オリ主設定
文月七火 24歳 206cm
鬼殺隊最強剣士『柱』の1人。
月柱。
許嫁であった胡蝶カナエを鬼に殺され復讐心に取り憑かれた。
日輪刀ではなく最強の妖刀村正を使用するが体の殆どが妖刀に蝕まれ、人ならざる者になりつつある。
常に笑顔を絶やさず温厚な性格だと思われるが、鬼を殺すためなら手段を選ばない冷徹さと残酷さを持ち鬼に対する憎しみは鬼殺隊の中で1番強い。
鬼殺隊からは腹黒天邪鬼、嘘つき糸目のあだ名を付けられている。
「ざっと数えて十二匹ってとこやねぇ」
日が落ち静寂に包まれた一件なんの変哲もない暗い森の中、まるで透視するかの様に息を潜めた者の気配を感じとる。
「おぉ〜怖ッ殺気丸出しやん」
雲の切れ間から月明かりが零れ、辺りを薄暗く照らすと木々を掻き分け異形の存在、鬼供が姿を現す。
「何だ…男かよ」
「コイツ鬼殺隊だせ?弱そうだが、肩慣らし位にはなってくれよな?」
「チッ、男の肉は筋張ってて不味いんだよな」
「とっととコイツぶっ殺して村を襲おうぜ!女子供が沢山いるはずだ」
取り囲む様に現れた鬼供は目の前の人間を罵り、餌以下の存在と嘲笑う。
「君ら…何か勘違いしとりませんか?」
「あ?何だと…」
「てめぇこの数が見えねぇのか?」
煽る様に言葉を返すと、鬼供の顔から皮肉な笑いが消えた。
「君らが僕らを狩る側やと思っとる様やけど残念逆…僕らが君らを狩る側や」
「てめぇ調子に乗るなよ!」
「いいぜてめぇはなぶり殺しにしてやるよ!!」
「君らには無理や、僕こう見えてかなり強いから」
「なっ…」
「いつの間に!?」
円状に取り囲み逃げ場のない状態でしかもこれ程の数で一斉に襲った筈だが、いつの間にか円の中心にいた人間は円の外に出ていた。
「ほらね、君らは狩られる側や」
「てめぇ何をしや…」
鬼供がこちらに体を向けたのと同時に、全員の首が体から離れ夜の闇に消えていく。
その表情からは一体何が起こったのか分かっていない様だった。
「はぁあ、呆気な…弱い奴程よう吠える」
鬼供が消えて行くのを横目に紙煙草に火をつけ、暗い夜空に向け煙を出す。
「フゥー…堪忍してなカナエちゃん、僕じぁ鬼と仲良くするの無理っぽいわぁ…」
煙草を吹かすと昔を思い出し、自然と涙が零れる。
何年経とうが決して忘れる事のない自分の無力さを呪ったあの日、自分の大切な人の命が目の前で消えていくのを見ている事しか出来なかった。
それからずっと大切な人を奪った鬼に復讐する事を考えてきた故、何時しか力を得るため人間であることを辞め闇に堕ちた。
仇を取れば大切な人が報われると、大好きな人が笑ってくれると。そう信じて鬼供と戦って来たが、殺せば殺す程大切で大好きだった彼女の理想からかけ離れていくのを実感している。
「ほんま堪忍な…君を殺した鬼供には憎しみしかあらへんのやから…人を襲わない鬼何て存在するわけあらへんし…もしそないな鬼がおっても…僕は受け入れる事は出来ひん…」
そう自分にいい聞かせ、煙草を踏み消しその場を後にした。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
二話目
文月七火の継子
高身長なうえスタイル抜群で道行く人々の目を引く容姿を持つが、本人は大の恥ずかしがり屋で超人見知り。
影の呼吸の使い手で実力は柱のお墨付き。
空手も得意。
「どーも、カナエちゃん今日も来たで」
毎日の日課になった墓参り。
何時もの様に墓標の前に座り込み掃除を始める。
「カナエちゃんは綺麗やさかいちゃんとお墓も綺麗にしとかなな」
口と手を動かしながら毎日来てる故大して汚れてはいないが、掃除を進めていく。
「カナヲも秋千代も立派な鬼殺隊になって2人ともやらい強くなってるんやで」
墓標にいくら話をかけても返事が返って来る事はないが、遠い世界でカナエが話を聞いてくれている気がしてやまない。
「フゥー綺麗になったな、羊羹作ってみたんよ食べてなぁ」
羊羹と花、お線香をそなえ立ち上がる。
「生きとったらまた来るさかい、それまで待っとってな…ほなまた」
煙草に火を灯しその場を後にする。
「さてもう出て来てええで、秋千代」
「気づいていたんですか…七火様…」
近くの茂みから帯刀した大柄で長い茶髪の少女が姿を現し、一歩離れ着いてくる。
継子の花筐秋千代だ。
「何でわざわざ隠れとってん?」
「その…七火様の日課を邪魔してはいけないと思いまして…」
「そないな事気にせんでええで、それに二人がかりでやったらもっと早う終わったのに…」
「ハッ…ごめんなさいごめんなさい、そうだとは知らずに私…ごめんなさいごめんなさい」
毛先をモジモジ弄る秋千代に冗談で返すと、目に涙を浮かべ何度も頭を下げ謝罪の言葉を連呼しだした。
「ハハハッ、冗談やで気にしいひんで、それより僕になんか用?」
「あ!そうでした!!、お館様から伝言を預かり七火様にも伝えに来ました」
「伝言?」
「はい、明日しのぶ様と共に館に来て欲しいと」
「なるほどなぁ、わざわざおおきに」
お館様の伝言で大体察しがつく。
「七火様としのぶ様に招集すると言う事は何かあったんでしょうか?」
「大体察しがつくわきょうび話題の哪吒蜘蛛山の件やろう、あの山には十二鬼月の一匹がおる噂があるさかい…」
十二鬼月の言葉を出した瞬間何時もは優しい糸目の七火の目が開き鋭い眼光があらわになり、その場の空気がまるで電気を帯びた様にビリビリと肌を刺激する。
「し…七火様…」
「あ、かんにんちょい昔を思い出しとった…明日の為に早う帰って支度しいひんとな」
「は…はい…」
怯えた秋千代の表情を見て我に返り、急ぎ足で我が家に帰った。
次日お館様に呼ばれ、しのぶと屋敷に出向くとお館様は縁側に座りお茶を楽しんでいた。
「蟲柱胡蝶しのぶ、月柱文月七火参上しましたえ」
「あぁ来てくれたのか忙しい所済まない、君達もお茶を飲むかい?」
「いえ、お構いなく」
「僕も遠慮しときます、そや!お茶請けに僕の手作り羊羹はいかがどすか?凄い美味うできまして頬っぺた落っこちてまうかもしれまへんよ」
懐から羊羹を出しお館様に手渡す。
「おぉ!美味しい!また腕を上げたね七火」
羊羹を口に運び数回の咀嚼後、飲み込んだ途端お館様から笑みが零れた。
「腕によりをかけて作ったさかい」
「ゴッホン…兄様、お館様」
『あっ…』
しのぶの咳払いで中々始まらない本題の話を始める。
「わざわざ二人に来てもらったのはね…」
「皆まで言わへんでも分かります、哪吒蜘蛛山の十二鬼月の件でっしゃろ?」
お館様の話に割って口を開くと、しのぶの顔付きが鋭くなる。
「十二鬼月…」
「察しが良くて助かる、七火の言う通り哪吒蜘蛛山の十二鬼月の件で二人を呼んだんだ」
「つまり…あの噂は本当だった…そう言う事ですか?」
「あぁ、哪吒蜘蛛山に送った隊士はほぼ壊滅、唯一生き残った隊士によれば…あの山には確実に十二鬼月がいる」
「やっぱしーな、わざわざ隊士を行かせるより僕ら柱が出向いた方が犠牲者を出さんといて済んだんとちゃいませんか?」
「情報が必要だったんだよ、それであの山に十二鬼月がいる事が分かった、だから君達に明日哪吒蜘蛛山に十二鬼月の討伐に行って貰いたい」
カナエのグッズが少ない(´;ω;`)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
三話目
昔の夢をみた。
自分の無力さを呪ったあの日の夢を
「あ…あぁ…カナ…エちゃん…」
「七火…君……」
血まみれのカナエを抱きかかえるともう見えてはいない目を開き、冷たくなっていく掌で頬を伝う涙をふいて小さく名前を呼ぶ。
「…僕…カナエちゃんの事…守れんかった…」
「泣かないで…七火…君…悪いのは私…の方だから」
「そないな事あらへん…僕が弱いさかい…僕がこの刀を使いこなせへんさかい…僕が…」
「自分を…責めないで…ずっと…笑ってい…て…皆を…お願いね…」
その言葉を最後にカナエ手が冷たくなり地面に落ちた。
「あぁぁぁッ!…童磨ぁぁッ!!必ず貴様を殺したるッ例えこの身修羅へ変わろうともッ僕の手で必ずッ!!」
「に…さま…兄様!!」
「ハッ…しのぶ?…」
瞼を開けると心配そうな顔でこちらの顔を覗き込むしのぶが目に入った。
「うなされていましたが大丈夫ですか?」
「あぁ起こしてもうたか?かんにんな」
「いえ、私は大丈夫ですが…」
「僕も平気、ちょい古傷疼いただけやで…しのぶもしかして眠れへんのちゃうか…そや!久しぶりに一緒に寝よか?」
上半身を起こし掛け布団をめくり、敷布団の空いているスペースを手でポンポンと軽く叩く。
「もう!!兄さん!!子供扱いしないで下さい!!全く!朝早くの出発ですから早く寝て下さい!!」
等と強がった事を言いながら布団に入ってくる辺り、やはり哪吒蜘蛛山の十二鬼月の事が気に掛るのだろう。
(言葉と行動逆やん…まぁそれ程不安なんやろ)
「兄さん早く横になって布団をかけて下さい!!寒いです!」
「おっと、かんにんな」
しのぶに急かされ横たわり布団をかけると、とても懐かしい香りが鼻をくすぐる。
(この香り懐かしい…カナエちゃんとおんなじや…)
「もし…哪吒蜘蛛山にいる十二鬼月が童磨だったら…」
「心配あらへんよ、そうやったら次は必ずこの手で頸を斬るまでやで」
「そうですね、おやすみなさい兄さん…」
「はい、おやすみなさいしのぶ…」
安心したのかしのぶはすぐ寝息を立てて眠りにつき、それにつられ七火も眠りについた。
「ここにも死体か…それにしてもこの山けったいな匂いするなぁ、これも鬼の仕業か?」
哪吒蜘蛛山に着いたが辺りは暗く鬼の活動が活発になっているのか、既に六人の隊士の死体を見つけた。この山に複数の鬼がいるらしくしのぶやカナヲ、秋千代とバラけて鬼を探している為早く見つかると思っていたが未だ鴉からの報告がなく手こずっているようだが、こちらの方向に鬼が居るのは間違いない。
「こっちから嫌な感じがするさかいこっちにおる筈やけど…またや…」
七火の周りに風きり音と共に半分に切られた小さな蜘蛛達が落ちてくる。
「さっきからおんなじ蜘蛛襲うてくるが…鬼の血鬼術か?…気持ち悪おしてしゃあない…」
嫌な感じがする方へ近く程蜘蛛の数が多くなっていく。
「この先に蜘蛛の親玉がおるに違いあらへん…うわ!危な!?」
先へ進もうとした瞬間、木の影から鋭い爪のような物がこちらを切り裂こうとするが回避し、距離をとる。
「何や…首なしの鬼?」
邪魔な木々をなぎ倒し現れたのは大柄な首のない鬼だった。
「首があらへんのに動いてる?…いや、あの体から伸びてる糸に操られてるんか」
首なしの鬼の攻撃を避けながら分析していく。
「首があらへんなら体をこもう刻むか」
刀の柄を鞘を握り、首なし鬼との間合いを一気に詰める。
「月の呼吸、玖ノ型降り月・連面」
刀を振るうと首なし鬼目掛け無数の斬撃が降り注ぎ、一瞬にして首なし鬼は跡形もなくなり消えていく。
「いっちょ上がりや」
服についた砂埃を払い、糸を操る鬼の元へ向かった。
「クソ…俺…こんな所で…死ぬ…のか…あ?」
十二鬼月との戦闘で日輪刀は折れ今にも首をへし折られそうな時、ぼやけた視界に何かが飛び込んできた。
「影の呼吸、壱ノ型…影狼!!」
「何だ…優しいこ…え!?ぐえッ!?」
十二鬼月の手が急に離れ川に落下し、水面から顔を出すと首胴体、脚と三つに斬られ消えていく十二鬼月とその前に立つ薙刀を持った大柄な女性が立っていた。
「だ…誰だ…あんた」
「あ…あのあの!だ…大丈夫ですか?…猪さん」
こちらに気づいて逆お姫様抱っこをされ川から上げられた。
「何で…おれ…女に抱きかかえられてんだ…」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
四話目
「クソッ…このガキ…俺の毒が殆ど回っているのに…俺を切りやがった…」
「あらあらぁ大きな音がして来たみたら体が半分になった大きな蜘蛛の鬼と虫の息の隊士がいるなんて〜」
「あぁ?鬼殺隊…まだ居やがったのか…」
糸で吊られ宙に浮いた小屋に座る鬼殺隊の少女の顔は月明かりに照らされ、不気味さを漂わせている。
「あのーすみません、半分の鬼さんこの辺りに十二鬼月が居ると聞いたんですが知ってますか?」
「知るかそんなもん!!」
「そうですか…なら必要ないので死んで下さい
」
「えっ…」
「蟲の呼吸、蝶ノ舞戯れ」
瞬きした一瞬で少女は目の前から消え、鬼の背後で蜘蛛になりかけている善逸の様子を見ていた。
「な…何だ今の…頸は斬られてねぇ…小娘!!何しやがッ…グハッ…」
鬼の体にシミのような物が現れると、体から血を吹き出し死んだ。
「あ!そうそう、私は鬼の頸は斬れませんが鬼を殺せる毒を造ったちょっと凄い人なんです!…って死体に話しても聞こえませんよね…」
「この子…十二鬼月じゃなかった…それに何かしらこの大きな繭は?」
小さな少女の鬼の頸を斬り落とした後、そこから少し離れた場所に大きな繭の様な物を見つけ調査を始める。
「ん〜…心音が聞こえる…」
繭から耳を放し、銅貨でコイントスをする。
「表…よし斬ってみよう」
銅貨をしまい、繭に日輪刀を振り下ろす。
「うわ!いてて…」
繭が斬れると中から緑色の液体と共にボロボロに溶けた隊服をきた隊士が流れ出てきた。
見たところ目立った外傷はない。
「あれ?…貴女は?あ!鬼は?」
「…」
「あの?…」
隊士の問に少女は口を開かずただニコッと笑っているだけだった。
「そんな…一番強くて早い人形がこんなにも呆気なく…」
糸の手応えが消えなすすべがなくなり、累と父の姿が脳裏に浮かぶ。
「もういや…私どうしたら…」
「鬼はんみっけ…って十二鬼月ちゃうんか…」
「あ…鬼殺隊の人…」
「なんや?襲うてきいひんのか?」
岩に座る女鬼と目が合うが襲ってくる様子がない。
「私じゃ貴方には勝てないもの…」
「フーム、自から頸を差し出すんか?」
「えぇ…私…もう疲れちゃったの…」
女鬼は涙を流しながら微笑んだ。
その姿を見てカナエの言葉が浮かんだ。
(人を襲わない鬼や自ら頸を差し出す鬼や救いを求める鬼もいる筈だから…)
「ちっ…鬼の目にも涙か…きしょいな…わかった望み通り解放したる…」
「ありがとう…」
「月の呼吸…壱ノ型、闇月・宵の宮」
その斬撃は決して女鬼の目には映らず痛みもなく、気づけば頸と体は離れていた。
「優しい斬撃ね…まるで月明かりみたい」
「やかましい、涙を流せるくせに…救いを求めるくせになんで人を殺したんや?」
「そうしなければこうなる前に私は死んでいたわ…ねぇもし私が人を襲わない鬼だったら…貴方達と仲良く出来たかしら?」
「人を襲わへんなら…もっと早うに…やったらな…」
「フフ、貴方本当は優しいのね…お礼に教えてあげる…この山には本当に十二鬼月は…いる…わ…」
それを言い残し女鬼は消滅した。
「鬼に礼をされるとは…ほんまにきしょいな…それに最後まで笑うとった…しんどかったんやな今まで…」
煙草をふかし、おかしな事を考えていた。
「もしあの女鬼とカナエちゃんが出会うとったら…きっとええ友達になっとったな…」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
五話目
「正しい呼吸なら…如何に疲弊していても関係ない…」
禰豆子と協力して十二鬼月の頸を斬ったと思っていたが、自ら頸を斬り放し斬撃を回避され再び窮地に陥ってしまった。
「血鬼術…殺目籠」
「ダメだ…腕が…上がらない…」
鬼の攻撃が起き上がる事が出来ない自分の周りに展開されるが、ダメージを受け過ぎたのか体を動かす事が出来ない。
「死ね…」
「やっと生存者に会うた…凄い傷やけど君大丈夫かい?」
「え?…」
諦めかけた時突如鬼が展開した赤い糸の攻撃が消え、自分と鬼の間に月を模した羽織を来た鬼殺隊の背中がみえた。
「貴方は…」
「ん僕?僕は月柱の文月七火や、君は?」
「竈門…炭治郎です」
「そか炭治郎はんか、十二鬼月…下弦の月やけど良う生き残った!後は僕に任せて」
「は…はい!」
「また邪魔な奴が増えやがった…だがお前今柱と言ったな?つまりお前を殺せばもっと強い力が手に入る!!血鬼術刻糸輪転!!」
十二鬼月は不気味に笑い、赤い糸を集め血鬼術を放った。
しかし血鬼術が迫ってくるが、七火は刀を抜こうとも回避することもしない。
「七火さん!!」
「なぁ鬼はん、あんたは人と仲良うしたいと思た事ある?」
七火のかなり手前まで来ると血鬼術の糸の束が消え、細かくなった糸が宙に漂っている。
「な!?糸がばらけた!?…」
(今七火さんは何をしたんだ?…刀を抜いた様には見えなかった…)
「あんたは人と仲良うしたい思た事あるのかて聞いてるんやが?」
「馬鹿か!そんな事を思う鬼がいる訳ないだろ!」
「そっか…よかったわ、これであんたをなんの躊躇ものう殺せんで」
「なに…」
「七火さんが…消えた…?」
決して七火から目を離した訳ではない。
しかし目の前にいた筈の七火は一瞬のうちに鬼の後ろへ移動し、煙草に火を付けていた。
「貴様!?…いつの間に…戦う気はあるのか!?」
「フゥー、戦いならもう終わってんで?」
激怒する鬼を後目に煙草の煙を吹かすだけだった。
「なん…だと…」
ようやく自分の体に違和感が出てきたのか顔に憎悪の表情を浮かべ、体がバラバラに崩れ消えていった。
「君の仲間の女鬼の方がまだ人間味があったで、所詮は下弦…肩慣らしにもならへんかったわ…」
(全く見えなかった…何をしたのかすら…きっとあの鬼も同じ筈…)
「兄様ここに居たんですね、鬼は?」
「七火様ご無事で」
「生存者は数名のみですか…」
「皆無事やったんやなあ、十二鬼月は残念ながら下弦…今終わった所やで」
未だ頭が混乱する中七火を囲む様に少女の鬼殺隊が三人現れた。
そのうち二人は見覚えのある人物だった。
「あ…あの!俺の仲間は…猪の被り物をした隊士に髪が黄色い隊士がいた筈なんです!」
「その方達なら既に安全な場所へ移してあります、重傷でしたが命には別状ありませんよ」
蝶の羽の模様を模した羽織を着た少女がニッコリと微笑む。
「よかった…そうだ!禰豆子は!俺の妹は!?」
「禰豆子はんってこの子の事かいな?…傷治っていく…なぁ炭治郎はん…この子鬼やろ?」
近くに気絶している禰豆子と呼ばれる少女の様子を見ると、体中に出来た傷が徐々に消えていっていた。
禰豆子が鬼だと言うこと知った途端、その場にいた七火さんを含め後から来た少女鬼殺隊の顔色が変わった。
「鬼を殺すのが役目の鬼殺隊が鬼と行動してるなんて〜万死に値しますね」
「待って下さい!俺の妹は確かに鬼ですが…人を襲わない鬼なんです!!」
「あらあら〜何を訳の分からない事を、人を襲わない鬼何ている訳ないですよねぇ兄様」
「…」
「兄様?」
「下弦の鬼の仲間に涙を流し、自ら頸を差し出す鬼がおった…もし自分が人を襲わへん鬼やったら仲良う出来たか?て言っとった…カナエちゃんの言う通り人を襲わへん鬼はいるかもしれへん…」
「そんな…」
「あの鬼の傷…炭治郎はんの傷とおんなじ下弦の鬼の血鬼術を受けて出来た傷や…つまり禰豆子はんは人を襲わず人間の炭治郎はんと協力し下弦の鬼と戦うとった事になる…」
推測を説明し炭治郎を立たせ禰豆子のそばに寄ると、禰豆子はそれに反応する様にムクっと体を起こした。
「ありがとうございます、七火さんの言う通りです!禰豆子は俺を助けてくれたし一緒に戦ってくれたんです!な禰豆子」
意識を取り戻した禰豆子は状況が分かって居ないらしく、七火達の顔を見渡すと炭治郎の胸に飛び込んだ。
「俺は大丈夫たよ禰豆子…ありがとな…」
「嘘…も…もしかしてあの人も鬼なんじゃ…」
「鬼なら傷は回復している筈です…炭治郎と言う方は正真正銘人間です…」
「例え家族であっても食い殺す鬼やけど…あら確かに人を襲わへん鬼として認めるしかあらへんな…」
「それしかありませんね…」
「し…七火様の言う通りですね」
「ですね」
「皆さん信じてくれるんですね!」
「その光景を見せられたなら信じざるを得えへんで…せやけど幾ら僕らが柱と言えど抱えきれる案件ちゃう…」
「そんな…」
「そないな悲しい顔しいひんで、明日は柱合会議が行われる…他の柱や御館様に禰豆子はんが人を襲わへん事を証明したら今まで通り鬼狩りを続けていける、僕ら二柱がついてるさかい絶対悪い様にはさせへんさかい」
「た…大変だ!!七火様が御屋敷から抜け出した!!」
「馬鹿な!?片腕を無くされて瀕死状態だったんだぞ!?たった二日で動ける筈はないだろ!!」
「おい!血の後が続いているこっちにも!」
「何!?」
「この方角は…まさか!!封刀山!?」
「はァ…はァ…力や…力が欲しい…」
童磨との戦闘で右腕を失い体もボロボロだった七火は力に飢え、何かに取り憑かれた様に妖刀が封印されたとされる封刀山の山頂へ向かっていた。
「もう少し…もう少しで…」
傷口が開き赤く染った着物に凍てつく吹雪が合わさり、血がこおり体の感覚を消し去っていく。
「見えた!!…なんや…あら?…」
氷の礫に撃たれようやく妖刀が封印された祠にたどり着いたが、入口の前に黒く巨大な影が現れた。
「く…熊やと!?」
吹雪の中目を凝らしてみると、それは今まで見たことのない程巨大な熊だった。
「クソ…」
一歩後退りをすると熊はこちらの気配に気付き、巨体に似合わない速度でこちらに突進してきた。
「速ッ!?」
寸前で熊を避け雪の上を転がり体制を立て直そうとするが、顔をあげた瞬間熊の剛腕が襲い軽々と吹き飛ばされ岩に激突し止まった。
「グハッ…痛てぇ…」
痛みに悶え熊の爪に体を抉られ更に激しくなった流血で、視界がかすみ始めた。
「あかん…血を流しすぎた…前…見えへん…」
そんな瀕死状態七火に追い打ちをかけるように熊は近づき、巨大な口で右肩に噛み付いた。
「ぐぁぁぁッ」
熊の牙は容易く肌を突き破り筋肉を断ち骨を砕いた。
(…こないな所で…死ぬんか…また…なんも出来へんで…)
死を悟った時、童磨との戦闘時の記憶が脳裏に浮かんだ。
そしてその記憶が怒りを産んだ。
「あぁぁぁッ!!熊ごときが僕を殺せる思いなや!!」
あの日の悲しみが、無力さが怒りを産みそして怒りが力へ変わった。
「ええ加減離れろ!!」
仕返しにと熊の首に噛み付いた。
思ってもみなかった獲物からの反撃に合い、口を離し転げ回るが怒りは収まらず更に力を加え熊の首筋をかみ切った。
「はぁ…はぁ…」
血しぶきを上げ、巨体と共に倒れ周りの雪が赤く染まった。
「人間を…ねぶった罰や…はァ…はァ…」
やっとの思いで立ち上がり妖刀が封印された祠へ入ると中は蝋燭で照らされ、一番奥に岩に刺さった刀の前に経を唱える僧侶がいた。
「あった…妖刀…」
「…鬼かと思いきや…重傷の人だったとは…何しに来たの?外にいた主はどうした?」
「その刀を貰いに来たにきまってるやろ…主?あのでかい熊なら噛み殺した」
「その体で…お主からは今まで見たことない程の悲しみと、怒りを感じる…まるで修羅のように」
長々と話を続ける僧侶を無視し、岩に刺さった刀に手を掛けようと伸ばすと横から僧侶が手を伸ばし七火の手を止めた。
「それに触れてはなりません!!その刀は妖刀村正、仮に抜け封印が解ければ貴方は人ではなくなってしまいますぞ!!」
「人ちゃうくなる?…上等や!!、覚悟なら既に出来てる!!」
僧侶の手を振り払い妖刀の柄を握り引き抜いた。
「ふ…封印が…そこまでして力を求めるのですか?…何故修羅の道を歩もうとするんですか!?」
「復讐の為や…」
妖刀を強く握ると刀身が禍々しい赤黒に染まり、体の傷が癒え失った右腕も赤黒皮膚だが元通りに生えていた。
「これで…これで…奴を…童磨を殺せる…」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
六話目
「あの…七火さん…ここは?…」
「綺麗な庭やろ?ここは鬼殺隊の本部やで」
哪吒蜘蛛山から下山し、七火達に連れて来られた場所は広い庭と大きな屋敷が立つ鬼殺隊の本部だった。
「鬼殺隊の本部!?そんな所で何をするんですか!?」
「本来なら柱合会議でしたが、貴方の事を報告したら急遽裁判に変更されました」
「さ…裁判!?…禰豆子は人を襲ってないのに…えっと…」
「そう言えば自己紹介がまだでしたね、私は蟲柱の胡蝶しのぶと言います」
「しのぶさん何で裁判を!?」
「鬼殺隊はそもそも鬼狩りが仕事や、それが鬼を連れとったらどないなる思う?…」
「兄様の言う通りです」
炭治郎の顔に不安の色が見え始め、心配に背に担ぎ禰豆子が入った木箱を見つめる。
「大丈夫ですよ炭治郎君!事実を知っている私達が着いてます」
「ありがとう…ございます…」
「さて、そろそろ他の柱がくるころやな」
月と蝶の模様があしらわれた懐中時計で時間を確認し、裁判前の一服で煙草に火をつける。
「そう言えば…七火さんやしのぶさんの柱って何なんですか?」
「おや炭治郎君は何も分からないんですね、柱とは鬼殺隊で最も強い者の事を言います」
「僕としのぶを含め十人おるんや」
(俺と禰豆子が手も足も出なかった鬼を一撃で倒した七火さんと同じ強さの鬼殺隊がそんなにいたのか…もしかして今日の裁判俺やばい気がしてきた…)
「おや?何時も一番最後に来る奴が珍しく妹と共に早く来てると思ったらこんな派手な庭で一服中とは派手な奴だな!」
「うむ!珍しい事だが火を消せ七火!後から来る伊黒が嫌がるぞ!」
「本当に珍しいわぁ」
(キャー七火君相変わらず表情が読めないけどその謎めいた雰囲気が素敵!!)
「音柱はんに炎柱はん、恋柱はんも久しぶりやなあ、蛇柱はんが来たら消すさかい」
「宇髄さん煉獄さんに甘露寺さんおはようございます」
「挨拶は要らん、なぁ文月…そいつが鬼を連れてる隊士か?…」
石飾りを付けた柱に睨まれ、身体中から汗が吹き出る。
(俺に向けられた殺気!?…)
「音柱はん…悪戯が過ぎますえ…」
同じ人間から向けられる殺気に恐怖を感じ声すら出せなくなったが、七火が炭治郎を庇うように前に入りお返しとばかりに七火が殺気を放つ。
「ぬぐ…あ…相変わらずド派手な殺気だ…」
宇髄は背中の日輪刀を抜き、臨戦態勢をとる。
「僕とやる気?ええで、相手になったる」
七火も煙草を踏み消し刀を抜くと赤黒に染まった禍々しい刀身が現れた。
「コラ!やめろ宇髄!まだ全員揃ってないんだ!」
「兄様も抑えて下さい!!」
煉獄としのぶが互いの間に入り刀を収めさせる。
「争う事でしか解決出来ないとは…可哀想だ…」
「何だぁ喧嘩か?俺もまぜろよ!」
「煙草くさっ…腹黒天邪鬼め煙草すったな?」
「あれ…僕何でここにいるんだっけ…」
「やっと柱全員揃うたし、始めよか」
「うむ!そうだな!って…富岡がまだ居ないようだが?」
「水柱はんならあそこにいんで」
富岡は何を話す訳でもなくて只少し離れた木に寄りかかり、枝に止まる鳥を眺めている。
(富岡さんたら…なんな所にたった一人で…―独りぼっちだけどそう言う所が素敵!)
「さぁ炭治郎はん、そろそろ始めんで」
「は…はい」
(…いつの間にあの人達は来ていたんだ?…全く分からなかった…)
柱同志の殺気のぶつかりに気を取られていたせいか、残りの柱達(一名を除いて)が七火さん達の周りに集まっていた。
「よし!柱が揃った!早速裁判を始めよう!それで七火、後ろにいる少年が鬼を連れてる鬼殺隊隊士だな?」
「その通りや、ほら炭治郎はん前に出て」
「は…はい…」
七火に背中を押され、柱達の前に出る。
「ド派手な奴だと思っていたが、よく見ると地味だな」
「めんどくせぇからそいつも連れてる鬼も殺せばいいだろ?」
「待って下さい!俺の妹は確かに鬼ですが、人を襲わない鬼なんです!」
炭治郎の言葉に七火としのぶ以外の柱の顔が呆れ顔にかわる。
「は?何言ってんだガキ!人を襲わない鬼がいる訳ねぇだろ!!」
「そないな事あらへんよ?昨日哪吒蜘蛛山で僕もしのぶも見たよ、人間の炭治郎はんと鬼の禰豆子はんが仲良うしとってん」
「人を襲う所か炭治郎君と共に下弦の月と共闘していた痕跡もありました」
「なんと!そんなド派手な事が?」
「鬼と共闘だと?…少年本当か?」
「七火さんとしのぶさんの言う通りです!禰豆子と一緒に戦いました!」
「だが人を襲う襲わないより鬼殺隊が鬼を連れている事に問題があるんじゃないか?」
口元を包帯で隠し蛇を連れた柱が炭治郎に鋭い視線を向けた後、七火を睨みつける。
「僕らは人を襲う鬼を殺すのが役目、人を襲わへんましてや共闘してくれる鬼を殺す必要はあらへん思うで?蛇柱はん」
「確かに!私達に協力してくれるなら心強いわね!」
「うむ!確かに七火の言う通りかもしれない」
「だから私この子は悪くないと思う!」
「甘露寺!?…チッそもそもそいつの妹が人を襲わない所を俺達は見ていない!」
「ならよぉ…」
「え?うグッ!?」
「風柱はん!?何をする気や!!」
身体中古傷だらけの柱が炭治郎の目の前までくると、胸ぐらを掴み持ち上げる。
「本当にこいつの妹が人を襲わないって事を確かめればいいだろ!!」
軽々と炭治郎を屋敷の中にほおり投げて、壁との激突の衝撃で背負っていた木箱の蓋が開き。中にいた禰豆子が屋敷の中にほおり出された。
「グアッ……」
「炭治郎はん怪我あらへんか!?」
「炭治郎君!!」
七火としのぶは慌てて炭治郎に駆け寄り、体を起こす。
「傷口が開いてしまった様ですね…」
赤くなった包帯を取り替えようとしのぶが手を伸ばすが、炭治郎の手が振り払う。
「俺は大丈夫です…それより禰豆子は?…」
炭治郎の心配を他所に禰豆子は起き上がり、ぼーっとしている。
「よかった…」
「呆れた…自分より禰豆子ちゃんの心配ですか…」
「たかが傷口が開いただけだろ?それに好都合だ!そいつの血を見た妹がどうするのか見ものだぜ!」
「不死川さん!!」
「恋柱はんこれでええんや!これで証明出来れば炭治郎はんも禰豆子はんもお咎めなし…そう言う事やろ?」
「あぁそうだ」
「可哀想だ…ある訳ない希望に縋るなんて」
「七火!胡蝶!襲って来たら迷わず頸を斬るんだ!!」
「頼んだで、炭治郎はん!」
「お願いしますよ炭治郎君!」
「はい!…禰豆子…おいで!」
炭治郎の声に我に返った禰豆子はこちらに顔を向け立ち上がり、ゆっくりこちらに向かってくる。
「…ね…ねぇあれやばいんじゃないの…」
「甘露寺…静かに見て」
やがてすぐそばまで禰豆子が来ると、七火達三人を抱きしめてきた。
「禰豆子!」
「馬鹿な!?…本当に人間を襲わない…だと!?」
「何と…」
「何で僕らも抱かれてるんや?」
「さ…さぁ分かりません…」
「こんな事が有り得るとはド派手に驚いた…」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
七話目
「昼間は会議ご苦労だったね」
あの後御館様が現れ状況を伝え禰豆子は鬼殺隊の一員として認められ、炭治郎はお咎めなしとなった。
「疲れている所済まないが予想より早く裁判が終わったから午後は予定通り柱合会議を行わせてもらうよ」
「それ程深刻な話があるって事なんやろう?」
そしてしばらくの間怪我の治療と修行のため七火としのぶの屋敷で炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子を引き取る事にした。
「七火の言う通りだ、最近隊士達の質が落ちていると思うんだ…」
「確かにな、雑魚ばかり集まったって何の意味もねぇしな」
「不死川の言う通りだが、ド派手な案が見つからないのも事実だな…」
「だが昼間の少年はいい目をしていたな!胡蝶の継子の栗花落といい七火の継子の花筐といい期待出来る隊士も中にはいる!」
「それは事実ですが、一部ではなく隊士全体の質を上げなければ意味がないと思います」
哪吒蜘蛛山の時もそうだったが十二鬼月以外の鬼に殺された隊士も多く、生き残った隊士は本の数名程だ。
「せやったら僕にええ考えがありますえ?」
「何かな七火?」
「僕ら柱が他の隊士達に稽古をするのんはどうでっしゃろか?継子を持たへん柱もおるし、柱が直々に稽古をしたら継子も見つかるし隊士の質も上がるかと思うがどうやろう?」
「腹黒天邪鬼にしてはまともだな」
「あ!それ私もいいと思うわ!」
(一見冷たそうに見えて実は隊士の事を思っているなんて…七火君やっぱり優しい…素敵だわぁ)
「うむ!俺もその考えはいいと思うぞ!!」
「私も兄様の意見に賛成です、ね?富岡さん」
「決まれば従うまでだ」
「あれ?今日って何で柱の皆が集まったんだっけ?…」
「可哀想に…話を聞いていなかったんだな…だがいい考えだ」
「それなら強え奴が集まった鬼殺隊が出来そうだぜ」
珍しく柱の意見が合う。
「確かにそれはいい考えだね検討しておくよ、とりあえず今日の柱合会議はここまでにしよう」
『はい』
「あ、それと七火と甘露寺は話があるから残ってくれ」
「な!?腹黒天邪鬼と甘露寺が残るだと!?」
「僕と恋柱はんに話どすか?」
「…私と七火君で居残り…キャーなんだろ!!…」
「兄様先に帰りますね」
「気ぃつけてや、炭治郎はん達を頼んだで」
お座敷から他の柱が出ていき、七火と甘露寺だけが残り静寂に包まれた。
「それで話とは何どすか?」
「実は二人に鬼の討伐に行って貰いたいんだ」
「私と七火君にですか?」
「そうだ、ここから北に廃寺があるんだが、どうやらそこに鬼が住んでるらしい」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
八話目
「廃寺に住む鬼ってどんなんやろうか?」
「…」
(七火君との合同任務…二人きりの任務って初めてじゃないかしらぁ!!)
「隊士達とも連絡がとれへんようやし、もしかしたら相当な力を持った鬼なのかもしれへんな」
「…」
(御館様の話だと近くには温泉街があるって言うし!鬼を倒したらゆっくりしてきていいって言ってた!!七火君とゆっくり温泉に入ったり美味しい物食べたり…もう最高じゃない!!)
御館様に蜜璃との合同討伐任務を受け、二人での御屋敷からの帰り道。
道中蜜漓に話をふるが、返事が一向に返って来ない。
「恋柱はん…僕の話きいてるん?」
「ひやっ!?」
下心丸出しの妄想をしていると、七火の顔が至近距離に有り思わず変な声を出し我に返った。
(顔…近い…こんなに近くで顔を見たの初めて…)
「恋柱はんもしかして具合い悪いんちゃう?ぼーっとしとったし」
「え?…ぜ…全然元気だよ!?ごめんちょっと考え事してただけだから!」
「そう?ならええんやけど」
「ね…ねぇ七火君いっぱい食べる女の子ってどう思う?…女の子らしくないし嫌い?」
「沢山食べる女の子?…全然嫌ちゃうし僕が作った料理を沢山食べて幸せな顔してるのを見るのが好きなんや」
(そう言えば…カナエちゃんもよう食べる人やったなぁ…本人は恥ずかしがっとったけど、僕が作る料理を見て涎垂らしとった時のカナエちゃんほんま可愛かったな…)
(やったぁ〜七火君いっぱい食べる人好きなんだぁ!七火君が作った料理食べてみたいなぁ〜)
グゥ〜
(…今の音…もしかして恋柱はん?…)
夕食時に近く更に食べ物の事を考えていた為、蜜璃のお腹に住む食欲が空腹を知らせる。
(やっちゃったぁぁぁぁあ…何で二人っきりの時になっちゃうの!!私のお腹ぁぁあ…し…七火君に聞こえちゃったかな…)
心の中で嘆き七火を横目で確認すると、何の変哲もない何時も通りの表情を浮かべている。
(よかった…聞こえてなかったんだぁ…)
「もう夕食時やし、何処かで食べていこか?僕お腹空きすぎて腹の虫鳴いてまいそや」
「あ!賛成!!私この辺りで行ってみたいお店があるのぉ〜そこに行ってみない?」
「恋柱はんに任せんで」
「わかったぁ、着いてきて〜」
〈数時間後〉
「兄さん…これは一体どう言う事ですか?」
「し…七火様…まさか…」
「イヤイヤ!!誤解しいひんでくれ!!御館様の屋敷出た後恋柱はんとご飯を食べる事になって、ほんなら恋柱はん酒も飲み始めて…酔いつぶれて起きへんし家知らへんし…しゃあなかってん!!」
蜜璃が酒を飲んで酔いつぶれてしまい家を知らず、仕方なく自分の屋敷に連れていく事にしたのだが…入口の戸を開けるとしのぶと秋千代が出迎えてくれたが、背負った蜜璃を見て表情が一転した。
「全く…秋千代…甘露寺さんを私の部屋に連れて行って私の布団を使っていいので横にして下さい」
「わかりました」
蜜璃を秋千代に任せしのぶと二人だけになった。
「兄さん何か言う事あるんじゃないですか?」
「お…お土産買うて来たで…」
「ちがーう!!帰って来たら言う事があるでしょう!?」
「あ、ただいま…」
「おかえりなさい、兄さん」
目次 感想へのリンク しおりを挟む