屁理屈艦これ合戦 (kokohm)
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 文字色のテストととりあえずの土台として投稿。ざっくりとした説明、準備回。ちゃんとしたのを知りたい方は別で調べていただけると。





「――屁理屈推理合戦の時間だ!」

 

 そんな言葉と共に、『七駆の部屋』のプレートが下げられたドアが勢いよく開かれた。これをなした漣に対し、室内の三人――朧、曙、潮は眼をまたたかせる。

 

「なによ、急に」

「屁理屈推理合戦をやりたいってことじゃないかな、たぶん」

「その通り! 朧ナイス!」

「いや、知らないけど。というか屁理屈なんたらって何よ」

「おうっ、ぼのはご存じない?」

 

 どこかの駆逐艦のような鳴き声を発しつつ、漣は微妙に怪しい日本語を発する。知らない、と首を横に振る曙に、仕方ないとばかりに漣は人差し指を立てる。

 

「では、説明しましょう! 屁理屈推理合戦とは、魔法を認めさせたい『魔女』と、魔法を否定する『探偵』によって繰り広げられる、一種の推理ゲームです」

「もうちょっと言うと、まず魔女の側が人に起こせるとは思えないような、摩訶不思議な事件を提示する。それを受けて、探偵はその事件が人の手で起こしえる事件だと推理する。事件の謎が解かれたら魔女の負けで探偵の勝ち、事件の謎が解かれなかったら魔女の勝ちで探偵の負け、って感じ」

「漣ちゃんはともかく、朧ちゃんも知っているんだ」

「司令官に教えてもらったことがあるから。ネットで一緒に動画を見たりもしたよ」

「ちなみに漣もそうです。で、面白そうだから実際にやってみようって感じ」

 

 なるほど、と潮が納得したように頷く。

 

「まあ非番で暇だし、それ自体は良いんだけど、推理ゲームで魔女とか出るもんなの?」

「屁理屈推理合戦には元になった作品があって、魔女はそこから来た要素なんだ」

「そして、魔女がいるからこそ、使えるようになるルールもある。それが、赤き真実青き真実なのです!」

「赤き真実と青き真実?」

 

 テンションの上がってきた漣の言葉に、曙と潮がそろって首を傾げる。

 

「赤き真実は魔女が扱える証明不要な絶対の真実! 赤で語られた分は絶対であり、そこには一片の嘘もない! そして青き真実は探偵が扱える推理の剣! 赤を繰る魔女に対し、魔法の存在を否定するために振るう可能性!」

「……いや、分かんないんだけど」

「まあ、単体での説明は結構難しいからね。具体例と共にやってみるのがいいんじゃないかな」

「ふむ、確かに。そういうわけで朧、何かいい例知らない?」

「ええ……」

 

 漣の無茶ぶりに、困惑した様子を見せる朧。数秒ほど、困ったように眉を下げていた彼女だったが、何かよいものを思いついたのか、

 

「……ああ、じゃあ適当なのを。とりあえず設定、というか事件の説明として、提督が執務室にいる光景を想像してくれる?」

 

 朧のお願いに、曙と潮、ついでに漣はその光景を頭に描く。そんな三人の様子を見ながら、朧はさらに続ける。

 

「で、提督の前に一つの箱がある。箱は厳重にラッピングされていて、中が見えない。その状態で、こういう赤を出してみるね。ゲーム中、箱は一度として開けられていないゲーム終了時、提督は箱の中身を知っていた

「開けていないのに中身を知っていた、ってこと?」

「そういうこと。この、赤で語られた言葉というのは、そのゲームの中において絶対の事実となるの。実は開かれたことがある、とかはなし。開けられていないったらいない、で納得して」

「ゲーム前には開いたことがあるとか、開いてはいないけど他の何かはしたとか、矛盾しない程度の解釈は出来るけどね」

「前提みたいなもんなわけね。で、それを踏まえたうえで推理をすると」

「誰かに中身を聞いた……とか?」

 

 潮のつぶやきに、朧が頷きを返す。

 

「そうそう。その場合、探偵はそれを青で提示するの。提督は誰かから箱の中身を聞いたって風に。それに対して、魔女はこの青を否定する――青を切る赤をさらに提示する必要があるわけ。提督以外の登場人物は存在しないという感じかな。こうやって赤と青の応酬を重ねて、青を否定する赤が出せなくなくなったらリザイン――つまり魔女の負け。逆に推理が枯渇していよいよ青が出せなくなったら探偵の負けね」

「ちなみに、赤はその青の一部分でも切れていたらオッケー。さっきの奴だと、ご主人様は耳栓をしていた、みたいなのでも成立するね。潮の推理とは意味合いが異なるけど、青は否定しているからいい、ってこと」

「へえー……」

「だから、青を使うときは何処まで細かく主張するか考えた方がいいかも。あんまりきっちり組み過ぎると、揚げ足取りみたいな赤を出されちゃうから。」

「その時はまたそれを否定するような青を出せばいいだけでしょ」

「まあそれもそうなんだけどね。それと、提示された赤がちゃんと青を切っているかどうか、それを検証するのは探偵側の仕事になるよ。ずれた赤で切ったふりをする魔女もいるから」

「漣とかはそういうのやりそうね。で、ルールはそれで終わり?」

「いえいえ、もう一つ基本ルールがあるのですよ。その名も復唱要求!」

 

 ぴしり、とまた上機嫌な調子で漣がポーズをとる。ただ、いい加減に慣れてきたのか、曙も潮も――潮ですら――さしたる反応を見せず、ただ黙って視線を動かすことで朧に話を促す。

 

「ああ、うん。復唱要求は探偵側が状況の確認をする、あるいはこういう赤が欲しい、という場合に魔女に対して出すものだね。復唱要求、ゲーム開始前、提督は中身を知らなかったみたいに。これに対して、魔女はその通り、あるいは少し違う文言で赤を返してもいいし、完全に拒否してもいいんだ。今回なら、ゲーム開始前、提督は箱の中身を知らなかったと私は返すかな」

「断ってもいいの?」

「うん。復唱要求は探偵の権利ではあるけれど、魔女にとっては義務ではないからね。受けると致命的な事態になる、あるいは単に場をひっかきまわしたい、ってことで復唱を拒否できるの」

「実際、復唱要求を完全に撤廃して、青と赤オンリーでやる場合もあるみたいだからねー。まあ、潮とぼのが慣れていないし、個人的に面白くないから、漣のゲームではやらないけど」

 

 スルーに堪えた様子もなく、平然と漣が補足をする。そんな彼女の様子に、また強いな、などということを思いながら、曙は頬杖をつく。

 

「なるほど、大体は分かったわ。で、漣がその魔女を、私たち三人が探偵をして、どっちが勝つかゲームをしよう、と」

「そういうこと! その感じだと、ぼのは乗ってくれるってことでおけ?」

「暇つぶしにはなりそうだし、あたしは良いわよ」

「私もいいけど……朧ちゃん、例題の答えって結局なに?」

 

 気になる、と言う潮に、ああと朧が頷きを返す。

 

「答えは箱が透明だっただよ。透明だから中身も見えたってわけ」

「あれ? でも箱はラッピングされていたって言ってなかった?」

「そこは幻想描写……ああっと、要はゲームでの状況の説明には嘘が混じっていることがあるんだ。あえて言っていなかったけどね」

「それっていいの?」

「赤は真実ってのは、=赤以外は真実と限らない、嘘が混じっている、ってことだから。基本的に赤以外の言葉は参考程度にして、前提に置かない方がいいよ。というか、そういう前提を復唱要求で確認するのが基本かな」

「分かった。じゃあそのつもりで頑張るね」

 

 うん、と頷く潮に、朧もまた同じものを返す。その二人と、思いのほか気乗りしている曙を見て、漣は力強く両の手を打ち合わせる。

 

「ではでは! 漣の屁理屈推理合戦を始めますよ!」

 

 面白いことになればいいな。それぞれに差異はありつつも、そういう意味合いの思いを、七駆の面々は抱くのであった。

 




 とりあえず諸々のテストも兼ねての投稿。第一射――第一盤のゲームは謎が思いついた時に投稿します、たぶん。私が書いている別の屁理屈推理合戦の方――こっちはこっちで残します――に回すかもしれませんが、そこはその時に。

 補足。人選はまず初期艦五人で始める予定だったのを、五人は多いかなと変更。導入役をやってくれそうな漣を続行で、関連のある七駆でやることに。第一射ではこの四人で、第二射以降は前回に出た艦娘一人が続投で残りは新顔、みたいな風でやるかもしれないし、やらないかもしれない。普段のプレイだと私は潮しか使わないので他の三人の口調が染みついておらず、しっくりこない。そこも要思案というところ。



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