砂上の雪は美しかった (Binegar*Blue)
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エピローグ:約束と出会い
佐城雪美
―一面の雪化粧
見渡す限りの大地は白一色で
ぼくの真っ黒な身体とは正反対だ
見上げれば、月明かりに照らされる彼女
そして傍にはその付き人がいる
白い吐息が、ぼくの口から漏れる
「…………」
彼女は何も言葉は発さずぼくを抱き上げ
優しく包み込んだ
彼女はどこか寂しげで、
ただただー空を見つめていた
「ねぇ…ペロ…」
彼女は口を開く。
「つぎは………」
「おともだちも一緒だと…いいね……」
しばらく微風の音だけが響いていた
そんな静寂の中
ぼくは「そうだね」と
返事をしたのだった
出会い (1)
彼女と出会ったのは夏祭り直後だった
川島さんと屋台を回っている時に、ふと目の前を彼女は通り過ぎた。
「黒猫は不幸を呼び込む」
そんな迷信をまだ信じていた頃の話だ。
幸運グッズを買い漁った直後だというのに
幸先悪いなあと、失念していた時、私の袖口を誰かが引っ張っていた。
振り返ると小さな女の子がいつの間にか私の後ろにたたずんでいた。しばらく見つめあっていたのだが、私の目をみてその子は口角を上げて、口を開いた
「…………黒猫……………?」
と、首を傾げてただ一言。
私は彼女が向かった方向を指差して、
その子に伝えた。
するとその子は、ぺこりとお辞儀をしてその場を立ち去ったのだった。
腰まで伸びた青い髪。
物静かな様子は大人びて見えたけれど、
その子の言動からは年相応の幼さが見られた。年は2歳くらい下だろうか。
少し興味を持ったけれど、黒猫を見たショックもあって、それどころではなかった。
でも、その後間もなくして、私たちは再会を果たした。
その子も同じプロダクションに所属するアイドルだったのだ。
出会い (2)
彼女と出会ったのは今と同じような雪の日だった。
窓は部屋との温度差で曇っている。
ただ朧げに町の街頭が暖かく照らしているのがわかる。
私は家で一人きりだった。両親はいつも仕事で忙しいから夜遅くに帰ってくる。
私が両親としっかり話したのはいつだったか、もう検討がつかない。
いつも、父が帰ってくる頃には私は寝ていて、私が起きるころには仕事に出かけている。すれ違いばかりで、私の言葉数も徐々に減っていった。
でも今日はいつもと違う日になった。
いつも声なんて発さない朝だったけれど、今日は一言、声を発したのだ。
朝、目を覚ますと彼女がリビングのソファで横になっていた。窓に映る積もった雪とは対照的に黒い衣服を彼女は纏っていた。
私は戸惑いながらも、モーニングティーを入れて、彼女の横に恐る恐る腰掛ける。すると、
「…んぎゃあ」
と鳴きながら、私の太ももの上に乗り、顔を近づけてきた。彼女はひとしきり私の匂いを隅々まで嗅ぎ終わると不意に、私の頬を舐めた。私は驚いたけれど決して嫌なわけではなかった。しばらくすると私は口を開いていた。
「……………ペロ」
彼女はそう呼ばれると、嬉しそうに頬擦りをしたのだった。
どうも、ぽん酢です。今回の冬コミはガチで挑もう!
というわけで7thライブの後押しもありますし、余裕を持ちまくって挑みます。
冬コミの原案です。
一週間ペースで更新できればなと思います。
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ぜひ批判でも構いません、ご意見ください!
ぽん酢
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