君との婚約を破棄させてもらう! (鷹-)
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君との婚約を破棄させてもらう!
「………………! 君との婚約を破棄させてもらう!」
……なに? 何事じゃ。
む、ここはどこじゃ。
「………………を陰でいじめていたと聞いたぞ。」
ワシに言うておるのか? 何のことだ。知らぬわ。
なにやら、皆ビラビラした服を着ておるの。ばてれんが着ておったものに似とるの。
むむ。ワシも着ておるではないか。袴(はかま)のようであるが。
「………………申し開きはあるか。」
無礼者めが。誰に向かって言うておる。
クッ、ビラビラで動きにくいの。長谷部はないのか。誰ぞ刀を持て。
蘭丸はおらぬか!! ………………おらぬか。
「………………!」
面妖な。どうやら奇怪なことになったようじゃの。
神隠しというやつか? ここは神の国か?
落ち着かねば。
落ち着かねば………………そうじゃ、いつものアレじゃ。
「じ・・・」
何じゃこれは。ワシの声とは思えぬな。まるで女のようじゃ。
「じ?」
まあよいわ、少しばかり驚いただけじゃ。やり直しじゃ。
「人間(じんかん)五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」
ふう、落ち着いたわ。
うむ。やはりいつものコレじゃの。
落ち着いたところで、この無礼者に一言いってやらねば。
「隣国で政変があったらしい」
「なんだと?」
「今や王家は名目上のお飾りだ。侯爵家が実権を握っているらしい。」
「侯爵家が? そんな力があったのか?」
「あったというか、抑えていた力を顕(あらわ)したというか。」
「王子の婚約者だった侯爵令嬢が、王子に婚約破棄されて怒ったらしい。」
「それで?」
「なんでも、王子が平民の女に骨抜きにされて浮気したとか。」
「それは・・・また。」
「それで侯爵令嬢が激怒して、抑えていた力を顕(あらわ)した。」
「しかしそれだけでは・・・」
「令嬢は領地に帰った後、領民を鍛えたらしい。」
「領民を? 騎士ではなく?」
「そのようだ。」
「何でも、聞いたこともない長さの槍やら、見たこともない武器やらを使うとか。」
「なんと。それで王家を抑えたのか。」
「領地の教会から、腐敗した聖職者や聖騎士を追い出して、蓄財を取り上げたらしい。一部の聖職者からは、『神敵』『魔王令嬢』と呼ばれているそうだ。」
「しかも、領地では商人ギルドを廃して、誰でも商売できるようにして、旅商人や船乗りが集まって大層賑わっているらしい。」
「ほう、それは良いことを聞いた。いずれ寄ってみるか。」
この小国の令嬢が、その後、近隣諸国を次々と併合、巨大帝国を築き上げることを、この時点で予想できたものはいなかった。
「今や
「令嬢は領地に帰った後、領民を鍛えたらしい。」
「領民を?
この中に農民出身の豊臣秀吉らがいる。
「何でも、聞いたこともない
「
この後、
「しかも、領地では
この
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というわけで、「あのお方」は「織田信長」でした。
Aルート
「無礼者! 手打ちにしてくれる!」
護衛騎士の剣を奪って王子と
即内戦。
本能寺で死亡後の転生だと、多分このルート。
Bルート
「クッ、ここは引かざるを得まい。まずは地盤を固めねば。今に見ておれ。」
尾張の掌握にも苦労していた頃、また近隣制圧の途上。負けそうな状況だと素早く撤退。
この頃の信長なら、そういう選択をしたはず。そのほうが後の展開につながる。
この頃の信長を出すには、転生でなくて憑依かなあ。
(挿絵予定)
重要文化財 紙本著色織田信長像〈狩野元秀〉
安土桃山時代 豊田市美術館
"信長一周忌の天正11年(1583)6月2日に、信長家臣与語久三郎正勝が報恩のために狩野元秀に肖像画を描かせて、兵火で焼けたのち再建に手を貸した長興寺に寄進したと寄進銘にある。"
解説:文化財ナビ愛知(愛知県)
(挿絵予定)
国宝 圧(へし)切長谷部
信長の愛刀。黒田官兵衛、福岡藩主・黒田家に伝わる。福岡市博物館
”本阿弥光徳が長谷部国重の作と極めて金象嵌銘を施した刀である。身幅が広く、大鋒の姿から、南北朝時代に活躍し、一説に鎌倉の名工五郎入道正宗十哲のうちの一人といわれた国重の作と見られる。もとは大太刀であったものを刀に仕立直している。
『享保名物帳』に所載の「へし切長谷部」が本刀である。織田信長所持で、茶坊主観内が敵対したので手討にしたが、御前の下に隠れたので、棚下に刀を差し込み、圧し切ってしまったため「へし切長谷部」と名付けられたという。
現存する長谷部一派の作の中でも、有銘無銘を通じて比肩すべきもののない傑作である。”
解説: 国指定文化財等データベース(文化庁)
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