寝てるって…、どんだけ図太い神経してるんだ?」

「いや…、おそらくスタンドによる消耗で予想以上に疲労しているんだ。自力で制御できないタイプだということは、常にパワーが消費されているということだ。」

「ブチャラティは、あの銀髪の男達のことを知っているのですか?」

「ああ…、あの銀髪の男の名は、J・P・ポルナレフ、アフリカ系の男はモハメド・アヴドゥル、犬はイギーという。ある事件がきっかけでイタリア国内でパッショーネと交戦したらしくてな、いくつかのチームが潰されたと聞いている。詳しいことは知らないが、あまりに強いのでパッショーネ内じゃ、もし見かけても下手に手を出すなとお触れが出ているほどだ。」

「確かに、相当な強者でしたね。しかし、なぜミナミを? まさか……。」

「あの様子だと…、知り合いだろうな。どこかからミナミがイタリアにいることを聞いて連れ戻しに来たのか…。」

「…向こうがこちらを殺す気がなかったので手加減して貰ったおかげで逃げる隙が出来ましたが、次に出会ったらどうなるか分かりませんね。」

「やれやれ…、シーザーに続いて、今度は、その二人組と一匹が追っ手になるのか…。爆弾を通り越して、疫病神じゃねぇのか?」

 アバッキオが、忌々しそうにミナミを見た。

「ミナミ…、やっぱ、年上好きなのかなぁ…。」

「その線は濃厚になったなぁ。ま、頑張れよ。」

「うぅ~。」

 落ち込むナランチャをミスタが励ました。

「そもそもメチャクチャ嫌われているのに、年上とか云々とか関係あります?」

「!」

「おい、ジョルノーーー!」

 傷口を思いっきり開き、塩をすり込む所業をするジョルノに、フーゴとミスタが叫んだ。ナランチャは部屋の隅で膝抱えて落ち込んだ。

 

 

 

 




配布されたお触れで、ポルナレフ達のことは知ってたブチャラティ。
でも、まさかミナミと知り合いだとは知らず。

トリッキーで最初の敵からかなりの強力なスタンドが多い第五部で、第三部のスタンドがどれだけ通用するか分かりませんが、純粋な攻撃力……スタンドパワーでは圧倒すると思ったのでこうしました。
あと、歴戦の戦士であることも強さに繋がってるかも。

そして、コレ書いてて考えました。炎を自在に操るマジシャンズ・レッドと、ギアッチョのホワイト・アルバム……、戦わせたらどっちが強いかと。
最高温度と、最低低温……、どっちが勝るか…。すっげー気になる。


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法皇の緑と、成長する災厄

ベイビィ・フェイス編。


ジョルノの影が薄いって感想欄でもらったけど…、原作通して見ると、攻撃担当が他の仲間だから、ジョルノってレクイエムまでの間は後援支援ばっかに見えて…、それもあるかも?


原作通りっぽい、オリジナル展開。


花京院登場!!(登場させる予定無かったんだけど)


 その後、高速道のトラックを利用してカメを乗せ、便乗。

 ……が、天井を見張っていたミスタのスタンド、セックス・ピストルズがトラックの運転手のハンバーガーを盗んでしまいカメを発見、結果ミスタは咄嗟の判断でトラックの運転手を気絶させ事故。警察や消防車が来たところでこっそりと逃げて、今、ローマの街道沿いで車を盗むかヒッチハイクするか考え中。

 敵の情報網がとんでもないためヴェネツィアにトリッシュを送り届けるまでの道中は、まったく油断ができない。

 しかも、ミナミというジョーカーであり爆弾まで抱えているのだ。下手すると強引にとはいえ同行させた同行者であるミナミのスタンドに寝首を掻かれる可能性、それと彼女を取り戻そうとする男達の存在(シーザー、ポルナレフ、アヴドゥル、イギー)があり、見つかればボコられること確実ときたものだ。(特にシーザー)

「あいつら以上に、ミナミの追跡者が来ないことを祈るぜ~…。」

「いたらどうするんですか?」

「…せめて怒り心頭で話が分からない状態じゃないことを祈るっきゃないだろ……。」

 ミスタとフーゴはそんな会話をした。

 その後、ジョルノが車を十台ほどゴールド・エクスペリエンスでカエルに変化させ、どの車が盗まれたか分からなくし、敵の追跡の遅らせる手段を取った。

「今なら『盗み時』っすよ~。100メートル範囲で俺ら以外の人間はいないぜ!」

 広範囲を飛ぶことが出来るエアロスミスと、レーダーで周りの様子をナランチャが見てそう言った。

 

 一方ジョルノは、カメを抱えて、駐車場から少し離れた位置にいた。

 彼の視線の先には、エンジンがかかったバイクが置かれていた。

 さっきまでなかったものだ。

 それを不信に思いつつ、ジョルノは、車が手に入ったことを伝えるべく抱えているカメの中にいるブチャラティに声を掛けようとしてカメの中を覗いた。

 しかし、カメの中には、ブチャラティはいなかった。

「ブチャラティ?」

 そしてトリッシュの姿も無かった。

「ーーー!」

 けれど、ミナミだけがソファーに寝ていた。そして彼女を守るようにブルー・ブルー・ローズの赤い根っこが周囲に囲うように生えていた。

「ミナミ! ブチャラティとトリッシュは!?」

『…う……うん?』

 ようやく目覚めたミナミが目を擦りながら起き上がった。

『トリッシュ…?』

 眠い目で周りを見回すが、そこにトリッシュの姿がないことに気がつく。

 そしてシュンッと見えない攻撃が、ミナミを囲うように守っている根っこのひとつに命中し、バラバラの小さな四角に変える。だがすぐにその四角になったモノからブルー・ブルー・ローズが生え、再構築された。

「今のは! 敵…!」

『えっ?』

『ど~なってやがんだ~? けど見られたからには…。』

「ゴールド・エクスペリエンス!」

『あっ…、だ、ダメぇ!!』

 ミナミが止めるよりも早くカメの中にジョルノがゴールド・エクスペリエンスを入れた。

 その直後、ゴールド・エクスペリエンスの喉部分が四角型に抉られ、ダメージフィードバックで、ジョルノの喉の部位が四角く抉られ息が出来なくなった。

『ジョルノ!』

『おめ~がミナミかぁ? ブチャラティのチームのジョーカーっていうのは~?』

 カメの部屋にある家具が小さな四角に分解されるようにグチャグチャと動き出す。

「…ぐ…っ…!」

 呼吸が出来なくなったジョルノは力を振り絞り、ゴールド・エクスペリエンスで家具を蹴った、だが途端に右足の先が消えて無くなり、そしてジョルノの右足の先が消え大量出血した。

『ジョルノ! スタンドを引っ込めて!』

『ざんね~ん! おせぇよ!』

 次の瞬間、ジョルノの右目が周りの肉と骨と共に四角く抉れて消えた。

 その時、ジョルノはカメから鍵を外していた。

 ミナミと、家具、そしてさきほど奪われたジョルノの右目が部屋から浮き上がって外に放り出された。

「なる…ほど……。敵が見えないんじゃなく…、とっくに…見えていたんだ…。この能力は…人間をバラバラに『細かく』し…、まったく別の物質に『大きさ』までも組み立て直す……! だが…ブルー・ブルー・ローズは……、物質同化型…。いくら分解して組み替えてもそこから生えなおせば……。」

「ジョルノ! それ以上喋ったら…!」

「…ひゅ……ぅ…。」

 

 

 

 

 

 

 一方。

『ミナミはどうしますか? 彼女のスタンドは、分解できないです。どうしますか、どうしますか?』

「ミナミという女は個人的にひじょーに興味深いが、今は置いておこう。トリッシュを入れたカメをこっちに運ぶことを最優先にするんだ! ベイビィ・フェイス!」

 

 スタンド、ベイビィ・フェイスの使い手メローネが、パソコン型の“親”であるベイビィ・フェイスの方を操作し、“子”に指示を出す。

 追跡対象のDNA(※今回はブチャラティの血)と、生きた人間の女性を触媒にして生まれてくる実体を持った自動操縦型スタンド。それが、ベイビィ・フェイスなのだ。(なお触媒にされた女性は、ほぼ喰われて死ぬ)

 

 

 

 

 

 

 

 さらにその一方。

「……。」

 エアロスミスのレーダー範囲からさらに、100メートル離れた場所に佇んでいる緑のコートを纏ったスマートな男が一人いた。

「さすがの“DIOの息子”でも、あの状況は打開できないか……。僕が行かなければならない。彼女を…ミナミだけでも無事に連れ戻さなければならない。」

 そして男が歩を進めだした。その足下に緑色の触手のようなモノが地面の下を走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてミナミとジョルノの方は……。

「ジョルノ! ジョルノ! ブルー・ブルー・ローズお願い! 助けて!」

 しかし、ブルー・ブルー・ローズは、ミナミの周りでミナミを守るために根を出囲っているだけで動かない。

 呼吸も出来ず、そして出血で倒れたジョルノを見てミナミが焦る。

『ケケケ! お前、足手纏い! 新入りの死体はここに置いときます。そしてミナミもひとまず置いときます。とても静かに、しずか~に、カメを…トリッシュを手に入れたぜ!』

 ベイビィ・フェイスが姿を現わし、カメを持ってエンジンがかかっているバイクに乗ろうとした。

 

 

 ビンッ

 

 

『?』

 直後、腕と身体に何か細い緑色の線のような編み目のように張り巡らされたモノに触れた。

 触れた瞬間、四方八方からエメラルドのような破壊のエネルギーの弾丸が飛んできた。

『なんじゃーーーー!?』

 あまりの突然のことで、ズドドドっと破壊のエネルギーを、ベイビィ・フェイスが喰らってバイクから落ちた。

 

「結界さ。」

 

「!?」

 ミナミが振り返ると、ずっと先に、よく知っている人物が立っていた。

「あ…あぁ…。」

 ずっと数十メートル離れた場所にいるが、ミナミには分かった。

 

 エメラルドのようなエネルギーを放てるスタンドを使えるのは、知っている限り一人しかいないからだ。

 

『き、聞いてねぇぞ! 新入りだけじゃなかったのか!? ミナミだけじゃなかったのか!!』

 全身をエメラルド・スプラッシュで撃ち抜かれたベイビィ・フェイスが、怒りに震えながら遠く離れた場所にいるメローネに問う。

 

「落ち着け、ベイビィ・フェイス!! どこから攻撃されたのか分からないが、今はカメを持って戻ってこい!」

 メローネは、突然のことに驚きつつそう指示を出す。

 

『クソが…クソがクソが! どいつだ!? ーーー?』

 

 

「エメラルド・スプラッシュ。」

 

 

 その瞬間、ベイビィ・フェイスの体内からエメラルドのようなエネルギーが爆発するように弾け飛んだ。

『ごげぇええええええええ!?』

 

『……ほう? これでも死なないか。自動操縦型と見たが…、本体はここから遙か遠くか。』

 

「花京院さん!」

 

『やあ、ミナミ。だいじょうぶかい?』

 

 ベイビィ・フェイスの体内からニョロニョロと出てきたのは、花京院のスタンド、ハイエロファント・グリーンだった。結界を張るため身体を解いていたが、ベイビィ・フェイスが狼狽えている隙にその体内に入り込み内側からエメラルド・スプラッシュを放ったのだ。

 

『そして、君もいい加減死んだフリはよしてくれ。』

「えっ?」

「………ふう…、あんたもミナミの知人ですか?」

「ジョルノ!」

 ジョルノは、ムクリッと起き上がった。抉られていた箇所がいつの間にか治っていて、呼吸をしっかりとしている。失っていた足先も靴と靴下も無いが元通りになっていた。

『そこの自動操縦型のスタンドと逆の能力…。生体パーツを造り出してくっつけるとはね。恐れ入ったよ。』

「本体は遠くですが、自動操縦型というわけではないですね?」

『その通りさ。僕は、君達のいる場所から100メートル離れた場所にいる。君の仲間のレーダーからギリギリというところか。』

「今までのミナミの知人の方より話が出来そうですね。」

『ああ、僕は少し話をしたいんだ。君達と……、それよりも…。』

「ええ。」

「? あっ…!」

『ぐおおおおおおおおおお!! ぶち殺す!!』

 体中、穴だらけになっているベイビィ・フェイスが立ち上がり、全身が伸びる。成長したのだ。それとともに傷は癒えた。

 

 

「言うことを聞け! ベイビィ・フェイス!!」

 しかしもはやメローネの言葉は届かない。教育次第で自動操縦型のスタンドの弱点を克服できる強力なスタンドではあるが、自立意識を持つため暴走を始めればもはやどうにもならないのだ。

 

 

 ベイビィ・フェイスが伸びた腕を振るった。矛先はハイエロファント・グリーン。

 ハイエロファント・グリーンは、即座に身体をほぐし、回避した。

『お、同じタイプ!? いや、違う! 糸状にほぐれただけか! ならぶっちぎる!』

『真に狙うべき相手を間違えているようだ。学習する割には、感情的なようだね。』

『?』

「ゴールド・エクスペリエンス…!」

『えっ? あがあああああああ!? ば、バイク!?』

「お前が乗ってきたバイクを、生命に変え、お前の体内に侵入させておいたんだ。あれだけ穴だらけになってたから…入れるのは苦じゃなかった。」

『こんなもの、俺が分解すれば!』

「エンジンが点火している状態で、ガソリンが漏れればどうなるか…。」

『まあ、言うまでもない。お前は、少しばかり知恵が足りないようだった。』

『あ……、あ、ああ、ああああああああああああああああああ!!』

 体内でもとのバイクに戻ったことでガソリンが漏れ、動いていたエンジンに点火してしまい、バイクが爆発。ベイビィ・フェイスは、爆炎に飲まれた。

「さて…、後始末はしっかりと。」

 ブスブスと焦げて燃え尽きていくベイビィ・フェイスの残骸にジョルノは生命を与え、毒ヘビへと変え、“あるべき場所”へ行かせた。

『容赦のなさは…、血筋か…。』

「?」

『いや、なんでもない。独り言さ。』

「花京院さん…、花京院さん…。」

『ごめんね。ミナミ、怖かっただろう? 遅くなってごめんね。』

 ハイエロファント・グリーンがミナミの頭を撫でた。

『すぐに日本に連れて帰りたいけど…、実は…できない事情が出来たんだ。』

「えっ?」

『ひとまず、ジョルノ・ジョバァーナ。君達と話をさせて欲しい。もちろん、僕の本体も行くから。』

「えっ? えっ?」

 花京院が来てくれて帰れると思ったミナミは混乱した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして一旦、カメの中。

 花京院は、カメの中に案内され、ブチャラティ達と対峙した。

「それで、話というのは?」

「ミナミのことで少し…。」

「ねえ、花京院さん…帰れないの? どうして?」

「落ち着いて。なにも君を見捨てるとかそういう話じゃないんだ。」

「彼女のことで? それはいったい?」

「正確には、彼女のスタンドのことだ。なにかおかしいことに気づいているんじゃないのかい?」

「ああ…、確かに何かがおかしいことには気づいてた。だがなにがおかしいのかは分からない。」

「こちらの調査によると…、今のミナミのスタンドは、半分程度の力しか残っていないんだ。」

「はんぶん?」

「これで!?」

 ブルー・ブルー・ローズの凶暴さは分かっている彼らは、さすがに驚く。本来はもっと強いのだということに。

「ここ数日の間にイタリア国内に、邪視と認識されるモノが出現しているという情報が入っていて…、その邪視を持つモノが、どうもミナミのブルー・ブルー・ローズに似ているんだ。それが何を意味するのかは、まだ分かっていない。だが君達はすでに遭遇しているんじゃないのかい?」

「……列車で見た。危うく死ぬところだった。」

「そう…、邪視を見たモノ、触れたモノはほとんど死んでいるんだ。」

「!?」

「ミナミ。あれの正体がブルー・ブルー・ローズだとしても、その責任は君にはないよ。僕らが保証する。邪視は、君の意思から生まれたモノじゃない。別の意思から生まれたモノだ。」

「……そんな、ことって…。」

「ミナミ。君も何かおかしいことに気づいているはずだ。だがその違和感の正体は分からないんだろう。それは真実だ。『矢』のことについては知っているかい?」

「矢? …なにも。」

「それも事実なんだろう。君の何も知らないところで、事態が最悪な方向に動き出そうとしているらしい。僕は、君にこのことを伝えることと、そのことの調査のためにイタリアに来たんだ。」

「帰れないの…?」

「すまない…。もしブルー・ブルー・ローズが、このイタリア全土に根を張っているのだとしたら…、おそらく君はこのイタリアから出ることすらできないんだ。つまり帰ることはできない。」

「そ…!?」

 そんな…っと衝撃を受けふらつくミナミをトリッシュが支えた。

「このことは、今別行動しているポルナレフ達…、そして、シーザーにも伝える! ブルー・ブルー・ローズが何をしているのか…、何をしようとしているのかを突き止めない限り、君は解放されない! 家族の元へ帰ることすらできない! だから、僕らはそれを解決させるために動く。その間のミナミの身柄の保護を、君達に頼みたいんだ! そのための金は出す! 引き受けて貰えるだろうか!?」

「ブチャラティ…。」

「……分かった。いいだろう。」

「おい、いいのかよ!?」

「ただし、俺達は、今大事な仕事をしている最中でな。だからそちらを優先するが、任務が無事に終われば、ミナミの保護の件も報酬次第で引き受けよう。」

「もちろん、報酬はそちらの言い値で良い。ただ、ミナミの身の安全だけは徹底して貰いたい。もし、それができないのなら、イタリアごと焦土に変えても構わないから、そのつもりでいてくれ。」

「……それはまた…。」

 とんだ大事だとブチャラティは、肩をすくめた。花京院は、クスッと笑う。

「花京院さん…。」

「ごめんね…、ミナミ。僕だって今すぐ連れて帰ってあげたい。だけど……。」

「……うん。分かってる。私のためなんでしょう? でも、なんでブルー・ブルー・ローズが…。それが分かれば…。」

「約束するよ。必ず君を家族の元へ返すから。そのために今しばらく辛抱してくれ。…いいね?」

「うん…。」

 花京院に頭を撫でられ、ミナミは半泣きになりながら頷いた。

「とりあえず、前金として、受け取ってくれ。」

 そう言って持っていたトランクをブチャラティに渡した。ブチャラティが蓋を開けると、そこにはとんでもない額の札束と、金銀宝石。

「……ミナミの存在の重さがよく分かるな。」

「僕らにとってはね。かけがえのない存在なんだ。ミナミは。」

 そう言って花京院は、微笑む。

 ナランチャは、ひとり、オロオロと花京院と花京院に頭を撫でられて安心したような様子のミナミを見比べていた。

 

 

 

 




花京院のハイエロファント・グリーンは、精神的な成長と、経験値によって操作できる距離が伸びています。

ミナミを今後どう同行させるか考えた末の後半。
ブルー・ブルー・ローズがイタリア全土に根を張り、邪視を使うなどして命を奪っていることが発覚。
そして、今のミナミのブルー・ブルー・ローズが半分ぐらいしか残っておらず、残りの半分が自動で勝手に動いているため列車の時なども不完全な人型として出現していた。
その目的は現段階では分からないが、最悪の方向に動いていることだけは分かっている。
それを解決させるため、花京院はブチャラティ達にミナミの身柄の保護を頼む。


次回は、いよいよ、ギアッチョだけど……、アヴドゥルと対決に持ち込みたい!
たぶん、ブルー・ブルー・ローズがイタリアに根を張っていてミナミを国外に連れて行けないという情報はすぐには入らないはずなので。


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絶対温度 vs 絶対零度

アヴドゥルvsギアッチョ。


かなり強引な形での勝負となりました。


そして私の文才では、この程度です……。ご期待に添えなかったかも知れません。


 

 ヴェネツィアまで、車で残り1~2時間程度と迫った。

 夜の闇の中を走行する車の後ろに、追っ手もいない。

 

 一方、カメの中では、新たに来たボスからの電子メールでアバッキオのムーディー・ブルースを使って10時間前に時間を遡らせろという謎の指示があった。

 やらせてみると、ダイニングチェアの上に立つ、どこかで見覚えがある老人の姿にムーディー・ブルースが変身する。

 その老人は、幹部のペリーコロさんだとブチャラティが言った。トリッシュをカプリ島でブチャラティ達に託した人物でもある。

 ムーディー・ブルースの再生により、ペリーコロは、語り出す。

 

 こんな方法を使ったのは、万が一電子メールを盗聴された場合に備えてのことだと。

 そして最後の指示とは、ヴェネツィアでボスへトリッシュを安全に引き渡す方法を伝えるためだと。

 

 ペリーコロは、写真を取り出し、写真に写るそこの像に隠されたOA-Discを手に入れろと言った。Discの中に引き渡し方法が記録されていると。

 するとペリーコロは、写真をライターでも燃やし始めた。

 一時停止させ、写真の中身をじっくりと見る。そこは、ヴェネツィアの入り口である、国鉄サンタ・ルチア駅前の像であった。

 再生を再開すると、ペリーコロは、自分のことがすでに敵にバレていることを語り、いかにトリッシュを安全にボスに引き渡すかが重要であるかを念を押し、ブチャラティ達へ無事であることを祈ることを伝え、ボスから充実した人生をもらったことを感謝しつつ、何一つ証拠も何も残さないこと、そして後始末は何も知らない自分の部下がすべてしてくれると伝えた後、懐から銃を取り出し……そして…。

 自らの頭を…、撃ち抜いた。

 そしてその身体はカメの天井へ行き、消えた。そして再生が終わった。

 ペリーコロは、自らの命を持ってボスからの指令をブチャラティ達に残したのだ。

「っ…。」

「トリッシュ。」

 ミナミに縋り付くようにトリッシュが抱きつく。その身体は、ガタガタと震えていた。

 花京院に会えたことで多少は精神的に落ち着いたミナミは、トリッシュを抱きしめ返し、頭を撫でた。その手に安心したのか、緊張の糸が切れたのか、トリッシュが微かにヒックヒクと小さな声を漏らしてミナミの胸で泣いた。

 そりゃ15歳の何も知らなかった少女に、過去の映像とはいえ人が死ぬ瞬間は刺激が強すぎるなんてもんじゃないだろう。気が強いようだが、同性で、なおかつ同じように波乱に巻き込まれたミナミがいるせいかトリッシュはギャングであるブチャラティ達に頼れずミナミに縋るところがある。心のよりどころにしているのだろう。

 その後、二手に別れるということになった。

 Discを手に入れる方と、ヴェネツィアにトリッシュを連れて行く方に。

 ミナミをどっちに連れて行くかなど決まっている。数が多い方だ。つまりトリッシュを連れていく方になる。ミナミの身を預かるという仕事を請け負ったのだ。トリッシュ同様に守らないといけないが、最優先すべきことはトリッシュを無事にボスのところへ連れて行くことだ。

 どちらかが失敗してもいけない。そして、どちらに敵が来ても迎え撃てなければならない。

 ヴェネツィアまで車で行く方法は、たったひとつの道路のみ。それ以外だと船で行くしかない。なので必然的にトリッシュをヴェネツィアに連れて行く方は船で移動することになる。

「……。」

「ミナミ? 目が痛いの?」

「ううん…。また映像が…。これは、車? ジョルノ達が乗っている…。」

「目の色が…。」

「えっ?」

「血みたいな…色に…。」

「えっ? ほんと?」

「ほら、鏡!」

「わっ! ホントだ! ……あっ。」

 右目が鮮血色になり始めていることを知ったが、それ以上に目に映っている映像の方に意識が行った。

「どうしたの?」

「これ…、マズいんじゃ……。敵? ものすごい冷気が二人を!」

「……信じるしかない。」

「そうです。二人が無事にDiscを手にし、敵を倒すこと! それ以外に勝利はない!」

 ちなみに、ナランチャは、ボートの上でレーダーを見ながらボートを運航中なのでカメの中にはいない。

「あっ。」

「今度はなんだ?」

「炎が…、あの炎は……。」

 

 ミナミの右目の映るのは、美しく、だが激しく燃え上がる火球。

 それが運河に落ちた車の上にて、運河の水ごと凍らせる超低温の冷気を溶かす。

 

 

『加勢が必要か? 若い衆。』

 

 

 翼を持つ獅子の像の柱の近くに、炎を纏った鳥の頭のスタンドを背にした褐色の肌に黒髪の男が立っていた。

 

 

「アヴドゥルさん!?」

「なに~~!?」

 

 思わぬ人物の登場に思わず声を上げたミナミ。そしてブチャラティ達は、アヴドゥルの名に驚いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「お、お前は…!」

 ミスタがその姿に驚く。

 

「冷気を操るスタンドから逃れるために水の多い運河に直に飛び込んだ、その策は見事! だが自らを犠牲として、仲間に先に行かせるその覚悟が勝利だとは思わぬことだ!」

 

「…とやかく言われる筋合いも無いし、助けてくれなんて言ってませんよ。」

「フフフ…、まあ年上の言葉はうるさいだろうが、素直に受け取っておけ。ミナミの件についての私からの礼だ。」

「!」

「彼女の保護の任を受けてくれたこと! その感謝のためこれより君ら、若きギャングに助太刀しよう!」

 

「あ…? いきなりものすげー熱くなったと思ったら…、なんだてめぇはよぉ?」

 

 絶対零度を操るスタンド、ホワイト・アルバムの使い手、ギアッチョが運河の中から姿を現わす。全身を覆う装甲スーツ型のスタンドは、防御と攻撃、両方を完璧にこなす今までに無いタイプであった。

「しかし驚きだ。このイタリアの地に、我がスタンド、マジシャンズ・レッドの対とも言えるほどのスタンドの使い手がいたとはな!」

「てめーのスタンド…、炎かぁ? はーん? つまり俺のスタンド、ホワイト・アルバムとはまったく逆ってわけか? 助太刀するとか言ったなぁ? つまりぃ、コイツらの仲間ってことかよ?」

「一時的にな。私は礼を返すため、そこの若い衆のため、敵対しているらしい君と戦うこととなる。君としては不満なことだろうがね。」

「ふまん? なーに言ってやがんだ? 変な野郎だぜ!! なあ!」

 ギアッチョは、再び凍らせた運河の水面に上がり道を作りながらその上をスケート靴のようになっている足で滑り、アヴドゥルに迫る。

「ほう? 私の方に向かうか?」

「たった今分かったんだよ! 俺のスタンドと対のようなテメーの方が厄介だってなぁ!!」

「その考えは、当たりだ。」

 ギアッチョの判断を、アヴドゥルは褒めた。

 ギアッチョが水に拳を突っ込み、殴りあげる。忽ち凍っていく水の柱がアヴドゥルを襲った。

「君の絶対零度と…、我がマジシャンズ・レッドの灼熱…、どちらが上か…。」

 炎の壁で水ごと氷を蒸発させたアヴドゥルは、横へ大きく飛び退き、アヴドゥルがいた場所にギアッチョが着地した。

「勝負と行こう!」

「うおおおおおおおおお!!」

 一瞬で、マイナス200度を超した冷気を放つホワイト・アルバムと、凄まじい炎を放ったマジシャンズ・レッドが衝突した。

 その瞬間に起こるのは、水蒸気爆発。

「……Discが壊れなきゃいいですが…。」

 っと、離れた位置から駅前の方に上陸したジョルノとミスタであった。

 爆発で吹っ飛んだのは、ギアッチョの方であった。運河に逆戻りし、水の中に落下。

「てめぇ…、相当な訓練されたスタンドだなぁ、おい!?」

「フフフ、君ら若いスタンド使いに負ける気はないぞ。」

 シュウウウウ…っと、水蒸気を浴びているが、傷ひとつないアヴドゥル。

「この世の始まりは、炎に包まれていた。私のスタンド、マジシャンズ・レッドは、その暗示を持つ。君のスタンドがこの世で最も低い温度を操れるのなら…、私のスタンドは、もっとも高い温度に達することも可能なのだ。」

 しかし…っと、アヴドゥルは付け足す。

「それだけの温度となると、当然だが周囲にも害が及んでしまうので…、ある程度は自重はしている。」

「く……! クソクソクソクソクソクソクソ!! てめーーーー!! 俺をなめてやがんのかぁあああ!? 手加減してるってのかぁあああああああああ!?」

「そういうわけではない。私の炎はその気になれば太陽に及ぶほどの温度ぐらいはできるのさ。実戦していないだけだ。だからこそ危険なのだ。太陽が突然地球上に現れたらどうなるか…、想像したこともないだろう?」

「そうかよ…。そんなに本気が出せねぇってなら…。」

 ビシビシ、バシ…っと、ギアッチョの周囲の空気が音を立て始める。

「本気が出るようにするっきゃねぇなあああああああ!!」

「ほう? そんなに私と本気で戦いたいのかね?」

「こいつは、俺自身の誇りに関わるんだぜ! 俺のスタンドと対をなすスタンドと戦って勝つ! この先の人生で自分と対になるようなスタンドに出会うことなんざこの先ねーだろーからよーーー!!」

「そうか……。それは、すまないことをしてしまったようだ。心から詫びよう。ならば…。体験するがいい。炎の達するその先を。」

「超低温の前じゃ! すべてがストップすんだぜーーー!! 例えそれがどんな炎であろうともなーーー!!」

 ギアッチョがフルパワーの冷気を纏って水面を凍らせながら滑ってくる。

 アヴドゥルは、炎を消して、奇妙な構えをする。

 ギアッチョはそれを訝しんだが、正面から戦い打ち勝つことこそ、絶対温度と絶対零度の勝負のつけ方だと信じ、突き進んだ。

 

「10万度を超えた炎は…、プラズマと化す。」

 

 カッ!と、それは一瞬だった。

 アヴドゥルの手前で発された白い炎は、もはや炎と言うには程遠い、光だった。

「……あっ?」

 ギアッチョは、自分自身の胸を見おろした。

 そきには空洞。何もない。

 貫かれ燃え尽きなどと生ぬるい消滅。

「3800度でも鉄など容易に切断できる。君の若さ故のその挑戦する覚悟は賞賛しよう。だが覚悟とは無謀と履き違えないことだ。……遅かったが。」

 胸に大きな穴を空けた状態で、スタンドが解除されながら倒れ行くギアッチョを、アヴドゥルは目を細めて見ていた。

「しかし…、炎を光へと変えるほどの温度にするには…、相当なスタンドパワーを集中させないといけなくてな。…疲れる。で? お探しの物は見つかったのかね?」

「…ええ。」

 ジョルノ達は、獅子の像の柱からDiscを手に入れた。

「では、旅の無事を祈るよ。私は失礼する。」

「もうお帰りですか?」

「ひとつ忠告しておく。おそらく、すでにシーザーにも君らにミナミを預けることは伝わっているはずだが……、伝わっていようとなかろうと…、半殺し程度に痛めつけられるのは覚悟しておきたまえ。ところで、ずいぶんと火傷しているようだが?」

「あんたとさっきの奴の水蒸気爆発で火傷したんだぜ!! 加減しろよ!」

「死ぬかと思いましたよ、さすがに。」

「そうか、それはすまなかったな。フフフ。」

「フフフ、じゃねーよ! あーもうヒリヒリする! ジョルノ、治してくれ!」

「分かってますよ。でも勘違いしないでください。僕の能力は、生体パーツを作って移植するのであって…、痛みなどは残りますよ?」

「いいから…やってくれよ。あ、チチチチ!? ちょっ、加減しろよ!」

「僕だって体中ヒリヒリなんですから、さっさと終わらせます。」

「私も手伝った方が良いか?」

「じゃあ、彼の服を脱がしてください。」

「うむ。了解した。」

「ああ! やめて、やめて! 服に焼けた皮膚がくっついてぇぇ、ハゲる! 痛い、痛いってばぁ!!」

「ほら、動かないで、変なところに行っちゃうじゃないですか(作った皮膚が)。ああ、もうこんなに真っ赤になって…。」

「中々に酷いな、君は…。君だってこんな状態なのに…。よく我慢できるな?」

「我慢ぐらい出来ますよ。」

「痛い痛い痛い! あぁ、早くぅ! 早くぅ、ジョルノ~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

『どうした、ナランチャ? ミスタとジョルノは?』

「お……。」

『お?』

「俺は何も見てなーーーい!! なにも聞いてなーーーーい!!」

『アヴドゥルさん、いる!?』

「ああ、ミナミ! ダメ、ダメだ! 出ちゃダメ!」

 

 

 てんやわんや。その後、誤解を解くのに少々かかったとか?

 

 

 




両者とも、自身のスタンドの力から自分の身を守れるという点でも同じだからなぁ……。

私の文才では、この程度になってしまいました。期待されていた方々には申し訳ありません。


科学的なことは好きだけど、正解は分かりません。
温度がある一定に達すると、プラズマと化すというのは、記憶にある空想科学読本から思い出しながら書きました。
100万度の炎を吐けるウルトラマン怪獣であるジャミラの炎は、科学的に考えると6秒で地球を貫通できるプラズマジェットになるらしいです。
もしかしたら、氷の屈折で防げちゃうかもしれないけど、10万度を超えてしまった炎は、すべてを切り裂き貫けるというチートレベルの殺傷力にしました。
ただし、やる側であるアヴドゥル自身は、この殺傷力を発揮するには相当なパワーを一点に集中させないといけないので一時的に無防備になり、疲労もすごく、多用はできない、ということにしました。


ところで、原作のあのシーンは、何を狙ったんだろう? すっごく疑問。面白いけど。


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邪悪な眼(まなこ)の見つめる先に

ボス登場。


原作通りっぽい、オリジナル展開。


トリッシュじゃなく、ミナミの方を始末しようとするボス。


 

 ヴェネツィア……、サン・ジョルジョ・マジョーレ島。

 ヴェネツイアと本土を繋ぐ唯一の道であるリベルタ橋とは真逆の場所にある、教会だけしかない場所だ。

 そこの塔の上にトリッシュを連れてくる。それがこの任務の終わりであるという指示。

 そして、ついでのように。

 

『ミナミ・ヒガシカタを同行させること。』

 

「えっ? 私?」

「……どうやらすでにパッショーネの本部には、ミナミの存在が知られているらしいな。」

「!」

「ひとつ言っておくが、俺が君の能力について組織に伝えたわけじゃないぞ?」

「ミナミは…関係ないはずよ? だって、身柄を保護するって約束してたじゃない。」

「もしかしたら顔を見たいのかもしれない。あるいは…、確認をしたいのかもしれないな。力について。」

「これで逆らったらどうなる?」

「反逆罪で死あるのみだな。」

「…しょーがないなー。」

「えっ? マジで行くの?」

 よっこらせと立ち上がるミナミにナランチャが心配そうに言った。

「私が言うこと聞かなくてみんな死んじゃったら目覚めが悪いもの。」

「お人好しですね。まあ、それは初めて出会ったときからでしょうか。臆病なくせに。」

「…寿命を返すんじゃなかったかな?」

「いえいえ、それについては素直に感謝してますよ。」

「1回殴っていい?」

「なんですか? 落ち着いた途端にえらく強気ですね。あんな弱ってたくせに。」

「あーもう、二人ともやめろって! なあ、ミナミ、ボスに紹介終わったら飯食いに行こうぜ! なっ?」

「……いいよ。」

「えっ!?」

「その代わり、奢ってくれると嬉しいんだけど。オススメがあるならソレが食べたいかな?」

「わ、分かったよ!」

「やったな、ナランチャ。チャンスはあるぜ。」

「?」

「本人全然分かってませんけどね。」

 ハテナマークを飛ばすミナミの様子に、ジョルノがポツリッと呟いたのだった。

「お前ら! まだ気ぃ抜くんじゃない! ナランチャはレーダーで周りの注意を払え!」

 ブチャラティが怒った。

「ミナミ。今はとにかく従ってもらいたい。いいな。」

「うん。いいよ。」

「ミナミ…。」

「だいじょーぶ。手ぇ繋ぐ?」

「…うん。」

 ニコッと微笑んだミナミがトリッシュに手を差し出し、トリッシュはコクリッと頷いてその手を握った。

「えっらい元気になったな。なんか変じゃね?」

「……確かに。」

 妙に元気になってるミナミの様子をミスタ達は訝しんだ。

 ブチャラティがジョルノに、ジョルノが身につけているテントウ虫のブローチをお守りとして貸してもらった。なお、そのブローチは、ゴールド・エクスペリエンスで生命が与えられており、万が一に備えて探知器として機能するようにされていた。

 ブチャラティは、トリッシュとミナミを連れて、塔の上に唯一繋がっているエレベーターに向かった。

「……トリッシュ?」

「あたし…これからどうなるんだろう? いきなりあんた達ギャングに拉致られて…、命を狙われて…、会ったこともない父親に会って…それからどうなるの?」

「…俺の予想だが…、まず君は違う名前になる、顔を整形するかもしれない。身分も戸籍も違う人になり、俺達の知らないところで…きっと遠い国で幸せに暮らすんだ。君の父親はそういう『力』を持った人だ。」

「……そんな都合良く行くのかな?」

「何が言いたい?」

 疑問を言うミナミに、ブチャラティは、少し眉間を寄せた。

「これだけ警戒心と用心深い人が……、自分に繋がる最大の要素を、形だけ変えてどこかに隠すだけで済ませるなんて思えない。自分に繋がるルーツを消す方法なんてたったひとつしか無いよ。」

「っ…!」

「ミナミ、トリッシュを不安にさせるな!」

「でも、だいじょうぶ。」

「?」

「はい、コレ。あげとく。」

「何コレ? 青いバラ? 茎が…血みたいに赤いわ。」

「たった1回きりの…究極お守りだよ。コレを…。」

 青いバラの花をトリッシュの身体に当てようとした瞬間。

 ミナミが消えた。

「えっ…?」

「ミナ…ミ!?」

「血が…!? ミナミ、どこ!? ミナミーーーー!?」

 気がつけばエレベーターの床が大量の血で真っ赤に染まっていた。その血の上に、ミナミが渡そうとした青いバラだけが残っていた。

「まさか…そんな、馬鹿な!? ミナミの言うとおりだったのか!? 俺達にトリッシュを護衛させたのは…、自分の正体を完全に隠すために、確実に、自分の手で、自分の娘を始末するためだったのかーーーー!? そしてその死を覆せる可能性を秘めたミナミを連れてこさせたのは、蘇生させるのを防ぐためか!!」

「そんな!!」

「おおおおおおおおお!! 吐き気をもよおす、邪悪とは! 何も知らない無知なる者を利用する!! 自分の利益だけのために利用する事だ!! 父親が何も知らない娘を!! そして、てめーの都合に悪いからと、己の力に苦しんでいるひとりの女を、てめーの都合で!! 許さねぇ!! あんたは、今、再び、俺の心を『裏切った』!!」

 ブチャラティは、激情のままにエレベーターの床をジッパーで開いた。

 遙か下の方。エレベーターの壁沿いにあるハシゴに、影になっていて顔は見えないが、血だらけのミナミを抱えた男らしき人物がいた。

「予定が変わった! あんたを始末する! 必ずだ!!」

「ブチャラティ!」

「トリッシュ、来い!」

 ブチャラティが伸ばした腕にトリッシュは迷うこと無くしがみつき、ジッパーを使ってエレベーターのロープを伝って拘束で降りていく。トリッシュの手には、ミナミが渡そうとしたあの青いバラの花が握られていた。お守りだと言ってくれたモノだから…。だから持って来たのだ。

 そして1階に到着し、ジッパーを開けて、開けて、開けて、とにかく先回りをする。

 ミナミから滴る血を辿っていき、次に行く場所を推理して先回りした。

 ブチャラティは、トリッシュを隠しながら、ミナミを抱えて地下へと階段を降りてくるボスを待った。

 トリッシュは、バラの花を握りしめ、必死に気配を殺そうと息を止める。

 まだだ、まだ間に合う。ジョルノに治療して貰えば助かるっと、ブチャラティは、己に言い聞かせる。

 

「ブローノ・ブチャラティ…。そこの柱から出てくるのはよせ。死にたくなければ、娘のトリッシュを差し出せ。」

 

 ボスがすべてをまるで見透かしたかのように静かに語りかけてくる。

「指示通り、我が娘を置いて帰れば。予定していた報酬以上のモノを用意しよう。それとも幹部となったばかりで自惚れたか?」

「スティッキー・フィンガーーー…。」

 次の瞬間、スタンドを発動させ、拳で狙った。

 だが、その腕を柱の死角から伸びてきたスタンドの手で掴まれ、凄まじい力で逆方向に曲げられる。

「ぐああああああ!?」

「…に…げ……て…。」

 ミナミが床に放り出され、血を撒き散らしながら、弱々しい声でそう言った。

「見捨てたりなどしない!」

 ブチャラティは、スティッキー・フィンガーズのジッパーで曲げられた腕を殴りジッパーを付けて腕を取り返した。

 死角から除くと、すでにボスは消えていた。

「ミナミ!」

「トリッシュ、動くな!」

「でも!」

 

「理由を知りたい。」

 

 ボスがどこからか語りかけてくる。

 

「せっかく任務を無事に済ませたというのに…、私はお前の仕事ぶりに尊敬の念を抱いていたのに…、信じられん行動だ! 何が望みだ? 欲が出たか? より多くの縄張りを…、それとも自分の実力を過大評価し、私を追い越せると自惚れたか?」

 

「トリッシュ…、君の父親など、どこにもいなかった。そう覚えておくんだ。」

「…分かったわ。」

 トリッシュの瞳には、怯えの色は消えていた。何かを決意したような強い意志を代わりに宿して。

 

「トリッシュだと? それが貴様に何の関係がある!?」

 

「貴様に俺の心は永遠に分かるまい!」

 ジッパーで顔から携帯電話を出したブチャラティは、ジョルノに連絡した。

 あの時、ボートのところで貰ったテントウ虫のブローチを、すでにボスの衣服に付けたのだ。

 そう…探知器として。ボスの位置を正確に掴むために。

『ブチャラティ! ボスは今! 地下納骨堂の螺旋階段下を降りた…ところの約2メートル先、柱のそばにいる!!』

「スティッキー・フィンガーズ!!」

 

 

 ダメだ

 

 

「!?」

 

 

 オマエは……死…ヌ

 

 

「最後だから教えてやろう。」

 

 ブチャラティは、いつの間にかバラバラにした柱の向こう側にいた。ボスがいるはずの場所に。

 

「お前が、たった今、目撃して触れたもの…、それは未来のお前自身だ。数秒過去のお前が、未来のお前を見たのだ。これが…、我が『キング・クリムゾン』の能力!!」

 

 

 ダメだ

 

 

「『時間を消し去って』飛び越えさせた…!!」

 

 ブチャラティの腹を、背中からスタンド、キング・クリムゾンの手が貫いた。

 

「誰だろうと、私の永遠の絶頂を脅かす者は許さない。決して! 確実に消え去ってもら…。」

 

 

 死

 

 

「?」

 

 

 永遠ナル

 

 

 安息ヲ

 

 

「ハッ!」

 トリッシュが気づいた。

「なっ!?」

 ボスも気づいて見上げた。見上げてしまった。

 その天井に、赤い根っこの塊が、まるで巨人のように柱に絡みつき、下を見おろしていた。

「コレは…、コイツは今イタリア全土で噂になっている…!?」

 グググ…っと、顔部分らしき部位に、造花のヒマワリの花が咲く。

 そこの中心部にある鮮血色の瞳の目が開いた。

「邪視(マロッキオ)!?」

「トリッ…シュ…、目を…見る……な!」

 ボスがブチャラティの腹から拳を抜いて勢いよく下がる。

 ブチャラティは、腹を押さえて倒れ込みながらトリッシュに力の限り叫んだ。

 トリッシュは、慌てて顔を逸らし、血だらけで倒れておりミナミの上体を抱きしめた。

 ズルズルと、柱を伝って、赤い根っこの塊が降りてくる。

「逃げ…、トリッ…シュ……!」

「あなたも連れて戻る!」

「俺は…いい…。」

「ダメよ!」

「いいから……! 逃げるんだ…トリッシュ!」

 やがて天井から床へと赤い根っこ塊が降りた。

 しかし……。

「?」

 まるでブチャラティ達を避けるように根っこが蠢きながら不完全な人型のゴーレムのように立ち上がり、誰かを探していた。

 まさかボスを? そんな考えが過ぎる。

 だがチャンスだと、ブチャラティは、最後の力を振り絞る。

「スティッキー・フィンガーズ!!」

 

「逃がさんぞ。」

 

 時間が飛ぶ。

 だが…。

 

 ガシッとボスのキング・クリムゾンの腕に、不完全な手の形の手が掴んだ。

「!?」

 その瞬間、駆け巡る臨死体験の衝撃。

 キング・クリムゾンは、その腕を即座に振り払い、ボスはキング・クリムゾンと共に飛び退いて逃げた。

「馬鹿な!? 読めなかっただと? 見えなかっただと!? な、ぜ…、アレは…、飛ばした時間についてこれるのだ!? ーー?」

 ポトリッと肩に何かが落ちたのを感じて見ると、造花のヒマワリの花が肩の上にあり、そこに邪視があって、目が合った。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 強烈すぎる金縛りが襲いかかる。

 

 

 逃ゲロ

 

 

「おおおおおおおおおおおお、昇れ、スティッキー・フィンガーズ!!」

 ブチャラティは、柱と天井にジッパーを付け、拘束でミナミとトリッシュを抱えて上がっていた。そして天井をジッパーで開きその上に上がった。

 

「ブチャラティ!」

 

 パソコンを手にブチャラティを探していたジョルノがちょうど来た。

「じょ、ルノ…。ミナミを……。」

「分かっています! ですが、ブチャラティの方が…。」

「俺は、もう…。」

「お願い……、私は後で良いから…。だいじょうぶだから…。」

「出血が酷いわ!」

「いや! 両方とも助ける!!」

 ジョルノは、ゴールド・エクスペリエンスで二人を即座に治療した。

 しかし…。

「ブチャラティ? ブチャラティ!?」

 ブチャラティの顔に生気がなく、目に光が無いうえに脈が無いことに気づいた。

 生体パーツを組み込んですべての怪我は治したはずだ。なのになぜ!?

「う…ぅう…。」

「ミナミ!」

「イタタタ…、ジョルノ、助けてくれたの?」

 ミナミの方は何の問題なく起き上がった。

「ジョ…ルノ…、アバッキオ達を…呼べ…急いでこの教会から…脱出を…。」

「ブチャラティ!」

 ブチャラティの目に光が戻って口を開いてくれた。

 ジョルノはホッとし、携帯電話をトビウオに変え、アバッキオ達のいる場所の絵画を破壊させ、彼らを呼び教会から脱出したのだった。

 

 その頃には、教会の地下に現れていた赤い根っこの塊が消えていた。

 

 

 




ミナミを狙ったのは、もちろん蘇生を防ぐためです。
ブチャラティの性格上、必ず来るだろうことは見越していたため、あえてミナミを完全に殺さず半殺し状態で攫い、ブチャラティとトリッシュを誘い出して始末しようとした。
ブチャラティを殺す寸前に追い詰めたところで、赤い根っこの塊と邪視が出現。これによりそれどころじゃなくなり、脱出に成功。
そしてなぜか『時間を飛ばす』能力が通用せず……?


ここから、ブチャラティは、死チャラティですね……。
彼の寿命は、ここで尽きる予定だったのがジョルノにより、生命力を分け与えられて擬似的に蘇生された状態に。これを解決する方法は、ミナミが持っています。


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裏切りと、勝算

裏切りからの、新たな旅立ち。


フーゴは、原作通りここで離脱。でも…?


あと、ナランチャの同行理由がちょっと違います。


 パッショーネへの裏切り行為。それは絶対なる死を意味する。それほどに巨大な組織だから。

 それを裏切った。

 許せなかったから。

 たった二日程度の出会いでしかない、娘のトリッシュを自分の利益のためだけに殺そうとした行い、そしてそれを防ぐことが出来るミナミをも予防のために殺そうとしたこと。それが許せなかった。

 

 ブチャラティは、そう説明した。

 

 静まりかえるその場。そして重い空気が支配する。無理もない。

 するとブチャラティがふらつき、膝と手をついた。

「ブチャラティ!」

「だいじょうぶだ…。血が足りなくて目眩がしただけだろう。」

「いいえ…、血は部品を作った際に補充しました。どこかまだ怪我をしているのでは?」

「なら、体力を消耗したからだろうな。だいじょうぶだ。」

「……、っ!」

 その時、ジョルノは見た。金属の尖った部位があったのだが、そこにブチャラティの手の端が刺さっており、そこから出血していなかったのだ。そして何よりブチャラティ自身が刺さったことに気づいていない様子がおかしかった。

 重苦しい空気の中、仲間の面々が口を開く。

 裏切り者がどうなるか知っているはずだと。

 そしてこのヴェネツィアがすでにボスの親衛隊に囲まれている可能性があること。

 そしてボスを裏切った者が何者であれ、悲惨な運命を辿ることも。

 

 ブチャラティは、言う。

 『助け』が必要だ。

 もし、共に来るというのなら、階段を降り、ボートに乗れと。自分は決してついてこいとは言わないと。一緒に来てくれと願うことも無いと。裏切り行為は、自分が勝手にやったことなのだから義理を立てる必要も無いのだからと。

 ただひとつ…。

「自分は、正しいと思ったからやったんだ。後悔は無い。ボスは必ず倒す! 今は、逃げるだけだが…。」

 そうハッキリと、大きな決意を固めた顔で言った。

 

 誰も何も言えなかった。

 重苦しい空気の中、やがて……。

「残念だけど…、ボートに乗る者はいないよ…。『情』に流されて血迷った事をするなんて…、あんたには恩はあるがついてくことはできない。あんたは現実を見ていない、理想だけでこの世界を生きていくなんてできないんだ。この組織なくして僕は生きていけない…。」

 そう言ってフーゴは足を乗せていた階段から足をどけた。

「フーゴの言うとおりだぜ、ブチャラティ。あんたのやったことは自殺行為に他ならないことだ。世界中何処に行っても安息なんてありやしない。そして、俺が忠誠を誓ったのは、組織だ。あんたに対して忠誠を誓ったわけじゃあねぇ。」

 アバッキオがそう言う。

 だが…。

「しかしだ……。俺も元々よぉ~~~、行くところや居場所がどこにもなかった男だ! この国の社会からはじき出されてよぉーーー、俺の落ち着ける所は…、ブチャラティ、あんたと一緒のときだ。」

 アバッキオは、フッと笑いボートに乗った。

「アバッキオ…。」

「いい気になるんじゃねぇぞ~、ジョルノ。」

「フフ…。」

「ば、馬鹿な! アバッキオ!?」

「ボスを倒すって事はよぉ~~、次の幹部は俺かぁ? 実力的に、俺かな? ホレ、カメを忘れんなよ。」

 ニヒヒっと笑ったミスタがカメをジョルノに放り渡しながらボートに乗った。

「ミスタ! おまえら、どうかしているぞ! 完全に孤立するんだぞ!? どこに逃げる気だ!? このヴェネツィアから逃げることは……。」

 フーゴがメチャメチャ狼狽える。

「ナランチャ…、君は、どうします?」

「お、俺は……。」

 ジョルノが聞くと、ナランチャは、ダラダラと汗をかき酷い顔色で俯いていた。

 そしてふとボートの方をチラッと見た時、ミナミと目が合った。

 ミナミは目をそらすことなく、ナランチャを見ていた。

「俺は…俺は…。なあ、ミナミ…、俺といるのは、イヤだよなぁ?」

「……どっちだろうね?」

「!」

「私は、あなたことを嫌いでいるべきか、そうじゃないべきか…、分からない。この数日だけだから、あなたの事なんて何も知らない。でも…、もしあなたが来てくれたら…。」

 するとミナミが座り込んでいるところからブルー・ブルー・ローズが生え、青いバラの花を一本持って来た。

「私は、あなたのことを知りたいと思う。そして、“祝福”するよ。ナランチャのことを。」

 そう語って、ミナミは、青いバラの花を差し出すようにナランチャに向けた。

「ーーー分かったよ!」

「おい、ナランチャ、お前!」

「…ごめん、フーゴ。俺…、馬鹿だからさ。好きな女ぐらい…守りたいんだ。」

 ナランチャは、ニッとすまなさそうにフーゴに向けて笑ってから、ボートに飛び乗った。その際にボートが揺れ、バランスを崩したミナミの手握っている青いバラの花がナランチャの身体に当たり、光となって消えた。

「今のは?」

「…お守りだよ。1回きりのね。トリッシュも持ってるソレ、身体に当てといて。」

「これ…どうなるの?」

「……1回だけ、どんな死因も無かったことになる。」

「なにーーーー!?」

 そのとんでも効果に、みんな驚いた。

「1回だけ。1回だけだよ。それ以上は、確実に死ぬし、生き返った後も、補充しないと1年で確実に死ぬから。」

「つまり、青いバラの花は、寿命1年分ですか。」

「そう。命のストックだよ。」

「…究極のお守りってそういう意味だったのね。」

「ちなみに、ソレ…どこから持って来たんですか?」

「……あー…、たぶん水の中の魚。」

「犠牲が必要だということですか。死者の蘇生も……。」

「そういうこと。」

「話は終わりだ。ボートが離れたなら! お前達は『裏切り者』となる!!」

 

 

 そして、フーゴだけを残し、ボートは水上を走り出した。

 

 フーゴは、そのボートをただ見送っていたが、その背後に忍び寄る金髪の男がいたことに気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

「ひとつ…、聞かせてくれ、ミナミ。」

「なに?」

「お前のブルー・ブルー・ローズは、時を消し飛ばすことにも耐えるのか?」

「分からない…。私のスタンドは、生と死を司っているんだと思うから……、果たして時間の支配さえ受けるとは思えないけど。」

「なるほど。」

「ブチャラティ? なにか見つけたんですか? ボスに勝つ方法を。」

「ひょっとしたら、ミナミのスタンドが勝利の鍵になるかも知れない。まだハッキリとしたわけじゃないが…。」

 ブチャラティは、教会の地下で見た、あのブルー・ブルー・ローズらしき邪視を宿した赤い根っこの塊が、キング・クリムゾンを掴んでいたのを思い出した。

 列車で体験しているが、アレに触ると臨死体験をさせられ、その衝撃で死にそうになる。きっとボスもそれを体感してとんでもない思いをしただろう。あのままショック死してくれればよかったが、そうもいかないようだ。時を操るスタンドを扱うのだからそれだけの精神力も備えているのだろう。

 あの赤い根っこの塊が、ブルー・ブルー・ローズなのだとしたら…、うまく使えばボスに勝つ手段となるかもしれない。問題があるとしたら、ブルー・ブルー・ローズの状態がわけが分からないことになっていて、イタリア全土で何かを行おうと動いていることと、それを解決させないとミナミ自身がイタリアから脱出することすらできないということだ。

 教会の地下の件といい、いずれも本体であるミナミを守るために行動しているのだとしたら……。

 

 ミナミとボスを戦わせれば、必然的に勝てるのでは?っという考えが過ぎる。

 

 だが、そんなことをさせたら…確実に……。

 

「花京院達や、シーザーに殺されるな…。」

 

 ミナミの保護を請け負ってなんだが、こんな非常事態になるとは……。

 知られたら半殺しで済むかどうか怪しくなってきた…。特に怒り心頭のシーザーについては。

 

 

 




ミナミ、青いバラの効果を教える。
なお、青いバラは、たぶん運河の魚から取った物だと思われる。なのも人間からじゃなくてもまったく問題なし。年単位で生きる生き物であることが条件ではある。

さて…、ミナミはナランチャについてどう思っているのか……書いてて分からなくなったけど、とりあえず最初の頃みたいに拒絶はしていない。
恋愛未経験だから、よく分からないんですよ……。あんまり恋愛物の作品も見ないし。


フーゴの背後に忍び寄る人物は……、あの人です。お怒り心頭の。

スクアーロと、ティッツァーノ、ボコられフラグ。



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鮫と、舌

スクアーロと、ティッツァーノ編。だけど……。


まず、謝っておきます。


この二人、名前はおろかスタンドの名前も姿も出さず退場です!!


あと、ポルナレフとイギーが再登場。


「あ、美味しい。」

「だよな~。ヴェネツィアの飯って美味いって話、マジだな。」

「私が住んでる故郷に、イタリア人の人がやってるお店があるんだけどね。そこもすっごい美味しいんだよ?」

「え~、日本でイタリアン? 日本人向けに魔改造されてんじゃねーの? よーしょくって奴みたいにさ。」

「イタリア料理を基本に、色んな国の料理の要素を盛り込んでるんだって。でも、そういうのって料理人なら目指す所じゃない? 良いところ取りって。ってゆーか、日本の洋食をなめないでよ? 日本に来たら美味しいところ連れてってあげるから。」

「えっ!?」

「よかったなぁ、ナランチャ~、お誘いなんて。」

「?」

 顔を赤面させるナランチャに、ミスタがよかったな!っとバシバシ背中を叩き、一方のミナミは分かってなかった。

「そういやよぉ、ミナミ。お前、弟がいるとかって言ってたなぁ?」

 ミスタがそう聞いてみた。

「うん? ああ、双子の弟がいるよ。うち、お爺ちゃんいるけど、母子家庭だし。」

「へっ?」

「お…お父さんいないの?」

「いるけど、別に家庭があるからね。」

「それってよぉ……、お前…、不倫…?」

「結果的にそうだけど、母さんは愛し合って私と弟を産んでくれて育ててくれたし、私達もそれで納得してたし、結構最近になって実際に会って和解も出来たしね。だいじょうぶだよ。」

 なーんてことないように言うミナミの様子に、ナランチャ達は唖然とした。

 不義の子というと、どうしても修羅場を想像してしまうが、どうやらそういうことはなかったらしい。そんな平和的な不倫騒動もあるものなのか…?っと、腐敗した社会で生きてきたナランチャ達は信じられなかった。

「ま、お父さんも今年で80歳だし、優しくしないとね。」

「メッチャ爺さん!?」

「おま…、いくつの時のガキだよ!?」

「えーと、60いくつ?」

「元気なジジイだな~!」

 男達からしたら、逆に尊敬ものだ。

 そして、そんな複雑な家庭で育ったというのに、平和に、そして良い子に育ったミナミが逆にすごいとも思われた。よっぽど家庭環境が良かったのか、それともミナミの性質が生まれつきそうだったのか……。

 たぶん、双子の弟とやらも似たようなものかもしれない。

 ふと見るとナランチャが、俯いていた。

「どうしたの?」

「……ん…、ちょっと…。」

「なにか変なこと言ったっけ?」

「違う…。ただ…、ちょっとミナミが羨ましいなって思って…。」

「私が?」

「俺の実家さ。母さんが俺がちっちゃいときに目の病気で死んじまって…、父さんは全然俺のこと興味なくってさ…。」

「…そうなんだ。」

「だから、不倫なのに、お父さんと仲が良いミナミがちょっと羨ましいなぁ、って…。」

「最初は、さすがにギクシャクしたよ~? 生まれた時からほったらかしだったから、気まずかった。それに向こうも向こうで修羅場だったみたいだし。遺産の件で調査したら私達のことが発覚してこってり奥さんに怒られたらしいよ? 生涯妻しか愛さないとか言ってたらしくってさ。ま、今じゃ笑い話だけどね。」

「心が広い!!」

「誰が?」

「ミナミも、ミナミのお父さん達もだよ!」

「そ~お? うふふふ。」

「って、なんで俺は頭を撫でられてるわけ?」

「あっ、ごめん、つい…。」

 ワシワシとナランチャの頭を無意識でなで回したミナミは、ハッと我に返った。

 ふと、ナランチャは思い至る。

「なあ…、ミナミ…、俺のこと弟みたいに思ってね?」

「うーん…、ナランチャが弟だったらメッチャ可愛がってたと思うよ?」

「お、俺、17歳なんだけど!」

「えっ、同い年? ……私が老け顔なだけか…。」

「あ、いや! そういう意味じゃ…。」

「どーせ昔っから、年上に見られてばっかだもん。日本人とイギリス系アメリカ人のハーフで、顔が完全にお父さん似だけどさ。」

「そんなことないって! すっげー美人じゃん!」

「…そう?」

「うんうん! マジマジ!」

「……ありがと。」

 ミナミは、ちょっと慣れない様子で落ち着き無く目を彷徨わせ、けれど小声でお礼を言ったのだった。その顔がほんのり赤らんでいた。

 その様子に、もしかして手応えあり?っとナランチャが、密かにガッツポーズを取っていると、その時ミナミの目の前のコップの中に、小さなサメのようなスタンドがいるのを見た。

「ミナミ! あぶな…。」

 そのコップを取ろうとした直後、コップから飛び出したサメのようなスタンドが、一瞬のうちにナランチャの舌を噛み千切った。

「えっ?」

 ミナミがぼう然として倒れていくナランチャを見た。

「ナランチャ!?」

「どうした!?」

「ひっ…、し、舌が…舌がないよ! 血も出てないし、息ができてないみたい!」

「ジョルノ! 治せ!」

「分かってます。」

 ジョルノは、適当にフォークを素材にして無くなった舌を造った。

「あー…、死ぬかと思った…。」

「敵がいたのか?」

「あ、ああ…。そこのコップに…。」

「なにもいねーぞ?」

「大きさは?」

「こーんなでっかいの! …?」

「ナランチャ?」

「!?」

 何やらおかしいことにミナミが気づき、ナランチャはナランチャで、自分の口を手で押さえた。

「ん~? ナランチャ。ちょっと…ごめんね。」

「?」

 するとミナミが両手をナランチャの両頬の添えた。

 その瞬間。

 凄まじい、ビリィ!っとした衝撃が走った。

「ぎゃおおお!?」

「ミナミ!?」

 ナランチャが顔を押さえて倒れ込み悶え、ジョルノ達が狼狽える。

 すると、ビチャッと何かがナランチャから離れてテーブルの上に落ちた。

「これは…。スタンド?」

「やっぱりね。さては、言ったことがウソになるとかそんな感じのスタンドかな? さっきナランチャの舌を取ったのもスタンドなら、相手は二人…。」

「なるほどな。」

 素早くそのスタンドをアバッキオがムーディー・ブルースの手で掴んだ。

「ミナミ! スープだ!」

「えっ?」

 ナランチャが痛みを堪えながら叫んだ。

 ナランチャがさっきまで食べていたスープの中からサメのようなスタンドが飛び出し、ミナミの喉に食いついた。

「ーーー!?」

「ミナミーーーー!」

 喉笛を噛みつかれ、ミナミは喉を押さえてよろけ、大量の血を吐きながらレストランの傍に停泊させたボートの方に倒れ込んだ。それを追ってナランチャ達が見ると、ボートの上にはミナミの姿は無かった。

「馬鹿な!?」

「ナランチャ、追跡しろ!」

「分かってるって!」

 ナランチャは、エアロスミスと同期しているレーダーを出し、ミナミの呼吸を探した。

 だが発見したものの、すぐにその反応が消えた。

 ナランチャは一瞬焦ったが、喉を咬まれていたので呼吸が止められてしまったのだと考える。だが二酸化炭素が出てないということはこれ以上追跡ができないということでもある。

 焦るナランチャだったが、その時近くのマンホールに、ブルー・ブルー・ローズが生えているのを見つけた。まるでこっちだと言わんばかりに。

「そっちだな!」

「待て、ナランチャ!」

「たぶんだ! たぶん、アイツ(ブルー・ブルー・ローズ)が教えてくれる!」

 ナランチャは、エアロスミスを出し、マンホールの下の下水道に行かせた。

 その時、マンホール内辺りで二酸化炭素の微弱な反応があった。おそらくミナミが少しだけ息を吹き返したのだろう。

「ミナミを返せーーーー!!」

 ナランチャがその反応が消える前に、エアロスミスから弾丸を発射した。

 すると反応が消え、一瞬で反応が移動した。ボートの方に。

「おい、見ろ! ミナミだ!」

 ヴェネツィアの街中を流れる運河の水の上に、ミナミがプカプカと浮いていた。サメのスタンドはミナミから離れると、水の中へ消えた。

「ミナミ! ジョルノ、早く治してくれよ!」

「…それはできない。」

「なんで!?」

「ナランチャ、落ち着くんだ。さっきのサメのスタンドを見ただろう? 奴はどうやら水…、いや水分の多いモノを移動するようだ。つまり、この水上のヴェネツィアにおいて奴の独断場と言って差し支えない。今、水の多い運河の上に行くことは自殺行為だ!」

「…ガフッ……。」

「ミナミ! ……け、けど…分かってても! 俺は行くぞ!」

「ナランチャ!」

「……じょ…る…の…。」

「!」

「ね…ら……。」

 

 

「お前が狙われてんぞ。ジョルノ・ジョバァーナ。」

 

 

 ジョルノが立っていた場所の横にあった小さな水たまりからサメのようなスタンドが飛び出し、ジョルノの首を狙ったが、それを横から突き出てきた針剣がサメのようなスタンドを貫いた。

 ビチビチと暴れるサメのようなスタンドを、針剣を持つスタンド、シルバー・チャリオッツの使い手、ポルナレフが刺した状態で持ち上げ。傍にいたイギーが近くの運河以外の水分を全て砂で硬め、水分を消していった。そしてトドメとばかりに、サメをイギーのスタンド、ザ・フールで固めて動けなくさせる。

「J・P・ポルナレフ!?」

「それに犬っころ!」

「ワンワンワンワン!」

「ぎゃああああ!」

 犬っころ呼びしたミスタに、イギーが飛びかかって鼻に噛みついた。

「水辺から離れな。ミナミを助けたらすぐに水分を取れ。コイツは、どうやら短距離の水分を一瞬で瞬間移動できるスタンドだ。遠距離型らしいが、攻撃力が低いぜ。だからさっきから急所ばっか狙ってやがったんだ。」

「助かりました。」

「回復役を潰すってのは常套手段だぜ。あと、情報収集の手段もな…。」

「俺か…。」

 ポルナレフがアバッキオを見て言った。

 ナランチャが、ミナミを引っ張り上げ、ジョルノが治療した。

「俺達がヴェネツィアに潜んでいやがる、このスタンド使いを倒す。その間に、お前らは逃げな。」

「けどよぉ! 敵は二人だけとは…。」

「いや、時間からしてヴェネツィアを包囲するほど人数は集まっていないはずだ。スタンドをこちらが捕えた今、ボスからの追っ手のスタンド使いは他にはいないだろう。今がチャンスだ!」

「じゃあ、コイツも預けるぜ。」

「おう。」

 ポルナレフは、舌に張り付くスタンドをアバッキオから受け取った。

「ブチャラティ! ヴェネツィアを脱出してもどっか行くあてがあんのかよ!?」

「……。」

 

「……待って。」

 

 するとカメの中からトリッシュが出てきた。

「思い出したの…。母からの昔話を。母は、サルディニア島で父と出会った。そして、母に『すぐに戻ってくる』と言い残して、『写真』も、『本名』も何も残さず永遠に消え去ったのよ。」

「サルディニア島!」

「ボスが…組織を作る前…、つまり15年前…? ボスの生まれ故郷か?」

「サルディニアよ! サルディニアに、ボスの過去と、正体はきっとある!」

「決まりですね。」

 そして一行は、追っ手の後始末をポルナレフ達に任せ、ヴェネツィアからボートで脱出した。

 

 次の目的は決まった。

 トリッシュが言っていたボスの過去が隠されたサルディニア島へ行くこと。

 そこに向かうには、列車も道路もダメ。ならばということで、飛行機を手に入れるという手段を取った。

「……。」

「どうした? ミナミ?」

「…あのね…、私…、1回飛行機が墜落して、あとセスナで墜落しかけたことがあるの。…だいじょうぶかな?」

「おいいいいーーーー! なんだそれはよぉ!? 初耳だぜ!?」

「ですけど、イタリアに来たときには、飛行機乗ってますよね?」

「うん。」

「なら、だいじょうぶですよ。」

「……う~ん。なんか猛烈に嫌な予感がするけど、いっか。」

「俺は心配だ~。」

 ミスタが胡散臭そうにしていた。

 

 そして一行は、ヴェネツィアの観光都市から離れ、空港へ向かった。飛行機を盗むために。

 

 

 

 

 




ミナミ、勘でナランチャについた、トーキング・ヘッドを見破り剥がす。
波紋がスタンドに使えたのは、スタンドが幽波紋だからということにしています。

トーキング・ヘッドを捕まえられてしまい、焦ったスクアーロ達は、せめて一矢報いようミナミを攻撃。だが怒りのナランチャと、ブルー・ブルー・ローズの導きで失敗。
当初の目的だった回復役のジョルノを狙うが、そこをポルナレフ達に妨害され、スタンドをすべて捕獲されてしまう。

ミナミは、自分がジョースター家の家系だと言うことはまだ喋ってません。たぶん、ジョースターのことはジョルノが知っているだろうし、まだ知られるわけにはいかないかなって思ったので、言わせませんでした。


次回は、ブルー・ブルー・ローズでも勝てない、最強最悪のスタンドが……。


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怨念のスタンドと、邪視

vsノトーリアス・Big。



かなり苦戦しました。


 

 夢を見た。

 

 迫り来る怪物の夢。

 

 すべてを食らいつくし、それでもなお止まらない。

 

 断末魔の叫び声のような、声を上げながら。

 

 ヤツは…、やってくる。

 

 

 

 

 

「…ナミ…、ミナミ。」

「……ハッ!」

 カメの中で眠っていたミナミは、汗をびっしょりかいていた。

「飛行機についたわ。出ましょう。」

「う、うん…。」

 ミナミは、汗を手で拭いながら起き上がり、カメから出た。

「やっとお目覚めだぜぇ。お前、寝過ぎ。」

「…眠いものは眠いんだから仕方ないじゃん。」

 ミナミは、ゴシゴシと右目を擦る。

「そういえば、飛行機の操縦って誰がするの?」

「アバッキオが、ムーディー・ブルースでパイロットを再生し、INS(慣性航法装置)を探してサルディニア島への航行をプログラムする。」

「なんて強引な…。なんか嫌な予感しかしないけど…。」

「考えすぎだって。……ん? レーダーに反応! 誰かが近づいてくる! 滑走路を歩いてくるぜ!」

「どこだ?」

「ミスタ! 左前方に反応だ! 何者かが来る! 向かってくるぜ!」

 ナランチャが、飛行機の外で周りを警戒していたミスタに指示を出す。

 窓から見ると、確かに誰かがひとり…男が歩いてくるのが見えた。

 

 

 ヤメロ

 

 

「?」

「ミナミ?」

 

 

 殺スナ

 

 

「えっ?」

「今のは…、誰の声?」

「…ブルー・ブルー・ローズだよ。たまにこうやって警告してくれる。でも…。」

 ミナミは、ハッとして外を見た。

 今まさにミスタが男を射殺しようと弾丸を撃った瞬間だった。

「ダメ!!」

 しかし手遅れだった。発射された弾丸は、男の身体を貫き、男は死んだ。

「あぁ…。」

「だいじょうぶ?」

「いや…うん…だいじょうぶだけど…。これから何が起こるか…。」

「いったいどうした?」

「ブルー・ブルー・ローズが警告の言葉を言ってくる時って…、とんでもないことが起こる前触れだから…。」

「なに?」

「落ち着けよ。アイツのスタンドも消えるところは見たし、問題ないって。」

 発進する飛行機に飛び乗ってきたミスタがそう言う。

 そして飛行機は発進した。

「今まで…、碌な事なかったんだよ…。ブルー・ブルー・ローズが警告してくれる時って…。」

「例えば?」

「誰かが死ぬ時は、死ぬし…。敵が襲ってくるときは、襲ってくるし……、外したこと無いの。」

「……具体的に何が起こるのかは教えてくれないのか?」

「殺すなって…、言ってた。でも、殺しちゃった…。だからもう手遅れ。」

「具体的には言わないのか?」

「ブルー・ブルー・ローズは、意識はあってもそんな頭が良いタイプじゃないから…。なんかざっくりで…。ん?」

「どうした?」

「あそこ…、あんな落書きあったっけ?」

「えっ?」

 見ればジョルノの後ろにある壁に汚い字で落書きがされていた。

 マルゲリータ(チーズとトマトソースだけのピザ)が食べたい、だの。死ね馬鹿、だの。鼻毛切らないと、だの。

「ただの落書きですよ。そんな神経質に…。」

「ねえ、この飛行機って、お金持ちの物じゃないの? そんな公衆便所の落書きみたいなのされてるなんておかしいわ。」

「金持ちの躾のなってねーガキが書いたんだぜ、きっと。」

「サルディニア…。」

「?」

「『サルディニアへ行きたい』、『ぼくらは』。『女の子と、南の島』……。」

 ジョルノは、席の前の折りたたみテーブルを開いた。

「『死体に喰われる。助けてくれ』、『あの男はカワイソーに、ゾウキンのように捨てられた。怨んで死んで行った。』、『恨みこそがヤツのエネルギー』、『殺されることによって』、『始めて作動するエネルギー』、『死ぬ前、あの男さえ見たことのなかったエネルギー』、『死体だから、もう殺すことはできない』?」

「……『敵スタンド』。『ノトーリアス・Big』?」

「なんだぁ、こりゃぁ!?」

「ああ!!」

「どうした!?」

「ジョルノ、ジョルノの右腕に!」

 ミナミが大焦りで指差す先には、ジョルノの右腕の袖から出ているペンと、モゴモゴと内側が蠢いている袖の中。

 ジョルノは慌てて袖をまくると、そこには、グジュグジュに腐ったように溶けた誰かの右手のような物がジョルノの右腕を侵食していた。

「ノトーリアス・Big!!」

「ば、馬鹿な!? いつの間に!」

「やっぱりーーー! 殺しちゃいけなかったんだ! それは…、あの男の怨みのエネルギーそのものだよ!!」

「ゴールド・エクスペリエンス!! 僕の右腕を切断しろ!!」

 ジョルノがゴールド・エクスペリエンスを出した。するとゴールド・エクスペリエンスの右腕もまた、喰われたように抉れていた。ダメージフィードバックだろう。

 ジョルノが右腕をゴールド・エクスペリエンスの左手で切断させた。ノトーリアス・Bigが取り憑いたその切断された右腕を、ミスタが…。

「だ、ダメぇ!!」

 しかし制止は届かず、ミスタの銃弾がセックス・ピストルズと共に発射され、ノトーリアス・Bigに撃ち込まれた。

「……こ、コイツは…。」

 ミスタの体の半分から大量の出血が起こった。セックス・ピストルズの4体がノトーリアス・Bigに取り込まれるように溶けていた。

「し、死体だから…殺すことは出来ない!? 怨みそのモノを殺すのは…不可能!?」

「な、なめんじゃねぇぞ!」

「ナランチャ、ダメ!!」

「俺の方が早い!」

 ナランチャは聞かず、エアロスミスを出して弾丸を放つ。

 だが、ノトーリアス・Bigは、触手のように粘った身体を伸ばして弾丸を取り込み全て防ぎきると、エアロスミスに触手を伸ばして攻撃を加えた。そしてダメージはそのままナランチャに行く。

「うわああああああああ!!」

「ナランチャ!」

「ミナミ、トリッシュ! 二人ともクローゼットに逃げ込み、カメの中に入れ!」

「分かったわ!」

 ミナミとトリッシュは、後ろの扉から逃げようとしたが…。ノトーリアス・Bigが突如方向を変え、ブチャラティ達を飛び越えて二人の方へ向かってきた。

「えっ!?」

「分かった…。コイツ…、ノトーリアス・Bigは…、速いモノを襲うんだ!!」

 ミナミがノトーリアス・Bigの性質を見破った。眼前に迫った時、ブルー・ブルー・ローズが壁となるように出現してノトーリアス・Bigを防いだ。

 素早く生えてきたブルー・ブルー・ローズを侵食するようにノトーリアス・Bigが蠢く。

「トリッシュ! ゆっくりと…ゆっくりと、クローゼットに!」

 ミナミは、身体から力が抜けるを感じたが必死に堪えながらトリッシュに叫んだ。その間にもブルー・ブルー・ローズがニョロニョロと生えまくり、それをノトーリアス・Bigが喰うように動く。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

「ジョルノ、ダメーーーー!」

「外へ…追い出す!」

 ジョルノは、残った左手でラッシュを繰り出し、そのスピードに反応して取り憑いたノトーリアス・Bigを割った窓から外へ左手を切断して追い出した。

「これで僕らは…、無事にサルディニアへ…。」

「そんなことしても無駄なんだよ!」

「?」

「ここがどこか分かってない! 高度1万メートル以上! ここで一番速く動いてるのはナニ!? 飛行機でしょ!」

「ぁ……。」

「…これだから……ブルー・ブルー・ローズ…、『ワタシ』が嫌いなんだ…。」

 なにもかもが手遅れになるから。っと、言い残しミナミは、意識を失った。

「ジョルノ…なんてことを…、今回ばかりは一番の大ダメージだ。お前の両手が無ければ、治療はできない! お前も、ミスタもナランチャも再起不能だ!」

「いいえ…、確かに僕のミスです…。でも…、僕はなにも考えずこんな自爆するような真似をしたわけじゃない。」

 ジョルノは、ドカリッと椅子に倒れ込む。すると、テントウ虫のブローチが1個落ちた。

 それがジワジワと変化し始めていた。それは、左手の形に。

「手を作っておいたのか!?」

「ええ…。これでなんとかなりま…。」

 その瞬間、ガクンッと飛行機が大きく揺れた。

 ブローチがたちまち後方に行ってしまう。

 更に窓を割ってノトーリアス・Bigが入って来た。

 そのノトーリアス・Bigの壁になるように、ブルー・ブルー・ローズがたちまち不完全な人型へと変わる。いや、人型のソレが現れたのだ。邪視を宿したソレが。

 ノトーリアス・Bigが包み込むように邪視を宿した赤い根っこの塊に張り付く。

 ガクガクと震えて腰を抜かしかけているトリッシュに、ブチャラティは、ジェスチャーをする。

 『近くに落ちている、ジョルノの左手を拾ってくれ!』っと、ジョルノとミスタとナランチャをカメに押し込みながらそう伝える。

 トリッシュは、大汗をかきながら、ゆっくりと、だが確実に、落ちているジョルノの左手に近づく。

 そしてテントウ虫のブローチから生まれたジョルノの左手を掴んだ。

 すると、赤い根っこの塊が倒れ込み、ノトーリアス・Bigが内側へと侵入した。やがて赤い根っこ部分がノトーリアス・Bigに喰われ尽くしていく。

 ブチャラティは、カメを抱えたまま、トリッシュに、ゆっくり来い!っとジェスチャーをする。

 コロッと金属音が聞こえた。そちら見ると、赤い根っこの塊から、矢の先端が出てきていた。

 その矢の形を、ブチャラティは、知っていた。ソレによく似ていたからだ。

 

 ポルポのスタンドが持っていた、矢に。

 

 だが次の瞬間、矢を中心に、矢から凄まじスピードで赤い根っこが生えてきてあっという間に人型の塊になった。それに反応してノトーリアス・Bigがさらに攻撃の手を強める。

「今!」

 トリッシュは、その隙をついて走り、ブチャラティに向かってテントウ虫のブローチを投げた。そして倒れているミナミを掴んで、ゆっくりと引っ張って運ぼうとした。

 ブチャラティは、それを受け取りながらも信じられないという顔をする。大声を出せばその大声のパワーにノトーリアス・Bigが反応するからだ。

 ズル…ズル…っと、ミナミをゆっくりと引きずっていると、赤い根っこの塊とノトーリアス・Bigの攻防がやがて、ノトーリアス・Bigの方が強まってきていた。

 無敵! 殺す方法が無い! あの怨霊のようなスタンドは殺せない!?

 そんな絶望がブチャラティの脳裏を過ぎる。

 その時だった。

 赤い根っこの塊の邪視が開いたとき、その目の前にブラックホールのような穴が出現した。

 そしてノトーリアス・Bigがそれに触れた瞬間、掃除機にでも吸われるように吸い込まれて消えた。

 ノトーリアス・Bigが消えた後、黒い穴は消えた。

 静寂がその場を支配するが……、やや置いて、邪視がこちらを見てきた。

「見るな!」

「あぁ!?」

「トリッシュ!」

 邪視と目が合ってしまったトリッシュが金縛りにあう。

 ノトーリアス・Bigという脅威が消えた今、動かないでいる必要もなくなり、ブチャラティは、トリッシュを後ろから抱えて後ろへやった。ブチャラティの身体が前に行き、ブンッと赤い根っこの塊が右手を振り降ろした。

「ブチャラティ!」

 しかし、その身体に触れる寸前でその身体がグニャリッと柔らかくなり、触れることは無かった。

「?」

 ブチャラティは、自身の身体の変化に驚いたが、ミナミを掴んで引っ張ると元に戻った。

 

 

 

 永遠ノ

 

 

 安息ヲ

 

 

 

 突如、赤い根っこの塊が増殖し、飛行機の内部の天井や壁にぶつかるほど巨大化した。

「なんだ、コレは…?」

 

 

 

 ミナミ

 

 

 

「!?」

 

 

 

 守っテ

 

 

 アゲル

 

 

 ダカラ・・・

 

 

 

 巨大化を始めた赤い根っこの塊が、辛うじて手の形となっている右手を意識の無いミナミに伸ばそうとした。

「スティッキー・フィンガーズ!!」

 咄嗟の判断でブチャラティは、スティッキー・フィンガーズを使って床にジッパーで穴を開けた。巨大化した赤い根っこ塊が落ちる。そしてジッパーを素早く閉じた。

「……か、勝ったの?」

「分からない…。」

 直後、ドオンッ!と飛行機に衝撃が走った。

 そして、バリンバリンっと窓が割れていき、外側から赤い根っこが入り込んできた。

 なお、外では、飛行機にしがみつくように、巨大化した赤い根っこの塊が張り付いていた。

「まさか、飛行機ごと潰す気か!?」

「そんな!」

 

『落ち着いてください。トリッシュ。』

 

「誰!?」

 

『私は、あなたが幼い頃よりずっと傍にいる。あなたの傍にずっといました。さあ、命令を…。あなたなら出来るのです。この機体を“柔らかく”するのです。』

 

「柔らかく?」

 そうこうしている内に、ギリギリ、ミシミシと飛行機の機体が軋みだしていた。

『落ち着いて。だいじょうぶです。さあ、私の名を…、あなたは知っています。あなたの幼い頃からずっと傍にいた私に命令を!』

 

「……『スパイス・ガール』!! 飛行機を柔らかくして!」

 

 その瞬間、スタンド、スパイス・ガールが出現し、飛行機の内部を殴りに殴りまくった。

 すると、グニャグニャと機体がへこみ始める。巨大な手の形がハッキリと浮き彫りになるが、やがて弾力に跳ね返され、窓から入っていた赤い根っこごと外へ出て行った。

「トリッシュ! 今のは、君がやったのか!? そのスタンドは…。」

「ええ…。さっきブチャラティの身体を柔らかくしたのは、私だったみたい。ミナミをカメの中に入れて、操縦席へ急ぎましょう! この機体を捨てるわ!」

「どうする気だ!?」

「操縦室だけを切り離して、ヤツ(赤い根っこの塊)を飛行機もろとも墜落させる!」

「墜落だと!?」

「アレに触れると、死ぬんでしょ!? なら触るなんてもってのほか! 不時着の衝撃でこっちに倒れ込んできたらアウトよ!」

「し、しかし!」

「いいから! 私のスタンドで、操縦室のみを柔らかくし、パラシュートにするわ! 急いで!」

「あ…、ああ!! 分かった!」

 トリッシュの凄みに圧され、ブチャラティは、急いでミナミをカメの押し込み、トリッシュと共に操縦席へ入った。

 そしてスパイス・ガールに飛行機を殴らせ、柔らかくし、操縦室、つまり飛行機の先端を胴体と切り離させた。

 飛行機の胴体には、先ほどより巨大化した赤い根っこの塊がしがみついていて、それでもなおこちらに手を伸ばそうとしたが、墜落のスピードが増さり、手は届かなかった。

 

 

 

 待ッテ

 

 

 ミナミ・・・

 

 

 

 まるで母親を恋しがる子供のような寂しい声を残し、飛行機の胴体と赤い根っこの塊が海へと墜落したのだった。

 

 

 

 




ブルー・ブルー・ローズと、ノトーリアス・Bigの戦いは、謎の赤い根っこの塊の方が出した、ブラックホールのような穴に吸い込んでノトーリアス・Bigを消滅。勝利。
だがその代わり、赤い根っこの塊が襲ってきてさらに強化された状態になり、飛行機もろともやられかけるが、スパイス・ガールの覚醒で勝利。

スパイス・ガールをいつ覚醒させるかで悩みました。結果、コレです。


赤い根っこの塊の声は、幼い子供のような声へと変わっています。男か女かは不明。
そして、徐々に進化を始めている?
ノトーリアス・Bigとの戦いで急激に成長したかな。ミナミへの思いを明確にし始めたので。


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消えた三人目

感想欄でいただいた言葉をヒントに、後付け設定で作った設定。


今回は、オリジナル回。


承太郎とポルナレフの会話が主。というか、会話しか無い。


 

「コレクトコール(料金受信人払い)で頼むぜ!」

 ヴェネツィアからイタリア本土に戻ったポルナレフとイギーは、別行動していたアヴドゥルと合流し、電話ボックスで承太郎に繋げた。

『もしもし、ポルナレフか。』

「いったいどういうことだ? なんでまたギャングにミナミを任せたんだよ?」

『ミナミの身の異変については花京院が伝えているはずだが?』

「そりゃ聞いたぜ! けどよぉ! 信用できる風ではあっても、イタリアの財団に任せるなり別の方法があっただろうが!」

『……ジジイの念写だ。』

「ジョースターさんの?」

『強いスタンド使いに預ける必要があった。そうでなければ、守れない。だから彼らを選んだのだ。』

「でよぉ! そいつらヤバいことに、今、組織を裏切って孤立状態らしいぜ! それでも預けっぱでいいのか!?」

『組織よりも遙かにヤバいモノが、今、イタリアを苗床に成長している。それを解決させなければならない。そのためには、強いスタンド使いが必要になる。』

「いったいなんなんだ? なにがイタリアで育ってるんだ?」

『ブルー・ブルー・ローズだ。』

「はぁっ?」

 ポルナレフはそれを聞いて、素っ頓狂な声を漏らした。

『ブルー・ブルー・ローズからミナミを守る必要がある。そうしなければ、たちまちイタリアは食い尽くされ…、それは世界中に害を及ぼすだろう。』

「ちょ、ちょい待ち! なんでミナミが、自分のスタンドから身を守らなきゃならないんだよ!?」

『……喰われるのを防ぐためだ。』

「はっ? くわれる?」

『現状から言って、ミナミが身に宿しているブルー・ブルー・ローズは、半分程度しか残っていない。別行動をしているブルー・ブルー・ローズが、残りの力を手に入れるためにミナミを喰う必要があるということだ。もしすべての力と意識を奪われれば、ソレを止める術は無くなるだろう。そうなってはすべてが終わる可能性がある。』

「わけが分からないぜ…。……まさか、だと思うが…、盗まれた矢と関係があるのか?」

『ポルナレフ。お前達は、矢について、どこまで知っている?』

「えっ? ああ、それは…。」

 

 

 遙か昔、イヌイット以外に人の住まないケープヨークという土地に、隕石が墜落し、そのクレーターは名所となっている。

 その場所を調査した作業員が、死んだ。あまりにも酷い死に様だった。

 だが奇妙なことも同時に起こっていた。凄まじい姿になり果ててしまった作業員の一人が、異能の力を発揮したのだ。

 その作業員は死に、そしてクレーターの中の隕石も見つからなかった。一説では、ウィルスさえいないほど寒い地域でこのような奇妙な奇病が発生したのは、隕石に眠っていた細菌かウィルスが原因だろうと見られていた。死んだ作業員達の身体についた小さな傷だけしかなかったのだから。

 矢の材質は、ケープヨークで採れる岩石と同じ物質であること。

 何者が矢を造ったのかは分からない。だがひとつ言えるのは、まだウィルスなどが知られていない信じられていない昔の時代に、神のような力を求める人間達により造られたのではないかということだ。

 実際、この矢は……隕石のウィルスは、生命を淘汰(死に至らせる)が、希にいる素質のある者がいると、生き残ったご褒美のように力を与えるという性質があった。

 神のような力イコールスタンドなのだとしたら、虹村形兆やポルポがやってきたスタンド使いを生み出すことは、まさに昔、矢を造ったその人間達の思惑通りとなったのだろう。

 

 だが最近になり……、矢は、それだけのモノじゃないことが分かってきたのだ。

 

 矢は、エンヤが所持していた物以外にも存在していた。

 杜王町にて二本の矢が破壊された。

 イタリアにあった一本は、ポルポが所持し、彼の死と共に破壊された。

 そして、ポルナレフ達が調査の末に発見しイタリアから逃げ帰るときに持ち帰った矢は、行方不明となっている。

 

 矢の新たなる可能性……。それは、スタンドの未知の領域への飛躍。

 

 矢の力により、更に上へと進化した者は、世界を制するという希望でもあるが、恐ろしすぎる可能性だった。

 

「…こんなところか?」

『ああ…、パッショーネは、矢を所持していたが、矢の可能性を知らずに破壊させてしまったらしい。運が良かった。』

「そうだな…。けど、生まれちまったスタンド使い達はどうしようもねーけど。それで?」

『……東方には、“3人目の子”がいた可能性がある。』

「はい? どういうことだ? ミナミは、仗助と双子だろ? まさか…、ジョースターさん?」

『バニシングだ。』

「ばに?」

『多胎受精の場合、希に腹の中の子が消える現象があると言われている。……ブルー・ブルー・ローズについて財団の超常現象研究機関が、本体であるミナミのことでジョースター家だけじゃなく、東方の血筋にもメスを入れた。そしたら、ミナミと仗助の母親である東方朋子の母子手帳に、3人いたことが分かったぜ。』

「けど…生まれたのは、二人だぞ? あとひとりは…。」

『本来なら3人で生まれるはずの、消えたひとり。それがブルー・ブルー・ローズに取り憑いている。いや、正確には、ミナミにか。今、イタリアに出没している邪視を宿したブルー・ブルー・ローズらしきモノは、3人目が発生させたモノである可能性が出てきた。邪視の民間伝承が正しければ、ミナミの性格では邪視が宿る可能性は限りなくゼロに近い。ならば、そのルーツはどこだ? もしブルー・ブルー・ローズに宿るのが、肉体を失い歪に成長した魂なのだとしたら、ミナミが宿すはずがない邪視の存在も…。』

「待て! 待てよ! だとしたら余計に分からねーだろ! なんで、血の繋がった姉弟を狙う必要があるんだ!? ソイツが東方の子の可能性があるなら、余計にミナミをソイツから守る必要がある理由が分からねぇ!」

『言っただろう? “歪(いびつ)に成長した魂”だとな。ミナミに憑いていたとはいえ、正常に成長する可能性は微々たるものだ。むしろ、ブルー・ブルー・ローズの能力に影響されて、いや……むしろ、矢の力を得て、一体化し歪んだ形でミナミと、世界を……。』

「それが、今…ミナミとイタリアを苗床に世界を滅ぼそうってのか!?」

『そこまでは分かっていない。だが、歪に成長した魂が、正しき方向に向かう可能性は限りなくゼロだ。もし正しくとも……、それがミナミのためか、世界のためか……、ブルー・ブルー・ローズの力を見れば、どちらに転んでも、最悪だぜ。』

「………どうしたらいい? 俺達は、何をしたらいいんだ!?」

『ひとつの方法として、矢を盗んだことで分離し、別行動している3人目の取り憑いたブルー・ブルー・ローズから、矢を奪うことだ。しょせんは肉体のない、精神だけの存在が矢を所持しても、それは真の進化とは言えない。成長こそすれ、本体はいまだミナミにある。ミナミが自分の意思で矢を使い自分を貫いていない以上、進化は不可能だ。3人目が歪に成長を遂げ、ミナミを喰らう前ならなんとかなるはずだ。』

「……もしもだ…。考えたくもねーが…、もしミナミを喰われ、3人目が完全になった場合はどーなる?」

『……終わりだろうな。』

 

 

 世界の全てが。

 

 

 その時、イギーが吠えだした。

「どうした、イギー…? ーーー!?」

 ポルナレフがそちらを見た時、そこに赤い根っこの塊がいた。

 しかしすぐにアスファルトに溶けるように消えた。

 まるでこちらを見て、会話を聞いていたのを気づかれ、慌てて消えたように……。

「マジかよ…! 3人目の可能性!! く、クソッタレ!!」

 ポルナレフは、大汗をかいた。

 

 

 世界を蝕もうとする災厄は、イタリアを苗床に、確実に成長していた。

 

 

 




ウィキペディアで、双生児について調べると、バニシングツインズという単語があります。
文字通り、片側が消える現象らしく、詳しくはウィキペディアで。



※2020/03/07
バニッシングじゃなく、バニシングツインズでした。申し訳ありません。


名前はおろか、肉体さえない3人目の東方の子というのは、完全捏造ですので!!
双子の姉という捏造ネタで、今更だけど!!


ミナミの性格じゃ、邪視が発生する条件を満たせないため、な~にか案は無いかな?っと考えた末の、3人目設定です。
3人目が何を目的に動いているのかは、まだ分からない。けど、思考はミナミに向いている。(前話の最後にて)


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最後の暗殺者と、奇妙な少年ドッピオ

今回は、ドッピオ(とボス)の二重人格会話とか、邪視の声とかが入り乱れてて、非情に読みにくいかも知れません。




そのことを踏まえた上でお読みください。


オリジナル展開です。


最後、邪視を宿した赤い根っこの塊が、リゾットと?って展開かな。


 

 イタイヨぉ

 

 

 寂シぃヨぉ

 

 

 置イテイカナイデ

 

 

 『ワタシ』ヲ

 

 

 見テヨ

 

 

 オ願イダヨ・・・

 

 

 『目』をミテヨ・・・

 

 

 忘レナイデ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トゥルルルルルルルルル。とぅるるるるるるるるるる。」

 青年と少年の間くらいだろうか。そんな成長期ぐらいの少年が、奇妙な声をあげる。

 たった今、タクシーの料金メーターを弄って倍メーターによる詐欺をしようとしたタクシー運転手は、ただ唖然とした。

「電話、電話だ! 着信が来たぞ! どこだ、おい、ドコだよ? あっ、あった!」

 そう言ってタクシーの運転席の窓ガラスに張り付けてあったキーホルダーを千切って耳に当てた。

「もしもし! ボス! はい、……えっ、殺さなくていい? 封筒の中身を見てないから? 分かりました。で、ですが、ボス…お言葉ですが、私の見解ですが、コイツは封筒の中身を見てしまったと…。あっ、いや…、ボスの命令なら…。確かにここで面倒を起こすわけには…。」

「な、なんだ…コイツ…、ブツブツって…、ま、まあ、この2万で許してやるよ…。」

 少年のことを不気味がりながら、タクシー運転手は、金を奪ってタクシーに乗って逃げていった。

「す、すみません。ボス…、『見張り』は、これから…。」

 

 

 

 

 『見張りはこれからだと!』

 『違うぞ! 私のドッピオ!』

 『よく見るんだ! だが、ゆっくりだ。そのまま自然に、怪しい行動を取るな!』

 『今、見張られているのは…、お前の方だ…ドッピオ!』

 

 

 

 

 岩陰に隠れた、黒い男がひとり…。

 

「し、知ってる! アイツは…、見たことがある!」

 

 

 『そうだ。リゾット。裏切り者の暗殺者…、すでにここまで来ていたか。』

 『奴も、飛行機の墜落で、トリッシュの実家にあった、このサルディニアの写真の存在に気づいたようだ。』

 『来ていることは、私が占い師に聞いていたから予測はついていた…。まず、奴を始末しなければならない。さもないと、トリッシュが来たとき、邪魔をされる。奴を始末するのは、この私だが……。お前の正体は決して奴にバレてはならない。バレずに奴に近づかなければならない、リゾットの能力は私にも謎だからな。では、電話を切るぞ、ドッピオ。』

 

 

「はい…。分かりました。ボス…。うぅう…、頭が痛い…。頭痛薬あったかなぁ?」

 ドッピオは、キーホルダーを耳から離し、頭を押さえた。

「そうだ! 僕はこれから見張りをしなきゃいけないんだ! でも、さっき近づけって…、何に? そういえばどこから電話してたっけ? あ、そーだ! タクシーの自動車電話だ! あー…、でも、メーター誤魔化されて2万円も取られちゃったよ…。僕ってどうしてこうなんだろう…。」

 

 

「俺は、お前に近づかない。」

 

 

「ハッ!?」

 その瞬間、ドッピオは、足下に刺さったナイフによって前にこけた。そして盛大に倒れた先にあった岩に顔を強打。

「うわああああああ!! イダイ! イダイよぉおおおお! ぢが…、いっぱい~~!!」

「……こっちを見ろ。」

 リゾットがいつの間にか、背後に回っていた。

「!?」

「その手をどけろ。それじゃあ顔が見えない。」

「ひぃいいいい! お、お金はありません~~!! さっき取られちゃってもうないんです~~!」

「……気のせいか。『追っ手』かと疑ったが。お前の怯えも無知も、演技では無い、本物だ。この俺をあえて追撃してきた者なら、こんな衝撃を受けた態度は取らない。しかも赤子以上に隙だらけだ。……一般観光客か。」

「ひい! こ、来ないで!」

「お前のことなどどうでもいい。ナイフを拾うだけだ。……!」

 ナイフを拾おうと近づこうとしたリゾットだったが、突然足を止めた。

「?」

 ドッピオがそれを不思議に思ったときだった。

 

 

 

 寂シイ・・・

 

 

 

「チッ! こんなところにまで!!」

 リゾットが素早く距離を取り、目をそらす。

「えっ? えっ? ぼ、僕の背後に……?」

 ドッピオは、背後にいるモノから向けられている視線の気配に振り向きたくなるが、振り向いたら最後だと同時に感じていて汗をかいて固まる。金縛りではない。

 何かいる! それは分かるが、絶対後ろを見たらいけないと本能が警告してくる。

 

 

 

 置イテイカナイデ

 

 

 

「な…、なにを?」

 

 

 

 

 置イテイカナイデ

 

 

 

 

「ひっ…。」

 

 

 

 

 コッチを

 

 

 見テ

 

 

 

 

 次の瞬間、ブシュッと音が背後から聞こえた。

「!?」

「さっさと立て! そして後ろを見ずに走れ!」

 リゾットがたった今何かを投げた体勢で目をそらしていた。

 

 

 

 

 イタイ

 

 

 

 

「う、うわああああああ!!」

 ドッピオの横から、ヌウッと赤い根っこの塊の手が迫ったため、ドッピオは四つん這いになりながら必死に逃げた。ドッピオが逃げた後、ドッピオがいた場所に赤い根っこの塊が倒れ込んだ。

 

 

 

 

 イタイ・・・ イタイイタイイタイイタイイタイイタイタイタイ!!

 

 

 

 

 赤い根っこの塊が顔の辺りを両手で押さえながら、のたうち、転がる。ゴロゴロと根っこの塊が転がり、リゾットとドッピオの間にちょうど来てしまう。そしてリゾットは邪視から逃れるため飛び退き距離が出来る。

 

 

 『邪視か! よりにもよってこんな時に、この場所で!? ヴェネツィアからここまで…!』

 『アレは…、観光客か!? 邪視に殺(や)られたか!』

 『コイツのせいで、リゾットから距離が離れてしまった!』

 

 

 見れば、別の岩陰に倒れている観光客らしき人間の手が…。ピクリとも動いてないので、間違いなく死んでいる。あんなところで不自然に死んでいるということは、間違いなく邪視の仕業だろう。

 問題は、邪視によって無関係な人間が次から次に死ぬことじゃない。目を見ると死ぬ。触ると死に誘われる。近距離パワー型キング・クリムゾン……、拳が触れるだけでアウト。しかも時間を飛ばしてもついてくるという要らないオマケ付きときたものだ。リゾットさえ殺せれば、あとはサルディニア島に来る予定のトリッシュ達を殺せると踏んでいただけに想定外過ぎる。

 考えろ! 考えろ! この状況を突破する方法を! “自分”に関わる全てを葬るために!

 だが下手に時間飛ばして触ったりなんかしたら、その瞬間に死体験の衝撃が脳を襲うのだ。

 人間は、錯覚でも死んでしまう。とある実験体に行ったとされる目隠しをした状態で僅かな傷をつけて、水を使って血が流れているのを錯覚させた実験で大量出血したと思い込んだ実験体は死んだ。

 “自分”はともかく……、ドッピオが精神的に持つかどうかが怪しい。いや、信頼しているが、ひとつの身体を共有する“二重人格”で、ドッピオの方は己がボスと慕っている者と同一人物だと知らない、そのため死の衝撃に脆い可能性がある。今、ドッピオを失うわけにはいかないのだから。さらに言えば、ドッピオが死んだ衝撃で脳がショック死を起こし、潜在している自分が死ぬ可能性だってある。

 いずれにしても邪視を宿した赤い根っこの塊をなんとかしないと、自分自身の痕跡を消す以前に、生き死にがかかっている。島から無事に出られない可能性もある。この邪視(赤い根っこの塊)は、それほどに危険で、今イタリア全土に出没しているのだ。

 あまりの恐怖(たぶん邪視を見たか、触って臨死体験させられたかして)でショック死したような死に様になるため、正しく死神と普通の人間達からは恐れられている。

 親衛隊の一員だったカルネのスタンド、ノトーリアス・Bigのように死んでから動き出す自動操縦型のスタンドとも違う。ドッピオを通して見ている赤い根っこの塊は、イタイイタイっと子供のような声を上げてのたうっている。ポルポのブラック・サバスとも違い、明確な意思や感情がある証拠と取れるかも知れない。

 しかし、やがて痛がるのをやめて、不完全な人型がむくりと起き上がる。リゾットの方を見ているようだ。リゾットは必死に目をそらして邪視から距離を取ろうとしている。暗殺チームの情報網ならとっくに邪視の存在は耳に入っているだろう。だからあれほどに恐れているのだ。

 このまま邪視にリゾットを始末させるよう仕向ける? いや、癖の強い暗殺チームをまとめていて、これまで失敗したことがないリゾットだ。組織のボスにも見せたことが無いスタンド能力で掻い潜って、先にトリッシュやトリッシュの実家に行く可能性がある。可能性は必ず摘まなければならない。

 その時、ドッピオの人格の内側に潜んでいるボスは、あることに気づいた。

 そういえば、ドッピオの背後にいた邪視の目を貫いたのは、リゾットではないかと。先ほど明らかに何か投げた動作の後が見られた。

 もしや?っと考えていると、ギョロリっと赤い根っこの塊の頭の辺りが180度回転して再生した邪視がドッピオを見ようとした。

 ドッピオの目と邪視の目が合いそうになった時。ドスドスと赤い根っこの塊の後頭部辺りに無数の刃物が刺さった。

「逃げろと言ったのが、聞こえなかったか、小僧!」

 リゾットが怒鳴る。

 リゾットの衣装のどこからあんな数の刃物が出たのかは分からないが、それがスタンド能力なのだとしたら好都合ではある。邪視を利用して観察し、隙を突いて殺せば良いのだから。

「う、うあああああ!」

 ドッピオが竦み上がって目を硬く瞑り、頭を抱えた。するとリゾットの舌打ちが聞こえた。

 

 

 

 イタイよぉ

 

 

 寂シイヨぉ

 

 

 『ワタシ』ヲ

 

 

 見テよ

 

 

 

「クッ…、コイツは不死身か!」

 ドスドスだの、ブシュブチュだのと変な音が聞こえ続ける。

 

 永遠に続くのではないかというほど続く不快な音はやがて不意に止まる。

 

「……女?」

 

 リゾットのその言葉を最後に、音は消えた。

 潮風が吹き抜ける音だけが耳を澄ませば聞こえる。ドッピオが恐る恐る目を開けた。

 そこには何もいなかった。もちろんリゾットもいない。赤い根っこの塊も跡形も無く消えていた。

「消えた…? なにが? どうしたんだ?」

 ドッピオはキョロキョロと周りを見回す。

 やがて自分以外なにもいないことを確認すると、そのまま尻から地べたに座り込んだ。

「はあ~~~、一時はどうなるかと思った。ん? それより僕は大切な任務があったんだ! そっちを優先しないと!」

 

 

 

 ロォォオオオオ

 

 

 

「えっ?」

 奇妙なうなり声とも、うめき声ともつかないような変な声が聞こえた。

 

 

 

 ロオオオオォォオオオド

 

 

 

「ど、どこ!? どこだ!? どこにいんだよぉ!? こ、怖くなんかないぞ! 出てこいよ!」

 

 

 

『『ワタシ』は、オマエに近ヅカナイ』

 

 

 

「!?」

 聞き覚えのある台詞と共に、無機質な声の質になってしまったリゾットの声が聞こえた。そちらを大慌てで振り向くと…。

「うわあああああああああ!?」

 ドッピオが思わず悲鳴を上げた。

 そこにはリゾットが立っていた。だがリゾット…なのか?っと問われると答えに困る有様だった。

 右目から露出した黒目が多いリゾットの目が垂れ下がり、そこからニョロニョロと赤い根っこが生えて動いている。

「こ、これはあああああああああ! 乗っ取ったのか!? アレ(邪視と赤い根っこの塊)がその男に寄生したのかああああああああ!? とぅ、トゥルルルルルルル!」

 不意にドッピオの目がギョロギョロと蠢き、口から電話の音のような言葉が出てくる。

「ぼ、ボス! 大変だ! 大変だよ! 電話、電話どこだ!? あった!」

 ドッピオは、その辺に落ちていた、造花のヒマワリの花を拾って耳に当てた。

「ボス! ボスぅうう! 邪視が、あの根っこみたいなのが、リゾットを!」

 

 

 『落ち着くんだドッピオ。落ち着くことが大切だ!』

 『お前が今置かれている状況は、好機だ!』

 『リゾットは、邪視に食い殺されたのだ!』

 『放っておけばあとは…。』

 

 

『お前…、俺の名を…知ってるのか?」

 声がリゾットのソレに戻った。

 ドッピオは、ハッとして慌てて口を手で塞ぐが、その瞬間、凄まじい吐き気が襲い、食道から口までせり上がる凄まじく硬い物と鉄の味が一気に広がり、ドッピオは大量のカミソリの刃を血と嘔吐物と共に吐き出した。

「そ、想定外にも…ほどがあるが……、不思議と…悪くないな。これで……チームの仲間の仇も、ボスの首も取れるのならナ!!』

「!?」

 

 

 『気づかれた!?』

 『ドッピオ! お前には、我がキング・クリムゾンの右手とエピタフを貸し与えていることを思い出せ!』

 『そして予測するのだ! 次の行動を! 未来の動きを!!』

 

 

『ム…ダ…だ……。『ワタシ』の力…ある限りなぁ!!」

 距離を詰めてきたリゾットが、ドッピオの右手首を掴んだ。その袖からズルズルと赤い根っこが生えてきて、ドッピオの右手首に絡まった。その瞬間、死の衝撃がドッピオの脳を襲う。

 脳を襲う衝撃に白目をむきかけるが、ドッピオは気合いを振り絞ってキング・クリムゾンの右手でリゾットの手と赤い根っこを振り払った。

 カミソリの刃を吐き出したばかりで鉄の味と、胃液の味を堪えながらリゾットの胴体に蹴りを入れて引き離した。

 その衝撃でブラブラしていたリゾットの右目が千切れ、落ちた。

 リゾットの右目が千切れた後、空っぽになったリゾットの右目から流れ出た血から、小さなスタンド群が現れ、ロォオオオだの、ロォオオオオドだのと声をあげる。そのスタンドと共に踊るかのように赤い根っこが少し生えて、ユラユラと揺れていた。

 

 

 

「ブルー・ブルー・ローズか…。キミ…ナマエ…、『メタリカ』…。』

 

『永遠ノ…安息ヲ……。ボスを殺し、お前の危惧する危険を取り払ってやろう!」

 

 

 

 

 リゾット・ネエロに寄生した、邪視を宿した赤い根っこの塊は、ひとりの娘を守るため、降りかかる脅威が同じであったことから共闘することで同意したのだった。

 

 

 

 




後半の寄生されたリゾットの喋りの部分の“『』”と、“「」”は。

“『』”が邪視の方で。
“「」”がリゾットの人格です。

前と後ろが両者入れ替わり立ち替わりしている表現です。



精神は別々に存在し、倒すべき相手が同じだったということで寄生されていながら共闘関係が成立。
結果、リゾットは、キング・クリムゾンの時間の飛ばしの耐性と、赤い根っこと邪視が宿す『死の衝撃(臨死体験)』の力を借りることが出来るようになった。


なんで、こんな展開になったかというと、ブチャラティ達とぶつけたかったからです。リゾットを。


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数奇な人生を歩む暗殺者

今回は、リゾットのプロフィールから抜粋した、リゾットの人生の歩み。


オリジナル展開です。



まだブチャラティ達とぶつけてません。


 

 リゾット・ネエロ。28歳。パッショーネの暗殺チームのリーダー。

 

 暗殺という組織の中でも特に血塗れのチームのリーダーでありながら、そのきっかけとなった彼の人生の転機は意外なモノである。

 

 従兄弟の子供が、酒飲み運転で事故死した。世間はこの事故を起こした運転手に数年だけの刑を科しただけで許してしまった。

 

 だが、当時15歳にも満たなかったリゾット・ネエロは許さなかった。

 

 18歳になった彼は、その運転手を暗殺。そして裏社会で生きることとなる。

 

 21歳でスタンド、メタリカを覚醒させ、以後組織の暗殺チームに入る。

 

 だが自分達がどれほど組織のために貢献してきても、組織は汚い仕事に手を染めるからという理由で暗殺チームを疎んできた。

 

 当然だがチームは組織に反感を持つ。リゾットを始め、これまでブチャラティ達と戦ってきたのは、そんな風に組織に必要とされながら、疎まれていたという矛盾した存在だったのだ。

 

 そしてあるとき、ソルベとジェラートいうチームの仲間が組織に惨殺された。あまりの酷い死に様の死体を送りつけられた結果、2年もの間、組織に逆らえばどうなるかという恐怖という首輪をかけられた。

 

 トリッシュという、娘が見つかるまでは。

 

 なぜ彼らがトリッシュを狙い続けたのか。理由は至極簡単だった。トリッシュがボスに繋がる最大のカードとなると判断した彼らは、一斉に反旗を翻し、ボスを殺して組織の大きな収入源である麻薬ルートを入手するため、これまでブチャラティ達を襲い続けたのだ。

 

 これまでの彼らの顛末を見たモノならば分かるだろう。今やチームは壊滅状態。残されたのはリゾットのみとなった。

 

 だがそれでも彼は諦めない。仲間の弔いのため、栄光を掴むため。たった一人残された彼を支えるモノは様々だろう。

 

 そんな数奇な人生と孤独に落ちてしまったリゾット・ネエロに“運命”は、手を差し伸べた。だが、それが果たして吉と出るか凶と出るかは分からない。

 

 イタリア全土を恐怖に陥れている赤い根っこの塊と邪視の存在。

 

 それがなんなのか分からなくても、出会ってしまえば自分もまたその被害を被る可能性があることは暗殺チームの情報網なら簡単に入手できた。

 

 そしてブチャラティ達の足取りと、死んでいった仲間達が残してくれた情報を元にサルディニア島へやってきて、邪視と遭遇した。

 

 しかし、ブチャラティ達の仲間か、あるいは組織の人間である可能性を危惧したにも関わらず、一般観光客だと判断した己は、それまで培ってきた暗殺者としての冷酷を捨てて一般観光客の少年を邪視から逃がすべく動いていた。今思えばそれは、従兄弟の子供と一般観光客の少年を重ねてしまったからかも知れない。

 

 不死身のような邪視を相手にしていて、やがて……。

 

 リゾットは、半分になってしまった視界の中で、奇妙な感覚と自分ではないモノが今、体内に入り込んでいてコレが持つ情報を共有している。視界が半分であるのに、右半分に映るモノがなんであるかはハッキリと分かるのだ。

 

 その存在が自分が先ほど相手をしていた邪視と赤い根っこの塊であることは分かる。だが不思議とソレを拒絶する気にならなかった。

 

 目の前にいる存在のせいだろう。

 

 

 

「ボス! ボスぅうう! 邪視が、あの根っこみたいなのが、リゾットを!」

 

 

 『落ち着くんだドッピオ。落ち着くことが大切だ!』

 『お前が今置かれている状況は、好機だ!』

 『リゾットは、邪視に食い殺されたのだ!』

 『放っておけばあとは…。』

 

 

 

 リゾットは、一言も自分の名を口にしていない。

 一般観光客だと思った眼前の少年は、彼の内側から聞こえてくる別の声と共に、リゾットのことを知っていたことをリゾットに教えた。

 そうなって一瞬にして理解した。

 自分に寄生したコレは、自分にとって敵を同じくするのだと。

 そして、今自分に組織のボスの正体を教えてくれたのだと。

 自分は、今、コレから力を借りているのだと。そして自分もコレに力を貸すことが出来るのだと。

 コレが、ブルー・ブルー・ローズと呼ばれていることも知った。本体がミナミという娘であることも知った。組織のボスがミナミを殺そうとしたから許さないということも。

 手を差し伸べたのは…、ボスを殺したいという目的の一致からだったということも。

 コレの力を借りれば、ボスの無敵のようなスタンドに耐性ができることも、そしてコレが持つ相手を死に誘おうとする力も自分で使うことが出来るのだということ。

 

 

「ブルー・ブルー・ローズか…。キミ…ナマエ…、『メタリカ』…。』

 

『永遠ノ…安息ヲ……。ボスを殺し、お前の危惧する危険を取り払ってやろう!」

 

 

 リゾット・ネエロに寄生した邪視と赤い根っこの塊……、否、ブルー・ブルー・ローズとの契約は成立した。

 

 

 

 




リゾットのプロフィール見たら、ホントに暗殺者!?って思いましたよ。

ドッピオ(ディアボロ)との戦いは、次回かな。
もしくは、飛ばしてブチャラティ達と戦いにするか。迷うところ。
その場合、ドッピオ(ディアボロ)は死んだフリしてます。


それにしても、原作でドッピオだったとはいえ、ディアボロを追い詰めたリゾットはメチャクチャ頑張ったと思う。
あと、骨ごと切れるハサミって……メタリカで生成した刃物の切れ味どーなってるの?


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vs リゾット(&邪視)

ボスには、死んだフリしてもらいました。


なので、リゾット(と邪視)は殺したと思ってブチャラティ達に挑みます。



オリジナル展開です。



流血注意!!


「……静かすぎる。」

「レーダーの範囲には、俺らの反応以外ないよ~?」

「なら、余計におかしいな。ここは、観光地だ。それに面積も狭い。シーズンじゃ無くとも少なからず人がいるはずだ。」

「……ねえ。アレ…。」

 ブチャラティ達がサルディニア島の異様な空気を感じて不審に思っていたとき、トリッシュがある場所を指差した。

 建物の塀の影に靴が見える。いや、靴を履いた人の足だ。うつ伏せで倒れているのだろう。

「ナランチャ。」

「……呼吸はない。」

 つまり死んでいるいうことだ。

「どうする? ピストルズを行かせるか?」

「いや……下手に近づけない。銃声を耳にしたこの静けさの元凶が反応してこちらに来る可能性もある。」

「ノトーリアス・Bigのように、速さで反応するスタンド…という可能性もあるからな。」

「それだったら。今飛ばしてるエアロスミスに気づくはずだよ?」

「…それもそうか。だが、用心しろ。俺達が墜落死したと組織が思い込んでくれているかも知れないが、そうでないと考えている者がココに来ると先読みして来ている可能性がある。用心に超したことは無い。」

「考えすぎじゃねぇの?」

 

 

 

 ロオオオオォォオオオ

 

 

 

「今なんか言ったか?」

「いや?」

 

 

 

 ロオオオオォォオオオド

 

 

 

「……気のせいじゃない。」

「ナランチャ! おめぇ、ちゃんと…。」

「見てるよ! け、けど、反応が無いんだよ!」

「ノトーリアス・Bigっと同じ系統か!?」

 

 

 

「俺の心臓も肺も…、すでに止まっているか。」

 

 

 

 どこか諦めているような男の声が聞こえた。

「どこだ!?」

 

 

 

『ダガ、コウツゴウ。』

 

 

 

 10メートルほど先であろうか、黒い男がいつの間にかいた。

 エアロスミスの二酸化炭素を探知するレーダーに反応せず、そして音もなくそこにいた男は…、閉じられた右目から血を流していた。

「いつの間に!?」

「そっちの女がトリッシュか。」

「!」

「だが…もう用済みだ。あとは…、ブチャラティ…、お前達を殺し、仲間の仇を討つだけだ。」

「なんだと? それはどういう…。」

「言葉の通りだ。……敵…コロ…ス。』

「そうか…、お前は…奴らの…。」

「そうだ。俺達は、暗殺チーム。…組織において矛盾した存在だ。ホルマジオ、イルーゾォ、プロシュート、ペッシ、メローネ、ギアッチョ……。お前達に敗れ去ったのは、俺の仲間だ。」

「てめーらが襲ってきたから応戦しただけだぜ!」

「知っているさ。俺達は覚悟の上だったのだから。組織に逆らうことも、ボスに繋がる最大のカードだったトリッシュを奪おうとしたのも。すべては、俺達を蔑ろにしてきた組織のボスの首を取り、栄光を掴むためだった。」

「……で? のこのこ俺達の前に出てきたのは、正々堂々ぶつかろうって腹か? 暗殺チームってわりにゃ、変な奴だな。」

「コレは…、「俺」の意思じゃない。『ワタシ』…だ。』

「ワタシ? ん? お前…。」

 

 

『ミナミ…、ドコ?』

 

 

「その声は…!」

「そちらにコレの本体がいるのなら、知っていて当たり前か。だがしかし、正面から俺の姿を見たところで、お前達の最後は決まっている。近づくことさえ、叶ワナイ。』

「動くんじゃねー!!」

「ナランチャ!」

 スッと横へ歩き出そうとしたリゾットに、ナランチャが上空に飛ばしていたエロスミスを戻して上からリゾットに向けて弾丸を撃ち放った。

 すると、あっという間にリゾットの姿が消えて、弾丸が地面を抉った。

「消えた!」

 

 

「ここにいない…、離脱したお前達の仲間もあとで殺し、お前達の後を追わせてやる。イルーゾォを殺したのはソイツだろう?」

 

 

「ちくしょう! レーダーに映らねぇ! やっぱアイツ呼吸してねーぞ!」

 どこか分からないが、リゾットがそう言う。ブチャラティ達は、エアロスミスのレーダーに映らないリゾットの不気味さと奇妙さに汗をかいた。

 次の瞬間。

「ウグッ!?」

 アバッキオが喉と腹を押さえ、大量のカミソリの刃を嘔吐物と血と共に吐き出した。

「アバッキオ!」

「なんでカミソリが!? これが野郎のスタンド…、う…ぎっ? うぇ、ぁあが!?」

「ミスタ!」

 銃を手に周り見回していたミスタの右頬と口から、大量の縫い針が突き出てきて傷を負わせた。

「どこだ!? どこだ! ちくしょーーー! ブ、ゲッ!? いぃぃぃでぇぇぇえええ!」

 ナランチャの顔や頭の表面からカミソリの刃が飛び出す。

 ゴゲェェっと、アバッキオはカミソリの刃を吐き出し続けていた。そして、ミスタやナランチャの顔からボトボトと血と共に針やカミソリの刃が落ちていく。

「スパイス・ガール!」

 トリッシュが針を柔らかくし、ミスタとナランチャの顔の針やカミソリをすべて吐き出させた。

「やはり、ボスの娘か…。お前もスタンド使いだったとはな。だが、そんなことはもうどうでもいい。ブチャラティ…、部下達を支え、自らも大きな戦力であり、また組織と戦ううえで希望の象徴になっているお前が死ねば…、部下達はどれほどに絶望するだろうな?」

「スティッキー・フィンガーズ!!」

「だが、遅い。」

 不意に姿を現わしたリゾットに向け、ジッパーで拳の距離を稼いだブチャラティがスティッキー・フィンガーズの拳を向ける。

「ブチャラティ!」

 カメからジョルノが飛び出し、ブチャラティの喉にゴールド・エクスペリエンスの指を突き刺した。そして皮膚の下に現れていたハサミを引きずり出す。

「……お前が例の新入りか。しかし、ブチャラティ…お前は…。」

「すまない…、ジョルノ…。」

「いいえ…。この島の異変は…、どうやらアイツに潜んでいるモノのせいでしょう。」

「…そうだな。この島にいる一般観光客や島の住民を殺したのは、俺じゃない。“コイツ”だ。」

 閉じられていたリゾットの右目のまぶたがゆっくりと開かれる。

 そこにある鮮血色の目が、ジョルノ達を見た。

「邪視!?」

 リゾットの内側に潜んでいるモノの正体に瞬時に気づいた時には、ジョルノが金縛りに合っていた。

「うっ…!」

「気合いで破れ! 見つめ続けるな!」

「お前の能力は知っている。その両手が邪魔だ。」

 ジョルノが気合いで金縛りを破った瞬間、右手の皮膚の下に発生したハサミが皮膚の下からジョルノの左手を切り落とした。切り落とされた左手にナイフが突き刺さり地面に縫い付ける。

「次は、右手だ。」

「スタンド能力を使ってるってのに…、スタンドが見えないってどういうことだよ!?」

「お前達がそれを知ることはない。なぜなら、ここでミナミ以外は死ぬ。」

「…ミナミを?」

「ソレは、コレの意思だ。利害の一致という奴で借りがある。力を借りて、貸す代わりに本体だけは生かす…。どうやらお前達は、コレにとって本体を脅かす敵としてしか見られていないようだな。」

「なんだと?」

「その理由は、お前達が一番よく知っているんじゃないのか?」

「それは…。」

「……お前達は俺の射程距離内にいる…。近距離が多いようだし、遠距離型もいるが…、今の俺に近づいたとて、触れることすら叶わない。」

「臨死体験か。」

「…死の衝撃に任せて死んだ方がマシだと思うか? このまま俺になぶり殺しにされるよりは。なら叶えてやっても構わないぞ?」

「ぜひ、そうして欲しいものだな。そうすりゃ、てめぇをぶん殴れるからよぉ!」

「フッ…。」

 口の中に残っている嘔吐物と血をペッと吐き出し、そう叫んだアバッキオ。リゾットが、不敵に微笑み、ブチャラティ達に向けて歩を進めようとした。

 近づくということは、自信だ。射程距離とか関係なく、今なら確実にいかなる距離でも殺せるという自信だ。

 この短期間で死線を潜ってきたブチャラティ達は、それを感じる。

 呼吸が無いと言うことは、すでに心臓だって止まっているはず。つまり急所を破壊したとて、リゾットが死ぬとは限らないのだ。だが、そもそも触ることすらできない。あの邪視がリゾットの味方をしている以上……。

 そして肝心のミナミであるが、カメの中で眠っていた。飛行機の中で意識を失ってから、ずっと眠っているのだ。あまりに深い眠りで、まったく起きる気配が無い。明らかにおかしいことは確かだが確かめる手段が無かった。回復役としてジョルノがいてもジョルノは医者じゃない。それにもしスタンドの影響なら医者に診せたとて無意味だ。

「楽しみだぞ。お前達が死んだ後、どんな顔になって死ぬかが楽しみだ。」

 リゾットは、どこか楽しそうに言う。

 万事休すか! っと思われた、その時。

 

 フワフワと、シャボン玉がどこからか飛んできた。

 シャボン玉に気がついたリゾットが、邪魔そうに手で払った瞬間。ビリィ!っと凄まじい衝撃が身体を襲い、吹っ飛んだ。

「なっ…!?」

 シャボン玉からは想像も出来ない凄まじい攻撃力を受け、吹っ飛んだリゾットは勢いで転がりながら体勢を整え顔を上げた。

 

 

 金髪が潮風に揺れる。

 フワフワと彼の周りにシャボン玉が舞っていた。

 

「シーザー!?」

 

「やっと追いついたぜ。」

 シーザー・A・ツェペリは、ギロリっと射殺すような目でジョルノ達を見て低くした声で言ったのだった。

 

 

 

 




しかし、ここまでブチャラティ達がリゾット(と邪視)に追い詰められる展開は、ちょっと無理があったかな……?

触ると死に誘われる、目が合うと死ぬ、中距離間なら血中の鉄分を奪われ傷つけられた上に最終的に死ぬ。
なにこのチート。


リゾットの心肺は寄生された段階で停止しています。つまり、状態としては死チャラティとほぼ同じ。

シーザーだけが駆けつけました、フーゴはいません。


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泡の輪っか、そして歌う青いバラ(?)

シーザー vs リゾット(&邪視)?


流血注意!!


あと、原作通り死んじゃう人がいます。
最後まで悩みましたが……、必ずしもすべての運命を覆せるわけじゃないということにしました。


 

 

 怖っ!!

 

 まずその殺気というか怒気の凄まじさに、感じた者はまずそう思う。

 ポンペイでの一件の時より、明らか怒ってる。

 そりゃ、あんな逃げかたされた上にそれから中々見つけられなかったことを考えたら、怒りも積もるというものだ。あと、シーザーと再会したあとに見られたミナミの不安定さも、彼と親しかったことが窺えるし、最初こそ善意でうっかり取ってしまった寿命をジョルノに返すためにブチャラティ達の所に来ただけだったのに、こんな状況になったのだ。完全に誘拐も同然だし、怒って当然だし……。

「てめぇら…、覚悟は出来てんだろうな?」

 バキボキと拳を鳴らすシーザー。

「あの…、今ちょっと立て込んでまして…、それが解決してからで良いですか?」

「ジョルノ!?」

「知ってるさ。見てたからな。」

 シーザーは、膝をついているリゾットを見た。

 リゾットは、立ち上がり、シーザーを見る。

「目を見るな!」

 ブチャラティが叫ぶ。

「ああん? 知ってるぜ、それぐらいよぉ。けどなぁ…、今の俺にゃ効かねぇよ、んなもん。」

「!?」

「ふぁっ!?」

「怒りが限界突破してるからか!?」

 ブチャラティ達…、否、ミナミを探すために積もらせてきた怒りが気合いとなって邪視をはね除けているらしい。

 なんて奴だ…。っというのがブチャラティ達の心の中で一致した言葉だった。

 頭の回転が良いブチャラティは、ふと考え至る。

 この状況を打破した後……、トリッシュは見逃してもらえるだろうが、自分達はどうなる?っと。するとジョルノと目が合った。どうやらジョルノも同じ事を考えていたらしく大汗かいていた。

「ジョルノ…。」

「……怪我を治してから…、素直に殴られましょう。」

 ナランチャ達に聞こえるようワザと大きめに言ったジョルノの言葉に、トリッシュを抜くナランチャ達は、ええっ!?という顔で青ざめていた。

 

「喰らえ、メタリカ!!」

「シャボンランチャー!!」

 

 見ると無数のナイフやメスなどの刃物と、シャボン玉がぶつかる瞬間だった。

 シャボン玉に当たると、バチンッと音を立ててすべての刃物が弾かれる。だが弾かれた刃物が、グルンッと方向転換してシーザーの方を向き、宙を浮く。

「そのシャボン玉がお前の能力か? だが、俺のメタリカには勝てんぞ。」

「こりゃーまた妙ちくりんな能力だな。お前の軽装に入る刃物の数じゃない。……その場で造ったか?」

「鉄分とは…、この地表に出ているもっとも多い物質だ。」

「なるほど。お前のスタンドは、その鉄分を操るスタンドか。」

「その通りだ。」

「鉄分は血液中にも流れてしな。だから身体の内側からカミソリやら針を出せたわけか。」

「……フッ。タネが分かったところで、手遅れだ。」

「?」

「鉄分が体外に出過ぎればどうなるか…、お前達は知っているか? ……血液が、おぞましい黄色になって死ぬ。」

 シーザーがハッとしてジョルノ達を見ると、さきほど大量のカミソリや針を吐き出したアバッキオ、ナランチャ、ミスタの様子が明らかにおかしくなっていた。足に力が入らないのか膝をついて、荒い呼吸をし震えている。

「組織を裏切ってからロクに喰ってないだろう? 血が赤いのは、鉄分の成分だ。鉄分とは、脳から足先指先まで酸素を行き渡らせる役割のある重要な栄養素。それを一気に失えば、いくら呼吸をしても酸素は取り込まれず、身体に行き渡らず、やがて身体は死人となる! シーザーとか言ったな? お前の相手をしながらでも、ブチャラティ達を殺すのは造作でも無いということだ。」

「ジョルノ! なんとかして!」

「そうしたいのは山々ですが…、特定の物質だけを減らされるのは、僕の生体パーツを作る能力では…。血液をすべて交換すればなんとかなるかもしれません…、でも…。」

「その前の、お前の残る右手を切り落としてやろう。」

 ジョルノは、まだ体内でひとつのハサミを生成されただけだ。だから鉄分はまだ十分ある。だが大量の鉄分を失った仲間を助けるにはリゾットとの距離が近すぎるのだ。しかもジョルノは、現在左手を切断されている。

 すると。

「…やれるもんならやってみな。」

 シーザーが真顔でそう言ったため、リゾットもブチャラティ達も目を見開いた。

「強がりか? やらないとでも思ったか?」

「そんなことはないぜ。お前はやるといったらマジでやる奴だ。」

「っ…。」

 なんだ? このシーザーという男の妙な自信のようなものはっと、リゾットは思った。

 シャボン玉の力は確かに相当なものだ。だが今の状況を打開できるとは思えない。何かあるのか?

 そういえば、この男…スタンドを出していないのも気になる。もしやメタリカと同じ体内に潜むタイプかとも思えた。

「おらぁ! 出来ねぇのか!? さっきのハッタリか!?」

「くっ…! 死ね!!」

 

 

 キュ~

 

 

「ハッ? グハッ!?」

 ジョルノの右手の皮膚の下にハサミを生成した直後、白い塊が飛んできて、トラックにでも轢かれたようにリゾットの身体を吹っ飛ばした。

「い、イルカ!? 白イルカ!?」

「俺のスタンド、『バブルリング』だ。」

 トラックにでも轢かれたように吹っ飛んだリゾットだったが、ゾンビみたいにユラリと起き上がる。

 太った白イルカに鎖や縄のようなモノが絡みついた姿のバブルリングというスタンドは、シーザーの傍に来て、キュ~だの、キュイ~だのと、高い鳴き声を出しながらすり寄った。

「……無意味だ。お前が今更スタンドを見せたところで、なあ!!」

 凄まじい数の刃物が…。

 しかし刃物の形はデタラメだった。

「!?」

「……当たれば痛いかもしれないが、斬れ味がなきゃ、刃物としての殺傷力はない。…捻らせてもらったぜ。お前の思考の一部を。」

「ねじる? しこう…?」

「俺のスタンド、バブルリングの能力だ。あらゆる物、空間、思考さえも捻って形を変えさせる。まあ、空間については、一時的なものだが、投げてきた物をあらぬ方向に飛ばさせるって芸当はできるさ。現に、お前のメタリカって奴で造ったはずの刃物がおかしな形になってるだろ? 正常に造ったつもりがな。」

「そんな馬鹿な…。」

「現実だぜ。バブルリング!」

 バブルリングが口から輪っか型の泡を吐き出した。

 その輪っか型の泡を指で器用に操り、小さな泡に分けて自身の周りに浮かせた。

「シャボンランチャー!!」

 そしてそれをリゾットに向けて飛ばす。

 リゾットは、正常に生成できない刃物を造り、シャボン玉にぶつけて破壊した。

 だがうちのひとつのシャボン玉が、左腕に当たる。その瞬間、固結び型されたヒモみたいに腕が捻れる。するとブチュ、メキメキとリゾットの左腕が内側から裂け、そこから赤い根っこが飛び出してきた。しかしリゾットは苦痛の苦の字も感じていないようだった。

「……痛覚さえ失ったか。そんな有様になってまで…。」

「例え…この身が朽ちようとも、せめて道連れを作るまでだ!」

 リゾットはそう叫び、身体のあちこちから赤い根っこと、血を吹き出しながら右手をジョルノ達の方へ向けた。

 だがその右手は、肘辺りから突如溶けるように崩れて地面に落ちた。

 驚愕したリゾットだったが……。

「ああ……、そうか……、食い尽くしたか…、俺を……。」

「お前…!」

 リゾットが何かを悟ったような顔になり、両膝をついて項垂れた。

「せめて…せめて地獄にボスを送りつけたのが、仲間への弔いになったか……。俺達は……栄光を掴みたかった……。……? なに?」

 両膝をついて項垂れていたリゾットがある方向を見た。

「馬鹿な……、殺したはずなのに………、そんな…。ツメが甘かった……。すまない……すまない、みんな…。」

「おい、何を言って…?」

「……ボスは、生きている。暗殺……しそこ……ね、た………。」

「ボスが生きている!? この島にいるのか!」

 驚愕するブチャラティ達だったが、リゾットはドシャッと地面にうつ伏せで倒れ、そのまま服だけを残して肉体が血と同じ色に溶けて、赤い根っこと共に消えた。

 静まりかえったその場に、空しく潮風だけが吹く。

 ジョルノは急いで左手を治し、血液を作ったりなどして仲間の治療をした。

「ナランチャ! 呼吸を確かめろ!」

「もうやってる! け、けど、ちっちゃい呼吸しか無いよ! トカゲとか…カエルとか…鳥とか、なんか小動物みたいな?」

「不自然な動きをしている呼吸を辿れ! アバッキオは、ムーディー・ブルースで15年前まで遡れ!」

「了解。」

 そうして島に来ているはずのボスを見つけることと、ボスの過去を探る組に別れた

 アバッキオは、特にボスの過去を探ることができることからジョルノとミスタが護衛にあたった。シーザーはカメの中に案内され、眠っているミナミに会わせている。なお理由は、ジョルノ達を見てるとすぐ殴りたくなるから…だった。

 用事が済んでからシバかれる予定ではある。

 

 しかし。

 

 この数分後に、アバッキオが死んだ。

 何かパワー型スタンドと思われる攻撃で腹を貫かれて。彼の死に様は、実に安らかだった。不自然であるほど。

 だが、アバッキオのムーディー・ブルースの再生(リプレイ)はすでに終わっていたことを示していた。それは彼が死んでもなお握りしめていた建造物の欠片。

 それがアバッキオがムーディー・ブルースにより再生をさせていた場所の裏側の物であることが分かり、そして……そこに男の顔と手のひらの後がハッキリと残っていたのだ。

 それが15年前のボスの顔と指紋であり、アバッキオが命をかけて残したボスに繋がる最大の証拠であった。

 それは、かつて警官だったアバッキオが死んだ同僚から受けた言葉。『真実に向かおうとする意志』。それがなせたことなのかもしれない。

 ……ところが、アバッキオの命と引き換えに得た情報は、空しく空振りする。

 不正アクセスして過去の犯罪者履歴、死亡者などの情報からはまったく該当者がいないのだ。ボスが徹底的にそれらの情報を消したとしか思えないほどあまりにもかすりもしない。

 やはりボスを討ち取れないとか…っという凄まじい絶望の空気がカメの中に充満しかけた時だった。

 

 

 

『コロッセオ。』

 

『コロッセオ。』

 

 

 

「この声は…。」

「見て、パソコンから!」

「ブルー・ブルー・ローズだと!?」

 カメの中で開いていたノートパソコンにブルー・ブルー・ローズが生え、そこから声が聞こえてきていた。

 

 

 

『オイデヨ。ミナミ。待ッテルヨ。』

 

『コロッセオ。』

 

『イッパイ咲カセテ、待ッテルヨ。』

 

『アゲルよ。アゲル。“矢”をアゲル。』

 

『コレは、君のモノダヨ。』

 

 

 

「なにを…言ってるんだ?」

「ミナミ…、まだ寝てる…。」

 ミナミの方を見ても、まだ寝ていた。

 

 

 

『コロッセオに、……ミンナ、オイデヨ。』

 

『ディアボロにも、聞カセテルヨ。』

 

『オイデヨ。ミンナ。』

 

『来ナイノナラ……、ミンナ、死ンジャウヨ?』

 

『“矢”の可能性の向コウ側…。』

 

『オマエも死ンジャウヨ? ディアボロ…。』

 

 

 

「ディアボロ?」

「さっきからおかしい…。ブルー・ブルー・ローズがここまでハッキリと物を言うなんてな。」

 

「ディアボロは……、ボスのことだよ。」

 

「ミナミ!」

 ソファーで寝ていたミナミがやっと目覚めた。

 ゴシゴシと右目を擦りながら、眠りすぎのせいで痛い頭を押さえる。

「なぜそんなことが分かる?」

「分からない……、頭の中に…、今、ブルー・ブルー・ローズが教えてくれた。この話…、ディアボロだけじゃなく、ポルナレフさん達にも…。」

「なんだと!?」

「分からないけど…、パソコンのネットワークに根を張ってそこから配信しているみたい。ディアボロは、矢の可能性も知らかったみたいだけど、これを聞いたし、あとアバッキオが残したデスマスクのことも…。だから、とんでもない災いを解き放とうとしてる。そうでもしなかったら、ブチャラティ達を止められないから。だから……絶対に使いたくなかった手を使おうとしてる…。無関係な人間を所構わず巻き込んで、組織に大打撃を与える可能性もあるのに…。」

「“矢”とは、ポルポが使っていた、あのスタンドを目覚めさせる、“矢”のことか?」

「たぶん……。なんで私に分かるのか分からないけど、その先があったんだ。ただスタンドを目覚めさせるだけじゃなく…、より高みへ……。それに選ばれれば、世界さえ……。うっ。」

「ミナミ、無理をするな。」

「シーザーさん…。」

「“矢”の可能性だの、んなこたぁ、お前には関係ないことだ。考えすぎるな。」

「いいえ…、先ほどのパソコンから聞こえた声を聞いてなかったのですか?」

「……聞いてたさ。けどな…。これ以上、ミナミを苦しめたくないんだよ。たかが望まない力を持っちまっただけの娘がこんなことに巻き込まれなきゃならない?」

「……声…、ブルー・ブルー・ローズは、ミナミにおいでと言っていました。コロッセオ…に。」

「みんな、おいで。ともな。その“みんな”というのが、俺達や、ボス……ディアボロのことだとしたら、集合させようとする意図が分からない。ミナミ。何か分からないか?」

「……ごめん。これ以上は……ただ、私達、そしてディアボロも、ポルナレフさん達もみんなを誘っているのは確か。でも、なんの目的があるのかは…。」

「……コロッセオか。ならサルディニア島から、そのままローマに上陸する必要があるな。」

「行くの?」

「行くしかない。……ボスが来る可能性に賭けるしかないだろう。」

 

 

 

『来ルヨ。来ルヨ。ディアボロは。』

 

『怖ガッテルヨ。見ツカルコトを。』

 

『でも、モウ、無理。』

 

『知ッチャッタ。知ッチャッタ。』

 

『“矢”を欲シガッテルヨ。』

 

『ディアボロに会イタカッタラ…、オイデヨ、コロッセオに。』

 

 

 

「……あなたは、なにを考えているの?」

 

 

 

『……来タラ…教エテアゲル。』

 

 

 

 そしてプツンッとパソコンの画面が消えた。

 

 

 

 コロッセオ。

 そこにイタリア全土を恐怖に陥れていた邪視を宿したブルー・ブルー・ローズの正体。

 そしてその目的が明かされるのだろうか?

 ジョルノ達は、僅かな希望なのか、巨大な絶望への始まりなのか分からない、パソコンから歌うように聞こえてきた声に従い、コロッセオを目指すことを決めたのだった。

 

 

 

 




リゾットに寄生したことで、急速進化した、邪視こと、ブルー・ブルー・ローズの分身(?)。

リゾットとアバッキオは、ここで死ぬことがすでに確定されていたため、どんな形であれ命を落とす運命にありました。青いバラの花を入れていたなら話は別でしたが……残念ながら……。


ここから、コロッセオに向けて物語が動き出す。
そして、あのゲスコンビが登場して大惨事が……。いや、もう邪視のせいで大惨事ではありますが。


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カビと、とろける地面

ゲスコンビこと、チョコラータとセッコ登場。



あと、シーザーが同行しているので、ちょっとカメの中での展開が違います。
戦闘などは、だいたい、原作通りの流れです。


 

 コロッセオ。

 ローマの皇帝達により、様々な改修や増築を行われながら、緊縮政策を取りながら、市民を懐柔するための娯楽施設の目玉として円形闘技場として作られた建造物。

 今や、ローマの観光地の目玉のひとつとなっている。

 ここで殺された猛獣は5000頭にも及び、そして数百人の剣闘士が死んでいった。

 

 今、このコロッセオに、剣闘士ではなく、スタンド使いが集結しようとしている。

 

 呼びかけたのは、ブルー・ブルー・ローズなるスタンド。

 

 敵味方問わず誘いをかけ、集めようとしている意図は分からない。

 

 だが、ボス……ディアボロが来ることは確定らしい。

 

 ディアボロが来るということ。もうたったひとつしか無いボスを倒す道。

 

 まるで蜘蛛の糸にでも縋る思いで、コロッセオがあるローマへやってきた。

 

 

 サルディニア島からボートに乗って海を渡ると、時間は夜となった。

 月が明るく照らす静かになったローマ。

 港から見える村の街灯がボートを港へ導く。

 港から村へ上がる階段の所に、二人の酔っぱらいがいた。

 完全に酔っていて正気じゃ無いらしく、トイレと間違えてポストに……とかしている。

 

 しかし、異変はすぐそこで起こっていた。

 

 まず酔っぱらいの一人が水飲み場に抱きついて離れないで、仲間らしきもうひとりが引き離そうと頑張る。

 やがて引き離すことに成功したが……、彼が水飲み場に絡めていた足と腕は水飲み場に残された。

 大きなカビのような物が下半身を覆い、腐らせ、上半身と分離させたのだ。

 それに気づいたもうひとりは、俺に近づくなと叫び階段を駆け下りようとして、失敗した。両足がカビに包まれて溶けたのだ。それも分からず必死に腕を振って走ろうとしているのが滑稽ではある。

 その異変には、ボートで今まさに上陸しようとしていたミスタとナランチャもすぐに気づいた。

 だがすでに謎のカビは、彼らをも襲っていた。それはナランチャが持っていたカメの中にまで及ぶ。

 宴会でもあったのか、夜目が慣れた目に、村の港のあちこちに一般人が倒れていた。カビに浸食されて。

 ナランチャが攻撃を恐れてボートに戻った瞬間、凄まじい勢いでカビが彼を浸食した。

 ジョルノがカメの中から叫ぶ。

 攻撃のスイッチがあるはずだと。

 港に上がっていたミスタが、攻撃のスイッチ?っと、恐る恐る手を下へ向けた。するとカビが下からきた。

 

 カビは、下へ行くと来る。逆に上に行くと消える。

 

 その法則に気づいた。

 だがカビの浸食は早い。港より下のボートに降りてしまったナランチャの手と足を崩し、カメを投げられなくされた。

 ミスタが機転を利かせ、ボートのエンジンを撃ち、破壊した反動でナランチャをカメごと陸地に放り上げさせたことで命は助かった。

 

 ある種のカビは、自分の生息域である低い位置に移動するため、他の生命体(例えば昆虫)の体内に入り込み、そして低い位置に移動した瞬間、増殖し、宿主を殺して養分にする。

 バッタカビや、冬虫夏草がその一例である。

 まさにその習性を持つ凶悪無比のカビ。それが今、ここにいる。

 

 その凶悪さは自然界ではあり得ない。スタンド攻撃であることは間違いなかった。

 

 

「……。」

 カメの中、ミナミは、身体にカビが付着したときもぼんやりとしていた。

「ミナミ?」

「……。」

 シーザーが声をかけるが、ぼんやりと宙を見上げているだけだった。

「しっかりしろ!」

「……あっ。」

 シーザーが左肩を掴んで軽く揺すってやっとミナミは、正気に戻った。

「お前…おかしいぞ?」

「…ん。分かってる…。分かってるけど…、なんだろう? 頭が…。」

「ジョルノ治療できそうか?」

「いいえ、この村では難しいです。生きたカビが傷口に…。」

 カメの中に押し込まれたナランチャの治療は今の状況では難しかった。ナランチャの代わりに外に出たブチャラティがミスタと共に、階段の上にある道路の車を使うべく階段に向かった。

 カメの中のソファーに横にされたナランチャは、ジーッと、ミナミとシーザーの様子を見ていた。

「…気になるの?」

「えっ、あ…別に。」

 そんなナランチャにトリッシュが聞いた。

「仲良さそうよね。もしかして恋人同士だったりして?」

「んな!?」

「ちょいまち、そこのバンビーナ。」

「なによ?」

「俺とミナミはまだ将来を約束はしてないぜ。」

「あら~? それじゃあ“する”予定はあるのかしら?」

「!」

「60年以上の片思い舐めんなよ? ガキんちょ。」

 シーザーは、唖然としているナランチャに、フッと笑って見せた。

「おい、お前! 今、60年つったか!? お前いくつだよ!?」

「秘密。」

「なんでそんな昔っからミナミのこと…。」

「色々とあんだよ。色々とな。」

「ぐわっ! なにこのひでぇ大人!? いや、ジジイか!?」

「暢気に色恋沙汰で盛り上がってる場合じゃないですよ。」

 ギャーギャー騒いでるナランチャ達に、ジョルノが冷静にツッコミを入れた。

 そうこうしている内にジョルノが呼ばれ、外へ出て行った。

 車を手に入れた一行だったが、敵は、カビのスタンド以外に、地中を移動するスタンドがいることが分かった。

 ジョルノは、ミスタの治療をし終え、ミスタが眠った後、運転をしているブチャラティに怪我の治療をしようと言った。だがブチャラティは気がついてない。不信に思いつつブチャラティの肩を掴むと……ブチャラティの身体の冷たさが手に伝わった。

 ジョルノは、ギョッとし恐る恐るブチャラティの首筋に指を当てた。そこに脈は無かった。

「…なんだ、ジョルノ? どうした? ……ああ…、怪我をしていたのか。もうあまり時間が無くなってきたな。だんだん、皮膚の感覚が…、いや、ヴェネツィアの時からか…。」

「ブチャラティ…、気づいてたんですか? あの時…から…。」

「不思議だな…。これは、『運命』と俺は受け取ったよ。『天』がちょっぴりだけ許してくれた偶然の運命だってな。ヴェネツイアで、お前が俺の負傷を治してくれたとき、お前がくれた『生命のエネルギー』は、もう少しだけ『動くこと』を許してくれたようだ。」

「なぜ黙っていたんですか…。あの時、ゴールド・エクスペリエンスは、あの時完全に傷を治したんだ…。その異常だって元に戻せる方法があるはず…。」

「ジョルノ…。それについてはゴールド・エクスペリエンスを使うお前自身がよく分かっているはずだ。終わってしまった命は戻らない。戻せない。俺の命は、あの時すでに終わっていたのだ。黙っててくれるか? みんなには……。」

「いいえ…、ありました…!」

「なにがだ?」

「今の状態を正常に戻す手段! そして終わったモノを戻す方法を、僕らは手にしている!」

「……ミナミか。」

「そうです! 彼女の力が本物ならば、死んだ者さえ蘇らせられる! 青いバラの花を使う手段というのも…。」

「………彼女をこれ以上苦しめられない。」

「でも!」

「お前の気持ちは分かっている。だが、こんなことに彼女を巻き込んだのは、そもそも俺に責任があるんだ。そして俺が今この状態なのも、俺の責任だ。その業を、仲間でもないミナミに押しつけるべきではない。」

「だけど……でも…、目の前に救済の可能性があるのに…!!」

「それに…、今の彼女では俺を元に戻すことはできないだろうな。」

「!」

「花京院が言っていたじゃないか。ブルー・ブルー・ローズの力がイタリア全土に広がり、暴走状態だと。そして今のミナミの力(スタンド)は、半分程度しかないとな。そんな状態で蘇生という大技ができるとは思えん。」

「……コロッセオ…。」

「ジョルノ?」

「パソコンの通信からブルー・ブルー・ローズは、僕らにコロッセオに来いと言ってきた。いるんじゃないですか? ……ミナミの力(スタンド)の半分が。もしそうなら、可能性はまだ残されている。」

「ジョルノ…、そこまで…。」

「エゴだって分かっています。でも正直な気持ちなんです。僕はあなたに死んでもらいたくない。生きてください…!」

「ジョルノ…。」

 泣きそうな顔で辛そうに言葉を吐き出すジョルノの様子に、ブチャラティは、しょうがないなぁ…っと、悲しげに微笑んだ。

 

 あとは下り坂にさしかかった時、突如車の前方の窓にカビだらけの死体が降ってきた。

 ドドドドっというような凄まじい音が聞こえてくる。

 横の窓から見上げると、ヘリコプターが飛んでいた。

 落とされた死体から感染したカビが下り坂によって広がろうとしたとき、ブチャラティは、ジョルノとミスタに自分に捕まれと叫び、車から飛び出しスティッキー・フィンガーズでガードレールを掴んだ。

 下り坂の先に、コロッセオが見えた。

 

 スタンドとは、本体の無意識などの無意識の才能。

 だが、このカビのスタンドは、罪悪感の欠片も無い。

 普通の人間ならあるはずの無意識のブレーキという、良心がない。

 カビのスタンドは、罪悪感というブレーキがないゆえに残酷さを楽しみ、それを生きがいにしているからこそ目覚めた能力。

 

「こんなことをするなんて…、こいつはブレーキが無い! コイツは悪の限度がない男だ!」

 カビはローマ中を侵食し、無差別に人を喰らい殺す。

 そこに良心というブレーキなぞない。

 死体から死体へ無制限に広がり続ける。

「ボスは承知の上で、解き放ったのか!? コイツは、ローマを潰しても止まらない! いずれイタリア全土…それ以上に…。しかもマズいぞ! 奴はヘリコプターで俺達より早くコロッセオに行く! コロッセオで待つブルー・ブルー・ローズに接触する気…、いやこの混乱に乗じてボスが先にブルー・ブルー・ローズに接触したら…!?」

 そしてブチャラティは、ミスタに指示を出す。

 必ずヘリコプターを墜落させろと。

「分かってるぜ! 行け、セックス・ピストルズ!」

 そして銃から発射された弾丸がヘリコプターのエンジン部分を狙ったが……。

 それはもうひとりの男により弾かれた。

 茶色の全身を覆うスーツのような奇妙な格好の男は、そのままヘリコプターから飛び降りるとまるでプールに飛び込むように綺麗な態勢で地面にトプンッと飛び込んで姿を消した。

 

 

 カビのスタンド、グリーンデイの使い手、チョコラータ。

 地面をまるで泥のように柔らかくし、潜航する能力を持つスタンド、オアシスの使い手、セッコ。

 

 下へ行けば広がるカビ。

 地面を柔らかくし、下へと沈めるオアシス。

 

 

 これ以上ないほどの組み合わせが、襲いかかる。

 

 

 

 




たぶん、ジョルノはブチャラティに生きていて欲しいって願うでしょうね。もし本当に救う方法が目の前に宙ぶらりんしていたら。

さて……、ここからどうするかな?
7ページ無駄無駄はさせたいし……。(書けないと思うけど)
でも、他の面子も集結する予定だから、みんなでチョコラータ達を追い詰めるか…。


しかし、もしかしたらフーゴがここで敵として登場する予定もあったらしい…というのを大百科とかで見たんですが…。
パープルヘイズは、そもそも麻薬の隠語で、裏切り者として登場する予定だったとか?
でも展開が暗くなるからという理由と、パープルヘイズが強力すぎたとかで途中退場……。
その代わりにできあがったのが、チョコラータだったわけなんだよね?

さて、ウィルスとカビじゃ……、どっちが厄介かな?
パープルヘイズのウィルスは、光に弱く、血清などがあれば浄化できるが、耐性ができるとより凶悪に。
グリーンデイのカビは、下へ行くと繁殖し、上へ行くと治るが、死体を媒介に広がる。


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オアシスは砂に埋もれ、カビは燃える

前回、あんな脅威度を出したのに、あっさり終了です。


ポルナレフ達も来てたので。


オリジナル展開です。


 

 地面に飛び込んだオアシスの使い手、セッコによりどんどん足場が溶けていく。

 ミスタとジョルノがヘリコプターを墜落させるか、本体であるチョコラータを叩く側に回り、ブチャラティが地中のセッコを相手にすることになった。

 

 ヘリコプターは、スピードはないものの、確実にコロッセオに向かっている。

 それを下から銃で撃ち抜けない距離まで逃げられたが、ジョルノが力を貸し、発射された銃弾を木に変えることでヘリコプターを拘束することに成功した。

 

 

「見ろ! アレを! 木が! 木がヘリコプターを捕まえてるぜ!」

「物質を生命に変えるというジョルノ・ジョバァーナの能力か!」

「ワオオオーン!」

 

 ブルー・ブルー・ローズの呼びかけによってローマに来たポルナレフ達は、ローマの街を走りながらそれを目撃した。

 カビの性質はローマに入った段階で一般人がやれているのを見て気づいた。なのでこれ以上被害が広まらぬよう本体を探していたのだ。

「これほどに悪質で邪悪なスタンドは、見たことがない! これはもはやDIO…もしくはそれ以上の残忍で邪悪な人格のなせる技だ!」

「ワンワンアオーン!」

「どうした、イギー!?」

「…どうやら敵は、もうひとりいるようだな。そっちに行きたいのか?」

「ワン!」

「下には行くなよ! カビにやられるからな!」

「ワン!」

 分かってるぜ!っと言わんばかりに鳴いたイギーは、別方向へ走り出した。

「アオオオーン!!」

「あっ? 犬?」

「あ、お前は!」

「ワオーーーン!」

 イギーがセッコに向けてザ・フールを出した。

「い、犬のスタンド使い!?」

 セッコが、地面を柔らかくした時の弾力の反動を利用して素早い拳を振るった。

 ザ・フールに命中した途端、その拳が入り込む。砂状のザ・フールの中に。

「うげげ!? す、砂!?」

「ワン!」

 次の瞬間に、ザ・フールの前足によるアッパーカットがセッコの顎に決まった。しかし片腕をザ・フールに固められていて吹っ飛べない。そのまま地べたに戻され、ドゴっボゴっ!と下からの攻撃を受け続けた。

「加勢…、感謝する!」

「ワン!」

 どうってことねーよ!っと言わんばかりにイギーが鳴いた。

「ご…ごの! どぢくしょーーがーーー!!」

「ワン!?」

 次の瞬間、殴られ放題だったセッコを中心に、周囲の地面が急速に柔らかくなり崩れ始めた。

「スタンドを解除しろ! 下に行ったらカビが!」

「うぅうう!!」

「ギャハハハ! このまま下に…。?」

 しかしイギーは落ちなかった。ギリギリ四本足で、砂で出来た柱に足を乗せている。その砂は、溶けて崩れた地面から出来ていた。

「ワオオオーーーーン!!」

「ゲゲ!? 溶かした地面が…、集まって固まる!? コイツ…小型犬のくせになんてスタンドパワー…!? ハッ!?」

 顔と手だけ出した状態で、ザ・フールの顔の形に固まった地面に囚われてしまったセッコの横顔に、ブチャラティの足が近づいた。

 セッコは、これから起こるであろうことを想像してしまい、大汗をかいた。

「ワン。」

「ああ、分かっているよ。」

「ひぃいいえええええええええええ!! 助けて、チョコラーターーーーーーー!! うぇ!?」

 悲鳴を上げるセッコに、黙れとばかりに、イギーが尻を向けて屁をこいた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ハッ!? せ、セッコ!? やられたのか!?」

 セッコの悲鳴を聞いたようなチョコラータ。

「くぅううううう! 私の可愛いセッコが…! 許さん! 許さんぞおおおおおお!! お前ら全員皆殺しだーーー!!」

 

 

「おい、アヴドゥル。この惨状を作った本体をヘリごと爆破ってのはどうだ?」

「うむ、手っ取り早いな。だが爆発では生き残る可能性がある。」

「なら、逃げられないよう徹底的に閉じ込めてから炙りましょう。」

「ガキのくせにえげつねーなぁ、お前。」

「えっ? これで終わり? あっけねーなー。ま、こんなもんか。残りの罰は、地獄で裁かれりゃいいか。」

 

 

「………………………………………………………………………………………………えっ?」

 そんな声がしたのでチョコラータが窓から見ると、ジョルノ達が知らない奴らとそんな話をしていた。

「カビで木を腐らされる前に、僕の生命を作り出す能力が早い!」

 建物の床に手を置いたジョルノが、さらに木を生やし、拘束しているヘリコプターをさらに雁字搦めにして扉も窓もすべて覆う。

「わああああああああああああ! 待って、待ってええええええ!!」

 チョコラータが割れた窓の隙間から腕を出して喚く。

 しかし熱と光を感じてそちらを見て激しく後悔した。

 アヴドゥルが今まさに大爆炎の塊を放とうと、マジシャンズ・レッドに炎を作らせていた。アヴドゥルの怒りを体現したような…、まさに太陽のような、ヘリコプターのへの字も残さんと言わんばかりの炎だった。

 医者目線で見ても分かる。アレ喰らったら灰も残らんヤツだと…。

「地獄まで燃えるがいい。」

「ヤダッバァアアアああああああああああああああああああ!!」

 そして爆炎がヘリコプターを包み込んだ。

 

 そうしてローマを襲っていたカビは、消えた。

 

 

「さて、あとは、コロッセオに向かうだけだな。」

「おい…、いいのか? こんなあっさりで?」

 

 

 

 

 




しかし、書いてなんですが、ザ・フールでオアシスが溶かした地面を操作できるのか?っという今更な疑問が……。
まあ、死線を潜ってイギーが成長したってことにしましょうか…。

もし無理だというご意見がありましたら、書き直しします。
活動報告、及びメッセージでお願いします。感想欄に書くと消される可能性があるので。


よくよく書いてみたら、アヴドゥルの炎を操る能力って、実は純粋なスタンドとしては、トップクラスに強いんじゃなかろうかと思った。燃料を積んでいる乗り物に炎って、まさに独断場だろうし。


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歪な愛

こんだけ盛り上げといて……、クライマックスの盛り上げが弱いかも……。


うぅ…、文才がない己が嘆かわしい!!



後書きに、後付け設定にもほどがある、ミナミと3人目との関係について書いてます。


※2020/03/13
誤字報告ありがとうございます。


 カビの脅威が消えた。

 

 あとは…、ブルー・ブルー・ローズが呼び出し場所にしたコロッセオに向かうだけ。

 

「罠だと思うか?」

「例え虎穴だろうと…、行くしかないんだ。」

「ですけど、だからって全員出て行くことは…。」

「いや、これでいいんだ。」

 ジョルノ達は、ポルナレフ達と共にコロッセオに向かっていた。残るメンバーをカメから出した状態で。

「なぜ?」

「私の占い師としての勘だ。おそらく、全員が見える状態でいなければならない。そうしなければ、向こうは場所に来たところで姿を見せないだろう。」

「……。」

「ミナミ? ミナミ。」

「ん…。」

「もう、しっかりして、こけちゃうわよ。」

「……眠い。」

「お前、寝過ぎなんだよ。この旅でどんだけ寝てたと思ってんだ?」

「そんなに寝てたのか?」

「ああ、かなり寝てたな。」

「消耗した体力や傷を癒すには眠った状態で力を温存するという意味でも眠ることは大切だが……、ところで君達、ここ最近の間にブルー・ブルー・ローズを見ているかね?」

「邪視なら見た。あの赤い根っこのことだろ?」

「そっちじゃない。ミナミの身の回りに現れる方だ。」

「それは…見ていないな。サルディニア島に向かう途中の飛行機で見て以来だ。」

「………眠った状態というのは、すなわち精神が無防備な状態になることだ。……ミナミ、お前は、気がつかぬうちに、残りの力と意識を喰われているんじゃないのか?」

「……分からない。」

「おい。それマズいんじゃねぇのか?」

「どういうことだ?」

 それからポルナレフ達は、承太郎から聞いていた、ミナミに身の危険について話した。

「……3人目?」

「君達は、本来なら3人で生まれるかもしれなかったらしい。」

「…そういえば……、お母さん…、お仏壇に……、造花のヒマワリの花をずっと飾ってたっけ…。」

「ヒマワリの花?」

「理由は分からないけど……、お仏壇に飾ってる花とは別に…小さな花瓶に…、造花だけど…飾ってた…。」

「理由は、聞いてないのか。」

「……聞いてない。」

「かー! 肝心なところだろ!」

「なあ…、このままだとミナミどうなる?」

 ナランチャが汗って聞いた。

 アヴドゥルは、首を横に振った。

「……予想が正しければ、食い殺されるだろう。3人目に。」

「そんな!」

 

 

 

『違ウヨ。』

 

 

 

「…聞こえたか?」

「ああ。」

「おい、3人目! いや、ブルー・ブルー・ローズか!? どっちでもいい、来てやったぜ! どこにいる!?」

 コロッセオの中央に繋がる通路を抜けポルナレフが中央へ出る。

「待て、ポルナレフ!」

「な、なんだこりゃぁ!」

「どうした!?」

「み、見ろ! コロッセオの中央が…、花畑だ!! 青バラだけじゃねぇ、ソメイヨシノの花や、あの白い花まで!」

 

 

『見テ見テ。綺麗デショ?』

 

『イッパイ集メタンダヨ?』

 

 

「あ、ああ……、まさか、そんな……。」

「しっかりしろ、ミナミ!」

 横からシーザーとナランチャがミナミを支えた。

「どれだけ…奪ったの? どれだけ殺したの? ねえ……。」

 

 

『ドウシタノ?』

 

『綺麗ナ花畑デショ?』

 

『ミナミ。オ花、好キデショ?』

 

 

「っざけんじゃ、ねぇーーーーよ!! てめぇ、その花をどこから奪ってきたか分かってるのか!?」

 

 

『ナンデ?』

 

『ナンデ?』

 

『泣イテルノ?』

 

『ネエ……、…笑ッテ…?』

 

 

「……笑えるか!」

「どこにいやがる!! 隠れてないで出てきやがれ!!」

 

 

『ドウシテ? ドウシテ?』

 

『ソッカ……、ワカッタヨ…。』

 

 

「?」

 

 

『安心シテ…。』

 

 

 するとモゴリと、花畑が蠢いた。

 そして何かが起き上がる。

 巨大な……、ソレが。

 ソレに邪視があり、ミナミを見る。ミナミは、泣き顔で思わず見上げた。

「目を見るな!!」

「ぁ……。」

 

 

 

 

『『ワタシ』が、守ッテ、アゲルカラ。』

 

 

 

 

 次の瞬間、ミナミの周りからブルー・ブルー・ローズが生え、横にいたシーザーとナランチャを吹っ飛ばした。

「やべぇ!! 逃げろ!」

「ミナミが!」

 支えを失い倒れたミナミをブルー・ブルー・ローズが包み込む。その塊となったミナミを、ソレが手を伸ばして掴んだ。

 そしてそのまま自分の口の辺りへ運び、飲み込む。

 赤い根っこの塊だったソレが、みるみるうちに形を変えていく。

 巨大な髑髏。赤い根っこが絡まった異形。

 

 

『集マッテモラッテ、アリガトウ。』

 

 

 巨大な髑髏…、ブルー・ブルー・ローズがまるで歓迎するように両手を広げる。

 

 

『アノネ。『ワタシ』は、確カニ3人目ダッタカモ。デモネ。本当は、ミナミの方ガ弱カッタ。』

 

 

 ブルー・ブルー・ローズは、語り出す。

 

 

 

 確かに自分自身は、かつて腹の中にいた3人目であったが、本当は、ミナミの方が二人よりもずっと弱かったのだと。

 まともに生きられないほど、魂が弱く、すぐに死んでしまいそうだったのだと。

 けれど、秘められた力があった。3人とも。

 ミナミが、“生《せい》”を司り、自分が“死”を司っていた。

 まるで対局のような関係だったが、それが功を奏した。

 秘められた力が、対局の力が引っ張り合い、二人を一人にしたのだと。

 結果、自分が消えて、ミナミが産まれた。

 3人いたことを知っている母だけが消えた自分のことで心を痛めていたけれど。

 

 けれど、そのことを怨んではいないと語る。

 

 ただ…、ミナミに幸せでいて欲しかったのに。

 

 なのに、ミナミは苦しんでいる。

 

 悪いのは、誰? なにが悪いの?

 

 

『アア……、悪イノは……、コノ世界ナンダッテ…。』

 

『悪イノは…、ミナミの周リニイル、人間達……。』

 

『集マッテモラッタノは、確実に死ンデモラウタメ。』

 

『ミンナ、ミンナ…。死ンジャエ。』

 

『ソウスレバ…。ミナミを守レルカラ。』

 

 

 

 

 

「い…歪だ…! こんな幼く、歪に成長した魂が!」

「コイツは…。」

「おい! そんなことして、ミナミが笑うと思ってんのかよ!! それでもう泣かないって、本気で思ってんのか!?」

「無駄だ! コイツは本気で…!! そう信じているんだ!!」

「承太郎…、3人目の目的が分かったぞ…。これは、一方的な“加護の愛”だ。歪に成長した魂が、精神が、最悪な形で本体を守るために導き出した災厄だ!!」

「ああ! 空が!!」

 トリッシュが空を指差す。

 夜が明け始めた空に、巨大な邪視のようなモノが、まだまぶたを閉じた状態でそこにあった。

 

 

 

『永遠の……安息を…アゲル。』

 

 

 

 

 空の邪視が、少しずつ目を開けようとしていた。

 

 




書いてると、最初のプロットからどんどん離れていくのは、私の癖……。

3人目は、すでにブルー・ブルー・ローズの意識と一体化完了。
ミナミを飲み込んだのは、残りの力を手に入れるのと、守るためです。

話が通じない相手ほど、厄介な怪物もいないかなって…。


ブルー・ブルー・ローズについての後付け設定は。

ミナミ→『生《せい》』
3人目→『死』

それぞれ二人が対局の力を持った一卵性で、ミナミの方が実は魂が弱くすぐに死んでしまいそうだった。
しかし潜在能力が引かれ合い、二人は融合。結果、一方が消えることに。
そして、対局の力がひとつになったのが、ブルー・ブルー・ローズとなる。
3人目の意識は成長せず潜在状態でいたが、近年ミナミがスタンドに気づいたことでブルー・ブルー・ローズが防衛本能によって意識を出し、それに引きずられて覚醒。

本来なら、ミナミは生きててもスタンドを1回使ったら死ぬほど魂と精神が弱かった。
青いバラの花が1回きりの生を与えるのは、ここから来ている。

後天的に邪視を宿したのは、ミナミを害するモノを憎む3人目の意識から生まれたモノ。

結果的に双子で産まれたものの、ミナミ(と3人目)と仗助は、顔立ちこそ似てても、実は二卵性関係。(一卵性、二人と、ひとりで計3人)


すっげー、後付け設定…。泣けてきた…。


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世界か、ひとりぼっちか

ここからは、もう完全にオリジナル展開なので、少しずつ進みます。

すみません…。私の執筆速度によります。


 

 パッショーネのボスこと、ディアボロは、コロッセオの中央に出る通路の所の柱で様子を見ていた。

「まさか…、これほどとは…。」

 想像を超えるスタンド…というかもはや怪獣レベルのブルー・ブルー・ローズの様に、ただただ震撼していた。

「あの空の目が開いたらどうなる? …まさか世界もろとも死ぬというのか? どうしたらいい? どうすればあのブルー・ブルー・ローズとかいうスタンドを殺せる!?」

 遠目に見ても、あの巨大なスタンドであるブルー・ブルー・ローズは、どう考えても倒せるビジョンが浮かばないし、キング・クリムゾンの能力に耐性があるらしいため時間を飛ばしても無意味ときたものだ。しかも触るときっと死の体験をさせられて死に誘われるだろう。

「どうする…、どうすれば…!」

 ディアボロは柱を背に頭を抱えた。

 

「あの目が開いたら…、終わっちまうような気がするぜ! 世界が!」

 そう皆が予感した。

 ゆっくりと本当にゆっくりと開こうとしている目の下の眼は、間違いなく邪視だ。

 空に生じたその目を見ずにいれば生きられるならまだマシかも知れないが、開いた瞬間にとてつもない死が無差別に、すべての生命を死に至らせるのだとしたら?

 そもそもあの目を潰せるのか?

 今ここにいるスタンド使いでそれだけの射程距離がある者は…。

「!」

 空の邪視に気を取られていたが、ジョルノがふと気づいた。

 巨大な髑髏の方がジッとしていることに。

「もしかして…、空の目を開くことに力を集中させている?」

 それを聞いて他の者達がハッとして髑髏の方を見た。

 言われて見れば確かにまったく動いていない。背中を曲げてボーッとしている。

「スタンドを倒す方法は……。」

「おい。」

「…なんです?」

「…させねーぞ?」

「分かっているのですか? この状況を。」

 シーザーに掴まれた肩を見ながらジョルノが言う。

「知ってるさ…。けどな…そう割り切れるような感情を持っちゃいなくってな。」

「世界を引き換えにしたとして…、彼女が…ミナミがたった一人残される方が幸せだと?」

 ジョルノがそう言っていると、シーザーが噛んだ唇から血が垂れた。

 見れば、ポルナレフ達も状況を理解しているものの、踏み切れず、感情がせめぎ合っている様子だった。

 本体であるミナミを殺せば世界は救われる。ミナミを優先すれば、世界は終わる。

「本当に…方法はねーのかよ!?」

 ナランチャが叫んだ。

「ミナミも世界も助ける方法って、本当にマジでないわけ!? どっちも取れねーのかよ!」

「ナランチャ…。」

 

「いや、ある…。」

 

 ポルナレフがボソッと言った。

「矢だ。」

 そして髑髏の方を見た。

「そもそも、3人目は肉体が無く、ブルー・ブルー・ローズもスタンド。そんな状態で矢の力を得ることはできない!」

「だが、この状況は…。」

「意志が足りないんだ! 高みへ昇ろうとする意志が! 自らの意志で、矢で自らを貫かなければ、矢は、その真の力を与えない! スタンドの本体があくまでもミナミにあるのなら、ミナミ自身が望んで矢を使わなければならないんだ!」

「…ミナミの性格では、それを望まないだろう。だからこんな回りくどい方法を取ったうえで、イタリアという国を使って自らを無理矢理成長させたのか。矢を真に手中にした場合に得られる力に近い力を手に入れるために。」

「飛行機の荷から矢を奪った時点で、それを理解したんだろうぜ。だが、ミナミが望まないから。矢さえ奪い取れれば止めることができるはずだぜ!!」

「だ、だけどよぉ! どこにあるんだ!? このデカブツの中にあるってのか!?」

「…恐らくな。」

 場が、シーンとなる。

「き…傷つけてだいじょうぶなのか?」

 ナランチャが恐る恐る聞いた。

「そこは大丈夫なはずだ。ブルー・ブルー・ローズは、本体にダメージが行かない。実際、10年以上前にコイツがエジプトで出てきたが、手を破壊されてもダメージは無かった。」

「しかも、脆い。」

「まだ問題があります。触っても大丈夫なんですか? 触った瞬間に死に誘われる可能性は?」

「……死ぬ覚悟があるヤツじゃなきゃ無理だろうぜ。だからコイツ…、それができないって踏んでジッとしてられんだろう。」

「なるほど。」

「俺が行こう。」

「ブチャラティ!」

「とうに死んだ者ならば、それを防げるんじゃないのか?」

 ブチャラティの言葉に、ジョルノ以外の面々が驚いた。

「あんた…。」

「すまないな。内緒にしときたかったんだが…。俺なら行けるだろう。ジョルノ、あとは頼むぞ。」

「ブチャラティ!」

 ブチャラティは、静止する声を聞かず、コロッセオの中央でボーッとしている髑髏の腕を駆け上っていった。

「スティッキー・フィンガーズ!!」

 内部への穴を空けるためスティッキー・フィンガーズを使った直後、ジッパーを開いたら…。

 凄まじい数の青いバラと共に、ソメイヨシノの花や、白い花が飛び出した。

 そのうちの白い花がブチャラティに当たり、パッと光となって消えた。その瞬間、ブチャラティの身体に異変が起こった。

「なっ…!?」

 突然の生《せい》の感覚。脈を流れる血潮。戻ってくる体温。皮膚の感覚。

 そして掴んでいた根っこの部位から凄まじい勢いで脳を直撃する死の衝撃。

「ぁ、がっ!?」

「ブチャラティーーー!」

「ワオオオーーン!」

 白目を剥いて落ちていくブチャラティを、ザ・フールの砂が受け止めた。砂で出来た滑り台を転がり、ジョルノ達がブチャラティを受け止めた。

「ブチャラティ!」

「皮膚の血色が…、まさか!」

「あ……、なんてことだ…。まさか“蘇生”を手段に使ってくるとは……。」

 ブチャラティの身体は蘇生の白い花によって蘇生されたのだった。

「あっ。」

 それが誰の声だったかは分からないが、ジッパーで開いていた穴から、ポロリッと、花と共に何かキラッと光るものが花畑に落ちていくのが見えた。

「矢…、矢が出た!!」

「マジで!?」

 まさかの出来事。

 

 

「よくやったぞ。ブチャラティ。褒めてやる。」

 

 

 その瞬間、時間が飛んだ。

 その感覚を知っている者は気づいた。花畑に向かって走って行くピンクの髪の色の男の姿を見つけた。

「なっ、まさか!?」

「アイツが…ディアボロ!?」

「マズいぞ! 矢を奪われる! 全員、急げ!」

 思わぬ形で矢が出たことで、矢の争奪が始まった。

 

 

 

 




規模が違いすぎるため、さすがのディアボロも頭抱える。

ブチャラティ、思わぬ形で蘇生完了。結果、触るとヤバくなる。
だが、蘇生間際にやった一撃が矢をブルー・ブルー・ローズの体外へ出させるきっかけになる。

果たしてそれは、罠か……それとも……。

ブルー・ブルー・ローズは、不完全なレクイエム。
ミナミが矢の力を望んでいないため、3人目は完成形に近い力を得るためイタリアを苗床に急成長したものの、やはり不完全であることには変わりなく……。


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ひとかけらの希望か、それとも……

かなり酷いかも……。


何度も書き直して、こんな展開…。難しい…!


青いバラの花が入っているナランチャが思わぬ役割を……。


 

 小さな矢の先端は、巨大な髑髏の鎮座する花畑の中に落ちた。ちなみにさっきブチャラティが空けた穴は、肋骨の左側部位辺りである。つまり落ちたのも左側辺り。ただし、斜め後ろの方。花で埋もれて見えないが、たぶんその辺りに落ちた。なにせ小さいし、遠いから。

「ええい! どこだ!?」

 花畑に先に到着したディアボロが必死に花をかき分けて矢を探している。

「さぁせるかーーー!! エアロスミス!!」

 先手必勝とばかりに、ナランチャがエアロスミスで攻撃を行った。

 だがその攻撃は躱される。キング・クリムゾンによる時間飛ばしで。

「お前達に探させた方が良さそうだな。」

 ディアボロは、そういうと、フッと姿を消した。

「あっ! 逃げやがった!」

「今のうちに早く矢を見つけなければ!」

「あんにゃろう、俺達が見つけたら横からかすめ取る気だぜ!? 先に仕留めた方が…。」

「いずれにせよ矢を見つけることが先決だ! 見ろ、空の目がもう8分の1は開いている!」

「あっ、でも止まってない?」

「矢が出たからか!? とにかくチャンスだ! 今のうちに矢を!」

「……このモッサリした中からですか?」

 隙間無くある花畑のどこかに矢が落ちたのだ。手分けして探しても難しい。

 それに……。

「もしかして、罠じゃないか?」

 その可能性があった。

 あんな簡単に矢を出したのはおかしい。何かあると。

 見上げれば、髑髏は同じ体勢のまま動いてない。なにもしてこないのが逆に怪しい。

「聞こえてるかどうかは別にして、コイツ、それほど頭がいいように思えないな。」

「確かに…、ブルー・ブルー・ローズは、子供のソレだ。歪に力だけが肥大化した。」

「止まっているうちに聞いておきますが、ブルー・ブルー・ローズについては、あなた方の方がよく知っているはずだ。行動原理や知性については?」

「本体を優先して守る。頭が良いほうじゃないな。」

「危険が大きいと判断した方へ攻撃を優先する傾向があるかもしれないが…。」

「じゃあ、空の邪視を止めたのは優先順位が今、ボスと僕達の方に向いている可能性が?」

「だとすると、ブルー・ブルー・ローズは、ほぼ自動操縦型のスタンドか。ならダメージが行かない理由も分かる。」

「3人目は肉体を失っていて、スタンドと同化したんだ。なら自動操縦型のスタンドになってても不思議じゃないか。」

「ディアボロを先に始末したとしても、今度はヘイトがこちらに向くでしょう。それなら先に矢の強奪を優先すべきかもしれません。」

「じゃあ、結論としては、やっぱ探す方向か?」

「そこだーーー!」

「ナランチャ!?」

 突然叫んだナランチャに、全員がなにごとか!?っとそちらを見ると、ナランチャがエアロスミスで髑髏の背骨付近の根っこを弾丸でぶち抜いていた。

「どうした!?」

「今! 今、矢が移動してた! アイツ地中に根を張ってて、そこから矢を運んでやがる!」

「なんで分かるんだ!?」

「分かんねぇ! なんでか知らないけど分かった!」

 その時、ナランチャの胸の心臓の上辺りに、青い小さな光が灯った。

「そうか…! 青いバラか! 君は、命のストックを…、ブルー・ブルー・ローズの力の欠片を持っているから分かったんだな!」

「なるほど、ナランチャ! 矢を外へ!」

「了解!」

 ナランチャは、エアロスミスで徐々に上へ上へと背骨に沿って弾丸でぶち抜いていった。

 すると、途中で矢が飛び出して落ちてきた。

「きたーーー!」

「拾え! 誰かが取るんだ!!」

 

「矢は、このディアボロのモノだ!」

 

「予測済みだぜ!!」

 ミスタが銃弾を、そしてアヴドゥルが炎をディアボロに放つ。

「愚かな! 我がスタンド、キング・クリムゾンの前では貴様らの攻撃など無意味よ!!」

 時間飛ばしそれらの攻撃を全て回避する。

 次の瞬間、ビンッと緑の網目状の何かにディアボロとキング・クリムゾンが当たった。そしてエメラルドのようなエネルギーが四方八方から飛んできた。

「なんだとぉおおお!?」

「花京院か!」

 

「遅くなってすみません。」

 コロッセオの一番上から花京院が現れた。

「……ダメ押しだ。」

「フーゴ!」

 花京院の後ろからフーゴが現れた。

 そしてパープルヘイズがディアボロを追撃。パープルヘイズのウィルスを恐れてディアボロは、網にかかった状態で身を捻りその拳を避けた。

 

「矢を掴めーーー!」

 花京院とフーゴがディアボロを止めている間に、落ちてくる矢を掴もうと皆が手を伸ばす。

「我がキング・クリムゾンは、結果だけを残す!」

 ディアボロが時間飛ばしでハイエロファント・グリーンの結界から脱出し、他の者達より上の方からキング・クリムゾンの手を落ちてくる矢へ伸ばし、矢がキング・クリムゾンの右手に刺さる。

「やったぞ! 矢は我がキング・クリムゾンを貫いた!!」

「しまったーーー!!」

「いえ…、やはり罠だったようですよ。」

「えっ?」

「ハハハハハ! ……?」

 次の瞬間、刺さったまま矢を握りしめていたキング・クリムゾンの手を突き破ってブルー・ブルー・ローズの赤い根っこが生えた。

「なぁあにぃいいいいい!?」

 ディアボロの右手がダメージのフィードバックで破壊された。落下したディアボロは、花畑に落ちた。そして根っこを生やした矢が宙で髑髏の方へ根を伸ばす。

「やはり、矢は3人目の手中にある! 物質同化型かつ、自動操縦型のスタンドであるブルー・ブルー・ローズは、最初から矢を奪われないよう細工していた!! 最初から奪われる心配が無いからドッシリ構えられたんだ!」

「チャリオッツ!」

 ポルナレフがシルバー・チャリオッツを出し、髑髏に絡む根っこと同化しようとした矢から伸びている根を切断した。その瞬間、スタンドを通って死の衝撃が脳を直撃する。

「ぐっ…。」

 ポルナレフがよろめきかけた時、切断された矢から生えた根っこが矛先をポルナレフに向けた。

「ワオオオーン!」

 それをイギーが砂の壁で防ぐ。ベキベキメキメキっと、砂の壁に根が食い込む。

「砂、借りますよ。」

 ジョルノが、ゴールド・エクスペリエンスで砂の壁を殴った。

 砂の壁は、草食の昆虫へと変化し、赤い根っこに群がった。草食の昆虫たちは、赤い根っこを喰らい尽くそうとする。しかし喰ったはしから、昆虫の腹を突き破ってブルー・ブルー・ローズが生え昆虫が死に絶えていく。そして死んだ昆虫を触媒に根っこは増殖し、他の者達に襲いかかった。

 触ると危険だが、根っこが細かく、そして虫となってアチコチに移動していたためあっちこっちから根っこが襲いかかってくる。直に触ると危険だと判断しスタンドで根っこを破壊していく。一瞬でも脳に死の衝撃が襲いかかるとするが、気合いを保っていればなんとかなると変な意味でコツを掴み昆虫の死骸を触媒にした根っこは全滅。

 ところが。

「矢…、矢が消えた!? ナランチャ、矢はどこだ!」

「そ、それが…。」

「なんだ!?」

「まさか根っこごと壊しちゃったとかないわよね!?」

「違うよ! 移動してる! 矢がコロッセオの中を移動しているんだ! コロッセオの周りの通路とかその辺り!」

「なんでそれを早く言わない!」

「ね、根っこぶっ壊してる最中に根っこになってた矢が飛んでちゃったんだよ! たぶん…。」

「頭悪いって言ったの前言撤回する。コイツ(ブルー・ブルー・ローズ)、意地が悪い!!」

「こうやって消耗させて、一網打尽を狙ってるのか!?」

「確かに、矢を狙っている限りは僕らの消耗は激しい…。ならいっそのこと…。」

「させねーよ?」

「さすがに僕だって分かってますよ。ミナミを狙うことが一番ヘイトが向く上にミナミが今いる位置を考えると…。」

 ジョルノが髑髏の胴体…、特に肋骨の辺りを見上げた。

 肋骨の内部に心臓みたいに固まった根っこが見受けられる。たぶん、そこにミナミがいる。

「あそこに到達する前に、間違いなく死にますよ。」

 よじ登ること考えるとどう考えても死ぬ。気合いで死の誘いを吹っ飛ばせても触る都度、衝撃が来たら精神が消耗してやがて死に至るだろう。

「本体(ミナミ)を狙ったとしても、矢を狙ったとしても、どっちみち殺すってか?」

「けれど、なにか突破口があるはずです。ブルー・ブルー・ローズの進化が不完全ならば余計に。」

「その突破口がさっきから見つからねーんだろ?」

「空の目は…、変わりなし…。」

「残りの体力から考えても、もう時間は無いぞ。」

「あのさぁ…。」

「どうしたの、ナランチャ?」

「…感じる。」

「はっ?」

「助けを…呼んでる…、気がする…。」

 ナランチャがまるで導かれるように、髑髏の方を見た。

「そこにいるのか?」

「ナランチャ?」

「……そうだよな。…こんなこと、望んじゃいないよな。望むわけがないんだ。」

 ナランチャが、フラフラと髑髏に近づく。

「おい、ナランチャ!?」

「いや、待つんだ!」

「様子がおかしいぜ!?」

 

「今…助けに行くからな。ミナミ。」

 

 ナランチャが髑髏の下半身に手を触れた。

 直後、ブワッと周りから、髑髏から赤い根っこが飛び出し、ナランチャを包み込んだ。

「ナランチャーーー!」

「近づくな、危険だ!」

「で、でも!」

「おそらく、この中では、彼だけなんだ。まだ3人目に制御を奪われる前のブルー・ブルー・ローズの力を持っているのは!」

「それがどういう関係が!?」

「ミナミが望んでいない。コレが鍵だったのだ!」

「どういうことだ?」

「これほどの規模の強力無比のスタンドが、いまだに大きな動きを見せないのはなんだ? 抵抗しているからじゃないか? 本体であるミナミが。」

「だから、ナランチャなら、ブルー・ブルー・ローズの内側から、ミナミを救い出してブルー・ブルー・ローズを倒せると?」

「可能性はある。」

「アイツに賭けるしかないってことかよ! 俺達はなにもできないのか!?」

「いや、コチラはコチラで、矢を奪えばいい!」

「けど、探知ができるヤツがいない状態で…。」

「あっ! そうよ! 私…。」

 トリッシュが、ポケットから青いバラの花を取り出した。ほんのり花の部分が光っていて、光の粒子のようなモノを発している。バラの花の向きが変わる。ひとりでに。

「これで分かるんじゃないかしら!?」

「よし、決まりだ! トリッシュ、その青いバラを手放すなよ!」

「分かってるわ!」

「あっ! 空の目が!」

 ハッとして見ると、空の目が開くのを再開していた。

「ナランチャが内側に入ってきて焦ったか!? 時間が無い! 急げ!」

 トリッシュが青いバラを握りしめ、光が導く咲きに矢があると信じた、その時。

 

 

 グオオオオオオオオオオ!!

 

 

 ジッと動かなかった髑髏が突然動き出した。

 うなり声を上げ、ギロリッと下を見て、左手を振り下ろす。

「散開!」

 四方八方に散開し、その攻撃を避ける。

「うぅ…、おのれ………、ハッ!? うわああああああああああああ!!」

 右手を押さえてやっと起き上がったディアボロだったが、迫ってきた巨大な影に気づいた時には、その手に潰されていた。

 

 

 

 




ちなみに、命のストックとして青いバラの花を消費した者は、ナランチャのようにはなりません。(シーザー、アヴドゥル、イギー、花京院)
また、3人目がブルー・ブルー・ローズを掌握する前の力である必要もあるので、ヴェネツィアで青いバラの花を持っていたのは、ナランチャと、お守りとして持っていたトリッシュのみです。

ディアボロは、とりあえず退場……に見せかけて?


最初にコレ書いたとき、フーゴを出すのを忘れてて、慌てて書き加えました。
ウィルス感染覚悟でなら、根っこを死滅させて矢を奪えるかな?


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死に染まる花畑

今回、短い。



前回、ブルー・ブルー・ローズに触ったナランチャは……。


そして潰されたディアボロは…。


 

「ここは……?」

 真っ白な空間だが、花畑が広がった場所にナランチャは立っていた。

 青いバラの花、ソメイヨシノの花、白い花…、だがどれも茎の部分が鮮血色をしていて緑がなく、花がついてなかったら血の海のようにも思えてしまうほどだ。

「そ、そうだ…。俺ミナミの助けてって声が聞こえた気がして…、それであのデッカい髑髏に触って……。ってことは、ここブルー・ブルー・ローズの中!?」

 ぼう然としていたが、間もなく凄まじい勢いで色々と思い出したナランチャ。

「ミナミーーー! ミナミーーー! どこだよーーー!?」

 

 

 …っそ……

 

 

「ミナミ?」

 声が微かに聞こえた気がした。

 

 

 いっそ…

 

 私が…死ねば良かったんだ…

 

 

「おい!?」

 なんか碌でもないことを言っている。

 

 

 そうすれば、こんなたくさん……

 

 たくさんの命を奪うことも無かった…

 

 

「!?」

 花畑が消え、そこには血塗れの死体で地面が埋め尽くされた。

 

 

 私のせいだ……

 

 どうして……どうして……

 

 私だったんだろう……

 

 誰か……誰か…

 

 私を……殺してよ…!

 

 

「それほどに死を望むのなら殺してやる!」

「てめぇ!?」

 ハッとして振り返ると、そこには体操座りして泣いているミナミと、その後ろに立つディアボロがいた。ディアボロが拳を振り下ろそうと構えようとした。

 ナランチャは、走り出した。踏みつけたはしから、死体は花びらとなって消えた。

「エアロスミス!! ……?」

 走りながらエアロスミスを出そうとしたが、エアロスミスは出なかった。

「小僧…、ブチャラティの部下か…。どうやら貴様も同じか。この空間ではスタンドは出せないらしい。だが、この娘を殺すのは素手で十分なのだ!」

「やめろーーーー!!」

 

 

『させないよ?』

 ディアボロの拳がミナミを捉えようとした直後、そんな声が聞こえて、ミナミがパッと花びらになって消えた。

 ディアボロとナランチャが驚愕していると。

『お前たち…、もう死んじゃってるのに……、ミナミに手は出させないよ。』

 ナランチャの後方から声が聞こえたので見ると、座った態勢を崩した状態で泣いているミナミの隣に、鮮血色の髪と瞳を持つ、ミナミと同じ形をした女が立っていた。

 3人目!

 ナランチャはそう確信した。

『メタリカ!』

「グホ!? な、なにーーー!?」

「な、なんでこのスタンドを!?」

 カミソリと針で傷つけられた二人は驚く。

 この能力を持つ者は、知る限りではひとりしかいなかったからだ。すでにその人物は……。

 

 

『ここは、『ワタシ』の世界。再現ぐらいできるよ。』

 

『それに、リゾットは、『ワタシ』に力を貸してくれた。『ワタシ』は、力を貸した。その時にディアボロを殺せなかった無念は…、『ワタシ』の中に残ってる。』

 

『この力は、…メタリカは、リゾットが残した怨念。ここは『ワタシ』の世界。だから使える。』

 

『死んじゃえ。みんな死んじゃえ。ミナミに害をなすヤツは、みんな死んじゃえ。』

 

 

 もう……イヤだ…

 

 

『ミナミ?』

 

『どうして泣くの? 泣いてるの?』

 

 

「お前…、本気で分かってねーのかよ?」

 ボタボタと血を流すナランチャが針を落としながら立ち上がる。

「お前が泣かしてんだろーーーが!!」

『?』

 ナランチャの叫びを聞いても、3人目はわけが分からないという顔をしていた。

 

 

 

 




3人目は本気で分かってません。
なお、ブルー・ブルー・ローズ内部でスタンドが使えないのは、ペッシの時でも起こっています。一応伏線でした。
現在、ナランチャとディアボロは、まだ死んでいるといより、死に向かっている途中であり、肉体の方はまだ死んでません。時間が経てば経つほど蘇生の可能性が低くなるのと同じで5~10分程度の時間しかありません。
もし肉体の方が完全に死亡すれば、ペッシの身に起こったように……。(※ブラックホールのような穴)



次回は、現実世界側にいるジョルノ達が矢を探すのと、空の邪視が目を開くまでの時間との闘いを書きたい。


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書物の神は、鎮魂歌を予言する

これだけ大規模にやったのに、あっさりした終わりかも……。


とりあえず、ジョルノ達sideです。


三部編でミナミの能力により生き残った敵がひとり、味方として駆けつけます。
予定無かったんだけどね。


「あそこだーー!」

 コロッセオの中央に続く周囲の通路で、矢の追跡が行われていた。

 3人目に掌握される前のブルー・ブルー・ローズの力であった、青いバラの花を体内に持っていたナランチャがミナミの救出のため捨て身でブルー・ブルー・ローズに包まれてからというもの、矢の探知ができる役割は青いバラの花を、ヴェネツィアの一件以降お守りとして持っていたトリッシュがしていた。

 残骸のようなほんの少しの力であるが、それがミナミがこの状況を望まず抵抗している証なのか、青いバラの花は矢の位置を教えてくれた。

 矢を移動させている根っこの動きは早くない。だが絶えず動いている。走れば追いつけるが、問題は矢を移動させ、守るように通路を触媒にしながら動いている赤い根っこだ。

「俺がやるぜ! セックス・ピストルズ! 矢を根っこから剥がせ!」

「ダメだ、ミスタ!」

「なんでだよ!?」

「ピストルズが捕まったらどうなる!」

「あっ。」

「くっそー! 時間がねーときに触るとアウトってぇ問題がつきまとう!」

 気合いで、死への誘いをはね除けるのも限界がある。はね除けるたびにゴリゴリ精神力と体力を失うからだ。休憩を挟めばなんとかなるかもしれないが、空の邪視が目を開け始めたため、休憩している場合じゃない。

 ブルー・ブルー・ローズからの攻撃は、ディアボロを潰したときの一撃以降ない。あくまでこちらが手を出したときのみ反撃をしてくるらしい。そもそも触ったらそれだけでカウンターで死の衝撃を受けるのだから、逃げてるだけでいいのだ。

「くっ……、蘇生さえされなければ、まだ勝機はあったかもしれないのに。」

「悔やんでも仕方ありませんよ、ブチャラティ。」

「そうよ! この戦いが終わったら、生き返れたことを喜べば良いのよ! 生き返ったことを喜ばなきゃ…、この力を誰よりも嫌っているミナミが浮かばれないわ!」

「トリッシュ…。そうだな。」

 ブチャラティは、そう納得して頷いた。

「……ブチャラティ…、ブルー・ブルー・ローズは、実体のある植物なのですか?」

 するとフーゴが聞いてきた。

「物質同化しているから実体はある。本物植物かどうかは分からないが…。」

「………命を捨てる覚悟があれば…、矢だけを奪い取れる可能性はあるかもしれない。」

「なに!?」

 全員の視線がフーゴに集まる。

「……パープルヘイズのウィルスですね?」

 ジョルノがそう聞くと、フーゴは頷いた。

 この後、急いでざっくりとだが知らない者達に、パープルヘイズの能力であるウィルスの力を説明。

「この通路は、影が多く、光がほとんど入ってこない…。つまり光による消毒は難しい。」

「誰かがウィルス感染で死を覚悟して矢へ向かい、矢を光の下に放り出す必要性があると?」

「もし…もし…、ブルー・ブルー・ローズに僕のパープルヘイズが通用しなかった場合のこともあります。だから確実とはいえないです。」

「待ってください。なにも確実に死を受け入れる必要はありません。」

「どういうことだ?」

「僕の能力でウィルス感染した周辺の壁とか床の材質でもいい、それを生命に変えてウィルスの抗体を生み出すことが可能です。そうすれば、血清が取れる。成功すれば犠牲者は出さないで済みます。」

 思わぬジョルノからの提案によって、光明が見えた。

 ブチャラティが他の者達を見回すと、言葉にせずとも意見は分かった。

「フーゴ! ジョルノ! 頼むぞ!」

「はい! パープルヘイズ!」

「ゴールド・エクスペリエンス!」

 フーゴがパープルヘイズを出し、それに続いてゴールド・エクスペリエンスが飛び出す。

 逃げるために移動している赤い根っこに向けて、パープルヘイズが拳を振るい、拳についているウィルスカプセルを放った。

 赤い根っこに当たって割れたカプセルからブワッと死のウィルスが撒き散らされる。

 途端、みるみるうちに赤い根っこが死滅していく。

「効果有りだ!」

「俺が行く。」

「シーザー!?」

「……ナランチャとか言ったか。あのガキにばっか良いところ取られちゃかなわない。」

 そう言ってシーザーは、鍛えに鍛え抜いた身体能力で誰よりも早く走り抜き、ブスブスと死滅して矢を床に落としたブルー・ブルー・ローズの中に手を突っ込んだ。途端、ウィルス感染範囲に入ったため、腐食が始まる。しかしそれを気にせず、掴んだ矢を通路の光のある方へと投げた。

「ジョルノ!」

「ゴールド・エクスペリエンス!」

 そしてすぐにジョルノが壁の一部をヘビに変え、そこから血清を取りだし、シーザーに指を突き入れてウィルスを浄化した。

「どうです?」

「ああ…、だいじょうぶだ。」

「おい! 矢に触ってだいじょうぶなのか!?」

 

 

「問題ない。ジョルノ・ジョバァーナ。お前が使うんだ。」

 

 

「えっ?」

「承太郎!?」

 そこへ現れたのは、承太郎と、大きな漫画を抱えた小柄な青年だった。

「トトの予言が正しければ、お前のレクイエムがブルー・ブルー・ローズを倒せる。」

「トトって…、あ、お前!」

「イヘヘヘ……、た、大変なことになってますね…。」

 トト神のスタンドを持つボインゴが顔を青ざめさせたり赤くさせたり忙しく表情を変えていた。

「レクイエム(鎮魂歌)?」

「矢の力で新たな段階へと昇ったスタンドのことだ。どのような力が手に入るかは、大雑把な予言しかできないトト神では、分からないが……、少なくともジョルノ・ジョバァーナが鍵となり、この危険な状況を打破するとなっている。」

「ぼ、僕のトト神は…近い未来しか分からない…。だ、だ、だから…、その先がどうなるかは……。」

「わからないんだろ? とにかく時間がない。すでに空の目が、2分の1ほど開いている。」

「ああ! 本当だ!」

「ん? んんん!? なんだ、俺達の指先が…。」

「あの目が力を発揮し始めている証拠だ。完全に開けば、すべての生命が消えることになる。回避不可能の、痛みも苦痛も無い、絶対的な死をもって。」

 指先が粒子となって少しずつ消え始めていることに気づいた一行。

「ジョルノ。」

「……分かりました。」

 全員の視線が集まる中、ジョルノが光の下に出された矢を拾った。

「スタンドを貫けばいいんですね?」

「そうだ。」

「………ゴールド……エクスペリエンス!!」

 そしてジョルノが、ゴールド・エクスペリエンスを矢で貫いた。

 しかし、直後ボコッとゴールド・エクスペリエンスに穴が空いて、矢が落ちた。

「失敗!? 矢に選ばれなかったのか!」

「ボインゴ! 予言通りなんだよなぁ!?」

「ぼ、ぼぼぼ、僕のトトの予言では…『ジョルノ・ジョバァーナは、矢でスタンドを貫いてレクイエムになり、勝ちましたとさ。』って…なってます。」

「大雑把だな!!」

「だが、この大雑把な予言は、絶対だ。外すことはできない。外そうとすれば手痛いしっぺ返しを喰らう!」

「ああ! 見て! 矢が!」

 落ちた矢がひとりでに浮き上がり、ダラリッと腕を垂らしていたゴールド・エクスペリエンスの腕を伝って頭の方へ移動を始めた。

 そしてボロボロとゴールド・エクスペリエンスの表面がひび割れ、崩れ始める。

 すべてが崩れ落ちたとき、そこに現れたのは矢と一体化したゴールド・エクスペリエンス・レクエイムの姿だった。

「これが…、レクイエム?」

「……なるほど…、だから僕が適任だったわけですか。」

「ジョルノ?」

「………ミナミは必ず救い出します。そして、ナランチャも。」

「ナランチャは…生きているのか!?」

「ええ。まだ肉体が完全には死んでいない。まだ蘇生が間に合います。」

「な、なら、急げよ!」

「分かってます。っ!」

 次の瞬間、コロッセオという建造物ごと破壊するような一撃が来た。中央にいる髑髏がジョルノめがけて攻撃を仕掛けたのだ。

「……なってしまえばすべてが分かる。アナタは、僕には勝てない。アナタが、不完全だからこそ勝つ余地がある。」

 壁や天井を突き破ってきた髑髏の手は、レクイエムの眼前で止まり、すべてが巻き戻されるように元通りになる。

 

 

『これが…、ゴールド・エクスペリエンス・レクエイム! 何人たりとも“真実”にはたどり着けない! このことは、私を操るジョルノ・ジョバァーナでさえも知らない! 不完全なるオマエのレクエムは、私がゼロへと!』

 

 

 ヤメテ……!

 

 

『怖いことは、何もない。オマエの不完全なるレクイエムが、奏でられずに始まる前に戻るだけだ。』

 

 

 ゴールド・エクスペリエンス・レクエイムが巻き戻される時間の中を動き、巻き戻されコロッセオを破壊しようと手を振り上げているブルー・ブルー・ローズに、まるで子供をあやすかのように、優しく触れた。

 

 

 そして、コロッセオを中心に、眩しいが、優しい光がローマを…、いや世界を照らすように輝いた。

 空の邪視は、その優しい光を防ごうとするかのように開きかけていた目を閉じ、粒子となって溶けて消えていった。

 

 

 

 

 

 




フーゴを駆けつけさせるとして…、どういう役回りをさせるか考えて考えて…、結果、殺人ウィルスによるブルー・ブルー・ローズの根っこの駆逐役にしました。
なお、ブルー・ブルー・ローズは、無機物を触媒にしているので本来なら効きませんが、ミナミを内側に取り込んだことで生体に近い状態になっているとか……、色々と後付けするとゴチャになるけど……。

承太郎がボインゴを連れてきたのは、ボインゴだけ行かせるのが危険だったからです。護衛ですね。
大雑把な予言ながら、確定すれば外そうとする大きな痛手を被ることになるトト神の力がどこまで通用するか分かりませんでしたが、今のこの場にいる面子で、不完全なブルー・ブルー・ローズ・レクイエムをゼロへと戻せる素質があるのが誰なのかを知る必要と、確実に矢の力を与えるためにトト神を使ったという感じです。

あくまで不完全な形で奏でられようとしていた3人目のレクイエムを歪んだ進化の前に戻すだけなので、3人目は消えませんし、ブルー・ブルー・ローズ(進化前)も残ります。もちろんミナミもだいじょうぶです。


もしかしたら、このトト神の力は、まだ持ってないけど六部編でも活躍するかも。(2020/03/17現在、頭の中で描いている段階では)



とりあえず、次回でナランチャ側も決着を付ける予定。


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迫るタイムリミットと、受け入れること

書ける勢いがある内に書く!
じゃないと、詰るから。


ナランチャとディアボロに迫る、タイムリミット(蘇生不可能時間)。


そしてミナミは……。


時系列は、ゴールド・エクスペリエンス・レクエイムが覚醒するまでの間に決着を付け、最後にゴールド・エクスペリエンス・レクエイムによる浄化?


『どうして? どうして、泣くの?』

 

 3人目は、本当に分かっていなかった。

 

『どうして、どうして、死にたいなんて言うの?』

 

 

「バカヤローーーー!!」

 ナランチャが叫ぶ。

「お前がそうさせてるんだ!!」

『どうして…、どうして…? ミナミを守りたいだけなのに…。』

「聞けよ!!」

『お前らが…。』

「!」

『お前らが…いるから……。それに、もう時間が…。』

「なに? ハッ!?」

 訝しんだディアボロがふと後ろを見てギョッとした。

 

 数メートル後ろの方に、ブラックホールのような穴が渦巻いていた。

 

「う…、うぉおおおおおおお!?」

「な、なんだ! 引っ張られ…!」

 その穴に向かって吸引する力が来て、二人はズルズルと穴の方に引っ張られた。

『人が死んで…、蘇生の可能性があるのは、5分から10分程度…、肉体はまだ死んでない。でも完全に死ねば……、その先は…。』

「なんだと!? こ、このディアボロがこんなところで死ぬわけにはいかんのだ! 小僧! 貴様が先に死ね!」

「ああ!? てめぇが死ねよ!!」

「グゲッ!?」

 ナランチャを捕まえ、穴の方へ放り込もうと考えたディアボロだったが、その手を躱されて、顎に頭突きを喰らった。

「ご、ごのガキがぁぁぁ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 格闘技の技術だの何だのはない、ただの喧嘩による戦いだ。

 ナランチャは、下っ端のギャングとして喧嘩は日常茶飯事だった。そしてミナミを救うために捨て身を取った彼の覚悟に、ディアボロは押された。

「このディアボロが…! こんな小僧にぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 ステゴロの戦いの真っ最中の二人は、ズルズルと穴へと引っ張られていた。

「貴様らさぇ……、貴様らさぇ……!! いなければ! この帝王たるディアボロは…!!」

「あんたにゃ分からねーよ。」

「!」

「俺は…、この命捨てたっていいって思って、ここへ来た。好きな女を助けられるなら!」

「…小僧が、この私にいっちょ前に説教だと? 笑わせる。しかもなんだその理由は! 馬鹿馬鹿しい!」

「だからあんたは死ぬんだ。誰からも愛されず、愛することも出来ず……、たった独りぼっちでな。」

「私は死なんぞ!」

「いいや。ハナから勝負はついてんだぜ。」

 ナランチャが立ち上がる。その心臓の上の辺りを通じて左手からシュルシュルと鮮血色の根っこが延び、いつの間にかあった鉄柱に絡まる。

「なんだとぉおおお!?」

「ありがとな。ミナミ。」

「逃がすか!」

「うお!」

 腕から伸びた赤い根っこを掴んで穴から逃れようとするナランチャの足に、ディアボロが掴まった。そうこうしている内に、穴が巨大化を始め、ディアボロの長い髪の毛の一部を飲み込む。

「離れろ!」

「貴様も道連れだ!」

「しつけーんだよ!!」

 ナランチャがディアボロを蹴って離させようとするが、ディアボロは逆にその足を掴んだ。巨大化した穴にディアボロの下半身は吸い込まれており、ナランチャに徐々に迫ってきていた。

 

 

「喰らえ、メタリカ!!」

 

 

 直後、男の声と共に無数のナイフがディアボロに襲いかかり突き刺さった。

「ぐあああああああああ!? き、貴様は…!!」

「お前…。」

 

 

「……その穴の先がどうなってるかは分からない。だが、安息なんてもんはお前にはないだろう。」

 

 

 リゾットは、どこか晴れやかな顔で、ディアボロを見おろしていた。

 トドメとばかりにハサミを作り出し、ナランチャの足を掴んでいる手首に開いたハサミの刃を添える。

「ここに残っていた、俺の怨念は…、これで消える……。みんな…今からそっちに行くからな。」

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 ジャキンッ

 

 

 その音が聞こえたと同時にナランチャの足にあったディアボロの重さが消えた。

 そして、リゾットの姿が、花びらとなって消えた。

 下半身をすでに吸い込まれていたディアボロは声を上げる暇も無く吸い込まれたらしい。

 ナランチャは、力を振り絞って、穴から逃れるべく、腕から生えた赤い根っこを伝って移動する。

 しかし、穴の吸引と穴の巨大化が早い。

「く、くそーーー!!」

 背後まで迫ってきた穴の存在に、ナランチャは、もうダメだ!っと諦めかけた。

 その時。

 ナランチャの右手を柔らかくて温かい手が掴んだ。

「…ミナミ!」

 ミナミが手を伸ばしてナランチャ手を掴み引っ張っていた。

 

 

『どうして?』

『どうしてなの? ミナミ?』

 

 

 死んで欲しくないから…

 

 

『なんで、どうして?』

『『ワタシ』が守ってあげるのに…。』

 

 

 ありがとう……

 あなたは、ずっと私のためにいてくれたんだよね?

 その命をくれたんだよね?

 

 

『!』

 

 

 もう、だいじょうぶだから……

 だから、もうやめて欲しいの……

 

 

『『ワタシ』は……。』

 

 

 ごめんね。ごめんね……

 気がついてあげられなくて…

 ずっと誰よりも傍にいてくれたのにね…

 だからこれからもずっと一緒にいよう

 あなたを独りぼっちにはしないから……

 だから、もうやめて

 

 

『『ワタシ』は……!』

 

 

 私が、死ぬ時まで……

 一緒に……生きようね……?

 私の大切な……家族……。

 

 

『ミナミ…。』

 3人目の目から一滴の涙が零れた。

 ミナミが微笑み、3人目に手を伸ばした。

 

 

 

 その瞬間、世界が優しい光に包まれた。

 

 

 




ルール無用のステゴロの戦いなら、ナランチャ強いんじゃないかな?
なんかディアボロって、スタンドに自信がありすぎて、スタンド頼りの典型だと思うし。長いこと表立って喧嘩なんてしたこと無いだろうから、肉体的にも精神面でも負けた……っということで。


ミナミは、3人目の存在を受け入れる。
歪に加護の愛を与えることが愛だと信じていた3人目は、家族愛を知る。そして自分が犯した罪も同時に理解して……。


時間軸は、ジョルノ達sideと平行しています。彼らが頑張ってる間に、こっちも頑張ってたって感じです。


ディアボロは、穴に吸い込まれましたが、その穴の先がどうなっているかは不明。少なくとも吉良吉影のようにはならない。
これでナランチャと共に生き返って、現実世界でジョルノのレクイエムにトドメを刺されて……原作のように…って展開も考えましたよ。



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最終話  それからのこと

タイトル通り。



ナランチャとシーザーは、ギャイギャイ(大人げなく)喧嘩してりゃいいって感じで後半を書きました。


恥知らずのパープルヘイズ要素、一部有り。(トリッシュが歌手になったとこ)


※2020/03/18
もうちょっと続くって最初書きましたけど、ありゃウソになった。


 そして、歪なる不完全なブルー・ブルー・ローズ・レクイエムは、完全なるレクイエムである、ゴールド・エクスペリエンス・レクエイムによってゼロへと戻された。

 

 歪に成長・進化した流れをリセットされたのだ。

 

 歪なレクイエムが無差別に喰らってきた命を吐き出し、正しき輪廻へと命を戻す。奪ってきた命の器は、もうない。だからそこから奪ってしまった命を次に生まれる命の糧に回すしかなかった。

 

 3人目の東方の子もまた歪なる成長をリセットされた。だが消えてはいない。

 

 消えて無くなることは、ゴールド・エクスペリエンス・レクエイムが許さなかったのだろうか。それともレクイエムではない、より大きな力の存在がそうさせたのか。正しく成長し、罪を償えという啓示なのか。

 

 コロッセオで起こった空の邪視や、巨大髑髏の姿は、ローマにいた人々が見ていた。優しい光がコロッセオから発せられ、空の邪視を消し、巨大な髑髏も消えた。

 

 まるで最初から、そこで何も起こっていなかったのだという風に、人々はそこで起こった異変を忘れ日常を取り戻していった。その場であの戦いに参加していた者達を除いて……。

 

 

 

 

 

「混乱の終息は早かったが……、情報収集する上では不便だったな。」

 イタリアのSPW財団施設で、承太郎が言った。

 SPW財団の医療機関に、ミナミは現在隔離状態である。超常現象研究科と協力して、ブルー・ブルー・ローズ・レクイエムの影響が残っていないかとか、3人目の存在がどうなったとか、調べているのだ。

 捨て身でブルー・ブルー・ローズの内側に行ってきたナランチャも一応検査は受けた。結果から言えば何の問題も無かった。

 イタリア全土を恐怖に陥れていた邪視の存在も、嘘みたいに消えた。被害者がほぼ全員死んでいるので、謎の死病だのという噂や、都市伝説みたいに残ったが、やがて忘れられてしまうだろう。

 だが、だからといってすべてが丸く収まるわけじゃない。

 まず騒動の発端になった矢についてだ。

 レクイエムとなったことで、矢の所有者はジョルノとなった。矢の研究のため、矢を未来のために使うという約束で矢は、ジョルノが所有しつつも、SPW財団の超常現象研究科と共有することになった。

 次にボスを失ったパッショーネの統率についてだが……。

 

「ジョルノ。お前がやれ。」

 

 ブチャラティがジョルノをボスの座に上げることを提案した。

 理由を聞くと、これまでのジョルノからブチャラティは、自分より黄金のような夢と精神を持つジョルノこそ、新生パッショーネの後釜にふさわしいと考えたのだとか。

 ジョルノは、出会った当初からただ者じゃ無かった。それは、これまで行動を共にして来た者達は誰もが理解していた。

 ブチャラティは、麻薬を憎み、ジョルノはギャングスターになりたい。形こそ違えど、組織を変えるという共通の目的を持った二人は協力することにしたという話をした。

 ブチャラティを推す者もいたが、結局は納得し、ジョルノをパッショーネの新たなボスの座へ座らせることになった。

 ブチャラティは、ナンバー2となり、ミスタがナンバー3となった。(※2や4関係はイヤだとミスタ自身が散々ごねた)

 トリッシュは、今更普通の生活に戻るのも…っと零していたが、ブチャラティに学校だけはちゃんと行けと怒られ、渋々帰されたが(※ディアボロの悪影響がないよう身の回りに注意を払うため遠からず近からず見守り役はつけて)、その後のことを語ると、意外なことに歌手としてデビューを果たして、学業と両立しつつ、あっという間に地元では知らぬ者はいないアイドルとなった。ブチャラティ達に会うことは、ブチャラティが反対したものの、結局は大切な交友関係と言うことで押しに負けて許して貰えた。もちろんギャング抗争などに巻き込まれないよう徹底的にそこは注意して貰ったうえであるが、スパイス・ガールの使い手でもあるトリッシュは、すっかり強かな女になっており、そこらのギャング程度じゃ勝てないレベルだった。いっそ入団します?なーんて冗談めかしてジョルノが零したほどである。(※ブチャラティにメッチャ怒られる)

 承太郎はSPW財団と共に、改めてイタリアに騒動を撒き散らした元凶となったブルー・ブルー・ローズの件が片付いたので、イタリアから出られなかったミナミの身柄の保護をしてもらったお礼をと申し出たが、ジョルノは、むしろ危険な状況に持ち込んでしまったことなどの謝罪も含めて、これからは矢のことも含めて協力体制をしてもらえれば助かるということで話はついたらしい。

 

 ちなみに……、シーザーは、ブチャラティ達の仲間であったアバッキオが、シーザーが追いついたサルディニア島で死んだこともあり自重していたそうだが、騒動が収まってからミナミを無理矢理攫ったことなどを含めてジョルノ達を思いっきり殴ったそうだ。(アバッキオについては、死んでからあの世で殴りに行くとコメント。シーザーの怒りのデカさにジョルノ達はさすがに震撼したとか?)

 

 数週間の末、SPW財団の超常現象研究科の調べで、ミナミの身体と精神に影響は残っていないと判断された。

 3人目は、ミナミ曰く、いるけど眠っているとのことだし、ブルー・ブルー・ローズからも邪視が消えていた。

 ゴールド・エクスペリエンス・レクエイムによって歪に進化したブルー・ブルー・ローズと、3人目がリセットされたのだという現象だった。

 3人目については、ブルー・ブルー・ローズとの融合度合いを考えると分離は不可能であり、ミナミの中から消すこともできない。ミナミと3人目が融合していて、スタンドも融合してブルー・ブルー・ローズという形に収まったいるのだからハナから不可能なのだ。

 レクイエムが、なぜ3人目を生かしたのかは分からないが、それが生きて償えという啓示だとしたら、経過観察という形で3人目の動向を監視する必要がある。

 元々ミナミの能力から、徹底マークされていただけに、それ以上に窮屈さを押しつけなければならない事情を説明したところ、ミナミはあっさりそれを受け入れた。

 そもそもの原因がブルー・ブルー・ローズと、今まで存在に気がつかなかった3人目にあるのなら、自分も償わないといけないと言った。

 3人目をそんな風にさせたのは、自分が弱かったからだと。だから強くなりたいとも言った。

 承太郎を含め知人達は、無理はするな、お前のせいじゃないと言ったが、これから先、3人目と生きていかなければならないんだからとミナミは微笑んだ。

 3人目の経過観察と共に、ミナミに無理をさせないためにもこれからもっと精力的にミナミを守っていこうと承太郎達は誓い合うのであった。

 

 そうして、日本への帰国まで準備の日々が過ぎていく中。

「な~あ、ミナミ。もうすぐ帰るんだよな?」

 豪華な病室でナランチャがミナミと話をしていた。

「いい加減帰らないと、母さん達に心配掛けるし、学校もあるしね。」

「……そっか。そうだよなぁ。」

「なに?」

「あ、いや…別に…。なぁ学校って楽しい?」

「うん。まあね。」

「……俺、全然学校行ってなかったんだ。」

「…そう。」

「でも、今は学校に行きてぇ。そんでちゃんと卒業して……、日本ってとこにも行ってみてぇな。」

「じゃあ、その時は、私の故郷を案内するよ。」

「マジで?」

「するする。」

「ミナミ……、その…色々とごめんな。」

「なに? 急に。」

「あとで知ったんだけど、俺、敵とはいえ…ミナミの目の前で…。」

「……もう…いいんだよ。」

「本当に、ごめん。」

「もうだいじょうぶだよ。私は。」

「……。」

「ナランチャ?」

 するとナランチャがおもむろに、ギュッとミナミを抱きしめた。

「……ごめん…。」

「……。」

「俺…、もっとイイ男になるから……。待ってて…くれねぇか?」

「……う~ん…。」

 ナランチャに抱きつかれた状態でミナミは、イタズラっぽく唸る。

「どうしようかな~?」

「なんだよ~。俺ってそこまでガキっぽいかよ?」

「フフフ…、別にそうは思ってないよ。でも、今のままじゃ、私、ナランチャのこと弟みたいにしか見えない。」

「えー?」

「せめてシーザーさんよりイイ男になれたらいいね。」

「えっ!? やっぱシーザーってヤツのこと好き!?」

「うーん……、色々とあってね…。好きとか云々じゃないっていうか…。」

「愛してるってこと!?」

「どうかな? 私、誰かを好きになったとか、初恋とかってしたことないから分からないけど。でもね…、ちょっと色々あったときに、『一緒に住まないか?』って言われたときに、顔…赤くなっちゃった。これが好きって気持ちならそうなのかな?」

「ガーーーン!」

「ナランチャ?」

 ナランチャの身体から力が抜け、ズルズルッと床に倒れた。

 

「おーい、ミナミ。なんか食べたい物…、って、どうした?」

 

 そこにシーザー。

「いや…ちょっと…。」

「おい、ガキんちょ。そんな状態でミナミのハートを掴めるわけねーだろーが。」

「うっせーよ、ジジイ!! 究極の若作り!!」

 シーザーがしゃがんでツンツンと突くと、ガバッとナランチャが起き上がり、ウガーっとシーザーに叫ぶ。

「ハハハハ! その若作りジジイに勝ちたかったら、精々頑張ることだな。ガキ。」

「絶対!! 勝ってやる!! あんたよりイイ男になってやらぁ!!」

「フッ。いつでも勝負してやるよ。」

「ウガーー! 大人の余裕!?」

「うふふふ、あははは…!」

 ギャイギャイ大人げなく喧嘩している二人の様子がおかしくってミナミは笑った。

 

 その後であるが、フーゴから文通したらどうかと提案され、ナランチャは早速ミナミに住所を聞いた。

 だがミナミは、文通にトラウマがあり、難色を示したものの、最終的には国際電話がお金がかかるということで、文通を許したのだった。

 なんで文通が嫌いなのかと聞かれ、ミナミは、かつてうっかり殺人鬼と文通し、うっかりその相手に好意的な感情を抱いたことを話した。

 それを一緒に聞いていたフーゴとミスタが、石になっているナランチャの肩を眉間を手で抑えながらポンッと叩いた。ドンマイ…っという意味で。

 

 

 




文通と国際電話…、実際やったらどっちが費用かかりますかね?
国際電話は、時間帯を気にしないといけないし、いつでもかけられるわけじゃないだろうしね。

さて…、シーザーと、ナランチャ……、どっちを付き合わせるか…。そもそも旦那候補は別にもいるけどさ。花京院とか。
シーザーは、改心したとはいえ、過去に殺人以外はやったという経歴の持ち主だし…。
ナランチャは、ギャングだし…。

あれ? なんか碌な事無い?
まあ、スタンドを持っている時点でまともな家庭は望めないのかなぁ……。


2020/03/18

 もうちょっと続けようとも思ってましたが、これ以上続けてもだらけそうだったのでここで終わらせます。

 お気に入り、感想、評価、ありがとうございました。


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番外編 杜王町へ
番外編1  楽しい楽しい杜王町へようこそ


番外編始めました。


ナランチャ(※フーゴ同伴)が、杜王町へ旅行しに来たという話。


まずは、日本と到着と、杜王グランドホテル、チェックイン。


短いです。


恥知らずのパープルヘイズネタがちょこっと。


 

「やってきたぜーー! ジャッポーネ!!」

「ナランチャ、はしゃぎすぎです。目立つ。」

 

 あれから、数ヶ月後。

 ジョルノとブチャラティの手際よさで、ボスを失ったパッショーネをあっという間に統率した。

 麻薬チームの存在といった問題はあったものの、忙しい日々と後処理も少しずつ終わりつつある。

 そんな折、学校の夏休みの期間を利用して、ナランチャが日本に行きたい!っと騒いだ。

 行くのは別に問題ないが…、問題なのはナランチャが無事に日本に行って、帰れるかという問題があった。なので、手が空いてたフーゴが保護者的立場で同伴して行くことに。

 日本の空港に着いてはしゃいでるナランチャを見失わないようしながら、フーゴは、ミスタが残念がっていたのを思い出す。ナランチャの恋模様を見れないのが、と。

 

 日本に来たのは、ミナミに会うためだ。

 もちろん手紙と国際電話でやり取りをして、会う日程を決めてある。

 

「あわよくば、ミナミのご家族に挨拶できればいいね。」

「お、おい! それはちっとばっかし早すぎ!」

「なにも結婚前提で挨拶するわけじゃないでしょう? なにを焦ってるんです?」

「えっ…、あ…。」

「まだ付き合っても無いのに、いきなり結婚相手だなんて言ってみろ、向こうがひっくり返るだろうし、最悪殴られる。」

「あ…、そういえば、ミナミのお爺ちゃん、警官だって聞いてた…。」

「それだとますます僕らの本業のことは話せないな。」

「うわー、どうしよう! 今更だけどメッチャ緊張してきたー!!」

「僕らは、あくまでミナミの友人の学生って事で通す。学生らしくしてれば良いんだ。」

「フーゴぉ…、お前いてくれて助かる~!」

「…はあ……、僕を行かせたのは正解だったよ。ボス、ブチャラティ…。」

 わーん!っと泣きついてくるナランチャの頭を撫でながら、フーゴはため息を吐きつつそう呟いたのだった。

 その後、空港で手続きをして、空港入り口で待っていると…、やがて待ち合わせ時間が迫り。

「ミナミ!」

 いち早くナランチャが彼女を見つけた。

 ナランチャが手を振ると、ミナミが手を振り返す。いてもたってもいられないとばかりに、ゴロゴロと旅行鞄を引っ張ってナランチャが駆け寄っていった。

「久しぶりだね。」

「マジ、久しぶり! 会いたかったー!」

「うひゃっ!」

 もう辛抱たまらんとばかりに、ナランチャにハグされるミナミ。

 フーゴはそれを見ていて、ナランチャのケツに犬の尻尾を見た気がした。

「身長伸びた?」

「そうか?」

「うん。」

「頑張って牛乳飲んでますから。」

「言うなよ!」

「うふふ。じゃあ、行こう。杜王町へ。」

 タクシー乗り場からタクシーに乗り、ミナミ、そしてナランチャとフーゴは、杜王町に向かった。

 

 

 

 

 まずは、杜王グランドホテルでチェックインし、着替えなどの重い荷物を置いていく。

「でも、本当にいいのかよぉ?」

「なにが?」

「ここきっとたっかいぜ~? なのに俺ら余裕で予約取ってさぁ。」

「ああ、その辺のことはボスのご厚意だから問題ないさ。せっかくのご厚意なんだから甘えればいい。受け取っておこうじゃないか。」

「あとでデッカい利子払わされなきゃいいけど……。」

「それより、ミナミを待たせてるんだ、早く行こう。」

「分かってるよ!」

 貴重品などを手持ちの小さめの鞄に入れて出発。そして外で待ってたミナミと合流した。

 

 時間は、お昼ご飯時。

「美味しいとこ予約してあるんだ~。」

「それってまさか、トニオとかいうイタリアン料理人の?」

「そうだよ。」

 ミナミは喜々として、二人をトニオの店、トラサルディーに案内した。

 

 

 




二人が宿泊する杜王グランドホテルの部屋は、お高い部屋です。

次回は、トニオさんのお店でご飯。

さて、どんな料理を出そうかな?
イタリア料理のレシピサイトを参考にしたいと思ってます。

日本に来て、いきなりイタリア人にイタリア料理食わせるのはおかしいかな……。でも名所ですから。
それに、トニオさんは、色んな国で修行してるし、純粋に美味いだろうし。


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番外編2  イタリア料理店 トラサルディー

楽しい内に、どんどん行くよー!



っというわけで、トニオさんのお店編。


提供料理については、医学的な根拠とかは抜きにして、イタリア料理レシピから抜粋しました。


フーゴが一部キャラ崩壊しています。



 想像以上に小さな店に、ナランチャとフーゴは驚いた。

「まさに隠れ家的店だね。」

「この店の特徴は、コレ。お客様次第ってことかな。」

「なんだソレ? そんなんでイタリアーノの俺らを満足させられんのかぁ?」

「入れば分かるよ。」

 クスクス笑いながらミナミが店の扉を開けた。

「トニオさーん。予約した、東方です。」

「いらっしゃいませ。ようこそおこしくださいました。」

「うわ、マジでイタリアーノだ!」

 店の奥から現れたシェフの男に、ナランチャがおかしそうに笑う。

「ご友人の方ですか?」

「うん。今日は、二人にご馳走したくて。あっ、もちろん私も食べます。」

「ありがとうございます。では、お好きなお席にどうぞ。」

「席、つーか、テーブル二つしかねーじゃん。」

「オー、申し訳ありません。当店は、私がシェフとウェイターをしていますので、目が行き届く範囲でしかお客様をお迎えできないのです。では、こちらにもうひと席分をご用意します。」

「ありがとうございます。」

 そうしてひとつのテーブルに三つ席を置いて貰った。

「では、皆さん、ミナミさんはご存じですが、改めてご説明させていただきます。当店は、お客様次第でご提供するお料理が変わります。私は手を見れば、お客様の健康状態がすべて分かります。それで料理が決まりますので…、お手数ですが、手をお見せくださいませ。」

「手を見る~? それでなにが…。」

「オウ…、あなたとっても寝不足ですね。2、3日前くらいからまともに寝ていないでしょう。」

「えっ!? なんで分かんの!?」

「それに右手にできかけの鉛筆タコができてて、右手の指が痛いはずです。慣れない勉学で目も疲れていますね。それに寝不足が祟って、胃腸が少し荒れています。」

「なんで、なんで!?」

「鉛筆だこは分かるが…、胃腸の荒れまで分かるんですか?」

「はい。そうです。ああ、あなたの方は、最近、腰がこっていますね。あと、足に軽い水虫があって、切れd…、オウ…!」

「落ち着け、フーゴぉ!!」

 言いかけたトニオを殴ろうとしたフーゴをナランチャがすんでで止めた。

「分かっても口に出すんじゃねーー!! ちったぁ客のこと考えろ、ゴラァ!!」

「それは、誠に申し訳ありません…。」

「次言ったら、ぶち殺す!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

 ミナミもフーゴを押させるのに協力しつつ、トニオに謝った。

「申し訳ありません。しかし、これは私の店の方針なので、誠に申し訳ありません。あなたは、少々(?)感情が高ぶりやすいようですね。分かりました。ミナミさんは、肌の艶が少々悪いようですね。それ以外は健康です。」

「じゃ、お願いしまーす。」

「はい。少々お待ちを。」

 ニッコリと笑顔を浮かべたトニオは、店の奥へ行った。

「なぁ…、ミナミ…。だいじょうぶか、この店? なんか怪しくね?」

「最初は怪しいって思ったよ。でも食べたら印象変わった。まあ、まずはお水でも飲んで落ち着いたら?」

「……ったく…。……むっ!? こ、これは…!」

「どうした、フーゴ?」

「な、なんて美味い水だ! 飲んでみてくれ、ナランチャ!」

「えっ? ん? んんん!? うっめーーー! なんだこれ!」

「ビックリするでしょ? ここお水から美味しいんだよ。」

「プッハー! くー、水でこんな美味いんなら、なんか期待できる気がしてきた! ん? なんか目がしょぼしょぼしてきた…。」

「涙が出てるじゃないか。いくら美味しくてもそこまで…。」

「あー…、来たね。早速。」

「えっ?」

「うぇぇ…なんか、涙が、止まらねぇ…、うぅうううう!!」

「な、ナランチャ!? 目が、目がしぼんでるぞ! ミナミ、コレは!?」

「だいじょうぶ、すぐ治まるから。」

「だが…!」

 

「ミナミさんの言うとおりです。」

 

 そこへ料理をワゴンに乗せて運んでくるトニオが現れた。

 目がしぼむほど泣いていたナランチャだったが、急にフッと涙が止まり、みるみるうちに目が治った。

「ナランチャ…? だいじょうぶかい?」

「ハーーー! スッキリした! メッチャ爽快! あんな疲れてた目が治った! メッチャ周りがよく見える気がする!!」

「シェフ! これは、いったい!?」

「そのミネラルウォーターは、5万年前の雪解け水です。眼球内の汚れを洗い流し、睡眠不足と勉強による目の疲れを解消する水です。あなたが飲んでも涙が出ないのは、睡眠時間と目の疲れがないからですよ。」

「り…、理屈は分かるが、異常だぞ!」

「だいじょうぶだって。トニオさんの腕は確かだから。」

「水、お代わり!」

「承知しました。では、前菜の方もご用意しましたので。まずは、こちらを。」

 ナランチャのコップに水を注ぎ、トニオは前菜をワゴンからテーブルに並べた。

「まず、こちらは、季節の野菜バーニャカウダ。そして、こちらは、ナスのホットサラダ。ミナミさんには、ニンジンのイタリアンサラダでございます。」

「なるほど…、客次第で料理が変わるとは言ってたが、三者三様か…。」

「はい。お客様の健康状態に合わせてお作りしますので…、提供する料理がそれぞれ変わることがございます。」

「メッチャ良い匂い!」

「いただきまーす。」

「……。」

 出された前菜は、とても美味しそうだし、実際食べてみればメッチャ美味かった。

「ウンマァァァァイ!! このニンニクの効いたマイルドなソース! 野菜の歯ごたえと甘みつーの!? それと相まって、メッチャうめーーー!!」

「静かに食べれないのかい?」

「本当は、ナランチャみたいに騒ぎたいでしょ? 身体プルプルしてる。」

「うっ…。」

 指摘されてフーゴは、赤面した。

 やがて……。

「ん? なんか右手のタコのとこが…、かゆい…。」

「まさか…。」

 ナランチャは右手を気にし、フーゴは自分の腰を押さえた。

 ミナミは、無言でポリポリと顔を掻いていた。

「か、かゆい…、かゆ、かゆかゆかゆ!!」

「うあぁぁあ! こ、腰の歪みが!?」

 ナランチャは、ボリボリと指を掻き肉をそぐ勢いになる。フーゴは、ひとりでにゴキゴキとなる腰に悶えた。

 そして、しばらくしてそれらの症状が治まった。

「掃除をしますので、少し失礼します。」

「あ、ああ…。」

 ナランチャは、自分の指からそげ落ちた、鉛筆だこだったモノの残骸を唖然として見ていた。

「やはり異常だ! この店はどうなっているんだ!?」

「まあまあ、種明かしは、全部食べてからで良いでしょ?」

「しかしだな!」

「本当は、次の料理が楽しみでしょ?」

「うっ!」

「ビックリするけど、美味いのはマジなんだよな~。こんな美味いイタリア料理なんて、イタリアで5本の指で数えられないほどないんじゃね?」

「確かにそうだが…。」

「トニオさんは、イタリア料理を下地にしてるけど、色んな国で修行して良いところを取り入れてるんだって。このお店も、お客さんに快適に過ごしてもらうためなんだってさ。」

 

「お待たせしました。次の料理です。」

 

 トニオが次の料理を運んできた。

「こちらは、大葉とサルシッチャとズッキーニのパスタ。そして、こちらは、アサリとセロリのスープパスタ。ミナミさんには、塩麹とタコの塩レモン冷製パスタでございます。」

「なあ、トニオさん、ピッツァないの? ピッツァ?」

「申し訳ありません。当店は、料理をお客様次第でお出ししているので…。追加注文でしたら承りますが。」

「ちゃんと喰うからさ。ピッツァくれよ、マルゲリータにキノコ乗せたの!」

「追加注文、承りました。では、ごゆっくりお楽しみください。」

「よく食べるね?」

「へへ。急に食べたくなったんだ。ミナミも喰う?」

「じゃ、一切れ頂戴。」

「オーケー!」

「う……。」

「フーゴ?」

「美味い…美味すぎる!! セロリの癖の強さがアサリの潮の香りと調和して、なによりこのスープの旨味!」

「ふ、フーゴ?」

「なんだい? ナランチャ?」

「な……、なんか雰囲気が……。」

「えっ? どうしたんだい? 変な顔をして。」

「いや! 変なのはフーゴの方だって! そんなキラッキラッ!? 温厚な好青年みたいなオーラ纏ってたっけ!?」

「いやぁ……、今まであれほどに湧き上がってきていた怒気がウソのように晴れやかに消えたんだ…。世界ってこんなに美しかったんだね…。」

「うわああああああ! フーゴが変になったーーー!!」

「たぶん、記憶ごと、この時のことは消えるからだいじょうぶだと思うよ。この手のは効果は持続しないから。」

「俺らの記憶は!?」

「……黙っててあげるのが優しさだよ。」

 フッと遠い目をしてミナミが微笑む。

 

「メインです。」

 

 トニオがメイン料理を運んできた。

「まず、こちらがイタリアンミートボールのトマト煮込み。そして、こちらが、ポテトと豚肉のイタリアンソース和え。ミナミさんには、ミラノ風カツレツです。」

「なんだか、お尻が…熱いなぁ…どうしちゃったんだろう?」

「お、俺も腹がなんか…、グルグルいって…。で、でも美味そうだなぁ…、く、喰うのを止められない!」

「キノコ乗せマルゲリータをもうすぐお持ちしますが、だいじょうぶですか?」

「くれ! すぐくれ!」

「承知しました。」

「うぅうううう!! は、腹が美味さで弾け……、ゲボォ!?」

「うっ!」

 メイン料理を食べたナランチャは腹から腸をぶちまけ、フーゴも食べてから急にテーブルに突っ伏したのだった。

「あーあ…、さすがだわ。もう見慣れたけど。」

 ミナミは、特に症状はなくパクパクと食べたのだった。

「お待たせしました。おや?」

「すみません。回復するまでちょっと待ってくださいね。」

「ええ、分かってますよ。こうなることは、私がよく分かっていますから。」

「トニオさんのスタンド能力は、本当すごいですよね。『パール・ジャム』でしたっけ?」

「ええ。そう名付けました。」

「す…スタンド?」

 ナランチャとフーゴがヨロヨロと起き上がった。

「ええ。私もミナミさんと同じスタンド使いらしいです。この能力は料理修業の時に気づきました。ですが、あくまでも私の料理の薬効効果を高める能力らしいので攻撃性はありませんので。」

「そうそう。今までの現象は、全部薬効効果を高めるスタンド、パール・ジャムの能力だったんだよ。でも料理の味は、トニオさんの腕だから。そこは勘違いしないでね。」

「早く言えよ…。」

「ハ~~、お尻の痛みと不快感がスッキリした。シェフ、とても爽やかな気分です。」

「ありがとうございます。」

「なあ…、フーゴはいつになったら戻るんだ?」

「デザートを食べ終わったときにはスッキリ治っていると思いますよ。では、こちら追加注文のキノコをトッピングしたマルゲリータです。デザートも間もなくお持ちしますので。」

「美味しそう。」

「ミナミも悪ぃヤツだな…。スタンド使いのイタリア料理店って…。」

「だからこそ、名所なんだよ。」

 ミナミは、ピザを一切れ取りながらクスクスと笑っていた。

 そして、フーゴは、デザートの後、普段の状態に戻った。ナランチャがよかった…っと泣いていて、フーゴは不思議がったのだった。

 

 

 

 

 

 




フーゴからキレたら怖いところを抜いたら、キレてる姿を知っているナランチャからしたら、悲鳴モノかな?
もっと気持ち悪くしたかったけど、私の技量ではこの程度です……。

そしてご飯描写ももっと上手くしたかったんだけど、さすがに億泰レベルは無理でした。

次回は、トニオさんの料理で飛行機疲れも取れたことだし、他の名所を回りつつ、億泰達とかに会わせようかな?


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番外編3  ミナミの友人達と弟

お昼ご飯後、仗助達と出会うナランチャとフーゴ。


短めです。


「おっ! ミナミじゃん。」

「あ、億泰君。」

 アンジェロ岩のところまで来たところで、億泰と出会った。

「だれ?」

「私の弟の友達。」

「あれ~、外国人なんて連れてどうしたんだよ~?」

「私、イタリアに旅行に行ってたでしょ? その時に知り合った人達だよ。」

「ハ、ハロー。えーと、マイネームイズ…。」

「いや、無理すんなって。分かるからさぁ。」

「お、日本語!? ん? 違うな…。スタンドか?」

「当たり。こういう時便利だよね。」

「そっだな。」

「なんか馬鹿っぽいぜ。」

「ナランチャ、初対面に失礼だ。」

「本当だよ。」

「いいよ、別に、俺マジで馬鹿だしよぉ。」

「あっ、でも良い奴だ…。ごめん。」

 億泰の素直さにさすがに気を悪くしたナランチャはすぐに謝罪した。

「紹介するよ、彼は、虹村億泰君。私と弟の仗助の同級生なの。」

「俺、ナランチャ。こっちはフーゴってんだ。よろしくな。」

「よろしく~。でよぉ、どうしたんだ? 夏休み中に観光?」

「まあ、そんな感じかな?」

「君もスタンド使い…というわけか。」

「おお、そうだぜぇ。」

「ミナミ、君の身辺はスタンド使いだらけか?」

「色々とあってね。杜王町は、スタンド使いが多いよ?」

 

「あっ、ミナミさんと、億泰君だ。」

「こんにちは。」

 

「康一君、由花子さん。もしかして、デート?」

「え、は、はい…そんな感じで…。」

「そうよ。」

 照れる康一と、照れつつもうっとりしている由花子であった。

「デート……。」

 ナランチャが、ポツリと呟いてミナミを見た。そんなナランチャの肩に、フーゴがポンッと手を置いて首を横に振った。

 

『アギ……。』

 

「ん?」

 なんか人っぽい顔に見える大岩から声が聞こえた気がした。だが岩を見ても何もないので気のせいだと思った。

「ミナミさん…、そっちの人達って…、まさか?」

「イタリアに行ったときに知り合った人達…。まあだいたい当たってると思うよ。」

「だいじょうぶなんですか!?」

「おい、なんだよ?」

 いきなりすごい剣幕で叫ぶ康一にナランチャはたじろいた。

「ミナミさんに酷いことしてみろ! 僕らが許さないぞ!」

「ミナミの敵? なら私も許さないわよ。」

「なんだと!? そんなことするかよ!」

 心外だとばかりにナランチャが反論した。

「だいじょうぶだよ、康一君。心配してくれてありがとう。」

「本当にだいじょうぶですか?」

「二人のことについては、財団も監視してるし問題ないよ。」

「えっ!? 俺ら監視されてるの!?」

「それは甘んじて受けれましょう。仕方がないんだから。」

 心当たりがあるフーゴは、そう言ってナランチャを落ち着かせた。

「ところで、ここで誰かと待ち合わせとは聞いたけど…。誰が…?」

 

「姉ちゃーーーん!」

 

「遅いよ、仗助。」

「へへ、ごめんごめん。」

「んん?」

 ナランチャが、眉をつり上げてミナミと見比べた。

 髪の色と顔立ち、そしてなにより目の色が…似てる。つまり…。

「弟さん?」

「そうだよー。双子の弟の仗助。」

「東方仗助っす。よろしく。」

 ぺこりとお辞儀をする仗助。外見はかなり不良じみているが、中身は好青年らしいことがそれだけで分かる。

「なんかぺったんこで、ハンバーグみてぇな髪型~。」

「ちょっ!」

「?」

「あぁ? 今お前、なんつった? 俺の髪型がなんだっ…って、ゴハッ!?」

 急に態度が急変した仗助を掴んで腹に膝蹴りを入れるミナミ。

「ごめん、ごめん! うちの弟、髪型のこと言われるとすぐキレちゃうの! だから思っても言わないで!」

 腹押さえてうずくまる仗助を余所に謝りまくるミナミ。ナランチャとフーゴは唖然とした。

「普段はとっても良い子なの! でも、怒らせると顔とかがまともな形じゃなくなるから気をつけて! お願い!」

「ご、ごめん…、こっちこそ…。だからそんな謝るなよぉ。それにしても、キレやすいってフーゴみてぇ。」

「僕がなんだって?」

「いや、なんでもないって。」

 フーゴからギロリッと睨まれ、ナランチャは降参だと手を上げた。

「ところで…。さっきから俺らのことつけてる野郎がいるけど……。どうする?」

 ナランチャがそういうと、ミナミは周りを見回し、ある人物を見つけた。

「露伴さん……。」

「なーんだよ、露伴じゃねぇか。」

「チッ。気づかれてたか。」

 物陰からスケッチブックを手にした男、岸辺露伴が現れ、こちらにやってきた。

 あっ…、これは大変なことになりそう…っと、東方姉弟は、同じ事を思ったのだった。

 

 

 

 




ナランチャは、日頃の癖(エアロスミスによる探知)でストーカーしてきてた露伴を発見。

次回は、露伴によるひと騒動かも。
スーパーフライのところにも行きたいし。(手土産に調味料とお菓子とか持って)


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番外編4  出られない鉄塔

出られない鉄塔のスタンド、スーパーフライ。

コイツ、アヌビス神みたいに今後スタンドだけが一人歩きするのかな?


鋼田一は、すっかり反省しているのでバトルとかは一切ありません。


 スーパーで、調味料と、お菓子をたくさん買っていく。そして町中を外れ、田舎道のような場所を通っていく。

「お菓子はともかく、調味料はなんで?」

 ゴロゴロと台車に乗せて箱詰めされた調味料とお菓子を運んで行く。

「ずいぶんと歩くな。」

「ある意味で名所があってね。」

「おいおい、いくら変な名所つってもなんで、あそこなんだよ?」

「いいじゃん。刺激的だと思うよ?」

「ねーちゃん…。」

「ところでよー…。なんでこの漫画家の先生っつーの? がついてきてるわけ?」

 ナランチャが、露伴を指差す。

「僕がどこに行こうと僕の勝手だろう?」

「さっきからずっとそう言ってますよね? 目的は、僕達じゃないんですか?」

「なぜそう思うんだい?」

「さっきから僕らのことを足の先から頭まで観察している。それにスケッチまでとっているでしょう。」

「えー! さっきから視線を感じると思ったら!」

「ふむ…、やはり学生であるはずがないな。その感性や佇まいからして、最初からただの一般人であるはずがないとは思ってたよ。」

「!」

「はあ?」

 事情を知らない仗助だけが首を傾げる。

「……目的は?」

「話されると困るかい?」

「当たり前だ。僕らはあくまでただの学生としてこの町に旅行に来ただけのイタリア人なんだ。」

「…あんた…、何者だよ?」

「僕は、漫画家、岸辺露伴。それ以上でもそれ以外でもないさ。」

 露伴とナランチャとフーゴのにらみ合いが発生する。

「あっ、見えてきた。あそこだよ。」

「? あれって電柱?」

「いや、鉄塔だ。それも送電鉄塔。」

 

「こんにちは。ミナミさん、仗助、それに先生も。」

 

「あっ、未起隆(みきたか)くん。」

「あの送電鉄塔に御用ですか?」

「だれ?」

「宇宙人の未起隆くん。」

「うちゅーじん~?」

「ま、ホントかどうかは分かんないけどね。」

「支倉未起隆(はぜくらみきたか)です。地球での偽名です。本名は、ヌ・ミキタカゾ・ンシといいます。年齢は、216歳。」

「……ミナミぃ…。ミナミの故郷ってこんなのばっかなの?」

「そう言われるのは心外だけど、言われても仕方ない変な町になっちゃったんだよ。」

「それはそうと、彼の所に行くんですね? わたしも行こうと思ってたところなので一緒に行きましょう。」

「いったいなにがあるんだい?」

「行ってみれば分かるよ。」

「そればっかりだ。」

 そう言いつつ、未起隆も一緒に鉄塔へ行くことになった。

 鉄塔につくと、その鉄塔が普通じゃないことにナランチャとフーゴはすぐに気づいた。

「おーい!」

 ミナミが上に向かって声を掛ける。

 

「おや~? ミナミちゃんじゃん。それに未起隆も来てくれたのかい。」

 

「ひ…、人が住んでるのか!? こんなところに!」

「し、信じられん!」

「ね? すごいでしょ。調味料とお菓子持って来たんだけど、写真お願いできる?」

「おお! ありがとう!」

「では、わたしは持って来た荷物を上にあげるの手伝いますね。」

 そして未起隆の身体が一瞬にして紐状に変化した。

「うお! やっぱスタンド使いか! ってことは、こっちの鉄塔にいるのも…。」

「そうだぜー。この鉄塔自体がスタンドでよぉ、グレートなことに入った人間を閉じ込めるんだぜ。絶対に入るなよ? そうなっちまったら、ひとりしか出られねぇ。最後に残ったひとりが無理に出ようとすると鉄塔の一部になっちまう。」

「げっ! そりゃ大変だ!」

 

「私はここから出る気はありませんよー。だから閉じ込めるなんてことはありませんから。」

 

 未起隆が運んでくる調味料とお菓子の箱を受け取りながら、鉄塔のスタンド、スーパーフライの本体(※本人では制御不能スタンドで、スタンドが一人歩きしている)、鋼田一豊大(かねだいちとよひろ)(※偽名)がそう言ってきた。

 そして荷物を受け取り終えると、スルスルとロープで降りてきて、鉄塔の中の地面に降りた。

「どこで写真撮ります? 引っ張り上げるから鉄塔の上に上がるかい?」

「う~ん、外側から生活風景を撮った方がいいような…。」

「ある意味で珍しい光景だ。名所と言われるのも頷ける。」

「じゃあ、そうしましょうか。」

 そう言って鋼田一はロープをすいすいと昇っていった。

「すげー身のこなし…。」

「あの人、3年以上ここで暮らしてるんだってさ。だから手のタコとか握力とかすっごいの。」

「3年!?」

「いいえ、もう4年になる。」

「1年増えた!」

「スタンドのせいで仕方なく住んでたんだってさ。でも仗助達に負けちゃって、もうここでずっと暮らすって誓ったんだよね?」

「そんなこともあったな~。」

「ひっ…、その件については…、本当に反省してますから。それに元々他人がイヤでここに住み始めましたから。住み始めてスタンドが発動したのは想定外でしたけど…。」

「もう怒っちゃいねーよ、そんなビビるなって。」

「なんか…色々とあったんだな?」

「あったんだよ。色々と。」

 私は見てないけどっとミナミは、苦笑いした。

「君達、こんな辺鄙なところまで歩いて喉が渇いたんじゃないかい?」

「ん?」

「よかったら我が家でお茶でも飲んでいかないかい?」

「露伴…、なんか企んでねーだろーな?」

「ふん。人を疑うのもたいがいにしろよ?」

「お前なぁ…、康一にやったこと覚えてねぇのか?」

「じゃあ、仗助? あんたが露伴先生にやったこともどーなのさ?」

「うっ!」

「ああ。よーく覚えているさ。」

「い…いや、そ、それは…。」

「えっ? なになに? メッチャ険悪な空気になってんだけど?」

「…まあ確かに喉は渇いたな。」

「そうか。なら写真を撮り終えたら、行こうじゃないか。」

 険悪なムードの中、フーゴがそう言った。それを聞いて露伴は、一転して態度を柔らかくした。

「そう言って…、本当は取材目的でしょう?」

「そうだが?」

「えっ? 取材?」

「露伴先生って、良い漫画描くためなら手段選ばないところがあるからさぁ…。」

「なになに? 俺ら何されるの?」

「取材をさせてもらったお礼のお金なら出すよ。心配ならミナミが監視役としてついてくればいい。」

「俺は?」

「僕としては、お前だけは家に入れたくないんだけどね。どーせ断ったってくるだろ?」

「かー! いちいち癪に障るな!!」

「フーゴぉ…、俺なんかやな予感しかしないよー。」

「タダじゃないだけまだいいじゃないか? 取材費をふんだくればいいだろう?」

「そうだけどよー…。」

「のど渇いたな…。」

 フーゴは、のどの渇きを感じているのかのどを指で触っていた。それを見た露伴がクスリッと笑う。

「じゃあ、写真も撮ったし、行こうじゃないか。」

 鉄塔の生活風景という写真を撮った後、一行は露伴の家に行くことにしたのだった。

 

 

 

 




おや? フーゴの様子が?

ところで露伴のヘヴンズ・ドアーって知られずに書き込むってできるんでしょうか?
あれだけ手が早いから可能なのかなぁ…。

このあと露伴の取材(強制)で、ひと悶着起こるという展開にしたい。


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番外編5  露伴からの取材(?)

岸辺露伴の家で。


露伴が、パープル・ヘイズのウィルスに興味津々(!)。


 露伴の家に来たが、居間にミナミと仗助、ナランチャとフーゴは、露伴の仕事部屋に連れて行かれた。

「んで? 俺らに取材ってなに?」

 お茶はそれぞれ出されたが、ナランチャは手をつけない。ムスッとして露伴を睨む。

「ずいぶんと不機嫌だね? ミナミと引き離されたのがよっぽどイヤだったかい? あんなあからさまな視線を受けてて気づかない女に恋するなんて、難儀だね。」

「いいんだよ! あんたにゃ関係ねーだろうが!」

「僕も彼女には興味があるって言ったらどうするんだい?」

「なっ!?」

「いい加減にしてください。ナランチャをからかうのは。」

「なにー!?」

「ふふふ…。単純で頭の悪いヤツほどからかいがいがあるってものでね。つい。」

「てめー!」

「おっと、ここは日本だ。下手に暴力沙汰になったら面倒だろう? 君達のような裏社会の人間が蔓延るイタリアと違ってさ。」

「ぐっ…!」

「さて、これから君達は、僕の作品のモデルになってもらうよ。」

「了承なんてしないが?」

「返事はどうでもいいんだ。どうやっても君達は僕の作品のために役だってもらうからね。」

「! エアロス…。」

「ヘブンズ・ドアー!」

 ナランチャとフーゴがハッと気づくよりも早く、露伴のスタンド、ヘブンズ・ドアーが発動し、二人の身体が一瞬にして本や、巻物の紙のようにペラペラにほぐれた。

「は、早い!?」

「なんじゃこりゃー!?」

「ふふふふ…、では、君達の人生を見させてもらうよ。」

「ギャー! やめろー!」

「君は、ナランチャ・ギルガ。17歳。最近学生に戻ったようだが、数ヶ月前まで学校に行かずギャング一筋でブチャラティという人物の下で働いていた。今も学業の合間にギャング稼業をしているようだね。スタンドは、エアロスミス。どんなスタンドなんだい?」

「元に戻せよ!」

「まあいいや、書き込めば早いか。」

 ナランチャの言葉など聞かず、本のように開いたナランチャの顔に、字を書き込む露伴。

 するとひとりでにナランチャのエアロスミスが出た。

「えっ!?」

「お前! 人の身体を資料に変えるだけじゃなく…書き込みまでできるのか!?」

「ああ、そうさ。これが僕のヘブンズ・ドアーの能力だ。どれ、君の方も拝見させてもらうよ。ふむふむ…、本名はパンナコッタ・フーゴ。16歳? おや、ナランチャ君より年下なんだね。ほうほう、なるほど飛び級で大学まで行ったが、そこで男性教授に言い寄られて…。」

「黙れーーー!!」

「うわ、フーゴ! ダメだ!」

「スタンドは、パープル・ヘイズ。殺人ウィルスを操るが、敵味方問わず巻き込む、本体すら危ない危険極まりないスタンドか。だが、無駄だよ。」

「!?」

 怒りの勢いで出してしまったパープル・ヘイズがまったく言うことを聞かず露伴の横に忠実に佇んでいて、フーゴはギョッとした。

「パープル・ヘイズの制御は僕が握ったからね。さて、殺人ウィルスとやらがどの程度の威力なのか調べさせてもらうよ。ちょうど資料のためにと買った、爬虫類のエサ用のハツカネズミがいるんだ。」

「やめろ! こんな日の光が入らない、室内でばらまいたら…。」

「ところで、君達…、これだけ騒いでても居間にいるあの二人が来ないのを不思議に思わないのかい?」

「ハッ!?」

「実は、ちょっとしたことで家が火事になってしまって、その改修の時に改造したんだ。防音だけじゃなく、防弾性も高く、億泰みたいな削り取る系じゃなければ簡単には壊せない室内にしたんだ。直感で異変には気づいているだろうがね。入るのは簡単じゃない。ナランチャ、君のエアロスミスのレーダーなら見えるだろう?」

 言われてナランチャは、レーダーで外の呼吸が二つあることに気づいた。間違いなくミナミと仗助だろう。

「さてと、早速だが、殺人ウィルスの威力を…。」

「ダメだって言ってんだろがーーー!! 死にたいのか!? 馬鹿なのか、アホなのか!? 逃げ場のないこんな密室でウィルスをばらまけば、たちまち30秒で溶けて死ぬぞ!?」

「ほう! なるほどなるほど。それは危険だ。だが余計に興味が湧いてきたぞ! この拳にあるカプセルの中にウィルスが…。」

「やめろーーーーーー!!」

 

 

 ガチャッ

 

 

 すると、部屋の扉の鍵が開く音がした。

「!」

 ギイイッと音を立てて開かれた戸の向こうには、血管浮かせたお怒り仗助と、腕組みしてニコニコ笑顔のミナミ(お怒り)。

「あっ。」

 露伴が一瞬ポカンッとした時、ポロリと、パープル・ヘイズの拳にあるカプセルがひとつ落ちた。

「ブルー・ブルー・ローズ!」

 ミナミが叫ぶと、床からブルー・ブルー・ローズが生えてカプセルを受け止めるクッションとなり、そのまま窓へと移動して、窓の鍵を開け、ポイッと太陽の下に投げ出した。

 途端、カプセルが割れて流れ出たウィルスがスズメやカラスに当たったらしく、ブクブクと口から泡を吹いて落ち、ドロドロに溶けた。

「だ…だいじょうぶだよね…?」

「ああ…、太陽の下なら、じきに消毒される。下に人がいないよな?」

「うん。だいじょうぶ。」

「あっっっぶねぇ~~~~~!! あっっっっっっぶなかった~~~~!!」

「ほっほ~、確かにこれを町中でばらまいたらそんじょそこらのバイオテロなんて目じゃないパンデミックになってただろうね。」

「この野郎! 分かってねぇな! これが太陽のない夜だったら、町は崩壊してたんだぞ!? 住民もペットも草木も全部全滅だ!」

 窓の外で死んだ鳥の様子をスケッチする露伴に、フーゴがキレまくる。

「露伴先生…。反省してください。」

「露伴、てめぇ…。」

 ミナミは、笑顔で手をゴキゴキとさせてるし、仗助は背後に、ゴゴゴゴゴ…っとクレイジー・ダイヤモンドを出している。

 動けないナランチャとフーゴは、同じ事を思った。

 

 

 これは、終わった、と……。

 

 

 その後、露伴がどうなったかは、ご想像にお任せします……。でも、死んではいませんし、アンジェロとか、エニグマの少年の末路のようにはなってはいません。

 

 

 

 




矢についての情報や、ブルー・ブルー・ローズ・レクイエム(不完全)のことを見る前に、パープル・ヘイズに興味を持った露伴でした。
露伴が仗助とのチンチロリンの一件の時に家を焼いちゃった後、色々と魔改造したのは捏造です。

なお、鍵を開けたのは、ブルー・ブルー・ローズです。

たぶん、このあと監視役に来ていたSPW財団員が頑張って念入りに滅菌をします。


う~ん。露伴の漫画に使うための資料探しの執念とかすごいからなぁ。
殺人ウィルス持ちのスタンドだなんて聞いたら、食いつきそうな気がして…この展開にしました。もちろんナランチャの人生にも興味を持つと思います。


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番外編6  ミナミと仗助の親

母・朋子登場。


あと、やりたかった仗助とナランチャの喧嘩勃発。


 

「ごめんね…。本当にごめんね…。」

「もういいって。謝んなくても。」

「悪いのは、あのド・アホ漫画家だ。まったく…、知らないうちに僕に書き込みをして誘導するとは…。」

 カフェ・ドゥ・マゴでジュースやコーヒーを飲み直しながら、ミナミが謝り倒すので、ナランチャとフーゴは落ち着けと制した。

 なんとなくのどが渇くような気がするように露伴がフーゴに人知れず書き込みをしていたことも分かった。その書き込みやナランチャとフーゴに本にしてから書き込んだ分は、お仕置きでボコボコ(※ナランチャとフーゴは未参加)にした時に解除されたので問題ない。

「念入りに康一君に尋問させたからだいじょうぶだと思うけど…。」

 あの後、心配してくれていたデート中の康一が直感で異変に気づいてきてくれてたのだ。幸い外に放ったパープル・ヘイズのウィルスは、その頃には完全に死滅していて感染は免れたのでよかった。

 そして念のために溶けて死んだ鳥の処理も、SPW財団に頼み、きちんと滅菌処理をしてもらった。

 デートを邪魔されたとして、追い打ち掛けて露伴は、由花子のラヴ・デラックスでさらにボコにされたのだった……。

「あれで懲りればいいけどね…。」

「いや、ぜってー無理だって。露伴の野郎の性格じゃ…。」

 ミナミがため息を吐いて言っていると、仗助がムリムリと首を振ったのだった。

「なにこの町…、スタンド使いだけじゃなく、変人も多いわけ?」

「それ言われると心外だけど…。」

「あっ、ごめん…。」

「結果的にそうなっちまったんだよな~。少し前は普通の町だったんだぜ?」

「なんかあったわけ?」

「スタンド使いが増えることになった事件があったんだよ。」

「まあ、詮索する気はないよ。しかし、あのイタリア料理店で疲れを取ってなかったら、大変だっただろうな。もしかして、こうなることを見越してたのかい?」

「飛行機疲れを取った方が楽しめるって思っただけだけど…。」

 フーゴが想像した意図はミナミにはなかったが結果的に奇人変人との遭遇による疲れを緩和することになったのだった。

 そろそろ時間的に夕方になる。

 青空が少しずつオレンジ色に変わり始めた頃である。

 1日目から色んな衝撃に出会ったため、せっかくトニオの料理で取れた疲れが溜まっていてぐったりしていた時。

 

「あら、ミナミ、仗助。」

 

「あ、母さん。」

「へっ?」

 美しく可愛らしい日本女性が通りがかり、二人の名前を呼び、ミナミが衝撃の言葉を言った。

 ナランチャ、思わず二度見。

「お母さん!?」

「そうだよ。うちのお母さん。」

「若すぎね!?」

「そっちは…ミナミがイタリアで知り合ったっていうお友達の人達?」

「あっ…、どうも。」

「こんにちは。ミナミと仗助の母です。」

「な、ナランチャです! こっちフーゴ。」

「こんにちは。」

 ナランチャは緊張でギクシャクしつつ自己紹介し、フーゴは特に慌てることも無く普通に挨拶。

 確かにミナミと仗助の母親なのだろう。だが二人に似ていない。ミナミと仗助の容姿からするに、白人の父親の血がものすごく濃いのかもしれない。

 いきなりのミナミの親の登場に固まっているナランチャを、フーゴが肘で小突いた。

「もしかして今から買い物?」

「そうよ。でも、お友達がいるでしょ? 気にしなくていいわ。スーパーで父さんと待ち合わせしてるし。」

「そっか。なあ、今夜の飯なに?」

「ひ・み・つ。」

「えー! そう言って、またそうめんとかじゃねーだろうな?」

「さすがに私だって飽きるわよ。楽しみにしてなさい。じゃ、遅くならないようにしてね。」

 そう言い残して母・朋子は去って行った。

 ナランチャは、ぽかーんと朋子の後ろ姿を目で追っていた。

「似てないって思う?」

「あ…いや、そういうわけじゃ…。」

「私達って、お父さん似だからねー。」

「だな。」

「そんな似てるわけ?」

「そうだよ。写真あるけど、見る?」

「見る見る!」

「あれ? 姉ちゃん、いつの間に…。」

 ミナミが財布から父・ジョセフの写真を出した。

「おお…、これは…。」

「びっくりするでしょー? 今年で、80歳。」

「年の差交際もいいところだろ!」

「でも、ま、愛し合って生んでくれたわけだし、去年和解も出来たし、別に気にしてないよ?」

「俺も。」

 あっけらかんとしている二人の様子に、ナランチャもフーゴもポカンとした。

 ナランチャは、イタリアで1回聞いているが、もう一回聞くと、ここまで修羅場のない浮気交際があるのか…っと思えてくるものだ。

 しかし…。

「シーザーって確か…、82とか言ってなかったっけ? なんで同じぐらいの歳でこうも差が…。」

「波紋の呼吸って言ってね、仙道なんだって。私も生まれつきできるけど、すっごい弱いから。」

「ジジイも昔は、してたらしいけど、奥さんと年取るために止めたんだと。」

「じゃ、シーザーがあえてその呼吸ってのをしてるのは……。」

 ナランチャは、ミナミを見た。

「その想像は当たってると思うっすよ……。」

 仗助が両肘をついて、長いため息を吐き、そう言う。

「あのね…、仗助…。私、お付き合いしてるわけじゃないよ?」

「『一緒に住もうか』って言われて、赤面してた奴の台詞じゃねーよ…。」

「ええー! やっぱそうなの!? ミナミ、やっぱシーザーのこと…。」

「なんであんたが過剰反応…、あっ!」

 仗助はやっと気づいた。

 フーゴは、直感でヤバいと思った時にはすでに遅し。

「ナランチャとか言ったな! ダメ! ダメだからな! 姉ちゃんはやらねーぞ!?」

「ああ!? お前にとやかく言われる筋合いはないぜ!」

「俺、弟っす!」

「弟だからって、姉の人付き合いに口出しし過ぎんなよ!」

「去年、その人付き合いで、危うくとんだトラブルになるところだったんだよ! 口うるさくもなるわ!! ってか、新しい文通相手、あんたかよ!」

 そのトラブルとは、殺人鬼・吉良吉影と文通の末に危うく男女関係になりかけたことだ。まあ、幸いというか…お互いに好意を伝える前に素性が分かったため、危ない段階には行っていないのが救いだったか。

「えっ!? なんで分かったんだよ!?」

「ポストに届く手紙の封筒見りゃ、海外から来たってわかるっすよ! んで、あんたらがイタリアから来るってのも聞いてたしよぉ! 合点いくっす!」

「てめー、まさか手紙盗み見してんじゃ…。」

「できるか! 俺、イタリア語分かんねーし! で!? 姉ちゃん、コイツとはどういう関係!?」

「えっ? 弟みたいな感じ?」

 仗助とナランチャの口喧嘩勃発中、ポカンとしてたミナミが話を振られて、そう答えたのだった。

 まだ弟扱いだったの!?っとナランチャはショックを受けて固まり、フーゴが励ますようにポンポンと肩を叩き、仗助はちょっとホッとしたのだった。

「そろそろ時間も時間だし、ホテルまで送るよ。」

「そこまでしてもらわなくていいよ。僕らだってもう子供じゃないんだし。ナランチャ、お会計してホテル帰ろう。」

 ガーンガーンっとショックを受けているナランチャを無理矢理立たせて、ミナミ達と別れて、ナランチャとフーゴはグランドホテルに帰ったのだった。

 

「あれだけ過剰反応されるってことは、僕らがギャングだってことは、口が裂けても言えないな…。」

 

 ホテルに帰ってから、フーゴはそう呟いていた。

 

 

 

 




ナランチャ……哀れ?


吉良吉影のことでメッチャ神経尖らせてるから、仗助も口うるさくなっています。
姉のことが心配だし、なにより幸せを願っているだけに。

ギャングと知られて、それで結ばれるとなると別居結婚になるかな?
結婚の形にも色々あるわけだし。なにも常に一緒にいるのが夫婦じゃないしね。


次回は、どこ行こうかな?
いっそお家にご招待? いや…それは早いか。


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番外編7  風邪っぴき

ミナミが風邪を引きます。


お見舞いに行く、ナランチャ達。


ナランチャ、ちょっと進展?


 

 翌日。

 連続した奇人変人との遭遇で疲れたナランチャはグッスリと眠って朝早く起きた。

 フーゴはまだ寝ていた。

 ナランチャは、フーゴを起こさないように自分の鞄を探り、勉強道具を取り出す。

 ギャング稼業を続けながら、学業をするのは、ずっと学校に行っていなかったナランチャにはかなり大変だったが、苦では無かった。

 遅れてしまった学力を補うため必死に勉強し、なおかつ、最近では日本語の勉強も始めていた。

 いつかミナミの故郷である日本に行くために始めたことだが、まさか数ヶ月後にこれるとは思わなかった。許可してくれたジョルノやブチャラティに感謝である。

「……朝から勉強とは精が出るね。」

「わっ、起きてたのかよ。」

「今、起きた。」

 その時、ホテルの部屋の電話が鳴る。

 出ると、ミナミからの電話だった。

「ミナミ? おはよ。どした?」

『……ゴホッゴホ…ッ…。』

「ミナミ? おい?」

『…あのね……、風邪引いちゃった…。』

「えっ!? マジで! だいじょうぶか?」

『……そっちはだいじょうぶ…? 移したかも…。』

「俺らはなんともないよ。それよりそっちは?」

『ゴホッ…ゲホッ…。』

「だいじょうぶじゃねーな…。」

『ごめんね…。というわけだから…、今日会えない…。』

「あ、いいよ。そっちが大変なんだし。無理しちゃダメだぞ?」

『うん……。』

「しっかり水分取って、薬飲んで寝とけよ。」

『…ありがとう。』

 そして、もうしんどいだろうから電話を切った。

「で?」

「風邪引いたんだってっさ。」

「残念だったな。」

「そんなこと…ねーよ。」

「文通で家の住所知ってるだろ? お見舞いに行けばいいじゃないか。」

「それは…。」

「やっぱ家族に挨拶しに行くのは緊張する?」

「当たり前だろ!」

「で? 行くのか、行かないか?」

「………………………………………………行く。」

 時間置いて、ナランチャは行くと言った。

 

「やはりそういうと思ったよ。ナランチャ君。」

 

「って、お前!?」

 いつの間にか露伴が部屋に入って来ていた。

「なんの用だよ!?」

「僕は漫画家だ。その都合でどうも相手の体調とかの変化にも敏感に分かってね。ミナミのあの様子だと風邪を引いたと思ったらその通りだったみたいだし、教えてあげようと思ってきたわけだけど? ところでお見舞いに行くなら、オーソンにでも寄ってスポーツドリンクでも買ってあげればいいじゃないのかい?」

「おーそん?」

「コンビニさ。行くんなら善は急げだ。行こうか。」

「なんであんたが先導するだよ!?」

「だいじょうぶだよ。もうなにもしないから。康一君には絶交されたくないしね。」

「……信用できない。」

 フーゴがジトリッと露伴を睨む。

「信用するしないは勝手にしろ。とにかく僕はギャングと一般(?)女子校生の恋愛模様を観察したいだけさ。」

「やっぱりそういう目的かよ…。」

 露伴の目的は、ナランチャの恋模様を観察することだったらしい。

 ハッキリ言って信用ならないが、康一という人物との繋がりを絶たれる方が堪えるようで、フーゴのスタンド、パープル・ヘイズを取材目的に利用しようとしたことをコッテリ怒られてその点だけは反省したらしい。たぶん、本心では反省してないだろうが。

 オーソンのような便利店舗がない地域に住むナランチャ達は、仕方なく露伴同伴のもと、近所のオーソンという店でお見舞いの品を買い、東方家の自宅に来た。

 ナランチャが緊張でガチガチになっているので、フーゴが家のチャイムを鳴らす。

 玄関から現れたのは、ミナミと仗助の母・朋子だった。

「あら、あなた達は…。」

「おはようございます。ミナミさんが風邪を引いたと聞いて…お見舞いに来ました。」

「まあ、ありがとう。あがってあがって。」

「お邪魔します。」

「お…お邪魔します…。」

「お邪魔させてもらいます。」

 フーゴとナランチャ、そして露伴が家に上がった。

 家に上がって早々、仗助と遭遇し、露伴を見つけた仗助は、なんでお前がいるんだ!?っと叫び、朋子からうるさいと言われていた。

「ミナミさんの風邪の具合は?」

「たぶん普通の風邪らしいわ。近所の病院行ってきたけど、夏風邪じゃないらしいし、食欲もあるしそこまで酷くはならないでしょうね。」

 朋子に案内され、ミナミの部屋の前に来た。

「ミナミ。お友達がお見舞いに来たわよ。」

 コンコンと戸を叩き、戸を開けた。

 女子校生の部屋…にしては、殺風景に思えるシンプルな飾り付けのない部屋で、若者らしいといえば漫画がそこらに転がっていることぐらいだろうか。

 ベットの布団の中でモゴモゴとミナミが動く。

「ゴホゴホ……、母さん…誰、来たの?」

「ナランチャ君達よ。」

「えっ!? ちょ、ま…、ゲホゴホ!」

「あーあー、無理すんなよ!」

 びっくりした拍子に激しく咳き込むミナミをナランチャが心配した。

「ちょ…なんで?」

 むくりとミナミが起き上がる。

 シンプルだが胸元が開いたTシャツを着ていて、その胸の辺りが…豊か過ぎるバストで押し上がってて……ブラが…。

「おお…、これは青少年には刺激が強いか?」

 露伴がコメント。ナランチャは、ミナミの胸元に釘付けだった。

「ゴホ…、母さん…、ごめん…。ズボン履くから…ちょっと出て行って。」

「まーたあんたはそんな格好で寝てたわけ? 服がキツいのは分かるけど、ちゃんと着ときなさい。じゃ、殿方達はちょっと出て行きましょうね。」

 そう言って朋子とは、ナランチャ達を部屋から引っ張り出して戸を閉めた。

「ズボンを履いていなかったということは、普段はもっと薄着で寝ているということですかね?」

「いい歳なのに羞恥心がイマイチないのよね、あの子。危なっかしいたらありゃしないわ。」

「……。」

「ティッシュいる?」

「ば…。」

 想像して赤面してしまったナランチャに、フーゴがこっそりと聞いたため、ナランチャは、慌てた。

 少しして戸が開き、ミナミが風邪の熱で赤らんだ顔をして部屋にナランチャ達を招いた。

「オーソンってとこで、スポーツドリンクとか飴とか買ってきたからな。早く元気になれよ。」

「ありがと…。」

 チャンチャンコを着ているが、まったく隠しきれていない胸元がイヤでも目につく。

 始めて出会った当初から、バストが…っと思ってたが、薄着だとこうもすごいのか…っと改めてビックリさせられる。

「そのサイズだと、普通の服屋じゃ入る服がないだろう?」

「あんたデリカシーってもんはないのか?」

 ズバッと聞いてきた露伴に、フーゴがすかさずツッコむ。

「うん。ない。だからだいたいは大きいサイズの店とか…、オーダーメイドとか。」

「あっさり答えちゃダメだろ!」

 あっさりと言っちゃうミナミもミナミだと、ナランチャがツッコむ。

「ところで、どうして露伴先生まで?」

「ああ、それは……。」

 チラッとナランチャを見ると、ナランチャは、ギッと露伴を睨んだ。

「ふーむ、どうやらこう大人数だと、少女漫画のような展開は望めないな。特に何も得られそうにないし、僕は退散するよ。」

「さっさとそうすりゃよかったんだ。」

「まっ、頑張りたまえよ、少年くん。」

「うっせー!」

「?」

 ギャーギャー怒るナランチャと、ニヤニヤしながら去って行く露伴。ミナミはひとりだけ分かっていなかった。

「トイレ借りていいかい?」

「うん…。場所分かる?」

「君のお母さんに聞くよ。」

 フーゴが立ち上がり、しかしその際に。

「ナランチャ…。」

「なに?」

「いいか? 風邪を早く治す方法は……汗をイッパイかかせることだ。分かるな?」

「!?」

 ヒソヒソと囁かれた言葉の意味が分からないほどウブじゃないナランチャはボンッと赤面した。

 そしてフーゴは退室した。

 残されたナランチャは、唖然として戸を見つめていた。

「ゴホゴホ……。」

「あっ…、しんどいよな? 寝とけよ。」

「…ごめん。」

 咳き込んだミナミに、ハッと我に返ったナランチャが心配し、ミナミを寝かせた。

「飴なめるか? スポーツドリンク飲むか?」

「……飴ちょうだい。」

「どれがいい?」

「……パイナップル味ちょうだい。」

「分かった。ほい。」

「ありがとう…。」

 ミックス飴の中から、パイナップル味の取り出し、ミナミに渡した。

「うん…、おいし…。」

 ミナミは、ムグムグと飴を口に含み、元気ない声で言った。

 少し間を置いて、不意に…。

「ねえ、ナランチャ…。前、言ったよね…?」

「なに?」

「『もっとイイ男になるから。待っててくれねぇか』って。」

「あっ…。」

「あれからね……、私なりにいっぱい考えてたんだよ?」

 ミナミが寝返りを打った。

「でもね……私…。」

「俺のこと、弟みたいにしか見えてないんだろ? いいよ。」

「仗助の前だから…ああ言っちゃったけど……、本当はね…。」

「えっ?」

 思わぬ言葉にナランチャは間抜けな顔をした。

「………でも、私……、誰かを好きになるのが怖いのかも。」

「それって…。ああ…、そっか…。」

 ナランチャは、ミナミが危うく殺人鬼と男女関係になりかけた一件の話を思い出した。

「ごめんね……。分かってないわけじゃないんだよ? 弄ぶようなことだってしたいわけじゃない……。答えはちゃんと出さなきゃいけないのにね…。」

「いいんだ。俺は、だいじょうぶだからさ。そんな無理して答えなくていいんだぜ?」

 ナランチャは、ベットに近寄り、ミナミの頬を撫でた。

 熱があり、しっとり汗ばんだ肌の感触が手に伝わる。

「……ごめんね。」

 その手にミナミの手が重ねられる。

 ミナミの目から一筋の涙が零れた。

 初恋に該当することが、殺人鬼だったという一件はミナミの心に大きな傷となっているのだろう。

 しかもナランチャは、ギャングだ。人だって殺している。それが大きな障害となっているのだろう。

「…なあ、ミナミ。」

「……。」

「俺は…後悔なんてしてねぇよ。ミナミのこと好きだってことを。」

「うん…。」

「何年先でもいいよ。もしかしたら一生かかっても出せないかもしれなくってもいいから。だから…、無理だけはしないでくれよ。ミナミが泣いてるのは俺は辛いよ。」

「……。」

「笑ってて欲しい。笑顔が一番だ。」

「……………………………………………ありがとう。」

「……俺…、そろそろホテルに帰るな。」

「もう?」

「ゆっくり寝とけよ。風邪早いとこ治せよ?」

「うん…。」

「じゃあ。」

 ナランチャは、そういうと立ち上がり、戸を開けた。

「……フーゴ、分かってたんだぜ?」

「なんだ? 別れ際に口づけでもすればよかったのに。」

「できるか!」

「ウブだな…、ナランチャ。」

「俺のが年上だぞ!?」

 

「ナーランチャさーん?」

 

「ハッ!? 仗助!」

「弱ってる姉ちゃんになんかしたか?」

「あっ…、なにも…。だ、だからスタンド引っ込めろよ!」

「問答無用!」

「わーーー!」

「ちょっ…うるさい!」

 ミナミの部屋の前でギャーギャー騒ぎになってたら、ミナミが出てきて怒られたのだった。

 

 その後、ミナミは反動で熱が上がったらしいが、翌日には風邪は治ったのだった。

 

 

 




本当は、キスぐらいさせようと思いましたが、それだと仗助が知った時に大惨事になりそうだったのでやめました。
ちなみにミナミは、まだファーストキス未経験です。

ミナミは、あんまり可愛いものとかぬいぐるみとかそういう系統は好みません。嫌いじゃないけど。ただ漫画は好きなので置いてるぐらい。少年漫画系が多いかも。
あと、ブランドが好きな仗助と違って、サイズ重視でブランド物もあんまり好まない。

風邪は治ったので、次回からは再び観光か……、それとも…別の人達に会わせるか……悩む。


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番外編8  振り返ってはいけない小道にて

勢い大事。
書ける内に書く!



今回は、夢を通じて、もう行けなくなった、あの小道にナランチャが?


あと、アイツのスタンドだけが登場します。本体はいません。スタンド単体です。


番外編、初の戦闘です。


 えーん えーん

 

 

「あっ?」

 ナランチャは、その子供の泣き声でハッと目を覚ました。

 だがそこはホテルじゃ無かった。

 ポストがあり、明るい小道だった。

 

 

 えーん えーん

 

 

「誰だ? 泣いてんのか?」

 ナランチャが周りを見回すと、ポストの近くに蹲っている子供を見つけた。

「おい? どうした? こんなところで。怪我でもしたか?」

 ブルネットの髪の毛をした、小さな女の子だった。格好のせいで一瞬少年に見えそうになったが。

「泣いてちゃ分からないぜ?」

 目線を合わせてナランチャが優しく聞く。

『……お兄ちゃん、どこから来たの?』

 顔を伏せたまま少女が聞いた。

「どっから…来たって…、これ夢だろ?」

 寝ていたホテルの部屋じゃないなら、夢であるはずだとナランチャは思っていた。

『あのね…、さっきまでお姉ちゃんと一緒に寝てたの…。でもね…気がついたらココにいたの。』

「なんでだ?」

『あのね……、噂があるの。絶対に振り返っちゃいけない道があるんだって…。きっとここだよ…。』

「振り返っちゃいけない道? ココが? なんで分かるんだ?」

『分からない…。でも分かるの……。』

「変な奴だな。で? なんで俺達はココにいるわけ?」

『分からない……。きっと力のせい……。』

「ちから? スタンドのことか? じゃあお前もスタンド使いか?」

『私の力は…、お姉ちゃんの力でもあるの…。だから…分からない…。』

「さっきから妙なこと言うな…?」

『お姉ちゃんと間違えて私を連れて行こうとしてるのがいる…! でも帰り方が分からなくって…。』

「それで助けて欲しいのか?」

『うん…。』

「…分かった。俺もここから出てぇからよぉ、一緒に行こうぜ。」

『ありがとう!』

 パッと顔を上げた少女の顔立ち…そしてその目の色は…。

「ミナミ?」

『お姉ちゃん、知ってるの?』

「いや…違う! お前…もしかして、3人目か!?」

『さんにんめ?』

 3人目の東方の子が首を傾げた。

 ナランチャは、なんとなく合点がいった。ココに引っ張り込んだ何者かがミナミとよく似た魂を持っていた3人目をミナミと間違えたのだろう。

 

 

 チガウ…

 

 

「ハッ!?」

『あ…ああ…。』

「振り返らなきゃいいんだろ!? 来い!」

 背後に背筋が寒くなる存在が現れたのを感じたナランチャは、3人目を立たせて手を引っ張った。

 

 

 ミナミ…

 チガウ……!

 

 

「!」

 背後にいた存在が前に回り込んできた。

 ネコを彷彿とさせるが、表情が固まったような顔をした人型スタンドだった。

『イヤー!』

「振り返るな! エアロスミス!!」

 ナランチャがエアロスミスを出し、立ちはだかる謎のスタンドを撃った。

 謎のスタンドは素早く拳で弾丸を防ぎ、ピンッと何かを指で弾くようにナランチャに向けてソレを投げてきた。

 100円玉だった。

『危ない!』

「うお!?」

 足にしがみついた3人目によって後ろへこけたナランチャの頭上で、100円玉が爆発した。もしそこにナランチャの頭があったら爆発によって顔が吹っ飛んでいただろう。

 ナランチャは、それで理解した。この謎のスタンドの能力は、爆発だと。それも100円玉のような小さな物でも触っただけで爆弾に変えてしまえるのだと。

 謎のスタンドが、またも何かを投げてきた。小石だった。

「エアロスミス!!」

 エアロスミスで小石を撃ち抜こうとした時、謎のスタンドが握りこぶし状態の親指を動かしカチッと鳴らした。

 その瞬間、小石が爆発しエアロスミスが巻き込まれた。

「ぐあああああああああ!」

 ダメージフィードバックでナランチャの身体に傷が出来る。

 夢のはずなのに、痛みが本物だと分かった。このままココで死ねば、おそらく現実の自分は死ぬと感じた。

『お兄ちゃん! あっ…、イヤーー!』

 ナランチャが痛みにのたうっていると、謎のスタンドが3人目の腕を掴んで持ち上げていた。

「そ、その手を……放しやがれーーー!!」

 ナランチャが立ち上がり、至近距離からエアロスミスを放つ。

 謎のスタンドが3人目を掴んでいない方の手で殴ろうと拳を振るった。

 拳がエアロスミスに接触する直後、エアロスミスが爆雷を落とした。

「爆弾が…お前だけの特権だと思うなよ!」

 ナランチャが叫ぶと同時に爆雷が爆発した。ナランチャを巻き込んで。

 ビシビシと謎のスタンドの顔が割れ、3人目を手放す。ナランチャも爆風で転がるがすぐに体勢を整えた。

 顔のヒビは、身体にも及んでおり、そして本体がいないためか非常に脆いようで先ほどの一撃で謎のスタンドは崩れかけていた。

 しかしそれでも先ほど落とした3人目に手を伸ばそうとする。まるで執着しているように。

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラ!! ボラーレ・ヴィーア(飛んで行きな)!!」

 凄まじいエアロスミスの弾丸の嵐が謎のスタンドが3人目を掴む前に降り注ぎ、まるで紙粘土細工が崩れるようにボロボロに崩れていった。

「今だ!」

 ナランチャが3人目を抱え上げ、振り返らず走り出した。

 その後ろで崩れた謎のスタンドが徐々に形取り戻し追いかけようとしていた。

「うおおおおおおおおおおお!!」

 ナランチャは、背後にある怖い気配に臆しそうになる気を奮い立たせ、走り続けた。

 そして、ある程度走ったところで目の前が真っ白い光に包まれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「………チャ、…ナランチャ!」

「……ぅう…。」

「だいじょうぶかい?」

「…フーゴぉ…?」

 目を覚ましたナランチャを、フーゴが見おろしていた。

 起き上がったナランチャは、慌てて周り見回したが、そこはあの小道ではなく、ホテルの部屋だった。

 身体を調べたが、怪我は無かった。

「うなされてたぞ?」

「あ…ああ…、ちょっとイヤな夢見た…。」

「…うなされ方が尋常なくって心配した。なにもないならいいよ。」

 そう言ってフーゴは自分のベットに戻り眠り直した。

 ナランチャは、汗ばんだ額を抑え…、夢?っと疑問に思った、その時。

 

 

 アリガトウ

 

 

「………どういたしまして。」

 脳内に聞こえた、あの少女の声で、あれが夢であって夢じゃ無かったのだと分かり、ナランチャは、やれやれと息を吐いた。

 

 

 後日、ミナミに『振り返ってはいけない小道』の話を聞いてみて、驚かれたのは別の話である。

 3人目については、ミナミに影響は無かったようだ。おそらくきちんと帰れたのだろう。ミナミの身体の内側に。

 

 

 

 

 




キラークイーンのみ登場。
幽霊になった吉良吉影から分離して、吉良吉影の生前の心残りだけで動くだけの存在になり果てています。そのため本体がいなくて弱い。
おそらく、ミナミが風邪引いて弱っていたところに付け入って魂を引きずり込もうとしたが、間違えて3人目を引っ張り出してしまい、助けを求めた3人目が夢を通じてナランチャを小道に誘うことに。

健康な状態、あるいはよっぽど不安定な状態でなければ、問題はありません。


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番外編9  愛しき名前と、迫り来る危機

活動報告の方でも書きましたが、平和なはずの番外編の方向性が変わりました……。


ナランチャが振り返ってはいけない小道で戦ったのを皮切りに、日常が再び浸食され始める?


あと、3人目の名前は、『愛陽(あいり)』となりました。


Earthwellさま、誠にありがとうございます。


 

「そういやぁさ、仗助は知ってんのか?」

「なに?」

「……3人目のことだよ。」

「ああ…。」

 カフェ・ドゥ・マゴで、ナランチャからそう言われてミナミは、そう言えばっと声を漏らした。

「イタリア旅行が長引いたでしょ? あれの事情説明で、スタンドが使える仗助にだけ、承太郎さんが話したみたい。でも、ナランチャ達の素性については話してないよ。じゃなかったら、仗助が知らないのはおかしいし。」

「そっか…。」

 それを聞いてちょっとホッとしたような…。

「で? その後は、どうよ?」

「なにが?」

「3人目はどうなんだ? もう害はないんだろ?」

「……寝てるような、寝てないような…。存在を知ってから感じるようにはなったよ。」

「あーそう。」

「そうそう。いい加減、3人目って呼ぶのもなんだから、最近じゃ名前で呼ぶようにしてるの。」

「へー。なんて名前?」

「母さんから聞いたの。母さんは、お腹の中に3人いたこと知ってるから、もし生まれてたら…って名前の候補は考えてたんだって。で、私のソレをつけるかどうかだいぶ悩んだんだってっさ。だから私がミナミって名前じゃなかったかもしれないの。」

「なんて名前?」

「……愛陽(あいり)。」

「アイリ…。」

「漢字にすると、こう。愛し合うの、愛に、太陽の陽(ひなた)と書いて愛陽なの。」

 持ってたスケジュール帳に、ボールペンで漢字を書き表すミナミ。

「……良い名前だな。」

「だよね。」

「そっか…、愛陽か。」

 ナランチャは、3人目……愛陽と、夢を通じてではあるが振り返ってはいけない小道で出会い助けたことを話していない。

 ナランチャの直感ではあるが、あの小道で遭遇し戦った、あの謎のスタンドのことは話さない方が良いような気がしているのだ。本体らしき存在がいなかったことも気がかりではあるが、なにかミナミと関わらせるとマズいような気がしてならないのだ。

 しかし……。

「なんか胸騒ぎがする…。」

「?」

「あっ、独り言だよ。」

 ナランチャは、慌てて手を振った。

「そういえば、ナランチャとフーゴが泊まってるホテルって、牛タン料理が美味しいんでしょ? どうだった?」

「ああ、ウメーよ、あれ。メッチャ美味かった。でも、ナイフとフォークとか置いて欲しかったなー。箸むずい。」

「そういうのも旅の醍醐味でしょ? 私だってナイフとフォークに慣れないし、イタリアじゃ結構不便だったんだよ?」

「そっか。そういうもんか。」

「そうそう。」

 ナランチャとの会話で、ミナミはニコニコ微笑む。

 ナランチャは、やっぱり笑顔の方がいいなぁ…っと思っていた。

 その後、ぶらぶらと二人で歩いた。

 ところで、なぜミナミとナランチャのみなのかというと……。

 フーゴが新生パッショーネと国際電話中で、仗助は急用でいなかったからだ。仗助はミナミをひとりにするのをメチャクチャ嫌がったが、母親にゲンコツをくらい渋々用事のあるところに行ったのだった。

 それで二人きりで……デートという形になったわけである。

「あっ…。」

「ん? どうした?」

「ここ…、ここがナランチャが言ってた、振り返っちゃいけない小道だった場所だよ。」

「ここが?」

 しかしそこはナランチャが見た小道の面影はなかった。

「色々あって今はその小道はないけど、ちょっと前まで噂はあったんだよ。それと幽霊さんもいたし。」

「ゆーれー!?」

「もう成仏してるよ。とても親切な幽霊さんだったんだよ。」

「あっ…そう……。っ!? ミナミ!」

「えっ? わっ!」

 いきなりナランチャが飛びかかってきて押し倒される形でミナミは倒れた。

 倒れる直後、ミナミの頭があった場所を、髑髏の模様がある手が何かを掴もうと残像を残していた。

「ど、どうしたの?」

「危なかった…。」

「えっ?」

「ここやべぇ! 早く離れようぜ!」

「ま、待ってよ…。」

 ナランチャがミナミの上からどき、急いで立たせようとする。

 

 

 見つけた

 

 

「っ!」

「えっ?」

「振り返るな!」

「わっ…!」

 無理矢理立たせた直後、ナランチャには聞き覚えがある声が聞こえて、振り返りかけたミナミを制して、無理矢理手を引っ張って走り出した。

 ミナミは何が何だか分からず、けれど引っ張られるまま走らされた。

 走って、曲がり角を曲がったとき。

「うお!」

 ちょうど曲がり角から現れた男とぶつかった。

「いってー! 前みろやゴラァ!」

「うっせーよ! こっちはそれどころじゃ…。」

「あっ、ミナミさん?」

「はっ?」

「あっ、小林くんだ。だいじょうぶ?」

「あー、ちっとばっかしすりむいたっすわ。こら、ガキ! お前何しやがんだ!」

「あぁ?」

「ごめんね、小林くん、今ちょっと…。」

「えっ? ミナミさんの知り合いっすか? まさか…彼氏!?」

「えっと…。」

「うわー! マジですかい!? コイツは大事件だ!」

「ち、違うよ…。まだ…その…。」

「しっかし、こんなチャラい奴が…、ブゲッ!?」

「うっせーんだよ! ぶん殴るぞ!」

「いや、もう殴ってるし! どうしたのナランチャ?」

「えっ、あっ、そうだ! さっき……、もういないな…。」

 ナランチャは小林玉美を殴った後、後ろを確認したが、なにもいなくてホッとした。

 

「ねーちゃーーん!」

 

「あっ、いいところに。仗助。ちょっと治してあげて。」

「ゲッ! 二人きりで…、ナランチャ、お前なんかしてねーだろうな!?」

「してねーよ! あらぬ疑いをかけるな!」

「それより、小林くんを…。」

「あっ? なんでコイツがいんだよ?」

「ちょっとぶつかっちゃって…。」

「これぐらいツバつけときゃ治るだろ?」

「ナランチャが殴っちゃったの。そっちが重傷。」

「分かった分かった。ホレ。」

 倒れている小林玉美を仗助が治した。

 ハッと気がついた小林玉美は、ナランチャに怒鳴りかけるが、仗助がいることに気づいた。

「だいじょうぶ?」

「あ…、だいじょうぶです…。」

 ミナミから心配され、小林玉美はヘコヘコと頭を下げた。その頬がほんのり赤らんでいて下心を感じさせたので、仗助がギロリッと睨んだ。

「それよか、彼氏さんと一緒なんてどうしたんです?」

「かーれーし!?」

「違うって! もう!」

「あっ、すんません。それよかずいぶんと急いでたようでしたけど?」

「ナランチャが急にヤバいって言って、私を引っ張って…。」

「どういうことっすか?」

「それは……。」

「あんた、なんか隠してねーか?」

 言いにくそうなナランチャに仗助が怪しそうに見て言う。

「いいよ、仗助。」

「でも!」

「言いにくいことを無理矢理聞いても仕方ないよ。もしかしたらナランチャも分からないのかもしれないし。」

「ミナミ…。」

「だいじょうぶだよ。私のためでしょ?」

「!」

 ニコッと笑ったミナミの言葉に、ナランチャは目を見開いた。おそらく気づいているのだろう。ナランチャが何か察してあえて言わないでいることを。

「あっ、ミナミさん、もしかして、さっきの小道のあとのところを通ってきたんですかい?」

「えっ? そうだけど?」

「あそこは、気をつけた方が良いですよ…?」

「どうして? 最近全然噂もないのに。」

「いやぁね…、あくまでちびっとだけ小耳に挟んだ話っすけどね…。なんでもいきなりあそこで、女が突然弾けて消滅したって話があるんですよ…、“手”だけ残して。」

「はあ!?」

「まあ、本当かどうかは分からないですよ? 警察は行方不明者として捜索してるって話らしいですけど…、念のため気をつけてくださいね。じゃっ。」

 そう言い残して小林玉美は去って行った。

 残されたミナミ達は、ぼう然とした。

「……手だけ? なんか……、アイツを思い出すな…。」

「言わないで。」

「ごめん…。」

「どういうことだよ?」

「あんたにゃ関係ねーっすよ。」

「いいや! 関係あるね! もしかしたら俺が見たアレが原因かもしれないから!」

「…あんた何を見たんだよ?」

「……夢だって思ってたけど、違ったかもしれねぇし、それより何があったのか教えてくれよ。そしたら話す。」

「仗助…。いいよ。」

「姉ちゃん……。」

「ミナミ?」

「……殺人鬼がいたの。この町に。その殺人鬼は……、女性の手を好んで殺しを続けてた、スタンド使い。」

「………まさか…?」

「私が…文通をしてた相手だよ…。」

 ミナミの言葉に、ナランチャは衝撃を受けた。

 

 文通の末に、ミナミと男女関係になりかけた相手の殺人鬼。

 ナランチャがあの夢を通じて出くわした、あの謎のスタンドは、その殺人鬼のスタンドである可能性が浮上したからだ。

 

 

 

 




前ならブルー・ブルー・ローズが自動で守っていたのに、発動しなかった。
レクイエムによりブルー・ブルー・ローズの成長をゼロに戻したのが、ここで障害となる。
なお、3人目こと……愛陽は、引っ張り出されて振り返ってはいけない小道に連れて行かれたことがショックで、キラークイーンにビビっています。



さあ、ここからどうしようかな!
4部キャラ全部出すのは難しいかも!


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番外編10  楽しい旅は一転して……

なんか……、長くなりそう……。
いや、でもパパッと終わるかも?


今回は、承太郎に連絡する仗助と、ジョルノに連絡する承太郎の話。


 

 その日、承太郎の連絡先に緊急連絡が入った。

「もしもし。」

『承太郎さん! 俺っす! 仗助です!』

「久しぶりだな。どうした?」

『緊急事態っす!』

「落ち着け。なにがあった?」

『キラークイーンって覚えてます?』

「……お前達の町にいた、あの殺人鬼・吉良吉影のスタンドか。」

『そうっす! ソイツが出たらしいですよ!』

「どういうことだ? 吉良吉影は死亡したはずだ。それは現場にいたお前も見ているはずだ。」

『そ、それが…、俺も分からないっすよ…。キラークイーンらしいスタンドが、あの小道にいたってのを聞いただけで…。』

「あの幽霊の娘がいた場所か。」

『そうっす! ナランチャって奴が今こっちにいるんですけど、夢でその小道で姉ちゃんの中にいる3人目らしい女の子を助けたときに戦ったって話を聞いたっす。』

「本体の吉良吉影はいなかったのか?」

『本体らしき奴はいなかったって聞いてるっすけど…。ナランチャの話だと、どうも狙いは姉ちゃんだったみたいで、間違えて3人目を引っ張り出したんじゃないかって…。退治しても死ななかったらしいっす。』

「……怨霊か。」

 スタンド使いが増加し、多種多様化したことで、SPW財団の超常現象研究科からそういうタイプが現れているとも聞いている承太郎は、吉良吉影のスタンドが怨霊となってこの世に残ったのではないかと推測した。

 吉良吉影がミナミと文通をしていて、危うく男女関係にまでなりかけたとは聞いていたが……。

 ミナミを狙っていると仗助は言っている。その際に3人目(愛陽)とミナミを間違えて、あの幽霊の娘であった杉本鈴美がいた振り返ってはいけない小道に引きずり込んでいる。

 何を目的に動いているのかはそれだけで明白だ。

 

 すでにいない本体である吉良吉影の未練であったミナミを、あの世へ連れて行くことだ。

 

 だからあの世に通じるあの小道に、間違えて連れてきた3人目(愛陽)を小道に。

 そこから承太郎は、考える。

 ブルー・ブルー・ローズは、ジョルノのレクイエムにより3人目(愛陽)もろとも1度リセットされた。その弊害として防衛能力が下がり、結果キラークイーンが付け入る隙が出来てしまっているのではないかと。

「仗助。お前はブルー・ブルー・ローズを見たか?」

『いいえ。ずっと見てないっすよ。』

「そうか……。いいか仗助。今のミナミは、ブルー・ブルー・ローズの守りが手薄だ。だから怨霊となったキラークイーンが簡単に付け入れてしまえる。」

『ど、どうしたらいいんっすか!?』

「キラークイーンは、本体を失っている。逆にそれが厄介なことになっている。ナランチャが倒せなかったということは、お前が加勢しても、億泰や康一君達が束になってかかっても完全に倒すことはできないということだ。」

『そんな!』

「知らせてくれたことは感謝する。SPW財団の超常現象研究科の総力と、所属スタンド使いや、俺も救援に向かう。それまでミナミを守り抜け。いいな?」

『分かってますっす! でも、できる限り早く来てください! 相手は幽霊だから、どこから来るか分かったものじゃなくって…。』

「何が何でも守るんだ。」

『分かってますよ! 救援よろしくっす!』

 そして電話を切った。

 承太郎は、SPW財団を通じて、新生パッショーネに連絡を入れた。

 ナランチャとフーゴというパッショーネ所属のスタンド使いが、杜王町に行っていることは、小耳に挟んでいたが、非常事態となったからだ。

『どうも…、空条博士。なにかありましたか?』

 電話に出たジョルノ。

「ミナミに緊急事態だ。そちらのナランチャ・ギルガと、パンナコッタ・フーゴの身に最悪の事態が想定される。」

『二人が何かしましたか?』

「いや…、むしろ巻き込んでしまったと言えるだろう。」

『どうしたんです?』

 それから承太郎は、すでに死亡した殺人鬼の未練で動くスタンドの存在のこと、そしてそのスタンドにミナミが狙われていること、レクイエムによりブルー・ブルー・ローズがリセットされたため自己防衛能力が下がっていることを話した。

 リセットされたことで小さくなった3人目(愛陽)をナランチャが助けた結果、彼の身も危ない可能性があることも。

『……分かりました。こちらも何かできることは?』

「そちらの組織の者を連れてくるのは手続きが必要だ。時間が無い。」

『ですよね…。ナランチャとフーゴには、滞在日数を増やすようにさせます。あの二人なら戦力として申し分はありませんので。』

「すまないな。」

『いえ、こちらこそ…。僕のスタンドでリセットしたばっかりに…。』

「君がやらなければ、世界が終わっていた。その点については感謝してもしたりないほどだ。気にしないでくれ。」

『ありがとうございます。』

 

 

 キラークイーン(怨霊)から、ミナミを守るための戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 




キラークイーンが、ノトーリアス・Bigほどじゃないけど厄介な奴に……。
多彩な爆弾スタンドと、速いモノを襲うだけのスタンド……、さてどっちが怖いか。


ミナミも守られてばかりじゃなく頑張らないと!
現時点では、逃げるのが手いっぱいだと思うけども。

現時点で考えてる決着のつけ方は、ノトーリアス・Bigに邪視を宿していたブルー・ブルー・ローズがやったことですね。それをミナミが愛陽と協力してやるって展開。
でもそうするかは未定。(2020/03/28時点)


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番外編11  間田敏和は、漢となれるのか?

今回は、なぜか間田が主人公的な感じ。


キラークイーンに追われていたミナミと偶然遭遇した彼は……?


あと、鋼田一も頑張ってます。


あとナランチャは出てません。


 

 なんでこうなった? なんでこんなことになった!?っと、間田敏和(はざまだとしかず)は、慌てていた。

「どうするの? 間田さん!」

「いいから走れ! 追いつかれたらお終いだ!」

 

 そう、彼は今、自分のスタンド、サーフィスと共に走っていた。

 サーフィスは、ミナミの姿である。

 咄嗟の判断で偶然にも捨てられていた美術用の等身大ポーズ人形を使ったのだ。

 

 そして、彼らの後ろ、2~3メートル先には、キラークイーン(怨霊)。

 ちょっとでも立ち止まったら追いつきそうな速度で、無表情(キラークイーンに表情は皆無)で、走ってきている。怖い。

 

 間田がキラークイーンに追われていたミナミを見つけたのは、本当に偶然だった。

 キラークイーンに見つからぬよう、町外れ近くのゴミ山に隠れた際に、捨てられていた等身大ポーズ人形にサーフィスを憑依させ、ミナミに触らせてサーフィスにミナミの姿をコピーさせたのは、本当に咄嗟の判断だった。自分でもこんな咄嗟の行動を取ったことに驚くほどに。

 キラークイーンのことは、間接的にだが聞いていた。

 町に潜んでいた最悪最強の殺人鬼・吉良吉影のことも。キラークイーンがその吉良吉影のスタンドであることも。すべての事件が終わってから知った。

 なのになぜキラークイーンがいる!? そしてなぜミナミが追われていたんだ!? そしてなによりなぜ自分はこんなことをやっているんだ!?っと必死に走りながら間田は考える。

 確かにミナミには、1度は好意を寄せたが、断られててっきり関わらないようにしてきたし、仗助が怖いので挨拶すら怖かった。だがそれだけのことだ。ここまで自分がやる義理はないし、命を賭けることをするほどでもないのだ。

「なんでこんなことになっちまたんだよーー!?」

 後悔しても手遅れ。捕まれば殺されるだろう。小心者としての直感がそう告げてくる。

 闇雲に走っていてもやがて疲れて追いつかれる。だが策などない。ただただ咄嗟の行動でサーフィスを使ったのだから。

 誰か…誰か! 助けてくれ! このままじゃ死んじまう!っと祈っても無意味だと分かっている。だが祈らずにいられない。

 人気の無いところで逃走劇をしているのも悪かったのだろう。人がいない。やがて今では名所となっている鉄塔が見えてきた。

 もうあそこしかない!っという思いで、鉄塔まで最後の力を振り絞って走った。

 そして鉄塔の中に転がり込むように入った。

 

「おお? ずいぶんと急いで…って…、何かいる?」

 

「匿ってくれ!」

「えっ?」

 鉄塔に住む男、鋼田一に向かって間田はそう叫んだ。

 キラークイーンが鉄塔の中に入ってくる。直後、鋼田一がロープで降りてきて、素早く間田とサーフィス(ミナミの姿)をくくって上へと引っ張り上げた。

 残されたキラークイーンは、ジイ…と上を見上げる。

「ハーハー! 助かった、助かったぁ!!」

「なにか…事情があるようで…。ミナミちゃんもどうしたんだい?」

「えーと…、間田さん、どうします?」

「いいからお前は黙ってろ!」

「? どういうことだい?」

 鋼田一は、さすがに何かおかしいことを察した。

「は、話せば…ややこしいっすけど…、コイツは…東方ミナミじゃねー…。俺のスタンドだ。」

「へ?」

「それよりも今は、下にいるアイツをなんとかしないと…。確か、この鉄塔はスタンドだったよな!?」

「え、ええ…。自分のスタンドの、スーパーフライですけど…。」

「なにか攻撃手段はないのか!?」

「あ、あるにはありますけど…。けど事情が分からないんですが?」

「このままじゃ、下にいるアイツがミナミの所に行っちまうんだ! そうなっちまったら殺される!」

「えっ?」

「あっ、間田さん! アイツが鉄塔の足を!」

「うぉお!」

 下の方で大きな爆発が起こり、鉄塔が揺らいだ。

「だいじょうぶですよ。スーパーフライの能力は…、人間一人を閉じ込めること…。そして…攻撃を加えれば…。」

 キラークイーンの爆発でグシャグシャになった足が変形を始め元に戻ると同時に、爆発のエネルギーがキラークイーンに向かって飛んだ。

「反射される! これで倒れたはずだ!」

「やったー!」

 キラークイーンがほぼ自滅したことを喜んでいたが……。やがて…。

 もうもうと上がる土煙が、キラークイーンの形に変わり、元の姿を取り戻した。

「なにーーー!?」

「あの爆発で! 奴は不死身!? 本体はどこに!」

「アイツに本体なんていねーよ! とっくに死んでんだから!」

「えっ!? じゃ、じゃあどうやって…。」

「知るかよそんなこと!」

「あっ、登ってこようとしてきてますよ。」

 ハッとして見ると、鉄塔の足を伝ってキラークイーンが上へと登ってこようとしていた。どうやら破壊が出来ないことを学習したらしい。

「死なないなら…、動きを止めるまで! 離れてください!」

「えっ? うわっ!」

 鋼田一は、ネジを取りだし、鉄塔の柱に投げつけた。

 すると、スーパーフライの能力によって弾かれたネジがキラークイーンの手に刺さり張り付けにした。

「ここで来る日も来る日も、訓練したかいがあった…。この鉄塔の中のことは俺がよく知ってるからな! ビリヤードのように角度、反射されるエネルギー、すべてが分かる!」

「すっげー…。」

 間田は羨望の眼差しを向けた。

 しかし、相手は本体のいないスタンド。片手を封じられても無意味なのだ。すぐに手を無理矢理引っこ抜くと、登るのを再開する。

「本体のいないスタンド…! 破壊しても無駄ならどうすれば…。」

「くっそー…、ここまでなのか…。あぁ、せめて可愛い女の子と付き合いたかったぁ!」

「間田さん、よく考えてください。」

「こんな時に何言ってやがんだ!?」

「ミナミがあなたを見捨てると思いますか?」

「あっ…。」

 ミナミの性格なら見捨てるなどするだろうか? 自分が咄嗟の判断で身代わりになったことを仗助達に伝えずに逃げるだろうか?

「そう…それが答え。私、サーフィス(うわっ面)がよーく分かってますよ。」

「そうか…、そうだよな。分かったぜ!」

「な、なにが分かったと?」

「時間稼ぎだ! 頼む! 協力してくれ!」

「ええ?」

「俺がこうして自分のスタンドをミナミの姿にしたのは、ミナミを助けるためなんだ! 頼むよ! あんたしか頼れねーんだ!」

「………ミナミちゃんには、よく調味料とかお菓子をもらってる。……深くは聞かないよ。それにココには君と俺しかいないんだ。なら…。」

 鋼田一は、手のタコに挟んでいるナイフを出した。

「やるべきことはひとつ! 時間稼ぎをすればいいんだな!?」

「派手に頼みます! 周りにいる人間が集まるほどに!」

「行くぞ!」

 少しずつ登ってくるキラークイーンの位置を確認し、鋼田一が鉄塔を傷つけた。途端、傷つけられた際に発生した反射エネルギーが飛ぶ。

 ドシュ、バスッと、キラークイーンの身体を傷つける。だがキラークイーンは表情ひとつ変えない。しかし、手の指を切断されたとき、さすがに支えられず地面に落ちた。だがすぐに傷が修復され、登るのを再開する。

「動くなよ! 派手に行くぜ!」

「うわわ!」

 鋼田一があちこちを傷つけまくり、エネルギーを反射させまくった。

 そのエネルギーはすべてキラークイーンに命中する。正確に、的確に。

 身体をバスバスっと貫かれていたキラークイーンが不意に何かを上に投げた。

「……?」

 それは、小石だった。おそらくその場で拾ったであろう。

 それが鋼田一と間田とサーフィスがいる場所まで上がったとき、小石が爆発した。

「うわあああああ!」

「あっ!」

「サーフィス!」

 その爆風でただでさえ悪い足場から落ちそうになった。それどころかサーフィスが間田にぶつかって落ちていった。

「掴め!」

 サーフィスに向かって、鋼田一がロープを投げた。サーフィスはそれを掴んで地面に落ちるのを免れたのだった。

 そのすきに登ってきていたキラークイーンが、手をサーフィスに伸ばす。

「サーフィス! 急いで登れ!」

「……間田さん…、ごめんなさい。」

「おい!」

 伸びてきたキラークイーンの手を弾くため、サーフィスが蹴ったが、逆に掴まれた。

 そして、サーフィスが爆発し粉みじんになった。

「サーフィス!」

 間田は、その光景を上から見ていることしか出来なかった。

 キラークイーンは、サーフィスを爆破させた様子を見て、ミナミじゃないと分かったらしく、わずかに目を見開いていた。やがて、ジロリッと間田達を見上げ、登るのを再開した。まるでよくも騙したな?っと言いたげに。

「ああ…なんてこった…。あんたのスタンドが…。」

「許さねぇ…! よくも…。」

「?」

「ああやってミナミを殺す気だったんだな! 許さねぇ!」

「落ち着いて! こんなところで暴れたら…。」

「クソークソー!」

「頼みます、落ち着いてください! そうだ…、アイツの狙いがあなたなら、囮になって貰えますか!?」

「はあ!?」

「俺は、この鉄塔を知り尽くしている! だからどの角度から反射できるか分かる! この足場の悪い状況だけど、地面に落とし続けることならなんとか…。」

「……分かった。やるぜ! ミナミがきっと来てくれるはずだ! 仗助達を連れてな!」

「右方向へ!」

「おう!」

 鋼田一が更に上へと登り、間田は横へと逃げる。そしてキラークイーンが間田がいるところまで登ってきた。

「捕まえさせねぇぞ!」

 上で柱を傷つけまくった鋼田一の反射の攻撃が、ビリヤードの玉のように弾かれまくって、すべてキラークイーンへと命中する。しかし、その程度じゃものともしないとばかりに立ち上がり、ゆっくりと確実に間田の所へ迫っていく。

「伏せて!」

 鋼田一が叫ぶと同時に、間田は身体を伏せさせた。

 直後、キラークイーンの後ろの足下に市販のガスボンベが落ち、先ほど反射させていたエネルギーがひとつ命中した。

 爆発が起こり、スーパーフライの反射により爆発が反射されキラークイーンが跳ね飛ばされた。

 

 

「間田くん!」

「ゲッ! マジでキラークイーンだ!」

 

 

 そこへ、下の方からミナミの声と仗助達の声が聞こえた。

 跳ね飛ばされたキラークイーンは、最後の悪あがきとばかりに間田の服を掴み一緒に落ちようとした。そして、掴んだついでに爆破させようと親指を動かそうとして…。

「おらぁ!」

 億泰が自身のスタンド、ザ・ハンドを使い、右手で空間削り、間田をキラークイーンもろとも引き寄せた。

「ドラァ!!」

 引き寄せた瞬間、仗助のクレイジー・ダイヤモンドの一撃がキラークイーンの横っ面にめり込み、間田を放して吹っ飛んでいった。

 何度かバウンドして地面に転がったキラークイーンは、やがてスウッ…と透明になって消えた。

「消えた!」

「……本体がいねーから、そう長くは実体化できないのかもな。」

「だいじょうぶ? 間田くん。」

「……うぅ…。」

「えっ? だいじょうぶ?」

「うぅううううううううううううう! 死ぬかと思ったよぉおおおおおおおお!!」

 間田は決壊したように大泣きしだした。

「あーあー、うるせぇな。……けど、見直したぜ。まさか姉ちゃんの身代わりになるなんてな。」

「うわああああああああああん!」

「よしよし。もうだいじょうぶだよ。ありがとう。」

「姉ちゃん! 胸貸すことねーよ!」

「だいじょーぶですかー!?」

 鋼田一が降りてきて心配した。

 

 その後、協力してくれた鋼田一にもしっかりお礼を言い、間田は、泣きながらミナミ達と町へと帰ったのだった。

 

 

 

 




小物なりに頑張らせました。
なぜ間田を書こうと思ったのか…よく分かりませんが、なんとなくです。サーフィスは、結構好きなんですよね。

ここからの展開どうしようかな?
噴上とかも出したいけど…、スタンド能力がなぁ……。


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番外編12  承太郎、合流

承太郎、やっと来日。


仗助からその後の状況報告など。


あと、怨霊キラークイーンの特徴など。


 

「それで? 状況はどうなっている?」

「……最悪っすよ。」

 救援に来た承太郎に、ゲッソリした仗助が近況報告。

 

 ナランチャが愛陽を助けて以来だろうか、とにかくキラークイーンは昼夜問わず襲ってきた。

 特に問題だったのは、寝ている間に襲われたときだ。

 ミナミの中にいる愛陽が悲鳴を上げたため気がつき、迫ってきていたキラークイーンに気がつかねば殺されていただろう。

 1度立ち上がれないほど倒してしまえば…、あるいはある程度ダメージを蓄積すれば少しの間は来ないが、しばらくするとまた復活してくるのだ。だがそれまでの時間は微妙で、ハッキリとしていない。

 これは、キラークイーンが本来は自動操縦型のスタンドではなく(シアーハートアタックは別にして)、本体を持つスタンドが怨霊として残ってしまった弊害だと思われる。

 またキラークイーン自体も学習能力はないらしく、1度退散すると記憶などがリセットされ、サーフィスで邪魔をした間田を殺しには行かなかったなどの特徴が確認できた。ただし倒される前の動いている間だけは一時的な学習はでき、その間だけ邪魔をした者を執拗に殺そうとする特徴もあった。ただし、あくまでも狙いの第一はミナミであり、ミナミがいればそちらを優先する。だがそれを邪魔すれば排除しようとしてくる。しかし邪魔したからといって逃げても追っては来ない。つまり狙いをミナミから逸らすのは難しいのだ。

 唯一ミナミから狙いを外させられたのは、間田のサーフィスだけだろう。しかし、追っている最中にサーフィスがミナミじゃないとバレてしまったらお終いだ。

 救いだったのは、キラークイーンが倒されても学習したことを蓄積できず、強くなっていくという特性がなかったことだ。

 だからといってこのままではイタチごっこだ。

 いずれ学校も始まるし、現段階でも日常生活で生き死にがかかっている。四六時中、キラークイーンの襲撃に備えるのは、ミナミにも周囲の味方にも大きな負担であり、このままではミナミや、味方が殺される。

 

 状況を聞いて承太郎は眉間を押さえた。

 想像していた以上に状況は悪く、幸いだったのはまだ味方側に死者が出ていないことだけだろうか。

 仗助が憔悴している様子からすると、狙われているミナミはもっとゲッソリしているだろう。

「ナランチャのエアロスミスのレーダーにも映らねーし、フーゴって奴の最悪の切り札のパープル・ヘイズのウィルスも、生き物じゃねーっすから効き目が無いし……、頭が悪くても本体がいないってだけで、ここまで厄介なことになるなんて……。」

「すまないな。遅くなって…。」

「来てくれて助かるっす…。それで、誰が救援に?」

「ポルナレフ達には来て貰った。SPW財団の超常現象研究科も今回の件は前例がないとして、かなり困っているらしい。」

「ナランチャから、死んで動き出すスタンドがいたってのは聞いたことあるっす。それとは違うんすか?」

「元々のスタンドがスタンドだ。性質がまったく異なる。キラークイーンの怨霊は、吉良吉影のよっぽどの未練によって生まれた偶然の産物だろう。名のある霊媒師にも依頼はしてみたが、この手の怨霊は未練を晴らさない限り止まらないと言われた。」

「それじゃあ…!」

「分かっている。そんなことはさせん。」

 慌てる仗助に承太郎がキッパリと言った。

「除霊能力があるスタンドがいればいいが、相手が相手だ、簡単にはいかんのは分かっている。だが、まったく手段がないなんてことは無いはずだ。」

「分かってるっすよ!」

「焦るな。キラークイーンを倒すにしても、封じるにしても、焦りは禁物だ。」

「姉ちゃん…ずいぶん参ってて…。」

「本当にすまないな。もっと早く来れば…。」

「だいじょうぶですよ。」

 仗助はそう言って無理をして笑った。

 

 その後、ミナミとも合流し、そのやつれ具合に承太郎達は本気でヤバい状況だったことを理解して、もっと早く来てやれば…っと後悔したのだった。

 ポルナレフに至っては、ごめんなぁ…っと言って涙ぐみ、やつれたミナミを抱きしめていた。

 四六時中キラークイーンの危険にさらされていて、あと承太郎達が来てくれて少しホッとして気が抜けたのか、ミナミはそのまま寝てしまい、その場に来ていたナランチャが、ポルナレフにあんたどういう関係!?っとギャーギャー噛みつかれることになるのであった。

 

 

 




怨霊キラークイーンは、倒されても復活する。けどその時間は一定していない。
倒せない敵に、ミナミも仗助達も憔悴……。

さて……、どうやって決着に持ち込もうかな……。
ナランチャにも頑張って貰わないと出番が……。

サーフィスによる囮作戦として間田にも頑張ってもらいたいし……。

シーザーも出したいな。


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番外編13  愛陽(あいり)との対話

先の見えない、キラークイーンとの戦いに光明?


5部編でのノトーリアス・Bigとの戦いの決着をヒントに。


 

 怨霊のキラークイーンとの戦いは、絶望的といえるほど先が見えなかった。

 いつ、どこから襲ってくるか分からないこともそうだが、倒しても倒しても復活してくるしぶとさ。呼吸や温度が無いため探知不可能。すでに死んだモノということがこれほどに恐ろしいのかと思い知らされる。

 すっかりミナミも、守っていた仗助達も参っていた。

 

 

 ミナミは、深い眠りの中にいた。

 承太郎達が助けに来てくれたからじゃない。気の休まらない毎日に、とうとう限界が来たのだ。襲ってきた疲労による眠気に抗えず、今キラークイーンが来たら確実に殺されるだろう。なのに諦めにも似た念が脳を支配し始めていた。

 仗助を始めとした味方達への負担を考えると、申し訳なさによる罪悪感に支配され、それが精神を摩擦させた。

 

 

『怖いよー…。怖いよー…。』

 

 

 幼い少女の声が聞こえた。

 愛陽だ。

 怖い気持ちはこちらだって分かる。キラークイーンが…、吉良吉影の亡霊が恐ろしい。

 承太郎や、占い師のアヴドゥルは、4歳で覚醒し成長していたブルー・ブルー・ローズが今まで守っていたからつい最近まで怨霊のキラークイーンの脅威がなかったのだろうと見ていた。だがイタリアのコロッセオでジョルノのレクイエムにより、愛陽と一体化し歪んで進化したブルー・ブルー・ローズの不完全レクイエムをリセットしたため、それまでの成長ごとなかったことになり自己防衛能力が下がってしまい、キラークイーンが愛陽を引きずり出すなどの簡単に手を出してこれるようなってしまった。

 スタンドの成長とは、精神力の成長に繋がる。しかしミナミの場合、3人目の子である愛陽との融合で偶然生まれたスタンドであるブルー・ブルー・ローズであることと、愛陽がブルー・ブルー・ローズの意識とほぼ同化しているため、ミナミの精神と繋がっていながらスタンドが別の精神ともなっているという特殊な事例となっていた。

 愛陽は、ミナミに間違われてキラークイーンに引きずり出され、振り返ってはいけない小道に連れて行かれたショックですっかりキラークイーンに怯えており、それがブルー・ブルー・ローズにも影響してキラークイーンの接近には過敏でも、怯えて出てこないのだ。つまりブルー・ブルー・ローズがミナミを守れない。

 

 

 

「愛陽。」

 

『あっ…ミナミ…。』

 

 薄暗い花畑の中で、膝を抱えて泣いている幼い頃の自分にそっくりの愛陽に、ミナミが話しかける。

 

『ごめんね、ごめんね…。』

「どうして? どうして謝るの?」

『だって、だって…、ワタシが頑張らないとミナミ死んじゃうのに…怖いんだもん…。』

「私だって怖いよ。」

『ミナミが怖いのは、ワタシが守らないからだよ…。ワタシが頑張って守らないと…ミナミ死んじゃう! そんなのやだぁ!』

「……私こそごめんね。」

『えっ?』

「私が弱いばっかりに、愛陽にばっかり負担掛けさせちゃって…。私がもっと強かったら良かったのにね。」

『ミナミのせいじゃないよぉ…。ミナミは、すっごく弱かったんだよ? すぐ死んじゃうかもしれなかったんだよ? ワタシ怨んでないよ?』

「私はね…、守られてばっかりだった。今だってそう…。仗助達に守ってもらって……、逃げることしかできない。」

『ごめんね、ごめんね…。ワタシがもっと頑張れば…。』

「愛陽が悪いわけじゃないよ。」

 ミナミは、愛陽を抱きしめた。

「覚えてる?」

『なぁに?』

「ノトーリアス・Big。」

『……えっと…。』

「少し思い出したの。トリッシュから聞いた話。」

『うん?』

「あなたが邪視を持っていたとき…、レクイエムでリセットされる前……、怨霊のスタンドだったノトーリアス・Bigを、あなたは倒した。いや、消した。」

『えっと……。』

「もうあなたには邪視はない。けれど……、力があるのは確かだと思う。だって、私達は対極のような力を持っていたんでしょう? 私が“生《せい》”を司り、あなたが“死”。今、あなたの力の方が必要なんだと思うの。」

『ワタシの?』

「少しずつでいい。でも確実に……、方法を思いだそう。ノトーリアス・Bigをどうやって消したのか。それさえ分かれば……。もしかしたら……。私達も、みんなも助かるかも知れないから!」

『………うん!』

 泣いていた愛陽は、力強く頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 承太郎は、国際電話でブチャラティから連絡を貰った。

 連絡内容は、こうだ。

 ジョルノのレクイエムによる、怨霊のキラークイーンの消滅させる方法。

 正確には、“真実”に到達できない状況に封印してしまうというかなり強引な方法らしい。

 しかし、パッショーネをまとめたとはいえ、ジョルノがボスの座に座って数ヶ月……、今だ裏の世界は混乱しており、パッショーネ内に反感を持つ人間がいるのは確かであり、ジョルノが今動くのはジョルノの身が危険にさらされるという問題があった。

 

 そして、もうひとつ……、これはブチャラティが実際に目で見たことであるし、確実性はないのだが……。

 

 

 邪視を宿していた頃のブルー・ブルー・ローズが、ブラックホールのような穴を出現させて、怨霊のスタンドだったノトーリアス・Bigを消滅させたことがあったということだ。

 

 

 しかし今となっては邪視は失われ、ブルー・ブルー・ローズ自体があの時と違って弱体化しているため、できるかどうか分からないということだ。

 だがそれを聞いて承太郎は、もしかしたら…っと、思い至る。

 元々、3人目である愛陽には、相手を確実に死に誘う力が宿っていたと考えられている。

 その死に誘う力が、怨霊として残った者をもあるべき場所……つまり死後の世界へと導くものであったのなら……。

 怨霊のスタンドだったノトーリアス・Bigを消滅させた……、否、ブラックホールのような穴であった死後の世界への入り口を開けて導いたのなら、怨霊のキラークイーンも同じようにできるのではないかと。

「……感謝する。」

『ナランチャとフーゴは?』

「ナランチャくんは、寝るのも惜しんでミナミの警護に当たってくれている。事が終われば、二人とも無事にそちらに帰す。」

『……ありがとうございます。』

 

 そして電話を終えた承太郎のもとに緊急報告が。

 

 

「てめぇ、承太郎! ミナミに一大事なら早く言え!」

「ちょうどよかった、あんたを緊急招集する予定だったんだ。シーザーさん。」

「はっ?」

 どこから聞きつけたか駆けつけてくれたシーザーに掴みかかられながら、承太郎はシーザーの肩に手を置いて、安心したように言った。

「ミナミに…、愛陽と話をさせてもらうため、波紋催眠をかけてもらいたい。」

 

 

 

 

 先の見えない闇に、光明が見え始めてきていた。

 

 

 

 

 




3人目である、愛陽(あいり)の死の力は、あらゆる生きとし生けるものを死後の世界へと誘う。
例えそれが強烈な怨念や未練で残った魂であろうとも。あるべき場所(=死後の世界)へ強制連行。

ただ愛陽の成長がブルー・ブルー・ローズ(=ミナミと愛陽の力の融合)ごとリセットされているため、どうやって引き出すか……。

承太郎は、ブチャラティからの話を聞き、シーザーの波紋催眠で愛陽と対話して力を引き出させようと考えたけど、先にミナミが愛陽と会話して方法を見つけていたというオチね。


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番外編14  未練の怨霊は、死後の世界へと誘われる

決着をつけなきゃ!って思ってたら……、速攻で終わっちゃった。


キラークイーンとの最後の激闘。

活動報告とかじゃ学習しないって書いたけど、この回にて怨霊のキラークイーンに変化が?


 

 

「お前…、寝とけ。」

「うっせーよ。」

 シーザーに悪態を吐くナランチャ。

「いや、本当に寝ろ、ナランチャ。」

 フーゴが心底心配そうに言う。

 怨霊のキラークイーンとの戦いが始まってからというもの、ナランチャは、ほぼ不眠不休でミナミを守っていた。

 相手はすでに死んだモノ。呼吸が無く、温度も無いためエアロスミスのレーダーに映らないが、ナランチャが持つ鋭い直感でどこから襲撃するかを見破ってきた。しかし限界はある。しかし、戦いの経歴が長い承太郎達が休めと言っても聞かないので手を焼いていた。

「3人目……愛陽が言ってたじゃないか。自分の力ならもしかしたら…やれるかもってな。」

「…俺は、守るって決めてんだよ。」

「だからってお前が倒れたら、ミナミが責任感じて心を痛めるだろうが。」

「むっ…。」

 シーザーにずばり言われ、ナランチャは俯いた。

 現在、ミナミは、とある空き家に用意されたベットで寝ている。シーザー達もそこにいた。キラークイーンとの戦いのため、実家にいられず、またグランドホテルに行くわけにもいかず、結局こうなったのだ。

 シーザーの波紋催眠で、愛陽を表に出させ、死に誘う力の有無について問うたところ、自分ならできるかもしれないと答えた。そしてミナミと相談していて、どうやって力を出すかを考えているとも答えた。

 邪視を宿していた頃は、容易に出来たことが、邪視を失った今ではもうできないなんてことはないだろうというのが、承太郎達の見解だ。できたということは、素質はあるということだから。

 ただ問題は、どうやってソレをしていたのか、愛陽が覚えていないということだった。歪に進化したブルー・ブルー・ローズとしての記憶ごとリセットされているためである。

 あのブラックホールのような穴のことは、ナランチャも知っており、歪に進化したブルー・ブルー・ローズ・レクイエムの中に入ったときに、危うくそれに吸い込まれかけたそうだ。その時は、ナランチャが肉体を一時的に捨てていて蘇生不可能の時間(5~10分程度)が迫ってきていて発生したと思われる。

 ミナミは、今、眠りながら、内側で愛陽とどうやってその穴を開けるか試行錯誤しているらしい。どれぐらいかかるか分からないが、今は委ねるしかないだろう。

 その時、間田の悲鳴が聞こえた。

 キラークイーンが来たらしい。おそらく、ミナミに化けているサーフィスが襲われているのだろう。外で間田の警護に当たっていた仗助達の攻撃らしき破壊音が聞こえてくる。

 

『まだか!?』

「変化無しだ!」

 

 すぐそこだがキラークイーンにサーフィスだということがバレないよう、無線で空き家内に連絡をしあう。

 なぜすぐそこでミナミに化けたサーフィスを置いていたのか。それは、ミナミと愛陽の変化を誘発させることを狙うことと、死に誘う力の発動がおそらく至近距離でないといけないと見られたからだ。

「……ん…。」

 ミナミが微かに呻いた。

「こちらの手は出し尽くした…。あとはもう…、愛陽の力しかないんだぞ! 頼むから早くしてくれ!」

「起こすなよ!」

「残念だが、コレばかりは俺達じゃどうしようもない。二人に委ねるしかな…、っ!?」

 

 

 『コッチヲミロ~~~!!』

 

 

「フーゴ! 後ろだ!」

「!」

「エアロスミス!!」

「バブルリング!!」

 壁に沿ってキュルキュルとキャタピラーを回しながら動いている、髑髏をあしらった小さな戦車が不気味な声をあげてフーゴに迫っていた。

 それをナランチャとシーザーがそれぞれスタンドを出し迎撃。

「おい! 承太郎! どういう状況だ!? こっちに変な戦車が来たぞ!」

『! シアーハートアタックか! 康一君!』

「はい!」

 バターンっと扉が開いて、康一がエコーズAct3を発動させる。

 直後、扉もろとも空き家の壁の一角が外からの爆発で破壊され、近くにいた康一が吹っ飛んだ。

「康一!」

 そして粉塵の向こうから、ブワッと粉塵をかき分けるようにキラークイーンが飛び込んできた。

 

 

 もう…ダマされない

 

 

「コイツ…!」

 いつの間にかサーフィスを見破っていたらしいキラークイーンが眠っているミナミを見る。

「エアロスミス!!」

「シャボンランチャー!!」

 ナランチャとシーザーが、それぞれスタンドの攻撃を行おうとすると、キラークイーンすぐに傍に落ちていた外壁の一部を拾ってバラバラのソレを投げつけて、カチッと親指を動かした。直後、爆発が起こり爆風の煙が襲う。その爆発の攻撃でナランチャとシーザーが吹っ飛び壁に叩き付けられた隙を突いて素早くキラークイーンが眠っているミナミに迫ろうとした。

『ゴルルルル!』

 その手がミナミに触れそうになった時、パープル・ヘイズがその腕を掴んで止めた。キラークイーンは、ベットの上に落ちていた外壁の一部を拾うとピンッと弾いてパープル・ヘイズの頭部に向けて飛ばし、直後にカチッと起爆スイッチを押し、パープル・ヘイズの顔の半分近くを吹っ飛ばした。そしてフーゴは、ダメージフィードバックで、顔の半分を失い倒れ込む。

「やら…せるかよ…!!」

 ナランチャがヨロヨロと起き上がり、エアロスミスを放つ。直後、カチッと音が鳴り、ナランチャの足下にあった瓦礫が爆発した。

「ドラァ!!」

 接触爆弾で粉みじんになっていくナランチャを、身体のあちこちボロボロの仗助がクレイジー・ダイヤモンドで元に治した。

 キラークイーンは、それを気にせず、ミナミに手を触れようとした。だが、そのキラークイーンの身体が太った白イルカに吹っ飛ばされ、壁にめり込んだ。

「コイツ…、知能が低いんじゃ無かったのかよ…? 明らかに進化してやがる…!」

 おそらく度重なる戦闘が結果的に怨霊のキラークイーンを進化させることになったのだろう。最初の頃は、サーフィスをすぐに見破ることさえできなかったのだから。

 壁にめり込んだ、キラークイーンが空き家の壁に両手を触れた。

「ハッ! やべぇ! 逃げろ!!」

 キラークイーンのやろうとしていることに気づいた時、億泰がザ・ハンドを使い、家の中にいた者達を全員外へ引き寄せた。引き寄せた直後に、キラークイーンを中心に、空き家の壁が大爆発した。

 イギーがザ・フールで砂の壁を作り、爆風から全員を守ろうとする。その砂の壁にキラークイーンの手が突っ込まれイギーを掴もうとしたが、ポルナレフのシルバー・チャリオッツの針剣がその手を貫き、そして指をズタズタに切り裂いた。

「マジシャンズ・レッド!!」

 爆風に負けない炎がキラークイーンを襲う。しかし、まったく怯むことなく、切り裂かれた手を修復させたキラークイーンが歩を進め、再び瓦礫の欠片を投げて爆発を起こした。

 明らかに威力がアップしている爆発の威力に、全員がダメージを受ける。

「ゴホッ…。」

「仗助…!」

 爆発のダメージで吐血する仗助。

 邪魔者がいなくなったと判断したキラークイーンが悠々と、ミナミの所へ歩いて行く。

「ちくしょう…、やらせるかよ…!」

 負傷したナランチャが立ちはだかるが、キラークイーンは、もう爆発させる必要もないとばかりにナランチャを殴り飛ばしてどけた。

「グハ…、み、ナミ…!」

 殴り飛ばされ、転がったナランチャがキラークイーンに手を伸ばそうとする。

 キラークイーンがゆっくりとミナミに手を伸ばした。

 その時。

 

 

『みんな……ありがとう。』

 

 

 愛陽の声と共に、ミナミに触れかけたキラークイーンの右手が黒い穴に吸い込まれた。

 慌てて手を抜こうとしたキラークイーンだったが、右腕が付け根からもげた。

 ミナミがゆらりと起き上がる。

 その髪と目が鮮血色に染まっていた。

 

 

『永遠の……安息ヲ!!』

 

 

 愛陽がミナミの口を借りて叫んだと同時に、キラークイーンの背後に黒いブラックホールのような穴が出現した。

 凄まじい吸引の力に、キラークイーンは、後ろへと引っ張られ、だがそれに抗おうと落ちていた瓦礫などにしがみつく。

 

「てめー……、いい加減に………、あの世へ飛んで行きやがれ!!」

 

 ナランチャが最後の力を振り絞って、エアロスミスを発動させ、キラークイーンがしがみついている瓦礫を破壊した。

 そして支えを失ったキラークイーンは、なぜだと言わんばかりに目を見開いたまま黒い穴へと吸い込まれ、穴と共に消えた。

 そして静寂……。

 ミナミの髪と目が、もとのブルネットと、青い色に戻った時、ミナミは、ハッと我に返ったようにビクッとなって、周りを見回した。

「仗助! みんな!!」

 その悲鳴じみた声を最後に、ナランチャは、意識を失った。

 

 

 

 

 




全員でかかっても勝てないレベルに急速進化したキラークイーン。
もし戦いが少しでも長引いてたら、終わってました。
誰にトドメを刺させるか悩んで、ナランチャにやってもらいました。

とりあえず、全員死にませんよ。仗助はさすがに病院行きだけど、仗助によって他の人達は助かります。


結局、出さなかった人達もいるけど……、いいかな…。最後だけポッと出すか。噴上とか。


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番外編15  相思相愛?

エピローグかな?


噴上、ちょっと出。


ジョルノも登場。そんで仗助を治療(痛い)。


無理矢理滞在日数増やして滞在してたから、早急に帰ることになるナランチャ。


 

「俺が女達と旅行している間に、そんなことがあったわけか?」

 病院に入院した、仗助の見舞いに、噴上裕也(ふんがみゆうや)が来て聞いた。

 

 町郊外にあった空き家での戦いは、あまりの凄まじさだったため、地元ニュースや新聞をしばらく賑わせてる結果となった。深く掘り下げられないように、SPW財団が裏で情報操作を行い、空き家にあったガス爆発事故という形で世間からは徐々に忘れられていく。

「そんな大事になってたんなら、なんで俺も呼ばない?」

「必要以上に巻き添えを増やす必要がどこにあんだよ?」

「俺なら、匂いでキラークイーンって奴が来るのが分かっただろうに。」

「あー…、そういう手もあったか。けど、おめーは旅行で忙しかったんだろうが。」

「まーな。楽しかったぜ。」

「ちきしょー! 俺なんて休み明けまで入院だぜ!?」

「それぐらいで治るんだからいいじゃねーかよ。」

「うっせーよ。こーしてる間にも姉ちゃんが……。」

「お前の姉ちゃんがどうした?」

「あっ、いや、おめーにはかんけーねーし!」

 

 すると、病室の戸がノックされる音がした。

 そして入室してきたのは、目にも鮮やかな金髪の美少年。

 

「東方…仗助さんですね?」

「えっ? 俺がそうだけど、だれ?」

「僕は、ジョルノ・ジョバァーナといいます。ナランチャとフーゴがお世話になりました。」

「へ? あの二人の知り合い?」

「ええ。……そして今回の一件について聞いています。僕が加勢できればよかったんですが…。」

「あっ、どうもっす…。ってかあんたもスタンド使い?」

「はい。」

「なにしにきたんすか?」

「実は…、二人が世話になったお礼をかねて、僕のスタンドであなたを治療しようと思いまして。」

「えっ? あんたのスタンドって…。」

「ですが、僕のスタンドは、無機物に生命を与え生体パーツを作るのであって。傷を癒すと言うよりは、傷ついた部位を取り替えると言った方が正しい。つまり痛みは残りますので。」

「えっ? ちょ、ちょっと待てって…、えっ、まだ俺許可出してな…、ぎゃあああああああああああ!!」

「ま、お大事に。仗助。」

 噴上は、励ましにもならない言葉を残して病室から出て行ったのだった。

 怪我でロクに動けぬ仗助は、その後、遠慮のエの字もないジョルノの治療により、完治したのだった……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ジョルノー、お前も来てたんなら早く言えよなー。」

「飛行機の上でしたからね。連絡取れませんでしたよ。」

「なぜあなたが? 国内の状況じゃ…。」

「一応の保険ですよ。もし、ミナミの中にいる3人目の力が使えなかった時のために。」

「そっか…。ところで、なんで病院に来てんだ?」

「それは、仗助の治療のためですよ。」

「あー……。」

 きっと仗助は酷い目に遭っただろうなと、ナランチャとフーゴは、想像した。

「退院手続きが終われば無事退院ですよ。二人のことを助けてくれたことも含めて、残りの休みは満喫して貰った方がいいと思いましてね。ところで、二人とも、仕事も学業も溜まってますから、帰る支度しておいてください。」

「えー!」

「仕方ないだろ。本来の旅行日数を無理矢理増やして滞在してたんだから。せっかく勉強道具持って来ていても、勉強どころじゃ無かったじゃないか。」

「む~…。」

「ところで、ミナミとは進展したんですか?」

「!」

「あー…、その様子だとまだ…。」

「うるせーよ…。」

 ナランチャは、両手顔を覆った。

「残念でしたね。」

「言うな!」

「ナランチャ…。まあ、気長に行こう?」

「うっせーよ…。」

 肩に手を置いて励ますフーゴであるが、ナランチャは、グズグズと泣いた。

「さ、早くホテルで支度してきてください。早くしないと飛行機が間に合いません。」

「えーーー! 早すぎ!」

「ほら、ハリアップ。」

「せ、せめてミナミに…。」

「時間がありません。」

「鬼ーーー!!」

 その後病院からホテルに帰って、急いで帰り支度。

 そして急いでタクシーを呼んだとき。

 

「ナランチャ!」

 

「!」

 タクシーに乗ろうとしたとき、ミナミが駆けつけた。

「……もう帰るんだね。」

「あ、ああ…。」

「その……、色々とごめんね。」

「そんなことねーよ。」

「……愛陽を助けてくれてありがとう。愛陽も感謝してるよ。」

「そっか。」

「………文通…続けてくれるよね?」

「も、もちろんだぜ!」

「その……えっと…。」

「どうした?」

「……一応…返事。」

「はっ? ……っ?」

 直後、ミナミの顔が近づいたと思ったら、フニッと柔らかくて温かい感触がナランチャの額に当たった。

 何が起こったのか分からず、ポカーンとするナランチャ。赤面したミナミが離れていった。

「……さすがに…、この往来で、口には…。」

「えっ? えっ? えーーーー!?」

「よかったですね。」

「よかったな、ナランチャ。」

 ボンッと赤面して真っ赤になるナランチャの肩に、ジョルノとフーゴが手を置いた。

 

「あーーーーーー!!」

 

 そこに仗助の叫び声。

 どうやら見てたらしい。

「姉ちゃーーーーん!!」

「い、いいじゃない…。もう…。」

「さ、殺される前に帰りましょう。」

「そうだな。行こうナランチャ。」

「えっ! あっ、ちょっ…。」

「待てーーー!」

 ジョルノとフーゴに両腕を掴まれ、タクシーに押し込まれたナランチャは、そのまま三人で急いでタクシーを発進させた。それを青筋立てた仗助が追いかけようとする。その仗助を、後ろからミナミが羽交い締めにして止めた。

 

 

 

 

 

 イタリアに帰国後、手紙が届き。

 あれから仗助が嘆きに嘆き、お嫁に行くのはまだ早いよ~っと泣きつかれたたという内容が書かれていたとか?

 

「ギャングだってことは、絶対に口外できませんね。これでは…。」

 

 ジョルノが手紙を盗み見してそうナランチャに告げたのだった。

 ナランチャは、パッショーネにいる他のギャング達のように、手に職つけて表向きは普通職として振る舞っているギャングになろうと誓ったのだった。

 

 

 

 




ナランチャがギャング辞めるって選択肢はないわな。怨みとかも買ってるだろうし。

一応コレで、相思相愛?になったかな?
恋愛未経験なので難しいですね……。
6部の頃には、別居結婚して子供ぐらいはいるかな?


さて……、お金貯めて、6部を買うまでだけど……。いつになることやら。


たくさんのお気に入り、評価、感想ありがとうございました。


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