最高への挑戦外伝 空白のグリッド (ヒロ@美穂担当P)
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1st 狂った日常

今回は「銀色の革命者」最終話直後の話。
美世の能力「ブレイク」に関わる事実が明かされる。


2012年11月。

JAFグランプリ富士スプリントカップで大クラッシュした34号車のモチュールGT-Rのドライバーである原田美世。

彼女のクラッシュはニュースで大きく取り上げられた。

 

 

 

 

 

 

彼女はそれ以降アイドル活動からもレースの舞台からも姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《2012年12月》

 

 

 

 

 

ここは東京都内のとある病院の病室。

死んだ目で天井を眺める女性の姿があった。

 

 

 

「ヒマだ……」

ベッドに横たわるのは原田美世。彼女こそ先月のレースで大クラッシュした本人である。

 

 

 

 

「動けないしなぁ……」

彼女の左足にはギブスが。骨折した左足は自由に動かない。顔などにも怪我の傷跡が残っていた。

クラッシュから約3週間が経ち、リハビリも行ってはいるものの、依然として回復の兆しは見えてこない。

 

 

 

 

 

「暴走……その通りだったな」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

時間を遡って11月。

レースでのクラッシュ直後、美世は病院まで大急ぎで走ってきた蓮と顔を合わせる。

 

 

「美世さん!ああ……っ、怪我が!」

「ごめん……やっちゃった」

美世はそれだけ蓮と会話を交わして手術室に運ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

手術後。

病室に戻ってきた美世が最初に見たのは自身がクラッシュしたレースのハイライト映像を見ていた蓮。

 

 

 

「なんか……自分をコントロールできなくなっちゃってて」

「クールダウンもできない。そんなテンションだった」

美世は蓮にその時の状況を伝えた。よくよく考えれば自分のミスじゃないか。そう美世は思っていた。

 

 

 

 

だが。

「脳内物質の過剰分泌が起きたんだよ」

いきなり後ろから声が聞こえて蓮と美世が驚いて振り返るとそこに立っていたのは一ノ瀬志希だった。

「プロデューサーの車はイイ匂いがするんだー」

志希は蓮のFD()の後を追いかけてきたらしい。

 

 

 

 

 

 

「脳内物質の過剰分泌?」

「そう。『ブレイク』の副作用……と言えるかな」

 

 

 

 

 

美世は『ブレイク』なる特殊能力を持っている。美世の怒りや悲しみといった特定の感情が一定以上に達した時に発現する特殊能力。発現すると情報判断能力及び空間認識能力の向上、判断速度の向上などが認められる。

志希曰く、実際に存在してるらしいがその存在を認める人はほぼ皆無であると。

美世はある時にこの『ブレイク』を発現するもこれをあまりわかっておらず、志希に話した事で『ブレイク』の存在を初めて認識したのである。

 

 

 

 

 

 

 

「『ブレイク』はヒトの脳内に秘められてる能力がある時に覚醒して高い能力を発揮する……。でもそれは脳組織の外部刺激があって初めて起きる物」

「その刺激がある事で『ブレイク』はある。でも……短期間に発現する回数が増すと脳への負担も大きくなっていく」

「ヒトの考え方で例えたら……そうだね。やりたくない事を無理に強いられるような物かな」

「んで『ブレイク』を発現した人の脳組織には脳内組織の変化した跡があった。異常な速度で変化した跡がね。その結果、被検体の身体機能には障害が残った。右半身不随になってしまった……」

「つまりあたしが言いたいのは短期間の内に『ブレイク』を使いすぎて本来待たなければならない脳組織の変化速度を上回る速さで脳組織の変化が起きて伝達組織のオーバーフローが起きてしまった……ってコト」

志希の口から出た事は美世と蓮に大きな衝撃を与えるのだった。

 

 

 

 

 

 

「つまり美世さんのクラッシュは……脳の暴走みたいな事が原因?」

「そーいう事だよ」

蓮の推測は志希に肯定される。

 

 

 

 

 

「ねえ、聞いてもいい?脳組織の変化速度って本当はどのくらいなの?」

美世は聞く。

「んー……あんまりはっきりとはわかんないけど……数年単位じゃない?」

「えっ」

 

 

 

 

 

美世が初めて『ブレイク』を発現したのが去年の6月頃。それから1年が経過している。しかしそれでも脳組織の変化が終わっていないのだと。

 

 

 

 

 

 

「そんな……もし美世さんに何かあったら遅いじゃないか!」

蓮が珍しく動揺を見せる。『ブレイク』の使いすぎで美世の体に障害が残ってしまったら彼女のレーサー人生どころかアイドル活動を諦めなくてはならない上、日常生活にも支障をきたす。

彼女の努力が実って今の彼女がある事を誰よりも知っている蓮にとってそれだけは絶対にあってはならない事だった。

「『ブレイク』は使わなくても確実に肉体的変化を感じるらしいよ。それがどういう結果かはともかく」

志希の言葉の続きが良くない事だとは容易に想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志希が病室を出ていった後。

美世は明かされた事実に呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

「蓮君……あたしはどうしたらいい?」

美世の問いに答える事ができない蓮。適当な事を言って彼女を傷つけたら。蓮は美世に言う言葉を選べなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「そろそろリハビリの時間か……」

備え付けのテレビの画面に表示された時刻を見て美世はゆっくりと立ち上がる。松葉杖を支えに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩行練習などが終わる。美世の表情は暗い。

早く復帰しようと燃える一方で変化の兆しがない現状に打ちのめされていた。

 

 

 

 

(シーズン開始までに治さなきゃ……。終わりたくない!!)

 

 

 

 

逆境の中でもその闘志は燃え上がっていた。少しでも今を変えようと美世は情熱を注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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2nd 今、やるべき事は

今回は年末の出来事。
美穂の決意が明かされる。


「蓮さんはどこに……?」

この場にいないプロデューサー()を探す少女。

 

 

 

ああ、まただ。

また頼ろうとしている。

 

 

 

 

(私が助けになりたいのに……結局助けられるんだ)

 

 

 

 

 

窓の外に見える空は彼女の複雑な心境を表すような暗い曇り空だった。

かすかに降っている雪は触ったら一瞬で溶けてしまう。

それでも積もる雪。積もり続けて人や車も埋まるくらいに大きくなる。

その雪はまるで彼女の悩みそのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

2012年12月31日。

今年最後の日を迎えた346プロダクションは大忙し。元日の特番の収録でいないアイドル達も多かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?美穂ちゃんどうしましたか?」

呼びかける声。声の主は高森藍子。彼女に呼ばれた少女、小日向美穂。彼女はいつもの元気がない。

 

 

 

 

 

 

 

「なんでもないよ……ごめんね。心配させたかな?」

無理に笑顔を作ってるのがわかる。自分でも正直イヤになる。

 

 

 

「私で良ければ話聞きますよ」

藍子は美穂の話を聞くことにした。美穂の口からは次々と悩みがこぼれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!?」

美穂がスマホの時刻表示を見ると30分も経っていた。

 

 

「藍子ちゃんごめんなさい!」

「いえいえ、いいんですよ。誰だって悩むから私が力になれたらなって思って」

美穂が慌てて駆け出していく。そんな美穂の後ろ姿を見送る藍子。

「プロデューサーさんがいて私達がステージに立てる……けど」

「美穂ちゃんはそんな感じじゃない……。プロデューサーさんがいて初めて『動き出す』んだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後6時。

オフのアイドル達が事務所に遊びに来て思い思いに過ごしている中で美穂は島村卯月と緒方智絵里の2人と一緒にN○Kの紅白歌合戦を見ていた。

 

 

 

 

 

「あっ!楓さんだ!」

「歌うのは『こいかぜ』だったよね?」

「えー!見たい!!」

346プロが誇る歌姫である高垣楓が出た途端アイドル達が一斉にテレビの方へ集まってきた。

 

 

 

 

 

「すごいなぁ……私も上手く歌えるようになりたいです」

「卯月ちゃんに負けないように私も頑張りたいです……!」

卯月と智絵里が意気込む中、美穂は。

(みんなと一緒に前に進まなきゃ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の部屋では年末恒例の某番組を見ているアイドル達が。

 

 

 

 

「うわぁ……出た」

「なんなん?」

出演者がパネルをひっくり返すと……。

「ふっはっはっはっ!」

「コレはアカン」

テレビに映るのは出演者の顔とゴリラの合成写真「子ゴリラ」。

 

 

 

 

「ちょっ、ダメやって……あっはっはっは!」

「どうしてこうなった(爆笑)」

「アタシも出演したい!そうしたらもっと笑わせられるのに☆」

 

 

 

 

 

アイドル達が見ているのは「笑ってはいけない熱血教師」。

浜○の顔が子ゴリラの顔になっている。そのシュールな光景で爆笑するアイドル達。

この後も様々な笑いのトラップに出演者達と一緒に笑わせられるアイドル達だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に時間が流れて気がつけば次の日まで残り20分。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォウッ

 

 

 

 

 

「蓮さん……」

 

 

 

 

聞き慣れたエンジン音が聞こえ、玄関へ駆け出していく美穂。

 

 

 

 

「うー……寒い」

「蓮さんお帰りなさい!」

「ただいま、美穂ちゃん。帰るのギリギリなっちゃってゴメンね」

「いいんです。蓮さんがいるだけで私は嬉しいですよ」

蓮と共に部屋に入っていく美穂。雪が降る外から帰ってきた直後の蓮に温かいココアを渡す。

 

 

 

 

 

 

 

「あと5分……」

日付が変わるまで残り5分を切る。年少組のアイドル達も頑張って起きている。何人かもう眠ってしまったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当は……全員でこの日を迎えたかった。でも……それは叶わなかった」

「僕も苦しい。でも美世さんが一番苦しい。僕は美世さんの悩みに対して力になれなかった」

蓮は心境を美穂に打ち明けていく。蓮は志希に告げられた美世の真実、自分が美世の助けになれない事に苦しむ。

 

 

 

 

「蓮さんの力に私達がなりたいです。だって……普段から私達は助けられて……。今度は皆が支えになりたいんですよ」

「私達だけではどうにもならない時だって協力してくれる人はいますから。夢斗さんや赤羽根さん達だっています」

「私は……ずーっと蓮さんに頼ってた。今でもだけど……変わりたいなって。それが私のやるべき事だって」

「美世さんの事もわかります。だから」

 

 

 

 

「ありがとう、美穂ちゃん」

「美穂ちゃん……頼んでもいい?」

「僕がまた一人で抱え込んでいたら叱ってほしい。美穂ちゃんがこう言ってくれてるのに気がついたらまた一人でどうにかしようとするだろうから」

「……どうも僕は助けられる事に慣れてないみたい。美穂ちゃんは知ってるんだよね、こういうの」

 

 

 

 

 

 

「美世さんが早く復帰できるように初詣で願うよ」

「ですね……。私もいいですか?」

「もちろん。美世さんだって頑張ってるからね。努力してるからそれが神様に届いてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

「ハッピーニューイヤー!!」

 

 

 

 

2013年1月1日。新しい年が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前6時、346プロ女子寮。

五十嵐響子達が餅などを焼いて準備していた。響子達はアツアツの餅を振る舞う。

 

 

 

美穂は砂糖醤油と一緒に餅を食べる。

(アーニャちゃんが言ってたけど……お餅って神様から元気を貰えるんだよね)

 

 

 

 

 

 

美穂は着替えて事務所へ。

年明け初の蓮との挨拶を交わして初詣のために神社へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社には大勢の人が詰めかけていた。一度目を離したら大変な事になるだろう。

人は境内だけでなくそこへ続く階段までいた。歩道まで繋がっているのだ。

 

 

 

 

「わー……多い」

「蓮さん、手離さないでくださいね」

「うん、蘭子ちゃんも」

「は、はい……」

「蘭子ちゃんが素に戻ってる……」

FDとFCが並ぶ駐車場。初詣に行きたいと言っていた神崎蘭子を連れてきた蓮達。

蘭子はFCに乗っていた。

蘭子曰くFCを運転していた時の美穂は「秘められた彼女の秘密そのもの」だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

パン、パンと手を叩く音。

3人はそれぞれの願いを思う。

 

 

 

 

 

(美世さんが早く復帰できますように)

(蓮さん達の力になれますように)

(素直になれますように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人が出店を見て回っていると蓮と美穂にとって見慣れた人物達が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、たこ焼き食おうぜ」

「自分でお金出してくださいよ」

「えー、遥買って」

「さっきのお賽銭も私出しましたけど!?」

「あ、本当だ……って小日向さん達じゃん」

そこに立っていたのは星名夢斗と瀬戸遥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蘭子ー、そのりんご飴食わせて」

「な、なっ!?傷ついた赤き果実を欲すと!?(食べかけですけど!?)」

「え?なんだって?」

「夢斗、相手は女の子ですよ!」

「俺そういうの気にしないんで平気〜」

「蘭子さんが気にするんです!!」

相変わらず自由な夢斗に手を焼いている様子の遥。

遥が夢斗をなんとか黙らしてから遥が話を切り出す。

 

 

 

 

「美世さんの容態は?」

「まだまだ良くならないみたいなんだ……。リハビリも長いし……。美世さんが一番辛いはずなんだ」

「できる限り美世さんのトコに行くようにしてる。でも……」

蓮は体がまだ満足に使えない美世の事を考え、極力美世の元に欠かさず行くようにしているがどうしても行けない日だってもちろんある。

 

 

 

 

 

「なら、俺らが行きますけど」

「どーせ俺はヒマしてるし。冬休み中なら毎日行けるッスよ」

「あ、あの私は……」

「美世さんの話し相手くらいはできるだろ、遥」

「……わかりました。小日向さん、私達も美世さんの力になります」

蓮が行けない時は夢斗と遥が代わりに美世の所に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が友よ……あの者は支配に屈しないのか(プロデューサー、あの人は自由すぎませんか)」

「そうだね……(苦笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆と力を合わせて解決する。それが美穂の見つけた答え。

彼女は悩みながらも前に進む。



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3rd 夢へのツバサ

今回は夢斗達の話。
初めて知る事実は少女を揺らす。


2013年1月。

ここはある大学の駐車場。雪が少し積もっている駐車場に向かっているのは……。

 

 

 

 

 

「あーっ、寒い」

「手袋欲しいな……。後でシューコちゃん達に聞いてみよう」

寝癖でボサボサな黒髪の青年星名夢斗と正統派美少女な相葉夕美の2人が歩いていた。

 

 

 

 

 

 

「夕美は仕事ねえの?」

「んー、今は特に。『フローラル夕美』も終わっちゃったからね」

「浩一が写真集買ってたな、そーいや。……ま、俺も仕事あるわ」

「仕事?夢斗君バイトしてないハズ……」

「仕事っつかバイト……だな、ぶっちゃけ。頼まれた時だけだし。あ、夕美が考えてるようなバイトとは違うからな」

「まあいいけど……」

「てなわけで俺はそろそろ行く」

「あ、よかったら私も行きたいな」

「……あー、いいけど大して面白くないぜ。つか夕美が行っていいのか?」

「……?」

 

 

 

 

 

 

夢斗は自身の愛機ランサーエボリューションに夕美を乗せて駐車場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだろ……私達以外に人がいる感じがする」

「……そーか?」

「不思議な車だなって思うんだ、夢斗君の車。夢斗君の運転もすごいけど……この銀色の車だからこそ夢斗君の運転がよりすごいって思うの」

「そりゃどーも。言っとくが俺は乗り換えるとか絶対にしないぞ」

「ふふ……夢斗君らしいなって」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくエボを走らせて着いた場所は……。

 

 

 

 

 

 

「あれ?ここって283プロの事務所だよね?」

「そーだけど?」

「夢斗君はまさか283プロに就職したの?」

「んなわけねーよ。そもそも俺が事務やったら確実にクビになるわ。346プロ(そっち)の緑色の事務員みたいにはできねえよ」

「でも夢斗君この間の期末試験学年トップだったじゃん。ちひろさんみたいにできそうだけど」

「事務仕事は単純につまんなそうだし。んで俺が小日向さんみたいな事出来ると思うか?」

「プロデューサーみたいに……多分ダメだね」

「絶対ダメだな、俺」

夢斗はエボを降りて事務所に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、夢斗さん!」

「よっ、果穂。遥いるか?」

「プロデューサーさんは今アルストロメリアの皆さんとお仕事に行ってます!」

「そうか……」

「もしかして……行くんですか?」

「まーな。んで来たわけだが……。果穂、ここで待ってていいか?」

「大丈夫です!」

「悪いな、果穂」

夢斗は一旦事務所を出てエボに戻る。車内で待っていた夕美を連れて夢斗は再び事務所へ。

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔します」

「えっと……どちら様ですか?」

夕美が夢斗に続いて事務所に入ると中にいたアイドル達の視線が一斉に向けられる。

「はづさん、夕美だって。相葉夕美」

「こ、こんにちは……」

「あら、346プロの……。どうされたんですか?」

事務員の七草はづきが笑顔で迎える。

「夢斗君に着いて行ったらここに……」

「夢斗さんはプロデューサーさんと行くところがあるんですよ」

「283のプロデューサーさんと……?」

「うは〜、ヒーターって冬の三種の神器だよな〜」

「暖かくていいですよね〜」

「だろ、果穂?」

「果穂ー、レッスンの時間だよ?」

「うう……。あっ、ちょこ先輩もどうですか!?」

「あ〜いいね……じゃなくって!」

「まあまあヒーターどうぞ(某アイドルのマネ)」

「ちょっ、夢斗さんって……ああ……暖かい〜」

会話してる後ろから聞こえる事が気になって夕美は集中できない。

「……夢斗君ってココに来てもこんな感じですか?」

「ココで?そうですね〜」

「後でキツく言っておきます……」

後で夢斗が夕美に怒られるのが確定した所で。

 

 

 

 

 

 

「あ、来たか」

「プロデューサーさん帰ってきました!」

 

 

窓の外に見える駐車場には夢斗のエボの隣に置かれた青い車から降りる女性が。夢斗のエボの車内をキョロキョロと見回した後に事務所へ向かってきた。

「あの人がプロデューサーさんなの?」

「そ。ああ見えて俺らと同い年だぞ」

「えっ!?てことは……」

「今年で20歳だ」

「私よりも歳上だと思ってた……。プロデューサーのひとつ下なんだね」

「小日向さんが今年で21か。つーか俺らが歳近すぎなのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

「うーっす、遥」

「待ってたんですね、夢斗」

「まーな。外寒ィし車内も寒いからな。夕美もいるから」

「お邪魔します……」

「346プロの相葉夕美さんですね、こんにちは」

 

 

 

 

 

 

「さてと……行くか」

夢斗はソファーから立ち上がる。

「そうですね。着いて時間ギリギリかも」

遥も何かが入った袋を持って夢斗の後に続く。

「えっ、どこへ?」

夢斗から何も聞かされてない夕美は2人がどこへ行こうとするのか分からない。すると。

 

 

 

 

「病院だよ。夕美……マジで心当たりないか」

「……わからない」

「ま……行けばわかる。俺が行く理由も」

 

 

 

 

青いインプレッサと銀色のエボは宙に雪が舞う東京の街中を抜けてとある病院へ。

 

 

 

 

 

夢斗と遥は病棟のエレベーターで4階に上がり、廊下を歩いていく。

2人の行く先がわかってない夕美は黙って一緒について行くしかない。だが夕美は言葉にしにくい不安を感じていた。

 

 

 

 

(わからない……けどこれだとダメな気がする)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくして病室前に到着。

入口に置かれている消毒用のアルコールを手に付けて病室の中へ。

 

 

 

 

「ちわーっす」

「失礼します」

夢斗と遥に続いて夕美も病室内へ。

「失礼します……っ」

 

 

 

 

 

 

夕美が病室にいた人物を見る。カーテンの向こうに見えたのは……。

 

 

 

 

 

「あれ?夕美ちゃんじゃん……。どうしたの」

 

 

 

「えっ……!?なんで……なんで」

 

 

 

 

 

 

カーテンの向こうに見えた痛々しい姿の原田美世。

同じ事務所の人間がなぜこんなにも傷ついた姿でここにいるのか。

夕美は状況を理解するのに時間を要した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕美、本当に小日向さんから何も聞かされてないのか?」

「うん……。美世さんが怪我してた事も今初めて知った」

「去年の11月のレースで大怪我しちまったんだと。んで小日向さんは看病のためにできるだけ毎日ここに来てるそうだ。……でもそれができない日だってそりゃある。会議やらどっかへの出張やらでどう頑張ってもムリな時に俺らが代わりにここへ行くんだわ」

「去年……。そう言えば見かけなくなったけど……まさかこんなことになってたなんて……」

夢斗の説明を混乱している頭で何とか理解した夕美。

 

 

 

 

「美世さん、調子はどうですか?」

「今日は検査したんだ。怪我自体は問題ないレベルに治ったよ」

「良かったです……」

「ただやっぱり左足はまだまだ時間がかかりそうって。早く自分の足で歩きたいなー」

遥と美世の会話を聞いた夕美は夢斗に聞く。

「夢斗君達がプロデューサーに頼まれたの?」

「いや、これは俺達の意思だ」

「夢斗が行くと言うので私も行く事にしたんですよ。夕美さんのプロデューサーさんも大変だと思って」

 

 

 

 

 

「コレ、美世さんの地元石川の肉が使われてるコロッケです」

「ありがとうね、遥ちゃん」

「いえいえ、夢斗が気になってたので」

 

 

 

 

 

 

「プロデューサーさんは夢斗君とどんな関係?」

「えっ!?」

「俺としては夕美みたいにイジれて面白いって思ってる」

「えっ、私そんな風に思われてたの」

「うん(即答)」

「不本意ですよ……。夢斗は気が合わない事が多い犬猿の仲って言ったところです」

「ソレはクルマの話じゃね?フツーに過ごしてるだけだったら全然そんな事ねーよ」

 

 

 

 

「あはは……。歳が近い皆は会話が楽しそうだね」

現在19歳で今年でハタチになる夢斗達3人と現在21歳で今年で22歳の美世。微妙に歳が離れてるためか会話に入りにくい。

「あっ、すいません」

「いいの。遥ちゃん達が楽しそうで」

 

 

 

 

 

 

 

しばらく会話した後病室を後にする3人。

病室の中では平静を装っていた夕美だったが病室から出た途端に表情に不安が滲む。

「美世さんの事何も知らなかった……」

「夕美さん……」

「んー……小日向さんなら言わなくてもおかしくないか。あの人は伝えたら相手を傷つけるってのがわかってる人だしさ。そういうのができねえとプロデューサーなんてやってられないだろうし。346はアイドル以外にも接する人が多いしよ」

「夢斗君……」

 

 

 

 

 

 

病院を出て遥と別れた後夢斗は夕美を乗せてそのまま346プロへ。今ではもう日課のようになっている夕美(アイドル)の送迎だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕美を送った後。

「復帰って大変だよな……」

夢斗は蓮と共に美世のリハビリの様子を一度見たことがある。

その際に見た美世はアイドルらしさはどこにも見当たらない一般人そのものの表情だった。必死に努力している人間の表情だった。

アイドル活動とレース活動に早く復帰するための美世の懸命な努力。美世のその熱意は夢斗にも影響を与えていた。

 

 

 

 

 

「……そもそも何やるか決めてない俺が言うことじゃねえな」

 

 

 

 

 

 

 

夢斗のやる事、それはモータースポーツで自分の名を轟かせる事。今は亡き妹に誓った夢斗の約束。

 

 

 

 

どの分野かはまだ決まってない。スーパーGT、スーパー耐久に全日本ラリー選手権。モータースポーツは様々な種類があるが美世はスーパーGT、蓮はスーパー耐久に参加している。

夢斗はまずそこから決める事がスタートである。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず大学出るまでに決めないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

美世の必死な姿は夢斗を動かすきっかけになっていた。夢斗も本格的に自分のやる事を考え始める。



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4th 魔法を望むシンデレラ

今回は美世の話。
出会いが傷ついたシンデレラにある決意をさせる。


2013年5月。

年明けから半年近くが経とうとしていたある日。

 

 

 

 

 

「やっと出歩けるか……」

ベッドの上でそう呟く女性。原田美世だ。

 

 

 

 

 

「でもまぁ……本格的な仕事は無理だろうな……。この足じゃ車の運転も難しいだろうし」

未だに完治には至らない左足を見ながら美世は呟いた。

今朝医師の説明を受けて、まだ激しい運動などはできないがある程度病院外での行動が許された。仕事もハードな事はまだできないが参加できるように。

しかし美世の仕事はアイドル。身体を酷使しがちな仕事だ。身体を直接使わなくとも知らず知らずに身体に負担が掛かる。様々な場所で活動するので移動だけでもなかなか苦になる。

そして美世にとって一番である事。レーサー活動だ。

 

 

 

 

 

 

去年の富士での大クラッシュ後、入院生活を送る事になった美世の代わりにチームに1人ドライバーが新たに加入したと聞いた美世。

しかし美世不在のモチュールは開幕戦岡山で3位を記録したが続く第2戦の富士ではマシントラブルでリタイアを余儀なくされるなどランキング上位争いに参加出来てるとは言い難い状態だった。

美世は一刻も早く復帰したい。しかし現実はそうもいかない。

 

 

 

 

 

 

「そうだ、事務所に行ってみるか……」

美世はまだ上手く歩けないその足で病室を後にする。外出届を出し、病院前でタクシーを拾って事務所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

病院から約20分程で事務所前に到着。

見慣れたはずの事務所がなんだか懐かしく思えてきた美世。

「そっか。最後ココに来たの富士に行く前だもんね」

美世が最後に事務所に来たのは去年の11月。半年近く前なのだ。それ故に久しさを感じていた。

 

 

 


 

 

 

場所は変わって346プロ事務所別館内施設の撮影スタジオ。

そこで写真撮影をしていたのは……。

 

 

 

 

「パイセン、体力は平気かい?」

「ナナはまだやれますよ!……たぶん」

 

 

 

 

安部菜々と佐藤心の2人によるユニット「しゅがしゅが☆み〜ん」のユニット曲「凸凹スピードスター」のCDジャケット撮影が行われていた。

様々な意味で凸凹(でこぼこ)な2人が曲とライブ以外の企画を全部自分達で決めているという言ってしまえば「346プロ屈指の濃いキャラ作りをしている2人による体当たりステージ企画」。

その最終段階としてジャケット撮影をやっていたのだが。

 

 

 

「ひい……冷や汗が止まらない……っ」

「足がパンパン……。こりゃナナ先輩を笑っていたバチかもな……っ☆」

午前中はステージ企画の練習のため川島瑞樹や堀裕子、荒木比奈達とダンスなどの練習をしていた2人。体力的にボロボロになっていた2人を待っていたのが撮影である。

既に体に練習の疲れが出ており、心は足が筋肉痛一歩手前だった。菜々も平気ではない。最も、以前湿布を貼られた際の菜々を笑っていた心は菜々を笑ったバチがここで当たったように見えなくもない。

 

 

 

 

「あの、もう少し寄ってください」

撮影スタッフの指示が飛ぶも……。

「パイセン、もうちょい近くに」

「腰が……腰が」

「こっちも足が死ぬ寸前だ☆(膝ガクガク)」

2人共限界寸前だったその時。

 

 

 

 

 

バターン!と擬音で表せるような音が。勢いよく入口のドアが開けられた。スタジオの全員が反射的にそちらを向くと。

 

 

 

 

 

「あれ……?あ、撮影してた?ごめんなさい……」

「……原田さん!?」

「……美世ちゃん、久しぶりですね。足……大丈夫ですか?」

「随分久しぶりじゃん?……こちとら仕事で忙しんだぞ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の撮影が終わるのを待っている美世は話を聞いてやってきた武内Pと話していた。

「小日向さんはまた……無茶をしています。いつだったかオーディションの話を聞きに行った時に向かった先で体調を崩して」

「……酷く体が弱っていたらしくて1週間入院して。点滴打たれてましたよ」

 

 

 

 

蓮とこの346プロで過ごして今年の春で2年が経った。

何回か同じような事を見たが蓮は自分の力でどうにかしようとする。

しかし今回美世は「大丈夫」と確信していた。

 

 

 

「蓮君を助けてくれる人、いるじゃないですか」

「原田さん、それは……誰でしょうか?」

「まずは夢斗君。あの子はああ見えて蓮君の事を慕っているの。だから蓮君の困った事とか全部わかってるよ」

「なるほど……。星名さんならやり方はともかく今の小日向さんの助けに十分なれる……」

「あと……」

「あと?」

「美穂ちゃん、かな?蓮君は無意識に美穂ちゃんの事を考えてる。んでその反対もある。美穂ちゃんが蓮君の事を無意識に考える。深い所もお互い似てるから悩み方の解決法だってきっと似てる」

「となると?」

「美穂ちゃんは蓮君を頼る。だったら蓮君も美穂ちゃんを頼ると思う。最も……直接的にはそう見せないだろうけど」

 

 

蓮との出会い、全てそこから始まった美世と美穂、そして夢斗。

蓮の存在が他者の行動を形作る重要なパーツとして美世達にハマっている。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

30分後。

撮影スタジオを後にした美世はとあるアイドルに頼み事をしていた。

 

 

 

 

 

「……で、大体の感じはこんな感じで」

「……うん!オシャレっすよ!でも美世さん、いきなりどうしたんすか?」

「んー……これがあたし!ってアピール。あたしの誇りでもあるかな(笑)」

「誇り……かっこいいっすよ!」

「そ、そうかな?」

「誇りってそんな軽々しく言えるようなモノじゃないからこそ重みがあるっす。『形』があるなら尚更!」

「自分っていう存在を示すシンボルは隠さないからこそ意味がある、そうアタシは思ってるっす」

美世に渡されたスケッチブックをまじまじと見て。

「んじゃ、出来たらアタシから言うので待っててほしいっす。あと、リハビリも頑張って!」

「うん!ありがとうね、沙紀ちゃん」

美世が吉岡沙紀に手渡したスケッチブックに描かれていた物、それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤いガラスの靴と……R。なるほど、それなら早いっすね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しづつ回復していく美世。彼女が抱き続けてきた「誇り」が「形」となっていく。

その「形」は彼女の人生その物を意味しているのだった。

 

 



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5th 始まるレース

今回でこの物語はラスト。
これを経て「最高への挑戦」に繋がります。


2013年6月。

ここは都内某所のとある大学。そこで何気ない日常を過ごす学生達。癖のある教師の講義を聞き終わり休み時間に入ったらクラスメイトと会話を始め出したり自販機にジュースを買いに行くなど僅かな時間を様々な形で過ごす。

 

 

 

 

「ふあぁ……」

「またバイト?」

「まーね」

「体壊さないでね」

「はいはい」

 

 

どうやらバイト疲れで眠そうな黒髪の少女とそんな彼女を気遣うピンク色の髪の少女。

2人は幼い頃からずっと一緒。いろいろと正反対だが2人の息はピッタリ。

 

 

 

 

「あたしの車が新しくなってちょっとなったけど次元が違うってまだ思うよ」

「うん。あの電子制御は私には設定できないし。R33だったら私でもできたけど」

「でもそっちができない事があるなんてすっごい車っても言えるじゃん?」

「そうだね。登場からもう5年くらいになるけど……まだまだ上を目指す事のできる車だよ」

 

 

 

 

女子大生の口からまず出ないであろうワードだらけ。明らかに普通ではない。

 

 

 

「GT-Rの維持は本当に大変だよ……バイトだけじゃお金足りない」

「持っていたお金がGT-R買う時にほぼ無くなってたもんね」

「人事のように言うけどさぁ……」

 

 

 

つい先月に19歳の誕生日を迎えた彼女達。学生はとにかくお金が掛かる。学費はもちろんの事、一人暮らしをしている彼女達は家賃やガス、水道代もある。

一人暮らしで車を持つ事は容易ではない。いくら乗らなくても必ず払わなければならない税金。それ以外にもガソリンやタイヤなどの消耗品がある。

 

 

 

それはいい。問題は彼女達の「車」だ。

 

 

 

「排気量は元々3.8リッター……からの排気量アップで4リッター……。8万近く取られるのがなあ……」

 

 

 

 

 

そう、彼女達の車は「改造車」である。

しかもスポーツカー。それもGT-R。車好きなら誰もがその名を知る車だ。

 

 

 

 

 

 

彼女達は「走り屋」である。

彼女達は公道を法定速度を上回る速度で走る。言うまでもなく法律に触れる行為。もちろん本人達もそれが犯罪行為とわかっている。しかしそれでしか得られない物があって走るのだ。

 

 

 

 

普通に走るだけなら日常生活では絶対に使われる事の無い大パワー。それは首都高を速く走るために与えられた物。利便性を捨てて得た他を寄せ付けない圧倒的な力。

 

 

 

 

「そもそもスポーツカー以外の選択肢ってないの?」

「ないっ!」

「即答かあ……」

元気良く即答する彼女に呆れるが自分自身も彼女の車を改造るくらいにはマトモではない。むしろ彼女の走りを楽しみにしている程。

本気で走るなら街中を走るような車では物足りない。走る事を見据えて作られたから「スポーツカー」と呼ばれる車を必然的に求めるのである。

 

 

 

「車に乗る、それは誰だって思うよ。乗れたら何でもいいってあたしは思いたくない」

「あたしは『車を買ってから運転席に座ってエンジンを掛ける』までが車選びだと思ってるから」

車という物はドラマ(人生)がセットになる高い商品だ。

一緒に付いてくる人生は買い手次第でいい物にも悪い物にも変わる。買い手の幸せにもなれば逆に買い手を狂わせてしまうだけの物にもなる。

初めて自分の愛車を買う時のドキドキとワクワクはそれだけでもいい思い出になる。

車は乗る人の愛が注がれていると分かる物。大切にされている車は長い間走ってもちゃんと整備してやれば例え半世紀前の車だろうと元気な走りをしてくれる。

 

 

 

「GT-Rのセッティングやメンテを実際にやるのは私だけどね」

「う……。でもそれだけあたしの車を知り尽くしてるっても言えるじゃん」

「所有者がメカに詳しくないってどうなの」

 

 

 

 

 

「それで希の車って今どうなってるの?」

「ボディ補強がもう少しで終わる。その後にエンジンやエアロ付ければひとまず見てくれは完成」

「自分の力で車を作れるってすごいよ、本当。あたしはどっか1つのパーツやるだけで音を上げそう」

「そんな事言ったらGT-Rの整備できないよ。日産の人達の技術を見たら明日翔はどうなるのかな?」

「だってー!」

 

 

 

 

 

「『紅のシンデレラガール』……原田美世さんに憧れてGT-Rに乗ってるけどあたしはどうしたらいい?美世さんのようにレースとか出てみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女がイメージした紅い車。それは彼女が乗る車と同じ名を持つもう1つの「GT-R」。

 

 

 

 

 

 

 

 

(いつか……会えたらな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強い想いは必ず動きを作り出す。

夢を追いかける者達が集まる時、走りでお互いを語り想いをぶつけ合う。

そんな動きの中心に彼女達がなる時がすぐ近くまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリッドに役者が揃った。

後はレーススタート(始まり)を待つだけだ。



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