ぼっちと魔王が異世界から来るそうですよ? (ボチボチ太郎)
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YES!ぼっちと魔王もやってきました!
こうして彼らは箱庭へ招待される


「比企谷ぁ!!どうしてそういうやり方しか出来ないんだ!!」

 

対して興味のない奴の為に泥を被り企画を達成させた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

「ヒキタニ君、美味しいの待ってるよ」

 

相反する達成させようのない依頼。付き合いたくない、付き合いたい……俺は海老名さんに告白する事でどちらも傷つかないようにどろ被った

 

その結果が校内でのいじめ、奉仕部との決別だった。

 

あの2人に抱いた感情は期待だった……だがそれも裏切られた。

あの2人に勝手に期待し、勝手に失望した自身に対する自己嫌悪が溢れてくる。

俺は何を期待していたのだと、心の中では気づいていた。

本物などない事を……

それでも諦めきれずにいる……

俺はどこまでも弱く醜い生き物だ……

 

━━━━━━━━━━━━━

 

奉仕部との関係は崩れてしまったものの城廻先輩と一色いろはによって奉仕部に依頼が持ち込まれた。他に立候補がいない現状で一色いろはを生徒会選挙で落とす……この依頼が更に俺達の関係を悪化させるとは思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

依頼の為に各々が奔走する中俺は雪ノ下雪乃にもう奉仕部には来なくていいと告げられた。

 

「はぁ……」

 

「あれ?もしかして比企谷くん?」

 

妙に聞き慣れた声に身を固くし無視を決め込む。

 

「ありゃ、無視?お姉さん悲しいぞー?このこの〜」

 

「あの、離れてくれません?雪ノ下さん」

 

異常に距離感の近い彼女に視線を向けると、彼女、雪ノ下陽乃はイタズラが成功した子供のように、しかし何処か妖艶な笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「比企谷くん奇遇だね?こんな所で何してたの?」

 

「別に、ただ冷たい風に当たってただけですよ」

 

「じゃ、お姉さんとデートしようか」

 

「え、いやですけど」

 

「つれないなぁ……でも君に拒否権はないから。じゃ、行こっか」

 

「そろそろ俺の人権確立してくれねぇかな……」

 

そうボヤきながら俺は雪ノ下さんに引っ張られ喫茶店にやってきた。

俺と雪ノ下さんはコーヒーを頼み一息つくとこれまた懐かしい声が聞こえてきた。

 

「あれ、比企谷じゃん!」

 

「折本……」

 

「比企谷くんの知り合い?」

 

「はい!比企谷とは同中だったんですよ!」

 

「へぇ!」

 

「お姉さん、比企谷とどんな関係なんですか?」

 

「私かー、ねぇ比企谷くん。私って比企谷くんのなんなのかな?」

 

「いや、知り合いの姉とかじゃないすか……」

 

折本の登場で嫌な予感はしていたが案の定黒歴史を暴露されやはり今日は来るべきじゃなかったと後悔するのだった。

 

△▽△▽△▽

 

「雪ノ下さん、どうします?帰ります?」

 

「うーん、そうだねー。そろそろ帰ろっか。」

 

「それじゃあ、俺はここで」

 

「あ、比企谷くん。何か落としたよ」

 

「?……手紙?」

 

「君宛にしては随分凝った手紙だね?」

 

「こんなの貰った記憶ありませんよ……」

 

「ねぇねぇ、中は?」

 

「え、雪ノ下さんも見るんですか?」

 

「だって気になるじゃない?」

 

「はぁ……」

 

「ほらほらー早く」

 

偉くしっかりとした手紙でちゃんと比企谷八幡様と書いてあることから誰かのイタズラだという可能性はないだろうが、材木座の厨二を詰め込んだ手紙だという可能性も否めないのだ。

俺は手紙を開き中を覗く。

同じように隣で雪ノ下さんが覗いてきた。

 

【悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能ギフトを試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの "箱庭" に来られたし】

 

なんだ?やっぱり材木座のイタズラか………

 

次の瞬間俺と雪ノ下さんはこの世界から消えた。

 

△▽△▽△▽

 

「うおおおおお!?」

 

「きゃっ!?」

 

「ッ……!雪ノ下さん!!」

 

「ひゃっ!比企谷くん!?」

 

「動かないでください!!」

 

俺は雪ノ下さんを庇うように抱き、湖に落ちた。

幸いにも何枚もの水膜によって怪我をすることはなかった。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜ?コレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

 

「.........いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

 

「俺は問題無い」

 

 

「そう。身勝手ね」

 

俺達以外に落とされた奴らが居たようで随分とご立腹な様子だった。

お互い睨み合って一触即発の空気……あぁ、帰りたい

 

「此方.........どこだろう?」

 

猫を抱えたショートヘアの少女も問う

 

「さぁな。まぁ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。お前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱き抱えてる貴女は?」

 

 

「春日部耀。以下同文」

 

 

「そう。よろしく春日部さん。」

 

「そこの貴女は?」

 

「わたしは雪ノ下陽乃。こっちは……後輩?の比企谷八幡だよ。」

 

「!?……いつから居たのかしら……まぁ、いいわ…最後はいかにも野蛮そうな貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と3拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

うわぁ…問題児の鏡だな…夜トもなかなか問題児だったけどな

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

雪ノ下さんの紹介で全員が目を見開いて驚いていた。

しかし、気を取り直して自己紹介を再開していたがあまりの問題児っぷりに再び考えるのだった。

 

早く帰って小町に会いたい……

 



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そして問題児達は真実を知る

上空から落とされ、問題児ががやがやとざわきはじめた。

すると問題児筆頭、逆廻十六夜は苛立たしげに言う

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇの?」

 

「そうね。なんの説明もないままではうごきようがないもの。」

 

「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

(全くです。)

 

「ねぇ、比企谷く……あれ?」

 

「あれ、あいつまた消えたのか?」

 

「匂いでも追えない……」

 

「どこに行ったのかしら……?」

 

「ウギャャャ!?」

 

「あ、居たね」

 

「居たな」

 

「居たわね」

 

「うん、居たね」

 

草むらから奇声をあげて飛び出すうさ耳とその後ろに佇む腐った目の男。

いつの間にか自分の背後にいた男の存在に気付かなかった黒ウサギは飛び出して来たのだ。

 

「なんだその奇妙な生物」

 

「そこの草むらで俺達の事見てたから捕まえたんだよ……」

 

「お前も気付いてたのかよ……まあ、雪ノ下以外みんな気付いてたみたいだけどな」

 

「みんな凄いねぇ」

 

その後は何かと黒ウサギが弄り倒され小一時間程経った頃には逆廻の前で正座した黒ウサギが居た。

 

「それじゃあ始めろ」

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?言いますよ?」

 

「早くしろ」

 

鬼かよ……

 

「う、言います!ようこそ、箱庭の世界へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうと召喚致しました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気付いていらっしゃるでしょうが、皆様は皆、普通の人間ではございません!」

 

あ、とうとう人間じゃなくなったのか俺……俺の目ってそんなにひどいか?

 

「若干一名落ち込んでる!?……まぁいいでしょう」

 

いいのかよ……

 

「皆様のその特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活出来る為に造られたステージなのでございますよ!」

 

俺や雪ノ下さんを除いた3人は目を輝かせながら黒ウサギに質問を投げかけていた。

黒ウサギもあらかた質問に答え終えた時に俺と逆廻は質問を投げかけた。

 

「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのは……たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

逆廻は俺達を一瞥した後に天幕を見上げすべてを見下すような視線で言った

 

「この世界は………面白いか?」

 

俺達全員は逆廻の質問に対する黒ウサギの返答を静かに待つ。

 

「────YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる新魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証致します!」

 

「じゃあ俺からもいいか?」

 

「はいな!なんでしょうか!」

 

「どうやって帰るんだ?」

 

その瞬間黒ウサギの表情は固まりピシッという音が聞こえた気がした。

 

「な、何故でしょうか?」

 

「俺自身ギフトなんてものに覚えは無いし、雪ノ下さんに関しては巻き込まれただけだ。自分の力が不確かな状況で危険な目にはあいたくない。」

 

「しかし、招待状はギフト保持者にのみ……」

 

「黒ウサギ。ここまで言ってお前は食い下がらないのは何故だ?使えない者が居ても意味がない。それならそれでも人材が必要な理由がある……違うか?ギフトゲームは人やギフトまで賭けることが出来るみたいだしな。黒ウサギのコミュニティはギフトゲームに敗北して人材を失ったからギフト保持者を召喚して補充しようとした……違うか?」

 

「………はい。比企谷さんの言う通りです。私達のコミュニティは名乗るべき名がありません。よって呼ばれる時は名前のないその他大勢、ノーネームという蔑称で称されています。」

 

「……その他大勢扱いかよ。」

 

「続けてくれ」

 

「はい……次に私達のコミュニティの誇りである旗印もありません。この旗印というのはコミュニティのテリトリーを示す大事な役目も担っています。」

 

「それで?」

 

「名と旗印に続いてトドメに、中核を成す仲間達は1人も残っていません。もっとぶっちゃけてしまえば、ゲームに参加出来るだけのギフトを持っているのは一二二人中、黒ウサギとジン坊っちゃんだけで、あとは十歳以下の子供ばかりなのですョ!」

 

「もう崖っぷちだな!」

 

「ホントですねー♪」

 

いやいや、そんなテンション上げていく雰囲気じゃないだろ……

 

「で、どうしてそんな事になったんだ?」

 

「コミュニティの子供達は皆親もすべて奪われました。箱庭を襲う最大の天災────魔王によって」

 

「ま………マオウ!?」

 

逆廻は目を輝かせながら新しいおもちゃを得た子供のようにはしゃぐ。

 

「魔王!なんだよそれ、魔王って超カッコイイじゃねぇか!箱庭には魔王なんて素敵ネーミングで呼ばれる奴がいるのか!?」

 

「え、ええまぁ。けど十六夜さんが思い描いている魔王とは差異があるかと……」

 

「そうなのか?けど魔王なんて名乗ってんだ強大で凶悪で、叩き潰しても誰からも咎められる事が無いような素敵に不敵にゲスい奴なんだろ?」

 

「ま、まあ…………倒したら多方面から感謝される可能性はございます。倒せば条件次第で隷属も可能ですし」

 

「へぇ?」

 

「魔王は主催者権限という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断る事はできません。私達は主催者権限を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは………コミュニティとして活動していく為のすべてを奪われました。」

 

黒ウサギは今にも泣き出しそうな声で語る。

仲間達の帰る場所を守る為にも改名をせず俺達に頼る他ないと……

 

「いいな、それ」

 

「────────は?」

 

「HA?じゃねえよ。協力するって言ってんだ。それとも俺は要らないってのか?失礼な事言うと本気で他所に行くぞ」

 

「い、いります、いります!十六夜は絶対に必要です!」

 

「あの……ではほかの皆様は?」

 

「私も構わないわ。」

 

「私も」

 

「飛鳥さん……耀さん……」

 

すると逆廻、久遠、春日部、黒ウサギは俺と雪ノ下さんを見る。

 

「で、どうするの?私は比企谷くんに着いてきちゃっただけだから判断は君に任せるよ」

 

「分かったよ……その代わり黒ウサギ」

 

「は、はい!」

 

「さっきも言ったが雪ノ下さんは巻き込まれただけだ。お前のコミュニティの全力をもって雪ノ下さんを守れ」

 

「もちろんです!」

 

「えー、そこは比企谷くんが守ってくれないの?」

 

「いや、雪ノ下さん……俺の柄じゃないでしょそういうの……」

 

「つれないなぁ」

 

クスクス笑う雪ノ下さんはやはり何処か妖艶な雰囲気を醸し出していて久遠や春日部は少し顔を赤くしていた。

 

「まぁ、なんだ……これからよろしく頼む……黒ウサギ」

 

「比企谷さん………ありがとうございます!」

 

「ぐあっ!?」

 

黒ウサギは勢いよく俺に飛び込む。それを久遠、春日部、逆廻はニヤニヤしながら見てくる。

 

「羨ましいな〜比企谷」

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

「比企谷くん……?」

 

「俺が悪いのかよ……」

 

雪ノ下さんだけ顔は笑ってるのに目が笑っていない。普通に怖いんだけど……

俺は内心とあるツンツン頭の不幸な少年を思い浮かべながらこう垂れるのだった。

 



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