ハーフヴァンパイアは半灰化しても火魔法研究がしたい! (アンチマテリアル竹輪)
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ハーフヴァンパイアは半灰化しても火魔法研究がしたい!

世界観説明が少し長いので読み飛ばすのもあり


ここはヴァンパイアの支配する大きな街である。

夜は血を求めてヴァンパイアが街に繰り出し、昼は人間の奴隷が暗い顔で街を歩いている…訳ではなく魔物に住む所から追われた人々や、貴族絡みの面倒な問題から逃げてきた人々の駆け込み寺のような街であった。

 

農地には24時間3交代制で遮光装備をきたヴァンパイアが見回りをして魔物を寄せつけない。貴族はヴァンパイアが関わると干渉が途端に難しくなるのでほぼ手を出してこない、血はそこそこ取られるが、争い事を好まない人々にとってはオアシスの様な場所であった。最近はエルフやらドワーフ、獣人なども混じってきてかなり発展しており、知名度も上がってきている。

 

ヴァンパイアから見ると如何だろうか、ヴァンパイアとは基本的に実力主義の種族である。周囲を蹴落とし自分こそ上に立ち、我こそが真のヴァンパイアである!みたいな。ただし何処にでも例外はある物で、いや別に真のヴァンパイアとか興味無いんで。という変わり者もいる。でもどちらのヴァンパイアも血が必要である。血を吸うとどんなに上手くやっても足が付く、別に血を吸われるくらいで死にはしないが忌避されているし、多くの宗教では魔族と同一視され、討伐隊が組まれる。強ければ割と何とかなるが、弱い者は血を吸えなければ日差しで干からびたり、流水が渡れないという弱点を持った人間の様なものだし、何より強い飢餓感に襲われ続けるのは中々つらい物があるだろう。そんなヴァンパイアにとってもここはオアシスの様な場所であった。弱いヴァンパイアといっても人間よりも強く、そこらの魔物ぐらいでは片手間に片付けられる強さを持つ。たまに現れる魔物を蹴散らして血がもらえるのはかなり待遇はいいだろう。最近は戦闘面だけではなく、物づくりや魔法の研究で血を得るヴァンパイアも増えてきた様である。

 

そんな急速発展中のこの街、多種族が集まれば様々出会いがあるのは当然で、多種多様なカップルが生まれる。その中ではヴァンパイアと人間の組み合わせなど特別珍しい訳ではなく、1日街を見てみれば十数組は見ることが出来るであろう。

 

 

さて、このいろいろと混沌とした街に一人の変わり者がいる、ハーフヴァンパイアの癖に火遊び好きな奴がいると、噂になるくらいは変わっている。

 

「火遊びっていうとそうゆう?」

「違う違う、火魔法のやり過ぎで灰に成り掛けたらしいぜ」

「そんなバカがいるのか?まだ火遊びの方が説得力あるぞ」

「案外そっちが本当かも知れねぇな、血入りビール一つ下さーい」

「今日はこれで店仕舞いだよ、さっさと飲んで帰んな」

「「へーい」」

 

今日も夜が開け人間達の時間がやってくる、働いてお疲れのヴァンパイアはお休みの時間、畑の見回りの担当だけ今日は曇りでないことにため息をついていたが。

 

 

ハーフヴァンパイアはどうするのかって?

どちらに近いかにもよるが大抵は夜に行動する者が多い、ヴァンパイアの弱点も半分ぐらい受け継いでいるからである。

昼に行動できない訳では無いが、肌がヒリヒリするのに好き好んで昼に外に出る者は少ない。

 

 

ただしこの街の端っこ、この街でも大きめのお屋敷の一室に住む変わり者は違った。

暗い部屋の中、銀色の長い髪はぼさぼさ、目の下に隈を浮かべバーナーの様なもので赤い宝石の付いた指輪を付けて指先を熱する変人がいた。

 

「火力負荷20%上昇…」

 

バーナーの火力を強めても指先は灰にならず綺麗な肌色を保っている。

 

「やった…遂に出来た…完成した…!」

 

変人の求める物ができたのだろうか、かなりの喜びを感じられる。

バーナーの調整弁の操作をつい逆にやってしまうほどである。

 

「あっやば、」

 

指先が灰に変わり指輪が爛々と輝きながら床に落ちてゆく。

どう見てもやばい、そう思った変人の行動はとても速い、指輪なんぞには目もくれず、部屋を出てドアを閉める。

キィィィンと独特の高周波の音が響いたと思えば、ドンッと爆発音、ドア越しに衝撃が伝わりどれだけの威力があった分かってしまう。部屋の機材は全滅だろう。

少し立て付けが悪くなったドアを開けると窓が吹き飛び、少々開放的になっていた。

 

 

「眩しい…」

 

 

表面が焦げて横倒しになったタンスからローブを取り出しくるまる。

どう言い訳しようか、と言い訳を考えているようだがどう考えても部屋一つ吹き飛ばしてしまったのだから無理である。

ならば成果を見せて誤魔化そうと予備の機材を引っ張りだし指輪に魔法を刻んでいくのであった。

 




魔力バーナー
人間の職人が研究職のハーフヴァンパイアからの依頼で開発させられた魔法具
魔力を高温度で効率よく安定的に燃焼させるために様々な工夫が施されている
今では職人の腕試しに作られることもあるとか。


最後まで読んでくれてありがとうございます
誰か続き書いて


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