〔更新停止〕天使に会うために転生したけどやっぱり尊い (愛しのマイはにい)
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没1

全世界の皆様へ

 

ウチの妹は天使です

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

遂に来た。

 

「ふっふっふっふっ………はぁ゛あ゛っはっはっ!」

 

待ちに待ったこの時がなぁ!

 

「はあぁーーーッ!はッ!はッ!」

 

「幸介静かにして!つぐみが起きちゃうでしょ!」

 

「ごめん……」

 

さあ、諸君。もうお分っかりだろう?おっと興奮し過ぎて噛んだ。

 

天使の生誕だ!お前らぁ!祝え!祝えぇ!

 

ふぅ……

 

ん?情緒不安定?僕4歳だから分かんない。

 

とまあジョークは置き。察しの悪い君には説明してあげようではないか。

 

生後10日が経ったが、羽沢家の長女つぐみの誕生なのだ。

 

(そして俺は兄となった男、羽沢幸介!)

 

え?誰だって?

 

まあ、あれだ。つぐみへの尊さとか諸々がなんかアレして転生した奴だと思えば良いよ。

 

兎も角、折角転生したのだ。おっさんになってもお兄ちゃんなんて呼ばれたいし、歯を磨いてあげたい。

 

はいそこ性癖に偏りが見れるとか言わない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、君達が観測している時間軸を動かしたよ。

 

今は七五三。つぐみはおめかししている。

 

ああ、かわいいねぇ……一年ぐらい前からおにいちゃんって呼んでくれるし、そのせいで毎日墓建ってるぐらい可愛い。

 

おめめパッチリ、ショートの髪も飾り付けて、赤い着物を着ている。そして俺は父さんにカメラの重要性を説いて買って貰ったカメラを使い思い出を残してゆくのだ。

 

(ああっ!笑顔が!眩しいッ!)

 

時折微笑みかけてくるのがかわいいいいいいい!アッ!(尊死)

 

ふう、死ぬかと思った。いや、死んだわ。

 

何父さん?俺の写真はいいのかって?いいって、今はつぐみの写真だろ?俺は来年だし、俺なんかが写ると純度1000%のつぐみ成分が薄れてしまう……あ!父さんにカメラを取り上げられてしまった……

 

「おにいちゃんもいっしょにとろっ!」

 

OH……神が言うなら仕方ないな……

 

っ゛で!?手を握ってきたぁ!?

 

尊死()にまーす。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

つぐみが年中じゃあ!可愛すぎる

 

月日は早いものでの、二年程度直ぐに経ったよ。この間の出来事はソイヤこと巴姉貴とあこ姫に顔合わせがあったぐらいかな。あと他の商店街組。

 

どうやら蘭との顔合わせはもうちょっと後らしいな。

 

さて、様子を見に行くとするか……

 

あ?駄目?なんで?は?

 

??????つぐみを見守る以外にここに来た意味ある?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

フゥン……更に二年経った。

 

つぐみも早小学生。前までは歯磨きをやらせて貰っていたのだが、最近やらせて貰えなくて悲しい。

 

……今年も来ました七五三!さあ、つぐみを撮るぞっ!

 

はぁ~!神!照れ顔好き!あ゛あ゛~゛!(尊死)

 

あ、そうそう。二年前に報告したときの直後に蘭と友達になったよ。

 

まあ、それで危惧してることが一つあるんだが……言っておこうか。

 

まあ、ご存知の方は分かるだろう。ご存知無い方に説明しておくと、高校になるとつぐみが過労で倒れる場面があるのだ。

 

調べてみると羽丘女子学園は何らかの力によって共学となっており、ここは見守ることが出来ると安心した。

 

だが、その場面は免れようが無い。俺個人としては健康に過ごして貰いたいのでフォローしたいところなのだが、そこは変えてしまうと最悪ストーリーからAfterglowが消える可能性がある。

 

あの場面はAfterglowの結束を高める為の重要なイベント。そして、つぐみの戒めの一つでもあるのだから。

 

果たしてどちらが正しいのか……俺には分からない。

 

いや、踏ん切りがつかないと言えばいいか。

 

倒れる方が良いに決まっているのだ。だけど、それを見れば俺は病む。確実に病む。

 

考えただけでガチで心臓抉られるかと思うくらい胸が痛いのだ。

 

本当にどうしよう……

 

 




………………………………………………
────────────────────────


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没2

~いつの日かの出来事~

 

カランカラン

 

「あら、いらっしゃい。」

 

「つぐちゃんのおにいさんこんにちは!つぐちゃんはいませんか?」

 

「つぐみ?ちょっと待ってね。呼んでくるよ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ひまりちゃん!どうしたの?」

 

「つぐちゃんあそぼうよ!」

 

「えっ!?きゅうにいわれてもあそべないよ!」

 

「えー!」

 

「つぐみ、遊んできても良いよ。」

 

「でも……」

 

「父さんには言っておくから…ね?でも、暗くなる前には帰るんだよ。分かった?」

 

「わかったよ!おにいちゃん!」

 

「よしよし…じゃあ、つぐみをよろしくね?」

 

「はーい!いこっ!つぐちゃん!」

 

カランカラン

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ひまりちゃん、ともえちゃん、モカちゃん、らんちゃん!バイバイ!」

 

「「「「バイバイ(~)」」」」

 

(きょうはたのしかったな)

 

カランカラン

 

「ただいま~!」

 

「つぐみ、来なさい。」

 

「え?」

 

「父さんッ……!」

 

(おとうさん……怒ってる。わたしがあそんだからかな……?)

 

「幸介も来い。」

 

「……分かりました。」

 

(どうしよう……わたしのせいでおにいちゃんおこられちゃう…)

 

「…つぐみ、今日は遊んではいけないって言ったよね?」

 

「はい……」

 

「どうして遊びに行ったのかな?」

 

「…………!」

 

(どうしよう…!どうしよう…!)

 

「……父さん、さっきも言った通り。つぐみは俺が遊んで良いって許可したから遊んだんだ」

 

「……おにいちゃん」

 

「だから────」

 

「────幸介、おまえじゃないつぐみに聞いているんだ。」

 

「…………」

 

「それで、つぐみ。正直に言ってごらん。」

 

「……あそびにいった……」

 

「どうして?お父さんは今日は遊んだら駄目だって言ったよね?」

 

「……ごめんなさい。」

 

「もう、いきなさい。ご飯になったら降りてくること」

 

「はい……」

 

ギリィィイ!

 

「…おにいちゃん?」

 

「……ごめんな、つぐみ。」

 

「おにいちゃんはあやまらなくていいよ!……わるいのはわたしだもん…」

 

「いいんだ。つぐみは悪くない。良いって言ったのは俺だし…」

 

「…ごめんなさい。」

 

─────────────────────────

 

…………

 

「つぐ~?どうしたの~?」

 

「あっ!ごめん!ぼーっとしてた!」

 

「……つぐ、倒れないでよ?」

 

「倒れないよ!…ちょっと昔のこと思い出してただけだから……」

 

「あっ!もしかして幸介さんでしょ!?」

 

「まあ…お兄ちゃんとのことだけど……」

 

「……つぐ。幸介さんってさ。結局────」

 

 

 

 

 

「どこに行ったんだろうな……」

 

 



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没3

ネタ時空なので本編とは関係ありません。

現時点のバンドリ(シーズン2)なので現行のストーリーとは設定が違います。

こんなものを書いてしまう私を赦してください……


ザワ……ザワザワ……

 

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 

「はーい、じゃあ始めるぞー。白金、号令を」

 

「は、はい……起立、気をつけ、礼……」

 

「「「よろしくお願いします。」」」

 

「着席……」

 

「じゃあさ───「───あの!」……市ヶ谷、どうした?」

 

「これ……なんなんですか?」

 

「有咲、学校だよ?」

 

「おたえに聞いてないっ!……えーと、羽沢さんのお兄さんでしたよね?」

 

「ああ、でも今は羽沢先生だ。いいね?」

 

「いや、そういうことじゃなくて……」

 

「まあ、説明するから少し待っていてくれ。……ここは、バンドリ学園2年A組だ。」

 

「いや、紗夜さんとか燐子さんとか年齢違うじゃん……そもそも羽丘と花咲川の制服で混じってるし……」

 

「そこはつっこんでは駄目だ。というより市ヶ谷、先生が話しているときは私語を慎めとおばあちゃんに教わらなかったか?」

 

「いや───!……はい、静かにします……」

 

「うん、じゃあ続きを説明しよう。現校長…いや、現オーナーの都築詩船先生のやりきったかい方針の元、様々なバンド間の交流を深め合ったり、今後活動していく上で重要なことを学んだりという目的で設立された。……何か質問は?」

 

「はい先生。」

 

「どうした奥沢?」

 

「関係ありませんが、あたしの後ろに席が空いているのはどういうことですか?」

 

「良い着眼点だ。早々と言ってもまだ初日だが、ここに転入する予定がある生徒がいるということだ。その時は仲良くしてやってくれ。」

 

「聞いたわはぐみ!一体どんな人なのかしらね?」

 

「仲良くなりたいね、こころん!」

 

「他には?……じゃあ続けるぞ。この時間は0時間目だ。設てi、校則の確認と簡単なレクリエーションで終わらせるぞ。」

 

「レクリエーション……?一体何なのかしら。」

 

「……そうだな、今私語したから湊……よし、ボーカル全員が自己紹介だ。」

 

「「えっ」」

 

「湊さん……?」

 

「申し訳ないわ……でも、羽沢先生。それはバンドの活動をする上でどこが重要なのかしら?」

 

「自己紹介は必要だ。なぜならお前たちは演奏前によくメンバー紹介をするだろう?ボーカルってのはバンド紹介や口上を述べることが多いから、それを練習しておいて損はない。そうじゃないのか?」

 

「そういうことならするしかないわね。」

 

「美竹は納得したか?」

 

「……そういうことなら。」

 

「よし、じゃあボーカルは前に来い。じゃんけんで順番を決めてから一人ずつやるんだ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「最初は丸山からか。いつでも初めていいぞ。」

 

「じゃ、じゃあ。行きます……!」

 

(彩ちゃんなら安心ね。あれだけ私と練習したもの。)

 

「まん丸お山に彩りをっ!パステルパレットの丸山彩です!よろしくお願いします!特技は頑張ることと、諦めないこと!どんなことにも挑戦しましゅっ!」

 

(最後の最後噛んだ。)

 

(彩ちゃん……)

 

(彩さん……)

 

(アヤさん……)

 

(やっぱり彩ちゃんって面白いなー!)

 

「うん、拍手を。」

 

パチパチパチパチ

 

「噛んじゃった……」

 

「丸山の自己紹介は自身の個性を的確に表していた素晴らしいものだった。じゃあ次は戸山。」

 

「はいっ!」

 

「よし、始めていいぞ。」

 

「Poppin'Partyの戸山香澄です!好きなものはフライドポテトとご飯!皆もキラキラドキドキしよっ!」

 

「はい、拍手」

 

パチパチパチパチ

 

「元気だが、もうちょっと内容を濃くしような。じゃあ次は美竹だ。」

 

「はぁ……」

 

「もっと元気良く。だ」

 

「……Afterglowのボーカル、美竹蘭です。」

 

「……………」

 

「……………」

 

「いやそれだけかよ!もっと無いのか!?」

 

「いや、無いでしょ……」

 

「最近6th singles出ましたとかあるでしょうが……」

 

「それ、2ヶ月ぐらい前の話だよ?」

 

「な?ここには知り合いしか居ないんだしもうちょっと拘ってみては如何かな?」

 

「……Afterglowの美竹蘭です。好きなものは……ビター系のお菓子「と華道」───モカ……!……華道も好き、です。」

 

「頑張ったな。じゃあ次、弦巻」

 

「ハロー ハッピーワールド!の弦巻こころよ!好きなことは楽しいこと!みんなもハッピーになればこの学園生活が楽しくなるわ!そうだ!美咲、はぐみ、薫、花音!今からライブをするわよ!」

 

「「えぇっ!?」」

 

「ライブでみんなを楽しくさせるんだね、こころん!」

 

「ふふ……どうやら私達の出番のようだ。」

 

「じゃあ早速───「はい、そこまでっ!」」

 

「展開的にも美味しいけど時間押してるからライブはまた次の機会だ。それに、まだ一人自己紹介が終わってない。」

 

「あら、そういえば友希那の自己紹介がまだだったのね!じゃあライブは後にするわ!」

 

「ああ、後で幾らでもやって良いから今は控えるんだ……最後は湊。まあこんなのでもトリを務めているが、大丈夫か?」

 

「ええ、任せてちょうだい。」

 

「Roseliaの湊友希那よ。私達は頂点を目指しているわ。この学園生活で頂点を目指す上で大切なものを見つけられるように頑張りたいわ。それについては皆も同じ意見なのではないかしら?だから、5バンドそれぞれ助け合って高め合いましょう。」

 

パチパチパチパチ

 

「うん、最後にふさわしいまとめだった。」

 

「当然よ。」

 

「よし、湊がなんかいい感じにまとめてくれたし、これにて授業を終わる!白金、号令を」

 

((あ、その辺は案外適当なんだ……))

 

「……起立、気をつけ、礼。」

 

「「「ありがとうございましたー」」」




番外編。正直に言うと台本形式にした方が良いのではと思うが……

席順は


─────────教卓─────────
─戸山──美竹──丸山──湊───弦巻─
─花園──青葉──氷川──氷川──瀬田─
─牛込──上原──白鷺──今井──北沢─
─山吹──宇田川─大和──宇田川─松原─
─市ヶ谷─羽沢──若宮──白金──奥沢─
─空席──空席──空席──空席──空席─
─空席──空席──空席──空席──空席─


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没4

何回ぐらい続けようかなぁ


キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 

ガラガラガラァ

 

「よぉーし!授業を始めるぞ!日直は号令をしてくれ!」

 

「「「???」」」

 

(((日直なんて決めたっけ……?)))

 

「……お前たち教室の掲示板を見ていないな?奥沢、この時間の日直は誰だ?」

 

「あ、はい。……戸山さんが今日の日直です。」

 

「だそうだ。何か伝えるときは後ろの掲示板を見るように。じゃあ号令を頼む。」

 

「起立!気をつけ!礼!」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

「着席!」

 

「じゃあ授業を始める。……その前にだ!」

 

バンッ!

 

「席替えをするッ!」

 

「あの、あたしらまだ1時間目なんですけど……」

 

「そうだな、だがこれを見てみろ。」

 

─戸山──美竹──丸山──湊───弦巻─

─花園──青葉──氷川──氷川──瀬田─

─牛込──上原──白鷺──今井──北沢─

─山吹──宇田川─大和──宇田川─松原─

─市ヶ谷─羽沢──若宮──白金──奥沢─

 

「席表……?」

 

「ポピパ、Afterglow、ハロハピを見てみるんだ。今はロール順に並んでいるが、その為に身長差が激しいんだ。だから背の順にするというわけだ。今のままの方が管理しやすいがな

 

「じゃありみりんが一番前でおたえが一番後ろってことですか?」

 

「そういうことだ。並べ替えた後の座席表はもう作ってある。」

 

─牛込──上原──白鷺──宇田川─北沢─

─市ヶ谷─羽沢──丸山──湊───弦巻─

─戸山──美竹──氷川──白金──松原─

─山吹──青葉──大和──今井──奥沢─

─花園──宇田川─若宮──氷川──瀬田─

 

「えぇー!前の方が絶対良いよー!」

 

(こいつ絶対氷川の横になりたいだけじゃないか……)

 

「そう言っても、前の授業で横に反らして前を見ようとする生徒もいたんだ。仕方無いだろう。」

 

「ぶー!」

 

「ブーイングをぶーで表すな。というより最前列ベース多っ!」

 

「いや、そんなことを言われても……」

 

「じゃあ授業を始めるぞ。」

 

(フリーダムすぎるわ……たえちゃんみたい……)

 

「千聖さん呼びました?」

 

「えっ!いや、呼んでないわ。」

 

「……?そうですか。」

 

「はい、授業をするから私語を抑えて。今回のテーマはこれだ。」

 

「「「お誕生日…?」」」

 

「そうだ。今日はお誕生日についてだ。」

 

「あ、あの───」

 

「───君たちの疑問も最もだ。なぜ誕生日が関わる?って思ってるね?」

 

「でも、誕生日は共通の話題だ。誰しもが持っていて、関係のきっかけにもなりやすい。」

 

(((多分、ここにいるみんなは今日が誰かの誕生日だと知ったら祝うと思うけどなぁ……)))

 

「まあ、そういうことだ。でだ、誕生日は覚えないと話にならない!今日は誕生日を覚えようという授業だ!」

 

「それって授業……?」

 

「いや、数学とかしても面白くないだろう……よし、今思いついたから弦巻の誕生日からだ。さて、弦巻の誕生日が分かるという奴は手をあげてくれ」

 

(……こころの誕生日だったら知ってる人は多いんじゃないかな。)

 

(あ、あれ?聞いたことあるのに忘れちゃった……!)

 

「1,2,3……14人か。やはり多いじゃないか」

 

「そうなの?でも、みんなに覚えてもらいたいわ!」

 

「知らなかった11人は8月8日(ハローハッピー)バースデイとかで覚えておくんだ。」

 

「それって幸介先生が考えたの〜?」

 

「…天の意志と言っておこうか。じゃあ、次は奥沢にしようか。」

 

「いや、なんで……」

 

「弦巻と奥沢は基本セットだからな。剣と鞘、鉛筆と消しゴム、親と子……まあそういう訳だ。」

 

「どういうこと!?ちょっと意味わかんないんだけど!」

 

「美咲ちゃんとこころちゃん……確かに……!」

 

「ちょっとりみ!?というかみんな全体的に納得してない!?」

 

「あら?美咲はあたしと一緒じゃ嫌なの?」

 

「いや……そうじゃない、けど。」

 

「だったら良いじゃない?」

 

「あー…うん、もうなんかいいかな。」

 

(((そういうところの積み重ねなんじゃないかなぁ……)))

 

「じゃあ一段落したみたいだから本題へ戻るぞ。奥沢の誕生日を知ってる人!」

 

(奥沢さんは確か誕生日は大変だって言ってましたね……あの時の奥沢さん、随分と嬉しそうでした。)

 

(……どうしようかしら、まったく知らないわ。)

 

「1,2,3……13人か!スゴいな……」

 

「ちょっと意外……というよりあたしって誕生日とかあんまり言ってないと思うんだけど……」

 

「こころんが言ってたから覚えてたんだよね〜」

 

「自分は奥沢さんが仰ってたのを覚えてて……」

 

「……う、ん。なんか、恥ずかしい……」

 

「いや、もっと少ないと踏んでいたんだがなあ……覚えていなかった奴らは真実には10月1日(遠い)奥沢美咲で覚えておけ。」

 

「いや何それ!?」

 

「分からないか……?」

 

「そんな真実って言ったって……あ、もしかしてミッシェルのこと……?」

 

「……なんか恥ずかしくなったから次の人に行くぞ。次は、なんか物憂げな顔してる湊の誕生日だ。」

 

「私の誕生日なんて、さっきの二人ほど知らないと思うわ。」

 

「違うぞ湊、さっきの二人が知られすぎているんだ。想定の範囲外だった……

 

「まあともかく、湊の誕生日を知っている奴は?」

 

(バイトの時にリサさんが言ってたな〜)

 

(香澄があたしの誕生日の前の日が友希那さんだって言ってたような……)

 

「1,2,3……11人……?いや、多くないか?」

 

「意外だわ……というより、美竹さんどういう経緯で知ったのかしら?」

 

「別に、たまたま聞いて知っただけですよ。」

 

「えぇ〜!蘭が教えてって言うから───「モカ!」」

 

「……リサ、美竹さんの誕生日を教えてくれるかしら。」

 

「えっ、というより今…?」

 

「ええ、美竹さんが私の誕生日を知っていて私が知らないというのは少し不公平に思えたからよ。」

 

「───っ!湊さん……!」

 

「……別にあなたの為じゃないわ。私がそう思っただけよ。」

 

「友希那ぁ……!」

 

(なんなんでしょうか、この茶番……いや、そう言っては失礼でしょうけども。)

 

(二人の間だと居辛いなぁ……やっぱり後ろの方がよかったな……)

 

「良い精神だぁ……感動した……」

 

(お二人はライバル……真剣勝負を望んでるからこそミナトさんはランさんの誕生日を知ろうとしたんですね!これこそブシドー、です!)

 

「あっと湊の誕生日は10月26日だ。覚えておくんだぞ!」

 

「……私にはないのね」

 

「文句は小説情報を見て感傷に浸る変な奴に言ってくれ。」

 

「……??」

 

「次!そうだな……戸山、誰か皆に誕生日を知って欲しい人はいるか?」

 

「はいっ!有咲の誕生日を皆にも知ってほしいです!」

 

「おまっ!香澄ぃ!」

 

「市ヶ谷の誕生日か……知っている人はどれくらいいる?」

 

(ああああ!嘘だろ!なんで私なんだ!?前の三人と絶対比較されるじゃねーか!)

 

「……なんだ、11人じゃないか。」

 

「えっ……?」

 

……レアスタンプ……もうちょっとあれだと思ったがなぁ。じゃあ知らない人は市ヶ谷の誕生日は──────これはッ!!?」

 

「今度はなんなんだ……?」

 

(ロクでもないことだったらぶっ飛ばす。ぶっ飛ばせなくてもぶっ飛ばす。)

 

「先生はとある発見をしてしまった……今から黒板に書くので見てくれ。」

 

 

 

323 519 714 124

 

 

 

「これらの数字は市ヶ谷を除いたPoppin'Partyの誕生日を並べただけの数字だ。……なんの法則性の無い数字だが、これには隠れた法則があった。」

 

 

 

-323+519+714+124=1034

 

 

 

「市ヶ谷以外の四人の誕生日を足し引き1034という数が出される。───しかし四人ではPoppin'Partyじゃない。市ヶ谷が居なければ、ポピパではない。だからここで市ヶ谷有咲(いちがやありさ)の名前の文字数である7を引くんだ」

 

 

 

1034-7=1027

 

 

 

「ああっ!これって!」

 

「1027……10月27日。この日は市ヶ谷の誕生日だ。」

 

「「「なん…だと……」」」

 

「じゃあ、ポピパって実は……有咲だったんだ。」

 

「何言ってんだおたえ!?」

 

(こんなのただのこじつけだろ!)

 

「ポピパ イズ 有咲!ポピパ イズ 有咲!さあ皆さんご一緒に!」

 

「「「ポピパ イズ 有咲!ポピパ イズ 有咲!」」」

 

「お前ら……」

 

 

「人の誕生日で遊ぶんじゃねーーーーーーーー!!!」

 

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン




なにこれ

有紗のギミックを考えた瞬間オチはこれにしようと決まりました。みんなも考えてみてね。


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没5

今回は台本形式で試してみます。


キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 

幸介「それじゃあ授業を始める。」

 

蘭「起立、気をつけ、礼」

 

「「「お願いします!」」」

 

蘭「着席」

 

幸介「それじゃあ2時間目の授業の内容……と言いたいとこだが───突然だがこのクラスで私あの子とギスってるなあ〜とか、あの子って〇〇と仲悪いよね。といったことがある人!」

 

美咲(どういうことなんだろう……毎回予想がつかない……)

 

幸介「ほんとうか?全員仲良しこよしか?……美竹の目線からは何かないか?」

 

蘭「いや……」

 

幸介「目が泳いでいる……まあ良い。」

 

幸介「それでは本題へ移ります。今回の授業は誰々といえば〇〇!というゲームをします。ルールは簡単バンド別対抗戦で、列ごとに聞いていきますのでリズムに合わせて答えて下さい。見事答えれたら一人につき1ptずつ得点を貰えます、答えが割れた場合には多いほうの人数だけ得点を得ることができます。全員正解の場合は特別ボーナス+1pt、計6ptが加算されます。」

 

有咲「特徴とかを言うんですか?」

 

幸介「そういうこと。じゃあまずリズムを確認するんだ。ガウベルを4回、笛を3回鳴らした後に誰なのかを言うので、それをもう1セット鳴らした後に特徴を言ってください。ルール分からないという人はいますか?」

 

「「「分かりました」」」

 

幸介「じゃあリズムとりまーす。」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「牛込!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

Poppin'Party『チョココロネ!』

 

幸介「おー、流石!全員ルールは理解できたか?」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「青葉!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

Afterglow『パン!』

 

幸介「はいここも流石ですね!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「若宮!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

Pastel✽Palettes『ブシドー!』

 

幸介「おっと、簡単すぎたか?」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「紗夜!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

Roselia「「「「ポテト!」」」」「ギター!」

 

幸介「ああーっ!やってしまった!ロゼリアは現在4pt!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「北沢!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ハロー ハッピーワールド!『コロッケ!』

 

幸介「はい一旦終了でーす。んー、最初は簡単にして全員6ptにするつもりだったが……」

 

リサ「紗夜〜!」

 

紗夜「……あの、皆さんそんなに私がポテトを好きだと思ってるんですか?」

 

燐子、あこ「「はいっ!(そうですね……)」」

 

友希那「紗夜、恥らっては駄目よ。これは自身の周囲からの印象を読み取る必要があるの。」

 

紗夜「……分かりました。」

 

幸介「いい感じに纏まったので再開します。一度言った答えはもう一度答えても無得点扱いになりますので注意してね。割れた場合には得点となった答えのみが適用されます!良いですね!」

 

「「「はい!」」」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「市ヶ谷!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ポピパ「「「盆栽!」」」「「蔵!」」

 

幸介「oops!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「巴!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

アフロ『太鼓!』

 

幸介「予想通りここは強敵!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「丸山!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

パスパレ「「「「まん丸お山に彩りを!」」」」「トチる!」

 

幸介「残念、丸山自信が無かった!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「今井!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ロゼリア『クッキー!』

 

幸介「さあここで挽回!頑張ってほしい!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「弦巻!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ハロハピ『ハッピー、ラッキー、スマイルイエーイ!』

 

幸介「ここも個性の塊だぁ!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「山吹!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ポピパ『パン!』

 

 

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「上原!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

アフロ「「「「…………」」」」「えいえいおー!ってええ!?」

 

幸介「まさかの上原といえばスルー!これは無解答ではなく4pt扱いです!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「日菜!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

パスパレ「「「「るんっ!」」」」「ギター!」

 

幸介「あー!氷川日菜完全に姉を追った形となった!4ptです!」

 

千聖「日菜ちゃん!」

 

日菜「ええー!皆私といえばギターだよ〜!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「白金!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ロゼリア『生徒会長!』

 

幸介「役職!それもありです特徴ですから!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

幸介「松原!」

 

カン カン カン カン ピッ ピッ ピッ

 

ハロハピ「「「「クラゲ!」」」」「f......クラゲ!」

 

幸介「今のは不正です!口の形からしてふぇぇと言うつもりでした奥沢!」

 

美咲「ごめんなさい……テンパりました……」

 

花音「が、頑張ろうね、美咲ちゃん」

 

幸介「はい、それでは今から縦列ではなく横一列になりまーす!ルールは同じく答えた場合はバンド毎に1pt、パーフェクトならお題のバンドに+1pt加算されます!更にカウントも3回の笛だけになりますが、仲がいいみんなならすぐに───答えられますよね?」

 

「「「ええーっ!」」」

 

幸介「それでは行きます!準備は良いですね!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「白鷺!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

りみ、ひまり、千聖、あこ、はぐみ『女優!』

 

幸介「素晴らしい!全員1pt、パスパレはボーナス1pt獲得!次行きます!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「羽沢!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

有咲、つぐみ、彩、友希那、こころ『コーヒー!』

 

幸介「皆さん冷静!全員同じです!次!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「美竹!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

香澄、蘭、日菜、燐子、花音『華道!』

 

幸介「企画倒れレベルで同じ解答ばかりです!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「奥沢!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

沙綾、モカ、麻弥、リサ、美咲『ミッシェル!』

 

幸介「いや、こんなことある?次行きます次!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「瀬田!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

たえ、巴、イヴ、紗夜、薫『儚い!(儚い…)』

 

幸介「もう一度一番前から!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「あこ!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

りみ、ひまり、千聖、あこ、はぐみ「巴!」「「ドラム!」」「大魔天使あこ姫!」「かわいい!」

 

幸介「いきなりバラバラぁ!?パスパレとポピパに1pt!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「湊!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

有咲、つぐみ、彩、友希那、こころ「「「「ボーカル!」」」」「猫!」

 

友希那「弦巻さん!?」

 

こころ「あら?友希那は猫は嫌いだったのかしら?」

 

幸介「割れましたがハロハピ以外に1pt!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「戸山!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

香澄、蘭、日菜、燐子、花音「「「星!」」」「「キラキラドキドキ!」」

 

幸介「あー!ロゼリアとハロハピは得点を稼げませんでした!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

幸介「花園!」

 

ピッ ピッ ピッ

 

たえ、巴、イヴ、紗夜、薫「ハンバーグ!」「「「「うさぎ!」」」」

 

沙綾「おたえ〜!うさぎで良いのに〜!」

 

たえ「ハンバーグ好きなんだけどなぁ。」

 

幸介「さあここでポピパが逃してしまった!残念ですがこれで終了です!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

幸介「……さて、どうだった?途中で口調変わったのは気にしないでくれ……」

 

香澄「楽しかった〜!ね、有咲!」

 

有咲「まあ、そうだな……でも香澄とおたえは私のことを蔵って考えてるのか……?」

 

香澄「あはは…有咲といえば蔵かな〜?って……」

 

たえ「おばあちゃんの方がよかった?」

 

有咲「いや、もう蔵でいいや……」

 

幸介「じゃあ一番割れたあこ。どうだった?」

 

あこ「皆、我が仮初の姿に騙される……じゃなくて……」

 

燐子「欺かれる?」

 

あこ「そう!我が仮初の姿に欺かれたのだ!」

 

幸介「ええと、それぞれの解答は『巴』『ドラム』『かわいい』『大魔天使あこ姫』だったが……まず『巴』と答えた上原から聞こうか。」

 

ひまり「あこって巴と一緒にいるからかな?」

 

幸介「なるほど、確かに一緒にいることが多い……『ドラム』は苦し紛れだが納得はできる……北沢の答えである『かわいい』だが……北沢、どういうことなんだ?」

 

はぐみ「……?あこちんってかわいいよね?」

 

あこ「ええー!はぐ!かっこいいって言ってよー!」

 

幸介「まあ個人の捉え方は自由だから……それでは結果発表に移りましょう!」

 

幸介「今回まずは4位から言いましょう!第4位は……」

 

 

 

 

 

幸介「Poppin'PartyとRoselia!」

 

香澄「あ〜!4位だよりみりん〜!」

 

りみ「うーん……やっぱり有咲ちゃんのを外したのは大きかったんかなぁ……」

 

友希那、紗夜「」

 

リサ「二人とも落ち着いて!ね?」

 

紗夜「……私が、ポテトと言えば……」

 

リサ「も〜!そんなにネガティブにならないの!」

 

幸介「どちらも3回周囲の評価とズレていました。さて次は……こちらも同率2位!では一位のバンドから発表させて貰います!……第一位は───ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

幸介「───Afterglow!」

 

ひまり「やったあ!」

 

巴「私らが一位か!」

 

幸介「日直でもある美竹!何かコメントを下さい!」

 

蘭「……悪くないね」

 

幸介「すっごい笑顔……ありがとうございます!では2位タイのハローハッピーワールド!とPastel*Palettesの両者は何かコメントを下さい!」

 

丸山「あ、えっと……今回のやったこのゲーム、すっごく面白かったです!次の出演の時にもやりたいです!」

 

千聖「彩ちゃん、収録じゃないのよ……」

 

丸山「あっ!そうだった……ちょっと進行がそれっぽかったから……」

 

こころ「すっごく楽しかったわ!それにみんなのことも知れたから別に1位じゃなくても良いわ!」

 

幸介「素晴らしいコメントだ───」

 

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 

幸介「───っと、時間になりましたので終了します。日直!」

 

美竹「起立、気をつけ、礼」

 

「「「ありがとうございました!」」」




間違いなく黒歴史回。効果音いらなかったのでは?と思いますが区切らないと分かりにくすぎるので入れたままにしております。

皆さんはアプデ情報見ましたか?次はAfterglowの箱イベのようです。

ちょ、ちょっとクラフトエッグさん?今年はAfterglow水着ですよね?5月最終に箱イベでも8月にもう一度箱イベ来ますよね?


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10100101
適当なあらすじ


前の二話は適当なほうの奴でしたすみません。

見せしめと反省としておいておきます。


全世界の皆様へ

 

ウチの妹は天使です

 

─────────────────────────

 

遂に来た。

 

「ふっふっふっふっ………はぁ゛あ゛っはっはっ!」

 

待ちに待ったこの時がなぁ!

 

「はあぁーーーッ!はッ!はッ!」

 

「幸介静かにして!つぐみが起きちゃうでしょ!」

 

「ごめん……」

 

さあ、諸君。もうお分っかりだろう?おっと興奮し過ぎて噛んだ。

 

天使の生誕だ!お前らぁ!祝え!祝えぇ!

 

ふぅ……

 

ん?情緒不安定?僕3歳だから分かんない。

 

とまあジョークは置き。察しの悪い君には説明してあげようではないか。

 

もう二年が経っているが、羽沢家の長女つぐみの誕生なのだ。

 

(そして俺は兄となった男、羽沢幸介!)

 

え?誰だって?

 

まあ、あれだ。つぐみへの尊さとか諸々がなんかアレして転生した奴だと思えば良いよ。

 

兎も角、折角転生したのだ。おっさんになってもお兄ちゃんなんて呼ばれたいし、歯を磨いてあげたい。

 

はいそこ性癖に偏りが見れるとか言わない。

 

───────────────────────

 

さて、君達が観測している時間軸を動かした。

 

今は七五三。つぐみはおめかししているよ。

 

ああ、かわいいねぇ……ちょっと前からおにいちゃんって呼んでくれるし、そのせいで毎日墓建ってるぐらい可愛い。

 

おめめパッチリ、ショートの髪も飾り付けて、赤い着物を着ている。父さんにカメラの重要性を説いて買って貰ったカメラを使い思い出を残してゆくのだ。

 

(ああっ!笑顔が!眩しいッ!)

 

時折微笑みかけてくるのがかわいいいいいいい!アッ!(尊死)

 

ふう、死ぬかと思った。いや、死んだわ。

 

何父さん?俺の写真はいいのかって?いいって、今はつぐみの写真だろ?俺は来年だし、俺なんかが写ると純度1000%のつぐみ成分が薄れてしまう……あ!父さんにカメラを取り上げられてしまった……

 

「おにいちゃんもいっしょにとろっ!」

 

OH……神が言うなら仕方ないな……

 

っ゛で!?手を握ってきたぁ!?

 

尊死()にまーす。

 

────────────────────────

 

つぐみが年中じゃあ!可愛すぎる

 

月日は早いものでの、二年程度直ぐに経ったよ。この間の出来事はソイヤこと巴姉貴とあこ姫に顔合わせがあったぐらいかな。あと他の商店街組。

 

どうやら蘭との顔合わせはもうちょっと後らしいな。

 

さて、様子を見に行くとするか……

 

あ?駄目?なんで?は?

 

??????つぐみを見守る以外にここに来た意味ある?

 

────────────────────────

 

フゥン……更に二年が経った。

 

つぐみも早小学生。前までは歯磨きをやらせて貰っていたのだが、最近やらせて貰えなくて悲しい。

 

……今年も来ました二度目の七五三!さあ、つぐみを撮るぞっ!

 

はぁ~!神!照れ顔好き!あ゛あ゛~゛!(尊死)

 

あ、そうそう。二年前に報告したときの直後に蘭と友達になったよ。

 

まあ、それで危惧してることが一つあるんだが……言っておこうか。

 

まあ、ご存知の方は分かるだろう。ご存知無い方に説明しておくと、高校になるとつぐみが過労で倒れる場面があるのだ。

 

調べてみると羽丘女子学園は何らかの力によって共学となっており、ここは見守ることが出来ると安心した。

 

だが、その場面は免れようが無い。俺個人としては健康に過ごして貰いたいのでフォローしたいところなのだが、そこは変えてしまうと最悪ストーリーからAfterglowが消える可能性がある。

 

あの場面はAfterglowの結束を高める為の重要なイベント。そして、つぐみの戒めの一つでもあるのだから。

 

果たしてどちらが正しいのか……俺には分からない。

 

いや、踏ん切りがつかないと言えばいいか。

 

倒れる方が良いに決まっているのだ。だけど、それを見れば俺は病む。確実に病む。

 

考えただけでガチで心臓抉られるかと思うくらい胸が痛いのだ。

 

本当にどうしよう……

 

 




申し訳無い……

展開を厚くしてお送りしたいです。

シチュエーションはたくさんあります故


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風呂は100数えて出ろって言うけど

前座回

誰か語彙力を下さい……(切実)


最近、俺には悩みがある。

 

悩んでいるといえばいつも何故あれ程つぐみが尊いのかを悩んでいるが、今回はそれ以外に早急に対応すべき悩みが出来てしまった。

 

それは――

 

「おにいちゃん!いっしょにおふろはいろー!」

 

……これだ。

 

「つぐみ?あんまりお兄ちゃんを引き止めないようにね?」

 

「はーい!」

 

勿論風呂に御一緒することはご褒美だ。てか最初ビックリしたもん。味噌汁噴出したもん。

 

まあ、それはそれ。最初頼んできたのが3歳ぐらいのころだ。まあ、その時は良いって言ったんだよ。

 

んで、髪の毛洗ってあげたり、風呂の中で遊んだりして平和だったのだ……あの時まではな……

 

ことの発端は先週だ。いつもの様につぐみが風呂に入ろうと言ってきたので入ると

 

「せなかあらってあげる!」

 

と言い出したのだ。色々葛藤しつつも背中を洗って貰うことにして頼んだら。

 

「こっちもあらうね!」

 

と前まで洗い出したのだ。……流石に駄目だと思ってやめさせたけど、何故か毎回のように背中を洗うと言い出してしまった……

 

まあ、ここまでなら惚気なら他でやってくれと言いたいと思う。

 

だが、本当の絶望はここからだった―――─

 

(お風呂に波が起きるのってそんなに楽しいのかな?)

 

つぐみはすごく喜んでいるが、この波を起こす遊びはイマイチ楽しさは分からなかった。

 

「おにいちゃん!もっと!もっと!」

 

「いくぞ!そ──れ゛っ゛!?」

 

一際大きな波を起こすも滑ってしまう。するとつぐみのバスタオルが……

 

ハラリ

 

(!?!!?!???!!?)

 

「ぅ……ぁ……」

 

「いたた………おにいちゃん?おにいちゃん!?」

 

──────────────────

─────────────

───────

 

(あの時はたまたまのぼせたと言ったけど……正直なところ毎回のぼせそうなんだよな……)

 

それなので一緒に風呂に入るときは無心になることを心掛けている。例えば般若心経を唱えたり素数を数えたりしているのだ。

 

だから大体

 

「「いーち、にーい、さーん、しーい…………」」

 

(2,3,5,7,11,13,17,19,23,29………)

 

といった意味分からんことをしている。

 

……今日は般若心経にするか。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ふんふんふんふーん♪」

 

「…………………………」

 

(観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空想不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無限耳鼻舌身意無色声香味触法無限界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無知亦無得以無所得故菩提薩垂依般若波羅蜜多故心無圭礙無圭礙故無有恐怖遠離一切転倒夢想究境涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪曰羯帝羯帝波羅羯帝波羅僧羯帝菩提僧莎訶般若心経)

 

「おにいちゃん気持ちいい?」

 

「うん。つぐみは背中洗うのが上手だね。」

 

「ふふっ!かゆいところはないですかー?」

 

「うーん…この辺かなー?」

 

「んしょ…!んしょ…!」

 

「ふう……気持ちよかった。ありがとうね。」

 

「えへへ…」

 

(ぐっ……!観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空想不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無限耳鼻舌身意無色声香味触法無限界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無知亦無得以無所得故菩提薩垂依般若波羅蜜多故心無圭礙無圭礙故無有恐怖遠離一切転倒夢想究境涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪曰羯帝羯帝波羅羯帝波羅僧羯帝菩提僧莎訶般若心経)

 

「よっと、」

 

(……ふう。とりあえず一息つけた……)

 

風呂に浸かり天を仰ぐ。今日も難所は突破できた……

 

「おにいちゃん!またアレやって!」

 

「ん?……ああ、いいよ。」

 

つぐみが急かすので俺は湯船の中で合わせた両手の中に水を含ませる。

 

「それ!」

 

勢い良く手を閉じると中から水が飛び出した。所謂水鉄砲である。

 

「うーん…こう?」

 

(小さな手じゃ出来ないけど必死にやってるつぐみ可愛過ぎか?)

 

そのまま見ていると、少しだけ水を飛ばすことに成功したようだ。

 

「やった!おにいちゃんみた!?」

 

「ふふ、飛ばすことが出来たね。」

 

喜んでいる顔にかなり弱く水を飛ばしてみることにした。すると──

 

「やったな~!それっ!」

 

「もっと強く飛ばしてごらん。」

 

「それそれ!」

 

その後もつぐみと水鉄砲で撃ち合いを楽しんだのであった。




二人とも健全な湯浴みスタイルですよ。


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最初から仕上げまでしていくのが務めだと思っている

書きたかった回。

というよりこれが筆をとった訳でもあります。


つぐみとの入浴を終えた後、本日のメインイベントと言っても過言ではないのがある。

 

「あーん」

 

つぐみの口腔を暫く覗く。

 

(……見た感じ虫歯は無し、ちゃんと磨いてるみたいだな。)

 

いい子には撫でてあげよう。

 

「ん。ちゃんと磨けてるな。」

 

「んぅ……」

 

気持ちよさそうに目を細めて撫でるのを受け入れている。

 

(あー!マジで目を細めるの反則!なんだこの可愛い生命体は!?)

 

やはり、可愛すぎる。猫なんて目じゃないな!

 

「つぐみ、立ったままで大丈夫か?」

 

「うん。」

 

「じゃ、磨くぞ。」

 

つぐみのピンク色の歯ブラシとクリアクリンを手に取り、ブラシに少量の歯磨き粉を付けた。

 

まずは上顎の右の臼歯から始める。外側から内側、最後に噛み合わせを磨くのが俺流の磨き方だ。

 

(つぐみの歯はまだ全て生え替わって無い。)

 

つぐみが抜けた歯は右下の側切歯と左上の側切歯の二つだ。

 

そこは生えかけの歯が除いているが、それ以外は未だに乳歯なのだ。ちなみに俺は3本抜けている。

 

まあ、まだ小学一年生だしなぁ……なんて思いながら臼歯の外側を磨き終える。次は内側だ。

 

シャコシャコと小刻みに刻まれるリズム。小さく速くが意外と大切なのよ。ホントの話。

 

内側は外側よりしっかりやるのがコツ。そして噛み合わせは内側よりもキレイするのが理想だ。

 

次は左側だ。こちらも右同様に磨くのだが、このとき左右によって力加減が変わることに注意しよう。持ち替えて磨くのも良いだろう。

 

強過ぎず弱過ぎずの絶妙な境目を行くように力を入れる。勿論弱過ぎると汚れがキレイに落ちないし、逆に強過ぎると歯を痛める原因となってしまう。

 

(生え替わってないからすぐ終わってしまうなぁ……)

 

ちょっと残念に思いながらも上顎の犬歯と切歯を磨く。

 

まず、犬歯は個人差もあるのだが乳歯の場合は殆ど気を付ける事はない。歯ブラシを縦にして歯と歯の間を入念に磨くのだ。

 

切歯もやはり、歯と歯の間を意識して磨くのがコツだ。

 

だがしかし、ここからがよく磨かねばならぬ場所だ。

 

切歯と犬歯の内側。ここは生え替わった後と大差がないほどデコボコしており磨きにくい。更に力も入れにくい難所だろう。

 

ここは徹底的にやる。

 

「つぐみ、もうちょっとだけ開けれる?」

 

はん(うん)……」

 

大きく口を開けたつぐみに歯ブラシの感覚のみで磨いてゆく。

 

……切歯内側は磨けた。次は犬歯だ……

 

デコボコに合わせて歯ブラシを差し込み磨く。犬歯の隙間に食べカスが挟まるのはよくあることだろう。

 

しっかりと磨けたことを確認して一旦つばを吐かせる。

 

「ぺってしていいよ」

 

つぐみはつばを出した後水を含んでくちゅくちゅぺっと吐き出してふたたびこちらを向いた。

 

これと同様の行程を下顎の歯でも行って終了だ。

 

「下の歯もやるぞ?」

 

「うん」

 

正直なところつぐみは俺のする歯磨きを嫌がると思っていた。しかし、予想外にもつぐみはこれを気に入っているらしく、割とニコニコしながら待ってくれている。

 

(歯磨きが好きなのか?分からん。)

 

つぐみの謎な部分の一つであるのだ。他にも、何か一緒に食べるときは俺を待つのだが俺は食べないときもつぐみは待ったり、水鉄砲が好きだと思ったが母さんや父さんと一緒に入るときは水鉄砲をしないらしい。

 

それが分かったときひょっとして無理させてんじゃあ……なんて危惧したのだが、反応をみるにつぐみは本当に楽しんでいるように感じる。

 

(今やってる歯磨きも自分で出来るんだけどな……)

 

理解し得ないが、つぐみの何かしらを引き出せているのなら嬉しいとは思ってる。

 

そうこうしているうちに歯磨きも仕上げだ。前歯は入念に磨いておく。歯が白いと笑顔がより綺麗になるからね。

 

「よし!終わり!」

 

つぐみが口をゆすいだ後、歯ブラシを洗って自分の歯ブラシを手に取る。

 

「おにいちゃん!」

 

「ん?」

 

「わたしがはをみがくよ!」

 

「……おっ、じゃあお願いするよ。」

 

屈んで磨きやすい位置に移動する。つぐみは緊張した面持ちで歯ブラシを握っていたが意を決して始めた。

 

「ごし…ごし…」

 

(別に声に出さなくても良いのに……)

 

だが、頑張っていることは分かった。

 

ひとしきり磨き終えた後、つぐみは遠慮がちにこちらを見てどうだったと聞いてきた。

 

勿論──

 

「──良かったぞつぐみ。」

 

と撫でてあげた。

 

「ほんとう!?」

 

(あーもう!なんだよ!可愛いか!?)

 

最近は何でもやりたがりのつぐみだが、そんなつぐみも可愛過ぎる。

 

「えへへ……」

 

うん、頑張ったなぁ……!偉かったぞぉ…!

 

────────────────────────

 

良い子は寝る時間だ。俺は良い子だから寝る。てかつぐみはちょっとでも起きようと眠気を耐えるから早く寝るのだが。

 

「おにいちゃん……いっしょにねてもいい?」

 

「ふぁ!?」

 

(変な声でた……一緒に寝よ?だって…?)

 

「いやだった…?」

 

「……良いよ、一緒に寝るか。」

 

「やった!」

 

もうね。そんな上目遣いで頼まれたらね。断る方が難しいってもんだよ!

 

てかどうした。最近のつぐみは。……あれか?萌え機能でも追加されたか?

 

「じゃ、電気消すよ。」

 

「うん」

 

パチッ

 

消灯後、暫く起きていたようだが、すぐに寝息をたて始めた。

 

 

 

 

但し俺に抱きついてだが。

 

対して俺は──

 

(寝れるかっ!こんな状況だれが予想出来る!?)

 

朝日が昇るまで心が荒ぶったのだった。

 

あと時々おにいちゃんって寝言言ってたので尊死()んだ。




つぐみの前では必死に抑える兄の鏡


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夏休みダイジェスト

小中は飛ばし飛ばしの展開になります。


夏休み

 

世間はイベントなどで盛り上がりを見せる時期だ。

 

家族で旅行。友達とお泊まり。家でテレビを見るのも良いし、外出して遊び回るのも良い。

 

俺は自宅でゆったり過ごしたい派だ。何もしないというただただ時が流れていくだけの無駄な時間を過ごす。あの虚無感は味わい深い。

 

まあ、今年もそんなことは無いのだろうが。

 

─────────────────────────

 

「わっ!すごいいっぱい人が来てるね!」

 

「……暑い。」

 

俺は今、市民プールの、ど真ん中

               幸介

 

なんて句を考えてしまうぐらい思考がイカれるほど暑い。

 

何故プールだって?それは──

 

『あ、ちょっとちょっと幸介君ー?』

 

『はぐみのお母さん。こんにちは。』

 

『はいこれ。』

 

『……市民プールのチケット?良いんですか?』

 

『良いの良いの。ウチで余ってただけだからつぐみちゃんと行ってくると良いわ。』

 

『ありがとうございます。』

 

──なんて事がな……

 

まあ、うん。予想以上に大盛況なもんでさ。

 

「わぁー!お姉ちゃん、あこウォータースライダーしたい!」

 

「はいはい、はぐれないようにな。」

 

「蘭~?早く~」

 

「モカ……せかさないでよ……」

 

「ともえ~!あこ~!待ってよー!」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

…………………………………………………

 

「あはは…みんなも来てたんだね。」

 

「……いやいや、偶然にも程があるだろ?」

 

おかしい。ここは割と離れた場所だぞ?

 

「アタシとあこは太鼓の練習のときにチケットをもらったんだ。それで三枚だったからひまりをさそって行こうってなった」

 

「私は山吹ベーカリーの福引きで2等が当たってペアチケットだったから蘭を誘ったんだ~」

 

それもしかして商店街の人が仕組んだんじゃなかろうか?

 

「俺らははぐみのお母さんから貰ったからつぐみと行こうってね。まあ、偶然だけど集まったんだから一緒に遊ぶか?」

 

「さんせーい!らんもモカも一緒に遊ぼっ!」

 

「うん、そうしよう」

 

「お兄さ~ん、モカちゃんはかき氷が食べたいな~」

 

「それはせめて昼ご飯の時に言ってくれ」

 

「こー兄!あれやりたい!」

 

「……ウォータースライダー?あれ身長大丈夫なの?」

 

「あこは去年一緒に乗ったから大丈夫だぞ」

 

「んじゃあ先アレから乗るか。」

 

「えぇー!落ちたりしないかな……?」

 

「ひーちゃんだけ落ちるかもね~?」

 

「もー!モカ~!」

 

…………………………………………………………

 

時刻は夕暮れ時。俺らは帰る客の一塊となっている

 

「ふう!いっぱい遊んだな!」

 

「楽しかったねー!」

 

「あこ、来年もお姉ちゃんたちと来たいなぁ」

 

「蘭~、まだ怒ってるの~?」

 

「…………」

 

モカがかき氷が売り切れていたのでかわりにソフトクリームを買ったのだが、それを俺が蘭にぶちまけてしまうというアクシデントがあったのだ。

 

「蘭…本当にごめん……」

 

「……別に、幸介さんが悪いわけじゃないから」

 

「蘭のソフトクリーム添えは美味しかったよ~」

 

「モカ…うるさい」

 

「つぐみ、楽しかったか?」

 

「…うん!」

 

────────────────────────

 

つぐみの宿題を手伝いたい。手伝いたくない?

 

善は急げだよし、行こう。

 

コンコン

 

「つぐみ」

 

「お兄ちゃん…どうしたの?」

 

宿題で困ったとこでも無いかと聞いてみたところ別に無いらしい。

 

そっかぁ……(´・ω・`)

 

「…あっ!そういえば自由研究何にしようか考えてなかった!お兄ちゃん何か無いかな?」

 

よし!自由研究か!どんなのが良いだろうか?

 

(この辺の土地の歴史とかなら…!これで行こう!)

 

「ここらの歴史……商店街についてはどう?」

 

「…それすごく良いかも」

 

早速計画を立てよう。そういや回覧板に高齢者向けの三味線がどうとかあった筈だ。

 

アポイントメントを取れば多分応じてくれるので、内容はそれらで良い。どのような質問をするか考えておくかだな

 

(つぐみの為に頑張るぞー!)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日は折角の三味線練習会なのに質問に答えて下さりありがとうございました。」

 

「良いの良いの。私達も久しぶりに若い子と話せて楽しかったわね〜」

 

「それなら良かったです。本当にありがとうございました!」

 

「ありがとうございました!」

 

取材を終えて帰路につく。時刻は5時過ぎ、およそ二時間半の長い取材だった。

 

(うんうん、大体の方向性は纏ってきたな。後は紙のレイアウトと内容原稿を考えて終了か……良いものになりそうな予感がする!)

 

早速取り掛かろうではないか…!はァーッハッハッハ!

 

―――――――――――――――――――――――――

 

今年も商店顔夏祭りの時期となった。

 

……ここ暫く眠っていた俺の撮影術…その全てを、浴衣を着たつぐみにぶつける!

 

今年はおNEWの浴衣を購入したのは知っている……可愛いんだろなぁ〜…

 

〜十日後〜

 

時は来た!そして俺は眠れなかった!

 

まあ良い。つぐみはもう中学生となり、なんやかんやあってAfterglowを結成したみたいだ。……実は生演奏で聴かして貰ったことは秘密だ。

 

練習毎に頑張り過ぎないように注意しているとなんだか時が経ったことを実感してしまう―――

 

……そういやあと二年か。

 

 

 

 

 

ええい!しんみりしても仕方が無い!今は今だ!未来の事など憂いてられるか!

 

(フフフ……撮らせて貰うぞつぐみッ!)

 

家の外に出て待つのだった。

 

〜しばらくして〜

 

「お兄ちゃん…お待たせ…」

 

恥じらいながら出てきた妹を見る。

 

(はァーん?)

 

可愛い(語彙力消滅)

 

なんだぁ?黄色の浴衣でハツラツとしたイメージを載せつつも少しだけ伸びていた髪の毛をストレートに下ろし、軽く化粧をすることで色っぽさも出してるぜこれ?

 

こりゃあなぁ……誰だって惚れるわ。

 

ホラ見ろよ滅茶苦茶注目浴びてるやん。テメエ等みてえなむさ苦しい奴らにはつぐみは渡さんからな!てか手出したらぶっ殺―――

 

ん?手を繋ぎたいだって!?(尊死)

 

良いよ良いよ。実に7ヶ月と12日ぶりだしね。アッ柔らか(追い尊死)

 

はぁ〜つぐみマジ天使自分のこと汚物にしか感じねぇわ。この世の全てはつぐみを崇めて終わりで良いんじゃない?

 

あ、はぐみじゃん。やっほー。

 

え?つぐみがすごく綺麗って?ハッハッハ。流石はぐみだ、違いをわかってらっしゃる。この先ハロハピに所属するだけあって俺をハッピーにしてくれるぜ。

 

ちなみにはぐみの父ちゃんってホントに『父ちゃん』って感じなんだよな。何時も厨房でコロッケ作りに勤しんで分かんないけど。

 

兎も角、はぐみと別れを告げて屋台へ向かう。ここには綿菓子は勿論メジャーなリンゴ飴フライドポテトたこ焼きベビーカステラに型抜き、くじ引き、射的、ヨーヨー釣り、果てにはなんか外国のジュースまであるのだ。

 

適当にラムネでも買ってこの熱気から体を冷やすか。

 

つぐみは手にしたラムネを開けて、両手を使って飲んだ。Afterglowの中でもつぐみだけ両手を使って飲むんだよな。

 

あ゛あ゛〜゛これよこれ。やっぱラムネはビンだな。

 

ビー玉で塞がらないように適度に傾けながら飲むこの感覚。まさしくビン特有のソレだよ。

 

飲んだ後は回収BOXに入れておき、再びふらふらと歩く。

 

唐揚げでも買うか。いや、ポテトも良いなぁ……つぐみとシェアしようシェア。

 

唐揚げの串を一つ余分に貰ってつぐみの分にする。小さい口で大きいものを食べてるところってグッとこない?俺はくる。お、この唐揚げ旨い。

 

お?純くんと紗南ちゃん。どうしたんだ?

 

ふむふむ、射的で取れないものがあるんだね?

 

ゴルゴ13と呼ばれ畏れられたこの俺の実力…とくと見るが良い!

 

………は?駄目?俺出禁なの?

 

マジか…ごめんな二人とも。代わりに何か……あ、沙綾。どうし―――行っちゃった。どうしたんだ?

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

おやおや皆さんお集まりで。はい、あこちゃんイェーイ!

 

フフフ…やはり皆つぐみに驚いているようだな…!つぐみを崇めよ。

 

てかモカたこ焼き、カステラ、綿飴、チョコバナナって……食いすぎではないか?肥えるぞ。(主にひまりが)

 

俺に食えって?しゃあねえな…食うか。

 

カステラ美味い。やはり焼き立てこそ至高だな。

 

折角だし皆で写真でも撮るか?なんて聞いてみると全員乗ってきた。何時もは断る蘭も賛同するのは夏の魔力って怖いねぇ……

 

――――――――――――――――――――――――

 

カランカラン

 

いつもの4人が店へと来た。今日は勉強会をするらしい。

 

「お、来たね。つぐみに知らせてくるよ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「こー兄!ここってどうやって解くの?」

 

「ここは移項して……」

 

「あ!そっか!さっきやったのと同じなんだ!」

 

「そうそう。詰まったら教えてね。」

 

あこと巴は教えると理解してくれるからやりやすい。蘭もまあ、暗記とか国語はイケるんだけど。いかんせん計算がからっきしなのだ。ひまりは逆に計算は出来るが国語や英語の表現が苦手だ。だが、恋愛系は凄い表現が上手い。結局のところ二人とも興味が無いだけだろう。

 

モカとつぐみは教えるほうに徹してもらう。やはり、人に教えるとより理解が深まるので覚えが良いのだ。

 

 

 

まあこれ夏休みの課題を終わらしてるだけなんだけどね…………




途中からデフォルトのソフトウェアキーボードからGboardに変えたら編集しやすぎることに気付いたので話の予定変更。

スマホ使ってる人は試してみると意外と合うかもしれません。


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高校一年生はなにもすることが無い 〜設定回〜

幸介が高校一年生のときの内容が1ミリも思い付かなかったので取り敢えず設定を書きました。


羽沢幸介

 

つぐみの兄。Afterglowと商店街組の知り合い。つぐみがちょっと避けているので最近は尊死を達成していない。

 

羽沢つぐみ

言わずと知れた天使。

ものすごく面倒を見てくれる幸介に申し訳なく思っていて、最近は幸介をちょっとだけ避けがち。

 

美竹蘭

メッシュの子

幸介のつぐみ好き好きには苦笑い。昔はつぐみちゃんのお兄さんと呼んでいたが中学生ぐらいから幸介さんに変わった。

『三点リーダー付けとけば雰囲気出るでしょ(適当)』

 

青葉モカ

パン好き。高校以前も山吹ベーカリーに通っていると思うけど、お小遣いが少ないのであんまりだったと考えている。幸介はよく奢ってくれるので行動を共にすることが多い。お兄さんと呼ぶときは何かしら企んでるときでそれ以外は幸介さん。

 

上原ひまり

中学生から片鱗を覗かせていた。(幸介談)

羽丘学園は共学となっているので……うん。

高校ではテニス部所属なので、多分Afterglowで一番出費額が多いと思う。二番目はモカ。

昔も今も幸介に王子様的なキャラクターのマネをさせていた。呼び方は幸介さん

 

宇田川巴

大魔王の姉ソイヤ

あこと共にダンス部所属だがそこまで情報は無いので活かせないのが悲しい。幸介のちゃん付けが最初に取れた人。理由は本人が恥ずかしかったから。

幸介は同じ妹がいる立場として尊敬している。姉のあり方や悩みを幸介に相談していたりした。幸介に太鼓を叩いてほしいと考えている。

 

宇田川あこ

大魔王なのか……?

幸介のことは実の兄のように接する。というよりそう思っている。一番幸介の呼び方が変わる人物であり、あこ、あこちゃん、大魔王……等等

幸介を呼ぶ時はこー兄

ちなみに会った時はハイタッチしてイエーイと言うのが恒例となっている。そろそろ幸介にNFOを勧める予定。

 

北沢はぐみ

ガルパで風の子一ニを争う。

幸介とはよく運動する仲。よく抱きつくがつぐみの前では遠慮する。はぐみの兄と幸介は妹について語り合うぐらい仲が良い。こーくん呼び

 

山吹沙綾

パン屋の娘。

純と紗南が幸介に迷惑をかけてないか心配。秘めたる想いを寄せている……?

パンの値下げはしない。

 

山吹純、山吹紗南

沙綾の下の子。

言えば大体なんでもやってくれる幸介に懐いている。それを沙綾が辞めさせるのが恒例。それぞれ幸介兄ちゃんと幸介お兄ちゃんと呼ぶ。

はぐみの兄ちゃんの名前も出ないかな……

 

蘭のお父さん

初邂逅はクリスマス。幸介には蘭はやらんと考えているが、幸介はつぐみ大好きなので蘭のお父さんの発する圧は何も感じない。

最終的に両者愛する者を語り合うことでちょっと仲良くなった。




現時点での関係性はこんな感じかなぁ……

蘭パパはガルジャムの時に出したい。出します。


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葛藤とすれ違い

本編頑張ります

途中保存忘れて本文ほとんど消えたけどログ機能便利すぎるわね。


つぐみが高校生になった。

 

といっても中高一貫校なのでそこまでの変わりはないのだが。ともかく高校の制服可愛いね。似合いすぎだろ。

 

入学式のスピーチで新一年生代表に選ばれてるみたいだし、つぐみはなんでも出来るなぁ!

 

スピーチはどう言えば良いかって?うーん……つぐみが高校生になってどうしたいかとか、そんなことで良いんじゃないか?

 

思ったことをそのまま伝えたほうが良いスピーチになりそうだし。まあ、大丈夫だ。頑張れよ。

 

…………………………………………………………………

 

うんうん……!良いスピーチだった!流石つぐみだな!恥ずかしがるなって、事実なんだからな!

 

お、蘭。……そんな浮かない顔してどうした?

 

……ああ、そっか。また、皆とクラスが違ったんだな。…だけどな。おまえはもう大丈夫だろ?

 

蘭、おまえらには確かな繋がりがある。たとえ離れてもいつもの5人だ。それだけは違いない。

 

ん、その調子だ。蘭はそういう顔のほうが似合う。ほら、あいつらが来たぞ。行ってこい

 

はぁ……マジでそろそろなのか……

 

どうしようか……ホントに……

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

練習スタジオに5人の乙女。勿論それはAfterglowの面々である。今日も近日中に行いたいライブに備えての練習をしている最中であった。

 

「……うん。今日もいつも通りだった。……お疲れ様」

 

「お疲れ〜」

 

「いやー!ガルジャムに出ようって事になったから皆いつもより張り切ったな!」

 

「当たり前でしょ!ね?つぐ!」

 

「うん……」

 

「つぐみ……?」

 

「な、なにかな?」

 

「つぐ、どうしたの?……やっぱ出るの無しとか止めてよねー!」

 

「ううん!そんなんじゃないよ!…ただ――」

 

「――幸介さんのことでしょ?」

 

「……うん。」

 

「え?幸介さんがどうかしたの?」

 

「最近お兄ちゃん元気が無いみたいで……」

 

「いやいや犬なんかじゃないんだから……で、つぐ。具体的にはどんな感じなんだ?」

 

「家の手伝いの時もずっと上の空で話しかけても反応がワンテンポ遅れてたり……あと、私がどうとか呟いてたり…」

 

「つぐの誕生日!…な訳無いか……」

 

「商店街で何かやるとかも聞いてないし……」

 

「……もしかして〜、つぐにプレゼントをあげる計画とかじゃない?」

 

「いや、モカ……この時期はおかしいでしょ……」

 

「高校入学祝いだと思ったんだけどな〜」

 

「うーん、やっぱり分からない……もう思い切って聞いてみるとか?」

 

「出来ればそれは最終手段がいいかなぁ……」

 

「……取り敢えず今は様子を見てみようぜ。はぐみとか沙綾に聞いたりしてさ。」

 

「……うん。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in蘭〜

 

「…………」

 

(昨日沙綾やはぐみに聞いてみたけど、やっぱり分からなかった。……つぐみの思い過ごしだったのかな?)

 

「蘭〜、おはよう」

 

「おはよう、モカ」

 

「幸介さんのって結局どうだったのかな〜?」

 

「つぐみの思い過ごしだと良いんだけど……」

 

「だよね〜、幸介さんがどうかしたらモカちゃん泣いちゃうな〜」

 

「……じゃあパンを奢ってもらうのをやめなよ…」

 

「そういう訳にもいかないのだ〜。可哀想なモカちゃんはパンを食べないと死んじゃうの〜……グスン」

 

「自分で買ったら良いじゃん……」

 

「あ、ちょっと寄るね。」

 

「待ってる」

 

山吹ベーカリーのパン〜なんて言ってモカは入っていった。まったく、少しは自重しないと幸介さんも困るのに……

 

(……ん?幸介さんだ。今日はつぐみと一緒じゃないんだ。)

 

「幸介さ……ん……」

 

「あ、蘭おはよう。」

 

(……寝不足なのかな?いや、流石におかしい。)

 

いつもの柔らかな笑みも無く、隈ができ眼光が鋭くなっている。その変わりようは別人ではないかとも思うほどだ。

 

「練習頑張れよ……じゃあな。」

 

「ぁ……行っちゃった……」

 

(只事じゃない……絶対)

 

何があるのだろうか。あの人をああしてしまうほどの何かが。

 

それはつぐみ?……いや、一番とはいかなくても近い距離でつぐみを見てきたのだ。私は、つぐみはいつも通りだと思う。

 

「蘭〜おまたせ〜」

 

「モカ……」

 

「……どうしたの?」

 

(……どうにかしなきゃ…!)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

月日が経ち、幸介さんはみるみるうちに変わっていった。それは私達Afterglowやつぐみの家だけでなく、商店街や、学校でも話題となった。噂好きの子がつぐみに聞いてきたけど、勿論つぐみにもわからない。

 

誰にもわからないまま時間だけが過ぎたある日。

 

「……皆に集まって貰ったのはもう分かるよね。」

 

「こーくんの事だよね!」

 

「うん。今日は幸介さんについて何か知っていおいた方が良いこととかを皆で共有したいんだ。」

 

「蘭がそういうこと言い出すのって珍しいよね。……まあでも、今回は皆同じ気持ちだと思うな。」

 

蘭の提案に沙綾が後押しする。

 

「じゃあ、はぐみから言うね!はぐみ、こーくんとつぐと一緒に運動してるんだけど最近ずっとやってないんだ。あ!あとコロッケも買いに来てないよ!」

 

「うーん……幸介さんってはぐの所のコロッケってよく買ってたよね?」

 

「一週間に一回はかならず買ってくれるんだけど……こーくん、一週間経ったけど買ってくれてないんだ……」

 

「やっぱりはぐみのとこもだったんだ……私のところも月曜に買いに来てくれるんだけど今週は来なかったし、純も紗南も幸介さんの様子がおかしいから遊ぼうとしないし……」

 

「確かにこー兄NFOにもログインして無かったはずだったよ!遊ばないときでもログインだけはしてたのにおかしいなって思ってたんだけど」

 

はぐみ、沙綾、あこが関係ありそうなことを言ったが、いずれも幸介さんに直接関わるようなことではなさそうだった。

 

「お兄ちゃんは……どうなんだろう。何か、悩んでる?みたい……」

 

「でもさ、いつもやってる事までしないような悩みってなんなんだ?」

 

「幸介さんがあそこまで悩むんだからそうとう大切なことなんだろうけど……誰か思い当たる節は無い?」

 

「幸介さんと言えばつぐだと思うけど〜、つぐはそんなの無いよね〜?」

 

「うん……無いかな……」

 

「そもそもいつ頃からああなったんだろ?」

 

「あっ!はぐみのRINEに朝走るのをやめるって来てたよ!」

 

取り出したはぐみのスマホには幸介さんが断る旨を伝える言葉が書かれていた。

 

「8日前……皆何か無かった?」

 

「……うーん……私は何も無かったなぁ」

 

「あこも……」

 

「……もしかして、」

 

「モカ…?何か思い当たるのがあるのか!?」

 

「……いや、なにも無いよ〜?」

 

「モカ、なんでも良いから言ってみろよ。モカだって幸介さんをどうにかしてあげたいだろ?」

 

「でも〜…多分違うと思うな〜」

 

いつもと違う様子のモカに全員から視線が注がれる。

 

「モカ……言って。」

 

「蘭〜?モカちゃんの推理は間違ってるって―――」

 

「良いから言って。」

 

「…………」

 

「……そんなに言えない事なの?モカ……」

 

「……ジャム。」

 

「?」

 

「皆でガルジャム参加しようって言った日。」

 

「…つぐみ」

 

「…確かに……お兄ちゃんに話した……けど!違うと思うよ!」

 

「つぐ……幸介さんにそれ以外の話題は何も言ってないんだよね?」

 

「だけど……」

 

「はぐみのRINEの会話の時間、つぐみ達と別れた後だったよね……」

 

「で、でも!お姉ちゃん達のライブの時、こー兄凄く喜んでたよ!」

 

「そうだよ!らんらんやモカちんも知ってるでしょ?」

 

「うん、純と紗南に聞かすぐらいだったんだからそれが原因じゃ無いと思うな。」

 

「……みんな、ありがとう…」

 

つぐみはそう言うも落ち込んだ様子だった。

 

 

 

結局、話し合いは結論が出なかったと、誰もが目を背ける形となった。

 

それぞれが“いつも通り”過ごせるのはいつになるのだろうか?

 

ガルジャムまで一週間を切った。




あらやだ……もうそろそろなのね……(謎のオネエ口調)

モルフォニカのガチャくると思うけどドリフェス引きます。


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大切なこととは?

あー……マジで最近これしか思ってねえや。

 

父さんにも母さんにも心配かけてるし……てかそれ言うなら商店街のみんなにもかけてるし……

 

学校は……うん。大丈夫でしょ(ボッチ理論)

 

まあつぐみを見守る上で交友関係を広げたところでモブには殆ど鑑賞しないし意味無いからなんだけどね。って俺もモブだが。

 

あら〜!つぐみの七五三の時の写真滅茶苦茶可愛い!尊死ぬわぁ〜……

 

 

 

はぁ……何やってんだろ……

 

明日、明後日、いつ倒れるか分からないのにさ。

 

あはは……怖がってる。馬鹿じゃないの?

 

こんなんだから―――「お兄ちゃん?」

 

おおっと

 

 

 

つぐみ?どうしたの?

 

いやいや、調子悪いこと無いよ〜!この通り元気だって!

 

……そんなこと無い。決してつぐみが負担になってるとかじゃ無い。

 

…うん。今日は早く寝るよ。ありがとうね。

 

 

 

はは……気付かれたかぁ……あーどうしよ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

……寝れん。どうしても考えてしまう。くっ!このままじゃつぐみとの約束を反故してしまうじゃないか!

 

コンコン

 

どうした?……えぇ!?一緒に寝てくれって!?

 

なんでさつぐみ?もうそういう歳でも無いだろう―――

 

……本当に寝るかどうか確かめたいからって……はは……

 

お見通しだったってことかぁ……仕方ない、いいよ。

 

確かめる筈なのにすぐに目を瞑ってしまったつぐみ。それを見ているとだんだんと心が落ち着いてきた。

 

つぐみが俺に提案したあのとき、つぐみから強い不安を感じた。…多分だけど、いや、俺は相当様子がおかしかったのだろう。こんなに心配されるまで悩んでる姿を見せるとは俺は駄目な奴だ……

 

……ああ、そうだ。これ以上見せるわけにはいかない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

結局、結局だが

 

―――つぐみが倒れることは無かった。

 

それ自体が良いことなのかと言われれば一様には言えない。何故ならつぐみが倒れることはストーリーの上で大切なことになのだ。

 

いや、まずは倒れなかったことを喜ぼう。ガルジャムは明日だが―――待て。

 

もしかして明日……なのか?俺がこの世界に来たことで何らかのズレが起きたとすればありえない話じゃ無い。

 

だが、そんな残酷なことがあっていいのか?

 

始まりに、出発点に、そんなことが起きてしまえば一体どうなるか予想できない。最悪、4バンド20人の物語なんてことになってしまう―――

 

「おにいちゃん……」

 

(うぉ!?)

 

急に呼ばれてビビったが、明日が本番だから早く寝るねと伝えてきた。

 

当然俺はまともに返せるはずも無く、それがいいと答えることしか出来なかった。

 

ここ最近はつぐみと一緒に寝ている。

 

何故かって?

 

―――怖いのだ。つぐみが倒れることが怖い。ただ、倒れるだけなのに、それでも、そんなことになって欲しくない。

 

つぐみと一緒にいる時が唯一安心出来る時間なのだ。




心象描写分からなすぎて意味不明になってる。

あと16日まで5日……楽しみ……


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自分なりのやり方にこだわる派だと思う

〜ガルジャム当日〜

 

ついにこの日が来てしまった……ああ心配だぁ……

 

つぐみたちはもう会場に行っているので今更止めてくれとはもう言えない。大人しく覚悟を決めて腹を括るしかない。

 

会場へのチケットはここにある。タオルとか水は用意しているし……うちわはいいか。

 

さあ、準備は出来た……行こう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『ありがとうございました!』

 

次がAfterglowだ。今の今までずっと演奏されていた音は、俺には残酷に時の流れを告げるものとしか聞こえなかった。

 

心の中で拒むなと言う自分がいる。

 

その反対に否定しろと、変えろと言う自分もいる。

 

最後まで悩み続けてしまう自分に嫌気がさす。それでも何も変わらず彼女らが出てきた。

 

ああ、待て。待ってくれ。始めるんじゃない。つぐみが、つぐみが……

 

『……今、この瞬間から、会場の熱をすべてあたし達のモノにする。見逃さないでついてきて!いくよ!』

 

演奏が始まった。……目を背けるな。逃げるんじゃない!

 

Afterglowの最初の曲『That Is How I Roll』だ。

 

内なる恐怖とは裏腹に、演奏は続く。しだいに俺はおかしいことに気が付いた。

 

つぐみは倒れない。いや、それ以上に蘭も、モカも、ひまりも、全員が前に聴いた時よりも大幅に上手くなっているのだ。

 

こんなにも綺麗で美しい。それが不思議だった。

 

一つ、思い出すとそれはストンと納得してしまう答えが見つかった。

 

(ああ、そうか。)

 

それでも良いんだ。

 

蘭がそうしたように―――俺も自分のやり方でやればいいんだ。

 

望む未来を手にする為に(本来の世界に戻す為に)

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

あの着物姿……蘭パパだ。いつ見ても男前だねぇ

 

あー、そういやこれから蘭に伝えに行くのか。道理で控え室に向かってる訳だ。まあこの俺は邪魔していい時と悪い時を弁えるのでね。今は話し掛けない方が良いだろう。

 

てか生ライブ良過ぎな。あっちの世界で中の人のライブ行ったけど俺はキャラ推しなんでね。まあつぐみがつぐみたる要素だから俺からすれば結局神なんだが……

 

あ、あこ発見。ってオイ逃げんな!

 

……このやろー目があった瞬間に逃げやがってよ〜……で、今回のライブについて語ろうじゃないか。

 

あ?調子は大丈夫なのか?なんだそれ……あのねぇ、無闇矢鱈に人が病気患ってるように言っちゃ駄目だからな?

 

そう言うとあこは良かったと言って抱きついてきた。なんで?

 

聞けば様子がかなりおかしかったのでずっと心配していたらしい。それはあこだけでは無く巴やつぐみ、沙綾やはぐみも心配だったのだとか。

 

そんなことになっていたなんて思いもよらなかった。今、言うべきは何ともないの一言だろう。

 

そう告げるともう一度聞き返してやっと確信を持ったようだった。これ皆にも大丈夫って伝えなきゃいけないな……

 

そう考えているとふと、思いついたのは、さっきあこが逃げるのはおかしくないか?ということだ。

 

聞いてみるといきなり目を反らして吃りだしたのでこれは何かがあるぞ。

 

問い詰めてみるとあこは観念して理由を話した。

 

 

 

「……だって、こー兄の顔……すっごく怖いもん……」

 

確認すれば確かにヤバい奴(濃い隈と涙で目を腫らした怪しい男)が居た。




That Is How I Rollって実質蘭の曲ですよね。

あれ蘭のお父さんとのなんやかんやの後で数日で作詞作曲、更に全員一週間でガルジャムに間に合わせたからやべぇなって思う。


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武士道は死ぬこと見つけたりと言うが、ブシドーとは何をすればいいんだ?

時間軸が具体的に分からないのでガルジャム後としました。


この世界(羽沢珈琲店)に必要なもの……太陽(つぐみ)(珈琲や茶菓子)(お客さん)……これらだけじゃ諸君らは足りないものがあるのを知っているかね?

 

羽沢珈琲店と言えばつぐみだが、舞台は一人じゃ成り立たない。…ここまで言えばもう分かるよな。

 

そう、彼女───

 

───若宮イヴだ。

 

Pastel✽Palettesのキーボードで、礼儀正しく明るく人懐っこい。ブシドーこと日本文化に惚れ込み日本文化を体験する部活動ならばほぼ全て入っているという少女だ。

 

憶測なのだが、本来はもうバイトとして羽沢珈琲店で働いていると考えていたのだが、今現在ここには居ない。かと言って求人募集もしてないし、仕方ないといえば仕方ないのだが。

 

つまるところ今後の予定は言葉を借りて言うならこの店に彩りを添えてってことだね。これ別人だけど

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

よし、父さんの許可は取れた。申し訳ないがつぐみを建前に人員確保として頼んでみると了承してくれた。

 

さて、募集情報は許可取って貼り紙にしよう。彼女が見そうなところ……花女周辺に貼れば効果的な筈だ。ちょっと古臭そうな感じで書けば来るでしょ(適当)

 

よし!大体の方向性は決まった!後は行動するだけだ!

 

まずは募集のレイアウトから……筆とかで書けばいけるか?ここのイメージをそんなに崩さず、若干わふうで……

 

〜数日後〜

 

うーん……父さんが駄目って言うから商店街に貼り紙を貼ったは良いが……果たして若宮イヴは来るのだろうか?

 

高めの身長で白髪、確か本業はモデルだったか?そんなの一回も見たこと無いし、てか、そんなこと言えば花女組全然見たこと無いわ。ポピパとか……あ、でも白鷺千聖と奥沢美咲は一回見たな。じゃあ四人しか見たことないのか……

 

そういや松原花音も常連となってたっけか。じゃあ四人ぐらいと新たな関わりを持つのか……とは言っても殆ど客と店員って関係だしそこまで意識しなくとも大丈夫だろう。

 

「たのもー!」

 

おおっと

 

こ、この声は!?(すっとぼけ)

 

どうやら当たりだ。まあ今の所正史に近いし来るとは思っていたがね(大嘘)じゃあ、父さんを呼んでささっと雇おうじゃないか。

 

バイトをしに来たという彼女に掛けていてくれと答えて父さんを呼びに向かう。ここで適当に口添えをして雇うのを確実なものにしなければ今後、生きていくことが出来ないと言っても過言ではない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

頑張った甲斐あってなんとか採用を出してもらった。まあ、あれなら殆ど何もしなくとも採用になっていたと思うけどね。

 

ふふっ……遂にアレが見れるのかぁ……!

 

皆もう分かるよな?な?

 

今日が彼女の初シフトでつぐみも手伝う日だ。十分起こり得るといえる。

 

「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」

 

そら、来たぞ。暫くするとつぐみとイヴが他愛のない会話を始めだした。どこ高校だとか部活動は何に入っているのだとか高校生らしい会話だ。

 

俺には会話が飛んでこないのはちょっと寂しい。

 

……(´・ω・`)

 

ま、まあ!花咲川は羽丘と違って女子校のままだし男慣れしてないんだろう!仕方ない!

 

カランカラン

 

「へいラッシェーイ!なに握りやしょーか!」

 

「イヴちゃんうちカフェだから……っ」

 

「はっ!日本のお店はお客さんに歓迎すると聞いたので……カフェじゃこう言わないんですね……」

 

お゛〜゛、良いですよぉ!

 

ね?これね?分かる?この感動よ。こうやって目の前でね再現されるともうクるよね。なんか前にも言った気がするわ。

 

この為だけに生きてきたと言っても過言ではない。まさに生きる原動力。三大欲求に加えような。




ちょっと文字数増えてる。これ文豪全一狙えるわ(三流)

追記:イヴちゃんのタノモーはひらがなでした。(四流)


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正々堂々!燃えるブシドー

イベントとか一年計算だとこの25人濃すぎる生活してるんだよなぁ……


『お二人に今度のリリースイベントに来てもらいたいんです!』

 

『リリースイベントって……Pastel✽Paletteの!?』

 

『はい!つぐみさんと幸介さんにはいつもお世話になっているのでそのお礼です!』

 

『そういうのは駄目だよイヴちゃん。』

 

『えっ!どうしてですか!?』

 

『いやね、つぐみだけならまだしも俺は男でしょ?アイドル業界とかファンが受け入れないと思うし、何より俺とつぐみはパスパレを応援しているんだ。それは言い換えればファンに優劣を作ることにもなってしまう。』

 

『で、ですが、それではここにお世話になってる身として礼を果たせていません!ブシドーじゃありません!』

 

『まあ、あとね。イヴちゃんの気持ちは嬉しいんだ。けどね……その日、商店街のイベントで手が離せないんだ……』

 

『そ、そんな……』

 

『ごめんねイヴちゃん!イヴちゃんが来てくれてから本当に助かってるからお礼なんて良いよ!』

 

『つぐみの言うとおり、俺らは助けてもらってる側だからそんなに気にしなくて良いよ。むしろ今回のイベントに行けない俺らの方が悪かった。』

 

『そんなことありません!私はつぐみさんと幸介さんには頭が上がりません!』

 

『それちょっと用法が違うかな……』

 

………………………………………………

………………………………

……………

 

「お兄ちゃん……あれで、良かったのかな?」

 

「仕方が無いといえばそれまでだけど、申し訳無い気分になる。」

 

「やっぱりそうだよね……」

 

「まあ、仕方ない!とりあえず会場を作んないといけないから、今はそれだけを考えよう!」

 

「…うん!」

 

本当はこんなことしたくないんだが……な。商店街がふわキャラ選手権の会場だとは思わんでしょ。

 

あれ確かハロハピのイベントだったからミッシェル優勝で終わりでしょ?

 

あ、弦巻こころに見つからないようにしよ。この前薫を呼びに来たとか言って絡まれたし、アレに目を付けられないに越したことはない。ハロハピの一員よ!なんて言われた日にはつぐみを見守る時間が大幅に減るだろうしな。

 

「ああ!幸介君!ちょっと頼みたいことがあって……!」

 

「…なんですか?」

 

「着ぐるみ……着ぐるみ作って貰えるか!?」

 

「は?」

 

「時間が無いのは承知なんだ!着ぐるみを作ってくれないか!?」

 

「いや何を言ってるんですか!ふわキャラ選手権は明後日ですよ!?間に合いませんし、クオリティも低いし、第一十分な布すらも無いんですよ!?」

 

「それも分かってる……分かってるんだ……!」

 

「第一着ぐるみなら、俺はミッシェルのデザインを考えました(焦って書いた)よね?それで金輪際こういうのはしないって言いましたよね?」

 

「そこをなんとか頼めないか!商店街の危機なんだ!」

 

「だから嫌ですよ!てかあなたが権利を売ったんでしょうが!」

 

「ぐっ……!」

 

「なんですか?また売るんですか?こっちは一銭も貰ってないんですよ?あなた方の旅行も行ってないんですよ?」

 

「そ、それは……」

 

「期限にも間に合いませんし今回は断りますよ。」

 

危ない危ない……またストーリー変えるとこだった……

 

そもそもつぐみが倒れてないからな。これ以上変えるわけにはいかない。

 

ストーリーにあったであろうミッシェルの優勝がなければどう転がるかわからん。てか、Afterglow以外殆どストーリー読んでないし……あれ?これヤバくね?

 

とりあえず今回最優先はミッシェルの優勝を揺るぎなきものにする……これぐらいか?

 

オーケーオーケー。まあ黒服と奥沢美咲がどうにかしてくれるだろ。

 

これは勝ったわ。(フラグ)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

終わった。何もかも……

 

いやさぁ……ねぇ?ズルいわ。商店街ほぼ全員からお願いしてくるとかさ……

 

腹いせにちょっとホラーテイストにしてやったがあれはあれで受けるかもな。

 

恐怖の遊園地とかに

 

中の人ははぐみが入るって聞いてるけどあんなはぐみ始めてみたわ。今まで見たことないほど滅茶苦茶やる気出してたね。

 

「ねえ、始まるまでまだ時間あるからお兄ちゃんはちょっと休んできたら?」

 

あ^〜つぐみマジ天使尊死()ぬわ〜

 

つぐみだけさぁ……休んでって言ってくれるのは……

 

あでも今なら無限に頑張れそう。きらぽん狩りイケるわ。

 

まあ今はお言葉に甘えて休もう。ニートになりゅぅ……

 

もうつぐみ無しじゃ生きていけねえわ。

 

皆もそう思うよな?な?

 

〜2時間後〜

 

「お兄ちゃん起きて」

 

ふええ……優しく起こしてくれるよう……

 

ソファーで横になってたけど毛布を掛けてくれてたね!嬉しい        

 

ふう……俺は寝起きは弱いんだ……取り乱した。

 

ん〜!だいぶ頭がスッキリした!ありがとうねつぐみ!

 

よし!もうちょっとガンバロー!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あれなんだっけ?ホビー君だかファビー君だかホラゲーのキャラでいたよな?今回俺が作ったのってアレイメージしたんだよね。

 

いきなり頭に降りてきて、まさしくビビっときた!って感じだった。

 

お、いたいた。どうだ様子は?

 

 

 

え?なんで?え?Poppin'Partyいるじゃん。は?

 

考えろ……不測の事態か?沙綾か?沙綾が読んだのか?てか市ヶ谷有咲やべぇな。滅茶苦茶警戒してるわね……一体どうして!?(バカ)

 

取り敢えず……“挨拶”といこうじゃないか……ふっふっふっふ……普通にしよ。

 

このうさぎを作ったって言うと有咲は胡散臭そうな目で見てきた。まあセンスは疑わないでくれ……布が。足りなかったんだ……

 

「こーくん!ここ寝癖がついてるよ!」

 

マジ?あホントだ。治してこよう……

 

じゃなくて

 

全員はぐみの応援に来たの?あ、沙綾はPoppin'Partyとして来たのか。へぇ〜……

 

何だか申し訳無いが俺はミッシェルの優勝を支持してるんだよなぁ……

 

なんだろな…凄くこう…複雑な心境だわ。俺もしがらみがなければそりゃはぐみを応援したいよ。でもここ変えるわけにはいかないよね。

 

許せはぐみ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『発表します!最初の種目は……走り幅跳びです!』

 

は?

 

オイオイオイ、死んだわミッシェル

 

はぁ〜?何が、何で走り幅跳びなんだよ?もっとあるだろ自己紹介とかさ……

 

てか走って跳ぶだけならはぐみ優勝じゃん。はぐみ運動神経良いもん。あー負け負け

 

\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/

 

『次の種目は、社交ダンス!ダンスのお相手は、ふわキャラのみなさんがそれぞれ自由に選んでください!』

 

社交ダンスか。勝った(確信)

 

あっちには踊れるのが二人もいるしこれはイケるわ。はぐみはこういうのとは違うダンスは踊れるんだが……まあ今回は運が味方したようだな。

 

「こーくん!お願い!」

 

ちょままはぐみ。こういうのは別の奴が良いだろう?ほら他のふわキャラも全員女性を選んでいるぞ。ミッシェルは薫を選んだらしいな。

 

「じゃ、じゃあかーくん!」

 

「オッケーはぐ!がんばろっ!」

 

戸山香澄か……踊れるのか踊れないのか分からん奴をなぁ……

 

頼む!あんまり上手く無い!

 

「幸介さん……良いの?」

 

沙綾の言いたいこともわかるが、結局これは必ずしも上手いダンスを求めてる訳じゃ無いしこれで良いと思うよ。

 

「…そっか。」

 

踊れていないはぐみ達もウケてるっちゃあウケてるし、そこまで間違いでも無いだろう。最終的に投票をするしインパクト残したのが勝ちだ。

 

弦巻こころと松原花音が踊っていたのは謎だったがな。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

風船配りねぇ……これミッシェルの勝ちか?

 

お、松原花音が小太鼓を叩いて子供ほぼ寄ってったな。

 

一方はぐみは……

 

「わーーーん!こわいよーーーー!」

 

うわ

 

…………あれは流石にヘコんだな……後でケアしておこう……

 

〜風船配り終了〜

 

「…………」

 

ま、な!デザインしたの俺だしはぐみが落ち込むことは無いよ!な!

 

「………うん」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「マラソンだって!はぐ!いけるよ!」

 

「う、うん!頑張る!」

 

バカヤロウ!(絶望)

 

なんでなんだ!?持久力は確かに必要かもしれないがマラソンはしなくても良いでしょ。

 

流石にこれワンチャン無いよなぁ……はぐみの持久力は嫌でも分かっている今回のコースなら着ぐるみを着ていても難なく走りきれるレベルだ。

 

もうヤケクソだぁ!

 

「この程度造作も無いことだろ?目指すのは頂点(てっぺん)だけだ。」

 

しかし、はぐみは物憂げな表情のままだった。

 

(やっぱはぐみって容赦するんだよなぁ……折角あの運動神経なのになー……勿体ない)

 

マラソン開始の合図が鳴る。

 

はぐみは1位だが……ミッシェルは…追いついていけてるじゃん!

 

奥沢美咲って将来黒服だとか言われてたけどありそうな未来だと思う。運動神経も何もかも上の下ぐらいはありそうじゃない?本人は弦巻こころは天才とか行ったけど自身も中々のポテンシャルは持ってると思うんだけどね。

 

見やすい位置に移動しよう。見つかりたくないけど。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

レース終盤、ミッシェルが止まった。

 

何やってんだよ……団長(ミッシェル)!止まるんじゃねぇぞ……(絶望)

 

やべぇ、やべぇよ。後続のふわキャラが近づいているし……立て!立つんだミッシェル!

 

はあ?はぐみが戻ってきたぞ。何?煽りか?

 

まあそんな訳無いと思うけど……頑張れとか言ってるのかな。

 

 

 

あーあ。ほんとこれからどうしようか。

 

ここのストーリーってどんな関係性を持つんだろう。ハロハピのイベントだったから……あれ?

 

待てよ……Poppin'Partyが居て思考がぐちゃぐちゃになってたけど参加してんのははぐみだよな?

 

え?これやばくね?今回の出来事って(ハロハピのイベントで)本当にあったかもしれないことじゃないのか?えーと……あの歌ってどんな感じだっけ……そうそう、もっふもふのふわキャラサンドイッチだ!

 

サンドイッチってつまり───




ささっと気軽に読める感じの文字数が良いと思ってたけど筆乗っていつの間にか最高文字数になってしまった。

書き始めはBeatin' in the Rainもちょっとだけ書こうとしてたけど密度高すぎだと思ったんで止めました。あと、ハロハピ結成とかミッシェル登場云々は正史よりちょっと遅くなってます。


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日常を楽しむことって中々出来ない

Beatin' in the Rainは書かなくて良いや。(よくない)

(筆者の脳みそじゃ処理できないから)仕方ないね


イベント事がない時が一番安心するわ。やっぱりね、無闇矢鱈にストーリーに関わっちゃ駄目なんだね。

 

ハッピーラッキースマイルイエーイ!とかそんなんだったら別にこっち活動自粛すりゃ良いだけだけど、落ち込んでたりとかそんなんだったら身近な人だとほっとく訳にも行かないし……

 

うーん……Afterglowのイベント……この時期って何だっけなぁ……ソイヤは巴だけだし違うしなんだろ?

 

やべぇ忘れたわ。とりま夏休みになったら狂騒曲だからそれまでは安心ってことだな。

 

あれってひまりの忘れ物を取りに行くんだよね。今すぐ行かないと宿題出来なくなるから行ったんだったか……

 

あれこれヤバくね?今まで宿題だけはちゃんとやっておけってずっとやらしてきたぞ?ちゃんとやらんと駄目だって付き合ってまでやらせたし……

 

マズい……このままだとフラグを折ってしまう……なんとか出来ないか?最悪忘れ物してもその前に取りに行ってしまうのでは?

 

あーやっべ。どうしようか……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

何も無いって良いよねー

 

考えることもなくのびのびと過ごせるからホント好きだわ。

 

「あ、お会計しますね。」

 

「幸介君、あのキレイな外人の子……もしかして新しい彼女?」

 

「そんなまさか。840円です。」

 

「あらあら……その言葉が覆るかも知れないわねぇ?」

 

「変な勘繰りしないで下さい。イヴちゃんは只のバイト。それだけです。」

 

そう答えるも常連のおばさんは不敵な笑みを浮かべて去っていった。あの人妙にゲスいんだよね。蘭とか沙綾とかも彼女なの?とか言うし……

 

けどな……!

 

そんな訳無いだろ!俺はつぐみ一筋だっ!

 

……ふぅ

 

思いの丈を発散したところで。まあ別につぐみに恋愛感情がある訳じゃないんだよね。可愛いから見守ってるんだからそんなのある訳ないし、もしえっちい感情とかあったらそんなもん下等生物と一緒だろ。しかも兄だし最悪だわな。

 

あー?共学になってるしつぐみはモテるよ?だってねぇ……可愛くて頑張り屋で誰にでも優しくてねぇ……うんうんホント良い子だわ〜……

 

お節介かも知れないがヤバい奴、例えば食い物にする奴とかは『止めないか♂』と話したりするのは流石に良いよね?まあどっちみち止めるけど。

 

でも一番びっくりしたのはあれだな。つぐみは中等部一年のときにも生徒会入ってたんだけどその時上の学年の女が告ったことだね。てか完全に誘ってたねアレ

 

それも処……話し合いで解決してなんとかなったけどホント嫌だったわぁ……

 

つぐみが性的に見られるなんて駄目だよ。(過激派)

 

「イヴちゃん机をよろしくね」

 

「はいっ!ガッテン承知です!」

 

イヴちゃんもだいぶ馴染んできた。お客さんも笑って対応してくれるのさ。偶にPastel✽Palettesとしてのイヴちゃん目当てで来る人いるけど聞けば見守り系の人達の穴場みたいになってるらしい。

 

完全にマナーの悪い客は退出してもらう。イヴちゃんにクレーム言ってきたり、痴漢してくる奴とかね。

 

最近はいろんな客が来るよなぁ……松原花音に白鷺千聖、それに……牛込りみか。まあでも、白鷺千聖は怖いわ。睨んでくるしなー……イヴちゃんが心配なのは分かるけどね。

 

ふわふわピンク担当も来たなそういや。ファッションセンス無い俺でもクソコーデだと思ったもん。反応に困ってるとイヴちゃんが気付いて『アヤさん!』って言っちゃったから『えぇっ!?あのっ!?』って反応してみると凄い笑み浮かべてた。

 

嬉しかったんだろうな。

 

「もう16時か……イヴちゃん上がって良いよ」

 

「お疲れ様です!ではお先に失礼しますね!」

 

イヴちゃんのシフトは昼前からアフタヌーンティーまでのラッシュに入ってもらってるんだけど、仕事……まあアイドル業やらモデル業やらの方を優先して貰ってる。頑張って行きます!とかなんとか言ってたけど押し切った。流石にPastel✽Palettesとかモデルの活動止めてまでバイトやっちゃ駄目でしょ?

 

最近はへいラッシェーイ聞けなくて寂しいけどね……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜登校中〜

 

キャー!カオルサマー!

 

「うわ」

 

薫だ……そういや部活動勧誘の時期か……

 

うへぇ面倒くさい…

 

何か薫に気に入られてるんだよね……なんで?(絶望)頼むから弦巻こころと会わされる展開だけは止めてくれ……

 

本人によると文化祭のとき中三でやった演劇が素晴らしかったらしいが、あれはガチの黒歴史だから話さないでほしいな。それ以降演劇部に入らないかと迫られているが嫌だ。

 

何が嫌だって薫ファンから目の敵にされてるのが嫌なんだよ。あと面倒くさいし嫌だし嫌だし……

 

おっ!後ろから蘭達が来ている!ちょうどいいし隠れさしてもらおうか。

 

「ちょっと失礼、悪いね。」

 

「……何やってんの?」

 

「いや、ちょっとな……」

 

見つからなければどうってことは無い。これから数週間ダンボールでも被ろうか

 

「おや、幸介じゃないか。演劇部の件は考えてくれたかな?」

 

えぇ……背後だったのに気付いたぞコイツ……

 

「別に俺は役者を目指してる訳じゃ無いんでね。」

 

「そうか……私は君との共演をいつでも待っているよ。」

 

「えっ!幸介さんって薫さんにスカウトされてるの!?」

 

おい待てひまり。今のはスルーの流れだろ?

 

「いやいや、良いかひまり?俺は演劇には興味無いし、やっても下手だぞ?」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「フフ…謙遜は良いが、過ぎた謙遜は嫌味だとも言うね。」

 

面倒くせえわ。コイツら拒絶してるの理解してるのか?

 

つぐみは分かってくれるよな?な?

 

「つぐみ、俺って大根役者だよな?」

 

「えっ!あー、うん……」

 

「……そっかー」

 

悲しいね(´・ω・`)

 

「……まあ、ね。結局入る意思は無いよ。」

 

「…その答えはやはり残念に思ってしまうね。だが、心変わりしたらいつでも言ってくれ。それじゃあね子猫ちゃん達。」

 

はあ……憎たらしいけど薫ってイケメンなんだよな……どこがって意外と気遣いが出来るし、相手のしてもらいたい事を汲んで行動できるし、多分ガルパの主要キャラでも見えにくい気遣いが出来るキャラだと俺は思うね。

 

一番は黒服だけどね。あれは結果だけが残るキンクリみたいなモンだし……




つぐみはえっちいと思ってもネタには出来ない。

てか巴と蘭の誕生日の話書いてないじゃん。(見切り発車特有のガバ)


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夏休みより夏休み前の方がワクワクする

日常会。今年でAfterglowの水着出てくれませんかね……最悪つぐみだけで良いから……


「あー」

 

こうしてつぐみが練習練習ばかりだと、何か楽しいことは無いかな……

 

「はぁ……」

 

「幸介さん、先程からため息をついてどうしたんですか?」

 

「あーねイヴちゃん、最近何も無くて暇なんだよね〜……」

 

「暇…ですか……」

 

「イヴちゃんは暇だって感じたことは無い?」

 

「うーん…日本に来てからはあまり無いですね……」

 

「あー…イヴちゃんは毎日が新発見!みたいだもんね……」

 

「モデルのときもそうでしたがアイドルになってからはお仕事で忙しくなりましたが、それ以上に楽しくなったんですよ!」

 

「そう考えるとイヴちゃんって割と波乱万丈な人生送ってるよね〜……」

 

「ハランバンジョウ!カッコいい響きです!」

 

「波乱万丈っていうのは……あー、物凄い複雑って意味だ。」

 

「なるほど……つまり色々なことをやっている人生ということですか?」

 

「そうなんだけど、それだと殆どの人にも言えるから普通の人よりもって限定した意味で言ったかな」

 

「やっぱり日本の言葉は難しいです……もっと修行をして、立派なブシになりたいです!」

 

「……いつか、その日が来たらおめでとうって言ってあげるよ。あ、祝いに日本刀でも買ってあげようか?」

 

「本当ですか!?武士に二言はありませんよね!?」

 

「無い無い」

 

「幸介さん、約束ですよ!」

 

日本刀で喜ぶ女の子って初めて見たわ。てかなんとなくとんでもない約束したけど……まあ良いか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お兄ちゃんいる?」

 

「どうした?」

 

「やっぱりちょっと見てもらいたくて……」

 

「高校生になったらやめるって言ったんだけどな……じゃあ見せて」

 

「…うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今やらしいこと始まると思った奴悪いこと言わないから出て来なさい。

 

「あらら……数学やったなぁ……」

 

「うっ……」

 

「出来るだけ手助けしたく無いんだけど……まあ今後7割取れる程度にやろうか。」

 

勿論テストの結果よ。中学まではつぐみとテスト勉強をしていたのだが、高校生になってからはやっぱり自分で努力した方が良いよねって考えてやらないようにしたんだが……まあ初回だし良いよね(激甘)

 

「えーと……ああこれ中間に時間稼ぎある奴か……」

 

考える時間長いけど配点そこまででも無い問題ってあるよね。あれ最後に解くタイプなんだけどその辺分かれやすいと思う。

 

ちなみにつぐみは一問ずつしっかり解いていくタイプだ。そのせいで解けるところが解けなかったりする。

 

まあ今までは全部正解出来るよう勉強してきたから知らなかったのだろう。こういう所を伸ばしたいから高校生から見ないと決めたのだ。

 

「ここは文章にある4で纏めると見せかけか。グラフと表を比較して……こうだな。」

 

やらしい問題だな……そういや意外なんだが文章問題はAfterglowだと一番蘭が解ける。点数高めのモカよりも高い正解率なのだ。

 

なんでだろうか、分からない

 

まあ、解けることは良いことだし、読み取る力って重要だから良いけどね。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ん。こんぐらい解けたら大丈夫でしょ」

 

「うん、ありがとうお兄ちゃん」

 

あ゛〜゛、この為に生きてんだよね(尊死)

 

Oops

 

何か矛盾が生じたが些細な事だろう。てか可愛いな。ホントに可愛いな。

 

え?何?天使じゃん

 

「どういたしまして」

 

懐かしいなこのやり取り……はっ!最近はあんまり話してこないと思ってたけどもしかして……嫌われてるとかか?

 

まずいね〜(海軍大将)こりゃ大変じゃ〜(衣囊怪物博士)

 

心当たりならある。……くっ!この世界じゃ俺を理解してくれる人は居ないんだッ!だから許せ、つぐみ……




夏編行こうかどうしよう。そろそろロゼリアかハロハピと絡ませてみたい。

最近最終回の流ればっか考えちゃう。モルフォニカはともかくRASはどうしようか考えてないのはマズイわね……


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折角の夏なのにイベントは少ない:前編

文体が変わってないか?

夏休み編前編というべきか……まあ後半は予想出来ちゃう。


夏休み

 

世間は賑わいを見せる時期だが。

 

俺はどちらかというと店の手伝いで毎日が賑わっているぞ。

 

「はっ……今もう一人の自分が……?」

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

「……何でも無い。」

 

今は休憩中だ。昼のラッシュが終わり、客脚も落ち着いてきた所なのだが休憩中の方が暑いってどういうこと?

 

「それでは私はここで失礼します!お疲れ様でした!」

 

「おつかれイヴちゃん、気をつけて……」

 

「はい!」

 

まだ7月だというのに暑すぎる……やべぇわ。

 

「あー……暑い……」

 

「こんな時に限ってエアコンが壊れるなんて……ちょっとタオル取ってくる。」

 

「いってらっしゃい……あ、もう一つ取ってきてくれる?」

 

「うん、分かったよ」

 

店の空調は大丈夫なんだけどリビングの空調と従業員のロッカールームの空調が同時に壊れたもんだから早く直せないし、ロッカールームの空調は大分古くなってるから父さんが購入を検討して、尚更遅くなってる。

 

「お兄ちゃん、はい」

 

「ありがと……うへぇ…あっつ……」

 

「あとこれを見つけたよ!」

 

「ん?……ミニ扇風機?」

 

「無いよりかマシ……だと思って。」

 

「そうだな……」

 

そう言ってつぐみがボタンを押す。羽が回り始め風が送られた。

 

「意外と涼しいな……」

 

風に当たろうと俺もつぐみも無言だ。てか俺汗臭くないか?ちょっと心配だわ……

 

「そういえば何でウチに扇風機無いんだろう?」

 

「買っても意味ないからかな」

 

「ロッカールームだってわざわざエアコン付けなくても扇風機で良いと思うけど……」

 

「確かに」

 

ロッカールームに沈黙が戻る。

 

「あ、もうそろそろ休憩終わらないと」

 

「あっちの方が涼しいから楽だ……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜別の日〜

 

「……分かった」

 

「絶対だよ!」

 

「了解了解。行くから。」

 

あ〜、面倒なことになった……

 

事の始まりははぐみのやっているソフトボールだ。俺は練習試合とか大会には良く行ってたのだが、ハロハピが来るという松原花音の言葉を聞いてからは行っていなかった。

 

はぐみにそのことを聞かれ、たまたまだよと何回か言うも流石にはぐみも煮えを切らしたのか今回の大会には絶対来てと言われてしまったのだ。

 

それから予想出来ることは……ハロハピ……弦巻こころに目を付けられるという事だ。

 

只でさえ現在3バカ(弦巻こころ、薫、はぐみ)の内二人に知り合いが概ね好意的なのだ。いやね、出会うまでは良いんだよ。だけど『(中略)幸介もハロハピで世界を笑顔にしないか?私と幸介なら出来る筈だ!ああ!儚い……』だとか言って『あなたもハローハッピーワールド!の一員よ!』なんてことになってしまえば終わりよ?

 

てか俺はどっちかというと黒服ポジなの。()()()()手助けすれれば満足なのよ。

 

はぁ……憂鬱だ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜練習試合当日〜

 

……うわ。

 

いるじゃん。てかなんだあの格好?もしかしてライブで応援するのか?

 

うわぁ……近付きたくない……

 

いやでもなぁ……一応全員と顔見知りなんだよなぁ……

 

よし、ちょっと離れた所にいよう。そこで応援するのが吉だ。

 

「幸介くん、こっちだよ」

 

ホ!いつの間に!?

 

てか折角隠れてたのに見つけないでくれ……

 

「あら?あなたが幸介だったのね!」

 

あっ(絶望)ちゃんと覚えてるわ(絶望)

 

ワンチャン忘れてるということに賭けたが無駄だったか。

 

「おや、こころと幸介は既に会ったことがあるんだね。てっきり私とはぐみと花音だけだと思っていたよ。」

 

「前みたいに落ち込んでないみたいね。幸介のモヤモヤはもう無くなったのかしら?」

 

「今新たなモヤモヤが出てきそうなのだが……」

 

「そうなのね!でも、楽しいことをすればきっとそのモヤモヤもどこかへ行っちゃうわ!」

 

もういいや……抵抗は無駄だった。大人しく同意してれば良いや……

 

「……そうかもしれないな。」

 

「その調子よ!あっ、良いことを思いついたわ!みんなで幸介を楽しませればモヤモヤもすぐに消えるわ!」

 

「はいはい、そこまでね。こころ。」

 

「ミッシェルも一緒に幸介を楽しませましょ!」

 

「いや、それだとはぐみの応援はどうするのさ……」

 

「どうしようかしら?」

 

えぇ……

 

「今日は俺もはぐみの応援に来たから、そっちをやって欲しい。」

 

「そうなのね。花音!薫!ミッシェル!さあ、行くわよー!」

 

「ちょ!ちょっと待ってこころ!まだ開会式すら始まってないよ!」

 

「あら?誰が早くから応援しちゃ駄目なんて決めたの?」

 

「ふっ…こころ、はやる気持ちは分かるがそれはいけないよ。私達は主役である子猫ちゃん達よりも目立たないようにしなければね。」

 

「うーん、そういうものなら仕方ないわね。」

 

この勝負……俺の勝ちだ!

 

弦巻こころは俺に対しての興味を失っている。俺はこのまま意識の外へフェードアウトしていく事だろう。

 

俺は最初からこうなると分かっていた!

 

……ホントだよ?

 

「あ!こーくん!こころんもミッシェルも来てくれたんだね!」

 

「おお、はぐみ。時間大丈夫なのか?」

 

「まだ時間あったから急いで来たんだ!……あれ?みーくんは?」

 

……これは知らんふりだな。

 

「みーくんって誰だ?」

 

「あら、ほんとね?さっき居たのにどこに行ったのかしら?」

 

「こ、こころちゃん……」

 

「……近くには見当たらないね。はぐみの勇姿を見られないなんて…ああ!なんて儚いんだ美咲!」

 

「ふええ……ど、どうしよう……」

 

うーむ、伝えない方針で行こう。悪いが関与してはならない。

 

「…みーくん、ソフトボール嫌いだったかな?」

 

……関与はしてはならない。

 

「…………」

 

ああ!くそ!一回だけだからな!

 

「はぐみ、このカメラで撮ったのをそのみーくんっていう子に見せてあげたらどうだ?」

 

「……うん!そうする!」

 

「生で見れないのは残念だけど、まあ、何か事情があったかもしれないし。でも、間違ってもそこを責めては駄目だからな?」

 

はぐみが頷く。よしよし、一先ずは気持ちの整理がついたようだ。

 

「……でも、来られなくて残念だったって思わせるくらいは良い。そう思わせればきっと次からは来てくれる筈だ。」

 

「そうなの?みーくん来てくれるかな?」

 

「……まあな。……よし、もう時間だしチームに行ってこい。頑張れよ!」

 

「うん!こころん!薫くん!かのちゃん先輩!ミッシェル!応援よろしくね!」

 

「はぐみー!応援してるわ!」

 

「フフ……全うしなくてはね。」

 

「が、頑張ってね…はぐみちゃん!」

 

「頑張ってねー!」

 

「あ!あとこーくん!お願いがあるんだけど!」

 

はぐみからお願いって珍しいな……なんだろ?

 

「何?」

 

「はぐみの代わりにベースをやってくれる?」

 

は?

 

「は?」

 

「あっ!もう行かなきゃ!こーくんお願いね!」

 

「おい!はぐみ待てっ!」

 

行ってしまった……

 

えぇ……なんで?(絶望)

 

「だが、ベースなんて何処にも……」

 

「羽沢様、こちらをお使いください。」

 

やっぱりな♂

 

はぁ〜?もうやだ……おうちかえりたい……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なんで服まであるんだ……」

 

「凄く似合ってるわ!」

 

「流石幸介…と言ったところかな。」

 

「ご、ごめんね幸介くん……こうなっちゃうともう誰にも止められないんだ……」

 

何これ?もう後戻り出来ないの?クソゲーかよ……

 

「あのー……」

 

おっとミッシェル、如何いたしました?

 

さっきは助けてくれてありがとう?いや俺ははぐみが心配だったからな……

 

ババン!実はミッシェルは美咲だったのだ!……これ驚いた方が良いのか?

 

まあ、適度に驚きつつあんまり謝らなくていいって伝えよう。突然ベース引く流れには素でびっくりだけど。

 

あー、マジで恥ずかし……後ではぐみに誰にも言わないように口止めしないと……

 

一応、薫や花音ちゃんにも口止めしておこう。つぐみ達には絶対バレたくないからな……

 

「あー、もう腹括るしかない、ミスっても文句言わないでくれよ?」

 

「幸介!あなたなら出来るわ!」

 

「愚問だね幸介……君ならば可能だろう?」

 

「大丈夫だよ…!幸介くん、一緒に頑張ろう!」

 

「花音さんまで!?……はぁ……なんかごめんなさい……」

 

もうどうにでもなーれ!




扇風機にあーってするつぐみは絶対可愛い

誰か描いてくれないかな……


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折角の夏なのにイベントは少ない:中編

パスパレのイベント回

次のイベントはハロハピ、そしてはぐみが主役のイベントだが……

ハロハピ内でソフトボールをするのか、あるいは所属チームの試合なのか……どっちだろう?


「「パスパレのイベント?」」

 

「はい!以前のイベントは幸介さんもつぐみさんも来られなかったので今回のイベントこそ来てもらいたいんです!」

 

「イヴちゃん、それっていつ頃かな?」

 

「再来週の水曜日です!」

 

「えっと……大丈夫だった筈…?」

 

「まあ父さんに言えばどうにかなるかなあ」

 

そう言うとイヴちゃんは目を輝かせた。いくらお世話になってるって言っても、わざわざイベントに招待しなくても良いのに。

 

「そういえば私、知ってる人のライブに行くなんて初めてだ。」

 

「ん?あれ?つぐみは無かったんだっけ?」

 

「多分無かったと思うけど……」

 

あこに誘われてRoseliaのライブに行ってなかったか?……あれ?記憶違いかなあ?

 

「あ、アイドルグループだしコールとかあるのか?あったら覚えないと駄目だな。」

 

いろいろ調べておかないと……

 

「何はともあれ、楽しみだねお兄ちゃん!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ナルホド……理解しすぎて成歩堂龍一になったわね。⚖️

 

今回のイベントはルミナスとゆらゆらの発売記念イベントだったのか。(激遅理解)

 

「うわー……すっごく大きい会場……」

 

「つぐみ達もこういう所でやるか?」

 

「い、今はやめとこうかな……?」

 

残念だ……Afterglowならこの規模でも絶対成功すると思うのに……

 

まだ少しだけ時間あるし、一息つくかぁ……

 

「つぐみ、タオルの準備をしておいてね。あ、あとサイリウムの準備も」

 

「大丈夫!」

 

自信満々だなぁ……やっぱ可愛いな。

 

はっ!つぐみが胸を張ってエッヘンとか言ったら可愛いじゃん!いつか見たい……

 

〜♪〜♪

 

「あっ……!始まったみたい…!」

 

しゅわりんどり〜みんが流れると会場が静まり返り、客の視線が袖へと注がれた。

 

『皆さんこんにちはー!』

 

「「こんにちはー!」」

 

『まんまるお山に彩りを!Pastel✽Palettesの丸山彩でーす!』

 

アヤー! ガンバレー! ウォオオオオオオオ!

 

『ベースの白鷺千聖です。今日のイベントに来て下さり、本当にありがとうございます!』

 

チサトー! キャーーーーー! アイシテルー!

 

『ギターの氷川日菜だよー!よろしくねー!』

 

ヒナチャーン! ルンッ! ルルルルンッ!

 

『ドラムの大和麻弥、大和麻弥です!よろしくお願いします!』

 

マヤアアアア! ワァァァアアアア! フヘヘ…

 

オイオイ……初っ端から飛ばし過ぎじゃねぇか?このままだとスタミナが持たんぞ……?

 

 

 

『キーボードの若宮イヴです!皆さん、今日はよろしくお願いします!』

 

 

 

「「イヴちゃーん!頑張れー!」」ブシドー! ブシドー!

 

 

 

 

 

…………何か?

 

『今日は私達の3rd singleのリリースイベントに来てくれありがとう!みんにゃっ!』

 

『あらら〜彩ちゃん開幕からまたやっちゃったね〜!』

 

『アヤさん、ブシドーです!』

 

『う〜……あんまり言わないで〜!』

 

会場に笑いが起こる。あれはもう定番というかログボ扱いだな。「どうして噛むのだろうか?」ではなく「どうして噛まなかったのだろうか?」という域まである。

 

そういうの含めて丸山彩の魅力なのだけどね。

 

『皆さんはもう買ってくれましたか?』

 

カッタヨー!

 

『わ、わ!凄い人が買ってくれてますね……』

 

『それじゃあ早速行ってみよう!』

 

『ちょっと日菜ちゃん!千聖ちゃん!進行させないで〜!一曲目は『ゆら・ゆらRing-Dong-Dance』です!』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ふぅむ……懐かしいな……

 

この世界に来てからはこういったライブに行くと初心に戻ったというか、そんな気分になる。

 

『次の曲は『もういちど ルミナス』です。』

 

……てかなんかこう複雑なんだよな。曲実装順じゃないからAfterglowもカプリチオ無いのにCOMIC PANICはもうあるし。

 

あと、幾ら何でも曲考えるのとか練習して引けるのが早すぎだろ。2年分を1年にまとめたんだから仕方ないけどさ。

 

あー、そういやひまりって課題を忘れたのだろうか?まあでも歴史の修正力に期待して良いだろう。今の所対して変わっていないのだから。

 

『『もういちど ルミナス』でした!次の曲は───』

 

『えぇ!彩さん、ちょっと飛ばし過ぎじゃないですか!?』

 

『アヤさん、残心がブシの基本ですよ!』

 

『えへへ……ごめんね、つい楽しくなっちゃって……』

 

『でもでも、お客さんは待ちきれないみたいだよ!』

 

『…それでは次の曲は新曲です!この前の特番を見てくれた人は知っているかもですが、今回はそれを発売前に演奏します!』

 

『彩ちゃん。準備は良い?』

 

『うん!それでは新曲、『SURVIVOR ねばーぎぶあっぷ!』』

 

確か……この次はゼッタイ宣言か?まあハロウィンシーズンだし10月か。

 

高校生にとってCDの初回限定盤とかのを買うのはお財布に優しくない事なんだよなぁ……とか言いつつ毎回買うんだけどね。

 

あと話し合った結果パスパレのCDはつぐみと半分ずつ出し合って買うということになったけど、半分だとしてもそれなりの額なのでつぐみの負担になってそうだし、やはり俺が全額出すべきだよな。

 

「新曲だってお兄ちゃん!」

 

「どんな曲なんだろうな。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜イベント終了後〜

 

あの後は歓声、歓声、歓声、だ。

 

勿論つぐみも俺も例外ではない。

 

あの日見た光景はここでも広がっていたのだ。

 

ああ、懐かしい気分だ……この満ち足りた気分を味わう度

 

俺はこの世界に来たことを実感する。




ポピパとロゼリアとハロハピってCD販売描写あったっけ?と思う今日この頃

あと、現実で販売されたCDと異なって収録曲はキチンと時系列順となっております。つまり今話彩が新曲と言っていたように3rdsingleにはねばーぎぶあっぷは入ってません。

1st:しゅわりん、レボリューションず
2nd:AtoZ、アンダンテ
3rd:ルミナス、ゆらゆら
新曲:ねばーぎぶあっぷ

ねばーぎぶあっぷは9月のイベントですが夏休み中の出来事、つまり8月としています。やっぱり月1曲とかヤバすぎませんかね


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折角の夏なのにイベントは少ない:後編

やっとの事で6番目回

あと設定ガバガバなことに気付いたんで今までの話ちょっとずづ直していきます。投稿間隔が開くかも……?


今日は最終登校日だ。まあ夏休みも終盤…ちゃあ終盤なのかな?まあ⅔くらい終わった所なので、さっさと宿題を終わらせている奴は夏休みを謳歌出来るだろう。

 

そして───イベントのトリガーが今日

 

筋書きは『ひまりが宿題を忘れ、皆に手伝ってとお願いする。』これが引き金だ。

 

他バンドはあんまり覚えていないが、Afterglowの話の内容は全て覚えているのさ!ガールズアンソロジーの時期忘れてたけど……

 

「幸介、つぐみ、モカちゃんが待ってるわよ。」

 

「分かったー!今行くって伝えて!」

 

「はーい!」

 

モカが朝早くに来るなんて……嫌な予感しかない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「も〜!モカちゃんを待たせるなんて酷いな〜」

 

「すまんな」

 

「幸介さんの謝罪は心が感じられないな〜?こんな美少女を待たせるのって相当な罪なんだけどなぁ〜?」

 

なるほど。このパターンか

 

「俺にパン買えと?」

 

「ん〜、幸介さんがそれで謝るって言うなら受け取らないことも無いけど〜?」

 

「…………夏休みの宿題が終わってないなら応援を込めて買ってあげようか。」

 

「……!あたしは───」

 

「───嘘だな。」

 

「……まだ何も言ってないんだけど?」

 

「モカのことだから終わってるとな。」

 

「あーあ……モカちゃんのパンが〜……」

 

「わざわざ山吹ベーカリーの開店時間に合わせて来たんだろう?てか、バイトしてるんだから自分で買え自分で。」

 

まあ、宿題を終わらせていることは評価しようか。(激甘)

 

今のはちょっと意地悪すぎたしな。

 

「……どのパンが良い?」

 

「えぇー……」

 

つぐみが何か言いたげだが……もしかしてパンが欲しいのか?

 

「今日は〜チョココロネの気分かな〜」

 

「はいはい。つぐみは?」

 

「えっ!私も!?」

 

「折角だしな。」

 

「じゃ、じゃあ……メロンパン…かな?」

 

メロンパン……確か8度目ぐらいだったな。そこそこ好きなパンだと思うが本人が望むなら仕方ないか。

 

「チョココロネとメロンパンね」

 

山吹ベーカリーってホント学生の味方だよな。殆どのパンが100円だし、パンの耳のラスクまで売ってるのだ。

 

俺はラスク滅茶苦茶好きなんだよね……しかもあれ一袋まあまあ量あるのに60円なんだぜ?焼きそばパン一個120円だけどラスク二袋買った方がお得だし美味い。

 

ラスクが美味すぎて馬に……おっと

 

あれはりみちゃんか。……今度つぐみにホラー映画見ようって言おうかな。って連想で人を捉えるのは失礼だ。

 

「あ、つぐみちゃんのお兄さん。」

 

「おはようりみちゃん」

 

りみちゃんって珍しくつぐみのお兄ちゃん呼び勢なんだよね。花音ちゃんでさえ初っ端から幸介さん呼びだったのにな。

 

あ、氷川紗夜はつぐみさんのお兄さんと呼びそうだな。

 

「お兄さんは今日もラスクですか?」

 

「いや、ラスクとメロンパンとチョココロネの3つ。モカとつぐみの分も買うんだ。りみちゃんはチョココロネ?」

 

「はい……やっぱり沙綾ちゃんとこのチョココロネは美味しくて……他のお店のチョココロネだと満足できないんです……」

 

「一理、いや十里ある。ここのパンは格別だよねぇ……」

 

りみちゃんってこんな喋り方だっけ?ガルパじゃもっと関西弁使ってた筈だが……やっぱ俺って親しみにくいのかな?

 

カランカラン

 

「お、幸介さんとりみ……ってりみ、何で制服なの?」

 

「え?え?今日って登校日やったよね?」

 

「あはは……登校日は明日。この前の花火大会の時に羽丘の次の日って言ってたでしょ?」

 

えぇ……まあ日付というか今何曜日かなんて忘れるからな……

 

「どないしよ……お姉ちゃんももう登校してる……」

 

「RINEで知らせてあげたら?」

 

こんなこともあるんだな。てか俺の影響小せえな。これホントに心配しなくて良いんじゃね?

 

「沙綾、会計頼んだ。」

 

「……またモカが頼んだの?」

 

「今回は宿題終わらせたご褒美って感じだけどな」

 

「幸介さん、そんなにモカを甘やかしたら駄目だって言ってるでしょ?」

 

ああ始まった。沙綾って良く俺を叱るんだよね。まあ俺が不利益被る時にしか叱らないから俺の身を案じているだけだけど。

 

「いや、最近は控えてるけど……」

 

「それ前にも聞いたよ?幸介さんがずっとそんなんだったら困るのは幸介さんだからね?」

 

「姑か沙綾は……」

 

全く、俺は甘やかしてるつもりは無いんだけどな……

 

俺が甘やかすのはつぐみだけなのだから。マジでゲロ甘やかしたつぐみ可愛すぎる。

 

最初は甘やかすのを受け入れてくれるんだけど、段々不安になって自分が甘えて良いのか分からなくなってオロオロしだすんだよね。でも最終的に自分から甘えてくるようになるっていうね!

 

──────可愛すぎか。

 

「じゃあな沙綾。」

 

「幸介さんが気を付けないと駄目なんだよ!」

 

「はいはい、分かったって」

 

カランカラン

 

むう……やはりそこまで心配する案件では無いんだけどな。

 

「幸介さん〜?“ご褒美”のチョココロネは〜?」

 

「なんでそこ強調した?……はい。つぐみも」

 

「……お兄ちゃん、やっぱりお金───」

 

「良いから良いから。な?」

 

つぐみって何か買ってもらうとすぐお金払おうとするからな。施しは大人しく受け取れば良いのにね。

 

「じゃ、出発するか。」

 

「そうだね〜♪モカちゃん大満足〜♪」

 

……モカは後で頬をにゅいーんとしてやろう。

 

モカの頬は滅茶苦茶伸びる。もうやべーほど伸びる。チーズって言われてもおかしく無いぐらい伸びるのだ。

 

たまに頬を使わせてもらっているが、あの感触が想像以上にハマるんだよな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ふうん……勝ったな(確信)

 

「皆ありがとう〜!」

 

ひまりの『トリガー』が発動された。ククク……ハッハッハ!

 

「でも、ちょっと意外だな。ひまりって中2のバンドを始めた時はちゃんと終わらせてたよな?」

 

「そ、それは……高校生になってから数学が更に苦手になって……」

 

「高校の数学って難しいよね……分かるよひまりちゃん。」

 

……こんな会話だっけ?

 

もっとこう違った気がするが……今は気を待つのみだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

一つ、予想外だったのはひまりが宿題ではなく参考書を忘れた事だ。

 

もしかすれば俺の記憶は当てにならない気がする。しっかりとした物ではなく、うろ覚え程度にしか覚えていないのかもしれない。

 

自身が信用できないほど怖いものは無い。

 

「行ってらっしゃい。」

 

「幸介さん……ホントに行かないの?」

 

「面倒だし。てか、わざわざ俺も行かなくても良いだろ?」

 

「やっぱり来て!お願い!」

 

「一生のお願いはもう使っただろ?」

 

「でも〜……」

 

どうしよ……行きたく無いんだよね。未来変える可能性あるから迂闊に行動したく無いところだ。

 

「お兄ちゃん……私も来て欲しいな……」

 

「むぅ……」

 

つぐみが言うなら……うーむしかし……

 

「……オッケー分かった、行くよ。」

 

この選択は最善だったのだろうか?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

先程ひまりが参考書を見つけ、そのまま帰る所だ。

 

……この後よくあるホラーみたいにドアが開かなくなって、つぐみが警備員が閉めたかもと、そして落ち着かせようと打開策を言う筈だ。

 

「あれ……?」

 

「どうした、蘭?」

 

「ここ、鍵かかってる……」

 

「えっ……!?他のドアは!?」

 

「どのドアも外から鍵がかけられてるね……」

 

よしよし……ここで警備員云々だ。

 

「もしかして、私達が校舎にいることを知らずに警備員さんが鍵をかけちゃったのかも……」

 

OK、つぐみに関しての記憶は薄れていない。次は打開策の提案しようとするが……つぐみだけの記憶だけじゃ殆どのストーリーを知らないのと同然じゃないか?

 

クソ、他のストーリーも読むべきだったか……

 

まあ、今嘆いても仕方がない。過去は変えれないのだから。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in巴〜

 

……今日の幸介さんはおかしい。

 

ただ、ひまりの参考書を取りに行くだけなのに渋ったり、つぐみが頼みこんだ時って危ないとかそういうのじゃ無ければ了承する幸介さんなのに今回はそれさえも渋ったのだ。

 

しかも学校に来る前からずっと黙り込んでる。何か考えてるみたいだけど、学校にそこまで危ないものなんて無いと思うけどなぁ……

 

「あった!参考書、あったよ!」

 

ひまりが参考書を見つけたけど……幸介さんはまだ何か考えている。

 

蘭の早く帰ろうという提案で急ぎ足で移動する。

 

「あれ……?」

 

「どうした、蘭?」

 

「ここ、鍵かかってる……」

 

蘭の一言でアタシらに動揺が奔る。他のドアを確認するも全て開かなかった。

 

そんな時、ふと思い出す。

 

「も、もしかすると体育館非常口が開いてるかもしれないぞ!」

 

あそこは確か部活で遅くなった生徒の為に開けられていたはずだし、今日も開いてる可能性はあるはず……!

 

アタシらはそこへ向かう事を決めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inつぐみ〜

 

私達が廊下を進んでいると、ひまりちゃんが夜の学校は怖いと呟いた。

 

今、私が持っている懐中電灯が無ければもっと怖かったのかもしれない。月明かりだけしかないなか……止めよう。想像しちゃうともっと怖く感じてしまう。

 

「うひゃあっ!?」

 

「うわああっ!?な、なんだ!?」

 

「今、窓に顔が映らなかった!?」

 

ひまりちゃんの声に恐る恐る見てみると、窓に反射している私だった。

 

「な、なんかごめん……」

 

驚かせちゃったことに謝罪して再び進み始める。すると、モカちゃんが学校の七不思議について話しだした。

 

確か……人体模型が動き出したり、鏡に知らない人が映る……とか聞いたことがあった……

 

モカちゃんが他の怪談話をしているともう一つ怪談を思い出した。グラウンドに井戸があって、それを覗き込んじゃうと引きずり込まれるのだとか───

 

「もぉ〜!やめてよ、モカ〜!つぐものらない!」

 

「うう、ごめんなさい……」

 

つい言ってしまった。そう言えば…………………

 

あれ?何をしたかったんだっけ?

 

疑問に思っているとモカちゃんが七不思議なのに6つしかない事がおかしいと言うも、巴ちゃんが止めさせたので話は終わった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inひまり〜

 

つぐが勇気を出して先頭を進んでくれたお陰で、なんとか階段まで来れたけど……

 

階段の七不思議を思い出しちゃった……!うぅ……登りたくない……

 

「ていうか、いつもの階段の段数なんて知らないし、増えてても気づかなくない?」

 

確かに!知らなかったら何が起こったか分かんないから怖がる必要ないじゃん!

 

「学校の階段、確か12段だったと思う。」

 

知ってしまった……つぐ〜!やっぱりちょっと楽しんでるでしょ!

 

「階段は12段……ねぇ、みんな。数えながら上ってみない?そうすれば、七不思議は嘘だって証明できるよね?」

 

でも、もし増えて13段あったら……?

 

考えるだけでも怖いよ〜!

 

まあ、でも蘭の言う通り階段が増えても何も無いし……!やってみる価値はあるかも……

 

みんなで数えながら上る。

 

「1、2、3…………」

 

「12っ!」

 

七不思議なんて嘘だった。そう私が言おうとしたとき、巴が勢いよく13と言った。

 

巴ったら嘘だって気付いて私達を怖がらせようとしてるな〜?そんなのに引っ掛からないんだから!

 

でも、巴は否定した。本当にやって無さそうだったので…………これってつまり───

 

「……早く、先進もう!」

 

「そ、そうだね!あはは〜、進もう!レッツゴー!ゴーゴー!!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inモカ〜

 

階段を通って、再び廊下を進む。

 

ともちんをからかってると、蘭に睨まれたのでやめることにした。

 

もうそろそろ潮時かな?こんなに面白い状況なのに楽しめないなんてなー……残念。

 

するとつぐが歌を歌えば怖くないかもしれないって言うと、皆は賛成した。んー……これじゃあすぐ脱出できそうだな〜?

 

歌を歌い続けると、ひーちゃんがいきなり何か聞こえない?って言ったので耳を澄ましてみると……ピアノの音がする。このメロディって……

 

「「「うわあーーーーーーーーーっっ!!!」」」

 

蘭とともちんとひーちゃんがパニックになってしまう。落ち着かせようとしてみても全く効果が無くて、三人とも全然別の所に行ってしまった。

 

ん?

 

つぐが鏡の前を通った時、何か……

 

試しにつぐを鏡の前に立ってもらうと、一瞬チラリと顔が見えた。

 

…こういうのってホントにあるんだね〜。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in蘭〜

 

はぁ……はぁ……帰りたい。

 

今、体育館に入った所で、さっきのはホントに怖かった……

 

でも、もうすぐで外に出れる。

 

安堵も束の間、つぐみの持っていた懐中電灯が突然切れた。

 

体育館は本当に暗く何も見えない。つぐみも体育館の間取を覚えていないらしく、ここから出るのは無理……なのかな……

 

──────風?

 

……そうだっ!

 

「てことは、開いてる窓かドアがあるってことじゃない!?行ってみよう!」

 

つぐみが率先して動き出す。暗い中駆け抜けるもどうやら行き止まりみたいだ。

 

「……?こっち?」

 

つぐみがカンで動く、すると懐中電灯が再び付いた。

 

「あっ!ねえ、非常口ってこれじゃない?」

 

ひまりの言うとおり、目の前には外に繋がっている扉がある。

 

やっと出られる……

 

巴がノブを手にするもカチャカチャと音が鳴るだけでドアは開かない。

 

蹴って開けようとする巴を止めて、何か他に出れるところは無いか考えてみる。

 

つぐみと巴が助けを呼ぼうと叫ぶと、鍵が開く音がした。もしかしたら警備員が来たのかもしれない。

 

つぐみがドアを開け、礼を言うも外には誰もいなかった。

 

「ホントにもう、勘弁してよ……っ!」

 

早く帰りたい。皆揃ってるし、もう帰ろう!

 

「…………思い出した。七不思議の7つ目」

 

神妙な主向きでモカが告げる。

 

「夜な夜な、生徒の幽霊が彷徨いてるんだって。遊び相手を探して、いろんないたずらを仕掛けてくるっていう……」

 

その時、外から体育館へ一陣の風が吹き込んだ。

 

それはまるで──────

 

「「「「「うわああーーーーーーっっ!!!!」」」」」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁ……はぁ……ここまで来れば……もう大丈夫だよな……?」

 

「流石に……校舎の…外までは……来ないでしょ……」

 

「……あれ?」

 

「モカ……?どうしたの?」

 

「……幸介さんが居ない。」

 

「「「「えっ」」」」

 

「……どこかではぐれたとか?いや、幸介さんに限ってそれはおかしいよね?」

 

「確か……最初にドアが開かないってなったときにはアタシの隣に居たんだけど……」

 

「……!ごめん、行ってくる!」

 

「つぐみ!」

 

「私達も行こう!」

 

「うん!」

 

「……でもさ、おかしくない?幸介さんだったらつぐを心配してたんだしさ。自分から居なくなることって……」

 

「良いから行くぞ!非常口のドアは開きっぱだし、出るならすぐに───」

 

バタン!

 

「……閉まったけど。」

 

「どうしよう……つぐ、もう入っちゃったよ?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

「…………」

 

カチャッ

 

「っし!開いた!」

 

ふうー……俺のピッキング技術を舐めんじゃねぇ……幽霊だろうがなんだろうが開けれぬ鍵は無い。

 

「さーて、後は……………ああ?」

 

開かない

 

……俺の頑張りは何だったんだ?

 

あー糞が……手間掛けさせやがって……

 

「あーあ、非常口から出るかぁ……」

 

面倒くさい。幽霊も関わりたくないオーラを分かってくれないのだろうか?

 

「窓から出るんでいっか……つぐみももう出てると思うし───」

 

バタバタと走る音が聞こえる。……誰だ?

 

懐中電灯の光が階段から溢れている……あれはつぐみかぁ……

 

「お兄ちゃん!!!」

 

「つぐみ、どうした?蘭とかは?」

 

「もう外に出たんだよ!お兄ちゃんも早く出ようよ!」

 

俺を心配して───ッ!?

 

なんて偉いんだつぐみ!感動するわ……!マジ神つぐみ神。天使以上の存在。

 

「ゥゥ……ノロッテヤル……」

 

「今良い所だから邪魔すんな殺すぞ?」

 

「(´・ω・` )エェ…」

 

TPOを弁えない失礼な幽霊だな。先につぐみ達を怖がらせたんだからさっさと役目終えて成仏しろよ。てかストーリーに無かったら怖がらせる前に除霊してやるところだからな?今は特別に見逃してるんだからな?あとそう簡単に人を呪うとか言うんじゃ無いよ全く。

 

「……?お兄ちゃん?」

 

「ああ何でも無い。急ごうか」

 

「屈んでどうしたの?」

 

「おんぶ。つぐみ、頑張ってたでしょ?」

 

「…じゃあ。」

 

懐かしい。昔はおんぶおんぶ言ってたな……あの頃のつぐみってサイドテールだったんだよね。

 

あの時もマジで天使だったな……今じゃちょっと遠慮してるっていうか、何事も控えめになったし。そこが魅力でもあるんですがね!控えめも良いぞぉ!

 

ま、こうやって過去に思いを馳せれるし、悪いことばっかじゃ無い。のか?

 

「じゃあ体育館の非常口までレッツゴー!」

 

「ご、ゴー…?」

 

こうやっておんぶしてダッシュしたらめっちゃ喜んだよなぁ……もっともっと!って言ってさ、最終的に何処で知ったのかはぐみとかあこもやって欲しいって言ってたな。

 

ああ、確か蘭と沙綾だけあんまり乗り気じゃ無かった筈だ。モカはおんぶよりだっこの方が好きだっけ。

 

てか、つぐみって羽根の様に……いや、羽根以上に軽いな。これちゃんと食ってんのか……?

 

……新学期からは俺が弁当を作ろうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あ、あれ?非常口のドアが閉まってる……?」

 

「ホントだ。」

 

まあでもこっちには鍵開ける道具あるし。折角色んな所を回って探し出したんだからな?

 

「フフフ…慌てるな我が妹よ…」

 

「で、でも!」

 

「こんなもの朝飯前だ。」

 

「え、えぇ〜……そんな方法じゃ開かないと思うけど……」

 

「だと思う?それでも昇降口の鍵の方が難しいけど……なっ!」

 

カチャッ

 

「え、開いたの?」

 

「うん。」

 

ふふ……伝説の鍵開け師は俺の事とは良く言ったものだな。俺は某魔法学園の鍵開け呪文より早く開けれる自身がある。

 

あんまり自慢できる特技じゃ無いけど

 

「じゃ、出ようか。」

 

ギィィ

 

「幸介さん!つぐ!」

 

「みんな!」

 

つぐみと皆が抱き合う。嗚呼、良い友情だ……

 

「ドアが急に閉まってそのまま開けれなかったんだけど。どうして出れたんだ?」

 

知られたく無いし……流石に蘭たちも引くから適当に誤魔化そう。

 

「あー……それはな───」

 

「───お兄ちゃんが開けたんだよ!漫画みたいにカチャカチャって鍵穴に針金を入れて鍵を開けたんだ!」

 

oh……やめてくれつぐみ……

 

これ流石にヤバイだろ。如何に蘭達と言えど微妙な反応を見せるだろう。

 

なんだ鍵開けが特技って変態かよ?

 

「マジで!?カッケー!」

 

小学生か巴は。

 

目を輝かせる巴を他所に蘭が言った。

 

「あのさ、それって体育館に行かずに外に出れたって事だよね?」

 

「昇降口はなんでか出れんかったんだよな。ちゃんと開けたのに……」

 

何か霊的な力を感じました……まあ流石に開始2秒で脱出とかストーリークラッシャー過ぎるし、もしつぐみ達について行っていても俺はちゃんと体育館から出る予定だったしな。

 

何故か最後あそこ閉まってたけど……

 

「それよりもう帰ろう。今7時前だぞ?」

 

「う…もうそんな時間かぁ……」

 

「荷物も置いてるんだから急いで帰らないと怒られるぞ?」

 

「あ、そっか…そのまま帰るとこだった……」

 

 

 

「ひーちゃん、結局今日は何も進まなかったね〜」

 

「明日!明日みんなで集まろうよ!ね!?」




ちょっと長すぎたかな?長いとガバガバになってそうで怖い

そして私めはパワフルハロハピを育成中だったのですが今回の新メンバーによってクールタイプが更に他タイプを寄せ付けない強さとなってしまいました。

これだからソシャゲは嫌い(´・ω・`)パワフル新メンバー出て


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羽丘学園非リアランキングNo.1

前回は長かったので今回は短めです。






今日、新学期が始まる。

 

俺の通うこの高校、羽丘はハッキリ言うと……

 

 

 

バカだ!

 

 

 

新学期と同時にほぼ冬服なんだぜ?せめてブレザーはいらないでしょ……

 

今年は残暑残暑でまだ暑い。てかまだ30℃超えだもの。

 

マジで暑い……下手こくと熱中症で死ぬぞ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

学校ってね。面倒くさいけど行かなきゃなんないんですよ。

 

夏休みの怠惰な毎日が恋しい……

 

別にさ、学校自体は好きなんだよ。ただね、何か語り合える友も居る訳でも無し、学業に励もうとももう通った道だし、部活で青春を楽しもうともそんなものよりつぐみの方が重要(だいじ)だし……

 

あれだ、つまり俺はボッチなのだ。この学校でつぐみ達とあこと薫しか話せるの居ねぇんだよ?で、薫以外同学年じゃ無いし、学校で知り合った仲じゃない。幼馴染だ。

 

しかもその薫とは薫ファンに阻まれてまともな会話も出来やしない。薫もそれを分かってるのかそんなにホイホイ話そうとする訳でも無いしな。

 

これ俺がA組だとヤバいからな〜……薫ファンって女子殆どだし、なんなら何故か男子からも敬遠されてる。俺がC組で良かった……

 

まあ、それでも奇異の目は逃れられんが、この程度どうってことは無い。薫ファンも薫と関わらなければ大人しいし、不良君みたいなのが俺に焼きそばパンダッシュしろとかそんな事も起きない。

 

平和だわ。1年の時は薫と同じクラスだったからホントにヤバかった。話すだけで怒られるから、薫と目で会話出来るようになってたしな……

 

【幸介、悪いが先にいかして貰うよ】

 

【了解。ささっと済ましてくれ】

 

なんて感じでな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

……………やっぱ暇

 

なんだこれ?生産性の無い時間(とき)過ごす価値無いんだよ。

 

あーあ、こんな回想ばっかじゃなんにも無いわな。あ?

 

はぁ……何?俺は触れられざるモノだったの?危険物ですか?あーあ……

 

早く終わってくれ…………

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜ニ学期が始まる前〜

 

カランカラン

 

「幸介君」

 

「お、蘭の父さん。“コーヒー”ですか?それとも……」

 

「“水”で頼む。あと餡蜜パフェを」

 

「分かりました。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「こちらが“水”と餡蜜パフェになります。」

 

「……ふっ」

 

「……では、ごゆっくり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……決して怪しいやり取りじゃないぞ?

 

これはつぐみ達のライブの映像と音データを渡しただけだ。

 

まあ蘭の父さんって著名な華道家だから色んな所に赴かなければならない。勿論そうなれば毎回ライブなど行ける筈も無く、蘭の父さんは苦い思いをしていた。

 

そこで俺に白羽の矢が立った。Afterglowのライブは全て行っている俺に、映像の録画、録音を頼まれた訳だ。

 

録画は俺のカメラ。録音はテープにしてあるのだ。

 

蘭の父さんってRUNMANとテープを大量に持っていたが、一体あれ程の量をどうやって買ったのだろう?

 

「幸介君、会計を頼むよ。」

 

「390円になります。」

 

「じゃあ、1000円で……釣りはいらない

 

「……いつもご贔屓にありがとうございます。」

 

「…それじゃあね。餡蜜パフェ、美味しかったよ。」

 

賄賂じゃないよ?正当な働きに対しての対価であって決してやましい物じゃない。OK?

 




やっぱほのぼのでいいやってことで後半削除しました。詳しい事は次回にて。その代わりのミニストーリーをどうぞ。

てかRASはパレオとマスキング以外どうしようも無いかなぁ

ポピパロゼリアとしか殆ど接点無いし……てかアフロと接点あったっけ?

今日から10月まで伸ばすのは無理なのでちょっとずつ考えていかないと……


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ツナグソラモヨウ

ツナグソラモヨウ編

展開早過ぎないか?

前回の蛇足中の蛇足を削除し、蘭パパとの話を追加致しました。本編にちょっと関係があるので流し見程度に見ていってくれたら幸いです。


「コロッケ〜♪コロッケは美味───」

 

「───お兄ちゃん!」

 

「つぐみ?って皆さんお揃いで」

 

「さっき練習終わって皆で帰ってる所なんだ」(お兄ちゃんが歌ってる所初めて見た……)

 

「で、折角だしつぐの家でお茶しようってここまで来たんです。」(幸介さんってもしかして……)

 

「まあ、今日の反省とかしたいし。アタシもいいかなって」(……なんだろう。絶妙に外れてるあの感じ……)

 

「あたしはパンが買えて満足〜。でも蘭が着いてきてって言うから仕方なく?」(幸介さんって音痴だったんだ。)

 

「さりげ無く嘘付かないでよ……」(……何なんだろう、あの歌)

 

「へぇ〜……」

 

うわあーーーー!!!俺が音痴なのが遂にバレた………死のう……

 

 

 

まあそれはそれとして

 

いよいよツナグソラモヨウが始まるのかな……

 

俺に関係してしまいそうなのはつぐみが蘭の歌詞を意味を聞いてきそうぐらい。確か白鷺千聖と花音ちゃんとイヴちゃんがその役を担っていたし、3人もいれば俺に聞かないでしょう。

 

今回のイベント……越したッ!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

つぐみが新曲やライブ云々と言っていた。どうやら“始動”したらしいな……

 

今回はつぐみ関係の事に関わりそうだから、その辺を思い出していこう。

 

まず……なんやかんやあって蘭の歌詞が理解出来ないとなる。で、蘭と4人に少し亀裂が入り、モカが今井リサ、つぐみが白鷺千聖と花音ちゃんとイヴちゃん、蘭が氷川日菜と相談パートがあり……その次にひまりと巴が夕焼けを───

 

───マズい…確かあれ写真の話になるけどまだ小旅行行ってないじゃん。

 

ヤバくね?ストーリー破綻してしまう……くそ、ここは世界の修整力に期待するしか……

 

……次だ次!んで、巴の緊急事態宣言で屋上に集まって仲直り(?)してなんやかんやあってお泊り会だ。

 

そして朝焼け見てライブやって終了!

 

歌詞考案は絶対無いし、各々の心象描写パート多めだったからイージーモードだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

うーむ……具体的な時間が分からないのは怖いな。どうリカバリー出来るか……いや、今回はまだ関わっていないし大丈夫か。

 

って蘭が泣いて走ってるじゃん。

 

……申し訳ないがここは大人しく見捨てる───

 

───訳無いわ。何がどうであれ、こんな状況やっぱ放っておけない。後処理は上手いこと公園に連れてきゃ良い訳だから簡単だしな。

 

ちょっとぐらい……関わっても大丈夫か。(浅はか)

 

「おい蘭、大丈夫か?」

 

「……っ!」

 

相当勢い良く逃げるねぇ……でも聞こうか。

 

「走りながらでも良い、何があったんだ?」

 

「…………」

 

話してくれない……どうしてだろう?やはりつぐみ達と喧嘩?したとか言いたく無いのかな。

 

「ほらハンカチ……は無いからティッシュで涙を───」

 

「───放って置いてっ!!」

 

「…………わかった。」

 

怒られちゃった……悲しい……

 

…でもこの後モカが公園でリカバしてくれるでしょ。(身勝手)

 

 

 

…………不安だ、一応誘導をしておこうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inモカ〜

 

(蘭……今頃華道の集まりかな。)

 

蘭も、ひーちゃんたちも悪くない。

 

悪いのはあたしだ。みんなの気持ちを知って、知らんぷりして。

 

もし、このままずっと仲違いしたままだったら?

 

(……あたし、ネガティブだなぁ)

 

こんな時、幸介さんだったらどうするんだろうか……あの人はあれこれして蘭の変わったことをみんなが理解(わか)るようにするんだろう。

 

ともちんとあこの時もそうだった筈だ。ともちんは言動が、あこは好きなものが女の子らしくないって周りから言われるのが嫌だったけど、ある日幸介さんと話すと次の日からスッキリした顔になっていた。

 

きっと、蘭のことだってすぐに───

 

「お、モカ、今から練習?」

 

「…幸介さんじゃん。どうしたの?」

 

幸介さんは帰る途中だと答えて、その後はあたしに合わせて黙って歩き続けている。この人はいつもこうやって何処からか現れる。それも考えている時に限ってだ。

 

そんな事を考えていると幸介さんは唐突にこんな事を聞いてきた。

 

「……なあ、モカ達の原点って、始まりってなんだ?」

 

あたしたちの始まりといえば一つしかない。

 

あの日、あの場所で、出会った時が始まりなのだ。

 

「どうして、そんな事を?」

 

「気付けばつぐみと仲良くなってるもんだからちょっと気になってな。」

 

………もしかすると、そこに何かがある?

 

あたしがそう考えるのは基本的に幸介さんは一言の重要さが高いからだ。何でも無い一言のように思っても後々大きな意味を持つことが多い。

 

だから、言動の一つ一つの意味を紐解いていけばおかしい点がいくつかあるのだ。その『おかしい点』は、何かがおきた後に線となって浮かび上がり、そして幸介さんが何故したのかの理由とも取れるようになる。

 

この前の時だってひーちゃんの参考書を取りに行く時について行くのを渋ったのはもしかしたら幽霊が居たのを知っていたから、そうあたしは考えている。

 

この人とは、多分見えている世界が違う。

 

なんでも『知っている』のだ。

 

あたしたちが知らないモノ、もしかすると───未来まで知っているのかもしれない。

 

もし、幸介さんが未来を見えるのなら、

 

未来のあたしたちは五人なのかな?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幸介くん、こんにちは」

 

「花音ちゃん……今日は二名様ね。」

 

「うん」

 

花音ちゃんと白鷺千聖か……今日はイヴちゃんがシフトの日だし、つぐみも手伝っている。つまり───今日か。

 

「イヴちゃん、花音ちゃんの注文を取ってあげて。」

 

「お任せください!」

 

適当に舞台を作って見守るだけ、簡単だ。

 

ここでつぐみがスマホでワレモコウの花言葉を調べたらオッケーだ。後は四人が勝手にしてくれる。

 

フフフ……この前のに比べたら何もしなさ過ぎて不安になるぜ。だが、やはりそれが確実だよな。

 

「つぐみ、交代」

 

「はーい」

 

良い返事ッ!!サスガダァ……

 

じゃなくて、今は人足が少なくなっているのでつぐみが会話する確率は高い。後はここから耳を澄まして確認を……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「えっと……『ワレモコウ 花言葉』……っと」

 

「えーっと……『ワレモコウの花言葉は【変化】【移ろい】【明日への憧れの】』……」

 

「はぁ……」

 

「つぐみちゃん、どうしたの?」

 

来た。

 

「えっ!?な、なにがですか?」

 

「さっきからため息ばっかりついてるよ。何か、悩み事?」

 

「い、いえ……その……」

 

「ツグミさん!何かあるなら言ってくださいっ!私、ツグミさんの力になりたいですっ!」

 

よし………任務完了した。多少のアクシデントはあったが問題ないだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜数日後〜

 

リンゴン

 

「ん?」

 

『お兄ちゃん、急だけど今日は蘭ちゃんちに泊まるってお母さんに伝えてくれる?』

 

『分かった。荷物は?』

 

『この後取りに行くよ』

 

「……勝利だ!」

 

フッフッフッ………ハッハッハッハ!

 

ああ、完遂したのだ。

 

俺は、勝った。最早ライブを聴くなど造作も無い!

 

あ、蘭の父さんと母さんに手土産を持っていかないと失礼だな……




モカは気付いている……?

次のイベントはなんですかねぇ……モルフォニカのイベントとか来そう。

今年こそアフロの水着イベを……我らに恵みを……


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羽丘学園文化祭午前の部

文化祭編、ガバガバ文章力でなんとか形にできるのか?

巴の誕生日も近いしそろそろ書きたいなぁ……


無事にAfterglowのライブも終わり、平和な日々を過ごした。

 

はぐみとかけっこで競争したり、巴の家で久々にあことゲームしたり、紗南ちゃんと一緒にお買い物に行ったり、第15²回『オイオイオイ、妹可愛すぎだわ』で語り明かしたり、つぐみと散歩したりであった。

 

そして唐突に始まる文化祭

 

準備したり、薫に劇に出てみないかと誘われたりとなんやかんやあったもののどうにか出来た。ちなみにつぐみや蘭のクラスの出し物は当日までヒミツらしい。

 

楽しみだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜文化祭当日〜

 

「〜〜♪」

 

つぐみ達ってどんな店なんだろうね。一応俺のクラスはフリーマーケット的なのになっている。準備は殆どやっておいたから当日は緊急以外は店当番無くて良いよね?(威圧)って聞いたら二つ返事でオッケーしてくれた。皆やさしいね。

 

しかし、喫茶店……あるいは飲食店系か、それとも見世物系か……意外と発表系が来るかもしれない。

 

行ってみないと分からないってドキドキ良いよね!

 

あと去年ちょうど店番があこと被って会えなかったから今年はあこのクラスも行こうか。

 

それじゃあ……確か、皆の店番は……

 

今の時間は……つぐみ達が店番を務めていたな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

いざ、B組の前に行くと喫茶店と看板にあった。A組も喫茶店だったが、高等部からは高度な飲食店系が許可されやすくなっているので一年は飲食店で攻めるのだろうか。

 

俺の時も飲食店だったな。と感慨深く思いながら入る。

 

「いらっしゃ───!?っいませ!」

 

男子生徒が案内してくれるようだ。

 

「連れは居ない。」

 

「はっ、はい!こちらの席でどうぞ!」

 

言い間違えてるぞ……『で』じゃなく『に』な?

 

「お兄ちゃん!」

 

「つぐみっ!」

 

ウチの仕事着(いつもの服)はエプロンなのだが、今は可愛らしいフリフリのメイド服をモチーフにしたらしい服だ。

 

正直に言うと可愛過ぎる。これを考案した奴は誰だ?滅茶苦茶いいセンスだ。

 

「その服、似合ってるな。」

 

「ホントに……?」

 

「うん、凄く可愛い。」

 

「えへへ……」

 

くぁー!やっぱもう全てが可愛い!尊死()ぬわ〜♪

 

「幸介さんじゃん、やっほ〜」

 

「モカと巴か……ひまりは?」

 

「あー、ひまりは外で客引きしてるんだ。あ、つぐみが接客した方が良さそうだな。」

 

なる程、ここはメイド喫茶か。男陣はボーイ役だということか。まあ良くもオッケー出したな……?この高校は男も多いというのに……

 

「じゃあつぐみ、オススメメニューとか無いか?」

 

「えっと、このオムライスがここのオススメなんだけど……やっぱりお昼時じゃ無いからあんまり売れてないかな」

 

オムライス……喫茶店で出すものなのか?もうちょっとこうパンとかそういうのを出した方がいい気もする。しかも並々ある飲食店からメイド喫茶でオムライスを頼むのはかなりのコア(オタク)だろう……

 

「手っ取り早く食べれる軽食が人気だと思うが……」

 

薫がこういうのやったら客が殺到するのだ。しかもなんであっても売れる。それで去年は売上が全校一位だったもん、ずるいわ。

 

「よし、オムライスを頼む。」

 

「はーい、オムライス一つ!」

 

いやしかし……

 

「懐かしい」

 

「……?お兄ちゃん、何が?」

 

「つぐみって良くおままごとしてただろ?覚えてるか?こーひーやさんって言ってな……」

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!」

 

本当に懐かしい。あの頃はメニューのレパートリーが5品くらいだったな。コーヒー、ケーキ、パフェ、ランチセット、何故かジュースもあった。

 

値段設定はウチに基づいて考えられていて、コーヒーが120円、ケーキが490円、パフェが390円、ランチセットが980円、ジュースは120円だった。つぐみにどうして珈琲屋さんなのにジュースがあるのか聞いてみると、コーヒーが苦くて飲めない人の為だと言っていた。やはり天使か?その後ある日母さんがつぐみにウェイトレスをやらせてみようって言い出して、つぐみは子供用エプロンに羽沢珈琲店の刺繍を入れてもらって、接客しだすともうヤバい。何がヤバいって可愛過ぎなんだよな、ホントガチで。腕捲りしてがんばる!って言うんだよ?そしてゆっくり運んでお客さんに渡す訳ですよ。ホントねこれヤバいんだわ。お客さんも滅茶苦茶ニッコリしてたもん。あれハロハピより世界を笑顔に出来るわホントに。で、それが終わったらちゃんと出来たよって喜ぶのよ。もうね、天使超えてるよ。なんだろう、巨大天使だろうか?まあその辺の階級分けの名称知らんけど真理に辿り着いた感あるね。無神論者も感動し心入れ替えてつぐみを神と崇め奉るのさ。それ見せられなくて申し訳ない、あー!本当に残念だったなー!

 

…………………………………

………………………

……………

 

───それからはもう商店街の名物よ。あの頃から沙綾もはぐみも手伝い始めだしたので、これはつぐみが全ての先駆者、つまり始まりの始まりよマジで偉い!

 

「あ、出来たみたいだから持ってくるね。」

 

マジで?早いな。

 

いや、しかしつぐみが作ったものでは無い。申し訳ないがここは辛口評価で行かして貰うぞ。

 

「お待たせしました!『メイドのオムライス』です!」

 

「……なる程」

 

見た目はごく普通のオムライス……ふん、こんなものより俺が作った方が良いに決まっているぞ。つぐみが運んで来なければ0点だ。

 

「じゃあ、いただき───」

 

「ちょっと待って!……まだ、そのオムライスは完成じゃ無いの!」

 

「なん…だと……?」

 

ここから何を足すと言うのだろうか。いや、ホントに一体何を?

 

「よし……お兄ちゃん、一緒に言ってね。……せーのっ───」

 

「───萌え萌えキュン♪」

 

???????????(なんですかこの可愛い生命体は?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この儀式は一体……?」

 

「あ、あはは……愛情を込める?らしいけど……」

 

赤くなりながらもそう答えるつぐみ。

 

頑張って考えた(CPU使用率100%)ら一つだけ思い浮かんだものがあった。

 

つまり、これってつぐみの愛情料理って事ですよね?そういう事で良いんですよね?

 

「…いただきますっ!」

 

公共の場だ。マナーを守り、このつぐみの愛情たっぷりのオムライスを最高に美味しいタイミングで食さねばな!

 

「あ!お兄ちゃん、待って!」

 

「ぬ?」

 

「ケチャップをかけるの忘れてた!ちょっと持ってくるね!」

 

「おう……」

 

無くても良いのだが……まあケチャップとオムライスは切っても切れない関係性があると言えるだろうね。どちらにせよ100点の料理……楽しみだ。

 

「ごめん、これで完成だから……」

 

「待ちかねたぞ───っ!?」

 

オムライスに描かれた文字は『お兄ちゃん(ラヴ)

 

そういうことか?そういう事ですか?

 

「お兄ちゃんラヴ……っておかしいかな……?」

 

……この味、このあたたかみ。それらは全て現存する食事を大きく超えている。超越した料理……たった一口、口に含めばつぐみの愛を感じる……それだけではない!噛めば噛むほど愛を、愛を!───感じられるのだ!

 

勿論下品な情熱的な愛などではない!やさしく……やさしく……見守る存在であると再認識させる、そうまるで太陽の様にっ!いや!神のようになッッッ!

 

正しく全ての人民共に向けられる恵み……慈悲の心……それらがこのオムライスに詰まっているっっっ!!!

 

「ふふふ……はっはっはっ……」

 

「お、お兄ちゃん……?」

 

「つぐみ、このオムライスは美味かった。」

 

気分が良い。久々に気分がヘブンしてる。

 

「……あと25分くらいか、店番頑張れよ。」

 

「うん!あ、後でちょっとだけお兄ちゃんのクラスに行っていい?」

 

「あー、俺は店番は務めないぞ。」

 

「え?どうして?」

 

「ま、ちょっと頑張っただけだ。ああ、あと午後に蘭のクラスに一緒に行くか?」

 

「あ、えっと……午後からは生徒会の仕事があって……」

 

申し訳なさそうに答えるのを見ると心が痛む。

 

マジで?うわー、マジかよ……去年もそうだったじゃん……

 

「だから、皆とは回れないんだ。」

 

「そっか………」

 

ん?待て、おかしくないか?

 

つぐみって俺のクラスに行くつもりだったんだよな?だったら何故皆と蘭の所にも行かないんだ?ていうかよくよく考えると午前クラス当番で午後生徒会とかおかしいでしょ。

 

もしや、あるべき筈ではない事をやらされているというのか……?

 

「つぐみ、もしかして……」

 

「……大丈夫、無理してないよ。」

 

嘘だ。つぐみが嘘を付くときはいつも以上に目を開き、瞳孔も開く。長くそれを指摘されてきたせいか目を瞑って笑顔をするようになったのだ。それでも嘘と分かりやすいが。

 

だが、その笑顔も偽物とわかる。少なくとも15年は同じく生活してきたのだ。分かって当然ともいえる。

 

頼んだ奴がよっぽどの理由なしに頼んだのであれば……処す。

 

しかし、生徒会もこのクラスも俺の関わりは無い。現在つぐみの負担を取り除く手段は無い。

 

「ごめんね!つぐみ!」

 

ほう?あの女子生徒か。……ふん、急いで戻ってきた事は評価するが、そんな事で情状酌量の余地があるとでも思うなよ?

 

「あっ、戻ってきたんだ麻衣ちゃん」

 

「うん……結局、駄目だった。生徒会の仕事もあるのにごめんね。」

 

「ううん、良いよ。ああ、でも……」

 

「……失敗したのは私のせいだし、つぐみが気を使う事もないよ。」

 

何かを失敗しただと?つぐみに物を頼んでおいて失敗するという意味の無い行為をしたのか?無駄な時間をつぐみは過ごした事になるんだぞ?

 

決定だ、処そう。

 

「つぐみ、この女子が?」

 

「ああ、えっと……うん。」

 

「そうか……」

 

反省はしているようだが……やはり許せぬな。さて、どうやって───

 

「幸介さん〜」

 

「モカ?」

 

「混み合って来たので幸介さんの会計を終わらせたいのです〜」

 

「……わかった。オムライスは何円だ?」

 

「600円になりま〜す。」

 

「高いな……ランチセットでもないのに」

 

単品でこれとは。水すら頼んでないのにな。

 

「つぐの愛がマシマシだったから?」

 

「それだと払えんぞ……」

 

「じゃあ幸介さんのつぐへの愛をあたしに───」

 

「1ミクロンでもやるもんか。それにモカにはモカへの愛があるだろう」

 

「……ちょっと意外〜、つぐにしか愛が無いのかと思ってたな〜」

 

「流石にそんな事はない。あ、ちなみに親愛だぞ?」

 

いやいや、一応全キャラに愛着はあるからな?つぐみが最推しであって、他キャラはまあまあ推してるからな?まあ一番変わったのがはぐみの愛着だが、あれはあれで子犬みたいで可愛いってことに気付いた。はぐみって気使わなさそうに見えて意外と気使ってくるし。

 

おっと、こんなこと言ってたらはぐみの兄ちゃんに殺されてしまうわ。マズイマズイ……

 

「あ、モカはあとで蘭のとこに行かないか?」

 

「え〜?幸介さんモカちゃんのこと興味ないとか言っておきながら誘うんですか〜?」

 

はぁ!?なに言ってんの?……おっと、蘭の口調に(意味不明)

 

「でも行くだろ?」

 

「蘭のクラスは〜……はっ!これは言ったら駄目な奴でした〜、それじゃあお昼にいつもの所で待ってま〜す」

 

「ちょ、おい、押すな……」

 

無理矢理追い出されてしまった。ふぅむ、これからどうしようか。

 

 

 

よし!ちょっと早いけどあこの所に行くか!




午前の部(次話も午前)

前書きは原則書き始めた時に最初にしか編集しません。なので前書きと後書きで内容が違うことが多々あります

前書きを書いたときは蘭の誕生日すらまだだったとおもうんだけどなぁ……(´・ω・`)


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羽沢学園文化祭午後の部

(午後から始まるとは言ってない)


中等部へ向かう為に渡り廊下へ向かうと、そこには黒髪に赤いメッシュを入れた少女が佇んでいた。

 

───蘭だ。

 

蘭の他者への扱いって俺と似てるから親近感を得てる。ただ、いくつかを除いてだが。

 

蘭に声を掛けると何故か驚いた様子だった。あこのクラスへ行くことを伝えてみるも「行かない方が……」と答えていた。

 

確かに高等部が中等部へ行くなどあまり無い。部活動などで交流があるとはいえ、やはりその数はまばらだ。が、俺は行く。

 

中等部に行くと奇異の目は逃れられんがその程度いつも受けているし、一年前に行くと約束もしている。反故にしてしまってはあこがかわいそうだからな。

 

「蘭、巴の分まで行くぞ。」

 

「ちょ、ま───」

 

反対する蘭の手を取って向かうのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お〜、ここかぁ……」

 

「……お化け屋敷だ。」

 

なるほどね。(予定調和)

 

どうりで道中高等部が多いわけだ。おそらくここに居る殆どは珍しいもの見たさという訳だな。

 

そもそもの話中等部の担任教諭は頭が凝り固まった連中ばかりだ。何故か俺はいつも授業態度が悪いと言われていた。

 

あの日々も悪くはなかった。(薫ファンとのいざこざが無かった)というより授業中につぐみのことを思い浮かべているだけだったんだが、一体何がいけなかったのだろう……)

 

「私は外で待ってるから、幸介さんだけ行ってきたら?」

 

「何言ってるんだ。“アレ”以上のは来ないし俺が金を払うから行くぞ。」

 

「わかったから手を繋がないで……!」

 

つれないねぇ……ま、こうでもしないと蘭は来ないからな。こうやって嫌がってる時に強引に連れて行くと最後には楽しかったって言うからね。勿論本当に嫌な時は連れてかないけど、大体は踏み出すのが苦手だったり恥ずかしいから断るってことが多いからねぇこの子

 

受付に金を渡して中へ入る。果たしてあこはどんな姿で来るのかね

 

「い、意外と暗い……」

 

蘭はオドオドしている。いや、こんなに怖がりだっけ?もっと大丈夫だった気がするが……

 

「蘭ってそんなに怖がりだったか?」

 

「……夏休みの時から、こういうの駄目になってて……」

 

よく見ると震えている。

 

……なんか、悪かった。今からでも外に出るかと聞くと、蘭は俺について行くと答えた。

 

あれがトラウマになってるのかな……どうにかして克服させてあげたい

 

「な、大丈夫だから。ちょっとだけ我慢できるか?」

 

「……うん。」

 

コクリと頷いたのを確認して手を差し出す。出された手の震えが治まったのを感じて、再び歩き始めた。

 

これは重症だ……

 

というよりどうしよう。元の蘭ってここまで怖がりでは無いはずだ。井戸の怪談聞いてビビってたけど流石に文化祭のお化け屋敷でビビることはないだろう。

 

……これも代償か。俺が、ここに来たせいで起こったのだ。

 

五人の───いや、少なくとも8人もの確定した未来を変えてしまったのだ。現在の影響は小さくても、何れは大きくなるだろう。

 

「幸介さんってさ、怖いものって無いの?」

 

不意に、蘭がそう聞いてきた。

 

俺は…未来が、明日が来るのが怖い。あるべきモノが消えて、他のモノにすり替わってしまう気がして。

 

……蘭には分からないんだろうな。蘭は、ここで暮らす人だから。

 

だからきっと、俺が居ることも変わりのない日常なんだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

カーテンの奥からあやしげな気配を感じた。

 

「……!」

 

あの息遣いや気配は……ま、魔王っ!

 

どうやらこっちを狙ってやがる……

 

これは───

 

『バーン!!!』

 

『いやああああああああああああ!!!』ズダダダダ

 

こういうこともありえるだろう。手を握っているが多分振り解いて逃げる筈だ。

 

暗い中走るのも危ないし、第一トラウマを掘り起こすのは良くないだろう。俺が言うのもアレだけどな。

 

……どうする……?予見していてはあこがかわいそうだし、かと言って無防備に受けても蘭がヤバい。

 

あっ!そうだ!あれだ!

 

「蘭、さっきからソワソワしてるが大丈夫か?」

 

「……うん。大丈夫……」

 

よし、あと5秒、4、3、2……今だ!

 

さっと蘭の頭を抱きよせる。

 

「バーン!!!」

 

少し遅れてあこが飛び出してきた。蘭は少しビクリと反応したが、叫んだりはしなかった。やはり見るより聞くだけの方が驚きは少ないだろう。

 

そして俺は驚いたフリをする……完璧だ。

 

「ビックリしたー……ってあこじゃん。」

 

蘭の反応を最小限に留めながらあこの欲を満たす。これはつぐみとお化け屋敷に行った時にやった奴だ。怖くて座りこんだままになったから抱っこして周りを見ないように移動したのを思い出したのだ。つぐみってお化け屋敷に入るまでは元気だったけど入ってからはものすごく怖かったようで、お化け役の人が怖がるつぐみを気遣って驚かす勢いも控えめだったなぁ

 

でも泣かなかったのはホントに偉かったなあ!てかあれから遊園地に行ってないな……今度久々に行ってみようか。

 

「あれ、こー兄!?」

 

「……あこ……?」

 

蘭が辺りを見回す。驚かした人があこだとわかり少し落ち着いたようだった。

 

「ねえこー兄、おねーち───」

 

「───ここで話すのもアレだから昼休みに話そう。あと巴は来てないぞ。」

 

「あっ……そっか。」

 

あこは理解したようでカーテンの奥へ消えていった。あこの姿が見えなくなると蘭がどうして抱いたのか聞いてきた。蘭の追求あると踏んでいたので予め用意しておいたビックリしてどこかに走っていかれても困るからということを言うと、あんまりやらない方が良いよとの事だった。

 

幾ら何でもそうそうやる機会は訪れないだろう。しかもお化け屋敷に行くとかほぼほぼ無いしな。

 

その後はこんにゃく罠とか鍵を取ろうとすると手が伸びてくるアレとかあったが、何とか蘭を乗り切らせた。

 

……普通のお化け屋敷は蘭と一緒に行かないようにしよう。

 

「出口だ……!」

 

「あっ───」

 

蘭が出口に向かって駆け出す。一番に逃げようとする奴には大体───

 

「きゃああああああああああああ!!!」

 

案の上出口の脇から出た血塗れの幽霊を見て腰を抜かして叫んだ。

 

ボーカルだからね。凄い声量。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜昼休み〜

 

回るべき所も無く。適当に屋台のものを買ってきて屋上で過ごすことになった。ポエマー蘭ちゃんとか言ってからかうとシスコンお兄ちゃんと言い返されたり、他にもいろいろと話し合って時間を潰した。

 

文化祭ライブに出ないのかと聞くと他のライブ、よりによって文化祭の2日後にあるライブに出場してしまい今回は泣く泣く諦めたのだとか。ウチ(羽丘)じゃまあまあ人気なんだけど残念だねぇ……

 

ガチャ

 

「あ、蘭───……」

 

モカが蘭と言ったところで急にドアを閉じた。

 

「ちょっとモカ!鼻がぶつかったじゃん!」

 

「あ〜…なるほど、なるほど〜」

 

「……?よく分からないけど早く行こうぜ」

 

ガチャ

 

「お、蘭と幸介さんじゃん。」

 

やってきたのはつぐみを除いた3人だ。あれぇおかしいなぁ……?

 

「あれ?つぐみは?」

 

「あ〜、つぐは遅れて来るって言ってたよ〜」

 

遅れて来る……か。大体つぐみは頼み事を引き受けすぎなんだよな。もうちょっと自分の時間というものを大事にしてほしいところだ。

 

「そういや巴、あこも来るってよ。」

 

「お、あこも来るのか。というか二人ともずっとここで?」

 

「……2時間、ぐらい?」

 

そんぐらいだっけか?まあ回るより屋上で話してた方が楽だしな

 

「えぇ……その間どこにも行ってないのか……?」

 

巴の問に俺があこのクラスとポテトとたこ焼きの屋台には行ったと答えると、失礼なことにひまりがこういった。

 

「幸介さんはともかく蘭はそんなんじゃダメ!花の女子高生なんだからもっと色々回ろうよ!」

 

「……俺は?」

 

「「「「えっ」」」」

 

揃いも揃って非道い。そりゃ一緒に回る人がいるかと聞かれるといないけどさぁ……

 

「幸介さんは回るより胴元っていうか……経営者よりじゃない?」

 

蘭は俺はディーラーかなにかかと思ってるのか?俺は経営も好きだが回るのも好きだぞ?

 

「幸介さんはつぐが居たら満足じゃ〜ん」

 

それは違いないが……もっとこう、言い方があるだろう。それでは俺はただの変態のように聞こえてしまうではないか。

 

「まあひまりさん曰く“花の女子高生”ってのに俺みたいなのが混じって行くのは一般論からするととてもとてもおかしいんだろう。」

 

(幸介さん拗ねたじゃん!ひまり、どうすんの?)

 

(いや、だって……)

 

(意外と負けず嫌いだからね〜)

 

「えっと、幸介さんも一緒に回るよな?」

 

巴……信じれるのはお前しかいない!

 

「ああ、うん。そうだな……許可があれば、な。」

 

チラリと三人を見る。ふふ、遠慮なく許可を出すが良いぞ。

 

(((面倒くさいなぁ……)))

 

バタン

 

「つぐみ!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「おねーちゃん!」

 

「うぉっ!あこ!」

 

「一緒にお弁当食べよ!」

 

あこはいつのまにか巴に抱き着いていた。うーん、つぐみは中学2年生ぐらいでしなくなったんだよなぁ……ま、今はもう高校生だし完全に兄離れしたんだろうね。

 

ちょっとだけ、ほんの少し、いや割と、てかものすごく悲しいが仕方のない事だ。

 

悲しみに暮れるも持ち寄った弁当を広げて食べ始める。するとひまりが思い出したかのように言った。

 

「あこと幸介さんまで揃ってご飯食べるのっていつぶりだっけ?」

 

確かつぐみたちが中学三年生の時に行ったプールが最後か?てか中学になってから俺はお泊りとか行かなくなったし当然なんだがな……そもそも年頃の女の子の家に泊まるとかありえないしさ。

 

「蘭の誕生日は……あ、あれはあこがいなかったっけ」

 

「運動会とかじゃない?」

 

「去年はお兄ちゃんは流石に高等部が中等部に行くのはダメだって言って一緒に食べなかったよね?」

 

「ああ、まあそれはいろいろと駄目だろ。蘭も嫌だって言ってたし……」

 

「あっ、あれは───」

 

「プールじゃないかな〜?確か、プールで食べたお昼ごはんが最後だったよね〜」

 

蘭の抗議を遮ってモカがそう答えた。今思いついたけどモカって根本的なところは蘭と似てるんだよな。公式CPといっても過言ではないしその辺のフィーリングは合うのだろう。関係は無いが野球とかでピッチャーとキャッチャーのことをバッテリーと言うのだが、そのバッテリーのことを夫婦とも言うぞ。これって二人の関係に似てると思うのだがどうだろうか?

 

……無駄話が過ぎたな。

 

「ああ!そうだそうだ!」

 

「あの時って……幸介さんが〜?」

 

「……なんだ」

 

ニヤニヤしながらモカが続ける。

 

「ナンパされたんだっけか〜」

 

うぜぇ……折角思い出さないようにしてたのに……

 

あー、思い出してきたらマジで腹立つわ。なんだあの女共が……ご飯食べてるときにいきなり割り込んできて何がイイコトしない?だぶっ殺すぞ。しかも挙げ句の果てにはつぐみのことを貧相だとかほざきやがった。アイツらには一生わからんだろう、身体美というものがな。てか貧相と言い切った割にひまりの方が豊満であった。

 

「……今なお成長中───か。」

 

「……?こー兄どうしたの?」

 

「いや、思い出したら腹が立ってな。」

 

ひまりが真っ先に彼氏出来そうだな……その時はソイツがいい人だということを願っておこう。

 

「幸介さんすごかったね〜?」ツンツン

 

「頬をつつくな……この話は終わりだ。俺はあんな奴らのことを思い出すことすらしたくないんだ。」

 

「……まあ、そうだよね〜」

 

どっちの目線なんだこのパン狂いは……

 

「それは置きだ、そろそろ昼休憩は終わりだし俺は蘭のクラスへ行くぞ。」

 

そう告げて蘭を見やると驚いたような顔をしたあと絶対に来ないで!と強く言われた。

 

どうして?と聞いても蘭は来ないでとしか言わなかった。

 

ちょっとぐらい訳話しても良いじゃんか……ま、どうせ喫茶店だったからメイド喫茶とかで恥ずかしい〜ってことだろうよ。

 

あーあ、屋上で暇潰す……いや、クラスの様子見てくるか……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜文化祭終了後〜

 

「これ、本当に任せて良いのか?」

 

「ああ、あとは任せて。それに俺しか処分出来ないだろうし結局やるしか無いんだけどね。」

 

「……なんかごめんな?俺、文化祭実行委員なのに最後まで任せっきりで……」

 

「好きでやったことだし気にしなくて良いよ。というより、それ君が言うことか?午前のとき変わって貰ったのに俺が無理言ったのを忘れてないよな?」

 

「そんなこと!羽沢には変わるのも良いぐらいして貰ったからな!」

 

「まあ、自分で出した企画だけど売り上げはそこそこだったみたいだし良かったよ。確か学年2位でしょ?」

 

「A組には勝ちたかったけどなぁ……」

 

「あそこはほぼ準備が無いと思うから準備費用の多い時点でもう負けだよ負け。」

 

「来年こそは一位を取る!羽沢も一緒のクラスになったらよろしくな!───あっ!でも準備とかはこうやってしなくても良いからな!」

 

「その時はよろしくな。」

 

彼はすまんなと言って教室を後にした。

 

……なかなかどうして好感を持てる男じゃないか。何事にも全力で、努力を惜しまないのが素晴らしい。人間性も良い。だって普通俺に話す奴は居ないもん。恐れられてんのかな……そんなことして無いけどなぁ……

 

片付けを進めていくと文化祭のしおりを発見した。それを手に取って捲っていく。

 

理由はどうであれ俺が自分からこうも力を入れた学校行事は初めてだった。ぽっと出の企画を受け入れてクラスに協力を呼びかけてくれたアイツには感謝だな。

 

「てかこれ全部の出し物の概要書いてるじゃん……」

 

俺のクラスは多分アイツが……計画を殆ど俺一人で進行させちゃったから書きにくかっただろうな。

 

……そういやこれで蘭の出し物を見れるんじゃね?

 

その考えに基づいて1ページ巻き戻してみる。すると───

 

 

 

 

 

1年A組『男装喫茶店』

 

これは深く聞かない方が良さそうだ。




前話と今回投稿までの流れ

文化祭2話構成と考える→執筆→前編完成→投稿→後編執筆→見返し中に話の内容が変わる→変更→何故かシーズン2の話の構成を立て始める→見返し→ここで今回の話をもう一度構成から考え直す→執筆→投稿

申し訳ございませんでした。筆者は執筆の次の日に見返し作業をするのですが、納得がいかず何度も何度も話を変えるうちにかなりの時間を要してしまいました。

これはタグ追加案件ですねぇ……


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残念だがHollow Weenはキャンセルだ

商店街ハロウィンイベントは来年に飛ばします。ポピパと絡みが少ないからね(メタ事情)


リンゴン リンゴンリンゴン リンリン リンゴン

 

「RINEの通知が───母さんから?…一体?」

 

『幸介大変!今テレビから電話が来てウチを取材をするって!』

 

『あとつぐみに伝えといて!』

 

取材……ねぇ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「どうしようかつぐみ。」

 

「お母さんは出ないって言ってるし、お父さんは普段から接客はしてないし……受けるのは私かお兄ちゃんだよね……?」

 

「そうなるけど……やっぱり俺は見栄えしないと思うんだ。」

 

「えっ」

 

意外そうな顔をするんじゃない。何故かって───

 

「つぐみの方が可愛いし、宣伝になると思うんだ。……断ってもいいんだよ?その時は俺がやるし、つぐみが責任を感じる必要は無いからね。」

 

実際のところ俺なんかよりつぐみの方が可愛いし目を引く。俺は…まあ背が高い人がいる!って子供に注目される程度だ。

 

「ううん。お兄ちゃん、私が受けるよ。」

 

「大丈夫───そうだね。でも、どうやって答えようか分からなかったら言ってね?」

 

「うん!」

 

健気だなぁ……取材、取材……やっぱここが良い店だから取材が来てもおかしくはないだろう。現実世界と同調したせいだろうな。

 

「ん……?……待てよ───」

 

取材、それは作中に一度だけあったことがある。だが、あれは───if(もしも)の話ではなかったか?

 

まさか、な。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜ロケ当日〜

 

「……!」ソワソワ

 

「落ち着いて?……そうだ。自然体で行けば良い。」

 

やまぶきベーカリーへと向かう5人組、それはやはりPastel✽Palettesであった。……予想通りだったな。

 

しかし、おかげでこの世界はねじ曲がっている確信がついた。本来あるべきはずではない話まで出てきている……これも代償、なのか?……こうなると俺はどこかでやりきったあの方とも会いそうだな。

 

「……!」ソワソワ

 

「……なぁ、今からでも変わっても───」

 

「───大丈夫…!私がやるから…!」

 

「……そうか。」

 

……緊張しっぱなしだな。こんなの生徒会選挙の時以来だ。

 

まあ、つぐみにとったらこれは何かの試練なのかもしれない。最近はなんでも俺を頼らずに一人でする傾向があるのだ。それから考えてつぐみは、自立しようとしているのだろう。

 

少し……面倒を見すぎたか……

 

「あっ、沙綾ちゃんのとこから出て来たっ!」

 

「……つぐみ、選挙の時を思い出して。あの時緊張をどうやって和らげた?」

 

俺の言葉にはっとしたつぐみは手を胸に合わせ静かに目を閉じた。

 

心臓の鼓動は一定だ。だが、恐怖、怒り……どれも緊張した状態だと一定ではなくなる。つぐみがもしパニックになってしまえば選挙で失敗してしまう可能性を憂慮して緊張を消すには鼓動を一定にまで戻すと良いと伝えたのだ。

 

勿論、そんなものに殆ど効果はない。鼓動の速度を抑えたところで身体の緊張は治らない。ただ、鼓動が落ち着くまで待っているだけなのだ。だが、つぐみはそれを信じた。

 

───病は気から。逆説的に言えば気を正せば病にはならない。簡単に言うとつぐみはそれを実行したのだ。俺にとっては気休め程度にと思ってやったことが予想外の結果だった。なんと、先程までアワアワと焦っていたつぐみが平常時、いや平常時以上に落ち着いたのだから。

 

人を信じるからこそ、できた事なのだろう。そう俺は考えた。つぐみにとってこの行為は自身の精神を落ち着かせることができる方法ならば、わざわざ嘘だと教えることもない。

 

……俺の緊張をなくす方法が何かって?

 

 

 

 

 

常に緊張しているからもう慣れた。

 

カランカラン

 

「「い、いらっしゃいませ!羽沢珈琲店へようこそっ!(いらっしゃいませ、羽沢珈琲店へようこそ。)」」

 

まだ少し緊張は残っているみたいだ。

 

「お客さま、何名さまでしょうか?」

 

イヴちゃんが店員のふりをする……やはりガルパピコであったか。

 

「え、えっと、当店では淹れたてのコーヒーとケーキを……」

 

「四名さまですね?こちらの席にどうぞっ!」

 

「えーっと……イヴちゃん?」

 

「イヴさん!今日はお客さんですよーっ!」

 

ふむ、しかし実際に間近で見てみると身近な存在に見えて関わりは無いな。イヴちゃんがバイトに来てるだけという接点のみしかない。

 

パスパレも良いが、やはりAfterglowが最高だよな!

 

「こちらの可愛らしい方は、羽沢つぐみちゃん。」

 

『こちらの可愛らしい方は、羽沢つぐみちゃん。』

 

『こちらの可愛らしい方は』

 

 

 

ふぅ………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パスパレって最高だなぁ!オイ!

 

ふっ、愛しているぜ……白鷺千聖!

 

俺は信じていた。パスパレって前々から良いと思ってたんだよね〜。そもそも時代の流れとしてはアイドルという存在は以前よりも鳴りを潜めていたと思うんだけど、パスパレならば新たなアイドルブームを巻き起こせると思ってたんだよな!俺の目に狂いは無かった!

 

「そしてこちらの方はつぐみちゃんのお兄さんの羽沢……幸介さんです。二人はこの羽沢珈琲店の店の顔なんです!」

 

おい、ちょっと間を開けたな?忘れてたな?俺の名前忘れてたよな?

 

(まず、つぐみちゃんのお兄さんの方から……)チラ

 

白鷺千聖がこっちを見ている……まさか俺に聞くつもりか!?

 

(俺じゃなくてつぐみを!)チラ

 

(拒否されたっ!?つぐみちゃんの方を見たから、そっちから聞けということね……)

 

なんとか意思は伝わったみたいだ。ここでつぐみのやる気が削げても困るからね。

 

「ここは、手作りのケーキが人気とか?」

 

「はいっ!今月は、季節のフルーツを使った、千聖さんが昨日食べたケーキがおすすめですっ!」

 

あっ……ここはそのままなんだ……オイオイ代償仕事しろよ。

 

「千聖ちゃん昨日も来たの?ずるーい!」

 

「え、えーっと…とりあえずそのケーキを頂きましょうか。」

 

そのケーキの用意はしてある。こちらにも持って来ているので、つぐみが出すだけだ。

 

「つぐみ、これを……」

 

「うん」

 

ケーキを運ぶつぐみを見ていると、宇宙船が壊れて別の星に不時着したところ、その星の生物に襲われながらも宇宙船をパーツを集めるゲームの味方になる生き物が物を運ぶ姿を思い浮かんでしまう。

 

「どうぞっ!」

 

「わぁっ!すっごーい!」

 

「カットするのは5等分でよろしいでしょうか?」

 

「あ、それでお願いね!」

 

他メンバー(丸山彩と白鷺千聖)の顔に陰りが見えたがホントに大丈夫なのか……?……いや、大丈夫じゃないか……

 

「切っている間に解説をしても?」

 

「是非、お願いします!」

 

イヴちゃんの声に全員が賛成する。

 

「このケーキは先程述べた通り季節のフルーツをふんだんに盛り合わせたフルーツタルトとなっております。ちょうど一つ切り分けれたのでこれを。」

 

用意してある皿に載せ、カメラに近い大和麻弥に渡す。

 

「当店ではタルト生地と一緒にオーソドックスなアーモンドクリームを焼き上げた後、その上にカスタードクリームを塗り、キウイ、イチゴ、バナナ、リンゴ、マスカット、ミカン、ラズベリー、ブルーベリーを盛り付けております。どうぞ。」

 

続いて白鷺千聖に渡す。やはり5等分となると量が多いな……あと一応手袋とマスクはしているぞ。食品を提供する側としては衛生的なことをアピールするのは重要だ。

 

「普遍的なフルーツタルトですが、素材となるフルーツは新鮮さや、味、どちらも良いものを選んでおりますし、店主の腕も良いのでご安心を。」

 

氷川日菜に渡すも、解説には興味が無いようだった。……注目はされてないな。良かった。

 

「通常であれば、8等分にカットされたものをピースでお出しするのですが、申し出ていただければ今回のようにホールでお出しすることもできます。この場合その場でお好きなサイズにカットしますのでワンホール丸ごとここで食べず残った物をお持ち帰りすることもできますし、好きなサイズを多人数で共有することもできます。」

 

イヴちゃんに渡す。こうやってカットするときに「ブシです!」って言われたときがあるけどそれだと全世界にブシが大量発生していると思うのだがつっこむのもどうだと思いスルーしていた。

 

「それではどうぞ、お楽しみ下さい。」

 

残りの一つを皿に載せて丸山彩へと渡す。ケーキを切ってる時ってピザ切ってるみたいな感じなんだよね……ってわかるかな?

 

あと、つぐみに切らせなかったのは、山盛りのフルーツが乗っていて崩さずに綺麗にカットするのは難しいからここは俺がやることになったのだ。見栄えって大事だからね。仕方ないね。

 

まあしかし、こう見てみるとケーキの食べ方一つでみんな違うようだ。白鷺千聖はいつも見ている通り模範的な食べ方だったが、対照的に丸山彩はキレイだが白鷺千聖ほどかと言われるとそうではない。イヴちゃんは食べ慣れた様子だが普通で、大和麻弥は頑張って上手いこと食べようとしているのが伝わる。氷川日菜は豪快だったが、クリームが口についても映えるのは美少女故の特権か。

 

食べ終わる速度は氷川日菜がダントツで早かった。しかし、白鷺千聖は当分の間ここには来なさそうだった。

 

食事制限とかあるのかな。いや、きっとしてるのだろう。つぐみだって気をつけようって頑張ってたぐらいだし、自身を使う職業ならば尚更だ。

 

そういや、つぐみはメイクしてないんだよな……いや、してるのかもしれないがメイクするのを見かけたことも無いしメイクしたら匂いと見た目で分かると思うからしてないのだろう。

 

「食べごたえ゛あ゛り゛ま゛したね゛……」

 

やっぱり見栄えを意識してホールにしたのは失敗だったな……ひまりとかは4分の1でもペロリと食べてしまうので忘れていた。

 

「お姉ちゃんの分のお土産貰っちゃった〜」

 

しかし、大量のチョココロネとフルーツタルトとこの後コロッケも食うのだが、氷川日菜の苦しがる様子を見ていないのは一体どうしてだろう。正直に言えばこのタルトをワンホール食っただけで俺は胃もたれするぞ……

 

「ツグミさん、幸介さん、ありがとうございました!」

 

そう言ったイヴちゃんだが、非常に苦しそうであった……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

片付けてエプロンを着替える最中、つぐみが大きくため息をついた。

 

「……疲れた?」

 

「うん……やっぱり緊張しちゃって……」

 

「ま、今回は知ってる人ばっかりで良かったじゃん。確か、ライブハウスで何度も会ってるんだろう?」

 

「それでもイヴちゃんもいつもと違ったし……千聖さんもお仕事って感じだったから……」

 

「そういう道に入ってるんだから仕方ないよ。つぐみだって将来この店を継いだりせずに他の仕事をするかもしれないんだし……ひょっとしてモデルでもやってるんじゃないか?」

 

「モデルなんて無理無理!」

 

「そうか?」

 

ガチャ

 

「二人ともお疲れ様。ジュースあるけどいるか?」

 

「貰う」

 

「お父さん私も……」

 

つぐみは勢い良くソファーに座った。気疲れってスゴいな。

 

「ハッハッ!つぐみは父さん似だな。」

 

何を言ってるんだこのおじさんは……

 

「……父さんとつぐみは似てないでしょ。」

 

「いや、顔じゃなくて性格がな。逆に、幸介は誰に似たんだ……?」

 

「きっと隔世遺伝か突然変異とかじゃない?」

 

「父さんも幸介みたく運動が万能だったら、母さんにもカッコイイとこ見せれたんだけどなぁ……」

 

「その前に軽く運動しなよ。前みたいに朝一緒に走る?」

 

「……いや、やめとく。」

 

「そっか。」

 

ホント父さんは出不精だから、ちょっと腹周りの体積が大きいのだ。それは反面教師として活用させて貰うとして、流石にそろそろ動かないとヤバいんじゃないか?健康診断の結果も芳しくないみたいだし……

 

ちなみにはぐみの父ちゃんは流石というか運動神経が良かった。一度運動会の親子で走る競技があったが、どのお父さんより速かった。あれ多分大会狙えるぜ?

 

とまあ隣の芝生は青く見える現象は放っておき、こういう話になると嫌にでも自分が異物なのかを再認識してしまうのだった。




という訳で非日常を書きました。

……そろそろ自分が忘れない為にもキャラ設定を書いておきたいです。脳内記憶だけじゃ忘れちゃう可能性大なんですよねぇ……

(ここだけの話大体考えた展開を忘れて没になるパターンがとても多いです。)


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設定回は半年毎に……

羽沢幸介

言わずと知れたシスコン。多分羽丘学園で最も噂がある人物だと思われる。悩みの種は未来が変わってしまうのかの懸念。最近白鷺千聖の写真集を購入した。

 

羽沢つぐみ

羽沢珈琲店の看板娘。スーパーウルトラ過保護な幸介に頼るのはいけないと思っていろいろなことを一人でやろうと奮闘中。つぐみは秘密裏に行ってると思っているが、周囲や幸介にまで自立の努力はバレバレである。

 

美竹蘭

あの一件からホラーが無理になった。ビター系が好きな幸介とは偶にお菓子をシェアすることもある。この間蘭の父さんのテープに気付いて戦慄した。

 

青葉モカ

パン大好き星人。学校内では不思議ちゃんだが一定数人気がある。でも、大体は幸介と知り合いということで避けられていることを疑問に思う。『マジカルうぃっち☆りん&すたー』という詐欺レベルのダークファンタジーの漫画を読んだ。そして蘭に勧めた。

 

上原ひまり

すごい。一部からは目の敵にされている。一部には一部に注目されている。かなり大きいフルーツタルトを4分の1ぐらいなら余裕で完食する。その栄養はどこへ消えるのだろうか……あと、幸介の体重を知って愕然とした。

 

宇田川巴

モテる。但し男女共にだが。周囲からはスゴい良い奴だと思われており、姉御感ハンパないよなとか言われている。大体幸介のフォロー役となることが多い。過去に幸介がモテない理由を聞いたところ性格じゃない?と言われたが、学校での幸介をよく知らないので未だに良くわかっていない。いろんな意味で幸介と対称な部分が多い。例えば巴はファッション好きでセンスもあるが、幸介はファッション疎くセンスもあまりない。等

 

北沢はぐみ

幸介と一番ハグした回数が多い。誰かが言うには好きがオープン過ぎて眩しいらしい。幸介自身もはぐみと一緒に過ごすのは楽しいので色々と気にかける。でも気にかけすぎるとはぐみの兄ちゃんが怖いのだとか。ソフト応援後、ハロハピに幸介を誘ったけど今までに類を見ないほど断られたのが残念。

 

山吹沙綾

ドラムのパン屋。純と紗南が幸介に迷惑をかけているのを恥ずかしく思う。でも、自身もあのぐらいの頃は幸介に面倒を見てもらっていた。幸介曰く、今どきの女子高生。そう言われて疑問に思い話しているうちに幸介が流行や話題、ファッションなどを殆ど知らないことを知って頭を抱えた。今度今井リサにメンズファッションのレクチャーをして貰おうと考える。

 

宇田川あこ

魔王だったりあこ姫だったりする。魔王って多分三次創作だと思うんですけど(名推理)巴の誕生日回をいい加減添削したいです。でもするする詐欺しそう。あとハグした回数が二番目。NFOで白金燐子と幸介は初期から知り合いだが、幸介は(表向きには)燐子を知らないのに、燐子は幸介のことを良く知るのはあこが話すから、あと幸介の顔も知っている。同様にロゼリアメンバーにも幸介の存在を知っている。羽丘の二人は最初にあこの話を聞いて懐疑的に思ったのと無関心に別れた。

 

若宮イヴ

タイプミス全1。よくいvyかイヴィになる。スマホ打ちにくいんだよ!(投げやり)幸介のことはブシと評した。パスパレでも話をするもここでも羽丘組+αは疑問に感じた。千聖は少し騙されているのでは?と疑い、日菜は見たことが殆ど無いのがおかしいと思う。麻弥は日菜以上に謎の存在だと思っているが、噂での幸介と薫やイヴ、ドラマー会議で聞く幸介がおかしいほどズレているので疑問。よくよく考えるとドラム組麻弥以外知ってるじゃないか……!(計算外)

 

松原花音

ふえぇ……お誕生日おめでとうだよぉ……

羽沢珈琲店の常連のお客さん。土日は大体居る。巴の誕生日プレゼントを一緒に選んだ。お礼は良いと言ったが、幸介は手伝い中少しだけ良いサービスをしたり、偶に奢ったりする。そのことについてはうれしく思うも贔屓はして欲しくないと考えた。

 

白鷺千聖

幸介を怪しむ。幸介が手伝いしているときは紳士的だが、本性は分からないだろうと怪しんでいる。花音とイヴにあまり接触しないほうがと提案したところ純粋にどうしてと聞かれて答えれなかった。イヴのハグを拒否するのだけは感謝している。はぐみに幸介のことを聞いた。

 

瀬田薫

文化祭売り上げ一位を取った。3年連続一位のクラスになっている。大体は幸介から変人扱いが多いが、根は良い奴ということは忘れられてはいない。

 

牛込りみ

幸介とはやまぶきベーカリーでよく会う。幸介のことはニコニコしたいい人だなぁぐらいにしか思ってない。羽沢珈琲店にはチョコ系のケーキが出たら行く程度。

 

弦巻こころ

登場話はたったの2話。でも実際はそれ以上会っている。なぜならライブの時にはぐみが呼ぶからである。奥沢美咲が幸介にはぐみのコントロールの方法を聞いたものの収穫は無かった模様。

 

丸山彩

幸介のことをイヴにいいファンができたと思い、アイドルの振る舞いについてレクチャーした。

 

戸山香澄

登場話は一話のみだが、顔見知り程度には会っている。

 

登場一話組は設定はほぼ無いです。




……今年Afterglowの水着イベントではなかったら…あの手を使うしかないな…

マジカルうぃっち☆りん&すたーってスターリンの粛清を元にして、可愛い魔法少女が悪い魔法少女を容赦なく拷問にかけるというヤバい漫画です。アニメ化予定。

あと自動投稿便利ですね。


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お菓子作り教室

〜inつぐみ〜

 

お母さんから私とお兄ちゃんでお菓子作り教室の講師をするということと、その宣伝をして欲しいということを伝えられた。

 

お兄ちゃんは強制でしなければいけなかったけど、私はやってもやらなくても良かったのだけどお菓子作りには少し自身があるし、やることにした。

 

宣伝に使うポスターやチラシを貼るのはいつも生徒会とかでやっているので、私が全部やって良いかお兄ちゃんに聞いてみると少し不安そうだったけどオッケーを出してくれた、これからはお兄ちゃんが安心できるぐらい頑張らないといけない。

 

お兄ちゃんってば普段はずっと私のことを気にかけてばっかりだから、たまにはお兄ちゃんがいなくても出来るのだと安心させたかった。

 

だから、これがきっかけになればと思って引き受けたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜次の日〜

 

お父さんから大事な話があるって言われて聞いてみると、お兄ちゃんがお菓子作り教室の講師として参加しないと言われた。……多分、私のせいだ。私がやりたいって言ったからお兄ちゃんは講師をやめるって言ったんだろう。今お兄ちゃんに聞いても、つぐみならできるよって言うと思う……

 

お兄ちゃん無しで、大丈夫かな……?───ううん、弱音を言っちゃ駄目だよね。これが無事に終わるって信じてるからきっとお兄ちゃんはやめたんだ。ここで頑張らないと!

 

よし!早速ポスターを貼りに行こう!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜お菓子作り教室当日〜

 

……お母さんがヘルプしてくれるけど、ホントにお兄ちゃんがいなくて私だけで大丈夫、なのかな?

 

もしも失敗しちゃったらどうしよう。

 

上手く教えられなかったらどうしよう。

 

……いや、こんな時こそ落ち着くのが一番だよね。そう思っていつものやり方で心を落ち着かせる。

 

よし……大丈夫!今日の為にいっぱい頑張ったんだ!

 

「さあ!頑張るぞー!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

「お菓子作り教室ねぇ……」

 

遂に来たか……ここは予め考えていたルートとしてはかなり悩まされたところだ。これには、氷川紗夜がとつぐみの関係性を持たせるだけでなく、氷川紗夜と氷川日菜の関係を改善、それにロゼリアの中の氷川紗夜という存在を変える。いろんな意味で氷川紗夜という人物が成長する為のきっかけともなる一因だと……そう聞いた。

 

この通り話を進めるならば簡単だ、俺が居ない状況にすれば良い。だが、そうはいかなかった。俺はあくまで羽沢家の長男で、父さんも母さんも俺がお菓子作り教室に参加することは折り込み済みだし、つぐみだってそう考えている。

 

ああ、軽い気持ちでこの世界に来るんじゃなかった。そう考えた。俺の欲が、つぐみたちのあるべき未来を潰すのだから。少なくとも俺は身の振り方を間違えた。周りからの評価は高かった。過去には、俺に習ってつぐみに周囲からの期待をかけられていたこともあった。これでは氷川紗夜とつぐみは同じではないか。何が言いたいのか分からない人が多いだろう。

 

本来であれば、氷川紗夜にとってつぐみとの邂逅は前向きになるチャンスであるのだ。これはつぐみとの会話を追っていた俺には分かっている。だが、つぐみの状況は、待遇は、考えは違う。つぐみは善意で動いていた。自分のある種の劣等感、他人より劣っているのではないか、その疑念を潰すために手伝い、頑張っていた(つぐっていた)節もあった。まあつまり言えば、自分に価値を見い出せなかったからこそ、他人の役に立つ為に動いていたのだ。

 

しかし、現状はどうだ?俺という比較対称ができ、つぐみは一人でもできると証明しようとしている。元々が一人だったので、結果的には行動に差は無くても、きっかけというものは大きすぎる差のはずだ。

 

そして、それは氷川紗夜という人間に突き刺さるであろう。同じ境遇、同じ悩みを持つ同士仲良くなるかもしれないが、それは前向きとは言えなくなり、本来の関係でもなくなる。

 

そうなればどうなる?今までなら幼馴染というわかり合っている存在の中で過ごしたからこそ綻びは少なかった。だが、今回こそはどうしようもない。少なくとも俺は氷川紗夜には妹と同じカテゴリライズにされるし、俺についてはあこから聞いたことがあるだろう。俺には嫌な人物という意識がついてしまえば俺には手出しが出来ないし、そもそも性格上俺の話も聞かないだろう。どうにか話せたっておかしな奴だと思われる。

 

今まで半年間、持ったほうだと考えるか。持たなかったと考えるか。要約すれば───

 

───今度こそ詰み(破綻)だった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

でも、できる限りのことはしよう。まず、悪感情を煽らない為に俺はその場にいない方が良い。これについてはバックレるかどうするかしよう。

 

……これぐらいしか出来ることはない、か。

 

「お兄ちゃん、さっきお母さんが言ってたのね……?全部私にやらせてくれないかな?」

 

「……どうしてだ?」

 

「ええと、こういうのは慣れてるから任せて欲しいんだ。お兄ちゃんは、当日も忙しいと思うし……」

 

俺にとって願ってもない話だった。まさか、つぐみから申し出てくれるなんてな。

 

「わかった。でも無理だけはするなよ?」

 

つぐみがこう言ったんだ。俺も母さんにダメ元で俺は参加しないと言ってみるか。

 

「……やらないで諦めてどうする。か。」

 

「?お兄ちゃんどうかしたの?」

 

「何でもない」

 

「そう……お兄ちゃんがいなくても頑張らないと

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜夜。つぐみが寝たぐらい〜

 

「父さん、母さん」

 

「幸介……話があるってどうしたんだ…?」

 

「うん、実はね……お菓子作り教室の講師をやらないって伝えたかったんだ。」

 

「……そんな、一体どうして……?」

 

「父さんも母さんも疑問に思ってるみたいだけど、これは俺のわがままなんだ。やりたくないからやらない。それだけの理由。」

 

「幸介、そんな理由で父さんも母さんも良いっていうと思うのかい?」

 

「思わない。でも、それでもやりたくないんだ。」

 

「……幸介、考え直さないか?」

 

「しない。俺の考えはこれで決まっているんだ。」

 

そう、きっとこれが俺のできる最大限だ。どんなに不自然でも、たった一日だけの辛抱で影響が軽減出来るのであればそれで良い。一生に一度のわがままだ。

 

「……母さんも何か……」

 

「幸介、それで良いのね?」

 

母さんが真剣に聞いてきた。俺の心に変わりはない、これが、最善だと思って行動するだけだから。

 

「ちょっと母さん……はぁ…もう、幸介の好きにしなさい。」

 

「…ありがとう。」

 

俺の決意が分かってくれたのか、母さんは俺を自由にしてくれた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜当日〜

 

「……土曜日が全部空いたのって何時ぶりだっけ。」

 

そう嘯きながら、俺は震える腕にある時計を見た。今は6時だった。あと3時間後でお菓子作り教室が始まる。

 

これで、変えれるかは分からない。少しでも軌道修正して───

 

「───ッ!そうか!必要なのは軌道修正なんかじゃない……!」

 

俺は今…この状況の完璧な打開策を考えついたかもしれない。

 

これならば、これならば……成功する可能性は十分にありえる…!

 

これが成功した暁には───

 

この世界の捻れは、全て無くなるだろう。




自身のことを完全な異物として捉えているなら、自身が及ぼした影響は悪いものばかりだと考えるのも無理はないのかもしれない。

……ターニングポイントがこんなんで本当に大丈夫なんだろうか。


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作戦始動

どうも、こんにちは。いろいろ拗らせマンです。


この作戦は大掛かりすぎる……だが、決行できたなら成功する確率は高い。他にも策は無いとは言えないが、一番良いのがこれだろう。

 

作戦は過去改変……いや、過去修正か。俺は過去へ戻り未来を変えるのだ。

 

 

 

……バカバカしいだろうが本当に真面目に言っている。そもそも俺がこの世界に来た、というより来れたのは時間跳躍のせいだ。

 

こう見えて前世?は科学者だった。

 

まあその辺の経緯はまた語るとして、どうやって時間跳躍をするのかということだ。

 

その装置、起動するエネルギー、それらを作り出す資金……全てが足りない状態でするのは夢物語だが、課題を解決できるところ、所謂アテが一つだけある。

 

弦巻財閥だ。

 

あそこであれば全ての課題をクリアすることができる。そう確信している。

 

今日、11月2日

 

この歪な世界を戻すための作戦を開始する日となった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そんなことを言ったが、まず、弦巻財閥との接触をしなければならない。大して科学的の成果も挙げていない男子高校生など相手にもしないだろう。インターネットを使い接触を試みる?相手の科学力を見るに専用の機器がなければ逆探知される。

 

だが、奴らを釣る“もの”ならある。それは前世の技術だ。超小型化、大容量化したデータチップ、光学機器、鉄にとって変わる新金属の精製、ヒトの神経電気を使った仮想空間へのダイブ·システム、機械には出来ない精密な動きをする事ができる人工筋肉、超重量の圧縮金属を用いたベーゴマの作り方……それらはこの世界にはない未知の技術だ。そういったものを開発しても、とある漫画に出てきたどこにでもドアというものは開発できないと言われいた。一応座標を指定するビーコンを目標地点に設置すれば空間転移をできるのだが、ビーコンを設置せずに目標地点に移動すると目的距離…つまり移動前を中点とした球体の表面のどこかへ転移する。地面、空中お構いなしにだ。

 

話が逸れた……最も、それらの大半が機密扱いとなっていて前世でも実用化までには至らなかったという悲しい事実もあった。

 

まあ前世の上の奴らの判断などはもう関係は無い。重要なのはその技術の価値だ。間違いなく弦巻財閥としても魅力なので協力してもらうのには十分だろう。

 

改めて接触方法についてだが、匿名で押し通すのは絶対に無理だ。そもそもそんな奴は信用できないし、時間跳躍に必要な機器は俺が作るのだから顔はバレる。んで、弦巻こころのお付きの黒服にはバッチリ顔を見られているので誰かも一瞬でわかってしまう。

 

だから最初から隠さない方針でいく。そして技術を教える引き換えに研究できるようにするしかない。

 

……身なりは整えた方が良いだろうか?

 

制服は、まあどうせ隠さないし制服で良いか。

 

あ、あとつぐみとかに知られるのも困るな……特に弦巻だけは知られたくない。はぐみなら説得可能だが弦巻こころは絶対に説得できない。

 

うん、ある程度計画は立った。

 

ここからは綱渡りだ。まずは弦巻財閥に興味を持ってもらうことが第一の関門。これを突破せねばもはや何も無い。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inつぐみ〜

 

今日は月曜日。珍しくお兄ちゃんが急用が入ったということでいつもは手伝いをしない曜日だけど手伝いをしている。

 

カランカラン

 

「いらっしゃいませ……って紗夜さん!」

 

「こんにちはつぐみさん。……今日も一人なんですね。」

 

「お兄ちゃんが今日は急用があるって……いつもは私じゃなくてお兄ちゃんが手伝いをしてるんですけどね。」

 

聞くと、紗夜さんはお菓子作りであがった疑問を聞きに来たらしい。……ちなみに、一番早く名前呼び同士になった人が紗夜さんだ。

 

「ええ、家にオーブンが無くて電子レンジでもできるかを聞きに来ました。」

 

「一応電子レンジでもできますけど…あんまりきれいな見た目にならないし、難しいのでオススメはしませんね。」

 

「なるほど……」

 

お菓子作り教室で作ったクッキーを更に上達しようとしたけど設備が無かったみたいだ。そこで、お父さんが呟いていたことを思い出す。

 

「あっ!そうだ!オーブンを貸しましょうか?」

 

「オーブンを……?いえ、そこまでして頂かなくても……」

 

「でも、お菓子作り教室で見たと思うんですけど、うちはオーブンがたくさんあって普段は使ってないオーブンもあるのでお菓子作りを上達したい紗夜さんに使ってもらった方が良いかなと思って……」

 

「……使わないオーブンですか……でしたらお願いできませんか?」

 

少しためらった後の、紗夜さんはうつむき気味にそう言ってきた。

 

「はい!ちょっとお父さんに聞いてきますね!」

 

一旦奥のお父さんに使ってないオーブンを貸しても良いか聞いてみるとすぐに良いと言ってくれた。

 

「紗夜さん、お父さんが貸しても良いって言ってくれたので、今から持ってきますね!」

 

「すみません……つぐみさんもお手伝いの途中でしたのに……」

 

「いえ、紗夜さんがお菓子作りに興味を持ってくれたのが嬉しくって!また今度、他のレシピも教えますよ!」

 

「では、まずはクッキーから上達しませんとね。」

 

これも私の新しい『いつも通り』になると良いな!




幸介とつぐみはどちらも献身的で努力をするが、幸介はあくまで丁重な扱い意識しているだけで、努力は自身の目的の為だけにする。つぐみは優しさと生来の性格からくるものであり、自身は勿論他人の為にも努力する。

二人とも兄弟揃って優しいと評されるが、実際は全然違うんですよね。あと幸介の丁重な扱いはガルパに関係のある人物にしか適応されないので、普通の人は余程のことが無ければ適当にしか相手にされないのでそれが恨みを産んで学校で悪い噂を立てられているという訳です。

自業自得ですね。


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推移

ツグってる……今回ツグりすぎだよおおおおおお!!!

ん?でもFWSっていつ頃だっけ……?


「……これで完成の筈だ。」

 

目の前に置かれた機械を見やる。色々とアナログな部品を使うハメになってしまい幾多ものコードが繋がれていてまるで心臓のように見えたので俺はこの機械をHEART(心臓)と名付けた。

 

HEARTは空間転移装置の応用だ。いつか説明したように空間転移装置は地上から半径1.5m、高さ2mの円柱型の範囲内のものを丸々転移先と置き換えるというイメージで動いている。ちなみに以前のものは範囲内から外に出ている部分は綺麗に切り取られるように削られたのだが今回のものはそうはしてない。時間跳躍の転移先は固定しているがどのような状況なのかわからないので範囲内に含まれるものであれば転移するように設定した。過去に跳んで早々怪死体を見たい訳でも無いからな。

 

肝心の過去に跳べる原理だが、以前作ったものはとある人工的に作られた異常性のある物質に莫大なエネルギーをぶつけて逆後現象と呼ばれる時間が戻る現象を使ったものだった。あれはエネルギーも非効率的だし転移先を確定できない。更に逆後現象がうまく時間に作用すれば過去に跳べるが、もし人に作用してしまえば一気に一つの細胞に戻ってしまう懸念もあった。結局俺はそれの実験に参加させられてここに来たわけだが……

 

脱線しすぎた。本題へ戻ろう。

 

要するに俺の推す理論で作った訳だが、やはり時間跳躍には莫大なエネルギーが必要なのだ。掛け合ってみたところ目標の17年前に戻るのに必要なエネルギーは約一ヶ月掛かるということだった。エネルギーの問題で一人で作戦は遂行できなかったのでありがたい。

 

……何故、17年前かって?

 

具体的な作戦───といってもかなり単純なのだが教えよう。

 

過去の俺を消す。……それが作戦だ。

 

この世界が正常な世界へ戻る働きがあるのは確認している。まだ影響の少ない時ならば俺を消してしまえば完全に元に戻せるだろうと考えた。

 

過去へ跳ぶことは恐らく成功する。俺を消すのが最善なんだ。

 

これが、一番良い方法だ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in羽沢珈琲店〜

 

「……こーくん帰ってこないね」

 

窓の外を覗きながらはぐみが呟いた。街灯と店の灯火が商店街の道を明るく照らすも幸介の姿は無かった。

 

「もう6時じゃん。幸介さんってよっぽどのことが無いと遅くまで出かけないよね?」

 

「うん。でも今月に入ってぐらいから遅くに帰ってくることが多くなったんだ……」

 

沙綾の疑問につぐみが答えた。何故、沙綾やはぐみが羽沢珈琲店にいるかというと今日は幸介の誕生日なのだ。

 

店のテーブルをくっつけてちょっとした長机にして、その上にはケーキが載せられるであろう皿やクラッカーが用意されていた。また、各々がプレゼントを用意しており、いくつか

 

「うーん……?今月って誰かの誕生日でもないし一体なにしてるんだろう?」

 

「……流石にここまで遅いとは思ってなかったから、そろそろ時間も……」

 

「ら、蘭!こー兄が帰ってくるまで待とうよ!」

 

「……さっき父さんに聞いてみたんだけど7時が限界だって言われた。……それが無かったら私は…絶対に残るつもり。」

 

蘭の本気で言った言葉だが、それは叶うことは無かった。幸介は意図的に研究室に残り時を経つのが待っている。決心が鈍らない為の決断だった。

 

訪れた沈黙に耐えかねたのか、そういえば、とひまりが言う。

 

「4月のときも幸介さんちょっと変だったよね。」

 

「確かそうだったよな…あれって何だったのか知っている人はいるのか?」

 

幸介について最も近い考えなのはモカなのだが、未来を知っているという妄言と言っても過言ではないものを皆に話せることでもないし、昔に練習中にそれとなく聞いてみたところ全員から否定されたので黙ったままだった。

 

もし、幸介に聞いていてはまた違った未来があったのかも知れない。

 

カランカラン

 

店のドアが開かれる音に目を向けると、濃い橙の色をした男が立っていた。

 

「はぐみ〜…ってあれ?」

 

「兄ちゃん!」

 

「アイツまだ帰ってきてないのか?」

 

連絡がつかないとつぐみが答えた。それを聞いたはぐみの兄は絶対にないと言うもはぐみがRINEを見せると仰天していた。

 

「……っかしいなぁ。幸介には秘密だけどな?アイツめっっちゃ楽しみにしてんだ。誕生日祝われたのが嬉しかったんで皆の誕生日も本気で祝うんだ〜って言ってたし。しかも忘れるような奴じゃ無いからな。」

 

「……だとしたら尚更おかしくないかな〜?つぐのRINEも電話も繋がらないんだよね?」

 

「うん……」

 

「マジで?ホントにアイツ何やってんだ……」

 

一応、はぐみの兄は幸介がつぐみのことを大好きというのは知っているし、共感できる。何故なら自身もはぐみが大好きだからだ。幸介がはぐみに好かれているのは解せないが、幸介の兄としての悩む姿を見てきて、少しながらもアドバイスをしてきた彼にとって全く連絡がつかないというのは到底考えれないことだった。

 

「……もしかして、さ。ほんとにもしかしてなんだけどさ……事故にあったんじゃ…ないかな───」

 

「───ひまりっ!」

 

「だって、こんなの絶対おかしいよ!蘭もそう思うでしょ!?」

 

誰もが考えた可能性。はぐみの兄の言葉によって、それは濃厚となってしまった。しかし、皆あえて無視をしていたのである。そんなことはないと、信じたかった。

 

「おかしいけど、幸介さんが連絡取れない状況にあるってことはわかるけど……!」

 

「蘭もひまりも落ち着けって!もしかしたら電源が切れてるだけかも知れないだろ?」

 

「そうそう。それに幸介さんってターミンネーチャーみたいに絶対死んだりしないでしょ〜」

 

「モカの言いたいことはわかるけどさ、流石にそれは不謹慎じゃない……?」

 

「そうだよ!こー兄が死ぬとか言っちゃ駄目だよ!」

 

「………モカちゃんなりの励ましだったんだけどな〜」

 

全否定に肩を落とすモカを尻目に、はぐみの兄が聞いた。

 

「ま、とにかくはぐみ、まだ残るか?」

 

「……うん。」

 

「そうか……」

 

「父ちゃん、怒ってた?」

 

「怒ってない怒ってない。むしろ幸介が帰ってないって聞いたら探しに行きそうだったし。はぐみは…7時か、8時ぐらいには帰ってこいよ。流石にご飯も食べないと駄目だろ。」

 

「わかった……兄ちゃん、こーくん帰ってくるかな?」

 

「知らん。でも一応俺からも電話してみるか……まあ、何があっても大丈夫だとは思うからそういう心配はしなくても良いと思うぞ。」

 

励ましと、ある種の確信に近い予想を述べてはぐみの兄は帰っていった。

 

こんなに待たせるとかアイツも何やってんだろうなあ……と呟き、今度洗いざらい聞くことにした。あと、その時一発ぶん殴ろうと考えた。

 

そうでないと折角嘘をついた意味がなくなるからだ。




はぐみのお兄ちゃん絶対やさしい。もっと増えろ。バンドマンで割と焼けて、高校生なのかな?それとも大学……?

あとHOPEって聞くとカイ=キスクを思い浮かべます。作者の周囲にもGGやってる人いないんですよね……

(ちなみに店員時の幸介の話し方とかはカイをちょっと参考にしたのはここだけの話)


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束の間の情景

次くらいにつぐみの誕生日回にしたいなぁ……


あの日から、俺は不思議な体験をした。

 

薫に演劇を誘われて

 

沙綾と純くんや紗南ちゃんの面倒を見て

 

あこが一緒にしたいからとゲームを教わって

 

運動好きなはぐみに効率的な身体の動かし方を教えて

 

モカがねだったパンを買ってあげて

 

巴と太鼓を叩いて、ラーメンを食べに行って

 

言葉足らずな蘭の言いたいことを理解しようと頑張って

 

ひまりのスウィーツトークを参考にして、ファッショントークには耳を押さえて

 

つぐみに兄と呼ばれて、妹と呼んで

 

ただただ楽しかった。変わらない関係など無かった俺は、たまたま『ガチャ』で引けたキャラ、そんな程度の認識だった彼女たちにまで教えられた。

 

何だかもう一つの人生を体験したようで、充実していた。

 

だから、わがままもこれで最後にしよう。もう俺は必要ではないのだ。俺が消えて元の世界へ戻る。それが彼女らの為になるだろう。

 

「ただいま」

 

「お兄ちゃん!」

 

……つぐみが駆け寄ってきた。店の中はまだ片付けられてなく、皿やコップが残ったままだった。

 

「どこに行ってたの!心配したんだよっ!?」

 

「ごめん……ごめんな?」

 

「……うん、でももう皆帰っちゃった。お兄ちゃん、皆にちゃんと謝ってよね?」

 

「……本当に、ごめんな……」

 

「…………」

 

何も言わずにつぐみは俺の手を引いて、奥からケーキを持ってきてくれた。

 

「…ハッピバースデイトゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪ハッピーバースデーディアお兄ちゃん〜♪ハッピーバースデートゥーユー♪」

 

「何を───」

 

「───まだ11時だからお兄ちゃんの誕生日なの!せめて私だけでも祝うからね!」

 

強引だ。

 

「とりあえずちょっと切っちゃうから今日はこれだけでも食べてね?」

 

「……わかった。」

 

ケーキを切るつぐみ。なんだかそれを見ると───

 

『ケーキはつぐみがきるからね!』

 

『うん。分かったよ。』

 

『つぐみ……!父さんが手伝う───』

 

『じぶんでやるの!』

 

『か、母さん……!』

 

『つぐみに任せて良いわ。というより刃は無いから全然大丈夫よ……』

 

『はい!どうかなぁ……?ちゃんときれた?』

 

「…………綺麗に切れたなぁ……」

 

ああ、駄目だ。

 

「……?ってお兄ちゃん大丈夫!?」

 

「大丈夫……だ。」

 

『父さんと母さんにプレゼントしたい?』

 

『うん!お兄ちゃんとハンカチを作って渡したいんだけど、どうかな!』

 

『……いいな、それ。…よし、やろうか!』

 

 

 

『じゃあ、お兄ちゃんは今日の私どうだった?』

 

『よかったよ。でも、もうちょっとだけスピーディーに運ぼうか。いや、溢すよりかは全然良いんだけどね。』

 

 

 

『わあ……!やっぱり巴ちゃんの太鼓は凄いね!』

 

『ああ、ただ純粋に楽しむからこそあの音を出せるんだろうな…』

 

『……カッコいいなぁ。』

 

『…そうだな。』

 

 

 

『ら、蘭ちゃん、お兄ちゃんはわざとやったワケじゃないから許してあげてね…?』

 

『……分かってる。』

 

『…いや、その、すまない……』

 

 

 

『うーん、もうちょっと甘い方が良いかも……』

 

『今でも充分甘い筈だけどなぁ……もっとかあ』

 

『ひまりちゃん、他には何かない?』

 

『そうだ!ソフトクリームを載せるのはどう!?』

 

『あ!それ凄く良いかも!』

 

『…う、甘…やっぱりこれ甘くしすぎなんじゃ…』

 

 

 

『ふっふっふー、モカちゃんの超絶技巧を見ましたか〜?』

 

『あのギター捌きは良かった。』

 

『だったら〜ご褒美にパンを───『やらない。』』

 

『全く〜!ケチなお兄さんだなぁ〜!』

 

『あ、あはは……二人とも程々にね?』

 

 

 

本当に、彼女らの「いつも通り」に触れれたような気がして楽しかったな……

 

「お兄ちゃん大丈夫……?」

 

「……ああ。……でも味分かんないや。」




めちゃんこ更新してなかった……

最近ガルパの腕がほんのちょっとだけ上がりました。というよりガルパしてる人って27は余裕なのだろうか……?私はファントムシーフとゼッタイ宣言がクリアすらしたことないんですよね。あとBRAVE JEWELが本当にできないです。それ以外の26はフルコンできるんですけどね……


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時を駆ける

はい。これから投稿ペースを上げていきたいです。(水着イベまでには夏休み回まで持っていきたいという切実な理由)


眼前にはタイム·マシンがある。

 

これから、俺は過去へ戻り修正するのだ。

 

「……短い付き合いでしたね。」

 

途端に黒服が言う。名も知らぬ黒服だが、俺がタイム·マシンを作っていることはこいつだけが知っているのだ。……その目的も、だ。

 

その理由は言わずもがな、協力者が必要であったからだが……それは良い。

 

「あんたには感謝している。この短期間でここまで漕ぎ着けたのはあんたのお陰だ。」

 

ただただ感謝であった。この人は俺が得体の知れないものであっても理解を示してくれた。弦巻財閥へ近づけたのもこの人あってこそ。黒服だと分かりにくいので名前を聞くと、契約によって名前は言っては行けないらしい。

 

……残念だ。

 

「……最後まですまないな。」

 

「こちらは手筈通りにしておきますのでご心配なく。」

 

「頼んだ。」

 

もう準備は済ました。やることもやった。あとは、過去を変えれば───もう終わりなのだ。

 

「……………」

 

……楽しかったなあ。本当に……

 

「これから始める……半径2m以内には近付くなよ。」

 

黒服を下がらせ、起動する。まるで、心臓のような機械から放電が起こる。

 

「───ッ!!!」

 

ぐにゃりと視界が─────────あtaMあgA───うGaむ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

……………………………………

 

……………………………

 

……………………

 

…………

 

 

 

……色が落ちた。

 

目から見えるものはまるで明治初期の写真のようであった。色が無いのだ。いや、厳密に言えば白と黒が合わさったようになっているのだが……まあ問題ではない。

 

「何かの不具合が……なんて言っている場合ではないな。」

 

転移場所は…………どこなんだろうか。

 

「……随分と運が良いな…」

 

俺が立っていた目の前にある建物は見覚えのある名前だった。

 

花咲川産婦人科内科医院───俺の生まれた場所であった。中に入り受付に面会をすると言って進む。

 

カツ……カツ……

 

一歩、

 

また一歩、

 

進むたびに集中していく。俺のポケットにはそこでくすねたメスがあるのだが、嫌でも意識を向けてしまう。こうやって誰かから目を忍びながら歩くというのは初めてのことだった。

 

カツ……カツ……

 

身体が喉の乾きを訴える。

 

カツ……カツ……

 

耳に響く靴の音。布が擦れる僅かな音さえも聞こえる。

 

カツ……カツ……

 

カツ……カツ……カツ……カツ…カツ…カツ…カツ…

 

「………303

 

ここだ、と手をかけるその瞬間───

 

───体が大きく吹き飛ばされた。まるで突進にでもあったかのような衝撃に、受け身も取れず地に伏せる

 

「……くっ!」

 

身体に鞭打って立ち上がり身構える。確かに攻撃を受けた筈だが何もなかった。

 

いや、見えなかったと言えば正しいか。

 

「光学迷彩か!」

 

左後方に跳ぶも再び衝撃を受ける。そんなまさか、光学迷彩なんて技術はこの世には無いはずだ。

 

「……くそっ!」

 

光学迷彩の弱点、それは光だ。いくら消えようとも強い光を当てれば同期にまで一瞬のラグがあるのだ。そして影も見える筈なのだが、見渡しても何もなかった。

 

もう一度強い痛みを覚えると、自分の身体が完全に横たわるのが感じれた。

 

立ち上がれない。どうしてだ?

 

ざわざわと声もする。その声から遠ざかるように俺はズルズルと運ばれていった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

被せられた袋を剥がされる。

 

「……っ!」

 

「よう。」

 

スーツの上からでも伝わる程屈強そうな男がそこにはいた。

 

「……お前は誰だ?」

 

見ているだけでヤバい相手だとわかる。身体面で格上、更に技術までもが上である。予感って奴だろうか。

 

「俺か…?俺は───

 

 

 

 

 

───お前だ。」

 

 

 

 

 

は?

 

「どういう……ことだ…?」

 

「まだ分からねえか?お前だよ幸介。」

 

「な───ッ!そんなバカな!この時代の幸介はまだ生まれたばかりだ!」

 

「そうだな。だが、それ以外の幸介はいる。」

 

「……まさか、未来の俺とでも言うのか?」

 

「まあ、そうとも言える。」

 

馬鹿げた話だ。つまり、まさか未来の俺が止めに来たとでも言うのか?

 

「何故だ……!何故止める!?」

 

「何故…か。」

 

「未来の俺ならわかるだろう!?俺の目的が!」

 

「黙りやがれ」

 

「何だと……!」

 

俺を一蹴したあと、さて。と区切り話を始めた。

 

「俺とお前との相違点を話そうか。」

 

「……相違点だと?」

 

「お前は『始点』だ。全ての始まりだ。」

 

「『始点』……?」

 

「対して俺は『終点』だ。……いや、『終着点』と言えばいいか……」

 

「……なんの意味だ?」

 

「それは自身で考えろ。俺からは言えねえ。」

 

「何格好つけてんだてめえ?」

 

「あまり時間が無いのでね。次に行くぞ。」

 

ちっ……はぐらかしやがって……

 

「そしてもう一つはだ。それは、あのタイムマシンを破棄しろ。」

 

破棄。その言葉に含まれる意味を紐解くために一気に冷静になった。わからない、何故破棄しろというのか───

 

「教えろ!何があった!」

 

「……すまんがそれも出来ない。」

 

「おい!待て!」

 

「お前には元の場所へ戻ってもらうぞ。」

 

「タイムマシンだと……っ!?」

 

光学迷彩といい資金を、資材を、一体どこから?

 

疑問は尽きなかったがそれと間もなく、俺は元の時代へと戻された─────────




久々すぎて話数設定も文のあれこれも滅茶苦茶じゃないか!このポンコツ!

ホントにね。申し訳ねぇ……もっと地の文で補足入れた方がいいですよね……


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変動

がんばる。




……一週間前。つい一週間前が俺が過去へと戻った日だった。

 

あの時の未来の俺の言葉、『タイムマシンを破棄しろ』という言葉が気がかりで仕方がなかった。

 

俺は詳しく聞き出すためにもう一度跳ぶつもりであるが、今一度導き出したタイムマシン論について見直している所であった。

 

勿論こんなことを誰にも言える筈もなく、一人でこっそりと行っているのだが───

 

たった一週間。たったの一週間隠すだけで大変だった。それは何故かというと、俺の目が色を認識出来なくなったからである。

 

思わぬ不具合であったが、そこまで計画に支障は無いだろうと軽視していたのが仇となってしまった。そもそも身体に異常が出るなどというのは想定外であったが、だからこそタイムマシン論を見直しているのだが、まあいい。

 

つまりは実生活に支障を来し、怪しまれることが無ければいい。だが……

 

「お兄ちゃん、これとかどうかな?」

 

「おー、そうだな……」

 

「うーん……こういうのはやっぱり考えちゃうなぁ……」

 

「大丈夫だよ。いつも歌詞を考えるのと同じだし。」

 

「でも華道の展覧会に出すんだろ?いくつか良い案を出したいから選んでくれってちょっと責任重大で……」

 

「お〜、これとかどうですかな〜?」

 

「モカちゃんそれって…パンジーだよね?」

 

「赤とパンジーが蘭と蘭の可愛さを表してるかな〜って」

 

「……モカっ!」

 

「え〜?蘭が気に入ると思ったんだけどなぁ〜?」

 

「はぁ……まあ一応いっか……」

 

不味いですねぇ……

 

実のところ特徴的な花の形程度なら見分けがつく。しかし、主に暖色系と寒色系、明暗ぐらいしか感じれない俺にはモカが取った赤いパンジーの隣にある別色のパンジーが何色であるかわからなかった。

 

学校でも、近代とかにある様々な要素のグラフを読み取るものがあるのだが、対応した色がどれがどれなのか分からない。

 

更には自分の服でさえ何色を着ているのか分からない始末だった。まあこれは例外だが(柄を覚えているため)

 

ともかく、今を乗り切ろう。まずは蘭に向ける意見だがどうしようか。

 

「…幸介さんは、さ。どんなのが良いと思う?」

 

「俺か?俺は……」

 

以前、好きな花は翡翠蘭と答えたことがある。どうしてかといえば花言葉がユニークなんだよね。つまりは蘭やつぐみたちの唯一性が好きだからということだったんだけどそれは良い。

 

今回は蘭の華道の展覧会で使用する花を探しているのだ。適当な理由をつけて選んでは駄目なのだが───これが難しい。花というものは持つ色彩は勿論、似たような花でさえ違った花言葉がある。

 

花を生けるときは俺は花言葉を考えて生けるのが好みということは蘭は知っている。前にアドバイスを頼まれた時もそれに則して考えた。

 

つまるところ詰みに近い。花の形でどんな種かわかるので、色を何とか聞き出して答えるしか道はない。

 

「そうだな……」

 

何か……何か無いのか?

 

横にあった台の上にある花を選ぶ。これは……ヒヤシンス、なのか?

 

「これはどうだ?」

 

俺は青のヒヤシンスと思われるものを手に取った。どうして取れたかというと、他のヒヤシンスよりも色がより黒く見えるからだ。あと青は変わらぬ愛とかだった気がする。

 

「……幸介さん、こっちの色のヒヤシンスはどうかな?」

 

「あー……」

 

なんで?なんで?なんで!?

 

別に俺に聞かなくても良いじゃん!(絶望)

 

心で慟哭を叫んでいると蘭がやっぱりと言った。もう駄目だ……お終いだ……

 

「幸介さんさ、隠してるよね。」

 

「……何をだ?」

 

「しらばっくれないで。……例えば、目が見えにくいとか、絶対にそうだよね?」

 

「えぇ───ッ!?そうなの幸介さん!?」

 

最早ここまで……嘘をついても大して意味を成さんだろう。

 

「……ああ。」

 

「…嘘、だよね?お兄ちゃん……?」

 

「嘘なんかじゃない……蘭の推測は当たっている。」

 

「「「……っ!」」」

 

「一週間前から俺の目は、色が───見えなくなった……」

 

「……そういうことだったんだ。」

 

「どうして気付けた?蘭に会ったのは5日だが、いずれも1時間にも満たないものだった筈だ。」

 

「見逃すわけ無いから。ずっと…幸介さんを近くで見てきたもん。」

 

「…そうか。」

 

……蘭は、俺を友だと。そう言ってくれるのか……

 

「幸介さん……私は、いや、私達みんな相談に乗ったのに……」

 

どうしてと言う。どうして言わなかったのだと言う。

 

「……あたしたちじゃ……さ。」

 

「あたしたちじゃ力になれないから言わなかったの……?」

 

悲痛な声だった。蘭の声はまるで叱られた子供のようで、弱かった。

 

「違う……」

 

「でも───」

 

「違うんだッ!!」

 

お前らのせいじゃない!俺が───弱いから。情けないからッ!

 

「……!」

 

「───あ……っ」

 

「ご、ごめん……」

 

「……感情を抑えきれなかった……すまない……でも、もう俺には何も分からないんだ。……お前たちの色も、ソラモヨウも……」

 

独特の間が占めた。居られなくなり俺は逃げた。残ったあいつらを見ることはできなかった。

 

 

 

……計画はまだ終わってない。俺は───ただ目的を達成する……それだけだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『みんなに提案なんだけど。お兄ちゃんの色が見えないのをどうにかして助けてあげれないかな?』

 

『でもさ、私達に何ができるのかな?』

 

『学校じゃ同じクラスじゃないし、そもそも学年も違うから何もできないよね。』

 

『うーん、ウェイターしてる時に助けるとか?あと何か買うときとか。』

 

『幸介さんって殆ど何も買わないでしょ……予想だけど家でゆっくりするんじゃないかな?』

 

『そういえばつぐみは普段の手伝いで違和感とか覚えたりしなかったの?』

 

『うん、お兄ちゃんは全然普通で、まさかそんなことになってるなんて分からなかったから』

 

『手伝い作戦は失敗しそうだね〜』

 

『そもそも幸介さんに手伝えることってあるの?あの状態でもなんでかヒョイヒョイこなせる気しかしないけど』

 

『まあ、それはありえそうだな……』

 

色が見えなくなった。そんなのもお兄ちゃんが何とかして治るのだろうか。去年の春ごろ、お兄ちゃんが落ち込んだ時も気付いたときには勝手に治っていた。きっと、これも私達がなにもしなくても時間が経てば治っているのだろう。

 

でも、そんなのでいいのか。そんないつも通りでいいのか。

 

かのような疑念が私達には確かにあった───




さて、もう7月になりますね。

私は来たる水着イベントの為にスターを貯めております。皆さんが超電磁砲コラボに使うも、水着に使うも、どちらにせよ良い結果になりますよう願うことしか出来ませぬ。

天に任せるしか、無いのです(爆死の恐怖)


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選択

レールガンコラボ譜面は見づらいけどノーツエフェクトはめちゃんこカッコイイから好きです。過去のコラボ衣装とかスキンをミッシェルシールで買えませんかね。500枚とかで良いから……

あと今回もみじ回です


ああ、どうして。

 

どうしてだよ

 

何故俺の為にするんだ?元気付ける為にライブなんかしてくれるんだ?

 

止めてくれよ……決心が鈍るじゃねえか……

 

あいつらのライブ見たときさ、泣きそうだったんだ。でもさ、泣ける訳ねえよな。

 

お前たちを歪にしてしまったのは───お前たちの運命を、未来を変えたのは俺だから。

 

甘えたいよ。歪な世界で満足したいよ。

 

 

 

……でも無理なんだよ。

 

駄目なんだよ。そんな俺じゃあ。

 

……駄目なんだ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

タイムマシンが完全にエネルギーを溜めるのには時間は掛からないように感じた。

 

色んな奴が俺を気にかけてくれた。まさかさ、蘭の父さんまで心配してくれるとは思わないだろう。

 

いやあ、男前にあんな形相させるなんて初めてだから面白かった。他にもはぐみの兄ちゃんも父さんも心配してくれてコロッケを貰ったし、沙綾んとこもちょっとまけてくれた。二人とも大丈夫なのかしきりに確認していたが、なにもそこまでしなくてもというほどだった。

 

あこも心配してくれた。ある意味さ、一番気を使わしたかもとは思う。色々言いたかったみたいだけど、NFOしようねって笑って言ってくれた。

 

花音ちゃんとイヴちゃんは同情してくれて泣いてくれた。白鷺千聖も、同情的な目を向けていた。

 

一番面白かったのは薫だな。あいつ、取り巻きがいるのに気取るのも忘れて大丈夫なんていうからさ。完全に素が出てて面白かった。

 

ははは…今思い出しても笑いがこみ上げる。

 

あんなに取り乱したことなんてなかろうに

 

「……はは」

 

……明日、いや明後日だ。セッティングも終わり跳べる用意はしてある。

 

未来の俺に聞かなければならない。タイムマシン破棄もそうだが、おそらくあいつは知っているはずだ。この世界の背景(バックヤード)もな。

 

だが、何故言えなかった?俺ならば言う。しかし言えなかったのは何か理由がある筈だ。

 

言えないことが何故か理解ができない。いや、言ってはいけない?言えば何かが起こるのだろうか?

 

「クソっ……一体何が問題なんだ?」

 

全く予想がつかないことに俺は苛立ちを覚えていた。

 

〜〜2日後〜〜

 

「……今しかない。」

 

俺はずっと居たいという浅ましい願望を持ちつつある。今更なんてことを思うのか、俺は愚かだ。

 

ここで動かなければ俺は甘んじ続けるだろう。

 

プルルルル

 

「はい、羽沢です。」

 

『羽沢様!現在どこに居られますか!?』

 

「今は家だが……どうした?何があった?」

 

『緊急事態です!こころお嬢様がタイムマシンの情報を知ってしまいました!』

 

「な…っ!どういうことだ!」

 

『こちらが何かしらの不手際によって情報が漏れていたようです!今現在ハローハッピーワールドのメンバーを集めてタイムマシンを使用しようとしています!』

 

「なんだって……!」

 

俺の研究室は弦巻邸の地下に存在している。本来の研究施設は別の場所に設立されているのだが、俺は監視も兼ねてなのか最も警戒が敷かれている場所である弦巻邸、それも資材搬入の限られる地下で行っていた。

 

不安要素は手元に置きたいという魂胆だったのだろう。それが裏目に出てしまった。

 

(そもそも弦巻は一体どうしてタイムマシンだと知ることができた……?)

 

完全に私用なので名もマニュアルも何も無い。なのに、何故あれをタイムマシンだと知れたのか……

 

『現在そちらへ向かっています!羽沢様しか止めれる人はいません!』

 

「説明をしたのか?危険性を訴えたか?どうなんだ!?」

 

『いえ、実はこころお嬢様がタイムマシンについて仰ったのはつい数刻前のことなのです。我々にメンバー招集をしてほしいとの旨を伝えられた時に発覚しました。羽沢様の監視役である私と旦那様(弦巻家の当主)のみしか知り得ぬ情報が何故漏洩したのかはまだ分かりません。兎に角お嬢様はタイムマシンについて知っているという事は確実です。』

 

「……駅前に何分で着く?」

 

『こちらから5分ほどで向かえます。』

 

「なら駅に着てくれ、東出口の先で待っている。」

 

『了解しました。』

 

「あと、現在お付きの黒服に伝えろ。あの装置は安全装置も出力リミッターも何もついていない。もしおかしな数値で実行してしまえば発火し大火傷や感電をする可能性があると。」

 

『分かりました。』

 

ピッ

 

……まさか、これのことだったのか?タイムマシンを破棄しろ。その言葉はこの状況未然に防ぐ方法として偶然にも確実な方法だった。

 

「とにかく行くしかねえ!」

 

家を飛び出して花咲川駅に向かう。未来の俺の言葉の真意──この状況の打開──再び過去に跳ぶのかどうか──色々と考える事はあるが、最優先はまず弦巻を止める事だ。




紗夜さんは(おそらく)第3位の電力復旧の申し出についてどう感じたのだろうか。

……そんなことより体操服が健康的で良いですね。


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過去、または

ふとしたときに「あれ?章管理ミスってないか?」ということが頭によぎります。


キキーッッ!!!

 

ガチャッ

 

「羽沢だ!研究室へ向かわしてもらう!」

 

警備に伝え、返答を聞かずに突き進む。ここからエレベーターによって地下4階にまで向かわなければならない。メンバーは既に揃っており、エレベーターの存在する階が4と表示されていることから研究室へ向かった思われる。

 

「非常階段は!?」

 

「警備の関係上地上と繋がる階段はありません!」

 

「クソっ!」

 

僅かなタイムロスをも惜しく思える。早く来てくれ……!

 

チーン

 

「起動する前なら全力で止める。もし、起動している状態なら強引にでも避難させる手筈で行く。」

 

「了解しました。」

 

「設定範囲は機体の前から半径1m程度の範囲だ。そこには立ち入らないようにしろ。」

 

一応の注意を言っておく。そうこうしている内に地下4階についた。

 

(ああもうっ!何で奥の部屋なんだよ!)

 

廊下を疾走、黒服も合わせて走る。ドアへと手を掛け開こうとするも勢いをつけ過ぎて突き破った。

 

───そこでは放電状態の『心臓』が起動していた。

 

「まあてええええええええええ!!!!」

 

「こ、幸介くん……?」

 

まず通りざまに花音ちゃんと奥沢を掴んで後ろへ飛ばす。黒服が受け止めたのも確認せず薫とはぐみを突き飛ばし、弦mAkいWO───!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「羽沢様ッ!……そんな…!」

 

「ふぇ……?どういうことなの……?」

 

「痛たた……あれ?こころんは?こーくんは?」

 

「……皆様、全てを私から説明致します。」

 

「…こころ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

………………………………………

 

……………………………

 

…………………

 

…………

 

 

 

……!

 

「はっ!」

 

辺りを見回す。俺は…弦巻を弾き飛ばしたまま時間跳躍をしてしまったみたいだ。

 

「…う、ん……」

 

弦巻が、いた。

 

横たわったままの弦巻がいた。

 

「……くそ

 

「クソがああああああああああああああ!!!」

 

助けれなかった未来の俺の話を聞いていればちゃんと弾き飛ばした救出できたはずだ

 

───でも、いる。

 

「クソッッ!クソッッ!!どうしてだ!!この程度もこなせない!?俺は───俺はッッッ!」

 

どうしてどうして、どうして

 

「また……救えなかった……ッ!」

 

「ぅ……あら…?」

 

弦巻が起きたと思えば、周りが騒がしい。俺は随分と目立っているようだった。

 

「弦巻、立てる か?」

 

「……幸介、足が動かないわ!」

 

「なんだって───」

 

「足が動かないの!」

 

嘘だろ……

 

そうだ!時間跳躍の副作用か!すっかり忘れていた。あれ?俺は異常が感じられんぞ?初回のみとかそういうのか?

 

「とにかく移動するぞ……しっかり捕まれ。」

 

弦巻を背負ってこの場からさっさと去る。さてと、どうしようか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無理じゃね?

 

未来の俺に会うのが一番何かを得られそうだが、弦巻の足をどうやって治すかだ。いや、そもそも治せるのか?俺の目は調べていないのでどういう原理で色を識別出来なくなったのか分からない。大方脳に異常があると思うのだが、脳に関してはあんまし得意では無いのだ。そういうのは知識のみしか知らない。

 

なら弦巻の下半身に異常が出たのは?脳か?神経か?どちらに異常があるかも分からないまま処置をするのは不味い。調べるにして専門の機器や道具が整った場でないと何もできない。更に言えば元の時間へ帰れるのだろうか。この時間が"どこ"なのか分からないし。

 

「弦巻、タイムマシンを何か弄ったか?」

 

「何もしてないわ!それより足が動かないのは不思議ね!」

 

「何もしていない……?」

 

設定は前回調整時のまま、過去へ行くエネルギーは……あっ!必要エネルギー量一ヶ月分足してねえ!!

 

じゃあここは前回から一ヶ月先ってことか……え?不味くね?未来の俺はいるのか?もし一ヶ月前だけしか居ないとかだったら無駄足じゃねえか。それに帰る手段もあるか分からない。

 

……どうする…?

 

「おんぶして貰うのはとっても楽しいわね!」

 

「はあ?今そんな状況下じゃないよ……」

 

「そうなのかしら?あたしたち、昔に戻ったのでしょ?」

 

「そうだな……」

 

「なら楽しめば良いのよ!そうだっ!昔のあたしに会いたいわ!」

 

「……はぁ……弦巻はまだ生まれてないぞ。」

 

「そうなの?それは残念だわ……」

 

足動かないのに良く楽しめるな……俺には理解できん。

 

……まあ、取りあえずタイムマシンがあった場所へ行くか……道は前回引きずられながらだったが朧気ながらも覚えている。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……ここだ」

 

古ぼけた小屋だ。てか都市になんでこんなもんが……

 

まあ良い。とにかく中へ入ろう。

 

ガララ

 

「……あるじゃん。」

 

そこには前回跳んだというか跳ばされたというか、未来の俺が作ったタイムマシンあった。

 

未来の俺はいるのか……?いや、居なければこんなものここに置いてはないよな……

 

うーん……どうしようか……まずは弦巻の足をどうにかして治すかしないとだな。

 

「よし弦巻、ちょっと良いか。」

 

「何をするにかしら?」

 

「足触るぞ。」

 

適当に動かしてみて痛みは無いらしい。むしろ、触られている感覚がないということだった。

 

「なるほど……これはどうだ?」

 

「うーん……何も感じないわ。」

 

「痛みさえもか……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

なるほどね。どうやら脳に異常がある訳でなく、下半身を司る神経がうんともすんとも言わなくなったようだ。これだったら生体パーツを使って下半身をまるごと付け替えれば元の生活には戻れそうだ。幸いにも神経以外は機能を損なってはいないので卵子は保存出来るしなんなら生体パーツに()()()()組み込める。

 

良かった良かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んな訳ねえだろッッッ!

 

この時代にそんなもんしたら化け物だと思われるわ!幾ら生体パーツが人のそれに似ていても結局は人工的に作った肉だ。メンテナンスはただの義手義足よりも遥かにかかるし、大型の生体パーツは粗悪に使えば簡単に腐る。まあ、俺らみたいな研究ばっかりで動かん奴は脳以外生体パーツにしていた奴もいたが……そんなもんできねえだろ。そもそもハロハピの活動あるし。

 

あ〜……マジでどうしようか。てかタイムマシン動かすほどの電力溜まってんのか?

 

「もーーーー!!!やだ!!!考えることが多い!!!」

 

取りあえず帰れるか確認しようか……

 

…………………………………………………………………

 

 

 

……どうやら帰れるみたい。ああ……どうしようか……

 

「……………………はぁ……」

 

「ため息は良くないわ!もっと笑顔になれば良いのよ!」

 

「分かってる分かってる。」

 

もう何度も繰り返されるやり取りにだんだんと適当な返しになってきた。ん〜……打開策ねえかな〜……

 

 

 

「……ん?」

 

打開策を考えようと記憶を漁っている最中、ある一つの言葉が気になった。

 

未来の俺は言ってたよな?始点と終点がどうのこうのって。ひょっとしてあれは時間跳躍についてのことなのでは?

 

始点と終点(終着点)は普通に言えば駅のことだ。あれが含む意味は───未来と過去。始点と終点は未来と過去を喩えたものだ。では何故それに喩えたか?

 

線路だ。無数に走る線路、それは、可能性──あったかもしれない未来……即ち別の世界線(パラレルワールド)に繫がっている。全ての世界の中で、一つの可能性に至った俺は未来からやってきて過ちを止めたのだとすれば、理解出来る。

 

つまり、この瞬間から別の世界線(パラレルワールド)に移ったとすれば……一つの可能性であった未来の“俺”は消えた、ということだ。

 

おそらくだが、未来の“俺”がいる世界線は──俺が止められずにハローハッピーワールド全員が時間跳躍をしてしまった世界であったのだろう。

 

(そういうことか……)

 

タイムマシンを破棄しろ───その意味がやっと理解できた。

 

「……言わなかったのは制約か、何かか……」

 

決して良い結果ではなかった。だが少し、前へ進めた筈だ。

 

……とりあえず元の時代に帰ろう。てかコイツ(タイムマシン)を操作出来るかな?まあ俺が作ったんだし分かるか。

 

ピッ ピッ

 

「……ん?」

 

ピッ ピッ ピッピッ

 

「あれ……?」

 

無い……

 

 

 

人数指定が無い

 

…どうしようこれ。俺の範囲選択型じゃ無くて人のみを跳躍させれるハイテクになっているのだが、人数を指定する項目が無い。何これ?確かに人のみを送るならばエネルギーをかなり節約することが出来るけども……なんだ、イレギュラーを潰すためにそうしたのだろうか?

 

だとすれば止めて欲しかった……

 

「……今は道具がないし調べられん……一か八か───やるしかない」

 

弦巻を抱えてパネルの操作をする。

 

頼む……

 

……成功してくれ───っ!

 

ピッ

 

バチリと電気が流れた。筋肉が痙攣していると、視界がネジ曲がる───

 

………………………………………

 

……………………………

 

…………………

 

…………




Afterglowの水着が来ることを願って───


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消失

二本立てできるかな?


 

 

「……介く……こ……くん……」

 

誰かが呼んでいる……

 

「幸介くん!」

 

「…………!───か、のんちゃん……?」

 

「幸介くん…!よかったぁ…!」

 

「こーくん大丈夫!?」

 

「はぐみ……弦巻は…?」

 

「こころんはみーくんと薫くんが連れて行ったよ!」

 

「そうか……」

 

……クソ、頭痛え……

 

立ち上がるのも出来なくなるほどの頭痛に頭を押さえていると、花音ちゃんが俺を呼んだ。

 

「あ、あの……幸介くん!」

 

少し涙目になりながらも決意を持つ顔をしている彼女を前に頭痛を忘れるほど驚いてしまう。

 

「ごめんなさい…っ!私が、もっと皆を止めてたら…っ!」

 

おかしな話であった。この世界において全くの未知である危険を憂慮しなければならないなんて不可能な事だ。

 

「そこまで責任を負おうとする必要は無いよ。あれの対策を練らなかった俺が悪いんだから。」

 

大人しく未来の俺の指示に従えば───そうすれば何も無かった。起こらなかったのだ。

 

バタン

 

「幸介!起きたのか!」

 

「薫…弦巻は?」

 

「こころは何ともなさそうだったよ、とても元気そうだった。」

 

「何ともない…?───足は動くのか?」

 

「「「足……?」」」

 

あまりにも知らない様子であった。

 

「こころちゃんの足が動かないって……それってどういう───」

 

「松原様、その話は一度置いて貰います。」

 

俺は黒服に詳しいことを聞こうと立ち上がろうとした。

 

───が、力入らない。立てない。自身から呆けた声が出たのがわかるほど、冷静になれた。

 

「こころお嬢様は何も異常はありませんでした。精密な検査を受けられたあと、こちらに戻ってくるでしょう。」

 

黒服は俺の横を通り過ぎて、“心臓”へと近付いた。

 

「何を───ッ!」

 

這ってでも動こうとすると、花音ちゃんと薫が俺を抑えていた。

 

何故───そんな言葉も出ないのに、何故か嫌な予感がして黒服に止めろと叫ぶ。その時には、“心臓”の放電現象が起こっていた。

 

「待てッッ!黒服ッ!二人とも離せ!」

 

「……ごめんね。」

 

「……すまない」

 

嘘だ───

 

ああ、ゆっくりと、ゆっくりと、黒服が消えていく──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ッッッ!!」

 

「幸介、くん……」

 

花音ちゃん……薫……

 

「……二人とも…どうして……!どうして止めたんだっ!」

 

怒りだ。初めてここまで怒りを覚えたと思うぐらい感情がざわめいている。行き場のない怒り(己の無力を相手に押し付ける行為)だということに気付き怒りを抑える。

 

あれが無ければ──そんなものは関係ない。そもそも俺は足が動かなかった。どちらにせよ黒服を止めることは出来なかったのだ。

 

「……ごめん、取り乱した。」

 

「ううん!幸介くんが謝ることはないよ!ただ……」

 

「──あれらは何なんだ?君はどうしてタイムマシンを作ったんだ?」

 

「薫くん!」

 

「すまない……でも、私は聞きたい。」

 

薫は何時もの演技は無く殆ど素というような面持ちで聞いてきた。だが、俺が別の世界から来ているなんて、俺のせいで歪んだ世界を直したいからタイムマシンを作ったなんて言えなかった。

 

「……今は話せない。勝手で悪いが、今日は帰らせて貰う……」

 

逃げることしかできなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あれから2週間が経った。周囲の目は目聡く、幸介とはぐみ、花音との間に何かしらのいざこざがあったのだと勘ぐられる程度には互いによそよそしい態度で接していた。

 

あの一件依頼はぐみは幸介に遠慮がちになっており、何時もくっついてるのに何もせず関わろうとしない姿勢で過ごしていた。その為おかしいという話が商店街中で為され、また幸介やはぐみに聞くも語ろうとしないので事態は想像以上に深刻だと頭を抱えた。

 

ちなみに幸介ははぐみの兄ちゃんに何があったと尋問された。はぐみの兄ちゃんは同衾をしてしまったのでは?と邪推しガチギレ。最後まで否定も肯定もしない幸介を見て彼は諦めた。

 

明るく天真爛漫を地で行く為誰からも人気のはぐみ───

 

商店街の未来を担う人物として期待される幸介───

 

その二人が、その二人だからこそ商店街は揺れていた。

 

 

 

しかし、お互いに何もしない。だからこそ動かない言わば“冷戦”となっていたその状態は終わりを告げた。

 

それはあまりにも残酷であった。いや、残酷過ぎた。幸介が倒れた───ただこれだけなら何も無かった。その筈だったのだ。

 

結果から言えば、はぐみは慟哭した。パニックとなり過呼吸になりながら、誰にでも分かる絶望の声を出していた。彼女を良く知る者からすれば───目に見て理解できる異常であった。

 

何故ここまでになったのか。今、その答え合わせが行われようとしていた───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

何度も繰り返される。

 

『ひっ……!』

 

止められない。

 

『つぐ、み……あ、あ───』

 

『あああああああああああああああああああ!!!!!』

 

止まらない

 

初めはつぐみが、ぐちゃぐちゃに───無惨な姿になった。次は蘭が、はぐみが、巴が、沙綾が、誰も死なないと思えば、俺の知らない所で誰かが死んだ。その時Roseliaは解散した。メンバーの一人の精神がおかしくなったらしい。……あこが、そう言っていた。

 

俺が死んだ時もあった。でも、その後については知ることが出来なかった。ああ、死んだから記憶がないのか。そう納得するまで何故それ以降記憶がないんだと当たり散らした。

 

総数で言えば大災害時の死者と同じくらいだっただろうか。でも、同じ人が何度も死ぬからそれを抜きにして30人程度。

 

これらは『過去』に起きたことなのだろう。俺が会った未来の俺が体験したものは見れなかったが、おそらくあれは未来ではなく『過去』の俺だったのだ。

 

奇妙な出来事はまだある。過去の俺が説明をしたときだけ未来が変わるのだ。死ぬ筈であった人物が死なず、別の人物が死ぬのだ。これを嫌って過去の俺は話さなかった……そうなのだろう。

 

「…………ぁぁ」

 

何度“殺した”?

 

あるはずでない終わり(BAD END)を俺が招き入れた。

 

違う、全部全部俺が何度も───

 

「こーくん!起きたんだねこーくん!」

 

「……はぐみ

 

暖かいぬくもりを感じた。安堵、はぐみから発せられる感情はその一点のみであった。

 

「よかった……!グスッ」

 

目は文字通り真っ赤に腫れきりやつれている。体臭もいつもより濃い。いつものはぐみは居なかった。

 

「大丈夫…か?」

 

確かめるように抱きしめた後、はぐみは小さくうんと答えた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「一体何があったんだ?詳しく、教えてくれ。」

 

抱きついたまま離れたくないと言ったはぐみを無理に剥がさずそのまま聞く。多分だが、長い期間気を失っていたのだろう。

 

「えっとね、こーくんが急に……倒れたんだ。それからずっと意識不明?って言ってた。……多分、一週間ぐらい寝てたんだと思う……」

 

「思う?」

 

「実ははぐみ……今日が何日だって知らないんだ……心配だったから、ずっとここにいたの」

 

「そうか……もう大丈夫だ。」

 

はぐみを優しく撫でる。余程の心配だったのだろう。

 

「はぐみね、すっごく怖い夢……なのかな?よく分からないけどこーくんが……───ッッッ!!!」

 

「はぐみ!?大丈夫か!?」

 

怯え、だ。話すのも憚れる何かがあるのか、かなりのパニックを起こしたはぐみの背中をさすり落ち着かせる。

 

「うん……こーくんがね、その……ッ!……死んじゃうんだ───」

 

「何……?」

 

「何処かの路地裏…なのかな…?暗い場所で、こーくんが急に倒れて、その後つぐちんやらんらん皆が泣いて言うの……こーくんが死んじゃった……ッて……!」

 

はぐみの言ったその状況、それは───間違いなく俺が観たものだ。いや、過去の俺に起きた出来事か。但し、つぐみたちが泣いているという状況は観てはいない。

 

「こーくんが倒れちゃって、死んだんじゃないかって怖くて───「もう良い」」

 

「もう言うな。」

 

そう言うとはぐみは懸念が完全に消えたらしく、すうすうと寝息を立て始めた。

 

こんなにも想われていたのか……

 

それなのに、俺は、はぐみを───

 

バタンッッ!!

 

「「幸介(くん)!!」」

 

「二人とも静かに……」

 

「おっと……すまない」

 

「っ……ご、ごめん

 

そのまま声を小さくして話す。

 

「……よかった。はぐみちゃん凄く安心した顔をしてる。」

 

「はぐみは誰が言っても君の側を離れなくてね……臨床検査を受けるときも離れないって無理矢理検査室に侵入したんだ。……余程、心配だったのだろうね。」

 

「そうか……」

 

……見ない内に死んでいたら。そう頭に過ぎったのだろう。

 

「幸介くん……大丈夫?お腹空いてないかな?」

 

「……そうだった。俺は、一体どれぐらい意識を?」

 

「…8日。倒れた日も入れると9日も意識が無かったんだよ。」

 

「…すると、今は───3月の、25日……?」

 

「うん…そうだよ……」

 

「……………」

 

……9日だと……?

 

「……あっ、そうだ。皆にも連絡しないと。」

 

「……?知らせを聞いて来たんじゃ?」

 

「いや、私は一日に2回、花音は3回ここに来てる。」

 

「3回も?───ああ、はぐみか。」

 

「その通り、はぐみのケアと君の様子を見に来てる。勿論つぐみちゃんたちアフターグロウや沙綾も来ていた。君の両親や、商店街の人達もね。」

 

「……心配掛けたな。」

 

「……ああ…反省してくれ。」

 

前にもこんな流れがあったな……

 

「よし、っと……幸介くん。」

 

「ん?」

 

「話が、あるんだけど……」

 

神妙な面持ちで訪ねてきた花音ちゃん。

 

「……俺もある。……そうだろう、薫。」

 

「そうだね……花音、まずは君からだ。」

 

「えっとね───」

 

花音ちゃんから聞いた話は、俺の知るものと同じであった。俺は彼女らが過去を、観たのだと確信した。

 

だが───薫の話は俺を驚かせた。

 

「文化祭、だろうか。そこで色んな人が刺されるんだ。」

 

「な、に……?」

 

文化祭。恐らくこれはアニメ二期の合同文化祭を意図するものだろう。だが、そんなものを俺は観ていない。立てられた仮説は俺の知らぬ過去があった。ただそれだけ。

 

「───……俺は話さなければならない。」

 

「だが、はぐみが起きるまで待とう。はぐみも聞かなくてはならないから───」




二本立ては出来ませんでした……

というか3rd seasonまで公開って……まあRASイベに合わせてだから2ndまでだとおたえ抜けたバンドみたいなアレだし第一メンバーとして六花が居ないから普通に予想できたという……

もうちょっと情報見とくべきであった。


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設定回という名の各自の状況+前回入らなかった話

今回は幸介が意識不明時に各方で起きた出来事を簡潔に纏めました(殆ど設定更新が無かったので……)

動画公開している間に3期まで書き上げなければ……ここから駆け足でいきます。

追記:今回は特に意味不明展開なので見たくねえよって人は次回の前書きにて説明致しますのでそちらを閲覧してください。


羽沢幸介

一週間ぐらい意識不明になった。足と目については黒服が時間跳躍をしてなんとかした。という分かりづらい描写があった。

 

羽沢つぐみ

後半はかなり描写は少ない……タイトル詐欺では?勿論落ち込んだが、生徒会や関わる人全てに迷惑を掛けないようしっかりと気持ちを切り替えた。

 

美竹蘭

幸介意識不明の報を聞き滅茶苦茶泣いた。幸介の目についてのそれは黒服ごと過去改変されたので無かったことに。

 

青葉モカ

幸介が自身が思っていた以上に大きい存在だったのだと知った。幸介が意識不明の間、蘭たちに明るく振る舞うことも同じ気持ちだとも言えず葛藤した。

 

上原ひまり

幸介の倒れた瞬間とはぐみの異常を直接に見た。どうすれば、どうしよう。今までにない困難にたじろいだ。

 

宇田川巴

ひまりと共に幸介が倒れた瞬間とはぐみの異常を見た。はぐみのお陰で何とか冷静になれた。Afterglowが一旦活動中止となった時、静かに受け入れた。

 

山吹沙綾

純、紗南といざこざがあった。幸介は勿論はぐみも心配でパンの差し入れをしに度々病院に行った。

 

宇田川あこ

超しょんぼり。分かりやすいとはいえ各員思い当たることがあったのかRoselia全員から事情を聞かれた。

 

北沢はぐみ

作者のせいで悲しみに暮れた。ハッピーエンドにするから赦して……

 

瀬田薫

幸介の知らない過去を見た。素が出る程動転したが、自身が慌てれば皆がもっとパニックになることを危惧していつも通りを取り繕った。

 

松原花音

ふぇぇ……夜も眠れないほど心配だよぉ……

ちなみにはぐみは出席停止扱いとなっていた。

 

弦巻こころ

過去へ赴いた。作者のせいでキチった。

 

奥沢美咲

ハロハピの活動が無くなり色々感じることはありながら裏で色々やってた。主に風船配りとか。

 

黒服

作者の惰性で幸介の呼び方が一致してない筈。過去を変えた。

 

白鷺千聖

花音を悲しませたので半分怒りとアフターグロウとハロハピ2つバンドが活動中止となっているその影響力に驚く。

 

はぐみの兄ちゃん

幸介にガチギレした。ガチギレしても許されるくらいだったのでOK

 

商店街の人達

えっ?マジかよ……みたいな反応。どうにかしようと色々画作するも先に幸介が回復し不発に

 

─────────────────────────

 

「……見た通りだ。俺は、過去を知り、未来を変えることを目的としている。……だが───俺は……っ!───お前たちを殺した!見殺しにした!」

 

独白。

 

何を言うか理解できない

 

努めて称道する。

 

沸く心抑えて、冷めぬ熱り

 

「何度も、何度も!何度も───ッ!」

 

滑稽。

 

乞うて逃れる?

 

発露

 

思いも、想いも。余す事無く───筈だった。

 

突然、手を握られた。痛いほど握るのではない、優しく、それでも離すまいと力強く握られていた。

 

「そんなこと言わないで!!!」

 

「……ッ!」

 

そう言ったのは花音ちゃんだ。普段を知れば有り得ない力強い声だった。

 

「もう、そんなこと言わないで。」

 

「……だが事実だ。俺は───」

 

「こーくんは……こーくんは悪くないよ!」

 

「───はぐみだって見ただろう?俺はお前たちを悲しませた。」

 

「はぐみ、こーくんがそんなに悩んでたって知らなかった……でも、頑張って、頑張って未来を変えようとしたんだよね?はぐみね、それって悪いことじゃ無いと思う!」

 

然として言ったその言葉。はぐみはなんとも考えていないようであったが。俺には冷水を掛けられたと錯覚するまでの意見であった。

 

「悪では無い……だが、善でも無い。」

 

悪いことではないのだ。未来を変えようとするのは前向きな理由だろう。

 

だが、それは"俺の欲"だ───

 

未来を変える。それは“自身の望まない世界を消す”のと同義ではないのだろうか?

 

そして、もう未来を変えてしまった俺は?

 

───思わぬ盲点であった。

 

「…………!」

 

今までにあった俺の考えが全て吹き飛ぶ。はぐみを純真だからこその価値観があると評価したことがあったが、まさかこんな所で気付かされるとは思ってもいなかった。

 

そうだ。

 

俺は……欲を出さない様に過ごしてきた。そう思っていた。だが───俺の望む“世界”は、俺が居る世界。

 

そんなことを考えてなければ、自由に行動出来るようになった頃失踪すれば全て解決出来たのだ。つぐみには兄が居た。という事であれば殆ど本編に関わりは無くなるだろう。

 

最早、明白であった。自身の真の愚かさを見た。

 

「俺は……───「───幸介くん!」……!?」

 

俺が呟く前に、花音ちゃんが優しく俺を抱きしめていた。一体なんなのか、そういう前に花音ちゃんは静かに言った。

 

「もう良いんだよ?幸介くんは頑張ったんだから。だから……そんなに悲しそうにしないで……」

 

途端、力が抜け落ちたかのように項垂れてしまう(受け入れてしまう)。意識しても俺の目からは大粒の涙が嫌にでも溢れ出していた。

 

「どう、して……俺はお前たちを……ッ」

 

「はぐみも言っていた通り、君がどんなことをしてでも掴み取った結果だったのなら何も言わないさ。どうして。中にはそんな声が出るかもしれないが、頭の中で理解はしてくれるはずさ。」

 

皆、自身を許せという。罪だらけの俺を許せと───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……皆が見たその光景(けしき)は、恐らく本当に起こった出来事だ。」

 

反応も待たずに次へ繋げる。

 

「多分、最初の俺は過去を変えようと時間跳躍を、タイムマシンを作り、使った。でも救えなかった。俺目線でしか“観て”いないがはぐみが“観た”のは最初の頃の俺だ。俺の死因は、時間跳躍をし過ぎた『副作用』若しくは『代償』と言っていいだろうか。」

 

「……っ!」

 

「花音ちゃんが観たものはつぐみが死ぬという過去を変えた結果、その皺寄せが蘭に向かったものだった。もう一つは……どんな状況か分からない。だけど、今に近い過去で行われたのだろう。」

 

沈黙、そして沈黙。花音ちゃんが観たもう一つの過去とは恐らく弦巻たちがタイムマシンを使い俺が間に合わなかった世界のことだ。

 

「薫のものは完全に分からない。恐らく最も近い世界であると思う……そして、今後起こりうることも。」

 

確信であった。恐らくではない───起こるのだと解る。

 

「……どうすれば良いんだろうか。」

 

「分からない。そもそも羽丘と花女が繋がりを見せる意味が無い。しかも、文化祭だ。一体どうしてそんなことになったのか解らん。……だが、どうにかすることができる。」

 

嘘と本当を混ぜて言う。まだ合同文化祭という訳わからんことは考えれないだろう。

 

「何かしらの対策は打つ。文化祭が行われたら警備を固めても良いだろう。」




なんだこれ……

次回はお祭り編です。


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商店街のお祭り

前回までのあらすじ

最近意味不明過ぎて見たくねえよバカって方の為に2行で纏めました。

『時間跳躍をした結果、幸介が絶望した。
しかし、花音、はぐみ、薫らによってなんとか立ち直った。』

絶対に結果だけ書いた方が良かったよなぁ…でもなぁ……


あの一件からいよいよ新学期となった。

 

みんな俺が倒れたことを心配していたが、何ともないと言うと胸を撫でおろした。表向きには原因不明の意識を失ったという1ミリも分からん診断結果を受け入れていたのは良くわからない。

 

Afterglowとハローハッピーワールド!が活動停止していたのは仰天したが……申し訳ない……

 

あと、つぐみが凄い過保護になった。手伝いの時は全然仕事を回そうとしないし、何故かイヴちゃんと結託してバリバリ働いている。

 

そんな中で一番の懸念が、俺が薫と同じクラスになったことだ。始業式のH.Rでは滅茶苦茶ザワザワしていた。

 

また、あの日々なのか……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……」

 

「新しいメンバーとして、旭湯の六花ちゃんも来てくれました。」

 

「今日は、GALAXYのスタッフとして来ました。───よろしくお願いします。」

 

何してるかって?観戦というかなんかそんな感じ。去年と一昨年もあって、それらは俺が色々やったんだが、今年はあんな事もあったし休めってつぐみたちが言うから要所要所のみの発言となった。まあ去年はやり過ぎた気もあるけどさ……だって思い出になれば良いかな?って色々案を出して、というか出し過ぎた。あれはあれで好評だったけどさ。

 

「あ、あの、つぐみさんのお兄さんは……」

 

「行き詰まったら参加するよ。」

 

ちなみに朝日ちゃんとは顔見知り程度だ。あこのクラスに行った時に初めて会った。まあ商店街にあるGALAXYのバイトだしまあまあの頻度で会ってるんだけどね。ちなみに居合わせた……ええと、香澄ちゃんの妹のあっちゃん……そう、明日香だ。差別化で明日香ちゃんはヤバい人を見る目だった。

 

流石にこー兄呼びは誤解を招くな……そう考えさせられた。

 

(確か、Afterglow、ハロハピ、Poppin'Partyの3つが出るんだよな。)

 

ここは"原作"との違いは無さそうだ。ここまで何かが変わっていたらどうしようもない。

 

というよりこの会議は殆どライブ出来るかの確認なんじないのか?俺やっぱり要らないんじゃ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お〜、幸介さんツグってますな〜」

 

「どした?」

 

「優しい優しいモカちゃんからの差し入れで〜す。」

 

「別に差し入れされる程のことをする訳でも無いが……ありがとうな」

 

紙袋の中にはメロンパンが入っていた。いやチョイスよ……もっとサンドイッチ的な食べ易いやつを選んで欲しかった。

 

いや、そんな事を考えるのは無礼か。

 

「───うめえ」

 

やっぱりパン買うならばやまぶきベーカリー一択だな。ここに長年店構えてるだけある。ちなみに3人だと(つぐみ、沙綾、はぐみだと)創業ははぐみのとこが一番古いのだ。

 

「しかし藪から棒に───」

 

「幸介さんってさ〜……つぐと似てるよね〜」

 

つぐみと……?いやそこまで似ては無いと思うが……

 

「どうしてだ?」

 

「うーん……つぐも何回か幸介さんみたいなことをしてたから?」

 

「つまりは責任を感じて行動するところか?なら薄情者以外つぐみと似てるじゃないか。」

 

「……そうかもね〜」

 

そんな会話を繰り広げる間にメロンパンは無くなっていた。案外夢中になって食っていたらしい。

 

「…ん、ありがとうな。もう一踏ん張りするわ。」

 

モカは頑張れと言って帰っていった。モカなりの励ましだったんだろうか。最近パンも催促してこないし……やっぱり色んな人に心配掛けてるんだな。

 

〜〜お祭り当日〜〜

 

屋台の設置は協力できた。だが、バンドの機材を運ぶのは私達の仕事だから駄目だと念入りに言われた。何なら監視が一人ついたレベルの警戒であった。

 

某オカマ芸人も驚嘆する程だろう。

 

という訳で当日だ。父さんから今日は休めと言われたので、少し休憩を取ろうと思う。つぐみたちと回ろうかと思ったがライブの細かなセッティングがあると言われた。

 

「幸介兄ちゃん、いっしょに行こーっ!」

 

「純!幸介お兄さんがこまってるでしょ!」

 

「え〜!!良いじゃん!」

 

……純くんも紗南ちゃんも楽しそうだ。

 

「二人とも行こっか。でも一緒に回れるのはつぐみのライブが始まるまでだけどね」

 

そう言うと二人は残念そうな顔をした。

 

少しでも心配させた分楽しませたいな

 

…………………………

 

「二人もライブ見るの?」

 

「うん!姉ちゃんも出るし!」

 

「じゃあシッカリ応援してあげてね。あ、サイリウムいる?」

 

沙綾は黄色だったか……ん?どうして俺が黄色を持っているかって?そりゃあ、色んな色があった方が対応できるからな。

 

「……ん、これは…」

 

天からは大きい雨粒が降ってきていた。ものの一瞬で観客は散っていく。

 

「しゃあねえ……取りあえず室内に行こう」

 

二人の手を握って歩き出す。……ここなら沙綾の家に行こう。

 

小走りで二人を連れる。ここまでは俺の知る展開と同じであった。だが、もし未来が変わり、再開の目処が立たなければ……

 

「…………雨、いつ止むかな……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幸介くん、雨弱くなってるわよ。」

 

純くんたちとゲームをしてると、沙綾のお母さんが俺に伝えてくれた。

 

「えっ……確かに、もう殆ど降ってませんね。」

 

「じゃあ外に行こうよ!もしかしたらやってる出店があるかもしれないし!」

 

という純くんの提案に、再び外へ出たのだ。そして適当にブラブラと歩きつつもgalaxyに向かっているのだった。

 

(未来が変わらなければ……だが……)

 

galaxyが見えてくると───ああ、良かった。大きな機器を運ぶ沙綾達の姿が見えた。

 

「随分と重そうな物持ってるな。」

 

「幸介さん……」

 

女6人で良く持てるなと思えるほど重そうだ。……いや、手伝ったら駄目だと思うけど…やっぱ見過ごせねえよな……

 

「───とすれば、ライブは再開するのか?」

 

「あっ、はい!」

 

「なるほどね……朝日ちゃん、ちょっと退いて退いて」

 

「ええっ!いや、幸介兄ちゃんでもそれは……」

 

俺のしたい事にいち早く気付いた純くんが止めようと声を上げた。ま、無茶でもやるんだよ。

 

「純くん、人って鍛えれば意外と重い物を持てるんだ。知ってた?」

 

「……大丈夫……なんですか?」

 

市ヶ谷有咲の取ってつけたような敬語を無視して下へ入る。

 

「オッケー、全員手離して良いよ。」

 

恐る恐る、そういった感じであったが手を離した。これくらいならば何とか出来そうだ。

 

「二人とも危ないから離れてて」

 

「スゲー……ホントに持ってる……」

 

楽勝ッッだッッ……!(瀕死)とまあ冗談は置いておき、こんなもんは安いもんだ。会場まで2分で運んでやるぜ……!

 

「何、皆ライブを楽しみにしているんだ。そんな

顔するんじゃない。」

 

不安そうな沙綾を横目に伝えてあげる。……あ、そういや文化祭でライブしてたよな……そっちはどうしようか。でも刺傷事件が起きたなら中止になるか。……やっぱりつぐみ達のライブ見たいよなぁ。

 

それに、はぐみたちと約束したしなぁ……無闇に自分を犠牲にしようとしないのと、あまり一人で抱え込みすぎないようにって釘を刺されてるし……

 

それにしても花音ちゃんって意外と強引だった。これらは有無を言わさず取り付けられてしまったのだ。

 

まあ、お陰で少し気持ちが楽になったけど……

 

「つぐみー」

 

「ぅえっ!?お兄ちゃん何してるの!?」

 

「えぇ……いや、えぇ……」

 

「……もしかして〜、幸介さんツグってます〜?」

 

「…そうかもな。これはどこに置けば良い?」

 

巴たちが手伝ってくれて、機材を設置する。一息つくと遅れてPoppin'Partyがいくつか持ってきていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「意外と観客が多くなったな……」

 

ライブを再開するというアナウンスが行われると、次々に人が集まった。何だかAfterglowのライブが一大行事として認識されているように感じて嬉しいとそう思った。

 

「───幸介君。」

 

何かと思い振り向いてみると、俺を呼んだのは蘭の父さんであった。お久しぶりですと答えると、彼は普段より饒舌に語りだした。

 

「身体はもう大丈夫なのかい?一週間も意識不明だったと聞いたが……」

 

「ええ、あれから大分時間も経ったのでもう何も異常はありませんよ」

 

そう答えると、蘭の父さんは安心げにそうかと言ってライブが楽しみだなと呟いた。……Afterglowは活動停止したので長らくライブを行っていなかったらしい。

 

俺は、どうしたいのだろう。花音ちゃんに示されたままに生きれば良いのか?彼女らを無視して俺を消せば良いのだろうか?

 

それらはどんなに考えても、答えは出なかった───




「つぐみちゃん、ラブってやっとくれよ。ラーブって。」

「ラ、ラーブ……?///」

ナイス長老さん!!!一生敬います!!!

みたいな展開も良かったかもしれないです。

ハロハピが水着確定……?でも山ぽかったし……

うーん、川で泳ぐ可能性もありえる……


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変えたい未来

シリアスはもうちょっとで終わり!




「……この案は私達だけでなく、学校側も交えて協議をするべきです。」

 

「それは承知の事……ここは慎重になるべき所で無いだろうか?そう私は考えているのです。貴方が理解を示してくれるだけでこれが採用される確率は高くなります。」

 

会議を始めて30分、両方(花咲川と羽丘)の意見は一つを除いて一致をしていた。

 

たった一つの意見。それは───警備の配置。

 

花咲川は風紀委員と先生、そして一般の生徒を募り警戒をするというものであった。少し警戒が厳しいと思えど最適と言える。

 

対する羽丘側の意見は素人目に見てもかなりの厳重警戒案であり、警備員を雇う為の金をどこから出すのかという課題点があった。

 

考え過ぎだ そう一蹴されるのを見て幸介は思わず苦虫を噛んだようにしかめっ面になっている。その姿を見て羽丘学園副風紀委員長は何が起こるのだと身構えるのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……すまない。正直学校全体で警備を敷くというのは見込めそうに無い。」

 

「それは…仕方無いよ……」

 

話し合う4人は秘密を分かち合った者達であり、幸介に協力しているのであった。

 

その目的は羽丘学園花咲川女子学園合同文化祭で起こるであろう刺傷事件を止める為である。この為に幸介は風紀委員長となり協議していた。

 

「こうなれば最初のプランで行くしかない。」

 

「私達4人でその男を見つける……か。」

 

「ああ。最早それしか残されていない。起こり得るかもしれないだけで学校側はそこまで重要視しないだろうし、ましてや未来を観えるなんてそんな荒唐無稽な話しは信じてもらえない。」

 

学校に脅迫文を送り警戒させるという案もあったが、その前に中止になるだろうというものであった。

 

「……とりあえず、その男の人の顔を知らないと駄目だよね……」

 

「そうだ。薫、俺が描くからどんな特徴だったか教えてくれ。」

 

今日集まったのはその為であった。具体的な男の姿や顔を知らないのと知っているのでは雲泥の差がある。4人だけでも知る人がいればまあまあ心強いというのもあるのだ。

 

「分かった、───」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

文化祭の準備の方は捗っている。女子校同士ではない点を懸念していたがその辺は大丈夫であった。ま、俺はお目付け役なんですけどね。何だろう、恐れられていたからか今年に入って校則違反を犯した人数も減ったという。

 

「羽沢、大丈夫か?」

 

「ん?ああ……何だ?」

 

「最近色んな所で見ているからな……疲れてねえか気になってな。」

 

「俺の心配するんじゃない。今回は最終兵器()が居るんだからよっぽど変な采配にしなければ成功は間違いないだろ。」

 

たまたま同じクラスであった去年の文化祭実行委員小林が俺を心配してくる。相変わらずコイツは誰にでも気に掛けるな。

 

「女子受けって言われてもなぁ……全然分からん!結局はある程度自由にして瀬田に全部任せるのが一番だと思うんだけどな……」

 

なんだ、分かってるじゃないか。

 

「ま、ともかく小林の考える通りにして良いだろ。俺はちょっと見回り(天使の住まう場所)に行ってくる。」

 

「おーう。」

 

ちなみに俺の噂を知らない花咲川の生徒は俺が恐れられるのか疑問符を抱いていた。もっと言えば白鷺千聖が直接聞いてきたレベルで不可解らしい。普段の俺を知ってたらおかしいって気付くのにな……

 

さあ、どう対策しようかな。

 

探し出して仕留める?現行犯で捕まれば良い。それに"まだ"何もしてない奴を捕まえるのは面倒くさい。後は俺の私怨だ。

 

やはり迎え撃つのが一番良いだろう。その時点でアイツの行動を意味の無いものとし、この世の最大級の屈辱を味わせた方が俺はもっと良いと思う。そんな事したら絶対にヤバい奴と定着するけどな。刃物持ってる相手を一方的にボコボコに出来るとか幾ら何でも訓練を受けないと素人相手でも難しいからな。

 

来ると分かれば別に怖くはないのだ。というよりあそこまで被害が広がったのも疑問だ。過去へ飛び、過去の存在を知っている俺が警戒している筈。俺ならそうするからな。

 

(お、居る居る。)

 

Afterglowは普通に出る。二日目に出るのだとか。あ、そういや文化祭特別バンドはどうなったんだろう。世間では大ガールズバンド時代とか騒がれてるしな。

 

ピンポンパンポーン

 

『みんなー!合同文化祭記念バンドのリハやるよー!講堂まで、"おかし"だよー!』

 

……………………今行くのは甘えだな。

 

俺は、当日───この目で見てやる。その為には波を立てずに終わらさねばならない。

 

絶対に見たいからな。てかつぐみに見に来てと言われた。

 

……リハでさえも見逃したくないッッッ……!!我慢……ッッ……!!!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「───……それではこの文化祭を成功させましょう。」

 

「「「「はい!」」」」

 

「…………」

 

……始まった、か。

 

万全を期すことは出来なかった。だが、止めてみせる。

 

クラスの奴には風紀委員の仕事であまり顔を出せない。(薫目的の客ばかりなので出す必要も無い)と断っておいた。

 

……初日か、二日目か。薫は教室の景色からして羽丘だろうと言っていた。

 

顔も割れている。少ないが十分だ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in薫〜

 

(……やっぱり気になる……幸介は大丈夫なのだろうか……)

 

いかに幸介と言っても安心出来ない。相手は刃物を持っているのだ。止めるなんて危ないことはやめて欲しかった。

 

「子猫ちゃん……さあ、おいで」

 

「カッ薫様……!」

 

「ふふ、遠慮することは無いよ。」

 

そんなことを考えつつも、自分のやるべき事を行う───筈だった。

 

教室のドアは開けられている。およそ130センチほどの隙間から忘れもしない横顔が通り過ぎた

 

(あれは……!)

 

見失ってはいけない。すまないと言って私はその男についていく事に決定するのに時間は要らなかった。

 

(幸介に電話を───!)

 

プルルルルル

 

…………………………………………………………………

 

プルルルルル

 

「ん?少し失礼します。」

 

「いや、大丈夫ですよ」

 

誰だ?こんな時に電話なんて……まさか、あの男を見つけたのか?

 

「どうした?」

 

『幸介、良く聞いてくれ───"あの男"を見つけた。』

 

「そこはどこだ……!まだ何もしてないのか?」

 

『ああ、何も。今の場所は4階の1-D……!』

 

「薫…?どうかしたのか!?」

 

ブツッ

 

「1-D……」

 

「大丈夫?何か───」

 

「すまないけど向かわなければいけない用が出来た!だから案内は出来ない!」

 

答えも聞かずに走り出す。案内の最中であった為、今花咲川まで向かう途中であったのだ。

 

「あっ!もう道は分かったので気にしなくて良いですよ!」

 

「本当にすまない!」

 

放り投げてしまったが、怒らなかった水色の髪の男の子に感謝する。

 

間に合うか……?いや、間に合わせてみせる……ッ!

 

…………………………………………

 

「……4階の1-Dだよなっ!?クソ、窓は閉じてるか……!!」

 

道行く生徒に謝りながらも走る速度は落とさない。殆どジャンプで階段を駆け上がり4階へと急ぐ───

 

何だか4階は騒がしい。見れば、野次馬が集まっているようだった。

 

「通せ!」

 

殆ど無理矢理に近い形でかき分けて教室内へ入る。すると、女子生徒を庇うようにして立つ薫と───

 

隠し持っていた刃物を取り出して薫に向けるクソったれがいた。

 

「間に───合った!」

 

男の横っ腹を蹴る。よろけている隙に薫を逃がそうとすると、どうやら腰を抜かして立てないようだ。

 

「ちぃっ!」

 

糞野郎が体制を立て直した。かくなる上はナイフを取り上げるしかない。武器を無くせば安全に薫を逃がせるだろう。

 

「おああ!!?」

 

絶叫してナイフを振るう男をいなして辺りを確認する。野次馬が邪魔で即座に逃げれないし、男が八つ当たりで暴れた場合被害を抑えれる自身はない。

 

突きに合わせて手を取り、相手の足を掛けてバランスを崩させる。ナイフを握る右手の力が緩んだことで即座に凶器を払いのけた。

 

僅かな時間を生み出せた。腰を抜かした薫を早く逃さないと───「───幸介ッッ!!!」

 

 

 

反応が遅れた。

 

奴の右手にはスタンガンが、そして、俺の首に───

 

…………………………………………………………………

 

……………………………………………………

 

…………………………………………

 

……………………………

 

………………

 

………

 

あ、れは……っ!!!

 

気を失う僅かな時間、俺は観た。観てしまった。

 

()()()が───!

 

「クッ!!」

 

……倒れる訳には……いかないッ!

 

驚いた顔の奴を見据える。おかしい。そう思っていることだろう。

 

だがそれは同じだ。先程より感覚が鋭敏になっている

 

いや、なり過ぎていた。

 

アドレナリンか何かで一種の興奮状態に陥っているのだろうか。今までとは類を見ないほどの集中だ。

 

耳は奴の心音まで聞こえる程に研ぎ澄まされ、目は全てがゆっくりと動いているように見えている。五感に起こるタイムラグが気持ち悪い。

 

だが、そのお陰で男の動きは全て見えていた。

 

動き出した瞬間にそれを阻止する。常人には不可能な動きまでもが簡単に出来てしまう。

 

目が変わった。あの目は、逃走を図っているようだ。

 

⅒秒にも満ちない時間。男から筋肉が軋む音と共に、スタンガンのスイッチを押す音と内部から聞こえるモスキート音を確認するには長すぎるように感じた。

 

少しの動作で避け、腕を伸ばしきった奴の鼻に最小限の動きでジャブを打つ。左手でスタンガンを奪い取りそのまま首に当てて、ボタンを押す。

 

は倒れた───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




コロナ第二波……止めてくれよ……


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変えれた過去

「………ッ!」

 

ベットで臥せていた身体を起こす。薫は……大丈夫なのか……?

 

くぐもっているが騒がしい音が外から聞こえる。ここは、保健室か……

 

ガララッ

 

「幸介くん!」

 

花音ちゃんがやって来た。余程心配してくれるのかとても大きい声だ。

 

「こーくん!!!」

 

「っ!」

 

はぐみ……耳が、死ぬ……心配してくれるのは嬉しいけどさ……

 

「良かった……」

 

「大丈夫!?ケガしてない!?」

 

「大丈夫……それより声のボリュームを落として……」

 

「う…うん……」

 

「ご、ごめんね……?」

 

……よく分からないが感覚が鋭いままだ。これは…一体……?

 

「……それで、薫は?」

 

「薫さんはもう少し後で来るって…私達に幸介くんを見ててって頼んだんです。」

 

「そうか……」

 

無事か……良かった……

 

「で、今後の予定は?……ああ、えっと。文化祭はこのまま行うの?」

 

「うーん……中止になるとかって聞いては無いけど……かのちゃん先輩は知ってる?」

 

「それは…分からないなぁ……」

 

……続行、するのか?

 

ガラガラ

 

「失礼します。」

 

「「紗夜ちゃん(紗夜さん)!」」

 

「……氷川さん、何か用で?」

 

一体どうして。凄い真面目だしあの会議のことを責任に思ってそう。

 

そもそも逆にその程度でどうして来たんだろう。ん?何で来てるんだ?

 

───今何時だ?

 

「…………」チラ

 

…6時半頃か。

 

俺が気を失ったのが何時だっけ……2時?いや1時かもしれない……

 

一体どれ程眠っていたのかと考えていると、氷川紗夜が怪訝そうな顔で俺を見ていた。

 

「?」

 

「…いえ、羽沢さんの……目が───」

 

「目?───あっ!」

 

「こ、幸介、くん……」

 

奥にあった鏡を恐る恐る見てみると───

 

 

 

俺の目は真っ赤に染まっていた。

 

「………これは……!」

 

まさか、この鋭敏になっている状態の代償か何か、と言うことか?

 

そもそも何故赤い?充血でもしているのだろうか。でも、それにしては透明度というか、透き通り過ぎている。喩えるならばステンドグラスといっただろうか。

 

「……まあ良い。それと───私だって一応の予防線を張ったに過ぎません。ですので貴方が責任を感じる必要はありませんよ。」

 

アイツと……話がしたい。

 

その目的を果たす為、何か言いたげな氷川紗夜を尻目に外へと出た。

 

アイツはあそこに居るだろう。その予想は間違ってなく、そこに居た。

 

「───薫」

 

「幸介……大丈夫なのかい?」

 

「悪いが薫を借りてく……来い。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

誰も居ないことを確認して屋上に出る。薫も後に続いてやって来た。

 

「……それで、話ってなんだい…?」

 

「…そうだな……俺はな、迷ってた。いや───」

 

 

 

「───ビビってた。迷っていたなんてものじゃない。怖くて、逃げてた。」

 

「何を……」

 

「俺の取った行動で、それが原因で取り返しのつかない事態になったら。ずっと目を背けてた。見ないようにしていた。」

 

「…今回は防げたじゃないか」

 

「いや、俺だけじゃ防げなかった。道を、新たな"可能性"を示してくれて、引き留めれても……防げなかった。」

 

「……だから、何を言いたいんだ。幸介?」

 

「俺はな、お前が臆病だって知っている。根も葉もない幽霊程度で怖がるって知ってんだよ。そして、お前が奴に刺されるという過去もな。」

 

気絶する寸前に俺は観た。薫が奴に刺される所だった。

 

己が死ぬとなれば殆どの人間は絶対に避ける。それが未来で起こるのなら尚更避けるだろう。だが、コイツは───立ち向かった。

 

「お前が勇気を出して立ち向かった。今思えば奴を追跡することすら嫌だった筈だ。だが、それをした。未来が変わると信じて。」

 

「───俺はそれに勇気を得れた。起きてしまった"過去"を嘆くのじゃない。いつか起こる"未来"を憂うのでもない。紛れもない『今』を変える為に行動するのだと理解できた」

 

それは殆どの人にとっては"あたりまえ"のこと

 

だが、俺は出来ていなかった。自分のことすら理解できずに迷っていたのだ。

 

だが、それも終わりだ。俺は彼女らを殺した。……人数で言えばおよそ200人程度だろう。勿論200の命を救ったから帳消しになるというものではないし、死んで赦されるとは到底思えない。

 

だから犯した"罪"を背負って俺は生き続ける。

 

俺の望む未来……それは───




これAfterglowの水着イベあるぞ!?


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今だからこそ(上)

さてさてさてさて、星4は誰だ?


「羽沢くんは休んでてください。」

 

そう副委員長は言った。はて、俺は昨日の事後の事を全て任せた謝罪をしに来たのだが……

 

「委員長、副委員長の言う通り今日は休んだ方が良いと……」

 

「だが───」

 

「大丈夫ですので。安心してください。」

 

ずいずいと押され、俺はテントから追い出されたのだった。

 

「……何なんだ?」

 

良く分からない。だがこういう日もあって良いか。Afterglowのライブもあるしな。

 

「───おや、幸介くんじゃないか。」

 

「おお、蘭の父さ、ん………何でここに?今まだ開催してないですよ?」

 

「いやなに、楽しみでな……」

 

「はぁ……あと1時間は待って下さい。」

 

ウキウキの蘭のお父さんと俺。何も起こらない筈が……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『文化祭二日目始まるよー!』

 

「む、始まったようだ。」

 

「行きましょうか」

 

何か起こった?何も起こる訳ないだろう。互いの娘と妹について語り合ったがな。

 

好きなものを好きという事。それは良いことだと思う。

 

逆に、好きなものを好きと言わん奴はそれを本当に好きとは思えんな。

 

「……見えました。あの教室です。」

 

「……………!」

 

フッフッフッ……この時を待っていた!

 

ガララッ

 

「いらっしゃいませー……って幸介さんと蘭のお父さんっ!?」

 

中に現れたのは───なんだひまりか……

 

まあ、うん。何だ、メイド喫茶って奴だ。2年連続だが大丈夫なのか知らんが。てかこの学年はメイド好き多すぎだろ……3クラスメイド喫茶だったぞ…?

 

「「……?ひまり(ちゃん)、つぐみ(蘭)は?」」

 

「あ〜…それは───」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「とっ、父さん……」

 

「「つぐみ(蘭)……───っ!?」」

 

二人ともメイド服じゃない……?どういう……ことだ???

 

「ふむ、そうか。なるほど……合点いった。」

 

 

 

「蘭、今日が担当する日じゃなかったのか?」

 

「昨日に変わって貰った。」

 

「っ……そんな……!」

 

「「───鬱だ……」」

 

「えぇ……?」

 

えぇ…って何だよひまり。俺らは本気で楽しみにしてたんだぞ!?

 

「つぐみがやんないとか来る意味ないじゃん……そもそも登校する意味もねえか……」

 

「……そんな、父さんには今日って言ったじゃないか。昨日そう言ってたじゃないか……」

 

 

 

「あのさ、ひまりちゃん……」ボソボソ

 

「ん、何?」

 

「あれって"あの"つぐみちゃんのお兄さん、だよね?」

 

「うん。皆が思ってるよりフランクでしょ?」

 

「いや、ちょっと……イメージというか先入観と現実が乖離してるんだけど……」

 

「あ〜……幸介さんのつぐバカっぷりは凄いからねぇ……」

 

「……ひょっとしてシスコンってやつ?」

 

「うーん……そういう感じじゃなくて、もっとこう遠い所からみたいな感じ……?」

 

おい、貴様ら。無視していれば言いたい放題言いやがって……!

 

「───聞こえているぞ。」

 

「ヒッ」

 

「脅さない脅さない。で?幸介さんはどうするの?」

 

「ひまりじゃ代わりは務まらん。」

 

「酷っ!?」

 

半分嘘だけど。今だって露出多すぎて男子生徒の目線を貰っているというのに、そんな時に接客されるとか嫌だしな。これ以上の変な噂は懲り懲りだ。

 

ふえーんと泣くひまりを尻目に蘭の父さんに意見を聞こうとすると……

 

「そうだ。蘭も一緒に回るか?」

 

「えっ、嫌だ……」

 

「………………」

 

父さんェ……頑張れとしか言いようがない。

 

「つぐみは忙しそうだし、ライブもあるしで回れないよね?」

 

「あ……───」

 

「でも、息抜きぐらいはするんだぞ?会長(氷川日菜)なら一緒にって誘えば許可取れるだろうし。」

 

謝ろうとする前に話を割り込ませる。別に悪いことでもないし。もっと言えば熱意を持って運営しようとする心意気は美しい。正に『ツグってる』って訳だな。

 

「頑張れよ………ほら、気を確かに。」

 

「幸介くん……私は……私は……!もう立ち直れそうにない……」

 

「声ちっさ!?───何を言ってるんですか。らしくない。」

 

心なしか老けた蘭の父さんを無理矢理立たせて別の場所へ向かう。他のクラスで純喫茶店があったのでそこに向かおう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

廊下を移動していると、端っこで負のオーラを出している男性と、今井がいた。

 

「ええーっと、友希那も恥ずかしいから拒否しただけで、別におじさんを拒んだ訳じゃなくて───」

 

「リサちゃん……分かっててもなんだ……」

 

あれは湊友希那の父親か……

 

「……ん?」

 

「……おや?」

 

蘭の父さんと湊友希那の父親の目が合う。すると───

 

「湊くんじゃないか!」

 

「美竹さん!お久しぶりです!」

 

!?

 

「えっ、ええ〜……?」

 

「いやあ、まさかこんな所で会うなんて……もしかして子供さんがここに通って?」

 

「そうなんだ。2年生でちょうど下の教室に───」

 

「ちょっと待って。お二人は知り合いなんですか?」

 

「ああ、湊くんは高校の時の後輩でね。私が卒業してからは一度も会ったことが無いんだ。」

 

なんだそれ……

 

「おや、君は美竹さんの……門下生かな?」

 

「いや、娘の友達でね。今は案内してくれてるんだ。」

 

「よろしくお願いします……って、そんなことより失礼ですけどお二人は大分年が離れてそうなんですが?」

 

「まだ私は40だ。湊くんは39か?」

 

「早生まれなので38ですよ。」

 

40って……マジ?ずっと50とかそのくらいだと思ってたんだけど……

 

「大体20年前くらいか……懐かしいな……」

 

「私もあの日の事が昨日のように思い出せます……」

 

「感傷に浸っている場合ではありませんよ……取りあえずそこの喫茶店へ行きましょう。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

……奇妙なものだな。いや、他意は無いが。

 

「あの時の美竹さんは───」

 

「おいおい、その話はよしてくれよ。若気の至りって奴だったんだ。」

 

「けど悪くは無かったですよね?」

 

「……そうだな。」

 

ここでおじさん二人の思い出話を聞かされる予定など無かったが───面白いし良いか。

 

というより蘭の父さんがバンドをしてたのが驚きなんだけどさ。いやね、蘭にあれだけ反対してたからてっきり未経験者だろうと勝手に想像していたが全くの逆であっった。てか湊友希那の父親って有名なバンドマンだった筈だし演奏は上手いのだろうか?

 

(偶然にも程がある。もしも蘭と湊友希那が好敵手だと知ればどう思うのだろうか。)

 

……気になる…!

 

え?滅茶苦茶気になる。なんだこれ……?好奇心を抑えきれない……!

 

「……あー……───」

 

「ん?どうしたんだい?───おっと、もうこんな時間か。」

 

「どうかしたんですか?」

 

「娘のライブが始まる時間でね。見にいくんだよ。」

 

(しめた!)「Afterglowってバンドなんですけど、妹がメンバーにいるので折角だし一緒にという目的だったんですよ。」

 

「Afterglowって名前か……」

 

随分と思わせぶりな反応だ。これは……どうなんだろう。そもそも湊友希那が好敵手の存在を語るのだろうか。

 

「良かったら湊くんも一緒に行かないかい?娘さんのバンドが出るかは分からないが、昔を思い出せるだろう。ほら、文化祭バンドなんてやってたじゃないか。」

 

「……うーん、それじゃあご一緒しようかな。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「へえ、トップバッターなのか……」

 

「ああ───っと、飲食は禁止だったな。それとマナーモードにしておいて…………」

 

「…………」

 

湊友希那の父親の反応は芳しくない。もしや知らないという説が濃厚だ。まあ自分から言わなそうな性格だろうし仕方ないか。

 

「時間だ。」

 

ザワついていた会場、その全てが歓声へと変わった。ステージがライトに照らされる。そこには───彼女たちがいた。

 

『Afterglowです!文化祭二日目も盛り上がっていこう───っ!』




番外編消そうかなぁ?もっとモルフォニカの話が出たらけそうか……個人的にコラボイベは書きたくないし……


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今だからこそ(下)

今回は視点を変えます。

何故か7000字ほど消し飛んでガン萎えしたので今回はブツ切りです。後書きにある程度のあらすじを書くので許して


〜in紗夜〜

 

「…………」

 

「……大丈夫でしょうか?」

 

目の前で蹲る男性、それは羽沢さんのお兄さんである。

 

フラフラと歩いていた為声をかけたのだが彼は何故かグロッキーな状態だった。10分ほど経った今もまだ気分は優れないようだ。

 

大丈夫かという問いにゆっくりと頷いた。そんな状態では誰も大丈夫とは思わないと思いますが……

 

「あっ紗夜さん!」

 

声をかけられたので振り向くと羽沢さんが駆け寄ってきていた。

 

「羽沢さん、どうかしたのですか?」

 

「お兄ちゃん見ませんでしたか?」

 

「それなら───」

 

羽沢さんのお兄さんが蹲る物陰を指したが、そこにはもう何も無かった───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

「………くっ」

 

頭が痛い……なんだこの頭痛は?そして吐き気もする。

 

Afterglowのライブを聞いている途中、いきなり頭痛に襲われたのだ。その次は吐き気が───一体どうなったのか。ああいや、心当たりはあるのだ。恐らく昨日のアレだ。

 

原理はよく分からないが俺の感覚が鋭敏になっている状態なのだろう。そして、脳の負担がかかり過ぎた。便利だと思ったが、代償のリスクからそこまで使えないものだ。

 

現に俺は、一階廊下の音を全て聞き取れる。大分落ち着いたが先程までは視界の動きがゆっくりとしていた。

 

ブーッブーッ!

 

うるさっ!?マナーモードで滅茶苦茶うるせえぞ!?

 

「……はいもしもし」

 

『ああ、幸介くん、山吹だ。』

 

沙綾の父さん……一体何が?

 

『すまない、本当にすまないんだけど、純と紗南が文化祭に行きたいって駄々を捏ねていてね。千紘も俺もどちらも保護者として行けないからと断ったんだけど、二人とも見てない隙に家を出ていったみたいだ。』

 

「…それ、大丈夫なんですか?」

 

『多分幸介くんの所に行くと思うから、もし来ていたら預かっていて貰えないだろうか?急にだし忙しいと思うけどすまない。』

 

……まあ文化祭特別バンドを見るだけだし、大丈夫か。

 

「分かりました。」

 

携帯を切り、話していると落ち着いた体を確かめる。耳も目もおかしくないし、ゆっくりと動いていない。自然と戻るのが嬉しいところだ。

 

ブーッブーッ

 

「また電話……?───もしもし」

 

『幸介、君に小さな客人が探していたよ。C組に来れるかい?』

 

「……今行く。」

 

ピッ

 

はぁ……何だろう、集中するのがトリガーなのだろうか。上手く引き出されば使えるが、制御できないと無価値どころかデメリットしかない。

 

運用できそうな方法を模索しつつ、C組へと向かうのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in蘭〜

 

(幸介さん、どこに行っちゃったんだろ……)

 

父さん曰く演奏が終わると直ぐに出ていったらしい。紗夜さんが体調が悪い幸介さんを見つけて様子を見ていたとつぐみが言っていたけど大丈夫なのかな?

 

「ん……?あれって───」

 

沙綾の弟の純くんと紗南ちゃんだ。二人は手を繋いで歩いている。沙綾のライブを見に来たのだろうか?

 

……いや、あれ迷子だ……ずっとキョロキョロ周りを見てる。

 

「蘭姉ちゃん!」パァッ

 

私を見つけると一転、晴れた顔をして近付いてきた。どうしてかその呼び方は不味い気がしてならない。

 

「……純くん、紗南ちゃん、どう…したの?」

 

「えっとね、蘭お姉ちゃん。お姉ちゃんのライブ?を見に来たの……」

 

(じゃあ、お父さんかお母さんと逸れたんだ。)

 

「お父さんかお母さんとはぐれたの?」

 

「……ううん、何も言わずに……来ちゃった……」

 

「えっ」

 

後ろめたそうに語る純くんの様子から、ダメと言われて無断で来たということなのだろう。いつライブあるかとかは知ってるのかな?

 

(とりあえず、沙綾のお父さんかお母さんに……そういえば電話知らない。……じゃあ幸介さんか沙綾に頼もう。ああでも、ライブ前だから沙綾には悪いかな。)

 

処遇を決めて、二人の手を取って3年C組へと目指すのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in沙綾〜

 

「おたえちゃん、連絡来ないね……」

 

りみの言ったその言葉は、ついにはライブ直前までその状態のままだった。

 

日菜先輩と燐子先輩が時間稼ぎをしてくれた。待ちきれない香澄がおたえを迎えに行った。

 

事故なんかで遅れてるんじゃない。多分、おたえは───

 

ガチャ

 

「───沙綾」

 

「……幸介さん」

 

「何やら様子がおかしいからな。……何があった?」

 

私がおたえが遅れていることを伝えると、幸介さんは一言だけそうか。と言った。

 

幸介さんは、残念に思ってるのかな?今日はもう私達のライブは出来ないと思う。それくらい分かっている筈だ。

 

しばらく黙ったままの幸介さんは、再び口を開いた。それは、何の脈絡もない言葉だ。

 

「勇気を失ったか?」

 

それは自身に言った言葉だ。更に続けて

 

「沙綾に教えた勇気の出し方、忘れたのか?」

 

忘れることは無い。あれは、私の原点でもあるのだから。私が、幸介さんを知りたいと願った日でもある。その願いは形を変えて私の中に存在していた。

 

「忘れる訳ないよ……でも…───」

 

「違うな、お前は忘れた。覚えていたならそこまで悲しい顔はしていない。」

 

そうだ、幸介さんは表情も読めるんだ。長い間そんな機会には恵まれなかったから忘れていた。

 

でも、勇気を出して何になる?おたえが直ぐにここまで来れる?そんな事は無い。だってまだライブは終わってないだろう。それはメッセージアプリがよく物語っていた。

 

「沙綾」

 

肩を掴まれた。聞こえてたのかな?だったら怒ってるかな?

 

「───俺の目を見ろ、いいか?お前は勇気が無いんじゃない───」

 

───勇気を出せないだけだ。この言葉はしっかりと覚えている。勇気を出す勇気が無いだけなのだ。初めに聞いた時はよく分からなかった───だけど、今はしっかりと理解している(分かっている)

 

「……分かっちゃいねえ、お前は。分かってない。」

 

幸介さんを見た。いや、私は彼を見たのだろうか。私を掴んでいた彼の目は恐ろしい程に綺麗で、紅く光を灯していた。

 

「無理だから、出来そうにない、迷惑が掛ける。───それがどうした?お前がやったのは都合よく理由をつけて逃げただけ。ただそれだけ。」

 

「そんなこと……」

 

「なら取るに足らない程度のことだった。という訳か。」

 

「───そんなこと……っ!」

 

そんなこと無い!私は…ライブがしたかった!ポピパの皆と文化祭ライブがしたかった!

 

「願え。ならば願うんだ。強引でも良い、そしてその勇気を出すのは難しいが一瞬。それは知ってるよな?」

 

「……お願い

 

彼から溢れんばかりの安心感を感じる。絶対におたえを連れてきてくれる。

 

「お願い幸介さん!───おたえを連れてきて!」

 

「───よくやった。」

 

ポンと頭に手を置かれる。こんな褒められ方はいつぶりか。

 

「案外自信は大きいようで小さいだろ?」

 

「……うん」

 

「じゃあ、そうだな……10分───どうにかして10分持たせてくれるか?」

 

そう言うと手に持っていた棒を壁に立て掛け、ジャケットを脱いだ。

 

「……全員不安そうにするなよ。とにかく、10分踏ん張ってくれたらそれで良い。」

 

言い終えると幸介さんは矢よりも速く走り出し、出口のドアを突き破るかのように開けて行った。

 

開いたままのドアを見つめて有咲が、どうするんだと言った。10分の短い時間は───

 

私達にとって永遠と思えた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

「……あれは」

 

校庭を曲がった先では香澄ちゃんが走っていた。

 

「香澄ちゃん!」

 

「幸介さん!どうして!?」

 

「ちょっとした出迎えだよ!君は先に戻ってくれないか!」

 

「嫌です!」

 

拒否、合理的な判断とは言えない。

 

「どうして!」

 

「おたえはポピパだから、私達はポピパだから迎えに行きたいんです!」

 

……間に合わないと分かっても足掻く、か。

 

随分と共感が持てるな。最も、俺の場合は言われるまで気付かなかったことだがな。

 

「……良いじゃん。その心意気は良い!」

 

「えっ?」

 

前のめりになりながら彼女と並走する。

 

「おんぶだ!女児一人背負って走れん事は無い!」

 

「は、はいっ!」

 

急な提案であったにも関わらず、香澄ちゃんはしっかりと俺の背へ乗った。

 

しっかりと掴まれたことを確認して、俺は一気に加速する。対照に視界上はどんどん遅く見える。

 

脳味噌の殆どを身体を動かすことに費やすと、いつもより早く走れる。道のりに向かえば間に合わない。ここは、家の塀を渡って行くことにした。

 

加速すればするほど、脳の酸素が筋肉へと使われるのが分かる。思考が安定しないのだ。

 

そんな時、脳の奥底でじわりと何かが広がった。

 

アドレナリンか、もしくは何かしらの脳内麻薬かもしれない。周りの音が聞こえないのだ。

 

極限までゆっくりになった視界は、もはや時が止まったと言っても過言ではない。

 

 

 

束の間永遠を過ごすのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…………!!!」

 

あそこだ。白い服を着て、ギターを背負う人影が見えた。

 

「待てッ!」

 

花園は立ち止まりこっちを見て驚いた顔をしていた。

 

「おたえ!」

 

「香澄!ライブは!?」

 

「ライブは時間を稼いで貰っている。香澄ちゃん、急いでいるのは分かるが少し時間を取って良いか?」

 

「大丈夫ですが……」

 

「ありがとう。花園たえ、ちゃんだったか。」

 

今から言うのは保身だ。もし、花園がRASに行ってしまうという可能性を潰したい。

 

「貴女は二本のギターを一度に引けるだろうか?いや、きっと引けない。」

 

「………ごめんなさい」

 

「あくまで私は部外者、謝るのは香澄ちゃんやバンドのメンバーにしなさい。───それで、君はどちらが好きだ?」

 

残念なことに俺は推測は出来ない。彼女が急いでいた理由は絞れたが、もし原作と変わっているならば外れであるのだ。

 

「好き……?」

 

「今のバンドか、()のバンドか───ということ。一つしかギターを握れぬというなら好きな方へ行くのが道理ではないか。」

 

わざわざ嫌な言い回しにしておくのも一応の保険だ。これが同じバンドメンバーからならキツい言葉だが、俺はあくまで部外者なのだ。

 

「………わ───」

 

「───先程も言っただろう。その言葉は俺に向けるものではない。それに時間も無い。話し合うのはこれが終わった後でゆっくりしてくれ。」

 

さて───跳ぶか。

 

 




幸介のタイムマシンから転じて作られたワープ装置を使いRoseliaのライブ中に羽丘学園講堂に戻れた三人。おたえだけが衣装が違うことを焦ったが、迷いの代償という幸介の言葉に一応の納得を示して、無事ライブを終了させた。文化祭終了後、各々の運営による会にて幸介がつぐみに本格的な運営として文化祭に望んだ感想はどうかと聞き、忙しかったけど楽しかったというつぐみの言葉にうんうんと頷いた後ひなつぐからのさよつぐという2連コンボを受けて尊死。帰宅の際にモカから未来を見ているのではないのか、自分たちはバラバラではないか。という問いに未来なんぞ見れない。と一蹴した。そして今回花園たえを間に合わせたのは計画の一つだと何か匂わせて終了。

という筈だったんですがねぇ………

嘘だ……嘘だ嘘だ!嘘だああああああ!!!!(80連爆死&データが消し飛ぶ)

みんなは つぐみを てに いれたか !?

あと、自動保存は絶対にONにしとけよな!お兄さんとの約束だよ!


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真の目的

ドリフェスを水着ガチャ終了と勘違いした人です。


「幸介くん……」

 

「……はい」

 

むっと顔を強張らせてこちらを見る花音ちゃん。正直怖くないしむしろカワイイけど、物凄い圧を感じる……

 

「ちゃんと分かってるの?」

 

「……はい」

 

「……あんまり無理しちゃ駄目だよ?」

 

「…無理は───」

 

「無理は駄目だよ?」

 

「分かった……」

 

心配性だなぁ……まあ凄いありがたいんだけどね。

 

どうしてバレたかっいうと沙綾が言ったらしい。文化祭終了後なんかプチドラマー会議みたいなのがあったらしく、そこで話したみたいだ。そもそも花園が戻ってないという情報は得ていた筈だしRoseliaまでもが出はったのはさぞ不自然だったんだろうな。

 

あと俺は全力を出しすぎて筋肉が千切れかけていたらしい。道理で4分で2kmを移動できた訳だ。痛みを感じなかったのも自身で勝手にアドレナリンを出しすぎて鈍っていたようだ。お陰で集中切れた時はクソ痛かった……

 

「はぁ……」

 

最近は落ち着いていると思ったのに何かザワザワするし、ウチでも何かザワザワしてるし……ホントさ、善意じゃ無いんだよ。むしろ打算で動いてるから何か褒めてくる奴には適当な返事しかできんのだ。

 

「……あ、そういや花音ちゃんは出るの?」

 

「何にかな?」

 

「Poppin'Partyの主催ライブ。つぐみたちが出るって言ってたから」

 

「うーん……多分、出るんじゃないかな……」

 

「予定が無いって怖いねぇ」

 

あははと困ったように笑う花音ちゃん。いや、割と切実そうなのが笑えない。

 

さて、例の曲があるかどうかだな……

 

足も以前のように動くし、何も問題はない。勿論Afterglowのライブも楽しみだしな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……まだ夏じゃ無いんだな……」

 

長い、長い期間を過ごした。今年に入ってから、ずっと……

 

僅か6ヶ月。俺は一生と等しく感じた。

 

文化祭のあの時から、俺の過去を全て観れるようになっていた。

 

恐ろしいかな、全て、誰かが欠けていた。思った以上に俺は罪を背負っているらしい。この身にはそれらの命を通して生きて───生かされていた。

 

もし、誰も欠けない世界に辿り着くことが出来れば───それが贖罪となる事を信じて彼女らを助けよう。

 

例え永遠に繰り返されるとしても、俺は償い続ける。償い続けなければいけないのだ。

 

この身に預けられた命を忘れてはいけない。

 

だから、どうか。俺が生きることを───

 

───許してくれないだろうか。

 

罪が増えることはあれど、消えることは無い。

 

これを"望む世界(Hello World)"と名付けようか。




幸介は8.3m/sで住宅地の塀を移動していたようです。(初速を考慮せず平均速度のみで計算したので実際はこれより速い)

100m陸上の桐生選手の最高速度は11.65m/s

香澄を背負って細いブロック塀の上をこんな速度で走るとかどう考えても無理がある……


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終わりというものは唐突に

 

 

 

「……今年は涼しいな。」

 

「去年は暑かったからね……お兄ちゃんって暑いのはキライ?」

 

「暑すぎず寒すぎずの適温が一番かな。」

 

他愛のない会話だ。

 

いや、俺の心情はかなりの揺さぶりがあった。

 

Poppin'Partyの主催ライブ───それは終わった。

 

問題は、彼女らが俺に礼を言った時であったのだ。

 

『───私も、バンドしたいなぁ……』

 

朝日六花……時間を稼いでくれた子だ。いや、"RAISE A SUILENのギター"だ。

 

違和感

 

彼女はRAISE A SUILENじゃない?

 

確かにギターであった筈だ。今まで全くのノーマークで、Poppin'Partyのファン程度でしか知らなかった。

 

過去観ると確かにバンドにすら入っていなかったのだ。

 

そして、この秋───起きる。

 

RAISE A SUILENへの加入が、ある筈だ。

 

残念なことにここは所謂"サザエさん時空"ではない。

 

つまり───終わりだ。

 

RAISE A SUILEN、大ガールズバンド時代。この単語は直ぐに繋がった。

 

「こうなってしまうと憂うな……」

 

「……?どうしたの?」

 

「何でもない。」

 

「?」

 

RAISE A SUILEN……"最後の"バンドか……

 

 

 

「………っ!」

 

()()、これか……!

 

「お兄ちゃん大丈夫!?」

 

「……いや、もう治まった……大丈夫だ。」

 

原因不明の目眩。最初は週1の頻度だったが、今は一日に数回にまでになった。

 

回数が増えるに連れ、えも言えぬ感覚……もしも例えるなら脳が縛られ、肺が握り潰されるかのような感覚であった。

 

おかしい……検査をしても身体に異常は無い。

 

だが、思い当たるフシはある───この"集中"だ。

 

これは身体の機能を最大限に引き出せるのだ。俺が文化祭の時のように、な。

 

身体に異常が出たが、目が赤く染まるという厨ニくさいものであったが、もしもこれも代償であるなら"不味い"

 

これ(目眩)が起こる度に濃密な死を感じてしまう。恐らく脳の処理が追い付かないのだろう。

 

しかし、トリガーである"集中"はふとした事でしてしまう。

 

早急に対策を練らねばいけなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜9月の中頃〜

 

「……BanG Dream……っ!」

 

それは正に、求めていた『答え』

 

「……なるほど、な。そういうことか……合点がいく。」

 

RAISE A SUILENはギターがいない。幾らブッ潰す等と言えどギターが居なくては同じ土俵にすら立てて居ない。

 

では朝日六花をどうしてスカウト出来た?どういう経緯が?そして、何故ギターが上手いと知った?

 

このポスター(Girls Band Challenge!)に書かれている通り、予選を通過した3バンドのみが決勝に進める。

 

その二枠、恐らく、いや、絶対にRoseliaとRAISE A SUILENだ。

 

そして、消去法にてPoppin'Party。なるほど、理解ゆく。

 

しばらくは鳴りを潜めたRAISE A SUILENも、ここでギターを探せていない事を焦る。朝日六花の近くには誰がいる?

 

"佐藤ますき"だ。俺はGalaxyに入っていく佐藤ますきを何度も見た。そこでもし───朝日六花が引けば、その可能性は十分に足り得る。

 

「……まさしく…!───()()ッッ!!」

 

いいシナリオじゃないか……!この通りBanG Dream(夢を撃ち抜け)……!そうだったのか!

 

「安直、素直……だが、それで良い。」

 

そして───

 

 

 

 

 

 

 

───これが最後だ。




みじ回



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設定回

忘れていた……なんてことは無いですよ?


羽沢幸介

ご存知本作の主人公。一時期は頭がおかしくなっており、その性で整合性がつかない話の内容だとして下さい。お願いします!何でもしますから!

ちなみに"集中"の制御装置を開発した。チョーカー型のバッテリーから頭に巻いているバンドに微弱な電流を送り、脳に作用することで無理矢理リフレッシュしている。使い過ぎると死ぬ。

 

美竹蘭

何処か変わった幸介に驚きつつも納得している。

最近で一番怒ったのは文化祭にて蘭パパと幸介がAfterglow法被を作ろうとしていたのを止めた時。背面にデカデカと自身が描かれているのは流石にキレていいと思う。

 

青葉モカ

変わってしまった幸介に未来が見えているのか質問した。見えないという力強い返答に、幸介は最初から()()()()()のだと分かった。

 

上原ひまり

幸介につぐみの代わりにならないとバッサリ言われた事が傷付いた。すっかり元の調子に戻った幸介の姿に安心していた。薫と幸介の関係が凄く気になっている。

 

宇田川巴

Afterglowに文化祭での幸介のことを言った本人。あまり触れないようにしようと全員一致で決定された。

 

羽沢つぐみ

幸介と会話するシーンあったが、電子の海に消えていった。幸介のことはちょっと変わったと感じているが、決して聞かないようにしている。

沙綾との会話の一端を聞いたことと、巴の情報からAfterglow内であらぬ誤解を招きかけた。

水着が当たんないよぉ!!!

 

戸山香澄

沙綾じゃなくてさーやね。本当にごめんなさい……

幸介に感謝している。うーん、やっぱり主人公女子キャラにすべきであったと思います……精神は男とかにしとけばもっと展開を持たせれたと思う……

 

花園たえ

礼に幸介に兎と触れ合ってもらおうと考えたが沙綾に止められた。ちなみに幸介に近付かれたら兎はストレスがマッハで不味い。

 

牛込りみ

幸介のことをスーパーマンか何かだと思っている。

ポピパの中では比較的幸介と仲が良い。チョコ系の菓子類をよく羽沢珈琲店に食べに来る。

 

山吹沙綾

今回の一件では流石の幸介でも……と考えていた。そりゃ10分で道のり4kmを往復とか無理だし……

というより、スペックがどう考えても間違いなく美少女系ヒロインでしょこの人……親の店を手伝い、人が良くて、オシャレに敏感で……うん、ヒロインじゃん。てかポピパが美少女ゲームの鉄板ばかりというね。元気、天然、小動物系、ツンデレetc……

 

市ヶ谷有咲

幸介の第一印象は何か怖そうな人というもの。実際180cmで目付きがかなりキツいから仕方がない。

世話好きの沙綾が世話されるのを好むのが意外すぎて暫くはそればっかり考えていた。

 

弦巻こころ

美咲と共に出番は少ない。

……ここだけの話幸介の過去を見ている。

 

瀬田薫

ウルトライケメン(幸介曰く)

幸介が変わるキッカケとなった。幸介の信頼が厚い。今なら演劇しようと言えば即座に了承するレベルで信頼している。

 

北沢はぐみ

文化祭の出し物がどう考えても何をする場所なのか理解できなかったので訪れるパターンは没となった。三期のチュチュに聞かれて言ったメガネgirl?がすきです。

 

松原花音

ふぇぇ……ってあんまり言ってない。ドラマー会議にて幸介の行動が発覚した後、もしかして危ないことをしたのではないかという思考に至った。控えめな子がグイグイ来るの好きだから書いて下さいお願いします。

 

奥沢美咲

苦労人。幸介には何かあるが、自身には関係のないことと知らんぷりをしている。

でも幸介にははぐみやこころの抑え方のアドバイスを貰ったりしている。

 

白鷺千聖

最近花音が壊れてるんじゃ無いかと疑い始めた。

でも花音はカワイイからオッケー。

 

氷川紗夜

超真面目。そりゃ来るかもわからない不審者対策にコストを払うなら他に回す。誰だってそうする。

 

 

 

〜〜BAD END集〜〜

見たく無い人は飛ばしましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつかの概要と題名を並べました

条件は、誰かが死ぬ、精神的におかしくなる、幸介が諦める等の条件でBAD ENDになると考えます。

 

・交通事故

つぐみが交通事故に合う。

・5番目のAfterglow

蘭がおかしくなり、最終的に失踪する。

・セキュリティ不足

羽沢珈琲店に暴漢が襲撃、イヴが殺される。

・あの日

心無い屑に襲われた沙綾が鬱になる。

・時間跳躍の代償

4回目の時間跳躍を行うと死ぬ。はぐみが観たのはこれ。

・精神崩壊

幸介の心が壊れる。廃人のまま一生を過ごす。

・凶刃

羽丘学園で行われていた合同文化祭にて死傷事件が起きる。

・アイジョウ

花音が幸介を〈自主規制〉する。幸介が受け入れる。



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温泉、行こう!

あと20曲フルコンで10連……うう……


「お兄ちゃん!温泉に行こうよ!」

 

「温泉……?」

 

どういう、ことだ?

 

「えっと、長老さん達がぎっくり腰で……───」

 

「えぇ……」

 

なんだそれ……ま、良いか。たまには温泉で一服というのも悪くは無い。

 

「オッケー、行こう。」

 

つぐみと銭湯に行ったのももう何年も前のことだ。……懐かしいな……

 

旭湯に行ったなぁ……確かミックスジュースを飲みたいとねだられたか。

 

この時、俺は気付かなかった。来ても商店街のやつだけでしょという浅い考えの元行動したのである……まさか───

 

 

 

「───まさか、こんなに人がいるとは……」

 

Poppin'Party、Afterglow、Roselia、ハロー、ハッピーワールド!、そしてRAISE A SUILENから朝日六花と佐藤ますきまでもが来ていた。

 

(不味くないか?普通に怖じけ付く。てか男女比よ。よく俺が行くのを了承したな)

 

「───あっ!幸介くん!」

 

「……花音ちゃん。」

 

何だろう、帰りたい……

 

……はぐみはまだこっちには来てない。逃げるなら今しかないな。

 

「あっ、花音さん、今度ウチで新商品が───」

 

「そうなんだ、またお邪魔しに行くね。」ガシッ

 

嘘、だろ……?音も立てずに後退った瞬間ノールックで腕を掴まれた……

 

「ふふ、お待ちしています!」

 

「……で、幸介くん?」

 

「ハハ…」

 

「逃げちゃ駄目だよ?」

 

花音ちゃんは俺の耳に手を当ててそう言って(脅して)きた。ふぇぇ

 

(どうする!?どうする!?いやホントに行きたくないって!)

 

よし、正直に言おう。男女比ヤバ過ぎて気を使うから行きたくないと言おう。

 

「花音ちゃん、俺は行きたくないんだ。」

 

「え、でも用意してるよね?」

 

「そうだけども、まさかここまで多いとは思わなかった。流石にね、この人数の女子だと怖じけ付くかな……って。」

 

「幸介さん〜、そんなこと言って実は嬉しいんじゃないの〜?」

 

「モカ、俺が嬉しいのは誰かくらい知ってるだろ?……で、そういう事だから帰らしてくれないか?」

 

「……やっぱり駄目。」

 

「どうして」

 

「駄目なのは駄目。」

 

「…………ほんとに?」

 

「駄目」

 

「………仕方ない。」

 

俺はカバンに入れていた粉末を地面に置き、両足で思いっきり踏み潰した。

 

途端、爆発音と共に足から垂直の方向に推進力得ていた俺は65°の角度で飛び上がる───

 

筈だった。

 

「幸介くん?([∩∩])」ガシッ

 

「───!?」

 

おかしい。人間を6mほど飛ばせる力なのに花音ちゃんは俺の足を片手で掴んでいた。軸が全くブレてねぇ……

 

花音ちゃんに抑えられた事によって下向きに力が向かう。それは即ち、遠心力によって加速された俺の頭部が地面に向かっていた。

 

(死ぬッ!)

 

何もできないので目を瞑った……予想に反して俺の頭はアスファルトにぶつかる事は無かった。

 

「………」

 

目前に迫ったアスファルトの光景のまま、だった。

 

いや、そんなまさか、おかしいだろう。

 

「幸介くん」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「……………!」

 

ふぇぇ……

 

「それで、行くの?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「是非!ご一緒させて貰おうか!いやあ!!嬉しくて涙デチャウナ……ハハッ…」

 

花音ちゃんさんは俺を立たせた後、とても眩しい笑顔をしていた。しかし俺はその姿に何処か圧を感じていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幸介さんってさ、花音さんとどんな関係なの?」

 

バスの中で蘭が聞いてきた。

 

「ん〜……友達かな。でも何で急に?」

 

「だってあんなに親しそうだったから……」

 

「親しそう……はともかく中々に本気の出せる相手だな。」

 

いやあ、全て見切られるとは思わなんだ。流石はハロハピってとこだな。今後は何かあったら全力で行こう。

 

「………」

 

「なんだ、寂しいのか?」

 

「……別にそんなんじゃ無いし。気になった、だけ。」

 

「そうか。」

 

……拗ねてるな?

 

ふ、全く変わりがないよな。昔っから疎外感覚えるとこうなるんだ。

 

別に俺も何時までも5人の輪に入ったままな訳無いだろう。そもそも俺じゃなくもっと普通の人物であればずっと交友範囲は広いはずだしな。

 

「そうだ、トランプでもやるか?」

 

「いや、何で持ってるの?」

 

「泊まりと言ったらトランプだろう。ほい」

 

奥に居るモカもやるだろうと思い、シャッフルしたものを二人分渡す。

 

「つぐみもやる?」

 

「じゃあやろうかな。」

 

俺の持つトランプの半分を渡す。さて、ババ抜きか。

 

「順番はどうする?」

 

「あたしが一番〜」

 

「じゃあモカのを引けば良いんだ。」

 

「で俺、つぐみの順か。」

 

「何か掛ける〜?」

 

「別にいらないでしょ……」

 

「私も蘭ちゃんに賛成」

 

「さあ蘭引け引け」

 

ある程度順番が回ると

 

「あっ!幸介さんトランプやってる!」

 

「あたしも混ぜてくれよ!」

 

「あこも!」

 

前の席に居る巴、ひまり、あこが参加した。白金さんはあこの助言に徹するみたいだ。

 

「何だかとっても楽しそうね!」

 

「トランプいるか?」

 

「ええ!是非欲しいわ!」

 

ひょいとカードを投げた。あっちはポピパとRASまで参戦してるからかなり波乱を産みそうだな……

 

そんなこんなでトランプを楽しむこと小一時間。温泉宿に着いた。

 

「……風情があるな。」

 

「わあ、すっごく大きい……!」

 

デカい宿だ。いや、デカすぎる。一体この人数借りるのにどれくらい金かかったんだ……?てかキャンセル出来なかったとはいえど長老さん達太っ腹すぎるだろう……

 

(この規模となれば温泉も良いものだろう。……ふ、楽しみだ。)

 

「ようこそお出で下さいました。」

 

女将さんが頭を垂れた。おお、何か高級宿にある奴!

 

「地蔵通り商店街リフレッシュ会の代理なんですが───」

 

「お話は伺っております。どうぞごゆっくりお寛ぎ下さい。」

 

そう言って女将さんは盆に部屋の鍵を載せて渡してきた。

 

「5部屋か……」

 

「部屋割はどうしよう。バンド別にする?」

 

「いや、流石に俺はね、別部屋の方が良いでしょ。」

 

「幸介さんが別部屋だと何処かが別々に別れないと駄目じゃない?」

 

「ならやはり帰った方が……」

 

「あたしたちの部屋じゃ駄目なの〜?」

 

「いや、駄目だろう。幾ら心得ているとは言え男女だ。」

 

「…あたしは幸介さんが……その、そういう事するって想像つかないんだけど……」

 

「危ないのはつぐぐらいかー?」

 

「えっ!?」

 

誰が襲うか。

 

「どう足掻いてもそんな世界は有り得ないから安心しろ。というより巴、それはふざけ過ぎだ。」

 

「悪い悪い……でも、皆大丈夫だって思ってるし、幸介さんはあたしらの所に居るのでオッケーだな。」

 

……むう、コイツらガードゆるゆる過ぎないか?そんなんじゃナンパで引っかかるだろうに。

 

ま、俺は命に換えてでもつぐみは守りますがね。

 

プルルルル

 

「すまん」

 

殆ど鳴ることの無い電話が───

 

『羽沢様、今よろしいでしょうか。』

 

「大丈夫だが……なんだ?」

 

『医療用人工筋肉の腐敗についてですが……』

 

「あれ?言ってなかったか?」

 

『はい。』

 

「と言ってもあれって只の肉だから。新陳代謝させる機能なんて付けるのには金が掛かり過ぎてどうしようもないし。ちゃんと処置をするしか無い。」

 

『……なるほど。』

 

「まあ、機械の方なら壊れない限り使えるからそっちが主流になるかな。人工筋肉の方はそっちの判断に任せる。」

 

なんも見たことないって人には物凄い抵抗あるだろうし仕方ない。見た目重視なら人工筋肉なんだけどね。

 

というより僅か4ヶ月でモニターテストにまで漕ぎ着けるのだから驚きだ。ネットにも記事が出来るくらいには知られているようだ。

 

行われているモニターのケースは手足が多い。財閥の方もまだ様子見なのか下半身全体はやらないみたいだ。

 

うん、科学の平和的利用って良いよね。まあこれは一歩間違えるととんでもない兵器を生み出しかねんが。

 

いや、実際言えばあった。応用でほぼ全身機械にして何か殺人マシーンみたいな馬鹿げたものがあったのだが、何が面白いって食事が出来なくて失敗したんだっけ。二日目ぐらいで急に動きがおかしくなるのを見た時は首を傾げた。

 

結局もう全部機械にしてAI搭載で量産してもEMPで全壊にされるって結論が出たからお蔵入りになったけど、あれはね。ヤバい物が出来たって思うね。

 

「……何の電話?」

 

「仕事の電話かな。」

 

「最近店にいないのも?」

 

「ああ。それが理由。」

 

「……つぐみに話しておいた方が良いよ。」

 

「……まあ、な。」

 

うーん、父さんと一悶着あったから手伝いには顔出しにくいし……まあでも、あっちは暫くは何もないしちゃんと話して置かないとな……

 

それに───

 

「こー兄も一緒に解く?」

 

「ん……?悪い、聞いてなかった。」

 

「これ!」

 

クロスワードかぁ……

 

「悪いが温泉をゆっくり楽しみたいんだ。どうしても解けないとかなら呼んでくれ。」

 

この手のゲームは知識があるか無いか。もしくは出し手の比喩の腕が問われる。俺はこういうのよりももっと運が絡んだり、頭を使わないものが好みだ。

 

読み合いは好きだけど、どうしても知識勝負は好きになれない。要するに知らないと出来ないゲームは嫌いなのだ。

 

「それに自分で解く方が面白いだろ?」

 

あこはわしゃわしゃしてやれるから楽しい。はぐみはハグするだけで撫でる回数は少なめだからな

 

俺はひとしきり撫でたあと、荷物を置きに行った。いやあ、楽しみだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

カポーン

 

……俺以外に人居ないのに鳴るか?

 

「しかしまあ、この光景は壮観だな……」

 

目下にはずらりと壺湯が並んでいる。どれも意匠を凝らしており、美しい絵柄が描かれている。壺湯が名物とは言ったものだ。

 

「ふ、見極めてやるぞ……」

 

謎の対抗心を浮かべて壺湯の縁に手を置いて───入る。

 

「…………」

 

外気に触れる面積が大きいからかそこまで熱くはない。だが、温すぎない。丁度良い温度とはこのことか。

 

心地良い安心を享受できる要因は更にある。この壺自体が閉塞空間を、パーソナルスペースとなっている。ゆりかごのようなものだろうか。

 

程よい温度と程よい広さ。

 

「……良いものだな」

 

湯治という言葉がある。

 

何もそれは、湯の効能で治すわけではない。

 

心の安寧を手に入れる。言わば病は気からの逆説だ。患った病により弱った心があるとするなら、その心を治せば病もいずれは治るということなのかもしれない。

 

(いや、わざわざ考えるのは野暮か……)

 

最早無となりて壺湯を楽しむのであった。

 

…………………………………………………………………

 

ガラガラガラ

 

(む、客か。)

 

いけない、浸かりすぎた。空を見れば藍色をしていた。

 

「いい湯であった。」

 

合掌、そして湯冷めしない為にそそくさと脱衣所に戻るのであった。

 

「む」

 

棚に置かれていたのは浴衣だ。

 

「もう寒いとは思うが……着るのも一興だ。」

 

うーん、甚平しか着たことが無いからよく分からん。でも何とか着ることが出来た。

 

「……良いな。これ」

 

寒いとは思ったが中々快適だ。浴衣というのも醍醐味だろう。

 

不思議と身体の調子が良い。今なら制御装置はいらないだろう。

 

……あれ意外とキツくて痛いし重いんだよなぁ

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おや?幸介じゃないか。」

 

「薫、お前も上がりか?」

 

「ああ、ついつい長居してしまったよ。……頭のそれ、着けなくて良いのかい?」

 

「調子が良いからな。」

 

「………幸介!」

 

いきなりガバッと肩を掴まれた。

 

「お?お?……なんだ?」

 

「目が戻ってる……ほら。」

 

薫がスマホのカメラで見せた。確かに瞳は茶色に戻っている。

 

「……もしかして、本当に湯治が……?」

 

"集中"しようとしても以前のようには出来なかった。これはつまり───

 

「───治ったんじゃないか?」

 

「ああ、もしかすればな。」

 

何てことだ。まさか温泉の効能が効くとは……

 

そんな馬鹿な事があって良いのか?アレの発動条件は電気を身体に通すというものの筈なのだ。

 

制御装置も電気の力で作用している。何故温泉なんぞで治る理由が分からない。もしや、効能か含まれている物質の効果?

 

だが、治った事は確かだ。

 

(……調べてみるか)

 

「何故かは分からないが───とりあえず良かった。悩みの種が一つ消えた。」

 

「……不思議なものだね。」

 

薫と別れて部屋へ戻る。部屋にはつぐみたちが居らず、蘭とモカが伏せていた。

 

「逆上せてんのか。」

 

満喫しているな……そろそろ夕食の時間だから起こさねば。

 

「大丈夫か?」ユサユサ

 

「う〜……のぼせた〜……」

 

顔が赤いままのモカだが、ゆっくりと起き上がった。

 

「ほら蘭、起きれるなら起きとけ。」

 

「もうちょっとだけ横になってる……」

 

……全く。

 

「……あれ〜、幸介さん浴衣じゃん。」

 

「我ながら似合うだろ?」

 

「ひゅーひゅー、ビシッと決まってるー」

 

「棒読みな気もするが……まあ良い。水飲むか?」

 

「ありがと〜」

 

つぐみたちが何処に行ったかモカに聞いてみたが分からないとの事だった。……もう飯行ってたりとかしてないよな?

 

ガラガラ

 

「ポピパ武道館行けるかも!」

 

「このまま勢いに乗ったら行けるだろ!」

 

「私達もポピパに投票する?」

 

「皆〜おかえり〜」

 

スマートフォンでPoppin'Partyと調べてみると一つの動画がヒットした。

 

その動画はMV───ミュージックビデオというものであるが、ぽっぴんしゃっふるという曲だった。サビくらいしか記憶に無いというのは黙っておこう。

 

……だが、なるほど。RAISE A SUILENがMVを投稿したという情報を耳に挟んだが、話の流れとしてはおかしくない。やはりこの状況はアニメ3期という事になるだろう。

 

何故ならAfterglowのSasanqaが無かったのだ。Easy come,Easy go!は───いや、夏までは全て()()()()()だった。俺の中で殆どの結論が出たのは先月にSasanqaが無かったこと。

 

数日前───11月23日にOver The Future Liveがあったこと。

 

そしてこのBanG Dream challengeだ。

 

即ちゲームとは別の世界線であるアニメの世界線。それが現在俺が居る世界線である───という事

 

俺はアニメ3期を知らない。ゲームもSasanqaのイベントが最後だ。

 

全くの未知。

 

しかし、これがアニメの世界であるなら。これが最後のアニメだと考えれる。

 

それは何故か、BanG Dream決勝が12月23日なのだ。1、2、3月で一体何が来る?いいや、何も来ない。

 

ならば決勝が終了したら───

 

「お兄ちゃん!」

 

「───っ!つぐみ、何?」

 

「蘭ちゃんが起きたからご飯に行こうって言ったんだけど……」

 

「……ごめん、待たせた。」

 

「……幸介さん、本当に大丈夫…?頭の奴外してて良いの?」

 

「大丈夫だ。さあ、行こう。」

 

……心配されてるよな。

 

ま、治ったって言ってもあんなことがあったんだし結局心配されるか……

 

そんな事を思いながら、俺はいの一番に部屋から出るのだった。




やったぞ!幸介の目は戻った!(ただし目に光が宿らなくなった。)

ちなみにあと4曲フルコンすれば10連出来るところまで来ました。今日中にフルコンして出なければ明日魔法のカードを使わないと……


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夢見て

うわああああああ!!!122連して当たらなかったああああああ!!!


───Poppin'Partyの追い上げは素晴らしいものだった。

 

所謂、『ごぼう抜き』

 

Galaxyもほぼ満員となり、商店街の売上にも後押しとなっていた。

 

「一時期はどうなる事かと案じたが……」

 

予想に反してスロースタートだった。いや、マジで30位以内に入るかな〜とか思ってた。

 

というよりツッコミ所が多過ぎるんだよ。

 

なんだ?意味不明なバンド名で出場してんだ?

 

終いには薫ファンバンド的なのもあったし、何やってんだって思った。いや、普通に意味不明すぎる。ファンでバンド出来るって何?

 

ちなみに一位と二位は勿論RoseliaとRAISE A SUILENだ。まあ予想通りだ。

 

但し……チュチュだったか、アイツはただでは置かない。

 

何時だったか羽丘までやって来た事があったのだ。朝日六花の勧誘にな。

 

その時、中庭で俺は天使から賜った天上の食物(つぐみから戴いたクッキー)を摂取しようとしていた。その時だった───

 

奴はあろう事かクッキーを潰し、ぶちまけ、全て地に堕とした!万死に値することだ!

 

ここまでの無礼は初めてだ。最早怒りは永遠に消えぬ。

 

……だが。

 

俺とて最低限は弁えている。今度何処かで会えば殺気をぶつけるだけにしようか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幸介、大地蔵祭りだけど───」

 

父さんが言っている。これは怒りかな。それとも心配かな。どっちとも取れる感情だ。

 

「ああ、大丈夫。参加するよ。」

 

「そうか……商店街の皆が幸介が来るか聞いてきて、困ったよ。」

 

苦笑い、だった。

 

「……本当に大丈夫だからね?」

 

「ああ、いや。本題はここからなんだ。」

 

本題?何だろうか。

 

「父さんは、幸介がこの店を継がない道を選択しても良いと思う。だけど───」

 

───しっかりつぐみに言え。

 

……()()それか。

 

「……………分かった」

 

言えるものか。こんなこと……

 

それに、もう見たくないんだ。つぐみのあんな姿は……!

 

俺は逃げるように廊下から移動して店内を通った。

 

「あら、幸介ちゃん。久しぶりね」

 

「佐山さん。」

 

往年の常連さんのマダムが声を掛けてくれた。彼女は右側の三番目に座るのだ。今日は混んでおり、座れないがこういう日は左の4番目に座る。

 

「忙しいみたいだけど、またここで接客してね。」

 

「はい、ああでも大地蔵祭りの手伝いをしますのでそちらが先になりそうですが……」

 

「あら。なら今年は行こうかしら?」

 

他愛のない会話だ。

 

「是非」

 

……最後くらい本気で頑張るか。

 

なんて考えて、羽沢珈琲店から出るのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

Poppin'Partyは見事決勝まで進めたようだ。Roselia、RAISE A SUILEN、Poppin'Partyの三バンドが決勝で争うらしい。

 

「…………」

 

……それぞれ新曲を作るんだろうか。

 

分かんないか。でも、作ってきそうだな。

 

Afterglowも大地蔵祭りに向けて練習してるし、俺も色々計画を立てている。

 

「黒服……先ずは、お前を……」

 

アイツはこの世界を見せてくれた……名も知らないけど。

 

初めは果てしない事だと思った。だけど"集中"と、それで得た記憶。それらを組み合わせれば……出来る。

 

先ずは、タイムマシンを使わない世界を目指そう。

 

駄目なら良い。別の世界を目指すだけだ。

 

そうして、いつか誰も死なない世界になったら───

 

そこから償おう。罪から逃れる事はできない。免罪符を買っても罪だ。

 

何時までも続けようか。




まだだ……最後の手段はある……!


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2018 12 24

結局つぐみちゃんが当たらなかったのでリセマラして当てました。

135連したんですがねぇ……まさかリセマラは初回20連で出るってなんなの……


大地蔵祭りは終わった。

 

Roselia、RAISE A SUILEN、Poppin'Partyはそれぞれ賞を貰ったらしい。あと、『かの人』も登場したとか。

 

やる事は終えた。

 

「……この理論なら成功する。」

 

改良に改良を重ねたタイムマシン。これならば俺の目的は達成できる。

 

バタン!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inはぐみ〜

 

「こーくんっ!」

 

ドアを開けてみると、まだこーくんは居た。

 

「はぐみ……どうして───」

 

「こーくん……ホントに行っちゃうの?」

 

「……許してくれ。約束は守れなかった……」

 

悲しそうにこーくんが言った、約束が守られないのは分かってた。だって───

 

「……ううん、はぐみ、難しいことは分かんない。だけど───こーくんがやってることは、悪いことじゃないって、分かってるから。」

 

こーくんはびっくりしたような顔になって、だけど、すぐに笑ってありがとうって言ってきた。

 

「あとね、もうちょっとだけ待ってくれる?」

 

「───まさか。」

 

「かのちゃん先輩も、薫くんも、こーくんにお別れを言いたいって……」

 

ほんとはつぐにも、ともちんたちにも言いたかった。でもどうしてかダメって思った。

 

だってこーくんが困るから、最後ぐらい困らせたくなかったから……

 

「はぐみ───」

 

こーくんはいつもみたいにじゃなくて、もっと強くぎゅっとしてくれた。温かくて、心地が良い。本当は、こーくんがこのままずっとここにいて欲しかった。

 

でも、そんなことは無いって分かっても、そんな期待をしてた。

 

絶対に叶わないって分かったとき、このハグも最後だって分かった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in薫〜

 

 

 

「薫……花音ちゃん……」

 

「酷いじゃないか幸介、何も言わずに行ってしまうなんて。」

 

「すまない。だが、これが───」

 

「後腐れ無いやり方。かな?」

 

幸介の言葉をピシャリと言い当てる。

 

彼は、彼の本質はネガティブだ。つぐみちゃん達と関わっている彼と、今まで学校で見てきた彼。そのギャップに初めは驚いていた。

 

容姿端麗文武両道という絵に描いた天才だが、誰に対しても冷淡な反応しかしない。という噂を聞いていた中等部時代、私は幸介が()った演劇を見て初めて興味を持った。

 

最初に自身の内にあったものは意外───といったものだった。何人からも忌避される人物が演劇をするのか。という何故(どうして)でもある。

 

そして高等部一年、同じクラスになった。

 

その頃の私はもう只の"薫"ではなく、『瀬田薫』としての存在が当たり前になっていた。

 

勿論彼にとってもそうだった。だが、私は中等部で観た演劇が忘れられなかった。彼は役になりきるのではない。彼が役なのだ。有り得ないという領域ではない。彼の演じたのは悪役のボスのジョーという役の筈だったのだ。

 

だが、違った。悪役のボスの幸介であった。ジョーは幸介を演じたのだ。

 

その役作りの違いに興味を持った。それを知れば、もっと演じれる幅が広がるのではないかという打算を込めて彼を演劇部に誘った。………ファンの前で。

 

知っての通り幸介は断った。今でこそ思うが、ファン怒り買うと知った上で言ったのだろう。私と離れる為には最適な手段といえる。

 

だが、思った以上にそれは悪手であった。今日に至るまでそれは続いているのだから。

 

彼女らの鎮めるには結託して行動するしかない、と辟易した顔で言いに来たのは今でも記憶に新しい。そうして彼を知る機会が増える度、違和感を覚えていた。

 

先程も言った通りギャップがありすぎた。そして、幸介に親しい人たちの話を聞く毎に得体の知れぬ突っかかりが生じた。

 

それは双方の話が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という状態だったから。

 

つまり、極めて離れた二面性を併せ持つが為にどちらの話も不自然だと感づいていたのだろう。

 

それに気付いて、長らくは羽沢幸介という人間を理解している。という事だと思い込んでいた。幸介の過去を観るまでは……

 

「……私自身が君の完璧な理解者とは言えない。だけど、これだけは言わせてくれないか。───他の世界に言ってもどうしてもという時は私達を頼ってくれ。」

 

───結論から言えば彼は……生まれる前から私達を知っていたのではないかと思うのだ。それがもし正解だとするなら、彼の取ってきた行動に説明と理解を示せるのだ。

 

最も、その事は幸介自らが伝えるまで心にしまい続ける事に決めている。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in花音〜

 

幸介くんが居なくなるって理解(わか)っていた。それが何時になるか分からないから、私はちょっとだけ彼に迫ってみた。

 

次第に私の中には彼が居なくなるくらいなら何でもして引き止めた方が良いのではないか。と考える自分が出てきた。

 

浅ましい考えだと思う。彼を応援し、動かしたのは自分であるのに───それを止めようとするなんて以ての外だ。

 

……でも

 

今何も言わないでいたら絶対に後悔する。

 

だから、少しだけ……ほんの少しだけの欲を込めて

 

「あのね幸介くん……もし、それが終わっても───絶対に居なくならないでね?」

 

縛り付けた。彼を縛り付けてしまった。彼はこういう約束は守ろうとしてしまうだろう。

 

本当に良かったのか。

 

私には分からなかった───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

「……知ってるか?」

 

俺は彼女らに助けられた。

 

「君ら3人は一人の男を救ったのだ。」

 

俺に道を教えてくれた。彼女らの本心を聞かせてくれた。

 

君たち(ハローハッピーワールド!)が世界を笑顔にするにはちっぽけな数だとは思うが……」

 

罪と向き合う事、俺がすべき事だ。

 

「一人を笑顔に出来るのだ。逆に言えば世界中を笑顔に出来る。だからこそ───」

 

感謝は尽きない。尽きることは無い。

 

「笑ってくれ。笑って、送り出してくれ。」

 

「「「……!」」」

 

思い出したかのようにいつもの三人に戻った。最後まで彼女らには救われた。

 

……俺はもう、挫けない。

 

「……ありがとう、そして、またな。」

 

俺は彼女らを下がらせ、タイムマシンを起動させた。

 

放電現象が起きて、辺りが遅くなっていく。その内、完全にときがTomAっt───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────

────────────

───────────────────

─────────────────────────




俺たちの戦いはこれからだ!


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Happy birthday 蘭


蘭とモカしか入浴シーンが無いやん……(絶望)


4月

 

様々な始まりを見せるこの季節……華でも咲かしに行きましょうか。

 

…………………………

 

はい!という訳でね!(ごまかし)

 

後十日で蘭の誕生日だ。今年は何にしようかな……

 

蘭ってな。ガルパのプロフィールでもそんなに好きなもの書かれてなかったからどうなんだろうって思って調べてみたんだが───

 

───全然分からん☆

 

いやさぁ……マジで嫌いなものもグリーンピースしかないしその辺フワッとし過ぎなんだよね。だからこういうプレゼントと渡すときは二番目ぐらいに悩んでいたりする。一番はつぐみだ。

 

どうフワッとしてるか参考までに振り返ってみよう

 

……………

………………………

……………………………

 

〜小学〜

 

『らんちゃん!』

 

『つぐみちゃん……とおにいさん……なに?』

 

『今日蘭ちゃんの誕生日でしょ?つぐみと一緒にプレゼント選んだんだ。』

 

『がんばってえらんだからよろこんでもらえるとうれしいな!』

 

『……あけて良いの?』

 

『断る必要は無いから、開けても良いよ。』

 

『わぁ……!きれいなかみどめ!』

 

『らんちゃんににあうっておもったんだ!』

 

『ありがとう!たいせつにするね!』

 

……………………………

……………………………

……………………………

 

〜中学〜

 

『随分そわそわしてるな。』

 

『……何?』

 

『いや、おかしいなー……と。』

 

『じゃあニヤニヤするの止めてよ……』

 

─────────────────────────

 

〜in蘭〜

 

カツ…カツ…

 

(皆、用事があるって帰っちゃったな……)

 

『モカまで用事があるって言うし……はぁ……』

 

プルルルル

 

『電話……?父さんから?』

 

『…もしもし』

 

【蘭、今すぐ帰ってきなさい。】

 

『えっ』

 

【急で悪いが集まりに出て貰うことになったからな。……直ぐに帰って来なさい。】

 

『ちょ!ちょっと!父さん!』

 

プッ───ツーツー

 

『まっ───……きれた……』

 

『なんで……今日に限って……最悪』

 

─────────────────────────

 

〜in幸介〜

 

『…あんな言い方したら駄目ですって』

 

『……すまない。つい……』

 

ガラガラ

 

『……うー、キツい…』

 

『ごめんなさいねぇ……ひまりちゃんに合う着物が無くて……』

 

『うーん……やっぱり恥ずかしくないか?』

 

『初めてだったからあんまり上手に出来てないけど……』

 

『モカちゃんのセンスに間違いは無いのです!エッヘン!』

 

『センス以前に気持ちだな。てか皆違う花を行けたんだな。』

 

『アタシはゼラニウムって花を活けたな』

 

『私はツルニチニチソウって花を活けたよ。』

 

『あたしはマーガレット〜』

 

『私はイキシアで、お兄ちゃんは?』

 

『俺は───』

 

ガチャ

 

『全員隠れて……蘭の父さん後はお願いしますよ…!』

 

『…ああ』

 

『ほら早く!』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『うわー、すっごく緊張しちゃう……』

 

『アタシもちょっとな……』

 

『こういう大掛かりなサプライズってしたこと無いもんね。』

 

『まあ大丈夫だろ。心が籠もってることは理解してくれる。』

 

『幸介さん〜?ちょっと言い方が悪いんじゃない〜?』

 

『…伝わってくれないと困るし。』

 

ガラガラ

 

『……!蘭が来た…!』

 

『打ち合わせ通りに……よし!行くぞ…!』

 

ガララ!

 

『『『『『『『誕生日おめでとう!』』』』』』』

 

『………え』

 

『蘭〜……って、泣いてるの?』

 

『……泣いてなんかない!』

 

『サプライズ成功!蘭、これ見て!』

 

『これ……もしかして』

 

『そう、アタシらで活けてみたんだけど…なんだか恥ずかしいな。』

 

『ううん。…これ活けたのは巴でしょ?』

 

『えっ、そうだけど』

 

『イキシアがつぐみ、ツルニチニチソウがひまり、マーガレットが……モカ。で、このローダンセは幸介さん……だと思うけど』

 

『スゴい!全部正解だよ蘭ちゃん!』

 

『……マジかぁ、モカに似せて活けたんだけどなー……』

 

『ふっふっふー、モカちゃんの言うとおり蘭はやっぱり間違えなかったじゃん?』

 

『間違えたりなんかしないよ……大切な……幼馴染なんだし

 

『……よし、じゃあご飯にしようか。』

 

『皆もウチで食べるの?』

 

『うん!皆で手伝って作ったんだよ!』

 

……………………………………

……………………………

……………………

 

あの時は料理が多過ぎて俺が作ったケーキが食べれなかったんだっけ。

 

懐かしいな……

 

って感傷に浸っている場合ではない。早く蘭へのプレゼントを考えねば

 

……マグカップとかはどうだろうか。うーん……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜練習スタジオ〜

 

「「「「「ハッピーバースデー蘭!」」」」」

 

「ほら蘭、立ってないで座って座って。」

 

「お兄ちゃん、ジュースは?」

 

「あ、一応貰うよ」

 

何でも無いようにスタジオにいる俺に驚いたまま固まる蘭。流石にスタジオまでは来ないとでも思ったか?

 

「……幸介さん仕組んでた?」

 

「いや、今回は予想して来た。」

 

「あたし達は幸介さんが来るって思ってたからね〜」

 

「まあ、小学校の時からずっとアタシらの誕生日祝ってくれてたしな。今日も来るって考えてたし」

 

「そりゃそうだ。取り敢えずプレゼントから渡そうか。」

 

今回は皆で出し合って買ったらしい。あれは……服だな

 

「蘭ってあんまり服とか興味無いでしょ〜?だからモカちゃん渾身の一枚を選んだんだ〜」

 

「モカちゃんのに合うようなボトムスを選んだから合わせて着て欲しいな!」

 

「私は靴を選んだよ!蘭って靴もあんまり買わないから蘭の雰囲気に合うようなのにしたよ!あっ、いろんな服に合うような靴を選んだから安心してね!」

 

「アタシはそんなにファッションとかには興味ないんだけど、蘭が好きそうな帽子を見つけたからそれにしたんだ。……気に入ってくれると嬉しいな。」

 

「へぇ〜蘭の服一式ねぇ……」

 

「……高かったんじゃないの?」

 

「もう!そんなこと聞くのは駄目!蘭は気にせず着てるだけで良いの!」

 

「う、うん」

 

納得させられたように蘭が頷く。次は俺か

 

「じゃあ俺からはこれだ。」

 

そう言ってラッピングされた小さな小箱を渡す。

 

「服とかじゃなさそうだな。」

 

「俺ファッションセンス無いしな……じゃあ、開けてくれ」

 

蘭が開ける。

 

「………これ、ペンダント?」

 

「ああ。……但し世界で一つだけどな。」

 

「えぇ!?もしかして幸介さんが作ったの!?」

 

「これ意外と恥ずかしいな……ま、蘭に似合う形にしてみたんだが…ここ、茜色のガラスだろ?」

 

「……ガラスがどうかしたんだ?」

 

「───ッ!もしかして!」

 

何かに気付いた蘭がペンダントのガラスを覗き込む

 

「説明する前に分かったか……ま、蘭のやった通り覗き込んだら勿論ガラスに色が付いてるから景色が赤く染まって見える。まるで夕焼けに照らされた感じにね。」

 

「あっ!それってもしかして!」

 

「考えてる通り、Afterglowをイメージしてみたんだ……ものすごく遠回しなんだけどな。」

 

ちなみにガラスには稲妻のマークを彫り込んでいるAfterglowのあのマークだ。

 

「…ありがとう。……大事にする。」




蘭のHBDでした。巴もいつか書きます。てかAfterglowは全員書きます。

誕生日回はその日と考えて貰えば幸いです。


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Happy birthday 巴

大幅に遅れた。

最近幸介のキャラブレブレになってる。……早くも記憶力の低下が見られるな……

今回は(も)起承転のみの駄作です。後に改変するかもしれません。


蘭の誕生日から4日、それが巴の誕生日だ。

 

さて、ほぼ同時進行みたいな感じで行くが、とりあえず蘭の誕生日プレゼントであるペンダントのデザインは固まった。あとはこのままデザイン案まで近付けれたら完成だ。

 

次は、巴の誕生日プレゼントかぁ……どうしようか。

 

巴って飾らないんだよね。いやファッションにはこだわるけどカッコいい系ばっかだし、小さいオシャレもイヤリングとかピアスとかそんなんだし、そもそもファッションセンスが巴より無い俺には無理だ。だから代わりに実用的なものを……何か無いかな……

 

「あ!あの……何か、困ってるんですか?」

 

…松原花音。───そうだ!巴と同じドラムじゃん!ドラムの何か使う奴とか聞いてみることにしよう!

 

「友達への誕生日プレゼントを悩んでいて……」

 

「そ、そうなんだ。」

 

そういやハローハッピーワールドはまだ結成していないからいきなり言えば不自然か……上手いこと聞けねぇかな?

 

「そうだ、少し案を出してくれませんか?」

 

「…うーん、友達の事が分からないからあんまり良いアイデアじゃ無いと思いますけど……やっぱり好きなもの、とか身につけるものが良いと思うんです。」

 

「身につけるもの……あ、ライブの衣装とかの装飾品とか……」

 

「……そのお友達は、その、ライブをするんですか?」

 

「凄いカッコいいドラムを演奏しているんです。でも、私はあんまりファッションセンスは無いので……だからドラムで使用するようなものをプレゼントにと思っていて」

 

「……あ、あの!良かったら一緒に見に行きませんか!?」

 

やったぜ。

 

「……えっと、何故?」

 

「あのっ、私、ドラムやってるんです!だから……ちょっとは、役に立てるかなぁ……って思って……」

 

「ドラムを…」

 

それっぽい反応しておく

 

「やっぱり───」

 

「───すみませんがお願いしても?」

 

おっと、撤回はさせないよ?折角言い出したんだから存分に質問に答えて貰おうではないか。しかも付いてきてくれるから間違うこと無いしな。

 

「…っ、はいっ!」

 

「では、予定が合う日を………」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜数日後、待ち合わせ場所〜

 

リンゴン

 

「お、RINEだ。」

 

『幸介くん、もう待ち合わせ場所に来てるかな?』

 

『はい、駅前の犬の像ですよね。』

 

『あれ?周りには幸介くんは見えないよ?』

 

『ええと、どんな服装ですか?俺は黒のパーカーにジーパンです。』

 

『私は青のトップスに白のスカートだよ。でも、そういう服装の人は周りにはいないです……』

 

頭上に疑問符を浮かべたくらげのスタンプ

 

『違う場所だったか、ちょっとそこで待っててね』

 

一通り返信を終えて、俺はとある場所へ向かう。実は駅前の像は二つあって、犬の像と猫の像があるのだが見分けるのは真正面から見ないと分かりにくいのだ。

 

花音ちゃんは間違えて猫の像にいるのだろうけど、そもそも場所は北口と南口という真反対に位置するから普通は間違うことは無いんだけどね……

 

まあ、流石は方向音痴と言われるだけはある。……予想通り南口に居た。

 

「花音ちゃん」

 

「あっ、幸介くん!」

 

ニコニコとしながらこちらへ向かってくる花音ちゃん

 

彼女の親身に困っている人を助けようとする姿勢が素晴らしい。白鷺千聖も甘いわけだ。

 

「それじゃあ行こっか。」

 

「江戸川楽器店、だっけ?」

 

「うん」

 

こっちだよと先導する花音ちゃん。流石に通っているお店の道ぐらいは覚えてるよね。多分ね?

 

適当な会話をしながら進む。ここまでで違和感を持った人は多いはずだ。

 

呼び方や話し方が親しくないか?とね。

 

なぜこうなのかというと、RINE交換した後にいろいろ考えた結果花音さんって呼んでたら本人が畏まらなくても良いって言ってきたんだ。あれこれ話して二人とも普段通りの話し方をすることになったのだ。

 

まあ、気が弱い?から相手に気を使わせたくないんだろう。店でもいつもありがとうと言ってくれるし、そういった礼を欠かせてない。そういやガルパでもちゃん呼び組だったな……

 

「そういえば誕生日の友達ってどんな子なのか教えてくれるかな?好みとか分かってると選びやすいと思うんだ。」

 

「んー、けっこうカッコいいのが好きだから、カッコいい感じのドラムって無いかな?」

 

「……ドラムだけじゃなくて殆どの楽器は演奏する人それぞれの調整があるから、あんまりオススメ出来ないかなぁ。もしも買うとしてもドラムセット一式で買わなきゃいけないし、それなりに値段もかかっちゃうから……こういうのは適度に交換するものとかが良いんじゃないかな?」

 

「消耗品とかか……」

 

……バチ───じゃない、スティックだ。よく花音ちゃんも折れた折れた言ってるから消耗品なんだろう。自作しても良いがやはり素人品より専門店の方が手に馴染むだろうし、耐久性も良いだろう。

 

「スティック。スティックとかはどうだろうか?」

 

「そっか、それなら良いんじゃないかな。」

 

ドラマーにもお墨付きを貰ったし、これで行こうかな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜江戸川楽器店〜

 

「……多くないか?」

 

ずらりと棚に置かれてあるスティックを見て思う。俺の背丈を越すぐらいの棚にびっしりとだ。

 

こんなんじゃ選べるのか?

 

「じゃあ、その友達はどういうジャンルを叩いてるの?」

 

「ジャンル?」

 

「ええっと、ポップとかロックとかって分かるかな?」

 

「ああ、ロックだよ。」

 

「そっか、じゃあ……ここからこの辺ぐらいかな。」

 

示された場所のスティックを目にする。……他と何が違うんだ?

 

「これとか駄目なの?」

 

「材質によって出る音も違うし、ロックだと激しく叩くから折れにくいのが良いと思うからここら辺のものがいいと思うな。」

 

駄目だわかんね。

 

「そうなのか……お、これとか良いんじゃない?金属が入ってて折れにくいってあるし。」

 

「それは………」

 

……………………

…………………………………

…………………………………………………

 

〜誕生日前夜〜

 

うむ、あれから色々話し合った結果金属の入ってる奴にしたぞ。ロックにも向いているというらしいしな。花音ちゃんに聞いてみるとよく折れる話はホントで、スティックってまあまあ高いから割と痛い出費なんだとか。それでバイトをしていたのか……

 

「お?あこからRINE?」

 

『こー兄!明日ってサプライズとかするの?』

 

『しないしない。足並み揃えようとしてもあこが一番早く祝うでしょ。』

 

『もー!それはもうやらないって!』

 

小学生のとき、あこが寝ぼけてサプライズをバラすという珍事が起こったのだが……初めて泣いたのを見たのはあの時だったな。あと一回だけ巴と喧嘩して泣いたっけ……その時は家出して俺の家に来たけど次の日に巴が来て仲直りしたな。

 

あの時は麗しい姉妹愛を感じたね。

 

「巴に合わなかったらどうしようか。……こんな事ならもう少し調査をするべきだった。」

 

誕生日の前日に言うべきことじゃない。

 

スティックが巴に合うことを願いながら早くに就寝することにした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜当日〜

 

「こんぐらいはサプライズしても良いだろう。」

 

早朝───といっても6時だからそこまででもないが、早い時間帯に俺は巴の家に来ていた。

 

巴の両親には許可を得てるぞ?というより以前から巴の両親にはよくして貰ってるからな。今回も快く許可を出してくれた。

 

……つぐみが知らない男に朝早くから会うとか俺だったら嫌なんだけどなぁ……

 

ピンポーン

 

『はーい』

 

この声は巴だ。

 

「やっほー」

 

『幸介さん!?』

 

『えっ!?こー兄!?』

 

へへへ……彼奴ら驚いてやがるぜ……

 

我ながらショボイな。もっと無いのかと思う。

 

カチャ カチャ ガチャ

 

「こんな朝早くにどうしたんですか?」

 

「お察しか、ハッ───」

 

「───待って!」

 

あこが巴の背後から飛び出してくる。あこのロングヘアー久々に見た。

 

「こー兄!昨日サプライズはしないって言ったでしょ!」

 

聖堕天使は随分とご立腹のようす。でもバレちゃサプライズじゃないもんな。

 

「みんなでサプライズはしないとは言ったけど……」

 

「ズルいっ!プレゼントも持ってきたんでしょ!」

 

プンスカと怒るあこの手には包装された小箱があった。俺が来たから慌てて持ってきたんだろう。

 

「じゃあ一緒に渡そうな?それで抜け駆け無しってことでいいだろ?」

 

「……うん。じゃあ───」

 

「「ハッピーバースデーおねえちゃん(巴)!」」

 

と同時にプレゼントを渡す。それはあこも同じだった。

 

「幸介さんもあこもありがとうな!もう開けてもいいか!?」

 

「うん。俺は───」

 

「───おお!幸介さんはスティックか!ちょうどそろそろ変えようと考えてたんだ〜♪」

 

開けるの早いな……まあ上手いこと合ったプレゼントだったし、良かった良かった。

 

よいプレゼントを選べたので花音ちゃんに感謝を感じているとあこが固まったままだと気付いた。

 

「?…どうした、あこ?」

 

巴も疑問に思ってか声をかけても固まっている。しばらくして───

 

「あこも……プレゼントがスティックなの……」

 

            

←to be continued…

 

 

 

ふええ……あことダブっちゃったよぉ……

 

なるほどね。巴がスティックを欲してる事前情報を持っているならあこも同じドラマーだからスティックを選べた。あこの知り合いには沙綾ぐらいしかドラマーがいないからダブらないだろうと考えて最適なプレゼントだろう。

 

……やっちまったなぁ

 

「わりぃ……別のものにしときゃ良かった……」

 

「ううん!こー兄が悪い訳じゃないよ!ただ、ちょっと……」

 

朝の日差しとは反対に場はどんよりとしている。

 

「…! これ、同じスティックだ。」

 

巴が2つのプレゼントを見て呟く。そこまでダブってるとは……ここまで来るともはや運命だな。

 

「……んな偶然あるのか。」

 

数あるスティックの中から金属の芯が入っているスティックを選んだなんて。あの店で70近くはあったぞ。

 

「そうだ!」

 

「おねーちゃんどうしたの?」

 

「これ、同じスティックだから片方ずつ使えば良いんだ。」

 

「えっ!?でも、おねーちゃんこれ太さが違うよ…?」

 

「折角二人が選んでくれたんだし、ちょっと違うけど慣れれば問題ないからな……」

 

「巴がそれで良いなら……良いが。」

 

どこか納得いかないまま巴たちと別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

……今度ラーメンを奢ろう。それが良いだろうと考えた。




実は巴は交換用にスティックを既に買っていた。というのが裏話。幸介のスティックを喜んだのは試してみたかったものだったからです。

3期のスナッピーちゃんってドラムのパーツの名称から来てるのでしょうか。この話を書いていて思いました。

最近ゴタゴタ続きなので投稿頻度落ちているのは申し訳ないです。


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Happy birthday モカ

誕生日回2回連続で続きそう……

はっ!その為の番外編だ!


夏休みも終わり、クソ暑い中制服で登校するのも3日目。

 

今日はモカの誕生日だ。

 

いつものように回想から始めようか……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜数日前の夏休み〜

 

「モカの誕生日か……」

 

しっかし、モカの誕生日プレゼントは凝ったものを送れなくて悩むのだ。一昨年は手作りパン。去年は夏休みに前倒しにして世界のパン展というイベントに連れて行った。

 

蘭とペアにしてペンダントとかのアクセサリーにしようかと考えたが蘭が想像以上に大切にしてくれていてやめた。しかも巴の誕生日プレゼントをスティックにした以上5人でお揃いということにもできないし、モカに同じのをプレゼントすると蘭の持つ特別感を損ねてしまう可能性があってやめたのだ。使いまわしだと思われるのもね。

 

……実用系で行くのもなぁ。モカが驚きそうなプレゼントは……うーん、やっぱり意外なところを攻めてみるか。

 

アクセサリは無しで、服……いや、センスが無い。本とか漫画は?……そこまで驚くものでもないか。

 

いやー、マジでどうしよう。あ、沙綾に頼んで似合いそうな服を見繕って貰うか?

 

───いや!服と言えばあれがあるじゃないか!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜駅前〜

 

……想定の範囲外だ……まさか、この世界にWEGOが無いなんて……

 

ま、まあ、あれは黒の服しか販売されなかったからあったとしても再現できる訳じゃなかったからな!あった所でだ。

 

……デパートに行こう。デパートだったら服屋も多い。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜デパートの衣類階〜

 

……くそっ!来る途中で買った女性ファッション誌なんか1ミリも役に立たねえ!

 

女性用衣類販売店に男が単身で行くのもおかしいので俺は周囲から奇異の目に晒されていた。これ俺って学校の比じゃないぐらいヤバい奴として見られてないか?

 

やはり沙綾に頼み込んで───

 

「「っと、ごめんなさい(すみません)」」

 

危ない、ぶつかりかけたな………って今井リサじゃないか。こんな所で会うなんて奇遇なもんだ。

 

……ん?今井リサ?……彼女って確か……

 

そうだ!女子力最高レベル!現代(イマドキ)女子でめちゃくそカワイイ超ヤバいと聞かされていた。今こそ助力願おう!

 

「今井さん、でしたよね?折り入って頼みがあるんですが。」

 

「……えっ。」

 

引かれているような気もするがこれしかないのでやけくそだ。

 

「単刀直入に言います。モカに似合う服を見繕ってくれませんか?」

 

「えっ……?」

 

この人さっきからえっしか話さないんだけど……大丈夫かな?

 

「モカ、青葉モカです。確か同じバイトだと……」

 

「───えっと、モカと同じバイト、です?」

 

──いや、これ困惑してるだけだ。まあそうか、俺は学校だとヤバい奴扱いだし、そんなのと女性用衣類販売店で出会うのも困惑するもんか。

 

「……急ぎすぎましたね。モカの誕生日プレゼントとして服を贈りたいのですが、私ではセンスが足りず似合った服を選べない。ですのであなたにご協力願おうとしているのです。」

 

「ああー……なるほど……」

 

なんとか理解できたという風であった。が、どこか渋っているように思える。今井リサが生命線だ……断られるわけにはいかない。

 

「……対価が足りませんか。でしたら……」

 

適当に財布の中を探る。お、これとか良さそうだ。

 

「この猫倶楽部のブラックチケットを差し上げますので、何卒その知恵を貸していただきたい。」

 

「……ふふっ。」

 

?何故笑った?

 

「幾ら頼み事でもそんなに畏まらなくて良いでしょ……」

 

「頼み事だからこそ丁寧に……」

 

「いやいや、同い年だし、あれって上司とか目上の人に使うヤツじゃんw」

 

今風JK……か。どうやら俺の持論は分からないようだった。『w』なんて久々に見たぞ。

 

「うん、オッケー。モカに似合う服を探せば良いんでしょ?」

 

「……っ感謝します。」

 

「あはは、普通で良いよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「ふふっ……じゃああっちのお店に行こっか。」

 

柔らかい言葉遣いにしても今井リサは少し笑ったままだった。

 

そんなにおかしいだろうか?この話し方……

 

「あっ、このチケットを」

 

「いや、そういうのは良いって───」

 

「いや、受け取って欲しい。」

 

「……じゃあ、貰うね。」

 

……どうしてこうも渋々なんだろうか。……俺は悪魔か?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あれからはもう凄かった。パーカーとズボンとスカートしか単語が分からなかった。しかも目を輝かせた今井が次々と候補を選ぶものだから追いつけない。……一体何着候補が出たんだろうか。しかもなんなのか分からなかった。

 

言われるがままに数着購入してしまった……が、モカはもっとカワイイ系でも似合うけどそんなのあんまり着ないから是非一式で着せてみたいという今井の論には賛成なので後悔はしていない。

 

だが、金額的には間違いなく今までで一番高いプレゼントとなった。いや、出費が痛い訳じゃないんだ。ただ暫くはパンとコロッケを買うのを控えよう。

 

ずっと家の手伝いをしているという理由で懐は温かいことが多かったがここまで減ったことは無かったぐらい出費をしたんだが───いや、もういい……

 

モカは自分の誕生日ということを絶対に知らせてくるのでそこで渡す。今日は学校なのでモカはまずパンを奢ってほしいな〜とか言うんだろう。その時に渡すというのはどうだろうか。……いや、学校に行くのだから行きは荷物になるから下校時に渡せば良いんだ。

 

「……この感じ、外にいる。」

 

なんとなくそんな予感がしたので窓から覗いてみるとやはりいた。……しかし大したもんだ。今って6時30分だぞ?モカの家からここまで10分程度かかるからかなり早く準備しないといけないだろう。(女の子ということを考慮して)

 

「よう」

 

「あ、おはよー幸介さん」

 

「んでなんだ?こんな朝早くに?」

 

「今日はモカちゃんのアンテナがビビっと電波を捉えたのです。何か良いことありそうだな〜って思って早く来たんですよ〜」

 

野生のカンか

 

「で〜?幸介さんはどうしてこんな早くに〜?」

 

うわ、絶対誕生日プレゼント催促してる。大体こういうときはモカって近付くもん。

 

「いや、モカがいたからいつもより早めにな。」

 

まだ時間に余裕があるから今渡すのでも良いな。よし、今渡そう。

 

「モカ、誕生日おめでとう。」

 

「……唐突すぎじゃない?」

 

「今でも良いかと思ってな。これ、プレゼントだ。」

 

モカは受け取ってプレゼントの中身を取り出す。

 

「服だ……!」

 

珍しそうに言われても反応に困るのでそうだと返した。

 

「これ、幸介さんが選んだんじゃないでしょ?」

 

何も一瞬で見抜かなくても良いじゃないか。俺のセンスはそこまで壊滅ではないはずだぞ。

 

「ある人物の協力をな……」

 

「これ今着ても良いかな〜?」

 

「今?いや今か?…まあ時間に余裕があるし良いと思うけど……」

 

「じゃあちょっと借りるね〜」

 

……すごい自然にウチに入ってったけどモカはどこで着替えるつもりなんだろうか?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「幸介さ〜ん」

 

「おぉ……」

 

これは…なかなか……

 

「ふっふっふー、モカちゃんの魅力にタジタジですな〜♪」

 

悔しいがつぐみと肩を並べているというのは否めない。パーカーといえばモカというイメージだがこれを見れば皆改めざるを得ないな。

 

今井に頼んで正解だった。初めはこういった系統は似合うのか疑問だったが、彼女はここまで似合うと見抜いていたのだ。

 

 

 

 

……やっぱりそういうのって───センスの差、なのか……?




猫倶楽部
完全予約制の猫カフェである。約5ヶ月という長い期間でかなり割高な値段だが、その分“質”はものすごく良い。猫カフェのレビューでは楽園と評されることが多く、幾度となく雑誌の取材を受けてきた実績もあるという名店。幸介は別の猫カフェで猫倶楽部常連に温情でチケットを貰った。



もうそろそろRAS追加ですねぇ……

流石にアニメ情報だけで話し方とか長めの文章を作るのは私には少し難しすぎたのでありがたいですね。あとバンドストーリーが25話もあるということなのでしっかり目を通して学ばねば……今年はモルフォニカかRASの水着イベじゃないよな?……な?


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Happy birthday ひまり

つぐみの誕生日はストーリーと進行と同じにしたいので2連誕生日回です。


文化祭、運動会、さらに中間テスト(学校で睨まれない日)を乗り切った。もはや恒例となった誕生日だが、ひまりもひまりで悩む。万年つぐみを追う俺には流行など追えぬのだから、今風なものは贈れない。

 

となると他になるんだね。さて、過去15年間(といっても10年くらい)を振り返ろうか。

 

最初は髪留めだっけか。この頃はひまりは髪を後ろに束ねていたから適当にシュシュを見繕ってプレゼントしたのだ。

 

手作りお菓子、花束(本人の希望)、ミラクルほいっぷ♡ペグペグという漫画……まあ、つぐみと一緒で歳相応というべきか。ついて行くのは難しかった。というか近年は食べ物シリーズばかりだ。

 

いやネタ切れとかじゃなくてホントについていけなかったんだよ……

 

という訳で他の物で行くぞ。

 

まず食い物は駄目。そして俺自身で選べるものが好ましい。でないとまた誰かに頼まなければいけないし、自分で選んだ方が良いに決まってる。最後は金額が高すぎないこと。まだちょっと財布は軽いからな

 

……うーん、おてあげだぁ……

 

いや本当にどうしようか。漫画の作者にサインを貰うとか……?駄目だ……ひまりが好きな漫画を知らない。

 

……原点回帰して髪留めは?

 

髪留めならば良いかもしれない。下手にメイク道具とか買っても迷惑だと思うしな。この程度が一番良いのかもしれない。

 

よし、早速───今回は前回の反省を活かして入念に調べてから行こうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「髪留め……検索、と。」

 

ん……?これ挟むやつじゃん。あ、ヘアゴムって言うのね。なるほどなるほど。

 

ではヘアゴムで検索して……

 

「!?」

 

なんだこれはっ!?本物のパンで出来たヘアゴム!?いやいやこんなもん腐るでしょ……

 

うーむ、こんなんじゃ駄目だな。他のはなんか大人っぽいのばっかだ。もうちょっと可愛い奴を好むと思うのだが……

 

ヘアゴム 可愛い

 

これなんか良いな……でもキャラ系は幼すぎる印象があるし、こう『飾らないけど可愛い』みたいな感じの奴は無いのか?

 

……お、これは良いのでは?これも似合うだろう。いや、飾らない黒というのも良いのかもしれない……

 

別にヘアゴムなんだし、一つより多い方がいいだろう。ひまりは2つ括っているしな。

 

───あ

 

よく考えたらヘアゴムを多く扱う店ってなんなんだ……?というよりまた単身突撃しなければいけないのか……

 

流石にモカの時みたくなるのはもう嫌なので誰かに頼んでついて来て貰おう。

 

誰に頼むべきか……そもそも頼むという考えがいけないな。やはり誕生日プレゼントは自身で選んだものが良いと思う。

 

店は……駅前にあるだろう。いや、ショッピングモールに多く扱う店があった筈だ。そっちの方が確実だ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜ショッピングモール〜

 

……うわぁ、思った以上に入りにくい……

 

なんだアレ……え?ホントにこれ入っていいの?俺不審者になるよ……?

 

「って幸介さん!?」

 

「沙綾……!あ、あと……香澄ちゃん、だっけ?」

 

まあまあ商店街に来ているので顔見知り程度にはなった。俺のことははぐみからちょくちょく聞いてたらしい……イヴちゃんや花音ちゃんが何故か昔のことを知ってるのははぐみから聞いたんだろうか。

 

「はいっ!つぐのお兄さんこんにちは!」

 

「覚えててくれたのか……意外。」

 

「……で、幸介さんがここにいるのって珍しいね」

 

「沙綾。俺だってモールぐらい行く。」

 

「でもここ女の人用の服とかしか無いフロアだよ?ここに一体何しに来たの?」

 

「………」

 

そうなのか……知らんなかった。道理で先程から視線を感じるわけだ。

 

「……沙綾。すまんが頼み事があるんだ。」

 

「…何?」

 

「俺と目の前の店で買い物に付き合ってほしい。……いや、付き合って下さい。」

 

「……はぁ。香澄、ちょっとの間だけど待ってもらって良い?」

 

「良いよ!」

 

「ごめんね香澄ちゃん。」

 

「幸介さん、どうせひまりの誕生日プレゼントを買うつもりなんでしょ?」

 

「まだ何も言ってないが……」

 

「いや、幸介さんがこういうとこ来るのって大体そういうのしか無いからね。しかも来週ひまりの誕生日だし。」

 

まあ、十年余りお隣さんだからな。しかも純と紗南ちゃんとよく遊ぶから、会う頻度でいえば蘭とかを差し置いてかなり高いしな。はぐみの次ぐらいに会ってるとおもう

 

「……そうだよ。ヘアゴムって奴をいくつかプレゼントしようって思ってな。」

 

あーあ、結局頼ってしまった……ま、仕方ない。こうなったらこういうものをよく知る沙綾に良いものを選んで貰った方が嬉しいだろう。

 

「やっぱり。で、どんなのが良いって思ったの?」

 

「これとかだな。」

 

スマホを見せる。すると───

 

「これを買おうとしたの!?いやいや、ありえないから!」

 

「え!?駄目なのか!?」

 

「いや、折角の誕生日プレゼントでただの黒のヘアゴムは流石に無いよ……」

 

「シンプルで使いやすそうだと思ったんだけどなぁ……」

 

「もっと可愛いのを選ぶの!ほら、これとか良いでしょ!」

 

「いや、これは……飾りが付きすぎて括れなく無いか?邪魔にもなりそうだ。」

 

「括れるよ!逆にそれ商品としてどうなの!?」

 

ジャラジャラしてるし絶対邪魔だろうと思ったのだが、沙綾は思いっきり否定した。……こんだけ装飾付いてたら絶対邪魔だと思うが身に着けたことは無いからなぁ……

 

「もう!幸介さんはそういうのは自分じゃなくて他を見て選んでって言ったよね!」

 

「いや……!」

 

「何?」

 

「何でもない……」

 

やっぱり沙綾はアクセサリーの鬼だ……昔っからずっとこうなのだ。まあこだわりというのは理解できるが何もここまで否定しなくても良いじゃないかと思う。最近は紗南ちゃんも沙綾を真似てるのかこういうのにうるさくなったしなぁ……乙女の価値観ってやつなのか。

 

「これとかどう?あ、あとこれも合いそう」

 

「お、おお……」

 

この後議論した後、いくつか選んだものを買った。沙綾にはお礼として目立つところにあった髪留めを買って渡した。まあまあ人気目のやつらしくダメ出しはされずに済んだ。……もうちょっと違う感じのやつの方が沙綾に合うと思うけど、あそこまで言われてはこうやって選べば間違いは無いと分かった。

 

……そんなにセンス無いかなぁ……?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜誕生日当日〜

 

今日は火曜日なのでひまりのプレゼントを学校で渡すことにした。紙袋にヘアゴムを入れている。使ってくれたらうれしいな。

 

おっ!あんな所にいたぞ!どうやらテニスをするようだ。

 

どう渡そうか。……別にそんな大層なもんじゃないから普通でいいか。

 

「ひまり」

 

「あ、幸介さん!今から帰りですか?」

 

「帰りだ。……ひまりは部活だな。」

 

俺の挙動に訝しむような目つきになったひまりは、どうしたんですかと聞いてきた。いや、なんか急にプレゼントがショボく感じて自信が無くなってだな……

 

「……Happy Birthdayひまり。これ、プレゼントだ。」

 

「わあ!」

 

紙袋を手に取り中からヘアゴムを取り出した。……やっぱケーキを───あ!クッキーとか作って入れた方が良かったじゃん!

 

うわー……やっちまった……

 

ま、まあプレゼント自体は概ね好印象のようだったのでよかった。流石沙綾が太鼓判を押しただけはある。

 

「あっ、これ可愛い!」

 

そう言ってひまりは沙綾がこれも買っておいたらと提案したものを手に取った。

 

……ちょっと悔しいから少し勉強しようとそう誓った。

 

「気に入ってくれてよかった。じゃあ部活頑張れよ。」

 

「はーい!プレゼントありがとう幸介さん!」

 

「……気にするな」

 

あれ8割沙綾の選んだ奴だからな……




ガルパで確認してたらデパートじゃなくてショッピングモールじゃん!ということを発見したので修正します。

番外編を書いた理由は本編では色んなキャラとの話を書きたいけど、どうしても関わりの少ないキャラっているのよね……ということで何でもありの番外編を書いてこの欲を抑えよう!といういつもの見切り発車で書きました。

あと…………



新衣装つぐみ……やだ、超かっこいい……

あんなん惚れるわ。マジで。


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Hello World

『誕生日回はその日だと考えて貰えば幸いです』

と言いましたね。つまりこういう事です。


バチッ

 

「くっ!?」

 

"心臓"の整備をしていると電気が飛んだ。火傷で済んだ程度で無事だった。

 

しかし、俺は見た。いや───"観た"と言うべきか。

 

観れた記憶には花音ちゃんや薫、はぐみに救われたこと。俺の作っていたタイムマシンの理論は挿げ替えられこうした記憶を観れる装置になっていること。結局このタイムマシンは不幸しか呼ばないもので作らない方が良いということもあった。

 

そして俺が起こした数々の罪も──

 

「……理解し得ない。」

 

だが、やるべき事は分かった。

 

───黒服に帰る事を伝えて駆けることだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ハァ……ハァ……敗北者……?

 

羽沢珈琲店見えてきた。ああ良かった、まだ皆居る。

 

カランカラン

 

「ハァ……皆…ハァ……遅れて、ごめん……」

 

「こーくん!」

 

「ゔっ゛」

 

構える暇もなくはぐみが来たので耐えきれなかった。凄い痛い……

 

全て、あの記憶にある。蘭、巴、あこ、ひまり、モカ、沙綾……そしてつぐみの順番だ。

 

「……遅かったじゃん」

 

「幸介さん…大丈夫か…?」

 

「こー兄が来たし始めようよ!」

 

「そうだよね!」

 

「モカちゃんもお腹ペコペコだよ〜」

 

「ほら、皆持って。つぐみ、よろしくね。」

 

「……お兄ちゃん、お誕生日───」

 

「「「「「「「「おめでとう!」」」」」」」」

 

これでアニメの世界へは行かなくなった。ゲームの方はイベントが多い関係上かなり動かなければ死を免れることが出来ないのだ。気を引き締めねば……

 

「……ありがとう。」

 

まずは各道具の開発だ。数々の道具を作れねばならない。それらを使い阻止するのが前提。

 

大まかに記憶を観た所見だが、目立った変わりようを見せるイベントは無いということは分かっていた。

 

(……兎に角、この次はつぐみの誕生日の為に動くのか……)

 

自己満足に過ぎない人生。彼女との約束を果たすのはもう少し先になりそうだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inつぐみ〜

 

「ああ千聖……こうして君とお茶出来るなんて……」

 

「薫?貴方はあくまで花音の()()()よ?」

 

「あはは……つぐみちゃん、この雪化粧パンケーキっていうのをお願いできるかな?」

 

「はい!お二人はいかがなさいますか?」

 

薫さんと花音さん、千聖さんと花音さんの組み合わせはあれど、三人一緒に来ることは珍しかった。

 

「ああ、そうだね……じゃあ私もそれにしようかな。千聖もそうするだろう?」

 

「……ええ、お願いするわ。」

 

千聖さんは薫さんを面倒臭がっている。二人は幼馴染だと聞いたけど私達とは全く違う関係なので新鮮だった。

 

〜数分後〜

 

「お待たせしました!」

 

「わぁ……!」

 

「おや、これは……!」

 

「狐と兎が乗ってるわね。」

 

「つぐみちゃん、これって練り切りだよね!」

 

「はいっ!花音さんの練り切りの話を聞いて、ウチでも何か使えないかと考えたんです!」

 

パンケーキの上に雪原と白兎と狐で彩ったこのパンケーキは、お兄ちゃんの雪化粧という名前案から、お父さんのパンケーキというものだと分かった方が良いだろうという案を合わせて雪化粧パンケーキとした。

 

お客さんから頼まれるかドキドキしていたけど、兎と狐の練り切りが可愛いと、ちょっとした人気メニューになって嬉しい。

 

「じゃあ、これはつぐみちゃんのアイデアなんだね……この2匹の動物たちが───実に、儚いね……」

 

「薫……兎と狐が食べれないのね?」

 

「……っ!な、何を言うんだい千聖……確かに可愛らしい兎と狐だが食べれないなんて事は無いさ。」

 

「でも薫さん、兎さんと狐さんを除けてパンケーキだけを食べてるよね。」

 

「いや、私はね。この儚い動物たちと一時の食事を楽しんでるのさ。決して食べれないなんて事は……」

 

「そう。ふふ、それにしても本当に可愛い兎さんね♪」パク

 

「……っ!」

 

「───あら、とても美味しいわ。」

 

千聖さんが兎を食べると、薫さんは少し表情が歪んだ。

 

「じゃあ、私は狐さんを……ん!こっちも美味しい!」

 

「……うぅ……」

 

花音さんが狐を食べると、薫さんは小さくうめき声を出していた。……薫さんって意外と素は普通の女の子なのかもしれない。

 

やがて意を決したのか、フォークで刺して口元まで持ってきた。少し間を開けて───

 

パクリと放り込んだ。

 

「……とても美味しいよ……」

 

情が入りすぎたせいか少し残念そうに食べていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「───あら、もうこんな時間なのね。」

 

「ほんとだ。ちょっと話しすぎちゃったね。」

 

「これも時間の儚さ、なのかもしれないね……」

 

「……じゃあそろそろお会計にしようかしら。」

 

私は伝票を見て合計金額を計算して、三人に伝えた。お会計が終わり、幸いにも他に誰もお客さんが居なかったので見送ることにした。

 

「今日はありがとうね。つぐみちゃん。」

 

「また来るわね。」

 

「……っと、そうだ。」

 

不意に、薫さんが私に近付いた。

 

そして───

 

「つぐみちゃん、幸介は……大丈夫なのかい?」

 

「……え?」

 

「ああ、いや。彼の様子が随分とおかしかったからね。何かあったのかと心配したんだが……」

 

杞憂だったのかもしれないね───とそう言って薫さんは帰って行った。

 

(お兄ちゃんが……?)

 

私には、変わった様子なんか分からなかった。




ある特定の状態でなら記憶を観ることができる身体なのが幸介。

"集中"は……概念というか。ふわっとした感じの設定しか無いんです……

一応こう、スケールを小さくして考えると人は茶碗程度の大きさの器と、それに満タンに入っている水(考えたり覚えたりするのに必要なもの)があって、集中した時はプールくらいの大きさの所にホースで繋げれるというものなんです。集中の後に倒れたりするのは水が溢れ出たり、ホースが多すぎる水に破けてしまう。みたいな感じで自身の限界を越してしまうからという考えなんです。

解りにくい設定で申し訳ない。でも何となく「ふーん、そんな感じなのね〜」程度に覚えてもらえると幸いです。


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巫山戯たお話

前回のあらすじ

過去の全ての記憶を観た幸介。彼は再び償いを決意し、つぐみの誕生日へ向けた計画を考えるのだった───


「…………………」

 

「…………………」

 

リビングにある机で見合う男女がいた。

 

一人は紛れもない俺であり、もう一人はつぐみだった。

 

だが、一つ。おかしな点があった。

 

それは───

 

 

 

俺が俺を見て、つぐみがつぐみを見ているのだ。

 

訳がわからない?俺も分からない。

 

唯一、分かっていたのは、入れ替わっている。ということだった。

 

「……とりあえず、母さんに言って休みにはして貰ったけど……」

 

「これ、どうしよう……」

 

記憶を観たその日、特に変わったことは無い……なんて思っていたが、そんな事は無かった。

 

こうなったのには理由がある。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『うー……眠い……』

 

トントンと階段を降りる。ちょっとだけ寝過ごしてしまったのだ。しかし、今はまだ7時なので学校には十分間に合うだろう。

 

ガチャン!

 

『きゃっ!』

 

(ん?)

 

俺は後ろを振り向くと、つぐみがこちらに向かってバランスを崩していた。

 

つぐみをしっかりと受け止め、階段の一番下まで一気に降りようとするも───

 

『うわっ!?』

 

そのまま俺を巻き込んで倒れ始める。どうやら角のクッションに俺は足を引っ掛けたらしい。

 

ガダダダダ ゴトン!

 

そこで俺とつぐみは意識を失った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そうして起きると入れ替わっていた。たまたまつぐみは俺の上であった為怪我はして無かった。が、母さんにあらぬ誤解を受けかけた……

 

「……とりあえず自分の部屋へ戻ろう。今日一日はちょっと様子を見て、これを戻す方法を探すよ。」

 

「うん……」

 

スマートフォンさえあれば暇潰しくらい大丈夫だろう。……いや、てか何なんだこれ……こんなの過去の記憶にも無かったぞ……

 

(つぐみ)にカバンとか諸々を渡して、俺は自室へと戻った。とりあえずどうしようか考えるも何も思い浮かばない。

 

「"集中"ができないじゃないか!?」

 

よくよく考えてみればつぐみの体なのだから当然だろう。

 

……あと案外俺の部屋って……その、『ニオウ』んだな……なんか、俺の体だと分かんなかったけど、つぐみの体だとすっげえ分かる。

 

こんなに感じながら過ごしていたんだな……とかなり凹む

 

(いやいや、そんな事を考えている余裕は無い!)

 

とりあえずPCで入れ替わりとで検索してみる。がやっぱり無い。あるのは最近ブームになった映画ばかりだ。

 

俺には度し難い内容であったが……いや、だから話の脱線が酷い。

 

「うーん……解決策も無いんだよなぁ……」

 

そもそも今の状態って何なんだ?

 

俺がつぐみであるなら、どうしてつぐみなんだろう。……なんだこれ、哲学だろうか。

 

色々と図を描いていく。まず、俺がつぐみの中にいるのだ。で、つぐみは俺の中に居る。それは間違いでは無いのだろうか。

 

もしかすれば、俺が……この場合つぐみが俺の人格を真似しているという状況なのではないだろうか。

 

逆に俺はつぐみの人格を真似ている。という仮説だ。

 

その仮説が正しいなら、つぐみは何故俺のPCのパスワードを知っているのかがおかしいだろう。よってこれは違う。そして、本当に入れ替わっている説が濃くなる。

 

……楽観できる訳無いか

 

(というより何故こんなことが一度も無かったのだろう?)

 

ぶつかっただけで入れ替わりとか既に多発していると思うのだが……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

今日は家族揃って昼ご飯を食べた。つぐみも元気がないし、俺も元気はない。だってこんな状況だからな……

 

父さんと母さんは心配して話しかけてくれているけど、適当な相槌程度しかうてない。つぐみと誰にも言わない方向で話し合ったのだ。

 

しかし解決策は無い。インターネットには入れ替わりという都市伝説とか呪術的な類の噺はかなり存在したのだが、多くは具体的な方法を書いてはいなかった。いくつか書いてあるものもあったが……実行するのは危険すぎる。

 

万が一つぐみも身に何かあれば嫌だし。

 

それにしてもつぐみって少食すぎないだろうか。ちょっと食べただけでお腹いっぱいなんだけど、こんなのでちゃんと成長するのか心配だ……

 

ドンドン

 

「どうした……?」

 

部屋の前にはもじもじしている俺(つぐみ)が居た。誰得だよ。

 

「お、お兄ちゃん……その……」

 

「……?」

 

「……と…トイレに……行きたいんだけど……///」

 

「(ʘᗩʘ’)」

 

「ど、どうしよう……///」

 

いやそんなこといわれたって……

 

「……我慢は?」

 

「………」フルフル

 

涙目で顔を振る俺(つぐみ)を見て困惑する。一体どうしてこんなことに……

 

「とりあえずトイレに行こう。」

 

「……うん」

 

さて、どうしたものか……

 

 

 

 

 

「……………………………………………」

 

 

 

 

 

…………は?

 

いや待て。何故俺も行く流れなんだ。

 

今の俺はつぐみであって、俺はつぐみだよな?

 

どっちみちトイレを見られるという結果に変わりはないのでは?だって俺がつぐみだから?

 

……もう何が合ってるか分からん……

 

「よし、待ってくれつぐみ。」

 

「えっ……」

 

ええと、俺はつぐみに排泄行為なんて見られたくない。見せたくもない。そもそも局部とかも見せたくない。それは今まで徹底してきた。

 

でだ。何故俺(つぐみ)がつぐみ(俺)に言ってきたかと言うと、それはアレを見たくなかったからだろう。

 

そしてだ。俺はつぐみの体なんだ。たとえ中身が俺であれ局部は見たくない。いや、この場合は見せたくないの方が正しいのだろうか。

 

しかし、このままだと俺(つぐみ)の膀胱が不味い。見た感じ耐えれなさそうだし、観念して漏らさせるのも倫理的に駄目だ。

 

流石にこのままでは不味いがつぐみに任せるのも気が引けるし、つぐみは助けを求めて俺の所に来たのだから助けるのが道理だろう。だが俺の体はつぐみだ。やはり見せたくないという気持ちが勝っているし、俺自身困惑している。かといって別の人には頼むなんてできないし───

 

「───お兄ちゃん……っ!///」

 

……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ええい!ままよ!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…………」

 

「…………」

 

お互いに、疲弊しきっていた。肉体的にはそこまで動いていない筈なのだが、精神的にはフルマラソンの距離でシャトルランしたみたいな擦り切れようだ。

 

多分、幸介つぐみ揃ってここまでになるのは今昔遡ってもこの世界だけだろう。

 

「二人とも!蘭ちゃんたちが来たよ!」

 

「「」」ピク

 

「……真似しよう。うん、お互いの真似をしよう。できる?」

 

「……大丈夫」

 

階段を降りてゆく、すると蘭たちがいた。

 

「つぐ〜!」

 

ひまりが俺に駆け寄って来た。

 

「わっ」

 

「何か事故でもしたんじゃないかって心配したんだから〜!」

 

「大丈夫だよ?ひまりちゃんが心配してるようなことは起こってないから……ね?」

 

やはりと言うべきか、ひまりはわっと泣き出してしまった。……この流れだと一緒に居た俺(つぐみ)に詳しいことを聞こうとして蘭か巴辺りが……

 

「幸介さん、つぐみに何があったんですか?あとなんでつぐみは制服のままで幸介さんは寝間着なの……?

 

そらきた。

 

てかよく考えてなかったけど俺寝間着じゃねえか!?しかもつぐみは制服のままだったし……

 

「え、えーっと……」

 

つぐみ!頑張れ!なんか上手いこと言い訳を頼む!

 

「その……すっごくデリケートなことだから、本人が言わない限りは……言えないっていうか……気にしないであげると嬉しいな。」

 

「……」

 

チラっとこちらを見る蘭と巴。そういえばモカはどうしたんだろうか。

 

カランカラン

 

「お〜、つぐじゃん」

 

モカの手には大きな紙袋があった。知ってるぜえ?お前の案外心配性だってことをなあ!

 

「モカちゃん……心配してくれてたんだね。ありがとう」

 

「……誰でも心配するって〜」

 

やっぱさ、モカは意外と打たれ弱いよねぇ……

 

記憶の中にもいくつかあったし。まあでも、そんな事はならないがな。

 

「兎に角、つぐみが事故にあったとかじゃなくて良かった。」

 

ある程度納得したような表情の蘭がそう言うと皆帰って行った。道から見えなくなるまで見送って───脱力した。

 

「何とか乗り切ったぁ……」

 

「良かった……」

 

何とかバレずに済んで良かった……

 

でもこれで乗り切ったといえるだろう。

 

「……はぁ……───あ?」

 

……あった。

 

まだあるじゃないか……()()()が……っ!

 

「……ッ!つぐみっ!」

 

「な、何?」

 

「頼む、風呂に入らないでくれ!」

 

「え?………あっ!」

 

「俺も今日は入らない……一日ぐらいは我慢してくれないか……っ!頼む……!」

 

お風呂に入らないというものはつぐみにとって嫌な事だろう。だが、入らないようにして貰わないと俺の決意は何だったのだろうか。となる。

 

「……分かった。入らないから……」

 

「ああ……すまない……」

 

見つからない解決法を求めて、再び部屋に閉じこもるのだった。




シリアス入れちゃ駄目ですね。百分の1でも多いくらいだぁ……


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知らないこと

並べ替えまくってるけどこれって最新話が何処なのか分かるんでしょうか……

もしわからないならば申し訳ありませんが目次の日付にて確認して下さい。

今回はみじ回です。


一夜。

 

一夜夜を明かせば、あんなにも俺を悩ませた現象は終息した。

 

朝になれば俺とつぐみは風呂に入った。勿論別々にだぞ?

 

自身の体に戻れたことを喜ばしく思う。……案外、この体にも愛着というものが湧いていたらしい。

 

……しかし、二度とこんな事を起こさない為にも原因の究明を進めていくか……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜inつぐみ〜

 

お兄ちゃんと入れ替わって二日目になった。

 

偶然にも私は人生で一番の驚きを得てしまった。

 

お兄ちゃんの過去の記憶を見てしまったのだ。

 

幾度も()()を繰り返しているお兄ちゃんを見ると思わず気が遠くなってしまう。

 

何故そこまでするのか……観た人全員が感じる当然の疑問しか出てこない。

 

でも、記憶を観ていく内に───お兄ちゃんが()()()()()()()()()()()を観た。

 

───観てしまった。

 

それこそが人生で一番の驚きだった。……私は、私を含めた全てが───作り物だったから。それはゲームであったり、アニメであったり、私達の本当の正体は私達の身近に存在する娯楽の一つだったのだ。

 

そこまで知ってとうとう分かった。お兄ちゃんの今までの対応のワケを───羽沢つぐみ(わたし)は彼の憧れであったからだ。

 

お兄ちゃんにとって私は『()()()()()()()()』であって、『()()()()()()()』じゃなかった。───ただ、それだけ。

 

その事実が、本来なら嬉しいものだった。恥ずかしくも、嬉しいと感じる筈だった。

 

そんな事は思えなかった。

 

その事はいつの間にか彼の大きな枷になっていたからだ。私を守りたいが為に起こした事はあまりにも大きすぎた。その為に果てしない()()を繰り返すキッカケになってしまっていた。

 

全ての始まりは───観点の違い。

 

例えるなら彼は自身を"外様"だと思っていて、私達は彼を"親藩"のように思っている。

 

だからこそ、彼の一部分しか救われなかった。本当は、どうしようもない溝があるのだと彼は知っていたからだ。

 

花音さん、薫さん、はぐみちゃんを責める気持ちは無い。むしろ、仕方なかったと思う。

 

一体どうして自分らがゲームのキャラクターだと思えるのだろうか。そんな事は誰も考えもしないだろう。

 

事実、私も驚いた。

 

……こんな荒唐無稽な話を誰が信じれるのだろうか。そんなこと、誰も信じれないだろう。

 

だったら───私が彼を止めればいい。

 

いや、止めなくてはいけない。

 

彼の()()はもうしなくて良いと伝えてあげないと駄目なのだ。

 

それが……彼に対してせめてもの"救い"になると信じて───

 

だから、私は手始めに寝ている彼の側へ行き、コツンと、頭を合わせた。

 

同じ方法で元に戻るという漫画ならよくある事。そして、私の予想通り私と彼は元の状態に戻っていた。




何も考えてなかったけど二本立てしちゃった♡

これが酒Powerですか……!


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Happy Birthday つぐみ

大変お待たせしてごめんなさい




俺の誕生日も終わったが、余韻なんぞに浸っている場合ではない。そう、約一ヶ月後にはつぐみの誕生日が来るのである。

 

さて、まずは記憶を振り返ろう。近辺のイベントは新年会のやつと……あとあのお参りのやつがあったはずだ。考えると正月初めはおみくじ、新年会は5日あたりの落ち着いた日に行われたんだろう。

 

予測が正しければ大きめの規模で誕生日会が開けるな。肝心の招待する人だが……勿論Afterglowは招待する。で、沙綾とはぐみとあこにも渡そう。純くんと紗南ちゃんは……どうしよう。一応あの子らも参加できるようにしておこうか。

 

まあ、いつものメンバーが揃ったな。じゃあ別メンバーを探してみよう。まずイヴちゃん……来てくれるとは思うが仕事が忙しい可能性大なので難しいか。花音ちゃんは…どうだろうか?まあ花音ちゃんも祝ってくれるよね。まあでもハロハピ年明けライブなんてものが無ければ来てもらおうかな。あ、ハロハピ誘うのも良いな……薫と弦巻は来てくれそうだしな。奥沢は弦巻と一緒に来る。

 

こうなったら全てのバンドも誘ってみるのもありか。住所はどうにかできるからそこに招待状を送って……まずPoppin'Partyは沙綾確定で、来てくれそうなのは香澄ちゃんとりみちゃんか……?いや、花園たえも来そうだな。市ヶ谷有咲も香澄ちゃんが来るなら行くみたいな感じで来てくれないかな。Pastel*Palettesは…やっぱり無理じゃね?辛うじて二人は来てくれそうだが年始は撮影とかありそうで忙しいだろう。ただでさえ最近テレビでよく見るようになったし、白鷺千聖はあんまり来なくなったし、イヴちゃんもシフト減らして仕事に専念するようにさせたとこだし。

 

Roseliaはあこは勿論だが、ほか候補は氷川紗夜と白金燐子か?氷川紗夜はまあつぐみと関わりがあるしいけるな……白金燐子はNFO内では知り合いだけど現実では一度も話したことがない……いや多分CiRCLEでピアノ組としてつぐみと会話はしたことあると思う。というよりつぐみが凄いと言っていた覚えがある。……あこが誘えばワンチャンだけど、面識がある氷川紗夜ならともかく全くの関わりのない奴が知っているなんて言えば完全にヤバい奴では?

 

……白金燐子は諦めるしかないか……

 

じゃあ招待状を送るのは最低11人、最高18人で進めよう。

 

7日はまだここは開けないと思うので……いや、その必要もないか?どこか広いスペースを確保出来ればいい。ウチでも良いが他は…いや、室内で広めのスペースってあんまり無いわ。

 

うーん、やっぱり20人くらいは入れるしウチが安定で他は探してみるので良いだろう。そういやCiRCLEのお誕生日ラウンジって貸し切りなのか……?

 

うん、大まかな方向性は決まった。ここは招待状を出して参加の有無を聞いた後人数分の準備をしよう。

 

「……やってやるか…!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……まあまあ多く来たな。」

 

招待状を出して見たところ、19人の参加となった。当初予定していた18人を何故超えたのかというと、白金燐子が参加が決定したからだ。なんでもあこに渡した氷川紗夜の招待状を見て行くことにしたらしい。湊友希那と今井は参加に賛成と反対で意見が割れたとも言っていた。なにはともあれあこ、ナイスだ。

 

まあ二人程度多くても些細なことだ。それ以上にパスパレが全員参加できないと言われたのでな。やっぱり売れっ子アイドルは違うわ。

 

「招待状は出したし、この人数ならウチで良い……次はどうするかだ。」

 

勿論料理、というか軽めのスウィーツを出すつもりだが、たった一個程度では物足りないだろう。招待したのなら満足して貰えるようにしないといけない。

 

「立食形式……良いじゃないか。マナーは私的なものだからそこまで厳格でなくて良い、食べるものを選べる方が楽しいだろう。机は増設すれば……少しスペースが足りないか───あ、ケーキスタンドを用意してみるのはどうだろうか?」

 

うん。こいつは良い。我ながらいい案が出た。

 

見栄えも良いし会話を楽しみながらパーティをするにはうってつけだ。皿やケーキの材料とか準備する資金は充分にあるから安心だな。

 

ピロン

 

「ん…?ひまりからRINEか?」

 

『幸介さん!つぐの誕生日のことで何か手伝えることってありますか?』

 

……いや、そこまではないな。当日来てくれるだけですごい充分なんだよね。そもそもこうやってAfterglowを結成してくれただけでもう神だしさ。そう考えると俺は今まで施されてばかりだったのだな。

 

『手伝って貰えることは無いかな。強いて言えばつぐみの誕生日プレゼントをしっかり選んでくれたら良いよ。』

 

そう伝えると、ひまりは良いプレゼントを探すと言った。

 

手伝うねぇ……まだ十日以上空いてるのに今からすることなんて少なすぎるしな。てかあまり日持ちしないものばかり作るから2日前に準備を始めれるかどうか……てか間に合うのか?

 

「ん?手伝う……?」

 

…何か湧き出しそうだ……

 

 

 

「───ッ!」

 

そうだ!

 

「フフフ……!ハハハハハ……!ハァーッッハッハッハ!」

 

ああ、これならば確信を持って喜んでもらえると言える。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in紗夜〜

 

(最近演奏の調子が良いから、この感覚を忘れないうちに練習を重ねていかないと……)

 

「ん……?」

 

家の塀にもたれ掛かるようにして立っている人影がいた。背が高めの男のよう性だ。

 

「待っていたぞ……」

 

「……誰、ですか?」

 

恐る恐る怪しい男性に聞いてみると、招待状を送った本人だと言われた。招待状といえば羽沢さんの誕生日パーティーしか思い当たらなかったが、一人候補としてあがる名前があった。

 

「……もしかして、羽沢さんのお兄さん……ですか?」

 

「そう、羽沢幸介だ。よろしくな。」

 

そう言って彼は軽く礼をしてきた。こちらも挨拶を返すと羽沢さんのお兄さんは話を続けた。

 

「折り入って頼みがある。氷川紗夜。貴女にはつぐみの誕生日ケーキを作ってもらいたいのだ。」

 

「は……?」

 

「急な話ですまない……練習に必要な時間が無いのも分かる。だが、貴女にしか頼めない。」

 

「準備を必要としない。とあった筈ですが……」

 

「勿論、これは招待状を送った時点の予定には入っていなかった。しかし、つぐみを喜ばすことが充分にできるのだ。これを逃す手はないと判断して頼みに来たんだ。」

 

要するに思いつき。しかも羽沢さん曰くとても上手くケーキを作れるお兄さんが一度もしたことのない素人の私に頼む意図が分からない。行動も思考も全く解せなかった。

 

「……私がケーキを作ることで羽沢さんが喜ぶとはどういうことですか?」

 

「10月に行われたお菓子作り教室。それに参加していたんだろう?」

 

それに続いて羽沢さんのお兄さんは私がお菓子作り教室に参加していたことを語る。しかし、その意図が分からず聞いてみると、一瞬の沈黙の後、羽沢さんのお兄さん残念そうに息を吐いて説明をしてくれた。

 

「……このパーティはサプライズだ。予想外の出来事を起こせば驚かせれる。講師と生徒、少なくとも成長を喜んで『わあ、こんなものまで作れるようになったんですね!』……そう言うだろう。」

 

「……妹思いなんですね。」

 

具体的な計画を話しているその顔はあまりにも楽しそうな顔だった。故につい、言葉がポロリと出てしまった。

 

その言葉を羽沢さんのお兄さんはそれをきっぱりと否定した。そして、自身の為だけに動いているに過ぎない。そう言って話を続けた。

 

「練習や機材の不足で掛かった金はこっちが受け持つ。場所が無いならアテがあるから伝えてくれ。手配しよう。」

 

「ちょっとまだ了承は───」

 

「良いケーキができると信じている。」

 

「待ってください!」

 

私の話も聞かぬまま羽沢さんのお兄さんはどこかへ去っていった。どちらにせよ、頼まれたのならやるしかない。あと、羽沢さんに喜んでほしいということも少しありますし……

 

ガチャ

 

「おねーちゃんどうしたの?何か話してたみたいだけど……」

 

「……電話してただけよ。」

 

「そう?」

 

(…………)

 

あの時羽沢さんが言った言葉は───

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜in幸介〜

 

カランカラン

 

「……ふ」

 

やぁーっと来たか……ま、いいさ。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「あの───」

 

「“ご注文”はお決まりでしょうか?」

 

「……はい。ではホットコーヒーをお願いします。」

 

「ホットコーヒーですね。持って参りますので少々お待ちください。」

 

全く……つぐみが居るっていうのに隠さなくてどうするんだ……

 

言葉を介せずとも意思は伝えれるだろうと考えていると、袖をくいっと引かれた。

 

「……お兄ちゃん、その、紗夜さんの接客は私がやっても───「良いよ」う、うん。」

 

ホットコーヒーを盆に載せ運ぶつぐみ。やっぱ好きなんですねぇ……!

 

「紗夜さん、お待たせしました!」

 

「羽沢さん……ありがとうございます。……ええと、」

 

はにかむつぐみに感謝を告げながら俺を見る氷川紗夜。俺はどうでもいいからつぐみと関われ親密になれ。

 

「あっ、紗夜さんはお兄ちゃんと会うのは初めてですよね!」

 

なぜ俺を会話の話題に……

 

「は、はい……そうですね。」

 

仕方ない、これは挨拶をする流れだ。行かなければ

 

「初めまして。つぐみの兄です。」

 

そういうと氷川紗夜は奇妙な目で見てきたが、やがて理解したのか弱々しく礼を返した。早く退場してえ……

 

「つぐみ、他のお客さんを見てくる。」

 

「うん。」

 

はぁ……逃げれた逃げれた。いやね、俺みたいな不快害虫をあの間に投入しちゃ駄目なんだよ。ここ絶対に不変ね。

 

「あっ!その、気にしないであげてください!お兄ちゃんは私の為に気遣ってくれたんです!」

「…そうなんですか?」

「えっと、さっきのはお客さんの接客は全部やるから話してても良いよってことなんだと思います。お兄ちゃんはちょっと言葉足らずなんです。だから……」

「…分かっていますよ。羽沢さんのお兄さんは優しい人だということは」

「お兄ちゃんは勘違いされやすいんです。……でも、紗夜さんは分かってくれるんですね……」

 

どうして

 

つぐみ……俺は良いんだ……俺なんかいらねぇんだ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おっ、これか。」

 

頼んでいたケーキスタンドが届いたのだ。

 

「弦巻財閥に頼んで正解だったか。やっぱりレンタルした方が安いな。」

 

あと氷川紗夜の練習場所にもなったしな。まあ怪しい目で見られたけど。

 

それと、ケーキの方は順調みたいだ。一応質問とかの解答もできるような人材を頼んでおいたからいい完成度にはなるだろう。

 

つぐみは喜んでくれるだろうな。いいシナリオじゃないか……あとは俺が頑張らなきゃな。材料とかを発注して、かなりの量のケーキを作らなければいけない。俺があまり甘すぎるのが嫌いなので今回は味見役がいないので己の感覚でまあまあ甘めに作る必要がある。ふ、氷川紗夜に任せはしたがそれ以外のケーキも引けをとらん出来栄えにするつもりだ。あ、パイとかやってみるか?りんごパイとかも良いし……なるべく飽きの来ないようにレパートリーを増やすか。

 

「これから忙しくなるぞー!」

 

自身に気合を入れる。

 

……つぐみの誕生日まであと二十日を切ってしまった。

 

ああ、もう一年経つんだなぁ……

 

今年は、いろいろあったけど楽しかったな。それなりに知り合いが増えたし、本当の意味で生きている彼女たちを見てきた。

 

だからかな、俺は…………

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜誕生日当日〜

 

……つぐみに悟られぬよう準備を尽くした。これは、過去には無い一番の誕生日となるだろう。

 

「お兄ちゃん〜!行ってくるね〜!」

 

「分かったー!気を付けるんだぞー!」

 

今、午後2時36分───これより、誕生日パーティーの準備を始めるッ!

 

まずは着替えよう。来客もあるのだから今回はスーツでホテルボーイのようにするのだ。(意味不明)大事なのは俺ではなく来てくれるみんななのだからな。

 

黒の革靴、黒のスーツに黒のネクタイ。それと手袋をしてオッケーだ。どこから見てもボーイかウェイターにしか見えない。

 

素早くテーブルを合わせて席を作る。バンド単位の参加のおかげで一つのテーブルに5人座れるようにできるので楽だ。長机も借りているので設置して、テーブルクロスを引いた。

 

スタンドを置き、皿も置き、フォークやコップも準備した。汚れても拭けるようにナプキンの設置と諸々の用意も済ませた。ただこの人数だとトイレが渋滞するのが難点なんだけどな……とまあそうこうしているうちに完了した。我ながら美しい会場にできたことだ。

 

カランカラン

 

「ようこそおいでくださいました。」

 

「……うわぁ」

 

「す、すごい……」

 

「……やっぱりお前らが一番だよな。」

 

感嘆の声を漏らすのは蘭たちだ。

 

「幸介さん、これって───」

 

「ふふん、ちょっと頑張ったんだ。」

 

「ちょっとどころじゃない気もするけど……」

 

蘭のつっこみは置き、招待した人らが続々と集まってくる。

 

「こーくん───わ、わ!スーツだっ!」

 

「幸介…似合っているじゃないか!」

 

「すごく…カッコいいです…!」

 

「おお、ハロハピも来た。」

 

「あら!とっても豪華ね!」

 

「こころ、大人しくしときなって…羽沢さんのお兄さん、わざわざあたしらも招待してくれてありがとうございます」

 

「いや、こちらから礼を言うべきだ。そもそも招待に応じてきてくれたのは貴女方ですし。」

 

いえいえと謙遜しあうのもつかの間、次の来客だ。

 

カランカラン

 

「あ!こころん!」

 

「香澄!あなたも招待されてたのね!」

 

「なあ沙綾……毎年こんなんなのか?」

 

「いや、こんなのは初めてだよ。」

 

「幸介兄ちゃん!ってすげー!スーツだ!」

 

ポピパに続けて純くんと紗南ちゃんが入ってくる。

 

「純くん、紗南ちゃんも。来てくれてありがとうね」

 

「………ッ!」ダッ

 

「紗南?どうしたの?」

 

「…………」ギュッ

 

え?めっちゃ避けられたんだけど……

 

やっぱりこの時期から多感なんだろうなぁ。沙綾もそんなんだったしそういうものだろう。姉に似たんだなきっと。うん、きっとそうに違いない。

 

「……ま、まあいい……沙綾」

 

こちらを向く沙綾。沙綾がいなければポピパは来なかっただろう

 

「ありがとうな、多分ここまで来させたのは沙綾だろう?」

 

「あはは…バレちゃったかぁ。」

 

「まあ、な。これでも自分の無謀な試みだとは知ってやっていたし……」

 

そもそも俺だけが呼んでもほぼ来ないでしょ。

 

カランカラン

 

「ん?」

 

あっ、あれは───っ!

 

「…湊さん。来たんですね。」

 

「…………」

 

はっ!今の会話からしてもしかして蘭が誘ってくれたのか!?蘭ゆき?蘭ゆきですか?『明日、つぐみの誕生日だから湊さんも来ませんか』ってか?んで素っ気無く『そう。考えさせてもらうわ』って返したのか!?

 

「ちょっと友希那?そんなにバチバチしないの」

 

「してないわ。」

 

「猛犬注意」

 

「モカ、今なんて言った?」

 

「んー?何でもないよ〜」

 

これは……修羅場の予感……!

 

具体的にはこんなの↓

 

モカ→蘭―?―友希那←リサ

 

「こー兄!」

 

「あこ……と───」

 

「───……白金、燐子…です……」

 

おっ、白金燐子とはここで知り合いになっておこう。つぐみにピアノのアドバイスとか与えてもらえればという全くの打算だが。

 

「ああ、すると貴女があこの言う───りんりんですね?」

 

「……!」

 

「えー、いや、こー兄……その……」チラッ

 

「無理!やっぱり無理だよあこちゃん……!」フルフル

 

「りんりんじゃー……ないかな……?」

 

えぇ……

 

「……いや、じゃあ誰なんだ?」

 

「あっ!いや!りんりんだけどりんりんじゃ無くて!」

 

「どういうこと……?」

 

何故普通に説明しない……?

 

「その……」

 

「あの二人はどうしたのかしら?」

 

「うーん……?なんで燐子のことを紹介しないんだろう。」

 

「……私が行ってきます」

 

「宇田川さん、白金さん、どうしたのかしら。」

 

「あっ、紗夜さん!実は……NFOでこー兄とりんりんが知り合いなんですけど、りんりんがずっとこー兄と話してみたいって言ってて今日初めて来たんですけど、こー兄にはりんりんがNFOをやってるって教えてなくて、でもどうしてかりんりんがりんりんだって───

 

宇田川さん落ち着いて、白金さんが多すぎて何を言っているのかよく分からないわ。……でも、何となくは状況は理解できました。……白金さん」

 

「ひ、氷川さん……その、自分を知ってると分かると尻込みしちゃって……

 

白金さんが嫌だと言うのであれば私はもう何も言いませんが……本当にそれでいいんですか?

 

いや……そんなこと……

 

でしたら行動するべきです。彼がどんな人物であるのかは私はわかりますし……というより宇田川さんが一番詳しいわね。

 

うん!こー兄は全然怖くないよ!しかも今日はつぐちんの誕生日だからすごく機嫌が良さそうだし!

 

全部聞こえてますよ。主にあこのが。

 

……そんなに俺と関わるの嫌なのか……てか俺が言うりんりんってRinRinじゃないからな。あこの言うりんりんだからな?

 

「あー、あこ。もういいぞ。白金さんはRoseliaのキーボードの人なんだよな?」

 

「えっ、うん。そうだけど……」チラ

 

「えっと、その、初めまして、RinRinです……」

 

えっこれ(NFOの名前)で自己紹介すんの?嫌なんだけど……?

 

「……えー、あー───っとはい。りんりんさんと呼べば良いんですね?」

 

「……?あの…NFOの…」

 

「NFO……?───……………ああ!Rinさんですか!」

 

大袈裟に反応しよう。すれば何とか誤魔化せる筈だ。

 

「なるほど、合点がいきました。ああ、りんりんだからRinRinなのか……」

 

「こー兄…?気付いて、なかったの……?」

 

「そりゃあ。現実とリンクした呼び方なんて予想してなかったし、なんなら全然関わりの無い人だと思っていたから……というか世間狭すぎじゃないか?Rinさんと出会ったのってまだRoselia結成してなかったでしょ?」

 

「はい……実は、Roseliaに入ったのもあこちゃんに誘われてなんです……」

 

「は〜……すっごい偶然だなぁ……ってずっと立ちっぱなしにしていた。座る場所は……椅子用意してくるから待っていて下さい」

 

うん上手いこと誤魔化せた。いやー、不思議なこともあるもんだな。

 

湊友希那と今井が来るのは予想外であったがまあ良いことだ。これってPastel*Palettes以外全員集合では?

 

「よし、どうぞ座って───」

 

Cry,Cry out! Cry,Cry out! 不器───ピッ

 

「失礼……はい」

 

「いやちょっと幸介さん!?今の着信音は何!?」

 

「電話中だ。後にしてくれ。」

 

「〜〜ッ!」

 

「悪いな……で、どうだ?」

 

『妹様が帰路についたことを確認しました。あと10分ほどでそちらに到着する筈です。』

 

「よし、それじゃあ例の物を。」

 

『了解しました。』

 

ピッ

 

「ん、何故着信音があれかって?」

 

「何か凄い恥ずかしいからさ……」

 

Roseliaの曲とかだったら着信音にしてる奴多いけどな。蘭的にはアウトなのか……蘭パパに伝えないとだ。

 

変えようか聞いてみると、先ほどとは打って変わってやっぱりいいと言った。

 

「おう…?なら良いが……Afterglow集合」

 

「ん?」

 

「あたしたちに何か〜?」

 

「実はな……」ゴニョゴニョ

 

「それ耳打ちする必要絶対にないよね」

 

「いいんだ。───ともかく……」ゴニョゴニョ

 

「それなら任せて!」

 

「ふっふっふ〜、なんだかモカちゃんのやる気が出てきましたぞ〜」

 

「……絶対ケーキ目当てでしょ…ま、幸介さんの考えは分かったから。」

 

「あたしらが上手いことしないと、か……ちょっと緊張するなぁ…」

 

「そう気負うなよ。案内するだけでいいからな。」

 

「あっ!今からあれしない!?」

 

「してる暇は無い。だからさっさと行け。」

 

「ええー!幸介さんのケチー!」

 

「んなこと言うとケーキやらんぞ」

 

「ひどーい!」

 

「…………お前ら、頼んだぞ」

 

「「「「任せて!」」」」

 

カランカラン

 

……普通、かぁ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お、あれつぐじゃないか?」

 

「ホントにすぐ来た……!」

 

「兄妹だからのカンってやつかな〜?」

 

「……一応、そういうのも…あるのかな……?とりあえず行こう。」

 

「まずつぐを誘うんだよな。で、つぐん家まで引っ張ると」

 

「あたしたちだけのサプライズだと思わせるなんて幸介さんも意地悪だよね〜」

 

「よし……ひまり、頼んだよ。」

 

「えっ!私!?……つぐ〜!!」

 

「あっ!ひまりちゃん!それに蘭ちゃんとモカちゃんと巴ちゃん!」

 

「つぐ、こっちに来て!」

 

「わわっ!」

 

「あたしがつぐの荷物を持つから楽にしてて良いぞ。」

 

「つぐは今日という日までつぐってるなんて……!」

 

「そんなこと言ってないでモカも手伝いなよ……」

 

「え〜」

 

「さ、つぐ、こっちこっち!」

 

「ちょっ、ちょっと待って…!」

 

「つぐ〜、こういうのは身を任せるのが一番だよ〜?」

 

「そうだぞつぐ。」

 

「いや、そんなこと───ってえ?……えぇっ!?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……つぐみが来た。手筈通りに頼みました。」

 

「…分かりました。」

 

氷川紗夜は少し緊張してるのか声に震えを感じた。

 

「…貴女の気持ちを込めて作ったものです。その様子では込めた気持ちは十全に伝わりませんよ。」

 

「───……そうですね。」

 

「それに、貴女がどれほど頑張ったか、練習を積んだか、つぐみは見逃しはしません。」

 

「───!」

 

どうやら気付いたようだな。……つぐみに努力を感じさせないのって難しいんだよね。めちゃめちゃ見抜いてくるし……

 

そんなことを考えていると、つぐみたちが中へ入ってきていた───それと共に、クラッカーを破裂させる。

 

「「「「「「つぐみ、お誕生日おめでとう!」」」」」」

 

「…………」ポカーン

 

「あ、あれ?つぐ…?」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「……あ、はは……」

 

弱く、乾いた笑いを洩らした。

 

「つぐみ……?」

 

「……つぐ〜、そんな反応じゃあモカちゃんは満足───」

 

ちょんとモカが頬を突くと、加えられた力に従って後ろへとグラつく───

 

「ちょ、つぐ!大丈夫か!?」

 

「……し、」

 

「「「「「「し?」」」」」」

 

「失神してる……」

 

「「「「「「ええーーーっ!!!」」」」」」

 

 

 

〜〜数分後〜〜

 

 

 

「う、う〜ん……」

 

「あ、起きた。」

 

「よかった……つぐみちゃんがどうかしたのかと思ったよ……」

 

「私、失神するところ初めて見た。」

 

「おたえなぁ……」

 

「ま、まぁまぁ……落ち着いて」

 

「ちょっと空回りしました感が凄いのですが……」

 

「紗夜さん、つぐちんに渡すのはまだチャンスはありますよ!」

 

「…そうですね」

 

「紗夜、さっきから貴女───」

 

「友希那〜!ちょっと黙ってて!」

 

「───むぐ」

 

(友希那さん……)

 

何やってんだあいつら……ハロハピはハロハピでさっきドレスを着てくればよかったとか会話してたしな……

 

「つぐみ、大丈夫?」

 

「ん……お兄ちゃん……?」

 

「つぐみ……よし、大丈夫そうだな。」

 

「いや、その───」

 

「まあまあ。みんな早く祝いたくてウズウズしてるんだ。その辺の話はあとでな?」

 

「幸介さ〜ん〜、まだ〜?流石のモカちゃんも我慢の限界というものが───「───モカ、それは多分お前だけだ。」」

 

全く……まあ祝う心があるのは知ってるが。

 

「立てる?」

 

「うん」

 

「よーし!改めて───」

 

「「「「「「お誕生日おめでとう!」」」」」」

 

 

 

それからは、楽しい誕生日パーティーだった。

 

氷川紗夜が作ったケーキに驚いたつぐみ(殆どの人)が食べてみて美味しいと言ったり。

 

花音ちゃんがPastel*Palettes全員がつぐみを祝う動画を見せてくれたり。

 

皆が用意してきてくれた誕生日プレゼントを、一番最初に渡すのは何故か俺だったりと

 

……一生に一度残る誕生日であった。俺はそう思う。




まずは凄い間が空いてしまってごめんなさい。やっぱりキャラ数多いと文とか展開がガバガバになっちゃう

せめてRAS実装までに投稿したかったなぁ……しかし、この流れは後編にてポピパRoseliaRASの夢撃ち抜く瞬間にフル期待していいんですよね?

あと2期再配信されましたね。今後のあれこれ展開でちょっと嬉しいです。緊張気味のつぐみで死んだ。


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