冥次元ゲイムネプテューヌ (ロザミア)
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コラボ『大人ピーシェが頑張る話。』
空から降ってくるなんて、主人公じゃない!?


あっちに移設したと言ったな、面倒だから取り消しだ


当然だけど!

皆は朝起きたらヒモ無しバンジーさせられたらどう思う!?

自分は、これが朝じゃなかったら大いに楽しんだよ!

 

 

 

「(こんな上空から)落下してなかったらだけどねええぇぇぇ!!」

 

 

 

はぁい、お茶の間にお届け!ねぷ子さんだよ!

 

一体何が起こったんだってばよ!?

昨日はゲームして、寝てたはずなんだけどなぁ!

気づいたらお空の上は洒落にならんしょこれは…?

 

「ねぷ姉ちゃんだぁぁぁぁぁ!」

 

「なんだ、これはどういう事態だ。」

 

周りに一誠とヴァーリの姿を確認!

人選どうした!

ここは天使なあーちゃんでしょ!?

 

「何で冷静なのぉ!?」

 

「ヒモなしバンジーの経験はあるからな。だが、怖いなら抱きついてこい!」

 

「ヴァーリぃぃてめぇぇぇ!」

 

「あーもうメチャクチャだよぉ!」

 

取り合えず、寝る前に何をしてたか確認!

 

「状況整理!私はゲームして寝た!」

 

「姉ちゃんの妄s…特訓してから寝た!」

 

「いつも通りに過ごして寝たな。」

 

「うん、理解不能だね!」

 

どうすればいいのさ!

いきなり死亡イベントをやっていいのはフリーゲームとホラーゲームだけだよ!

 

「飛べば助かるといえば助かるが?」

 

あ、そっか。

飛べば─

 

「──」

 

 

 

シェアを、感じない。

いや、二人分感じるけど…嘘?

ここ、何処?

駒王の皆のシェアもない…!?

 

 

 

…ヴァーリが、見てる。

しっかりしないと…!

 

「うーん…ヴァーリ!これはね、出会いイベントだよ!

落ちた先には何と人が!みたいな!」

 

「ほう。」

 

「そこで新しい発見とかがあるに違いない!あ、あれ、ところでいーすんは?」

 

「姉ちゃん、そろそろ俺は気が遠くなってきたぜ。」

 

「気絶するなよ、見捨てるぞ。」

 

「ヴァーリぃぃ…後ではっ倒すぞ!」

 

「いーすんが居ない!心のケア要員いーすんが!オーマイゴッド!」

 

「「女神はそっちだろ。」」

 

「そうだった!?」

 

 

 さあ!!出会い系サイトの如く女の子こおぉい!!

駄目元で願ってみる。

 

 

「とおおおおおおおぉ!」

 

 

 閃光───。

 突如として金髪の妙にエロイ格好をした女性が、イッセーを抱きかかえる形で助けた。

 

 

「キタ━━(゚∀゚)━━!!」

 

 

 これだよ!!ネプ子さんはこういうのを待ってたのだよ!

いや本当助かった!ありがとエロい人!

 

 

「君~。大丈夫?」

 

「お、おっぱ…!!いえ、大丈夫です!」

 

「出会い来た!あれ、私は?」

 

「現地人か、助かった。」

 

「二人してたすかってないけどね!」

 

「お前となら構わないぞ」

 

「ねぷ…こういう時にまで言うと嫌がられるよ?」

 

「善処しよう」

 

「あ、あの…助けていただいてありがとうございます。

その…姉ちゃんとあのいけすかねぇ馬鹿も助けてくれませんか?」

 

「ナーイス!そこの金髪お姉さん助けてplease!ねぷ子さんに助けのお慈悲を!」

 

「ハハハ、焦るネプテューヌも好きだ…!」

 

その女の人は苦笑いをした。

 

「……あの変態そうな人も助けるべきかな?」

 

「あー…助けてやってください!」

 

一誠は嫌いだけどだからって見捨てないもんね。

流石我が弟!

 

『二天龍が何をしているんだかな…』

 

ドライグの呆れ声。

う、うーん…そうは言うけどさ。

 

「ピィちゃん、その必要はないわ!」

 

 瞬間───。

ネプテューヌの女神化した状態、パープルハートによく似た女性がヴァーリを助けた。

 

…パープルハート?

 

「ケガはなさそうね」

 

「──…ああ、感謝する。」

 

「えっ──」

 

 

私が、もう一人。

パープル、ハート?

全部が瓜二つ。変身した、自分。

 

 

「ねぷ姉ちゃんが二人…!?」

 

ど、どういう…?

あ、はは…ちょっと分かんない…

 

で、でも一つだけ分かるよ、これ私助かってねぇ!

 

「あ……わー、ありがと!ところで、私は?落下先でキャーッチしてくれる的な!?」

 

 

「ええ、今助け──」

 

「ごめーん、すぐに助ける───」

 

 

 私を見た途端、二人とも、硬直した。なんで?

 

 

「わ、私?!?!」

「ね、ねぷてぬぅ!?!?」

 

 

いや汲んでほしい話題そっちじゃないよぉ!?

 

 

「のわあああああぁぁ!!」

 

あ、下に誰かいた?

アカン死ぬ!?

ゴツン、と派手にぶつかっ…生きてるぅ~↑

 

ねぷぅ…どうにか助かっ─

 

「ちょっと!早くどきなさい!」

 

強引に退かされて、スッテンコロリ。

 

「ねぷっ!?ごめん!えーっと」

 

何となく、上品な印象。

うん、ごめん、分かんない!

 

「受け止めてくれたって言うか下にいてぶつかっちゃった?

ごめんね!怪我はない?」

 

「ねぷ姉ちゃんが二人……天国か?」

 

「…これは面倒なことになったな。」

 

『何かの拍子に、別世界とやらに来たと?』

 

「ああ、明らかな異常事態だ。」

 

取りあえず、謝ってから辺りを見回す。

どうやら、皆助かったようだ。

ああ、よかった。

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

「それで、貴方達は別の世界からやってきた…そういうことですね」

 

 

その後、パープルハートの私が私になって、あーだこーだありました! 

 

先ほど助けてくれた金髪の女性らしき人が、変身を解除してそう聞いてきた。

 

 

「お名前をお聞きしても?」

 

先ほどとはうって変わって、かなりクールな女性だ。

なるほどぉ…女神だね!(超速理解)

 

「俺は兵藤一誠。姉ちゃんの弟だぜ。」

 

ところで、一誠はちょっと顔赤いよ?

お姉ちゃんには分かるよ?

もしかして、ドキドキしてます?

 

「ヴァーリでいい。よろしく頼む。」

 

「ふふん、私のターンだね?私はネプテューヌ!

超絶美少女にして完全無欠の主人公!つまり!

元の世界だと主役だよ!よろしくね!」

 

いつもの挨拶は必要だよね?

決まったね。

 

…あれ、何で黒って感じの女の人と黄色い女の人呆れてんの?

 

「私、スベった?」

 

「いえ、いつも通りすぎて少し呆れただけ」

 

「右に同じくです」

 

「はえー…ここの私もそうなんだね?」

 

「至って普通の自己紹介だよね?」

 

「「ねー。」」

 

「あー^^俺ここに生きたい。」

 

いやぁ…ちょっと、気持ち悪いよ、一誠。

 

「それで、そちらの名前を俺たちは知らない。

ネプテューヌは知っているが…」

 

「気になる!私も攻略対象の名前を知らないと接しづらいし…教えてほしいな!」

 

「私の名前という言葉は次元を超越した!」

 

向こうの私がドヤると、黒い人がビシッとツッコミを入れた。

 

「やめなさい!」

 

「ねぷっ!!」

 

そして、こちらの私は動かなくなった…ナムナム。

 

「私はノワール、ラステイションで守護女神をしているわ」

 

「ピーシェです」

 

「守護女神、ラステイション…」

 

「女神なのか、やっぱり。ってことは、こっちのねぷ姉ちゃ…ネプテューヌさんも?」

 

「ええ、プラネテューヌの守護女神よ。こんなだけどね。」

 

「プラネテューヌ、ラステイション…国か何か?」

 

「そう、私達守護女神はそれぞれ国を統治してるのよ。」

 

「そっちの私もプラネテューヌを統治してたり?」

 

「ううん、私は違うよ。ちょっと色々と事情があるって言うか…まあ、主人公的な事情があるって事で!」

 

流石に本来の自分は死んでて中身は別です、なんて重くて言えないもんねー…

にしても、あまりにも別世界。

横の軸…ってより縦オブ縦の軸だねこれは!

 

帰れるかな…

 

「取りあえず、よろしくね!ノワール、こっちの私!ピーシェ…うーん、ピー子でどう?」

 

「ピー子……ですか」

 

その言葉を聞くと、少しピーシェは悲しそうな顔をした。

ヤバイ、バッドコミュニケーション引いた!?

違うか!

 

「じゃ、じゃあピィでいい?」

 

「ポケモンじゃねぇか!」

 

違うか!!

 

「ぴ、ピーちゃん!」

 

「私と同じ呼び方取られたー!?」

 

違うかぁぁぁぁ!!(衝撃のネプベルト)

 

「そっちのネプテューヌもどこか変なのね~…」

 

「ああ、だがそこがいい。」

 

「そ、そう…」

 

「いえ、どんな呼び方でも構いません」

 

そう言いながら、ピーシェは優しく微笑んだ。

 

…はっ、そうか!

そういうことだったんだ!

 

「じゃあすべて合わせてピィー↑子ちゃん!!」

 

「いやいや!それはなんかやだ!!」

 

「分かった!じゃあ、○○○だね!」

 

「ピー音じゃねぇか!!」

 

否定された。

駄目だ、どれも却下される…

くそう、自分にはプロデュースする才能はないね!

 

「文句ばっかじゃん…ピィー子でいっか!頑張ってピッピになろうね!」

 

「ピィじゃねぇよ!!」

 

「話が進まないからそれくらいにしなさい!」

 

「はーい…」

 

「じゃあ、プラネテューヌにレッツゴー!ノワールも来るでしょ?」

 

「え?そ、そうね…貴女に任せるのは不安だしね。」

 

「プラネテューヌかぁ…別の私が統治してる国、かぁ。」 

 

自分の世界より、混沌としてないのかな。

だって空気が綺麗で、風が気持ちいい。

 

「何だか…いいね。」

 

少し、素の自分が出てしまう位には、好きかもしれない。

先程の明るさより、少し静かな面持ちで微笑む。

 

「ちょっと待ってください」

 

 

 そう言って、ピーシェは行こうとしているのを何故か止めた。

 

 

「ん?なにトバリシティのスロットに出て来るポケモンの進化前ちゃん」

 

「そのネタは歳がばれかねないからやめい!!」

 

 

 そう言って、ピーシェはコホンと咳払いをする。

 

 

「できれば誰もいないところで、一誠君、ヴァーリ君、君たちと少し話がしたいのですが。よろしいですか?」

 

「どうした。」

 

「お、何だ?一誠さん答えられる範囲なら何でも答えるぜ?」

 

「ん、今なんでもって?」

 

「何でもするとは言ってない!」

 

「…それで、どうした?」

 

「答えられるなら答えてください。貴方達は何者ですか?」

 

「ん?ピィちゃんさっき名乗ってたでしょ?」

 

「そういうことではありません。貴方達は『人間』『悪魔』『(ドラゴン)』このうちにありますか?」

 

…これはどういうことだろう。

こちらの世界を知ってるように…?

 

「!?」

 

「…助けてもらった恩もある、か。

俺は人と悪魔のハーフだ」

 

「も、元人間で悪魔だ。」  

 

「それで、二人とも二天龍ってスゴいドラゴンを宿してるんだよ。」

 

「二天龍?それって…」

 

「ピーちゃんの言ってたおとぎ話?」

 

「は?おとぎ話?」

 

「ほう…?」

 

「どゆこと?」

 

ピーシェは頭をかきながら、少しめんどくさそうに答えた。

 

 

「『神殺しの二天龍』私の師匠が教えてくれたおとぎ話です。内容は確か……神や魔王が戦争をしている時代。2匹の龍が突如として乱入し『神如きが、魔王如きが我ら(ドラゴン)の決闘に入るな!』そう言いながら神達を逆さ──神たちと戦う話です」

 

「うわぁお…物騒。」

 

「どういうことだ?お前の世界と俺たちの世界に繋がりは…いや…?」

 

「どうした?」

 

「もし、当時の誰かがピーシェの世界に流れ着いたとすれば…」

 

「考えすぎじゃない?いーすんが居ないから当時の検索とか出来ないけど…」

 

「厄介だな。それで?お前は俺達が二天龍だとしたらどうする?」

 

「……わかりきっていることでは?」

 

 

そう言いながら、ピーシェはコンバットナイフを取り出した─

 

 

「すとぉぉっぷ!!ピィちゃんちょっとシリアスに行き過ぎなんじゃないかなぁ!」

 

「そ、そうそう!争っても意味ないよ!」

 

「…私からも聞かせてほしいわ。貴方達二人はおとぎ話のような争いをするの?」

 

「ふっ…この世界にそういう事情は持ち込まんさ。

それに、ピーシェの言っているおとぎ話はこちらの世界ではもう何世紀か前の話だ。」

 

「そうだぜ!俺たちは無闇に争う気はありませんよ!

ねぷ姉ちゃんが悲しむ事はしたくねぇ…」

 

「そういった事に対して怖い女神がいるんでな。まあその女神に惚れてるわけだが。」

 

「…大丈夫じゃない?二人ともこう言ってるし、嘘をついてるようにも思えない。」

 

二人が戦うなんてそうそうないよ~

喧嘩はするけどさ。

 

「どういうつもりだ?」

 

「ヴァーリ、疑っても仕方ねぇだろ?」

 

「まあまあ…ピィー子、ありがと!」

 

「……よし。信じます」

 

「…なるほどね」

 

ピィー子の考えはわかったようだ、ノワールが不敵な笑みを浮かべた。

 

「毒が入ってる可能性を考慮して、食べなかったらこの3人が敵ってわけね」

 

「…違います」

 

「え?!違うの?!」

 

「正解は『いただきます』を言っているかどうかです」

 

「ピィちゃん判断基準がおかしくね?」

 

「まあ、さっきの会話で信頼に値することは言ってましたけどね、これはただのテストのようなものです」

 

 

へぇーよく分からないけど、美味しいからいいや!

 

 

「美味い!これはプロの味だ!」

 

「…やはり料理を覚えるべきなのか。菓子作りだけでも。」

 

「でも、やっぱりプリン食べたいよね。」

 

「で、そろそろプラネテューヌに行くって形でオーケー?」

 

「そういえば、ネプテューヌが二人って事はイストワールの気苦労が…ネプギアもどんな反応するんだか。」

 

「いーすん、いるんだ。ネプギアって?」

 

「こっちのネプテューヌの妹よ。女神候補生とも言うわね。」

 

「この世界でいう次世代の女神ということか。

こちらとは本当に違う世界だな。こっちの世界はマトモな神がいるかどうか…」

 

「ねぷ姉ちゃんは超最高だからな!っていうかネプギアって子は妹なのか。つまり俺ポジか。」

 

 

プラネテューヌ。

…この次元の自分の国。

楽しみだなぁ、この次元の自分の国なんて…勲章ものですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、でいいでしょうか、私はプラネテューヌの教祖をしております。イストワールです」

 

そう言って、いーすんは礼儀正しくお辞儀した。

初めまして。

どんどん現実を認識していく。

いーすんも、いないかぁ…

 

「あ、はい!初めまして、兵藤一誠っす!」

 

「ヴァーリだ。」

 

「いーすん…ううん、ちょっと違うや。

知ってると思うかもだけどネプテューヌだよ!」

 

「ひらがなばっかじゃないし、顔文字使わないもんね。

私の知ってるいーすんじゃないや。でも、いーすんなんだよね。」

 

「はい、おそらく時間軸が違うだけで、貴方達の知るイストワールと同一人物と考えてくださり構いません」

 

 そう言いながら、イストワールは微笑んだ

 

それから、この次元の私が呼び方を決めない?って話になったけど

割愛!

内容知りたい人は、もう一人のコラボさんをチェックだ!

 

「メタいよ!!」

 

「話も決まったし、プラネテューヌを探索しよー!」

 

「ネプテューヌが、プラネテューヌを探索、ね。

何だか変な感じよね。」

 

「姉ちゃんだからなぁ…嬉しいんかな。」

 

「君もそれでいいですか?ヴァーリ君?」

 

「ネプテューヌがそう望むなら…。ただ、それで信用したとは思わないでほしいものだが」

 

「………奇遇ですね。私もそう忠告しようと思っていたところですよ?」

 

 

 ピーシェもヴァーリも軽く微笑んでいる………うん。目は死んでるけど、とりあえず笑顔だ。

 

ま、まあ…仲良くなっていこうね…ピィー子は妙に自分と距離取ってる気がするけどね。

 

「あ、でもネプギアって子に会いたいかも?

プリンも食べたいし…」

 

「なら、先に教会へ行きますか?両方の目的を果たせますよ。」

 

「ほんと?いーすんさっすが!じゃあ行こう行こう!」

 

「…うん、私の国なのに何か仕切られてるくね?」

 

「何だか、こっちのよりも子供な印象だわ。」

 

「ま、待ってくれよーねぷ姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お姉ちゃんピーシェさん、おかえりなさあああああああええええええええええええええ!!??」

 

何だか、自分に似てるけど純粋な印象を受ける女の子がめっちゃ驚いてる!

この子が、ネプギアちゃんだね!?

おー…これは、可愛い!

 

「驚いてるねー…私もだったけど。」

 

「い、いーすんさん!?どうなってるんですか!?」

 

「えーかくかくしかじか…」

 

「な、なるほど…?えっと、初めまして…ネプテューヌさん?何だか変な感じだなぁ…」

 

「あはは、慣れてね!ネプギアちゃんっていうんだよね?

うんうん…」

 

「え、えっと…?」

 

ジーッと自分はネプギアちゃんを見つめる。

ジッと、観察するように。

何となく、嬉しくなった。

 

「うんうん…いい子だね。」

 

「ありがとうございます…?」

 

自然と頭に手を乗せる。

妹だ、自分じゃなくても、ネプテューヌの妹だ。

 

「えーっと…ネプテューヌさん?」

 

「あ、ごめんね!嬉しくてつい!改めて、ネプテューヌだよ!どう呼んでもいいからね!」

 

「わぁ…本当に二人なんだ。」

 

「ネプギアさん、ネプテューヌさん達がプリンを食べたいそうです。」

 

「あ、好みも一緒なんだ。」

 

「そうだよ、ネプギア!ネプテューヌは万国共通でプリンが好きなんだからね!」

 

「…女神候補生か。見たところ、純粋な少女だが戦えるのか?」

 

「戦うのよ、候補生でも…女神なんだから。」

 

「ふっ、そうか。いずれ女神となる存在…さぞ、強くなるだろう。」

 

「ヴァーリ!」

 

「戦う気はないさ。」

 

「女神と戦いたいなら、私が相手になりますよ。私は戦争が好きです」

 

「…よろしい、ならば戦争(クリーク)だ」

 

「アンタらぁ!仲悪いように見せかけて実は結構仲いいでしょ?!」

 

 

そう話していると、イストワールがため息をついた。

 

 

「…プリンを食べるのでは?」

 

「そうだった!!いきますわよわたくし!!」

 

「プリンが我らを待ってる!」

 

走れ走れー!プラネテューヌのプリンは我にあり!

 

部屋に到着!

冷蔵庫確認!…かく、にん…

 

閉めてからまた開ける。

 

事実を再確認してから

 

 

 

「「きゃああああ───!!」」

 

 

 

私達の悲痛な叫び声が木霊した。

 

「何!?」

 

「お、お姉ちゃん!」

 

「ねぷ姉ちゃんに何があったぁぁ!!」

 

「おい待て、二人とも…ハァ、行くぞ。」

 

ネプギアと一誠が走ってきた。

 

「「プリンがなああぁぁい!!」」

 

「そんなことでそんな悲痛そうな声を上げないで!!」

 

ピィー子は激怒した。さっきまでだいぶツッコミをためていたんだね…

でも、死んじゃうよ!?

プリンがない、これは…死活問題!

骨を埋めるのはこの部屋かぁ

 

「みんなで心配して駆け寄ったんだよ?!それがプリンがなかっただけって何?!それだけで『もうだめだ…おしまいだ…」みたいな声ださないでっ!!」

 

「「ナイスツッコミ!」」

 

「やかましいっっ!」

 

私達2人はビシッと人差し指をピィー子に向けてそう言った。

ピィー子はため息をつきながら冷蔵庫を漁った。

ツッコミのセンスあるね~。

ゲオルグに学ばせよう(無慈悲)

 

「はぁ…プリンくらいなら作りますから……ヴァーリさん、手伝って下さい」

 

「プリン作ってくれるの!?」

 

「さっすがピーちゃん!これが終わったらポケリフレだね!」

 

「だからポケモンじゃないからっ!!」

 

「…分かった、付き合おう。『ちょうどいい』からな。」

 

「あの、私も…」

 

「ネプギアは座ってるといい。何、ネプテューヌ達の相手でもしててくれ。それとそこのシスコンのな。」

 

「んだとヴァーリ!大体てめぇはいつもいつも…」

 

一誠が絡もうとしたら、ピィー子がヴァーリを連れていった。

ちょっと嫉妬。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ!待ってる間ゲームしよゲーム!」

 

「でもお姉ちゃん。なにやるの?」

 

「スマシスSPECIAL!!」

 

「元ネタがひしひしと伝わってくる名前出すんじゃないわよ!!」

 

「まあいいじゃないっすかノワールさん。」

 

「そうそう、今更だよぉ。というわけでゲーム機セット!

プラグイン!ネプテューヌ.EXE、トランスミッション!」

 

「それ以上いけない!」

 

「プリンを待ってる間、どちらのネプテューヌが一番強いかを決める…そう、これはある種の次元戦争だよ!

どう、一誠調子は?」

 

「ネエチャン!オカラダノホウハ…」

 

コントしつつ、ゲームをセットしていく。

始めてやるゲームだなぁ。

楽しみだよ。

 

「スマシス久々にやるわね…、くたばりなさいネプテューヌ」

 

「矛先に迷いがねぇ!!」

 

「お姉ちゃん!!今助けるよ!」

 

「ちょっ…、今回チーム戦じゃな……あああぁぁぁ!!残機一つなくなったぁ!!」

 

「ねぷぷぷ…今回はノワールを利用させてもらうよ!なんてったって私は迷惑をかけてないんだからね!」

 

「隙ありよ。」

 

「あああぁぁぁぁ!?なんで!?」

 

「あら、乱闘なんだから当然じゃない。ゲームでも、私は負けるつもりはないわ!」

 

「おおう、女神三人の大戦が勃発してる。俺達はそれを避けながら見ているしかないのか…!」

 

「こうなれば、ノワールを一人狙い作戦!一誠!成功したら撫でてあげるよ!」

 

「悪く思わないでくれよなノワールさん!!死にさらせぇ!」

 

皆でわいわいとゲームをやる。

あ…最近、こんな時間取れなかったや。

…うん、楽しい…楽しいなぁ。

 

…帰ったら、皆とやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、二人になれたな。まあ、プリンでも作りながら話をしようか。」

 

さて、場面代わって俺の担当だ。

まあ…プリン作りは変わらないんだが。

この女は油断ならない。

ノワールとネプギアはそこまで疑い深い訳ではないが…さて、どうしたものか。

 

「そうですね、そうしましょう」

 

そう言いながら、ピーシェは微笑んだ。まるで先ほどまで警戒していたのがウソかのように。

 

…何だ?

少し、違和感を感じる。

 

「ところで。プリンを作った経験は?」

 

「プロ、とまではいかないが何度か練習し、作ったことはある。足手まといにはならないさ。」

 

プリンを作りながら質問を飛ばす。

 

「質問だが、俺達は帰れるのか?」 

 

「帰れる…とは断言できません。君たちをここに呼び出した黒幕は…一応検討はついていますが」

 

ピーシェはそう言いながら。卵を泡立て機で溶かし始めた。

呼び出した…つまり、狙っての犯行か。

尚更元の世界の可能性が出てきたが…

 

「呼び出した、か。二天龍に恨みを持つ存在…と言いきれないな。なら、不確定要素のネプテューヌまで呼ぶ意味がないからな。だが、それを踏まえた上で検討がついているんだろう?

良ければ聞かせてもらえないか。」

 

「わかりました」

 

 ピーシェはそう言った後、可能性のある黒幕を話し始めた。

 

「可能性があるのは3人…いえ3匹。クロワール、イクス、クリス。この3匹です。3匹とも別々に行動していますが、次元に干渉出来て、なおかつこういうことをしそうな羽虫共です」

 

どれもこれも、面倒な奴ということは理解した。

次元干渉…いまいちパッとしないが、この次元に引き込んだということだろうか。

 

「次元干渉か。クロワール…名前からして、イストワールに似ているな。実物は知らんがな。

三匹、ということは人の形すらしていないのがいるということか?」

 

「何にしても、傍迷惑な連中だ。

わざわざ俺達を巻き込んだのならば近い内に仕掛けてくると見て間違いなさそうだ。」

 

「仕掛けてきたら、多少手伝って頂きます…あ、そのやり方失敗します」

 

ここは、こうでこう…と教えながら、ピーシェは話を続けた。

 

「ほかに聞きたいことは?」

 

「む、そうか…すまんな。」

 

素直に謝罪して教えの通りにする。

正直ありがたい。

こういうものを教われるのは滅多にない機会だからな。

 

「聞きたいことか。この世界に詳しくないからな…

だが、そうだな…教えてくれないか?

お前はどこから来た女神だ?」

「こことは違う、神次元ゲイムギョウ界というところです。そこで補佐女神をやっています」

 

合点がいった。

この女は少し慣れすぎている。

いや、不測な事態である筈なのに、慌てもしない。

 

つまりは、この女自体が俺達と似たような奴ということだ。

 

「別次元か。…あの男が知ればどうなることやら。

ならば、俺達の次元は冥界を中心としたゴタゴタもあるからな…冥次元といったところか。

ああ、聞きたいことはもうない。」

 

作業に一段落ついてから、複雑そうな表情をする。

俺ばかりが考えても仕方がない気がしてきたな…

 

「正直、俺には想像もつかんことだ。

人のために身を粉にする女神…それも自身の国とはな。」

 

「人の為に身を粉にする神なんてバカバカしい?」

 

そう言いながらピーシェは微笑んだ。

 

俺は微笑むピーシェに首を振る。

 

「…いいや。お前の中のソレは分からんが、俺にとっての女神はあいつだけなんでな。

あいつの苦悩を知ってるからこそ、馬鹿馬鹿しいと笑えないさ。ああ見えて、考えていることは重いぞ、うちのネプテューヌは。」

 

「そう……」

 

ピーシェはため息をついた後、もう一度俺に向き直った。

 

「じゃあ最後に、私が君に言いたかったこと。いってもいいかな?」

 

「…ああ、構わないが。」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そう言いながら、子供のような笑顔で、そう口にした。

 

ため息をつく。

狸が…俺を騙していたということか。

 

「…よくもまあ。」

 

「変だと思われても仕方ないね、でも今のが本心だよ」

 

ピーシェは俺の頭を撫でた。

ネプテューヌなら受け入れるが、他は別だぞ…?

 

「『疑う』これは感情を持つ存在の2番目に信頼できる感情なんだ。君が疑ってくれたから。私は君を敵じゃないと信用できた。だから、ありがとう」

 

不服だったので撫でる手を退かす。

分からんでもないが、何だ。

やはり俺とこいつは違う。

 

「よせ。…とんだ食わせ物だ、お前は。

まあ…信頼を勝ち取る事が出来たのなら安いものか。

ネプテューヌは直感任せだ。だから俺が警戒する必要があった…結果的にいい方へ傾いたがもうやらんぞ。」

 

『そう拗ねるな、ヴァーリ』

 

「うるさい、アルビオン。」

 

アルビオンを黙らせる。

拗ねているんじゃない。

呆れているんだ。

 

「ふふっ、食わせ物か…誉め言葉として受け取っておくね」

 

そう言ってピーシェは微笑んだ後出来上がったプリンを持った。

 

「好きにしてくれ、全く…」

 

俺もピーシェと同じようにプリンを持ってネプテューヌたちの元へ。

…もう疲れた。

二度とこんなことはせんぞ。

 



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お互いの認識確認の時間!つまり、コミュニケーション!

というわけで続きの時間のネプテューヌだよ!

 

二人がプリンを作りに行ってから、皆でゲームしてるけど、これが中々面白い。

どうやら、この次元の自分も腕前はいいと見えるね。

 

「ふっふっふ!ようやくタイマンできるね!もう一人の私!」

 

「その%でこのねぷ子さんを倒そうだなんて夢のまた夢!

悪いけど、私が天に立つよ!」

 

「ノワールさんを倒したと思ったら踏み台にされて倒された…俺を、利用したのか姉ちゃん!」

 

「ゲームに関しては、より外道になる方が勝つんだよ一誠!」

 

「…楽しそうで何よりだ。」

 

「ふっ!あまりそのネタを使うなよ…弱く見えるよ(どやぁ)」

 

 

「ああもう…まさか異世界の奴になぶり殺しにされるなんて…イッセー!後で私とタイマンしなさい!」

 

 

「あ、それ私も入っていいですか?」

 

 

「……」

 

「それはどうかな?強い言葉が弱く見えるんじゃない、強い者こそがその台詞を吐けるんだよ!

それと、もう一人の私…私はタイマンの方が強いよ!」

 

「何度でも受けて立ちますよ、勝つのは俺だぜ。

ネプギアも一緒にやろうな。」

 

 

「……はぁ」

 

 

ピィー子の大きくため息が聞こえた。

あ、戻ってきたっぽい?

うーでも、ケッチャコを着けないと!

 

「…もう少し放っておきましょうか」

 

「そうしてやれ。」

 

「…おや、皆さん楽しそうになさっていますね。」

 

「む、イストワールか。」

 

「まだ慣れてないご様子ですね。」

 

「こちらの世界とは文明レベルが違う。半日ほどで慣れるのは無理がある。」

 

「それはそうですよね」

 

 

そう言って、ピィー子はゆっくりと玄関の方へ足を進める。

 

 

「いーすん様、私は少し外をぶらついてきます」

 

ピィー子はそう言い残すと、そのままこの部屋を立ち去ってしまう。

 

い、行っちゃった。

どうしよ…くっ、自分なだけあって実力はほぼ一緒だ!

決着が着かない!

 

「大変だな、あいつは。」

 

「同感です。…そちらの世界は女神が一人しかいないんですね。」

 

「いない、というより…一人しか創れなかった、が正しいのかもしれんな。」

 

 

「ま、まさかここまで粘るなんて…こうなれば!

勝ちも負けも要らない!私は、道ずれを選ぶよ!!」

 

「何!?姉ちゃんが勝ちを捨てて掴みからの道ずれ戦法を!?」

 

「ぁああぁ!!おのれドンキ────グ!!」

 

「「「P音不可避ぃ!!」」」

 

「ヴァーリさんは混ざらないんですか?」

 

「俺はいい。こうして見ているのも楽しいものだ。」

 

微笑んで楽しんでいるこちらを見るヴァーリ。

 

うん、カッコつけてるけど、ヴァーリはこういうゲーム弱いから参加しないだけだよね?

前なんてヘラクレスにもやられてたよね?

 

RPG位しかやりたくないって言ったの覚えてるからね!

 

「ふっふっふ…引き分けだよ!でも、気分的には勝利!」

 

「よし、次は俺達のターンだな!」

 

「ええ!残機は3でいいわね?」

 

「はい、私はそれで大丈夫ですよ!」

 

「もう一人の私!次はアリオカート!!さっきみたいに道連れが出来ないゲームで決着をつけるよ!もう一人の私は私が撃つんだ!今日!ここでぇ!」

 

ぼーっと見ていたいーすんが、ボソッと呟いた。

 

「……これ、いつになったら終わるのでしょうか?」

 

「次もぎったんぎったんにしてやりますよ。

のわーって言っても知らねぇぜ!」

 

「レーシングゲームだね?撃てるかな!同じ私を、君にぃ!」

 

「盛り上がっているところ悪いが、プリンが出来たぞ。」

 

「え、プリン!?くっ、決着が先かプリンが先か…」

 

「折角作った出来立てのプリンなのだが、そうか、ゲームが大事か。残念だがイストワールと食べながら眺めてるかな?」

 

からかうような笑みでそう言うヴァーリは楽しそうだ。

むむむ…

 

「仲がよろしいんですね」

 

「そういえば、ピーシェさんはどうしました?」

 

「外に行かれましたよ?」

 

「そっかー。なんかピィちゃん、こういう風に遊んでると離れる癖があるよねー」

 

「ヴァーリは何か分かってるんじゃないの?」

 

「さあな。」

 

惚けた感じだけど…まあ、気軽に話してじゃないしね。

じゃあ、行きますか!

 

「んー…じゃあ、私呼んでくるよ!皆でプリン食べたいし!」

 

「え、じゃあ俺も…」

 

「一誠はそこでお座り!」

 

「はい…」

 

一誠はしゅんとなるけど、こういう時にしっかりと周りと仲良くならないと。

ピィー子の事が気になるのか、自分が心配なのか分からないけど大丈夫大丈夫!

 

「じゃ、ちょっと行ってくるね!」

 

「…そういえば、そちらのネプテューヌさんはプラネテューヌを殆ど知らないのでは?」

 

「「「「あっ」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、とは行ったものの遠くには行ってないと思うんだよねぇ。」

 

トボトボと歩いているけど、本当に別世界って感じだ。

 

何というか…未来的?

いつかこっちの世界もこうなるのかな。

どうなんだろう。

 

「嬢ちゃん、ちょうど良かった!ほれ、新作プリン!

前みたいに感想聞かせてくれよな!」

 

「へ?あ、ありがとう?」

 

突然おじさんにプリンを渡されたと思えば感想をねだられた。

慕われてるんだねぇ…何だか申し訳ないけど。

 

取り合えず、ちょっと食べてここはこんな感じがいいよって言ってからとっても美味しかったと言う。

おじさんは笑顔だ。

 

─あれ、これって。

 

「お姉ちゃんだ!今日も遊んでくれるの?」

 

「あ、あーえっと、今日は迷子を探してて!」

 

ああ、やっぱり。

この光景に、覚えがあるよ。

 

「姉ちゃん、サッカー上手くなって褒められたんだぜ!」

 

「わーすごい!頑張ったんだね!偉いよ少年!」

 

ああそうだ、これは…──

 

 

『お姉ちゃん、遊ぼうよ!』

 

『よしきた!一誠、遊びの時間だよ!』

 

『うん!』

 

 

─これは、よく似ている光景だ。

 

 

『姉ちゃん、この前のテスト百点とったんだぜ!』

 

『凄いじゃん!教えた甲斐があるねー…これからも高得点ゲットだよ!』

 

 

─駒王町で、皆と共にある、自分。

 

 

『いつもありがとうねぇ、ねぷちゃん。』

 

『ううん、こういう時間も楽しいよ!』

 

『偉いねぇ…じゃあ、今日は息子の作ったプリンでも食べるかい?』

 

『いいの!?やったー!お婆ちゃんのお店のプリン大好き!』

 

『今は息子のだけどねぇ。』

 

 

─見た目は違うけど、同じ。この次元のネプテューヌも…皆に慕われてる。きっと、願いも自分と同じ、なのかな。

 

うん…そっか。

ここは、プラネテューヌはネプテューヌの理想なんだね。

守りたいのは当然だよね。

こんなに、優しさに溢れてる。

 

国のトップだし、誹謗中傷とかあるかもしれないけど…でも、この国の人の根底にある信仰はネプテューヌに向けられるもの。

何だか…安心した。

 

この国の女神と勘違いされながらピィー子を探して、ふと立ち止まる。

 

ありゃりゃ…

 

「迷ったね、うん。」

 

「…て、こんなところで何してるんですか?」

 

あ、いた。○○○ちゃんいた。

 

「だからそれはやめてって!」

 

このツッコミはピィー子だね、うん。

 

「探したよー!帰ろ?ゲームに夢中ですっかり忘れちゃってたよ!プリン、プリン♪」

 

いや、迷子になるとは思わなかったけど無事にピィー子に会えたからヨシッ!

 

「探してたって…完全に迷子になってるじゃないですか」

 

そう言いながら、ピィー子達は帰ろうと足を動かし始めた。

 

でも、少ししてピィー子は立ち止まった。

 

「…あの、一ついいですか?」

 

「うん?なーに?言っとくけど、スリーサイズは教えないよ?」

 

「そんな野暮なことは聞きませんよ…」

 

 

ピィー子は頭を掻きながらため息をついた。

 

 

「どうして、あんな簡単に私達を信用できたんですか?ただ恩を感じたから?」

 

「どうして、かぁ…」

 

そう聞かれると、難しい。

納得できる答えじゃないと思うし。

 

「恩を感じたというより、ピィー子や他の皆を信じたいと思ったからだよ。」

 

「皆を信じたい…、ですか」

 

 

それを聞いた途端、ピィー子は少し俯いた。

 

 

「あまり軽々しく信じないほうがいいですよ?」

 

「軽々しく見えたかな?」

 

ただ微笑む。

まあ、仕方ないと思う。

ピィー子からしたら…馬鹿馬鹿しいのかもしれないね。

 

「ピィー子はさ、悪の組織って感じの組織に連れ浚われたとして、その人たちをどうする?」

 

ふざけてるかもと思われるかもだけど、至って真面目な質問。

 

「そうですね…、殺す… と言ったら?」

 

 そう言いながら、ピィー子は不敵な笑みを浮かべた。

 

「普通だと思うよ。だって、組織の中心にいて、そこになにもされないでポンっていたら誰でもやると思う。」

 

髪を少しいじりながら肯定する。

ピィー子は意外だったようで、少しだけ反応する。

ごめんね、貴女の知る『ネプテューヌ』ではないんだ。

 

でも、と付け加える。

 

「私は、それが出来なかったんだよね。

何でかな、組織のトップの子を助けようとか…色々と変に頑張ってさ。自分の心配なんかより、他の人の心配ばっかしちゃって。自分でも、ちょっと怖かったりね?」

 

あははと苦笑する。

 

曹操達、オーフィス、クルゼレイ、ヴァーリ、美猴と黒歌。

皆の事、心配しちゃって。

衝突もしたけど和解して。

 

これは自分の願いだから。

 

「……」

 

ピィー子は少しだけ沈黙した。

 

 

「貴方はやさしいんだね…、他の人を助けようとできる人は……本当に尊敬するよ」

 

ピィー子は微笑んで、話を続けた。

 

「敵すら信じることができるのは…ネプテューヌさん、いえ、ねぷてぬの特権なのかもしれないね」

 

「そうだね、これは《私》の特権かもね。何て言っても、ネプテューヌは主人公だもんね!ほら、帰ろ?」

 

手を取って、歩く。

 

ねぷてぬ。

それが本来のネプテューヌへの呼び方なんだね。

…もしかしたら、ピィー子も同じなのかな。

 

なんてね。

事実は分からないけど、ピィー子はピィー子だよね。

 

「《ネプテューヌ》は凄いよね。この国もそうだし、いろんな人に信じられてる。普段はぐでーっとしてるのに、慕われてる。

助けることに戸惑いを持たない。傷付くことも厭わない。

失うことが怖いんだろうね。」

 

「……まるで『憑依転生』した別人見たいな言い方するね。まぁ転生した人、何人か知り合いいるけどさ」

 

ちょっとだけ核心を突かれる。

でも、ちょっと違う。

転生ってことでもないと思う。

 

あはは、と笑う。

 

「どうだろねー?まあ、私ったら超絶美少女にして完全無欠だからどこ行っても人気者なのは仕方ないかな~って感じ!

プリンが私を待ってるよー!皆で食べるプリン程美味しいものはないからね!」

 

「…そうだね、帰りましょうか」

 

そう言って、手を繋ぎながら帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おかえりー!全部プリンたべちゃったよ★」

 

よし、殴ろう。

遠慮は要らないね。

 

「うーん…もう一人の私さ、ちょっと座ろっか?」

 

「ね、姉ちゃん、落ち着い─」

 

「一誠。」

 

「はい!」  

 

「静かにね?」

 

「マズイ、キレてるぞ…」

 

「え、あっ、ちょっ…!冗談!全部なくなってたらどうなるかっていうドッキリだからちゃんと食べてないよほら!」

 

そういって、別ネプはプリンを見せた。

うんうん、分かってる分かってる。

だから取り合えずぶん殴るね。

 

「落ち着いてもう一人の私!クールになるんだ!!」

 

「どうなるか知りたいんだよね?今から、教えてあげるよ!」

 

「俺は何も見てない何も見てない…」

 

問答無用と、別ねぷに拳骨を叩きつける。

 

「あだぁぁ!!?」

 

「はい、許したよ。」

 

「拳骨落とした後に言う!?」

 

「あはは……でもどうします?」

 

「ん?なにがよ?」

 

「このプリン、誰も食べてないはずなのに人数分ないんですよ」

 

確かにあるのは七人分、一人たりない。

 

ああ、わざとかな。

 

でも、逃がさないよ。

 

「ああ、私は食べないので、私は省いてください」

 

「ピィー子。」

 

ピィー子の前まで行って、スプーンで半分にする。

 

「こういう時はね、半分こするんだよ?一緒に食べようよ!」

 

「……自分は、食べないつもりで作ったので、お気になさらずに」

 

何故かピィー子は頑なに食べようとしない。

苦々しい表情を自分に向けてきたけど…それは、多分、自分にじゃない。ネプテューヌに向ける感情だ。

 

笑顔で伝える。

 

「じゃあ、私も食べない。」

 

「エリート女神のノワールさん、こういう時どうすれば?」

 

こそこそと一誠がノワールに話しかける。

おお、仲良くなったね?

 

「何よその呼び方…というか完全に子供の喧嘩じゃないの!」

 

「勝手にしてください!私は食べません!」

 

「ピィちゃんが食べないなら私も食べない!!」

 

「お、お姉ちゃんとピーシェさんが食べないなら私もいいです」

 

「何伝染してるのっ!!訳わかんない!」

 

ピィー子は顔を赤くして怒った。

この場の皆は優しいから、こうなると思うよ?

ちょっと、認識不足じゃないかな。

 

「俺も食べない!」

 

「面白そうだ、俺も食べるのを止そうか。」

 

「アンタもかい!!」

 

尚も否定するピィー子に、顔を近づける。

 

「ピィー子は、プリンが嫌い?

それとも、私が嫌い?それとも─」  

 

 

 

「─自分が嫌い?」

 

頑なに断る姿に、自分は放っておけないと思った。

 

「───っ」

 

自分が嫌い、その言葉を聞いた瞬間。ピィー子の顔が少し強張った。

ああ、ちょっと当たりだ。

 

「何故……自分が嫌いだと?」

 

「プリンが嫌いなら、作るって言い出さないし…さっきの会話で何となくこっちの私に好感を持ってるのは分かる。

単に食べたくないって言うのもそろそろお昼近いから小腹とか空いてるよね?じゃあさ。」

 

「昔、何かあったとか。それのきっかけの一つがプリンとか。」

 

「…貴女に教える必要はありません『赤の他人』の貴女には」

 

そういった後、ピーシェはため息をついた。

 

赤の他人。

そりゃそうだね。

うん、気付いてたりする?

 

直感程度、かな。

 

「でも、わかりました。食べますよ」

 

「うん!」

 

教えてもらえなくても、笑う。

 

折れてくれたから、OK!

こうやって皆で食べるから美味しいんだよね。

 

「美味しい!プリンは何処でも美味しいね!…あれ、皆どうしたのさ?食べようよー!」

 

「お、おう!」

 

「…おお、確かにいい味だ。覚えるために練習だな…」

 

「はっ犯罪的だ……!美味すぎる!!」

 

「こら!こっちのネプテューヌ!そういうネタをしないの!」

 

「ろ、労働の火照りと?部屋の熱気で──」

 

「ネプギアも乗るな!!ピーシェ!アンタからもなんか…」

 

「……」

 

「……ピーシェ?」

 

「──ん…んむっ…ん〜♪♪」

 

 

ピィー子はメッチャ美味しそうに食べている。

 

おーおー可愛い顔しちゃって…

素が出てる出てる。

 

「──!」

 

 周りの視線に気がついたピィー子は顔が真っ赤になったあと、わざとらしく咳払いをした。

 

「ごほん!!!ごほん!!!わ、我ながらまぁまぁですね」

 

「ふっ…くく…く、く…!」

 

「お前、趣味悪いな…」

 

笑いを堪えるのに必死なヴァーリ。

ジト目でそれを見る一誠。

 

「…うんうん。」

 

「別次元のネプテューヌさん、どうかしましたか?」

 

「んー?何にも。この次元は楽しいんだろうなって。」

 

「帰りたくなくなりますか?」

 

いーすんの言葉。

 

ちょい当たり。

 

「…あはは、どうだろ?」

 

「帰りたいと思うまでここにいていいの!私という主人公は望まれる場所に現れるのだ!!ふはははっ!!」

 

「あはは、流石私!言えてるね!帰りたいと思うまで、かぁ!うん、それもそうだよね。」

 

「…」

 

「んー、いーすん!教会を散歩していい?」

 

「構いませんが…お一人で?」

 

「うん!プラネテューヌ教会を別次元の私自らが審査してしんぜよう!なんてね。」

 

「言われてるわよ、グータラ女神。」

 

「何をぅ!?」

 

「私もついていきます」

 

そう言ってピィー子は立ち上がった。

 

「お、じゃあ二人で審査の時間だー!」

 

ピィー子の手を取って、部屋を出る。

 

「楽しそうだな、姉ちゃん。」

 

「どうだろうな。」  

 

「何だー?拗ねてんのか?」  

 

「ふっ…まだまだだな。」

 

「上等だ、表出ろ」

 

 

 

「…さて、あそこの暑苦しい二人は置いておいて、行きましょうか」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会の中を歩く。

 

「教会かぁ。凄いねー!ここがプラネテューヌの中心なんでしょ?」

 

「そうなりますね、だからほら。ここはタワーですから。滅茶苦茶高いですよ」

 

そう言って窓のほうを指さす、高さにして雲まで届きそうな勢いだ。

凄い!これは東京タワー並に高いよ!

スカイツリー?ちょっと時代追い付いてないんで…

 

「…すいません、ついてきてしまって」

 

「ん?気にすることないよ。」

 

窓からの景色を見る。

 

「謝るのは、私の方だよ。

土足でピィー子の心に入り込もうとした私が謝らないとね。

…ごめんね。」

 

「……」

 

 

ピィー子は気まずさか、それとも何か別の理由なのか。頭をかいてばつが悪そうにしている。

 

 

「じゃあ、親睦の意味もかねて、少し愚痴大会しませんか?なんでも聞きますよ?」

 

「んー?愚痴?私は特に無いよ。

ここに来て、むしろ希望が持てた位だもん。

むしろ、私が相談に乗るよー?」

 

おちゃらけた様子に戻って、ピィー子に笑いかける。

 

もう、聞いてもらったばかりだしね。

その、うん、好きな人にね。

 

「ふふっ、そうですか…では少し愚痴を聞いてもらうとしましょう」

 

 

 そう言って、ピーシェは軽い口調で話し始めた。

 

「エンディングが本当にあるとしたら…『バットエンド』『トゥルーエンド』『ハッピーエンド』どれを取りますか?」

 

「悪い、本当、良い。三つの内一つかぁ。

分かってると思うけど、私はハッピーエンドを取るよ。」

 

「なるほど…あなたにとって、ハッピーエンドってどんなものですか…ってなんか、某職人のプロ番組みたいな言い方になっちゃいましたけど」

 

 

そう言いながら、ピィー子は苦笑いをした。

 

「皆が、笑い合える未来。人も、悪魔も、堕天使も、天使も。皆が笑い合える未来が私にとってのハッピーエンド…なんてどうかな。」

 

窓を見つめながら、でも同じくらい苦笑いしてるのが分かるような声でそう言う。

 

「……………その中に、《自分自身》は入っていますか?」

 

「─ピィー子は、どう思う?私がその中にそれをいれると思う?」

 

「正直思いません」

 

 

ピィー子はそう断言した。

よく分かってるんだね、ネプテューヌのこと。

 

 

「貴女みたいな人は、私は数多く見ています。『みんなで幸せになりたい』『ハッピーエンドを目指す』『争いのない世界』そんな理想を持っている人は、ほぼ確実に、こういう理想なんです─」

 

「─『みんなが助かるのなら自分の命など惜しくない』と」

 

「だよね~」

 

あはは、と笑う。

 

「我ながら馬鹿だなって思うよ。私が居なくなったら泣いちゃう人も居るのにね。うん、だから極力そういう事態にならないようにするよ、これからも。

でも…それでも私一人消えればそれで済むのなら。

…私は、それを迷うこと無く選択するよ。

多分、大事なことも、家族も、友達も…全部投げて、安全な場所に投げて…私は消えるよ。」

 

我ながら馬鹿馬鹿しい。

だって、それは何人かを泣かせてしまう行為だ。

自己犠牲の、精神。

 

でも…やってしまうんだろうね、自分は。

 

「…そうですか。ネプテューヌさん…いえねぷてぬ。」

 

「ん?なに──」

 

 

 

「歯ぁくいしばれぇ!!ぴぃぃぃぃぃぱああああああああああぁぁんち!!!!」

 

 

 

自分の頬にピィー子の右ストレートが炸裂した。

吹っ飛ばされて壁にぶつかる。 

背中と頬が痛む。

 

…ああ、なるほど、色々と、見えてきた。

 

貴女は経験したんだね、それを。

 

「……殴られるとは思ってたけどかなり強い一撃だね~。」

 

頬を擦りながら立ち上がる。

 

「溜め込んでたのかな、《ピー子》?」

 

 

「そうだね溜まってるね!ねぷてぬ見たいな優しい人のおかげでね!」

 

 

そう言ってピィー子はネプテューヌの胸倉を掴んだ。

 

 

「言っておくけど、私は『ハッピーエンド』なんて嫌い。

大嫌い!!」

 

「そっか。」

 

胸倉を掴まれる。

でも、それは分かってる。

 

「それは押し付けられるから?」

 

「……それもある、『ハッピーエンド』っていうのは、基本的に誰かが頑張って、勝ち取った未来。でもさ──それが何?」

 

「必死にがんばって、そのエンディングを目指したその後は?その頑張りはただの世界平和如きで満たされるの?その人が頑張っている途中でも、『家族』や『親友』。そんな人たちは貴女を心配してるんだよ?それが全て終わったら、その心配がなくなってみんなが『笑顔』になる?そんなわけないでしょうが!!」

 

「分かってる。」

 

ピィー子に同意する。

 

掴む手に、手を添える。

ごめんね、本当にごめんなさい。

 

自分を思っての発言は分かる。

 

でも…もう、失いたくないからさ。

 

「─それでも、私はそうする。

手を取り合う未来に私も居るのがベストだけどね。

でもね、ピー子…自分にしか出来ない事がそれだったら…女神の力も、何もかも捨てるよ。」

 

「それは大切な人が悲しんでも?その自分しか出来ない事は、大切な人を悲しませる以上に重いことなの?」

 

「そう言われると悩むんだけど…うん、そうだね…理屈じゃないよ、これは。悲しませたくないけど、やるしかないっていう矛盾。そういうものを私は抱えてるんだよ。

誰でも一つは持ってる矛盾…私の場合は、それなんだ。」

 

「…そう」

 

 

ピィー子はそう言うと、力なくネプテューヌを解放した。

 

 

「自分で矛盾と思ってるなら、これ以上言うつもりはないよ……。でもそれだともう一つ矛盾出てきちゃうね?」

 

「うん?何かあったかな…?」

 

「『ハッピーエンド』なら、主人公が死んじゃダメでしょ?主人公が死ぬのは『トゥルーエンド』。」

 

そう言って、ピィー子にデコピンをされる。

 

 

「主人公なら、まず生きて。生きて生きて生きまくって、『ハッピーエンド』を見てから死んで。あなたは《ねぷてぬ》なんでしょう?」

 

「あいたっ!」

 

額を擦る。

 

「私にとってのハッピーエンドって言ってたじゃ~ん…分からなくはないけど。

うーん、まあ、ピー子のいうねぷてぬとは違うけど…まあ、主人公なねぷ子さんだよ?そりゃ死にたがりじゃないから生きるけども。」

 

殴られたとこまだ痛むな~と愚痴りながらぶつぶつと言う

 

「ふっ…。そんなハッピーエンドはお姉さんが許しません」

 

ピィー子はそう言いながら、ごめんね、と言いながら自分の頭を擦った。

 

「…まあでも、私にもそっちの顔見せてくれたからグッド、かな。で、なつき進化はまだなの?ピィ!」

 

「ふふふっ…私はそう簡単になつき度はあがらな───って私はポケモンじゃないってば!! 」

 

「うんうん、ナイスツッコミ。丁度いいし戻るよ《ピィー子》。」

 

「あ、はい、そうですね」

 

ピィー子が考え事をしている……その時。

 

 

 

「おやおや、もしかして結構仲良くなった?」

 

「───っ!!」

 

殺気。

ピィー子が反射的にコンバットナイフを投げたが、固い音がするだけでダメージはないようで。

 

 

「……イクス」

 

 

目の前にいたのは黒くて丸い球体。羽を生やして飛んでいる。その姿は愛らしいような、どこか禍々しい。

 

「あれれ、もしかしてくーろーまーくー?」

 

取り敢えず木刀を構える。

 

(んーシェアが少ないから女神化を下手に使えないね~

どうしよっかいーすん…っていーすん居ないんだった。)

 

「もしかしなくても黒幕だよ~ン」

 

そう言いながら、表情がわからないイクスはかっかっかとおぞましい笑い声をあげた。

 

瞬時に理解した。

イクスは、こいつ(・・・)はどうしようもない悪だ。

 

 

「それで?この世界にネプテューヌさんを含める三人が来たのはお前の所為でしょう?何が目的?」

 

「んー、率直に言うと、そのネプテューヌを渡せ、的な?」

 

狙いは自分。

二人じゃないんだ、よかった。

 

「また私狙いな人!?人じゃないけど!もー勘弁してよ!

前に一回ポセイドンと名前の意味同じだろっていう謎の怒りを向けられて辟易としてるんだよ!?毎度毎度グータラしていたいのに厄介事起こるし~積みゲー増えるばっかで困ってんだからね!」

 

取り合えず、ピィー子の手前だし、少し迷惑そうにする。

実際は、自分狙いなら好都合だよ。

だって、他の人を巻き込まないできてくれたから。

 

「……なぜこの人を?」

 

 

シリアスブレイク発言を無視し、ピィー子はイクスを睨んだ。

 

 

「おや?もしかして気づいてないのかい?」

 

「……」

 

「そいつの体に『黄金の欠片』の反応があることにさ」

 

うん、何それ。

え、自分また設定生やされたの?

 

伏線回収しきれなくなるでしょ!!



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戦闘開始だよ!巻きでいこう、巻きで!

「黄金の欠片?何それ?この次元での設定生やされた感じ?」

 

ちんぷんかんぷんな自分は知ってそうなピィー子に聞く。

 

「…さぁね、ゲイムギョウ界は追加設定のオンパレードだから。いちいち覚えてない」

 

「あーなるほどね!うちもそんなだからいいんだけどね。

んー、おかしいなぁ。私ってそんなのあったっけ?

カオスの力とか神様的パワーならあるんだけど…そういうのじゃない感じ?」

 

「…そのカオスって『カオスエナジー』の事じゃないよね?」

 

「あれ、こっちだとそう呼ぶの?じゃあ、そうなんじゃないかな!」

 

その言葉を聞き、イクスは盛大に笑った。

あれを黄金って…ちょっと無いと思う。

 

「あはははっ!!!ピーシェ!!お前が失敗し続けている変身方法をよぉ!この女はやれるみたいだぞ!はっはっはははっ!!!」

 

「……っ」

 

ピィー子は気に食わなかったのかイクスを睨んだ。

当のイクスは全く意に介してないけど。

 

「おお、怖い怖い。だが…ほお?『カオスエナジー』を知っていて。『黄金の欠片』を知らないか。こいつぁ面白い」

 

「あ、ごめん。水を差すようで悪いんだけど私も上手く使えないからね。カオス化。」

 

手を挙げて、上手く制御できない事を伝える 。

そもそも、あの時からそんなに時間経ってないし…

 

あ、あの時が分からないって人はしっかりと本編読んでね!

 

「なんだ、そりゃあ残念だ、なら───」

 

そう言ったイクスの隣、二人の女性が立っていた。一人は緑色の髪の胸が大きい女性。もう一人はシアン色の胸の小さい女性だ。

 

「っ!ホワイトハートとグリーンハートの『カオス』状態…!!」

 

「その力、今ここで見せてくれよぉ!」

 

「ねぷてぬ!!下がって!!」

 

「下がる?やだなぁ、ピィー子は!

これって不利な奴?でもでもバランスブレイクしちゃうのがネプテューヌ!だからね、ピィー子!」

 

ピィー子に向けて笑顔を向ける。

 

どんな相手でも、ねぷ子さんが挫ける訳にはいかないよね!

 

手を差し出す。

ピィー子に願うことはただ一つだけ。

それさえあれば、自分は戦える。

どこまでも駆けられる。

 

 

 

「─私を、()()()!」

 

 

 

「…わかった!!」

 

 

 そう言うとピィー子は何かを投げ渡す、それは何かの石のようだ。中にシェアが入っているのを感じる。

 

「…ははっ、師匠に知れたら大目玉だな…他人に任せるなって…」

 

それを手に取り、自身のシェアと同調する。

 

自分の知るシェアとは違う。

でも、これは女神化に必要なもの。

 

「うん、これならいける!」

 

ビシッと二人のカオス化した女神を指さす。

 

「─私の力、刮目しちゃってよね!

これが、別次元でただ一人の女神の力!」

 

この場の誰もが見慣れた女神化。

希望の象徴、国を守護する女神の姿。

 

 

 

「─女神パープルハート、ここに見参!」

 

 

 

刀を手に持ち、ピィー子に微笑む。

 

「ありがとう、一時的とはいえ女神化出来たわ。

でも…これだけじゃ足りなさそうね?」

 

「足りる、いや足りさせてみせるよ。プロセッサユニット展開。《エディン》」

 

 

ピィー子はそう呟いてシェアクリスタルを天高く放り投げると、シェアクリスタルがひとりでに回りだし、その光がピィー子を包む。そして次の瞬間──。

 

 

「イエローハート!装着完了!!」

 

 

ピィー子の第二の姿。

ピィー子曰く、イエローハート。

 

ああ、夢みたいだ。

 

だって、自分の世界では『女神』は一人しかいない。

だからこそ、これは夢のような時間。 

危機感は忘れないけどね。

 

「…女神と協力して、女神と戦うなんて夢にも思わなかったけど、今更ね。

さあ、覚悟しなさい。

グリーンハート、ホワイトハート…そして、イクス!

貴方の計画、ここで潰させてもらうわ!」

 

(槍と斧…同じ女神と考えると、ここは。)

 

「槍が先!」

 

グリーンハートへと接近する。

その刀にバチバチと音が鳴り、雷を纏う 。

 

「じゃあ私はホワイトハートもらいまーすっ!とおおおおおりゃあああああああああぁぁ!!!」

 

 

刹那───

イエローハートのクローとホワイトハートの斧は触れた瞬間に空気を振動させ、地面がピリピリと振動する。

 

わーお…力強いね…?

本気で打ち合ったら勝てる自信ないかも?

いや、その時は負けないけど。

 

「おーい!グリーンハート任せていい?」

 

「問題ないわ、貴女はホワイトハートを倒して!」

 

刀と槍がぶつかり合う瞬間、雷が拡散する。

 

「私は正々堂々も好きだけどこういう小手先のプレイも好きよ?」

 

警戒はしていたのか距離を取られる。

けど、反撃の機会は与えない!

 

「っふ、はっ!せいっ!」

 

力強く、けれど舞うように。

速く、鋭く、時にわざと遅く振るわれる刀の攻撃をグリーンハートは槍で器用に防ぎながらも攻めあぐねる。

 

「カオス化しても、技術は同じよ。」

(ここは屋内。下手な大技は使えない。

エクスブレイド…いえ、それなら。)

 

シェアを力に。

 

具現化するは剣。

 

「32式エクスブレイド、8本展開!!」

 

自分の背後にいつもよりも小さなパープルハートの刀と同サイズの剣を展開する。

 

8本は初めてだけど、やれてよかった!

 

「クロスコンビネーション!!」

 

刀を防がれる瞬間、腹部へ蹴りを叩き込み、追撃を仕掛ける。

槍で咄嗟に防ごうにも背後の剣が射出され、槍を弾く。

計8回の連擊の後、打ち上げてから叩き落とし、残りの剣がグリーンハートに突き刺さる!ごめんね…!

 

 

 

「せえええええええええい!!」

 

 

 

グリーンハートが地面に落ちると同時にイエローハートの蹴りがさく裂。

 

滅茶苦茶な戦い方するね!?

自分のが型に嵌まり過ぎなのかもしれないけど…!

狙ったんなら凄いけど…

 

グリーンハートはちょうど、ホワイトハートにぶつかり、二人同時に地面に倒れこむ。

 

「ストライィィク!!!さぁ!最後だよ!ライダーキックのように華麗に決めようか!!」

 

「ええ、なら、最後に決めるわよ!」

 

シェアを足に纏わせる。

にしても、テンション高いね、こっちのピィー子。

元が、こっちなのかな。

 

成長する前のピィー子…って感じ?どうだろ。

 

「ビクトリィースラッシュならぬ、ビクトリィーキックなんてどうかしら?」

 

「おーけーおーけー!!乗った!」

 

乗ってくれた。

こういう時はヒーロー物でいうキックが常套!

 

そう言うとピーシェの足に何か黒い光が宿る。

 

「いっくよぉ~~!!!」

 

「ええっ!」

 

 

二人で息を合わせ、同時にジャンプする、上空で一回転したのち、真下のグリーンハートとホワイトハートに向けて姿勢をとった。

 

 

「「ビクトリィーキック!!!!」」

 

 

2人の黒い光とシェアの白い光が重なり、まるで花火の玉のように華麗に飛んでいき、ぶつかった途端に敵の二人と同時に綺麗に四散した。

 

 

「はっ!きたねえ花火だ!」

 

 

ピーシェは着地して振り返り、鼻で笑いながらそう言った。

あ、はは…ちょっとドン引きかも。

 

「助かったよ、ねぷてぬ」

 

ねぷてぬと呼ぶピィー子に首を振る。

 

「貴女の信じる心が、私を強くしてくれたのよ。

感謝するのは私の方だわ。ありがとう、ピィー子。

カオス化は、必要なかったわね。」

 

「さて、そろそろ観念してほしいな?イクス」

 

「そうだね。まさかここまでこのネプテューヌがやるとは思っていなかった」

 

 

そう言って、イクスは不敵な笑みを浮かべた。

まだまだって様子だね。勘弁してほしいなぁ!

 

「まだ諦めてない様子ね。ここが屋内であることも考えてほしいわね。」

 

「そんなの私には関係ないね。それに──」

 

「あら?屋内でやるのはさすがに野暮よ…?イクス?」

 

 

いつの間にか、気配も何か感じなかったのに。自分とイエローハートの後ろに一人の女性が立っていた。

その女性は暗い紫髪のロングヘアーで、妙に露出の多い踊り子のような服を着ている。

 

咄嗟に振り向いて距離を取る。

 

「っ!!貴女は──」

 

「おや、DCD、いつの間に来たんだい?」

 

「今さっきよ…?それにしても…随分苦戦しているのね…」

 

「また新手?流石に二番煎じは飽きられるわよ。」

 

刀を握り直す。

 

(…この女性もイクスと同じような事をするなら…

形振り構ってられなくなるかも。)

 

焦りが生じる。

グリーンハート達を倒せたのはピィー子がいたのもあるけど殆ど機械のように動いていたから。

 

けど、そんな二人を召喚できるイクスと同格っぽいDCDが相手となると…まずいかも。

 

「まっずいな~…DCD来る前にイクス仕留められなかった…」

 

そう言いながらピィー子は苦笑いをした。冷や汗が流れているので、相当やばい状況なのだろう。

 

「共犯者って事かしら。何にせよ…私だけならまだしも他の人を巻き込んだ時点で許すつもりはないわ。」

 

("使う"?いえ、まだ─)

 

「貴女も私の黄金の欠片というのが欲しいのかしら。それとも別の?」

 

「貴女も私の黄金の欠片というのが欲しいのかしら。それとも別の?」

 

「私は黄金の欠片には興味ないわ……。ユリーナにでも譲るわよ」

 

そう言って、DCDは自分に近づいた。

 

「私が欲しいのは、貴女のカオスエナジーよ?」

 

「悪いけど…譲るつもりはないわ。

この力は危険…だけど、それでも私はそれを手放さない。」

 

DCDから距離を取る。

ちょっとちょっと…今日の自分モテモテじゃん!

 

悪党とイチャつく気は毛頭ないよ!

 

「…一誠とヴァーリや他の女神が居てくれたら、もっと楽なんだけど。」

 

「はははっ、それは叶わないかな~」

 

 

そう言いながら、イクスはかっかっかと笑った。

 

 

「もしかして気づいてないのかい?…時計を見てみなよ」

 

「時計──」

 

…時間が止まってる?

 

周りの時間にまで干渉できるってことか。

なるほど、マジで?

 

「─そんなに大事かしら、このカオスエナジーが。」

 

事態を理解して、眉をひそめる。

 

「それは大事よ…?なんたって、()()()()()()()なんだから」

 

そう言いながら、DCDは不敵にほほ笑んだ。

 

その言葉にちょっとイラッときた。

それは、あり得ない。

 

「…いいえ、そもそも本来交わることがない世界同士。

接点を持つわけがない…このカオスエナジーは私の産みの親である聖書の神が授けたものよ。

貴女の言うカオスエナジーとは別な筈。ハッタリはやめて貰えるかしら。」

 

「なんでもいいわ…、それでも奪うだけだもの」

 

ハッタリにしても質が悪い。

これは誰に貰ったわけでもない…自分だけの感情だよ。

 

DCDは知ったことかといわんばかりにこちらへ歩を進める。

 

「っ、カオス化を…!」

 

カオス化を使おうと紫の駒を取り出そうとし──

 

 

 

「─その必要は無いな。」

 

「─その通り!遅れてわりぃ!」

 

 

 

─頼もしい二人の声を聞いて、安堵する。

 

「…二人とも…酷いくらいいいタイミングね、スタンバイしてたなら許さないわよ。」

 

「そ、そんなことねえって…」

 

赤い鎧と白い鎧。

二人が自分とピィー子を守るように前と後ろに立つ。

 

「……ドチラサマ????」

 

イエローハートが目を丸くしている。

 

ふっ、とヴァーリが笑う。

 

「鎧のせいで声じゃ分かんないか。」

 

「ならば、敢えて名乗らせてもらう。」

 

 

 

「「俺達は二天龍だ。」」

 

 

 

「一誠、ヴァーリ…カッコつけちゃって。」

 

一誠がDCDに、ヴァーリがイクスへ拳を構える。

 

「折角お呼ばれしてんだ、活躍しなきゃ損だろ!」

 

「俺の妻に手を出した自分を恨め。」

 

「こういう時までそういう台詞吐かない!」

 

「え…えええええええええええええぇぇぇぇぇ!!!ヴァーリとねぷてぬってこれ!!ねえこれ!!!!」

 

 

そういってピィー子は小指を立てた後、今度は親指を立てた。

あー!あー!

ちょっと!ヴァーリの馬鹿!何でそういうこと言うの!?

 

嬉…恥ずかしいでしょ!

 

「違うから!ほら誤解されたじゃない!」

 

「何だ、照れてるのか?」

 

「ヴァーリぃぃぃ…嘘ついてんじゃねぇぞ!

この二人よりまずテメェを潰すぞ!?」

 

「なんだ?『神殺しの二天龍』の再現でもするか?」

 

「チッ、この野郎…!!」

 

「ピィー子、嘘よ?私はヴァーリと付き合ってすらいないからね。」

 

ピィー子にそう言う。

違うったら違う…ま、まだ。

 

「な、なんか脈ありではありそうだね~~……」

 

そうピィー子が苦笑いしていると、DCDとイクスは気に入らない様子だった。

 

 

「おいおい、どういうことだよ?時止めしたんじゃねえの?」

 

「……ええ、したはずよ、この二人は動けるはず…」

 

 

どうやら、この二人が介入したのがかなり想定外らしい。

 

 

「あ!それ私も気になる!この時止め、一応神様レベルじゃないと介入できない能力のはずなんだけどな~…」

 

ピィー子も同じらしい。

そっか、知らないもんね。

 

「おいおい…ピーシェ!忘れたのか?」

 

「俺達は二天龍。」

 

「「神を越えるくらい、造作もない!」」

 

『神風情を縛る力で我らを止められる事能わず。』

 

『我ら天に吼えし龍である。』

 

「私の世界には神器っていう人間にのみ宿る特別な武器がある。その中で、神をも殺せる可能性を秘めた神器はこう呼ばれるわ。神滅具(ロンギヌス)…想いにより強くなるのが神器なら、神滅具もまたその想定を越える。」

 

『『貴様らは、龍の逆鱗に触れたッ!!』』

 

白い龍、赤い龍。

ドライグとアルビオンが一瞬だけ見えた。

スッゴいイラッとしてるね…ハハハ…

 

そうだよね、神様だって恐れた二天龍なのに、神様レベル位の介入不可の時止めなんて受けたらプライドが許さないよね。

 

意地で突破したね、これは…

 

「は…はははは…はは…」

 

ピィー子は乾いた笑い声をあげた…。そして力なく肩がだらんと落ちる。

 

 

「し、信じられない……」

 

 

ピィー子は二人に唖然とするしかなかった。

 

「師匠たちも……。『輪廻楽園(アイン・ソフ)』と『全能起源(オリジン)』を使わないと入ってこれない領域なのに…。こんないとも簡単に…」

 

うん、分かるよぉピィー子…

 

「ねぷ姉ちゃんに手を出した事、後悔させてやるぜ。」

 

「加減する必要はない。こいつらが俺達をここへ呼んだ元凶だろう。」

 

「ピィー子、いくわよ。…女神だもの、まだまだ強くなれるわ。私だって可能性があるんだから、貴女は尚更でしょう?」

 

「……可能性…か」

 

 

 それを聞いたピィー子は、軽く微笑み光りだす、光が収まるとそこには。

 

元の姿のピィー子がいた。

 

 

「二天龍様、一つお願いを…聞いていただけないでしょうか?」

 

「お、おう?」

 

「…」

 

二人して、変身を解いた事に疑問を覚えながらも話を聞く。

イクス達への警戒は怠らない

 

「お二人の持ってる怨念を…少々分けて頂けますか?」

 

 

そう言って、ピィー子は微笑んだ。

 

 

「はっ…、何を言うかと思えば、たかがドラゴンの怨念など、少ないことこの上ないだろ」

 

 

そう言いながらイクスはあざ笑う、それを見てピーシェは勝ち誇ったような顔をした。

 

 

「ただのドラゴンなら…ね?」

 

 

「どういう意味…?」

 

「それで?くださいますか?」

 

「怨念って…!耐えられるかわかんねぇけど…それでもいいってんなら…」

 

『待て、相棒。』

 

ドライグが一誠の言葉を遮る。

 

「何だよ?」

 

『…かつて人であった女神。聞こえるだろう。

我らはドラゴンである。我等二天龍の持つ数百年の怨念…その身に受けると?』

 

『然り。我等の怨念は我等の物にあらず、我等を使った人間の果てである。』 

 

アルビオンまでピィー子に話し掛ける。

 

…そっか、試してるんだね。 

 

『女神よ、我等ドラゴンは誇り高き生物である。

故に問う、我等の怨念をも手にいれ、その力で何とするか。』

 

『『答えろ、女神。』』

 

「アルビオン…」

 

「肯定、その通りです。貴方達は誇り高きドラゴン。そしてその所有者の憎悪を、私如きがそんな()()()()を手に取るなど、おこがましい事この上無いでしょう」

 

ピィー子はにっこりと、子供のように笑った。

 

「でも。私人間です。神様じゃない…信頼では動かないのです。人間が簡単に動くことができるのは…心が闇に染まったときだけなのです」

 

そういうと、ピィー子は跪く。

 

「私は、何かを守るためには《慈悲》すら殺さなければならない…、慈悲を殺すのに、その力が必要なんです。どうか──」

 

祈るように、懇願するようにピィー子は2体の龍に怨念を渡してくれと言う。

 

沈黙が少し。

 

『『…』』

 

『此方寄りの意見だ。』

 

『その意見に相違はないと判断しよう。』

 

『一度限りの力として貴様に譲渡しよう、人間。』

 

『貴様が今よりも深い闇に囚われるか否か、見せて貰おう。』

 

『『受けとれ、愚かな人間。』』

 

二人の鎧を通してピィー子に流れ込んでくる怨念。

悲しみ、怒り、苦しみ、憎悪。

多くの負の感情が流れ込む。

 

「っ、く…!!」

 

「ピィー子!…頑張りなさい!」

 

苦しむピィー子に言いそうになった言葉を噛み殺し、激励の言葉を送る。

 

大丈夫、ピィー子なら、勝てる。

 

 

 

「タリの女神と黒歴史女神の憎悪に勝てる訳ないだろうがあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ──────!!!」

 

 

 

しばらくして、ピィー子は叫ぶ。

体は真っ黒に染まり服もボロボロ、元のピィー子の原型を留めていなかった。

 

イメチェンした!?

カオス化…じゃないね。

怨念を身に纏った…が正しいのかな。

 

「よし…耐えた」

 

 

「ピィー子…大丈夫?」

 

「俺達が言うのもなんだけど…平気そうだな。」

 

「でなくては困る。」

 

「憎悪なら……いやってほど経験したからね」

 

「そう…なら、よかったわ。」

 

「律儀に待ってくれたじゃないか。仕掛けたらそれ相応の対応だったが…」

 

「これからやることも変わんねぇよ。」

 

「そりゃあ黙ってみてるさ、そっちのほうが面白いから」

 

 

 そう言いながら、イクスはけたけたと笑い声をあげる。

 

 

「それで…?ピーシェ。アレは使わないの…?」

 

 

「…あいにく、思ったより憎悪がひどくてね…。制御できそうにないから使えそうにない」

 

 そう言いながら、ピィー子は苦しそうに苦笑いをした。

 

「快楽主義者か。壊れた機械らしい性格だ。」

 

「姉ちゃん、カオス化なんて使うんじゃねぇぞ。」

 

「一誠…」

 

「その為に俺が、俺達がいるんだ。もうあんな姉ちゃんを見るのはごめんだ。守らせてくれよ、こういう時くらい。」

 

「…いい弟を持ったわ。」

 

一誠、頼もしくなっちゃって。

…うん、守ってね。

 

「無理はするなとは俺は言わん。ピーシェ、お前の穴埋めは俺がやろう。」

 

「ふふ…、ネプテューヌさん…奥さんに嫉妬されない程度にお願いします」

 

「ピィー子!違うって言ってるでしょ!」

 

「デートどころか夜の語らいまでしたのにな。」

 

「あれは病院で話しただけでしょ!」

 

全く失礼しちゃうよ!

…でも、ちょっと嫉妬しちゃうからね!

 

「そろそろ俺の殺気が有頂天だからやめてくれますか?」

 

「怖い怖い。待たせ過ぎもよろしくないな。」

 

「そうだね」

 

そう言って、ピィー子は笑顔を振りまいた。

 

 

「さて、ご唱和願います」

 

「……まあ、いいわ」

 

 そう言って、ピーシェは自分の手を自分の胸に優しく置いた。

 

「さぁ、私達の──」

 

「…ええ、私達の──」

 

 

 

「「戦争(デート)を始めましょう。」」

 

 

 

「習わしか何かか?」

 

「ならばこちらも抜かねば…無作法というもの…」

 

「一誠、ふざけない。」

 

「はい」

 

生き恥晒すからその台詞禁止ね、一誠。

 

「相手がどんな輩であれ─」

 

 

「─"勝つ"のは私達よ。」

 

"勝利"を手にするために。

刀に光を纏わせる。

 

「いくよ!!!」

 

 

ピィー子は憎悪によって生成された禍々しいクローで容赦なくDCDを仕留めにかかる。

 

「っ!」

 

 その攻撃は避けられはしたが。

 窓へと攻撃の振動が飛び出し────。

 

 目の前の山を切り裂いた。

 

 

「うっへぇぇ…」

 

 

ピィー子はドン引きしている。

うん、こっちも、ドン引きだよ!嘘でしょ!?

 

「…流石に、始末書まで責任は持たないぞ。」

 

「姉ちゃん、新技か?」

 

「そうね。思ってたことが1つあるのよ。」

 

 

「─この光が、放射線とかだったらって。」

 

「えっマジ俺死ぬやん。」

 

「流石に50%は嘘よ。でも…こういう手もあるわ。」

 

刀を突き出すと、刀から一筋の光…ビームがDCDへと放たれる。

 

「名付けて、ガンマレイ・ケラウノ─」

 

「それ以上いけない。閣下ファンに殺される。」

 

駄目だった。

これ以上いうと光の奴隷になるから言わないでおこうね。

 

「…!あっぶない…」

 

 

 間一髪でDCDは避けたが…。

 

「遅い!!」

 

 

 そこにピーシェが待ち構えていた。

 

「食らえ!師匠から受け継いだ最強必殺技!!」

 

 

 

「《瞬・閃・轟・爆・破》あああああああぁ────!!!」

 

 

まるで某ドラクソボールに出てきそうなビームは、あっさりとDCDに避けられた。

 

「避けて早々悪いが…」

 

『Half Dimension!』

 

「これはどうかな!」

 

空間自体に半減をかけ、ヴァーリとDCDの距離が1mあるかないか程度になり、ヴァーリは構えていた拳を振り抜いた。

 

「粉微塵にしてやるよぉクソ機械!姉ちゃんに手を出す=死、だ!スクラップにしてやる!」

 

『ぐわぁぁまた女神が生えてる!!やめろ、妄想するな!』

 

倍加回数にして6回。

一誠がイクスへと瞬時に迫り、蹴りを放つ。

 

「ぎゃっ!!!おいおい!普通の悪魔とかドラゴンのパワーじゃねえだろどう考えても!」

 

 

 納得がいかないように、イクスは怒った。

 

 

「わたしと…あの男の人の距離が…何もされてないのにあそこまで接近された?…どうなってるの?」

 

 

「所詮お遊びだぜ、武術だの拳法だのよー!

純粋な闘争に必要なのは力だけだ!

それ以外は、不純物だ…よく覚えてからスクラップになれよなぁ!

俺が行き着いた答えはこれだ!」

 

『Boost!』

 

容赦なくイクスに連打を仕掛ける。

 

一誠…怒ってるのか楽しんでるのかどっちかにしようよ!?

 

「さて、どうなっているのか、当ててみるか?

距離を操られたのか、それとも…俺がワープしたのか…」

 

『Half Dimension!』

 

「もう一撃だ。」

 

もう一度同じ状況を作り、蹴りを放つ。

 

「まだ二人に任せていいわね。なら…少し位、私も破壊力を出すわよ。」

 

刀を消し、シェアを自分の内へ高めていく。

 

「じゃ、じゃあ私も…」

 

ピィー子も一旦パワーを引っ込めて、こぶしに集中し始めた。

 

「その様子、気付いたのかしらピィー子。」

 

二人の相手をしている二天龍を見る。

 

「二天龍は相反する力を持つドラゴンよ。

半減と倍加。…時間をかければかける程一誠の倍加はされていくし、ヴァーリの半減はより対象を弱体化させる。

…私の世界って、デタラメでしょう?」

 

「…デメリットは?」

 

ピィー子は辛そうに答えた。

 

「1回ならともかく、二人とも何回もやってるように見える…そんなことをしたら、間違いなく体に負荷がかかる…。二人の体は大丈夫なの?」

 

「一誠の場合は…倍加された力の幾らかを肉体維持に回してる。ヴァーリは分からないわ。ヴァーリはそういうのを語らないから。私には無茶はやめてくれって言う癖にね。」

 

でも、と微笑む。

 

「一誠は気合いがあるし根性がある。私がいなかったら、あの子が色々と背負ってたかもって思うわ。

ヴァーリも、強さを求める割には周りに甘いし…

二人とも、強いわ。」

 

 

 

「オラオラァ!まだ壊れねぇか。さては聞いてねぇな?

っかしいな…9回はやってる筈なんだが。」

 

『白いのは上手く立ち回ってるが相棒は獣だな。俺は好きだぞ?』

 

「うっさい!」

 

 

「体が重いだろう。俺の能力がそろそろ分かってきたんじゃないか?」

 

『いつもより維持が悪いな。』

 

「こう見えて、苛立ってるんだ。」

 

 

「やるわね…、少年くん…?そういえば名前、きいてなかったわね…、聞いてもいいかしら?空間を支配する奇妙な少年くん?」

 

「はっはっはっ、ホントにただのドラゴンかよ!アッタマワッルイ脳筋パワーだな!」

 

二人ともまだまだ動けるっぽいね。

うん、力も溜まってきた!

いーすんがいないから調整が難しいなぁ。

 

「お前のような輩に名乗る名はない…と言いたいが。

ヴァーリ・ルシファーだ。」

 

「俺に出来るのはゴリ押しだけなんだよ、悪ぃか。

何にしても、テメェがこの先を要求するなら踏み越えるだけだ。」

 

戦闘としては圧倒的にヴァ―リと一誠が優勢で、このままいけば押し切れそうなほど優位に事は進んでいた。

 

「……ネプテューヌさん、そろそろ準備してください。そろそろ向こう本気で来ます」

 

「そうね…」

 

体が浮かび、光に包まれる。

人の形から戦闘機へと。

 

これが自分の今の全力!

 

「ハード:ネプテューヌ…さあ、一気にいくわよ!」

 

「ハード化…私の奴とは結構違いますね」

 

 

そういいながらピィー子は苦笑いをした。

え、もしかして使えるの!?

じ、自分のオリジナル秘奥義だと思ってたのにぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて………と」

 

「ああ、そうだな、DCD、そろそろ遊びは…」

 

 

 

 

「「終わりにしよう」」

 

 

 そういうと二人は漆黒の闇に覆われ、姿を消す。

 次見えた時には、DCDという少女は紫だった踊り子のような服が真っ白になり、頭に紅い角のようなものが二本生えて、イクスは丸い姿とは打って変わり、人型になって、後ろにビットのような武装が6つ搭載されている。

 

 

「ヴァ―リ君、貴方にカオスの力…ちょっとだけ見せてあげるわ」

 

「終わりとしよう、愚かな(ドラゴン)よ」

 

二人はそれでも余裕を崩さない。

二人とも、修羅場はかなり潜ってるもんね!

 

「悪いな、もう見たことがあるんだ。」

 

「一誠!!」

 

「おう、ねぷ姉ちゃん!ぶちかましてやれ!」

 

『transfer!』

 

黒と紫の戦闘機に赤いオーラが宿る。

先程までの倍加全てを自分へと譲渡する。

 

「どんな相手でも、私は私の誓いを貫き通す!

全てを壊して、全てを繋げるわ!

ピィー子、合わせて!」

 

「OK、いつでもどうぞ」

 

 ピーシェは不敵な笑みを浮かべた。

 

「全弾発射、くらいなさい!!」

 

倍加された戦闘機は音を越え、姿すら視認されない程の速さを発揮しながらミサイル25発を二人へと発射する。

 

「俺達もやるか?」

 

「当たり前だろうが。」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

二人はイクスとDCDへと手を向ける。

 

「「ダブルドラゴンショット!!」ぉぉぉ!!」

 

二人の強大な魔力が砲弾のように放たれる。

 

こ、これは流石に自分もくらいたくないなぁ…

 

「《レミエル様・我祈りを聞き・我願いに耳を傾けよ・願わくば・かの者達を導きたまえ》」

 

 

ピィー子はそう詠唱すると、ピィー子から翼が生える。金色に光るその羽は、白くて綺麗で見るものをすべて魅了しそうな美しい羽だ。

 そしてピィー子はその羽に、貯めていた憎悪を組み込ませる。

 

 

「《白き刃の軌跡》───ッ!!!」

 

 

 羽を羽ばたいたと同時に混ざり合った二つの光が束になり、2人に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すべての攻撃が命中。その反動か、あたりに煙が舞った。

 

 

「…やったか」

 

戦闘機の姿から戻り、着地する。

 

「ピィー子、それはフラグっていうのよ。」

 

「一応まだまだやれっけど…どうだ?」

 

「さあな。」

 

「…ごめん」

 

ピィー子はそういうと、目の前を見た。

 目の前には呆気なく転がっている二人の体がある、二人ともボロボロだ。

ピィー子は近づき、二人の首元に触る。

 

「やっぱり…コピー体か」

 

「倒したってことでいいのね?」

 

「…の、ようだな。」

 

「勝ったぞピーシェ…この戦い、我々の勝利だ!

勝った、勝った!今夜はドンかつだ!」

 

「やった!ドン勝──って100人のバトルロワイヤルやったわけじゃないよっ?!」

 

「ナイスツッコミだぜ!」

 

女神化を解除する。

 

フゥ、疲れた!

 

「まあ、何にしても勝利!ブイ!レベルアップって感じはしないけど、時間も動いてるっぽいね?」

 

「さて…イストワールになんて説明すべきか。」

 

「いーすん様には私から報告しておきます、それよりネプテューヌさん」

 

 

ピィー子は死体から離れ、自分の方へ。

 

 

「カオスエナジーを持っているなら、今すぐ捨てたほうがいいです。あれは悲劇を呼ぶ力です、使ったことがあるなら……。暴走した経験もあるでしょう」

 

「…そうかもね。」

 

でも、と紫色の駒を出す。

 

 

 

『会って間もない私に、あそこまで手を差し伸べてくれた。

それだけで、私には十分だった…』

 

 

 

今はもういない、友達(ロキ)から貰った鍵を、捨てるわけにはいかないからさ。

 

「約束したから。私のために最後の力を使ってくれた友達のために…この力は捨てられない。

それにね、ピィー子。もし悪い力っていわれる奴でもさ、きっと扱い次第で希望に変えられると思うんだ。」

 

「もちろんです」

 

そういって、ピィー子はふっと微笑んだ。

 

「悪い物でも、必ず良い物になる可能性があります……そう、改心する敵キャラのように……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、なんで今私、ゲームみたいな例えしたんだろ」

 

 

「「「…ぷっ」」」

 

 

 素で、どこかネプテューヌのような例えをしたピィー子に、なぜか3人とも笑いが込み上げてきた。

 

 

「ちょっ!!笑いことないじゃん!!」

 

「あはは!うん、そういうこと!」

 

「何か、変なとこで似てんなぁ」

 

「さて…戻るか。」

 

一通り笑った後、ピィー子の手を握る。

 

「ピィー子、戻ろっか!」

 

「はい、はい」

 

そういいながら、満更でも無さそうにピィー子は握り返した。

 

さあさあ、帰ろうね!

危機は去ったし、後はこの日を楽しむだけだよ。

 

多分、そんなに居られないだろうしね!

 

だから、思い出作りをしないと!

ここであったことを、忘れないように。



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楽しかった、ゲイムギョウ界!(卒業式)

「というわけで、私達は今!カントー地h、じゃなくて温泉に来てるよ!」

 

「イエエエエエェェェイ!モーモーミルクのもう!!モーモーミルク!!」

 

「ポケットの中のモンスターネタはピィだけで勘弁してっ!!」

 

「「ナイスツッコミ!!」」

 

「なんで二人ともそんなに仲いいのっ!!」

 

二人して胸を張る。

 

「そりゃもちろん、ネプテューヌであるからして!

だいじょーぶ!ちゃんとネプギアちゃんとノワールもいるからね!」

 

「ノワールは帰ってもボッチだから呼んだよ!」

 

「誰がボッチよ!?」

 

「よかったのかな、成り行きで来たけど…」

 

 

「ヴァーリ、俺達は空しいよな。」

 

「…言うな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…時は温泉。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 ピーシェと俺…兵藤一誠はその場で静止していた。

 

あ、ありのまま…今起こったことを話すぜ…!ネプ姉ちゃんとヴァ―リがゲームしてて、先入って来いって言われたから渋々入りに来た、こっちのネプテューヌさんに連れ去られてここまで来たが…なぜか全裸のピーシェさんがそのまま温泉に入っていた…!?な、なにを──。

 

 

「……ここ、混浴もあるらしいよ…」

 

「へ、へえー…お、俺出ますわ…」

 

駄目だ、俺の理性…鎮まるのだ。

確かにピーシェの体は素晴らしいが!ここは耐えろ…

 

っていうか謀ったな!?

 

「あ……えっと、いいですよ。せっかく服脱いだんですし」

 

 

ピーシェはそういいながらもかなり顔が真っ赤だ、温泉の水越からでもわかる豊満な体、スレンダーな体系、そして水滴が肋骨のラインをスーッと通り、自然と色気を演出している。

 

え、エロイ!

 

だが待て、待つんだ一誠。

 

…俺は、紳士だ…!

 

「それに一誠君には聞きたいこともありますし」

 

「うっ…!そ、そっすか…」

 

意識しつつも湯船に浸かろうとする。

 

「ちょっ!!すとっぷ!!」

 

 

 見ないように温泉に入ろうとした瞬間、一瞬だけこっちを向き、すぐにそっぽを向いたピーシェが怒鳴り声をあげる。

 

「まず体!体から洗ってください!」

 

「あー、あーそうだった…すんません。

ちょっとまだ吃驚してるっぽいっす。」

 

馬鹿野郎!!いつもやってることダルルォ!?

じょ、女子と一緒だからってお前…馬鹿野郎!!

 

しっかりとシャワーで体を洗おう…ついでに落ち着こう。

 

やべぇ、ドキドキが止まらん…

 

「気を取り直して、聞きたいこととは?

シャワー浴びながらっすけど」

 

「ネプテューヌさんと一誠君ってどういう関係なんですか?義姉弟?」

 

ピーシェはそう聞いてきた。

義姉弟…ああ、そうだったな。

もうずっと一緒だから普通の姉弟だとばかり…

 

「よく、私の胸見てきたよね?でもそれよりネプテューヌさん見る回数のほうが多かった。男子だとそういう人は珍しい気がして」

 

(バ、バレテーラ…)

 

ちょいと視線が痛い。

すいません悪気は無かったわけでもないんです良い胸です許してください俺は駄目な男です…!

 

と、取り合えず質問に答えるか。

 

「ああ、俺と姉ちゃんは義姉弟だよ。

記憶喪失の姉ちゃんを、拾ったっていうか…懐かしいなぁ。」

 

懐かしそうにそう言う。

 

『うーん…姉ちゃんが言ってること半分分かんないけど困ってるんだな!家に来なよ!』

 

『え、いいの?』

 

この時が俺達姉弟の始まりだった。

俺は、こっから憧れを見つけたんだ。

 

「姉ちゃんは、俺の憧れなんだ。

優しくて、強くて、諦めが悪い。…俺が大好きな姉ちゃんはさ、女神とかそう言うの関係無く前からあんなでさ。

俺は、そんな姉ちゃんを守りたくてさ。だから、かな。」

 

「……通りでその歳にしてはたくましい背中だと思った」

 

そういいながら、ピーシェは軽く微笑んだ。

逞しい、か…俺よりもそれが似合う奴なんていっぱい居るってのに。

…何喜んでんだ、俺。

 

「少し私に似てるかもしれませんね、私にも二人、姉みたいな人がいたんですよ。

一人は素直じゃないけど優しくて。もう一人は素直だけど怒と哀を出すのが苦手で…」

 

そういって、ピーシェは俯いた。

 

「……まぁ、私は守りたいと思ってもあの二人には色んな意味で敵わないんだけどね」 

 

「そんなもんだよなぁ…」

 

分かる、それはスッゴい分かる。

俺も姉ちゃんには一生勝てないって思ってるからな…

あんな簡単に信じられねぇし…

 

シャワーを止める。

 

「…すんません、入りますね。」

 

今度こそ湯船に浸かる。

ピーシェに背中を向ける形で。

 

「あー…風呂はいいなぁ。」

 

女性と一緒の風呂ということを誤魔化すように呟く。

 

「…俺は馬鹿だから、ねぷ姉ちゃんを守る盾位になれればって思って鍛えてきた。でも、あのいけすかねぇ奴の方が強いし、他にも姉ちゃんの仲間はいるし。

俺は要らないんじゃないかって…思ってた。

でも、昔から俺は守れてたって知れたから、今は軽い気分なんだ。」

 

「…よかった、今盾になれればいいと思ってたら殴るところでした」

 

「うへぇ、怖い怖い。

…ここのネプテューヌさんは女神って事を除けば姉ちゃんと全く違うなって思ったよ。

根っからの女神って点も含めて違う。」

 

「…そうですか、守ってあげてくださいね、大切なお姉さんを」

 

 

そういいながら、次の瞬間。

 

むにゅっ……

 

 

背中にむにっとしたいい感触が当たる。

 

ば───!?

 

硬直する。

 

「おおぅ!?あ、当たってる当たってる!」

 

思わず固まって色々と想像してしまう。

 

「一誠さんこれでも頑張って抑えてますことよ!?」

 

「……そんな貴方に、姉の一人の言葉を送りますどんな奴を地獄に落としてもいい、()()()()()()()()()()()()

 

 

そういいながら、ピーシェは抱きしめる力を少しだけ強くした。

あ、あがが…この人狙ってやってます!!?

 

 

「…ところで、当たってるって何が─────っっ!?!?!??」

 

 

今頃気づいたのか、すぐに離して後ろを向いた。

 

 

「す、すいませんっ!!!いつもの癖でっ!!」

 

「あー…ハハハ…男って獣っすから気を付けてください…はい…」

 

鎮まれ、俺!

頼むから…頼むから…!

 

 

─俺に、意識させないでくれ…!!

 

 

「でも、それはピーシェにも言えることだからな。

改めて肝に命じてくれよ。

…後、ごちそうさまです…」

 

「ええ、貴方がそう言ってくれると、あのネプテューヌさんへの不安要素がなくなります」

 

 

ピーシェはそういいながら笑顔を浮かべた。

心が揺さぶられる笑顔だった。

 

…くそ、何でこんな展開に。

 

 

「あ、あと。抱き心地よかったです、こちらこそごちそうさまです」

 

 

ピーシェは立ち上がり、髪をサラッと翻した。

 

「さて、そろそろ出ますね。ある人たちに O★HA★NA★SHI★しなければいけないので」

 

「…まあ、そうだな。

俺も手伝うよ。今回はちょっとよろしくねぇし。

ついでにヴァーリも殴る。

て、訳で先出てくれ。」

 

「ふふっ、ありがとうございます。さて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エクソダス、ロザミア。貴方達が主犯だね。殴る」

 

え?

 

 

待ってくれ!俺は無実なんだ!

エクソダスなら殺してくれ!何度だって殺してくれ!

首跳ねてそこらに晒してくれてもいい!

俺は口車に乗せられただけなんだ!だからコラボ主の俺の命だけは助けてくれ!

 

「見苦しいぜ。」

 

バカやろぉぉぉう!!!!

 

ロザミアぁ!!

 

なぁ↑にをいってるぅ!!!

 

ふざけるなああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!

 

「「とりあえず死ね!!」」

 

 

松ダぁああああああああああああああああああぁぁぁ!!!

 

 

止まるんじゃねえぞ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼ、ボコられた…ネプテューヌです…前が見えねぇ状態から復帰したばっかです…

 

「ってことで!!ピィちゃんの好感度を二人のネプテューヌで上げて進化させようプロジェクト!(添い寝)はじめるよ~~!!」

 

「わぁぁぁ!って思ったけど私とピィー子の好感度はメーターにしても平均よりちょっと上だと思うんだけど、そこんとこどう?」

 

「……いや、どうしてこうなった?」

 

ピィー子は困惑した。

必ずかの、邪知暴虐な女神を───

 

「それはメロスっ!」

 

「イベルタルとかが出る地方…」

 

「それはカロス!!」

 

「はーいナイスツッコミ!

うーん、まあほら、ねぷねぷしよう!」

 

「読者はこういうのを求めているのだよピィちゃん!!」

 

「……いっても無駄ですね」

 

そういいながら、呆れ果てたようにため息をついた。

 

「あはは、ごめんね?まあほら、もっと仲良くなれってガイアが私に囁いたからさ!

一緒に寝るだけだよ!

川の字で、真ん中ピィー子ね。」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

「じゃあさっそく!!好感度上げてピッピにするよ~~もう一人の私!」

 

 

「あ、言っておきますどお二人とも好感度は最底辺ですからね今」

 

「「ガーーン!!?」」

 

「ねぷ子さん最大の秘密を話していないからなの!?

ちょっとショック…!」

 

「なつき度が…足りなさすぎ!?」

 

「もうチートバグするしかないよ、これは!」

 

「どっちがどっちだか絶対読者わかってませんよね?!どっちもウザい事ぐらいしか読者視点だと感じない!!」

 

そういってピィー子はため息をついた。

ば、馬鹿な…殴られた意味は一体!?

あ、ムカついたからか。

 

「っていうか、なんでそんなに仲良くなりたいんですか?そちらのネプテューヌさんには……、あの時ひどいこと言ったはずですけど」

 

「え、どゆこともう一人の私?」

 

「仲良くなるのに理由って要るのかな?

私はピィー子と仲良くなりたい!それじゃ駄目?

こっちの私も、そうやって接してきた筈だよ。」

 

「おお、流石もう一人の私!なんか蚊帳の外だけど!」

 

「つまり…もう一人私が要れば!」

 

「「三人でジェットストリームアタック出来る!」」

 

「分かった?」

 

自分はそう言って笑いかける。

 

「だからガイヤなの?!マッシュとオルテガも囁いたりするの?!あああぁぁもう!ツッコミが追い付かない!」

 

 

ピィー子はそういいながら、顔を真っ赤にして怒った。

 

「ま、まあいいです、理由がいるか、そう聞きましたね

そもそも理由のない仲は無いんですよ?」

 

「私ともう一人の私は理由無く仲良いよ?」

 

「そうだよ(肯定)」

 

困ったように笑いながら自分はピィー子と話す。

たまーに素が出そうになるけど、問題ないない!

 

「んー…まあ、さ。

別にお堅くなくていいんじゃない?

二人の時は素で話した仲じゃん。

良いんじゃないかな~…」

 

「それは貴方のやり方がムカついたから素が出てしまっただけです。

私。貴方みたいな人たち大嫌いですから」

 

「ええー!?ピィちゃん酷い!」

 

大嫌い。

…うん、仕方ないかな。

自己犠牲しちゃう系だからね、自分達。

間違いなく嫌われても文句言えない立場だよ。

 

「んー…仕方ないよ、この次元の私。

じゃあ、ピィー子を困らせるのもここまでにして、解散にしよっか?」

 

「そうだねー、あっ!ネプギアとノワールのとこ行こうよもう一人の私!絶対面白い反応くるよ!」

 

「いいね!枕持ってって不意打ち枕投げとかしよう!」

 

「いいねいいね!」

 

「……私、男性陣の所行ってきます」

 

「お?もしかしてだけど〜?」

 

「もしかしてだけど〜?」

 

「「次元を超えた恋?」」

 

「ほんとにうっざいね!!そんなんじゃないよ!!」

 

「一誠にもついに春が!?」

 

「おー…イッセー君ももしかしてプラネテューヌに永住?」

 

「幸せ掴んでくれるかな!?」

 

「ヴァーリ君でもありじゃない?」

 

「え、駄目。」

 

「あ、うん…」

 

普通に駄目だよ。

…ちょっと独占欲あるんだなぁ、自分。

まさか別世界で気付かされるなんて。

 

「……ヴァーリくんは色々伝授しときます。師匠直伝の堕とし術でも吹き込んでおきます」

 

そう言って。その場を後にした。

 

「いってらっしゃーい!」

 

「…で、好きなの?」

 

「あははー。私達も行こっか?」

 

誤魔化しながらネプギアちゃん達の部屋に行った。

勿論、ノワールからツッコミ入れられてそこから枕投げ大会が始まったのは言う迄もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…よく分かんねぇけど、ピーシェがこっちの部屋にきた。

意識しちまうから顔を見たくなかったんだけどな…

 

「で、俺達のところに来た理由は?」

 

「あんま女一人で来るもんじゃないぜ。」

 

「夜這い…とは思ってくれないんですね。体には少し自信あるので少しショックです」

 

正直、そういうことを言うのはよろしくないと思った。

ヴァーリはあれだけど。

 

「俺には心に決めた奴がいる。お前よりもずっと魅力的だよ。」

 

ほらな…呆れるぜまったく。

 

「…」

 

「おい、赤龍帝君?」

 

「いや、迫られたら断れる自信なしっていうか…」

 

まあ、俺は駄目なんですけどね…

ていうか、迫られたら風呂場の事思い出すからマジでやめてね!

一誠さんも男なんだからね!

 

「情けない…」

 

会話を聞いて、軽くピーシェは微笑んだ。

 

 

「ジョークですよ、ジョーク。ほんとの理由は二つあります」

 

 

 そういってピーシェはクリスタルのようなものを俺達に投げ渡した。

 

「憎悪、助かりました。二天龍様。お返しします」

 

クリスタルを手に取ると、二人は顔を見合わせる。

 

そして、返す。

 

「ドライグも言ってただろ?一回限りだって。」

 

「もう感じないしな。」

 

「後さ、二天龍様ってやめてくれ。イッセーでいいよ。」

 

「好きに呼べ。様は要らないがな。」

 

「…一応残った分はお返ししようと思ったのですが」

 

そういいながら、ピーシェは苦笑いをした。

 

「じゃあ、先ほどのように一誠君、そしてヴァ―リ君と呼ばせていただきます」

 

それに俺達は微笑む。

 

「それでいい。それだけじゃ何も出来ないだろうからな。

消費され過ぎてる。アルビオンめ、計算高いもんだ。」

 

「はは、それで、用はそれだけなのか?」

 

「いえ……あと一つ、正直男性二人に言うのは抵抗あるんですが…ここで寝かせていただけませんか?」

 

…ん?

 

雲行きが怪しくなってきましたね。

まあ勿論ここは断──

 

「構わんが。」

 

「ええ!?」

 

「どうした。」

 

「あーいや…」

 

先程の風呂を思い出して顔が赤くなる。

ヴァーリは何か察したのか鼻で笑う。

 

「ウブめ」

 

「あ"?」

 

「…ふふっ」

 

こ、この野郎…血の海に砕き沈めてくれるわぁ!!

 

ピーシェは、どこか小悪魔っぽい顔を見せた。

 

 

「ああ~、でも私、抱き枕がないと寝れない体質なのよねンっ、良い抱きまくらないかな~~ンっ…・・・・ちらっちらっ」

 

ガツンと殴られた気分。

 

『おい、相棒?』

 

…抱き枕、ピーシェの抱き枕?

あの豊満な胸を合法的に…!

 

『相棒?一誠さん!?』

 

「…な、なら仕方ないよなー俺が抱き枕に!(あわよくばその素晴らしい体を堪能させてくれ!)」

 

「…」

 

正直色々といっぱいいっぱいな俺は正常な判断を失い欲に任せた発言をしてしまう。

ジト目で一誠を見るヴァーリ。

 

 

「はい!交渉成立ですね!!」

 

 

少し驚いた顔をしたピーシェだったが、何故かノリ始めた。

 

「俺は…何を見せられているんだ…?」

 

「さあ、どんと来い!俺は抱き枕だ!」

 

覚悟完了はしているぜ!

いつでも来い!

 

頭を押さえるヴァーリ。

 

「よーし!じゃあさっそく──」

 

 

 ピーシェが笑顔で抱き着こうとしたその時───。

 

 

「「ぎゃぅ!!」」

 

ピーシェと俺の頭が銃のような何かによってぶち抜かれた。

 

一体、何が起こった…くそぅ…!

 

 

「……し、シオリ姉が怒った」

 

「一体…何が…」

 

「…気は済んだか?馬鹿二人は仲がよろしいようだ。」

 

「俺は一体何を…」

 

「…どうやら、異次元から狙撃食らったみたい…。ごめん、さっきの私は冷静じゃなかった」

 

「いや、俺も冷静じゃなかった…悪い。」

 

「取り合えず、寝たらどうだ。」

 

何度目か分からないため息をつくヴァーリに一誠は素直に謝る。

 

『相棒、お前は─』

 

(…分かってるよ!)

 

「そうですね、おやすみなさい」

 

ピーシェはそういうと、立ったまま壁にもたれかかり、眠り始めた。

 

…いやいやいやいや!?

 

「…おい?」

 

「立ったまま寝るなよ!?しっかりと布団で寝てくれ!」

 

「いえ、ベッド2つしかないですし…、ね?」

 

ピーシェの発言にヴァーリは天井を仰ぐ。

はーくそが、みたいな感じだ。

 

「…おい、赤龍帝君。」

 

「何だよ。」

 

「少し頭が痛くなってきた。俺は少し外の風を浴びてくる。」

 

「お、おう…」

 

ヴァーリはため息をついた後、部屋を出る。

 

「…うん、そこのベッド使っていいんじゃないか?

多分、そういうことだぜ。」

 

「……わかった、あの人女ったらしでしょ。さっきもドキッとすること言いましたし」

 

「あー…その気は無くはないのか。

でも、アイツ、ねぷ姉ちゃん一筋だからな~…

…今の姉ちゃんが一番甘えられるのって俺とアーシア、いーすん除けばアイツだけだしなぁ。」

 

気に食わねぇけど、姉ちゃんの支えは多い方がいい。

…耐えられるのだって限りはあるんだしな。

 

「…へぇ」

 

 

そういって、ピーシェは俺に近づいた。

どうして、こいつはこうも……無警戒っていうか…

 

「じゃあ、一誠君はどんな人がタイプ?好きな人とかいるの?」

 

「え、俺?急だな…」

 

急な話題だ。

いや、ヴァーリから俺に切り替わっただけだけど。

 

少し、考える。

 

「姉ちゃんは違うんだよ、間違いない。

アーシア…は守ってやりたい存在だし、部長たち…は仲間だし。」

 

最初は、助けたい、恩返しがしたいから始まった。

ハーレム王になりたいとか…そんなことも考えてた。

けど、何だろな。

 

分かんねぇけど、色々と余裕が無くなっていく現状でそういうのが消えて。

 

改めて、俺のタイプか。

 

姉ちゃんは、違う。

だってあの人は俺の憧れだ。

付き合いたいとは明確に違う。

守りたいと好きは…違う。

 

…目の前のピーシェを見る。

 

二天龍の怨念を受けたり、疑いの目をずっと向けてきたり。

…なんだか、壊れやすい、或いは壊れてる印象を受けた。

 

ああなるほど。

ストンと、納得した。

 

そして、後悔する。

…損な役割だな、俺って。

 

 

 

「でも、タイプってんなら…多分、ピーシェみたいのがタイプだと思うよ。」

 

 

 

「……マ?」

 

ぽかんとした表情で、ピーシェは俺を見つめた。

 

 

「おう、嘘は言わねぇよ。」

 

 

真面目な様子でピーシェを見つめ返す。

実際、嘘じゃない。

 

危ない印象を感じて、儚げな様子とたまに見せる無邪気な様子。

姉ちゃんと似てるけど明確に違うなにか。

 

一目惚れなんだろうか。

…支えたいって思っちまった。

別世界の、誰かを。

馬鹿な奴だ、どうしようもない馬鹿な奴だ。

また、女で困ってるじゃないか。

 

 

 

「…ありがとっ!!」

 

むぎゅっ!!

 

さっきより強めに抱きしめられる。

む、胸が!

柔らかい体が抱き着いてきて…!

 

「どわぁ!!?」

 

抱き締められて、慌てる。

あーもう、またか!

 

「唐突すぎて吃驚するって!?」

 

「す、すいません。また…」

 

そういいながらも離していない。

…あーくそ、可愛いじゃねぇかよ!

 

 

「タイプだ…、なんて初めて言われたもので……嬉死しそうでつい…」

 

「…マジかよ。ピーシェはかなりっていうかめっちゃ美人なんだから自信持てよ。」

 

呆れた。

周りは馬鹿か。

こんな可愛いのに、告白もされたことないは疑うわ。

 

今の顔を見られたくなくて、抱き締める。

…あーくそ、マジだよ。

一日でこれは…惚れやすすぎだろ。

 

 

「俺なら間違いなく告るね。周りの男は見る目がねぇよ。」

 

 

こう言って、離れてくれればいい。

それでいい。

そう思って、俺はわざとそう言った。

 

実際には、そんな度胸はない。

あるんだったら今頃…ここにはいないと思う。

 

 

 

「…ありがと、何なら今告ってもいいんだよ?」

 

 

 

予想外な発言に息を飲む。

蠱惑な言葉だった。

それは、分かってていってるんだろうか。

 

(『相棒、分かっているんだろうな。』)

 

…分かってるよ。

そんなことは、分かってる。

本当に馬鹿な男なんだ、俺は。

 

…何で惚れるかなぁ…よりにもよって、この子に。

でも、それでも…

 

言葉にせずに溜め込むことの辛さは…分かってるつもりだ。

 

なら、それをして、後悔する方がいい。

 

俺は、意を決して言葉にする。

 

 

 

 

「…俺は、ピーシェが好きだよ。」

 

 

 

 

初めての告白だった。

結果の分かっている告白。

だって、互いに忘れた方がいい事なんだ。

それを、俺は…告白なんてして。

 

声が震える。

 

(『悲しんでるのか、相棒。出会って、数時間しか一緒にいない女だぞ。』)

 

…想いに、時間は関係無いよ、ドライグ。

 

抱き締める力が強くなる。

初めてだ、こんなに胸が締め付けられるのは。

姉ちゃんの辛そうな顔を見た時は真っ先に怒りが浮かんだ俺とは思えない。

 

 

 

「で、も…オレ、は……!」

 

 

「『ネプ姉ちゃんや、みんなを守りたいんだ』かな?」

 

 

「…っ、ああ。姉ちゃんが放り出してねぇのに俺が放り出すわけにはいかねぇ。それに…俺は、この次元の奴じゃない。」

 

俺は、この次元に居られないんだろう。

激しい矛盾だ。居たいのに居られない。

…難儀な性格だと思う。

姉ちゃんを守りたいから一緒に帰る。

けど、好きな人とも居たい。

 

だから、これは一つの選択だ。

 

 

「…そう」

 

 

そういって、ピーシェは俺を離した。

 

 

「それでいいよ。君のやりたいこと。信じたいことを貫き通せばいい」

 

「…ああ、俺は俺の意志を通す。」

 

顔を乱暴に腕で拭ってから、拳をピーシェに向ける。

吹っ切れたいい笑顔を装う。

…本当は。

その想いを、今度こそ心に仕舞う。

 

…俺は、こっちを選択しないと。

 

「だから、ピーシェも頑張れよ。」

 

「…いわれるまでもないよ」

 

 

そういって、ピーシェは俺の拳に、自分の拳をぶつけた。

まるで何かを誓い合うように、ぶつけあった。

 

…勝手に告って、終わったなぁ。ま、その方がらしいか。

 

レイナーレの時より、よっぽど心地がいい終わり方だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「昨日はお楽しみでしたねっ!!」」

 

「そうですね」

 

「「え?」」

 

「おう、そうだな。」

 

「あ、ありゃりゃ?イッセー君の反応も普通?」

 

「何もなかった?」

 

「どう思う?」

 

「うわぁ一誠が反抗期!」

 

ま、まさか一誠がはぐらかすなんて!?

こ、これは事件だよ…!

 

「ちょちょちょ!!ピーシェさん何かあったんですか?」

 

「……ふっ」

 

「何よ!!その大人な笑みはぁ!!」

 

ピィー子は軽く笑って、ヴァ―リに体を向けた。

 

「なんか、昨日はすいませんでした」

 

「構わん。実際、ここの風をもう少し感じたいとは思ってたからな。」

 

「おー、ヴァーリ君って厨二?」

 

「ほう、この口か?」

 

「いひゃひゃひゃひゃ!!」

 

ヴァーリが笑顔で別ねぷの口を左右に引っ張る。

 

「あはは、二人とも思い思いに楽しんだっぽいね。」

 

「ええ、とても…さて、そろそろタイムリミットでしょうね」

 

 

「ん?ピィちゃんどういうこと?」

 

 

その言葉に反応するかのように、自分、一誠、ヴァ―リの体が光りだす。

およよ…?

 

「次元が繋がったからと言って、ずっと持続できるわけではありません。ある程度近いと修復はされませんが。

遠すぎると次元修正のために強制的に元の世界に戻されるんです」

 

「わわっ!?ってそっか…今日でお別れか。」

 

「そのようだ。…まあ、何にしても、面白い夢だったと思っておこう。」

 

「そう、か。お別れか…居心地よかったし、もう少しいたかったぜ。」

 

ヴァーリはふっと笑い。

一誠はかなり残念そうにしつつも苦笑い。

お別れ。

それを実感した。

 

…そっかそっか、これで皆とお別れかぁ…

長いようで、短い終わり。

 

うん、仕方ないよね。

 

「ピィー子、ノワール、ネプギアちゃん、もう一人の私。

ちょっとの間だったけど、ありがとね。」

 

「うん!またね~!!」

 

「ちょっと!まだスマシス一回も勝ってないんだけど!」

 

「はい、さようなら!!」

 

 

そういって、ノワールは怒ったが、別ねぷとネプギアは満面の笑みを浮かべた。

あはは、ノワールには悪いけど再戦の機会は無いかなって…

 

「…」

 

少し黙っていたピィー子が、まずはヴァ―リに近づく。

 

「ヴァ―リ君、これを」

 

 

差し出されたのは紙で、何かのレシピにようだ。

 

 

「疑ってくれたお礼です。堕とすのに使ってください。愛情というスパイスは忘れずに」

 

ねぷっ!?

 

驚く自分の横で一誠が高笑い。

 

「ハーッハハハ!残念だったなノワールさん!勝ち越しのまま行かせてもらうぜ!ネプギア、お前の姉ちゃんを守れよ!俺も頑張るぜ!」

 

「後腐れないねー流石私!」

 

 

「ん?ああ…ありがたい。…ピーシェ、俺には倒すべき相手、憎むべき敵がいる。だがそれとは別に守りたい者もいる。

…挫けるな、何かあれば、周りをみろ。目を曇らせること無く、強くなれ。」

 

レシピを受け取ってから、真面目な面持ちでピーシェに言う。

 

「とまあ、俺が言いたいのはそれだけだ。レシピ、感謝する。いつかの再会を楽しみにしていよう。」

 

ヴァーリはふっ、と笑ってまた会おうと言う。

 

「ええ、忠告感謝します」

 

そういってピィー子は優雅にお辞儀をする。

 

 

「そして一誠君、まあ君には伝えるべきことは伝えましたね。だから…そうですね」

 

 

ちゅっ……

 

ピィー子は一誠のほっぺにキスをした。

へっ?

 

ちょ、ちょちょちょ!?

どういうこと!?

やっぱりそういう…!?

 

「次会ったときは貴方の心を頂く…なんてね」

 

「…ハハ、参ったな。次会うときは、全部の荷物を下ろせてたらいいんだけどな。またな。」

 

恥ずかしそうに頭を掻いてから、ニッと笑う。

何でそんな満更じゃなさそうなの!?

 

「わわわ…ピィー子と一誠がそんな関係に!?」

 

「どうでしょうね?…さて、最後にネプテューヌさん」

 

 

そう言って、ピィー子は驚いてる自分を見た。

え、ああ、自分の番?

 

 

「私は貴方が嫌いです、貴方のような自己犠牲の塊はだいっっ嫌いです」

 

「また言われちゃった…他に言葉は無いのー!?

ピィー子のケチー!」

 

「ねぷ姉ちゃんは自業自得だろ。」

 

「…まあな。」

 

「うぐっ!酷いなぁ…」

 

ひ、酷いあまりにも酷い言葉に心が砕けそうだよー…

 

「でもね……『ねぷてぬ』、誰にでも一つは矛盾を持ってるって、言ったよね?」

 

ピィー子はそう言って、何かを取り出した。

缶?

 

ピィー子はそれを見て、少し瞑目。

 

そして─

 

 

 

 

 

「私の矛盾を教えてあげるっっ!!私の大嫌いは!大好きだから!!」

 

 

 

 

 

そういってピィー子は何かを投げ渡した、それはプリンのジュースのようだ。

…これは…

 

「私はエンディングは作らない!そしたら会えなくなっちゃうから!

次回予告がずっとずっと続き!もっともっと会えますように!!

 

それは()()()()()()()()()()よ!受け取りなさい!!」

 

「わっとと…」

 

…ああ、そっか、これ。

うん、想いを感じる。

シェアじゃないけど、それに似た何かを。

 

「あはは、そっか!きっと世界一美味しいね。」

 

…ピィー子になら、いっか。

 

ちょっとしたサプライズ!

 

受け取って、笑顔を見せる。

ピィー子の方へと近づく。

 

「うん、こうやって教えてくれたピィー子には、ちゃんと教えないとだよね。」

 

光になっていく手で、しっかりとピーシェの手を握る。

 

綺麗な手。

でもきっと、それを言ったら否定されるから心に。

 

…スイッチを切り替える。

 

 

 

 

「『自分』は─────ネプテューヌ。」

 

 

 

 

 

「かつて、死んじゃった空っぽのパープルハートに入った誰かさん。」

 

 

 

 

 

いーすん位にしか見せない顔。

ネプテューヌとしてじゃない、自分の顔。

 

言葉を送りたくなった。

 

励ましの言葉を、友達としての言葉を。

本当の本当の、本心から。

 

 

 

「きっと貴女はこれからも苦労すると思う。

でもね、それでも貴女は一人じゃない。

一人きりでは越えられない苦難も、誰かと一緒に。

貴女を含む抱える悲しみ全てに希望を灯してくれる筈だよ。

『自分』も、ここではない何処かで貴女を支える一人。」

 

 

 

自分にも言える事。

誓いのように、ピィー子に伝える。

これは、神様にも伝えたことの一つ。

 

ネプテューヌとしてじゃない、自分としての言葉を。

 

ネプテューヌ特有の微笑みじゃない、何か別の、平凡な微笑みを向ける。

 

 

「……やっと見れたね、貴方の本当の顔を」

 

 

 

そういってピィー子は優しく握り返す。

 

 

 

「なら、また会ったら話し合おう…。希望も絶望も…。

願わくば、私も貴方を支える一人の『大嫌いな人』になろう…。またね」

 

ああ、やっと。

この時ようやく…通じ合えた気がする。

 

嬉しくて、悲しい。

 

けど、お別れにはしたくないから。

また会いたいって気持ちを込めて─

 

 

 

 

「─うん、『またね』」

 

─スイッチを、切り替える。

 

手を離して、一誠とヴァーリの元へ戻る。

 

「もしかしたら、次元が繋がっちゃうかもしれないし!

希望は捨てないよ!

じゃ、皆!光さんも空気読んでるみたいだし!締めといくよ!

ドタバタだって絆はここにあるから、来れない保証なーし!

というわけでさよならは無し!

また今度、ゲーム機持ってカチコミに行くからよろしく!!」

 

「また会おうな!」

 

「まあ、縁があれば、だな。」

 

そう言って、手を振って完全に光となって消えていく。

まるで最初から、そこにいなかったかのように。

 

「またゲームしようね~!!」

 

「はい!また縁があれば!」

 

「また会いましょう!次は負けないわ!!」

 

最後に皆との再会を願う言葉を聞いて、ゲイムギョウ界から、自分達は消えた。

 



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いつか、必ず。

─目を開けると、そこは自室の天井だった。

 

…あ、そっか、ゲイムギョウ界から帰ってきたんだった。

ポケットを探り、缶を取り出す。

プリンジュース。

 

「…ありがとう、ピィー子。頑張る理由が、また一つ増えたよ。」

 

缶を額に当てて、目を閉じて感謝する。

 

バン、と音を立てて扉が開く。

そこには、いーすんが涙目になりながら浮いていた。

 

「ね、ネプテューヌさぁぁぁぁぁぁん!!(´;д;`)」

 

「わー!?いーすん、泣いてどうしたの!?」

 

取り合えず駆け寄って、いーすんを部屋に入れて扉を閉める。

お、お母さんにはバレてないね…いや、もしかして既に…

 

いーすんは泣きながら説明してくれた。

 

どうやら、世界中から自分と一誠の反応がなくなってあーちゃん達を巻き込んだ捜査劇が繰り広げられていたようだ。

それで、自分達の反応が家に出て、慌てて帰ってきたらしい。

あーちゃんは一誠の方。

 

そして、リアスちゃん達もドタバタしながら入ってきた。

 

「「「「「「ネプテューヌ!」」ちゃん!」さん!」先輩!」」

 

「ねぷっ!!?

み、皆…た、ただいま?」

 

それから何があったか鬼気迫る表情で説明を要求された。

流石に異世界の事を話すべきか迷ったけど、この場の全員だけでの秘密でって事で話した。

 

にわかにも信じがたいって様子だったけど世界中に反応がないっていういーすんの事前の報告で、信憑性が増した。

 

「ネプテューヌ…そのゲイムギョウ界はどんな場所だったの?」

 

「えっと…女神が私以外にもいて、それぞれ国を持ってる世界だったよ。」

 

「先輩みたいな女神が他にも…世紀末ですか。」

 

「小猫ちゃん、それはちょっとどうかと思うよ…」

 

「なるほどね…何にしても、ヴァーリ含めて貴方達が無事でよかったわ。それに、楽しかったようね?」

 

「さっすがリアスちゃん!その通りだよ!」

 

「本当に心配しましたわ。イッセー君の様子も見ないといけませんわね。」

 

「そ、そうですぅ!先輩に何か無かったとは決まってないですよぉぉ!」

 

ドタバタしながら皆一誠の方へ行っちゃった。

 

リアスちゃんだけは止まって、振り向く。

 

「ネプテューヌ。」

 

「うん?」

 

「…この世界にいて、楽しい?」

 

不安そうな顔。

聞く限りとても楽しそうに話してたから、この世界が嫌になっちゃったのかと不安なんだろうね。

 

…ここは、しっかりと本心で。

 

 

 

「─うん!私の居場所は、やっぱりここだよ!」

 

 

 

「…そう、よかったわ。何かあったら、微力ながら力になるからね?」

 

「うん、ありがとね!」

 

リアスちゃんは頷いてから自分の部屋を出る。

あはは、リアスちゃん達の不安も凄かったんだね…

あんまり言わないリアスちゃんがああなんだから他もかも。

 

「ネプテューヌさん、それは?」

 

「うん?このジュース?」

 

「プリン…ジュースとありますが…あのセカイのですか?(・_・?)」

 

「うん、ピィー子…私の大事な友達からの贈り物だよ。

いーすん、これはね──」

 

 

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()()、なんだよ!」

 

缶を開けて、ジュースを飲む。  

 

プリンの味。

友達から貰った、一番美味しい飲み物の味。

…この缶、洗って残しておこうかな?思い出だもんね。

 

「うん、最高に美味しいね!美味すぎる!!」

 

「そうですか(*´∀`*)」

 

いーすんは何だか嬉しそうに自分を見つめている。

 

…うん。

今日も一日、頑張っていこう! 

いつか会える!

なら、次会うときはもっと自然体で。

 

「じゃあ、そういうことで──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきた。

漠然とした感想が浮かんだ。

帰ってきちゃったんだなぁ…

 

頬への感触がまだ残ってる。

 

「…っし、起きますか。」

 

『いい体験だったな?』

 

「…そうだな、最高にいい体験だったよ。」

 

あっちで誓ったんだから、みっともない事は出来ねぇな。

 

よし、そうと決まれば特訓を──

 

 

 

「─イッセーさん!!」

 

 

 

バン、と勢いよく扉が開く。

な、なんだ!?

 

アーシアがとても疲れた様子で入ってきて、俺を視認すると涙を流しながら抱き着いてくる。

 

なんか最近抱き着かれるな…

 

「イッセーさん…ああ、よかったです…!」

 

「…ただいま、アーシア。」

 

「はい…おかえりなさい!」

 

泣きながらも笑顔を見せるアーシアに帰ってきたんだという意識が強くなった。

 

「ネプテューヌさんも消えて…イッセーさんもいなくて…!」

 

「悪い。何て言うか…世界越えてた。」

 

「…もう、何ですかそれ。」

 

「いや、ホントなんだって!」

 

頬を膨らませるアーシアに弁明する。

信じてくれよぉ…俺だって説明できねぇよ~!

 

「「「「「「イッセー!」君!」」先輩!」」」

 

「どわぁぁ!?」

 

「きゃっ!?」

 

ドタバタしながらオカ研の皆が入ってきた。

 

な、何だってばよ!?

 

皆に落ち着くように言ってから部長に聞くと、いーすんがアーシアに協力を持ちかけて、ほぼ一日オカ研の皆で探してたみたいだ。

ゲイムギョウ界については姉ちゃんが話したみたいだ。

 

…めっちゃ迷惑かけてんじゃん!!?

 

「イッセー…大丈夫なのね?」

 

「あ、はい、何とか?」

 

「あら、煮え切らないわね。」

 

「あー…何つーか、大変でした。」

 

「そう…おかえりなさい。」

 

「はい、ただいまです。」

 

部長は信じてるみたいだ。

 

他の皆はどうだろう。

分からないのは俺も一緒だけどさ。

 

…でも、あの場所での出来事は全て実際にあったことだ。

 

ゲイムギョウ界に来たこと、あの次元の皆と楽しんだこと、黒幕と戦ったこと。

…そして、告白をしたこと。

 

全部、俺の心に刻まれてる。

 

皆と再会を誓った。

…ああ、頑張るさ。

 

「…だから──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…異世界。

 

それは何処までを異世界と見るのか。

何か一つが自分の知る世界と比べて明らかに異質だとすれば異世界なのか。

自分の知る誰かがおかしければ異世界なのか。

時間、人物、建物、国、情勢、力。

 

何もかもが違えば異世界なのか。

 

或いは…そう定めればそれは異世界なのか。

 

それは分からない。

分からないが…俺がいたのは間違いなく異世界だった。

 

あそこまで自然の多い場所、人の手が入っていない場所は俺の記憶に無かった。

女神という存在が守護する国など知らなかった。

 

ヴァーリ・ルシファーは貴重な体験をした。

そう言えるだろう。

別次元の想い人に似た女を見て、はっきりと理解した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それだけでも俺には十分ではあったが…他にも面白い体験をした。

 

レシピを取り出して、それを読む。

 

「…ふっ、愛情というスパイスか…キザな事を言うじゃないか。」

 

「よう、ヴァーリ。おはようさん。」

 

「美猴か、おはよう。」

 

「昨日はいなかったみたいだが、何処にいたんだぜぃ?」

 

「…」

 

少し考える。

あの二人はどうか知らないが…俺の周りに言うべきではない内容だ。

特に、あの男に知られれば何をやらかすか。

 

…こういう気疲れは俺に回ってくる、か。

 

「少し一人旅をしてきた。面白い相手だったとだけ言っておこう。」

 

他の次元に呼ばれ、そこで戦う。

 

中々ない機会といえる。

これからあるかないかといった確率だろう。

 

美猴は興味深そうに笑う。

 

「へぇ、どんな相手だったんだ?」

 

「それはまた次の機会にしよう。

やることが出来た。アーサーとルフェイ、黒歌は任せる。」

 

「ちょ!?最近俺に投げること多くねぇか!?

暇なんじゃないんか?」

 

「これから忙しいんだ。何せ、これを覚えなければならないからな。」

 

立ち上がり、レシピをひらひらと見せながらキッチンへ向かう。

 

このプリン、かなりの味だったな…物にすれば更なる前進となるだろう。

この点に関して言えば感謝しかないだろう。

 

仲間といえど血の気の多いうちの連中だ、行けたとしたら喧嘩を吹っ掛けに行くに違いない。

 

故に俺は多くを語るつもりはない。

 

だが、そうだな。

 

「もし機会があれば──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『─また、いつか。』

 

あの超次元へ。

仲間と一緒にまた夢のような日々を。

ドタバタだって、絆はここにあるんだから。

 

 

 



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人物紹介─ネタバレあり─
軽い人物紹介!


ネプテューヌ、一誠、ヴァーリの人物紹介です。

ネタバレを少し含むので本編まだ見てないって方は一通り見てからに見ましょう。

いいですか?



















よろしいようですね、ではどうぞ。


ネプテューヌ(表)

種族 女神 ???

年齢 ???

性格 明るくフレンドリー、メタ発言多め

好きなもの プリン、友達、ゲーム

嫌いなもの ナス!!!

 

この作品の主人公オブ主人公。

記憶喪失の所を一誠に拾われて兵藤家の家族になった。

紫藤家との交流もあった。

 

普段からプリンが大好きで毎日最低一個は食べないとネプリウムが足りなくてぶっ倒れると本人の発言だが別にそんなことはない

『なんですとー!?』

周りを引っ張るというよりしっちゃかめっちゃかにするといった表現が正しいが、真面目な場面では普段の態度が嘘のような冷静さを見せる。

駒王町での人気者を自称しており、事実周りの人々からは慕われ、愛されている。これも人助けをする性分ゆえとは一誠の談。

 

戦う時は刀(または木刀)で戦い、桁外れの戦闘センスで熊はおろか初見で堕天使を撃退した。

女神となった姿は『パープルハート』。

冷静さがより顕著になり、声が低くなり、少女の見た目から大人の女性の見た目へと変わる。

 

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

 

ネプテューヌ(裏)

種族 女神 人(憑依)

年齢変わりなし。

性格 自己犠牲御構い無し、誰かを放っておけないハッピーエンド目指す系主人公。

好きなもの (表)に加えて、日常、平和 

嫌いなもの どうしようもない悪人

 

記憶喪失の主人公 ネプテューヌ。

その正体はかつて聖書の神が生み出したパープルハートが負傷し、その魂がほぼ消滅した時に何の拍子か誰かの魂が入った者。

パープルハートは機械的な性格だったが、魂が変わったからかそれとも本当の自分がそれなのか…何かに引っ張られる形で(表)のような性格になった。

時折見せる、何かを見透かすような性格、発言、雰囲気は『彼(または彼女)』のもの。

 

放っておけないからという理由で今までの事柄に首を突っ込み、出来ることをほぼ休みなく行ってきた。

辛さも苦しさも全部を抱え、溜め込んでしまう性質があり、それが災いしてカオス化が一度顕現した。

 

戦闘法はネプテューヌの型破りな性格と中身の性格があってこその、常識破りなものとなっている。

 

無茶な行動、下手すればあっさり死ぬ状況でも『ハッピーエンド』の為に全力を尽くし、多くの人物から信頼と信用を勝ち取る。

その中で英雄派が味方となり、はぐれ悪魔の黒歌を救うことに成功する。

 

北欧の悪神 ロキの命を使った術のお陰でカオス化を制御下に置く方法を手に入れた。後は本人の克服する意思一つ。

 

聖書の神に『何があっても手を伸ばすことを諦めない』と誓い、より精神を強固なモノとするが…?

 

また、度々自身に手助けをして、好意をぶつけてくるヴァーリ・ルシファーに好意を抱いている。

本人は気付きたくはなかったが、吹っ切れて目を逸らすことをやめた。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

兵藤 一誠

種族 人間→悪魔

年齢 17

性格 欲に素直なシスコン熱血

好きなもの 家族、胸、ねぷ姉ちゃん

嫌いなもの 仲間やねぷ姉ちゃんを害する存在 ヴァーリ

 

ハイスクールD×D世界の主人公であり、ネプテューヌの義弟。

ネプテューヌを拾った本人であり、ネプテューヌを誰よりも慕い、憧れている。

普段はツッコミ担当。

ネプテューヌには絶対の味方であり、仲間かネプテューヌと問われたら多少の迷いの後に前者を切り捨てる程。

依存に近い極度のシスコンであり、ネプテューヌに何かあり、それが誰かの仕業だと異常ともいえる敵意を抱く。

 

戦闘スタイルは『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の倍加を使った暴力的な格闘スタイル。

感情的になりやすいのもあって神器成長は規格外に位置している。

コカビエル戦では禁手を解放してから譲渡能力を獲得した程。

 

シスコンにも理由があり、一度何も出来ずに守られた過去から次こそは守る側になりたいからという想いが年月をかけて強くなりすぎた結果。

 

ヴァーリに過剰な敵意を抱いており、ネプテューヌの想いにも気付いている故に下手に手を出せずにいる。

決闘を申し込んでおり、丁度いい時期になったらするとのこと。

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

ヴァーリ・ルシファー

種族 半人半魔

年齢 ???(一誠に近い年齢であると思われる)

性格 冷静な戦闘狂 仲間想い ネプテューヌといる時は恋愛馬鹿(美猴の談)

 

好きなもの ラーメン、戦い、ネプテューヌ

嫌いなもの 愚者

 

赤龍帝の対をなす白龍皇を宿す青年。

テログループ『禍の団(カオスブリゲード)』に所属しており、自分のチームを持っている。前に所属していた場所は堕天使総督アザゼルのグリゴリ。

人と悪魔の子であり、子供の頃から強い魔力と神器を宿していたが為に父親に迫害された。母親の事は慕っているが母親の方は記憶を消されているだろうとの事。父親に関してはそれの後ろにいる人物の方に怒りを抱いているので興味はない。

 

ネプテューヌに好意を抱いており、惚れた理由は最初は強さだったがそれからその心に惚れていったとの事。俗にいうベタ惚れである。

ネプテューヌを禍の団に浚った理由がそれなのではないかと思われたが『無限の龍神 オーフィス』に何か良い影響を与えてくれるのではという希望を抱いて浚ったと判明した。

 

無茶無理をするネプテューヌに苦言を呈するもそれでも進むと言った彼女を支えることを決めた。

 

現在、禍の団の活動はしておらず、他の禍の団メンバーの動向を窺っている。オーフィスが無事なのも残っている彼らのお陰。

 

戦闘スタイルは『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』の半減を中心とした能力と自身の膨大な魔力を駆使した万能スタイル。前・中・後で対応できるため敵にしたくないとは曹操の談。




人物紹介も隙見て更新していく予定です。

過去編こういうの書いて!っていう人はメッセージや感想でお願いします。



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オカルト研究部の皆のコーナー!

本編かと思った?残念、ここは人物紹介のコーナーだ!

というわけで、オカルト研究部の皆です。
また、アーシアちゃんのネタバレが多分に含まれているため注意!


リアス・グレモリー

年齢:18

種族:悪魔

性格:胃を痛めるツッコミ悪魔 

 

二大お姉さまの一人にしてオカルト研究部部長、その正体はグレモリー家次期当主であり駒王町の管理者。

人生経験として駒王学園に通い、悪魔としての活動もしている。

自身の管理不足のせいで堕天使達に狙われた一誠達の件に責任をとても感じている。

しかし、ネプテューヌ達と共にネプテューヌ達の両親に話をし、両親に受け入れられた事でより強くなることを決意する。

彼女からすれば眷属は友人であり、家族。

一誠の事は頼もしくも変な眷属として認識しており、彼が度々謎のパワーアップを遂げる度に胃を痛めている。今では胃薬は彼女の友達。

ネプテューヌの事は、巻き込んでしまった一般人から危なっかしい友人と思っており、ネプテューヌにも頼られているが本人からすればネプテューヌの方が優秀なので何とも言えない気分になっている。

 

戦闘スタイルは滅びの魔力を駆使した後衛戦術。

自分が近接戦闘に向いていないことを理解しており、殆どの相手に絶大な威力を有する滅びの魔力を放ちながら下がる逃げの一手。

近接アタッカーの誰かと組むことでその真価を発揮する。

けれど、彼女はどちらかというと司令塔向きでありレーティングゲームでの失敗から時折メイド兼義姉のグレイフィアから戦術を教わっている。

 

ちなみに、最近ではゲームの腕が著しく上がったことに喜んでいたりする。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

姫島 朱乃

年齢:18

種族:人間→悪魔

性格:A極振りドS

 

二大お姉さまの一人でありオカルト研究部副部長。

リアスによって人から悪魔へと転生しており、女王を担当している。普段はお淑やかだが、戦いになると一変しドSになる。

『雷の巫女』という二つ名があり、その名の通り雷の術を用いた戦術が得意。

罠を仕掛ける事も出来、リアスの補佐として頭を働かせることも出来る。

 

姫島という家に生まれたが、その父親は堕天使の幹部であるバラキエルであり姫島の家はバラキエルが留守の間に朱乃を殺害しようと企てたが、朱乃の母である朱璃が朱乃を庇い死亡、バラキエルが駆け付けた時には息絶えていた。

バラキエルに救出されたものの、この事件以降父が堕天使であるからこのようなことになったと考えるようになり家を幼い身で出ていった。

放浪の日々の中でリアスに拾われ、恩義を感じ悪魔へと転生した。

 

北欧と三勢力による調印式の際にバラキエルも護衛にいたため険悪な雰囲気となるが、ネプテューヌと一誠の説得により仲直りをし、以降は親子として接するようになる。

バラキエル曰く、あのドSは朱璃譲りだそうで嬉しそうにしていた。

 

自身の中の堕天使の血を受け入れ、光の力を扱えるようになり朱乃だけの力、『雷光』を手にいれた。

しかし、出力に問題があるためバラキエルとアザゼル指導の下修行の日々を過ごしている。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

木場 祐斗

年齢:17

種族:人間→悪魔

性格:誠実 爽やか 意外と熱血

 

駒王学園二年生であり、グレモリー眷属の騎士。

リアスに瀕死のところを拾われ、転生した。

学園でもイケメンとして有名であり、人気がある。

 

使う神器は『魔剣創造』。

騎士の速さと手数の多さで相手を攻め落とす戦闘スタイルであり、長期戦は向いていないことを気にしている。

その為、体力面の強化をアザゼルのトレーニングメニューに従って行っている。

 

木場 祐斗という名前は偽名で本当の名前はイザイヤ。

教会の聖剣を実験するための施設に幼い頃に入れられ、そこで家族とも呼べる仲間と過ごす。

しかし、その施設で行われる実験の数々は非道な物であり家族が消えていく生活に恐怖を覚える。

家族の協力で一人だけ逃げることに成功したイザイヤは聖剣への復讐心を胸に拾ってくれたリアスの眷属となった。

 

苦節あって聖剣への復讐は終え、家族との奇跡の会話をし新たな力、禁手に覚醒した。

その際に聖剣因子を獲得し『聖剣創造』も獲得している。

 

自身を励ましてくれたネプテューヌ達には恩義を感じている。

 

周りが個性的で隠れ気味ではあるが、グレモリー眷属のエースの一人であり、才能や覚醒値はアザゼルからしても稀に見る逸材との事。

 

一誠とは切磋琢磨する仲であり、何処までも突き進む彼に憧れている節がある。

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

塔城 小猫

年齢:16

種族:妖怪→悪魔

性格:口数少ない毒舌健啖家

 

駒王学園一年生であり、グレモリー眷属の戦車。

リアスに拾われ、悪魔へと転生した。

ネプテューヌとはデザートをよく食べる仲。

 

口数が少なく、多くを喋らない代わりに出てくる言葉は棘がよくあり、耐性がないと傷付くだろう。

小柄な体型に反し耐久力と筋力はグレモリー眷属の中でトップであり、戦車の特性を活かし戦う。

 

実は猫又という妖怪種族であり、姉である黒歌は猫魈という猫又より上の存在。

名前も白音という名前。

姉と共にある悪魔の元に送られ、生活していたが姉の次に悪魔にされそうになり姉が主人を殺害している間に逃がされた(この時白音は真実を知らないまま逃がされている)。

そして、行く宛もなくさ迷っていた所をリアスに拾われ、本人の意思で悪魔になった。

 

姉がはぐれ悪魔という情報を知った時は姉はそんなことはしないと

否定していたが姉に再会することなく駒王学園に入学することとなった。

ネプテューヌと共に姿を見せた姉と話し、真実を知り心の疑問が解決、今後守られるだけの自分ではなく守れる自分へなるために強くなることを決心する。

 

姉の黒歌とアザゼルの指導の下、自身の強化に励んでおり、それが活きたのか一人でミドガルズオルムの巨体を食い止め、吹き飛ばすにまで至った。

姉の評価として及第点だそう。

 

ちなみに小さい胸の事を気にしているので言った日は死を覚悟しよう。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

ゼノヴィア

年齢:17

種族:人間→悪魔

性格:猪突猛進猪突猛進猪突猛進!

 

元教会の戦士で現在は駒王学園二年生のグレモリー眷属の騎士。

 

堕天使幹部のコカビエルがバルパーと協同し聖剣エクスカリバーを盗み出した事でコカビエル及びバルパーから聖剣奪還に任務を受け、紫藤イリナと共に駒王の地に来た。

 

それからコカビエルに神の死を知らされ、教会に問い質しに戻った際、教会にとっての不都合な件だった為知らぬ存ぜぬな対応をされ嫌気が差して教会から出ていった。

その際に『こんなもんいるか!』と聖剣エクスカリバーの一本を地面に叩き付けて出ていったという。

 

その後、特に何も考えずに出ていったことが祟り、駒王の地に戻ってきたはいいものの金もなく倒れた所にリアスに拾われる。

その後はリアスからやめておけと言われたものの自棄になって悪魔へと転生した。

 

生まれながら聖剣因子を持つ天然物であり、聖剣デュランダルに選ばれた者。

じゃじゃ馬で扱いづらいと本人は言うが壊れず切れ味も抜群のデュランダルとの相性は良いらしい。

 

ネプテューヌが聖書の神の後継者である女神と知って『やっちまった』となったもののその後すぐに『なったもんはしょうがない、このままでもいっか!』とすぐに立ち直った模様。

この女に関しては悩みなど秒で解決することだろう。

 

最近はアザゼルにデュランダルをもっと扱いやすく出来ないかと相談しており、どう改造するかを話し合っているそうな。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

ギャスパー・ヴラディ

年齢:???

種族:吸血鬼→悪魔

性格:引きこもり臆病系吸血鬼

 

グレモリー眷属の僧侶。

実はリアスの眷属の中では早い段階で眷属になっていたのだがその才能と神器、本人の性格も相まってリアスには扱いきれないとされ旧校舎に封印されていた。

紙袋を頭に被る男の娘であり、自らを陰キャと称して怯えて震える。

もう一度言う、男の娘である。

見た目は文句無しの美少女、だが男だ。

女装しており、女の子に見える。だが男だ。

 

人間と吸血鬼のハーフであり、それ故に神器を持つ。

デイウォーカーという吸血鬼の血を引いているので日中活動も出来、血もあまり好まない。

 

視界内の時間を停止させる神器『停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)』を持ち、カテレア・レヴィアタンに利用され強制的に禁手化させられたことがある。

 

極度の対人恐怖症であり、初対面で出会った日には段ボールに隠れて口を利かない。

そんな彼だが眷属の中でインターネットを介した契約等でリアスに貢献しており、一番の稼ぎ手だったりする。

そのせいでリアスに叱られたりする時にそれでマウントを取ろうとするもはっ倒される。

 

最近では出番が少ないことを気にしており、強くなれば出番増えるのではと間違った方向の思考でアザゼルに強くなることを伝えて彼の考えた特訓メニューにヒーヒー言いながらもこなしている。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

アーシア・アルジェント

年齢:17

種族:人間→悪魔

性格:清純派献身聖女

 

元教会のシスターであり、現在は駒王学園二年生のグレモリー眷属の僧侶。

シスター時代は神器『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』を宿し、その癒しの力を使うことから聖女として扱われてきたがその優しさから悪魔も治療してしまい教会は今までの聖女評価を一転し魔女の刻印を押して追放。

その後はレイナーレに騙される形で駒王町にやってきた。

一誠とネプテューヌには全幅の信頼を置いており、二人のやることに疑いを持たない(心配はするし怪我をしたら叱る)。

 

レイナーレの計画に組み込まれ、神器を抜き取られた物のネプテューヌ達のお陰で神器は取り返され、レイナーレも倒された。

しかし、一度魂とも呼べる神器を抜かれた為瀕死であり、アーシアの意思で悪魔になることを決め、転生する。

 

以降は兵藤家の一員として暮らし、ネプテューヌと一誠の妹として過ごすこととなる。

 

一誠に恋心を抱いており、一誠には特に献身の姿勢を示す。

家事全般を覚えたのも一誠との距離を縮めたい一心から。

 

 

ここから先は更にアーシアのネタバレです。

また、本編には語られない裏話もあります。

よろしいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その献身はある種の束縛であり、一誠の無意識のトラウマを見抜いた上で踏み込み治療する意思を一誠に示す。

一誠の全てを受け止め、愛する覚悟での告白をしたものの、その束縛による停滞を望まず家族としか見れない一誠に断られたがアーシア本人も叶うことはないと分かっていた。

 

もし告白が成功した場合、文字通り全てを捧げて全てを癒してくれるだろう。

早い話、監禁染みた行為をしてきて外の関わりを持たせない。

欲望が叶った聖女の深い闇が露になること間違い無しなのであの時の一誠の判断はアーシアにとっても最良の判断だった。

 

告白を断られたものの二人の仲は良好で、むしろ関係性が定まったことでより強固なものとなった。

これからは仲間として一誠を後ろから支えることを決め、また別の成長を見せる。

 

一誠に好きな人が出来た時には無意識のトラウマを見抜いた観察眼がその人物に向くことだろう。

 

戦闘面においては回復役としての性能のみで、本人もそれを自覚した上で這ってでも治療に専念すると伝えている。

精神面では本作トップクラスであり、アザゼルもその精神の強さには称賛の声であった。精神が肉体に追い付いていないの一例ともいえる。

 

また、禁手の準備は整っているそうで後は本人の意思次第。




アーシアちゃんは本作の病む可能性(つまりヤンデレ)があった一人です。一誠君が選択肢間違えなかったお陰で可能性は鎮圧されました。

京都編でしっかりと皆の見せ場を作りますからご安心を。

では、本編の執筆行ってきます。


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主人公降臨の章
記憶喪失系主人公降臨!


やあ(´・ω・`)
ようこそ、ねぷハウスへ。
このシェアはサービスだからまずは女神化して落ち着いてほしい。
うん、「また投稿」なんだ、済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この投稿を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「デジャブ」みたいなものを感じてくれたと思う。
和気藹々とした小説界でそういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思ってこの投稿をしたんだ。
じゃあ、見てもらおうか。




ボーッとしながら歩道を歩く。

10分くらいそうしている気がする。

何でだろう?

自分が覚束無いというのだろうか。

 

いつもの自分というのもボンヤリとしか思い出せない。

ただ、目線が低い気がする。

小さい女の子、のような…

 

服装も、特徴的なパーカーを着てるし、下が…

そこまで考えて、やめた。

 

別の事を考える。

体がとても軽い。自分の体じゃないみたいだ。

 

というか、ここどこだろう。

自分はこの町を知らない。都会、というわけでもない。

旅行にでも来ていたのだろうか。

 

気付いたときにはポツンと立っていたから覚えてない。

自分は、誰だったか…

 

うんうんと悩んでも分からない。

 

もう一度、周囲を見渡す。

建物、店、人、人人…いたって普通の光景だ。

 

ふと、店のガラスに目が留まる。

ガラスに人の姿が写ってる。

頭に十字キーのような髪飾りを着けた紫色の髪のパーカーを着た可愛い女の子も自分と同じようにガラスを見て…いる…?

 

少し、手を動かす。

女の子も手を動かす。

ぴょんぴょんとその場で跳んでみる。

女の子もぴょんぴょんと跳んでる。

自分を指差す。

女の子も女の子を指差す。

 

「えっと…」

 

声を出してみる。

可愛い声だ。普通に喋ったら元気に喋るんだろうな…

いや、そうじゃない。

 

「これ…もしかして…」

 

間違いない。

だってきっとこの女の子も自分と同じ表情をしている。

疑いようもない事実を前に、ガラスを見るのをやめてトボトボと歩くことにした。

 

自分はこの女の子になってしまったらしい。

 

…でも、この女の子、何処かで見たことあるような?

知ってるような、知らないような…引っ掛かる。

 

何がきっかけでこんなことになったのか自分でも知りたいくらいで途方に暮れるというレベルよりも骨を埋める場所を探すレベルにまで到達している。

何をどうしたらこんな事態になるのか。

 

女の子になるというのは世界的にあり得るのだろうか?

ついに性転換と若返りが出来るようになってしまったのだろうか。

実は自分が妄想と現実を視覚とかそういうレベルで混同してるんじゃないだろうか?

 

そう思って、頬をつねったりしてみる。

 

「うぅ、痛い…」

 

普通に痛いから夢じゃないし、変わってないから妄想じゃない。

残念ながら現実……これは現実っ……!

 

どうしてこんなことになったんだろうか。

やっぱり思い出せない。

記憶喪失系な自分はこの後どうするべきか歩きながら悩む。

 

そんな時、公園を見つける。

小さい子供が遊んでる公園。

滑り台で遊んだり、砂場で遊んだり。

キャッチボールしてる子もいる。

当然、親も同伴。

 

自分はこんな女の子の姿だけど保護者はいない。

 

ベンチに腰掛けて足をブラブラ、無邪気に遊べるほど精神年齢は低くない…と思う。

何というか、こういう時の異物感凄い。

孤立してる子供ってこんな感じなのかな?

今度見かけたら優しくしよう。

 

お金も何もないけど。

 

「これじゃいけないお兄さんに拐われてゲヘヘな展開になってしまうかも。記憶喪失で拐われ系ヒロイン…ビビっと来た。」

 

これは売れる。

その手の話で一本書けるかもしれない。

 

というか、自分は一人で何を言ってるんだろう。

もしかして、この体の持ち主に引っ張られてる?

まあ、それならそれでいいかもしれない。

 

…でもなぁ、こんな何もない状態で戻ったらなぁ。

持ち主平気?野垂れ死ぬよ、これ。

 

「んー、よし!」

 

少し、元気だして頑張ろう。

もし、持ち主が戻ってもいいように少しでも生きやすいようにしよう。

 

「なあ、姉ちゃん。」

 

「ほえ?」

 

おおう、突然男の子に話し掛けられた。

第一村人って奴かな。

いや、町だから町人!

 

「どうしたのかな僕?私は今この転落人生を何処でライズするか考えてるんだけど…」

 

「ライズ?まあいいや、姉ちゃん暗い顔してたから気になって…どうかしたの?」

 

「おお、心がピュアオブピュア!綺麗すぎて眩しいとはこの事か!」

 

優しい男の子の頭を撫でながら感激。

 

にしても、このテンション楽しいな。

性に合ってるとは違うけど、暗くなるよりマシか。

 

「そうだね~…ちょっと記憶喪失で家無き子なんだよね。」

 

「姉ちゃん、帰る家が無いの?」

 

「うん、まさかの展開に天真爛漫を地で行く私もドッキリビックリ状態でこの公園で鬱になってたんだ~」

 

「うーん…姉ちゃんが言ってること半分分かんないけど困ってるんだな!家に来なよ!」

 

「え、いいの?」

 

やだ、この子いい子過ぎて将来心配。

見ず知らずの女の子を家に招待するなんて…現代の引きこもり男子に見習わせたい精神。

 

いや駄目だな、見習わせたら犯罪者続出間違いなし。

 

男の子は笑顔で頷く。

 

「姉ちゃんいい奴っぽいし困ってそうだから、いいぜ!」

 

「何ていい子…!私は今猛烈に感動してるよー!」

 

「わあー!頭ガサガサすんな!」

 

「おっとごめんごめん。嬉しくてつい。よし、そうと決まれば君の家まで全速☆前進DA!」

 

「姉ちゃん、俺の家知らないだろ!」

 

「…あっ。」

 

走り出そうとして男の子の言葉にそうだったと転けそうになる。

何とかこれ以上の醜態を見せまいと堪えて転けないで済んだ。

 

「しょうがねぇ姉ちゃんだなぁ。」

 

男の子は呆れながらも自分の前を歩いて案内してくれる。

そうしてしばらく歩いて、一軒家の前へ辿り着く。

 

『兵藤』

 

名字であろう文字を見て、この子は兵藤という子なんだと理解する。

兵藤君は鍵を使って玄関の扉を開ける。

 

「ただいまー!」

 

「あら、おかえりなさい…あら?」

 

兵藤君の母親と思われる人が玄関まで来ると、自分を見る。

そのまま、歩いて自分のところまで来ると…

 

「可愛い子ね~!」

 

「へ?」

 

何を言われるかと思えば自分の容姿を褒める言葉だった。

もう少し、何か言われるかと思ったけど…そうか、兵藤君の家族も優しい人なのかな。

 

しかし、その笑顔も少しのことで今度は心配そうな表情。

 

「貴女、どうしたの?もう夕方なのに…お家は?」

 

「母さん、姉ちゃんはきおくそーしつなんだって!」

 

「え?…本当?」

 

「え、うん!」

 

取り合えず、元気に返事をする。

 

「まあ…そうなの。それなら、連れてきて正解ね。今日は遅いし、家に泊まっていきなさい。」

 

「いいの?」

 

「いいのよ。それにしても、一誠も偉いわ!人助けをするなんて!」

 

「へへ…うん!」

 

母親に撫でられて、心底嬉しそうな一誠君。

良いお母さんというのだろうか。

 

泊めてもらえるなんて、優しさの権化かよーこの家庭。

 

「そういえば、名前は分かる?」

 

「あ、そうだよ。姉ちゃんの名前、俺知らないや。」

 

「あー…そうだよね。名前…」

 

困った。

名前なんて覚えてない。

嘘だとしても一応名乗っておくべきだ。

 

少し前、店のガラスから見た自分を思い出す。

 

名前…

 

 

 

「─ネプテューヌ。」

 

 

 

「ネプテューヌ?なら…ねぷちゃんね!」

 

「おーねぷ姉ちゃん!」

 

「え、あ…うん!そう、私はネプテューヌ!よろしくね!」

 

咄嗟…というより、無意識に出た名前。

ネプテューヌ、海王星…だったか。

何故そんな名前が無意識とはいえ出たのだろうか。

 

…この体の持ち主の記憶、とか?

 

あり得ない話ではない。

とはいえ、そうか…ネプテューヌ。

 

自分は今日からネプテューヌだ。

 

「俺は兵藤一誠、よろしくな、ねぷ姉ちゃん!」

 

「うん、よろしくね!」

 

その後、帰ってきた一誠のお父さんに自己紹介をして、可愛い子だと褒められ、夕飯を皆で食べた。

流石に風呂は自分だけで入ったけど…本当に女の子になったんだなと理解した。

 

少し羞恥心を感じる辺り、前世は男?

…まあ、どうでもいいことだ。

 

その日はとてもよく寝れた。

ちなみに、一誠とは一緒に寝た。

立派に育つのだぞ少年!

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、早7年。

え、早い?そんなこと言われても時の流れは早いから仕方ないね!

一誠も大きく育って、自分の背をあっさりと越してしまった。

何だか嬉しいような寂しいような。

 

一日だけ泊まったんじゃなかったのかって?

そうしようと思ったんだけどさ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子の身元が判明しない?」

 

「ええ…ネプテューヌさんの捜索願い等も出されていませんね。

もしかしたら…」

 

「孤児…?」

 

後日、一誠と一誠の両親と市役所に出向いても分からなくて、自分は捨てられた子供…所謂孤児って扱いに当たるらしい。

 

「どうされますか?近くの孤児院に預けるという事も…」

 

「…ねぷちゃん、もし貴女がいいなら、ウチの子にならない?」

 

「おばさん…?」

 

「折角出会ったのも縁だと思うの。一誠も喜ぶと思うわ、ね?」

 

「ネプテューヌさえ良ければだが…」

 

「えっと…俺もねぷ姉ちゃんと一緒が良い!」

 

優しい家族だと思ってたけど…まさかここまでとは思わなかったよね。こんな見ず知らずの…赤の他人の自分をここまで想ってくれるなんてさ。

だから、嬉しくて。

 

「うん…私も、皆といたいな!」

 

そう言って、自分は兵藤家の家族として生きることになったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そんなこんなで一誠も高校2年生!

今日も元気に登校させるべく朝を自分が起こすようにおばさんに頼まれたんだよね。…おばさんってのもおかしいか。お母さん、かな?

 

扉を勢いよく開けて膨らんでるベッドに飛び込む。

 

「イエーイ、グッモーニン!!」

 

「ぐえぇ!?」

 

「朝だよー!気持ちの良い朝でまだ寝ていたい気持ちは分かるけど悲しいけど学校なんだよね、これが!」

 

「ね"、ねぷ姉ちゃん…!お、起こし方が殺しにきてるぞ…!」

 

「あれ?痛かった?」

 

「いや鳩尾にクリーンヒットしたわ!朝から死にかける目覚ましとかそれこそ死んでもごめんだわ!」

 

「えー?でも、そうでもしないと一誠起きないしなぁ。」

 

「起きるよ!タイマーだってほら!」

 

一誠がタイマーを指差した瞬間、タイマーが鳴る。

 

…うん。

 

「てへぺろ?」

 

「疑問系!?可愛いけど疑問系で謝る気ゼロ!うっそだぁ少しは非を認めても良くない!?」

 

「いやータイマー使えるようになるなんて一誠も大きくなったね~」

 

「しみじみと言っても殺しかけた事実は消えねぇからな!」

 

「あ、ばれた?ごめんね?」

 

「ったく…おはよう、ねぷ姉ちゃん。」

 

「うん!おはよう一誠!」

 

背が大きくなっても自分を姉と慕ってくれる一誠に嬉しくなる。

うーん、中々のナイスガイ。

これはモテモテ間違いなしだね!

 

…性格があれじゃなければなぁ。

 

起きた一誠と一緒にリビングに向かう。

リビングには、一誠の両親…私にとっても、今や両親となる二人がそこにいた。

 

「朝からドタバタしてたわね。おはよう、一誠。」

 

「おはよう、仲が良いのは良いことだぞ二人とも。」

 

「そうでしょそうでしょ?何たって私と一誠は駒王町最高の姉弟だからね!」

 

「おはよう、母さん、父さん。」

 

いつもの朝食の風景。

朝はパンに限る。

サクッとした食感の後に来るバターとマッチするあの味!

これこそ至高の朝食!

でも、そんなパンでも敵わないものがあるんだな、これが。

 

「プリン、プリン♪」

 

「ねぷちゃんは本当にプリンが好きね~」

 

「一日に一個は食べてるからなぁ。」

 

「その内、朝昼晩をプリンだけで済ませそうだよな、ねぷ姉ちゃん。」

 

「そんなことないよ!?私だってプリン以外の味を堪能したいんだからね!そんなこと言うから一誠はモテないんだよ!」

 

「プリンどうこうとモテるは関係無いだろ!」

 

「はいはい、食べたら支度して遅刻しないよう行くのよ。」

 

「はーい!」

 

その後、支度して家を出る。

遅刻しないよう余裕を持って出るのは学生の嗜みなのだ。

にしても、本当ならだらけてたいんだけどなぁ…

ゲームしてたい。

 

「にしても、ねぷ姉ちゃんは本当に背が変わらねぇな。」

 

「そんなことないよ!きっと5センチは伸びてるよ!」

 

「いや微妙だな5センチって…」

 

「そんなことより、毎度思うんだけどこの制服って変だよね~」

 

「おっぱいがどれくらい大きいか分かりやすいからいいじゃないか!」

 

「それ私以外の女子に言うとドン引きされるからちゃんと取り繕おうね!ネプテューヌとの約束だよ!」

 

一誠は何がどうしてこんな胸好きになってしまったのか…

自分が順当に成長していたら美少女ボンキュッボン間違いなしなのでその目を向けられていただろう。

全く身長は変わらないけど、変わらないけど!

 

見た目変わんないのには最初自分含めて家族全員が疑問を持ったけどそんな子もいるでしょってなってからそのまま。

まあ、気にしてもしょうがないよ。

 

ちなみに、自分は3年生である。

 

「流石にねぷ姉ちゃんにまで迷惑掛かるから控えるよ。」

 

「んー本当かなー。どうせ友達とエッチなDVD見てるんでしょ~?」

 

「そそそそんなことないよ!?一誠さん真面目だからそんな宝、じゃない不純なもの見ないよ!?」

 

あこれは見てるな。

友達と何するのは勝手だけど、自分がいなかったら覗き魔とかになってたんじゃないだろうか、この子。

 

ねぷ子さん的に、危機回避した感じ?

流石自分。

 

「ねぷ姉ちゃんこそ、どうなんだよ。友達とかさ。」

 

「私を見くびらないで欲しいね!友達作りなら百戦錬磨のねぷ子さんにかかれば友達なんてすぐ出来ちゃうもんね!」

 

「で、実際何人?」

 

「五人かな~」

 

「わーハイライト消えた目。」

 

まさかね、押せ押せが通じにくいとは思わなかったよ。

クラスだとマスコットみたいな扱い受けてるのになぁ。

ま、まあ…自分は駒王町のアイドル的存在ですから、町の人を入れて良いなら仲良し多いし!

 

「あ、もう着いちゃったね。ちゃんと授業受けて青春を謳歌するんだよ一誠!」

 

「いや台詞が年寄りだし、歳1つしか離れてないし。

ねぷ姉ちゃんこそはしゃぎすぎるなよな。」

 

「約束できないかな!じゃ、またねー!」

 

一誠とも別れて、いつもの学校生活が始まる。

ぶっちゃけ、いつも通り過ぎるからカットするよ!

ほら、文字数にだって限りはあるんだからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り授業を受けて(寝て)部活に入ってるわけでもないので放課後になったので帰る。

 

笑っちゃうくらい普通の日常だ。

靴に履き替えて、一誠を待つべく校門まで歩く。

 

いつも帰りは弟と帰らないと寂しくなってしまうねぷ子さんなのだ。

 

「んーおかしいなぁ、記憶喪失系主人公なのに何も起こらないなんてこんなの絶対おかしいよ。何かの陰謀に違いないよ!」

 

「おおう、何だかいつもより元気だな。」

 

「あれ、一誠?早いね、どうしたの?」

 

「あ、そうだよ!ねぷ姉ちゃん聞いてくれよ!」

 

「う、うん、珍しくハイテンションで吃驚だけど聞くよ。」

 

「なんと俺、彼女が出来ました!」

 

「へえ~一誠に彼女が…」

 

いやー一誠にも春が来たか。

もしかしたら一生出来ないで自分が貰うことになるのではと心配してたが、まさか出来てしまうとは思わなかったな~

 

ちょっと待て、彼女?

 

 

「嘘ぉぉぉぉぉ!!?」

 

 

「そんな叫ぶくらい衝撃的なの?俺に彼女出来ないって確信してた感じなの?泣くよ?一誠さん人生最大の泣きを見せるよ?」

 

「いやいやいやいや!彼女だよ?あのスケベで胸が大好きで毎日エッチな妄想してそうな一誠に彼女だよ?叫ぶに決まってるじゃん!」

 

「凄い罵られてるぅ!半分どころか8割当たってるけど姉に直にここまでキッパリ言われると辛い過ぎる!いいだろ俺に彼女出来てもさ!」

 

「妄想かもしれないじゃん、ちょっと写真見せてみ?持っとるんやろジャンプしてみ?」

 

「いや小銭とかの話に変わってんじゃん!俺の彼女は五千円じゃねぇよ!…ほら!」

 

一誠が携帯を取り出して写真を見せてくる。

わー可愛い黒髪女子~まさかの本当だというのか?

リアリィ?

 

「い、一誠の理想像みたいな子だこれぇ!?」

 

「俺にも運が回ってきたみたいだぜ…俺の勝ち!何で彼氏出来ないか明日まで考えてきてください。」

 

「ぐ、ぐぬぬ…な、名前!名前は?」

 

「まだ食い下がるかこの姉。天野夕麻ちゃんだ、どうだ参ったか!」

 

「アイドルみたいな名前してるぅ!」

 

敗けを認めるしかないじゃないか。

嘘だぁ、一誠の方が春来るの早いなんて嘘だぁ!

高校3年生の時点で行き遅れが確定していた…?

く、やはり普通の高校にしていればよかったのか!

 

…何はともあれ、一誠に彼女が出来たのは喜ばしいよね。

 

「うぅ…一誠、しゃがんで!」

 

「えーしょうがないな、これでいいか?」

 

「んー、流石は我が弟!完璧な高さ調整だよ。」

 

手を伸ばして、頭を撫でる。

最近やってあげてなかったから何だか新鮮だなぁ。

 

「おめでとう、一誠。」

 

「…お、おう。」

 

「胸の事ばっか考えて別れないようにね!」

 

「感動を返してぇ!」

 

そうして、二人で家に帰った。

一誠は大はしゃぎで両親にも彼女が出来たことを写真を見せて伝えると両親はとても喜んで今日は赤飯だった。

自分もお祝いの気持ちですっっっごい残念だけどプリンを渡した。

期間限定プリンだ、味わって食え!

 

 

でも、まさかこの彼女…天野夕麻がきっかけであんな事になるなんて、この時は私は─多分一誠も─思っても見なかったんだ。

 

 




反省なんかしないぜ。
反省したら敗けだぜ!
妄想をぶちまけるのが小説なんだから反省しちゃいけないんだぜ!

…はいあのですね、書きたい衝動がですね。
許してください。


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第一シリアス発見!ブレイクなるか!

いーすんから仕事任された~!
面倒だなー…は、そうだ、プラネテューヌ行こう!
おいでやすプラネテューヌ…おこしやすプラネテューヌ…
イエーイプリン美味しいやったー!

ネプテューヌエンジン・フルドライブ!

…はい、やりたかっただけですが、何か?



やっほー!主人公オブ主人公ことネプテューヌだよ。

 

一誠に彼女が出来たのも束の間、明日でいきなり初デート。

まさか、そんなスピードでガンガン行く系の彼女なんて思わなかったけど、ヘタレな一誠には丁度いいかな。

 

ま、自分は弟が幸せならそれでいいや!

 

「ねぷ姉ちゃん、聞いてる?」

 

「うん、聞いてるよ!ちょっと待ってね!もうちょっとで主任倒せそうなんだ!」

 

「聞いてねぇ!この姉体は闘争を求めてゲームしてるせいで俺の話を聞いてねぇよ!」

 

「あ、そうなの?で、それがなにか問題?とう!」

 

「とう!じゃない!頼むから聞いてくれよ!ねぷ姉ちゃんにしか頼めないんだって!」

 

「えー?そんなこと言ったって…あぁぁ!?」

 

げ、ゲームオーバー…このねぷ子さんがNPCに遅れを取るなんて…

クソザコプレイヤーだった可能性が微レ存!?

 

ガッカリとした気分で一誠の話を聞くべくそちらに向いて姿勢を正す。

ただし、ゲームの後のプリンは欠かさない。

 

「それで、話ってデートの事?」

 

「いや聞いてたんかい。まあ、そうなんだよ。俺って彼女がいないどころか女子の友達だって殆ど居ないだろ?だから、女の子の事ならねぷ姉ちゃん位にしか聞けないんだよ。」

 

「おばさんに聞けば良いんじゃないの?」

 

「いや、ほら…母さんにはさ、恥ずかしくね?」

 

「姉と母の違いは一体何なのさ~もしかして母性?母性なの?

それなら私じゃ勝てないから仕方ない!可愛い弟の頼みとあらば受けるのが姉であり主人公!さあ、ねぷ子さんにお悩み相談…ねぷの部屋だよ!」

 

「多方面に喧嘩売ってる気がするけど抑えろ俺…!

えっとさ、デートの時はどんな会話をするべきかな?」

 

難しいことを聞く。

そもそも、自分だって彼氏が居ないのにデートの時どうすべきか何て聞かれても分からない。

一誠もそれは分かってる筈だ。

自分の生活態度を知ってるから特に。

 

多分、気を紛らせたいんだろう。

色々と考えちゃうから、自分のヘンテコなアドバイスを聞くことで考えないようにしてるんだろう。

 

「夕麻ちゃんの性格がどんなか知らないけど、私は一緒にいて楽しい人ならそれでいいかな~。だから、出来るだけ普通の会話をしてそれで距離が縮めていけばいいんじゃない?」

 

「適当だなぁ…普通ったってどんな?」

 

「うーん、彼氏いない歴=年齢な私にはちょっとそこまでは分からないよ~」

 

「そうだよな…ねぷ姉ちゃんは、そういうの考えたりしないのか?」

 

「別に良いかな、周りの皆が笑っててくれれば私はそれで十分だよ!ほら、私ってば主人公気質だから何物にも染まらない的な?モテるかも知れないけどねぷ子さんは誰にも靡かない精神を貫くよ!」

 

「まあ、ねぷ姉ちゃんは人気だからな~。でも、それでもいい人が見つかったらどうする?」

 

おお、何だか踏み込んでくるな。

確かに、自分も女の子とした過ごしてる年も長いから男がどうとか考えたことはあるけど…ふぅむ、そうだな…

 

「それでもってなら私はその人と周りが楽しく過ごせればいいよ。結局、私って寂しがり屋だから賑やかな方が好きなんだよね。

一人に寄り添い続けるとかは、無理かな~」

 

個人より、周りと騒ぐ方が好きな自分に誰かに寄り添うとかは考えたことがない。

柄じゃないというか、自分らしくない。

 

それでもいいって人なら受け入れるけど。

 

「ねぷ姉ちゃんらしいや。俺も深く考えすぎだったのかな。

俺は俺らしく夕麻ちゃんに接すればいいよな。」

 

「その意気だよ!一誠ならやれる!」

 

「俺はやれる!」

 

「頑張れ!ファイトファイト!」

 

「何かやれる気がしてきた!ありがとうねぷ姉ちゃん!」

 

こうして、自分の応援でやる気になってくれるなら嬉しい。

大切な弟だ、幸せな道を歩んでいってほしい。

弟だけじゃなくて、両親含めた周りの親しい人達。

皆が明るければ…自分はそれで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぷ姉ちゃんは優しい人だ。それに強い事を俺は知ってる。

いつだって俺を応援してくれて、本当に悩んでるときはその悩みが解決するまで一緒にいてくれる。

駒王町の多くの人から笑顔を向けられる人だ。

ねぷ姉ちゃんは困ってる人を放っておけないからつい助けてしまうそうで気付いたら人気者になっていた。

 

俺にとっても、母さんと父さんにとっても大切な家族だ。

 

だから、ねぷ姉ちゃんにはねぷ姉ちゃんの幸せっていうのをしっかりと掴んで欲しい。

 

「ねぷ姉ちゃん。」

 

「どうかした?」

 

「ねぷ姉ちゃんが悩んでる時とか…そういう時は絶対力になるよ。母さんや、父さんだってさ。」

 

「も~急にどうしたのさ。あ、それなら今とても助けて欲しいな~」

 

「お、早速お助け一誠する?」

 

「しちゃおっかな!ここのボスが倒せなくてさ~協力プレイなら結構楽にやれちゃうらしいから姉弟の絆をボスに見せ付けてやろうよ!」

 

そう言って笑顔でコントローラーを俺に渡してくるねぷ姉ちゃんに俺はよっしゃと付き合う。

何だかんだでこうしてねぷ姉ちゃんとゲームしてる時間が一番平和な気がする。

 

俺の姉がねぷ姉ちゃんでよかったよ、本当に。

 

「ねぷ!?ちょっと一誠!流れ弾当たってるよ!」

 

「知らなかったのか?真の敵は身内だったのさ。」

 

「な、なんだってー!?とかなんとか言ってちゃっかり破壊するところ破壊する一誠流石だよー!」

 

コロコロと表情を変えて、今を全力で楽しんでる我が姉に流石だなと思う。

 

明日のデート、成功させて皆を安心させないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっほー!商店街から中継中のネプテューヌだよ。

え?急だなって?いやいや、だって弟のデートだよ?

これは見ないと損でしょ!

デートの計画は自分と一誠が立てたんだからどこで集合するかも分かるしね!

 

おっと、早速一誠と彼女である天野夕麻さんが来ましたね!

一誠は少し緊張してるけど昨日の私のお陰かまだ自然体な方だね。

夕麻さんの方は…おおっと、やはりスタイル抜群!

見せ付けるかのようなプロポーション!

胸がないのを気にしてる人に殺意を向けられても仕方ないぞこれは。

 

「じゃ、行こ?」

 

「そ、そうだね。」

 

あちゃー、これは彼女さんに主導権を握られてる状態!

これはやっぱりデートは早かった!

付き合ってそんな経ってないのにデートは早かったか!

 

そのまま主導権を握られたまま二人のデートは進んでいった。

けれど、途中で自分から会話をするようになった一誠とそれに相槌を打つ夕麻さんは相性が悪くないように思えた。

 

デートは順調に終わりを迎えようとしている…そう、思えた。

 

ふと、自分の周りから人の気配が消えたように感じる。

一誠と夕麻さん、隠れて見てる自分が居るくらいだろうか。

何だか不気味だ。

 

ねぷ子さんレーダーが嫌な予感がすると自分に伝えてくる。

 

「一誠君、今日は楽しかったよ。」

 

「そ、そっか…よかったよ!俺、こういうの初めてだからどうしていいか分からなくてさ…」

 

「誰だって初めては大変だよ。…でも、後1つだけお願いがあるかな。」

 

「何かな、何でもとは言えないけど、俺に出来ることなら言ってくれ!」

 

少し、夕麻さんの顔に影がかかった。

嫌な予感が強まる。

 

気付いたら、自分は一誠の方へと駆け出していた。

何かそこに偶然落ちてた鉄パイプを拾う。

よし、装備完了!ひのきの棒がどうたら言ってる場合じゃないよ!

 

「死んでくれないかな?」

 

「え?」

 

夕麻さんの発言と共に、夕麻さんの手に光が集まり、槍の形になる。

そして、それを呆然としている一誠の左胸へ突き刺そうと─

 

 

 

「─そこのシリアス展開、ちょっと待ったー!」

 

 

 

─自分が横から鉄パイプを振り下ろして光の槍を叩き折った。

おお、折れるもんだね!光の癖に実体あるとか弱体化してるじゃん!

 

「なっ!?」

 

「え、ね、ねぷ姉ちゃん…?」

 

「うん、一誠の(義)姉にして主人公オブ主人公、シリアス展開は許さないねぷ子さんだよ!」

 

「…おかしいわね、ただの人間が入ってこれないようにした筈だけど…」

 

「残念だけど、主人公な私には通用しないんだな、これが!

私ほどのシリアスブレイカーになるとそっち方面の性能は発揮されなくなるという私の中だけの設定があるんだよ!それより、どういうつもり?見間違いじゃなければ一誠を…」

 

殺そうとしていた。

後ろにいる一誠はまだ現状を理解しきれないようで呆然としてる。

仕方ないよね、折角出来た彼女さんにこんなことされたら…

 

目の前の夕麻は舌打ちをした後、再び光の槍を手に持つ。

 

「まさか邪魔が入るとは思わなかったけど…貴女も殺せば問題ないわよね?」

 

「一誠!」

 

「ねぷ姉ちゃん、俺…!」

 

「大丈夫!私がついてるよ!今は逃げよう?私を信じて欲しいな!」

 

「…うん。」

 

一誠の腕を掴み、その場から走り出す。

これ以上ここにいたら一誠が危ない。

弟は、姉が守らないと…!

 

走りながら、後ろをチラ見する。

 

そこには、黒い翼を生やしたイケない格好で滑空して追いかけてくる夕麻の姿が!

 

「ねぷぅ!?何で立て続けに超展開なのさ!?」

 

「死になさい!」

 

夕麻は光の槍を正確にこちらに投げてくる。

外す気とかないのか!?

 

鉄パイプを握り締め、横に振るい、光の槍を弾く。

 

「チッ!」

 

「一誠、大丈夫?」

 

「はぁ…はぁ…俺、分かんねぇよ!どうして、こんなことに!」

 

「一誠…」

 

そうだよね。

やっと出来た彼女に殺されかけたら、こうもなるよ。

でも、ずっと分からないじゃいけないんだ。

 

少しでも、理解しないといけない。

 

「一誠、大丈夫だよ。私とおばさんとおじさんは…どんなことがあっても一誠の味方だよ!」

 

「ねぷ姉ちゃん…!そう、だよな…今を見ないと…」

 

「今は逃げることに集中して!私があの目に悪い槍を弾くから!」

 

「分かった!ごめん、ねぷ姉ちゃん!」

 

「謝らない謝らない!子供の頃、似たことあったじゃん!前は熊だっけ?」

 

迫り来る槍を弾いて、軽口を叩く。

一誠もつられて話に乗る。

 

「熊が来て、ねぷ姉ちゃんがたまたま買った木刀で撃退したんだよな!」

 

「ほら、似たことだよ!つまり、夕麻は熊だよ!」

 

「誰が熊だ小娘ぇ!」

 

「ほら、ムキになって否定するとき、それは己を肯定してしまってるんだよ!やっぱり熊じゃないか!夕麻じゃなくて熊五郎って名前に変えてよね!」

 

「人間風情が…堕天使である私を愚弄するなんて、絶対に殺してやる!」

 

「堕天使だって、ぷぷー!厨二病もここまで来ると妄想を現実に出来てしまうんだね!」

 

「さっきから姉が俺を殺そうとした奴を煽り倒してる件について。ヘイト高まってくからやめてぇ!死ぬぅ!」

 

めっちゃ怖い。

あの顔ヤバイよ、ネット掲示板に載っけたら面白くなりそうな顔だわ。

冗談はさておき、実際はそんなに楽観視できる状況じゃない。

腕も痺れてきたし、走るのも限界だ。

 

でも、弟が殺されるのを黙ってみてるねぷ子さんじゃないよ。

 

「一誠!そのまま逃げてて!」

 

「逃げてろって…ねぷ姉ちゃん、戦うつもりかよ!」

 

「ふふん、ねぷ子さんが負けるなんてないない!ボッコボコにしてやんよ!」

 

夕麻へと駆け出す。

飛んでくる光の槍を弾きながらの接近だからかなり腕に来る。

けど、負けては主人公の名折れ!

あと少しの距離の所を跳躍し、鉄パイプを構える。

 

「メガ・ド・ダイブ!」

 

「ぐぅ!?」

 

全体重を乗せた振り下ろしに夕麻は光の槍で防ぐけど飛翔を保てずに地面に落ちてそのままぶつかる。

 

「人間に、これ程の力が…?」

 

「おおっと、私はただの人間じゃないよ。さっきも言ったけど主人公ですから!ドヤァ!」

 

今の内に逃げよう。

一誠の方へと走る。

 

「やったな、ねぷ姉ちゃん!」

 

「喜ぶのは後、今は逃げ続けよう!」

 

「お、おう!」

 

一誠の手を取って、また走る。

 

正直キツいけど、ねぷ子さんをシリアスにぶちこんだ…それは大いなる間違い!

何としてでもぶっ壊すよ!

 

「くっ…待ちなさい!」

 

「待てと言われて待つネプテューヌはいないよー!」

 

「馬鹿にして…!」

 

「しつこいなぁもう!さっさと諦めてどっか飛んでってよ!」

 

息が苦しいけど、それを感じさせないよう快活に喋る。

相手は挑発に弱いタイプのようで、怒りに任せた投擲は自分達に当たらない方にまで飛んでいく。

これ、大丈夫かな?

 

逃げていると、前方に人の姿が。

やっと他の人を見つけられた。

 

赤い髪の女性…あれ、見たことあるな。

 

「貴女達!」

 

「あれ?二大お嬢様だ!私達忙しいから離れた方がいいよー!」

 

「貴女は確か…いえ、それよりも、後は私に任せてちょうだい!」

 

「え、どゆこと?一誠、分かる?」

 

「い、いや…理解が追い付いてないのに更に追い打ちされて正直頭痛い。」

 

リアスちゃんだったかな?

普段の一誠ならその見た目に興奮とかしてるだろうけど現状だと仕方ないよね。

 

でも、何だか味方っぽい?

リアスちゃんが自分達の前に出て、追いかけてきた夕麻を睨み付ける。

 

「チッ…ここの領主か!」

 

「堕天使の侵入に気付くのが遅れたどころかこうして関係のない他人まで巻き込むなんてお兄様に叱られても仕方がないわね。

今すぐ私達の目の前から消えればここでの戦いは無しにしてあげる。それでも来るようなら…」

 

夕麻に手をかざすと、そこから赤い光が溢れ出す。

あれに当たるとタダじゃ済まない、そんな予感がした。

 

夕麻も冷や汗を流し、また舌打ちをしてから光の槍を消す。

 

「…悪魔風情が。そこの女と悪魔に感謝するのね、坊や。けれど、貴方がそれを宿している限り…私は殺しに現れる。今日のところは撤退させてもらうわ。」

 

夕麻はそう言って、何処かへ消えた。

何だったんだろう…

手を握ってる一誠の手は汗で凄い。

 

大丈夫という意思表示のために強く手を握る。

 

リアスちゃんは赤い光を消すと、溜め息をついて自分達の方へと向き直る。

 

「怪我はない?」

 

「うん、けど…説明はしてもらいたいかな。」

 

「そうね…その前に、1つだけ。」

 

リアスちゃんは、自分達へ深く頭を下げてきた。

 

「ごめんなさい。事前に貴方達への接触を止めることが出来なかった。これは一般市民の命を脅かした私の責任よ。」

 

二人して驚く。

まさか、謝られるなんて。

 

自分は慌ててリアスちゃんに話しかける。

 

「謝る必要なんて無いよ!私達だって何が何だか分からなかったんだもん。ね?」

 

「そ、そうですよ!リアス先輩は俺達を助けてくれたじゃないですか!」

 

「…そう言ってくれるとありがたいわ。でも、貴女達が危険な目に遭ったのは紛れもない事実。この町の管理を任せられたのに…」

 

「えっとね、それも含めて私達に説明して欲しいな。

それを聞いて、色々と判断させて欲しいかな!でも、今のうちに1つ聞いていい?」

 

「ええ、私に答えられる事なら。」

 

「リアスちゃんは、味方?」

 

自分の質問に、リアスちゃんは微笑んですぐに返答する。

 

「ええ、味方よ。グレモリーの名に誓うわ。」

 

「…そっか。」

 

「説明の場を設けるためにも、明日でいいかしら。色々と頭の中で整理したいでしょうし。」

 

「是非、そうさせてください…俺もう、何が何だか…」

 

今にも倒れそうな一誠。

自分ももうヘトヘトだ。

 

リアスちゃんは、頷いて家まで送ってくれることを伝える。

 

正直また襲われたら駄目そうだからお願いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ってきた自分達はお母さんに今日はお風呂に入って寝ることを伝えると心配そうにしながらも了承してくれた。

多分、何かあったんだろうと察してくれたのかな。

 

お風呂に入って、明日に備えて寝ようと思ったとき、自分の部屋の扉が開いた。

入ってきたのは一誠だった。

 

「あれ、ねぷ姉ちゃん、寝るのか?」

 

「流石にヘトヘトだよぉ…あんなに動いたのは初めてだし、腕も痛いもん。ゲームなんか出来ないよ~…一誠は眠れないの?」

 

「まあ、そんなとこかな…」

 

嘘だとすぐに分かった。

だから、自分から言い出すことにした。

こういうときの一誠は言い出せないから。

 

「あー、何か一誠見てたら一緒に寝たくなっちゃったなぁ!

たまには仲良く寝ようよ~いいでしょ?はい決まり!」

 

「え、えぇ…仕方無いな、ねぷ姉ちゃんが言うなら仕方無い。

姉の言うことだからな!」

 

「よろしい!さあ、一緒に寝て、明日元気に起きよう!」

 

「おう。」

 

一誠が少し戸惑い気味にベッドに入ってくる。

うん、少し狭いけど、いいかも?

 

こうして一緒に寝ると、昔とは違うんだなって感慨深くなる。

あの頃は小さかったのに。

 

「大きくなったよね~」

 

「ねぷ姉ちゃんが小さいんだよ。」

 

「何を~!?そんなこと言う弟はこうだ!ワシャワシャの刑だよ!」

 

「うわ!頭を乱暴に撫でるなよ!」

 

ワシャワシャとやるの昔は好きだった癖に。

何となく昔を思い出して楽しくなる。

 

…でも、たまにはしっかりと姉らしくしないとね。

ワシャワシャと乱暴に撫でるのを止めて、一誠の頭を胸元に抱き寄せる。

 

「ね、ねぷ姉ちゃん?」

 

「うん、お姉ちゃんなネプテューヌだよ。今日は、大変だったね。」

 

「…うん…っ…」

 

辛いに決まってる。

だから、自分がその辛さを受け止めてあげないと。

トラウマになってからじゃ遅いんだ。

 

少しでも、自分がその辛さを分かち合えるならそうする。

 

声を殺して泣く一誠の頭を優しく撫でる。

 

「ごめんな、姉ちゃん…!」

 

「いいんだよ、私は分かってるよ。辛かったよね。」

 

しばらく、その時間が続いた。

 

一誠が泣き疲れて眠った後、自分もそのまま目を閉じて、寝た。

 

明日は今日よりいい日でありますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、朝を迎えた自分と一誠は支度をして駒王学園へ登校した。

登校中に自然と周りを警戒してしまうが、それは仕方ないことだよね。

また会ったらどうしてくれようかって気持ちが強いんだよ今のねぷ子さんは!

にしても、腕とか足とか痛い。

筋肉痛が…凄まじい…!

 

それで、今の自分はというと。

 

「キャー!木場君がマスコットのネプテューヌと歩いてる!

ねぷ木場?ねぷ木場なの!?」

 

「でもネプテューヌの隣に一誠もいるじゃない!野獣とイケメン…ひらめいた!」

 

「うちって、こんなのばっかだよね。」

 

「あはは…」

 

「野獣ってなんだよ…」

 

自分と一誠のクラスへリアスちゃんからの遣いで迎えに来たと言う学園の王子様的存在、木場祐人君についていく。

その途中で腐女子とかが五月蝿かったけどねぷ子さんは我慢できるからね!

 

連れてこられたのは、オカルト研究部…略してオカ研だった。

 

「うわぁ、それっぽいね。」

 

「一体何話されんだ俺ら…」

 

「じゃあ、入りますよ。」

 

オカ研に入ると、そこには…

 

お菓子を黙して食べている白い髪の女の子と、微笑んでこちらを見るリアスちゃんと対をなす二大お嬢様の一人姫島朱乃ちゃん…

そして、同じくソファーに座ってこちらを見るリアスちゃんだった。

 

「やほー!昨日の件について教えてもらえるそうだから来たよ!」

 

「ええ、約束したもの。どうぞ座ってちょうだい。」

 

「紅茶をいれますわね。」

 

「は、はい!」

 

「ねーねー、その羊羮美味しい?」

 

「ええ、まあ。」

 

うーん冷たい!

 

しかし、そんな世間話をしに来た訳じゃないのだ。

紅茶が目の前に置かれて、話が始まる。

 

「まず、襲われたのは兵藤一誠君…貴方でいいのよね?」

 

「はい…あの、何で俺はあんな目に?ねぷ姉ちゃんだって危ない目に遭ったし…」

 

「ちゃんと順を追って説明するわ。まず、私達がどういう者なのかについてね。」

 

「ゴクリ…」

 

少し緊張してきた。

一体どんな話になるのか…

謎の組織的な存在?日夜悪と戦うヒーローだったりするのかな?

 

 

「単刀直入に言うわ──私達は、悪魔よ。」

 

 

その言葉と共に、自分と一誠を除く全員が背中から黒い蝙蝠のような羽を出した。

 

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 

夕麻の言葉通り、本当に悪魔だとは…。

これから、自分達はどうなるのか!?




リアスの性格が少し違うのは深海よりも深くオゾン層よりも高い訳があるんですよね。
とっても重要な理由なんですよ…そう。

私が話を作りやすくする、というね…


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初の戦闘、つまりチュートリアルだよ!

ネプテューヌの時間だオラァ!(投稿)

それはそうと、ネプテューヌの世界ってネタとかで分かりづらいけど結構ハードですよね。

技の指摘がありましたので二話を修正しました。
✕テラ・ド・ダイブ
◯メガ・ド・ダイブ

反省のためにVⅡを2周してきます。



やっほー!主人公オブ主人公ことネプテューヌだよ。

 

自分と一誠の周りには蝙蝠のような羽を生やしたリアスちゃん達の姿が。

何てこったい。オカ研のメンバーは存在がオカルトだったのか。

 

「オカルトを研究する部活がオカルトになっちゃってるとはこれいかに!?」

 

「このオカ研は私達が学園で集まりやすくするための場よ。

それで、貴女達にはこれから説明するけど…大丈夫?」

 

「私はいつでもいいよ。カモンベイベー!」

 

「自分も大丈夫です。」

 

「そう、それじゃ、分かりやすく説明するわね。」

 

そこからリアスちゃんが話したのはこの場にいる人以外が聞けば荒唐無稽な話だった。

何でも、悪魔以外にも夕麻のような堕天使、天使…ドラゴンや果ては神なんかも居るそうで。

悪魔と堕天使と天使は三勢力と周りから言われてるそうな。

 

それで、リアスちゃんはグレモリーという悪魔貴族の御令嬢なんだそうな。

社会勉強なども兼ねてこの駒王に来たらしい。

何故かついでに管理も任されたようだ。

 

「あの堕天使が貴方を殺しに来た理由は貴方に宿っている神器(セイクリッドギア)よ。」

 

神器(セイクリッドギア)?」

 

「聖書の神が創り出した人間にしか宿らない特別な力を宿した物。何が宿るかは人それぞれらしいけど。」

 

「つまり、俺は良く分からない神様の要らないお節介でこうなったのか…でも、神器(セイクリッドギア)なんて出せないですよ?」

 

「そうね…祐人、教えてあげてくれる?」

 

「はい、部長。一誠君、自分の内側を意識して、力を解放するようなイメージをするんだよ。」

 

「内側って言っても…」

 

「はいはいはーい!力を解き放つなら、技名を叫ぶといいんじゃないかな!」

 

「なるほど、それもありですね。一度やってみてくれるかな?」

 

「いや恥ずかしいだろ!この面子で俺が技名叫ぶの!?

…まあ、いいけどさぁ。」

 

いいんだ。

実はちょっと楽しみなのかな。

男の子だなぁ。

 

一誠は好きな漫画の1つ…えっと、ドラグソボールだっけ?

それに主人公の技のポーズを取る。

 

「ドラゴン波!」

 

瞬間、一誠の右手が光り出す。

 

光が収まったと思えば…何だか物々しい赤い籠手が右手に装備されていた。

翠色の宝石が目立つね。

 

「何 か 出 た。」

 

「これは…龍の手(トゥワイスクリティカル)…かしら?」

 

「冷静に分析してもらってるところ悪いんですけどこれ外れます?」

 

「消えろって念じてみよう。」

 

「お、おう。消えろ消えろ消えろ…」

 

別に喋らなくてもいいのでは?ねぷは訝しんだ。

 

あ、消えた。

なるほど、どういうのかは知らないけど、一誠も戦えるようになったのかな。不本意かもだけどね。

 

うん、でも待ってほしい。

 

「一誠。」

 

「どうした?」

 

「一誠だけズルくない?私にだってそのセイクリッドなんちゃらが宿っててもいいじゃん!というか、主人公だよ?ネプテューヌなんだよ!?普通私にも宿ってるもんじゃないの!?」

 

「あらあら…噂と違わぬはしゃぎっぷりですわね。」

 

「ねぷ姉ちゃんは宿ってなくても強いじゃん!昨日だって鉄パイプで互角って言うか若干上だったじゃん!」

 

「でもでもー、私としては更なる力の覚醒!みたいな感じで欲しかったりしちゃうわけで~」

 

「無いものは無い!諦メロン!」

 

「そんな~」

 

「話を続けていいかしら?」

 

「あ、すみません姉が。」

 

「いいのよ、仲が良いのね。」

 

「ふふん、駒王町の最強コンビとは私達のことだからね!」

 

「あー…続き、どうぞ。」

 

むむ、何だか反応が悪いね。

やっぱりまだ気にしてる?

うーん…もう少しこっちも気にしてあげるべきかな。

 

「貴方に宿っている龍の手(トゥワイスクリティカル)は能力を二倍にする力があるわ。」

 

「おー…なるほど。」

 

「まあ、それについては置いておきましょう。

ここからが重要な話よ。」

 

「重要?」

 

「ええ、貴女達の今後のね。」

 

真剣な表情のリアスちゃんに一誠は背筋を正す。

自分?自分は何者にもとらわれぬ主人公だからね。

今更だけど紅茶美味しいや。

 

「貴女達を守ることは変わらないわ。

オカルト研究部には入ってもらう必要があるけど…三つほど選択肢がある。

一つは記憶を消して、前のような生活に戻る。

二つ目は記憶を持った状態で自衛できる程度の強さを身に付ける。三つ目…私達と同じ悪魔になる。」

 

「あ、悪魔に?」

 

「ええ。この悪魔の駒(イーヴィルピース)を使って悪魔に転生できるわ。私の眷属になってね。」

 

「あ、二つ目で!」

 

「…それでいいのね?」

 

「うん!種族変更するのはねぷ子さんらしくないしね!

一誠には三つ目のデメリットとメリットをしっかり教えてあげてね!」

 

自分は別に構わない。

記憶があった方が一誠を守れるってだけで。

 

悪魔には何となくなりたくないからいいや。

 

「そうね…悪魔になると、基本長寿よ。長い時を生きることになる。それがいいか悪いかは任せるけど。最初は眷属でも名を上げれば眷属でなくなり、自分だけの眷属を持つことも許されるわ。勿論、横暴は駄目だけど。デメリット…聖なる力に弱いとか、朝が妙に気だるくなるとか。」

 

「デメリットがざっくりしてるけど、平気?」

 

「生まれつき悪魔だから人に対して何がデメリットになり得るのかちょっとね…」

 

「なら仕方ないね!一誠はどうしたいの?…一誠?」

 

「自分だけの眷属…自分だけの…ハーレム…!」

 

「あっ…」

 

「自分、悪魔になります!」

 

「え、ええ…いいのね?」

 

「はい!ハーレム王に俺はなる!」

 

拳を天に掲げる一誠はいっそ清々しさすら感じる程決意に満ちていた。

ハーレムを目指す弟に少し心配になるねぷ子さんだけど…

うーん、まあ…個人の自由、だよね?

お父さんとお母さんもきっと分かってくれるよー。

 

何か、一部からの冷めた目が姉として心苦しいけど。

 

「分かったわ。なら、この兵士(ポーン)の駒を使って転生させる。心の準備はいい?」

 

「はい、バッチコイです!」

 

へ~悪魔の駒っていうけど、チェスと同じ感じなんだ。

リアスちゃんは一誠に兵士の駒を4つ使う…

 

…あれ?

 

「あら…もしかして、足りない?」

 

「駒が?」

 

「ええ。本当に龍の手なら4つ程だと思ってたけど。試しに7個いってみましょう。」 

 

もしかして、リアスちゃんって思いきりがいい方?

嫌いじゃないけどね。

全額投資するのは楽しいよね!

 

7個を使う。

 

…あれれ?

 

「故障?」

 

「そんな筈ないわ。…もしかして…」

 

8個にして、再度試みる。

 

すると、駒が一誠の中へと入っていく!

一誠は少し驚くけど…どっか変わった?

 

「ど、どう?」

 

「すげぇ、力が溢れるぜねぷ姉ちゃん!もう何も怖くない!」

 

「死亡フラグ建てないでよ!」

 

「まさか、兵士全てを使ってようやく眷属化なんてね…」

 

「全部!?もしかして、一誠は凄いのかもよ!?まあ、流石は主人公の弟!姉として鼻が高いよ!」

 

「俺は今、究極のパワーを手にいれたのだ!」

 

姉弟漫才もそこまでにして、改めてリアスちゃんの方を向く。

 

「じゃあ、これからは一誠共々よろしくね、皆!」

 

「よろしくお願いします、リアス部長!」

 

「ええ、よろしくお願いね。」

 

「あらあら、マスコット的存在が増えましたわね。」

 

「よろしく、一誠君。ネプテューヌ先輩も。」

 

「…よろしくお願いします。」

 

その後は自己紹介をして、皆の名前を把握した。

羊羮食べてた子は塔城小猫ちゃんっていうらしい。

なるほど、猫っぽいもんね。

 

「一誠、ネプテューヌ。二人にはこれから戦いがどんなものかを把握してもらうわ、いい?」

 

「オッケー!あ…なら、家に寄らないと。」

 

「あら、何か持ってこないといけないものが?」

 

「ほら、私ったら超絶可憐な女の子だから武器がないと。」

 

「え?」

 

「え?」

 

「いや、ねぷ姉ちゃんは可憐じゃないだろ。騒がしいし。」

 

「酷い!私だってヒロインチックにやれって言われたらやるよ!

そんな相手がいないだけなんだからね!」

 

「つまり可憐じゃないんだな。」

 

「ん~そうとも言う!」

 

それはそうと、自分は超絶美少女なのは間違いない。

 

でも、家にありそうなのは木刀くらいしかないや。

んー…まあ、大丈夫でしょ!

 

「武器ね…それなら仕方ないわ。念のため、私が一緒についていくわね。」

 

「うん、何だかごめんね!」

 

「いいのよ。学校にわざわざ持ってくる方が危険だもの。」

 

「優しいリアスちゃんに私は感動だよ~!」

 

抱き付こうとするが、寸でのところでかわされた。

代わりにソファに顔面から突っ込む。

痛い。

 

「ねぷぅ!?何で避けるの!?」

 

「ごめんなさい、勢いが強かったから反射的に…」

 

「ナイス反射神経だね…勝ったと思わないでよね!」

 

「もう勝負ついてるぞねぷ姉ちゃん。」

 

一誠にツッコミいれられる。

ちくせう、自分は負けてしまった…けれど、第二第三のねぷ子さんがリアスちゃんを抱きつきにいくんだからね…!

 

「それじゃ、そろそろ行きましょうか。」

 

「では部長、また後で。」

 

「失礼します。」

 

「ふふ、ネプテューヌちゃんと一誠君もまた後で。」

 

「うん!気を付けてね!」

 

「部長、俺は…」

 

「貴方も私とネプテューヌと一緒よ。少し急いで行きましょう。

朱乃達が向かったとはいえ時間がかかるでしょうし…」

 

リアスちゃんと一緒に自分達は家に向かう。 

急ぎ足で向かう途中で、気になったから聞いてみる。

 

「そんなに強いの?」

 

「強い訳じゃないわ…人に紛れるのが上手いのよ。」

 

「擬態とかが得意ってこと?」

 

「似たような感じね。」

 

「そもそも、何と戦うんですか?」

 

「はぐれ悪魔よ。」

 

「はぐれ…?」

 

「主を失った、または殺害した…それらが要因で暴走した転生悪魔の事よ。中には無理矢理眷属にした主を殺してはぐれと認定された転生悪魔もいるわね。」

 

「それって、悪魔の中にも酷い人がいるってこと!?同意の上ならともかく、無理矢理だなんて酷すぎるよ!」

 

「ええ…同じ悪魔として悲しいものね。」

 

理不尽な事だ。

無理矢理悪魔にされて、そこから逃げれば指名手配犯だなんて。

自分がその場にいたらぶん殴ってるね。

 

それに、周りの親しい人がそういうことに巻き込まれたら怒りに呑まれない自信はないし。

 

「あ、ついた!急いで取ってくるね!」

 

家に入る。

 

「あら、ねぷちゃん。おかえりなさい…あら、一誠は?」

 

お母さんに見つかった。

そりゃそうだけど、何て言おうか…

うーん、お母さんに全て黙ってるのは心苦しいけど、巻き込まないためだ。致し方無い!

 

「一誠と遊びに行こうと思ったんだけど財布忘れちゃった!」

 

「そうなの?駄目じゃない、財布はしっかり持ち歩かないと…気を付けてね?あまり遅くならないようにするのよ。」

 

「う、うん!」

 

やばい、めっちゃ辛い。

心苦しさがMAX。

ごめんよお母さん。

時が来たら説明するよぉ。

 

急いで二階にあがって、自室にある木刀を手に取る。

 

…これ、木刀持っていくのバレたらヤバイな。

 

窓を開ける。

ちょうど落としてもバレなそう…かな?

 

「とう!」

 

落としたが、地面が土だったお陰で大きな音は無し。

んー、運がいいのも主人公の特権かなって!

 

さっさと下に降りて靴を履く。

 

「行ってきまーす!」

 

扉を開けてすぐに木刀を取りに行く。

 

「えーと…あったあった!」

 

ネプテューヌ は 木刀 を てにいれた!

 

これで一応戦えるね。

リアスちゃん達の下に戻る。

少し待たせちゃったかな?

 

「ごめん、お待たせ!」

 

「大丈夫よ。さっき、祐人がはぐれ悪魔を追い込んだって報せが来たからそこに向かうわ。」

 

「はい!」

 

「じゃあ、早く向かおう!」

 

リアスちゃんを先頭に走る。

それにしても最近よく走るなぁ。

疲れちゃうよー。

帰ったらプリン食べよ。

 

悪魔になったからか一誠の足が速くなってる。

やっぱり身体能力も上がるんだ。

魅力的だけどやっぱりいいや。

 

少しして、目的の場所に辿り着く。

廃棄された工場みたいだね。

ここなら騒ぎも見つかりにくい、かな?

 

木場君たちも居て、皆近寄ってくる。

 

「祐人、ここにいるのね?」

 

「はい、結界は副部長が貼りましたので早々出られません。」

 

「よし…じゃあ、二人とも。これから入るわよ。準備はいいわね?」

 

「勿論!私はいつでもいけるよ!」

 

「自分も、大丈夫です!」

 

一誠は龍の手(トゥワイスクリティカル)を出して、自分は木刀をしっかりと握る。

リアスちゃんは頷く。

 

「入るわよ。敵ははぐれ悪魔バイザー、行くわよ。」

 

『はい!』

 

「おー、いいね、号令って感じ?」

 

皆で結界に入っていく。

中には、前に見た堕天使…夕麻とは違った化け物がいた。

 

ケンタウロス…のような姿だけど、胴体部分に隠そうともしない巨大な牙。

その胴体より上に裸の女性がくっついてる。

 

うん、痴女だ。

 

「おお、ナイス…ごめん、かなり気持ち悪い。」

 

「一誠の教育に悪いから早く倒そうよリアスちゃん!」

 

「そうね…」

 

リアスちゃんが自分達より前に出る。

 

「はぐれ悪魔バイザー…抵抗しないならせめて一撃で葬ってあげる。抵抗するようなら苦痛を与え、その後消し飛ばす。

さあ、どうする?」

 

「オマエラも殺しテ喰ってやルぅ!ギャハハハハハ!」

 

「駄目ね、話が通じない。何人喰ったのか…いいわ、お望み通り苦痛をあげる!

一誠、ネプテューヌ!今から悪魔の駒の性質を教えてあげる。」

 

「チュートリアルで性能教えてくれる優しい部長の姿がそこに!

ねぷ子さんの好感度が上がった!」

 

バイザーが巨大な腕でリアスちゃんを押し潰そうとする。

 

「まず、騎士。速度上昇の恩恵があるわ。

王の護衛が主な役割よ…祐人!」

 

「お任せを!」

 

木場君はいつの間にか剣を手に取りリアスちゃんの前に出て、迫る巨大な腕を切り裂く。

うわぁグロテスク。

中々ですよ、これは。

 

中々の速さだ、速度強化ってのは伊達じゃないね。

 

「ギャァァァァ!!」

 

「次に、戦車。戦車の駒は防御と攻撃、それぞれを上昇させるの。小猫、お願い。」

 

「はい、部長。」

 

「小娘ガぁ!」

 

もう片方の腕を叩きつけようとするけど、小猫ちゃんが腕に拳を叩きつけると倍以上はある腕が押し負けて吹き飛んだ。

パワフルだ、しかも痛がる様子もない。

 

「あら、私の番ですわね。」

 

「ええ。女王は僧侶、騎士、戦車、兵士全ての特性を持っているの。つまり、朱乃は私にとって最も信頼できる存在なのよ。」

 

「うふふ、お褒めに預かり光栄です。さ、痺れさせますよ?」

 

朱乃ちゃんが手を翳すとバイザーに雷が降り注ぐ。

あんまりにも突然だったから分かんなかったけど、そういう魔法なのかな?

 

「あら、もっと足掻いてもいいんですよ?」

 

「アガ、ァァァァ!」

 

あ、ドの付くSの方でしたか。

ちょっと隙見せないようにしようかな。

哀れバイザー…

 

「よし…俺も!」

 

「あら…」

 

一誠が痺れて動けないバイザーへ走り出す。

 

すぐに復帰できそうにないし、大丈夫かな?

良いところ見せたいんだろうね、男の子だから。

というか、自分のいる意味…ある?

ちょっとねぷ子さん泣くよ?

 

一誠は飛び上がって、バイザーの顔面に拳を叩き込む。

 

「オラァ!」

 

「ゲファァ!!」

 

クリーンヒット!ってあれ?

バイザーは吹き飛ばず、本体の普通の腕で一誠を掴む。

 

よし、自分の番来た!

ふふん、姉に任せよ!

 

「うわ!?」

 

「小僧、せめて貴様ダケでも…!」

 

「おおっとそうはさせないのがこのネプテューヌだよ!」

 

バイザーの前にまで走り、地を蹴って更に速度をあげる。

 

「ね、ねぷ姉ちゃ~ん!」

 

「情けない声出したらモテないよ!」

 

木刀でがら空きの胴体に斬りかかる。

かったい、けど…主人公なめんな!

 

「名称そのままだけど、パワーエッジ!」

 

そのまま力を込めた一撃!

バイザーは思わず一誠を手放す。

 

「ぐあっ!」

 

「た、助かったぜねぷ姉ちゃん!」

 

「世話の焼ける弟だなぁ。ほら、決めるよ!」

 

「お、おう!」

 

『Boost!』

 

うわ、急に渋い声!?

もしかして、一誠の龍の手?

倍加のやり方掴んだっぽいね!

 

怯んでるバイザーにキツいの叩き込んでやる。

 

「二人でやるよ、せーの!」

 

「俺達姉弟のコンビネーション!」

 

 

「「ドラゴンズコンビネーション!!」」

 

自分が四方八方に駆け回りながらバイザーの体のあちこちを木刀でぶん殴り、体勢を崩したところを一誠が全力の拳の一撃をバイザー本体に叩きつける!

 

これぞ我ら姉弟の即席コンボ!

 

「ガハァァァァァァ!!?」

 

バイザーは堪らず吹き飛び、地面に倒れ伏す。

 

「うーん決まったねー!」

 

「見たか俺らのコンビネーション!」

 

「大勝利!皆見てくれたよね?」

 

「え、ええ…ネプテューヌ?」

 

「どったの?」

 

「貴女、本当に人間?」

 

「急に化け物認定!?私は歴とした人間だよ!何か成長しないけどそういう悲しい宿命を背負った人間だよぉ!」

 

「そう…でも、良いコンビネーションだったわ。さて…」

 

リアスちゃんは倒れ伏すバイザーに近付く。

自分は大丈夫だと思うけど心配だからついていく。

 

バイザーの前まで来るとリアスちゃんはバイザーへと手を翳して赤い光をまた向ける。

 

「何か、言うことは?」

 

「…殺せ。」

 

「…やっぱり、人を食べたの?」

 

「ああ、そうだ…早く殺せ、貴様も喰うぞ!」

 

「ネプテューヌ、下がってなさい。」

 

「ううん、見届けるよ。」

 

「…そう、強いのね。」

 

自分で倒した敵だ。

その最期も、見届けるのが筋というもの。

 

リアスちゃんは、赤い光を更に強め、バイザーへと放つ。

 

当たったバイザーは文字通り、塵すら残らずに消滅した。

 

「この人も、不当な扱いを受けちゃったのかな?」

 

「それは今後の調べ次第ね。何はともあれ、お疲れ様。」

 

「あ、そういえばさっきのは?」

 

「消滅の魔力。私や私の血縁の人なら殆どが持ってる物よ。」

 

「なるほど~悪魔によって力が違うってことなのかな。」

 

「ええ、そうよ。さ、帰りましょうか。明日から一誠には色々と教えないとね。」

 

「自分は手伝わなくていいの?」

 

「あら、手伝ってくれるの?」

 

「んー…いいよ!」

 

「ありがとう、優しいのね。」

 

「主人公ですから!ドやぁ!」

 

こうして、自分と一誠の初の戦闘は無事に終わった。

 

この後、一誠の兵士の能力はなんだと聞いたら、どんな駒にもなれる逆転の駒、だそうだ。

 

やっぱりチェスをモチーフにしてるんだなぁ。

 

解散して、帰った後、いつも通りの時間を過ごした。

こういう時間を大切にしたいね、これからも。

 

「プリン最高~!」




ネプテューヌがいると、話が書きやすい。
何でかって多少何してもネプテューヌだから出来そうだなってなるからだ。
頼りになるぞ主人公オブ主人公!


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シスター発見!コミュニケーション開始だよ!

9000字も書いたの久しぶりですわ。

それもこれも筆を進ませるねぷねぷが悪いんだ!
ありがとう主人公!


やっほー!主人公なネプテューヌだよ!

 

オカルト研究部に所属することになった自分達。

当然、オカ研の活動も手伝うよ!

助けてもらったことの恩は返す、これ人として大事だから覚えるよーに!ねぷクイズに出るよ!

 

で、活動内容なんだけど…

一誠と一緒に行動してほしいそうなんだ。

というのも悪魔としての仕事だから悪魔じゃない自分に全部やらせるのは忍びなく、なら一誠の手伝いとして活動に参加することにしたんだ~。

 

それで今、そのお仕事中なんだけど…

 

「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ!!」

 

「…わぁ、私こんなおぞましい光景を初めて見たよ~」

 

「ねぷ姉ちゃん、そこは黙ってよう…夢は、誰にでも見る権利はあるんだ。」

 

目の前のゴスロリネコミミの巨漢に自分はドン引きだったりする。

ミルたんと言うらしいが…

 

こ、怖い。

主人公である自分が震えるだなんて…

殺意すら感じるのに純粋無垢な瞳…どういうことなの…

 

「えっと、ミルたんは魔法少女になりたいの?」

 

「そうにょ。」

 

「異世界に転移してください。」

 

「もう一誠が折れた!?」

 

「悪魔さんでも駄目にょ?」

 

「俺に、力がないばっかりに命を散らすことになるとは…」

 

「あ、諦めちゃダメだよ!ミルたん、ごめんね!魔法少女には出来ないけど他に何か無いかな!?」

 

「じゃあ、この魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブを一緒に見てほしいにょ!」

 

「勿論!私もアニメ好きだし、見たいな!」

 

実際アニメは好きだ。

魔法少女物はあまり見ないけど、これを機に見始めるのもアリかもしれない。

 

一誠もぶんぶんと首を縦に振るのを見て、ミルたんは嬉しそうに自分達を家の中に入れてくれた。

 

「お邪魔しまーす!あ、自己紹介してなかったね!

私、ネプテューヌ!主人公オブ主人公とはこの私のことだよ!」

 

「兵藤一誠っす。」

 

「ミルたんはミルたんにょ。じゃあ、一緒に見るにょ!」

 

それから、自分達は魔法少女ミルキーを見ながら夜を過ごした。

 

それを見た感想としては…

 

「う、うう…!まさかこんな熱い展開かつ泣けるアニメとは思わなかったよぉ!」

 

「魔法少女ミルキー…!なんて過酷な運命なんだ…!俺は感動したぜ!」

 

「そうにょ。ミルキーは凄いんだにょ!」

 

「うん!ミルたんが魔法少女を目指すのも分かる気がするよ!

こんなの見せられたら自分だってなりたいって思うよね!」

 

あまりにも感動的だったのでいつものお喋りもせずに真剣に見てしまった。

そして、視聴し終わった後に自然と泣いてしまった。

これほどの傑作を見なかったとは…自分は何と愚かだったのか!

 

「そうにょ…でも、頑張っても魔法少女になれないにょ。

だから悪魔さんに頼もうと思ったんだにょ。やっぱり、ミルたんは魔法少女になれないにょ?」

 

「それは…」

 

「そんなことない!」

 

「ネプテューヌさん?」

 

「ミルたん!夢を諦めるなんて良くないよ!ミルたんにとって魔法少女は諦めてもいい夢なの?」

 

「それは…違うにょ!」

 

「そうだよね!ミルたんにとってのハッピーエンドを諦めるなんてしちゃダメだよ!」

 

「ミルたんにとってのハッピーエンド…頑張るにょ!ありがとうにょ!」

 

「これくらい、お安いご用だよ!」

 

「ありがとな、ねぷ姉ちゃん。」

 

「私は思ったことを言っただけだよ?一誠が感謝する必要はないって~」

 

「それでも、一応な。」

 

頭を撫でられる。

んー、一誠に撫でられるのは久し振りだけど悪くないね。

褒められるって嬉しいよね。

いやまあ、褒め方とかあるけど今回のは良い方だよ。

 

そうして、ミルたんは悪魔と契約はしなかったもののアンケートには高評価をしてくれた。

これなら一誠も褒められるね!

 

さて、終わったし帰ろうかな?

今日が休みでよかったよー何気に帰れなかったから両親に友達の家に泊まりますって伝えたら気を付けてねって言ってくれた。

んーぐう聖。

 

帰りになって、自分達はまだミルキーについて話していた。

 

「いやぁ、まさか魔法少女で泣くとは思わなかったよ。

製作陣は書き慣れてるに違いないね!」

 

「製作陣どうこうは知らないけど、そうだな。あそこまで熱い魔法少女物も珍しいし、人気なのも分かる気がする。」

 

「今度ミルキーイベントあったら行ってみようかな?」

 

「ありじゃないか?そこまで興味持つなら行って損はないだろうし。」

 

「だよね!」

 

会話をしながら家へ向かう。

 

そんなときだった。

 

「キャッ!?」

 

小さい悲鳴が聞こえて、何だろうと思いそちらを見ると、金髪のシスターが転んでしまっていた。

一誠も同じだったようで、シスターを見てる。

 

「ナイスヒップ。」

 

「もう、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!そこのシスターさん大丈夫?」

 

「あう…大丈夫です、すいません。」

 

「謝る必要ないよ!」

 

「お優しいのですね。ああ、主よ…この出会いに感謝します…」

 

「えっと…」

 

どう見ても外国人だ。

それに若い…

そんな子が日本語をここまで話せるものか?

 

気になる。

 

「それにしても、日本語上手なんだね?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「どうしたんだ、二人とも?」

 

「一誠、集合!」

 

「お、おう…で、なんだ?」

 

「え、日本語だったよね?」

 

「そうだな、日本語に聞こえたぞ。…これも悪魔の駒の恩恵なのか?」

 

「そうなると私がおかしいじゃん!…あ、もしかして!」

 

「分かったのか!ねぷ姉ちゃん!」

 

分かってしまった。

なるほど、それならしょうがない。

 

「主人公である私には自動翻訳機能があるに違いない!

まあ、言語分かりませんで物語を進めるわけにはいかないからね!そんなのは古代文字だけでいいもんね!」

 

「ぜってぇ違う気がする…けど、細かいこと気にしててもしょうがないよな。」

 

「そうそう、私的にも相手的にもラッキーじゃん?それでいいじゃん!ってことで、シスターさん!」

 

「は、はい!」

 

「どうかしたの?見ない顔だし…」

 

この駒王の伝説的存在であるねぷ子さんが知らないなんてあるわけがない!

いや、実際にはあるんだけどシスターさんみたいな格好なら見たことあるはずだし!

 

「来日したばかりで迷ってしまって…言葉も通じませんし…」

 

「そっかー、なら、私達が案内してあげるよ!ついでに日本のことも教えちゃう!」

 

「連れ回したいだけだろねぷ姉ちゃん?」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

「ありがとうございます!私、アーシア・アルジェントです!」

 

「私は主人公のネプテューヌ!よろしくね!」

 

「俺は兵藤一誠、よろしくなアーシア!」

 

こうして、アーシアを教会まで案内する途中で色々な場所を紹介することにした。

 

まずは…

 

「ここは?」

 

「ふふん、ここはスイーツ屋さん!ここのプリンは絶品なんだよ!試しに食べてみる?」

 

「いいんですか?」

 

「私も食べたいし、一誠とアーシアも食べれば何と三倍も美味しいんだよ!」

 

「そうなんですね…なら、食べたいです!」

 

「よぉし、ねぷ子さんが三人分買っちゃうよ!」

 

「そんな!私も払います!」

 

「いいっていいって!私から友達に送るプレゼントだよ!」

 

「友達…?」

 

「アーシアは俺達と友達は嫌か?」

 

「…いいえ、嬉しいです。」

 

「そっか!」

 

自分はスイーツ屋のおじさんに話し掛ける。

おお、まさかの限定プリンがあるではないか…!

買わせてもらおう!

主人公は一定の運もあるって事だね!

 

「じゃあおじちゃん!限定プリン三個!」

 

「嬢ちゃん、今日は運が良かったな。」

 

「まあ私ほどの超絶美少女となるとプリンが買われるのを待っちゃうって事だよ!」

 

「ハハハ、なるほどなぁ。プリン好きにプリンが応えるって事か!」

 

「そういうこと!」

 

お金を払っておじさんに手を振った後にアーシアと一誠の下へ戻る。

 

完璧だ。

この限定プリンを食べさせてプリン好きにすることでプリン仲間を増やすのだ。

そうすれば駒王町はプリンの需要に気付き、更にプリンを製造するって寸法よ。

ごめん、自分で考えてそれはないなと思った。

 

「はい、限定プリン!これは何と、一日に百個しか販売されぬプリンなんだよ!」

 

「そんなに貴重なものを…ありがとうございます!」

 

「よっしゃそこのベンチにでも座って食おうぜ。」

 

「買ってすぐに食べる…これこそ贅沢ってものだよ!限定ともなるとその贅沢さは伝説級だよね!」

 

「なるほど…」

 

早速ベンチに座ってプリンをスプーンで掬う。

見よ、このプルプル…そして、この艶を!

そしてそれを食べる!

 

「やっぱりこのプリンは美味しいね~!買えてよかった!生きててよかった!」

 

「生の感謝をプリンを食すことでする姉がこちらになります。」

 

「でも、とても甘くて…幸せになりますね。」

 

「確かに。俺も一回か二回しか食えてないし…」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「買っておいた奴食われたし、勝手に賭けをして負けた俺から取られたし。」

 

「うぐっ!?そ、それは…ごめんね?」

 

「まあいいけどさ。こうして食えたし…」

 

一誠…本当にすまんかった。

プリンが好きとはいえ誰かから取るのは今思えばプリン好きのすることではなかった。

自重しよう。

 

それにしても、自分でも作れないこの艶…やはり就職先はあそこにしようかな?

 

少しして、食べ終えて幸福感。

頑張ったご褒美に自分に買うのもありかもしれない。

 

「それじゃ、次の場所は一誠が決めちゃってよ!」

 

「そういわれると思って既に場所は決めてあるんだな、これが。」

 

「おお、流石我が弟!」

 

「じゃ、行こうぜ。」

 

「善は急げ、だね!」

 

そうして一誠の案内で来たのは…

 

「ゲームセンターだ!」

 

「ゲーム、ですか?」

 

「そうだよ、ここはお金を使って色々なゲームが出来る場所なんだ。俺も友達とよく来てるけど、楽しいぜ。」

 

「なるほど…私もやれますか?」

 

「勿論、ゲームセンターは楽しい場所だからね!」

 

まあ、稀に空気を壊す輩とかいるんだけど、そこは気にしない。

皆もゲームに負けたからって苛立ちでその場のゲームに当たらないようにね!店員さんに怒られるし、何より人としてよろしくないよ!

 

「ふふん、手始めにこのクレーンゲームからやろう!」

 

「手始めに金が消し飛ぶ奴やるのか…」

 

「大丈夫!私これ得意だから!さあ、アーシアが欲しい奴を取っちゃうよ!」

 

「え、それなら…この猫のぬいぐるみが欲しいです!」

 

「こんなの余裕だよ!」

 

「いや、待て…俺がやる。」

 

「え、一誠が?」

 

「ここを案内したのは俺だ。つまり、ここは俺がやらねばならない…違うか?」

 

「い、一誠…!」

 

そんな、あの一誠が漢を見せようとするなんて!(ゲームセンター)

私、感動しちゃったよ!(クレーンゲームです)

 

「分かったよ…男には退けない状況…それが今なんだね。」

 

「そうだ、だから俺が…やる!」

 

「凄い気迫です、イッセーさん…!」

 

そして、一誠は戸惑うことなく自身の財布から百円玉を投入した…

 

この気迫、取れなきゃ嘘だよ!

絶対取れるね、2ポンド賭けてもいいよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ取れたぁぁぁぁ!!」

 

「千円を崩したときは私代わろうかなって思ったけどやったよ、一誠!」

 

「凄いです、イッセーさん!」

 

一誠、獲得…手放しの勝利…!

合計金額千三百円…!

 

え、2ポンド?取れたから無しだよ?

勝てばいいんだよ!

 

「俺はやった…勝ったんだ!さあ、受け取ってくれ!俺達の友情の証だ!」

 

「ほ、本当にいいんですか?折角お金をあんなに使ったのに…」

 

ぬいぐるみを躊躇なく渡す一誠にアーシアは戸惑う。

一誠はそんなアーシアに頷く。

 

「アーシアの指定したぬいぐるみを取るのが目的だったしな。

それに、こういう物は似合うだろうしさ。」

 

「イッセーさん…はい!ありがとうございます!」

 

アーシアはぬいぐるみを受け取って花が咲いたような笑顔を見せてくれた。

ぬいぐるみをいたく気に入った様子で抱き締めている。

 

それに自分と一誠は目頭を押さえる。

 

「尊い。」

 

「尊すぎてやばい。」

 

「尊みが溢れる。」

 

「あの、お二人とも?」

 

「何でもないよ!ただ、癒しってここにあるんだなって。」

 

「え?」

 

「気にしないでいいんだ。さ、他のゲームもやろうぜ。」

 

「でも、一誠。そろそろお昼だよ?」

 

「マジか…アーシアはお腹空いたか?」

 

「わ、私は大丈夫──」

 

その時、キュウゥと音が聞こえた。

アーシアが赤面してる所を見るに、そういうことらしい。

 

「遠慮しないでいいよ!腹が減っては戦は出来ぬ!私達もお腹空いたし、何か食べてから教会に行こう!」

 

「はい…」

 

「この辺だと蕎麦屋が美味かったな。」

 

「おお、蕎麦!日本の食がどんなのかを学べてお腹も膨れる…まさに一石二鳥だね!」

 

というわけで蕎麦屋に向かった。

 

申し訳ないけど、蕎麦屋はカットさせてもらうけどアーシアはとても美味しそうに食べていたよ!

天ぷらとかそういうのも好きになってくれると嬉しいかな!

そう思いながらそっと一誠のお皿にナスの天ぷらを置いたよ!

その時の視線は気にしない。気にしないったら気にしない。

あんな悪魔の食べ物を食べたら死んじゃう。

 

いっそ根絶やしにしよう!

ナスは根絶すべき食材なんだよ!

 

といった感じでお昼を食べた後、教会まで向かった。

教会かぁ、教会といえば、イリナちゃん元気かなぁ。

一年くらいしか遊べなかったとはいえ友達だから心配なんだよね。

 

そんなこんなでやってきました教会!

何か寂れた感じだけど、大丈夫かな?

 

「本当にここでいいの?」

 

「はい!ここで大丈夫です、ありがとうございました!」

 

「良いってことよ。また会おうな、アーシア!」

 

アーシアはぬいぐるみを抱えて頭を下げる。

純粋な子だなぁ。

 

「このぬいぐるみ、大切にします!お友達の証、ですから!」

 

「うん!またね、アーシア!」

 

「はい、ネプテューヌさん、イッセーさん!」

 

そうしてアーシアは中に入っていった。

うん、こうして友達も増えたし良いこともしたしで気分が良いや!

 

さあて、帰ろうかな──

 

「っ、一誠危ない!」

 

「え、何グエェ!?」

 

何となく危険察知したので一誠の襟を引っ張ってその場から退かす。

すると、一誠の立っていた場所には光の槍が突き刺さっていた。

 

これは…堕天使!

 

「まさか気付かれるとは…」

 

「お前は…!」

 

降りてきたのは黒い翼を生やしたおじさん…夕麻の他にも堕天使がこの町にいるの!?

あの時と違って武器もないし、ヤバイよ!

 

「わざわざ教会に立ち寄るとは愚かな悪魔だ。見逃してもらったことも忘れたか?」

 

「とか何とか言って、リアスちゃんに見逃してもらったのはそっちの方な癖に!意地張ってると余計ダサいよおじさん!」

 

「何だと…人間風情が!」

 

「そうやって人間馬鹿にしてると痛い目見るんだからね!

人間の強さの一つ、それは人脈!私の知り合いを既にこの場に呼んでるんだな、これが!」

 

「ふん、そんなハッタリ、誰が…」

 

「あ、リアスちゃんだ!」

 

「何!?」

 

自分が向こう側に指を差すとおじさんが振り向く。

ラッキー!

 

その隙に一誠の腕を掴んで逃げる!

 

「居ないではないか…やはりハッタリ…逃げただと!?」

 

「バーカバーカ!丸腰なのにマトモに戦うわけないじゃん!

ほら一誠も言ってやりなよ!」

 

「え、俺も?や、やーいやーい!無性髭!人間に騙される堕天使!クソダサ堕天使!」

 

「おのれぇぇぇぇ!!」

 

「めっちゃ怒ってるけどこの距離ならどう足掻いても追い付かないでしょ!」

 

さっさと逃げるに限る。

馬鹿め、ねぷ子さんの作戦は108式まであるのだ!

主人公は逃走においても敗北はないのだ!

 

おじさんは追ってくる様子もなく、自分達は逃げ延びる事に成功した。

 

「つ、疲れたぁ…」

 

「でも、堕天使が二人もいるなんて思わなかったな…」

 

「私も、まさかこんなことになるとは思わなかったよ…」

 

「くっそ…とりあえず、帰ろうぜ。明日も悪魔の仕事があるし…気にしても仕方ない。」

 

「そうだね、もうクタクタだよぉ…」

 

その後、帰ったらお母さんに心配されたけど大丈夫だよと誤魔化した。

夕飯を食べて、お風呂に入ってその夜は寝た。

 

んー、武器を常備した方がいいかな。

逃げてばかりは性に合わないし、皆もそう思うよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます!

昨日の事は気にしない!

今日のお仕事もミルたんにしたのと同じように悪魔としてお願いを叶えようって仕事だね。

そんなわけで一誠と一緒に向かってるんだけど。

 

「ねぷ姉ちゃん、その長い入れ物はなんでしょうか?」

 

「木刀入れだよ!」

 

「いや直球!おいおい、何でさ!」

 

「前みたいに襲われた時に逃げれなかった時用だよ!」

 

「ああ、なるほど…無闇に振り回すなよ?」

 

「子供じゃないからしないよ!ほら、ここじゃないの?」

 

「ん、確かに。よし…」

 

一誠がインターホンを鳴らす。

大丈夫、ミルたんを見た後だと何が出ても怖くない!

中身はいいけど外見は世紀末覇者だったからね…ミルたん。

 

でも、来るの遅いね。

 

試しに扉を開けようとして…

 

「ねぷ!?防犯大丈夫?開いたけど…」

 

「マジかよ…とりあえず、中に入ろうぜ。」

 

「お邪魔しまーす…」

 

中に入ると、何だか鉄臭い。

うわぁ…猛烈に嫌な予感。

 

そのまま、リビングへと向かうと…

 

「っ!何だよ、これ…!?」

 

「こ、これってももももしかしなくても…血!?」

 

リビングがおびただしい量の血の水溜まりが出来ていた。

 

殺人現場に遭遇したってこと?

にしても、むせ返る程の血の臭い…うえっ。

 

「おやぁ?悪魔さんのご登場じゃあーりませんの!」

 

「…お、前…引き摺ってるの…」

 

「キャア!人殺し!」

 

「その通り!悪魔の連れの癖に反応いいじゃないですの!僕ちゃん嬉しくて殺意もりもり!」

 

出てきたのは白髪の神父さんだった。

右手に引き摺ってるのは自分達の仕事のお相手さん、かな。

 

しかも、この人なんか頭おかしい?

 

「っ、テメェが殺ったのか!」

 

「当たり前じゃーん。悪魔なんぞに媚び売る腐れ人間は世のため人のため殺さなきゃ!ついでにその悪魔と連れも来たみたいだから解体しちゃってよろし?」

 

「駄目って言ってもやるんでしょ!」

 

「大当たりぃ!フリード・セルゼンって言いまーす!覚えなくていいから死ねやぁ!」

 

素早い身のこなしで光の剣で斬りかかってきたフリードに、咄嗟に出した木刀で防ぐ。

力、強い!

 

「自己紹介されたからしとくけど!私はネプテューヌ!

この作品の、主人公だよ!」

 

「頭イカれてんじゃねぇのクソガキ?やっぱ頭かっ捌くしかねぇなぁギャハハハ!」

 

「ねぷぅ!?この人怖いよ!?でもでも、こんな現場を見たからには現行犯で逮捕してぶた箱エンドにしちゃうんだからね!

刑務所という名の養豚場に出荷よー!」

 

「それなら俺ちゃんがテメェを地獄に出荷してやるぜぇ!」

 

「そんなー!?」

 

話が通じるようで通じないし、屋内だし…ちょっとピンチかも!?

 

フリードがつばぜり合いをやめて距離を取ったかと思えば拳銃を取り出して撃ってきた。

ヤバイ…!

 

「っぐぅ!ねぷ姉ちゃんはやらせねぇぞ!」

 

「一誠!?」

 

「おーおー悪魔が庇ってらぁ。感動的ですねぇ、痛そうですねぇ。もっと苦痛をくれてやるよぉ!」

 

一誠が自分の前に出て銃弾を代わりに受けて膝をつく。

歯を食い縛って汗が凄い。

 

…よくも一誠を!

木刀を強く握り、フリードに飛び掛かる。

 

「もう許さないよ!」

 

「許さないからなんだってんでございますか!悪魔は悪!ついでに悪魔と居る奴も悪!正義は我にありってなぁ!」

 

自分でも驚く程のスピードでフリードに木刀を叩き込むけど、殆どを光の剣で防がれる。

お返しとばかりに拳銃を撃ち込まれてもギリギリ身をよじって回避。

 

「おいおい普通銃弾かわす?動体視力ってより人としてありぃ?」

 

「そんなこと知らないよ!主人公に不可能の文字はないんだよ!

いい感じに気絶させれればいいやと思ったけど…ボッコボコに──」

 

 

 

「フリード神父?何だか騒がしいですが…」

 

 

 

「─えっ。」

 

「隙ありぃ!」

 

「ねぷぅ!?」

 

こんな場所で聞く筈がない声に呆然として、フリードに蹴られてしまう。

今の声は、まさかアーシア…!

 

声のした方に視線を向けると手で口を押さえて顔を青くするアーシアがいた。

 

「ひっ…キャアァァァ!?」

 

「アーシア…!何でここに…?」

 

「イッセーさん、それにネプテューヌさんも!?酷い怪我…!」

 

アーシアが一誠に近付いて手を翳すと光が一誠を包む。

一誠の表情から痛みが引いていく。

今のは…?

 

「アーシア、今のは…」

 

「…主からの贈り物、だと思っていたのです。ですが、私は異端として追放されてしまった…そして、ここに来たのです。」

 

「神器…!」

 

「あらあら駄目じゃありませんかぁシスターアーシア。

折角つけた傷を治すなどと…」

 

「フリード神父!何故このようなことを…?」

 

「悪魔と契約しようとしてたからに決まってるでござんしょ?

そこの少年君も悪魔なんだぜ、シスターアーシアぁ!」

 

「そんな…イッセーさんが、悪魔?ネプテューヌさんも?」

 

「私は人間だよぉ!」

 

「そうですか…でも、悪い悪魔ではありません!」

 

「はぁぁ!?悪魔にいいも悪いもあるわけねぇだろ頭沸いてんのか!んなだから悪魔癒して追放されんだよ馬鹿が!」

 

涙を流しながらも一誠を庇ってくれるアーシアに嬉しくなる。

まだ友達だと思ってくれてるんだ。

信じてくれてる。

 

それが分かると、まだ力が入る。

それどころか、力が湧いてくる、かも!

 

「まだ戦いは、終わってないよ!」

 

 

 

「─あら、それはどうかしら?」

 

 

 

「「ッ!」」

 

夕麻の声!

 

まさか、フリードとグル!?

アーシアを庇いながらだと…

 

「駄目じゃない、アーシア?悪魔を庇ったら。

ほら、こっちに戻ってきなさい。」

 

「駄目だよ、行っちゃ駄目!ねぷ子さんに任せて!」

 

「馬鹿な人間。私以外にも堕天使は後三人…勝てる?」

 

「勝てるじゃなくて勝つよ!」

 

「…そうねぇ。アーシア、貴女はどうすべきか分かるわね?」

 

「ッ…はい。」

 

「駄目だ、行くな!頼りないかもだけど俺とねぷ姉ちゃんが守るから!」

 

「…ありがとうございます、一誠さん。ネプテューヌさん、無理しないでくださいね?」

 

「アーシア…」

 

悲しげに微笑むアーシアに胸を締め付けられる。

駄目だ、信じられてるって感じてるのにこんなのよくない!

 

「おおっと動いたら悪魔を撃ち殺すぜ?」

 

「くっ…」

 

いつの間にか、フリードに剣を首に突き付けられてた。

 

「アーシア!本当はどうしたいの!?」

 

「頼む、友達だってんなら信用してくれ!」

 

「…ごめんなさい。やっぱり追放された私には不相応の幸せでした。少しの時間とは言え、ありがとうございました。」

 

小さな涙を溢しながら堕天使達の方へと歩いていくアーシアに自分達は何も出来ない。

何もさせてもらえない。

シリアスを壊すのが私なのに、黙ってみてるしかないなんて…

 

「ここに向かってきてる悪魔に感謝なさい、愚かな二人。

さあ、行くわよアーシア。」

 

「…はい…」

 

「アーシアぁ!」

 

「…さようなら。」

 

その言葉を最後にアーシアもフリードも夕麻たち堕天使も去っていった。

体から力が抜ける。

駄目だ、こんなんじゃ。

 

「…私、主人公失格だよ。」

 

「ねぷ姉ちゃん…俺…」

 

「…一誠?」

 

「助けないと。」

 

「でも…」

 

「友達だろ、泣いてたんだ…助けてやらなきゃ駄目じゃないのかよ。主人公!」

 

「!」

 

そうだ。

こんなのアーシアだって望んでない。

不相応の幸せなんてあっちゃ駄目だ。

 

その否定を許しちゃ駄目だよね。

私が、常日頃から言ってることだった。

 

「「ハッピーエンド以外受け付けない。」」

 

「だろ、ねぷ姉ちゃん。」

 

「…うん、そうだね。ごめん、一誠、もう一度信じてくれる?」

 

「何言ってるんだよ、俺はいつだってねぷ姉ちゃんを信じてるぜ。」

 

「…よし!助けよう!私たちの友達を!」

 

「おう!」

 

その後、リアスちゃん達が来て、自分達は一度オカルト研究部に帰還した。

 

…それにしても…あの力が湧き上がる感覚は一体?



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思惑とか計画とかバランスごとぶっ壊すよ!

ネクストホワイトのガチャが来ましたよ。
皆さん当てましたよね!私は当ててないけど、皆さんは当てましたよね?
ネクストパープルを素引きしまくった弊害ですねクォレハ…

まあ、ルウィー民でない事が一番の要因かな…(ルウィーの女神化キャラ無し)


やっほー!元気いっぱいネプテューヌだよ!

アーシアを助けるべく、リアスちゃん達に協力を頼むのと傷を癒すためにもオカルト研究部に戻ってきた自分達。

 

一誠が今その事を伝えたんだけど…

 

パシンッ。

甲高い音がオカ研に響く。

リアスちゃんが一誠の頬を叩いた音だ。

一誠は叩かれても真剣な眼差しでリアスちゃんを見てる。

勿論、自分もだ。

 

「貴方達、自分がどれだけ危険なことをしようとしてるか分かってるの?」

 

「分かってます。」

 

「堕天使だけじゃない、はぐれの悪魔払いだって大勢居るのよ。」

 

「でも、私達の友達を助けたいんだ!」

 

「眷属と部員を死なせに行くより遥かにマシよ。

私達が行っても万が一はあり得るのよ?リスクを冒してまで行きたいの?」

 

「友達を助けられないくらいなら、死んだ方がマシだよ!」

 

「今行かなかったら一生後悔します!駄目だと言われても俺達だけでも行きます!」

 

リアスちゃんは主として、部長として自分達を心配した言葉なのは分かってる。

でも、大事な友達を助けたい気持ちは揺るがない。

 

「…そう。なら、好きにするといいわ。」

 

「…失礼します。」

 

一誠はそう言ってオカ研から出ていった。

自分も行こうとして…

 

「ネプテューヌ、私と朱乃は今回の件に手を出せないわ。

でも…お兄様に掛け合い、堕天使勢力と話をしてあげる。」

 

「!ありがとう、リアスちゃん!」

 

「言っておくけど、私はそっちで何が起こっても知らないからね。」

 

「うん、大丈夫!私は勝つよ!不意打ちばっかりでちょっとイラっとしてた所だったんだよね。ねっぷねぷにしてやんよ!だからね、リアスちゃん!」

 

「何かしら?」

 

「私を信じて欲しいな!」

 

「…馬鹿ね、早く行きなさい。」

 

「ちょっとツンデレだけど…まあいっか!行ってきまーす!」

 

自分も扉を開けて出ていく。

 

リアスちゃんツンデレ属性なのかな?

それはそれで可愛げがあるよね!

 

 

「…部員を信じない部長じゃないわよ、私は。」

 

「ねっぷねぷ…面白い言葉ですわね。」

 

「そこは普通ボコボコでしょうに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぷ姉ちゃん、何か話したのか?」

 

「ううん、何も!」

 

「そうか。じゃあ、行こうぜ。」

 

「そうだね!私と一誠がいれば無敵だよね!」

 

「当たり前な事言うなよな。誰が相手でもぶっ飛ばすぜ!」

 

教会まで向かいながら、姉弟の絆を再確認。

そうだ、自分達二人がいれば何だって乗り越えられる。

昔からそうしてきたんだ。

 

でももし、駄目だったら一誠だけでも。

 

…ううん、暗いこと考えたら駄目だよね。

ねぷ子さんはひたすらポジティブ!

負けることなんて考えない!

 

教会につくと、見覚えのある二人がそこにいた。

 

「木場君、小猫ちゃん!?」

 

「二人とも、どうして…」

 

「どうやら、手が足りなそうな部員がいるようだからね。

それに、とても暇なんだ。」

 

「右に同じく。折角出来た仲間です、お手伝いしますよ。」

 

二人の善意に自分達は口角を上げる。

なんだ、やっぱり優しいんだから。

ツンデレってことで決まりかな!

 

「それじゃ、手伝って貰っていいか?」

 

「勿論。」

 

「了解です。」

 

「よーし!じゃあ、四人パーティーで教会にいる私達の友達を助け出すよ!」

 

全員が頷く。

うん、信じる心を感じるよ。

100%じゃないけれど、それでも…嬉しいんだ。

 

教会の扉を木場君が剣で斬り裂く。

 

「こんな腐った扉、斬るくらいが丁度いいよ。」

 

「…手荒い歓迎のようです。」

 

中に入ると、そこには悪魔払いと思われる人達が何人もいる。

 

どうやら、連戦かな?

 

「さあ、ちょっと連戦になるけど戦闘開始だよ!準備はいいよね?」

 

「いつでも行けます。」

 

「…こうも多いと加減は難しいですね。」

 

「こうしてる間にもアーシアが苦しんでるかもしれないんだ。

さっさと道を開けて貰うぜ!」

 

「気合い十分!私も本気でやろうかな!」

 

木刀を握り締め、前へと駆ける。

それに続くように三人も駆ける。

 

こんなところで立ち止まってる暇はない。

雑魚敵らしく吹っ飛んで貰うよ!

悪魔払いの一人一人の強さは前に戦ったバイザーよりも弱い。

 

なら、手間取る訳ないよね!

 

「シュジンコウザン、なんてねー!」

 

「邪魔だぁ!」

 

「退いて貰うよ!」

 

「数だけは多いですね、無駄ですが。」

 

『ぐあぁぁぁ!!』

 

怒涛の攻撃で数をものともしない。

今の自分達をこんな悪魔払い達じゃ止めることなんて出来ないよ!

 

程なくして半数以上を倒したのを恐れてか他の悪魔払い達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

だったら最初から道を阻まないでよね。

 

「さあ、ラストだよ!」

 

「皆のお陰で早い!これなら堕天使の企みを潰せるかも知れねぇ!内容は知らんけど!」

 

奥への道が開けた。

全速力で突っ走る。

 

そして、奥についた自分達が見たものは…

 

 

磔にされたアーシアとそれを嘲笑う四人の堕天使だった。

フリードも近くにいる。

 

どうやら、何かの儀式でもしようとしてる様子だ。

 

「そこまでだよ!」

 

「なっ…貴様ら!」

 

「一体何者っす!」

 

「あの時の小娘か…」

 

「おろ?お早いご到着でございますね。面白いの見れると思ったのにざーんねん。」

 

「…チッ、後もう少しのところで邪魔が入るか!」

 

「テメェら!アーシアに何しようとしてやがる!」

 

「見るからに怪しい儀式…木場先輩。」

 

「早めにあの子を助けた方が良さそうだね。」

 

まさか、磔にしてるとは思わなかったけど…間に合った!

 

でも、アーシアはまだあっちの手にある。

早く助けないと。

 

「正念場だよ、皆!」

 

「はい。」

 

「ここまで来たんだ、しっかり助けましょう。」

 

「お願いね!さあ、そこの熊五郎とエセ神父!ついでにモブ堕天使を倒してハッピーエンドだよ!」

 

「ふん、底抜けの阿呆だな!グレモリーの悪魔がいれば我らに敵うとでも?」

 

「それが勝てちゃうんだなぁ。覚悟決めた主人公は何者にも負けないっていう法則を知らないなんておじさんやっぱり古いね!」

 

「下っ端の堕天使は私がやります。」

 

「三人だよ?大丈夫?」

 

「なら、僕も行きますよ。」

 

「…分かりました。では、先輩方はあのシスターの救出を。」

 

「うん、ありがとね!」

 

「頼んだ、二人とも!」

 

木場君と小猫ちゃんに三人の堕天使を任せて夕麻の方へと駆ける。

でも、もう一人厄介なのがいることは分かってる。

 

「あらら堕天使三人なのに足止めされてやんの。じゃああっしも頑張っちゃおうかなぁギャハハハ!」

 

「くそったれ神父!テメェの相手は俺だ!」

 

「およよ?雑魚悪魔君じゃあーりませんか!あっし的にはそこのクソチビを殺したかったんだけど…まいっか!」

 

「一誠、大丈夫なの?」

 

「俺だってやられっぱなしは嫌なんだ、俺達の友達を頼むぜねぷ姉ちゃん!」

 

「任された!」

 

一誠にフリードを任せる。

大丈夫、気合いと根性がある一誠なら勝てる。

自分の弟だ、姉である自分が信じないでどうする。

 

だから、一直線に走る。

  

「ネプテューヌ、さん…」

 

「アーシア!私を信じて!絶対に助けるから!」

 

「…はい、信じます…!」  

 

アーシアは辛そうだけど微笑む。

大丈夫、絶対に助ける。

こんな優しい子を助けられないなんて駄目だから。

 

「小娘一人で何が出来る!」

 

「一人じゃない!皆が力を貸してくれたんだ。主人公として決めさせて貰うよ!」

 

「抜かせ!儀式まで後少し…邪魔をするな!」

 

光の槍を手に持ち、こちらに槍を振るう。

 

木刀でそれと打ち合い、言葉を投げ掛ける。

 

「こんなことして何になるの!?悪いことをしても返ってくるんだよ!」

 

「黙れ、貴様のようなぬるま湯に浸かった人間に何が分かる!

力のない堕天使である私はこうしてでも力を手にいれる!

至高の堕天使になり、あの方の寵愛をいただくのだ…その邪魔をするな!」

 

「そんな身勝手を罷り通す程私は寛大じゃないよ!」

 

「人間風情が生意気な!少し前まで何も知らなかった小娘が!」

 

「何も知らないは理由にならないよ、知らないなら知ればいいでしょ!」

 

力を込めて木刀を振り抜き、光の槍を弾く。

体勢を大きく崩した夕麻に地面を蹴って近付く。

思い付きでぶっつけ本番だけど決めちゃうよ!

 

 

「クロスコンビネーション!」

 

 

怒涛の連続攻撃で一切の行動を許さない。

最後に斬り上げてから地面に叩きつける!

これこそ、最初の必殺技!

 

「ぐあぁぁ!?」

 

「そっちが悪事をやめる気がないなら容赦しないよ!」

 

「な、めるなぁぁ!」

 

夕麻が光の槍を投げてきて咄嗟に回避してしまう。

弾けば距離をもっと詰めて攻撃できたのに…

 

ふらふらと立ち上がり、夕麻はクスクスと笑いだす。

 

「ふぅ、ふぅ…ふ、ふふ…人間の癖にどうしてよ…どうしてそんなに強いのよ…?貴女も私を馬鹿にするのね。嘲笑うのね…やっぱり、力が要るのよ…力が!」

 

「馬鹿にしてないよ!物事を悪いように考えるのは良くないよ!」

 

「よく回る口ね…でも、いいわ。もう時間だもの。」

 

「時間…まさか。」

 

 

 

「あ、あぁぁッ!!」

 

 

 

アーシアから悲鳴が聞こえる。

そちらを見ると、アーシアから光のような物が出てくる。

あれが、アーシアの神器?

 

でも、どうして!

 

「儀式を少し早めさせて貰ったわ。完全な形で抜き取れないのは惜しいけど…これで聖女の微笑(トワイライト・ヒーリング)は私の物!アーシア、私のために死んでちょうだい!アハハハハ!」

 

「アーシア!」

 

光を手にして笑う夕麻を放っておいて磔になってるアーシアを解放する。

アーシアはぐったりとしており、辛そうだ。

 

「ネプ、テューヌさん…ごめんなさ…私…」

 

「謝っちゃ駄目だよ…謝るのは私の方!だから、死んじゃ駄目だよ!」

 

「優しいん、ですね…でも…神器は魂と深く結ばれていると聞いたことがあります…だから、私は…」

 

アーシアの言葉から力が消えていく。

助けられなかった?

…駄目だ、そんなこと、認められない。

 

まだ、助けられる筈だ。

ふと、夕麻の先程の発言を思い出す。

 

『完全な形で抜き取れないのは惜しいけど…』

 

そう言ってた筈だ。

完全に抜き取られてはいない。

つまり…まだ結びはある筈。

 

「アーシア。お願い、私をまだ信じてくれる?」

 

「…ネプテューヌさん…?」

 

「お願い。」

 

「…はい。ずっと信じてます、お友達、ですから…」

 

力なく微笑んだ後、アーシアは動かなくなる。

 

…大丈夫。

こんなシリアス認めない。

 

友達を死なせるようなシナリオも、そんなことをした相手も。

 

ぶっ壊すんだ。

 

「可哀想なアーシア。馬鹿な相手を信じたまま死ぬなんてね…」

 

「死んでないよ。まだ、死んでない。」

 

「ハァ?知らないの?神器を抜き取られた者は…」

 

「夕麻からもう一度奪い返せば、元に戻る筈だよ。

だから、その繋がりを断ち切る。」

 

「特別な力もない人間が何を言うかと思えば笑わせる!

既に神器は私に力を与えている!私は不滅の存在、至高の堕天使レイナーレだ!アハハハハハハハ!」

 

「それは違うよ。私にだって1つ、とっておきがあるんだから!」

 

そうだ。

理解した。

 

先程から力が湧いてくるのは怒りなんかじゃない。

信じてくれる人達の心なんだ。

 

自分を信じてくれる分だけ、自分は強くなれる。

 

なら、その信頼に応えなきゃいけないよね。

 

信じる心(シェア)が、私に力をくれる。

これから、その力を見せて上げるよ、レイナーレ!」

 

己の内側にある力を正しく認識する。

少し、困惑したけど大丈夫。

正しく使ってみせるよ。

 

手を差し出す。

 

『ずっと信じてます、お友達、ですから…』

 

信じる心(シェア)を力に。

 

それが自分に出来るただ1つの事!

 

手のひらに電源マークのような物が現れる。

これが、シェア。

感じる、信じてくれる人の心が!

 

アーシアの心はまだ消えてない!

 

 

「刮目せよ!」

 

 

シェアを自分の中へと。

すると、力が更に湧き上がる。

 

姿が変わる。

大人の女性のような体型へと変わっていく。

紫と黒が基調のレオタードへと衣装が変わる。

 

持っていた木刀が刀へと変化する。

 

そうか、これが自分の力。

 

シェアエネルギーを力へと換えるのが自分の唯一の能力!

 

この姿を名付けるなら…

 

 

「パープルハート、ここに見参!」

 

 

自分でも驚くくらい凛々しい声。

渦巻いてた心が冷静になるのを感じる。

皆が自分を助けてくれる。

 

「な、なんだ…それはなんだ!?」

 

「さっき言ったでしょうレイナーレ。これが、私の力。

シェアの力よ。貴女の歪み、私が断ち切るわ!」

 

「姿が変わったからなんだって言うの!私は至高の…!」

 

「同じことしか言えないのなら─」

 

軽やかに地を蹴る。

凄い、身体の軽い…今なら、出来なかった動きも出来る筈だ!

 

レイナーレの後ろに回り込み、刀を構える。

 

 

「─その口、閉じて貰うわ。」

 

「速ッ…!」

 

「遅い!」

 

「ご…っ!?」

 

パワーエッジ!

 

力を込めて振るった一撃が前の姿とは比べ物にならない程の威力でレイナーレを吹き飛ばす。

もう治ってる…まだまだ!

 

吹き飛んだレイナーレへ追い付いてシェアを刀に纏わせる。

 

勝ちに行くわ!

 

 

「ビクトリィースラッシュ!!」

 

 

Vの字に斬り、爆発。

シェアの応用でこんなことも出来る…!

抜き取るのが目的だ、この勝負、貰った!

 

「ガァァァ…!なんだ、これは…!?私は、私、は─アァァァ!?」

 

「!そこね!」

 

突如、レイナーレが苦しみだした。

自分には見える。

シェアで繋がってる自分にはアーシアの魂が!

 

鎖が繋がれたようにレイナーレにある神器…その鎖を断ち切る!

 

「アーシアに返しなさい!」

 

「く、来るな!来るなぁぁぁぁ!?」

 

「一閃!」

 

レイナーレに繋がっている鎖のみを斬り裂く。

 

パキン、という音と共にレイナーレから光が漏れだす。

 

「あ、あぁ…駄目、それは私の…私の力だ!」

 

「いいえ、これは…私の友達の力と魂よ!」

 

光へ手を伸ばし、レイナーレからそれを抜き取る。

 

温かい光。

アーシアの心そのもののよう。

 

急いでアーシアの下へ行き、その光を埋め込む。

 

「アーシア、お願い…生き返って!」

 

「おのれ…おのれぇぇぇぇ!!ふざけるなぁぁ!」

 

「…しつこいわね。私、かなり怒ってるって気付いてないのかしら。」

 

槍を構え、ボロボロの状態で向かってくるレイナーレに刀を振るう。

生きて罪を償わせる。

本当は許せないけど…それを決めるのはアーシアだから。

 

「私、は…認め、て…」

 

振るった刀の一撃は槍は砕け散り、レイナーレは気絶する。

 

安心して欲しい、峰打ちだよ。

 

…何はともあれ、一件落着。

これで後は…

 

周りを見渡すと、三人の堕天使は倒されたようで倒れてる。

気絶させるに留めてくれたようだ。

 

フリードの姿はない。

逃げたのかな…?

 

代わりにボロボロの一誠がやってくる。

小猫ちゃんと木場君もやってくる。

 

「アーシア…と、誰!?」

 

「あら、一誠。姉の姿を忘れたの?」

 

「え、は!?ねぷ姉ちゃん!?嘘だろ!」

 

「急成長ってレベルですか…?」

 

「その姿は?」

 

「そうね…主人公の特権って所かしら?」

 

「なんじゃそりゃ…そうだ、アーシアは?」

 

「分からない。抜き取られた神器をすぐに埋め込んだから後は…」

 

「アーシア次第か…」

 

ぐったりと一誠はアーシアの近くに座り込む。

 

ところで、この姿は戻らないのかな?

…まあ、今しばらくはこのままでいいかな。

 

木場君と小猫ちゃんは堕天使達を縛り上げ、拘束した。

 

その少し後に変化が訪れる。

 

「…ん…ここは…」

 

「アーシア!」

 

「イッセーさん…ネプテューヌさんも…助けてくれたんですね…」

 

「よかったわ…って私が分かるの?」

 

「はい…何となく、ですけど…」

 

目を覚ましたアーシアは少し弱々しい。

どうかしたのだろうか。

起き上がる様子もないので、自分が代わりに上半身を抱き起こす。

 

「アーシア、どうしたの?」

 

「分かりません…」

 

「…どうやら、とても弱ってます。」

 

「小猫ちゃん、分かるの?」

 

「はい、少しだけですけど…このままだと…」

 

「そ、そんな!どうにかならないのかよ!?」

 

 

 

「─出来るわよ、1つだけ。」

 

 

 

「!リアスちゃん…!来てくれたのね!」

 

「ネプテューヌ…随分と姿が変わったわね。」

 

「私の事は後よ。それより、助けられるの?」

 

「ええ…ただ、その子には辛い選択かもしれないわ。」

 

そう言って取り出したのは悪魔の駒。

確か、僧侶の駒…

 

悪魔に転生させるということだろうか。

 

「その子の同意があれば転生させ、眷属にするわ。でも、しないのなら…」

 

「…そう。アーシア、貴女はどうしたいの?」

 

「…私は…」

 

「…アーシア、自分の心に従って。」

 

アーシアは俯いて、考える。

時間はない。

いきなりの選択肢。

 

悪魔になる。

それは自身の信仰する神に対する冒涜になるのではないかと考えているのかもしれない。

 

でも、ここはアーシアの心に従って欲しい。

 

「私、は…私、皆さんと…」

 

アーシアの声が震える。

 

でも、言い切ろうとする意思を感じる。

だから、自分達は黙ってそれを聞く。

 

 

「─私は、皆さんと生きたいです…!」

 

 

「…決まりね。」

 

「お願い、リアスちゃん。」

 

「ええ。」

 

アーシアには僧侶の駒を埋め込む。

 

するとどうだろう。

アーシアの顔色が良くなっていく!

どうやら無事に悪魔になれたらしい。

 

嬉しくなって一誠と自分はアーシアを抱き締める。

 

「よかった、本当に!」

 

「アーシア…!」

 

「はい…!ありがとうございます、皆さん!」

 

うん、やっぱりこうでなきゃ。

 

犠牲がある終わりなんて好きじゃない。

ハッピーエンドじゃなくちゃね!

 

こうして、アーシアを巡る事件は幕を閉じる。

 

ちなみに、自分の変身は解除してって思うと解除できるようで元のネプテューヌとしての姿に戻るとどっと疲れた。

 

どうやら、あの変身は普段よりも力を発揮するからか解除したら急激な疲労が襲うらしい。

まあ、デメリットあるのも仕方ないよね。

 

主人公として、きっちり目的も果たしたし、しばらくグデーッとしてもいいよね?

 

後、あの後リアスちゃんに質問責めされたけど自分だってよく分かってないと伝えると頭を抱えていた、ドンマイ!

堕天使連中もあっちの偉い人にどうするかを任せるらしい。

アーシアも反省してくれればいいという事で許して上げた、聖女!

 

 

「いやぁ、一件落着!主人公として華麗に決めちゃったよね!」

 

夜になって、自分の部屋でゲームをする。

一誠はもう寝てる。疲れてたろうし、よく頑張ったしね!

アーシアはリアスちゃんが一日面倒を見るようだ。

一日かぁ、その後どうするのかな?

 

自分はゲーム!

疲れたけどそろそろゲームしないと発作が…!

 

「それにしても…」

 

自分は何なんだろう?

この物語の主人公で変身できちゃう超絶美少女だけど、何者なのかよく分かってない。

リアスちゃん達と活動してると分かるかなって思ったけどあんまり進展ないし。

 

というか変身でより一層気になったし。

人間じゃなかったりする?

 

うーん、悪魔というわけでもないし、堕天使でもないし。

天使?いやいや、まあねぷ子さんは天使的存在だけど種族は違うだろうし。

 

益々気になる。

 

「…まいっか!」

 

少し考えて、それを思考の彼方に放り捨てる。

今がよければ、それでいいじゃん!




ようやく女神化出来ました。
やっぱりこれがないとやってられないぜ(シェアキメる)

これからもどんどん更新してハイDをねぷねぷにしますよ!
出来てるか不安だけど!


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後日談だけど、まだまだ続くからよろしくね!

この小説、ネプテューヌが主役なんですけど、実は最初はネプギアにしようか迷ったんですよね…まあ、ネプテューヌにして正解でした。
書きやすいし、楽しいし。
あ、でもネプギアちゃんも好きですよ?むしろネプギアちゃんの方がですね?ええ、はい、私はプラネ民ですからどっちもいけますけどね?ほら、ね?


駒王でやらかした部下がこっちに送られてきたという報せを聞いて、口うるさい部下に言われて戻ってきた。

既に処遇等は決めているらしい。

リーダーの判断なく進められる処遇、これ如何に。

 

質問等も終えており、資料を渡された。

処遇も載ってるが…

 

「慈善活動、ね。」

 

「ええ、堕天使のイメージは最悪の一言ですから、少しでもイメージアップに貢献してもらうためにも。まあ…またやればその時は。」

 

「怖い怖い。人間を下に見る奴が人間の所でねぇ…」

 

「他にも目を通してくださいよ。」

 

「あいあい。」

 

面倒ながらも資料に目を通す。

 

…ふと、ある一文が目に留まる。

 

「おい、この小さい女が変身したってのは?」

 

「ああ…どうやら、姿が別人レベルで変わって強さも向上していたとか。」

 

「ふぅん…」

 

変身、ね。

 

なるほど…面白い。

中々、興味を引く内容だ。

 

「用事思い出した、じゃあな。」

 

「は?ちょ、仕事残って…おいゴラァ!逃げんじゃねぇ!」

 

そそくさと逃げる。

捕まったら面倒だし、仕事なんてしてる暇があるなら他にやることやる。

 

そう簡単に執務なんぞするか馬鹿。

 

さて、駒王町か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やほー!ネプテューヌだよ!

 

アーシア奪還から1、2週間経ったかな?

アーシアを一日面倒見てくれたリアスちゃんからこんな提案があったんだよね。

 

『ネプテューヌとイッセーの家に居させてあげられない?』

 

そう言われても、自分達で決められない。

何せ、生活費とかの問題でお父さんとお母さんに聞かなきゃいけない。

人がいいからって自分も居れて三人目なんて…

 

『あら妹が出来たみたいね、ねぷちゃん。』

 

『ウチとしては大丈夫だぞ?』

 

ま さ か の 了 承

 

え、もしかしてウチってお金あるの?

そう言えばゲーム機とか買ってもらった時にポンとお金出してたし…わお、あり得る。

 

そんなこんなでまた家族が増えたんだよね。

 

アーシアがウチに来たとき、皆大はしゃぎだったなぁ。

もちろん、自分もね!

 

『これからもよろしくお願いします!』

 

笑顔で言われた時、嬉しかったよ。

守れたんだなぁって。

 

これも、シェアのお陰だよね。

まさか、変身できるとは思わなかったけど…

あ、でも困ったことが1つあってね?

 

『ねぷ姉ちゃんが変身するとさ…エロいよな。』

 

ヤバイと思ったよね。

一誠の標的にされるのかと思ったけどあんまりそういったことはなくて…

 

何が困ってるんだ、って?

 

変身した時、視線がバレバレな事かな。

姉にまでそういう目線を送るのはよろしくないから怒ったけどさ。

懸念していたことが起こってしまったか~ってなったよ。

 

リアスちゃん達とも仲良くなってきたと思うんだよね。

 

前なんか家でゲーム大会したけどまさか木場君があそこまで才能を秘めているとはね…

リアスちゃんと朱乃ちゃん、アーシアはゲーム事態あまりしないようで慣れてなかったようだけど木場君に関しては初めての癖にすぐに操作覚えて私と渡り合ってきたからね。

居るもんだね…天才って。

 

「ネプテューヌさん、今日は休みなんですか?」

 

「うん!あーちゃんは一誠とデートなんでしょ?」

 

「で、デートだなんてそんな…!ただ、頼まれてたものを買いに行くだけで…」

 

「いいのいいの!あーちゃんみたいにしっかりしてくれる子が一誠とくっつくなら応援しちゃうよ!」

 

今更だけど、家族になったのもあって妹みたいな感じだからアーシアの事を今後はあーちゃんって呼ぶことにした。

本人もそういう呼ばれ方したことないそうで嬉しそうだったし、成功だね!

 

そんなあーちゃんは今日お母さんに頼まれてた物を一誠と買いに行くんだそう。

何で自分は駄目なのかなと思ったけど、察した。

あーちゃんは一誠に惚れてるっぽいんだよね。

まあ、惚れるのは分かるけどね、我が弟ながら優しいし熱血だし!

スケベなのがなければなぁ。

 

「じゃ、私は少し出掛けるね!」

 

「え、どこへ?」

 

「ん?んー…まあ、その辺!」

 

特に計画も無し。

良いことがあればよし、悪いことがあれば愚痴る。

それだけ。

 

靴を履いて、外に出る。

日差しが気持ちいいね~外出はこれだから好きだ。

でも中でゲームするのも同じくらい好きだ。

 

とりあえず、暇潰しに歩こう。

 

シェアを認識したあの日以降、色々と見方が変わった。

誰が自分を心から信じてくれてるか、何となく分かるようになった。

誰からのシェアなのかがぼんやりとだけど分かるようになったんだよね。

 

「これが新要素って奴だね、間違いなく!」

 

まあそれは置いておくとして。

 

それから色々な人に挨拶されたり、話しかけられたり。

楽しい日だと実感する。

覚えてもらって、好感を抱いてもらってるんだから嬉しいな。

 

うん、これならもし自分が…っと考えない考えない。

 

で、何やかんやで…

 

「無意識とはいえ行き着く果てがゲームセンターかぁ。

よし、今日はここに決めた!」

 

中に入ると、少しだけど人が居るね。

大人もいるけど、お仕事休みかな?

 

どれをやろうかなと歩いていると

 

「と、取れねぇ…こいつ俺から金を取ろうとしてるな…!」

 

わお、ワルそうな見た目のイケオジがいつぞやのクレーンゲームにやられてる。

んー…見てて可哀想になるなぁ。

 

イケオジに近付いて話し掛ける。

 

「ねぇおじさん!そんなんじゃ甘いよ!」

 

「あぁ?んだとこのガキ!これで取ってやるから見てろ!」

 

「良いけど~…ワタシの助言を聞いてからでも遅くないと思うな。」

 

「助言…ほう、つまりこのクレーンゲームに勝てるってのか?」

 

「余裕なんだな、これが!まあ、私の言う通りに動かしてみなよ!」

 

「そこまで言うならやってやろうじゃねぇか。」

 

ていうか、フィギュアの箱かぁ。

初心者に難しいものを取ろうとするとは…

最初はクレーンゲームの仕組みを理解してからこういうのに挑むべきなのに事を急いて金を失くしていく愚…

 

「ストップって言うまで動かしてね!」

 

「分かった。」

 

「ん~……ここ!ストップ!」

 

「ああ?かなり横じゃねぇか。」

 

「ふふん、まあまあ。」

 

「んじゃ、次は前に動かすか。」

 

「オーラーイオーラーイ…はいストップ!」

 

「今度は普通だな…これで取れるのか?」

 

「結果を見れば、私の正しさが分かってしまうよ!」

 

クレーンが景品である箱に降りていく…その時だった!

 

「お、おお!?クレーンが箱の間に…馬鹿な!そんな技があるのか!?」

 

「そして、このまま穴に…シュー!!」

 

「信じられねぇ…こんな技があるなんてよ…」

 

箱を取り出して、未だ信じられぬ顔のおじさん。

ふっふーん、ねぷ子さんにかかればゲームセンターを攻略するなんて楽勝だもんね!

 

その後、お礼と言われて自販機のアイスを奢ってもらって一緒に座って食べてる。

 

「にしても、嬢ちゃん、一人でここに来たのか?」

 

「そうだよ!今日は高校も休日だし、暇だからね!」

 

「その見た目で高校生!?詐欺かよ…普通小学とか中学だろ!」

 

「詐欺って失礼な!ま、ねぷ子さんは若さを保ってしまう超絶美少女だから仕方ないけどさ!」

 

「なるほどね…そういや、名前聞いてなかった。」

 

「おっと、初めて見る顔のおじさんにはしっかりと私を覚えてもらわないとね!私はネプテューヌ!この物語の主人公だよ!」

 

「ネプテューヌ…海王星たぁ面白い名前だな。」

 

「そうかなぁ?主人公らしいオンリーワンな名前だと思わない?」

 

「まあ確かにな。」

 

「おじさんの名前は?」

 

「俺?俺は、そうだな…おっちゃんじゃ駄目?」

 

「えー…まあいいけど!その見た目なら間違えないし!」

 

「…ネプ子よぉ、良い奴だなぁお前。」

 

しみじみと言われて頭を撫でられる。

無骨な手には優しさを感じて、されるようにされとく。

 

「ねぷぷ…おっちゃん、撫ですぎ!」

 

「わりぃな。」

 

「良いけどさ~私じゃなかったら犯罪だよ?」

 

「へぇへぇ、反省してやすよっと。」

 

アイスを食べ終える。

たまにはチョコアイスもいいもんだね。

おっちゃんどこか行く気配見せないし、暇なんだなぁ。

 

おっちゃんは少しした後、話し掛けてくる。

 

「ネプ子、例えば何だがよ。」

 

「んー?」

 

「特別な力が誰かに宿ってて、それが世を乱しかねない力だとする。お前はそれを排除しようとするか?」

 

「おおう、急だね。」

 

「まあ、例えばだよ。で、どうする?お前はそいつを消すか?」

 

「え、何で?必要ないよ。」

 

考えるまでもないので消す必要はないと答える。

おっちゃんは視線をこっちに向ける。

 

「理由を聞いても良いか?」

 

「だってさ、危険な力でもその子自身は危険とは限らないじゃん。話も理解もしないで身勝手な判断で消しちゃうのは駄目じゃないかな。」

 

「もし、暴走したら?」

 

「止めるよ!暴走ってことは本人の意思とは違うことをしてる可能性だってあるじゃん?なら、止めてどうすればいいか私も悩む!」

 

「…理想論じゃねぇか?」

 

「理想論も口に出来ないで主人公はやれないよ!」

 

「…ハッハッハ!それもそうか!いや悪いな、お前さんの主人公力を確かめさせてもらったぜ。」

 

「ま、まさか試されていたなんて!?おっちゃん、やるね!」

 

「そうだろう?ま、お前は主人公やれるよ。頑張れよネプ子。

何か困ったら…ここに連絡してみな。とりあえず話は聞いてやるよ。」

 

おっちゃんはそう言って番号の書いてある紙を渡してきた。

名前は…無いや。

 

「今更だけど、おっちゃんってヤの付く人?」

 

「ちげぇよただのおっちゃんだよ。」

 

「そっか!」

 

「…さて、俺はそろそろ行こうかね。ありがとよ、ネプ子。」

 

「うん、今度はアイスじゃなくてプリンを奢ってねおっちゃん!」

 

「うわがめつ。考えといてやるよ。」

 

そう言って手をヒラヒラと振っておっちゃんは去っていった。

 

んー…考えても仕方ないや!

おっちゃんはおっちゃんだよね!

 

それから少しして、自分は家に帰った。

 

またちょくちょく会いそうだなぁ、おっちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町を歩きながら、先程の出来事を思い出す。

 

「ネプテューヌね…」

 

直接会って感じたのは、この世界にとってネプ子の力は異端だ。

異物と言ってもいい。

今まで感じたことの無い強い力を感じた。

 

もっとも、俺クラスじゃないと気付けない代物だろうが…

 

1つの考えが浮かんで、すぐにその考えを振り払う。

 

「話も理解もしないのは…そうだな、寂しいもんだ。」

 

言われて気付くとは思わなかったが、確かにその通りだと思う。

 

底抜けに明るい奴だと理解して、これから苦労するだろう未来に耐えられるか心配する。

何と言うか、要らん苦労まで背負いそうだ。

 

電話番号、しかも自分のを渡した時は打算とか考えてなかった。

何となく、放っておいたらくたばるのではないかと思った。

 

「会って間もない小娘に何を考えてるんだかな。」

 

追々その事も理解するだろう。

 

今のところの結論を出した時、携帯が鳴る。

名前を見ると、顔がひきつる。

 

「…あー、この電話番号は、現在使われて─」

 

『─ますよね?いい加減帰ってきてもらっても?』

 

「珍しい研究対象が─」

 

『おい。』

 

「はい。」

 

『帰ってこい。いいな?』

 

「はい、帰ります!すいませんした!」

 

ドスの効いた声に背筋を正して答える。

駄目だ、逆らえねぇ。

 

電話を切り、執務に戻るべく本部に向かう。

 

この役目、出来ればぶん投げてぇなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきた自分は絶望していた。

何故って?

 

冷蔵庫にプリンが無いからだよ!

普段、『ねぷの』って書いてあるプリンがない!

絶望した!プリンを買ってなかった自分に絶望した!

 

「私としたことがプリンが無いなんて…!飢え死に待った無し!?」

 

「ねぷちゃん、明日買っておいてあげるから今日は我慢ね。」

 

「やったー!おばさん大好き!」

 

「私もねぷちゃんが大好きよー」

 

抱き付くとよしよしと頭を撫でられる。

おっちゃんとは違った優しさを感じる。

お母さんやお父さん、一誠からは特別シェアが強い。

 

何て言うかな、疑いとかそういうのが無いんだよね。

完全に信じきってくれてるっていうか。

だから少し嘘を付いてるのが辛いって言うか…

 

「ねぷちゃん。」

 

「何~?」

 

「ありがとね、ウチに来てくれて。」

 

「えー?どうしたの急に?」

 

「ほら、前に話したことあるでしょ?一誠の事。」

 

「うん。」

 

お母さんは子供を宿しにくい体だそうで、二度の流産で子供は諦めかけていたそう。

でも、八年後に一誠が生まれた。

 

だから、お母さんとお父さんは一誠に目一杯愛情を注いだし、一誠も二人を愛してる。

 

そう教えてもらったことがある。

 

「ねぷちゃんがウチの子になってくれた時、どれだけ嬉しかったか…私達がその明るさにどれだけ助けられてきたか…だから、ありがとね。」

 

「ううん!私だって、家族として受け入れてくれてありがとね!私、お母さんとお父さんが大好きだよ!」

 

「あら、おばさん、じゃないのね?」

 

「んー…恥ずかしかったけど、言ったらスッキリした!これからはこう呼ぶね!」

 

また1つ、家族の絆が強くなった気がするよ。

こういう時間を大切にしたいよね!

 

あ、ちなみにさっきの話は一誠にはしてないよ。

そういう話はしなくても、家族の絆に変わりはないよね!

 

「ただいま~」

 

「ただいま帰りました!」

 

「あーちゃんと一誠帰ってきたね。」

 

玄関まで少し小走り。

 

玄関には笑顔のあーちゃんと少し疲れた様子の一誠がいた。

 

「おかえりー!どうだった?」

 

「楽しかったです!」

 

「おーよかったね!」

 

「ねぷ姉ちゃん…」

 

一誠があーちゃんに聞こえないように話し掛けてきた。

 

「どったの一誠?少しお疲れだけど。」

 

「女の子って…難しいんだなぁ。」

 

「あーうん…お疲れさま。」

 

頑張ったね一誠。

よしよしと頭を撫でてあげる。

まあ、自分があまりファッションとかに興味示さないからなぁ。

これなら、少し位は買い物とか付き合わせておくべきだったかな?

 

まあ、いい経験になったということで1つ。

 

その後、いつものように帰ってきたお父さんがプリンを買ってきてくれたのを感動した自分は拝み倒した。

まさか、気付いてくれていたとは…兵藤家の大人は聖人か!

 

いつも通りのように夜を過ごして寝ることに。

…ちなみに。

 

「あーちゃん、もう生活には慣れた?」

 

「まだ少し…でも、皆さんが優しいおかげで慣れてきてます。

これも主のお導きですね…いたっ。」

 

「神様への感謝をしたら悪魔的に痛みが走るってやっぱい辛いよね…」

 

あーちゃんは自分の部屋で一緒に寝てるんだ。

まあ、ベッドは違うんだけど。

元々一人部屋にしては広かったし、可愛い妹同じ部屋なんて嬉しいよね!

 

で、あーちゃんにも少し悩みがあったりして。

神様への祈りとか感謝を日常的にしてるあーちゃんは悪魔の特徴なのか頭痛とかが走るみたいなんだよね。

 

本人は大丈夫って言うけど、どうにか出来ないのかなぁ…

シェアの力でも、こういう種族的なのは変えれそうにないし。

やっぱり、見ていて不憫に思うし助けてあげたいんだけどな。

 

「まあ、今日は寝よう?明日は学校だし、遅く起きてると朝辛いよ!」

 

「はい、そうですね。では…おやすみなさい、ネプテューヌさん。」

 

「うん、おやすみあーちゃん!」

 

あーちゃんも駒王学園にリアスちゃんが入れてくれたんだ。

そしたら、大人気で皆にちやほやされてたね。

本人は困ってたけど、ああいう時期が自分にもあったなぁと自分的にはしみじみ。

所属はもちろんオカ研だよ!

 

とまあ、後日談的な話もここまでにして、寝ちゃうね!

明日もいい日でありますよーに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁ、日差しが気持ちいい日だね!

こんな日は部員皆でカラオケでも…と思ったんだけどさ。

 

「会いに来たぜ、愛しのリアス。」

 

「え~…?」

 

これはどういう事だってばよ…?

自分としては全く理解できてないけど、リアスちゃんとかは理解してるっぽい。

 

何か急にホストっぽい男の人が来たし、リアスちゃんはウンザリした顔だし、一誠は口をあんぐりと開けてるし!

 

ど、どうすればいいのかな、この場合?




おっちゃん、一体何ゼルなんだ…!
きっと黒歴史があってイテテな物書き殴ってたに違いねぇぜ!

ところでですね、とっても重要なことがあるんですよ。

この後のレーティングゲームにネプテューヌをどうぶちこむかなんですよね~…


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ネプー・ポッター 不死鳥の(チームを倒す)騎士団
婚約騒動!?止めるんなら穏便に…無理だよねー!


いえーいピースピース。

四女神オンライン過疎ってるぞどういうことだ!(当たり前です)
くそ、魔法使いネプギアちゃんに癒されるとするぜ…!


ゲームスタート!

 

新挨拶やってみたよ!

というわけでネプテューヌだよ!

前回の続きだけど、あらすじは前書きに頼んであるから大丈夫だね!

 

で、部室に突然やってきた他社作品だとオ・ノーレって叫びそうな声の人だけどリアスちゃんの知り合いっぽいね!

 

話し掛けようかなって思ったけどリアスちゃんがウンザリした様子だし、何かあるね。

 

「ライザー…貴方と結婚はしないって言ってるでしょ?」

 

「おいおい、俺じゃ不満か?」

 

「不満も不満、大不満よ。お父様が言うには酒に酔った勢いって話じゃない!真に受けるなんてどうかしてるわ!」

 

「だが、正式な飲みの席でした会話だろう?そういうのが罷り通るのもまた貴族社会って奴だリアス。」

 

うーん、リアスちゃん困ってるっぽい?

助け船出した方がいいのかな…

 

そう考えてると一誠がちょんちょんと自分の肩を指でつつく。

 

「どったの一誠?」

 

「いや、部長に婚約者なんていたのか?ショックで叫びそうになったんだけど…」

 

「私が知ってたら一誠にも伝えるに決まってるでしょ?」

 

「ところで、二人はあの人のことは?」

 

「うわ、突然参加してきたな木場。無いぞ?」

 

「だよね。あの人はライザー・フェニックス。フェニックス家の次期当主でレーティングゲームの実力者の一人だ。」

 

「レーティング…ゲーム?」

 

「レーティングゲームというのは王を含めたチームが戦って先に王を討ち取った方の勝利という冥界のゲームだよ。」

 

「はえー…冥界って凄いんだね~…」

 

木場君の話を聞いていると、あっちの話もヒートアップしてるようだ。

困ったことに、ライザーって人は婚約をそのまま押し通そうとしてるらしい。

 

まあ、リアスちゃんの家も色々凄そうだもんね。

 

「ところで、お前の眷属はこれで全部か?」

 

「そうだけど、それが?」

 

「いやなに…少ないなと思ってな。俺みたいに増やせばいいものを。」

 

ライザーが指を鳴らすと一杯女の人が現れる。

全部女の人じゃん!一誠が暴れちゃう!

 

というか、この部室広いよね…

 

「お、おのれ…ハーレムを築いているだと…」

 

「一誠、どうどう…」

 

「…それで?そこの人間はなんだ?」

 

「私?」

 

「ああ、人間なんぞが何故この場にいる?悪魔だけだと思ってたが…」

 

「私はネプテューヌ!よろしくね!この物語の主人公で超絶美少女だよ!」

 

「お、おう…」

 

「ちなみに、何て呼べばいい?私としては、あだ名を付けるのもありだと思うけど本人の了承とかあった方がいいかなって!」

 

「なあリアス、この人間凄い気安いんだが。」

 

「私の部員よ。」

 

「そうか…」

 

自己紹介してから握手を求める自分にライザーは自分の手を叩く。

少し痛いけど、ショックの方が大きかったり小さかったり…

 

「気安いぞ、人間。何の事情でリアスの庇護下にいるかは知らんが俺は下等な人間と喋る口を持ち合わせていないんでな。」

 

「でも、今喋ってるから持ち合わせてるよね?」

 

「…ふっ。」

 

「朱乃?」

 

「いえ…何も。」

 

「私としては、そういう差別的なのはポイント低いよ?ちゃんと話して理解しないとしっかりとした家庭は築けないと言いますか!

リアスちゃんだって勝手な人は嫌だもんね?」

 

「え、ええ。ネプテューヌの言う通りよ、私は私として見てくれる人と居たいの。悪いけど、この話は無しにして。そもそも、卒業してからでもこの話は遅くないでしょう?」

 

「リアス…俺はフェニックス家の悪魔だ。お前もグレモリー家の悪魔だろう?どこの馬とも知れん奴よりも、純血同士で繋がった方がいいと俺は思うがね。」

 

「そうやって拘って、何になるのかしら。」

 

「頑固なのは汚れだけで十分だと思うけどなぁ。

ほら、今日はいい切っ掛けになるだろうから一回穏便にリアスちゃんと話をしようよ!」

 

「ええいさっきから喧しい!これは貴族同士の話し合いだ!

人間が口を挟むな!」

 

「ねぷ姉ちゃんは変なこと言ってねえだろ焼き鳥!」

 

「や、焼き鳥!?」

 

「ふっ…ふふ…!」

 

「朱乃?」

 

「何でも、何でもないのよリアス…!」

 

一誠の焼き鳥発言にライザーの眷属が少し怒ってるっぽい雰囲気。

困ったなぁ、穏便に解決したいんだけど…自分のために怒ってくれてるっぽいから叱れないといいますか。

 

「眷属の躾がなってないようだなリアス…俺がやってやろうか?」

 

「やめなさい、ライザー!」

 

「やいこの焼き鳥!部長が嫌がってるのに迫るだけに飽きたらずねぷ姉ちゃんを人間人間って呼びやがって!名前を教えたんだから呼べやコラァ!」

 

「おおう…一誠?何もそこまで怒らなくてもいいんだよ?

しかも怒るところそこなの?」

 

「…口の利き方に気を付けてもらおうか。やれ、ミラ。」

 

「御意。」

 

「いいっ!?」

 

ライザーが視線を遣り、指示するとミラって人が棒を持って一誠へ向かってくる!

 

おっとぉ、それを黙ってみてるねぷ子さんじゃないよ!

 

一誠の前に移動して、振り下ろされる棒を白羽取りする。

ふふん、このくらい主人公には普通だね!

 

「なっ…」

 

「言い過ぎたのは一誠の代わりに謝るけど、暴力を振るうようなら私も容赦しないよ!」

 

「人間の癖にやるな。…いいだろう、リアス。こういったことはレーティングゲームで決めようじゃないか?」

 

「…レーティングゲームを決め事に使うのはよくないと思うけど?」

 

 

 

「それに関しては問題ありません。」

 

 

 

「ねぷ!?また誰か来た!?」

 

今度は銀髪のメイドさんが現れた。

 

こら一誠、嬉しそうにしない。

今大事なシーンだよ?

私もシリアスシーンかどうかを見極めてる最中なんだからね!

 

「リアス様、ライザー様。レーティングゲームによって婚約を破棄するか否かを決めることを魔王様はお許しになりました。」

 

「…かの最強の女王様からわざわざありがとうございます。

聞いたなリアス。では、そうだな…一週間後、今後について決めようじゃないか、力でな。」

 

「…ええ、分かったわ。」

 

「そこの人間。ネプテューヌ、だったか…貴様もかかってきてもいいんだぞ?」

 

「そう言うってことは自信ありなのかな?」

 

「人間一人加わって、勝てるとは思えんがな。」

 

ライザーはそう言って眷属達と去っていった。

 

うーん、こうなるとは思わなかったけどチャンスなのかな。

一誠を殴ろうとしたのは事実、ぶっちゃけイラッと来たけど…それを理由に参戦するのは、うーん…

 

「ネプテューヌ様は、如何なさいますか。」

 

「参加できるの?」

 

「非公式であるこの試合だけを見れば…参加は出来ましょう。」

 

「そっか…うーん、分かった!やるよ!」

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

「かしこまりました。では、私はこれで。」

 

「ええ、ありがとう。」

 

「…」

 

「ねぷ?」

 

今、メイドさんから一瞬だけ視線を感じたような。

 

話し掛けようにも、もう行っちゃったし。

…気のせい、かな?

 

「こうなった以上、勝ちにいくわ。皆、力を貸して!」

 

「言われずとも、ですわ。」

 

「了解です。」

 

「騎士として、王に従います。」

 

「部長のためにも全力でやります!」

 

「えっと…頑張りますね。」

 

あーちゃんは戦いを経験してないから仕方ないよね。

まあ、自分も言える位経験してる訳じゃないけどね!

 

「ネプテューヌ、ありがとう…人間の貴女を悪魔の問題に巻き込んで…」

 

「いいのいいの!私だって一誠を殴られそうになって怒ってたりするしね!特訓でしょ?頑張るよ!」

 

「ええ…特に、変身した貴女との特訓なら無駄になるなんて事はない筈よ。」

 

「へ、変身するの!?疲れるから嫌だな~」

 

「あら、貴女の大好きな百個限定プリンを買ってあげようと思ったけど…やめておいた方が良さそうね。」

 

「そんなこと無いよ!やる気十分!私でよければ特訓に付き合うよ!」

 

(チョロいなぁ)

 

(チョロいですわね。)

 

(羨ましい…)

 

(ネプテューヌさん…)

 

(おお、ねぷ姉ちゃんの変身が見れるのか!あまりしてくれないから期待大!)

 

うん、微妙な視線を感じるけど気にしない。

気にしないったら気にしない。

 

にしても特訓かぁ…どうするのかな?

 

「特訓…つまり、合宿ね!」

 

「…え"っ」

 

「あら、どうかしたの?」

 

「いやぁ…ゲーム持ってくのは?」

 

「駄目よ。」

 

「えー!?」

 

「…と言いたいけど、まあ、少しだけなら。」

 

「リアスちゃん大好き!持つべきは友達だね!」

 

「調子いいんだから…」

 

特訓、合宿。

中々のイベントだね!これは全力で行かないと損だね。

 

この後、明日の合宿に向けて早々に解散することにした。

 

でも、教えられるほど強いのかな、自分。

 

帰り道で、一誠とあーちゃんと歩いていると一誠が話し出す。

 

「ねぷ姉ちゃん、明日から頼むぜ。」

 

「んー…分かったけど、あんまり期待しないでね?」

 

「いやいや、ねぷ姉ちゃんの強さは俺が一番知ってるんだ!

だから、自信持ってくれよ。」

 

「そうですよ、ネプテューヌさん!」

 

「あはは、二人に言われたらポジティブに行っちゃうよ!」

 

「それでこそねぷ姉ちゃんだぜ。」

 

一誠はきっと悩んでる時期なんじゃないかな。

フリードにも粘るのが精々だったって言ってたし、今回だってミラって人の攻撃に対応できてなかった。

 

男の子だから、悔しいよね。

 

「一誠、私は厳しいよ?」

 

「…おう、その代わり、強くしてくれよな!」

 

「わ、私も頑張ります!」

 

「うん、皆で打倒ライザーだよ!えいえいおー!」

 

盛り上がりながら、帰宅。

お母さんとお父さんに部活の合宿があることを伝えると少し寂しくなるとか言われてしまった。

うーん、そう言われると弱いんだよね。

でも、今回はリアスちゃんの為にも心を鬼にするよ!

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

翌日になって、合宿先に向かう自分達。

荷物を最低限にしておいたお陰で荷物はそこまで重くないんだけど…

 

「疲れた~休~憩~」

 

「もう少しだから頑張りなさい、ね?」

 

「そう言って10分経ったよ!へとへとだよぉ…死んじゃうよ~!」

 

「そう言ってる内は死なないわ。ほら歩く!」

 

「うへぇ…鬼!悪魔!リアスちゃん!」

 

「悪魔だけど、鬼じゃないし私の名前を悪口みたいに言わない!」

 

「いひゃいいひゃい!ゆふひふぇー!」

 

疲れたんだよぉ!

宿はまだ?ゲームしたい!プリン食べたい!

このままだとねぷ子さんのHPが先に尽きちゃうよ!

 

愚痴りつつしっかりと進んでいると、大きな建物が見える。

 

間違いない、あれだ!

 

「着いた?着いたよね!?ヒャッホーイ!」

 

「急に元気になりましたわね。」

 

「全く…」

 

「俺も疲れたぜ…」

 

「すいません、イッセーさん…荷物を持っていただいて。」

 

「いや、それはいいんだ。それよりも、一旦座りてぇ。」

 

「中に入ってからね。」

 

さて、中へ入ると…いやぁ、リアスちゃんもお金持ちの家なんだねぇ。

広い!デカイ!高い!の三段式!

 

荷物を置いて座布団の上でぐで~と横になる。

 

「疲れた~寝ていい?」

 

「お風呂でもご飯でも寝るでもしていいわ、特訓が終わればね。」

 

「ひえ~!無情だよぉ!これから誰と特訓するかも聞いてないのに!」

 

「とりあえず、一通りお願いするわ。この中で一番強いのは貴女ですもの。」

 

「そんなこと…あると思うけど、今日中に全員?」

 

「それは流石に辛いでしょう?今日は祐人と…」

 

「ねぷ姉ちゃん!頼む!」

 

「…イッセーの希望でイッセーね。」

 

「よろしくお願いします、ネプテューヌ先輩。」

 

「アドバイス出来るか分からないけど主人公に任せたまえ!」 

 

木刀は持ってきたし、何とかなるなる!

 

限定プリンのため仲間のため!

今日からバトルティーチャーネプテューヌでいくよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは一誠からいくよ!」

 

「ああ、容赦は要らねぇぜ。」

 

神器を構えた一誠に自分は木刀を持って自然体。

構えとか、そういうのはあまりしない主義なんだよね!

 

「一誠の強くなりたいっていう心、私には分かるよ。だから手加減はしないでボコボコにするから頑張ってね!」

 

「ねぷ姉ちゃん…俺はいい姉を持ったぜ!うおぉぉ!」

 

一誠は自分へと殴りかかって来るけど、半歩動いてかわして木刀で一閃!

木刀は一誠の腹へ当たり、一誠は呻き声をあげながら数メートル吹っ飛ぶ。

 

「ぐぇっ…!」

 

「単調な動きじゃ見切られてカウンターを喰らうよ!」

 

「なら…!」

 

『Boost!』

 

「おお!速くなったね!でも…」

 

倍加した一誠の速さはそこそこのものだけど…目で追えちゃうんだよね!

さっきより隙の少ない拳。

 

それでも師匠キャラが簡単にやられるわけにはいかないんだよね!

 

拳を木刀で弾いてから勢いのまま回し蹴り!

 

「ぐあ!?まだまだ!」

 

「うわわ!危ないなぁ!」

 

食らった上で食いしばり、足を掴もうとしてくる。

お、何か見つけたかな?

 

かなり強引だけど、木刀を杖代わりにしてもう片方の足で腕を蹴りあげる。

 

シェアの応用って奴だよ!

 

「そう簡単にいかねぇか…!」

 

「敢えて耐えたってところかな?」

 

「…ああ、俺はまだまだ技術とか無いからな。だから、気合いと根性で耐えてカウンターがいいんじゃないかと閃いた。」

 

「うんうん、なるほど…なら、耐えれる攻撃と耐えれない攻撃を見極めないとね!」

 

「判断しやすいのじゃ駄目か?」

 

「じゃ、例えば…この木に私が二回攻撃するからどれがやばいか判断してね!」

 

まず一発目。

 

「パワーエッジ!」

 

力を少し込めて木に木刀を振るう。

木はガサリと揺れる。

 

次に二発目。

 

「パワースラッシュ!」

 

力をしっかりと込めて同じように振るう。

 

すると木はガサガサと先程よりも強く揺れる。

 

ついでに自分の手もビリビリする。

 

「どう?」

 

「どうって言われても、二発目の方が強かったよな?」

 

「そうだよ!でも、どっちが危なそうな一撃か木に当たる前に分かった?」

 

「…分からなかった。そうか、そういうことか!」

 

「全部とは言わないけど、こういう見極めは出来るといいかもしれないね!」

 

「ああ、ありがとなねぷ姉ちゃん!」

 

「感謝される程のことはしてるけど、気にしなくていいよ!

じゃあ、次は木場君行ってみよう!」

 

「続けてですが、大丈夫ですか?」

 

「ふふん、ねぷ子さんは元気だよ!遠慮せずに全力で来てね!」

 

「そうですか…では、胸を借りるつもりでいきます!」

 

木場君が剣を出し、構える。

 

魔剣創造(ソード・バース)だっけ。

木場君の神器は魔剣を創る神器。

戦う速さと手札を活かしたスタイルだね。

 

これは変身も考慮にいれようかな。

 

そう考えていると木場君の姿がブレる。

 

騎士の駒の特性のお陰で結構速いね。

自分は右に木刀を振るう。

すると、ガキンと物と物がぶつかる音がした。

 

「…流石です、ネプテューヌ先輩。」

 

「速くても、音で分かっちゃうかな!」

 

木刀の一撃を剣で防がれる。

 

「ですが…」

 

「ねぷ!?」

 

防いでいる魔剣が突然雷が発する。

喰らったらやばいかなと思い後退。

そこに透かさず迫ってきて剣を振るってくる。

 

木刀で何度も来る攻撃を防いでいるけど、これじゃまずいね!

 

ということで…

 

「速さを活かした、連撃!流石だね!じゃあ、少し本気出しちゃうよ!」

 

「!」

 

強引に木刀を払って剣ごと木場君を後退させる。

 

シェアエネルギーを手のひらに。

そして、自分の内へとシェアを。

 

「刮目せよ、なんてね!」

 

「来るか…!」

 

自分の姿が変わる。

木刀を刀へと変え、それを手にとって構える。

パープルハートに変身完了!

 

疲れるけど、ここは特訓のためだから張り切っちゃうよ。

 

「さあ、特訓はここからよ。」

 

屈んでから地面を蹴って一気に近付く。

 

「クロスコンビネーション!」

 

「速い!」

 

一撃目の斬りかかりに剣で防がれるけど、変身した自分の力は伊達じゃないよ!剣ごとぶっ壊す!

 

バキン、と砕ける音と共に魔剣が消え失せる。

 

「くっ…!まだ!」

 

「魔剣の生成が早くなってるわね、防ぎきれるかしら!」

 

二撃目、三撃目と魔剣を犠牲に防いでくるけど…なら、これはどうかな。

刀を振ると見せ掛けてパープルキック!

 

説明しよう!パープルキックとは、敵を吹っ飛ばすためのただの蹴りだよ!

引っ掛かった木場君は魔剣で防ぐも吹っ飛んだ。

 

そこに後ろに回り込む形で追い付いて一閃。

 

背中を殴られた木場君は地面に倒れる。

 

「ぐぅ!…参りました。」

 

「大丈夫?少し気分が乗ってしまったわ…立てる?」

 

倒れてる木場君に手を差し伸ばすと木場君は手を掴んで立ち上がる。

 

「…それで、どうでしたか?」

 

「魔剣による意表を突く攻撃は確かに驚いたわ。その後の攻撃もね。ここで問題。私はさっきの訓練で貴方に教えたいことをしたわ。思い出せるかしら?」

 

「…フェイント、ですか?」

 

「そう。さっき私が刀を振ってくると思ったでしょう?だから剣を来るであろう位置に構えておいた。」

 

「ええ…そうです。僕に足りないのは攻撃の中にフェイントを入れること、ですか。」

 

「経験の浅い私としては、だけどね。一直線に来るだけの攻撃じゃさっきの一誠みたいに迎撃されてしまう。だからと思って言ってみたけど為になったかしら?」

 

「はい、ありがとうございます。…やっぱり性格変わってますよね?」

 

「見た目も変わってるんだし、性格だって変わるでしょう。」

 

「いやそれはどうかと…」

 

そう?

自分としてはこれも自分って感じだけど…まあいいや。

 

「背中、痛むでしょう?歩ける?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「そう…」

 

歩いてあっちに行ってしまった。

うーん、まだ心を開いてくれない…

何でだろう?

 

まあ、仕方ないよね。

 

その後、パープルハートのまま特訓を続けた。

これ大変だなぁ…明日は誰なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぷ姉ちゃんとの特訓後、飯とか風呂とか一通り済ませて明日に向けて寝るだけとなった。

ただ…

 

「えーいいじゃんこういう時くらい一誠と寝ても~!姉弟の仲なんだよ!?」

 

「駄目よ、家ではいいかもしれないけどイッセーだって男子なのよ?」

 

「だいじょーぶ!一誠はヘタレオブチキンだから!」

 

「泣いていい?」

 

「あはは…ネプテューヌさん、代わりに私が寝ますから、ね?」

 

「うー、あーちゃん聖女!疲れたし寝るね!」

 

「そうね、私達も寝ましょうか。」

 

「はい、おやすみなさい部長。」

 

「おやすみなさい!」

 

そうして残ったのは男子である木場と俺だけ。

ヘタレオブチキンって言われたのめっちゃ傷付いたわ。

いやそうだけど、言わないでもよくない?

ねぷ姉ちゃんだからと割り切ってるけどさ。

 

「一誠君は…」

 

「ん?」

 

「ネプテューヌ先輩と仲がいいよね。」

 

「そりゃお前姉弟だからな。」

 

「それもあるけど…」

 

「何となく言いたいことは分かるぜ。」

 

ねぷ姉ちゃんは殆どと仲良くやれるけど俺には他よりもずっと遊んでもらった記憶がある。

それに…

 

「ねぷ姉ちゃんに憧れてるんだ、俺。」

 

「そうなのかい?」

 

「ねぷ姉ちゃん、強いだろ?昔からそうなんだ。俺の背がねぷ姉ちゃんと同じくらいの時、山で遊んでたら熊が出てさ。」

 

今でも思い出す。

憧れの切っ掛けって奴だ。

小さくて今よりも弱い時、熊に襲われた。

 

その時の事を木場に話し出す。

 

『──!』

 

『う、うわぁぁ!?』

 

『一誠!』

 

その時、怖くて叫ぶしかなかった俺とは違ってねぷ姉ちゃんは俺の前に立って太い木の枝を持って熊と睨み合ってた。

 

『ね、ねぷ姉ちゃん?』

 

『私がいるよ!熊なんか、すぐに撃退しちゃうから!』

 

『──!』

 

『う、うん!』

 

『よぉし、このひのきの棒があれば怖いもの無しだよ!』

 

そう言って熊を撃退したんだ。

本当にするとは夢にも思わなかった。

 

危険がなくなって泣き始めた俺にねぷ姉ちゃんは優しく抱き締めてくれたんだ。

 

『怖かったよね。でも、大丈夫だよ!私が守るからね!』

 

その時から、俺はねぷ姉ちゃんを助けられる位強くなろうと決めたんだ。

いつまでも守られてちゃカッコ悪いし。

 

そう、話した。

 

「その時から、ネプテューヌ先輩は強かったんだね。」

 

「ああ。…堕天使に殺されそうになった時分かったんだ。

まだ一歩も近付けてないんだって。庇って貰ってばかりで、まだ弱いって実感したよ。」

 

だから、この特訓で俺は強くなって見せる。

強くなる道筋って奴を見つけてみせる。

 

「強くなるぞ、木場。」

 

「うん…そうだね。」

 

「そうと決まれば寝る!」

 

布団を被り、目を閉じる。

明日はもう少し強くなってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーちゃんは戦うの嫌でしょ?」

 

布団に入った状態であーちゃんに話し掛ける。

 

「はい…戦うなんて…人を傷付けるなんて怖いです。」

 

「だよねー。私もなんだよね!」

 

「ネプテューヌさんも?」

 

「当たり前だよ~。誰も傷付けなくていいなら私は茨の道でもそうするよ!前の出来事とかは無理だったけどね。今回も無理そうだし、困ったなぁ。」

 

「それでも、友達のために戦うんですよね。」

 

「主人公ですから!私ってば人気だよね!」

 

「そうですね、ネプテューヌさんは人気です。」

 

「だよねー!」

 

まあほら、自分はこう見えて色々出来ちゃう系の主人公だから引っ張りだこなんだよねこれが。

あまりの人気にゲームが出来ちゃうね!

 

「だから、傷付けたくないならしなくていいんだよ?」

 

「え?」

 

「逃げることだって戦いみたいなものでしょ?ひたすら逃げることも大事だよ。そうして虎視眈々と勝利を狙うとかでもいいし。逃げながら仲間を回復とかでもいいんだよ。」

 

「でも…いいんでしょうか、私だけ。」

 

「得意不得意は誰にだってあるよ!私だって料理苦手だよ?プリンしか作れないもん!」

 

悲しげかな、自分がキッチンに立とうとするとお母さん達全員に止められるくらいなのだ…

これもまた、他の仲間を引き立てる為…でいいのかな?

 

「じゃ、私は寝るね!おやすみ!」

 

「…はい、おやすみなさい、ネプテューヌさん。」

 

明日も同じ感じなのかなぁ、大丈夫かなぁ…

自分、アドバイス出来てるよね?出来てるといいなぁ!

 

自分も新技開発しようかなぁ。




ネプテューヌは主人公だけど、ネプテューヌがヒロインな時があってもいいのか?
急に乙女してもいいのか?
そこに悩む今日この頃。


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特訓終了!さあ、ゲームスタート!

ランキング入ってて驚きすぎて投稿!
嬉しすぎてVⅡやってました。
いやぁ…皆、ネプテューヌ好きですね!

同志が多いと嬉しいもんです!



やっほー!グレートバトルティーチャーネプテューヌだよ!

略すとGBTNだね!

 

あれから特訓は大変だったなぁ。

特にリアスちゃんと朱乃ちゃんの特訓!

小猫ちゃんは立ち回り方とかを教えたんだけど、すぐに身に付くかは分からないかな。

 

何が大変だったって、魔力とかよく分からないし、格闘は殆ど出来ないしで…

朱乃ちゃんに関しては困ったことにドSで乗ってきたら止まってくれないから一回ダメージを与えてからじゃないと話聞いてくれないんだよね。

 

あーちゃんについては…

 

「あーちゃん、もう一周だよ!」

 

「はぁ…はぁ…はい!」

 

「頑張れー!ふぁいと、ふぁいと!」

 

単純に体力を作ってるよ。

主に逃げる用の体力作りだね。

 

あーちゃんは特訓前に自分に言ってきたんだ。

 

『私に戦う力はありません…ですから、皆さんを助ける役目を担います!』

 

『それは昨日私が言った?』

 

『はい…皆さんが倒されないように治療するのが私の役目。這ってでも皆さんの下へ駆け付けます!』

 

『なるほど…なら、特訓は体力作りだよ!辛いかもだけど、大丈夫?』

 

『頑張ります!』

 

そうしてライザーとのレーティングゲームまでひたすら体力作り。

後は、神器による治療をさせてるかな。

何とか治療範囲を広げれないかなと考えてるけど難しいや。

 

どうしたものかな。

 

「お、終わり…ました…!」

 

「頑張った!大丈夫?タオルとスポドリを飲んで、休憩しよう!」

 

「は、はい…けほっ…」

 

汗だくな状態のあーちゃんにタオルとスポドリを渡す。

取り合えず、涼しい場所に座らせる。

 

根性は一誠達にも負けてないね。

どれだけ詰められるかだねー。

 

「ネプテューヌ。」

 

「リアスちゃん、どうかした?」

 

「いえ…疲れてない?」

 

「大丈夫だよ?それより、滅びの魔力についての課題はどう?」

 

「難しいわね…イメージと言われても、そう簡単にはいかないものね。」

 

「でも、これが成功したら強い筈だよ!」

 

「そうね…祐斗辺りに聞いてみるわ。」

 

「それがいいかも。頑張って!」

 

リアスちゃんの課題は、滅びの魔力に形を持たせること。

どうやら、想像力が物をいう部分もあるっぽいんだよね。

ヒントはレイナーレ達堕天使の光の槍。

これは光力っていうのを使ってるらしいんだ。

だから、魔力もそれが出来るんじゃないかなって。

 

自分が練習してる技にも使えるかもだから物は試しでやってるけど中々面白いね。

自分の理想の形になるにはもうちょっとかも。

 

「あーちゃん、少し休んでてね。私は他を見てくるね!」

 

「ネプテューヌさんも無理はなさらぬように…」

 

「大丈夫!私は無理な時は無理って言うから!」

 

そう言って他の人が今どうなってるかを見に行く。

朱乃ちゃんはどうなってるかな?

 

「ねぷねぷぷ~ねぷぷ~♪」

 

「あら、可愛らしいですわね。」

 

「朱乃ちゃん!」

 

「私の様子を見に来た、そうでしょう?」

 

「おお!名探偵朱乃だね!それで、どう?」

 

「ええ…とても地味ですわ。」

 

「まあまあ…朱乃ちゃん、抑えが利かないんだから、それじゃ勝てるものも勝てないよ?」

 

「確かに、そうですが…何故瞑想なのです?」

 

「精神を落ち着けるって大事だよ?」

 

朱乃ちゃんは夢中になりすぎて周囲の警戒とか散漫になりがちだからこういう時は瞑想だよ!

瞑想をすると精神が落ち着いていく筈!古事記にもそう書いてある!

 

「それに、ただ瞑想するだけじゃなくて、周囲の音とかを聞いてその場の状況を理解することが大事だよ。」

 

「私が女王だから、ですか?」

 

「それもそうだけど、これは普通の事だと思うよ。

目標だけを倒すなんて的当てでしょ?戦いはそんなに優しくない…と堕天使との戦いで学んだねぷ子さんなのであった!」

 

「ネプテューヌちゃんも成長してますのね。」

 

「もちのろんだよ!私だって新技を2つ程練習中なんだからね!」

 

「あら、それにしてはやってる所を見たことありませんわ?

どういう特訓を?」

 

「イメトレだよ!」

 

「イメージで練習できるものということですわね。」

 

「そういうこと!私は想像力豊かだからささっと出来ちゃうから心配しないでね!」

 

「それにしても、よく技を思い付けますわね。」

 

「1つはビビっと来たんだー!で、2つ目は夢で見たんだよね!」

 

「夢、ですか?」

 

「そう、あれは不思議な夢だったんだよ…」

 

寝ていたら、夢の中でとても大きな骸骨の剣士が現れて、いつの間にか刀を持った自分にこう言ってきたんだよね。

 

『ネプテューヌよ、我が奥義を教える…』

 

『新技キター!』

 

「ちょっと待ってください。」

 

「え、なに?」

 

「それ大丈夫ですか?こう…任なんとかさんに喧嘩売ってませんか?」

 

「大丈夫大丈夫!それに今更だよ!」

 

「…まあ、そうですわね。」

 

まあ、色々と割愛すると、その技を教えてもらって現実で練習中なんだよね。

そう伝えると難しい顔をされた。

 

「夢で見た技をそのまま出来るものでしょうか。」

 

「出来ないっていうのはやらない人の逃げ口上だよ!やってやれないことはないよ!」

 

「その理屈はおかしいと思うのですが…」

 

「でも、それでやれたら1つ技が増えるよ?出来なくても、何処かで役に立つと思うな!」

 

「なんて前向きなんでしょう。流石は主人公ですわね?」

 

「まあね!じゃ、私は行くね!」

 

「ええ。」

 

朱乃ちゃんと別れて、取り敢えず歩く。

うーん、次は誰のところに行こうかな~。

 

まあ、何処かにいるでしょ!

 

ぴょんぴょん飛びながら移動。

超絶美少女で主人公な自分にしか許されぬ移動法!

 

「ぴょいーん!ぴょいー─」

 

「ふっ!」

 

「ねぷっ!?」

 

あ、ありのまま今起こったことを説明するよ!

自分が移動していたら横から拳が迫ってきていた。

な、何を言ってるか分からないと思うけど…分かる?そう?

 

ならいっか!

 

横に跳ぶことで拳を回避。

 

「こ、小猫ちゃん!いきなりは危ないよ!?」

 

「こういう戦い方をするのも大事だと教えたのは先輩です。」

 

「そうだったっけ?」

 

「見敵必殺、そうですよね?」

 

「上手く立ち回ることが大事だよって言っただけだよ!?」

 

「私はそう解釈しました。」

 

「わぁお…」

 

見敵必殺(サーチアンドデストロイ)

まさかの物騒100%とはねぷ子さんの目を以てしても見抜けなんだ…

でも、小猫ちゃんが考え抜いた末がそれなら自分がどうこう言うのは間違ってるよね。

なら…

 

「ネプテューヌ先輩、全力で来てください。

今大事なのは一撃で仕留めること…そして、仕留めきれなかった時の戦闘です。」

 

「だよね~私もそう言おうと思ってたりして!だから──」

 

待たせるのも悪いし…

ささっと変身!刀を構えて小猫ちゃんに微笑む。

 

 

「─お望み通り、全力で叩き潰すわ。それでいいわね?」

 

「ええ、はい。今はいいとしても、本番で大して耐えれなくて負けましたでは話にならない…戦車として、より成長するためにも。」

 

「初めてそこまで喋ってくれたわね。嬉しいわ。」

 

拳を構える小猫ちゃんに言われたように全力で斬りかかる。

全力でって言われたし…頑張っちゃうよ!

 

叩き潰すことを意識する。

 

「でぇい!」

 

「…ハッ!」

 

「良い目ね。」

 

寸でのところでかわされて拳を突き付けられるけど腕を掴んで背負い投げ。

柔軟さが少し足りないかな?

 

「考えることをやめたら負けよ。投げ返すくらいしてみなさい!」

 

「言って、くれますね…!」

 

「貴女達、言わないと分からないもの。一誠もそうだけど…熱くなるのはいいけど力押しで勝てるのは格下だけよ。」

 

流石戦車。

堅さは皆の中では一位だね。

耐えるだけで勝てるとは限らないけど…そこは一誠と同じで耐える中で切り返しが出来るかどうか。

 

「同格、格上…ライザー達はそちら側。そこを理解しないと思いもしないところで負けるでしょうね。」

 

「何をしてくるか…常に思考を巡らせる。」

 

「ええ。さあ、もう一回いくわよ。」

 

「次こそ、一撃当ててみせます。」

 

その意気だよ!

居合の構えをして接近。

居合切り…をすると見せ掛けてスピードを上げて小猫ちゃんの横まで移動。

刀を振り抜く!

 

小猫ちゃんは来ることを予期していたように刀に蹴りを当ててくる。

刀をすぐに手放して格闘に変更。

 

「ッ!」

 

「よく見切ったわ!」

 

シェアを拳に纏わせてジャブ。

威力があまりないけど、シェアの力で補う。

 

顔を狙ったけどずらして避けられた。

すぐにアッパーをかましてくるけど…

 

「残念♪」

 

「…牽制…!」

 

「正解、よ!」

 

少し大人気ないけど飛べることを活かして後ろに少し後退。

拳を1、2発叩き込んで最後に蹴って吹っ飛ばす。

小猫ちゃんは後ろの木に叩きつけられる。

 

「っぐ!拳もいけるとか万能ですか…」

 

「バランスがいいと言って頂戴。主人公たるもの、こういう事くらい出来ないとね。」

 

変身を解除して小猫ちゃんに駆け寄る。

 

「大丈夫?頭とか打ってない?」

 

「…ええ、少し休みます。」

 

「うん!えっと、立ち回りはもう少し堅実にいけたら大丈夫かな!でも、柔軟さが欲しいかな。」

 

「…分かりました。」

 

「あと少ししかないけど私も付き合うから頑張ろう!」

 

「はい。」

 

「それじゃ、私はこれで!」

 

「待ってください。」

 

他のところへ行こうとしたら待ってくれと言われたから止まる。

おお、小猫ちゃんに待ってと言われるとは!

これは好感度イベントって奴だね!?

 

「ネプテューヌ先輩はいつからそんなに強くなったんですか?」

 

「え、いつから?」

 

「…最初から強かったんですか?」

 

「まあ、技とかはカッコいいかなとか思ってイメトレは欠かさなかったけど…身体能力は元々こんなだよ。変身するとスッゴい軽いけど!」

 

「ズルいです。」

 

「ズルいって言われたのは初めてだなぁ。」

 

何だかんだでこれが普通だったから気にしてなかったけど悪魔の皆に言われるくらいだから異常だったりする?

えーほんとに?

 

「私と同じようなのは絶対いるよ!人間だからって甘く見ちゃ駄目だよ!」

 

「…了解です。」

 

「話は終わり?」

 

「はい、呼び止めてすいません。」

 

「いいよ!じゃあまた後で!」

 

小猫ちゃんと別れ、また他の人のいる場所へ。

 

こうしてると、各イベントシーン回ってる感じでいいね!

まさかの奇襲イベントがあるとは思わなかったけど。

 

そんな感じで、他の人とも特訓をして何となく新技のイメージも固まった自分なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで一週間!

やって参りましたレーティングゲーム会場!

打倒ライザー目指してようやくこの日がやってきたね!

 

負けるとは微塵も思ってないけど気を引き締めて行こう!

 

「というわけで…リアスちゃん、気合いを込める為にも一言!」

 

「き、急ね?ええとそうね…私の我儘に付き合ってくれてありがとう皆…絶対勝つわよ!」

 

「おお、それっぽい!」

 

「やる気出てきたぜ!」

 

皆闘志が宿ってるね!

そう、この日のために頑張ってきたことを自分が一番知ってるからね…この勝負、負けられないよね!

 

「あんな酷い特訓を頑張ってきたんだもん、何とかなるよ!」

 

(((((どの口が…?)))))

 

「はい、頑張って皆さんを治します!」

 

凄い向かってくる視線が痛いけど気にしない。

気にしたら負けだよ!

 

話は終わったのを見計らってかこの前のメイドさんが話し掛けてくる。

 

「皆様、準備はよろしいですね。」

 

「ええ、いいわ。」

 

リアスちゃんがそう言うとメイドさんは頷く。

 

「では…この先へ。」

 

魔法陣だ。

ここからバトルフィールドに行けるっぽいね。

 

よし!

 

「セーブしよう!」

 

「いやゲームじゃねえよ!ゲームだけど!」

 

「全くもう…ほら、始めるわよ。」

 

魔法陣に立つと、魔法陣が光輝く!

 

そして…

気付けば、部室にいた。

ってさっきと同じ場所だよ!?

 

「あれ?故障?」

 

「いいえ、もう始まるのよ。」

 

『皆様、今回の舞台は駒王学園の一部を再現したフィールドとなります。リアス様の本陣は旧校舎 オカルト研究部。ライザー様の本陣は新校舎 生徒会室でございます。』

 

「凄いね~ここ丸ごと舞台なんだ。」

 

「そう言うことよ。皆、これを耳に。」

 

「おお、通信機って奴?光ってるけど!」

 

「魔力的な、が付くけどね。これで通信を行うわ。」

 

それっぽい感じだね。

 

っと、気分変えないとね。

敵を倒すんだから、油断しちゃ駄目だよね。

ねぷ子さんらしく華麗に決めちゃうよ!

 

『制限時間は人間界の夜明けまで。それでは開始します。』

 

「じゃあ、作戦を説明するわ。」

 

「待ってました!」

 

「作戦はいたってシンプル…短期決戦よ。」

 

「眷属の差は歴然だし、あっちの方が慣れてるもんね。」

 

「そういうこと。ライザーは尖兵として送ってくるのは兵士…朱乃はこの旧校舎をカモフラージュとして幻術を。祐斗と小猫は森にトラップをお願い。」

 

「「「はい。」」」

 

3人とも頷いて部室を出ていく。

心配だけど、きっと大丈夫だよね。

 

「なるほど、比較的侵入しやすいのは森だもんね!」

 

「ええ、そうね…ネプテューヌ、貴女分かるの?」

 

「うん!学園なら散歩とかしてるしよく知ってるよ!」

 

散歩が役に立つとは思わなかったなぁ。

でも、手が足りないね。

自分が行ってもいいけどレーティングゲーム前日にリアスちゃんに言われちゃったしなぁ…

 

『準備、整いましたわ。』

 

『僕と小猫ちゃんの準備も整いました、部長。』

 

「分かったわ。朱乃、そのままそこで待機、警戒を怠らないで。

祐斗は同じく森で敵を警戒しながら待機。小猫はイッセーと合流して体育館へ向かいなさい。」

 

指示を出してる間、一誠とあーちゃんの様子を見る。

どうやら二人とも緊張してる様子。

まあ分からないでもないけどね。

 

「ほらほら、二人とも!そんな緊張してたらあらぬコマンドミスをしちゃうよ?元気だそうよ!」

 

「ねぷ姉ちゃん…そうだな!俺達ならやれないことはないぜ!」

 

「ありがとうございます、ネプテューヌさん。」

 

「良いってことだよ!皆頑張ろう!ファイトファイト~!」

 

ここにいる自分含めた皆に赤い光が宿ったかと思うと光は消えた。

 

「今のは?」

 

「シェアのちょっとした応用って奴!」

 

「何だか、力が湧いてくるな…シェアってのはこんなことも出来るのか!」

 

「温かい光でした…」

 

「一誠、行ってきなよ!」

 

「ああ…行ってきます!」

 

一誠が部室を出て、小猫ちゃんと合流しに行く。

 

これで部室に残ったのは王であるリアスちゃん。

回復役のあーちゃん。

そして…自分。

 

「ネプテューヌ、貴女の役目…分かってるわね?」

 

「任せてよ!私の役目は他の皆の手助け、だよね?」

 

「ええ。イッセー達と同じルートを進んで。基本的な戦闘は皆に任せて大丈夫。でも、誰か危なそうなら手助けして。

あ、体育館へは私の指示が入るまで入っては駄目よ。」

 

「オッケー!じゃあ、行ってくるね!」

 

「ネプテューヌさん、その…私も行きます!」

 

「アーシア…でも、貴女は。」

 

「戦えません、そんなこと分かってます。この場において戦えないのは私です…でも、治療なら!治療なら私は皆さんの役に立てます。お願いします!絶対に足手まといにはなりませんから!」

 

「いいよ!」

 

「ネプテューヌ、貴女まで!」

 

「リアスちゃん、私はあーちゃんの悩みをずっと聞いてきたんだ。皆の役に立ちたいってずっと言ってたんだよ!リアスちゃん…私が絶対守るから!駄目かな?」

 

リアスちゃんは悩ましげに目を閉じる。

 

あーちゃんはこの日のために出来ることをやってきた。

たった一週間だけど、それでもやれることをめげずにずっと。

 

それを知ってるからこそ肯定する。

それが主人公ってもんでしょ!

 

「…ハァ、分かったわ。」

 

「リアスちゃん!」

 

「アーシア、無茶なことはネプテューヌに全部押し付けていいから、無理しちゃ駄目よ?」

 

「ちょ!?」

 

「はい!」

 

「あーちゃん?…ああうん、主人公らしく頑張るね!行ってきます!」

 

あーちゃんと共に部室を出て皆の所へ向かう。

さぁ、盛り上がって参りました!

ねぷ子さんの強さ、刮目しちゃってね!




こうして始まったレーティングゲーム!
さあ、どうなるネプテューヌ!
このまま原作通りにしてしまうのか?

別に皆を助けちゃっても構わないよね?byねぷ子


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不死とかチート!?でも諦めたらそこで試合終了だよ!

レーティングゲームの時間だオラァ!

会場のねぷ子さん、そっちの様子はどうですか~?


はーい!現場のネプテューヌです!

一誠達のお助けの為に体育館へと走る。

 

『ライザー様の兵士三名、戦車一名、リタイア。』

 

お、順調っぽい?

 

うーん、最近マラソンみたいに走ってばかりだね。

いつになったら行ったことのある場所へ飛べる呪文を覚えられるんだろうね?

やっぱり石碑を探さないとなのかな!

 

「あーちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫です!」

 

「おお、体力上がってるね!これはHP振りされてるね!」

 

自分の特訓メニューは無駄ではなかった!

 

それで、体育館に辿り着いたはいいんだけど…

リアスちゃんの合図が来るまで暇だなぁ。

 

でもさ、何か体育館焼けてない?

 

『ネプテューヌ、アーシア、聞こえる?』

 

「リアスちゃん!」

 

「はい、聞こえます。」

 

『イッセー達はそこよりも先に進んで行ってるから向かって。』

 

「何かまずいことになった?」

 

『いいえ─』

 

 

 

『─順調すぎるくらいね。』

 

 

 

「なるほど!」

 

皆強くなったからだね。

自分の教えが上手く働いたのならこれは嬉しいね!

 

取り合えず、皆の下へと向かうことに。

 

「何かあるんじゃないかって位順調だね?」

 

『ええ…でも、この調子だと皆あまり消耗はしてないようね。

本命のライザーを叩くためにも余力は残しておきたいけど…』

 

「いかんせん人数が少ないから仕方無いね!」

 

『うっ、ごめんなさい…』

 

「大丈夫だよ!リアスちゃんにはリアスちゃんの眷属にするかしないかとかのラインがあるんでしょ?気にしない気にしない。」

 

「今は、作戦に集中しましょう!」

 

『そうね。』

 

先へ急ぐとようやく戦闘の音が聞こえる。

雷が走る音と爆発する音…なるほど、これは朱乃ちゃんだね。

激しい戦闘みたいだし。

 

到着すると、雷と炎が飛び交い、周囲は焼け跡とかで凄いことに。

どうやら上の方で戦ってるらしい。

 

「朱乃ちゃん!」

 

「あら、危ないですわよ。」

 

「手伝えることはある?わ、っとと!」

 

炎が迫ってきたので避ける。

上を見ると朱乃ちゃんと戦ってた女性が自分の方へ炎を放ってきた。

 

当然、見え見えだから避ける。

 

「容赦ないね!こういう会話シーンで急な攻撃を仕掛けるのはご法度だよ!」

 

「あら、そういったことに疎くてごめんなさい?でも、これはゲームとは言えチェス…戦争なのよ?」

 

「ネプテューヌちゃん、相手は女王です。ここは私に…」

 

「んー、駄目かな!」

 

「まあ、私を心配してくれて?」

 

「うーん、朱乃ちゃんなら問題はないと思うよ?でも…」

 

見たところ朱乃ちゃんの方が優勢だ。

その証拠に相手の女王さんは所々ボロボロだ。

だというのに余裕な態度を崩さない。

ブラフならそれでいいけど、もし何か策があるなら朱乃ちゃんの敗北は十分あり得る。

 

「というわけでこっからは私も混ざるよ!」

 

「どういうわけか知らないけど、人間一人と油断すると思わないことね。」

 

「油断してくれたら楽だったけどおばさんはしてくれないの!?」

 

「誰がおばさんだ!…礼儀のなってない子供ね。そちらは人を見る目がないのかしら?」

 

「あら、女ばかり囲ってる殿方の女性は言うことが違いますわね。」

 

「煽りが得意なのね雷の巫女。」

 

「仕掛けたのはそちらが先でしょうに、あまり怒っては皺が増えますよ?」

 

「ふふ…殺してあげるわ!」

 

「あまり強い言葉を使うと弱く見えますわ。女王らしく堂々としませんと。ネプテューヌちゃん、用意はよろしいですね?」

 

「うん!あーちゃんは下がっててね!」

 

「はい!」

 

「こうして共に戦うのは初めてですわね。」

 

「バイザーの時戦ったよ?」

 

「あれは蹂躙と言いますのよ。だから、戦いになるようにしっかりと足掻いてくださいね?」

 

「言ってくれるじゃない…!」

 

あっちもかなりやる気になってる。

わぁ、これはさっさと決めないとまずそうだね。

参加するとは言っても自分は変身しないと飛べないし…

 

「リアスちゃん、変身の許可を!」

 

『…相手は女王。ライザーまで最高戦力の貴女にはあまり疲弊はさせたくないけど…こちらの女王が倒れるくらいならそうした方がマシね。パープルハートの変身を許可するわ!』

 

「ノリがいいね!じゃあ、早速やっちゃおう!」

 

「何をする気か知らないけど、そうは…ッ!」

 

「余所見は行けませんわ。」

 

手をかざし、シェアが形となって現れる。

 

変身の邪魔をしようとしてきた女王さんを朱乃ちゃんが阻止してくれた。

よし、今だね!というか、変身シーンを邪魔するのは御法度だよ!

 

シェアを自分の中へ。

お披露目しちゃうよ!

 

 

 

「刮目せよ!」

 

 

 

パープルハートになり、機械的な羽を生やす。

刀を手にとって相手の女王を見る。

 

羽なんてなかっただろって?

いやいや、あったんだけど描写不足だよ!

 

何はともあれ…

 

「変身完了、すぐに決めるわ。」

 

「相変わらず凛々しくなりますわね。」

 

「皆して同じことを言うんだから…私は私よ。」

 

「姿が変わった…?神器?」

 

「残念だけど、少し違うからくりよ。」

 

飛んで朱乃ちゃんの隣まで行く。

飛ぶと地面での戦いに慣れてるからあまり派手には動けないかな。

というのも、跳躍力でもなんとかなってたというのもあるし。

 

足場ならシェアで作れるんだけどね!

一度空中で足場を作れるかなと試行錯誤した甲斐があったよ!

 

早速、シェアで足場を作り蹴って女王へと近付く。

 

「なるほどね…でも、馬鹿正直に突っ込んでくるのは愚策よ!」

 

そういって女王は炎をこちらへと放ってくるけど、横から雷が炎へとぶつかり相殺。

朱乃ちゃんがいるからこういう事が出来るんだよ!

 

「雷の巫女…!」

 

「考え無しじゃないのよ?貴女を地面に叩き落とさないと…やりづらいのよ!」

 

刀を振り下ろして、地面へと叩き付ける。

相手の狙いが何かは分からないけど、それなら攻めるしかない。

 

女王はマトモに自分の攻撃を受けてかなりの速度で地面へと落ちていく。

 

レーティングゲームだからってこうして気兼ねなくやってるけど大丈夫かな?

女王の近くに降りて油断なく構える。

朱乃ちゃんも自分の隣に降りてきた。

 

「ぐ、く…やって、くれる…!」

 

「あそこから落ちてよく立てるわね。」

 

「私は、ライザー様の女王…ただで負けるわけにはいかないのよ。」

 

ライザーは眷属から慕われてるようだ。

やっぱり、ハーレム築いてるだけで眷属全員との仲は良好なんだね。サクリファイス戦術って嫌われそうな戦術だけどそれでもこう言われるなんてね。

 

やっぱり二人で穏便に話し合えばいいのになぁ。

プライドとかが邪魔をするんだろうね。

 

「そっちの信念とかもあるんでしょう…それでも、私はこっちで戦うと決めた。なら、私は勝利をもたらすだけよ。」

 

「そう…そうね。…私はユーベルーナ、貴女は?」

 

「ネプテューヌ、この姿はパープルハートよ。」

 

「ネプテューヌ…雷の巫女、いくわよ。私は女王として戦うわ。」

 

ユーベルーナはそう言って、懐から何かを取り出して使った。

すると、身体中の傷が塞がっていく。

 

多分、もっと油断したところで使っての不意打ちを画策してたのかな。

何か心境の変化があったのかな。

 

「フェニックスの涙…やはり持ってましたか。」

 

「もう少し油断させて使う気だったけど…気が変わったわ。

ネプテューヌ、貴女が一番の脅威だと理解した。」

 

「そう言って貰えるのは光栄ね。なら、後腐れなくやりましょうか。」

 

回復したユーベルーナは先程よりも強い炎を拡散させる。

 

炎を切り払い、進もうとするもまた炎が迫る。

横を見れば朱乃ちゃんもユーベルーナに雷を放つ暇がないらしい。

 

拡散させたのはこの為か!

威力が少し落ちるけど下手に動けない状況でこちらの体力を削る気なんだ。

 

「そっちの魔力が先に尽きるわよ?」

 

「ライザー様の真の作戦は既に実行されてるのよ。王が倒されたら終わりだって理解してる?」

 

「…まさか!」

 

「リアスちゃん!聞こえる!?」

 

急いでリアスちゃんに通信をいれる。

まさか、相手の狙いは最初から…

 

迂闊だった。

ライザーがレーティングゲームの経験者なら、そういう手を使うのだっておかしくない!

 

『何か非常事態が?』

 

「急いでその場から離れて!ライザーの狙いは貴女よ!」

 

『…なるほど、最初から戦力を分散させておいて私一人を倒す作戦だったのね。』

 

 

でも、とリアスちゃんは続ける。

 

『そうもいかないみたいね。』

 

「…ごめんなさい、朱乃ちゃん。」

 

「いえ、構いません。行ってください、ネプテューヌちゃん。」

 

「ええ!」

 

炎を切り、すぐに後方へと飛ぶ。

電撃が走る音がより大きくなった。

朱乃ちゃんが炎を抑えてくれている。

 

急がないと。

 

あーちゃんは…

 

「行ってください!私は私の出来ることを!」

 

「…分かったわ、皆の治療をお願い!」

 

それだけを伝えて速度を上げる。

 

頼むから持ちこたえていてね、リアスちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通信を切って、手に魔力を集中する。

 

作戦が裏目に出るなんて…私もまだまだね。

王が直々に出向いてくるとは思わなかったけど、ある意味チャンスではある。

 

ネプテューヌやイッセー達はこっちに向かってきているだろう。

なら、それを信じてみようと思った。

 

本陣の壁が爆発する。

あらかじめ離れておいたから吹き飛ぶような失態は犯さなかったけど…

やっぱり、実力だと足りないと実感する。

 

「よう、リアス─」

 

入ってきて早々話し掛けてきたライザーにすぐに滅びの魔力を槍にして放つ。

 

顔に受けて吹っ飛んだライザーは静止するけど、こんなんじゃ決定打にならないことくらい分かってる。

私がやらないといけないのは…

 

後ろの壁を魔力をぶつけて壊すことでそこから出る。

 

今回の敗北条件は王が敗れること。

なら、本陣は捨てても問題はない。

 

少し広いところに出て、足を止める。

 

「鬼ごっこは終わりか、リアス?逃げるだなんてみっともないだろうに。」

 

「逃げる?貴方面白いことを言うのね。頭が一度吹っ飛んで馬鹿になったのかしら。」

 

「減らず口を。俺とお前じゃ実力の差は明白だと分からないのか?」

 

「確かに貴方と私、悔しいけど貴方の方が上よ。でも、それで諦める理由になるのかしら?」

 

「はっ、いつからそんな往生際の悪い性格になった?」

 

「いつからかしらね。」

 

「まあいいさ。その顔を歪めてみるのも悪くはない。

観客の前で無様に負ける姿を晒すことだ、リアス。」

 

距離があっても熱さを感じる炎をライザーは身に纏う。

実力の差は明白。

逃げ続けようにも難しい。

 

けれど、言葉だけでも強気でいないと、動けないじゃない。

 

「五回よ。」

 

「何?」

 

「五回、貴方には…死んで貰うわ、ライザー。」

 

「…面白い、やってみろ!」

 

他力本願かもしれないけど、私じゃ倒せない。

せいぜいが戦いながら時間稼ぎをするくらい。

そこに全力を注ぐ。

 

きっと…来る。

 

 

 

 

 

 

・ 

 

 

 

 

 

 

飛んでる最中、全速力で走っている人物に目が留まる。

あ、一誠だ!

 

飛びながら一誠の近くまで行く。

 

「一誠!」

 

「ねぷ姉ちゃん!今は急がねぇと部長が!」

 

「木場君と小猫ちゃんは?」

 

「皆、足止めの為にあっちに残った。姫島先輩もそうなのか?」

 

「ええ。」

 

「そうか…よし、俺たちで決めるしかねぇな!部長を助けねぇと!」

 

「リアスちゃんが無事だといいけど…」

 

そう、王が倒されたら問答無用でこの勝負は終わり。

 

リアスちゃんが持ち堪えるか逃げ続けてくれれば間に合わせて見せる。

いや、きっと今もライザーを相手に持ち堪えてくれてる筈。

 

ここは、仲間の信頼に応える主人公らしいところ見せないとね!

 

「一誠、大きな怪我はしてないのね?」

 

「少しくらったりしたけど、ヤバイ奴は絶対に避けたぜ。これも特訓の成果だ。」

 

「頼もしくなってきたわね、流石よ。」

 

「お、おう!」

 

旧校舎の近くまで来て、音が聞こえる。

爆発音だ。

ライザーはフェニックス…自分でもどんな悪魔なのか分かる。

確か、不死だったっけ。

 

でも、完璧な不死なんて存在しないってゲームでよく言ってるから何とかなるよね!

無ければ出禁だよ!

 

急いで爆発音のする方まで向かうと…

 

「くっ…はぁ…はぁ…!」

 

とても消耗した様子で膝をつくリアスちゃんの姿が見えた。

ライザーは胸に穴が空いていたけど炎が溢れたと思えば穴は塞がっていた。

 

「まさか、本当に五回も殺されるとは思わなかったが…ここがお前の限界だ。」

 

「うっ……ふふ、私は賭けに勝てたようね…!」

 

「…なるほどな。」

 

「リアスちゃん!」

 

「部長!」

 

リアスちゃんに駆け寄って体を起こす。

ここまでずっと戦ってたんだ。

五回も殺されたと言ってたけどそこまで削ってくれるなんて。

 

「やっぱり来てくれたわね…」

 

「部長、後は俺達に任せてください!」

 

「ええ、私達がしっかり決めるわ。」

 

「頼もしい限りね…後は頼むわ。」

 

壁に寄り掛からせてからライザーと対峙する。

 

けれど、ライザーの様子がどこかおかしい。

 

「女、お前は誰だ?」

 

「ネプテューヌよ、忘れたの?」

 

「…審判!」

 

『その方はネプテューヌ様です。間違いありません。』

 

「おいおい、どういうカラクリだ…?」

 

「気にしたら負けよ。」

 

「…まあいい。」

 

「往くわよ、ライザー。その余裕、焦燥に変えてあげるわ。」

 

「お前を踏み越えて勝利を掴ませて貰うぜ!」

 

「調子に乗るなよ…!」

 

ライザーは炎の翼を出す。

その炎は強い勢いで燃え盛り、熱さが伝わってくる。

 

ライザーは獰猛に笑う。

 

「貴様ら全員、俺の炎の前では無力だということを苦痛を以て叩き込んでやろう!」

 

「一誠、やれるわね?」

 

「いつでもやれるぜ。」

 

頼もしい弟もいることだし、勝ってみせる。

 

ライザーの再生は一見無敵の能力だけど、裏がある筈。

それを見極めるためにも…何発も叩き込んで再生させる!

 

ねぷ子さんの本気、刮目せよ!





今のところネプテューヌがいるだけで原作をやってる感じですが、退屈してませんか?
ネプテューヌ要素もうちょっと出したいけど…色々と後じゃないと都合が悪いんだ。だから付き合って貰うぜぇこれからもよぉ…!


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あ! やせいの フェニックスが とびだしてきた!

皆!これを見てくれ!
これによると『ネプキャラが出る確率は五分五分…』と書いてある!
つまり!ネプキャラが出ることは十分あり得るって事だったんだよ!




シェアを纏わせた一閃で迫り来る巨大な炎を切り裂く。

自分の処理しきれない炎は一誠が籠手を装着した拳で炎を払う。

 

流石フェニックス…不死鳥だよ。

でも、譲れないものはこっちにもあるんだよ!

 

「二人がかりでやるわよ!」

 

「ああ、俺達ならやれる!」

 

「中々のコンビネーションだ…!」

 

少しずつ近付く。

後一手があればいける!

なら、あの新技ならいけるかも!

 

ライザーがまた巨大な炎をこちらへ向けて放とうと手を向けてくる。

 

「余所見厳禁よ。」

 

「何を言ってる?」

 

 

 

「32式エクスブレイド!」

 

 

 

「ぬぐぁっ!?」

 

「な、何だ!?デカイ剣が空から降ってきた!?」

 

「これもシェアのちょっとした応用よ。」

 

シェアで生成した巨大な剣がライザーの腕へと降り、その腕を切り落とす。

これぞ新技 32式エクスブレイド!

単純に広範囲技として練ってみたけど今みたいに一人狙いならシェアをそこまで使う必要もないし、行動を阻害するために使ったから痛手じゃない!

 

「今のうちに…!」

 

「一気に決めるわ!」

 

怯んだライザーに一誠は正面から、自分は後ろに回り込んで攻撃。

 

「なめ、るなぁ!」

 

「うっ…!?効くか焼鳥野郎が!」

 

「ぐぁっ!」

 

「私を忘れないでほしいわね。」

 

「ガッ…!」

 

炎を纏った拳で一誠に殴りかかってきたライザーに一誠は腕で防いでから痛みを無視して籠手で顔を殴る。

ついでに自分も刀で背中を斜めに振り下ろす。

 

今気付いたけど、再生が遅れている?

 

もしかして、そういうこと?

 

「貴方、もう精神的にキツいんじゃないの?」

 

「だから、どうした…!」

 

「そうか、フェニックスの能力の再生…精神まで再生する訳じゃないッ!見つけたぜ、お前の弱点をッ!」

 

「調子に…乗るなぁぁ!!」

 

「ぐあぁっ!?」

 

「くぅ…!」

 

ライザーが自分を中心に火柱を立て、一誠はマトモに食らって吹っ飛ぶ。

自分は後ろに跳んで直撃は避けたけど余波で壁まで吹き飛ばされた。

 

背中が壁と激突する寸前で飛ぶことで勢いを殺す。

 

「まだあんなにやれるなんて…」

 

「俺はフェニックスだ!負けるわけがない!貴様らなんぞにやられるわけがないんだ!」

 

「ぐっ、くそぉ…!部長が五回も残機減らして、俺達も一回減らしたのにまだやれるのかよ!」

 

「プライドも侮れないものね。それだけで再生が出来るなんて恐れ入るわ。」

 

圧倒的な火力…それも、滅びの魔力みたいに大部分を削れるものが欲しい。今は小猫ちゃんの助力は難しい…

 

どうすれば…?

 

「イッセー!」

 

「部長?」

 

「貴方の限界はまだ先の筈よ!ネプテューヌだけじゃないのよ、想いを力に変えられるのは!」

 

「想いを力に…神器か!」

 

「貴方が強く想えば神器はそれに応えてくれる…貴方の可能性を見せて!」

 

「…はい!」

 

「ふふっ…」

 

…今回は一誠に譲ろうかな!

 

自分でもよかったけど、ここは一誠に決めてもらった方が成長に繋がる。

思えば、一誠は大きな勝利を掴んだことが無い。

だからこそ、ここで一度勝ちを知るべきなんだと思うな。

 

目を閉じる一誠を一瞥してからライザーを見る。

 

「リアス、まだそんなに喋る余力があったとはな…だが、ここで終わりだ!」

 

「させないわ。私と一誠を倒してからにしなさい。」

 

「何故邪魔をする!人間の貴様には関係無いだろう!」

 

「確かに、悪魔じゃない私には貴族とかの取り決めは分からない…

けれど、友達の手助けをするのに理由なんて要るのかしら?」

 

「ネプテューヌ…」

 

「人間だとか、悪魔だとか。そんなの歩幅の違いでしかないわ。

私にそんな線引きを問われても困るわね?」

 

「身勝手な女だ…」

 

「知らないようだから教えてあげる。主人公は身勝手なのよ。」

 

不快そうに顔を歪めるライザーに微笑む。

ふふん、そんな顔したってねぷ子さんのこの主人公パワーは消せないんだな、これが!

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

「何かしら。」

 

「少しの間でいい、持ちこたえてくれ!」

 

「任せなさい!」

 

「一人で来るか!」

 

「ええ、ここからは捨て身でいくわ!」

 

刀にシェアを纏わせてライザーへと飛翔。

 

多少の被弾は覚悟で迫る。

ヤバイのは弾くけど、熱い!

でもこんなのを気にしてたら主人公は務まらないよ!

 

「クロスコンビネーション!」

 

「易々と食らうと思うか人間!」

 

「いいえ、無理矢理でも食らってもらうわ!」

 

「こいつっ!?」

 

32式エクスブレイドをもう一度ライザーに向けて落とす。

今度は足元へと落として体勢を崩すことを目的として!

 

目論み通り、ライザーの体勢が崩れたところに斬りかかる。

 

「せいっ!」

 

「ぬぐっ!?」

 

「まだまだ!」

 

「が…っおォォォ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

一撃を与えて怯んでるところを更に攻めようとした時、ライザーが手に炎を集めてそれを爆発させた。

自分だけじゃなくライザー自身も巻き添えを食らうというのに恐ろしい執念!

 

自分はマトモに食らって一誠のところまで吹き飛んでしまった。

 

「くっ……っ!」

 

「ねぷ姉ちゃん、姿が…!」

 

変身が保てなくなって、元に戻る。

 

おおっと…これヤバイんじゃない?

いや、でも…!

 

「フェニックスだ…俺はフェニックスなんだぁぁ!」

 

精神がもう限界な筈だ。

後一回決定打。それも強い一撃を与えれば…!

 

「一誠、ごめんね。時間稼ぎは出来た?」

 

「ああ!だから休んでてくれ!」

 

「そうはいかないかな!最後までやるよ!プリンのために!」

 

「…ねぷ姉ちゃんらしいぜ。よし、なら俺の新しい力…刮目してくれ!」

 

一誠がそう言うと籠手の碧の宝玉が輝く。

 

『Boost!』

 

「倍加?一度だけなんじゃ…?」

 

「ただの龍の手ならな。…どうも、俺は当たりらしいぜ。」

 

「どういうこと?」

 

「イッセー、貴方…!」

 

リアスちゃんが気付いたようだけど自分にはさっぱりだ。

どういうこと?

 

 

 

「─『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。神をも殺せる可能性を持った神滅具(ロンギヌス)の一つ、らしいぜ。」

 

神滅具(ロンギヌス)…」

 

 

 

その言葉を聞いた時、少しだけ悪寒が走った。

言葉では言い表すなら、怖い?不快?そんな感じ。

でも、一誠に感じてる訳じゃなくて…一誠にそんなの感じる訳ないし。

 

その神滅具に、何かを感じてるのかな、自分。

 

「…そっか!流石は我が弟だね!やっぱり主人公ばりの補正はあったってことだね!」

 

取り敢えず、今は黙っておくことにした。

自分的にもそんなこと気にしてたら仕方ないってなったしね。

 

一誠も自分の言葉にニカッと笑う。

 

「そういうこと!これなら高威力を叩き出せる。一撃ぶちかませばいけるんだろ?なら、絶対に届けれる状況にしてくれ!」

 

「そういうことなら…新技いくよ!」

 

「まだあるのかよ!?」

 

「ふふん、主人公は日々成長してるんだよ!」

 

残ったシェアエネルギーを木刀に纏わせる。

相手を拘束して仕留める技!

 

その名も

 

 

 

「デルタスラッシュ!」

 

 

 

ライザーにシェアの斬撃をΔを描くように飛ばし、拘束する。

 

「ぬあぁ!?」

 

「一誠、決めちゃって!」

 

「今よ、イッセー!」

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

『Boost!』

 

もう一度倍加した後、一誠は籠手をライザーに突き出して倍加された魔力を収縮させていく。

 

す、凄いよこれは!

 

 

 

「ドラゴン…ショットォォォォ!!」

 

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

巨大な魔力砲が一誠から放たれてライザーへと直撃する。

よし、最後に決めちゃうよ!

 

「一誠!」

 

「おう!」

 

 

 

「「成敗!」」

 

 

 

シェアも爆発!

ライザーから再生の気配はなく、自分と一誠は二人で後ろのリアスちゃんに向かってピースをする。

 

『王であるライザー様の敗退を確認。この度のレーティングゲーム…リアス様一同の勝利です。』

 

「やった…のね?」

 

「うん!私達の勝利だよ!ちゃらららったったったーん♪」

 

「長く苦しい戦いだったぜ…」

 

「「第三部、完!」」

 

(まだ二部なのよね…)

 

リアスちゃんから視線によるツッコミを受けたけど気にしない!

勝ったんだから気にしない!

 

これこそ絆の勝利って奴だね!

 

「皆さん!」

 

「無事みたいだね。」

 

「大勝利ですね。」

 

「あらあら、何とか勝てたようですわね。」

 

「皆!朱乃ちゃんとあーちゃんも無事でよかったよ!」

 

「アーシアちゃんに治してもらってましたの。」

 

「そうなの?よく頑張ったね!」

 

うんうん、欠けてないし文句無しだね!

 

グレモリーチーム大勝利!

 

「リアスちゃん、ここはリーダーらしく一言!」

 

あーちゃんの治療を受けてたリアスちゃんが頷いて立ち上がる。

勝てて嬉しそうな表情で、自分も嬉しくなる。

 

リアスちゃんは皆を見回した後

 

「皆、私の為によく頑張ってくれたわ…本当に。ありがとう、感謝してもしきれないわ。皆、自慢の眷属よ!」

 

「はい、部長!」

 

「皆さんが無事でよかったです。」

 

「役に立てたのなら、光栄です。」

 

「右に同じです。」

 

「もう少し活躍したかったのですが…精進、ですわね。」

 

「うんうん。」

 

自分は眷属じゃないけどね!

 

リアスちゃんは皆に笑みを浮かべた後、自分の方を向く。

 

「ネプテューヌ…本来なら人間である貴女が参加してもメリットなんて無かったのに、ここまでしてくれた。」

 

「そんなこと言わないでよ~私は友達のためにやっただけだよ!

それに…眷属っていうのもあるかもしれないけど、ここの皆はそれだけじゃなくてリアスちゃんだから頑張ったんだと思うな!」

 

「…それでも、よ。ありがとう、ネプテューヌ。貴女がいてくれて本当によかった!」

 

「ねぷっ!もー恥ずかしいよ~!」

 

「ぐぬぬ、羨ましいぜ…」

 

一誠の羨ましそうな視線を受けながら、満面の笑みのリアスちゃんに抱き付かれる。

こうして、ライザーとのレーティングゲームはグレモリー眷属with自分の勝利となった。

 

ちなみに、一誠にドラゴンで赤龍帝のドライグっていうのがいるらしいんだけど…

一誠を唆したりしてたらタダじゃおかないんだからね!

一誠にも気を付けるようにって言ったら分かったって苦笑しながら返事をされた。

 

それにしても、神滅具、かぁ…

 

一誠、大丈夫かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな感じで婚約騒動があったんだけど、乗り込んでおじゃんにしちゃったんだよね!」

 

『いやお前さんさらっと言ってるけどお家問題に思い切り首どころか全身突っ込んでるじゃねぇか。』

 

「私にかかればこんなの朝飯前っていうか~主人公として当然っていうか?」

 

『主人公って何だっけ…』

 

そんなこんなで暇な自分はリアスちゃんに買って貰ったプリンを食べながらおっちゃんに電話していた。

この大活躍を少し脚色すれば問題なし!ということでおっちゃんには大体合ってる話をしているけど、反応がよろしい!

 

『にしても、よくもまあやろうと思ったな?ネプ子、お前が関わらなくてもいい事だろうに。』

 

「そうなんだけどさ…私ってば我儘だから友達が嫌そうなら助けたいってなっちゃうんだよね。」

 

『…それでやるかねぇ?』

 

「まあ、結果オーライじゃん!セーフセーフ!」

 

『アウトよりのセーフだがな。ま、頑張ったじゃねぇか。』

 

「でしょ?ということで今度何か奢ってね!」

 

『何がというわけがバカタレ。俺がお前さんに奢らなきゃならんところ今の話に出てないだろーが。』

 

「バレた!?おっちゃん探偵!?」

 

『いや誰でも気付くわ。』

 

「そうかな…そうかも!」

 

おっちゃんがため息をついてるのが電話越しに伝わる。

ありゃりゃ、呆れられちゃった。

 

『…ネプ子。』

 

「なに~?」

 

『お前は変わるなよ。』

 

「主人公の私が闇堕ちなんてしないって!」

 

『そうだけどそうじゃなくてだな…まあいいか。あまり無理はすんなよ?親御さんに心配かけたくはねぇだろ?』

 

「うーん、それもそうだね。気を付けるよ、ありがとね。」

 

『感謝することでもねぇだろ。俺としても、ネプ子の奇想天外な話は聞いてて面白いからな。何かに巻き込まれて音信不通とかになったら酒が不味くなんだろ。』

 

「え~私酒の肴!?」

 

『そうだよ。だから酒が美味いと感じるためにも無事でいろよな。OK?』

 

「んー…まあ、オッケー!じゃ、そろそろ切るね!」

 

『おう。』

 

電話を切る。

やっぱりおっちゃんはいい人だね。

こうして心配してくれたし。

 

「あれ、おっちゃんって人との電話は終わったんですか?」

 

少ししてあーちゃんが部屋に戻ってきた。

 

「うん!心配されちゃったけど、平気って伝えたよ!」

 

「そうですか…でも、その人の言う通り、あまり無茶はしないでくださいね?」

 

「善処するよ!」

 

「本当でしょうか…」

 

「うぅ…あーちゃんが私を信じてくれない!泣いちゃう!」

 

「え、あ、泣かないでください!ネプテューヌさんの事は信じてますから!ね?」

 

「そっか!」

 

(あれ、今ネプテューヌさんの演技に引っ掛かった?)

 

プリンが美味しい!

でも1日1つと決めてる訳じゃないけど食べ過ぎは注意だよ!

ねぷ子さんとの約束だからね!

 

何はともあれ一件落着。

あれからリアスちゃんとの関係は良好だし、よかったよかった。

 

ドタバタは好きだけどし過ぎは面倒だし程々な毎日が一番だよね。

 

「ねぷ姉ちゃん、今度こそ勝つぞ!」

 

「ねぷ!?いきなりバトルを仕掛けられるとは…でも応じちゃうのが主人公の気概だよ!」

 

「あ、私もやりたいです。」

 

「よし、三人でバトルだよ!」

 

「くっくっく…この日のために鍛えてきたテクニックでねぷ姉ちゃんを負かしてやるぜ。」

 

「ふふん、姉より勝る弟などいないってことを教えてあげるよ!」

 

こういう日常が大事だよね!




ライザー編完結…!ライザー編完結…ッ!ライザー編完結…ッッ!
聖剣編をする前に、使い魔編を少し挟むから待つんだ!


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使い魔ゲット!え、私は別?そんな~!

皆、ネプキャラ出して欲しいって言ってくれて嬉しいもんです。
コンパちゃんとかアイちゃんとか出せるようなら出したいと思います。
まあでも、無理そうなら許してね!


やっほー!フェニックスキラーの称号を得た主人公オブ主人公!

ネプテューヌだよ!

うんうん、戦闘回だと挨拶をいれる暇がないから出来る時にやっておかないとね。

 

今回はリアスちゃんから呼び出しがあってオカ研に来たんだよね。

 

「今日は何があるんだろうね?」

 

「オカ研に毎回厄介事来るみたいに言うのやめない?」

 

「一誠、今までを振り返ってみてよ!私達は感覚を麻痺させちゃいけないんだよ?」

 

「まあまあ…」

 

「聞こえてるからね、ネプテューヌ。」

 

「ねぷ!?リアスちゃん、おはよう!」

 

「おはよう、皆。ちゃんと全員居るみたいでよかったわ。」

 

「一体何が始まるんです?」

 

「大惨事大戦よ…じゃなくて、皆には使い魔を持って貰おうと思ってね。あ、使い魔っていうのはこういうものよ。」

 

リアスちゃんは赤い蝙蝠を出す。

朱乃ちゃんや小猫ちゃんも自分の使い魔を出す。

 

うんうん、ゲームでいうところのパラメーター上昇システムだね?

ねぷ子さんこういうの詳しいよ!

 

「ねえ、リアスちゃん。私は?」

 

「ネプテューヌは特別よ。使い魔の森は人間は出入りできないんだけど…融通利かせて貰ったわ。」

 

「やったー!差し詰めおいでよ使い魔の森って事だね!

楽しみだな~」

 

「ネプテューヌが使い魔を持てるかは別よ?」

 

「なん……だと……!?」

 

「当たり前でしょう。そこまでのサービスはいくらなんでも無理よ。まあ…あっちから来れば話は別だけど。」

 

「んー…まあ、主人公の私についてきてくれる使い魔だって居る筈だよね!」

 

「ネプテューヌちゃん、ファイトですわ。」

 

「うん!」

 

よし、頑張って使い魔ゲットするよ!

 

「というわけで、この魔法陣から直接使い魔の森に向かうわ。」

 

「皆、使い魔ボールやきずぐすり、なんでもなおしは持った?」

 

「フレンドリィな店が無いから持ってねぇ…ちくわしか持ってねぇ!」

 

「逆に何でちくわは持ってるのよ!」

 

そんなこんなで魔法陣の上に皆乗る。

すると、レーティングゲームの時のように視界が揺れる。

この感覚あんまり好きじゃないんだよね…

 

視界が安定する頃には森に立っていた。

 

「ここ?」

 

「ええ、冥界にある使い魔の森よ。ここでは危険があるから専門家を呼んできたわ。」

 

「専門家!博士って奴だね。」

 

どんな人なんだろうなぁ。

楽しみだなぁ。

 

「使い魔、ゲットだぜぃ!」

 

「は、その声は!?」

 

それっぽい人の声に振り返る。

そこには帽子を被った人の良さそうな笑みを浮かべたおじさんだった。

 

おお、それっぽい人よりもある意味信用できそう!?

 

「おじさんが専門家?」

 

「ああ、俺の名前はザトゥージ。使い魔マスターを目指してるんだぜぃ!」

 

「つまり、使い魔についてはかなりの知識を持ったプロよ。

今回は彼同伴の下、使い魔を手に入れて貰うわ。」

 

「よっし、頑張ります!」

 

「でも、使い魔さんはどうやって?」

 

「使い魔は力尽くから勝手にまで様々だぜぃ。気性が荒いのもいれば穏やかと性格も違うからな。」

 

「なるほど~…よろしくね!」

 

「任せとけぃ!それで、嬢ちゃんは見たところ悪魔じゃないみたいだが…」

 

「うん!だから見学!もしついてきてくれて家に迷惑じゃなければって感じかな!」

 

「なるほどだぜぃ。なら、早速出発だぜぃ!」

 

こうして、ザトゥージおじさん同伴の下、使い魔の森を探索することに。

道中でどんなのがいいかと聞かれた時、あーちゃんが分からないと答えたら

 

「んー、多分精霊あたりがピッタリかもだぜぃ。」

 

「なるほど!精霊さんもいるんですね!」

 

「可愛い精霊だといいね!」

 

「はい!」

 

「…ザトゥージさん、その満面の笑みは一誠さん的によろしくない結果を生むと予感してるんですが。」

 

「…経験って、大事だよな。」

 

「Oh…」

 

早速精霊がいるという湖に向かうと…

 

精霊がいた。

いたんだけど、いたんだけどさ。

 

マッチョな水の精霊だったんだよね。

 

「ポカーン…」

 

「…えっと。」

 

「反応に困ってるじゃん!そんな仕上がってるよ~な精霊だと思わなかったけど予想通り酷いし!」

 

「いやぁ、こういうゲテモノもいるっていい経験になったろう?」

 

「なったね!何か出る度に目が死んでく覚悟も出来たよ俺は!」

 

「あーちゃん、別のところ行こっか。」

 

「そう、ですね。」

 

まさか、マッチョだなんて…

しかもいい筋肉だったし。

精霊ってあんなだったかなぁ?

 

おかしいなぁ、ねぷ子さんの予想だともう少しスラッとしてる筈だったのになぁ。

 

残念に思いながらもその場を去ろうとする…その時だった。

 

「ぬらァ…」

 

「ん?あー!何か雑魚っぽい見た目のモンスター!」

 

「お、そいつはスライヌだな。嬢ちゃんの言う通り雑魚だが…」

 

スライ○に犬の耳と尻尾の生えたモンスター、スライヌ!

おお…なんかそれっぽいの出てきたね!

 

何だか無害そうだし、近寄ってみようかな。

 

「嬢ちゃん、近づいちゃダメだ!」

 

「えっ?」

 

「ぬらっ!」「ぬらぬら!」「ぬらぁ!」

 

「わわっ、いっぱい出てきました!?」

 

「スライヌは複数で活動する奴で、雑魚だからって馬鹿にしてると返り討ちに遭うんだぜぃ…」

 

「ねぷぅ!?」

 

「ネプテューヌ!」

 

ザトゥージおじさんの解説してる間に大量のスライヌに張り付かれた自分は思わず倒れる。

 

そこから、スライヌの恐ろしさを知ることとなった。

 

「だ、駄目だよー!足に張り付いたりしちゃ駄目だってばぁ!」

 

「ねぷ姉ちゃんが襲われてる!?」

 

「スライヌはああやって組み付いて体力を奪っていくんだぜぃ。」

 

「言ってる場合じゃないでしょ!祐人!」

 

服の中とかに入ろうとしてきたり足とか手を舐められてくすぐったさと恥ずかしさが込み上げてくる。

皆の前であられもない姿を晒すなんて無理!

しかもなんか力出ないから変身出来ない!

 

こ、このままだと主人公の自分がこの作品をR指定物にしてしまうよ!?

 

「吹き荒れろ!」

 

「「「ぬーらぁぁぁ!?」」」

 

木場君が風の魔剣で暴風を出してスライヌを吹き飛ばしてくれた。

 

うえぇ、ベトベトだよぉ…

 

「大丈夫ですか?ネプテューヌ先輩。」

 

「ありがとー木場君~!あのままだったらやばかったよぉ!」

 

木場君に起こされて、リアスちゃんがハンカチで拭けるところを拭いてくれた。

 

「全くもう、もうああいうのに近づいたら駄目よ?」

 

「はーい…」

 

「こりゃ、気を付けねぇとな…ねぷ姉ちゃん、大丈夫か?」

 

「うん…」

 

「あらあら…」

 

もうあんな見た目に騙されないようにするよ!

あんな酷い事されるとは思わなかったとはいえ油断した!

 

今度会ったらヤローオブクラッシャーだよ!

 

こんなことなら来なきゃよかったかもだよぉ…

どんよりとした気持ちで皆と歩く。

もう精神的にキツイよ。

 

「ねぷ姉ちゃんが見たこともないくらいどんよりしてる…」

 

「ぬるぬる…べとべと…うえぇ…」

 

「もう若干トラウマになってますね…」

 

いや、無理だよ。

皆あれを味わってないからそう言えるんだよ。

あんなの人が受ける所業じゃないよ。

ああいうのを拷問って言うんだよ!

 

そうこうしているとザトゥージおじさんがあれを見てみろと指を差す。

 

そこには紫がかった蒼い龍がいた。

 

「あれは蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)だな。希少な個体で、成体になると龍王クラスの実力があるぜぃ。」

 

「おー…凄い!ああいうのを見たかったんだよね!」

 

「お、元気出てきたな。けど、あれは珍しい個体だからゲットできるかどうか…」

 

「強いんだよね?」

 

「強いぜぃ、俺が保証する。」

 

「なら…」

 

一誠か、あーちゃんだよね。

うーん…何となく、一誠はダメそう。

 

「あーちゃんの聖女パワーで仲間になれないかな?」

 

「私ですか!?」

 

「危険じゃないかしら?」

 

「私とザトゥージおじさんがヤバそうなら助けるから大丈夫!」

 

「自然と巻き込まれるとは思わなかったぜぃ。」

 

「うぅ…私に出来るでしょうか…」

 

「仲間になったら火力問題が解決するチャンス…私がついてるよ!」

 

「…はい、やってみます!」

 

少し危ないかもだけど、何事も危険が付き物。

あーちゃんも経験がないといざって時に動けなくなっちゃうからね。ここは心を鬼にするよ!

 

あーちゃんと一緒に蒼雷龍に近付く。

 

「あの…!」

 

「…?」

 

「もしよければ私の使い魔さんになってくださいませんか?」

 

「…」

 

見つめあう蒼雷龍とあーちゃん。

ご、ごくり…

自分的に、この見つめあいが一時間は続いたかのような錯覚を覚える。

 

果たして、結果は…!

 

蒼雷龍はふわりと飛んであーちゃんの方まで来た。

手を出す雰囲気には見えない。

 

「♪」

 

蒼雷龍は笑顔であーちゃんの周りを飛び始める。

どうやら、認めて貰えたっぽい?

 

皆から安堵の表情。

 

「や、やりました!」

 

「まさか蒼雷龍をゲットするとは思わなかったぜぃ!」

 

「うんうん…ニックネームは?」

 

「…少し考えますね。」

 

「決めてあげるときっとその子も喜ぶよ!」

 

「じゃあ、次の場所に──」

 

 

 

 

─……ま、…え…か?

 

「─えっ?」

 

 

 

 

何だか頭の中に直接声が聞こえたような。

少し低い穏やかな声…?

 

周りをキョロキョロと見渡しても人とかは皆以外見当たらない。。

 

でも、何となく探さないといけない気がする。

何でだろう?

 

「ネプテューヌさん、どうかしたんですか?」

 

「あーちゃん、聞こえなかった?」

 

「えっ、と…何がでしょうか…?」

 

「この辺に幻覚や幻聴能力を持った奴はいない筈なんだが…」

 

 

─女…ま、私…え…か?

 

 

「ねぷ!?また声が聞こえたよ!」

 

「私達には聞こえなかったけど…気のせいじゃ…なさそうね。」

 

「やっぱり、探してみていい?」

 

自分の言葉にうーんと悩むリアスちゃん。

もし奥深くまで行ったりしたら危ないし、当然かもだけど…

自分はこの声の人を探す必要がある。

そんな気がする。

 

「なら、私が一緒に行きますわ。」

 

「朱乃ちゃん!」

 

「そうね…貴女なら安心ね。ネプテューヌ、危なくなればすぐに朱乃と逃げるのよ?」

 

「うん!」

 

「では、行きましょうかネプテューヌちゃん。私もその声とやらが気になりますわ。」

 

「うん、確か…こっち!」

 

正確な方向は分からないけど何となく合ってる気がする。

朱乃ちゃんも自分に任せるようでついてきてくれる。

 

で、肝心の声なんだけど…

 

 

─女…様、私…声…え…すか?

 

 

「声が聞こえやすくなってきてる。」

 

「誘われてる…という事でしょうか?」

 

「どうだろう…」

 

警戒しながらも声が聞こえやすくなることを頼りに歩く。

多分、それほど距離は離れてない。

だんだんと声が聞こえやすくなってきた。

 

でも…この声、何だろう。

とても気になるのはどうしてだろう?

プリンとかにしかここまでの興味を惹かれるとかはなかった筈なんだけどなぁ。

 

もう少し歩く。

その時だった。

 

 

─女神様、私の声が聞こえますか?

 

 

「…!今度はしっかりと聞こえるよ!」

 

「あら、声はなんと?」

 

「女神様、私の声が聞こえますか?だって。」

 

「女神…?…まさか…」

 

「何処にいるの?私は聞こえてるよ!」

 

声に答えるように問い掛ける。

森の中に自分の声が響く。

 

 

─ああ、よかった!木の上にいるのです。声を頼りに来てください。

 

 

「木の上だね?声を頼りに…えっと…もう一回お願い!」

 

 

─こっちです。こっちに来てください。

 

 

声を頼りにどの木にいるか探す。

 

朱乃ちゃんは考え込んでる様子だし、ここは自分一人で探そう。

 

この作業を何回かして、ようやく声の聞こえる木を見つける。

木を見上げると、確かにこの場所に似つかわしくない本みたいな物がある。

 

少し手間だけど木登りだって主人公の必須スキルだよ!

 

木を登って、ようやく本とご対面!

本を手に取る。

 

「声を出してたのは君?」

 

─はい、ようやく会えました、女神様。

 

「…えっと、女神様って私のこと?」

 

─はい。…覚えてないのですか?

 

「え、何を?」

 

─…そうですか。

 

少し残念そうな声。

本が喋るなんて思わなかったけど…でも、この本を見つけた時とても安心したような気がする。

 

「そういえば、名前とかあるの?本のタイトル?長い?」

 

─長くはありませんよ。では、自己紹介を。

 

 

 

─私はイストワール。この世界の歴史を記録している史書です。

 

 

 

「イストワール…いーすんだね!」

 

─いーすん?

 

「イストワールだと連呼しにくいから、いーすん!駄目かな?」

 

自分がそう言うといーすんは

 

─いいえ、そちらが呼びやすいように。

 

「そっか!私はネプテューヌ!よろしくね、いーすん!」

 

─ええ、今後ともよろしくお願いします。ネプテューヌさん。

 

こうして、いーすんを無事見つけた自分は木から降りる。

朱乃ちゃんに話しかけよう。

 

「朱乃ちゃん!」

 

「あら…?それは?」

 

「この本はいーすんだよ!」

 

「あら、可愛らしいタイトルですわね。」

 

「タイトルっていうかイストワールっていう名前なんだけどね!」

 

─ネプテューヌさん。

 

「うん?」

 

─どうやら、貴女にしか声が届かないようです。

 

「そうなんだ…」

 

「それが声の主ですか?」

 

「うん、どうやら私にしか声が届かないっぽい。」

 

「あら、残念ですわ。本の声、というのも聞いてみたかったものですが…」

 

いーすんには聞きたいことがいっぱいあるけど、一先ず皆のところへ戻ろう!

色々と迷惑かけちゃったし、謝らないと。

 

そう思って、踵を返すと…

 

そこには服が無くなったリアスちゃんたちの姿が!

ちなみに、木場君と一誠とザトゥージおじさん、あーちゃんは無事。

 

「またゲテモノが現れたんだね…」

 

「ついていって正解でしたわ。」

 

「ザトゥージおじさん、何があったの?」

 

「服だけを溶かすスライムが現れてこうなった。」

 

「なるほど、エロゲみたいなモンスターって実際いるんだね!」

 

「ところで、嬢ちゃんそれは?」

 

「これ?いーすん!イストワールっていうんだ!」

 

「使い魔…じゃなさそうだし専門外だな。」

 

─私はモンスターなんかじゃありません。

 

「どうどういーすん…一誠!鼻の下伸ばしちゃ駄目だよ!」

 

「スラ太郎ぅぅぅ!!」

 

「スライムに愛着が湧いてたけど吹き飛ばしてからこの調子です。」

 

「放っておいていいよ。」

 

大方スライムが服を溶かすから悪用しようと考えてたんだろうし、女の敵なスライムとかスライヌは撲滅だよ!

自分はもうあれを許さないよ!

 

変身してでも倒すよ!

 

その後も、触手だとかヤンキーなモンスターとかいたけど何とかなったよ。

ちなみに、蒼雷龍の名前はラッセー君だって。可愛い名前を貰ったね!

 

一誠?一誠にはないよぉ、使い魔ないよぉ!

 

哀れにも触手とスライムを仲間に出来ずに意気消沈してそのままだった。

まあ、カットでいいよね、これ。

 

それで、解散して念入りにシャワーで身体中を洗った後、あーちゃんと二人…いーすんも入れて三人だね!

自分の部屋にいるんだけど…

 

「イストワールさんと話せないのは残念です…」

 

「仕方ないよね。いーすん、皆と話せるモードみたいなのないの?」

 

─無くはないです。ですが…そうですね、それをするのには3週間掛かりますね。

 

「3週間!?3週間も経たないと皆と話せないの?コミュ障?」

 

─失礼な!私の持つシステムは膨大なので適切な形になるために必要なだけです。

 

「3週間なんて大変ですね…」

 

「それにしても、ようやく会えたっていうけど…いつから彼処にいたの?」

 

─転々と各地を回ってましたが、ワープしていたら彼処に引っ掛かって数十年は彼処にいました。

 

「ええ…」

 

「イストワールさんは何て言ったんですか?」

 

あーちゃんに説明すると微妙な顔をされた。

そりゃそうだよね…ドジった訳だし。

 

─待った甲斐はありました。記憶の欠落が見えますが幸い女神様としての力は失われてはない様子。ならば後は時間や出会いが解決するでしょう。

 

「いーすんは説明してくれないんだね。」

 

自分の言葉にいーすんはすみません、と落ち着いた声で一言。

謝らせる気はなかったんだけどなぁ…

 

─一気に説明しては混乱すると思います。これはこの世界においても貴女や私の存在が如何に異常なのかについて教えるようなものですから。

 

「私やいーすんが?」

 

─今理解して欲しいのは貴女が女神であること。そして、私は貴女を補佐する役目であるということです。

 

「…そっか、分かったよ。」

 

「ネプテューヌさん、大丈夫ですか?何だか…」

 

「大丈夫!さ、寝よっか!」

 

「…はい。」

 

自分が女神っていうのはよく分からないけど、自分は自分。

主人公オブ主人公のネプテューヌだよ。

それは変わらないよね。

だから、今は気にしない。

 

取り敢えず、いーすんが仲間になったって事で終わり!

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーションの!」

 

「コーナー!って何だよこれ。」

 

「え、これ?ほら、ライザー編っていう一つの節目を迎えたわけだし、ネプテューヌ要素はガンガン出していくためにもまずはこのネプステーションをやっていこうと思ったんだけど…あ、ゲストは私の弟の一誠だよ!」

 

「あ、はい、一誠です。じゃなくて…これどういうコーナーなんだよ!」

 

「ここは本編とは別に次回予告とか駄弁ったりするコーナーだよ。まあ、基本的には大きい章の予告をすると思ってね。」

 

「なるほど…まあメタ発言全快なので何となく察したよ。んじゃ、早速次回予告だな。」

 

「基本的にはゲストにやって貰うよ!」

 

「俺か~…ゴホン!

ライザーを倒し、平和な日常が訪れたと思いきや今度は木場の様子がおかしい!どうやら聖剣ってのが関わってるらしいが…更に思わぬ人物も!?

次回、聖剣編改め『聖剣伝説─LEGEND OF NEPU─』!」

 

「次回もまたサービスサービス!」

 

 




いーすんは出す。
これは重要なんだ。そう、きっとな。
これをきっかけにネプのモンスターとか出していきたいと思います。


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聖剣伝説─LEGEND OF NEPU─
悩みを聞くのも役目だし、背負うのも主人公の役目だよ!


お気に入りが300を突破してとても嬉しいです。
このまま頑張っていきますよ!
にしても、ネプテューヌ大好きかよ!
分かる。


やっほー!最近女神疑惑発生のネプテューヌだよ!

成長しなかった理由はまさか女神だから!?

いやいや…神様だって成長くらいするでしょ。

リアスちゃんどうなるのさ。

あの体型で産まれたら流石にドン引くよ!

 

何やかんや平和に過ごしてたんだけど、その間にもいーすんとの関わりとか周りの人との時間は怠ってないよ!

コミュを上げれば仮面が増える訳じゃないけど!

 

まあ、最近じゃいーすんを持って移動してるからか知識に目覚めたのかとか言われちゃってるけどね。

うん、違うよ?

 

ただ、最近…ちょっと心配事があって。

木場君がどうも上の空っていうか、何かに執心っていうか。

時折怖い顔なんだよね。

 

確か、私達の家に皆で遊びに来て、昔の写真を見てたときだったかな。

少し恥ずかしかったなぁ。

 

「うーん…木場君、心配だなぁ。」

 

─そこまであの方を心配する理由は?

 

「友達だし、後輩だもん。悩みがあるなら何とかしてあげたいっていうのが本音かな!」

 

─なるほど。

 

「いーすんはそういうの無いの?」

 

─あまり考えたことがありません。私は女神様と共に在り、この世界の歴史を記録するのが使命ですから。

 

「何だか寂しいな~そういうの。」

 

そういう生き方は悲しいなぁ。

でも、いーすんは自分をずっと探してた訳だし…

自分も探せたらよかったんだけどなぁ。

 

「ごめんね、ずっと探させて。」

 

─ネプテューヌさん…

 

「元はといえば私が何者か分からなくなってこの町にずっと居たから…」

 

─それ以上言ってはいけませんよ。

 

「でも…」

 

─確かに永い年月を掛けましたが結果的にはこうして会えたわけですし…それに、今いるご家族や今ある絆を否定するようなことを言ってはいけません。貴女の中にあるシェアは皆さんの信頼の証。貴女らしくありませんよ、ネプテューヌさん。

 

「いーすん…うん、分かった!」

 

─ところで、ネプテューヌさんは自身について悩みはないのですか?

 

「え、どうして?」

 

─女神様の補佐が私の役目ですから。

 

「そっか~…」

 

悩みかぁ。

悩みといえば、うーん。

まあ、あれしかないや。

 

「私の事について…かぁ、文字通りって感じ?」

 

─ご自分が何者か…ですか?

 

「うん。私が女神だって言われても…」

 

─そう悩むことではありません。

 

「そうなの?」

 

─シェアを感じられて、歳をあまり取らない。それだけの違いですよ。

 

「うーん…そういうもんかなぁ。」

 

─ネプテューヌさんは人として生きてきた身ですから実感が湧かないかもしれません。これは時間が解決するでしょう。

 

「…そっか、そうだね。」

 

─私の言葉は役に立ちましたか?

 

「うん!いーすんは優しいね!」

 

─…そうでしょうか?

 

「役目だ何だって言ってもこうして相談に乗ってくれるだけで嬉しいんだよ!」

 

実際、こういう悩みを溜め込んじゃう時があるからいーすんの相談に乗るって発言に助かった。

いーすんの寄り添ってくれる言葉に癒されたよ。

 

「取り敢えず、オカ研に行こっか。」

 

─分かりました。

 

「こういうのを相棒って言うのかな?」

 

─…どうでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえばナチュラルにドッジボール大会サボってた!

リアスちゃんに叱られないかな?

でもでも、所属してるか曖昧だって嘘つけばワンチャンある!

 

オカ研に入ると、パシンという音が聞こえる。

驚くのは後にして、何があったのかを認識する。

そこには木場君がリアスちゃんにビンタされていた。

 

あ、あれ?何かあったのかな…?

ドッジボール大会でやらかした?

 

「目が覚めた?」

 

「…はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

だから、今日は帰っていいでしょうか。」

 

「祐斗!」

 

「おい、木場…どうしちまったんだよ?」

 

「君には分からないよ、僕の心は…絶対にね。」

 

な、何か険悪な雰囲気だよ?

木場君も顔が怖いし…

仲間同士で何でこんな険悪な雰囲気になるのさ!

 

木場君は怖い顔のまま入ってきたばかりの自分の前…正確にはオカ研から出たいんだろうけど…そこまで来た。

 

「退いてくれませんか、ネプテューヌ先輩。」

 

「木場君…悩みがあるなら、力になるよ!」

 

「…退いてください。」

 

─ネプテューヌさん。刺激すると危ないです。ここは一度通してあげましょう。

 

(…うん…)

 

いーすんの言う通りに退くと、ありがとうございますと言って木場君はオカ研から出ていった。

自然と顔が俯く。

 

「木場さん…」

 

「あらあら…これは深刻ですわ。」

 

「…祐斗…やっばり。」

 

…こんなの絶対おかしいよ!

こんなシリアス、絶対ダメ!

 

すぐに木場君を追いかける。

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

「イッセー待ちなさい。…事情を説明するわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく、木場君を追いかける。

そう遠いところには行ってない筈…

こういう悩んでる時…そうだ!

 

─ネプテューヌさん。

 

「いーすん、どうしたの?」

 

─木場さんが何故あんな態度だったのか気になりますか?

 

「そりゃ気になるよ。」

 

─分かりました。3日…と言いたいですが少し急いで3時間かかります。

 

「?よく分からないけど任せるね!」

 

いーすんが何かするそうだけど…取り敢えず、今はあの場所に行ってみよう!

 

自分が悩んでる時、毎回あそこに行くんだよね。

これ内緒だよ?

主人公はそういう姿をあまり見せちゃいけないんだからね。

 

少しして、あの場所に…公園についた。

ここが自分にとっての始まりって感じだったなぁ。

 

っと、木場君は…いた!

 

座って暗い面持ちだ。

また突っぱねられるかもだけど、諦めるねぷ子さんじゃないよ!

 

「木場君!」

 

「!追ってきたんですね。」

 

「うん。…ねぇ、木場君。どうしたの?らしくない、とは言わないけど…そんな暗い顔してるのは何か違うと思うな。」

 

「…ネプテューヌ先輩には分かりませんよ。僕は本来こうですから。」

 

「言ってくれないと分からないよ!それに、木場君が本来そうだとしても…私達に協力してくれたのも木場君だよ!もしかして、私に話せないような内容だったりする?」

 

「…そうだと言ったらどうしますか。」

 

「それなら、私は何も聞かないよ。」

 

木場君がじっと自分を見る。

本人が言いたくないなら自分が無理に聞き出すのはよろしくないし、何よりそういうことは自分がしたくない。

 

だから、聞かないでおく。

 

「…ネプテューヌ先輩、僕は─」

 

木場君が何かを言おうとした時。

殺気っていうのかな、そういうゾクッとするものを感じ取って後ろを振り向く。

 

「おやおやぁ?そこにいるのはいつぞやのガキンチョと悪魔君じゃあーりませんか!お久し振りですねぇ!」

 

「フリード!?また面倒事持ってきたの!?ご近所迷惑になるからやめてよね!」

 

「いやぁご近所さんには悪いでございますけど悪魔とその関係者はムカつくから殺さないといけないって聖書にも載ってるんだなぁ!」

 

フリードが現れて、何だかいつもと違う剣を取り出して斬りかかってくる。

 

…ん?

何か凄い速くない!?

鍛えたってレベル越えてるよ!

前に会った時の何倍も速くなってる…!

 

「って訳で死ねやオラァ!」

 

「チッ!」

 

木場君が前に出て魔剣でフリードの攻撃を防ぐ。

 

でも、木場君の様子がおかしい。

怒りっていうか…憎しみ?そんな感じの感情が滲み出てる。

 

「その剣は…聖剣か!」

 

「あったりぃ!天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)だ。これさえありゃそこのガキンチョもてめぇもバラバラって訳よ!」

 

─ネプテューヌさん、お気をつけて。あれは聖剣エクスカリバー…七つに別れた聖剣の1つです。

 

「エクスカリバー!?ちょっと待って!」

 

「あ?何で待たなきゃならんのよ!」

 

「それが聖剣だっていうなら1つ確かめなきゃいけないよ。」

 

「はぁ?聖剣を知らなそうなガキンチョが何をいうかと思えば!」

 

「ビームは出るの?」

 

「…は?」

 

「ビームは出るのかって聞いてるんだよ!エクスカリバーでしょ!?」

 

「ネプテューヌ先輩、それは別のゲームです。」

 

「あれ…そうだっけ?」

 

おかしいなぁ。

聖剣ってビームが出るから聖剣なんじゃ?

というかエクスカリバーって凄いもの持ってるね。

しかも七つに別れたって凄いことになってるよね…

 

「悪魔君凄い熱い視線むけてくるじゃあーりませんの。」

 

「僕はそれを破壊する…絶対にだ。」

 

「でもでも今の攻撃を凌いでるだけじゃどうにもならないんだなこれが!俺様に素直に斬られて死に晒せやぁ!」

 

「木場君!」

 

このままだと押しきられちゃう…なら!

シェアエネルギーを解放して変身をしようとする。

 

その時

 

「手を出さないでくれ!!」

 

「木場君…?」

 

「おやぁ?仲間割れとはいけませんな~」

 

木場君からの怒声。

今、拒絶された?

でも、なんで…このままだとピンチなのに?

 

…迷ってる暇なんて無い!

拒絶されても自分は助けるよ!

 

「刮目せよ!」

 

シェアを自分の中へ。

パープルハートに変身して刀を手にもってフリードに斬りかかる。

 

「げっ、ガキンチョが変身しやがった…!」

 

「速いだけなら問題ないわ!」

 

「…手を出すなっていいましたよね。」

 

「ごめんなさい。でも…私は貴方を信じてるわ。」

 

「っ…!」

 

「ぐえっ!」

 

刀を防いで顰めっ面になるフリードに木場君ががら空きになってる腹を蹴る。

フリードは呻き声をあげて吹っ飛ぶ。

 

「ご飯出ちゃったらどうすんのよホント!俺様だって吐くんだぜ!」

 

「貴方に勝ち目はないわ。さっさと降参しなさい。」

 

「誰がするかバァカ!分が悪いのは事実だが捕まってはやんねぇ!バイナラ!」

 

「待ちなさい!」

 

さっきの速さでどこかへ去っていくフリードを追いかけようと思ってやめる。

今は木場君が大事だよ。

変身を解除して、肩で息をする木場君に近づく。

 

「木場君。」

 

「どうして放っておいてくれないんだ…!」

 

「放っておけないよ。仲間だし、友達だもん。」

 

「…」

 

「私、主人公だからね!悩みを聞いてあげたりするのも役目っていうか、恒例行事っていうか!というわけで!」

 

木場君の手を握る。

じゃないと逃げそうだから無理矢理。

 

「頭冷やす為にも家においでよ!ゲームとプリンがあれば落ち着くって!」

 

木場君が目を見開く。

少しして、目を閉じて微笑む。

 

「それはネプテューヌ先輩だけですよ。」

 

「バレちゃった?でも、放っておけないのは本心だよ!」

 

「…分かりました。部長に言わないでくれるなら行きます。」

 

「うん、分かったよ!」

 

リアスちゃんには悪いけど、今は木場君優先!

こんな状態の木場君をふらふらさせるわけにはいかないよ。

 

一誠には伝え…たらリアスちゃんにも言っちゃうだろうしなぁ。

 

取り敢えず、家に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!」

 

「おかえりなさい、ねぷちゃん。あら、木場君?」

 

「すいません、お邪魔していいですか?」

 

「ええ、構わないけど…酷い顔ね。あまり抱え込んだら駄目よ?」

 

「…ありがとうございます。」

 

「まあまあ、上がって上がって!私の部屋でゲームでもしよう!」

 

家に着いて、自分の部屋に入る。

うんうん、やっぱり自室はとても落ち着くね。

 

座ってと言うと木場君は素直に座ってくれた。

 

「ネプテューヌ先輩は…復讐とか考えたことありますか?」

 

「無いかな~」

 

ゲームの準備をしながら後ろで話しかけてくる木場君に答える。

 

復讐、そういうのは考えたこと無いなぁ。

だって悲しいよ、それは。

 

「ポジティブに生きるのがモットーっていうか、復讐なんて私らしくないし。」

 

「それもそうですね…僕は、あります。昔からずっと。」

 

「そっか。どうして?」

 

「…聖剣が僕を、僕達の人生を狂わせたんです。恨むなっていう方が無理ですよ。」

 

「聖剣を恨んでるのは何でなの?あ、辛いなら話さなくていいよ?」

 

「いえ…話したくなりました。」

 

そう言うと、木場君は語りだした。

どうしてあそこまで聖剣を恨んでるのか。

復讐を考えたのか。

 

「僕は聖剣を扱えるようになるために施設に居た。そこでは…僕や僕の仲間達をモルモットのように扱う地獄のような施設だった…僕はそこで何度も実験を受けてきた。その中で、仲間がどんどんと減っていって、最後には…」

 

「木場君。」

 

「僕達は本当にただ利用されただけだった。人並みの幸せも、人並みの生活も送れない。皆、実験に耐えきれずに─」

 

「木場君!」

 

もういい。

木場君の話を聞いていて、木場君の顔を見て気付いたら座ってる木場君の頭を抱き締めていた。

 

酷い内容だった。

まさか、聖剣を使う為だけにこんな事をする人が居るなんて。

木場君はただの被害者だ。

復讐を誓うのも無理はないし、あんなに暗い顔をするのも仕方ない。

 

とても、聞いていて気分がいい話じゃない。

 

「もういいよ…無理して話さなくていいよ!」

 

「…聖剣を壊さないといけないんです。僕みたいな被害者を増やさない為にも、僕自身の為にも。」

 

「…じゃあ、私も手伝うよ!」

 

「ネプテューヌ先輩?」

 

「私も聖剣の破壊を手伝う!悪いことには荷担できないけど…聖剣を破壊することは悪いことじゃないと思う。」

 

─ネプテューヌさん、貴女は…

 

「何より、そんな暗い顔をしてる木場君を放っておけないよ。話を聞いたら尚更ね!だから…一人で無茶しちゃ駄目だよ。」

 

「…ありがとう、ございます…」

 

木場君の頭を撫でる。

こんなのを一人で抱え込んでたら壊れちゃうよ。

全部とは言わないけど…少しなら背負える筈。

 

…あれ。

 

─ネプテューヌさん、シェアです。

 

(うん…木場君から?)

 

─はい、まだそれほど強くはありませんが…ネプテューヌさんの心が届いたのだと思います。

 

(そっか。)

 

「ゲームやろ!いっぱい遊んで、少し忘れよう?」

 

「そう、ですね。分かりました。」

 

そうして、少しの間木場君と一緒にゲームで遊んだ。

ゲームをしてる時の木場君は最初険しい表情だったけど段々楽しそうにしていた。

うん、そうだよね。

 

皆のためにあそこまで怒れるんだ。

優しいに決まってるよね。

 

それで、そろそろ一誠達が帰ってくる時間になりそうだからって理由で木場君が帰ることに。

 

「今日はありがとうございました。…お陰で、少し気が楽になりました。」

 

「ううん、私でよければいつでも頼って!主人公ですから!ドヤァ!…明日、部室に来てくれるよね?」

 

「…そうですね、謝らないといけませんし…行きますよ。」

 

「そっか!じゃあ、また明日!」

 

「はい、また明日。」

 

そう言って木場君は帰っていった。

よかったよかった、少しは気が休まったようで。

ずっと復讐の為に動いてたら倒れちゃうもんね。

 

「見てたわよ、ねぷちゃん。」

 

「お母さん?」

 

「まさか、付き合ってたの?」

 

「ねぷ!?そんなこと無いよ!」

 

「あら~本当~?」

 

「わーわー!持ち上げないでよー!」

 

「ただいまー…ってなにしてんだよ?」

 

「ネプテューヌさん、先に帰ってたんですね!ただいまです!」

 

「あー帰ってきちゃったじゃん!降ろしてー!」

 

その後、夕飯を皆で食べて、自分の部屋に一誠とあーちゃん、自分といーすんが揃う。

 

いーすんの調べもの、もう終わってる筈だけど…

 

「いーすん、どう?」

 

─ええ、概ね木場さんの言っていた内容と同じですが…酷いものです。これを教会が秘密裏に行っていたなど…

 

そこからいーすんに教えられた内容…聖剣計画は驚愕…ううん、唾棄すべき内容だった。

しかも、天使側の教会…あーちゃんの事もそうだけど、まさかこんな外道な事をしていたなんて。

木場君含めた多くの子供達がこの計画に利用されて死んでしまった。

それもこれも、聖剣を扱う為に必要な因子を抽出する為だけに。

 

自分は二人にもこの内容を伝えた。

 

「部長に聞いてはいたけど…そこまでひでぇ内容だとは思ってなかったぜ…!」

 

「そんな…教会が…?」

 

「全部、間違いないと思うよ。ね、いーすん。」

 

─はい、間違いありません。

 

「間違いないって。…木場君が恨むのも無理はないと思う。」

 

「…フリードが主犯ってのは考えられねぇ。裏に誰かいるってことだよな。そいつも倒して聖剣も壊す。それでいいってことか?」

 

「待ってください!聖剣を壊すのは良くないです!」

 

「どういうこと?」

 

「聖剣は教会においても重要視されている武器です。それを破壊したとあっては…教会との戦争もあり得ます。」

 

「でも、それなら木場君はどうするの?」

 

「それは…」

 

「…取り敢えず、明日来るんだろ?木場の考えを聞くためにも今日はもう寝ようぜ。」

 

「…そうですね。」

 

「うん…」

 

自分達だけで決められる問題じゃない。

元はと言えば教会が悪いのに壊したら怒るなんて酷いよ。

そんなのが許されていいのかな…自分は木場君を助けたいのに。

 

一誠は自分の部屋に戻って、あーちゃんももう寝るようだ。

 

自分は…

 

─ネプテューヌさん。

 

(いーすん…私、どうすればいいの?)

 

─聖剣の破壊…取りあえず、明日になってから行動を決めてもいいかと。

 

(やっぱりそうなるんだね。)

 

─すいません、お役に立てず…

 

(ううん、いーすんには助けられてるから気にしないで。

もう寝るね、おやすみ。)

 

─はい、おやすみなさい。

 

そのまま、目を閉じる。

明日、決めても遅くはないと思うし…

一筋縄じゃいかなそうだけど、主人公としてめげないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝早く、オカ研に皆集まる。

ちゃんと木場君も来てくれてよかった!

部室に入る。

 

でも、どうやらお客さんが来てたみたいで…

リアスちゃんの表情は若干険しい。

 

「あれ…ネプテューヌ?一誠君も…」

 

「い、イリナ!?と、誰だ?」

 

外国へ引っ越した筈の栗毛少女ことイリナちゃんと青い髪に緑のメッシュの女の子がいた。

 

「…眷属か。」

 

「ええ、ネプテューヌは違うけどね。…それで教会の戦士がわざわざ何の用?」

 

「伝えることがあるから管理者の所まで来たそれだけだ。

申し遅れたが、私は教会の戦士 ゼノヴィア。」

 

「同じく、紫藤イリナ。」

 

「…そう。それで、伝えたいことって?」

 

「教会に保管されていたエクスカリバーが数本盗まれた、というのが1つ。」

 

「エクスカリバーが…!?」

 

「木場君…」

 

「大丈夫です…まだ。」

 

拳を握り締めて感情を抑える木場君に心配になる。

だって視線が二人の持ってる剣に向かってる。

あんな目で見るってことはつまりそういうことなんだ。

 

「犯人は神の子を見張るもの(グリゴリ)の幹部、堕天使コカビエルとその一味だ。」

 

「ねぷ!?また堕天使!?」

 

「…それで、まだある?」

 

「ああ、最後に─」

 

 

 

「─我々教会の戦士だけで聖剣を奪還する。貴様ら悪魔には不介入を要求する。」

 

 

 

その言葉に絶句したのは自分だけじゃなく、周りの皆…もちろん、リアスちゃんもだった。

幹部が相手だし、フリードもいるんだよ?他にもいるっぽいのに…

自殺行為だよ!

 

もう、どうすればいいの!?




ぶっちゃけこれからネプテューヌには色々と大変な思いをしてもらうかもしれない。でも主人公ならなんとかなるさ!
パプハ様を信じろ!


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昔馴染みが急成長したと思えばバトル発生!?

ねーぷー! 

聖剣編は大事だからしっかりやっていきます(フラグ)

しっかりとねっぷりするからよろしくな!


ゼノヴィアっていう教会の戦士が助力無し…つまり二人だけでの聖剣奪還をするって言ってきた。

皆が絶句する中、リアスちゃんが二人を呆れた視線を送る。

 

「馬鹿なの?堕天使コカビエルは大戦でも生き残った伝説の堕天使…それだけじゃない、盗まれた聖剣を使うフリードや他の仲間。

それを二人だけでやる?死ぬ気なの?」

 

「神のために死ぬのなら、悔いはない。」

 

「死なないに越したことはないけどね。死にたくないし…」

 

「愚かね、事の発端が重要なのではないわ。教会から盗まれたから教会の戦士が派遣された。そこまでは分かるわ。

けれど、それを現地の管理者…この場合は私だけど、それに手出しは無用と言うのは信仰だのどうだのは関係の無いことよ。」

 

「悪魔と組めと?それこそ我々教会の戦士を愚弄する!」

 

「面子だとかプライドもあるかもしれないけど…それを抜きにして考えなさい。一般市民の命が関わっているのよ!この町の管理を任された者として愚かと言わずして何と言うの!」

 

リアスちゃん…!

凄いしっかりしてるリアスちゃんだ!これは頼りになるよ!

自分や他の皆が感動してる中、やっぱり木場君の視線は剣にいってる。

 

「少し考えれば分かることでしょう。教会は貴女達を使い捨ての駒としか見てないのかしら。」

 

「黙って聞いていれば教会まで馬鹿にするのは許せないわ!」

 

「イリナちゃん、落ち着いてよ!昔はそんなじゃなかったじゃん!」

 

「!……ふぅ、そうね。でも、悪魔になった一誠君といい、悪魔と一緒にいるネプテューヌといい…一体何があったの?」

 

「それはまた後で話すよ。ねぇ、危険な相手なんだよね?協力して倒すことは駄目なの?」

 

「…まあ、普通ならそうでしょうね。」

 

「こうして否定したけど、教会の考えが分からない訳じゃないわ。ネプテューヌ、いい?教会が悪魔と手を組んだら教会にとっては汚点になり得る。それを避けたいが為にこうしている…そうでしょ?」

 

「そうよ。」

 

「でも、奪還できなかったら意味ないじゃん!考え無しにも程があるよ!」

 

「そうだぜ、汚点だか何だか知らねぇけど、死んじまったら何もかもおしまいじゃねぇか!」

 

「…うじうじ悩む位なら手っ取り早い方法があるよ。」

 

「木場君…?」

 

今まで黙っていた木場君が発言する。

自分は気になって顔を見上げると、苛立ちを隠しきれてない木場君がいた。

一誠もドン引いてるよ…

 

「決闘をして、勝った方の言うことを聞く。シンプルじゃないか。」

 

「祐斗、何を言って…」

 

「…ほう、勝てると言いたいのか。」

 

「ゼノヴィア?」

 

「そっちは二人、ならこっちも二人。一対一を二回やる…ほら、簡単だろう?」

 

「木場君、落ち着いてよ!」

 

「ネプテューヌ先輩、貴女に言われたから少しは抑えようと思いました。ですが…こうも長いだけの話…うんざりだ。」

 

一応、抑えようとはしてたみたい…でも、イリナちゃん達が死んでもいいとか言ってるのに苛立ちを覚えたのかな。

 

でも、手っ取り早い方がこの際いいのかもしれない。

自分としてもこの場は木場君だけじゃなくて他にも良くない雰囲気だし。

 

あっちも一人やる気だし。

 

「…ねぇリアスちゃん、ここは木場君の話に乗るのもありじゃない?」

 

「…頑固者が相手にもいるしね。祐斗、一誠がやりなさい。いい?」

 

「お、俺!?」

 

「こういった経験も必要、ということよ。」

 

「そ、そういうことか…はい!」

 

「祐斗、分かっているとは思うけど…」

 

「殺すような真似はしませんよ。…武器破壊はあるかもしれませんが。」

 

「あらあら…結界を張りますわね。」

 

「ええ、お願い。…そういうことよ。殺傷無しの模擬戦だけど、構わないわね?」

 

「いいだろう。」

 

「ちょ、ゼノヴィア…もう、分かった。」

 

あっちも乗ってくれたし、後は勝つだけだね。

でも…今の木場君、大丈夫かな。

あの武器、エクスカリバーに目がいきすぎな気がするんだよね。

 

「木場君…」

 

「…すいません、僕はやっぱりあれを無視することはできない。」

 

「なら、無理はしちゃ駄目だよ。」

 

「…はい。」

 

本当は自分が出た方が手っ取り早いんだろうけどリアスちゃんの決定だからね、口は出さないよ。

 

それに、さっきの戦えない一般人の皆を思う気持ちは伝わったし!

 

「一誠、頑張ってね!」

 

「おう、やってやんよ!」

 

「あ、洋服崩壊(ドレスブレイク)は無しね。」

 

「なん…だと…!?あの胸を見てくれよ…あれはどう考えても使うべきだ!」

 

「ねぷ子さん、幼馴染みを皆の前で剥くような弟は嫌いかな。」

 

「ぐ…やってやろうじゃねぇかこの野郎ッ!」

 

「一誠君、シスコン抜けてなかったんだね。」

 

「そこうっさいですよ!」

 

ライザーとのレーティングゲームの時、やっぱり何かをやらかしてたらしく…それが洋服崩壊(ドレスブレイク)

なんでも、女の子の服を破く為だけの技だそうで…その場にいたらぶん殴ってたと思うな。

 

イリナちゃんが昔のようにからかうような笑みを一誠に向ける。

 

「でも、昔はねぷ姉ちゃんねぷ姉ちゃんって手を繋いでたじゃない。」

 

「いやーっ!?子供の頃の話はやめよう!精神的攻撃はセコいよ!俺泣いちゃうよ!」

 

「あの時は一誠もイリナちゃんも可愛かったなぁ。イリナちゃん、大きくなったね。」

 

「そういうネプテューヌはいつになったら身長伸びるのよ。

とはいえ、そろそろ始めないと抑えが利かない二人が暴れそうだし…一誠君の力、私が確かめてあげるよ!」

 

「空気がね、あっちとそっちだと色々と違うよね。」

 

「…まあ、色々とあるのよ、私も…教会も。」

 

「イリナは…信じていいのか?」

 

「私達と戦って、共闘してもいいかなって思えば改めてこっちから頼む。でも、思えなければ…手出しはしないで。

元々二回戦しかないからどっちかが二勝しないと終わらないし、こんなんでいいでしょ。」

 

「そうね。」

 

「部長、結界の準備整いましたわ。」

 

「ありがとう。」

 

こうして、結界の中へと入って観戦することになった。

一誠は何となくやる気が出てきてるからいいけど、木場君は空振らないか心配だなぁ。

 

「ネプテューヌ先輩。この勝負、どう見ますか。」

 

「うーん…小猫ちゃんは?」

 

「教会に選ばれた戦士…それも、あの武器は木場先輩の表情からエクスカリバーですよね。そうなると…まだ判断は難しいですね。」

 

「私は木場君達を応援するよ!イリナちゃんにも頑張ってほしいけど…ここは皆のためにもね。」

 

「なるほど…私も木場先輩と兵藤先輩を応援します。」

 

心配は心配だけどそれはそれ。

勝ってくれるって信じてるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は聖剣に復讐を誓った。

それは皆のため、馬鹿な実験を繰り返さないようにするため…自分のため。

 

少し考え直す機会があった。

僕のために悲しんでくれる人がいる。

部長は僕のために良くしてくれた。

 

けれど…聖剣を見た時、僕の心に憎悪がまた芽生えた。

僕はこういう生き方しか出来ないのかもしれない。

それを改めて実感した。

 

…そんな僕を抱き締めてくれた。

心から心配して、心から慈しむような。

そんな優しさを感じ取った。

ネプテューヌ先輩はお人好しだ、自分とは真反対と言ってもいい。

 

僕の拒絶をものともせずにズケズケと入り込んでくる。

普通なら迷惑だと怒るものだけど、相手を想う心に嘘が1%も混じっていないと分かるとそんな気も失せた。

 

嬉しかったんだと思う。

こうして自分の内側に入ってきてまで心配する人がいて。

少し周りを見ようと思えた。

一誠君やアーシアさんが慕う理由も分かる気がする。

 

だから、少し手荒な方法を取った。

あの場だとネプテューヌさんや部長は誰かが傷つく方法を思い付かない。

こういうのは今の僕が楽にやれることだ。

 

幾分か心が軽くなったお陰か聖剣を見ても怒りで前を見失うような事はない。

壊したいという心は失せてないけど、ただやられることは無くなったと思う。

 

「準備は出来たかな。…そのエクスカリバーを破壊される準備が。」

 

「面白い冗談だ。エクスカリバーを随分と目の敵にしているようだが…何者だ?」

 

「先輩だよ、君達の。」

 

目の前のゼノヴィアという教会の戦士に敵意の視線を送る。

この言葉が全てを物語っている。

僕は逃げてきた。

でも、力を身に付けてきたんだ。

 

…今ならきっと壊せるはずなんだ。

 

「その忌々しい聖剣を壊す。覚悟はいいかい。」

 

「貴様のその剣では聖剣であるエクスカリバーを壊せはしない。

逆にその思い上がりを矯正してやろう。」

 

「どうかな…やってみなくちゃ分からない。」

 

「…いくぞ!」

 

魔剣を手に迫ってくるゼノヴィアの聖剣…これは破壊の聖剣か!

破壊の聖剣の一撃は重い筈だ。魔剣で真っ正面から打ち合えば負けるのはこっちだ。

とにかくかわして隙を窺おう。

 

騎士の速さなら避けれる範囲の攻撃ばかりだ。

問題はない。

 

痺れを切らした相手の一撃をかわして魔剣の力を解放する。

 

「吹き荒べ!」

 

「風の魔剣…!くっ!」

 

「貰った!」

 

体勢を崩した時、聖剣を狙って今一番攻撃力の高い魔剣を創造して振るう。

 

ガキンッという金属製の物が壊れた音が響く。

 

「…残念だったな。」

 

「チッ…これでも駄目か。」

 

届かない。

これでもまだ聖剣を壊せない。

足りない。

 

多分、何度やっても同じ結果だろう。

そんなことは分かってる。

こうなる可能性があったのも分かってる。

 

『一人で無理しちゃ駄目だよ。』

 

ネプテューヌ先輩をチラリと見る。

 

勝利を信じてるのと心配するという半々の感情が見てとれる。

器用な人だ。

 

仕方無い。

昨日良くして貰ったこともあってこの戦いでこれ以上聖剣に固執してたら負ける。

 

新しい魔剣を創造して斬りかかる。

当然受け止められてしまう。

 

「いいのか?聖剣は目の前にあるぞ?」

 

「本来の目的を見失うわけにはいかないよ。色々と恩があるしね。」

 

「…なるほど。」

 

ゼノヴィアが後ろへ跳んでから構えを解く。

僕は意図が読めずに剣を握りっぱなしだ。

 

「どういうつもりだい?」

 

「貴様の力量は問題ない…と私は判断した。今回はそれが試合終了の条件だろう?互いに本気は出せまい。」

 

「…それもそうだね。」

 

「さて、イリナはどうなっただろうか。あの悪魔とは知り合いであったようだが…」

 

互いに剣をしまって一誠君達の方を見る。

どうやら、あっちも終わったようだ。

傷だらけになりながらも立ってる一誠君と傷らしい傷はないけど疲れてる様子のイリナという教会の戦士がいる。

お互い、武器をしまってるところから見て、認められた感じかな。

 

「一誠君…強くなったね。」

 

「…」

 

「一誠君?」

 

「すいません今スッゴい痛いの我慢してるんで待ってもらっていいですかね…!」

 

「イッセーさん!治療します!」

 

「サ、サンキューアーシア…」

 

アーシアさんが駆け寄って、神器で回復をする。

その時、隣のゼノヴィアが眉をひそめる。

 

「あれが魔女か。」

 

「あまり、変なことはしない方がいい。」

 

「…ふん。」

 

「木場くーん!」

 

ネプテューヌ先輩や塔城さんがこっちへ来た。

ネプテューヌ先輩に至ってはこっちに突っ込む勢いで抱きついてきた。

 

「うわっ…と、どうかしましたか?」

 

「良かったよぉ無事に済んで!怪我はない?大丈夫?」

 

「…先輩、心配しすぎです。」

 

「だって、木場君の事を知ってる身からすると心配になるのは当たり前じゃん!」

 

「分からなくはありませんが、抱きつくのはどうかと。」

 

確かに。

抱き付かれると昨日の件もあって多少気恥ずかしい。

純粋に心配してくれているのは分かる。

 

こういう悪意の欠片もない善意には…何だか泣きたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場君と一誠が無事…いや一誠は傷だらけなんだけど。

まあ、これでリアスちゃん達の力量を認めてくれるということらしい。

やったね、これで皆協力できるね。

駄目だったら私だけでもやろうと思ってたよ!

 

先走ったせいか、いーすんが本のままふよふよと浮いてこっちに来てる。

 

─急ぎすぎですよ。

 

「あ、ごめんいーすん!」

 

─構いませんが、木場さんが困惑しています。そろそろ離してあげては?

 

「それもそうだね!ごめんね、木場君!」

 

「いえ…」

 

「…本?」

 

「本じゃなくて、いーすん!」

 

「いーすん…なるほど、そういう本なのだな。」

 

「そうだけど…そうじゃないっていうか。」

 

─声が聞こえないと浮いてる本ですからね、私。

 

「悲しいなぁ…」

 

「…兵藤先輩の方へ行かないんですか?」

 

「ああそうだった。じゃ、また後で!」

 

手を振って一誠とイリナちゃんの方へ向かう。

傷が多かったけど、イリナちゃんへ真っ直ぐ向かう姿勢は頑張ったと褒めたいし。

まさか、剣が盾に変わったり鞭に変わったりするとは思わないよ。

 

「二人とも~!」

 

「おう、ねぷ姉ちゃん。何とかなったぜ。」

 

「何とかされたって言えばいい?…ところで、アーシアって言ったわよね。貴女が、悪魔を治療した魔女?」

 

「っ…今だって治してますが、そうです。」

 

「…まあ、私はとやかく言わないけどね。ただ、自分の行いには責任を持った方がいいわとだけ。」

 

「え…」

 

「この町には任務で来てるけど…こういった話なら教会の戦士としてじゃなくてもいい訳だし?あんまりそういう事言う気は起きないし。一誠君が悪魔なのもネプテューヌが悪魔と一緒にいるのも訳があるんでしょ?」

 

「いや、その…私はそうだけど。」

 

「俺は夢のために悪魔になりました。」

 

「え、ちょ…何でそんな申し訳なさそうなの!?」

 

「その…ハーレムのために。」

 

「はぁ!?え、本当に言ってます!?」

 

「うん、言ってる。」

 

「うわぁ…無いわ、色魔の類いだったよ。」

 

姉として申し訳ない。

イリナちゃんの発言に一誠は正座してる。

うん、そうだよね。

今思えば色々とぶん投げてたもんねあの時。

 

「…ま、まあ…過ぎたことを気にしても仕方無いわ。

あ、ネプテューヌ。この後そっちの家に行ってもいい?」

 

「いいよ!イリナちゃんが来てくれるならお母さんもお父さんも喜ぶだろうし!でも…」

 

「知らないんでしょ?こっち側の事。」

 

「うん…」

 

「悪い、言わないでくれるか?」

 

「二人の事だし、言い出せないって分かってるよ。言わないって約束する。」

 

「ありがとう、イリナちゃん!」

 

「ありがとな。」

 

「イッセーさん、服…」

 

「え…あー!?服が所々破れてらっしゃる!?」

 

「お母さんに言わないとね、これ。」

 

「派手にスッ転んだ…で誤魔化せる範囲じゃねぇな。」

 

「ま、黙ってる罰だと思って怒られなさいな。」

 

「うぃっす…」

 

項垂れる一誠に苦笑する。

 

「終わったようね。」

 

「激しい戦闘にはならなくて安心しましたわ。」

 

「でも、祐斗が自分を抑えるとは思わなかったわ。何かあったの?」

 

「うーん…もしかして…」

 

昨日の言葉のお陰だったり?

そんなことないか。

自分としてはそうであってもそうでなくてもいいけど。

 

そうこう考えてたら木場君とゼノヴィアもこっちに来た。

 

「まあ、それはいいとして…コカビエルの件、こっちも手を出させて貰うわよ。」

 

「ええ、お願いするわ。」

 

「やったー!これから一緒に頑張ろうね!」

 

「悪魔と和気藹々とする気はない。」

 

「でも協力するなら相互理解は必要、みたいな!私はネプテューヌだよ、よろしくね!」

 

「…ゼノヴィアだ。」

 

「うんうん、じゃあこれから…」

 

家に行こうと言おうとしたら、携帯が鳴る。

誰だろうと思ったらおっちゃんだ。

 

どうしたんだろう?

取りあえず出ようかな。

 

「ごめん、ちょっと電話!」

 

「ええ。」

 

少し離れてから電話に出る。

 

「もしもし?おっちゃんから掛けてくるなんて珍しいね!」

 

『ネプ子、無事か。』

 

「え?ど、どうしたの?」

 

『いや…最近俺の周りが騒がしいからよ。そっちももしかしたら何かあるんじゃねぇかと思ってよ。』

 

「そっか…大丈夫!何もないよ!」

 

『そうか…ならいいんだがよ。無理だけはすんなよ。』

 

「うん!ありがとね!」

 

『ああ。』

 

通話が終わり、皆の方へ戻る。

…おっちゃん、タイミングがよかったけど、そういうことだったりするのかな。

 

そうじゃないとは思うけど、うーん。

 

その後、イリナちゃんとゼノヴィアを家に誘って今日のところはお開きという形になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーさん、大変そうでしたね…」

 

「いやぁ、流石に言えないし…怒られても仕方無いよ。」

 

イリナちゃんが来た時のお母さんの反応はもう凄かった。

可愛くなったとか大きくなったとか、トウジさんは元気かとか…色々と質問責めだったけどイリナちゃんも楽しみにしてたようで楽しげに喋っていた。

 

その間、一誠は正座をさせられてて、イリナちゃんとの話が終わってから説教が始まった。

取りあえず、喧嘩したらこうなったということにしたらしい…哀れ一誠。お姉ちゃんは味方だからね。

 

「ところで、今更だが私まで上がったのはいいのか。」

 

「いいよ!私としてはあーちゃんとも仲良くしてほしいし、難しいこと考えないで遊びたいし!」

 

「楽観的だな…そこの元聖女と話すことなどない。」

 

「ネプテューヌ、それはいいんだけど一つだけ聞かせてほしい。

聖剣を異様に壊したがってた悪魔…彼は?」

 

「木場君の事?うーん…詳しくは木場君のためにも伏せるけど、聖剣の被害者…かな。」

 

「聖剣を壊せば教会が黙ってません…ですよね?」

 

「どうだろ。」

 

「えっ?」

 

「おい、イリナ?」

 

ゼノヴィアの咎めるような視線を気にせず、イリナちゃんはお茶を飲む。

おやつはもちろんプリンだよ!

 

「ゼノヴィア、私達は聖剣の奪還が目的。そうでしょう?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「別に、状態の事は言われてないのよ。」

 

「…何を言ってるか分かってるのか?」

 

「そう怒る事じゃないと思うけど。あっちが聖剣を少なくとも3本は握ってる。対処のために壊してしまいましたが奪還には成功しました。うん、これが一番じゃない?」

 

「イリナちゃん、凄い!それならお互いに優しいプランだよ!」

 

「しかしだな…」

 

「壊さないに越した事はないけど、もしもの話よ。

それに、コカビエル単体で教会の聖剣を三本も盗めるのかってなると…引っ掛かるしね。」

 

「…それもそうだ。」

 

「何はともあれ、木場君の悩みを解決できそうで良かった!これで後はカキピーを倒すだけだね!」

 

「コカビエルです、ネプテューヌさん!」

 

「えー…言いにくいよ。なんでコカビエルなの?コカピエルならまだ言いやすいよ。濁点付けるとかあり得ないよ!」

 

「ネプテューヌも言いにくいけどね。」

 

「え、そうなの?」

 

今明かされた衝撃の真実。

そんなに言いにくい?

ええ…そんなぁ。

 

その後、戻ってきた一誠も交えて皆でゲームをした。

イリナちゃん、ゲーム上手くなってない?

おかしいなぁ、前は楽勝だったのに。

ゼノヴィアは猪突猛進な操作だし…

 

でも、何となく仲良くはなれそうで良かったかな!




ちょっとした裏話

イッセー「ねぷ姉ちゃん、いーすんの力でドライグの声って聞けるように出来ないか?」

いーすん「3日かかります。ついでにそれで聞けてもネプテューヌさんだけです。」

ねぷ「だってさ。」

イッセー「そっかー。」


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私にだってシリアスは存在するんだよ?

VVVのネプテューヌの衣装、可愛いですよね。
やっぱりネプテューヌって結構似合う衣装多いんだなぁ。
まあ、初期のパーカーが一番好きですけども。


やっほー!皆大好きネプテューヌだよ!

今日も元気におはよう!

コカビエルを倒して聖剣の奪還を皆ですることになったんだよね。

 

だけど、コカビエルってどんな相手なんだろ?

堕天使で凄いのは分かるけど…うむむ。

フリードが聖剣を何本も持ってるっぽいし…

 

「ま、取りあえず…こういう時は探索だよね!」

 

家を出て暇な自分。

部活の活動もコカビエルの件もあって休止だからね。

 

多分、二人か三人に分かれて動くのかな。

 

「ネプテューヌ、貴女は私と行動よ。」

 

「イリナちゃんと?ゼノヴィアは?」

 

「ゼノヴィアとは何回か組んだことあるけど…あの子、脳筋なのよ。」

 

「ああ…」

 

「今日だって一人で行っちゃったし、困ったものね。引き際は分かってる筈だから、心配はいらないと思うけど…」

 

「じゃあ、一緒に行動だね!」

 

「ええ…一誠君も居たら、昔のようだったんだけどね。」

 

「まあ、そこは仕方無いよ。一誠はあーちゃんと組んだ方がいいのは事実だもん。」

 

イリナちゃんと歩きながら会話する。

一誠はあーちゃんと行動するようで、張り切ってた。

一誠はパワータイプだからヒーラーがいると助かるもんね。

 

イリナちゃんも納得した様子だ。

 

「それもそうね。…ねえ、ネプテューヌ。」

 

「どうかした?」

 

「私ね、頑張ったのよ。」

 

「うん、昨日見てたけど…頑張ったね。」

 

「大変だったけど、英国へ渡る時の約束を守るために頑張ってきたの。」

 

したなぁ…大切な約束、忘れたことなんてないよ。

今よりも泣き虫だったイリナちゃんが涙を流しながらも一誠と自分にしっかりと言ったこと。

 

『私、あっちに行ったらもっと頑張って一誠君とネプテューヌが驚く位凄くなるね!』

 

大変な時もあったと思う。

教会の戦士って、選ばれた人なんだと思うし…だから、泣きたくなることもあったと思う。

 

「その、ね…」

 

「イリナちゃん!」

 

「あっ…」

 

少し背が高いけど、背伸びして頭を撫でる。

頑張ったんだもんね、褒めないといけない。

どれだけ頑張ったのかは分からない。

でも、こうして元気な姿を見せてくれた。

それだけで自分はいいんだよ、イリナちゃん。

 

されるがまま撫でられるイリナちゃんの姿に、昔を思い出す。

違いは泣かなそうなことかなぁ。

 

「…この世界の事を知って、決めてる事が1つあるの。」

 

「うん。」

 

「どんな事があっても…ネプテューヌや一誠君、この町の人を裏切ることだけは出来ない。」

 

「背負いすぎちゃ駄目だよ。」

 

「分かってる。…お父さんにも話したらね、いつかこの町の教会へ一緒に戻ろうって言ってくれたの。」

 

「トウジさん、この町好きだもんね。」

 

「うん。」

 

イリナちゃんの決めたことに自分は異を唱えない。

だって、必死に考えたことだと思う。

もし、この町が教会にとって不都合になったりした時はイリナちゃんは裏切るって言っていること…それは分かってる。

だからって信仰を捨てちゃ駄目とか、トウジさんはいいの、とか言うことは絶対にしない。

 

自分はその時その場所で助けられる人を助けるだけだから。

 

「私にとっては悪魔とか天使とか。そういうのはあまり変わらないの。この町が好きだから無理言ってここに来たんだしね。」

 

「そうだったの?」

 

「そう、聖剣を十全に扱える教会の戦士は一握り。

けど、教会の考えとか知ったことじゃない。私は私だもの、好きにさせて貰うわ。」

 

「イリナちゃん、昨日教会をバカにするのは許せないって言ってたよね?」

 

「育てて貰った恩もあるしお父さんの職場だからね。

あんまり悪く言われるのは好きじゃないの。」

 

「わぁ…変わったねぇ。」

 

「…今でも、一誠君は好きだし、ネプテューヌも好きだよ?」

 

「分かってるよ、ちゃんと。」

 

「そっか。…じゃ、再開しましょ。」

 

そう言って、綻ばせてた顔をキリッと引き締めてイリナちゃんは歩き出す。

皆どんどん変わっていくなぁ。

うーん、自分も少しは変わればいいのに。

 

「ネプテューヌは記憶戻った?」

 

「ううん。でも、別に気にしたことはないかな!」

 

「そうなの?」

 

「私は私でしょ!ねぷ子さんは記憶があろうとなかろうとこの物語の主人公にして超絶美少女…これは変わらぬ真理なんだよ!」

 

「相変わらずなのね、それは。」

 

そうして、二時間程探索したけどそれらしい人物とかは見つからなかった。

いーすんにも頼んだけど、後一時間かかるし…うーん困ったね。

 

「いない…闇雲に探すべきじゃないのかしら。」

 

「でも、手掛かりとか無いし焦っても仕方無いよ。

フリードがあっちにいるってことは奇襲もあり得るし…」

 

ん、奇襲?

そっか、その手があったね!

でも、これは危険な案…イリナちゃんが賛同するかどうか。

 

「イリナちゃん、人目の無い場所はまだ探してないよね?」

 

「そうね。」

 

「じゃあ、次はあんまり人が寄り付かない場所に行ってみよう!もしかしたら何かあるかも!」

 

「んー…まあ、それもそうね。やっぱり堕天使が親玉なのもあって人目に付く場所には居ないのかもしれないしね。」

 

「そうと決まればレッツゴーだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、この教会ね。見たところ廃棄されてるようだけど?」

 

「ここはレイナーレって堕天使が拠点にしてた教会だよ。

同じ堕天使だしあり得るかなって!」

 

「なるほどね。」

 

今となっては懐かしい場所、なのかな?

いい思い出はないけど、嫌な思い出の場所って感じ?

 

中に入って、周りを見渡す。

前に自分達が暴れた跡っていうか交戦の跡が残ってる。

ううん、それよりも…

 

「ネプテューヌ。」

 

「うん。」

 

「どうやら手ぶらで帰ることは無さそうね…」

 

聖剣を構えるイリナちゃんに続くように木刀を袋から取り出して構える。

やっぱりつけられてたのかな。

 

ふと、風を切る音と靴で床を蹴る音が聞こえた。

 

「イリナちゃん!」

 

「っ!」

 

イリナちゃんが自分の声に反応して聖剣を盾に変化させる。

瞬間、金属がぶつかる音が響く。

イリナちゃんが若干後退したけど無事っぽい。

 

不可視だなんて、せこい!

 

「あらら、防がれちゃったい。取りあえず一発で教会の戦士を気絶させる算段でござんしたが…」

 

何もない場所からフリードが姿を現す。

透明になる効果の聖剣もあるんだね。

何か、ガチャしたらそんな感じの聖剣が当たるゲームとかありそう。

 

「聖剣を返しなさい、フリード・セルゼン。」

 

「返すわけないでしょ頭沸いてるでありますかぁ?」

 

「んな訳ないでしょ。今のは教会の決まりみたいなもんよ。

…ま、返さないなら力ずくで返してもらうわ。」

 

「聖剣一本と聖剣三本、こっちの方が本数が上なのに余裕そうで羨ましい!殺していい?」

 

「本数で粋がってる奴相手に負けるとでも?」

 

「私だっているんだからね!」

 

「毎度毎度ここに来る度に会うじゃねぇのクソガキ!そんなに僕ちんに会いたかった?」

 

「うーん、あんまりかな。」

 

毎回辻斬りだし…会ったら二言目は死ねだし。

毎度こうだと主人公で寛大な自分でも辟易とするっていうか。

 

「話し合いとか考えたこと無いの?」

 

「んなもん悪魔や悪魔といる奴等と話して何になるって話よ!

クソ悪魔も関係者も皆殺しだ!」

 

「そっか…多分、そっちの事情もあると思うけど、私も友達や家族を傷つけられたくないから…ボッコボコにしてやんよ!」

 

「やってみろやクソガキィ!」

 

天閃の聖剣に持ち替えたフリードが人間離れした速度で自分に向けて斬りかかってくる。

木刀で受け止めるけど、畳み掛けるように素早さを活かした攻撃を何度もしてくるから攻撃に転じれない!

 

「オラオラオラぁ!辛くなってきたんじゃねぇの!?さっさとくたばっちまえ!」

 

「そんな、事言って、一撃も、ねぷ子さんに!与えられてないよ!私ってばガード固すぎだね!」

 

「ネプテューヌ一人が相手じゃないのよ!」

 

「おおっと忘れてたでござんすよ信者さん!鞭なんか振るってそういう御趣味ぃ?」

 

「んな訳あるか馬鹿!」

 

擬態の聖剣を鞭に変化させて振るってフリードの足を絡め取ろうとするけど素早い動きで悉くかわされる。

 

でも、これで何とか出来るね!

 

何度も振るわれる鞭を避けてるフリードに接近して木刀で殴りかかる。

 

「クリティカルエッジで決めちゃうよ!」

 

「チッ、ムカつく鞭だな畜生が!」

 

フリードが苛立ちながら拳銃を取り出して自分に向ける。

けど、そんなものに今更臆す主人公ねぷ子さんにあらず!

 

フリードが引き金を引く瞬間、それよりも早く鞭が腕を絡めとって方向をずらす。

 

「クソがっ!」

 

「取り敢えず、成敗だよ!てやぁぁ!」

 

木刀を肩に振り下ろしてから下から上にフリードを打ち上げてから、一閃!

 

取り合えず技名を込めればそれっぽくなる!

これぞねぷ流剣術だよ!

 

「ごふぁぁッ!」

 

フリードはマトモにくらって地面に倒れ伏す。

 

「ふふん、悪役続投はやられ役の象徴だよ!」

 

「聖剣は返してもらうわよ。」

 

イリナちゃんが倒れてるフリードの所有している聖剣を取ろうとする。

 

その瞬間だった。

 

「バァァカ!!」

 

「っ、ぐぅ!?」

 

「イリナちゃん!?」

 

ガバリと起きたフリードがイリナちゃんの肩に光の弾を撃ち込む。

イリナちゃんは思わず聖剣を手放して肩を押さえ、自分はイリナちゃんに近づく。

 

フリードは素早く起き上がってイリナちゃんの落とした擬態の聖剣を持って離れる。

 

「ケケケケ!殺しもしないで聖剣を穫れると思ったら大間違いなんだよボケが!というわけで四本目いただきまぁす♪残念ですねぇ、痛いですねぇ!」

 

「くっ、この…!」

 

「まさか死んだフリが得意な動物だったなんて!イリナちゃん、大丈夫!?」

 

「人間だバカ野郎!チッ、ムカつくがさっさと撤退させてもらうぜ。ダメージまで受けて聖剣奪ったんだからなぁ。あばよ!」

 

念のためと言わんばかりに玉を地面に投げると煙が溢れる。

思わず目を閉じて吸わないように口と鼻を腕で塞ぐ。

 

少しして、目を開けるとフリードは居なくなっていた。

 

うう、まさか聖剣を盗まれるなんて…

それよりもイリナちゃんだ!

 

「イリナちゃん、早くあーちゃんの治療を受けよう!」

 

「っぅ…首跳ねときゃよかったあのクソ神父…!ごめんね、ネプテューヌ…私が未熟なばっかりに。」

 

「仕方無いよ、私も分からなかったもん。」

 

反省は後、今はあーちゃんを呼ぼう。

あーちゃんに電話したら、すぐに向かうとの事でハンカチで肩を縛って座らせておく。

 

イリナちゃんは意気消沈、といった様子だ。

 

「…あーあ、強くなれたと思ったらこれだ。」

 

「イリナちゃん…」

 

「騙し討ちなんて何回もされてたのに油断したわ。異形じゃないからって勝手に耐久力を下に見てた…慢心ね。」

 

「武器は大丈夫なの?」

 

「ま、木場…だっけ、彼に魔剣を貸してもらえるならいいけど…駄目なら拳でやるしかないわ。一応、そっちも鍛えてるけど。」

 

「なら、大丈夫だよ!」

 

「でも、聖剣を奪われたのよ?」

 

「二度と取り返せない訳じゃないんでしょ?私や皆を信じてよ!

今まで皆の期待に応えてきたねぷ子さんが言うんだから大丈夫だって!」

 

「…変わらないね、ネプテューヌ。」

 

「そうかな?」

 

嬉しそうな寂しそうな、そんな笑みを浮かべるイリナちゃん。

でも、これは性分だからね。

 

「ネプテューヌは昔から自由で、ポジティブで、皆の事が大好きで。皆もそんなネプテューヌが好きだからとかじゃない。自然と応えてきたからこそ。…無理してない?」

 

「してないよ?私はいつでも元気だよ!」

 

「そう…ならいいんだけど。」

 

「イリナちゃんこそ、頑張りすぎたりしちゃ駄目だよ?たまにはストレス発散とかしないと倒れちゃうからね!」

 

「はいはい。」

 

「ネプテューヌさん!イリナさん!」

 

「あーちゃん!あれ、一誠は?」

 

「そ、それが…!」

 

あーちゃんが焦った様子で入ってきた。

一誠はいないし…どうしたんだろう?

 

 

 

「コカビエルが部長さんたちの所に…!」

 

「ネプテューヌ!!」

 

 

 

あーちゃんの言葉を聞いて、自分は急いでリアスちゃんの方へと向かった。

イリナちゃんの制止の言葉も無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─女神様…いえ、ネプテューヌさん。コカビエルは旧校舎にいます。

 

「ありがとう、いーすん。飛ばすわよ。」

 

変身して、リアスちゃんたちの方へと速度を飛ばす。

町の人に見られないようにかなり上を飛んでるけど、大丈夫かな?

それにしても…まさか、親玉直々に来るなんて!

ライザーといいコカビエルといい、もしかして親玉は待てないのかな!

 

もうすぐ旧校舎。

リアスちゃんたちは無事かな…

一誠も向かってる筈だし、木場君だって…

 

─コカビエルの力は本物です。気を付けて。

 

(うん…分かってるよ。)

 

そして、旧校舎に到着した自分が見たのは─

 

 

 

 

傷だらけで倒れてるリアスちゃんや朱乃ちゃん。

剣を地面に突き刺して膝を付く木場君とゼノヴィア。

立っているけど満身創痍な小猫ちゃん。

血だらけでそれでも皆を庇うように前に立つ一誠。

 

そして、それをやったコカビエルと思われる10の翼の堕天使が飛んでいる。

よく見れば、老人のような男も立ってる。

 

「───」

 

 

 

 

「伝説の堕天使…これほどだなんて…!」

 

「つまらんな。遊びだというのにこの様ではな…」

 

「皆、は…やらせねぇ。俺が、守る!ねぷ姉ちゃんのように!俺が守るんだ!」

 

「威勢だけでは何も出来んぞ赤龍帝。所詮は雑魚…力もないようでは退屈しのぎにすら…む?」

 

急降下して、刀を頭目掛けて振り下ろす。

察知したコカビエルは光を剣のようにしてそれを防ぐ。

 

「ほう…?貴様、その力…」

 

「…!」

 

「ぬっ…!」

 

シェアを刀に纏わせて、握る力を更に強めて剣ごとコカビエルを弾く。

地面に叩き付けられる前に態勢を整えられてしまう。

 

一誠達の前へと立って、刀を構え直す。

 

─ネプテューヌさん!いけません!

 

「黙って、いーすん。」

 

─ネプテューヌさん…!

 

「ねぷ、姉ちゃん…?」

 

「ネプテューヌ先輩…!」

 

「…こんなに、ボロボロになって。」

 

チラリと皆を一瞥してから、コカビエルと老人を見捉える。

初めてかもしれない。

レイナーレの時だってこんなになったことはないのに。

 

「…貴方が堕天使コカビエルね?」

 

「そうだとも。そういう貴様は…人、ではないな。だが、人に近しい存在…何者だ?」

 

「普段なら、悪党に語る名はないとか言ってるところだけど…」

 

「クク、怒り心頭といった様子だな。」

 

「そう見える?私、初めてなのよ。こういう感覚…って言えばいいのか分からないけど。」

 

抑えようとは思わない。

 

あんな傷付いた家族を、友達を見せられて…あり得ると思っていても抑えられない。

一誠なんて、今にも倒れてしまいそうなのに皆を守らないといけないって耐えて…何発貰ったんだろう。

 

「聖剣を盗んで、貴方は何がしたいの?」

 

「戦争だ。」

 

「…戦争?」

 

「そうだ!この町を始まりとして、そこの魔王の妹と眷属を殺し、教会の戦士を殺し…魔王、熾天使の連中を引っ張り出す。

そして、我ら堕天使こそが至高の存在であることを思い知らせるのだ…あの戦争の続きをここでなぁ!」

 

話の一部は思考のせいで聞こえなかった。

リアスちゃん達を殺して、この町を巻き込んで。

そうまでして何をするかと思えば戦争。

 

…さっきいーすんに当たっちゃったから、後で謝らないと。

 

多分、あそこの老人が聖剣を盗む際に手引きした犯人かな。

教会の関係者、かな?

 

「アザゼルも、シェムハザも温すぎる!何が平和、何が同盟だ!今まで戦争してた相手と仲良くしろだと!?ふざけるのも─」

 

「もういいわよ、喋らなくて。」

 

自分でも驚くくらい冷めた声。

コカビエルは嬉々として話していた内容を遮られたのが少し癪に障ったのか睨んでくる。

 

「─ほう、多少はやるようだが…俺に勝てるとでも?平和ボケしてた奴に負けるとでも?」

 

「喋らないでいいって言ったのよ。私の大切な友達に手を出して、私の可愛い弟にここまでして、私の大好きな町を戦場にしようとして…」

 

刀をコカビエルに向けて、真っ直ぐ睨む。

 

「私はパープルハート…この町を、この町の人々を守る者として。」

 

少し位、いいと思うんだよね。

色々と…勝手な人が多いしさ。

シリアスを壊すのが得意な自分でも流石にちょっと位はさ。

 

 

 

「貴方達を…私は絶対に許さないわ!」

 

 

 

─こういう時位はシリアスになったっていいよね。




本編最初のマジギレねぷ子。

多少の悪事は反省してねとかで許すけどコカビエルみたいなのには同情の余地無しなのである。


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ネプテューヌ、サガシテ 

マジギレねぷ子、必ずしもいい方向に進むとは限らない。



光の剣とシェアを纏った刀がぶつかり合う。

力はあちらが上だけど、足りない部分はシェアで補う。

だから、力、速さ共に互角だ。

 

コカビエル…戦争をするためにこの町を巻き込むなんてとてもじゃないけど許すことはできない。

その以前に、一誠達をここまで傷付けた奴を…どうして許せるのか。

 

湧き上がる怒り…憎しみ。

 

「でぇい!」

 

「ハハハ!面白い!どんどん力が出てくるではないか!?

どこにそんな力を隠していた!」

 

「そんなことどうでもいい、重要なことではないわ。

これなら…貴方を倒すことが出来る!」

 

─ネプテューヌさん!それ以上は…!

 

「俺は楽しいぞパープルハート!貴様のような強者に巡り会えた事、運命とやらに感謝しよう!」

 

「黙りなさい!」

 

「ぬぅ!」

 

力に任せて刀を振るい、剣を弾いて更に詰め寄る。

駄目だ、まだ足りない。

後、もう少しの所に手が届かない!

 

今ここで倒しておかないと…こいつは!

 

そう思うと、また力が湧き出る。

もっと!

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「おぉぉッ!」

 

コカビエルが後ろへ後退し、無数の光の槍を放ってくる。

 

自分はコカビエルへと飛びながら槍を弾く。

 

「32式エクスブレイド、三連射!」

 

「何…!」

 

「ここ!」

 

上空から32式エクスブレイドをそれぞれ別方向、挟む形で落とす。

コカビエルは直撃はマズイと判断したのか上手く避ける。

けど、それこそが狙いだ。

 

そこへ更に速度を上げて接近して腕を切り落とすつもりで刀を振るう。

 

「っ、甘いわ!」

 

「ぐぅ…!」

 

光の剣で逸らされて腕を少し傷付けるだけに終わり、蹴り飛ばされる。

 

「楽しいなぁ!この一時、この闘争の瞬間こそが生きていると実感できる!いいぞ、もっとだ!」

 

「まだ…まだ足りないのね…」

 

「もっとだ、俺達の猛争はまだこんなものではないだろう!」

 

怒りがトリガーで力が溢れ出るようになった。

 

そっか、そうだったのか。

シェアが人の信頼の証であるなら自分の感情もまたシェアになり得る。

…なら、自分がもっと強い感情を持てば。

一誠を守れる。

 

「…ふふ。」

 

「む…?」

 

「下らないわ、戦争なんて…そんなもの。」

 

黒い感情が滲み出る。

怒り、憎しみ…

いけないと心のどこかで分かっていても、止められない。

だって、痛かった筈なんだ。

苦しかった筈なのに。

なんで笑ってるの?

 

自分はそれを許容できない、認められない。

やっぱり、守ってあげないといけない。

力がある自分が皆を、一誠を。

 

元凶は分かりきってる。

だからこそ、対処だって理解してる。

そんなことを言う奴、やる奴を倒せばいい。

甘かったんだと思う。

最初は堕天使陣営に送り返して反省させればいいと思ってた。

だから倒そうって。

 

でも、それじゃ駄目なんだ。

だって、何百年何千年も生きてる相手が自分のような小娘に一度倒された程度で諦めきれるのか、なんて分かりきってた。

 

「堕天使に、教え込まないといけない。」

 

「ん?」

 

「私が、守らなきゃいけない…その為にも──」

 

「何ッ─ぐあぁ!?」

 

コカビエルからしたら、突然目の前に自分がいて刀を腹に刺されて蹴り飛ばされた…そんな感じかな。

 

体勢を何とか整えたコカビエルは腹を押さえながら光の槍を投げてくるけど、そんなのは通用しない。

弾いてすぐに刀をもう一度振るう。

槍の後ろにもう一本の槍を隠してることくらい分かってる。

 

「っぬぅ…ここまでやるか。」

 

 

 

「─貴方を、殺す。」

 

刀に付いた血を少し見て、意外と何とも思ってない自分がいた。

…なら、やれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケルベロスを何とか倒してコカビエルに挑んだものの、まるで赤子の手を捻るように俺達はボロボロにされた。

だけど、ねぷ姉ちゃんは怒涛の勢いでコカビエルの腹を刺すというダメージを与えていた。

 

その様子に皆が希望を持つ。

だけど、この中で俺だけは違った。

 

違う。

 

「凄い…あのコカビエル相手に…!」

 

「勝てるかもしれませんわ…」

 

「結界はソーナ達に頼んだけど…」

 

「…一誠君?」

 

違う。

 

「違う…!」

 

今戦ってるのは…ねぷ姉ちゃんなのか?

あんな、戦ってる時も元気でネタを忘れないねぷ姉ちゃんがあんな…人を殺すような目をしてるなんて。

 

違う、俺には分かる。

あれは、正気じゃない!

仲間をやられた時の俺に似てる…怒りに呑まれてるんだ。

 

─聞こえますか、一誠さん。

 

「え、この声は…」

 

周りを見渡しても…皆以外人はいない。

 

…人?

もしかして、浮かんだままの本…いーすんに近付いて手に持つ。

 

「いーすん、なのか…?」

 

─よかった。急ピッチで貴方だけにパスを繋げました。

 

『…お前がイストワールか。』

 

─そうです。いえ…それよりもこのままでは危険です!

 

「どういうことだよ?」

 

─今のネプテューヌさんの状態は非常に危ない…シェアとは別の負の力…いえ、混沌に近い力に呑まれかけています!あれが行きすぎると…ネプテューヌさんの人格を保証できません!

 

「何だって!?ねぷ姉ちゃんじゃなくなるっていうのかよ!」

 

─今、この場でネプテューヌさんを止められるのは一誠さん。貴方だけです!どうか、女神様を…ネプテューヌさんを!

 

「止めるったって…俺にどうすりゃ…」

 

そこまで言って、言葉を止める。

 

…そうだ、きっとねぷ姉ちゃんは自分の感情に自分が追い付いていないんだ。

今まで、こんなことになる前に何とか出来たからなっちまった状況なんだ。

 

だったら、俺が止めないと。

 

「任せてくれ、いーすん!俺がねぷ姉ちゃんを止めて見せる!」

 

『相棒、今の状態で向かうのは危険だぞ。』

 

「だからって放っておけねぇよ…俺のたった一人の姉ちゃんなんだぞ!弟の俺が助けないでどうすんだよ!」

 

『まあ、聞け。今の相棒の想いの強さは十分伝わった。

だから、そろそろ解禁の時だと思ってな。』

 

─まさか…禁手化(バランスブレイク)ですか?

 

禁手化…確か、世界のバランスを覆せちまう程の神器の進化だったっけか。

それがあれば止めれるのか…?

 

「…ドライグ、俺はねぷ姉ちゃんに暴力を振るわねぇぞ。」

 

『阿保が、相棒にやれるとは思っとらんわ。少し位力がないとあの二人に巻き込まれて死ぬだけだ。だからこそ、禁手をしろと言ってるんだ。だがな、相棒。』

 

「…?」

 

『禁手化することは、相棒が世界に巻き込まれる事を早めることだと思え。三勢力含め、世界の全てに巻き込まれる…酷かもしれんが、俺達の二天龍は特にそういう存在だ。お前の姉である女神も巻き込む覚悟が、お前にあるか?』

 

─ドライグさん、今そのような問答をしている時では…!

 

『歴史の。今多少なりとも覚悟を固めておかねばいずれ同じことが起きるぞ。いいか、これは相棒の為でもありあの女神の為でもあるんだ。答えろ、相棒。お前は、今まであの女神に守られてきたお前は!世界の混沌の渦に巻き込まれる覚悟はあるか!?』

 

ドライグの言葉は尤もだ。

遅かれ早かれ、俺に突き付けられていた問答。

ねぷ姉ちゃんを助けるには禁手が必要だ。

でも、禁手をすれば…いや、しなくてもだが。

俺や周囲は世界中の厄介事により巻き込まれていく。

 

…俺のたった一人の大事な姉。

いつだってその強さに憧れて、明るさに憧れて、優しさに憧れた。

ねぷ姉ちゃんは俺にとって永遠の憧れだ。

誰よりも優しいからああなっちまったんだ。

 

コカビエルを殺して、正気に戻ったらいーすんの言う混沌の力に呑まれるのは確実だ。

それは嫌だ。

 

巻き込むのだって嫌だ。

日常で笑っていてほしいし、こういう事にだって手を出してほしくない。

本来なら俺や部長たち皆で解決するべき事なのに。

 

…でも、それでもそれしか方法がないなら。

 

「ああ、やってやる。やってやるよ。」

 

そうすることでしか俺の憧れを助けられないなら!

 

「聞けよドライグ!」

 

いつか誓ったんだ。

守られてばかりじゃ嫌だ。

今度は俺が守るんだって。

 

そんでもって、シスコンかも知れねぇけど…「ありがとう、よく頑張ったね!」って言って貰いたい!

 

 

 

「世界の何が来たって俺がねぷ姉ちゃんを、皆を守る!だから力を寄越せよ!赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)!!」

 

 

 

俺の声に、ドライグがニヤリと嬉しげな笑みを浮かべた。

そんな気がする。

 

『その意気や良し!ならば、存分に俺の力を使え!』

 

「ああ、いくぞ!」

 

「『禁手化(バランスブレイク)!!』」

 

WELSH DRAGON BALANCE BREAKER!!

 

そんな声が聞こえて、俺の全身を龍を模したプレートアーマーが包み込む。

そして…

 

BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!

 

倍加が俺の限界ギリギリまで一気に来た。

力が溢れる。

でも、そんなことは些細な事なんだ。

 

「イッセー、その姿…!」

 

「部長、俺…ねぷ姉ちゃんを助けてきます。」

 

「そんな無茶を…いえ、そうね…大事な姉だものね。」

 

「大丈夫です、信じてください!」

 

部長は笑顔で頷く。

俺はドライグの制御で龍の翼を使って上空のねぷ姉ちゃんとコカビエルの下まで飛ぶ。

殺しなんて、絶対にさせねぇ!

 

─一誠さん、どうか頼みます…!

 

『相棒、飛行に関しては俺に任せろ。相棒は女神に声を届かせることに集中しろ!後一発はあの堕天使をぶん殴れ!』

 

「ああ、分かった!」

 

俺だって、主人公…ねぷ姉ちゃんの弟なんだ!

やってやれないことはねぇ!

 

馬鹿みたいなスピードで二人に…いや、コカビエルに近付いた俺は不意打ち気味に蹴りを叩き込む!

 

「テメェは、落ちろぉぉ!!」

 

「むっ、ガハァァ!?」

 

「っ!?」

 

見事決まった俺の蹴りはコカビエルを地面へと叩き落とす。

ねぷ姉ちゃんは刀を構えて、俺を見捉える。

 

─一誠さん、気を付けてください!

 

「ねぷ姉ちゃん、俺だ!」

 

「一…誠…?私、は…そう、そうよ。コカビエルを、敵を…皆を、町を守るために…その姿は…」

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)。俺の禁手…進化した神器だ。」

 

「赤、龍帝……あ、うぐ…!?」

 

「ねぷ姉ちゃん!?」

 

ねぷ姉ちゃんがぼそぼそと呟いたと思えば頭を押さえ出す。

俺は思わずねぷ姉ちゃんに近付く。

だけど

 

『相棒!!』

 

「ッ!?うおっ!」

 

「…」

 

俺の顔を貫くように突き出された刀を間一髪で避ける。

あ、危ねぇ…ドライグのおかげで反応できたぜ…

顔を俯かせたねぷ姉ちゃんから、黒いオーラがうっすらと見える。

これが、混沌…カオスの力か!

 

「赤龍帝…ドライグ…そうよ、貴方が一誠に憑くからこうなったんじゃない。おかげで一誠は堕天使に殺されそうになって、悪魔になって、戦わなくちゃいけなくなって、あんなにボロボロになって!」

 

「ねぷ姉ちゃん、しっかりしてくれよ!」

 

『無駄だ、相棒!今の女神は力を抑えきれていない!』

 

「最初からこうすればよかった…ドライグを、神器を一誠から切り離せばもう戦う必要もなくなる!」

 

俺の声も虚しく、ねぷ姉ちゃんは笑って刀を構え直す。

ドスの効いた怖い声。

聞いたことがない、こんなねぷ姉ちゃんの声は。

怒った時だって…こんなんじゃなかった。

 

「大丈夫よ一誠。痛みはあるかもしれないけど、すぐだから。

私に身を委ねて。そうすれば守って上げるから、貴方もお母さんもお父さんも…皆も、この町も。」

 

「くっ…!」

 

そんな優しい声で話さないでくれよ。

優しい声なのに…ねぷ姉ちゃん、分かってないのか?

ねぷ姉ちゃんから感じるのは言葉通りの優しさじゃない。

 

濃すぎる殺意だ。

 

殺してでも守る。

そんな矛盾を感じた。

そうだ、俺からドライグを切り離すなんて出来ない。

アーシアの時は特別だったから出来たんだ。

 

魂と深く結び付いた神器を、ドライグを切り離す。

それは俺を殺すってことだ。

 

…姉に殺される弟でいられねぇよ。

 

「ねぷ姉ちゃんは間違ってる。確かに俺は最初望んで得た力じゃなかった。でも、ドライグは俺に戦いを強要しなかった!俺の想いに応えて力を貸してくれたんだ!だから、もうこれは俺の望んだ力なんだ!」

 

『相棒…』

 

「反抗期かしら。」

 

「ああ、反抗期だよ。随分と遅くなったけど…ねぷ姉ちゃんを助けるための、初めての反抗期だよ!」

 

「お仕置きが必要ね!」

 

俺の倍加した速度と同等…いや少し上位の速さで詰め寄ってきて刀を振るってくる。

戸惑いがねぇし殺意がすげぇ!

 

反撃…い、いや!なに考えてんだよ!?

ねぷ姉ちゃんを殴れるわけないだろ!

 

─一誠さん!

 

(な、なんだよいーすん!今攻撃を避けるので精一杯…!)

 

─信じてください。

 

(信じる…?)

 

─はい、信じてください。ネプテューヌさんを!

 

「…そうか、そういうことか!」

 

今のねぷ姉ちゃんは感情の制御が上手くいかないせいでシェアよりもカオスの力が勝ってるからこうなってるんだ!

なら、シェアの力を強めることが出来れば…!

 

でも、どうやって…シェアは信じる心だろ?

俺はねぷ姉ちゃんを全面的に信じてるけど…

今から皆を説得しようにもかえって危険に晒しちまう。

 

くそ、シェアも倍加できれば…

 

ん?倍加?

 

ねぷ姉ちゃんの攻撃を避けたり弾いたりしてるが、強い!

こんなに強いのかよ、ねぷ姉ちゃんは!

 

「ドライグ!」

 

『何だ相棒!!』

 

「ねぷ姉ちゃんを倍加できねぇか!?」

 

『…そういうことか。ならば相棒。強く想え!』

 

「簡単に言うぜ…!」

 

けど、分かりやすい!

俺はねぷ姉ちゃんを助けたい。

その為にもねぷ姉ちゃんがカオスの力に勝たなきゃならねぇ!

 

それなら、俺に出来るのは…シェアに働きかけることくらいだ。

頼む、俺の想いに応えろよ!

 

『いいぞ…!怒涛の勢いじゃないか相棒!この成長度、凄まじいぞ!』

 

「マジで成功したのか!?」

 

『何でも、とはいかんがな。たまたま条件に見合った形があったに過ぎん。それよりも、相棒!これならば女神を救えるやもしれんぞ!』

 

「本当か!っとぉ!」

 

ドライグの言葉で希望が見え始めた!

 

『相棒の今の倍加している力を譲渡する力。

その名も赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)だ!』

 

「なるほど…大体分かった。」

 

「さっきから喋ってばかりね、一誠。…お姉ちゃんよりも大事なことがあるの?」

 

「悪い、ねぷ姉ちゃん。」

 

刀を避けて、弾いて。

それでも隙がない。

譲渡しようにもこうも攻撃に隙が無いんじゃ難しい。

 

「なら…ここは!」

 

鎧があって助かったかもしれないな。

体に向けて振るわれる刀を敢えて受けることにする。

斬られた部分が砕けるものの…捉えた。

 

「捕まえたぜ、ねぷ姉ちゃん!」

 

「こ、の…放しなさい!」

 

刀を握る腕を掴んで抵抗される前にさっさと使う!

今のねぷ姉ちゃんは、見てられねぇ。

そんな怖い顔よりも笑顔が似合うんだからさ。

 

だから頼む、これで戻ってくれ!

 

『Transfer!』

 

「何を…!」

 

力を譲渡する。

対象はねぷ姉ちゃんだけど、違う。

ねぷ姉ちゃんのシェアに対して譲渡する!

 

シェアの力がカオスの力を上回れば元に戻る筈なんだ!

 

「これは…シェア、が…っ、あぁぁぁぁ!!」

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

刀を手放して、再び頭を押さえて暴れるねぷ姉ちゃんに近付く。

 

─倍加されたシェアとカオスの力が拮抗してます!

 

『相棒!』

 

ドライグの呼び掛けに頷く。

暴れるねぷ姉ちゃんを抱き締める。

力が強くてやばいけど…でも、今なら助けられるんだ!

 

「いっ…せ…!」

 

「俺は信じてる!強くて、優しくて、自由奔放な姉ちゃんに戻るって信じてる!」

 

「う、ぅぅぅ!?」

 

「俺達はどんなことがあっても家族だ!」

 

だから、戻ってくれ、ねぷ姉ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら、そこは暗い空間だった。

 

「あれ?」

 

ここはどこだろう?

確か、自分は…

 

そうだ、怒りと憎しみに任せて、コカビエルを…!

そこまで考えて、頭をぶんぶんと振る。

違う、あんなの自分じゃ…!

 

あの黒い感情、あれが自分なの?

 

自分は呑まれたんだ、あの感情に。

 

こんな暗くて広いだけの空間に、ただ一人。

 

「…嫌だよ。」

 

そんなの嫌だ。

皆と笑っていたい、遊んでいたい。

黒い感情にもう呑まれないって約束するから…だから帰りたい。

 

自分、このまま消えちゃうのかな。

…精神的な死、なのかな、これは。

 

「そうよ、私。」

 

「え…?」

 

後ろから声をかけられて、振り向いた。

 

そこには、自分がいた。

いや、少し違う。

 

パープルハートがいたんだ。

 

「わ、私!?」

 

「ええ、パープルハートよ。…尤も、カオスって付くけどね。」

 

怖い笑み。

少し、装備も違う。

何でそんな最低限の部分しか隠してないの!?

現実の自分もそうじゃないよね!?

 

パープルハート[カオス]は自分に近付いてくる。

そして、なにも出来ない自分の首を掴んで持ち上げる。

 

「うぐっ!?」

 

「貴女が望んだから私がいるのよ?コカビエルを殺したいって思ったから。そこから立て続けにドライグとか堕天使自体に憎しみを抱いた。その混沌とした感情から私は生まれたのよ。」

 

「あ、ぐ…!」

 

「いいのよ、私。貴女が消えても私は私だもの。

女神として、姉として一誠を守ってあげるわ、私なりの方法でね。」

 

違う。

殺される。

これに任せたら、一誠達が殺されちゃう。

 

「いいじゃない、憎しみ。あんな光景を見れば抱いて当然だものね?正当な権利って奴よ。」

 

「ぅ…!」

 

「だから、殺してもいい。殺そうとしたんだもの、殺されても文句はないでしょう。」

 

「駄目、だよ…!私、は…皆を…!」

 

「何も出来なかった癖に。」

 

「ぅぐ…!」

 

握る力が強くなる。

苦しい。

辛い。

嫌だ。

死にたくない。

殺されたくない。

生きていたい。

皆といたい。

 

「貴女が弱いからこうなったのよ。」

 

「ぁ、ぎ…!」

 

「でも、私は強い!私なら皆を守ってあげられるわ。

貴女にとっても悪い話じゃないでしょう?貴女は私だもの、これも一つの貴女よ。ふ、ふふふ…!さあ、体を寄越しなさい!」

 

「ぃ…」

 

「まだ抵抗するの?無駄にショッキングなことはしたくないんだけど…」

 

意識が、もうろう、と…

 

もう、なにをかんがえてるか、わから、なく

 

み、んなのもとに…かえ…

 

助けて

 

 

─ねぷ…ちゃ…!

 

 

「…?」

 

こえ、が…?

このこえ、は…

 

 

─ねぷ姉ちゃん!

 

 

この、声は…!

 

「…私、が!」

 

「えっ…!?」

 

首を掴む手を掴む。

一誠の声だ。

聞こえた、聞こえたんだ。

 

シェアを感じる。

 

心から信じてくれるシェアを感じるよ!

 

「私は私を譲ったりはしないんだからね…私は、主人公だからこの程度の危機…!」

 

思い切り、腕を蹴る。

痛みを感じたのか手を握る力が緩んだ。

その隙に拘束から逃れる。

 

「往生際の悪い…!」

 

「足掻けるところはしっかり足掻かせて貰うよ!というわけで逃げる!」

 

声のした方へ逃げる!

この空間じゃ勝てないから、これが得策なんだ。

全力で走るよ!

 

「逃がすとでも…!」

 

「それが逃げられるんだな、これが!何故なら主人公ですから!」

 

あんな危ないお姉さんな自分に任せてられるか!

絶対R-18方面にやらかすに決まってるよ!

そんなの無理!無理ったら無理!

 

全力で走ってると、小さな光が見える。

 

カオスな自分が向かってくるけど、この距離なら…!

 

「手を伸ばせ、ネプテューーーヌッ!」

 

光に手を伸ばす。

 

光に手が触れる。

温かい光だ。

シェアの光!

 

─俺は信じてる!

 

…もう、一誠はシスコンだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一誠。」

 

「ねぷ姉ちゃん…!」

 

抱き締めてくる一誠を、自分も抱き締める。

温かい。

嬉しくなって、頭を撫でる。

 

「ありがとう…一誠のおかげよ。」

 

「ねぷ姉ちゃんの弟だからな…!」

 

でも、喜ぶ時間もそんなにない。

 

「パープルハートォォォ!!」

 

「空気読んでくれねぇな。」

 

「余裕出てきた?」

 

「当然!」

 

コカビエルが叫びながらこっちに来るけど、もうさっきみたいな出力は出せない。

でも、あんなの自分じゃないしね。

 

─ネプテューヌさん!よかった…!

 

「いーすん、ごめんなさい。」

 

─いえ、私の事は…

 

いーすんにも迷惑をかけちゃった。

ドライグにも。

 

助けて貰った手前、これ以上カッコ悪いところは見せられないね! 

 

「今度こそしっかり決めるわ!」

 

「俺達二人でな!」




やっぱり暴走しちゃったけど、むしろよく耐えてたと思うんだ。

まあ、ここでカオスを一回だしたのにはしっかりと訳がありますから許して!なんでもしますから!


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嫌な決着だけど、前を向かないと。

パープルハートのカオスについての感想が殆どで嬉しい。
エロいよね、あの格好。
あれで迫られたら絶対に襲う自信がある。そんでもって始末される自信がある。


腹部から血を流しながら向かってくるコカビエルを迎え撃つべくもう一度刀を創る。

ぶっちゃけ、あと少ししか変身を保てないんだよね。

速攻で…と言いたいけどさっきの状態でようやく少し上回る程度だったし厳しいかな。

 

一誠もかなり無茶してるだろうし。

 

「今更だけど、あのご老人は?」

 

「アイツはバルパー。聖剣計画で木場の仲間を殺した奴だ。

木場が決着を付けるだろうから、俺達はこいつに集中しようぜ。」

 

「…そう、あれが。一誠、二人がかりじゃないとやられるわよ。」

 

「だな。俺が殴るから…」

 

「私がサポートね。」

 

サポートかぁ。

どうしたもんかなぁ。

まあ、一誠の攻撃が届くようにすればいいよね。

 

「一誠、ただがむしゃらに行きなさい。」

 

「え、いいのかよ?」

 

「逆に、連携とか考えない方が私たちらしいじゃない。

ほら、やるわよ!」

 

「おう!」

 

デルタスラッシュの要領でシェアを斬撃として二発飛ばす。

コカビエルは一つは避けてもう一つを光の剣で弾き飛ばす。

一誠がコカビエルに向けて突っ込んでいく。

当然、迎撃として光の槍が飛んでくるけど自分が横から斬撃を飛ばして破壊する。

 

「赤龍帝としての力に目覚めたか。だが!俺が上で貴様が下だ小僧!」

 

「俺一人なら、そうかもしれねぇ…けど、俺達なら!

テメェが下で、俺達が上だ、コカビエル!」

 

籠手と剣がぶつかり合う。

コカビエルの全力…一誠が倍加させても足りる物じゃない。

そう、一誠個人なら。

 

「ぬぅ、こいつ、力が!倍加させたとしても…まさか!」

 

「そのまさかだ!俺の倍加には、ねぷ姉ちゃんのバフも含まれてるんだぜ!元の身体能力を倍加しても上回れないなら…こうすりゃいい!」

 

「小癪な真似を!だが、気に入った!」

 

「ぐあっ!?」

 

「一誠!」

 

「余所見する暇があるか、パープルハート!」

 

一誠が弾き飛ばされ、コカビエルが自分に向かってくる。

正直、コカビエルと正面切って斬り合う事は長いこと出来ない。

 

一誠にバフをかけたけど、それも残り少ないシェアを本当に最低限残して譲渡してる。

 

「なら…!」

 

「貴様は俺を楽しませてくれる最高の女だパープルハート!

なればこそこの手で殺してくれる!」

 

「嬉しくない熱いプロポーズね。全力でお断りよ!」

 

刀が剣とぶつかり合う度にヒビが入っていく。

もう二、三回は耐えてね!

 

─ネプテューヌさん、一誠さんがこちらに向かってきてます!

 

「分かったわ!」

 

「これで、どうだ!」

 

「っ、まだよ!」

 

剣を大きめに振るって刀にぶつけてくる。

当然、ヒビの入っていた刀は壊れるけど…

壊れる瞬間に刀を手放して後ろに後退する。

 

一誠、後は…託すよ!

 

残りの変身維持分も含めたシェアを込める。

 

当たらなくてもいい、隙を生み出してくれれば、それで!

 

─ネプテューヌさん、危険です!

 

「いいのよ、いーすん。信じてれば、道は開ける。

シェア(信じる心)に不可能なんて文字は存在しない!」

 

コカビエルに向けて、最後の一撃を放つ。

 

 

 

「残りのシェア、全部あげるわ!32式エクスブレイド!!」

 

 

 

リソース度外視で放ったエクスブレイドはいつものよりも二倍は大きかった。

それがコカビエルへ一直線に向かっていく。

 

変身維持のためのシェアまで使い果たして、変身が解ける。

飛んでいたのもパープルハートの時だけ…ただのネプテューヌの自分は悲しいけど上から落ちるしかないんだよね。

 

エクスブレイドに隠れてるからコカビエルには見えないようでよかったけど…どう!?

 

「一誠!グッドラーーーック!!」

 

「デカイッ!?ハハハ、それでこそ!」

 

コカビエルが光をビームとして放って、エクスブレイドを破壊しようとする。

エクスブレイドは光の奔流の中を突き進む。

当たってくれたら御の字だけど、それは無理そう。

 

エクスブレイドがコカビエルに届くかどうかのギリギリの位置で威力に耐えきれずに爆発する。

 

「ぐっ…!だが!」

 

「ふふん、狙いは違うよ!」

 

─ネプテューヌさん!

 

「いーすん、大丈夫!」

 

落ちながら、いーすんに返事をする。

これだと、誰かの上から落ちたらヤバイね。

かなり上から落ちてるし…

 

まあ、それはいいや。一誠の戦いを最後まで見ないと!

 

爆発のお陰で体勢を崩したコカビエル。

意図を理解したのか、自分の方を見ないで真っ直ぐコカビエルへと向かう一誠。

 

頼もしくなっちゃったなぁ。

もう守る必要は無いのかな。

 

「おぉォォォ!!」

 

「くっ…赤龍帝か!?」

 

態勢を整えるその瞬間、一誠のスピードが最高潮に達する。

拳を強く握って、コカビエルに向けて突っ込む!

 

「これでも…喰らいやがれェェ!!」

 

「ガッ…!?」

 

強く握り締めた拳はコカビエルの顔面を捉えた。

過去最高の威力であろう拳は寸分違わずコカビエルを殴り抜く。

 

その威力はコカビエルの抵抗を許さない程で、コカビエルはそれを喰らって一直線に地面へと落ちていく。

 

そして、地面へぶつかった瞬間。

凄まじい音を立てて地面にめり込んだ。

あまりにも強い一撃だったせいか、地面にクレーターが出来てる。

その中心にコカビエルはめり込んでいた。

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

「ヘルプミィィィ!死ぬ!この速度は死ぬよ!?」

 

一誠が急いでこっちに来るけど、間に合いそうにないね。

下の誰か…っていうか木場君は無事なの?

 

やば、意識が遠退いてきたっていうか。

高いところから落ちるとこうなるって本当だったっぽい?

 

地面にぶつかる、そう思った瞬間だった。

 

「…えっ。」

 

「誰だ…?」

 

 

 

「…大丈夫か。」

 

 

 

体が誰かにお姫様抱っこの形で抱えられる。

白い鎧を身に纏って顔が見えない人…その人がやってくれたっぽい。

えっと、誰?

 

「大丈夫か、と聞いているんだが?」

 

「あ、うん、大丈夫…えっと、君は?」

 

「堕天使陣営から、コカビエルを回収に来た者だ。」

 

「そうなの?」

 

「ああ、降ろすぞ。」

 

「う、うん。」

 

ゆっくりと降ろされる。

一誠が自分の傍に降りてきて、白い鎧の人…男の人かな?

その人に向き合う。

 

「ねぷ姉ちゃんを助けてくれてありがとな。でも、アンタは…」

 

「コカビエルを回収しに来た堕天使側の人だって。」

 

「そうなのか?」

 

「その通りだ、赤龍帝。そして、俺が…──」

 

 

 

「─白龍皇だ。」

 

 

 

「アンタが…!?」

 

「待て。今は二天龍どうこうはやめておこう。それに、見ろ。」

 

白龍皇君が指を差した方を見る。

 

そこには、

 

「木場君…」

 

木場君が、結晶のようなものを涙を流しながら手に持っていた。

光が結晶から溢れ出ていて、自分はそれが木場君に何かを語りかけているように見えた。

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

ネプテューヌ先輩を助けようと一誠君が自分の覚悟を叫んで禁手化した。

そして、ネプテューヌ先輩とコカビエルの下へ飛んでいった後…僕も立ち上がり、全ての元凶であるバルパーへと剣を向けた。

 

けれど、そこにフリードが現れたんだ。

聖剣が四本…それをバルパーに渡したと思えば儀式を始めた。

 

その儀式は聖剣の統合。

本数が欠けているとはいえ、聖剣を束ねたそれは隔絶した力を持つに違いない。

だから、バルパーをいち早く倒そうとした。

 

けれど、フリードに邪魔をされてそれは叶わず。

 

儀式は成功してしまった。

四本の聖剣の力を束ねた聖剣は、脅威的な力だった。

何せ、統合された聖剣の力を引き出せるんだから反則に等しい。

 

吹き飛ばされた僕に、バルパーは嘲笑うかのように結晶を投げてきた。

 

聞けば、皆の因子の結晶だという。

使い物にならないゴミだから要らないと。

所詮は失敗作の因子だから廃棄物だと。

 

許せなかった。

バルパーも、聖剣計画も…!

何より、生き延びたのに何も出来ない自分が何よりも!

こんなに倒したいと思っているのに神器は反応しない!

想いに応えてくれるのが神器じゃないのか…それとも、僕に力がないからか…?

 

「皆…ごめん…僕が不甲斐ないから…生きていて…ごめんよ…!」

 

『それは、違うんじゃないか。』

 

「え…?」

 

声が聞こえた。

聞き間違える筈もない。

同じ施設にいて、笑い合った仲間の声。

死んだ筈の…仲間の…

 

すぐに理解した。

結晶の因子を通じて、僕に話しかけているんだ。

皆の意思を感じる。

 

「皆…!」

 

『イザイヤ、お前の後悔。確かに聞いたぞ。』

 

『一人残して、ごめんね。辛かったよね…』

 

『こんな状態だから触れることも出来ない。でもさ…』

 

『力は、渡せる。託せるんだ。俺達の無念、俺達の願い全部を乗せて…俺達の因子を託す。』

 

「皆…僕は!僕は皆を置いて!皆に逃がされて!なのに僕は!」

 

『イザイヤ!』

 

「っ…!」

 

『いいか、俺達は好きでお前を逃がして、好きでお前に託すんだ。お節介だとかじゃなくて、自己満足のためにな。』

 

『そーそー、だからイザイヤは荷物渡されたよ面倒だなぁふざけんなよくそがって思えばいい。』

 

『重く受け止められてもそれはそれで何かって思うしね。』

 

とてもじゃないが、そうは思えない。

託すって言われたし、重く受け止めるなって気遣ってるのがバレバレだし。

だけど、何だか変わらない皆に…ホッとした。

僕の見ている幻覚じゃなければ、皆はここにいるんだ。

 

倒れてる場合じゃ、ない。

 

「…じゃあ、その荷物。僕が預かろう。」

 

『おう。俺達の思い、叩きつけてやれ!』

 

『楽しかった日々は確かにあったんだからさ。』

 

『皆、イザイヤが大好きだから、こうするの。だから、気にしないで。』

 

本当は泣きたい。

でも、それは勝った後でも出来ることだ。

今は、笑って…皆に声を届ける。

 

「ああ…皆、僕は…守りたいものが出来たよ。」

 

『そりゃ、よかった─』

 

そう言って、皆は僕に因子を託してくれた。

皆の力を感じる。

そうだ、僕達は一人じゃない。

この力は守るものの為に振るうものだ。

 

守るためならいくらでも剣を取る。

 

「…ああ、行こう、皆!」

 

ネプテューヌ先輩じゃないけど、刮目して貰うよ!

 

これが僕の新たな進化の形!

神器が僕の意志と皆の因子に応えた姿。

 

 

 

双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)…これで、その剣を破壊する!」

 

「何っ…!?」

 

バルパーが驚いている。

それもその筈だ。

この聖魔剣は本来交わることのない二つの属性を併せ持つ剣なんだから。

 

フリードに向き合い、聖魔剣を構える。

 

「何だ何だぁ?そんな剣でこの聖剣様に勝てる訳ねぇだろぉがぁぁぁ!!」

 

「それはどうかな。人の想いってのは…案外バカにならない。」

 

剣と剣がぶつかり合う。

強度も上がってるようだ。

だけど、それだけじゃない。

 

この聖魔剣はまだ手品が残ってる。

 

「風よ、荒れ狂え!」

 

「あぁ!?なんだそれはよぉ!?」

 

「元が魔剣としての性能があるなら、いつも通りの運用も可能。

それだけだよ!」

 

「ぐ、おぉぉ…!だけどだけど、忘れちゃいませんかぁ?

エクスカリバーの能力をよぉ!」

 

「擬態、透明、速度、幻覚…確かに、恐ろしい能力だ。

でも、君じゃ使いこなせないよ。」

 

「バカにしてんじゃねぇぞクソ悪魔がぁ!!」

 

擬態の力で剣の形から斧に変わる。

 

でも、力だけじゃどうにもならない。

聖剣の出力はその性質上、光に左右される。

伝説の聖剣であれば光の力は強大だろう。

 

けれど…不完全な統合をされた聖剣ならば!

 

「光を喰らえ…!」

 

「んなっ…!!」

 

聖魔剣とぶつかり合った時、光を喰らう魔剣の性質を引き出して出力を抑えた。

 

元々力に物を言わせるタイプじゃないし、こういう搦め手が得意だからね。

出力が低くなった聖剣は形を保てずに剣の形に戻る。

 

なら、後は…!

 

「ハァァァ!!」

 

「幻覚が使えねぇ!?来るんじゃねぇよぉぉ!!」

 

喚くフリードを無視して聖剣に聖魔剣をぶつける。

 

前は敵わなかったけど、皆の想いがあれば!

この剣は強くなれるんだ!

 

バキンッという音が響く。

 

「偽りの聖剣は聖魔剣の下に敗れた。お前の計画も終わりだ。

バルパー・ガリレイ。」

 

「ガ、ハァ…」

 

呆気ない最後。

聖剣は砕け散った。

フリードも斬り伏せた。

ようやく、超えることが出来たんだ。

僕は、これでやっと…

 

喜ぶのは後にして、バルパーに聖魔剣を向ける。

 

呆然としているバルパーは正気に戻るとブツブツと喋り出す。

 

「馬鹿な聖と魔は性質が真逆だそれを合わせるなど神でなければ不可能な筈なんだ何故それが出来た?まさかとは思うが神器にあらかじめそう仕組まれていたのかいやそれでは聖剣と魔剣を別ける理由にならないだとすればそれは神が…神が…それは…!」

 

「何を─」

 

ぶつぶつと喋り終えたかと思えば顔を上げて驚愕の表情。

何を考えているのか聞こうと思えば、突然それは起こった。

 

光の槍がバルパーの胸を貫いたんだ。

 

「ガッ…ごはっ!コカ、ビエル…!」

 

「…それは俺がサプライズとして取っておいた奴だ。仮にここで俺が負けたとしても置き土産としてな。」

 

「バルパー…!?」

 

コカビエルが満身創痍といった様子で立っていた。

バルパーは光の槍に貫かれて倒れ伏す。

 

僕はコカビエルに剣を向けて、一誠君も拳を構える。

気づけば、白い鎧の…まさか、あれが白龍皇なのか?いや、今はどうでもいい。

それよりも…!

 

ネプテューヌ先輩がバルパーに駆け寄って、コカビエルを睨み付ける。

 

「…見事だった。聖魔剣か…これからを暗示しているかのようで…なるほど、俺が負けるのは必然だったのか?」

 

「コカビエル…!何でこんなことしたの!?」

 

「ふっ、知れたこと。俺がこの場の連中に言うならいざ知らず。

そいつに言いふらされれば教会としても都合が悪いだろう?

だから俺が潰しておいてやったのだ。」

 

「それなら、悲しいけど…記憶を消せばいいじゃん!殺すなんて、そんな…!」

 

「温い、温いぞパープルハート。そいつは頭だけは一人前だ。

遅かれ早かれ気付いていたろうさ…だからこそだ。

いいか、そこの信徒も交えてよく聞くがいい!」

 

 

 

「神は死んだ。我等が創造主は既に死んでいる!」

 

 

 

「なっ…!?」

 

告げられたのはにわかにも信じがたい真実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それって…あーちゃんやゼノヴィア、イリナちゃんの信仰してる神様が死んでいるってことだよね…どういうこと?」

 

「大戦で神は死んだ。それだけが真実だ。」

 

「そんな…主は…馬鹿な、ならば私たちは何を信じていたのだ…?」

 

「ゼノヴィア…」

 

コカビエルから告げられたのはまさかの真実だった。

満身創痍のコカビエルはそれから自分の方へと歩いてくる。

殺気を感じないし敵意も感じない。

 

そんなことよりも…!

バルパーが!

 

「バルパー…!悪人だけど、死んじゃ駄目だよ!罪を償わないと!」

 

「敵、対していた…者を…心配するのか…」

 

「そんなこと関係ないよ!死んじゃうなんて駄目なんだよ!

私が何のために戦ったのか…分からなくなっちゃうじゃん!」

 

「…お前は、愚かだな…だが、正しい…」

 

「あーちゃん、あーちゃんは…!?」

 

「そろそろ到着する筈だ!けど…!」

 

「一誠、そこから先は言っちゃ駄目だよ。何とかしないと…!」

 

止血しようにも、心臓を貫かれてる。

分かってるんだ、無駄なんてことは。

でも、やれることをやらないと…主人公じゃない!

 

でも、バルパーに手を掴まれた。

 

「…最期に、愚かなお前に…」

 

「喋っちゃ駄目だよ!」

 

「…あの力もまた、混沌、つまりは魔の力…ならば…聖なる存在のお前でも………」

 

「…バルパー?」

 

掴む手から力がなくなる。

 

コカビエルが近くまで来たけど、そんなことは目の前の現実からすれば些細な事だった。

 

救えなかった。

主人公として、個人として…

救うことが出来なかった。

 

「…」

 

「俺が憎いか、パープルハート。」

 

「憎くない…とは言えないよ。」

 

「ならば俺を斬るか。」

 

「…斬れないよ。それをしたら、そっちと同じになっちゃうもん…」

 

「甘い奴だ。」

 

「コカビエル。」

 

「…ふん、白龍皇か。」

 

「アザゼルから回収を命じられてる。大人しく付いてきて貰おうか。」

 

「…パープルハート、お前は神の死を知り人の死を知り、どうする?」

 

どうするって言われても…

そんなの決まってる。

でも…

 

少し、分からなくなってきた。

自分は正しいのかどうか。

 

女神だなんだ言われても、分からないことは分からないよ。

いーすん、女神ってなんなのかな…

 

「私は…守るよ。皆を、この町を。」

 

「ふっ…そうか。ならば何も言うまい。…俺の負けだ、連れていけ。」

 

「ああ。…赤龍帝君、また会うとき、どうなるか楽しみだな?」

 

「戦う気はねぇからな。」

 

「さて、それはどうかな。…無理をさせないことだ。」

 

「…おう。」

 

コカビエルは白龍皇君に拘束されて連れられて行った。

 

残ったのは、ボロボロの皆。

そして…救えなかった人。

 

強くならないといけない。

守れるようになるために、救えるようになるために。

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ネプステーションの!」

 

「コーナー!」

 

「はい、聖剣編完結!後味悪すぎるけど、これも物語としてあるあるだよね!ということでゲストは木場君だよ!」

 

「ゲストの木場祐斗です。今回は僕と一誠君の成長、強敵との戦い、ネプテューヌ先輩の謎が深まる章でしたね。」

 

「白龍皇との邂逅もあったし、濃い章だったと思うな!

それに、私の秘密が深まるばかりだし、そろそろ明かされても~

ということで、次章は?」

 

「以前程の明るさが無くなったネプテューヌ先輩。

でも、事態は動いていくばかり。

それは各勢力のトップとの邂逅により加速していく。

そして、トップ達による和平の場に同じ立場としてネプテューヌ先輩の姿も…簡単に終わる雰囲気でもなさそうだね。

次章、WILL BE VENUS。」

 

「次回もよろしくね!」



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WILL BE VENUS
新しい仲間登場!ドタバタの予感!?


ネプテューヌへの愛さえあれば更新スピードは止まることはない!
ノワール二尉!ブラン特務三佐!私は!私はァ!



やっほー、ネプテューヌだよ!

うーん…何かちょっとやる気出ないね。

ぐったりしちゃうっていうか、面倒っていうか。

あれから色々と分からなくなって頭がぐちゃぐちゃっていうか。

 

だから、最近は外に少し出て帰ってきてボーッとしちゃう日が続いてるって感じ。

あ、部活には顔を出してるよ?

でも、何だかね。

 

お母さんたちにも心配させちゃってるし、ちゃんとしないといけないって思ってるんだけど…

 

ああ、そうだった。

皆にはあの後何があったか言ってなかったね。

 

バルパーの事は意外にも木場君が埋葬したんだ。

せめて、これくらい自分の手でやっておきたいって言うから、教会にひっそりと埋葬したんだ。

自分もあの後行ったよ。

バルパーの最後の一言…あれは自分へ助言をしてくれたんだと思う。

違うかもしれないけど、自分はそう信じるよ。

 

それで、イリナちゃんだけど…

ゼノヴィアから言わないでくれって言われて、コカビエルは倒してから堕天使に送還して、聖剣は壊れたけど奪還できたって伝えた。

救援に行けなかったことをこれでもかってくらい謝られたけど、あーちゃんに治療を頼んだのは自分だし気にしないよう言っておいた。あーちゃんは皆の治療に大忙しだったし…

あーちゃんには神の死を伝えておいた。

多分、イリナちゃんもだけどいずれ知ることだから。

ショックは大きかったけど、意外と早く立ち直った。

 

『それでも、私は信仰をやめません。主が居なくとも教義は生きていると思いますから。』

 

強いなって思う。

自分は今も悪人とはいえ救えなかったことを根に持ってるし、そういう吹っ切れる強さは無い。

元のネプテューヌはそうだったかもしれないけど…

 

イリナちゃんとゼノヴィアは聖剣を持って教会に向かった。

ゼノヴィアちゃんは問い質したい事もあるって言ってたけど…どうなるんだろう。

 

あれから、他の皆は普段の生活をしながら修行をしている。

木場君と一誠が特にそうだ。

男の子らしく、強くなりたいって言ってたなぁ。

 

そういう自分はというと…

 

─ネプテューヌさん。

 

「んー、どうしたのいーすん。」

 

─流石に怠けすぎでは?

 

「え~…勉強はある程度してるし、いいじゃん。義務は果たしてるって奴だよ~」

 

─町の皆さん、ネプテューヌさんの元気がないことを心配そうにしていましたよ?

 

「そうなんだ~…」

 

…少し、自堕落な生活を送ってましたとさ。

このままだと駄目だって、分かってるんだよ。

…でもさ、整理というか、踏ん切りが付かないっていうかさ。

 

─…ネプテューヌさん。まだ立ち直れませんか?

 

「ねえ、いーすん。」

 

─はい。

 

「そのさ、部屋から…出てもらっていい?」

 

─…分かりました、何かあればお伝えします。

 

「うん。」

 

いーすんの気配が部屋から消える。

多分、一誠の所にでも転移したのかな。

 

…最低だなぁ。

いーすんに当たるなんて、馬鹿みたいだ。

あの時は謝ろうと思ってたのにな…

 

「…女神って、何だろ。分かんないや。」

 

女神なら、もっと力があってもいいじゃん。

何でこう…人間一人助けられないかな?

自分って弱いのかな…

 

カオスに身を委ねれば…

 

「っと、いけないいけない。あれは駄目だよね。」

 

あれはいけない力だ。

それは分かってるんだ。

また身を委ねたら、もう戻ってこれないと思う。

それぐらいあれは危険な力だ。

 

乗っ取られて自分じゃない自分になって他の皆も巻き込むことになっちゃうだろうし。

 

そう思っていると、携帯が鳴り出す。

 

誰だろうと思ったらリアスちゃんだった。

 

「もしもし、どうかしたの?」

 

『ネプテューヌ、ちょっとオカルト研究部まで来てもらっていい?紹介したい子がいるのよ。』

 

「分かった、すぐ行くね。」

 

『ええ。』

 

電話を切って、支度をする。

部員が増えたとか?

んー、それはないか。

悪魔関係者じゃないと活動難しいだろうし。

 

「行ってきまーす。」

 

「あら、何処に行くの?」

 

「オカ研!」

 

「気を付けてね、いってらっしゃい。」

 

「うん。」

 

お母さんとお父さんにも少し後ろめたい。

一誠もあーちゃんも、自分も大きな隠し事をしてる。

いつか言わないといけない、でもそれっていつなんだろう。

 

立ち止まる。

そのせいでお母さんが心配そうに見つめてくる。

 

「どうかしたの?」

 

「…あのね、私…」

 

「悩みごと?」

 

「…うん。」

 

「それは、私やパパにも言いにくい?」

 

「…」

 

「悪いことをしてる訳じゃ、ないんでしょ?」

 

「うん。」

 

「ねぷちゃん。」

 

抱きしめられた。

優しく頭を撫でられて、あやすように。

 

「お姉ちゃんだから、任せすぎちゃったのかもしれないわね。

言いたくないなら、言わなくてもいいのよ。」

 

「いいの?」

 

「だって悪いことじゃないんでしょう?ねぷちゃんがそんなことするわけないもの。だから、言いたくなったら言ってちょうだい。」

 

「…うん、ありがとう。」

 

「無理だけはしちゃ駄目よ?」

 

本当は気付いてるんじゃないかなって位優しい。

この優しさにまた甘える形になっちゃうけど…でも、甘えたい気分だ。

 

「うん!」

 

「よろしい。元気でた?」

 

「すごく出た!帰りにプリンがあったらもっと出るよ!」

 

「調子いいんだから。」

 

「主人公ですから!行ってきまーす!」

 

「はいはい、いってらっしゃい。」

 

扉を開けて、元気よく外に出る。

…うん、悩んでても仕方無い事なのかも。

でも、悩みながらでも元気は出る。

 

うん、少し復活!

 

─元気は出ましたか?

 

「いーすん!あ…ごめんね。突っぱねちゃって…」

 

─仕方ありません。私にも非はありますから…

 

「どういうこと?」

 

─それもまた、秘密です。

 

「むむむ…まあいいや!それよりも、オカ研に行くよ!」

 

─何かありましたか?

 

「紹介したい人がいるんだってさ!」

 

─あまりそういうのはよろしくないかと。

 

「いーすん!?多分想像と違うことだよ!?」

 

─そうですか。

 

もしかして、いーすんって天然だったりする?

 

思えば、聡明そうに見えるけどたまにボケるし…

準備期間は殆ど3が付いてるし…ポンコツだったりするのかな。

な、無いよね!

史書だもん、そんなことないよ!

 

取り敢えず、巻きで行こう!巻きで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着!」

 

「来たわね。…もう大丈夫なの?」

 

「うん、心配かけてごめんね?皆も!」

 

着いたら、自分以外はもう居た。

おおう、最後に到着とは…主人公感ない?ないかなぁ?

 

皆心配してくれていたのか、嬉しそうにしている。

…心配させちゃってたんだなぁ。

しっかりしないとね。

 

「ねぷ姉ちゃん、元気になったんだな。よかったぜ。」

 

「ネプテューヌさん、良かったです!」

 

「二人にも心配かけてごめんね!もう私は平気だよ!」

 

「イッセーさん、とても心配してましたから…昨日なんかもう…」

 

「何なの?俺がシスコンだって皆により知って貰おうと何かを暴露するのが流行りなの?」

 

「でも、皆もう知ってるし。」

 

「木場ァ…!テメェの記憶だけでも飛ばしてくれる!」

 

「悪いけど、それは勘弁願うよ。」

 

「一誠、お姉ちゃんが好きだからって暴力的になっちゃだめだよ!」

 

「運が良かったな木場。」

 

(((まるで犬…)))

 

「…そろそろいいかしら?」

 

「あーごめん、どうぞ!」

 

リアスちゃんの方に皆が視線を向ける。

今日は何があったのかな?

 

「今日は新しい眷属と、前々から眷属にしていた子の紹介をしようと思うわ。」

 

「えぇ!?新しい!?どういうこと?」

 

「私もこうなるとは思ってなかったけど…本人に頼まれたというか。」

 

それに前々からっていうのも気になる。

何か理由があって紹介が遅れたのかな。

 

「皆知ってる者よ。入ってきてちょうだい!」

 

オカ研の扉が開く。

新しい眷属…それは!

 

 

 

「この度、騎士の駒にて悪魔に転生したゼノヴィアだ。

今後ともよろしく頼む。」

 

 

 

「えええぇぇぇぇ!?」

 

「どういう…ことだ…」

 

「教会の戦士がこれでいいんでしょうか…」

 

小猫ちゃんの言うことは分かるけど…ええ?

帰ったんじゃなかったの?

何があったら悪魔になるの?

 

おかしくない!?

 

「待って待って!何があったの!?」

 

「む、ネプテューヌか。いやなに、クビになったし行く宛もなかったからこっちに来た。それだけだが?」

 

「うっそだぁ!イリナちゃんは!?」

 

「イリナなら今でも教会の戦士としての仕事に明け暮れているだろう。自暴自棄になってこうして悪魔になったわけだ。」

 

「え、それでいいの?人生の選択ミスってると思うんだけど?」

 

「イッセーもそう思います。」

 

「行き当たりばったりもアリかなって思った。

後悔はしてない、反省もしてない。寧ろスッとしてる。」

 

─(教会はこれで大丈夫なんでしょうか…)

 

皆がゼノヴィアに唖然とする中、自分の行動に一点の曇り無しなゼノヴィアは自分の頭を撫でてくる。

 

「ねぷ、どうしたの?」

 

「何というか、先輩なのかと思って。」

 

「小さくてごめんね!変身したら私だって凄いんだからね!」

 

「そうだそうだ!変身したねぷ姉ちゃんのおっぱいや尻はエロいんだからな!」

 

「一誠?」

 

「はいなんでもないですすんません。」

 

何か一誠に変身姿見せるの嫌になってきた。

流石にそう見られてるのは嫌だし…

というより、一誠は白龍皇君の事どう思ってるんだろ。

戦いたいとは思ってないみたいだけど…

 

「元教会の戦士が悪魔になるなんて聞いたことないけど…やっちゃった私が言うのも何だけどこの先何て言われるか胃が痛いわ…」

 

「あらあら…紅茶でも飲みます?」

 

「それは後にするわ。さて、ゼノヴィアは受け入れられたと見ていいみたいね…問題はあの子だけど。」

 

「何かあるの?」

 

「そうね…お兄様に認められれば改めて眷属として迎え入れるといいって言われてて、会いに行ったりしてるだけ…眷属ではあるのだけど今日がお披露目になったって感じね。」

 

「実力が認められたってこと?」

 

「コカビエルを倒した功績…と言われてもね。

本来なら一誠達やネプテューヌが称賛される事なのに私の武功みたいにされても困るのよね。」

 

「んー、私は別に。それよりも、その子に会ってみたいな!」

 

リアスちゃんはリアスちゃんなりに頑張ってるのは知ってるし!

大体、タイミングが悪いよ、敵さんの。

全くさぁ、もう少し位慎重に動いてもいいじゃん!

何でこう、すぐに本丸に来るかなぁ!

 

リアスちゃんは無言で抱きついて来て、それから気を取り直してその子の下まで皆を連れて歩き出す。

何だかさ、自分って精神安定剤みたいになってない?

 

気のせいだといいんだけど。

 

…それで、旧校舎のある一室に着いた。

どうやら、ここにいるみたいだね。

 

「ここに居るんだけど…ギャスパー、入るわよ?」

 

リアスちゃんがコンコンと扉をノックすると、部屋の方からガタンと音がする。

えっと、何かあったのかな?

ギャスパーって子らしいけど。

 

リアスちゃんがため息をついている所を見るに、一度や二度じゃ無さそうだね。

 

「…ギャスパーは対人恐怖症なの。あまり刺激しないようにね。」

 

「あ、入るのは確定なんだ。」

 

「双方のためよ。あっちが踏み込まない以上、こっちから踏み込まないと何も進展しないもの。荒療治かもだけど…まあ、これも愛よ愛。」

 

「それでいいのか情愛の悪魔って感じだけど…私としては賛成かな!」

 

「まあまあ、実際に会ってみたら打ち解けられるかもしれないし入ろう!」

 

「ここはネプテューヌ先輩か小猫ちゃんが先に入るべきじゃないかな?」

 

「…理由は?」

 

「何となく、接しやすいし。」

 

「…嘘はなさそうです。部長、私とネプテューヌ先輩が先に行きます。」

 

「うーん…そうね、先に入ってもらっていい?最悪捕縛して構わないわ。」

 

「わぁ物騒。取り敢えず、お邪魔しまーす…」

 

中に入ると、意外と整った部屋だった。

引きこもりっていうより…中で仕事してる感じみたいな。

…なんだけど。

 

部屋のすみに目の部分に穴を開けた紙袋を被った…女の子?が蹲っていた。

あーこれ重症かも…

 

「ひえぇ…何で入ってくるんですか許可だしてないじゃないですか不法侵入!不法侵入!駄目!絶対!」

 

「えーと…返事がなかったから入っちゃった!ごめんね。

自己紹介からしようよ、ね?」

 

「よ、陽キャですぅぅぅ!陰キャの僕を精神的に始末する気満々の笑顔してますぅぅ!!」

 

「…リアスちゃん。」

 

「が、頑張って!」

 

帰りたくなってきた。

流石に関わりを持とうともしない人とは合わないというか…主人公のコミュ力にも限度はあるんだけどなぁ。

 

ギャスパー…ちゃん?くん?

まあどっちでもいいんだけど、どうしたものかなぁ。

 

「少し落ち着こう?私達は同じオカルト研究部のメンバーだよ!

だから部員同士仲良くしようよ!」

 

「挨拶に来ただけで特に何かするつもりはないです。」

 

「…な、何もしませんか?」

 

「しないしない。」

 

「はい。」

 

「うぅ…」

 

「…ところでさ、女の子?男の子?」

 

「お、男ですよぅ…」

 

「へえ~」

 

女装趣味の対人恐怖症の男の子かぁ。

まるで絵に描いたかのような人物像だね!

ギャスパー君は立ち上がってビクビクしてる。

 

「ギャスパー・ヴラディ…です。一応、僧侶です…」

 

「私はネプテューヌ!よろしくね!この物語の主人公にして超絶美少女…つまり!完璧超人なんだよ!」

 

「肩書き増えてませんか先輩。」

 

「そうだっけ?まあ気にしない気にしない!リアスちゃん、入ってきていいよ!」

 

「流石ネプテューヌ。そのコミュ力、私も欲しいわ。」

 

「主人公たるもの生半可なコミュ力じゃ生きていけないからね!

私程になればこれくらい余裕だよ!」

 

「俺達も入っていいんですか?」

 

「いいわよ。刺激しちゃ駄目よ?」

 

そんなこんなで自分の後ろに隠れたギャスパー君…ギャー君でいっか!

対人恐怖症のせいで皆とまともに会話が出来るかというと…

難しいよね。

 

「ギャー君、大丈夫?」

 

「う、うぅ…む、無理!やっぱり無理ですぅ!僕は引きこもって死んでいくのが一番なんですぅぅぅ!」

 

「自己紹介が出来ない悲しさよ。」

 

「これは相当だね…」

 

怯えるギャー君に向き直る。

うーん、相当震えてるけど…

 

一歩踏み出さないと。

 

「ギャー君はゲーム好き?」

 

「えっと…好き、です。」

 

「じゃあ、皆でゲームしようよ!そしたら、ここにいる皆には慣れていくんじゃないかな!」

 

「パーティープレイ…ですか?」

 

「そう!どうかな?」

 

「…やってみたい、です。」

 

「決まり!じゃあ早速やろ!こっちに本体とかソフトあるみたいだし!」

 

うんうん、困ったらこういうものにだって頼らないとね。

好きなものなら夢中になれるし、楽しめる筈だし。

正直、お医者さんじゃないからこういう事しか出来ないよ。

 

皆で楽しくゲームをやることになった。

ギャー君も最初はビクビクしてたけどだんだん慣れてきたのか…

 

「あぁぁぁ!?ギャー助、赤甲羅ァ!」

 

「あ、当たるのが悪いんですぅ!」

 

「二位は貰うよ。」

 

「嫌だ、俺は負けたくないぃぃ!単発キノコじゃ勝てないじゃんかよぉ!」

 

「運を恨むのね、イッセー。」

 

「…ねえ、朱乃ちゃん。」

 

「どうかしましたか?」

 

「…なんで私はさっきから最下位近いの?」

 

「ギャスパー君のアイテムに悉く当たるからでは?」

 

「それだよ!私頑張ったのにこの仕打ちは何なの!?」

 

「まあまあネプテューヌさん…ゲームは平等ですから。」

 

「あーちゃぁん!私の味方はあーちゃんだけだよぉ!」

 

悲しいなぁ。

こういう時に勝って人気を集めるのが主人公じゃないの?

これじゃ自分の頑張りは何だったのか…

 

ふと、温かい感覚に包まれる。

 

「あれ、これは…!」

 

─シェア、ですね。ギャスパーさんから微弱ながらも信頼の心を感じます。

 

「…そっか!なら、頑張った甲斐があったね!」

 

少しでも信じてくれるなら、そこから大きくしていけばいい。

自分だけでなく、他の皆との親睦も深められれば…きっと。 

皆分かり合えるよね。

 

「ギャー君。」

 

「は、はい!?」

 

「楽しい?」

 

「…はい、楽しいです。」

 

「うん、ならよし!今日はとことん遊んじゃうよー!」

 

「おー!」

 

「…くっ!勝てないではないか!壊してくれる!」

 

「やめなさいゼノヴィア!?」

 

その後も、皆でわいわいとゲームで遊んだ。

こうして絆を結んで、慣れていけば対人恐怖症だって克服できちゃうよ!根拠はない!

 

─(…コカビエルの件はもう堕天使だけの問題に収まらない。

恐らく、何かしらの動きがある筈…私も、その時に。)

 

「いーすん、勝てないよぉ!」

 

─ゲームに勝つ方法は自分で見つけましょう、ネプテューヌさん。

 

「い、意地悪ぅぅぅ!」




キミモナカマダ

ということで、今回から三勢力会談編。
さあ、ここらへんからが本番ですよ!


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三勢力会談!そして今明かされる衝撃の真実!

ちょっと雑い(頭抱え)




やっほー!コミュ力お化け、ネプテューヌだよ!

まあ、それは当たり前だけどね!

 

とまあ、それはさておいて、今日はね~とても大事な日なんだ~!

何と…授業参観なんだよね!

いやぁ…この日だけはサボれないね。

お母さんかお父さんが来るからね、しかもカメラ構えてさ。

一誠の方にはどっちが行くんだろうね。

 

そんなわけで学園の廊下を歩いてるんだけど…

 

何か凄い人集りが…何だろう?

有名人でも来てる!?

 

あれれ、生徒会長の支取蒼那ちゃんもいる…というか、絶望しきった顔してるんだけどどうしたんだろ。

 

「ねえねえ、どうしたの?」

 

「…ああ、ネプテューヌさんでしたか…ええ、はい…まあ、何といいますか…」

 

「有名人が来てるのかな?私見てくるね!」

 

「ちょ、ま…」

 

人混みの中へ入って、前へと進む。

小さいことを活かしてするすると行けちゃうのは利点だね!

さぁて、誰がいるのかな~…

 

 

 

「魔法少女マジカル☆レヴィアたんだぞ☆」

 

 

 

そっと人混みから出て蒼那ちゃんの方へ戻る。

 

「あの、ネプテューヌさん…」

 

「…えっと…蒼那ちゃん、もしかしてなんだけど。」

 

「…誠に遺憾ながら…姉です。」

 

「…そうなんだー、姉なんだ。私、魔法少女のコスプレして授業参観に来る姉は初めて見たよ。」

 

「だから私はこの日が嫌なんです…両親ならまだしも、姉はプライベートはああだから…!」

 

「苦労してるんだね、蒼那ちゃん。よしよし…」

 

にしても、蒼那ちゃんの姉がまさかコスプレイヤーだとは思わなかったよ。

真面目な生徒会長の姉はああでした…なんて。

 

「あー!ソーナちゃん発見☆」

 

「ヒエッ」

 

「蒼那ちゃん、私行くね!」

 

「待ってください!置いていかないでください!」

 

ごめん、蒼那ちゃん!

自分も関わりたいとは思わない!

流石に…いたた案件だよ!

り、リアスちゃんの所へ行こう!

 

「あの子が例の…」

 

リアスちゃんのクラスの方に行ったら、また人集り。

何か読めてきたよ。

 

「あの人イケメンじゃない!?」

 

「あの髪…リアス様の!?」

 

「ハァ…」

 

「リアスちゃーん!」

 

リアスちゃんがため息をついてるから話しかける。

自分に気付いたリアスちゃんはこっちにやってくる。

 

「ネプテューヌ、どうかしたの?」

 

「蒼那ちゃんのお姉さんが何かあれだから逃げてきたんだ。」

 

「ソーナの…ああ、セラフォルー様ね。」

 

「様?」

 

「四大魔王の一人なのよ、セラフォルー様は。」

 

「ええ…」

 

あの人魔王だったの?うっそぉ…

は、まさか…

わざとああいうキャラをしていて、本来は腹黒いキャラなのかも…!

あり得るよ、とてもあり得るよ!?

 

「それより、誰が来てるの?」

 

「お兄様よ。」

 

「え、そうなの?挨拶してこようかな!」

 

リアスちゃんのお兄さんって前に聞いたけど魔王なんだよね。

ってことは魔王が二人も来てるって事だけど…

怪しい!何かありそう!

 

「…まあ、それなら行こうかしら。」

 

「乗り気じゃないね?」

 

「お兄様は重度の…その、ね?」

 

「あー…なるほど!」

 

シスコンさんだったかぁ。

それならちょっと辟易とした反応してと仕方無いよね。

いつ暴走するか分からないしね!

え、自分?

やだなぁ、弟大好きなねぷ子さんでも時と場所は選ぶよ!

具体的には休み時間に一誠成分吸収のために抱きつく位だよ!

 

まあ、それは置いておこう。

今は…リアスちゃんと一緒にお兄さんに挨拶!

 

「お兄様!」

 

「ああ、リー…リアスじゃないか。」

 

あ、ホントだイケメンだ。

取り繕ってるね、ブラコンの自分には分かるよ!

まあ、公に暴走出来ないだろうし仕方無いよね。

 

公で暴走してたセラフォルーって人は重症?うん、ねぷ子さんもそれには同意せざるを得ない。

 

「そっちの子は?」

 

「この子がネプテューヌです。」

 

「ああ、この子が!ネプテューヌちゃん、リアスがお世話になってるね。私はサーゼクス・ルシファー。よろしく頼むよ。」

 

「私はネプテューヌ!この物語の主役、つまりは主人公オブ主人公だよ!リアスちゃんとは楽しくやらせて貰ってるよ!」

 

「はは、そうか。それはよかった。」

 

「お兄様、今日はお母様が来ると聞いていたのですが…?」

 

「ああ、少し事情があってね。都合がいいから私が来たんだ。

後でグレイフィアも来る。」

 

「そ、そうなの…」

 

「じゃ、挨拶も済んだし、またね!」

 

「ああ、また。」

 

リアスちゃんとサーゼクスさんに手を振って離れる。

さてさて、お次は~

 

「ネプテューヌ。」

 

「うん?あ、お父さん!」

 

お父さんが自分担当のようだ。

前はお母さんだったし嬉しいかな!

 

「おお、嬉しいのかー?」

 

「嬉しいよー!」

 

「ハハハ、父さんは子供の頃授業参観は好きじゃなかったのにネプテューヌは偉いな~」

 

頭を撫でられる。

そういえば、お父さんとはあまり二人きりで話したことは無かったかも。

これを機に話す時間を増やした方がいいかもね。

 

と、周りからの視線が…はしゃぎすぎた?

 

「あ~^」

 

「私の心は汚れてたんだなって。」

 

「浄化される…!」

 

何が眩しいのか目を抑える人とか、凄い微笑んでる人とか様々なんだけど…

どうしたんだろう。

 

「あんまり気張らなくていいからな。」

 

「気張ることないよ。じゃ、そろそろ授業だから行こう!」

 

「ああ。クラスの子とは仲良くやれてるか~?」

 

「私にかかればクラス皆が友達くらい余裕かなって。」

 

「流石我が娘!」

 

「それ程でもあるかな!主人公ですから!ドヤァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業参観はとても平和だったよ!

自分のクラスは、が付くけど。

リアスちゃん曰く…

 

『あんなに兄を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだわ。』

 

とのこと。

同じく、蒼那ちゃんはというと。

 

『…まさか魔王の立場の人がプライベートとはいえコスプレで来るとは思いませんよね。それも公衆の面前で。あり得ます?卒業する三年で良かったとか初めて思いましたね、ええ。

まさかやらかすとは思いませんでした、しかも姉ですよ。

結論から言うと蹴りました。』

 

…うん、死んだ魚の目をしてたよね。

凄く可哀想だったよ。

一誠は普通だったらしい。

よかった、変なことしなくて。

 

それで、放課後になってお母さんとお父さんが笑顔で帰った所なんだけど…

 

「えっと…リアスちゃん、何で呼ばれたか分からないんだけど…」

 

リアスちゃんから申し訳なさそうにオカルト研究部に来るように言われて来たんだけど皆いるね。

リアスちゃんに聞いてみればリアスちゃんも良く分かってない様子。

ありゃりゃ。

 

「お兄様が貴女も込みでいて欲しいって言うから…ごめんなさい。」

 

「なるほど!なら仕方無いよ。」

 

魔王ってことは兄妹であるけど上司でしょ?

仕方無いよね。

まあ、自分としても暇になってたしいいけど。

 

少し待って、オカ研に誰か入ってきた。

 

「やあ、お待たせ。」

 

「魔王様!」

 

「やあ、イッセー君。…さて、待たせてしまってすまなかった。」

 

サーゼクスさん、でいいのかな。

その人が前のレーティングゲームの時に見かけたメイドさんと一緒に入ってきた。

あの人、サーゼクスさんのメイドさんだったんだ。

 

「ネプテューヌちゃん、君をこの部屋に待たせたのはこれから始める会談に必要だったからだ。」

 

「え?どういうこと?それって悪魔じゃない私が居てもいいの?」

 

「むしろ、居て貰わないと困るんだ。

コカビエルを倒した君がね。」

 

「うーん…よく分からないけど、何を始めるの?」

 

「三勢力会談…と言ったところかな。」

 

「お兄様、それは…」

 

「ああ、遅くなったが…そろそろいがみ合ってばかりじゃいられない。」

 

 

 

「─悪魔、堕天使、天使による和平の場としてここにトップが集まるんだ。」

 

 

 

…えーっと。

 

「尚更私要らないんじゃ?」

 

「そうです、ネプテューヌは厳密には三勢力には属してない。

会談に参加させるのは…」

 

「とても重要さ。この子の存在は特にね。」

 

─ネプテューヌさん、参加しましょう。

 

「いーすん?」

 

─これは貴女にとっても大切な事です。

 

いーすんから真剣な口調で言われた。

困ったなぁ。

そう言われたら頷くしかないんだけど…

 

そうだ、堕天使と天使のトップも来るんだよね?

物申してもいいのかな?

 

「その本は…」

 

「いーすんだよ。イストワール!」

 

「サーゼクス様。」

 

「…やはり…か。」

 

「いーすんを知ってるの?」

 

静かに頷くサーゼクスさん。

グレイフィアって人も知ってるっぽい。

 

いーすんはこの世界を記録してる史書らしいけど…それが関係してるのかな?

 

「あの、魔王様!」

 

「ん、どうしたんだい、イッセー君。」

 

「その…ねぷ姉ちゃんをどうする気ですか?」

 

「イッセー?」

 

「聞かないといけないことです。

俺の姉を何に巻き込むつもりですか。」

 

「…少し違うな。巻き込むんじゃない。もう、巻き込まれてるんだよ。」

 

「え、それはどういう…」

 

「会談の時、全てが分かる。」

 

そう言って、サーゼクスさんについてきてくれと言われて皆よく分からないままついていく。

…うん、自分のことがようやく分かる感じだよね?

覚醒イベントと見た!

 

そう思ってついていくと、広い部屋に案内された。

こんな部屋あったんだねこの学園。

あ、でもあったかも。

 

そこに入ると、蒼那ちゃん…この場合はソーナちゃんかな?

あのソーナちゃんの眷属の人も。

魔王のセラフォルーさんもいるね。

 

でも、そんなことはどうだっていい。

 

それよりも目に入った人に自分はとても驚いた。

 

 

 

「─よう、ネプ子。こうして会うのは久し振りだな?」

 

「おっちゃん…?」

 

「あの時のおっさん!?」

 

 

 

なんでおっちゃんがここに?

しかも、隣に銀髪の青年がいるし…誰だろ?

一誠も知ってるっぽいし…

驚いた自分はおっちゃんに駆け寄る。

 

「おっちゃん!?何でいるの!?」

 

「ハッハー!おっちゃんも凄い人だったって訳なんだなこれが!

堕天使総督アザゼル様とは俺の事よ!」

 

「だ、堕天使総督!?おっちゃんそうだったの!?」

 

「そういうこった。」

 

だ、堕天使のトップがおっちゃんだったなんて…

でも、それなら…自分に会ったのは…

疑いたくないけど、そう思っても仕方無いよ。

 

「おっちゃん…もしかして、前に会ったのって…」

 

「…ああそうだ、お前を調べるためだ。」

 

「やっぱり…ねえ、何で堕天使のトップならレイナーレやコカビエルを止めれなかったの?偉いのに、何でよ…」

 

「俺にも堕天使全員の動きを把握することは出来なかった。

コカビエルは前から怪しいとは思ってたが、昔からの仲もあってよ…疑いきれなかったんだわ。…すまねぇ、謝っても許されることじゃねぇと思うけどよ。」

 

頭を下げるおっちゃんに自分はどうしていいのか分からない。

でも、おっちゃんにも色々あると思うと怒るだけじゃ駄目だと思う。

昔からの仲ってことは友達ってことだよね。そんな人を疑いたくないのは自分も同じ。

…結果的には一誠達も無事だった。

 

「…分かった!」

 

「許してくれるってのか?」

 

「うん、許すよ。私がおっちゃんなら同じだったと思うから…許すよ。だから、次からは変な隠し事はしないで欲しいな!」

 

「…やっぱお前、いい奴だな。ありがとよ、ネプ子。」

 

「うん!それに私達友達じゃん!」

 

「ああ…そうだな、友達だ。」

 

よかった。

そうだよ、立場が分かってもおっちゃんはおっちゃんだよね。

あの時ゲームセンターで会って、少し会話したただのおっちゃんと今目の前にいる堕天使総督としてのおっちゃんは変わらない。

だから、いいんだ。

 

友達を信じるのも友達だから。

 

「一誠も許してあげよう?次やったら許さないけど。」

 

「…ねぷ姉ちゃんがいいんなら俺もいいよ。俺はねぷ姉ちゃんに助けて貰った側だしよ…」

 

「そっか。」

 

「アザゼル、まさかネプテューヌちゃんと接触してるとは思わなかったよ。」

 

「それについては悪かった。だが、俺やミカエルにいち早く知らせてもよかったんじゃねぇか?」

 

「確定してたわけでもない情報を渡すのは憚られたからね。」

 

「もーサーゼクスちゃんもアザゼルも会談始まってないのに固いぞ☆」

 

「…だな、ミカエルの野郎が来てねぇのにこんな話しても仕方ねぇ。」

 

会談かぁ…和平って言ってたけど協定でも結ぶとか?

益々分からないよいーすん。

自分がここにいないといけない意味が。

 

「…ところで、隣の君は?」

 

「ああ、紹介が遅れた。

こいつはヴァーリ、前に会ったと思うが白龍皇だ。」

 

「あー!前に落ちた時助けてくれた人!私はネプテューヌ!

前はありがとうね!」

 

「…ああ。ヴァーリだ、よろしく頼む。1ついいか?」

 

この人がそうだったんだ!

会えてよかったよぉ!

堕天使の所属だったんだね。

 

「うん、私に答えられることなら!」

 

「お前がパープルハートでいいのか?」

 

「え、うん、そうだよ!」

 

「そうか…なるほどな。ありがとう。」

 

「うん?」

 

何に対してのありがとうなんだろう。

少し分からなかったけど嬉しそうだしいっか。

 

少しして、誰かが…といっても後来る人なんて限られてるよね。

 

「おや、私が最後ですか…」

 

「遅れるという程でもないよ、ミカエル。」

 

「そうですか。ところで…アザゼル?隣にいるお方がもしや?」

 

「テメェの想像の通りだよ。」

 

「やはり!」

 

入ってきた如何にも天使って人は凄く喜んだ様子で自分に近付いてくる。

え、え、何?

あー自分もそっち行きたい!一誠の方行きたいよ!

 

満面の笑みなんだけど怖いよ!?

 

「初めまして、私は天使長をしているミカエルと申します。

お会いできて光栄です。」

 

「う、うん…ネプテューヌ、です。」

 

「おいコラ、ミカエル!ネプ子が困惑してんだろうが!」

 

「…それもそうですね。すいませんでした、少し…いえとても嬉しくて。」

 

「嬉しい?」

 

「ええ。」

 

な、何でこんなに皆が自分に話題持ちきりなのか分からないよ。

皆が自分の事を知ってるようだし…

早く会談始まらないかな…?

 

そうして、ようやく皆が席につく。

自分もリアスちゃん達の方へと戻る。

 

色々と不安になってきた。

 

 

 

「─それでは、三勢力会談を始める。この場にいる全員は神の死を知っている。」

 

「あいあい、やっとかよ、ちゃっちゃと必要な事だけ済ませようぜ。

和平だろ?堕天使総督として大いに賛成だ。」

 

「理由は?」

 

「種族数だよ、俺達は面倒な生まれなんでね。争ってたら滅んじまう。」

 

「…天界は?」

 

「ええ、私も賛成です。これ以上争っていても仕方ありませんから。」

 

トントン拍子で進んでいく和平交渉。

というか、皆そのつもりで来てるから話すこともそんなにないんだ。

激しい言い争いになるよりかはいいけど…

 

「悪魔はどうなんだ?」

 

「魔王を代表して、賛成しよう。」

 

「では皆様、著名を。」

 

グレイフィアさんがサーゼクスさんに紙を渡して、サーゼクスさんがそれに名前を書く。

その後、おっちゃんへと渡っておっちゃんも名前を。

最後にミカエルさんが名前を書いて、終わり。

 

うん、早く終わったね。

 

「うんうん、これで変に争わなくていいね☆」

 

「さぁてそれはどうかな?」

 

「…うむ、ネプテューヌちゃん。すまないね、このような場面を見せられても困っただろう?」

 

「え、いや…平和なのは良いことだよ!うん!」

 

「ネプ子~もっと不満言ってもいいぜ?」

 

「アザゼル。」

 

「はいはい。んで、話すんだろ?」

 

「ああ。ネプテューヌちゃんをこの場に呼んだのは訳がある。

それは─」

 

サーゼクスさんがその理由を語ろうとした時だった。

 

いーすんが皆の前に出る。

その様子に、サーゼクスさんも口を閉じる。

 

─ネプテューヌさん、私が話しましょう。

 

そして、いーすんが光った。

 

光に思わず目を閉じる。

 

そして、光が収まると…

 

 

 

「─みなさんはじめまして。

わたしがいーすんこと、イストワールです(^-^)」

 

 

 

『えええぇぇぇぇ!?』

 

そこにいたのは、本当に小さい人だった。

目玉模様の帽子や羽が目立つ。

でも、本に乗るくらいしか大きくないよ!?

 

しかも何で声高いの?

平仮名と片仮名と顔文字!?

 

どうしたらそうなるの?

 

「ええ、ネプテューヌさんのキモチもわかります。

シショのトキとはシヨウがちがうんですよ(^.^)」

 

「仕様ってレベル!?」

 

「まあ、それはそうと。わたしのハナシは聞いていただけますよね?( *・ω・)ノ」

 

「あ、ああ…まさか、史書がそういうキャラだとは思わなかったが…頼むよ。」

 

「ええ、はい。まかされました。」

 

おおう…いーすんがまさかああいうキャラだとは。

 

「ネプテューヌ、貴女知ってたの?」

 

「し、知らなかった…」

 

ま、まあ…真面目な雰囲気だし、ここは少し静かに。

 

ようやく知れるんだし、待ちきれないというか。

いーすんは静かになった周りを見渡して頷くと語り出す。

いーすん自身の事や自分の事。

 

「わたしはセカイのれきしをキロクするシショ。

そして…セイショのカミによってつくられたソンザイです。」

 

「やはり、主の…!では、ネプテューヌさんは…」

 

「はい、ごそうぞうのとおりです──」

 

 

 

「─ネプテューヌさんは、ジセダイをになうモノとしてセイショのカミにつくられたメガミさまです。」

 

 

 

「…まあ、そうだよね。聖書の神様の事は知らないけど、そうだとは思ったよ。」

 

女神。

どういう存在なのかは分からないけど…

人じゃないのは分かってたことだよね。

 

でも、それだけじゃないはず。

 

「いーすん。私が記憶を失う前、何をしていたの?」

 

「そ、そうだぜいーすん!ドライグがねぷ姉ちゃんを女神だって言ってたのもそこに理由があるんだろ?」

 

「アルビオンも知ってる様子だったな。」

 

「そうなのか、ヴァーリ…いや、当たり前か。」

 

そうして、いーすんは語り出す。

 

「はい。すこしむかしになってしまいますが…パープルハートさまはセイショのカミのしご、かつどうをはじめました。

ニンゲンをシュゴするモノとしてのかつどうを。」

 

「…神滅具所有者があまり見つからなかったのは…」

 

「はい、パープルハートさまがぼうそうしたロンギヌスのショユウシャをたおしていたからです。」

 

次々と語られる真実。

でも、自分は身に覚えがない。記憶がないからだと思うけど…

そっか、もう人を殺したりはしちゃってたんだね…

 

「ですが…レキダイサイキョウとされるフタリをたおすとき、チカラをつかいすぎたのです。」

 

「ま、待て待て!歴代最強の二人っていうと赤龍帝と白龍皇だろ?二人を相手取ったのかよ!」

 

「そうです。パープルハートさまはジセダイをになうメガミですから。シェアはヒトビトのオモイがチカラとなるシステム。

パープルハートさまはシェアのりょうだけつよくなるのです(^^)v」

 

はえー…昔の自分凄い強かったんだね。

でも、力を使いすぎたってことは前みたいにシェアを使いきったってこと?

 

「シェアをつかいきったパープルハートさまはわたしにしばらくやすむことをつたえました。

わたしはやすまれてるあいだにパープルハートさまをかくした。

フッカツするときにあらわれるように。」

 

「…でも、その時には記憶を失っちゃってたんだよね。

ごめん、いーすん。」

 

「いいえ、ネプテューヌさんがぶじならば(^^)」

 

…そっか。

だからこの場に必要だったんだね。

でも、どうしてサーゼクスさん達は知ってたの?

 

そう聞くと、サーゼクスさんが話し出す。

 

「大戦の後、二天龍を神器にした後に聖書の神が言ったんだ。

次世代の神が現れるとね。史書の事もその時知ったんだ。」

 

「だからミカエルはお前に会って喜んでたのさ。

神の子供みたいなもんだからな。」

 

「ええ…あの時見つけられなかったことが悔やまれます。」

 

「そうなんだ…」

 

「ミカエル。お前はネプ子をどうするつもりだ。」

 

「どうもしませんよ。ネプテューヌさんは人々の味方でしょう。

この場において、人の代表…といったところでしょうか。」

 

「そ、そんな急に言われても!私、そんなの知らないよ!」

 

「だろうな。ま、お前には真実を知って貰った方がよかったからよ。」

 

「おっちゃん…」

 

「お前はそのままで居りゃいい。人の代表だとか、女神だとか考える必要はねぇのさ。自由に生きて、勝手に周りを救ってるのがお前らしいぜ。」

 

「…僕もそう思うよ。使命とかは気にしないでいい。

だけど、真実を知ってどうするかは君次第だよ。」

 

「う、うん…」

 

いきなり人の代表だとか言われて驚いたけど…

あーよかった、普通にしてていいんだね。

急に王様ですよみたいな事言われたから身構えちゃった。

 

でも、そっか。

自分は一誠のお姉ちゃんで、主人公で超絶美少女なのは変わらないもんね。

よかった。

 

でも…昔の自分はそういうこともなくて頑張ってたんだよね。

 

今は今、昔は昔っていうけど、昔の自分の事も背負うのは大事なんじゃないかな…?

 

「ネプテューヌさん。」

 

「いーすん?」

 

「ネプテューヌさんがどうするかはまかせます。

わたしはついていくだけですから。」

 

「そうよ、ネプテューヌ。貴女が誰でも私達の友達なのは変わらないわ。」

 

「リアスちゃん…」

 

「ふふ、オカルト研究部のマスコットですものね。」

 

「朱乃ちゃん…」

 

「プリンを一緒に食べた仲ですよ。」

 

「小猫ちゃん…」

 

「僕は貴女に助けられました。何があっても助けになりますよ。」

 

「木場君…」

 

「ネプテューヌさんは私の大切な人ですよ!」

 

「あーちゃん…!」

 

「ねぷ姉ちゃんは、ねぷ姉ちゃんだぜ。

安心しろって!何があっても俺が守るぜ!」

 

「一誠…!うぅ、皆大好きだよー!」

 

思わず泣いちゃうよ。

そうだよ、この中でもこれだけ信頼してくれる人がいるんじゃん。

また変に迷ってた。

町の皆、家族、友達…皆を守れる力があるんだよ。

日常を守れる力があるんだから。

 

そうだよね、らしくない、らしくないよ!

主人公ならやるべきこと、あるよね!

 

「うん、決めたよ!」

 

その為にも、変身…ううん、女神化(・・・)をする。

パープルハートの姿じゃないとこういうのは言っちゃいけないと思う。

前の自分のためにも!

 

だから…決意表明、刮目しちゃってよ!

 

 

 

「私は、女神として…主人公として人々を守る。

人々を守護する女神…守護女神として生きていくわ。」

 

あ、でも、普段は普通に女の子してていいよね?

プリンとか食べたいし…




WILL BE VENUS(女神になります)

少し駆け足だけどこの後が大事だからねしょうがないね。

ネプ子は聖書の神によって創られた新たな人に寄り添う女神でしたとさ。

でも、ようやく守護女神としての決意が固まりました。
いーすんもようやくモードチェンジ。
読みにくいなこれ…

ちょっとあれだったらこの話作り直すかもしれないですね(自身無し


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和平成立、やったーって何か来た!?

メアスケfinal、だとぉ!?
ネプテューヌじゃなかったけど、寂しくなるなぁ。

それはそうと忍ねぷどうなったよ。


前回のあらすじ!は前書きさんに任せたよ!

 

というわけで守護女神宣言をした自分。

周りの皆の反応は様々。

複雑な顔をする一誠とか、喜び半分寂しさ半分なおっちゃんとか、これでもかって位喜んでるミカエルさん…って。

 

「ね、ねえミカエル…?」

 

「はい?」

 

「凄い嬉しそうだけど…」

 

「妹のような存在ですからね、こうして自分で道を定めたことがとても喜ばしいのです。」

 

「…そういうことね。」

 

ミカエルさんは聖書の神に創られた天使だもんね。

そうなると兄妹みたいなものなのかな。

あれ、おっちゃんもじゃない?

天使から堕天した訳だし…おっちゃんが兄…なのはちょっと嫌かなぁ。

 

「おい、今なに考えたよ。」

 

「何も。」

 

「ふーん…なあ、人の味方…って言えばいいのか知らんが…そういうことだろう?」

 

「…セラ、君の意見は?」

 

「この中に人の味方になれる存在がいるのはありがたいわ。」

 

えっ、誰この人。

さっきまできゃるーんって感じだったのに。

もしかして仕事になるとスイッチ入る系?

 

流石~…っといけない。

人の味方であるって感じなら提案しないと。

 

「私からも、1ついいかしら?」

 

「構わないよ、なんだい?」

 

「…一つだけ。」

 

自分は言わなきゃいけない。

人を守る女神であるなら、大事なことなんだ。

 

「人へ危害を加えないことを…三勢力の代表としての三人に同意して貰いたいわ。」

 

「…ま、そりゃそうなるわな。」

 

「分かった、悪魔の代表として同意しよう。そして、悪魔がそれを行ってるかどうかの調査も。終わり次第、嘘偽りなく報告することを悪魔として誓うよ。」

 

「天界を代表し、同意します。…聖剣計画のような事もありますからこちらも調査をしておきましょう。」

 

「堕天使総督として同意する。コカビエルや下級堕天使の件もあるからな、シェムハザ達に調べさせとくわ。」

 

「ありがとう、皆。」

 

まだ言葉という形だけでも、こうして同意して貰えたのは嬉しいかな。

だって、あっちからしたらさっき守護女神を名乗ったばかりだよ?

 

あ、そうだよ言い忘れてた!

 

思い出して、ミカエルさんに話しかけようとすると、ミカエルさんが先におっちゃんに話し掛けてしまった。

 

「アザゼル。和平締結をした後に聞く形になりましたが…多くの神器保有者を保護したり神器を研究していたのは何のためですか?

貴方の趣味、といえばそれで終わりですが…」

 

「備えていたのさ。」

 

「備えて…?」

 

「ああ…禍の団(カオスブリゲード)っていう組織が──」

 

 

 

「─口が過ぎますね、アザゼル。」

 

 

 

瞬間、何かの力が働いたように感じる。

よく見たら、何人か動きが止まってしまっている。

これは…ギャー君の…?

 

「…おいでなすった。」

 

魔法陣が現れて、そこから女性が現れた。

この人が禍の団のメンバー…?

見たところ、多分悪魔だよね。

 

「…貴女は?」

 

「初めまして、次世代の女神。貴女の事も、この和平の事も全て聞かせて貰った。私は、カテレア。カテレア・レヴィアタン。」

 

「カテレアちゃん…どうして?」

 

「貴様…どうしてだと!」

 

カテレアという人がセラフォルーに怒りの形相…サーゼクスさんにもその視線が向いてるところを見ると魔王に怒ってる?

レヴィアタンって確かセラフォルーもだよね?

 

そういった理由かな。

 

「我々旧魔王派を追いやり、魔王になった気分はさぞ心地がいい事でしょうね…だからこそこの禍の団!我々は現魔王を倒し、新たな魔王として君臨する。」

 

「穏便に出来ないかしら。何も力だけでやる必要は無いでしょう?」

 

「お優しい女神様らしい意見ね。もう話し合いをする域を越えたのよ、私達は…奴等が我々を追いやったあの日から!」

 

「カテレア、君は誤解している…過激な行いは必ず火種を生む。

だからこそ君達に考え直す時間を与えたんだ。」

 

「何を馬鹿な事を…大王の狗が!」

 

サーゼクスさんやセラフォルーがカテレアと話してる間にリアスちゃん達の方へ向かう。

よかった、動ける子が多いね!

ゼノヴィアは何か自分を見たときびくっとしたけどどうしたんだろ?

 

「ネプテューヌ、これは…ギャスパーの。」

 

「多分、カテレア達に何かされたと見ていいわ。

ここは私達に任せてギャー君を…」

 

助けに行って、と言おうとしたらまたいくつかの気配を察知する。

いったいどうなってるの~!?

 

「ネプテューヌさん、まほうつかいたちのシュウゲキもカクニンしました!(;゜゜)」

 

「外にいるみたいね…」

 

「誰が手引きした。この会談はトップしか知りえない!」

 

「誰かが裏切ったということですか。」

 

「おいセラフォルー、雑魚殲滅は得意だろうがお前が行けよ。」

 

「えー…いいけどカテレアちゃんは?」

 

「俺とミカエルで相手する。他の奴等は入ってきた奴等を倒してこい!」

 

「お兄…魔王様!眷属の一人が…ギャスパーが利用されたかもしれません。助けに行ってもよろしいですか。」

 

やっぱりギャー君も巻き込まれた!?

それなら、自分も行った方がいいよね!

 

おっちゃん達が心配だけどここは友達を…

 

「ネプテューヌさん!」

 

「ッ!くぅッ!?」

 

『DIVIDE!』

 

横から来た拳を咄嗟に腕で防いだもののそんな音声が聞こえた瞬間、体が急激に気だるくなる。

 

自分はそんな感覚に陥りながら犯人を睨み付ける。

いい人だと、思ったんだけどな!

おっちゃんもその行動に咎めるような視線を向ける。

 

「…ヴァーリ、どういうつもりだ。」

 

 

 

「─どういうつもりも何も、俺の為だよ。」

 

 

 

「こ、れは…?」

 

「『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』…触れたものの能力を半減させる力です。」

 

「ネプテューヌさん、大丈夫ですか?」

 

「ええ…そのようね。ヴァーリ、何が目的なの?」

 

「まだ立てるか、流石は俺の見込んだ女だ。それとも…意地か?」

 

「ねぷ姉ちゃん!テメェよくも!」

 

「一誠、来ては駄目!」

 

「けどよ、姉ちゃん…!」

 

ねぷ姉ちゃんと呼ばない時は余程の時、だったかな。

でも、駄目だ。

…多分、ヴァーリは自分を実験台にしようとしてる。

赤龍帝の一誠は仲間想いだし、シスコンだからそういったところを刺激すれば…

 

二天龍の戦いは避けられない。

 

この学校の被害だけでなく、下手したら…!

それは避けないといけないんだ。

 

「リアスちゃん達はギャー君の救出を、サーゼクスさん達は雑魚の掃討をお願い!出来るだけ…殺さないように。」

 

「難しい注文だが…君は?」

 

「私なら大丈夫…と言いたいけど。一誠、私に譲渡してくれる?」

 

「…ギャー助を助けて周りの奴等を倒したらすぐに戻ってくる!」

 

『Transfer!』

 

半減された力が一誠の譲渡のお陰で元に戻る。

 

そっか、だから半減と倍加だから決着がつきにくいんだ。

…でも二天龍の戦いとか今だと迷惑だと思うんだけどなぁ。

 

一誠達が会議室から出ていく。

残ったのはミカエルとおっちゃん、自分…ヴァーリとカテレアだね。

 

「ヴァーリ、世界の敵になれとは言ってねぇぞ。」

 

「魅惑的な誘いがあったものだからな。それと…」

 

ヴァーリが自分に視線を向ける。

え、なに?

自分が原因!?

なんかした!?謝った方がいい!?

 

「パープルハート、女神であるお前が欲しくなった。」

 

「えっ。」

 

…ごめん、ちょっと待って欲しい。

 

えっと…

 

欲しくなったってどういうこと?

力が欲しくなったってこと?

あーそうだよね。シェアって自分しか持ってない力だし、興味あるよね。

 

うんうん、とっても分かるよ。

ネプ子さんなら放っておかないね。

ころしてでもうばいとるって奴!

 

…うん、違うよね。

 

おっちゃんも呆然とした様子から立ち直る。

 

「おいおい、どういうこった。それなら一層こんなことする意味がねぇだろ。」

 

「欲が深いんだ、俺は。闘いを捨てることは出来ない、けれど女神も欲しい。なら、奪い取ってでも手にいれるのは当然のことだろう?」

 

「ネプテューヌ、お兄さんはああいうのは認めませんよ。」

 

「お父さんそんな子に育てた覚えねぇぞ!」

 

「親離れ子離れの時期という奴だ、残念だったな。」

 

「…本気?私、こういうことをする人と付き合う気はないわ。」

 

当たり前だけど、テロリストな人と付き合う気は毛頭無いよ!

主人公にも選ぶ権利はあるんだよ!

というか、戦いたいっていう感情が凄い見えるから怖いよ?

 

「いーすん、貴女からも言ってよ。」

 

「パープルハートさまにきゅうこんするヒトはまえにもおおくいましたから…( ´-`)」

 

「そんなしみじみと言わないで!前の私の事は覚えてないんだから…」

 

「赤龍帝はいいってか?」

 

「正直惜しい…とは思ったが、今の彼の実力じゃ俺には勝てない。」

 

「白龍皇、無駄話が過ぎますよ。」

 

「…仕方ない。何処まで戦えるか楽しませて貰うぞ、パープルハート!」

 

「…おっちゃんとミカエルはカテレアを倒して。私が相手するわ。

おっちゃんは辛いでしょ?」

 

「…おう、すまねぇ。」

 

「ネプテューヌさん、サポートします!」

 

いーすんが光となって自分の中に入り込む。

ってちょっと待って、本ごと入れるもんなの!?

ふぁ、ファンタジーだなぁ。

いや、自分が言えることじゃないけど。

 

─ネプテューヌさん、史書の力を使ってネプテューヌさんのシェアを強化します。

 

(あ、漢字使ってる。)

 

─今は気にしないでください。それより、来ますよ!

 

「無視とは酷いな!」

 

「無視なんかしてないわ。」

 

飛んでくる拳と脚を避ける。

うーん、洗練されてるっていうのかな、強いね。

一発貰うごとに半減使われるんでしょ?なにそれチート!?

 

そういう力を振るっていいのはラスボスとかでしょ。

 

まあ、そろそろ攻撃に出ようかな!

攻勢に出る時に役立つ技といえば…

 

「パワースラッシュ!」

 

「む、強いな。」

 

『DIVIDE!』

 

拳を刀で弾いて強く鋭い一撃を放つ。

基本、刀って言ってるけど刃はないから斬り殺しちゃったみたいな展開はないけど…

物も半減できるのは聞いてないよ!?

 

そのせいでヴァーリに一撃かましたけど何かヒビ入ってるし!

 

チート行為も程程にしてよ!

 

でも、今は愚痴を口に出すよりも行動だよね!

 

「クロスコンビネーション!」

 

「流石の速さだ!」

 

「なら、まだ上げていくわよ。」

 

シェアで自分の力を引き上げる。

主人公補正って奴だよ!

主人公はこれくらいしても許される!

でもそっちは許されないよ!

 

でも、ヴァーリは強い。

クロスコンビネーションの連撃を全部かわしてくるものだから途中で中断する。

 

困ったなぁ。

というか、戦いに集中しにくい。

 

「1つ聞きたいことがあるわ。」

 

「何だ、答えられることなら答えるが。」

 

「その、何で私なの?」

 

「他者に好意を持つのに理由がいるのか?」

 

「そうだけど!」

 

「ふっ、冗談だ。」

 

こ、この…!

ネプ子さんのなけなしの乙女心を馬鹿にした!

ネプ子さんの 好感度が 少し下がった!(2ぐらい)

 

「最初は強さが目についた。その後、お前の戦う姿が。」

 

「見事に戦いの事ばっかりね…」

 

「許せ、戦いが好きな性分なんだ。だが、あの戦いの後、俺はお前の事を考えなかった日は無い。」

 

「戦いたかっただけじゃないの?」

 

「いいや、戦いの高揚ではない別の胸の高鳴りを感じる。

この感情、まさしく恋だ!」

 

「カテレア、テメェ!ヴァーリになに吹き込んだごらぁ!」

 

「何も吹き込んでないわよ!くそ、オーフィスの蛇を使った私が何故!?」

 

あっちではミカエルとおっちゃんが順調にカテレアを追い詰めている。

こっちはヴァーリが自分に惚れた理由を聞いてたりする。

うん、戦いの場で何してるんだろうね。

 

─愚か者ここは戦場だって言えばいいですか?

 

(何だかSAN値直葬しそうなのが主犯になりそうだからやめて?)

 

─それにしても、彼の想いは本物だと私は思うのですが…?

 

それなんだよ。

でも、テロリストになっちゃったんだよ?

仲良くなろうとも思ってたのに…振るべき、なんだろうなぁ。

それに、人の味方をすると言った手前それを脅かす人とは一緒になれないよ。

 

「ヴァーリ、貴方の気持ちは伝わったわ。でも…」

 

「そこから先は言わなくてもいい。」

 

「…そう。なら─」

 

「お前を連れていく。」

 

「!」

 

迫る拳を咄嗟に刀で防いでしまった。

そのせいで刀が壊れてしまい、その拳が自分の体へと到達する。

 

まずいと思った時には遅くて。

 

『DIVIDE!』

 

「っ、あぁ!」

 

半減の力が自分に働いて、体が脱力すると共に拳によって吹き飛ばされる。

壁にぶつかって、強い衝撃が背中から全身へ。

 

普段なら、そんなに痛いものじゃないのに…耐久力諸々も半減されてる…!

 

─ネプテューヌさん!

 

「ま、だ…大丈夫よ…!」

 

「油断しすぎだな、パープルハート…いや、ネプテューヌと呼ぼうか?半減された状態のお前が俺に勝てるものかな?赤龍帝ならば半減を無理矢理倍加することで戦えるだろうが…先程の様子を見るにどうすることも出来ないだろう。」

 

「だからって…諦めるような質じゃないわ。」

 

「だろうな。」

 

─ネプテューヌさん、もう一度半減を受けたら危険です。どうか気を付けて…!

 

「っ…!」

 

「体が重いか?半減されたせいで自分の体とは思えないだろう。」

 

「ええ、かなりね。」

 

「手荒なことはしたくない。お前の意思で来て貰うのが一番なんだが。」

 

「従うとでも?」

 

「…そうか。なら、仕方無いな。」

 

まだ負けてない。

攻めに出たら負けだよ、これ。

 

カウンター主体の戦法に変えて戦うしかない。

でも、本気じゃないなんて嘘でしょ、強すぎでしょ。

一誠、戦って勝てるのかな…

 

ヴァーリが魔力弾を放ちながら近付いてくる。

刀をもう一度創ってそれで弾く。

重い…!

 

「ふっ!」

 

「…これで!」

 

素早く突き出された拳。

半減された状態だから余計に早く見える…けど、それを何とかかわして刀を腹にぶつける!

 

「…!」

 

「半減前ならくらっていた一撃だったが…甘いな。」

 

そう言われてから、すぐに刀を手放そうとした。

けど、それよりも早くヴァーリの手刀が自分の首に当たる。

 

『DIVIDE!』

 

─ネプテューヌさん!

 

「あ…」

 

首に衝撃が来ると共に更に半減の力が働いて大きな気だるさと共に女神化を維持できなくなる。

意識が段々、朦朧と…

 

「──!」

 

「──…!」

 

ミカエルとおっちゃんがこっちを見て焦ったような顔をしてるけど…何を言ってるか分からないや。

カテレアはどうにかなったのかな?

 

自分は勝てなかったや。

でも、一誠が戦うのだけは阻止しないと…

 

「いー…すん…」

 

─しっかり…!

 

「ごめ…」

 

─ネプテューヌさん!

 

そこで、自分の意識はプツンと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャー助を助けて、ねぷ姉ちゃんの所に戻った俺達。

そこで目にしたのは…

 

アザゼルとミカエルに倒されて気絶しているカテレア。

ヴァーリに抱き抱えられている変身の解けて気絶してるねぷ姉ちゃんだった。

 

「遅かったな。」

 

「ヴァーリ…テメェ!」

 

「よくもネプテューヌを…」

 

「おっと、それ以上近付かないでもらおう。」

 

「っ、人質のつもり?」

 

「…好いてる相手をそういう風に使うのは心苦しいが、まあそうなる。」

 

「は!?」

 

なに言ってだこいつ?(ん抜き言葉)

好いてる相手を普通気絶させねぇだろ馬鹿!

 

「堕天使に好意持った相手を気絶させろって教わったのかお前。」

 

「ウチはマトモな事しか教えてねぇ。」

 

「じゃあ何でああなってんだよ。」

 

「知らねぇよ。むしろ俺が聞きてぇよ。惚れたのだって今知ったんだぞ。」

 

「私の妹に当たる存在なんですが、拐うのはやめてもらえませんか?」

 

「悪いが無理だな。」

 

「ええい融通の利かない奴だ。」

 

くそ、ねぷ姉ちゃんを助けなきゃいけねぇってのに姉ちゃんが人質なんてズルい奴だ…!

狙うなら赤龍帝の俺にしろよ!

 

ヴァーリはカテレアを見て、溜め息をつく。

 

「それにしても、カテレアは負けたか。オーフィスから蛇を貰ってもあの程度なら仕方無いが…」

 

「無限の龍神か…何のためにオーフィスが協力してる?」

 

「俺にも話せないことはいくつかある。目的も済んだ撤退させて貰おう。」

 

「逃がすと思ってるのかい。ネプテューヌ先輩を返して貰おうか。」

 

「ふっ、これ以上女神を半減させたらどうなると思う?」

 

力を半減させるのがアルビオンの能力、だったか。

ドライグから聞いたけどここまで厄介だとは思わなかったぜ。

ねぷ姉ちゃんが何も出来ずに負けたっぽいし…相性が最悪だったんだろう。

くそっ、どうすれば…

 

『相棒。』

 

「何だよ…!」

 

『下手に動けばそれこそ事だぞ。…今は自分を抑えろ。

白いのの宿主が真に女神を好いているなら下手打つことはせんだろう。』

 

「姉ちゃんを見捨てろってのか。」

 

『お前の実力ではいくら禁手したとしても差がありすぎる。

取り戻せるチャンスは必ずくる。歴史のもついている筈…俺を信じてくれないか。』

 

「…」

 

確かにドライグの言う通りだ。

魔王様達もそれが分かるからこそ動けないでいるんだ。

ヴァーリを逃がすしか手はねぇ…。

 

禍の団…姉ちゃんに何かしようものなら絶対に許さねぇぞ!

今でも許さねぇけど更に許さねぇ!

 

「…分かった。」

 

「イッセー!?」

 

「それでいいのかよ、赤龍帝。」

 

「俺だって嫌だ。けど…下手打つわけにはいかねぇんだ。

おい、ヴァーリ。ねぷ姉ちゃんに変なことするんじゃねぇぞ!」

 

「約束しよう。」

 

「毎日プリン食わせろ!あと、ゲーム時間管理しろ!風呂にも入らせろ!」

 

「…分かった。」

 

(((お、おかん…?)))

 

…よし、最低でもこれだけやらせたらねぷ姉ちゃんも困らねえ筈だ。

むしろ、何だかんだで帰ってくるかも知れねぇ。

ここは姉ちゃんを信じるしかねぇ…!

 

あ、待ってくれ。

 

「紙とペンください。」

 

「え、ええ…」

 

「えーと確か…」

 

「…あ、イッセーさん。これ違います。これは前に買いましたよ。」

 

「マジか、流石だなアーシア。」

 

「はい!」

 

「…おい、これ。」

 

取り合えず、書いたやつをヴァーリに投げ渡す。

ヴァーリは、それを怪しみながらも受け取る。

今は見ない、か。

隙出来るかもと思ったけど仕方ねぇ。

 

「これは?」

 

「長いからあっちで見ろ。」

 

「そうか。では…また会おう。義弟君?」

 

「ああ!?」

 

「怖い怖い。退散させて貰うよ。」

 

ヴァーリはそう言って飛んで去っていった。

 

その後、俺は膝をつく。

 

「イッセーさん!」

 

「くそぉ!俺が強ければ…!」

 

「今は、ネプテューヌを信じましょう。」

 

「ああ、カテレアも無力化できた。情報を吐かせれば…あるいは。」

 

「せっかくの和平の場がよぉ…俺の責任だ、すまなかった。」

 

各々が後悔を抱きながら、その日は解散した。

 

母さんと父さんには部長が催眠をかけて友達の家に泊まりに行ってるって事にして貰った。

部長に謝ると、これも自分の責任だって言ってた。

 

アーシアは部屋に姉ちゃんがいないから寂しいだろうな。

俺もだけどよ…

 

絶対強くなってやる。

そんで、姉ちゃんを取り戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。

少し体が気だるいけど、何とかなる…。

体を起こすと、どうやらベッドに寝てたっぽい。

 

あれから、負けて…

 

「ネプテューヌさん、おきたんですね!(^∇^)」

 

「いーすん…ここは?」

 

「それが、わかりません…しらべてもボウガイをうけてるようで…」

 

「そっか…」

 

考えても仕方無いよね。

禍の団のアジト、みたいな所かな?

困ったな…どうしたらいいのかな。

 

悩んでたら、ガチャリと扉が開く。

ヴァーリかな、と思ったら…

 

 

 

「ん、起きた。」

 

ゴスロリ衣装の黒髪の女の子…ってなんで胸のところ×マークのテープだけなの!?

風邪引くし危ないよ!色々と!

 

「女神。」

 

「えっと…誰?」

 

「ネプテューヌさん…このかたは…!((゚□゚;))」

 

「イストワール、久しい。」

 

「あー…私はネプテューヌ、君は?」

 

「我?我、オーフィス。」

 

オーフィスちゃんって言うんだ。

うん、さっきから感じてたんだけど…

 

この子、凄く強いよね?

ヴァーリとか目じゃないくらい。

 

どどど、どうなるの!?




はい、禍の団…ヴァーリの所へと連れ拐われたヒロインなネプテューヌ。
これからどうなっていくのか!
頑張れ主人公!絆を築け!


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相手が大物でもコミュは出来る、それを証明するよ!

どうも、皆様。

前回の感想から、厳しくもありがたいご指摘を受けました。

確かに、ネプテューヌがいきなり人の代表、というのもおかしいのかなと思い人の代表、ではなくてあくまで人側の味方という形にしたのとネプテューヌの身体能力を半減されるという描写に変更しました。

ご指摘を下さった皆様はネプテューヌ作品、ハイスクールD×D作品を好きだからこそご指摘を下さったと思いますのでそのご指摘を今後の教訓にしつつ投稿を頑張りたいと思います。
読んでいて楽しいと応援をしてくれる人の為にも完結はさせたいと思います。

このような作者ではありますが、この作品をこれからも読んでいただけると嬉しいです。

少し長くなりましたが、本編です。


やっほー!ええっと色々あったけど…ネプテューヌだよ!

 

オーフィスって子が自分の寝てた部屋に入ってきて、何をするでもなくベッドの前に立ってる。

困ったなぁ…いーすんも何か警戒してるし。

 

「ネプテューヌ。」

 

「え、ああうん、なに?」

 

「ネプテューヌ、女神?」

 

「そうなるね。」

 

「なら、強い?」

 

「…どうだろ?」

 

守護女神になるって決めたのに、ヴァーリに負けちゃったし。

それって良くないよね。

信用、失っちゃったかな…

テロリストに宣言直後に負けちゃうってまずいことだよね。

 

弱い、のかな。

 

今まで何とかなってたのは多分…偶然の積み重なりだったと思う。

たまたま女神の力がまだあって、たまたまそれが一誠達を助けられるくらいで…それが何回も積み重なって調子に乗ってたのかな。

 

皆でハッピーエンドを迎えるのって難しいんだね。

 

「ねえ、オーフィスはなんで私の事知ってるの?」

 

「前に見た事がある。」

 

「いつ?」

 

「かなり前。正確には覚えてない。前とはかなり姿違う、力も小さい。」

 

「…そっか。」

 

「女神の姿、隠してる?」

 

「隠してるって訳じゃないよ。ずっと女神化してると疲れるし、こっちの方が慣れてるんだ。」

 

「そう。」

 

…あまり会話が続かない。

表情があまり動かないし、感情の機敏が薄いのかな?

 

「ネプテューヌさん。」

 

いーすんに引っ張られる。

耳に顔を近付けてくるから多分内緒話?

 

「かのじょはムゲンのリュウジンです。このセカイのさいきょうのいったいです。」

 

「そうなの?あーでも、何となく凄いもんね。」

 

「カオスブリゲードのアジトなのもありますし、かのじょがボスなのでは?」

 

「…オーフィスって禍の団のトップ?」

 

「そう。」

 

「そっか。」

 

トップかぁ…

何でここにいるんだろ?

少なくとも、自分に何かしにきた感じじゃなさそうだけど…

 

うーん…

 

うんうんと唸っているとまた扉が開く。

 

「…オーフィス?」

 

「アルビオン…じゃない、ヴァーリ。」

 

「うわっ。」

 

「真っ先に出る言葉がそれか。」

 

「当たり前でしょ!誘拐犯なの自覚してる!?」

 

「まあな。」

 

「だったら家に帰して欲しいんだけど…」

 

「それは出来ない相談だ。」

 

こ、このぉ…!

惚れてる女の頼みも通用しないか!

分かってたけどお先真っ暗過ぎる…

 

って、ヴァーリの後ろに結構荷物が…

 

「それは?」

 

「ん、ああこれか…これはお前用だ。」

 

荷物を部屋の中へとどんどん入れていく。

オーフィスもそれにつられて荷物を入れる。

 

…えっと。

 

プリンがかなり多いね。

それも自分が好きなの。

後、ゲーム?あれ、欲しかったやつじゃん。

 

「こ、これは…全部私の?」

 

「ああ、赤龍帝に言われたからな。安い出費だった。」

 

「や、安い?これ全部が!?ゲーム何個あると思ってるの!?

それに、プリンも私が大好きな奴だし…」

 

「ん、これ美味しい。」

 

「オーフィス、それはネプテューヌのだ。」

 

「…返す。」

 

「そうだ。」

 

「いや食べかけじゃん!いいよ食べて?私消費しきれないし…」

 

「ん、そうする。美味しかった。」

 

「早っ!?」

 

「…で、体の具合はどうだ?」

 

「え、ああ…もう平気だよ。いや、やった張本人に報告するのおかしいけど…」

 

「そうか、よかった。」

 

…何だか調子が狂うなぁ。

慣れない気遣いが何となく見えるから困る。

 

…少し、探った方が良さそうかな。

 

「ねえ、何で禍の団を作ったの?」

 

「我、静寂な世界に帰りたい。」

 

「…えっと、それだけ?」

 

「ん。」

 

「静寂な世界ってとこでどうするの?」

 

「眠る。」

 

「…ヴァーリ、これどゆこと?」

 

「少しあっちで話そう。オーフィス、ここにいろ。プリンはもう駄目だぞ、いいな?」

 

「…分かった。」

 

「いーすんもここにいて。」

 

「わかりました。」

 

あ、今残念そうに見えた。

 

取り合えず、ヴァーリについていって部屋の外へ。

襲われたりしないよね?

 

「…まあ、つまりは周りの旧魔王派や他の連中はオーフィスの力目当てということだ。」

 

「それって…」

 

「あいつらは最初からオーフィスを静寂な世界…次元の狭間に帰すつもりはないし、これからも利用するだろう。」

 

「そんなの!ねぷっ!?」

 

抗議しようとしたら手で口を塞がれる。

ねぷ子さんが喋るのをキャンセルなんて…!

 

「他の過激な奴に聞かれたらどうする?」

 

「むー…」

 

「それでいい。」

 

「でも、そんなの酷いよ。オーフィスはただ帰りたいだけでしょ?」

 

「それがそうでもない。」

 

「どういうこと?」

 

「オーフィスは追い出されたのさ。もう一体の最強の龍…グレートレッドにな。」

 

「グレートレッド?」

 

「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッド』。次元の狭間に住む龍だ。オーフィスはそいつに追い出されたから同じ方法で帰ろうとしてるのさ。」

 

「グレートレッドを倒そうとしてるってこと?」

 

「そういうことだ。だから自分以外の力がいる…その結果があれだがな。」

 

「…何とかしてあげられないかな?」

 

「俺に聞くのか?」

 

そうだけどさぁ。

確かに拐った相手に聞くのはどうかと思うけどさ。

…でも、利用されるだけなんて可哀想だよ。

 

「それでも…うん、頼れるのはいーすんとヴァーリしかいないよ。」

 

「敵なのに、か?」

 

「そうかもしれないけど…」

 

「…ふっ、まあいいさ。惚れた弱みという奴だ。俺に出来ることなら頼るといい。」

 

「ほ、本当に?」

 

「ああ。ただし…」

 

「ただし?」

 

「今度俺とデートして貰おう。」

 

「ででで、デート!?テロリストなのに大丈夫なの!?」

 

「心配するのそこなのか、お前は。」

 

そうは言うけど大事だよ。

テロリストなのに呑気にデートなんてしてたら捕まって…あれ、でも捕まった方がいいのかな。

 

うーん…まあ、いっか。

 

「じゃあ、デートする代わりに…お願いね!」

 

「ああ。」

 

「早速だけど、1ついい?」

 

「本当に早速だがどうした。」

 

そうと決まったら行動だよ!

まずはヴァーリとオーフィス!

皆の事は心配だけど帰れないなら仕方無い。

ここは自分なりに頑張るよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何でゲームなんだ。」

 

「…説明書、読む。」

 

「うんうん、疑問は尤もだよ。でも、これこそが大事なんだなこれが!」

 

「ネプテューヌさんといえばこれですよね(-_-;)」

 

そう、ゲームをすることで仲良くなれる…筈!

そういう考えの元、これを起動した訳なんですよ。

 

「ということで、このRPGを交代制でプレイしていきたいと思いまーす!」

 

「RPG…ロールプレイングゲームの略だったか。」

 

「ん、これ簡単。余裕でクリア。」

 

「お、言ったね?じゃあ、プレイしてみよう!」

 

そうして始まったゲームプレイ。

オーフィスもゲームやったことあるのかな?

…あ、ないね、何か操作ボタン確認が覚束無いし。

 

ヴァーリはヴァーリで興味なさそうだけどチラチラと見てる辺り本当は興味あるね。

 

うん、でも自分はね、自分の位置に文句言いたいかな。

 

「何でヴァーリの前に座らされてるの?」

 

「このくらいで文句を言うな。」

 

「えー…あれ、オーフィス、その難易度ヤバイよ!?」

 

「無限の我は強い。つまり主人公も強い。この難易度は適正。」

 

そこから地獄は始まった…!

 

「攻撃力が序盤の敵じゃないよ!」

 

「砕け散ったな。」

 

「…今のは何かの冗談に違いない。」

 

序盤の敵にゴミのように粉砕され。

 

「ボスの状態異常攻撃が異様に多い件について。」

 

「くそ、半減の力さえあれば…!」

 

「ないものねだりはどうかと…」

 

「ま、負けた…だと…!」

 

「アルビオン、弱い。」

 

「くっ、今に見ていろ!」

 

ヴァーリのターンになってプレイを見るとボスに蹂躙され。

 

「おお、これもしかしてパターンきた!?」

 

「技の選択をミスるなよ…?」

 

「一瞬の油断が命取り。」

 

「なんとかなりそ…」

 

「「「あっ。」」」

 

「…だめでしたね(;^^)」

 

自分でも駄目だった。

なにこれクソゲー?

いや最初からゲームシステムを把握してないのに最高難易度でやるのが間違いなんだけどさ。

 

「うん、一回やり直そう。」

 

「そうだな、無謀だった。」

 

「ん、賛成。嫌な事件だった、忘れる。」

 

「発端が言うかっ」

 

「まあまあ、なかよくやりましょう、ね?」

 

そうして、一度リセットして難易度ノーマルでやると…

 

「見ろ、敵がゴミのようだ!」

 

「勝てばいい、それが全て。」

 

「二人がさっきの難易度よりも簡単すぎてキャラ崩壊を起こしてる件について…」

 

「ふれないでおきましょう。」

 

うん、でも楽しそうにプレイしてる。

やっぱりゲームってこういう為にあるんだと思う。

 

オーフィスも心なしか楽しそうだし…静寂な世界かぁ…どんなところなのかな?

グレートレッドって龍は本当にオーフィスを理由もなしに追い出したのかな?

もしかしたら…何か理由があったんじゃないかな。

 

というか、色々と分かっていないことが多い。

これは少し調べる必要があるよね。

 

「オーフィス、楽しい?」

 

「…楽しい?この感情、楽しい?」

 

「自然と盛り上がったり、うおぉ!ってなるのって…楽しいって感情だと思うな!どう?」

 

「…ん、我楽しい。」

 

「よかった!」

 

それから、またしばらくゲームで遊んだ。

ヴァーリにそろそろやめた方がいいって言われたけど今日くらいいいじゃんって言ったら仕方無いなって言って一緒にやった。

 

オーフィスは相変わらず表情が動かないけど雰囲気っていうのかな?そんな楽しそうな感じだった。

 

「遊びすぎちゃったね!」

 

「ん、疲れた。でも、楽しかった。」

 

「だからやめた方がいいと言っただろう。」

 

「…ネプテューヌ。」

 

「ん、なに?」

 

「女神としての姿、見たい。」

 

「え、何で?」

 

「何と無く。…駄目?」

 

うぐ…疲れるからあまりやりたくないんだけど…

でも、オーフィスは昔の自分を知ってるみたいだし…うん、やってみよう!

 

女神化をして、パープルハートの姿を二人に見せる。

 

「どう?」

 

「どうも何も、俺としては好きだとしか。」

 

「…その、オーフィスは?」

 

「ん…姿、違う?」

 

「え?」

 

「…」

 

「いーすん、どういうこと?」

 

「…オーフィスさんがいるいじょう、かたるひつようがあるとおもっていました。」

 

いーすんは神妙な面持ちだ。

 

でも、なんで黙ってたの?

 

『わたしはついていくだけですから。』

 

…もしかして、あまり昔の事を話そうとしないのはいーすんなりの気遣いなのかな。

 

「あのときのセツメイではたりないぶぶんもありましたから。」

 

「黙っていたのは何故だ?」

 

「あまり、ムカシのことをシってはそちらにはしってしまうとおもったからです。」

 

「…他者を想うが故か。」

 

「すみません、あのトキもおはなししていれば…かてたかもしれません。」

 

「いいのよ。あの時は私の油断が招いた結果…反省するのは私の方よ。話さなかったのだって、あの時出来るとは限らなかったからでしょう?」

 

「…はい。では、おはなしします。」

 

自分含めた三人はいーすんの前に座る。

いーすんとしては、今の方がいいのかな…だから話さなかったのかもしれない。

変化が怖かった、のかな。

 

「まず、ネプテューヌさんのイマのおすがたはまだカンセイされていないコロのおすがたです。」

 

「え、この姿が?」

 

「はい。ほんらいのめがみさまのおすがたはイマとはかなりチガいます。」

 

「俺から質問いいか。」

 

「はい。」

 

「神滅具所有者を倒していたと言うが…被害は甚大だった筈だし三勢力が気付かなかったというのもおかしい。何か結界のような物をネプテューヌかお前は持っていたということになる。」

 

「はい、ヴァーリさんのおっしゃるとおりです。しゅういのひがいをおさえるためにケッカイごとベツクウカンへとテンソウするスベがありました。」

 

「今じゃ、使えない?」

 

「こればかりは…シェアがたりない、としか。もしテンカイできてもそのあとたたかえるかといわれるとむずかしいです。」

 

「なるほどな、だとすれば…より多くのシェアがネプテューヌに集まればその結界を展開できるし、元の姿に戻れるということか。」

 

「…色々と疑問は解消されたけど、そもそも昔の私はどうやってシェアを集めていたの?」

 

「それは…」

 

「信仰、か。」

 

「信仰?」

 

「神とは信仰される者だ。神滅具所有者の処理が先程の結界で認知されなかった。だが、それでもお前の力は今の何倍もの力を有していた…考えられるとするなら、聖書の神の信仰がお前のシェアに変換されていた…といったところか。」

 

凄い…そこまで考えられるなんて。

頭がいいってレベルじゃないよ!尚更なんでテロリストしてるのか聞きたいくらいなんだけど…

創った本人なら、そういったシステムも作れるよね。

 

いーすんはヴァーリの言葉に頷く。

 

でも、それだとおかしいよ。

聖書の神を信仰してる人達の数だけシェアが増えるなら…今の自分も強い筈じゃ?

 

「どうして今の私は強さを保ててないの?」

 

「あのトキ、シェアをつかいきってソンショウもおおきかったパープルハートさまがねむりについたとき…おそらく、そのトキにバグがしょうじたのかと。」

 

「聖書の神とのリンクが途切れたということか。死んでいたとしても神自身への信仰が消えるわけではない。だが、リンクが途切れたことでネプテューヌの力は今ぐらいしかないということになるな。」

 

「そういうことなのね…」

 

…まだ気になることはあるけど、今はこれぐらいで。

何でもかんでも一気に知ると頭が痛くなっちゃうし。

 

結局、シェアが必要なんだね。

 

…でも、昔の自分みたいな強さが戻るにはかなり必要ってことだよね…これは、鍛えた方がいいかな。

それか…

 

「カオスの力を制御するしか…ないのかしら。」

 

「ネプテューヌさん、それはきけんです!コカビエルのとき、どうなったかわすれたわけではないでしょう!」

 

「俺としても反対だ。暴走したらそれこそ昔のお前がやっていたようにお前が誰かに殺される。」

 

「…ネプテューヌ、強くなりたい?」

 

オーフィスが自分の前まで来る。

じっと見つめてくる目は正直に話せと言ってるようで…

 

「…強くなりたい。でも、地道にやってくしかないわ。カオスの力を制御するのは、今は諦めるわ。」

 

「…地道に。我なら、蛇を与えて…」

 

「駄目よ、オーフィス。」

 

「駄目?何故。」

 

「それで強くなれたとしても…仮初めに過ぎないと思う。

シェアありきで強くなる私が言うのはおかしいかもしれないけど…」

 

「…そう、分かった。強くなるには、地道な努力。」

 

「ええ。」

 

でも、ここで鍛えるなんて出来るのかな。

強くなるためには色々と足りない。

…テロだって止めないといけない。

 

どうすれば、いいんだろう?

こんな時、一誠とか居てくれればなぁ…

 

「ネプテューヌ、鍛えたいならいい方法がある。」

 

「あるの?」

 

「俺にも仲間がいてな。そいつらと実践に近い鍛練をすればいい。」

 

「どういうつもり?私が強くなっても貴方にメリットなんて…」

 

「お前が強くなればいずれ楽しい戦いが出来るかもしれないだろう?」

 

とことん戦闘の事ばっかだなぁ…って、本当かな?

流石にあんなに頭回ってたしそんな理由な訳がないと思うけど…

やっぱり何かあって自分を連れ去ったんじゃ…

なんて、都合がいい考えなのかな?

 

…うーん、でも今はその言葉に甘えるしかないよね。

何にしても強くならないといけないし。

 

「…ありがとう。」

 

「構わん。じゃあ、行くか。」

 

「え、今から?」

 

「ああ、ちょうどいるだろうしな。」

 

「そう…オーフィス、貴女も来る?」

 

「行く。」

 

「懐かれたな。」

 

「よかったですね、ネプテューヌさん。」

 

女神化を解除する。

ヴァーリが扉を開けてついてこいと言ってきたからついていく。

オーフィスも自分の後ろをちょこちょこ歩いてついてくる。

 

冥界の何処かだったりするのかな、ここ。

でも、人間界の方が隠れやすいのかな?

 

少しして、ヴァーリが部屋の扉の前で立ち止まる。

 

「ここだ。」

 

ヴァーリはノックをせずにガチャリと開ける。

 

自分とオーフィス、いーすんも入る。

誰がいるんだろう?

凄い化け物とかだったりしないよね?

 

「お、来たな…お?」

 

「可愛い女の子も一緒にゃん。」

 

「ん、我もいる。」

 

何か猿っぽい男の人と着物を着崩してるダイナマイトボディの猫耳生やした女の人がいた。

えっと…ヴァーリの仲間?

 

「お、オーフィスもいるぜぃ。それより、その子は新しいメンバー…って訳でもなさそうだ、何者だぜぃ?」

 

「彼女はネプテューヌ。俺の嫁だ。」

 

「違うからね。ネプテューヌなのは間違ってないけど嫁じゃないからね!加えて、紹介するときは主人公で超絶美少女って言ってよ!連れ去られる系ヒロイン属性もついたよ!」

 

「シショのイストワールです。」

 

「お、おう…中々にフリーダムだぜぃ。俺は美猴ってんだ。」

 

「ちょっと待って欲しいにゃん!私を差し置いて超絶美少女を名乗るのはそれちょっとおかしいにゃん!」

 

「お姉さん美少女ってより美女でしょ?」

 

「分かってるじゃないの。」

 

「チョロい女だぜぃ…」

 

「何か言ったかにゃん?」

 

「何にも。」

 

漫才かな?

 

それにしても美猴も飄々としてるけど、強い。

この女の人も…

 

「私は黒歌っていうにゃん。」

 

「黒歌に美猴だね、よろしくね!」

 

「それで、ヴァーリ。オーフィスも連れてこの二人とここに来たのはどういうことだ?」

 

「オーフィスに関してはついてきた。ネプテューヌが強くなりたいそうだ、付き合ってやってくれないか。」

 

「テロリストに頼むことじゃないぜぃ…」

 

「伸び代はありすぎる程だ。頼めないか?」

 

「そもそもお前がネプテューヌ…呼びにくいな。ネプ助を俺の嫁扱いしてることに驚いてるんだぜぃ。」

 

「遂にロリコンになったにゃん。」

 

…あ、そっか。

普段の自分は小さいからロリコン扱いになるのか。

風聞を気にして諦めてくれたりしないかな。

 

後ネプ助!?

そんなに呼びにくいかなぁ…ショック。

 

「高校三年だぞ。」

 

「何も問題なかったにゃん!」

 

「いや大有りだろ!高校三年連れ拐う事自体に突っ込めよ!」

 

あ、この人マトモだ。

ツッコミ役かぁ、哀れな…

 

ツッコんでも仕方無いと悟った美猴は自分を見る。

 

「まあ、一度実力を確かめてからになるだろ。教えるなんてしたことないからなぁ。」

 

「いいの?」

 

「おう、ヴァーリが惚れたんだ。ネプ助の実力は低くない筈だぜぃ!」

 

「んじゃ、私は見学でいいにゃん?」

 

「…まあ、よかったな、ネプテューヌ。」

 

「うん、ありがとう、ヴァーリ!」

 

「…俺は少し部屋の外に出る。強くなりたいなら励むんだな。」

 

そう言って退室するヴァーリ。

そうだ、強くならないといけないんだ。

オーフィスの事をどうにかする為にも、強くならないと。

これ以上、負けないためにも…今頑張らないとね!

 

負けた事実からスタンドアップネプテューヌだよ!




長い前書きの後なので後書きは少し簡潔にまとめたいと思います。

・結界
シェアを使った結界で発動と同時に別空間へと転移するといった物になります。力の痕跡はイストワールが処理をして女神は神滅具所有者を倒していたといった形にしました。
いわゆるシェアリングフィールドですね。

・当時のシェア
三勢力にも聖書の神の最期の言葉以外ほぼ認知されていない筈のパープルハートにそこまでの力があったのかという疑問のための解答。ヴァーリの言う通り、聖書の神への信仰がそのままパープルハートのシェアになっていました。なので強かったわけです。

・パープルハートの姿
昔と今では姿…つまり、プロセッサユニットが違っていた。
もしかしたら、フォーム自体が…という話。
いーすんが黙っていたのはいーすんなりにネプテューヌに話せば昔の事も全部背負ってその使命感に潰れてしまうのではという危惧からです。まあ、言ったとしてもフィールドは貼れなかったし結果は同じでした。

以上です。

前回の感想でご指摘を下さった方や楽しいと言ってくれた方、ありがとうございます。


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レベルアップ!私、強くてニューゲーム!

最近色々と怖いけど、ネプテューヌは平常運転!

元気なネプテューヌが皆好きなんだよ!


やっほー!修行してたネプテューヌだよ!

修行期間?映す価値無し!

なんか、期間中ってゲームだとイベントみたいで嬉しいけど現実だと悲しいけどテスト期間とかの方があって辛いよね。

まあ、そんな事はどうでもいいや。

 

美猴と黒歌、ヴァーリによる特訓は地獄だった。

 

そりゃもう、死ぬかと思ったよ。

美猴は如意棒?だっけ?それを持って筋斗雲っていうのに乗って戦うんだけど、それだけならまだ何とかなったんだよ。

でも、仙術ってなに?変化ってなに!?分身って何なのさ!?

スッゴク羨ましい!ボコボコにされた!悔しい!

 

黒歌も仙術使いだけど、実は妖怪で悪魔らしくて(美猴も妖怪らしい)魔力とか妖術とか使われて搦め手ばかりで負けちゃった。

 

ヴァーリは言わずもがな。

 

良いとこは行くけど…

 

美猴曰く、

 

「力の応用や咄嗟の思い付きは良いんだが技術が足りないぜぃ。」

 

とのことで…やっぱり実戦経験のなさが目立ってるっぽい。

黒歌は、

 

「シェア、だったかにゃん?あれを上手く使えば魔法と同じ現象が出来るんじゃないかにゃん。」

 

とのこと。

魔法と同じ…つまり、炎とか雷とか出せるってことだよね。

 

ヴァーリは、

 

「技術などもそうだが…そうだな、シェアありきの女神としてはシェアを集めなければどうにもならない部分もあるだろうな。」

 

…だよね。

そんなこんなで、シェアを集めるというのは後にして、皆に技の技術とシェアの応用がどこまで利くのかに付き合って貰った。

出来たらすぐに実戦やるからキツいなんてもんじゃない。

 

そうして、三日間皆の付きっきりの特訓のお陰で…

 

「私、パワーアップ!皆のお陰で強くなれたよ!」

 

「長いようで短かったぜぃ。これもネプ助の才能ってやつか。

スポンジみたいに教えたこと吸収しやがるからついのめり込んじまったぜぃ。」

 

「何やかんやで乗り気になって付き合っちゃったにゃん。」

 

「流石は俺の妻だな。」

 

「グレードアップしてるけど、良くて友達だからね。」

 

「ネプテューヌさん…あそこまでドリョクするなんて(ノ_・、)」

 

まあ…せざるを得ないよね。

強くならないと守れないものもあるなら、強くなるしかないじゃん。

自分が目指すのはハッピーエンドなんだから。

 

「シェアを使った属性魔法をそのまま放ったり、纏わせたり…普通に強化魔法として使ったり!うん、私ファンタジー主人公の道を確立してるね!」

 

「体術忘れんなよー」

 

「嫌って程叩き込まれたからね…」

 

「けど、これで強くなれた筈だぜぃ。」

 

「うん、それもそうだね。」

 

皆、嫌な顔一つしないで協力してくれた。

戻ったら敵なのかもしれないのに。

 

事情を話しても、別に構わないって感じだったし。

 

美猴とヴァーリは戦闘狂なだけだってことはこの三日間で理解した。

黒歌は事情があってはぐれ悪魔扱いを受けてるだけで、それも不当なものだって事を知った。

白音ちゃんかぁ…何と無く心当たりが無いわけでもないんだよね。

 

黒歌はどうやら妹のために主人を殺したみたいで、離ればなれになった妹、白音ちゃんを探してるみたい。

自分もリアスちゃん達の側にいたのもあって聞かれたけど白音って名前の子は知らないけど心当たりはあるって言ったら喜んでた。

魔王のサーゼクスさんとか説得できないかな。

 

「ねぷっち、白音に本当に心当たりがあるのね?」

 

「この三日間ずっと確認してくるけど、あるよ。外れってことは…多分無いかな。」

 

「なら、いいの。協力してよかったにゃん。」

 

大好きなんだなぁ、妹が。

自分を犠牲にしてでも助けたい…そうだよね、自分だってそうする。

一誠は大事な弟、あーちゃんもそう。

二人を助けられるなら喜んで身を差し出すと思う。

 

だから、助けてあげたい。

幸せであるべきだと思う。

 

「黒歌、絶対に白音ちゃんに会わせるよ!信じて欲しいな!」

 

「ねぷっち…もー可愛い!」

 

「ねぷぅ!?」

 

感極まったとばかりに抱き締められる。

ほ、豊満なメロンが!

一誠が死ぬほど羨ましがるだろう体験を自分はしている!

あ、でもリアスちゃんとかにやって貰ってるんだろうなぁ。

 

「そこまでにしておけ。」

 

「にゃん!?」

 

「た、助かった…」

 

「…ネプテューヌ、お前が強くなることは俺としても好ましい。これからも女神として強くあることだ。」

 

「ヴァーリ…うん、ありがとう。」

 

打算があったとしても、協力してくれたのは確かだし、三日間で皆と過ごしたのは嘘じゃない。

テロリストだからとかそういう考えもあったけど、でも…楽しかった。

守護女神の自分が言っちゃ駄目だと思うけど、楽しかったんだよ。

 

ヴァーリが優しいのは良く分かったし…面倒見もいい。

オーフィスの話し相手になってあげてるし、黒歌達を気遣ったりしてる時もあった。

だから、ちょっと、ほんのちょっとだけど好感度上がったかな!

 

「皆、ありがとう…でも…」

 

「どうした?」

 

「…やっぱり、やだな。もし戻ったら、皆と戦わないといけないんだよね?」

 

「私としては白音に会わせて貰えるならそれでチャラだからどっちでもいいにゃん。」

 

「俺は強くなったネプ助と戦えるってならそれはそれでありだぜぃ。」

 

「それでも!…私は嫌だよ。だって、皆優しいもん!なのに戦う必要なんて…だって、テロリストっていってもまだそんなに活動はしてないでしょ?なら…」

 

「ネプテューヌ。」

 

「ヴァーリ…?」

 

自分の言葉をヴァーリが遮る。

真面目な顔だ。

 

「そうだとしても、ここにいるのは俺達の意思だ。」

 

「…テロリストになってまで戦いがしたいの?」

 

「世界の強者と戦うのに手っ取り早い方法がそれだったからな。俺は強くなりたいんだ。」

 

「右に同じだぜぃ。」

 

「私も、白音を探しやすいのは悪魔とかもいるこの禍の団だと思ったからだしね。」

 

「それなら、私が…」

 

「私がずっと二人と戦うし白音も見つける、か?それは無理だ。」

 

「それは俺達の罪を背負うことだぜぃ。ま、出来ないことなんだけどな。」

 

「ネプテューヌさん…かなしいことですが…ホンライならこうしてつよくなるのにきょうりょくしてもらうのも、ここにつれさられてもなにもされないのもキセキのようなものなんですよ。」

 

分かってる。

身勝手な発言なのは、分かってるんだ。

でも…それでも皆の優しさに触れた自分は一誠達がヴァーリ達と戦うのが嫌なんだ。

 

ヴァーリは自分の頭を撫でてくる。

 

「それでもというのなら…また俺達に挑むことだ。勝者は敗者に命じる事も出来る。」

 

「…でも、それは…」

 

「冥界は実力社会だ、もしかすれば…あるかもしれないぞ?天界はどうかは知らんが…やらないで諦めるのがネプテューヌという女だったか?」

 

「!」

 

何か、口車に乗せられてる気がするけど…でも、そうだよね。

やらないで終わり、な自分ならここまで来てないよ!

オーフィスの事も、黒歌の事も、ヴァーリの事も…自分にとっては大事なんだから!

やれるだけやって、掴み取らないとね!

勝ち取りたい!

 

「うん、理屈とかそういうの抜きでやるのが私だよ!

主人公が諦めてたらそれこそ世の終わりだよね!」

 

「それでこそだ、ネプテューヌ。…まあ、まだ帰すわけにはいかないんだがな。」

 

「えー!さっきの倒しに来いみたいな発言はなんだったの!?

今のは絶対に私を帰して後日再会して熱血バトルって展開だったよ!」

 

「だがそれは起こらない…悲しいが、ここは現実だ。」

 

「酷いや!」

 

「ネプ助は悩むのも多いが吹っ切れるのも早いぜぃ。」

 

「良いことだと思うにゃん。」

 

その後はオーフィスも来て、皆でゲームをした。

大乱闘でスマッシュなゲームなら、ねぷ子さんに勝てるものなど存在しないよ。

美猴もヴァーリも黒歌もオーフィスも、自分にボコボコにされる様を見るのは胸がスッとしたぜ…。

 

悔しそうな顔でもう一回って言われるからそれを繰り返してたら夜になってた。

というか、あんなに大量にあったプリンが結構減ってるんだけどこっそりと誰かが食べてる?

視線をオーフィスにやるとオーフィスが目をそらしていた。

 

取りあえず、食いしん坊なのは分かったけど…良く食べるね。

 

残りの半分にねぷのって書いておいて書いてないプリンを食べるんだよって言うと無表情で目を輝かせてた、器用だなぁ。

 

いーすんも加えて続きをしたけど、いーすん小さいせいでボコボコである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【速報】いーすんへの罰ゲームでヴァーリと二人きりになる。

 

なんで?と思ったけど、さっきの大乱闘ゲームでビリに罰ゲームにしようってなって皆で必死に勝ち残ろうとして最初に負けたのがいーすんだから。

それで、自分とヴァーリはそれでウケるかどうかの判定をするためにどんな内容なのか分からないって感じ。

でも、いーすんに何するんだろう…

 

「ヴァーリってお笑いみたいなの見るの?」

 

「まあ、見てたが…合わなかった。」

 

「何かそれより他の見てそうだもんね。」

 

「そういうことだ。…折角二人だけだというのに聞きたいのはそれだけか?」

 

バレてる。

うーん、もう少し緩い雰囲気で聞きたかったけど…仕方ないか。

 

「じゃあ、聞くね。ヴァーリはなんでそんなに強くなりたいの?」

 

「なぜ強くなりたいか、か…この世界が弱肉強食の世界だから…という理由では納得しないだろう?」

 

「絶対そんな理由じゃないでしょ。」

 

「まあそうなんだが。となると、俺の事を話さないといけないな…」

 

「話さないって選択肢はないんだ?」

 

「お前には俺を知ってもらいたい。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

すごいド直球で流石の自分もたじろぐといいますか…

こう、何かしら重い理由じゃないのかな?って思っちゃったけど…ここまで強くなろうって意思が強いとそれは違うよね。

 

良し、覚悟して聞こう!

 

「まず、俺の名前を教えないといけないな。」

 

「名前?もしかして、ヴァーリは偽名なの?」

 

「いいや。フルネームを言ってないだろう?俺はヴァーリ・ルシファー…どこかで聞き覚えは?」

 

「え、そんなこと言われても…あっ!」

 

ヴァーリは知らないけど、ルシファーは知ってる!

サーゼクスさんもルシファーを名乗ってたじゃん!

 

「じゃあ、サーゼクスさんの親戚?」

 

「それは違うな。第一、リアス・グレモリーの兄だというのにグレモリー姓じゃないのはおかしいだろう?サーゼクスは元々グレモリー家の悪魔だ。ルシファーを襲名したのは魔王だからに他ならない。他の魔王もそうだと思うがな。」

 

「そ、そうなんだ…じゃあ、ヴァーリは悪魔なの?」

 

「半分正解だ。俺は…人と悪魔、両方の子なのさ。」

 

「人と、悪魔の?」

 

ゲームとかアニメである半人半魔ってやつ?

 

でも、悪魔って貴族社会じゃないの?

 

「当然、俺は悪魔社会からしたら不要な存在だ。人間である母もな…だから、まあ…捨てられたのさ。」

 

「…そう、なんだ。お母さんは?」

 

「母は俺や他の悪魔の記憶を消されて人間界のどこかにいるだろうさ。」

 

「…辛くない?」

 

「幸い、アザゼルが親として俺に接してきたからあまり辛くはなかった。…ここまで話せば、何と無く分かるだろうが、俺にはどうしても倒さなければならない奴がいる。」

 

それは父親なのか、別の誰かなのかは分からないけど…

暗い過去だ。自分は恵まれてるから余計にそう思う。

母親が息子の顔も覚えてないなんて、悲しいよ。

 

…そっか、だからあんなに強くなろうとしたんだね。

 

「とまあ、こんな理由だ。」

 

「ありがとね、話してくれて。」

 

「お前の過去を知っていて、俺の過去を知らないのは何だか不平等な気もしてな。」

 

「それは、惚れてるから?」

 

「…そうだな、そうなる。」

 

「なんでそんなに好かれてるのか分からないんだけど…」

 

「俺にも分からない。」

 

変なの。

なんかむず痒い気分になるなぁ…よし、気にしないことにしよう。

それより、いーすんはまだなのかな?

 

あ、でも何か扉の向こうからいーすんの嫌そうな声が聞こえる。

 

何するんだろう?

罰ゲームだし、気になるなぁ…

 

扉が開いて、皆が戻ってくる。

 

「真面目すぎるんだぜぃ、もっとこう、弾けてだな。」

 

「そうにゃん、罰ゲームだから甘んじて受け入れるにゃん。」

 

「ん、苦しみは一瞬。」

 

「うう…やりますよ…(T_T)」

 

皆がいーすんを隠してて、いーすんのすすり泣く声が聞こえるだけ。

何があったし…?

 

美猴がやれやれといった感じで、黒歌は愉快そうにしてる。

オーフィス?平常運転だよ。

 

「よし、イストワールの罰ゲームの時間だぜぃ。」

 

美猴が退くと…そこには!

 

黒いサングラスを掛けてがら悪そうないーすんが本に座ってた。

よくあったねそのサイズのグラサン…

 

「い、いーすん…」

 

「あ?んだよ。」

 

「ふぁっ!?」

 

ねぷ!?いーすんが、いーすんがぁ!

スッゴい怖い!ヤクザみたいになっちゃったよ!

罰ゲーム…おそろしや!

 

「というわけで、いーすんにはがら悪く振る舞ってもらうにゃん。」

 

「こうやってる間も本人の心はズタズタ。」

 

「ひ、酷いや!」

 

「うっせぇぞメガミぃ!かじくらいしろや!」

 

「ねぷぅ!?」

 

いーすんが体当たりをしてきてねぷ子さんベッドに頭からダイブ!

い、意外と痛い…!

というか、何かノリノリじゃない…?

 

ヴァーリは何かプルプル震えてるし…あ、笑い堪えてる。

 

「ふっ…く…何でもない、続けて構わない…」

 

「笑ってない?」

 

「笑ってない。」

 

嘘だよね絶対笑ってたよね。

スン…って真顔になっても遅いよ。

 

それから30分程いーすんのドつきは続いた。

今度からあのいーすんをグラサンいーすんと名付け、出てきたら逃げることにしよう。

 

ま、まあ…楽しかったし、いいや。

いーすんも鬱憤たまってたんだね~…




いーすんの たいあたり!
こうかは ばつぐんだ!
ネプテューヌは プリンをたべて かいふくした!


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誰かを信じるなら、まずは自分から!古事記にも載ってるよ!

こんな日本にいられるか!俺はプラネテューヌに引っ越すぜ!
ネプギアちゃんとイチャイチャするんだ!(叶わぬ夢)
ネプテューヌとゲームするんだ!(届かぬ想い)
超次元魂があればなにも怖くないんだ!(真っ赤な誓い)


やっほー!強くなれたネプテューヌだよ!

いや本当に強くなれたかは知らないけどね!レベル上がったかもしれないけどどうだろうね?

 

禍の団に連れ去られて5日目。

困ったことにまだ帰してはもらえない。

これ一生帰れないまである?

もしそうならやっぱり無理矢理動くしかない?

というかお父さんとお母さん心配してない?

一誠やあーちゃんは無理してないかな。

 

色々な不安や心配がこみ上げる。

これがずっと続いてる。

ヴァーリ達の前では気丈に振る舞ってるけど、やっぱり普段過ごした人がいないのは寂しい。

けど、ここで弱音を吐くのは駄目だよね。

敵の本拠地…みたいなもんだし。

 

「はぁ…」

 

「ネプテューヌさん…」

 

「いーすん…大丈夫!まだ帰れないと決まった訳じゃないよ!

それに黒歌の事もあるから…帰してはもらえると思うんだ。」

 

「それがいつになるか…ふあんですか?」

 

「…うん。」

 

オーフィスだってどうすればいいか分からない。

このままだと利用されちゃうだけ…出来ることなら連れ出したいけどそしたら何も知らないお母さんやお父さんが危ない。

 

むしろ、このままじっと動かない方がいいんじゃ…?

いやいや、それは無しでしょ。

うじうじしてても仕方ない、ここは…

 

「プリンを食べて気分を変える、これに限る!」

 

「たべたいだけでは?(-- ?)」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

「ふとりますよ?」

 

「ふ、太らないよ!主人公は太らないという特性があるんだよ!」

 

「…まあ、ネプテューヌさんのなやみはりかいしているつもりです。ですが、そんなときこそレイセイであるべきです。」

 

「う~、分かってるよ~」

 

そんなことは分かってるけど心配なものは心配だよ~

あーちゃんは日本をあまり知らないし、優しいから何かあったら怖いし、一誠はエロいし。

リアスちゃん達だって動いてくれてるだろうけど、それでも…うーん…

 

プリンを取り出して、食べようと蓋を開けると同時に扉も開いた。

えっ、プリンに新機能追加したの?

 

「ネプテューヌ。」

 

「なんだ~オーフィスだったか~」

 

「逆になんだと思った?」

 

「プリンの新機能。」

 

「どういう…こと…?」

 

オーフィスだった。

よかったぁ、プリンの機能にしては悪趣味すぎるよね。

 

オーフィスが来たってことはゲームしに来たんだろうね。

 

「今日は何のゲーム?」

 

「ん、この格ゲーのリベンジに来た。」

 

「ほほう、練習もしてないのに私に勝とうだなんて数百年甘いよ!」

 

「イメトレはしてきた。」

 

イメトレは怠らなかった…確かに、イメトレは大事だよ。

 

いや、結果が出るまでは何も言うまい!

自分の愚かさ、その身で味わうといいよ!

 

数十分後…

 

「確かにイメトレの効果は絶大だった…プレイングも、指さばきも素晴らしかったよ。でも、まるで全然!私を倒すには程遠いんだよね!」

 

「また勝てなかった…」

 

「残念だったね!」

 

「む、もう一回。」

 

「ゲームはほどほどにしないとダメですよ!(;゜゜)」

 

「まだ一時間も経ってないよ!」

 

「寧ろ五徹しても足りない。」

 

すっかりハマったね、オーフィス。

五徹って…廃人の道でも辿ろうとしてる?

 

やばいよやばいよ、廃人には勝てないよ。

 

そうしてしばらくいーすん監視(あまり効果がない)の元ゲームで対戦してたんだけど…

 

突然、扉がまた開いたんだ。

ヴァーリ達かなって思って振り向いたんだけど…

長い黒髪の貴族みたいな男の人が入ってきた。

あの、ノックしてください。

 

「オーフィス、ここにいたのか。」

 

「ん。」

 

「あのー…ここ一応、私の部屋なんだけど…」

 

「…白龍皇が連れてきた女神とはお前か。」

 

「え、何々?私ってもしかして噂になってる?」

 

「いい噂ではないがな。それよりもオーフィス、蛇を寄越せ。」

 

「今プレイ中。」

 

「貴様…っ!」

 

「待って待って!一旦ストップ!」

 

「何だ女神。」

 

今にも掴みかかりそうな態度の男の人を止めて、ゲームを中断する。

あーもう、なんでこんな血の気が多い人がいっぱいかなぁ?

 

「まずは落ち着こう?いきなりそんな寄越せとか言ったらオーフィスも気分悪いよ。」

 

「貴様には関係無いだろう。第一、連れ去られた貴様がなぜ敵を庇う?」

 

「敵じゃないからだよ!それより、一回落ち着いて話し合おう?

ほらほら座って座って!」

 

「…いいだろう。」

 

「ほっ…」

 

取りあえず、面倒なことになりそうだね。

面倒は嫌いなんだけどなぁ…

 

まあいいや、私とオーフィスに向かい合うように座った男の人…悪魔だよね、たぶん。

カテレアって人と同じかな?

 

「まず、自己紹介ね!私はネプテューヌ!」

 

「名乗られたからには名乗るのが礼儀だな。

クルゼレイ・アスモデウスだ。」

 

「えっと、蛇が欲しいって話だったけど…なんで?」

 

「決まってるだろう。今の魔王どもを倒し、捕まったカテレアを救うためだ。」

 

「カテレアを?」

 

「カテレアは俺の恋人だ。あの会談に居たなら知ってるだろう?」

 

「いや、知ってるけど…恋人なんだ。」

 

あの人恋人いたんだ。

うわぉ、びっくり!

 

「でも、酷い扱いは受けてないと思うよ?」

 

「何故そう言いきれる?今の悪魔の政権を覆そうとしたテロリストだぞ?拷問の限りを尽くされてないと何故言いきれる。」

 

「えっと…これは私の印象だよ?だから怒らないで聞いて欲しいな。あの会談にいた二人とは話したんだけど、悪い人って印象はなかった。多分、情報は欲しいけど拷問まではいかないと思う。

セラフォルーに関しては競い合った的な仲じゃないの?だから、それもあると思うし…」

 

「貴様の印象で全て信じろと?」

 

「うん、信じて欲しい。」

 

「ネプテューヌ、人をみる目ある。信じた方がいい。」

 

「…だが、俺の意見は変わらん。今の魔王を倒す…その為にこの禍の団を結成したのだからな。」

 

「そもそも、何でサーゼクスさん達を倒そうとしているの?」

 

「奴らは温い。何故悪魔が堕天使や天使と和平を結ばねばならない?奴らを滅ぼし、悪魔の社会を築けばいいだろうに。

温い奴らに代わり、我々が新たな悪魔の世を作る…それが目的だ。」

 

…うん、何と無く分かった。

多分、恨みとかあるんだろうね。

前にサーゼクスさんが言ってたけど…旧魔王派は過激な意見が多かったんだ。

 

「それって悲しいことだと思うよ。」

 

「何だと?」

 

「何で争わないといけないの?」

 

「それは我々悪魔こそが至高の…」

 

「それって大事?」

 

「…何が言いたい。」

 

「私には、分からないんだよ。至高至高って言うけど…戦って勝たないと証明できないの?そんなに血を流したいの?」

 

「我々は争ってきたのだぞ、それを…!」

 

「争いが嫌だから和平を結んだんじゃん!悪魔も堕天使も天使もこれ以上戦いたくないから和平を結んだんだよ!ずっと戦って、やっと種族が減ってくだけだって気付いたから…だから和平を結んでこれ以上自分達の種族が減らないようにってお互いの手を取り合ったんじゃないの!?」

 

「ぐっ…貴様に何が分かる!力で支配する世の何がおかしい!」

 

「力で支配して、それで何か変わるの?変わらない今を変えたいから協力しようってなったんだよ。クルゼレイ…クルゼレイにもカテレアって人がいるじゃん!カテレアがそんな争いしかない世界で死んじゃったら悲しくならないの?」

 

「…カテレアが…」

 

ここまで言って、ようやくクルゼレイは言葉を止める。

目の前に出された紅茶を見つめるだけ。

そうだよ、大事な人がいなくなるなんて嫌だよね。

そんな世の中に自分達で進んでしようだなんて間違ってる。

 

きっと憎しみとかで前が見えなくなってるんだ。

自分でいいなら、それを晴らして道を照らしてあげたい。

 

その為なら頭を働かせて話し合うよ、何度でも。

 

「カテレアも、クルゼレイも…戦ってばかりの世界じゃ幸せになれないよ。手を取り合おうよ、忌々しいと思ってても何処かで折り合いをつけないと苦しいだけだよ。」

 

「…クルゼレイ、それでも蛇が欲しい?」

 

「…俺は間違ってるのか。」

 

「争いだけの世界にするのは間違ってるよ。でも…カテレアを助けたいって気持ちだけは間違ってないと思う。誰かを助ける心に善悪はないと思うよ。」

 

「そう、か…少し、考える。失礼する。」

 

クルゼレイはそう言って部屋を出ていった。

少しだけど…この禍の団の事が分かった気がする。

 

にしても…

 

「疲れたぁぁぁぁ…」

 

ぐでーっとソファに横たわる。

オーフィスに頭を撫でられる。

ぎこちない、35点!

 

「おつかれさまです、ネプテューヌさん。」

 

「いーすんもどうして何も言ってくれなかったの~いーすんの方が頭いいんだからさ~」

 

「わたしがはつげんするとどうしてもリロンテキになってしまいます。かんじょうてきなネプテューヌさんのコトバだからこそ、とどいたのだとおもいますよ?」

 

「うー、そう言うけどさぁ…」

 

「ネプテューヌ。」

 

「うん?」

 

「我、間違ってる?」

 

「…帰りたいっていうのは誰でも同じだと思う。私だって家に帰りたいよ。でも…どうして追い出されたのかを考えないと、同じことの繰り返しだと思うな。」

 

「どうして、追い出されたか?我が邪魔だったから?」

 

「ずっと同じ場所にいたのに今更そうするのかな?」

 

「…分からない。」

 

「そっか。大丈夫!これから分かっていこう?そうすれば、きっと良いことがあるよ!」

 

「…ポジティブ?」

 

「まあ、ポジティブ…なのかなぁ?私としては、前向きに考えないとどんどん思考の沼に沈んじゃうからこうしてるだけなんだけど。」

 

「そう。」

 

会話が途切れた。

オーフィスは関心のあることは熱心に聞いてくるけど何と無く分かるとそれ以降同じことを聞いてこなくなる。

それは学んでるから。

物事も、感情も。

だから、特に気にすることはない。

 

クルゼレイの時も、その時の関心がゲームに向いていたから投げ槍な対応だったんだ。

 

まだ、子供なんだ。

色々なことを周りから学んでいる子供。

 

もしかして、グレートレッドは…

いつか、聞けるなら聞こうと思う。

最強の片割れの真意を。

まだ自分の事も分かってないことがあるから…それが終われば。

 

もう全部が話し合いで解決するとは思わない。

今までも結局は戦ってた。

でも、出来るなら、話し合って解決したい。

 

うん、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、旧魔王派の奴と話したのか。」

 

「うん、あんな感じなの?」

 

「話したことがあまりないから、多くは知らないが…ほぼ全員がああして現魔王を恨んでいる。」

 

「そっか…」

 

ヴァーリがやってきて、何でか自分を膝の上に乗せながら話す。

…うん、まあ、諦めたよ。

頷く気はないけど、少し強引だし。

抵抗するのも疲れるし…

 

オーフィスはゲームを黙々とやってる。

隣でいーすんがここはこうするべきです、とかの指示を出してる。

結構相性が良さそう。

 

「あいつらとも穏便に、と思ってるのか?」

 

「おかしいかな。」

 

「俺はお前の理想をとやかく言わないさ。お前なら何やかんやでやり遂げると信じる。」

 

「…毎度思うけどさ、どうしてそんなに私の事評価してるの?」

 

「別に好きだからという訳じゃない事もないが…」

 

「どっちなのさ。」

 

「好きだ。

…お前は力としての強さ以外の別の強さを持っている。それを信じてるだけだ。」

 

今すごいど直球で告られたけど無視する。

無視するったら無視!

顔赤くなんてなってないんだからね!

 

「ヴァーリは、美猴達の事を大事な仲間だと思ってる?」

 

「…そうだな、あいつらと過ごす時間は嫌いじゃない。」

 

「素直じゃないんだね、そこは。」

 

「お前の場合は想いが止まらないだけだ。」

 

「ええ…」

 

もういいや。

そこはもういいや!

もう動揺しないよ、うん。

 

それに今は他の話題があるんだからね!

 

「というか、私を帰す気ある?」

 

「………………ある。」

 

「今の長い間は何!?」

 

「正直、帰したくないさ。だが、これ以上義母と義父に迷惑をかけるわけにもいかない。」

 

「しれっと結婚してるのやめない?」

 

「バレたか。」

 

「寧ろバレないと思ったその精神を私は疑いたいよ!」

 

何でこう、暴走列車かなぁ。

自分にそんな魅力があるようにも思えないし、自分よりも大切にしてあげれそうな人はいる筈なんだけどなぁ。

何がそんなにいいんだか。

 

まあ、ねぷ子さんは超絶美少女だから惹かれてしまうのも仕方無い…のかな?

 

「ネプテューヌは帰ったら何をするんだ。」

 

「え、何してたか話すのと、二人に抱きつくのと、一誠とあーちゃんに何か無かったかの確認を本人達含めてするのと…」

 

 

 

「─あの家で、皆でプリンが食べたいな。」

 

 

 

「…結局、そこか。」

 

「うん、それが私だしね!私らしいでしょ?」

 

「そうだな…お前らしい。ここ数日でやっと理解したよ。」

 

「主人公な私だからね、理解するのに数日を要するのは仕方無いというべきか遅いぞというべきか!」

 

「元気なことだ。」

 

「ねぷっ!?」

 

頭を撫でられる。

うむむ…一瞬驚いてしまった、これは負けた。

不意打ちはずるいと思うんだよね、自分。

 

でもなんだか心地いいので特別に、とーくーべーつーに!

少し好きにさせてあげようと思う。

ねぷ子さんは寛大なのだ。

 

「お前は、女神より人が似合う。」

 

「え?」

 

「どうして女神として戦うことを選んだ?人としての日常こそがお前の望みだろうに。」

 

核心をつくように言われた言葉。

驚いた、本当に理解されてる。

そんなに見られてたり?恥ずかしいなぁ。 

 

「その日常を守りたいから、じゃないかな。

せっかく女神っていう存在なんだしさ、皆を守れるなら戦うよ。

だってほら、ハッピーエンドは仲間が誰一人欠けないで迎えるからハッピーエンドなんだよ!」

 

「…俺には出来そうにない考えだ。」

 

「当然だよ!何故ならこれは主人公オブ主人公…つまり私の使命だからね!」

 

「そう言って誤魔化すのはどうかと思うが。」

 

「ご、誤魔化してないよー」

 

というわけで早く帰りたいなぁと思うのと、禍の団の事をもっと詳しく調べられないかなっていう二つの考えが拮抗してる自分。

…でも、オーフィスの事も放っておけないしね。

ここは少し我慢しよう。

 

クルゼレイの事や、他の禍の団のメンバー…もう少し調べよう。

 

思ったよりも複雑そうだし。

 

もしかしたら、味方…というか、改心させられるかもしれない。

無駄な戦いは避けるためにも、やれることをやろう!

 

「ヴァーリ、協力してくれる?」

 

「何をするんだ?」

 

「分かってる癖に~」

 

「ハッピーエンド、だったか?それのためか?」

 

「うん!」

 

「…ふぅ、惚れた弱みだな。分かった、俺に出来ることなら協力する。元々そういうつもりだったしな。俺の判断でいいか?」

 

「うん、信じてるよ!」

 

「信じてる、か…」

 

何だか煮え切らない、みたいな感じ?

どうかしたのかな…?

…でも、話したくないならいいや。

うん、もうヴァーリ達を信じてもいいよね!

 

こっちから信じないと、相手も信じてくれないもんね。

 

頑張るよ!えいえいおー!

 

「あ、オーフィスさん、そこはこのワザがユウコウです。」

 

「攻略本イストワール、ありがとう。」

 

「ナマエおかしくないですかΣ(゚ロ゚;)」

 

「気のせい。…あ、倒せた。余裕の勝利だった。」

 

「いえ、これまだダイイチケイタイですね。」

 

「…!?」

 

「ノコリのHPをかんがえると…ツミ、ですかね(>_<)」

 

「まだだ、まだ終わらんよ。」

 

仲良いなぁ、あの二人。

というか、オーフィス…アニメとか見てるせいでそっちに言葉がいってない?

 

少し心配になる、ねぷ子さんなのであった。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーション!!(起動音声)」

 

「始まったな。」

 

「はい、というわけで今回のゲストは?」

 

「白龍皇兼ネプテューヌとカップルのヴァーリだ。」

 

「はい違うからねー!

今回は三勢力会談から禍の団に連れ去られるまでの話だったね!」

 

「何だかんだで適応力が高いお陰で助かってたな。

旧魔王派のクルゼレイへの発言はどうなったか…」

 

「まあ、良い効果が出ると願って!次回予告!」

 

「俺と協力して禍の団をより知ることを選んだネプテューヌ。

そして、そんな矢先にある男が接触してくる。

ネプテューヌ、お前の心と行動でシリアスを粉砕してくれ。

 

次回、『冥次元ゲイムネプテューヌC─混沌へのコネクト─』」

 

「熱き闘志にチャージ・イン!」

 

 

 




今回でWILL BE VENUS編も終わりです。
色々とありましたが、次回から禍の団編。
主人公のネプテューヌならハッピーエンドに導ける筈!


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冥次元ゲイムネプテューヌC─混沌へのコネクト─
英雄目指して三千里、私は主人公ですけどね。


ねぷねぷしよ!(挨拶)

英雄って聞くと思い出すのがアナゴな男を思い出す私は病気。




やっほー!禍の団調査隊隊長のネプテューヌだよ!

 

ヴァーリ協力の元、禍の団を調査できるようになった自分。

でも、ガンガンいこうぜしてたら自分やいーすんだけじゃなくてヴァーリ達も危ない。

慎重な行動が大事だよね。

 

「いーすん。」

 

「はい?」

 

「正しいって何だろう?」

 

「むずかしいしつもんですね。」

 

「あ、ごめんね!変なこと聞いちゃって!」

 

「いいえ。ネプテューヌさんがせいちょうすることはとてもよろこばしいことです(^-^)」

 

「そうかな?」

 

「むかしのアナタは…すこし、きかいてきでしたから。」

 

「ええ?ちょっと想像できないかも。」

 

機械的な自分かぁ…

…え?でも、それだと…うーん…?

 

いや、そうだとしたら自分はなんでこの体に精神が引っ張られる?

そう思い込んでいる?

ネプテューヌとはそういう者なんだってなってる?

いや…それは違う筈。

そもそも、何かの事故でこの体に入ってしまった…筈だ。

 

そんな自分の新たな疑問を話してないから気付かないいーすんはさっきの正しさとは?という質問に対して自分なりの答えを返してくれた。

 

「ただしさとは、そのヒトのかちかんによるものであるとおもいます。」

 

「私からしたら正しいこと、他から見たら正しくないこともあるってこと?」

 

「ギャクもまたシカりですね。ですが…わたしはネプテューヌさんのコウドウはただしいとおもいますよ。」

 

「いーすん…」

 

正しいに絶対はない。

そっか、考えてみればそれが普通だよね。

 

…いーすんには、話した方がいいのかな?

昔の自分とはどうして違うのか…その理由が自分が入り込んだ事が原因だとしたら。

 

「いーすん、あのね…!」

 

「はい。」

 

「その…」

 

「…ネプテューヌさん、おちついて。シンコキュウですよ。」

 

「う、うん。」

 

言われた通りに、深呼吸を二、三回繰り返す。

 

落ち着いてきた。

少し、怖いけど…でも。

 

「いーすん、聞いて欲しいことがあってね──」

 

いーすんには全部を知ってもらいたい。

相棒とも呼べる仲のいーすんだからこそ、話したいと思った。

話した、自分はネプテューヌの体に入り込んだ別の魂であることを。

そのせいで記憶がないのかもしれないことを。

黙ってたことを謝りながら話した。

 

いーすんは最初、驚いた様子だったけど、得心したように聞いていた。

そこに、怒りとかの感情は見えなかった。

 

「…なるほど。」

 

「ごめん、黙ってて。」

 

「あやまることではありません。…もしかしたら、メガミさまのタマシイは…あのときすでに…」

 

「え…」

 

「だとしても、イマのネプテューヌさんがきにすることでもありません。それに…わたしは、イマここにいるアナタをしんじているのです。」

 

「いーすん…!」

 

少し恥ずかしそうに言ういーすんに嬉しくなる。

よかった、話して。

こうして、秘密にしていたことを話すと心が楽になる。

 

「あまり、むかしのことはきになさらぬように。」

 

「どうして?今後の私のためにも大事なことだよ?」

 

「アナタはあのメガミさまとはまた違うメガミなのです。

みなさんとテをとりあうミチをえらんだアナタならばセイショのカミのヨソウすらこえられる…そうおもうのです。」

 

聖書の神…自分達からしたら、本当の親みたいな存在だよね。

でも、面識ないからなぁ。

 

困ったもんだね。

 

「うん、皆との絆があればどんな困難だって乗り越えられるよね!」

 

「キズナのチカラ…それがどのようなキセキをうむのか、しっかりとキロクさせていただきます(`・д・´)」

 

やる気十分といった様子のいーすんに、何だか元気づけて貰ってるようで微笑ましい。

…うん、お父さんとお母さんに話そう。

受け入れてくれるかは分からないけど、それでも。

 

「ありがとね、いーすん。」

 

「…はい。」

 

勇気をくれたんだよ、いーすん。

やっと話そうと思えたんだ。

大事なことにようやく決心がついた。

女神とか、そういうのよりも大切なこと。

 

家族にこんなこと秘密にしてるなんて…よくないもんね!

 

不意に、扉をノックする音がする。

 

あ、ヴァーリだね。

ノックする人ヴァーリしかいないもん。

 

「どうぞー!」

 

「失礼する。」

 

「ヴァーリ、おはよう!」

 

「ヴァーリさん、おはようございます(^∇^)」

 

「ああ、おはよう。さて、まずはここの内部を把握するところから始めようと思うが…大丈夫か?」

 

「マッピングだね!RPGの基本中の基本だからね、ねぷ子さん得意だよ!」

 

「ふっ、そうか。ネプテューヌ、そんな装備で大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない!(キリッ」

 

はっ、乗っかってしまった。

やりおるわ…!

まさか、このねぷ子さんがネタに乗ってしまうとは…

 

少し悔しく思いながらもヴァーリについていく。

 

いーすんに細かいところを記録してもらって、自分は大まかに把握する。

 

「要注意人物っていないの?」

 

「関わりづらいという事ならいるな。」

 

「例えば?」

 

「そうだな…む。」

 

「ねぷっ。急に立ち止まらないでよ~!」

 

ヴァーリが要注意人物について話そうとして、ストップする。

どうしたんだろう?

顔を背中にぶつけて痛いけど、前方確認!

ヴァーリの背中からちらりと覗く。

 

漢服を着た青年がそこにいた。

 

「ヴァーリか。誰かを連れて歩くなんて珍しいな。」

 

「対して接点もないお前に言われてもな。…ここで何をしている?」

 

「訓練終わりの羽伸ばしだ。」

 

「そうか。…ネプテューヌ、こいつが要注意人物の一人だ。」

 

「え、そうなの?」

 

「…どういう話だ?」

 

でも、そんなに危険そうには見えないけど…

内面ヤバイ系?

良くあるし、警戒しとこう!

 

「小さい女の子じゃないか。無闇に連れ回すのは感心しないぞ。」

 

「18歳でその事を気にしてるから言うんじゃない。」

 

「いいもんね、どうせ成長しない女神ですよーだ。ふんだ!」

 

「それは…非礼を詫びるよ、すまなかった。」

 

「…そんなに怒ってないよー!まあ、取りあえず会ったからには自己紹介だね!私はネプテューヌ!主人公で女神やってるよ!」

 

「…女神?というと、君が…?」

 

「うん、連れ去られちゃった系の美少女ヒロインだね!」

 

「な、なるほど…中々濃いな。俺は曹操、英雄派のリーダーをしている。」

 

「曹操って…えーっと…」

 

英雄派っていうのも気になるけど…

曹操って聞いたことあるなぁ。

何だっけ?

 

「チュウゴクのえいゆうのなまえですよ、ネプテューヌさん。」

 

「あ!そうだ!思い出した!」

 

「流石に知ってたか。」

 

「うん!何したかは知らないけど!」

 

「そ、それは仕方無い。歴史に興味がなければ触れることもないからな。ところで、そこの小さい方は?」

 

「もうしおくれました、イストワールです。ネプテューヌさんのホサとでもおもっていただければ。」

 

「ネプテューヌにイストワールだな。…ふむ、それにしても女神か。」

 

「お、何々?早速私に興味津々?」

 

「まあ、多少はある。」

 

「なら、お話だね!」

 

禍の団に所属してるってことで何かあるんだろうけど話さないと分かるものも分からないよね。

ねぷ子さんのコミュニケーションからは逃れられないよ!

一部の融通の利かない人を除くけど。

 

「ここで話すのもあれだし、私の部屋に戻ろう!」

 

「いいのか?」

 

「いいのいいの!ほらほら、曹操もこっちこっち!」

 

「あ、ああ…」

 

腕を掴んで引っ張る。

時間は有意義に使おう!

 

ということでさっさと自分の部屋へと戻った。

 

紅茶を出して、向かい合う形で座る。

 

「それで、英雄派って何が目的なの?」

 

「人の身でどこまで高みへ行けるか…その為に人でない者に挑む。

英雄になりたいのさ。」

 

「どうして?」

 

「悪魔やドラゴンを滅ぼすのはいつだって人間だからだ。

この世で、人間としてどこまで戦えるのか…それが俺達の目的だ。」

 

よく分からない、というのが感想だった。

人として、どこまで行けるか…強さを求めてるって事かな。

分からない。やっぱり分からない。

 

とても嫌な予感がする。

 

「ねえ、曹操。それはこういう組織じゃなきゃ出来ない?」

 

「俺達は戦いたいんだ。俺達の人間の力を試したい。」

 

「おい、曹操…」

 

「それは、どうやってやるの?」

 

「ふむ…まあ、誘いに乗ってくれるならそれがいいが。

駄目なら…そうだな、襲撃か。」

 

「その人の事や、周りの事は考えないで?」

 

「そうなる。」

 

ああやっぱりと思った。

曹操だけかもしれないけど、興味がないんだ。

戦いたいっていう欲望を叶えたいだけで、周りなんてどうでもいいんだ。

だから、周りの事だって巻き込める。

 

そうだよね、そういう場所だもんね。

ヴァーリや黒歌、美猴やクルゼレイは話が通じたけど他もそうとは限らなかった。

 

シェアを使って刀を出そうとする。

 

「やめろ、ネプテューヌ。」

 

「…ヴァーリ?」

 

出そうとして、ヴァーリに腕を掴まれて止められる。

 

「やめるんだ。」

 

「どうして止めるの?悪いことはやめさせないと!」

 

「だからといって力で抑えようとしてどうする?お前は何がしたくてここに留まると決めたんだ。」

 

「っ…!」

 

「…君は俺達に否定的なようだが、君の理想はなんだ?」

 

落ち着く。

曹操の言葉を聞いた上で落ち着かないと。

ヴァーリが止めてくれなかったら…勝ち負け関係無く、自分は力に頼る所だった。

 

目の前が本当に見えない時…コカビエルの時も合わせて二回目だ。

止めてもらってよかった。

 

「女神として、人々を守る。そして、ハッピーエンドを目指す!」

 

「…人々を守る、か。そうだな、なら…俺の仲間を見て、話を聞けば分かってくれるかもしれないな。」

 

「テロ行為を許す気はないよ!」

 

「ふっ。」

 

そう言っても曹操の心には響いてないようで笑われる。

…でも、そうだ。

他のメンバーはどうなんだろう。

もしかしたら、心の内に不満を秘めてる人がいるかもしれない。

 

なら…!

 

「…分かった、会わせてよ。」

 

「そう言って貰えると思ったよ。早速行こうじゃないか。」

 

「うん。」

 

「俺も行こう、構わないな?」

 

「わたしもいきます。」

 

「好きにするといい。」

 

曹操は先に部屋を出る。

 

少し、冷静になろう。

深呼吸深呼吸。

きっと、何とかなる。

自分だけじゃないんだ、味方は。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん…ありがとう、ヴァーリ。」

 

「お前が怒り狂う姿が見たくないだけだ。落ち着いたなら行くぞ。」

 

「…それでも、ありがとね。」

 

「…ああ。」

 

ヴァーリに感謝した後、三人で曹操の後に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曹操に連れられて、着いた場所。

そこは広い一室だった。

大勢の人が入るための部屋…英雄派が勢揃いってことかな。

 

曹操が扉を開けて、どうぞと入れてくれる。

 

入った先には、何人かの人間がいた。

 

金髪ツインテールの女性とか、2mはありそうな巨漢とか、何かフリードを思い出すような男性とか、眼鏡かけた如何にも後衛ですみたいな男の人とか、無表情の子供とか、ブラウンの髪をした男性とか…居るなぁ、結構。

 

「戻ったか、曹操。…ヴァーリ、とそいつらは?」

 

「彼女達はネプテューヌとイストワール…ヴァーリに連れ去られた女神達だ。」

 

「ふぅん、まあいいけど…」

 

「ネプテューヌさん、ぜんいんがニンゲンです。

セイクリッドギアのはんのうもケンチしました。」

 

「やっぱり。」

 

「全員、表の者から弾かれた存在だ。」

 

「セイクリッドギアがげんいんでツイホウされた…そういうことですか?」

 

「他にも理由はあるが、大抵はそうだ。」

 

「そういった人達を拾って、英雄派を立ち上げたってことなんだね。」

 

「ああ。全員、俺に賛同してくれている。」

 

「…。」

 

ん?あのブラウンの髪の人…今、賛同って言葉にピクッと反応したような…後で話してみよう。

そう思ってると、巨漢の人がこっちまで来る。

 

わ、わぁ、おっきいね…身長低いから困っちゃうよ。

 

「こんなちっぽけなガキが女神?おいおい、どういうこった。」

 

「可愛いようだけど、何のためにここに来たのよ。」

 

「英雄派に入りたいとかかもしれない。あまり刺激しない方がいい。」

 

「ちっぽけで悪かったね!後、英雄派には入らないよ!」

 

「…なら、尚更何故連れてきた、曹操。」

 

「彼女は俺達に否定的でな、そこで全員の事情を知って貰った方がいいかと思っただけだ。」

 

「…まずはメンバーを紹介したらどうだ?」

 

「ああ、そうだったな。」

 

眼鏡をかけた男の人が呆れた様子で言った後、本を読むのを再開する。

メンバーを紹介するために仲間の前まで歩く曹操。

 

「この巨漢はヘラクレス。あの大英雄の魂を継ぐものだ。」

 

「俺の祖よりも強くなってみせらぁ。」

 

「金髪の彼女の名前はジャンヌ・ダルク。聖女の魂を継ぐものだ。」

 

「よろしくする気はないけど、まあ覚えておいてよ。」

 

「そこの眼鏡をかけた彼はゲオルグ。悪魔メフィストと契約した男の子孫だ。」

 

「…ああ。」

 

「そこの子供はレオナルド。殆ど喋らないが、よろしくしてやってくれ。」

 

「…」

 

「彼はペルセウス。英雄ペルセウスの魂を受け継ぐ男だ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「そして、白髪の彼はジークフリート。英雄シグルドの末裔だ。」

 

「よろしく頼むよ。」

 

ここにいないメンバーも居るが、仕方無いという言葉を聞いてまだいるんだと思った。

ジークフリート…ジークでいっか。

ジークが話しかけてくる。

 

「君は僕達に否定的だそうだけど、何故か聞いてもいいかな。」

 

「周りの人を巻き込んで、迷惑をかけるテロ行為を肯定しろっていうの?私には無理だよ。」

 

「人の高みを目指すことは駄目なのかい?」

 

「やり方が間違ってると思わないの?」

 

「強さを証明するなら、これが手っ取り早い。」

 

「…おかしいよ、そんなの。」

 

「おいおい、俺達のリーダーに賛同しないのに批判しに来ただけか?」

 

「見た目相応にお馬鹿なのかしらね。」

 

「ネプテューヌさんをバカにするのはゆるしませんよ。」

 

自分の前にいーすんが出てくる。

それはヘラクレスの前に出ることであり、比べるのも馬鹿馬鹿しいほどのサイズ差だ。

 

「テロをおこなうこと…それがエイユウのタマシイをつぐものたちのまつろならば、これほどかなしいことはありませんね。」

 

「んだと?」

 

「かつてギリシャのカミにふりまわされたヘラクレス…アナタはじしんのヨクボウにすらふりまわされるほど、おちましたか。」

 

「テメェ…黙って聞いてりゃ!」

 

「おい。」

 

殺気。

誰からなんて考えるまでもない。

ヴァーリからの殺気。

 

いつの間にか、ヘラクレスの振り上げた腕を掴んだヴァーリがそこにいた。

自分に向ける笑みを消して、殺意だけを乗せて。

 

「論破されたら手を出すのが英雄のやり方か。」

 

「離しやがれよ白龍皇。まさかこいつらのどっちかに惚れたなんてことはねぇだろ?」

 

「そのまさかだ。罵詈雑言ならばネプテューヌも聞く覚悟はある。当然、戦う覚悟もあるだろうが…話し合う前に力に走るのなら容赦はしないぞ。」

 

「ヴァーリ…!」

 

「…チッ!」

 

ヘラクレスが強引に腕を払う。

ヴァーリは手を離して自分の隣まで戻ってくる。

…何だか、とても頼もしい。

 

今の殺気は、守ろうって事だったのかな…?

でも、折角作ってくれたチャンス…ここは切りだそう!

 

「ねえ、聞かせて欲しいな。皆がどうして英雄派になったのか。」

 

そうして、英雄派全員が顔を見合わせる。

曹操の話してやれといった様子に面倒そうに、けれど従う様子で皆一様に話を聞かせてくれた。

 

神器を手に入れて迫害された、売り飛ばされそうになった、実験台にされた…

酷い内容も多くあった。

中にはそういったこともなかった人もいたけど…

でも、最後には皆こう言うんだ。

 

曹操が自分達を引っ張ってくれた。

 

そう言う皆は曹操を信頼しているようだった。

確かに、カリスマっていうのはあるみたい。

…だとしても。

 

自分が、欲望のためにテロ行為をすることを許すことにはならない。

人の味方、守護女神として…それもあるけど普通に考えて、やっちゃ駄目だって分かる筈なんだ。

目的に盲目になり過ぎているんだと思う。

 

そんなことをして、英雄になれるの?

 

「…皆がどうして曹操についていくのかは分かったよ。」

 

「そうか、それはよかったよ。なら…」

 

「でもそれは、テロを容認する事とは別だよ!

そんなのは、英雄なんかじゃない!ただの悪党だよ!」

 

「…!」

 

「英雄って誰かを泣かせてなるのがそうなの?物語とか、そういうのを見たりしたんじゃないの?例え誰かを倒したとしても、誰かを救えたから英雄になるんじゃないの?この中の誰でもない誰かが胸を張ってあの人は自分にとってのヒーローだって言える存在が英雄なんじゃないかな!」

 

「誰かを…救う。」

 

ペルセウスの声が聞こえた。

そうだよ、だって…その行いが誰かにとって正しくないものだとしてもきっと救われている人が何人かはいる筈なんだよ。

 

「曹操はもう、英雄なんだよ?」

 

「…俺が?」

 

自分にそう言われて反応が遅れる曹操に畳み掛ける。

 

「だって…この中の誰かを、それ以外の誰かも救ったじゃん!

ありがとうの言葉を聞いたんでしょ?その行動に思惑があったのかもしれないよ。でも、それでもありがとうって言われたんでしょ?なら、それは英雄なんじゃないの?」

 

「俺が、英雄…?」

 

「それでも、人も救わないで悲しみだけを生むのが英雄だって言うのなら…!」

 

女神化をして、刀を創る。

そして、それを曹操へと向ける。

 

「それでも、貴方が誰かを傷付けるだけの悪へと変わるのなら…

私は守護女神として戦うわ。」

 

「姿が…!」

 

「…なら、俺は、何だったんだ。」

 

「曹操?」

 

「俺のやろうとしていたことは何だ?ハハ、馬鹿みたいじゃないか。俺はもう英雄だった?それに気付かずに…俺は何をしようとしていた…!」

 

自分の言葉が心には大なり小なり響いたのか、曹操は悩むような発言をしている。

…もうこれ以上言っても効果はないね。

 

「貴方達が本当に仲間を想うのなら…今までの価値観を置いて、話してみなさい。偉そうなことを言ってるとは思うけど…本当の過ちを犯す前に。」

 

『…。』

 

皆、曹操に困惑しているようだ。

でも、そこから踏み出さないといけない。

…だから、ここまでが自分の出来る範囲。

必死に言葉をぶつけて、気付いて貰える部分まで心を出すまでが…自分の出来る最低限。

こういう悩みを一発で解決できる力があるならどれだけいいんだろうって常々思う。

でも、これは英雄派っていう1つの組織が解決しなきゃいけない問題なんだ。

 

「行きましょう、二人とも。」

 

「ああ。」

 

「わかりました。」

 

ここにいたら雰囲気が悪くなるだけだから退室する。

 

そして、部屋に戻ろうと伝えるとそれがいいだろうってヴァーリが言ってくれた。

いーすんも怖かったかもしれないし…あまり負担のかかることはさせたくない。

 

そうして、部屋に戻ろうと歩き出すと…

 

 

 

「待ってくれ!」

 

「…貴方は確か…」

 

呼び止められて、振り返る。

 

そこに立っていたのはペルセウスだった。

 

「ペルセウス、だったわよね。気に障ったのなら謝るわ。」

 

「いや、いいんだ。むしろ、感謝したいくらいだった…」

 

「どういうこと?」

 

「…前々から、どんどんと過激になる曹操達についていけなくなってきた自分がいた。だから、やめようと言おうと思って…言い出せなかった。人体実験までしていたアイツに、俺は…!」

 

「…誰でも、勇気を出せる訳じゃないわ。それが友達相手なら、尚更よ。」

 

「それでも…貴女は言ってくれた…ありがとう…!

この機会を逃さないよう、皆と話したいと思う。」

 

「お礼なんていいのよ。私は…家族を、皆を守りたいだけだから。

それに、私と話すよりも大事なことがあるんでしょう?」

 

「ああ…けれど、礼を言いたかった。貴女の言葉を無駄にしない。」

 

そう言って、ペルセウスは戻っていった。

 

…そっか、やっぱりやめようって思ってくれてた人はいたんだね。

ただ、勇気が出せなかっただけ。

それを自分がそれを引き出せたなら、嬉しいよ。

 

そう思って自然と微笑む。

 

突然ヴァーリに撫でられる。

 

「少し空気を読んで欲しいのだけど?」

 

「我慢できなかった。反省はしてないし後悔もしていない。

むしろ今、スッとしている。」

 

「…今回はいいわ、助けられたもの。」

 

「そうか。」

 

「ネプテューヌさん、おつかれさまです。だいじょうぶですか?」

 

「いーすんこそ、怖かったでしょう?」

 

「いえ、メガミさまのためですから…」

 

そういう会話をしながら、部屋に戻った。

きっと、明日にはいい結果になるといいなと思いながら。

 

ヴァーリに女神の姿の自分の頭を撫でさせて欲しいと言われて仕方なく許したけど…女神化って疲れるんだよね。

うーん、もしかして自分も絆されてきてたり?

簡単に攻略されたら何か負けた気がするし、少し気張ってみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、翌日になったんだけど…

 

「女神様、是非俺を女神様の騎士にしてほしい!」

 

「…えっと。」

 

曹操が急に部屋に来て土下座してきた。

 

ごめん、何がどうしてそうなったのか分からないんだけど…

これ、どうしたらいいの?

何か最近超展開だよ~!?




間違いがあっても仕方無い、人間だもの ねぷを

あっさりと解決した?英雄派との対話。
でも、何やかんやでピシッと指摘したらやりすぎる前なら何とか改心はしそう。

でも、ねぷ子さんに言われたら改心するしかない。
誰だってそうなる、私だってそうなる。


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仲間が増えたよ!やったねネプテューヌ!

ねぷねぷしろ!(挨拶)

英雄派、いったいどうしたというんだ…(親父ぃ)


始まりはあの槍を手にしてからだった。

 

貧相な村の生まれで、なにがあるわけでもない。

けれど、ある日化け物に襲われ、無意識の内に力を欲した。

それが神器と呼ばれる物だと知るのはかなり後の事だった。

化け物を簡単に倒せた俺は自慢しようと思い、親に話した。

それがいけなかったのだろう。

対して愛情も無かった親は俺を裏の者に金と交換で引き渡そうとした。

 

それで、ちょっと家出をした。

自分には何か才能があるのではないかと、昔から見上げた山を登った。

その山を登りきった時、拍子抜けだったがそこから見える景色は今でも一番綺麗だと思える。

 

そこから、この山を登ったように自分はどこまで人としてやれるのかを試したくなった。

家には、帰ることはなかった。

 

学んだ、学べることを自然から、人から、歴史から学んだ。

そして、学び、調べる内に自分が曹操という英雄の子孫ということを知った。

 

もしかしたら、他の英雄の子孫もいるかもしれない。

 

共に高みを目指す仲間を探すことにした。

そうして、俺は何人もの英雄の子孫、魂を継ぐものを見つけた。

中には虐げられていた者もいたが、助けた。

 

皆、俺について来てくれた。

憧れのような目を向けながら。

 

何回か異形の者と戦う内に仲間を失ったこともある。

人間はやはり弱い生き物だ。

だから、最大限の対策をしないといけない…そう思った。

 

皆、俺について来てくれた。

闘志を宿しながら。

 

信頼を利用するかのように実験台にしたりもした。

そのお陰で新たな発見がいくつもあった。

進んで実験台になる者もいた。

躊躇わなかった。

そうして異形の者を倒して、まだ強いものがいることを知った。

それらと戦うならテロリストになるのが早いと思った。

今思えば…調子に乗っていたのだと思う。

仲間の全員が賛同してくれたから。

 

皆、俺について来てくれた。

どこか恐ろしいものを見るような目を向ける者がいた。

 

そうして、俺は外道へと堕ちていく…筈だった。

 

『曹操はもう、英雄なんだよ?』

 

諭してくれた。

正しくない、それは間違っているとはっきりと言ってくれた。

英雄になる…その目標から遠ざかっていく俺を、俺達を止めてくれた。

方向を示してくれた。

 

叱咤された友が言葉をくれた。

 

『曹操…あの方の言う通りだ。俺達は道を間違えてしまった。

けれど…罪を償うことはできる。』

 

『…ペルセウス。』

 

『皆もだ。愚かな行為の犠牲者である仲間に許して貰えるその日まで…償いをしなくてはならない。』

 

『けれど、ペルセウス…僕達は何をすれば。』

 

『分からない。だが、この罪から逃げることだけはしちゃいけない。外道にだけはなってはいけない。』

 

そこから、皆で悩んだ。

戦って、強さを証明する。

それが俺達の今までだった。

だから、どう償えばいいか分からないのは必然だった。

 

それが正しいと全員で思っていたからだ。

 

だから、必死に考えた。

何が正しくて、何が間違っているのか。

頭のいいゲオルグも答えを見つけられない。

 

…けれど、1つだけ思い付いた。

 

『恩返しだ。』

 

『恩返しって…あの女神に?』

 

『道を踏み外した俺達を戻そうとしてくれた。

皆、話し合って間違いを自覚した、そうだろう?

なら、俺達は彼女を、あの人に返しきれない程の恩義がある。』

 

『…俺は賛成だぜ。』

 

『ヘラクレス。』

 

『アイツは俺に怯まず、言葉を叩き込んだ。ただ真っ直ぐで優しさを感じる言葉をよ。…俺は俺の目を覚まさせてくれた奴に恩を返してぇ。』

 

ヘラクレスの言葉を皮切りに皆が賛同する。

本当に間違っていたのか、まだ分からない者もいる。

けれど、あの人は俺達を力でなく言葉を用いた。

誰にでも出来ることじゃない。

 

『いつか、許される日まで。』

 

気高い精神を感じた。

それを信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

や、やっほー。

何かダイナミック土下座をかまして騎士にして欲しい発言にどうすればいいか分からないネプテューヌだよ。

 

「え、どうしてそうなったの?」

 

「俺達は間違えた。その償いをしようにも…恥ずかしながら何をすべきか分からない。だから…だから、まずは貴女に恩を返したい。」

 

「いやいや、私そういうことをしてほしくてしたんじゃ…」

 

─ネプテューヌさん。

 

珍しく本の状態のいーすんから話し掛けられる。

 

─彼らの為にもこの話を受けてもいいと思います。

 

(どういうこと?)

 

─どうすればいいか分からない状態の彼らを導けるのは現状では貴女しかいません。最後まで面倒を見るのも大事だと思いますよ?

 

そう言われるとそれもそうかと思ってしまう。

確かに、言うだけ言って後はそっちでなんて都合が良すぎるよね。

 

…何をするのが償いになるのか分からないのは、仕方無いよね。

 

「うん、分かった!」

 

「本当ですか!」

 

「うん!でも、恩返しの中で何が償いに繋がるのかを見つけたらそっちを優先して欲しいな。後、敬語禁止!普通にネプテューヌって呼んで欲しいな。」

 

「…分かった。ありがとう、ネプテューヌ。」

 

「よろしい!」

 

協力者が増えたってことでいいのかな。

だとしたら、動きやすく…あ、なら。

 

「ねえねえ、英雄派の皆はオーフィスをどう思ってる?」

 

「オーフィス?いずれ超えようと思ってた相手だが…いや、今はそういうつもりはない。となると、何を考えているか分からないといったところか。」

 

「やっぱり?オーフィスって表情動かないから分かりにくいよね。」

 

「それで、オーフィスがどうかしたのか?」

 

「最近良くここで遊んでるんだけど私も帰らないといけないから。だから…」

 

「利用されないように守る、ということか。」

 

「うん、お願いしていい?」

 

「それぐらいなら、ジャンヌとゲオルグ、ヘラクレスの三人…いや、レオナルドも一緒に居させよう。」

 

「レオナルドって、あの男の子だよね?」

 

自分の質問に曹操は頷く。

 

「ああ。感情に乏しい者同士、気が合う事もあるだろう。

それに…きっと成長する筈だ。」

 

「精神的にってこと?」

 

「ああ。幼いのもあるが、神器のせいで何処かの組織に実験台にされていたのが大きいだろう。」

 

「実験台…!?どんな神器なの?」

 

魔獣創造(アナイアレーション・メーカー)。魔獣を造り出すことが出来る神器だ。本人が制御できていればとてつもない魔獣を造り出すことすら可能だろう。だが…」

 

「制御出来ていないんだね。」

 

「ああ…精神的な幼さ故だろう。だから、ここはオーフィスと共に成長して欲しいと思うよ。」

 

…本来の曹操はこういう優しさがあるんだね。

うん、憑き物が落ちた感じもするしいい感じだね。

 

そのレオナルドって子ともいつか話してみたいな。

今は難しいかもしれないけど…

うん、でもこれでオーフィスの事は心配要らないね。

皆強いらしいし!自分よりよっぽど強いと思うよ。

 

─ネプテューヌさんの強さは力だけでは語れませんがね。

 

(ま、主人公だからね。私ほどになると口と精神こそが武器になっちゃう的な!)

 

「そうだ!昨日はあれだったからさ…」

 

「ん?」

 

「皆で遊ぼうよ、一回!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲオルグ、このゲーム…やったことがあるな!?」

 

「経験者…とでも言っておこうか。」

 

「恐ろしく早い指さばき…僕でなければ見逃しちゃうね。」

 

はい、やっぱりゲームだね。

 

親睦を深めるために自分の部屋で色々なゲームをして遊んでるよ!

ゲオルグがレースゲームで無双してヘラクレスとジークが慣れない感じでプレイしてるね。

ちなみに…

 

「ああ、窓に、窓に!」

 

「匂い立つなぁ…」

 

「SANチェック失敗しての発狂ロールプレイに磨きがかかるな。」

 

「3ターンほどでいいですよ。」

 

こんな風に自分から深淵を覗きに行く人もいるね。

いーすんがGMしてるけど生き生きとしてるね。

自分もしたことあるけど、シナリオ温めておいたのかな?

 

ちなみに、レオナルドはというと…

 

「2マス進んで…あ、お金が増えるね!」

 

「我よりも金持ち…レオナルドのターン。」

 

「…。」

 

「おお、6マス!?さっきから運がいいね…あ、家族が増えるね。

はい、この車にもう一人乗せようね。」

 

「…うん。」

 

自分とオーフィスと一緒にボードゲームをしてるよ。

オーフィスも途中から来て、ボードゲームに切り替えたんだよね。

ちなみにそれまではポーカーしてたよ。

勝てなかったよ!

 

他の皆ともゲームしてたんだけどね。

やっぱりこっちの方が心配だったから。

 

仲が良さそうなオーフィスとレオナルド。

相性がいいのかもね。

 

「レオナルド、楽しい?」

 

「…。」

 

静かに頷くレオナルド。

 

うん、よかった。

感情に乏しいっていうけど…環境が必要だったんだ。

何が楽しいのかを分からなかったんだ。

 

頭を撫でる。

魔獣創造、いーすんの話だと神滅具の1つ。

それを宿したから酷い目に遭った。

一誠も、似たようなもんだよね。

神器は…人を不幸にするのかな。

 

「レオナルドは、魔獣創造が嫌い?」

 

「…?」

 

「分かんないか~。仕方無いね!」

 

「レオナルド、無口。」

 

「多分、話すことを知らないんだと思うよ。」

 

「知らない?」

 

「実験台にされて、曹操達に助けられて…でも、そのまま。

だから、まだ成長をしてないんじゃないかな。」

 

「…なら、これから育つ?」

 

「どうだろうね?でもね、レオナルド。」

 

「…。」

 

自分よりも小さなレオナルドは少し見上げるように顔を動かす。

じっと見てくる目は言葉を待っているよう。

 

「きっと、その魔獣創造は誰かを助ける力になると思うんだ。

だから…誰かを守ってあげてね。ねぷ子さんとの約束、出来るかな?」

 

「……うん。」

 

少し考え込んだ後、しっかりと返事をした。

 

うん、言葉を理解してると思う。

いい子だから頭を撫でる。

うんうん、何だか無口な弟みたいな?

 

曹操曰く、何人か自分についてきたいらしい。

正直、頼もしいと思う。

 

「…ネプテューヌ?」

 

「オーフィス、もう無闇に蛇を渡しちゃ駄目だよ?」

 

「…ん、我、学んだ。蛇で手にいれる力は一時的な物。

ネプテューヌの特訓を通じて学んだ。」

 

「じゃあ、もう大丈夫かな。」

 

本当はもう少し居たかったんだけど…

ちょっと大所帯になっちゃうから警戒されちゃうよね。

打ち切りかな。

 

名残惜しいっていうのは拐われた所から始まったにしてはおかしいけど…でも、大事な日々だったよね。

 

「ごめん、ちょっと外出るね。」

 

オーフィスとレオナルドが頷く。

 

何となく、察したから扉を開けて部屋を出る。

 

「…昨日の今日だが、探索は終いでいいのか?」

 

ヴァーリが壁に背を預けていた。

待っていたといわんばかりに。

入ってくればいいのに、変なところでキザったらしい。

 

「ごめんね、私が言い出したのに。」

 

「構わないさ。そういうドタバタしたところもお前らしい。」

 

「そうかな~…そうかも!」

 

「丸く収まるならそれでいい。それに、黒歌の事もあるからな。」

 

「うん、そこは頑張るよ。」

 

「ならいい。」

 

でも、その前に。

確かめないといけないことがあるよね。

 

「この為だったんだね。」

 

「何がだ?」

 

「ヴァーリが私をここに拐ってきた理由。

オーフィスの為だったんでしょ?」

 

「なぜそう思った?」

 

「ヴァーリは優しいからね。利用されるだけのオーフィスが可哀想だった。だから、私を連れてきた…みたいな?」

 

「締まらないな…だが、概ねその通りだ。」

 

オーフィスが心配だったから…だから自分を連れ去った。

何で自分かは分からないけど…それでも、ヴァーリの考えに自分から乗ったようなもんだしね。

 

「お前に任せてよかった。英雄派とも和解するのは予想外だったが…」

 

「何で私だったの?」

 

「何となくだ。惚れたのもあるが…お前なら出来るんじゃないかと思っただけだ。」

 

「拐われる私の身にもなって欲しいよ。」

 

「…悪かった。」

 

謝罪してくるヴァーリを意外に思ったけど…出会いもあったしいいかな!仲間も増えたしね!

 

「帰して貰えるんだよね?」

 

「ああ、自宅に直接とはいかないがな。」

 

「そうなの?」

 

「ああ、冥界に向かう。そこでグレモリーに拾って貰うといい。」

 

「冥界に?」

 

「ああ、何でも次期当主となる貴族悪魔達の集まりがあるらしい。」

 

「そっか、なら仕方無いね!」

 

「…よく信じるな?」

 

「ヴァーリはこんなことで嘘つかないよ。そうでしょ?」

 

「ふっ…お見通しか。」

 

「流石にこれくらいは分かるよ!」

 

この数日で分かったことがいっぱいある。

それはリアスちゃん達の側にいたら分からなかったこと。

何も知らずに倒すだけだったかもしれない所をこうして連れてきてくれた。

今はそれに感謝してるくらいなんだよ、ヴァーリ。

 

…まあ、言わないけどね。

言ったらまた何かされそうだし!

 

「すぐ行くの?」

 

「黒歌がうるさくてな。」

 

「そっかぁ…まあ、持ち帰る物とかは特にないし、いいかな!」

 

「なら、イストワールや他の連中に伝えてくるといい。」

 

「うん、少し大人数かもしれないけど…いいよね?」

 

「あまり大事にはしたくないが…仕方無い。」

 

「ありがと、ヴァーリ!」

 

「よせ、叫びたくなる。」

 

「分かったやめる。」

 

叫ばれたら迷惑だし…それにしても、黒歌が急かすのも仕方無いよね。大切な妹に会うチャンスだし…

でも、白音ちゃんの方はどうなんだろう。

 

はぐれ悪魔扱いされてる黒歌の事を…知ってるのかな。

 

まあ、そこは行ってからだよね。

 

「じゃあ、ちょっと皆に言ってくるね!」

 

「ああ。」

 

部屋に戻る。

いーすんが楽しそうにGMしてるけどプレイヤーのペルセウスと曹操がもう許してくれって言ってるところを見るに地雷踏んだね。

ジャンヌは落ちたかな?

 

「皆、ちょっといい?」

 

自分の一言に、皆がこっちを向く。

 

「今日で私はここから出ていくことになったんだ。」

 

「…ネプテューヌ、帰る?」

 

「うん、お母さん達が心配だしね。」

 

「そう…寂しくなる。」

 

「ゲームは置いていくから楽しんでね。」

 

「ネプテューヌ、俺達もついていっていいのか?」

 

「うん、ヴァーリに頼んでおいたよ!でも、私の家にはちょっと…」

 

「そこはいいんだが…そうか。

ジャンヌ、ヘラクレス、ゲオルグ、レオナルドの四名は先程話した通りここで待機だ。」

 

「おう、任せてくれ!」

 

「こっちはこっちでやるわ。」

 

「…まあ、守りや世話は心配するな。」

 

「…。」

 

「その他はネプテューヌとヴァーリ達と同行する。異論はないか?」

 

「ああ、無いよ。」

 

「同じく。」

 

「よし。…俺達は準備万端だ。」

 

「うん!」

 

英雄派の皆も味方になると頼もしく見えるね。

オーフィスの護衛も大丈夫そうだし。

いざとなったらってのもあるし。

勿論、殺傷禁止だよ!

 

「いーすんは平気?」

 

「ええ、つづきはだつらくしたジャンヌさんぬきになりますが…」

 

「最後まで見れないの悔しいんだけど!」

 

「諦めるんだな。俺も最後までいけないかもと諦めてる。」

 

無事に仲良くなれたみたいだね。

よしよし…

 

「じゃあ、早速行こう!」

 

「はい。」

 

「ネプテューヌ。」

 

「って、どうしたのオーフィス?」

 

「ん…また、ね。」

 

ぎこちないけど笑みを浮かべて手を差し出すオーフィス。

またね。

…うん、成長してるね!

 

「うん、またね!またゲームしようね!」

 

「ん。次は、負けない。」

 

握手をして、また会うことを約束する。

 

それまでは、少しお別れだね。

ちょっと大変かもしれないけどハッピーエンドの為なら努力は惜しまないよ!

普段しないからだけど!

 

部屋を出て、ヴァーリの方へ。

 

そこにはもう黒歌と美猴もいた。

 

「お待たせ!」

 

「待ったにゃん。」

 

「まあそう言うなって。頑張ったようだなネプ助?」

 

「うん、ちょっとね!」

 

「さあ行くわよ、白音が私を待ってるわ!」

 

「待ってるかは分からないんだぜぃ。ネプ助次第なのも分かってるのか?」

 

「分かってる分かってる。」

 

「本当なのか不安だぜぃ…」

 

口調が真面目だし、分かってくれてるとは思うけどなぁ。

 

ともかく、準備は万端。

冥界に行って、リアスちゃん達と再会してから…サーゼクスさん達に話をつけよう!

 

「じゃあ、行くぞ。」

 

「転移か?」

 

「ああ。…冥界か、キナ臭いな。」

 

確かに。

次期当主が集まる場だ。

何かあるかもしれないよね。

 

また波乱があるのかもしれないという予感と共に自分達は転移の魔法陣の上に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、やってきました冥界!

二度目だね!

何かすごい歪な感じなのかなとか思ったけどそんなことはないみたい。

ここは…森かな?

使い魔の森とは違うっぽいね。

 

「到着?」

 

「ああ、ここから目立たないように森から会場まで向かう。」

 

「そっか、見つかったら危ないもんね。」

 

「…ゲオルグに姿隠しの魔術をかけて貰うべきだったか。」

 

「隠密系の魔法ならあるにゃん。」

 

黒歌が魔法を使う。

…あれ、でも変わらないよ?

 

「認識阻害の魔法にゃん。見つかりづらいって感じね。」

 

「なるほどぉ…」

 

魔法かぁ、習ったのとは違うし練習しないとだね、使うなら。

 

まあ、今はいっか!

皆で森から会場まで移動する。

たまに変な生物がいるし…触らぬ神に祟りなしってことで!

 

そうして、会場近くと思われる場所まで来たけど…これからどうしようか?

 

あ、でも…自分なら。

 

「ネプテューヌ、待て。」

 

「うん?」

 

「グレモリーなら分かるが…他の貴族悪魔に突っ掛かられる可能性もある。少しでもリスクは避けるべきだ。曹操達がいるとはいえな。」

 

「そっか…でも、どうすれば?」

 

「黒歌。」

 

「ねぷっちに行かせるのもありだも思ったけど、私の方が自然かぁ…仕方無いわね。」

 

黒歌が黒猫の姿に変わる。

あ、これ特訓でもやられた奴だ。

黒歌は猫の妖怪だから化けられるんだね。

 

黒歌はチラリとこっちを見た後会場まで走っていった。

 

「認識阻害の魔法は切られたみたいだな。隠れておこう。」

 

「ネプテューヌ様も。」

 

「あの、その様は要らないんだけどなぁ…」

 

「堅苦しいと思っていただいて結構です。」

 

ペルセウスだけは様付けとか敬語が抜けなくて…

いや、まあ本人がそうしたいなら止めないけどさ。

慣れないなぁ。

 

しばらく待ってる間、いーすんが話し掛けてくる。

 

「ネプテューヌさん、もうジッカンしてるとはおもいますがシェアがかなりふえています。」

 

「うん…私もビックリだよ。」

 

シェアが凄い増えてるんだよね。

ねぷ子さん的にレベルアップかな?

多分これは…曹操達や、オーフィス。

後はヴァーリかな。

 

「でもまだまだ昔の私には程遠いよね。」

 

「セイショのカミのしんこうをシェアにかえていたわけですから…しかたのないことです(^-^;)」

 

なら、もっと頑張らないとね。

昔の自分に笑われちゃうよ。

 

そんな感じで話していると黒歌が戻ってきた。

 

小猫ちゃんと一誠を引き連れて。

 

お、おお…!一誠!

何かがっしりとしてるけど、頑張ったんだね一誠!

 

「小猫ちゃん、一人じゃ危ないぜ!」

 

「…姉様、ですか?」

 

一誠の心配する声を無視して黒歌に話し掛ける小猫ちゃん。

黒歌は猫の状態から人の状態に戻る。

うん、揺れたね、何がとは言わないけど。

 

一誠の興奮が見えるけど、性癖は直らないんだね…

 

「会いたかったにゃん白音。」

 

「姉様…やはり…!」

 

「おお、ナイスバディ…じゃねぇや。小猫ちゃんのお姉さんなのか?」

 

「…はい、黒歌姉様です。」

 

「そうなのか…お姉さん、一人で小猫ちゃんに会いに来たのか?」   

 

「そういうわけじゃないにゃん。出てきていいわよ。」

 

お、ゴーサイン!

皆で頷いて木の影から出る。

 

ちゃんと一誠達に手を振ってね!

私は帰って来たぁぁぁ!

二人とも、驚愕の表情。

 

「ね、ね…」

 

「やっほー!会いたかったよ一せ──」

 

 

 

「ねぷ姉ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

 

「ねぷぅぅぅ!!?」

 

思いっきり泣きそうな顔で突進してきて抱きつきに来た!

突然の事すぎて反応できずに抱きつかれて地面にダイブ。

や、柔らかい地面で助かったよぉ…

 

「ねぷ姉ちゃん無事だったんだな!おお、俺は心配で心配で…!」

 

「ねぷ…ねぷ…!」

 

「い、イッセーさん!

ネプテューヌさんがイキできてません!(;´゚д゚)ゞ」

 

「お、おお!いーすんも無事だったか!っと悪いねぷ姉ちゃん…!」

 

「ぜー、ぜー…死ぬかと思ったよ馬鹿一誠!」

 

取りあえず一発叩いておく。

嬉しいのは同じだけどここまで苦しむ羽目になるとは思わないでしょ!

シスコンすぎるのも困りもんだね…

 

「そろそろいいかな、赤龍帝君。」

 

「ヴァーリ!あの時のねぷ姉ちゃんを拐った恨み、ここで晴らして…」

 

「ストップストップ!曹操達も困惑してるじゃん!

黒歌の為にも待って欲しいな!」

 

「…ねぷ姉ちゃんはいいのかよ?」

 

「いいも何も、あっちでも楽しくやれてたからさ。

心配かけてごめんね?」

 

「…まあ、ねぷ姉ちゃんが許すならいいけどよ。」

 

「凄まじいシスコンだな…」

 

「今代の赤龍帝はある意味凄いね…」

 

ふう、じゃあ一回仕切り直しをしよう!

 

抱きつかれた時に分かったけどかなり鍛えたんだね。

何ていうか、男の子!みたいな感じになってたよね!

感心感心!

主人公の弟だもんね!

 

「じゃあ、小猫ちゃんや一誠の為にもちゃんと─」

 

 

 

「─イッセー、小猫?ここにいるのかしら?」

 

 

 

あ、リアスちゃんの声だ。

こっちに向かってきてるっぽい?

 

と思ったらもうこっち来た。

リアスちゃんは自分達を見ると驚いた表情。

 

「ね、ネプテューヌ!?」

 

「リアスちゃん!お久しぶり!心配かけてごめんね!」

 

「それはいいけれど……貴女は!」

 

リアスちゃんが突然手に魔力を集中させる。

あ、これはやばい雰囲気になる。

 

「禍の団…そして、SS級はぐれ悪魔の黒歌!」

 

ちょっと良くない雰囲気…でも、そんなんで怯むねぷ子さんじゃないよ!

ちょちょいと解決しちゃうからね。

帰って来た主人公ですから!




英雄派まさかの味方ルート。

レオナルド君には頑張って貰おう


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魔王様に物申す!私、気になります!

ねっぷねぷにしてやんよぉ!

Vテューヌのねぷ子可愛すぎませんか?(今更)
これは買うしかないけどネプギア来ないかぁ…


やっほー!説得フェイズに移行するネプテューヌだよ!

さてさて、前回はリアスちゃんが黒歌に向けて消滅の魔力を向けているところまでだったね!

 

ということで、リアスちゃんから黒歌を庇うように前に出るよ。

曹操も一緒に前に出てくれるから安心だね!

 

「何をしているのネプテューヌ!そこを退きなさい!」

 

「待って待って!話を聞いて欲しいから一度その手を向けるのやめて!ちゃんと訳があるから!」

 

「…イストワールもいるし、洗脳されてはいないのね?」

 

「うん!信じて!」

 

「……分かったわ。」

 

魔力を集中させるのをやめて構えを解いたリアスちゃんに安堵する。

姉妹の再会だから、バトルな場面にはしてほしくないしね。

 

「じゃあ、説明するね。」

 

リアスちゃんや小猫ちゃんにしっかりと説明する。

黒歌がはぐれ悪魔になったのは小猫ちゃん…白音ちゃんを守るためで、主人殺しの罪を背負ってでも助けようとしたこと。

そして、白音ちゃんと再会するためにここに来たこと。

自分がそれに協力する事。

 

全部話した。

 

全部の説明を聞いた後、リアスちゃんは瞑目する。

白音ちゃんはそれを聞いて呆然としている。

 

少しして、リアスちゃんが考えが纏まったのか目を開く。

 

「そういう経緯があったのね…魔王様との話し合いが必要みたいね、これは。」

 

「信じてくれるにゃん?」

 

「まだ半信半疑ではあるけれど…そうだとしても、確かめなければならないわ。これは明らかにおかしいもの。」

 

「おかしい?」

 

「ええ。主人殺しは重罪…けれど、それは非があればの話よ。

どんな形であれその家のしっかりとした調査はされる…一度指名手配をしたとはいえ撤回した上で保護されたといった話も無いわけではないの。…なら、今の話を聞く限り、その悪魔は他の眷属にも同じようなことをしていた可能性は大いにある。」

 

「そうか…だとすると撤回されていないことがおかしい!」

 

曹操の言葉にリアスちゃんが頷く。

 

そっか、確かに。

リアスちゃんは前に同じようなことを言ってた。

はぐれ悪魔のはぐれになる前の経緯等を調べる…それがされたなら…

どうして黒歌のはぐれ悪魔としての扱いは撤回されていないの!?

 

「どうも引っ掛かる…だから半信半疑なのよ。

食い違いがあるにしても妙な違いが発生する…疑うべきは貴女じゃない。」

 

「…貴女、正気?」

 

「正気も正気よ。じゃなきゃこんな冷静に頭が働く訳ないでしょう?疑わなきゃならない相手…それは─」

 

 

 

「─現魔王、つまりはお兄様達は何かを隠しているってことね。」

 

 

 

「部長、それは…!」

 

「あり得ない話ではないでしょうね。」

 

「…では、グレモリーもネプテューヌに協力するということでいいか?」

 

「ええ、是非。事の真相が分からないままなのは釈然としないもの。」

 

「大丈夫なんですか、部長。」

 

「踏み込んだ話になるから、分からないけど…それでもそれが眷属の為になるならやるわ。小猫…白音って呼んだ方がいいかしら?」

 

「いえ…今まで通りでお願いします。部長、ありがとうございます…ネプテューヌ先輩も、姉様と来てくれてありがとうございます。」

 

「感謝されることなんてしてないよ!主人公として当然の事をしたまでだよ!」

 

「そうだとしても…ありがとうございます。」

 

「私も、ありがとう…ねぷっち。」

 

「もー…まあ、お礼はいただく系主人公だからね、私。

でも、喜ぶのはまだ早いよ!」

 

「ええ、そうね。白龍皇の事やそこの人たちの紹介もして貰わないとだし、お兄様達に問い詰めないといけないもの。」

 

「魔王への問答に黒歌はともかく俺達は参加できないがな。」

 

そうだった。

英雄派の皆の事も紹介しないとだよね。

 

サーゼクスさん達と話すには…リアスちゃんに頼む他無さそうだね。

シスコンなら応える筈…絶対に応える筈!

あ、魔王の妹っていうなら…蒼那ちゃんもだね!

 

「ヴァーリと美猴はここでお別れなの?」

 

「まあ、そうなる。俺が一緒にいても仕方無いだろう。」

 

「今回は赤龍帝への顔見せもあるが黒歌とネプ助の為だからなぁ。戦っていいならやるんだぜぃ?」

 

「あの秘密を言っちゃうよ?」

 

「あー今日はもう帰りたい気分だぜぃ!戦う気も起きねぇなぁ!」

 

はい、鎮圧完了!

じゃあ、またねと言おうと思ってヴァーリの方を向くと…

 

「わわっ!」

 

何か近いんだけど。

一誠なんて犬みたいに威嚇してるんだけど。

 

ヴァーリが何も言わずに抱き付いてくる。

あのぉ…最近抱き付くのがトレンドなの?

しかもちょっと強いから離れられないし。

はっ、また誘拐事件!?

 

話し掛けようとして、

 

「本当は、離れたくはないんだ。」

 

…ちょっと、寂しそうにそう言うヴァーリに子供のようだと思った。

 

「…不器用だね、ヴァーリって。」

 

本当に不器用だね。

オーフィスの事も、今みたいな状況も。

あーもう、これネタ言う雰囲気じゃないよ。

というか自分も乙女なわけで。

 

…仕方無いなぁ。

よしよしと背中を擦る。

 

「ヴァーリの事、私は嫌いじゃないよ?」

 

「本当か。」

 

「うん…でも、ねぷ子さんルートに入るには、まだかな。

日々努力せよ、なんてね。」

 

「…帰るぞ、美猴。」

 

ヴァーリが自分から離れて、背を向ける。

美猴はへいへいといった様子。

 

「またね、ヴァーリ、美猴!」

 

「おう!」

 

「ああ、また会おう。」

 

歩いて去っていく二人を見届けてから英雄派の皆を紹介するべくリアスちゃんの方へ向く。

何だか、顔を赤くしてるけどどうかしたの?

 

「どうしたの?」

 

「いえ、その…強く求められてるのね、貴女。」

 

「戦闘にしか欲がないと思っていたが…実際見ると凄まじいな。」

 

「手を出したら僕らの前に彼に殺されそうだね、相手は。」

 

「ねぷ姉ちゃんに手ぇ出したら俺が黙ってねぇぞ。」

 

「ネプテューヌさん、ねんのために……はい、なにもされていませんね。」

 

いーすんが自分の額に手を当てて三秒ほどじっとする。

その後、微笑んで魔法とか使われてない事を言ってくれる。

いーすんはまだちょっと警戒はしてるっぽい。

 

「ヴァーリはそんなことしないって。平気平気!

それより、そろそろ自己紹介しよっか!」

 

「それもそうか。元禍の団所属、英雄派リーダーの曹操だ。

今はネプテューヌへの恩を返すため共にいる。」

 

「同じく、英雄派副リーダーのジークフリート。

よろしく頼むよ。」

 

「英雄派のペルセウスです。我々を諭してくださったネプテューヌ様をお守りすると決め、ここにいます。」

 

「一人だけ凄い忠誠心だけど…リアス・グレモリーよ。」

 

「兵藤一誠っす。」

 

「塔城小猫です…」

 

「うんうん、皆自己紹介したね!

じゃあ、皆の所に戻ろう!」

 

「そうね。曹操達は…ええ、私に任せて。」

 

取りあえず、事態は治まった。

そんな感じかな。

このまま、一誠達が仲良くなってくれたらいいなぁ。

 

そう思いながら、皆で会場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここがあの悪魔達の会場(ハウス)だね!

ふっふっふ…何だか見下すかのような視線を感じるけど動じるねぷ子さんじゃ…ねぷ子さんじゃ…

 

『………』

 

「リアスちゃーん…」

 

「よし…殴ろう。」

 

「落ち着け赤龍帝!」

 

「ネプテューヌ様を怯えさせるとは…万死に値する。」

 

「君も落ち着いてくれペルセウス…」

 

「ネプテューヌ、大丈夫よ。」

 

「…姉様はそのままでお願いしますね。」

 

「にゃー」

 

ちょっと怖かったのでリアスちゃんの後ろに隠れる。

主人公でもここまで怖い視線を受けるとちょっと…

いーすんには自分の中で待機して貰ってる。

 

リアスちゃんに庇うように連れられて、さっさとあーちゃん達の元へと向かう。

 

「貴女がいなくて寂しがっていたわ、皆ね。」

 

「…そっか、お母さん達も?」

 

「余程仲のいい友達といるのねって感じだったけど…心配だったと思うわ。」

 

「うん…今日帰れる?」

 

「そうね、これ以上家にいないのも良くないだろうし、掛け合ってみるわ。」

 

「ありがと、リアスちゃん!」

 

そうして、あーちゃん達のいるテーブルまで着く。

仲間内で談笑をしていたようだけど、リアスちゃんが戻ってきたことに気付いたようで、こっちを向く。

 

すると皆驚きの表情。

 

「ネプテューヌ先輩!?」

 

「まあ、ネプテューヌちゃん…無事でしたのね!」

 

「ぶ、無事で良かったですぅぅ!」

 

「女神…じゃない、ネプテューヌ…そうか、帰ってきたのか。」

 

「ネプテューヌさん…!」

 

とても嬉しそうな様子。

ギャー君は袋被って分かんないけど…

 

あーちゃんは感極まった様子で抱き付いてくる。

一誠の時みたいな勢いがある感じじゃなくて、ゆっくりと来る感じ。

こっちも抱きしめ返す。

 

「よかった…本当に無事で…!」

 

「うん、心配かけてごめんね…もう勝手にいなくならないよ!」

 

その後、皆に今まで何があったのかとか英雄派の紹介とか、会えなかった分を埋めるように話した。

あ、パーティーだったし少しだけ食べ物もいただいたけどプリンが無いとは…これは悪魔界にもプリンを流行らせるしかないね。

 

リアスちゃんは他の人への説明だけど…どんな説明のしかたしてるんだろう?気になるかも。

 

ジークは魔剣を何本か所持しているようで、木場君とそういった話をしていた。

木場君の神器も魔剣を創る物だからどういったものかを把握することも成長に繋がるよね。

ペルセウスはあんまり自分の側を離れない。

というか、視線が自分に来ないように庇うように立ってる。

あーちゃんが話し掛けてくれたから黙りは無さそう。

 

曹操はというと…

 

「ねぷ姉ちゃんは凄いんだぜ。町を歩けば大人子供問わず大人気なんだ。ゲームセンターに行こうとしたけど子供にサッカー誘われて付き合ってたし、プリンの新作をよく行く店の店主さんに貰ってたし…」

 

「なるほどな。人望があるんだな。」

 

「しかも、普段はぐうたらなんだけど決めるぞって決めた時は誰も止めらんねぇんだ。テストでいい点数取れたらご褒美って母さんが言ったらやる気だして全部のテストほぼ満点を叩き出したんだぜ?」

 

「それは普段からやった方がいいのでは?いやしかし…そうか、ならあの時のネプテューヌは君の言う状態だったのか。」

 

こんな感じで自分の話をしていた。

一誠の姉自慢を曹操は真剣に聞いているのがシュールというか、何というか…

というか、姉本人がいるのに恥ずかしいからやめて欲しいかな。

 

「何であんなシスコンになっちゃったかなぁ…」

 

「イッセーさんはネプテューヌさんが大好きなんですよ。」

 

「それは分かってるけどさぁ…姉離れも少しはしてほしいかなぁ…」

 

「ネプテューヌさんは弟離れ出来るんですか?」

 

そう言われて、一誠が誰かと結婚して今の家じゃない家で過ごしている様子を想像してみる。

…うん。

 

「弟よぉぉぉ!」

 

「ね、ねぷ姉ちゃんどうした!?」

 

ちょっと寂しくなったので一誠に抱き付く。

一誠は満更じゃない…訂正、めっちゃ嬉しそうにしてる。

 

「…おしとやかな方と思っていたが案外お茶目な面もあるようで。」

 

「えへへ…私も今の皆さんが好きですから。」

 

そんな感じで、少し皆との時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで現在、会場の外に出された自分と曹操達です。

 

…ああうん、何でってのは分かるけど仕方無いんだよこれ。

リアスちゃん曰く、

 

『これから来る上の悪魔は考えが古いのよ。だから、このまま会場にいるとネプテューヌや英雄派の皆が笑い者にされてしまうわ。

お兄様達の事はソーナと協力して絶対に連れてこさせるから待っててくれないかしら?』

 

とのこと。

まあ、そんな場面になっても言い返したりは出来るんだけどそれをしたらリアスちゃん達の立場が危ういし、自分としてもそれは望ましくない。

周りの若手悪魔を見てたら分かることだよ。

あれはこっちを見下してた。

何名かは…珍しい者を見るような目だったけど。

 

「ネプテューヌ、君は人の味方だと言ったな。」

 

「うん、そうだよ。」

 

「それはどうしてだ?女神だからか?それとも…正義感か?」

 

「…何だろね~」

 

「分かってないのかい?」

 

「ううん、分かってるよ。」

 

ただ、どう言葉にしたものか、みたいな。

ちょっと難しい感じなんだよね。

うん、でも固まってきた。

 

「女神とか、そういう特別な立場だからじゃないんだよね。

私って記憶が無いから女神だっていうのも忘れてた状態でさ。

一誠の家に拾われて…色々とあって今があるんだ。

昔の私はいーすん曰く機械的だったらしくてさ~ねぷ子さんがそんなロボットみたいなのは想像できないけど…まあ、こうして感情があるのは素敵なことだと思うんだよね。」

 

「…幸せな日々か。」

 

「うん。女神だって分かって、昔色々なことをしてたらしくて…でも、今の私は昔の私とは強さとか違うわけでさ。

世界のため、とかそういうんじゃないんだよね。

うーんと…うん、家族とか周りの大好きな皆を、日常を守りたい。

そう思って…人の味方をしたいって言ったんだ。」

 

「ふっ、あの時とは言葉が多少違うな?」

 

「そこを言われると痛いんだけど…女神的には人を守らないとってのもあるしさ。でも、こっちが本当だよ。

やっぱりお互いに笑い合える方が良いじゃん!」

 

「…そうだな。」

 

やっぱり、まだ色々と気持ちに整理がつかないみたい。

昨日今日で終わることじゃない。

恩返しがしたいっていうのも自分を見失うのが怖かったから…それぐらいはねぷ子さんでも分かるかな。

 

だから、自分のこういう言葉が助けになるなら嬉しいかな。

 

そういった意味ではペルセウスが一番しっかりしてるのかな?

やるべき事っていうのかな…今は自分を守るっていうのがペルセウスの中で一番大事らしい。

 

「ジークは何かないの?」

 

「僕は…無いかな。折り合いを付ける相手がいるわけじゃないし…これから見つけるさ。」

 

「そっか。」

 

皆が別々でもしたいことを見つけてくれたら嬉しいかな。

勿論、悪いことなしの方向でね。

 

そうこう話していると、会場の扉が開く。

 

「本当に帰ってきたようだね。安心したよ。」

 

「サーゼクスさん!」

 

出てきたのはサーゼクスさんだった。

曹操達の事も聞いていたのか驚いた様子もなく、自分の帰還を喜ぶように微笑んでいる。

…本当にサーゼクスさん達が悪いのかな?

でも、ここは心を鬼にしないとだよね。

 

「リアスから大事な話があると聞いた。

後でリアスも来るが…まあ、場所を移そうじゃないか。」

 

「うん。」

 

サーゼクスさんについていく。

会場内にまた入るけど、皆のいる方とは反対の道みたい?

 

─ネプテューヌさん、大丈夫ですか?

 

(正直ちょっと緊張してるけど、黒歌と小猫ちゃんのためにも頑張るよ!)

 

─分かりました。スキャンはお任せください。

 

いーすんや曹操達に周りの事は任せて、自分は前だけを見て進もう。

今はそれが大事みたいだしね。

 

そうして、着いたのは応接間のような一室。

 

「さあ、座ってくれ。」

 

「うん…」

 

─この部屋には特に何も仕掛けられてはいないようです。

 

(分かった、ありがとういーすん。)

 

「俺は立っていよう。」

 

「…なるほど、君が曹操か。」

 

「ああ、初めまして魔王サーゼクス。英雄派リーダーの曹操だ。」

 

「ああ、サーゼクス・ルシファーだ。よろしく頼むよ。

…それで、ネプテューヌちゃん。どんな話かな?」

 

「その前に1ついい?他の魔王の人は?」

 

「セラ達かい。セラはああ見えて外交担当だからね。

他の魔王も一緒の方がいいなら…」

 

「ううん、それなら仕方無いよ。」

 

悪魔の駒については、また後日になるかな。

…ううん、やっぱり聞けるところは聞こう。

 

仕事もあるだろうからそこは仕方無い。

 

「サーゼクスさんは、SS級はぐれ悪魔 黒歌って知ってる?」

 

「勿論。しかし、君はどこでそれを?」

 

「私が禍の団に拐われた時、会ったんだよね。」

 

「そうなのかい?何かされなかったか?」

 

「うん、大丈夫。それで、聞きたいのは黒歌についてなんだ。」

 

「…私に話せることなら話そう。」

 

真面目な顔だ。

自分の事を見定めるような目。

 

「正直に言うけど、黒歌から話を聞いたんだ。

どうしてはぐれ悪魔になる道を選んだのか。」

 

「…聞いても?」

 

サーゼクスさんの目が鋭くなる。

 

「勿論話すよ。

黒歌には大切には妹がいて、手を出そうとした主人から妹を守るために殺したんだって。それが主人殺しの真相。

本人から聞いたけど、嘘はないと思うよ。」

 

「…そうか。君が言いたいことは分かったよ。

黒歌の指名手配をなくして欲しい…そうだろう?」

 

「うん、そうしてほしいよ。」

 

「何か、曖昧だね?」

 

「…ねえ、サーゼクスさん。」

 

可能性はあると思った。

はぐれ悪魔の指名手配撤回からの保護。

 

もしかしたら、それは隠す必要がないからした措置なんじゃないかなって。

だから、この可能性を聞いてみよう。

 

 

 

「─何か、隠してるよね?」

 

 

 

「…何か、とは?」

 

自分がそれを言おうとした時、ノックをした後に扉が開く。

あ、来たね。

 

入ってきたのはリアスちゃんと黒歌、そして小猫ちゃんだった。

サーゼクスさんは黒歌を見た時目を見開いたけど、すぐに元の落ち着いた表情に戻る。

 

「調査した上で隠さなければならない事実…そういった事があるのではありませんか、お兄様。」

 

「リアス…彼女は。」

 

「黒歌です。ですが、危険はありませんわ。

彼女の守りたい妹ならここにいますから。」

 

「…そうか、なるほど、そういうことか。」

 

「サーゼクスさん。」

 

「…分かった、話そう。」

 

観念したかのようにそう言ったサーゼクスさん。

やっぱり、なにか理由があったんだね。

調査をしなかったんじゃなくて、調査をした上で重大な何かに気付いた。

で、それが黒歌の指名手配を撤回する事が難しくなる要因だった。

 

サーゼクスさんとしても苦しかったんじゃないかな。

 

「まず、言っておこう。君の望むような黒歌の指名手配を撤回はまだ出来ない。」

 

「っ…!」

 

「白音。」

 

「姉様…?」

 

「いいのよ。」

 

サーゼクスさんの言葉に小猫ちゃんが殴りかかろうとするけど黒歌が腕に手を添えて止める。

 

「サーゼクスさん…」

 

「分かっている、これは悪魔の勝手な都合。

僕達の管理が行き届いていない証拠だ。けれど…」

 

「御託はいいわ。そういう言い訳よりも話すことあるでしょ。」

 

「…その通りだ。」

 

黒歌の強い語気で説明を求める声にサーゼクスさんは頷く。

うん…したことは変わらないよね。

結果的に姉妹なのに会えない日々が続いたんだから。

 

「黒歌はナベリウス家分家の眷属悪魔だった。

そして、そこを重点的に調べた。魔王四人でね。」

 

「普通は重役四人なんてあり得ないこと、なんだよね?」

 

「ああ。だけど、最初の調査の報告を受けて疑問に思った。

アジュカの入念な調べの元、ようやく少し分かった。」

 

「魔王四人で調べて、少し?」

 

「それだけ情報操作が上手かったんだ。

悪魔随一の技術力を持つアジュカが何日もかけて調べないと分からない程には…まさかとは思ったよ。断絶したと思っていたからね。」

 

サーゼクスさんが膝の上で拳を握りしめている。

自分に怒っているんだと思う。

転生悪魔である黒歌をはぐれ扱いにせざるを得なかったとはいえしたことも、小猫ちゃんに申し訳なく思ってることも自分には伝わった。

 

「ナベリウス家の裏に隠れている人物。

その者の情報を下手に表に出すのは危険だった。

だからこそ、他言無用を頼みたい。」

 

『…。』

 

皆が頷く。

魔王であるサーゼクスさんからの頭を下げてまでの頼みだった。

 

それを確認した後にサーゼクスさんは再び口を開く。

 

 

 

「ネビロス。それが黒歌の指名手配を撤回できない『理由』だ。」

 

 

 

「ネビロス…?」

 

自分の疑問の声にサーゼクスさんは頷く。

 

「ああ。『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』の悪魔の1つでね。技術が抜きん出ていたのとナベリウス家を内戦時に従えていたことしか分からないんだ。」

 

「分からないって…それだけヤバイの?」

 

「下手に手を出せないという点ではある意味殆どの悪魔より危険人物だろうね。」

 

「つまり、公に出せばどうなるか分からないから現状維持をしていると?」

 

「そうなる。…これは魔王全員による決定だ。

ネビロス家の事は現状も調べを続けているが…結果は察して欲しい。」

 

「技術力に物をいわせて報復してくる可能性もあるだろうし、聞く限りでは相当頭が切れる。なるほど、公言するのは確かに危険だな。」

 

「ですが、姉様はどうすれば…」

 

「それに関してなんだが…」

 

サーゼクスさんが挙手をする。

視線がまたサーゼクスさんに集中する。

 

「ネプテューヌちゃんさえ良ければなんだが…」

 

「私?」

 

「私の方からも最大限サポートをすると約束する。勿論、他からもだ。だから、そちらの方で黒歌を匿ってはくれないか?」

 

突然の頼みにちょっと理解が追い付かない。

えっと…黒歌を自分の家で匿う?

いやまあ、確かに一般人、それも赤龍帝の一誠の家に潜んでるとか思いもしないとは思うよ?それぐらい赤龍帝って凄いらしいし。

 

でも…うーん…

 

「一般人であるネプテューヌとイッセーのご両親まで危険に晒してしまいます!」

 

「僕の眷属を派遣しよう。」

 

「あ、なら安心かな?」

 

「ちょ、ネプテューヌ!」

 

「ご心配なら、我々英雄派も警護をします。」

 

「曹操はどう?」

 

「近くのアパートを借りることが出来るなら楽だな。」

 

「なら、そこら辺も僕が何とかしよう。」

 

「あ、今は分からないけど入居者募集してるの近くにあったよ。」

 

「決定の流れになってない!?」

 

リアスちゃんのツッコミも分かる。

かなりあっさりと決めたけど、ちゃんと考えてるんだよ?

黒歌の能力も含めてOKしてるし…

 

─私はネプテューヌさんの決定に従いますよ。その時のサポートもお任せください。

 

って、いーすんも言ってるし。

 

「突っぱねるのは簡単だよ。でも、私は頑張った黒歌が報われないのは間違いだと思うんだよ。」

 

「だとしても…ご両親はいいの?」

 

「心配だけどさ。私はサーゼクスさんのサポートや英雄派の皆を信じたいな。」

 

「…ねぷっち、どうしてそこまで?」

 

「友達だもん、友達を助けたいって思うのは駄目かな?」

 

心底疑問に思ってる黒歌にそう言う。

友達を助けられないで主人公は名乗れないよ。

ネビロスの事は時間がかかるかもしれないけど絶対に尻尾を掴むし、何ならいーすんっていう強い味方もいるし!

 

黒歌は顔を俯かせる。

小猫ちゃんも黒歌に寄り添うようにしてる。

 

…うん、姉妹だもんね。

 

「助けさせてよ。」

 

「…うん、助けて、ねぷっち…!」

 

「ネプテューヌ先輩…!」

 

「うん、任せてよ!サーゼクスさん、曹操達。そういう訳でお願いしていい?」

 

「ああ、元々我々の責任だ。全力でサポートさせて貰おう。」

 

「俺達英雄派を信じてくれて感謝する。

その信頼に応えよう!」

 

「恩返しに繋がるといいんだけどね。」

 

「なってるなってる!もう全部返して貰ってるよ~!」

 

「「「それはない。」」」

 

「えー…?」

 

そんな事ないと思うけど…

自分がやったのって良くないよって言っただけだよ?

そんな大きな恩かな…

 

ま、まあ曹操達がそう言うならそれでいっか。

 

何はともあれ…まだまだ問題は山積みだけど…

一応、黒歌からのクエストは達成だね!




ネビロス「ファっ!?」

ネビロス、君には早々に出て貰う…じゃないと色々とね。
犠牲になったのだ、物語の都合、その犠牲にな…

悪魔ってのも面倒な社会だなぁと染々思うねぷ子なのであった。


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レーティングゲーム観戦!ってピンチじゃん!?

ねぷねぷの覚醒だ!人類の無意識がねっぷねぷを望んでいるのだ!






やっほー!前回色々と頑張ってみたネプテューヌだよ!

うん、疲れた!本当に疲れた…!

頭を働かせてばっかだよ最近!

真面目な話、自分働きすぎだよね?

 

「サーゼクスさん。私を家に帰すことって…」

 

「あー…そうしたいのは山々なんだが…」

 

「え、何か事情があるの?」

 

「これから若手悪魔同士のレーティングゲームがあってね…」

 

「魔王だからサーゼクスさんも見ないといけない?」

 

「そうなんだ…だから、とても申し訳ないんだけど終わってからで…」

 

「まあ…それなら仕方無いよね。あ、なら観戦はいい?」

 

「構わないよ。曹操君達も見ていくかい?」

 

「ああ、そうさせてもらおう。」

 

「ヘラクレスを連れてきていたらうるさかったね。」

 

「確かに…」

 

若手悪魔のレーティングゲーム…リアスちゃんもだよね。

 

一誠達がどれぐらい強くなったのか分かるわけだね。

うんうん、姉として見ない手はないね!

リアスちゃんここにいるけど平気?

 

「リアス、そろそろ戻った方がいい。」

 

「え、ええ…ネプテューヌ、また後でね。」

 

「うん、ありがとう!試合見るからね!」

 

「なら、尚更無様は晒せないわね。」

 

微笑んでから小猫ちゃんと退室する。

小猫ちゃんも出るときにこっちに頭を下げてきたけど…うん、サーゼクスさんに対してだよね。

 

「黒歌はどうするの?」

 

「うーん…まあ、黒猫の状態でいるにゃん。ねぷっちといれば取りあえずは安全にゃん。」

 

そう言って黒猫の状態になって自分の膝に乗る黒歌。

うーん、撫でたくなるけど黒歌だって分かってると何だかね。

 

何にせよよかったよ~…

 

─シェアも獲得しましたし、また前進ですね。

 

信頼を勝ち取った、みたいな。 

何だかそんな気がして嬉しくなる。

 

ともあれ、これからレーティングゲームだね。

 

リアスちゃんの所へ行こうかな?

 

「サーゼクスさん、リアスちゃんが何処かは分かる?」

 

「ああ、皆に一言言いたいのかな? 」

 

「うん、今回は参加できないからね。」

 

前回は特別っていうかライザーも乗ったからだし。

もっと言うと、今回は公式戦。

だから眷属じゃない自分が参加するのは悪魔の偉い人からしたら断固反対だろうね。

 

「そう言うことなら─」

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

はいはいやって参りました!

待機室に突撃取材!

サーゼクスさんにリアスちゃん達がいる部屋を教えて貰って、その部屋の前にいるんだな!

 

さぁて、このまま突撃を─

 

「アーシアは渡さねぇ!」

 

「…何やら不穏だな。」

 

「うん、何かあったのかも、入ろう!」

 

扉を開けて入る。

そこには緑色の髪の美青年さんがリアスちゃん達と対峙するように立っていた。

 

「何かあったの?」

 

「ネプテューヌさん…」

 

あーちゃんがちょっと疲れた様子。

それに、この人…何だか怪しい。

主人公の勘が告げている、これは外面だけ張り付けている類いだ!

 

警戒していると、緑髪の人が話し掛けてくる。

 

「君は?」

 

「ネプテューヌ。こう見えて女神なんだ!」

 

「女神…!」

 

「…。」

 

突然、自分を見る目が変わった。

何だろう、これ。

既視感がある…駒王町にも似たような目をする人がいたような…

 

あーちゃんに向ける目も今のこれと同じ。

んー…?

 

あれこれ考えていると、緑髪の人は自分に近付いて手を握ってくる。

 

「なんて美しいんだ…女神だなんて!」

 

「いや、あの…」

 

「僕の眷属になってほしいくらいだ…!」

 

あ、分かった!

思い出した!

コレクターのお兄さんが新しいプラモデル見つけた時の目と似てる!

 

そうと分かれば手を振りほどくよ!

 

「ごめんね、そういうのお断りなんだよね!」

 

「…それも、そうか。会って早々失礼をしたね。すまない。

僕はディオドラ・アスタロトだ。」

 

「うん、それはそうとあまりそういう目を人に向けるのは感心しないよ?」

 

「…そういう目?」

 

「あ、新作だ!欲しい!って目。」

 

「…!」

 

「プラモデルとかなら分かるけど、人にそれを向けるのはちょっと常識的に無いっていうか!私としてもノーサンキューかなって。」

 

ディオドラの表情が驚愕に染まる。

多分だけど、良くない事してるよね。

まあ、何となく分かるってだけなんだけどさ。

 

「まあ、そういうことだから!諦めてね!」

 

「…そうだね。じゃあ、僕はこれで失礼するよ。トレードの件、考えて欲しいな。」

 

「何度でも言うけど、あり得ない。出ていきなさい。」

 

怖い怖いとばかりにディオドラは出ていった。

ふぅ…さっきの話とかでの雰囲気が自分から抜けてなかったお陰で細かいことに気付けたよー

 

また疲れたんだけだね!

 

「大体の事は察したが、何があった?」

 

「それが…」

 

どうやら、あーちゃんが欲しいと言ったディオドラが眷属と交換しないかって持ちかけてきたらしい。

で、リアスちゃんは当然のように断ったけど引き下がらないディオドラはレーティングゲームで自分が勝てばあーちゃんを貰うと挑発してきたとか。

 

うーん…そもそも、勝負自体はしてもリアスちゃんがそれに応じてないんだから気にする必要はないよね。

 

ふと、ヴァーリの発言を思い出す。

 

『冥界か、キナ臭いな。』

 

単に自分を捨てたからっていうことはない筈。

ヴァーリ自身、何かを感じ取ったのかもしれない。

 

─少し警戒した方がいいかもしれませんね。

 

(うん。)

 

いーすんの言う通り、ディオドラが何かする可能性は高い。

注意しよう。

 

「取り合えず、今は試合に専念した方がいいかも!」

 

「ねぷ姉ちゃんも見てるんだもんな…みっともない所は見せれねぇな!」

 

「大丈夫、僕達はあれからかなり努力してきた筈だよ。

自分を信じるだけさ。」

 

「そうそう。ネプテューヌちゃんがいなくなった後なんて私含めてとても頑張りましたのよ?」

 

「え、そうなの?」

 

「ええ。イッセー君や木場君、アーシアちゃんは特に♪」

 

「「先輩!」」

 

「あら、怒られちゃいましたわ。」

 

「ふっ、少しは緊張もほぐれたか?」

 

「ぼぼぼ、僕は今にでも引きこもって…」

 

「ギャー君、逃げたらどうなるか…」

 

「ひぃぃ!やりますやりますぅ!」

 

自分がいなくなった後、皆頑張ったんだね。

…何だか嬉しいなぁ。

こういう関係を大事にしたいよね、いつまでも。

 

さて、そうなると…

 

「皆、頑張ってね!ふぁいとふぁいと!」

 

「ねぷ姉ちゃんの応援があれば百人力だぜ!すぐにあの顔面に一発叩き込んでくるから見ててくれよな!」

 

「うん!」

 

「リアス・グレモリー、警戒はしておくことだ。

内からも、外からもな。」

 

「…ええ、そうね。貴方の考えている通り、そうなったとしたら…」

 

「まあ、そこはそちらに任せる。俺はあくまでネプテューヌの護衛だ。」

 

曹操とリアスちゃんの会話から何となく分かるけど、やっぱり二人も疑ってるんだね。

禍の団にいた曹操も怪しいと判断してるんだ。

 

禍の団で悪魔といえば、クルゼレイはどうなったんだろう。

考え直してくれればいいけど…

生きていれば、やり直しは出来る。

それを信じて欲しいな。

 

取り合えず、何があってもいいようにはしておかないと。

お母さん達の事も、その後だね。

 

…一誠もあーちゃんも隠し通すことはできないって分かってる筈。

もしもの事があれば、自分が全部背負う。

 

─その心配は無いと思われますが…あの方達は100%善人です。

 

いーすんの考えすぎだと言う言葉に苦笑する。

分かってるんだけど、考えちゃうんだよね。

お父さんとお母さんからのシェアはとても強い想いだってことは自分が一番分かってる。

 

それでも、考えたりしちゃうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーティングゲームの観戦をするべく、サーゼクスさんと一緒に魔王専用の部屋に来たけど…

 

「え、いいの?」

 

「あそこに君を連れて行ったら古い悪魔達が君に何を言ってくるか。君のためでもある…が、そういう理由ならグレイフィアもうるさく言わないだろうからね。」

 

「利用された!」

 

「流石は悪魔、やり方がズルいな。」

 

「あそこにいると嫌でも聞こえてくるからね。」

 

「うーん、まあいいけどね!皆で仲良く見よう!

早く一誠達の試合が見たいなぁ。」

 

「ハハハ、アザゼルからの伝手だがとても頑張ったと聞いているからね。僕としても楽しみだよ。」

 

「おっちゃん?どうして?」

 

「ああ、そうだった…アザゼルがイッセー君達を鍛えたんだよ。

きっと、君の事での謝罪の意味もあったんだと思うよ。

息子同然の白龍皇…ヴァーリも禍の団だったしね。」

 

「気にすることないのに…後で電話しようかな。」

 

「実は冥界に来てるよ。」

 

「ええ!?堕天使なのに来ていいの?」

 

「もう和平はされているからね。それに、彼には少し大事な役目があるんだ。」

 

「役目?」

 

「まあ、それは秘密ということで。」

 

うーん、ケチ!

でも、おっちゃんが来てるなら会えたら挨拶しとこうかな。

こういうことならメールアドレス交換しておくべきだったよ。

 

そうこうしているとサーゼクスさんの始まったという言葉を聞いて、画面を見る。

黒歌はさっきから膝の上で寝てる。

小猫ちゃんのこといいのかなぁ…

 

「そういえば、イストワールは?」

 

「さっきからずっと私の中だよ。」

 

「そうか。」

 

─こちらも試合状況は見ていますよ。

 

「いーすんも試合見てるから平気だって。」

 

「そうなのかい?」

 

「うん。あ、一誠!いけいけー!右フック!左フック!パンチパンチ!」

 

「ハハハ…」

 

「そういえば、魔王である貴方もレーティングゲームをするのか?」

 

「いいや、私や他の三人はやれないんだ。」

 

「それはどうして?」

 

「魔王としてそう易々と表には出られないさ。」

 

「それは…ご苦労様です。」

 

大変なんだね、魔王も。

自分達もやってみたいとかあると思うけど…

やっぱり、トップって縛られやすいんだなぁ。

 

ねぷ子さんは悪魔じゃなくて女神だからレーティングゲーム自体出れないけどね!

一誠達が勝てるように祈るとか応援するくらいしかないや。

女神だけど、祈るくらいやるよね?

 

というか、一誠もっともっと頑張って!

 

「フレーフレー!よし、そこだ!」

 

「凄い応援してるな…」

 

「当たり前じゃん!主人公の弟なんだから、これくらい突破できなきゃね!」

 

「そういうものかな。」

 

「そういうものだよ!」

 

「しかし、何やら妙ですね。あのディオドラの眷属…消極的というか…」

 

「…怯えてる…?」

 

「え?」

 

試合画面を注視する。

一誠達と戦っている女性達…何だか、暗い表情?

中には涙を流してる子もいる。

 

どういうこと?

まるで…

 

「この試合自体を望んでいないみたい…?」

 

「…ディオドラ君の悪い噂はあまり聞かないが…この様子を見るに、何かあるかな。」

 

「分かるの?」

 

「眷属は普段から共に過ごす仲間、家族だ。

その眷属があの様子…一誠君達が戸惑うのも分かるよ。」

 

…一誠、大丈夫かな。

 

何だか、試合が不穏なものに変わったように思えた。

戸惑いながらも何人か倒す皆。

試合としては普通。

だけど…戦うこと自体を拒む、望んでいない人の顔を見てしまうと何か別の異様な物へと変わる。

 

「無理矢理にでも戦わせるって良いことなの?」

 

「いや…選手の体調が優れないなら事前に出場しないことも出来る。けれどこれは─」

 

サーゼクスさんが喋っている途中…それは起こった。

 

ディオドラが前線に出張ってきたんだ。

 

「王なのに…そんなに強いの?」

 

「いや、若手の中でも強すぎるわけでもない筈だよ。」

 

なら、なんで…

 

そう思って試合を見ていると、ディオドラの表情が人の良い笑みではなく、見下すかのような笑みに切り替わる。

 

『君達を招待してあげるよ。このパーティーにねぇ!』

 

『な、なんだ!?』

 

「っ、これは!?」

 

サーゼクスさんの焦りと自分達の焦りは殆ど同じだと思う。

ディオドラが何かをした。

 

サーゼクスさんが誰かに確認を取ってるけど、多分運営かな。

なら、その間に…

 

(いーすん!)

 

─…はい、解析完了しました。どうやら、レーティングゲームのシステムに何者かが不正アクセスをして乗っ取りをしたようです。

 

(さっすがいーすん!頼りになるね!)

 

─30秒かかりました。

 

(十分だよ!)

 

「ネプテューヌちゃん、実は…」

 

「不正アクセスからの乗っ取りだよね!」

 

「あ、ああ。そうか、史書か。流石だな…」

 

「話している場合か、あれを見ろ!」

 

「…禍の団か…!」

 

曹操に言われて試合画面を見ると乗っ取られたレーティングゲームの試合場に禍の団の構成員が大勢入ってくる様子が確認できた。

や、ヤバイよ!

急がないと!

 

「取り合えず、試合場に入ろう!緊急事態だもん、これは出張ろうよ!」

 

「ああ、ありがとう。行こう!」

 

サーゼクスさんが運営に連絡をして、部屋に魔法陣が現れる。

全員でそこに乗って、試合場へと転移する。

 

って黒歌も?大丈夫かな…ああ、いやでも…

 

もう遅いよね!

なるようになるしかないか!

 

試合場は凄まじかった。

構成員が大勢入ってきたせいでリアスちゃん達も戦闘中。

ディオドラの姿は見えない…どこに?

 

「会場内の者に避難誘導を!ここは危険だ!」

 

サーゼクスさんの声に運営側が焦ったように返事をするのが少しだけ聞こえた。

会場内もバタバタしてるだろうし…

 

自分もさっさと動こう!

 

「いーすん、サポートお願い!」

 

─はい、お任せください。

 

「ネプテューヌ。俺達も動くが問題はないな?」

 

「うん!あ、でも…」

 

「殺しはなし、だろう?」

 

「あれぐらいなら余裕さ。」

 

「ペルセウス、任せるぞ!」

 

「ああ、護衛はこのペルセウスに任せて貰おう。」

 

曹操は槍を、ジークは剣を出してそれぞれ構成員達の方へと向かっていった。

よーし、自分も久々のバトルパート行くよ!

 

忘れられてるかもだけど、この物語の主人公は自分だからね!

 

前よりも多くのシェアを感じる。 

これも主人公の善行ってヤツかな!

 

 

 

「久々だけど女神の力、刮目しちゃってね!」

 

 

 

女神化をして、パープルハートへと変身する。

刀を手に、冷静に敵を見捉える。

 

「変身完了、一気に行くわよ!」

 

「了解です!」

 

「にゃーん。」

 

黒歌が黒猫のまま何処かへと走り去る。

心配だけど、黒歌なら大丈夫だよね!

 

「ペルセウス、背後は頼むわよ。」

 

「お任せを。」

 

今のシェアなら色々と出来そう!

ふふん、あの時の特訓の成果を見せちゃうよ!

シェアで魔法と同じような現象が出来るならこんなことも出来ちゃうんだな!

 

その名も!

 

「32式プラズマエクスブレイド!」

 

雷の属性を付与したエクスブレイドが敵のど真ん中に降る。

そして地面にぶつかる瞬間、雷が拡散する!

 

『ぐぁぁぁぁぁ!!?』

 

「安心しなさい、峰打ちよ。」

 

「雷に峰打ちはありませんが流石ですネプテューヌ様!」

 

うん、ちゃんと気絶する程度の威力にしておいたよ?

この人達が敵だからって倒すのは違うから。

バタバタと倒れていく構成員達。

そして、残ってる人数は…まだまだいるね。

 

「いーすん、今構成員達が送られてるのはシステムがアクセスされているからなのよね?」

 

─はい。ですが、私ではなく他の…恐らくはレーティングゲームの責任者と思われる方がシステムの奪還をしています。そのサポートに5割を割いていますが…

 

「なら、10割で良いわ。私のサポートよりもそっちを優先して!その方が被害も少なくなるわ。」

 

─分かりました。では…お気を付けて。

 

特訓の成果は発揮されてる。

それに今の一撃でタゲ取り成功したっぽい!

いやぁ、流石はねぷ子さん!主人公らしい働きだよね?

 

ペルセウスの神器で守りも万全だし、このままどんどん行くよ!

 

そう思って、次の技を使おうと思ったら光の槍が構成員達に降り注ぐ。

あれ、これって堕天使の?

 

ってことは…

 

上を見ると、12枚の黒い翼でちょいワル親父な風貌…

 

「おっちゃん!」

 

「やっぱ今の一撃はお前だったかネプ子ぉ!前よりもかなり強くなったんじゃねえか?」

 

おっちゃんがこっちに降りてきて嬉しそうに笑ってる。

よかった、おっちゃんも無事なんだ。

 

「よく戻ってきたな、ヴァーリは一緒か?」

 

「戻ってくる時は一緒だったんだけど…」

 

「そうか…ま、今はこっちに集中するか。つってもすげぇ助っ人がいるんだけどな。」

 

「助っ人?」

 

「誰が助っ人じゃ小僧が。」

 

いつの間にかそこにいたって感じでおっちゃんの隣に隻眼のご老人が立っていた。

うわぁ、見るからに凄そう。というか、おっちゃんより凄そう。

 

「おっちゃん、そこのご老人は…?」

 

「ま、知らないわな。北欧神話の主神、オーディンだよ。」

 

「オーディンって、あのグングニルとかで有名な?」

 

「そうそう、ゲーム知識か?」

 

「ええ…私はネプテューヌ。この姿はパープルハートよ。」

 

「ペルセウスです。」

 

「ふむ…」

 

嘘ぉ!?本当にビッグネーム!?

何でここに有名な神様がいるの?

ど、どうしよう、サインとか貰おうかな?

 

「北欧の主神が何故ここに?」

 

「訳アリじゃ。それよりも…良い尻じゃな。」

 

「ひゃうっ!?」

 

サインを貰うか迷ってたら、オーディンにお尻を触られた。

…このエロ親父。

 

「ふん!」

 

「ぬおぉ!?」

 

「おお…良い蹴り…」

 

オーディンに結構強めに蹴りを叩き込む。

ちょっと、自分も女の子なんですけど!

それを許可もなくお尻触るとか最低過ぎるよ!

サインなし!絶対なし!

 

「ペルセウス、塩撒いて。」

 

「確かに度しがたい行いでしたが、相手は主神です。

下手な事は…」

 

「許してやってくれよ。あの爺さんセクハラしないと気が済まねぇんだ。」

 

「だからって初対面でお尻を触るなんて女の敵よ。」

 

「嫌われちまったな爺さん。」

 

「いてて…最新の女神なだけはあるわい…」

 

「それで、爺さん。やるのか?」

 

「まあ、の。なぁに一撃見舞ったら儂はもう何もせんぞ。」

 

「待って、もしかして彼らを殺すつもり?」

 

とてつもなく嫌な予感がしてオーディンに聞く。

もしそうなら止めないと。

悪いことをしたとしてもそれはいけないよ!

 

オーディンは自分の問いがおかしいのかケラケラと笑う。

 

「おかしな事を。奴らは刃をこちらに向けたのじゃぞ。」

 

「だとしても、殺して終わりだなんて。殺意に殺意で返していたら憎しみを生むわ。」

 

「…なるほど、お主は儂らのような神と違い人の感性が極めて高いようじゃ。」

 

「爺さん、ネプ子はこういう奴なんだ。だから俺は気に入ってる。

あまり、無下にしないでやってくれねぇか?」

 

「生意気な鴉が過保護なものよ…仕方あるまい。」

 

「ありがとう、オーディン。」

 

「お主らには勿体ない程じゃなアザゼル。」

 

「別に俺らの勢力じゃねぇよ。」

 

一応自分、無所属だしね。

それでも友達のためなら味方をしたい。

思い切り首を突っ込む。

主人公なのもそうだけど、それがネプテューヌっていう自分だし。

 

「どれ、主神の力のほんのちょびっとだけ見せてやるかのう。」

 

オーディンの力が高まるのを感じる。

今の自分との差が嫌でも感じるっていうか…これが一神話のトップなんだなって。

 

そんな神様も倒せる可能性のある神滅具ってやっぱり凄いんだね。

 

「禍の団よ、我が名はオーディン。名誉が欲しくばこの首、取って見せよ。」

 

『─おぉぉぉぉぉ!!』

 

その言葉は何だか敵を惹き付けるような言葉。

何かに惹かれるかのように構成員は揃ってオーディンの方へと向かってくる。

 

ニヤリと笑ったオーディンは槍を向ける。

 

「そこの女神に感謝せよ─グングニル。」

 

グングニル。

その一言と共に槍から放たれた一撃。

加減されてるとはいえ、それは向かってきた構成員全員を戦闘不能に陥らせるのに十分だった。

 

自分が言わなかったらもっと強かったんだよね、これ。

よ、よかった!構成員の命を救ったよ!

 

倒れ伏してる構成員達が突然出てきた鎖に縛られて動けなくなる。

 

「流石は主神オーディン…トップは伊達じゃねえな。」

 

「あれで加減…」

 

「私のお願いを聞いてくれてありがとう…」

 

「なぁに、美女でなければ断っておったわい。」

 

「気紛れということ?」

 

「神とは基本そういう者じゃよ。しかし…お主にはそういったものがない。本当に珍しい神じゃ。」

 

「だろ?」

 

「そんなに…?」

 

「ギリシャ調べてみ?やべぇから。」

 

「また後でね。いーすん、そっちはどう?」

 

─はい、先程奪取に成功しゲートを閉じました。しかし、最後に何名かの転移を許してしまいました。

 

「いいえ、そっちは私達でどうにかするわ。ありがとういーすん。」

 

─はい、ではそちらのサポートに戻ります。

 

流石いーすん!と責任者さん!

でも、誰が転移してきたんだろう?

 

「そこに居るのか。」

 

「分かるの?」

 

「うむ…まあ、儂の仕事は終わりじゃ。従者をあっちにほっぽったままじゃったのを忘れておった!ではさらばじゃ。」

 

「自由な爺さんだぜ…ネプ子、頑張れよ!」

 

おっちゃんがオーディンと一緒に行っちゃった。

まあ、護衛みたいな感じだと思うし、仕方無いね。

もう殆ど構成員も居ないみたいだし…安心かな?

 

「じゃあ、一誠達と合流を…──」

 

 

 

─ネプテューヌさん!

 

 

 

「っ!なに!?」

 

「これは、転移…!ネプテューヌ様!」

 

いーすんが呼んでくれた時にはもう既に自分の足元に魔法陣が。

いつの間に…!?

今まで隠れていた…いや、もしかして…

 

今、転移の魔法陣を足元に作った!

 

ペルセウスがこっちを弾き飛ばそうとしてくれるけど、それよりも早く転移が始まる。

 

ああもう、さっきから急に何か起こってばっかだなぁ!

刀をしっかりと握って次の事態に備える。

 

転移先は…聖堂みたいな?

でも、レーティングゲームの試合場っぽいから…多分、ここにいるのは。

 

 

 

「─ああ、会いたかったよ女神様。」

 

「やっぱり、貴方よね…ディオドラ・アスタロト!」

 

玉座に座っていたのはディオドラだった。

レーティングゲームをこうして台無しにした上、多くの人に迷惑をかけた…これはもう、逮捕だよ!

 

「おっと、妙な真似はやめてもらおう。」

 

「…あーちゃん!?」

 

「ネプテューヌ、さん…」

 

縛られたあーちゃんがディオドラの近くで倒れている。

よく見れば、殴られたような痕が…

何て酷いことを…!

 

今すぐにでもはっ倒したい…でも…

 

「アーシアの生殺与奪の権利は僕が握っている。分かるね?」

 

「…外道ね。」

 

「何とでも。それで、どうするんだい?」

 

「……分かったわ。」

 

─ネプテューヌさん…!

 

(仕方無いよ、いーすん…あーちゃんの為だよ。)

 

刀を手放す。

仕方無いことだから。

いーすんが何かしても、もしかしたらを考えると…

 

ディオドラは刀を手放した自分を嘲笑う。

 

「アハハハ!そんなに大事かい?アーシアがさぁ。」

 

「貴方に言う気はないわ。それで、何が望み?」

 

「従順じゃないか、女神様。まあいいや…そうだなぁ。」

 

 

 

「─僕の下僕になって貰おうかな。」

 

そう言って、ディオドラは懐から悪魔の駒を取り出した。

またまたピンチだね、これは。




ネプ子、またまたピンチ!
悪魔の駒でそのまま悪魔になってしまうのか?
人質なんてセコイぞ!

しかし、ディオドラ君。


本当に良いのかね?


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誰がとは言わないけど自業自得だよね!

このネプテューヌ凄いよぉ!流石プラネテューヌのお姉さん!

前回までのあらすじ!
オイオイオイオイオイ、死んだわアイツ。
ほう、悪魔の駒ですか…大したものですね。


ディオドラクッキング、今回のメニューは?


悪魔の駒。

悪魔じゃない存在を転生させて悪魔にするための道具。

ディオドラから投げてこっちにまで転がってきた駒を見る。

 

「さあ、なるのかい?ならないのかい?」

 

「…」

 

「ネプテューヌさん、そんなことする必要は…あぐ…!」

 

「アーシア、君もうるさいね。少しは黙って見れないのかい?」

 

「あーちゃん!やめなさい、ディオドラ!」

 

「なら、早くしてくれ。」

 

ディオドラがあーちゃんの腹を少し踏みつける。

あーちゃんの顔が苦痛に歪む。

 

悪魔になるしかないのかな。

 

─ネプテューヌさん、いけません!女神様がそのような…!

 

(あーちゃんを助ける為だもん…仕方無いよ。)

 

悪魔の駒を手に取る。

騎士の駒…木場君と同じく速さ特化の駒だね。

よし!

 

なっちゃいますか!

 

「約束しなさい、あーちゃんを解放すること…」

 

「ああ、するさ。さあ早く!」

 

「…お姉、様…」

 

悪魔の駒を自分の胸に当てる。

そして、悪魔になることを受け入れる。

…ごめんね、皆。

 

ああでも、何だろう。

女神としての自分、一人の女の子としてネプテューヌの両方を見てくれたヴァーリや弟の一誠に申し訳がないかな。

 

悪魔の駒が光輝く。

 

…やっぱり、嫌だなぁ。

 

 

 

─これは…!

 

 

 

光が収まる。

これで、自分も悪魔かぁ…

 

そう、思ってたんだけど…

 

─ネプテューヌさん。

 

(どうかしたの?)

 

─悪魔の駒、まだ手にありますよ?

 

「えっ?」

 

「な、なんだ?どういうことだ!?」

 

「…今ね!」

 

「へっ?」

 

何だかディオドラが動揺してて自分もよく分かってないけどこれはチャンス!

少し助走をつけてジャンピングパンチだよ!

 

「歯を食い縛りなさい!」

 

「ぐはぁぁ!?」

 

シェアで強化した拳はディオドラの顔を捉えてめり込んだ。

そのまま、殴り抜ける!

ディオドラ君、玉座ごとぶっ飛んだー!

 

う、うん!事態は切り抜けたよ!

流石自分!

 

─恐らく、ディオドラの実力よりもネプテューヌさんのスペックが高すぎるせいで悪魔の駒が弾かれたのかと。

 

(思ったより拍子抜けな理由だった!?)

 

いや、うん…納得はしたよ。

まあ、主人公は常に成長してるから置き去りにしてしまっても仕方無いよね!

 

あーちゃんの鎖だけを刀で断ち切り、解放する。

 

「あーちゃん…こんな傷ついて…!」

 

「ネプテューヌさん…よかった…私のせいで悪魔になっていたら、私…!」

 

「結果的にはならなかったのだからいいのよ。

人質のいないディオドラなんて私がしっかりと倒すから安心して。」

 

「はい…!」

 

泣いているあーちゃんを抱き締めて、背中を優しく擦ってあげる。

これ、一誠も好きなんだよね。

昔の話かもだけど。

 

にしても、乙女の顔を殴るなんてとんだゲス野郎だったね!

これは何発か殴らないと気が済まないよ!

鉄拳制裁待ったなし!

 

ということで遅くなったけどやっほー!

今しがたゲス野郎ディオドラを殴ったネプテューヌだよ!

多分、ディオドラって殴り飛ばされるだけでガッツポーズ取られる類いの人だよね。

 

「ば、馬鹿な…何故、悪魔にならない…僕はアスタロトだぞ…!

ディオドラ・アスタロトなんだぞ!」

 

「そんなこと言われても、貴方が私よりも強さが劣った…それだけじゃない。貴方の努力不足よ。」

 

「努力だと…ふざけるな!」

 

「…何はともあれ、貴方の罪は明らか。罪を償いなさい。」

 

刀を向けて、ディオドラを睨む。

まだ抵抗する意思を見せている。

手札があるのか、それとも諦めが悪いだけか。

前者なら更に警戒を、後者ならただ気絶させるだけ。

 

でも、ああいう様子を見る限り後者かな。

 

ディオドラに攻撃を仕掛けようとした時、後ろから走ってくる音が。

 

「ディオドラァ!!ってねぷ姉ちゃんがなんで!?」

 

「転移させられて来たのよ。あーちゃんなら救出しておいたわ。

ちょっと危なかったけどね。」

 

「危なかった?アーシア、どう言うことだ?」

 

「実は…」

 

あーちゃんが事細かに説明する。

自分が追放されたのはディオドラの策略であること、眷属悪魔全員がシスターや聖女ばかりであり、調教をしていたこと。

そして、あーちゃんだけじゃなく自分の事も下僕にしようとしていたこと。

 

「私は、利用されて…それで…!う、ぅ…ひぐ…!」

 

「あーちゃん…」

 

…あーちゃん、辛かったね。

痛みを思い出したのか涙をまた流すあーちゃん。

 

「…分かった。」

 

一誠はそれを見て、聞いて前へと歩き出す。

 

「お前…」

 

「何だい、赤龍帝?君のような下等な悪魔に僕が…」

 

「ドライグ。」

 

『WELSH DRAGON BALANCE BREAKER!!

BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost…』

 

「負けるわけ、が…」

 

静かに禁手化をした一誠。

どんどんとその力を倍加させていく。

顔が隠れているせいで表情は読み取れないけど…

怒ってる、叫ぶのすら忘れるほど怒ってる。

 

「な、な…!?何だその力は!く、来るなぁ!?」

 

必死に遠距離攻撃をして近付けさせまいとするものの一誠はそれを腕を払うだけに終わる。

そして、その距離が僅かになった時…

 

「──!!?」

 

ディオドラがくの字に曲がって吹き飛んだ。

 

…今、一瞬で近付いて腹を殴り飛ばしたの?

 

吹き飛んでるディオドラに追い付いた一誠が背中を蹴ってこっちまで吹き飛ばす。う、うわぁ…

地面に転がるディオドラは恐怖と痛みに支配されて涙とか鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。

 

「ゲホッ、ゴボっ!ひ、ぃぃ!?や、やめてくれ!許し…ぐぇっ!」

 

ディオドラの胸ぐらを一誠が掴んで持ち上げる。

 

「アーシアだけに飽きたらずねぷ姉ちゃんにまで手を出しやがったな…おい、くそ悪魔…」

 

 

 

「お前ここから生きて出られると思うなよ」

 

 

 

「あ、ぁぁ…ア"ァ"ァ"ァ"ァ"!!?」

 

底冷えするような声。

心の底から怒りを抱いて、殺意を乗せた言葉。

…初めて、一誠が怖いと思ったかも。

 

ハッ、とボーッとした状態から復帰する。

一誠が拳に力を溜めて殴ろうとしている。

だ、駄目だよ!

 

慌てて一誠に駆け寄って力を溜めてる腕を掴む。

 

「駄目よ一誠!」

 

「…ねぷ姉ちゃん。」

 

「こんな外道を殺す…そんなの絶対に駄目。」

 

「アーシアが傷付けられたんだぞ、ねぷ姉ちゃんが無理矢理悪魔にされそうになったんだぞ!!他にも、死んだシスターを無理矢理生き返らせて下僕にして…それでもこいつを庇うのかよ!?」

 

「…それでも、そうだとしても…罪を償わないと。

こんな外道でも償いもせずに死ぬなんてそんなのは逃げよ。」

 

「……」

 

「お願い、一誠…貴方にこんなことで人殺しをさせたくないわ。」

 

「……おいくそ悪魔。」

 

「ァ、ァァ…?」

 

「ねぷ姉ちゃんに感謝しろ。俺だけだったら…絶対に顔も残さなかった。」

 

ぶんぶんと顔を縦に振るディオドラがとても哀れに思えた。

そうして舌打ちをした後掴んだ手を放す。

あーちゃんとは距離もあるし、何より心がボロボロなディオドラじゃもう何も出来ないはず。

 

一誠が深呼吸を一回。

 

「…悪い、前が見えなくなってた。」

 

「大丈夫よ。一誠は誰かのために怒れる自慢の弟…謝ることないわ。むしろ、私の分まで怒ってくれてありがとう。」

 

「…あー、その…おう。」

 

「ふふ、照れ屋ね。あーちゃん、もう大丈夫よ。」

 

「はい…ありがとうございます、一誠さん、ネプテューヌさん…」

 

笑顔で感謝するあーちゃん。

その顔を見てようやく胸の内の黒い感情が消えていく。

…うん、ちょっと危なかった。

またコカビエルの時みたいになりかけた。

 

一誠があそこまで怒ったから冷静になったけど…

 

─ネプテューヌさん、少しよろしいですか?

 

(いーすん?)

 

─アーシアさんに何か術を使ったかのような形跡がありました。しかし…誰かにその術を解除したようなのです。遠隔から何処かへ転移させるための…

 

(ディオドラが?)

 

─いえ、彼とは違いますが…

 

となると、誰に…

 

あれ、そういえば…

数名の転移を許しちゃったって言ってたよね。

…まさか。

 

何となく、事態は終わってないことを理解した。

まだ攻撃は終わってない!

 

「っ、一誠!」

 

それに気付いて、気を抜かないでいたお陰で一誠の後ろから飛んでくる魔法を刀で弾くことに成功した。

 

「うわ、何だ…!?ディオドラは倒しただろ!?」

 

「まだ誰かいる…隠れてないで出てきなさい!」

 

そう言うと、コツコツと音を立てて魔法を放ってきたであろう人物が姿を現す。

長い茶髪で軽鎧にマントを着用した男の人だ。

 

警戒して、

 

「上手く行くとも思えなかったが、まさかここまで酷いとは思わなかったぞ。ディオドラ・アスタロト。」

 

「しゃ、シャルバ…!助けてくれ!貴方なら出来るだろう?

オーフィスから蛇を貰った貴方なら出来るだろう!?

助けてくれぇ!」

 

「あの野郎…」

 

一誠が睨むとシャルバって人に助けを求めてたディオドラは悲鳴を上げながら助けを乞うのをやめる。

何だか、完全にトラウマ出来てるよね…

 

シャルバはディオドラをゴミを見るような目で見た後、興味が失せたように視線をこっちに移す。

 

「女神は貴様だな?」

 

「ええ、そうよ。私はネプテューヌ…シャルバ、でいいのよね。」

 

「ベルゼブブが名前の後ろにつく。…なるほどな。

良いことを教えてやろう。」

 

「?」

 

「クルゼレイ・アスモデウスは禍の団を裏切った。」

 

「!クルゼレイが…そう。」

 

「裏切ったので、殺そうとしたが邪魔が入り右腕と左足しか奪えなかった。」

 

「…え?」

 

右腕と、左足。

裏切ったから…殺そうと?

 

…確かに、それくらいされてもおかしくない。

でも…うん…

クルゼレイが無事なのはよかったけど、この人は…

何とも思ってない。

ただ裏切り者だから殺そうとした。

流石テロリストって感じだよ。

 

「カテレアがどうの言っていたが吹き込んだのは貴様だろう?」

 

「…そうよ。」

 

「おい、シャルバ!お前の目的はなんだ!?」

 

「知れたこと。今の冥界を滅ぼし、新たなる悪魔の世界の創造。

それだけが我が宿願よ。」

 

「貴方は四大魔王がそんなに憎いの?」

 

「憎いとも。初代ルシファーの子孫の白龍皇も今の冥界も憎い!

…まあ、今はそれはいい。問題は貴様だ、女神。」

 

「私?」

 

「貴様のせいで禍の団は多くの者が裏切った。

英雄派、クルゼレイ…白龍皇も裏切ったようなものだ。」

 

「人望がないのね。まあ、私は主人公だから。」

 

「ふん……チッ、クルゼレイめ。贖罪のつもりか、下らん真似を。」

 

…?

あーちゃんを見て忌々しそうに、吐き捨てるようにクルゼレイの名前を言う。

クルゼレイが何かした?

 

もしかして、あーちゃんにかかってた術を解いたのはクルゼレイなのかな?

 

「それで、まだやるつもり?貴方一人でこれから来る人達全員を相手取れる?」

 

「確かに、貴様の言う通り多勢に無勢というやつだ。

だが…ここで貴様らを倒すこと自体は出来ないことではないぞ?」

 

「─!」

 

シャルバの魔力が高まるのを感じる。

蛇…そっか、オーフィスから貰ってたんだね。

多分、自分の来る前に事前に貰ってたんだと思う。

 

「少しの間、憂さ晴らしに付き合って貰おうか。」

 

「来るわよ、一誠。」

 

「おう。作戦は?」

 

「いつも通り、姉弟のコンビネーションでいくわよ。」

 

「了解!」

 

「なるほど…そこの悪魔を守りながら戦えるかな?」

 

あーちゃんを守りながら戦わないといけない…そんなのは百も承知だよ!

それくらい出来ないと主人公張れないからね!

 

シャルバが大量の蝿を出して、それにいくつもの円陣を組ませる。

 

─魔力反応。攻撃、来ます。

 

いーすんの言う通り、魔力の波動が無数に撃ち出される。

 

「一誠!」

 

「おう!」

 

魔力の波動をそれぞれの武器で弾きながらシャルバの動きを注視する。

シャルバは余裕の表情で攻撃を続ける。

蛇のお陰とはいえ強い!

 

蝿自体も襲い掛かってきて体に傷が出来ていく。

あーちゃんが近くで治してくれているけど…

ジリジリと追い詰められているのは確か。

 

確実な勝ち方だ。

間違いなく、このままいくと負けちゃう。

 

そう、このままいけばね!

 

シェアを駆使して刀に炎を纏わせる。

更に更にー!

シェアの炎が自分の意思に応えるように刀の倍以上延びる。

新技いくよ!

 

「燃えなさい!フレイムブレイド!」

 

「っ!ぬぅ!」

 

「まんまじゃねぇか!」

 

長い炎の刀を横に振るう。

流石にまずいと判断したのかシャルバは後ろに大きく跳んで攻撃範囲から逃げる。

けど、これで蝿の数が減って動きが乱れた!

 

「新技なんだから仕方無いでしょ!ほら、突っ込みなさい!」

 

「ああ、往くぞぉ!」

 

「チィ、来るか…!」

 

かなり倍加した一誠の身体能力は馬鹿にならない。

シャルバとの距離を詰めるのだって数秒もかからない。

 

一気に距離を詰めた一誠がシャルバへ殴りかかる。

 

「力がある…!だが!」

 

「ぐ…!」

 

「吹き飛べ!」

 

ガードするんじゃなくて躱しながら、蝿を一誠の前へと展開して魔力の波動を放つ。

耐える一誠だけど一際大きい波動には吹き飛んでしまう。

 

「ぐあっ!くっそ…!」

 

「流石は赤龍帝と女神といったところか…」

 

「一誠、大丈夫!?」

 

「まだまだこのくらい!」

 

「…まあいい、目的は果たした。」

 

「目的?」

 

「クク、なんだと思う?」

 

チラリ、とディオドラを見るけど、特に何かされた様子もない。

…こっちの実力を見に来た?そんなことをする必要がある?

全力でこられたらこっちも周りを考えないで動く必要があるし…

 

一体、何の目的が…?

 

シャルバはくつくつと笑う。

 

「答え合わせはまた別の機会にしようではないか、女神。」

 

「逃げる気?」

 

「そうさせてもらう。貴様らに一手与えるようではあの魔王を殺すことは出来そうにないからな。先に貴様らに接触してよかった。

感謝するよ。」

 

「嬉しくねぇ感謝だ…」

 

「では、また会おう。」

 

シャルバは笑いながら転移をして去っていった。

 

…一体、何が…?

 

いや、今はそれよりも皆の元に戻ろう。

こっちに来るのが遅れたのも理由がありそうだし…

 

「一誠、皆は?」

 

「それが、フリードや構成員達が襲い掛かってきてよ。

皆に任せて来たんだけど…大丈夫かな。」

 

一誠が禁手を解除したので、自分も女神化を解除する。

 

「大丈夫だよ!サーゼクスさんや曹操達がいるから余裕余裕!

でも、フリードもいたんだ?」

 

「ああ、アイツかなりおかしくなってたぜ。

自分の体を色々と改造したらしいし…」

 

…そうまでして、何がしたいんだろう。

悪魔を殺して、何かを殺して。

この先に何があるんだろう?

 

「取り合えず、皆戻ろう!私も疲れちゃったよ~…」

 

「おう。アーシア、立てるか?」

 

「は、はい!」

 

「…ディオドラはどうする?」

 

「一誠、頼んでいい?」

 

「分かった。おい、何かしたら鼻折るぞ。」

 

「ひぃぃ…」

 

うわぁ…自分でもドン引きレベルだよ、これ。

あーちゃんを立たせて、安心させるためにも手を握る。

 

ディオドラは一誠に引き摺られている。

うん、まあしたことがしたことだしね。

ディオドラの眷属悪魔達はどうなるんだろう…その辺もサーゼクスさんと話そうかな。

 

シャルバのせいで釈然としないまま、皆の元へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サーゼクスさん達と合流して、ディオドラをサーゼクスさんに引き渡した。

勿論、今まで何をしてきたかも説明した。

そうしたら、サーゼクスさんは

 

『…そうか。』

 

それだけ言って、こっちに謝罪と感謝の言葉を送った。

リアスちゃんに後を任せてその場を去った後、リアスちゃん達に色々と心配されたので、大丈夫だと伝えるとホッとされた。

フリードは後一歩だったけど逃したらしい。

 

…まあ、仕方無いよね。

 

それで、今自分が何処にいるかというと…

 

医療施設にいます!

治療中って訳じゃないよ?

お礼も兼ねてお見舞い!

あーちゃんも行くって言ったけど怪我もあるからまた今度にしなさいってリアスちゃんが言って渋々って感じだった。

まあ、それもあるんだろうけどリアスちゃんはまだ警戒してるんだろうね。

だから、代わりに自分が来ました!

 

「リンゴがいい?バナナがいい?それともプリン?」

 

「何故いきなり果物ではなくプリン…いや、それよりもだ。

何故ここに来た?」

 

「やだなぁ、あーちゃんの術を解いてくれたじゃん!

そのお礼だよ、クルゼレイ!」

 

右腕と左足がない状態で患者としてベッドに寝かされているクルゼレイ。

何だか、少し柔らかい感じ?

 

眉間に皺寄るよりマシだよね!

 

「…お前には感謝する。」

 

「そんなお礼言われることしてないよ。結局、私の我儘だから。」

 

「そうだとしても、お前のその我儘によって考え直すことが出来た。…あの後、俺はシャルバに殺されそうになってな。」

 

「うん、でも誰かが助けてくれたんでしょ?」

 

「ああ…英雄派の面々だったか。ギリギリのところで救われた。

傷の手当てをしようとしてくれたが、そこまで施しを受けるのは違う気がしてな。…それで、無理矢理ここに転移して自首をした。」

 

「…カテレアの事は聞いた?」

 

「ああ、すぐにな。どうやら、今の俺と同じように丁重に扱われてるらしい。…今度、面会しに行く。」

 

「そっか…頑張ってね。」

 

「ああ。」

 

英雄派…多分、ゲオルグ達だよね。

よかった、ギリギリ間に合ったんだ。

でも、どうして助けたんだろう?

悪魔を多少なりとも恨んでてもおかしくないのに。

 

クルゼレイは少しふっと笑う。

 

「まさか、オーフィスがあそこまで精神的成長をしているとは思わなかったぞ。」

 

「オーフィスが?」

 

「何せ、俺を助けるよう言ったのはオーフィスらしいからな。

あの場には居なかったが…」

 

「…無事かな?」

 

「実力ではある一匹を除いて勝てる者はいないだろう。

…ネプテューヌ、お前は正しい。正しすぎるのだ。」

 

「どういうこと?」

 

「正しいだけで人は納得しない。どれだけ心が清くても、どれだけ優しさに溢れていようとも…許容できない者はいるのだ。」

 

「…うん、私の事が嫌いって人もいると思う。

でも、それでも私は私を貫くよ。主人公だからね!」

 

「ふっ…忘れるな、必ずお前を排斥しようとする者が現れる。

お前でも、相容れない存在が…必ずだ。だからこそ、より強くなれ。その正しさを貫けるように。」

 

「…うん!」

 

しっかりと頷く。

クルゼレイは言いたいことを言い終えたのか目を閉じる。

…寝ちゃった。疲れてたのに、無理させたかな。

 

静かに病室を退室する。

部屋の外には曹操達が待っていた。

ペルセウスはまだ守りきれなかった事を心底悔やんでる。

いいよって言ったのになぁ…

 

「…ねえ、曹操。」

 

「何だ?」

 

「私、頑張るね。こうしてついてきてくれる曹操達や一誠達に胸を張れるように、もっと頑張るよ!」

 

「…何か言われたようだな。分かった、俺達も付き合おう。」

 

ふっと笑う曹操の表情は何処か暗い。

どうかしたのかな?

何だか…心配とか悔しさとか…そういうのが混じってる。

 

「曹操?どうかしたの?」

 

「…いや…何でもない。」

 

そう言って、それ以上言うことはないって雰囲気を出す。

…そう言う態度を取られると、気になるけどよくないよね。

ペルセウスやジークに視線を向けても首を横に振るだけ。

 

…うん、分かった!

いつか話してくれるよね!

 

「曹操!」

 

「ん?」

 

「言いたくなったらで良いから…あまり思い詰めないでね。」

 

「…ああ、分かった。」

 

そう言って、頭に手をポンポンとされる。

む…子供扱いしてない?

ねぷ子さんだってもう彼氏出来てもいい歳なんだよ?

 

─見た目が子供だからじゃないですか?

 

(何をぅ!?私だって女神化すれば誰もが振り向く美女なんだからね!)

 

─そんなことで女神化はしないでくださいね?お願いですから。

 

(どーしよっかなー)

 

ジト目になってるであろういーすんを無視して、色々と考える。

 

何だか、自分の知らないところでどんどんと事が大きくなっていく。

そんなモヤモヤとした感じが自分の中で渦巻いていく。

 

でも、きっと皆と一緒なら乗り越えられるよね。

 




最早哀れとしか言い様のない悪役、ディオドラ。

しかし、シャルバ君は原作と違ってまだ賢さを見せてる方だ!
彼の今後に期待しよう!

それはそれとして、次回でこの章も後一話の命だ…ブ○リー、お前もその話数と共に死ぬのだ…


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私無し!?タイトル詐欺だよ!?

これがシャイニングねぷ子というものだ!(挨拶)

今回、ねぷ子さんは出ません。



それは当然と言えば当然だった。

分かってたことではあった。

だから、これから起こるだろう事も…漠然とした感覚だが分かった。

 

英雄派が禍の団を抜ける際、当然ながら疑問の声は上がった。

今までやっていたことを何故?

いきなり心変わりした、そう思われても仕方がない。

思いきりが良すぎたんだ、俺達は。

だからこそ、こうなるかもしれないと分かっていた筈だ。

 

何名かは絶対に反発するだろうと。

 

「なあおい、曹操。何でアンタについていくと決めたか分かるか?」

 

「分かっている。だがそれでも…俺達に道を示してくれたのは確かなんだ。」

 

「恐ろしい…女神とはこれ程まで人の心を操れるというのですか。」

 

「テメぇ、リーダーが操られてるっていうのかよ!」

 

「待て。」

 

「…。」

 

反発の声は当然のように広がる。

人外に恨みを持つものもいるし、それを抱いてもおかしくない程の事をされてきたことは知っている。

 

俺は…それでも俺は、今とは違う道を歩んでみたかった。

ただの興味と思われてもいい。

だが俺にはそれが本来歩むべき道だったのだと信じたい。

愚かな己が許せないからなのかもしれないし、自己満足でしかないのかもしれない。

 

「曹操、お前はあの女神についていく。そういうことなんだな?」

 

「ああ。」

 

「なら、俺は降りる。人外は消えるべき存在…俺はそうお前に語ってお前はそれを理解した上で英雄派に入れた。

だというのに、お前から俺を裏切った。」

 

「…ああ、否定しない。」

 

「ハハハ!あの曹操が女神なんぞについていく!?よりにもよって、神!神と来たか!神々がどれだけ馬鹿で屑なのか分かってるだろうがよ。どんな名前してやがんだその女神は!」

 

「ネプテューヌ。それが彼女の名前だ。」

 

まずは一人が降りた。

かつての自分の偉業を自慢するような奴ではあったが実力はかなりの物だった男。

彼の恨みは俺も知っている。

侮蔑する訳でもなく、ただ淡々と降りると言った。

 

名前を聞かれたから名前を告げた。

すると、俺を見下して嗤うような女の顔が変わった。

真顔。 

彼女が本当に怒りを抱いている時になる顔だった。

こうなることも、予感はしていた。

だが、何も伝えずにいるのは違うと思った。

だから伝えた。

 

「ああ、そうかい…なら、俺も降りる。」

 

「分かった。」

 

「世話にはなった。だが、それだけだ。恩はとっくに返した。

テメぇとの関係はそれで終いだ。」

 

また一人が降りた。

メンバーの中で特に神を嫌っていた彼女の事だ。

嫌いになるのも分かっていた。

それに、先程の顔はそういうこと(・・・・・・)なんだろう。

だから、やはり止めることはしなかった。

その名前はある神によって人生が狂わされた者の名であるから。

 

「…あの。」

 

「そうか。君も…そうだな。」

 

「うん。」

 

彼についていくように一人が抜けた。

彼に人体実験の実験体にされている時に救われ、彼に心酔しているのは分かっていた。

まだ少女と呼ぶべき見た目と齢。

ついていくのは必然だろう。

 

「嘆かわしい。女神に洗脳されてしまったのですね…」

 

「んだとテメェ!」

 

「やめないかヘラクレス。そう思われても仕方無い。」

 

盲目の彼は嘆くように、恐怖するようにそう言った。

そうか、彼にはそう聴こえたのか。

これも、自分の行いの結果なのかもしれない。

 

「恐ろしい女神だ。所詮、神には…女神には人の心など分からないのです。」

 

そう言ってまた一人が降りた。

盲目であり、神器を持つが故に迫害を受けた。

人嫌いであり悲観的な彼には俺達が滑稽に映ったのだろうか。

 

「…なら、ついていく。」

 

「彼が友人だからか?」

 

「ん。」

 

淡々とした様子で彼女は盲目の彼についていくと決めた。

仲がいいのは知っていた。

…正直、戦力としては彼女一人で無双出来る程なのでいて欲しかったが仕方無い。

 

この少女は迫害を受けた訳でもなく、誘ってみたら入った。

思い入れも大してない組織にずっといたいとは思わなかったのだろう。

 

「み、皆…」

 

「…俺としてはお前に残って欲しい気持ちはある。」

 

「ゲオルグ…でも…」

 

「心配か。」

 

一人だけ、とても迷っていた。

彼女は天才だ。

とても頭がよく、技術力も高い。

その名前の通り、多くの実績を残せる程には。

そんな彼女は穏健派だ。

思えば、協力的じゃなかったのもテロ行為自体をすべきではないと思っていたのだろう。

 

「…見捨てられないわ。」

 

「そうか。なら…アイツらを頼む。」

 

「…はい。」

 

そう言って、彼女も降りた。

優しい彼女が仲間を見捨てることをしない…そんなことは分かっていた。だけど、この結果になってしまったから降りた。

当然と言えば当然だった。

 

そうして、6人。

6人が英雄派を降りた。

俺は止めることはしなかった。

出来る筈もない。

テロ行為をして、思い上がっていた俺には…出来る筈もない。

 

6人共、俺達とは別の道を歩む。

仕方のないことだ。

むしろ今までよくついてきてくれたとすら思う。

だからこそ、彼らがどんな生活を送るのか分からないが応援くらいはしたい。

 

援助が必要ならしたいとも思う。

情けない俺に何が出来るかは分からないが。

 

…だが、もし。

もしも、俺のようなろくでなしになるのであれば。

その時は…

 

俺はそれを止めるために全身全霊を以て貫かねばならなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禍の団襲撃後、まだ冥界にいた俺達はネプテューヌについていき、クルゼレイ・アスモデウスのいる病室まで向かった。

ネプテューヌは一人でいいと言って入っていったので俺達は待機だ。

 

待っている間、ジークフリートとペルセウスに任せて病院を離れ、あちらに残したゲオルグ達と情報共有をしようと連絡を入れた。

 

「ゲオルグ、曹操だ。」

 

『曹操か…』

 

「…?どうした、ゲオルグ。」

 

何やら、掠れたような声。

 

『…報告する。クルゼレイ・アスモデウスはそちらにいるな?』

 

「ああ、入院している。」

 

『ならばよし…クルゼレイ・アスモデウスをオーフィスの指示で逃す際、シャルバ・ベルゼブブと交戦した。シャルバ単体ならば問題なかったが…アイツら(・・・・)までいるのは予想外だった。』

 

「待て、どういうことだ?お前らは無事なのか!」

 

『問題ないとは言いづらいが…死んではいないさ。

だが…そうだな、俺達は合流した方がいいだろう。』

 

ゲオルグの言うアイツら。

疑問が浮かび上がる。

…いや、答えはもう分かっているが頭が拒否している。

 

「…分かった。魔王サーゼクスと話をつけて拠点は手に入りそうだ。後日連絡をする。座標を送るからそこに転移してきてくれ。」

 

『ああ。…それとだな、実に不甲斐ない事だが。

絶霧(ディメンション・ロスト)の一部が奪われた。』

 

「…本当に無事なのか?魂に傷がついたも同然だろう!」

 

『何、その際機能の殆どを防衛した上で切り離したから損傷自体はそれほどない。だが曹操…気を付けろ。アイツらは、アイツは間違いなく制御が利かなくなってるぞ。』

 

「…お前の言うアイツらとは…」

 

 

 

「英雄派から降りたあの6人でいいんだな。」

 

 

 

あの時、降りると言って消えていった仲間達。

6人共…一緒だったのか。

 

『ああ、そうだ。』

 

「…そうか。ならば、俺達が始末をつけなければならないな。」

 

『ネプテューヌに言わない気か?』

 

「これは俺の仕出かした事だ。英雄派から発生した事なんだ…そんなことに付き合わせる必要はない。」

 

『必要はない、か。確かにな…だが、ネプテューヌは間違いなく首を突っ込むぞ。そういう奴だからな。』

 

「…だろうな。眩しい奴だよ、本当に。」

 

『それで、そっちの状況も教えてくれ。何があった?』

 

「ああ、そうだったな…」

 

ネプテューヌは必ず首を突っ込むだろう。

…きっと、その時俺は突っぱねる事が出来ない。

彼女の優しさに甘えてしまうだろう。

 

俺はゲオルグに説明をしてから、その後も会話を少しして通信を切った。

ジークフリート達の元へと戻る。

 

「曹操、どうだった?」

 

「少々厄介な状況になりそうだ。後で言おう。」

 

「了解。」

 

そうして、ネプテューヌが病室から出てきた。

 

何かを決めたような顔で俺達に胸を張れるように頑張ると言ってきた。とても、いい顔だ。

俺にはまだ出来そうにない顔だ。

 

羨ましいという感情が出たのか、後ろめたいことがあるからなのか…少し暗くなっていたようだ。

感情の起伏に鋭いネプテューヌにどうかしたのかと聞かれて、突っぱねるように言ってしまった。

 

だというのに

 

「言いたくなったらで良いから…あまり思い詰めないでね。」

 

…無償の優しさというのはこういうことをいうのだろうか?

俺にはまだ出来そうにないが…英雄とはこういう質なのだろうか。

分からないが…けれど、俺には眩しく、強さの関係ない1つの到達点であると思う。

隠し事をしていても疑わない。

こうまで信じてくれるのは何故なのだろう。

 

それがネプテューヌという者なのだろうか。

誰かを助けることを戸惑わない。

それで自分が重荷を背負ってもそれを受け入れる。

 

けれど、正義の味方というわけでなく。

絶対的な悪の敵でもない。

理解しようと歩み寄る。手を取り合おうと努力する。

ある種の自己犠牲なのだ。

 

自己満足と言われても仕方がない。

傲慢と罵られても頷きながら手を引っ張るだろう。

 

ああ、それでこそと笑う。

それでこそ俺が信じたい女神だ。

神などマトモな奴は居ないだろうと思っていた。

多くの神話を知った今でもその考えは覆らない。

それでもこの女神は違う。

 

「わわっ…曹操、子供扱いしてない?こう見えて私18だよ!」

 

「実年齢はもっと上だろうに。」

 

「まあそれはそうなんだけど尚更そういう扱いはよろしくないでしょ!」

 

誰よりも人に寄り添い、人と歩み、人を助ける。

字面だけなら都合のいい神様かもしれない。

けれど、それは彼女が悩み、苦しみ、足掻いた末で差し出した手だ。俺はそれを拒む事は出来ない。

付き合いの短い俺にすらここまで信用してくれるのだから。

 

だからこそ俺はそれに報いたい。

許されるならいつまでもその苦難多き身を守らせて欲しい。

ここにいる曹操という男は間違いなく救われた者の一人なのだから。

傲慢だと、偽善者だと罵る者がいれば声を大にして否定しよう。

 

…だから、もう一度その優しさに甘える形になることを許して欲しい。

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ネプステーション!!」

 

デレレーデレレーデー

 

「始まったよ!ネプステーションのコーナー!今回のゲストは英雄派リーダーの曹操だよ!」

 

「曹操だ。…それにしても俺の独白が長いな…」

 

「まあ、今後の展開に必要だから仕方無いね!ということで今回のネプステーションは長めにいこう!」

 

「構わないが、ヒントを出す位しかないが?」

 

「そう?ここって本編とは関係ないからメッタメタでもいいんだよ?私は一向に構わないっ!!」

 

「…まあ、それでいいなら。」

 

「えー今回出た元英雄派の人はオリキャラだよ!と言っても私の設定で矛盾作りまくる作者に作れるわけないから提供して貰ったよ!名前は記載するのはよろしくなさそうだからこの場をお借りして感謝感激!」

 

「ああ、本当にありがとう。」

 

「それにしても、曹操って私のことそんな風に見てたの?

何か照れるなぁ。」

 

「ヴァーリ呼ぼうか。」

 

「次回予告!」

 

「…。」

 

「じーかーいーよーこーくー!」

 

「分かった分かった。

冥界での騒動から数日。突然のヴァーリの接触に困惑していると彼の口からはデートの一言…さて、こういうことには疎い俺では分からないが頑張ってくれ。

そして、またしても波乱の幕開けだが…荒事なら任せて貰おう。

次回、『未来へのプレイヤー』」

 

「また次回、会おうね!」




今回は短い?許し亭許し亭…

えー、オリキャラ提供をしてくださった御方。
本当にありがとうございます!今後とも冥次元ゲイムネプテューヌの更新を頑張ります!


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未来へのプレイヤー
散歩散歩~♪ってデート?


よーし、北欧編スタートだぁ。

けど、まずはあの件を消化だ


やっほー!色々と大変だったけど帰ってきたネプテューヌだよ!

レーティングゲームは禍の団の襲撃もあったから一旦中止。

クルゼレイやカテレアから情報を得ようという話になったっぽい。

リアスちゃんも色々とあったけど平気かなぁ。

 

駒王町に帰ってきた自分達は一旦元の生活に。

お母さん達にはとても心配されたけど友達と楽しく遊んできただけだよって伝えた。

…本当はすぐにでも言おうと思ったんだけどね。

 

一誠とあーちゃんはまだ迷ってるみたい。

自分だけ言うって選択肢は無いから、二人の決断を待つよ。

でも、もっと大事になる前に伝えた方がいいとは言っておいたけど…どうなるかなぁ。

 

黒歌は英雄派のいるアパートの方がいいだろうって事でそこに住まわせてる。

ねぷっちと居たいって言われたけど、猫缶暮らしは可哀想だから却下した。

 

というか学校もヤバイんだよ!

勉強置いてかれてるから三日ほど追い付けるように頑張ったよね。

もうこういうことがないようにしたいよぉ…

 

「ネプテューヌさんはよろしいので?」

 

「何が?」

 

自分の部屋でいーすんに勉強を見て貰って終わったからゴロゴロしてると突然聞かれた。

 

「ごりょうしんはナニもしらない…つまり、ネプテューヌさんたちがじぶんのイマをつたえてもついていけるか…(--;)」

 

「そうだねぇ…大丈夫じゃないかな?」

 

「そんなてきとうな…コンゴをサユウすることなんですよ?(; ゚ ロ゚)」

 

「大丈夫だって!私はもう覚悟ガンギマリだから二人次第だよ。

それに、今も昔も変わらないよ。私はネプテューヌ!主人公で超絶美少女でこの家に住んでる!いつも通りだね。」

 

「うーん…ネプテューヌさんをうたがっているわけではないのですが…」

 

いーすんの疑問は尤もだけどお父さんとお母さんはそんなことで向ける愛情は変わらないって信じてるから。

何といっても転がり込んだ自分やあーちゃんを歓迎してくれる二人だからね!

 

「うーん…それにしても勉強してると座ってばかりだから疲れちゃうね…散歩しよう散歩!」

 

「とうとつですね。」

 

「ここ最近動いてたせいか落ち着かないんだよね!

はっ!?ワーカーホリックってやつ!?」

 

「ふだんぐうたらだからそわそわしてるだけでしょう。(-_-)」

 

「いーすんが私をディスってくる~私はさらわれ系ヒロインしてただけなのに!」

 

「そういえば…エイユウハのみなさまはどうなりましたか?」

 

「ほら、近くのアパートあるでしょ?サーゼクスさんがいくつか部屋を購入してあげたんだって。

被害が少なかったのは曹操達のお陰でもあるからって。

建前が必要なのって…大変だよね。」

 

「それがうえにたつものですよ。」

 

「そっかぁ…でも、ゲオルグ達には驚いたなぁ。

再会した時、怪我してたから…まあ、詳しくは聞かなかったけどさ。」

 

何かあってからじゃ遅いかもしれないけど…別に上に立つ人じゃない自分は仲間の気持ちを優先したい。

大事になったらそりゃ叱るかもだけど、近い内に話してくれるって信じるよ。

 

財布を持って外を見る。

今日は少し曇りかな?

降りそうかなぁ…折り畳み傘を持って出る。

いーすんは自分の中に入る。

 

「降りそうかな、いーすん?」

 

─夕方から降りそうですね。

 

「まあ、そんな日もあるある!」

 

─曹操さん達に言わなくてよろしいのですか?誰か一人でも一緒にいれば会話も出来ますよ?

 

「今日はいーすんと二人でいいかなー。ま、何か出会いもあるかもしれないじゃん?」

 

─そういうものでしょうか…

 

「そういうものだと思うな~」

 

─ネプテューヌさんは、本当に多くの感情を獲得したようです。

しかし…こんなことばかりで辛くありませんか?

 

「暗い話ばっかするのは私達らしくないと思うよ?めいっぱい楽しんで、それで何かあったらその時頑張ろうよ!」

 

別にそんなことで辛いとか思ったことはないしね。

確かに、色々と大変だとは思うけど…それでも、自分が女神であること、ネプテューヌという少女であるお陰で沢山の出会いに恵まれた。なら、これはマイナスじゃなくてプラスだよね。

 

─…分かりました。では、今日はどのような散歩コースに?

 

「うーん…無難に公園コースかな!」

 

─はい。

 

そうして、やっと戻ってきた平和な時間を堪能する。

ただの散歩でも、大変だった時と比べれば楽しいもので。

謎の高揚感というか…多分、嬉しいんだ。

 

お父さん達は曹操とかに任せれば間違いなく無事な筈。

ま、自分は無防備なんだけどね。

 

公園までやってくる。

珍しく、子供がいない。

何でだろうと考えて、結界だったりとか思ったけどそういうわけでもないっぽい。

 

まあいっかとブランコに座って漕ぐ。

 

「雨だからって来れなかったのかな。」

 

─あの元気な子供達が諦めるとは思いませんが。

 

「ま、仕方無いよね。久し振りに遊べたらなぁって思ったけど残念!」

 

そうやって、暇潰しにブランコを漕ぎ続ける。

いーすんは帰りませんかとは言わず、黙ってるだけ。

そんなことをしてたら、誰かが近づいてきてるのか、砂を踏むジャリジャリって音が聞こえてそっちに視線を寄越す。

 

「一人…いや、二人か。暇じゃないのか?」

 

何でか、ヴァーリがそこにいた。

少し呆れたように自分を見ていた。

いや、呆れたいのこっちだからね?

 

「テロリストの自覚ある?」

 

「多少は。最近、暇だがな。」

 

「良いことでしょ。それで、何しに来たの?連れ去りにとか?」

 

「…それもありか。」

 

「なしですよ!( `д´)」

 

「む、イストワールか。」

 

「だいたい、カオスブリゲードにいるあなたがキガルにあいにきていいのですか?」

 

「問題はない。オフの日だ。」

 

「大有りだよ!?」

 

「まあ、何…その時はお前が何とかしてくれるだろう?」

 

「何その謎の信頼…私だって無理な時は無理だからね?」

 

特訓とか色々なことに付き合ってくれたのもあって一応弁明とかはしてあげるけど限度だってあるからね?

ぶっちゃけおっちゃんに電話して連れ帰って貰うのもアリだよ?

 

…まあ、しないけどさ。

 

「というより、忘れたのか?」

 

「え、何か約束した?」

 

「…まあ、だろうなと思ったさ。ほら、行くぞ。」

 

「行くって…?」

 

「デートだ。」

 

「え…」

 

デート、デート…

あああ!?

禍の団にいた時にした約束!

今思い出したよー!

そっかそっか…だからこっち来たんだね?

意外と可愛いじゃーん!

 

からかおうと思った自分はヴァーリに近寄って腕に抱きつく。

 

「そんなに私に会いたかった~?私が恋しかったとか!」

 

「ああ。ここ数日寂しかった。」

 

どストレート!

こっちが恥ずかしくなるよそんな真っ直ぐ言われると。

からかうつもりがからかわれてる!

 

「イストワール。俺がいるからネプテューヌの安全は保証しよう。」

 

「いえ、あの…かんぜんにシンヨウできるわけでは…」

 

「…。」

 

「すみません、ネプテューヌさん。ようじができましたので…」

 

「ねぷ!?いーすんの裏切り者!」

 

いーすんがどっかに行っちゃった。

多分…一誠の所だね。

 

正真正銘、ヴァーリと二人きりになってしまった…

 

「折角のデートだ。邪魔はされたくない。」

 

「…本当にそれだけが理由なの?」

 

「それだけ?お前は分かってないな、ネプテューヌ。

俺からすれば、お前は十分魅力的だ。」

 

「へ!?急に口説いても靡くねぷ子さんじゃないよ!」

 

「そうか、残念だ。さて…何処に行こうか?」

 

逃がさないと言わんばかりの眼光。

ヤバイ、これはねぷ子さんピンチ!?

ヴァーリが獣だったらどうしよう!

 

馬鹿な!この作品は恋愛要素薄めにするって作者が最初に言ってたじゃん!こんなの絶対おかしいよ!

 

でも、何だかんだでヴァーリとは話しておきたかったので付き合うことにした。

 

「うーん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外だな。」

 

「何が?」

 

「てっきり、ゲームセンターだと思っていた。」

 

「む、失礼だね。私だって乙女だよ?そりゃカフェの1つや2つ行きたいよ。まあ、ここのプリンが美味しいって思い出して来たんだけどね。」

 

「そういうことか。」

 

というわけで、カフェに来ました。

ねぷ子さん的にはゲームセンターでもよかったんだけど…

デートだし、こういう場所でもいいかなって思ったんだよね!

乗り気だなって?

うーん、まあ…嫌いじゃないから。

 

店員さんに適当に注文してから、ヴァーリが話しかけてくる。

 

「お前が無事でよかった。」

 

「あれ、冥界で起こったこと知ってるの?」

 

「まあな。悪魔の駒で悪魔にされそうになったと聞いた時は…ディオドラ・アスタロトに殺意を持った。」

 

「あ、あはは…そんなに?」

 

「…俺は、お前を失うことが耐えられないようだ。」

 

「大袈裟だよ~悪魔になっても私は私…」

 

「ネプテューヌは、女神であるべきだよ。」

 

「ちょっと分からないけど…まあ、結果オーライだよ!

私はこうして無事だし、ディオドラは裁かれるの確定だし!」

 

何だか、女神であるべきっていうのはちょっと好きじゃない。

別に女神だから皆を守りたいって訳じゃないし…何なら、ただの人間だったとしても誰かを助けたいよ。

 

だから、話を軌道修正。

 

自分の意図に気付いたのか視線を逸らすヴァーリ。

 

「…すまない、悪気はなかった。」

 

「言葉通りの意味じゃないんでしょ?別に平気だよ。」

 

「そうか。」

 

…それにしても、いつもと少し様子が違うよね。

何だろ?

自分が何かしたって訳じゃないと思うけど…

 

聞いてみようかな。

 

「ヴァーリ、抱え込むのは良くないよ?」

 

「抱え込んでいる訳じゃ…いや、すまない。

ただの見苦しい嫉妬だ。」

 

「嫉妬?誰に?」

 

「…英雄派の面々…」

 

「英雄派の皆…?」

 

何で英雄派の皆に嫉妬してるんだろ。

…あ、そっか。

 

「私といれるから?」

 

「…」

 

当たりっぽい。

…えー?ちょっと今日のヴァーリはカッコ良さよりも可愛さがあるよ?

直球ばかりの言葉であれだけど、自分を好いてくれるのは嬉しいしね。

 

「案外、可愛いところもあるよねヴァーリって。」

 

「うるさい、放っておけ。」

 

「あれー?ひょっとして照れてる?英雄派の皆が私と気軽に会えるから照れてるんだー!」

 

「ぬ、くぅ…!」

 

照れてますなー毎度自分が味わうのをヴァーリが味わってる!

ふふふ、この恥ずかしさをしっかりと堪能したまえ。

そうして、飲み物が届いた時…

 

「ねぷぅ!?こ、こ、これは!」

 

「…ふっ、理解したようだな。」

 

ストローが、二本刺さったこれは…!

俗にいう、カップルドリンクと呼ばれる奴!

ヴァーリ、まさかここまで計算して…

 

「お前と飲みたかった。」

 

「あ、そうなんだ。」

 

単純に興味とかだった。

でも…これ、あれだね。

いざ飲もうと思うと恥ずかしいね!

これを飲むの?

すみません、他の飲み物を…

 

メニュー表、もう無くなってる!?

 

「うー…!ええいままよ!」

 

ストローを咥える。

…うん、何ということはなかった。

最初だけの羞恥心であった!

まあ、ねぷ子さんのメンタルは鋼…これぐらいで砕けることはない!

 

ちなみにヴァーリは特にこれということはなく咥えた。

 

…うん、美味しいね。

 

「こういうのもありか。」

 

「まあ…私、こういうの初めてだから恥ずかしかったけど…」

 

「抱き締めたいな、ネプテューヌ。」

 

「場所を考えてね!」

 

「お待たせしました、プレミアムプリンです。」

 

「あ、ありがとう!おー…これは美味しいね、絶対!」

 

店員さんがプリンを持ってきてくれた。

プレミアムと付くプリン…このプリンは美味しすぎて卒倒するかもしれないね!

 

早速一口。

 

「んーおいしー♪」

 

…今日も一日生きてると実感する美味しさ、間違いない。

これは販売個数限定プリンには劣るものの美味しい!

二番目のプリンだね!

 

と、プリンを堪能しているとヴァーリが微笑んでこっちを見てる。

 

「ねぷ?どうしたの?」

 

「いや…可愛いと思ってな。」

 

「…」

 

ねぷ子さんが超絶美少女なのは認めるけど、プリン食べてるからってそんなに表情和らぐ位可愛く見えるの?

それはないと断言できないのがねぷ子さんの可愛さとはいえ…

 

プリンを乗せたスプーンをヴァーリに突き出す。

 

「なんだ?」

 

「ヴァーリ!はい、あーん♪」

 

「…!?」

 

ふふん、驚いてるね!

経験がないねぷ子さんでもあーんならば一誠にやったりはしてあげたことあるのだ!

弟にするのと同じこと!

これは勝ったね!何に勝ったか分からないけど勝ったね!

 

ヴァーリは固まってたけど、少ししてから再起動。

差し出したプリンを食べる。

 

「どう?」

 

「…甘いな。」

 

「でしょ?えへへ、ほら、もう一回!はい、あーん♪」

 

「くっ…そういうところも好きだ!」

 

「うん、知ってる。ほら、あーん。」

 

そうして、カフェで過ごした。

あー楽しかった。

ヴァーリのああいう驚いた顔、いいね。

 

それで、カフェを出た後は商店街を一緒に歩いてる。

 

「買い物とか、見たいものはないのか?」

 

「新作ゲームなら見たいけど今はいいかな。」

 

「そうか。」

 

「ヴァーリはただ歩くだけなのは嫌かな?」

 

「いや…嫌いじゃない。」

 

「そっか!」

 

ただ歩くだけ。

軽い運動にもなるし、気分転換にもなる。

こういう時間も好きだよ、自分は。

 

ヴァーリも嫌いじゃないみたいでよかった。

 

そうして歩いていると、こっちに走ってくる子供が。

 

「姉ちゃんだ!」

 

「お、どうしたのかな、少年!」

 

「どうしたじゃないよ!最近、姉ちゃんがいなかったから…姉ちゃん、友達と遊ぶんだけど一緒に遊ぼうぜ!」

 

「最近忙しかったからごめんね!あー、でも…」

 

「何、こういうのも…悪くない。」

 

「そこの兄ちゃんも遊ぶの?」

 

「うん、だめかな?」

 

「いいよ!じゃあ、行こうぜ!」

 

子供に誘われて、デートは中断。

ヴァーリと一緒に子供達に付き合うことに。

うん、やっぱりただの散歩にして正解だったね。

 

よーし、久し振りに子供達と遊ぶよ!

 

遊びはドッジボールのようだね…

 

「ふふん、それなら私はこっちでヴァーリはあっち!」

 

「よーし、しょーりのめがみはこっちについたぞ!」

 

「むむむ…兄ちゃん!姉ちゃん達を倒そう!」

 

「あ、ああ。」

 

「よーし、じゃんけん…」  

 

「ぽん!負けたぁ!」

 

「私達のターン!」

 

こっちのターン!

ねぷ子さん、ボールを子供に投げました!

 

しかし、ヴァーリが前に出てボールを掴む。

 

「俺のターンだな。」

 

「兄ちゃんすげぇ!今の動きどうやったんだ!?」

 

「むむむ…ヴァーリに負けるわけにはいかないね!」

 

「ふっ…まずは小手調べだ。」

 

ヴァーリが投げて…はっ!外野へのパス!?

投げられたボールはしっかりと外野の子がキャッチ。

そして、外野の子が内野へと投げる!

 

一人もやらせないよ!

 

守護らねばならないから子供の前にヴァーリのように出てボールをキャッチ!

 

「馬鹿な、この海のリハクの目を以てしても捉えられなかった…」

 

「でもお前節穴じゃん。」

 

「姉ちゃん!俺なんかのために!」

 

「なんて声だしてるの、田中!」

 

「俺山田だよ。」

 

「はい、パス!」

 

こっからが勝負だよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたらもう夕方で、皆して夢中になってたから時間なんて気にしてなかった。

もう帰らないといけない時間の子供達は一足先に帰っちゃった。

 

自分とヴァーリはベンチに座ってた。

 

「子供は凄いな…俺は疲れたぞ。」

 

「あはは、私も少しだけ。どう?楽しかった?」

 

「…そうだな、こうして遊ぶというのも…心地がいい。」

 

「でしょ?こういう時間とか触れ合いを大事にしたいよね。」

 

「…ああ、そうか。」

 

妙に納得した様子のヴァーリ。

 

「お前が守りたいものを…しっかりと理解した。」

 

「…そっか。」

 

「温かいな…本当に。」

 

しみじみと…さっき過ごした時間を噛み締めるように言うヴァーリ。

…触れ合いとか、そういうのも求めてるのかな。

ヴァーリの心はヴァーリにしか分からないから…何とも言えないけど。

 

「お前は俺を倒さないのか?」

 

「倒さないよ。」

 

「なぜだ?その気になれば俺はこの町を消せる。危険人物だぞ?」

 

「そういうことする人じゃないでしょ、ヴァーリは。

確かに、戦闘狂かもしれないけど…物事の判断ができない訳じゃないし…何より、そういうことする気だったら今頃もっと私の周りがゴタゴタしてるよ。」

 

「…お前はそう言って誰かを信じるんだな。」

 

「誰かを疑うより、誰かを信じる方がよっぽどいいよ。

私は皆との絆を信じるよ。力じゃなくて、想いを。」

 

「想いか…シェアを力とする女神だから言えることなのかもしれない。」

 

「女神だからとかじゃないでしょ。私は私、ネプテューヌだよ!

主人公だから出来ちゃうことと思って欲しいね!」

 

「そういうことにしておこう。…さて。」

 

ヴァーリが立ち上がる。

その顔はさっきみたいな複雑な顔じゃなくて何かを決めた顔だった。

 

「無理はしないでね。」

 

「ああ。…ネプテューヌ。」

 

「うん?」

 

名前を呼んだヴァーリは、振り向いて自分の肩に手を置く。

か、顔が近いよ?

これはギャルゲによくあるシーン!?

まだ好感度振り切れてないよ!よくないよそういうの!

 

顔が近付いてくる。

緊張すると共に目をギュッと閉じる。

 

「何があってもお前を守る。」

 

「ぇ…」

 

声が異様に聞こえる事から耳に囁かれたと分かった。

その後、首に柔らかい感触。

 

えっと…

 

目を開けるとヴァーリはもう居なかった。

 

「…帰ろ。」

 

深くは考えないことにした。

凄い覚悟を感じたような…そんな気がして。

自分はその覚悟に見合う人なのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ね、ネプテューヌさん!?

 

「いーすん、どうしたの?」

 

「はわ…!ネプテューヌさん、首!」

 

「首?」

 

帰ってくると本の状態のいーすんを抱えたあーちゃんが出迎えてくれた。

顔を赤くしたあーちゃんに言われて、玄関の鏡を確認すると首筋に赤い…

 

そこまで確認して、靴を脱ぐ。

 

「…うん、じゃあ私部屋に戻るね!」

 

「え!?待ってください!そ、その首の…!」

 

さっさと、階段をあがって部屋に入って扉を閉める。

 

顔が赤い。

ちょっと、今日はやっぱり散々かもしれない…

 

「あーもう…馬鹿!」

 

この場に居ないヴァーリを罵倒する。

当然、一誠やあーちゃん、お母さんとお父さんに聞かれたことは言うまでもない…

 

「ねぷ姉ちゃん、それは誰に付けられた?

場合によっては戦争になるけど、教えてくれ。

なあ、誰に付けられたんだ?」

 

「あーうん…ひ、秘密…」

 

今度会ったら、新技ぶつけよう。




リリィランク上がってくぅ!



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私が何したっていうのさー!?

辛いときは跳ぶんだ、カンガルーのように!(挨拶)

答え合わせ第一弾


やっほー!昨日デートして大変だったネプテューヌだよ!

…うん、しばらくあのネタでいじられそう。

首にキスマーク付けて帰るとか何と油断ならない奴!

今度会ったら絶対に罰を与えちゃうんだからね。

 

うんうん、まあそれは置いておこう。

 

今はオカルト研究部にいるんだけど…

そのー、とても気になることが1つ!

 

「おっちゃんが何でいるの?」

 

「おーネプ子。あっちぶりだな!」

 

「だてんしそうとくがあくまのバショに…これがわへいですか…」

 

いーすんが昔を思い出してるのかしみじみと言う。

あーうん、そこは自分は分からないからいいとして…

 

おっちゃんがどうしてオカルト研究部…というか駒王学園にいるのか!

 

「それで、何でいんの?」

 

「教師として駒王に来たんだよ。オカ研の顧問でもある。」

 

「おっちゃんが教師で顧問!?まさか、オカ研を堕天使勢力に!?」

 

「んなことするかっ。赤龍帝…イッセーや女神のお前をこの際だから詳しく調べたいってのが1つ。」

 

「アザゼル…私の眷属や友人にどうするつもり?」

 

「待て待て。物騒なことをしようなんざ思ってねぇよ。

イッセーは今までの赤龍帝の中でもかなり特殊な成長をしてるんだ。神器に詳しい俺がいれば便利だろ?

ネプ子に関して言えば、こいつは難しい存在だからな…」

 

「ネプテューヌ先輩が難しい存在?どういうことですか?」

 

「そうだなぁ…」

 

おっちゃんが立って、ホワイトボードに人を何人か輪のように描いて、その輪の中心の人にネプ子って名前をつける。

 

「女神っていうのはシェア…まあ、信じる心、信仰心だな。

それを元にその力を発揮する。シェアは万能なエネルギー…謂わば、夢の力なのさ。シェアがあればバカみてぇな魔法を使うことも出来れば、シェアの応用で枯れた大地だって再生できる。」

 

「そ、そうなの?」

 

「理論上ではあるがな。冥界での禍の団襲撃の時にこうなんじゃないかって出来た仮説だ。

そんで、それが当たってるかどうか答えられる奴がいるだろ?」

 

「いーすん、どうなの?」

 

いーすんが、自分の中から出てくる。

いーすんは微笑みを浮かべている。

 

「はい、シェアがあればのはなしですが。(^∇^)」

 

「え、ええ…私ってそんな凄かったの?主人公とはいえ設定過多じゃない?」

 

「むしろ、当然だと思うがな。お前を創った聖書の神はそれこそ万能の存在だった。神器や俺らを創ったのは全部アイツだ。

お前も、その力の一部を受け継いでるって事なのさ。」

 

「忘れがちだけど、ネプテューヌって聖書の神の後継なのよね。

敬ったりとかした方がいい?」

 

「んー、やめてほしいかな?後継とか言われても神様ですとかしたい訳じゃないし…後継とかじゃなくて、ただのネプテューヌだよ。」

 

「ま、そうだろうな。アイツが絶対受け継げって言った訳じゃねぇんだからそれでいいんだよ。ま、話を戻すが…ネプ子は便利であり、危険な存在…他の神話も耳が早いからな。よく思わねぇ奴もいるだろうよ。」

 

「シャルバとか…他にもいると思う。」

 

おっちゃんは頷く。

クルゼレイの言葉を思い出す。

 

『ネプテューヌ、お前は正しい。正しすぎるのだ。』

 

『ふっ…忘れるな、必ずお前を排斥しようとする者が現れる。

お前でも、相容れない存在が…必ずだ。だからこそ、より強くなれ。その正しさを貫けるように。』

 

自分を案じるようにそう言ったクルゼレイの言葉はしっかりと思い出せる。

自分を否定する人、自分と対立する人が必ず来る。

…それでも。

 

「そんな人とも手を取り合う未来を諦めないのは、間違ってる?」

 

「…お前も成長してんだな。そうだな…厳しい事を言わせて貰う。

その願いは実現不可能だ。周りが聞けば世迷言、妄言だと言うだろうよ。」

 

「アザゼル。」

 

「グレモリー、これは絶対だ。曲げようがねえ事実なんだよ。

誰もが手を繋ぐってのは誰も出来やしねぇ、だから戦争は起こる。」

 

「……確かに、そうね。」

 

「けどな。それでも、そんな願いを馬鹿正直に掲げる奴はいるんだぜネプ子。現実を見ても諦めない奴ってのはいる。

お前は手を取り合えない現実を見ても理想を掲げるか?諦めるのか?」

 

おっちゃんの真剣な眼差し。

自分を試すかのような言葉に自分。

出来るって言うのは簡単。

理想を掲げるのは誰でも出来ること。

 

おっちゃんが聞いてるのはそんな簡単なことじゃない。

きっと、掲げて途中で折れないのかどうかを聞いているんだと思う。

だから、これは即答する事じゃない。

事じゃないんだけど…

 

「出来るよ。」

 

「…お前、考えた上での発言か?」

 

「もう言われたことだもん。とっくに決めてるんだよ、私。

誰が相手でも、手を取り合える可能性が0.1の確率でも存在するなら私は手を差し出すよ。何たって私はネプテューヌだからね!」

 

睨まれたけど、クルゼレイの時にもう決めてることだよ。

だってその為の力なら持ってる筈だから。

おっちゃんは少しして諦めたように溜め息をついて、自分の頭にポンポンと手を置く。

 

「お前のそういうところは本当に尊敬するぜ。」

 

「主人公ですから!ドヤァ!」

 

「流石ねぷ姉ちゃんだぜ!俺も協力するからな!」

 

「一誠は早く姉離れを覚えてね。」

 

「俺の事嫌いかよ…?」

 

「大好きだよ?」

 

「姉ちゃーん!」

 

「先輩、キモイです…」

 

「あらあら、お姉ちゃん子ですわね。」

 

空気が明るく変わった。

よかった、皆緊張した様子だったから。

でも、朱乃ちゃん…気のせいだといいけどおっちゃんを視界に入れないようにしてない?

 

これは、オカルト研究部編ってとこかな?

 

「ま、俺はお前らの面倒を見る係とでも思ってくれりゃいい。 

つっても面倒事持ってくるかも知れねぇがな。」

 

「勘弁して頂戴…この前も北欧の主神が来てたことに驚いていたのに。」

 

「おっちゃんって人脈あるんだね。」

 

「信用はねぇがな!」

 

「堕天使の総督だぞ、胡散臭いにも程がある。」

 

「元教会の戦士に言われるたぁな。まあいいさ、それよりもお前ら…ちゃんと鍛えてるか?」

 

「失礼ね。前みたいに力不足ってことがないように日々鍛練よ。」

 

「特に、ヴァーリには負けられねぇ…今度こそ顔に一発…二発…三発…」

 

「イッセー君、増えてる増えてる。」

 

「殴り足りねぇ!ねぷ姉ちゃんを傷物にしやがって!」

 

「ねぷぅ!?一誠、誤解生むからやめてぇ!?」

 

「へぇ?」

 

おっちゃんがそれを聞いて目を光らせる。

あ、ヤバイ。

そう思った時には遅かった。

 

「ヴァーリとデートでもしたのか?ん?お付き合いは始めた感じ?」

 

「で、デートはしたけど…」

 

「へぇ!何したんだ?買い物か?それとも遊園地に行ったとか?」

 

「いや、その…カフェで…」

 

「カフェで?」

 

「リアスちゃんまでノッてきた!?」

 

「諦めなさい。」

 

うわぁ…自分がなにしたっていうの?

これも全部禍の団が悪いんだ!

一誠なんてもうヴァーリの名前をぶつぶつと呼びながら殺意滾らせてるじゃん!

 

「で、カフェで?」

 

「カップルドリンク飲んだり、プリン食べさせたりしてました…」

 

「ひゅー!やるじゃねぇか。何?くっついちまう?俺は構わねぇぜ?」

 

「いやいやいや!それはないって!」

 

「そうなの?」

 

「うん、別にそういう訳じゃないし…約束だったからデートしただけで!」

 

そうそう。

ヴァーリの事は信じてるけど、約束だったからした。

それだけなんだよ!

 

『何があってもお前を守る。』

 

思い出して、首に手を添える。

 

…あーもう、ヴァーリのせいで変な気分だよ!

 

「とにかく!この話題は終わり!おっちゃん、今日はどうするの!?」

 

「(逃げたな。)今日は顔合わせってのもあったから特に考えちゃいねえな。」

 

「そうなんだ。じゃあ、英雄派の皆も気になるから帰るね!」

 

「お、おう。」

 

「ああ、ネプテューヌさん、まってください!(;゜0゜)」

 

半ばその場から逃げるように退室して英雄派の皆のいるアパートへと向かった。

少し、心配なのもあるしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アパートに来た自分といーすんは曹操とゲオルグがいる部屋のインターホンを鳴らす。

ガチャリと扉が開くと曹操が出てきた。

 

「ネプテューヌか。」

 

「うん、どう?ゲオルグ達の怪我は…」

 

「心配するな。アーシアが来てくれたのもあって既に完治はしている。だが…ゲオルグがな。」

 

「ゲオルグがどうかしたの!?」

 

「おい…曹操、余計なことを言うな。」

 

ゲオルグが曹操の後ろにいる。

呆れた声と視線を曹操に向けている。

少しだけ難しそうな顔をしているけど、平気っぽい?

 

「…まあ、上がるといい。イストワールにも聞きたいことがあるからな。」

 

「わたしに?」

 

「うん、分かった!上がるね?」

 

「ああ、茶を用意しよう。好きにくつろいでくれ。」

 

中に入ってまず気になったのはリビングの本棚だった。

歴史についてや神話について。

難しそうな本がいっぱいある。

ゲオルグの私物…じゃなさそう。

 

曹操は、これ全部読んでるのかな。

 

ゲオルグといーすんがソファで向かい合いながら会話をしてる。

 

「イストワール…率直に聞くが、神器の一部を切り取り、接合することは可能か?」

 

「接合?」

 

「ああ。」

 

「でも、神器ってその人の魂と深く結び付いてる物でしょ?切り取るだけでも危ないのにくっつけるなんて…」

 

「だから聞いているんだ。」

 

「…はい、かのうです。そのひとのタマシイとはべつでセイクリッドギアじたいはトウメイなジョウタイですから。つなぎあわせることはかのうでしょう。ですが…」

 

「とても歪な力…そうだな?」

 

「ええ…いきすぎたチカラはみをほろぼします。ゲオルグさんのロンギヌス…ディメンション・ロストとなにかをつなぎあわせる。

そういうことですか?」

 

「俺がやるわけではないがな。」

 

「ゲオルグ…喋りすぎだ。」

 

お茶を持ってきた曹操がテーブルに置く。

咎めるようにそう言う曹操は諦めたような顔をしているけど…まあ、気になるけどさ。

 

「話してくれるの?」

 

「…ハァ、そうだな。お前を巻き込むようで嫌だったんだが…」

 

「今更だ。知っておいた方が狙われた時油断も少ない。」

 

「それもそうだが……いや、よそう。」

 

「はなしていただけますね?」

 

「…ああ。」

 

観念したように椅子に座ってお茶を飲む。

 

「クルゼレイを助ける時、ゲオルグ達はある者達の襲撃を受けた。」

 

「…まさか、そのときにディメンション・ロストのいちぶが?」

 

「そのまさかだ。神滅具の一部が取られるとは…」

 

「誰にやられたの?」

 

「…英雄派を降りた6人だ。辛うじて、ゲオルグの絶霧のお陰で逃げることに成功したらしい。」

 

「…そっか、だから病院であんな顔してたんだね。」

 

「ああ…すまない。これは俺達の問題だ。だから巻き込みたくなかった。」

 

「ううん、謝ることじゃないよ。でも、巻き込みたくないっていうのは感心しないかな。私が巻き込んじゃってるのに、曹操が巻き込まないのは違うと思うよ?」

 

「俺達が、お前に?」

 

やっぱり分かってなかったんだ。

結局、あの時は自分の我儘を貫いたに過ぎないんだよ。

テロなんて間違ってる。英雄になりたいのにそれでいいの?って自分の心に従って、やめようよって言った。

恩返しだって言うけど…自分は恩を売ったとかそんなつもりはなくてただやめてほしかっただけ。

でも、ちょうどいいかなって思ってこうして自分の都合に付き合わせてる。

 

…それを巻き込んだって言わずに何て言うんだろう。

でも、それでも友達だって言い張る。

エゴだって言われてもいい。

 

「友達だからさ。ねぷ子さんでいいならガンガン巻き込んじゃってよ。見捨てることなんて出来ないし、見て見ぬふりは得意じゃないよ!」

 

「…お前という奴は。」

 

「ほらな、話してよかっただろう?どうせ無関係じゃなくなる。

どのみち、ネプテューヌは何処かで巻き込まれるだろうからな。」

 

「え、どういうこと?」

 

「三勢力…人外を憎んでいる奴は多い。そんな奴らが守護女神のお前を放っておくわけがない。」

 

「なるほど…なまえなどもおしえてもらえますか?」

 

ゲオルグの言う通り、やっぱり人外の被害者はいる。

だから、自分にその恨みを向けてもおかしくないんだ。

そういう立場なんだから、分かってることだよ。

 

曹操はいーすんの質問に頷く。

 

「ああ。アイツらは──」

 

名前を言おうとして、曹操は目を見開いて玄関の方を見る。

ど、どうしたのいきなり?

何かあったの?

 

「…ゲオルグ。」

 

「ああ、噂をすれば影が射す。周囲に関しては任せろ。」

 

「ねぷ?どうしたの?」

 

「ネプテューヌ、外に出るぞ。ゲオルグは絶霧を使って隔離、他のメンバーを呼べ。」

 

「了解。」

 

「う、うん!いーすん、行くよ!」

 

「はい。」

 

曹操と一緒に急いで外に出る。

ゲオルグの絶霧を使うってことは危険があるってことだよね。

 

三階から、下を見下ろす。

そこには…

 

 

 

「─見付けたぞ…ネプテューヌ!!」

 

 

 

心の底から憎悪を滾らせて、自分を睨む褐色肌の豊満な体つきの女性が立っていた。

手には槍を持っていて…って槍!?

 

隣の曹操を見ると曹操も黄昏の聖槍を持って、三階から飛び降りる。

えええ!?

 

え、ええい!ねぷ子さんも主人公なんだからね!

曹操に続く形で下に飛び降りる。

 

「ね、ねぷぅぅぅ!?」

 

「うお…っと!無理ならやるな!」

 

「あ、あはは…ありがと曹操。」

 

曹操にギリギリのところをキャッチされた。

下敷きにしなくてよかったよ。

ギャグ補正で生きそうだけどさ。

 

褐色肌の女性はギラギラとした目で自分を見ている。

 

知らない人なんだけど自分なんかした!?

 

「ネプテューヌ…海王星の名前、女神…!クク、ククク!

この日を待っていたぞ!」

 

「ごめん、誰?」

 

「これから死ぬテメぇなんぞに名乗る名前はねえ、殺すぞ。」

 

「え、ええ…私、そっちに何かした?」

 

「何も。お前の名前と神であることがアイツにとって我慢ならないようだ。」

 

「ネプテューヌさんのなまえで、かみをうらむ…まさか、あなたは…」

 

「元気そうじゃねぇか曹操、そこを退けよ。じゃねぇとテメェから殺す。」

 

「悪いな、カイネウス(・・・・・)。今はネプテューヌの槍として生きている俺を退かしたいのならそれこそ殺せ。」

 

か、カイネウス?

 

…って誰?

いーすんが近くに来て耳打ちする。

 

「カイネウス、カイニスともいいますね。ギリシャのかみであるポセイドンにうらみをもつじょせいで、のちにだんせいとなったエイユウです。」

 

「何でそのポセイドンに関係ない私を殺そうとしてるのさ!?」

 

「ギリシャ神話に続く形の神話、ローマ神話の中には同一視される海神の名前にはおよそ三つある。ネプチューン、ネプトゥヌス…そして、ネプテューヌだ。」

 

「え?それって完全に私名前だけで恨まれてるじゃん。

全国の一般ネプテューヌに謝ってほしいんだけど!?」

 

「何で俺がテメェに謝らなきゃならねぇ?

その名前ってだけで忌々しいのに神だと?ふざけるな!

ポセイドン、ネプテューヌ…このカイネウスが殺しに来てやったんだ、喜んで死ねよ!

何が守護女神だ…人様に迷惑かけるのが神だ。そんな存在が人間を守る?馬鹿馬鹿しい!人外は皆殺しだ!」

 

ヤバイよあの人マジで殺る気だよ!?

取り合えず、シェアで刀を創るけど…

周りに被害が及んじゃうよ!

カイネウスって人はどうでもよさそうだけど曹操や自分にとっては回避したいことなのに…!

 

「なるほど…ならば、今回はお前の暴走か。大方、何処にいるかようやく掴んだから殺しに来たってところだろうが…さて…」

 

「黙れよ曹操。ただの人間が、俺に勝とうってか?」

 

「ちょっと待った!こんなところでやってたら一般人に被害が出ちゃうよ!場所を考えてよ!」

 

「あ?雑魚が何匹死のうが関係ねぇだろ。」

 

「っ、それ、本気?」

 

「ハッ!弱い奴は死ぬ!当然の摂理だろうが!」

 

平然とした様子でそう言う。

…誰が死んでもお構い無しってこと?

 

それはちょっと見過ごせない。

この人、ちょっとどころかかなり危険だよ。

自分一人を狙えばいいのに周りの被害を考慮しないなんて。

 

「曹操、倒そう。」

 

「冷静に話が出来る状況でもない、か。…ゲオルグ!」

 

曹操がゲオルグの名前を呼ぶと何処からともなく霧が立ち込める。

そして、気付いた時には既に周囲のアパートは無くなっている。

これが絶霧…結界として最高だね。

流石ゲオルグ!

 

カイネウスは特に気にした様子もなく、槍をグルグルと片手で回した後に自分に矛先を向けてくる。

曹操は黄昏の聖槍を構えて、自分は出し惜しみ無く女神化をする。

 

パープルハートになった自分にいーすんが中に入る。

 

「邪魔するんなら元リーダー様だろうが女神と一緒にぶっ殺してやるよ!」

 

「気を付けろ、カイネウスの強さは本物だぞ!」

 

「分かったわ。貴女のその周りを考えない精神…叩き直してあげるわ!」

 

「ほざけ、神風情がぁぁ!!」

 

じゃあ、久しぶりにしっかりと宣言させて貰うよ!

ねっぷねぷにしてやんよ!!

 




今が旬の英雄、カイニスことカイネウスです。
ポセイドン君、釈明は?


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ボロボロに言われる私の事考えてほしいなぁ…

アズレンてめぇ、ネプコラボもっかいやれ!(挨拶)

英雄当てゲーム、第二弾。


槍と刀がぶつかり合う。

曹操もいるのにあっちに痛手を与えられていない…かなり上手い戦い方だ。

こっちに恨みと殺意を乗せた視線をぶつけてくるのに攻撃は冷静。

カイネウスは確かに強い女性だった。

 

加えて、あの槍…普通の槍じゃない。

槍から水…ううん、海水が出てきたと思ったら渦を巻いてこっちに向かってきた。

 

英雄の武器って奴なのかな?

 

─カイネウスはポセイドンに男にされた後、海を操る槍も受け取ったと言われています。ですが…おかしいですね。カイネウス、カイニスは既に亡くなっている筈。

 

「前世の記憶持ちって事じゃない?ふっ!」

 

「やるじゃねぇかクソ女神…曹操もそうだが、俺の攻撃に耐えやがるとはな。」

 

「ネプテューヌ、カイネウスの槍もそうだが、単純に相性が悪い。奴の体はただの人間のものじゃない。文字通り不死身だ。」

 

「一々解説入れねぇと気がすまねぇのか曹操!オラァ!」

 

槍による一閃。

曹操は後ろに下がる。

カイネウスはそのまま自分の方まで来て槍を振るう。

 

シェアで生成した刀でよかった。

これがただの刀ならとっくに折れてる。

暴力とも呼べる位荒々しい槍捌き。

 

─カイネウスの不死身の体…確かに、物理による攻撃は効果が薄いでしょう。

 

(なら魔法?)

 

─恐らくは。シェアによる魔法現象ならば効果もある筈です。

 

「なら…!」

 

ポセイドンは海神…海の力を使えるなら、昔から属性相性はこうでしょ!

刀にシェアの雷を纏わせる。

 

「なにっ…!?」

 

振るわれる槍を逸らして、隙を作る。

油断したね、カイネウス!

 

「痺れるわよ、サンダーブレード!」

 

雷を纏った刀を振り下ろす。

不死身の体が本当なら、容赦はいらないね!

振り下ろす瞬間シェアで身体を強化する。

 

主人公たるもの、これぐらいの芸当は出来ちゃうんだな!

 

カイネウスの体に刀がぶつかる。

確かに…硬い!

けどカイネウスの顔が苦痛に歪んでいるところ見るにシェアによる属性攻撃は耐性を無視できる!

 

「ぐ、がぁぁぁ…!!馬鹿な、俺の肉体は不死身…!あの野郎の加護が…!」

 

「ポセイドンの加護…以前、聞かせて貰ったが海を渡る加護として魔力への抵抗もあるらしいな。だが…シェアは魔力じゃない。」

 

体が痺れている筈なのに槍を手放さずに握り、後ろに下がって距離をとる。

こっちへ向ける視線はより強くなってる。

 

「…ふざけるなよ…!俺はテメェをぶち殺す…!

ああ、憎い!ポセイドン(ネプテューヌ)!!」

 

「貴女がそのポセイドンに何をされたのかは分からない。

けれど、それをポセイドンに向けるのならいざ知らず、他を巻き込んでまでやることではないわ。」

 

「三勢力の女神様の分際で随分とお利口じゃねぇか…なぁ?

女神ネプテューヌ…三勢力が今まで人間に何をしてきやがったか知らない訳じゃねえだろ!」

 

「…そうね、全てでないにしろ知っているわ。」

 

聖剣計画、悪魔の駒、神器保持者の殺害。

他にも色々としていると思う。

…悪いことをしてしまっている。

それは間違いない。

 

「彼らが償うべき罪よ。それでも…貴女がしているのは自分の正当化、テロでしかない。」

 

「黙れよ女神。綺麗事だけ述べて俺を見下してやがるのか?

テメェは全く知らない…悪魔が、天使が、堕天使が、神器が!

どれだけ人間を弄んできたのかをな…怖いんじゃねぇか?その汚さを見るのがよぉ…綺麗なだけの自分が汚されるようでなぁ!」

 

「カイネウス。それ以上口を開けば…その頭、貫くぞ。」

 

「やれるのか、曹操!テメェに、元仲間(・・・)が!

安っぽい理想を掲げてたテメェにその覚悟があるってのか?」

 

「…ああ、あるさ。」

 

「ハッ、どうだかな…!」

 

カイネウスの恨みは自分に向けるのはお門違いかもしれないけど、それは理屈じゃないんだと思う。

神が心底憎い、海神の名前が心底憎い。

その要素だけでも許容できないんだと思う。

 

憎悪を失くせばどうすればいいか分からない。

そういうのもあると思う。

 

…これ、ポセイドンに一度会って文句言っても許されるんじゃないかな。

 

それに、やっぱり神器保有者は迫害とかの対象になりやすいらしいね。

 

カイネウスは痺れが取れてきたのか槍を再び向ける。

 

「所詮は女神。人間ごっこしてるだけの女神様に人の心が分かるとは思えないねぇ…守護女神だか何だか知らねぇが、俺達は必ず人外を滅ぼす…!」

 

「まだやる気?」

 

「ハッ、俺は死んでねぇぞ。やめさせたきゃ俺を殺せ!」

 

「ネプテューヌ、どうする。」

 

「…私は諦めない。それでも駄目だったのなら…私の手で。」

 

「…分かった。無力化するぞ!」

 

曹操がカイネウスへと聖槍のオーラを解放しながら接近する。

自分もそれに続くようにカイネウスへと向かう。

 

「来るかよ…なら!」

 

槍に海水が集まる。

さっきの比じゃないデカさ!

これはまずいね。

 

「渦に飲まれて溺れ死ね!」

 

曹操と自分の二人を飲み込んで余りある程の渦潮。

それが放たれた。

 

「曹操!」

 

「ああ、任せろ。聖槍よ、その輝きを─!」

 

聖槍の尖端が青白い輝きを放つ。

曹操がそれを大渦に対して薙ぐ。

輝きがより一層強まると同時に大渦が切り裂かれる。

 

これが最強の神滅具…これが向けられてたらヤバかったかも。

 

─海神の槍もまた神の力…神滅具によって神を越えたという事ですか…

 

「流石ね、曹操。」

 

「半ば賭けではあったが、信頼してくれる女神がいるからな。」

 

「チィ…!」

 

やっぱりあの大渦は溜めがいるみたいで歯噛みするカイネウスの姿が。

そのまま二人で接近する!

 

そうして斬りかかろうとして─

 

 

 

静かな殺気を感じ取って、横に刀を振るう。

 

「っ!」

 

何か斬ったけど…おかしい。

何もない。

 

「気を付けろ、ネプテューヌ!絶霧にどう干渉したかは知らないが…敵が入り込んでいるぞ!」

 

「何か斬った感覚はしたわ…」

 

「チッ…あの陰険が邪魔しやがる!」

 

「暗殺を得意とする…青光矢(スターリング・ブルー)か!」

 

─放った後も軌道を変えられる神器です…探知、急いでいます。

 

「お願い。…干渉したということはカイネウスを含めて三人。」

 

どうする?

このままだとカイネウスと他二人を相手する…

曹操が禁手をして自分も全力を出したとしても勝てるかどうか。

 

隣の曹操は誰が干渉したか納得したのか苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

「カイネウス…どういうつもりだ!子供だぞ!?」

 

「ハッ!俺が知ったことか。俺にいうんじゃなくてあの餓鬼に言えよ!」

 

「くっ…!」

 

こうしてる間も変則的な動きをする青い矢が飛んでくる。

カイネウスも攻めに転じてくるせいで対処が追い付かない…!

 

「っ…ゲオルグ!ペルセウスとヘラクレスを!」

 

カイネウスの攻撃を一人で捌いている曹操がゲオルグに指示を飛ばす。

結界の維持をしながらだろうし、ゲオルグは過労死枠だね…

 

しばらくして、結界の空から二人が落ちてくる。

 

「ど、どおぁぁぁぁ!?」

 

「ゲオルグ、もう少しマシな送り方は出来なかったのですか!」

 

─『仕方ないだろう。緊急だ。』

 

ヘラクレスとペルセウス。

二人が何とか着地してから状況を把握する。

 

「カイネウスじゃねぇか!曹操、そういうことかよ?」

 

「ああ。頼めるな?」

 

「任せろ!前々からやりあいたいとは思ってたぜカイネウスゥ!」

 

「ヘラクレス…!女神を殺す邪魔をするならかつてアルゴー船にいた仲とはいえ容赦はしねぇぞ!!」

 

海神の槍をその頑丈な拳で応じる。

それと同時にヘラクレスの神器 巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)による爆発が起こる。

ヘラクレスの戦闘センスは本当にすごい。

当たる寸前に巨人の悪戯を発動できるのは難しい筈だもん。

 

ペルセウスも蛇の王妃による死の勅令(イージス・ミネラリゼーション)で青光矢を防いでいく。

 

「この矢の精度…間違いありません!」

 

─探知できました。

 

いーすんの声と一緒に脳裏に正確な位置が表示される。

 

「とりあえず、あぶり出すわ!」

 

上空にシェアを溜めて、巨大な剣にする。

32式エクスブレイドでいーすんの探知してくれた位置へ落とす。

 

地面にぶつかり、爆発したけど…

油断なく構えていると青光矢が飛んできて、それを弾く。

 

「…そろそろ出てきなさい。物陰に隠れても無駄よ。」

 

 

 

「─そのようです。虚言の類いではないようだ。」

 

 

 

出てきたのは両目を包帯で隠した長い赤髪の男の人。

何て言うかな…見えない筈なのに見透かされてるみたいな…そんな感じ。

 

「貴方が青光矢を放っていた人ね。もう一人は何処かしら。」

 

「教える義理はありません。ですが…自己紹介はしておきましょう。

私はトリスタン。かつて騎士王に仕え、襟を分かった者。

その生まれ変わりです。」

 

─アーサー王伝説に出てくる騎士の一人ですね。

 

「貴方も、人外を?」

 

「恨む、とまでは。しかし、私や他の者が受けた迫害を無視されるのも癪に障りましたから。」

 

「…そう。」

 

「今、手を取り合えないかな、と思いましたね。」

 

「っ!心が読めるの?」

 

確かに、今思ったけど…吃驚した…

 

トリスタンは自分の問いにふっと悲観的な笑みを浮かべる。

 

「読めるとは違います。貴女の音を耳が拾ったに過ぎません。」

 

「…そう、厄介ね。」

 

「貴女が曹操達を洗脳した女神ですね。」

 

「洗脳?」

 

「貴女の言葉で曹操達は心が変わった。…恐ろしいものを見ました。女神とはこのような芸当も出来るのかと。

自覚なく人の心を操るとは恐れ入りました。

所詮、神…女神に人の心は分からないのですね。」

 

─出鱈目です。ネプテューヌさんにそのような能力はありません。惑わされないように。

 

(分かってるよ。)

 

「誰と会話してるのですか?」

 

あーもう面倒臭い!

いーすんとの会話も聞き取れるの!?

耳とかの問題じゃないでしょ!?

目が見えないから耳が発達してるって言っても限度があるよね?

 

「貴方が何と言おうと私はこの絆を信じるわ。一時の物であり、いずれ離れていく物だとしても…共にいた時間は嘘じゃないもの。」

 

「…驚いた。本心からの発言とは。」

 

「トリスタン…あの子は?」

 

「おや、曹操ですか。お久しぶりですね…ええ、悲しい事ですが彼がいる以上、依存している彼女もついてくるでしょう。

どんなことだろうと頼まれればする…報われませんね?」

 

「来ているんだな…」

 

「あの子って?」

 

「ああ…ゲオルグの絶霧の一部を接合するなら相性自体はいいだろうからな。恐らく、その子がそれを行使した結果だろう…気を付けろ、ネプテューヌ…いるぞ。」

 

曹操の言葉に精神を研ぎ澄ます。

トリスタン、曹操…あっちにはペルセウスとヘラクレスがカイネウスの相手をしてるね。

 

…何だろう、不透明な感じだけど…

 

一人、いる。

 

()にいる!

 

思わず、刀を振りそうになって何とか止める。

だってそこにいたのは…

 

「っ、子供…!?」

 

「…」

 

目の前に鏡のようなものを展開していた少女だったから。

金髪の幼い少女。特徴的なのと言ったら…その赤と青のオッドアイ。

少女は鏡を周りに展開しながらトリスタンの元へと歩く。

 

曹操も槍を振るわなかった。

…もしかして、あの鏡、何かある?

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)…カウンター系の神器ですが…僅かながら絶霧の反応があります。

 

「…貴女は?」

 

「…私は、パンドラ。何にでもなれる鏡の存在。希望にも、絶望にもなれるの。」

 

こ、これはこれで…掴み所がないね。

パンドラ…うん、何となく分かるよ。

パンドラの箱の人?

 

開けちゃ駄目な箱を開けた人、だっけ?

ゲーム知識ばっかりだから何とも…

 

─間違っていませんね。パンドラ…しかし、生まれ変わりは勿論、子孫というのは無理があります。

 

「私は名前だけのパンドラ。()を見せるだけの()。」

 

「…パンドラに絶霧を接合させたのか。」

 

「ええ、彼女が望んだことですので。」

 

「魂に等しい神器に別の神器を組み込む…それがどれだけ苦痛で歪な事か分かった上でパンドラは了承し、彼はやらせた、か…」

 

こんな子供が…どうしてそこまで?

その彼っていうのは手段を選ばない人なの?それとも…

苦渋の末にそれが出来てしまう人種なのかな。

 

何にしても…知らないことが多すぎるね。

 

曹操が聖槍をトリスタンとパンドラに向ける。

 

「退け、トリスタン。大方、カイネウスを連れ戻しに来たんだろう。」

 

「流石は曹操。洗脳されたとしても頭は回るようだ。

ええ、そちらの女神はよろしいので?」

 

「…ええ。」

 

了承する。

多分、曹操にも思うところがあるんだと思う。

…うん、もっと強くならないといけないって実感する。

 

「見逃してくださるようですので、一言だけ。

三勢力の罪…それをしっかりと認識することです。」

 

「そうね、ありがとう。」

 

「…少し戸惑いますね。敵の言葉なのにしっかり信じられてしまうと。」

 

トリスタンはパンドラの名前を呼ぶ。

すると、パンドラは頷いて、周囲の鏡にトリスタンとパンドラ…後、あっちのカイネウスを入れて鏡ごと消えた。

 

瞬間、絶霧の結界も消えた。

今の戦いの終わり。

それを感じ取って、女神化を解除する。

 

「…ふぅ。」

 

「曹操、その…大丈夫?」

 

「ん?ああ…平気さ。それよりも、ネプテューヌ…これから荒れるぞ。」

 

「うん…私だけじゃなくて、他の皆も危ないね。

ねえ、リーダーが誰か知ってるんじゃない?」

 

「あの6人でリーダーになれる人物、か。

そうだな、もう話すべきだろう。…部屋に戻ろう。」

 

少し、暗い表情をした曹操。

 

「カイネウスが消えちまった!決着はまた今度になっちまったじゃねぇか!」

 

「ネプテューヌ様、遅れてしまい申し訳ありません!」

 

「あ、あはは…いいよいいよ。守ってくれただけでも十分だから、ね?」

 

「くっ…ありがとうございます!」

 

「ヘラクレスは平気?」

 

「おう、俺の体は頑丈よ!カイネウスが来た時は呼んでくれ、アイツとの決着は俺がつけるからよ!」

 

ワハハと笑いながらそう言うヘラクレスがちょっと羨ましいかも…

ペルセウスは何だろう、忠誠心が凄いのかな。

自分ってその忠誠心向ける程の人なのかなって思っちゃうけど…うーん、ペルセウスがいいならいいのかな…?

 

─流石はギリシャ英雄の魂を継いでるだけあって割り切ってますね。

 

(あれ多分、考えてないだけじゃないかな…)

 

「じゃ、戻ろう!」

 

「おうよ。」

 

「はい。」

 

曹操を元気付けたいなぁ…どうすればいいんだろ?

悩みながら、曹操の部屋へと戻る。

三勢力の罪…一体、どんなものなのかも調べなきゃ。

 

やっぱり、皆でハッピーエンドを迎えたいもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狭い!!」

 

「そう言うなよゲオルグ!俺達の仲じゃねぇか。」

 

大の男が4人もいるとアパートの一室は狭く感じる。

ヘラクレスは巨漢だから余計にそう感じるのかも?

 

まあ、自分は小さいから特に気にしないけどね!

 

「曹操、大丈夫?辛いなら…」

 

「いや、話す。」

 

倒すべき相手を確認するような曹操。

 

辛そうなのは仕方ない。

だって、かつての仲間だったんだもん。

本来なら、戦いたくもないと思う筈。

 

それでも、カイネウスを相手にした時に槍を向けた。

その時の曹操はとても頼もしく見えた。

でも…うん、リーダーだもんね。

 

「俺が確認しなかったのが悪いんだ。だから、これは俺が…俺達が解決すべき問題だと思っていた。

だが、アイツらはネプテューヌを狙った…

苦楽を共にした仲間だ。それは間違いない…それでも、お前は俺達に希望を見せてくれたんだ、救ってくれた。

だからこそ、俺はその身を守ると誓った。」

 

自分を見ながら、曹操はそう言う。

 

曹操は、揺れやすいんだ。

とても揺れやすい。

だけど、絶対と決めたことを通してくれる人だと思う。

 

うん、辛いと思う。

それを飲み込んで自分を守るって言ってくれるのは凄い嬉しいよ。

でも…

 

自分は曹操の手の上に自分の手を置く。

 

「曹操。」

 

「何だ?」

 

「きっと、手を取り合えるよ。」

 

「…」

 

「全部知ってる訳じゃない。もしかしたら、差し伸べた手を弾かれるかもしれない。でもね、それでも怖くても、苦しくてもそれをやめたら駄目なんだ。

自分が辛くなるとしても、私は手を繋ぎ合いたいよ。

…こんな私だけど、ついてきてくれる?」

 

遅くなった確認。

それでも、これからもしないよりはずっといい確認。

 

曹操は、ふっと微笑む。

 

「そんなお前だからついていきたい。」

 

「…うん!」

 

他の皆も…そうみたい。

面倒だなって言ってくれてもいいのになぁ。

正直、馬鹿なことしてるとは思うけどさ。

 

「…よし、じゃあ、話すぞ。」

 

曹操は今度はしっかりとした目で自分に残りのメンバーの事を今度こそ話し出す。



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英雄当てゲーム最終弾!そして、あの場所へ出発だよ!

尚、当てられる程の要素をだしていない模様。
これは駄作者ですわ…




「まず最初に…そうだな…三國無双といえば誰か分かるだろうか?」

 

「えっと…呂布だっけ?」

 

「ああ。呂布…彼女も俺達の元仲間だった。」

 

「え、呂布が女の子?それなんてギャルゲ?」

 

「まあ…確かに可愛らしい見た目ではあるが力は女の物ではなかったな。」

 

「なんか納得。」

 

呂布ってよくゲームとかでも強すぎる系として出る人でしょ?

うん、分かるよ。

それが女の子になっても拳で岩くらい壊しそうだもんね。

 

りょ、呂布だー!

 

隣のいーすんが微妙な顔をする。

 

「よくしばりくびにしたアイテとナカマになりましたね…?」

 

「まあ、先祖だの何だのが気にしても仕方無いとは思ってたからな。」

 

「ぶっちゃけそう言うの覚えてるわけないもんね~」

 

「カイネウスが特殊なだけだ。それだけ憎いんだろうな…神が。」

 

「まあ、カイネウスのサイゴをかんがえればわかりますが。」

 

えっと…聞かないでおこう。

他人の最期とか気分沈んじゃうし…

ねぷ子さんは元気じゃなきゃね!

 

「性格とかは?」

 

「とても大人しいな。あまりコミュニケーションは取れなかった。トリスタンには懐いていたよ。」

 

「ええ…あの人と?私、苦手かも…」

 

「俺も苦手だぜ、あの野郎毎度嫌味ったらしい奴で好かねえ。」

 

「それで、神器は?」

 

「ああ、龍の手(トゥワイス・クリティカル)だった筈だ。」

 

「ジークと同じだね。」

 

勘違いだったけど、最初の一誠とも同じかな。

でも、ただの倍加でも強いと思う。

ただの人って考えたらだめだね。

曹操もそうだけど、打たれ弱いから立ち回りが上手いって人もいるわけだし。

 

「次は…賢者の石、ホムンクルス。」

 

「テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイムですね( ・`д・´)」

 

「え、誰。」

 

「パラケルスス、というナマエでもゆうめいです。」

 

「あの人そう言う名前だったの!?えっと…賢者の石は知ってるよ?あれでしょ、使うと全体回復する…」

 

「そうだけどそうじゃないぞ。というか、曹操達はそのネタ知らないだろうに。」

 

「ゲオルグは反応してくれるって信じてたよ!」

 

「謎の信頼はやめろ!」

 

ゲオルグにツッコミを入れられた。

やっぱり思った通りだ!

ゲオルグはツッコミ…メガネだからもしかしてと思ったんだ!

 

「続けるぞ?」

 

「あ、ごめん。」

 

「…彼女は自分をパラケルススと名乗っていたよ。

代々、自分の家の優秀な者が受け継ぐ名前だそうだ。」

 

「女の人なの?」

 

「ああ。天才、そうとしか言えない頭脳と手腕だった。

彼女は仲間想いでな。彼らの事が心配でついていったよ。」

 

「苦労枠だね、間違いないよ!」

 

「確かに…穏健派であった彼女は胃を痛めてる可能性があります。」

 

「技術や頭脳は俺も尊敬している。だからこそ残ってほしかったが…仕方無い。」

 

「苦悩してるとは思う。これから、どのように動くにしても、な…」

 

聞けば聞くほど苦労枠で不憫枠だね、その人…

凄そうなのに凄くないっていうか…

…何とか説得できないかなぁ…

 

幻煙の魔獣(ファントムフォッグ・モンスター)という神器を宿しているが…それに加えて、人外への手札は多いだろう。」

 

「ファントムフォッグ・モンスターはケムリでマジュウなどをサイゲンするセイクリッド・ギアですね。ケムリというトクセイなのでぶつりてきなコウゲキはききません。」

 

「うわぁ…私だとかなり苦手かも。」

 

物理効かないの多くない?

カイネウスも効き目薄かったし…

まさか、主人公へのメタ!?

たまにいるよね、主人公キャラだけじゃ突破できない系の相手…

 

「そして、最後のメンバー…彼がリーダーだろう。

実力は申し分無いし、彼の憎しみは凄まじいものだ。」

 

「ゴクリ…」

 

「平安において大江山の首魁、酒呑童子を討ったことが有名だろう…─」

 

 

 

「─源頼光。彼はその子孫であり、その名前を継ぐ者だ。」

 

 

 

「源って…源氏?」

 

「はい。かのゆうめいなアベノセイメイとおなじジダイをいきたひとですね。」

 

「彼の憎しみは凄まじいものだった。人外は消えるべきだと、殺さねばならないと…何がなんでもそれを為そうとする強い意志を感じた。」

 

「…何があったんだろう。」

 

「頑なに語ってはくれなかった。それだけ彼の中では禁忌ということだろうな。」

 

源頼光。

源氏の事なら教科書とかで知ってるけど…詳しくは。

大江山ってなんだろうってなったし。

 

「彼の神器は聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)。ジャンヌと同じ神器だが…技量も力も彼は英雄派でもトップに近かった。」

 

「木場君も確か後天的に取得してたよね。」

 

「はい。セイケンのインシをとりこんだからかと。 

それにしても、ヨリミツですか…」

 

「何にせよ、曹操の予想だとその人がリーダーなんだね。」

 

「ああ…」

 

「うん、分かった。」

 

曹操は自分達の仲間でもあった人達と悔いのないように決着をつけるつもりでいる。

話をして、穏便に済むのならそれでよしって思ってる筈だけど…そうならなかった場合は…

 

…自分に決着をつける、かぁ。

 

「皆にも伝えておくね。」

 

「ああ、そうしてくれ。これは俺達だけの問題に収まらない筈だ。特に、頼光はな。」

 

「うん。曹操、自分だけで片付けようと思っちゃ駄目だよ。

置いていこうとしたら私追いかけるからね?」

 

「そんなことしないさ。」

 

「そうしようとしたら縛り付けといてやる。」

 

「後先考えねぇ時があるからな、うちのリーダーは。」

 

「貴方に言われたくないと思いますが…そうですね。」

 

「…この通り、不本意ではあるが警戒されてるからな。」

 

まあ、しそうな危うさはあったし、受け入れてね!

それにしても…カイネウスの勝手な行動とはいえ周りを巻き込んだし…そういうことをするかもしれないって思っておかないとね。

 

立ち上がって、玄関に向かう。

 

「帰るのか。」

 

「護衛は?」

 

「いいよ、近いし!あ、それよりも黒歌は?」

 

「今更か…散歩でもしてるんじゃないか?猫の状態ならまずバレないだろうしな。」

 

「それもそっか…よし!じゃ、帰るね!」

 

「では、みなさん。また…」

 

いーすんと一緒に外に出る。

ゲオルグの結界のお陰で特に被害なし…

毎回こうだといいけど多分、そうはならない。

 

でも、少しでも被害を抑える事はできる筈。

 

それと…

 

「決着、かぁ。」

 

「ネプテューヌさん…どうかしましたか?」

 

「…いーすんはさ、私はこのままでいいと思う?

このまま、戦っていって、勝てると思う?」

 

「それは…」

 

「正直に答えてほしいかな。」

 

これから、どんどんと戦いが激しくなっていく。

これは絶対だと思う。

ドラゴンは厄介事を引き付ける。

いーすんがそう言ってた事がある。

 

一誠は二天龍の一体、ドライグを宿してる。

その言葉の通りなら、激化していくのは間違いない。

 

多分、自分も。

 

いーすんは少し暗い顔をして答える。

 

「きびしいでしょう。メガミさまのチカラといえど…それでもゲンカイはありますから。」

 

「だよね。…うん、なら私も自分の問題を片付けなきゃね。」

 

帰り道を歩きながら、携帯を取り出す。

電話する相手は勿論…

 

コール音が二、三回程流れてから相手が出る。

 

『おう、ネプ子か。』

 

「おっちゃーん!元気?」

 

勿論、アザゼルことおっちゃんに電話を掛ける。

というのも…おっちゃんが頼りっていうか。

いーすんは何をするか分からないみたいで首をかしげてる。

取り合えず、自分の中に入ってと伝えると頷いて入ってくれる。

 

『おう、元気だぜ。そんで、どうしたんだ?』

 

「んー…お願いがあってさ。」

 

『…言ってみな。』

 

おっちゃんは優しい。

面倒だって突っぱねる事も出来るのにそれをしない。

よし、こういう時は年長者に甘えるよ!

 

「実はね──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、休日ぅ!

おっちゃんに心底だるそうに了承してもらってからOK貰ったらしくて公園で待ってる。

 

「よーネプ子。」

 

「おっちゃん!おはよう!」

 

「おはようさん…じゃねぇよ!面倒にも程があったわ!」

 

「ねぷぅ!?頭グリグリはやめてぇぇ!」

 

おっちゃんが来たと思えば拳二つに頭を挟まれてグリグリとされる。

痛い!地味に痛いよこれ!

 

「ったく…どういうつもりだよ、ネプ子。よりにもよって俺に頼むことじゃなかったろう。まあ、請け負ったがよ。」

 

「いやぁその、私ってば頼れる伝手がおっちゃんしかいないというか…あはは、ごめんね?」

 

「まあ、それなら俺を頼るってのは間違ってもいねぇのか…?

ってそうじゃねぇ。何だって──」

 

 

 

「─ミカエルに会わせてほしいなんて頼んだんだ。」

 

 

 

「んー…」

 

「しかも、天界にも一度行きたいだなんてよ。つまんねぇぞ?」

 

そう、おっちゃんに頼んだのは他でもない。

一度天界に行きたいのとミカエルさんに会いたいからなんだ。

まあ、大事だよ、これは。

 

何て言ったものかなと考えてから

 

「自分の事で一先ずの決着、みたいな。」

 

と言った。

嘘じゃなくて、本音。

置いていた問題だったし、いーすんとの関係をしっかりと明白にする為のもの。

そんなことしなくてもいーすんは相棒だし、大切な仲間だけど…

 

いーすんにこの事を話したら、

 

─『…そうですね。私やネプテューヌさんの故郷のようなものですからね……ええ、分かりました。』

 

考えるような感じだったけど、了承してくれた。

 

「お前の事で…ねぇ。」

 

「後、もう一人呼んでるんだ。」

 

「もう一人?」

 

おっちゃんと少し待つこと10分。

 

そのもう一人が来た。

 

「すまない、遅れた。」

 

「ちょっと遅刻だよ!私みたいな美少女を待たせるなんてよくないよ?」

 

「少しゴタゴタしていた、すまないな。…堕天使の総督殿はもう来ていたか。」

 

「あー…曹操だったか?ネプ子、何でこいつを?」

 

「それにかんしては、ワタシが。」

 

いーすんが自分の中から出てくる。

 

「イストワールか。」

 

「はい。…そうそうさんをおよびするようにネプテューヌさんにたのんだのはワタシです。」

 

「何だってそんなことを?詳しく聞かせてくんねぇか?」

 

「ええ…といっても、もうしわけありませんが、そうそうさんジシンにヨウがあるわけではありません。トゥルー・ロンギヌスにヨウがあるのです。」

 

「聖槍に?」

 

いーすんの言葉におっちゃんが考えるような仕草。

曹操も自分もよく分かってないからその辺どうしてなのか教えてほしい。

 

「天界、聖槍…まさか。」

 

おっちゃんが何か分かったような様子。

 

「イストワール…お前さん、まさかだとは思うが。

システムに干渉できるのか…?」

 

「ええ、できますよ。シショですから(^-^)v」

 

システム?

なにそれ?

 

おっちゃんは自分の様子を見てそうだったなと言って説明してくれた。

 

システムとは、神器とか聖書の神が創ったもの等を管理する物。

ミカエルさんのようなセラフしか見ることが出来ないらしい。

そんな凄いものをなんでいーすんが?

 

「ワタシはセイショのカミにつくられたさい、おおくのケンゲンをいただきましたから。」

 

「なるほどねぇ…」

 

「凄いね、いーすん!」

 

「ふふっ、サポートするのがやくめですからね。」

 

「…俺も天界に行っていいのか?人が行けるような場所ではないだろうに。」

 

「そうだぜ。俺もだが人間である曹操が入れるとは思えねぇが…」

 

「もんだいありませんよ。それで、アザゼルさん。あなたのあんないでテンカイにむかうのですね?」

 

「おう、そうだけど何かあるのか?」

 

「いいえ、コウツゴウです。」

 

「わあ、不気味。」

 

「マジでそれな…そんじゃ、行くぞ。つっても入り口まで転移だけどな。」

 

「堕天使なのに出来るの?」

 

「昨日ミカエルにやっとこさ繋いで貰ったんだよ。

大変だったんだからな?」

 

「うん…お疲れ様。」

 

「分かってんのかねぇ…」

 

何にせよ、よかったー…

これで和が故郷が拝めるわけだね!

ふふん、どんな場所か見せて貰っちゃうよ!

 

おっちゃんに案内された場所に転移の魔法陣。

 

とうっ、と一番乗りで魔法陣に乗る。

 

「がっつくながっつくな。天界は逃げねぇよ。」

 

「そうは言うけどおっちゃんも楽しみなんじゃないの~?」

 

「んな訳あるか。俺達堕天使は親であるアイツとは訣別してんだよ。戻ってもお堅い連中ばっかで嫌になるって訳だ。

お前の案内兼護衛でもねぇ限り戻らねぇよ。」

 

「天界でも護衛が要るの?」

 

「ある意味一番危険だぜ、天界は。信仰ってのはそれだけ人を狂わせる…天使しかり、人間しかりな。しかも、これが神の為になるだの言って人攫いも実験もお構いなしと来た。セラフ連中は信じてもいいが他は信じるなよ。」

 

「ええ…一気に天界のイメージ崩れたよ…」

 

ブラック…色んな意味で怖い場所のイメージがついたよ!?

行くのが怖くなってきたんだけど…むしろ帰りたくなってきたんだけど!

いーすんはもう行く気満々だし、何ならおっちゃんが連れてく気満々だよ!

 

まあでも、行くって言ったのは自分だしここは頑張るよ!

 

「準備いいな?行くぞ。」

 

おっちゃんがそう言うと、転移が始まる。

目の前の景色がブレて、どんどんと転移先の景色に変わっていく。

そうして、転移が終わる頃には…

 

「わぁ…!」

 

石畳の白い道に石造の建物があり、空が白く光り輝く場所…

多分、ここが天界。

自分といーすんの生まれ故郷。

 

「戻ってきちまったなぁ…つうか第一天かよ。」

 

「一?」

 

「ああ、さっき見上げた時の光景…あれは天井なのさ。」

 

「天井…あれがか?」

 

「第七天まであるぜ。登るのはしんどいが…」

 

周りには天使と思われる人達もいる。

でも、自分達に関わろうとしてこない。

 

何だろ?

 

「お待ちしてましたよ、ネプテューヌさん、イストワールさん。」

 

石畳の道から歩いてくる人…周りの天使達が驚きと共に頭を下げてる。

前と変わらない笑顔で来てくれた。

 

「ミカエルさん!」

 

「おひさしぶりです、テンシチョウさま。」

 

「はい、おひさしぶりです。…おや、アザザルと人の子までいるのは予想外でした。よく入れましたね?」

 

「すみません、ワタシがシステムにきょかをだしました。」

 

「…ああ!三日前に妙な反応があったのはそういうことですね。

あれ以来何もなかったので…なるほど、史書である貴女にも権限はあるようです。」

 

「はい。こちらはそうそうさんです。」

 

「お初にお目にかかる、ミカエル殿。俺は曹操…ネプテューヌを守る者として共にいさせて貰っている。」

 

「…ええ、実力者ですね。安心しました。」

 

ミカエルさんは少し曹操をジッと見つめた後、笑顔に戻る。

見定めてたんだ、あの少しの間に。

おっちゃんが退屈そうに欠伸をしてる。

 

「んで、戻ってきたはいいが…イストワール、何をしに俺達を?」

 

「ネプテューヌさんやワタシのうまれこきょう…それをまたカクニンしたいというキモチもあります。

けれど、ネプテューヌさんのごじぶんのことでひとまずのケッチャクをつけたいというネガイをかなえたい。ですので、ドウコウしてもらいました。」

 

「なるほど…ネプテューヌさんの頼みはアザゼル経由で知っていますが、イストワールさんの用を聞いたほうが良さそうですね。

天使長として、是非お聞かせ願いたい。」

 

ミカエルさんの言葉にいーすんが頷く。

いーすんのしたいこと…何だろ、おっちゃんはシステムへの干渉って言ってたけど…

 

だいしちてん(第七天)、システムのもとにワタシたちをあんないしてほしいのです。」

 

「…それは何故でしょう?貴女は記録する存在…システムも一度全てを確認したいと?」

 

少しだけ、ミカエルさんの雰囲気が変わる。

いーすんといっても、今の天界のトップはミカエルさん。

だから、そう易々とシステムを見せるわけにはいかない…そういうことだと思う。

 

「それもいいのですが…そうですね…」

 

周りを気にするいーすん。

ここだと言いにくいのかな。

 

「ミカエルさん、少し場所を移したいんだけど…立ってるだけだと疲れちゃって。」

 

「それもそうですね…では、少し移動しましょう。エレベーターがありますから、第六天まで。」

 

「いきなり上だな。」

 

「第七天は神のシステムがある場所だ。神聖な場所なのさ。

だからこそ、セラフ達は第六天を拠点にしている…だろ?」

 

「ええ、覚えているようで結構です。

アザゼルには見せたくはない場所ですが…特別ですよ。」

 

「へーへーありがてぇこって。」

 

まあ堕天使だもんね、おっちゃん。

信用はないって言ってたけど嘘じゃなさそうだよね。

自分は結構信じてるんだけどなぁ…

何処と無く胡散臭いからかな。

 

というか、エレベーターあるんだ。

意外と現代的?

 

ミカエルさんについていくと、本当にエレベーターみたいなものがあった。

自分の知る形とは少し違うけど…

 

それに乗って、上昇していく感覚。

第六天まで少し時間はありそう。

いーすんからありがとうございますって言われたけど…これくらいならお礼とか言われる程じゃないよ。

 

「ワタシがだいしちてんまでいきたいリユウでしたね。」

 

いーすんはエレベーターが第六天へ昇る中、微笑む。

 

 

 

「システムのチュウスウにアクセスし、いちじてきにセイショのカミをよびもどす…それがだいしちてんへいきたいリユウです。」




ねぷ子さんも自分に一時的な決着を。
いーすん、一体どうやって聖書の神を呼び戻すのか、その真意とは…

まあ、いーすんだから悪いことにはならないよ。
多分、おそらく、きっと、メイビー


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聖書の神様を呼ぶ!?魔法カードでも使うの!?

さて、そろそろねぷねぷだ(挨拶)

いーすん、何をする気だ!?(警備隊長)


聖書の神を呼び戻す。

いーすんのその言葉に自分を含めた全員がどよめく。

 

「主を、呼び戻す?」

 

「死者蘇生って事…じゃねえのかそれは?」

 

「そうですね…みかたをかえればそうかもしれません。」

 

「見方も何も、その通りじゃない!?だって、聖書の神様って大戦で…」

 

「ええ、亡くなられております。それは我々がこの目で見たことです。」

 

「イストワール、方法は?」

 

曹操の質問にいーすんは、はいと言ってから答える。

 

「そうそうさんのトゥルー・ロンギヌス…それにはセイショのカミのイシ(遺志)がやどっています。それとこのばのみなさまのエニシをバイカイにいちじてきにジッタイをもてなくなったカミをよびもどすのです。」

 

「えっと…それって生き返るのとどう違うの?」

 

「…なるほどな。神は死んでも信仰ある限り存在はしている。

実体のなくなった信仰を受けるだけの神を時間制限ありで呼び戻す…つまり、あれか?通信みたいな感じか?」

 

「主が自らのお力で復活なさるというのは…」

 

「できないでしょう。いくらセイショのカミがバンノウとはいえシをちょうえつはしていません。」

 

「…イストワール。それは…罪深いことではないのか?」

 

「…そうですね、そうおもわれてもしかたありません。

ですが…ネプテューヌさんのためにも、ワタシのためにも…どうしてもカミとのセッショクがヒツヨウなのです。

ワタシでは…ネプテューヌさんのチカラのすべてをとりもどすことはできないのです。」

 

「…ねえねえ!お腹すいた!プリン食べたい!」

 

「はあ?いや、ネプ子…タイミングをだな。」

 

「えーやだー!プーリーンー!」

 

「…ふふ、そうですね。少し甘いものを食べるのも大切でしょう。

頭を動かした後とかは特に。勿論、ネプテューヌさんの為にプリンを用意してますよ。」 

 

「本当!?さっすがミカエルさん!ねぷ子さんポイントを100贈呈しちゃうよ!」

 

「おや、そのポイントを貯めたら何か貰えるのでしょうか?」

 

「んー…秘密!」

 

「それは残念です。」

 

自分の突然の我儘におっちゃんが呆れたように咎めるもミカエルさんは微笑んでそれに乗ってくれた。

 

世間一般的に良くないことだとは思うよ。

死んじゃった聖書の神様を呼び戻すなんていうのは。

命に対する冒涜だと思う。

 

本当の親に会いたいっていうのはある。

勿論あるよ。

でも…いーすんが自分の為にって言ってくれて、苦労して準備をしたのにそれを無下にはできないよ。

それに、いーすん自身の為になるなら自分はそれに乗りたい。

今まで助けられてきてるからさ。

 

「…まあ、いいけどよ。」

 

おっちゃんも渋々といった様子で腕を組んで話をやめる。

ありがとう、二人とも。

 

曹操は特に言うことはないのか、自分の斜め後ろに立っているだけ。

 

そうして、第六天に着いた。

まず目に入ったのは金色に輝く光輪を背にした神殿のような神々しい建物。

周囲には多種多様彩り鮮やかな草花が咲き誇っている。

 

正直、現実味に欠ける光景ばかりだよね。

でも、自分が言えることじゃないかな。

 

「ミカエル殿、あそこが?」

 

「ええ、私達セラフのいる、現在の天界における中枢機関…その名もゼブルです。」

 

「スッゴい!RPGとかで良く見る感じの建物だね!わあ、ここって何があるの?巨大ロボ?あ、もしかして実はダンジョンってオチ!?」

 

「巨大ロボはありませんし、残念ながらダンジョンでもありません。ここで大事な活動をしているのですよ。」

 

「そっかぁ…セラフも大変なんだね?」

 

「そうですね…私達の管理がなってない時も多くあるので大変と言うのは違う気がします。申し訳ない、が正しいのでしょうね、この場合は。」

 

「実際その通りだろうよ。」

 

おっちゃんがけっ、て感じにそう言うとズケズケとゼブルに向かって歩いていく。

スッゴい我が道を行ってるね、おっちゃん。

 

「アザゼルの言葉は正しいものです。…さあ、行きましょうか。」

 

「うん。」

 

ミカエルさんと一緒におっちゃんに追い付く。

おっちゃん一人だと絶対に怪しまれるからね。

いーすんと自分ならギリギリ何とかなりそう?どうだろ。

 

ゼブルの中は外で見た見た目とは裏腹に近代的な感じ。

機械とかも人間界じゃ見ないものばっかりで、下手に触ると壊しそう。

 

「えー、これ本当にゼブルの中!?外と中だとスッゴい違うよ!?」

 

「ふふ、大はしゃぎですね?」

 

「そりゃそうだよ!私こんなの見たことないもん!いーすん、凄いよね!?」

 

「ええ、ワタシもキロクではしっていてもジツブツははじめてなので…さわってみたいです。(ノ≧∇≦)ノ」

 

「俺も触ってみたいな~」

 

「アザゼルは駄目です。本来なら天界に立ち入ることも出来ないことをしっかりと理解してくださいね?」

 

「へーへーありがてぇありがてぇ」

 

「こういうのはゲオルグが喜ぶんだろうが…ふむ…」

 

いーすんは興奮した様子で、曹操は機械に詳しくないからジッと見てるだけ。

おっちゃんはもう隙があったらやらかしそうだから見張っとこう。

 

そのまま、ミカエルさんに案内されて個室に。

 

座っていてくださいと言われて、大人しく座っておく。

ミカエルさんは色々と取りに行っちゃった。

 

「ふぅー…んで?第七天で神を呼び戻すのはいいがよ、それで何を聞く気だ?」

 

「あれ、おっちゃんも会いたいの?」

 

「説教がうるせぇから嫌に決まってんだろ。」

 

「えーそんな理由?」

 

「…ただよ。」

 

「?」

 

「俺達が背負う筈の物をお前達に背負わせてるって自覚はある。

それに前に許して貰ったからな…ダチとしてお前に協力するくらいならやってやるよ。」

 

「素直じゃないなぁ。欲には素直なのに。」

 

「うっせぇよ。」

 

「俺は一度会ってみたいな。…この槍に宿っているのが遺志ならば、意志疎通は出来ない。だが…本人ならば。この槍を扱う以上、知っておく必要がある。」

 

「そっか、曹操の黄昏の聖槍を使うんだもんね。」

 

「はい、いちじてきなよびもどしですので…ジカンがたてばいつもどおりのセイソウでしょう。」

 

「なるほど、そういうものか…」

 

曹操には悪いことをしたと思う。

本人は天界に来て少し眼を輝かせてるけど…それでも、こっちの都合に巻き込んじゃったから。

 

そうして少し待ってるとミカエルさんが戻ってきた。

プリンと紅茶を人数分出して、ミカエルさんも座る。

 

「ありがとう、ミカエルさん!」

 

「いえ、大事な妹ですからね。」

 

「天使じゃないがな。」

 

「関係ありませんよ。主が創り出した命…であれば妹でも問題ないでしょう。」

 

「そう?あ、でも家だと私がお姉ちゃんだから上の人居なかったから新鮮かも?」

 

「試しに兄と呼んでくれません?」

 

「お兄さん?」

 

「んー…少し他人行儀な感じですね…」

 

「お兄ちゃん?」

 

「いいですね、ミカ兄さん的にポイント高いですよ。」

 

(こいつ本当に堕天してないんだよな?)

 

ミカエルさんってこういう触れ合いをしたいのかな。

意外と積極的っていうか…こういった事を全然してないから自分となら気兼ねなく出来そうって事でしてるとか?

 

まあ、それぐらいならお安い御用だけど…

 

紅茶とプリンが美味しい…!

何だか、のほほんと出来ちゃうね~…

 

「って危ない危ない…目的を忘れるところだったよ!」

 

「本当に第七天へと行きたいようですね。」

 

「うん。本当に出来るかどうかはいーすん次第だけど…それでも自分の事をしっかりと知っておかないとこれから向き合う事も出来ないだろうから。このままじゃ胸を張って人の味方って名乗れないと思う。」

 

「ミカエル、お前としても親にもう一度会いたいんじゃねぇのか?いきなり神の代行をすることになったんだ、それぐらいやっても罰は当たらねぇよ。」

 

「堕天使らしい誘惑ですね。しかし露骨すぎますよ、アザゼル。」

 

「親に会う、それがおかしいことかねぇ…?固すぎだぜ、天使長さんよ。そんなんだから人間の欲望を見誤るのさ。」

 

「勝手な判断で人々を狩っていた貴方に言われるとは思いませんでしたよ?」

 

「勝手はどっちもだろう?」

 

「もー!すぐ喧嘩ムードになるのやめようよ!ミカエルさんの天使長としての責務とかあるのは分かってるよ。その上で無理を承知で頼んでる!私は生みの親の聖書の神に一度会って話がしたい。

いーすんも!その為に第七天に行きたい!」

 

「ゆるされぬおこないかもしれません…ですが、ワタシはそれでもあいたいのです。あわねばならないのです。」

 

「……」

 

ミカエルさんは少し目を閉じて考える。

緊張が自分に走る。

駄目だと言われたらそれはもう諦めるしかない。

天使長として安易な判断は出来ないだろうし…

 

それでも、ミカエルさんからすれば考える余地はあるみたい。

 

しばらくして、ミカエルさんは目を開ける。

 

「…分かりました。特別に許可します。」

 

「本当!?」

 

「ええ、ただし…イストワールさんとネプテューヌさんだけです。

アザゼルや曹操さんの立ち入りは禁じます。」

 

「…それもそうだな。ネプテューヌ、ならばこれを。」

 

曹操は納得した様子で聖槍を自分に渡す。

 

「いいの?」

 

「禁じられた以上、納得するしかないさ。それに、ネプテューヌが会ってくれるんだろう?なら、これでいい。」

 

「…過ごしてそんなに長い間いた訳じゃないけど、成長したね。」

 

「なら、今度はお前が成長する時だ。」

 

「うん!」

 

しっかりと受け取る。

重すぎず、軽すぎない。

そんな感じ。

 

ミカエルさんも聖槍には思うところがあると思うけど…

聖書関連の物だよね、これ。

教会からしたら…ううん、ミカエルさんを信じよう。

 

おっちゃんは分かってた様子で紅茶をぐいっと飲んだ。

 

「縁はその場にいなくてもいいのか?」

 

「できれば、ちかくにいていただければ。」

 

「…ま、そういう訳だからちょいと近くまではいさせて貰うぜ。」

 

「いいでしょう。」

 

「よーし!そうと決まれば第七天に向けて出発だよ!」

 

「おいおい、プリン食ったらもう行くのか?」

 

「ふふん、落ち着きをもてないのがこの私!時はゼニーなりって言うじゃん?」

 

「金なり、な。ミカエル、阿呆が早く行きたいよお兄ちゃんって言うんで行こうや。」

 

「ええ。…あの、アザゼル…すみません。ちょっと今の気持ち悪かったです…」

 

「二度と言わねぇから安心して案内しろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七天に向かうべく、第六天…ゼブルの奥まで進む自分達。

ミカエルさんがここからは来ちゃ駄目って言うまでは同行許可を貰って曹操とおっちゃんも来ている。

ちなみに聖槍は自分がしっかりと持ってる。

返したら空気が微妙になるから…ね。

 

「正直な話。」

 

ミカエルさんが歩きながら話し出す。

 

「私も主のお言葉をお聞きしたい。私が天界のトップとして未熟なばかりに他のセラフや信者に苦労を掛けていますから…」

 

「神が完璧だったわけでもあるめぇよ。」

 

「そうだとしても…天使は、主が居てこそでした。」

 

「…ま、堕天使の俺よりも縛られてるのは事実か。」

 

そっか。

天使は堕天使や悪魔と違って代わりになれる存在がいなかったんだ。

だって、トップが聖書の神だったから。

そんな神様が死んじゃったからこうしてミカエルさんがトップになるしかなかった。

…可哀想だよね、組織のトップであり自分達の親を亡くしちゃったんだもん。

 

そりゃ、言葉の一つや二つ改めて聞きたいと思っても仕方無い。

 

自分よりもよっぽど会いたいよね。

それをトップだから下手な真似はしちゃいけないから想いを封じてた。

…改めて、信頼してくれてるって分かる。

言葉じゃなくて、その行動で。

 

これは主人公として決めないとね。

 

そうして、奥のエレベーターまで着いた。

 

「この上が第七天…主のいた場所です。ここからは私とネプテューヌさん、イストワールさんで行きます。お二人はここでお待ちください。」

 

「あいよ。」

 

「ネプテューヌ、神に会ったのならどのような人物だったか教えてくれ。」

 

「うん、任せて!ねぷ子さんの幸運値は天元突破してるから安心しちゃっていいよ!」

 

「かしていただいたトゥルー・ロンギヌスにちかいます。」

 

「ああ。」

 

「おい、ネプ子。神が俺について何か言ってたらうるせぇ馬鹿親父と伝えておけ。」

 

「あはは…うん、分かったよ。」

 

罰当たりだけど、堕天使だもんね。

うん、おっちゃんらしい。

 

ミカエルさんはおっちゃんに咎めるような視線を送るけどおっちゃんはどこ吹く風といった様子。

もう話すことはないっぽいね。

 

開いたエレベーターの中へと入る。

何だか緊張してきた。

 

「では、行きますよ。」

 

「うん!」

 

「おねがいします。」

 

エレベーター特有の上昇していく感覚。

外は見えないけど、かなり上っぽい。

縁を利用するのに大丈夫かな?

いーすんをチラリと見るけど、普通な様子。

 

…平気っぽいかな?

 

「もし、あの時あの場で貴女が神の後継者として宣言してくださったら…第七天は貴女の場所でした。」

 

「…そうなんだ。」

 

「ですが…分かっていたのです。貴女が人に寄り添う事を。

漠然とですが、それでも貴女はこちらのトップに立つことはない。そんな納得があったのです。」

 

「…私、薄情なのかな。」

 

「いいえ。主は誰よりも自由であるように願ったと思います。」

 

「え…なんで?」

 

「…何ででしょうね。私も、分かりません。

ただ、私が親であるのなら…今度こそ、自由な選択が出来るように願います。」

 

親として。

自分はそんなに想われていたのかな、聖書の神様に。

分からない…けど、それももうすぐ分かるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神のいた場所、天界の最上部。

第七天。

そこへ足を踏み入れる自分達。

 

何だろう。

何もない…そんな場所。

広々とした空間の真ん中に、大きな球状の光のようなものが浮いている。

 

あれがシステム?

想像していたのと大分違うけど…機械じゃないんだ。

 

「やはり、立ち入ることが出来るようですね。」

 

「キョウセイソウカンされることもハアクずみです。きょかをもらったのにソウカンされてはたまりませんから。」

 

「ええ!?知らなかったよ!?」

 

「ネプテューヌさん。イストワールさんの力は絶対に誰かの手に渡らせてはなりませんよ?」

 

「う、うん…それは分かってるよ。」

 

いーすんの凄さは自分が一番知ってるもん。

戦いの時もシェアの管理とかのサポートをしてくれなかったら負けてる場面が多いし。

 

「これがシステム、主の遺した物です。」

 

「これが…」

 

「…イストワールさん。やるのですね?」

 

「はい。」

 

いーすんがシステムに近づいて、その光に手を伸ばす。

自分とミカエルさんもシステムに近づく。

いーすん、何してるんだろう?解析かな?

 

「…ええ、ダイジョウブ。まちがいなくせいこうします。」

 

「おお…緊張してきた!深呼吸するよ!すー…はー…」

 

「おちつきましたか?(;´∀`)」

 

「う、うん!ちょっとはね。じゃあ…聖槍とここの私達と下のおっちゃんのえにしを使って…」

 

「主を今一度、ここに。」

 

「はい。…システム、キドウします。」

 

いーすんの声が機械的に変わる。

多分、システムに介入しているからだね。

難しい単語がいくつもいーすんから出てくる。

 

少しして、持っていた聖槍が独りでに浮き上がり、光り出す。

何の光!?

 

「この光は…!」

 

「わわ!?光が強すぎて画面、もとい視界が!?」

 

光がより強くなる。

何か心なしか自分のシェアが消費されてない!?

いーすんがやってるの?

 

「セイショのカミ…ネプテューヌさんにおことばを…!」

 

いーすんの懇願するような言葉の後、光が第七天を埋め尽くす。

暖かい光。

日だまりのような光。

 

ああ、これはシェアだ。

 

何となく、理解した。

そうして、視界が光に埋め尽くされた。

それと同時に、体が倒れていくような感覚。

あれ、動けない…?

 

しかも、意識が遠退いて…

もしかして、ミカエルさんも…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微睡むような感覚。

実際に眠っているような…そんな感じ。

でも、倒れて…倒れて?

 

少しずつ頭が覚醒していく。

 

頭といえば、固い地面じゃなくて柔らかい感じ?

目をうっすらと開ける。

 

そこにあったのは…

 

 

 

自分の頭を優しく撫でる人。

何だろう、美しいとかそういうのじゃなくて…懐かしい感じ。

男の人のよう、で…

何て言うのかな…酷く曖昧な表現だけど、蒼い瞳を除いて殆どが白いんだ。 

髪も、肌も。

歌舞伎とかの白い化粧じゃない…ただ、白い。

 

ボーッと撫でられたままでいると…

 

「めがさめましたか?」

 

いーすんが微笑んでこちらの顔を覗き込んでくる。

 

「ねぷっ!?」

 

ハッとして目を覚ます。

 

ヤバイ、絶対的安心感に身を委ねていた!

ねぷ子さんともあろうものが…不覚!

 

起き上がって、撫でていた人をしっかりと見る。

 

「…」

 

見間違いじゃなかった。

さっきの、表現と同じ感じ。

 

蒼い瞳が静かにこっちに向けられている。

微笑みを浮かべた顔は…お母さんに似ている。

 

「…えっ、と。」

 

 

 

「─ネプテューヌ。」

 

 

 

「─!」

 

優しく名前を呼ばれた。

名乗ってないのに…

 

いーすんは目の前の人に無警戒。

つまり…そういうことなんだよね?

 

「初めまして、ネプテューヌ。」

 

「その…神様?」

 

「はい。」

 

聖書の神様。

自分といーすんの生みの親。

その人に、ようやく会えた!




モンスター三体を生け贄に聖書の神を召喚!

詳しくは次回を待て!


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ありがとう、神様!

ねぷてぬー!(挨拶)

遂に現れた聖書の神。
ネプテューヌとイストワールは納得する答えを見つけられるのか。



 

おっとり…って訳でもない。でもしっかりとした感じでもない。

酷く曖昧。

蝋燭の炎みたいに吹けば消えそうな印象。

 

「名前は…」

 

「…」

 

目の前の神様は困ったように考え込む。

名前が言えない?

 

「名乗っちゃ駄目系?」

 

「…!」

 

ニッコリと頷いてから、申し訳なさそうにする。

何だろう、大変なんだね…

 

「じゃあ、神様で。」

 

「…」

 

しゅんとする。

うーんこの。まあ、子供に神様呼ばわりは…だよねぇ。

 

名前、じゃないにしろ…

 

少し寂しそうに微笑んだ後、もう一度自分の頭を撫で出す。

なに、この…なに?

いや、何となく嬉しいよ?

 

「くっ…気を失っていましたか…ネプテューヌさん、大丈、夫…」

 

「ミカエル。」

 

「…まさか、本当に…?」

 

「任せて、すみません。」

 

ミカエルさんが起きて、神様を見ると酷く動揺した様子。

本当に会えると思ってなかったのもあるだろうし、会えて嬉しいのもあるんだと想う。

 

次第に、しっかりと事態を理解したようで涙が出る。

 

ミカエルさんが泣いてる。

 

「ああ、主よ…!」

 

「はい。」

 

「今一度、御言葉を…一言でいいのです…!」

 

神様に対して跪くミカエルさん。

神様はそれを見て、雰囲気が変わる。

静かなそれから厳格なそれに。

 

「…ミカエル。」

 

「はい。」

 

「人の時代です。…分かりますね?」

 

「…はい。」

 

本当に一言。

人の時代。

それだけでミカエルさんは全てを理解した。

自分は分からないけど…ミカエルさんは分かったらしい。

 

頷いたミカエルさんを見て雰囲気が元に戻った神様は微笑む。

 

「壮健でありなさい。」

 

「…はい…!」

 

「ガブリエル達にも、そう伝えてください。」

 

「はい!」

 

そうして、二人の会話は終わった。

ミカエルさんは自分といーすんを見て心から嬉しそうに笑った。

よかった…!

 

「ネプテューヌ。」

 

「は、はい!」

 

「…途切れていますね。しかし、感情を得たのは喜ばしい。」

 

「セイショのカミ…ネプテューヌさんがほんらいのすがたにもどるにはどうすれば…?」

 

「イストワール。それは意思一つです。」

 

「いし、ひとつ…」

 

「貴女の力と、ネプテューヌのシェアの力…その二つがあってあの姿へ成るのです。そして、トリガーは貴女達の意思。」

 

「…ワタシもまた、ネプテューヌさんどうようにせいちょうするときだと?」

 

「はい。史書として、そしてネプテューヌを支える者として…」

 

「…わかりました。」

 

いーすんは納得したように自分の元へ戻ってくる。

 

そして、今度こそ蒼い瞳が自分へと向けられる。

だから、自分をしっかりと見つめ返す。

自分の気になっていること…ちゃんと聞かないと。

 

「ねえ、その本来の姿は分かったけど…カオスの力は…」

 

「それは貴女自身の戦い、ネプテューヌ。」

 

「…でも、怖いよ。」

 

「大丈夫。シェアが、貴女を導きます。」

 

「シェアが?」

 

信じる心、シェア。

それが…どうやって…?

 

「信じる心がシェアとなるのならば貴女もシェアを、他者をより信じなさい。万人にシェアはあるのです。信頼の形に違いがあるのは当然の事…貴女も知っている筈。」

 

「あ…」

 

そうだ。

シェアを感じる…最近はそれだけを意識していた。

でも、こうしてシェアをしっかりと認識する前だって同じだったんだ。

皆、自分を信じてくれてた。

言動、行動は違っても…自分の事を信じてくれてた。

 

忘れてたんだ。

大事なことなのに…忘れちゃいけないことだったのに!

 

シェアを感じればその人は自分を信じてくれてる…そう考えてた事は否定できない。

…反省する。

 

「うん…分かった。」

 

「…」

 

「もっと、皆を信じる。誰かを信じることを諦めないよ!」

 

静かに、満足げに頷く神様。

 

「ねえ…最後に一つだけいい?」

 

「…?」

 

「どうして私を創ったの?私は…神様の後継者として生きなくていいの?」

 

「…」

 

無言。

自分の問いへの答えを持っている筈なのに…どうして教えてくれないの?

どうして黙ってるの?

 

「私は…もしかして、興味本位で創られたの?」

 

「いいえ。」

 

「なら、どうして?どうしてパープルハート…ネプテューヌを創ったの?」

 

「…怖かった。」

 

「え?」

 

怖い?神様が?

聖書の神様は皆が言うように万能だったんじゃないの?

そんな神様が怖いの?

 

「私がいない世界。

私が導かない世界。

私が必要とされない世界。」

 

そう言う神様の顔は暗く沈んだ面持ちで、本当に怖いんだと理解した。

死んじゃった後、自分の子供達や導いてきた人達がどうなるのか不安だった?

 

「信仰として存在しても、そこに私はいない。心を向けられるだけの虚像。」

 

死んじゃった事で、その声に何かをすることも出来なくなった事が怖かった。

 

「人に応える存在が居なくては…傍に寄り添う者が居なくては…」

 

「だから、私を?」

 

「天使は、私に従う。しかし、それは私を愛してくれるが故。

貴女は違う、ネプテューヌ…貴女は人に寄り添い、人と触れ合い、人に近しい者。人でなく、人に最も近い者。

私の、娘。」

 

「…!」

 

一滴。

右の蒼い瞳から涙が零れた。

儚い笑みを自分にだけ向ける。

 

娘って言ってくれた。

ネプテューヌを、娘って。

 

嬉しかった。

ただただ自分(・・)は嬉しかった。

 

「天使である皆には押し付けてしまったけれど…せめて、貴女には。寂しくないようにとイストワールを創った。

この世は美しくも荒々しい。力を授けた。

人を守ってほしい、人と共に。

結果、押し付けてしまった。自由であれを崩してしまった。」

 

「…ううん。」

 

矛盾を抱えた神様。

自分に自由でいてほしいけど、代わりに人を守ってほしいと願った人。

ごめんなさいを言われる前に手を取る。

 

自分(・・)は感謝してるよ。」

 

「何故?」

 

「自分は、ネプテューヌでネプテューヌじゃないけど。

それでも、自分は自由だったよ。ずっと…自由に選んできたよ。

記憶を失くす前も、失くした後も…自分なりの選択だったんだよ。

人の味方をしたいのは自分がやりたいから、家族を守りたいから!だから、指を咥えて見てるだけって事にならない位力をくれた事…ずっと、お礼が言いたかったんだ。」

 

自分なりに伝える。

記憶を失って、ネプテューヌ本人の魂も失って、自分っていう誰かがネプテューヌだけど…それでも、生みの親に感謝しないなんてあり得ない。

だって守りたいって心は同じな筈だから。

この体から伝わる正義感に嘘はないよ。

 

 

 

()を生んでくれて、ありがとう!」

 

 

 

「…──」

 

「だから、改めて誓わせて。一人きりで越えられない事がこの先あっても、悲しみや苦しみばかりだったとしても…皆と一緒に私が絶対に希望を灯して見せるから!主人公として、ネプテューヌとして!」

 

これから、消えてしまう神様に誓う。

親に対して、子供が夢を語るようなもの。

手を握って、未来を想い描く。

その夢を叶えられるように、頑張りたいって伝える。

 

視界が涙でぼやける。

この体の、ネプテューヌが神様に会えて嬉しく思ってる。

本当はもっと話していたい。

でも…それでも、もう眠ってなきゃいけない。

 

「安心して!私は完全無欠の美少女主人公、ネプテューヌだから!」

 

「…ワタシも、ネプテューヌさんのサポートをぜんりょくでおこなうこと、そしてそのユメをかなえることをちかいます。」

 

「…ネプテューヌ、イストワール。」

 

自分といーすんの誓いを、本当に嬉しそうに聞いていた。

名前を呼ばれて、言葉を待つ。

きっと、これが神様本人から聞ける最後の言葉だから。

 

「…私もまた、シェアと共に貴女達を見ています。

その夢を、現実へと変えてくれる事を…見ています。」

 

「うん!」

 

「はい…!」

 

神様は満足そうにしている。

神様の体が薄くなっていく。

ミカエルさんの方に顔を向けて、一度頷く。

 

ミカエルさんがどう返したのかは分からないけど…それでも、信じているように見えた。

 

「───」

 

「…うん!いってきます!」

 

自分に何かを伝えようと口を開く。

もう声が出せていなかったけど、理解できた。

だから、しっかりと返事をする。

 

神様はその蒼い瞳に自分といーすんを焼き付けるように、消えるまでずっと見つめていた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─帰ってきたか。」

 

第七天から第六天へと戻ると曹操とおっちゃんが待っていた。

 

おっちゃんは待ちくたびれたといった様子だった。

 

「よう、その様子だと会えたみたいだな。」

 

「ええ、とてもユウイギなジカンでした。」

 

「うん、ねぷ子さんもまさか会えるとは思ってなかったけどTHE神様って感じだったよね!」

 

「俺についてなんか言ってたか?」

 

「一言も言わなかったね!」

 

「それはそれでムカつくぜおい。」

 

「んー…心配ないって事じゃない?まあいいじゃん!」

 

「うーむ…まあそうだな。」

 

何だか釈然としない様子のおっちゃんだけど、放っておいて大丈夫だね。

そう思いながら曹操に聖槍を返す。

 

「どうだった、神は?」

 

「神様も、矛盾を抱えるんだね。」

 

「心とは、矛盾するものらしいからな。」

 

「うん…そうだよね。誰だって、そうなんだ。」

 

心は矛盾するもの。

いつか自分が消えることも分かってたんだと思う。

そう悟らなきゃいけないことがあったんだ。

けど、そうなった後が怖くて。

 

…うん、大丈夫。

自分が、私が神様の意思を覚えてるから。

いーすんやミカエルさんも…ほんの一部だとしても、知ったからね。

 

「ネプテューヌさん。」

 

「ミカエルさん、どうしたの?」

 

ミカエルさんが自分に話しかけてくる。

心なしか、神様に会う前よりも気分が軽くなってる印象。

 

「ありがとうございます。主の御言葉を聞けたのは貴女とイストワールさんのお陰です。」

 

「ううん、私だけじゃないよ。この中の誰か…いーすんが大半かもだけど、欠けてたら神様は応えてくれなかったと思う。

だから、皆のお陰だよ。もちろん、ミカエルさんも含めて!」

 

「それでも、ですよ。…主から御言葉を賜った以上、それを遂行せねばなりません。人の時代…私達もまた、過去の過ちを…罪を清算し、人々に寄り添うべきか離れていくべきかを決めねばなりません。」

 

「うん、悪いことをしちゃったのなら謝らないとだよ。」

 

「はい。…それと、ネプテューヌさんのご支援もしなくてはなりませんね。」

 

「え、なんで?」

 

「おいおい、ミカエル。急にどういうつもりだよ?」

 

自分への支援。

それは嬉しいけど、どうしたの?

妹だからとかは無しでお願いしたいけど…トップが一人に依怙贔屓してるみたいな感じだとミカエルさんが危ないもん。

おっちゃんの言葉通り、少し疑問に感じる。

 

ミカエルさんは微笑む。

 

「ネプテューヌさんは主の仰られたように人々に寄り添い、生きる者です。人の時代を人々が知らぬ裏側でその力で支える…そういう生き方を貴女も選んだ。少しでも力になりたいのです。」

 

「…そっか。」

 

ミカエルさんなりの答えなんだね。

人の時代とだけ言われて、表立って人前に出れないから人の味方の自分の支援をする…そういうつもりらしい。

 

「ありがとう!」

 

「はい。」

 

手を差し出す。

ミカエルさんはそれに応じてくれた。

これからもよろしくって意味の握手をする。

 

神様が繋いでくれた絆。

それを大事にしよう。

 

「さてと…戻るかねぇ。」

 

「え、おっちゃん予定あったの?」

 

「これでも総督なんだぜ?多忙の極みよ。」

 

「サボってるのでしょう?」

 

「うっせぇ。あー…そうだな、ネプ子、お前も来るか?」

 

何かの端末を取り出してからおっちゃんが自分を誘ってくる。

 

「何処に行くの?」

 

「もっかい冥界さ。」

 

「冥界?これまた何で?」

 

「ミカエルがいっからなぁ…言えねぇなぁ。」

 

「悪いことしようとしてるんじゃないよね?」

 

「もしそうなら第五天に投獄しますか。」

 

「勘弁してくれ、退屈で仕方ねぇ!ったく…オーディンの爺さんは覚えてるだろ?」

 

「うん、前に来てたね。」

 

「シュシンみずからがきてたのはおどろきましたが…」

 

「北欧勢力が俺たちの同盟…まあ、和平だな、それに乗っかろうってんで近々調印式があんのさ。」

 

「へぇー…」

 

和平同盟に他の勢力が加わるんだ。

何でかは分からないけど、争いは御免だとか?

まあ、それくらいだと思うけど…そっかそっか、だから前におっちゃんはオーディンといたんだね~

 

……え?

 

「待って…それって大事じゃね?」

 

「…アザゼル、貴方は何してるんですか。」

 

「総督としてそれはどうなのか。」

 

「…(^_^;)」

 

「…おう、その目をやめろ。わーってるよ!さっさと戻るっての!」

 

「あはは…まあ、おっちゃんらしいよ!うん、行く!」

 

おっちゃんのやらかしは後で怒っておくとして、冥界に行かないとね。

 

「お、マジか?いやぁよかったぜ。イッセー達も居るからよー…

というか、約一名からの圧が凄くてな。お前みたいな奴が居てくれると場が和むぜ。」

 

「そんな理由で誘われたとは思わなかったけど主人公に前言撤回はそうそう無いよ!」

 

「なら、俺もこのまま同行か。」

 

「あ…ごめん。」

 

「いや、謝ることでもない。こういうことも体験だろうさ。」

 

曹操は人間出来てきてて嬉しいなぁ…

このまま、頼れるリーダーになってほしいね。

ただ…うん、何となくただ調印式やって終わりとはいかないかも。

 

前のような離反した英雄派の人達や、シャルバ…あっちが関わってくる可能性もあるし、油断は出来ないね。

 

だとしても、まずは皆に会おうかな。

 

「では、第一天まで向かいましょう。」

 

「お、見送りか?」

 

「ええ、どこぞの堕天使に勝手に動かれる可能性もありますからね。」

 

「そーかいそーかい!」

 

「もうやけくそだね…じゃあちょっと急ごっか!」

 

「はい。(^-^)」

 

第六天、ゼブルから皆で出た後、最後にもう一度だけ振り返る。

 

やっぱり大きい建物で、圧巻って感じ。

あり得たかもしれない、自分の居場所。

だけど、自分の居場所はここじゃないから。

 

第七天のあの光景を思い出す。

 

─いってらっしゃい。

 

自分を娘って言ってくれた本当の親。

 

いってきます。

もう会えないけど…いってきます。

 

会えた事への喜びともう会えない悲しさを胸に、前を向く。

主人公らしい誓いも立てたし、またまた再スタートだよ!

 




神様にとっても、ネプテューヌにとっても、イストワールにとっても。
最初で最後の会話。

【ネプテューヌ の スキル が 増えました!】



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冥界到着!私が来た、みたいな!

ねっぷねっぷねっぷねぷねぷ~ねぷねぷねぷっねぷ~(挨拶)

よし、ねぷねぷの時間がやってきました。
楽しんでいけぇ(超絶上から目線)


冥界へ着いた自分といーすん、曹操、おっちゃん。

ミカエルさんは流石に冥界に天使長一人でいくのは問題があるしやることがあるから来れなかったよ。

 

けど、互いの信頼関係を築けたからあの時間は大切だったね。

 

シェアも着々と増えていってるし、そろそろじゃないかな。

後は自分といーすんの想い次第だと思う。

どう想えばいいのかは分からないけど…シェアを信じるよ。

 

北欧神族との調印式。

勿論、代表はオーディンらしいけど…冥界でやるんだ。

前回みたいに危ないんじゃって思っておっちゃんに聞いたら、今回は魔王もそうだけどおっちゃんの組織からも幹部を派遣してるらしい。

 

うーん、よっぽどが無ければ何とかなるのかな。

 

「このままオーディンの所へ行くんだよね?」

 

「ああ、アイツらもお前に助けて貰った分もあるだろうから文句はねぇだろうよ。」

 

「普通に駄目そうなら私も諦めるけど…」

 

「しかし、なぜオーディンほどのカミがサンセイリョクと?」

 

「いい機会なんだそうだ。あの爺さんの言うことを読もうとしても面倒なだけだ。こっちに不利益だけってなら北欧で勝手にやってろって感じだったが…まあ、北欧の技術が手に入るからな。」

 

「そんなに凄いの?」

 

「ああ、オーディンの術もそうだが、その直属の部下であるワルキューレ達の魔法はすげぇよ。他にもあるが…それはまた今度な。」

 

「えー、教えてくれてもいいじゃん!ケチ!」

 

「堕天使だからなぁ。」

 

むむむ…おっちゃんの逃げの常套句!

でも実際それで説明つくから何も言わない!

ねぷ子さんは決着ついた事でうじうじ悩まないんだからね。

え、コカビエル?し、知らないかなー…

 

「でも、これで同盟が出来たらいいことだらけってこと?」

 

「それがそうでもねぇのさ。」

 

「どゆこと?」

 

「北欧神族との付き合いが今後始まるってこった。」

 

「それって悪いこと?」

 

「前に言ったろ、神ってのは面倒くさいのさ。」

 

気紛れ。

基本、神はそういう存在だという。

何と無く最近の事で理解してる。

人に迷惑をかける神のせいで自分も被害被ってるしね!

 

ポセイドンって神なんだけどね?

 

「やっぱりギリシャに文句言いに行きたい気分。」

 

「お、なに面白そうな事言ってんだ?」

 

「面白そうか…?どうも喧嘩売りに行く言葉に聞こえたんだが。」

 

「ギリシャもデカイ神話だからな。そんなギリシャに文句言いに行くなんざ面白そうだと思わねぇか?」

 

「だって…私関係無いもん。」

 

「カイネウスのこと、すっかりきにしてますね…(;^^)」

 

「カイネウス?どういうことだ?」

 

「それについては、俺に責任がある。説明させて貰おう。」

 

調印式の会場に向かう最中に、曹操が離反したメンバーの事を話す。

おっちゃんは先程とうって変わって聞き手に回る。

しっかりと聞いているから、おっちゃんにとっても無視できない件って事だね。

まあ、そうだよね…

 

「なるほどな…反英雄派っていったところか。」

 

「反英雄派、か…今後はそう呼ぼう。」

 

「おう、採用ありがとよ。にしても…マジで俺らの罪だな。」

 

「おっちゃんはどうするの?」

 

「堕天使の独断で決めれることじゃねえさ。奴さん達の事情をしっかりと把握しないことにはな。俺らのやらかしの被害者って事しかまだ分かってねぇ…それだけでも十分なんだけどよ。」

 

三勢力の罪。

神器を得たことによる迫害、教会による神話への侵食、神器保有者の殺害、望んでいない悪魔化、はぐれ悪魔。

他にも、色々とある筈。

 

いーすんの史書の機能を頼ってもいいけど…

いーすんにも心がある。

三勢力がやってしまったことを全部知ったら心を痛めるだろうし…

それに、これはちゃんと大人達から聞くべき案件だよね。

 

「それはまた今度考えようよ。今は調印式でしょ?」

 

「…それもそうだな。上手くいくといいんだがな。」

 

「不穏な言い方だが、何か絡んでくると?」

 

「イッセー…この場合は赤龍帝か。ドラゴンは厄介事を招くもんさ。」

 

「弟がそういう風に言われるといい気しないよ?」

 

「そういうもんだと覚えて貰うためにも言ってるのさ。

呼ばなきゃいいだろって言われるんだがな、そういう場合。」

 

「ああ、調印式に何か起これば事だろう?」

 

「まあ、な…だが、上手くいけば厄介(運が悪い)厄介じゃない(運が良い)に変えられるかもしれねぇぜ?」

 

「おっちゃんもなに考えてるか分かんないかな。」

 

「俺は人並み以上の欲があるってだけだぜ?ついでに堕天使。

面白いの大歓迎なおっさんだよ。」

 

「見た目はイケオジなのにこれだからね~…」

 

「ネプテューヌにはヴァーリがいるだろ?」

 

「べ、別にヴァーリは何でもないでしょ?」

 

「ホントか~?」

 

「しつこいよーおっちゃん。私は別にそういうのいいって!」

 

というか、考えすぎると意識しちゃうからまた会った時に笑顔で挨拶出来ないでしょ!

ヴァーリはヴァーリでこっちの精神状態お構いなしなんだから…

 

もしかして親子でそうだったりする?

おっちゃん譲りの可能性あり?

あり得るなぁ…

そうして歩いていくと大きな館に辿り着いた。

 

「ここでオーディンが待ってるの?」

 

「ああ、まだ時間があるからな。ほれ、入るぞ。」

 

「はーい。」

 

「北欧の主神か…ペルセウスしか会ってないからな、気になっていたんだ。」

 

「ただのエロ親父だよ。」

 

「ネプテューヌさんはセクハラされましたからね…」

 

「一神話の主神がそれでよく…いや…何でもない。どこも同じだったな…」

 

「聞かれたら何言われるか分かんねぇから静かにしとけよ?」

 

「うー分かったよ。」

 

またセクハラ…ああ、でもこの姿の自分ならされないかな。

うん、こういう時子供体型で良かったよ。

普段は気にするけどこういう時は気にならない!

 

こういう柔軟さも大切なのが主人公ってもんだよ!

 

中に入って、少し歩く。

おっちゃんが部屋の前に立ってノックする。

 

『カラスの小僧か、入って良いぞ。』

 

「おう、失礼するぜ。」

 

中に入るとオーディンが座ってワインを飲んでた。

ええ…昼間からお酒…これはもう駄目神じゃ?

 

いや、酔わないと思うからいいけどさ。

 

「何じゃ、女神と人間も連れてきおってからに。それに、妖精か?」

 

「はじめまして、シショのイストワールです。」

 

「俺は曹操だ。女神であるネプテューヌの護衛をしている。」

 

「ほほう…神滅具保持者か…最近の史書は人型で浮くんじゃのう…」

 

「やろうと思えば出来るだろうがよ。後、ネプ子もそうだがイストワールにも手を出すなよ?」

 

「分かっとるわい、前のは出来心じゃ。そう警戒するでない。」

 

「本当かなぁ…」

 

「それより、オーディン殿。護衛が見当たりませんが…」

 

「ああ…そうじゃのう。」

 

「ヴァルキリーの一人や二人ほど連れているのでは?

まさか、戦乙女が職務を放棄するということはないでしょう。」

 

「うむ、その通りじゃ曹操よ。ロスヴァイセには少し周辺を警戒して貰っておる。どこぞのカラスが護衛を放棄したもんでな。」

 

「悪いって。」

 

ロスヴァイセっていうだ、その女の人。

前にオーディンが言ってた人もその人かな?

女の人だよね?ロスヴァイセって名前だし、戦乙女っていうし…

 

これで男ならあの時のミルたん事件と同じ悲劇が…

 

「女の人、だよね?」

 

「うむ、とても残念なヴァルキリーじゃが。」

 

「よかった~…」

 

皆が首を傾げるけど、これは一誠と自分だけの真実でいいんだよ。

うん、これはね、流石にね。

取り敢えず、ベッドの上に座る。

 

「調印式まで時間があるんだよね?」

 

「うむ。」

 

「なら、オーディンにも聞きたいことがあるんだけど…」

 

「ほう、言ってみよ。」

 

「自分の負の感情…っていうのかな、そういうのが暴走する時、どうすればいい?」

 

「…ふぅむ。」

 

少し考える様子のオーディン。

難しい質問なのかな。

気紛れなのが神だから負の感情とかもあんまり無いのかな?

 

どうなんだろ。

 

「お主は自分が制御できない時があったのじゃな?」

 

「うん。カオス化っていうのかな…それに一回呑まれちゃって。」

 

「怒り、憎悪、嫉妬…他にもあるが、このような感情は普段からあるものよ。儂にも当然ながらある。」

 

「そうなんだ?」

 

「うむ、神は万能ではないのじゃネプテューヌよ。聖書の神もそうであろう?凡そ便利であっても全てを制すことは誰にも出来ぬ。」

 

「うん…そうだね。」

 

「感情のコントロールが上手くいかない時はある。お主の場合はそれが人格にまで影響を及ぼしてしまったのじゃろう。」

 

「ネプテューヌさんはむかし、キカイテキでしたから…」

 

「備わった感情はまだ成長途中という事じゃろう。

しかし…そのカオス化の時に発生した人格は付き合ってく他あるまい。」

 

「感情の暴走で人格が増えるとかってあり得るの?」

 

「似たような症例はあるぜ。防衛本能が働いて別のものとして分ける、とかな。お前の場合は力も別のカオス化したお前がいるってことだ。何をしたら出てくるかは…分かってるだろ?」

 

「うん。」

 

多分、あの時程の怒りや憎しみが出てきたら…かも?

トリガーはあれぐらいの強い負の感情だと思う。

ディオドラの時はなりかけたけど…ディオドラ自身が所謂小物だったから。

 

「ま、お前の自制心を信じるさ。やばいと思ったら気絶させてでも止めてやるよ、俺や周りがな。」

 

「うーん、優しくしてほしいなーなんて!」

 

「アホか、んなことしたらこっちが死ぬわ。」

 

「またまた、そんなこと言っちゃって!おっちゃんの方が私よりも強い癖に~」

 

「まだな。」

 

何だかいつか越えちゃうみたいな言い方されてるけど、まだまだ勝てるとは思えないけど…

というか、カオス化した自分の強さがよく分からない。

 

感情がトリガーなら、その感情が激しければ激しい程強くなるのかな。

 

何にしたってオーディンにも聞けてよかったよ。

こういうのは年長者に聞くに限るもんね。

 

「調印式、上手くいくかな?」

 

「さあな、上手くいくようにするさ。」

 

「堕天使の総督や幹部に加え、魔王もいる。並大抵の者では太刀打ちできないだろうな。」

 

「曹操ならどう?」

 

「俺か?…粘れはするが、数で攻められればどうだろうな。」

 

「粘れるんだ…」

 

やっぱり曹操は強い。

自分ならボコボコにされちゃうと思う。

戦い方が巧いのかな?

曹操自身、技巧派だって言ってたし。

 

「オーディンは、どうして同盟に?」

 

「あの三勢力が和平を結ぶ、と言っても若いお主には分からぬじゃろう。長い間いがみ合っていた者達が矛を納めるのはそう簡単な事ではない。儂ら神話の者達も変わる時が来た…そう感じ取った儂は取り敢えず三勢力と同盟を組もうと思っただけよ。」

 

「反対も多かったんじゃねぇの?」

 

「然り。しかし、どちらかから歩み寄らねば争いは止まらぬ。

謝罪は後からでも受け取ることが出来るが、命とは基本一度限りなのじゃ。」

 

「なるほど…」

 

オーディンにはオーディンの主神としての考えがあるんだ。

北欧の神様達もそれを信じてくれたってことなのかな。

じゃあ、尚更この調印式は成立させないとね。

 

主人公な自分が来たからにはシナリオ的に勝ちは確定だけどね!

 

しばらくして、部屋の扉が開く。

おっちゃんやこの中の誰かが出るために開けた訳じゃない。

入ってきたのは一人の長い銀髪のお姉さんだった

 

「オーディン様、周囲の警戒が終わりました。」

 

「うむ、ご苦労であった、ロスヴァイセ。」

 

「はい…それで、この者達は?堕天使の総督は分かりますが…」

 

「この者達は新たな女神とその護衛の者じゃ。」

 

「恒例の自己紹介ターイム!私はネプテューヌ!主人公な女神やってます!」

 

「はじめまして、ワタシはイストワール。シショです(^-^)」

 

「俺は曹操だ。」

 

「ヴァルキリーのロスヴァイセです。」

 

真面目な感じだけど…うん、オーディンが言うには残念らしい。

幸薄系?それとも酔ったらやばい系?

どっちにしても苦労はありそうだね。

 

「…それにしても、新たな女神と言いますがどこの神話の…?」

 

「えっとね…聖書かな?」

 

「聖書?一神教では…」

 

「あー違うぜ、ネプ子は全く別の…そう、コイツこそが新たな神話って奴!そうだよな?」

 

「え、私は…」

 

「(いいから口裏合わせろ!)」

 

「(は、はーい!)バレちゃった?まあ、お茶目なねぷ子さんを許してよ!」

 

「え、ええ…なるほど、新たな神話、ですか…」

 

納得してくれたっぽい?

にしても、何で今更自分の正体を偽る必要が…?

あんまり、嘘をつきたくないんだけど。

 

おっちゃんが耳打ちをしてくる。

 

「(いいか?オーディンはギリギリOKだがな、他においそれとお前の存在を公にするわけにはいかねぇんだ。)」

 

「(ええ?何でよ?)」

 

「(一神教ってことは聖書の神だけがこっちにとっての神。

つまり、お前が聖書の女神を名乗ると色々とヤバイんだよ。

新しい神話ってのも間違ってねぇから…我慢してくれ、な?)」

 

「(うーん…分かったよ。)」

 

一神教の宗教に二人目の神様とか登場するのは良くないってことね。

難しいなぁ…

でも、ここはおっちゃんに従っておこう。

一部の人は知ってていいんだけど、それ以外には隠さなきゃいけない…平気かな?結構女神女神言ってた気がするんだけど。

主人公って名乗ってる回数の方が全部の回を通して多いとしても二番目くらいに多くない?

 

「そういえば、一誠達は?」

 

「おー、アイツらはリアスの実家にいるんじゃねえか?」

 

「そうなんだ…うーん、まだ時間があるならそっち行きたいなぁ。」

 

「まあ、行って少し話すくらいの時間はあるが…またここ離れるのもなぁ。」

 

「あ、そっか。ならいいよ!」

 

「ワタシひとりでいく、というかとおもいましたよ。」

 

「同感だ。」

 

「二人とも、私をなんだと思ってるの?私だって見た目少女で一般人なねぷ子さんが冥界を歩いたら良からぬ結果になるのは分かるよ!」

 

まったく失礼しちゃうよね!

寧ろここ最近知性の高さを発揮してると思うんだけどな!

INT高いと思うんだけど、その辺どう思われてるか分かった気がする。

 

いーすんと曹操は呆れたような顔をしている。

 

「ふだんのげんどうをおもいだしてください。( ;-`д´-)」

 

「お前はもう少し自分を振り返るべきだな。」

 

「えー?」

 

そんな言動してたかな。

 

……うん、してたかも?

自重した方がいいかな?いや、ない!

これをやめた瞬間、主人公ポジションが誰かに掠め取られる気がする!

 

何にせよ、調印式は成功して、明るい未来に一歩近づきたいね!




ここ最近、楽しんで貰えてるか不安になってたりするけどそれはそれとして頑張るのだ。


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調印式!何も起きない筈はなく!?

ねぷちゃ~ん(挨拶)

北欧編は長引くぞい!



やほー!今日も今日とてねっぷりしていってね!

 

あの後、時間が来るまでロスヴァイセも交えて色々な話をしたんだけど、ヴァルキリーって魔法の知識が豊富なんだね。

色々と教えられたよ!

いいのかなって思って聞いたんだけど、教え子が出来たみたいで嬉しいとか。

オーディンからのお咎めも無しだし、よかったのかな。

 

ロスヴァイセはアースガルズ系の術式魔法っていうのを使うんだけど、攻撃系の魔法の知識が特に豊富だったね。

逆に、防御系はあんまり?いーすんの方が詳しかったかも。

 

オーディンはそんなロスヴァイセよりも魔法の知識が多いんでしょ?やっぱり凄いね。

いーすん曰く、知識が欲しくて片眼を泉に差し出したって言うけど…自分にはちょっと怖くて出来ないかなぁ。

 

「ありがと、ロスヴァイセ!」

 

「いえ、私の知識が役に立ったのなら何よりです。」

 

「うーん…何だかスッゴい教えて貰ったのに何も返せないのは何だかなぁ…」

 

「私が好きで教えたことですから……ああ、なら、一つだけいいですか?」

 

「お?いいよいいよ!じゃんじゃん聞いちゃって!」

 

「ネプテューヌさんは何を司る神なのですか?」

 

「司る?」

 

「はい、例えば豊穣とか戦とか…そういった概念を身に付けているのが神ですから。」

 

「ホクオウは、そうですね…オーディンさまはちしき、センソウとシ、まじゅつのカミでしたね。」

 

「うむ、よく存じておるようじゃな。やはり欲しいのう…その史書の全ての知識を得たいわい。」

 

「いくらオーディンさまといえど、キャパシティがもたないかと。」

 

「ほほう?それほどまでに内蔵してあるとな…興味深いわい。」

 

何を司る、かぁ…

信仰ってのも違うよね。

信仰は神様なら誰でもとはいかなくても大抵が受けているものだもん。

だとしたら…うーん…

 

「絆かな。」

 

「絆ですか。」

 

「後、幸運でしょ?出会いでしょ?えーと…」

 

「お、多いんですね。」

 

「主人公ですから!そう、殆どの素晴らしい的な要素を司っちゃってる系の女神だからね!」

 

「なるほど…?」

 

「ロスヴァイセさん、ハンブンほどだまされてることにきづいてください。ネプテューヌさん、キズナはわかりますがホカのヨウソはどうかと…」

 

「え、割と真面目に言ったことを否定された!?」

 

「真面目に言ったことだったのか…俺はてっきりネタかとばかり。」

 

「何か今日二人して酷くない!?私そんなに普段からボケてる?」

 

「ああ。」

 

「ですね。( ・-・)」

 

「あれれー?おかしいぞー?」

 

自分はそこまでボケたつもりがないのになぁ。

最近はぶっ壊したくても自分事情のせいで壊せないからシリアス貫いただけで解決したからシリアスキラーの称号を取り戻すつもりなだけなんだよ?

 

「よっし、そろそろ行くぞお前ら。」

 

「お、ついに来たね!」

 

「では、頼むぞい。」

 

「おう、任せな。」

 

おっちゃんに連れられて皆で調印式の会場まで向かう。

それにしても、オーディンもだけどおっちゃんもよくこの件に乗ったよね。

大変だと思うんだけどなぁ…

 

後、リアスちゃん達は元気かなぁ。

一誠とあーちゃんに関しては朝から見てないよ。

うう、早く会いたいよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とうちゃーく!

ここが皆がいるハウスだね!

っていっても外なんだけどね。

こういう式ってあれだよね、外でやる時多いよね。

 

キョロキョロと周りを見渡す。

 

見覚えのある姿を見かけたから走って近づく。

 

「皆!やっほー!」

 

「ネプテューヌ、来てたのね。」

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

「おっす!おっちゃんに連れられて来たよ!」

 

「あら…そうですのね。」

 

「ん~…?」

 

「どうかしたんですか?」

 

「…ううん、何でもないよ!プリンの在庫はどうだったかな~ってボンヤリと考えてただけ!」

 

「ねぷ姉ちゃんらしいぜ。」

 

「これから重要な式だというのに能天気な…」

 

「そうは言うけど、これは重要だよ!私からプリンを取ったらその人は一日中泣いて震えるだろうね…!」

 

「食べ物の恨みは恐ろしいと聞くからな…間違いではないのか?」

 

「そうそうさん、アナタまでそちらがわにいかないでください!」

 

いーすんがツッコミ役が減ることを防ごうと曹操を説得してる。

 

うーん、咄嗟に誤魔化したけど…気のせいじゃないね。

朱乃ちゃんのおっちゃんを見る目が強いっていうか…恨んでるみたいな…?

そういう感情に呑まれたからいち早く気付けたんだろうけど、何があったんだろ?

 

「朱乃ちゃん?」

 

「どうかしましたか、ネプテューヌちゃん?」

 

「ううん、緊張してる?何だか険しい顔してたよ?」

 

「…あら、バレました?ええ、こういった場は慣れませんから。」

 

「そっか!気分悪くなったら言うんだよ?」

 

「朱乃、大丈夫なの?」

 

「ええ、ネプテューヌちゃんの言う通り緊張していただけですわ。」

 

誤魔化すような言葉。

触れられたくない案件なら触れないのが一番かな?

ただ、おっちゃんが何かしたようには見えないかな…

やってたら居心地悪そうにはなる筈だし。

 

考えるのは苦手なんだよね。

 

あ、そういえば

 

「おっちゃん!幹部の人は?」

 

「ん?あー…そのだな、アイツは…」

 

何だか言いにくそう?

チラリと朱乃ちゃんを見たね。

関連がある?

 

よし、空気読まずに聞いちゃおう。

 

そう思ったけど…

 

「必要ありませんわ、あんな人。」

 

「あ、朱乃ちゃん?」

 

「堕天使は信用なりません。ネプテューヌちゃんもそう思いませんの?一誠君も、アーシアちゃんも襲われた身ですわ。遠ざけたいと思うのは当然ではありませんか?」

 

珍しく突っぱねるような言葉。

本当に必要ないと思ってるようで、舌打ちすら聞こえそうな程普段の朱乃ちゃんからは想像できない声。

 

「いや、俺は…」

 

「私は、もう気にしてません。それに、和平を結んだのですから協力していきませんと…」

 

「んー、朱乃ちゃん。あんまりそういうこと言うのは良くないよ。」

 

「あら、そうですか?堕天使は狡猾で欲望にまみれてる種族。

この調印式にまた(・・)堕天使総督の制御が外れた輩が暴れる可能性も…」

 

「怒るよ?」

 

咄嗟に出た言葉がそれだった。

 

自分のその時の声が低かったのか、朱乃ちゃんは息を呑むような感じになっちゃった。

でも、良くないよね、そういう言い方って。

 

「嫌いなら嫌いって言えば良いじゃん。

おっちゃんはこの調印式をしっかりと終わらせたいから幹部の人を派遣したんだよ?それを狡猾だなんだって…酷くない?」

 

「おい、ネプ子。」

 

おっちゃんに言われて、気付く。

言い過ぎた!注意する程度の筈が…あーもう、本当にここ最近感情のコントロール出来てないね。

これじゃ駄目だ。

 

「…ごめんね、ちょっと言い過ぎちゃった!でも、そういう態度はやめようね!皆で協力してこう?以上、終わり!」

 

「そうね。魔王様もそろそろ来る筈、静かにしてましょう。」

 

「…ええ、すみません。」

 

駄目だ、これじゃ好感度とかが下がっただけで何の解決にもならない。

 

朱乃ちゃんの抱えている闇っていうのかな…

堕天使関連だと思うけど、そういったものを解決できるならしてあげたい。

じゃないと、前に進めないままだもん。

 

…でも、まずは調印式だよね。

 

おっちゃんが気まずそうに頭を掻いていたけど、何かに気付いたようで、「おっ」と声を発する。

 

「ようやっと来たな。」

 

「サーゼクスさん来たの?」

 

「あーいや、今回は違ぇんだ。外交だからな。」

 

「どゆことだってばよ?」

 

「四人もいる魔王が仕事を分担するのは当然だろ?」

 

「それもそっか!」

 

そうして、来た人物は自分も知ってる人だった。

オーディンはやってきた人物を待って、その人もオーディンの前まで歩く。

 

「お主が外交担当か?」

 

「ええ、お待たせして申し訳ありません。四大魔王、外交を担当してます、セラフォルー・レヴィアタンです。」

 

「うむ、北欧が主神 オーディンである。」

 

セラフォルーさん!?

しかも会談の時の雰囲気だし!

へぇー…外交担当だったんだ。

初めて知ったよ。

 

セラフォルーさんは、オーディンに紙を差し出す。

 

「では、北欧との同盟を。」

 

「うむ…善き未来の為に。」

 

オーディンが自分の名前を記入しようとする。

 

 

 

「─その調印式、中止にさせてもらおう。」

 

 

 

「むっ!?」

 

突然、空から魔力弾が降り注ぐ。

刀を生成して弾き飛ばす。

皆、咄嗟とはいえ攻撃を防ぐことに成功したようだね!

 

でも、同盟のための紙が…

 

何か起こるかなって思ってたけど、本当に来るなんて。

 

誰か、なんて確認。

上から降りてきたのは黒いローブを身につけた目付きの悪い男の人だった。

 

「ぬぅ…ロキ、お主…」

 

「他神話と同盟など、腑抜けたことを宣うものでな。邪魔しに来た。」

 

「おっちゃん、ロキって?」

 

「ロキっていうのは北欧の悪神でな。トリックスターとも呼ばれる神だ。」

 

「何で北欧の神様が?この調印式って北欧の神様達も納得してたんじゃ?」

 

「納得などするものか!!」

 

「うわぁびっくりした!聞こえてたの!?」

 

ロキが自分の言葉に反応して声を荒げる。

 

そんな叫ばなくてもいいじゃん!

ねぷ子さん驚きすぎると死んじゃうよ!

 

「聖書の連中が北欧に何をして来たか…忘れた訳ではあるまい!

奴らは自らの神話を拡大させようと我々の領域にまで手を出した!何故それで手を取り合う等と言える!」

 

「むぅ…!」

 

「え、そうなの?」

 

「主に天使陣営で一部の狂信的な奴等が…な。」

 

「ねぷ姉ちゃん、これは戦いの予感がするぜ。」

 

「うん、それはちょっと分かってるけど…納得はしないよ!説得フェイズを試みるね!」

 

「ちょっと、ネプテューヌ、危険よ!?」

 

「だいじょーぶ!」

 

いーすんと曹操を連れてロキの所まで走っていく。

 

オーディンの前に立ち、ロキと対面する形になる。

ロキは自分達の姿を見て、冷たい表情。

 

「貴様、ただの小娘ではあるまい。その気配、神に属する者か。」

 

「趣味で女神と主人公やってるネプテューヌだよ!」

 

「女神…なるほどな。我が名はロキ、北欧の悪神だ。

さて、女神が何故オーディンの前に人と共に来たのか問おうか。」

 

あれ、何か話しやすい感じ。

てっきり邪魔だ他神話がぁ!とか言われるかと思ったよ。

 

「えっと、ロキはこの調印式に反対なんだよね?」

 

「如何にも。理由は分かるな?」

 

「うん、聖書の人達が北欧に迷惑を掛けたからだよね。」

 

「そうだ、あちらから仕掛けてきて、それを我らが主神に尻尾を振らせるような真似がどうして出来る?寧ろ、奴等から何かあって然るべきであろう?」

 

「…そうだね。私も、良くないことだと思う。」

 

「話が分かる女神だ。北欧に来る気はないか?」

 

少し気分が良さそう。

でも、自分は北欧に行くためにこうして前に出たんじゃない。

聖書が何をしてしまったかをまた知れた。

 

神様も関わってたんだと思う。

だから、これは自分の問題でもあるよね。

 

「ううん、ごめん。私はこっちだから。」

 

「そうか…」

 

「ネプテューヌさん…」

 

「ロキの言い分も筋は通ってるよ。だから、私は謝らないといけないんだ。」

 

「謝る?何故貴様が謝罪など…」

 

「無関係じゃないからね。こう見えて、難しい身の上らしいけど、ねぷ子さん的にはあまりそこら辺は丸投げでいいかなって!」

 

ここはしっかりと謝らないといけない。

だって、本当に謝らないといけなかった神様がいないんだから。

娘に回ってきても仕方ない。

 

頭を下げる。

 

「もういない聖書の神様に代わって、娘の私が謝罪させてもらうね。北欧の皆に聖書が迷惑をかけたこと…ごめんなさい。」

 

「…聖書の神の、娘…?」

 

「…うん。」

 

「…聖書の神は死んでいたか。」

 

「うん。」

 

「お前は、聖書の神を名乗るのか?」

 

「…ううん、それは出来ない。私は、自由でいてほしいって言われたから。だから、私なりの方法で、人を、家族を、友達を…皆を守るよ。」

 

「…ロキよ、この者は過酷な運命を受け入れた強い女神じゃ。

自らの知らぬ、自らの親がしでかしてしまった事をこうも純粋に謝罪することは容易いことではない。

儂もまた、聖書を完全に許したわけではない。

ロキ、お主の言う通りこうするのは間違いであるのやも知れぬ。

だが…」

 

「他神話へ侵攻を開始しては聖書と同じ、か。」

 

「うむ…分かってはくれんか?どちらかが歩み寄らねばこれは終わらぬ。儂らは主神なきこやつらよりも年長の者…なればこそ謝罪を後に受けようと思っておった。」

 

「…ネプテューヌといったか。」

 

しばらく考え込むような間の後、ロキが自分の前へ来る。

 

「お前の謝罪をもって聖書への怒りは取り消す。娘を想う心は俺とて分かるつもりよ。」

 

「本当!?」

 

「二言はない。少しでもあの謝罪に悪意があるものならその首を跳ねに行っていたが…ああも無いようでは悪神としては満点をくれてやる他無かろうさ。」

 

「よかった…皆、これで争わなくていいんだね!やったよいーすん、曹操!」

 

「ああ、冷や冷やしたぞ…」

 

「おなじくです…ですが、おみごとです、ネプテューヌさん(^∇^)」

 

ロキとオーディンがこうして争わなくて済んで良かったよ~!

これで一件落着だね。

セラフォルーさんもこっちに来る。

 

「ネプテューヌちゃん、貴女のお陰で調印式が無事に進みそうね。ここにいない三人の魔王も含めてお礼を言わせてもらうわ。」

 

「うん!私の活躍、しっかりと皆の目に焼き付けばそれでいいよ!これで人気投票一位は間違いなしだね!」

 

よかったよかった。

平和が一番だもんね~!

じゃあ、ちゃっちゃと調印式やっちゃおう!

 

「では、調印式を再開します。」

 

「うむ、頼むぞい。」

 

改めて紙を用意したようで、オーディンはそれに今度こそ記入する。ロキも今度はそれを難しい表情で見ている。

仕方ないよね、すぐに仲良くすることは出来ないよ。

でも、これから仲良くなっていけば─

 

 

 

─突然、体を強引に退かされる感覚。

 

「えっ─」

 

横にどかされて、地面に倒れこむ。

 

一体何が、と思ってどかされた方を見る。

 

「─…っ、ぬぅ…!」

 

胸の辺りを抑えるロキの姿がそこにあった。

もしかして、自分を庇って…!

 

急いで立ち上がってロキに駆け寄る。

 

「ロキ!?」

 

「近寄るな!」

 

「ねぷっ!?」

 

「…く、これは…精神汚染の類いか…!!」

 

「ロキ、お主!」

 

「チィ…!誰だ!」

 

周りの護衛をしていた人達、一誠達も誰がやったのかを探している。

その最中にもロキは汗を大量に流しながら踞る。

 

「貴様ら、離れろ…神である俺の抵抗を貫く程の術…!」

 

「ロキ、そんな…何とか出来ないの、オーディン!?」

 

「ぬぅ、暫し待て!」

 

 

 

「グ、ォォォォォォォ!!」

 

 

 

オーディンが解除しようとするも、ロキがそれをはね除けて叫ぶ。

苦悶の表情…ただ見てるしかない自分の無力さが分かる。

 

ロキはその後、さっきまでの苦しそうな様子が嘘のようにスッと立ち上がる。

 

「…ロキ?」

 

「聖書の…者共…貴様らを…皆殺しに…!」

 

「いけません、ネプテューヌさん、はなれて!」

 

「ネプテューヌ!」

 

いーすんと曹操の言葉と共に曹操に引っ張られてロキからより離れる。

あの顔は…よくない顔だ。

凄く強い憎しみに汚染されてる!

 

「ロキ…!」

 

「オーディン様!お下がりください!」

 

「来たれ、我が息子!」

 

ロキの言葉と共に魔法陣がロキの前に浮かび上がる。

その魔法陣から光と共に現れたのは…

 

「グルルルル…」

 

大きな狼だった。

それを見た途端に、身震いがした。

あの狼は、天敵だ。

そう感じ取った自分は何とか気持ちを切り替えて刀を再び生成する。

 

「…ロキ、助けるからね…!」

 

せっかく、いい展開だったのに…こんなのって無いよ!

 

だから、絶対に助けてみせる。

こんな酷い展開も、全部壊して救ってみせるよ!

だって、自分はネプテューヌだからね。





ロキには悪いが今後のためにもここで精神汚染されてもらおう。

大きな狼…一体、何リルなんだ…


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決して相容れない相手は、貴方なんだね。

好きな技はミラージュダンス!(挨拶)

タイトルの言う、相手とは!?
ロキを救えるのか…?
刮目せよ!


エクソダス様の【大人ピーシェが頑張る話。】という作品にて宣伝してもらいました!
このような作品を宣伝してくださってありがとうございます!
こちらの作品もピーシェが主役ということで面白いものとなっております。是非読んでくださいね。




大きな狼を見て、悪寒っていうの?それを感じた。

特に、剥き出しの牙はまずいよね!?

何でこんなにゾクッとするのかな…

 

「悪神ロキの息子…フェンリルか!」

 

「我が息子よ、全てを喰らい、引き裂くがいい!!」

 

「ロキ、目を覚ませ!お主程の者が精神を掌握されるなど…!」

 

「黙れぇ!邪魔をするならば貴様も殺すぞオーディン!」

 

「ぬぅ…!」

 

「オーディンさま、キケンです!」

 

「ああ、下がった方がいい!フェンリルは神殺し…主神といえど一撃は死に繋がるぞ!」

 

「神殺し!?ねぷ子さんメタ!?」

 

神殺しって何!?

え、そりゃヤバイって思うに決まってるよ!

って、フェンリルならそうだよね!うん、ゲームでもそんなだもんね!

 

「ネプテューヌ、お前も下がれ。ここは…!」

 

「話は聞かせてもらったぜ!」

 

「一誠!」

 

「ねぷ姉ちゃんにばかり良いところ取られてる一誠さん達じゃないって所見せてやんよ!主人公の弟もまた主人公なんだよ!」

 

「イッセーさん、このばにおいてロキさまとフェンリルにたちうちデキるのはバイカがあるアナタです。そうそうさん、イッセーさんたちとキョウリョクしてください。」

 

「…ああ、そうするべきか…いや、待て。」

 

曹操がいーすんの指示に頷くも、待ったをかける。

フェンリルはおっちゃんと堕天使の誰か…多分、幹部さんかな?その人が食い止めてる。

早くしないと…!

 

「イストワール、ゲオルグたちと通信を繋げるのは可能か?」

 

「…わかりました。」

 

「曹操、急がないと…」

 

「こういう時こそ冷静になれ。ロキはああなる直前の発言を思い出せ。」

 

「えっと…」

 

えっと、確か…

 

『精神汚染の類いか…!』

 

あ、そういうことか!

 

「術者がいるってこと!?」

 

「まだ近い筈だ。そいつを倒せば…或いは。息子のフェンリルは分からないがロキはどうにかなる筈だ。」

 

「じゃあ、そっちは私が行くね!」

 

「ああ、だが待て。その前に護衛が一人か二人いるだろう。」

 

「…はい、レンラク、とれます。」

 

いーすんがそう言うと妙な感覚が頭に…何だろ?

 

『聞こえるか。』

 

「え、ゲオルグ?」

 

『ああ、イストワールに繋いでもらっている。

事情は何と無く把握しているが…ジークとジャンヌでいいか?』

 

「頼む。正直、加減できる相手じゃない。」

 

『だろうな。待っていろ、その座標にすぐに送る。』

 

「さっすがゲオルグ!」

 

『褒めても何も出ないぞ。』

 

「今度そっちの部屋行った時にプリンあればいいかな!」

 

『聞いてないなお前?…まあいい。急ぎだろう?』

 

ゲオルグがそう言ってからすぐに霧が立ち込める。

あ、これはゲオルグの…!

早すぎじゃない?

 

曹操を見ると得意気な顔で携帯を取り出して見せてくる。

 

「いつでも転移の準備はしておくようには言っておいたのさ。

お前といるとこういった場面に遭遇するからな。」

 

「あれ、貶されてない?」

 

「まさか!戦うしか能がない俺達にとってはありがたいことだ。」

 

個人的にはその戦いは起こって欲しくないんだけどなぁ。

 

まあ、そこは仕方ないや。

霧から、二人がやってくる。

既に剣を一本手に持った状態で。

 

「ジーク、ジャンヌ!」

 

「やあ、ネプテューヌ。ようやくお披露目が出来る…といったところかな?」

 

「暇だから来たわ。」

 

「雑な理由!でもありがたいよ!曹操、一誠…皆をお願いね!」

 

「おう、任せとけ!」

 

「ああ。」

 

ジークとジャンヌを連れて、駆け出す。

方向は何と無く分かる。

動いてなければだけど…ロキの術を受けた瞬間のことを思い出す。

 

体が何処に向いていたのか…自分を庇ったって事は術の方向は分かっていた筈だから。

 

「取り合えず、走りながら詳しいこと説明するね!」

 

「お願いするよ。」

 

「ええ、頼むわ。」

 

「かくかくしかじか!」

 

「まるまるうまうまね。」

 

「どういう…ことだ…!」

 

「ジークさん、つまり…──」

 

いーすんがジークに説明する。

ジャンヌが理解したのにジークは理解できなかった…まだまだだね。

いーすんの説明が終わって、ジークはなるほど、と頷く。

 

「かなりの術者のようだね…」

 

「けど、調印式の為にも、ロキの為にも、頑張ろう!」

 

「…そうねぇ、神様に借りを作るのもありね。」

 

「君はまたそういう…」

 

「こういう考えをしてるくらいが丁度いいのよ、私はね。

聖女って柄でもないし。」

 

「あはは…いーすん、探知は…って難しいよね。」

 

「もうしわけありません…このヒロいメイカイをタンチするとなると…みっかかかりますね。」

 

「ポンコツね。」

 

「しつれいな!ワタシはポンコツではありません!」

 

ジャンヌの容赦ない発言にいーすんは怒る。

怒られてるジャンヌは悪びれもしてない辺り、本当にポンコツって思ってそう。

んー…まあ、何か変なところで三週間とか三日かかるって言うからその可能性が浮上してる説あるんだよね!

 

でもでも、いーすんには助けられてばかりだから発言はしたりしなかったりラジバンダリ!

 

「とにかく、この先に行ってみよう!

イベント的に術者さんがいるって決まってるから間違いないよ!」

 

「相変わらず君はおかしな発言をするね。」

 

「最近シリアスに生きすぎだから私としてはそろそろ面白おかしい系に変えていかないと色々と裏切っちゃうっていうか!

もっと詳しく言うとタイトル説明文に真っ向から喧嘩売ってるって言うか~」

 

「ネプテューヌさん、ワタシもですがついていけてません。」

 

「あれ?」

 

ありゃ、メタ発言連発しすぎた?

でも、問題ないね。

何故なら主人公であるから!

多分問題ない!

 

さあ、このまま突っ走るよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫る牙、爪をかわし、槍を振るう。

ロキの子、神狼、神喰らい…フェンリル。

北欧において、神々の黄昏にて主神オーディンを喰らう者であり、すぐ後にオーディンの息子のヴィーザルに殺される運命にある者。

 

最高位の魔物であることは間違いないだろう。

神殺しに特化しているとはいえ、主神オーディンを喰らう者である以上その力は並の神を凌駕する。

現に、足止めをしていたアザゼルと幹部…バラキエルは苦戦をしていた。

聖書における堕天使側の力の象徴が二人いても苦戦を強いられる相手…それがフェンリル。

 

ロキの相手は魔王であるセラフォルー・レヴィアタンとグレモリーの眷属、ヴァルキリーがしているが、こちらも精神汚染をされているというのに高度な術を行使し、苦戦させられている。

 

だが、この場において最も恐ろしいのはフェンリルだ。

その体躯に見合わない速さ、そして、見た目以上の嵐とも呼べる力は魔物でありながら神でもある事の証明のようだ。

 

現状、グレイプニルが無い以上倒すしかない…

故に俺は赤龍帝と共に堕天使二人に加勢した。

 

4対1の圧倒的有利な盤面。

 

だというのに、だ。

 

「ウォォォン!」

 

「何という身のこなしだ…何度槍を振るっても当たる気配がしないな!」

 

「チッ、神滅具所有者二人が来ても軽いダメージしか与えられねぇとはなぁ!」

 

「だったら!この狼よりも速く、強くなればいいだけだ!」

 

『Boost!』

 

「禁手して何度目の倍加だ!元々の地力が違いすぎる!」

 

神滅具は神を越えられる可能性のある神器だ。

しかし、フェンリルはまるでそれは自分の専売特許だといわんばかりに攻めが激しくなる。

 

鋭い爪が振るわれるが横に避けて聖槍のオーラで矛先を伸ばし、振るう。

嘲笑うかのように軽々と避けられる。

攻撃も回避もかなりの速さだ、判断を見誤れば確実に殺される。

槍を持つ手に汗が滲む。

 

赤龍帝…兵藤一誠の倍加は確かに脅威的な力だ。

だが、ただの人間だった眷属悪魔がいくら倍加したところでフェンリルの力には遠く及ばない。

魔王クラスが使えばチャンスはあるが…

 

魔王はロキの相手をしていて手が離せない…というより、魔王が離れた瞬間、戦線は崩壊するだろう。

 

「アザゼル!グレイプニルに相当する物は無いか!」

 

「ねえよ!グレイプニルはフェンリルを縛る為だけに造られた鎖だぞ!んな代物に相当するものなんざ持ってる訳ねぇだろ!」

 

「それもそうか…!」

 

無い物ねだりをしても仕方ないか…だが、本格的にどうしたものか。

北欧の神々が手を焼くだけはある。

 

禁手化。

実は、俺はまだその境地に至れていない。

だが、今の生活の中で多くのヒントを得ている。

例えば、グレモリーの騎士である木場といったか。

彼の禁手は本来ならばあり得ない方向性だ。

聖剣と魔剣…二つの性質が反発すること無く共存するなんて思いもしなかった。

 

…俺もまた、本来の禁手ではない何かを得るべきなのかもしれないな。

神が死んだことの影響とやらが俺の考えにどこまで応えてくれるか…

 

「だが、その前に…」

 

目の前のフェンリルをどうにかしないことにはな。

さて、どうしたものか。

 

思案していると後ろから気配が1つ。

…手練れだな。

 

「お困りのようだね。」

 

「…誰だ?」

 

「僕は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと速すぎかも~なネプダッシュ!

もう疲れたよ!休憩したいけど今は緊急クエストだから逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だよ!

 

「でも疲れた!」

 

「それ何回目よ?」

 

「3!」

 

「天丼は3回までよ。」

 

「はーい。」

 

こうして、イベントマーク目指して走ってる自分達だけど、ジークが何かを感知したようで止まる。

 

「誰かいる。」

 

「…ああ、これ知ってる奴ね?」

 

「え、じゃあ…」

 

「はんえいゆうは…ですか(д`ヽ)」

 

「反英雄派?そういう名前で呼ぶことにしたんだね…

いるんだろう?これ以上隠れるようなら元仲間といえど容赦はしない!」

 

ジークの言葉の後、目の前の景色の中に人型がうっすらと見える。

まさか、これが光学迷彩って奴!?

科学的な力が自分達の敵だったのさ!ってオチ!? 

 

少ししてから、そこに現れたのは…全身を覆い隠すようなローブとペストマスクで顔を覆った如何にも私怪しい人ですって人だった。

 

「…流石はジークフリート。不可視の魔術だけでは駄目でしたね。」

 

「やはり君か、パラケルスス。穏健派の君が頼光に協力してこんなことをするとは思わなかったよ。」

 

「…そうですね、私も本来ならこのようなことはしたくない。

ですが、私達はもう戻れない。少なくとも、あの子に移植することを了承した時点で私は立ち止まることは出来なくなった。」

 

「ロキに術を仕掛けた犯人は見つかったね!ねえ、お願い!術を解いてほしいな!パラケルスス…言いにくい!パルスでいい?」

 

「滅びの呪文に似た名前はやめてください。」

 

「えー…パラケでいいや。パラケは本当にこんな皆が争うことをしたいの?私は、出来れば争わない方向でいきたいんだけど…」

 

「それは出来ない、女神様。本来ならば貴女が汚染される筈だった術…もう一度、貴女へぶつけましょう。」

 

「させないわよ、陰険。結局は私達と同じよ、あんた。

こんなことしたくないだのなんだの…自分の止まりどころを他人のせいにしているも同義よ。」

 

「私はもう罪深い。許してもらおうなんて思ってない。 

もう、彼らの行く末を共にすると決めた。邪魔をするなら、貴方達も…殺す。」

 

「シリアス!?倒された筈じゃ…!」

 

「…君の頭脳と神器は確かに恐ろしい。けれど、君が僕らを相手にするのは無理があるんじゃないかい?」

 

「その通り、故に私は人を頼る。適材適所ですよ。」

 

…何だかさ、自分を出さないようにしてるような気がする。

良くないよね?

もし、酷いことをしたって思ってるなら…ちゃんと事情も聞かなきゃいけない。

暴力は何も解決しないよ!

 

「ねえ、頼光は何がしたいの?」

 

「…頼光は…」

 

「本当に、本当にパラケもしたいことなの?

したくもないことを続けて、離れることも出来ない辛さは分からないよ。それでも…誰かに助けを求めることは悪いことじゃないよ。」

 

「…私を…私を惑わせないで、女神様…!見捨てるなんて出来ない、見過ごすことも出来ない…!私には、こうするしかない!」

 

初めて感情的になったパラケはフラスコを取り出すとそれの中にある煙を地面へと垂らす。

煙は次第に形を持っていく。

 

あ、曹操といーすんが説明してた奴だ!

 

確か、幻煙の魔獣(ファントムフォッグ・モンスター)だよね。

物理無効…物理無効じゃん!?

クソゲー!駄目絶対!

 

大きい蛇を模した煙の怪物が自分達に牙を剥き出しに威嚇してくる。

 

「ネプテューヌさん、シェアによるマホウでたちまわりましょう!( ̄^ ̄)」

 

「うん!」

 

「いや、彼女の魔獣は僕に任せてくれ。」

 

「え、ジャンヌと私は?」

 

「アンタと私は…こっちよ!」

 

「ねぷっ!?」

 

ジャンヌが聖剣を後ろに振るうと剣同士のぶつかる音。

振り向くと、剣が弾かれて地面に落ちている。

もう一人…!

 

「むしろ、こっちが本命ね…」

 

「え、本命ってつまり…」

 

瞬間、ゾッとする。

この感覚は…殺気だ。

ヴァーリが英雄派にぶつけた時の純粋な殺気に似てる。

でも、それよりも濃厚な殺気…特に、自分にそれが向けられている。

 

恨み、怒り、憎しみ…負の感情をこれでもかってくらいぶつけられる。

少し、息苦しさすら感じる。

 

その人は、自分にずっとそれをぶつけながら刀を持って歩いてくる。

 

日本の軍服らしきものを身に纏い、黒の短い日本人特有の髪。

長身の男性で、持っている刀とはまた別の刀を帯刀している。

その人をしっかりと認識した瞬間、直感で理解した。

 

この人とは、分かり合えない。

致命的な面で噛み合わない。

 

クルゼレイの言葉の人物が、そこにいる。

 

「流石ジャンヌだ。隙をついたと思ったが…」

 

「その殺気を隠してからやるのね。」

 

「…源頼光。」

 

ジャンヌへの称賛の言葉を、ジャンヌは吐き捨てるように言葉を投げる。

つれないな、と肩を竦めた。

 

自分が名前を呼んだ時、ピクリと反応して自分に視線が突き刺さる。

 

「…ああ、お前が、ネプテューヌか。」

 

「うん、私がネプテューヌ。」

 

「人の味方、だったか。」

 

「うん。」

 

「流石は女神といったところか。…俺もまた、人の世の平和を望んでいるよ。」

 

「何となく分かるよ。」

 

「一度話してみたいと思ってたんだ。カイネウスやトリスタンは特に教えてくれないからな。リーダーには向いていないらしい。

ああ、やっぱりだ、と思ったよ…」

 

「うん、私も一回話し合いたかったよ。」

 

でも、認識した時に理解した。

 

刀を突き付け合う。

今までで一番真剣に。

 

分かってたように、定められていたように。

諦めたように二人して笑う。

自分は純粋に残念に。

頼光は納得したように。

 

「私は皆と笑い合うハッピーエンドを望んでるんだ。」

 

「素晴らしい考えだな。俺も同じだよ。」

 

「うん、でも…うん、違うよね。」

 

「残念ながら。もっと早く会いたかった。」

 

自分もそう思った。

もっと早く会えれば…きっとこうならなかった。

だからこそ、残念な出会い。

奇跡的に外れてしまった出会いの瞬間。

 

 

 

「人外は、この世にいらない。」

 

「私にとって、それ(人外)も皆に入ってるよ。」

 

 

 

ああやっぱり、と思った。

頼光は人だけのハッピーエンドを目指してる。

自分は人も人じゃない、皆一緒のハッピーエンドを目指している。

 

目指してる場所は同じようで違うそれは1つの方向性を失くしたか失くさなかったか。

だからこそ、噛み合わない。

奇跡的なまでに、運命的なまでに…どうあっても駄目なんだと分かった。

 

「─ああ、残念だよ。本当に!」

 

「うん、私も──とても残念ね、頼光!」

 

女神化して、頼光へと突っ込む。

考えることは一緒のようで、頼光も自分へと向かってくる。

刀同士がぶつかり合う。

それだけで、何と無く互いの願いが分かる。

 

これはある意味で自分との戦いなんだ。

 

「だからこそ、私は貴方を倒す。」

 

「故に、俺はお前を殺す。」

 

どこまでいっても平行線。

目指す果てが数ミリずれているだけなのに、分かってしまうんだ。

この人は私と似ているようで、似ていない。

分かり合えるようで、分かり合えない。

だから、ぶつけ合うしかないんだ。

 

ロキを一刻も早く助けるため、何よりこの願いのために。

 

この未来への願いをぶつけ合う。




シリアスブレイカーになろうと思ったらどう足掻いても通じない、というかある意味誰よりも強い相手で完全シリアスモードにならざるを得ないネプ子。

さあ、ここからが本番。


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しっかりと決めちゃうよ、主人公ですから!

ブラックハート【カオス】ピックアップ早すぎぃ!
ホワイトハートのカオスを出したばっかじゃん!?

こ、これは…パープルハート様のカオスも近い!
石貯めよ…


火花が散る。

刀と刀のぶつかり合い、願いをぶつけ合う。

誰も欠ける事のないハッピーエンド…それを真っ向から否定される。

だから、自分も頼光の人じゃない皆を失くして人だけのハッピーエンドを否定する。

 

恨みがこの人を強くしているのか、この人が強いからこそ恨みも強いのか。

それは分からない。

 

「貴方も恨んでいるのね、誰かを。」

 

「ああそれもある。だが、それだけではない。

この日ノ本が、奴等人外に侵されている…それが我慢ならない。」

 

「…そうね、彼らがしてきたことはとても許されることではないわ。でも、彼ら全員のせいじゃない。貴方のそれは何も知らない善良な人じゃない彼等にも向けているわ。」

 

「分かっている。だが、これは…理屈ではない!」

 

「く、うぅ!」

 

─ネプテューヌさん!

 

弾き飛ばされるも、後ろに飛んで体勢を整える。

 

…一部例外はあるけど、人間と女神だと元々の身体能力に差がある筈。

だというのに、まるで人じゃないように…

 

もしかして…?

 

「いーすん、頼光をスキャンして。」

 

─分かりました。

 

「ネプテューヌだけじゃないわよ!」

 

「無論、お前も警戒しているさ。」

 

ジャンヌが入れ替わるように頼光に斬りかかる。

踊るような剣さばきで頼光と互角に斬り結ぶ。

力を逸らすような動きに頼光も攻めづらさを感じてるのかもしれない。

 

「あら、初めてアンタとやり合うけど、顰めっ面ね?」

 

「同じ神器同士で攻めにくさを感じてるに過ぎん。

勝つのは俺だ。」

 

「生意気ね!」

 

頼光の刀に力が入る。

ジャンヌの剣が押され始める。

ただ見てるだけの自分じゃないよ!

 

「32式…エクスブレイド!」

 

「っ!」

 

「逃がさないわよ!」

 

「チッ…ハァッ!」

 

「キャァ!?」

 

上から落ちてくるエクスブレイドに気付いたのか距離を取ろうとする頼光に猛攻を仕掛けるジャンヌ。

頼光は舌打ちをした後に刀をもう一つ生成して二刀を交差するように振るってジャンヌを吹き飛ばして、距離を取る。

 

エクスブレイドは地面にぶつかって爆発するだけに留まる。

 

やっぱり強い!

周りをよく見た戦い方…曹操に似てるようで若干違う形。

 

「ジャンヌ、平気?」

 

「ちょっと飛ばされただけよ。ていうか、何よあの馬鹿力!」

 

「私の予想が当たっていれば…試すわ。」

 

刀にシェアの魔法を纏わせて、頼光へ斬りかかる。

 

「来るか、ネプテューヌ。」

 

「ええ、いかないと攻撃出来ないもの。」

 

「それでこそだ。全力で相手しよう。」

 

二刀から一刀に変え、迎え撃つ姿勢の頼光へと聖なる輝きを放つ刀を振るう。

 

「フラッシュエッジ!!」

 

「光力…!気付いたか!」

 

─ネプテューヌさん、スキャン完了です。…悪魔の駒の反応を検知しました。彼は悪魔です。聖剣因子は見受けられません。

 

「やっぱり、悪魔だったのね。」

 

光力に苦虫を噛み潰したような顔をしながらも刀で受け流される。

やっぱり悪魔だった。

多分、本人の同意もなしにされた方だと思う。

だから、主人ももう…

 

「ああ、俺は…昔、人から悪魔へと変えられた。日ノ本に生きる者としての尊厳を奪われた気分だった。」

 

「貴方は、復讐をしたいの?」

 

「俺一人ならば、その場で腹を斬った。だが…だが!

人外共は日ノ本へとその足を踏み入れ、多くの人々をその道へと堕としていった!人外共は悉く滅ぼす。俺のために、何より日ノ本のために、排斥する。」

 

「貴方の想いに偽りはない…それは分かるわ。でも、私はそれを許容できない。」

 

「元よりされると思っていない。一目見て分かる程だよ。

お前は、何に代えても倒さねばならない敵だ。」

 

「それは私も同じ事よ、頼光。」

 

手を取り合いたいのに取り合えない。

だから、その取り合うための手はこの刀を握るために。

 

譲ることのない、譲れば閉ざされる未来()を振るう。

シェアが応えるように高まり、刀へと伝わる。

ただこの戦いを制すために!

 

 

 

「ビクトリィー…スラッシュ!!」

 

 

 

「これは…!」

 

Vの字に斬るように刀を振るう。

シェアはまだまだたっぷりある。

出し惜しみをするだけ劣勢になるだろう。

だから、全力で!

 

「暖かい光だ…だが!」

 

刀をもう一本生成して、二刀で以てビクトリィースラッシュを迎え撃ちに来る。

間違いなく、防がれる。

過大評価でも何でもなく頼光の技量と力は本物。

日本のために、自分のために血反吐を吐くくらい鍛えたんだと思う。

だから、これくらい防ぐ筈。

 

…自分が一人なら。

 

自分を追い越すように飛んでいった聖剣が頼光の足を切る。

 

「ぬっ…ジャンヌか!?」

 

「二対一よ、卑怯とは言わないわね?」

 

「ハァァァァ!!」

 

聖剣による痛みが悪魔の頼光にはより強く感じるのか顔をしかめる。  

そして、自分の刀が頼光へと入る。

 

纏わせてたシェアが頼光を中心に爆発する。

 

「ぐ、おおぉぉぉ!!」

 

爆発して、頼光の苦痛の叫びが響き渡る。

その声に、顔をしかめる。

けど…まだ。

 

自分なら、まだ諦めない。

だからきっと彼も。

 

爆発による土煙から、何かがこちらへと飛んでくる。

それはこっちの反応よりも早く…自分の肩へと深く突き刺さる。

 

「ぐっ、くぅ!!」

 

「ネプテューヌ!」

 

「大、丈夫よ…それよりも、まだ!」

 

突き刺さったのは刀だった。

即座に引き抜いて、それを遠くへ捨てる。

右の肩から血が流れる。

今更だけど、この作品は残酷な描写ありだよ!

 

煙が晴れる。

 

「ぐ、ぅおぉぉ…!まだだ…俺はまだ死んでないぞ…!」

 

何かを投げた後のような体勢の頼光がボロボロながら立っていた。

まだ足りない。

頼光の心はきっと折れない。

自分よりも硬く、入り込む余地を許さない心は絶対に自分の手を拒む。

 

軍服が所々破け、上半身の素肌が少し見える。

そこからでもかなりの古傷や、自分が与えた傷が痛々しく見える。

 

「俺は、まだ、生きているぞ!」

 

「頼光…!!」

 

「アンタ、死ぬ気?」

 

「死なん!俺は…日ノ本から人外共を消すその日まで死なんのだ!

俺のこの最初にして最後の偉業の糧となるがいい…!」

 

傲慢とも取れる発言、その実それは自分を鼓舞するための物に他ならない。

偉業だなんて思ってないだろうから…それは単に必滅の誓い。

 

自分の選ばない未来への渇望が、そうさせるのか。

ハッピーエンドを目指すのは同じなのに…悲しいよ、頼光。

 

聖剣を刀へと変化させたのも、頼光なりの意地なんだろうね。

 

「俺には、まだ…!ぬぅ…!」

 

鬼気迫るとも言える顔の頼光が、苦しむような呻き声をあげた後、刀を手放す。

よく見れば、手から焼けるような音が聞こえる。

 

─恐らく、彼は聖剣を使うために悪魔としての特性を抑える何かを使っている可能性があります。そして、あの反応を見るに、時間切れのようですね。

 

そっか、聖剣の因子もない状態で悪魔であることを無理矢理誤魔化して使ってたんだ…

 

「頼光、もう…」

 

「やめよう、と言うんじゃなかろうな…!ああ、確かに忌々しいまでの拒絶反応のせいでこの刀達を振るえない。だが…俺には、これがある。」

 

抜いたのは、元々携えていた刀。

それは他とは違った何か特別な力を感じさせる刀だった。

 

「童子切安綱よ、俺に力を!」

 

「国宝じゃない…盗んだっての!?」

 

「元は源が使っていたものだ。ならば俺が使うことの何がおかしい?」

 

「だとしても盗人でしょうが…!」

 

「今更だ。」

 

大事なお宝を使ってでも、何をしてでも成さなきゃいけないって意志を感じる。

どうなろうとも構わないといった様子。

 

…でも、この勝負は勝ちだよ。

 

「く、うぁぁ!」

 

背後から女性のものと思われる悲鳴が聞こえる。

ジークとパラケが戦ってる方だ。

 

振り向くと、パラケがペストマスクを少し壊されて、体にも少し切り傷が出来て倒れてる。

対するジークは魔剣を構えたまま、ほぼ無傷の状態でいる。

 

「君は前線向きじゃない。そんなことは分かっていただろうに。」

 

「ぐ、く…だとしても、私は…!」

 

「パラケルスス、退け。」

 

「っ、頼光…」

 

「すまない、ここは撤退だ。」

 

「…了解しました。」

 

ふらついた様子で立ち上がり、術を行使する。

パラケと頼光の足元に魔法陣が浮かび上がる。

 

「決着は取っておこう、その時には俺もより強くなっている。

…出会いの形はどうあれ、俺はお前という女神に敬意を表する。」

 

「…貴方の想いの強さは理解したわ。でも次こそ倒すわ。」

 

「…ああそれと、ロキについてだが…すまんな、解除する術等無い。」

 

「釣られたって訳ね。」

 

「さてな、今頃どうなっているかは見物だが…ロキを倒せば術も解けるだろう。上手くやれよ、ネプテューヌ。」

 

「言われなくても、そのつもりよ。」

 

その会話の後、頼光とパラケはその場から消えた。

…あれが、源頼光。

あの人だけは自分が倒さないといけない。

そう、理解した。

 

女神化を解除せずに、肩を抑える。

 

落ち着いたら、だんだん痛みが大きくなってきた。

 

「ちょ、ネプテューヌ!」

 

「大丈夫…右肩が上手く動かせないだけよ。」

 

「そういうのを世間一般的に大丈夫じゃないっていうのよ!

ほら、傷口見せなさい!」

 

─無茶をなさらぬよう。こちらからも治療を施します。

 

(う、ごめん…)

 

ジャンヌに包帯をキツく巻かれて、いーすんに内側から治療してもらう。

 

「まったく…これじゃどっちが護衛か分からないでしょ。」

 

「ネプテューヌ、動けるかい?」

 

「ええ、問題ないわ。」

 

─治療を施しはしましたが完治とまではいきません。アーシアさんにお願いしましょう。

 

(うん、ありがとう、いーすん。)

 

─…はい。

 

肩はまだ痛むけど、治療はしてもらったから気にしていられない。

頼光の話が正しければまだロキは暴れてるだろうから…フェンリルも止めないと。

 

「行きましょう、二人とも。」

 

「無茶だけはやめてよね。」

 

「なら、こっちが無茶するしかないね。」

 

「…前に出すぎたのは謝るから、やめてほしいわ。」

 

ちょっと二人とも意地悪だよぉ…

 

「あはは、こうでも言わないと君は無茶をするだろうからね、」

 

「にしても、何か色々と違うわね…アンタ。」

 

「そう?どちらも私よ。」

 

「分かってるけど、実際しっかりと話してみるとね。」

 

うーん…ハッ、この姿を利用すればモデルみたいな感じで業界へ進出してアイドルに…!

うん、やめよう。

何か面倒そうだし。

 

それより急がないとね。

一誠達もキツイだろうし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェンリルが先程までの暴威が嘘のように大人しくなる。

一体何が…?

先程来た男が剣を掲げたと思えば光が発せられた。

その光がフェンリルを大人しくさせた…いや、違う。

 

フェンリルの精神を支配した?

 

紳士的な風体でスーツにメガネという格好の金髪の美青年。

 

「これでいいかな?」

 

「あ、ああ…いや、それよりも、お前は?」

 

「うん?ああ、フェンリルに自己紹介の機会を潰されていたね。

改めて、自己紹介を。

僕はアーサー。アーサー・ペンドラゴンだ。」

 

「アーサー?というと、かのアーサー王の末裔か。」

 

「御名答。結局、そちらの組織に入る前に禍の団から消えたから会えなかったけど…こうして会えて光栄だ。」

 

「禍の団に…?いや、余計な詮索は止そう。フェンリルを鎮めてくれて感謝する。俺は英雄派リーダー、曹操だ。」

 

「俺は兵藤一誠。助かったぜ…」

 

「助け合いだと思ってね。それに、フェンリルの支配には成功したから合格だ。」

 

「おいおい、待て待て。さっきから理解が追い付かねぇ。」

 

アザゼルの言う通りだ。

アーサーのお陰でこうしてフェンリルは何とかなったが…

アーサーの言う合格の事が分からない。

 

「お前さんがあの騎士王の子孫なのは分かったが、合格ってのは何だ?誰がここまで手引きしたんだ?」

 

「ああ、それは──」

 

 

 

「─それは私にゃん。」

 

 

 

いつの間にか、岩の上にのんびりと座っている女性、黒歌の姿があった。

何やらしてやったりな顔をしてる。

 

「黒歌か…つまり、ヴァーリ達の手引きか?」

 

「当たりにゃん、曹操。」

 

「これで合格でいいんだね?」

 

「うん、ばっちりにゃん。」

 

「…何か良からぬ事でも企んではいないだろうな!」

 

先程まで沈黙を保っていたバラキエルが槍を黒歌へと向ける。

黒歌はそれを睨むことで返す。

 

「猫は恩を忘れる真似はしないわ。

ねぷっちがこの調印式が成功するのを望んでるなんて考えなくても分かることよ。

私がねぷっちを裏切ることはないわ。」

 

「むっ…そうか、すまなかった。」

 

黒歌なりに手伝ったということか…?

よく分からないな、猫の考えることは。

ここ数日見ないと思えばヴァーリとつるんでたとは。 

これじゃ匿う意味が無いだろうに。

 

とはいえ助かったのは事実だ。

 

「黒歌、助かったよ。ヴァーリは来てないのか?」

 

「さあ?最近のヴァーリはねぷっちに夢中で分からないにゃん。」

 

「では、ネプテューヌに会いに?」

 

「どうだかにゃん。あれはあれで奥手にゃん。脈ありだと思うんだけどにゃーん。」

 

確かに。

 

そう思ってしまった俺は悪くない。

…今思うと、ここにいる殆どがネプテューヌに心を動かされた面子だ。

黒歌も、俺も、アザゼルも兵藤一誠も。

 

…俺たちの中心は彼女で間違いないな。

本人は思ってないだろうが。

 

さて、後はロキだが…

ヴァルキリー達の方へ視線を向ける。

 

「流石は神か。」

 

「くっ、悉く防がれるわ!」

 

「トリックスターの名は伊達ではないか…」

 

「ぐ、うぅぉぉ…!下らん、三勢力は皆殺しだ…!」

 

ほぼ劣勢だな。

当然といえば当然か…フェンリルに戦力を割きすぎた。

木場祐斗が禁手に目覚め、聖魔剣を扱えるといえど。

ヴァルキリーが如何に攻撃に優れていたとしても足りない。

 

相手はあのロキだ。

いくつか手傷は負ってるようだが倒れる気配は微塵も見せない。

 

だが、ここからが本番だ。

 

「俺達も加わろう。」

 

「お、おう!でもよ、ねぷ姉ちゃん達が…」

 

「分かってるさ。」

 

ロキに聖槍を向ける。

ロキはこちらに視線を寄越し、フェンリルを見ると目を見開く。

 

「我が息子…?くっ、フェンリルを制したか。」

 

「後は貴方一人だ。」

 

「なめるなよ小僧!我が名はロキ…北欧の神が一人、悪神ロキである!北欧が受けた屈辱、死を以て償うがいい…!」

 

「ああ、神が相手なら…それを越えるのみだ。」

 

フェンリル程の強さはないだろうがそれでも一線を画す力はある。

気を引き締め、ロキへと駆け── 

 

 

 

─ようとして、急接近でロキへと向かってくる誰かを見て立ち止まる。

 

あれは…

 

ロキも気付いたのかそちらへ振り向く。

 

「っ、貴様は…!」

 

紫の女神、お調子者である彼女が戦う時に必ずといっていい程その姿へ変わる。

その手に持つ刀は斬り伏せる為でなく、誰かを救う為。

 

「ロキ!」

 

「ネプ、テューヌ…!」

 

ロキ目掛けて刀を振り下ろす。

ロキはそれを杖で防ぎ、鍔迫り合いの形に。

 

「ネプテューヌ…聖書の女神が!」

 

「目を覚ましなさい、ロキ!貴方はそんな感情に呑まれてはいけないわ!」

 

「何を…!」

 

「猛争の渦に呑まれてはいけないわ。貴方は北欧を貴方なりに愛している筈…この行動は北欧の為にならないわ!」

 

「黙れ!青二才の女神が!」

 

「黙らない!」

 

最新の女神と北欧の悪神の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼けるような肩の痛みを無視する。

この痛みよりも苦しんでいる人を優先する。

 

─ネプテューヌさん!

 

「大丈夫、まだ呑まれてないわ。」

 

「若い女神が、あり得ぬ理想を語る!貴様の言う終わりは、ラグナロクよりも重い終わりを招く!」

 

「あり得ない理想じゃないわ。誰かに否定されても、誰かが肯定してくれた。だからこれは、叶わない終わりじゃない!」

 

力を込めて、ロキの杖を弾き飛ばす。

 

「む…!」

 

「クロス、コンビネーション!」

 

踊るように斬りかかり、無防備なその体にダメージを与えようとするけど…

 

「甘いぞ!」

 

「っ、ぅ!」

 

こっちが斬りかかるよりも早く魔法陣を組み上げ、衝撃波を放たれて体勢が崩れる。

そして、追撃とばかりに何十発もの魔法の弾が自分に放たれる。

 

「おぉぉぉぉ!」

 

「赤い鎧…!?」

 

禁手化した一誠が飛んで自分を抱いて一緒に弾を避ける。

 

「先走っちゃ駄目だろ、俺達がいる!」

 

「一誠…ごめんなさい、また…」

 

「反省は後!ロキを助けるんだろ?」

 

「…ええ!」

 

こういう時の一誠は本当に頼もしい。

…うん、強くなった。

 

「赤龍帝か…」

 

「フェンリルはああなっちまったぜ。大人しく殴られてくれねぇか?」

 

「頷くとでも?だが…この勝負、預けよう!」

 

「なっ…」

 

「暫しの平和を楽しむがいい…だが、次こそは貴様らを滅ぼしてくれる!」

 

「待ちなさ──!」

 

ロキは自分達の言葉を待たずに何処かへと消えた。

 

…静寂が辺りを包み込む。

精神汚染されたままあんなに動けるなんて…ロキ…

 

「っあ!」

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

右肩にさっきよりずっと鋭い痛みが走って、思わず刀を手放す。

…上手く力が入らないや。

無理しすぎだね。

 

幸い、落ちた刀は勝手に消えたけど…やるせなさが残った。

 

「一度、戻ろうぜ。」

 

「ええ、そうね…」

 

空を飛べる自分の方が適任だからってジークとジャンヌをフェンリルに当てるって話だったのにフェンリルが沈黙してたから自分が突っ込んだ形になっちゃったし…

 

それにしても、肩が痛いよぉ…ねぷ子さんいいとこ見せれたかなぁ?

うーん…もっと頑張らないと。

 

─ネプテューヌさん、あまり無理はしないでくださいと言いましたよね?

 

(ヒェ、い、いーすん?あれは仕方無いっていうか…)

 

─問答無用です。アーシアさんに治療してもらった後、覚悟してくださいね!

 

(え、えぇぇぇ…私、頑張ったのに!がっくし…)

 

何て言うか、まだまだねぷ子さんは詰めが甘いってはっきり分かっちゃった件…

ぬぬぬ、絶対に次こそ読者待望の新技を御披露目しちゃうんだからね…!

 

─ネ プ テ ュ ー ヌ さ ん ?

 

(ななな、なんでもないです!?)

 

トホホ…と締まらない自分なのであった。

 

…うん、でも…本当に自分が向き合わないといけない相手は分かったし、一歩前進だよね?




補足!この次元ではアーサー君が入ろうとした頃には英雄派脱退が起こってたので直接ヴァーリチームに所属してもらいます。
ルフェイちゃん?あの子はまた別で重要な役目があるのさ。
闇魔術が得意なんて設定を私に見せたうぬが不覚よ。


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喧嘩は良くないよ、仲直り仲直り!

ネプギアちゃんLv999(3回目)は気持ちがええのう(挨拶?)

今更だけどうちのねぷ子さん…VⅡっぽい性格かと思ったがどっちかというと無印寄りでは?


やっほー!皆大好きネプテューヌだよ!

あの後、あーちゃんに治療してもらったんだけど…その時のあーちゃんといーすんがね…

 

『ネプテューヌさんはいつもそうです!すぐ皆さんの前に出て無茶をして…こうして肩に大怪我をして!治療する人の身にもなってください!』

 

『ネプテューヌさんがいてもたってもいられないメガミさまなのはしょうちしていますが、もうすこしみなさんをしんじてコウドウしてもよろしいのでは?そもそも──』

 

うん、お説教の嵐だったよね。

ずっとお説教されてたけど途中でリアスちゃんが止めてくれた。

よ、よかった!他の皆は助けてくれなかったから正座のまま気絶するところだった!

 

『あー…確かに突っ込んだネプテューヌも悪いかもしれないけど対処しきれなかった私達も悪いのだからその辺にしましょう、ね?』

 

あの時は拝んだね…うん、間違いなく天使に見えた、悪魔だけど!

とまあ、そんな感じで重傷といえば重傷だからベッドで寝かされてるよ。

 

ちなみに、オーディンは取りに行くものが出来たとか何とか。

黒歌とも会ったけど、まさか助けを呼んだくれたなんて思わなかったよ。やっぱり、持つべきものは友達だよね。

 

「しっかし、フェンリルがどうにかなったのはでかいよな!」

 

「うん、アーサーには助かったよね。」

 

「はい、エクスカリバー・ルーラーがあるのはいがいでした。

それより、ネプテューヌさん。かたのいたみは?」

 

「だいじょーぶ!ねぷ子さんは痛みに負けないスキル持ちだから出歩ける位元気だよ!」

 

「かまいませんが…イッセーさんかだれかといっしょでないとゆるしませんよ。(`Δ´)」

 

「わ、分かってるって。」

 

「ねぷ姉ちゃんはほっとくと無茶するからな。俺がしっかりしねぇと。」

 

「うう、一誠がそういう考えが出来るようになっててお姉ちゃん嬉しいよぉ!」

 

「誰のせいだよ!?というか、前からこうだったよ!」

 

「え?でもエッチなものは見るじゃん?」

 

「逆に見ないという発想があるんですか?」

 

「あ、もう否定しないんだ…」

 

「俺は、悟った…俺の欲こそが俺自身の力!間違いないぜ。

原作全巻通して俺が欲の解放をしなかったことは1つとしてない!」

 

「メタい!それ以上のメタ発言は主人公特権で禁止だよ!?」

 

一誠がついに同じ境地に立とうとしてる!?

これはまずいよ!

具体的には自分の立ち位置が危うくなる!

 

ポテンシャルとか正義度が意外と高い一誠なら自分から主人公の座を奪うことは出来なくない…くっ、ここでそのメタを使うなんて!

 

「止めてくれるなねぷ姉ちゃん!俺はもう振り切って行くしかないん──」

 

 

 

「しつこい!!」

 

 

 

「ねぷっ!?」「すいません!!」

 

「…そとからのどなりごえですね。」

 

「う、うん…」

 

今の、朱乃ちゃんだよね。

あんな怒鳴り声聞いたことないよ。

もしかして、堕天使的な?

 

一誠と顔を合わせて、頷き合う。

 

一誠が屈んで背中にジャンプ!

これぞ姉弟おんぶ!

 

「ゴーゴー!」

 

「ラジャー!」

 

「あ、ふたりとも!…もう、けっきょくこうなるんですね…(;´д`)」

 

病室から出て、二人でダッシュ…はしないで廊下を少し早めに歩く。

 

幸いそんなに高い階じゃないから外にはすぐに着いた。

声のした方に行くと、朱乃ちゃんと男の人の姿が。

言い合ってる感じかな?

 

「何度も言いますが、もう私には話しかけないでください。

迷惑です。」

 

「朱乃…私は…」

 

「今更父親面ですか?母様を見捨てた癖に。」

 

「それは違う!朱璃を見捨てた訳ではない、お前のことも決して…!」

 

これ以上はちょっと良くないかな…?

家族問題に首を突っ込むようであれかもしれないけど、ここはねぷ子さんのターン!

 

一誠も同じ意見だったようで朱乃ちゃんと男の人の間に割って入る。

 

「ちょっと待った!」

 

「な、なんだ貴様らは?」

 

「イッセー君、ネプテューヌちゃん…?」

 

片手に持ってた靴を地面に落として、おんぶ状態から降りて、靴を履く。

 

「二人とも、ストップ!あんまり叫ぶと病院の外とはいえ迷惑だよ!」

 

「それに、姫島先輩も先輩のお父さんもヒートアップし過ぎだぜ。それじゃ口喧嘩にしかならないだろ?」

 

「これは私達親子の問題だ。部外者が口出しをするな!」

 

「っ…!」

 

「む、朱乃!」

 

「先輩!」

 

「朱乃ちゃん!」

 

朱乃ちゃんが何処かへ走り出す。

男の人…朱乃ちゃんのお父さんも追おうとする。

 

「とうっ!」

 

「ぐっ!?何をする!」

 

咄嗟に首根っこを掴んで追わせまいとする。

朱乃ちゃんのお父さんは随分お怒りといった様子で詰め寄ってくるけど…こっちはちょっと咄嗟だったから怪我してる方の肩使って痛いんだよね…

 

「いてて…言い争ったばかりでしょ?私に任せてよ。」

 

「お前に?」

 

「友達だし、女の子だからね。こういう時は同姓の方が良かったりするんだよ。まーまー私に任せておけば万事解決!というわけで、一誠ファイト!」

 

「あ!?」

 

一誠にこの場を任せて朱乃ちゃんを追いに行く。

ふっふっふ…これで怖いのはいーすんのみ!

この華麗なるねぷ子さんの作戦に隙はほんのちょっぴりしかないよ!

 

怪我人といえど主人公ねぷ子さんを真に阻める者なんていないんだなぁこれが!

 

少し時間が経って勘だったけど…

 

朱乃ちゃんがベンチの上で座ってる。

あ、あれはイベントベンチ!

説明しよう!

イベントベンチとは何かこう都合の良いタイミングで設置されているベンチのことだよ!ここ、テストに出るからね!

 

朱乃ちゃんの前まで歩いていく。

 

「朱乃ちゃん。」

 

「ネプテューヌちゃん…どうなさいました、と聞くのは野暮ですわね。私のこと、聞きに来たのでしょう?」

 

「違うよ!」

 

「え、あ…ごめんなさい、私ったら。」

 

「うん、嘘だよ!聞きに来たねぷぅ!?」

 

あ、頭叩かれた…!

結構良い音鳴ったよ!?

目の前の朱乃ちゃんは黒い笑み浮かべてるし!

 

「うふふ…いけませんわね、ネプテューヌちゃん?」

 

「あわわわわ、ごめんごめん!」

 

「全く、傷心中の女の子にすることではありませんわ。」

 

「だけど、ちょっと調子戻ったね。」

 

「…もう、ネプテューヌちゃんは。」

 

「あはは、それでどうしたの?護衛の時もだけど…堕天使に対してあんなに当たりが強いのはやっぱりお父さん?」

 

「ええ、まあ…昔、色々とありまして。」

 

「…お父さんのこと嫌い?」

 

「…嫌いです。あんな、母様を見捨てた男なんて…!」

 

さっきもそうだけど、その一言で殆どを察した。

…でも、察するだけじゃだめだと思う。

寄り添ってあげないと勝手に壊れちゃうんじゃないかな。

そんな危うさが朱乃ちゃんにはある。

 

「溜め込むのは良くないよ。私で良ければ、愚痴でも何でも言ってよ!」

 

「…何故、ネプテューヌちゃんはそこまで他人のために何かが出来るのですか?」

 

「何でって…うーん…したいからじゃない?」

 

「打算も何もなく?」

 

「あはは、それを私本人に聞くのは違う気がするけど、うん。

友達だもん、理由はそれで十分じゃない?」

 

「…ネプテューヌちゃんらしいといえばらしいのかしら。」

 

「私はいつでも自分の心に従って動いてるよ。まあ、それが皆の心配の原因になったりするんだけど…でも、その行動で後悔はしないよ。」

 

禍の団に連れてかれた時はどうなることかと思ったけど結果的に良い感じになったし。

結果論といえばそうかもしれないけど、それでいいじゃん?

 

朱乃ちゃんは自分の言葉を聞いて何か思うところがあるのか自分をジッと見つめる。

 

「…そうですね、貴女らしいです。最近だとネプテューヌちゃんがどんどん遠くにいるように感じますわ。」

 

「そんなことないよ~私はいつでも皆と一緒にいるよ?」

 

「分かってますわ。私がそう感じるだけ……ええ、ネプテューヌちゃんになら話そうかしら。」

 

「いいの?」

 

「あまりしたくない話だけど…何となく、ですわ。」

 

「そっか。うん、じゃあ聞いちゃおうかな?」

 

「はい。えー…ほわんほわんほわん…」

 

「えっ、回想!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の家、姫島家は少々特別な家でして…まあ、詳しいことは長くなりますから省きます。

 

私はその姫島家で生まれたのです…堕天使と人の子として。

 

─さっきの堕天使の人と、朱璃って人?

 

はい。

馴れ初めはよく母様から聞かされていたから覚えていますわ。

重傷だった堕天使…バラキエルを助けたことが切欠だったようです。

そこから二人は惹かれあったと。

 

─おお!何だかラブロマンス的な!本当にあるんだね。

 

ええ、私もそのような恋をしてみたいと思っていました。

しかし…五大宗家、姫島からすれば異端な私は邪魔でしかなかったのです。

 

私には姫島としての才覚が無かった。

それだけで私は汚点として扱われた…

 

五大宗家からすれば堕天使は突然現れた敵のような者。

そんな者の血を引く私は一刻も早く消し去りたい娘だったのでしょう。

 

─そんな、で、でも!あの人って護衛の時にもいたし、幹部でしょ?そうそう手出しなんて…

 

ええ、あの人は強い。

そんな強いあの人でも二人と存在できる訳ではありません。

狙うならば、その人がいない時でしょう?

 

私と母はあの人が仕事で留守にしている隙を突かれ、五大宗家からの刺客に襲撃されたのです。

母はその時、私を庇い…

 

あの人が戻ってきた時には母は息絶え、私と父だけとなりました。

 

その時から、私は堕天使を…父を、恨みました。

いえ、この場合は…五大宗家もでしょう。

 

何故、堕天使と人の子なのか。

何故、狙われなければならなかったのか。

何故、母が死ななくてはならなかったのか…

 

多くの疑問を抱いた時にはあの人といることが嫌になった。

 

私はすぐにあの人を拒絶し、家を飛び出したのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…凄惨な過去って言うのかな。

自分じゃ想像できないくらい辛いことがあったんだ。

 

堕天使を恨むのは違う、なんてとてもじゃないけど言えない。

理屈とかじゃなくて…子供が自分の目の前で親を殺されたら、何かを恨んだりするのは当然だと思う。

木場君の時もそう。

周りに振り回されて、自分に何が出来るわけでもないのに振り回されていく。

 

そんなの、朱乃ちゃんにみたいになっても仕方ない。

 

「その後、長い間母から教わった術や雷の力で食いつなぎ追手から逃げながら各地を放浪し、その途中でリアスに出会ったのです。」

 

「それで、悪魔になったんだね。」

 

「ええ。リアス達のお陰で私は追手に怯えずに済んだ…」

 

「お父さんは今でも嫌い?」

 

「…嫌いです。」

 

「…そっか、嫌いなら仕方ないね。」

 

「何か言うかと思いましたわ。」

 

朱乃ちゃんにその通りかもと笑いながら首を横に振る。

 

「本当に嫌いなら私からは何も言わないし、言えないよ。」

 

うん、嫌いなものは嫌い。

当たり前だよね、自分がナスを受け付けないのと同じ。

拒絶するのが一番早い。

 

こう見えて、色々な人生相談は駒王町でしてきてるねぷ子さんだからそういうのは分かってるつもりだよ。

 

「でも、何となく朱乃ちゃんは意地になってると思うよ。」

 

「私が、意地に?そんなこと…!」

 

「私から見てだけど…朱乃ちゃんがお父さんを突っぱねるのはそういうところもあるんじゃないかな。今更拒絶した相手をっていうのはあると思うけど、それだと何も進まないよ。」

 

「っ…私は!」

 

「ねえ、朱乃ちゃん。お父さんとどれくらい話してないの?」

 

「……10年になるかと。」

 

「うん、そっか…朱乃ちゃん。一回お父さんと話してみよう?」

 

「何故そうなったのか聞きたいわね、ネプテューヌちゃん。

言ったわよね?堕天使なんかと話す気は…」

 

「そうやって、お母さんの事でずっと進まないの?」

 

少しキツい言い方かもしれない。

でも、こうしないと朱乃ちゃんは動かないと思う。

自分のその考えに依存しちゃ、何も成長できない。

 

叩かれたりしても仕方無いと思うけど、それでも停滞を選ぶのは…朱乃ちゃんのためにならないよ。

自分の言葉に朱乃ちゃんはぐっと言葉を詰まらせる。

 

10年も話さなかったら、そういう考えが固まるのは仕方無いと思う。でも、しっかりとそこを話した訳じゃないんじゃ?

 

「朱乃ちゃんが逃げる気持ちは分かるよ。でも、朱乃ちゃんのお父さんが朱乃ちゃんを娘として想ってるのに嘘はない。

ちゃんと向き合いたいって、お父さんの方は思ってるんだよ!

だから、朱乃ちゃんも結果がどうなるとしても向き合わないと!」

 

「っ!私が、あの人と…でも…!」

 

「一人で向き合うのが怖いなら事情を知っていて信用できる誰かと一緒に!私じゃなくても、一誠やリアスちゃん!オカ研の皆だって朱乃ちゃんを見捨てないよ!」

 

「…ネプテューヌちゃん…」

 

「お母さんがいなくても、お父さんはいる…お母さんが大好きだった二人がこうしてしっかりと話し合いもせずにお別れは悲しいよ。」

 

「……」

 

朱乃ちゃんはそれっきり黙っちゃった。

 

…うん、あくまで決めるのは朱乃ちゃん。

自分はこうして話した方がいいんじゃないかって提案することしか出来ない。

自分で選ばないと、駄目だからね。

 

…少し考える時間が必要かな。

 

「…家族と話せる時間は大事だと思うからこう言っただけだよ。

朱乃ちゃんが、自分でしっかりと決めてね。」

 

「…ネプテューヌちゃんは。」

 

「私?」

 

「ネプテューヌちゃんは、どうなの?」

 

「えっと…お父さんやお母さんとは─「そちらじゃなくて!」聖書の神様?」

 

「もう既に亡くなっているその方とは話せてないのに…貴女は平気なの?」

 

「うーん…朱乃ちゃんが内緒にしてくれるなら話すけど…」

 

「します。」

 

「そ、即決だね。」

 

まあ、朱乃ちゃんの為になるなら話そうかな?

朱乃ちゃんの隣に座って天界の事を話す。

 

「実は、今日おっちゃん達と天界に行ったんだよね。」

 

「…最初の段階で凄いのですが…」

 

「あはは、まあまあ。そこはほら、主人公的に突然の展開的な?

それで、いーすんや皆のお陰でほんの少しだけ神様に会えたんだ。」

 

「せ、聖書の神に?」

 

「うん。少しだったけど、色々と話したよ。」

 

「その、どうでしたか?」

 

「んー…意外と、怖がりだったのかな?後、自分に責任を感じてたかも。」

 

「神が?」

 

「意外かな?でも、神様も一人の親なんだって…話してて分かったよ。私の事やいーすんの事を心配してくれてたし。

それで、矛盾を抱えてた人なんだって事も分かった。

私に自由でいてほしいけど、人に寄り添っていてほしいって願ってて…私の事を娘って言ってくれたんだ。」

 

神様の事をずっととても凄い人だって考えてたから怖がりな所とか…人っぽいところを知って、同じなんだな~って思ったよね。

朱乃ちゃんもそう思ってたみたいで、意外だって感じ。

 

「神は、感情なんて無いのかとばかり。」

 

「結局皆同じで、色んな事を考えて生きているんだ。

ねえ、朱乃ちゃんのお父さんもさ、朱乃ちゃんの事を娘だって言ってた?」

 

「…そう、ですね。」

 

「一部の酷い人を除いてさ、子供の事を想わない親はいないと私は思うな。」

 

…ヴァーリのお父さんはその一部の人。

でも、ヴァーリのお母さんはヴァーリの事を愛してたもんね。

うん、きっとそうだよ。

朱乃ちゃんのお父さんはしっかりと朱乃ちゃんと向き合いたいと思ってるに違いないよ。

 

「難しいのかもしれない。でも、もう一度だけ信じてあげよう?」

 

「…そうですね。」

 

そう言って、立ち上がる朱乃ちゃん。

深呼吸を一回、二回。

そうして、朱乃ちゃんは自分の方へ振り向く。

 

「少し、意地になってたのは認めます。ですから…ここはそれを無くしてもう一回話してみようと思います。ついてきてくれますか?」

 

いつもの優しい笑みで、一緒に来てって言ってくる朱乃ちゃん。

…うん、よかった。

じゃあ、ここはねぷ子さんももう一踏ん張りかな!

 

「うん、私でいいなら付き添うよ!」

 

「ありがとう、ネプテューヌちゃん。」

 

「よーし!そうと決まれば、一誠といーすんの所に─」

 

「ナニがそうときまれば、なんですか?( `ー´)」

 

「あら、イストワールさん。」

 

「はい、どうもアケノさん。」

 

わー、いーすんだー何で怒ってるんだろうなー(棒)

 

冗談は程々にして、無茶苦茶怒ってない?そんなに怒られる事したかな?

ログ確認したけど…え、特にしてないよ?

 

「わかってませんね?」

 

「う、うん。私、普通に主人公ムーヴしてただけだよ?」

 

「ネプテューヌさん…あなたは、けがにんですよ?」

 

「……あ」

 

「ネ プ テ ュ ー ヌ さ ん ?」

 

「ひいぃ!?」

 

あ、これは説教される…イベント取り逃し!?

サブイベだってこなしてきたねぷ子さんがこんな大事なイベントを取り逃したらトゥルーエンド的な条件達成が出来なくなるかもしれない!

 

な、何とかしないと…

 

内心慌てていると、いーすんがため息をつく。

 

「…おせっきょうはアトでもできます。」

 

「え、じゃ、じゃあ?」

 

「ええ、コンドはムリしないようにナカでカンシさせてもらいます(#・∀・)」

 

「えー…」

 

「い い で す ね ?」

 

「ハイ」

 

いーすんはそう言って自分の中へと入る。

うわぁ、怒ってるよ…自分が悪いんだけど…忘れてた。

怪我人だって思い出したら肩の痛みも思い出してきたよ~…

 

「ふふ、イストワールさんにはネプテューヌちゃんも頭が上がらないようで。」

 

「あ、ははは…」

 

「ネプテューヌちゃんのお姉ちゃん、といったところでしょうか?」

 

「えー?私は長女だよ!?急に姉設定生やされても読者も私も困るよ!」

 

「あら、そうですか?ですがこの章の終わりに人物設定を作ると言ってましたし、そこに生やされる可能性はあるのでは?」

 

「何か途端にメタくなったね!?」

 

「残念ながら、時折メタいのがこのシリーズ…貴女だけの特権ではないということですわ。」

 

「ま、まっさかぁ…」

 

─知らぬは本人ばかりですね。

 

(え、本当なの?ほ、他に誰が!?)

 

─それを知るには3日かかりますよ?

 

(何でこう言う時にポンコツになるのいーすん!)

 

─残念ながら、史書の力全てを使っても3日かかるのです。

 

(うわーん、鬼!悪魔!いーすん!)

 

うー…これは陰謀!作品による陰謀に違いないよ!

 

少し、理不尽さを感じながらも朱乃ちゃんと一緒に一誠達の所に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃ちゃんと一緒に戻ってきた、んだけど…

 

「貴様に娘はやらんぞ!」

 

「何の話!?え、悩み相談みたいな雰囲気からいきなり戦闘に突入するの!?」

 

「喧しい!少し考えれば分かることだった…貴様のような男が朱乃の近くにいるのはそういう目的があるからだろう!

貴様の魂胆は丸分かりだぞ?私に取り入ろうという魂胆だろう?」

 

「待って、ちょっと待って!真面目にシリアスな悩みだなぁと思ってたら打ち明けてた本人がギャグに突入するのは流石におかしい!俺にだって展開の自由は許されてもいいじゃん!」

 

なんか、槍で攻撃してる朱乃ちゃんのお父さんとそれを必死に涙目になりながらも避けてる一誠の姿がそこにあった。

…えっと、どゆこと?

 

「朱乃ちゃん?」

 

「…父が、すいません。」

 

「いやそれはいいんだけど、一誠を助けないと…」

 

「そうですわね。」

 

朱乃ちゃんが申し訳なさそうにしてたけど、切り替えて一誠の前に出る。

光の槍が寸でのところで止まる。

朱乃ちゃんのお父さん…バラキエルは驚いた様子。

 

「あ、朱乃!?」

 

「…取り敢えず、勘違いなのでイッセー君に謝ってもらっても?」

 

「…すまない。」

 

「い、いや、いいんすけど…」

 

朱乃ちゃんの言葉に冷静になったのかバラキエルは素直に謝った。

一誠…頑張ったのに可哀想に。

後で甘えさせてあげようかな。

 

朱乃ちゃんは冷たい顔をしてたけど、また深呼吸を一回してから表情がいつもの優しげなものへ戻る。

 

「ふぅ…私が意地になってました。」

 

「朱乃?」

 

「姫島先輩…?」

 

 

 

「一度、しっかりと話し合いませんか?」

 

 

 

そういって、穏やかな声でバラキエルに提案する朱乃ちゃんに何となく安心感を抱いた。

…多分、これなら大丈夫じゃないかな?

 

まあ、色々とあるから油断はできないけど…

ロキの件もあるし、しっかりしないとね。




一誠「(相談をしていたのにあの展開で)かなり恐怖を感じた。」


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仲良く、楽しくね!

私だけ~の、棚が、ここに、あるのー♪(挨拶)

えー、最初はシスコンドラゴンこと一誠の視点です。


えー、どうも、イッセーこと兵藤一誠です。

最近だとシスコンだのオカンだの言われてるけど、俺が女神化したねぷ姉ちゃんのあの魅惑ボディに誘惑されてないのは健全な弟ポジ

を貫いてるからな。決してエロいっすとか思ってないんだからな。

 

…若干思ってるのは内緒な。

 

んで、さっきねぷ姉ちゃんに姫島先輩の関係者…多分、親父さんだよな、会話内容からして…その人の対応を任されて取り敢えず座りましょうって言ってベンチに座って落ち着く。

 

「姫島先輩と何か話してたようですけど…」

 

「お前に話す義理はない。」

 

「まあ、そうなんすけど…」

 

「…先程の少女は、お前の何だ?」

 

「俺には聞くんすね。」

 

「ぬぐ…」

 

「ハハハ、別に構わないんですけどね!

ねぷ姉ちゃんは俺の姉ですよ。」

 

「ねぷ…となると、あの少女がネプテューヌ、女神パープルハートか。だが、お前は悪魔だろう?」

 

「あー、まあ。俺は単純な内容ですけど、ねぷ姉ちゃんは深い事情があったっていうか…」

 

ねぷ姉ちゃんは信じてくれてるのか俺やアーシアには殆ど教えてくれた。

自分に昔の記憶が無い理由…つまり、昔の戦いの時、とっくに本当のねぷ姉ちゃん…ネプテューヌは死んじまってて、今入ってるのは全く別の魂らしい。

 

だからといって俺の大好きなねぷ姉ちゃんは子供の頃からずっと居てくれたねぷ姉ちゃんだけだ。

強くて、優しくて、頼もしいねぷ姉ちゃんだ。

 

アーシアからしても、同じだと思う。

 

姫島先輩の親父さんはそうか、と言って深くは聞かないでくれたのだった。

 

「そうか。…私はバラキエルだ。」

 

「え、ああ!俺は兵藤一誠です。」

 

「一誠か。なるほど…朱乃とはどういう?」

 

「オカ研の副部長と部員って感じですかね。後は部長の眷属同士といったところですよ。」

 

「そうか…あの子が悪魔になったのは私の責任故、何も言う気はない。いや、まず取り合ってすらくれんのだが。」

 

「親子なんですか?」

 

「…そうだ、私と人である姫島朱璃とのな。朱璃に似てくれてよかったと常々思うよ。俺のような武骨な者にならずにいて安心する。」

 

子を心配する親、か…

やっぱ、俺も話さないとだよな。

踏ん切りがつかないのは寧ろ俺の方だしな。

 

『相棒。』

 

(ドライグ、どうした?)

 

『寧ろ、お前がアクセル全開でないのが丁度いいと俺は思うぞ。』

 

(どーいうことだおい。優柔不断な方がいざとなった時のパワーアップが凄まじいとかそっち方面の事考えてるんじゃないだろうな?)

 

『それもそうではあるが…あの女神とお前が全速前進の姿勢だったらどうなるか分かってるだろう?』

 

(あ、はい。)

 

そっすね。

ねぷ姉ちゃんのブレーキ役になれる人はそんなに居ないんだ。

いーすんも絶対止めれるかって言われたら少し悩むしな。

アーシアは…事後処理的な役かも。

 

お、俺が何とかしねぇと。

ヴァーリの野郎には譲らねぇぞ!

 

『白いのと戦ってくれるのなら構わんが、引き合いに出される女神が哀れだ…』

 

(黙らっしゃい。)

 

ええいこのドラゴン、痛いところ突きおってからに。

俺だってねぷ姉ちゃんをそういうことの引き合いに出したくねぇっての。

けど、絶対に決着はつけてやるからな…!

 

「…何やらやる気に満ちているようだが。」

 

「あ、すんません。ちょっとシスコン覚醒するとこでした。」

 

「シスコン…?まあいい。」

 

「気にしないでください。姫島先輩、怒ってたみたいですけど…親子喧嘩ですか?」

 

「私が悪いのだ。…朱璃と朱乃を守りきれなかった私が。」

 

「…良ければ、相談くらい乗りますよ。」

 

「お前が私の相談に乗って得れる利益などあるまい。」

 

「あー…ねぷ姉ちゃんがうつったかな。放っておけないっていうか。」

 

「…変わり者だな。なら、相談に乗ってもらおうか。」

 

そっから、姫島先輩の過去が分かった。

堕天使と人間との子供で、家特有の才能が無いからって…始末しようだなんて間違ってるぜ。

それが原因で仲の良かった家族がバラバラになるのは、尚更!

綺麗事ばかりが世界じゃないのは分かってるけどよ、それを許容したらねぷ姉ちゃんもだけど俺は俺が嫌になる!

 

「バラキエルさんは姫島先輩と話がしたい、ということか…」

 

「ああ…私の責任とはいえ、ああも避けられてはそれも叶わないがな。」

 

「もし、それが解決するとしたら?」

 

「何?」

 

「今から言うのはもしもの話ですよ。俺らしくないからこういうプレイはねぷ姉ちゃんとかに任せるのが弟なんだけど…」

 

協力プレイらしいからな。

ねぷ姉ちゃんが任せたって言うんだからお膳立ては任せたって事だよな。

ふっ、弟はしっかりと分かってるぜねぷ姉ちゃん!

 

俺は頭が悪いんじゃあない。感情的なだけなんだぜ!

そう、頭悪いんだったら駒王に受かる訳がない!

 

「もしも、ねぷ姉ちゃんが姫島先輩の説得に成功したら、バラキエルさんは先輩と話せる。」

 

「まあ、そうだな。」

 

「そうなったら、バラキエルさんはまず何て言うんだ?」

 

「…すまなかったと言いたい。私があの時任務に向かったばかりに朱璃を失うだけでなく朱乃の心を傷付けた。ならば、私は過去の事を朱乃に謝罪したい。そして…もし許されるのなら親子としての絆を、取り戻したい。」

 

「姫島先輩を娘だって面と向かって言えるんですね?」

 

「当たり前だ!悪魔になろうと、拒絶されようと、あの子は私達の大事な娘だ!」

 

「なら、大丈夫ですよ。」

 

「もしもの話だろう!出来るわけがない。あの子の拒絶はとても強い…仲間とはいえ他人がどうにか出来るわけがない!」

 

頭ごなしに否定、拒絶するのは親子って感じだなぁ…

でも、それで言葉を撤回する一誠さんじゃないぜ。

こうして関わった以上、俺はかーなーりしつこい。

 

否定もそこまでだ、残念だったな(某鋼男)

 

「否定するのは簡単だけど、諦めるのか?」

 

「それはっ…」

 

「仮の話だとしても、そういったことも考えられない奴が、すぐに諦める奴が否定するのは違うだろ!

ねぷ姉ちゃんなら絶対に何とかしてくれる。信じてくれ。」

 

「何故だ、何故そこまでする?無償の奉仕など、ただの自己犠牲に他ならないだろう。」

 

「…俺も、本来ならそういったもん求めますよ。」

 

「ならば…」

 

「けど、こういう仲間の問題解決に見返り求めるのは違う。」

 

バラキエルさんは俺の言葉にしばらく考えるように目を閉じた。

少しして、目を開けて俺をしっかりと見捉える。

 

「……そうか、お前はそういったことの判断が出来るのだな。

…そうだな、お前を信じてみよう。」

 

「ありがとうございます!」

 

「いや、礼を言うべきなのは私だ。

ふっ、お前のようなマトモな男だ、どういった願いで悪魔になった?」

 

ピシリ、と固まる。

 

おいおいおいおい、ここでそれ聞くの?

いやまあ、気になったから聞いたんだと思うよ?

答えられる内容じゃないじゃん!

 

ハーレム王になりたいから悪魔やってますだぞ!?

娘さんはそんな俺の仲間ですってなったらどうなると思う!?

ほう、正直に暴露する気ですか。

死ぬわ俺。

 

『はぁい、相棒?建前やってる?』

 

ドライグの妙な煽り。

まずいぞ、このままだと正直に話すしか…建前を、言おう!

そしたら…

 

「え、えー…俺、悪魔社会に物申したくて~」

 

「嘘は好かんな。」

 

「あはん。」

 

ピシャリと一言。

 

ばれてーら。

本格的にまずい。

助けてぇぇ!!ねぷ姉ちゃぁぁぁん!!!!

 

─頑張って!一誠なら誠心誠意伝えれば平気だよ!

 

お、俺の内なるねぷ姉ちゃん!?

そうだよな、俺の名前の通り、誠意ある対応をすれば…!

 

『相棒、お前…(ドン引き)』

 

ドライグが何でかドン引きしてるけど気にしない!

気にしたら負けだ!

シスコンなら己の内に姉を投影するくらい余裕だ!

 

「はい、俺はハーレム王になりたくて悪魔になりました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしたら、怒られて弁明する機会も失ったんだよな。」

 

「当たり前じゃない?」

 

「かなりキョウフをかんじました((( ;゚Д゚)))」

 

『女神、言ってやれ。相棒はかなり深い沼に沈んでる。』

 

中継変わってネプテューヌだよ!

いやぁ…一誠視点は久しぶりだから切らなかったけど、これは酷い。

え、何?一誠って毎日心の中に自分生やしてるの?

純粋に怖かったんだけど…

 

「一誠…それは、キモイよ…」

 

「ハーレム王が?」

 

「一誠が私を心の中に投影してるのが。」

 

「何でさ…」

 

「いや…私は現実にいるのにそっちにも居るとか引かないのがおかしいっていうか…大人の私が突然空から降ってきました!とかならまだ分かるんだけどね。」

 

『分かったら駄目だろ。』

 

「ヘイゼンとミライのじぶんまたはヘイコウセカイからくるカノウセイをみとめないでください…」

 

「いやほら、ネプテューヌだよ?あり得るって!」

 

次元を越えたりするのは絶対にあり得るよ!

何せ、魂が乗り移る系主人公がここにいるからね!

というか乗り移った結果が自分なんだけどね!!

 

とまあ、こうして一誠の説明を聞いていて、朱乃ちゃんとバラキエルさんは二人で少し気まずそうな雰囲気であっちで座ってる。

そろそろあっちの状況動かさないとね!

 

二人の方へ駆け寄る。

 

「二人とも暗いよー!明るくとは言わないけど、どっちかから話さないと!」

 

「あ、ああ…すまない、この場を設けてくれた女神と彼にはどう礼をすればいいか…」

 

「いいのいいの!」

 

「しかし、それでは私の気が収まらない!」

 

「私もですわ、ネプテューヌちゃん。イッセー君にも迷惑をかけてしまいましたし…」

 

「んー…それならさ!今度、ゲームでもしようよ!」

 

「ゲーム?そんなものでいいのか?」

 

「いつもやっているのでは?」

 

「ううん、誰かとやるゲームって楽しいよ?一人でやるのもそうだけど、いつもと違う人とやるのは新鮮だもん。」

 

「…ゲーム…遊び、か。」

 

「…思えば、昔はよく遊んでくれましたわ。」

 

「ああ、朱璃も…私も、お前と遊ぶ時間が何よりも好きだった。」

 

…うん、何だかいい雰囲気だね。

 

「朱乃、朱璃を守れず…お前を傷付けた。父と呼んでくれとは言わん。だが…すまなかった…!」

 

「…私も、ずっと子供のように頑なに認めなかった。

父様が忙しいことなんて分かってた筈なのに、来てくれなかったからと全部父様のせいだと押し付けて。

…ごめんなさい、父様。」

 

「っ…!」

 

お互いに、謝る。

ずっと、離ればなれだった寂しさもあったのかバラキエルさんと朱乃ちゃんは互いに抱き合って涙を流す。

 

二人の時間にしよう。

そう思って、いーすんと一誠の方へ戻る。

二人ともいい顔だ。

 

「おつかれさまです。(^∇^)」

 

「説得、大変だったろ?」

 

「ううん、ここに来る前の話をしたくらいだよ。」

 

「…先輩も一歩踏み出したんだな。」

 

「とてもおもい、いっぽですよ。」

 

「でも、その一歩が大事なんだよね。踏み出さないと、前に進まないんだよ。当たり前の事だけど、大変だよね。」

 

「ねぷ姉ちゃんはそれをどんどんやるんだから、こっちの身にもなってくれよ。」

 

「主人公ですから!ドヤァ!」

 

「くそ、許せる!」

 

『許すな注意しろ。』

 

あっさり、と思うかもしれないけどこの瞬間まで10年の時間があったと思えば…これくらいあっさりの方がいいよね。

一言一言が本人達には重い筈だから。

 

「よし、ねぷ姉ちゃん!病室に戻ろうぜ。」

 

「はい、フタリともおセッキョウですよ(#^-^)」

 

「覚えてた!?」

 

「あたりまえです!」

 

『甘んじて受け入れるんだな、二人とも。』

 

「ドライグ、テメぇ!」

 

「うわーん!やっぱり鬼、悪魔、いーすん!」

 

「なんといわれようと、コンカイはゆるしませんよ!」

 

うー…今回は逃げちゃ駄目だね、逃げたらいーすんが口効いてくれないかもしれないもん…

一誠と一緒に諦めて、病室へ戻る。

勿論、帰りはおぶってもらう。

 

えっさえっさと戻る途中…

 

「よう、お前ら。」

 

「おっちゃん?」

 

「どうかしたのか、おっさん。」

 

自分達の方へおっちゃんが歩いてきた。

一誠の問いにいや…と言葉を少し濁す。

 

「…姫島の娘の事、ありがとよ。」

 

「アザゼルさん、やはりしっていたのですね?」

 

「ああ、知ってた。…俺がやってやれた事なんてお前らのしてくれたことに比べたら些細なもんだったがよ。」

 

「いいじゃん!ああしてバラキエルさんと朱乃ちゃんは仲直り出来たんだし!何をしてあげられたかじゃなくて、結果どうなったのかだよ。」

 

「お前、お前~…いい奴だなぁ!」

 

「わー!?おぶられてる状態での頭ガシガシは禁止!ねぷ子さんも女の子だからそういうの気にするんだよ!?」

 

「へぇ、意外だな。お前の性格からして無頓着だと思ってたぜ。」

 

「何をぉ!?このねぷ子さんヘアーはわざと短くしていることにお気付きにならない!?」

 

「短くした方が楽だからじゃねえの?」

 

「そんなこと無いよ!短くしてた方が、何て言うか…ねぷ子さんって感じがするし!」

 

「ねぷ姉ちゃ~ん…俺の耳にガンガン響くぜ…」

 

「あ、ごめん。」

 

一誠が目を回してるから静かにする。

 

…そういえば、ロキは大丈夫かなぁ。

フェンリルはどうにかなった…っていうか、アーサー達とどっか行っちゃったけど。

精神汚染って位だからどんどん…

 

「ロキの事心配してんのか?」

 

「分かっちゃった?」

 

「お前の心配事なんて他人ばっかだからな。

安心しろ、悪神だぜ?そういう悪どいもんへの耐性は高いだろ。」

 

「でも、汚染されちゃったよ?」

 

「元々お前用だったんだろ?なら、強めにされても仕方ないさ。

だが、俺とロキを信じな。」

 

「…うん、分かった。」

 

おっちゃんとロキを信じる、か。

うん、だよね。

信じられるだけじゃなくて、自分も信じないとね。

 

一誠にも一人で突っ走るなって言われたし、仲間と頑張らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、病室に寝かされてる…んだけど…

寝れない!

いーすんのお説教も凄かったし…何気に他に迷惑かからないように防音されてたし!

 

だから、病室で窓をボーッと見てるんだけど…

困ったなぁ。

 

「ねむれないのですか?(/0 ̄)」

 

「いーすんは寝てていいよ。今日はごめんね?」

 

「いえ…あまりムリはしないでくださいね。ネプテューヌさんのことをしんぱいしているのはワタシだけではないのですよ?」

 

「うん、ありがと。」

 

「はい。では…おやすみなさい(-_-)zzz」

 

いーすんはそう言って、自分の中に入って休眠モードに入る。

そこは何かロボっぽいんだね~。

こうなったいーすんはちょっとやそっとじゃ起きない。

いやまあ、心の中で必死に呼び掛けると起きてくれるんだけどさ。

 

…お父さんやお母さんにも連絡はしたし、大丈夫。

 

『ねぷ姉ちゃん。俺、決めた!これが終わったらしっかりと伝える。』

 

お昼の時の一誠の言葉を思い出す。

やっとお父さんとお母さんに話す勇気が出たらしい。

うん、一歩踏み出したね。

お姉ちゃん、そういう一誠が大好きだよ。

 

……あーもう、そこで迷う必要ないじゃん!

 

ずっと入ってこないその人へ声をかけることにした。

 

「開いてるから入ったら?」

 

「…寝ないのか?」

 

入ってきたのは、やっぱりというか…ヴァーリだった。

かっこつけて夜に来た感じ?

ねぷ子さんとのコミュニケーションから逃れることはできないよ!

 

ヴァーリはベッドの近くまで来て、椅子に座る。

 

「何だか眠くなくて。」

 

「俺でよければ話し相手になろうか。」

 

「んー…じゃあ、お願い。」

 

そもそも、何のために来たんだろ?

 

「こんな夜遅くに、下手したら私寝てるのに来た理由を聞いてもいい?はっ、まさか夜這い!?」

 

「そういう事をするつもりはないさ。様子を見に来ただけだ。」

 

「で、本当は?」

 

「寝顔が見れたらラッキーだと思った。」

 

「正直でよろしい!」

 

心配してくれるのはいいんだけどね。

ヴァーリは自分の怪我してる肩を見ている。

 

「…大丈夫か?」

 

「派手に動くと痛いだけで普通に過ごす分には平気。

明日はどうか分からないけどね。」

 

「すまない。」

 

「え、何で謝るの?」

 

「守ると言ったのにこの様だ。離反した英雄派の動向を捉えきれなかった。」

 

「それは仕方ないよ。全部出来る人なんてそういないって!

それに、ちゃんと助けに来てくれたじゃん。」

 

「…それはそうだがお前を守りきれなかった。」

 

「じゃあ、ずっと傍にいてくれる?」

 

「…」

 

ヴァーリが黙り込む。

 

ずっと傍にいるなんて出来ないよ。

ヴァーリはまだ、テロリストなんだから。

英雄派は少し特例なんだってサーゼクスさんが言ってた。

自分や自分の周りの一般市民を守る者が居ないから都合のいい英雄派を護衛役にしたんだって。

 

それでも、実際に助かってるから英雄派の皆への感謝の念は絶えない。

 

身体だけ起こして、座ってるヴァーリの頭を撫でる。

 

「ヴァーリがそう言ってくれるのは凄く嬉しいよ、嘘じゃないよ?でも、強いヴァーリにも守れる限界はあるんだよ?」

 

「…そうだな。」

 

そう言って、ヴァーリは撫でる自分の腕を掴む。

それで、顔をズイッとこちらに近付けてくる。

ちょっとビックリする。

 

「ネプテューヌ…それはお前も同じことだろう。」

 

「ふふん、私は─」

 

「お前は、一人だ。お前しかいないんだ。」

 

強がりを言おうとして、先手を取られる。

どうして、そんな酷く辛そうな顔をするの?

自分は、ただ皆と楽しくいたいから頑張ってるんだけど…

 

「今回は肩だったからよかった。だが…もし、心臓だったら?」

 

「でも、結果としては無事だったよ?」

 

「結果論だ、そうなる前のもしもも想定しろ。」

 

強い口調。

それだけ心配してくれてるのが分かる程、少し危機迫った感じ。

確かに、もしあの速さで刀が胸に来てたら死んじゃってたかもしれない。

 

危機管理が足りなかったと言えば、それまで。

わざわざこうやってもしもの話も交えて気を付けるように言うのは一重に自分を心配してくれてるから。

顔が離れる。

ちょっと安心する。

 

「…ヴァーリは、さ。私が死んじゃったら悲しい?」

 

「…どう、だろうな。考えたこともない。」

 

「じゃあ、考えてみて?」

 

「…苦しいな。」

 

「そっか。」

 

パッ、と腕を離してくれる。

苦々しい顔で、想像できちゃったのかもしれない。

 

自分らしくないけど、自分はいつそういうことがあってもおかしくない立ち位置だと把握してる。

けど、見過ごせないから動く。

 

「私はこういう性格だから危ないって分かってても動いちゃうんだ。」

 

「知ってる。」

 

「で、皆に心配かけちゃうけど…自分がこうじゃないとって思った結果が欲しくてもっと無茶をしちゃう。」

 

「そうだな。」

 

「…本当は戦いたくないよ。こうやって話して、お互いを理解して、解決したいんだ。」

 

「…ああ。」

 

「それが出来るっていうなら、私はこの力だって捨てれる!

神様がせっかく私を想ってくれた力だけど、それが邪魔なら捨てるよ。…でも、それじゃ駄目だから頑張るんだよ。」

 

「仲間を頼っても、無茶をするのか?」

 

「ごめんね。」

 

「…ネプテューヌ。」

 

「うん、何?」

 

「好きだ。」

 

「知ってるよ。」

 

「お前が消えるのは、恐らく俺には耐えられない。」

 

「…そうかな、皆強いから、平気だよ。」

 

「平気じゃない。」

 

…うん、何となく分かるよ。

だから、自分は立ち上がれる。

そうなりたくないし、出来ればそこに自分もいたい。

 

「俺は、頼りないか?」

 

「ううん、頼もしいよ。

…多分、誰よりもそういう面で信頼してるよ。」

 

「なら…もっと頼ってくれ。」

 

「…うん。」

 

ヴァーリはヴァーリのエゴがある。

自分が好きだから、こうして守ってくれてる。

多分、そうじゃなかったら…ここまで言ってくれてない。

 

でも、ここまで自分に言ってくれるのはヴァーリ位しかいないんだよね。

ちょっと…ううん、かなり嬉しいかも。

こう、純粋に好意とかぶつけられるとどうもね。

 

「うーん…ねえ!ちょっと顔こっち近付けて!」

 

「なんだ…これでいいか?」

 

疑いもしないで、顔が近付く。

少し見つめる。

うーん整ってらっしゃる。

こんなイケメンに好意ぶつけられる自分ってもしかしなくても超絶美少女の類いでは?ねぷ子さんだからね。

 

しめしめと思う。

 

「うんうん、じゃあサービスね!」

 

「何を─」

 

 

頬に、唇を当てる。

 

 

「──」

 

「ねぷ子さんからのお礼っていうか!そんな感じ?」

 

「…」

 

「あれれ、ちょっと反応よろしくないよ?」

 

固まってるし。

何さーちょっと仕返しのつもりでやったのに反応がこれじゃちょっとつまんないよ?

 

ヴァーリがスッと立ち上がる。

 

「あ、あれ?」

 

「…帰る。」

 

「あれ、怒らせちゃった?」

 

「いや…もういい時間だ、寝るといい。」

 

「うーん…分かったよ。」

 

何か変だし、聞かないでおこう。

うん、それがいい。

ヴァーリは少し早足で部屋から出る。

 

いーすんも寝てるし、また一人。

 

うーん、勢いとはいえ頬にしちゃった。

まあでも、これも仕返しだしね。

ねぷ子さんも攻めれるんだよと教えてあげないとね!

 

「…えへへ。」

 

ただ、自然と顔が緩んじゃうのは…うん、仕様だよ。



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えっと、仲良くね?喧嘩よくないよ?

恋構想 熱暴走!(挨拶)

一誠君がシスコンパワーじゃなくておっぱいパワーで強くなってない?おうじゃあ何でそうなってるか教えてやるよ!



─朝ですよ、ネプテューヌさん。

 

「ねぷ~…後、二時間…」

 

─駄目ですよ、もしロキ様が来たらどうするんですか!

 

「んー…?ロキ…?…ああぁぁ!!」

 

いーすんに言われて、一気に目が覚める。

そうだよ、今日もばっちり警戒しないといけないんだった!

昨日のヴァーリとの話で浮かれてたりしたの?馬鹿なの?

 

「おはよ、いーすん!」

 

─はい、おはようございます。

 

ということで、何とか早めに起床したネプテューヌだよ!

何となく、肩の調子は良さそうだね。

ベッドから起きて、そういえばと思う。

 

冥界で一日過ごしたの初めてじゃない?

いやぁ、どうしよっか~…病室なんだけどさ。

一日安静の為だけに使わせてもらったの今思うと申し訳無いよね。

まあ、切り替えていこう。

 

取り敢えず着替える。

 

病人らしく寝る時は病院で用意してくれたのを着てたんだけど…

うーん、いつものパジャマが恋しかったよね!

 

着替え終わった後、コンコンとノックされる。

多分、曹操達かな?

 

「はーい!」

 

「はは、元気そうじゃないか?」

 

「うん、お陰さまでね!おはよう、曹操!」

 

「ああ、おはよう。気持ちのいい朝、とは言えないがな。

肩の調子はどうだ?」

 

「うん、好調だよ!」

 

「無理だけはするなよ。…ああそれと、朗報だ。」

 

「ねぷ?」

 

「ヴァーリがお前の護衛になるそうだぞ?」

 

「えっ、急に?」

 

困った様子で曹操は頷く。

 

「護衛は俺達がいると言ったんだが、それでもと頼まれてな…

まあ、彼程の実力者がいれば万が一もないだろう。」

 

「そりゃ、そうだけど…」

 

「どうかしたのか?」

 

昨日の事、気にしてるのかな。

そうだとしたら、気負わなくていいのに。

うーん…でも、心強いのは事実だし…

 

『じゃあ、ずっと傍にいてくれる?』

 

なんて言ったのも自分だし…

あれ、これよく考えなくても告白っぽくね…?

そういうつもりは無かったんだよ?うん、ヴァーリもそう思ってる筈だよ!

 

「ううん…悩んでも仕方ないよね!」

 

「よく分からんが…歯磨きは?」

 

「あ、まだだね。」

 

「起きて着替えたばかりだったか。」

 

曹操はそう言って部屋から出る。

あれかな、準備が終わるまで待つから早くしろって事かな。

だんだん、曹操の行動も余裕が出てきたよね。

なんていうかな…振る舞いを理解してきたっていうのかな?

取り敢えず、皆との距離を測ってたのは間違いないよね。

 

取り敢えず、諸々の支度をして…お腹空いたね!

 

「はい、終わり!お腹空いた!」

 

「正直でよろしい。グレモリー達のところに向かおうか。そこで全員で朝食だ。」

 

「そうなの?」

 

「戻ってきたオーディンから話があるそうだからな。」

 

「帰ってきたんだ!じゃあ、急ごっか!」

 

善は急げ!

部屋を出て、リアスちゃん達の所へ曹操の案内で向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!」

 

「ええ、おはよう。」

 

「ふむ、来たようじゃな、女神よ。」

 

「オーディン、おかえり!」

 

「うむ。」

 

取り敢えず、席に着く。

リアスちゃん達は勿論、オーディンとロスヴァイセもいるね。

ジークとジャンヌも帰らずにいてくれたみたい。

 

「えっと、話って?」

 

「うむ…お主か赤龍帝に頼もうと思っての。

ミョルニルという物を知っておるか?」

 

「ミョルニル?なんか変な名前だね?」

 

「ネプテューヌさん、ミョルニルとはホクオウのカミ、トールのブキであり、カミのいかづちをやどしているとされるハンマーです。」

 

「凄いハンマーって事だね!」

 

「概ねそれでよい。そして、そのレプリカを持ってきたのじゃがな。」

 

「胃が…!」

 

「リアスさん!?」

 

「お労しや、部長…」

 

リアスちゃんが何か、お腹を押さえてるけど…平気?

一体誰がそんなになるまでストレスを!?

自分ではないと思うんだけど。

 

朝御飯はパン!

お米派の自分に挑戦かね?

んー許せる!

 

「ふぉほへふひははふぁんふぁっへ?」

 

「ネプテューヌちゃん、食べながら喋りませんの。お行儀が悪いですよ?」

 

「ふぁーい。もぐもぐ…それで、レプリカがどうしたの?」

 

「お主か赤龍帝に貸そうと思っての。」

 

「え、俺ぇ?」

 

「あくまで貸すだけじゃ。扱えるかは…さてのぅ。」

 

「一誠に任せるね!」

 

「何で?え、神の武器ならねぷ姉ちゃんが使えよ!」

 

「え、だって…私ってば刀とかならいけるけどハンマーはちょっと使うにしてもロキと戦えないかなって。」

 

「となると、赤龍帝じゃが、どうかね?」

 

「いやいや、俺に出来るわけ無いでしょ!姉ちゃんならまだしも!無理無理無理!嫌ですよ!俺は死ぬのはごめんです!」

 

「ふむ…そうか。」

 

少しがっかりした様子でオーディンは黙る。

その時、リアスちゃんが大きなため息をついた。

まるで情けないとでも言うように。

 

「イッセー、ネプテューヌの期待を裏切るのね。」

 

「…部長、何と言おうが俺は持ちませんよ!俺は素手で戦ってこそなんですからね!」

 

「残念だわ、私の大切な兵士…それも赤龍帝という者でありながら、その体たらく。それじゃハーレムなんて夢のまた夢ね。」

 

「挑発のつもりですか?でもね、そういうのを無視してでも俺は拳で戦う!」

 

ん、この流れは?

 

「…イッセー─」

 

 

 

「─ハンマー持てや。」

 

やってやろうじゃねぇかこの野郎!!

 

で、出たー!

相手を煽って意思を曲げる戦術!

リアスちゃん、いつの間にあんな方法を…!

 

「リアスちゃん…恐ろしい子…!」

 

「これが人間界で手にいれた15の技術…その一つよ」

 

「まさか、これと同等のが…!?」

 

「部長…流石だぜ…」

 

「いや、間違った成長だからね?」

 

木場君のツッコミはその通りなんだけどそうだと思わせる凄みがあったッ!!

これは…謎の進化を遂げる!?

 

「では、赤龍帝よ。これが持てるかの?」

 

「やってやんよ!まあ見てな…この一誠さんにも主人公補正が働くという事を教えてやるよ!ねぷ姉ちゃん、ご照覧あれぇ!」

 

「ネプテューヌさん、イッセーさんのシスコンが…!」

 

「あーちゃん…でも好きでしょ?」

 

「う、それは、はい…」

 

「うんうん、頑張ってね。」

 

一誠がハンマーを握って、持ち上げ…

 

持ち上げ…

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!ドライグゥ!!禁手化だ!」

 

『いや待て。』

 

禁手をしようとして、ドライグが止める。

一誠は少しイラついた様子でドライグと会話を始める。

 

「あ?ねぷ姉ちゃん見てんだぞ!?かっこわりぃままでいられっか!」

 

『黙れシスコン。いいか?これはどうも相棒の心を試す物だ。

要は、相棒は心が汚いから─』

 

「つまり俺の綺麗な部分をめっちゃ見せればいいんだな?」

 

『そうだが?お前に出来るか?胸ばかりのおま─ヒェッ』

 

え、何かドライグがおぞましい物を見たような声を出したけど?

何か一誠が真剣な様子でミョルニルを握ってるけど、そんな声出す要素あるの?

 

『相棒、やめろ!お前の思考は俺にも流れてくるんだぞ!

おい、やめ、やめろぉぉお!!怖い!俺が恐怖するだと!?

女神が!女神が一人、二人、三人、四人、五人…!うぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

「え、一体何が起こってるの?」

 

「…ああ、しばらく居なかったからイッセーがどうなったのか知らないのよね。」

 

「え、どういうこと!?」

 

オカ研の皆がまたかぁみたいな顔してるけど、もしかして自分が居ない間に今みたいな状況あったの?

 

「イッセーは…貴女への憧れとか何やらを全部混ぜ込んだシスコンパワーを手に入れたのよ。」

 

「え、ええ…ついにシスコンがそこまで天元突破したの?」

 

「そうよ。」

 

「イッセーさん…わりとなんでもありですね( ;-`д´-)」

 

その一誠はというと…

 

「神の武器だか何だか知らねぇけど俺にとっての神はねぷ姉ちゃんだけだし何ならねぷ姉ちゃんは俺の姉だしねぷ姉ちゃんよりすげぇのなんていねぇし主人公な姉を得た俺は一番の幸せ者では?ぶっちゃけ胸と同じかそれ以上に好きなんだよ。」

 

ついに思考だけでなく言葉にも出てきたよ…?

え、ちょっと弟が怖い。

いや、凄いといえば凄いんだけど…お、重い。

 

そうこうしていたら、ミョルニルに反応が!

 

どんどん今までの重さが嘘のように一誠がミョルニルを持ち上げていく。

 

「分かったら俺に従ってねぷ姉ちゃんの期待に応えさせろ。」

 

「お、おお…!?」

 

オーディンが驚くのも無理無いと思うけど…

まさか、本当に持ち上がるとは…!

無理矢理従えた感ありそうだけど…?

オーディンはミョルニルを持ち上げた一誠に近付いて観察する。

 

「ふむ…なんと…」

 

「ねぷ姉ちゃん!俺、やったよ!」

 

「あ、あはは…頑張ったね、一誠!」

 

「あー^^もうこれで五年生きれる。」

 

「…キモイです、先輩。」

 

「なるほど、姉への愛が神の武器を上回った…ということかの。

諦めたようにお主へ多少落ちたものの神の雷は使えるようじゃ。」

 

「流石よ、イッセー。」

 

「ありがとうございます!ハッハー!ドライグ、見たか!?」

 

『メガミ、コワイ。』

 

「ド、ドライグぅぅぅ!?どうしよう!?ドライグが壊れちゃったよ!?」

 

「かのウェルシュ・ドラゴンがああまでなるなんて…イッセーさん、なんとおそろしい…((((;゜Д゜)))」

 

「ネプテューヌさん…いつもの事なんです…」

 

「えっ」

 

「…毎度、強くなろうとなる時に先輩はああやってシスコン覚醒をしていくので間近にいるドライグさんはトラウマが出来てしまったようです。」

 

それほんと?

ドライグ…哀れなり。

一誠が胸だけに一途ならこうはならずに…なってたね。

 

トラウマが自分っていうのも何だかなぁ…

 

ちなみに、英雄派の三人はというと…

 

「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるわ。吐きそう。」

 

「僕もあんな感じでグラムとの相性を解消したいなぁ…」

 

「なるほど…想いが力になるのとほぼ同じベクトルか…神の武器が計ったのは兵藤一誠の精神であるのならそれを認めさせる、否、服従させる程の何かを見せればいいということか…」

 

ジャンヌはあまりの気持ち悪さにトイレに。

ジークは遠い目をして、自分との相性がよろしくない魔剣の事を愚痴る。

曹操は割と真剣に今のシーンを考察して、今後の糧としようとしてる。

 

三者三様っていうか…一人だけしか現実を直視してない!?

曹操、あれ単に一誠が気持ち悪くなってただけだよ!

 

「何にせよ、これでロキを助ける一手をゲットだね!」

 

「そういえば、ヴァーリさんは?」

 

「は?」

 

「一誠はちょっと静かにね!」

 

「……おう。」

 

何でそんな嫉妬とか憎しみとか何やらない交ぜにしたような顔してるの?

もう、仕方無いなぁ…

仕方無く、一誠の頭を優しく撫でる。

 

「一誠は嫌なの?」

 

「アイツはねぷ姉ちゃんを浚って、惚れただのなんだのほざきやがった。俺は嫌いだ!」

 

「うーん、でも優しいのは分かるでしょ?」

 

「…だからって。」

 

「平気平気、何かする気ならもうされてるって!」

 

「ぐぬぬぬ……分かったよ!で、何でヴァーリの話になったんだよ!」

 

「ああ、俺から話そう。」

 

曹操が手を挙げて、皆の視線を集める。

 

「彼から俺に接触があってな。自分にも護衛をさせて欲しいと頼まれた。俺達も同じとはいえテロリスト…ではあるが、こちらとしても不確定要素であるロキを絶対に鎮圧…ネプテューヌ風に言うのであれば助けられる確率が高まるからという理由で勝手ながら承諾した。」

 

「裏切らない保証は?」

 

「無い。」

 

「断言したわね。」

 

「感情論のような物だが、彼が俺達…というよりネプテューヌを裏切る線は限り無くないだろう。」

 

「好かれておるのう、女神よ。」

 

「あ、はは…」

 

「…好きにすればいいじゃねぇか!俺は認めねぇ。」

 

「あ、イッセー!」

 

一誠は(ちゃっかり朝御飯は食べ終えて)席を立ってリアスちゃんの制止も聞かずにどっかに行く。

うーん…仕方無いとは言っても…

一誠の気持ちも分かるんだ。

 

自分を心配して反発してくれてるんだろうし…そりゃ嫉妬とかも混じってるかもだけどさ。

 

…自分が言っても変わらない部分だと思う。

 

「全く…あの子は…」

 

「イッセーさん…」

 

「心配ですぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…!」

 

皆のヴァーリへの強さの信頼が嫌でも分かっちまった。

だから嫌なんだ!

醜い嫉妬だ、そんなことは分かってる。

 

ねぷ姉ちゃんを守れるのはヴァーリや曹操の方が適任だって言うのは分かってる!!

でも、それでも…

守りたいって願った俺が簡単に引き下がってたまるか…俺は、ずっと姉ちゃんの背中を見て育ってきたんだ。

 

姉ちゃんみたいにはなれなくても強くなって誰かを守りたいって願ったんだ…!

 

館の外に出て、八つ当たりをしてしまった事と馬鹿な自分に嫌気が差す。

ねぷ姉ちゃんはそんな俺を見捨てたりしない。

誰よりも優しいからな…俺なら俺を見捨ててる。

 

『相棒。』

 

「何だよ…」

 

『劣等感、か。誰しも持つ悪感情だな。』

 

「うっせぇ!」

 

『…なあ、相棒。お前は白いのが気にくわないのか?』

 

「ああ気に食わないね。アイツは急に現れたと思ったらねぷ姉ちゃんは浚うし、好きだとか宣うし!どんどん距離を詰めてきやがる!強いし、頭もいいし、想いも強い…!」

 

『…』

 

「俺が、惨めに見えてくる位には、アイツは強いんだ…」

 

『ならばどうする。おめおめと、女神の隣にいることを許すのか?相棒自身が欲した場所だろう。』

 

「分かってる!」

 

だけど、どうしようもない差って奴はあるんだよ、ドライグ。

俺がいくら変なパワーアップをしようが、アイツはそれよりも上なんだ。

強くなるのに貪欲な奴だってのは分かる。

姉ちゃんへの想いも本物だ。

俺が言うんだから間違いない。

でもそれを譲ったらおしまいだろうが…!

 

男の子には意地ってのがあるんだ。

どうしても譲っちゃいけない一線が俺にだってある。

 

あの野郎はそれを軽々と踏み越えていきやがる。

 

「…俺は、強くならなきゃいけないんだ。」

 

『ならば?』

 

「…あの人の隣に立つのは、俺だ。誰よりも姉ちゃんの強さを、弱さを、優しさを、悔しさを、願いを知ってるのは俺だ!

俺が姉ちゃんの事を一番分かってるんだ!その場所は、俺の場所だ…!」

 

ずっと抱いてた憧れを、ぽっと出の宿敵ポジションの男におめおめと奪われる?

嫌だ、嫌だ!!

俺の憧れは、絶対にお前にだけは渡さねぇ…!

 

お前みたいな、戦いに全部を捧げるような男には、絶対に渡さねぇ…

 

「─随分と、荒れているな?」

 

目を見開く。

聞きたくもない声、けど聞かないといけない声。

間違いなくアイツだ。

 

俺は顔を上げてソイツを見る。

 

ヴァーリ、ヴァーリ・ルシファー…!

 

「ヴァーリ…!!」

 

「ライバル君、おはよう。」

 

「おはようクソッタレ、顔も見たくねぇのに朝に見るなんて俺の運勢は最下位か?」

 

「なるほど、嫌われてるな?」

 

『…当たり前だ、ヴァーリ。』

 

「アルビオン、ここでは喋るのか?」

 

『ここで喋っておかないと出番もなさそうだからな。』

 

ヴァーリの他に声が。

そうか、それがアルビオンか。

ドライグのライバル。

白龍皇。

 

「それで、俺は何故君にそこまで嫌われているのか。」

 

「分からねぇのか?なら教えてやる…テメェが姉ちゃんの隣を御所望だからだ。」

 

「なんだ、つまりは嫉妬か?」

 

「見苦しいと思うならそう思えよ。けどな、俺はお前を絶対に許容しねぇ。俺が、そこに立つ。」

 

「既に弟であるお前(・・)がまだ欲するか。ネプテューヌも大変だな?」

 

「黙れよ塵屑。俺は、お前を、認めない。」

 

「なら、こう返そう。彼女の隣は俺が貰う。」

 

『ヴァーリ、煽るな。』

 

『相棒、頭を冷やせ。それはもう嫉妬ではなく憎悪だぞ。

こんなところでアレになってくれるな。』

 

アレってのがよく分からない。

だけど良くねぇってのは分かる。

ドライグに言われて、落ち着く。

ダメだ、こいつを見るとどうしても反発する。

 

いや、単語を聞くだけで、か。

 

「…護衛の後、勝負だ。」

 

「面白い、会談の時よりも数段強くなったようだ。

俺としても、一度くらい決着は着けたいと思っていた。

受けて立とう。」

 

「その余裕面、ぶっ壊すのが楽しみだ。」

 

「俺はお前との戦いを楽しみにしてるよ。だが、その前に…」

 

「「ロキを助ける。」」

 

「…チッ、それが終わったらお前をぶっ倒す。」

 

「そうなるといいが。生憎、加減はしないぞ。」

 

「したら倒した後に何発か殴るぞ。」

 

絶対にぶっ倒してやる。

その為にもねぷ姉ちゃんの為に、何より自分の為にロキを助ける。

じゃないとヴァーリを殴れないからな。

 

ヴァーリは何処かへ歩いていった。

黒歌達に合流か?

まあいいや、俺も戻ろう。

謝んないと…

 

ヴァーリ。

お前みたいな男に…日常が好きな姉ちゃんは、渡さない。




シスコンを拗らせた一誠はねぷ子最優先。
まず思考にねぷ子が出るくらいにはお姉ちゃん子。
ねぷ子的にはまだまだ姉に甘えてくる可愛い弟。
ドライグからすると、『こいつ女神が姉じゃなかったら襲ってたんじゃ?』レベルと思われてる。

一誠「解せぬ」
ドライグ『自業自得だ』
乳神「私は?」
一誠「要らない」


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助けて、思いを繋いで、その先へ行こうよ!

I LOVE NEP!(挨拶)

北欧編も終わりが近づいてきましたよ!


必要なのは以下の三つ。

遺伝子、核、そして、安定させうる力。

かの者は実に協力的だった。

顔すら見せぬ癖に技術には貪欲だ。

 

何でも構わない。

あちらに何の利があろうとも構わない。

利用すべき同志もいない今、無駄に貪欲な者の方が信用できる。

 

役立たずは役立たずとして消える運命ではあったが…

要は使いようだ。

役に立つようにその場だけ、こちらにだけ利益をもたらす駒にすればいいだけの事。

 

これによって遺伝子は手にいれた。

まあ、上質とは言いがたいが。

 

感情の渦が力となることは既に確認済み。

力に関しては現状を見れば幾らでも隙はある。

選り取り見取りだ。

 

問題は核だが…さて。

こちらの思い通りに動いてくれるといいが?

祈ろうではないか、ハハ。

 

既に戦いの幕は上がった。

互いに平穏無事という事はあり得まい。

魔王一派…力のある四人は確かに強い。

だが、強いだけに過ぎない。

奴等には狡猾さが足りぬ、泥を啜る覚悟が足りぬ、何より誇りが足りぬ。

誇りなくして魔王は名乗れない、名乗らせない。

 

学ばせてもらったとも、女神。

お前の存在が特異点のようなものであり、お前の行動は(ネビロス)であっても予測しきれぬ物だろう。

 

故にこそ私はお前さえも利用して見せよう。

お前という超次元の存在さえも零にしてみせる。

最初は私の勝ちだ。

次の一手はどちらが制すかな。

楽しみで堪らない。

憎悪だけが我が身にあると思っていたが…なるほど、こうして自分を俯瞰するというのはとても重要だ。

 

お前の手札に何がある?見え透いた手札で切れるカードにジョーカー足り得る物はあるか?

あるとすれば、私もまたその札を出すだけの事。

 

ならば…後は札の価値が勝敗を決めるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきた一誠は少しスッキリした様子だった。

でも…何だろうね、ちょっと怖さが残ってるような…シスコンとかじゃなくて…うーん?

 

一誠の事だから大丈夫、だよね?

弟を信じるよ。

 

今はいつ襲撃が来てもいいように皆でなるべく被害の出ない場所にいる。

ロキが来るにしても、一人では来ない筈…

フェンリルが居なくても、別の何かが来るかも。

 

ただ、神殺しの牙っていうのが無いのは安心だよね。

オーディン曰く、神に該当する者なら例外無く殺されるとか。

自分、あの場にいなくてよかったっぽいね…

 

正直、この場にオーディンと魔王のセラフォルーさんがいるなら来るって言ってたけど…わざわざ罠だって分かってるのに来るのかなぁ…?

 

疑ってる訳じゃないんだけど、ロキだって賢い筈だし…

 

そうやって待ってる訳で…

 

「うーん…」

 

「やはり不安か?」

 

「あれ、ゼノヴィア?どうしたの?」

 

「コミュニケーションというやつだ。私もわざわざ来るのかと疑問には思っている。」

 

「そうだよね…」

 

「だが、今のロキは精神汚染の術をくらっているのだろう?」

 

「うん。」

 

「もしかすれば…戦力を用意して突っ込んでくるかもしれないな。」

 

「…」

 

「朝食の時の元気はどうした?お前らしくもない。」

 

「なんていうかさ、儘ならないよね。」

 

「そんなものだ。私は主の死も知らずに主の為にと剣を振るってきた…だが、今や悪魔だ。なるようになるしかない、というやつだよ。」

 

「そうなのかな。」

 

「結局、何かを持っていても別の何かに振り回される。

教会の戦士として生きていた私が学んだのはそれだ。

力が強くても、頭が良くても、万能などある筈もない。

万能を目指しても万能には辿り着けない。」

 

「うーん、難しいね。」

 

「そうだな、難しい言葉を私は珍しく使ってるな。

分かりやすく言うと、Lv120を目指しても限界値のせいでLv100までしかいけない。」

 

「おお、分かりやすい!」

 

「だろう?」

 

ゼノヴィア…そういう難しい台詞言えたんだね…

素直に脳筋極めてると思ってたからごめん…

にしても、ゼノヴィアから話しかけられたことはあんまりないから新鮮だね。

 

これはもしかして…好感度がレベルアップしたと見た!

 

「ネプテューヌ…ロキを救えると思うか?」

 

「救うよ。」

 

「どうやってだ?」

 

「どうやっても、私達で助けよう?」

 

「…お前は苦労する道を戸惑い無く選ぶな。」

 

「それがネプテューヌちゃんですもの。」

 

「ねぷっ!?び、吃驚した!朱乃ちゃん!?」

 

「はい、朱乃ちゃんですよ。」

 

背後から声が聞こえたと思ったら意外と近くに居たようで、朱乃ちゃんに驚いた。

ちなみに、ゼノヴィアもそうっぽい。

 

「気配もしなかったが…」

 

「うふふ、淑女の嗜みですわ。」

 

「淑女…なるほど、戦士ということか。」

 

「違うよ?」

 

「違うのか。」

 

「え、急にキャラ戻るの?」

 

「何の事だ。」

 

て、天然だ!?

リアスちゃんの胃がキリキリ痛む原因は自分だけじゃなかったんだね!

あーちゃんと木場君が癒しってぼやいてたけど、そういうことなんだね…

ギャー君もあれだもんね…

 

「ネプテューヌちゃん、あの後父様と仲直りが出来ました。

ありがとうございます。」

 

「ううん、私はただ背中を押しただけだよ。

あの時、一歩踏み出したのは朱乃ちゃん自身なんだから、お礼なんていいよ。一誠には言ってあげてね?」

 

「それはもちろん。ですが…貴女も私のお礼を受けとるべきなのよ?背中を押すことは、とても大変なこと…全部とは言わないけど、その大変さは分かってるつもり。だから、自分はいい、なんて言っちゃダメよ?」

 

「う、うん…分かった。」

 

「よろしい。」

 

何だか、朱乃ちゃんしっかりしてるね。

より、って付けるのが正しいのかな?

多分、バラキエルさんと仲直りしたから心に余裕が出来たのかもね。

 

「ちょっとオーディンの所、行ってくるね。」

 

「はい、私はお礼が言いたかっただけですので。」

 

「私も話がしたかっただけだ。行ってくるといい。」

 

「ありがと、頑張ろうね!」

 

「ああ。」「はい。」

 

話を終わりにして、オーディンの方へ向かう。

 

オーディンはロスヴァイセの近くに少し険しい表情で立っていた。

 

「オーディン。」

 

「む?おお、ネプテューヌか。」

 

「何だか、怖い顔してたよ?」

 

「むぅ、すまぬな。」

 

「ううん。…ロキの事、心配?」

 

「そうじゃな、その通りじゃ。…奴は悪神じゃが、絶対悪ではない。

必要悪でしかないのじゃ。友ではないが、敵かと聞かれれば少し考える…そのような奴じゃ。」

 

「じゃあ、助けないとね。」

 

「うむ。…フェンリルが居ないとはいえ、まだ奴には多くの術と戦力はある筈。油断はするなよ。」

 

「大丈夫!仲間がいるもん!」

 

「ハハハ、その通りじゃな。ところで、白龍皇はどうした?」

 

「ヴァーリ?んー…どこいったんだろうね?いっつも神出鬼没だから分かんないや!」

 

「そうか…」

 

ヴァーリ、本当に来るよね?

こうも遅いと何かあったのかなって心配になる。

後、黒歌もいないし…

黒歌もふらっと現れてはふらっと消えるから気にしてもしょうがないけどさ。

 

「あのさ、オーディン──」

 

 

 

「─何だ、悪魔どもがいると思えば魔王と女神、オーディンまでいるではないか!」

 

 

 

「っ、ロキ!」

 

前回と全く同じ登場の仕方。

でも、前回と違うのは…

 

ロキの側に2体のフェンリルに良く似た、でもフェンリル程の大きさはない狼。

そして、ドラゴンの頭、蛇の胴体…一体どれぐらい大きいのか。

 

巨大なドラゴンも共に転移してきた。

 

「ミドガルズオルムか…」

 

「量産型だがな。本体は怠惰の限りを尽くしている。だが、侮れば貴様らの五体は無事では済まんぞ。」

 

「フェンリルの子狼…スコルとハティですか。

ネプテューヌさん、あの二体も神殺しを継承しています。」

 

「うむ、お主はロキと相対せよ。」

 

「オーディンは?」

 

「そうじゃった。では、儂は年寄りらしく逃げるかのう。」

 

オーディンはそう言ってスタコラサッサと何処かへ行っちゃった。

でも…

 

「間に合ったか。」

 

「ヴァーリ!」

 

「すまん、少し情報を漁っていた。…やはり子狼とミドガルズオルムか。」

 

「ミドガルズオルムは量産型だって。」

 

「なるほど、本体ならば考えものだったが量産型ならば幾らか力は落ちてるだろうな。」

 

ヴァーリが入れ替わるように自分のところに来た。

良かった~…情報を漁ってたってことはロキの事かな?

 

あ、一誠達もこっちに来た。

 

「ねぷ姉ちゃん、あのデッカイ蛇は俺に任せてくれ!」

 

「大丈夫?」

 

「おう、ドラゴン相手なら何とかしてみせるぜ!」

 

「それなら、僕も行こう。」

 

「ジーク…そっか、グラム!」

 

「北欧の魔剣が北欧のドラゴンを滅ぼすのは当然だろう?」

 

「うん!一誠、ジーク…頑張ってね!」

 

「おう、やってやんよ!」

 

「君は君のやりたいことをすればいい、僕たちもそうする。」

 

魔剣グラム…ジークのとっておきのようだけど、ジークの神器は龍の手だから相性が良くない。

でも、ジークはそれでもグラムを頑張って扱おうとしてる。

 

一誠もミカエルさんからアスカロンっていう聖剣を貰ったらしい。

何か籠手に収納されてるらしいから、普段は見ないんだけどね。

 

うん、二人なら大丈夫だよね。

 

「なら、あの狼は私かしら。」

 

「速いだろうし、僕もかな。」

 

「あら、二体いるんですもの、私と父様も参加しますわ。」

 

「ああ、獣狩りは経験がある。任せて貰おう。」

 

バラキエルさん、ジャンヌ、木場君、朱乃ちゃんがスコルとハティの相手をするらしいけど…

 

「あーちゃんは後ろで怪我人の手当てね。誰か運べる人…」

 

「私も戦いたいんだが?」

 

「ゼノヴィアだね!」

 

「聞けぇ!」

 

「え、でも…ゼノヴィアが戦いながら怪我した人を運んだらカッコいいよ?」

 

「何?」

 

ゼノヴィアが反応した。

 

「カッコいいのか?」

 

「カッコいいよ!ね?」

 

「え、はい!ゼノヴィアさんのカッコいい姿を見てみたいです!」

 

「そ、そうか…カッコいい姿を見たいなら、仕方ないな!

やってやろう!」

 

((((ちょろい。))))

 

作戦成功だね!

ゼノヴィアは考えるのが苦手だけど臨機応変の動きは出来るから色々と動いて貰った方がいいんだよね。

後、ゲームをやらせてからカッコ良さを追求するようになったんだよね…RPGのラストら辺でうおぉぉぉ!!って言いながら主人公達に感動してたもんね。

 

「ヴァーリ、ねぷ姉ちゃんを守れよな。」

 

「言われるまでもない。曹操も居るからな。」

 

「勿論だ。…というか、一ついいだろうか?」

 

「どしたの?」

 

「いや、こういうのはお約束の部類なんだろうが…かなり会話してて攻撃もされないのかと疑問に思ってな。」

 

「曹操、RPGで編成中に殴りかかってくるボスはあんまりいないんだよ。」

 

「ああ…そういうことか。しかし、グレモリー達はどうする?」

 

「私は素直に後ろで援護よ。小猫はイッセーとジークフリートと協力して。」

 

「はい。」

 

「ギャスパーは…」

 

「あの狼はこ、怖いですけど…止めてみせます!」

 

「そう…分かったわ、お願いね。」

 

「セラフォルーさんとおっちゃんの援護もあるだろうし、頑張ろう!ファイト、ファイト!」

 

作戦会議終わり!

後はやるだけやる!

 

「ふん、下らん作戦会議は終わったか?」

 

「うん、待たせたね!」

 

「貴様らが足掻いたところで、この悪神を殺すこと能わず。

我が術に翻弄され、消え去るがいい…!」

 

ロキが杖をこちらに向けると、スコルとハティ、ミドガルズオルムが咆哮の後、こちらへ向かってくる。

今、助けるよ。

 

皆の力があればどんな困難だって乗り越えられる。

 

だから!

 

 

 

「刮目しちゃってよ!」

 

 

 

その為なら、自分は女神の力を使う。

今までよりも、ずっと多いシェアを感じながらいつものように女神パープルハートになる。

 

「さあ、ロキ。ここで終わらせるわ!」

 

「抜かせ、終わるのは貴様らだ!」

 

刀を向け、曹操とヴァーリ…二人と共にロキへと向かっていく。

この後、一誠のミョルニルをぶつけることが出来るかは…一誠達次第かな!

ねぷ子さんが本気出して出番なくしちゃうかも!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面代わって一誠さんのターンだ!

 

ヴァーリの野郎に任せるのはムカつくがこいつの相手は俺の方が適任だかんな、仕方ねえ!

 

「さて、赤龍帝君。僕に合わせる気は?」

 

「個々でやった方が強い、違うのか?」

 

「中途半端にもならない協力するよりそうした方がよろしいかと。先輩はただ突っ走るのが得意なので。」

 

「酷くない?毒舌だったっけ?」

 

「そうですよ。」

 

「そうだった。」

 

「ハハ、面白いメンバーだ。じゃあ、荒々しいドラゴンには荒々しい力で相手をするとしようか!」

 

グラムって魔剣を取り出したジーク、拳を構える小猫ちゃん。

俺も、禁手をさっさとして倍加をしまくる。

 

『グラム、か。隣にいるだけで寒気がするな。』

 

「こんなのよりもねぷ姉ちゃんの期待裏切る方が怖いわ!」

 

「先輩だけです。」

 

「そのシスコン、少し直した方がいいんじゃないかい?」

 

「■■■■■!」

 

うわうるさっ!

無駄にデカイ体で突進を仕掛けるんじゃないよ!

 

と思ってたら小猫ちゃんが前に出て受け止める構えをする。

 

「無茶だぜ、小猫ちゃん!ここは俺が…!」

 

「黙っててください。」

 

聞く耳持たず。

いざとなったら譲渡しようと思ったが…

 

小猫ちゃんを轢き殺すには十分な体躯をしたミドガルズオルムを小猫ちゃんが二本の腕で止めようとしている。

 

いけるのか?

 

「姉様に仙術を習おうとしました。

まだ体の問題や精神が整ってないだの言われて却下されました。

魔法を使おうとしました。ぶっちゃけ才能ありませんでした。

なので、しばらくある方法で鍛えてました。」

 

ズドン、と迫る巨体を細い二本の腕で受け止め、後ろに地面を抉りながらさがる。

やっぱりダメかと思ったが、小猫ちゃんは辛そうな表情をしていない。

 

…すると。

 

ピタリ、とミドガルズオルムの体が止まった。

いや、止められた。

 

 

 

「腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回。

ランニング10km。これを毎日やりました。」

 

 

 

「いやそれ別の漫画ぁぁぁぁぁ!!」

 

「これは、驚いたな…まさかあの巨体を…」

 

「■■、■…?」

 

嘘、マジ?みたいな顔をミドガルズオルムもしている。

俺もしている。

ジークもしている。

小猫ちゃん…いや、小猫さん…凄いっすね…

え、なに?俺もそれしたらいける?

強くなれる理由を知れる?

 

無論、受け止めるだけではなかった。

 

「正直、脳筋枠を取られた気分だったので…怒りを乗せた、一撃!」

 

無防備な腹へと力を込めた拳がめり込む。

 

ミドガルズオルムの肌だってそんなに柔じゃない筈なのに拳はその耐久を貫通してめり込み、ミドガルズオルムの巨体を何メートルかぶっ飛ばした。

 

「■■■■…!!?」

 

「…と、突撃ぃぃぃぃ!!」

 

「飽きないなぁ君達といると!」

 

取り合えず、ぶっ飛んだミドガルズオルムにジークと俺が突撃。

アスカロンを籠手から出して、二人で斬りかかる形となった。

 

『お前ら、締まらんな。』

 

「「うるさい!!」」

 

泣きたいのは男二人なのは言っちゃいけない…!

 

まさか、小猫ちゃん活躍回だと誰が思った!

俺とジークがカッコ良く龍退治すると思ったらこれですよ!

あー忘れてた!

こういうノリもあったね!

最近シリアス多かったから忘れてましたよ畜生!

 

おのれフリード!

絶対に許さんぞ!

 

心で涙し、まだまだ元気なミドガルズオルムに男二人、剣を手に挑むぜ!




フリード「誠に遺憾でござんすね。」

エクソダス氏が宣伝をしてくださるのでこちらもまたお返しに。
エクソダス氏の小説、「大人ピーシェが頑張る話。」を是非みてくださいね。


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それぞれの戦いだよ!

全てを繋げ、ネプテューヌ!(挨拶)

パッパと進めるよ! 

最初に一誠視点から始まりますのでご注意ください。




巨体はまた動き出す。

屈辱だと言わんばかりに小猫ちゃんを狙い出すが、その動きは覚束無い。

当然だぜ。俺達は討伐しに来たんだからな…

アスカロンとグラムを刺しまくったぜ!

 

「テメェこの野郎!逆鱗落とせ!」

 

「いや、宝玉を持ってる可能性がある。」

 

「そういえば、竜の肉って美味しいんですかね。」

 

「…いや、どうだろ。」

 

「だったら食えばいいんだ!」

 

「なるほど、先輩頭いいですね。」

 

「分かった、君達バカだろう?」

 

何度も仕掛けてくる巨体を活かした攻撃は小猫ちゃんのお陰で全部凌いで貰い、グラムとアスカロンがその攻撃の後の隙を突いて斬る。

こっちは倍加を重ねた力だし、ジークのは魔剣の頂点に位置するグラムだ。

何度も食らえば龍王のクローンでも一溜りもない!

 

『相性というのは理不尽なものだ。北欧の災厄…そのコピーであってもそれには逆らえないということだ。

オーディンが如何に強くとも、フェンリルに勝てぬように…絶対的強者は存在しない。

龍もまた、その枠組みを出ることはない…』

 

「■■、■■■…!」

 

「トドメは任せます。こちらは動きを封じます。」

 

「了解。グラムよ、龍を喰らえ…!」

 

「っしゃあ!何かサクサクやれてていい感じぃ!」

 

正直、可哀想だとは思う。

こうして造られて、戦わされて…何かを知るってこともなく死ぬ。

理不尽だと思う。

 

それをする俺達も含めて、全部。

ねぷ姉ちゃんなら…もしかしたら。

そう考えてしまうのは俺の悪い癖なんだろう。

 

でも、俺はねぷ姉ちゃんじゃない。

寧ろ、姉ちゃんがやれないなら、俺がやる。

 

小猫ちゃんが足掻くミドガルズオルムの顎に拳を下から叩き込んだ。

脳が揺さぶられたのか、単にダメージがでかかったのか…

ミドガルズオルムはその巨体を痙攣させながら地面に倒した。

 

苦しそうに呻きながら、俺達を見やる。

 

「…じゃあな。」

 

「終わりだ。」

 

ジークと二人でアスカロンとグラム…二つの剣を頭に突き刺した。

 

「■──」

 

一瞬だけ、苦悶の声をあげた後、ピクリとも動かなくなる。

 

謝ることはしない。

ゲームや漫画の受け売りだけどそれは奪った命への冒涜だそうだ。

なら、俺は謝らない。

 

ジークは死んだミドガルズオルムの頭に手を当てて目を閉じている。

 

「…せめて安らかに。」

 

「死んだ奴に言うのか?」

 

「造られた命…そこに思う処が僕にはあるのさ。

ある意味…僕はコイツだからね。」

 

「龍の手か?」

 

シグルド(・・・・)さ、神器はどうでもいい。」

 

「…英雄シグルドですか。そういえば、北欧繋がりですね。」

 

「何かの巡り合わせか、はたまた何かの悪戯か。

強いて言うなら我等が女神様なんだろうけど…さて、どうなんだか。」

 

ジークの言っていることは良く分からない。

難しい事っていうより、言えない事情って奴だろう。

身の上って部分だと難しいんだろうけど。

何にしても、その思う処ってのがジークにグラムを抜かせた要因なのは間違いない。

 

『戦いはまだ終わってないぞ。一番楽な相手を倒したに過ぎん。』

 

「分かってるよ。ねぷ姉ちゃんの所に行かねえとな。」

 

「あの狼二体はいいのかい?」

 

「あっちもすぐ終わるだろ。」

 

「信頼かい?」

 

「まあな、二人はどうする?」

 

「…徒労になりそうだ、僕はここにいよう。」

 

「同じく、です。」

 

「分かった、サラバダ!」

 

取りあえず、ねぷ姉ちゃんの方まで飛ぶぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガルル…」

 

「ウォォォン!」

 

二匹の狼が吠える。

月と太陽を追いかける者、スコルとハティ。

僕たちはある種の伝説と相対している。

神殺しの力をフェンリルと同様に持っているがフェンリル程の力はない。

 

速さも親に劣るようだ。

その証拠に爪や牙の攻撃をかわすのが容易い。

 

「伝説の魔獣程じゃない!」

 

「流石、騎士の駒ねぇ。」

 

「その騎士より少し遅いくらいなんだ、流石は英雄派だよ!」

 

魔剣と聖剣。

それぞれ相反する物を持つ僕とジャンヌダルクはスコルとハティをそれぞれの剣の特性を活かして注意を引き付ける。

 

流石は北欧の魔獣だ。

下手な攻撃じゃびくともしない。

これがフェンリルだったら瞬く間に殺されていただろう。

それ程、神殺しの大狼は恐ろしかった。

 

「風よ、吹き荒べ!」

 

「グルゥ!」

 

「ギャオゥ!」

 

「やらせるとでもっ!調子に乗るんじゃないわよ狗が!」

 

風の魔剣で脚を狙ったけど避けられて二体に隙を突くかのように牙を僕へと向けるが…ジャンヌダルクがその隙を埋めるように二本の聖剣ですれ違い様に二体の脚を斬った。

けど、斬り落とすには至らず、決して浅くはない傷が出来た程度。

怯みはしたのでそこを更に狙う。

 

僕じゃないけどね。

 

閃光が二体の狼に降り注いだ。

バチバチと音が聞こえるから雷光が正しいのだろう。

 

何でも、自分の堕天使の力を受け入れたらしい。

バラキエルという堕天使が父親と見て間違いない。

 

上を見上げれば、悪魔の羽と堕天使の翼を片方ずつ展開した姫島先輩の姿があった。

 

二体への効き目は抜群のようで、痺れが残っているが動きが辿々しい。

 

「頭上注意、ですわ。」

 

「流石、副部長だよ。」

 

「堕天使の光と雷の魔力、ねぇ。ちょっと思い付いたわ。」

 

「何を…?」

 

「締めはあのおっさんでしょ?なら試し技くらい許してよね。

ちょっとそこの!えっと、アケノだっけ?」

 

「あら、何でしょう?」

 

「その雷、私に放ちなさい(・・・・・)。」

 

「へぇ?」

 

「じゃ、ジャンヌさん?」

 

「いいから。」

 

聖剣を変えて、挑発するかのように姫島先輩へ告げるジャンヌダルクは勝ち気な笑みだ。

姫島先輩も何だか乗り気だし!

 

「あらあら…なら、無様に這いつくばらないでくださいませ!」

 

「あら、ちょーっと多いかも?ま、いっか。」

 

「いっか、じゃないですよ!」

 

「黙ってなさい。さあ…見せ所よ。」

 

迫る雷にジャンヌダルクは剣を掲げる。

聖剣にぶつかる雷。

 

そうか、雷の聖剣か!

光の属性が大半だと思ってたけど、それもそうか…

魔剣創造と聖剣創造は対の神器だ。

片方しか属性の剣を作れない、なんてことはあり得ない。

 

雷を吸収した聖剣に青白い雷を迸る。

 

「デカイのいくわよ!」

 

未だに痺れの取りきれていない二体に聖剣を向けて…あれ、投げるポージング?

投げる気か!?

 

 

 

「サンダーブレード!ってね。」

 

 

 

一直線へ飛んでいった聖剣はスコルとハティの近くへと刺さり…

 

爆発した。

雷と共に、爆風が二体を包む。

 

「ガァァァ!!」

 

「え、えげつない威力だ…」

 

「あら、父様の出番は無さそうかしら。」

 

「…いや、構えろ!」

 

それまで手出しをしなかったバラキエルさんが一本の光の槍を土煙の中へ投擲した。

そして…

 

「ウオォォォン!!」

 

それに反応したかのようにスコルが土煙からこちらへと駆けてきた。傷は所々見えるけど、まだまだ健在か!

 

スコルの速さは今までのそれよりも数段速かった。

加減をしていたのか、はたまた命の危険を察知してリミッターが外れたか。

その速さは親に迫るほどであり、僕らは先程までの二体の速さに慣れすぎた為に反応が送れる。

 

「知恵のあるッ!」

 

バラキエルさんが光の槍を片手に持って僕らの前へと立ち、槍を薙ぐように払った。

 

当たると思ったが、地面を蹴っての後ろへの跳躍でその攻撃を避けた。

なんて反射神経だ!

 

晴れた土煙の方を見ると、ハティがボロボロになって倒れている。

 

「奴め、片割れを盾にしたな。」

 

「兄弟なんじゃ…?」

 

「知恵があるといっても所詮は獣…生存本能が働いたのだろう。」

 

「追い詰められた獣、ねぇ。」

 

「何だ、どういうことだ。負傷者がいないじゃないか。」

 

「あ、ゼノヴィア。」

 

「アーシアが働かなくて済むのは喜ばしいことだが…私の見せ場がないぞ…?」

 

「それを私達に言われてもねぇ。」

 

「ということで、参加させろ。イッセー達はもう倒してるぞ。」

 

「早っ!何したらあのデカブツを、って特効二人もいたわね…」

 

そうか、アスカロンとグラムか。

それならその早さでの討伐も納得だ。

 

僕達もあと一匹だ…早く倒さないとね。

 

スコルは殺意を滾らせ、こちらを睨む。

先に仕掛けたら五人に一気にやられると理解している。

 

「埒が飽きませんわ。状況を動かします。」

 

姫島先輩が雷をスコルへ落とす。

スコルはもう当たるものかと避ける…が、姫島先輩の攻撃を皮切りに僕達も動き出す。

 

ゼノヴィアと僕、ジャンヌダルクがスコルへと駆ける。

 

バラキエルさんが光の槍を何本かスコルへと投げるが避けられる…がその回避が狙いだ。

ジャンヌダルクが回避先へ聖剣を投げる。

 

「グルゥ!」

 

スコルの右前脚に聖剣が刺さる。

魔獣であることも重なってダメージは大きい。

そこへ追撃するようにゼノヴィアと僕が斬りかかる。

 

ご自慢の脚が機能しない今が勝機!

 

確実に葬るために、禁手化をする。

 

双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)…斬り裂け!」

 

「デュランダル、眼前の敵を破壊しろ!」

 

デュランダルと聖魔剣がスコルを斬り裂く。

 

確実に入った…!

 

「が、ァァ…」

 

スコルは、最後まで憎むかのような目を向けながら倒れた。

二体の魔獣を討伐した瞬間だった。

 

「よし…!」

 

「怪我人はいないようだな。まあ、カッコいい一撃が出来たから私は満足だ。」

 

「あら、終わりましたのね。」

 

「はい、助かりました。」

 

「ジャンヌさんが雷を寄越せと言ってきた時はどうするつもりかと思いましたが…功を奏しましたわね。」

 

「中々いい技だったでしょ?」

 

「父様も、お疲れさまです。」

 

「いや、私は牽制しかしていない。全て朱乃達の功績だ。」

 

「いえ、バラキエルさんがいなければこの早期決着はあり得ませんでした。ありがとうございます。」

 

「…そうか。」

 

少し照れ臭そうに視線をどこかへやるバラキエルさんに姫島先輩も嬉しそうだ。

…姫島先輩も憑き物が落ちたようだね。

 

さて、後は…

 

頑張ってください、ネプテューヌ先輩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ちろ、女神!!」

 

「っ…!」

 

「女神だけと思わないでもらおうか!」

 

「チッ、人の子か…!」

 

ロキの術が自分へ迫る。

それを曹操が聖槍で弾いてくれたけど…消耗はこっちの方が大きい。

 

ロキの術は厄介の一言に尽きる。

雷を出したと思えば炎が出たり。

鎖のようなものがこちらを縛りに飛んできたりもしてきた。

 

奇術師のように杖を振るって術を行使するロキはまさにトリックスターだった。

 

攻めあぐねているのはそれだけじゃない。

 

─ネプテューヌさん、防壁、残り5つです。

 

「まだあるのね…」

 

防壁。

術による膜のようなものを纏っている。

この防壁が曲者なんだ。

一枚防壁を破っても瞬時に次の防壁がロキを守るせいで攻撃が通らない。

 

破壊力が必要なんだ。

強力な防壁を破った上でロキに決定的なダメージを与える破壊力。

それが今要求されている。

 

─ネプテューヌさん、今それを使えば女神化を保てないかと。

 

「分かってる。…後、二枚破れば勝機が見えるんだけど…!」

 

もう既に八枚ある内三枚を破ったけど…警戒もそれにつれて大きくなった。

もう下手に消耗する技は撃てない。

 

だけど、後二枚破ればその技が撃てるんだけど!

 

「天の崩雷!」

 

─広範囲の術が来ます!

 

ロキが杖を掲げるとロキの頭上に大きな魔法陣が現れ、そこから雷が無差別に降り注ぐ。

危険だけど、逆に好機!

 

刀で弾きながらロキへと近づく。

ロキの近くに向かう度に雷の落ちる頻度は上がる。

近づけさせるつもりがないんだ。

 

「無理矢理にでも!」

 

「一人で先行するな。」

 

「その通りだ。お前の護衛ということを忘れてないか?」

 

「ごめんなさい、二人とも。」

 

「小賢しい女神どもが…!業火に焼かれろ!」

 

新しい術…!

炎の球がいくつも迫ってくる。

 

「32式エクスブレイド…3本、展開!!」

 

信頼する技の1つ、エクスブレイドの応用。

自分の後ろに自分の刀と同じぐらいの大きさの剣を3本創造する。

 

3本を射出し、迫る炎の球を破壊する。

 

「○ージルから学んで正解ね。」

 

「ツッコミはしないでおこう。助かった、礼を言う!」

 

ロキまでの距離はここくらいで十分!

 

刀に光を纏わせる。

更に更に、新技いくよ!

 

「フラッシュピアース!」

 

刀を突き出す。

すると、刀の先端から一筋の光…俗に言うビームが放たれる。

 

「聖槍よ、貫け!」

 

「成長が早いな、流石俺の妻だ!」

 

「結婚はしてない!」

 

曹操も合わせるように聖槍の光のオーラをビームにして発射する。

ヴァーリは魔力を槍状にして放つ。

 

「何っ…!」

 

ロキの驚愕の表情。

杖で防ごうとするより先に自分の放ったビームがロキにぶつかる。

防壁のお陰で貫くような事になってない、けどこれじゃ割れない!

そこに曹操の聖なるオーラのビームも当たる。

そのすぐ後にヴァーリの槍がぶつかる。

 

パリン、という音が聞こえた。

 

防壁、残り4枚!

 

でも─

 

 

 

「─後一手足りない、そう思っただろ、姉ちゃん!!」

 

 

 

「えっ─」

 

声が聞こえたと思ったら自分の横を誰かが横切る。

ううん、誰かじゃない。

大きなハンマーを持った赤い鎧…間違いない!

 

「一誠!」

 

「俺が、その一手をくれてやる!!」

 

「ぬ、ぅ!悪魔の小僧、それはっ!?」

 

横へ回転しながら接近する。

 

「そうさ、ロキ!これはお前への目覚まし第一だ!

遠慮するなよ!」

 

ハンマーが応えるように雷を纏う。

魔法の雷とは違う、聖なる力を感じるハンマー。

感じたこともない程の力。

 

 

 

「─ミョルニルッ!!」

 

 

 

ロキが回避しようとしても間に合わない。

それよりも速く一誠がミョルニルを叩きつける。

 

そして、ミョルニルが雷を爆発させる。

バチバチと、音を立てながら神の雷がロキを襲う。

 

「ぐ、おぉぉぉぉ!!?」

 

パリン、と音が聞こえる。

 

防壁、残り3!

 

雷はまだ止まらない。

後一枚だけでも剥いでやると聞こえる程雷は強さを保ったままだ。

 

「オォォオォォ!!」

 

─ネプテューヌさん、準備出来ました!

 

「─ええ!」

 

刀を消して、膝を抱えて浮き上がる。

 

自分を中心に光が発生する。

目を閉じていても分かる。

シェアが自分を作り替えている。

 

破壊力に特化するなら、こっちだとばかりに。

 

そして、その光が止むと同時に─

 

紅い光が、ロキへとぶつかった。

 

パリン、ともう一度防壁の壊れる音がした。

 

残り、2。

終わらせるよ!

 

「全てを壊して、救う──」

 

 

 

「ハード:ネプテューヌ!!」

 

 

 

自分の考え付いた技。

シェアの新しい応用。

 

自分が、戦闘機の姿に変身する。

紫と黒の機体…これなら!

 

─変身残り時間3分です!

 

十分だよ!

 

「何だと!?」

 

「ハハハ、何だあれは!ハハハ!」

 

一誠はミョルニルを持って後ろに全力で下がった。

 

戦闘機になった自分は超高速でロキへと突貫する。

 

「ミサイル発射、全弾持ってけ!!」

 

ミサイルを発射する。

計25発、全部くらっちゃってよ!

 

ロキもやられるばかりじゃなく、雷を発して何発か落とすけど…足りないよ!

 

「おのれ、女神…!」

 

残り17発がロキへと降り注ぎ、爆発する。

 

残り2枚、割れちゃってよね!!

 

 

「ぬ、ぐ、ァァァァ!!!」

 

 

連続で防壁の割れる音が響いた後、ロキがようやく直接ダメージをくらう。

ミョルニルでもくらっていたようだけど今回はその比じゃないよ!

 

爆風による土煙。

変身をすぐに解除して女神化も解除される。

 

「よっと!…どうかな?」

 

土煙が晴れると、そこには…

 

「ぐ、ぐぅあ…」

 

ボロボロになって横たわるロキの姿があった。

やりすぎ…じゃないよね。

精神汚染を解くためにも必要だし…

 

(いーすん、どう?)

 

─……はい、ミョルニルとシェアが上手く作用したようです。殆ど精神汚染は消えています。

 

(よ、よかった!)

 

急いでロキの元へ駆け寄る。

ヴァーリと曹操、一誠も一緒に。

 

横たわるロキは自分を見ると痛そうだけど苦笑い。

 

「…ぐっ、手荒が過ぎるぞ…」

 

「それぐらい許してよ。…大丈夫?」

 

「ああ…何とか。まさか、ミサイルが来るとは思わなかったが…」

 

ロキを起こす。

辛そうだけど、治療をすれば…

 

「感謝する、ネプテューヌ…」

 

「ううん、私だけじゃないよ。ロキを助けようって思ったのは…きっとここにいる全員だから。」

 

「…そうか。」

 

「もうすっからかんだよー」

 

「戻るぞ、ネプテューヌ。」

 

「うん!」

 

曹操がロキに肩を貸す。

 

自分はヴァーリの隣を歩く。

まだまだ余力のあるっぽいし、守ってよね~なんて。

 

「一誠、頑張ったね!」

 

「っ、ああ!」

 

「どしたの?」

 

「いや…やっと役に立てたなって。」

 

「そんなこと考えてたの?もー…こうして頑張れてるのは一誠のお陰でもあるんだよ?」

 

「へ?」

 

「一誠やあーちゃんっていう弟と妹がいるからお姉ちゃんは頑張れるんだからね。そりゃ、二人が頑張っても嬉しいけど…あんまり無理しないでね?」

 

「ね、姉ちゃぁぁぁん!!」

 

「わー!大きい子供だな~」

 

「ふっ…」

 

まあ、何にしても、一件落着だよね!

あーちゃんに治療して貰おうね、皆!

 

 

 

 

 

「─これで終わり、そう思われるのは困るな。」

 

 

 

「っ──!」

 

その声が聞こえると共に、何とか刀を生成して後ろを振り向く。

 

そこには、前に一度相対した敵の姿、そして…

見ているだけでゾッとする黒い帯のような物が迫ってきていた。

 

刀でそれを弾いてその人、に…

 

弾いてすぐに、また黒い帯が自分に迫ってくる。

反応、出来ない。

 

そして、その帯は自分の胸に──




先が気になる(察しのいい人は気付く)展開だなぁ!

あ、それとですね。

エクソダス氏の『大人ピーシェが頑張る話。』とコラボすることになりました!どんどんパフパフ!

ただいま一生懸命コラボシナリオを練っておりますもうしばらくお時間を…


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目を逸らしていた想い

もっとねぷねぷ大作戦です!(挨拶)

前回までのあらすじッ!!

ロキの精神汚染を解くことに成功したネプテューヌ達、しかし何者かの奇襲に遭い、ネプテューヌの身に危険が…








黒い帯が自分の胸を──

 

 

 

 

─貫くことは、なかった。

 

「ぐ、ぬぁ…!」

 

「ヴァー…リ…?」

 

咄嗟だったんだと思う。

ヴァーリが自分と入れ替わるように庇った。

そのせいで、ヴァーリの腹部に、鎧を貫通して帯が突き刺さる。

 

「無事か…」

 

「貴様は…!」

 

 

 

「シャルバ・ベルゼブブ!!」

 

 

 

黒い帯で自分を狙い、ヴァーリを刺した人物…シャルバがいた。

計画通り、といったような笑みを張り付けて。

 

「女神は庇われたか、計画通りだな。

…だが、悪神の神核は貰った。」

 

「えっ」

 

その言葉と共に、ロキの方を見る。

 

そして、間に合わないと悟った。

だって。

 

ロキの真後ろの地面から同じように帯が出て、ロキの胸を貫いたから。

 

「ご、は…!蝿、がぁ…!!」

 

帯がシャルバの元へ戻るとシャルバの手には何かが握られていた。

血塗られた、何かが。

あ、あ…

 

あれは──ロキの、力の源。

 

 

 

「ロキ!!」

 

 

 

自分の悲鳴とシャルバの笑いは同時だった。

 

「ハハハ…!ここまで上手くいくとは思わなかったぞ!」

 

「曹操!ヴァーリとロキを!」

 

「っ、だが!」

 

「いいから!!早くしないと、ロキが!!」

 

「…く、兵藤一誠、頼むぞ!!」

 

「……あぁ。」

 

『相棒、お前─』

 

握る力が強くなる。

助けられたと思った。

一件落着だって思ってた。

でも、違った。

 

頑張って、助けて、仲良く調印式を終えられるって…思ったのに!!

 

「シャルバ…!!」

 

「怒り、当然か。だが…お前にも原因はあるぞ?」

 

「え…?」

 

「耳を貸すな、姉ちゃん!」

 

一誠の声が遠くなる。

 

自分に、原因?

え、いや、そんな…

 

「女神、お前が戦いは終わったと思い女神化を解除した。

それが白龍皇を貫いた原因であり、悪神ロキの神核が我が手にある一因だ。」

 

「あ、え…」

 

「ハッタリだ!テメェが仕掛けてこなきゃよかった話だろうが!!」

 

「戦いはあの時会った時から始まっていた。分かっていた事だろう?私がまたお前の前に姿を表すこと位想像出来た筈だ。」

 

「私が…」

 

「その手で救ったのは確かだろう。だがその分だけお前は取り零した!代償だ、失態だ、貴様のせいなんだよ!」

 

「ふざけんな!姉ちゃんに落ち度はねえ!これ以上姉ちゃんに何をさせてぇ!!」

 

呆然とする。

自分の、せい。

ヴァーリが負傷したのも、ロキが神核を奪われたのも。

 

全部、全部。

 

そうだ、あの時も救えなかった。

 

バルパーの時も、フリードに殺されたあの人の時も!

もっと早ければ、もっと強ければ。

 

─ネプテューヌさん!!

 

(いー、すん…?)

 

─貴女は…背負いすぎです。間に合わなかった部分もあります。

ですが、貴女は…助けられたじゃないですか!

 

(…)

 

─溢れてしまった物にさえ貴女は必死に手を伸ばした。だからこそ、最後に言葉を託された時もあったんですよ!

あの時、天界での誓いを嘘にするつもりですか!!

 

(誓、い…)

 

…そうだ。

神様に、誓ったんだ。

これからも見ててって言って、安心させるために。

 

どんなに挫けそうになっても、苦しくても、悲しくても、辛くても!

一人きりでは越えられない事があっても、皆と手を合わせて掴み取るって決めたんだ!

 

崩れそうだった膝に力が入る。

 

「…」

 

「…シャルバの言う通りかもしれない。私が原因な部分もあると思う。」

 

「認めたか、ならば「でもっ!!」む…」

 

「それでも、私は諦めちゃ駄目なんだ。

尚更、この夢を、誓いを私が諦めたらいけないんだ!

私は戦うよ!シャルバとも、頼光とも…私の夢を貫くために!」

 

「…くっくく、ハハハハハ!

それでこそだ女神!お前は本当に私の目を覚ましてくれる!」

 

自分の決意を聞いて、シャルバは狂気的に笑う。

それでこそ、と。

 

「そうだ、そうでなくてはいかん。

私と貴様の闘争は、これでより洗練される!

やはり貴様が特異点だ女神!貴様のお陰で今の私があり、貴様の輪がある!」

 

「冥界はいいの?」

 

「そんなものは最終的な目標に過ぎん。どのみち、貴様を倒せずしてこの悲願は達成されんだろう。

ならば、私と貴様の闘争にこそ意味がある!」

 

「…私は、戦いに意味を見出だしたくないよ。」

 

「だとしてもだ、貴様は私を止める。貴様の手札を使って、私もまた私の手札を使って…このゲームは互いを潰し合う命を懸けたゲームなのだからなぁ。」

 

前に会った時よりもっと強い力と意思を感じる。

でも…この場でやり合うような敵意を感じない。

ロキの神核を奪いにきただけ?

 

「ロキの神核をどうする気?」

 

「お楽しみ、という奴だ。今はまだ私達の戦う時ではない。」

 

「また逃げる気か!させっかよ…っ!?」

 

「近寄るな、赤龍帝。」

 

シャルバに殴りかかろうとした一誠だけど突然後ろに下がる。

 

シャルバの周りを漂う黒い帯。

…あれは、何だろう。

ヴァーリの鎧を貫く程の力があるのは間違いない。

一誠でもただじゃすまない。

 

「白龍皇の力、神核…そして、女神の遺伝子。

ああ、素材は揃った…これでようやく一歩だ。」

 

シャルバの言葉。

 

…遺伝子、力、核。

もし、かして…シャルバは!

 

「何をしようとしてるか分かってるの!?」

 

「ああ、重々承知だとも。人の為の女神よ。」

 

「シャルバ…!」

 

「いずれその時に、成果を御披露目しよう。

それまでより強くなっていてくれ、女神達よ。」

 

シャルバが消える。

あの時と同じ風に。

 

一誠を見ると、手に力が入りすぎて痛い音が聞こえる。

 

「…戻ろう、一誠?」

 

「姉ちゃん…!」

 

「大丈夫だから、ね?」

 

「~っ…!…ああ。」

 

もう奇襲はない。そう判断して二人で急いで皆の元へ戻る。

一誠は色々と納得してないけどそれを圧し殺して従ってくれた。

多分、自分についてもだと思う。

 

でも…この焦りを優先させてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って皆の元に戻る。

 

あーちゃんの神器による治療の光が見えて、そこに駆け寄る。

 

治療が済んだのか、お腹に包帯が巻かれて寝かされてるヴァーリ。

近くにギャー君がいるから、治療したのはギャー君かな。

側に黒猫状態の黒歌もいる。

 

そして、まだ治療の光を受けているロキ。

皆、集まって出来ることをしてる。

 

「…っく…!」

 

「あーちゃん!」

 

「ネプテューヌさん…」  

 

「ロキの様子は…?」

 

「……」

 

あーちゃんが、悔しそうに唇を噛んだ。

治療の光が消える。

それは、あーちゃんが治療を止めたことを意味してて。

 

「…手を、尽くしました。」

 

「そん、な…」

 

「…くっそ…!こんなことあるかよ…!!」

 

ロキは苦しそうに寝かされている。

まだ、意識はある。

手を握る。

 

「ロキ…!」

 

「…何を泣いている…」

 

「泣くよ!だって、せっかく助けられたのに…これからも仲良くしていけるって思ってたのに…!私は、守れなくて…!」

 

「…ネプテューヌ、何か持っているな?」

 

「え?」

 

「悪魔の気配が…するぞ。」

 

自分に向けてそう言ってくる。

悪魔?自分は違う…もしかして。

 

ポケットから、ディオドラから取ったままだった悪魔の駒を取り出す。

取り出した瞬間、ロキがそれを奪い取った。

 

「ロキ、何を!?」

 

「まさか、悪魔に…」

 

「戯け、この悪神が悪魔になんぞなるものか。反吐が出る…

聞け、ネプテューヌ。」

 

「っ、うん…」

 

ロキが自分の手を握り返す。

 

「お前には、闇がある。力としての闇…それはお前の感情そのものだ。」

 

「うん…」

 

「…お前には、多くの友がいる。だが、その友はお前の闇との向き合いを共に挑むことが出来ない。孤独な戦いだ。」

 

「うん、分かってる。でも、これは…私が受け入れないといけないから。」

 

「そうだ……私は、そろそろ消える。」

 

「っ…」

 

「神核を抜き取られたのだ。神として、存在することは出来なくなった…だが…!」

 

ロキが悪魔の駒に何かの力を流し込む。

苦しそうに、辛そうに…でも、何かを成そうとする意思を感じる。

 

ふと、握っている手を見る。

 

その手が、うっすらと…まるで消えていくように。

 

「っ、駄目!無闇に力を…!」

 

「何も遺すなと言いたいか!」

 

「…!」

 

「私は、純粋なお前だからこそ残りカスとなってしまったこの力を託すのだ。悪神としてではない、ロキとして…この力を!」

 

「で、も…!」

 

「既に消えることが確定している身…お前には迷惑を懸けた。

消えるとしても、その闇と向き合う一助に。」

 

「なん、で…私は、自分のエゴを…」

 

「故に託すのだ。人よりも、人らしい女神であるお前に。」

 

悪魔の駒が、変わっていく。

紅い見た目から、紫色の…自分の色へと。

 

そうして、その作業が終わったのか変異した悪魔の駒を差し出してくる。

 

「…それがお前の闇の力の受け皿になるだろう。

乗り越えろ、お前の闇を…負を。」

 

受け取ると、ロキは呻き声と共に消滅の速度が加速していく。

 

もう、手が消えて…足も…!

 

受け取った駒から、ロキの力を感じる。

少ない力だけど、確かにロキの力を。

 

「…一緒に、戦ってくれるんだね…」

 

「…同じ神、ではなく…ネプテューヌが出会った、ロキ()として、共に戦おう…」

 

「こんな、結果になっちゃったのに…!消えるなら、消えるなら…!」

 

「……私でよかったのだ。」

 

「何でそんなこと…」

 

「私でいい…未来のない私より、未来を創るお前が生きるべきだ。

どの神話にも影響されない…新たなお前だからこそな。」

 

下半身が光となって消えてしまった。

 

視線が自分から、空へと移る。

空を通して、何を見てるのか。

自分には分からない。

だけど…ロキが自分の自己犠牲を良しとしないのは、分かった。

 

「会って間もない私に、あそこまで手を差し伸べてくれた。

それだけで、私には十分だった…」

 

「うん…」

 

「仲間を見ろ、ネプテューヌ。」

 

「仲間…」

 

言われて、周りを見る。

一誠とあーちゃん…自分の大切な弟と妹。

リアスちゃん、朱乃ちゃん、木場君、小猫ちゃん、ゼノヴィア、ギャー君…オカ研の皆。

曹操、ジーク、ジャンヌ…ここにはいないけど、他の英雄派の皆。

おっちゃんやバラキエルさん…堕天使の二人。

セラフォルーさん…信じてくれた魔王の人。

ヴァーリ…自分を好いてくれる人。

 

「お前と共に戦うことを良しとし、お前と共に悲しんでくれる者達だ…お前の夢は、何だ?」

 

「…皆と、手を取り合える未来。」

 

「お前は、それを少し叶えている。自らの夢を、誓いを…

だがな、ネプテューヌ…お前はお前しかいない。

お前という個人がいなければ…叶わぬ願いだ。

お前もその輪に…いろ、ネプテューヌ。」

 

微笑むロキに、涙を止められなかった。

こんなにいい人が、こんなに何かを想える誰かが…消えていい筈が無いのに!

 

「…うん…!」

 

「…ロキよ…」

 

「オー…ディン…」

 

隣を見上げると、そこにはオーディンが立っていた。

悲痛そうな面持ちで、ロキを見ている。

 

「…先に逝く。」

 

「…うむ。さらばじゃ…北欧の悪神、ロキよ。」

 

「ああ…悪である私が…最期に、希望を…ハ、ハ…上出来な、終わりだ…───」

 

そう言って、ロキは─

 

 

 

─満足そうに、消えていった。

 

 

 

「…ロキ…」

 

「…最期に、何かを遺せたのじゃなぁ。」

 

「姉ちゃん…」

 

「ネプテューヌさん…」

 

ロキとの絆が、消えた訳じゃない。

ロキは最期にこれを遺してくれた。

 

…変異した駒を額に当てて、目を閉じる。

 

「お疲れ様…──おやすみなさい、ロキ。」

 

あんなに流れていた涙は、いつの間にか止まってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲しんでばかりじゃいられないと、皆から突き刺すような視線を貰いながらも進行を買って出たおっちゃんが調印式を再開するようにセラフォルーさんに言った。

場所を変えるべきか悩んでたけど、オーディンがここでしたいと言って調印式をこの場で行った。

 

酷く、淡々としていたと思う。

 

勿論、自分はそれを喜んだ。

皆もそう。

 

だけど…手放しには喜べなかった。

 

調印式が終わって、すぐに病院へ向かった。

先に運ばれたヴァーリが心配だったから。

 

あの時、守ってくれなかったら…自分は死んでたから。

そのお礼を言いたくて。

 

病院に着いて、ヴァーリの病室を教えて貰ってそこに向かった。

本来ならテロリストのヴァーリはこの待遇はあり得なかったようだけど、手伝ってくれたのと窮地を救ってくれたからという理由で自分がセラフォルーさんに頼み込んだ。

 

曹操達には自由にしててと言っておいた。

いーすんも曹操達に預けてきた。

正真正銘、一人だ。

 

コンコンと病室の扉をノックしてから、入る。

 

病室には、静かにベッドに横になって窓を見ているヴァーリが居た。

 

「…どうした?」

 

窓を見ながら、ヴァーリは自分にどうしたと聞いてきた。

自分は椅子に座って、少し沈黙する。

 

ヴァーリは、それに対して何も言わなかった。

 

待ってくれたんだと、思う。

 

「…大丈夫?」

 

「これか?名誉の負傷、というやつだ。」

 

「そういう言い方、やめて。」

 

「…大丈夫だ。」

 

「よかった。」

 

また、静かになる。

自分が負い目を感じているのもある。

 

「…辛かっただろう?」

 

「…うん。目の前で、また…」

 

「お前の目指す未来の過程で、そういうこともあるだろうな。」

 

「…だね。」

 

「……延期になったが、兵藤一誠と戦うことになった。」

 

「えっ?」

 

一誠と、ヴァーリが?

何でそんな…一緒に戦ったのに。

何で?

 

「お前は慕われているよ、本当に。」

 

「それは……うん、昔から一誠はそう。」

 

「羨ましいことだ。兵藤一誠はお前の分まで俺を警戒していたよ。俺に憎しみまで向けてな。」

 

「一誠が、憎しみ?」

 

「理解はしても納得は出来ない。俺も経験がある…

だからこそ、俺は彼との決闘に応じた。この様だがな。」

 

ようやくこっちに顔を向けてくれた。

負傷の事で笑っているようで…苛立った。

 

自分を守ってくれたからってついた傷を笑ってるのは…嫌だった。

 

「やめてよ…何で笑ってるの?」

 

「名誉の負傷だからだ。」

 

「私を守れたから?そんなの!」

 

「お前は、誰かを守って出来た傷は要らないか?」

 

「っ…私、は…ヴァーリが私を守って出来た傷で笑ってるのが嫌で。」

 

「そうか、すまない。…だがな、ネプテューヌ。

俺はお前を守れた。それがどれだけ、俺にとって嬉しいことか分かるか?」

 

「…分からないよ。」

 

「俺は、俺の好きな人を守れた、やっとだ。」

 

「あ…」

 

その言葉で自分はなんて事を、と後悔した。

ヴァーリは一度、家族を失くしてるんだ。 

捨てられて、母親との絆も失って。

 

…だから、あんなに自分を守るって言ってくれたんだ。

 

「ご、ごめん…私…!」

 

「謝らなくていい。」

 

「でも私、ヴァーリに酷いこと…!」

 

「…ネプテューヌ。」

 

突然、腕を掴まれた。

体が引き寄せられて、ヴァーリの胸に自分が収まる。

 

怪我が悪化する。

そう思って、離れようとすると

 

「あうっ…」

 

抱き締められてしまった。

 

…抵抗しようにも、怪我を悪化させちゃうとよくない。

 

だから、されるままにしておいた。

 

「守れてよかった…本当に。あの時、咄嗟に動けた自分を誉めてやりたいよ。」

 

「…ありがとう、ヴァーリ…」

 

「ああ、それでいい。俺は謝罪なんて受け取りたくない。

お前からの感謝の言葉をもらえればそれで。」

 

「…うん。」

 

「…どうしようもなく好きなんだよ、俺は。

お前を守るためなら、自分が死んでもいいと思える位に。」

 

「そんなの!」

 

顔を上げて否定しようとする。

けど、それよりも早くヴァーリの言葉が入る。

 

「お前も、そうだろう。自分一人で済むならそれでいいと…思ってるだろう?」

 

「ぅ…」

 

「なら、そんなお前を守らせてくれ。」

 

…たぶん、自分が何を言っても通じない。

自分の自己犠牲と同じように。

…何だ、似てるんだね。

 

「今日は、よく頑張ったな。」

 

「…ずるいよ。私には無理するなって言って、自分は無理するの?」

 

「見栄を張りたくなるものだ。」

 

「…馬鹿。」

 

ヴァーリの胸に顔を埋める。

 

自分の声が震えているのが分かる。

…嬉しいんだ。

いーすん以外にも…しっかりと理解してくれる人がいてくれることが。

 

ううん、きっとあーちゃんや一誠も…他の皆も言わないだけで理解してる。

だから、悔しそうな顔を自分に見せるんだ。

 

でも、今は…

 

「馬鹿だよ、ヴァーリは…私も、ヴァーリも…!」

 

「二人して、どうしようもないな。」

 

「…うん…でも…」

 

「でも、なんだ?」

 

「今日は、ごめん…泣かせて…!」

 

今は、この人に。

目を逸らして、見ていなかった人に。

甘えさせてほしい。

 

「…好きなだけ泣くといい。」

 

「う、ん…!ごめんね…!」

 

声を殺して、涙を流す。

あれだけ流したのに、まだ溢れてくる。

 

頑張ったのに、助けたのに、笑い合えるのに。

 

その未来が、誰かの思惑で潰されて。

 

ひたすらに心が締め付けられるように痛くて。

でも、意地になって弱音をあんまり見せまいとして…

結局こうして、この人に甘えている。

 

ごめんね、と言ってもいいんだよと言われる。

心を許す人に、優しすぎるよ…

 

ずっと、背けてた。

もしかしたら居なくなっちゃうからと、自分の夢だけを目指して。

だって、怖かったから。

 

それに手を出して、いいのかなってずっと怖くて。

でも過ごしていく内に大きくなっていって。

 

だから、もういいよね?

 

「ありがとう…ヴァーリ…!」

 

「今回だけでなく、溜め込んでいた辛いことを吐き出すといい。

俺でよければ…お前が泣くための場所にくらい、なってやるさ。」

 

「うん…!」

 

目を背けるのをやめる。

想いを隠すのは、やめにしよう。

 

自分もどうしようもないくらい─

 

 

 

─ヴァーリ・ルシファーが、好きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーション!!」

 

「始まりました!」

 

「はい、久し振りのネプステーションのコーナー!

司会は当然皆のネプテューヌだよ!

そして、ゲストはあーちゃんことアーシア・アルジェント!」

 

「はい、アーシアです。よろしくお願いします!」

 

「うん、この章は過去最高に長かったね!

でも、削るところは削ったんだよね。」

 

「ですね。それでも回収するべき伏線もあったのでこれほど長くなりました『未来へのプレイヤー』編、どうでしたか?

感想ではヴァーリさんとのラブコメに対するコメントも多かったですね。」

 

「あはは…まあ、そんなわけで分かってたと思うけどねぷ子さんも好きだったってパターンだよ。」

 

「これに懲りたら、自己犠牲の精神はやめてくださいね?」

 

「あーちゃんが言う?まあいいや、次回予告!」

 

「はい。

向き合う準備が出来たネプテューヌさん…ですが、先に進むだけじゃなく、過去を振り返ってみるのも必要です。

というわけで、イッセーさんとネプテューヌさんの過去を見ていきましょう。

次回、『憧れはこの胸に』」

 

「久し振りにあの子も出るよ!」




はい、というわけで…

ヴァーリ君、君の勝ちだ…
ねぷ子は可愛いなぁ…と言うには色々と葛藤があった様子。

拙作ではロキは退場です。
ネプテューヌにカオス化への鍵を遺して、散っていきました。

そして、そのロキを殺したシャルバの目的。
それは一体…

まあそれは一旦置いといて気になるとか言われてた過去編の時間だオラァ!


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憧れはこの胸に
過去、振り返らずにはいられない!


ぬらー(挨拶)

少しだけ過去編をば。


子供の頃、幼馴染みのイリナとはよく遊んだ。

プロテスタントだとか、教会だとか…そういうのが関係ない子供の日々。

夕方くらいまで一緒に遊んで、二人で遊んでいると決まって来てくれる人がいる。

 

「一誠、イリナちゃん。」

 

「あ、姉ちゃんだ!」

 

「ネプテューヌ!」

 

何処で遊んでいても、迎えに来てくれる。

多分、イリナの父さんもいると思うけど、来るのは姉ちゃん一人だ。

優しく微笑んで、俺達を迎えに来てくれて

 

「帰ろっか!」

 

「「うん!」」

 

二人して姉ちゃんの方まで行って手を繋ぐ。

本当に嬉しそうな笑顔で受け入れてくれるから俺もイリナもそんな姉ちゃんが好きだった。

遊んでくれる時はゲームする時も外で遊ぶ時も楽しくて時間なんてあっという間に過ぎて。

 

姉ちゃんは人気者だ。

俺達だけじゃなくて他の子供とも遊ぶ時があって、子供達の親にも受け入れられて。

商店街でもたまに野菜とか魚とか貰ったりするくらいには気に入られてる。

 

記憶喪失ってことを気にしないで、明るく皆を繋いでくれる。

 

明るくて、優しくて、強いんだ。

普段はぐーたらで、母さんに叱られないとテスト勉強もそんなにしないけど…やるって決めたら普段から想像もつかない程真剣な様子でやり遂げる。

 

そんな姉ちゃんと遊びに出掛けた、当然イリナもついてきた。

 

山に行くってなった時は驚いたけどついたらついたで楽しかった。

風は気持ちがいいし、ねぷ姉ちゃんが疲れたって言いながら座り込むのが可笑しくて。

 

で、中腹位で休憩用の広場があったからそこでかくれんぼをしようってイリナと二人で言い出したんだ。

姉ちゃんは快く承諾してくれた。

 

「じゃあ、私が鬼だね?」

 

そうして始まったかくれんぼ。

かくれんぼには自信があったから隠れられそうな良い穴があってそこで丸まってた。

 

…後で叱られて気付いたけど、その場所は指定された場所より少し奥だった。

 

そうやって静かに隠れていたら、何かが聞こえた。

草を踏みしめる音、枝を踏み折る音。

ゆっくりとその音が近づいてくる。

姉ちゃんにしてはやけに慎重だなと子供ながら思った。

 

…そしたら、それは間違いだと気付かされた。

 

俺は姉ちゃんかどうかを確認しようとして、穴から顔を出した。

山には他の動物がいる可能性もあったから…

そうして、それと目が合った。

 

「──」

 

「く、熊…!」

 

野生の熊だった。

 

当然ながら野生の熊なんて初めて見た。

怖くて尻餅をついて体が震えた。

 

そうやって震えている俺に熊はジリジリと寄ってくる。

 

「──!」

 

「う、うわぁぁ!?」

 

怖くて、助けてほしくて叫んだ。

 

戦える力なんて無い。

神器が子供の俺に発現してる訳でもないし、ましてや悪魔でもないただの子供の俺は怖くて叫ぶしかなかった。

 

けど、何となく…姉ちゃんなら。

姉ちゃんなら助けてくれる。

そういう押し付けがましい確信があった。

 

「一誠!」

 

とても焦ったような声で姉ちゃんが俺の前まで来た。

熊なんて怖くないっていうくらいに。

 

「ね、ねぷ姉ちゃん?」

 

姉ちゃんは顔だけこっちに振り向いて笑顔を見せる。

 

「私がいるよ!熊なんか、すぐに撃退しちゃうから!」

 

その言葉は何だか100%信じられるって感じる言葉で。

姉ちゃんならやれるって思えて。

本当なら姉ちゃんも逃げなきゃいけないのに。

 

だって、勝てるわけがないんだ。

子供の俺達に、勝てるわけが。

 

でも俺は咄嗟に…

 

「う、うん!」

 

「よぉし!」

 

俺の言葉を聞いて、嬉しそうにしながら太い木の棒を構える。

 

「このひのきの棒があれば怖いもの無しだよ!」

 

「─!」

 

「主人公タイム!私の活躍のために撃退されちゃってね!」

 

そっからのねぷ姉ちゃんは凄かった。

熊が手を振って爪で裂きに来てもひょいとかわすし、山で転びやすいのに軽快なステップで翻弄するし。

何なら木の棒で頭をぶっ叩いたりしてたし。

 

…今にして思うと、俺の信じる心が姉ちゃんの力になってたんだと思う。

あの頃から姉ちゃんの力は戻りかけてたんだ。

 

そうして、熊は逃げ出した。

あっさりと撃退した姉ちゃんは熊の姿が見えなくなるまでじっと見てから自分の方に振り返った。

 

「いっちょあがり!一誠、大丈夫だった!?」

 

「あ、う…」

 

思わず目を疑った。

まさか、撃退するなんて思わなかったし、無傷だなんて信じられなかった。

 

でも、それよりも安心感が勝って思わず涙が出てきた。

そのまま、大声で泣き出してしまった。

 

「う、うぁぁぁぁん!!」

 

「ありゃりゃ~…」

 

姉ちゃんは俺をもっと安心させるように抱き締めた。

 

「怖かったよね。でも、大丈夫だよ!私が守るからね!」

 

「う、ぁぁぁ!!」

 

「よしよし、いい子いい子だね~…」

 

「っとと…ネプテューヌ、どうしたの!?」

 

「あ、イリナちゃん。あはは…ご覧の有り様?」

 

その後、隠れてたイリナもこっちに来て。

俺が泣き止むまで姉ちゃんは俺を抱き締めて頭を撫でてくれた。

俺は、守って貰ったんだ。

 

イリナも事情を知ってから俺に大丈夫でよかったと抱き付いた。

 

泣き止んだ俺はイリナの方に行かなくてよかったと思った。

姉ちゃんは助けてくれると思うけど、同じ結果だったかは分からない。

 

その後、一緒に手を繋いで皆で帰った。

怖かったし、泣き疲れたから、遊ぶ気力もなかった。

イリナも同じようで、しばらくあの山にはいかないでおこうって話になった。

 

それから家に帰ってから姉ちゃんは母さんに謝った。

イリナも一緒にいて、俺とイリナはどうして姉ちゃんが謝るのか分からなかった。

年長者としての謝罪…今になると分かる。

 

「おばさん、ごめん!私が面倒見きれなかったばっかりに一誠を危険に晒しちゃって…」

 

「…イリナちゃんも、二人も怪我はないのね?」

 

「う、うん。あの、母さん…」

 

「そんなに心配しなくても怒らないわよ。」

 

「ほんと?」

 

「終わりよければ全てよし…って言うじゃない。

でも、運良く撃退できたからといって熊に木の棒で挑むのは良くないわね。」

 

「う、ご、ごめんなさ─「私なら鉄パイプ片手にやるわね。」おばさん!?」

 

「あはは、まあしばらくはあの山はやめなさいね?」

 

そう言ってから俺達をぎゅっと抱き締めてくれた。

母さんからは特にお咎め無しだった。

大人の包容力っていうか…取り敢えずそう言う感じの物を感じた。

無事でよかったって本当に思っててくれた。

 

この時からだったと思う。

 

もうこんなことにならないように、強くなりたいってなった。

姉ちゃんが謝ったり、泣くことが無いように。

俺が強くなって姉ちゃんの前に立てばそんなことは起こらないって思って…努力をした。

 

イリナも同じような心境だったのか、離れるその時まで一緒に頑張った。

といっても小学生が出来ることなんてたかが知れてる。

だから、体を鍛える位しか出来なかったがそのお陰で周りの悪ガキは伸せるようにはなったと思う。

 

それから成長して、イリナがトウジさんと一緒に行っちまった。

 

仕方無いって事もあったけど…でも、イリナのあの時の言葉は今でも鮮明に思い出せる。

 

「私、あっちに行ったらもっと頑張って一誠君とネプテューヌが驚く位凄くなるね!」

 

涙を流しながら姉ちゃんと俺に誓うように言ってきたイリナにしっかりと頷いた。

だから、イリナも頑張ってるから俺も頑張ることを諦めちゃいけないって思って…色々とやった。

 

勉強はしたし、体を鍛えるのは他の事で頻度は下がったけど続けた。

 

全部、姉ちゃんを守りたいっていう俺の努力だった。

…けど、俺はまだ弱かったようで。

 

中学生一年生のある日。

 

姉ちゃんと同じ中学だ、当たり前だが。

 

そんな学校で、俺にとっては後悔する日があった。

 

姉ちゃんは学校だと人気者で、俺は一緒にいる弟って感じだった。

ただ、姉ちゃんは人気だけどその分色々と面倒も付き纏って。

そういうのを見て嫉妬の心か知らないけど、下らないちょっかい…まあ、俗に言うイジメに近い事が起こったことがあった。

 

「いたぁ!?」

 

「どうした姉ちゃん!って、それ…」

 

「画鋲だね~…間違って入れちゃったかな?」

 

「んな訳ねえだろ!くそ、何処の馬鹿だよ…!」

 

姉ちゃんは特に気にしなかった。

多分、色々気付いて、俺を気遣ったりもした上で何もしなかった。

俺は、そうじゃなかった。

 

姉ちゃんを守らなきゃいけない。

守って貰ってばかりの俺じゃなくならないといけない。

姉ちゃんは、俺が守るんだ。

 

…けど、学年が違うからクラスも違う。

そのクラスで起こってることは俺に止めることは出来ない。

正直机を殴りそうになった。

 

古典的なイジメのパターン。

 

俺は放課後に姉ちゃんのところへ行った。

 

「ネプテューヌ、これやっといて。」

 

「え?当番は君だよね?」

 

「っさいなぁ…やれって言ってんのよ!」

 

女の嫉妬だ。

何に嫉妬したか知らないけど、俺が来た時、運がいいのか悪いのか姉ちゃんが黒板消しを投げられてる場面を見た。

 

咄嗟に腕で庇ってたけど…そんなことはどうでもよかった。

 

姉ちゃんに物を投げやがった。

 

こいつか、こいつなのか!

 

そこから、俺は激情に身を任せてその女に詰め寄った。

 

「一誠?」

 

「テメェか、画鋲仕込むだのして姉ちゃんをいじめる奴は。」

 

「腰巾着じゃない。上級生に対してその態度は…」

 

「どうでもいいんだよ…!」

 

「あぐっ…!」

 

胸倉を掴み上げる。

ぶん殴ってやる。

絶対に許すわけにはいかねぇ…こういう奴は言って聞く奴じゃないんだ。どうせ、またやる。

 

そう思って拳を作る。

 

他の生徒は止めようとしたりする人もいたせいで俺は引き剥がされた。

面白がってる奴もいたが…そんなのはどうでもいい。

 

「い、一誠!」

 

「話せテメェ!姉ちゃんは悪いことをして無いんだ…どうしてこんな事しやがった!」

 

「っ、小さくて可愛いからってチヤホヤされてテメェムカつくのよ!他の人に尻尾振っちゃって…!」

 

「私はそんな…」

 

「お前達、何をしてる!」

 

教師が生徒と一緒に戻ってきた。

 

当然、教師との話し合いになった。

あの女は嘘を言いまくったが、他のいい生徒の証言であの女が全面的に悪いって結論に結局なった。

 

「…だが、お姉さんを守りたいからって乱暴をするのは良くないな、一誠君。」

 

「…はい、ごめんなさい。」

 

「だが、その志は立派だと思うよ。今回の事はご両親に連絡するから、しっかりと説明するように。」

 

「はい。」

 

…あの女から謝罪は無かった。

あるにはあったが、形だけの心なんかこもってない謝罪だった。

 

帰り道になって、姉ちゃんと帰る。

 

姉ちゃんを守れたのか…分からなかった。

明るさが無かった、あんなことがあったし当たり前だけど…俺の事を気にしてるのは分かる。

 

「ねぷ姉ちゃん…俺、迷惑だった?」

 

「え?そ、そんなこと無いよ!一誠が守ってくれたのは嬉しかったし…私だったら黙っちゃってたかもだし…」

 

「…ごめん、手ぇ出しそうになった。」

 

「うん…良くないと思うけど、一誠は反省してるよね。

だから、私からは何も言わないよ。」

 

大事になったといえばなったが、暴力的な場面に行く前に止められたからよかった。

…でも、帰ってから母さんにひっぱたかれた。

 

ヒリヒリする頬を抑えず、母さんを見る。

単純に怒ってるわけじゃない。

子供を心配する目でもあった。

 

「どうして叩かれたか、分かるわね?」

 

「…殴ろうとしたから。」

 

「そうよ。それだけはしちゃいけないわ…暴力は何も解決しない。」

 

「はい。」

 

「それをしたら貴方もいじめた子と一緒になっちゃうの。今回はそうならなかったけど、次からは駄目よ。」

 

「…はい。」

 

「でもね、一誠。」

 

次に、頭を撫でられた。

 

「お姉ちゃんを守ろうってしたのよね?偉いわ。

でも、お姉ちゃんは優しいから殴ろうとしたらどういう気持ちになるか分からない一誠じゃないでしょ?」

 

「…うん。」

 

「大丈夫、悪いのはあっちなんだから。それで、今回一誠が反省することが何かしら。」

 

「暴力を振るわない。」

 

「そうよ。」

 

「ごめんなさい…!」

 

「いいのよ…一誠はちゃんと分かってる。

お姉ちゃんの事は、お母さんに任せなさい。」

 

母さんは、いつも優しい。

優しすぎて、涙が出る。

こんな馬鹿な俺にもこうして愛情を注いでくれる母さんに、俺は感謝の念が尽きなかった。

 

姉ちゃんのケアも母さんがしてくれた。

 

俺はというと…

 

「よし、一誠!土曜日は二人で何処か行くか!」

 

「父さん?」

 

「おじさん、私は~?」

 

「ネプテューヌはそうだなぁ…母さんと何処か行きなさい。」

 

「あら、たまにはいいわね。」

 

父さんはこんな感じで、話を聞いても特に何も言わずに気分を切り替える話を振ってくれる。

それで、本当に土曜日に俺と父さんは釣りに出掛けた。

尚、俺は釣りの経験がないから父さんに教えて貰いながら楽しんだ。

 

「一誠、お姉ちゃんを守ってやるんだぞ。お父さんとの約束だ、出来るな?」

 

「おう、俺が姉ちゃんを守る!」

 

「それでこそ俺の息子だ!

いいか?俺がお前と同じ歳の頃はな──」

 

そんな風に、昔の話を交えながら色々と話した。

俺には、もったいない程いい両親だ。

 

だから、母さんと父さんの言葉は守らなきゃいけない。

力に身を任せないで、姉ちゃんを守る。

 

そう決めた…決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと昔を思い出して、今を振り返る。

レイナーレっていう危機から守られて、俺はあれから成長したのか。

…してない。

寧ろ、また暴力に走りかけてる。

 

姉ちゃんを守るって決めたのに、守れてねぇ。

 

「…俺は、弱いのかな。」

 

アーシアを助けた時も、姉ちゃんや木場達がいたからだ。

ライザーに勝てたのは未知数な姉ちゃんの力があったからだ。

 

コカビエルの時、姉ちゃんが暴走して…助け出せた。

けど、守れた訳じゃねぇ。

 

三勢力会談の時、ヴァーリに負けた姉ちゃんが浚われた。

俺に、力がなかったせいだ。

 

ディオドラの時、姉ちゃんとアーシアを危うく失うところだった。

 

俺は、強くなれてねぇ。

現状の一歩後ろにいるだけだ。

ねぷ姉ちゃんはヴァーリに気があるのかもしれない。

それとこれとは話は別だ。

 

…俺は、強く、なりたいんだ。

 

全部とは言わない。

姉ちゃんや仲間の前に立って少し位守れたら。

それでいいって思って…でもそれも出来なくて。

 

毎回、姉ちゃんが辛い思いをしてる。

ここ最近は特にそうだ。

俺は知ってるんだよ、姉ちゃん。

ねぷ姉ちゃんが願ってるのは平穏な日々で、そこで皆と笑い合えればって。

 

でもさ、そこに姉ちゃんがいねぇと俺は笑えねぇんだよ。

俺に、守らせてくれないのか。

俺が力不足だからなのか。

 

…それを否定したくて、ヴァーリに戦いを挑んだ。

けど、あいつは怪我して今は療養中。

 

「イッセーさん。」

 

「あれ、アーシア。どうした?」

 

「思い詰めた顔をしてますよ?」

 

「…ごめん。」

 

「謝ることじゃありませんよ。」

 

アーシアがいつの間にか居て、俺の隣に座る。

…アーシアも、歯痒かったんだろうな。

ロキを助けられなかったし、何より後ろで見てる自分が何よりも悔しいって思ってると思う。

 

「ネプテューヌさんの事ですか?」

 

「ああ。…俺、強くなれてないなって。」

 

「どうしてそう思ったんですか?」

 

「…強くなったって思っても、姉ちゃんはその先を行っててさ。

俺達よりも一歩前に出て戦うんだ。

俺は、それを一歩後ろで見てるしかなくて…守りたいって思ってるのに、守れなくて。」

 

「…私は、守れてると思いますよ。」

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「ネプテューヌさんとは一緒の部屋で寝ますから、愚痴とか悩みとか色々聞くんです。」

 

アーシアはその時の事を思い出すように話す。

姉ちゃんのその時を。

 

「最初は愚痴なんです。あのゲームはアイテムが~とか、そんなのばかり。でも、途中から悩みを打ち明けてくれるんです。

『私は一誠に迷惑かけてないかな』って言ってました。」

 

「…何て言ったんだ?」

 

「逆に聞いてみたんです。どうしてイッセーさん達よりも前に出るんですか?って。ちょうど、イッセーさんの悩みでしたね。」

 

「アーシア…何か、強かになったな。」

 

「無茶ばっかりする人が二人ほどいますから。」

 

「ごめん。」

 

「いいんですよ、分かってますから、お二人の気持ちは。

それで、ネプテューヌさんは言うんです。」

 

『あーちゃんや、一誠っていう弟と妹がいるからお姉ちゃんは頑張れるんだよ。カッコつけたいとかあるけど…でも、二人がいなかったら、心が折れてたと思うんだ。二人とも、私の支えなんだよ?』

 

「…って言ってました。」

 

「何だよ、それ…ハハハ。」

 

姉ちゃん…俺、守れてたのか?

姉ちゃんの心を、少しだけでも支えられてたのか?

 

「イッセーさんは闇雲に走りすぎです。一人で悩んで…そういう所はそっくりですよね。」

 

「…かもな。」

 

「私でよければ、いつでも相談に乗ります。

だから、抱え込まないでください。イッセーさんは、頑張ってますよ。」

 

笑顔でそう言ってくれるアーシアに少し救われる。

そうか、走りすぎか。

…思えば最近、暴走してたかもしれない。

 

色々とありすぎて、心の余裕が無くなってきてたんだろう。

 

「ありがとな、アーシア。やっぱ、アーシアが居ないと駄目だな。」

 

「え、そ、そうですか?」

 

「ああ。…それはそれとしてヴァーリの野郎は叩きのめす。」

 

「結局ですか?」

 

「馴れ馴れしすぎだろ、アイツ!姉ちゃんも姉ちゃんだけどさ…強いから腹立つんだよ。」

 

「あはは…でも、応援してますね。」

 

「ああ!」

 

少し、スッキリした。

心が軽くなった。

 

色々と、見えなくなってたな。

全部じゃなくていい。

少しでも、支えられれば…

 

でも、いつかは皆を守りきって見せる。

せっかくの力なんだ、これを使いこなさねぇとな。

 

悪かったな、ドライグ。

 

『まったくだ。』

 

これからも、よろしく頼むな。

 

『当たり前だ、相棒。』

 

新しく、決意を胸にこれから頑張ろう。

今度はもうちょっとゆっくりと。

 

目指す場所は遠いけど、いつか絶対に辿り着いてみせる。

 

俺は、ねぷ姉ちゃんの弟だからな。



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Cへの道筋─mk2─
話をしよう、あれは今から…えっ、真面目に?はーい


300年だ…(挨拶)

原作の悲劇を避けるためにここであの問題に向き合います。




やっほー!

ちょっと乙女発揮しちゃったネプテューヌだよ!

え、コラボ?

そうだよコラボだよ?

 

楽しかったよねぇ!!

 

ロキとの戦いから数日が経過した。

サーゼクスさん曰く、ヴァーリは置き手紙を残して出ていっちゃったらしい。

勝手だよね、ほんと。

 

『傷は癒えた。ネプテューヌの事を頼む。』

 

…本当、勝手だよ。

気にするこっちの身にもなってよね。

 

で、その数日の間で起こったことなんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、アーシア、いーすん。…話がある。」

 

「え、今から?」

 

一誠が部屋に入ってきて、開口一番にそう言った。

いーすんと顔を見合わせてから、あーちゃんとも顔を見合わせる。ハテナを作る自分達。

 

でも、何だか決意みたいのを感じるけど…

 

「とりあえず、座って座って!」

 

「おう。」

 

「イッセーさん、どうしたんですか?」

 

「…そろそろ、話そうと思うんだ。」

 

「…ゴリョウシンに、ですね?」

 

「ああ。」

 

…ああそっか。

まだ、言ってなかったね。

 

うん…一段落済んだばっかりで色々とあったから少し頭から抜け落ちてたよ。

 

「待たせてごめんな、姉ちゃん、アーシア。」

 

「い、いいえ!私も…最近になってようやくですから…」

 

「一誠には一誠の整理する時間がある。私達はそれを分かってるよ。…今から?」

 

「一日置いたら、揺らいじゃいそうでさ。」

 

「ううん、いいよ。じゃあ、リアスちゃんも呼ばないとね?」

 

「部長さん、今から来れるでしょうか?」

 

「来るよ。リアスちゃんもね、気にしてたから。」

 

前に一度、話さないの、とは聞かれた。

 

その時はまだって答えたけど、話す時は呼んでねと言われたし。

そういう約束は違えない人だから、大丈夫。

 

何気に信頼度なら負けてないよ。

 

携帯を取り出して、リアスちゃんに電話を掛ける。

 

コール音が少し鳴ってから

 

『もしもし、ネプテューヌ?』

 

リアスちゃんの声が聞こえた。

 

「うん、お昼は食べ終わったかな?」

 

『ええ、どうかしたの?』

 

「一誠の覚悟が決まったから。

今日、話すことに決めたよ。」

 

『!…そう、分かった。少ししたらそっちに行くわね。』

 

「うん。」

 

優しい口調。

多分、リアスちゃんもとっくに話す覚悟は決めてたんだ。

もしかしたら、二人に怒られるかも、恨まれるかもしれないのに。

怖い時もあったと思う。けど、それをおくびにも出さなかった。

 

…リアスちゃんは、頼ってばかりって言うけど、そうじゃないよ。

 

堂々としてるから、皆動いてくれるんだよ。

 

「部長は、なんて?」

 

「少ししたら来るって。それまでにお父さん達に言おうね。」

 

大事な話があるって。

 

 

そうして、お母さんとお父さん(今日は休日だったらしい)に大事な話があるって三人で言うと二人とも分かったって言って待ってくれた。

 

…うん、ありがとう。

 

少しして、リアスちゃんが来た。

お父さんとお母さんはどうしてリアスちゃんがって思ったみたいだけどリアスちゃんから

 

「私もご両親のお子さん…アーシアさん、一誠さん、ネプテューヌさんの大事な話に大きく関わっています。

その為に、ここに来ました。」

 

「…分かりました。座ってください。」

 

真剣な様子にお父さんも姿勢を正して、リアスちゃんにも座るように言う。

自分達三人と両親二人が向かい合う形で座って、リアスちゃんもこっち側に座った。

 

「それで、話って?」

 

「うん。…これから話すことは、二人からしたら馬鹿らしい話だと思う。でも─」

 

「ねぷちゃん。」

 

お母さんが遮る。

優しい瞳だった。

 

「ねぷちゃんが話したくなった時に話せばいい。

そう言ったわね。…それが今なのよね?」

 

「…うん。」

 

そうだった。

先手は、既に打たれてたようだ。

 

流石お母さんだ、敵わないや…

 

「じゃあ、話すね。私や、一誠達の事。」

 

それから、長い話が始まった。

 

一誠がレイナーレに殺されかける所から始まって…その時点でちょっと目をパチクリさせてたけど、一誠やあーちゃん、リアスちゃんが悪魔である事を証明すると唖然としていた。

 

「つまり…一誠とアーシアちゃんはリアスちゃんの眷属…悪魔になったって事でいいのか?」

 

「はい、その認識で問題ありません。

ですが、これは事前に確認を取った上でのご本人の判断だったということをご了承ください。」

 

「私の場合はとても危ない状態でしたが…今でも悪魔になる判断をしたことを後悔していません。」

 

「俺もだ。…人間の一誠じゃなくなったけど、俺は、それでも守る力が欲しかった。」

 

「…そうか。」

 

そして、一誠達には神器が宿っていること、この世界の裏側をしっかりと説明した。

リアスちゃんが逐一解説を入れてくれて、二人とも理解しやすかったと思う。

 

これまで、どういうことに巻き込まれて、首を突っ込んできたかも話した。

 

「…リアスちゃん、いえ、グレモリーさん。」

 

「はい。」

 

「三人とも、ずっとこうして?」

 

「話そうとは思いましたが…三人、特に一誠さんのお気持ちの整理が出来ていなかったようなので今日まで待たせていただきました。

…ですが、私や私の関係者がお二人のご子息達を巻き込んだことは変えようのない事実です。どんな罵声も浴びる覚悟は出来ています。」

 

「…三人とも、後悔してないのね?」

  

リアスちゃんの言葉を聞いて、お母さんがそう聞いてくる。

お母さんとお父さんの視線が自分達を貫く。

嘘を言ったら許さないと言う視線。

 

「うん、私は後悔なんてしてないよ。」

 

「俺も、してないぜ。」

 

「わ、私も皆さんとこの道を進むことに戸惑いはありません!」

 

「…ねぷちゃんは?」

 

「え?」

 

「まだ、ねぷちゃんの話を聞いていないわ。」

 

「あ…そうだった。」

 

一誠達の話をずっとしてたから肝心の自分の話をするのを忘れてた。

 

(いーすん、お願い。)

 

─分かりました。

 

取り合えず、いーすんに出てくるように告げる。

すると、光と共に、自分の中からいーすんが出てきた。

二人とも、吃驚したみたい。まあ、そりゃそうだよね。

 

いーすんは二人に丁寧にお辞儀をする。

 

「はじめまして、おフタカタ。ワタシはイストワール。

メガミサマ…ネプテューヌさんのサポートをやくわりとしているシショです(^-^)」

 

「え、あ、どうも一誠達の父です。」

 

「あら、可愛い。…それで、イストワール…さん?」

 

「どうおよびするかはごジユウにおねがいします。」

 

「そう?ねぷちゃんはなんて呼んでるの?」

 

「いーすんって呼んでるよ。」

 

「なら、私もいーすんって呼ばせて貰うわ。

それで、いーすん…貴女が今言った女神様って…ねぷちゃんが女神って事?」

 

「はい、ネプテューヌさんはメガミサマです。

しゅぞく、メガミです。」

 

「…そう。」

 

「父さんちょっと混乱してきたな…ネプテューヌは女神で、一誠とアーシアちゃんはリアスちゃんと同じ悪魔になったって事…なんだろう?それで、危ない事をしてきた。」

 

「うん。」

 

いきなり怒涛の説明だったから混乱するよね。

でも、何日も説明してたら辟易としちゃうだろうし、一気に説明して漠然と理解してくれればいいんだ。

 

「……一誠達に関しては分かった。悪魔として生きていく…そう決めたのなら、俺からは何も言うことはない。ただ、無茶ばかりしないように、としか今は言えない。

…ネプテューヌはどうしてなんだ?」

 

「どうして、って?」

 

「女神だとしても…それは昔の話だ。

…戦う必要は無いんじゃないか?」

 

無理をしてるんじゃないか。

そんな視線による訴えを感じとる。

 

…うーん、優しい。

 

戦う必要。

確かに、自分には…()()()()

 

多分、あの時あの場にいなければ何も知らないまま生きていたかもしれない。

ずっと、女神としての力も理解しないまま生きていたかもしれない。

 

「…戦う必要は無かったかもしれない。

でも、私はそっちを選んだ…この力が、一誠達家族や友達を守ることに繋がるのなら…私は迷い無く使うよ。」

 

「色々あったんじゃないのか?ここ最近、お前のちゃんとした笑顔を見てない気がするぞ。」

 

「…うん…色々、あった。ありすぎて、ちょっと混乱したくらいだけど。」

 

本当に色々とあった。

嫌なこと、辛いこと、苦しいことが多くあった。

でも…

 

「でも、その中でリアスちゃん達や他の仲間と出会って、話をして、協力して…辛いことばかりじゃなかった。楽しいことも沢山あったんだ。」

 

「ねぷちゃんは、それでいいのね?」

 

「…うん、いーすんもいる、一誠達もいる。

大丈夫、私は…」

 

「頑張れる、なら許さないわよ。」

 

「えっ」

 

「ねぷちゃんの頑張れるは、無茶するサインなのよ?お母さんちゃんと知ってるんですからね。

だから、頑張れる、は禁止。」

 

お母さんの見透かすような目。

優しいけど、厳しい言葉。

 

いつもおかえりって言ってくれる人の言葉。

辛いことがあって弱音を吐きたくなった時、何も言わずに聞いてくれる人の…心配する言葉。

 

「…私、皆と進むよ。

無茶もしちゃうと思うけど…それでも、私は見て見ぬ振りって出来ないからさ。だから、手を伸ばすよ。」

 

「…」

 

理解の追い付かない話だっていうのに、それでも先に出てくる言葉が子供である自分達を心配する言葉だった。

本当は、今すぐそういうことをやめて欲しいって思ってる筈。

でも…昔から二人は自分達が考えて選んだ事を尊重してくれる人だった。

 

だからきっと、今回もそう。

 

お母さんは厳しい表情から一転して穏やかで優しい表情に戻る。

お父さんもため息をついてから苦笑い。

 

「なら、頑張りなさい。やると決めたらやり通しなさい。

私達には、出来ることは殆ど無い…それこそ、辛いことや悲しいことを吐き出したい時に受け止めてあげる事くらいしか出来ない。

だから…」

 

お母さんとお父さんがリアスちゃんに体を向ける。

そうして、頭を下げた。

 

「「私達の大切な子供を、お願いします。」」

 

「…はい、グレモリーとして、そしてリアスという個人として。

より、三人を支えることを誓います。」

 

…大切な、子供。

そう言ってくれた。

 

「ネプテューヌさん、ないているんですか?」

 

「えっ、あ…あはは、ごめんね、すぐ泣き止むから…」

 

拭っても拭っても、涙は止まらない。

嬉しかった。

不安だった、女神だから受け入れられなくなっちゃうんじゃないかって。一誠達を突き放しちゃうかもしれないって。

ずっと、怖くて。

でも、話さないと進めないからって、思って…!

 

一誠とあーちゃんも、涙を流している。

 

一誠は顔を俯かせて、拳を握り締めている。

あーちゃんは、口元を押さえて。

 

皆が皆、嬉しくて、黙っていたことが申し訳なくて泣いていた。

 

「もう、どうしたの?」

 

「ごめ、なさ…!拒まれちゃうんじゃって…思って!」

 

「俺も…すげぇ怒鳴られて、家にいられないんじゃ、って…!」

 

「ごめんなさい…黙っていて…!」

 

「…いいんだぞ、三人とも。そりゃ、もっと早く話して欲しかったけど…三人とも話し合って決めて、こうして俺達に打ち明けてくれたじゃないか、リアスちゃんまで呼んで。」

 

「追い出しもしないし、拒みもしない。

いい?女神だろうと、悪魔だろうと、何かを宿してようと─」

 

 

 

「─貴女達は、私達の家に来てくれた大事な子供なんだから。」

 

 

 

思わず、抱き着いた。

席を立って、お母さん達の方へ、迷い無く抱き着いた。

一誠もあーちゃんも、二人へ。

 

二人とも、困ったように、でも嬉しそうに抱き締めてくれた。

 

声をあげて泣いた。

リアスちゃんが見てるとか、そういうことを気にしないで…皆で、泣いた。

 

ここが、居場所なんだって。

帰ってきていい場所なんだって…しっかりと分かって。

嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなくて。

 

言いたいことがいっぱいある筈なのに、一つしか言葉が浮かばなくて。

 

 

 

「ありがとう…!!」

 

 

 

自分達を、大事な子供だって言ってくれて。

リアスちゃんも貰い泣きしたのか、目頭をハンカチで拭ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも二人はいつも通り接してくれる。

ただ、変わったのは…

 

お母さんが部屋に入ってくる。

 

「ねぷちゃんねぷちゃん!」

 

「な、なに?」

 

「ちょっと変身して?」

 

「え、ええ?疲れるから嫌なんだけどなぁ…」

 

「せっかくいいスタイルしてるんだから戦いばっかりじゃなくてオシャレしなきゃ損よ!お母さん命令!」

 

「うーしょうがないなー…」

 

「…」

 

「ネプテューヌさん、いい機会ですよ!」

 

お母さんとあーちゃんに言われて、女神化をする。

いつも展開してる装備は無くしてるから部屋の物にぶつかるとかはない。

 

「これでいい?」

 

二人とも目を輝かせて…あーちゃんに関しては見飽きてるでしょ?

 

「やっぱりいつものねぷちゃんと違うから新鮮味がまだ抜けないわね~…これで着飾ったらどんな男もイチコロ間違いなしよ!」

 

「どんな、男も?」

 

その時、自分に電流走る。

オシャレを、すれば…どんな男も?

 

 

 

へー…へー…

ふーーーーーん…

 

 

 

「…そうね、私もすべきだと思うわ。」

 

「そうでしょそうでしょ?」

 

本当はファッションとかそういうのに興味はないんだけど、うん、主人公的に考えて見栄えって大事だと思うんだよね!

登場した時にボロボロな格好は窮地を脱して救いに来るシーンとかじゃないと映えないんだよ!

 

うん、だから別にヴァーリがどうとかじゃないよ?うん違うよ!?

 

「じゃあ、今日はこの時のために色々と買ってきたから何が似合うか試しましょうか!」

 

「はい!」

 

「分かったわ。」

 

「…だいじょうぶでしょうか?(;^^)」

 

その日、自分の部屋は着せかえ部屋と化した。

 

え、描写しろ?

ふっふっふ…それはまたのお楽しみだよ!

 

え、どうしても?

大丈夫!ネプテューヌファンな皆ならあんな衣装やこんな衣装が思い浮かぶ筈! 

うん、エッチな衣装想像した人素直に挙手ね。

 

終わった頃には自分は女神化を解いてベッドに突っ伏していた。

 

「着せかえ人形って……大変なんだね……」

 

「ネプテューヌさん…大丈夫ですか?」

 

「ノリノリで色々と着せられたよね…あんないいドレス持ってたのは驚きだったけど。」

 

「貰い物だそうですよ。」

 

「よく貰えたね~」

 

「お母様の交友関係が気になりますね。」

 

「あはは、それは分かるかも。」

 

「それで、ネプテューヌさんはなにかおきにいりはみつかりましたか?(-ω- ?)」

 

お母さんは夕飯を作りに下に戻って、残った三人で談笑する。

一誠とお父さん、暇だったろうな~…

 

「うーん…まだよく分からないや。」

 

「これからもオシャレ頑張りましょう!」

 

「しばらく着せかえ人形は勘弁かな…」

 

「ふふっ、ですが…たのしそうでしたね。」

 

「…うん、久しぶりに心から笑えた気がするかも?」

 

家族とのこういうドタバタは何だかいつもより楽しくて。

自然と顔がほころんだ。

 

お母さんとお父さん、一誠とあーちゃん、自分といーすん。

家族皆が笑顔な家庭だ。

 

 

 

─ああ、そっか。

 

この家は、自分の理想だ。

人も、人じゃない人も…皆が笑顔でいられる場所。

小さい自分の理想の場所。

そこが自分の帰る家。

 

…こんなにも恵まれてる。

周りの人にも、自分にも恵まれ過ぎてる。

 

この場所は、絶対に守らなきゃいけない。

自分の理想であり、帰る場所であるこの場所を。

自分達を笑顔で受け入れてくれて、激励の言葉まで送ってくれた二人を。

 

「守っていこうね、ここを。」

 

「…はい!私達の家ですから!」

 

「ですね。」

 

皆が笑い合えるこの場所を守っていこう。

 

そう、誓った。

 

「姉ちゃん、アーシア。飯だぜ。」

 

「はーい!」

 

「はい!」

 

「…そういや、一つ聞いていいか?いーすんって食事はどうしてるんだ?」

 

「ワタシですか?σ(・д・?)」

 

「あー…」

 

一誠、ついに踏み込んだ!

実は自分も知らない事情に踏み込むとは成長したな!

 

「ワタシはネプテューヌさんのシェアをすこしいただいていますね。」

 

「……え、それだけ?」

 

「はい、そうですが?(・_・?)」

 

「…一誠、あーちゃん。」

 

「…おう。」「…ですね。」

 

「どうしました?」

 

「確保ーーー!!」

 

「「おおー!」」

 

「はい?ひゃぁぁぁぁぁぁ!?Σ(O_O;)」

 

いーすんを確保し、下へと直行!

 

知らなかったとは言え、ご飯の美味しさを知らないまま生かす訳にはいかない!

今日が飯の美味さを知る時と心得るがいいよ!

 

お母さんにいーすんの分もって言うと

 

「ふふっ、はいはい。」

 

「ハハハ、食事の席が一つ賑やかになったな。」

 

二人して笑うものだから、自分達も笑っちゃう。

 

そして、いーすんはというと…

 

 

「おいしいです…これをまいにちたべているなんて…ズルいですよ!(´;д;`)」

 

「めっちゃ泣いてるやんいーすん…」

 

めっちゃ感動してた。

これが、ご飯の素晴らしさ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になって、電話を掛ける。

 

ちょっと外で空を眺めながらっていう感じで。

 

『はい、もしもし?』

 

「やっほー!リアスちゃん!」

 

『あら、どうしたの?』

 

「ううん、ちょっとね。

…ありがとね、待っててくれて。」

 

『もう、本当にどうしたのよ。その言葉なら前も聞いたわよ?』

 

困ったように笑いながらそう言ってくるリアスちゃん。

そうは言うけど、自分も怖かったろうに待ってくれたリアスちゃんに感謝の念は絶えない。

管理者として、(キング)として当たり前とか言うけど、それとこれとは別なんだ。

 

「何度でも言うよ!リアスちゃんのお陰なんだから。

…リアスちゃんが居なかったら、今の私達は無かっただろうから。」

 

『…それは違うわ。』

 

「え?」

 

『私は一つの要因でしかなかった。でも、それを頑張って繋げたのは貴女よ、ネプテューヌ。ううん、貴女だけじゃない。

他の皆もそう…皆の意地があったから今がある。

決して私だけのお陰じゃない…それに、私なんて謝りたいくらいなのよ?』

 

「え、何で!?」

 

申し訳なさそうな声に困惑する。

リアスちゃんは頑張ってるのにどうして謝ってくるのか分からない。

 

『元々、私の管理不足が原因よ。子供だから、なんて言い訳は管理者がしてはいけない。この町に、私の管理不足のせいで堕天使が来てしまった。そして、イッセーと貴女が巻き込まれた…

貴女達はこうして許してくれてるけど…だというのに、こっちの事情にどんどん巻き込んでいく自身が…情けなくて。』

 

「リアスちゃん…」

 

『純粋に助けになりたくても、体裁が絡む立場って…嫌なものね。

ライザーの時も、コカビエルの時も、会談の時も。

イッセーとアーシアは別だとしても、貴女を遠ざけないといけない立場だったのに利用した。…利用、したのよ。』

 

「…」

 

懺悔だった。

自分の立場、実力を鑑みて、悔しくても自分達を巻き込まないと解決できない。

そんな事件ばかりだった。

 

『貴女は自分から進んでやったなんて言うでしょう。

でも、私は…それでも止めないといけないの。それを、実力不足なのをいいことにいいように利用した私に…感謝する必要なんて無いのよ。今回もそう、いっそ恨み言をぶつけてくれた方がどんなによかったか!』

 

「…うん。」

 

『貴女達をお願いしますって言われて、私の方が何倍も助けられていますなんて…言える筈無いじゃない…!』

 

「でも、私や一誠は…」

 

『神滅具や女神は関係無いわ!貴女達を守る立場である筈の私が守られている…それはあってはならないことなの。

ずっと助けて貰って、でも何も返す事が出来なくて…私は…』

 

消え入るような声で、途中から涙も混じった声になって。

 

ずっと溜め込んでた悔しさを吐き出して。

…自分の強さが苦しめてたなんて思っても見なかった。

 

「リアスちゃん。」

 

『…』

 

「私は、それでもリアスちゃんに感謝してる。

立場や実力に苦しんでいたとしても、繋げてくれたのはリアスちゃんだから。それに、戦いから逃げることは多分…出来なかったとも思う。私ってこんな性格だからさ。リアスちゃんの制止も聞かないでしょ?

だから、そこはごめんね。

でも…これからも、私はこういうことに首を突っ込む。」

 

『…どうしてもなのね。』

 

「うん。」

 

『……貴女は、馬鹿ね。

巻き込まれる必要なんて無かったのに、自分から巻き込まれて。』

 

「…怒ってる?」

 

『怒るに怒れないから嫌なのよ。利用してたのは確かなんだから。私が頑張っても貴女達は更に向こうへ行って…

こっちの気を知りもしないで。』

 

「ごめんね。」

 

『─でも…そんな貴女達が、私は大好きよ。』

 

それは、情愛の悪魔としてでもなく、ただ一人のリアスちゃんとしての言葉だった。

自分の歯痒さも、悔しさも辛さも…全部飲み込んだ上での言葉。

 

『だから、もっと努力しないとね。

強くなって、貴女達を守れるように。

私は、守られる王になりたいんじゃない。

守る王になりたいのよ。』

 

「…なら、頑張るしかないね。」

 

『ええ、今に見てなさい。』

 

リアスちゃんとの心が分かってよかった。

 

…それに、何も返せてないっていうけど違うよ。

 

自分達の今があるのは、間違いなくリアスちゃんのお陰でもあるんだから。

 

「あ、でも黒歌の時は、かっこよかったよ?」

 

『あの時本当に胃が痛かったわ。』

 

ああ…すっかり苦労人枠になっちゃって。







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いざ、精神世界へ!

女神様ぁぁぁ!(挨拶)

さあ、ようやくこの時がやって来てしまいましたね…




やっほー!皆と一緒に努力、友情、勝利!ネプテューヌだよ!

 

昨日はとっても楽しかったなぁ。

うん、色々と先送りにしてた問題だったからいい機会だったね。

 

さて、と…

 

紫の駒を取り出す。

 

「…まだ、こころのジュンビはできませんか。」

 

「ううん、準備は出来てる。…でも、自分勝手に進みすぎると怒られちゃうから。」

 

「…」

 

意外そうに自分を見つめるいーすん。

ま、まあ…そんな目をされるのも分かるけどさ。

 

「流石に、駄目だった時も想定しないとでしょ?」

 

「…そうですね。」

 

「いーすん、どうかしたの?」

 

「…ネプテューヌさん、やはりカオス化は諦めませんか?」

 

「どうして?」

 

「あまりにもリスクがたかすぎます。もし、シッパイすればネプテューヌさんだけでなく、まわりのかたにも…」

 

「それはそうだけど…」

 

「話は聞かせて貰ったぜ!」

 

扉が開いてそこから入ってきたのは一誠だった。

珍しくキメ顔だから多分失敗する。

 

「酷くない?俺がキメ顔だと失敗する法則出来てんの?」

 

「そ、ソンナコトナイヨー」

 

「棒読みじゃねぇか!」

 

「それで、イッセーさん。どうされたのですか?」

 

「あ、そうだった。いーすん、俺達の事を心配してんならその心配は無用だって事だ。」

 

「どういうことですか。」

 

「俺達がカオス化の事を考えてなかったと思ったら大間違いだぜ。この数日でアザゼル先生と俺達がその対策を練ってきたんだからな。」

 

「な、なんですとー!?私その話聞いてないよ!?」

 

「そりゃサプライズとして黙ってたからな。

んで…これに参加してくれたのが…ほい。」

 

「あ、紙なんだ。どれどれ…?」

 

紙を渡されて、書かれてる名前を読む。

 

えっと…オカ研の皆、おっちゃん、英雄派の面々、イリナちゃん…少し閉じる。

イリナちゃんも参加してたんだ。

 

「…多くない?」

 

「まだあんだろ?」

 

「えーと…」

 

サーゼクスさんとセラフォルーさん。

アジュカ・ベルゼブブ…誰だろ?魔王の人かな?

ミカエルさん及びセラフ一同…うっそぉ…セラフの人達とは面識無いよ?

 

「私のために?」

 

「皆、ねぷ姉ちゃんに感謝してるんだぜ。

そらもう全力だったぞ。」

 

「えっと…私、そんなに凄いことしてないよ?」

 

皆と力を合わせて頑張っただけで、自分は少し貢献した程度っていうか…

 

一誠は額を押さえてため息をついた。

 

「はぁーーー…姉ちゃんがそう思っていても、俺達はそう思ってないんだ。」

 

「でも…申し訳ないっていうか…」

 

「姉ちゃんは、受け取る系主人公なんじゃなかったのか?」

 

「うぐっ、痛いところ突くね一誠」

 

「俺達は姉ちゃんに助けて貰ってきた。だから、俺達も助けたいんだよ。姉ちゃん一人でガンガン進んでもいいこと無いんだから素直に受け取っとけよ。」

 

「そんなもんかな…?」

 

「そんなもんだよ。」

 

そんなもんかぁ…

でも、皆が自分のために頑張ってくれたのは素直に嬉しい。

そっかぁ…そんな感謝されることしてたんだね。

 

うーん、ねぷ子さんはただ皆と仲良くしたいとか悩み解決したいってだけだったから実感わかないなぁ…

 

「うん、ありがとう。」

 

「おう。」

 

「それで、具体的にどんなことをしたの?」

 

「カオス化するために、暴れる可能性を踏まえて、専用の部屋を作ったんだ。ミカエルさん達がいて助かったよ。」

 

「どういうこと?」

 

「カオス化って悪魔よりの性質だっていーすんが前に話してただろ?だから、抑えるなら天使の方が手っ取り早いって事であまりにも暴走が激しかったら光力を流して強制的に無力化させようって機能がついた。」

 

「なんか、物騒じゃね?」

 

「まあ…言う程酷くはないと思うぜ。」

 

「ぼうそうをヨクセイするためのそうち、ということですか。

…ネプテューヌさん、やりますか?」

 

「もっちろん!皆がやってくれたんだから、使わなきゃ損でしょ!

それに、皆の想いの結晶ってことだよね?なら、やるしかないよ!」

 

いーすんがため息をつく。

その後、困ったように笑う。

 

なんか、毎回ごめんね?

 

「しかたありませんね、ネプテューヌさんがコウカイのないセンタクがそれならばワタシはなにもいえません。

それに、ネプテューヌさんのためにここまでしてくださったみなさまにモウしワケがありませんからね。」

 

「だね。」

 

「いやぁ、照れるなぁ。」

 

「一誠だけのお陰じゃないでしょ?でも、ありがと!」

 

よしよしと一誠の頭を撫でる。

少し、久しぶりだ。

こんなに逞しくなっちゃって、誇らしいっていうか複雑というか。

 

「いつも、迷惑かけちゃってごめんね?」

 

「…ホントだぜ、しなくてもいい事にも首突っ込んで、俺達の身にもなってほしいよ。」

 

「ごはぁ!」

 

「でも…俺達はそんな姉ちゃんだから信じられるんだ。

一人じゃ大変でも、いーすんや俺達が支えっからさ。」

 

「うーん…出来た弟!」

 

「うぉっと。」

 

思わず抱き着く。

何となく読めてたようで受け止められる。

引き締まってる体だ。

 

頑張ってきた事がよく分かる。

 

いつの間にか、立派になったんだなぁ。

自分で考えて、動ける位に成長したんだ。

ずっと大事な弟で守る存在って思ってたけど…もう守られるだけの一誠じゃない。

 

「なんか最近抱き着かれるの多くない?」

 

「コラボでもやられてたね!」

 

「本編は関係無いからやめろぉ!」

 

「でも、ちょいネタとして出すなら問題ないかなって。」

 

「いや俺のキャラも若干歪むよ!」

 

「でも一誠のキャラは登場した時から原作乖離激しかったから今更かなって…」

 

「ストォォォップ!!?それ以上やめよう!?

原作とか言うのやめよう!?

この作品は冥次元ゲイムネプテューヌだからな!?」

 

「あ、宣伝?VVVも出るもんね!」

 

「やめて、これ以上メタを連発しないで!部長、助けて部長!」

 

『私じゃ無理よ、貴方がやるのよ、イッセー!』

 

「責任者、おい責任者!眷属に丸投げすんな!」

 

「せーきにんしゃーせーきにんしゃー♪」

 

「会話文だけでメタを連発するなその歌はギリギリラインだから駄目ぇ!いーすん助けて!」

 

「…(-_-)zzz」

 

「寝やがったポンコツ史書!?」

 

今日の一誠は一味違うね!

ツッコミにキレが戻った、というより強化されたね…これは、自分もボケの秘奥を抜かねば、無作法というもの…

 

「抜かないでいいからな!?」

 

「何かあっちのツッコミうつったね?」

 

「いやツッコミさせてんの誰のせいかを考えろ駄目姉ぇぇぇ!!」

 

これ以上は一誠の血管がぶち切れちゃうからやめよう。

いやぁ…ツッコミ強くなってお姉ちゃん嬉しいよ!

でも、まだまだだね(エッチゼーン)

 

「ごめんごめん。じゃあ、おっちゃんにメールしよっと。」

 

携帯を取り出して、おっちゃん宛にメールを送信する。

内容は

 

『一誠からカオス化する時の部屋を皆で協力して作ったって聞いたよ!ありがとう!

早速使ってみたいんだけど、いいかな?』

 

うん、おかしな部分はないはず…

少しして返信が来た。

 

『迎え行くから家で待ってろ。』

 

すっごい雑。

了解って返信して、携帯を閉じる。

 

「どうだった?」

 

「おっちゃんが迎えに来るから待ってろって。」

 

「では、しばしまちますか。」

 

「…ところで、アーシアは?」

 

「あーちゃんなら…お母さんと一緒にお買い物だって。

あーちゃん、料理スキル上がってるんだって…」

 

「何か、ごめんな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ!」

 

「エ○ルトォォォォ!!」

 

「誰が宇宙人だ!!」

 

インターホンが鳴って、玄関の扉を開けると調子が良さそうにおっちゃんが片手を上げて挨拶してきた。

一誠が反応したけどおっちゃん…ネタ分かったんだね。

 

「んじゃ、行くか。」

 

「おお、おっちゃん…車持ってたんだ!免許は?」

 

「あるに決まってんだろ。え、持たずに走行してるって思われたの?」

 

「「うん。」」

 

「イストワール…お前は?」

 

「すいません…(;>_<;)」

 

「胡散臭い自覚はあっけどまさかここまでとは思わなかったぜ…」

 

「自覚あったんだ…」

 

黒い車だ、カッコイイ。

おっちゃん、毎日これで学校行ってるのかな?

気になってきた。

 

「取り敢えず、車に乗り込めー^^」

 

「わぁい^^」

 

「俺の車なのに主導権握られてんの納得いかねぇ…いいんだけどよ。」

 

「すいません、ふたりが…」

 

「頼むからお前だけはおかしくなんなよ?」

 

「セツジツですね(;^^)」

 

「お前が一番のブレーキ役なんだからな。頼むぜほんとに。」

 

「ワタシがいちばん…だとよかったんですがね。」

 

「あん?」

 

「ふふ、なんでもありません。」

 

おっちゃんの車に乗り込み、目的の場所まで移動する。

ちょっとずつ町を離れてるっぽいから携帯を取り出してあーちゃんにメールを送る。

 

『一誠といーすん連れて出掛けるね!』

 

っと…

 

これで問題ないね!

 

「町から離れてるんだね。」

 

「万が一を考えてな。町に被害出すわけにもいかねぇだろ?」

 

「確かに!」

 

呑気だねぇ、と運転しながらそう言うおっちゃんは少し呆れてる。

 

「ネプ子、お前のカオス化は謎が多い。

負の感情がより強くなると刺激されて顕在化するって話をしただろう?」

 

「うん、したね。」

 

「すまん、ありゃ間違いだ。」

 

「ええ!?」

 

「アザゼルさん、どういうことですか?(;゜゜)」

 

間違いだったって…じゃ、じゃあどういうことなの!?

いーすんがおっちゃんに何故かを聞く。

 

「負の感情が強くなるだけなら既に軽く三回はカオス化しててもおかしくねぇのさ。

何度も絶望を叩き付けられてるお前が『実は何も考えてないです』とかじゃなけりゃな?」

 

「流石にそんな演技力は持ってないよ!」

 

「姉ちゃんは演技するの苦手だもんな…」

 

「だろうな。

それなら、どうして一度だけカオス化したんだって話になる。

恐らくだが…」

 

「恐らくだが…?」

 

「お前が力を求める心が一定のラインを越えればカオス化するんじゃないか?」

 

「力を求める…」

 

「ココロ、ですか…」

 

一誠は驚いてないように見えるけど…もしかして、おっちゃんから一通り説明は受けたのかな。

 

おっちゃんは頷く。

 

「お前の負の感情が強くなり、より力を求めた時にカオス化する。これが正しいと思うぜ。事実、コカビエルの時はそうだったろ?」

 

「コカビエルの時…」

 

確かに、あの時もっと力が欲しいって思った!

そしたら、コカビエルを圧倒するくらいの力が出てきて…

そ、そっか…見落としてたんだ。

 

「トリガーはもっと別だったって事だ。

改めて考えると…性質は悪魔に寄ってるが感情で強くなるカオス化はまるで神器だな。」

 

「言われてみれば?」

 

「聖書の神…様が、神器を参考にしたってことっすか?」

 

「大元は同じなんだ、あり得なくはないだろう?」

 

「確かに…じゃあ、姉ちゃんのカオス化は感情に左右されるのか?」

 

「そこがまだ何とも。何にしてもカオス化を物にしねぇとな。

ネプ子、覚悟できてんだろうな?」

 

「そりゃもちろん!絶対に物にしてみせるよ!」

 

「頼もしいねぇ…着いた、ここだ。」

 

たどり着いた場所…それは!

森!の前!

 

…どーいうことだってばよ。

 

いーすんと二人でおっちゃんと一誠を見る。

一誠はおっちゃんに言えとばかりに指を差した。

 

「だーかーら、被害拡大を抑えるためだっつの。

町中に認識阻害の結界張るわけにもいかねぇだろ?」

 

「おお…おっちゃん、考えてるね!」

 

「ったく、ほら、すぐ着くから行くぞ。」

 

そうしておっちゃん案内の下、例の場所まで向かう。

名前は特に考えてないらしい。

えー…?

 

本当にすぐに着いたけど、バレないんだ…?

 

白い建物で、森に似つかわしくない。

確かにこれは認識阻害をしないとすぐにバレるだろう。

自動ドアから入ると、黒い翼を生やした人…堕天使がいた。

 

「総督、お待ちしておりました。」

 

「装置はどうだ?」

 

「動作確認異常無し。いつでもやれます。」

 

「おー…研究員さんだ。」

 

「そういうこった。ほら、行くぞ。」

 

また案内されるとある部屋の前に辿り着く。

 

他よりも厳重な造りの扉だ。

暴れた時用に外に出さない為だろう。

 

「…ネプ子、これからお前はその駒を介してお前自身の精神に飛び込む。俺達はそれを部屋の外から観測するが…大丈夫か?」

 

精神を観測。

それは自分の内面を見られるということ。

誰でもそれは嫌悪感を抱くであろうそれ。

でも、自分は。

 

「大丈夫だ、問題ない!」

 

「…ったく、真面目に聞いてやってんのにこれだよ。

ほれ、行ってこい。何かあったらすぐに助けてやッからな。

イストワールも手伝ってくれや。」

 

「それならば、ワタシもネプテューヌさんとともに…」

 

「いーすんだってねぷ姉ちゃんの精神には入れなかったんだろ?

なら、こっちでサポートしようぜ。」

 

「……はい。」

 

少し考えてから、若干悔しそうに顔を歪めた後すぐに表情を凛とした物へ戻す。

いーすん、ごめんね。

 

「ネプテューヌさん。なにがあっても、ワタシたちがいますからね。o(`・д・´)o」

 

「うん、ありがとう!よーし、お邪魔しまーす!」

 

扉を開ける。

そして、そこには大きな装置があり、何かを置く台のようなものがある。

カプセルみたいな装置に入ればいいのかな。

 

『あーあー…聞こえるか?』

 

「良好だよ!」

 

『よし、まずは変異した駒をその台に置いてくれ。』

 

「うん。」

 

駒を置く。

すると、台が駒を認識したのか作動して駒が浮き上がる。

 

『…問題ないな。

こっからお前はそのカプセルに入って精神世界へとダイブする。

ロキのお陰でカオス化の精神汚染はお前に影響を与えない筈だ。

…後は、お前次第だ。』

 

カプセルを見る。

 

…これに入れば、自分はまたあの自分に会うことになる。

今度は、しっかりと戦えるとは思う。

 

「…」

 

駒を見て、瞑目。

 

ロキがくれたこの駒が、自分を守ってくれる。

きっと大丈夫、上手くいく。

でも、不安は拭えない。

 

あの自分は…怖かった。

純粋な殺意をぶつけられた。他の混じってない、殺意を。

 

『姉ちゃん。』

 

「一誠?」

 

『俺達がいるよ。姉ちゃんがヤバかったら、俺達が助ける。

だから、姉ちゃんはただ真っ直ぐ走ればいい。』

 

「……うん。」

 

そうだ。

らしくないぞ、ネプテューヌ!

 

また深みに落ちそうになってた。

 

大きく深呼吸をして、カプセルに入る。

 

「そうだよね、私には皆がいる。

…よし!行くよ!」

 

 

 

 

 

「─リンクスタート!!」

 

 

 

 

 

『それMMOじゃねぇか!!!』

 

ツッコミを聞きながら意識が自分の世界へと進んでいく。

 

現実から、精神へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、そこは暗い空間だった。

辿り着いた。

コカビエルの時にも一度訪れた…カオス化した自分がいる場所。

 

シェアが使えるかの確認をする。

 

…問題ない。

 

 

 

 

 

─突然、鋭い殺気を感じる。

 

 

 

 

 

殺気を感じた方へ全身を向ける。

 

そこには…

 

「あら、また来たのね。いえ…来る覚悟が出来た、ということかしら。」

 

「カオス化した…私…!」

 

「そうよ、貴女が一度なった姿の変わらないパワーだけのカオス化じゃない。完全なカオス化…それが、私よ。」

 

いつも女神化した時の自分よりも露出の多いプロセッサユニット…っていうか最低限の部分しか隠してない。

カオス化したらああなるのかなぁ…

 

パープルハート〔カオス〕は不敵な笑みを浮かべて自分の前に立つ。

その手には禍々しい刀が握られている。

 

自分も、刀を創造して構える。

 

「私を物にしたい…そう、馬鹿な考えね。」

 

「例えそうだとしても、私は私に向き合うって決めたからね。

そっちも私なら分かるでしょ!」

 

「ふふ、ええそうね。貴女の事は私が一番分かる。

だって私は貴女の闇だもの。

だからこそ、貴女には先がない。」

 

「先?」

 

先がない。

それは成長がないってこと?

そんな筈はない。

 

だって、自分は皆と強くなってきた。

多くの事に向き合ってきた。

 

「貴女の目指すハッピーエンド…何処がゴールなのかしら。」

 

「皆が笑い合える未来、それが私にとってのハッピーエンドだよ!」

 

「本当はそんなこと出来ない…そう思ってる癖に。」

 

「そんなことは──」

 

 

 

「『自分はここまでやってるのに、周りは分かってくれない。』」

 

 

 

「─!」

 

「図星でしょう?

もう一度言うけど、私は貴女の闇…深層心理その物よ。

貴女の抱えている負の集合体…その私が分からないとでも?」

 

「やぁぁ!!」

 

刀を振るう。

刀は炎を纏ってパープルハート〔カオス〕へと迫る…が、あちらの刀に簡単に防がれる。

 

ギリッ、と奥歯を噛み締める。

 

反面、余裕そうに哀れなものを見る目で自分を見下すもう1人の自分。

 

「周りへの失望が強いのは他でもない貴女自身。

そう、率先して動くのも周りが頼りないから。

いーすんは別だとしても、他には侮蔑に近い失望を抱いているのよ。」

 

「違う。」

 

「何処が?貴女の願う未来なんて永遠に訪れない。

他でもない貴女が口実を欲してるからに過ぎないのよ。」

 

「違う!」

 

「頑張っても、頑張っても問題は起こって、周りの人の罪が明らかになって…まるで尻拭いをしている気分でしょう?

本当は自分じゃないのに女神の役職を押し付けられて、うんざりしてる癖に。」

 

「違う!!」

 

どれだけ力を入れても、動かない。

力の差を見せつけられている気分だ。

 

煽るような言葉の数々に否定の言葉が強くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「─ハッピーエンドの中に、()()()はいるの?」

 

瞬間、腕の力が弱まる。

 

そして、その隙を突かれて…いや、遊ばれてたんだ。

突き飛ばされて、仰向けに倒れる。

 

思考が、覚束無い。

 

パープルハート〔カオス〕が近付いてくる。

 

「答えられない?」

 

「─」

 

()()()の事を気付いていないとでも?

死ぬかもしれない状況にそれでもと突っ込んでいく…確かに周りは希望を得るかも知れないわね。だってそれは物語の主人公のような行動だもの。」

 

「…ッ!!」

 

「無駄よ。」

 

「あっ!?」

 

咄嗟に手を伸ばそうとして、その手を踏みつけられる。

精神世界だというのに、痛みがリアルだ。

 

一体、目の前のこの人は何を言っている。

 

ハッピーエンドの中に、自分がいるのか。

当たり、前だ。

だって、その中にネプテューヌがいないとハッピーエンドじゃない。

 

そんなこと、分かってる筈だ。

 

()()()はいるのかと聞いているのよ。」

 

「そんなこと、当たり前じゃん。私が目指す終わりに私がいるのは…」

 

「そう、いないのね。」

 

「ぇ─」

 

 

 

 

 

肩が、熱い。

視線をやると、肩にあの禍々しい刀が深々と刺さっている。

原因は、これか。

 

「──ッ!!!」

 

知覚した瞬間、一気に痛みが押し寄せる。

叫びそうになるのを歯を食い縛って堪える。

 

「痛い?()()()の感じる痛みよ。」

 

「な、にを」

 

「気付かないのね。それとも、気付きたくない?」

 

話が、噛み合わない。

まるで、自分の闇じゃないような。

 

いや、待て、それだとすると。

目の前のこの人は、そうなのか。

 

「気付いたのね。」

 

「嘘、だ。」

 

「やっと会えたじゃない。嬉しいでしょう?」

 

 

 

 

 

「私は()()()()()()の闇よ。認識した?

初めまして、私を救ってくれた誰かさん。」

 

それは、いつか会ってみたいと思った人。

聖書の神様と同じで、会えないと思っていた人。

だって、彼女は…死んでいる筈だ。

肩の痛みなんて気にならなくなった。

 

目の前の彼女は、それほどまでにあり得ない。

 

あり得てしまった、出会いだった。




死んでいたと思われる存在、『ネプテューヌ』。
今まで自身の闇だと思っていた者はその彼女の闇の部分だった!
ネプテューヌ、どうなる?


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継承の儀 前編

プラネテューヌの女神の力、見せてあげるわ!(挨拶)

女神パープルハート。
今のネプテューヌの女神化であり…神の死後、多くの神器保有者を殺してきた存在。

その力は歴代の二天龍にまで迫る。




「私は()()()()()()の闇よ。認識した?

初めまして、私を救ってくれた誰かさん。」

 

ネプ、テューヌ…!?

 

そんな馬鹿な、魂は消えたっていーすんが言っていた筈じゃ…

 

「流石のいーすんも混ざりすぎた魂は分からないようね。

ええ、本物の魂はほぼ消えかけよ。私という闇がいるくらいじゃないかし」

 

「ネプテューヌに、闇?」

 

「当たり前でしょう?だって私は()()()()()()でありながら()()()なんだから。」

 

言われてみれば…でも、それだと…自分はネプテューヌとほぼ同化している事になる。

両方の闇を併せ持っているのにここまで形を保っているのはその証拠に他ならない。

 

「本物に闇がないと思ったら大間違いよ。」

 

「え、だって…本物の私は機械的だって…」

 

「そう、機械的()()()

けれど、他ならぬアナタが感情を宿したお陰で消えかけの魂にも影響が出たのよ。」

 

「それで、闇が…?」

 

「人を守るために、人を殺す…まるで道化ね。

得たばかりの感情が爆発して闇が生まれるのは当然だった。

人を救っても、誰かから感謝されることもない。

被害を抑えて、四六時中戦っても労ってくれたのはただの1人だけ。」

 

「それ、は」

 

「絶望したのよ。夢なんか持っても仕方がないと判断した。

光は闇に飲まれ、残ったのは私ただ1人。

でも、アナタはそれでもと足掻き続けた…出来ることがあるから、ここが終わりじゃないから、そんな合理性の欠片もない自己犠牲でね。」

 

心に、闇だけが残っちゃったんだ。

何人も、何回も…人を殺して、人を守ったっていう現実を直視したから。

きっと、機械的になって感情を殺していたのもその為だったんだ。

矛盾を抱えた機能不全を起こすから。

 

パープルハート〔カオス〕は肩に突き刺した刀を抜いて、離れていく。

仕切り直し、それを感じさせる。

 

「でもアナタのその頑張りを誰が真に理解してくれたの?

上辺だけの感謝を受けて嬉しい?本当は、自分の全てを理解してくれる人を求めていたんじゃないかしら?

自分という、ネプテューヌであってネプテューヌでないただ1人の誰かとしての頑張りを、見て欲しかった。」

 

「そんなこと、ないよ。」

 

「その心が軋んで、私が顕在化したのに?

辛いことばかり、悲しいことばかり。

じゃあ振り回されてばかりでうんざりとしているのに、それでも頑張る理由は何なの?アナタが、そこまで自分を殺す意味はあるの?

今でもアナタを慕って、好いてくれる人はいるのに?」

 

哀れみの目は未だに自分を射抜く。

…ああ、この目は。

 

自分じゃない、彼女の視線だ。

 

自分には、出来ない。

こんな冷たい目は…出来ない。

 

でも、優しいと感じてしまった自分はやはり…どこか、壊れてるんだろう。

だって、肩を突き刺して、手を踏み抜いて自分を否定してくる相手に優しいなぁって思うのは狂ってないと出来ない。

 

それだけは、ネプテューヌであっても出来ない筈だ。

 

きっと親しい相手ならそれは出来たんだろう。

でも、それでも…似ている誰かから否定されたら嫌悪感を覚える筈。

 

何でだろう。

元々、こんな人だったのかもしれない。

 

「…私の目指す終わりは、私がいないといけないんだ。

だって、それは他ならぬ()()が目指しているんだから。

今じゃまだ、足りない。

だって、終わってない。やれることが、まだある。」

 

冷たくなってきていた心に活を入れる。

 

何をしているんだ。

目の前にいるのに、倒れたままでいいのかと。

それでいいのか主人公。

 

─いいや、駄目だ。

 

だってこの想いは自分だけのもの。

 

目の前のネプテューヌに完全に理解されてたまるか。

これは、自分の見出だした夢だ。

 

「止まれないよ、ここじゃ。私は()()として向き合う。

目を背けないで、手を伸ばす。じゃないと…倒せない人が出来ちゃったもん。」

 

「私に全部任せる…という気はないのね。」

 

「誰かに委ねた夢を、口授できる程私は女神やれてないよ。

ねぷ子さんは、ねぷ子さん!何度でも言うよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「私が目指すのは完全無欠なハッピーエンド!!

私が歩む道を、誰かに委ねることは一度だって許さない!!」

 

 

 

 

 

 

 

強く願う。

力じゃない、希望を。

誰かと手を繋ぐ未来という希望を夢見る。

 

その夢が、自分を強くする。

奮い立たせてくれるんだ、この心を。

 

目の前が自分が会いたかったネプテューヌ…その闇だというのなら!

 

 

 

─それすら救って見せろ、女神。

 

 

 

「─!」

 

自分と目の前のパープルハートしかいない筈の空間に声が聞こえた。

たった一言。

でも、それだけで十分だった。

 

受け入れて、救って、笑い合うんだ。

それがどんなに困難な道でも…今までの誰かの為の行いは間違いなんかじゃなかった。

こんな自分が、ネプテューヌという君に頼ってしまった形でも誰かを救って夢を見れた。

 

だから、その夢で繋ぐ。

 

女神化の前に、あるものを取り出す。

ここに来る時にそれを介するなら…きっとこの絆はある筈だから。

 

パープルハート〔カオス〕が目を見開いた。

その表情、崩れると思ったよ。

 

「正気?」

 

「正気も正気だよ。」

 

「それを得るために、ここに来たのに?私を倒せばそれを制御できるというのに?」

 

「違う、倒すから制御するんじゃない。

…ネプテューヌの心の闇を、倒すだけなんて出来ないよ。」

 

「─アナタは。」

 

紫色の駒にシェアを流し込む。

 

前なら、出来ない事だった。

全てを抱えて、落ちていくだけの自分だったから出来なかった。

 

でも…今なら。

 

絆が、自分を保たせる。

導いてくれる。

信じる心がシェアなら、自分も皆へ信じる心を(シェアを)

 

紫の光が、自分を包み込む。

 

「刮目してよ、これが私の!」

 

 

 

 

 

「カオスフォーム…起動!!」

 

視界を光が包まれる。

そして、闇へ染まっていく。

 

心が蝕まれていく。

 

どこまでも堕ちていく。 

深い深い闇に、沈んでいく。

 

…そう、前までなら。

 

手を引かれる感覚。

 

 

─姉ちゃんは、1人じゃねぇよ

 

─ネプテューヌさん、行きましょう!

 

一誠、あーちゃん。

 

─ほら、迷っちゃ駄目よ

 

─あらあら…ほら、こちらです

 

リアスちゃん、朱乃ちゃん。

 

─先輩、ファイトです

 

─今度こそネプテューヌ先輩を助けます

 

─考え無しめ、嫌いではない。

 

─た、大変ですぅ!こっちですよぉぉ!

 

小猫ちゃん、木場君、ゼノヴィア、ギャー君。

 

─突っ込む癖、どうにかならないのか?

 

─考えてそれか、全く…

 

─それでこそ。

 

曹操、ゲオルグ…英雄派の皆。

 

─ねぷっち、そっちじゃないわ

 

─迷ってんじゃないぜぃ

 

黒歌、美猴。

 

─ネプ子ォ!テメェまた無茶しやがって!

 

─流石というべきかな

 

─魔王少女もビックリな勢いね☆

 

おっちゃん、サーゼクスさん、セラフォルーさん。

 

─ん、まだ約束果たしてない

 

─…ほら、行くぞ

 

オーフィス、ヴァーリ。

 

─ねぷちゃん

 

─ネプテューヌ

 

─行ってらっしゃい

 

お父さん、お母さん。

…神様。

 

─いきましょう、ネプテューヌさん。

 

うん、いーすん。

 

皆を感じる。

暖かい光を。

 

皆のシェアが、導いてくれる、引っ張ってくれる。

自分は一人じゃないことを、教えてくれる。

 

…確かに、自分は失望していたのかもしれない。

それは、押し付けだ。

身勝手で、こうあってほしいという願望。

もうそれは、とっくに消えている思いだ。

でも思ってしまったのは事実。

だから、反省はしないと。

 

『さあ、次のステージに立つ時だ、女神…いや、ネプテューヌよ。』

 

うん、ありがとう、ロキ。

もういない筈の友達が、繋いでくれた希望。

 

だから、ここからは一人で大丈夫。

 

目を開ける。

姿は変わっていない。

けれど、闇のオーラを確かに感じる。

 

これが、カオス化。

 

目の前のパープルハートは驚いている様子だ。

 

「不完全とはいえ…制御したというの…」

 

「これが私達の絆の力。そして…貴女を救う力よ。」

 

「…いいわ、流石と言ったところね。

なら、私も本気でアナタを始末させて貰うわ。

その儚い幻想を、儚いまま散らせてあげる。」

 

力の制御は良好、多分…今までで一番の出力だ。

それでも、目の前のパープルハートは自分よりも強い。

当たり前だよね、だって歴代最強の二天龍を相手取って勝ってるんだから。

 

それまでも、神滅具の神殺しの可能性をはね除けて来たんだ。

 

だから、ここからは自分の意地。

 

「アナタがどれだけ足掻いても私には届かない。」

 

「その位覆して見せるわ。だって私は…主人公だもの。

待ってる人がいて、待たせている人がいる…帰る理由が私にはある。

貴女には無いでしょう?」

 

「下らない理屈ね!」

 

「試してみる?」

 

何故か分からない。

でも、負ける気はしない。

一人だった彼女とは違う。

寄り添う相手が居たのに、機械だったが故に共にいれなかった彼女とは。

 

自分の胸に、多くの人の想いが宿っている。

それが、女神の…自分の力になるんだ。

 

一人だけの感情で強くなるよりも、皆の絆で強くなる。

それがあの人の望んだ女神!

 

なら…負ける筈がない!!

 

刀と刀がぶつかり合う。

鍔迫り合いの形になり、確信する。

 

拮抗している、相手は本気…つまり、絆の力がネプテューヌ1人の闇に迫っている!

 

「そん、な馬鹿な…シェアを新たな境地へ昇華しようというの!?」

 

「何の事か分からないけど…これは、決して変わることの無い皆の想いよ!!」

 

「っく!」

 

力を込めて、彼女の刀ごと切り払う。

攻撃力どころか、切れ味も上がっている…これなら。

 

というか、肩の痛みがなくなってる?

 

見てみると、傷が塞がっていた。

…そういう恩恵かな?

 

いつ飲み込まれてもおかしくない現状、皆のお陰で意識を保ててるようなもの。

不完全なカオス化による侵食をシェアで防いでいるに過ぎない。

 

…でも、そういうリスクを背負わないで勝てる相手?

いいや、無理だ。

 

「やるじゃない…さっきまで大違いね。

想いを糧に女神は強くなる。私には、出来なかったこと。」

 

パープルハート…ってもう流石に二人いるからカオスって呼ぼう。

 

カオスは嫉妬の視線をぶつけてくる。

それに刺激されて心の中の闇が溢れそうになる。

 

感情、に敏感だなぁ!

 

確かに、これは厄介だ。

早々に決着をつけないといけない。

 

「…認めましょう。アナタは今の私とほぼ同じ境地にいる。」

 

「なら─」

 

 

 

 

 

「─何もない試練なんて無いのよ、ネプテューヌ。」

 

 

 

 

 

「!」

 

「前座はおしまい。

ここからが本番と知りなさい。」

 

雰囲気が変わった。

 

闇を纏った雰囲気から、清廉なそれに。

…これは、まずい。

 

カオスは、深く腰を落とし刀の切っ先を相手に向け、その峰に軽く右手を添えた。

これは○突の構え…!

 

「覚悟、したわね?したのかしら?したようね。」

 

「…ええそうね。」

 

ずっと戦い続けてきた彼女は自分とは比べ物にならない程の実力だ。

技量だってそう。

ただ力任せに戦うだけじゃ生きられなかった筈だ。

 

本気の構え…

 

自分も、刀を握り直して深呼吸。

ここからは、死地。

 

「…アナタの力、その全てを出し切りなさい。」

 

 

 

 

 

「─継承の儀を、始める。」

 

 

 

 

 

カオスの姿が消えた。

いや、消えたんじゃない…!

 

「っ!」

 

「チッ…」

 

瞬時に狙いに気付き、向かってくる刀に合わせてこちらの刀を添える。

突かれたカオスの刀は寸分違わず自分の首へと向かってきた…けれど、自分の刀がそれを逸らす。

刃と刃の擦り合う音が木霊する。

 

見えなかった…!

今のは偶然…自分も殺す気でいくなら首を狙うから。

 

その直感が上手く働いただけ、次はない。

全部を出し切らないといけない…なら!

 

シェアを使い、五感全てを強化する。

 

初擊に失敗したと分かるとカオスは刀を手放して拳を振るってくる。

武器を、捨てた!?

 

対処するために片手で振るわれる拳を強化された視覚で捉え、掴もうとし…防ぐ方に切り替える。

自分の手のひらにぶつかった拳は、その細い腕からは想像をつかない程の威力を発揮した。

 

パァン、と凄まじい音を立てながら自分は手のひらで拳を受けながら数メートル後退する。

 

…これは…

 

一撃一撃が、必殺そのもの。

これが戦いの日々を生き抜いてきたパープルハートの力。

 

「くっ、うぅ!なら…32式エクスブレイド…6本展開!!」

 

手数で補うしかない。

自分の背後に自分の刀と同じサイズの6本のエクスブレイドを展開し、駆ける。

 

「クロス…コンビネーション!!」

 

地を蹴り、その速度を上げてカオスへと迫る。

それと同時に、3本のエクスブレイドを射出する。

 

カオスはエクスブレイドを避け…ないで拳で3本全てを破壊した。

 

力業もヤバイでしょ、それは…!

 

迎え撃つ姿勢のカオスに刀を水平に振るう。

 

当然、避けられる。

避けた瞬間にエクスブレイドを射出、動きを更に封じる!

 

「甘い。」

 

黒い雷がエクスブレイドを破壊する。

魔法まで…!?

すぐに距離をとる。

 

「アナタの殆ど私には出来るのよ。

そう、アナタのそれは私がこのスタイルを確立する前のスタイル…半端者に相応しいわね。」

 

「っ…!いいえ、ならば新しく作るだけよ!」

 

今までの戦闘スタイルが通じないなら…全く別のスタイルをこの場で確立する!

 

今までイメージしやすいものが刀だった。

それはパープルハートが使い続けてきた武器だったから。

体が覚えていたんだ。

 

…けど、それなら、他の武器ならば。

一手足りないなら、その一手を。

二手足りないなら、その二手を造り出す!!

 

まだまだ…ここからだよ!




ネプテューヌの今までの戦闘スタイルはパープルハート〔カオス〕には通じない。

ネプテューヌが新たに作り出すスタイルとは!

絆を繋げ、ネプテューヌ!

次回、継承の儀 後編!


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継承の儀 後編

ねぷ子さんの覚悟、刮目せよ!








刀と刀がぶつかり合う。

また、同じ真似。

 

技量と力、両方において負けている筈。

また打ち払い、その隙をついて必殺の一撃を叩き込めばいいだけ。

今度は外さない。

 

─そう、決めつけていた。

 

(なに…これは…!?)

 

変わった、全てが変わった。

あの一瞬で何が起こった!?

 

刀を振るう。

弾かれる。

 

…槍だった。

 

光の槍を、刀を握っていない手で振るった。

 

「堕天使、の…」

 

「束ねるのは、仲間達の絆。私は、常に皆と共にある!」

 

あり得ない。

その槍の振るい方は記憶を覗いた私もよく知っている。

 

何故、何故堕天使総督の動きを!

 

「シェアで繋がった皆が、私に力を与えてくれる。

その経験を、私は垣間見たのよ!」

 

無茶苦茶だ。

そんなこと、出来る筈がない。

信仰を介してその者の力を自分に引き出すなんて…そんな芸当、それこそ神の御業!

 

「これが…貴女の戦闘スタイル…!」

 

「そう、私の戦闘スタイル…それは!」

 

 

 

 

 

 

「全部乗せよ!!」

 

 

それは、技量なんて物は関係ないとばかりの戦法。

他者の力、経験を再現し、その場での最適解を導き出す。

 

当然、常に最適解を得られる訳じゃない。

だけど…これは、まるで…

 

力の差が、離れていっている!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─よお、力が必要か?

 

うん、お願い。

 

必要なのは同調する意思。

その力を引き出すために、その情報を覗く。

 

不完全ゆえに自分は更にシェアとの同調が強くなっているからこそ使える裏技。

あり得ない事象を、あり得ないこの姿だからこそあり得させる。

 

同格なんかじゃない。

圧倒的に経験と力の差があるなんて思わない。

思うことはただ一つ!

 

 

有利なのは、自分なんだ!!

 

 

槍を振るい、刀を振るい、カオスへと迫っていく。

確実にその力に迫っている。

この精神世界において、自身への鼓舞はそれこそ力の源となる。

だってそれが反映されないのはおかしいから。

 

槍で弾き、刀が体を捉える。

正確に撃ち込んで、吹き飛ばす。

追撃の為にすぐに接近する。

 

おっちゃんの力が、自分を支えている。

少し覗いただけで分かる総督に相応しい戦闘技量。

それを自分に流し込む。

 

当然ながら負荷は尋常じゃない。

 

けれど、それを踏み越えてこそこの人を打ち破れる!

 

「調子に乗って…!」

 

「押されているのは事実でしょう?」

 

「そうね…だけど!」

 

カオスを中心に衝撃波が走る。

 

咄嗟に槍と刀で防いだけど槍が砕けて、吹き飛ばされた。

 

「くっ!」

 

「ハァァァ!!」

 

迫り来る突き、あまりにも速いそれは自分の首を狙っている。

強化された五感はまだ継続している。

なら…

 

シェアを介して…!

お願い、力を貸して!

 

─仕方ない、上手く使え

 

流れ込んでくる堅牢なそれの知識。

シェアを消費し、それを再現する。

頭痛が酷くなる。

 

引き出せば、引き出す程負荷は重なる。

だけど…それを気にして勝ちは拾えない!

 

突きは首へ到達する前に目の前のそれに阻まれた。

 

「これは…結界!ゲオルグ…!?」

 

「っ、くぅ…!」

 

新たに切り替える。

 

駄目になる前に、攻めきる…!

その為の剣、そして力を…!

 

─無茶をする。

 

─倒れんじゃないわよ。

 

─使ってください、先輩!

 

三人分を自身へと流し込む。

求めるのは剣、速さ。

 

頭痛が更に酷くなり、視界が一瞬ぐらついた。

右の視界が、赤い。

あまりの負荷に脳がパンク寸前になっている。

 

やれてあと二人。

 

それ以上は…死ぬ。

 

ふらつきそうな体を気合で言うことを聞かせて地を蹴って、結界を消して斬りかかる。

言葉を紡ぐことすら惜しい。

ぐらつく視界を何とか固定し、剣を創造する。

 

結界に阻まれていたカオスは斬りかかりに若干対応が遅れる。

 

「速い…!」

 

「っ…!」

 

有無を言わさぬ連擊、あの刀を砕くつもりで刀と剣を振るい続ける。

舞うように、されど激しく。

 

ゼノヴィアとジャンヌのその部分だけを借りた。

 

カオスの顔が焦りで歪む。

 

「何がそこまでアナタを駆り立てると言うの!

他者の経験を自身の体に組み込む…自殺行為に等しい事を何故やれるの!」

 

焦りかは知らないが喋っている。

 

何故、どうして。

そんなものは聞き飽きた。

何度でも同じ事を言う。

 

「誰もが手を伸ばして、戦っている。

それを、私だけが才能に胡座をかいている訳には、いかない…!」

 

「くっ…!?」

 

完全に気迫という面においてこの場を制しているのは自分だ。

 

流石、主人公なねぷ子さんだ。

負けられない戦いは、決めないとね。 

刀で防ぎ続けるカオスは反撃の隙を見つけようとしている…けど、このスタイルは近接戦闘の面だけじゃない!

 

魔法現象を再現するシェア。

だけど、自分にはカオスのようには出来ず、物に纏わせる事が精一杯だった。

けど…!

 

─どうぞお使いください。

 

右の目が使い物にならなくなる。

現実には影響はない…筈。

ぶっちゃけやりたい放題してるけど、大丈夫かはまだ不安だよ。

 

「ちょっと見えにくいわね。」

 

「っ、まだよ!」

 

防いでいたカオスが先程のように黒い雷を放ってくる。

ほぼゼロ距離に近い…けれど、それを通す訳にはいかない。

 

雷同士がぶつかり合い、相殺される。

 

「なっ…」

 

驚く表情。

朱乃ちゃんの雷光を再現する。

光の属性もあるそれはカオスエナジーで造り出される雷に相性が良かった。

 

驚愕と共に防御が薄くなる。

シェアも残り少ない。

カオス化を保てるのも時間の問題。

 

初めから短期決戦するつもりで猛攻を仕掛けているからいいけど…

 

「これが…アナタの意思の力…?」

 

「いいえ、私の意思の力なんて微弱な物…

 

これは、私達の絆の力よ!!」

 

断言すると共に二つの武器を同時に振るい、刀を弾き飛ばした。

 

そう、弾くではなく、弾き飛ばした。

これが一番の狙い。

弾き飛ばされた衝撃でカオスの腕はすぐには機能しない。

好機だった。

ここを逃せば、もう次はない。

 

だから、全ての力をここに注ぐ!!

 

 

 

 

 

「ネプチューン・ブレイク!!」

 

 

初擊。

それを完全に決めるために少しのシェアだけを残して全てを脚力強化に回す。

 

視界を、音すら越える速さで以てカオスを斬り上げる。

 

反応される前に、全てを叩き込む…!

 

続けて浮いたカオスに四方八方から駆けて何度も刀で斬る。

 

「く、ぁぁあ!!」

 

カオスが斬られながらも向かってくる自分を捉え、拳を振るう。

その殺気だけは今までのそれを凌駕していた。

でも、それが届くことはあり得ない。

 

体を強引に捻り、その拳をかわす。

すれ違い様に更に一撃。

 

「っが…!まだ、よ!」

 

カオスがカオスエナジーを全て使ったのか巨大なビームを放つ。

追い詰められている証拠だった。

 

着地する。

本当は最後にもう一撃与えて終わるつもりだった。

 

けれど、今の自分はもう足も限界だった。

立って構えるのでやっとだった。

でも、気合いであと一歩動く力と刀を振るう腕力は残っていた。

 

"勝つ"のは自分だ、絶対に。

 

─後で、お説教ね。

 

ごめんね。

 

情報を取得する。

 

痛みというものが体から失われる。

一瞬だけ意識が飛びそうになった。

 

刀に、残りのシェアを使って再現する。

刀が纏ったそれは紅かった。

 

迫り来る"黒"。

 

「ふぅー……───」

 

息を吸って、吐く。

精神世界においてそれは無駄な動作かもしれない。

 

でも、自分には意味ある行為だった。

 

紅を纏った刀を強く握り、構える。

突きの構え。

心を落ち着けて、"黒"を見つめる。

 

…ううん、正確には"黒"の先にいるカオスを。

 

「これが、最後──」

 

一点を貫く、それだけをイメージする。

騒がしくなる心を鎮める。

 

 

 

 

 

「─貫け…!!」

 

 

そうして、突きと共に放たれた紅の一条の光。

 

"黒"に比べたら、あまりにも小さく、細いそれはそれでもただ真っ直ぐに突き進む。

 

"黒"と"紅"が衝突する。

 

拮抗は一瞬だった。

 

"紅"は、"黒"を越えた。

 

鋭い"紅"は止まらず突き進み、そして──

 

 

 

 

 

「─っ、ぁ……!」

 

この先にいたカオスを貫いた。

 

カオスが落ちてくる。

ドサリ、と落ちたカオスはそれでも立ち上がろうとしていた。

胸に、決して小さくはない穴を開けながらも。

 

女神化が解除される。

 

歩けない筈の足が、勝手に動いた。

背中を、押されるような感覚がする。

 

ゆっくりと、確実に。

倒れるカオスへと歩いていく。

 

そうして、辿り着いた。

見下ろす形で、カオスを見る。

 

「…私の、負けね。」

 

諦めたように、けれど清々しそうな表情で立ち上がることをやめた。

 

「…それが、アナタの答えね。」

 

「……うん、これが私の覚悟。

だから、いいんだよ。私に代わろうとしなくて。」

 

「…辛くないの?」

 

「辛いよ。」

 

「怖くないの?」

 

「怖いよ。」

 

返事は全部肯定。

だって、辛いものは辛い。怖いものは怖い。

嘘は、言えない。

 

「なら、どうしてまだ頑張るの?アナタはもう、十分背負っているわ。私から見ても…ずっと。」

 

それでも何故と聞かれる。

さっきも答えたけど、それとはまた違う答えを問われている気がした。

 

どうして頑張れるのか、どうしてそこまで傷付くことを厭わないのか。

そんな視線の問いを感じた。

 

立てなくなって、膝をつく。

 

「辛いし、怖いし、苦しいし、悲しいよ。

頑張っても頑張っても…足りないんだって実感させられる。

本当はこんなことせず、非日常から目を背けるべきだったかもしれない。」

 

「なら、何故?」

 

「それでも、私は。」

 

 

 

 

()()は、それを見なかったことにすることが、失うことが一番怖い。」

 

知っているのに、見えているのに。

それから逃げることを自分自身が許さない。

例えそれが残酷な真実だとしても、それから目を背けることをしてはいけない。

 

「それを背負ってでも、皆と手を繋ぎたいんだ。

私って、我儘だから。」

 

自分の言葉に、カオスはそっと目を閉じる。

 

「…苦難が多い方を選ぶ。心を得た私じゃ出来ない事ね。」

 

「気付いてあげられなくて、ごめんね。」

 

「今更よ。ずっと、心が芽生えた瞬間からこんなだったから。

遅かれ早かれ私は一度表に出たもの。」

 

もう一度目を開いて、自分の頬に手を添えてくる。

自分はその手を拒まない。

 

「試練は合格よ。私の力、アナタが使って。」

 

「うん、これからは…一緒だよ。」

 

「…苦労しそうね、それは。」

 

「それどういう意味!?」

 

「何人に心配と苦労をかけさせてるか、思い出しなさい。」

 

「うぐっ!」

 

ふふっ、とカオスが笑う。

何処かやりきったような笑みだった。

 

「…でも、その輪に私も入っていいのなら。連れていって。」

 

願うような言葉。

そんなこと。

 

手を握って、笑いかける。

 

「言われなくてもそうするよ!」

 

「…ああ、よかった。」

 

そうして、カオスは紫の光となって自分の中へと入っていった。

 

…空間に、一人になって座り込む。

どっと疲れが出てきた。

も、もう無理…シェアも気力もすっからかん…

 

「あー…しばらくは、刀握りたくない気分だよ~…」

 

眠くなったきた。

精神世界で眠くなるっておかしいかもだけど、眠くなってきた。

 

多分、戻るってことかな。

 

あれ、そういえばおっちゃん達見てるって言ってたような…

こ、これは…やばい…?

 

言い訳を今のうちに考えておこう!

 

そう思いながらも、目を閉じて、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィン。

そんな機械的な音が聞こえて目を開ける。

 

…あれ、ここどこだっけ。

 

カプセルみたいな…ああ、そうだった。

おっちゃん達が秘密で作った場所だった。

 

右目は見える、精神的疲労は凄いけど体は動く。

 

よかったぁぁぁぁ…これで右目さようならだったら笑えなかった。

 

安堵しつつ、カプセルから出て紫の駒を台から取る。

 

「…ありがとう、ロキ。」

 

また助けてくれた友達に、お礼を言う。

 

にしても疲れた。

あの戦いから学べたことは多くある、けども!

うん、また明日にしようかなぁ…

 

扉を開ける。

すると…

 

「姉ちゃぁぁぁぁぁん!!」

 

「ネプ子ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ネプテューヌさん!(;´Д⊂)」

 

めっちゃ泣いてる三人が自分の方に雪崩れ込んできた。

当然こうなると思ってなかった自分はそのまま床に下敷きになる訳で…

 

「ねぷぅぅ!!?」

 

め っ ちゃ 痛 い。

あ、痛覚ある!

痛覚、ヨシ!

 

それより、号泣してる三人だよ!

いーすんもなんでそんなに泣いてるのさ!?

 

「見せてもらったぜお前の覚悟ぉぉ!」

 

「ごめんな姉ちゃん!俺達が不甲斐ねぇばっかりに!!」

 

「ああ、ぶじでよかった…!」

 

「く、苦しいから…離れて…!」

 

し、死ぬ…帰ってきて早々これは死ぬ… 

精神的にキツイ所にこれは辛い…ツライさんなのだ…!

 

おいおいと泣く三人。

その後、何とか宥めて解放してもらった。

 

ちなみに、おっちゃんのあんなに泣いた様子は初めてだった。

 

休憩室のような場所で皆でプリンを食べながら話をすることになった。

うん、プリンあるなんて分かってるね!

 

「生き返るよ~!!」

 

「んな大袈裟な…大袈裟でもねぇか。

本当に大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ、多分、カオス化も危険なく使えるようになったと思う。」

 

「イストワール、どうなんだ?」

 

「カオスフォームはみちなブブンがおおすぎます。ワタシもわかりません…ですが、あのたたかいをみるに…ダイジョウブかと。」

 

「そうかい。…何はともあれ、お前の覚悟と想いはしっかりと理解したぜ。悪かったな、知らず知らずの内に背負わせちまった…」

 

おっちゃんが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 

慌ててスプーンを置いて頭を上げるように言う。

 

「い、いいって!自分も突っ込む癖があったから!

ほら、それよりも皆で仲良くしようよ!」

 

「…そうだな、言葉だけじゃ何度でも言える。

ネプ子、何かあれば絶対に力になるぜ。

堕天使一同…は無理かもだが、俺は必ずな。」

 

「ワタシも、よりサポートにちからをいれさせていただきます。」

 

「ああ、俺もだぜ。」

 

「…あはは、皆ってば。」

 

その言葉がどれだけ嬉しいことか。

繋げられたんだって、実感できることがどれだけ励みになるか。

 

「うん、頼りにしてるね、皆。」

 

そうして、絆がより強くなったことを感じられた。

 

うん、これからも皆と共に、未来を目指そう!

 

Here we go!Good to go!ネプテューヌ!

 

だよね、皆!




カオスフォームを取得しました。

教えて、いーすん!

カオスフォームとは、ネプテューヌさんの新たなフォームであり、女神化の次の分岐点の一つです。
悪魔よりの性質となっており、女神状態よりもより攻撃的な性能になっています。
属性による攻撃も強化されており、今までよりも強力な技も使えるでしょう!

シェアによる経験のコピーはあの精神世界だけの特別なスキルです。
現実よりも心がよりシェアと近くにあるお陰で使えただけなので試しても無駄ですよ、ネプテューヌさん。
「ええい、何故使えん!?」


ネプテューヌはネプチューンブレイクを覚えた!

ネプテューヌは混沌次元一閃を覚えた!(カオスフォーム限定)

ネプテューヌはカオスバインドを覚えた!(カオスフォーム限定)


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二天龍 1

カオスパプハ様が来るだと!へっ、当てるしかねぇな…!!

さあ、今回のタイトルを見れば分かるように、あの二人です。






カオスフォームを手にいれて、また数日が経った。

皆に知らせると、何だか納得したような様子だった。

どうしてかを聞くと…

 

『何だか、呼ばれた気がした。』

 

って皆言うんだよね。

…もしかして、シェアと深く繋がってた精神状態だったから?

うーん、難しいね。

 

でも…皆によかったって言われた。

 

やっと自分の中に区切りがついたお陰で心に余裕が出来た。

あの施設は今後も自分用として残すらしい。

い、いいのかな…?

 

精神的疲労もすっかり治って元気元気!

でも、カオスフォームをしっかり物にしないとね。

 

それと、()とも繋がれた事でいくつかやれることも増えたし…

シャルバや頼光達に備えておかないと…

 

「にしても、平和だね~…」

 

「そうですね、平和が一番です。」

 

「あーちゃんの言う通り!にしても、今度は一誠が居ないっぽいんだよね…」

 

「イッセーさんも色々とありますから。」

 

「アーシアさんはマトモでたすかります…(o^-^o)」

 

「ちょっといーすん、私がマトモじゃないみたいな言い方やめない!?」

 

「マトモなかたはミギメをシツメイさせてツウカクシャダンまでしません!セイシンセカイといえどムチャのしすぎです!( ;゚皿゚)」

 

「でもああしないと勝てなかったもん!」

 

「かてるかてないよりまずジブンをタイセツにしてください!」

 

「また始まってしまいました…」

 

そのままいーすんとの口喧嘩が始まりそうになる。

 

その最中に、携帯が鳴る。

手にとって、誰からかを確認する。

 

…リアスちゃん?

 

「はーいもしもし!ねぷ子さんで──」

 

『ネプテューヌ!!大変よ!』

 

「え?スーパーの特売!?それともプリン食べ放題!?」

 

『特売は昨日の16:25からの奴で終わったでしょ!プリン食べ放題は貴女の願望でしょうがっ!そうじゃなくて…』

 

リアスちゃん特売行くんだ…

正確に時間覚えてるし、絶対行ってるやつだよこれ。

 

『イッセーがヴァーリとこれから決闘をするらしいのよ。』

 

「何ですとー!?」

 

「ど、どうかしたんですか?」

 

「い、一誠がヴァーリと戦うって…」

 

「今日ですか!?」

 

何ぃやってんだ一誠ぃぃ!

ねぷ子さんをもっとゆっくり身も心も休ませておくれよ!

いや、気持ちは分かるけど!

 

「ど、どこでやるの!?」

 

『それが…レーティングゲームのシステムを使って、そこでやるってお兄様が…』

 

「何でサーゼクスさんが出てくるの?」

 

『分からないわ。黒歌にヴァーリに伝えてもらうように頼んでる時に話は聞かせてもらったって言いながら来たから…』

 

「フリーダムなお兄さんを持つと苦労するんだね…」

 

『その言葉、姉ってワードに変換してイッセーに伝えておくわ。』

 

ええい、皆してそう言う。

言いよるわ、リアスちゃん!

このねぷ子さんに精神的ダメージをほんのちょっぴり与えるとは…!

 

…それにしても、どうして今なんだろう。

一誠…あんまり思い詰めてないといいけど。

もし、思い詰めて戦おうとしているなら…絶対によくない結果になっちゃうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

レーティングゲームのステージは俺が魔王様に頼んで学校にしてもらった。

ヴァーリは必ず来るから先に居させて欲しいと言ったら快く承諾してくれた。

 

『相棒、よかったのか。』

 

「何がだ?」

 

『女神に何を言われるか分からんだろう。』

 

「説教なら後で聞くさ。」

 

ドライグと会話しながら、学園の中を歩く。

誰も居ない学園なんて初めてだから新鮮だった。

 

ヴァーリとの戦い。

アイツからすれば普通に戦うだけなのかもしれないが…俺からすれば大きな意味を持つ。

 

これは俺なりのけじめだ。

 

俺の、一つの決着だ。

 

階段を上りながら、闘志を燃やす。

 

「俺は…はっきり言って弱いよ。」

 

『そうだな。』

 

「ねぷ姉ちゃんに何度助けられたか分からない。

仲間達が居たからここまでやれてるんだって分かってる。」

 

『その通りだ。』

 

「…でもさ。」

 

階段を上る。

 

拳を握り締める。

強く、強く。

 

「だからって俺が置いていかれていい理由にはならないだろ。」

 

『…ああ。』

 

「それだけはしちゃいけない。

俺は強くならなくちゃならねぇんだ。

守ってもらってばかりの兵藤一誠じゃいられない。」

 

『何故お前はそこまで力を求める?』

 

「弱い一誠じゃ誰も守れない。弱い一誠は…いらない。」

 

『故に命を張るか。』

 

「…姉ちゃん、本当は怖がりなんだよ。」

 

『あの女神が?そうは見えんがな。』

 

「バーカ、もっと人を見ろよ。」

 

へっ、と笑いながら階段を上る。

 

もうすぐ屋上だ。

屋上、か。

 

姉ちゃんと来たことはあんまり無いな。

というか…学園じゃあんまり一緒にいない。

姉ちゃんとずっと居ると姉ちゃんに悪いからな。

 

「人との繋がりが大事な女神だから、それを守るように見えるか?」

 

『実際、シェアは女神の力の源だろう。繋がりあってこその女神だ。』

 

「なら、その為だけにあそこまで命張るのか?」

 

『やりかねないだろう?』

 

「やらないよ、姉ちゃんは。」

 

『何故言い切れる?』

 

「姉ちゃんは、人との繋がりが大事だ。

それは女神としてじゃない。あの人だからだ。

見ず知らずの人にあそこまで手を伸ばせるのは…誰にでも出来ることじゃない。」

 

『ならば、奴はイカれているな。』

 

「イカれてるよ、最高に。

だって、そのとき行動する時は俺達の心配を視野から外すんだぜ?俺達がどんな顔するのか分かってる筈なのに分かった上で突っ込むんだよ。」

 

『狂っている。』

 

「狂ってるよ。」

 

心の底から同意する。

あの人は狂ってる。

否定されても、拒絶されても、血を流しても、動けなくても手を伸ばす。

 

異常と言わずに何て言うのか。

 

ゾッとする程強靭なメンタル。

戦闘センスも凄まじいが、あの人の強い理由はそれだ。

 

()()()()

行動の理由はそれに尽きる。

今そこで動かなければ自分が後悔する。

 

結果として奇跡的な大団円。

 

けど…もし、一歩ずれていれば。

少しでも間に合わなければ。

この光景はあり得ない。

自分への納得。

究極的なまでの自分本意。

それがあの人だ。

 

「でも、俺は姉ちゃんが大好きだ。」

 

『異常性を知って尚か。』

 

「そんなもの、関係無い。

俺の誇れる部分は二つだけ。

あの人達の息子であることと姉ちゃんの弟であること。

…それだけしか、俺に誇れることはない。」

 

異常性を知って尚、俺はあの背中に憧れた。

誰かを導き、繋ぐことを恐れないその姿を目指した。

 

俺は、それでも知っている。

()()()が望んでいることはただ一つだけ。

それだけは今も昔も変わらない。

 

平和な日常。

 

それだけが欲しくて、あの人は無茶をする。

…憧れが傷付くのを指咥えて見てるだけなのは、もう嫌だ。

 

俺は、俺の憧れを、姉を、仲間を、家族を守る。

 

この力はその為に。

強さを求めるのはそれ故に。

 

「俺は、今の俺を捨てたい。

姉の背中を見るだけの兵藤一誠から、姉の前に立つ兵藤一誠に変わりたい。」

 

『故に白いのとの戦いを望むか。』

 

ドライグの言葉に無言の肯定を示す。

 

ヴァーリ・ルシファー。

歴代最高の白龍皇。

姉ちゃんに惚れて、守ると宣言した男。

 

…ずっと勘違いをしていた。

周りが見れていなかった証拠だった。

 

「俺は、アイツが憎いんじゃなかったんだ。」

 

『ならばなんだ。』

 

「俺は…」

 

 

 

「俺は、アイツを認めるのが怖かったんだ。」

 

 

 

『怖い、か?』

 

「アイツの強さを、想いを認めたら俺の今までが馬鹿馬鹿しくなりそうで、怖かった。」

 

『今は違うんだろう?少なくとも、今の相棒に憎しみは感じない。』

 

「アーシアのお陰だ。」

 

あの時、アーシアが教えてくれなかったら。

俺は今も俺のままだった。

 

守れなかったんじゃない。

支えることが出来ていた。

 

…けどな、俺はやっぱり前に立ちたいよ。

だってその方がかっこいいだろう?

 

「俺は俺だ。アイツが居たからって、俺の過去は無くならない。

そんなこと分かってた事なのに…馬鹿だよな。」

 

それを、俺は見失っていたんだ。

まるで、機械みたいに俺は守るって事だけを考えて。

何時からか、何かがすり替わってたんだ。

 

屋上に着いて、空を見上げる。

 

…仲間は、ここにいない。

 

当然だ、俺が望むのはアイツとの一騎討ち。

俺は、レーティングゲームなんていう遊びをしに来たんじゃない。

 

「…ほう、広い場所だ。」

 

屋上に一人立っていると、また扉が開く。

 

最初に開いたのは俺。

なら、次に開くのは…

 

「ここでいいのか?」

 

「…ああ、いいぜヴァーリ。」

 

視線をそちらに向けると、そこにはヴァーリが立っていた。

 

ふっ、と楽しげな笑み。

それを見ても、俺の心はもう動かない。

 

「ほう、いい面構えだ。これから戦う者の顔をしている。

以前のお前ならそうはなってなかっただろう。」

 

「俺の何を知ってるんだよお前はっ。

ったく…まあ、その通りだ。以前の俺なら怒りのままに殴りかかってた。悪かったな…色々と。」

 

キョトン、というワードがぴったりな位ヴァーリは固まった。

 

この野郎…俺の謝罪がそんなにおかしいか。

籠手を出して、今にも殴りそうになる衝動を抑える。

どのみち戦うので籠手は出すが…。

 

「驚いたな。まさか、謝罪をされるとは…どんな心境の変化だ?」

 

「変化っていうより…戻った、だな。」

 

「…」

 

()は譲る。

横に並ぶのは、俺には無理だ。」

 

「何…?」

 

「…だけど─」

 

 

 

 

 

 

「─前は譲れ。」

 

拳を構える。

準備は出来ていると、姿勢で示す。

ヴァーリはそれを聞いて理解したのかニィッと笑う。

 

「そうか、ならば後は言うことはないか。」

 

「後は互いの全力が物を言う…だろ?」

 

「ああ、そうだ。ハハッ、楽しい闘争になりそうだ…!」

 

「戦いを楽しんでんのはお前だけだよ。

俺は俺を超えるためにお前を倒す!」

 

ヴァーリもまた白龍皇の光翼を展開して構える。

倍加と半減。

…決着が着かない筈だ。

どう見たって延々と続くに決まってる。

所有者の限界まで続いて、死んでいったんだろう。

 

…何にしても、気にしても仕方ない。

俺の出せる全力を出すだけだ。

 

ドライグ曰く、俺は異質だそうだ。

シスコン部分か、それとも単に成長部分か。

どちらでも構わないが…

 

「じゃあ、始め──」

 

 

 

 

 

『─ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

「む…この声は。」

 

レーティングゲームのナレーション。

この快活な声は…間違いない。

 

姉ちゃん、もう来たのか、早いな。

でも、魔王様達に頼んであるから皆は入れない。

正真正銘二人だけだ。

 

「姉ちゃん、どうした?」

 

『どうしたもこうしたもないよ!

急に今日決闘だって言われた私とあーちゃんといーすんの気持ち考えてよね!』

 

「なら姉ちゃんも普段の行いを考えてくれよな。」

 

『痛いところ突かれた!で、でもヴァーリもまだ傷が痛むかもじゃん!』

 

「いいや、もう治ったが。」

 

『な、なら…』

 

「姉ちゃん。」

 

『?』

 

俺はすうっと息を吸う。

あんまり言いたくないけど…この時ばかりは、言わなきゃならない。

 

 

 

邪魔しないでくれ。

 

『…!』

 

少しドスを効かせる。

姉ちゃんが息を飲むのが分かった。

ああ、それでいい。

この時ばかりは邪魔をしないで欲しい。

 

俺のためであり、こいつのためなんだよ。

 

「俺達がやるのは…文字通りの一騎討ちだ。

これはもう決めたことなんだよ。」

 

『どうしても戦わなきゃいけないの?』

 

「ああ。」

 

『…ヴァーリも?』

 

「そうだな。」

 

『…分かった。』

 

不承不承といったようだった。

本当は争って欲しくないんだろうけど、そうもいかない。

ドライグのご機嫌取りってのもあるけど。

 

改めて、向かい合う。

 

待ちに待ったこの瞬間。

俺の全てをぶつけるべきこの時を、俺は待っていた。

 

そうだ、俺は今日で俺を超えるんだ。

今までの守られてばかりだった俺を…

誰かを守れる俺になるために。

 

アイツにも、強くなる理由があるように俺にだってある。

気持ちだって負けてない。

 

「ヴァーリ。姉ちゃんの事好きか?」

 

「無論、俺はアイツの全てを受け止める男になる。」

 

「……姉ちゃんもさっさとうんって言やぁいいのに。」

 

「ん?」

 

「ああ、こっちの話。」

 

…ああ、悔しいけどこいつになら俺は姉ちゃんを任せられる。

ここまで真っ直ぐな想いを口に出来る奴だ。

こいつしか、いない。

 

けど…まだ認めるわけにはいかない。

 

「俺くらい倒してくんねぇと両手を振って任せられねぇな。」

 

「お前の許可は要るのか?」

 

「要るさ。」

 

「そうか、ならばお前を倒すだけだ」

 

「そう簡単にいくと思うなよ。」

 

皆が認めても、俺は俺を倒した奴以外を認めるつもりはない。

俺は、面倒な弟だな。

でも…これくらいはさせてほしい。

振り回されてばっかりだ。

 

だから、これくらいは。

 

風が吹く。

この場限りの一騎討ち。

全力の全力を出させてもらうぜ。

 

二天龍なんて関係無い。

俺は…姉ちゃんの弟だ!

お前が俺を倒せないようなら、姉ちゃんを任せることなんざ出来ねぇな!

 

 

 

「勝つのは、俺だ。兵藤一誠!!」

 

「全力でいくぜ、ヴァーリ!!」




憎しみも、怒りも、劣等感も。
そんなものは幻だった。
今あるのは超えるという意思。

力を求め、高め続けてきた。
守るものを見つけた。
今あるのはただ一人を守る意思。

二人の意思は今、ようやくぶつかり合う。


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二天龍 2

いつ起こるか分からないから『あの状態』は怖いんだ。





互いの拳が互いを捉える。

けれど、そのどちらもが捉えた相手を殴ることは出来ていなかった。

 

『Boost!』

 

倍加される。

相手の動きが鮮明になってくる。

身体能力の倍加がヴァーリに追い付き始める。

 

赤の鎧と白の鎧。

対をなすドラゴン。

…その決着は、俺には関係無い。

 

身体が追い付き始める。

そう、ようやく追い付き始めた。

 

まだ足りない。

 

半減を喰らうわけにはいかない。

喰らったら、俺は追い付けなくなる。

どうしたって地力の違いがある。

生まれながらにして魔王の才能があるヴァーリとただの一般人だった俺じゃ見える世界ってのが違う。

 

だからこそ…俺はそれに食らいつく。

俺だからこそ見える隙がある筈だ。

 

諦めるな、最後の一秒、一瞬までアイツの一挙一動を見ろ。

 

触れるだけで発生する半減。

あまりにも発動条件の緩いそれは禁手をすれば空間にまで及ぶ。

ドライグが教えてくれたことだが…なんだそのチート。

 

俺に勝てる要素が見えねぇな。

 

『怖じ気づいたか。』

 

「はっ、冗談…!」

 

「上手くかわすじゃないか!」

 

「当たればゲームオーバー。なら、当たらなきゃいいだけだろ!」

 

『Boost!!』

 

『ヴァーリ、時間をかけると赤いのがより調子づくぞ。』

 

「ハハハ、いいじゃないか!ここまで一撃も与えられない相手は初めてだ…!」

 

迫る拳と蹴りを触れることなく避ける。

 

無理に攻めるな。

アイツの土俵に立つな。

さっき拳でアイツを捉えて分かった。

こいつに、半端な倍加じゃ駄目なんだ。

 

…精神世界の時の姉ちゃんの戦いを思い出す。

 

あの時だって姉ちゃんは、諦めることをしなかった。

皆の絆を束ねて、可能性を引き寄せた。

俺には、シェアはない。

 

だけど…諦めないことだけは、俺にも出来る。

俺は、ネプテューヌの弟だ!

あの人が諦めないなら俺も諦めちゃいけない!

 

俺は、超えるんだ!

臆病な俺を、目を背けてきた俺を、泣き虫な俺を!!

 

限界なんて、誰かが決めることじゃない…俺が決めることでもない。

俺が死ぬときが限界だ。

 

なら、その限界近くまで俺は…!

 

避けて、避けて、避け続ける。

魔力も、拳も、蹴りも。

全部を避けて、倍加をする。

 

倍加の一部を身体の維持に回す。

 

考えることを諦めるな。

戦うことを諦めるな。

現実を諦めるな。

 

『相棒、お前は…!』

 

「避け続けるか。あくまで倍加に徹する…なるほど、賢明だ。」

 

いつもの俺ならこの緊張を保つことは出来なかった。

仲間がいたから?違う。

姉ちゃんに甘えていた?違う。

 

前に進んでいたんじゃない。

停滞していたんだ。

ずっと、何かから目を背けて。

 

終わりにしなくちゃいけない。

 

次の倍加で俺は…仕掛け──

 

 

 

 

 

─一瞬で、拳が俺の腹を捉える。

 

「………ぇ」

 

「甘い。」

 

『Divide!!』

 

正確に捉えた拳は、そのまま鎧の硬さすら無視して俺を殴り飛ばした。

フェンスを突き破って、空へと投げ出された。

 

半減、された…!

 

倍加に慣れてきた身体がほぼリセットされた…!

翼を展開して何とか校庭に着地する。

屋上のほうが回り込みがされにくいから屋上にしたのに…盲点だった。魔力の強化だって出来んのに、それを視野に入れてなかった!

 

勝てないのか、俺は!

また…また俺は何も超えられずに…!

 

『何をしている相棒。』

 

「…ドライグ。」

 

『お前はもう諦めるのか。俺の知る相棒はまだまだ、諦めが悪い筈だが?』

 

「……」

 

 

 

 

 

『一誠、お姉ちゃんを守ってやるんだぞ。お父さんとの約束だ、出来るな?』

 

『おう、俺が姉ちゃんを守る!』

 

 

そうだ。

 

 

─姉ちゃんが謝ったり、泣くことが無いように。

 

 

そうだ。

 

 

俺…俺の原点は、そこだったな。

ただがむしゃらに努力するガキだった俺は、それでも誰かを守る意志はあった。

空回りして、遠回りをして。

 

それでもと手を伸ばしてきた。

 

…ああ、まただ。

 

俺はまた前が見えてなかった。

まだ、まだだよな。

何回も半減をされたらその倍はやればいいだけだ。

 

何堅実に立ち回ろうとしているんだ。

俺にそんな綺麗な芸当が出来る訳ないだろうが。

 

俺にあるのは意地だけだ。

姉ちゃんみたいな誰かを照らして導く星にはなれない。

光ることすら出来ない屑星だ。

 

だけど!

 

「諦めたらそこで試合終了だよなぁ!!」

 

『面倒な相棒だ。そら、来るぞ!』

 

「ああ。」

 

『Boost!!』

 

「さて、半減した上でその分の力を頂いた。まだ戦うか─」

 

 

 

 

 

瞬間、地を駆ける。

視認できない速さじゃない筈だ。

…俺が避けることに専念していた速さなら。

 

龍の鎧ごと、殴り抜ける。

 

「ぐ、おぉ…!?」

 

何を思い違いをしているんだ、兵藤一誠。

お前に出来るのはこれだけだ。

何が避けに専念だ。

 

自問自答の連続。

それだけ俺が迷っていた証拠。

 

振り払え、迷いを!

 

「俺に出来るのは攻める事だけだったな。らしくねぇことをした。」

 

「く、ハハハ!そうか、まるで獣だな…!」

 

「ああ、俺はそれでいい。

獣のようでも、俺はそれで!」

 

さっきの戦い方を馬鹿馬鹿しいと吐き捨てろ。

俺の努力は無駄にならなかった。

俺に出来るのはがむしゃらなまでに相手を殴り、蹴り、ぶっ飛ばす事だ。

 

ごめんな、母さん。

 

戦いになると俺は荒い事しか出来ねぇ。

 

「こっからが本当の戦いだぜヴァーリィィ!!」

 

吼えろ、どこまでも獰猛に。

ドラゴンよりも凶悪に。

強くなれ、超えろ。

目の前の存在を、超えろ!

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

俺の意思に呼応するかのように連続で倍加が始まる。

肉体維持に回し、殴り掛かる。

身体能力という点において、今の俺は今までの敵、味方全員を上回っている。

 

姉ちゃんでさえも、今の俺に追い付けない。

 

俺の意地をお前にぶつける!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()が迫る。

表情は見えないが、獰猛な笑みを浮かべているに違いない。

恐ろしいものだ、これが想いの生み出した形の一つか。

 

或いは…これこそが一つの極致か。

 

俺が凄まじい程に冷静な戦いをするとすれば、こいつは凄まじい程に獰猛な戦いをする。

 

…ああ、なるほどな。

ここまで来ると俺とお前は対極だ。

なるべくしてなった、ということだろう。

 

運命、引力と言い表すしかない。

白龍皇と赤龍帝…この二つは必ず出会う運命にある。

そう聞いたことがある。

これ程迄に運命を感じてたのはネプテューヌと出会った時以来だ。

 

こいつの戦い方は…野生的な戦いだ。

本能を引き出し、それにほぼ同化する事により圧倒的な戦闘力を得ているのか!

 

化け物め…それだけで俺に迫る程になるとは、感服する他ない。

 

これがこいつの可能性か。

絆はネプテューヌに渡したと言いたいのか?

 

「オラァァ!」

 

「チッ…」

 

半減するにしても、下手に触れれば腕が吹き飛びそうだ。

ドラゴンの…それも、赤龍帝のオーラを拳に纏わせてそれを攻撃に使っているのか。

 

まさか…覇龍を使えるのか?

 

魔力を放ち、距離を取ろうとするが…

 

「しゃらくせぇ!!」

 

「無茶苦茶な奴め…!」

 

腕を振るい、その衝撃波で魔力を消した。

そして、その脚力で以て俺に接近し近接を仕掛けてくる。

 

覇龍の一部を引きだして…いや…違うッ!

 

コイツ…それすらも本能か!?

力すらそれでねじ伏せているというのか、この男は!

 

『我々よりも原初の姿に近い男…何が奴をそうさせるのか。』

 

「ああ…だが、奴の心はただ一つが原動力だ。」

 

誰かを守る。

その一点に尽きる。

だが、その心を今は殺す事によりただ俺一人を潰しに来ている。

 

ああ、それでいい。

俺もそうでなくては本気が出せん!

 

お前を倒し、俺はより高みに進もう!

 

拳と拳がぶつかり合う。

 

『Divide!!』

 

『Boost!!』

 

(こいつ、倍加が…!?)

 

早い、従来の赤龍帝の籠手を超えている。

神器の在り方すら変えたというのか?

システムそのものに喧嘩を売り始めたというのか…!

 

なるほど、規格外だ。

想い一つ、などという生易しい物ではない。

執念或いは妄執とも言うべき物。

 

必ずその境地にたどり着くという願望。

 

それはこの世界においてある種の力に他ならない。

この世界が想いを起点に強くなる世界だとすれば、こいつの想いはそれを起動キーとして現状ある壁を超えているにすぎない。

 

「なるほど…つまり、この戦いは…!」

 

「そうだ、この戦いは…」

 

 

 

 

 

「「()()()()()()()()()()()()!!」」

 

 

その言葉と共に互いの顔に拳が届く。

そして、両者共に後ろへと吹き飛ばされる。

俺は校舎の壁を幾つか突き破りながら。

イッセーは地面へと転がりながら。

 

ガラガラと瓦礫を押し退け、飛び出す。

 

駄目だな、彼に感化されているようだ。

 

イッセーもまた立ち上がって地を駆ける、

 

「俺は、俺を!」

 

兵藤一誠…見誤っていたのは俺だった。

認めよう、お前は俺が出会った()()()…強い!!

 

下手な防御は逆に不利だ。

わざとくらって半減した方がいい。

 

「超えるんだぁぁぁぁぁ!!」

 

「来るか…!」

 

拳に赤いオーラを纏う。

物にしたのか、それとも無意識か…

とんでもない奴だ。

 

成長率というものではない。

これは…変質だ。

 

神器その物を変えている。

 

()は吼える。

何を守れるか、未だ迷うソレは迷いを振り切るように拳を振るう。

 

また半減をしようと自身もまた拳を振るおうとし──

 

 

「─!!」

 

 

避けた。

 

…何だ、今の悪寒は…?

 

俺の腕が、もがれる光景を幻視した。

()の振り抜いた拳を見る。

何かを、掴もうとしていた…?

 

目の前の赤を見る。

 

溢れんばかりの闘志。

…その中に殺意が見え隠れしている事に俺は気付いた。

 

「お前…!」

 

「ヴァーリィィィ!!」

 

赤が迸る。

何度めの倍加だ。

どれだけ奴は自身の限界値を超えた?

 

『ヴァーリ、まずいぞ。』

 

「分かっている…!」

 

何度も振るわれる拳を横から攻撃を当てることで安全に半減をしていく。

余分な力が光翼から排出される。

 

この男…どこまで獣に堕ちていく気だ…!

 

「兵藤一誠!それ以上同化するな!」

 

「ォォォ!!」

 

くそ、駄目か。

 

…何処からだ?

何処からアイツは自分を限界までその身を堕とした。

 

純粋な一騎討ちに割り込んでくるか怨念ども…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳を振るう。

拳を振るう。

拳を振るう。

 

半減をされてもすぐに倍加をする。

足りない。

まだだ、まだやれる!

 

─おいで

 

もっと倍加をしねぇと届かねぇ!

更に速く、更に力強く!

もっと…迫れ!

 

─おいで、おいで

 

『相棒!!?』

 

何だよ、ドライグ?

 

ヴァーリに拳を振るう。

避けられる。

 

「兵…誠…!…同…な!」

 

ヴァーリが焦りの声で俺を、呼ぶ。

降参か?認めないぜ!

まだまだお前もやれんだろ!

 

─おいで、おいで、おいで

 

にしても、何だこの声…?

 

ヴァーリも何かを感じてるのか?

少し身体を動かすのを止め…

 

止め…

 

─だめだよ

 

止まらない…!?

ど、どういうことだよ!?

 

『相棒、それ以上獣になるな!!』

 

どういうことだ!?

獣って…そりゃ確かに獣みたいな戦い方でもいいから追い付かないとってなったけど…

 

『何…逆手に取られたか!』

 

─おいで、おいで

 

声がより強くなる。

 

頭に響く…!

 

身体は勝手に動くし、しかも…何だ?

殺すつもりで動いていないか、俺の身体。

 

おいで

 

頭が痛い…!

 

割れるような痛さが俺を襲う。

それに呼応するように俺の動きはより獣のように執拗になってヴァーリを攻める。

 

誰だ…俺とヴァーリの戦いに…!

 

『こんな時にか…!相棒、気をしっかり持て!飲まれるぞ!』

 

こっちにおいで

 

何かに引き摺り込まれるような感覚。

でも、身体はまだ勝手に動く。

 

何だ、これは!?

 

くっそ…俺は、こんなところで誰かのお陰で勝てた、なんて結果は要らねぇ!!

 

『相…!諦…な…!!』

 

 

 

 

 

コっチにオイで

 

赤い手のような物が、俺の顔、手、足、全部を掴んで引きずり込んでくる。

 

必死に抵抗するが、力が強くて意味をなさない事に気付く。

 

…これは、何だ?

 

 

 

ころせ、コロセ

 

頭に恨みや憎しみといった負の感情が流れ込む。

 

頭痛の酷さが増した。

抵抗する力が弱くなる。

 

そして、俺はそのまま…

 

 

何処かへ引きずり込まれた。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

目を覚ます。

 

…暗い。

どこまでも暗い空間だ。

心なしか、寒いと感じた。

 

何処だよ、ここ。

学園…じゃねぇな。

 

いや、俺はこれに似た場所を知ってるぞ。

 

そう、姉ちゃんが精神世界に行った時の場所に酷く類似している。

まさか、ここは俺の精神世界…?

ならあの赤い手は…

 

どういうことなんだ…

 

何にしても、戻らないといけない。

 

「ドライグ?」

 

…反応はない。

 

ドライグとの会話も出来ないなんて心細いな。

くそ、ここはどうやって戻るんだよ!

妄想でもすりゃいいのか!

 

おいで

 

「っ、またこの声か!誰だよ!」

 

俺の声が木霊する。

 

そして、少ししてそれは現れた。

 

 

 

ぐちゃり。

その気持ち悪い音と一緒に赤い人の形をした何かが地面から沸き上がってきた。

 

更に質の悪いことにその顔の部分は目玉が一つだけという吐き気を催す程の気持ち悪さだった。

 

「お前か…!」

 

 

こっちにおいで

 

 

「…」

 

言葉が通じてない。

意志疎通が出来ないのか?

…何にせよ、それは俺にずっと、おいでと語り駆けてくる。

 

優しそうな言葉に見えるが、その実…何にも宿ってない。

 

「ドライグもいねぇけど…お前を倒せば脱出できんだろ!」

 

殴り掛かる。

 

しかし、赤い何かは拳をすり抜けた。

 

…手には、何もついていない。

いったい、コイツは…?

 

 

─この子とおいで

 

 

「っ!?」

 

そいつの手には──

 

 

 

─姉ちゃんが抱えられていた。

 

何で、姉ちゃんがここに!?

いや、それよりも…

こいつは…!!

 

拳を握りしめていると、姉ちゃんが身動ぎする。

 

「うっ……」

 

「ねぷ姉ちゃん!!」

 

「ねぷ…?あ、一誠…ああ、一誠だ!」

 

ねぷ姉ちゃんは嬉しそうにその手から離れて俺の所まで駆け寄ってくる。

何もしてこない…?

 

目玉はじっとこちらを見ている。

 

姉ちゃんは涙すら見せて俺に抱き付いてくる。

 

「よかったよ一誠!皆、皆が…!」

 

「皆がどうした!?」

 

「シャルバに捕まって、それで…私はこの人…人?まあいっか。

この人に偶然助けられて…!」

 

「そう、だったのか?」

 

シャルバが来たのもそうだけど、こいつが味方だったなんて。

見ず知らずの俺たちを助けてくれたってのか。

それとも魔王様の知り合いか?

 

「一誠が操られてる所を助けてくれたんだ!

 

そう、なのか…?

思い違い、か?

赤い何かを見つめる。

 

 

─いっシょにいテあげて

 

 

気持ち悪いけど、いい奴、なのか?

 

姉ちゃんは、本当に感謝してるっぽいし…

困惑が俺の頭を支配する。

どういうことなんだ…

 

赤い何かから目を離すと、赤い何かが俺の前まで一瞬でやってくる。

 

「うわっ!?」

 

「だいじょーぶ!この人は助けてくれたからいい人だよ!」

 

「…そうなのかなぁ。」

 

赤い何かは手を伸ばしてくる。

優しそうな目になっている。

 

……

 

 

─こっちにおいで いっしょにおいで

 

 

「一誠、一緒に行こう?皆を助けないと!」

 

「……」

 

 

 

─『相棒!気をしっかり持て!』

 

 

 

ドライグは、何か知っているようだった。

何かの危機を察知していた。

そして、俺をここに連れ去ったのはこいつだ。

 

…でも、目の前のこいつは俺と姉ちゃんを助けようと…

 

手は俺の手の方まで伸びてくる。

 

どういうことなんだ?

俺は、信じるべきなのか?

…でもねぷ姉ちゃんは本物だ。

喋り方も気配も、簡単に真似できるもんじゃない。

 

ドライグと俺の思い違い、か…

 

 

─おいで あぶないよ おいで

 

 

心配するような目。

ねぷ姉ちゃんも俺を見ている。

 

…そうか。

 

なら、仕方ないよな。

姉ちゃんだからな、仕方ないよ。

 

「一誠?」

 

「ああ、悪い悪い。そうか…あんた、ありがとな。」

 

 

─おいで おいで こっちにおいで

 

 

「その方が良さそうだしな…」

 

俺は差し伸べられた優しい手を掴んだ──



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二天龍 3

真面目な回が続くな~

よし、頑張ろう。


 

ドウシテ ドウシテ

 

「い、一誠…?なんで…──」

 

 

 

 

 

「─あのさ、演技上手いけど役者向いてないよ、お前。」

 

「え…」

 

姉ちゃん()()()()()()()を殴り飛ばす。

 

ああ、実体あるのか。

冷静になって気付いた。

こいつは俺の姉ちゃんじゃない。

 

だって、強引さが無さすぎる。

いつもなら俺を引っ張って行く筈だ。

 

…俺の記憶を読みきれなかったか?

 

殴り飛ばされた姉ちゃん…いや、化物か。

化物は立ち上がる。

顔が分からない。

黒に塗り潰されている。

 

ああ、やっぱり違かった。

…よかったぁぁぁ!!これで本物だったら土下座もんだったぁあ!!

 

「どうして拒んだの?」

 

「お前が姉ちゃんじゃないから。」

 

「ならお姉ちゃんならいいの?」

 

「その時次第だ。姉ちゃんが決めたから正しいとは思わねぇよ。」

 

カワイソウな一誠

 

「それは俺が決める。お前じゃない。」

 

弱い一誠、何も超えられない

 

「これから超えるんだよ。」

 

アハハハハハハハハハハハハハハハ

 

…姉ちゃんの姿でべらべら喋られるのってかなりイラッとするな。

 

ゲラゲラ、ゲラゲラと。

化物は嗤う。

赤い何かは握り潰された手を再生させて、俺に近寄ってくる。

 

拳を構える。

 

…俺の精神世界だとしても、これは俺の考える()()じゃない。

ドライグは知っていて、俺は知らない。

 

…赤龍帝関係か。

ったく、お前もお前で俺に苦労掛けてるよ、ドライグ。

 

多分、お前の言う『アレ』っていうのがこの化物共だろう。

 

「お前らは、何なんだ?」

 

分からないの?

 

「だから聞いてるんだよ。」

 

嘘つきドライグ 教えてくれない

 

「嘘つきって何だよ。教えてくれない…は否定しないけど。」

 

アイツ、度々茶を濁すからな。

こういうことなら無理矢理にでも吐かせればよかったぜ。

俺の妄想という拷問でな。

 

…にしても、赤い何かはまだ俺に手を差し伸べてくる。

 

「お前は、誰だ。」

 

 

─おいで、おいで

 

 

「行かない。」

 

 

─オイテかナいデ

 

 

「置いていく。」

 

 

やめて やめて

 

 

懇願するような声。

未だに手を差し伸べてくる。

泣きそうな目をしてる。

 

…でも、もう騙されない。

こいつの目は、濁っている。

憎しみが滲み出ている。

 

矛先は、俺じゃない。

でも、俺の関係者だろう。

姉ちゃんが矛先なのか?

 

「もう一度聞く。お前らは、誰だ。」

 

あなたも一緒にいよう

 

 

こっちにオイデ

 

 

「一緒に、いてよ」

 

化物と赤い何かの言葉を何度も聞く。

同じ言葉ばかりだった。

まるで呪詛のように。

 

…何となく、気付いた。

 

この目は、濁ってるんじゃない。

 

生気がないんだ。

生きている目じゃない。

死んだ目だ。

死んで、いるんだ。

 

…死者、なのか。

 

「お前らは、怨念なのか。」

 

「一緒にいて、一緒にとけあおうよ」

 

「赤龍帝の籠手にいる怨念…昔の所有者なのか。」

 

「こっちに、きて」

 

…意識して、ようやく分かった。

 

周りにも、()()

 

赤で塗り潰された人が何人も、何人も。

 

俺を囲んでいる。

…そうか、最初から俺を逃がすつもりはないってことか。

 

 

いっシょに来てあげて

 

 

俺が視認したからか、それともこいつの言葉を皮切りになのか。

赤い人が俺に歩いてくる。

求めるように、腕を伸ばしながら。

 

姉ちゃんの姿をした化物は俺に抱き付いてくる。

 

「一緒に、おいで」

 

「お前─」

 

まるで、仲間を増やそうとしている。

俺を取り込もうとしているのか。

俺に成り代わろうとしているのか。

 

赤い何かの手が、俺に触れる。

 

瞬間─

 

 

 

 

 

おいでおいでオイデオイデコッチニオイデコイ、コイコイコイカワイソウカワイソウ殺せコロセコロセヨコセヨコセヨコセヨコセ おまえもオイデ こっちにおいで

 

 

「─ッ!?」

 

憎悪が頭に流れ込んできた。

誘うような言葉の裏の感情。

 

体を寄越せ、お前もこっちに来い。

殺してやる。

 

そんな、負の感情が俺に流れ込んでくる。

駄目だ、触られると俺もこうなる!

振り払って、化物の抱擁からも脱出する。

 

周りの赤い何かも俺に触れてくる。

 

 

ニゲルナ イカナイデ コッチニキテ

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニゲルナ」

 

「チッ、侵食が進んでいる!」

 

『ヴァーリ、どうすれば!?』

 

「いいか、絶対に入ってくるな!まさか、ここに来て二天龍の憎悪が仕掛けてくるとはな!!」

 

『どういうこと?』

 

「所有者の無念、恨み、憎しみ…そういった負の感情が溜まり所有者を侵食してくる。

そして、それに堕ちた者は理性を失い…()()となる。」

 

『覇龍…?』

 

完全に殺しに来ているな。

惨たらしく殺そうと四肢をもごうとしている。

だが、その分動きが分かりやすい。

 

適度に拳を入れて半減をしている…んだが。

 

『Divide!!』

 

「死ね、死ね」

 

「びくともせんか。」

 

こうも反応が無くては最悪な事態を想定してしまう。

…殺してやるべきか。

 

このような場面で果てる奴ではないと思っていたが…不測の事態だ、仕方無いか…

 

 

 

 

 

『イッセーさん!!』

 

 

「ぁ───」

 

む、この声は…

確か、アーシア・アルジェント…だったか?

ネプテューヌではなく、彼女がマイクを代わったのか。

 

『何をしているんですか、イッセーさん!』

 

奴の動きが止まる。

声に、耳を傾けている?

 

…もしや。

 

『貴方は、そんな所で終わる人ではありません!

無茶をして、必死に頑張って…それでもネプテューヌさんと同じように帰ってくる人です!』

 

「…」

 

『今更、()()()()()に囚われないでください!

貴方は…そんな怨念程度で足を止める人じゃありません!だから…』

 

「…ぁ、ぉ」

 

「これは…」

 

 

 

 

 

『そんなもの倒して、戻ってきてください!!』

 

 

必死の叫びだった。

俺には、分かった。

これは、愛する者への叫びだ。

 

強い意志を感じた。

貴方はそんな場所で折れる人ではない。

そんな確信を本人へぶつける。

 

100%の信頼をぶつけられる相手がいるんだな、お前も。

 

奴は立ち止まり、全てを聞いた後…

頭を押さえだした。

抗っているのか、兵藤一誠。

 

「ぉ、オオ…!」

 

『一誠!ファイトー!』

 

「いやそこは少しシリアスを貫け。」

 

 

「我…目覚めるは…!」

 

「まずいか…!」

 

『覇龍の詠唱だ。ヴァーリ、構えろ。』

 

「分かっている。」

 

 

呻きながらも、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の詠唱を始める。

これは…間に合わないのか?

 

いや…兵藤一誠の意識をより刺激すればいいんだ。

ならば、これならどうだ!

 

 

 

「何だ、堕ちたか。ならばネプテューヌは俺がもらうぞ。」

 

 

 

「テメェェェヴァーリィィィィィィィ!!!」

 

 

 

「戻ったな!」

 

『嘘ォ!!?』

 

『人の想いとは愚かしくも素晴らしいものだな。』

 

今日一番の叫びと共に、兵藤一誠は覇龍の怨念から解放された。

 

しかし、何だ。

あっさりだったな。

精神の方で何かあったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭を潰す。

残り25人になった。

声も少なくなってきた。

 

何人も湧くからキリが無い。

けど、こいつら全員を潰さないと俺は帰れない。

 

くっそ先輩方置き土産にしては趣味悪いぞ。

やりたくてやってる訳じゃねぇっての…

 

「ヤメテ ヤメテ」

 

「うるさい。」

 

「イタイ イタイ イタ─」

 

殴り殺す。

簡単なくらい殺せてしまう。

それは、生前の彼らを想像してしまうようで罪悪感が生まれそうになる。

 

…だけど、俺には関係無い。

 

俺は姉ちゃんじゃない。

救ってあげたいとは思わない。

寧ろ、寝ててくれと思う。

 

姉ちゃんなら救いの手を差し伸べるだろうが…諦めてくれ。

 

にしても、いつになったら俺はこっから出れるんだ!

 

何度も殺す。

手に触れなきゃいいんだ。

幸い、こいつらはノロマだ。

 

…そう、こいつら全部を否定しないといけない。

そこにどんな悲劇があったとしても、俺は。

 

「オォ!」

 

「イタイ ヤメテ ツライ」

 

同じことしか言えないこいつらに出来ること。

俺は、これしかない。

救いの手を差し伸べるだけの勇気が俺にはない。

 

共存なんて、出来る筈がない。

 

 

 

─イッセーさん!

 

 

 

ふと、声が聞こえた。

強い呼び掛けの声だ。

誰から、なんて考えることもなく分かった。

 

「…アーシア?」

 

ここには俺とこいつらしかいない筈じゃ…?

 

 

 

─何をしているんですか、イッセーさん!

 

 

 

清らかで、強い声。

心からの呼び掛けだ。

周りの赤い何かもピタリと止まる。

 

いや、違う。

 

止められている。

 

こいつら…外部からの影響に弱いのか?

 

 

 

─貴方は、そんな所で終わる人ではありません!

無茶をして、必死に頑張って…それでもネプテューヌさんと同じように帰ってくる人です!

 

 

 

…そうだな、こんなところで決着もつけれないまま終わってたまるかよ!

 

拳に力が入る。

止まっている赤い何かを殴り飛ばしていく。

 

何度でも湧くなら、何度でも倒す!

少し諦めかけてた俺をまた引き上げてくれるなんて…やっぱ俺は駄目だな!

アーシアには後で感謝しねぇと。

 

 

 

─今更、()()()()()に囚われないでください!

貴方は…そんな怨念程度で足を止める人じゃありません!

だから…そんなもの倒して、戻ってきてください!!

 

 

 

「オォォォォ!!!」

 

より拳に、脚に力が入る。

魂に火が灯る。

ここまで言われて戻らねぇ奴はいねぇ!!

 

「ヤメテ イカナイデ オイテイカナイデ」

 

「そんな頼みは、聞けないねぇ!」

 

「ア、ァァァァァァ」

 

触れようと必死に手を伸ばしてくる。

 

それを拒むように拳を振るう。

俺は、お前らとは居られない。

俺の居場所はここじゃない!

 

「どうして?」

 

先程まで動かなかった姉ちゃんの姿をした何かは問いかけてくる。

 

「辛いことから目を背けないの?

苦しいことから逃げ出さないの?

悲しいことから背を向けないの?」

 

腕が伸びる。

触れに来るというより、拘束しに来ている。

 

何とか避けながら、近付いていく。

 

「それをして、何も変わらないから俺達はそれに立ち向かうんだろうが!」

 

「生きて希望なんてない

ハッピーエンドなんてあり得ない

本当の終わりは、救いのない終わりしかない」

 

姉ちゃんの姿でハッピーエンドどうこう語るんじゃねぇ。

 

これは、俺の精神だろうが!

 

「誰かの決めた終わりが俺の終わりな訳あるか!テメェの事はテメェで決める!」

 

「なぜ諦めないの?」

 

「諦めなかったあの時があるから今があるんだよ!」

 

必死に迫る手を避けながら化物への距離を詰めていく。

 

そうだ、諦めたら意味がない。

諦めて解決しないから頑張ってんだ。

 

だから!

 

 

 

「邪魔すんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

 

距離が後少しになって、飛び掛かる。

そして、拳を化物の顔面に叩き込んだ。

 

倍加も何もない。

でも全力で。

全力で俺はお前らを否定する。

 

化物は拳をくらって倒れた。

 

周りの赤い何か達もグチャリという不快感のする音と共に崩れ落ちた。

 

「…俺を帰せ。」

 

「どうして」

 

「疑問ばっかりぶつけるんじゃねぇ。」

 

「辛いことから目を逸らしてあげようとしたのに」

 

「誰もしてほしいなんて頼んでねぇ。」

 

「行かないで」

 

「俺にも待ってる奴はいるんだよ。」

 

「置いていかないで」

 

「置いていく。…でも、忘れないではいてやるよ。」

 

ピクリ、と倒れたままの化物は反応する。

 

やば、何か言っちまったか?

もしかしてそういうことも言っちゃいけない奴か。

やらかしたか。

 

「本当に?」

 

「忘れたくても怖くて忘れられねぇよ。」

 

「…そう」

 

そう言って、化物はスゥっと消えていった。

 

…何だったんだか。

ドライグの奴、きっちり説明してもらうからな!

アイツ、説明しないからどうすりゃいいか分からなかったんだぞ!

 

 

 

…ん、何となく、浮き上がるような感覚がする。

条件達成したか…よしよし。

戻って続きを──

 

 

 

「何だ、堕ちたか。ならばネプテューヌは俺がもらうぞ。」

 

 

は?

 

何言ってるですか?

 

姉ちゃんをもらう?

俺を倒してないのに?

 

な、なんたる暴挙!

許されることではない!

こいつ…!

 

絶対に許さんぞ虫けらジワジワとなぶり殺しにしてくれる!覚悟しろぉぉぉぉぉ!!!

 

 

 

「テメェェェヴァーリィィィィィィィ!!!」

 

 

 

「戻ったな!」

 

『嘘ォ!?』

 

怒りの叫びと共に暗い空間から場面が一転する。

 

校庭か、ここは。

つまり、戻ってきたんだな。

なるほどな…目の前にはちょっとボロボロなヴァーリの姿が。

 

…俺、暴れてたのか?

 

…いやでも、ヴァーリがいるしな。

冗談とはいえ、今禁句言いましたよね。

 

「ヴァーリ。」

 

「何だ?」

 

「くたばれェェェェェェ!!」

 

「グワァァァァァァ!!?」

 

『えぇぇぇぇぇ!!?』

 

取り敢えず、ぶん殴ってはっ倒した。

 

…よし!

倒れているヴァーリに指を差す。

 

「あなたを詐欺罪と誘拐罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?テメェが俺をこんな言葉で騙し、俺の心を破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。近いうちに訴えます。裁判も起こします。冥界の裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!テメェはテロリストです!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!」

 

「どういう、ことだ…」

 

『相棒、お前何してんだぁぁぁ!!』

 

「ドライグ、テメェよくも教えなかったなぁ!!

作品的に伏せといた方が読者増えるとでも思ったか戯けがぁ!

お陰で一誠さんこんな目に遭ったわ!

お前金輪際変な隠し事するんじゃねぇぞ!!」

 

『あ…はい…』

 

「めっっっっちゃ疲れたわ!!」

 

もう何か一皮剥けたんじゃないかなって思ったわ!

超えたよね?過去の俺超えたよね!

だって昔の俺なら手をはね除ける事しなかったし!

 

勝ったぞ!俺の勝ちだぁ!

 

「アーシアァァァ!ありがとぉぉぉぉぉ!!」

 

『イッセーさん、やめてください!大声でやめてください!』

 

『胃が痛くなってきたわ、朱乃…』

 

『あらあら…飲みます?』

 

『ええ…』

 

倒れてるヴァーリ、勝ち誇る俺、恥ずかしがっているアーシア、胃が痛い部長。

 

そして…

 

 

 

『いやこれどうすんの?』

 

極めて素の状態のねぷ姉ちゃんというカオスな状態になっていた。

 

…これが冥次元だ!




真面目(前半)

吹っ切れ一誠
若干の常識をぶん投げて過去を乗り越えた一誠。
シスコン度が少し下がった代わりに精神安定度が少し上がった。
分かりやすく言うと前向きになった。


覇龍?なんだいそれは…君の出るタイミングはもう過ぎ去ったんだよ!
過ぎ去りし過去を求める必要は無いんだよ!


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あの人は今!ってえぇぇ!?

退くことだけは出来ません!(挨拶)

今回はねぷ子達出ません!

ところで、皆さん、この章の名前覚えてます?






役に立たない小者を一人切り捨てたあの時。

私は確信したのだ。

 

悪魔よりも、堕天使よりも、天使よりも。

何よりも恐ろしい存在は奴なのだと。

美しくも狂ったあの女神なのだと。

 

故に、私は渇望する。

奴とのゲームを。

破滅するのはどちらなのか…それを私は知りたいのだ。

 

私が勝てば冥界をリセットし、新たなステージへ進める。

奴が勝てば…さて、どうなるのだろうか。

 

勝ち負けは大事だ。

だが、その過程で何を得たのかが重要なのだ。

奴と同じ視点を得なければ勝てない。

 

次の一手を読めない。

奴より先へ、奴より上へ。

魔王も神も二天龍も何もかもが下らん。

奴との戦い、それだけに私は注力するのだ。

 

『次世代の女神、何と面白い存在か。

君はそれに勝ちたいのかい?』

 

『ああ、私は勝つ。勝たねばならない!でなければ私の終わりは決して訪れはしないだろう…!』

 

『何故?魔王を倒せれば君は超越者を越えた真なる魔王となるのに。』

 

『そんなもの最早どうでもいい。』

 

『どういう心境の変化だい?』

 

『力ではない…奴の強さの根底はその繋がりにある。

他者を繋げるあの精神こそが奴の強さそのものなのだ。』

 

お前(ネビロス)には分かり得ない。

分かるわけがない。

私という一度底辺に堕ちた者だからこそあの光を見て尚拒める。

 

繋がる力、シェア。

それは信じるという心そのもの。

それが奴を強くする…だが、シェアだけで強くなる訳ではない。

体が急な成長に追い付けるか?突然赤ん坊から大人に変わった時、果たしてその赤子は正常な判断が下せるのか?言葉を発せられるのか?

 

恐るべきはあの精神。

諦めることをしない、したとしても這い上がるだけの強靭な心だ。

 

狂気すら感じるあの心こそが強さなのだ。

奴は未だ成長過程、より強くなるだろう。

私も以前に比べればかなり強くなれただろうが…直接奴に挑めば勝てる保証はない。

 

殺して死ぬようなら悪神諸とも死んでいる。

 

周りの存在も邪魔だが…やはり、奴は特異点だ。

奴の周りに何かが起こる。

意識していなくとも、あり得る筈の無い事象があり得てしまうのだ!ああ、何という理不尽か。

 

そして、何と素晴らしき事か。

一人の悪魔として、感服する。

あの精神こそ、あの時の冥界に必要なものだった…

あの戦争、あの時代において…これこそが。

 

だが、それも全ては過ぎ去った時間だ。

 

私は奴に挑む。

生きていると実感できる時間…奴の視点を考え、策を練る時だ。

以前の私では想像もつかぬ。

 

女神一人にここまで…

 

『シャルバ、君はどうしたい?』

 

『私一人では奴の繋がりに敵わないだろう。

絶対なのだ、これは。火を通せば肉は焼けるという現象が起こる位に絶対なのだよ。

…故に、私は禁忌に手を染める。』

 

『禁忌?』

 

『なあネビロス。

命を造ることは可能か?』

 

『…本気のようだね。』

 

『無論だとも、素材は私が揃えよう。』

 

『君に出来るかい?』

 

『無茶無謀は承知の上だ。

そう、これくらいの事を出来ずしてあの女神に勝てる筈もない。

さあ、言え!』

 

『ハハハ、君はイカれている悪魔だ。

そうか、そうか…私の興味を埋めるためにも働いてもらおうかな。』

 

鍛えに鍛えた。

何にしても私自身が弱い。

故に、強くならねばならない。

 

そして、次に技術を。

ネビロスの真似ではあるが、私だけの技術を手に入れた。

 

最後に…

 

必要なのは、遺伝子と核、そして力だ。

偶然だった。

偶然にも、使役していた蝿が奴の血を手に入れていた。

 

確信にも似た何かだった。

これさえあれば全てを手に入れられる。

 

ともかく、遺伝子は手に入れた。

 

核は、悪神という極上の素材を手に入れた。

私は今、()()()()()

 

力は、女神を庇った白龍皇から少々いただいた。

 

女神(ハード)、悪神の核、白龍皇の力。

 

…ああ、かくして揃ったのだ。

全てがな。

 

『まさか本当に揃えるとはね。

…なら、私もそれに応えよう。これで不良品を出したらネビロスの名が泣くからね。』

 

『ああ、苦労したんだ。

頼むぞ、貴様の腕を信頼しているんだ。』

 

…そうして、ようやく出来た。

 

あの女神に対抗するための力が!

パープルハート、いやネプテューヌ。

お前を倒すための力を手に入れたのだ。

 

あの人間どもよりも、私こそがお前の好敵手足り得るのだ。

 

なるべくしてなった世界を受け入れないあのような青二才どもとは違う。

私こそが、いや…私達こそが。

 

 

 

巨大なカプセルに入れられた一人の()()が私の元へ送られた。

これこそが私の切り札。

 

 

 

カプセルの中の少女はうっすらと目を開ける。

 

生きている。

当たり前だが、何と素晴らしき技術だ。

ネビロスの…貴様は本当に狂気の悪魔だよ。

 

隠居したあの男(メフィストフェレス)ではなく貴様を選んで正解だった。

鍵は揃った、これこそが新たなる戦火への鍵だ。

 

カプセルを開き、少女を出す。

 

「気分はどうだね。」

 

「……私、は」

 

覚束ない言葉。

 

…奴め、面倒な部分は押し付けたな。

だが、それもいい。

シェアシステムを搭載できずとも、分かるぞ。

この少女の力はあの女神に対抗、いや!勝つことが出来るのだと!

 

「自分がどのような存在か、分からないか。」

 

「は、い」

 

光のない目で、私を見つめる。

 

紫の長い髪は遺伝子由来か。

何、じっくりと育てるさ。

 

 

 

「君は、新たなる女神だ。

そう…君の姉であるネプテューヌを越える、真の次世代の女神なのだよ。」

 

「女神…私、が…?」

 

「そうだ。」

 

「ネプ…テューヌ……私の…お姉ちゃん……私、は?」

 

「名前か。」

 

少女はコクリと頷いた。

そうか、名前か。

 

…考えたこともなかった。

使い潰すつもりでもあった。

だが…ここまで苦労すると、使い潰すのも惜しい。

私の力になるべき少女だ。

 

…親の真似事か。

 

ネプテューヌの妹…私の力となる存在…望みへの、歯車。

 

「君の名前は──」

 

 

 

 

 

 

 

「─ネプギアだ。」

 

 

 

「ネプギア…私の、名前…ネプギア…」

 

「そうだ、君の名前だ。君だけの名だとも。」

 

「私、だけの…!」

 

目に活力が宿る。

唯一性が欲しかったのか?

いや…それとも、名前という自己を構成する要素を求めたに過ぎないのか。

 

ネプギアはゆっくりと歩き、私の手を取った。

 

「私は、ネプギアです。」

 

「…ほう。」

 

清らかな声だ。

まさしく穢れなき女神のようではないか。

ここまでとはな…

 

改めて、奴を敵に回したくなくなった。

お前は恐ろしい奴だよネビロス。

 

細い腕、華奢な手で私の手を取るネプギアは微笑む。

 

「私はシャルバ・ベルゼブブだ。」

 

「…私の、お父さんですか?」

 

お父さん。

なるほど、そう認識したか。

それもよかろう。

 

利用される相手ではなく、教えてくれる相手としての認識。

 

…何にせよ、ピースは揃った。

 

私は片膝をついて、頭を撫でる。

 

「その認識で構わないとも。」

 

「お父さん…私のお父さん!」

 

非情に嬉しそうにするネプギア。

 

…これから、どう教えていくべきか。

下手な事を教えてはいけない。

曲がりすぎると、何があるか分からないからな。

 

さあ、どうなっていくか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物事を正しく教えていく。

今までの私からは想像もつかぬ姿だ。

教鞭を取るわけではない…が、娘に教える父の気持ちにならねばならない。

 

ネプギアは純粋だった。

悪事に向くかと問われれば否と言わざるを得ない。

 

…そこだけはクレームを叩きつけたい。

 

だが、ネプギアは多くの知識を水を吸うスポンジのようにどんどんと覚えていった。

真面目、というのだろう。

それとも親に褒めて貰いたい一心か。

 

「お父さん、これは?」

 

「触れるなよ。それは悪魔の駒…独自のルートで入手したが使う宛のない物だ。」

 

「どういう物なんですか?」

 

「それは多くの種族を悪魔へと変える道具だ。」

 

「どうしてですか?」

 

「さて、それは私にも分からない。だが、これを作った奴はろくでもない者に違いない。」

 

「…」

 

こういう物にも興味を示した。

正直、片付けを怠った私が悪い。

今度片付けでもしておこうか。

 

「お父さんも悪魔ですよね。」

 

「そうだとも。」

 

「じゃあ、お父さんもこれで?」

 

「いいや、私は純血の悪魔だとも。

紛い物の悪魔とは違う。」

 

「そうなんですね…」

 

教えを乞う時のネプギアは淡々としていた。

しかし一語一句全てを記憶するような姿勢は常だった。

 

故に偏らせてはならないのだ。

全てを覚えた末にどちらかに傾くようなことは。

 

「お父さん、冥界は楽しいですか?」

 

たまに、このような事も聞いてくる。

子供故か、残酷な質問だ。

まるで私を知ってるようではないか。

 

「何故そのようなことを?」

 

「お父さんは私とずっと居ますから…冥界は楽しくないのかなって…それとも、私のせいで…?」

 

滅ぼしてやりたい、とは口が裂けても言うわけにはいかない。

だが…よく思っていないのも確かだ。

下手な隠し事は通用しない。

洞察力も優れているとは、恐れ入る。

これもあの女神の遺伝子か?

それとも、悪神か。

 

ネプギアの頭を撫でてやる。

 

「今の私は、この時間が一番大切なのだよ。」

 

「本当ですか?」

 

「本当だとも。昔の私もよく分からぬことがあれば教えてもらった物だ。」

 

「私は、迷惑じゃありませんか?」

 

「何を言う。娘を邪険にする悪魔ではないよ、私は。」

 

「…良かったです!」

 

純粋な少女だ。

 

いざという時、戦えるのだろうか。

そういう不安が私にはあった。

だが、それは杞憂に終わった。

 

少女は生まれながらにして才覚があったのだ。

 

女神の姿となったネプギアの姿は鮮明に思い出せる。

 

あれは…鬼神だ。

振ったことも無いだろう剣を振るい、魔獣を瞬殺した時はゾッとした。

強いなんて物ではない…この娘は最強だ。

 

あの女神すら打ち倒せる…!

 

女神化したネプギア…パープルシスターと呼ぼう。

パープルシスターは憐れみの感情を露にしながら魔獣を斬り殺した。

殺すことが慈悲とでもいうように。

 

そして、女神化を解除し、私の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫ですか、お父さん!」

 

「ああ…まさか、戦えるとは思わなかった。」

 

「私もです。」

 

「どういうことだ?」

 

「えっと…」

 

言葉を探しているようだった。

焦らせてはいけない、ゆっくりと喋って構わないと伝えるとありがとうございますと言ってから言葉を探す。

 

「…あの姿になって、剣が出てきた瞬間…こう振るえばいい、みたいな感覚があって…それで、やってみたら、勝てました。」

 

「何と…」

 

天性の戦闘センスだ。

いずれ磨くべきと思っていたが、より一層磨くべきと判断した。

 

こうすれば勝てるという漠然とした感覚をより確かなものとするために。

 

私は戦うことも覚えないかと提案した。

 

「戦い…」

 

「そうだ、それは埋もれるべきでない才能だ。

ネプギアさえ良ければだが、私がその為の施設を用意しよう。」

 

「…お父さんは、私が強くなれば嬉しいですか?」

 

どう答えるべきか。

正直に言えばお前は戦うための存在だと言うようなものだろう。

 

難しいものだな。

 

「君次第だとも。」

 

「…なら、私、強くなりたいです!」

 

「…分かった。」

 

強い意思を感じ取った。

そうか、強くなりたいか。

選択は大事だ。判断力が鍛えられる。

いざという時、誰かに判断を頼る者ではいけない。

 

不思議なものだ。

こんなことをしている暇など無いと以前ならば思ったのだろうが今はそんなことを思っていない。

むしろ、この時間すら楽しんでいる。

 

あの女神とのゲームの準備期間だからか。

それとも…

 

いや、止そう。

 

心とは移ろうもの。

故にこそ、面白い。

 

ネプギアの成長を、楽しんでいる?

…否定はすまい。

その成長が私を勝利へ導くのだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん、大丈夫ですか?」

 

「ああ…問題はない。眩しいが…」

 

…地上に来るのは殆ど無かったが、ネプギアが一度見てみたいと言うので来てみた。

金は一応あったが…

 

相変わらず忌々しい太陽だ。

地上に来るなど滅多に無い私には多少毒だ。

 

だが、あまり気弱な姿は見せられない。

 

何せ、ネプギアは純粋だ。

人間に何か誘われても断りきれるかどうか。

しっかりと手綱を握らねば。

 

…しかし、ここまで目を輝かせるとは予想外だ。

このまま何処か走り去るのではないかとすら思う。

それはないだろうが…

 

「ネプギア、何に興味がある?」

 

「えっと……取り敢えず、歩きましょう!」

 

「……分かった。」

 

この太陽の下歩くのか…以前ならば絶対に断った。

ぬぅ…しかし、これも勝利のためか。

地上を知ることも大事だ。

これは私のためにもなるだろう。

 

そうして、私はネプギアと人間の街を歩いた。

 

ネプギアは贔屓目等を抜きにしても美しい少女だ。

周りの人間どもの視線は嫌でも分かった。

まあ、私がいるからか特に絡まれることはなかった。

面倒がなくて助かった。

 

…ふと、ネプギアが足を止めてある一点を見つめていた。

 

「お父さん、これは?」

 

「これか。

これは機械だ。この機械は…テレビという物だな。

機械は人間の知恵の結晶…誇れる点の1つだろう。」

 

堕天使共が渡した技術だとしても、それを発展させたのは紛れもない人間だ。

素直に称賛に値する。

 

もっと言えば人間は空よりも上に飛んだという。

あの月にまで…他の星、か。

長くはない命だからこそそれを燃やせるのだろう。

私にはない情熱だ。

 

堕天使や天使であろうとそれを馬鹿にはできまい。

悪魔などもっての他だろう。

 

…下等生物とは呼べんな。

 

今思えば、人間は古くより悪魔と接点があった。

契約、使役、支配…どう言った形であれだ。

いわば、隣人のようなものか。

 

物思いに耽っているとネプギアは機械の店へと入ろうとしていた。

慌てて共に入る。

 

「入る時は声をかけなさい。」

 

「ご、ごめんなさい!気になっちゃって…」

 

「…夢中になれるものか。まあ、許そう。」

 

入った店はよく分からなかった。

機械に詳しくはないから何ともいえない。

ネビロスなら何か言っただろうが。

 

ネプギアは目を輝かせ、機械を見ていた。

 

…そういう成長もありか。

 

「機械に興味が出来たのか?」

 

「あ…ごめんなさい、つい…」

 

「構わない。それで、どうなんだ?」

 

「はい!凄く、興味があります!

私も、作ってみたいなー…」

 

…ここまで興味が出るとは。

これは学ばせるべきだろうか。

 

「作ってみたいか?」

 

「はい!」

 

「そうか…ならば、そうするか。」

 

「え?」

 

それから、一部便利そうな機械を買った。

帰った私は機械について色々と知ることにした。

知識を集めるのは実に何十年ぶりか。

 

色々と本も買った。

 

難しい。

素直にそう思った。

だが…ネプギアならば、どうだろうか。

 

「お父さん、これは…?」

 

「作ってみたいのだろう。」

 

「い、いいんですか?」

 

「出来るところまでやるといい。応援しているよ。」

 

「ありがとうございます!!」

 

感極まったようにネプギアは私に抱きついてきた。

 

…それほど嬉しいか。

だが、もしかしたらこれもまた強さに繋がるかもしれない。

好きにさせてみよう。

そう思った。

 

それからネプギアは機械に没頭した。

強くなるための鍛練は欠かさなかったが、機械の勉強はそれよりも時間を取っていた。

 

…私に聞くことも少なくなったな。

 

没頭できるものがあるのはいいことだ。

私の打倒女神への策を練る時間と同じだろう。

私の場合は丸三日通して考えたからな。

 

次に、ネプギアが頼んできた。

 

「お父さん、この部品が欲しくて…」

 

「ついに作れるまでになったか!」

 

「ま、まだ分からないよ?でも、ちょっとだけ試してみたいっていうか…」

 

うむ…本当に凄まじいな。

人間界でいう所の大学なんぞすぐに出れるだろう。

人としての生活もさせるべきか。

感性も成長するだろう。

 

だが…あの女神に近づきすぎるのは駄目だな。

 

難しいものだ。

 

そう考えながら、承諾した。

金ならある。

むしろ、使い道がないのでどんどん使って構わない。

 

そうして、ネプギアは機械弄りを始めた。

 

見ていても分からないのでネビロスと会話することにした。

 

『どうだい、彼女は?』

 

「素晴らしい成長だ。機械を作れるようにまでなった。

家事も自分から率先して覚えるのは予想外だったが…とにかく凄まじい吸収力だ。」

 

『えらく高評価だね。』

 

「しないわけがない。

この前など私に隠し事をしたとはいえオムライスを作ったんだぞ。」

 

『へえ、オムライス…うん?なんて?』

 

「耳が腐ったかネビロス。オムライスだ。」

 

『あーうん…』

 

「…まあなんだ、ネプギアの強さは凄まじい物だった。感謝しよう。」

 

『いや、君は私の興味を埋めてくれた。それだけで十分だとも。』

 

相変わらずだ。

興味があればその研究か…

 

『それにしても、機械か…』

 

「何だ、話してみたいのか?」

 

『遠慮しておこう。万が一もあるからね。』

 

「用心深いことだ。」

 

『越したことはないよ。では、また。』

 

通信が切れる。

アイツめ、そそくさと通信を切ったな。

…しばらく暇を潰すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネプギア、それが私の名前。

そう教えてくれたのはお父さん(シャルバ・ベルゼブブ)だった。

ネプテューヌ…お姉ちゃんの妹、それが私。

次世代を担う女神。

 

次世代が何かは分からない。

お姉ちゃんの顔も分からない。

 

お父さんは、色々なことを教えてくれた。

無知な私に、言葉を、生活を、勉学を、歴史を教えてくれた。

優しさを感じた。

 

でも、きっとそれだけじゃない。

 

だとしても、私はお父さんを信じたいと思う。

 

色々なものを与えてくれた。

過ごしていて、嫌なことはなかった。

我が儘も許してくれた。

 

感謝の気持ちはあっても、拒む理由はないよね。

 

それにしても、と機械を弄りながら考える。

剣を握って、何かが流れ込んできた時…

 

あの姿は…

 

紫の女神、私とは違う、女神。

 

あれがお姉ちゃん。

ネプテューヌ…パープルハート。

剣を振るって、槍も振るって、斧も振るって、刀も振るって。

何でも使えていた。

 

戦いの記憶だった。

 

きっと、これのお陰で戦えていたんだ。

でも、それを抜きにして戦えるようにならないと…

お父さんを守れない。

 

強くならないと。

 

「これが完成すれば、その一歩になるよね…」

 

頑張るんだ。

生まれたばかりの女神である私に教えてくれたお父さんのためにも。

 

…でも、いつかお姉ちゃんにも会いたいなぁ。




ネプギアちゃん誕生です。
やったね!
強くなるのじゃ…

シャルバさん女神育成奮闘記

次回は二天龍決着です。


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『二人』の決着

君の 部屋に ひらり 舞い降りた~(挨拶)

はい、二天龍の決着、そして…?






えっと、ありのまま今起こったことを説明するぜ!

一誠が怨念に飲まれそうになって、あーちゃんが渇を入れたらそこから事態は一転…ヴァーリが一言言ったら一誠の意識が更に浮上したようで怨念を捩じ伏せて戻ってきた…と思えばヴァーリを殴り飛ばした。

 

うん、ちょっと…よく分かんない。

 

ということで、ちょっと視点を貰ったネプテューヌだよ!

 

あーちゃんが顔を手で覆ってるけど赤いのバレバレなんだよね。

うーん、一誠…吹っ切れたでいいのかなぁ?

 

「…で、リアスちゃん大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫よ…大丈夫…たかが胃がやられただけよ。」

 

「問題だよね!」

 

「今更よ、胃の一つや二つ…この胃薬を飲むだけで治るから。」

 

「おっちゃん…」

 

「頼まれたから作った。俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇ!悪いのはぶっちゃけやらかすお前らだ!」

 

何も言えない!

やらかしてる自覚はあるから何も言えない!

 

くそうくそう、自分は頑張ってるだけなのに…!

 

─その頑張りが無茶苦茶な時があるからでは?

 

(いーすん厳しいよぉ!)

 

─私なりの親愛のような物だと思ってください。

 

(うぅ…はーい)

 

親愛にしちゃ厳しいよね…?

でもいーすんのが正しいから自分は引き下がるしかないのだ。

世知辛いのう世知辛いのう…

 

「けど、勝負は終わってない。」

 

「木場君?」

 

「イッセー君は自分を乗り越えたに過ぎない…ここからが本番ですよ。」

 

「えー?あの空気からそうなる?」

 

チラッと校庭を見ると…

 

二人とも立って構えてる。

 

え、マジで?

あの雰囲気からそうなるの?

強制バトル漫画に持ち込むの?

 

「うーん…疲れてないのかなぁ…」

 

「ネプテューヌ先輩、観戦が暇ならプリンありますよ。」

 

「ホント!?小猫ちゃんありがとう!」

 

「はい。…ちょろいもんだぜ」

 

「ヒェッ…」

 

ギャー君の短い悲鳴。

どうしたんだろう?

まあいいや!このプリン…は、犯罪的なうまさだ…!

 

プリンを食べながら、二人の戦いを観戦する。

 

「…二人とも。」

 

白と赤が地上と空中を行き来しながらぶつかり合う。

魔力をぶつけたり、拳や脚を叩き込んだり。

二人の戦いは正に一進一退。

 

何度も、何度も殴りあって。

でも…それが正しいように見えた。

 

二天龍の戦い。

昔からずっと続く戦いなんだとか。

永遠に戦うことを宿命付けられているように…

 

─ネプテューヌさん。

 

(いーすん。)

 

─あの二人は、あの悲劇を繰り返しません。大丈夫ですよ。

 

(うん。)

 

もしかしたらを想像して、いーすんが大丈夫だと伝えてくれる。

それだけで安心できた。

 

昔の自分は二天龍も倒したらしい。

きっと、一度や二度じゃない。

いーすんはその時の詳細を頑なに話さないけど…ネプテューヌの闇が教えてくれた通りだと思う。

 

…うん、でも今は違うよね!

どれくらい違うかと言うとリメイク前とリメイク後のストーリーのあっさり感くらい違うよ!

 

「ネプテューヌさん。」

 

「あーちゃん?」

 

「ネプテューヌさんはどちらを応援してますか?」

 

「え、そりゃあ…」

 

…どっち?

どっちもじゃ駄目かな…

 

いや、でも、どっちって言われたら…

 

「イッセーさんを私は応援してます。」

 

「私は」

 

「ネプテューヌさんは、ヴァーリさんですか?」

 

「へ!?」

 

どうしてそっち!?

一誠じゃなくて!?

 

「ネプテューヌさん、勝負ってどっちが勝つかを決める戦い。

そうですよね。」

 

「そりゃあ…そうだけど。」

 

「私は、イッセーさんが勝ってくれると信じてます。

あの人の、頑張りを私は知ってるから。」

 

「あはは…恋せよ乙女って感じだね。」

 

「えへへ…ネプテューヌさんは?」

 

「……」

 

「決めれるところを決める。ネプテューヌさんはそういう人だと私は思っています。ネプテューヌさんからしたらイッセーさんもヴァーリさんも応援したいですよね。

でも、二人の中で一人しかと言われたら…どっちを応援しますか?」

 

とっても真剣な質問だった。

 

家族か、想い人か。

半端な答えは失礼だと思った。

あーちゃんは、もしかしたら自分なんかよりもずっと強い精神力を持ってるのかもしれない。

 

そうなったら…自分はどっちを選ぶべきか。

 

一誠の努力は知ってる。

昔から傍で見てきたから。

ヴァーリの想いを知ってる。

ずっと言われてきたし、行動で示された。

 

…自分は…

 

「…ヴァーリ、かな…」

 

「どうしてですか?」

 

「その…好きだから、は駄目かな。」

 

「いいえ。」

 

好きな人に頑張ってほしい。

そう思ってしまう自分は薄情なのかな。

弟を切り捨てたような気がして…罪悪感が込み上げてくる。

 

あーちゃんは大丈夫と言ってくる。

 

「私も、イッセーさんが好きですから。」

 

「告白、しないの?」

 

「…したいんですけどね。多分、心の何処かで怖がられてる…そんな気がするんです。」

 

「え?」

 

一誠が怖がる?

 

思わず、戦っている一誠に視線がいった。

 

鎧もボロボロになりながら、それでも二人は戦っている。

所々で血も流れている。

…流石に止めるタイミングはサーゼクスさんも見失うなんて事はないと思うけど。

 

一誠が女の子を怖がるなんて、そんなこと…

 

…あ。

 

 

 

 

 

 

 

「レイナーレの時…?」

 

思わず合点がいった。

そういえば、告白されて、裏切られた上に殺されそうになったのが一誠の今の道の始まりだった。

 

一誠も気付いてないけど、心の何処かで壁を作ってる?

…あり得ない話じゃないよね。

 

あの事件は解決したけど、何があったかまでは消えることじゃない。

 

ああ、まだ踏ん切りがついてないんだ。

 

「あーちゃん、するべきだよ!」

 

「え…」

 

「一誠はね、ああ見えてヘタレなんだよ!」

 

「黙って聞いてたけどすっごい失礼よね、ネプテューヌ。」

 

「え、でもさ、そうじゃない?」

 

「否定できないかな…」

 

「やるべきだよ、勇気を出さないと!」

 

「…まあ、それを決めんのは嬢ちゃんだろ。今は真面目に二人の戦い見ようぜ。」

 

「…はい。」

 

おっちゃんの言葉に、会話を中断する。

 

二人の戦いに視線を戻す。

 

『おォォァァァ!!』

 

『ぬぉぉぉぉぉ!!』

 

二人の叫びが聞こえる。

強い叫びだ。

お互いに譲ろうとしない意思。

 

…けど、応援するなら。

 

勝ってね、ヴァーリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳が交差する。

 

赤と白。

交わらない二天龍が、その決着を果たさんとする。

願い、私欲、想い…多くが入り交じった闘争。

 

赤龍帝…兵藤一誠はこの時、今までの殻を破った。

破れたようで破れていなかった蛹。

長い幼年期が終わった瞬間であった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

守るための力を手にした彼は何処までも愚直に突き進む。

辿り着くべき場所はここではない。

 

呪いを乗り越え、新たなる鍵を手にした彼はそれでも求める。

赤い王道…全てを守る、そんな主人公の王道を。

 

二人の魔力がぶつかり合う。

 

最弱と最強。

拮抗する筈の無い二人。

あらゆる面において、この差は歴然であった。

 

白龍皇…ヴァーリ・ルシファーは満たされない。

越えられない壁を超え、自らに食らい付いてくる男と戦っている今でさえ私欲は満たされない。

 

本当に欲している物は別で、ここは通過点でしかない。

 

「ハハハハハハ…!!」

 

既に次のステージへ至る条件は揃っていると自らに宿る龍は言った。

けれど、それを使う気はなかった。

 

己の決着がついていないのに、おいそれと新しい力に手を出すなど愚かと判断した。

 

だが、この闘争は二人だけのもの。

何度もやるべきではない。

この一度限りの闘争。

 

ならばこそ、新たなる好敵手に感謝し、それを打ち倒す。

 

かくして、二人の実力は互角となった。

劣っていた筈の兵藤一誠は想いと執念で壁を乗り越え、届かせて見せた。

ヴァーリ・ルシファーは足を掴まれたのだ。

引きずり込まれる事はなくとも、這い上がらせた。

 

土台が同じとなれば命運を分けるのは一つのみ。

 

技も、力も、全て使った。

倍加と譲渡による押し切りと小手先の戦法は落とすに至らず。

半減と空間制限による狡猾な戦法もまた落とすに至らなかった。

 

結論が出たのは二人同時だった。

 

殴り合いによる決着。

倍加も半減も攻め落とすに至らない。

ならば原初の戦いが勝運を分ける。

 

何度殴ったか、何度蹴ったか。

 

「ぐぁ…オラァ!!」

 

「ぬぅ…オォ!!」

 

鎧は既に意味をなしていなかった。

二天龍の力など関係なく、因縁も今までのいがみ合いも、二人の頭に残っていなかった。

 

あるのはただ一つ。

 

 

 

((こいつに、〝勝つ〟!!))

 

 

 

意地と意地のぶつかり合い。

いつ意識を失って倒れてもおかしくはない。

負けるわけにはいかないという意地のみでその意識を保つ。

痛みが逆に奮い起たせた。

 

「倒れろぉぉ!!」

 

「がはっ…!」

 

一誠の頭突き。

形振りなど構っている暇は最初から無い。

倒せば勝ちなのだ、そんなものに拘る意味は無い。

 

自棄っぱちに似た一撃は見事ヴァーリの顔を捉え、白い仮面は砕けた。

 

だが、それでも踏みとどまる。

 

「まだ、だ!!」

 

「ごっ…!?」

 

拳が腹にめり込む。

意識が飛びそうになりながらも歯を食いしばってその場で耐えた。

吐きそうになりながらもそれも堪える。

 

無様を晒すとかではない。

そんな隙を晒せるかという意地。

 

どちらも倒れない。

 

だが…

 

どちらも満身創痍だった。

長い間の殴り合いにより意識を保っている事自体が奇跡だった。

押せば倒れる体。

けれど、されるとしても目の前のこいつ以外の誰かだという心は一致していた。

 

「へっ…もう、フラフラ…じゃ、ねぇかよ…」

 

「くっくく…お前こそ…倒れそうじゃ、無いか…?」

 

「バッカお前…これはこういう、構え、だ!」

 

「ぐっ…」

 

一誠が拳を振るう。

もう力がそんなに入っていない拳だが、少しであれど威力はあった。

顔を殴られたヴァーリはふらついて後退しながらも倒れない。

 

「ま、だまだ…!」

 

「うぁ…っ!」

 

ふらつきながらも勢いをつけて殴りかかるヴァーリ。

防御など出来ず、拳を胸に受けて、倒れそうになる。

 

「っ…だぁぁぁ!」

 

後ろに倒れそうになったが足に力が入る。

まだ負けられない。

そんな意思で足が後ろにいき倒れるから後退に堪えた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

 

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 

 

最後の力を振り絞って地を駆ける。

 

否、駆けると言うには遅すぎる速度。

だが、気迫でもって地に足を踏みしめ、力を入れる。

この一撃をぶつける。

その為だけに。

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

拳が交差し、互いの頬にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

「がっ…!」

 

「ぎっ…!」

 

二人して、地に倒れる。

仰向けに倒れ、そのまま動けなくなる。

一度倒れてしまった今、もう意思による根性は働かない。

倒れる瞬間まで、互いを睨んでいた。

 

起き上がろうとする。

立てば勝てる。

そんな漠然とした考えと共に体に力を入れ─

 

 

 

 

 

 

─立ち上がることが出来ず、力尽きる。

 

『…この勝負。』

 

『そうだな、赤いの。』

 

共に在る相棒が会話を始める。

それはある種の試合終了の知らせだった。

 

宿主の体を理解している二体だからこそ、限界だと判断した。

 

『『引き分けだ。』』

 

引き分け。

 

勝ちもなく、また負けもない。

どちらかが立ってどちらかが倒れると思っていた全員は呆然としていた。

どちらが勝ったのではない。

どちらも拮抗し続けた結果がこれなのだ。

 

二人の鎧が消え、ボロボロで倒れる二人が残る。

 

勝ちたいと願った二人は、しかしそれは叶わず。

だというのに

 

 

 

 

 

 

二人はどこか満足げな表情で気絶しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れた二人は、そのまま病院へ運び込まれた。

勝ちたくても、どっちも届かなかった。

見ているこっちも何も言うことが出来ずにいた。

だけど…

 

らしいな、なんて思った。

 

互いに足りない穴を埋めることが出来たと思う。

だからこそ、ああやって二人は引き分けになったんだ。

理屈とか、そういうものはあの二人に無かった。

 

勝つっていう意思だけがそこにあった。

 

だから、痛々しくても止めるなんて無粋な考えは無かった。

 

傷付いてるのに、二人とも負けるかって歯を食いしばって立つことを諦めなかった。

これでいいんだと思う。

 

大事な一戦だったけど、これが最良だったのかなって。

 

二人は治療の済んだ二人は安静にして、明日退院だそうな。

改めて、あーちゃんの神器は便利だと思った。

…ただ、治すことを躊躇していたのは理解できた。

 

結局治したけど、二人からしたら…もしかしたらこの怪我は一日だけ残しておこうと思っていたかもしれない。

 

そうして夜になった。

 

…夜の病院は怖い、なんていうけどそうは思えなかった。

 

廊下を歩く。

行き先は、決まっていた。

 

 

 

病室の前に辿り着く。

辿り着いて、何となく思い出す。

 

想いに気付いたのも、こんな夜だった。

 

酷く真面目な自分。

新鮮な気分だった。

ネタとかを考える余裕はなかった。

 

いーすんは、多分寝てる。

ここには自分だけで来た。

 

開いているかを確認する。

 

…開いてる。

 

少しの深呼吸。

扉を開けて中に入る。

 

気絶していたし、疲れてるだろうから…寝てると思う。

 

ベッドを見ると、ぐっすりと寝ているヴァーリの姿があった。

そりゃ、あんな殴り合ってたらそうなるよ。

椅子があったからベッドの隣まで持っていって座って寝顔を眺める。

 

綺麗な寝顔だなぁって思った。

手を伸ばして、引っ込める。

 

何をしてるんだろ。

一誠の所に行けば良かったのに。

 

…結局、手を伸ばして、綺麗な銀髪に触れる。

あ、さらさらしてる。

手いれとかしてるのかな。

…するかなぁ?

 

少しの間、そうしていた。

やっぱり、好きなんだなぁって思いながら。

 

顔が自然と熱くなる。

 

自覚してから、ずっとこんな感じ。

困っちゃうなぁ…

 

真っ先にこっちに来たのは、そういうことだろうから。

 

でも、自分は誰かを好きになっていいのかな。

今更だって分かっていても、疑問を抱く。

だって、自分はこんな性格だ。

 

もしかしたら、自己犠牲が働いて死んじゃうかもしれない。

 

そしたら…置いていっちゃう。

そんなのは嫌だ。

だったら最初から…

 

「…ヴァーリが、悪いんだよ。」

 

諦めた方がいい。

このまま、初な反応だけして、誤魔化していればそれでいい。

置いていって、余計悲しませるよりずっといい。

 

好きだけど、そんな事態になる位なら自分から切り捨ててしまおう。

 

自分も、付き合ってからそうなったら嫌だから。

 

想いを、抱えたまま。

 

胸が痛む。

せっかく、あっちから好きだって言ってくれてるのに。

自分も好きだって自覚してるのに。

 

…でも、自分は…こんな性格だから。

きっと、誰かと結ばれても変わらない。

こんなに好きでも、危険な事態になったら真っ先に身を投げ出す嫌な自信がある。

 

それは、ネプテューヌだからなのか、自分という誰かだからなのか。

人のために、とかじゃない。

納得できないからそうしてしまうエゴイズム。

 

「私、は……」

 

言おうとして、やっぱりやめようよ、と臆病な自分が言ってくる。

勇気を振り絞ろうとも言ってくる普段の自分もいる。

あーちゃんには、ああ言ったのに。

 

自分は逃走を選択しようとしている。

 

もし聞かれたら、もうどうしようもなくなる。

 

でも、今じゃないと自分は機会を失う。

独り言でも、言ってしまった方が楽になる。

恋する、自分と決別を…するためにも。

 

 

 

…聞こえていますか。

()()()が。

 

 

 

「会談で、会って。告白されて…」

 

 

 

声が掠れる。

起きているわけでもないのに。

 

 

 

「浚ったくせに、親切で…協力してくれてっ…」

 

 

 

涙が溢れそうになるのを堪える。

言葉を紡ぐ事がこんなに怖いなんて思わなかった。

こんなに胸を締め付けるなんて思わなかった。

 

 

 

「私、を…助けて、くれて…私を、見てくれて…」

 

 

 

ただ一人、()()()()()()を求めてくれた。

自分を、私を、全てを受け入れてくれた。

それがただ嬉しくて、でも、苦しい。

 

血を吐くんじゃないかと思うくらい辛い。

怖くて、体が震える。

逃げ出したくて足が動きそうになる。

 

でも…逃げたくない、自分がいる。

 

「だから、私は─」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─私は、好きだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言った。

しっかりと、言葉にした。

駄目だ、泣いたら、バレる。

ここにいて、告白しましたなんて、言えるわけない。

 

「でも、ごめんね。私は、置いていきたくない…!」

 

そうして、自分は逃げ出したくなって、立ち上がる。

もう嫌だ、こんなこと嫌だ。

こんな苦しくて、怖い告白なんて、するんじゃなかった。

でもしない事の方が怖くてしちゃったんだ。

 

「だから、もう…さよなら。」

 

もう、想いを見せる必要はない。

後は諦めてくれるまで、のらりくらりといつもの様子で…逃げればいい。

 

視線を外すことが怖い。

想いを隠すことが怖い。

結ばれないなんて怖い。

 

…それすらも、胸にしまう。

 

歩きだそう、別の希望を胸に、歩き出すんだ。

 

歩を進める。

部屋から出よう。

そうすれば、今まで通り。

 

これ以上ここにいたら、自分は自分を保てない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ─」

 

突然、体が引き寄せられた。

 

そんな、嘘だ。

だって、寝ていることは、しっかりと確認して…

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ(嬉しい、ありがとう、来て)

 

上塗りの想いと本当の想いが一緒に出る。

 

抜け出そうと、暴れる。

 

「行くな!」

 

「離して!」

 

必死に暴れても、離してくれない。

 

強く抱き締められて、動けない。

 

聞かれてた、見られてた?

分かってたの?

なんで起きてなかったの?

こんなこと、しなかったのに!

 

「ネプテューヌ。」

 

「やだ、やめて。」

 

「聞いてくれ。」

 

「聞きたくない!」

 

「頼むから。」

 

「頼まないで!」

 

「言うからな。」

 

「言わないでいいよ!」

 

必死に拒む。

でも、本気になれない自分がいる。

怖い。

それを聞いたら、受け入れたくなる。

 

でも、でも自分は置いて──

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はお前が好きだ!愛している!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、だ」

 

 

 

 

 

 

「俺を、置いていくな!!」

 

 

 

 

 

 

「あ、ぁぁ」

 

 

 

 

 

 

「俺が守る、俺が助ける…だから…!」

 

 

 

「俺と、一緒にいてくれ…ネプテューヌ。」

 

何処までも、真っ直ぐな想い。

心に届かせて見せる、そんな気持ちが見える想い。

 

いつの間にか、自分は抵抗する力をなくしていた。

抱き締められることを、良しとしている。

 

「私、こんなだよ」

 

「知った上で、好きだ」

 

「置いて、いっちゃうよ」

 

「置いていかせない」

 

「私、小さいよ?胸も、ないよ?」

 

「関係ない。」

 

「我儘だよ?怖がりだよ?こんな、泣き虫だよ?」

 

「俺の前では、ありのままのお前でいい。」

 

どう聞いても、それでも好きって言葉が来る。

 

ズルい。

ズルいよ、そんなの。

どうして、そんなに肯定するの?してくれるの?

 

「私で…いいの?」

 

「ただ一人のお前だけが好きだ。」

 

 

 

─ああ、駄目だ。

 

無理だ、こんなの。

はね除けるなんて、出来ない。

 

だってこの人は、自分だけを好きだって言ってくれてる。

 

そんなの、拒否できない。

 

出来るなら、こんな事していない。

 

涙が溢れ出す。

また、あのときと同じ。

でも、一つだけ違う。

 

「…うん」

 

顔をあげる。

涙を流してるけど、笑顔で。

 

隠してた想いが、この涙なんだ。

だったら、見せないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、君が好き。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は、面と向かって。

 

告白の返事をする。

 

すると、胸の苦しみが消える。

吐きそうな位の苦しみが一瞬で消えた。

辛かった。

 

けど、もう…辛くない。

 

「大好き。」

 

手を伸ばす。

好きな人の頬に、両手を当てる。

 

嬉しい。

こんなにも嬉しいことはない。

今日、この部屋に来て良かった。

 

「私の事、好き?」

 

「お前だから、好きなんだ」

 

「えへへ」

 

嬉しくて、頬が緩む。

緊張と辛さで固まっていた顔が緩んだ。

涙は止まらなかった。

これは、嬉し涙だ。

 

そのまま、顔を近づける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは、恋人になれた二人の時間だった。



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私達、付き合いま…ってこの空気何!?

私のターン!(挨拶)

うおおおおおん、俺は投稿マシーンだ!
原動力となる感想、評価を、くれぇぇぇぇぇ!!(溢れる欲望)





目を覚ます。

 

何だか、暖かい。

というか…抱き付いて…

 

─思い出す。

 

「わ、わ…」

 

顔がすごく熱い。

あ、あー…そうだった…

昨日は…告白して…それでっ。

 

頭が茹で上がりそうだった。

 

というか、ここ…

 

 

 

病院じゃん!!

 

 

 

あ、あのまま寝ちゃったの!?

迷惑すぎるじゃん、看護師さんとかに見つかったら怒られる!

こ、こうなったら…すぐに窓から飛び降りて女神化すればまだバレない!

 

そう考え、動こうとして今更気付く。

 

…抱き付かれてる。

 

腕を退かそうと思って、やめる。

寝顔を見る。

 

…あーもう、ズルばっかだ。

 

こんな…見てるだけで心がポカポカするのは、ズルい。

逃げるとかそういうのをやめたくなる。

 

脱力して、自分もヴァーリの背中に腕を回す。

 

「…」

 

昨日の夜、ようやくというか…自分が逃げてただけなんだけど恋人になれて。

それで…キスしたんだよね。

うん、その…何回か。

 

今思うと、餓えてるのかって言われたら反論できない…!

 

最近のねぷ子さん、ちょっといやらしい方向行ってるから軌道修正しないと…

かなり心が軽い。

こんな気持ちで朝を迎えるなんて初めて!もう何も怖くない!

 

まあ、重荷がまた無くなったっていうか。

もう、置いていくとか思えないっていうか。

 

「…」

 

「あ、起きた?」

 

少し目蓋を開いたヴァーリに笑顔で挨拶をする。

眠そうな顔を隠そうともせず、じっと自分を見ている。

て、照れるんだけど。

 

「へい彼氏、おはよう!」

 

「おはよう…もういいのか?」

 

「ストップ!シリアスは禁止!」

 

「持ち込むお前が言うな。」

 

「ぐはっ…おのれ、この彼氏容赦がないよ…!

うー…それよりもこの腕を退かしてよー」

 

背中を優しく叩く。

どけて~って軽い調子で言う。

ぷ、プリンが恋しいなぁ!

 

心臓バックンバックンだから早くして!

 

「嫌なのか?」

 

「嫌じゃないけど、場所を考えよ?」

 

「別にいいだろう。俺の病室なんだから俺の勝手だ。」

 

「勝手に倒れておいて良く言うよ…」

 

「少し位傲慢な方が生きやすい。」

 

「…で、どけてくれないの?」

 

「もう少しこのままだ。」

 

「うー…」

 

恥ずかしさが込み上げる。

でも、嫌じゃない。

 

嫌じゃないけど、自制心!

ねぷ子さんは拘束を振り払って見せる!

 

モゾモゾと動いて、上手いこと抜け出す。

ふふん、小さいことが幸いしたね!

 

ふっ、小さいことがね…胸も、身長も…ふっ…

 

そそくさとベッドから脱け出す。

 

ヴァーリは残念そうだ。

罪悪感が凄いからその顔やめてよ~…

要求されたらしてあげるから、なんて恥ずかしくて言えない…

 

「痛くない?」

 

「問題はないが、風呂が恋しい。」

 

「あの後、体を拭いた程度だったんでしょ?そりゃ恋しいよね。」

 

「お前と入りたい。」

 

「流石に欲望の垂れ流しし過ぎじゃないかな!?」

 

「駄目か…」

 

「さ、流石に早いよ…」

 

ちょっと自制心無さすぎじゃないかなってねぷ子はねぷ子は呆れてみたり…

しょんぼりしているヴァーリが、何だか子供っぽくて頭を撫でる。

 

「ほらほら、今日退院でしょ?」

 

「ああ、アーシア・アルジェントには礼を言わないとな。」

 

『…夫婦会話はもういいか?』

 

「ねぷっ!?」

 

だ、誰!?と思ったけど…アルビオンかぁ。

吃驚した。

あんまり声を出さないから誰だろって一瞬なっちゃった。

 

「おはよう、アルビオン。」

 

『ああ…かつて宿主を何度も殺してきた女神が、まさかヴァーリとな。世界とは、分からんものだ。』

 

「あの時は、ほら…感情なかったし…」

 

『構わんさ。弱肉強食、それが龍の世界だからな。』

 

「うーん…にしても、あんまり喋らないのに今日は話すね?」

 

『ヴァーリとお前が番になったのだ、そろそろ黙るのも疲れた。

ヴァーリに二人の会話が好きだからと言われたが…何度も何度も砂糖吐きそうな展開をされたらな。』

 

「アルビオン、黙れ…」

 

『ああ、昨日の告白はよかったぞ。』

 

「アルビオン!」

 

『ハハハ、そう怒るな。俺の苦労が分かっただろう?』

 

「ぐぬぅ…」

 

「あはは…ごめんね?迷惑だった?」

 

アルビオンは自分の謝罪にふっと笑う声を発する。

聞こえるだけで、姿は分からないから声からしか感情分からないや。

 

『戦いしかないこいつに新たな道を示した。

それだけで俺には十分だ。』

 

「なんか、親みたいだね。」

 

『俺に責任もある。宿ろうと宿らなかろうと同じだったろうが…こいつが幼い頃に発現したから見てきたのだ。

それにしても、強くなるの一点張りのお前がなぁ。』

 

「いいからそろそろ黙れ。」

 

『…これ以上はうるさくなるな。

では女神、ヴァーリ共々よろしく頼む。』

 

「うん!」

 

保護者だなぁ。

多分、ドライグとはまた別の視点を持ってるんだろうね。

冷静な姿勢だったから、頼りになりそう?

 

あ、それよりも戻らないと。

 

「えーっと、私戻るね!」

 

「待て。」

 

「え、何?」

 

ヴァーリがベッドから降りて体を伸ばしてから自分に近付いてくる。

 

ジッと見下ろされて、何かしちゃったっけと疑問。

もしかして無理矢理脱け出した事を気にしてる?

謝った方がいい?

 

ちょっと慌てそうになってると、ヴァーリが手を伸ばす。

 

手が頭に置かれる。

 

「ほぇ…」

 

「…よし。」

 

手が離れてく。

あ、もうちょっとしてほしかった。

 

じゃなくて…

 

「ごめん、今の何?」

 

「ネプニウムを供給していた。」

 

「ネプニウム!?」

 

え、何それは…それは流石に怖い。

ちょっと怯えた目で見ていると慌てたような様子。

 

「違う、そうじゃない。今のは照れ隠しのようなものでだな…」

 

「そ、そうだよね。ネプニウムなんか無いよね?」

 

「当たり前だろう。…その、癒しがほしかった。」

 

照れくさそうに、ぶっきらぼうに言うヴァーリが可愛く見えて。

あはは、と笑ってしまう。

何だか、付き合って二日目で色々と見つけられるんだね。

もしかして、ヴァーリも肩の力抜けたのかな。

 

だから、そんな姿を見せてくれるの?

 

「ヴァーリはこの後どうするの?」

 

「少しやりたいことがあるから戻る。美猴やアーサー達が心配だからな。

ああそれと…そろそろ黒猫一匹が寂しがってるから構ってやれ。」

 

「え、ああ!最近忙しくて黒歌の事英雄派の皆に任せっきりだった…」

 

そういえば、レオナルドが少しずつ話し始めたとか、なんとか。

確認と言うか、交流のために顔を見せにいこうかな?

黒歌に関しては謝るつもりで会おう…うん。

 

でも、そっか…やることあるんだ。

 

「あいつも理解しているからな。責めはしないだろうさ。」

 

「まあ、私も匿ってる一人だからね…じゃあ、その…」

 

「うん?」

 

これから言おうとすることが恥ずかしくて言いづらい。

ヴァーリも首を傾げてるし…

でも、言わない辛さはもう分かったから言おう!

 

「あー、その…ほら…で、デートはまた今度かなぁって…

 

「…」

 

「な、なーんちゃって?」

 

「ネプテューヌ、俺を殺す気か?」

 

「なんで!?」

 

「あまり可愛い発言をするなよ…俺が尊死するぞ?」

 

「可愛いって…あーうん、帰るね!」

 

もうなんか、ずっと居すぎだし恥ずかしいし色々とごちゃ混ぜになって一回抱き付いてから逃げるように部屋を退室する。

 

ヴァーリがなんか言ってたけど気にしない!

 

…そういえば、あーちゃんはどうしたのかな。

自分と同じように、動いたのかな。

 

そう思いながら、帰路についた。

ちなみに、一人で帰る時、色んなお店を見てここいいなぁとか考えてた。

 

弛んでますよ、ネプテューヌさんって言われそう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきて、お母さんにどこ行ってたか聞かれて咄嗟におっちゃんに付き合ってたと言うと何でか納得された。

そんなにつるんでる?

おっちゃんには助けられてるけど、もしかして信頼があるんじゃ?

 

後、一誠が勢い良く家を飛び出していったらしい。

うーん?

 

自分の部屋の前に着いて、勢い良く扉を開ける。

 

「おはようあーちゃん、いーすん!そしてただ…い…ま…?」

 

「おかえりなさい、ネプテューヌさん。」

 

 

 

「…おかえりなさい。」

 

いーすんは普通に返してくれたけど、あーちゃんは目に見えて落ち込んでる。

というか、涙ぐんでる。

 

慌てて駆け寄る。

 

「あーちゃん、どうしたの!?」

 

「ネプテューヌさん……私、弱いですね。」

 

「何かあったんだよね?何かされたの?」

 

「…いいえ。」

 

 

 

「私が、してしまったんです。」

 

 

 

あーちゃんが振り絞るようにしてそう言うと顔を俯かせる。

 

勢い良く家を飛び出していった一誠…

 

…もしかして、一誠の事で何かあったのかな。

いーすんを見ると、静かに首を横に振るだけ。

 

「アーシアさんがへやにもどったときにはスデにこのセイシンジョウタイでしたヽ(д`ヽ)」

 

「そっか…」

 

何となく、確信がある。

 

そういうことなんだろうという確信が。

でも、聞いていいのかな。

…ううん、聞かなきゃ始まらないよね。

 

「あーちゃん、一誠に告白したの?」

 

「……はい。」

 

あーちゃんは顔を俯かせたまま同意する。

 

やっぱり。

振られた…にしては、違うよね。

 

「…話しますね。」

 

あーちゃんは、何があったのかの説明のためにもぽつりぽつりと話し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、イッセーさんが好きだ。

カッコいいとか、そういうのじゃなくて。

真っ直ぐな性格とか、諦めないところとか。

 

ネプテューヌさんの事が大好きなこととか。

家族を大事にしているところとか。

 

そんなイッセーさんが好きです。

 

だから、思い悩む姿を見ている時は傍に居てあげたい。

相談に乗って、その闇を晴らす光になりたい。

ただ、今よりも近くに。

 

けれど、いつも貴方は何処か距離を置くんです。

日常でも、戦いでも。

少し距離を置いて、本当の心まで届かせようとしてくれない。

 

…私では、駄目でしょうか?

 

 

 

イッセーさんが退院して、帰ってきた。

お母様やお父様からは心配の声が当然ありましたが、イッセーさんは

 

「喧嘩してきた!」

 

晴れ晴れとした顔でそう言うから、二人ともそれ以上何かを聞くことはありませんでした。

ヴァーリさんとも戦いは惜しくも引き分けでした。

互いに全力を出しあって、あの結果ならどちらも納得…だと思いたいです。

 

ただ、この時の笑顔に嘘はないと信じます。

 

…治療をする時、若干ながら戸惑いがありました。

こういう大事な戦いで負った傷を大事にする人が中には居るそうです。

この戦いも、大事な戦いでした。

イッセーさん、ヴァーリさんは治療を求めないかもしれない。

 

…もしかしたら、そう思うと戸惑いました。

 

ですが、私は私の意思を信じて治療をしたのです。

 

傷を残す…そんな考えを、私は一生理解できないでしょう。

残していい傷なんて、あってはならない。

治せるなら治すべきですから。

 

…あの戦いを観戦している時、ネプテューヌさんと話しました。

先程の壁を作られているという感覚についても。

 

ネプテューヌさんはイッセーさんをヘタレと言いましたが、本当にそうなんでしょうか。

でも、私から一歩を踏み出さないといけないのも事実。

 

イッセーさんは、起きてすぐに悔しがってました。

あの時もう少し粘れたらとか鍛え方が足りなかった、とか。

私はそう思いませんでしたが、イッセーさん本人がそう思ったのならそうなんだと思います。

 

戦いに直接参加できない私には、やはり分からないことが多いのだと実感しました。

私は治療をする者です。

戦いは本分では無いし、避けられるのなら他の方に任せて治療に走るべき存在です。

その為に護衛となるラッセー君もいますし、周りの方も守ってくれます。

 

…守って、くれるのです。

 

最近は、ネプテューヌさんの顔が優れていませんでした。

ロキ様が亡くなられた影響も少なからずあると思われます。

ですが、カオスフォームを習得してからは整理がついたようで顔色も戻ってお父様とお母様も安堵していました。

 

私は、それも見ているか聞いていることしか出来ませんでした。

 

無力感というものはここまで人を変えるんだと実感したのです。

ロキ様を助けられなかったこと。

私が戦いに参加できたら無かったかもしれない傷。

私自身の弱さが悔しく思います。

勿論、日々の努力として鍛えるなどはしています。

 

私の求めた結果はありませんでしたが。

 

アザゼルさん曰く、

 

『お前さんには戦うって事自体が向いてねぇ。後方支援、それも回復一辺倒が一番合ってるよ。』

 

とのことでした。

悔しい、と思ったのは何度目だったのか。

誰よりも早く駆けつけて、治療をする。

それが出来てようやく一歩。

 

ですが、その一歩がまた遠退く。

…私は、命を取りこぼしたのです。

治療を出来るものが仕方無かったを口にしてはいけないのです。

助けられなかったこと。

それ自体を一生背負わなければならないことなのです。

 

…私は、助けたくてもその傷を埋めるだけの力が足りなかった。

 

必死になって助けた方が瀕死になって、それを救えなかった。

それが杭となって私の心を打つのです。

 

だからこそ、私は決めたんです。

 

優先順位、それを作るべきなのだと。

何かをするにしても優柔不断になりがちな私に必要なものでした。

 

日常でも、非日常でも。

その一位を優先すべきだと。

 

…私の一位はイッセーさんでした。

あの人は真っ直ぐです。

それ故に私よりも脆い方でした。

 

イッセーさんには直接支えてくれる人がいません。

そこがネプテューヌさんとの唯一の違いでしょう。

あの人は、ヴァーリさんがいます。

ですが、イッセーさんは…いないのです。

 

遠ざけてしまうから、というのもあるでしょう。

ですが、恐らくは怖いのだと思います。

裏切られるという事が。

 

人に、ではなく。

物事に裏切られる事。

かもしれない、という可能性が見えた時にはもう壁を作ってしまう。

そんな防衛本能。

 

ネプテューヌさん曰く、イッセーさんはレイナーレさんに騙されて殺されかけたそうです。

恋人になったと思えば、だったようで。

 

心の傷は物理的な治療ではどうにもなりません。

…その傷を埋めるのに、私では駄目でしょうか?

 

そう思った時には私はイッセーさんの部屋の前にいました。

ネプテューヌさんが帰ってきてなくてガッカリしていたのを思い出します。

 

ノックをして反応を待つ。

 

「アーシアか?」

 

「はい、私です。」

 

「おお、入っていいよ。」

 

許可を得て、部屋に入る。

 

イッセーさんは座って、私に笑顔を見せました。

壁を、感じます。

 

「痛みなどは大丈夫ですか?」

 

「ああ、平気だよ。アーシアのお陰だぜ!」

 

「ふふ、そうですか。」

 

私のお陰。

そう言ってくれるのは非常に嬉しい。

ですが、私が癒したいのは…また別の傷なのです。

 

「癒して、良かったんですか?」

 

「え、どうしたよ突然?」

 

「いえ…あの傷を、残したいとか…そういう考えがあったかもしれないと思うと。」

 

「いや、ないないない!痛いまま生活したくないからさ。

アーシアがいるから、俺はピンピンしてるんだぜ?」

 

「そう、ですか。」

 

私がいるから。

その嬉しい言葉にさえ、壁を感じる。

どうしてですか、イッセーさん。

 

隣に座る。

イッセーさんは少しビクッとして、距離を取ろうとするけど腕を掴んで引き止める。

 

「ど、どうしたんだよ?今日は何だか変だぜ?」

 

「イッセーさんは…私を避けてますか?」

 

「いや、そんなことは…」

 

「怖いですか?」

 

私は怖い。

イッセーさんの顔を見るのが怖くて、俯いたまま。

でも、言葉は出てきた。

 

「疲れてるのか?今日は休んだ方がいいよ。」

 

「お願いです、答えてください。」

 

「俺がアーシアを怖がる理由がないだろ。」

 

「…そうですか。」

 

「納得してくれたか。なら─「質問を変えます。」え?」

 

 

 

「─裏切られる事が怖いですか?」

 

 

 

私はその時、意を決して顔をあげてイッセーさんの顔を見た。

ジッと、その瞳から伝わる感情を見るために。

 

目は口ほどに物を言う、ということわざがあります。

 

…その通りでした。

 

その目にあったのは、恐怖でした。

 

「何、を言って。」

 

「ネプテューヌさんは、裏切りません。ご両親も。

…私は、その中には入ってないんですね。」

 

「裏切る、って…」

 

「乗り越えたばかりで申し訳ありません。

ですが、私はその傷を看過できませんでした。

…イッセーさん。」

 

イッセーさんの手を、両手で包む。

 

 

 

 

 

 

「私は裏切りません。私は貴方が大好きです。

…だから、私を貴方の傍に置いてくれませんか?」

 

 

 

 

イッセーさんは、手を振り払って、部屋を出ていってしまいました。

一人、取り残される。

駄目だった。

 

そう思った時には、涙が止まらなくなりました。

私が怖いんですね。

信用、してくれないんですね。

 

…辛くて、仕方無かった。

傷を埋めたい、そんな思いもあった。

でも、イッセーさんが好きという想いは嘘じゃない。

その傷を埋めて、一緒にいたい。

 

…ですが、返事もなく出ていってしまいました。

 

私は、追いかけられませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私、間違ってましたか…?」

 

震える声で自分に聞いてくるあーちゃんに、どう答えたものかと考える。

積極的…とも違う。

献身的、これだ。

 

あーちゃんの献身は凄いものだ。

でも、一誠からしたらそれは怖いものだったのかもしれない。

 

傷を言い当てて、それを癒したい。

そう言われたら。

…ちょっと警戒しちゃうかも。

 

心の傷なら尚更。

 

でも返事もなく出ていったのは…どうなんだろう。

追いかけるべきと言うのは簡単だよ。

でも、それでさらに追い込んだら…

 

…うん。

 

「あーちゃんはどうしたいの?」

 

「私は、イッセーさんと…一緒にいたいです。」

 

「今でも一緒だよ?」

 

「それは…違います。

私は、もっと傍にいたいんです。家族ではなく、隣に寄り添う者として。でも…」

 

「うん。」

 

「…イッセーさんが私でなく、別の方を望むのなら私は諦めがつきます。私が望むのはイッセーさんの心の傷の回復です。

…傍にありたいのは、本心です。治療も、本心です。

…ズルいですね、私。」

 

「…大変だね、あーちゃんは。」

 

「アーシアさん…」

 

難しい考えだと思う。

二つの内、どれかが叶えばそれでもいい。

そういうのじゃない。

 

あーちゃんは…『心の治療』と『一誠と付き合うこと』が一緒になっちゃってるんだ。

ちょっとした歪みだと思う。

 

あーちゃんも気付いているからこそ、難しいんだ。

 

…一誠、これは自分じゃ無理なやつだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って、走って。

 

何でか分からないけど、アーシアから逃げた。

何かを見るような目、言葉。

俺はそれから逃げたんだ。

 

罪悪感と自己嫌悪に陥る。

 

でも、戻る気になれなかった。

少なくとも、今戻っても同じことが起こる。

 

…いつの間にか、公園に立ってた。

 

子供はまたそんなにいない。

ベンチに座る。

 

「…俺がアーシアを怖い…か…」

 

思ってない…と言えるのか。

手を振り払ったのは、怖いからじゃないのか。

アーシアの事は信じてる。

感謝もしている。

 

でも、あの時のアーシアは…

 

心に踏み込んでくるような目をしていた。

 

…怖いのか、俺。

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

綺麗な声が聞こえた。

…はて、俺に聞いているのか。

落ち込んで地面しか見てないから分からなかった。

 

俺の前に、誰か立ってるのか靴が見えた。

 

取り敢えず、見上げることにした。

 

そこにいたのは──

 

「…えっ?」

 

「?」




一誠と誰が出会ったのか。

そして、アーシアと一誠…どうなるのか!
ン待て次回ィ


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貴方を癒し、支えたい

「…えっ」

 

「?」

 

目の前の人物の顔を見ようと顔をあげた。

そうして、驚愕したんだ。

 

だって…

 

 

 

とても、姉ちゃんに似ている。

姉ちゃんより髪は長いし、背は高い。

けど…髪の色、目の色は瓜二つだ。

姉妹と言われたら姉か妹、どっちかは分からないけど信じてしまう。

 

良く見たら、姉ちゃんと同じような十字キーを模したアクセサリーも付けている。

…俺は夢でも見てるのか?

 

「あの…」

 

「え、いや…ごめん。」

 

また声をかけられて、ハッとする。

声は、似てないよな。

流石に…うん。

 

他人の空似だ。

 

咄嗟に謝る。

にしたって…似すぎだろう。

 

「大丈夫ですか?何だか、参ってるみたいですけど…」

 

「ああ…ちょっとトラブルがあってさ。悩んでたんだ。」

 

そこまで言って、目の前の女の子に気を許そうとしている自身がいることに気付く。

まさかだけど、俺はこの子に今の気持ちを相談しようとしたのか?

 

見ず知らずの、女の子に?

 

姉ちゃんに似てるからって、そこまで寄せるか…?

 

目の前の女の子は「そうなんですね…」と心配そうにしている。

何だろう、純粋っていうか…

真っ白?そんなイメージだ。

 

「私で良ければ、ご相談に乗りますよ!

辛いことは吐き出すといいってお父さんも言ってましたから!」

 

笑顔を向けて、そう言ってくる。

困惑しないといえば嘘だけど、何となく話そうかなと思った。

謎の安心感があるのもそうだけど、いつまでも一人で悩むべきじゃないと判断したからだ。

 

「…じゃあ、聞いてくれるか?」

 

「はい!」

 

女の子は隣に座って、聞く姿勢に入る。

 

「何て言うかな…話せば少し長くなるんだけど。」

 

「大丈夫ですよ。ゆっくり話してください。」

 

優しいな…

 

…俺は怖いんだろうな。

思わず弾いて逃げたのは、そういうことなんだろう。

多分だけど、レイナーレの時から…だと思う。

 

告白されて、殺されかけて。

だから俺の無意識の内に避けてた。

 

アーシアはそれを見抜いて、癒そうとしてくれた。

告白と一緒に、そういわれたんだ。

 

「俺さ、一回告白されて付き合ってた子がいたんだ。」

 

「お付き合い、ですか?」

 

「ああ。彼氏彼女の関係ってやつだ。…だけど、騙されてたんだ。

その彼女は俺にずっと嘘を付いてたんだ。」

 

「そんな…酷いですよ。」

 

「はは、ありがとな。でも、もう別れたから平気だよ。

でも、それがきっかけ…なのかな。

さっき気付いたんだけど、怖いみたいでさ。

無意識の内に壁を作ってたんだ。」

 

「トラウマ、ですか。」

 

「多分な…」

 

肯定してから、俯く。

最低だ、俺。

信じるって決めておいて…信じられてなかったんだ。

 

壁を作って、伸ばされた手を弾いて。

そんなの、信じられないって事と同じじゃないか…

 

「それで、俺と良くいる子が告白してきたんだ。

すっげぇいい子でさ、俺なんか勿体無いくらい献身的っていうか…優しいんだ。」

 

「お返事はしたんですか?」

 

「…いや、逃げた。」

 

「…怖かったんですね。」

 

「…多分。俺は、あんな真っ直ぐに想いを向けてくれた子から返事もせずに逃げたんだ。」

 

「…お兄さん。」

 

呼ばれて、女の子を見る。

真剣な表情だ。

 

「お兄さんはどうしたいんですか?」

 

「…」

 

「私は、お返事をした方がいいと思います。その人の想いは本物で、お兄さんと一緒にいたいんだって感じました。

…でも、決めるのはお兄さんです。

このまま、背を向けるのか。それとも、答えを出すのか。」

 

「俺は…」

 

女の子の言う通りだ。

決めないといけないのは俺だ。

今の俺は逃げているだけだ。

このまま逃げて、アーシアになにも答えない。…そんなのは駄目だ。

でも、告白にしっかりと答えられるのか?

好き、だなんて考えたこともない。

家族になって、支えてくれる一人として認識していた。

でも、恋人…好き嫌いまでを考えたことはなかった。

こんな半端で答えられるか?

 

俺は、どうすればいいんだ。

 

「お兄さんは、どう思います?」

 

「俺は…アーシアを…」

 

何があっても俺の傍にいてくれた。

姉ちゃんみたいに、俺を肯定してくれた。

俺が暴走気味でも止めてくれたし。

 

辛い時は相談に乗ってくれた。

 

…アーシアに、助けてもらってばっかだった。

 

「分からないんだ。」

 

「分からない、ですか?」

 

「…俺、あの子が好きなのかな。考えないようにしてたのかもしれない。だから、こういうことになるなんて思ってなかった。」

 

「…大変だったんですね。

でも、そういう時こそ向き合わないと駄目だと思います。

お父さんが言ってました。目の前の事から逃げてたら強くなれないって。」

 

「…いいお父さんなんだな。」

 

「はい!」

 

笑顔の女の子は、誇らしそうだった。

 

…そうだよな。

こういう時こそ冷静に考えねぇと。

アーシアは俺をしっかりと見ていてくれた。

なら、俺もアーシアをしっかり見ないといけない。

 

…けど、好きなのか、そうじゃないのか。

 

「俺、考えてみるよ。」

 

「しっかりと考えて、それで出た答えなら…その人も納得すると思います。」

 

「…そうだな、ありがとな。

そういえば、名前を聞いてなかった。俺は兵藤一誠、君は?」

 

私ですか?と自分を指差す女の子。

頷くと、笑顔で。

 

 

 

 

 

「ネプギアです、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

そう名乗った。

…ネプギア、か。

名前までなんだか似てるんだな。

ネプって…姉ちゃんが聞いたら海王星な私はセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない~とか言いそうだ。

 

「そっか。サンキューな、ネプギア。

どうすりゃいいのか分かってきたよ。」

 

「いえ、私は…一誠さんの悩みを聞いていただけですから。」

 

「それでも、聞いてくれただろ?それだけでも気が楽だったからさ。」

 

「…えへへ、そうですか?」

 

嬉しそうにそう言ってから、ネプギアは携帯を取り出して、慌て出す。

 

「お、お父さんからメールが結構来てる!?わわ、急いで帰らないと…すみません、私はこれで!」

 

「お、おう。気を付けてな!」

 

「はい、また何処かで!」

 

…俺よりも年下と思われるネプギアに諭された。

世界って広いなぁ…

とにかく、考えを纏めないとな…

 

アーシアを傷付けた事もあるしな…

 

…俺って、馬鹿だよなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん、返事できなくてごめんなさい!」

 

帰路につきながら、連絡する。

真っ先に謝らないとと思って思わず大きな声で謝る。

 

『いや構わない。何かあったのか?』

 

「顔を真っ青にして悩んでる人がいて、相談に乗ってました。」

 

『…そういう風に装う輩と思わない辺り甘いな。

何もなかったんだな?』

 

「はい、むしろ仲良くなりました!」

 

『それはいいことだ。友人は視野を広くしてくれる。』

 

駒王町。

来たのはお父さんと一緒を含めて二回目。

今日来たのはちょっとした買い物の為だった。

 

こっちの方が入荷が早かったからいち早く欲しかったからお父さんに一人で大丈夫って言って来たんだった。

 

そうしたら、兵藤一誠さんと出会った。

 

死んじゃいそうな顔色だったから思わず話しかけて、そこから悩みを聞くことになった。

 

付き合ってた人に裏切られて、そこから心の傷が出来ていたようで。

壁を作るようになってしまったとか。

 

そして、家族って認識の人から告白されたこと。

 

大変だと思う。

私には想像もつかない。

まだ人生の経験も浅い私にはこうなのかなといった想像しか出来ない。

けど、何となく一誠さんはどちらかを選ぶ。

 

そんな気がしながら帰るのだった。

 

『それで、しっかり買えたのか?』

 

「うん、バッチリだよ!」

 

『それはよかった。帰りは気を付けてくるといい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、夜になってもイッセーさんは帰ってこなかった。

 

…これなら、告白しない方がよかったのかもしれません。

でも、私は治したかった。お付き合いがしたかった。

 

あの人の心の傷を、癒してあげたかったんです。

誰でもない、私が。

 

…独占欲、なんでしょう。

 

心が癒えるその時まで、私がずっとお側にいます。

その為の場所も、頑張ります。

…そんな、独占欲。

 

ネプテューヌさんにすら会わせたくない心が私にあった。

 

…私は魔女なんでしょう。

後ろで回復しか出来ない女の嫌な欲望。

 

…嫌な女に生まれたと思いました。

それでも後悔はしません。

私の告白は確かにイッセーさんの心には届いている筈だから。

 

夕食を食べて、お風呂も済ませ。

お父様とお母様に聞いてみたら、外で食べてくるという連絡が来たそうです。

 

ネプテューヌさんはずっと私を心配そうにしていました。

 

…まだ帰ってきてないようで、イッセーさんの部屋は暗かった。

電気を点けて、入り浸る。

 

感傷的になってるのは理解してます。

私が招いた結果ということも。

…だけど、もう一度だけ顔を見たいのです。

 

明日また見れる。

そう分かっていても、そう思うのです。

 

だから、私はここで待ちます。

きっと、イッセーさんは何らかの答えをもって来ると信じて。

 

…そうして待っている内に、眠気が襲ってきました。

いけません、寝るわけには……

イッセーさんのお顔を見るまでは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─…シア。…ーシア?

 

 

「アーシア!!」

 

「ッ!?」

 

大きい声に驚いて飛び起きる。

 

…どうやら、本当に寝てしまったようです。

耐えられない自分が嫌になる。

 

…ですが、起こしてくれた声は、待ち望んでいた声で。

 

イッセーさんが、困惑した顔で私を起こしていました。

 

ああ、待っていました。

イッセーさん。

私に、その傷を治させてくれるんですか?

 

 

「…答えを、聞かせてもらえますか?」

 

「…ああ。俺は─」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─俺は、その治療を受けることは出来ない。」

 

 

 

 

 

それは、何となく分かっていた答えで。

でも、それでも苦しかった。

…だって、イッセーさんはそういう人だ。

 

「理由をお聞きしても。」

 

だから、答えを聞いた上でどうしてかを聞かせてほしい。

そうすれば私は…諦められる。

ただの癒し手のアーシアとして、貴方の近くにいるだけになる。

それでも、私は構わないから。

だから、納得できる理由をください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えを纏めて、家に戻った。

必死に考えた。

俺はアーシアに相応しいのか、とか。

俺の心の傷を治してもらえるのか、とか。

 

でも、結論はそうじゃなかったんだ。

 

俺は、アーシアの治療(告白)を受けない。

 

…受けちゃいけない。

 

「理由の前に、質問いいか。」

 

「はい。」

 

「…アーシアは、俺の心を癒したいのか?距離を今より縮めたいのか?」

 

「どちらもです。」

 

「…そうか。」

 

今の答えで完全に理解した。

 

多分、俺の傷は治らない。

そして、アーシアは家族だ。

 

「…ごめんな、俺はアーシアを家族と見れても、そういう存在として見れない。」

 

言葉にした方がいいのだろうか。

俺はアーシアの治療を受けたら最後、停滞すると。

 

だって、ある種の束縛だ。

 

『付き合いたい』、『心の傷を治したい』

 

一番近くで治療をしたいからお付き合いがしたいです。

 

…というわけでもないのがこの想いの厄介なところだ。

二つで一つでなく、二つとも別々で一位の想いなんだ。

 

勿論、俺の推測に過ぎない。

人の告白にこうして推測をたてるなんてのは最低だ。

けれど、俺の今後を決めるというのなら俺はそうする。

 

「…私じゃ、駄目なんですね。」

 

「…」

 

多分、俺がこの告白を頷いたら…俺もそうだけどアーシアは前に進まなくなる。

停滞が始まったら何もならない。

 

それに、俺はもう助けてもらってるんだ。

 

「心配しなくて大丈夫だ。

俺はもう、トラウマを克服できるよ。」

 

「…本当、ですか?」

 

「アーシアに、指摘されて…信じられてなかったんだって思った。

それでこのままじゃ駄目だって分かったんだ。

…だからってアーシアに頼るのは違うと思うんだ。

俺が乗り越えるべきもので、そうじゃないと同じことが起こると思う。」

 

「…私を、一人の女の子として見てくれませんか?」

 

すがるような目。

だけど、俺は静かに首を振る。

 

「…俺は、今更アーシアをそう見れないよ。」

 

「こんなに、想っています」

 

「ごめん。」

 

「全てを捧げられます」

 

「ごめん。」

 

「…はい」

 

ただ、謝る。

俺は…俺は、最低だ。

 

こんなに献身的な子に好かれているのに。

俺は…それに向き合えてもいいえと言うしかない。

 

アーシアは、そんな俺に微笑んだ。

 

「イッセーさんは、また無茶をするんですね。」

 

「…俺、馬鹿だからさ。怪我でもしないと進めないんだ。」

 

「馬鹿だから、は免罪符になりませんよ。」

 

「…だな。」

 

「だから…だからっ…」

 

 

 

 

 

「貴方は、貴方らしく…イッセーさん、らしくっ…前に、進んでください。」

 

 

 

ポロポロと、涙を流しながらアーシアは、そう言った。

 

抱き締めることは、出来なかった。

それをしたら、俺はこの子を受け入れなきゃいけなくなる。

アーシアも、それは望んでいない。

 

「私は、それでも貴方をお慕いしています。

だから…貴方の増えていく傷を癒すのは、許してくれますか?」

 

「…俺の治療を任せられるのは、アーシアしかいないよ。

頼もしい『仲間(家族)』…だからな。」

 

「ズルいですよ………!私の事、振っておいて、そう言うのは!」

 

「ごめん。」

 

「ほんとです……でも。」

 

 

 

「はい、お任せください、イッセーさん。」

 

 

 

涙を見せながら微笑むアーシアに、俺は頷くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

告白と治療は断られた。

…何となく、分かっていました。

だから、大丈夫。

 

この欲が叶ったら、私は貪欲に何かを求めてしまうだろうから。

きっと、イッセーさんを引き止めてしまう。

いけないことだと分かっていても、それをしてしまうでしょう。

イッセーさんが望まなくても…

 

だから、正しいんです。

貴方の選択は…間違いじゃありません。

 

だから、そんなに辛そうな顔をしないで。

 

「私は、大丈夫です。」

 

顔に手を添える。

強引にいけば、なんて考えが一瞬だけ浮かんでそれを振り切る。

 

私がしたいのは、そうじゃない。

今のイッセーさんの傷は、私には治せない。

治させて、くれない。

でも…和らげることは出来ると思うのです。

 

仲間として、助けてあげたいのです。

 

「真剣に考えてくれたんですね。

私は、それだけで嬉しいですよ。」

 

周りに目を向けていないといけないイッセーさんがこの瞬間だけは私だけを考えてくれていた。

それがとても嬉しい。

これは束縛だ。

 

私は間違っている。

治療と恋を混同してしまっている。

それでも私のこの気持ちは嘘じゃない。

 

だけど、この気持ちに決着をつけないと。

他ならぬ私がこの気持ちに終わりを。

 

諦めきれない…なんて事はしない。

振り向いてくれるまでなんて事はしてはいけない。

それは足枷になってしまう。

 

この想いを振り切って、前に進むと言ってくれた貴方に。

この献身を、今度は仲間として捧げたい。

 

だから、さよならを。

 

辛いけど、今でも貴方が好きだとしても。

 

私は貴方の後ろを歩みます。

貴方が後ろに倒れそうな時、私が支えます。

前には…いっぱいいますから。

だから、後ろは私が。

 

「イッセーさん。」

 

「…ああ。」

 

「これからも、よろしくお願いしますね!」

 

「…ああ、よろしくな!」

 

無理をして笑顔を二人で見せ合う。

 

…何だか、おかしな光景だ。

だけど、これが正常なんですね。

 

「もし、イッセーさんに好きな人が出来ても見極めちゃいますからね?」

 

「え、どうして?」

 

「私の想いを断ったんです。私の想いより上でないと。」

 

「俺の好きって気持ちは無視なのな…」

 

「…ふふっ、冗談です。

イッセーさんはすぐに真に受けますね。」

 

「いや、だってアーシアはあんまり冗談言わないからさ。」

 

「こういう時くらい、私だって言いますよ。

…では、私は戻りますね。」

 

「…ああ、『おやすみ』」

 

「はい、『おやすみなさい』」

 

それは家族としての言葉。

この言葉をもって、私の気持ちは終わりを告げた。

…そうすぐには消えませんけど、でも諦めることは出来る。

 

部屋を出て、私とネプテューヌさんの部屋に戻る。

 

扉を静かに開ける。

ネプテューヌさんもいーすんさんも寝ているだろうから。

 

 

 

「あーちゃん。」

 

 

 

「…起きて、たんですね。」

 

…そう思っていたのに、ネプテューヌさんは起きていた。

少し悲しそうに微笑んで、私を迎えてくれる。

普段の快活な雰囲気ではなく、戦いの時の冷静な雰囲気でもない。

…姉の雰囲気、というんでしょうか。

 

「告白、失敗しちゃいました。」

 

「…そっか。」

 

「でも、これからも家族として…私は、支えます。

ネプテューヌさんも、イッセーさんも…皆さんも。

だから、だから……!」

 

「あーちゃん。」

 

ネプテューヌさんが再び名前を呼んでくる。

両腕を広げて、優しい顔をしていた。

 

 

 

「いいんだよ、私には。」

 

「っ…!」

 

気付いたら、抱き付いて泣いていた。

胸の内の苦しみを吐き出すように、この気持ちを流すように。

 

優しく背中に腕を回して、頭を撫でるネプテューヌさんは…ただただ静かに私の悲しみを受け止めてくれた。

 

「わたしっ、イッセーさんを、好きで…助けたくて…っ」

 

「うん。」

 

「でも、受け入れて、くれなくて…」

 

それでいい。

でも、それが辛いとネプテューヌさんに言葉を吐き出す。

頭を撫でる手はどこまでも優しくて。

安心感と共に、イッセーさんに言わなかったこの胸の内をさらけ出す。

 

きっと、私が切り替える為に、こうしてくれている。

 

吐き出したいことを吐き出して、スッキリさせてキッパリと諦められるように。

だから、それに甘えるように私は。

 

目を閉じて寝てしまうその時まで、ネプテューヌさんを抱き締めて泣き続けた。

 

しばらく、私の好きは変わらないでしょう。

でも、いつかはこの気持ちを、捨てる時が来る。

…それまでは。

 

私の献身を、捧げます。

貴方の後ろを支えます。

 

貴方の傷を、癒します。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーションの!」

 

「コーナーです!」

 

「どんどんパフパフ!

ということで、今回も始まりましたネプステーション!

Cへの道筋─mk2─編はこれでおしまい。

ゲストは勿論、あーちゃんだよ!」

 

「二回目は私が初ですよね。

ヴァーリさんじゃなくていいんですか?」

 

「ヴァーリと私だけだとここただの恋人空間になるよ?」

 

「あはは…なるほど。爆発してください。」

 

「ねぷっ!?

え、えーと…この章は怒涛の展開だったね。」

 

「ですね。

様々な想いに決着がつきましたね。

カオスフォーム、ヴァーリさんとネプテューヌさん、私とイッセーさん。」

 

「うん、だから、ここからはしっかりと前を向いて進もう!

次回予告!」

 

 

「夏休みに入り、オカ研メンバーで京都に向かうことになった私たち。

ですが、駒王でなくともトラブルが降りかかります。

京都の妖怪、事件。

そして…反英雄派がついに動き出す。

ネプテューヌさん、決着は近いです!

って…新しい女神!?どういうことですか!?

 

次回、冥次元ゲイムネプテューヌ。

『猛争の渦、切り開け想いの翼』!」

 

「次回も私が大活躍!」

 

 

 





アーシアは 『貴方に献身を』 の称号を取得しました!
一誠は 『想いを振り切り、前へ』 の称号を取得しました!
一誠とアーシアのリリィランクが10になりました!


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猛争の渦、切り開け想いの翼!
夏だ!夏休みだ!どこ行こう!


ねぷの夏休みだ!(挨拶)

さあ、京都編の始まりだぁ…






おはようございまぁぁぁす!!

今日も元気なネプテューヌだよ!

ふっふっふ…なんでこんなにテンション高いのかって?

教えてあげよう!

 

待ちに待った!夏休みだからだよ!

 

「おはよぉぉぉあーちゃぁぁぁん!!」

 

「ふえぇ!?」

 

目覚ましネプテューヌ!

おはようの挨拶を君に!

 

あーちゃんが飛び起きて何事かと周りを見渡す。

あーちゃんにはとても元気な自分が写ったことだろうね!

そうして、頬をプクーッと膨らませて怒ってくる。

 

「ビックリしたじゃないですか!起こすにしてももう少し静かに起こしてくださいよ!」

 

「何言ってるの!夏休みだよ、夏休み!

成績表も問題なかったんだから遊び倒すんだよ!

早起きしなきゃ!」

 

「ネプテューヌさん、だからといってそれはないですよ( ;-`д´-) 」

 

「あ、いーすんおはよう!」

 

いーすんも起きて、本から人の姿に。

呆れた様子で注意してくるいーすんにあーちゃんは頷いている。

 

「おはようございます。ですが、ナガいおやすみだからといってあそんでばかりはゆるしませんよ」

 

「なん……だと……!?」

 

「あたりまえです。シュクダイをコツコツとやって、それからあそぶのがフツウですよ。」

 

「いーすんさんの言う通りですよ、ネプテューヌさん。

やらないことが後々響くんですから、計画的にやりましょう?」

 

「えー、夏休み残り数日で私は終わらせる派だよ?」

 

「ダメです、ワタシのメがあるうちはケイカクテキにやらせますからね。」

 

「ええぇぇ!いーすんのケチ!鬼!悪魔!」

 

「ワタシはシショです( `_´)」

 

「分かってるよ!」

 

いーすんが鬼過ぎる!

夏休みは自由なんだよ!?

こんな時くらいは青春を謳歌すべきだと自分は思うなぁ!

 

そう、青春!

せっかくねぷ子さんは自分の幸せ掴むことに成功したんだからそりゃもう色々としたいわけで。

 

「ネプテューヌさん、イッセーさんは起こさないんですか?」

 

「あ、そうだね。行こっか!」

 

「はい。」

 

「はぁ…ワタシはネプテューヌさんのなかにいますね。」

 

いーすんはため息をついた後、自分の中に光となって入る。

毎日のサポートありがとね、いーすん。

 

あーちゃんと一緒に一誠の部屋に突撃!

 

あ、そういえばあーちゃんの事なんだけど…

あーちゃん曰く、もう大丈夫なんだそう。

流石に早すぎないかと思ったけど、本当に大丈夫そうだったし今も普通に過ごしてるから…多分、あーちゃんの中では早い段階で整理がついてたんだね。

 

強い妹を持ったなぁ…

 

部屋の扉を勢いよく開ける。

 

「一誠!おはようございまぁぁぁす!!ねぷ子さんタイマーが朝をお知らせするよ!」

 

「うるせぇぇぇぇぇ!!?」

 

一誠もまた飛び起きる。

飛び起きてすぐに自分に詰め寄ってくる。

 

割とおこだね?

 

「今年は一段とうるさいな!?前回は無言でボディプレスだったじゃん!今回はどうして鼓膜に強烈な一撃かますの!?」

 

「ンナイスツッコミィ!」

 

「前回はボディプレスだったんですか…?」

 

「ああ、アーシア…おはよう。」

 

「はい、おはようございます。それで、何故ボディプレス?」

 

「毎年恒例だよ、夏休み最初の日に姉ちゃんが騒ぐのは…」

 

いてて、と耳を押さえる一誠にあーちゃんは苦笑い。

そうだよ?兵藤家だとこれは毎年恒例だよ?

ちなみに前々回は後ろから飛び乗りだったね!

 

あの時は嬉しそうにしてたけど、どうしてボディプレスは駄目なのか。

 

「ボディプレスは苦痛が伴うからだよ!」

 

「地の文にまでツッコミ入れるようになったの!?」

 

「地の文にボケ投下するから習得したんだよド阿呆!」

 

「あいたぁ!?」

 

拳骨クリーンヒット!

 

殴ったね!?

お父さんにも殴られたことないのに!

 

「夏といえば?」

 

「海か?」

 

「えっと…プール?」

 

─夏休みの課題をですね…

 

「いーすん、課題はやるから他はない?」

 

─言質取りましたからね。夏といえば、山でしょうか。

 

うーん意見が分かれたね!

これもまた夏の醍醐味…

 

海、山、プール…

 

「姉ちゃんは?」

 

「そりゃ海だよ!皆で楽しく海で遊びたいね!」

 

「ネプテューヌさんらしいですね。でしたら、今度海に行きますか?」

 

「おー、いいね!兵藤家総出で海に行こう!」

 

「想像したら楽しそうだな。家族全員かぁ…最近、そういうの無かったもんな。」

 

「これはもう計画するしかないよね!」

 

「水着なぁ…買わないとなぁ…」

 

海、海といえば水着…

そう、一誠が鼻の下を伸ばしてしまうこと間違いなし!

あ、でもあーちゃんいるからどうだろう…

 

皆でワイワイと話していると携帯が鳴る。

 

こんな朝に誰だろうと思って確認するとリアスちゃんだった。

 

「はーいおはようリアスちゃん!ネプテューヌだよ!」

 

『ええ、おはようネプテューヌ。朝にごめんなさいね。』

 

「ううん、気にしないで!それで、どうかしたの?」

 

『ええ、アザゼルがオカ研メンバー全員を召集しろって言うからこうして連絡したの。アーシアとイッセーはいるわね?』

 

「うん!これから部室に向かえばいい?」

 

『ええ。プリンを用意して待ってるわ。』

 

「絶対行くね!」

 

電話を切る。

うーん、おっちゃんが何か企んでるようだけど何だろう?

一誠とあーちゃんが首をかしげてる。

 

「ねぷ姉ちゃん、部長はなんて?」

 

「おっちゃんが部室に集まれ~だってさ。」

 

「総督さんが?」

 

「ろくでもないことじゃないか?研究結果に付き合えとかさ。」

 

「どうだろ?取り敢えず支度して行こっか。」

 

「だな。」「はい!」

 

三人で下に降りて、お父さんとお母さんにおはようの挨拶をしてから朝御飯の支度の手伝いをする。

今日も今日とてお米が美味しいね!

 

「今度私も料理しようかなぁ…」

 

「「「「絶対にやめて」」」」

 

「泣いていい?」

 

「ネプテューヌさんがわるいですよ。」

 

自分の料理が美味しくないのは分かるけど総員に言われると泣きたくなるよね…あーちゃんが敬語抜きになるって相当だもんね…

いいですよーだ、ねぷ子さんはこのまま料理できない女の子として生きていきますよーだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうお前ら、無事集まったようだな。」

 

支度をして部室にやってきた自分達。

部室にはおっちゃんがどかっと座りながら待ってた。

リアスちゃんもいるんだけど…その…

 

「リアスちゃん…」

 

「あら、どうかした?」

 

「どうして、胃薬を瓶ごと持ってるの?」

 

瓶ごと握ってるって言いますか。

これから何があっても即座に使えるよう用意してるようにしか見えないって言いますか。

 

リアスちゃんはフフッと優雅に笑いながら

 

「全員集まる時は大体私の胃にダイレクトなダメージが来る時だもの。備えあれば憂いなしよ。」

 

「部長、優雅じゃないっす!」

 

「お黙りイッセー!貴方の暴走も一因を担っているのよ!」

 

「すんません。」

 

素直に謝る一誠。

うん、自分もその一因だからごめんねとしか言えない…

あーちゃんだけだよね、この中でリアスちゃんにダメージ与えないの。

 

「おう、仲が良いようで何よりだ。」

 

「でっしょー?」

 

「仲は良いけど胃痛が伴う会話はしたくないわ…」

 

「ま、それは俺の胃薬で耐えるこったな。

お前らが二番乗りだからな、まあ寛いでろよ。」

 

「はーい!」

 

おっちゃんに言われて座る。

すると、リアスちゃんがプリンを用意してくれた。

 

「リアスちゃぁぁん!やっぱりリアスちゃんは最高の部長だよぉ!」

 

「はいはい。味わいなさいよ?」

 

「それはもちろん!いただきまーす!」

 

「相変わらずのプリン好きだなぁネプ子。」

 

「美味しいからね、仕方ないね。この世で一番美味しいものだからね!」

 

「まあ、好きなら良いんだけどよ。」

 

うますぎる!(某眼帯蛇)

 

はっ犯罪的だ…!!うますぎる…!!

ここに神殿を建てよう!

あまりのうまさにコロンビア!

 

「スプーン咥えたままボケないの。」

 

「はーい。」

 

リアスちゃんに言われて素直に従う。

 

「んで、ネプ子。丁度良いから聞くけどよ、あの後カオスフォームはどうなった?」

 

「あ、それは安心して。しっかり使えるっぽい。」

 

「試しになってみてくれねぇか?」

 

「え゛っ」

 

「どうした?」

 

「…恥ずかしいな~」

 

やめよう?公開処刑だよ。

自分、ここであの姿はよろしくないと思うんだ。

ヴァーリになら、見せても良いけど~…

あれは、ほら、ね。

 

呆れた様子のおっちゃんはため息をつく。

 

「はぁ…ネプ子よぉ。

もう俺らは一度カオスフォームの姿を見てるんだぜ?

グレモリーとアーシアはともかくよ。ほれ、さっさとしねぇか!

データ取れねぇだろ!」

 

「うわぁぁん!私に人権がないよぉ!」

 

「ねぷ姉ちゃん。」

 

「一誠!一誠は助けてくれるよねぇ!?」

 

「頑張れ。」

 

「裏切りものぉぉ!!」

 

くそう…やればいいんでしょやれば!

 

やってやろうじゃないのこの野郎!!

 

紫の駒…あれから、おっちゃんに『カオスピース』っていう名前を貰ったんだよね。

カオスピースを取り出して、シェアを注ぐ。

そして、女神化!

 

「カオスフォームにアクセス!なんてね!」

 

女神化のその先、一つの可能性であるカオスフォーム。

何て言うか…うん、なってみて何だけどさ。

 

布面積ならぬプロセッサ面積足りなくない?

これ下着と何が変わらないの?

え、待って、やっぱ恥ずかしいよ!

 

おっちゃん!おお、じゃないよ!

測定器みたいなもん出して冷静にデータ採取しないでよ!

 

いーすん!?おっちゃんと、一緒に調べるのやめてよ!?

 

「これは…すさまじいですね(゜ロ゜)」

 

「ああ、混沌の力…カオスエナジーとでも呼ぶべきか。

この数値はすげぇな…ヴァーリの禁手の出力よりも数値が高いのは久しぶりだぜ。」

 

「いままでのロンギヌスホユウシャの数値をうわまわってます。」

 

「ってなると…やっぱ下手に使わせるべきじゃねぇな。」

 

「…ねえ?」

 

「イストワール、今考えて書いてみたんだが、これはどうだ?」

 

「おおきすぎませんか?セントウのときにジャマになりますよ。

ここを…こうでどうですか?φ(・・*)」

 

「なるほどなぁ…」

 

「…」

 

…無視?

自分、ここまで恥ずかしいの我慢してるのに無視?

それはないんじゃない?

 

こうしてさ、下着同然の姿になってるのにさ。

こんなに自分ほっぽって話するなんて仲いいね?

 

「お、おーい、二人とも…」

 

「そろそろ…反応した方がよろしいかと…」

 

「「…あっ。」(゜゜;」

 

「…無視するの?無視するつもり?無視したわね…」

 

刀を創造する。

流石に、ここまで無視されるのは良くないと思うんだよね。

だから、お灸を据えるのは当然だと思うんだよね!

 

「お、落ち着け。悪かった、悪かったから!」

 

「ネプテューヌさん、ここはおちつきましょう?

カンジョウテキになるのはよろしくありませんよ?(;゜゜)」

 

「あら、無視したのは貴方達よね?

お仕置き、してあげるわ。」

 

「落ち着け、姉ちゃん!」

 

「一誠、止めちゃ駄目よ?お姉ちゃん怒ってるだけだから。」

 

「お、おお落ち着け!おっちゃんプリン買ってあげるから!な?」

 

「そんなことはどうでもいいの、重要なことじゃないわ。」

 

刀にシェアを纏わせる。

力加減は、このくらいでいいよね。

 

 

 

 

 

「あ、ヴァーリが見てる!!」

 

 

 

「えっ…!?」

 

ヴァーリ!?

この姿を、見てる!?

あ、あわわ…と、とにかくカオスフォーム解除!解除!!

 

解除して、あーちゃんの後ろに隠れる。

 

…あれ?

 

「一誠、その…ヴァーリは?」

 

「いないぜ。」

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その場で頭を押さえて踞る。

は、恥ずかしすぎる!

 

っていうか、カオスフォームの感情に刺激されやすいせいでいーすんとおっちゃんにあんなこと…ああああ!

最低だ、自分!

 

鬱だ、死のう。

 

「ね、ネプテューヌさん…大丈夫ですか?」

 

「生まれてきてごめんなさいって今思ってるけど大丈夫。」

 

「大丈夫じゃないですよ!?」

 

あー…もう駄目だ。

自分って何でこんななんだろう。

 

あぁぁぁ…

 

「…あらあら、これはどういう事態ですの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、皆やってきて自分の鬱状態、いーすんとおっちゃんの反省する姿に驚いて状況をあーちゃんと一誠に聞いて把握してから自分を励ましてくれた。

なんというか、ありがたいね…

 

「えっと、おっちゃん。」

 

「すまんネプ子。」

 

「いやそれはもういいから。私も悪いし…

私達を呼んだ理由を聞きたいかな。」

 

「ああ、それか。

半分の目的は達成したから、後はこれだけだな。

えー、お前ら。」

 

コホン、とわざとらしく咳をしてからおっちゃんは立ち上がる。

 

 

 

 

 

「─二日後、京都に行くぞ!」

 

 

 

 

 

『えぇぇぇぇ!?』

 

突然すぎて皆驚く。

リアスちゃんは知ってたようで事前に耳を押さえて大声をガード。

いや、京都?

 

夏だよ!?

海とか山とかプールじゃないの!?

 

夏の京都だよ?死ぬよ!?

 

「な、何で海じゃないの!?」

 

「そこかよ!」

 

「当たり前じゃん!普通、海でしょ!水着でしょ!」

 

「暑すぎますぅぅ!僕、閉じ籠って冷房効いた部屋でゲームしてますぅぅぅ!!」

 

「引きこもり過ぎだよ、ギャー君。

…それで、アザゼル先生。どうして京都なんですか?」

 

「いやな、京都に呼ばれててよ。」

 

「誰にですか?」

 

「日本神話だよ。」

 

『…!』

 

日本神話…っていうと、天照とかスサノオとか?

 

ギリシャ神話もあるんだからそりゃ日本神話もあるよね…

でも、どうしておっちゃんが?

 

「俺だけじゃないぜ。

サーゼクスの野郎も、ミカエルも呼ばれてる。」

 

「三勢力のトップばかり…」

 

「大方、責任取りの時間さ。」

 

…あ、そっか。

三勢力、やらかしちゃってるもんね…

日本にもダメージはあるだろうし、そういう事かな。

 

やっぱり、まだまだ解決すべき問題はあるんだね。

 

「でもさ、私達が一緒に行くのは何で?」

 

「ついでにお前らに京都を楽しんで貰おうかなーと。」

 

「あの話を聞いて楽しめるかと聞かれると疑問ですわね。」

 

「まあそう言うなって。

日本神話も鬼じゃねぇ…大事にはならねぇさ。」

 

「どうして分かるの?」

 

「真ん中の立ち位置だからさ。

だから、これ以上はよろしくないからどうにかしろって忠告なんだよ。」

 

「だから、具体的にどうするかを説明しに行くの?」

 

「そういうこった。

まあ、俺も自覚はあるからな…そろそろ完成するし、丁度いい。」

 

「…?」

 

何が完成するんだろ?

問題解決に繋がるんだろうけど…

 

そういえば、おっちゃんが前に三勢力の技術を共有して北欧の技術も寄越して貰ったからようやく動けるって言ってたような。

その事かな?

もしそうなら、良いことだよね。

 

「まあ、折角だから楽しみましょ?」

 

「一人は寂しいからよー一緒にきてくれよー」

 

「流石に嘘くさいぜおっさん。まあ、行くけどさ。

だろ、姉ちゃん。」

 

「楽しみだね、京都!」

 

「ほら。」

 

え、京都だよ?

暑いとはいえ京都だよ!?

観光するなら持って来いだし、絶対楽しいよ!

いやまあ、暑いけど!!

 

「おっちゃんが折角全額負担って言ってくれたんだから楽しもう!ギャー君も楽しもうよ!」

 

「うぅ、分かりました…出番ほしいので行きますぅぅ…」

 

「メタいメタい。」

 

「京都のデザート…行くしかないですね。全額負担ですし。」

 

「小猫ちゃんが平常運転で僕は安心だよ…」

 

ほら、皆何だかんだで楽しそうだし!

行くしかないよね!

 

「じゃあ、二日後にオカ研メンバーで京都!

楽しんで行こー!」

 

『おー!』

 

「部長私なんだけど…まあいいわ。おー!」

 

「おー!……ん?」

 

 

 

 

 

「俺全額負担かよ!?」

 

おっちゃん、ありがとう!

おっちゃんの財布に敬礼!




─シャルバさん奮闘記─

ネプギア「お父さん、京都行きましょう!」

シャルバ「何故この暑い時期に…?」

ネプギア「神社とか行きたいなーって…駄目ですか?」

シャルバ「よし行こうじゃないか。しっかり準備するぞ。」

ネプギア「わーい!」





アザゼル総督の財布は犠牲になったのだ…オカ研メンバーの旅行、その犠牲にな…



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京都へゴーの巻!

ナスダァ…(挨拶)

導入パート2の時間です。

2日も待たせて申し訳ねぇ!


やっほー!

京都に行く事になったよ!って言って気を付けてねってお金貰ったネプテューヌだよ!

 

平和な出だしからしっかり始まったの久しぶりじゃない?

でもでも、次章予告でシリアス確定なんだな、これが!

そろそろシリアスブレイクしないとね~!

 

さ、メタいのは終わらないけど一旦やめて一誠を起こしに行くよ!

あーちゃんならさっさと起きて支度終えてお母さん達と話してるね。

いーすんも一緒だし、談笑してるのかな?

 

ねぷ子さんも準備終えてるんだな、これが!

後は寝坊助一誠だけだね!

 

一誠の部屋に急行して、扉を開ける。

まあ、二日前と同じなのは冷めるからここは優しいお姉さん節を出しちゃうよ!

 

まだ寝てる一誠のベッドの方まで歩いて、布団を揺する。

 

「起きなさい、起きなさい。

私の可愛い弟。」

 

「ん……?」

 

「今日は お前が初めて お城に行く日だったでしょう。」

 

「…初めて城に……?」

 

 

 

 

 

「俺は勇者じゃねぇよ!」

 

 

 

ガバッと起きてツッコミ。

 

しっかり起きたね!

いやぁ、このネタも分かるなんて流石ねぷ子さんの弟だね!

 

「そして伝説が始まった!」

 

「始まんないし城にも行かねぇよ!

何か最近シリアス多いからって取り返そうとしてない!?」

 

「そんなことないよ、私がいるだけで若干のネタは生まれてるからね。」

 

「自分がネタ的な事を連発してる自覚はあるのな…」

 

「んん、自覚ありますな。」

 

「ヤの付くネプテューヌにならなくていいからな。

おはよう、ねぷ姉ちゃん。」

 

「うん!おはよう!」

 

起きた一誠は支度自体は昨日のうちに済ませてたらしく朝御飯をしっから食べて着替えとか済ませて降りてきた。

 

うんうん、夏休み…暑い京都にわざわざ行くけどそれはそれ。

京都は色々とあるからね~…楽しみだよ!

ちなみに、私は食べ物屋さんを巡りたいなぁ~

 

どうやら迎えが来るっぽいけど…

 

ピンポーン、とインターホンが鳴る。

 

お迎え来たっぽい?

少し早足で玄関まで行って扉を開ける。

 

「はいはーい!どちらさまー?」

 

「どうやら名字の見間違いではなかったようだな。」

 

「ねぶっ!?」

 

そこに立っていたのは、バラキエルさんだった。

迎えってバラキエルさんなの?

いいのかな…幹部の人だよね?

 

取りあえず、一誠達もこっちに来た。

 

「バラキエルさんが迎え?」

 

「ああ、ここから集合場所まで送っていく。これが券だ。」

 

あ、新幹線の券だ。

人数分ある!

わぁ、準備してたけど本当に京都に行くんだね~…

 

お母さんもこっちに来ると、バラキエルさんは礼儀正しく挨拶をする。

 

「お子さん方の迎えに来ました、バラキエルです。」

 

「ああ、どうもご丁寧に…それじゃ、ねぷちゃん達。

しっかりと楽しんでいくのよ?何かあったら連絡すること。

いいわね?」

 

「うん!」

 

「安心してくれ、俺がしっかり守るぜ!」

 

「イッセーさんの無茶が働かないことを切に願います…」

 

「アーシアも毒吐くようになったな…?」

 

「バラキエルさん、よろしくお願いしますね。」

 

「お任せください。」

 

お母さんはそうしてリビングに戻っていった。

バラキエルさんの車は人が多く乗れそうで、荷物も積みやすい車だった。

皆で荷物をさっさと積んで車に乗り込む。

 

「ゴーゴーレッツゴー!」

 

「そういえば、魔法陣とかで行かないんだなぁ…」

 

「あくまで部活メンバーでの旅行なのだ。

楽ばかり覚えてはならんぞ兵藤一誠。」

 

「はいっす。」

 

「このまま、駅まで?」

 

「うむ、最寄駅まで向かい、そこでアザゼル達と合流だ。

帰りの時も私が送る事になっている。」

 

「ごめんね、バラキエルさん。

幹部なのに…」

 

「気にすることはない。断ることは出来たが私がやりたいからやってるに過ぎん。

朱乃達と楽しんで来るといい。」

 

「うん!」

 

「どうして堕天したのか分かんねぇくらいだぁ…」

 

「…聞くな。」

 

バラキエルさんの重苦しい言葉に自分達は何も言わないでおく事にした。

最寄駅…意外と近くだし、リアスちゃんにあとちょっとで着くよってメール送っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、何でいるの?」

 

「そう言われてもな。」

 

駅に着いて早々、思わぬ人物がいてそう聞く。

 

いやだって、部活の旅行なのにいるとは思わなかったもん。

 

「おっちゃん!」

 

「いやよぉ…説明したら一人は護衛をつけるべきだって言うんでな。」

 

「忘れて貰っては困るが、俺達はお前の護衛でもあるんだぞ。」

 

「京都に行くだけだよ?曹操が想像してるようなこと起きないと思うよ?」

 

うん、曹操がいるとは思わなかったよ。

しかも、護衛だし。

 

曹操は甘いぞとばかりに半目で睨んでくる。

 

「お前はトラブルメーカーとしての自覚が足りないのか?

イストワールが言わないなら、ここは俺が言わせて貰うぞ。」

 

「えっと?」

 

立場逆転してる?

あれ、自分が叱られる立場になってない?

 

─自業自得かと。

 

いーすん!?

味方がいなくない?

周りの皆も納得してるような表情だよね?

 

「お前と兵藤一誠は何処にいてもトラブルを招くんだ。

望んでなくともな。だからこそ、護衛が必要なんだ。」

 

「俺まで巻き込まれた!?」

 

「というか、言い方酷くない!?」

 

「事実だろう。

だからこそ、最低でも俺一人は護衛につかせて貰う。」

 

「まあ、いいじゃねぇかよネプ子。

いざって時に頼れる味方だぜ?」

 

「ありがたいけど…うーん、何か釈然としない!」

 

「さらっと巻き込まれた俺の精神的ダメージを考えてくれよ。」

 

「イッセー君は仕方ないかなって。」

 

「んだと木場ァ!」

 

「危険に突っ込むという点では私は何もいえない。すまんなイッセー。」

 

「ちょ、猪突猛進はよくないと思うんですぅ。」

 

取っ組み合いを始めそうな一誠に小猫ちゃんが渋々間に割って入って牽制する。

最近、小猫ちゃんも強いからね~…

力だけなら越されたんじゃないかな?どうだろ。

 

シェアありきの自分だから何とも言えないや。

 

「じゃあ、護衛お願いね、曹操!」

 

「任された。素直に守られてくれよ?どやされるのは俺なんだ。」

 

「え、誰から?」

 

「…察してくれ。」

 

「???」

 

「あー…ネプ子、愛されてんな。」

 

え、何の事?

どゆこと?

皆頷いてないで説明してよぉ!

じゃないと何もわからないモヤモヤで今日1日生きていくんだけど!

 

「ネプテューヌ。」

 

「あ、リアスちゃんが説明してくれる?」

 

「鈍感系主人公じゃなくてシリアスブレイカー系主人公を目指してるなら自分で気付くことね。」

 

「ご馳走さまです、とだけ言っておきますわね、ネプテューヌちゃん。」

 

「えぇぇぇ?」

 

ますます分からないよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何やかんやあって皆で新幹線に乗り込んだ。

新幹線に乗るのって何気に久し振りなんだよね。

中学生の時の修学旅行以来じゃないかな!

速いよね、新幹線。

 

「やっぱりこういうのいいよね~…外の景色が早変わりしていくよ!」

 

「でも、景色が変わるなんて転移で見慣れた光景じゃない?」

 

「チッチッチ…甘いよリアスちゃん。

転移と新幹線じゃオゾン層とマリアナ海溝並に違うんだよ!」

 

「そうなの?」

 

「そうだよ!転移の場合はポンって変わるけど、新幹線は景色の変わっていく様子が見れるんだからね!

つまり、過程も見れるって寸法なんだな、これが!」

 

「なるほどね…転移も魔法の部類だから過程を飛ばした結果しか生み出せない…ある意味科学と魔法の違いね。」

 

「科学の 力って すげー!」

 

実はそこまで深い説明しようとしてなかったけどリアスちゃんが納得したからいいや!

ちなみに、隣のあーちゃんもなるほどといった様子で頷いてる。

何だろね、この騙してしまった的な罪悪感。

あ、リアスちゃんの隣は朱乃ちゃんだよ。

 

「そういえば、ネプテューヌちゃんは将来どうするか決めていたりしますか?」

 

「将来?んー…取りあえず、大学デビュー?」

 

あんまり考えたことないなぁって今更ながら思う。

まだわからない将来よりも今の方が大変だからね。

そういった意味でも考えられないかな?

 

「あーちゃんは?」

 

「私ですか?」

 

「私的にはアーシアは医療関係に従事しそうと思うけど。」

 

「うーん、どうなんでしょう?」

 

「今の方が大変だもんね~…」

 

「それもありますが、まず考えたことがなかったんです。

今のままであったらなぁ…そんな考えがありました。」

 

「そうですわね…私も、そうならよかったのですが。

でも、時間は進むものですわ。ずっと今のままはあり得ない…難しいものですね。」

 

「ですね。」

 

「私には少し分からない部分ね。

悪魔だから、時間なんていくらでもあるって思うわね。」

 

うーん、ここが人と人外の差なのかな?

自分は人間期間長かったからその考えの方には賛同できないけど悪魔のリアスちゃんからしたらそうだよね。

 

あーちゃんと朱乃ちゃんは元々が人間だから、なのかもね。

 

「あら、リアス。そうやって悠長にしていると思わぬ結果になるわよ?」

 

「…そういうものかしら。」

 

「種族悪魔のリアスちゃんからしたらそうなんだね。

私的には、今を頑張った方がいいなってなるかも。」

 

「人と悪魔の意識の違い、ということでしょうか。

長い寿命と短い寿命ではやれることの期間が違いますもんね。」

 

「難儀ね、人間は。でも、だからこそ他よりも進んでいるのね。」

 

「難しいね!」

 

「そうね、本当に難しいわ。」

 

こういう問題は自分に出来ることはあんまりないからね…

女神だから変に手を出しちゃ駄目だよね。

辛いなぁ…うん、でも。

 

何かの問題に気付けたのなら、その解決策も見つかるはずだよね。

 

そうして、談笑をしながら新幹線は京都へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暑い!!」

 

京都に着いて早々第一発言がこれ。

いやだって…暑い!

 

汗がね、止まらないよね!

新幹線が涼しかったのもあるけど外が異様に暑い!

これが日本の夏…まあずっと味わってるけど京都ってこんな暑いんだね。

 

心なしか太陽がよりギラギラと自分達を照らしてるように感じる。

 

「いやほんと暑い。飲み物冷えててよかったぜ…」

 

「あっちぃな…どうしてこんな暑いんだ。」

 

「盆地なのもあるけど、気温の数値以上に湿度の高さのせいでサウナ状態なんだそうよ。」

 

「へぇ~…おっちゃん、ホテルは?」

 

「安心しな、いい旅館に予約いれといたからよ。」

 

「流石ぁ!」

 

おっちゃん、流石だよ!

なら、善は急げだよ!

 

おっちゃん曰く、バスで数分でそこから歩くんだって。

 

ば、バス…ありがたいね!

バスなら涼しい筈だよね!

 

「よーし、そうと決まれば乗り込め~!」

 

「急いだら転ぶわよ。」

 

「大丈夫、大丈夫!」

 

バスを逃すわけにはいかないよ!

走るんだよぉぉ一誠ぃぃぃ!!

 

一誠はというと。

 

「暑くて走る気起きないぜ。やっぱすげぇよ、姉ちゃんは。」

 

「何やってんの一誠ぃぃぃ!」

 

「護衛される気あるのか…?」

 

「無いと思います…京都といえば、美味しいわらび餅のお店があるとか…」

 

「こんな時でもリサーチを忘れない姿勢に感心するよ…」

 

あれぇ誰もついてこない!?

おかしいよ、皆おかしいよぉ!

 

「皆旅館に早く着きたくないの!」

 

「いや、走ってまで行きたくないかなって。あと、ギャー助を見てくれよ。」

 

「暑すぎてもう動きたくないですぅぅ…やっぱり自室で閉じ籠ってFPSするべきだったんですぅぅ…」

 

「今にも溶けそうだね…」

 

ギャー君が何だかスライムみたいになってる…

というか、本当に溶けそうだよ。

吸血鬼は灰になるんじゃ?

 

「太陽は平気なんですけど……あ、暑いですぅ…」

 

結局、ギャー君を気遣いながら皆でバス停に向かう自分達であったとさ。

取り敢えず、謝っておこう…

 

にしても暑いなぁ…絶対砂漠には行きたくないね、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご予約をしていた方ですね、御部屋へ案内いたします。」

 

「ああ、ありがとうございます。」

 

やっと…っていうのもおかしいけど旅館に着いたよ!

凄い大きい旅館で、高かったんじゃないかなぁと思ったけどおっちゃんは普通な顔。

総督なだけあってあるのかな…?

 

それよりも、外は暑かったけど旅館は涼しい!

 

旅館の人が自分達を案内してくれる。

 

部屋は二つらしいね。

 

「こちらとこちらの部屋になります。」

 

「おー、どっちも広いよ!」

 

和って感じの部屋だぁ…

こういうのは新鮮でいいね。

家だとこういう部屋じゃないからね。

 

最初に案内された部屋に入る。

 

「じゃあ、こっちの部屋を使うから男子はそっちね。」

 

「おう、了解だ。」

 

「おっさんもこっちか?」

 

「そりゃお前…経費削減だよ…」

 

「あ、意外とお高い?」

 

「俺今月のガン○ラ諦めるわ。」

 

「ボロボロですね。」

 

おっちゃん…顔に出さなかっただけだったんだね…

ありがたやありがたやと拝んで、寝転ぶ。

 

─ネプテューヌさん、着いて早々だらしないですよ。

 

(ええい、暑さ感じなかったいーすんはいいじゃん!

あの暑さ味わったら寝転びたくもなるよ!)

 

観光は少し後にしようかな…

 

おっちゃんは荷物置きに来ただけでこの後すぐに行かなきゃだろうし。

うん、少し休憩。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

痛みを抱えろ、この痛みを忘れてはならない。

強さを手にいれるために、痛みを得る。

 

毒を呑み、憎しみを呑み、苦しみを呑む。

 

全ては日ノ本から化けものどもを消し去るため。

その為に全てを利用する。

優しさで救えはしない。

 

目を閉じれば言葉と共に光景が頭に浮かぶ。

 

 

 

『私にとって、それ人外(それ)も皆に入ってるよ。』

 

 

 

憎しみではなく、尊敬を。

純粋な想いが女神にはあった。

強さであり、優しさであり、無償の救いだ。

 

ならばこそ相容れない。

 

悪魔に堕とされ、心に鬼を宿した俺にその救いは要らない。

人外は等しく皆殺しだ。

 

例外はない、そう…例外はないのだ。

お前も殺す。

その尊い意志を踏みにじり、打ち砕く。

 

あるべきは人のみの世でいい。

何故化け物が人の世に土足で踏み入る?

八百万の神々を見よ。

ただそこに在る彼らを見よ。

 

故に化け物よ、死に絶えろ。

それこそが奴らの罪業を払う唯一の救いだ。

 

だが、その前に。

お前だ、女神。

似通った、けれども決定的に違う理想を掲げる女神。

お前こそが我が宿敵。

お前こそが我が運命。

 

ネプテューヌ。

人に近い女神よ。

 

どちらの意志が勝るのか。

どちらの理想が正しいのか。

 

罪を知り、それでもと手を差し伸べるお前か。

憎しみを胸に化け物(害悪)を滅ぼす俺か。

此度の勝負にて全てを決そう。

死合う時が来た。

 

「罪を償わず死ぬ。それを良しとしない、か。むべなるかな。

だが…」

 

それを否定しよう。

 

お前が仲間と共に歩むように。

俺もまた俺の仲間と歩む。

 

…本当に、昔に出会えなかったことが心苦しい。

だからこそ、その理想を斬る。

 

「頼光…」

 

「召集だ。」

 

「…はい。」

 

俺に改造を施してくれた仲間に指示を出す。

 

すまない。

だが、俺は止まれない。

この理想を叶えるその日まで。

心に燃え盛る業火が消えるその日まで。

 

俺は軍靴を鳴らすのだ。




後半の視点は頼光君です。

さあ、掘り下げもしながらしっかり進めていきますよ!


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京都観光の時間! でも、別の方では?

どうもぉぉぉ!(挨拶)

京都編は色々な視点が描写されます。
大変だけど頑張るぞい。


暑さを気にせずに京都を歩く。

ぶっちゃけ暑ささえ気にしなければいい場所だよね、夏の京都。

まあ、暑さを耐えられるかと聞かれたら難しいんだけどね!

 

というわけで、現在グループに別れて京都を巡ってるネプテューヌだよ!

イカれたメンバーを紹介するぜ!

 

まず、食べるの大好き少女の小猫ちゃん!

 

「ネプテューヌ先輩、このお店はどうですか。この先にありますよ。」

 

「おー、いいね!私は問題ないよ!ギャー君は?」

 

そして、引きこもり系吸血鬼のギャー君!

 

「ぼ、僕も構いません。ネプテューヌさん達についていくだけですから…」

 

「そんなこと言わないで一緒に楽しもう?」

 

「う、はい。」

 

以上、自分が面倒見るメンバーだよ!

一年が小猫ちゃんしかいないから、自然と最上級生なねぷ子さんらへんが一緒にいることになるっていうか。

 

まあ、一緒にスイーツ巡りするの楽しいしね!

ギャー君に関してはリアスちゃん曰く

 

『貴女のコミュニケーション力ならギャスパーも安心して過ごせる筈よ。』

 

とのこと。

それでいいのか王!って感じだけどまだまだ人に不慣れなギャー君には自分みたいなのがついているべきなのかな。

 

ちなみに…

 

「ゲオルグ、そちらはどうだ?…こちらか?今のところは問題ない。この真っ昼間に襲撃があるかどうか。…ああ、油断してなどいないさ。ああ、では引き続き兵藤家及び駒王町の守りを怠るなよ。」

 

「…頑張ってるね。」

 

「…ですね。」

 

「SPみたいですぅ…」

 

少し離れた距離で携帯でのやり取りをしてる曹操もいるよ。

まあ、頼もしいもんね。

こうやって周りを必要最低限の警戒に留めてくれてるのは一応の配慮なのかな。

ペルセウスじゃなくてよかったかもしれない。

 

ゲオルグとの会話だったっぽいね。内容を聞くに手薄…っていうのはあれかな。

自分達がいない間、駒王町をパトロールとかさせてるのかな。

 

ただ、距離を開けられると…何だかね。

 

モヤモヤする気分を解決すべく曹操に近寄る。

 

「ん、どうした?」

 

「離れてないで、一緒に行こう?」

 

「いや、俺は護衛だからな。」

 

「うーん…じゃあ、護衛対象なねぷ子さんが気になるから一緒にいて!何ていうか、すっごい気になる!」

 

「…まあ、それなら仕方ないか。すまない、配慮が足りなかったな。」

 

「ううん、私達を守ってくれてるのは分かってるから謝らないで!でも、ほら。知り合い放って楽しむのはねぷ子さん的にあり得ないっていうか。」

 

「そうだな。なら、仲間に入れてもらおうか。」

 

「うん!」

 

それから曹操も混ざって皆で観光。

色々なお店を巡ったんだけど、やっぱり暑さは誤魔化せなかったよ…

何だかんだで、曹操だけが涼しそうな顔してた。

 

神社とかも、あれだよね。

そこに在るだけなのに何ていうか…厳かな雰囲気があるよね。

 

 

 

「というわけで、大変だけどやってきました!清水寺!」

 

「坂の時点で疲れました。」

 

「まだ階段あるんですかぁ…」

 

「おお、ここが清水の舞台と有名な清水寺…電車で来た甲斐があったな。」

 

「人もいっぱいいるし、観光スポットって感じだよね。」

 

いやぁ、階段多いけどそれもいいよねって思い始めてる自分がいるよ!こういう観光名所はしっかりと巡んないと損だもんね!

 

ちなみに、ここに来る前に伏見稲荷大社とか行ったよ!

こんこんっ。

 

これからあのお寺に突撃する訳だけど…

 

「よし、記念写真撮ろう!」

 

「中に入ったらにしないか?」

 

「勿論、中から外の景色も撮るけど普通に外見も撮りたいな!

というわけで、カメラ撮ってください!」

 

取り敢えず、見知らぬ人に元気よくお願いする。

笑顔で承諾してくれて、四人でピースピースって感じで写真撮影!

中は下手に撮れないっぽいしね~

 

お礼を言って、いざ清水寺!って感じだったんだけど。

 

─…!?

 

(どうかしたの、いーすん?)

 

─…い、いえ……気のせいでしょう。

 

(?何かあったら言ってね?)

 

─ええ…今は観光を楽しみましょう。

 

どうしたんだろ、いーすん。

さっきまでは楽しんでたのに…

何か、感知した?でもそれなら教えてくれるよね。

うーん…まあ、気にしすぎかな。

 

「ネプテューヌ先輩、なにボーッとしてるんですか?」

 

「い、行くなら行きましょうよぅ…」

 

「あ、うん。ごめんごめん!プリンの事考えてた!」

 

「先輩らしいですね…」

 

「ネプテューヌ、早く行こうじゃないか。」

 

「何気に曹操が一番楽しみなんだね…」

 

「元々、歴史あるものは好きなんだ。

いつかは来たいと思っていたのもあってな…事前リサーチは既に済ませていた。」

 

「心ウキウキじゃないですか。」

 

一番盛り上がってるのは曹操だった。

何なら、神社のパンフレットとか全部貰ってたし。

でも、英雄派の皆のためにおみやげ買ってたのは好感度高いよね。

 

やっぱり頼れるリーダーっていうか、面倒見がいいよね。

 

うんうん、こういうのでいいんだよね。

 

こういう時間が大事だよ。

こうやって、楽しい時間を謳歌する!

どれだけ大事な時間なのかが今となっては凄く理解できるよ。

 

階段を上って、寺の中に入る。

おおー…何ていうか、歴史を感じるね。

 

「スッゴいね~…これってずっと維持してるの?」

 

「いや、創建以来10度を越える大火災にあっている。」

 

「え、じゃあこのお寺は?」

 

「この度に再建されてきたそうだ。

それだけ篤い信仰があるのだろうな。」

 

「へぇ~…」

 

信仰って、凄いんだね。

シェア以外にこうやって信仰を感じるのは久しぶりかも。

神社もそうだけど、物に歴史ありだね!

大事にされてきたんだね。

 

「まあ、あまり騒がないようにな。

マナー違反は許されない。」

 

「はーい。」

 

「それにしても人が多いですね……ん…?」

 

「どしたの小猫ちゃん。」

 

何だか、人混みの中に誰か見つけたかのように一点に目を凝らしてるようでどうしたのか尋ねる。

 

「…いえ、ネプテューヌさんみたいな髪をしてる人もいるんだな、と。」

 

「え、酷くない?それならリアスちゃんだって紅髪だよ!」

 

「疲れてるんですよぅ…こんな暑いと頭も視覚もおかしくなりますよ…」

 

「この口ですか、ギャー君。」

 

「ふぃふぁぁ!?」

 

ギャー君の意外と鋭い言葉に小猫ちゃんが笑顔で頬を引っ張る。

ギャー君に効果は抜群だ!

でもそれぐらいにしておこうと注意する曹操にそれもそうですね、と中断する。

頬を擦るギャー君は涙目だ。

 

メールを見ると、一誠達も楽しんでるっぽい。

よかったよかった。

このまま、楽しく過ごそうね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい日って、きっとこういう日をいうんだと思う。

階段を下りながら、買ったアクセサリーを見る。

 

「楽しいか?」

 

「はい、とっても!」

 

お父さんが渋々といった様子で一緒に来た京都。

 

初めは、ちょっとした興味だった。

お父さんが度々研究しているシェア。

それは信じる心の力だって言っていた。

 

だから、こういう信仰が集まる場所ならそれがハッキリと分かるんじゃないかと思って頼んでみたら来れました。

…シェアについてはあまり分かりませんでしたが。

 

でも、思い出作りの場としては最適で。

日々頑張ってるお父さんにこういった形で一緒に楽しみたいなって思って。

結果的にお父さんも楽しめているようでよかった。

 

「ネプギア。

信仰について何か分かったか?」

 

「え?な、何の事ですか?」

 

目的がバレて、咄嗟に誤魔化す。

お父さんはふっと微笑む。

 

「娘の考えることなど私にはお見通しということだ。」

 

「…バレてたんですね。

でも、思い出作りに来たのは本当です!こうして、楽しめてますし!」

 

「疑うつもりはない。

それに叱っているわけでもない。

ありがとう、考えるだけの日々よりもこうして見て感じることも必要だと理解できた。」

 

頭を優しく撫でられる。

感謝された…よかった。

お父さんの悩みの解決に貢献できたんだ。

 

嬉しいな。

 

「えへへ…」

 

「さて、次はどこに向かうか。といっても時間もそう無いが……」

 

ピタリ、とお父さんがその場で立ち止まる。

私もそれにつられて止まって、お父さんの顔を伺う。

少し、警戒するような目をして周りを見ている。

 

何か、あるのかな…?

 

…あれ?

 

「お父さん、これは…」

 

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

「人がいません!」

 

「…高度な隔離か。」

 

私の肩を抱き寄せて周りへの警戒度を引き上げるお父さん。

 

「京都の妖怪どもが早々に手出しをするとは思えんな。」

 

「…隔離って、結界ですか?」

 

「その通り、気付かぬレベルで別空間へと移されたらしい。

相当な従者か、あるいは…」

 

 

 

 

 

「─勘繰りが趣味になったようですね。」

 

 

 

 

 

突然、殺気のような物を感じて普段は別の位相にずらしている武器を取り出す。

スイッチを押すと、ブォンという音と共に光の刃がそれから発生する。

 

それで上から迫る攻撃からお父さんを守るべく防ぐ。

 

…槍の一撃。

 

「ハッ、防ぐかよ!」

 

「貴女、は!」

 

「テメェも女神だな?ならブッ殺す!!」

 

「っ、やぁ!!」

 

強引に槍を振り払うと、凄惨な笑みを浮かべた白髪の女性は後ろへ跳んで距離をとる。

 

「英雄崩れ…カイネウスか。

今更何のようだ。それに…研究者か。」

 

カイネウスと呼ばれた女性の隣に煙が発生して、そこからペストマスクを被った人が現れる。

不気味なのはマスクのせいか、それともその人の雰囲気からなのか…ビームソードを掴む力がより強くなる。

 

「あなた方にこの京都の地に居られては困る、ということです。

今すぐこの地から退くのなら、これ以上手は…」

 

「うるせぇぞ根暗女!そこに俺の殺してぇ奴が居るんだから殺す以外の選択肢はねぇんだよ!!」

 

「ね、根暗…オホン、これは我らのリーダー、頼光の慈悲です。

今息の根を止めることはしないであげましょう。」

 

「…お父さん。」

 

「…クク。」

 

お父さんが肩を震わせる。

ああ、これは。

 

「ハハハハハハハハ!!面白い事を言うではないか。

いやはや、冗談を言うのはそのマスクだけにしてほしいものだ。

交渉の意味を理解していないと見える。」

 

お父さんが、悪い顔をしている。

あまり好きじゃない顔だけど、どこか頼もしい。

そして、こういう顔をする時は。

 

大体、怒っている時だ。

 

「私に、闘争から逃げるなと言いたい訳だな。

ふざけるのも大概にしろ、人間。

あの女神を越えるのは私…私達だ。

それを邪魔立てするというのならば容赦はしない。

貴様らこそ私とネプギアの前から失せろ。」

 

何匹もの蝿と、ゾッとする黒の帯を周りに展開してお父さんが二人に告げる。

お父さんはお姉ちゃんと実力争いをしているみたいで、戦いから逃げることが嫌いになったって前に言ってました。

 

だから、この人達はお父さんの嫌っている行動をさせようとしたから…怒られて当然ですよね。

かくいう私も、ここで京都観光を理不尽な理由で止めるつもりはありません。

 

「そうですか…ならば、この場でその子ごと消えていただきます…!」

 

「ふん、従うだけの傀儡が…私を倒すのは貴様ではない。

盤上に上がり込むなよ、人間。これは私とあの女神のゲームだ…!」

 

煙の怪物がお父さんに迫るけど、お父さんが手を翳すと黒の帯が独りでに動き出して煙の怪物を切り裂く。

怪物は悲鳴をあげながら消えていく。

 

ペストマスクの人はお父さんが相手するようだ。

 

なら、私の相手は…

 

意識をそちらにやると、槍が迫っていた。

 

「っ!」

 

ビームソードを振るって槍を弾く。

カイネウスが舌打ちをしながらも槍を振るって攻めてくる。

 

早いけど…早さなら、私だって!

 

「ブルーソニック!」

 

軽快なステップと共にビームソードを振るい、槍と打ち合う。

力はあっちだけど、勢いは、私の方が!

 

「チッ、あの女神に似てるだけあってやるじゃねぇか…!」

 

「あの女神…お姉ちゃんを知ってるんですか!?」

 

「あ?姉だぁ?…調べだと弟がいる程度じゃなかったのかよ。」

 

「お姉ちゃんを知ってるのなら…聞かせてもらいます!」

 

理由を手にいれました。

この人を倒したら、一度会いたいお姉ちゃんの情報が聞き出せる。

なら、全力でいきます!

 

力を解放する。

私の力…すなわち。

 

 

 

 

 

「刮目してください、これが私の女神の力!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どういう事か、聞いても?」

 

サーゼクスの疑問の声が部屋に木霊するような錯覚を覚える。

 

俺はネプ子達を旅館に置いた後、さっさと日本神話のお偉いさん…

天照大神の元へと向かった。

ミカエル、サーゼクスと共に俺は向かったものの…

 

『お主らは、自らの罪と対面する。

その罪を確と見、打ち克ったのであれば…日本神話は三勢力と同盟を結ぼう。』

 

長い沈黙の末の天照の第一声がそれだった。

俺たちの罪。

何となく察しはついていたが…俺も聞きたかったからサーゼクスには感謝だった。

 

神気をこっちに影響が出ないように抑えた天照は俺達へ閉じていた目を開く。

 

「そのままの意味である。

我らは、お主らが来る前に一人の男の謁見を許した。」

 

「謁見…」

 

「その者は…かつて、我が国の軍人であった男だ。」

 

…俺の予想通りか。

俺は手を軽く挙げて、発言の許可を貰う。

 

「名前は頼光か?」

 

「…左様。」

 

「確か、反英雄派のリーダーの名前でしたか。」

 

「反英雄派…そのように呼んでいたのだな。

頼光は我に言ったのだ。」

 

 

 

『天照大神よ、ご照覧あれ。

この日ノ本に蔓延る三勢力を滅して見せましょう。』

 

 

 

「…あれは復讐に囚われた者だ。

だが、我が国の者の言葉だ。苦しみの声であり、怒りの声だ。

我が国にお主らが少々勝手をしてきたのは隠しようのない事実。

…ならばこそ、ここで勝手の結果を知るべきだ。

情報でなく、事実でなく…感情をぶつけられる事がお主らに必要なことだ。」

 

「…」

 

それは、何よりも重い言葉だった。



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国を想い、戦を想い、人を想う

ネプ子さんの出番はまだだよ!(挨拶)




歩く、歩く、歩く。

恐れなど無く、あるのは信仰と愛国心…それだけだった。

止まれという声に反応してその足を止める。

 

ここで歩を進めよう物なら俺は確実に日ノ本に背いた者として自らの腹を裂き、首を跳ねる。

 

「汝、悪魔の身でありながらこの場へ来る事…その意味を理解しておるのか。」

 

まるで賢者のような風格の男はそう言って俺を睨む。

 

…俺はその場で跪き、頭を垂れた。

 

「この身は悪魔へと堕ちた身なれど、日ノ本への忠誠は変わらず。

天照大神様への謁見をお許し頂きたく来た次第。

名を、源頼光と申します。」

 

「頼光…?

まさか、汝は…」

 

「はい、我が祖先は平安にて数々の異形を滅した源頼光であります。」

 

「……かつて、源家より一人の男児が行方不明となり、刀も消えたと聞いていたが、よもや生きていたとは…そうか、汝は頼光の魂を継ぎし者か。」

 

「左様でございます。

故に、この日ノ本に背くことはあり得ません。」

 

「…面を上げよ。」

 

言われて、顔を上げる。

賢者は俺の元へと歩き、頭へ手を置いた。

神の気…それを俺は確かに感じた。

だが、痛みはなかった。

 

この方は、俺に配慮して神気を抑えておられた。

 

「生きて戻ってきたこと、嬉しく思う。

我が名は思金神。知恵の神格である。」

 

思金神…!

それを聞いた時、背筋がより一層正されるのを感じた。

 

その顔を見るなど恐れ多い事だ。

天照大神を天岩戸から出す際に八百万の神に知恵を授けたという。

そのような方に会えるとは。

…俺は礼を失していなかっただろうか。

 

「頼光よ。何故天照大神への謁見を求めるか。」

 

「日ノ本より、異形どもを追放するためでございます。」

 

「…左様か。

…汝のこの国を想う心はその声、姿勢で十分に理解した。

私から、謁見の許可を貰ってこよう。」

 

「…感謝します…!!」

 

涙が出そうになった。

俺の言葉を無下にせず、受け入れてくれたのだ。

いや、本当は分かっているのだ。

俺の復讐への業火を理解しておられる。

何も言わず、謁見の許可を貰ってきてくれると言うのだ。

 

感謝以外の何物でもない。

 

思金神はその場から去った後、俺は正座する。

 

「…長かった。

あの苦痛の数日を、耐え抜き…ようやく異形どもを滅する力を手にいれた。」

 

その為に力を借りたのは業腹だが…あれはギリシャの神だ。

日ノ本への被害はない。

元より、俺が人の心での復讐に燃える様を楽しんでいるようでもあった。

故に、俺に力を授けたのだろう。

 

感謝はすれど唾棄してはならない。

 

そうして待つこと数分。

思金神は俺の元へと戻ってきた。

俺は再び跪こうとすれば、手で止めるように制した。

 

「許可は得た。後は、汝次第だ。」

 

「…この度は、何と礼を言えばよろしいか!

このご恩、一生忘れません…!」

 

「構わぬ、元より汝が悪魔の身に堕ちたのは我ら日本神話が勝手を許しすぎた故。謝罪をするのは我々の方であった…」

 

「そ、そのようなことは決して!憎むべきは己の領域を弁えぬ三勢力でございます!」

 

「…すまんな。」

 

そう言うと、思金神は消えた。

 

…この先に、かの天照大神様がいる。

そう思うと、足取りが重くなる。

頭痛は止まず、けれどこの痛みは俺の日ノ本への忠義が消えていない事の証左である。

 

歩き続けて、巨大な屋敷のような建物を見つける。

屋敷の戸は、俺が来るのを待っていたように独りでにピシャリと開いた。

 

中に入り、歩く。

 

…自然と、1つの部屋の前に辿り着く。

 

『入れ』

 

厳格な声。

俺はゆっくりと戸を開け、中へ入る。

 

…顔を見ることは出来なかった。

当たり前だが、薄く暗い幕に遮られる形で。

けれど確かに俺は話すことを許された。

 

「…天照大神様。」

 

「よく来た……否、よくぞ戻ってきたと言うべきか。」

 

「っ…」

 

「して、何用か。」

 

声だけで神気を感じた。

 

「悪魔の元から離れ、長い間さ迷いました。

そして、この世の闇を知ったのです。」

 

「…」

 

「私欲の為だけに無力な民を犠牲にしていく異形どもの存在。

…天照大神様は、知っていたのですか?」

 

「奴等が勝手をした事か。

…以前より、忠告はしてきた。」

 

「何故追い出さなかったのですか。」

 

「我が国は来るものを拒めぬ。

そして、在るがままに進んでいくのだ。残酷であれど、全て。」

 

「日ノ本が異形どもに侵食されているのを分かっているのでは!

なればこそ、国を守るのが…!」

 

「頼光よ。」

 

「…!」

 

その声は、憐れみなのか。

それとも…悲しみなのか。

俺には分からなかった。

知っていて、何故。

 

神仏が表に出る世界ではなくなったのは分かっている。

だが、それは奴等も同じではないのか。

 

「お主は、どうしたいのだ?」

 

「…国のため、何より己がために。

異形どもを討ち滅ぼすのみです。」

 

それが日ノ本に再びこの名を背負って生まれた俺の役目。

使命であり、運命なのだ。

どのような形になってでも、日ノ本を守る。

 

「お主は何故、そこまで我が国に忠を尽くす?」

 

「決まっております。…己は、この国で生まれ、育った。

全て日ノ本で得た物。その恩を、返すためです。」

 

「…そうか。…すまぬ、すまぬな。」

 

無力さを嘆くような声。

…分かっている。

既に、俺の知る日ノ本は無い。

 

戦に負け、国に負け。

故に今がある。

 

だが…百歩譲って米に負けるのはいい。

裏切られたとしても、それもまた人の世の定めであろう。

 

だが、三勢力。

貴様らがこの国に何をしてくれた。

病魔をばら蒔き、混乱を招いただけではないか。

 

幸福を口授すべき子を泣かせたのだ。

 

許してはおけない。

 

太陽よ、天照大神よ。

どうかご照覧あれ。

 

俺は天照大神様の声に答えず、ただ一言。

 

「天照大神よ、ご照覧あれ。

この日ノ本に蔓延る三勢力を滅して見せましょう。」

 

それだけを告げ、俺は出ていった。

この時をもって、俺は神の声を聞く権利を捨てたのだ。

 

されど、太陽よ。

病魔に苦しむ人々よ。

 

黙して見るがいい。

この頼光が、この日ノ本に蔓延る病魔を切り払おう。

毒であれば、毒でもって…この闇を裂こうではないか。

 

三勢力。

貴様らを許しはしない。

この日ノ本に毒を撒いたその罪。

死を以て償わせる。

 

いずれ奴ら全てを焼き払い、斬り払うその日まで。

 

俺は軍靴を鳴らすのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い光が走る。

盾が光を弾き、地を砕きながら駆けた。

 

白のプロセッサユニットを身に纏い、後ろに翔びながら撃ち続ける。

カイネウスと接近戦で戦うのは圧倒的に不利。

記憶の中のお姉ちゃんなら対等以上に渡り合うんだろうけど、私じゃ暴力的な攻撃に耐えられない。

 

ビームソードを造る際に女神化した時の武装も造ろうと思って作ったのがこのマルチプルビームランチャー…略してMPBL。

剣として使うもよし、ビームガンとして使うもよしな性能にしたけど、近接での打ち合いには向いてない…。

 

「オラオラオラァ!逃げてばっかじゃ俺は倒せねぇぞ!!」

 

乱暴、けれども合理的な戦い方。

やられる前に潰す…私じゃ出来ない。

 

それに、異様に体が硬い。

私のビームソードの刃が通らないなんて…防御魔法を使った形跡もない。多分、元々の体質かな?

 

駆けながら、ビームを弾き続ける。

疲れを知らないのかな…

 

「お父さんは…」

 

けれど、このスピードならまだまだ余裕だからお父さんの方を見る。

 

煙の怪物を倒しながらペストマスクの人に魔力で攻撃しているけど千日手みたい。

…なら、私が。

 

上に飛んで、ペストマスクの人に狙いを定める。

 

 

 

 

 

「マルチプルビームランチャー!!」

 

 

 

 

 

出力50%で少し大きめのビームを放つ。

私の力の源はシェアじゃないけど、似たようなもの。

そして、出力だけなら…私はこの中の誰よりも高い。

 

光が、ペストマスクの人にぶつかる直前。

 

「っ、まだ!」

 

煙の怪物が何体も重なってビームを防ぐ。

 

実体がないのに…どうやって…?

でも、確かに煙がビームを防いだ。

 

…うん、防がれたけど私の狙いは当たった。

 

「隙だらけだ。」

 

お父さんの黒帯が鞭のように振るわれてペストマスクの人の胴体を裂こうとする。

 

「くっ…!?」

 

後ろに跳んで避けるけど…

 

ペストマスクに亀裂が走る。

パラパラと砕けたマスクは顔を隠すことが出来なくなった。

 

露になった顔は綺麗で、絶世の美女とも言える風貌だった。

でも、その顔は悔しさで歪められている。

 

「無視か、女神ぃぃ!!」

 

「嘘、この高さまで…!?」

 

気を取られ過ぎて、私の方まで跳んできたカイネウスに反応できなかった。

槍が水を纏ったかと思えばそれを叩き付けられる。

水はしょっぱくて、濁流のように強い勢いで水が噴射されて地面に叩き付けられた。

 

まさか、こんな高さまで生身で跳んでくるなんて…

 

立ち上がる。

 

「ケホッ…やりますね…」

 

「ハッ、このままぶち殺してやるよ。

テメェも、あの女神も…悪魔も、堕天使も、天使も、神も!

全員殺してやる!」

 

凄い殺意。

口だけの殺意じゃなくて、絶対にやるという殺意を感じる。

…でも、さっきのは油断しただけ。

次からは、被弾しない。

 

そう思って、MPBLを握る力が強くなる。

 

 

 

 

 

─大きな力をお父さんの方に感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻煙の魔獣(ファントムフォッグ・モンスター)…範囲は煙を広げることが出来ればそれだけ伸びる。物理を無効にする特性…だったか。」

 

「よく調べているようですね…」

 

「脅威となるだろう物を調べるのは当然の事だ。」

 

目の前の美しい女、パラケルススは煙を広げながら息を整える。

やはりというか、戦闘向きではない。

後方支援に徹していた方が強いだろう。

 

だからこそ解せない。

 

何故アレを使わない。

あれは人の完成形だろう。

 

「錬金術師が前に出るなど愚の骨頂だ。」

 

「…そうでしょうね。」

 

「分かっていながら、か。

貴様らは何がしたいのか。」

 

「分かっているでしょう?」

 

「三勢力を滅ぼす…だが、貴様はそうではない。

苦しいか、人間。苦しみを抱えてでもあの救えない人間どもと共にいるのは何故だ?」

 

「…私は。」

 

生き苦しそうな道を歩む。

壊れそうな心を補強し続けているのだろう。

悪魔である私には分かる。

心に人一倍敏感な悪魔だからこそ。

 

「私じゃ、あの人達を止めることは出来ない。

救うことも、休ませることも出来ない。でも、私は…私は、自分だけ逃げるのは、嫌だから。

それなら、私は戦う。病を抱えた仲間を放ってはおけない。」

 

「…愚か者め。滅びが待つと分からんか。」

 

「例えそうでも、私は同じ道を歩みます。私はもう救えない。

だからこそ…!」

 

煙が形を得ていく。

周りに広がった煙を見るにネプギアには行ってない。

…だが、そろそろ来るか。

 

「私に出来るのは精々が薬を作り、投薬する位。

物を造る錬金術師としての力でも癒せないものは癒せない。

…だから、せめて私はこの力で抗う…──」

 

 

 

 

 

「─禁手化、幻煙の魔獣創造(ファントムフォッグ・メイクモンストル)。」

 

「■■■…」

 

煙が形を得たのは…ただの魔獣ではない。

 

北欧の魔獣、フェンリル。

それが私の前に姿を現した。

 

そうか、これが…この女の覚悟か。

 

「フェンリル…そうか、そうか。

素晴らしい…やはり人間を下等種族とは呼べんな。」

 

至ったのは魔獣創造の機能を手にいれた禁手。

似た部分があるとはいえ…禁手をすればこうなるか。

 

素晴らしい、やはり戦いは強さを磨く。

 

より確信できる。

戦いこそが我々の進化を施す。

 

黒帯の本数を増やす。

この黒帯はあの女神に対抗するべく造った物だが…使い勝手が良すぎる。

あの超越者の怠け者の能力を意識して造ったはいいが少々意識しすぎた。

 

「だが、フェンリルとはいえ私の敵ではない。」

 

「傲りが過ぎますね、シャルバ・ベルゼブブ。

貴方もまた魅了されただけの悪魔に過ぎない。」

 

周りの煙が形を得ていく。

フェンリルが大量に生産されていく。

一人を相手にオーバーキルだな。

 

だが…だからこそ笑おう。

 

「この数を相手に、貴方は抗う術はあっても突破する術はない。」

 

「…ハハハ、素晴らしい!この数…この状況。

神に感謝せねばなるまい。

私の進化にまた新たなピースが加わる瞬間だ…ならばこそ、私はこれを越えようではないか!」

 

「…イカれた悪魔め!」

 

大量の神狼が迫る。

黒帯を振るう。

三匹ほどの首を貫いて消し去る。

魔力を放ち、更にもう一体を消して包囲網を突破する。

 

新たなフェンリルが生まれる。

 

…なるほど。

 

「面白い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑い。

暑いので、キンキンに冷えたお茶を飲む。

皆は爽健○茶派?おーい○茶派?それとも別のお茶派?

俺は爽○美茶派の一誠です。

 

2年生らしく、アーシアと俺、木場とゼノヴィアで回ってるわけだが…楽しいよ?楽しいんだけど、暑い。

 

一誠さんは素直なのです…希望などないのです、あるのは絶望だけ。

 

「お茶が消え失せた…俺の、○健美茶がっ!!」

 

「さっきからツッコミたかったんだ。

○を移動するせいで隠せてないよね。」

 

「気にしたら舌噛んで死ぬぞ。」

 

「お茶を気にしたら死ぬなんてどんな世の中なんだい?」

 

「こんな世の中…かな。」

 

「イッセーさん、お茶なら自販機がありましたよ。」

 

「お、やったぜ。…にしても。」

 

ふぁんふぁ?(何だ?)

 

「ゼノヴィア…お前よく食うな。」

 

団子を食べるゼノヴィアの手には袋があって、その中にはまだまだ団子やら饅頭やらが入ってる。

 

こいつが一番楽しんでるんじゃないだろうか。

汗掻いてないし。

 

「暑くねぇの?」

 

「むぐむぐ……何を言うかと思えば。この程度の暑さでへたばっていては教会の任務などこなせなかったからな。

むしろ、もっと来い。」

 

「私は暑いです…」

 

自販機に金を入れてお茶を購入。

スポドリでもいいんだけど、塩飴ちゃんなら既に持ってきていたのだ。

アーシアが持ってるけどな。

 

「にしたって、お前金あったのな。」

 

「バイトしてたからな。」

 

「マジで?」

 

「うむ、金はあっても困らない。

労働をしたらその分贅沢をすればいい。今の私は労働の対価を買ってるのだ。」

 

「なるほど。」

 

こいつバイト出来たのか。

失礼かもだけど…猪突猛進して物を壊してるイメージが。

 

「流石に私も自重するぞ。」

 

「俺たちの間でも自重して?」

 

「考えておく。」

 

「あはは…それで、次は何処に行こうか?」

 

「うーん…休憩しませんか?」

 

「だな、歩き続けて疲れたし。座れそうな場所発見したし休憩!」

 

「はい、イッセーさんもどうぞ。」

 

「おお、ありがとな。」

 

ベンチを見つけて座る。

アーシアが隣に座って、飴を渡してくる。

ありがたく受け取って舐める。

 

やっぱね、塩分摂取大事だと思う。

 

皆も今は夏だろう!

水分、塩分の摂取は怠るな!

一誠さんとの約束だ!

え、うるせぇ?そう…

 

そうして少し日陰のあるベンチで休んでいると

 

「お兄さん、お姉さん。」

 

「ん?」

 

何やら、金髪の女の子がこちらに来た。

何だろうか、異様な雰囲気…というべきか。

 

この京都に似つかわしくない西洋の服を来た女の子だ。

感情が見えない真顔で俺達を見る。

 

「えっと…迷子ですか?」

 

「…うん、間違いない。標的。」

 

「え──」

 

女の子はクスリと笑う。

まずい、そう思ったときには遅かった。

 

 

 

 

 

「─貴方達に訪れるのは不幸か、幸運か。

鏡の世界がそれを見せてくれましょう。」

 

 

 

 

 

俺達の目の前に鏡が現れたと思えば、それは光った。

そして、体が引っ張られる。

木場達も同じようだが…アーシアに手を伸ばして手を掴む。

 

「イッセーさん!」

 

「離すなよ!くっ…!!」

 

万華の夢幻鏡(ディメンション・ミラー・シンフォニー)。」

 

 

女の子は真顔で鏡に吸い込まれる俺達を見る。

その目には、俺達は写っていなかった。

 

…機械のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡を消して、その場を後にする。

パラケルススさんのお陰で周囲にバレる事はない。

私はただ、頼光様の命令に従うだけ。

 

後は、あの悪魔達がどうなるか。

あの二人に蹂躙されて死ぬだけでしょう。

 

「ああ、頼光様。パンドラはやりました。

次は、どうすれば?」

 

貴方の前では、私の箱は幸福のみをもたらしたい。

私には貴方しかいないのだから。

パンドラは、その為に今を生きるのです。

 

私を救ってくださった。

 

私の救いは、貴方だけ。

私がもたらす救いも、貴方にだけ。




反英雄派の過去もしっかりと書いていこうねぇ。

まあ、今は戦いなんですけど。


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分断された皆!でも、私達は負けないよ!

おはテューヌ?こんにちテューヌ?こんばんテューヌ?(挨拶)

皆お待ちかねの投稿だ!(待ってない)
俺は忙しくても最低限ペースは保つからよ…だからよ、止まるんじゃねぇぞ…





床が冷たい。

そのまま倒れてたようだ…起き上がり、周りを確認する。

 

「なんだ、こりゃ…!?」

 

周りはガラス張りのような空間。

俺達が映ってる…鏡、か?

そう、鏡だ。

鏡の空間…あの女の子の仕業か…

 

『相棒、気を付けろ。』

 

「あん?」

 

『この空間…非常に厄介だ。』

 

「どういうことだよ。」

 

『この空間の鏡を壊すんじゃあないぞ。

倍にして威力が返ってくる…思い切り叩き付けたスーパーボールが思い切り返ってくる位にな。』

 

「詳しい忠告どうも。」

 

隣ではアーシアがまだ倒れてる。

 

…よかった、アーシアだけでも一緒だ。

木場達は無事か…?

心配だけど、この迷路みたいな空間を歩くしかねぇ。

 

「アーシア、起きろ。」

 

「うぅ……イッセーさん…」

 

「何かされてないか?」

 

「…大丈夫です。」

 

体を揺すって起こす。

目を覚ましたアーシアは立ち上がって、周りを見ると顔をしかめる。

 

「これは…鏡ですか。

イッセーさん…これは良くない事態です。」 

 

「ああ、敵だったなんてな…」

 

「いえ、違います。」

 

「え、違うん?」

 

「はい…一面鏡張りの空間なんて、自分の感覚が狂います。一刻も早く脱出しないと平衡感覚すら儘ならなくなる恐れが…」

 

「な、なるほど…詳しいんだな。」

 

頷くアーシアの言う通り、ずっとこの空間にいたら狂ってしまいそうだ。

そう言えば、ネットの掲示板やらで見たことがある。

 

何でも、何日も暗い空間にいると気が狂ったように金切り声をあげたりするようになり、そこから解放されたい一心で情報を吐いてしまう。

そんな拷問法。

 

…似たようなものだろう。

 

早いところ脱出しないと。

 

そう思って、歩を進めようとする。

 

『相棒!』

 

「っ!」

 

「きゃっ!?」

 

ドライグの声に反応して、俺はアーシアを抱き抱えてその場から後ろへ跳ぶ。

 

すると、俺のいた位置に青い光が突き刺さる。

鏡は音を立てて割れるが、周りの鏡までは一気に割れなかった。

 

…今のは。

 

「奇襲…!」

 

「一体、どこに…」

 

「…今の光が来た方向は…」

 

前方の斜め上…

少し上を見る。

 

…ただの、鏡の天井だな。

 

いや、違う。

 

「分かったぜ、今の奇襲のトリックが…!」

 

なんて合理的な作戦だ。

 

「本当ですか?」

 

「ああ。この空間は操作されてるんだ、今もな。

…そして、鏡を操作することで、奇襲してきた相手の姿を隠してやがる。」

 

今の位置にはいないだろう。

死角を狙った奇襲…というわけでもない。

相手も一撃で仕留められると思ってないってことか。

 

なら…

 

『Boost!』

 

「イッセーさん…?」

 

「アーシア、俺の傍から離れるなよ。」

 

「…はい!お側にいます!」

 

魔力を手に溜める。

倒すとかじゃない。

 

この場面を破壊する!

 

 

「ドラゴンショットォォォォ!!」

 

 

山を吹き飛ばせる威力の魔力を放つ。

鏡を突き破る。

何枚も、何枚も。

 

よし…足場は無事だ。

そして、これで操作されたら違和感に気付ける。

 

「走ろう!」

 

「はい!」

 

手を掴んで、走る。

 

面倒だが、俺にはあの奇襲に対処するための手が足りねぇ。

だから、この迷路を走るしかない。

分断されたなら合流しないと…勝ち目が…!

 

…ん?あれはっ…!?

 

「こっちじゃ!!」

 

「へ?は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣を振るうものの呆気なく破壊され、追撃される。

斧による暴力の一撃。

僕はそれを速さでもって回避する。

 

一撃でも貰ったら負け…いや、死だ。

目の前の相手はそういう手合いだ。

 

「ゼノヴィア、無事かい。」

 

「何とかな。

しかし…何だここは、目がおかしくなりそうだ。」

 

ゼノヴィアは既にデュランダルを構えている。

けれど、もう何回も打ち合って分かった。

これは、化け物だ。

 

目の前の少女は本当に人間なのか!?

 

赤く短い髪の女の子は自分の身の丈ほどはある斧を軽々と持ち上げる。

 

「…すばしっこい。」

 

「よく避けてると褒めてほしいね…!」

 

「速いだけじゃ、勝てない。」

 

突っ込んでくる。

 

まるで通じない。

技も悪魔としての筋力も、足の速さも。

全部を関係無いとばかりに壊してくる。

 

それに加えて…少女の手を見る。

 

龍の手(トゥワイス・クリティカル)…既に倍加は使ったけど…

違う、重要なのはそっちじゃない。

この強さ、間違いなく至ってる。

 

更に、あの斧もただものじゃない。

あの子に振るわれるためにあるような武器じゃないか。

 

華奢な見た目とは裏腹にその腕力は豪腕といってもいい。

 

ここは…回避に徹して戦うしかない。

 

「デュランダルは打ち合える…が、こちらの体がもたん。」

 

「僕も聖魔剣があるけど、雷も風も意味なかったね。」

 

「消えて。」

 

「…よし、名案を思い付いた。」

 

「め、名案?…君が?」

 

「おいそれはどういう事だ詳しく聞こうじゃないか。」

 

「いや…うん。」

 

「誤魔化すなぁ危なっ!!貴様、会話中の戦闘は厳禁だとRPGに教わらなかったのか!?」

 

二人でまた距離を取る。

鏡を砕き、女の子は外したと溢し斧をまた担いだ。

 

「ゲームは、したこと、ない。」

 

「あ、すまん。」

 

「それで、名案って?」

 

僕は急かすようにゼノヴィアに名案とやらを聞く。

嫌な予感というか、何となく察しがついているからさっさと聞こうと思った。

 

「ああ、この状況をどうにか出来るたった一つの方法だ…」

 

「それは…?」

 

「それは…」

 

「それは…?」

 

 

 

 

 

「逃げるんだよぉ~~!!木場~~ッ!!」

 

 

 

「やっぱりじゃないか!!?」

 

 

後ろを向いて全速力で逃げ出すゼノヴィアに僕も一緒に逃げる。

察しがついていたとはいえこれが最善策なのは笑えない。

後ろを少し振り向く。

 

「逃がさない…」

 

「追ってきてるじゃないか!」

 

「知るか!とにかく逃げるぞ!イッセー達との合流が先決だ!

あれをどうにか出来るのはイッセー位だからな!!」

 

「激しく同感だけど悔しいよ!」

 

くそ…それにしても、全力で逃げているのに引き離せないなんて何て速さだ、あの子!

人間やめてるんじゃないか!?

 

実は人造人間ですって言われた方が信じられる!

 

走っていると、頭上に影が射す。

何だと思って走りながら上を見ると…

 

斧を振りかぶったあの子がいた。

 

「これで、沈む!」

 

「どわぁぁぁ!!?」

 

「跳躍だけで追い付かれたっ…!?」

 

慌てて横に回避してまた駆け出す。

駄目だ、逃亡もいずれは決着がつく。

そもそも、イッセー君と合流できるのか?

…不安が募る。

ここは敵陣のど真ん中だ。

 

あの女の子みたいにイッセー君とアーシアさんも襲われてないとも限らない。

 

 

 

「ええい、何をしておる、こっちじゃ!」

 

 

 

「「!?」」

 

「…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ」

 

「どうかしましたか、先輩。」

 

「…ううん。」

 

何かを感じた。

…何だろう。

シェアに似てたような…

 

……まさかね。

シェアは自分にだけ搭載されたシステムだ。

自分といーすんだけが知覚できる。

 

でも、何か…起こってる気がする。

主人公的な勘がこの京都で事件発生しましたって言ってる!

 

─ネプテューヌさん。

 

(どうしたの?)

 

─気付きましたか?

 

(…うん。京都に何か起こってる。)

 

─私達に害が無いようであれば報告は控えましたが…非常事態です。

 

(何かあったの?)

 

─凡そ三秒前に二年生組が何者かによって結界か何かに隔離されました。

 

(…分かった!)

 

─データ事態は観測しました。巻き込まれる前に警告が可能です。

 

いーすんの報告が終わり、立ち止まる。

丁度、清水寺の観光が終わったところでこの事態。

 

「曹操。」

 

「悪いが聞けないな。」

 

「まだ何も言ってないよ!?」 

 

「大方非常事態だろう?俺は俺の持ち場を離れるつもりは毛頭ない。」

 

「…それは、護衛だから?」

 

「ああ。」

 

「前までは融通効いてたじゃん!ケチ!」

 

「前まではまだ『何とかなる』見立てがあったからだ。

明確な脅威が分かっていたから、俺の仲間があの場にいたからお前に任せられた。」

 

「それは私達が貴方に認められる程の実力が無いからですか。」

 

静かに聞いていた小猫ちゃんが曹操に近寄って聞く。

曹操は冷ややかな目で小猫ちゃんを射抜く。

 

「君達の努力は認めよう。

だが、実力も認めるとは限らない。

事実、俺は君達をあっという間に倒せるだろう。」

 

「…分かっています。

でも、私もまた先輩に救われた。

そのご恩を返したいんです。だから…だから、私達に任せてくれませんか。」

 

「僕たちだって、や、やれるんです!」

 

「…それは、君達がこの異常事態に立ち向かうということか?」

 

「はい、私達は確かに貴方には勝てない。

…でも、協力することは出来ます。京都について詳しいであろう姉様なら解決策を見つけてくれる筈…後は、死ぬ気で挑みます。」

 

覚悟の目だった。

戦うことをしっかりと覚悟している目。

今までとは違って、ちゃんとした命のやり取りだと頭と心で理解してる。

 

…戦士の目、なんだと思う。

 

曹操はそれを聞いて、ふっと笑う。

 

「ああ、なら俺からも助けをだそう。」

 

「え、で、でも…」

 

「『俺は』持ち場を離れない。」

 

「…えっと、英雄派の人をこっちに貸してくれるんですか?」

 

「でもそしたら、お母さん達は!?」

 

「ハハハ、俺がそれを頭に入れてないとでも?

もう一人の協力者に事前に言ってあるさ。」

 

「…試したんだね?」

 

「謝罪はしないぞ。

こうして仲間の腹の内を知るのも俺の役目だ。

…俺もまた、お前に恩を感じているんだ。忘れないでくれ。」

 

…曹操。

そうだね。

曹操達は恩返しの為に頑張ってるんだ。

まだ、自分達の道が見えないから、そこから何かを見出だそうとしてる。

 

甘いだけじゃ、リーダーは務まらないって事なんだね。

 

「既に皆を魔王に協力して貰って来させた。

だから緊急事態でも対処が出来る。」

 

「へ、どういうこと?ゲオルグとの電話は?」

 

「残念だったな、あれは嘘だ。」

 

「えぇ!?」

 

「俺があんな場でわざわざ声が漏れるくらいの声量で連絡するわけがないだろう?」

 

「う、言われてみれば…敵を騙すなら味方からって奴?何にしたって性格悪いよ!?」

 

「皆に言われたよ。」

 

「だろうね!」

 

「あまりにも酷いですぅ…!」

 

ま、まあ…曹操の期待どおりだったのは良いことだったから…とにかくヨシッ!

 

リアスちゃんにも連絡しよう。

携帯を取り出す。

 

2、3回ほどのコール音の後に出てくれた。

 

『どうかしたの?』

 

「緊急事態発生だよ!一誠達が隔離されちゃった!」

 

『…何かの冗談かしら?』

 

「ううん、本当だよ!いーすんが言ってたから間違いないよ。」

 

『…ネプテューヌ。』

 

「何?」

 

 

 

 

 

『事情は何となくだけど理解出来たわ。

ちょっと用が出来たからまた後で。』

 

 

 

 

 

「えっ、ちょっと待っ──」

 

()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

「─!」

 

『そっちは頼んだわよ、主人公。』

 

その言葉を最後に、通話は切れた。

 

…リアスちゃんと朱乃ちゃんも既に巻き込まれてる。

なら、ここはもうやるしかない。

 

「曹操!」

 

「動くか?」

 

「うん、ちょっと時間がかかるどころじゃないけど。」

 

「そうか…なら、これを。」

 

「え、何これ?地図?」

 

曹操から色んな箇所に×がされてる地図を貰った。

宝の地図なら要らないんだけど…?

 

「転移魔法陣はこういう時便利な代物だ。

サーゼクス殿から許可と共に何処にあるか分かるようにと渡された。」

 

「…まるで、何かあると分かってたようですね。」

 

「行く先々で事が起これば構えもするさ。」

 

「ある意味ネプテューヌさんのお陰ですぅ…は、早く行きましょう!?」

 

別の意味で信用されてて自分は涙が出そうだよ!

今までの分で色々と根に持たれてるよね?

絶対そうだ!

 

くそぅくそぅ…この緊急事態じゃなければゲームで分からせるのに!

 

っと、こんなこと言ってる場合じゃないね。

 

「とりあえず、行こう!」

 

「途中まで同行します。」

 

「ここからなら…ここが一番近いな。連絡しておくか。」

 

待っててね皆!

いきなりの襲撃じゃ大変よな!ねぷ子、動きます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

パープルシスターの姿から戻って、走る。

 

まさか、こんな事態になるなんて。

あの人は…まずい。

私じゃ勝てない。

お父さんも、殺されちゃう。

 

ボロボロな状態のお父さんを何とか背負って走る。

女神でよかった…人間だったら背負ったまま走れなかった。

 

「ネプ…ギア…ええい、放さんか。」

 

「放しません!」

 

まさか、ただの旅行でこんなことになるなんて思いもしなかった。

これじゃ…巻き込まれに来たみたいで。

 

取り合えず、逃げないと。

 

この結界の外に出ないと。

 

気付けなかった自身が嫌になる。

私じゃ守れないのかな…?

 

 

 

『悪いが、こちらもお前らに割く時間はない。』

 

『ぐ、ぉぁ…!?』

 

 

 

お父さんが、煙で出来た狼の大群と戦ってる時だった。

数が多くても立ち回りと黒帯で若干優勢だったのに…後ろから背中を斬られた。

 

もう一人いたなんて…!

 

刀で斬られた箇所がかなり痛むようで治療魔法を掛けてもあまり効果がない。

血は止まっても痛みは続いてるようだった。

 

「……結界の外に出るのには骨が折れるぞ。

私を背負って逃げるなど…」

 

「お父さんを見捨てることは出来ません!」

 

「…妙な部分で姉に似たか。私は悪人だぞ?」

 

「お父さんはお父さんです。

私の、ただ一人のお父さんなんです!」

 

「…まったく。」

 

それきり、お父さんは静かになったので走ることに徹しました。

追ってくる気配はあるけど攻撃をしてこない。

…このままの速度じゃ追い付かれるかな。

 

でも、戦いまで温存しないと。

 

「はぁ……はぁ……」

 

特にあの人…カイネウスはしつこそう。

…うう、どうすれば。

 

「おい。」

 

「え?」

 

はじめて聞く声で、足を止めてしまう。

…そこにいたのは、眼鏡を掛けた男の人だった。

 

「…こんな場所に迷い混んだのか?」

 

「ち、違います!カイネウスとパラケルススって人に襲われて…」

 

「……なるほど。差詰め、この結界から出たいということだな。」

 

「は、はい。」

 

眼鏡の人はお父さんを一瞥した後、ため息をつく。

 

知り合い…?

ううん…今はそれよりも大事なことがある。

 

「あの、私達を出してくれませんか?」

 

「まあ、出来ないことはない。

俺としてはお前達はどちらでもいいが…あいつらに殺られるのは違うだろうからな。」

 

「貴方は、何でここに?」

 

「俺は自分から入った。」

 

「…仲間、何ですか?」

 

「…いいや、()()仲間じゃない。」

 

私の後方を見ながら、眼鏡の人はそう言った。

何処かを見つめるんじゃなくて…思い出すように。

 

私はこの人を信じようと思う。

お父さんも、気を失ってるようだし…判断を謝っちゃいけない。

でも、この人は信じられる。

 

「…そろそろ来るな。

逃げるとしよう。あの突撃馬鹿の相手はごめんだ。」

 

「は、はい!お願いします!」

 

眼鏡の人が指を鳴らす。

すると、霧が立ち込める…

これって…

 

「…神器ですか?」

 

「ああ。結界神器ではあるが…何事も使いようだ。

本命の場所でもなかったからな…これ以上いても仕方がない。

…全く、これだから──」

 

 

 

「待ちなさいゲオルグ!!」

 

 

 

「…準備途中なんだが。」

 

ゲオルグ…この人の名前。

 

パラケルススが肩で息をしながら立っていた。

ゲオルグさんは何かを言おうとして、そして…

 

諦めたようにため息をついた。

 

「優柔不断め。それだからお前はそうなる。」

 

「…どうして、ここにいるの。貴方達は、駒王にいるんじゃ…」

 

「ああ、いたよ。来たのは二時間前だ。」

 

「…読まれていたの…」

 

「いいや、ただの偶然だ。

まあいい、パンドラは何処だ。」

 

「教えるわけないでしょう。」

 

「…そうか、残念だ。

話すことはもう何もない。

お前達は敵だ…かつての仲間であっても。

尊敬はしていたよ。」

 

「ぁ、待っ──」

 

 

 

 

─そうして、景色が変わる。

薄暗い空間から、どこかの建物の中に。

 

誰の視線もない。

 

転移、したんだ。

…転移する直前のパラケルススの表情。

助けを求めるような、そんな表情だった。

 

「さて、着いたな。」

 

「あ、あの、ありがとうございます!」

 

「構わない。」

 

そう言って、ゲオルグさんは歩いて外へ行こうとする。

私も、慌ててついていこうとする。

 

「ここにいろ。

外は暑いからな。」

 

「…はい、何から何までありがとうございます。」

 

ここはお言葉に甘えようかな。

丁度、ソファがあったからお父さんを寝かせる。

 

足がクタクタ…しばらくは走りたくないかな。

 

…それにしても、何が起こってるんだろう。

この京都で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外へ出る。

暑くて鬱陶しい眩しさだ。

携帯を取り出し、曹操へと通話を掛ける。

 

『こちら、曹操だ。』

 

「報告する──」

 

 

 

 

 

「─シャルバ・ベルセブブ及び奴の実験結果と思わしき少女を保護した。

サーゼクスホテルまで来い。」

 

 

 

悪いが、俺は非情に徹する役目なんでな。

純粋さを利用するようで悪いが…

この状況の打開の為にまだ巻き込まれて貰う。

 

俺達を救ってくれたネプテューヌの為にもな。




さあ、どんどんいこう。
戦いは止まらない、加速する!


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出会いは必然、だけど…?

ねぷは続くよどこまでも(挨拶)

さあ、皆お待ちかねの時間です…が、そんないい雰囲気になるかな?




曹操が突然サーゼクスホテルって所に向かおうなんて言い出してついていくことに。

よく分からないけど、そこでゲオルグが待ってるみたい。

…うーん?どうして急に?

 

なんて疑問満載だけどついていく!

皆大好きネプテューヌだよ!

 

それで、転移の魔法陣を見つけて転移を何回かしてサーゼクスホテルについたんだけど…

あれだね、完全にサーゼクスさんの作ったホテルだよね?

 

はえー…自分の名前のホテルはちょっと…うん…

残念だなって。

 

中に入ると、ゲオルグが気だるそうに座ってた。

 

「遅い。何処をほっつき歩いていた。」

 

「そう言うな。本来なら別の用事を優先しようとしていたんだ。

だが、そうも言えない事態のようだ。」

 

「…まあいい、魔王名義で借りていた部屋に休めてある。」

 

「他は?」

 

「あのー!私達を放って話をするのはよくないとねぷ子はねぷ子は思ってみたり!」

 

「そうだったな。」

 

すまないと謝られたら許すしかないのがねぷ子さん!

ということで許します!

 

「それで、結局誰を休めてるの?」

 

「…結局顔を合わせる事になるからな。

シャルバと少女だ。」

 

「…」

 

「シャルバ…ってロキさんを殺した?」

 

「加えて、ネプテューヌ先輩を利用した人物ですね。

少女…ということは新しく利用する相手を見つけたんですか?」

 

シャルバ。

 

…ロキの核を抜いた本人。

怒りが無いといえば嘘になる。

むしろ、バリバリある。

 

でも、自分が取り乱しちゃうのはダメだと思う。

 

だから、ここは。

 

「よーし!諸々の事情をまるっとお見通しにするためにも会いに行こう!」

 

「先輩…」

 

「んー大丈夫!私ったら過去を気にしない系主人公なのですよ!

取り敢えず行こう?」

 

「…だな。」

 

「話は終わったか?早く行くぞ。一秒が惜しい筈だろう。」

 

「ごめーん!反省してるからカエルの技使わないでね?」

 

「誰がゲオルグ13世だ。」

 

ゲオルグにチョップされて会話を中断。

ついていく…んだけど。

 

少女…うーん。

 

(いーすん、君の意見を聞こうッ!)

 

─テンション高いですね。…そうですね…予想通りかと。

 

(うーん、だよね!)

 

じゃあ仕方無いね!

ガッカリしてメソメソする暇なんて無いんだな、これが。

ということでついていくよーRPGの人並についていくよー

 

エレベーターに乗って、三階、かな?

305、と書かれた部屋をゲオルグが開ける。

 

やけに時間が長く感じる。

開けるまでがスローモーションで、時間が遅くなってるのかなと錯覚する。

でも、錯覚は錯覚。

扉は開かれて、曹操とゲオルグが先に入る。

 

ハッ、として、自分も中に入る。

 

そこにいたのは

 

 

 

 

 

「─お姉、ちゃん…?」

 

 

 

 

 

とても、自分に似ていた。

容姿は、少し身長の高い髪の長い自分…みたいな。

どっちかというと、姉はそっちって認識されそう。

何だろう、色々と違和感がある。

 

 

 

 

 

「……………うん、お姉ちゃんだよ。」

 

 

 

 

 

酷く長い沈黙なようで、とても短い沈黙。

どうしてお姉ちゃんだと言えたんだろう。

見た目?

同じ十字のアクセサリー、瞳の色?

 

違う。

 

そんな明確なものじゃない。

ただ漠然とした感覚。

やっぱりそうなんだ、といった感傷。

 

お姉ちゃん?自分が?この子の?

 

ベッドに寝かされているシャルバが気にならないくらい、その子を凝視している自分がいる。

 

─ネプテューヌさん。

 

いーすんが呼んでる。

言葉を返さないと。

 

…自分が、お姉ちゃん。

 

一誠やあーちゃんは弟妹っていう明確な立場で自分はその姉なのに。

 

まるで、まるで。

 

 

 

 

 

この子が本当の自分の妹のようで。

何かが、割り込んでくるような…そんな妙な感覚に襲われる。

今までの全てに介在されてたような。

…被害妄想に近い、そんな何かが。

 

 

 

 

 

吐き気が汲み上げた。

ゲロインは真っ平ごめんなのでそれを耐える。

口に手をやることなく、作った笑顔で。

 

曹操がこっちを見てる気がするけど、それでも自分は視線を外さない、外せない。

 

だからなのか。

 

「ごめんね、お姉ちゃんだけど知らないかな。」

 

そんな、冷たい台詞を吐いてしまった。

 

単純に、怖いのか。

自分の細胞とヴァーリの力の一部とロキの心臓を持つこの子が。

妹だよと明確に伝えてくるこの子が。

 

どうして?この子に罪はないよ/なんで認めないといけないの?

 

矛盾、だった。

 

「ぇ、あ…わ、私…ネプギアです。」

 

「私は─」

 

「ネプテューヌ…ですよね。お父さんから、聞きました。」

 

お父さん。

そう言った。

 

しっかりとした子供じゃない。

それは当たり前だ。

だって、こんなに似てる子が、シャルバの子な訳がない。

 

だからこそ、凄い何かが沸き上がる。

 

「シャルバが、お父さんなんだ。」

 

「う、うん。お父さんは私に色々と教えてくれたんだ。

生活とか、機械の事とか。」

 

「っ…」

 

ああ、駄目だ。

自分は、この子をまだ…受け入れられない。

嬉しいことを話すネプギアが、とても…似ていて。

 

ネプテューヌじゃない自分が出そうになる。

 

不快感じゃない。

何だろう。

この感覚は。

 

この子はクローンじゃない。

 

明確に違うって分かる。

 

なら、これは。

何だろう?

 

─お姉ちゃん

 

お姉、ちゃん。

自分が。

 

─姉ちゃん!

 

─ネプテューヌさん!

 

何だろう、これは。

 

ふらふらと足が動く。

シャルバに近付く。

 

「ネプテューヌ?」

 

「先輩…?」

 

二人が呼ぶ声がしたけど無視する。

 

自分は、ネプテューヌ。

この子は?

ネプギアだ。

明確な違いは、名前と中身。

 

何で受け入れられないのか。

 

ああ、やっぱり今の自分はおかしい。

 

「ねえ」

 

「お姉ちゃん…?」

 

「シャルバ、起きて」

 

体を揺する。

一誠にするように、優しめに。

起きないと駄目だよと伝えるように。

 

目を覚まさない。

 

「起きてよ」

 

「おい、ネプテューヌ。」

 

「ねえ、起きて」

 

揺する。

揺する。

揺する。

 

死んでるわけでもないのに、起きない。

 

少し、強めに揺する。

 

「お姉ちゃん、やめて!」

 

「起きて」

 

ネプギアが腕を掴む。

振りほどく。

 

違う、そうじゃない。

 

説明を求めてるんだよ。

 

こんな幸せそうな子なのに。

これから、色々と学ぶべき子なのに。

大切な、妹になるのに。

 

 

 

─違う、そうじゃない。

 

 

 

何かが決壊したようにシャルバの上に乗る。

いわゆる馬乗りだ。

 

シェアで刀を創造する。

 

貫くように、刃を向ける。

 

 

 

「やめてぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

体を、弾き飛ばされる。

 

刀を消して、上手く着地する。

部屋が少し広くて助かった。

 

おかしい。

話を聞きに来たのに。

どうして、こんなに…

激情に駆られるんだろう。

 

「起きてよ……シャルバ!!」

 

「………騒々、しい…な」

 

少し弱い声でゆっくりと目を開けるシャルバ。

 

動こうとして、曹操に取り押さえられる。

 

「離して」

 

「悪いが、無理だ。」

 

「……ああ、ネプギア。」

 

「お父さん!起きてくれてよかった…!」

 

ネプギアが涙を見せながら抱き付く。

シャルバはそれを子供をあやすようにヨシヨシと頭を撫でる。

 

なんだ、これは。

これじゃ親子だよ。

 

何で?

これがしたいことなの?

自分と戦うための結果がこれなの?

 

「……に」

 

「ネプテューヌさん…お、抑えなきゃ…」

 

「何の、為に…」

 

激情がまた沸きだす。

これじゃ、また同じ。

コカビエルの時と変わらない。

 

でも、抑える自信は無かった。

抑えようとも思わない。

 

心のままに、叫びたかった。

 

 

 

「この為に、ロキを殺したの!?どうして!!」

 

 

 

「…こうなるか。」

 

ゲオルグの言葉が耳に入る。

でも、気にならなかった。

 

─ネプテューヌさん、落ち着いてください!

 

「…そうか、そうだろうな。」

 

シャルバは起き上がる。

ネプギアが抱擁を解いて、少し顔を俯かせる。

 

「私は、お前に勝つ。その為にあの神を殺したし、お前の細胞を奪ったし、ヴァーリ・ルシファーの力も一部盗んだ。

それがこの子だ。ネプギア…私に勝利を呼ぶための存在。

そして、私の娘だ。」

 

「……女神を造ったんだね。」

 

「造るなとは言われなかったのでな。

私はお前に勝つためならこれくらいの手は打つ。

これはお前と私の戦いだ。」

 

やるせない。

とても、やるせない。

拳を握る力を解きたくても解けない。

 

ロキは、この為に殺された。

それがあって、この子がいる。

 

…幸せそうに、している。

 

会って一日もない友達って言われたら頷くしかない。

でも、時間なんて関係ない。

ロキは、自分の恩人だから。

 

友達で恩人なんだ。

最後に力を託してくれた。

 

─…ネプテューヌさん。少し、落ち着きましょう。ここにいたらずっと激情に飲まれます。

 

いーすんの心配する声。

…その通りだよね。

今の自分は冷静さを欠いている。

 

「…ごめんね、私…少し部屋出るよ。」

 

「…ああ、後で詳細を話す。すまないな。」

 

「ううん、分かってたのに抑えきれない私が悪いからいいよ。」

 

「…先輩、一人は危険です。その、私も一緒でいいですか?」

 

遠慮がちにそう聞かれた。

小猫ちゃんは心配してそう言ってくれてる。

いーすんもいるしね、別に構わないかな。

 

「うん、いいよ。」

 

「…ありがとうございます。」

 

そうして、部屋から出る。

 

「お姉ちゃん…」

 

心配そうに見つめるネプギアを無視するように。

罪悪感も抱えながらその場から立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ネプテューヌの精神的ダメージは深刻だな。

イストワールと塔城小猫が復帰させてくれることを信じる他ないか。

 

俺はこういう時に無力だ。

 

だからこそ、こういった話は俺が率先して聞こう。

 

「私を殺すか?あの女神を害する存在だぞ?」

 

「だ、駄目ですよ!お父さんは…やらせません!」

 

「勘違いしているようだが、今のところそのつもりはない。」

 

「ほう、どういうつもりだ?」

 

「そもそも、お前が弱ってるならその時に仕留めればよかった話だ。ゲオルグなら不意打ちくらい容易い。」

 

「…それをしなかったのはお前たちに聞きたいことがあったからだ。」

 

「交換条件、ということか。」

 

「…その、一ついいですか?」

 

ネプギアが控えめに手を挙げて発言の許可を求める。

俺が頷くと、言いづらそうにしていたが口を開いた。

 

「…お姉ちゃんは、私が嫌いなんですか?」

 

難しい質問だ。

嫌い…というわけではない。

ただ、覚悟していたよりも現実が強かった。

 

俺にはそうとしか言えない。

 

自分の細胞を使った生命…それをすぐに受け入れられるのかと問われればその時にならないと分からない。

先程のように激情に駆られるかもしれない。

冷静に話し合うかもしれない。

 

「…嫌いではないと思う。だが…君は自分がどう生まれたか知っているか?」

 

「やめろ。」

 

「…知らないんだな?」

 

「…知らないです。」

 

「…親面をするとはな、シャルバ・ベルゼブブ。

怖いのか?自分が何をしてきたのか知られるのが。」

 

「ゲオルグ!」

 

「…ふん。」

 

ゲオルグ…苛立っているな。

むしろ、その怒りをぶつけないことに仲間として敬意を払う。

俺も、律しないとな。

 

「お父さんがしてきたこと…ロキって人の事ですか…?」

 

父親…か。

そうか、お前は父親として接した…接してしまったのか。

冷徹になれなかったのか。

そうなれなかったのか。

 

それとも…何かを見出だしたか。

 

今言うべきだろう。

自らの出自を知らないことは後々になって枷になる。

ネプテューヌの激情の理由を知るべきだ。

父親の罪も。

 

「…君の父親、シャルバ・ベルゼブブは北欧神話の神、ロキを殺した。」

 

「……お姉ちゃんが、言ってました。」

 

「ネプテューヌとは本当に短い時間だったが友になれたらしい。

そして、君の心臓。神でいう、神核……それはロキの物だ。」

 

 

 

「……ぇ?」

 

 

 

呆然。

この言葉が一番似合うだろう。

 

シャルバは諦めたように目を閉じていた。

 

残酷なのかもしれない。

もしかしたら、なんだ、といった風に終わるかもしれない。

だが、俺はそうは思えなかった。

 

ネプテューヌと同じく善に傾いている。

そんな子だと俺は確信している。

 

「嘘、ですよね。」

 

「いいや、真実だ。」

 

「お父さん…?」

 

「…事実だとも。

私は、ネプテューヌに勝つためにそうしたのだ。

奴に頼み、同じ女神を造り出そうとした。

そして出来たのが、君だ、ネプギア。」

 

「……そう、なんだ。だから、お姉ちゃんは…」

 

「…確かに私は、あの時ネプテューヌを超えたいが為に君を造るように奴に頼んだ。それは変えようのない事実だ。

だが、私は…」

 

…顔を伏せるシャルバは、以前ほどの圧を感じない。

狂気すら感じた闘争心は何処へいったのか。

 

ネプギアも、沈んだ様子だった。

 

誰かの犠牲の上で生まれた命。

それを簡単に受け入れられないのだろう。

 

「…シャルバ。お前は誰と相対していた?」

 

「…貴様らで言う所の反英雄派だったか。パラケルスス、カイネウスと交戦していた。」

 

「なるほど。」

 

「だが、あの男に不意を打たれてこの様だ。

ネプギアがいなければ私は、あの場で死んでいただろう。」

 

「…頼光か?」

 

「ああ。観光に来たつもりが、こうも巻き込まれるとは…因果か。」

 

「因果?」

 

「あるいは特異点とも呼べる。

私には、あの女神がそこにいるだけで何かが起こる。

そんな気がするのだ。ドラゴンのオーラなど比較にならない程に…」

 

…確かに。

 

いやそんなことよりも頼光達だ。

まさか、本当に仕掛けてくるとは…

カイネウスは確実に倒せる自信はある。

 

だが、他がな。

戦いにくいことこの上ない連中ばかりだ。

パラケルススは戦闘は専門外なことを考慮すればやりようはあるとしても…

 

ゲオルグに任せるべきか、パラケルススは。

 

「二年生組が消えたのは結界を使えるパラケルススの仕業…じゃないか。だが、それだと誰が?」

 

「パンドラだろう。」

 

「絶霧と接合した結果、結界神器としての性能にも目覚めた…そういうことか。」

 

「それも、通常の結界じゃないだろう。

新たなる神滅具になるかもしれない程だと予想する。」

 

「…今すぐにでも全員を召集するべきか?」

 

「やめておけ、ヘラクレスには悪いが今回は今いるメンバーだけで戦闘を考えた方がいい。」

 

「…そうだな。それにしても、一番厄介なのは…やはり、呂布か。」

 

「どうするんだ?」

 

「…いや、それよりも二年生組の救出を…」

 

 

 

「その必要はない」

 

 

 

「なに…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱乃。」

 

「ええ、分かってるわ。」

 

朱乃と歩きながら、認識を擦り合わせていく。

何が起こっているのか…

ネプテューヌの言葉を信じない訳じゃないけど、この事態…

 

良くないわね。

 

「部長、この後どこ行くんですか?」

 

「僕達はこのままついていこうと思います。」

 

「…ええ、構わないわ。」

 

このイッセー達に瓜二つな存在。

これは何なのか…把握する必要があるわね。

 

偶然会った形でイッセー達と合流して一緒に歩いていたらネプテューヌからの連絡が来た。

 

となると…良くできた偽者、もしくはネプテューヌの情報が嘘。

 

後者は殆どする意味がないわね。

よって無し。

前者…この場合は意味が生まれる。

 

牽制、もしくはこのまま何処かまで誘導しての暗殺。

イッセー、祐斗、ゼノヴィア、アーシア。

 

…この四人がここまで見た目も喋り方も似ていると疑う心が薄れてしまう。

 

念話を用いて朱乃と会話する。

イストワールとゲオルグから教わってよかったわ。

毎度思うけどあの二人万能ね…

 

(朱乃、ここは一緒にいた方がいいわ。警戒はして、誘導されているようなら…)

 

(…人目が多すぎるわ、これはしてやられた…というヤツね。分かりました。)

 

「そうね…もう少しこの大通りを歩きましょうか。」

 

「はい!」

 

「暑いが、大勢でいれば暑さも紛れるというものだな。」

 

さて…何処かで人払いの結界を使いながら倒さないとね。

いつ痺れを切らすか分からないし。

 

ふう…胃薬を旅館に置いてきた事を後悔してるわ…

 

何にしても、ネプテューヌ達に引き合わせることだけはしちゃ駄目ね。

 

「ああ…折角の観光なのに胃が…」

 

「気を確かに…」

 

曹操の勘が当たったのは悲しいわね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の大迷宮から脱出出来た。

な、何を言ってるか分からねーと思うが俺もどうして脱出出来たのか分からなかった。

手品だとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。

もっと正確な案内人の頼もしさを感じたぜ…

 

走り続けて疲れた俺はその場で座り込む。

 

ここは神社か?

 

「アーシア、無事か?」

 

「は、はい…」

 

「これくらいで疲れるとは情けないのぅ。」

 

…そう、俺達は呆れた様子でこちらを見る女の子に助けられた。

勿論、ただの女の子じゃない。

狐の耳を頭に生やした女の子。

獣っ子…フレンズなんだな!

 

「悪い、ありがとな。でも、よく出口が分かったな…?」

 

「うむ。それについては母上のお陰じゃ。」

 

「お母さん?…ああ、そうだった。

俺は兵藤 一誠。」

 

「私は、アーシア・アルジェントです!」

 

「アーシアに一誠じゃな。

私は九重と申す、見ての通り妖怪じゃ。」

 

「妖怪…やっぱいるのか!」

 

「狐の妖怪さんですね。」

 

うんうんと頷く九重に何となくホッコリするが、それよりもどうやって出口を見付けたのかってのと助けてくれた理由を聞かないと。

九重もそれを話そうと思ったのか咳払いを一回。

 

「私がお主たちを助けられたのは…ほれ、それがあったからじゃ。」

 

「「?」」

 

指を差す方を見ると、鏡があった。

 

「鏡?」

 

「それが出口じゃ。」

 

「どういうことですか?」

 

「母上の言うことに従っただけだからのぅ…詳しくは分からん。

ただ、この裏の京都にある鏡をあの結界の起点としていたと言っておった。」

 

「…なるほど?」

 

難しい話だな、よく分からない!

適当に相づち打っとこう。

 

「じゃあ、なんで助けてくれたんだ?」

 

「…いやさっぱりじゃな!」

 

二人してガクッとした。

し、知らないで助けたのか?

じゃあその母上に聞くしかないのか…

 

って待ってくれ。

 

「裏?」

 

「おお、やっと気付きおったか。

空を見よ!」

 

「…あれ、薄暗いですね?まだお昼の筈ですが…」

 

「そうじゃ。

ここはそういう場所なんじゃ。」

 

「えっと…俺達のいた場所は表の京都で、ここは裏の京都ってことか?」

 

「うむ!別空間というヤツじゃな!」

 

「はえー…とんでもねぇな京都。」

 

いーすんがいれば解説があったかもだけど、今はそれどころじゃなさそうだしな。

結局奇襲の犯人分からねぇし。

 

あの女の子…また会ったら捕まえた方がいいよな。

 

「では、母上の所まで行くぞ!母上もお主らの残りを助けたと思うしの!」

 

「木場とゼノヴィアか!?くぅ~…ありがとな!」

 

「感謝する程ではない。

母上はただで助ける方ではない。」

 

「…そうですね、でもありがとうございます。

お陰で助かりました。」

 

「っと、そうじゃ。一誠、その鏡を壊すのじゃ。」

 

「え、いいのかよ?」

 

「うむ。京を荒らす不届き者に使われる位ならば割ってしまえ!」

 

「お、おう…んじゃ遠慮なく!」

 

鏡を掴んで地面に叩きつける。

パリン、と高い音を立てて鏡は割れた。

 

あー…割っちゃったぜ。

 

「じゃあ、案内よろしくな。」

 

「任せよ!」

 

ふんす、と胸を張る九重に俺とアーシアは笑う。

調子も戻ってきた!

反撃の為にも色々と知っとかないとな!

 

にしても、姉ちゃんたち、無事かなぁ…




自分も自分の細胞使って生まれました心臓はご友人のですよって言われたらすぐ受け入れられる自信はないですね。

この時のネプテューヌはかなり中の人出てしまってます。

そして、一誠達二年生組、裏京都の方達との出会い!
反撃開始なるか!


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今は前を向こう!戦いはこれからだよ!

バニーパープルシスター可愛いんじゃあ~(挨拶)

ネプテューヌは一人じゃない、皆が支えてくれるよ!





ホテルのソファに座って、項垂れる。

どうしてこうなるのかなって激しい自己嫌悪に陥る。

何だろう、覚悟していたんだけど…ガツンと固いもので頭を殴られた気分だった。

 

でも、あの子に罪はない。

あの子はただ生まれただけだから。

でも…自分は…シャルバを、許せるのかな…

あの手を取れるのかな。

手を差し伸べる事が出来るのかな。

 

─ネプテューヌさん…大丈夫ですか?

 

「ごめんね。少し…辛いかも。」

 

「…先輩、どうぞ。」

 

「ありがと、小猫ちゃん。」

 

缶の炭酸を貰って、開ける。

カシュッという気持ちのいい音。

喉を刺激するようなシュワシュワとした感じが今の自分には何となくありがたかった。

 

ちょっとだけ落ち着いて、冷静になる。

 

「私、あの子のお姉ちゃん…なんだよね。」

 

「ネプギアさんがそう言っているだけです…とは一概には言い難いです。」

 

─ネプテューヌさんの細胞を用いて誕生した女神…妹とはいかなくても子供の部類にはなるかもしれませんね。

 

二人の言葉をしっかりと聞く。

子供、かぁ…そうだよね…

どうして姉なんだろう?

 

シャルバっていう父親がいるんなら母親を求めるのが普通じゃないかな。

でも、ネプギアは自分という姉を求めた。

 

シャルバがそう教えたのかな。

 

「私って駄目だね。

誰かに誓っても、こうやって挫けちゃう。

主人公失格だよ…」

 

「…そんなこと言わないでください。

先輩は、私にとって誰よりも格好いい主人公ですよ。」

 

自分の言葉を小猫ちゃんが隣に座って、否定する。

どうして?

自分はこんなに情けないよ。

 

神様にああやって見ていて欲しいって言っても、一人の女の子を受け入れられないんだから。

 

「先輩は、私を救ってくれたんです。

姉様を信じきれなかった私を、どうするべきか悩んで沈んでいく姉様を…救ってくれたんですよ。」

 

「…救えてる?」

 

「はい。

誰かのために頑張れるって誰にでも出来る事じゃありません。

皆誰だって自分が一番…自分の都合です。

でも、先輩は自分の都合だとしても誰かを必死に救おうとしている。免罪符にしないで、何が起きても受け止めようとしている。」

 

「そんなことないよ。私は…もっと。」

 

もっと救えたんじゃないかって。

そんな傲慢な思いがあるんだ。

まだ、まだ救える。

 

そうやって、必死になって終わった後には大抵…両手から結構溢れて。

救えるものも救えない。

 

「傲慢でいいじゃないですか。」

 

「え?」

 

「私は、先輩よりも傲慢な人を知りません。」

 

そう言う小猫ちゃんは、微笑んでいた。

それって褒めてる?

 

「もっと助けたい、なんて傲慢な人じゃないと考えません。

でも、そんな先輩だからこそ助けられた人がいて、今があります。

溢れた命もあると思います。善悪関係なく手を差し伸べると決めた先輩には納得できない事の方が多いと思います。」

 

でも、と自分の手を掴む。

自分の右手を両手で包み込む。

 

暖かい。

 

「先輩は、その傲慢さで私達を助けてくれたじゃないですか。」

 

「…」

 

「先輩が溢してしまった人は、先輩にどんな言葉をかけましたか?」

 

「私が助けられなかった…」

 

 

『…お前は、愚かだな…だが、正しい…』

 

バルパーはコカビエルに刺されて、でも…自分を正しいって言ってくれた。

 

『ああ…悪である私が…最期に、希望を…ハ、ハ…上出来な、終わりだ…───』

 

ロキは、シャルバに神核を抜き取られて、助けられなかったけどその力を託してくれた。

 

二人とも、自分を肯定してくれた。

 

「…いいのかな、このままでも。」

 

「向き合ってばかりだと疲れるのは当然です。

先輩は…頑張りすぎですよ。頼りないかもしれませんが、私達をもっと頼ってください。じゃないと、姉様も私も心の底から喜べません。」

 

「でも私、ネプギアに酷いこと言っちゃった。」

 

「感情的になる時なんて皆ありますよ。すぐに受け止められなくても、徐々に受け止めていけばいいんです。先輩は少し…走りすぎです。」

 

「小猫ちゃん…」

 

…ありがたいな、こう言ってくれる人って。

やっぱり、自分は一人じゃ駄目だ。

挫けやすいから、起こしてくれる人がいてくれないと転んだままになっちゃう。

うん、そうだよね。

ちょっと急ぎすぎだったのかもしれない。

 

「…よし、取り敢えず回復したかも?」

 

「疑問系ですか。」

 

─ネプテューヌさん、無理をなさらなくても…

 

「無理してないよ!こうやって支えてくれる皆がいるから私の今があるから…大丈夫!」

 

「そうですか。では、戻りますか?」

 

「うん!」

 

ネプギアにも謝らないと。

しっかりと、向き合わないとね。

まだ話してもいない、自分の感覚だけで否定しちゃったから。

 

大丈夫、ねぷ子さんの夢はこんなところで終わらないって所を分からせないとね!

 

ダッシュで戻るよダッシュで!

 

部屋に戻る…と?

 

「たっだいま~ねぷぅ!?」

 

「…」

 

「ああ、おかえりネプテューヌ。」

 

「あ、お姉…ネプテューヌ、さん。」

 

び、吃驚した。

 

ああ、読者の皆は何に吃驚したか分からないよね。

ねぷ子さんがしっかり描写するよ!

 

部屋に戻ってきたと思えば部屋には曹操達はいるんだけど、見知らぬ人がいたんだよね。

長身の人で、黒の袴を着た…男の人かな?

それだけならよかったんだけど…

 

赤い天狗のお面を着けてるんだよね、うん。

 

っていうか、ネプギアは遠慮した呼び方してるし…うーん。

自分が悪いし…

 

「何だ、まだ連れがいたのか。」

 

「すまない…ネプテューヌ、この方はこの京都を取り仕切る妖怪。

八坂殿の遣いの者だ。」

 

「ジャパニーズ妖怪!?そ、そっか、日本神話の神様もいるんだしそりゃいるよね。」

 

「先輩、私も元は妖怪です。」

 

「あ、そうだった。」

 

小猫ちゃんも妖怪だったね。

今は悪魔だけど…

 

八坂って人の遣いの妖怪さんは入ってきた自分達を見定めるように見てから頷く。

 

「では、私は外で待っている。準備が出来次第こちらへ来てくれ。」

 

「分かった。」

 

お面の人は出ていった。

んん?内容が分からないや。

曹操に近寄って、話を聞く。

 

「HEY曹操!これはどういうことなんだい?」

 

「その感じ、戻ったな。先程、遣いから二年生組を保護したとの報せを聞いてな。それで八坂殿と共にいるそうだからそちらに行こうという話になった。」

 

「なるほど…もしかして、スッゴい場所?」

 

「京都の裏だ。」

 

「え、ブラジルでも行くの?」

 

「日本の裏側に行くんじゃない。後、日本の裏側は海だ。」

 

「ええ!?」

 

「し、知らなかった…」

 

「限定的な知識を知る必要はないぞネプギア。」

 

嘘ぉ!?

自分はブラジルの人に声が届くと信じて穴を掘って叫んだのに!

まあ、開通してないけど。

そっか~…海だったんだ~…初耳だよ。

 

でもよかったよ、一誠達助かったんだね。

本当によかった!

 

こうしている間にも~って考えてたから助かったよ。

 

よーし、これはもう八坂って人に会うしかないね!

 

その前に…

 

「ネプギア!」

 

「は、はい!」

 

「…ごめんね、さっきはあんな態度取って。

私も、どう反応すべきか分からなくて、そしたら思考がぐちゃぐちゃになって…」

 

「ぁ…」

 

ネプギアに謝る。

しっかりと向き合うためにも、自分から一歩進まないと。

謝るところから始めて、そこからようやく進める。

 

「後、ネプテューヌさんじゃなくて、お姉ちゃんでいいよ!」

 

「…うん…お姉ちゃん!」

 

嬉しそうにネプギアは自分をお姉ちゃんと呼ぶ。

おお、一誠とあーちゃんに続いてネプギアもかぁ。

 

シャルバはそんなネプギアを複雑そうな目で見ている。

 

…今は、抑えよう。

 

「それで、シャルバ達はどうするの?」

 

「悲しいことに協力しろと言われた。仕方無く付き合おう。」

 

「お父さんをこうした人を許せません。

倒して、謝らせます!」

 

「…謝る、か。ネプテューヌ、今回の犯人だが…頼光達が動いた。」

 

「…そっか。」

 

頼光と向き合う時が来た。

それだけ分かればもう十分。

 

頼光が動くなら他のメンバーも動いてる。

 

あの女の子、パンドラって子も戦うのかな。

 

「先に言っておくけど、英雄派だけで解決するなんて言わないでよ?」

 

「流石に言わないさ、もう十分巻き込んでしまってる。」

 

「よかった!主人公の出番を失くす何ていう大損害を好感度稼ぎしておいた私はフラグごと叩き折るなんて…私ってばフラグクラッシャーじゃない!?」

 

「だといいがな。そのまま嫌なフラグも叩き折ってくれ。」

 

ただ…ずっと思ってたことが一つだけ。

 

これだけは解せなかった。

あり得るのかな、といってもいい。

ネプテューヌの観点ではなく、『自分』という個の観点からの疑問だからこそ、それが当たっているのか分からない。

 

「日本神話の神様は京都にいるんだよね?」

 

「ああ、その筈だが…」

 

「なら…どうして、頼光達の行動を咎めないんだろう?」

 

「……確かに。これも下手すれば京都の安寧を乱す行為の筈だ。

それを管理者の日本神話が何故…」

 

「簡単なことだ。」

 

「お父さん、分かるんですか?」

 

シャルバは分かりきったように外を睨む。

 

「日本神話がその行動を許している。

それだけだろうさ。」

 

「何故だ?」

 

「さて、それは私にも分からん。だが…神とて感情を持つ。

奴はこの日本において最後の兵士だ。

頼光の存在は、どのように映ったのだろうな。」

 

「……考えても、仕方無いか。

だとすれば妖怪側も黙認する筈と思ったが…一枚岩ではないということか。」

 

難しいんだね、神話事情も。

 

もしかして、今回は自分達だけで解決すべき問題じゃないのかな…?

でも、それは…うーん。

 

とにかく、お面の人の所に行こう!

ネプギアとシャルバも仲間になったし、戦力アーップ!

…こんな時ヴァーリもいたらなぁって思うのは良くないんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出る。

暑さで気が滅入りそうになるけど暑さに負けないくらい元気でいれば問題ない!

 

お面の人は周りの人に怪しまれてる様子もなく立っていた。

というより、皆この人を見ていない?

 

「準備は出来たか。」

 

「大丈夫!セーブしてないけど平気だよ!」

 

「せえぶ?西洋の言葉は難しいな…では、ついてまいれ。」

 

そう言ってさっさと歩きだしたお面の人についていく。

シャルバの服は何と元に戻ってた。刺し傷とかあったのに…

魔法の部類かな?

 

ゲオルグは暑さに顔をしかめてるけどついてくるようだった。

 

「大丈夫?ホテルで待機でもいいんだよ?」

 

「このメンツを見ろ。

脳筋ばかりだぞ、一人は気弱で動けるかも分からない。

頭脳派の俺が一緒でなくてどうする。」

 

「き、気弱…泣きたい気分ですぅぅ…!」

 

「えっと…大丈夫、ですか?」

 

「はいぃ…どうせ僕は引きこもりで陰キャでいる方がお似合いなんです…」

 

「ゲオルグのせいで落ち込んじゃったじゃん!」

 

「知らん、事実を述べただけだ。」

 

ツーンとした態度のゲオルグにまったくと思いながらネプギアに慰められてるギャー君を見る。

頑張ってるのは知ってるけど…後一歩なんだろうなぁ。

 

きっと大丈夫だよ。

リアスちゃんも信じてるって言ってたし!

 

曹操は依然として自分の隣を離れない。

何かありがたいなぁ…

 

歩きながら、曹操が自分を横目で見た後、視線を戻してから話し掛けてくる。

 

「頼光は…お前と戦うだろうな。」

 

「…頼光は転生悪魔だった。だから、三勢力が嫌いなのかな。」

 

「それだけではないのかもしれないな。

きっと、失望したんだろう。」

 

「失望?」

 

「人を人とも思わない所業。人体実験、悪魔化、危険だからといった殺害…その多くを見てきたんだろう。

事実、パンドラもその被害者だった。」

 

「でも、三勢力にもいい人はいるよ。」

 

「だから失望なんだろうさ。」

 

曹操は淡々と話を続ける。

何かを悟った様子でもあった。

 

「善を見出だしたくても、それを塗りつぶす悪がいれば…目を瞑りたくもなる。喜劇よりも悲劇が多いのが世の常だ。

お前が喜劇にねじ曲げてきたことを、頼光には出来なかった。

その無力さも後押ししてしまったんだろう。」

 

「…今からでも間に合うのかな。」

 

「……」

 

 

曹操は、何も言ってくれなかった。

肯定も否定もなかった。

自分次第…なのかな。

 

手を取り合える未来を取りたい。

でも、頼光は…どうなんだろう。

 

悩みながら歩いているとお面の人が立ち止まる。

 

人気のない裏路地だった。

 

「ここ?」

 

「ああ、ここが裏の京都の入り口の一つだ。」

 

お面の人は何もない空間に手を翳す。

すると、空間が捻れる。

 

目の前に、何もない筈だったのに江戸時代を感じさせる建物が見えるようになる。

 

…これが、入り口。

 

「一種の結界か?」

 

「この京都は表と裏…二つあって初めて安寧を保つ。

何も表に妖怪がいないわけではないがな。」

 

「わー凄い!この先に八坂って人がいるの?」

 

「うむ、では行こうか。」

 

皆で足を踏み入れる。

 

そこは、空は薄暗く、町に点る仄かな灯りによって幻想的に照らされている…そんな場所。

 

ここが裏京都!

凄い…!

 

─位相が違う…というのでしょうか?とにかく、ここなら私も、出られそうですね。

 

そう言って、いーすんが自分の中から出てくる。

 

「レーティングゲームのクウカンとにています。

しかし、このキョウトは…オモテとのイソウがずれているようですねφ(・・*)フムフム...」

 

「うわぁ、お姉ちゃんの中から人が…?」

 

「…私も初めて見るな。まさか、女神…普段は隠しているのか?」

 

「流石に普通の人に見せられないでしょ。」

 

「ネプギアさん、はじめまして。

ネプテューヌさんのサポートをタントウしています、シショのイストワールともうします(o^-^o)」

 

「ちなみに私はいーすんって呼んでるよ!」

 

「ネプギアです、よろしくお願いしますね、いーすんさん!」

 

「いーすん、さん?」

 

「あはは、いいんじゃない?」

 

「陽キャのような呼び方ですぅぅ!僕と真反対に位置してへぶぅ!?」

 

「ギャー君うるさい。」

 

こ、小猫ちゃん…

拳骨って、ネガティブキャンセルが雑ぅ…

 

いーすんは何だか困ったような嬉しいような、そんな顔で頷いていた。

ちなみに…

 

「私は無視か。」

 

「ワタシはアナタをミカタとしてみていません(*`Д')」

 

「嫌われたものだ。」

 

「お、お父さん…」

 

「…さて、和気藹々としているのは結構だが八坂様も暇ではない。」

 

「あ、ごめんね。行こっか、皆。」

 

お面の人にやんわりと言われて謝る。

そうだよね、偉い人だもん、忙しいよね…

 

よしよし、いーすんも出てきたしこのままレッツゴー!

 

お面の人についていくと、町を出てしまう。

あれ?町じゃないの?

 

黙ってついていくと、小川を越え、林を抜ける。

 

ちょっと疲れたかも…

 

そのまま歩くと、巨大な赤い鳥居と古風な屋敷が建っていた。

 

ま、まさかここが八坂って人の家かな!?

ここが件の人のハウスね!

 

「ここ?」

 

「しかり。私はここまでだ。」

 

「そっか!お面の人、ありがとね!」

 

お面の人は自分の頭をポンポンとしてから歩いていった。

 

うーん、子供扱いされてない?

自分、こう見えて18…じゃなかったね、うん…

 

年増になるんだね、自分…はは…

 

勝手に落ち込んでる自分を尻目に曹操達は鳥居を潜る。

 

「あー待って!私を置いていったら罰金100万円だよ!」

 

「寒そうな地方のライバルの真似をしてないで来い。

八坂殿も暇じゃないと言ってただろう?」

 

「曹操って護衛だけど厳しいよね。」

 

「逆だ。護衛だから厳しいんだ。」

 

ええ…?そんなもんかな?

 

自分も鳥居を潜って、屋敷の入り口の前に立つ。

誰が開けるんだろうなぁ…

 

…え、自分?

 

自分に指差すと、皆が早くしろとばかりに頷いた。

ネプギアは苦笑している。

…はーい…

 

「ごめんくださーい!ネプテューヌはいかがっすかーーー!!」

 

「違くないか、それは。」

 

方向がおかしい?

そんなことないよ!来たって伝えればそれは挨拶!

そう何もおかしいことはないのだ!

 

戸がゆっくりと開いた。

 

後ろの皆にドヤ顔をかましてから我先にと中に入る。

 

「お邪魔しまーす!」

 

「お、お姉ちゃん…声大きいよ…」

 

「ネプギア、知っておけ、これがうちのネプテューヌだ。」

 

皆も中に入る。

すると、今度は青い炎がぼうっと自分の目の前に現れる。

吃驚したけど青い炎はゆらゆらと揺らめいて、少ししてから案内するように移動し始めた。

 

「狐火…か?」

 

「え、じゃあ八坂って人は狐の妖怪?」

 

「九尾…というヤツか。」

 

皆で狐火?についていく。

熱いのかな?

そっと手を近付けると、狐火?は自分に当たらないように前に出る。

 

…うーん、この。

 

諦めてついていくと、大きな戸の前に辿り着く。

狐火?も消えちゃった。

ありゃりゃ…面白かったんだけど。

 

取り合えず、戸をゆっくりと開ける。

 

開くとそこには…

 

 

「ねぷ姉ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

「ねぷぅぅ!?」

 

一誠が猛ダッシュで大広間の奥から来た。

 

これはぶつかるパターン!?

そう思って身構える。

 

「ぐへぇ!?」

 

「…あれ?」

 

一誠はあとちょっとの所で首根っこを掴まれたように呻き声をあげた後にぐったりと倒れた。

 

あ、あれ?

 

 

 

「─騒がしいのぅ。」

 

 

 

圧を感じる声。

一誠を引き摺りながら中に入る。

 

そこにいたのは…

 

「姉の気配がどうのと言っておったが本当とは。

お主の弟はどのような嗅覚をしておるのじゃ?」

 

「シスコンだから…うん…」

 

「先輩、来てくれたんですね。」

 

「待っていたぞ!」

 

「ああよかった、ネプテューヌさん…!」

 

9本の尾を生やした巨乳の金髪美女が座っていた。

 

皆の姿もあったし、よかったぁ…!

ていうか、何かお茶出されてるし!

 

「八坂さん?」

 

「左様、妾が八坂。妖怪の頭領をしておる。」

 

「凄い人って事だね!」

 

「ふふっ、そうじゃな、そういうことじゃ。」

 

八坂さんは上品に笑ってから、座るように促す。

取り合えず、皆座ると、ポンッと何もないところからお茶が出てくる。

 

はえー…凄いや。

 

「いってて…あ、姉ちゃんは…ってシャルバ!?」

 

「…面倒になる前に外にいればよかったか。」

 

「てめぇ何でここにいやがる!とにかく、ぶっ飛ばして…」

 

「一誠さん、やめてください!」

 

「へ?」

 

ネプギアが一誠を止める…って、知り合いなの?

え、いつ知り合ったの!?ねぷ子さんそれ知らないよ!?

 

別のシーンで知り合ってたパターン?

 

一誠はネプギアを見ると、どうしてここに、といった様子だった。

 

「え、何でネプギアがここにいるんだ?」

 

「お久しぶりです、一誠さん。えっと…お父さんは今お姉ちゃんの味方なので戦うのはやめてください!」

 

「は?お父さん?」

 

ネプギアが頷く。

一誠の視線がこっちに向く。

説明してプリーズっていう目を向けられる。

 

八坂さんに時間を貰えるか聞くと、少し楽しそうにしながら了承してくれた。

 

「えっと…かくかくしかじか!」

 

「まるまるうまうまって事か。」

 

「何で伝わってるんだい?」

 

「私にも分からなかったぞ…?」

 

「え、そうですか?」

 

「アーシア、お前…凄いな…」

 

一誠は話を理解してからシャルバを睨む。

シャルバはだからなんだと言わんばかりにお茶を飲んでる。

 

「お前の事、まだ許してねぇからな……ネプギア、また会えて嬉しいよ。」

 

「はい、私も嬉しいです!」

 

笑い合いながらまた会えたことを喜ぶ一誠とネプギアに取り敢えずシャルバの事は触れない方向になったことを理解する。

 

まあ、それが一番だよね。

不自然な共闘だけど…今は友達同士が会えたことを喜ぶべきだよね。

…なんだけど。

 

笑顔のまま湯呑みに皹を入れるあーちゃんを見る。

 

「……」

 

「あーちゃん?」

 

「はい?」

 

「ナンデモナイデス…」

 

「…ふむ、取り敢えず話は終わったかの?」

 

「うん、待たせてごめん!」

 

「よいよい。」

 

「それで、話があるんだよね?」

 

ただ助けただけならこっちに来る筈。

招待したってことはそれなりの用件だよね。

心して聞かないと。

 

八坂さんも真面目な様子になって頷く。

 

「この四人を救出したこと、それを理解しておるな。

ならば話は簡単じゃ。この京には今、不届き者がおる。

天照大神は黙認しておるが…我ら妖怪勢力は別じゃ。」

 

「裏の京都を利用されたの?」

 

「うむ、裏の京都の鏡…それらを結界の起点とした。

これは立派な領域侵犯じゃ。神が許そうと妾は妖怪の頭領として許さぬ。

どのような物か理解しておらずとも皆殺気だっておる。」

 

自分達に向けてじゃなく、頼光達へ向けた怒気でさえこっちにもビリビリする程の圧。

…結構怒ってるね。

 

「本来であれば我ら京の妖怪が奴らを追い出せばいい話ではある…が、どうやらお主らと関わりがあるようじゃな?

天照大神と共にいた堕天使の総督曰く、三勢力と対立しているとのこと。」

 

「おっちゃんはどうしてるの?」

 

「天照大神の場所に今も居る。

…恐らく、お主らと戦わせる腹積もりじゃろうな。」

 

「天照大神か…この戦いで何かを見定めるつもりか?」

 

おっちゃん…多分、サーゼクスさんやミカエルさんもだよね。

頼れる筋がちょっと消えちゃったね。

でも、ある意味好都合だよ。

 

日本神話の神様はどっちにも味方しないスタンスってことでしょ。

 

こう言う状況だけど、今回の戦いはハッキリとしてるね。

なら、ここはねぷ子さん言っちゃうよ!

 

「どの道、あっちとはまた戦うつもりだったからいい機会だよ!

八坂さん、私達に任せてよ!」

 

「こっちから願いたかった位だ、八坂殿。

俺達の元仲間…三勢力の被害者が相手ならば俺たちが向き合うべき問題だ。」

 

「うむ、ならば戦うのはお主らに任せよう。

場所は妾達が整えようではないか。」

 

…何となく、分かる。

 

今回の戦いが自分にとってどれだけの意味を持つか。

似てるようで決定的に違う理想の頼光と自分。

…その決着になる。

 

負けられないね、絶対!




妖怪勢力と共に反英雄派と戦うことになったネプテューヌ達。

場所を整えると言った八坂の策とは?
そして、表の京都にて偽物の一誠達と行動するリアス達はどうするのか。

次回、『ミラーラビリンス攻略 前編』


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ミラーラビリンス攻略 前編

さあ始まるザマスよ!行くでガンス。ふんがー(挨拶)

というわけで鏡の世界攻略していきます。

どうなっていくか…楽しみだぁ。


なぜこうなったのだろう。

私達はどうして引き裂かれたのか。

単に都合が良かった…この一言に尽きるのでしょう。

 

偶然にも不幸の箱を開いてしまった。

この名前を与えられたからなのか、それとも神様の気まぐれなのか。

 

どちらにせよ、私には抗う術は無かった。

 

普通の家に生まれ、普通の家族で、普通の生活を送ってきた。

名前を、パンドラ。

お父様もお母様も優しくて、暖かい人。

 

喧嘩をしても、小さな喧嘩だけで次の日には家族揃って笑顔になる。

ご近所の子とも仲良しで、毎日を草原を走る少女のように楽しく生きていた。

 

生きていた、筈だった。

 

ある日、町の教会から人が来た。

怖い人、恐ろしい人。

きっと童話の悪い人。

 

「うちの娘をどうするつもりですか!」

 

「パンドラに手を出すな!」

 

「お父様、お母様…」

 

教会の人がいっぱい来て、私の手を掴んで幸せから遠ざける。

涙を流して取り返そうとする二人を、弱い私は見ているだけ。

 

「パンドラ!」

 

「やめて、連れていかないで!」

 

そんな声を聞きながら、泣いて手を伸ばす二人を見ながら私は教会に連れていかれた。

幼い私は何をされるのか分からなかった。

分からなかったけどお父様とお母様に会えなくなるような気がした。

だから、最後に怖いながらも手を伸ばした。

 

 

 

「お父様、お母様!助けて…!」

 

 

 

手は、届かなかった。

教会に来た時、私はすぐに下の方へと連れていかれた。

暗くて、冷たくて、息苦しい地下室。

何をされるのだろう、もう帰られないのか。

子供ながらもここは怖い場所なのだと理解した。

 

周りを見たら、子供の姿があった。

 

同じぐらいの、小さな男の子。

壁に寄りかかって、虚ろな瞳が私を見つめる。

 

近所の子はこんな瞳をしていなかった。

怖い人は私をこの地下室に置いて扉を固く閉めて出ていった。

鉄の扉は想像よりも冷たく、命を吸い取るようだった。

 

私は男の子に近寄った。

こんな冷たい部屋だけど、人がいる。

涎を垂らしながら上を見つめる男の子でも、それは変わらない。

 

「ねえ、アナタは誰?」

 

「ぁ…ぁ…?」

 

「私はパンドラ、アナタは誰?」

 

「…だ、れ…?」

 

「名前はないの?」

 

「なまえ…?」

 

何てこと。

名前がないなんて、可哀想だわ。

酷いことをされてきたに違いない。

そう思った私は自分の服が汚れることを厭わないで男の子を抱き締めた。

 

「可哀想…良くないわ、名前がないなんて…」

 

「あた、たかい。」

 

「そういうアナタは冷たいわ。」

 

幼いといっても私は今年で9になる。

甘えてばかりの女の子じゃなかった。

 

「パ、ンドラ…」

 

「ええ、パンドラよ。怖い地下室…一人だったの?」

 

「一人…?ああ、アアァァァァ…!」

 

「きゃっ!?」

 

一人という単語を聞いた時、男の子は暴れた。

暴れた影響で私は弾かれて、地面に倒れる。

地面は冷たく、べちゃりと何かが手に触れる。

でも、そんなことが気にならないくらい男の子は暴れた。

怖いものから逃げるように、抵抗するように。

 

「アァァァァ!」

 

「暴れないで、いいこだから!」

 

私は意を決して男の子を力強く抱き締めた。

暴れたせいで手から血が出る男の子を見ていられなかった。

 

尚も暴れる男の子に離すもんかと抱き締め続ける。

 

…少しして男の子は大人しくなった。

 

「…落ち着いた?」

 

「…ぅ」

 

「ごめんなさい。怖いことがあったのね…私がいるわ。」

 

「パンドラ…パンドラ…!」

 

「ええ、大丈夫よ。寒い部屋も、暗い部屋も…私が一緒。」

 

安心したように泣き出す男の子をあやしながら、周りを見る。

暗いけど、何かが見える。

よく目を凝らして見ると、それを認識した。

 

して、しまった。

 

「ひっ…!」

 

 

 

 

 

人だったもの。臓物、目、死体がそこにはあった

 

 

 

 

 

叫びそうになって、男の子を強く抱き締めることで気を確かに持つ。

叫んじゃ駄目、叫んだら…怖い大人が来る。

 

落ち着くまで、私も呼吸を整える。

幼くても、分かる。

分かってしまう。

ここは、よくない場所。

 

死体は皆、子供だった。

 

ここは…何なの?

不安と恐怖が私を支配しなかったのは一重に私よりも恐怖している男の子がいたから。

 

だから、少しの平静を保てた。

 

ここは…いけない場所。

少なくともここは平和じゃない。

 

「…」

 

それからは…苦痛だらけだった。

男の子はもう見捨てられてたのか何もされなかったけど私は違う。

私に悪い大人が寄ってたかって集まった。

怖い手が伸びてくる。

抗う術は…なかった。

 

「──!!」

 

 

 

 

「薬物投与。」

 

 

 

 

意識が混濁する。

 

痛い、痛い…痛い痛い痛いイたいイタいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!

 

やめて、やめて、やめて!!

 

私が、壊れていく。

 

「薬物──を投与。」

 

苦しい、苦しい、苦しい

 

怖い、怖い、怖い

 

私が音を立てて壊れていく。

まるで、硝子のように、皹が…

 

 

 「──を投与」

      「安定してます」

           「──を投与」

                「やはり適正がある」

                       「──を──」

 

吐きそうになっても許してくれない。

痛みを訴えても許してくれない。

許しを請う、許してくれない。

 

何かを投与することを、やめてくれない、

 

そうして、私から痛みが消えた。

痛くない。痛くない。

何かを投与されても、痛くない。

 

触れても分からない。

 

ああ、理解した。

 

もう、触れても分からない。

感じることも出来ない。

 

もう冷たいとも感じない部屋に戻される。

男の子はビクついた様子で私に近付いてくる。

上手く立てない。

 

「パンドラ…」

 

「大、丈夫…よ…」

 

体だけ起こして、男の子の手にそっと触れる。

握らないように。

手を握る力も分からない。

 

後に、味の薄いスープとパンが出された。

 

男の子の分が無かった。

 

ああ、いけないわ。

それはいけない。

 

パンを半分にする。

 

「半分にして、一緒に食べましょう?スープもあるわ。」

 

今は、耐えないと。

怖い大人に負けてはいけない。

きっと物語のように助けてくれる人がいる筈だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八坂さんが言うには、何にしても鏡の結界を使うパンドラを捕らえないと話は始まらないらしい。

パンドラ…絶霧と追憶の鏡を接合させた神器を持ってるんだよね。

一誠達から聞いた話だと、鏡に吸い込まれて、鏡だらけの迷路にいたって言うけど…

 

「どう攻略しようか?」

 

「そこなんだよな。パンドラって子を見付けて、鏡の世界に逃げられないように捕まえる…これなんて高難易度?」

 

「ちなみに、あの鏡の世界に仲間がいたぞ。斧を持ってたな。」

 

「呂布か…」

 

「青い光みたいなのに奇襲されたぞ?」

 

「トリスタンか。」

 

「うーん…これって順序が逆?」

 

「どういうことだ?」

 

曹操に聞かれて、自分の考えを頭で整理してから話し出す。

 

「パンドラを攻略するには中にいる呂布とトリスタンを先に倒すべきだったりしない?」

 

「何でだ姉ちゃん?」

 

「三人が一斉に襲ってこないとは限らないし、各個撃破すべきじゃないかなぁって。」

 

「なるほど、パンドラ自身も入れるだろうからな。

それをしないのは…」

 

「トリスタンと呂布がいるからだと思う。そっちに任せる方が確実だしね…」

 

「ただ、鏡の世界からどうやって帰ってくるかだ。」

 

「それにかんして、ワタシからゲオルグさんにききたいことがあります。」

 

「何だ?」

 

いーすんがゲオルグの前まで飛ぶ。

おお、いーすんに策が!

これは楽しみだね…!

 

「ゲオルグさんのディメンション・ロスト…それをパンドラさんはとりこんでいるんですよね?」

 

「ああ、本当に一部だがな。機能としてはこちらに不備はない。」

 

「ええ、それで…」

 

そこからいーすんが話し出した鏡の世界からの脱出方法。

それは賭けのような物で、だけどそれくらいしか方法が無いように感じた。

 

ゲオルグは唸って考え込む。

 

「確かに、やれなくはないかもしれない。だが…」

 

「カクジツではありません。」

 

「そうだぜいーすん。それで帰ってこれなかったらヤバイどころじゃないぜ。」

 

「ゲオルグさん、出来そうですか?」

 

「……やれる…とは思う。」

 

「もう少しハッキリお願いします。」

 

「お前なんだか容赦ないなアルジェント!ええい、やれる!

やってやる!俺ばかりこき使って覚えておくんだな!」

 

「おおー!ゲオルグ流石!」

 

あーちゃんがズバッと切り込んでいって観念したようにゲオルグが吠える。

ああ…可哀想に…

 

「でも、これで鏡の世界は大丈夫だね!」

 

「…となると、グレモリー達が心配だな。」

 

「話を聞くに、かなりまずい状況だろう?」

 

「そ、そうですぅ!二人を助けないと!」

 

ギャー君が焦るのも無理ないよね。

リアスちゃんのあの言葉…間違いない。

接触されてる。

 

一人からの接触じゃなくて、数人。

 

一人だけなら小手先の戦法が得意な二人が焦る必要はあまりない。

だけど…数人ならそうも言えない。

 

加えて、一誠達が危ないって言った時…

 

『何かの冗談かしら?』

 

あの言葉は…?

一誠達が危ないって聞いたらどう言うことかを聞いてくるようなリアスちゃんがまず自分の言葉を疑った。

これにヒントがある。

 

ネプギア達から聞いたパラケルスス達や一誠達から聞いたパンドラ達。

そこから考えないと。

 

有力候補はパラケルススとパンドラ。

どっちかかもしれないしどっちもかもしれない。

でも、パラケルススはシャルバ達と交戦してたし除外。

 

ならパンドラだけど…

鏡の世界を構成するだけの力の他に、まだ手があるの?

 

鏡…鏡…

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

 

「─これだ。」

 

ピースがハマる感覚。

寧ろ、これしかあり得ない。

そんな確信が自分にはあった。

 

「鏡写しだよ!」

 

「はしょらないでくれ。」

 

「ああごめんゼノヴィア…えっと、リアスちゃん達は今、一誠達の偽物といるんだよ!」

 

「どうして分かる?」

 

「えっと…パンドラは鏡を操るんだよね?」

 

「ああ。」

 

「その鏡の性質を利用して、偽者を写し出したんだよ!」

 

「具現化と似たようなものか?だが…パンドラにどれだけの負荷がかかっているんだ。」

 

「それは分からないけど…でも、一誠達の偽者が相手なら…」

 

「姉ちゃんそっち?え、なら俺も…」

 

一誠が一緒に来ようとして、木場君に肩を掴まれる。

すっごいいい笑顔で木場君は

 

「君はこっちで呂布と戦ってね?」

 

って言って、一誠は心底不思議そうに首をかしげる。

 

「な  ん  で  ?」

 

「君ぐらいの馬鹿力じゃないと勝負の土俵に立てないんだよ。」

 

「一誠、頑張ってね。」

 

「あああちくしょぉぉぉぉ!!」

 

「…あの!」

 

「ん?」

 

ネプギアが意を決したかのように声をあげる。

悲しげな一誠は無視するとして…

 

「どうしたの、ネプギア。」

 

「あ、えっと…私も、一誠さんと戦います!足手まといにはなりません!絶対に役に立ちますから!」

 

「マジでか。ありがてぇぜ!」

 

「い、いいんですか?」

 

「願ってもないぜ、よろしくなネプギア!」

 

「…はい!」

 

嬉しそうな笑顔なネプギアを見てホッとする。

何だろう、初めてこんなに人と関わるから少し緊張してたのかな。

あ、でも戦うのに慣れてない可能性あるもんね。

 

うーん…

 

シャルバをチラッと見る。

 

「…なんだ。」

 

「ネプギアは戦って大丈夫?」

 

「私より足手まといにはならん。寧ろ、私がいるからこそあんな失態だった。」

 

腹立たしいと言わんばかりに舌打ちをするシャルバ。

あれだね、パラケルスス達に苛ついてるっぽい。

そうなるのも仕方無いよね、二人からしたら観光に来ただけだもん。

 

今は敵意とか気にしないで関われるから色々聞くチャンスだよ!

 

「シャルバはどうするの?」

 

「私はお前と行動しよう。そちらの人間としても楽で助かるだろう?」

 

「理解してるようでありがたいな。あまり下手な動きをすると貫いてしまうかもしれないな。」

 

「もー二人ともギスギスしないでよ!」

 

うう、ヴァーリが居てくれたらもっとあっさり纏めてくれそうなもんだけど…

ダメダメ、今いない彼氏気にしても仕方無いよ!

 

「皆さん、バラバラに騒がないでください!」

 

あーちゃんがピシャリと言うと皆が静かになる。

あ、自分も含めてね。

そうだねちょっと無駄話してたね。

 

「とにかく、まとめますと…イッセーさんとネプギアさん、木場さんは呂布さん。ゼノヴィアさんと私はトリスタンさん。

鏡の世界にはゲオルグさんが当たるでいいですね?」

 

「それで構わない。グレモリー達はどうするんだ?」

 

「それならば妾から提案がある。」

 

「手があるの?」

 

「左様。表ではあまり動けんであろう?ならば、こちらへ引きずり込めばよいのじゃ。」

 

「そっか!でも、どうやって?怪しまれたらまずいよ。」

 

「何、簡単よ。

ちょいとばかし表に協力してもらえばいいだけじゃ。

そこから先はお主達の戦い…よいな?」

 

八坂さんの言葉に力強く頷く。

任せてほしい。

偽者相手でも、自分達は負けない。

 

絆があれば、乗り越えられるよ!

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

おっすオラ一誠。

 

作戦通りゲオルグ監督協力の下、鏡の世界への侵入をするところだ。

んで…

 

「鏡の前にいるのは何でだってばよ?」

 

「馬鹿かお前。鏡から出られたのなら鏡から入ることも出来る。」

 

「は?天才か?」

 

「お前が馬鹿なだけだ。さては理系科目死んでるな?」

 

「そそそそ、そんなことありませんことよ?」

 

「漫才はいいから早くしようね?」

 

「あはは…」

 

木場の注意に仕方無いとばかりにゲオルグ監督が準備を始める。

 

ところで気になったことがある。

 

「ゼノヴィアとアーシアは?」

 

「別口からの侵入をする事になった。お前らが終わり次第投入する予定だ。」

 

「一度逃げられたことは理解されてるだろうからどうなるか…」

 

「二人同時に相手…というのもあり得ますね。」

 

「そういうことだ、気張るんだな。」

 

「さいですか…」

 

馬鹿力な俺が呂布って子の相手になるのはいいんだけどよ。

龍の手なんだろ?

小手先でどうにかならなかったのか?

 

…ならなかったからこうしてるんだった。

 

『いいか相棒、龍の手といっても禁手がどのようなものかまでは想像がついていない。ジークフリートと同じか、或いは…』

 

分かってるって。

強いってことは理解してる。

油断はしねぇよ。

 

パンドラは姉ちゃん達に任せるって決めてんだ…俺はこっちでやってやるさ。

俺達の楽しい旅行を潰しやがって絶対に許さんぞジワジワと追い詰めてぶん殴ってやる覚悟しろ!

姉ちゃんの精神的ダメージを鑑みても万死に値するぜ。

 

あ、でも胸がでかい子だったら加減しちゃうかm

 

『相棒、真面目にな?』

 

真面目に覚醒しろって言いたいんですか。

 

『逆に聞くが真面目にしない覚醒ってなんだ。』

 

そんなものは俺の管轄外だ。

とにかく、やってやればいい。

というより、龍の手ってことはアスカロンが効くのか?

 

『自然とドラゴンとしての属性があるからな。

効くだろう。』

 

勝ったな(確信)

この試合10-0ですね?

間違いなく勝ちましたね、コンビニ行ってくる。 

 

「イッセー君。百面相するのはいいけどネプギアちゃんがいることを考えてね?」

 

「…いや違うんだよ。ドライグと会話してたんだよ。」

 

「えっと…私は気にしてませんから!」

 

「やめて素直に心が痛む。」

 

「ところで、ドライグさんって…?」

 

『俺だ。』

 

「ええ!?籠手が喋った!?」

 

『俺はは籠手じゃねぇドラゴンだ!ついでにトカゲでもない。』

 

「はい…ドライグ…さん?」

 

『おお、マトモな感じがする。いい、凄くいいぞ!

頼むからマトモでいてくれよ新人女神よ。宿主がシスコン過ぎるからな。』

 

「…一誠さん、ドライグさんをいじめちゃ駄目ですよ?」

 

「いじめてない、いじめてないから。」

 

どうしてこう、心に刺さる視線かなぁ!?

 

俺は普通にやってるだけなのにこの非難!

そんなにおかしいことしてるかなぁ俺!

 

極めて普通に戦っても変人扱いされるんだよ!

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)でもしてやろうか!?

ああ、やってやるよ!やりゃいいんだろ!

胸がデカかったら今までの主人公度を犠牲に発動してやるよ!

ついでに乳語翻訳(パイリンガル)も使ってやるよ!!

 

『相棒、品位を下げるのはやめるんだ!』

 

うるせぇトカゲ!!

テメェは少し俺に新しい道を示してくれよ相棒でしょ!

ろくに示さないから俺も暴走するんだよ!

姉ちゃんの心の声を把握する姉語翻訳(ネプリンガル)だって思い付きでやったら出来たよく分かんない技だぞ!

 

「準備できたぞ。」

 

ゲオルグ監督の言葉に現実に引き戻される。

ああ、やっとか。

 

鏡を見ると、あの鏡だらけの世界が見えていた。

 

よーしイッセーさん行っちゃうぞ!

 

「行くのに覚悟とか無いんだね。」

 

「我主人公ぞ?そんなの要らないねぇ!」

 

「一誠さんって変な所あるんですね。」

 

「今更なんだよなぁ…じゃ、ゲオルグ監督。行ってくるぜ!」

 

「誰が監督だ。さっさと行って捕縛なり何なりしてこい。」

 

「はい!」

 

そう言って、三人で分断されないように手を繋いで入る。

入った瞬間移動されました、とか冗談でもキツいからな。

俺には心のオアシスが大事なんだ…そう、暴走しないようにな。

覇龍?あったねそんなの。

 

というか、姉ちゃんが真面目になりすぎると俺パートでふざけが多くなるのどうにかならねぇのか。

 

「やってきました鏡の世界。今回の実況は兵藤一誠。

解説役はネプギアでお送りしていきます。」

 

「へ!?あ、えっとネプギアです!」

 

「撮影もしてないからやめようね。

それにしても…鏡だらけなのは相変わらず。迷路なのも変わらずか。」

 

「歩くしかねぇのか?」

 

周りは鏡、鏡、鏡!!

鏡の大迷宮ってか?

俺が四人に増えそうだからこれ以上は言わないでおくぜ。

今だって偽者いれて二人なんだからな。

 

周りを警戒していると、鏡が動き出す。

 

何だ?圧殺しようとでもいうのか!

 

「皆固まれ!いざとなったら叩き割ってやる。」

 

「…いや、この動きは…」

 

「迷宮じゃなくて…広間になっていく?」

 

 

 

 

 

 

「─そう、私がそうしてもらうよう、お願いした。」

 

 

 

 

 

 

声がして振り向くのと、迷宮が広間になるのは同時だった。

 

そこにいたのは、自身の身長と同じくらいの大きさの斧を持つ女の子。

…呂布だな、間違いない!

斧が呂布って言ってる!

 

「お前が呂布か!」

 

「イッセー君、気を付けてくれ。僕も戦うけど…正直聖魔剣でも突破は怪しかった。」

 

「お二人の邪魔にならないよう、頑張ります!」

 

「…赤龍帝。私は、待ってた。」

 

「俺ですか?」

 

「そう。」

 

指差すな。

俺は指差されるのが人生の500位に入るくらい嫌いなんだ。

つまりは気にしてない。

 

「私よりも強くなる…なら、それを越える。」

 

「何だ、俺と戦いたいなら大人しく捕まっといてくれねぇか?

後でいくらでもやってやるからさ。」

 

「駄目。お前達、倒して…トリスタン助ける。」

 

「仲がよろしいようで。なら…往くぞドライグ。」

 

『逝くにならないといいな?』

 

「うるせぇ。」

 

禁手、さっさと往くぞ!!

 

交渉決裂ってヤツだ。

ならこっちで語り合うしかねぇよな。

喧嘩だぁぁ!とか言わねぇけど…

 

こっちにはこっちの都合があるからな。

 

はっ倒して観光の再開をさせてもらうぜ!

 

 

 

『WELSH DRAGON BALANCE BREAKER!!』

 

 

 

「この拳がお前を貫く!」

 

「私が、勝つ。それだけ。」



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ミラーラビリンス攻略 中編

戦わなければ…生き残れない!!(挨拶)


実験は続いた。

私はよく分からないまま、何かを手にいれた。

鏡だった。

綺麗な鏡を手にいれた。

でも、何だかイライラしてその鏡を石で叩き割った。

 

男の子が近付いてくる。

少し怖がってる様子だけど、私はこの子にまで当たるつもりはない。

名前…つけてあげないと。

 

「大丈夫、私は平気よ。」

 

「パンドラ…へいき?」

 

「平気!」

 

手をそっと触れる。

もう、温かさも感じない。

寒さも感じない…でも、触れることは出来る。触れたかすら分からなくても、この目が触れていることを肯定する。

 

男の子からぎゅっと握ってくれて、驚く。

 

「へいき、パンドラ。」

 

「…うん。そうだ、貴方に名前をつけてあげるわ。」

 

「なまえ…?」

 

「私のように、自分だけの名前よ。私はパンドラでしょ?」

 

「パンドラ…なまえ……なまえ、ほしい…!」

 

楽しみになってきた様子の男の子が微笑ましく感じる。

ああ、この子は光だ。

…私が、守らないと。

私にとっての、光を…

 

そうだ。

 

「貴方の名前は、フォスよ。」

 

「ふ…おす?」

 

「フォスよ、フォ・ス。」

 

「ふぉ…す…ふぉす、フォス!フォス、パンドラ、へいき?」

 

「気に入ったのね。それと、平気、じゃなくて──」

 

暖かいと感じるのは…こういった時間でも同じ。

私にとって、お父様とお母様以外で暖かいと感じたのはフォスといるこの時間。

もう暴れることはしないし、私の事を慕ってくれている。

弟のような存在。

 

今はそれだけでいいの。

今はこの時間が私にとっての…光。

 

「フォス、いつか二人でここを出ましょうね。」

 

「フォス、パンドラ…でる…?」

 

「二人で、戻るの。お父様とお母様は優しいから…きっと、暮らせるわ。」

 

「かぞ、く?」

 

「そう、家族よ。私達は…家族!」

 

「かぞく…フォス、パンドラ、かぞく!」

 

嬉しそうにはしゃぐフォスとの時間。

 

それがどうか奪われませんように…そう、願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィアさんと共に鏡の世界に再び来た。

けれど…トリスタンさんはいませんね。

 

「アーシア、気を付けろ。

相手は遠距離からの攻撃に優れているからな。」

 

「はい。」

 

「…それにしても、アーシアは変わったな。立派になったと言うべきなのか。」

 

「え?」

 

「強かになった。精神的に、皆を引っ張れる位にまでな。

その証拠が、先程の皆の反応だ。」

 

「…そうでしょうか。」

 

私は強くなれた自信がない。

ただ、救いたいだけで…私に出来るのはそれくらいですから。

 

ゼノヴィアさんはふっと笑う。

 

「自己評価が低いのは良くないな。私も、そんな時が…ないな、うん。私は常に私を見ている。」

 

「難しいこと言うんですね。」

 

「そうしないと、生きていけなかったからな。悪魔を討つことも、異端者を討つことも…楽ではなかった。」

 

教会の戦士の時よりもいくつか丸くなった…というより考えが柔軟になったんでしょうか。

気楽そうなゼノヴィアさんが羨ましいです。

何というか、いつも…そうなんだ、みたいな反応ですから。

 

「さあ、お喋りはここまでかな。」

 

「…いるんですか?」

 

「とても臭う。静かな殺気だ、相当な手練れだなトリスタンとやらは。」

 

周囲の警戒を強めるゼノヴィアさんに同調するように私も警戒を強める。

私に出来ることを常に考えていかないと…置いていかれる。

 

「──来る!」

 

いち早く察知したのかゼノヴィアさんが私を抱えてその場から飛び退く。その際、ゼノヴィアさんが刃物を投げた。

 

青い光…矢が私の先程の位置に突き刺さり、鏡の床が割れる。

 

それと交差するように飛んでいった刃物が弾かれる。

 

「…さて暗殺者、このまま私は時間稼ぎでも構わないが出てきた方が早いぞ?」

 

 

 

 

 

「─そのようです。嘆かわしいことに、私の腕では貴方を射殺す事は出来ないようで。」

 

声の主が天井の鏡から出てくる。

ああ、やっぱり…イッセーさんの読みは当たったんですね。

 

天井の鏡が潜伏場所だった…

 

赤い長髪の男性はその目を包帯で閉ざしながらも正確にこちらの方を向く。

 

「流石は教会の戦士、一筋縄ではいきませんか。

だから私もパンドラに進言したというのに…嘆かわしい。」

 

「トリスタン、ですね?」

 

「ええ、当たっていますよ。

お強い心をお持ちのようだ。」

 

「…あ、トリスタンといえばアーサー王伝説の騎士トリスタンか!」

 

「今更ですかゼノヴィアさん!?」

 

「…教会の出とは思えないほど学が無いのですね。

私はあったかもしれない祖先などどうでもよろしいのですが。」

 

得心がいったとばかりに手をポンと叩いたゼノヴィアさんに私とトリスタンさんは呆れた。

こんな時に緊張感が無さすぎます。

 

「では、貴女方の排除…させていただきます。」

 

「そう容易くやれると思わないでもらおうか。

アーシア、ここは…」

 

「退きませんよ。邪魔にならないように動きますから安心してください。」

 

もう役立たずの私ではいられない。

私は次のステージに進まなければならない。

それが最後の成長だとしても…私はその扉をこじ開ける。

 

私は癒す者、救う者でありたい。

その願いを通すために…私は戦場を歩きます。

怪我人も救いを求める人も、大小あれどそこにいるのです。

 

貴方のお陰で気づけました。

私が戦うのは人でなく、『傷』なのです。

 

なら、手術と変わらない。

 

「貴方を救います。貴方の心を、洗いましょう。」

 

「…聖女ではなく、悪女ですね。」

 

「何とでも。私は私の為に他者を癒します。あの人の隣にいられない私には…それがやるべきことですから。

ゼノヴィアさん、手術開始です。」

 

「スイッチが入ったな。悪くない切り替え方だアーシア。

なら、久々に張り切るか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一手、二手、三手と拳と斧の攻防が続く。

悪魔の俺と、人間のあっちだとしてもずっと戦ってた呂布の方が強さの基準が高い。

俺のは誤魔化しに過ぎないのを忘れちゃいけない。

 

強さを誤魔化し続けて、越える。

それが俺にとっての『赤龍帝の籠手』だ。

 

ただ予想外だったのが…!

 

『Boost!』

 

「私も。」

 

あっちの()()()()が光を発する。

呂布の圧が高まり、力強さも増した。

 

あり得るっていうのか、これが…!

 

 

 

「俺の神器とまんま同じかよ!」

 

「こっちは禁手でこれ。そっちは元から、差はある。」

 

「ねぇよ反則が!!」

 

『おのれ…似た性質だと…!?』

 

戦闘が始まったのと同時に呂布が禁手を解放した。

龍の手の倍加をきっちり使った後にだ。

それがあの籠手。

 

龍哭の魔篭手(ドラグニティ・ギア)

 

赤龍帝の籠手と何も変わらない能力。

倍加し続ける力。

 

けど、おかしい…だとすれば…

 

「なんで、体がもつんだ…!」

 

「私は特別。限界を知らない。」

 

「出鱈目が!!」

 

倍加する。

木場の奴、正解だよまったく!

俺じゃなきゃ、こいつは無理だ。

 

余波だけで周囲の鏡が割れ、貼り変えられる。

俺とこいつの戦う余波でこれだ。床の鏡が何度割れたか…

それも分かってるのかわざと割って行動を阻害してきやがる。

 

「一誠さん!」

 

「!」

 

背後から声がかかり、横に跳ぶ。

 

俺の背後から全てを貫かんとばかりにレーザーが通り過ぎたのは同時だった。

 

「無駄……!?」

 

斧で打ち消そうとしたのか呂布が斧を振るう。

しかし、ここでも信じられない事態が起こった。

 

「私だって…女神なんです!!」

 

「っ、はぁ!!」

 

ガクン、と呂布の膝が曲がりかけた。

何だ?これはどういうことなんだ…?

レーザーと斧が拮抗した。

 

…すげぇよネプギア!

一秒にも満たない拮抗だったがそれで十分だ!

 

一際大きな声を出して振るわれた斧によってレーザーが打ち消された。

 

そしてその振り終えたタイミング、それを狙ってた!

 

拳を握り、床を蹴る。

割れる音を気にせずに一瞬で呂布の懐へと。

 

「ぶん殴る!!」

 

「っ、まだ!」

 

「そうはさせないよ!風よ、切り刻め!」

 

殴る俺を蹴ろうとした呂布に木場の魔剣の暴風によって足の力が緩まる。

ぶつかった足の威力は俺が吹き飛ぶには及ばない。

 

さあ、ようやく捉えたぜ。

 

「痛いのいくぜ!」

 

拳が鳩尾に突き刺さる。

うっそだろ…殺す気はないとはいえ硬い。

だけど、殴り抜ける。

 

「くぁっ…!」

 

吹っ飛ばすには至らず、けれど何mか後退させた。

 

ダメージはある筈だ…じゃなきゃ人間じゃねぇよ。

あっちとこっちの倍加は未だされてる。

まだまだ油断はできねぇな。

 

「イッセー君。」

 

「そりゃ、パンドラ直々に動く必要もねぇよな…こいつ、間違いなく曹操と同レベルかそれ以上だぜ…!」

 

「っ…ふぅ…」

 

ネプギアを見ると、女神化したのかビームソードが銃と剣の役割のあるビームランチャーへと変わっていた。

シェア…ってより魔力か?

 

分からねぇけど、ネプギアの地力の高さが窺える。

呂布と数瞬とはいえ拮抗したんだ。

実力は高い。

 

「…油断した。そこの女神、強い。」

 

「なら覚えとけ。俺たちに弱い奴なんていねぇ!」

 

「私達は負けません!どれだけ強くなっても…力を合わせれば!」

 

「─私は、呂布。強くないと…いけない。」

 

静かに暗示をかけるかのように独り言。

そして、取り出した薬品のような物を見て、嫌な予感がして呂布へと駆ける。

 

「やらせるか!」

 

「残念。」

 

俺が止めるより先に呂布は迷うこと無くその薬品を飲み干した。

 

そして、蹴り飛ばされてネプギア達の方に倒れる。

 

「一誠さん、大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だけど…くそ、嫌な予感がしやがる。」

 

呂布は斧をダラリと持つ。

目が本気の殺意をぶつけてくる。

 

 

 

 

 

「ここからが本番。」

 

「っな!?」

 

 

 

 

 

その一言の後に、呂布が消える。

違う、消えたと思うほどの速度…!

ドーピングかよ!?

 

どこだ、何処から来る!

今の速さなら…!

 

「後ろか!?」

 

後ろを振り向くが、いない。

頭上に影が差す。

上をすぐに見ると振り下ろす準備が整った呂布の姿があった。

 

速いなんてもんじゃねぇ…これは、瞬間移動のレベルだ!

 

ネプギアと木場が巻き込まれる…!

それだけはさせるか!

 

「二人とも!」

 

「きゃぁ!?」「イッセー君!?」

 

二人を突き飛ばして、掌を呂布へと向ける。

くっそ、こういう時だけ速くて助かるぜ俺の体!

 

『Boost!』

 

「ドラゴンショット改め、ドラゴンインパクト!!」

 

掌に赤い魔力が集まる。

時間が遅く感じる。もう振り下ろされる斧が死神の鎌にしか見えない。

けど、俺がやられて…誰が二人を守る!

 

男の子にはな、意地があるんだよ!!

 

 

 

 

 

「撃ち抜けぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「…落とす!!」

 

 

 

 

 

俺の倍加した魔力全部を乗せた魔力球を呂布に放つ。

殺す気でいかないとこっちが死ぬ!

呂布は更に倍加した力で斧を振り下ろす。

 

頼むから、くらってくれ…!!

 

 

 

 

 

「私の、勝ち。死ね。」

 

 

 

 

 

その願いは裏切られ、斧はいとも容易くドラゴンインパクトを切り裂くと共に俺の胴体を斜めに裂く。

縦にまっぷたつにならなかったのはドラゴンインパクトの反動で俺の体が退いたからか…?

 

鎧を砕き、俺の体を斬った。

 

「─ご、ぼぁ…!」

 

 

 

「一誠さん!!」

 

 

 

「駄目だ!」

 

ネプギアの悲痛な叫びが聞こえた。

木場が飛び出すのを止めてくれてる。

それでいい。

 

…倒れるわけにはいかない。

 

女相手に意地を通すのも…男の子だよな。

 

「いってぇ…なぁ…!」

 

さっさと退場するようじゃねぷ姉ちゃんの弟は務まらねぇ。

俺の憧れは消えちゃいない。

まだだ、まだ俺は生きてる。

たかが体が斬られただけだろうが。

 

『transfer!』

 

振り下ろしたばかりの呂布の腕を掴む。

動くだけで体が痛む。

 

血が噴き出す。

勝手に出てろってんだ。

 

「まだ動ける…?無駄なこと。」

 

呂布の驚愕した顔が見える。

イッセーさんをあんなんで倒したと思ってんのかこの野郎。

 

拳が迫る。

 

『Boost!』

 

「お前、に…教えてやる!」

 

「っ!?」

 

拳を掴む。

何とか掴めた。

くそ程痛い。

これは…手の骨逝ったな。

 

「あんなんで俺が死ぬ…?

ふざけんな、俺はあんなんで死ぬならとっくに死んでる!!

俺は…俺の憧れに追い付くまで死ぬか!」

 

 

 

 

 

「俺はネプテューヌの弟、兵藤一誠だぞ!!やるならもっと潰す勢いでやれよ!!」

 

 

 

 

その言葉と共に、俺は頭をぶつける。

いわゆる、頭突きだった。

頭に振動が響く。

 

「気持ち、悪い!」

 

「がぁっ…!」

 

蹴られて、仰向けに倒れる。

意識が朧気になっていく。

倒れてる、場合か…!

 

俺は、まだ…!

 

呂布が斧を振り上げる。

 

何だよその顔、俺が怖いのか?

流石はイッセーさんだぜ…あの呂布を怖がらせるなんてな。

 

…くそ、もう、無理か…?

 

ああ、やべぇ…前が、暗く…

後は頼んだぜ…ネプギア……木場…!!

 

 

 

 

「─私が、倒します。」

 

 

 

 

最後に聞いたのは凛とした、覚悟のある声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬られた。

一誠さんが…!反応できずに、庇われた…!

慌てて駆け寄ろうとして、木場さんに止められる。

 

「放して!」

 

「冷静になるんだ!」

 

「一誠さんが…!」

 

「…いってぇ…なぁ!」

 

一誠さんの痛みに耐える声が聞こえた。

嘘…あの傷で意識が…?

 

木場さんから一誠さんに視線を移す。

そこには、呂布の腕を掴んで、拳を止める彼の姿があった。

血が止めどなく出て、今にも倒れそう…でも、倒れないって意思が背中から伝わってくる。

 

「お前に…教えてやる!」

 

振り絞るような声で、苦しさを感じさせない声で。

彼は頭を振り上げる。

 

 

 

「俺はネプテューヌの弟、兵藤一誠だぞ!!やるならもっと潰す勢いでやれよ!!」

 

 

 

その言葉と共に、彼は呂布に渾身の頭突きをぶつけた。

 

その言葉は、私の心にも響いた。

お姉ちゃんの弟であることを誇るように。

負けてたまるかって意地を感じるようで。

 

私は、焦っていた気持ちが落ち着いていく。

…そうだ、私も戦わないと。

私も女神なんです。

例え、生まれが歪だとしても…受け入れてくれた。

 

この力は、守るために。

誰かを守るために誰かを倒す。

そんな当たり前を私はまだ理解してなかった。

MPBLを握る力が強くなりすぎていたから緩める。

 

一誠さんが蹴られて、仰向けに倒れる。

これ以上は、看過できない。

 

ここからは─

 

 

 

「─私が、倒します。」

 

 

 

この行動に、もう迷いはありません。

退くことだけは出来ない。

この場をどうにか出来るのは私だけなんだ。

 

一誠さんに振り下ろされる斧をMPBLで弾く。

 

「一誠さん…お疲れ様です。」

 

回復魔法をかけて、労りの言葉をかける。

一誠さんは気を失ってて聞こえてないだろうけど…貴方のお陰で目が醒めました。

 

「木場さん、一誠さんをお願いします。」

 

「援護は?」

 

「隙があったら、お願いします。」

 

「分かった。…ごめんね、僕が弱いばかりに。」

 

「そんなことありません。ここに弱い人はいませんよ。」

 

彼の言っていた言葉を反復するようで申し訳ないけど、無力さを感じる必要はない。

木場さんのお陰であれを使わせることが出来たんです。

 

あれほどのドーピング…きっと時間制限がある筈。

 

お父さんを傷付けて、一誠さんを傷付けた。

私の弱さが招いた結果です。

それでも、どんな理由があろうと…傷付けた貴女達を許しません!

 

「女神じゃ、私は倒せない。」

 

「決めつけが早いですよ。私はまだ、戦える。

それに、貴女がどんなに強くても…勝つのは私です。」

 

まだお姉ちゃんのいつかの記憶に頼るときがある。

ロキという神様の核から溢れる魔力に頼るときがある。

 

…でも、これも私の力です。

 

「MPBL、最大出力…!」

 

MPBLのロックを外し、出力を最大にまで引き上げる。

 

それに…私には後一つ使える物がある。

機械も、魔力も、女神の力も…凄い力です。

でも、これも凄いんですよ?

 

「…女神も潰す。消えろ。」

 

斧が振るわれる。

凡そ常人だと捉えられない早さの横振り。

殆どがこの段階で一閃されるだろう一撃。

 

でも、私は捉えられる。

 

「ふっ!」

 

「無駄!」

 

横振りに合わせてMPBLをぶつけて弾く。

一撃を弾くだけで腕が痺れそう。

弾いてすぐに拳を叩き込む。

けど、片腕でガードされて斧が振り下ろされる。

 

片腕だけであの斧を振るうなんて…!

 

横に体を逸らして振り下ろしを寸でで躱す。

 

あの斧だけは避けないといけない。

このタイミングでもない。

何処かで大きな隙を…

 

そう思案しているとすぐ目の前に斧を振るおうとする呂布の姿が。

 

「っく!」

 

上に飛んで斧から逃れる。

何発かビームを発射しても弾かれてしまう。

反応速度も尋常じゃない。

 

「…なら、あっちから…!」

 

木場さんの方を向いた直後、呂布の姿が消える。

しまった…!

そうだ、相手は武人とかでもない。

一対一はこっちから捨ててるんだからそんな手もあるのに!

 

飛ばなければまだ注意を寄せれたのに…!

 

急いで木場さんの方へと駆けつける。

 

けど、それよりも速い呂布が木場さんへと斧を振り下ろす。

 

「これで、二人目…!」

 

「木場さん!!」

 

一誠さんを背にする木場さんは鋭い目付きをしながら呂布を見て─

 

 

 

 

 

 

 

─ニヒルな笑みを浮かべた。

 

 

 

「君がそうすることは──読めていた。」

 

斧を振り下ろし、木場さんは受け止める暇もなく斬り裂かれる…

そう、思っていた。

 

でも、結果は違う。

 

私の視線の先には…

 

 

 

木場さんが一振りの剣で斧を受け止めていた。

 

 

 

「!?なんで…!」

 

「君がイッセー君を斬ったそのすぐ後。

イッセー君は自分の意地とは別に僕に託していた。」

 

「…あっ!」

 

思わず声をあげる。

もしかして、あの時の…

 

『transfer!』

 

あれの事…?

 

でも、あれって何の…?

 

力を入れても押し切れていない呂布に木場さんは今までよりも獰猛な笑み。

まるで、チャンスを待っていたとばかりだった。

 

「譲渡。君のそれにはない、イッセー君の力だ。

倍加していた力を、誰かへと渡す。そして、当然その倍加先は…」

 

「っ、お前…!!」

 

「一度だけなら、聖魔剣でこの状況まで持ってこれる。

だから、譲渡された僕はさっきまで無力な僕を演じていた。」

 

そして、と一筋の汗を額から流した木場さんから視線を感じた。

私は、それに頷いてMPBLを呂布へと向ける。

 

「君の馬鹿力は確かに驚異だ。生半可な罠も、実力も通じない。

だからこそ、君の注意はネプギアちゃんとイッセー君に向いた。

この二人が君を打倒しうる相手だ、それは間違いない。」

 

聖魔剣を持つ手が徐々に震える。

まだ、まだその時じゃない。

木場さんのあの目は…違う、すぐに撃てじゃない。

 

機会を待て、そんな目だった。

 

「けど……残念だったね三国志最強。

騙し合いは僕が一歩上だった。」

 

「この…!!」

 

聖魔剣が弾かれ、怒りのままに呂布の蹴りが木場さんにぶつけられる。

木場さんは腕でガードしつつ吹き飛ばされる…

 

でも、ここだ。

 

ここが一番の好機!!

 

 

「この瞬間を待っていました!!」

 

「っ、無駄って言ってるのに!!」

 

無駄じゃない。

これは、木場さんと一誠さんが作り出した最大の隙!

無駄なんかにさせません!

私は、お姉ちゃんの妹なんです…ここで、失敗するわけにはいきません!!

 

 

 

「マルチプルビームランチャー…出力最大!貫いて!!!」

 

 

 

私の魔力、全てを使います!

 

そうして放たれたビームは今までで一番の輝きと威力を叩き出す。

呂布はそれを斧一本で迎え撃たんと構える。

籠手が光り、また倍加したことを告げる。

 

「私の方が…強い!!」

 

斧とビームが拮抗する。

嘘…全力なのに!?

 

でも、ここで負けるわけにはいかない!

勝たなきゃいけないの!

 

「全部…裏切られて死ね…!!」

 

「お願い!!」

 

 

 

 

 

「─裏切られるのは、君だ!」

 

 

 

 

木場さんの声がまた聞こえる。

 

「っあ!?」

 

呂布の苦しそうな声が聞こえた。

何が…?

よく見ると、呂布の足に一つの剣が刺さっている。

 

え…でも、一誠さんの拳ですら受け止めれる硬さだったのに…?

 

木場さんの方を見ると、そこには…

 

「ネプギア…流石だぜ…」

 

何かを投げる動作をした一誠さんとそれを支える木場さんの姿があった。

 

一誠さん…!

 

「なん、で…今の私に、こんな剣が…!?」

 

「アスカロン。」

 

「それは…!」

 

「龍殺しの聖剣、その一つがこれだ。

グラムじゃねぇが…その力は折り紙付きだろ!」

 

「……負ける?私が…?曹操、以外に…!」

 

アスカロンが刺さり、思うように立てなくなった呂布が顔を歪ませる。

そして、膝を折ったその瞬間─

 

 

 

 

 

─拮抗は無くなり、私のビームが呂布を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

鏡の床に降りて、女神化が解除される。

呂布が倒れ、斧は呂布からかなりの距離がある場所に転がっていた。

 

「……倒した…?」

 

「…死んで、ねぇな。」

 

気絶してるようで、倒れ伏してる。

よかった…頑丈なのが功を奏しましたね。

 

勝てたのと、一誠さんが無事とはいかずとも立てるくらいの余力があるのが嬉しくて駆け寄る。

 

「お疲れ様です!!」

 

二人に抱き付いて、勝ったことを喜ぶ。

 

「いだだだだだだだ!?」

 

「あ、ご、ごめんなさい私!」

 

「あはは、ネプギアちゃんもっとやってあげなよ。無茶すると痛いって教えてやるんだ。」

 

「テメぇ木場!?」

 

「ハハハ、まあ、何はともあれ。」

 

木場さんが一誠さんをしっかりと支えながら笑う。

 

「勝てたね、僕たち。」

 

「…はい!」

 

「だな…しばらく、戦いは懲り懲りだ…」

 

お姉ちゃん…勝てたよ!




呂布撃破!
あっさり勝てたように見えるじゃろ?
この三人だから勝てたところあるんですよね。

まず前提として倍加と譲渡が出来てアスカロンのある一誠がいないと初手で詰みますね…そんな呂布でした。

ちなみに曹操とジークフリートで10:0の試合が出来ます。
やっぱ魔剣いっぱいマンと禁手やべぇ奴は強い、はっきりわかんだね。


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ミラーラビリンス攻略 後編

待たせたな!(挨拶)

ミラーラビリンス…迷宮の敵は残り一人。

さあ、アーシアとゼノヴィアはどう戦う?

そして、パンドラちゃんの過去、再び。
重くいこう!


あれから、何日、何週間、何ヵ月が経過しただろう。

 

本を何冊か貰った。

実験を頑張ったご褒美だとか何だとか。

私は絵本を要求した。

フォスの為にも…学ばせてあげないと。

きっと外は光に満ちている。

貴方のようにきっと…

 

「見てフォス!本を貰ったの!ほら!」

 

「…?」

 

「ああ…知らないのね。本って言うのはね、こういうものよ。」

 

首を傾げるフォスに教えるように本を開く。

すると、フォスは興味が湧いたようで目を輝かせた。

 

「人、うつっ、てる……」

 

「そうよ、本はね私達に色々なものを教えてくれるの。

まずは絵本の物語を読みましょう?私が読み聞かせてあげるわ。」

 

「パン…ドラ、よむ……フォ…ス、きく。」

 

…何だろう?

フォスの目の下に隈があるような…

睡眠は取れてる筈なのに…

 

一体どうしたのかしら…

 

でも、元気そうだから私の錯覚ね。

 

隣に座って、絵本を開いてフォスに見せながら読み出す。

夢を馳せるように、夢を与えるように。

外に一緒に出ようという願いを強くするために。

 

私は言葉を紡いだ。

フォスはとても楽しげだった。

これは何、と聞いてくるから教えてあげると楽しそうだった。

肩に頭を乗せるどころか体重をかけてくるフォスに甘えん坊ねと言いながら撫でて、読み聞かせを再開する。

 

一冊読み聞かせると、フォスは更に次を要求する。

ああ…よかったわ。

楽しんで貰えてるのね。

 

「じゃあ次は、こっちね。」

 

「…パンドラ……」

 

「なぁに?」

 

「フォス…は…家族…?」

 

「当たり前じゃない!フォスは私の大事な弟よ。」

 

「……ぁ」

 

フォスは嬉しそうに一言、声を漏らす。

不安なのかしら。

不安を拭うように頭を撫でてあげる。

 

大丈夫、私がいる。

 

「大丈夫、お姉ちゃんがいるわ。

弟を守るのは、お姉ちゃんの役目なのよ?」

 

「ぅ…」

 

「そうだわ、歌を歌ってあげる!私、お父様とお母様に褒められるくらい上手なのよ?」

 

「…」

 

「その後は、そうね…そうだわ、本を貰った時みたいに玩具も貰いましょう!きっと楽しいわ。」

 

「…パンドラ……」

 

「…どうしたの?」

 

 

 

 

 

「…ありが…とう…おね…ちゃ……───」

 

 

 

 

 

フォスはそう言うと、眠かったのか眠ってしまった。

 

…ちょっと、起こしすぎちゃったわね。

眠らせてあげましょう。そっと抱いて冷えないようにする。

 

大丈夫、今までだって乗りきれた。

乗りきってこれたの。

フォスと二人で…話して、遊んで。

 

怖い大人にだって負けなかったわ。

だって、私達はここを出るの。

私は…フォスと一緒に、お父様達の所に戻って…それで…

 

「フォス、フォス…」

 

皆で幸せに、生きて…

学校に、手を繋いで行って、友達を作って、遊んで…

家でも仲良く暮らして、喧嘩をしても、仲、直り…

 

「ああ…どうしてなの…神様……」

 

どうして私達なの?

私達は、悪いことをしてしまったのですか?

神様は、私が嫌いなのですか?

私達は、頑張って生きてきた。

何をされても、感覚が消えても…それでもこれ以上を手放さないようにしてきたの。

 

だから、悪いことをしてしまったのなら許してください。

 

フォスは良い子です。

痛くても我慢して…私とも仲良く接して。

可愛い弟なんです。

 

だから…だからぁ…

 

 

 

 

 

「連れて、いかないでよぉ…!」

 

フォスを抱いて、泣きじゃくる。

駄目だわ、行っては駄目。

私は…私は一人じゃ駄目なの。

私を置いていかないで。

私を、この暗くて冷たい部屋で一人にしないで。

 

お姉ちゃんを、置いていかないで…!

 

フォス…どうして冷たくなっていくの?

どうして、寝息が聞こえないの?

どうして、安らかな顔をしているの?

 

行かないで、フォス…私の光…

 

暗い部屋で、私は一人。

冷たい部屋で、私は一人。

孤独で虚しく……

 

見えていた光が閉ざされていくようで、それが嫌でたまらなくて。

 

私は、光を抱き締め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い光を弾く。

お互い決定打は与えられないのが現状。

弓を扱う者らしく、トリスタンは痺れを切らす事なく射ってくる。

 

一定の距離を保つ…なるほど強い。

 

けれど、このままでは千日手だ。

スタミナは互いに無限ではない。

悪魔と人間…その差は必ずある。

教会の戦士の頃に比べて体力が上がったのを実感している。

 

トリスタンは確実に私の体力よりも下な筈だ。

 

悪魔を殺してきた私が言うのだ、間違いない。

間違いないが…

 

「アーシア、大丈夫か。」

 

「はい、ラッセー君もいますから。ですが、このままでは時間を稼がれてしまいますね。」

 

「…そうだな。ここは少し攻め手に回るか。」

 

「あの…それはどうやって…?」

 

「─?」

 

ラッセーとアーシアが不安げに私を見る。

どうやって、だと?

私が取れる作戦など一つだけに決まってるだろう。

 

ここからはかなりの小声での会話だ。

 

「ここにデュランダルがある。」

 

「はい。」

 

「相手と距離があり、意表を突く必要がある。」

 

「…はい。」

 

「なら…なぁ?」

 

「…すいません、それはやめた方が─」

 

 

 

「投げるに決まってるよなぁ!?」

 

 

 

「何してるんですか!?」

 

小声会話終了!

 

トリスタンに向けて、デュランダルを投球ならぬ投剣!

向かってくる青い光は身を捩って躱す。

アーシアのツッコミが来るが、知ったことではない!

 

これが私の作戦だ!

 

ついでに私も全速力で走ってトリスタンに突撃する。

 

「なっ!?」

 

「耳が良いなトリスタン!!」

 

「うわうるさっ…じゃない、まさか、このような手を打ってくるとは。」

 

騎士の駒の特性上、この無茶苦茶を通すだけの速さは獲得している。

故に、投げたデュランダルに追い付いて斬りかかるという芸当も可能となる。

 

まあ、避けられたのだが。

 

「さて、その青光矢では私を仕留められないようだ。

このままじっくりことことしてやろう!」

 

「確かに、このままでは私も危ういでしょう。

…なので、奥の手を切らせていただきます。」

 

禁手などさせるか!

そのまま斬りかかり、ラッセーの雷撃も放たれる。

 

「悲しい…貴女方の攻撃の音を聞く私に当たりはしない。」

 

全て読めているように避けられてしまう。

ぬぅ、かなり耳が良いな。

爆弾でも持ってくればよかったか。

爆竹でも今から作れないか?

 

何ならラッセーの咆哮に期待…出来ないな、うん。

 

「聞かせてあげましょう、音の残酷さを。」

 

奴の持つ、青光矢が光輝く。

思わず、目を腕で覆う…

矢ではなく、音だと?

 

どういうことだ…?

 

 

 

 

 

星光の幻奏(スターリング・フェイルノート)。切れ味が良すぎるので、気を付けてくださいね。」

 

「…あまり、変わってないな。」

 

「変える必要がありませんから。こんな風に。」

 

竪琴のようになった弓の弦に指を掛け、引いて放す。

その際、音が聞こえた。

ピン、という音が。

 

 

 

その音を聞いた途端、非常に嫌な予感がして、首を守るようにデュランダルを縦に構えた。

 

 

 

まるで金属同士がぶつかり合う音がした。

 

 

 

…なるほど、これは…非常に相性が悪い。

 

「音の矢、いや、刃か。」

 

弦を引いた時に発生する音…その時点で矢をつがえ、射出しているのだ。

それが音の弓、フェイルノート…

 

何という神器だ…

 

「完全に○月作品じゃないか…!」

 

「ゼノヴィアさん、気にするところそこじゃないです!

というか、どうして要所要所でネタを挟むんですか!」

 

「いやでも…いや、これはパロディだ。トリスタンではなく、あれはきっと『トリスたん』なのかもしれない!」

 

「そんなハイボールにたん付けして呼ぶアル中の人みたいな呼び名やめてくれませんか?」

 

「ほら、敵にも言われてますよ!」

 

駄目かなぁトリスたん。

私としてはかなり頑張ったネーミングなのだが。

いや、敵にあだ名付けるのはどうかと思うが…殺すわけではないのだし。

 

何より、皆が望まないだろう。

 

「アーシア、私の側を離れるな。ラッセーだけでは無理だろう。」

 

「音の刃…ですか。

そうですね、切れ味は想像に固くありません。」

 

ラッセーは心配そうにしながらアーシアに引っ付く。

 

まあ、真っ二つだろうな。

デュランダル程の聖剣或いは魔剣でなければ受けきれない鋭さだろうさ。

 

「…さて、どう突破する?」

 

「私に考えはあります…ありますが…」

 

「何だ、言ってみるといい。」

 

「…」

 

音の刃を防ぐ中、アーシアは私に視線を送る。

 

言葉では、聞こえてしまうからか。

なるほど…

前に進む意志を私に示すか。

この音の刃の中、それをしなければならないと。

 

何だ、得意分野だ。

 

「任せて欲しいな、私から離れるなよ?」

 

「はい…!」

 

「それと…私に何があっても、その意志だけは残せよ。」

 

「ゼノヴィアさん…」

 

そう心配そうに見られてもな。

死ぬつもりはないが、ここで倒せなければ被害は増える一方だ。

ならば、そういう覚悟もすべきということ。

仲間のため、駆けて死ぬなど名誉ではないか。

口に出さんがな。

 

「キザったらしいが…さあ、死地に参ろうか!」

 

「はい!」

 

アーシアの足に合わせながら走る。

多少離れても対処可能であるため、それも計算にいれながら走る。

トリスタンが引き打ちをしてくるのも考慮の内だ。

そう、トリスタンは耳がいい。

 

本当に耳がよろしい。

恐らく、生半可な音でも大丈夫なようにはなってる筈だ。

 

フェイルノート。

確か、無駄なしの弓とも呼ばれる弓だったな。

トリスタン卿自身の実力もかなりのものだったらしい。

円卓の面々は実力は高いが噛み合わせがなぁ…

 

そんな考えを頭の隅に追いやり、音色と共に来る刃を風の音を聞いてデュランダルで弾く。

幸い、威力としては然程ではない。

 

…だが、疑問は別だ。

 

ポロンポロンと、一回だけ鳴るのなら脅威にはならない。

 

「流石は教会の戦士。ああ…元、でしたね。

そこの悪女と共に斬るに至らないのは私の実力不足。」

 

「は、どうだかな。

余力を残しているのは分かっているぞトリスタン!!

やる気を出してみたらどうなんだ!」

 

「…そうですね。

貴女の目論見に付き合う形になりますが…それごと刻めば良いだけのこと。」

 

「さて、出来るかな?耳がよく、心を聞けたとて、この私を超えることは出来ぬぅ!」

 

「真面目にやれませんか!?」

 

「悲しい…この回は真面目さのない空間で悲しい…」

 

「ポロロン。」

 

「やめましょうゼノヴィアさん!?」

 

何だアーシア、ここで恐れてたら負けるぞ!

馬鹿野郎お前、私は勝つぞお前!

 

トリスタンは呆れたように竪琴に指を掛ける。

 

「では、踊ってみなさい。フェイルノートの音を聴き、その態度が折れないか…確かめてみましょうか…!」

 

その五指で以て、竪琴を連続で弾く。

音の刃が、五連続。

受ければ死か?

 

…いや、違うな。

 

私の価値の条件を見誤るな。

私がすべきなのはトリスタンを倒すことではなく、倒す手立てを届けること。

 

そう、私の生存は二の次なのだ。

 

だが、死ぬ気かと問われればそうではないと答える。

 

「アーシア、私の声と共に走れ。」

 

「~~っ…!はい!!」

 

その会話だけが精一杯だった。

 

 

 

 

 

─来る。

 

 

 

 

 

1、息を吸い込む。

2、デュランダルを構える。

3、風を切る音を聴く。

 

 

「今だ、行けぇぇ!!!」

 

 

「…っ!!」

 

アーシアが駆けるより早くデュランダルを振るう。

 

確実に、首を斬りに来る音の刃──

 

 

 

 

 

()()防がせてもらった。

 

 

 

 

カラン、とした音が聞こえる。

体が浮遊する。

いや、違うな…落ちている。

 

私の体が、支えを失ったのだ。

 

激痛よりも早く、鏡の床にぶつかる。

 

そうして、焼けるよりも痛烈なそれがやって来る。

だが、口から出てきたのは…

 

「くっ…ハハハハハ!」

 

笑いだ。

賭けに買った笑いのみが、私にはあった。

苦痛を叫ぶだと?馬鹿を言うな、この四肢が綺麗に逝っただけだろう。

 

なぁに…すぐに終わる…

 

後は、お前のやり方次第だ、アーシア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィアさんの笑い声が聞こえる。

背中に伝わってくる激励を私は地を駆けるための力に変える。

 

私は、弱い。

きっとグレモリー眷族の誰よりも弱い。

力もない、速さもない、硬くもない

 

だからこそ、意志だけは負けてはいけない。

その足を止めることだけは許されない。

誰よりも遅くても、誰よりも弱くても…止まる理由にならない。

 

そこに私が看過できない傷があるのなら、私はそれから目を背けてはならない、逃げてはならない。

そこに死が待っていても、助けられないとしても。

それを盾にしてはいけないのです。

だからこそ、私は─

 

 

 

「─その『傷』を、癒しましょう。

孤独の穴を埋めましょう、憎悪の念を鎮めましょう、矛を収めましょう。

私は癒す者であり、奪う者。」

 

あの日、あの人達に心の中で誓った想いは誰よりも強く──!!

 

「私の光は、貴方を癒す!」

 

私に足りないものは覚悟であり、痛みであり、苦しみであり、悲しみであり…怒りでもあり、憎しみだったのです。

清いものだけを受け入れる身勝手な聖女なんて、私は望みません。

ならば私は全てを知る魔女になります。

 

でなければ、傷を癒す事など出来ない。

肉体と精神、その全てを癒したいのです。

 

それだけが、アーシア・アルジェントに許された力。

だからこそ、私は至れる。

 

癒すべき傷を前に、この時だけ私は誰よりも強くなる!

 

「禁手…!しかし、その神器では!」

 

 

 

 

 

「─『全て照す救済の光(トワイライト・サルベーション)』」

 

 

 

 

 

トリスタンさんの竪琴が一度だけ鳴る。

 

神器の形は変わりません、ですが…私の癒す力は私の手の届かない範囲にも及ぶようになる。

 

そして…打たれ弱いだけの私ではいられないのです。

 

音の刃が見えない壁のような何かによって、私の首を跳ねることなく防がれる。

 

「!?」

 

「ラッセー君!」

 

「──!!」

 

「しまっ…!」

 

完全に討ち取ったと思っていたのか驚愕してラッセー君に反応できなかった。

トリスタンさんはラッセー君の雷撃によって体が痺れ、神器を手放す。

 

フェイルノートの強みは音の刃。

ですが、それを弾く力を奪えば私でも攻略が可能です。

 

「手短に済ませましょう。」

 

「…あな、たは……おそろ、しい…ひとだ…」

 

「それでも私は構いません。全ての傷を癒します…その果てが、どんな結末であってもです。」

 

「っ…くっ…」

 

「ラッセー君、気絶させる程度でお願いします。」

 

「──」

 

ラッセー君は私の指示に頷いて、トリスタンさんに雷撃を放つ。

そうして、トリスタンさんは倒れ伏す。

 

…はい、気絶しているだけですね。

ラッセー君を撫でてから見張るように指示を出し、ゼノヴィアさんに近寄る。

 

…四肢が斬り落とされていますが、綺麗に斬りすぎましたね。

 

四肢を拾って、うつ伏せのゼノヴィアさんを仰向けにする。

 

「くっつけます、痛みは?」

 

「痛い、痛いが…そうか、禁手か。私の時に使えばよかったのでは?」

 

「そう都合が良いものでは無いんです。『全て照す救済の光』は私が倒れない限り任意の人を癒し続ける神器。加えて、私を守るための障壁を私にだけ造る…そんな、ズルい神器なのです。」

 

しっかりと四肢を近付けて、癒しの力を行使する。

すると、禁手前とは比べ物にならないくらいの速度で回復していき、少しずつくっついていく。

 

「…回復役が倒れては本末転倒だからな。それくらいが妥当だろうさ。他に回していたら守りきれていないだろう。」

 

「…そうだと、いいんですけど。」

 

「何はともあれ…終わってみたら呆気ない。楽勝だったな!」

 

「四肢を斬り落とされて楽勝も何もありません!

少しは責めてもいいんですからね?」

 

「むむ…そう言われてもな。

私もアーシアの禁手を知らなかったとはいえ、ああするしか突破口を見出だせなかった。」

 

「…そうですか。」

 

ゼノヴィアさんが羨ましい。

割り切り方なら皆さんの中で一番かもしれませんね。

しがらみとか、そういうのあるんですかね。

 

…鏡の世界で、パンドラさんの妨害がなかったのはゲオルグさんが頑張ってるからなんでしょう。

 

「…イッセーさん達は大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫さ。木場や…ネプギアとやらもいるんだろう?

あのネプテューヌの妹だ、弱い訳がない。」

 

「…ネプギアさん、ですか。」

 

何だか、嫌な気持ちです。

恐らく、そういうことを危惧してるんでしょうけど…

まあその時はその時ですね。

 

私は一歩引くと決めた身です。

 

今は、皆さんの無事を祈りましょう。

 

「…ネプテューヌさん、どうか部長さん達を助けてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡が、見えない。

どうして、どうして、どうして

 

私の鏡、全てを写し、閉じ込める鏡が見えない。

 

呂布やトリスタンは…?

二人を閉じ込めたまま、閉じ込めた彼らを逃がしてしまった。

私が未熟なばかりに?

 

…嫌だ。

 

嫌だ、嫌だ!

捨てられたくない!

私は、私にはもう、頼光様しかいないのに!

 

私の光はもうあの人しかいない!

捨てられる…こんな役に立たない私、いる価値が失くなってしまう…

嫌だ、もう失うのは嫌だ。

 

私の光、私にとっての希望…

それを奪うのなら容赦はしない。

私の光を奪う人達は、皆、みんな…絶望を見せてやる。

 

捨てないで、捨てないで…

私を一人にしないで、お父様、お母様…ああ、ああ…

どうして私を、置いていくの…

 

「パンドラは、まだ役に立ちます…ここで、失態を…取り消さないと…」

 

ああ、フォス…フォス…

 

どこにいるの?

フォスはどこ…?

フォス、フォス…私のフォス()

 

鏡を、見ないと…

見つけ出して、倒すの。

偽者も、あれだけじゃ足りない…絶対に倒せるだけの力を…私に…

フォス、お願い…私に力を貸して…

 

「…見つけた…」

 

頼光様を、誑かす敵…お前だけは…!

 

 

 

 

 

 

 

─ネプテューヌ…!




アーシアちゃんの禁手は考えてみましたけど私の厨二センスではこれが限度だった…!そしてマウント取りである。



捕捉されたネプテューヌ、彼女が仲間と共に行くのはリアスと朱乃の救出!
そんな二人は偽者四人と共に行動を余儀なくされている現状…
ただやられるだけの二人では無いことを思い知らせてやれ!

次回、『王と女王の意地』

次回もまた、やってやるです!


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王と女王の意地/英雄よ、推して参る

10周年おめでとねぷ!!!(挨拶)

初代ネプテューヌ発売日は昨日、私の誕生日も昨日!!
今度記念話でも作りますね。

新作発売が待ち遠しいぜ!

では、刮目せよ!





やっほー!

久しぶりのねぷ子さん視点じゃない!?

二話ぶりのねぷ子さんの事、待ってた人もいるんじゃない?

やあやあ久し振り、大スターネプテューヌだよ!

 

さてさて、自分達はリアスちゃん達を救出すべく京都を手当たり次第歩いているんだけど…

 

「何処にもいないよぉ!」

 

「闇雲に探していればそうもなるだろう。」

 

「部長達が何をするのかを考えましょう。」

 

「ええっと…あれですぅ、周りを巻き込まないよう動く、とか?」

 

「リアスちゃんと朱乃ちゃんならそうする、のかな。

じゃあ、人気のない場所に行く?」

 

「といってもそれだけならしらみ潰しだが。」

 

「なら、どうするの?」

 

「…そうだな。ギャスパー、だったかな?」

 

「ウェ!?はい!?」

 

曹操が考える仕草をしつつ、チラリとギャー君を見るとビクリと反応する。

曹操は取って食う訳じゃないんだから、と言ってから

 

「グレモリーや姫島朱乃の魔力を感知できないか?」

 

「えぇ!?いやいやいやいや、無理無理無理無理!ぼ、僕はそんな器用な芸当が出来るわけ無いじゃないですか!?」

 

「器用かどうかはやってみれば分かる。」

 

「ギャー君ならやれるよ!」

 

「何でそんな根拠ないこと言うんですかぁ!僕に出来るなら先輩でも出来ますよぉ!そ、そうだ!イストワールさんに頼りましょう!?」

 

あくまでやりたくないと言うギャー君に対して、曹操は眉間に皺を作る。

うーん…いーすんかぁ。

一応、確認のために自分の中で待機してるいーすんに聞いてみる。

 

いーすん、やれる?

 

─この大勢の中から二名だけを捕捉するのは難しいです。私のサーチは一つ一つを確認して割り出す物なので…お役に立てず申し訳ありません。

 

ううん、そんなことないよ。

いーすんのお陰で私は無事なんだから!

これからもよろしくね、相棒いーすん!

 

─ふふっ、なんですかそれ?私の機嫌を取っても夏休みの課題は手伝いませんよ。

 

ガーン…そんなつもりないのに!

取り敢えず、皆に苦笑い。

 

「ごめん、いーすんも二人だけを探知するのは時間がかかり過ぎるって。」

 

「決まりだな。」

 

「…ですね。」

 

「う、うう…」

 

「ギャー君!」

 

「は、はい?」

 

うじうじと悩んじゃうのは仕方無いよね。

元々内気なギャー君にぶっつけ本番なんて難しいにも程がある。

でも、でもだよギャー君!

 

「ギャー君も、リアスちゃん達を助けたいんでしょ?」

 

「それは…はい…」

 

「すっごく大変なことをお願いしてるのは分かってるよ。

でも、ギャー君じゃないとこれは出来ないから…出来たら、リアスちゃん達をずーっと早く助けられると思うんだよね!

もうサラマンダーより早い!って位!」

 

「本当、ですか?」

 

「ねぷ子さん嘘つかないよ!だからお願いギャー君!

ここは勇気を出して見ようよ!」

 

「……」

 

「大丈夫、一人じゃないよ!」

 

「………やります!」

 

ギャー君が自分から、しっかりとやるって言ってくれた。

うん、よかった!

ギャー君だって助けたくない訳じゃないもんね。ただ、自分を出すのが怖くて、閉じ籠っちゃうだけだよ。

 

少し圧をかけられると怖がるけど、こうやって手を取る感じでいくのがやる気を引き出す秘訣だよ!

ここ、ネプポイントアドバイスね!

 

「よし、場所の割り出しとしては…ここと、ここ、そしてここだ。」

 

「まず三つのポイント…ですね。行きましょう。」

 

「大体近ければ分かるので…が、頑張りますぅ…」

 

地図に印を付けながら、移動する自分達。

取り敢えず、時間との勝負だよね。

タイムアタックでもねぷ子さんは主人公!

仲間と力を合わせれば時間短縮なんて楽々だよ!

 

待っててね、リアスちゃん、朱乃ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑さが思考を鈍らせる。

長いことこうして観光をしながら背後の四人に気を付けているけど…

ここまで何かをすることはない。

偽者なのだろうけど…困ったわね。

 

(まるで監視ね、これじゃ。)

 

でも、もう少しで人気のない場所へは行ける。

 

そこで…仕掛けるしか私と朱乃に生存の道はないと見たわ。

このままずっと何もしないなんてあるわけがないもの。

 

…そうね、頼りすぎだった。

自然と、ネプテューヌ達がいるから大丈夫。

そんな他人任せの考えが私にはあった。

私よりも優秀で、私よりも強くて明るいあの子がいる…私が駄目でもあの子達がやってくれる。

 

何て浅はかで愚かしい考えだろう。

いつから私は誰かを盾に生きることを選んだのだろう。

遅かれ早かれ巻き込まれたから、なんて理由はもう通じない。

今でさえ、私は私が何をしてしまったのかを理解している。

そんな自分が嫌になる。

 

ハッピーエンドを目指すあの子がいれば平気?

そんなわけ無いじゃない。

ネプテューヌはそんな器用な子じゃない。

何処までも愚直に誰かの手を握ろうとすることしか出来ない子。

強くても、あの子は脆いのよ。

 

あの子に任せきりにしていたら、私は私でなくなってしまう。

私であることの意味を失う。

そんなのは嫌だ。私は、私だ。

 

魔王の妹なんて肩書きにふんぞり返る私じゃない。

守れる私になるために、私なりの努力を重ねてきた。

 

ファッキンホット(めっさ暑いわ)

 

「え、部長なんて?」

 

「とても暑いわ。少し休憩しましょう?」

 

「賛成です。そうですね…あそこなんでどうですか?」

 

朱乃が指を差した方…俗に言う裏路地ね。

流石にバレるかしら…?

でも、日陰で休むという意味ではおかしくはないはず。

あ、でもお店にしておいた方がよかったのかも…

 

「あーいいっすねー」

 

「僕も賛成です。」

 

「何かを急いでる訳でもないんだ、問題ないだろう。」

 

「ですね。」

 

あ、よかった。

これは通るのね。

…まるで普通の観光ね。

やっぱり事を起こさないでネプテューヌ達を待った方が……

 

考えを振り切る。

 

ここは戦わないと相手の思う壺よ。

偽者とはいえイッセー達だもの…ここで倒しておかないと後々面倒になる。

 

ただ、どう戦うかよね。

そもそも裏路地じゃ狭いし、人払いの結界を貼っても向こうは力業があるわけだし…

 

限りなく私達は動けない状態。

ここで戦ったら周りの建物、人間への被害は確実。

レーティングゲームの中なら問題はないけど、無い物ねだりね。

 

「あら、飲み物が空になってしまいましたわ。少し買ってきますわね。」

 

「ええ、分かったわ。」

 

「なら、僕も「木場君はお茶でよろしいですね?」え?ええ…」

 

「買ってきてあげますわ。暑かったでしょう?ここは先輩に任せてくださいな。」

 

「…分かりました。」

 

(───)

 

(分かったわ。)

 

朱乃が去り際に視線を寄越す。

 

…なるほどね。

なら、ここは朱乃を信じて待ちましょう。

それまで、私はこの偽者達を引き留めていればいい。

 

一人で考えすぎね…朱乃もいるのに私は一人で考えていた。

こういう事態に慣れてなさすぎるわね…

 

基本的に監視なはず。

私達が決定的な隙を見せない限り、始末はしに来ない。

私をここで始末しようものなら面倒事が起こる。

 

一般人の介入…それを気にしないのなら既に仕掛けてきてもいい筈。

この偽者が誰かが化けた物なのか、単純に中身の無いそれっぽいだかの偽者なのかは私には分からない。

けど、私が敵なら数の有利があるとしても周りの目を気にする。

証拠を消すだけの何かがあるのなら別だけど…

 

無いわね、皆基本脳筋だもの。

アーシアは違うけど…うん、他三人は無いわね。

 

「さて、少し休みながら話でもしましょうか。

イッセー、あなた最近は落ち着いたじゃない?」

 

「そうっすか?あーでも…そうかもしれないですね。」

 

「そうよ。ヴァーリとの一戦から憑き物が落ちてきた感じで、今なんて気負ってないって感じじゃない。」

 

「確かに、前はネプテューヌ先輩が絡むだけで怖かったからね。」

 

「怨霊の類かと錯覚するほど呪詛を吐いてたからな。」

 

「うっそだろお前。」

 

「ところがどっこい、夢じゃない…現実だ…!!これが現実…ッ!!」

 

このやり取り、やっぱりいつものあの子達ちなのよね。

ネプテューヌに言われなかったら騙されてたわね。

そのまま何処かで暗殺…なんてこともあったと思うとゾッとするわ。

まるでスワンプマンね。

 

そうして、十数分経っても朱乃は帰ってこない。

今のところ、会話で時間を稼いでいるけど…

 

「…姫島先輩、迷ってるんですかね。」

 

「そんなおっちょこちょいじゃないわよ、朱乃は。

イッセーもそう思うでしょ?」

 

「え?もしかしたら迷ってたりする可能性とか…はっ、ナンパ!?」

 

「あのSが発覚しなければモテるからな。私が男で何も知らなければ突撃してるかもしれない。」

 

「あっさりとあしらうと思うけどね。

それに、もし無理矢理でも悪魔よ?」

 

「…あ、そうかぁ。」

 

もっともらしいことを言って誤魔化す。

実際、朱乃はそんなおっちょこちょいじゃないからおかしくないわね。

それはどちらかと言うと私だし。

 

…自分で言ってて悲しくなるけど。

 

「お待たせしました。」

 

───チャンスは来た。

 

朱乃の声と共に、手に消滅の魔力を集中させる。

朱乃の視線から伝わったこと、それは…

 

 

 

 

 

「一人となって尚平常心を保ち、親友を信じる…人それを、絆と呼ぶ!」

 

 

「だ、誰だ!」

 

「悪党に名乗る名前はないよ!!というわけで、お待たせリアスちゃん!私達、参上!!」

 

ネプテューヌ達をここに連れてくること。

 

あるかないか、と聞かれれば無い確率の方が高い。

でも、信じるしかないじゃない?

必ず連れてくるって目だったもの。

 

それに、ネプテューヌ達なら来てくれるって信じてたわ。

 

偽者達が狼狽える。

 

「姉ちゃん!どうしてここに…!?」

 

「一誠の偽者にお姉ちゃん呼ばわりされたくはないよ!

さあ、二年生組、覚悟!曹操、合図送っちゃって!」

 

「ああ。

──八坂殿、お願いします。」

 

八坂?

誰の事かは分からないけど…曹操が札のような物にそう言うと──

 

 

 

 

 

 

─私達はいつの間にか薄暗い空の下、まるで日本の江戸時代を想起させる建物の数々。そんなおかしな空間に立っていた。

 

これは、レーティングゲームのような…?

いえ、違うわ。

恐らく、先程の八坂といわれる人物はネプテューヌ達と協力している。

その作戦の場がここってことね。

 

…ここまでお膳立てされたら、やるしかないわね!

 

偽者達を指差し、発言する。

 

「貴方達、少しおいたが過ぎたわね。よりにもよって、私達の大切な仲間に化けるなんて…お仕置きが必要ね。」

 

『……』

 

偽者達は、黙り。

先程までの慌てぶりはなんだったのか。

 

本性、というより人形らしい姿ね。

 

大方命令を実行する。

そのつもりなんでしょう?

 

距離的に近いのは私。

朱乃はネプテューヌ達の近くにいるけど、ここまで来たら皆殺しを選択して攻撃してくる筈。

それとも、一人でも多く始末するか… 

 

まあ、どちらにしても…やっと盤面が同じになった。

 

されるがままの手をこまねく状況から、手を出せる状況まで。 

結局ネプテューヌ達や朱乃のお陰なのは情けないけど…

 

でも、これで手を下せる。

 

「リアスちゃん、こっちは引き受けるよ!」

 

「ええ、なら…朱乃!やるわよ!」

 

「あら、お一人でもよろしいのでは?」

 

「何言ってるの。女王がいないと王は働かないのよ」

 

「あらあら、困った王様ですわ」

 

そう、困った王様なのよ。

司令塔としても、戦うものとしても未熟もいいところ。

こんな隙だらけの王なんて恥もいいところよ。

でも、そんな私についてきてくれるから未熟なりに頑張れる。

 

いつかお兄様すら越える王になるために。

ここで立ち止まることは出来ない。

 

集中させた消滅の魔力。

ただ玉を投げるように放つだけじゃなくってよ。

 

「!」

 

裕斗がこっちに接近してくる。

こっちは一人だから、狙うのは普通よね。

…それにしても、速さも裕斗そっくりね。

 

良くできた偽者だこと。

 

すぐに距離が縮まり、剣を振るおうとする裕斗。

私は人差し指を裕斗に向ける。

 

「それでも貴方は人形。

精密な動作は難しいのかしらね?」

 

これ以上私の家族の姿でいられるのも癪だわ。

消えなさい。

 

人差し指から放たれる消滅の魔力。 

細いレーザーのようにして放たれたそれは裕斗の胸に穴を空けた。

血は出ないのね。

 

「──」

 

裕斗の偽者は何も言わず、無表情でパリン、と鏡が割れるように消えた。

 

「まずは一人。能力は本人に準拠するのね。

ただ、禁手までは出来ない…そんなところかしら。」

 

呆気ないと思うが、それもその筈。

そもそも、消滅の魔力は威力だけじゃなく、阻む壁でさえ消し去るからこそそう呼ばれる。

 

貫通する、この一点だけなら私はこの場の誰よりも強い。

 

ネプテューヌ達は目を白黒としている。

朱乃が雷で三人を囲うように放つ。

 

「戦える状況になれば偽者程度に負けるわけないでしょう?」

 

「ええ、けれどやりにくいですわね。

偽者といえど仲間ですから…」

 

「あ、あー…私達いらなかった?」

 

「馬鹿言わないの。ネプテューヌ達がこうして来てくれなければ私達は何も出来なかった…本当に感謝しかないわ。」

 

「そうそう、ほら、やりますわよ。」

 

「はーい!」

 

ネプテューヌと小猫が構える。

ギャスパーは何やら疲れた様子だけど…どうしたのかしら?

もしかして、私達の捜索を頑張ってくれた?

 

…そうだとしたら、うんと褒めないと。

 

「まあでも、私達が負けるわけないよね!」

 

「先輩、油断はいけませんよ」

 

「油断じゃなくて、これはお決まりって奴だよ!

主人公ねぷ子さんとその仲間の皆がこんなところで負けないよ!」

 

「…なあ、護衛の俺が戦わなくていいのか?」

 

「曹操はこの後のために待機ね!」

 

「ふぅ…分かった、従うよ。まったく、うちの女神様はいつもこれだ」

 

曹操はやれやれとした様子で構えずに待機する。

まあ、相当な手練れじゃない限り不意も打てないでしょうけど…

この後?

何があるのかしら…

 

「後で教えてもらうわよ、ネプテューヌ!」

 

「うん!その前にまず、うちの弟と妹に化けた偽者をぶっ飛ばすよ!」

 

危機的であったはずなのに、これから戦うというのに。

何故かしらね。

貴方や皆と共に戦えるのが、とても嬉しいわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷の包囲網から抜け出した一誠が朱乃ちゃんに殴りかかるけど、籠手の一撃を自分の刀で受け止める。

 

…うん、受け止められる。

一誠の拳はこんなんじゃない、もっと想いの乗った拳で強いんだ。

こんな、何もない拳が自分達を倒せるわけないよ。

 

「久しぶりのパワーエーッジ、なんてね!」

 

「…」

 

雷にぶつかるように弾き飛ばす。

偽一誠は雷にぶつかって痺れる。

 

「あらあら、私の雷を素直にくらうなんて…やはりイッセー君らしくはないですわね。悪い子にはお仕置きしませんとね?」

 

朱乃ちゃんがすかさず堕天使の力を引き出し光の槍を三本放つ。

痺れて動けない偽一誠はそれをマトモにくらう。

…あの、朱乃ちゃん…

 

「頭に突き刺すのは…どうかと思うよ…」

 

「あ…すみません、ネプテューヌちゃん。気にくわなくてつい」

 

「いや、うん。いいんだけどヒエッてしちゃって」

 

偽一誠は哀れにも爆発四散することもなくパリンと割れて消えてしまった。

後はあーちゃんとゼノヴィアの偽者だけど…

 

「…!」

 

偽ゼノヴィアは自分達を飛び越えてギャー君の方へと剣を振るう。

 

「ヒエェェェェ助けてくださぁぁぁぁぁい!!」

 

そう言いながらもギャー君は目を背けない。

何とか視界に偽ゼノヴィアを収めると…

 

偽ゼノヴィアの動きが止まる。

 

「あ、あれ。…あ、神器あるんでした」

 

思わずズッコケそうになった。

あ、あれぇ?それでいいのギャー君!

ギャー君はホッとした様子で、小猫ちゃんに声をかける。

 

「あ、あの塔城さん…」

 

「果てしなく自分でやってくださいと思った私は悪いのでしょうか」

 

呆れた様子だけど仕方なしとばかりに停止する偽ゼノヴィアに念には念を入れてなのか10発位殴る小猫ちゃん。

心なしか、胸とか重点的に殴ってない?

 

あ、もしかして気にして──

 

「先輩、そこから先は物理的に首が飛ぶと思った方がよろしいですよ」

 

「アッハイ」

 

停止が解除された偽ゼノヴィアは衝撃が今襲ってきたのか物凄い挙動をしながら吹っ飛んでパリンと割れて消えた。

 

…うわぁ、あれが時止め無駄無駄ラッシュ?

怖いなぁ怖いなぁって。

くらうのは嫌だなぁ嫌だなぁって。

 

「で、残りはアーシアね」

 

「…私がやるね」

 

偽者とはいえ、妹だもん。

一誠は朱乃ちゃんが倒したけど、せめて偽あーちゃんは自分の手で。

 

「…駄目ね、それはやらせられない。不許可よ」

 

偽あーちゃんに向かおうと思った直後、リアスちゃんのそんな声と共に偽あーちゃんの胸が穿たれる。

自分に警戒していた偽あーちゃんはなす術もなく、その場で倒れてパリンと割れて消えていく。

 

偽者はこれで全部。

戦いは、とても呆気なく終わった。

偽者自体、命令通りにしか動かないし力も限度があるせいで神器の特性を活かしきれてないのもあるし、当然とも言えた。

 

リアスちゃんがこっちに歩いてくる。

 

「ありがとう、皆。消えくれなかったら私たち、何処かでひっそりと消えていたかもしれないわね」

 

「…えっと、一ついい?」

 

「偽者のアーシアのことなら理由は一つよ。

偽者とはいえあなたが大好きな妹だから自分でやろうとしたんでしょう?そんなのさせられないわ」

 

「でも…」

 

「いい、ネプテューヌ?」

 

リアスちゃんは屈んで自分の頭に手を置く。

 

「心はね、一つしかないのよ」

 

「それは、分かるけど」

 

「そして、耐えられるのにも限度があるの。

あなたは、バレないように溜め込む時があるんだもの。私が代わりにやると言っても聞かなかったでしょう?」

 

バレてる。

辛いものは辛いけど…でも、それでも自分がやった方がいいって考えてたことが。

 

リアスちゃんだってあーちゃんが仲間として大好きなのに。

 

自分の代わりに、請け負ってくれたんだ。

 

…なら、自分はその好意を受け取らないと。

 

「ありがとう、リアスちゃん。」

 

「いいのよ。私にとって、あなたは本当に大事な友達なんだから」

 

「うん!

…あ、それでね、リアスちゃん達を見付けられたのは朱乃ちゃんが来てくれたのもあるんだけどギャー君のお陰なんだよ!」

 

「あら、そうなの?」

 

「え、ぼ、僕は何も…皆さんのお陰です!」

 

「ギャスパー…ありがとう」

 

ギャー君の照れ隠しを聞いて、微笑みと共に頭を撫でる。

…うんうん、よかった。

 

曹操がこっちにやって来る。

その顔は少し不満げだった。

 

「あっさり終わったな」

 

「何か不満げだね?」

 

「当たり前だろう。仕方無しに了承したが、本来は守られる立場なのを忘れないでくれ」

 

「あはは、ごめんごめん。ねぷ子さんも活躍したいなぁって思ってたんだけど…皆強くなったよ、うん」

 

「…それで、俺を温存させたのは何故か聞いても?」

 

「うーん…特にないんだけどね」

 

「おいっ」

 

そう怒られても、活躍したかったのは本当だもん!

主人公なのに京都でそんな活躍してないんだよ!?

これじゃ今回はねぷ子微妙な章だなとか言われちゃうじゃん!

 

「…もうこの件はいい。なら、女神化しなかったのはどうしてだ?」

 

「えっと…ちょっと言いたくないな~って」

 

「頼光か」

 

「まだ言ってないのにどうして分かったの!?」

 

ため息をついて、額を小突いてくる。

少し痛い!暴力反対だよー!

 

「お前が出し惜しみする相手など、アイツしかいないだろう」

 

「…うん、頼光だけは私が倒さないといけないんだ」

 

「似ている…んだったか?何処が似ているんだ?

頼光は人外を日本から追い出し、人の世を守る。

ネプテューヌは人外含めて全てが手を繋げる世界を造ろうとしている。…似ているか?」

 

曹操が言うことは至極普通なことだよ。

自分と頼光の目的は、すごい似ている…という訳じゃない。

でもね、それでも似てるんだよ。

 

緊張が解けたのか疲れた様子の小猫ちゃんとギャー君、リアスちゃんと朱乃ちゃんを見る。

 

「私は人じゃない皆も一緒のハッピーエンドを目指してる。

頼光は人だけのハッピーエンドを目指してるんだよ。

…ただ一つを切り捨てたのか、それを守りたいと思ったのか。

それだけの違いなんだ、私たちって」

 

「…頼光とは…」

 

「うん、多分…そうなると思う」

 

どちらかが倒れるまで…ううん、しっかりとしよう。

どちらかが死んじゃうまで、自分と頼光は戦う。

手を繋ぐことを諦めたくないよ。

でも…自分は理解しちゃったんだ。

 

あの目は、自分を受け入れない。

あの手は、自分をはね除ける。

 

誰よりも強い拒絶の姿勢だった。

だからこそ、決して相容れないと思ったんだ。

 

「…本当はね、怖いんだ」

 

「…」

 

「殺し合いなんて、したくないよ。だって…死んじゃったら何もかも終わりなんだよ?死にたくないし、殺したくないよ。」

 

でも、これは自分だけにしか出来ない。

誰にもやらせない。

これから背負うだろう物は、自分が背負わないといけないものなんだ。

 

…もう勝つつもりって?

 

「…けど、皆を失うことの方が私は怖いから。」

 

だって、もう負けられない。

自分はそうならないように頑張ってきたんだ。

 

だから───

 

 

 

 

 

「皆を守るために、私は戦うよ」

 

 

 

 

 

─自分は”勝つ”

 

「…そういうところに、俺は救われたんだろうな。

なら、その道を整えるのが俺たちの仕事、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の世界を掌握。

 

俺の絶霧を取り込んでいるのなら、その大本である俺がそれに介入できない道理はない。

妖怪…八坂の作戦はそれだった。

鏡の世界に逃げ込めないように、またはそこを経由できないように封じる。

 

ハッキングしてから全てを掌握するのに時間がかかったが…概ね成功だ。

 

だが、これからが本番だ。

パンドラにとって目の敵になるであろう人物の特定は容易い。

どうせネプテューヌだろう。

 

依存先の頼光がアイツに夢中なんだ、矛先が向くのは当然だろうよ。

ならばそこからの行動は読みやすかった。

 

恐らく、単独での行動は危険だと判断する脳は残っている。

なので、俺がすべきなのは…

 

「パンドラ、お前を引き離して同行者をアイツら…いや、曹操に押し付けることだ」

 

目の前の少女に笑いかける。

ここにパラケルススがいれば纏めて面倒を見てやったんだがな。

奴め、こういう時の判断は間違えないか。

 

「…邪魔を、しないでください」

 

「悪いがそうはいかない。引き離すのに苦労したぞ?よりにもよって殺意全開のアイツを同行させていたんだ、転移させるのも一苦労だった」

 

パンドラは俯いたまま俺を見ようとはしない。

ただ分かるのは…こいつにあるのは焦り、怒りだ。

こいつにとって、頼光はどれだけの光なのか。

 

…いや、何にしても…

 

「ここでお前を拘束させてもらう」

 

「…邪魔を、するのなら、あなたも」

 

ようやく顔を上げる。

その顔は…何も写さない無表情。

鏡らしいし、その名前らしい表情だ。

 

…ふぅ、少々骨が折れそうだ。

 

そっちは頼むぞ、曹操。

そして、ネプテューヌ…お前には大役を任せること非常に申し訳ない。

 

だが、頼む。

 

これ以上、馬鹿が助長する前に止めてやってくれ。

 

パンドラは鏡を自身の周囲に展開する。

一度顔を顰めるパンドラに疑問を覚えるが…今はまだ気にする段階ではないか。

 

「もう、しばらくは働かないぞ…絶対に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るか」

 

「え?」

 

殺気を感じ取った俺はネプテューヌを庇うように前に出て聖槍を構える。

そして、上から迫る一撃を受け止める。

 

槍と槍がぶつかり合い少しの拮抗の後相手はこれ以上は意味がないと察したのか距離を取る。

 

「…お前もしつこいな」

 

「あなたは…ッ!」

 

ネプテューヌ、ネプギアと来て、またネプテューヌを狙うか。

それとも…誰かに寄越されたか。

何にしても、都合がいい。

 

ある意味で、お前が一番厄介だよ。

誰よりも。

 

 

 

「チッ、やっぱテメェがいると仕留められねぇよなぁ曹操。

相変わらずヒョロい癖に面倒な野郎だ」

 

槍を手に持ち、白い鎧を身に纏う。

俺の知る中ではお前くらいだよ、カイネウス。

 

「あ、また来た!ちょっと!いい加減私を海神だか何だかの理由で狙うのやめてくれない!?ストーカー反対!」

 

「黙れ。守護女神だか何だか知らねぇが…気に食わねぇ。

だから殺す。それ以外で必要な理由があるのかよ」

 

ギリシャ(そっち)らしい回答どうもありがとう。

残念だがネプテューヌ、こいつもお前を阻むぞ」

 

「うー…ねぷ子さん狙うなら直接ポセイドンを狙えばいいのに!

さてはヘタレだね!?

好きな先輩に告白しようと思ったけど出来なくてラブレター送るくらいしか出来ない人種と見たよ!」

 

「は?」

 

「気にするな、発作みたいなものだ」

 

ここはふざける場面…関係無いか、うちの女神には。

ヴァーリめ、恨むぞ…

 

グレモリー達は…危険か。

それなりに場数を踏んでるが、カイネウスは話が別だ。

呂布もだが、こいつの戦闘経験はかなりのもの。

 

ここは…

 

「ネプテューヌ、ここは俺に任せてグレモリー達を連れて戻れ」

 

「え?そんなこと出来ないよ!皆で戦った方が…」

 

「頼むよ、お願いだ」

 

「………分かったよ」

 

本当は、俺達が解決すべきだった。

それをここまで背負わせること、本当に申し訳ない。

だから、ここは俺一人でやるべきなんだよ。

 

ネプテューヌは観念したようにグレモリー達を集める。

 

「曹操、勝ってよ!」

 

「聖槍に誓おう」

 

「じゃあ皆、行くよ!」

 

「…いいの、ネプテューヌ?」

 

「いいのいいの!ここは曹操に任せちゃえ!」

 

「あらあら…曹操さん、頑張ってください」

 

「美人からの声援とはありがたい」

 

ネプテューヌ達がその場から離れていく。

それを邪魔するように飛び出すカイネウスをこの身と聖槍を以て邪魔をする。

 

カイネウスは舌打ちをして嫌悪感を隠しもせずに再度槍を構える。

 

「邪魔するんじゃねぇよ。あの女神をぶっ殺す、ついでに他の連中もだ。呂布もトリスタンも不様に負けやがって…」

 

「残念ながら、お前もここで負ける。これ以上の勝手は許さんよ」

 

「ハッ!いい気になるなよ曹操。テメェが俺に槍勝負で勝つ気か?一度だって俺に槍で勝てたことがないテメェが!」

 

「ああ、だから…今から勝つ。それだけだ」

 

「ほざけよ。テメェも、アイツらも女神に絆されやがって。

神が人間にろくなことをしてきた試しがねぇことは重々承知してるだろうが」

 

「…まあ、ギリシャのお前からすれば馬鹿馬鹿しいだろうな。

だが、俺達は確かに救われたんだ。

あの時の自分に戻らないように、この恩を返すまで死ねない」

 

「…本気なようだな」

 

無論、その通り。

その問いに俺は無言で返そう。

ネプテューヌ、お前が考えるよりもずっと俺達は救われている。

どれだけその救いがありがたかったか。

 

そして、お前の力になれることがどれだけ嬉しいか。

 

…ああ、だからこそ。

かつての仲間を倒すべきなのは俺達だと思っていたんだ。

けれど考えを改める。

 

もう俺達は違うんだな。

本当に袂を別ってしまった。

ならば、お前が正しいんだろうさ。

 

「言葉でなく、俺自身の実力で以て示そう!

勝負といこうかカイネウス!」

 

「…トリスタンの野郎、洗脳だとかほざきやがって。

いいぜ、曹操。最後にテメェの稽古に付き合ってやる。

ただし…負ければ死だがよ!」

 

英雄よ、ここでお前を倒し、俺は前へと進ませてもらう。

この槍は女神のために。




あ、良ければネプギアちゃん主役のmk2発売日を記念した小説も投稿してあるので読んでくれると嬉しいです。


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歪な鏡を打ち砕け

忍びネプは何処へ行ったのか…?(挨拶)

パンドラ戦、その終わりです。

ゲオルグ先生、やっちゃってください。





鏡をいくつも展開したパンドラへ魔法陣をざっと20は展開し、そこから放たれる雷、炎、氷がパンドラへ襲い掛かる。

 

鏡がパンドラを守るように動き、魔術を防ぐ。

その際に、防いだ鏡も割れる。

 

絶霧の特性も得た鏡は防御面において俺の絶霧程ではないにしろそれに近い性能をしている。

長期戦になると俺の方が不利だ。

 

だからこそ、大人げなく往かせてもらう。

元来、魔術師とはそういうものだからな。

 

鏡と魔術による攻防。

パンドラは自由には動けない、そうするために普段はやらない燃費のよろしくない一斉射撃を行っているんだからな。

効果が出ていることを確認し、自身を中心に霧を展開する。

 

絶霧(ディメンション・ロスト)には攻撃性は一切ない。

だが、それは俺に魔術がなければの話だ。

俺の魔術と絶霧が合わさることにより、攻防一体のフィールドを作り出すことが出来る。

 

「…絶霧…私の…」

 

「お前のではない。

お前のそれは似ているだけの紛い物だ。

霧から鏡に特性が変わった、な」

 

パンドラは絶霧に適合した。

追憶の鏡(ミラー・アリス)との相性もよかったのだろう。

が、あくまでそれは絶霧のほんの一部だ。

霧を媒介にするのと鏡を媒介にするのではかなり違う。

 

鏡は物体であることもそうだが…一番の欠点は消費の大きさだろう。

 

絶霧の一部と追憶の鏡を同時に扱う以上、燃費は最悪といってもいい。

それを行使できているのは一重にパンドラの精神力の高さか。

神器が成長するようにパンドラもまた歪な成長をしている。

 

「鏡の世界は驚愕した、封じたがな。

ただ、お前も立っているのは辛くなってきているだろう?

その様子だと、休息を取っていないと見た。

頼光はお前を酷使する外道に成り下がったのか?」

 

「頼光様を悪く言わないで。

私は、私の判断でここにいます」

 

「…まだお前は子供、学ぶべき立場だろうに。研鑽すら出来ずに、何処へ行くというんだ…」

 

やるせないとはこういう感情なんだな。

俺が絶霧の一部を奪われなければこうはならなかった。

だからこその尻拭いだ。

 

お前は頼光に依存しているとはいえ、英雄派の中では特別丁重に扱われていたな。

 

可愛がられていた、というべきか。

俺もお前に授業をしたことがあるのを覚えている。

まだ、曹操と頼光が袂を別つ前、俺達が愚者だった頃だった。

 

『…ここまでで分からないことは無いか?』

 

『……』

 

『…頼光』

 

『すまない。…パンドラ、どうなんだ?』

 

『…ない、です』

 

『そうか。無いそうだぞ』

 

『聞こえてる』

 

頼光がいなくてはマトモに意見も出せなかったお前がそこまでの自我を取り戻したか。

…嫌な成長をしてしまったな。

自我が回復するのはいい。けれど、その矛先が結局あの男にだけ向いているのは…な。

 

「ならば、教鞭を振るった俺がお前を正す」

 

「あなたも、私から光を奪う…ゲオルグ…先生、あなたも…」

 

パンドラは顔を歪めて霧に隠れる前の俺を睨む。

先生、か。

そう思ってくれてはいたんだな。

 

ならば尚更だろうよ。

 

そう思い、俺は攻撃を再開しようとするが…

 

 

 

 

 

「鏡よ、万物を写し出せ…万華の夢幻鏡(ディメンション・ミラー・シンフォニー)…!

さあ、あなたの目に写る鏡は誰を写し出す?あなたに希望は与えない、絶望があなたの終着点」

 

鏡が輝き出す。

その状態で禁手だと…!?

形振り構わずか!

 

手を止めるべく、魔術を行使しようとし──

 

 

 

─殺気を感じた俺は真横に壁を作り、しゃがみこむ。

 

土の壁は拳によって砕かれ、砕いた本人の姿が露になる。

 

「…馬鹿な、まだ再現する余力が残っているのか!?」

 

そこにいたのは、白龍皇…ヴァーリ・ルシファーだった。

 

「俺と、戦え…戦えぇぇぇ!!」

 

「チィ!」

 

転移を行使して距離を取る。

何だこのヴァーリは!?

俺の知るヴァーリとは……いや、似てなくはないが。

 

それにしたって闘争本能に身を任せすぎだ。

 

まるでそれ以外を削ぎ落として………?

 

 

 

…そういうことなのか?

 

鏡が写すのは本人だけではない、物語にあるようにその者の本性、一部すら写し出す。

だとすれば?

これは、ヴァーリという男の戦闘狂の側面だけを写し出した偽物だとすれば…

 

いや、勝てない。

俺では致命的に相性が悪い。

 

今でさえ、攻撃を避けるために必死に防壁、転移、妨害をしているものの効果は見られない。

防壁は力ずく、転移すれば距離は一瞬にして詰められ、妨害は潜り抜けられる。

 

「オォォォォォッ!!!」

 

「調子に乗るな…!」

 

魔力で作成した鎖をヴァーリに放つ。

当然、破壊しようと動くが絶霧と俺の相性は抜群だ。

破壊されそうになる鎖を転移させ、裏を取る。

 

動作が間に合わないヴァーリは縛られる。

だが、5秒も持たないだろう。

それでいい、その短い時間がお前を倒す。

 

「炎よ、焼き尽くせ!」

 

最大火力で魔力を投入する。

まだ余裕はあるが…くそ、派手に動けんな。

 

拘束しているヴァーリへ業火を放つ。

行使する俺でさえ熱を感じる程の炎だ。

鎧の無いお前ならば…!

 

『Divide!』

 

半減の能力が使われ、炎の威力が落ちる。

だが、それでもだ!

その威力を殺しきれまい!

 

その間に、準備をしなくては…!

 

掌握した鏡の世界にアクセスする。

…全員無事か、よし。

もう一仕事してもらうぞ……ッ!

 

兵藤一誠に頼るのは難しいか…ならば…いや…他の消耗もデカイな。

だとすれば…

 

ふと、焦りすぎな自分に気づく。

…まだ危機的状況ではない。

ヴァーリの偽者…確かに強いが倒せない絶対ではない。

 

……よし。

 

鏡の世界のそいつに対して外に出るように転移を行使。

かなりの無茶ではあるが、やむを得まい!

 

 

 

 

 

「──えっ?」

 

ネプテューヌの二人目の妹、ネプギアがこちらへとやって来る。

目を白黒させて状況の把握が間に合っていないネプギアが辺りを見渡す。

武器は手放してないな。

 

「ネプギア」

 

「あ、ゲオルグさん!何とかなったんですね!えっと…ゲオルグさんが呼んだんですか?」

 

「そうなる。もう一仕事いけるか?」

 

「もう、一仕事?」

 

「まだだぁァァァァ!!」

 

「ッ!!?」

 

振るわれる拳にネプギアは自身の武器で防ぐ。

 

そして、こちらに視線を寄越さずに相手を見る。

 

「この人、ですか?」

 

「そうだ、少し任せる。術者を俺が倒す…その間、耐えてくれ」

 

「分かりました!ゲオルグさんに近付けさせません!あと一度だけなら…!」

 

「頼むぞ!」

 

ネプギアがパンドラを視認すると、ヴァーリを弾き飛ばす。

距離を取ってくれたのか、ありがたい。

 

パンドラはネプギアを忌々しそうに見た後に俺を不機嫌そうに見つめる。

 

「…先生は、私が嫌いなの?」

 

「好き嫌いの話ではない。善悪の話ならまだ分かるがな。

お前のやろうとしていることはお前のためにもならないし、こちらのためにもならない。正しいだけが人の本質ではないが…だとしてもだ。俺を教師と思うのなら、生徒らしく言うことを一度は聞いてくれないか」

 

「…あの女神が、私の光を、消そうとしている。

頼光様…私の、光……フォス…ああ…フォス…救ってくださったあの人の為にも、私があの女神を倒すの」

 

フォス…覚えている。

頼光も同行させて曹操と共に教会を襲撃した時だ。

といっても大々的に動くわけにもいかなかったので、せいぜい天使陣営には何者かに襲撃された、くらいだろう。

 

その時だったか…パンドラを発見したのは。

地下を発見した時、嫌な予感がすると言った頼光はいの一番地下へと向かっていった。

いくつもの地下室には子供が収容されていた。

何名かは精神が死に、生きていることすら哀れな状態であったが…パンドラはその中ではまだマシな部類だった。

 

『誰…?』

 

光を映さない虚ろな瞳が俺達を見つめたのは覚えている。

俺と曹操は周囲を警戒し、頼光が子供たちの保護をしていた。

当然ながら、子供を連れたまま他の用を済ませることはできない為撤退を余儀無くされたが…パンドラを連れる時に一度暴れた。

 

『嫌、いやぁ!フォスを、フォスを置いていかないで!!

私から光を奪わないで!!汚い大人!フォス、フォス!私のフォス!』

 

…死体に、呼び掛けているようにしか見えなかった。

子供の死体は若干腐りかけていたが、パンドラはそれを気にせずに抱きついた。

 

依存していたのだ、死体に。

フォスと名付けられる子供の死体に。

 

『…すまない、俺達が遅かったばかりに…』

 

頼光の悔しげな声を覚えている。

子供に対して真摯に向き合う頼光はパンドラの目にどう映ったのか。

いつから依存先をフォスという死体から頼光へと移ったのかは分からないが、この時が切っ掛けなのは間違いない。

 

…フォスの死体は回収した後に埋葬した。

今も、四人だけしか知らない場所に安らかに眠っているだろう。

 

「依存するなとは言わない。俺もまた、魔術に対してある種の依存があるからな。だが、お前は外に目を向けない…向けなさすぎる」

 

パンドラの今の姿は哀れだった。

俺が憐憫を抱く程に、今の生徒の姿は見ていられない。

精神を保つため、他者に心を委ねるのは…良くないのだ。

 

怖いのだろう、外に目を向けるのが。

辛いのだろう、汚いものを見ることが。

だから逃げる。

仕方の無いことだ、それが人間だ。

 

自己防衛本能が働いてもおかしくない程、心を壊された少女。

 

「俺には、お前を救えない」

 

お前を救えるのは、誰なのか。

いや、何なのか。

誰かを引き合わせれば、それに依存するのか。

何かを見せれば、それは晴れるのか。

 

分からない。

だが、ここで終わっていい命ではない。

 

雷を放つ。

パンドラの鏡によって防がれる。

追憶の鏡としての機能は俺相手では死んでいる。

そして、パンドラの表情にはだんだんと焦りが生まれてきた。

 

「かなりの無理をしているな」

 

「どうして、先生、どうして?どうして私の邪魔をするの?

先生は、酷い人ね」

 

「ああ、否定はしないとも──所詮、魔術師は外道の集まりだ」

 

「汚い、大人ね」

 

「そうだとも。お前は少々…煤けてしまったな」

 

魔術と鏡による攻防は俺が有利であった。

パンドラにはもう喋る位しか出来ないだろう。

鏡の動作が鈍くなっていってる。

 

ヴァーリを鏡写しで出したのも足を引っ張っているのだろう。

 

…何事も相性だ。

俺一人ならばヴァーリを出された時点で負ける。

しかし、絶霧と転移を駆使すれば勝ちの可能性を持ってこれる。

仲間、その要素こそが俺を優勢へと持っていった唯一の要素。

 

ネプギアを見やる。

 

「ブルーソニック!!」

 

「ハハハハハ!!」

 

…早く鋭い剣舞と、拳脚の乱打がぶつかり合う。

魔力による自己強化をしてるのか奴の拳と脚に傷はない。

 

半減もある筈だが衰えのない動き…彼女も女神、か。

 

視線を戻し、パンドラを拘束すべく動く。

残りの魔力を少し残し、パンドラの全方位を魔法陣が囲う。

 

「…っ」

 

「降伏しろ」

 

「…私は、頼光様の、為に…──」

 

そこから先を言わせるつもりは、俺にはなかった。

 

 

 

 

「お前の理想を押し付けるな!!」

 

 

 

「…!」

 

「お前の考えを、奴に委ねるな!

これ以上、現実から逃げるんじゃない!」

 

声を張り上げる。

 

柄じゃないことをしている自覚はある。

だが、こいつに今物を言えるのは俺しかいないのだ。

ならば、教鞭を振るった者として諭さねばならない。

声を大にしてそれを否定しなければならない。

 

俺達を救ってくれた女神のように。

 

「最後に一つだけ教えてやる。

お前の人生はお前のものだ。フォスという死体のでも、頼光の物でもない!お前の人生はお前にしか歩めないものだ!

いい加減、夢を見るのは……やめろ」

 

「──うる、さい!」

 

鏡が俺を挟むようにして出現し、俺を潰そうとする。

後ろに跳ぶことでそれを難なく躱す。

凄まじい音を立てながら鏡は割れる。

 

「うるさい、うるさい、うるさい!!先生に何が分かるの!!

フォスを、弟を失った私の何が!?私には、あの子しかいなかったの!!あの暗く冷たい部屋で、あの子は私の心を温かくしてくれた!私だけの光!!私だけの、私だけの思い出!」

 

感情の爆発だった。

両腕を抱き締めるようにして膝をついて感情を爆発させるパンドラに、俺は何も言わずに近付く。

 

「頼光様が助けてくれた!これで、お父様とお母様の元に帰れる!!そう、思ったのに!!」

 

 

 

『あら、可愛い子ね!』

 

『お、本当だ。名前は?パンドラちゃんか…可愛い名前だ。

生まれたばかりの子とも、良ければ仲良くしてやってくれないか?』

 

『……ぇ?』

 

親の元へと帰す。

頼光が一人でやったことだ。

だが、残酷な結果しかなかった。

 

パンドラの両親はパンドラのことを初めからいなかったかのように忘れてしまい、新たな子を授かっていた。

 

教会による記憶改竄…それが原因で起こった悲劇だ。

 

その後のパンドラの心境は俺には分からない。

ただ、俺が頼光から聞いて分かったのは…

少女の心の拠り所は全て消えた、ということだった。

 

「神様は私を見捨てた!私は、愛されない子だった!!

フォスを連れていって、お父様とお母様すら私を忘れた!!

あの子は誰!?私はここ、パンドラはここなのに!!

頼光様だけなの、私にとっての最後の光は!」

 

幸せな家庭すら奪われた少女が壊れるのは当然だった。

 

…そう、それくらい俺も分かっている。

だが、それでも誰かに囚われたままの人生などあっていいわけがない。

ただ現実を見たくないが為にそうするのは、許さない。

 

俺が見下ろせる位置にまでやって来たというのにパンドラは何もしない。

何も出来ないのだろう。

 

ネプギアのいる方向から何の音も声もしない。

殺気もない。

恐らく、禁手が解除されたのだ。

 

「先生…私は、私はどうすれば良かったの…?」

 

「…どうすれば、よかったんだろうな」

 

頼ればよかったなど口が裂けても言えない。

その言葉を言っていい訳がない。

俺にその資格はないのだ。

 

どうすればよかったのか。

間が悪かったと割りきればいいのか。

出来ないからこうなったのにか。

 

だから、俺は

 

「これから、見つければいい」

 

頭に手を置き、魔法陣を解除する。

こう言ってやることしか、俺には出来ない。

パンドラは涙を止めることなく、俺を見上げる。

 

「お前は物を知らなすぎる。お前にはまだ時間が腐るほどあるだろう。これからどうするのかを探すなんて、今からやればすぐに見つかるだろうさ。

…そして、それに付き合うのも吝かではない」

 

「……狡い大人ね、先生」

 

「魔術師は狡いんだ」

 

「狡くて酷いなんて、悪い魔法使いね」

 

「訂正しろ、魔法使いと魔術師は違う。

悪い魔術師ならば許容する」

 

「…頼光様を、助けてくれる?」

 

「…どうだろうな。」

 

「約束してくださらないのね」

 

出来るわけ無いだろう。

余程の奇跡でもない限り、アイツは死ぬ。

生き残ったとして、三勢力からすれば排除しておきたい存在だ。

どれだけの闇をアイツが知っているか。

それは俺らにも言えることだが…アイツは転生悪魔だ。

 

となると、俺達よりも秘匿しておきたい物を見てきた可能性はある。

 

パンドラは、諦めたように顔を俯かせる。

 

「…私は、殺してくれないのね」

 

「ならば自殺するか?フォスには会えるだろうな」

 

「……そうね」

 

俺はその判断を止めない。

ネプギアは止めるかもしれないが…

 

パンドラは、鏡を一つだけ出して、自身の顔を写し出す。

 

「…酷い顔」

 

自嘲するような声だった。

鏡をしばらく見て、鏡に写る表情が歪み始める。

泣いているのだろう。

 

「こんな顔で、フォスに…会えるわけない……」

 

「そうか」

 

「…申し訳ありません、頼光様。パンドラは──」

 

 

 

 

 

「─もう、あなたの希望を写せない」

 

降伏の言葉だった。

それを言い終えると、糸が切れたようにこちらへ倒れ込んでくる。

それを受け止め、容態を確認する。

 

…寝てるだけか。

消費が荒すぎる、馬鹿が。

 

「あの、ゲオルグさん」

 

「ああ、すまない。突然とはいえ協力してくれたこと、感謝する」

 

「いいんです!少しでも役に立てたのなら嬉しいです!

えっと、そうじゃなくて…一誠さんたちは…?」

 

「ん、ああ…そうだな。転移だけでもさせてやらないとな」

 

そういって、八坂の所へと残りの魔力を使って転移させる。

まあ、鏡を経由してだがな。

魔力が少なすぎて経由しないと出来ないとは…俺も馬鹿か。

 

どっと疲れたぞ、全く…

 

「お疲れさまです、ゲオルグさん。その子がパンドラちゃんですか?」

 

「ああ、詳しいことは戻ってからにしよう。

マトモな場所で休みたい…」

 

パンドラを背負って何とか立ち上がる。

くそ、魔術師の俺に重労働ばかりさせおって。

俺が若者でよかったな。

向こう一ヶ月は働かん、絶対にだ。

 

…後は、三人か。




ちなみに、鏡の世界を掌握してなかった場合パンドラとの鬼ごっこをしながらコピー体の相手を強いられてました。

つまり、英雄派を引き抜いたネプ子さんはファインプレーだったわけですね。
裏話みたいなもんですけどね!


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高みへ至り、英雄へ

投稿スピード戻していこうと思ったので(今日)初投稿です

曹操VSカイネウスとなります。
さあ、戦いの行く末は?





一体どれほどの時間が経ったのか。

いや、実際は10分も経っていないのだろう。

互いからすれば長く、周りからすれば短い様子見。

 

下手に動けばそれが隙となって死ぬ。

 

馬鹿正直に禁手を使うのでもいいが…さて、目の前の相手がそれを馬鹿正直に見ているだけだろうか?

答えは否だろう。

受けてたつというのもありえるが、今回に限っては無いだろう。

 

「テメェとこうして槍を正面切って向け合うのはいつぶりだったか」

 

「さてな。5ヶ月前じゃないか?」

 

「ハッ、良く覚えてやがる。そんなに俺に槍で負けたのが悔しかったか?」

 

「ああ、悔しかった。だから、次はない」

 

次はない。

二つの意味での言葉だ。

もう負けないというよくある宣言、そして…

 

もう、互いに槍を交わすのはこれで最後になる。

 

どちらかが倒れ、どちらかが立ったまま。

…俺は、お前のようには出来ない。

手を取り合えないと思ってしまう。

 

カイネウスは獰猛な笑みを隠そうともせずに話しかけてくる。

 

「一つ聞かせろ」

 

「構わない、なんだ?」

 

「テメェはどうして今もあの女神といやがる。

それ相応の理由があんだろ、あの時俺たちに語ったことが全部じゃねぇんだろ。今いるのは、その理由があるからだろ」

 

「…先に言っておくが、あの時語ったことはあの時の俺の全部だった。俺たちは救われたんだ、ネプテューヌにな」

 

そう、救われた。

それだけなら、よかったのだが。

 

ネプテューヌは俺を信頼している。

護衛としてではなく、もっと近い存在。

仲間、友として俺を心から信じてくれている。

 

その信頼からか、イストワールたち程ではないにしろ弱みを見せてくる。

俺が裏切ると本気で考えていないのだろうな。

 

…そして、最大の弱みまで見せてきた。

 

『曹操にも、言っておこうかと思って!』

 

笑顔で言うことなのか、とその話を聞いて疑問に思った。

 

だが、彼女は乗り越えたのだろう。

己の存在、その問題を。

 

「恩を返すまで…それが俺の理由だった。

それを終えたと言われ、実際にここまでしてやる義理はないでしょ、ともな。

…だがな、俺たちは馬鹿なのだろう。それ以外、何をすればいいのか分からなかった」

 

「だから今もいるってか?」

 

「半分はそれだ。

もう半分は…弱っちい人間の彼女を支えてやりたかった」

 

「…俺の耳が腐ったか?今、人間って単語が聞こえたが」

 

「嘘は言ってないとも」

 

半分人間で、半分女神。

そう表現するのが正しいだろうな。

 

カイネウスは訝しむ。

 

「ありゃ女神だろ?人間じゃねえ」

 

「そうだな、確かに彼女は女神だ。

…カイネウス、お前は輪廻転生のような形で今のお前がいる。

記憶を保持し、力も保持したままのお前。

ならば、誰かが憑依してしまったというのもあり得ない話ではあるまい?」

 

「…おいおい、冗談だろ?」

 

半信半疑といったカイネウスに俺は諦めたように笑ってみせた。

おかしな話だ。

女神パープルハートの体に、今のネプテューヌの魂…つまり人間の魂が憑依したなど。

だが、信じるに値した。

俺は信じると決めたんだ。

 

「じゃあなんだ、あの女神は人間の魂を持ちながらあそこまでやってるってか?」

 

「ギリシャでは無いわけではないだろう。

実際に神の血を半分宿した英雄などごまんといるんだからな。

ならば、10割女神の血、10割人間の魂があってもおかしくはない」

 

「おかしいだろ…どんな確率だよ。

つまり、俺は既に死んでる女神に対して喧嘩吹っ掛けたも同然じゃねぇか」

 

「そもそもポセイドンとの関わり何ぞ名前位しかないだろうに。

完全にお前の見当違いな恨みだ」

 

「…」

 

気が削がれた。

そんな様子だった。

流石の俺も、それを隙として突く気にはなれなかった。

 

この話は終わってないからな。

 

「…そりゃあ人間を守るとか宣って矢面に立とうとするわな。

神の癖に何言ってるんだと思ったがそういう裏があったのかよ」

 

納得した様子でカイネウスは頭を掻いた。

何だか、罰が悪そうだったが気を取り直したように槍を構える。

 

「話は終わりだ。

後は生きるか死ぬかの戦い。

つまり、戦士としての戦いだ…」

 

「こうして再び槍を交わすこと、光栄に思う」

 

「ハッ、死ぬ準備はいいようだな」

 

殊更死ぬつもりなど無いが、死なないという確証はない。

だが、この戦い…勝てる戦いではある。

ならば前進あるのみ。

命を賭ける価値が生まれるというもの。

 

拮抗した状況を作るなど、馬鹿馬鹿しい。

勝負は動かねばならない…そうだったな。

 

動き出したのは、意外なことに同時だった。

 

槍を振るい、ぶつけ合う。

膂力はあちらが上…多少の無茶の通る体でもあるからな、遠慮などしてこないか。

 

さて、こちらが突破しなくてはならないのはポセイドンの槍、そして加護のある体か。

 

「女神の時みたく、俺の耐性を突破できるかな、テメェに!」

 

「出来る出来ないではない、やるんだ」

 

…そうだ、俺はそこだけは変わらない。

必ずなってみせる。

仲間と共に歩み、高みへと。

 

そしてその果てに、俺は!

 

「英雄になる!!」

 

必ずそこにたどり着く、必ずだ。

その為の障害は打ち砕くのみ!

 

俺の想いに応えるように聖なる光が刃となる。

そうだ、延びろ。

より強固になり、あらゆるものを浄化する光となれ。

 

「分かるか、カイネウス!」

 

「根性論か。嫌いじゃないぜ」

 

聖槍が壊れる心配はない。

心配すべきは今も打ち合えている俺の体か。

単純に弾くだけでなく逸らしているからこそ打ち合いのように出来ているだけだ。

 

俺が弱っちい人間であることは変わらない。

 

「魂が叫ぶ…!俺が超えるべき壁だと!」

 

「ハッ!ここがテメェの終点だよ曹操!」

 

カイネウスの槍に水が集まる。

ポセイドンの槍、水がない場所でもこれほどの力が振るえるとは…

カイネウスが槍を振るうと海水が俺を囲う。

 

まずい、カイネウスの姿が視認できない…!

 

水の壁から槍が突き出される。

攻撃する瞬間、必ず殺気は感じ取れる。

感覚に頼りながら聖槍で海神の槍を防ぐが、このままではまずい…

ならば、こちらもそれを超えるまで。

 

「聖槍よ、力を見せろ…!」

 

聖槍が光輝く。

俺は、水の壁を一閃し壁を切り裂く。

その際に光によって矛先を伸ばしていたが…無駄だったか。

 

だが、水の壁は突破した。

 

「ハッ、これくらい突破できなきゃリーダー出来ねぇだろ!」

 

「ぐっ…!」

 

突破して早々、槍と盾によるラッシュ。

 

避けるなり弾くなりは出来るが…やはり自力が違うか。

だが、魔法を使えるわけでもない。

ましてや、ポセイドンの加護を超える神意が聖槍に残っている筈もない。

 

覇輝は…俺には過ぎた力だ、使えないだろう。

 

相手のペース。

しかし、俺の右には森…か。

 

「光よ…!!」

 

もう一度聖槍の光を解放する。

 

今度は攻撃でなく、目眩まし。

死なずの体とはいえ視覚は守れない。

 

「ぐおっ!?」

 

ここで槍を振るうのは悪手だ。

そもそも聖槍で突破できる体ではない。

 

そう、神器は神の造り出した物であっても神の加護があるわけでもない。

聖書の神の遺志が宿るといわれても、それは神自身の力でない以上は突破できないのだ。

 

よって、ここは森に入る。

一度息を整える。

 

俺に出来ることは槍を振るう事だけだ。

だが…それは聖槍の力を引き出しきれてないが故。

ならばその力を引き出せれば力の差は埋まるだろう。

 

「…禁手、か」

 

今一度、己に問う。

 

俺に出来るのか?…出来る。

俺にやれるのか?…やれる。

 

恐らく、これに関してはネプテューヌが関わらなかった場合の俺…つまりは外道の俺の方が一歩上だろう。

他は俺が上だが。

 

今の俺に問われるのは力ではない。

覚悟だ。

そこまで至れるかの精神を問われている。

ただの禁手…というのは間違いかもしれないが、今求められるのはそれではない。

禁手の亜種とされるもの…それが俺に必要だ。

 

 

 

 

─ふと、彼女の言葉が脳裏に浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

『例え誰かを倒したとしても、誰かを救えたから英雄になるんじゃないの?この中の誰でもない誰か(英雄派じゃない人)が胸を張ってあの人は自分にとってのヒーローだって言える存在が英雄なんじゃないかな!』

 

 

 

 

「──はは」

 

自然と、笑いが漏れた。

そうだ、そうだったな。

 

俺は何を悩んでいたんだ。

 

今更だろう、そんなものは。

覚悟など、とうに出来ている。

この槍、この身は女神のために。

俺たちを救い、俺たちを導いてくれた貴女のために。

 

ありがとう、ネプテューヌ。

 

諦めていた俺を、またお前は救ってくれた。

お前の言葉は響くな。

 

「誰かの手を取れる人間、そして誰かに認められてこその英雄。

俺がなりたいのはそれなんだ」

 

カイネウスが来る。

その槍はまた俺を殺しに振るわれるだろう。

 

だが、それを超えよう。

 

今、ここで。

 

 

 

「聖槍よ、我が心に応えろ。

その光は我が女神の為に捧げよう」

 

聖槍が呼応するように光輝く。

そうか、中にいるだろうお前も頷いてくれるんだな。

…ああ、そういえば親だった。

 

俺の内より光が七つ、球体となって外へと出てくる。

 

俺の考えていた禁手、それがこれだ。

調整が済んでいないが…いいだろう。

今のまま、超えてみせよう。

 

七つの光、『七宝』は静かに俺の背後へと浮かぶ。

 

今ここに聖槍は新たなる扉を開いた。

これが俺の英雄になるための力。

 

 

 

 

 

「|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》」

 

 

…長いな。

今考えたにしては長すぎる。

しかし、入れたい単語が多すぎてこれでも厳選したんだがな…

俺自身が転輪聖王となることだ、といった発想から前々から考えてはいたんだが…ううむ、こうなったか。

 

「おいおい、光りすぎんだろ…」

 

カイネウスが森に入ることなく話しかけてくる。

 

…確かに。

これでは見つけてくださいと言っているようなものだ。

いや、この光自体も聖なる光だから悪魔には効くが…あいつには効かないな。

 

「にしても、テメェの禁手がそれか」

 

「そうだ」

 

「派手さはねぇが…テメェが至った禁手だ。それだけの強さはあるんだろうな?」

 

「退屈はさせないさ。だが…これで俺がお前に優位に立った」

 

「へぇ…そりゃつまり、この体を貫けるようになったのか」

 

「今からそうなる」

 

「はっ──」

 

『七宝』の一つ、女宝(イッティラタナ)が輝き、俺含めて辺り一帯を光で包み込む。

といっても目眩ましにならない程度の光だ。

 

だが、これでいい。

 

「これよりは互いに死地、一撃がお前の体を貫くだろう」

 

「…俺が言うのもなんだが、様子を見るのもよくねぇもんだな」

 

「慢心したな、英雄カイネウス」

 

「ほざけよ、半人前」

 

『七宝』を体内へと戻し、その力を聖槍に回す。 

聖槍は今までよりも強く輝く。

この光は悪魔だけでなく、天使、果ては神すら焼くだろう。

その確信がある。

 

「疾ッ…!」

 

聖槍を振るう。

光の刃が聖槍の間合いを伸ばす。

海神の槍との打ち合いが始まる。

 

先ほどまでならば俺の力が及ばずに終わっただろう。

だが、それは先ほどまでの話。

 

ここからは俺が優勢だ。

 

カイネウスの膂力は俺よりも少し弱い程度にまでなっていた。

これにはカイネウスすら驚く始末。

 

「ッ!?さっきの光か!」

 

「女宝、『七宝』の一つであり…女限定ではあるがその異能を封じる光だ。その身は既に不死身ではなくなった、俺の槍…受ける覚悟はあるか!」

 

「ハッ!加護なしだぁ…?加護だけで戦ってる訳じゃねぇんだよ!!」

 

先程よりも鋭さは消えたもののキレは変わらず。

聖槍を盾で受け止め、槍の突きが迫る。

 

珠宝(マニラタナ)!」

 

「ハアッ!?」

 

球体の一つが俺の体から槍の一撃を守るように出現し、それを受け止めたと思えば別の場所…俺の隣の地面にまるで槍の突きが刺さったかのような跡が出来る。

 

珠宝(マニラタナ)の能力は攻撃の受け流し。

誰かに受け流せるが…俺の修行不足だな、他人にはまだ無理だ。

 

「驚くのはまだ早い。

その盾、壊させてもらうぞ!」

 

聖槍を突き入れるが、盾に防がれる。

しかし、それこそが狙い。

 

俺からまた珠宝と入れ替わる形で球体…輪宝(チャッカラタナ)が現れ、槍の形を取って盾へと突っ込む。

 

嫌な予感がしたのかカイネウスは盾を放棄し、その場から後退する。

 

盾は輪宝によって無惨にも破壊される。

 

「チートじゃねぇか!?」

 

「弱っちい人間なんでな、これくらいはハンデだろう?」

 

「ふざけんな、俺も人間だ馬鹿が!」

 

輪宝(チャッカラタナ)の能力、それは武器破壊。

ついでに余波も威力はあるため貫く力はあるが…期待はできないな。

 

さあ、盾の失くした今が好機。

 

「急に人間やめたような力使いやがる!」

 

「焦りが生じてきたな?」

 

「ハッ!馬鹿を言うのも休み休み言え!」

 

海神の槍の機能は封じた。

しかし、それでもカイネウスは強い。

ここまでされれば戦意喪失、或いは気勢が削がれても仕方がないというのにそういった様子もない。

 

苦境であれ獰猛な笑みは曇りもしない。

動揺があれどそれはそれと出来るのは素晴らしいことだ。

ああ、ヘラクレスもそんな感じだった気がする。

やはり、気の合う相手なのだろうか。

 

槍を振るう姿、自分が盾を破壊されようと加護を打ち消されようと戦えると吼える一騎当千の戦士のようであった。

 

「傷一つまだついちゃいねぇぞ!いつになったら俺を殺せるんだ!?」

 

槍で以てそれに応える。

既に何度も行われた打ち合い。

ここまで来れば互いの槍の手は知り尽くしたも同然だった。

 

聖槍の光はそれでも海神の槍を破壊するには至らず、輪宝も避けられる。

しかし海神の槍もこちらの聖槍を砕くに至らない。

 

だが、輪宝でなければ手はこちらにある。

 

故に、終わらせよう。

 

「一撃で終わらせよう、英雄よ!!」

 

「来いよ、半人前!!」

 

球体を二つ、俺の内より出す。

 

馬宝(アッサラタナ)!」

 

槍を振るい、避けられた瞬間一つの光球を飛ばす。

 

その瞬間、カイネウスの姿が消える。

…否、飛ばしたのだ、俺が。

馬宝の能力は対象の転移。

何処へ飛ばすも俺の自由、そこを俺が正確に把握していればだが。

 

今回は飛ばすのは容易だった。

 

何故なら…

 

「チッ、今度は転移か!?」

 

飛ばしたのは俺の上だ。

そして、最も無防備となった。

ならばこれで事足りる!

 

輪宝と被るかと思ったが、こちらは少し違ったな。

 

残りの一つをカイネウスへと向ける。

 

「対象を砕け…!」

 

「しまっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

将軍宝(パリナーヤカラタナ)!!」

 

 

 

 

 

将軍宝の能力。

それは単純な破壊力。

恐らく、二天龍の鎧すら突破できる破壊力を持っている。

 

それは寸分違わずカイネウスへと発射され、カイネウスは咄嗟に海神の槍を盾にそれを防ごうとした。

 

だが。

 

 

 

 

 

「ガ、ハッ…!!」

 

将軍宝を防ぐには足りず。

聖槍の一撃ならば耐えられるだろう海神の槍を、粉々に砕いた上でカイネウスへと直撃した。

 

幸い、防がれた分威力が抑えられたのか腹に穴が空くなんて事にはならず、上空からカイネウスは落下した。

 

油断なく槍を仰向けに倒れているカイネウスの首へと突き付ける。

 

「終わりだ」

 

「……の、ようだ」

 

「随分あっさりと認めたな」

 

「ハッ、足掻いて届くならやったんだがな。

…敗者は敗者らしく、大人しく首を差し出すさ」

 

「その意気やよし」

 

目を瞑り、死を待つカイネウスに槍を突き出す─

 

 

 

 

 

─事もせずに、禁手を解除し槍を収める。

 

カイネウスは殺してくれると思っていたからか、怒りの視線を俺に飛ばす。

 

「どういうつもりだ、テメェ。生き恥を晒せってか!?」

 

「敗者は勝者によって一つ位は言うことを聞かねばならない。

そうだろう?」

 

「…何だ、生きて罪を償えとか言うつもりなら…」

 

「ああ、そう言うつもりはない」

 

だが、殺すつもりはない。

最初はあったが…失せた。

 

殺すしか止める手立てはない。

そう思っていた。

だが…今は違う。

 

「お前にはついてきてもらう。そして、謝ってもらわねばならない」

 

「は──マジで言ってんのか」

 

「本気と書いてマジと読む。本気(マジ)だとも」

 

「じゃあ、何だ。テメェは俺を生かして、生かされた俺はあの女神…ネプテューヌに頭下げろってか!」

 

倒れていたカイネウスが起き上がる。

今にも俺に襲いかかりそうな語気の強さ。

 

俺はそれに頷き、従えと視線で訴えるしかない。

 

殺す機会を自ら手放したのだ。

後はこれくらいしか出来ない。

 

「…ハッ、ハハハハハ!!面白ぇ」

 

しかし、カイネウスは自身を打ち倒した相手に従わない者ではない。

良くも悪くも、弱肉強食思想なのだ。

 

「いいぜ、テメェが勝者なんだ。俺はそれに従うさ」

 

「…ありがとう」

 

「嫌で嫌で仕方がねぇが改めて考えてみれば…女神だからと決めつけすぎていた」

 

だから、これから見極める。

そんな言葉と共にカイネウスはついてくることを俺に言う。

 

…これでいいんだろう。

貴女についていくと決めた俺が、その夢を壊すのはあってはならない。

誰一人欠けないハッピーエンドを目指すのなら、俺もそれについていく。

 

「さて、では戻るか」

 

「さっさと案内しろよ」

 

「何だお前図々しいな…」

 

「ハッ、生かしたのはテメェだろ。

ああそうだ、テメェの禁手…あれの名前何だ?」

 

「ああ、あれは──やめておこう」

 

「は?」

 

あれは一々口に出す名前じゃない。

だからやめておく。

舌を噛みそうな名前だとか、思い付きとはいえあんな名前にしたのが恥ずかしいからとかではない、断じて。

 

さて…後は、二人か。

 

ネプテューヌ、お前はどう選択する?

頼光を殺すのか、生かすのか。

手を取り合える未来を、手繰り寄せてくれるのか。

 

俺はどんな選択であれついていこう。

 

頼んだぞ、主人公。




カイネウスを倒し、殺さずに謝罪会見へ連行。



・『???』ルート解放の条件を一つクリアしました。

1.パンドラ、カイネウスを殺さない
2.??を???
3.???へ??


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最後の戦いも近いし、精神統一!…疲れる!

この戦いで、燻っていたネプラー達が一斉に世に放たれる。
そうなれば、俺の勝ちだ!(挨拶)

さあ、京都編の戦闘も後数話…ついてこれるか?


やっほー!今猛ダッシュ中のネプテューヌだよ!

あ、今更だけど10周年おめでとう!

 

曹操にカイネウスを任せて、一度八坂さんの所へ戻る。

リアスちゃんと朱乃ちゃんへの説明と、皆が戻ってるかどうかの確認。

 

携帯を取り出して時間を見るともう夜だった。

夜だけど、元々薄暗い裏の京都にいるとそんな実感はなかった。

それが何だか、ありがたく感じた。

自分は今日は寝ることはないだろうから。

何処か確信のある予感が自分にはあった。

 

八坂さんのいるお屋敷に戻った自分達は急ぐように中に入る。

 

「よくぞ戻った」

 

八坂さんの労りの言葉が自分達を迎える。

八坂さんの側には…

 

「いいですか、そんな無茶をしたら私だけでなく他の皆さんにまで心配をかけて精神的なダメージを─」

 

「はい…すんません…」

 

「あ、あはは…」

 

「スヤァ…」

 

正座させられて説教を受けている一誠と説教をしているあーちゃん。

乾いた笑いしか出ていない木場君と寝てるゼノヴィアの姿があった。

 

「ただいま!」

 

「あ、ネプテューヌさん!おかえりなさい。

あ、でも少し待ってくださいね。イッセーさんの無茶を叱ってるところなんです」

 

「あーうん、それはいいんだけど「姉ちゃん!?」ネプギアは?」

 

「ネプギアさんですか…」

 

「先輩、恐らく鏡の世界を乗っ取ったゲオルグさんに転移させられたんだと思います」

 

「そうなんだ…木場君は怪我ない?」

 

「僕は大丈夫です。

僕よりも、イッセー君やゼノヴィアの方が無茶をしましたね」

 

「うーん…あーちゃんが説教してるし、いいかな!」

 

ネプギアやゲオルグ、曹操は心配だけどここに他の皆がいるってことは勝ったんだよね。

あれ、でもトリスタンと呂布の姿が見えないや。

 

「あ、呂布とトリスタンなら八坂さんが封印してます」

 

「事が済み、八百万の神への言及が済めば解放する。

安心するが良い」

 

「そっか…でも、無事勝って良かったよ!」

 

「…ねえ、ネプテューヌ?そろそろ事の説明を頼みたいのだけど…」

 

「そうだった!えっと──」

 

そこから、座って休憩しながら朱乃ちゃんとリアスちゃんに説明を始める。

その間、シャルバが木場君にネプギアは本当に無事なのかって肩を揺すりながら殺気が漏れるくらい怖い顔をしながら聞いてきて、木場君は分からないなりに大丈夫だと思いますって言うとまだ気になるけど問い詰めても仕方ないと思い直したのか座る。

 

親馬鹿だなぁ…

 

説明を終えて、今の状況を整理する。

 

「呂布とトリスタンの二人は倒して、曹操はカイネウスとの一騎討ちでしょ?ゲオルグはネプギアを呼ぶくらいだから…パンドラかな」

 

「残るは…」

 

「パラケルススと頼光ですわ」

 

「…だが、パラケルススに関しては簡単に倒せるだろう。

奴は禁手という切り札まで晒してきたのだからな」

 

「…うーん……」

 

「何だ、女神」

 

「正直、私としてはそれだけで判断するのは良くないと思うんだ」

 

「錬金術…それもパラケルススの家系ともなればかなりの使い手。

手の内はまだまだあると思うべきね」

 

リアスちゃんも同じようで自分の言葉に続くように発言する。

シャルバも、それもそうかと思い直したようで考え込む。

朱乃ちゃんは自分の後ろまで来ると肩を揉み始める。

うん、なんで?

 

「あの、朱乃ちゃん?」

 

「あら、どうかしました?」

 

「なんで肩揉み?」

 

「凝ってるかと思いまして、案の定少し固いですわ」

 

「あ、うん…」

 

あ、そこ気持ちいい。

痛い!?そこは少し痛い!?

待って、その楽しくなってきたぜ!みたいな表情やめて!

 

段々痛いところを揉み始めるのやめて!?あ、そこは痛気持ちいい!でも痛い!?

 

「少し、気負っているかと思いまして」

 

「元とはいえ人間一人を相手にする、それが貴様にとっての重荷なのか」

 

「…」

 

朱乃ちゃんの心配する声とシャルバの純粋な疑問に押し黙る。

 

どうなんだろう。

頼光と戦うことが重荷なのか、それともこのままだと殺し殺されの戦いになるから重荷なのか。

 

「分からないや」

 

「ネプテューヌ…」

 

「ねえ、皆で手を取り合うって…そんなに難しいことなのかな」

 

「夢物語だ」

 

「シャルバ!」

 

「グレモリーの娘、私は現実的な意見を述べたに過ぎん。

あり得ない、出来るわけがない。そういった事実がそれを否定できてしまう」

 

「そうだけど…」

 

リアスちゃんはシャルバを責めるように呼び掛けるけど正論によって悔しげに顔を俯かせる。

シャルバは自分を見て、ため息をつく

 

「貴様はその程度で悩むのか」

 

「…その程度じゃないよ」

 

「その程度だろう」

 

自分の弱い否定も冷静に潰す。

 

「…女神パープルハートはその程度で折れてしまうのか?」

 

「ぇ…」

 

「あまり私を失望させてくれるな。ネプギアもお前のその姿を見て何を思うだろうな」

 

「何処へ行く?」

 

「外の空気を吸う。監視をするなら好きにしろ、妖怪」

 

そう言って、シャルバは出ていった。

終わってくれるなという期待が込められた言葉だった。

自分はその程度の事も壊せないのかと、煽られるようでもあった。

 

「ネプテューヌ」

 

「え?ねぷっ」

 

リアスちゃんに引っ張られて、体が倒れる。

 

頭が柔らかい何かに乗っかる。

太ももだった。

リアスちゃんの膝枕だった。

 

「リアスちゃん?」

 

「今は休みなさい。らしくもなく考えすぎよ」

 

「…うん、ごめんね」

 

「謝ることじゃないわ」

 

「…ありがとう」

 

「あらあら」

 

頭を優しく撫でられて、目を閉じる。

重かった心が軽くなる。

支えられているとより感じる。

 

考えすぎ、かぁ…そうなのかも。

行き当たりばったりが自分なのに、今までの事が怖くて賢いわけでもない頭で考えすぎてた。

 

気付かせてくれて、ありがとう。

 

感謝と共に、少しだけ眠る。

起きたら、元気なネプテューヌでいるから、今は少し寝させて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出て、空気を吸う。

自然の多い空気は好きだ。

少なくとも…そう、東京のような澱んでしまった空気に比べ、綺麗だ

 

悩み、もがき、なお悩む。

それが美徳と取るか、醜悪と取るかは…さて。

それはその人物の性格が出るのだろう。

私には分からない。

悩みというのは時と共に解決するもの。

そう、定義してきた。

 

無論、時が解決しなければ動くしかないのだが…基本的には時間が解決するものだ。

悩みというのは考えても仕方がないから悩みなのだ。

犯罪の道具がどうとかで考えるのは悩みではなく推理。

 

少し、意味合いが違う。

 

聖も魔も関係無く、人々全てと手を取り合う。

ネプテューヌという女神はそれ故に苦悩が多いのか?

しがらみがあまりにも多いのか?

 

分からない。分からないが、気に食わないと思った。

何かを犠牲にするしかない未来を変えてきた筈なのに、何故悩む?

気楽な考えをさらけ出し、下らない思惑を吹き飛ばす。

それが貴様である筈、私の倒したいと願う女神である筈だ。

落ちぶれて視野を狭めるのだけは勘弁して欲しかった。

見苦しく、つまらなくなっていく存在を見るもの程気の冷めるものはない。

故に、此度だけは私なりの激励を送った。

それによって考えを改めるかは女神次第だ。

 

「あ、お父さーん!」

 

「帰ってきたか…」

 

「連戦という形でお借りした。負担をかけすぎたこと、改めて詫びる」

 

嬉しそうにこちらへ走ってきたネプギアの頭を撫でながら、追い付いたゲオルグの謝罪を聞く。

…背負ってるのは敵だった少女か。

 

「構わんよ、ネプギアにもいい経験になっただろう」

 

「はい!それに、助けになれて嬉しいです!」

 

「…そうか、ならばこれ以上の謝罪はやめておく」

 

そう言って、ゲオルグは一足先に屋敷へ入る。

ネプギアも疲れたようで、珍しく私の腕を引っ張りながら中へと入る。

 

…ふむ、成長したかな、これは。

 

「ネプギア」

 

「あ、はい、どうかしましたか?」

 

「お前はネプテューヌが自身の願いをねじ曲げてでも勝利を掴む…そんな女神に見えるか?」

 

パチパチ、と瞬きを数回。

意味を頭で理解してから、少し考える。

 

その後、困ったように笑う。

 

「私もお姉ちゃんと会ったのは今日が初めてです。だから、しっかりとこうだって言えません…でも、お姉ちゃんは全部分かった上で自分の願いを通す。そんな人だと思うんです」

 

「…そうか、そうだな。流石は我が娘だ」

 

頭を一度撫でてからまた歩き始める。

 

貴様はこの程度で立ち止まってしまうちっぽけな存在なのか?

否と私は叫ぼう。

貴様がその程度ならば私は負けなかった筈だ。

 

ここまで戦おうなど考えもしなかっただろう。

下らない妄執を捨て去り、挑むことすらしなかった。

私に貴様の輝きを見せてくれ。

曇ってばかりの魂でなく、貴様という我を通す姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

段々と、意識が覚醒する。

目を開けると、仰向けだったようでリアスちゃんの顔が見えた。

微笑みが自分を出迎える。

 

「起きたのね」

 

「うん、ありがとね、リアスちゃん!」

 

起き上がって、伸びをする。

うん、すっごく休めた。

お陰で、頭がスッキリした!

 

「…もう大丈夫?」

 

「大丈夫!すっっっっごく考えてから寝たんだけどね」

 

「ええ」

 

「なんっっっっにも分からなかった!」

 

「あら…そうなの?」

 

予想外、という感じじゃなくてやっぱりといった感じでリアスちゃんは続きを促す。

他にも聞いてる皆がいるけど、それでも自分はリアスちゃんに話したかった。

 

「何にも分からないから、取りあえず解決する!」

 

「頼光は?」

 

「倒すよ!でも殺さない!私はどんな困難でも手を差し伸べる事を諦めないよ!」

 

誰も殺さない、もう誰も犠牲にしたくない!

だから、話し合いたい!

誰かを犠牲にするなんて間違ってるもん!

 

「それが貴女の選んだ道なのね」

 

「うん…ごめんね」

 

「無茶をしないなんて思ってないわ。

その無茶に助けられてきたのも事実だから。

だから──絶対に勝ちなさい。貴女の決意を通すために完膚なきまでに頼光を倒しなさい」

 

「うん!」

 

信じる心。

それが自分の強さなのに、自分で疑ってた。

自分の道が頼光を殺すことでしか進めない道だと、思い込んでた。

でも違うよね。

 

だって自分はネプテューヌ!

この作品の主人公オブ主人公で、絶対にハッピーエンドを諦めないって決めた女神なんだから!

もう疑わない、迷わない!

その為にも前に進んで、進めない壁に当たっても壊して進むんだ!

 

やってみなきゃ分からない、やらないと始まらない!

そうでしょ、皆!

ごめんね、みっともないねぷ子さんを見せ続けて!

ここからはしっかりとムーヴ決めちゃうから見ててよね~!

 

「目指すは打倒頼光じゃなくて、反英雄派とも手を取り合う未来!レッツゴーだよ!」

 

「場所分からないでしょ?」

 

「あ、そうだった」

 

─ご心配には及びませんよ

 

そんな声と共にいーすんが自分の中から現れる。

その表情は安心したといった表情で、自分がまた心配させちゃったと理解して反省する。

反省はしたけどまた心配かけちゃうかもしれないから許してね!

 

「こんなこともあろうかと、ヨリミツさんのイバショをサーチしておきました( ´ー`)b」

 

「さっすがいーすん!早速乗り込んじゃおう!」

 

「待て、女神」

 

黙ってたシャルバが話し掛けてくる。

 

「どったのシャルバ?これから出撃するって時に?」

 

「私も行く。あの若造…曹操が居ない以上、マトモな戦力は私くらいだろう」

 

「待ってください、私も…」

 

「いいや、貴様は待機だ。そこの吸血鬼の小僧もだ」

 

「はうぅ、いきなり指名されてビビります!?」

 

「…何故か聞いても」

 

「相性が致命的に悪すぎる。貴様は煙を掴めるのか?」

 

「…」

 

悔しげに拳を握り締める小猫ちゃんに近付いて、よしよしと頭を撫でる。

 

「大丈夫大丈夫!小猫ちゃんもギャー君も頑張ったから!最後は主人公の私が決めなきゃね!

ここからは最強無敵なねぷ子さんが頑張っちゃうから安心してよ!」

 

「…先輩…はい、分かりました。お気を付けて…」

 

「が、頑張ってください…!」

 

「姉ちゃん、俺も…」

 

「皆待機!マトモに動ける子、居ないでしょ?」

 

朱乃ちゃんやリアスちゃんも待機。

何かあった時、指示を出せる人がいないと。

八坂さんもいるけど、人手があるに越したことはないよね。

 

シャルバを見て、頷く。

 

「よろしくね、シャルバ!」

 

「ふん、借りを返すだけだ。それが終われば…貴様との雌雄を決する」

 

「うん、それまでは仲間だよ!」

 

「…ふっ」

 

「お姉ちゃん…ごめんね、私も呂布と鏡写しの相手に消耗しすぎちゃって…」

 

「ううん、こっからはお姉ちゃんの活躍だからね!

十分頑張ったから、ネプギアは休んでて!」

 

申し訳なさそうなネプギアを安心させる。

謝ることなんてないよ。ネプギアがいなきゃ、もっと大変だった筈だからね!

 

うん、お姉ちゃんが頑張る番だよね。

責任重大って奴!

 

「よーし、取りあえず、曹操が戻った来たらよろしく!」

 

そう言ってから、ゲオルグの隣で座布団を枕代わりにして寝る女の子…パンドラを見やる。

 

「皆、脅かさないようにね?まだ小さい女の子だから」

 

「安心しろ、そんな奴はここにはいない。ほら、さっさと行け。

頼光を連れて戻ってこい」

 

「うん、ねぷ子さんにお任せ!」

 

八坂さんを見ると、ただ微笑んで頷く。

頼んだぞ、といった視線であり…単純に良いものを見れたといった視線でもあった。

 

そうして、自分はシャルバと共に頼光のいる場所に向かう。

いーすんのナビを頼りにしながら、仕掛けも何もない道を進む。

 

「…シャルバは、パラケルススと戦うの?」

 

「二体一がしたいのか?」

 

「いや、そう言う訳じゃないんだけどね!だったら、殺しちゃダメだよ!」

 

「……貴様が今のリーダーだ。従うとしよう」

 

「ありがと!」

 

「死なない程度には痛め付けるやも知れんがな?」

 

「ねぷっ!?そういうの良くないと思うなぁ!」

 

「クックッ…」

 

そうして、急ぎ目に歩いていると、いつの間にか霧…ううん、煙が立ち込める。

もしかして、と思ってシャルバを見ると気に食わない様子で煙の先を睨んでた。

 

「女神の姿になって、行け。いいな?」

 

「…うん」

 

シャルバの指示に従って、女神化する。

何だか久々な気がするけど、変身だよ!

 

「シャルバ、どうか気を付けて」

 

「貴様の方こそ倒されてくれるな」

 

大丈夫そう。

だって凄い怖い笑み浮かべてるし…

あれから強くなったっぽいし任せても平気だよね!

 

そう思って上に飛んで、頼光の所まで全速力で向かう。

 

多分、邪魔になるだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神の気配が行ったのを確認し、黒帯を展開する。

 

「そちらも一騎討ちが望みだったということか」

 

「…答えることはありません。これから、貴方は死ぬのですから」

 

「臆病者がよく吠えた。だが、貴様の仲間は貴様を救わんぞ」

 

「…パンドラも敗れてしまったのね」

 

姿は見えない。

だが、女の声はよく聞こえた。

近いのか、遠いのか。

反響しているかのような声を聞く。

 

結局、己を出すことの出来ない愚か者だ。

寄り添おうとして、寄り添うことの出来ない人間。

 

分からないなりに理解しようと学んできた。

故に、私には分かる。

良心に押し潰されそうになっているのだ。

 

ならば放棄すれば良いものを。

 

「実に下らない。故に、貴様は私に敗れるのだ」

 

「…どうでしょうね」

 

「ほう?」

 

「愚か者で、臆病者な私ですが…それでも戦う覚悟は出来ている。

貴方を倒して、あの女神も倒す…それだけなのですから」

 

「倒す?倒すだと?クックク…笑わせるのも程々にしてくれ。

私はともかく、女神を倒す?貴様がか?」

 

これ程可笑しい言葉を吐くとは…

道化ここに極まれりというものだ。

私を差し置いて、あの女神を倒すときた。

 

「図に乗るなよ人間。

あの女神は私の獲物だ。あの堕落した超越者にすら渡してなるものか。あれを倒すのは私だ。

それを貴様ごときが倒すなど…身の程を弁えるべきだ」

 

「…狂った悪魔、貴方は救えない。

生物として破綻する前に、私が地獄へ誘いましょう」

 

「ハッ、己も救えぬ愚者がよく吠えた。

ならばその心、私が砕いてやろう」

 

不様に倒れ伏す貴様を、私が嘲笑ってやろう。

 

故に、その傲慢が口を開く前に倒れた方が身のためだ。

私の機嫌がこれ以上損ねられれば…さて、どう潰すかを考えてしまうやも知れんぞ?

 

黒帯が私の感情に呼応するように私の周りを這い回る。

実体のない軍勢で何処まで足掻くか、今一度確かめるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いーすん、こっちで合ってるの?)

 

─はい、問題ありません。そのまま進んでください

 

(分かった!)

 

いーすんのナビの通りに進んでいく。

まさか、裏の京都に潜んでたなんて思わないよ。

でも、考えておくべきだったね。

パンドラっていう鏡を経由して移動が出来る子がいるんだからそんな芸当も出来るってことだよね。

うーん、ゲオルグ居なかったら詰んでたねこれ。

 

シャルバは大丈夫として、問題は自分かな。

前はジャンヌが一緒だったからいけたけど、今回は正真正銘自分一人。まあ、自分から一人で行くって言ったんだけどね!

 

─彼も禁手に至ってると思われます。お気を付けて

 

(うん、ありがとう、いーすん!)

 

そうして飛んで、森の中に一つの開けた場所を見つける。

 

そして、その中心に立つ人を見つける。

目が合った。

とても穏やかな笑みを浮かべてるのが分かる。

そこに降り立つ。

 

待っていたんだね、ここで。

 

 

 

「待たせたわね、頼光」

 

「ああ、随分と待った」

 

何気ないような会話をする。

それは、まるで最初から敵じゃなかったかのような形。

でも戦わなきゃいけなくて。

 

頼光は悟ったように、残念そうな顔をする。

 

「俺と彼女を除いて、皆やられたか…」

 

「安心して、捕縛しているだけよ。色々と聞いた後は監視とかは免れないと思うけど、それでも生きられるように皆にお願いする」

 

「…そうか、ありがとう。お前が敵でよかった」

 

こんなに穏やかな会話が出来るのは、自分が認められているからだと思う。

じゃなきゃ、人じゃない自分を頼光が受け入れる筈がない。

だからこそ、ここで止める。

 

頼光は刀を手に持つ。

 

「構えろ、ネプテューヌ。既に理想は語った、果ても過程も語った…ならば、これ以上の問答は不要」

 

「…そうね。私は、貴方を止めるわ」

 

自分も刀を構える。

人と人外が手を取り合う…その為にもこの戦い、押し通るよ。

絶対に負けられないし、勝たせない。

 

「日ノ本から貴様らを排斥する。

その為にも…勝たせて貰うぞ、ネプテューヌ!!」

 

「いいえ。勝つのは私よ、頼光」

 

勝って、皆と共に未来に進む。

自分は勝つ。

あっちは殺す気で来る。

 

でも、自分は殺し合いをしに来たんじゃない。

手を取り合う為に来たんだ。

だって自分は主人公だからね!

勝つと決めた戦いは勝つし、やると決めたことはやり通す!

ねぷ子さんは欲深いんだよ!

 

さあ、しっかりと決めちゃうよ!!



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負けられない戦いだよ!

やっほ(挨拶)

色々と忙しくて投稿が遅れました。
許し亭許し亭…

前半はシャルバ、後半からねぷ子です。


黒帯が動き、襲い掛かる魔獣どもを凪払う。

所詮、獣といえど煙は煙。

そして、神器による力ならば我が敵ではない。

これは神器を封殺することを目的として作り、改良を重ねてきた道具なのだからな。

 

あの超越者を真似るようで苛立たしいが力は力だ。

うまく使いこなしてやろうとも。

 

「厄介な道具…」

 

「貴様ら神器保有者の成長は目に余る。故に封じるのは当然だろう?」

 

「まさか、悪魔に言われるとは思わなかった。

しかし、道具の勝負なら錬金術士の私が上ということを思い知らせてあげましょう」

 

「はっ、学芸会をしたいのなら穴蔵に戻ることだ」

 

次の一手などくれてやるものかと黒帯が魔獣を無視してパラケルススを突き刺しに伸びる。

 

「幻煙よ、盾となりなさい!」

 

「無駄だ」

 

魔獣が割り込んで来るがそんなもので止まる道具ではない。

紙切れと変わらないとばかりに魔獣を突き刺し、その奥にいるであろうパラケルススも突き刺す。

 

…手応えがないな。

 

それに、煙が視界を阻害するせいで見失った。

これが狙いか、錬金術士。

 

ならば強引に凪払うだけのこと。

 

黒帯が折れ目なく伸び、刃物がごとき鋭さを得る。

周辺ごと、斬り込んで見るとしよう!

 

「斬れ」

 

私の周辺を黒帯が一周して、斬る。

ただの生身ならば一撃だが…戻ってきた黒帯には血が付着した様子も無い。

 

そして、感知範囲を広げるかと思った直後。

地面が突然揺れだす。

 

「ぬ…!」

 

幸い倒れる程の揺れではないが、一体何が──

 

 

 

─瞬間、何かが私の姿を覆う。

影…?

 

上を見ると、そこには木の根が振り下ろされる瞬間だった。

 

「何っ…くっ!」

 

横に避けることで根の叩き落としから逃れた。

それにしても大きすぎる…

急激な成長か?

これが錬金術…ということか?

 

「一つではありませんよ」

 

「なるほどな…!」

 

環境を利用し、有利状況を作っていく。

じわじわと追い詰めてくるタイプか!

私とほぼ同じ戦闘スタイル…

 

ならば、こちらもその手に乗ってやるぞ…!

 

襲い掛かってくる木の根を避け続け、人差し指はあるだろうサイズの蝿を十匹召喚する。

貴様の熱を追う蝿だ、逃れられるかな!

 

「これは…!」

 

「ハッ、貴様の体力が、何処まで持つか…見物、だな!」

 

黒帯で時に斬りながら根の叩き落としを避ける。

 

しかし、根だけではない。

魔獣、四肢のある獣だけでなく空から襲い掛かる種類まで現れ、四方より攻められる。

 

確かに、この状況は他のメンツならば対処の難しい状況だ。

だが…私はあの女神を打倒することのみを考え鍛えてきた!

 

「嘗めるなぁぁぁぁ!!」

 

「っ…!?」

 

魔力の爆発。

私を中心として魔力が風となって煙を吹き飛ばす。

その神器の弱点は簡単だ。

霧と同じく風によって無力化出来ること。

それは衝撃波による風圧でも変わらん!

 

煙が晴れたことにより、三匹にまで減ったもののしつこく追い回してくる蝿を煙の魔獣で対処するパラケルススを見つける。

 

「捉えたぞ」

 

「っ、まだ!」

 

黒帯が迫り縛り上げようとした直後に蝿が魔獣に殲滅され、パラケルススが地面に手をつく。

すると、地面が隆起しパラケルススを持ち上げる。

 

馬鹿な、これも錬金術だというのか…!?

 

「貴方の黒帯は確かに厄介…ですが、動き自体は直線的!」

 

「ぬぅ…!」

 

隆起した地面に突き刺さり、抜け出そうとする黒帯が固定化されたように動けなくなる。

限定的な地面の操作…なるほど、過小評価をしていた…

 

そのせいで私は信頼する武器を一つ失ったのだ。

 

蝿も召喚できるが…さて、どう立ち回るか。

 

「黒帯が封じられたことは驚いた…だが、それで私に勝てると思ったのなら間違いだ」

 

無数の蝿を召喚し、円陣を組ませる。

黒帯の使用不可、これでようやく互角になった。

それだけだ、勝つのは私だ。

 

魔力の波動が煙を晴らし、パラケルススへと迫る。

煙の魔獣も意味を為さない。

それだけの魔力を込めているというのもあるが、そもそもがこういった手段に無力なのが災いしているのだ。

 

魔獣創造を模したのだろうが、比べるのも烏滸がましい程に維持が出来ていない。

 

「私は負けられない…!」

 

地面が隆起し、壁となって波動を防ぐ。

奴の行う錬金術…恐らく、消費する何かはある筈だ。

魔法使いのように魔力のようなものを消費する筈。

それまで耐えるか…?

 

…いや、それはない。

私の手で倒す。

こだわりのような物だが…こういうのは一つはあった方がいい。

 

「いつまで持つかな」

 

「くぅ…!どうして、私の想いに応えてくれないの…!」

 

悔しがるような声。

煙がこちらまで伸びないように心掛けながらその声に耳を傾ける。

なるほど、神器の成長…それがこいつにはないのか。

だから開発した。

 

魔獣創造のような能力を、例え劣化でもと求めた。

まるで私のようではないか。

神器使いを封じるために黒帯を作成した私と何も変わらぬ。

 

「貴様に迷いがあるから神器は応えない」

 

「迷いなんて…」

 

「ならば、貴様はなぜ戸惑う?私を殺そうと思えば薬品なり何なり使うだろう。貴様には殺意が足りん、戦う意思が足りん」

 

「…足りない?」

 

「貴様は戦いたいのではない。まずその段階から履き違えている」

 

「…私は…いいえ、私は戦わなくてはならない!

頼光達を止めることもせず、ついていき…あの子に絶霧を移植したあの時から!私は許されることを放棄した!

だからこそ、私は─」

 

「救ってほしかった」

 

「──っ!」

 

女の叫びは悲痛なものだった。

言葉を紡ぐ度に目が潤んでいくのだ。

見るに堪えないのではない。

 

私からすれば今ならば黒帯を拘束する地面を壊し、パラケルススの喉元を貫く。

 

…だが、私は今借りを返している最中でな。

殺すことは禁じられている。

痛め付ける事すら女神は許さないだろう。

 

「貴様はその一言を言えず、行き止まりを進もうとしていたに過ぎない。故に、成長などある筈もない。誤った道を進む者がどうして先に進めようか」

 

「なら、貴方は!?貴方は…誤ってないと!?」

 

ならばお前はどうなんだと逃げるように問い掛けてくる。

私に聞くのか?

 

「誤る筈がない、私は私の全てを肯定する」

 

「なっ…」

 

「神ロキを殺害したことも、魔王どもに反旗を翻したのも、女神を創造する禁忌を犯したことも…私の中では何一つとして間違いはない。全てが私を構成する事柄であり、自己肯定の素材だ」

 

傲慢と思うのならば思うがいい。

だが、私は正しい。

何故なら私が正しいと思う行動をしているからだ。

 

正しいと思うためなら借りを返すために倒したい女神に協力だってするし、誰かを殺すことも厭わない。

結局は誰もが好きなのは己だ。

自分が一番可愛いのだ、愛すべき者なのだ。

つまり、己を肯定できない者が成長できないのは必然。

己を好きでなくなっているのだから。

 

「ではこちらからの質問だ」

 

「ぅ…」

 

「貴様は己を肯定できるのか?正しいと思えているのか?

本当に、戦うことが貴様にとっての正しさなのか?」

 

「わた、しは…」

 

「願いも吐き出せない人間が、私やあの女神の前に立つんじゃない」

 

攻撃は完全に止んだ。

それは精神がそれどころではないということであり、この戦いの終わりを示していた。

 

…呆気ないと思いはしたが当然か。

この女はそもそも戦う人間ではないのだから。

表立って戦うのではなく、裏で懸命に戦う存在。

 

私には理解できんがそういうものなのだろう。

 

パラケルススは顔を歪めながら膝をつく。

 

「私は、どうすればよかったのですか…私は、止められなかった。

あの目を見て、止めましょうと言えなかった…加担してしまった私は戦うしかないのに…!」

 

「…知ったことか、己に傲慢になれよ人間。

願いのない人間などあるものか。貴様は、反対の方向を進んだ。

空回り等当然だったのだ。

故に、問おうか…貴様、何をしてほしいんだ?」

 

「私は…私は…──」

 

 

 

 

 

 

 

「─あの人を、助けて…!」

 

 

血を吐き出すようにして口から出た言葉は他者を思いやる言葉だった。助けてほしいと、救ってやってほしいと。

…私には叶えられるものではない。

ネプギア一人で手一杯なのだからな。

 

私は持ちきれない枷は持たない主義だ。

 

だからこそこう言おう。

 

「叶うだろうよ」

 

「どうして…?頼光は人外をあれほど…」

 

「関係ない」

 

「えっ」

 

「そんなもの、あの女神には関係無いのだ」

 

ふと、クルゼレイを思い出す。

奴も憎しみを抱えた悪魔だった。

利用してやろうと言う魂胆しか無かったが…それでも、奴の憎しみには共感はできた。

だが、そのクルゼレイにも女神の言葉は届いた。

戦うことをよしとせず、言葉での解決を第一とする女神の言葉は奴の憎しみを凌駕した。

…私の期待が大きすぎるか?

否、否である。

奴ならばそれくらいは出来る。

そう決めたと言ったなら、やるのが奴だ。

 

「それで?続けるつもりか?」

 

「……本当に、女神は…頼光を救ってくれますか?」

 

「さあな、未来を見ることは私には出来ん」

 

なぜ私はここまで奴に執着しているのか。

心の底からそれを理解しているからだ。

奴は私を止めるだろう。

私の目的は変わらん。

冥界を我が物とし、新たなる魔王として新たなる世界を築く。

それは変わらない。

だが、その過程において女神は必ず止めに来るだろう。

故にこちらもその戦いを楽しむのだ。

 

今は関係ないことではある。

だが、こいつらの目的を聞き、現状を見ると他人事とは思えなかった。

私もこいつらと同じになるのではないか?

 

…否、勝利の栄冠は私にある。

生温い場所にいすぎたか。

ネプギアの戦闘訓練もそろそろレベルをあげないとならんな。

今回の戦いは経験値をかなり得られたことだろう。

ならば、レベルも二、三段階程上げても問題はあるまい。

 

「…貴方はもう先を見据えている。強いのですね」

 

「…勝たねばならない相手だからな。考えることは、山ほどある」

 

パラケルススに戦闘の意思はもうない。

この戦いは終わった。そちらはどうだ?

死を以て終わる筈の戦い…貴様はそれをどう変える?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀同士のぶつかり合う金属音が響く。

腕に伝わる力強い振動は想いの強さを教えてくれているかのようで、生半可な覚悟では受けきれない程の物だと知る。

きっと、さっきまでの自分なら駄目だった。

殺意に殺意で応えるのが戦いなんだと諦めるところだった。

違うんだよ、そうじゃない。

欠けちゃいけないんだよ、自分の目指すハッピーエンドは!

それは頼光も同じこと。

 

出来る領分じゃないのかもしれない。

頼光の覚悟を踏みにじるような戦いをしようとしているのかもしれない。

でも、死んでしまったら全部おしまいなんだ。

夢を語ることも実現することも託すことも出来ない。

聖書の神様が、自分に託しきれなかったような…そんな辛い事はあっちゃいけない。

自分の見える範囲であったとしても、そんなちっぽけな悲劇だって許さない。

 

「夢は夢でしかない、現実を見ろ!人外どもが何をして来たか、何を隠してきたかを知ったいるだろう!」

 

頼光は声を大きく張り上げて自分に言う。

無駄な理想だと、大きすぎる理想など身を滅ぼすだけだと。

刀を振るう力がまた強くなる。

それでも、自分はそれを弾く。

 

「何度お前が平和を叫ぼうと愚かな人外どもは争いを求める!

お前の努力は何の意味も為しはしない!故に、その理想を砕き、俺自身の手で人外どもをこの国より排斥するのだ!」

 

「例え私のしていることが小さな事だとしても…ただ排斥するだけで終わるなんて事にはしたくない!どんなに小さいことでもきっと実ってくれる。

何度だって手を差し出して、何度だって立ち向かう!

それが私という女神よ、今一度しっかりと記憶することね!」

 

互いの刀が砕け、生成する。

 

…あの時はジャンヌがいたから一手が届いた。

間違いなく、頼光は強い。

単純な強さだけじゃなくて、精神的な強さも兼ね備えている。

絶対にそれを為さなきゃいけないっていう強い意思を視線だけでも感じ取れる。

 

仕切り直し、距離を取って出方を窺う。

 

「高尚な願いだ、理解できるよ。

だが、お前は知っているだろう。あいつらの醜悪な姿を、下らない行いを!一体どれだけの無力な人々が騙され、食い物にされ、弄ばれた!?これも元を辿れば全て聖書の神が仕出かした大きすぎる負債だ!何が神器だ…そんなもので人間が強くなれたとでも!?」

 

「確かに、あの人がしたことは人間からすれば迷惑かもしれない。

そこに否定する材料はないわ。

なら、私がそれをどうにかする」

 

「どうにかならないから今があるんじゃないのか!」

 

「だから、匙を投げるの?

それは違うでしょう?無理だと投げ出して、諦めたら何も進めない!そこに未来は訪れない!」

 

「なら、お前はどれだけの犠牲を払うつもりだ。理想の実現に、犠牲は伴うもの。それをお前は─」

 

「犠牲を出すつもりはないし、出させもしない。

そんな常識、私が壊して進む!」

 

「綺麗事を!」

 

頼光が駆け出す。

自分もそれを応じて頼光へと飛翔する。

休む暇のない剣戟が始まる。

砕けても即座に生成して振るっての繰り返し。

埒が明かないけど、それでも…やる価値は自分達にはあった。

 

「綺麗事だけでは変わらない!どれだけ尽力しても、犠牲は出るものだ!お前は怖いだけだ、誰かが消えることが怖いのだ!」

 

「そうよ、怖いわ。怖いに決まってる!

あの日いた誰かがいなくなるなんて、そんなの怖くないわけが無い!それでも敵も味方も関係無い!手を伸ばし続ける、取ってくれるその日まで…私は戦う!

理想の実現には犠牲が伴う?そんなもの!」

 

 

 

 

 

「犠牲がでなくても、ハッピーエンドは迎えられると、私の手で革新する!してみせる!」

 

全てを壊して、救ってみせる。

頼光の刀を砕き、がら空きの鳩尾に拳を叩き込む。

 

「カハッ…!」

 

「一人で駄目なら、二人で。二人でも駄目なら…皆で!

私は一人じゃない、私の理想は私だけの理想じゃない!」

 

「パープル、ハートぉぉ!!」

 

刀を生成し、叫ぶ頼光の振るった一撃を刀で防ぐけど…今までで一番の力強さに負けて砕け散る。そして、その隙を逃すまいと続けざまに横腹を蹴られて、吹き飛ぶ。

 

「あぁッ!」

 

「なら、お前は俺にすら手を差し出すのか!?」

 

「そんなの…当たり、前よ」

 

ちょっと呼吸がしづらい。

でも、それもすぐ直る。

 

─ネプテューヌさん、大丈夫ですか?

 

(平気、ありがとねいーすん)

 

─いえ

 

「私は、貴方とも手を取り合いたい」

 

「俺とお前は相容れない」

 

「いいえ、それは違うわ。私達は相容れないんじゃない…相容れようとしなかっただけ。決めつけて、もう無理だって諦めてた。

でも、気づいたのよ。貴方と私は、全く違うわ」

 

カオスピースを取り出す。

力を貸して、ロキ。

今の自分に、頼光を…例え強引にでも手を取るための力を。

 

「ここからは、本気のさらに本気よ」

 

カオスピースにシェアを注いで、カオスフォームへ変身する。

 

 

 

「刮目しなさい、更なる可能性を!」

 

 

 

格好がどうとか今は関係ないよ!

どんな力でも、きっと希望に繋げられる。

混沌の力とか言われてるカオスフォームだって、その筈なんだ!

 

頼光は目を見開いて、自分を見る。

 

「これは…!なるほど…新たな可能性…進むための力を手にしたか!」

 

「そう。この力を使って、私は進む。

過去も、今も受け入れて未来へ!」

 

「…恐らく、俺の想像もつかないほどの試練があったのだろう。

そして、乗り越えたからこそその力を手にしたのだろう」

 

「…ええ、私自身に決着をつけたわ」

 

「そうか。その力は…お前一人の力なのか?」

 

「いいえ─」

 

分かっていて尚問い掛けてくる頼光に自分はしっかりと答える。

一人の力で、ここまでいける訳がなかった。

だって、シェアは皆の信じる心。

それはきっと誰にでもある強く優しい力で、自分に勇気と希望を与えてくれる力。

 

それがあるから自分はここに立てている。

 

「─これは、皆で掴み取った明日への希望よ」

 

「…なるほど、な」

 

何かを見出だしたかのように穏やかな笑みを浮かべるも一瞬の事で、闘志の籠った瞳が自分を捉える。

 

「お前ならば、或いは─」

 

「…」

 

「パープルハート…その力、その心嬉しく思うぞ。敵ながら天晴れといったところか…ならば、俺もそれに応えよう!

そして、お前のその力と俺の力…どちらがより明日を照らす陽となるか、それを決めようではないか!」

 

嬉々とした表情の頼光に自分も頷いて応じる。

紫に光る刀が生成され、それを握る。

ここからが正念場、それがはっきりと分かる。

 

「力と力のぶつかり合い…となれば、俺も解放させて貰おう」

 

頼光もまた、真の力を解放する。

つまり、禁手。

きっと、凶悪な性能なんだと思う。

けど…頼光は自分の理想を叶えたいが為に手にいれた禁手。

自分はそれを打ち破らないといけない。

自分こそが、それを。

 

頼光の刀が毒々しい色となっていく。

 

「毒を食み、俺もまた新たなる可能性を手にいれた。

そして、お前という存在が俺の覚悟をより確固たる物としてくれた…その礼をこの禁手で以てさせてもらう…──」

 

 

 

 

 

悪殺の絶滅聖剣(イビルナイトメア・デスイレイザー)

龍をも屠る毒が女神、お前をも蝕む」

 

刀が毒々しい色の光を纏う。

…ううん、違う。

頼光も、それを内包している?

 

─解析開始します。…食らうのは危険です、お気をつけて

 

龍をも屠る毒…きっとヤバイやつだよね。

なら、立ち回りを考えないといけない。

カオスフォームなら多少の無茶も通るから…しっかりと様子を見ないと。

 

「やろうか、パープルハート」

 

「ええ、第二ラウンド開始よ」

 

駆け出すのは、同時だった。

さあ、ここからが本番…全部を乗り越えて、進むために!

証明をしなくちゃいけない。頼光を相手に、自分の覚悟を。

この時だけは、覚悟が必要なんだ。

 

頑張ってくれた皆のため、待ってくれてる人達のため。

そして、自分の夢のために!

手を伸ばそう!!



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勝利を刻め、ネプテューヌ!

ねぷねぷしよ!(挨拶)

長かった反英雄派の戦い。
最後は当然この二人です。





刀が振るわれる毎に毒々しい光は辺りにも鱗粉のようにばらまかれる。

肌に付着した部分が少し焼けるように痛くて、腕を見ると少し赤くなっていた。

間違いなく、毒の類いだね。

ばらまかれる光だけでこれなら、直撃はまずい…!

それだけは避けないと。

 

シェアで少し防御にも回してるからいいけど、本当の生身ならどうなることやら。

 

カオスフォームのお陰で刀自体の硬さもかなりの物だからそう簡単に折れはしないけど…

様子見をし過ぎても仕方無い!

何が相手でもねぷ子さんはねぷ子さん!

 

刀に炎を纏わせる。

炎は青く燃え盛り、カオス化の強化がどれだけ凄まじいかを物語っているよう。

 

闇の力って感じがするよね!

ダークチップヲツカイナサイ…

 

「燃え尽きないでね?」

 

「…上等!」

 

そうでなくてはとばかりに笑みを深める頼光に自分も口元を緩める。

さあ、行くよ!

カオス化したねぷ子さんの技、とくと見よ!

 

「カオスフレイムブレイド!」

 

刀を横に振るい、青い炎が波となって頼光へと迫る。

ばらまかれていた光さえも飲み込む業火を頼光は熱さを感じているのか汗を浮かべながらも二刀を構えて

 

「ハァァァァ!!」

 

それをクロスするように振るって、自分に迫る炎をかき消した。

流石…と言いたいけど!

 

「まだまだ!」

 

「っ!」

 

しっかりと打ち破ってくれるって信じてたから炎の後ろでスタンバってました!

今度は刀に黒い雷を纏わせる。

 

「痺れるわよ、カオスサンダーブレード!!」

 

黒い雷が走る。

刃と共に雷が振るったばかりの頼光を捉える。

 

「まだだ!」

 

「っ!?」

 

もう少しで届くといったところでとても嫌な予感がして後ろへ飛ぶ。

その予感は当たったようで、頼光の腹部から刀が突き出てくる。

 

まさか、自滅…なんてことがあるわけもなく、突き出た刀が消える。

頼光も無事みたい。

 

「そんな芸当も出来るのね…」

 

「俺も試すのは初なんだが…何、やってやれないことはないさ」

 

「そうね。諦めれば、そこで終わりよ」

 

やっぱり、属性頼りは良くないね!

こうなったら力と力でぶつかり合うしかない!

 

─解析できました

 

(流石いーすん!どう?)

 

─…サマエルという存在の毒のようです

 

(サマエル?)

 

─『エデンの蛇』『神の悪意』『神の毒』と称される存在です。ドラゴン殺しという点においてグラムを超える毒をその身に宿し、ドラゴン以外であっても猛毒の類いです。直撃すれば女神であるネプテューヌさんも無事では済みません

 

(そうなんだ…ありがとね)

 

─戦う貴女に比べれば、これくらい大丈夫ですよ

 

サマエル。

うーん、龍喰者(ドラゴン・イーター)ってとこかな!

そのサマエルの毒を頼光は自分に使ったんだ。

ただの禁手じゃ、手が届かないから毒さえ飲み込んだ。

どれだけ苦しかったんだろう、痛かったんだろう。

 

自分にはかもしれないという憶測しか出来ない。

だけど、これだけは言える。

頼光は死ぬ可能性を考慮しても乗り越えてみせた。

届かない筈の場所に伸ばせた。

 

「貴方は凄いわね」

 

「唐突だな」

 

「それだけの毒を貴方は飲み込んでも生きて力に変えた。

貴方のその覚悟と行動には感服する他ないわ」

 

「…なるほど、理解したのか。流石は女神といったところか」

 

「相棒のお陰よ」

 

「ふっ、俺のこれもパラケルススのお陰で禁手に至れた。

毒に苦しむ俺を三日三晩寝ずに看病してくれてな」

 

「私が言うのもなんだけど、貴方酷いわね」

 

「ぐっ…返す言葉もない…俺のような男についてきてくれた皆には感謝してもしきれない」

 

会話をしながらも、いつでも斬りかかれる準備位は互いにしている。きっと、頼光の憎悪を知っているから皆ついてきたんだね。

目的がどうあれ、頼光はちゃんと認められてるリーダーだったんだね。

 

「故に、負けられない。この戦いを始めたのは俺で、ついてきてくれた仲間がいるからこそ…折れてはならんのだ。

俺一人であれば諦めもしただろうが…そういう運はあった」

 

「…人外が憎い?」

 

「俺は日ノ本を守るために軍人として生きてきた。

だというのに…悪魔どもは俺を転生させ、奴隷としたのだ。

それだけならば主を始末したあの日で終われた。

己だけが被害者ならば己を始末すれば全てに片がついた。

だが!あろうことか奴らは他の人々を…日ノ本の民だけでなく、他の国の者にまで手を伸ばした!」

 

頼光の憎悪が滾る。

決着をつける前に、知っておきたかった。

何を見て、何をしてきたか。

 

「俺達は確かに動物を殺し、食ってきた。

それらに殺されるのであれば納得もした!

だが実際はどうだ、悪魔は人を承諾もなく転生させ、堕天使は人の想いすら踏みにじり殺し、天使は人を騙し利用した!

俺はこの目で確と見てきた!愚かさを、醜さを!

確かに、いい悪魔もいよう、堕天使もいよう、天使もいよう!

しかし、その善を塗り潰す程の悪を見て…俺は希望を捨てた。

無駄な期待をしていた己が一番の愚かだったのだ」

 

「だから、こうして人外をせめて日本からだけでも排斥しようと?」

 

「この生が続く限り、日ノ本より追い出し奴らの棲みかに全てを押し込めてやる。

かつて敵であった国ですら、奴らの魔の手は伸びている。

この戦いを、天照大神や三勢力の代表が見ているだろう。

奴等も理解する筈だ!自らがどれだけ首を絞めてきたか!」

 

期待を捨てる。

どれだけの絶望だったんだろう。

それでもと希望を持った頼光が見てきた物がそれをさせるに至った。

今が良ければ全部いいなんて綺麗事は言わない。

過去につけてきた傷を、どうやって癒すかも考えなきゃいけない。

罪を罪のままに終わらせていいわけがない。

 

だから、サーゼクスさんたちは償わないといけないんだ。

 

自分達のしてきたことを、見つめ直して、修復の一歩を歩まないといけない。

そのためにも。

 

「私には貴方の絶望は分からない。

辛いことも苦しいことも、貴方にしか分からないことだから。

排斥することを決めた貴方にはそれ相応の理由があるから、私はそれを否定しない。けど、肯定もしないわ。

貴方の憎しみも、私は飲み込んで先に進む」

 

「なぜ庇う?無駄なことだ、どうせお前も裏切られる。

奴等はそうして期待を無下にしてきたのだ」

 

「それでも私は信じる。

今よりもずっといい未来が皆となら作れると信じたい。

だって…期待も希望もしないで生きるなんて、私には出来そうもないわ」

 

裏切られるとしても、自分は信じたいんだ。

その人が、きっといい人であると願いたい。

絶対に悪い人なんていないって信じたい。

 

誰かにとっての悪は、誰かにとっての善だって思いたい。

 

「貴方は裏切られるということを知っている。

それを飲み込んで、私とは別の未来へ導こうと決意した貴方を…私は切り捨てられない」

 

「誰かを犠牲にするという事が許せないか。ならば…その先へ行く前に俺が引導を渡してやる!」

 

頼光が動き出す。

手には二刀を持ち、確かな殺意を向けてくる。

 

自分もまた刀を握りしめシェアを行使する。

 

「32式エクスブレイド・八連!」

 

背後に剣を八つ生成して迎え撃つ。

手数だって負けるつもりはないし、意志でも負けるつもりはないよ!

自分がとことん我儘だって知らしめるチャンス!

 

「面白い!」

 

向かってくる頼光に剣を射出しながら自分も駆ける。

こういう時は飛ばずに足で行った方がやりやすい。

頼光は二刀で二本を弾くも弾いた二刀も砕ける。

 

「オォォォォ!!」

 

けれど、砕けた刀が新しい刀に変わるのに一秒もかからない。

続けて生成した二刀で弾き、砕ければ補充し、足を止めない。

全てを弾き終えるのと自分が距離を詰めたのは全くの同時だった。

 

「その首、斬り落とす!」

 

「貴方にやれるかしら?」

 

「やれるやれないではない、やる!」

 

「だから気に入ったッ!!」

 

二刀との打ち合いが始まる。

手数では分が悪くても、単純なパワーは自分が遥かに上だ。

打ち合いで一刀を弾いてもう一刀を振るうのにはラグが生じる。

女神な自分に感謝!弾いてすぐに斬られるなんて事にならなくて安心した!

 

「改めて実感する…お前は強い!どこまで強くなる!その力で何を救う!」

 

「皆となら、どこまでも強くなれる。

そして、その力で私の手の届く全てを救う!」

 

「傲慢だな!!」

 

「あら、知らないなら教えてあげるわ」

 

何十と続く打ち合いの途中で不意を突くように後ろに飛んで刀にシェアを纏わせる。

この戦いだって、遊びでやってるんじゃないんだよ!

毒が強くても、意志が強くても!

 

有利なのは、自分なんだ!

 

「主人公っていうのはね、傲慢じゃなきゃ務まらないのよ!!」

 

後ろに飛びながらΔのようにシェアの斬撃を飛ばす。

頼光は全力で振るった一刀が空振ったせいですぐに動けない。

デルタスラッシュが頼光に当たる、その時。

 

「いいや、まだだ!」

 

また体から刀が生えて二発の斬撃を防がれる。

けれど、一発だけ、一発だけ頼光の右腕にぶつかり、爆発する。

続けて攻撃しようと接近する。

 

「ぐ、おォォォ!!」

 

腕が吹き飛ぶとまではいかなくてもこれで右腕は全力で打ち合える程の力は出ない。

けれど、頼光は痛みを誤魔化すように叫んで自分に左手に持つ刀を向けて毒の光をビームのようにして放つ。

 

「くっ!!」

 

スレスレで体を逸らして直撃は避けながら近付く。

かすった箇所が形容しがたい痛みに襲われるけど、今更こんな痛みで止まる自分じゃない!!

 

刀を握ってない左手にカオスエナジーとシェアを集中させる。

 

「カオスバインド!」

 

左手を頼光に向けると何本もの黒い鎖が放たれる。

 

「く、ぐぅ!?」

 

四本ほどは落とされたけど、それでもまだある鎖は頼光の四肢を縛って地面に先端を埋める。

まるで、逃がさないというように。

 

これで決めるよ!

 

「勝利を刻むわ!」

 

「っ!」

 

刀にシェアを纏わせ、頼光との距離を更に詰める。

抵抗するように体から毒の刀が射出されるけど、自分も剣を生成して射出して相殺する。

 

この力は、皆の力!

皆の想いがシェアになる!!

 

「パープルハート……ネプテューヌゥゥゥゥゥ!!」

 

「いつだって私は一人じゃない!皆が私と共にある!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ビクトリィースラッシュ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

Vの字に刀を振るい、頼光を斬る。

勿論死なない程度に、でも死ぬ程痛いよ!

形はどうあれ皆に迷惑をかけたのは事実だから!

 

頼光の自分を見る表情は、別の何かを見ているような驚く顔で。

 

斬られる瞬間に、頼光は一言だけ。

 

 

 

 

 

「─進化の刃、か…」

 

 

 

 

そう言って、素直に斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の意志に、揺らぎはなかった筈だった。

故にどんな相手にも屈せず、腕が失くなろうと喉元に食らい付く…そんな覚悟すらしていた。

死ぬのならば、せめて相手も道連れにしていく。

 

そう決めていた。

 

トリスタン、呂布、カイネウス、パンドラ…そして、パラケルスス。

別の道を歩めば楽だったろうに、俺についてきてくれた仲間達。

何故俺についてきてくれたのだろう。

パンドラは…俺に依存していたとはいえ、他の生き方を見付けられなかったのだろうか。

諭してやれていなかったのだろうか。

俺といることはないと告げたのに、ついてきた。

 

カイネウスとトリスタンはよく俺を罵倒しながら接してきた。

怒らないラインを超えないまま接してくるものだからその距離感が心地よかった。

呂布は…あまり話さなかったな。静かなのが好きだから俺のようなうるさい男は好かれんだろう。

パラケルススは本当によくついてきてくれた。

サマエルの毒を浴びることを決めた時は何度も口煩く止めるよう進言されたが…結果的に折れてくれた。

そのせいで涙を流させての治療を強要してしまったのは本当に申し訳無く思っている。

 

ここまでされたのだ、勝たなければならない。

退くに退けない理由が増えた。

ありがたい、まだ俺の足を支えてくれるのか。

 

俺にとって、この五人が最高の仲間だった。

やることは誉められた物ではないが、日ノ本の為にと耐えてきた。

誰かがやらねばならない。

分からせてやらないといけなかった。

魔王どもに、堕天使の総督に、天使長に…理解させねばならなかった。

貴様らがしてきたことはこうなんだと。目を逸らすなと。

 

お前さえいなければ、俺の意志が僅かでも揺らぐなどある筈が無かったのだ。

ネプテューヌ、俺の切り捨てた理想を捨てなかった女神。

 

お前は…何故耐えられるんだ?

何故溢れ落ちる物にすら手を伸ばすんだ?

 

俺には分からない。

俺はもう諦めた。

溢れた物よりも、今ある物をと無視してきた。

 

なのにお前は違った。

死ぬと分かっている者にすら向かっていくお前は眩しかった。

聖剣の光など生温い程の眩しさだった。

 

俺には分からないんだ。

どうして、あの時。

北欧の神、ロキを見捨てなかった?

見捨てれば、楽だったろう。

お前の力でも無理なものは無理だと理解すべきだと思っていたというのにお前はそんなことは知らぬと手を伸ばした。

 

そして今、お前は俺の目の前に立っている。

女神としてでなく、一人の理想を掲げる者として俺の前に立っている。

嗚呼、やっぱりだ。お前は眩しすぎる。

 

誰も見捨てない、切り捨てず手を繋ぐ未来。

 

そんなものはまやかしだ。

あり得ないと俺は早々に諦めた。

だが実際はどうだ。

目の前の女神はそれをしようと傷付きながらも立っているではないか。

 

お前は何を見ているんだ?

何がお前をそうさせる。

誰かに誓ったのか?それとも使命感か?

 

…違う、こいつは心からそれを求めている。

綺麗事だ、妄言だ、幻想だ。

誰もが手を取り合うなど、誰にも叶えられない理想だ。

何かを排斥しなければ何かを守れはしない。

お前だって、そうしてきたんじゃないのか?

俺に、教えてくれ。

お前はどうしてそこまでやれるのかを。

お前の覚悟を、強さを見せてくれ。

俺の覚悟など上回っていると証明してくれ。

 

…結果として、お前は俺に勝った。

 

迫り来る紫の刃とそれを放つ女神の姿が見える。

正真正銘、詰みだった。

体から刀を生やそうにも、そうすぐに出来るものじゃない。

今もなお、俺は悪魔の身だ。

薬の効果が切れたのか、聖剣が俺を蝕む。

 

だというのに、お前の刃は苦しくない。

目に写るお前は…強かった。真っ直ぐだった。

曲がらない姿を俺に見せてくれた。

 

刀を振るい、未来を掴むお前の姿に、俺は…

 

 

 

 

 

「─進化の刃、か…」

 

 

 

 

 

未来を見た。

今とは違う、別のお前を俺は見た。

強く、真っ直ぐで、美しい女神の姿を俺は見た。

幻だろう。

だが、俺にはそれが現実にすら思えた。

体を刻まれる感覚に、不思議と痛みはなかった。

むしろ、心地よさすら覚える。

そうして、理解する。

 

これは、ネプテューヌという女神が関わってきた者達の想いだ。

この光は、ネプテューヌだけの力ではない。

 

嗚呼、なるほど。

俺が勝てる道理など無かった。

1%だって、可能性は無かった。

毒が強かろうと、技の冴えがあろうと…勝てない戦いだったのだ。

だってそうだろう。

俺は一人なのに、目の前のこいつは何人もの想いと共に俺に向かってくるんだ。

そんなの、弱いわけがない。

 

叩きつけられた一撃は、俺の捨てた筈の理想で。

俺はそれに未来を見たんだ。

 

すまない、皆。

すまぬ、日ノ本よ。

俺は……今、折れてしまった。

俺の目指したかった永遠はあって、それに手を伸ばした者がいた。

届かぬ筈はないと、手を伸ばし続けた者がいたんだ。

 

そうして、意識が朦朧とする中、俺は。

 

「共に、行きましょう」

 

その言葉と共に微笑む女神が伸ばした手を、掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を握ってすぐに気を失った頼光を木に寄り掛からせてから女神化、カオスフォームを解除する。

疲れがどっと出て、その場に座り込む。

 

─体内の毒を消さないといけません!まだ倒れないでください!

 

(もうヘトヘトなんだけどなー…)

 

─分かってますが、少しの辛抱です。私の指示通りにシェアを使ってください

 

(うん、分かったよ)

 

いーすんの指示を聞きながら、体の毒をシェアで消す。

体の痛みが楽になる。

…頼光にも、ある程度シェアでの回復をしておく。

何だか、憑き物が落ちたような顔で気を失ってる。

 

空を見ると、やっぱり薄暗いままで。

 

でも実際の外は星空なんだろうな、と思った。

 

「…届いたね、いーすん」

 

「…はい、おつかれさまでした、ネプテューヌさん」

 

「いーすんも、ありがとね」

 

「ワタシはアナタのサポートがヤクメですから。

それに…ワタシはネプテューヌさんのアイボウですからね」

 

誇らしげないーすんに、いーすんもそう思ってくれてる事が嬉しくて自分も何だか自分が誇らしくなる。

ああやっぱり、相棒はいーすんだけなんだなって。

 

でも、今回は本当に疲れた。

本当なら頼光を担いで戻りたいんだけど…

疲れちゃって、それどころじゃないや。

 

「ねえ、いーすん…任せていい?」

 

「──…はい、おまかせください、メガミサマ」

 

自分の言葉に何かを感じたのかとても優しい微笑みで承諾してくれたいーすんに安心感を感じて、自分は大の字で地面に倒れる。

達成感と、安心感が今までの不安を拭ってくれる。

やっと、進めたんだ。

 

「一人きりじゃ超えられない時は、皆で。

悲しみで溢れた時は…私が希望を灯す」

 

その誓いを、守れてるのかな。

頼光に、希望を届けられたのかな。

敗北も届けたかもしれないけど、それでも新しい可能性を見せられたのかな。

 

頼光にしか分からないけど…それでもやれることはやった。

 

この後もまだゴタゴタがあるだろうけど…今は。

この戦いが終わった事を喜んでいいよね。

 

ああ…よかった。

 

自分もまた、やりきったという想いと共に目を閉じる。

 

 




後書きのお時間…ですが!

頼光戦で書くことはありません。
長いようで短いあの戦いが全てです。


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事件解決!やっとこさの観光満喫! 前編

投稿なんだなぁ、これが!

てな訳で前編です。
ああ、ようやく京都編も終わりが近い


目を覚ますと、そこは旅館だった。

一体どういうことなの、説明してよ苗木ぃ!

今までのは夢だったというんですか!?

 

と思ったけどそうじゃないみたい。

腕とか包帯巻きにされてるのを見るに、戦ったのは現実だったっぽい。

夢オチ展開じゃなくてよかった!

 

「いーすーん!」

 

「はい、どうかなさいましたか?(・_・?)」

 

「あ、普通に本の状態だったんだ」

 

呼んだら本が光ってヒトガタいーすんが現れた!

よかったよかった。

 

「おはようございます、ゲンキそうですね」

 

「うん、いーすんが運んでくれた…訳じゃないよね?」

 

「できればそうしたかったのですが…ヨリミツさんもイッショにイッセーさんたちにカイシュウしてもらいました」

 

「なんで旅館?」

 

「みなさん、ここにいますよ。イマはやすんでいるかと」

 

「頼光達は?」

 

「ヤサカさんにしばらくあずかるとのことで、おいてきました」

 

「ええ!?」

 

そんな!折角誰も犠牲にならなかったのにもしかしたらがあるかもしれないじゃん!?

責任取りとかで首を~とかそういうヤクザ物の定番があり得ちゃうよ!?

 

慌てる自分にいーすんは困ったように微笑む。

 

「ワルいようにはしないといっていましたし、アンシンしてよろしいかと」

 

「そう?」

 

「あそこまでがんばったみなさんのイシにそむくほどヒドイかたではありませんよ」

 

「…それもそっか。えっと、ネプギアやシャルバは?」

 

「ギリははたしたといっていってしまいました。

ネプギアさんはまだいたかったようですが…」

 

「そっか…」

 

でも、助かったのも事実だし、シャルバをぶっ飛ばすのは今度にしておこう。

立ち直ったとはいえロキの分はしっかりとした場で一発殴るよ!

ねぷ子パンチが炸裂するよ!

 

ネプギアともまた会いたいし、ちゃんと二人で話したいなぁ。

 

…それにしても、頼光達は大丈夫かな?

皆無事っぽいし、シャルバもパラケルススを殺したなんてことはしなかったみたいだね。

義理堅いっていうのかな…?

 

にしても、いーすんと二人だけなんだけど…あーちゃんとかは?

 

「それじゃ、起きよっか!今何時?」

 

「あさの6じですね。」

 

「ねぷっ!?早起きしすぎ…ってそっか、あの後寝ちゃったもんね」

 

「シンパイしましたよ、あれからおきなかったんですから」

 

「ありゃりゃ、ごめんね?」

 

「ブジおきたのでよしとします」

 

うーん相棒。

いーすんは流石理解力Aってところかな。

にしても、流石に起きてる人少ないよね…?

いや!ここは、出撃します!!

 

いーすんは平気そうだと判断したようで自分の中に光になって入る。

 

─出るのはよろしいですが、しっかりと歯磨きと着替えはするように

 

「え?あ、ほんとだ!パジャマじゃん!だ、誰が私を!?」

 

─リアスさんと朱乃さんがノリノリで体を拭いて、着替えさせてましたよ

 

「あーよかった!無いとは思うけどもしかしたらを想像しちゃったよ!」

 

─他にも報告すべき事が幾つかありますが、取りあえず朝の支度だけしてください

 

「はーい!」

 

というわけでしっかりと朝の調子整えていこうね!

皆はそういうことを普段からやってるかな?

やっておかないと色々と大変だからね!

 

はい、カットカットカットカットぉ!!

 

いつもの服装に着替えたので部屋から出る。

え?洗ってないのかって?

やだなぁ~何着か同じの持ってるだけだよ?

ねぷ子さんは清潔な女神なのだよ、君。

 

「起きていたのか」

 

「あ、曹操だ!出て()()()曹操に会ったね!」

 

「…」

 

─……

 

…あ、うん、ごめんね。

今咄嗟に出してみたダジャレなんだけど、ウケないよね。

少し死んだ目をし始めた曹操に慌てて話しかける。

 

「おはよう曹操!今日もいい天気ぃ!」

 

「ああ、おはよう。ところで、今のは?」

 

「忘れて?」

 

「了解した。早起きだな、昨日は激戦だったんだろう?

もう少し休んだらどうだ?」

 

「いやぁ…何か二度寝する気にはならなくて!プリン食べたい!」

 

「ああ、朝食が食べたいのか」

 

「あ、今ので分かるんだ…」

 

「まあ、何となくだよ」

 

軽い会話をしながら、食事の場まで歩く。

曹操が前を歩いて先導してくれるから迷う心配もないね!

プリンが待ってる!自分という選ばれし者を待ってるんだよ!

 

「ちなみに、和食だぞ」

 

「わーい!」

 

「プリンは…出ないな、うん」

 

「わー……え?」

 

「俺を責めるなよ。後で外で買って食べればいいだろう?」

 

「あ、そっかぁ!賢いね!」

 

「普段のお前は馬鹿だな」

 

「なにをぅ!?あ、ところでゲオルグは?」

 

「寝かせてやってくれ、死ぬ程疲れてる」

 

「ああ…うん…」

 

ゲオルグ、相当働いたんだね…南無南無。

今日一日は放っておこう、そうしよう。

そういえば、和食といえば何だろう?

ねぷ子さん的には朝に天ぷらは勘弁してほしいかなぁって。

 

そんなこんなで食堂についた自分達。

 

座布団に座ってると旅館の人がメニュー表を持ってくる。

 

「えーと…あ、お蕎麦だ」

 

「個人的にありがたいな」

 

「あれ、蕎麦好きなの?」

 

「最近、コンビニ弁当生活だったからな…」

 

「Oh…料理できないんだ」

 

「やれなくはないが、楽な方を選んでしまうんだ。

何というか…近くにコンビニがあると、そこでいいか、となってしまう」

 

「で、ついつい甘いものも買っちゃうと」

 

「そうそう」

 

会話をしながら、適当に決めて注文をする。

全部おっちゃん持ちだから問題ないね!

ありがとう、おっちゃんの財布!

 

「頼光達は大丈夫かな…」

 

「…頼光の訴えは間違っていない。

やり方は間違えたのかもしれないが、それは三勢力の責任でもある。傷を作ったのは三勢力だからな」

 

「うん…」

 

「もしこれでトップの面々が何かをするでもなく都合のいいように隠蔽するのであれば…見捨てても誰も文句は言わないぞ」

 

「うーん…それはないと思いたいなぁ」

 

「どこまでも信じることをやめないな」

 

「まあ、ねぷ子さんは信じるのをやめない系主人公女神ですから!」

 

「ついでにヒロインと」

 

「ヒロインも出来てこそ完璧な主人公と言いますか!」

 

「そうか。それで?何処までいった?」

 

「黙秘で」

 

「初々しいようで結構」

 

すっごいからかわれてる!?

というか、もしかして曹操が来たのってヴァーリの差し金?

…いやいや、まっさかぁ

 

「ヴァーリに頼まれた時は何事かと思ったが…終わってみれば、また巻き込まれたといった感じだったな?」

 

「え、ほんとにヴァーリに頼まれてたの?」

 

「…おっと、分かってなかったのか」

 

「えええええ!?何でヴァーリ!?

しかも頼まれたって事は知ってたの!?」

 

「いや、ヴァーリ曰く」

 

『とても不安でな、共にいれない俺の代わりに頼む』

 

「とのことで、先にゲオルグを行かせてから同行したということさ」

 

「何でヴァーリは私達が京都に行くのを知ってたのさ!」

 

「いるだろう、よくつるんでる黒猫が」

 

黒歌の仕業だったのか!!

なるほどなぁ…それなら納得いった。

でも、黒歌もズルいよね。

ヴァーリ達と連絡とれるなんてさ!

自分だってヴァーリや美猴、アーサーって人と話したいのに!

 

ぶっちゃけると気軽に会って話したい!

 

うー、何だかハメられた気分だよ!

 

そんな感じでうーうーと唸っていると注文した蕎麦が来た。

取りあえず会話をやめて食事に集中する。

夕飯も食べてないからお腹ペコペコだよー!

こうなったらこの後プリンを二個位買って食べてやるんだからね!

あ、ところで読者の皆は蕎麦を食べるときってネギとか山葵って入れる?

自分は入れたり入れなかったりラジバンダリなんだけどそういうところも人の自由だよね~

流石にプリン入れようとか考えたこと無いからね?

 

閑話休題!

 

蕎麦を食べ終えて取り敢えずしばらく曹操と話すことに。

いーすんは流石に出せないからね~…

 

「カイネウスは倒したんだよね?」

 

「ああ、殺してはいないさ」

 

「でもでも、私の事まだ色々言ってたでしょ?」

 

「誤解だと説明したらあっさりと引き下がったよ」

 

「へ?女神なのは事実なのに…って、もしかしてだけど話した?」

 

「すまん、ああ説明する他無かった。お前の秘密を暴露したことには変わらない」

 

「いやそれはいいんだけど…そっかそっか~!」

 

「もし会えたら、謝罪するように言っておいた。

今は頼光達と一緒だろうが…また会えるさ」

 

「うん、そうだよね!」

 

よかったよかった!懸念事項がどんどん無くなってくよ!

嘘、私の味方…色々と優秀すぎ…?

いっぱいいるってのもそうだけど、やっぱり皆凄いや。

自分なら秘密話せないよ~…

 

「なあ、ネプテューヌ」

 

「どったの?」

 

「お前は寂しさとかはないのか?」

 

「へ?ホントにどうしたの?誰かいなくなった訳じゃないのにさ」

 

「…いや、すまない。忘れてくれ」

 

「言ってよ~」

 

向かい側に座る曹操の足をテーブルの下で痛くない程度に蹴る。

ほれほれ、ねぷ子さんに言ってみんしゃい?

ちょっとくらいなら答えられるかもよ!

 

少し迷ったような顔をしてから曹操は話をしだす。

 

「事が済んだ今、聞くのはどうかと思ってたんだがな。

お前は女神だろう?」

 

「うん、そうだね」

 

「しかも、他の神話に属さない、ただ一人の女神だ。

だからこそ考えるんだが一人の女神というのは寂しくないのか」

 

「うーん?うーん……」

 

寂しいかぁ。

どうなんだろう?

曹操の中ではネプギアはカウントしないみたい。

まあ、分かるといえば分かるけども。

ネプギアは造られた女神だから、そういう感じなのかな。

聖書勢力って訳でも無いしね、神様から言われたし。

 

…自分だけ、かぁ。

 

「まあ、例え話なんだけどさ」

 

「ああ」

 

「私だけじゃなくて…あと三人くらい?自分と同じような変身する女神がいて、違う性格だとしたらさ。

んー…今よりもずっと衝突もあったかもしれない」

 

「何故だ?同じ存在なら手を取り合う選択の方が早いだろう」

 

「合う合わないはあると思うなぁ。

いやまあ、ねぷ子さんは強引に手を取るけどね?ただ、その三人が仲良いかって聞かれたら別の話だもん。

それに…」

 

未来を想像してみる。

お母さんやお父さんは人間。

100年とかは生きられない。

知ってる人がいなくなって、でも知らない人を知っていく。

自分はその別れと出会いを繰り返して、生きていくんだと思う。

 

「いつか別れが来ても、それまでの日々が楽しければ私は嬉しいなって」

 

「…俺や英雄派の皆は人間だ」

 

「うん」

 

「悪魔も、堕天使も、天使だって何時かは天命が来る」

 

「うん」

 

「それでも、お前は生きるのか」

 

「そうだね」

 

「強いな、お前は」

 

「ううん、皆がいるから強くなれるんだよ」

 

この理想は、ずっと抱えなきゃいけない。

実現が難しくても、自分はそれをしてみせる。

頼光に言った言葉を嘘にしたくないし、誓いだって守りたい。

それに縛られてるって言われたらそうかもしれないけど…でもさ、それはその人との繋がりでもある筈。

 

自分は繋がりを感じられるから、それを大切にしたい。

神様だって、いなくてもシェアは感じるんだ。

 

「寂しさはいつか来るよ。それをバネにしてどう跳ぶかだと思うんだよね」

 

「バネにして、か。…なら、お前の理想を少しでも叶えられるように俺達もより一層努力するとしよう」

 

「そろそろ恩返しもいいと思うんだけどなぁ…

私に付き合うこと無いよ?」

 

「馬鹿言うな」

 

曹操は手を伸ばして自分の額を小突いてくる。

何するのさと見ると、呆れたように笑っていた。

 

「俺達に見せてくれ、その理想の果てを」

 

それがきっと英雄になる道だ、と曹操は言った。

 

…何だ、自分の目的のためについてきてくれてるんだ。

よかった、縛ってる訳じゃなかったんだね。

うん、でも…あー、これはまだ言わないでおこうかな。

 

「うん、じゃあこれからもよろしくね!」

 

「ああ」

 

そんな感じの話をして、曹操との絆が深まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し飛んで皆起きてきて、一誠が嬉しそうに向かってきたのを小猫ちゃんに襟首掴まれて止められて落ち着いて部屋で談話してた時。

 

「おーっす」

 

おっちゃんが戻ってきた。

後ろを見ると、サーゼクスさんとミカエルさんもいた。

ミカエルさん、羽消せたんだ…あ、でもそれくらい出来なきゃ現代厳しいよね。

 

「おっちゃん!」

 

「アザゼル、お兄様、それに天使長まで…どうかしましたか?」

 

「固くならないでいいよ。…時間を取るようで悪いんだけど話があるんだ」

 

「何!?まだ働けと言うのか!?」

 

「どうどうゲオルグ…寝てていいから、ね?」

 

「助かる。結果は後で聞かせてくれ…今日一日は堕落の限りを尽くしてやる…」

 

ゲオルグはそれだけ言って寝ちゃった。

おっちゃん達も理解してるようで申し訳なさそうにそれを見た後に部屋に入ってくる。

大部屋でよかった~

 

「まず、皆さんには謝罪を。私達の責任だというのに戦わせてしまったこと、申し訳なく思います…」

 

「あはは、いいよいいよ!気にしたってしょうがないもん!

それで、頼光達は?」

 

「京都の妖怪達からならまだしも我々三勢力が彼らに罪を問うことが出来るわけがない。故に、天照大神及び九尾の八坂殿に一任することとなった」

 

「えっと、それで…?」

 

「結果として、日本神話は頼光達に今日一日妖怪達に馬車馬のように働かせてる…で終わり」

 

「それで終わりっすか?」

 

「あっちの決め事だ。俺達に口出しは出来ねぇし資格もねえ。

俺達としては、これからの方針が決まりだしてるって事だな」

 

「方針…」

 

三勢力が取るべき方針…想像できるけど、ちゃんと聞こう。

サーゼクスさんは悪魔の駒を一つ取り出した。

 

「悪魔の駒…これとそれを生み出した我々が元凶だ」

 

「お兄様、それは…」

 

「遠くない未来、我々はこれを消さねばならない。

そして…終わるか分からない贖罪の日々さ」

 

「俺達堕天使も神器保有者を殺しすぎた。

神器の解明、保有者の保護…やることが大積みだ」

 

「…人の時代、そう神は仰りました。

我々天使は人に寄り添っていこうと思います。

具体的な案はまだですが…」

 

「ミカエル様」

 

「貴女は、アーシア・アルジェントですね。なんでしょうか」

 

「信者の方々に…真摯であってください。

私はもうよろしいのです。ですが、他の方は違います。

全てとは言いません、ですが…一部の真実を告げるべきです」

 

「…そうですね、ありがとうございます」

 

…頼光の叫びは届いたんだね。

三人とも、決めかねていた事を決めようとしている。

ミカエルさんは迷っていたのかもしれない。

神様の言葉に従うのはいいけど、どうすればいいのかを。

だから、あーちゃんの言葉が道を照らしてくれたらいいな。

 

「……天使長ミカエル、一つだけいいだろうか」

 

「あれ、ゲオルグ?寝てたんじゃ?」

 

「ああ、寝てやるとも。だがその前に一つ済まさねばならない」

 

布団から起きたゲオルグは立ち上がって、拳を握り締める。

そして、ミカエルさんの顔を殴った。

それも思い切り、全力だった。

 

ミカエルさんも何処か察していたようにそれを受けた。

 

「ゲオルグ、何を!?」

 

「黙れ!!いいか、天使長。

その痛みを忘れるな、忘れたら必ず殺してやる。お前だけの不手際とは言わん、だがお前はトップだ。

だからお前を殴った。…俺の生徒とその弟の苦しみを忘れるな!」

 

「…はい、一生忘れません」

 

「ふん…以上だ、寝る」

 

ゲオルグは用は済んだとばかりにまた寝始めた。

…パンドラの事かな、多分。

ゲオルグも、優しいね。

 

「じゃあ…この話は終わりでいい?今日くらい、自由時間!」

 

「…だな、悪かったな時間取って。

各自、好きにしてくれや」

 

「はーい!よーし、一誠、あーちゃん!プリン買いに行くよ!」

 

「よっしゃ行こうぜ!」

 

「待ってください、部屋に取ってくるものが…」

 

「塩飴ですか」

 

「はい、油断はいけません!」

 

「んじゃ、アーシアと行くからねぷ姉ちゃんは出口で待っててくれ」

 

「了解!曹操はどうする?」

 

「ん?ああ、俺はここにいる。

もう心配はないだろうしな」

 

「そっか!」

 

じゃあ、兵藤家三人で行動だね!

よーし、今日くらいはしっかり満喫するよ!

そう決めて、部屋を出た。

 

その後、リアスちゃん達も部屋を出る。

 

「ネプテューヌはこのまま外ね?」

 

「うん、皆は?」

 

「うーん…旅館でのんびりしてるわ。ずっと外を歩くのも疲れちゃったもの」

 

「ですね、偽物四人と一緒は気疲れしましたわ」

 

「OK!他は?」

 

「僕は今度こそ引きこもりますぅぅぅ!」

 

「木場先輩、ゼノヴィアさん、私は行きたいところがあります」

 

「食べ歩きかな?じゃあ付き合うよ」

 

「くっ、昨日で金を結構使ってしまった!だが行く!」

 

「あ、ゼノヴィアはミカエルさんに何もないの?」

 

「ん?…んーーーー…無いな、うん、無い」

 

「そ、そっか」

 

なんか羨ましいなぁそういうメンタル。

ゼノヴィアだけ一貫してそんな感じだよね。

そういうとこ強いや。

じゃあ、小猫ちゃんの組と一緒に行動しようかな。

何といっても小猫ちゃんはスイーツのリサーチは凄まじいからね。

ふっふっふ…自ずと素晴らしいプリンにも会えるって寸法よ!

 

「よーし!そうと決まれば観光開始!!」

 

「ゴーゴー、です」

 

「ついていけるか…この金額で…?」

 

「いや、それよりもイッセー君とアーシアさんを待とうね」

 

木場君の言う通り、一誠達を待つこと数分で来たので暑い京都を満喫すべく外へと出るのであった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、何で残ったよ」

 

堕天使総督が残った俺に問い掛けてくる。

何だ、こっちから切り出そうと思っていたんだがな。

 

「シャルバ・ベルゼブブと造られた女神…ネプギアはどうする?」

 

「…シャルバはいずれ確保するつもりだ。彼なら色々と知ってそうだしね。ただ、ネプギアという女神に関しては僕たちも決めかねているんだ」

 

「…なるほどな。まあ、聞きたいことはそれだけだ」

 

「頼光達の事で聞きたいことはもうないのか?」

 

「これからあいつらがどうするのか…それはあいつらの決めることだ」

 

だが、と続ける。

頼光、お前は俺とは違う希望を見出だしたんじゃないか?

ネプテューヌはお前が手を取ってくれたと言った。

なら、お前は…

 

「もう、新たな道を見つけてるのかもしれないな」

 

話はそれで終わりだ。

ネプギアをどうするのかも俺が決めることではない。

きっと、ここのトップ三人でもなく。

決められるのは、親であるシャルバか…それとも。

 

ただ、今日はもう、頑張った皆が楽しむ日であればいい。

 

悩むのは、それからでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相も変わらず忌々しい太陽だ。

睨み付ける気にもならないとはこのことか。

あの後、私はネプギアを連れて拠点に戻った。

京都の観光は…別の日にしておくことにした。

 

「お父さん」

 

「どうした」

 

「お姉ちゃんは…強いですね」

 

ネプギアの言葉は何を意味するのだろう。

姉である女神が強いことに憧れを抱いているのか、嫉妬しているのか。

ただ、表情を見ればそれは解決した。

とても、やる気に満ちている。

いつか超えたい、そんな気持ちが伝わる。

 

「そうだな、あれでこそ私が倒したいと願う女神だ」

 

「もっと強くなります。お姉ちゃんを超えられるように!」

 

「その意気だ」

 

頭を撫でてやると嬉しそうにするものだ。

 

…今回はいい経験になった。

私がまだ未熟ということ、ネプギアの成長に繋がる要素。

まだ足りない。

あの女神を倒し、果ては冥界を我が物とする。

その為にも、強くならねばならない。

特異点たる貴様はどこまで強くなるのやら。

楽しみでしかたがないが…さて、私はどこまで高みへ至れるか。

分かるのは一つだけ。

 

相対する日は近いということ。

 

それまで、死んでくれるなよ。

私が超えるその日までな。

 

「さて、今日はどうする?」

 

「そうですね…今日は──」

 

それまで私もこの日々を楽しませてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたか、頼光よ」

 

目覚めて早々その言葉を聞いた時、俺は改めて理解する。

俺は負けたのだな。

俺の理想は届かなかった。

一度負け、折れてしまった俺が再び理想を掲げる…そんなことは出来ない。

恥さらしにも程がある。

 

それに、俺は女神の手を取ってしまったのだ。

 

心から敗けを認めた。

 

故に、俺は

 

「はい」

 

そう答える他無かった。

 

天照大神は再び謁見する機会をくださった。

他のメンバーも一緒だった。

カイネウスは…今にも噛み付きに行きそうだったが止められていた。

 

「だが、見事であった。

お主の覚悟、理想を見せてもらった。

…故に、その生かして貰った命を無駄にすることは許されぬ。

情けとして生かされたのではなく、共に歩みたいが為に生かされた命。どう使うか、よく考えよ」

 

「…御意」

 

他も同じ反応だった。

まあ、カイネウスだけはケッとだけしか言わなかったが。

けれど、次に見た人物達には激情を抱かずにはいられなかった。

 

そこにいたのは、魔王、堕天使総督、天使長。

 

刀を出せば斬れる。

そんな距離だった。

 

「…すまなかった」

 

魔王に頭を下げられた時。

俺はどうすべきだったんだろう。

怒りのままに斬り伏せればよかったのか?

それとも、菩薩のように許してやればよかったのか?

分からない。

 

分からないから、俺は斬ることをしなかった。

 

「もう、君のような被害者を出さないと誓おう」

 

「…言葉ではなく、行動で示してくれ。俺は…貴様らを信じない」

 

信じられるものか。

裏切ってきたのは貴様らだった。

だから、その誓いが本当だったと判断できたなら。

改めて、その目を見て話してやる。

そう思った。

敗者だが、俺が敗けたのはネプテューヌだ。貴様らではないのだから。

 

だから…俺が信じたいと思わせる位の行動をしてくれ。

もう、安易に何かを信じたくはない。

 

「…?」

 

ふと、隣のパンドラを見ると震えていた。

天使長を見て震えていたのだ。

…そうか、そうだろうな。

 

「天使長、彼女が分かるか」

 

「…以前、襲撃を受けた教会でセラフにも悟られずに神器覚醒の実験をしていたという情報は聞いていました」

 

「…パンドラ、言いたいことがあるなら、言うべきだ」

 

パンドラは震えて、天使長を見ていた。

睨み付けるでもなく、泣くでもない。

けれど何かを溜め込んでいるようだった。

 

意を決したようにパンドラは口を開いた。

 

「私は、お父様とお母様との絆を奪った教会を許しません」

 

ただ、許さないという感情。

それを口に出せたという事実に俺は驚いた。

憑き物が落ちたようだった。

 

…ああ、そうか。

 

歩みを、始めたんだな。

 

「…はい」

 

天使長は謝罪も何も言わなかった。

言ったところで、意味はない。

これからの行動が全てを決める。

 

どうしていくかは、こいつら次第だ。

 

…俺はもう、負けた身だ。

ネプテューヌに負けた今、再び挑んでも意味はない。

これからどうすべきなのだろう。

どうしていくべきなのだろう。

 

堕天使総督は、何を言うでもなく真剣な表情だった。

真剣に、俺を見ていた。

俺もまた、その目を見る。

 

何かを決めているような、そんな目だった。

そこからは、理解はすぐだった。

 

この男もまた、ネプテューヌという女神の掲げる希望を支える男なのだ。

所業は別としてこの男もまた戦士だ。

それに支えると思わせるお前は…やはり、強いな。

負けるべくして負けた…そう実感した。

 

「…神器保有者は、玩具ではない。その事を理解してくれ」

 

「…分かった」

 

この男から聞けた言葉はこれだけだった。

きっと、もう決めているのだろう。

ならば、これ以上は要らない。

 

さて、これからどうなるのか…

 

それまでを黙ってみていた九尾と思わしき女性が伏せていた目を開く。

何という圧か…これが九尾か。

妖怪とは、恐ろしいな。

 

「では、お主らの罰を決める。天照大神はお主らを許容したが、妾は違う」

 

「如何なる罰も受ける次第です」

 

「その潔さや良し。では、お主らは…」

 

 

 

 

 

「裏京都で一日働いて貰う。以上じゃ」

 

 

 

「…それだけ、ですか?」

 

拍子抜けにも程がある罰だった。

いいのだろうか、そんなもので。

最悪、俺一人で全てを背負って死ぬ覚悟が無駄になった気分だ。

 

九尾は可笑しそうに微笑む。

 

「何、十分してやられた様子じゃ。妾達はそれで許そう。

その後は、生きるも死ぬも自由よ」

 

「…ん、終わり?」

 

「終わりではありませんよ。これから大仕事のようです」

 

「…黙って聞いてたがよ、生かされて働いて後はポイなんざ屈辱っちゃ屈辱だぜ。殺してくれりゃ楽だったってのに曹操の野郎…」

 

「パンドラ…私に仕事押し付けていいからね」

 

「ありがとう、パラケルススさん。でも、私、頑張ります」

 

…何だろうか、納得がいかない。

それでいいのか?

俺達は、それで許されるのか?

 

モヤモヤとした感覚が頭から離れない。

その様子を見て九尾はケラケラと笑った。

 

「それだけで良いのかと思っておろう?」

 

「…まあ」

 

「ならば、その後どうすればその感覚が抜けるか…考えることじゃ。ほれ、座っとらんで仕事じゃ!今日一日寝られると思わぬことじゃな。ああ、そこの娘は妾の娘と遊ぶので許す」

 

「え…は、はい」

 

パンドラにまで重労働がなくて良かったと安堵すべきか、それとも今後に悩むべきか。

…いや、そうだな…もう、決まってるか。

俺は、手を取ったんだ。

 

安易に信じることはもう出来ない。

けれど、お前を信じることは容易くはなかった。

…また会えるだろうか、あの女神に。




裏話とかは次話でしたいと思います。

つまり、次話でこの章は終わりです。


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事件解決!やっとこさの観光満喫! 後編

やほー!皆の隣に寄り添う主人公、ネプテューヌだよ!

観光はとっても楽しかったね!

プリン食べたでしょ?プリン食べたでしょ?プリン食べたね!

あれ、プリンばっかり食べてる?

 

─食べ過ぎです。太りますよ

 

ふ、太らないもん!

ねぷ子さんは主人公補正によって体重問題とは無縁だから!

太るわけないんだなぁこれが!

…運動しとこうかなぁ

お寺やら神社やらも見てて心が洗われる気分だったね!

御朱印とかはしないけど、巡るだけでも楽しいもんだね。

 

おっちゃん達が頑張るって言ってたし、これからが大変だろうからこういう時間は楽しまないとね。

自分にも手伝えることはありそうだもん!張り切っちゃうよ!

 

とまあ、観光を楽しんだ自分たちは旅館に戻って夕食を食べて各自部屋とか温泉とかを楽しんでる。

自分は部屋でのんびりしてるんだけどね。

 

「あーちゃん、膝枕して~」

 

「はい、どうぞ」

 

「わーい!

ああ、適度に柔らかいよぉ…あーちゃんのや・わ・は・だ!」

 

「誤解を招くのでやめてください!」

 

「はーい!」

 

「だらけてんなぁ…まあ、俺からしたらこの姿がいつも通りだけどさ」

 

「それにしたってフケンコウです( ´Д`)」

 

「いいじゃんいーすん!今日くらいこうやってダラダラしても問題ないよー」

 

「色々とありすぎだからなぁ…」

 

「ですね…」

 

「…それもそうですね」

 

四人して、ため息。

何か立て続けに色々と起こるもんだから、だらけたくてもだらけられないよね。

もっとゆっくりでいいんだよ?

 

「今回でようやく一段落ついた感じだよな。

シャルバとか、反英雄派とかさ」

 

「そうですね、後はシャルバさんだけですからね」

 

「あーうん…いや、まだあるんだな、これが」

 

主に、ヴァーリとか美猴に任せっきりな件がね!

いーすんは察したようだけど二人は分からないようで疑問符を浮かべてる。

 

「ほら、禍の団だよ」

 

「え、解体されてなかったの?」

 

「何か話題に出なくなったので終わったものかとばかり」

 

「酷い!?いや、分かるけどさ!

オーフィスの事とか、任せっきりだからさ…」

 

「ああ、ヴァーリさんですね」

 

「アイツ子守り出来るんだな」

 

「ヴァーリさんはメンドウミいいですからね」

 

「…で、本音は?」

 

何だかそれが本音じゃないみたいではないかね一誠どん?

本音も本音なのに!

いや、他にもあるけど!

 

「そりゃー会いたいよー…アオハルしたいよー」

 

「大々的には会えないんだっけか、まだ」

 

「特に大きな事はしてないって言ってたし、今まで助けてくれてたからいいと思うんだけど…」

 

「体裁がありますから…総督さんも本心ではネプテューヌさんと同じことを思ってる筈ですよ」

 

「だといいんだけどなぁ…」

 

…まあ、会いたいには会いたいんだけど、恋人だから…ってだけじゃ無いんだよね。

本当、自分って駄目だなぁ。

何だろ、こういう時何て言うんだっけ?

 

うんうんと考えていると、一誠が急に真面目な顔で話し掛けてくる。

 

「姉ちゃん」

 

「んー?」

 

「姉ちゃんの夢って皆の手を取り合う未来じゃん?」

 

「うん、そうだけど…突然だね?」

 

「悪い、聞いとける時に聞いとかないとって思ってさ」

 

「謝ること無いよ、じゃんじゃんお姉ちゃんを頼ってよ!」

 

「ありがとな。

姉ちゃんは、どうしようもない悪人にも手を差し伸べるのか?」

 

「…うーん」

 

一誠の言うどうしようもない悪い人と自分の思うどうしようもない悪い人は色々と違うと思う。

でも、それを踏まえた上で一誠は聞いている

 

改心する気がない人っていうか…何かこう、本当にどうしようもない、変えようがないって人でしょ?

 

「うん、そうするよ」

 

するかなぁ…いやまあ、自分はどうしようもなく弱いから、直面したら分からないけど…それでも、諦めたくないよ。

一誠は自分の答えを聞いて、少し顔を歪める。

 

「…俺は、そんな奴に手を差し伸べて、姉ちゃんが取り返しのつかない怪我をするのが嫌なんだ。だから、切り捨てるって言って欲しかった」

 

「イッセーさん…」

 

…それが普通だと思う。

多分、何処かおかしいのは自分なんだろうから。

ネプテューヌになった時か、その前からかは分からないけど…心が弱いのに、何処かイカれてる。

それが自分なんだと思う。

 

それに、切り捨てるってことは…そういうことだよね。

 

「一誠、今から私が言う事はどうしようもなくおかしい人の発言だから参考とかにしちゃ駄目だよ?」

 

「姉ちゃんがおかしいわけ無いだろ!」

 

「ううん、おかしいよ。

本当、どうしようもないくらいイカれてるんだ、ねぷ子さんって」

 

「そんな自分を罵倒するようなこと…」

 

「今は聞いて、ね?」

 

「…」

 

本当に一誠はいい子だね。

よしよし、と落ち着かせる為にも頭を撫でる。

身長も伸びて、男の子って感じだよね。

きっと、もっと逞しくなるんだろうなぁ。

 

「殺しちゃう事だけはね、したくないんだ」

 

「そんなの普通ですよ、ネプテューヌさん」

 

「自分の手を、汚したくないから殺したくない。

殺すくらいなら腕をあげてもいい、足をあげてもいい」

 

「…それは…」

 

目でも、舌でも、何でもあげていい。

何なら、女神の力でもこの命でもいい。

それでいいのなら、安いと思えてしまう。

そりゃ、死にたくはない。

死にたくはないけど、それしかないなら()()()()()()()()

 

「殺しを手段にしたくないんだ、私」

 

「…」

 

「一度でも、それをしちゃうとね。それが選択肢に入るんだ。

手が取り合えない、じゃあ殺そう。…そんなの、嫌じゃん?」

 

「俺は姉ちゃんが傷つく位なら…」

 

「うん、ごめんね。

傷付くことに戸惑いがないからこうなっちゃうんだろうね。

私の理想は大事だけど、何よりも大事なのは皆だからさ!」

 

だから、守れるのならそれを戸惑いもなく差し出せると思う。

手を伸ばすのと同じように命を出せる。

きっと…そうだと思う。

 

多分皆を悲しませちゃうけど、それでも誰かを殺める事だけは出来ない。

 

「…もっと強くなるよ、姉ちゃんが安心して手を伸ばせるように。

俺も強くなって、姉ちゃんの道を切り開く」

 

「私も、癒すことしか出来ませんが…それでもお役に立てるなら」

 

「ありがとう、二人とも。

いや~お姉ちゃんはこんなにいい弟と妹を持って恵まれてるね!

うんうん、これぞ家族愛!」

 

「姉ちゃんが心配ってか、俺達がいないと突っ走って転びそうじゃんか」

 

「一人だと何するか分かりませんから」

 

「そのとおりですよ、ネプテューヌさん」

 

「あーん三人とも酷い!!」

 

「だって、なぁ?」

 

「はい」

 

「ヒテイざいりょうがありません(;-Д-)」

 

「あはん」

 

これが自分のしてきた無茶の結果だよ!

皆はこうなっちゃ駄目だよ!

信頼は得れても心配は絶えないからね!

 

「うーっすネプ子~」

 

そんな感じでシリアスは終わってまたのんびりとしていたらおっちゃんが入ってきた。

 

「どしたの?」

 

「いやよぉ、休憩くれてやったとかで俺のところに寄越してきやがって、外で待ってるんだが…」

 

「アザゼルさん、だれが、というのがぬけてます(´・ω・`; )」

 

「ああ、そうだったな。少し急いでたもんで…まあ、今回の件でお前に会いたい奴なんて分かりきってるだろ?」

 

そう言うおっちゃんに、自分は少し考えて納得。

昨日の今日だけど、いいのかな。

でも、そっか、会いに来てくれたんだね。

 

よし、と立ち上がると一誠とあーちゃんも立ち上がる。

 

「あれ、二人も?」

 

「一人で行くなんてイッセーさん許しませんよ!俺も行くからな」

 

「ですです」

 

「…あきらめましょう、ネプテューヌさん」

 

「はーい…外?」

 

「おう、俺も行くから心配すんなって」

 

「いや、アンタはもうちょい反省の色を見せろっての!」

 

「行動で示す。言葉じゃどうにもならんよ」

 

まあ、よくあるメンバーってことだね。

それなら善は急げと少し駆け足で外に向かう。

うーんうーん、何て言うべきなんだろう?

 

でも、もう戦う必要はないから気楽でいいよ

 

あーなんでこの廊下短いかな!

もう少し台詞を考えたかったんだけどなー!

取りあえず靴を履いて、外に出る時に大きな声!

これだ!!

 

よし、ネプテューヌいっきまーす!

 

「どうもー!超絶美少女女神系主人公ネプテューヌでーーっす!」

 

 

 

「……なんだ、上手い反応が出来ずすまない」

 

 

 

勢いよく外に出て挨拶すると、上手い返しが出来なくて居心地が悪そうな頼光がいた。

後ろには…他の反英雄派の皆も。

あ、あの子が呂布かな?わー、普通に可愛い女の子だ。

 

「ごめんごめん、ちょっと気楽に行こうかなって」

 

「随分と、切り替えが早いんだな」

 

「あはは、色々とあるから慣れちゃった、みたいな?」

 

「なるほど、そういうものか」

 

「そういうものだよ!それで、どうしたの?」

 

「一言だけ言いたくて来た。他も同様だ」

 

ありゃ…頼光ってお堅いね?

もっと気楽に接してくれていいんだけど…

あれかな、これが素とか?

 

頼光は真っ直ぐに自分を見つめていた。

真面目な雰囲気だから、自分も見つめ返す。

 

「…お前の理想、俺はそれを信じよう。

俺が捨て去った物も、お前ならば…やり遂げるかもしれん。

故に、俺はお前の助けになろう」

 

「…いいの?人外はいるよ?」

 

「俺は既に負けた身ではある…が、悲劇を許す気は毛頭無い。

三勢力がこれからも変わらぬつもりであるのなら…恥を晒そうと、俺はまた刀を取るだろう。

…そうならない、させない為にお前は動くんだろう?」

 

「うん、私はハッピーエンド主義者だからね」

 

「俺には出来ん考えだな」

 

「それは頼光が私には出来ない考えがあるって事だよ。

協力すれば、もっと出来ることも広がるよ!」

 

「そう、だな…その通りだ。

こうして敵であった俺と話してくれること、嬉しく思う」

 

「ううん、私も話せてよかった!これから、よろしくね!」

 

「ああ。…堕天使総督、頼むぞ」

 

「おう」

 

頼光はもう話すことはないと後ろに下がった。

他のメンバーがこっちに来る。

か、カイネウスはまだ怖いかも…

 

「よぉ、女神」

 

「や、やっほー…」

 

「なんだ覇気がねぇな。

…まー、なんだ…悪かったな。神らしくねぇとは思ったがマジで違うとは思わなかった」

 

あれ?

確かに曹操が謝るよう言ったらしいけどやけに素直だね。

うーん…そうだね、自分も知らない事ばかりだよね。

 

「いいよいいよ!勘違いって分かってくれたら十分!

あ、でも私カイネウスの事全然知らないや!

英雄だったんだよね?」

 

「ああ、前世はな」

 

「なら、英雄譚とか聞かせて欲しいな!何をしたとか、色々!」

 

「…ハッ、気が向いたらな」

 

何だかさっぱりしたような笑いで頼光の方に背中をド突きに行った。仲良いんだね~

っと、まだいるね。

 

呂布とトリスタンが一緒に来た。

 

一誠がちょっとジッと睨んだけど呂布は気にも留めてない。

のほほんとした感じ。

 

「…敗北は敗北です。

ここで自殺するのは恥でしかないでしょう。

曹操と頼光…二人があなたについていくのであれば私もついていくのが道理。今後ともよろしくお願いします」

 

「うわすっごい他人行儀。

まあ、うん、よろしくね!あーでもあんまり心とか読まないで欲しいな~…」

 

「……ふふ、ええ、ええ。分かりました。」

 

「あなたが誰かを心から信じられる日を待っていますね」

 

「…やはりあなたは悪女だ」

 

「ん、次は私の番。取りあえず、これあげる」

 

「あ、お煎餅」

 

「お近づきの印」

 

「うん、ちょっと違くない?」

 

「私と女神は初対面。問題なし、グッ」

 

いやサムズアップされても。

何だろ、意外と天然?

いやぁ…割り切ってるみたいな感じかな。

 

切り替えが上手いんだね。

 

「うん、これからもよろしくね!」

 

「よろしく。後、今度ゲーム教えて」

 

「お?いいよいいよ~!しっかりと教えてしんぜよう!」

 

「おー」

 

何かノリいいねこの子。

でも一誠曰く戦ってる時は鬼みたいに強かったそうだし…

頼もしいや!

 

二人とも、後ろに下がって行った。

…仲良いのかな?どうだろ。

 

そう考えてると、パラケ…かな?すごい美人さんとパンドラが

やってきた。

パラケはとても申し訳なさそうにしてて、パンドラは自分をただ静かに見ている。

 

「パラケかな?」

 

「…はい、パラケルススです女神様。今回の件は…」

 

「ねえパラケ」

 

「っ、はい」

 

とても苦しそうに喋るものだからつい止めちゃった。

うん、駄目だよ。

そんな辛そうに喋るのを見過ごせない。

 

だから、少し背が高いけど背伸びして頭の上に手を置く。

 

「誰かに、助けを求めて皆に拒絶されるのが怖かったんだよね」

 

「…はい」

 

「本当は、皆にこんなことして欲しくなかったんだよね」

 

「…はいっ」

 

「…うん、お疲れ様。よく頑張ったね」

 

「──ッ!!」

 

パラケの膝が崩れて、抱き付いてくる。

自分は吐き出させた方が良いと思って、背中を優しく擦る。

…優しい人だもんね、辛かったと思う。

 

「…ごめん、なさ…ごめんなさい…!私が、私が止められていれば…!頼光に、毒を呑ませることも…パンドラに、あんな…あんな!」

 

「大丈夫、大丈夫だよ。皆無事だから、もう大丈夫だよ」

 

「私は…わた、しは……!私自身が…許せない…!」

 

ただただ善良な人。

才能があって、それが出来てしまう。

皆の事も分かっているから止めにくい。

そうしてやってしまってから後悔したんだ。

 

どうしてあんなことを、って後悔して、後戻りは出来ないってなって。

助けを求めることが余計怖くなって…

 

だから、自分は叱らない、叱れない。

 

よく頑張ったねって、お疲れ様って言う。

心が潰されなかったこの人は、とっても強い人だから。

 

よしよし、と頭も撫でて溜め込んでいた事を吐き出させよう。

パラケの泣いている姿に驚いているのか目を少し見開くパンドラに話し掛ける。

 

「パンドラは、何かある?」

 

「……私、の…」

 

「うん」

 

「私のような…子を…もう、出さないように…してください…

当たり前の幸せを、奪うことがないように…」

 

「…うん、分かった。

皆に言うね。こんなことが無いように、パンドラのような子が出ないようにって」

 

ちょっと手を伸ばして頭を撫でようとして届かなくて困っているとパンドラが近付いてきた。

よかった、届く。

 

綺麗な金髪を撫でる。

 

「…ぁ…」

 

「どうかした?」

 

「………撫で方が…お母様、みたい」

 

「…そっか」

 

それは多分、パンドラにとっての悲劇の一つで。

この子から笑顔を取った要因の一つなんだと理解した。

もう、撫でられないんだと。

 

撫でていると、次第にパンドラの目からポロポロと涙が溢れる。

 

「…もう、私を撫でてくれる人がいないの…」

 

「…」

 

「お父様も、お母様もいないの…私を、忘れちゃったの」

 

「……ごめんね」

 

「神様は、私が嫌いなの?」

 

「…ううん、そんなことないよ」

 

「どうして?」

 

「私が、嫌いじゃないもん」

 

「…変なの……でも…」

 

 

 

「…ありがとう、女神様」

 

 

 

叫ぶわけでもなくて、ただポロポロと涙を流すパンドラを撫でて、涙と一緒に辛さを吐き出すパラケを泣き止むまで抱き締めた。

おっちゃんも、一誠も、あーちゃんも、いーすんも。

何かを言うわけでもなくただ見ていた。

目に焼き付けるように、ただ。

 

そうして泣き止んだパラケが我に戻って恥ずかしそうに離れる。

 

「もう大丈夫?」

 

「はい…ごめんなさい、みっともなく泣いて…」

 

「ううん、大事なことだよ。私だって泣くんだから!」

 

「…ありがとうございます。

…頼光達同様、これからは皆さんの助けになりたいと思います」

 

「…約束、してくれる?」

 

「うん、約束だよ。信じてくれる?」

 

「…うん」

 

「ありがと!」

 

笑いかけると、パンドラはやっぱり笑わなくてパラケの後ろに隠れる。

パラケは何だか優しい微笑みでパンドラの頭を撫でると一礼して頼光達の元に戻っていった。

 

手を繋いで、親子みたいだった、なんて言えないかな。

 

そうして、頼光達は戻っていった。

まだ、八坂さん達に働かされているんだろうね。

会いに来てくれて良かった。

 

…少し、安堵するとガクンと態勢が崩れて傍にいたあーちゃんに支えられる。

 

「ネプテューヌさん!」

 

「ね、姉ちゃん!?」

 

「大丈夫か、ネプ子!」

 

「あ、れ?ごめん、ちょっと気が緩みすぎてたみたい」

 

「緩みすぎてたじゃねぇよ!もしかして、ずっと頼光達のこと考えてたのかよ!」

 

「そりゃ、気にしちゃうよ~…ごめん、あーちゃん。もう大丈夫だか……あっ」

 

支えてくれてたあーちゃんに謝って、一人で立とうとしたのに上手く立てない。

足が言うことを聞いてくれない。

あれ、あれあれ…?

 

─ネプテューヌさんが考えてるよりも、体はまだ休息が必要なんでしょう。観光するだけの余裕はあっても、昨日の相手との会話やカウンセリングのようなものまでしたのです。もう休むべきですよ

 

「…ごめん、ちょっと立てないや」

 

「自分のことは鈍いぜ姉ちゃん……アーシア、俺が背負うから頼む」

 

「はい、夕食はお部屋に運んで貰いましょう」

 

「そんな、皆で食べてよ!私は一人で…」

 

「ネプ子、俺達のせいとはいえ…二人の気持ちも、考えてやってくれや」

 

そう言われて、二人の顔を見る。

 

一誠は自分を背負ってるからよく見えないけど、あーちゃんはとても心配そうに…それも少し泣きそうな位だった。

一誠も、なのかな。

 

あー…駄目だ、これじゃダメダメだよ!

 

「…兵藤家で食べよっか」

 

「ああ、そうしようぜ」

 

「ですね、きっと美味しいですよ」

 

─食べたらお風呂、その後はすぐに寝てくださいね

 

(はーい…)

 

…ホントだ、体疲れてるや。

鈍感だなぁ、自分。

もっとしっかりしないとね。

 

そうして、一誠に背負われて部屋に戻った。

 

いーすんも含めて四人で食べた夕食は、とても美味しかった。

あーちゃんとお風呂に入って、体を洗って貰っちゃったや。

その後、自分を挟む形で布団で寝た。

 

とても安心できる夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今、何と言った?」

 

『珍しい、理解が遅い感じかな?』

 

「戯れ言はいい」

 

久方ぶりにネビロスから連絡があったと思えば、不愉快な情報が耳に入った。

少し頭が追い付かず、もう一度聞く形になったが…ネプギアがいなくて良かった。

 

『じゃあ、もう一度言うよ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

『─リゼヴィム・リヴァン・ルシファー、彼が動いた。

僕も誘われちゃったや、どうしようか?』

 

…遂に動いたか、惰眠を貪っていた奴が今更何故…?

 

何に興味が湧いた…?

今代の二人か?いや…ならばもっと早くに…

…女神、か?

だとすれば、何故今になって……いや、それよりも…

 

「絶対に協力するな」

 

『…あー…ごめん…一回だけ()()しちゃったんだよね』

 

「何を渡した!」

 

少し声を荒げて聞く。

それ相応の対価は得た筈だが、それはそれだ。

私とて今まで払ってきたのだ、少し位聞き出せる筈だ。

 

『まあ、話すけど…───だよ』

 

「……そう、か」

 

脱力する。

安心ではなく、不安による脱力。

…何故、今になってなどどうでもいい。

 

超越者リゼヴィム…貴様、狙ったな…?

 

全身に力を入れて、心で喝を入れる。

 

『さて、どうするんだい?』

 

「決まっている」

 

誰だろうが、関係はない。

超越者が相手ならば…手間が省けた。

貴様から葬ってくれる。

 

私の獲物だ、私の戦争相手だ。

 

それを横から掠め取ろうとする鼠が貴様だろうと容赦はせん。

 

 

 

「全身全霊を以て潰す。手を貸せ、対価は払ってやる。

奴への協力拒否の分も入れてな」

 

『ワオ、魅力的。

なら、悪巧みといこうかシャルバ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねー、俺スッゴく気になってることがあるのよ」

 

「何でしょう。下らないことなら戻りますが」

 

「やぁー酷いね。これでもかってくらい君対応が雑だよね。

まあいいんだけど…ほら、いるじゃん。最近活躍してる…」

 

「女神パープルハート、ですね」

 

「そうそう、紫ちゃん!俺ずーーーーっと気になっててさぁ…

やってみようと思ってね?」

 

「やる気になったと思えば…まあ聞きますよ」

 

「そんなどうでも良さそうに聞くなよー性癖全世界にばら蒔くゾ?いやね…」

 

 

 

 

 

 

 

「女神様とやらが何処まで足掻けるか、見てみたくない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーション!」

 

「スタートです!えっと、これでいい?」

 

「OKOK!バッチグーだよ!

というわけで久し振りのネプステーションのコーナー!

まあ、これが始まるってことは章の終わりなんだけどね!

司会は勿論ねぷ子さんことネプテューヌ!

ゲストは~?」

 

「ネプギアです、よろしくお願いします!」

 

「いやぁ…遂になっちゃったね。

ネプキャラだけのネプステーション。

ここだけクロスオーバー関係無いよね」

 

「それを言ったら駄目だよ、お姉ちゃん」

 

「だねー。

というわけで提供して貰ったキャラこと反英雄派の皆との戦いは終わってこれからは仲間に!」

 

「これからも登場しますが、一つの区切りとして…ですね。

提供してくれた方、ありがとうございます。

これからの頼光さん達の活躍、見ていてくださいね」

 

「そして、ネプギアも本格的に参戦が決まる次章だけど、不穏だねー…リゼヴィムって誰さ!?」

 

「それは次章にならないと分からないよお姉ちゃん。

ここで言ったらネタバレになっちゃうよ」

 

「それもそっか!

じゃあ、待ちきれないから次回予告!」

 

「うん、えっと…

『久し振りの平穏に元のだらけっぷりが帰ってきたお姉ちゃん。

でも、そんなある日、またまた久し振りのフリードさん!?

取り敢えず戦うけど…何だか不穏です。また波乱の予感!

え、私が頑張るんですか!?』

次章、冥次元ゲイムネプテューヌ。

『sister generation!』」

 

「次回の私たちも!」

 

 

「「刮目せよ!/してください!」」





さてあとがきこと裏話。

えー、最初は相容れない相手として最後まで手は伸ばすけど駄目だった…つまり、殺すしかないってなる展開を作ってました。
けど、そんな道理も蹴り飛ばすのがネプテューヌでないといけないと思い、作り直しました。

なので大幅なプロット変更のために時間を要した次第です…申し訳無い。
パンドラについてなのですが、弟の設定もなかったんですよね…はい、私が作りました。
何というか、悲劇的ならここまでしようぜってなって…うん…反省はしてない、後悔もしてない。むしろスッとしてる。

そして、ようやく一段落着きました!
次章からより激しい展開が始まりますが、一段落!
リゼヴィムはD×Dを書く上で外せませんね、何処までゲスとして書けるか楽しみです。
ネプギアちゃん、君が次章頑張るんだよ。
何故ネプテューヌでなくネプギアちゃんかって?
…詳しく言いませんが、そういうことです。

無駄に長いのもやめにして、ここからは欲望垂れ流し。

コラボ等の御誘い等は随時受け付けております!
この時のねぷ子を使わせて欲しい!そういう要望もOKです!
皆さんと繋がる事が出来れば嬉しい限りです。
もしよろしければ、御誘いください。

では、また次章会いましょう!


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sister generation
絶望のアンファング


さあ、新しい章の開演だ。

まず一つ言っておきます。

ごめんね、ネプテューヌ





だらだら過ごすって…いいよね。

こう、部屋にいて、何かを気にする事もなくただ自堕落に過ごす。

最近大変だった時期を考えるとこれって最高の休みなんじゃない?

はー天才、ねぷ子さん天才だね。学会に出れちゃうね。

博士号も取れちゃうくらい天才!

 

いやぁ、やっぱり部屋でだらけるのっていいね!!

 

 

 

「俺の部屋じゃなければなぁ!!」

 

 

 

部屋の主…ゲオルグのツッコミが部屋に響き渡る。

 

はい、というわけでやっほー皆!

人の部屋で入り浸るネプテューヌだよ!

 

「まあまあ、いいじゃん!

私も会いたい子がいたしさ~」

 

「会いたい奴がいるのは構わん。だが、それで俺の部屋に入り浸られても困る!レオナルド、追い出せ!」

 

「…やだ」

 

「おい黒猫、普段から面倒見てやってるだろ!

頼むから追い出してくれ!このままだとこいつは俺の菓子を食い尽くす!」

 

「えー嫌にゃん。久しぶりの出番だしねぷっちともう少し遊びたいにゃん。ねー?」

 

「…ねー」

 

黒歌の上に座らされて自分の前にちょこんと座るレオナルド。

二人のコンビネーションは完璧だぁ…

ゲオルグもこれには涙目。

レオナルドも感情が表に出るようになって反応もよくなってきた。

興味が出たらこれは何って聞いてくるし、可愛い子供って感じ。

黒歌とかヘラクレスがよく構ってるらしくて二人に懐いてる印象かな。

 

「何でお前はこう……緊急時の真面目さは何処へ行くんだ!?」

 

「えー…主人公といってもずっと張り詰めてたら死んじゃうよー

プリン一年分の働きはしてるよー」

 

「そうにゃん。ねぷっちは私達と遊ぶっていう大事な役目を果たしてる最中…これは真面目にゃん!」

 

「そうだそうだー!」

 

「そうだー」

 

「はぁーーー……」

 

隠す気がさらさらない大きな溜め息。

ごめんね~英雄派の皆に会った後は大抵ここがゆっくり出来るんだよね。

まあ、そんなゲオルグの机に座ってるいーすんとの魔法勉強でチャラにしてくださいな!

 

「ゲオルグさん、もうしわけありません…(;>_<;)」

 

「…いや、イストワールが謝ることではないんだ……もうこいつらは放置だ。それよりも大事な探求が待ってる」

 

「そのドリョクのしせいはこのましいです」

 

「世辞は良い。完成すれば…ふふふ…」

 

「そういえば、頼光達はどうしてるんだろう?」

 

「む…アイツらか。アイツらは堕天使陣営…というよりアザゼルが預かる事になったらしい」

 

「おっちゃんが?」

 

「行き場が無いのは確かだからな。神器保有者保護を目的として現在は動いている。アザゼルも大助かりだろうさ」

 

「どゆこと?」

 

おっちゃんが助かるっていうのが分からない。

どうしてなんだろう。

 

「悪魔の駒の摘出…それを試みているそうだ」

 

「出来るの?」

 

「悪魔として転生させる際、どうしても魂に定着させてしまうせいで今までの技術では出来なかったが…技術の公開、北欧からの提供、その他諸々もあってやれるかもしれないとの事だ」

 

「じゃあ、はぐれ悪魔の人とかも保護するのかな」

 

「さてな、そこは魔王ども次第だろう。

古い悪魔を政治の舞台からどう退かし、納得の出来る法を敷けるか…見物だ」

 

「またまたぁ。傍観者みたいにしてるけど、ゲオルグも技術提供してる癖に!」

 

「……パラケルススの奴に頼まれてな」

 

「惚れてるとかー?」

 

「ハッ、あり得んな」

 

間髪入れずに否定されたので本当に無いってことかぁ。

ゲオルグに春はあるのかなぁ…生涯独身とか?

まあ、それはそれでゲオルグの生き方だよね。

 

そう思っているとレオナルドが後ろに倒れこんでくる。

 

「どうしたの?」

 

「つまんない」

 

「えっと…遊ぶ?」

 

「…トランプしたい」

 

「おー、いいね。それじゃ、黒歌もやろっか!」

 

「むむ、大富豪ならやるにゃん」

 

「どうして闇が深いゲームを最初にチョイスするかな」

 

「闇は最初から知っておいた方がいいにゃん」

 

「お前らはどうして純粋にやれんのだ」

 

「セイチョウするということはけがれをしるということなんですね…」

 

「否定できないからやめろ」

 

達観したような二人を無視してトランプを始める自分達。

しかし、そこで前代未聞の出来事を目撃する!!

 

「わーい革命だ!」

 

「革命返し」

 

「ねぷぅ!?」

 

レオナルドの手札運が良すぎる…

まるでイカサマをしたかのようにっ!?

してないんだろうけど何という運の良さ!

 

何度やっても勝てない…黒歌と自分の手札がまるで弱いかのような錯覚に陥る!

バ、バカな!革命が出来る手札は最強なのではないのか!?

 

「革命出来てもその後解決できなきゃ意味がないぞ」

 

「みなさんはしっかりとテフダとソウダンしましょうね」

 

「か、勝てない…!」

 

「強すぎるにゃん…これが、子供ゆえの天運だとでもいうの…?

白音…お姉ちゃんはもう駄目…強く生きるのよ…」

 

「何処ぞのカードゲームじゃあるまいし魂を吸い取られんのにその演技は何だ」

 

「カードゲームって負けたら闇に食べられるとかカードにされるとか無いの!?」

 

「ありませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」

 

なん……だと……!?

まさか、嘘だったなんて…

でも、ファンタジーやメルヘンはあるんだからそういうこともあり得る!

やっぱりカードゲームは強くなろうと決心するねぷ子さんなのであった。

 

結局レオナルドには勝てなかった。

 

ゲオルグも参戦したけど勝てなかった。

寧ろゲオルグが最下位になってた。

 

「どうしてお前らは考えなしにそれを出すんだぁ!」

 

「チームプレーしてるんじゃないんだよ!」

 

「勝てば良い、それが全てにゃ!」

 

「…上がり」

 

「……よし、二位だけは貰うよ!主人公の名にかけて!」

 

「そんなものに重要なものをかけるな!」

 

「かけごとはよくないですよ!( ;゚皿゚)」

 

「やってないにゃん」

 

とまあ、こんな雰囲気で楽しんでから帰ることに。

ちょっと暗くなるまでいたけど…うーんどうするかな。

曹操には頼んでおいたけど、どう働くかな。

 

それで帰り道の途中…

 

「にゃー」

 

「黒歌、一緒に来なくてもいいのに」

 

「…」

 

─…何か、警戒しているようです

 

(警戒?)

 

─分かりません。黒歌さんのような動物…妖怪ですが。黒歌さんだからこそ分かる何かを警戒してるのかもしれませんね

 

…どゆこと?

まあ、黒歌がいるなら安心かな。

強いしね!

 

というか…何だろう。

歩きながら、周りに視線をやる。

 

…だーーーーれもいないね。

 

「…結界?」

 

「…違うわ、ねぷっち」

 

「あれ、いいの?変化解いて」

 

「人の気配がしないわ。加えて、結界でもない」

 

「…機械的な?」

 

─恐らくは…

 

ってことはもう何か起こるの!?

とりあえず、木刀は出しておくけど…

うーん、気配なんてしないけどなぁ…

 

「…来る!」

 

「へっ!?」

 

黒歌が自分の前に出て薄い壁…防御壁を張るとそれに何かをぶつける音が響く。

周囲に人がいないせいかイヤにそれが耳に入る。

 

そして、襲ってきた人物…

 

「あらら…野生の勘?そういうのってセコいって言われたことありませんこと?私めもそういうのに防がれちゃ自信がミリ削りしちゃいますわ!」

 

「ふ、フリード!?」

 

「あー、あのはぐれ悪魔祓いの」

 

このふざけたような口調、そしてジークによく似た髪。

似つかわしくない牧師みたいな服…

 

フリード・セルゼンが襲いかかってきた。

 

色々と改造したって話だったけど…見た目普通だね。

 

「くそ女神に~?くそ悪魔かぁ!ヒャヒャヒャ!久しぶりの獲物で俺ちゃんとっても嬉しいです!じゃあ、ぶち殺すかぁ!!?」

 

「…酷い気、何を取り込んだらそんな事になるんだか。

ねぷっち、さっさと終わらせてグレモリーにでも届けるにゃん」

 

「だね!刮目せよ!」

 

今更使い回しボスに負けるねぷ子さんじゃないよ!

しっかり決めて、今度こそブタ箱エンドにしてやんよー!

女神化して、刀を構える。

 

フリードはそれでもヘラヘラとしながら光の剣と銃を構える。

 

「あーあーその姿もこれで見納めか~…」

 

「牢屋か何処かにぶちこまれて、見納めよ」

 

「黒歌、油断しないで。往くわよ!!」

 

「いい悲鳴を聞かせてくれよぉ俺のためにさぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼吸が乱れそうになるのを押さえながら体に鞭打って走る。

くそ、よりによってという奴だった。

奴に話を聞いておいて正解だった…これはまずいぞ。

私の闘争が失くなってしまう。それだけは駄目なのだ。

 

「お、お父さん!どうして駒王に突然!?それにこの人は!?」

 

「今は走れ!」

 

「シャルバ・ベルゼブブ、貴様どういうつもりだ」

 

現在駒王町。

グレモリーがいるだとか堕天使総督がいるだとかは些末な問題だ。

それにヴァーリ・ルシファーを連れ出すのにも時間を要した。

くそ、無駄な時間を使わせおって…!

 

ネビロスが奴に与えた技術…あれならば確かに女神を殺すことなど容易い。

だが、私には分かるぞ超越者。

貴様は殺害目的ではなく快楽目的でそれを使うことぐらいな。

手遅れになる前に急行しなければ…ネプギアを連れているのもそのもしもを想定した上でだ。

 

ネビロスめ…要求が凄まじかったが相応の物は作れるんだろうな!!

 

「おい、聞いているのか!」

 

「喧しいぞ白龍皇!女神を死なせたくないのなら急げ!!」

 

「お姉ちゃんが!?」

 

「…後で説明して貰うぞ!」

 

くそ、老骨に堪える!

私の闘争がこのような形で終わっていいものか!

下らぬ思惑にも程があるぞ…リゼヴィム!

 

そうして、女神の居場所を探す内に。

 

 

 

 

 

 

「…今の…銃声…?」

 

 

 

 

 

 

「──!!」

 

「待て!くっ、ネプギア!」

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごっはぁぁぁ!!?」

 

「一昨日来やがれにゃ」

 

「これで貴方の悪事も終わりよ。黒歌、拘束お願い」

 

「了解にゃん」

 

「ぐっ、くそがぁ!出鱈目に強いじゃねぇか…テメェ」

 

倒れ伏すフリードの拘束を黒歌にお願いする。

黒歌なら油断なく拘束できるだろうし。

 

フリードはくそったれと反吐が出るといわんばかりに顔を歪める。

 

「…どうして貴方はそうまでして悪魔や関係者を殺そうとするの?」

 

「ハッ……どうせ短い命なんだ。どう生きようが俺の勝手だろうが!教会の連中は温すぎんだよ!悪魔は殺せだとか言いやがるから二度と同じこと出来ねぇように見せしめに切り刻んだら異端だの何だの…くそ喰らえだね!」

 

短い命って言うのは分からないけど…

でも、駆け抜け方を間違えてる。

きっと周りにいい人がいなかったんだろうね。

諭してあげられる人や、寄り添える人が。

 

「…貴方は道を誤ったのよ。強さに固執するんじゃなくて、人との関わりを求めるべきだった」

 

「何だ説教か?おいおいおいおい勘弁してくれよ女神様、テメェも俺ちゃんを否定するスタイルな訳?周りが、俺を、見捨てたんだろうがよぉ!!」

 

「それでも──」

 

罪を償えば、自分は関わってあげられる。

 

そう、言おうとした。

言おうとして、口から出たのは、耳に聞こえたのは。

 

 

 

 

 

 

 

─ネプテューヌさん!!!

 

パァン、という軽そうで重い音。

自分の口からは、赤い液体が流れてきた。

お腹、が痛い。

 

「…ぇ?」

 

…あれ、穴、みたいなのが。

 

─…ネ……ん!し……!

 

女神化、何で解除されるの?

体の言うことが、上手く効かない。

あれ、あれ、あれ。

突然すぎてよく分からない。

 

おかしい、刀が光になって消える。

体が倒れて、起き上がれない。

痛い、スッゴク痛い。

 

 

「ねぷっち!!」

 

 

拘束をした黒歌が駆け寄ってくる。

喋ろうと思って、口を動かす。

 

「く、ろ…ぁ……」

 

「喋っちゃ駄目!」

 

必死な形相で魔法か何かで治そうと焦る黒歌。

安心させようと思っても体が動かない。

あ、れ…そういえば…

 

いーすん、の声が…聞こえない…

 

─………!

 

あれ、どうして…?

 

フリードはとても愉快そうに顔を歪めて、笑っている。

嬉しそうに、楽しそうに。

フリードに、やられたの?

違う、それは違う。

 

まずい?これ、ピンチ?

死んじゃうかも…

 

そうだ、体をシェアで治せば………?

 

 

 

 

 

あれ……?シェア、使えない?

どうして、どうしてどうしてどうして…

何度考えても、頭も朦朧としてきて駄目だ。

 

痛みが、少し引く。

 

傷が塞がったのかな。 

ああでも、体が動かない。

どうして…?

 

シェアを、感じられないの?

皆からのシェアが…分からない。

途端に孤独感が強くなる。

自分は一人、ただのネプテューヌになってしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプテューヌ!!!」

 

とても聞き覚えのある声が、聞こえた。

頑張って、視線だけをそっちに向ける。

 

駆け寄ってくる彼の姿。

 

ああ、来てくれたんだ。

嬉しいな、来てくれて…

ネプギアや、シャルバもいる?

もしかして、ピンチを察して来てくれたとか?

 

ねぷ子さん、嬉しいなぁ…

 

「ネプテューヌ、しっかりしろ!」

 

「ぁ…は…」

 

力が出ないのが分かってくれたのか、抱き上げるヴァーリにこんな状況だけど嬉しいと思うのは…良くないんだろうなぁ。

シャルバやネプギアの鬼気迫る表情が自分がどれだけ危険な状態かを物語ってるようで不安になる。

 

ああ、ちょっと今回ばかりは…まずいかも。

 

助けて欲しいかな…あはは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き上げたネプテューヌが俺に微笑んだ後に力なく気を失う。

 

「ネプテューヌ!おい!」

 

「おい、そこの」

 

「わ、私?」

 

「そいつを見張ってろ。というより、誰かに投げてこい。

白龍皇、こいつの家は分かるんだろうな!」

 

「……くっ。ああ、分かる」

 

オーフィスの面倒を見ていたらシャルバが少女と共に来た時は身構えた。

だが、有無を言わさぬ姿勢に俺はついていった方がいいと判断し他の仲間に任せて駒王に来たが…来た瞬間がこれだ!

何をしている…ヴァーリ・ルシファー…!

大切なものを守れていないではないか。

寧ろ、安全だろうと腹を括っていたんじゃないか!

 

自分に怒りをぶつけるのは後でもいいと俺はネプテューヌの家に向かう。

イストワールの反応もない。

…くそっ。

 

家に着くのに、そう時間は掛からなかった。

 

ネプテューヌが持っていた鍵で玄関を開ける。

そして、帰ってきたと思ったのか、居間から誰かが向かってきた。

 

「あ、ねぷちゃ…!?きゃぁぁぁぁ!!」

 

…よりによって、兵藤母か。

叫び声に反応してか、階段から誰かが降りてくる。

 

今一番会いたかった人物だった。

 

「どうしましたか!?…っ…!!」

 

「…頼めるか?」

 

「……はい、任せてください!お母様、説明は必ずします。だから手伝ってくれますか?」

 

「っ……分かったわ。ねぷちゃん…」

 

「わ、私も手伝います!!」

 

兵藤母とアーシア・アルジェントにネプテューヌを預ける。

少女も助けになろうと共に行き、俺は手持ち無沙汰になる。

壁に背を預け、座り込む。

戦ってもいないというのに、疲労感が込み上げる。

それ以上にこみ上がってくるのは情けなさと怒りだった。

 

「…くそっ…!!」

 

『落ち着け、ヴァーリ』

 

「落ち着いていられるか!!」

 

『気持ちは分かる。だが、こんな事態だからこそ冷静さを捨てるな。教えた筈だ』

 

「──すまない…」

 

『…俺も、お前と同じ気持ちだ』

 

「アルビオン…」

 

そうだ。

アルビオンも俺の恋路を応援してくれた者。

悔しいと思ってくれているのだろう。

…シャルバはただ立っている訳ではなく、連絡を取っていた。

 

「私だ。…ああ、二番目に嫌な事態だ。それで、どうなんだ」

 

『──』

 

「…おい、ふざけてるのか?」

 

『──!──』

 

誰かとの会話で、苛立ちが大きくなっている?

いや、面倒事が増えたことに気だるさを覚えているのか?

…どちらでも構わない。

 

「…お前の提供した技術は無事にリゼヴィムに使われてしまった。

お前の責任とは言わんが…報酬分は働け」

 

『──』

 

「リゼ…ヴィム……?」

 

待て、何故そいつの名前が今出てくる。

俺は立ち上がって話が終わったであろうシャルバに掴みかかる。

何故そいつが出てきた。

そういうことなのか、そういうことなんだな?

 

「おい…この手を退けろ」

 

「いいから答えろ。アイツなんだな…」

 

「…リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。聞き覚えがあるか、混ざり者のルシファー」

 

「っ、アイツか…!アイツが!」

 

手を離す。

怒りが沸き上がる。

またお前が奪うのか、リゼヴィム…!

俺の大切なものを、奪うのか!

 

─ごめんね、ヴァーリ

 

母を俺から離した時のように!

父が俺を恐れた時のように!

お前は…!!

 

─私は、好きだよ

 

ネプテューヌ…俺の、守るべき者。

守れなかった俺が…いるべきなのか…?

兵藤一誠にも言われ、彼女からも受け入れられたというのに、俺は…俺の誓いは…!

 

「何処へ行く」

 

「…俺に、資格は…」

 

「おい、若造」

 

シャルバは俺の肩を掴んだと思ったら俺の頬を拳で撃ち抜いた。

歯が折れるのではと思う程の痛みが襲うが、喪失感の方が勝ってるせいか受け身も取らずに廊下に倒れる。

 

「貴様はその程度か」

 

「…」

 

「答えろ、白龍皇。貴様はその程度であの女神を諦めるのか」

 

「…俺は…」

 

シャルバの言葉は、俺の胸を抉った。

何をしているんだと、ふざけるなと。

好敵手と定めた相手だからこそシャルバは信じているのか。

ネプテューヌはこの程度で死なないと。

 

…彼女は、弱いんだぞ。

泣き虫で、すぐに不安になって心が折れてしまう。

それを無理矢理奮い立たせる少女なんだぞ。

それを…俺は。

 

一人に、してしまっていた。

 

「後悔するなとは言わん、寧ろ腐るほどしろ。

だがな、守ると誓ったのなら一度守れなかったからと投げ出すんじゃない。想いの方向性を見失うんじゃない」

 

「想いの…方向性…」

 

「…こんなところで、腐ってる場合か。

何をすべきか分かるだろう?」

 

何をすべきか。

何を…してやれるか。

酷く重い体を起こして、立ち上がる。

 

…きっと、怖い筈だ。

 

「…すまない」

 

「いいから行け」

 

「…ああ」

 

『ヴァーリ…』

 

アルビオンの心配する声を聞き、何とか自身を奮い立たせる。

 

まだ、失ってない。

失うものか。

俺に出来ることをしなくては。

 

上の階へ行き、乱雑に開けられた扉の先へ入る。

 

そこには、酷く焦燥した顔のイストワールと顔を歪めるアーシア・アルジェントと兵藤母、少女。

 

そして、とても辛そうにしながらも眠っているネプテューヌの姿があった。

 

「…ヴァーリさん」

 

「頼む、傍に…いさせてくれ」

 

「…はい」

 

「…貴方がねぷちゃんの?」

 

「こんな形での挨拶ですがお付き合いさせていただいているヴァーリ・ルシファーです」

 

兵藤母は俺の自己紹介を聞いて、疲れた様子でも微笑む。

 

「そう……ヴァーリ君、この子をお願いね。多分、貴方が傍にいないと駄目だわ」

 

「…はい」

 

強い人だと確信する。

力でなく、心が俺なんかよりよっぽど強い。

現実を見れている…というのか。

 

少女は疲弊しているものの泣きそうになりながらネプテューヌの手を握っている。

 

「お姉ちゃん……」

 

「…君は」

 

「あ…すみません…その、ネプギアです…」

 

「ヴァーリだ」

 

ネプギア…そうか、シャルバの…

ネプテューヌは姉に当たるのか。

そうか……

 

「…すまない、ネプテューヌの手を握らせてくれ」

 

「分かりました」

 

「…」

 

まだ、暖かい。

辛いのは、お前自身だろうに…どうして俺に抱えられた時に微笑んだんだ。

俺は、泣きたいくらいだというのに。

 

だが、辛そうな顔をされるのは…俺も辛くなる。

 

イストワールが俺の近くにまで来て、ネプテューヌの髪を小さい手で撫でる。

 

「ヴァーリさん…」

 

「…イストワール、聞かせてくれ。ネプテューヌは…」

 

「…わかりました」

 

イストワールは伝えるのに戸惑っていたが、俺に聞かれると意を決したかのようにその重い口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ネプテューヌさんはゲンザイ、シェアがありません。

むりやり、シャダンされている…そのようなジョウタイです」

 

その事実は、とても絶望的で。

ネプテューヌの手を握ってやる位しか出来ない自分がとても情けなくて…俺は

 

「…そう、か」

 

と一言だけ口に出すのでやっとだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

急いで家に向かう。

皆の声も耳に入らない。

ドライグの声さえも、俺には入らない。

 

撃たれた。

誰が?姉ちゃんが。

誰に?分からない、多分フリードじゃない。

どうして?知らない。

今どうしてるか?アーシアの治療を受けている。

 

…まただ。

 

またねぷ姉ちゃんの事を傷付ける奴が現れやがった。

 

ヴァーリもいるらしい。

守れなかったのか、とかそういうのはいい。

アイツが悪いんじゃない。

シャルバやネプギアもいるらしい。

多分、助けに来たんだろう。

 

違う、そうじゃない。

 

俺が知りたいのはそうじゃない。

姉ちゃんが無事なのかとか…そういうのもある。

だけど、そうじゃない。

俺に出来るのは治療じゃないから。

 

 

 

 

 

「誰が姉ちゃんをやった」

 




はい、この章はねぷ子に辛い状況になって貰います。
まあ、何とかなるさ、何とか。

・最後の一誠

やばい。
分かりやすくやばい。
この状態のヤバさはこの作品を見てる皆なら分かる筈。

・イストワール

イストワールはシェアが必要なんじゃなくてシェアが食事代わりになるだけ。
食事すれば普通に補給可能。

・ネプテューヌ

シェアがない彼女は何が出来るのか?
…まあ、次回かな


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二つの道がある

ネプテューヌ、お前の真実を取り戻してみせろぉ!

というわけで更新です


目を覚ます。

暗い空間に一人、自分だけが立っている。

何も見えない先のない空間。

ただ、暗くて寂しく、寒さすら感じる空間。

 

ふと、見覚えのある誰かが自分の前に現れて前を歩き出す。

 

「あ、待って!ここどこ?」

 

呼んでも聞こえていないように歩いて行く。

ついていこうとしても、目の前の誰かは歩いている筈なのに自分よりもずっと速く先へ行って、消えてしまう。

気付けば、同じように見覚えのある誰かがいっぱい周りにいて、自分より先へ進んでしまう。

 

「待って、待ってよ!」

 

置いていかれる。

…また、暗い空間に一人。

同じような事が何度も起きて、挑戦しても意味がなくて。

 

皆が皆、自分を見ないで置いていく。

 

無駄な挑戦だと嫌でも理解して、辛くなって座り込む。

 

「…一人は、嫌だよ」

 

そうして、本に座る小さい子が自分の目の前にやってくる。

見間違える筈もない。

いーすんが来てくれた。

 

ただ、顔はなんだか悲しそうで、自分の心をより不安にさせる。

 

「いーすん?」

 

「……ごめんなさい」

 

「え…?」

 

いーすんは自分に謝った後、皆と同じように自分じゃ追い付けない速さで何処かへ行ってしまう。

自分はそれが嫌で、必死に手を伸ばす。

 

「待って、待って!!いーすん!!」

 

やっぱり、いーすんには声が届いてないようで。

見捨てられた訳じゃない…まるで、これで最後というような、そんな…

呆然といーすんの行った方を見ていると、そこから誰かがやって来る。

 

「…」

 

「ヴァー…リ…」

 

「……」

 

あれ…どうして自分の前でそんな悔しそうな、やりきれないような顔をしているの?

待ってよ…その花は何?

何でそんな辛そうなの?

 

「…守りきれなかった。俺は、お前を…」

 

「ま、待って…」

 

花を自分の足元に置いて、去っていく。

待って、とようやく腕を掴めたと思ったら。

スッと手がすり抜けた。

 

え…?

どうして?どういうこと?

…花、ヴァーリやいーすんの顔……

 

まさか、と思ってようやく後ろを振り返る。

 

そこにあったのは──

 

 

 

 

─自分のお墓だった。

 

 

 

 

 

 

 

「───ッ!!ハァ…ハァ…うぐっ…うぅ…!」

 

目が覚める。

見覚えのある天井が目に入る。

慌てて起きて、周りを見渡す。

…自分の部屋だ。

何度か深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

大丈夫…あんなのは夢…夢だから大丈夫…

 

どうして自分の部屋に寝かされて…?

それに、お腹の辺りを確認すると包帯がしっかりと巻かれている。

…あ、そっか、フリードと戦って…それで…

 

…シェアを、感じなくて。

 

暗い部屋に、自分一人。

怖い…冷凍庫に閉じ込められたんじゃないかって位寒さを感じる。

嫌だ…一人は嫌だ!

 

シェアを感じない…皆を感じられない。

当たり前のような物が分からない。

いーすんは?いーすんはどこ?

重い体を何とか起こして、ベッドから降りようと床に足を着く。

立ち上がろうとした時。

 

「っあ…!」

 

ガクン、と体が倒れて、大きな音が部屋に響く。

足に力が上手く入らない。

タンスとかで何とか体を立たせて、歩き出す。

一歩一歩が遅くて、シェアがどれだけ自分にとって重要か理解する。

ああ、もしかして死ぬのかな…

 

扉を開けようとして、気だるさが襲ってくる。

もう疲れてる…こんな当たり前の事すら出来ないなんて…

一旦背を壁に預けて座り込む。

膝を抱えて、これからどうすべきなのかを考える。

 

こんなんじゃ、戦うことだって出来ない。

自分じゃ…もう戦って誰かを諭せない。

言葉だけで止まってくれなかったから今まで戦って諭してきた。

皆を止められた。

でも…それが出来ない自分は?

 

「役立たず……」

 

見限られても、仕方ない。

あの夢も、もしかしたら本当になるのかもしれない。

自分は…もう駄目だ。

 

「…やだ、なぁ…」

 

自分の体が今までと違って重くて、鉛でも詰まってるんじゃないかと錯覚する程言うことを聞いてくれない。

シェアが自分から消えてしまった…のかな? 

 

…皆との繋がりがどれだけ自分の支えになっていたかが分かるね。

本当の自分は…こんなにも立つのに力が要る。

赤ちゃんなんかよりよっぽど弱い。

窓を見れば、夜空が見えて…とっても綺麗だなとぼんやりと思う。

いっそ、あの星になれればどれだけ楽なんだろう。

苦労も何もかも捨てて、あの空へ行けたらどれだけ…

好き勝手したかもしれない。

けど、自分なりに皆と接して、頑張ってきたつもりだった。

…その結果がこれかぁ。

何だろうね、自分は何のために生まれたんだろう。

自暴自棄になりかけているのは分かっていても、全てを否定された気分で背負っている物全てを誰かに押し付けて逃げてしまいたいとすら考える。

 

自分は、間違ってたのかな………

膝を抱えて、顔を俯かせて気弱な考えしか生まれない自分に嫌気が差す。

本物のネプテューヌは、どうするんだろう。

諦めないで、手を伸ばすのかな。

所詮偽物の自分だからこうなったのかな。

本物なら上手くやれたのかな。

 

そうやって思考の沼に沈んでいると、ガチャ、と扉が開く。

 

「…ネプテューヌさんしだいです」

 

「そうか…」

 

「…あ…!っ……」

 

やって来たのは、いーすんとヴァーリだった。

 

いち早く気付いたいーすんが嬉しそうな顔をしたと思えば自分の現状を目の当たりにして涙を流しそうな程顔を歪める。

ヴァーリも、それに気付いて焦ったような顔でこっちに来る。

 

「ネプテューヌ、起きたのか?

何故座り込んでいるんだ…」

 

「あ、はは…二人とも…よかったぁ」

 

思ったよりも心が摩りきれているようで、乾いた笑いと声しか出ない。負の感情が沸き上がってしまう。

…ああ、二人ともいる。

よかった…自分は見捨てられてないんだね…

 

「…立てないのか?」

 

「分かっちゃうんだ」

 

「…ベッドに寝かせるぞ」

 

「うん、ごめんね」

 

「いや、いいんだ」

 

優しく抱き上げられて、ベッドに寝かされる。

鉛のように重いのに、軽々と持たれたからこう感じているのは自分だけなんだ。

 

布団を掛けられて、いーすんも近くに来る。

 

「…いーすん、私死んじゃう?」

 

「そんなことっ!…そんなこと、ありません。ゼッタイにさせません」

 

「ネプテューヌ…痛みは?」

 

「……無いかな。体は重くって歩けないけど」

 

事実だけ伝える。

見栄を張っても仕方ない。

いーすんの反応を見るに、多分そういうことだから。

泣きそうないーすんに重い体に鞭打って手を差し出す。

 

「いーすん…大丈夫だよ。私、主人公だから」

 

「ネプテューヌさん…」

 

「他の皆は?」

 

「…兵藤一誠はお前の現状を知ってアザゼルと行動している。他も同様だが、アーシア・アルジェントとネプギアだけはここに残っている。シャルバは…分からない」

 

「一誠…暴走してないといいけど…ネプギアやあーちゃんは残ってくれたんだ~嬉しいなぁ」

 

「イッセーさんにはなんとかおちついてもらいました。

…ネプテューヌさん、はやめにおつたえします」

 

「もう長くない?」

 

「まだダイジョウブです」

 

ああ、そうなんだ。

まだこの状態のまま生きてるんだね、自分。

寝た状態のまま、夜空を眺めていーすんの話を聞く。

 

「ネプテューヌさんのなかにシェアはありません。

シャダンされているしまいました。おそらく、うたれたときに…」

 

「そっか。ねえ、いーすん」

 

「はい」

 

「あんまりにも重荷になるようなら─」

 

 

 

「それいじょうさきはいわないでください!」

 

 

 

「……うん、ごめん」

 

いーすんの辛そうな叫びに、発言の選択を間違えたと自分に呆れる。いーすんは泣きそうな顔で自分の顔に手を添えてくる。

 

「ネプテューヌさんしか…ワタシのあいぼうはいないんです。

ワタシのあいぼうは、アナタだけなんですよ!

すてるだとか、そういうことだけは…いわないでください」

 

「…少しネガティブになりすぎだ」

 

「…ごめんね。私も、相棒はいーすんしかいないって思ってるよ」

 

その後は、ずっと起きてるより寝た方がいいって事でさっきの夢の事もあって怖かった自分は二人に一緒に寝て欲しいって頼んだ。

二人とも、お安いご用という風に一緒に寝てくれた。

 

人の温もりっていうか…安心する。

 

シェアを感じられない今だと、これが繋がりを感じられる。

皆からのシェアを感じられないことが、満足に体を動かせないことが…こんなにも怖い。

 

「死にたく、ないなぁ……」

 

「…」

 

自分の呟きは、天井に吸い込まれて消えてしまった。

ただ、ヴァーリの腕が自分を抱き締めてくれたことが何よりも嬉しかった。

自分は、こんなにも脆い。

 

主人公なのになぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になって、目を覚ます。

えっと、昨日はお姉ちゃんを治療して、それで…

アーシアさんが一誠さんの部屋を使いましょうって言ってくれて一緒に寝たんだった。

アーシアさんはもう起きたのか部屋にいない。早起きなんだ。

 

お姉ちゃん…大丈夫かな。

 

取りあえず、下に降りようと思って部屋の扉を開ける。

 

「あ、ネプギアさん」

 

「いーすんさん、おはようございます」

 

「はい、おはようございます」 

 

いーすんさんが廊下にいたから挨拶をする。

いーすんさん…大丈夫かな。

昨日は凄く焦った様子だったし…それに、お姉ちゃんのシェアが無いって言った時は血でも吐いちゃうんじゃないかって位辛そうだった。

 

「ネプテューヌさんがキノウのよるにめをさましました」

 

「本当ですか!?アーシアさんもこの事は…」

 

「はい、おつたえしました。オカルトけんきゅうぶのみなさんをよびにいったのでじきにもどるかと」

 

「それで、お姉ちゃんは…」

 

「…シェアあってのメガミサマです。それがないせいかホコウすらコンナンなジョウタイです」

 

「そんな…」

 

「ですが、あきらめてはいけません。きっとネプテューヌさんをなおすシュダンはあります」

 

「…そうですよね、頑張りましょう!」

 

そうだ、お姉ちゃんは諦めなかった。

だから皆がいるんだから。

お父さんが好敵手だって嬉々として語っていた時を思い出す。

 

きっと、諦めなければ先へ続く筈!

 

「お姉ちゃんは起きてますか?」

 

「はい。ヴァーリさんがイマようすをみてます」

 

「…二人の時間ですもんね」

 

「おりてくるまで、そっとしておきましょう」

 

それから、お姉ちゃんのご両親とお話をしてどれだけお姉ちゃんが愛されているのかを知った。

…大丈夫、私頑張るからね。

優しい人達が悲しむのは間違ってる。

だから、私は戦います。

 

「ネプギアちゃん、無理はしちゃ駄目よ?」

 

「ネプギアもネプテューヌの妹なら家族みたいなものだ。

無理のしすぎで、倒れるなんて事が無いようにしてくれ」

 

「はい!」

 

心配そうな顔からもう二度とあんなことが起きて欲しくないって願いが理解できる。

でも、私に出来るかな…お姉ちゃんみたいに、手を伸ばせるかな…

 

…でも、昨日の一誠さん…

 

『どうしようもない悪か』

 

あの時…一瞬だけ感じた殺気。

あのカイネウスさんよりも鋭い殺気は始めてだった。

…後で話せたら話そう。

多分そのままにしていたらよくないと思う。

 

「おい、ネプ子が起きたって本当か!?」

 

「お、お邪魔します!」

 

「あら、皆来てくれたのね…アザゼルさんも、お忙しいのに」

 

「あー問題ねぇ…です。それより、ネプ子は…」

 

「今は、そっとしておいてあげてください。降りてくるまで…」

 

「…そうか」

 

オカルト研究部の皆さんが来てくれたけど、少し待機ということに。

 

「アザゼルさん、シャルバさんとはあいましたか?」

 

「会ったぜ、アイツから来てくれたよ。

ただ、独自に動くってのと、ネプ子を撃ったのは何かを教えられた。ネプギアの事も頼まれたが…平気か?」

 

「はい、お父さんなら大丈夫だと思います。

それで、お姉ちゃんの事ですけど…」

 

「シェアがねぇんだよな…サーゼクス達魔王やセラフ連中にもミカエル経由で伝えておいたが…くそ、遮断だとかやりやがって…」

 

「で、おっさん。姉ちゃんを撃ったのは何だよ」

 

「…魔弾の射手って知ってるか?」

 

「知らねぇ」

 

魔弾の射手?

私も知らないかも…そういう人?

でも、人の気配はしなかったらしいし。

 

「使用者の望む物に必ず当たる7発の弾を放つってやつでな。最後の一発は使用者の望まない物を撃ち抜くんだが…それを用いたらしい」

 

「待ってアザゼル。それってつまり、魔弾の射手は人ではなく、物ということ?」

 

「シャルバ曰く技術の類いだって話だ」

 

「……ネビロスかしら」

 

「ネビロス…姉様に続いてここでも…」

 

…えっと、この場合って発言すべきなのかな。

そっと手を挙げて、発言の許可を貰おうと思います…

 

「どうしたの?」

 

「えっと…ネビロスって『番外の悪魔』のネビロスさん…ですよね?」

 

「ええ、そうだけど…」

 

「その、ネビロスさんとは一度だけ話したことがあります。

生みの親みたいなところもありますし…」

 

「…え、本当?」

 

「じゃあシャルバの奴はネビロス経由でネプギアを造ったって事かよ」

 

一度だけ、本当に一度だけ話したことがある。

お父さんに頼んで、話してみたいと言って話させてくれたことがあった。

 

『感性が備わったね。やあ、僕はネビロス。フルネームは伏せさせて貰うよ』

 

柔らかい声だった。

それから、少し話して機械とかの事で盛り上がった。

それで分かったのは…あの人は悪い人じゃない。

多分、根っからの技術屋なだけなんだと思う。

報酬をくれるなら技術提供して使った感触を聞いたりするけど、それだけ。

仲良くもするけど、技術の方を優先しちゃう。

そんな人だと思う。

 

「悪い人じゃないと思います。

お父さんも、ネビロスさんと今回の事で話したのかもしれません」

 

「…解決法はシャルバに一任すべき…いえ、こちらでも手は打たないと。天界なら…」

 

「いや、シェア自体ネプテューヌにしか備わってない機能だ。

天界に行って修復できるかは一割も無いだろうよ。

俺もまだまだ分かってないことが多いから下手に手出し出来ん」

 

「となると…直接リゼヴィムを倒した方がいいのかしら」

 

「魔弾の事も考えると、な…」

 

皆が話し合ってるけど、ご両親はよく分かってない様子。

私といーすんさんで補足しながら説明するとなるほどと納得してくれた。

日常の人なのに理解あるなぁ…お姉ちゃん達のお陰かな。

 

そうして、方針を話し合っていると階段を降りる足音が聞こえた。

 

「あ、皆。えーっと…おはよう?」

 

ヴァーリさんに背負われて、力無い笑顔で挨拶をしてくるお姉ちゃんが来た。

 

皆、何も言わない。

ううん、何も言えないんだ。

…だって、こんなの酷い、あんまりだよ。

 

あんなに元気だったお姉ちゃんが元気の無い顔をしている。

それが何よりも心に突き刺さる。

自分でこれなんだから、アーシアさんや一誠さん…他の皆さんは…

 

「…姉ちゃんさ」

 

「あ、一誠。どうかした?」

 

「俺さぁ、大切な家族がここまでなってて許してあげてって言われて許せる程聖人でも無いんだわ。悪魔だし」

 

「…」

 

「母さんや父さんがいるけど…俺は言わせて貰う。

俺からすれば俺の仲間、家族を傷付ける奴は皆許せない。

今回の奴は…どうしようもない悪だ。手の付けようのない屑だ」

 

「…!」

 

一誠さんの目を横から見て、確信した。

駄目だ、言わせたら駄目。

それを言わせたら、一誠さんは戻れなくなる。

きっと、それを肯定する人が出てしまうからこそ、言わせられない。

だから、私は咄嗟に

 

「一誠さん!杖か何かありませんか!?」

 

「…ネプギア」

 

「ほ、ほら、お姉ちゃん立てないくらいだって聞きましたから…ヴァーリさんもずっと背負ってるのは辛いだろうし、ね?」

 

「…そう、だな。おっさん、外だっけ」

 

「お、おう。この大人数だから外に畳んである」

 

「あざっす」

 

「あ、わ、私も行きます!言い出しっぺだし!」

 

一誠さんと一緒に外に出る。

気まずい…けど、言わせたら…お姉ちゃんだけじゃなくて誰も望まない結果になってたかもしれない。

 

「あ、これじゃないですか?」

 

「…何で止めた?」

 

「…一誠さん、それだけは言っちゃ駄目です」

 

「お前に何が分かるんだよ…!」

 

「あっ…!」

 

肩を強く掴まれて壁に背中を打ち付けられる。

ぶつけた痛みはそんなにないけど、肩を掴む手が食い込んで痛い。

でも、それ以上に気になるのは一誠さんの怒りと悲しみ、憎しみが混ざった目。

 

「お前に、姉ちゃんをその場にいなくて守れなかった俺の何が分かるんだ!?」

 

「…」

 

「姉ちゃんが撃たれて、辛そうな顔で寝てて、起きたらあんな元気の無い姿で!それを見たときの俺の気持ちが分かるのかよ!!」

 

「…分かりません」

 

私に怒りをぶつける一誠さんは悪くない。

その場で怒鳴ってもよかったのに、我慢してたんだから。

 

「…私には分かりません。多分、お姉ちゃんにも分かりません。

でも、あの場で、お姉ちゃんだけじゃなくて皆さんにも言うのは…駄目だと思いました」

 

「……」

 

「リゼヴィムって人を殺すって言おうとしたんですよね」

 

「当たり前だろ…!今回ばかりは許しておけるか!

姉ちゃんが撃たれただけじゃなく、シェアを消されたんだぞ!!

繋がりを大切にする姉ちゃんが、それを奪われたも同然だろうが!」

 

「今のお姉ちゃんに、それを言おうとしたんですか!」

 

「ッ!」

 

けど、お姉ちゃんやご両親に堂々と言おうとしたのは駄目。

それは亀裂を生んでしまう一因になってしまうから。

止めないといけないと思った。

お姉ちゃんは長く喋る気力は無さそうだった。

ご両親も…一誠さんの気迫に圧されてるようだった。

 

家族にそんな圧で話すのは良くないと思うんです。

 

肩を掴む力が弱まる。

 

「そんなことを今のお姉ちゃんにも、立ち直った後でも言って欲しくないです!」

 

「……」

 

「一誠さんも戻れなくなっちゃいますよ!

誰かのために、そんなことを背負わないでください…!」

 

「…ごめん」

 

謝った後一誠さんは手を離した。

その道は…きっと辛いから。

殺しが手段になっちゃうとそれを選んで、一誠さんがどんどんと孤独になっていくのは…嫌だったから。

 

だって、呂布の時の一誠さんはあんな辛い状況でも輝いていた。

だから…その輝きを失ってしまうのは、よくない。

 

「リゼヴィムを許せないのは私も同じです。

でも、その前にお姉ちゃんを治さないと」

 

「…だな、止めてくれてありがとなネプギア」

 

「はい!」

 

「っていうか、さっさと運ばないとな!」

 

一誠さんが持って、私が扉を開ける。

何もなかったような感じで戻って、車椅子を展開してお姉ちゃんを乗せる。

 

「姉ちゃん、どうだ?」

 

「おー…折り畳み式なのにリモコン操作だぁ…」

 

「これが堕天使技術だぜ。ちなみにこのボタンを押すとぉ!

高速移動が出来る!!」

 

「おっさん、後で説教な」

 

「あふん」

 

「やはり駄目ですわね、この人をリーダーに動くのは」

 

「泣きそう」

 

「泣くといいわ」

 

「どうして君たちはそうやって一つ仕組み付けただけで怒るかなぁぁぁ!」

 

「あはは」

 

お姉ちゃんが笑った。

けど、いつもみたいな快活な雰囲気はなくて、やっぱり元気と言うか…活力みたいなものが無さげだった。

 

「やっぱ体が重いか、ネプ子」

 

「あー、うん…歩くのも辛いかな。妙に気だるいし、食欲も沸かないし…プリン食べたいっ!みたいなのが無いんだよね…キャラじゃないなぁ…」

 

「そうか…イストワール、遮断されてるって言ってたよな。

もう一度パスを繋げ直すのは…出来ねぇのか?」

 

「すでにやりましたが…こちらもネプテューヌさんにカンショウできないんです。パスをつなげようにも、それをはじかれる…いうなれば、フタのようなものでさえぎられているんです」

 

「なら、その蓋を壊すとか出来ないのか、いーすん」

 

「むずかしいです。ネプテューヌさんにどんなアクエイキョウがおよぶか…ヘタなてだしはヨケイなジタイをまねくかと」

 

「ネプテューヌさん…女神はシェアがずっとないとどうなりますか?」

 

「えっと…死んじゃう、とか?」

 

「…あー、そうだな。

シェアなくして女神はねぇ。聖書の神への信仰心が昔のネプ子の力になってた時と、記憶もなにもかも失ってリスタートした時もその時は少なからずシェアが体を満たしてた。

だが、今はその時のどれにも該当しない。

供給されたシェアも消え、供給も無し。…燃料がない車は動けねぇだろ?」

 

アザゼルさんの説明は分かりやすかった。

お姉ちゃんはこのままだと消えちゃう。

だから、その前にシェアとの繋がりを復活させないといけない。

 

「でも、蓋ってどんな?」

 

「…のろい、みたいなものでしょうか」

 

「呪い?」

 

「ソウトウつよいのろいがネプテューヌさんをむしばんでいる。

そんなかんじです」

 

「…お祓いとかの次元じゃなさそうだよなぁ」

 

「俺がリゼヴィムって奴ならそんなんで終わるようにはしねぇな。

やれるとしたら相当高位な神なんだが…天照大神には頼れねぇしな…」

 

どうすれば…そう皆で考えているものの良い案は浮かばない。

私も、何も思い付かない…お姉ちゃんが消えるのだけは阻止しないとなのに。

私、こんなにも無力なの…?

 

そう沈み込んでいると、携帯が軽快な音を鳴らす。

 

「あ、ごめんなさい、私です。

…お父さんからだ!」

 

「何!」

 

急いでお父さんからの電話に出る。

 

「もしもし、お父さん!?」

 

『ネプギア。女神は起きたか?』

 

「はい…でも…このままだと…」

 

『消滅、か。…スピーカーに変えてくれるか?』

 

「分かりました」

 

スピーカーに変えて、携帯を机に置く。

 

『聞こえるか、女神。ついでに他の連中』

 

「ついでかテメェ!」

 

『悔しければこれから馬車馬のように働け。

さて、イストワールだったか、詳細を聞かせろ』

 

「はい、ゲンザイ──」

 

そこから、いーすんさんの説明が始まる。

こっちとしても状況整理になるから有り難かった。

お父さんは説明を聞いて、やはり、と言った。

 

「やはりってこたぁ薄々分かってたのか」

 

『まあ、半々だが。ならば、これで解決するな』

 

「本当なのね!?」

 

『安心しろ、グレモリー。だが…おい女神』

 

「うん?何?」

 

『…まずは称賛を。貴様はよく頑張った。ここまで敵味方問わず絆を紡ぐ…誰にも成し得ない偉業と言える。

好敵手と定めた私としても、貴様が高みへ向かうのは喜ばしかった。だが、貴様はリセットされた』

 

「…だね」

 

『では、ここからが提案だ。

貴様には二つの道がある。

一つは”困難だが未来を切り開く道”

貴様は女神の力を取り戻し、新たな可能性を手にいれる』

 

「おい、待て。それで良いじゃねぇか。

どうしてもう一つを用意してやがる」

 

『ほう、では何か。

このまま直してこれからもよろしくと?

ならば、いっそこの道も提案してやるのが面白い』

 

お父さんはくつくつと笑いながら、アザゼルさんへそう言った。

アザゼルさんは苛立った様子だけど、携帯ということもあって手出しできない。

 

「いいよ、おっちゃん。…それで、もう一つって?」

 

『もう一つの道は”安寧と自由の道”──

 

 

 

 

 

 

 

──その体を捨て、女神ではない人間の形を得る事だ』

 

その言葉は、甘美な誘いだった。

お姉ちゃんを見れば、そうとしか思えなかったから。

だって、それを聞いたお姉ちゃんは…

 

 

 

「…女神を、やめる……」

 

かなり、動揺をしながらもその言葉を聞きたかったかのような…

そんな印象を私に抱かせる表情をしていた。

…これは、私の口出しすることじゃない。

多分、お父さんは試しつつもお姉ちゃんを想っての発言なんだ。

 

お姉ちゃん、どれを選ぶの?




さて…この二つの選択肢、どう選ぶのか。
次回はそこを見て欲しいですね。


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選んだ道は──

さあ主人公、お前の答えは?




『もう一つの道は”安寧と自由の道”

その体を捨て、女神ではない人間の形を得る事だ』

 

「…女神を、やめる…」

 

シャルバによって、二つの道を示される。

まるで、試されているようだった。

自分がまだ折れていないのか、貫ける意志があるかどうか。

周りの皆を見ると、自分を見ていた。

 

ああ、そうか。

これは…自分が、私が決めないといけないこと。

ネプテューヌだけでなく、自分だけでもなく。

二つの意志を、一つにしなきゃいけない。

 

今の自分に、出来るのか。

自分はまだ、皆と繋がって、皆と生きていたいと純粋に願えるのか…どうなのか。

 

不意に、肩に手を置かれる。

見上げると、ヴァーリが自分を見つめていた。

微笑むでもなく、悲しむでもない。

 

「…俺は、お前の選択を尊重しよう。

このままお前が女神として生き続ける道を選ぶのも良い。

全てを捨てて、人としての道を歩むのも良い。

どちらを選んでも、俺はお前の味方であり続け…お前の傍にずっといよう。もう二度と、お前から離れない」

 

「ヴァーリ…」

 

ヴァーリの優しさが、心に響く。

嬉しくて、肩に置かれる手に自分の手を重ねる。

ああ、温かい。

この人は本当に、温かい。

 

「ヴァーリ、お前って奴は…

ネプ子、お前さんには今まで世話になった。なりっぱなしだった。だからよ、俺はお前がもう嫌だって言っても非難しねぇぜ。

誰にも言わせねぇ、誰にもだ。そんなことを言う奴は俺がぶん殴ってやる。

だから、休みたいって言ってもいい。どちらを選んでも俺達はお前を助けるぜ」

 

「おっちゃん…」

 

「ネプテューヌ…アザゼルの言う通りよ。

私達は貴女のお陰でここまで来れた。

私にとって、貴女はかけがえの無い友人…いえ、親友だと私は思ってる。だから…私は、今度こそ、助けたい」

 

「リアスちゃん…」

 

「あらあら…リアスったら。殆ど言われてしまいましたが、お父様とまた家族として接することが出来るようになったのはイッセー君とネプテューヌちゃんのお陰です。

どのような選択であれ、お父様共々お力添えしますわ」

 

「朱乃ちゃん…」

 

「僕の想いを肯定して、それでも寄り添ってくれたのは貴女だけだった。僕は騎士として、そして個人として先輩を助けになります」

 

「木場君…」

 

「私も…姉様と再会できたのはネプテューヌ先輩のお陰です。

誰よりも真摯で、傲慢な貴女に助けられた今が私の一番の宝物。

だから…姉様共々、力になりますよ」

 

「小猫ちゃん…」

 

「ぼ、僕も…その、皆さんと早く打ち解けられたのは無理矢理とはいえ先輩が僕を連れ出してくれたからです。

ゲームをしてくれたし、外に一緒に出てくれた。

僕も、先輩の力になります!」

 

「ギャー君…」

 

「まあ、どちらにしても私達はお前を助けると言うことだ。

安心するといいさ」

 

「ゼノヴィア…」

 

皆の言葉が、優しさが、感謝が心に伝わる。

何て温かいんだろう。

何て綺麗なんだろう。

自分が守れたものは…こんなにも…

 

「ネプテューヌさん。

アナタはワタシといういしをひろってくれた。

だれよりもシンケンにいしのこえをきこうとするアナタにひろわれて…ほんとうによかった。

そんなアナタだからこそ、みなさんをつないだイマがあるんです。ワタシも、これまでどうよう、せいいっぱいのサポートをします」

 

「いーすん…」

 

いーすんの言葉、献身の心が伝わる。

違うよ、いーすん。

助けて貰ったのは自分の方。

他の誰でもない、いーすんだからこそ…今も自分は生きていられるんだよ。

 

「ネプテューヌさん…貴女の頑張りをずっと見てきました。

その結果を、私は…本当に尊く思います。

でも、その中には貴女がいないといけません。

どんな形であれ、どんな姿であれ、どんな貴女であれ。

ここの皆さんはネプテューヌさんの明るさ、優しさ、強さ、真っ直ぐさに救われています。

…貴女がその傷を癒したいというのなら、私は祈ります、貴女のために、他でもない私を家族にしてくれた貴女のために…!」

 

「あーちゃん…」

 

あーちゃんの言葉、祈りが伝わる。

どこまでの誰かの傷を癒すことに全力を注げるあーちゃんだからこそ響く言葉。

自分はあーちゃんよりも聖女な人見たこと無いや。

 

「お姉ちゃん。

私はまだ、お姉ちゃんとは話したこと無いけど…でも、お姉ちゃんが頑張って皆を繋いだから皆お姉ちゃんの力になりたいって言ってる。お姉ちゃんがどっちを選んでも、きっと皆は全力を尽くしてくれる。私も、お父さんも…お姉ちゃんの意志を尊重するよ」

 

「ネプギア…」

 

ネプギアの言葉、寄り添いの心が伝わる。

もう、女神らしいんだなぁ。

でも、可愛い妹だと心から思う。

シャルバっぽくならなかったのは奇跡だとも。

 

「皆殆ど言いやがったよ。

あー…姉ちゃん!俺はねぷ姉ちゃんがどっちを選んでもいい!

俺に出来るのはリゼヴィムの野郎をぶん殴って、姉ちゃんの前で土下座させることだけだからな!

だから、安心してくれよ!姉ちゃんの道は、俺達で切り開く!!

俺達、家族で仲間だろ?」

 

「一誠…」

 

一誠の言葉、力強さが伝わる。

行きすぎちゃう時があるけど、それでも誰かのために怒れて、誰かのために動ける一誠は本当に格好いいよ。

お姉ちゃん、誇らしいなぁ。

 

「ねぷちゃん…本当はね、無理はして欲しくないの。

…それでもねぷちゃんは選んできたものね。

だから、私達はねぷちゃんの帰る家でいつものように出迎える…それがすべき事よね」

 

「ネプテューヌ…お前達は俺や母さんの経験の数倍辛さ、苦しさを経験してきたが、それに勝る楽しさがあった筈だ。

お前のやりたいようにやりなさい。ここにいたいならここに居れば良いし、力を取り戻したいのなら帰る場所になるぞ」

 

「お父さん、お母さん…!」

 

二人の言葉、選択の尊重と慈しみを感じる。

この二人がいるから、ねぷ子さんや一誠は曲がらずに生きてこれたんだ。

帰る場所にいてくれるから…

 

「俺達英雄派の答えは変わらない。お前を助け、支えよう」

 

「どのみち、元気の無いお前は見てるだけで疲れる。

さっさと元気だけは取り戻せ」

 

「守れなかった…許していただけるならどちらを選択しようとこのペルセウス、守護の盾で貴女を守る所存です」

 

「また、ゲーム、しよ」

 

「アンタにその顔は似合わないわ。

ほら、いつもみたいにやりたいようにやりなさいよ。

事後処理とかは皆に押し付けりゃいいのよ」

 

「ハッハー!その通りだぜ女神さんよ!

俺達はその無茶を押し通す為にいるんだからよ!

言ってくれや、何をしてぇのか!」

 

「外道にならずにいられたのは君のお陰だ。

だから、その道を守るのが僕たちの役目だと思う。

…守れなかった分際だけど、今選ぶ道は守り通そう」

 

「曹操、ゲオルグ、ペルセウス、レオナルド、ジャンヌ、ヘラクレス、ジーク…」

 

英雄派の皆の言葉、勇ましさが伝わる。

皆の恩返しは終わっても、それでも自分についてきてくれるんだね。助けてくれるんだね。

どっちを選んでも…自分を支えてくれるんだね。

皆の想いが自分に伝わる。

皆の言葉が自分を満たす。

 

…最後に、自分へ問う。 

 

この先も、痛くて苦しい思いをするかもしれない。

辛さしかないかもしれない。

裏切りに遭うかもしれない。

それでもその夢を貫き通せる?

その未来を革新してみせるって豪語できる?

 

─私は、貴女と共に

 

…うん、私。

捨てられないや。

こんな想いを見せて貰って、温かさに満たされて。

それを投げ出すなんて、出来るわけがない。

例え、これからの苦難が自分を刻んでも。

自分を見失いそうになっても。

いつの日か訪れる別れに悲しもうとも。

 

 

 

 

 

私は、ここにいる。

 

 

 

 

 

「シャルバ」

 

『重要な選択だ、よく考えたか?』

 

「うん。私は、私だから」

 

自分が、私が選ぶのは。

一つしかないんだ。

だって、この想いは捨てられない。

この目で未来を見るまで、その手で掴み取る日まで。

私は、歩くって決めたんだ。

皆がいれば、出来ないことなんて無い。

 

走らなくてもいい。

急ぐ必要なんて無い。

諦めないで歩くんだ。

 

歩くような速さで、ただひたすらに。

 

だから、その為に私は─

 

 

 

 

 

 

 

「─私が選ぶのは、”困難だけど未来を切り開く道”

皆の想いと一緒に、次のステージに進みたい!」

 

『…やはり、貴様は素晴らしい』

 

シャルバの声は、歓喜に満たされていた。

100%とはいかなくてもいい感じの回答だったのかな。

 

『その道を歩むのならば、それ相応の物が必要となる。

だが、まずは…そちらに向かうとしよう。

少し待て、特別ゲストを連れてこよう』

 

「うん。…シャルバ」

 

『どうした』

 

「ありがとね」

 

『…貴様と私の戦いはこのような終わりであっていい筈がない。

その為にも、貴様には本調子でいて貰わなくてはな』

 

「あはは、それでもね」

 

『ふん』

 

通話が切れる。

恥ずかしがりかな?まあ、どちらでもいいけど…

うん、体が重くてもねぷ子さんはねぷ子さんだよ!

皆が頑張ってくれる。自分を治してくれる。

 

存分に頼らせて貰いたい。

 

「ということで、もう一回私はこの道を進むよ」

 

「異論無し。どちらにせよ、ついていくが…それでこそ、と思うよ」

 

「リアスよぉ、次期当主のレーティングゲームとかどうするよ?」

 

「あら、そんなのどうでもいいわ。

情愛の悪魔として、友人として傷付いてる親友を助ける事が先決よ。グレモリーの名が廃るわ」

 

「ええ、それならそっち優先しても…」

 

「馬鹿、貴女を放ってレーティングゲームなんてやってみなさい。

イッセー達は絶対についてこないわよ?王一人なんて滑稽よ」

 

「あ、あはは…」

 

「実際その通り。自分本意は死ぬ。古事記にも書いてある」

 

「古事記なら仕方ない…待ってくれイッセー君。

古事記には書いてないだろう?」

 

「古今和歌集だっけ」

 

「いやどれにも無いよ!?」

 

「お姉ちゃん」

 

「ネプギア…頼っていい?」

 

「!…うん、任せて!頑張るよ!」

 

ネプギアの力強い言葉。

…もしかしたら、本来の妹はネプギアだったのかもしれない。

でも、巡りめぐってこうして会えたんだからいっか!

 

…よし、それなら…

 

「ねえ、いーすん。お願いしたいことがあるんだ」

 

「なんでしょう?」

 

「ネプギアは女神の基盤とかって出来てるんだよね?」

 

「ネプテューヌさんのサイボウをもち、ロキさんのカクをもっているのでおそらくは…まさかとはおもいますが…」

 

「よし、それなら話は簡単だね!」

 

「お、お姉ちゃん?何を…」

 

戸惑うネプギアにビシッと指を差す。

今回の主役は決まったね!

 

「ネプギアにも、シェアを扱えるようにしちゃおう!!」

 

 

「え、え─えぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 

「待て待て待て待て!!出来るのかよ!?」

 

「…ケツロンからもうしますが、やれます」

 

「マジかよ…」

 

「ネプテューヌさんとほぼおなじメガミであるネプギアさんだからこそというハンソクみたいなものですが…」

 

「で、でも…信じてくれる人がいないと、シェアって…」

 

「何言ってるのネプギア!そんなの解決してるでしょ!」

 

「え?え?」

 

さっぱり分からないといった様子のネプギアに、しょうがないなぁと皆を見る。

皆、短い時間とはいえ分かってる筈だよ。

 

「ネプギア、俺は信じてるぜ」

 

「私もですね」

 

「シャルバの娘とは思えないくらい純粋だよなぁ…信じねぇって方が濁ってるぜ」

 

「えぇ!?他の皆さんも…?」

 

「京都じゃお前さんがいなかったら危なかったんだろ?なら、疑う必要もねぇじゃねぇか!」

 

「み、皆さん…」

 

ネプギアも、理解したようで嬉しそうな笑みを浮かべる。

そうだよ、ネプギアを信じない人はここにいないよ。

皆がネプギアを信じてる。

 

だから、自信を持つべきだよね。

 

「…お姉ちゃん、私もお姉ちゃんと同じ女神になれるの?」

 

「なれるよ。でもね、ネプギア…これだけは覚えておいて欲しい」

 

自分の前に来たネプギアの手を両手で包む、祈るように額を当てる。

 

「シェアを貰うってことは信じてくれてる皆がいるってこと。

だけど、ネプギアも皆を信じないといけない。

皆を繋ぐのがシェアなら、繋いだ絆をどうするかはネプギア自身が決めなきゃいけないんだよ」

 

「…うん、分かった。

私、間違ったことには使わないよ」

 

「よろしい!いーすん、お願い!」

 

「わかりました。やってみます…ネプギアさん、すこししつれいしますね?」

 

「へ?わ、わわわわ!?」

 

ネプギアにいーすんが光となって入り込む。

すんなりと入ったし、ちゃんと女神じゃーん。

今までのはロキの力を使った擬似的な変身だったらしいけど、これからはしっかりと使えるようになるはず。

 

いーすんが作業してる中、インターホンが鳴る。

多分、シャルバかな?

律儀なんだなぁ…

皆で外に出ようってなって玄関から出る。

ヴァーリが押してくれて、移動も楽だなぁ。

段差は痛いんだけどね!

 

そうして、外にいた人物は…

 

「ふむ、多少は己を取り戻したか」

 

『おお、これが本物かい?いやぁ…初めましてかな!

僕はネビロス!フルネームは伏せさせてね』

 

シャルバと…

白いボディ、あと機械音声みたいな……っていうか、これ…

うわぁ、これ大丈夫?

 

「これ…pep○er君じゃん…」

 

『マキダヨー』

 

「やめよう!?」

 

『あ、なら葵~やったで葵~?』

 

「それは違くない?」

 

『注文が多いね、女神様って』

 

「あ、うん…もうそれでいいや…」

 

これヤバイよ、○epper君はまずいって。

というか、どうして造れるのさ。

え、そこまでネビロスって進んでるの?

 

『驚いてくれたようで何より。

では、改めて自己紹介をするよ』

 

pe○per君…ネビロスは機械音声だけど感情を感じさせる声で礼儀正しく礼をする。

 

『僕はネビロス。

こっちのシャルバにネプギアを提供し、リゼヴィムに魔弾の射手を授けた張本人で─君を治すためにやってきた悪魔だよ』

 

敵でもなく、味方でもない。

そんな印象を与えられる。

けれど、今回は自分を治してくれるってことで。

 

うん、頼りにさせて貰おうかな?




今回は短めですね。

さて、やっと表舞台にやってきたpepp○r君ことネビロス。
シャルバの言うシェアを復活させるための方法とは?
さあ、ねぷ子は今回動けないぞ!


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よーし、主役交代の時間だね?バトンタッチだよ!

え!?今度の新作は無印のリメイクのリメイクのリメイク!?
わー凄い!

買います(真顔)




やっほー!シェア無し主人公ネプテューヌだよ!

うーん、辛い!でもうじうじしてらんないから元気だしていくよ!

気だるさMAXだけどね!

 

pe○per君ことネビロスがシャルバとやってきて、自分を治す手段とは何かを聞くべく狭すぎるって事でオカ研の部室に集まることになった。

お父さんとお母さんは家に置いていくけど、ヘラクレスとジークとレオナルドを護衛に回しておく。

レオナルドも戦う意志を見せてくれた。

本当は戦わせること自体嫌なんだけど…言って聞いてくれないし。

 

『おー…学園の一部室にしてはやりたい放題したね?』

 

「う、うるさいわね。結果としては集まれるんだからいいのよ…」

 

『まあ、何であろうと構わないけど。

じゃあ、ちょいと女神さんを調べさせてね!

安心してね、変なことしないからSA!』

 

「スキャンと言え、スキャンと」

 

ネビロスが近付いてきて、目から光が発せられ自分を包む。

お、おお…何か変な感じ。

これで隅々まで調べられちゃってるんでしょ?

訴えたら勝てるよ。

 

『あーなるほどね、完全に理解した』

 

「本当にしてる?」

 

『してるよー。これなら僕の案で治るかな』

 

「マジか!?」

 

『マジもマジ、大真面目さ。

まー僕としても女神さんが死んだらそっちの研究とか出来ないしね~…シェアとか絶対に僕が知りたいことを知ってる力だと思うんだよね!』

 

「え、待って?ねぷ子さん抜きで研究とかしてるの?」

 

『そりゃ、細胞はあったからね』

 

「凄いこと言ってるぅぅ!」

 

敵に回しちゃいけない奴じゃん!

シャルバGJ!自分とかいう研究材料無しで自分の細胞だけでやってらっしゃる!

そりゃサーゼクスさんも下手に手を出せないとか言うよ!

 

「ネビロスさん、さっきは言えなかったけどお久しぶりです!」

 

『おお、ネプギアかい?いやぁ、今日も可愛いね。

前にいったMPBLの改善点はどうなったのかな?』

 

「はい、お陰様でいい具合になったと思います!」

 

『相も変わらずいい手際だ。うーん、将来助手に欲しいよ。

シャルバ、駄目かなぁ?』

 

「ほざけロボット。生身で来たら考えてやる」

 

『生身で来たら拘束待った無しだよ』

 

「なあ、ネビロスさんよぉ」

 

『ああ、シスコン赤龍帝君か。どうしたんだい?』

 

「あ?」

 

『グホァッ!?この悪魔…強いぞ相棒!』

 

「何でお前の方がダメージ高いんだよドライグ」

 

「自分の胸に聞きなさい、イッセー」

 

今までドライグがどんな目にあってきたかを考えるといいよ一誠。

そりゃ、トラウマにもなると思うよ…

最近だと本当に精神的に壊れちゃうんじゃないかってくらいトラウマ再発してるもんね…

 

「ドライグはいいや。それで、姉ちゃんを治すには何が必要なんだ?」

 

『よくぞ聞いてくれたよ。簡単に言うと、女神さんのそれは強力な呪いだ。人の信仰を蓋してしまう程の呪いさ。

だから、それを消し去る程の物が必要となる』

 

「つまり?」

 

『聖遺物。そう呼ばれるものが治療に必要だね』

 

「聖遺物…聖杯、聖骸布、聖釘、聖十字架…とか呼ばれる?」

 

『ノルマの一つは達成してるけどね』

 

「ああ、俺の聖槍か。確かに、これならば聖遺物足り得るだろう」

 

えっと、聖遺物ってそういう何かこれスッゴく聖なるものだって感じの奴でいいのかな?

曹操の聖槍だけじゃ足りないのかなぁ

 

「聖杯、それは…あらゆる願いを叶える願望器…」

 

「違うんだよなぁ…」

 

「あ、違うんだ」

 

『まあ、ぶっちゃけた話聖杯が必要なんだよねぇこれが。

神滅具の方でも本物の方でもどっちでも構わないけど』

 

「せ、聖杯…ですか?」

 

ギャー君が少し反応する。

怯えたような反応をネビロスは察したのかギャー君に近付く。

 

『へえ、知ってるんだね。

本物の欠片は教会が所持してるから神滅具の方かな?』

 

「え、あ…」

 

『是非教えて欲しいね。

研究対象が光になって消えちゃったは嫌だし、報酬分働かないのはポリシーに反する』

 

「ぁぅ…」

 

「ネビロス、そこまでよ」

 

『…まあ、仕方無いね』

 

ギャー君を庇うように立つリアスちゃんにネビロスは諦める。

知ってるんだろうけど…何かあるのかな。

トラウマとか?

 

「ルーマニア、です…」

 

「ギャスパー?」

 

「ぼ、僕だって先輩を助けたいんです!」

 

『ルーマニア…?

吸血鬼の君がどうして在処を知ってるのかだけでも教えて欲しい』

 

「…ぼ、僕は人と吸血鬼のハーフで…聖杯…『幽世の聖杯』を持ってるヴァレリーも…そうだからです」

 

『人と吸血鬼のハーフか。

それが二人…何ともまあ。

吸血鬼達もプライドが削がれたのかな?』

 

ルーマニアって…遠くない?

いきなりの外国だよ!でも、ギャー君の故郷ってことかな。

ヴァレリーって人が宿しててギャー君の知り合いならもしかしたらあっさり協力して貰えるかも?

 

「取り敢えず、ルーマニアに行くのはいいが、何人かはこっちに残ってミカエル達やサーゼクス達と連携が取れねぇとな。

てな訳で俺は残らにゃいかん」

 

「俺もネプテューヌの護衛として残ろう。

万が一聖槍を失うことがあっても困るからな。

ということでゲオルグ」

 

「嫌だ!」

 

「子供じゃないんだ、駄々を捏ねるな」

 

「お前ら俺を使い勝手のいい男だと思ってないか!?

俺も死ぬときは死ぬぞ!」

 

「リーダー命令だ、早く行け」

 

「な、く…!恨むぞ曹操…!」

 

「おっちゃん、頼光達を頼れない?」

 

「そうさな…そうした方がいいか」

 

『あ、反英雄派なら少し貸して欲しい人がいるんだ。

錬金術士の子がいるだろう?』

 

「パラケルススか」

 

『そうそう。その子はこっちに残してくれ』

 

「構わねぇが…」

 

『うんうん、ありがとう』

 

頼光達も動いてくれるなら百人力だよね!

皆がいれば解決も早い筈だよ!

警戒すべきなのはリゼヴィムの動向だけど…どうなるかなぁ

 

そうして誰が行くかを決めているとネプギアからいーすんが出てくる。

 

「どうですか?(・_・?)」

 

「…感じます、皆さんをもっとずっと強く!」

 

「それがシェアです。

ただ、ネプギアさんはメガミのそしつがあるといってもうまれたばかり…カンゼンなカタチではありません」

 

「どゆこと?」

 

「これからカンセイしていくメガミ…コウホセイ、みたいなものですかね」

 

「女神候補生!いいじゃん!

ネプギアには色々な可能性があるってことでしょ?

良いことじゃん!」

 

「すげぇじゃねぇかネプギア。

これからよろしく頼むぜ!」

 

「はい!お姉ちゃんのためにも頑張ります!」

 

「…ネプギア、これからも精進することだ」

 

「はい、お父さん!」

 

何かが変わった訳じゃないけど、ネプギアが嬉しそうなのはいいことだね。

それに、色んな可能性があるっていうのは大事だよね。

その中から、未来を選び取れるんだから。

 

きっと、いい未来を選択すると思うな。

 

「アザゼル」

 

「何かあったのかシャルバ?」

 

「いや、出来ればカイネウスはここに残せ。

アイツはある意味リゼヴィムへの手札になる」

 

「まあ…いいけどよ」

 

シャルバ…リゼヴィムに対して警戒が高いけど、何を知ってるんだろう?

 

「シャルバはリゼヴィムに詳しいの?」

 

「詳しいといえば詳しい。

だが、私の知るリゼヴィムではなくなっているだろう」

 

「え、おかしくなったとか?」

 

「いいや?元々奴はおかしい奴だ。

そうだな…生きる屍というべき姿だったが…今はどうなっていることやら」

 

『生き生きとしてたねぇ。

僕から見ても彼は今にも死にそうな感じだったんだけどなぁ。

まあ、いいじゃないか別に。

どうせ消す相手だろう?』

 

「え?」

 

『え?』

 

「え、消すの?」

 

『消さないのかい?』

 

んん?ネビロスは首をかしげて自分を見る。

機械だから表情は分からないけど、理解できないようだった。

どうして?といった様子だった。

 

「私、こんな風にされたけど殺したりはしないよ?」

 

『正気かな?』

 

「正気も正気!そりゃ、今も体は重いし、皆と戦えないのは辛いよ?でも、それで恨みをぶつけて殺す!っていうのは違うと思うんだ。一度話し合ってさ…それでも駄目なら、その時はそれ以外の手を考えるよ」

 

『…ああ、なるほど。

君、よく異常だって言われるだろう?』

 

「うん?そう言われたことあるよーなないよーな」

 

「あるっちゃある」

 

「あるんだって」

 

『覚えてないんだ』

 

「まあねーどう言われても、これが私の道だから。

未来に繋がるって信じてるからね」

 

『信じる奴は足元を掬われるってあるけど…君はそうなっても進むんだねぇ…』

 

ネビロスは興味深そうな声で納得してくれた。

何だろうね、こう…知りたいことは知りたいって言える感じ?

いい人だけど、悪い人にもなっちゃう。

そんな感じだよね、ネビロスはさ。

 

「さて…私も残るとしよう。魔王も呼ぶか?」

 

「お父さん、それだと…」

 

「この事態で私を捕らえる、か。

あり得なくはないな。だがまあ、背に腹は変えられんよ。

そちらに行ったところで私に出来ることはあるまい」

 

「何があるか分からない以上、どちらか一方に戦力を割きすぎる訳にもいかないんだ。頼光達がそちらにいる以上、問題はないと思うが…警戒は怠らないでくれ」

 

「ええ、そうするわ」

 

「…」

 

「ギャー助、どうした?」

 

「いえ…ヴァレリーに会うのは久しぶりなので…」

 

「大丈夫だって!何かあったら俺たちが助けになればいいだろ?」

 

「言うようになったなぁ一誠」

 

「俺たちは仲間だからな、助け合いは普通だろ」

 

『なら俺も助けてくれ相棒』

 

「ごめんドライグ」

 

『相棒!?AIBOOOOO!!』

 

可哀想なドライグに反して、アルビオンは平穏だよね。

今も悲痛な叫びが響くドライグ…ライバルのアルビオンはどう思ってるんだろ?

 

『赤いの……哀れなり』

 

「成長スペックが凄まじい分、代償はドライグの精神摩耗か…」

 

「大きすぎる代償だなぁ…」

 

そんなこんなでルーマニアに行くのは…

 

・オカ研メンバー、ゲオルグ、ネプギア、パラケを除く元反英雄派

 

って感じかな?

何はともあれこれだけいたら何か起こっても対応できる筈だけど…

リゼヴィムがどう動くかも分からないしね。

気を付けていこう。

まー、気にせずに行こう?GoGo!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、随分と早く着いたな」

 

「転移の魔法陣が便利に感じたのって何時ぶりかしらね」

 

ネプギアです。

現在、ルーマニアについたばかりです。

飛行機とかで行くかと思ったら、リアスさんが魔王のサーゼクスさんに連絡してルーマニアにいる知り合いの悪魔を頼って魔法陣を繋げたとか何とか。

こういう時、凄い便利だなぁ…

 

それで、もう一つ重要なことがあります。

 

─ネプギアさん、酔ってませんか?

 

(あ、はい、大丈夫です!)

 

いーすんさんもこっちに来て、私の中にいるってことなんです。

お姉ちゃんが出発する時にいーすんさんにお願いして私のサポートに回るようにしてくれたようです。

 

ヴァーリさんからもお願いされたし…頑張らないと!

 

頼光さんが辺りを見て、ふむと言う。

 

「魔王の言う通り、空き家のようだ。

あまり怪しまれるようなら暗示か何かで騙し通すしかないか…」

 

「すいません…」

 

「君が謝ることでもないだろう。

リゼヴィムか…超越者として数えられているのなら実力者なのは間違いないだろう。慎重に行動すべきだな」

 

「そうね。まずは、吸血鬼を見つけましょう」

 

「っていいますけど部長。吸血鬼なんて何処にいるのか分かりやせん!」

 

「あ、僕知ってます…ただ…その…」

 

言いにくそうにしているギャスパーさん。

ハッキリしない様子にトリスタンさんが肩を竦める。

 

「怯えが見えますね。しかしそれを承知で来た筈でしょう」

 

「ん、さっさと吐く」

 

「ひぃぃぃ!!仲間なのに容赦ないですぅ!?言います、言いますよぅ!」

 

ギャスパーさんが言うには今は早いからもう少し待つべきとのこと。

やっぱり夜遅くに活動するんだ。

なら、それまでどうしよう?

 

「各自自由行動だ。

食事等は心配は要らない」

 

「あの、お金とか無いですよ?」

 

「ここにある」

 

頼光さんが取り出した袋からルーマニアの通貨…ルーマニア・レウが結構入ってた。

あ、小銭も多い。

レイ、レウ、バン、バニだっけ。

でも言葉とか分からないし…

 

─自動翻訳されますからご安心を

 

(え、そうなんですか?)

 

─女神の活動を補助する機能はしっかりと付けてあります

 

(ありがとうございます、いーすんさん)

 

─いえ

 

自動翻訳…凄いけど、いいのかなぁ…

自分だけズルいような…

 

「俺達も日本語に翻訳されるから安心してくれよな」

 

「あ、私だけじゃなかったんですね!…あれ?今私何も言ってないのに…」

 

「空気で分かる」

 

「凄いんですね、一誠さん!」

 

「それほどでもある。俺は900レイでいい」

 

「却下だ。お前は子供なんだからこれでいい」

 

「どうして…どうして…」

 

自業自得なのかは分からないけど一誠さんが口を滑らせてしまったのは分かりました。

でも、私が貰ったのは少し多かったような…?

頼光さんを見ると、ふっ、と笑ってたことから少し嫌がらせも込めてあるんだなと理解する。

 

「駄目ですよ、仲良くしないと!」

 

「そーだそーだ」

 

「ところで、どうしてこんなにあるのかしら?」

 

「堕天使総督から渡されてな。

まあ、好きに使えということだろう」

 

「なるほど…」

 

な、流された…

うーん、でも…遊びに来た訳じゃないし、いいのかな。

私も気を引き締めないと。

 

皆さんとももっと話して、仲良くなりたいな。

 

そういえば、ギャスパーさんはルーマニアに来るとき怯えてたけど…何かあったのかな。

ヴァレリーって人が心配なだけじゃないよね。

ちょっと話してみよう。

皆が自由行動ということで外へ行ったり、この空き家を少し調べたりしてる間に隅に座っているギャスパーさんに話しかける。

 

「あの、ギャスパーさん」

 

「へ?あ、ネプギアさん」

 

「少し話を聞いていいですか?」

 

「…僕がどうして怯えてるか、ですか?」

 

「はい」

 

「…」

 

ギャスパーさんは周りを見た後、手招きをしてくる。

その通りに近寄って、私も隅に座る形になる。

あんまり聞かれたくない話なのかな。

 

「…僕はハーフなのか皆から嫌われ者だったんです。

吸血鬼は悪魔よりも血統を重んじる種族…それに、僕は神器を制御できないせいでより嫌われました」

 

多分、虐待とかもされてきたんだと思う。

お父さんが言ってた『純血の悪魔以外の境遇はそれほど良くない』って言葉を思い出す。

 

そういうこと…なのかな。

 

「それで、家を追われて…ヴァンパイアハンターに殺されたんです」

 

「え…」

 

「でも、部長に…僕は助けられた」

 

リアスさんがギャスパーさんを見つけて、それで悪魔に転生させることで助けた…のかな。

ギャスパーさんが嫌って感じじゃ無さそうだし、いいのかな。

 

「ヴァレリーは僕の恩人なんです。

幽閉されていた僕に優しくしてくれて、逃がしてくれた」

 

「…ありがとうございます。

大丈夫、ギャスパーさんはもう勇気を持っています。

ヴァレリーさんだって、無事に会えますよ」

 

「…だといいなぁ…」

 

ギャスパーさんは少し楽になったようで固かった表情が和らぐ。

 

吸血鬼…警戒はした方がいいのかな。

もしかしたら、ルーマニアでも何か起こる…そんな予感がする。

でも、皆がいるからきっと大丈夫だよね。

 

そうやって色々な人と会話をしているとドタバタと騒がしい音を立てながら一誠さんが扉を開けて小猫さんと入ってくる。

誰かを担いだ様子だった。

 

「アーシアはいるか!」

 

「ここにいます!怪我人ですか?」

 

「ああ、路地裏にいたんだ」

 

「ショートカットしようとしたら倒れてましたので」

 

寝かされた人はまるで西洋の人形のような人らしくない美貌を持った女性だった。

腕や足から血を流していて苦しそうな顔で呻いている。

 

「大怪我はしてなさそうですね……」

 

アーシアさんが神器による治療を施す。

 

「…傷の治りが早い」

 

「そうなのか?」

 

「はい、切り傷の類いが多いんですけど…それにしても、異様に早い気が…」

 

「あ、その人吸血鬼です…」

 

「へぇ~そうなのかギャー助」

 

「吸血鬼GETだぜ」

 

「………はい?」

 

一誠さん、思わぬファインプレーをしていたことに気付き唖然。

周りも早々に手がかりを手に入れたことに驚きを隠せない様子。

私もですけど…凄いなぁ一誠さん。

 

─トラブルに遇いやすいんです…

 

御愁傷様です…いーすんさん…

 

「や、やったぜ。イッセーさん分かってましたけどね?

まあ、これくらい姉ちゃんの弟…つまりサブ主人公にかかればね?

余裕っていうかノーミスクリアっていうか」

 

「はいはい偶然偶然」

 

「偶然じゃねぇし、必然だし?」

 

「ほんとに?」

 

「yes。偶然、興味ないねぇ」

 

一誠さんと木場さんのコントは置いておくとして、ギャスパーさんの指摘でこの女性が吸血鬼であることが判明した。

これで第一歩だね!

 

「取り敢えず…起きるのを待ちましょうか」

 

「そうだな。トリスタン、念のため周囲の警戒に努めてくれ」

 

「分かりました」

 

「ん、トリが行くなら、私も」

 

「頼光様…鏡の接続、終わりました」

 

「ありがとう、パンドラ」

 

「はい」

 

「さて…どうなることやら」

 

頼光さんの一言は、皆の心境を代表するかのようで。

これから何が起こるのか、何が起こっているのか…不安を抱かせる。

吸血鬼の女性が傷ついて倒れていた…ただ事じゃなさそう…

 

でもお姉ちゃんのため、そしてギャスパーさんのためにも頑張ります!




原作ではギャスパー君が出ていった後に聖杯を発現しますが、ここではちょっと早めに発現した感じでお願いします。
まあ、バレたのは同じくらいってことで!

…にしても、原作よりも進みが早いな…?


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お互いの状況…ってはわわ、何が起きてるの!?

さあて、作戦会議は終わったかい?



吸血鬼の女性を治療してから一時間程が経過した。

私はアーシアさんと一緒に女性を看ている。

魘されるような呻き声をたまに発する所から酷いことをされたのかな…

 

他の人は話しすぎて看護の邪魔だからと別の部屋に移された。

 

「こうして二人で話すのは初めてですね」

 

インスタントだけどココアを淹れてくれたようで、アーシアさんに話しかけられて手渡される。

甘い味が緊張感を和らげて、温かさが心に余裕を持たせてくれる。

私のほっとする様子を見てなのか、微笑みを浮かべるアーシアさんは吸血鬼の女性よりも綺麗に見えた。

 

「はい…ココア、ありがとうございます」

 

「ルーマニアに来てからずっと肩に力を入れすぎているようでしたから。

こういう時は、甘いものや温かいものを口にするといいんですよ」

 

「…私、そんなにカチコチでした?」

 

「はい、とても」

 

「あははは…はぁ…」

 

駄目だなぁ、私。

落ち込む私にクスクスと笑うアーシアさんは何処か大人びてる…というより慣れてるのかな。

 

アーシアさんは苦しそうにしている女性の手を優しく握る。

すると、苦しそうだった女性の表情が和らいで静かな寝息をたてる。

 

「すいません。前のイッセーさんを思い出して、つい」

 

「一誠さんを?」

 

「凄かったんですよ。

ネプテューヌさんを守るって躍起になって頑張って…」

 

今も凄いんですけど、と遠い目をするアーシアさんに納得する。

この人は、色々と経験してるんだなぁ…

お姉ちゃんの近くにいて、色々な所を見てたみたいだし。

多分、お姉ちゃんが信頼する人の中でもかなりの位置なんじゃないかな。

 

その話が気になって、聞くことにした。

 

「ずっと走って、がむしゃらに頑張って…でも、折り合いを付けることが出来たんです」

 

「折り合い、ですか?」

 

「ヴァーリさんです」

 

「…えっと、赤龍帝と白龍皇の…」

 

「はい、引き分けでしたけどね」

 

引き分け、勝ちでもなければ負けでもない。

中途半端といえばそれまで。

でも、私はそうは思わなかった。

その話をするアーシアさんは清々しいような、そんな顔だった。

中途半端と思う人がそんな顔をするわけがない。

 

だから…いい戦いだったんだと思います。

 

「イッセーさんはヴァーリさんが嫌いだった。

自分の欲しい物を全部持ってたから」

 

「全部ですか?そんなこと…」

 

「ない、と思いますよね。

私もそう思ってたんです」

 

「アーシアさんも?」

 

「だってそうでしょう?絶対に何か1つは重なる部分があると思ってましたから。でも、そうならなかった…あの戦いまでは。

ようやく、1つの共通点を得たんです」

 

「…それは?」

 

「ライバル。高め合う…という点において神器のこともあって抜群でしょうけど…多分、そうじゃないんですよね」

 

無茶はしないで欲しいんですけど、と困った顔のアーシアさん。

私は、よく分からない。

ライバルなんていないし、そんな戦いもしたこともなければ見てもいないから分からない。

 

「あの二人は背中を預けられるから…ライバルなんだと思います」

 

「それは仲間じゃないんですか?」

 

「ちょっと違うんです。

あの二人は普段はいがみ合いの方が多いんですけど…ここ一番の時は絶対に手を取り合うんです」

 

「絶対に?」

 

「ええ、絶対に」

 

羨ましい。

そんな感情がアーシアさんにはあった。

まるで、一誠さんと一緒に戦いたいようで。

 

「あの…」

 

気になることがあって、聞こうとしたその時。

部屋の扉が開いて、そこからパンドラちゃんが入ってきた。

静かな面持ちでこちらに歩いてきて、吸血鬼の女性を一瞥した後私たちの方に顔を向ける。

 

「…容態は安定、ですか?」

 

「はい、頼光さんに頼まれたんですか?」

 

「いいえ。私の意思、です」

 

「他の皆さんは?」

 

「この人が起きるまでは待機」

 

「そうですか…」

 

この人が鍵を握ってるんだよね。

 

早く起きて欲しいって気持ちもあるけど…こういう時こそ焦っちゃ駄目だ。

この人だって辛いことがあったんだろうし…

でも、ルーマニアで何があったんだろう。

吸血鬼…教会がやったとかじゃなさそうだし。

 

「吸血鬼…血を吸わないと生きられない神様に逆らう種族。

そして、強くて…哀れな人達…」

 

「哀れ、ですか」

 

パンドラちゃんの言うことは難しい。

神様に逆らうって言うことも分からないし、どうして哀れなのかも分からない。

分からないことが多すぎて、私で大丈夫なのかなって思ってしまう。お姉ちゃんなら上手い返しが出来るのかなとも。

 

「どうして哀れなんですか?」

 

「強いのに、怯えているから」

 

「ネプギアさん、吸血鬼は凄く強い代わりに弱点が多いんです。

ニンニクや、十字架等…それらを使われたら如何に強い吸血鬼でも負けの目が出てきてしまう」

 

「そうなんですね…」

 

弱点が多い…太陽とかも苦手なんだっけ。

太陽の下で歩けない。

どんな思いなんだろう、それは。

私には分からない。

もし、太陽の下で歩きたい吸血鬼がいたら、どうするんだろう。

死んじゃうのを承知で外に出るのかな。

それとも…何か方法を見つけるのかな。

 

「ぅ、うん…」

 

「あ…!」

 

女性から声が発せられる。

どうやら起きるみたいで、アーシアさんが私に顔を向ける。

 

「部長さんと頼光さんを呼んできてください。パンドラさんは何かあった時の為にお願いします」

 

「はい!」

 

「分かりました」

 

パンドラちゃんは頷いて鏡を展開して、私は急ぎ足で部屋を出てリアスさんと頼光さんのいる部屋に向かう。

ノックしないのは失礼だけど、ガチャリと開ける。

少し驚いた様子のリアスさんと平然とした様子の頼光さんが話し合ってたようで座ってた。

 

「どうしたの?」

 

「例の女性が起きました!」

 

「そうか…まずはリアス嬢と俺だけでいいだろうな…行こう」

 

「そうね」

 

三人で急いで女性のいる部屋へと向かう。

その途中で…

 

ガシャン、という音が聞こえた。

鏡の割れる音…!

もしかして、暴れてるの!?

 

部屋の前について、扉を開く。

 

「貴女の攻撃は確かに強い。でも、私の鏡はそれを通さない」

 

「小癪な…!」

 

女性が鋭い爪を振るって鏡を割る。

本来ならそこから倍返しの衝撃が出る筈だけどパンドラちゃんが意図的に使ってないみたい。

あくまで盾として…凄い。

 

「そこまでよ!」

 

リアスさんが悪魔の羽を出して、女性の前に出る。

女性はリアスさんを攻撃しようとしたけど、羽を見て目を見開いて動かない。

 

「…悪魔?」

 

「一部は人間だけどね。

私はリアス・グレモリー…お互い、争いは無しにしない?

私たちが倒れてる貴女を拾って治療した。事情を聞きたくてね」

 

「……ごめんなさい、そうとは知らずに。貴族の名折れね…」

 

意外と素直に戦闘態勢を解除した女性はまだ疲労があるのかベッドに座り込む。

捕まったと勘違いしたのかな。

 

頼光さんと一緒に椅子を用意して私たちも座る。

 

「私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。

カーミラ派…といっても分からないわね。まあ…そんな派閥があるとだけ知って」

 

「俺は頼光だ。

それでエルメンヒルデ殿、なぜあの場で倒れていたのか?」

 

「…裏切りがあった」

 

「裏切り?」

 

暗く沈んだ面持ちでエルメンヒルデさんはそう言った。

裏切り…他の吸血鬼から?

派閥って言ってたし、別の派閥からだと裏切りとは言わないから…

 

「同じカーミラ派の吸血鬼に、ツェペシュ派の者がいた。

そして…昨日の夜、クーデターが始まったの。

反逆…それをした者の中に家族、友人までいた。

それで、何をするでもなく逃げてきたのよ」

 

…どう言葉を投げ掛ければいいんだろう。

裏切り、それも家族や友達からなんて酷い…

何かしてしまったとしても、クーデターなんて…

 

リアスさんも何か思うことがあるのか何かを言う様子はない。

 

「なるほど。吸血鬼の町…それがあるということでいいんだな?」

 

頼光さんが代わりというように話を続ける。

エルメンヒルデさんは頷く。

 

「ならば話は早い。

そこまで案内してくれないか」

 

「何を無茶なことを。

カーミラ派は終わったのよ…ツェペシュ派のせいで全てが…」

 

「ツェペシュ…か。

ただ案内するのが不安ならば何かしようじゃないか」

 

「…何をしてくれる?」

 

「さあ、そちら次第だな」

 

そう言われて、エルメンヒルデさんは考え込む。

私たちも、ルーマニアに詳しいわけでもないから出来ることは少ない。無茶なことじゃなければいいんだけどな…

エルメンヒルデさんは思い付いたようで話を切り出してくる。

 

「なら、働ける場所をちょうだい」

 

「いいのか?」

 

「…どのみち、裏切り者がいると分かってまた同じ派閥を作るなんて無駄よ。今までの自分の価値観を壊された気分…なら、別の道を歩むわ」

 

「…だそうだ、リアス嬢?」

 

「端から丸投げする気満々だったわね…?」

 

「さて、何のことやら」

 

リアスさんはため息をついて、仕方ないわね、と言う。

そっか、リアスさんなら魔王の人の家族だし、そういう伝手があるよね。

 

エルメンヒルデさんは了承されると思ってなかったのか少し驚いている。

 

「まさか、了承されるなんて…」

 

「それくらいならお安い御用だ。

俺達も、急いでいるからな」

 

「何が必要なのか、聞いても?」

 

「…聖杯。ヴァレリー・ツェペシュが持つ聖杯だ」

 

「ヴァレリー……そう、それなら行かなければならないわね…」

 

エルメンヒルデさんはそう言ってから横になる。

ただベッドに横たわっただけなのに、それだけでも1つの芸術のようで…自然と魅了される。

疲れたというように目を閉じたエルメンヒルデさんは一言。

 

「少し寝るわ。その後、案内する」

 

「分かった」

 

また寝息を立て始めたエルメンヒルデさんをそっとしておこうと思い、五人で部屋を出る。

アーシアさんはホッと安心した後、パンドラちゃんの頭を優しく撫でた。

 

「…?」

 

「パンドラさんが守ってくれなかったら、私は危なかった…ありがとうございます」

 

「…仲間、ですから」

 

「ふふ、はい」

 

「エルメンヒルデの協力は得られたわね。けれど…まさかクーデターが起こってるなんて…」

 

「ああ、これは少し対策をしておかないとな」

 

「皆を呼びましょう」

 

リアスさんの集合の言葉に皆従って、広い部屋に集まる。

リアスさんがエルメンヒルデさんが起きたこと、協力してくれること、吸血鬼の町でクーデターが発生したことを話す。

ギャスパーさんの顔が青くなったのを私は見逃さなかった。

近くにいたこともあって、肩に手を置く。

 

「大丈夫、これから皆で向かいますから」

 

「は、はい…ヴァレリーは…大丈夫なのかな…」

 

大丈夫とは言えない。

そんな無責任な発言を私は出来ない。

皆が事を理解して、ゲオルグさんが手を挙げる。

 

「1ついいか。ツェペシュ派とカーミラ派…というのは?」

 

「ギャスパー…知ってる?」

 

リアスさんが聞くと、ギャスパーさんは頷く。

 

「男性の真祖を尊ぶのがツェペシュ派で女性の真祖を尊ぶのがカーミラ派なんです。

ずっと昔から対立を続けてる…ってことだけ…」

 

「十分だ、感謝する。俺からは以上だ」

 

ゲオルグさんの感謝の後、今度はゼノヴィアさんが手を挙げる。

 

「どうして今更反逆が起きたのかは?」

 

「分からないわ。

ただ、私たちの現状と今回の騒ぎ…何だかほぼ同じ日に起こっているのが気がかりね」

 

「リゼヴィムが関わってる可能性はあるということだな、理解した。私も以上だ」

 

それから、色々な質問があった。

吸血鬼への対策はどうするか、とかエルメンヒルデさんは信用できるのか、とか。

色々あったけど、頼光さんとリアスさんが答えていった。

吸血鬼への対策を考えようってなったけど…

 

「いやもう襲ってきたら殴ればよくね?」

 

「清々しい程の脳筋だが間違ってない」

 

え、いいんですか?と思ったけど現状だと十字架とかは用意できない。

一誠さんの取り敢えず襲われたら応戦しての数の暴力。

正直いいのかなぁと思ったけどそれでいいっぽいし…大丈夫かなぁ?

 

「行き当たりばったり上等!

どのみち、時間はかけてられねぇんだ!

俺達で無理矢理にでも切り開けばいけるさ!」

 

一誠さんの鼓舞とも取れるしいい加減とも取れる言葉に、皆さん別々の反応をしていたけどそれでも、まあそれでいいか、といった反応が多かった。

ちなみに一番賛同していたのは呂布さんだった。

 

うーん…皆がいいのなら、それでいいのかな…?

 

─ネプギアさん、そこは否と言う勇気が必要ですよ?

 

ずっと静かにしていたいーすんさんがツッコミを入れてきた。

やっぱりそうだよね…でも、そういう手しか今はないし…仕方ないよね!

 

─ネプギアさん!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプテューヌ、落ち着け」

 

ヴァーリの言葉が自分を諌める。

分かってるよ?分かってるけどさぁ!

うー…でも、心配だなぁ…皆大丈夫かなぁ…

 

自分の部屋でうーうー言いながら皆の心配をするしか出来ない自分が恨めしい!

 

「大丈夫かなぁ…」

 

「あの面子で駄目なら諦める他無いだろうな」

 

「それって大丈夫ってこと?」

 

「さて、どうだろうな?」

 

意地悪な顔をするヴァーリに自分はジト目を向ける。

そういう時は彼女を安心させる言葉を送るべきだよね?

妙なところで困らせてくると言うか、何というか。

 

「ねぷっち、してほしいことがあったら言うのよ?」

 

寝かされている自分の手を握って黒歌が心配そうに言ってきて、自分も握り返す。

うーん、起きるのも大変なねぷ子さんの明日は皆に懸かってるのだ…

 

「大丈夫だよ。皆が傍に居てくれるだけで嬉しいなぁ」

 

「もう…こういう時は甘えていいんだにゃん」

 

「優しいね、黒歌。

私が撃たれた事を気負ってるなら気にしなくていいんだよ?」

 

「…ごめんね、ねぷっち」

 

「仕方がない。魔弾の射手なんてどう防ぐか分かるわけがないんだ」

 

よしよしと撫でたくても腕が少し重い。

結局、シェアがないとこんなだなぁ…駄目だなぁ。

シェアが戻るまでどうしよう。

 

「ゲームは出来そうに無いな」

 

「うー…辛い!私からプリンとゲームを取ったら主人公性を失うようなものだよ!」

 

「儚さは生えたにゃん」

 

「うわぁぁぁぁそれエンドで死ぬやつ!」

 

イヤだー!死にたくなーい!死にたくなーい!!

そう騒げる元気は出たけど、やっぱり体は重い。

うーん、これはもうじっとする他無いのかなぁ…

 

コンコン、と扉がノックされる。

 

それからガチャリと扉が開き、入ってきたのは…

 

「ん、いた」

 

「お、オーフィス!!?」

 

「まあ、そうなるよね」

 

入ってきたのはオーフィスとジークだった。

何食わぬ顔で入ってきたオーフィスに皆驚く。

何てこったい…どうして?

 

オーフィスは無表情で顔を膨らませる。

 

「久し振り、寂しかった」

 

「ご、ごめんね!」

 

「美猴から聞いて、飛んできた」

 

「ええ…」

 

「何をしてる、あいつは…」

 

ヴァーリが呆れるけど、少し嬉しかった。

心配してくれてるんだなぁって分かるから。

ジークは多分、来たオーフィスを発見して連れてきたんだね。

 

「…大丈夫?」

 

「…うーん、ちょっと辛い?」

 

「我、助けられない?」

 

「そうにゃ、無限の力なら呪いを解除とか…」

 

「…ごめん、我解呪は出来ない」

 

俯いて謝ってくるオーフィスの頭に何とか手を伸ばして置く。

 

「大丈夫、一人じゃ駄目でも皆がいるよ」

 

「協力プレイ」

 

「そう、協力プレイ!私達なら絶対治せるよ!皆いるんだから!」

 

「…うん」

 

よしよしと撫でる。

すると、オーフィスも手を伸ばしてきて、よしよしと撫でられる。

ありゃ?自分も?

 

「辛いのは、ネプテューヌ。撫でられるべき」

 

「ハハハ、その通りだね。皆いるんだ、大丈夫さ」

 

「もー…」

 

照れるなぁもう。

そういうのキャラじゃないんだよね。

でも、うん…甘えとこうかなぁ。

何か、心地いいしね!

 

そうして、少し寝ようかと思っていると。

 

 

 

 

 

─部屋、というか家が揺れる

 

 

 

「わわわ!?」

 

「っ、奴か!!」

 

何々!?襲撃!?

奴って?コブ…リゼヴィムが来たの!?

ええ、またラスボス突撃してくるの?

もう何番煎じか分からないネタやってくるボスなの?

 

ヴァーリが行こうとした時、ジークが手で制する。

 

「君はネプテューヌを。僕が行く。

黒歌とオーフィスもここにいるんだ。いざとなったら…逃げるんだよ」

 

「分かったわ」

 

「ん、頑張って」

 

「ジーク…頑張ってね」

 

「はは、死ぬ気でやらせてもらうさ」

 

ジークが行った後、ヴァーリは顔を歪める。

…そうだよね、行きたいのはヴァーリの方なのに。

自分のせいで…

 

「…お前のせいじゃない。

俺が二人いればいいのにと思っただけだ」

 

「…そっか」

 

…自分は…私は…どうすればいいんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界が貼られて、隔離された兵藤家の前で戦いが始まっていた。

だが、かなり一方的な展開だ。

何せ…

 

「おいおいおい、どういうことだよ。神器が使えねぇぞ!」

 

「…そう、だからあのくそったれは余裕な訳!」

 

「くっ…」

 

英雄派の殆どは神器があればこそ強さを発揮する。

だが、それを封じられた今、俺達は…!

 

「ん~中々どうしてよく避けるねぇ。

感動的だねぇ、友情って奴?でも残念かな、俺との差は歴然って奴なんだな、これが!」

 

十二枚の黒翼、魔王が着ることを許された衣装、そしてヴァーリに似た銀髪…間違いない。

この男こそがリゼヴィム!

 

「はっ、玩具で遊んでたテメェらじゃそれが関の山だろ。

代わりな!」

 

「カイネウス…だが、お前も!」

 

「あぁ?関係ねぇよ、神器じゃねえし…それに、差があるだとかはそれこそ関係ねぇだろ」

 

カイネウスが前に出て、槍と盾を構える。

海神の槍と盾ならば確かに対抗はできるが…奴は悪魔の中でも最上位だぞ…!俺達が邪魔なのは分かるが、一人で行くのは無謀そのものだ。

 

カイネウスはニヤリと獰猛に笑い、リゼヴィムを目で捉える。

 

「テメェら半人前に見せてやるよ。

これが英雄の姿って奴だ!」

 

勇猛…俺にはそう見えるカイネウスに、しかしリゼヴィムは嘲笑を浮かべる。馬鹿馬鹿しいとばかりに。

 

「へぇ?人間一人…ああいや、混ざりもん?まあ人間。

一人でレイドボスな俺に向かってくる感じ?笑えまくりなんだけどなぁ」

 

「ハッ、笑えるのはこっちだぜ蝙蝠野郎」

 

「ほ?」

 

「これからテメェはその人間様にぶち殺されるんだからなぁ!」

 

海神の槍を手にリゼヴィムへと向かっていくカイネウスにリゼヴィムもまた夥しい程の魔法陣をカイネウスにのみ向ける。

そこから放たれる黒い波動はカイネウスを貫かんとするが…

 

「刃も魔法も届かない、俺には決して!!

ハハハ、その首戴くぞ蝙蝠野郎ォ!!」

 

「珍しい、神の加護かい?なら、これでどうかなぁ!」

 

魔法をその加護と盾によって弾き、そのままリゼヴィムの元へ跳んで槍を振るわんとする。

しかし、何処からともなく鎖が飛び出しカイネウスの足に絡まって地面に叩きつける。

 

「ガッ、まあそう上手くいかねぇよなぁ」

 

「無事か、カイネウス!」

 

「黙ってろ曹操!」

 

安否を確かめる俺に吼えるカイネウス。

こ、こいつは何故協調性がないんだ…!

というより、俺に対してか?

 

「このままじわじわ攻めるのもいいかなぁ。

ほら、耐えてくれよ英雄様さぁ!」

 

またしてもリゼヴィムの魔法がカイネウスに向く。

放たれた黒の波動、その数は先程よりも数倍多い。

流石のカイネウスもこれを受けきれない!

くそ、聖槍があれば…!

 

 

 

 

 

「削り取れ、バルムンク!!」

 

 

 

 

 

「おおっとぉ!?」

 

突如、竜巻状の破壊の渦が黒の波動を消し去りリゼヴィムにまで向かっていく。

リゼヴィムは驚きと共に十二枚の黒翼で自分を覆い耐える。

…翼に傷も付かんか。

 

だが、今の攻撃は…!

 

「苦戦してるね、カイネウス。魔剣ならあるけど、ご所望かい?」

 

「ジーク…そうか、魔剣は神器じゃなかったな!」

 

「早く来やがれよジーク!」

 

「そうよそうよ!」

 

「どうして戦えない二人にこうも言われなきゃいけないんだろう…」

 

呆れた様子でヘラクレスとジャンヌを見るジークはリゼヴィムに振り返って魔剣ノートゥングを構える。

そういえば、以前魔剣の取り出しをしやすくしたとアザゼルと語っていたな…

 

だが、ジークは生身の人間だ、龍の手がなければ…

 

「…神器が使えないか。なら、信じれるのは自分と武器だけかな」

 

「ハッ、テメェついてこれんのかよ?」

 

「やりようはある。君こそその加護でいけるのかい?」

 

「言いやがる。…駆けるぞキザ野郎」

 

「お好きに、突進女」

 

カイネウスはより獰猛に、獣のように突進し。

ジークもまた駆ける。

リゼヴィムは少し面白そうに、けれど侮蔑するような視線と魔法を二人に向ける。

 

「人間が二人なったねぇ。

でも、俺には勝てないよ、残念だけど」

 

「さて、どうかな?

0はない、君が生きてる命ならね」

 

「喉元かっ捌いてやるよ!!」

 

魔法を二人で弾きながら進み、鎖をノートゥングで粉々に引き裂いて再び距離が詰まる。

けれどリゼヴィムの余裕な態度は崩れない。

 

「我が女神の未来のため、斬らせて貰う!ティルヴィング!!」

 

「海神の槍よ、敵を飲み込め!!」

 

槍から海水が発生し、リゼヴィムを飲み込む。

そして、破壊力重視のティルヴィングが振り下ろされる。

 

しかし…

 

「よいしょっと」

 

「っ!」

 

リゼヴィムは飲み込まれながらもティルヴィングを掴み、ジークを叩き落とし海水の拘束を翼で払うだけで無効化した。

叩き落とされたジークはバルムンクに持ち替え、渦を生成して体を浮かしてから着地する。

 

これでも届かないか…!

 

黒翼を展開しながら地面に着地し、パチパチと拍手をするリゼヴィム。

 

「流石は英雄様だ、俺もすこーーし肝を冷やした。

死んじゃうかな?生きてましたぁ!ってねぇ!

あー残念、俺ちゃん生きてまーす」

 

「一々腹立たしいな…」

 

「女神ちゃんの様子を見に来ただけなのに皆ったら歓迎してくれないからおじさん張り切っちゃったね。

年寄りに厳しい世の中になったもんだ」

 

疲れた様子もなければ撤退の気配もない…どうする…オーフィスを頼るか…?だが、俺の勘がやめておけと言っている。

取り返しが付かなくなると。

 

そうして拍手を終えてから態度を変えたようにため息をついたリゼヴィム。

 

「にしたって女神ちゃんの仲間の口から出るのは未来、未来、未来!はー夢見すぎかよ?」

 

「夢を見て何が悪い。

僕達は彼女の見せてくれる未来が心地いいんだ。

それについていくのが悪いのかい」

 

「未来ねぇ…

キミ達は何でそんな不確かなものを守ろうとする?

因果も、運命も、理も、物理の法則さえこのくっだらねぇ世界の作り出した都合の結果に過ぎないのに!

未来の色は明るいかい?」

 

「だとしても、それを切り開くのが僕達という今を生きる者だ。

僕達の女神の理想を叶えるのが、僕達のやるべきこと。

それを否定させない」

 

「別にキミ達の理想を否定してる訳じゃない。

尊いと思うし?あーそんな未来もありっちゃありとも思う」

 

けれども、とリゼヴィムは嘲笑を浮かべて話を続ける。

 

「人間と女神の差は歴然だよぉ?

先に死ぬのは君らだし、生きるのはあの女神ちゃんだけ。

今理解者が居たとして、百年、千年先は誰がいる?

悪魔かい?天使かい?堕天使かい?違うだろう?

真に欲してるのは人間の理解者だろう?」

 

嘯くように、嘲るように。

どうせ今だけだとあり得る可能性を羅列していく。

リゼヴィムの言うことは間違っていない。

 

そう、悪魔や堕天使、天使でさえも女神の寿命よりも先に消える。

 

残るのは彼女だけなのだ。

 

「言っておくけど俺はそれを指摘しようが女神ちゃんは諦めないって分かってるぜ?でもさぁ…それは主人公本人の話。

他の仲間は?どうするのかな?

いつか消える命を、そんか不確かな未来のために燃やすのは如何な物かと思うのよねぇ」

 

「…ああ、そうかよ」

 

「ん?」

 

カイネウスが納得したような声を出す。

リゼヴィムは気になったようで視線をカイネウスに向ける。

 

「テメェの言葉は薄っぺらだ。

可哀想だなんざ微塵も思っちゃいねぇだろ?」

 

「はい正解」

 

「んな…」

 

先程までの憂いの顔は何処へやら。

再び嘲笑を浮かべるリゼヴィムに俺達は唖然とする。

カイネウスだけは下らないとばかりに吐き捨てた。

 

「テメェは所詮嘘まみれだ。悪魔らしいねぇ、契約以外での嘘まみれ…反吐が出る」

 

「嘘が堕天使の専売特許とでも?

馬鹿馬鹿しいねぇ…そもそも、事を仕出かしたのだって1つだけだよ?再認識して貰うためさ」

 

「再認識…?」

 

「そう!」

 

 

 

 

 

 

 

「─悪魔は、悪でなければならない。誰よりもね」



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どんな悪でも、私達は屈しないよ!

やっほ^^

色々と、刺激されたり大学始まったせいで遅れたぜ許し亭許して


「悪魔は、悪でなければならない。誰よりもね」

 

そういったリゼヴィムはとても楽しそうに、ケラケラと笑う。

俺はそれに手を握り締める。

こいつは…こいつはそんなことのために!

 

「そんな下らない思想に、ネプテューヌを付き合わせる気か!」

 

「ヒャヒャヒャ!何怒ってるわけ?偽善を振りかざすのも大概にしなよ曹操ちゃん!まあ、別に女神ちゃんじゃなきゃいけませんでしたって訳じゃないんだけどね~。

誰でもよかったのよね、これが」

 

「誰でも、だと?」

 

「その通り!」

 

ビシッ、と指をこちらに差し、嘲笑う。

 

「別に誰でも。

君たちでもいいし、赤龍帝でもその家族でもいいし?

でもほら、それじゃ俺が龍のオーラに釣られましたって感じで嫌じゃん。だから女神ちゃんを撃った。

信仰をその身で受けられない呪いをプレゼントFOR YOUしたんだよぉ!」

 

「──」

 

こいつは、生かしておいたらいけない。

その場の気分で傍にいた誰かを殺すような奴を、生かしていい訳がない。

そんなふざけた理由で仲間を、主を傷つけたこいつを許しておけない。

 

「怒った?怒ったよなぁ!最初の被害者なんてどうでもよかったんだよ、どうでもね。

まあ、今はルーマニアを頼んでるし?そっちもどうなるか見物だけど…俺はこっちを楽しませて貰おうかなぁ。

魔王も廃れたもんだよねぇ、ゲームみたく世界征服を企ててる方がこっちの気分もよかったってのに和平だのなんだの…

だから、俺が代わりに悪魔の真価を見せてやろうって話な訳ね」

 

「冥界でやってろよ」

 

「えー?それじゃつまらないじゃん。

どうせ悪名高くなるなら全世界ってね」

 

「貴様…!」

 

「ヒャヒャヒャ!そう怒るなよぉ、キレすぎだろ。

ちょっかいかけただけじゃん?俺ってば面白そうなら手を出しちゃう精神年齢お子様だから許してつかーさい!」

 

言動、態度…その全てに苛立ちながらもどうともしがたいこの状況に俺達は拳を握り締める。

このままでは…兵藤家が…!

 

その時だった。

 

「おっとぉ!」

 

黒く長い何かが俺の横を通り過ぎ、リゼヴィムにまで伸びていった。

リゼヴィムは間一髪といった様子でそれをかわす。

黒く長い…黒帯は消え、代わりに俺の背後から刺々しい魔力を感じる。

 

「随分と、暇そうではないか超越者」

 

「…おやぁ?」

 

そうして来たのはシャルバだった。

いつもの自然体でやってきたシャルバは不愉快だとばかりにリゼヴィムを睨む。

ネビロスもまた機械の体でついてくる形でやってきた。

睨まれたリゼヴィムはこれはこれはと笑いながら話し掛けてくる。

 

「シャルちゃーん元気してる?あー違った!

子守り頑張ってる~?」

 

「なるほど、貴様の入れ知恵かネビロス」

 

『やだなぁ…正当な報酬を貰った結果といって欲しいな』

 

「ふん」

 

「あっれぇネビロスちゃん。

どーしてそっちいるのよ、俺と一緒にこの世の終わりってのを楽しむ話はよ?」

 

『ごめん、僕のログにはそんな会話した覚えないかな』

 

「あらそう残念」

 

ネビロスはどうでも良さそうに返し、リゼヴィムもまたどうでも良さそうにネビロスとの会話を打ち切る。

シャルバがネビロスを買収してなかったらどうなってたことやら…

 

「にしたって君も女神ちゃんと仲良しこよしかい?

君なら俺の考えが共感できると思ってたんだけどなぁ…期待してたんだぜ?冥界の在り方を根底から覆してくれるってさぁ」

 

「期待通りの結果ではないか、何せ貴様の期待などなかったのだからな。

期待してない結果を期待したの間違いだろう」

 

「あらあらあら?何か考え読まれてて気持ち悪い感じじゃないのよ?かなーり変わったねシャルちゃん!

だから女神ちゃんの妹分作ったりしたわけ?」

 

「単に戦力として欲したに過ぎん」

 

「その割には溺愛してるねぇ」

 

「優秀な道具には信頼も愛情も湧くというもの。

貴様にはそんなものもないようだが」

 

「友達0人って言いたいわけね。

はー辛いわーおじさん心打ち砕かれて辛いわー」

 

悪同士、分かるものでもあるのかどちらかが詰まるなんて事がない会話。

しかし、どちらも互いを受け入れていない。

平然とした罵倒の投げ合いだった。

 

「何、気にくわなかった?自分の獲物取られた気分?

可哀想だけど、こういうのに漁夫の利もないんだよねぇ…結局は時間を掛けすぎたオメーが馬鹿を見たって訳なんだよぉヒャハハハ!!」

 

「余裕だな、リゼヴィム?魔弾が頼もしいか?」

 

「楽しいかな~撃ったら当たるなんて俺のためにあるようなもんじゃないの?」

 

「そうか、なら朗報だ」

 

『渡した本人が言うのもなんだけどさ…それ、実は完成品じゃないんだ』

 

「……あん?」

 

リゼヴィムのきょとんとした顔。

ネビロスは機械の顔だが声は少し申し訳なさそうにしているところから真実なのだと物語っている。

ネプギア曰く、悪い者ではないらしいが…技術者なのか、善くも悪くも。

 

『本当は必ず当たる七発の弾丸を造りたかったんだけどね、流石に無理だったからさぁ…まあ一発は出来たよ?でも魔弾とか欲しいって言われたから試作だけど性能は保証するそれをあげたわけね』

 

「悪徳商法極まりないんじゃない、それは?」

 

『いやいや、別に間違ってないだろう?悪魔は契約を違えない。

しっかりと必ず当たる魔弾(・・・・・・・)をあげたじゃないか』

 

「なら、二発目は?」

 

『さあ?君が七発全部が当たると思えば当たるかもしれない、当たらないと思えば当たらないかもしれない。もしかしたら運良く反動も何もかもが上手くいって脳天を撃ち抜くかもしれない。

けれど、僕が渡した魔弾は1つだけだ。嘘はない』

 

「ふぅん、そうかい…なら、要らないかねぇ…?後で捨てとくよ」

 

つまらなそうにそう言ったリゼヴィムはそれはそれとしてとシャルバを見る。

相も変わらず侮蔑の視線だった。

 

「君は君で俺の邪魔をしに来たんでしょ?」

 

「当然だろう。あの女神は私の戦争相手だ。

奴があの調子ではこちらの気も削がれるというもの…貴様を排除し、貴様の研究物をいただくとしようか?」

 

「怖い怖い、どーしてこう怖い発言の人が多いんだろうね~

女神ちゃんも出てこないし…ま、少しは楽しめたしね。

今日のところは帰ろっかなぁ」

 

「何だ、一手遊んでやろうとは思わんのかね?」

 

「対策してそうな面だし、やるだけ無駄って奴。

…あ、なら1つ伝言頼まれてよシャルバちゃん」

 

飽きたとばかりに帰ろうと踵を返すリゼヴィムがシャルバにそう言うものの、シャルバは無言で立つのみ。

どのみち言うんだろうとばかりに。

 

「女神ちゃんの未来が、俺を塗りつぶすか、それとも…このまま全てを俺がカンバスごとぶち壊すのか。

それを競おうじゃないのよ」

 

「…いいだろう、伝えておこう。

だが、次に見える時が貴様の終わりだ」

 

「どっちの『しゅうまつ』?終末?それとも週末?」

 

そうして、リゼヴィムは消えた。

リゼヴィムのいなくなった後、緊張状態だったせいか息が上がる。

神器も使えるようになっている…だが…くそっ!

悔しさのあまり地面を殴る。

 

他の皆も悔しげだ。

 

「くそ、俺達じゃ相手にすらならねぇってか!?」

 

「悔しいけど、神器に頼ってたのは間違いないもの…」

 

「…神器を封じる異能。恐ろしい奴だ…リゼヴィム」

 

「大丈夫かい、皆」

 

ジークがこちらへ来て、心配してくれる。

…俺も頼りすぎだったな。

そうか、だからシャルバはカイネウスを残すよう言って自らもここに留まったのか。

 

「ああ、問題はない。

…すまない、俺達が弱いせいだ」

 

「気にすることないさ。

どういう手合いか分かったんだ、それで良しとしようじゃないか」

 

「ああ…皆も無事か?」

 

「体はピンピンしてるがよ、少し鍛え直す必要があるぜこりゃ」

 

「そうね…」

 

「今の我々では守護も儘ならないとは…」

 

全員精神的ショックが大きいな。

だが…そこはアザゼルと要相談ということにしておいて…

今気にすべきはリゼヴィムの発言だ。 

ルーマニアを頼んでいると言っていた…つまり協力者がいるということか。

恐らく悪魔だとは思うが…聖杯が狙いか?

だとしたら既に事はリゼヴィムが有利と言うことになる。

 

…いや、まだだ。

リゼヴィムのあの態度、恐らくは聖杯の入手はまだな筈だ。

あの態度まで嘘ならば話は別だが…

 

くっ、後手になっているのは変わらない。

兵藤一誠達がどこまでやれるかに懸かっている。

 

「皆!」

 

ネプテューヌがヴァーリに車椅子に押される形でやってきた。

そんな姿になってまで俺達の心配をするのか…?

比較的精神的余裕があるジークがネプテューヌの前に行く。

 

「撤退してくれたから良かったけど正直攻め落とす気でいられたらまずかったかもしれない」

 

「…そっか、でも皆無事なんだよね?」

 

「ああ、皆悔しいとは思うけど、今の僕達の結果としてはこれが最上だった」

 

「うん、無事ならそれで良いよ!取りあえず、皆上がってよ」

 

結界も消えているし、何より世界を巻き込もうとする奴がわざわざ周りを気にするものか?

だとすれば本当にネプテューヌを見に来ただけなのか…

 

取りあえず家に上がらせて貰い、傷の手当てに注力することに。

ちなみに、パラケルススはネビロスに付き合わされてその場にいけなかったことを悔やんでいたようで謝り倒してきた。

パンドラに見せられない場面が増えたな…レオナルドは、見てしまった…

 

「神器を無効にする…か」

 

「恐らく、無効に出来る限界はあるとは思うが俺達がその限界にまでいけるかと言われたら…時間がないとしか言いようがない」

 

「そうだな…」

 

『…ヴァーリ、俺の事は気にするな。

お前の力は、お前の物だ。お前は誰よりも強い男になるのだろう』

 

「アルビオン…」

 

付き合いが長い故か、アルビオンの力を使えない事が懸念として顔を険しくしていたヴァーリにアルビオンが心配は要らないと伝える。

…家族のようなものか。

 

「肝心な時にアザゼルはいないんだな」

 

「仕方無いだろう。周りへの説明はあの総督に一任している」

 

『僕達が表に出たらそれはそれでねぇ』

 

…困ったな、対抗札の堕天使総督は説明で大忙しと来た。

加えて、先程の戦闘の情報も送った事だしな。

どうすべきか…

 

そう考えているとネプテューヌが手を挙げる。

 

「取り合えず、一誠達にも同じ情報を伝えよう?」

 

「そう、だな。あちらに向かわないとも限らないからな」

 

無事だと良いんだがな…

ゲオルグ経由で情報を共有しよう。

アイツもサボってないといいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルメンヒルデさんが起きて、出発!と思ったらゲオルグさんから待つように言われて意気揚々としていただけに少し空気が悪くなる。

 

「…なるほど」

 

「何かあったんですか?」

 

携帯を見終わったのかその表情が見る見る険しくなっていった。

ゲオルグさんに話を聞いてみる。

難しい顔をして、どうしたものかと困っていたようだった。

 

「曹操から連絡が来てな」

 

「曹操さんから?」

 

「ああ。…ネプテューヌ達にリゼヴィムが接触してきた」

 

「なっ…無事なのか、皆は!」

 

あっちにいる皆の安否を焦って確かめる一誠さんにゲオルグさんは問題ないと頷く。

一旦安堵の雰囲気が流れるけどまだこれだけじゃない。

 

「魔弾の脅威は無くなった。だが、リゼヴィムの強さはそれだけではない。

奴は、神器その物を無効化する」

 

「ハァ!?インチキ効果も大概にしろ!」

 

一誠さんの言葉に神器を持つ人だけでなく他の皆まで同じ反応をする。

確かに、人が対抗するためにあるのが神器なのにそれを使えないなんて無防備どころか相手からしたら餌だよね。

 

…何にしても、お姉ちゃん達が無事でよかった。

 

「悪いが、それだけじゃない。今回のルーマニアでの一件もリゼヴィムが一枚噛んでいる可能性がある」

 

「クーデターが発生したのは…そのリゼヴィムという男のせいだと?」

 

「恐らくは、だ。真相は向かわねば分からない」

 

「…いいわ、ならさっさと行きましょう。どうせ行くしかないのでしょう」

 

エルメンヒルデさんは真実を確かめるという目的も得たからか俄然やる気になってくれた。

…うん、私達だって頑張るんだ。

足りない部分は私が補います!

 

「もしリゼヴィムが来ても女神の私なら十分対抗できます!」

 

「…そうね、弱気になっても仕方ないわ。

ネプテューヌは私達が助ける!その為にここに来たんだから」

 

「ですわね、ここでおめおめと帰れません」

 

私の言葉にリアスさんと朱乃さんが同調してくれる。

頼光さんを見ると、それでいいとばかりに微笑んでいました。

…もしかして、試されてた?

 

それを皮切りに、気圧されていた皆さんもやる気を取り戻してくれました。一誠さんに限っては尚のことどう殴るかとかぶつぶつ考えてますけどね…

 

─もしもの時はお願いします

 

はい、いーすんさん。

ストッパー…やれるかなぁ。

そうして、私達はエルメンヒルデさんの案内のもと吸血鬼の住まう町へ向かうことに。

 

パンドラちゃんが眠そうだったので渋々といった様子でゲオルグさんが背負いました。

…でも、パンドラちゃんは嬉しそうだし、懐いてるのかな。

 

頑張った、聖杯を手に入れよう!

ギャスパーさんの為にも、私達の為にも、何より…

お姉ちゃんと、また話すためにも!

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ…疲れた!」

 

ドカッ、とソファに座る。

良い素材だ、蹴ってもすぐ壊れないかな?

まあ、それはどうでもいいや。

連絡来てるしどうなってっか聞いてやるぜ。

 

「はいはーい、こちらリゼヴィムだよん!」

 

『耳元で騒がしいですよ。

…しかし、吸血鬼を煽動する意味はあったんですか?』

 

「それ聞く?」

 

片手の指で適当に遊びながら答える。

俺ってば律儀だから答えてあげちゃう優しすぎるおじさんだからね。

 

「その方が面白いじゃん?それに知ってるかい?

警戒ってのはそれだけ周りへ敏感になるけどその分弱点は露見しやすいもんだよ」

 

『…そういうものですか。

それで、どうでしたか?女神は』

 

「やーそれがさー聞いてよ!

俺ちゃん会いに行ったら熱烈歓迎されちゃってパーティ開いたんだよねぇ!会えなかったけどね」

 

『そうですか、それはよかったですね』

 

「ま、ネビロスちゃんがあっちにいるのは予想外だったけど…

でも、順調順調、極めて順調だよ」

 

『適当言ってませんか?』

 

「んな訳ないでしょぉ?こう見えて悪知恵ならかなり上だという自負はあるよ?」

 

ま、それはそれとしてと話を蹴りあげる。

ダルいけど、これも楽しみのためだよね。

無限の龍神もあそこにいるし?

そろそろ舞台に引きずり出さないとねぇ…

 

「ま、頑張ってちょーよ。期待はしないからSA!」

 

『まあ、やれるだけはやりますよ』

 

呆れた様子で通信を切られる。

連れないねぇ…俺はこんなにも誠実なのにね?

呑気にしてあげてるのにさ。

 

「女神の影響…シャルちゃん曰く、特異点。

龍のオーラとはまた違うそれかぁ…さて、何処までそれが及んでいるのかが大事だよねぇ」

 

どうしたってそれに期待しちゃうよねぇ、悪であるなら、それに相対する者の素養を気にするのは当然って奴。

ま、つまらないならその場で殺してもよかったんだけどね。

見所はあるからね~

 

これが、よく耐えるねぇ。

サマエルもドン引きの呪いの筈なんだけどねぇ。

今にも消えそうな意識を、繋ぎ止めてまで俺ちゃんの大事な孫といたいのかい?

 

相も変わらず世の中クソだな!

こんな頑張ってるいたいけな女神が傷つく世界だなんて!

 

「あー…楽しいなぁ」




あ、そういえば…ポケモンのMVよかったですよね。
僕ぁ感動しちゃいましたよ。
色々なネタが分かるからこそあれは素晴らしい。

ポケモン小説投稿したくなるだろうがよぉ!?


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目的地到着、だけど何この、なに?

遅くなりましたぁ!

やっとの投稿となります。
バイトと学業忙しいンゴねぇ…


吸血鬼の町…私達はそこに何事もなく辿り着いた。

奇襲の警戒とかしていたけど、何もないとは思わなかった。

ただ、その町についた時言葉を失った。

 

「これは…凄まじいな」

 

「ああ…クーデターとはいえここまでとはな」

 

頼光さんとゲオルグさんが正直な感想を言っている。

町は…スゴい状態だった。

何人か吸血鬼と思われる人達が血を流して倒れて、建物も凄い力で殴られたかのように穴が空いているのが多くある。

エルメンヒルデさんは倒れてる吸血鬼の元に駆け寄って、アーシアさんも向かう。

 

「しっかりなさい…!」

 

「う…エルメン、ヒルデ様…?」

 

「治療します!」

 

「傷が…」

 

アーシアさんの治癒の光が吸血鬼を癒す。

傷が見る見る内に治っていくけど、流した血は戻らない。

だけど、これならこれ以上の状態は悪くならないと思います。

 

私も倒れてる他の吸血鬼を治療するために駆け寄る。

 

「一人じゃ危ねぇ、俺も行くぜ」

 

一誠さんが察してくれたのかついてきてくれた。

感謝しつつ、足を止めない。

他の人にも大きな声でお願いをする。

 

「皆さんは怪我人を集めてください!」

 

「分かったわ!皆、二人一組で動くわよ!」

 

『了解!』

 

皆がそうして動き出して、私も一人の吸血鬼の元へ辿り着く。

呻き声をあげてるけど、まだ息はある。

急いで治療魔法をかけて、傷を治していく。

 

「にしたって、やりすぎだろ…これじゃテロだぜ」

 

「多分、倒れているのはカーミラ派の人達…なら、ツェペシュ派の人がこれを…?」

 

「…ヴァレリーって子は本当に良い奴なのか、怪しくなってきたな」

 

「ギャスパーさんの去った後、何があったのかも確かめないといけませんね。…ふぅ、これで大丈夫です」

 

「…女、神……?」

 

呻き声をあげていた吸血鬼がそう言ってくる。

確かに女神になったけど…ううん、そんなことはいいんです。

それよりも、早く他の人の手当てを急がないと…

 

─無理はしないでください。目的はあくまで聖杯です

 

(はい、でも…見て見ぬふりは出来ません)

 

─…ネプテューヌさんに似て、頑固ですね

 

いーすんさんの呆れたような、でもどこか安心したような声。

お姉ちゃんも、見捨てないと思う。

知らない人でも、手を差し伸べるお姉ちゃんなら助けてから行く筈だから。

 

少しして、怪我人が何人も運ばれて、治療魔法を掛けようとした時。

 

「ネプギアさん、まってください( - -)ノ」

 

いーすんさんが出てきて、待つように言う。

 

「どうかしたんですか?」

 

「マリョクをつかってのチリョウより、シェアをつかってのチリョウにしましょう。コウハンイをいやせます( ・∀・)」

 

「なるほど…」

 

シェアを使う…女神化以外で初めてだけど、出来るかな…

そんな不安げな私にいーすんさんは微笑みを見せる。

 

「シェアにシコウセイをもたせてください、いやしたいのなら、そうおもってつかうんです」

 

「指向性…分かりました!」

 

魔法と同じように…でも、想わないといけない。

自分の中のシェアを感じ取って、怪我をしている吸血鬼達を癒したいと願う。

 

そして、そのシェアを解放する。

 

「あ…」

 

するとシェアが光となって吸血鬼達を包む。

光が消えると、傷が消えた吸血鬼達の姿があった。

よかった…成功した!

 

「つかいかたはわかりましたね(^-^)」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「では、ひきつづきネプギアさんのナカにいます」

 

そう言っていーすんさんは私の中に戻る。

…もしかして、中にいたらいーすんさんを意識しちゃうから出てくれてたのかな。

心遣いに感謝して、皆を見る。

 

「流石はシェアね…ネプギア、調子は?」

 

「まだ余裕です!このまま行きましょう!」

 

心配されたけど、不調はない。

私はここで立ち止まってる暇もないんです。

それより…エルメンヒルデさんとギャスパーさんの方が…

 

「…案内はしたわ」

 

「それは、ここに残ると?」

 

「カーミラ派は終わり。けれど、ついてきてくれた者は生きている…となれば、同胞のために残らなければならないわ」

 

ここに残って、気を失っているこの吸血鬼達を守る。

そう言っているんだ。

エルメンヒルデさんの意思を尊重しようと思います。

 

「エルメンヒルデさん、案内してくれてありがとうございました!」

 

「ええ。…無理はしないことね」

 

「はい!」

 

ぶっきらぼうにそう言うエルメンヒルデさんにそう返してから皆さんとツェペシュ派の城へ向かう。

アポイントメントとか取ってないけど…お姉ちゃんのためです!

ここは押していこう、うん。

 

「…」

 

「?」

 

エルメンヒルデさんと別れ、城を目指す途中、隣を歩く一誠さんが考え込む様子。

気になって話し掛ける事にした。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや…何て言うか、スムーズに行きすぎな感じだからさ」

 

「罠の可能性、ですね」

 

「ああ、リゼヴィムが任せてる相手ってのがどうしても気になる。多分、あっちも狙いは聖杯だ…だからこそ、何か仕掛けてくるかと思ったら拍子抜けってくらい何もない。

城へ向かってるのに妨害一つ差し向けてこないなんて逆に怖いだろ?」

 

「確かにそうですね…でも、こうして進めてるだけ良いと思います。何があるか分からないけど、それでも聖杯には近付けてる筈だから」

 

「そうだなぁ…ま、その時はその時だな」

 

「お気楽だな、兵藤一誠」

 

その時の自分に判断を任せる一誠さんに頼光さんが口を挟んでくる。

一誠さんはムッとした顔で頼光さんを見るけど頼光さんは冷静な表情を変えない。

 

「相手はリゼヴィムの手先だけでなく、吸血鬼もいる。

この状況、警戒はすれど油断はするな」

 

「ぐぬぬ…」

 

「気にくわないのなら、結果で俺を黙らせて見せろ。

ネプギア、お前もだ。女神を救うという今回の任務は重大だと理解しているのなら適度な緊張感を持て」

 

「は、はい!」

 

─流石頼光さんですね。彼の言う通り、警戒は怠らずに

 

(う、分かりました…)

 

うぅ、いーすんさんにも言われました…

でも、確かに気を緩めすぎかも。

皆さんは警戒してるのに少し楽観視し過ぎました…

ここはしっかりしないと!

お姉ちゃんの代わりでもあるんだから!

 

「それにしても…」

 

歩きながら、周りを見渡す。

やっぱり何も来ない。

拍子抜けどころの騒ぎじゃない、何かがあったと疑うのが普通。

 

…もうお城の前についた。

 

「ここまで何もなかったな」

 

「ヴァ、ヴァレリーはここにいるんですか?」

 

「ツェペシュ派にいるのは間違いないと思いますけど…どうなってるのでしょう?」

 

 

 

 

 

 

「ああ、それは私が遊んだからですかね?」

 

 

 

「っ!」

 

上から声が聞こえて、見上げる。

そこにいたのは、銀の髪の男の人が悪魔の羽を生やして飛んでいた。

私たちを見下ろして、ふっと微笑むと私たちの前に降り立つ。

 

「あなたは…?」

 

「ユーグリット。ユーグリット・ルキフグスですよ、女神の妹君」

 

「私の事を…!」

 

「ええ、知ってます。リゼヴィムに情報を提供したのは私ですからね」

 

「ルキフグス…グレイフィアさんの身内か!?」

 

「イッセー、構えなさい」

 

「部長?」

 

一誠さんが驚いた様子でそう言うとユーグリットは頷く。

けれど、リアスさんの一言で皆臨戦態勢を取る。

ユークリッドは皆さんのその様子にこれはこれは、と笑みを崩さない。

 

「お義姉様の弟ね?」

 

「汚らわしいグレモリーの妹とはいえ、それくらいは分かりますか。まあ、どうでもいいんですけどね、そんなこと」

 

「どうでもいい?」

 

「聖杯、欲しいんでしょう?」

 

「まさか、もう─」

 

「いえいえ、私もそうしたかったのですが…遊び好きの彼には面白くないようでしたので」

 

「…」

 

ユーグリットの発言に皆警戒する。

多分、中の吸血鬼は粗方倒されてる。

なら、この人が関門?

でも…どうして、聖杯を求めるんだろう。

 

「ゲームをしましょうか」

 

「ゲーム?」

 

「ええ、ゲームです。戦う…というのは私も不利ですからね。

ここは少し趣向を凝らしましょうか」

 

「それに付き合う道理はないと思うのですが?」

 

「おや、そうですかね?」

 

トリスタンさんの正論にユーグリットさんは尚も笑みを崩さない。

やっぱり、何かある。

私たちをその勝負の土俵に引きずり込む為の何かが!

 

「ならば、ヴァレリー・ツェペシュはボンッと爆発していただきますかね」

 

「な──」

 

事も無げに、求めていた聖杯ごと所有するヴァレリーさんを爆発させると宣言するユーグリット。

私達は驚愕する他なかった。

 

「何を驚くことが?別に聖杯が壊れようがやりようはありますのでね」

 

「…どんなゲームにする気だ」

 

「ハハハ、乗る気になってくれてありがとうございます。

では、ゲームの内容を教えましょう!」

 

少し上機嫌なユーグリットに、悔しくなる。

手玉に取られているのに、打開策がないなんて…!

そうして、ユーグリットから聞かされるゲームの内容とは─

 

 

 

 

 

 

「シスコン暴露バトル!!フロムルーマニア!」

 

 

 

 

「は?」

 

「え?」

 

「…?」

 

「何を…言っている…?」

 

「おや、反応が悪いですね」

 

…えっと…?

シスコン暴露…?

どういうこと?

 

つまり…どういうこと?

 

─深く考えてはいけない事です。エラー吐きそうになりました

 

「…なるほどな」

 

一誠さんが何かを理解したように皆よりも一歩前に出る。

ユーグリットは興味深そうに一誠さんを見る。

 

「ほう、赤龍帝が相手とは光栄な」

 

「イッセー、何をしようとしてるの!?」

 

「そうだ、イッセー君!君がそこまでする意味はない!」

 

「一誠さん、理解できたんですか?」

 

「大体分かった。それに、する意味がないだと?

馬鹿言うんじゃねぇぜ木場…ここは俺がやらないで誰がやるんだ!?」

 

『相棒?ま、待ってくれ!』

 

「悪いな、ドライグ…これしかないんだ」

 

『やめろ!そんなことしちゃいけない!相棒!何をやっている!

ふざけるなぁぁ!!』

 

ドライグさんの悲痛な叫びを無視して、一誠さんが更に一歩前に出る。

…えっと、シスコン暴露バトルって何をするんですか?

 

─姉、または妹をどれだけ愛しているかを競うんじゃないですか?

 

(え…それ、対決で良いんですか?)

 

─二人にはそれでいいらしいので、良いんじゃないですかね…?

 

(ふ、複雑な心境です…)

 

というより、ギャスパーさんは大丈夫なんですか?

見てみると、やっぱりというか、顔を俯かせている。

 

「あの…大丈夫ですか?」

 

「…ヴァレリーが無事なら、いいんですけど…」

 

「遊んだって言ってましたもんね…」

 

「し、心配だけど僕が下手に動いたらヴァレリーだけじゃなく皆さんにまで迷惑をかけちゃうので…黙ってみてます!」

 

「一誠さんを信じる他ないですね…」

 

とは言うけど、この数なら押せるんじゃないかとも思う。

爆発させる暇も無く、倒せたりは…しないのかな?

そう思っていたら、リアスさんがこっちにやってくる。

 

「取り合えず、イッセーに任せましょう」

 

「えっと…勝てるんですか?」

 

「ええ、勝てるわ。馬鹿な相手…イッセー相手にシスコンバトルなんて、自殺行為よ」

 

「そ、そんなに?」

 

「…見ていれば分かるわ。私達がどれだけ『アレ』を見て、聞いてきたか…」

 

心なしか、リアスさん…というかオカ研の皆さんの目が死んだ魚の目みたいになってるような…?

一誠さんの方を見ると、何やら凄いオーラを感じます。

ユーグリットも凄いけど…何というか、迫力が違う!

 

「ほう…逃げずに向かって来たことだけは誉めてあげますよ」

 

「立ち向かわないとテメェをぶん殴れないんでな…」

 

「怒りが抑えきれない様子だ。恨む相手が違いますよ?

私がやったのではなく、彼が「関係ね~なぁ~~」ん?」

 

黒いオーラを全身から溢れさせる一誠さんはユーグリットの言葉を遮る。

怒り…ううん、憎しみ?

そんなどす黒い何かを感じさせられる。

 

「テメェがあいつの仲間だってんなら話ははえぇ訳だ。

テメェをぶっ潰して、他の仲間も引きずり出して、リゼヴィムをこっちの表舞台に立たせて二度とこんな真似できないように死なない程度に四肢へし折って精神ズタズタにしてやる。

姉ちゃんを苦しませた罪はデカイんだよ…どれくらいデカイかというと大統領の演説に小石ぶん投げて起こる事態並にデカイッ!

姉ちゃんの道を阻んだ報いは絶対に受けてもらう、姉ちゃんが許しても周りが許しても俺が許さねぇ、テメェらをこの兵藤一誠が直々にぶちのめす!」

 

「なるほど…『強い』ッ!!」

 

「頼光様、何だかあの二人だけ画風変わってます」

 

「パンドラ、気にしてはいけない。それと、耳を塞いでおくことように」

 

「はい」

 

「呂布、あなたもですよ」

 

「…致し方無し」

 

パンドラちゃんと呂布さんが耳を塞ぐ。

私はどうしよう…?

うーん、でも他の人は聞く姿勢だし…一誠さんの勇姿を見ないと!

 

大丈夫、一誠さんなら勝てるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が見てる。

俺が勝つのを確信してるオカ研の皆と、何だか冷めた視線を送ってくる頼光、ネプギアに至っては頑張ってくださいみたいな純粋な視線を送ってくる。

 

くっそ気まずい

 

ここまで俺がやります発言したイッセーさんが悪いよ?でもさ、この中でシスコンバトルなんていう具体的すぎる内容で戦えるの誰がいる?

ネプギアは姉ちゃんとの時間が足りなすぎるからダメ!

アーシアは姉ちゃんと過ごしてるけど昔を知らないからダメ!

小猫ちゃんはそもそもシスコンというより突っ込みだからダメ!

 

俺だけじゃん、俺一点狙いじゃん。

 

なーにが赤龍帝が相手とは光栄な、だよこのシスコン野郎!(ブーメラン)

お前の姉を自慢したい姿勢なんかくっそどうでもいいわ!(特大ブーメラン)

そもそも自慢して何になるのかを教えてくれよ!(ブーメランカッター)

 

なんなんこれ?新しい処刑方が何かで?俺を精神的にぶち殺したいの?王道進もうとする俺をそんなにシスコンに引き戻したいの?

百害あって一利なしかよコイツ。

絶対俺だけなら知るかばか野郎って感じで殴り飛ばしてたね。

 

「さあ、始めましょう!私達の戦いを!」

 

「いいぜ、だが、一発だけだ」

 

「何?」

 

「一発だけの勝負だと言っているんだぜユーグリット・ルキフグス。愛を叫ぶのに事細かに喋るのは優越感に浸りたい阿呆のすることだ、俺は違う」

 

「ならば、あなたは何だと言うのです」

 

「俺はなんか姉ちゃん尊いっすってなった時に勝手に出てくるだけだ。別に姉ちゃん自慢がしたい訳じゃあない…」

 

「しかし、あなたは多くの人の前で女神への愛を叫んだと調べが出ておりますが?」

 

「焦るんじゃあない、ちょいと尊みが溢れただけじゃあないか?

お前、なぁんか勘違いしてやがるな?

まあ、やろうじゃねぇか」

 

こいつ、面倒かよ。

何だってこんなことになったんだってばよ。

ていうか、こんなふざけたことに姉ちゃんが巻き込まれたと考えるとムカッ腹が立つぜ。

こいつすっげぇ変態だぜ?

 

けど、ここでやらにゃ姉ちゃんがやべぇからな。

頑張ってやんよ!

ユーグリットは少し納得しがたいといった様子だけど渋々と頷く。

その態度は俺がすべきなのでは?

 

「…では…スタートです。あなたのシスコン魂、見せてもらいますよ…一発勝負でね」

 

「…」

 

「くっ…」

 

「どうしたユーグリット。まるで何発も用意してきたのに一発なせいでどれを言えばいいのか悩んでるようじゃねぇか?」

 

「ぬぐっ…」

 

「わざわざテメェの土俵に上がってやったんだ…ならテメェは自信満々な表情でしてやったりと思わねぇといけねぇんじゃねぇか?

なあ、どうなんだ、ユーグリット!」

 

そして、俺が撃ち出すべき弾は決まってる。

後は、テメェが弾丸を込めるだけ…そう、それで全てが終わる。

テメェの下らねぇ自尊心を砕いてやる。

 

焦った様子のユーグリットを見て、勝利を確信する。

こいつ、さては引き出しは多いが浅いな。

深くない以上、俺には勝てねぇな…

 

そして、数分が経過し…

 

「いいだろう、私が撃ち出す『弾』は決まったッ!!」

 

「なら、抜きな、言葉の『弾』をッ!!」

 

「私の、私の弾丸は──ッ!!」

 

今、こいつは見誤った。

その時点で、テメェの敗けだぜ。

テメェが口を開いた次の瞬間、ぶちこむべき弾を正確無比にぶちこんでテメェを潰すだろうぜ!!




なんでか始まったシスコン暴露バトルは一誠の先手によりかなりの優勢となる。そして、早くも追い詰められたユーグリットが焦って放った弾丸を一誠はどうぶち破るのか?

次回、『ユークリッド、散る』
ディメンション、レディ!



あ、ポケモン短編で『僕も同じように息をしていたい』を投稿してますので良ければ読んでやってください。


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一瞬の決着、そして突入!

ハロウィンネプギアちゃん当たったぁ!

私の勝ちだ、花京院!




口を開いた瞬間がテメェの最後だ。

そうして、ようやくユーグリットの口からそれは発せられた。

 

「私が出す弾丸、は──」

 

言葉に詰まるユーグリット。

どうしたというのか、何も言えないで終わるのか?

しかし、それは間違いだった。

まるで、気付きたくなかったかのように目を見開いて、奥歯を噛み締める様子。

 

 

 

 

 

「─姉は、私を愛してくれた。

愛してくれたんだ、絶対に…!

私に、私に…弟の私にッ…!」

 

 

 

渇望…か。

結局、お前は怖かったんだな、ユーグリット。

勇気がなかったんだ。

 

俺は悔しげに立つユーグリットに近づく。

 

「テメェは…馬鹿な奴だぜ。

今、言おうとした言葉よりも本心を優先したんだぜ」

 

「っ…私は、君が羨ましい。

義理とはいえ、姉がずっと近くにいる君が!

私の姉は…グレイフィア姉さんは…私よりもあの汚ならしいグレモリーを優先したんだ!!家を捨て、私を捨て、男に逃げたのだ!!」

 

「いいや、違うな。

テメェが足りなかっただけだぜ、ユーグリット」

 

「私に、足りないものだと…?」

 

「テメェは、逃げた。向かっていく意思を、姉に確認もせずにポッキリと独りで折って逃げたんだ。

どうしてだと聞けばよかった、捨てるのかと叫べばよかったんだ」

 

手を差し出すなんて事はしない。

俺がやるのはお前はどうしようもなく馬鹿な奴だと突きつけてやる事だけだ。

こいつが何をしたくてリゼヴィムの野郎に協力してるのかは察しは付く。

だがよ、それに姉ちゃんを巻き込んだ時点で許すつもりはねぇ。

 

ユーグリットは納得いかないのか俺を睨む。

 

「ならばあなたは!あなたはどうなのですか!?」

 

「ハッ、そりゃテメェ…俺が語れる姉ちゃんの事は一つしかねぇよ」

 

胸を張って答える。

俺の尊敬する人を語るのに多くは要らねぇ。

 

「姉ちゃんは、俺の憧れで大事な姉だ。それ以上語ることなんてねぇだろ」

 

いつだってそうだ。

姉ちゃんを目標に頑張ってきた。

そんでもって、その頑張りを姉ちゃんは知ってくれてる。

なら、それでいいじゃねぇか。

 

呆然とした様子で俺を見ているユーグリット。

 

「なあ、もういいか」

 

「……一つ聞かせてください。あなたは誰かの物になる女神が嫌ではないのですか?」

 

「何でさ。

ヴァーリの野郎はいけすかねぇし、好きでもねぇけど実力はあるし想いは本物だ。姉ちゃんも嫌がる様子もねぇ。…なら、俺が止めるなんてのは野暮じゃねぇか?駄々っ子じゃねぇんだからさ」

 

今更意固地になる必要もない。

ユーグリットにピシャリと言う。

魔王様にグレイフィアさんを取られたからって癇癪起こしただけだろ。なら、間違いだって諭してやらなきゃならねぇ。

…だよな、姉ちゃん。

 

「本当はテメェを殴りてぇ。だけど、そんな暇はねぇんだよ。

分かったらさっさと敗者らしくだな」

 

「…そうですね、私の心は敗けを認めてしまった。

今回は素直に解除しましょう」

 

「中の吸血鬼は…殺したのか?」

 

「いいえ、眠ってると思いますよ。

そろそろ、起きる頃合いかと」

 

「分かった。…これからどうするかは、テメェが決めろ」

 

俺はそう言ってから、皆に行こうと言うと皆が頷いて一緒に城の中へと向かう。

ユーグリットの事は今は無視だ。

今はそんなことよりも大事なもんがある。

 

走っていると俺の隣に頼光がつく。

その表情は満足げだ。

 

「お手柄というやつだな」

 

「別にあれぐらい。あんなんでいいならいくらでも言ってやるよ」

 

「…だが、拘束くらいしてもよかったんじゃないか」

 

「どうせ逃げられる。なら、好きにさせてやろうぜ」

 

「それもそうか」

 

あんなんでも実力者だ。

戦うとなったら少しは被害が出てたろうし、人質もあるから従うしかなかった。

仕方ないって奴だな。

 

にしても城内は静かだ。

吸血鬼が寝てるとはいえ、何かしら騒動があってもいい筈だけどな…

 

とにかく片っ端から探すしかねぇか!

 

「何人かで別れて探索するわよ!」

 

「それが早いか」

 

そんなこんなであっさりと組み合わせが決まった。

というか、ネプギアと木場が俺と組むけど…いいのか?

 

「まあ、ゲオルグさんに結構任せてる部分も多いし、ここら辺で僕らも頑張らないとね」

 

「はい!後、さっきの一誠さんかっこよかったですよ!」

 

「そうかなぁ…俺はまたあんな場に引きずり込まれて泣きたかったぜ」

 

『相棒が愛を叫ばなくて俺としても安心だ。

今度ばかりは死を覚悟したからな』

 

「お前死なねぇだろ」

 

『言葉の綾だ。死ぬのは精神だからな…』

 

さいですか。

もう少し労ってやろうかな?

ドライグのメンタルズタズタだとそれはそれで負けに繋がりそうだしな。

 

三人で城を探索するけど、今のところ何もなし。

何なら、部屋がいくつかあるのに生活感のある雰囲気はあれど人がいない。

 

吸血鬼一人いないなんてあり得るのか?

 

「…異常だぜ、これは!」

 

「だね。もっと数があると思っていたのに…じゃなきゃクーデターなんて起きる筈がない」

 

「もしかして、ユーグリットは何かを隠していたんでしょうか?

…あ、いーすんさんが城の周辺を調べてくれるそうです」

 

「いーすんの結果が出る前に俺たちも出来るだけ調べとくか」

 

いーすんは調べが早い時と遅い時がある。

差は分からないけど、多分今回は少し遅いかな。

何だかなぁ。

 

早くヴァレリーって子を見つけねぇといけないのに、見つからない。

このデカイ城全部を回るのだって苦労するんだぞ…けど、他の皆から連絡はまだ来ない。

つまりは見つかってないということだ。

 

一番上の階は部長と頼光に任せてるが、それでも進展は乏しいのか…

 

「隠れてるにしたって…得意すぎだろ」

 

「そうだね…」

 

…、ん?隠れてる?

 

ふと、一つの記憶が呼び覚まされる。

 

 

 

 

 

『なあなあ、ねぷ姉ちゃん。この建物、続きがあるらしいけど階段なんてないよ?』

 

それは俺がガキで、姉ちゃんが女神の自覚がなかった日常。

俺たちにとっての正常。

姉弟の空間だったいつか。

 

姉ちゃんは俺の言葉にあははと笑う。

 

『一誠、そういう時はそこで使えそうなアイテムを使うんだよ!』

 

『ええ?ここで?使えるかなぁ』

 

コントローラーを操作しながら、片っ端から使える使えないに関わらず使うコマンドを押していく。

駄目、駄目、駄目。

殆どが駄目だったのに、最後に残ったそれ。

 

『えー爆弾!?それこそないだろ!』

 

『物は試しだよ、一誠!』

 

マジかよと思いながら決定ボタンを押す。

すると…

 

爆弾が爆発して、地下への階段が見つかったのだ。

 

『ええええ!?』

 

『うんうん、主人公の勘はいつだってキレッキレだね!

いえーい、ピースピース!』

 

『すげぇやねぷ姉ちゃん!天才じゃん!』

 

『それほどでもあるかな~!私ってば大天才過ぎて世の発明家達に逆に出番を譲っちゃうくらいだから!』

 

『すげぇ!』

 

 

 

そんな思い出。

楽しくて、ワクワクした…そんな日だった。

そうか、そういうことなんだな、姉ちゃん。

 

確信が俺にはあった。

そして、それに気付くと同時にネプギアからいーすんが出てくる。

 

「みなさん、サーチかんりょうです。ヴァレリーさんのいどころは…」

 

「地下だろ?」

 

「な、なんでわかったんですか!?(゜_゜;)」

 

「…主人公の勘、かな?」

 

「ネプテューヌ先輩の受け売りって事か」

 

「そういうのは言うもんじゃねぇやい」

 

さて、となるとやることは一つだな。

全く、いなくても導いてくれるなんて最高の姉だぜ。

拳を強く握り、俺は…

 

『Boost!』

 

「よっし、皆少し離れてろよ」

 

「分かった」

 

「一誠さん、もしかして…」

 

「おう、この床ぶち抜く」

 

「キンキュウジですから、しかたありませんね」

 

「うぅ…いいのかなぁ…」

 

ネプギアと木場、いーすんを下がらせてからもう一度拳を握る。

問題なし。

さーて、ご開帳だぜぇ!

 

「気分は地上最強だぜぇぇぇ!!」

 

地面をぶん殴る。

ただそれだけで、床は崩れていく。

崩壊に巻き込まれる前に飛び退いてその様子を見守ると…

 

「あ、穴です!地下への穴が出来ました!」

 

「まあ、床くらいなら余裕だよね」

 

「まあ丁度いい威力かな、ゴミムシの相手にはさぁ」

 

「イッセー君、何をするつもりだい?」

 

「いやいや、ちょっと突撃をね!」

 

飛び込もうとするとネプギアに後ろから掴まれる。

駄目でした、突撃失敗です。

何故突撃しようとしたか?

そりゃおめぇ、今の俺ならなんだっていける気がしたからさ。

 

「落ち着いてください!」

 

「俺はスッゴい落ち着いてる。体が軽い、こんな気持ちで向かうのは初めてだ!もう何も怖くねぇ!」

 

「駄目だイッセー君!それは死亡フラグだ!?しかも首が喰われるタイプ!」

 

「お姉ちゃんに叱られますよ!」

 

「スン…」

 

「…わかりやすいですよね、イッセーさんは( ;-`д´-)」

 

おいなんだその呆れ顔は。

姉ちゃんの説教は怖いんだぞ。

怒る時はマジなんだからな?

普段殆どを水に流す姉ちゃんがガチギレしたらどうなるか知らないから言えるんだ…

 

まあ、それからして…

 

「イッセー…はしゃがないの」

 

「はい…」

 

戻ってきた皆を代表して部長から説教された。

悲しいけど俺の独断専行が原因だからねしかたないね。

俺は止まるからよ…

 

ゼノヴィアが穴を覗き込んで、ほう、と一言。

 

「それで、この先にいると…」

 

「そうみたいですね、上から見てもいませんし、降りるしか道はないでしょう」

 

「うう…ヴァレリー…」

 

「ん、突撃、粉砕あるのみ」

 

「だよな、何かあったら?」

 

「「ぶん殴る」」

 

「いえーい!」

 

「いえーい」

 

呂布と俺は波長が合うねぇ。

一刀両断されかけた身としては複雑ではあるけど波長が合うなら問題はないな!

 

仕方ないか、と頼光がため息をついた後に刀を取り出す。

 

「これから降りる。いつでも戦えるようにはしておけ」

 

「念のため、何人かはここに残ってもらうわ」

 

「私は残りましょう」

 

トリスタンは残る宣言。

 

「頼光様、私も残ります」

 

「そうか、分かった。いざとなったときの退路は任せる」

 

「はい」

 

「…私も残ります」

 

「俺も残りたいのだが」

 

「ゲオルグ……まあいいだろう」

 

「心の底から喜びを感じたのは久しぶりだな…」

 

パンドラ、小猫ちゃん、ゲオルグの三人も残ることに。

バランスは…まあ、普通かな?

なんとかなるわな。

んじゃ、後の面子で突撃すれば問題はないと。

 

「行きましょうぜ部長!」

 

「行きましょうぜ」

 

「呂布とイッセーはどうして突撃脳になってるのかしら。

知波単学園にでも行ったの?」

 

「突撃であります!」

 

「やめようか」

 

「構わん、どうせ同じことだ」

 

「頼光…あなた、少し楽しんでるわね?」

 

「…さてと、行くぞ」

 

「図星ね」

 

頼光が追求から逃げるように飛び降りていった。

馬鹿野郎、俺が一番乗りする予定だったんだぞ!

俺も急いで飛び降りる。

皆も飛び降りるけど、とても邪な考えいいですか?

これ、上見たら見えますよ。

 

『相棒、そろそろ怒るぞ』

 

「ごめんなさい」

 

意外とドスの利いた声でそう言われては俺としても反省。

華麗な着地を決めていつでも殴れる心構えと準備はしている。

…地下室は色々な資料が貼られていて、少し近付いて内容を確認すると難しい数列や言葉が書かれていてちんぷんかんぷんだった。

 

「さて…この先か?」

 

周りは広いけど、一番奥にそれらしい扉がある。

他の扉よりも少し大きく、厳重なそれはこの地下が研究施設であることを教えてくれる。

 

皆もやってきた。

よし、俺が開けるか。

俺なら何か来ても弾けるからな。

 

「…よし、開けるですよ」

 

○IO様ぁぁ、ぶったおしておくんなましですよぉぉぉぉッ!とばかりにゆっくりと扉を開ける。

そこには…

 

「ぐ、ぬぅ…何の音だ……いや、それより…っ!?」

 

貴族…だと思うけど、珍しく白衣を着ているな。

それに、俺達を見ると敵意がすぐに見える。

だがそれ以上に分かるのは…

 

こいつはどす黒い悪だって事だぜっ!

 

「貴様ら…何者だ!」

 

「名乗るときはテメェからって作法を知らねぇのか?」

 

「ふん、侵入者に合わせるなど愚の骨頂。名乗れ!」

 

「いいじゃあねぇの。名乗ってやるよ…俺は兵藤一誠!

そして、その愉快な仲間たち!聖杯…ヴァレリーツェペシュをいただきに参上した」

 

「聖杯、だと……裏切ったか、ユーグリット…!!」

 

…つまり、こいつがクーデターの主犯!

そして…聖杯で何かをしようとしている!

いったい何を…?

 

俺の隣に、ネプギアが立つ。

 

「ヴァレリーさんを出してください!どうしても聖杯が必要なんです!」

 

「……貴様らに、渡すものか!私の聖杯、私の研究…アレを渡すわけにはいかない!」

 

「こいつ…何か取り出すぞ!!」

 

強い執念だ、何か強い執念を感じる!

エルメンヒルデとは違う、誇りよりもその何かを優先している!

しかも何かを取り出した…

 

それは、小さい杯だった。

 

「それは…!」

 

「そうだ、これが…貴様らの求める聖杯!『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』!!」

 

「そんな、ならヴァレリーさんは…!」

 

「奴は私の役に立ってくれた!どこまでも有効活用してやるぞ、ヴァレリー、このマリウスが!!ハハハ、アハハハハッ!!」

 

「テメェ…!」

 

この吸血鬼…マリウスだったか。

こいつはどうしようもねぇ悪だ!

更正の余地すらねぇ…更に、悪魔でもねえから法の裁きは期待できねぇ。

 

マリウスは高笑いしながら聖杯を掲げる。

すると、聖杯が光り、マリウスを包み込む。

 

瞬間…マリウスの体が一回り…いや、どんどんでかくなっていく!

凶悪な面になっていきやがる!

聖杯…やっぱマトモなもんじゃなかったか!

 

「イイゾ、イイゾォ!この力!私の体を強化している!生命力がどんどん上がっているぞ!」

 

「こいつはマジにヤベェ奴だぜ、部長!」

 

「ええ…倒すわよ、皆!」

 

「…ヴァレリーが……」

 

皆が戦おうとしているが、一人だけ顔を俯かせてる奴がいた。

ギャー助だ。

そうだよな…恩人つってたよな。

 

ギャー助は、拳を握り締め、俺の隣にまでやってくる。

 

「マリウス……!殺す!」

 

おお…ギャー助が啖呵切ってる所初めて見たぜ…

というより、キャラ変わってないか…?

 

「くそ吸血鬼、テメェをぶち殺して、聖杯を寄越してもらう!」

 

「ギャー助?」

 

「あ?」

 

「いえなんでもないです、はい…」

 

ヒェ…何か怖いっす。

というか、さっきから闇のオーラ的なの漏れてますよギャスパー先輩…?しかも性格変わってるし。

 

ま、まあいいや…皆も驚いてるけど、戦わねぇとな!

気持ち切り替えていくぞ!

 

「仇討ちの時間だこのやろう!」

 

「虫けらが!踏み潰してくれる!」

 

「皆さん、力を合わせて、倒しましょう!」

 

「そうだな…試したいことも出来た、やる気を出すとしよう」

 

この人数なら、負ける気がしねぇぜ!

スクラップにしてやるよ蝙蝠ぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤龍帝との戦いに敗れた私はある物を持ち帰り、戻ってきた。

すると、それを見越したかのように連絡が入る。

 

「…もしもし?」

 

『あー、あー、えっと?聞こえてるかな?リゼヴィムさんだけどさ』

 

「ええ、聞こえてますよ」

 

『あ、そう?そりゃよかった」

 

「ッ!?」

 

後ろを振り替えるとリゼヴィム…彼がそこにいた。

いつの間に…?

いや、超越者からすれば容易いことということか。

 

相変わらず私にもその侮蔑の視線を送ってくる。

 

「それが『聖杯』?」

 

「ええ、眠らせてから取ってきましたよ」

 

「悪い子だねぇ…」

 

聖杯を渡すと、彼はそれを面白そうに観察した後に懐にしまった。

 

…それにしても、逃げた、か。

未だ耳に残るあの言葉。

私の行動が悪かったというのか。

 

「あれあれあれ?どうしちゃったのかな?」

 

「いえ…」

 

「もしかして負けた?」

 

「…まあ、はい」

 

「ヒャヒャヒャ、まあそんなとこだろうと思ったけどね?

なぁに、次があるよん!舞台なら俺ちゃんが整えて…」

 

「それなのですが」

 

「?」

 

彼の言葉を遮る。

彼はそれが不思議なのか首をかしげる。

…今からでも、遅くないだろうか。

言葉を交わす、それをすることは遅くないだろうか。

 

「今回の一件で私は身を引こうと思います」

 

「…へぇ、理由は?」

 

「心境の変化とでも言いましょうか。マシな解決策を見つけたので」

 

「そりゃよかった、家族だしねぇ…仲良しこよしはすべきってことだねぇ」

 

本当は微塵も思ってないだろうに。

私の抜けると言う発言にも特に何も思ってない様子。

 

「いいよいいよ、俺ちゃんもついてくる気がないなら帰してあげる優しい悪魔だかんね」

 

「いいのですか?」

 

「勿論!」

 

「…ありがとうございます」

 

今回のことを公言するつもりはない。

彼に世話になったのは事実だ。

私としても、裏切るような事はしたくはない。

 

だが…どのみち私が関与したのはバレる、か。

彼も分かった上で了承してくれた。

気のいい悪魔…というのは本当なのだろうか?

 

「俺ちゃんとしても、残念だなぁ…」

 

「体のいい駒がいなくなるからでしょう?」

 

「いやいや、本当に残念なんだってばよ────」

 

 

 

 

 

 

 

「─使い勝手悪くなる駒になるからさ」

 

「ッ!!」

 

彼はそうして、無表情で私の胸にそれを叩き込んだ。

 

瞬間、嘔吐感が襲い掛かる。

 

「ぐ、う、がぁ…な、にを、いれた…!?」

 

「さあね、君に言っても仕方ないじゃん?

どうせこれから人形になるんだからさぁ」

 

「リ、ゼ…ヴィ…ム…!!」

 

「そもそもさぁ、虫がよすぎないかい。今更、戻れるとでも?

ないない、無理無理!君も、俺も!」

 

 

 

 

 

「どうせ悪はぶっ殺されて惨めに消えるんだよ、ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

その言葉を最後に、私はそれに蝕まれた。

悟る、私の終わりを。

理解してしまった、この悪性を。

 

…姉さん、私は……



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時間がないからさっさと倒す!回収の時間だオラァ!

また遅くなった。
きっと疲れてるんだ…このロザミアが更新速度が落ちるなんてそれしか考えられない!


ゴウッ、と勢いよく振るわれた拳を各自散開して避ける。

なるほどな、確かに強い一撃だ。

くらったらくたばるかもしれねぇってくらいには強い…だが!

 

巨大化したとはいっても成人男性の1.5~2倍程度!

 

俺は地面を蹴ってマリウスの懐に入り込む。

 

「ヌッ!?貴様!!」

 

「テメェがもう一撃振るうよりも先に、俺が拳を五発叩き込むほうが早いぜッ!!!」

 

『Boost!!』

 

ぶちかます!

土手っ腹に五発しっかりと拳を叩き込む。

 

マリウスはその衝撃でよろめいて動きが鈍る。

その隙を突くように頼光と木場、呂布が己の獲物を持って斬りかかる。

 

「さあ、怪異殺しだ」

 

「聖魔剣で、その歪みを断つ!」

 

「殺す」

 

「はあぁ!!」

 

呂布と頼光の振るった一撃が両腕を切り落とし、木場の聖魔剣とゼノヴィアのデュランダルが上から斜めに交差するように体を切り裂いた。

 

「ガッ………愚かな、その、程度…でっ!?」

 

体がみるみる内に再生していくマリウスは動こうとしてピタリと体が止まる。

この止まりかたは…ギャー助だ。

 

「動くんじゃあない。ヴァレリーをいいように使ったお前を、一片の慈悲もなく殺してやる」

 

「ギャスパー…よね?」

 

「ギャスパー…まあ、間違ってない。俺はバロールの意思を宿したギャスパー…とでも思えばいいんじゃねぇの」

 

「て、適当ね……バロール…そう、そういうこと。初めからそういう運命だったということね」

 

「部長、止まってる今がチャンスです!」

 

「そうね…皆、一斉攻撃よ!再生の隙も与えない!」

 

「MPBL、ロック解除!」

 

全員が全力でマリウスに攻撃を仕掛ける。

死ぬどころか消し飛んでもおかしくない威力だった。

けれど…

 

「ォ、ォォォオオオ…!」

 

「野郎、まだ耐えるのか!?」

 

「吸血鬼の元の再生力が強化されてるんだわ。

不死身に等しい程に…!」

 

「それなら、どうやって!?」

 

ネプギアの焦りはもっともだ。

マリウスはこれだけ叩き込んでも再生して、元通りになっていく。

こっちが消耗するだけにしか思えない。

焼き鳥野郎よりも不死身じゃねえか!

 

ギャー助が前に出る。

 

「なら、それを闇に覆えばいいんだな?」

 

「厨二かな?」

 

「黙ってろ」

 

「はい」

 

ギャー助から黒い靄のようなもの…ギャー助曰く、闇らしい。

その闇を再生を続けるマリウスへと向ける。

 

「あまり使いたくないんだが、この屑相手なら問題はない」

 

「ォォ…ギッ!?グアァァァァ!!?」

 

闇がマリウスを包むと、より苦痛の表情を浮かべ絶叫が響き渡る。

よく見ると…再生してねぇ!

どういうことだ!?

 

「俺の闇はそれこそ生きた呪いみたいなもの。

その概念を闇で喰らえば後は生きた血肉一匹だ。

さあ…どう殺してやろうか!」

 

獰猛…いや、憎悪を感じる姿に俺は既視感を抱く。

言い直そう、こいつは俺に似てる。

姉ちゃんを傷つけられた時の俺に、酷く似てる。

 

だからか分からねぇけど…

 

俺はギャー助の翳す手を掴んだ。

不機嫌そうな顔を向けられる。

 

「何のつもりだ?」

 

「…殺すのは、やめようぜ」

 

「一誠さん…」

 

「テメェもリゼヴィムを殺そうとしてた癖にか」

 

「ああ、虫がいいかもだけど…エルメンヒルデの件もあんだろ?

だから、殺すのはやめようぜ。死ぬってのは逃げだ」

 

「…」

 

姉ちゃんの言葉だ。

死は逃走、そう言った姉ちゃんは真剣そのものだった。

俺からしたら、クズが一人死のうが俺達には影響なんてないのに姉ちゃんはそのクズすら守ろうとしている。

…なら、俺はこのクズを殺しちゃいけねぇ。

俺達は姉ちゃんを助けるために来たんだ。

その姉ちゃんが掲げている事を折ってしまうのは違う気がした。

 

ギャー助は、舌打ちをして闇を解放する。

倒れたマリウスから聖杯が転がる。

それを手に取ったギャー助はマリウスを引っ掴んだ。

 

「ぐぁ…」

 

「ヴァレリーはどこだ」

 

「…ば、かな、何故…城の吸血鬼は…何をしているのだ…」

 

「は?最初からいなかったぜ」

 

「…ユーグリッド…!」

 

…そうか、アイツが始末したのか。

最初ッから聖杯を手にいれる気だった訳だ。

でも、それならどうして聖杯を盗まなかったんだ?

 

「ヴァレリーは何処だ!」

 

「ぐっ、そこの、奥だ」

 

「…」

 

ギャー助は用済みとばかりにマリウスを放り投げる。

聖杯を手放したことで再生力が戻ったのか治りが遅い。

念入りに骨が折られてやがる…ギャー助の奴、バロールだったか?それになってるのか。

 

「ギャー助、お前…」

 

「…お前らは俺の仲間だ、ヴァレリーも恩人だ。

だから牙を向けることはない。それに、俺はギャスパーだ」

 

「…ああ、分かったぜ。ギャー助はギャー助だよな」

 

「…」

 

バロールだろうが何だろうが、ここにいるのはギャー助だ。

なら、拒絶なんてしねぇ。

俺達は仲間だからな。

 

それに満足してくれたのか、ギャー助は目を閉じ、再び開けると周りをキョロキョロと確認する。

 

「あれ、あれ?」

 

「ヴァレリーって子はこっちだってさ」

 

「え?…あ、ヴァレリー!」

 

「…一誠さん、ヴァレリーさんは…もう…」

 

ネプギアがやってきて、落ち込んだ様子でそう言ってくる。

聖杯をギャー助が持ってるというのもあるだろうが…

俺は、まだ信じねぇぞ。

 

「…どうだろうな」

 

「え?」

 

「この目で見るまでは、分からないってことさ!」

 

俺もギャー助についていく。

皆もマリウスを拘束してからついてくる。

 

ギャー助が開けたのか、その扉は開いていた。

奥からはすすり泣くような声が聞こえる。

 

俺はそのまま中へと入る。

 

そこには…

 

「うぅ、ヴァレリー…!」

 

「…」

 

端整な顔立ちをした美女が、静かに横たえていた。

…駄目だったのか。

俺は拳を血が出る程握り締める。

 

元々、分かってはいた。

神器は魂と結び付いているものだ、それがなくなれば死んじまう。

 

俺は、俺達は助けてやれなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗な女性が横たわっている。

私は、それを見て絶望した。

だって、助けると散々言ったのに…こんな形で会うことになるなんて。

 

私たちは助けられなかったんです。

 

ギャスパー君も泣いて…胸が締め付けられる気持ち。

リアスさんたちもその光景に黙ってしまっている。

 

─ネプギアさん

 

(…はい)

 

─一度、彼女に触れてみてくれませんか?

 

(え?)

 

─お願いします

 

(わ、分かりました)

 

何か気になるいーすんさんに従って、ヴァレリーさんに近付く。

ギャスパー君に一言断っておこう。

 

「ギャスパー君」

 

「うぅ…ぐす、なん、ですか?」

 

「少し触れますね」

 

「え?」

 

ヴァレリーさんの額に手を当てる。

…あれ?

冷たくなりきってない。

普通、死体は体温が無くなっている筈。

だとしたら…

 

─…辛うじて生きてます

 

「えっ?」

 

「ネプギアさん?」

 

「…生きてます」

 

「何!?本当か!?」

 

「は、はい。いーすんさんが言いますから、まず間違いないと思います」

 

─少し診た程度ですが、意識不明で死にかけ…の方が正しいですね

 

いーすんさんの言葉をそのまま皆さんに伝えると希望を持った表情に変わる。

よかった…まだ間に合うかもしれない!

ギャスパー君も嬉しいようで、涙を拭って立ち上がる。

 

「早く、連れ帰りましょう!」

 

「はい!」

 

「マリウスはどうする?」

 

「エルメンヒルデさんに渡すか…同じように連れて帰るか、ですね」

 

「…エルメンヒルデはしばらくはここに留まるだろう。処遇だけ決めてもらって俺達で預かるのが確実と判断する」

 

「そうね…」

 

話し合いが終わったのかリアスさんと頼光さんは先にマリウスの元へ戻っていった。

木場さんもそれについていく形でこの部屋を去る。

 

「よし、これで姉ちゃんも助かるし、ヴァレリーも希望が見えたな!」

 

「良しとするか、それとも悔やむかは後でだな」

 

「ん、考えるより行動あるのみ」

 

「あらあら、皆こう言ってますし急ぎましょう?」

 

そうして、私達はエルメンヒルデさんに報告すべく捕縛したマリウスを連れて戻ることにした。

ヴァレリーさんは、呂布さんが背負っている。

驚く程軽いそうで、生活風景が見えるようで悲しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…マリウス・ツェペシュ、当主にならなかったと聞いた時は何故と思ったけど…」

 

「エルメンヒルデ、か……グ、クク、無様、だな。

聖杯によって強くなった吸血鬼どもにズタボロになった貴様らは…」

 

冷たい眼差しでマリウスをエルメンヒルデさんが見下ろしている。

戻った私達にエルメンヒルデさんは事態の収束を察したのか安堵の表情でこちらにやってきたと思ったら、マリウスを見た直後に全てを察したのか今の状況になっている。

 

一応、一通りの説明をした後に確認を取ることにした。

 

「エルメンヒルデさん達カーミラ派の皆さんが被害者の今、私達が裁くことはできません。その…どうしますか?」

 

「……」

 

「殺すか?私を…研究者として、私は為すべき事をしたまでだ」

 

「その下劣な口を閉ざしなさい、マリウス。

貴方はツェペシュ家の誇りすら失い、吸血鬼としても堕ちる所まで堕ちた。

いいでしょう、エルメンヒルデ・カルンスタインが罪人である貴方の罪を決めましょう」

 

一瞬、ヴァレリーさんを気の毒そうに見た後に一人のトップとしての顔になったエルメンヒルデさんがマリウスの処遇を述べる。

 

「貴方は、我が同胞の命を奪い、自らの派閥すら利用した愚者。

死よりも貴方には生き地獄が相応しい。聖杯の知識をこの者達に教えなさい」

 

「…貴様、聖杯の情報を他者に教えろと言うのか!

ふざけ、ガッ!?」

 

「ふざけているのは貴方ではなくて、マリウス。

貴方に拒否権などない、もう一度言うわ…生き地獄が貴方の処遇よ。これから、どう扱われていくか決めることもできず、ただ利用される苦しみを味わうといいわ」

 

反抗するように口を開いたマリウスの顔を容赦なくその足で踏み抜いたエルメンヒルデさんはこれでも慈悲なのだとばかりに見下ろす。

私達はそれを黙ってみていた。

正直、ありがたいけど…よかったのかな。

 

ふぅ、と一息ついたエルメンヒルデさんはこっちを見て微笑む。

 

「わざわざこの愚者を捕らえたのには訳があるのでしょう?

これから世話になる身としては弁えているつもりよ。

…本当はもっと惨たらしく殺してやりたいけど、それでは貴方達も困るでしょう」

 

「ありがとう、エルメンヒルデ」

 

「…私はしばらくここにいます。今回の一件でカーミラ派は心身ともに傷を負った…私はそれに寄り添う義務がある」

 

「ええ、また来るわ。その時、貴方達のこれからを決めましょう」

 

「新しい何かを見つけるのに丁度いい機会よ、存分に利用させてもらう。その時はよろしく頼むわ」

 

エルメンヒルデさんはリアスさんと握手をした後、一礼をしてからカーミラ派の吸血鬼の元へと戻っていった。

…マリウスは何も言わない。

受け入れたのか、それとも諦めたのか。

私は分からないけど、これで一応の決着がついたのは確かだった。

 

お姉ちゃんを助けるための聖杯もここにある。

ヴァレリーさんはまだ生きている。

何とか、繋ぎ止めないと。

 

その為にも帰ろう。

 

「…さ、帰りましょうか。

ネプテューヌが待ってるし、色々と気になることも多いもの」

 

「全く、予想以上にあっさりだったな」

 

「ゲオルグさん、こんなに人がいるんだからあっさりじゃないと大変ですよ」

 

「…そうか?いや、そうか…」

 

「先生、大丈夫?」

 

「…どうだろうか、大丈夫だとは思うが」

 

最近色々とありすぎて感覚が麻痺したのかゲオルグさんはやつれたような顔で、心配が募る。

パンドラさんからは裾を引っ張られて心配され、自分でも大丈夫か分かってないようで余計に。

大丈夫かなぁ…最近、酷使されてるし。

 

苦笑するリアスさんが手を叩いた後に早く帰るわよ、と言うと皆返事をする。

 

リゼヴィムの事は気になるけど…取りあえずお姉ちゃんとヴァレリーさんが優先だよね!

急ぐように私達は駒王の魔法陣がある場所まで戻るべく歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、うーん…」

 

「まだ唸ってるのか」

 

「だって心配だもん!」

 

「気持ちは分かるが、それはそれとしてお前は病人なんだから大人しくしてくれ」

 

「はーい…」

 

うんうんと唸っている私、誰が呼んだかネプテューヌだよ!

読者の皆へのいつもの自己紹介遅れすぎだよ?

でも、心配だなぁ…ネプギア達、気負ってないかなぁ。

 

ヴァーリからは注意されてまたベッドに寝直す。

うーん…気だるいけど、まだ喋ってる方が楽なんだけどなぁ。

 

曹操達はあの後も警護をしてくれてるみたいで、申し訳ないし。

 

「ヴァーリは、大丈夫?」

 

「ん?」

 

「私、こんなだし…守ってあげられないから。

それに、皆こんな事態で疲れてるみたいだから」

 

「…お前はまたそうやって」

 

呆れの混じった溜め息をついた後、頭を撫でられる。

鍛えてるからか手は少しだけ硬いけど心地がいい。

嫌じゃないから拒絶もしない。

というか、こういう時で不謹慎かもだけどもうちょっと仕掛けてきてもいいと思うんだよね、自分。

 

「お前は気にしなくていい。

むしろ、喜ぶべきなんだ」

 

「なんで?」

 

「ここにいる者達は皆お前が手を繋いだからこそここにいる。

ここにいるからこそ、お前の助けになっている。

俺だってそうだ」

 

「…もう」

 

そういう言葉を欲していた自分が要求しているようで少し嫌になると同時によくやったと褒めたくなる。

何だか、自分でもしおらしいかなとは思うけどシェアを感じられない自分なんてこんなものだと思う。

あの時、別の選択をしていたら…きっと全部から逃げていたと思うから。

 

皆の言葉は自分が一歩進むために強い力になってくれたんだ。

帰ってきたら、しっかりとお礼を言いたいな。

 

「ネプテューヌ」

 

「オーフィス、どうしたの?」

 

「ネプテューヌは、強くなりたい?」

 

「うん」

 

「どうして?」

 

「…皆と手を取り合う為には、言葉だけで繋がるのは難しいって気づいたから、かな。

相手が強くて、私が弱かったらゲームオーバーでしょ?

だから、強くなった、その人を止められるようになるんだ」

 

「見捨てないのは、なぜ?」

 

「だって、仲良くなれるかもしれないでしょ?」

 

「…難しい」

 

考え込んだオーフィスに苦笑い。

まだ情緒が不安定だもんね、難しい事を言ったのかな。

でも、オーフィスって自分よりも歳上でしょ?

うーん…グレートレッドは本当に鬱陶しくて追い出したのかな…

 

いつか、話せるといいな

 

「ネプテューヌは、辛くない?」

 

「辛くないって言ったら嘘になっちゃうから言うけど…すーっごい辛い!大変!もう勘弁してってなるよ!たまに変な因縁吹っ掛けられるし、私のこと狙う人も出るし!

大体私だって年がら年中グータラしてたいよ!乙女の時間を使わせるなんて~って怒りたくなるよね!」

 

自分ってよく巻き込まれるよね。

シャルバ曰く特異点とかなんとか。何それ空の物語?

グランブルーネプテューヌ?

とても素晴らしい日になるよって?まあなってるよ!

 

ガーッと不平不満を言う自分にオーフィスは不思議そうにする。

 

「辛いのに、頑張る?」

 

「辛いから頑張るんだよ、オーフィス!

大変だけど、皆がいてくれるから頑張れるし、皆のために頑張ろうって思えるんだよ!」

 

「…ヴァーリも?」

 

「程々にが付くがな」

 

「…何となく、分かった」

 

「オーフィス の 理解力 が あがった!」

 

「ドヤッ」

 

無表情でのドヤッいただきました~!

 

そうやってオーフィスの質問に答えているとおっちゃんがドタバタと入ってくる。

パラケも一緒だ。

 

「おぉいネプ子ってオーフィスもいやがる!?」

 

「アザゼル、お久」

 

「お、おぉ…お久し振りだな。

ってそれはいいんだっ!ネプ子!ネプギア達が聖杯を手に入れたって報告が来たぞ」

 

「ヴァレリー・ツェペシュも意識不明ですが、連れてくるそうです」

 

「え、何かあったの?」

 

「ああ…」

 

おっちゃんとパラケから聞いた内容を要約すると…

 

リゼヴィムの仲間のユーグリッドがやってきて一誠とバトル。

無事に勝って城に突入して、マリウスって吸血鬼が聖杯を抜き取って自己強化した姿をギャー君が本気を出して倒して、ヴァレリーちゃんも何でか生きてるから連れてくる…と。

 

うん、何か短くも濃い時間を過ごしたんだね。

 

「えっと、聖杯って神器なのに抜いていいの?」

 

「良いわけあるか。だが、俺の憶測が正しいのなら…」

 

おっちゃんが語ろうとした時、また扉をノックする音が。

わぁ、お客さん多いね、今日。

取りあえずどうぞーと言うと、曹操がやってきた。

 

「全速力で戻ってきたぞ、彼ら」

 

「え、えぇ…落ち着いてほしいんだけど。

じゃあ、私も下に降りないとね!ヴァーリ、抱っこ」

 

「変な甘え方をするな…やはり軽いな」

 

「重い方がいいのー?」

 

「いや、どちらでも」

 

何それと思いながらもヴァーリに車椅子に乗せられる。

階段降りるのにおっちゃん特製車椅子は足すら改造されてるせいで降りるのも楽々なんだね。

その無駄な技術は何なんだろう?

 

うーん…ヴァレリーちゃん、大丈夫かなぁ…

あーちゃんの時とは違って神器を抜き取られてかなり時間が経ってるっぽいし。

 

でも、意識不明なだけだから…大丈夫、な筈。

ここの皆なら、きっと助けてくれる。

ねぷ子さんもちゃんと治さないとね!




聖杯を獲得した一行が戻り、遂にネプテューヌの呪い解除が可能となる。
しかし、ヴァレリー・ツェペシュの容態は聖杯を戻しても戻らず…
消沈するネプテューヌ達の元に、ある二人が訪れる。

次回、『明日を投げ出さない』
私ともう一人…両方が助からないといけないのが物語の『大変さ』だ


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明日を投げ出さない

まだだ、まだ私の投稿はやれるっ!
逆境だ…必要なのは逆境なのだっ!!


帰ってきたネプギア達を出迎えた自分ことねぷ子さんはヴァレリーちゃんを急いで寝かせると、聖杯をおっちゃんが確認する。

 

「…ああ、間違いなくこりゃ『幽世の聖杯』だ」

 

「でも、どうして聖杯がここにあるのにヴァレリーちゃんは生きてるの?」

 

「それについてはもう当たりは付いてるぜ。

恐らくだが、聖杯は三つある」

 

「み、三つ!?」

 

聞くだけですごい聖杯が三つもあるの!?

ってことは…魂が三等分されてるってこと?

思ったことをそのまま疑問にしてみるとおっちゃんは難しい顔をしながらも頷く。

 

「魂が分けられてる状態で一つ欠けたならまだしも二つ欠ければ意識が無くなるのは当然だ。最悪死ぬこともあり得る。

そこは半分とはいえ吸血鬼なのが幸いしたってことだな」

 

「ん?二つ?」

 

「ああ、そこのギャスパーが持ってるのが抜き出された二つのうちの一つだ」

 

「……ユーグリット」

 

「そう、そいつが抜き取ったんだろうな。

つまり、それを戻しても意識が戻るかは…分からねぇってことさ」

 

「そ、そんなぁ…」

 

悲しみに暮れるギャー君を見て、心を締め付けられる。

…うん、もう一個ぶっ飛ばす理由が増えたね。

 

「えっと…お姉ちゃんは救える…んですよね?」

 

「そ、そうだぜおっさん!元の目的の姉ちゃんを助ける方まで駄目だったらそれこそ本末転倒だ!

どうなんだ?」

 

「ああ、ネビロスの野郎の言う通りだったよ。

聖杯一つでも相当な力だ…これなら呪いを払う程度訳ねぇだろう」

 

「よ、よかった…」

 

「…」

 

素直に喜べない。

自分が助かる前に、ヴァレリーちゃんを助けてあげたいって気持ちが大きい。

でも、今無力な自分にそれは出来ない。

 

なら…元の目的を優先して、その後リゼヴィムをぶっ飛ばして取り返すのが一番なのかな。

 

…うん、それなら急ごう!

 

「おっちゃん、すぐにお願いできる?」

 

「おう、と言いたいがあの施設に向かうぞ?」

 

「ネプテューヌのカオス化を使えるようにしたあの施設?」

 

「ああ、あそこにネビロスとシャルバを置いてきてるんだ。

俺とパラケルススはここにいろって言われたもんでな」

 

な、なるほど。

でも、おっちゃんも信用してるんだね。

もしかして、ネビロスとシャルバには何か共感するところがあったのかな?

それなら、早く行かないとね。

 

そう思ってると、お母さんが自分の方へやって来る。

 

「うちが狭く感じるなんてね。

…ねぷちゃん、治るのよね?」

 

「うん、治すよ!治ったら、元気なねぷ子さんの姿を見せるからね!」

 

「そうね…それと、女神化だったかしら?その姿も見せてね?」

 

「うん!」

 

「…皆、ありがとうね。ねぷちゃんの事、助けようと頑張ってくれて」

 

「いえ…そんな。私達もネプテューヌに助けられてばっかりですから」

 

「それでも、ありがとう。

…一誠、あなたも逞しくなったわね。お姉ちゃんを助けてあげられるくらい、強くなって」

 

「母さん…」

 

お母さんは皆に頭を下げた後に一誠を抱き締める。

本当に、強くなった。

心も、力も。

 

「アーシアちゃんも立派よ。うちに来た時よりもずっとね」

 

「お母様…」

 

「自慢の子達ね、三人とも」

 

心が救われるような、そんな言葉だった。

もっと言いたいこともあるだろうに、お母さんはそれを飲み込んで頑張ったと愛の言葉を送ってくれた。

…本当に、自慢の両親だ。

自分は恵まれ過ぎていると実感する。

 

「行ってらっしゃい、気を付けるのよ」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

「うぅ…感動しました…!」

 

「パラケルスス…涙脆いな」

 

「あなた達は涙腺が無いんですか!?」

 

パラケの言葉も空しく皆は別に泣くことじゃないとばかりに出ていく。

あーうん…パラケはあれだね、貰い泣きとか良くしそうだよね。

それよりも善は急げだよ!

何か袋詰めされてもがいてる人がいるっぽいけど…うん、見なかったことにしよう。

 

一体何ウスなんだ…

 

そうして何かでかい車に乗って施設に向かう。

ヴァレリーちゃんにはギャー君が隣にいて、心配そうに見ている。

 

それから、特に会話もなく静かな車内で自分は窓越しの景色をただじっと見ていた。

本当に治るのかなと不安に思って隣に座るヴァーリの手をぎゅっと握る。

ヴァーリも分かってくれたのか握り返してくれて、それが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

施設にやって来た自分達は待っていたというような顔のシャルバと相変わらず機械の体で手を振るネビロスに出迎えられる。

 

「聖杯は?」

 

「あるぜ」

 

『アザゼル君の言う通り、抜いても死んでないね。

へー…隅々まで調べたいねぇ?』

 

「ヴァレリーに手は出させません!」

 

『おー怖い』

 

いつになく強い言葉を発するギャー君に琴線に触れたかなとネビロスはからかうのをやめる。

シャルバは呆れた態度で自分のところにやって来る。

 

「貴様の呪いを解呪するが…痛みは伴う、覚悟は?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「ふん、ならいい。おい、聖杯を持ってこっちに来い」

 

「こいつ…ヴァーリ以上に気に食わねぇぜ…!」

 

「ま、まあまあ…お父さんもお姉ちゃんが心配なんですよ」

 

「男のツンデレはキモいぜ」

 

「こら、一誠」

 

「はーい」

 

『はいはい、大人数で来ても作業が遅れるから大半はここで残ってね~』

 

「ネプテューヌ、そういうわけだから頑張るのよ」

 

「うん、大丈夫だよリアスちゃん!私よりもヴァレリーちゃんが心配だしね」

 

「自分の心配をしなさい」

 

コラ、と額に軽くチョップされた自分ははーいと伸びた返事をしてヴァーリに車椅子を押して貰う。

ネプギアには手伝いをして欲しいとのことで一誠とおっちゃん、自分とシャルバ、ネビロスと一誠の六人で治療部屋に行くことに。

うん、でも多いよね。

 

『解呪と言っても聖杯のエネルギーを利用して君の生命力を強化しての無理矢理な祓い方なんだけどね。

だけど、それくらいリゼヴィムの組んだ呪いは強大だ。

流石はルシファー、面倒事も強いのは勘弁願うよね?

まあ、僕とシャルバに任せてくれたまえよ』

 

「額を擦り付けて感謝することだな」

 

「お父さん!もう…絶対治るよ!安心してね、お姉ちゃん」

 

「うん」

 

「…不安か?」

 

「ううん、もうないよ。ありがとね、流石は私の彼氏」

 

「調子のいい彼女を持つと大変だよ」

 

「ギリギリギリ…」

 

一誠ぇ…

そんなに恨みがましく見られても。

それなら彼女さん作ればいいのになぁ…一誠は顔がいいし性格も悪くないんだからさ。

 

そんなこんなで着いた治療部屋は見覚えがあった。

これはカオス化を手にいれる為の部屋だった筈だけど…

装置も幾つか変わってるし。

 

『改造したよ。

ぶっちゃけ、照射するだけだし!』

 

「ぶっちゃけたなぁおい」

 

『隠す意味ないしね』

 

「あはは…じゃあ、私があっちにいけばいいんだよね?」

 

「おう、カオス化の時と同じだ」

 

「うん、分かった」

 

「まってください、ネプテューヌさん」

 

「いーすん?」

 

「……」

 

いーすんがネプギアから出てきたと思えば、少し黙った後に何かを決めた様子で自分の中へと何も言わずに入った。

…えっと、どうしたんだろう。

 

「心配なのかな」

 

「んー…そうか?」

 

『ほらほら、そんなことよりも入った入った』

 

「わわわ、押さないでよ~!」

 

何とか立ち上がって、扉の前に立っていたら押されて部屋の中に入れられた自分は扉の奥のネビロスを睨み付けてから装置の前に立つ。

前はロキ。

今回は…ヴァレリーちゃんの聖杯。

しっかりと話がしたいから…その為にも自分も治さないと。

 

後回しにするようで嫌だけど、さっさと済まさないとね!

装置の中に入る。

 

『準備はいいかな?さっさと終わるからね!』

 

─ネプテューヌさん

 

ネビロスに返事をしようとした時、いーすんが話し掛けてくる。

 

(あ、いーすん。どうしたの?)

 

─…私も、成長の時なのかと、思いました

 

(えっと…?)

 

─あなたが前に進むために、私も一助になるために。そして、私自身が今よりもあなたを助けられるようになるために

 

(…ぁ)

 

聖書の神様の送ってくれた言葉を思い出す。

 

いーすんと自分、二人の意思が成長することでようやく戻れる。

…そっか、いーすんも決心が着いたんだ。

 

─ですが、あの姿に…私は至って欲しいとは思いません

 

(え、なんで…?)

 

─あの姿は、きっと先はないのです。私には分かります。先のない未来を、私は求めてしまっていたのです。ですが…それを求めるのは間違いだった。私はどこかであの方を待ち望んでいたのです

 

(でもそれは、昔の相棒だったから…)

 

─あの方は亡くなったのです

 

(…)

 

はっきりとそう言ういーすんに自分は何も言えなかった。

もういない者を求める。

それはよくないことなんだと気付いたいーすんははっきりと。

 

─あなたはあの方ではありません。もっと別の未来へ、進化する姿になれる筈なのです

 

(いーすん…)

 

─私は、それが見たい。私を見つけてくれたあなたに、過去の遺物でしかない私が出来るのはこんなことしか出来ません

 

(そんなことないよ。いーすんはいつでも私を助けてくれた。

一番の相棒だし、家族だよ!だからこんなことって言わないで)

 

─…はい

 

柔らかな声。

それから、いーすんは静かになった。

…聖杯のエネルギーをいーすんにも回す。

多分、自分への負担はないと思う。

 

いーすんが心配だけど、大丈夫。

自分の相棒はそんな柔じゃないよ!

 

『もしもしー?』

 

『おいネプ子、大丈夫なのか!』

 

「あ…大丈夫!さあ、私に撃てぇ!」

 

『はいはーい』

 

『姉ちゃん、無理そうなら言うんだぞ!』

 

「OK牧場!」

 

『古い』

 

ピシャリとシャルバに言われて、そのまま装置が動き出す。

あ、ノリ悪い。

上を見ると、光が自分へと降り注ぐ。

きっとこれが聖杯のエネルギーだ。

 

そうして、光が自分を包み込んだ瞬間だった。

 

 

 

「…く…ぅ!?」

 

ドクン、と心臓が驚いたように跳ね上がる。

体全体の熱が急激に高まったような感覚。

立っていられない程胸が痛い。

 

気を抜けばそのまま気を失ってしまいそうで、手放したくなる。

 

…駄目だ、それは駄目だ。

これは拒絶したら治療できなくなる類いの奴だ。

 

それに…いーすんの為にも、ねぷ子さん、頑張っちゃうからね…!

 

何とかガラスの壁に手を付けて立ち上がる。

 

『お姉ちゃん、大丈夫!?』

 

「ばっち…ぐー…!心配して…くれる、妹が、愛おしい、よ!」

 

『もう少しだ、耐えろ』

 

頭が割れそうな位痛い。

体から何か飛び出すんじゃないかってくらい胸が痛い。

動悸が激しくなる。

表現変かもだけど、呪いが暴れてるんだ。

 

─ネプテューヌさん

 

「いー……すん……」

 

─大丈夫、もうすぐです。そして……私も、変わる時です

 

「う…ん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体中が痛いだろうに、ネプテューヌさんはそれでも苦しげに微笑む。

…私だけ、変われていない。

聖書の神の言葉の意味を分かっていた。

分かっていた上で、私は…自身の変化を恐れた。

 

あれほどネプテューヌさんに言った自身が、である。

それでも私は怖かった。

今の私はあの方と共に過ごし、あの方の終わりを見届けた私だから怖かった。

…ですが、変化しなくてはならない時が来たのでしょう。

 

ネプテューヌさんの更なる進化の為、何より私という史書がよりお役立ちするために。

 

今の私とは、別れを告げなければならない。

いつまでも過去を引きずる私であってはいけない。

未来を共にすると決めたのなら、後ろ向きで歩くわけにはいかないのです。

 

随分と長くお待たせしてしまった。

だというのに怒ってすらいない。

 

私だけでもこれは戒めとしておかないといけません。

行動が遅いのは…私の欠点です。

 

聖杯の力を使って、私もまた一歩を歩み出さないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まると同時に、体の重さが消える感覚。

そして、マグマが煮えたぎってるんじゃないかと錯覚する程の熱も消えていた。

それに…感じる。

 

皆の、シェアを…感じる。

 

その事実が嬉しくて、その場でへたりこんでしまう。

大切なものを放さないように自分の体を抱き締める。

やっと戻れたような気がする。

さっきまでの自分は、弱い自分をずっと浮き彫りにしていたようで嫌だった。

シェアが、自分を包んでくれるような感覚。

 

「ネプテューヌさん」

 

自分の中から現れたいーすん。

いーすんも少しだけ変化していた。

帽子が目玉模様じゃなくて自分の服にもあるNのマークがあって、翼が消えてスラッとした感じになって…

 

いーすんが微笑む。

 

「無事、解呪に成功しましたね。私も変われたと思うのですが…どうでしょう?」

 

「…い」

 

「い?」

 

「いーすんが漢字使ってるぅぅぅぅぅ!!?」

 

「はい、使ってます!」

 

二人で喜び合う、漢字を使えてることと、自分を完治を。

よかった!でも顔文字表記ともおさらばかぁ…

 

『おーい』

 

「あ、ごめん」

 

『いやいや、皆安心してるからむしろもっと喜びなよ。

でもその前にヴァレリーだっけ?その子に聖杯を戻さないと』

 

『ネプ子、イストワールも…よく頑張ったな。戻ってこい!』

 

「うん!」

 

「ネプテューヌさん、これからも…よろしくお願いします」

 

「よろしくね、いーすん!」

 

いーすんとのコミュがランクアップ!

これでねぷ子さんもペルソナ使いに!

 

「なりませんね」

 

ならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖杯を持って、皆の元に戻る。

ちなみに、部屋を出たときに感涙した一誠よりも先にヴァーリに抱き締められた。

一誠?スッゴい形相で舌打ちしてたよ…

 

皆がしっかりと歩いてる自分を確認すると嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「ネプテューヌ!」

 

「成功したんですね!」

 

「うん!今から聖杯をヴァレリーに戻すよ」

 

「お、お願いします!」

 

神器を戻す。

あーちゃんの時もやれたそれはヴァレリーにも適用された。

聖杯をヴァレリーの胸元に置くと聖杯が所有者だと認識したのか体に溶け込んでいった。

 

…けれど、二つしかない現状じゃ目を覚ますことは無かった。

 

「…やっぱり、駄目なんですか…?」

 

「……いいえ」

 

「パラケルスス…?」

 

ヴァレリーに触れたパラケが駄目ではないと断言する。

その表情は、今まで見た中で一番…様になってるというべき表情だった。

 

「脈が復活している。魂が三つの内二つになったから意識は回復しないけど…生命活動自体は先程よりもしっかりとしている。

…アザゼル総督、私の今から頼むことを…どうか聞いてくれますか?」

 

「…お前さんは絶霧を追憶の鏡と接合できる程の腕を持ってる。

その言葉は重要だと判断するぜ、言いな!」

 

 

 

「─教会にある本物の聖杯…その欠片を持ってくるように天使陣営に話を通して欲しいんです」

 

 

 

『なっ…!』

 

自分みたいなその事がよく分からない人を除いた全員が驚く。

まるで、なんでそんなことを知っているのか気になるように。

おっちゃんまで驚いている。

 

どういうこと?聖杯は『四つ』あった!?

 

驚愕冷めやらぬといった様子でパラケに詰め寄るおっちゃん。

 

「おいおい!何でお前さんがそんなことを知ってやがる!?

仮にあるとしてそれは…教会の最重要機密じゃあねぇのかぁ!?」

 

「ええ、ですが私は見たことがあるのです。一度だけ、本当に一度だけ…その欠片を、私は見たことがある」

 

「どうやって見た…?」

 

「昔の仕事です、錬金術の、ね」

 

「…なるほど、よく消されなかったと言うべきか。

俺はお前さんを見くびっていたぜ…だがその認識を改める。

お前さんはその記憶をしっかりと保持していた、敬服したぜ。

分かった、ミカエルには俺が話をつけてやる」

 

「お願いします」

 

おっちゃんが忙しいとばかりに携帯を取り出しながら去っていった後、自分は感動してパラケに抱きつく。

 

「パラケー!」

 

「め、女神様…!な、何か粗相を…」

 

「ううん!凄いよ!一気に解決策出しちゃって、やっぱりパラケは凄い人だよ!」

 

「でも、どんな仕事だったの?教会からの依頼でしょう?」

 

「ええ…代々、私の家系は錬金術を生業としていますからそういった方からの依頼も珍しく無かったんです。

…あの時は、私も断念しました」

 

「え、気になる!どんな内容?」

 

「聖杯の復元です」

 

「え゛っ」

 

「チラリと見たとかじゃなくてガッツリ当事者だった件について」

 

でも…教会からの正式な依頼、それも大事な聖杯の復元なんていう凄い依頼を貰った経験があるパラケって凄いのでは?

…これからは、先生って呼ぼう。

 

「でも…私は復元しませんでした」

 

「出来たの?」

 

「恐らく、復元する事は可能でしたが…あれは人だけでなく、人ではない者全てに良くない。錬金術師は物を見る目がないといけません。一目で分かりました、これは完全な形に戻してはいけないと…

実際、神器でしかない聖杯もあれ程の力があるのです、本物の力は想像もつかないでしょう。

あれは、欠片であることが世に一番でしょう」

 

賢者のように、真実を知っているように話すパラケは錬金術師として高位の存在なんだと思わされる。

だから、余計に嬉しい。

頼もしい仲間っていうのもだけど、思慮深い人はこのメンバーで必要だからね。

 

「まあ、通るかは分かりません。

聖杯は教会にとってもそう易々と渡せるものでは…」

 

「許可取れたぞー」

 

「おー!」

 

「…あれ?」

 

「パラケルスス…ミカエル殿は妹に甘いらしい」

 

「曹操…あなたも苦労したのね」

 

「お前も要因の一つだぞ」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい…!」

 

「ミカエルの野郎、護衛を連れてこっちに来るってよ」

 

「ミカエルさんが来るの?」

 

「心配なんだと。トップの自覚あんのかね?」

 

「「「お前が言うな」」」

 

「あーあー聞こえねー!」

 

まあ、おっちゃんはサボりにサボったツケだよね。

甘んじていじられるべきだとねぷ子さんは思うから何も言わないよ。

 

それから、ミカエルさんが来るまで施設で待つことにした。

 

いーすんがバージョンアップしたことは皆からしても興味深かったようでネビロスとおっちゃんなんかは詰め寄りそうだったからリアスちゃんと一緒に止めた。

 

そして、外の扉が開く。

音で気付いた皆が立ち上がってやってくるであろう人を待つ。

 

「無事治ったという報せを聞きましたが…何よりです、ネプテューヌさん」

 

「はーい、ネプテューヌ!元気?」

 

「え、イリナちゃん!?」

 

「イリナ…来たのか」

 

「ストラーダ卿に頼もうと思ったのですが、どうしてもと言われまして」

 

イリナちゃんがアタッシュケースを持ちながら手を振ってくる。

わあ、イリナちゃんだ!

本当に久しぶりだなぁ…というか、また強くなった?

 

「元気そうね。…あー、ちょっとごめん」

 

「うわわ!?」

 

アタッシュケースをテーブルの上に置いた後、自分に抱き付いてくるイリナちゃんに慌てる。

 

「ごめんね、大変な時に力になれなくて」

 

「…気にしないでいいよ。それに、今から助けてくれるでしょ?」

 

「それは勿論!ミカエル様の護衛はここまでだから、今からはネプテューヌ限定の何でも屋になったげる!」

 

「ん?今何でもするって言ったよね?」

 

「何でもするとは言ってないわ」

 

「あ、私の護衛ついでだったんですね…」

 

「そ、そんなことないですよ!?」

 

「ええ、分かってます」

 

しゅんとなるミカエルさんに慌てて否定するイリナちゃん。

その後演技だったようでホッとした後はヴァレリーちゃんを二人とも見る。

 

「『幽世の聖杯』ね…そりゃ、見つかる筈もないわね」

 

「ええ、まさかハーフとはいえ吸血鬼の少女が保有していたとは。…では、聖杯の欠片を埋め込みましょうか」

 

「本当にいいの?大事なものなんじゃ…それに、教会の人から非難されない?」

 

「まさか、説得はしましたよ。ええ、それはもう丁寧に。

あなたから貰った恩や私達のしでかした事を考えれば、これぐらいの事は」

 

「でも、教会の事、皆が悪いって思わないでね?

管理不足だったとはいえ、主の為にって誠心誠意働いてきた人もいるから…」

 

「トウジさんみたいにいい人もいることは皆知ってるよ!

大丈夫だよ、ね?皆!」

 

「…はい、教会は許しませんけどいい人はいると思います」

 

「あ、あはは…中々ズバッと言うわねこの娘…」

 

パンドラの言葉は重みがあってイリナちゃんも苦笑い。

まあ…イリナちゃんみたいなタイプは教会だと珍しいのかな。

信仰はしてるといえばしてるけど、みたいな感じ。

 

ミカエルさんが会話を打ち切ってから、アタッシュケースを開ける。

そこにあったのは文字通り、欠片だった。

聖杯のとは分からない欠片。

…でも、何か強い力を感じる。

 

─間違いなく、聖杯の一部です

 

「いーすんも本物だって言ってる」

 

「流石に私が持ち出しましたからね、差し替えはあり得ません。

これを埋め込みますが、成功するかは分かりません。それだけは留意してください」

 

「は、はい。どうか、ヴァレリーをお願いします…!」

 

「承りました」

 

ミカエルさんが欠片を手に取り、ヴァレリーちゃんへと持っていく。

そして、近くに来たと思ったら欠片が光りだした。

共鳴、してるのかな?

 

「…聖杯同士、本物とコピーといえど同じ。こうも反応するのならば…!」

 

そのまま、欠片をヴァレリーちゃんへと押し当てる。

ミカエルさんが何かを呟くと、欠片はみるみる内にヴァレリーちゃんの中へと入っていく。

 

「…これで意識が戻るかどうか」

 

「ヴァレリー…」

 

皆が緊張した面持ちで車椅子に座り、眠るヴァレリーちゃんを見る。

そして…

 

 

 

「─……ん………こ、こは……?」

 

 

 

重い瞼を少し開けて、周りを見るヴァレリーちゃん。

意識が、戻ったんだ…!

ギャー君が堪えきれないように泣き出す。

 

「やった…!成功です!」

 

「よっしゃ…よっしゃー!」

 

「き、緊張したわ流石に…」

 

皆が皆、喜んでいる。

ヴァレリーちゃんは起きたばかりで状況が読み込めないから、あーちゃんとパラケが容態のチェックと一緒に簡単な説明をしている。

 

ミカエルさんはただ一人、天井を…ううん、それよりもっと上の空を見上げて一言呟いた。

 

「…これが、正しい行いなのでしょうか」

 

「ミカエルさん…」

 

「…すみません、まだ怖いようです。

自らの意思で決定するのは、難しいものですね」

 

「ううん、ミカエルさんは決められたじゃん!

大丈夫、神様も笑顔でグッジョブって言ってくれるよ!」

 

「だと、いいのですが」

 

それから、騒ぎすぎて五月蝿いとあーちゃんとパラケに怒られた自分達は別の部屋に移ったヴァレリーちゃんたちを見送った。

ちなみにギャー君同伴。

 

…うん、これで再スタートだね!

 




ヴァレリーとネプテューヌ、二人の復活とイストワールの成長。
紫藤イリナも交えてリゼヴィムをどうするかを話し合う。
そして、ネプテューヌはその夜、夢を見る。
巨大で、荘厳な龍が語りかけてくる夢を。
そして姉に憧れるネプギアもまた、一歩を踏み出す。

次回、『夢見る女神、一歩の勇気』

マリウス「私は?」

裏で情報絞られてます。可哀想…でもないな。


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夢見る女神、一歩の勇気

俺は~やるぜー投稿を諦めない…このロザミアには夢があるッ!!


あれから、二時間ほどの精密検査を受けたヴァレリーちゃんは後は安静にしていれば回復はすぐという診断をパラケから言われて無事に終わった。

自分もそんな感じだったけど…

 

ただ、前と違うのはシェア以外にも自分の力が何だか滾るというか、なんと言いますか。

明らかなパワーアップを感じる。

いーすんも、声が少し低くなって大人の女の人の声って感じ。

 

ヴァレリーちゃんは最初何があったのか分かるのに時間がかかったけどギャー君とあーちゃん、パラケの丁寧な説明で一応の把握は出来たみたい。

ヴァレリーちゃんが車椅子に座った状態で頭を下げてくる。

 

「この度は助けていただいてありがとうございます。

改めて、自己紹介を。私はヴァレリー・ツェペシュ、人と吸血鬼のハーフです」

 

「お礼なんて…私達は利用したようなものだから…」

 

「僕からも、ありがとうございます!」

 

「ギャスパー君までっ」

 

「ま、いいじゃねえか!俺達は姉ちゃんとヴァレリーが助かったって結果を得られたんだぜ?これが一番の上がりじゃねえのか?」

 

「まあ、確かにそうだね」

 

「…すみません、空気を壊すようで悪いのですが、いいですか?」

 

ミカエルさんがそう言うと、皆話を聞く姿勢になる。

どうしたんだろう。

 

「ヴァレリーさんに埋め込んだ聖杯の欠片…あれは延命措置のようなものに過ぎません。魂の一部を抜き取られたのを同じ性質で埋めても、魂の形までは似ない…リゼヴィムから取り返さない限り、ヴァレリーさんは真に助かったとはいえません」

 

「…その通りね」

 

原因のリゼヴィムとその仲間がどうにかなった訳じゃない。

リゼヴィムを倒さないと解決には程遠い、と現実を優しく突きつけてくれたミカエルさんに感謝だね。

ちょっと浮かれちゃったかも。

 

そこから、改めてマリウスに話を聞くことになった。

 

袋から出されて座らされて厳重に拘束されたマリウスは苛立った様子だった。まあ、そりゃそうだよね…

 

「マリウス、ユーグリッドと何故繋がりを得たのかを話なさい」

 

「するとでも?」

 

「お兄様」

 

「…なんだ、聖杯」

 

「テメェ、その言い方!」

 

「いいんです。お兄様、話してくれませんか?

お兄様も謀られた身の筈です。敵の情報程度、渡しても…」

 

「…ならばお前はどうなのだ。お前をそうしたのは私だぞ」

 

「恨んでませんとは言えませんが…許します」

 

「なに…」

 

「許す代わりに、話してください」

 

「馬鹿なのか?」

 

マリウスのヴァレリーちゃんへの発言は刺がある。

聖杯としか見てないかと思ったら別の感情が見えそうだったり…でも、すぐに隠される。

何だろう。

 

ヴァレリーちゃんもこんな目に遭ったのにマリウスを許すからその代わり全部話してといっている。

自分が言うのも何だけど簡単に許せるもんなんだね。

 

「お兄様は私よりもずっと賢い方です。

私の聖杯の性質を理解して…それでも使おうとしたんでしょう?」

 

「…私は聖杯の研究がしたかった。それだけだ!

その為に、周りの馬鹿どもが五月蝿かった。だからああしたのだ」

 

「まあ、私のことをそんな目で?変態ですのね」

 

「何を言って…馬鹿者が!嫁入りもしていない馬鹿、それも貴族がそのような発言をするな!」

 

「でも、その通りでしょう?お兄様、聖杯()が大好きですものね」

 

「誤解を招く言い方はわざとか!貴様、ヴァレリー…周りから隔離された弊害か!?」

 

「あ、名前で呼んでくださった」

 

「黙れ聖杯!」

 

「話してくれたら、やめてあげます」

 

何か悪戯好きの妹と悩まされる兄の構図が出来てるけど、ヴァレリーちゃん強い。

マリウスもイライラしながらも返してる辺り別に嫌いという訳じゃないのかもしれない。

 

…兄妹らしいし、もしかしたら昔は普通だったかも?

 

ウンザリしたように舌打ちした後、こっちに顔を向ける。

 

「これ以上この馬鹿に付きまとわれるとこちらが持たん。

いいか、一度しか話さんぞ」

 

「テメェ拘束されてるって理解して?」

 

「いいのか?別に喋らなくてもいいんだぞ?」

 

「え、喋ってくれないんですかお兄様?」

 

「…是非、話させて貰おう」

 

「おいたわしや、兄上…」

 

そこからマリウスによって語られたのは難しい事じゃなかった。 

ヴァレリーちゃんの『幽世の聖杯』を研究するのに自身の地位と周りの視線が邪魔に感じていたマリウスの所へユーグリッドが現れ、取引を持ちかけられた。

 

内容は『聖杯を一つ譲っていただきたい、その代わり目障りな周りを消してあげよう』という物。

譲るのではなく、貸すのならという条件で手を取り合った二人は早速聖杯を利用して周りの吸血鬼を活性化させ、手中に置いてクーデターを開始。

そうして満足な研究環境を手に入れたマリウスは没頭しようとしていた時にユーグリッドによって周り共々意識を失う。

気付いた時には一誠達が現れて聖杯の一つを奪われて周りの吸血鬼も消されていた。

 

「忌々しい…契約は絶対という悪魔はなんだったのだ!」

 

「いいえ、違うわね。ユーグリッドは契約を守ったわ」

 

「何だと?」

 

「文字通り、周りを消してあげたでしょう?

手段は問われなかったし、契約を終えた彼のその後の行動に何の制限も無かった。それがいけなかった」

 

「…チッ」

 

リアスちゃんに反論されて舌打ちだけしたマリウスはそれ以降喋ることはなかった。

ヴァレリーちゃんも利用されただけという事実を改めて認識したようで少し暗い表情だった。

 

「マリウス、これからあなたの聖杯の知識を存分に利用させて貰うわ。リゼヴィム達がどう利用してくるか…それへの対抗策として今度はあなたが利用されるのよ」

 

「……好きにしろ」

 

「あら、素直ね」

 

「喧しい妹がいるのでな…」

 

「ああ…」

 

こうして、マリウスの一件については一応の片が付いた。

ヴァレリーちゃんも安静にしないといけないからまた別室で寝かされる事に。

 

そして、残った皆で話し合い。

 

「まず、リゼヴィム側の戦力についてだが…」

 

「本人とユーグリッド…それだけじゃないのは確かだけど判明しているのはここまでね」

 

「とてもじゃないが、それだけであんな大それた行動をするとは思えん。もっと仲間がいるのは間違いない」

 

「仲間か…」

 

頼光の発言に曹操が考えるように仲間という言葉を言った。

どうやら、そこが引っ掛かるようだけど…

 

「本当に仲間なのか?」

 

「どういうこと?」

 

「簡単な話、あの男からしたらどんな相手も平等に嘲笑を向ける対象だ。そんな男が仲良しこよし…利害の一致と言えど勝手を許すだろうか」

 

「ユーグリッドはどうすんだよ?」

 

「そう、そこだ。あの男について一つの疑問となったのはそこなんだ。

どうやってユーグリッドと繋がりを得たのか、ではない。

何故ユーグリッドがアイツと組んだのか…それが気になる」

 

「それは、超越者だから?」

 

「いいや、それはないだろうな。

初めから知っていたのだとしたら…リゼヴィムがどのような人物か多少知っていた筈だ。なのに接触したのだとしたら…」

 

「…精神的余裕が無かったとか?」

 

イリナちゃんに皆の視線が行く。

何となしで呟いたのか恥ずかしそうに手をブンブンと振るイリナちゃん。

 

「あ、いや…今のなし!」

 

「いや、確かにあり得る」

 

「え、通るの?」

 

「姉であるグレイフィア・ルキフグスがサーゼクス・ルシファーと交際したことによってユーグリッドが離れたのは間違いない。

とすると…接触する余裕すらなかった可能性も浮上するのか?」

 

「やっぱリゼヴィムがやったってことか?」

 

「つけ入る隙はいくらでもあっただろうな。

しばらく匿ったのか…?」

 

「仲間として、でなく、駒として迎え入れたのかしら」

 

「…なるほど、もしかすると俺達は何手か先を行かれてるのかもしれないな」

 

『ま、情報が無ければそんなもんだよね』

 

「あ、ネビロス」

 

ヴァレリーちゃんの容態をもう一度チェックしに行ったネビロスが戻ってきてそんなことを言ってきた。

 

『彼をマトモに見るのはよろしくない。

マトモであればあるほど彼の精神性は毒だろうね』

 

「どゆこと?」

 

『打算もあるかもだけど、彼は刹那的な快楽主義な面があるからね~どう転んでも楽しいんじゃない?』

 

「イカれ野郎だな」

 

『まあ…彼の悪魔は悪であるべしって考えは僕も少し共感できるよ。その理念の元で動いているかもしれないし、動いてないかもしれない。ただ言えるのは…居場所を掴めてない以上はこっちは備えるしか出来ないってことさ』

 

「備える?」

 

『そそ。もし彼が聖杯で何かを復活させるとしたら考えうる限りでも最悪な部類だろうしね』

 

「おいおい…まさかとは思うがよぉ」

 

何か察しがついたのかおっちゃんとミカエルさんの顔が歪む。

不愉快だとばかりに。

ネビロスはその考えを肯定するように頷く。

 

『邪龍を復活させるんじゃないかな?』

 

「邪龍って?」

 

『命なぞ二の次、戦い、悪行を最優先する頭のネジが飛んだ力だけはある龍、それが奴らだ』

 

『肉体すら失った奴らが復活すると?』

 

アルビオンとドライグの疑問はもっともだ。

肉体がないのに復活できるの?

 

『そりゃ、聖杯なら可能だよ。ネプテューヌちゃんの解呪だって出力はかなり下なんだからね』

 

「チートやんけ」

 

「おめぇが言うなシスコン野郎」

 

「…じゃあ、邪龍が復活したらどうなるの?」

 

『まあ…邪龍対三勢力かなぁ』

 

「加えて、戦う場所を選ばん奴等だ」

 

「人間界で戦う可能性もあるってことか」

 

「それいつも通りじゃ…」

 

『相棒、そういうことはな、胸の内に秘めておくんだ』

 

「あ…はい」

 

漫才は放っておくとして…邪龍かぁ。

どうするのが正しいんだろう?

もしかしたら、言葉すら通じないかもしれない。

そうなったら…自分はどう選択するんだろう?

 

その時にならないと分からないけど、そんな不安が胸に残る。

 

皆もそれは同じようで表情に影が差す。

 

「今ではない。それは確かだ」

 

「お父さん…それまで強くなれってことですか?」

 

「そうだ、私も…貴様らも。全員が力を付けねばあの超越者に一泡吹かせることもままならんだろう」

 

特に、と自分へと視線を向けてくるシャルバ。

 

「女神、貴様が奴と話をするというのならな」

 

「…リゼヴィムは私のこと嫌いかな」

 

「さてな。全てを嫌悪している可能性もある」

 

「なんで?」

 

「奴が悪魔だからだろう」

 

「ちょっと、どういうことかしら」

 

「若い悪魔たる貴様には分からんだろう。

悪魔とは本来、契約を除けば邪悪なる存在。

寧ろ、奴の方が元来正しいのだ」

 

「旧い思想だこと。その結果が今の悪魔の現状でしょう」

 

「ならば、貴様が革新するのだな」

 

話は終わりとばかりにシャルバは出ていく。

ネプギアは何か思うことがあるのかついては行かなかった。

ネビロスは残るらしい。

 

「取り敢えず、帰ろっか?お母さん達にも元気な姿を見せたいし!」

 

「そうだな、考えても仕方ねえ!鍛えるにしても悩んでたら伸びねぇよ!」

 

「そうだね、確かにその通りだ」

 

一誠と木場君の肯定に乗るように皆帰ることに。

…うーん、強くならないと、かぁ。

自分の新しい姿もよく分からないし…うーん。

 

あ、そういえば聞くことがあるや。

 

「勿論、ヴァーリも泊まってくよね!」

 

「いいのか?」

 

「問題ないよ!」

 

「そうか…そうさせて貰う。世話になる」

 

「美猴とアーサーとルフェイはどうするにゃ?」

 

「三人には既に話している。

俺が居なければ固まるなりして過ごすようにと」

 

「あら、そう」

 

ヴァーリが来てくれると聞いて少し安心する。

もし、自分の知らない場所で倒れたら怖い。

リゼヴィムが自分だけではないとはいえ大切な人を傷付ける可能性は十二分にある。

 

でも、居てくれるなら安心だよね。

 

…うぅ、何か拘束系彼女みたいでやだなぁ。

 

それから、自分達は家に帰るべく車に乗ることに。

頼光達は少し独自で動くとのことでその場で別れた。

パラケも今度こそついていくと頼光に詰め寄って言うと困惑しながら了承する頼光が見れたからヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたネコ!

この元気で素晴らしいねぷ子さんをお母さん達に見せないとね!

あ、その前に…

 

「姉ちゃん、どうしてそこで立ってるんですかね」

 

「ほら、お母さんに約束してたからそれをね?」

 

「仕方無いなぁ…女神化承認!」

 

「ファイナルフュージョン!」

 

「するならさっさとしなさい!」

 

「は~い」

 

じゃあ、さっさと女神化しちゃおう!

シェアを感じる!体が軽い、こんな感覚は初めて…じゃないけどもう何も怖くないね!

 

「じゃあ、久し振りに女神化!アクセス!変身!起動!」

 

「該当するワード全部言うまでしない気?」

 

リアスちゃんのジト目が炸裂して耐えきれなくなって女神化する。

 

おお…このプロセッサ!このボディ!

これこそ自分!

復ッ活ッ

ねぷ子さん復活ッ!ねぷ子さん復活ッッ!!ねぷ子さん復活ッッッ!!!

 

「ふぅ…どう?変なところないかしら?」

 

「無いぜ!」

 

「お姉ちゃんの女神化…ちゃんと見たのは初めてだけど…凄い綺麗だよ!」

 

ネプギアの誉め言葉にそういえばしっかりと見せたこと無かったと思って頭を撫でる。

うんうん、妹の頭を撫でるのもしてあげてなかった。

あ、結構サラサラ…

 

「じゃあ、早速お母さんに見せないと」

 

「おう。母さん、帰ってきたよー」

 

玄関に入った後、一誠の言葉に奥から少し駆け足でお母さんがやってくる。

 

「おかえりなさい皆…あら?」

 

「ただいま、お母さん」

 

「ねぷちゃんなの?」

 

「ええ、正真正銘、ネプテューヌよ。どう?」

 

お母さんが目を擦った後、再度自分を見る。

現実だと理解した後、自分の手を握ってくる。

握り返したら、顔とか髪とかもペタペタ触られる。

 

「…」

 

いつの間にか品定めするような形に…

 

「…ああよかった、ねぷちゃんだわ…」

 

その後、しっかりと抱き締められる。

久しぶりにお母さんに見せた女神化。

自分もしっかりと抱き締める。

背丈も、お母さんより少し大きいくらい…うん、女神化が久し振りだから少し新鮮。

 

「おかえりなさい」

 

「ええ」

 

「もう元気?」

 

「元気よ」

 

「よかった…」

 

それから、女神化を解除して一旦解散ということで皆色々と気持ちや考えを整理するために帰っていった。

ネプギアとヴァーリは泊まるって聞くと嬉しそうに了承してくれた。

 

ちなみに…

 

「我、待機組だった故暇だったドラゴン。

羨ましさによってお泊まり申す」

 

「よいぞよいぞー!」

 

「にゃー…」(寝る場所困りそうね…)

 

オーフィスは寂しかったようで泊まる宣言。

今日はいっぱい居るなー!

あ、ご飯どうしよう…?

席とか、大丈夫かな?

 

結果として、どうにかなったけど、少し狭かった。

そんなのもたまにはいいかなって皆で笑った。

ネプギアは少し、思い詰めた様子だったけど…

 

お風呂は大変でしたね…はい。

 

それで、後は寝るだけになって少し喧嘩が始まった。

主にあの二人の。

 

「イッセーさんは許しませんよ、ねぷ姉ちゃんと寝るなんて!」

 

「看病してる時もしたが?」

 

「はー?それとこれとは話は別ですし?不純異性行為ですよ?」

 

「羨ましいのか?残念だったな」

 

「う、羨ましくねぇし?何なら俺は一人でいいし?」

 

「ごめんなさい、一誠さん…人数も人数なのでそっちで寝ていいですか?」

 

「問題ないぜ。大体ヴァーリ君は躊躇無いですよねぇ?」

 

「甘えてくる彼女が可愛いものでつい」

 

「ついじゃないですよね!」

 

ちょっとヒートアップが激しくなりそうだったからそろそろ口を挟もうと思ったらお母さんが

 

「一誠?」

 

「母さん、母さんもどうかと思うよな!」

 

「今日一日は許してあげなさい。ねぷちゃんの為にもね」

 

「何ぃ…ぐぬぬ……お、覚えてろ!」

 

「あ、待ってくださーい!」

 

悔しげな一誠が自分の部屋へと逃げていって、ネプギアもついていった。

あーちゃんは終始傍観していて、終わった後にあははと苦笑する。

 

「仲良いですよね、ヴァーリさんとイッセーさん」

 

「良くないが」

 

「男同士の友情なんてそんなものよ。オーフィスちゃんは私達と寝るから問題ないわ。ねー?」

 

「ねー」

 

お母さんはオーフィスが気に入ったようで可愛がっていた。

オーフィスも満更どころか嬉しそうだったし…善きかなって奴だね。

そうしてあーちゃんとヴァーリ、自分で寝ることになった。

黒歌は英雄派の皆のところに行っちゃった。小猫ちゃんのところに行けばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、寝たと思ってたんだけど…

何か、変な場所に立ってるんだよね。

しかも、誰も居ないし。

 

うん、ここ何処?

 

誘拐事件?異世界来ちゃったかー…

 

「…じゃなくて!本当にここ何処!?ベッドは?私の快適睡眠タイムはー!?」

 

そうやって叫んでいると、それに答えるように

 

『突然の呼び出し、申し訳無い』

 

「ほあっ!?」

 

そんな厳つい声と共に、それが自分の前に姿を現す。

赤くて、巨大で、二対の翼を持ったドラゴン。

…え、あの、何の用で…?

 

もしかしなくても、多分あれだよね?

 

「ぐ、グレートバリアリーフさん?」

 

『すまない、その世界最大のサンゴ礁地帯ではない。

私はグレートレッド…と呼ばれている』

 

「あ、あーうん…そうそう、グレートレッド。

ってほぁぁぁぁぁぁ!!?

どうして私を!?オーフィスとつるんでるから?」

 

『そうではないのだ、女神…いや、ネプテューヌよ』

 

「あ、はい…」

 

否定してくれてよかった!危うく冥次元、完!ってなるところだった!

グレートレッドは申し訳無いという様子で自分に語りかけてくる。

 

『君を呼び出したのは他でもない。

報せと、釈明のためだ』

 

「報せと、釈明?」

 

『そう、一つは君に対して、もう一つはオーフィスについてだ』

 

「えっと…うん、どうぞ」

 

座り込むと、少しゴツゴツしている。

うーん、地面。

 

『では、一つ目だが…』

 

 

 

 

 

 

『─君はいずれ、私やオーフィスと同じ位置に来るだろう。

夢幻()無限(オーフィス)のような、新たなむげん(次元)に…』

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠れなくて、ベッドから体を起こす。

…強くならないといけない。

そう言われて、どうすべきだろうと悩む。

このまま、お父さんと共に鍛えるべきか、皆さんの輪に入って鍛えるべきか。

 

私はお姉ちゃんを越えるためにお父さんが生み出した女神候補生。

…それは納得してる。

でも、本物の強さを私は持ってない。

それじゃ、お姉ちゃんを越えるどころか皆さんの足を引っ張ってしまう。

 

皆さんは、どうすべきかを理解してるようだった。

ううん、方針を決めようとしているようだった。

私はそれすら出来てない。

 

「眠れないのか」

 

「あ、一誠さん…起こしちゃいましたね」

 

「うんにゃ、俺も少しな。悩んでるのか?」

 

「え、どうして…」

 

「そりゃ、飯食ってる時に思い詰めてたり、元気無さそうな今のネプギア見てたら分かるよ」

 

「…すみません」

 

「謝ることじゃないだろ?相談乗るぜ、前に乗ってくれたから、その恩返しってことで」

 

起きた一誠さんは私の悩みを聞こうとしてる。

…話した方がいいかな。

私は思いきって、どう強くなるべきかを話すことにした。

周りがどうすべきか分かってるのに、私だけ置いていかれてるようで…

 

一誠さんは一通り聞いてからなるほどなぁと一言。

 

「んー、ネプギアはどうして強くなりたいんだ?」

 

「えっと…それは、お姉ちゃんを越えたいから」

 

「憧れてんだな、姉ちゃんに」

 

「はい、お姉ちゃんは…諦めない強さがあるから、私もそんな風になりたいって思って」

 

「分かる!だよなぁ……なら、一回姉ちゃんと戦うしかあるまい!」

 

『脳筋が』

 

「うるせぇぞドライグ!」

 

「その、どうしてお姉ちゃんと?」

 

「そりゃあ…実際どれくらい強いか分からないだろ?

確かめてみないとな!」

 

うーん…確かに、そうなのかも。

どれくらい強いかを理解してから、そこを目指していく…のかな。

ううん、違う。

多分、一旦果てを知った方がいいと言ってるんだ。

闇雲に強くなろうとしたら空振る。

…そう言ってるんだと思う。

 

少し、分かった気がする。

 

私はさっきよりも軽くなった気分を感謝するためにお礼を言う。

 

「ありがとうございます、一誠さん!」

 

「お、おう」

 

よし、お姉ちゃんと戦おう!

きっと答えはそこにある筈!

 

 

 

『相棒、どうするんだ、勘違いされてるぞ』

 

「…け、計画通りだぜ」

 



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お話×朝食×覚悟

ども、ロザミアです。
まだこの章終わってねぇ…
でも、ここは成長のためにも頑張ります!!


目の前のドラゴン、グレートレッドが言った言葉を頭の中でもう一度再生する。

自分が、目の前のグレートレッドやオーフィスと同じ位置に行く?

むげんに、なる?

 

「ごめん、分かんないや」

 

『だろうな』

 

「強くなるってこと?」

 

『それもある。だが、強さとは力のみを指すものではない事は君も知っているだろう?』

 

「うん」

 

『…しかし、むげんになるということは等しく世界の枠組みから逸脱した化け物になるということだ』

 

「そんなこと無い!グレートレッドもオーフィスもこうやって話せるじゃん!化け物なんかじゃ無いよ!」

 

自分の否定の言葉にグレートレッドは頷く。

 

『ありがとう、君の言葉は純粋だな。

けれど、周りからすれば私とオーフィスは不気味な存在なのだ。

故に外から世界を見てきた。世界の危機でない限り私はその空気にすら触れることは無いだろう』

 

「でも、オーフィスは?」

 

『あれは私が意図的にやったことだ。

敢えて、追い出した。…何故やったか、理解できるか?』

 

「分からないけど、オーフィスの為だったんでしょ?

ずっといたのに、今さら追い出すなんておかしいもん」

 

その通りだと満足そうにふっと笑う。

グレートレッドはオーフィスに何かを伝えたかったんだね。

 

『心を育んで欲しかった。

永い時を生きるには、無感情は丁度よかったのかもしれない。

だが、我々は役目ある龍。心の無い者に判断は出来ない』

 

「でも、言えばよかったんじゃ…」

 

『私が伝えてもついぞその必要性を見いだしてはくれなかった。

オーフィスも何故追い出されたか分からないだろう。

だが、結果としてオーフィスはあそこまで心を得ることができた。一重に君や仲間達のお陰だ、感謝する…そして、多大なる迷惑を掛けたことを深く謝罪しよう』

 

グレートレッドはそう言って頭を下げてきた。

自分は慌ててグレートレッドに頭を上げさせる。

いやいやいや、そんな謝ることじゃないよ!

 

「オーフィスの為にやったことなんだから謝ることじゃない!

それに、今のオーフィスなら話せば分かってくれるよ!」

 

「ん、我理解する」

 

『む…そうか、分かってくれるかオーフィス──』

 

「ほら、オーフィスも分かって──」

 

 

 

 

 

「『オーフィス!!!?』」

 

 

 

 

 

「ぶい」

 

隣を見るとボーッとグレートレッドを見るオーフィスがいた。

しかもぶいってしてきた。

い、いつの間に…?

 

「グレートレッドの匂い、した。問い詰めに来たら、理由分かった」

 

「な、なるほど」

 

『…力ずくで追い出したこと、申し訳無い。

だが、私に心があるのにお前には感じる心が備わっていないのは…嫌だったのだ』

 

「善悪も分かる、ふんす」

 

『そのようだ。…どうだろうか、まだこの空間に戻りたいだろうか?』

 

「…うむむ」

 

オーフィスは悩み出す。

最初の目的は戻ることだもんね。

だから、その目的をどうするかだから簡単に決めるのはって事かな。

 

しばらくして、考えが纏まったオーフィスがグレートレッドをジッと見る。

 

「やっぱり、我帰りたい」

 

『静寂は寂しくないのか?』

 

「寂しいけど、また戻ってくればいい。

グレートレッドも、寂しい」

 

『オーフィス…』

 

「後、嫁入り」

 

『そうか、嫁入りか……うん?』

 

「グレートレッド、我と番になる。OK?」

 

『いや、全然OKじゃないが?』

 

…あ、何かお邪魔かな?

ねぷ子さん、少しさがってるね…

そうしようとした時、グレートレッドがキッと自分を睨んでくる。

逃げるなとばかりの眼光に蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。

 

「グレートレッドは我を心配した」

 

『そうだな』

 

「申し訳無いとも思ってる」

 

『うむ』

 

「つまり、我を想ってくれている。これは夫婦では?」

 

『何故その考えにまで飛躍したのかを問い詰めたい』

 

「違う?」

 

『違うな。そんな自信満々に聞かれても私の態度で分かってほしい』

 

「そう…」

 

ショボンとした様子のオーフィス。

もしかして、オーフィスって色々と無鉄砲?

あ、これ違うや何も考えてないだけだ。

グレートレッドはやれやれといった様子でため息をついた後、自分をまた見つめてくる。

 

『さて…話は終わってないのだ』

 

「え、でも報せとかも聞いたよ?」

 

『ここからは私個人がする話だ。

君がオーフィスと私同様の存在になるのは…ハッキリといってどうなるか分からない以上恐ろしい』

 

「恐ろしい?」

 

『君が、ではなく君の取り巻く環境がどう変わっていくのか…それが私には恐ろしいのだ』

 

「例えば、ネプギア」

 

『真に君と近しい存在は、彼女だろう。史書はまた別の存在だ。

生まれは同じであろうと、生まれの意図が違うのだから』

 

「ネプギアが?」

 

あの優しいネプギアがそう変わるとは思えないけど…でも、二人の懸念は何となく分かる。

何かが少し変わるだけで大きく物事は変動する。

それが怖いのは自分も同じだから、分かる。

 

「ネプギアは可能性の塊、道がいくつもある」

 

『今が伸びた末に純粋そのものの女神になるか、それとも大きく歪み混沌の女神となるか。

それらを写し出すことは容易いほど彼女は透明だ』

 

「グレートレッドの能力?」

 

『如何にも。何も『夢幻』とはそう呼ばれてるだけではない。

その名に相応しい力があるものだよ。

私はその名の通り夢と幻を司る。君でいう理想とは似ているが大きく違うものだ』

 

「そうなんだ…」

 

具現化は出来るって事かな。 

難しくて分かりづらいよー!

 

『他にもいるが…君ならば導けると信じている。

申し訳無いが私は基本的にそちらに干渉はできない。

いや、しないというのが正しい』

 

「えっと、強すぎるから?」

 

『それもある。だが、私の役割にこそ理由はあるのだ』

 

「それを言えば我も関わるべきじゃなかったと思う」

 

『…そうだな、私の感情だ。今のは取り消してくれ』

 

グレートレッドなりの理由があるんだろうね。

なら、自分も特に何か言うことはないよ。

 

グレートレッドは申し訳無いと言った後にそろそろだなと名残惜しそうに言った。

 

『これ以上は君の精神に支障をきたす。

今回はここまでとしよう。その前に、最後に観ることしか出来ぬ私から贈り物をさせてくれ』

 

「贈り物?」

 

『ささやかながら、私から君へ。

どうか、君の夢が輝かしき未来へと繋がるよう─』

 

グレートレッドが指を自分へと翳すと赤い光が自分へと降り注ぐ。

暖かいそれを自分は静かに目を閉じて浴びる…

けど、何かが変わったようには感じない。

一体、どんな贈り物を…?

 

『どのような困難であれ、未来へと切り開く力…シェアのその先へと向かうための鍵のようなものを与えた。

後は、その時の君次第だ、ネプテューヌ』

 

「……むぅ、我も渡す」

 

『オーフィス、遊びではないのだ』

 

「分かってる、でもこれくらいは罰は当たらない」

 

「え、オーフィスまで?」

 

「ん、我も可能性を与えるだけ。

無限の可能性…とまではいかない。でも、最大限のお礼」

 

オーフィスも羨ましいとばかりに自分の手を握って何かを流し込んでくる。

よく分からない感覚、意識がハッキリとしていくような…そんな感覚。

 

グレートレッドはやれやれと呆れを含んだため息をついた。

 

自分はどうなっていくのか分からないまま、意識が朦朧としていく。

せ、せめてお礼は言わないと…

 

「次、会えた時は…友達、だよね?」

 

『─そうであることを、心より願っている。

またいつか、その時に』

 

「ありが…とぅ…二人、と…も…」

 

お礼を言えた自分はそのまま意識が暗転する。

倒れ込むというより、その場で寝に入るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチリ、と目を覚ます。

いつもならこんなに鮮明に意識がすぐにハッキリとしたことはない。

けど、今日は別だった。

 

「…現実…?」

 

夢を介した現実。

そう表現する他ない事があった。

夢って基本的に覚えてないものだし…どんな会話をしたのか覚えている。

…でも、この事は言わないでおこう。

皆の為にも、あまり大きな事は避けておこう。

 

グレートレッドが今になって接触してきた事は何かの前兆のようなものを感じさせてならない。

それに、グレートレッドを頼ることは出来ないことが分かった。

多分、良くあるご助言キャラだね!

 

天井をボーッと見ること数分して、横を見るとあーちゃんとヴァーリはまだ寝てる。

うーん、早く起きちゃった?

 

「よっこいしょ」

 

ベッドから降りて、そっと部屋を出る。

動けない時に比べたら本当に動きやすい。

本状態のいーすんがフワフワと自分について来ていた。

 

「あれれ、寝てていいよ?」

 

─まだ、寝てていいのでは?

 

「私はいいよ、寝過ぎて寝れないしねー。

それに、夢を見たから寝る気失せちゃったや」

 

─夢ですか?

 

いーすんは自分が声を小さくして話しているからか、それとも単純に眠いからか自分にだけ語りかけてくる。

自分は眠気が吹き飛んだ頭で色々と考えながら話す。

 

「そうそう、色々あるんだよーねぷ子さんにも。

どうしたらプリンを何個も食べられるかなーとか」

 

─今ならやれそうですがね

 

「自分の力でやりたいじゃん?」

 

─そういうものですか

 

「そういうもの!いーすん、お腹空いた?」

 

─…そうですね、何か軽く食べたくはあります

 

「そっか~…じゃあ、ねぷ子さんが特別に何か作ってあげるよ!」

 

─え゛

 

「え、何?」

 

─いえ……作れるんですか?

 

「だいじょーぶ!レシピ通りに作れば余程の事がない限り美味しいって!」

 

─…側でアドバイスしますね

 

「いーすんが手伝ってくれるならもう完璧だね!」

 

よーし、皆の分も作っちゃうぞ~!

ねぷ子さんだって料理できるってところをしっかりと見せてあげないとね!

このクッキングビーナスなねぷ子さんのスキル、刮目せよ!!

 

 

 

 

 

「ね、ネプテューヌさん!塩と砂糖を間違えてますよ!」

 

「卵に殻が入りすぎです!」

 

「そんな入れたら駄目ですよ!?」

 

「ネプテューヌさん!?」

 

 

 

 

 

─そうして、出来上がったのが…

 

「これ、何ですか?」

 

「タマゴヤキダヨ」

 

「卵、焼き…?」

 

「ウン」

 

目の前には紫色の卵焼きと思わしき物体が皿に乗っていた。

…いや、うん。

まさか、一工夫入れるだけで紫色になるとは。

 

「凄いね、料理」

 

「あの、ネプテューヌさ「いーすん、食べるよね?」え、あの私は「食 べ る よ ね ?」……はぃ」

 

少しガクガク震えながらいーすんは、小さいフォークを使って紫色の卵焼きを取る。

それを見る表情はおぞましい何かを見るときのそれで、SAN値がガリガリ削れているような…そんな感じの心境を思わせる。

 

「…一工夫、したんですよね」

 

「いーすんも見てたじゃん!シェアを注入してみたよ!」

 

「何故、それで紫色に…パープルハートだからですか…?」

 

「まあまあ、変な匂いはしないでしょ?」

 

「その代わり美味しそうな匂いもしないですが」

 

「食べてみたら美味しいかもよ!紫キャベツと思って!さあ!」

 

「…覚悟を決めました、いきます…!」

 

いーすんは意を決した面持ちで口を開けて、それを食べた。

 

…瞬間

 

「─?──!──~~~!?」

 

「い、いーすん?」

 

「─コフッ」

 

百面相をした後、いーすんは自分を恨めしそうに見た後に血を吐いて倒れた。

 

い、い…

 

 

「いーすーーーーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、こんなことに…!」

 

「だから言ったのよ…ねぷちゃんはしちゃ駄目って…」

 

「何で、何でやったんだ姉ちゃん!

それはいけないことだって…分かってたことじゃねぇかよぉ!!」

 

「う、うぅ…いーすん…!」

 

「い、生きてます…」

 

自分の叫び声に皆が集まってきて、この惨状を見た結果叱るお母さんと一誠に正座する自分。

いーすんはネプギアとお父さん、あーちゃんに介抱されて復活している…んだけど。

 

ヴァーリが紫の卵焼きをじっと見ている。

 

「あの、ヴァーリ?」

 

「これ、捨てるのか?」

 

「え、うん」

 

「そうか」

 

そう言って、ヴァーリはさっきの惨状を目の当たりにしたにも関わらずそれを口にした。

戦慄ッ、あの状況を見たのに食べるなんて…作った自分でも食べる気がしないのに!

 

一誠がヴァーリの両肩を掴む。

かなり心配そうな顔だ。

 

「お、おいおい!今すぐペッしなさい!死ぬぞ!死ぬぞ!?」

 

「……美味い」

 

『本気か、ヴァーリ!?』

 

「アルビオン、俺は食に嘘はつかない」

 

「ヴァーリぃ~~!」

 

普通に美味しそうに食べるヴァーリに感極まって抱きつくとよしよしと頭を撫でられる。

周りは正気かこいつという目で見てるし、何ならお母さんは味覚障害…?とか言ってる。

ちょちょちょ、失礼すぎない!?

 

「そこまで言うなら食ってみるか~」

 

『正気か…?』

 

「まあ、美味いんだろ?」

 

「ああ、美味い」

 

「イッセーさん、やめた方が…」

 

(そうなんだよなぁ、いーすんはぶっ倒れたんだよなぁ)

 

ネプギアの一言に同意するように目が虚ろになりかけたけど首をぶんぶんと振ってからフォークを手にとって例のあれを一思いに口へと運んだ。

オーフィスですら息を呑む…

もぐもぐと食べる一誠に一同は緊張の面持ち。

 

その後、一誠はフォークをテーブルに置いてから…

 

 

「無」

 

 

その顔は虚無だった。

美味しいという反応も、まずいという反応もない虚無。

ただ瞳は虚ろで悲しいものだった。

 

「無?」

 

「味がね、無いの」

 

「そんなことある?」

 

「…これ、もしかしてなんだけどさ…ロシアンルーレットみたいになってんじゃねぇか?シェアを投入したせいで変質したんじゃ?」

 

「う、うそぉ…」

 

「…なら、俺があとは食べよう」

 

「頼む…」

 

「気にするな、俺はこの卵焼きは好きだ」

 

「はうあっ!?」

 

す、好き、好き、好き…

おおう、今旅立ちそうになった!

なんて威力なの…!?アレは間違いなく自分を駄目にする言葉だ!

 

それから、あーちゃんとネプギアが朝御飯を作って皆で食べた。

ちなみに黒歌は見計らったかのように帰ってきて食べた。

ヴァーリは今日一番は自分の卵焼きだそうです…

そして、強くなるためとヴァレリーの様子を見るためにまた施設を訪れる。

前にメールでトレーニングルームを作ったとかなんとか。

ヴァレリーちゃんの回復のためでもあるんだって。

 

リアスちゃんや朱乃ちゃんも誘ったんだけど…

 

『ごめんなさい、お兄様に呼ばれてるの』

 

『あらあら、お父様と共に行かせてもらいますわ』

 

といった風に朱乃ちゃんは承諾してくれたけどリアスちゃんには断られちゃった。

 

「よし、やって来ました!」

 

「待ってたぞ、女神達」

 

「バラキエルさん!おひさー!朱乃ちゃんおはよー!」

 

「お久し振りです!」

 

「えっと…初めまして、ネプギアです」

 

「あら、元気ですわね。おはようございます、皆」

 

「ああ、初めまして、私はバラキエル…朱乃の父だ。

それと、久しいな」

 

施設に着いた自分達を朱乃ちゃんとバラキエルさんが出迎えてくれた。

おっちゃんはいるのかな?

 

「バラキエルさんは幹部だけど、何か無いの?」

 

「無論ある。それもあって朱乃の面倒を見れなかったからな…」

 

「そっかぁ…おっちゃんは?」

 

「中にいますわ。ギャスパー君もいますわよ」

 

「お見舞いってことか…トレーニングルームに行く前に様子見に行くか?」

 

「…やめておけ。話したいことが多いだろうからな、二人の時間というのは大事だろう」

 

「それもそうか…よっし、ヴァーリやろうぜ!」

 

「ああ」

 

そうして中に入ると、研究員の人達が忙しなく動き回っている。

 

「何してるの?」

 

「マリウスから聞き出した聖杯の情報と実際のデータから色々と調べているそうだ。うまくいけばヴァレリー・ツェペシュの聖杯への負担の軽減にも繋がるだろう」

 

「そうなんだ」

 

「まあ、この研究員達の数名は別の案件だが…」

 

「どういうことっすか?」

 

「女神のシェアエネルギーについての研究だ。

進化するシェアは我々堕天使にとっても興味の対象でな」

 

「お父様…」

 

朱乃ちゃんの不安そうな声にバラキエルさんはふっと笑うと問題ないと言う。

 

「アザゼルと私とシェムハザが選んだ研究員達だ。

勝手な行動はしない。しようものなら…」

 

「しようものなら…?」

 

「首と体が別れるだろうな」

 

「ヒェッ」

 

「お父様?」

 

「むぅ、事実これはあまり外に出してはならん事なのだ朱乃」

 

「…仕方ないことなのですね」

 

機密事項が自分の力。

そう聞くと、一概にもいい訳じゃないんだって実感させられる。

そりゃ、ネプギアと自分しかシェアが使えないからそうなるのも納得するけど…辛いね。

 

その後は地下にトレーニング施設があるそうで、エレベーターに乗る。

 

かなり下に下がっているようで…少し待った。

でも、着いたときは興奮したんだよ!

だって…

 

「す、すげぇ…なんだこりゃ!?」

 

「地下は大自然だった…!」

 

「科学の力、なんですか?」

 

目の前に広がっていたのはまさに自然そのものだった。

目測でも広さは結構あるし、森はあるし岩場もある。

簡易的なトレーニングルームというには済まないものがそこにはあった。

 

いーすんは何かを確認するように草木に振れている。

 

「これは…シェア?」

 

「え?」

 

「使った覚えないよね、お姉ちゃん?」

 

「うん…」

 

「おー、流石は史書だなイストワール!」

 

「この声は…」

 

上から声がして見上げるとおっちゃんが農業をするような格好で飛んでいた。

完全におっちゃんだね?

 

「アザゼルさん、これは…」

 

「安心しな、ネプ子を検査してた時のを使っただけだ。

全部が全部シェアで作った訳じゃねーし残ってもねぇ」

 

「アザゼルはシェアの応用を実験したのだ」

 

「前に言ってた枯れた大地がどうのって奴?」

 

「おう、その通りだ!

そして、試しに何とか指向性を持たせて使ったらこれだ。

まさに創の力みてぇで興奮したね」

 

その言葉を聞いてからもう一度辺りを見渡す。

太陽とかはないけどそれを除けばある程度生物が生きられる。

そんな風にも見える。

 

これがシェアの可能性…!

 

「凄い!私、感動したよおっちゃん!!

こんなに綺麗で、すっごいのは見たことない!」

 

「そうだろそうだろ?おめぇに見せてやりてぇと思って作った甲斐があるぜ」

 

「私のため?」

 

「シェアの可能性を間近で見て、感じてほしかったのさ。

お前さんは無限の可能性を持った奴なんだってよ」

 

「おっちゃん…!」

 

「うぉぉぉん!俺は感動したぜ、おっさん!!

姉ちゃんの為にそこまでしてくれるなんてよぉぉぉ!!」

 

「お前本当にアザゼルか?」

 

「おいヴァーリそりゃどういうことだテメェ」

 

皆のやり取りを聞きつつ、何度もこの目に自然の光景を忘れまいと見る。

これが、自分の可能性。

 

「…」

 

ネプギアも何か感じるものがあるのか真剣な様子でこの光景を見ている。

そして、ぐっと手を握ってから自分の方へ顔を向ける。

 

「あの、お姉ちゃん!」

 

「なぁに?」

 

「えっと…その…」

 

「ネプギア、言っていいよ。言葉を頭で整理して、ゆっくりでいいからね」

 

「!う、うん!」

 

言おうとして戸惑う様子のネプギアに、落ち着くように言う。

多分、予想できるけど…ネプギアの口から言うことに価値があることなんだ。

ここは、聞く姿勢でいなきゃね。

 

「私、強くなるために頑張って…それで、お父さんと特訓を重ねて…」

 

「うん」

 

「でも、強くなれたのか分からないの。

お姉ちゃんに追い付きたい一心で、頑張ってるけど…分からなくて」

 

「うん」

 

「だから…私と、戦ってほしいの!お姉ちゃんにどこまでやれるか、私がどこまで強くなれたのか…理解するために!」

 

…強い子だと思う。

悩んで、悩んで悩み抜いたんだろう。

きっと、決心が着いたのは昨日だと思う。

けれど、しっかりと戦おうと明確な形にしたのは今。

すぐに出来ることじゃないし、やろうと思ってやれることじゃない。

 

妹のお願いだもん、ここはしっかりと応えないと主人公で姉じゃないよね!

 

「分かった!私と戦おうネプギア!」

 

「…うん!」

 

「よく言ったぜ、ネプギア!」

 

「女神対女神…こりゃ、今日一番のイベントだな。記録しねぇとな」

 

「いーすん、おっちゃんと一緒にいてね?」

 

「…病み上がりですので、ご無理はなさらぬように」

 

「うん」

 

皆が下がり、自分とネプギアはそれぞれの武器を手に構える。

まずは女神状態じゃない方で、確かめないとね。

 

…うん、強い(・・)

絶対に自分でも苦戦する。

そんな予感がする。

あの目は迷いのない目だ。

決めたことを貫く目。

…自分よりも、女神らしい。

 

「しっかりと来てね、ネプギア!」

 

「言われずともだよ!お姉ちゃん!」

 

しっかりと相手を見て、本当に似てるなぁと思う。

だけど、やっぱり()()しかいないとも。

 

相手へと駆けたのは、同時だった。

 




次回、『次世代の戦い 前編』


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次世代の戦い 前編

さあやってまいりました、ネプギアVSネプテューヌ。

もっと戦うんだ…戦え…戦え…


女神化した状態ならまだしも普通の状態で出来ることは消費の荒いシェアを用いた攻撃か武器による攻撃といったところ。

それでもそういった部分で差は出るものだって漫画で言ってた!

 

シェアで創った木刀とネプギアの自作したビームソードがぶつかり合う。

 

「どうして、木刀で受けきれるのか分からないよ!」

 

「それは主人公補正かな!パワースラッシュ!」

 

「っ─」

 

鍔迫り合いをしてる最中に一瞬だけ力を抜いた後に再度力をより込めて振るって体勢を崩す。

よくやってた手法だけど、ネプギアは知らないよね?

 

そのまま畳み掛けようとして、危険を察知する。

即座に木刀を盾にするように付き出すとビームソードがぶつかる。

 

…わぁお、崩された体勢を無理矢理シェアの強化で整えて斬りかかってきたよ。

 

悔しそうな表情を浮かべるネプギアにふふんと得意気に笑って見せる。

 

「ずっとその体勢辛いでしょ?」

 

「っ、流石だね」

 

今の攻防をするだけで分かる。

この子は成長している。

戦いながら強くなっていくなんて、どこの野菜人なのネプギア!

 

でも、勝ちは譲れないよ!

 

「イヤーッ!おりゃりゃりゃ!!」

 

「くぅ!」

 

シェアで身体能力を強化して押し込む。

膝を曲げたネプギアにラッシュを叩き込む。

ビームソードで何とかガードしてるけど、このねぷ子さんの剣撃いつまで受けきれるかな?うぬの力はその程度かトキ!じゃないネプギア!

 

その時、ビームソードに紫電が走る。

 

「サンダースラッシュ!!」

 

「フレイムソード!」

 

炎と雷がぶつかり合うものの、すぐに重みは消える。

振るったと同時に退いたんだ。

ありゃ、仕切り直しだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…くっ」(強い!何百年も戦ってきた鬼神のよう…!)

 

純粋な戦闘センスだけじゃない、瞬時の判断とそれを可能にするだけの技術がお姉ちゃんは持ってる。

私はそれを見よう見まねでやっているだけ。

これじゃ離れてく一方だ…なら!

 

息を整えて、迫ってくるお姉ちゃんを見捉える。

 

口はああだけど戦いに関しては私よりも数段上。

シェアを封じられた状態じゃないお姉ちゃんはこんなに強いなんて。

記憶の中のお姉ちゃんと何も変わらない…!

 

なら、私は!

 

「高速剣舞─ミラージュダンス!!」

 

シェアで更に脚力を強化して駆ける。 

この瞬間だけなら、お姉ちゃんの意表を突けるはず…!

事実、お姉ちゃんはその場で立っていた私が目の前に、懐でビームソードを振るおうとしてるのを見て目を見開いている。

 

だというのに…

 

「──」

 

(なんで笑ってるの…!?)

 

何かを確信しているかのような、そんな笑みを浮かべたと思ったら私を目だけ動かして見てきた。

背中に突然氷を当てられたような、そんなぞっとする感覚と共に頭に警報が鳴り響く。

 

上を見れば私の頭上に剣が一本向いていた。

 

瞬間、強化した足でお姉ちゃんの後ろに回り込むのと剣が落ちてくるのは同時だった。

殺す気のような攻撃だった…!でも、殺気はない…なんで…!

 

ううん、後ろは取った!

なら──!

 

 

 

「死角、と思ったよね?」

 

 

 

「っ!くぁ!?」

 

ギャリ、と何かが逸れる音がした。

咄嗟の反応をしなかったら…今逸らした木刀に突かれてそのまま負けてた?

目の前のお姉ちゃんは振り向き様に突きを放ったんだ…!

あの剣の射出は…誘導だったんだ。

少し考えれば分かることだった。

 

そうすれば、ミラージュダンスを当てられる可能性はあった。

 

お姉ちゃんの目は…鋭かった。

普段のあどけなさなんて無い、戦いをする時の、倒す人を定める目。

合わせに来ているとはいえ、全力で倒しに来ているんだ…

 

さっきもそうだけど、もう一つ分かった事がある。

 

お姉ちゃんは判断能力が高いだけじゃない、状況を理解してそれの打開策を即座に出せるだけの択があるんだ。

引き出しが多い、シェアがあっての事だけど…それを余すことなく使ってる。

頼光さんとか他の人もこの緊張を知ってるのかな…?

 

「ネプギアの器用さはその武器と動きを見れば分かるよ。

流石私の妹って感じだね。…でも、私も器用なんだ、知ってた?」

 

「…!」

 

そう言いながらも手を止めてくれない。

攻めの手はまだあるとばかりに振るってくる。

木刀じゃなくて真剣だったら…そんな考えが過る。

 

「多分、実戦は余りしたことないよね?」

 

「うん…!」

 

「なら、後は登るだけだ、よ!」

 

武器を構える暇もない!

防戦一方…振るうだけじゃなく何度も放たれる突きに活路を見出だせない。

駄目だ、このままだと呑まれる…!

 

 

 

 

 

─『俺は…俺の憧れに追い付くまで死ぬか!』

 

瞬間、京都での戦いを思い出す。

あの時、一誠さんは…死にそうな状況でも諦めず、必死に足掻いた。

それが勝利に繋がって、誰も犠牲にならなかった。

 

そうだ、あの時と何も違わない。

私の憧れはお姉ちゃんで、その憧れと戦ってる。

私のために、強くなるために!

 

ビームソードを握る力が強くなる。

反撃できないなんてあるわけない。

乗り越えるんだ、この壁を、この一瞬一瞬を全力で。

何より、私にこのきっかけをくれた彼にこんな無様を見せられません!!

 

「スラッシュウェーブ!!」

 

「!」

 

地面に衝撃を放ち、砂埃が舞う。

そして、剣を振るよりも早く拳を握ってお姉ちゃんの肩を殴る!

 

「ギア・ナックル!」

 

「うぁっ!」

 

(やった…!)

 

一撃だけ、されど一撃。

私はついにお姉ちゃんに一撃を与えることが出来た。

決定打にすらならないけど、それでも活力が湧いてくる。

 

大丈夫、今までの努力は無駄になってない。

 

まだまだ…戦えます!

 

「やるじゃん、ネプギア!鋭い攻めになったね!」

 

「…私の事を応援してくれた人がいるから、頑張れるんだ」

 

「へぇ、昨日の時だとして…一誠かな?」

 

「うん、一誠さんが言ってくれたからこうしてお姉ちゃんと戦う意志が固まったの」

 

「隅に置けないなぁ一誠も」

 

「?」

 

「ううん、なんでもない!」

 

ほら、続きと木刀を構え直すお姉ちゃんは平然としている。

…私はそれに待ったをかける。

 

「およ、どうしたの?」

 

「お姉ちゃん、女神化して」

 

「…もう生身はいいの?」

 

「うん」

 

お姉ちゃんは多分、本気じゃない。

だって、私よりもシェアを使った技はいくつもある筈なのにそれを使わない。

それは私に合わせてるんじゃなくて意識の問題なのかもしれない。

 

お姉ちゃんはそっかそっかと言うとシェアを使って女神化する。

 

私もそれに合わせるように自分の中のシェアを使って女神としての姿…候補生だけど…パープルシスターに変身する。

MPBL、私の武器…何度も改良を重ねてきた武器。

…女神のお姉ちゃんを越えないといけない。

それが私の目標で、お父さんが望んでいること。

 

殺す殺さないじゃなくて、純粋に越えたい。

 

だから、やってみせる。

私の強さを証明して見せる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神化をしてから、パープルシスターになったネプギアを見る。

どんどん成長しているんだなぁ、と物思いに耽りそうになってまだ戦いは続いてることを思い出す。

 

「こうしてしっかりと女神の姿を互いに見せるのは初めてね」

 

「私は先に見たけど、うん、こうして互いに女神化するのは初めてだね」

 

驚いた、変わらないんだ。

 

自分はこうなるけど、ネプギアはあまり内面が変わらない。

そっか、そうなんだ。

ネプギアって、本当に凄い女神になるのかも。

 

「本気で来てね、お姉ちゃん」

 

「…分かったわ」

 

本気なんだけど…うーん…

本当は嫌だし、あまりやらないけど…

でも、そこまで言われたらやるしかないかな。

じゃあ、本気でやろう!

ねぷ子さんの真の力見てみよ!

 

「じゃあ、本気でいくわよ?」

 

「お願い」

 

「ええ、妹の頼みだもの─」

 

 

 

 

 

「─本気(殺す気)よ」

 

 

 

 

 

「─ッ!!」

 

ネプギアの喉元目掛けて一点集中で強化した足で音を置き去りにして突きを放つ。

けど、それもネプギアの銃と剣が一体になった武器によって逸らされる。

勘がいいね?

 

でも、逸らすだけでも精一杯だったのか自分を見てくる。

ごめんね、本気だから微笑みサービスも無しだよ。

 

横腹に蹴りを入れて森の方面に吹き飛ばし、すぐに追う。

 

「あぁっ!!」

 

「疾ッ─!」

 

『本気』の自分は表の顔っていうのかな、『ネプテューヌ』を後ろへと追いやって『自分』を表にする。

…うん、こう見えて普通な自分だからね、殺意とか何だとかは普通にあったりするよ?そりゃありますとも!

 

ネプギアが体勢を吹き飛ばされてる途中で立て直して何発もビームを発射する。

乱雑そうに見えて、避ける先を潰しながらの狙い撃ち…自分じゃ銃の才能はあんまないかな!

 

でも、こういう時正面突破するよ?

 

刀を二度振るってビームを二度弾く。

ああ、やっぱり同じ位置にもう一発撃ってたね。

 

ただ、それくらいは読んでたのか後ろに後退されて距離が空いてしまった。

うんうん…いい判断だね。

でもね、何のために森に叩き込んだんだと思う?

 

「32式エクスブレイド─6連─!」

 

背後に6本の剣を作り、散らばるように射出する。

本気で戦う以上卑怯も何も関係無く、どんな手を使ってもネプギアを倒すよ。

だから、どうかこれくらい越えてね。

 

そう願いながら自分もネプギアへと地を蹴って接近する。

 

ネプギアの表情は明らかに焦りが浮かんでいる。

まあ、いつ来るか分からない攻撃があったら焦るよね。

でも敵は待ってくれないよ!

 

牽制のビームを放ってくるけどそれを物ともせずに弾いて追い付いつく。

ネプギアへと躍りかかる。

 

「ふっ!!」

 

「っ、まだ!」

 

ネプギアが手に炎を集めて放ってくる。

剣じゃないのは、まだまだ不安があるから?

でも威力はありそうだね。

なら…

 

「甘い!」

 

「えっ!?」

 

盾にした刀を捨てて素手で殴りかかる。

拳振るのは一誠の専売特許じゃないよ!

 

咄嗟に剣を使ってガードしようとした時、射出していた一本が飛来してそれを弾き飛ばす。

 

「これでがら空きね」

 

「しまっ─」

 

「コンボアーツ!」

 

拳をネプギアに二発叩き込んでから胸にさらに重い一撃を放つ。

 

「ぁ、ぐぅ─!」

 

そして、追撃のように残り5本の剣がネプギアへと飛来し─

 

 

 

「─ま、だまだ!!」

 

 

 

─咄嗟にシェアで生成したのか、歪な盾がネプギアを守る。

 

もう覚えたんだ。

早いねぇ、生成。

 

シャルバが自信満々なのも頷けるかも。

盾がこっちに向かってきて、それを蹴って弾いてネプギアの方を向くけど…いない。

 

上かと思って見たらさっき弾いた剣を回収してこっちへ向けていた。

 

「MPBL、出力最大!!」

 

先端から遠目でも分かる程強いエネルギーを感じる。

くらったら一堪りも無い。

受けきれるのは呂布とペルセウス位じゃないかな。

 

 

 

「貫いて!!」

 

 

 

そうして放たれた暴力的な光が自分目掛けてやってくる。

マスパみたいに大きいね!?

これはまずい!

 

プロセッサユニットの翼を展開して逃げるように空を飛ぶ。

MPBLから放たれた光は森を飲み込んで尚自分へと向かってくる。

エネルギー使いきるつもり!?

 

「仕方ないわね…!」

 

段々と追い付いてくるそれに覚悟を決めて刀を造り出してシェアをさらに刀に込める。

 

 

「デルタスラッシュ!!」

 

 

Δの形にシェアを放ってビームとぶつけ合う。

そして、まだ足りないと感じて巨大な剣を生成する。 

 

「これが本当の32式エクスブレイド…射出!」

 

ビームと剣がぶつかって大爆発が起こる。

あれでようやく相殺とか…どんだけ化け物火力なのさ、あの銃。

 

さて、ネプギアは…

 

「ハァァァ!!!」

 

「!、っぅ!」

 

爆発の煙の中から全速力で突っ込んでくるネプギアのMPBLを刀で防ぎながらも勢いを殺せずに落ちていく。

後ろを見ると岩場だ。

まずいまずいまずい…!

 

ふっ、と押される感覚が無くなったと思えば銃口がこちらを向いていた。

 

わおっ

 

「落ちて!!」

 

「くぅぅ…!」

 

まだエネルギーがあったのか銃口からビームが照射されて刀で受けるも先程よりも強い威力を防ぎきれずに岩場へと落ちていく。

岩を壊す勢いで落ちて、少しの痛みが体を襲う。

…咄嗟に障壁展開してなかったら危なかった。

 

とはいえ…まだまだやれるんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんつー戦いだ…」

 

俺、兵藤一誠から出た感想はそれだった。

ネプギアがあそこまで姉ちゃんに迫れるとは思わなかったし、姉ちゃんもあんだけマジになるとは思わなかった。

 

今もやりあってる二人を見て、全員が真剣にそれを見ている。

流石は堕天使施設、映像で戦ってる場面がしっかりと見えるぜ。

 

「拮抗、してるんですか?」

 

「いや」

 

アーシアの疑問をヴァーリが答える。

 

「あれは違う。

ネプギアが成長しながら戦ってるが、ネプテューヌも同じだ。

依然として差は埋まってない。ダメージもネプギアの方が上だろう」

 

「でも、ネプテューヌさんの方が岩場とか壊しながら落ちたり…」

 

「確かに、それだけ見れば大怪我なものだが…見ろ」

 

「え?…本当です、怪我らしい怪我が見えません」

 

「判断力が違う。

やられた瞬間の対処すら早い」

 

「な、なるほど…」

 

直接正面切って戦う奴じゃないからな、分からないのも当然だ。

けど、ネプギアだって姉ちゃんよりダメージを受けてるのにあそこまで意識を保ちながら戦ってる。

俺なんて最初の首狙いで吃驚したぜ。

まさか、姉ちゃんがそこを狙うとは思わなかった。

 

『…経験の差だな』

 

『お前もそう思うか、赤いの』

 

「どういうことだよ?」

 

「馬鹿野郎、一誠。

ネプ子はどんだけ戦ってると思ってやがる」

 

「え、そりゃレイナーレの時から…」

 

「ちげぇよ、それよりも昔からだ」

 

「はい?」

 

おっさんの言葉を聞いても首をかしげるしかない。

そりゃ、姉ちゃんは昔から戦ってるのは知ってるけどよォ。

それはパープルハートだろ?今の姉ちゃんじゃない筈だぜ。

 

「お前さんの言いたいことは分かるが、そうじゃねえのさ。

体が覚えてるってあるだろ?手続き記憶って奴だな。

戦いが常となっていた当時のパープルハートは少し戦うだけで体が動くのさ。

それをネプ子は理解して物にしているって訳だな。

他人だが自分…俺にはそれが分からねぇが並大抵の努力じゃねえ筈だぜ」

 

「そうか、体は変わらねぇもんな…」

 

「百年単位の実戦経験を物にするネプ子もネプ子だがネプギアもやべぇなぁ…機械作りも戦闘も才能の塊だな」

 

「間違いなく、ネプテューヌさんに迫る程でしょうね、ネプギアさんは」

 

いーすんの言うことは理解できる。

戦いながらあそこまで強くなるなんてハッキリ言って異常だ。

…でも姉ちゃんとそれだからなぁ。

こりゃ、どこまで上り詰めるかの戦いか?

 

何にしても、俺は今回ネプギアを応援するぜ!

焚き付けたのは俺だしな!

 

それに、あんなに努力したんだ。

報われねぇのは、違うだろ。

頑張れ、ネプギア!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、と納得する。

ネプギアが急激に成長している原因が分かった。

自分だ、自分が成長を施してる。

負けたくない気持ちもあるんだろう。

でも、そうじゃない。

戦い方が段々と自分に近づいてきている。

この短時間で完成しようとしているんだ。

 

力の差は今は自分が上でも、1ヶ月先はどうなっているか。

スポンジのように吸い上げるこの子に対して、自分は何処まで上になれるか。

 

互いの武器が何度もぶつかり合う。

最初とは比べ物にならないくらい鋭い剣筋になった。

それでもまだ自分が上だと確信がある。

 

「ブルーソニック!」

 

速く鋭い剣撃が連続して自分に襲い掛かる。

それら全てを見極め、防ぐ。

それじゃ崩せないよ。

 

「その程度かしら!」

 

「まだです!まだ、私は戦える!」

 

「それでこそよ、ネプギア」

 

この子に果てはあるのか、そんな疑問が浮き出るけどそれは自分も同じだと一蹴する。

今までの自分からじゃ想像も出来ない感想だけど…

 

楽しい、この一戦だけは心から楽しいと思える。

 

「なら、もう一つ上がるわよ」

 

まだ上がるなら、自分も上がるまでだ。

この分だけこの子は応えてくれる。

使わないでおこうと思ったけど、そんな気も消えた。

 

MPBLが刀とぶつかる瞬間に炎を纏わせて爆発させる。

ネプギアも瞬時に後退するけど…これでいい。

カオスピースを出して、シェアを流し込む。

 

カオス化はしないでおこうと思ってた。

でも、撤回するよ。

今なら、思う存分やってもいい。

その分感情的になっちゃうけど…ご愛嬌ってことで。

 

 

「刮目しなさい。カオスフォーム!」

 

 

カオス化して紫に光る刀を構える。

一瞬、気圧されたのか一歩後退りしたけどすぐに持ち直して構え直してくれた。

よかった、それでこそだよ。

 

「これが…カオス化…!」

 

「ズルいかもだけど、戦いにおいて関係無いわよね?」

 

鋭さが足りない、速さが足りない、何より…力が足りない。

なら、補填するまで。

シェアならそれを可能に出来る。

 

ネプギアに微笑んで一言。

 

「もっと楽しみましょう?この戦いを…共に!」




・『本気』ネプテューヌ
普段はあまりしない殺す気の攻撃をしてくるネプテューヌ。
ネプギアたってのお願いですることにしたものの『まだ』深層心理での本物の戦いを自分の戦いかたを交えて真似てる。
習得は時間の問題。


・ネプギアスキル『???』
まだ使われていないネプギアのスキルの一つ。
その効果は──


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次世代の戦い 後編

姉妹の戦いも終わりへ─




再開から10秒後、私は背後からの一撃で吹き飛ばされていた。

何が、とはならない。

ただ目に見えない速度で後ろに回り込まれて刀で斬られた。

漠然と理解して、同時に奥歯を噛み締める。

 

カオス化、話には聞いていたけど…強い。

女神化が本来の力を底上げする状態なら、カオス化は混沌の力を外付けとして強化したような状態。

女神化の先、その可能性の一つがカオス化…!

 

体勢を立て直したものの、あの速さとパワーに追い付けないようじゃ話にならない。

…今の私にはその為の力は無い。

でも、追い付く必要はない。

私には本来の前提を覆す力がある。

それをどう使うか…何とかしてそれを届かせないといけない。

なら、捨て身で?ううん、それだと押し切られる。

多分、隙を窺いながら戦う余裕もない。

それくらい、今のお姉ちゃんは強い。

 

「今のが本当の戦いなら、死んでいたわね」

 

「…」

 

言い返せない。

今ので対応できなかった私は本来ならもう…

でも、今は違う。

 

一体どれだけあの姿になるために頑張ったんだろう。

私じゃ想像も出来ない程の事をしたんだと思う。

お姉ちゃんは凄い。

普通なら、カオス化は良いものじゃないって判断して切り捨てる。

でもお姉ちゃんはそれを手にして制御してる。

並大抵の覚悟じゃ出来ない。

お姉ちゃんは自分が望む未来のために行動で示したんだ。

だからカオス化をしても何ともない。

 

何かをするためには覚悟を示さないといけない。

私にはそれが足りない?

それでも、私はお姉ちゃんがカオス化してもいいも思えるくらいにまで成長している。

 

「…それでも、私は強くなりたい。今よりずっと」

 

お姉ちゃんはそれでも遠い。

カオス化とかじゃなくて、精神的にお姉ちゃんは強い。

挫ける時もあるけど、この度に柱を強化して立ち上がる。

誰かの為に一生懸命になれる。

私に出来ないと思えるお姉ちゃんの凄いところ。

 

ふと、お姉ちゃんが微笑む。

 

「いいのよ、ネプギア。焦らなくてもいいの」

 

「え?」

 

「あなたは頑張ってるじゃない。

機械作りも、戦いの特訓も…頑張りの成果はこうして出ているわ。

焦って何かをするよりも、コツコツと頑張ればいいのよ」

 

「でも、私…強くなれてるかな?」

 

「強くなれてないなら、私に一発も与えられないわ。

でも、私はカオス化までしている…強くなれてないなんて、私まで自信無くしちゃうわよ?」

 

「そ、そんな!」

 

「それにね、私みたいになろうとしなくていいのよ」

 

「──ぇ」

 

 

─何かが、崩れそうになる。

 

お姉ちゃんみたいに、ならなくていい?

それは…それは、私の否定なんじゃ…?

だって、私はお姉ちゃんに勝つために生まれた女神で…お姉ちゃんに取って代わるために造られたのに?

 

「ネプギア、最後まで聞いて」

 

「─はっ」

 

思考の波に浚われそうになって、お姉ちゃんの言葉で浮かび上がる。

そうだ、全否定されてないのに何をそんなことを考えているの。

お姉ちゃんがそんなことする筈無いよね。

 

「駄目よ、私になるのは。それだけは駄目。

それをしたら、あなたは耐えられなくなる」

 

「なんで…?お姉ちゃんは今も耐えているのに?」

 

「それはね、ネプギア─」

 

 

 

「─この世界が、汚いからよ」

 

 

 

悲しそうに、それでも慈しむように笑みを私へと向けてくる。

それは…それはっ…

 

「それ、は…」

 

言い返そうとして、言い返せない。

言葉のボールを返すことが出来ない。

だってこんなにも重い。

 

そうだ、お姉ちゃんは私よりも生きている。

それなりの物を見てきている筈なんだ。

それでもその在り方を崩さず、曲げずに手を伸ばす。

…異常だ、どうしようもなく異常なんだと気付かされた。

手を伸ばして取ってもらえるかも分からない、もしかしたら派手にはね除けられるかもしれない。

今だと、リゼヴィムがそうだ。

なのに…なのにどうしてそれが出来るの?

 

異常性を理解した瞬間、数々の疑問が浮かび上がる。

 

だって─

 

震える声で、体までは震わせまいと堪えて疑問を投げ掛ける。

 

「なんで、それでも…信じるの?」

 

お姉ちゃんはその疑問を予想していたのか、数瞬もせずに返す。

今度こそ、本当の笑顔で。

 

「どんなに汚くても、どんなに辛い世界でも。

それでもきっと残ってる筈なのよ、ネプギア。

綺麗で、尊いと思える…そんな心が。

本当に悪い人なんていないと、私は信じているのよ」

 

まるで読み聞かせるようだった。

 

信じる。

どれだけ苦しいんだろう、辛いんだろう。

だって、信じるってことは裏切られることもあるってこと。

お姉ちゃんは全部飲み込んでそれでも信じる人だから、裏切られた時のショックは大きい筈なのに。

それでもやめない、やめることをしない。

 

「だからね、私にはならないで。

あなたは、あなたしかいない。

こんな私になろうだなんて、思っちゃ駄目よ」

 

「…」

 

…私は、なれない。

憧れるお姉ちゃんにはなれない。

強いお姉ちゃんに近付けても、それの代わりにはなれないんだ。

 

…ごめんなさい。

少しの想像をした私でも出来そうにない。

 

「…お姉ちゃん、私は私のまま、強くなるよ」

 

「それでいいのよ。…戦いの途中なのにこんな話をしてごめんなさい。今じゃないと出来ないと思ったのよ」

 

「ううん、いいよ。

私も、少し履き違えてた」

 

お姉ちゃんが異常なら、お父さんも多分異常なんだと思う。

お姉ちゃんは眩しすぎる。

光を目指して歩くなら、当然それに目を向けないといけない。

お父さんは光を見すぎて、焼き付いてしまったんだろう。

 

「再開しよう、お姉ちゃん」

 

「ええ…あなたの全力、見せてもらうわよ!」

 

「うん!」

 

まだ試験段階だけど…それでも今出来る全力を!

シェアを行使して、更に魔力を解放する。

これで勝利を刻んで見せる!

 

 

 

「ビットズコンビネーション!」

 

 

 

異空間から二つの大きなビットを出現させてお姉ちゃんに向かわせて、私もMPBLを手に全力で飛翔する。

ビットを見たお姉ちゃんは驚きと喜びが混じった顔で、それでも油断の無い瞳が私を捉える。

 

「私には出来ない戦い方…機械を駆使した戦術ね」

 

「そう、これが今の私の全力!」

 

斬りかかりと同時に二つのビットが横からビームを発射する。

お姉ちゃんは、後ろに飛びながら刀に青い炎を纏わせる。

青い炎…かなりの高温ってことだよね。

 

「カオスフレイムブレイド!」

 

「っ、熱…!」

 

大振り、だけどビットを巻き込もうとするのに最適な動きが私もろとも飲み込む程の大きさの炎が迫ってくる。

ビットを下がらせながら真下に落下して事なきをえるけどそれでも熱さは伝わってきた。

炎でお姉ちゃんが見えなかったけど、上から来る!

 

「せぇい!」

 

「ふっ!」

 

頭上から振り下ろされる刀をMPBLで受け止める。

 

ビットもお姉ちゃんを狙ってビームを発射する。

 

「楽しくなってきたわ!」

 

「(無茶苦茶な!?)」

 

私へと詰めながら、踊るように刀を振るう。

その動きでビームを避けながら攻撃するなんて…!

これじゃ、牽制にもならない。

 

けど…!

威力自体は大したこと無い、腕に来る負担は重みあまり無い。

こっちの体力を削ろうとする算段?

それなら…!

 

「オーバーフロー覚悟で!チームワークで…!!」

 

ビットの出力を更に上げて、スピード上昇。

縦横無尽に放たれるビームにお姉ちゃんは対応するように躱す。

だけど、そこに私がいけば!

 

「なるほど…!」

 

「ハァァァ!!」

 

全力で剣を振るい、お姉ちゃんに果敢に攻める。

ビームと私の対処に追い付かなくなり始めてるのか苦い顔をしている。

このまま…!

 

その背中に追い付きたい!

強くなったって分かってる。でも、その思いも越えたい!!

どこまでも強くなって…どこまでも高く飛んで見せるんだ!!

 

「くっ…っ!!」

 

「!、そこ!!」

 

ようやく見せた隙、ビームを避けきれずに肩に当たってよろめいた所を刀を狙って振るって弾き飛ばす。

そして、間髪入れずにお姉ちゃんへと腕を伸ばす。

 

これさえ、決まれば!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ?」

 

後少し、後少しのところで腕が動かない。

動かそうとすると、ジャラジャラと音が鳴る。

どうして、と腕を見る。

 

「カオスバインド…後一歩だったわ」

 

「そん、な…!」

 

鎖が腕に巻き付いて…ううん、体に巻き付いて動けない。

ビットも同様に、鎖に縛られて地面に落ちている。

後一歩なのに…後一歩で…!

 

お姉ちゃんの安堵した顔を見るに、本当に後一歩だったのが分かる。

分かるからこそ、悔しい。

だって…やっと追い付けたと思ったのに。

 

「終わりよ、ネプギア」

 

「…ううん、終わりじゃないよ」

 

「…」

 

「ちゃんと、私を倒して、お姉ちゃん。

じゃないと、私は何度でも斬りかかるよ」

 

「………分かったわ」

 

目と言葉で訴える。

せめて、しっかりと倒してほしい。

私を…ちゃんと斬って。

じゃないと納得しない。

 

お姉ちゃんは分かってくれたようで刀を上へと振り上げて──

 

「─お姉ちゃん、私…強くなれるかな」

 

「─ええ、なれるわ、どこまでも」

 

そうして振り下ろされた刀に鎖ごと斜めに斬られ、私は気を失いそうな程の痛みと共に落ちていく。

ああ…届かなかった。

 

ふと、視線を地上の皆に向ける。

 

何人かは、そうなったかという顔とそうなるだろうといった顔。

 

だけど一人だけ。

一人だけ本当に悔しそうに、応援していてくれたことが分かるくらい、顔を歪めていた。

何だか、胸が暖かい。

ああ、最初から…ずっと応援してくれたんですね─

 

 

 

 

 

「─一誠さん」

 

 

 

 

 

その光景を最後に、受け止められる感覚を感じながら意識が沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

落下していくネプギアを抱えて皆の前に降りる。

…危なかった。

戦い方を咄嗟に戻さなかったらどうなってたことか。

まだまだ強くなる必要があるね~…それこそ…新しいフォームを獲得とかそういう特撮系の成長が必要とみたね。

 

皆がこっちにやって来る。

シャルバは…いないね。

 

「ネプギアさんは大丈夫ですか?」

 

「目だった傷はないと思うけど、念のため治療をお願いね」

 

「はい!」

 

「勝てたか、ネプ子」

 

「そうね…もっと強くならないといけないことは分かったわ」

 

「向上心があるようで結構」

 

「あらあら、ネプテューヌちゃんも真面目ですわねぇ」

 

「本当はゲームとかしたいけど、仕方無いわね」

 

あーちゃんにネプギアの治療を任せて、皆の思い思いの言葉に返していく。

一誠は…悔しそうにしてるね。

焚き付けたらしいけど、結構面倒見いいんだねぇ。

 

「ネプテューヌ」

 

「どうかした?」

 

「…その格好、やめられないか?」

 

「カオスフォームの事?どうして?」

 

「大勢にお前の肌を見られているようで嫌だ」

 

「あら、妬いてるの?」

 

「そういうわけでは…」

 

妬いてるんだ~?へー、ほー、ふーん?

ヴァーリに詰め寄ってから耳元で囁いてみる。

 

「私の心は、あなたに夢中よ?」

 

「そういうのはいい!いいから、解除してくれ…!」

 

「ふふ、はいはい」

 

気恥ずかしそうなヴァーリから言われて、カオス化を解除する。

女神の姿は維持するけどね、まだ言いたいこととかあるし。

ホッとしたため息をつくヴァーリに可愛い彼氏だと思いながら一誠に近付く。

 

「…ネプギアが負けたのが悔しいのね」

 

「…そう、だな。

おかしいよな、俺らしくないよ。

普段なら姉ちゃんを応援するけど、今回はネプギアを応援したくなって…負けた時、俺の事じゃないけどすげぇ悔しかった」

 

「そうね…お父さんがサッカーでチームを応援してて、そのチームが負けた時に一緒に悔しがるのと一緒な感じかもね?」

 

「そういうもんかな」

 

「それは分からないわ。

でも、一誠。あなたはあなたの心に従いなさい。

それが今後のためにもなるわ」

 

一誠の成長にも、心が一歩進むためにもなる。

そろそろ、誰かのためよりも自分のために何かするのもいいんじゃない?

お姉ちゃん応援するよ!

 

それにしても…来なかったね、シャルバ。

でも案外どっかで見てたりしてね。

 

 

 

 

 

 

・  

 

 

 

 

 

 

……

………負けた、か。

 

カメラより流れる映像を見て、ふぅ、と一息。

 

『負けちゃったねぇ。悲願は遠くなったんじゃない?』

 

「…近くなった」

 

『ほう、それは?』

 

ネビロスの軽い態度に苛立ちながらも質問に答えることにする。

 

「今回はネプギア自身の道を明確にするための戦いだ。

そして、その戦いはネプギアの中で大きな糧となった。

ならば…収穫はあったということだ」

 

『そうかい?』

 

「そうだ」

 

『……シャルバ、君はどうしたいんだい?』

 

ネビロスのその言葉は、今更目的を問うものでもないだろう。

だが、私はその言葉に明確な言葉を返すことはできない。

そう、出来ないのだ。

何をどうしたいかなど…最初から分かっている筈なのに。

 

冷たくなった紅茶を飲もうとして、やはりやめる。

 

「…私はどうしたいのだろうな」

 

『冥界を一度崩すんじゃないのかい?』

 

「…そうだな、その筈だ。

私は…確かにそのためにネプギアを造り出した。

だが……今のこの生活に満足している己もいるのだ」

 

『冥界を崩す意志もなくなってないと』

 

「その通りだ。

…どうすればいい?」

 

『…とりあえず、リゼヴィムを倒してから考えようじゃないか。

あの子との今後はね』

 

…私の心の決着はさっさと着けろということか。

何と難しいことか。

疑問ではなく、立ち往生。

私は進むのを拒んでいるのか?

今更何を?神すら殺しておいて、何を?

 

『それで、行かないのかい?』

 

「…そうだな、あの女神との戦いは私が発端だからな」

 

そう言ってから、私はネプギアの寝かされている研究所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暖かい何かが被さっている。

意識が浮き出てきた時の最初の感想はそれだった。

それから目を開けると白い天井が映って、負けちゃったんだと思い出す。

…でも、前よりも強くなれたことは実感できた。

 

「起きたか」

 

「え…?お、お父さん!?」

 

横から声がしたと思ったらお見舞いに来てくれてたのかお父さんが座っていた。

体を起こそうとして、肩を掴まれて優しく寝かされる。

 

「まだ休んでいなさい」

 

「え、でも…」

 

「治療されたとはいえ、疲れまでは取れん。

ここは言う通りにしなさい、いいな?」

 

「ぅ…はい」

 

確かに体が少し気だるいのは事実だった。

お父さん…来てくれたんだ。

…気まずい。

お父さんの目的を想えば、私が負けたことはよくないことの筈なんだ。

だから…話を切り出せずにいた。

 

「ネプギア」

 

「っ、は、はい」

 

「怯えなくてもいい。

負けたことで私に負い目を感じているのならそれは違う。

私の期待を裏切ったわけではなく……違うな、そうではない」

 

「…?」

 

何か言葉を探してるような、そんな感じでああでもない、こうでもないと独り言を続ける。

それが十分は続いたけど、言葉がうまく見つからなかったのかため息をついて

 

私の頭を優しく撫でた。

 

「何が言いたいのかというとだ…よく頑張った。

父として、私は誇らしく思う」

 

何度もやった筈なのにぎこちない撫で方。

それでも私を労るようにそう言ってくれるお父さんに嬉しくて、でもやっぱり勝てなかったことが申し訳なくて、悔しくて。

自然と、目からポロポロと涙が溢れてきた。

 

ぎょっとしたお父さんが心配そうにしている。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ううん、大丈夫です…!

ただ、頑張ったって言ってくれたことが嬉しくて…悔しくて…!」

 

「勝てなかったことが悔しいか」

 

「はい…!」

 

「…強く成長するのだ、私も、お前も」

 

それから、私は声を殺して、静かに泣いた。

お父さんは泣き止むまで頭を撫でるのをやめなかった。

 

そうして、泣き止んだ後

 

「私、強くなります…今よりも、ずっと強く!」

 

「そうだ、その意気だ」

 

お父さんもお姉ちゃんを倒すために強くなる。

私もお姉ちゃんを越えるために強くなる。

私は…まだまだ強くなれる。

 

決意を新たにしたところで、別の話題に移ることになった。

 

「最近、あの赤龍帝と仲が良いようだな」

 

「はい!一誠さんがあのとき私の悩みを聞いてくれなかったら今回の戦いはなかったですし、それに…一誠さんも、私の憧れなんです」

 

「…そうか。憧れ、か」

 

「真っ直ぐなんです、凄く。

お姉ちゃんの弟であることを誇らしく思ってて、絶対に諦めないって意志があって…」

 

「…しばらく、私とネビロスは別行動をする。

お前は女神と共に行動しなさい」

 

「え…」

 

「何、問題はない。

私は私で先手を打たねばならないからな…」

 

お父さんやネビロスさんが心配だけど…こういう時、私がいたら却って邪魔になるかもしれないから従っておこう。

迷惑はかけたくない。

それに、皆さんといれば参考になることが多い筈だ。

 

「…行っちゃうんですか?」

 

「すまんな、事態は刻一刻と動いている今…行動しないわけにはいかぬのだ」

 

「うん、気を付けてくださいね!」

 

「ああ」

 

お父さんは部屋を出ていってしまった。

…無茶しないといいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー疲れたよぉぉぉ…!

家に帰ってきて部屋に戻って早々にベッドにダイブする。

 

「今日はもう動かないよぉ…」

 

「お疲れさまです、ネプテューヌさん」

 

「うん…」

 

いーすんからの労りの言葉でもっと楽になる。

一誠にはあの後ヴァーリと組手やらして先に帰っててくれって言われちゃった。

熱心だなぁ…応援してたし、自分も強くなろうとしてるんだね。

 

「…一誠さんも、ヴァーリさんも次の段階にいける筈なんですけどね」

 

「どういうこと?」

 

「それだけ、お二人の想いは神器に影響を与えているということです。後は、お二人次第ですね」

 

「きっかけってこと?それなら大丈夫だよ」

 

多分、もうすぐその機会も来るだろうしね。

自分も、その機会が来るかも?

可能性、かぁ…どうなるかなぁ。

今、どれだけ強くなれてるんだろうね。

自分ってば結構無茶ばっかりだから色々と力量無視してる気がするし、実際どれくらいなんだろ。

 

むげんかぁ…むげんってなんだろね。

どうなるんだろう、不安かも。

 

「…寝るかなぁ…」

 

「夕御飯に起こしますね」

 

「お願い、いーすん」

 

「はい、お任せください」

 

いーすんもおかんだなぁ。

こんな自分に世話焼いてくれるんだからねぇ。

もっと自分のために生きてもいいと思うんだけど。

 

明日はどうしようかな。

明日の自分に決めようかな。

そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプステーション!!」

 

「のコーナー!」

 

「はいはいやって参りましたネプステーションのお時間だよ!

司会はもちろん私ことネプテューヌ!

今回のゲストは~?」

 

「ネプギアです!何回か私出てるけど、いいのかなぁ…」

 

「いいのいいの!今回はネプギアメインな話だったんだし!

それにしても、戦った私が言うのもあれだけど頑張ったねネプギア!頼もしいし、誇らしい!二つ合わさってタコらしい!」

 

「合わせちゃ駄目な言葉だよお姉ちゃん!?

えっと、重要なお知らせがあるんだよね?」

 

「うん!えっとね、実は作者が新しくコラボのお誘いを受けてて、今それを先に投稿してくれているダグライダーさんの作品!

『刀使ノ指令ダグオン』とのコラボ!ということなんだけどね!

ちょうどいい機会ということで…」

 

「本編とコラボおよび番外編を分けようってなったんです。

だから、本編は『冥次元ゲイムネプテューヌ』だけど、コラボとかは別の短編作品として投稿します。

今あるエクソダスさんとの『大人ピーシェが頑張る話。』もあっちに移します」

 

「あっちの方も随時投稿していくから是非見てほしいな!

コラボだから私も外面内面合わせてはっちゃけるからね!」

 

「お姉ちゃんの場合は曇るの間違いなんじゃ…?」

 

「ねぷ!?そ、それはいいんだよぉ!

じゃあ、本編次回予告!後書きでコラボ予告するからね!」

 

「えーっと…これかな?

様々な事があったけど、これも始まりに過ぎなかった。

次に襲い掛かるは邪龍!邪悪なドラゴンが復活していく中、リゼヴィムの狙いはある一体の龍のようだけど…?

どんなに強い邪龍でも、私達の想いと力があればきっと越えられる!そして、ついに覚醒する力!

次回、冥次元ゲイムネプテューヌ!『邪龍戦線』!」

 

「次回もネプネプファイト、レディーゴー!」




「後書きでも忙しい!それがネプ子さん!!
コラボ予告だよぉ!
突如として次元が崩れて混ざり合う、そこで出会う異世界の戦士、ダグオンと刀使!力を合わせて、私達の世界を取り戻そう!
『冥次元ゲイムネプテューヌ×刀使ノ指令ダグオン』!
お楽しみに!!」



・「強く成長するのだ、私も、お前も」
ジョジョの奇妙な冒険第二部『戦闘潮流』のシーザー・ツェペリより

・もっと自分のために生きてもいいと思うんだけど
お前が言うな(ねぷっ!?)


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邪龍戦線
戦いは終わらない、加速する!


さあ、始まりますよ邪龍戦線編。
私の大好きな悪役をバシバシ出していこうねぇ…


やっほぅ!絆あり可能性マシマシ主人公のネプテューヌだよ!

最近はおっちゃんの施設で皆特訓を重ねているね。

トレーニング施設はかなり整ってて皆が集まって特訓するには良い場所だ。

それにしたって…何だかよく見る組み合わせがあったりする。

 

「オッシャァ!まだまだ往くぜネプギア!!」

 

「はい!」

 

禁手を解放した一誠と女神化したネプギアが戦っている。

戦うといってもバラキエルさんやおっちゃん監修の下で指摘とか色々されてるけど。

…あれ、なんでネプ子さんには指摘来ないんだろ?

 

「余所見とは余裕だな」

 

「ねぷっ!?ちょちょちょ、槍振るわないで!?」

 

曹操から不満そうな一言と共に聖槍が振るわれ、それを避ける。

更に森の方から誰かが突っ込んでくる。

 

「ハァッ!」

 

「ふおぉぉぉ!?危ないでしょ!!」

 

「そりゃ剣だからね!」

 

ジークからの攻撃を必死に回避する。

 

えっとなんでこうなってるかと言うと…

リゼヴィムでないにしても相手が強いのは分かってるんだから現状トップクラスの自分とやりあいたいんだとか。

ヴァーリは黒歌と小猫ちゃんと戦ってるけど普通に戦えてるね。

パワータイプで小細工も揃ってるから攻めにくいよね…分かる。

 

ちなみに自分はこの後他の英雄派の皆が待ってます…はい…

 

苦労人なネプ子さんとかあんまり無いよぉ!

もうちょっと労ってくれてもいいんじゃないですかぁ!

 

「まだまだ!」

 

「ひぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプ子の奴…真面目にやってんのかぁ?」

 

「ああ見えて特訓には真剣ですよ。

…しかし、アザゼルさんはどう思われますか?」

 

「あん?」

 

「リゼヴィムについてです」

 

ネプ子や他の連中のデータを取りつつ、手伝ってくれるイストワールと会話をする。

リゼヴィムねぇ…つっても分からない尽くしな奴だ。

どうしたもんか。

 

ネプギア曰く、シャルバが先手を打つために行動してるらしいが…サーゼクスの野郎からの連絡は未だに来ねぇことを考えるとかなり手こずってるな。

リアスの奴もそろそろこっちに寄越してくんねぇといざって時がやべぇしよぉ。

 

ったく、嫌な期間だぜ。

 

何せ仕掛けてくるのはあっちの自由だがこっちは対処しなきゃいけないのは突然なんだからな。

ふざけた話だ。

 

「俺から言える事はただ一つ。

あらゆる可能性を考慮しろってことだ」

 

「邪龍の復活を事前に阻止すべく各神話へ忠告をしたらしいですが」

 

「ああ、オーディンのジジイも手伝わせたが…結果はまあまあだろうな」

 

「…そうですか」

 

「毎度後手後手なのは仕方ないにしても今度は邪龍か…」

 

「邪龍…ドラゴンの中でも一際邪悪さ、または危険な類いのドラゴン…いざとなればオーフィスさんに頼れないでしょうか?」

 

「…お前さんはどう思う?」

 

俺の考えはこうだ。

リゼヴィムはオーフィスすら視野に入れていると。

サマエルはコキュートスにぶちこんであるから問題はねぇとは思うが…どうだろうな。ハーデスの所にも連絡は入れてるが返信はなし。

当然だがよ、俺達が好き勝手した中には冥府も入ってるんだからな。

 

ここでも足を引っ張るのは俺らか…

 

「オーフィスさんを利用するのを待っている…と?」

 

「かもしれねぇってだけだ。

無限の龍神をどうにかするなんざかなりの荒業でもなきゃ無理な話だしよ」

 

「…難しいですね、実際」

 

「ああ、だから俺達はどうしようもない時以外は奴さんの力は借りられねぇ」

 

「ですね」

 

それから、再びデータ取り及び指導に専念しようと思った時。

 

 

 

「─総督!!」

 

 

 

うちの研究員が大慌てで俺の元へと駆け込んでくる。

 

「どうした」

 

「た、大変です…!こちらのモニターが何者かにハッキングされました!」

 

「んだと!?チッ…一旦訓練は中止だ!俺は先に行くから集めて連れてこい!」

 

「了解しました!」

 

「アザゼルさん、私も皆さんを集めてから行きます」

 

「おう」

 

こんな時にハッキングだと?

仮にも技術屋の堕天使が情けねぇ話だ…それに、ネビロスの手も加わってそこらは堅い筈なんだがな!

まさかとは思うが…野郎か…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いーすんと研究員さんに大声で中止の報せを聞いてからおっちゃんの元へと向かう最中にこの施設のモニターがハッキングされたことが告げられる。

そ、それってまずいじゃん!

あーよかったエレベーターまで停止させられなくて!

 

これがバイオなハザードならエレベーター使えなかったよ!

 

急いでおっちゃんの元へと辿り着いた自分達を出迎えたのは砂嵐状態の大画面のモニターだった。

 

おっちゃんはそれを険しい目で見ている。

 

「おっちゃん!」

 

「おう、来たか。お手上げだぜ、こりゃ面倒な細工だ」

 

「ザーザー言ってますね…」

 

ネプギアも何とかしようと思ってるのか研究員さんたちを手伝ってるけどお手上げらしい。

うへぇ…これ、どうなってるんだろ。

誰がこんなことを?

 

「ん…?」

 

何かに気付いたおっちゃんがモニターを見ていると、砂嵐の状態が変わる。

 

映ってるのは椅子とそれに座る銀髪の髭を生やしたおじさん。

…ヴァーリにどことなく似ているその姿は、特定するのに時間はかからなかった。

からかうような笑みを浮かべながら足を組んで座っている。

 

隣のヴァーリを見ると、手を握り締めてリゼヴィムを凝視している。

 

 

 

『やあ、堕天使総督と部下の人。

後は…ああ、グレモリー眷属と英雄派。

お?それに女神お二方もいらっしゃる!

お初にお目にかかります、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーと申す不届き者です。ま、名乗らなくてもよかったかな?』

 

「リゼヴィム…!」

 

『やーやーお元気そうで何よりだぁ。

もしかして、治しちゃった感じかな?』

 

「お陰様で、色々と苦労したんだからね!」

 

『ウフフフフ、そう怒らない怒らない。

度し難い輩だと思って抑えて頂戴よ?

俺はご挨拶に来たんだからさぁ?』

 

「挨拶?」

 

ニタニタとした笑みを崩さないまま、片手に杯を持って話す。

その手に持っている杯…!

自分が反応する前にギャー君が反応する。

 

「それは!ヴァレリーの…!!」

 

『ああこれ?これ便利で助かってるよ。

何せこれがあれば肩凝り改善だから!それは嘘だけど、便利なのは本当よ?前は何に使ったかなぁ…思い出せないねぇ?使いすぎちゃって前の事なんてさぁ、ヒャヒャヒャ!』

 

「テメェ…!それはヴァレリーちゃんのだぞ!

命を弄ぶんじゃねぇ!!」

 

『怖いねぇ兵藤一誠君。あんまり殺気立つなよぉ、まだ準備段階なだけだろう?御披露目はまだなんだからサァ、建設的な話をしようじゃないのよ』

 

「…それで、何の挨拶だ?自己紹介ならしてもらったぜ」

 

『挨拶、そう、挨拶だ!

あーその話題の変更有り難う!そうそう挨拶ね…まあ、宣戦布告とも言うけど。

ま、これから邪龍をばら蒔いて世界を焼き尽くすから楽しくやりあおうってだけだから気にしないでよ』

 

「気にするよ!?

ちょっと待ってよ、ばら蒔くって…世界に!?」

 

今までは一区画とかだけど、リゼヴィムの言葉をそのまま受けとるなら世界中に邪龍をばら蒔くって言ってるようにしか…!

もしそうなら、大変なことになる!

 

リゼヴィムはこっちを指差して頷いてくる。

 

『そそ!世界中に邪龍をポイポイして、滅茶苦茶にして貰うのさ。楽しそうだろう?世界VS邪龍With俺!あーたまらない興奮してきたぞ!』

 

「虫酸が走るな」

 

「そんなに戦いたいなら邪龍と戦えばいいじゃない」

 

『…それじゃつまらないだろう?』

 

さっきまでのふざけてた態度が一変して狂気の据わった目をこちらへ向けてくる。

ニンマリと笑うその顔は得体の知れなさがあり、怖かった。

 

『戦争だよ、戦争をしよう。

殺したり殺されたりしよう、奪ったり奪われたりしようじゃないか。戦いの中でぐちゃぐちゃに混ざり合った本音と本音をぶつけあって汚泥を啜りながら進軍しよう。

俺達の悪を、君達の善で塗りつぶしてくれ!

俺達はその為に種を蒔き、火を放ち、燃やし尽くす!

さあ、さあ、さあ!殺しあいをしよう!楽しいぞ、きっと楽しいぞ?』

 

「狂ってるわね…」

 

イリナちゃんの言葉は皆の言葉だった。

狂ってる。

そうとしか言えない圧倒的なまでの言葉の羅列。

悪を成したいという行動がここまでするの?

 

イリナちゃんにリゼヴィムは笑いを堪えない。

 

『ヒャヒャヒャヒャヒャ!!狂ってる?まさかキリスト信者に肯定して貰えるとは思わなかった!俺の狂気はあのくそったれの神様に肯定され保証された訳だ!ならば神の気狂いは誰が証明してくれるのかねぇ?ん?まあ、問題だけ遺してくたばった神様なんざ糞の役にも立たないからどうでもいいや!

俺が狂ってるなんて分かりきった話だろう?一体どれだけ生きて虚しさを心に抱えてきたか!爆発しそうだよ俺は~ハハハハハ!』

 

「…それで、話は終わり?」

 

『勝手に切り上げないでよぉ、少し提案があるのよ。

うんうん、俺もこっちの準備だけ万端なのはどうかと思ってさぁ。戦争は唐突だけど拮抗もしない戦争は俺の本意でもないしねぇ』

 

「提案?どゆこと?」

 

リゼヴィムは未だ狂気を滲ませた表情で自分を指差す。

 

『お話しようよ女神ちゃん』

 

「─ふざけるなっ!!」

 

その提案を聞いて、誰よりも真っ先にヴァーリが怒りを爆発させた。

憎しみを隠さずにリゼヴィムを睨み付けるヴァーリにリゼヴィムはニタニタと笑う。

 

「貴様の道楽に付き合う義理はこちらにあると思っているのか!」

 

『話を途中で切るなよ青二才。

俺はお前と話してないし、目にも入れてない。

捨てられただけの玩具がネジ巻いて動くんじゃない』

 

「貴様…!」

 

『で、お話の料金として…んーそうだなぁ…二週間あげようか』

 

「それまで何もしない?」

 

「ネプテューヌ、話に乗るな」

 

「…」

 

『しないしない!絶対にしないよ。

契約だ、俺達は二週間の間…世界に攻撃は行わない』

 

「契約……なら、内容に付け足して欲しいことがあるよ」

 

「ネプテューヌ!」

 

ヴァーリにごめんねと視線で伝える。

それでも…その二週間の猶予に価値がある。

絶対にそれを逃しちゃいけないと思える価値が。

 

『持ち掛けたのは俺だし、言ってごらん?』

 

「会う場所はそっちで決めてもいい。だけどそこにはリゼヴィムと私だけ。罠とかそういうのもなしで戦う行為も駄目。いい?」

 

『何だぁそんなこと、OKOK!

なら今のうちに決めちゃおうかぁ俺と君のデートプラン!

明日…そうだなぁ……おじさん地上にめっちゃ興味があるのよねぇ。

浅草とかでどう?』

 

「うん、いいよ」

 

『はい契約成立。

悪魔諸君?契約ってのはこういうのを言うんだぜ?

譲歩もして、両方得をする内容を提示する…悪魔の仕事だから覚えないとねぇ』

 

先に脅しをかけて来たのによく言うよねこのおじいちゃん!

でも、これなら明日の時間を潰すだけで二週間の猶予を貰える。

掌の上だろうけど、それでもその二週間で全部引っくり返せばいい。

 

リゼヴィムは満足そうにして拍手をした。

 

『とまあ、俺は悪魔なんでねぇ…悪でも契約は守るから安心しなよ。何もしないと誓ってあげよう。手出しもしない、嬉しいだろ?』

 

「嬉しいね!」

 

『嫌われたもんだねぇ…まあ、明日を楽しみにしてるよネプテューヌちゃん?じゃあねー』

 

「待て、リゼヴィム!!」

 

『あー?何よヴァーリきゅん。おじいちゃんに何か用?』

 

「俺を見ろ!貴様が捨て、それでも生き延びた俺を見ろ!!

俺はここにいる!貴様と同じ血を持つ俺が、ここに!!」

 

『……ヴァーリ・ルシファーねぇ。母親の名字じゃなく、あくまでルシファーかい。

なら、先達として教えてあげようか』

 

必死なヴァーリに対してリゼヴィムは怠そうに。

けれど、何かを感じ取ったのかリゼヴィムは立ち上がってこちらへ歩いてくる。

そして、モニター一杯にリゼヴィムの狂気的な笑みが映る。

 

 

 

『悪魔を理解しな、人のまま、俺を殺したいなら悪を理解しろ。

認識して、呑み下し、吐き出さずに己の糧として。

そうしてようやくお前は俺と同じ土俵だ』

 

 

 

そう言ってから、ブツリ、と乱雑な音と共に映像は消えた。

 

静寂が辺りを包む。

 

「……機能、回復しました」

 

「ああ…ご苦労だった─」

 

 

 

 

 

 

「─ネプ子、お前は残れ。後は、出ていっていいぞ」

 

その言葉が来るのを確信していたから自分はすぐに頷いた。

他はおっちゃんの威圧を受けて仕方ないと部屋を退室した。

ヴァーリも自分を見つめた後、出ていった。

 

おっちゃんと、自分だけになる。

 

「分かってやったのか」

 

「ううん、ただ…リゼヴィムは悪であることに拘っているのと悪魔であることに執着があったから。

契約は守るって確信があるよ」

 

「…あのなぁ」

 

おっちゃんは苛立ちを隠さずに自分の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

苦しいけど、息が出来ない程じゃない。

 

「分かってんのか、ネプ子。

悪魔は契約を守る。けどな、テメェがその契約を反故にしねぇとは限らねぇだろ。

リゼヴィムの狂気に耐えられんのか、あの言葉に。

テメェが反故にしたらリゼヴィムは嬉々として周りを巻き込んで暴れるぞ」

 

「分かっ、てるよ」

 

「分かってねぇ。テメェは自分を簡単に賭けすぎだ。

もっとテメェの価値を知れ!世界平和だとかの前にテメェが死んだら何にもならねぇのが分かってねぇ!!」

 

「じゃああのまま、邪龍をばら蒔かせてた方がよかったって?

冗談言わないでよ」

 

最悪な展開を無しにするってあっちから言ってくるなら乗るしかない。

そもそも、その土台をあっちが用意した以上それ以上のない自分達は上がるしかないんだ。

おっちゃんの腕をはね除けて着地する。

 

「見知らぬ誰かが死ぬのだって私は嫌だ。

邪龍が蔓延って、解決策はあるの?無いからあの提案を呑んだんだよ。

それに、自分を賭けすぎって言うけどね。私は必要な時以外賭けてないよ。

とにかく、明日はリゼヴィムと話し合うだけだから気にしないでいいよ。…じゃ、また」

 

「おい待てネプ子!!」

 

おっちゃんの制止も聞かず、部屋から出る。

少し歩いてから、壁に寄りかかって座る。

 

激しい自己険悪に襲われる。

またやっちゃった…突っ走ってはね除けた。

おっちゃんの言葉は何も間違ってない。

でも…ああするしか無かった。

世界中なんて守りきれる自信がない、犠牲あっての勝利なんて…そんなの私は望んでないから。

 

「何やってんだろ…また馬鹿した」

 

「ネプテューヌさん」

 

「…いーすん」

 

顔をあげると、いーすんが自分の正面で浮いていた。

心配そうな顔だった。

 

「…また突っ走っちゃって…」

 

「起きたことを悩んでも仕方ありません。

アザゼルさんの事は私に任せてください。

ネプテューヌさんは、明日のために休むべきかと」

 

「…怒らないんだ?」

 

「怒ってますよ」

 

「じゃあ、怒鳴らないの?」

 

「それは終わってからのお説教にします。

それに、私もあれ以外の選択肢はないと思ってましたから」

 

「…そっか」

 

それでも自分を餌にするような事はしないで欲しい。

そう言ってからいーすんはおっちゃんと話をするために部屋へと入っていった。

 

…自分も帰るかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気分は上々といったところ。

 

生き返れ生き返れ、下らない世界へようこそと嘲笑うために俺が蘇らせてやる。

汚泥を啜り、肉を食み、胃袋を満たすために生をくれてやる。

杯を掲げ、光が魂と体を構築する。

暗闇が光を飲み込み光が暗闇を飲み込む。

見るだけで分かる力、飽くなき欲望だ。

 

「貴様は何がしたい」

 

望み?

 

「それは目的だろう?

俺は目的もなく、過程と理念だけがあるんだよ」

 

「目的だけがない、憐れだな」

 

「憐れ?憐れ!?それを決めるのは君じゃなくて俺だ。

誰にも決めさせない、誰にも俺を否定させないし忘れさせない。

誰のものにもならないし誰の為にもならない!

俺は俺で、俺が俺でなくなることは決してないんだよ!」

 

「その為に悪を成すか、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

悪であることを示すために?」

 

龍が問い掛けてくる。

人の形をした龍だ。

人間のような化け物が、同じく人間のような化け物である俺に問い掛けてくる。

良い問いだ、悪い問いだ。

 

杯を手で遊ばせながら椅子に座る。

 

「世界が俺達を忘れようとしている。

そんなことは許さない、悪であれと望まれた悪魔が変わることも許さない。ただ見放され、排斥された悪が、求めてるんだよ。

戦争だ、戦争を求めている!そして見つけたいんだよ、圧倒的なまでの善を!俺を打ち倒してあまりある栄光を手にする善を!

だからこそ俺は今に嫌気が差して立ち上がった。

何かがある筈だ、善が浮き彫りになる瞬間が!俺が生きてるってことは俺の悪が肯定されていることに他ならない!!」

 

椅子から立ち上がり、仰々しく動く。

踊るように、指揮をするように。

 

「俺が悪を重ねるだけじゃただの戦争主義者だ、それじゃつまらない。それはただのお遊戯会でしかないじゃないか。

俺は善が見たいんだよ、現れないなら見つけるしかないだろう?」

 

「狂っているな」

 

「結構!狂っているなら狂おうじゃないか!どうせ生は一度きり!俺は全チップを賭けているんだ、どう動くかは分からないのなら道化のように踊り、怪人のように唄い、人間のように遊ぼう!」

 

「何をする?」

 

「何もかも。俺は何もかもしようじゃないか。

俺の戦争だ、誰が死のうが知ったことか。」

 

「ならばなぜ話し合いなどする?」

 

「デートと戦争は別だ。

悪とは己に素直でなけりゃねぇ…下らないプライドに左右されるか弱い君達と一緒にしてくれるなよ」

 

「ほう、俺よりも貴様は強いと?」

 

「強いだけが世界じゃない。人の世を歩いた癖に分からない傲慢さ、嫌いじゃないよ。

口で負けてりゃその時点で君達の負けだろう?敗者は黙ってくれよ」

 

拳を握る音。

殴るならそれだけの邪龍。

堪えるならそれまでの邪龍だ。

 

…堪えるかぁ、ならそれまでだ。

 

ま、利用してあげるよ、邪龍も何もかも。

明日のデートは楽しくなる、早寝早起きを心掛けるかなぁ…

 

「これは序曲に過ぎない、俺達の世界の金切り声を聞くための舞台作りに過ぎない。

だがイカれ人同士なら面白い実のある話だろうねぇ。

楽しみだな、楽しいぞ!ウフフフフ…どうなるかなぁ」

 

君と俺だけの口戦争だ、どう楽しむ?

さあ、序章を始めよう。



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二人だけの会話

コラボ回を書きながらこちらも投稿する。
前日譚も大変だけど、それもまた楽しい。

それはそれとして本編を目の中に突っ込んで殴り抜けるッ!!


車に送ってもらってそこへ向かう。

車を降り、不安そうな視線に笑顔で返した後に歩き出す。

もういるだろう、座っているのか立っているのかは知らないけど。

歩く。

約束通り、監視も何もない一人だ。

パーカーのポケットに手を突っ込んで歩く。

 

そうして見つけた。

何と言うか、見た目はイケメンなおじさんだから見つかりやすかった。

特徴的な銀髪を見間違う筈もなく、座ってコーヒーを飲む人に声をかける。

 

「やっほー!」

 

「んー?」

 

間延びした声、呑気な声だった。

コーヒーのカップを置いて、気だるそうな顔をこちらに向けてくる。

そして…

 

花が咲いたように嬉しそうな顔をする。

待ち望んでたといわんばかりの反応で少し困る。

敵というか…そう言う関係なんだけどなぁ。

 

コーヒーを飲み干してこっちにやって来る。

飲み干してから来るところにちゃっかりしてるとは思う。

 

「やあやあ待ってたよネプテューヌちゃん!女神ちゃーん!

お爺ちゃんの眠気覚ましコーヒータイムの終了時間直前に来てくれるなんて君は空気が読めるね!」

 

「ちょちょちょ…近い!近いって!」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

顔が近かったけど謝って離れてくれた。

ああビックリした…

 

「さて、楽しもうじゃないの」

 

「…楽しいかなぁ」

 

「俺は君とこうして面を合わせて話せるだけで楽しいとも。

つまり、今日は俺を友達と思って接してくれればいい」

 

「…」

 

地獄を作るなんて言った人がよくもまあそう言える、と内なる自分が吐き捨てる。

ネプテューヌはこんなことを言わない。

けれど私はそれを唾棄する。

…そうだとしても、平和的解決を望むのだから、自分もまた度しがたい。

ここには怪物しかいないんだから。

 

どこへ行こうかと考えるリゼヴィムと歩いていると、前を歩いていたリゼヴィムがこちらに振り向く。

10年の付き合いの友人のような、それを心配するような顔だった。

 

「あまり自分を思い詰めても仕方ないんじゃなぁい、ネプテューヌちゃん」

 

「…何の事?」

 

「そう疑いなさるな!今日ばかりは俺は口出しはしても手出しはしないからSA!

そういう契約だからねぇ」

 

「悪であるって言うのに契約は守るんだね」

 

「悪魔だからねぇ」

 

「関係ある?」

 

「あるね」

 

ポケットから賽子を取り出したリゼヴィムはたまたまそこにあったベンチに座る。

 

「悪魔は契約を結べばそれを可能な限り叶えなきゃならない。

それは欲望の詰まった題であれ、理想にまみれた命であれ悪魔はそれをただの契約として受け入れる。

受け入れて初めてそれを契約とする!」

 

「…悪魔であることに拘るんだね、リゼヴィムは」

 

「まあ、自分を大切にするのは重要だからねぇ。

在り方は人それぞれなれどその在り方そのものを根底から変えるのは難しいものさ。事変わりやすい悪魔といえど根底は同じなのさ」

 

だというのに、と残念そうに手で遊んでいた賽子を見つめるリゼヴィム。そこには哀愁があった。

心から悲しんでいる。

 

「今の悪魔は残念極まるね」

 

「どうして?契約を守ってる悪魔は多いよ?」

 

「違うね。

契約してるんじゃない、あれは寄生してるのさ。

蛆のごとく地より湧き出て他者の心へ入り込み、心を吸う生き物。その在り方へと歪んだ…それは悪魔じゃあないね」

 

「寄生…?」

 

「古来より悪魔はそれ相応の資格がある奴以外は召喚出来ない類いだった。確かに、悪戯に召喚する奴もいるけどそれはそれで契約足り得る。召喚に応じることこそが契約ならば誰であれその契約書に名を記すに値する!

それを当代はどうだい?何をするかと思えば地上への進出!

駒の開発、他者への転生……下らないねぇ、実に。

どちらが悪魔を卑下してるか分からないじゃないかね?」

 

驚いた。

単純にその口から出る台詞に驚いた。

リゼヴィムは悪魔を尊んでいる事に、ではなく全悪魔を否定する言葉にだ。

これなら魔王なんて要らなかったろうにねぇ、と最後に言ってから賽子で遊びだした。

 

子供のように移り気の激しい人物。

 

そんな印象すら浮かぶ。

 

「今の当主は…半端だねぇ。敵対者足る俺が、永く生きる俺からすれば青二才にも満たない。君一人に背負わせた方がいい治世だろうさ」

 

「私?無理だよ、私に国とか無理無理!」

 

「例えばの話だ。

まあ、君はもうあらゆる悪魔の駒を超越しているから誰もその種族に手を伸ばせないだろうけど…というより、その可能性は切り捨てられてるね」

 

「…あっ」

 

「心当たりはあるようで何より、まあ、そんなんで変わったら詰まらないから有難いね。

そうだろう?俺の敵であり、女神の人間ちゃん」

 

「えっ」

 

見抜かれた?

いつ、どこで、どうして?

いや、違う。

 

そうか、この為だったのかと思い至る。

 

この為の邂逅だったんだ。

自分の中身を探るため、互いの腹の内を見せるための邂逅だったんだ。

 

「私を理解したかったの?」

 

「君も俺を理解したかったろう?お互い様だよ、ウフフフフ」

 

「…当たり。でも、それだけじゃないよね?」

 

「そうだねぇ…問いたいね。

ずばり、ネプテューヌちゃん。

君は俺とも手を取り合えると思うかい?」

 

「うん」

 

「ウフフフフ、気前のいい即答ありがとう。

どうしてか聞いても?」

 

「だって、話が出来るよ?

リゼヴィムと私は、こうして話し合えてる。

なら…私はリゼヴィムを受け入れるよ」

 

心がある、言葉がある、その人がいる。

それだけで、繋がれる。

それは今までが証明していることで、自分の掲げる夢を叶える方法。

誰もが繋がる可能性を秘めている。

 

皆それに気づいてないだけで、その糸は常に紡がれている。

多少強引にでもそれを結ぶ。

それが自分のやっていること。

リゼヴィムはそれをうんうんと頷いて、納得する。

 

理性的、どこまでも狂った様子を見せない。

これがリゼヴィムという悪魔の一側面だとしても、自分はその側面に踏みいることを許された。

とても、有難い。

 

「なるほどねぇ、見えてきた」

 

「私も、分かってきたよ」

 

「ほほう、さては同じ答えと見たねぇ」

 

「せーので言う?」

 

「「せーの」」

 

 

 

 

 

 

 

「「─ヒトデナシ」」

 

「ああやっぱり?」

 

「…分かってたけどネプ子さんがヒトデナシはなくね?」

 

口ではそう言うものの、胸にはストンと納得が広がる。

ああ、ヒトデナシ。

確かに、自分もリゼヴィムも最終的な人の感情は無視して動いている。

そうだ、自分本意だ。

 

「そうかねぇ、筋金入りだよ、君。

俺は分かっててやってるし、君もそうだろう?

自身のエゴイズムに身を委ねて動くのは、とても心地がいい」

 

「心地がいいっていうのは分からないけど…皆の意見をたまに無視しちゃう事はあるよ」

 

「…面白いねぇ。

君はどうして俺の理想的な敵足りえてくれるんだい」

 

「主人公ですから、ドヤ!」

 

「主人公ねぇ…」

 

リゼヴィムはそう言いながら賽子を懐にしまった。

 

ともすれば、リゼヴィムは何なのだろう。

ラスボスなのだろうか。

恐らく違うんだろう。

もっと何か…別の何かな気がする。

 

立ち上がって歩き始めたリゼヴィムに自分も続く。

 

言葉のキャッチボールを除けば平和な時間だ。

とても悪の親玉ポジションの人といるとは思えないほどに穏やかだ。

 

「リゼヴィムは好きなことはないの?」

 

「好きなことねぇ…悪事をするのは大好きだね。

けれど大好きなものなら別にある」

 

「それは?」

 

「人間だよ、女神ちゃん。

人間こそが悪魔を悪魔たらしめる。

俺は人間が大好きだ、愛してるといってもいい」

 

「…そっか」

 

やっぱりそうだ。

この悪魔は自分の知るなかで一番悪魔らしい。

世界をめちゃくちゃにするといいながら人間を愛してると宣う。

何て矛盾、だけど本人の中では矛盾なんて何一つとしてない。

 

これが悪魔リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

悪魔らしい悪魔であり、超越者であり、賢人のような愚者。

まるで仮面をいくつも被った存在だった。

きっと誰よりも人間を愛してるし、誰よりも世界を壊したがってる。

…異常性こそがリゼヴィムの中では正常な答えなんだ。

 

自分は微笑んでこう言うしかない。

 

「どうしようもなく、狂ってるね」

 

「君が俺にそれを言うか、パープルハート、いやネプテューヌちゃん。

キリスト教にも言われたけどねぇ…身内にも言われたね。

狂ってる、ねぇ…何を今更!言うのが100年は遅いねぇ。

よろしい!ならば俺を止めるかい!」

 

「うん、絶対に止めるよ」

 

「ウフフフフ、素敵な返しをありがとう。

なら、ここからは闘争の中で語り合おうじゃないか。

この穏やかな時間に幕を引いて、俺達の戦争を始めよう」

 

「うーん…それはいいんだけどね?」

 

「うん?」

 

空気を壊すようで悪いんだけど…

そのですね、長く話したりしてただ歩いてるだけだとね。

 

「お腹すいた…」

 

「ガクリッ…おいおい締まらないよぉ!」

 

「ご、ごめん」

 

「いいんだけどなんかこう…こうさぁ。

まあいいや…寿司でも奢るよ、こんなおじいちゃんと一緒で良ければね」

 

「なんか無駄に優しいね?」

 

「そりゃ君、これから戦争する相手への礼儀みたいな物だとも。

今のうちに食も楽しむといい…これから退屈はしないんだからねぇ…」

 

出来ればさせてほしいです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回らない寿司って本当にあるんだね、ネプ子さんまた賢くなれましたね。

回ってる寿司は良く行くけど回らないのは行かないからなんか新鮮だったなぁ…

 

二人して意外と食べた。

まさかリゼヴィムもあんな食べるとは…

小猫ちゃん程じゃないにしても良く食べる部類だね。

太らないの?

 

「お腹一杯!ゴチになりました!」

 

「ハッハッハ善きに計らえ~」

 

「ははー!」

 

「まあ、こんなやり取りもこれで終わりだ。

今度こそ、お別れといこうじゃないの」

 

「あ、なら最後に1つだけ!」

 

「んー?」

 

聞いてあげようという姿勢のリゼヴィムに自分はずっと気になっていたことを聞くことにした。

多分、彼は嫌だろうけど…折角答えが目の前にいるからね。

 

「ヴァーリのこと、嫌いなの?」

 

「…彼氏だからかい?」

 

「そうかもしれないけど…ううん、きっとそうじゃなくても聞いてたと思う」

 

「お優しいことだねぇ。

…嫌いねぇ、なら1つ問おうか。

君は何をもって人物を嫌う?」

 

「え?うーん……理不尽を与える人?」

 

「なら、君は俺が嫌いで俺はヴァーリが嫌いってことになるね」

 

「…そうなるのかな?でも、嫌いって程じゃないよ?」

 

「今の答えなら、そうなるのさ。

嫌いの基準なんて物差しはない。

例え俺があれの父親を誑かして捨てさせたとしても、その延長線上であれの母親の記憶を消してやったとしても。

俺があれを嫌う理由になるかい?」

 

「それは…そうだね。

じゃあ、嫌いじゃない?」

 

「むしろ期待してるね。何を、とは言わんさ」

 

何を期待してるんだろう。

昨日のリゼヴィムなら戦争相手が増えることだろう。

でも、今のリゼヴィムを見ると…分からない。

単純に孫のヴァーリに期待を寄せている?

なら…それなら自分で育てればよかったのに?

 

のらりくらりと質問がかわされる。

 

まるで実態がないようだった。

性格がコロコロ変わって、リゼヴィムがそこにいるのか検討もつかない程に。

本当は偽物なんじゃ?

そんな疑問すら沸いてくる。

でも、その疑問が消えるほどの確信としてこれはリゼヴィムだという漠然とした感想がある。

 

むむむ…主人公の眼を以てしても分からないとは!

 

「まあ、いずれ分かる、いずれな…」

 

「ぐぬぬ…卑怯なり」

 

「ウフフフフ、許してチョーよ。

じゃあ、また会おうじゃないのネプテューヌちゃん。

二週間でどう仕上がるか…楽しみで仕方がないね」

 

心より戦いを楽しみにしている様子。

恋人との逢瀬を楽しみにするように、プレゼントを渡すのを必死に隠す子供のように。

ニヤニヤとした顔は、しかし誠実そうにも見えた。

 

だから、自分はこう返す。

 

「絶対に諦めないよ。夢も、リゼヴィムと手を繋ぐ未来も」

 

歩きながら手をフラフラと振ってリゼヴィムは去っていく。

 

…何だかんだで普通に過ごした気がする。

困った。

心に入り込むのが上手いにも程がある。

話術というか…揺さぶってくる言葉だ。

 

こうして、自分とリゼヴィムの話は終わった。

だから、後は考えなきゃいけない。

この二週間、何をするのか。

きっと、今まで通りの修行じゃ駄目だろう。

何より…自分の力の先が気になる。

 

グレートレッドの言葉、新しいむげん。

つまり、自分にはグレートレッドとオーフィス…この二人…二人?二龍と同じ位になれるってこと。

 

どうすればなれるのか。

そして、なるべきなのか。

グレートレッドは『むげん』は皆化け物だと言っていた。

自分はそう思わなくても長く生きたグレートレッドからすればその通りなんだろう。

 

「…うーん、考えても仕方ないかな。とりあえずおっちゃんに連絡をっと」

 

終わり次第すぐに連絡を入れろとしつこく言われてしまったのでその通りにする。

メールで終わったよーと送るとすぐに返信が来た。

 

『駅に車寄越してるから乗れ。大丈夫だったか?』

 

固い文章だった。

それだけおっちゃん達には心配をかけさせたんだと思う。

いーすんも居ない本当での一体一。

心細かったけど、向き合うにはいい機会だった。

 

駅に向けて思案しながらも歩くことにした。

まだ良く分からないことが多いけど、皆との絆が導いてくれるって信じてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、ネプテューヌさん」

 

駒王町に戻ってきて、家に帰った時。

まず声をかけてくれたのはいーすんだった。自分はそれに快活にただいまと言うと皆心配なさそうだと安心した。

…ヴァーリには特に悪いことしちゃったね。

 

「どうだった?」

 

「似た者同士って感じ?」

 

「なるほど、お前はそう捉えたのか」

 

「なるほどって…どういうことだ曹操」

 

ヘラクレスの質問に曹操は寄りかかってた壁から離れる。

 

「リゼヴィムは多重人格のように多くの顔があるということだ。

良ければ、どのような会話をしたか簡潔にでもいいから説明してくれないか?」

 

「うん、いいよ」

 

ヴァーリの事は伏せて他の事はある程度話す。

すると、皆分かったようで考え込んだり何度も頷いたりと様々だった。

皆に聞いたら、

 

狂気的な悪魔、戦争狂、子供っぽい、愚か者、賢そう…等々、色々と皆の感想が違う。

 

それはリゼヴィムという悪魔の成せる技なのかもしれない。

 

「…理解したわ」

 

リアスちゃんは何か分かったようで頻りに頷いていた。

 

「リゼヴィムは確かに私たちの最大の敵なのかもしれないわ。

邪龍よりも、遥かにね」

 

「えーっと…部長、俺分からんとです」

 

「悪魔としてリゼヴィムは誰よりも悪魔であるのよ、イッセー。

誰よりも悪魔らしい存在、それが彼。

だからこそ、最大の否定者足りえる、足りえてしまう。

私たちを否定するに余りある物が彼にはある。

いつかの頼光と同じかそれ以上に…」

 

「契約を厳守するところがですか?」

 

「それもある。でも、それだけじゃない。

リゼヴィムが真に悪魔として私たちよりもそれらしいのは顔よ」

 

「イケおじだからですか!?

かぁー世の中顔か!くたばれイケメン!!」

 

「一誠さんも十分それに入ると思いますけど…」

 

「なら生きろイケメン!!」

 

一誠ェ…ネプギアも注意の仕方間違えてるよ~

でもお姉ちゃん許しちゃいます!

そうじゃなくって…

 

「多重人格のような性格でしょ?」

 

「そう。使い分けが上手い、思考を分離させられるのね」

 

「つまり、狂気的な自分と冷静な自分、二つがあると?」

 

「そうなるわね、もしかした、まだまだあるのかも」

 

「…なるほど、悪魔らしいといえば悪魔らしいですね」

 

「……少し、外の空気を吸わせてくれ」

 

「ヴァーリ…」

 

ヴァーリはそう言って出ていった。

…そうだよね。 

自分の捨てられた原因、お母さんと離ればなれになった元凶だもんね。

 

……うん。

 

「ごめん、皆」

 

「行ってきなさい」

 

「…ごめん、勝手で」

 

「その勝手に救われてるんだ、構わないよ。

それに恋人だろう?今支えてあげないでどうするのさ」

 

「姉ちゃん…行ってやれよ。アイツには、姉ちゃんが必要だ」

 

「…うん!」

 

皆に感謝して自分も家を出る。

ヴァーリは外で思い詰めた表情で立っていた。

…どう言葉をかけるべきなんだろう。

 

「ネプテューヌか」

 

「…うん」

 

そう思っていたらあっちから声をかけてきてくれた。

話し掛けづらいのを察してくれたのか、単に気づいたからなのかは分からないけど、ありがたかった。

 

こんな時でも助けてもらうなんてよくないね、ほんと。

 

「…心配かけちゃったよね」

 

「…そうだな、心配で胸が張り裂けそうだった」

 

「心配ばっかりかけちゃってるね」

 

「…俺が不甲斐ないばかりに、すまない」

 

「違うよ」

 

違う、そんなんじゃない。

不甲斐ない?どうして?

 

「子供だったヴァーリは悪くないじゃん!それに…今回は私が勝手にやった事だから。だから責めるなら私を責めてよ」

 

「お前は……いや、違うな」

 

「え?」

 

「情けない、と思っていたんだ」

 

「情けない?」

 

「ああ」

 

自分の手を見つめながらヴァーリはそう言った。

 

「俺はお前の心も体も守れていない。情けないことこの上無かった。兵藤一誠にああ言ったというのにだ…俺は口約束すら守れない馬鹿だった」

 

「そんなこと…」

 

「事実だ」

 

そんなことない。

ヴァーリは自分の心を守ってくれてたよ。

傍にいてくれるだけでも、救われてた。

シェアが無くても、ヴァーリの心は常に伝わってた。

 

「…お前がそうじゃないと思ってくれているのは分かってるよ。

けれど、これは事実なんだ」

 

「…なら、これから守ってよ」

 

「ネプテューヌ?」

 

「守ってよ」

 

悔やんでいるのなら、それをバネに変えないといけない。

悔しさだけを残すなんて駄目だから。

それを強さに変える一助になれるなら。

そう思って、上手く言えない自分は意思のままに言葉を発した。

 

「…だが」

 

「もう!!」

 

相変わらず俯いてるヴァーリに苛立った。

ので、両手で顔を掴んでこっちに無理矢理向けさせる。

説教が必要だねこれは!

 

「うじうじ悩まない!私を守れなかったのが悔しいなら次は必ず守れるようになってよ!そりゃ私の無茶のせいなのは分かってるけど…でも、私が無茶できるのはヴァーリのお陰でもある!あの時の告白は嘘じゃないんでしょ!」

 

「…嘘じゃない。俺はお前を守りたい」

 

「なら、守って。

私の背中を誰かが撃ったりしないように、守って」

 

自分が好きなヴァーリはもっと強気で、賢くて、でも優しい。

そんな人なんだ。

だから、うじうじ悩んで立ち止まってる姿を見るのは…何か嫌だ!

 

「どんな時でも私を任せられるのはね、ヴァーリしかいないんだよ。助けてくれるんでしょ?」

 

「ああ」

 

「私のこと、守ってくれる?」

 

「ああ」

 

「…その、私のこと……」

 

「好きだ」

 

「まだ何も言ってないよ!」

 

「…フッ、ハハハ…!」

 

突然、ヴァーリが笑いだした。

何だか馬鹿らしくなったとばかりに。

 

「むー…なんでそこで笑うのさ~」

 

「ハ、ハハハ…すまない、俺だけ思考の沼に沈んで馬鹿馬鹿しくなってな…そうだった。俺はお前が走れるように守る…そう決めたんだった」

 

『惚気を聞かされる身になってほしいが?』

 

「あ、アルビオン…どこまで聞いてた?」

 

『無論、お前が来たときから全て。そも俺達は繋がってるのだから聞こえてしまうのだ、許せ』

 

「ねぷぅ~~!そうだった!私ってば分かってたのに何してんのー!?」

 

『何、ヴァーリはお前を愛してるのは間違いない。

そこは保証するぞ』

 

「嬉しいけどそれは本人から聞きたかったなぁ!?」

 

『本当に申し訳ない』

 

某鋼男の博士みたいに全く申し訳なく思ってないような謝罪やめて!あー!あー!

時よ戻れ!バトル路線に変えるから戻って!

 

時の砂、誰か時の砂持ってきて!

 

「時の砂を知ってるのは今どれくらいだろうか」

 

『発売日は1990年だぞ』

 

「何か悲しくなるからこの話やめよう!」

 

「おかしい、俺はその年代の生まれではないのにどうして喪失感が…?」

 

『寄る年波には敵わんな…魂だが』

 

「アルビオンは何なの?ドライグ並の出番ないから無理矢理ねじ込みに来たの?」

 

『出番はな、誰でも欲しいんだよ。

出番無くなったのもこの作品いるんだぞ』

 

「ねえなんで急にメタが侵食してるの?さっきのシリアスは!?」

 

『いいか、作品の説明文見てみるんだ』

 

え、何急に突然。

 

…あ、うん。

シリアスはぶち壊すんだって。

ぶち壊、す……

 

…。

……。

………。

 

『気付いたか?』

 

「嘘、この作品…シリアス多すぎ…?」

 

「どうしてだろうな…?」

 

『何故だろうな』

 

どうしてシリアスは発生するんだろう…?

 

「作者の思考回路が闇に近付きすぎた結果の文、いわばツケだな」

 

「メタいけど、何かこのテンションならやっていける気がする!」

 

『気のせいなんだよなぁ』

 

「分からないじゃん、もしかしたらこれなんか凄い力に目覚めて超天元突破グレンねぷ子になるかもしれない」

 

『なるんだったらここまで苦労してないな』

 

「残念だが夢は潰えたな」

 

「それはリゼヴィムに言ってよ!ああもう、何かぐだぐだになってきた!大丈夫でいいんだよね!?」

 

「ああ、やるだけやって見せるさ」

 

「その意気だよ!」

 

よし!

そうと決まれば二週間の余裕があるうちに詰めれるところ詰めちゃおう!駒王防衛隊、ファイアー!

シリアス担当はねぷ子さんじゃない!あっちのリゼヴィムだ!




ネタ時空!?殺されたんじゃ…

残念だったなぁシリアス、トリックだよ。
本物のネタ時空は滅茶苦茶な場面での再発を伺ってたって訳だ。
シリアスにしとこうかなと思ったし、騙して悪いなとも思ったよ。


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ゴタゴタしてきたね、問題多いよ!

皆様、新年明けましておめでとうございます。

投稿が遅れた事、誠に申し訳ありません。 
色々とやることがあったもので…
では、最新話です。


「退屈だ」

 

唐突に不満げな言葉を飛ばしてきたのは邪龍だった。

放浪していた所をスカウトして応じた彼はしかしその力を振るえていない。

確かに退屈だろう。

 

けれど俺はそれを意に介さない。

至極無駄な回答しか用意しないからだ。

それはきっと彼を悪い意味で刺激するだろう。

煽るのも面白そうだが痛手の方が大きいだろうから触らぬ神に祟りなしである。

 

「何故契約など律儀に守る?」

 

絡んできた。

最初から絡んできていたがまだやるのだろうか。

俺は俺で二週間後の計画を練っているというのに全くもって暇人ならぬ暇龍だ。

 

ポーンの駒を動かしながら話の続きに付き合ってやることにした。

 

「悪魔だからねぇ」

 

「屑の貴様がそこに拘るとは」

 

「君も邪龍…ドラゴンであることに誇りはあるだろう?」

 

「だからこそ解せんのだ。

貴様には譲歩が無い…誇りあるものだとするのならある程度の線引きがあるはずだろう?何故貴様は貴様のみが悪魔であると定義する?」

 

「さてねぇ…僕ちんにも分かりましぇーん」

 

「…ふん」

 

「そう怒るなよ~君と私様は仲間じゃないの?お悩みでも?」

 

「何故戦わん。何故様子見を選んだ?」

 

「…」

 

全部答えてやるのも癪なのでニンマリと笑顔で返す。

露骨な舌打ちが聞こえてきて清々する。

俺が何でも答えてあげる聖人君子とでも?

そういうのは鏡よ鏡~ってボッチでやってな。

 

「邪龍、聖杯、俺、そして…『獣』…計画は順調じゃないか」

 

「…二週間待つ利点がないだろう!」

 

「何を焦ってるのさ。越えられるのが怖いと?」

 

「なんだと…?」

 

「君の生きてきた軌跡が凌駕されるのが怖いのかと聞いているのさ」

 

「…あり得ん。たかだか想い1つで越えられるものか」

 

「…ま、そういうことさ。

ゲームは楽しくなくちゃねぇ…君の為でもあるのよこれ。

俺ってばやっさしー!」

 

「微塵も思っていないことを言うな」

 

「何か口悪くねぇ?おじいちゃん泣いてしまいますわ~よよよ…」

 

まあ、正解なんだけども…と、彼の様子を少し観察する。

ああ、こりゃダメだね。

その内いなくなるかな、これ。

困りはしないけど面倒が増えるのは…遠慮したいなぁ。

 

でも嫌われてるしね。

 

放っておこうかなと結論しようとした時だった。

手に持っていたポーンが砕け散る。

 

…彼、ではないねぇ。

微量の魔力残滓。

ああ、うんうん…強化されてるようで何より。

 

「ここにいたか、明星」「相変わらず腐ってる!」「老人らしく老衰しろ!」

 

「貴様は…魔源か」

 

「ハロハロー性能は問題なさそうね!」

 

「問題なしだ。礼を言おう、明星」「チェスなんて出来んのか?」「下らない児戯をするならない頭使えよ!」

 

三つ首ちゃんの左右はうるさいけど真ん中が普通で助かるねぇ。

にしても…うんうん、強くて嬉しいよ?

俺としてはそっちの彼よりも信用できる。

 

「あと明星はやめてくれね?それは初代ですんで」

 

「そうか、ならばリゼヴィムと呼ばせてもらう。…お前たち、少し静かにしろ!」「は?真ん中だからって喧しいんだが?」「センターアイドルだからって調子乗らないで?」

 

「あーあー気にしないからさぁ。それで、挨拶だけ?」

 

「何はともあれ蘇らせたのは貴様だ。故に筋を通しに来た…そして、蘇らせたということは貴様は我が力を欲している。そうだな?」

 

「そう!イグザクトリィ!」

 

「ならば問おう。貴様は邪龍を欲すか?悪を欲すか?」「冗談を言えば頭から食いちぎる」「両手両足は丸焼きで臓器を捻り出そう!」

 

左右の頭の言うことはともかくとして下手な答えは首を絞めるなぁ。普通に答えるだけなんだけどねー

 

「無論、悪だよ。僕ちんが求めるのは悪でいい。それが邪龍という悪であれ、悪魔という悪であれ、行いに大差はないからねぇ」

 

「悪であることを受け入れるか、悪魔」

 

「君らと同じさ、邪龍」

 

「…気に入った、これより貴様の指示のみ聞こう」「感謝しろよ蝙蝠」「ふざけた指示なら喰い殺す」

 

「いやぁありがたいね。流石は悪神から創られた邪龍、悪であれかしとされた龍だ!君とは分かり合えると思っていたよ」

 

こちらの言葉に真ん中の首はくつくつと笑い、左右の首はゲラゲラと嗤う。

俺と彼の関係はこれより上下などない平等になった。どれだけのメリットか。彼一体でどれ程の災厄となるかなど想像に難くない!

間違いなく、彼はこちらの最高戦力だ。

 

そんな彼が、先ほどからずっと俺たちを見ている最初からいた邪龍に視線を寄越す。

 

「……ああ、生き延びた同胞か。我と違い、肉体も無事だったと見える」

 

「…先達と言えばいいのか?何故その男に協力する?」

 

「知れたこと、我らは悪。悪であらねばならぬ、善があるのならば我らは必ずその対となる存在であらねばならぬ」

 

「それが先達の理念か」

 

「理念?違うな、これは我が本能だ。そのような高尚なものであるものかよ」「勝手に推し量んな蜥蜴がよぉ!」「呪い殺すぞ!」

 

「口が悪い頭だ…ならば問おう、先達。獣の本能で悪であれかしとされたその力を振るうというのか?」

 

「無論だとも。同盟者は邪龍を望まず悪を望んだ。ならばそれに従い、限りある悪行を為すまでよ」

 

ああ、やはりいい。

この邪龍は理解している。

あの拝火教の悪神が創り出した邪龍なだけはある。

流石だ、俺は運がいい。

 

そこまで会話してある程度の理解となっとくをしたのか彼は何処かへ行ってしまった。

残ったのは俺を同盟者と呼ぶ悪の権化。

 

「して、貴様の最大の敵は誰だ?」

 

「おお?取っちゃうのかな?」

 

「我単体であればそれも良しであったが…何、同盟者が望む盤面にしたいのであればそうすればいいだろうさ」

 

「ありゃ、お優しい。

そうねぇ…最大の敵、というと…」

 

昨日のデートした相手を思い浮かべる。

互いを互いに気狂いだと理解し、それでも拒絶と寛容を譲歩しない仲になった。

俺の戦争相手、俺の愛すべき敵となった。

 

「女神かなぁ…」

 

「ほう、神か。だが聖書の神は死した筈だが?」

 

「ああ、あんなんじゃないよ。もっとやばい気狂いだよ。

俺の手を取ろうとしてきた可愛い女神様なんだ」

 

「正気か?」「狂ってる」「化け物かな?」

 

「そう、化け物だ、怪物だ、モンスターだ。だがだからこそ愛おしいね!孫も根は俺と同じだから惚れたのかねぇ?ウフフフフ、楽しみじゃないか」

 

「なるほど。…味見くらいはしてみたいものだ」「正気かよ」「巻き込まんといて」

 

「契約上、二週間はお預けだよ」

 

「致し方無し、か…」

 

非常に残念そうだった。

折角共感出来る同盟者がこうも落ち込むのは俺でも気分が悪い。

なのでちょいと資料及び映像を提供することにした。

 

「これは?」

 

「僕ちんの相手、つまりは女神ちゃんの記録だよ。

中々に面白い記録だよ?」

 

「ほう…」「女神なんざごめんだ」「神は皆、どこかイカれている」

 

しばらくの間、彼はそれを読み進め、視聴した。

何というか、分かりやすい反応だった。

目が輝いていくというか…こう、玩具を貰った子供のような。

しかし邪龍も惹き付けるなんて君は罪だねぇ…いや、当然か。

君は闘争を拒むけど君の力は闘争の本質に値する。ならばそれを好むものを惹き付けるのは分かりきっていたことだった。

 

「何という女神だ、まるで神とは別次元の存在だ」「気色悪いの極みだぞ」「これは生き汚い人間と何も変わらない」

 

「人間だからねぇ」

 

「…ふむ?…ああ、なるほど中身か」

 

「ザッツライ!」

 

「ならばこそ素晴らしい、貴様が敵と認めるだけはある。我もまたこのような敵が欲しかった」「昔じゃ無理だ」「今ならば?」

 

「んー…昂ってるね」

 

「無論、貴様の契約を破る気はない。安心するがいい…だが、このような光景を見れば我は昂らずにはいられない!」「血を求め、肉を求める!」「殺戮と勇者を求める!」

 

うんうん…要約すると『マジ戦いたくてッベェわマジッベェわ』ということだね。

間違いない、このままだと俺に矛先が向く。

勘弁願うので計画を1つ動かすことにしよう。

こんなに意気投合するの早いとは思わなかったし計画的には問題なし。

 

「昂ってる君に良い案があるよ」

 

「む?」

 

「君の千の魔術に頼りたくてね」

 

「ほう、我が術に?」

 

「そう、どうしても解きたい封印があるんだよ」

 

「…聞こうか」

 

改めて聞く姿勢を整えた彼に感謝しつつ話を続ける。

俺が欲しいのは邪龍、それもある…けれど本当に欲しいのはもっと別だ。

これこそこの戦いに相応しいと確信している。

 

「あの聖書の神が、能力だけが取り柄の神が封印しか出来なかった封印…俺の知識、君の術、そして…供物さえあれば解除できると思うんだけど、どう思うね?」

 

「ほう…つまりは…我らよりも強きものか」

 

「まあ、グレートレッドと同列かねぇ?」

 

「クカカカカ…それはそれは!」「強い奴!」「戦いたい!」

 

分かりやすいなぁ…まあ、肯定ってことでいいんだろう。

当の真ん中の首が嗤ってるし。

 

「二週間、遊ぶ気は俺にもない。精々暗躍しようじゃないか、野心の昼夜が過ぎるのはすぐそこで、彼女達は絆を信じて走っている」

 

「何とも楽しそうではないか」

 

「ウフフフフ!楽しいとも、この戦いは俺のものだ。

ついに俺は、俺の相手を見つけた!!」

 

だから期待を越えて見せてくれよ、女神ちゃん。

俺達の勝ちを、その価値を以て越えてくれよ。

じゃなきゃ全部壊しちゃうからねぇ…君の絆、それがどこまでか見せてもらいたいんだからさ。

 

 

 

 

 

・ 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょっとぉ!!」

 

「くっ…キャァ!?」

 

刀で受け止めるも強度を勝ったようで光の槍に弾き飛ばされて転がる。

うへぇ…なんて馬鹿力!

何度も繰り返される修行に慣れながらも転がされる。

 

「ネプ子、イメージが足りねぇぜイメージがよ」

 

「イメージ…」

 

転がした張本人のおっちゃんことアザぜル総督様はやっぱりというか強かった。

バラキエルさんの比じゃないくらいには卓越した強さを持っていた。

 

片手間のようにやられて焦った場面なんて片手で数えられる程度。

今まで無かった事だけど…踏んできた場数が違う。

 

「シェアってのはイメージで形を作ったりするもんだ。

お前さんの刀が脆いのはある種の妥協があるからだぜ」

 

「でも、これ以上となると纏まらないのよ。

もっと硬く、鋭くなんて。大体、あなたの力が強すぎるんじゃない?五発に一本は壊されて創り直してるのよこっちは」

 

「それが妥協なんだよ。いいか?お前の強みは想像力と意外性だ。

属性攻撃も、普通あり得ねぇデカすぎる剣も何もかもお前さんの強みだ」

 

「それは、そうね」

 

「ならそこを伸ばすしかねぇな。もっと新しい技を作るとかよ」

 

「新しい技…」

 

「ああ、難しいかもだが、手札が多ければ多いほどお前さんは有利なんだ。増やさない手はねぇだろ」

 

その通りすぎて何も言えない件について。

確かにネプ子さんの奇想天外戦術は環境にぶっ刺さりだから増やすのはアドだもんね!

 

「後は単純に実力を伸ばすことだな」

 

「そうね。…おっちゃんになら話しても良いかもしれないわ」

 

ここで自分はそろそろ明かすべき相手には明かしておこうと閃く。

ここはこの閃きを信じるべきそうすべき。

 

「ん?」

 

「私ね、グレートレッドに会ったのよ」

 

「はえー、グレートレッドねー……」

 

 

 

「は?グレートレッド?」

 

 

 

すっごい呆けた顔に笑いそうになるけどそこは我慢して頷く。

実はいーすんにもこの事は話してない。

知ってるのは自分とオーフィス、そして今知ったおっちゃんだけ。

ヴァーリにも言っていないのは意外と抜けてるから言っちゃうんじゃないかって事で…

 

おっちゃんが大声出しそうになったのを止めて、近付いて小声で話しかけてくる。

 

「ど、どどど、どういうことだ…!?」

 

「オーフィスとグレートレッド曰く、私も『むげん』になりかけているとか…」

 

「はぁ…?いや、そうか…なるほど…」

 

「今ので分かったの?」

 

「大体だぞ?合ってるかも分からん。だが、恐らくはお前の女神としての特性が新たな『むげん』になる鍵なんだろうな」

 

「特性…シェア?」

 

「そうだ、シェアはそれこそ人の想いが力となるシステムだ。

人との繋がりが有る限りそれこそ無限に力がわき出る…そういうことなんじゃねぇか?」

 

な、なるほど?大体分かった。

難しいけどシェアが凄いって事だね!まあ確かに皆のパワーをメテオにしてるから当たり前と言えば当たり前だね!

 

「つまり、これからも誰かとの繋がりを増やしていくべきなのね」

 

「それもそうだが…無理にするんじゃねぇぞ?しっかりとした信頼関係がなきゃシェアは生まれねぇんだからな。いつも通りのお前さんで良いんだからな」

 

「ええ。…おっちゃんは、親身になって付き合ってくれるわね」

 

「おお、どうした突然」

 

突然と言えば突然。

だけど、聞きたくなったんだよね。

おっちゃんがこんなに優しくしてくれるのは…多分、罪滅ぼしなのもあると思う。けど、だからって悪魔の問題にまで首を突っ込む意味はない筈だ。

和平があったとはいえ、本来ならサーゼクスさん達がもっと動く案件なのに。

 

「おっちゃんがそこまで身を削らなくてもいいのよ?」

 

「…」

 

「四六時中、色々な情報を調べては調査とかさせている…それくらい私でも気付いてるわ。それを纏めて、堕天使殆どに指示するなんておっちゃんらしくないわよ」

 

「…そうだな、俺もそう思うがなぁ」

 

おっちゃんは自分の言葉に同意しながらもやめる姿勢を見せない。

 

「気付いてないだけで、俺はお前さんから結構貰っちまってる。

だからやめるのは無しだな」

 

「私、そんなに何かした覚えないけど?」

 

「そりゃそうだ、ネプ子は突っ走ってるだけだからな。それに、尻拭いまでしてもらってんのに一応の大人な俺が指咥えて見てるわけにゃいかねぇだろ?」

 

「…そう」

 

「それに御前さんが無茶しないか心配で心配で仕方ねぇ!勝手に契約は取るし勝手に突き進むし勝手に怪我作るしでアーシア程じゃねぇが俺の気苦労の為にも俺自身が監視した方が俺の胃の安全に繋がるんだよ!」

 

「台無しよ!!」

 

自分のせいとはいえ何かこう言われると色々とツッコミたい!

さっきまでの発言全部胃の安全に直結してると考えると複雑過ぎる!そんなに身勝手だったかなぁ!?

自分の行動を振り返る…

 

身勝手だったね!ねぷ子さんかなりやらかしてるね!

これには憑依系主人公のねぷ子さんも反省の意を見せなきゃいけないのかもしれない。

でもまたやらかす予定目白押しだからするのは終わってからにしよう、そうしよう。

 

「まあ、取り敢えずしばらくは全員の実力を底上げするしかないか─」

 

 

 

「ショチョォ!じゃない総督!!」

 

「テメェ後で裏な。んで、どうした?」

 

慌てて入ってきた職員の人におっちゃんはイラッとしつつも聞いてみる。

なんか似たようなこと前にもあったね。

この施設ってあれなの?イベント発生ポイントなの?

 

「教会です…!」

 

「…教会。戦士か?」

 

「はい…!」

 

「紫藤イリナはここにいるのにか」

 

「加えて武装しています!」

 

「……」

 

不意に、視線がこちらを向く。

自分?と自分の事を訝しむけど思い当たることが無い。

教会が自分に対して……

 

ある、全然ある。

何が思い当たることがない、だ。

核心しかない…自分だ。

ここに来たのは自分だろうと断定できる。

 

「私、だよね?」

 

「ミカエルからの連絡も無しとくりゃ…露呈したな」

 

「だだ、誰から!?」

 

「考えても仕方ねぇ、取り敢えず表に行くしかねぇ。おい、俺とネプ子は先行くが他のエリアの奴らも呼んでこい!特に、うちに来た教会の戦士様は一番にだ」

 

「はい!」

 

職員さんが連絡を入れてから他の皆の元へ向かっていく。

待っていてもいいけど、前にイリナちゃんから聞いたことを思い出す。

 

『私以外の教会の戦士?いやー…やめておいた方がいいわ。信仰深いっていったら良い風だけど、実際は見境無しよ。主は絶対、他の種族と神話は淘汰すべきってね』

 

面倒くさいとプリンを食べながら遠い目をしていた。

多分、話が通じ無い可能性もある。

ぶっちゃけ急がないと施設への攻撃もあり得るわけで。

うー神様ぁ…そこらへんまで残すのは良くないと思うなぁ…!

 

おっちゃんと急ぎながら外へと出る。

 

すると、そこには…

何名かの教会の戦士と思われる人達とその人達よりも一歩前に立つお爺さん…うん、このお爺さんヤバイ。

強いなんてもんじゃない、ぶっちゃけると人ですかって聞きたいレベル。

 

ただその面持ちは武装している他の戦士の人達とは違って穏やかなものだった。申し訳無いとも見える。

 

「おいおいかなりの大所帯じゃねぇの。なあ、『司祭枢機卿』」

 

「いやはや、耳が痛い。こちらとしてもこの大所帯は避けたかったのですが…困ったことに聞く耳をもちませなんだ」

 

「教育がなってねぇな。俺がいうのもなんだが顧問を増やすべきだぜ」

 

「私と同じ強さかそれ以上ならば、安心できますがね」

 

「すまねぇ、向こう数年はねぇな」

 

軽口の叩き合い。

緊迫した様子ではあるけれどその余裕はあるらしい。

ただ、おっちゃんの挑発するような笑みの中にはかなりの警戒心が隠れている。

それだけこのお爺さんが強いってことだよね。

 

そうしていると後ろにいた戦士の一人がお爺さんに話しかける。

 

「ストラーダ様」

 

「…堕天使総督殿、その御方が?」

 

「…その前にだ、どこまで知ってる?」

 

「この教会の戦士25名と私はセラフのミカエル様より全てを」

 

「あの馬鹿…喋りすぎだ」

 

「その反応、間違いないようですな」

 

なんか凄い敬うような視線が突き刺さるんだけど…

おっちゃんへの敵意はあって自分にはないのやめてほしいなぁ、なんて。

 

お爺さんが自分を見据えながら一歩前に出る。

 

「ネプテューヌ様でよろしいでしょうか?」

 

「う、うん。えっとお爺さんは?」

 

「司祭枢機卿を務めているヴァスコ・ストラーダと申します。

ネプテューヌ様、本日こちらへ赴いたのは他でもありません」

 

 

 

 

 

 

 

「─教会にご帰還を」

 

そう言ったストラーダさんと戦士の人達は自分に対して跪いた。




・司祭枢機卿
教会でいうナンバー3という扱い。
つまり偉くて強いってことですね。



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高性能お爺ちゃん!の巻!

更新ペースを取り戻していこうと思うロザミアです。

…いつになったら我が家にはPでSな5は来るんだろう。
五次元なねぷ子さんプレイしたいのになぁ……



「教会に、ご帰還を」

 

「……」

 

目の前の人達が跪いている…自分に対して。

でも、それは…それに頷くことはできない、断じて出来ない。

皆の目に映っているのは自分じゃない。

自分という水晶玉の奥から聖書の神様を見ているんだ。

それはいけない、神様の死を否定しちゃいけない。

どんな物にも終わりはある、人にも物語にもだ。

それを否定することは神様の否定なんだ。

娘の自分がその否定を肯定しちゃいけない。

その否定を否定しないといけない!

 

それは許しちゃいけない!

 

「駄目だよ、私は帰らない、帰れない」

 

「っ、何故ですか!主の寵愛を受けし貴女が何故!我らを見捨てるのですか!」

 

「違う、捨てるんじゃないよ。

聖書の神様は、死んじゃったんだよ?私は…聖書の神様にはなれないよ、誰にもなれない。私は、()()はネプテューヌだから…ネプテューヌ以外にはなれないよ」

 

糾弾するかのように、自分へと声を荒げた戦士の一人に首を横に振って全員に事実なんだと、神様の死は確定しているんだと伝える。

そして、神様の代わりはいないと。

 

「神様は、皆を見捨ててないよ。死んじゃっても、大切だった。

死んじゃった後も心配する程に心配だったんだよ」

 

「…ならば、ならば…貴女は、主の子たる貴女は!何なのですか!」

 

「ただのネプテューヌだよ。生まれは神様からだけど…それでも神様は自分を継ぐことを拒んだ。だから私は継がないしそれ以外で皆と手を取りたいよ」

 

いーすんと二人で戦っていたのも神様が不安だったから。

かつてのネプテューヌも薄い自我でそうしていた筈。

なら、自分がそれを崩すわけにはいかない。

神様は独善的だったかもしれない、それでも…そこには愛があった。

誰かのための愛があった、想いがあった。

それを蔑ろにするのは誰にも出来ない、しちゃいけないんだ。

 

「神様は皆が大好きだった。でも、いつか離れなきゃいけない」

 

「…」

 

「頑張って、頑張りすぎて空振って、それでもと思ったけど限界が来ちゃったんだよ。私はその時、創られた子供で…会うときまで顔も知らなかった」

 

「それは」

 

「でも愛されてた。神様は最後の力を振り絞って自分に目一杯の愛と頑張れるだけの力をくれた。人に寄り添って欲しいって願ったから」

 

それは決して無駄じゃない。

自分の手は、今も誰かと繋がっている。

皆、手を取り合える筈なんだ。

一人で生きていける人なんていない、神様を求めても神様はもう応えられない。どれだけ手を伸ばしても…もう体がない。

だから、自分はその手を掴まないといけない。

 

それは自分が神様の娘だからじゃない。

求めてるのが神様でも、自分はそれになれない。

友達にしかなれないんだ。

 

「私は神様にはなれないけど皆と手を取り合うことは出来る」

 

「…やはり、歳ですなぁ」

 

ストラーダさんはしみじみとした声で立ち上がる。

戦士の皆は不安そうにストラーダさんを見ている。

そして、立ち上がったストラーダさんは自分に優しい微笑みを向ける。

 

「やはり、貴女の帰還は叶わぬということですな?」

 

「うん。でも、いつか教会には遊びに行きたいな!仲良く、皆で…」

 

「皆とは…悪魔の面々も?」

 

「…うん、和平もあるとはいえ皆が皆仲良くなれるなんて夢見すぎかもしれないけど…皆の事を知って貰って、受け入れて欲しい。いい悪魔もいて、共存できるんだって。きっと神様もそう望んでると思うんだ」

 

あの時の、神様の言葉は後悔が含まれていた。

それはきっと大きな対立を生んでしまったこと、他神話への迷惑をかけてしまったこと、信者の皆を導けなかったことへの後悔。

なら、娘としてそれだけでも自分は神様の代わりとして手助けしたい。でも、自分が導くのはほんの少し。皆の歩き出しの機会を作ることくらいしか出来ない…それが大事なんだ。

喧嘩して、分かりあって、和解する。

それが一番大切なんだって知ってるから。

 

「…主のお望みと」

 

「うん、私が教会の皆に女神としてやれることは神様の後悔を無くしてあげることだと思うから」

 

「…そうですか、なるほど…」

 

ストラーダさんはそうして考えるような仕草の後に、戦士の皆の方に振り返る。

 

「帰還せよ」

 

「し、しかし…」

 

「女神パープルハート様の温情だ。これ以上言わせる気か?」

 

「っ…御意…」

 

戦士の人達はストラーダさんの圧の籠った一言に気圧された様子で帰っていった。

でも、ストラーダさんはその場に留まっている。

 

「…歳ですな、しかし我ながらいい歳の取り方をした。突然の押し掛け、お許しください」

 

「ううん、いいよ!」

 

「複雑な心境、だというのに心が洗われる気持ちでありました。心からの言葉だったのでしょう?主の代行にならぬとはいえ主の愛娘の御言葉です。それを否とするのは憚られる」

 

「えっと…仲良くしてくれるってことでいい?」

 

「ええ、このような老いぼれでよろしければ」

 

「っ、ううん!全然!お爺ちゃんキャラは全然居なかったから大歓迎!」

 

「俺は?」

 

「おっちゃんはおっちゃんでしょ」

 

「唯一性はあるってことだな?ならよし」

 

おっちゃんのキャラ崩壊は今に始まった事じゃないから全力で無視する!

ストラーダさんは私たちのその会話が面白かったのか微笑む。

 

そんな時だった。

研究所の扉が開いて、ワアワアと騒がしく人が一杯出てきた。

言わずもがな、イリナちゃん筆頭の皆である。

 

「ね、ネプテューヌ!ストラーダ司祭枢機卿が来たって…ヒェ」

 

「おや、久しい顔ですな」

 

「お爺さん…?」

 

「気を付けて、化け物よ」

 

「グレモリー、化け物が化け物と呼ぶのはどうなんだ。いや同意だが…」

 

「姉ちゃんに何しに来たし…!」

 

「司祭枢機卿…ナンバー3ですね」

 

「あ、あががが…猪な私でも司祭枢機卿は無理だ!勝てん!絶対に勝てん!」

 

「主よ…痛ッ」

 

皆が皆、色々な反応を示しながらも共通しているのは一点。

 

ストラーダさんはやっぱり強いってこと。

おっちゃんが警戒するくらいだし…

でも、取りあえず説明をしないとね。

説明しようと口を開いた瞬間だった。

 

「お久しぶりです司祭枢機卿!!その節は大変お世話になりましたぁぁぁ!!」

 

イリナちゃんがスライディング土下座をストラーダさんにして、言葉が引っ込んだ。

皆が皆唖然とする。

イリナちゃんが土下座なんて生まれてこの方見たことない。

 

「…戦士、紫藤イリナ」

 

「ッ、ハ、ハイ!」

 

「……余りに弛んでいるようならばこの拳を使う気ではいましたが、その必要はなさそうで何よりです」

 

「─!ありがとう、ございます…!」

 

顔を上げて、ストラーダさんに感謝した。

イリナちゃんにとって、きっとストラーダさんは恩師に当たる人なんだと思う。

尊敬と畏敬の念があった。

それだけ、凄い人なんだろうね。

 

「えっと…ネプテューヌ、少し遅れたけど話はついたの?」

 

「うん、これからも友達としてよろしくって」

 

「よかったぁぁぁぁ……」

 

「イリナよぉ、ストラーダさんとやらは何ぞや?」

 

「イッセー君、いい質問…と言っていいのか分からないけど。

司祭枢機卿は私達教会の戦士の教官であり、最高峰の戦士なの。

そして、私の恩師でもある…」

 

「つまり強いってことだな!」

 

「ま、まあそうなるよ。ええと…」

 

「どう呼ぶかは任せましょう」

 

「はい師匠!師匠は、これからどうなさるのですか?やはり、バチカンへ…」

 

「そうしようとは思っていましたが……戦士イリナ、聞けば災厄と見えると聞きましたが」

 

多分、リゼヴィムかな?

災厄…まあ、災厄だね。

それに、聖杯の悪用をしてるから教会からしてみれば下手人?

 

「はい、今はここの方々と日々修行を」

 

「よい心掛け…ならば、一つ提案があります」

 

「…あの、師匠…?まさかとは思いますが」

 

「ええ、ここの全員を鍛えるのに協力をさせてもらおうかと」

 

「……ぃ」

 

「い?」

 

「勘弁してください…」

 

「ええ…」

 

イリナちゃんが今にも死にそうな顔でそういった。

ええ…戦士の訓練ってそんなに凄かったの?

ゼノヴィアを見ると…あ、駄目だ震えてる。

 

「何、加減はしますよ。老い耄れにどこまで務まるかは…さて」

 

「謙遜ですか?嫌みですか?」

 

「少なくとも、皆強い素質を持っている。ならば、ここで伸ばさねばならないと思うのですが、ネプテューヌ様?」

 

「うん、ストラーダさんから得られるのは多いという結論がねぷ子サーティーンディシジョンしたら出たし、お願いしたいな!」

 

「あの…聖拳は無しで…」

 

「コロサナイデ」

 

「ゼノヴィアが戻ってこない…」

 

ゼノヴィアは魂が抜けた様子でコロサナイデとしか言わない。

ええ…戦うの大好きなゼノヴィアがこうなるなんて自分は選択を誤っちゃった?

いやいや、そんなことない。

きっと厳しいだろうけど為になる!

 

「じゃあ早速見て貰おう!一誠、Go!」

 

「どうして俺からなんですか?」

 

「拳だし、丁度いいかなって」

 

「そっかぁ、ならヨシッ!」

 

「では、訓練場までお願いします」

 

「ネプ子…お前なんて事を…」

 

えっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤッダバァァァァァーーーッ!!」

 

「一誠が死んだ!!」

 

「この人でなし!」

 

一誠顔面一発KO。

何度拳を振るってもストラーダさんには一発も当たらずにそのまま拳を叩き込まれて顔面から地面に激突した。

 

「筋はいい。しかし無駄が多い」

 

「…姉ちゃん」

 

「う、うん?」

 

「どうしてヨシッ!ってなったんですかね…」

 

「わかんにゃい」

 

「兵藤一誠、でよろしいですな?」

 

「いてて…はい」

 

ストラーダさんは一誠に手を差し出して、一誠はそれを掴んで立ち上がる。

鼻折れてなくてよかったね。

 

「神器による自己強化、はよろしいが技術がまだ足りていない。

それでは振り回されて終わりですな」

 

「仰る通りです、はい…」

 

「後で五体を駆使した近接戦とは何たるかを教えましょう。君は伸びる」

 

「おお…はい!」

 

何だぁ…結構普通だった。

いやぁ、心配して損したな。

 

「では、戦士紫藤イリナ?」

 

「はいィ!」

 

「あの、イリナちゃん。怖がりすぎだよ?」

 

「…一誠君とかはね、まだ外部だからああなのよ。見れば分かるわ」

 

そんな死地に向かう兵士みたいな顔するなんて…ストラーダさんの扱きはそんなにやばいの!?

 

聖剣を取り出して構えるイリナちゃんにストラーダさんは自然体だ。でも、ストラーダさんはほう、と一言だけ感心したように

 

「強くなったようだ」

 

「このメンバーとやり合って成長しなかったら家で裁縫してるべきでしょうね」

 

「違いない。では…」

 

ストラーダさんが一歩踏み出した─

 

「ふっ…!」

 

「形状変化の早さが上がりましたね」

 

イリナちゃんは聖剣を堅牢な盾に変化させたのと拳が盾にぶつかったのはその次の瞬間だった。

速い…!一誠の時は殆ど動かずに居たけど、あんなに速いなんて!

 

「どう、も!!」

 

イリナちゃんは盾を剣へと戻しながら後退し、拳銃を取り出す。

フリードが使っていた物と似た形状だけど弾は非殺傷能力が付与されている。まあ、死ぬほど痛いけど。

 

近づかれては堪らないとばかりに拳銃から弾を放つ。

 

「土俵に立たない、重要ですが…」

 

弾を体を反らすだけで避けて先程と同じような速さで接近していく。

スーパーお爺ちゃん過ぎない?

イリナちゃんは舌打ちした後に拳銃を放り捨てて聖剣をナイフへと変える。あれ、なんでナイフ?

 

「ゼノヴィア、なんでナイフなの?」

 

「…司祭枢機卿相手に剣を振るのは悪手だ。接近戦そのものが敗けを意味すると言っていい」

 

「え、でも接近戦しようとしてるよ?」

 

「見れば分かるだろうが、あの人は強すぎる。追い付かれればそうしなければならない。振りやすい武器にするのは当然だろう。というより、イリナが好んでるからな」

 

「なるほど」

 

拳とナイフがぶつかり合う。傷一つついてない拳がもうヤバイのは分かったけど…振るう早さも凄い。

倍加を何回かした一誠よりも早い!

 

「対応しますか、最後に見たときは何時でしたかな」

 

「1ヶ月前です」

 

「一月でここまでやれますか…なるほど」

 

「澄まし顔で言われても!嫌味ですか!」

 

「褒めてますよ」

 

多分、あの人からすればジャブみたいなもの。

最終的にスピードを上げたのかイリナちゃんが対応しきれぬ間にナイフもとい聖剣を弾かれて拳を突き付けられる。

 

「ですが、まだまだ。次のステップに進むのに丁度いい方法はありますよ」

 

「うぐっ…お願いします」

 

「はい」

 

終わったようで、イリナちゃんは悔しげに呻いた後に頭を下げた。

負けず嫌いなのは相変わらずだね…

 

「司祭枢機卿はイリナに期待しているんだ」

 

「期待?」

 

「イリナは認めたがらないが逸材なんだそうだ。何度か『いずれ自分の座を継いで欲しい』とは頼まれてるとか」

 

「え…何度もってことは」

 

「ああ、その度に断っている」

 

「そんな、どうして?」

 

イリナちゃんは認められる位凄いって事でしょ?それなら受けてもいい話なのに…

 

「まだいてぇ……その話、俺も気になるぜ」

 

「地位は要らない、だそうだ」

 

「強さが欲しいってことか?」

 

「…ネプテューヌは知ってるのではないか?」

 

「…あっ!」

 

そうだ、確かに自分はイリナちゃんの覚悟を聞いている。

聖剣窃盗事件の時だ。

あの時、イリナちゃんは自分達や駒王町の為なら組織だって裏切るって言ってた。

あの時の言葉…そんなに本気だったんだね。

だから本来凄く名誉な立場だって要らないって即答できた。

…イリナちゃん…

 

「ふぅーキツかった。どれくらいキツいかと言うと正座のまま紙芝居を五回見せられるくらいキツかった」

 

「それじゃ分からねぇだろ?」

 

「そうねぇ…ネプテューヌ?どうかした?」

 

「イリナちゃ~ん!!」

 

「うわっ、どうしたのよ!」

 

感動してイリナちゃんに抱きつく。

困惑しながらも受け止めて慰めるように頭を撫でるイリナちゃんにそこはかとない姉感を感じつつも答えることにする。

 

「そんなに私達の事を大切に思ってくれてるなんて…うう…!」

 

「…ゼノヴィア~?」

 

「今日はカレーかな、いやシチューかな」

 

「…ったく」

 

「よし、丁度いいからイッセーさんも抱き付いていい?」

 

「良くないでしょ!?昔のノリが通じるのは昔までだっての!」

 

「あーまあ確かに昔と違ってありますからな?」

 

「警察のご厄介になりたかったのね一誠君?それとも教会の戦士として切り捨ててあげようか?一誠ちゃんになってみる?」

 

「嫌だなー俺がそんな煩悩まみれた事言う訳無いじゃんかよーハハハ」

 

「もしもしポリスメン?」

 

「申し訳ありませんでした」

 

一連の流れが終わるまでイリナちゃんの姉力を堪能した自分は離れる。一誠は…土下座してるけどそのままでいいや。

ネプギアからの視線が凄いけど…心配そうな視線だけど自業自得だからね、ネプギア…

 

「ふぅ、でも師匠が本気じゃないとはいえ少しでも持ちこたえられたのは成長出来たって事かな」

 

「よく対応できたな。流石は未来の司祭枢機卿といったところか?」

 

「あーやめてやめて。周りが持て囃してくるけどそんな気無いから。パパにまで言われるし、何ならミカエル様にも言われたんだからここでは忘れさせてよ」

 

「かなり本気じゃね?もうなっちまえよ」

 

「…嫌よ。責任ある立場なんて、重荷でしかないわ。戦士っていう投げられやすい立場の方がいいのよ」

 

「トウジさんも喜ぶだろ?」

 

「まあ、ね…」

 

言い淀むってことは申し訳ないんだろうなぁ…でも、答えを変える気はないんだ。

その後も、ストラーダさんは皆と一戦交えては改善点を指摘して、どうすればいいかを教えてくれた。

自分?うん…まあ…はい…何か結構駄目だしされました。

 

でも、あーちゃんは戦えないからって事で治療方面での教えがあってよかったよ~なかったら置いてけぼりだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練が終わって、皆で少し話した後解散になった。

自分達も帰ろうってなったんだけど…あの後、ストラーダさんがイリナちゃんを呼び止めて訓練場へと行っちゃった。

踏み込むべきかは分からないけど…気になる。

ストラーダさんがどうしてそこまで本気なのかも、分かるかもしれない。

ということで訓練場へと行くことにした。

一誠も行くと言って、あーちゃんとネプギアには待ってて貰うことに。

 

そして、訓練場に着いた自分達は早速二人の姿を確認して隠れることにした。

いわゆる盗み聞きである。

 

「師匠、その話は何度も断っています」

 

「司祭枢機卿になれば多くの権力が手に入るというのにかね」

 

「…確かに魅力的ではあります。戦士達をほぼ自由に出来るのは…正直言って惹かれます」

 

でも、と付け加える。

 

「その立場が邪魔になる時が来る。だから、天使になることも拒否したんです」

 

「地位は要らない…だったか。その一点張りだが、そろそろ教えてはくれないかね」

 

「…師匠、私はここで育ったんです。この駒王で、一誠君とネプテューヌに出会って…育ったんです」

 

「紫藤トウジからも聞いた。戦士の召集で離れさせる結果になったことは申し訳なかった」

 

「だから私を推薦するんですか?」

 

「いや…違う。君には才があり、貪欲なまでに強くなろうとする気概もある。実績もそうだ、多くの危険な案件を難なくこなしてきた君ならばと私は思っただけのこと」

 

「老い先も短いからでしょう」

 

イリナちゃんの言葉にストラーダさんはうむ、と残念そうに同意した。歳…確かにお爺ちゃんだから後継者は欲しいんだろう。

信頼できる誰かなら安心して任せられるから。

だからイリナちゃんに任せたいんだね。

 

「私はこの町が好きです、大切です。一誠君も、ネプテューヌも…皆大好きです。この町を守るためなら私は戦士の座だって放棄します」

 

「…なるほど、確かに地位は枷になるか」

 

「綺麗さっぱり捨てられる荷物の方が、楽でしょう?だから、他の人を探すべきですよ。教会は私からしたら強くなるための体のいい訓練場としか思ってませんし」

 

「紫藤トウジの娘とは思えぬ発言だな、異端審問を掛けられても文句はいえん」

 

「元より覚悟の上です」

 

「…だが、流石といったところか。ならばこれで終わりとする。

だが、教えは続けさせて貰うぞ?」

 

「えっ…あの、師匠?」

 

「何せ扱きに耐えられるのは少数なものでね、私も手放すのは惜しい。それに……うむ、聖拳を継承させるならば君以外にいないと思っている」

 

「いや、あれは…って私に継承?」

 

「私の拳は多くの偉業を屠ってきた、壊すことしか出来ぬ拳だ。だが、君ならば守るための力に出来るだろう。さあ、どうする?」

 

「……」

 

イリナちゃんは暫く考え込む。

ストラーダさんも答えを焦らす気は無いようで静かに待ってる。

 

それから、イリナちゃんは考えが纏まったのか頷いた。

 

「お願いします」

 

「修行は厳しいぞ?」

 

「今更言われても、ですよ。何度血反吐吐いたか」

 

「…ふっ、ならば明日からは死ぬ気で覚えることだ」

 

「はい!」

 

そうして、イリナちゃんは訓練場を出ていった。

…一誠も真剣な顔をしてる。

イリナちゃんの覚悟は並大抵じゃない。

ずっと昔から変わらずに折れずにいられたのは凄いことだ。

 

「さて…盗み聞きとは女神様も悪い方ですな」

 

「バレてる…!?」

 

「そりゃそうだ」

 

観念してストラーダさんの前に出ると怒った様子ではなかった。

 

「彼女があそこまで守りたいと思う人物と町…なるほど、確かに分かる気もする」

 

「…イリナは、あっちでもああだったんですか?」

 

「元々強くなるのに貪欲でしたからな。まあ、少々やり過ぎましたが…」

 

「そっか…」

 

「では、私もこれで。彼女にはこの事は言わないでおきましょう」

 

「た、助かります」

 

ストラーダさんめっちゃいい人でよかった。

これがおっちゃんなら告げ口してるよ。

間違いない。そういった意味で信頼してる。

ストラーダさんも出ていって二人になる。

 

「イリナも頑張ってるんだ、俺たちももっと強くならねぇと」

 

「最初の三人組としてはこのままだと危ういもんね!レベルアップしないとヤバイよ!」

 

「ストラーダさんに一撃与えてぇしな!」

 

「そうそう!」

 

「「えいえい、おー!」」

 

二人でより一層強くなることを誓って訓練場を出る。

イリナちゃんも待ってたようで、ネプギアとあーちゃん、いーすんと一緒にやって来る。

 

「入れ違いなんてあるのねぇ…」

 

「あはは、あるある」

 

「稀に良くある」

 

「いーすん、そっちは終わったの?」

 

「皆さんのデータ集計ならば終わりました。シェアに関しては…少しだけ気掛かりがありますが」

 

「あー…また後で聞かせてね」

 

「今日は色々ありましたからね、明日辺りにでも」

 

「明日かぁ…」

 

「皆さん、帰りましょう?疲れたでしょうし」

 

「帰ってお風呂入りたいなぁ、ネプギア入ろうね!」

 

「うん、お姉ちゃん!」

 

「てぇてぇなぁ」

 

姉妹でおっ風呂!おっ風呂~!

 

あーちゃんからの視線が…!

一緒に入る?って聞いたら笑顔で頷かれた。

可愛い。

妹s最高!

 

家が待ち遠しいなぁ!

 

「あ、一誠君とネプテューヌは帰ったらお話ね」

 

「「えっ」」

 

「聞いてたのよね?」

 

ストラーダさん?ストラーダさん!ストラーダさん!?

バレバレじゃん!何してんのぉ!モロバレルだけどどう誤魔化したのさ!?

お爺ちゃん駄目だったかぁ…そっかぁ…

 

その後、帰宅した次の瞬間イリナちゃんのお説教が自分と一誠を襲った。

どうしてこうなるの……




イリナちゃん回でした。
急ですけど、ストラーダさんとの本格的な修行もあるのでここしかなかったぜ。


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本能を呼び覚ませ

皆さんお久しぶりです。

かなり遅れての投稿許して…許して…

あ、今回は一誠回です。


それはストラーダさんに厳しい修行をつけてもらっている最中に言われた。

 

「兵藤一誠。どうやら君は覚悟が足りていない」

 

「は?」

 

何を言ってるんだってなった。

そりゃそうだろ、覚悟が足りないってなんだよ。

俺はどんな険しい道でも、苦しくても駆けてみせるって決めたのに、まだ足りないっていうのかって。

 

「どういうこと…ですか?」

 

「君は何を抑えている?」

 

「俺は別に抑えてなんかいませんよ!」

 

「いいや、君の戦い方は少しぎこちない」

 

「…」

 

言い返せない。

確かに俺の戦い方は少し違うのかもしれない。

けど、俺はこれ以外の戦い方なんて…

 

「…少しいいかな」

 

「ヴァーリ…」

 

そんな時、ヴァーリがやって来た。

まるで、答えを知ってるかのような顔だったが俺は噛みつこうとは思えなかった。

 

「お前本来の戦い方なら分かるかもしれない」

 

「本当か!?」

 

「…ただ、君の想いを少し否定するかもしれないが」

 

「構わねえ!教えてくれ!」

 

「獣だ」

 

「はい?」

 

「だから、獣だ。覚えていないか?俺と戦い、引き分けとなったあの時だ」

 

それを聞いて、あの時かと思い至る。

だけどあの時の事は朧気なんだよ。

覇龍ってのになりかけてたから…

 

『相棒、あの時のお前を知りたいか?』

 

「ドライグ、何か手があるのか?」

 

『恐らくな。女神はどこだ』

 

「姉ちゃんはあっちだぜ、呼んでくるか?」

 

『いや、女神ではなく歴史のの力がいる』

 

「いーすんの?まあ、いいけどよ…」

 

姉ちゃんのところに行って事情を話すと、快く頷いてくれた。

いーすんは勝手に決めないでくださいって怒ってたけど溜め息の後に了承してくれた。

 

いーすん、もう姉ちゃんのオカンって感じだな。

いや、手間のかかる妹を持つ姉?

 

「それで、ドライグさん。私は何を?」

 

『ああ、相棒と白いのの宿主の戦いを相棒に叩き込めないか?』

 

「記録を映像化しろということでしょうか?まあ、それくらいなら三日もかけないで出来ますが…」

 

『なら、頼めるか?』

 

「少々お待ちください……」

 

色々と手間自体はあるのか目を閉じて集中し始めたので俺も少し思考に没頭する。

獣…俺の戦い方が?

 

「お待たせいたしました」

 

そうして、見せられた光景は俺の事だというのに違和感があった。

いや、違う。

今の俺に違和感が芽生えたんだ。

あの俺が本物だと、そう言われた気がして。

激しい納得と気持ち悪さが自身に充満した。

けど、それを飲み込んで食い入るように映像を見る。

俺の動きを観察する。

 

あれは、本能だ。

本能のままに戦っている。

俺がしたのかと思うような巧い戦い方をするかと思えば殺意に身を任せた攻撃までする。

これだ、俺が求めているのはこれなんだと思った。

 

「…そっか、そうなんだな」

 

「君の強さは誰かを守りたいという願いがあってこそだ。

だが、君の真の戦い方は本能に切り替えた獣の戦いだ」

 

「…矛盾してんな」

 

「そうだな」

 

だけど、ようやく俺の戦い方ってのが分かった気がする。

そうか、抑えてたのか。

なら、後は物にするだけだ。

 

「兵藤一誠、見えたかね?」

 

「はい!…極限まで、俺を追い詰めてください!絶対根をあげないから、お願いします!」

 

「よろしい。ならば…今から30分を全力で生きて見せなさい」

 

そう言ってストラーダさんは聖なる気を纏った。

なんて威圧感だ…!まだ纏っただけなのにビリビリと緊張が走る。

これが人の極致ってやつなのか…!?

 

そして、俺が禁手化して構えようとした時。

 

 

 

 

 

その時既にストラーダさんの『聖拳』が迫ってきていた。

 

 

 

─死

 

『相棒、オーラを纏わせろ!!』

 

「ッ!!ウォォォォオ!!?」

 

ドライグの指示のお陰で腕に龍のオーラを纏わせて防御する。

しかし、それでも『聖拳』は強力無比。

防御した俺をそのまま彼方へと吹っ飛ばした。

吹っ飛ばされた俺は木を薙ぎ倒しながら減速していき、地面に倒れる。

 

腕で受けたってのに体にまで響きやがる…!!

意識も一瞬飛びかけた!

俺の腕、あるよな…?

どうやら、無事らしい。

 

『相棒、無事か』

 

「な、何とか…!ぐ、いてぇ…!」

 

『すぐに二撃目が来るぞ、気張れ!そして、耐えるのではなく反抗しろ!』

 

「反抗するったって……!?」

 

「腕が残っていてよかったと言うべきか」

 

「くっそ!」

 

人の出す速さじゃねぇ!

間違いない、曹操よりも人としての強みの奥にこの人はいる!

拳が振るわれる。

 

不慣れながらもオーラを纏わせた拳で対抗しようとして

 

『駄目だ撃ち合うな!!』

 

その言葉で慌てて腕を掴む方に切り替えようとして、無防備な横腹にもう片方の拳を叩き込まれて吹っ飛んだ。

悪魔に有効な聖気。

それを撃ち込まれたせいで頭がぐらつく。

吐き気が込み上げて腹の中の物を吐いたがすぐに立ち上がる。

 

「ッ、く…どうしろってんだ!」

 

『奴と相棒では強さの土台が違う。白いのの宿主と比べてもだ。

故に、何を使ってでもいい!全てを利用しろ!生き残れ!』

 

「何言ってるのかさっぱりわかんねぇよ馬鹿…!」

 

『相棒』

 

「んだよ…」

 

『ない頭を必死に振り絞れ。最後まで足掻いて、最後まで考え続けろ。そこまでやってようやくお前は土俵に立てる』

 

「……」

 

考えろだって?足掻けだって?いつもやってることだろ。

最後まで、足掻いてるだろ!考えてんだろ!

まだ足りないっていうのかよ!

 

…分かってる。

俺は非才だ。

何があるわけでもない。

俺にあるのはたまたま宿ったドライグっていう相棒ともしかしたらしがみつけるかもしれない力だ。

それでも、俺は偶然、たまたま、運が良く姉ちゃん達と乗り越えてきた。

それでも足りない。まだ足りない。  

 

倍加する。

 

そう言われたら、俺は何をすりゃいい。

全部を利用する。

必死こいて考える。

全神経を研ぎ澄ます。

 

倍加する。

 

…姉ちゃんが言ってたっけ。

苦しいときほど笑うのが主人公って。

漫画でもあったな。

なんでこんなこと思い出してんだ。

 

─周りの物を確認しながら次はどこから来てどう攻撃するかを考える。

 

足りない、何かが足りない。

何が足りない。何が足りない?何が足りない!

いや、そうか。

 

「足りないのは……──」

 

今の俺に、足りないもの。

そうだ、ふとした時俺はそれを実行できていた。

何でだ。

決まってる、仲間がいたからだ。

後を任せてもいい仲間がいたからだ。

 

でも、今は一人だ。

俺一人で乗り越えないといけない。

でも、相手も一人だ。

超ベテランで勝てる気なんて一切ない。

泥を見てる俺が星に手が届くわけがない。

 

けど、もし、もしも。

それで一瞬でも伸ばせる手があるなら?

 

「──」

 

それでこの状況を切り抜けられるなら。

ただの訓練だとしても、この30分は、この30分だけは狩りだ。

ストラーダさんが狩人で、俺は獣。

でも、一瞬だけその状況をひっくり返せるなら?

 

頭を空っぽにするな、考え続けろ。

土俵に立てるってんなら何だってしてやる。

生き残りさえすりゃいいんだ。

 

「…ほう」

 

ストラーダさんの声がする。

やっぱり真っ直ぐだった。

感心した様子だったが拳にまた聖気を纏わせた。

来る、来る、来る。

何が来る、どこを狙う。

殺す気はないが、下手したら死ぬ。

俺は悪魔だから死ねる。

 

ああくそ、頭痛い。

分からない事ばっかり考えてる。

無理だ、出来るわけないだろ。

強いなんてもんじゃない。俺じゃ何したって勝てやしない。

 

「─いい笑みだ」

 

それでも。

俺は、この状況を覆すために一発くれてやる。

 

迫ってきた、拳が迫ってきた。

間違いない、ここは…

鳩尾に一撃!

 

「オォラァ!!」

 

「むうっ…!」

 

横から拳を振るって『聖拳』をずらして、続け様に倍加した脚力に任せても地面を蹴ってその場を離れ

 

「ドラゴンショット…!!」

 

倍加した魔力が球となってストラーダさんへと放たれる。

 

「その程度か!」

 

ドラゴンショットは拳に弾かれ、爆発する。

もちろん、こんなんで終わりじゃない。

俺は一挙動が欲しかった。

だから、ドラゴンショットでストラーダさんの一挙動を稼いだ。

 

ああ、これが欲しかったんだ。

 

『BoostBoostBoostBoost─』

 

倍加する時間が欲しかった。

発動してる暇なんざ無かった。

意識を倍加に向けてる暇なんざ無かった。

だから、作った。

 

「…行くぜ、おい!!」

 

足りないものは分かった。

今だって足りない。

足りさせに行くんだ、今から!

 

俺は地を蹴ってストラーダさんへと突っ込む。

 

ストラーダさんはニヤリと笑みを作ると拳を構えた。

 

「蛮勇かね!」

 

「いいや、違うね!『覚悟』だ!!」

 

「ならばよし!」

 

ようやく理解できた。

俺はずっと遠回りをしていた。

近道と思っていた遠回りだったんだ。

ストラーダさんから逃げることは近道に見えて、何にもならない。

ドライグ、お前の言う通りだった。

 

何もかもを利用して、俺はストラーダさんに立ち向かわなければならない。

長い遠回りだ、困難で恐ろしい遠回りだ。

 

でも─

 

「ぬぅん!」

 

「ハッ!!」

 

「っ…!目眩ましか…!」

 

地面を蹴って土をストラーダさんの顔へと飛ばす。

人は顔を咄嗟の判断で守ろうとする。

頭は大事な器官が多いからだ。

 

ストラーダさんも例外じゃない。

そして、倍加した俺の足は土塊を飛ばした。

 

「オォォォォォォ!!!」

 

「甘い!!」

 

完全に隙をついた一撃、拳はストラーダさんの無防備な腹へ入ると思った。

けど、ストラーダさんは俺の拳を弾いた。

 

…だけど、思っただけだ。

そうなるかもと考えていた。

俺は非才だ。

何をしても足りない。

だからドライグはない頭を振り絞れって言った。 

それでも足りないかもしれない。

 

でも─!

 

「ハァッ!!」

 

弾かれた腕を戻さず、そのまま回し蹴りを放つ。

 

「ぐぅっ!!」

 

回し蹴りはストラーダさんの弾いた腕に命中した。

呻き声をあげたが、折れてもいないだろう。

 

このままじゃ、俺は勝てないだろう。

足掻いても一撃だけだった。

叩き込もうにも立て直された。

もう、通じないだろう。

 

でも─!!

 

 

 

 

─それでも、一撃だ!!

 

 

 

 

 

そうだ、全部利用しろ。

環境を、相手を、自分を利用し尽くせ。

俺に足りないものを補うために。

倍加しても足りないなら、他で補うしかないんだから。

 

『Boost!』

 

泥臭くてもいい!

みっともなくてもいい!

俺に姉ちゃんのような何でも出来る戦い方は出来ない。

ヴァーリのように圧倒的なスペックでの戦い方は出来ない。

 

「ならばこれはどうだ!」

 

「ガッ…!…アァァァァッ!!」

 

更にスピードアップしたストラーダさんの拳が腹に入る。

見えなかった…!けど!

痛みも吐き気も全部飲み込んで腕を掴んで背負い投げをして地面に叩きつけようとして、ストラーダさんはそれを読んでいたのか更に蹴りを放って俺を吹き飛ばす。

 

吹っ飛ばされて転がされて、徐々に意識が朦朧とし始める。

駄目だ、まだ俺は物にしてない。

倒れてはいけない。

攻撃を続行しろ。

 

『Boost!』

 

これは訓練だ。

だけど、命懸けの訓練だ。

 

ストラーダさんはその為に老骨に鞭打ってくれてんだ。

俺もそれに全力で応えていくのが礼儀ってもんだ。

獣、龍なのに獣なんて皮肉効いてるよなドライグ。

 

『全くだ。相棒といると飽きることがない。』

 

悪いな、弱くて。

こんなことに付き合わせてさ。

 

『構わん。

…最初はこんな小僧、すぐにくたばるだろうと思っていた。』

 

酷いなそれ。

俺だって頑張ってるんだぞ。

 

『だろうな、足掻いている姿にこそ俺は興味を抱いた。

そして、これだ。龍だというのに、獣とはな。

何、禁手しかまだ出来ていない相棒にはお似合いという奴だ。』

 

かー、ひっでぇ!

お前本当に相棒かよ!

もっと励ましの言葉をくれてもいいだろ!

 

『ククク、駄目だ。

だが…何処までも付き合ってやるぞ。』

 

…ああ、当たり前だ。俺達は文字通り魂の相棒だぜ。

 

『ならば─』

 

「ああ─」

 

 

 

「『─魂に、火を入れろ!!』」

 

限界超えて、行くぜ!

絶対に物にしてやる。傷付いてでも、今ここで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倍加をした蹴りで木を根本ごと蹴り飛ばしてストラーダさんへと自らも駆け出した一誠さん。

それは形振り構わぬ、といった様子でした。

…でも、私はそれが…嫌だ、と思ってしまう。

 

「ネプギア?」

 

「っ、ううん。何でもない、何でもないよ。」

 

お姉ちゃんが顔を覗き込む。

悟られちゃ駄目だ。

一誠さんが選んだ道を、私が否定するなんてしちゃいけない。

 

『ぐあっ…まだまだ!!』

 

『ぬぅ…形になってきた…!』

 

ストラーダさんの鋭い一撃が一誠さんへぶつかる。

それを耐えた上でストラーダさんへ食らい付く姿は本当に獣みたいだった。野性味溢れる戦いだった。

土を利用して、森を利用して、考えて考えて考え抜いて戦ってる。自分に出来る限界はここじゃないって叫んでる。

だけど、それは傷付くことを厭わない戦い方で。

一誠さんが傷付いてでもストラーダさんへ攻撃を届かせているのを見て、私はズキリと胸が痛んだ。

何でだろう。

 

一誠さん、それも男の子の意地なんですか?

 

『引き出せ、本能を!』

 

『ヲォォォォ!!』

 

変わっていく、一誠さんが変わっていく。

怖い。

本能と同化しての戦法。

それを物にし始めているあの人は凄い。

お姉ちゃんの足手まといになりたくない、助けになりたい。

そんな決意を感じる。

 

祝福すべき事なんだ。

なのに…

 

「ネプギア!」

 

「はっ──」

 

「…怖いの?」

 

「え…?」

 

「手、震えてるよ。」

 

言われて気づいた。

手が震えている。

…怖い。

寿命を縮めている戦い方をしている一誠さんが堪らなく怖い…ううん、違う。その戦い方が怖い。

やめてほしいとすら思う。

だって、次戦う相手は邪龍なのに。

そんな怪我を厭わない戦い方をしていたら命がいくつあっても足りないよ。

 

「…信じてあげて。」

 

「でも…」

 

「一誠はここからだから!」

 

「……うん。」

 

それからしばらく眺めて、30分が経とうという佳境。

 

それは来た。

一誠さんはボロボロで、それでも懸命に拳を振るう。

もう見ていられないと思って、こんな特訓はこれっきりにしようと思い──

 

 

 

 

 

『─やっとだ、やっと固まった。』

 

そんな言葉を聞いて私は俯きかけてた顔を上げる。

そこに移っていたのは、さっきまでの獣染みた戦いじゃなくて…

 

この特訓をする前のスタイルの一誠さんだった。

なのにストラーダさんの更に加速した拳を捉えて流して拳を叩き込んでいた。

凄い…スタイルは戻ってるのに、キレが違う!

 

な、なんで?

 

「兵藤一誠。彼の戦い方は獣だ。獣の執念、何としても食らい付くという執念が必要だった。」

 

「ヴァーリ、自主練はもういいの?」

 

「ああ。」

 

「あの…それとあの戻った戦い方に何の関連が?」

 

「ヴァスコ・ストラーダ。彼に追い詰められたあの男は物にしたということさ。本能を引き出すコツをな。」

 

「戦い方を戻したのは…?」

 

「戦い方は間違っていない。だが、それにしてもぎこちなさが残っていたからな。俺と戦ったあの時…あの時だけは別だった。

全ての歯車が噛み合ったような鋭い動きだった。」

 

そう語るヴァーリさんは楽しそうに映像を見つめていた。

それにしても、と彼は続ける。

 

「あの男は土壇場でないと覚醒しないな。」

 

「まあ…主人公補正ってことで一つ!」

 

「そういうことにしておこう。」

 

「最近それで乗りきろうとしてない?」

 

「そんなことはない。」

 

…そっか、自分から追い込んでいたんだ。

でも、あんな痛々しいのはもうやめてほしい。

見てて胸が締め付けられる気持ちでしたから…

よかった、私の勘違いで。

 

ああ、でも…今の一誠さんは。

 

格好いいなぁ…

 

『…うむ、後はそれをいつでも引き出せるようにするだけだ。』

 

『はい!ありがとうございました!』

 

特訓も終わったようで、二人とも礼をした。

 

「いつつ…ありがとなアーシア、ネプギア。」

 

「もうあんな無茶やめてくださいね!」

 

「次したら縛り付けますからね?」

 

「ヒェ…」

 

その後はアーシアさんと一緒に傷の手当てをしたけど、本当にボロボロで笑顔で説教をするアーシアさんが怖かった。

…でも、今の一誠さんはやっと悩みが晴れたようで困ったように、だけど確かに嬉しそうに笑っていた。

 

「…かっこよかったですよ。」

 

少し恥ずかしくて、それは小声になってしまった。




おや、ネプギアの様子が…?

さて、ようやく一誠の枷が外れました。
そして、次回。


『邪龍戦線開幕』

※その前に、何個か書きたいネタがあるのでやっぱり開幕は後回しで!ふはは、もうしわけねぇな!


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皆でゲーム!お喋り!これぞ日常!

邪龍戦線が始まると言ったな、あれは嘘だ(ウワァァァ)
まあ急かすなよ…たまには胃もたれを引き起こす物じゃない話だってあげるさ…ククク


朝。

ボーッとしながらも起きて、時計を見て今の時間を理解する。

いつもなら目覚ましでもっと早い時間で起きるんだけど…まあ…いっか。

 

おはよー…今日はのんびりネプテューヌだよ~

 

「おはようございます、ネプテューヌさん。」

 

「んー…おはよう、いーすん。」

 

「眠そうですね?」

 

「まあねー…」

 

「アザゼルさんから言われてしまったからですか?」

 

「んー…だね。休め、だっけ?」

 

昨日、おっちゃんから言い渡されたのはただ一つ。

 

『お前ら、一回しっかり休め!』

 

これだけである。

多分、これからもっと大変だろうから少しでも英気を養っておけって事なんだろうけど…いいのかな。

そんな自分の心配を察したのかいーすんは微笑んだ。

 

「こういう時間も必要ですよ。

確かに皆さん張り詰めすぎでしたから…アザゼルさんの判断は正しいと思います。」

 

「そう?そんな張り詰めてた?」

 

「はい、頑張りすぎは体に毒ですよ。

いざという時、何も出来なかったら困るでしょう。

今はしっかり休みましょう?」

 

「そうだね…よーし!」

 

いーすんの言葉に頷いて、休日を満喫することにした。

…といっても、何をすればいいんだろ?

起きたばかりの頭では何も思い付かない。 

あーちゃんは…あれれ、もう起きたんだ、いないや。

そうして少しボーッとしていたら、ドタドタと階段を上がる音がして…バンッと部屋の扉が開けられる。

 

「ねぷっ!?」

 

「はうっ!?」

 

「ねぷ姉ちゃん!!」

 

「い、一誠!?な、何事、敵襲!?」

 

「目覚ましイッセーだっ」

 

「ややこしいよぉ!」

 

「たわばっ!?」

 

いーすんと私はビックリして一誠を見たら、ウキウキ顔で目覚まし宣言されたので枕を投げた。

見事顔面クリーンヒット!一誠の目覚ましの旅は終わりを告げた!

 

閑話休題

 

何だかんだと休日を楽しもうと思い、下でご飯を作っていたお母さんとあーちゃんを手伝ってから朝御飯を食べる。

 

「今日はなにしようかなぁ…」

 

「ゲームしようぜ。最近全然してないしさ」

 

「私も良いですか?」

 

「お、ねぷ子さんに勝とうって事かな?いいよ!ふふん、年季の違いを見せてあげるよ!」

 

「本来の年齢の話かな?」

 

「それ以上いうとねぷ子さんは一誠をどうするか分からないからしっかりと考えて言ってね!」

 

「ハイ、スミマセン」

 

「あはは…そういえば、ネプギアさんを昨日から見ませんが…」

 

「ネプギアなら、おっちゃん達の技術を物にするって張り切ってたし研究所じゃない?」

 

というか、研究所にいる時のネプギアって機械を見たりすると喜びに満ち溢れてるっていうか…今すぐにでも触りたい!っていう感情が丸見えなんだよね…

あーちゃんも今日は家でゆっくりするんなら、ゲームしようかな?

 

そんな感じで皆についてとか今日はどうしようとか話しているとお母さんがふふっ、と笑う。

 

「お母さん?」

 

「三人とも、本当に仲が良くて嬉しくて、ついね」

 

「そんなの当たり前だよ!私達は家族なんだから!」

 

「そうそう!」

 

「…おかわり」

 

「オーフィス、よく食べるね…」

 

「食はいい文化。イストワールもそう言ってる」

 

「毎度涙が出そうです」

 

「そ、そんなに…?」

 

「シェアは…味がないので…」

 

「ああ…」

 

いーすん、食に目覚める。

本当に涙流しそうなのがまた悲壮感が…何だろう、どうして補給先変えたってだけで未亡人みたいな感じがするんだろう。

それにしても…うんうん、ご飯をのんびりと食べるの、何か久しぶりだなぁ。

何かと急いで食べて、特訓に行ってたし。 

 

のんびり…っていうのを最近はしてなかったし…

久々だな~何しようとか考えちゃうほどには。

ねぷ子さんらしくもない、かな?

 

まあまあ、色々と考えながらでいいから今日一日を楽しもう!

うん…あ、ついでにヴァーリも呼ぼう。

うん、こういう時に彼氏も交えてゲーム!

黒歌とかもその内来るでしょ。

早速とばかりに携帯を取り出してヴァーリに通話を…

 

『どうした?』

 

繋がった。

声が聞けるだけでも嬉しい。

これはつまり、姿を見たら元気百倍ねぷ子さん!

 

「これから皆でゲームするんだけど、良ければどう?」

 

『分かった、朝のトレーニングが終わり次第行こう』

 

「…汗流してよね?」

 

『当たり前だろう』

 

「じゃ、また後でねー!」

 

「…姉ちゃん、まさか今のヴァーリか!?」

 

「そうだけど…?」

 

「絶対にゲームでボコボコにしてやる…大乱闘だ姉ちゃん!」

 

「これは荒れる予感、我は詳しい」

 

なら止めてよ!?

オーフィスもだけどあーちゃん…ああ、あーちゃんが苦笑いしながら距離取ってる!

いーすん!ああ、いーすんご飯に夢中!

お母さ、ああ、皿の片付けに逃げた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠を何とか宥めてから上に上がって、ゲームを起動する。

うわぁなんか緊張する…久しぶりすぎて緊張する!

コントローラーが軽い…軽すぎる!

もしや、これなら出来なかったあれも…!

 

そう思って、キャラクターを選んで操作するんだけど…

 

「ギャー!?吹っ飛ばされた!?な、何をするだぁーッ!許さん!一誠!」

 

「やられるのが悪いんだよぉ!俺が上、姉ちゃんが下だ!」

 

「貴様が下だ!我が弟一誠~!!」

 

「あ、えいっ」

 

「へ?アーシアさん!?あ、復帰出来な…」

 

「ナイスアーシア、さよならイッセー」

 

「オーフィスゥゥゥ…!!」

 

思うようにいかないどころかマジもんの大乱闘に…ってあーちゃんとオーフィスが密かな協力体制を!?

な、なんてこったい…一誠は一誠で自分を狙ってくるし…これはまずいのでは?

でも私にはこれがあるよ!

 

「キャーーッチ!」

 

「姉ちゃん…まさか…やめろ、やめてくれ…!」

 

「私と一緒に地獄に落ちよう一誠…」

 

「嫌だぁぁー!」

 

秘技、妹に勝利を譲りに行くの術!

ふっ、一誠…どうせ私達は日向の道を歩けない(ストックゼロ)

一誠と共に落っこちて、自分の最下位は確定。

よし、あーちゃん行くんだ!道を切り開くんだよ!

オーフィス遠慮しない!?遠慮して!いやめっちゃ上手い!当てこすり上手い!あーちゃんも何か上手い!

 

「あっ」

 

「え、えい、えいっ」

 

「アーシアが!運送で!画面端ぃ!」

 

「復帰を読んで、まだ殴るぅ!」

 

「アーシアのメテオ決まったァー!」

 

「これは聖女は聖女でも殴ルーラー」

 

「鉄拳聖裁」

 

「我が負けた……アーシア…さてはやりこんでいる…!?」

 

「こ、答える義理はありません!…えへへ、どうですか?」

 

「うちの妹可愛い」

 

「尊い」

 

「お前に負けるなら悔いはないさ…」

 

オーフィスと一誠、自分がバタンと倒れる。

駄目だ、勝てるわけがなかったんだ…強すぎる、もう駄目だ、おしまいだぁ…逃げるんだぁ勝てるわけがないYO…

このままだと聖なる可愛さに心臓が停止する!

 

─ネプテューヌさん、ボコボコでしたね

 

(そこぉ!言わないお約束!?)

 

─主人公なのに、負けたままでいいんですか?

 

(や、やってやろうじゃん…)

 

いーすんに闘志を刺激されて今、覚醒の時!

再開、と思ったら扉が開く。

 

「…どういう状況だ?」

 

「あ、ヴァーリ!ほら早くコントローラー持って!

ねぷ子さんとコンビでいくよ!」

 

「愛の共同作業だな?了解した」

 

「ねぷぅ!?や、やめてよちょっとそんなうへへへへ…」

 

「だらしない顔だぞ~姉ちゃん…それはそうと来やがったなヴァーリぃ…お前を仕留めるために俺はトレーニングを重ねてきたんだ…イメージでな」

 

「せめてそこは普通に練習をしろ。お前はなんだ、想像したら実現するハ○ヒ的な存在か?」

 

「ある~晴れ~た日~のこと~」

 

「やめろぉ!」

 

「カオス…カオス…」

 

「とにかく、やりましょう?ね?」

 

よーし彼氏来たらもう負けないよ石破ラブラブ天驚拳で一誠達を沈める!勝ちは譲らない!後、先頭の景色もゆずらない!

ねっぷねぷにしてやんよー!

 

と、意気込んだはいいものの…

 

「なんでオーフィスとあーちゃんそんなに強いのぉ!?」

 

「な、何となく?」

 

「やり込みが違う。落ちろ、カトンボ」

 

「ぬおっ…!?」

 

「ヴァーリが死んだ!」

 

「この人でなしー!あ、一誠隙あり」

 

「どうしてスマッシュしたんですか?」

 

「まあ、ヨシッ!」

 

「どうしてヨシッて言ったんですか?」

 

「勝てばいい、それが全てだよ一誠!」

 

「力こそが正義…いい時代になった…」

 

あ、オーフィスがこっちに来た、って何その動きぃ!?

小ジャンプ刻むなんてプロい事をぉ!あ、ガーキャン掴まれた…

やばっ、運ばれる…くっ!

 

「シェア強化!」

 

─ネプテューヌさん!?

 

「うぉぉぉ負けられないんだ!」

 

「これは…通常の速度の三倍…!赤い彗星…」

 

「これが私の!全力全開!うぉぉぉ!大乱闘スマッ○ュブラザーズでも主人公は私だぁぁ!!」

 

「行け、ネプテューヌ!誰かのためではなく、お前自身の願いのために!」

 

「ヴァーリてめぇ!火に油を注ぐんじゃないよぉ!?」

 

「くぅおぉぉぉぉ…ッ!!」

 

「(ところでこれは我がゼルエル?)」

 

「(さ、さあ…)」

 

「今だ!くらえオーフィスぅ!」

 

「うぇ…ぁあっ…」

 

「勝ったぁぁ!!」

 

やったよ、冥次元、完!!

成し遂げたんだ…全てに終わりがついたんだよぉぉ!

吹っ飛ばした操作キャラクターを見て、遠い目になったオーフィスはそっとコントローラーを置いてからお菓子をポリポリと食べ出した。

 

「あ、ネプテューヌさん。私残ってます」

 

「へ?」

 

「えいっ」

 

「ほわぁぁぁぁ…!!?」

 

「ネプテューヌがやられた!」

 

「この人でなしぃ!」

 

「また一位、やりました~♪」

 

「だ、大乱闘なのが間違いだったのか…!?俺達は怪物と戦っていた…ッ!」

 

「ならパーティー物にすればいいのでは?」

 

『アルビオンもそう思うぞ』

 

『白いのが壊れた…』

 

それから、しばらくゲームは続いた。

お昼を食べてからも、皆でワイワイとはしゃいで、お菓子とか食べながら騒いで。

たまに来るお母さんも笑ってて。

いーすんも途中から参加はしたけどコントローラーが大きくて無理ってなってオーフィスと一緒にトランプとかして…

黒歌がやってきたと思ったらトランプ勢増えたし。

 

ヴァーリがやりたいものあるっていうから聞いてみたら一人用のRPGだし。だから皆で交代交代でやって、待機してる組は指示出したり野次を飛ばしたり。

 

すごく楽しくて、平和な時間で。

 

周りには笑顔ばっかりで。

皆楽しいんだなって…分かるくらい、騒がしくて。

 

「姉ちゃん?」

 

「ネプテューヌさん、泣いて…?」  

 

「…え?」

 

一誠とあーちゃんの心配そうな顔が目に映って、潤んでる視界に気付く。

お、おかしいな…涙が…?こんなに楽しいのに、なんで…

 

「ごめん、何でだろ…私、楽しいのに…」

 

「ねぷっち…」

 

「…かけがえのない時間だからだろう。

お前や、俺達が守りたい時間だからだろう」

 

ヴァーリに言われて、ストンと納得が降りてくる。

涙は止まらない。

こんなにも楽しいのに、楽しいから…止まらない。 

皆と一緒にいる時間が大好きで、笑顔で溢れているのが私の望みだから。

 

気付いたら、皆が抱きついてきた。

この時間が大切だって知ってるから。

これから来る時間を知ってるから。

だから今が愛おしくて、これからもこうしたいって…守りたいってなる。

 

「守ろうな、姉ちゃん」

 

「この時間を、また皆さんで…」

 

「ネプテューヌさん、私達がいますよ」

 

「皆がいれば、乗り越えれる。でしょ?」

 

「今まで通りだ。皆がお前についてくるさ」

 

「うん…うん…!」

 

涙は、しばらく止まらなかった。

楽しい時間を守りたいって改めて決心がついた。

友達も、家族も、どんな人だって…きっとこれから繋がる人達のためにもリゼヴィムを止めよう。彼とも手を繋ごう。

もう何も失わないためにも、暗闇の先を照らすためにも。

 

今思いきり泣いておこうって思って…それからしばらく泣いた。

 

「…ごめんね、皆。続き、やろっか!」

 

「おう、次の番誰だっけ?」

 

「俺だったと思うが」

 

「ヴァーリ…なら、早く進むとこまで進む。隅々まで探索しすぎ」

 

「穴埋めはしたいだろう」

 

「隠し通路とか見つけたい人種だわこれ…」

 

「あ、ヴァーリ!そこは…」

 

「「「「「「「あっ」」」」」」」

 

ヴァーリ選手、辛い相手にボコされた~!

無言で一誠へとコントローラーを渡した後、ヴァーリは自分の隣までやってきて座った。

あー…セーブする前までだからまたマップの埋め直し…

 

「ここに当たれば大ダメージの技があるじゃろう?」

 

「いやそれ当たった試しないにゃん」

 

「分からないだろ!ここで当たるかもだろ!」

 

「当たって倒せるんですか?」

 

「分からないからやるんだ…よっしゃいけぇぇぇうわぁぁぁ!?」

 

「フラグ回収早すぎ」

 

「あ、あぁ…一誠…!」

 

一誠が運ゲーに勝てずにボコボコにされた…

一誠はあーちゃんにコントローラーを渡して、フラフラと立ち上がる。

 

「何て声…出してやがる…姉ちゃん!」

 

「だって…運ゲー何かのために!」

 

「騒ぐんじゃねぇ!運ゲーに負けるのはゲーマーの常だ……俺はやめねえからよ!お前らが運ゲーをやめねえ限り、その先に確率確定はあるぞ!だからよ……外すんじゃねぇぞ…」

 

「一誠ぃぃぃ…!!」

 

「…ただのRPGですからね?」

 

こうして、負けたらスンッ…と遠い目でコントローラーの代わるゲームパーティーは夜まで続いた。

何だかんだと、盛り上がって中盤までいって…セーブしてやめた。



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その日、姉弟が世界から消えた

どもども。
えー皆様、今回糞ほど短いですし、突然のコラボ!
しかし、今回はこちらに乗せるのではなく別の形式でのコラボとなります。
多分近々来るんじゃないっすかね!!

では、導入スタート!!


やっほー!

色々と忙しいけど休めって言われて休んでるネプテューヌだよ!

この前も楽しかったねぇ…昨日の出来事だけど。

 

楽しかったねぷ子さんは今、一誠と一緒に町を歩いてるんだ。

 

「ねえ一誠、久しぶりだねぇ。こうして姉弟だけだなんてさ」

 

「だな。…ここは変わらないよな」

 

「私達が頑張ってるお陰…って訳じゃないけど、皆平穏だよね!

うんうん、平和が一番だって光の国の人も言ってるよ!」

 

「まあそうなんですけどね!」

 

なんて取り留めのない会話をしながら、歩く。

実際は何話すべきかなって思ってるだけで。

真面目な話、とかはやめておこうかなと思ってるんだけど…日常よりも非日常が濃いと、こうも分からないもんなんだ。

あの時はもっとすらすらと出てきたのにね。

 

一誠もきっとそう思っていて、二人で下手な会話を続ける。

そんな時だった。

 

「あ、ネプお姉ちゃんと一誠兄ちゃんだ!」

 

「ねぷ?あ、皆、どうしたの?今日はボール持ってサッカーかな?」

 

よく遊んであげていた子供達が嬉しそうにサッカーボールを持ちながらトコトコと駆け寄ってきた。

そっか、あんまり遊んであげられてなかったもんね。

自分がサッカーをやるのかを訊くと、年長の子が元気よく頷く。

小学生…自分は小学生時代はなぁ…やっぱり遊んだ記憶しかない!

 

「お姉ちゃん達も遊ぼー」

 

「久し振りに一誠兄ちゃんのドライブシュート見たい!」

 

「どうした、俺達が怖いのかー!」

 

「…だってさ、姉ちゃん。やるか!」

 

「んー…だね!」

 

それから、自分達は子供達としばらくサッカーをした。

ちゃんと加減して、子供達に合わせて楽しくやったんだけど…うん、また一つ守りたいと思えるものを思い出せた。

覚えてはいたけど、戦い続きだったからどこかぼんやりとしてしまって。

 

だからこそ、自分は子供達に感謝しないといけない。

女神としてじゃなくて、一個人として接してきた身として…

 

「ありがとね、皆」

 

「いいってことよ」

 

「よく分からないけど、うん!」

 

「子供は純粋だよなぁ…」

 

一誠の呟きにぶんぶんと頷く。

遊びも終わって子供たちと別れ、お昼が近くなってきて…帰ろうかな、と二人で帰路へ着いたその時だった。

 

突然、足元の感覚が無くなって…下を見ると…空の上。

…ごめんちょっと待って洒落にならないからこれ以上の負担はお許しくださいなんだけど─

 

「へい姉ちゃん!!」

 

「え?あ…」

 

一誠の方を見ると、一誠の足元も同じような感じで。

あかん、と一瞬で悟ったよね。

自分だけならいいけど、いやよくないんだけど一誠もはまずいって!!

 

へ、変身を

 

「あ、ダメだ間に合わない。アイルビーーーバーーーック!!?」

 

「俺なんか似たような展開知ってるんだけどおぉぉぉっ!?」

 

落下する感覚を二人共々味わって…自分達はこの世界から消えた。

これが世界の破壊者さんですか…?

雑な導入じゃない!?ねえ、ねえぇぇぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総督!女神と赤龍帝の反応消失!!」

 

「なして!?」

 

その報告と総督の驚愕の声からドタバタは始まった。

以前も一度だけネプテューヌとヴァーリ、一誠が一斉にいなくなった事例があった。イストワールの言伝だったが、本当だとは…とアザゼルは慌ただしく動きながらも思考する。

 

今二人が消えるのは割とまずいのだ。

必死の捜索が幕を上げる…のだが、それはそれとして写す価値はないのだ。

 

「おいっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神ちゃん消えたってマジぃ?」

 

「だそうだな」

 

「ふぁぁぁぁ……嘘やん…予定伸ばす?契約内容更新する?」

 

「もう少し期間はあるから迫ってきて帰還を確認できなかったらにしないか」

 

「はー……女神ちゃんがドタバタしてるのは知ってるけどこうなるとはねぇ…いやはや、困った困った」

 

悪役面子もまた戦うべき相手、その主役が消えたことで割と焦っていた。

リゼヴィムはほとほと困った様子で、けれど暇なので相方とチェスをして暇潰しをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして姉弟揃って世界から消えたその日から…元の世界はドタバタと二人の捜索に力を入れるのだった。

そして、落ちた二人はこれからどこへ向かうのか。

今度は誰と出会い、どう発展するのか。

 

それを語るのはまだ…幕は上がっていない。

 

しかし、落ちるネプテューヌには確信があった。

これから出会う者とはきっと、絆が結べる筈だ、と




さあ、ネプテューヌ、君は誰と絆を結ぶんだろうね


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帰ってきて、分かるもの

この話は『大人ピーシェが頑張る話。合同コラボ』の冥次元側のエピローグであり、本編の続きです。
何?コラボは本編と関わらないって言った、だって?
ありゃ嘘だ。

プリテンダーってことで許して♡

ということで
『大人ピーシェが頑張る話。合同コラボ』のページです
https://syosetu.org/novel/264627/






ゲートを潜り抜けるとそこは自分の知る場所。

おっちゃん達がいる研究所の前だった。

帰ってきた。

あの時、何故か分からないけど自分と一誠も巻き込まれたあの日。

自分達は確かに別の次元にいて、絆を紡いで…帰ってきたんだ。

体の重さ、気だるさが消えて、飛び回れるほどの力が湧いてくる。

 

同時に寂しさが込み上げる。

だってまた会える、なんて分からない。

またね、とは言ったけど会えるのかな。

 

「…ううん、繋がりは確かにあるよね」

 

空を見る。

落ちてきたあの空と同じで、繋がっているのかなと想える青空。

偶然なのかな、と再会できた友達を見て思った。

でも必然だと思えるように今はなっている。

 

「ただいま、私の戦う世界」

 

言葉とは裏腹に自分の表情は晴れ渡ったような笑顔でそう言う。

あの時、あの場所で、あの人達と過ごした日々は確かによかったと思える日々だったんだから。

自分に甘えてきて、懐いてくれた男の子から貰った自分を模したぬいぐるみを抱き締める。

ああ、温かい。

想いが籠ってる。大好きだって想いが、伝わってくる。

あの子は帰った後、大丈夫だろうか。

男の子だからって、あの子は子供で。自分はまだ少し気掛かりになってることに気付く。

 

『うん! 僕も頑張るからそしたらまた会えるかな?お姉ちゃんや一誠兄さんとも』

 

自信満々にそう言って、楽しそうな顔でそう言った後に再会を誓った。指切りげんまんしたし、何より…自慢したくなるくらいのお姉ちゃんになるって言ったもんね。

再会するその時まで、自分は挫けていられない。

これから始まる戦いに、自分は心を折られるなんてあっちゃいけない。

 

だって自分みたいに記憶が無いのに頑張ってる子だっているんだから。月のような女の子と、女神の複製体を名乗る女の子。

…あーあ、やっぱり一回記憶喪失ユニット組んでみるんだった。

また会えるかな、会いたいな。

 

…顔向け出来るくらい頑張ったら、会えるよね。

 

「よーし、そうと決まれば邪龍倒して──」

 

「おーい、俺を忘れないで~」

 

「ねぷぅぅ!?って一誠か」

 

背後から声がして、吃驚して振り向くと一緒にあの次元に落ちた弟がいて。

一誠もまた、あの子から貰ったぬいぐるみと…左手の薬指に、黄色い糸?

 

「一誠、それ…」

 

「…まあ、ほら。俺も頑張る理由が増えたっていうか。

変わったというか、さ」

 

照れ臭そうに頬を指で掻く弟に、大変だなぁ、と思う。

一誠ったら、あーちゃんを振ってピィー子に惚れたんだ。

というか、実ったのかな。

 

「じゃあ、尚更頑張らないとね!」

 

「だな、ちょっと面倒そうだけどなぁ、相手」

 

「邪龍でしょ?へーきへーき!ほら、言うじゃん?

悪の栄えた試し無しって!」

 

「ははは、姉ちゃん、何だか元気だな?」

 

「…まあねぇ。私でも、ちゃんと辛い過去から誰かを救えるって分かったら…ね」

 

「…俺も戦う予約されたもんなぁ」

 

「一誠は再戦の予約もでしょー?」

 

「俺、勝てるかなぁ…というか、まずおかしくねぇ?

俺生身、あっち使役だぜ?」

 

「勝ってるんだから文句言わないの!」

 

ぐったりと項垂れる一誠。全くこの子ったらかっこつけちゃって後の事考えないんだからもー!

それくらいが自分達に合ってるのかも。

さて、研究所の中に入っておっちゃんにでも会おうかな。

 

そう思ってドアの前まで行こうとして、足を止める。

というか、目の前の光景に止めざるを得ない。

自動ドアが開いて、おっちゃんやオカ研の皆、ネプギアや英雄派の皆がやって来る。

 

「『ネプテューヌ/ネプ子/お姉ちゃん/先輩』!!」

 

…いやこれ雪崩れ込んで来るの間違いだね!?

 

「ねぷぅぅぐへぇ!?」

 

「グギュグバァ!?」

 

当然のように自分と一誠は揉みくちゃにされる。

ぬいぐるみ、ぬいぐるみだけは死守!!絶対に死守!!

当然のように雪崩れ込んできた皆の中心で、大変な目に遭う。 

 

「ネプ子ぉ!てめぇまた消えやがってよぉ!」

 

「ネプテューヌ、無事だったのか?それはよかった」

 

「お姉ちゃん、一誠さんも!いなくなってビックリしたんですよ!?」

 

「ねぷっち、猫は寂しかったのよー!」

 

「わーわー!皆、落ち着いて!いっぱい話すから!

ちゃんと今日何があったかを話すから~!」

 

「とりあえず落ち着こうぜ、帰ってきたばっかなんだからさ!」

 

一誠と自分の言葉に一先ず落ち着いてくれたのか、研究所へと入り、皆に何があったかを説明した。

皆思い思いの反応があった。

ポケモン、とか…他の女神、とか…そもそも別次元、とか。

かくいう自分も何だか深い因縁がありそうな気がするマ…マザコングだっけ?その人の事とか考えたりしてたけど。

 

何だかあの人、他人の気がしないよね。会ったこともないのにさ。

まあ、それは一応置いておこう。

 

「それで、そのぬいぐるみは愛月って男の子から貰ったのね」

 

リアスちゃんから訊かれて、うん、と頷く。

今も座りながらぎゅっ、と抱きしめているぬいぐるみに皆似ていると言ってくれて、ヴァーリにいたっては欲しそうにしていた。

けどあげないもんね!これは自分が貰った大切な絆だもん!

一誠も片腕に大切そうに抱えていた。

 

「なーんか、弟ってあんな感じなのかなって思ったよな、姉ちゃん」

 

「私はもう弟も妹もいるけど新ジャンルだったよね。

甘えん坊で可愛かったんだよー?」

 

「あらあら、私達も会ってみたかったですわ」

 

「…ネプテューヌさんがその次元に行きたいのでしたら、一応座標は記録したのですが」

 

「いいよ、行かない」

 

「よろしいので?」

 

いーすんの問いに、頷く。

今は行かない、行けないよ。

自分は何も終わらせてないのに、行けるわけがないから。

だから行くとしても…全部終わった後かな。

あーちゃんは一誠の薬指を見て、何かを察したようにくすりと微笑んでいた。

一誠はあーちゃんの微笑みに気付いたのか、恥ずかしそうに頭を掻いていて、他に気付いた人から訊かれていたけどはぐらかしていた。

 

それから、色々と訊かれては答えて、答えにくいことは適当にはぐらかした。帰ってきたことに落ち着いたのか解散して、皆思い思いに行った。

でも、おっちゃんは残って自分に話しかけてきた。

 

「なあネプ子」

 

「なーに?」

 

「楽しかったか?」

 

「…うん、楽しかった。きっと、ここと同じくらいワイワイやれたと思う。でも、やっぱりここが私の帰る次元だよ。

色んな女神がいて、女神の数だけ考え方も違う。

それが分かっただけで嬉しいんだ」

 

「そういうもんかね。…俺ぁよ、ネプ子が戦いを放棄しても仕方ないって思っちまった。ネプ子もあっただろ?辛さからの解放って奴が」

 

「無いよ」

 

辛さからの解放、だなんて無い。

むしろ帰りたくて仕方なかった。

どうしてこんな時に、なんで今なんだって思って…でも、優しい人達だったから落ち着けて。

元の次元では皆探してる筈だから、帰らないとって思った。

 

「私はここの女神。

どんなにあそこでの日々が楽しくても、一緒にいたいって思われても…私、ここが好きだから。

それに私、皆のシェアがないとダメダメな主人公だからさ」

 

「…目指したいこと、見つけたか?」

 

「それはまだかなぁ…」

 

「大変なもんだな、女神さん」

 

「…おっちゃん、女神って別の次元だと一人じゃないんだって」

 

「らしいな」

 

「女神って人の想いから生まれたんだって」

 

「…ま、偶像崇拝だもんな」

 

「…私って、とことん違うんだね~」

 

「…だな~」

 

複製体を名乗る子を思い出して、それでもやっぱり違うと思う。

あの子は誰かのためにその身全てを捧げられる、そんな女神だと思う。きっと女神って誰かのために動ける子ばかりだろうから。

自分は…誰かのためじゃない、自分のために動く。

自分が見てて嫌な気分になるから、と。

 

人の入ってる自分とは違う女神。

その違いに、ピィー子だけじゃなくて、複製体を名乗るあの子とも…やっぱり違う。

自分は女神であって女神じゃない。

だけど…だけど、自分は人に寄り添える。

あの人の願いを、受け継げる。

 

「なあネプ子。

お前さんは他世界の女神を見て、そんでそれに関わったお前以外の奴らを見てどう思った」

 

「どう…?」

 

「お前さんは悩みに陥りやすいからな。

解していくのが一番なのさ。で、どうだった?」

 

「…」

 

どう、かぁ。

自分以外で…皆、色々あったけど笑ってたよね。

自分がいたからって子もいたかもしれないけど、笑ってた。

 

「…笑顔がね、いっぱいあったんだ」

 

「それはネプ子の好きな笑顔か?」

 

「うん、私の好きな笑顔」

 

「そうかい。

…なら悩むことないだろ」

 

おっちゃんは椅子から立ち上がって、そう言う。

自分はよく分からなくて、首を傾げる。

悩むこと、ないのかな。

 

「お前さんの好きな笑顔があるってことは…ここにもあるってことじゃないのか?」

 

「あ…」

 

「辛気臭い事ばっか考えてんじゃねぇよネプ子。

いいか?面倒なことは全部俺たちに投げろ。お前がやりたいことをやって、そんで成し遂げればいい。俺はお前さんの進む道にチップを賭けたんだからよ」

 

「…うんっ!」

 

「よーしそうと決まったら特訓しろネプ子!」

 

「ねぷぅ!?私帰ってきたばっかりだよ!?というか何日経ったの!?」

 

「おう、一日だ」

 

「時間差ありすぎぃ!?」

 

「まあ喜んどけよ、お前さんが最も危惧していた事にはならなかったんだからよ!次元座標については気になるが…やぶ蛇だろうからな、あんまし調べないでおくわ。イストワールの分野だろうしな」

 

いーすんの分野かぁ…

いーすんに聞いてみようかな。今、中にいるしこっそり…

 

─今はリゼヴィム達の事に思考を割いてください

 

酷いや!!

自分頑張ったのに~…いーすん、さては信じてないな!?

 

─いいえ、信じてますよ。特にピーシェさんや女神の複製体という…イリゼさんでしたか、とても気になります

 

そうなんだ…ま、まあね。

自分と違って二人はちゃんと女神だしね。

いーすんも他の女神は気になっちゃうかぁ。

 

─ええ、はい。シェアというシステム自体はどこも変わらないようですが…ネプテューヌさんとは何が違うのかは気になります

 

いーすん、真面目だなぁ。

帰ってきたねぷ子さんに泣いて喜んでもいいんだよ?

 

─私は毎日ネプテューヌさんに感動してますよ

 

うぇ…そ、そうなの?

うー…じゃあ、もっと感動させられるように頑張るね。

いーすんが胸を張って相棒だって言えるように!

 

─……ネプテューヌさんは、自分に正当な評価をすべきかと

 

…それからいーすんからは声がしなくなる。

真面目だけど、やっぱり寄り添ってくれてるような、気のいい友達のような…そんな感じ。

いつでも、自分にとってはいーすんが相棒だよ。

 

「おっちゃん、取り敢えず特訓付き合ってよ!」

 

「オメーその前に親御さんに連絡しろ馬鹿!」

 

「あいたぁ!?」

 

それもそうだけど、チョップはない。

痛いよ…よくも自分にこの痛みをぉ!と言いたいところだけど心配かけたかもしれないし電話しないと!

それから自分はお父さんとお母さんに流石に次元渡ってたというのはあれだったので研究所で色々とお手伝いついでに勉強会をしていたと伝えた。

 

遠い世界の皆。

頑張るから、どうか見ていてね!

 

 

 

 

 

──

────

──────

 

 

 

 

 

「女神と赤龍帝が戻ってきたぞ」

 

「へえ?いやぁよかった。一日だけ…いや、どうかな?

まあいいか、このままいなくて終わり!ってならないでお爺ちゃんも安心だ。もしそうなったら食い甲斐のある奴は孫くらいだしなぁ」

 

ケラケラと嬉しげに笑ってはチェスの駒を進める。

順調に準備は進んでいく。

次期にやってくる遊び心の戦争。

その日のために着々と準備を進めていく。

 

女神ちゃん、君はあっちで何を見てきたんだい。

茶会を開いて是非とも話を聞きたいところではあるが…その答えは戦いの時に聞こうかなぁ。

悪の親玉がまた赴くなんて興醒めもいいところ。

しかしなんだなぁ…これじゃおちおち眠れないなぁ。

 

何か周りでうろちょろしてる奴がいるし。

さてさて…これの駆除はどうするかなぁ…絶妙な立ち位置だろこいつ。どうしたもんかなぁ…

これ、僕ちゃんが手を出したらそれだけ遅延させてくるだろ?

やり手になったねぇ。

放っておくが吉かな。

 

「で、あれはどう?」 

 

「ユーグリッドはよく働く。あれの馴染みも良くなってきている。どうする?一度試運転でもするか?」

 

「んー…いやぁ、実戦投入でいいでしょ。

曲がりなりにも天才だったんでしょ?なら平気平気、それくらいやれるって」

 

「楽観的だな」

 

「早い話、この戦いは俺と女神ちゃんの対話だからねぇ…他人の扱いなんてどうでもいいのさ。肥溜めにぶちこんでいれば~って思うし、丁重に扱っても良いんじゃない?って思う。それくらいどうでもいいね」

 

「ならば、その聖杯もか?」

 

テーブルの上、チェス盤の隣に置かれている金の杯。

それを指差して彼は言うので、一瞥してから指で撫でる。

 

「んー?ああ…これは『別』だよ。ほら、これってあの子の命みたいなもんでしょ?」

 

 

 

 

 

「ちゃーんと全部使ってあげないとねぇ…嬉しいだろ、救世主様」

 

くつくつと嗤う。

戦いの日はすぐそこに。

異次元の旅は楽しかったかい、お嬢さん。

それは重畳。実りのある日々を過ごしたのなら敵としても嬉しいねぇ。

ほら、どうか見せておくれよ女神ちゃん。

楽しい舞台の幕をブチ上げてやるからさ。



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邪龍戦線開幕

お待たせいたしました。
色々とコラボ影響などを考えながらプロットを直し、ようやく終わりまで見えたので書き上げての投稿です。

6000文字いかないけど許してにゃん


慌ただしい、とはこの事かもしれない。

帰ってきて早々でないにしても、やっぱりその時になると緊張してしまうもので。どうなってしまうかなという不安と何とかしようという気合いが混じる。

 

リゼヴィムの宣戦布告から二週間が経過して、自分達はやれることをやってきた。冥界、天界に状況説明をしてそれぞれ防衛出来るようにと急ピッチとはいえ堕天使の皆も協力してくれたお陰で拠点も出来た。ウォールなんちゃら的な?

まあ、なんにしてもやれるだけの事はやった。

後は自分達の力と絆でどうにかするだけ。

 

「…行ってきます。また戻って来れるように勇気を頂戴ね」

 

自分の姿をした可愛らしいぬいぐるみを抱き締めてそう言って、それからベッドにそっと置く。大切な物だから持っていけない。

失くしたら自分は泣いちゃうと思うから。

 

「姉ちゃん、頑張ろうぜ。学校のためにもな!」

 

「そうですよ、色々と無理を通してますから頑張らないとです!」

 

「おほん、ネプテューヌさん、皆さんがいます。私も微力ながらのサポートをさせて貰いますので…もう少し肩の力を抜いてください(`ω´)」

 

「あはは、うん。ごめんねいーすん…少し力んでた。一誠とあーちゃんもありがとっ」

 

「にゃー」

 

部屋を出て、両親を抱き締めて(抱き締められたとも言う!)から家を出ると準備を終えた一誠とあーちゃん、いーすんが待ってた。

それぞれ頑張ろうと伝えてきて、力みすぎてた事に気づいた自分は苦笑。それから黒猫…黒歌が間延びした声で鳴いた。

 

「黒歌、小猫ちゃんとはいいの?」

 

「あの子も戦う心構えはしてたにゃ。なら、今回はねぷっち達の方でせっせと働くとするわ」

 

「でもまさか、リアスちゃん達がこっちのチームに二人を任せるとは思わなかったよ」

 

「ああ、部長大丈夫かな…」

 

「いざとなったら倍加したその脚で向かうと良いにゃん。

まあそれはともかくとして、ヴァーリが代わりにあっちに言ったのは意外かも。こういう時『俺がネプテューヌの傍にいる』って言いそうなものだけど」

 

「戦力の偏りを無くすためでしょうね。ヴァーリさん一人でもかなりの戦力ですから…」

 

「…でも、意外だったな」

 

「何がですか?」

 

向かう最中、一誠は言う。

多分、意外っていうのはリゼヴィムの事かな?

 

「いつでも仕掛けられるチャンスはあったのに、仕掛けてこなかっただろ?俺には分からねぇ…アイツの人となりっていうのが」

 

「…そうですね、私も分かりません」

 

一誠の困惑の混じった言葉にあーちゃんも同意する。

いーすんと黒歌も静かだけど、感想は同じようで視線は自分に向いていた。

何でそこで自分?と思ったけどあれかな?自分は分かってそうって事かな?

 

「うーん…リゼヴィムは多分、悪魔であることに拘ってるんじゃないかな?」

 

「確かに、契約を守ったり、今の悪魔はとか言ってたから拘りは強いのか」

 

「…恐らく、なんですけど」

 

あーちゃんが自分と一誠に一言そう言ってから話し出す。

 

「あの人に抱いている印象はそれぞれ別だと思うんです。

イッセーさんから見たリゼヴィムは、面倒な人、ですか?」

 

「そうだな、要らないこと持ち込んできて…止めてほしいぜ」

 

「ネプテューヌさんは、自分と同じ、ですか?」

 

「うん、リゼヴィムは多分私と同じような人だと思ってる」

 

「黒歌さんから見たら、ろくでなし、ですかね?」

 

「そうねぇ、ろくでなしに良いも悪いも無いしそんなとこにゃん」

 

「そうですか。…私から見たリゼヴィムは、誠実な人です」

 

「誠実、ですか?確かにネプテューヌさんを攻撃してきた割には話がしたいと言って本当にそれだけだったり二週間何もしてきませんでしたが…」

 

「ええ、だからリゼヴィムはそういう悪魔なんです。そういう存在なんです」

 

そういう存在。

つまり、一人一人が別々の印象を持つような多面性の悪魔…ってこと?確かに、ころころと性格の変わったかのような発言は自分がないようにも見える。

 

「私達は本当のリゼヴィムが分からない…んだと思います。

ネプテューヌさんが話した時のリゼヴィムも数ある一つの一面に過ぎないのかもしれない。そう思うと、私は色々と納得できるんです。リゼヴィムが目指しているのは世界への攻撃とか悪魔が悪魔らしくなるとか…そういうのじゃなくて、本当はもっと別の何かなのかも…そう思ってしまうんです」

 

「そういえば……」

 

そういえば、ヴァーリのことも少し気に掛けていたようにも見える。じゃあヴァーリを試すのが目的って訳じゃない。…本当に自分と戦争をするのが目的なのだろうか。

確かにそれは、あの声を聞いて、笑みを間近で見たからこそそうだと頷けることだ。けど…それは決めつけなんじゃ?

でも邪龍と本当に同盟を組んでいるらしいし…やっぱり、分からない。何が本当で、何が嘘なのか。

リゼヴィムは本当に、刹那的な生き方をしたいのか。

そんなことはない、と言いきれない。そうだ、とも言いきれない。

のらりくらりとしたその在り方に、少しだけ恐怖がある。

何でだろう、となるよりも早く…何なんだ、となるように。

 

「…それでも私達がやるのは変わらないよ」

 

冥界への転移魔法陣のある場所へ辿り着き、自分は言う。

やることは変わらない。

自分がやるのは、殲滅でもない、排斥でもない。自分は手を取りたい。どんな相手でも…もう、目の前から何かがいなくなるのだけは嫌だから。だから、手を取る。

 

「繋ごう、明日を…なんちゃって。まあ考えても仕方ないことってあるし、気楽に行こうよ!」

 

「…だな、気楽に行けないけど気楽に行こうぜ」

 

「それって矛盾にゃん」

 

「ですね…でも、矛盾を抱えてるのは私達だけじゃないですもんね」

 

そういうこと!と言って我先にと魔法陣の上に立つ。

この先はもう、戦いの場だ。

不思議と恐怖はない。だって皆がいるから…皆がいれば、私は誰よりも強く在れる。

だから、私は怖くない。

 

そうして皆で冥界へと転移した。

 

 

 

 

 

・ 

 

 

 

 

 

 

 

「例えば、何だけど」

 

「む?」

 

ポーンの駒を動かしながら対面に立つ同盟相手に話し掛ける。

勝負中なのもあって左右はうるさくないのは有り難い…有り難くない?勝負中はうるさいのは歓迎だけど喧しいのは嫌いなんだよね。

 

「こっちとあっちに差はあると思うかい?」

 

「…そうだな、限りなく無いだろう。

あちらは群、こちらは個で成り立っているからな。比べることすら無駄なことだ」

 

あちらも駒を動かした。

当然のように馬に引かれて人が死んだ。まあ、最初だしね?

そう、此方と彼方の差はない。なら、何で待ったのか。

 

「まあ、待ったのは僕ちゃんがやりたいことがあったからなんだけどさ」

 

「解放して何になる。あれは負の塊だろう?」

 

「…そうねえ。じゃあ君はあれは何だと思う?」

 

「今言っただろう、あれは負でしかない。いるだけで世界が軋む、そんな化け物だ」

 

「化け物ってのには賛成だけど、儂様は少し解釈が違うかなぁ。

あれはとても純粋だよ。希望も、絶望もない。負っていうのはそんな善悪による物じゃなく、負もまた正なのさ」 

 

「なら分ける意味があるまい」

 

「あるとも。影響の先が、正と負なのさ。だからその純粋さに誰かさんは狂気とか、希望とか、そういうありきたりなネームを授けた。要は判別がしたくてしたくて仕方なかったってハナシ」

 

「つまり方向性を定めれば益になる、と?」

 

その通り、と駒を動かしながら頷く。そう、どんなもの方向性、指向性を持たせさえすればそこへと進む。

シェア…だったかな?それもそうだろう。

シェアは希望の力と周りはいっているが、俺からすればそれもまた負であり正でしかない。

強い力っていうのは得てしてそういうものだ。

 

だからこそ、見てみたい。

 

「先に言っておくけど、ワシちゃんは勝つつもりはあるけど勝てるとは思ってない」

 

「ほう、何故だ?」

 

「前座だからさ。ゲームに例えるなら中間のボス。

もっと分かりやすくいうなら前菜ってやつ」

 

「では、最後のボスはなんだ。…あれか?」

 

「クク、ウフフフフ…さーてねぇ…」

 

自然と漏れる笑いを堪えることなく吐き出しきって、それからワインを呷る。

不味くて仕方がない。けれど今だけは美味だ。

 

「次期に始まる、聖杯で復活させた邪龍の進軍が、それを引き裂く光の姿が。楽しみで仕方ない!女神ちゃんだけじゃない、それに集るこの小さな光達がどう足掻くのか、見てみようじゃないか。

 

目標、首都リリス。ついでに天界も。悪役の舞台をブチ上げろ!

下らない世界に花を咲かせてやろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見て、俺は自然と刀を構えていた。

地より出ずる悪龍達。いや、体をいいように作り替えられた化物。

三勢力が負ければ次はどこにこれが来る?そんな自分への問いに知れたことと返す。

日の本に違いない。民草が蟻を潰すように踏み潰されていくのだろう。それは駄目だ、許容しない。俺はそれを排斥する。

その為に今を生きているのだ。その為にあの女神の手を取ったのだ。

 

「皆構えろ、此よりは死地である」

 

俺の後ろの仲間が、悪魔どもが構える。

先頭を立つ俺の声に従うように、一言も発することはない。

まさか悪魔と戦う日が来ようとは。いや、あの女神を助ける時に一度やったか。

化生がやって来る、力ある俺達が止めねばならない。

 

刀を抜く。目の前の一切合切を葬るために。

腕を上げる。俺の後ろにいる思いを同じとする者達のために。

声をあげる。勝利をその手に、そして俺に未来を見せてくれたあの女神に報いるため。

この源頼光、首都リリスへの進行の阻止、見事果たしてみせよう。

 

「皆、この頼光に続け!!」

 

『オォォォォォォォッ!!!』

 

天よ照覧あれ。

刀を握り、誰よりも早く駆けて橫薙ぎに振るって邪龍の数体を消し去る。所詮複製体、造作もない。

ここの守護は、我らが請け負った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天界にて、私はミカエルに話を持ち掛けていた。

ある疑いを確かなものとするために。

 

「…何故今その情報を?」

 

「そうね…早い話、教えてもらったのよ。これを知っておかないと、面倒になるって」

 

「駒王の前任の悪魔と教会の戦士の関係を、ですか」

 

「そうよ。私の前任…クレーリア・ベリアルについて、教えてちょうだい」

 

目の前の天使長は少し考えた後に目を開け、頷く。

きっと以前ならここに来ることすらなかった。けれど今は三勢力が手を取り合う程の案件…今なら調べられる。

いいえ、調べないといけない。あらゆる可能性を加味して、私はリゼヴィムの駒を一つずつ潰していかないといけない。

 

「分かりました。クレーリア・ベリアルさんと深い関係にあった戦士の記録について教えましょう。

これもまた、我々の罪ですから…」

 

─『クレーリア・ベリアルの死の真相を知るために天界に行け』

それが私に送られた手紙の内容だった。誰から、というのは何となく見当がついている。

ここに来るためにネプギアやイリナにも一緒に来てもらったし成果を出さないとね。

それにしても…何故今になってそれを知らないといけないのか、については分からない。けれどあの男が無駄な情報を与えるとは考えづらい。だからこそこの案件は調べる価値がある。

 

「彼の名前は八重垣 正臣。当時、戦士であるにも関わらずクレーリアさんと恋に落ちた…教会の戦士です」

 

「…ベリアル家の令嬢が…戦士と…」

 

「はい。ですが当時は互いに睨み合っていた状態…そのような恋愛は許されません。ですので説得したのですが…結果彼は離反し、粛清されたのです」

 

「…」

 

粛清、戦士、悪魔との恋、ベリアル……

そこまで考えて、嫌な予感が過る。

あり得ない、と思いたいけどあり得てしまう。

嫌な汗が背筋を伝い、私は他の可能性を頭の中で思い浮かべる。

 

「…私の調べでは、クレーリア・ベリアルは粛清されて眷属と共に命を落としたとされているわ。…でも、変じゃないかしら。

教会が手を下すなら、戦士だけで良い。何でわざわざ…戦士の八重垣だけじゃなくクレーリア・ベリアルまで?」

 

「…すみません、リアスさん。

それは…どういうことでしょうか?」

 

「どういうことって……待って、()()()?」

 

「ええ、戦士八重垣はイリナさんのお父上である戦士トウジが粛清しましたが…クレーリアさんについてはこちらも預かり知りません」

 

一瞬だけ、呼吸を忘れる。

違う?教会じゃない?となるとやったのはもう、片方しかないじゃない。そうなるしかない、そうなる以外にあり得ないのだ。

でもまさか、どうしてそんなことが…

だってそうなると……クレーリア・ベリアルは──

 

─悪魔陣営に殺されたことになる。

 

そして、ベリアルといえば…!

 

「ごめんなさい!今すぐ戻るわ!」

 

「どうなさったのですか!?」

 

「分かったのよ、リゼヴィムが自分の駒にするなら誰にするか!

誰が理想的で、どうすればあっちの陣営に加わるかが!」

 

「っ。分かりました、私達に出来ることは──」

 

「天界の警備を薄めるわけにはいかないでしょう!」

 

そう答えながら部屋を飛び出し、駆ける。

特訓のお陰でちょっとの運動じゃ疲れない。

すぐにネプギアとイリナが待っている外まで出て、二人を発見する。

大慌てで出てきた私を見て、慌てて駆け寄ってきた。

 

「リアスさん!?どうしたんですか?」

 

「今すぐ冥界に向かうわ」

 

「え?調べものは済んだの?というか天界で邪龍を迎え撃つんじゃ!?」

 

「それどころじゃないわ!朱乃達には移動しながら指示を出すから平気。今は、私達が向かわないといけないの。じゃなきゃ…」

 

 

「私達は、背後から撃たれるわ!」

 

気づくのは遅れた。けれど…まだ間に合う。

まだ、勝負は終わっちゃいない。




『クレーリア・ベリアル』
かつて駒王町を縄張りにしていた、リアスの前任にあたる女性悪魔。教会の戦士の八重垣と恋に落ちるも、悪魔側の大王バアル家や教会からは許されず、説得にも応じなかったため粛清されて眷属と共に命を落としたとされる。しかし、どちらの陣営が実際に手を下したのかも不明確であったりと、その死には謎が多かったものの、今回で悪魔側の粛清であることが判明。

『八重垣 正臣』
クレーリアの恋人であり、教会の戦士。
当時ではその恋愛を認められることはなく説得する教会や悪魔側と対立することになり、どちらが先に手を出したかは定かではないものの、最終的に粛清され命を落とした。今回で教会側の粛清であることが判明。執行者は紫藤トウジ


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邪竜前哨戦だよ!あれ、他にもあるの?

モチベーション低下及び家族との色々があって執筆する手が止まってしまったこと謝罪します。

これを機にもう少し執筆の手が早くなればなぁ、と思います


化物共を生成する刀を振るい、斬り伏せていきながら周囲の状況を把握する。周りの味方は俺のように龍達への特攻を持っていない。

といっても俺も扱うのに誤魔化しが必要だが… 

 

「トリスタン!」

 

『そう五月蝿くしないでください…ただでさえ周りが五月蝿いんですから』

 

「すまん。俺の方に援護頼む!だが俺ごと巻き込むつもりで良いぞ!」

 

『最初からそのつもりでした。死んでもパラケルススに私は謝りませんよ』

 

「何故そこでパラケルススが出る。まあいい、上等だ!」

 

俺が声を張れば、耳に付けた小型通信機越しにトリスタンへと話し掛けると静かな声で声量を下げろと言われる。

しまった、耳がいいトリスタンには普通で良かった。

俺ごと、と言ったのには理由がある。狙いを定めるには少しばかり多いからな、俺を巻き込んでくれる方が手っ取り早い。幸い、避けれる自信はあるし俺以外周りにいないからな。

こういう時に悪魔で良かったと思ってしまうな、目が良くて助かる。

 

『射ちました』

 

「■■■───!?」

 

声と共に直ぐ様音の刃が飛んできて、事前に跳んで刃から逃げる。

化物共は刃に気付くこと無く向かってくるが…気が付けばその首が体から次々と離れていく。これと戦ってアーシア殿を奴の元まで運んだゼノヴィア殿…確かに猪突猛進だな。

 

血の海に足を着け、周囲を見る。幾分か減り、後ろの味方も持ちこたえられるだろう。…といってもトリスタン側は俺の場所よりも安全だろうが。何せ…無双の英雄がいるからな。

 

「ならばリーダーの俺が負けてられんだろうさ。

この身は度しがたくも未だ悪魔…人外の身なれば!」

 

「■■─!」

 

「それにしても…数の多い!!」

 

向かってくる化物共は知能自体は高くないようで突撃をしてくる位だ。邪龍と言われるだけあってそれだけでもかなりの脅威だが…他の攻撃がないのなら対処も楽だ。

二刀を薙ぐように振るって左右の邪龍を裂き、遅れてこちらの喉笛に牙を向ける邪龍を胸から刀を生成してその切っ先で脳天を突き刺す。

殺しても殺してもキリがない。量産された存在…と見るのが正しいか?元の龍が生きているかはともかくとしてこれではあまりにも邪といえど龍の名折れだ。

 

それにしても…

 

「独りで戦うのに慣れているとはいえ、やはり寂しさがあるというものだ」

 

 

 

 

 

「なら、ここからは二人だなァ、くそリーダー!」

 

俺の真横に水渦過ぎ去ると共に生意気げな声が聞こえ、後ろを確認すること無く問う。

 

「カイネウス、お前、担当場所はどうした!」

 

「うるせぇ!曹操に文句言いやがれよ!『槍が被るから頼光の方に行ってきたらどうだ?』とか抜かしやがって来たんであの馬鹿と居られるかってんで来てやったんだよ」

 

「それは何とも…」

 

曹操も、中々にカイネウスと相性の悪い男だ。

まあ、何だっていい。カイネウスがいればこちらの防衛は更に楽になるな。特な、一人より二人…これに勝るものはなかろう!

 

「だが──」

 

「あ?」

 

カイネウス……の後ろから襲い掛かる龍を刀を突き出して貫く。

絶命までそう掛からず、すぐに倒れてくれるのはサマエル毒の強力さに感謝だな。

刀を引き抜いてからカイネウスへと笑いかける。

 

「もっと周囲を見てくれんと曹操の元に戻す。いいな、カイネウス」

 

「ハッ…上等だくそリーダー。悪魔の親玉には流石に部が悪かったが…この程度、我が槍の渦の前では塵芥当然!いっそテメェと俺で数でも競うか?」

 

「首取りか。…興が乗った、たまにはお前と競うのも悪くはない!」

 

槍を振るい、海神の槍より放たれる海水の渦が邪龍を飲み込む。

聖なる武器に該当するそれは邪な存在の前では確かな殺傷力だな。

それを俺の真横に放ったのは殺す気かと言いたいが、外す女にも見えん。

心労も絶えんとは恐れ入った!

 

そうして俺はカイネウスと共に最前線で邪龍達を屠りながら通信を入れる。

 

「呂布、そちらの防衛は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問題ない、どうぞ」

 

『ふざける余裕があるならいい!引き続き頼むぞ三國志最強!』

 

「了解…」

 

武器を振るえば私は強い。拳を振るっても、私は強い。何故なら私は呂布だから。

呂布である事に誇りはないけど、呂布であることは有り難い。そうじゃなかったらきっと私は強くなかったから。

 

「私一人で事足りる。後ろに退がれ」

 

「そうはいかない。こちらは数が多い、如何に神器が強いといえど協力すべきだ」

 

退けと言ったのに悪魔に断られた。

おじさんな見た目だけど、優しめ…悪魔なのに、私を嫌がらない?

蜥蜴を斧で凪払って殺してから魔力を込めた弾で蜥蜴を殺しているおじさんに訊いてみる。

 

「おじさん、何故私を嫌わない?」

 

「時代だよ」

 

「時代?」

 

「私はこうして少し長く生きているが…魔王様達は人と協力…いずれ駒無き世界で手を取り合えればと動いている。始まりは罪でも、償い、贖えば我々もいつかは若い世代に罪を被せる事もなくなる…ならば私は戦う!」

 

「■■■■…!」

 

おじさんは熱のある声でいくつもの弾で蜥蜴達を撃ち抜き、倒していく。この人、未来を信じてる。手を取り合う……私も、女神に貸しがある。その女神もそれが好きだった…なら、私もそれに付き合う。

恩を仇で返すのは、嫌だ。

 

「その夢、手伝う」

 

肉体に剛力を宿し、斧を振るい、衝撃波だけでも蜥蜴達を凪払い、打ち砕いていく。

私は強い。でも、私は頭とかはよくない…だからこそ、それが良いと感じた方に突き進む。それは良いことだ。それは助けても良い。

 

「…ありがとう」

 

「構わない。どのみちこれは倒すもの…さっさと片付ける」

 

「それなら、俺も協力しよう」

 

その言葉と共に、拳が邪龍を葬る。

そこに立っていたのは筋肉質の男。悪魔っぽくない悪魔…?

 

「すまない、見たところここが一番邪龍が多いように見えたからな。助太刀させてもらおう」

 

「必要はない。全て私が凪払う」

 

この男、強い。

けど、ここは私の持ち場。

後、少し悪魔は嫌いなのもあって突っぱねてしまった。

 

「それはそうかもしれないが、負担というのは軽減するに越したことはない。勝手に手伝わせてもらうぞ」

 

「…仕方ない。お前、名前は?」

 

「俺か。俺はサイラオーグ・バアル…若手で最も強いと自負している」

 

「なるほど。なら…勝手に手伝え。私に裂かれても文句は言うな」

 

「…中々豪胆なお嬢さんだな。良いだろう!」

 

戦うことが私の在り方。

それが役立つというのなら例え独りであっても戦おう。

命果てるまで、己の武を示さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらら、やっぱり急造の邪龍じゃ雪崩れ込む位しかやれないか。

かといって本場のを今出しても面白くないなぁ…どうしようかな、手札を切るかな?

 

「おイ、俺ヲ戦わセろ」

 

混ざったような声が聞こえて、振り向く。

振り向いて、これがいたなと口元が弧を描く。

これなら遊べるかな、多分。

 

「んじゃ、ちょっと暴れてきてよ。頼むよー?君には結構混ぜたんだからただボコられるのはやめてよね?」

 

「当たリ前だ、あノ、クソ女神を殺す…」

 

「恨み買ってるねぇ、紫ちゃん。まあ、結構理不尽な恨みだけどサ」

 

とはいえ、今ここでこれを使うのは気が引けるなぁ。

…んー、調整不足で役立たずで終わりました~が一番嫌なんだよねぇ…さてさて…どうするかな…

 

「…あーやっぱ無し。君まだ動かないで」

 

「あァ?」

 

「聞こえなかった?動かないでって言ったんだよん」

 

「くそ悪魔…俺に指図するんじゃネェ、テメエと俺ハ協力してタだけだ」

 

「んじゃぁその力あげたお礼ってことでここは一つ言うこと聞いてよ~。お願い!いっしょーーのお願いだからサ!」

 

手を合わせて頼み込む。

まあ心なんてこもってないんだけど、利害関係は一致してるし?

僕ちゃん達は持ちつ持たれつ…だっけ?そういうもんだよね?

 

「……好きにしろ!!」

 

ありゃりゃ、椅子蹴ってどっか行っちゃった。

…あの椅子、日本円にして15万はするのになぁ…おじさん、泣きそう。どうしてこう出費がかさむかなぁ?誰のせいなんだ、ぷんぷん。

まあいいか。

 

それじゃあ、使うのはこっちにしよっと。

チェス盤をぶん投げて、テーブルから出てきたそれを押す。

ポチっとな。

 

「聖杯で蘇らせた邪龍のエネルギー…ちゃーんと利用しなきゃ損だったしねぇ、いやぁどんな塵でもリサイクルする儂様はもしかしたら偉いのかもしれんねぇ!…ん?」

 

…おんや?

これは、これは……ああ、それは面白そうだねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが始まって1時間は経過したかな。

倒しても倒してもキリがない。けど、聖杯の出力も限度があるってネビロスは言ってた。

となればねぷ子さんの意地の見せ所だよね!

困っちゃうよね…いつまで経ってもこうだと!だから、ちょっと多めのシェアを使って…!

 

「32式エクスブレイド-12連-!」

 

剣を12本生成、そのまま飛ばして自分も突っ込む。

エクスブレイドは邪龍達を自動で貫いていき、自分もまた刀を振るって斬り裂いていく。飛べるっていう持ち味を活かして空に逃げながらのヒット&アウェイ!

それにしても、ここからまだまだ巻き返せそうではあるね。

なんせこっちの拠点はまだ攻撃されてないし!

地上は一誠と黒歌が迎撃してる。

一誠はいつもの力押しだけど、オーラを纏うとかいうどこぞの野菜人みたいな感じで攻撃を受けないようにしてるし、黒歌はひょいひょい動いて攻撃を避けながら一撃をお見舞いして倒しているね。

あーちゃんは拠点で負傷者の回復。

呪いの一撃を受けていなくても邪龍の攻撃は普通にやばいもんね!

 

「じゃあ、このまま攻めて──」

 

─ネプテューヌさん!

 

攻めていきましょう、と言おうとしていーすんに言葉を遮られる。

どうかしたの?と訊く前にそれは起こった。

 

「■■■──…!」

 

「お、おいおい邪龍がグロテスク…っていうか溶けていってるぞ!」

 

「違うわ!これは…ねぷっち!邪龍達が合体していく!このままだととてつもない事になる!」

 

「っ、いーすん!解析!」

 

─急ピッチで進めています。しばらく時間をください!

 

『おおいネプ子!聞こえるか!』

 

「おっちゃん?」

 

通信機から連絡があり、おっちゃんの声が聞こえる。

少しばかり焦っているようであり、事態は深刻だと言っているようなものだった。 

 

『イストワールの解析があるだろうから、取りあえずマジの詳細はそっちに任せる。いいかネプ子、そいつは直ぐ様倒さんといかん!』

 

「そうね、邪龍合体だなんて戦隊物ならやり合いたくないものね」

 

『いやそうなんだけど少し違うだろ…というか戦隊物ならメンバー偏りすぎだろ!』

 

そのツッコミ、的を射てると言ってもいいね!

それはそうとどんどん肥大化してるし、このままだとちょっとブレス吐くだけで首都に被害が……

 

ここは先手必勝、変身中の攻撃はご法度だけど誰かが言ってた!

タブーは破るためにあるって!つまりこれは攻撃してもその人の言葉に従った自分は悪くない!…こじつけだけどね!

 

「ネプテューヌ」

 

「ヴァーリ、どうにか出来そう?」

 

「…半減を使ってもいいが、触れるのも儘ならんな。アルビオン曰く、あれは触れるだけでも呪毒に蝕まれる可能性があるようだ」

 

「なにぃ!?俺戦えないじゃんか!?」

 

「殴る蹴るが主流の一誠からすれば天敵ね。ドラゴンであるならアスカロンやグラムで…それ以前に吹き飛ばせないかしら」

 

『いや、接近は難しいだろうな。そもそも近付くべきじゃねぇよ』

 

─アザゼルさんの言う通りですね。あれだけの呪いの塊です、近くにいるだけでも相当でしょう……ただの人間のジークフリートさんには厳しいでしょうし、一誠さんも同様です。悪魔としては脆い方ですから…

 

「…となると遠距離ね……私がやるわ」

 

「遠距離ってんならドラゴンショットでもやれそうだな。よし、ブッパは正義って言うしそうするか」

 

「それもそうだな…生半可な攻撃ではなく全力を振るうぞ。万が一も考えるとな」

 

首都を潰されるとまずいしね。

でも、魔王の皆は戦えないのが惜しい…だってサーゼクスさん達がいてくれたらもっと対処が楽だったと思う。…ううん、国民を守ってるのは自分達だけじゃない。避難させた場所で魔王直々に守ることも必要…だよね。

早速やろう!そうして動こうとして…

 

邪龍が凍った。

遅れて、寒さがやってきて、一誠はぶるりと体を震わせる。

な、なにぃぃぃ!?いったい何が起きて…時間でも停止してた!?

 

 

 

「はぁい☆健闘してる皆、悪いドラゴン倒す為!魔王少女が参上!魔王少女マジカル☆レヴィアタン!」

 

 

 

空から声がして、見上げれば…魔法少女衣装を着た魔王セラフォルーさんが居た。も、もしかしてあれはセラフォルーさんの魔法!?

圧倒的ではないか我が軍は!

 

「といっても、長くは持たない。だから今のうちに粉砕しちゃって!」

 

「唐突すぎて驚いたが、助かった。ネプテューヌ、兵藤一誠!」

 

「分かってらぁ!ありがとうございますセラフォルー様!」

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

「ええ、行くわよ!」

 

自分はシェアを込めて、一誠は倍加して、ヴァーリは手に入れていた力を注ぎ込んで…放つ。

凍り付けから解放されようとしているのか、氷にヒビが入って紫色の毒々しい光がそこから溢れている。

そんな邪龍目掛けて全身全霊を!

 

 

 

「決めるわよ、デルタスラッシュ!」

「「ダブル・ドラゴンショット!!」」

 

 

『■■■■■───!!』

 

Δの文字を描くようにして放たれたシェアの斬撃と二人から放たれた魔力球。それを迎え撃つように凍り付けから解放された邪龍は脅威と判断したのかこちらへ極太のブレスを放ってきた。触れたら一貫の終わりの呪いのブレス…けれど、自分達には絆の力がある!

今一度シェアに力を込めて…刀身に眩いばかりの光を灯す。

光を纏った刀身の切っ先を突き出し…ブレスに向けて一条の光をぶつける。

 

「くっ、ぅううううっ!」

 

「姉ちゃん、受けとれ!」

 

『Transfer!!』

 

拮抗どころか押されかけていたところを一誠の譲渡が助けてくれた。強化された自分は力の限りシェアを注ぎ…ブレスを押し込み始める。そこに先程放った二人の技がブレスへとぶつかり…一気に邪龍の口付近まで押し込まれたそれは弾け、そこにデルタスラッシュが追い撃ちのごとく直撃し…爆発。

 

「■───■■────…」

 

邪龍にかなりのダメージを与えたようで、その体がどろどろと溶け始める。

…グロい!それはグロいよ!?バイオな世界じゃないんだからもう少しやられ方を工夫して!

 

それから動く気配が無かったので降りてきたセラフォルーさんに話し掛けることにした。

 

「セラフォルーさん、ありがとう。私達だけだと被害があったと思うわ」

 

「いいのいいの~☆皆冥界の為に頑張ってくれてるんだから私達も動かないと☆」

 

「でも、避難の方は?セラフォルーさんも誘導していたんじゃ?」

 

「それは終わったから平気っ☆サーゼクスちゃん達もやるべき事をやりに向かったわ☆」

 

やるべき事…それを詳しく言わないって事は言うべきではないって事なんだろうね。それにしてもあんなに強いなんて…頼もしいなぁ、これなら邪龍達にも普通に勝てそうかも?

 

─楽観視は感心しませんね。

 

(うぐ…反省します…)

 

「じゃあ、皆を集めようぜ姉ちゃん。俺達疲れたぜ…」

 

「へばるのが早いな。そんなことではこの先が思いやられるな?」

 

「あぁん…?」

 

「はいストップ。二人ともやめなさい。全く…すぐに売り言葉に買い言葉なんだから。」

 

まあ、その分息も合うようだけどね。

良いと思うよ、男の友情っ!

それから皆を集めたんだけど、何だろう…胸騒ぎがするんだよね。

邪龍達は一旦倒したんだから安心して良い筈なのに…なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアスさん、結局どうして冥界に?」

 

「そうよ、理由をそろそろ教えてよ。」

 

冥界に戻ってきて、ネプギアとイリナに訊かれる。まあ当然よね、寧ろこれに関しては私が悪いわ。

でも急ぎだったから…

 

「取りあえず、向かいながら説明するわ。

…さっき天界で聞いた話、教会の戦士と悪魔の恋愛。その結末について…これはまだ、決着が着いていないわ。」

 

「え、でも…何年も前の話ですよ?」

 

「そう、何年も前の話。でも、ある一人にとっては忘れ難い、停滞させてしまう程の問題だったのよ。」

 

ベリアル、と聞けばレーティングゲームを嗜む者なら誰しもが思い浮かぶ人。

レーティングゲームにおいて、格付けというものはやはりある。

一番上を目指すのはプライドの高い貴族達にとっては当然のもの。

 

「クレーリア・ベリアルには兄がいる。」

 

「…それって。」

 

「ええ、そうよ。クレーリアを失ったその人はきっとまだ調べている。でも天界と関わりを持てていなかったからその真実に今一歩足りなかった……」

 

「待って。それはつまり貴女がその真実を伝えるの?」

 

「…正直に言うと、どうすべきかはの分からない。会ってどう話すべきかも、分からないけど…でも、確実に言えるのはリゼヴィムにとって利用しやすい人物ということよ。」

 

それだけはさせない。

聖杯の力を使えば、といった甘言をあの悪魔は平気でやるでしょうね。それはさせない。

先手を打つ…それしかない。そうしないとどんどん引き抜かれるわ。

 

邪龍と同盟を組む男だもの、同時にスタートして勝てるとは一切思っていない。

ネプテューヌ達を頼れない今、私達がやらないといけない。

 

 

 

そうして、その人の元に辿り着く。

戦いとはまた別の場所に、何故かは分からないけれど、くまなく探しても居なかった果てに、ルシファードのコロッセオに辿り着いた。

 

その灰色の髪は間違いなくその人だ。

 

「ここにいた…」

 

「結構走ったわね……」

 

「おや…君達かな、私をここに呼んだのは?」

 

「…え?」

 

「違うのか?…そうか、だとするとまた別の用なんだね。

自己紹介をしないといけないな。私は…ディハウザー・ベリアル。

レーティングゲームで『皇帝』と呼ばれてもいるかな。」

 

優しげな面持ちで自己紹介をしたのは、探していたもう一人のベリアル。

ディハウザー・ベリアルがそこにいた。

 

…呼ばれた…誰に?

 

リゼヴィムが、もうそれを見越していた?

いえ、いくらリゼヴィムでも未来を見通すことはできない。

これは、もしかすると…いえ、それでもよリアス。

私は一歩進んで、ディハウザー様に向かい合う。

 

「お初にお目にかかりますディハウザー様。私はリアス・グレモリー……あなたに、お伝えしないといけないことがあります。」

 

 

 

 

 

「─隠蔽されていた、真実を。」




裏で動き出す思惑。
リアス達はそれを阻止できるのか?

次回の執筆頑張るゾイ!


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明かされた真実、そして

どうも、毎度の事ながら更新遅れてますね申し訳ない。
べ、別にイカのゲームが楽しくてサボってるんじゃないんだからねっ


ディハウザー・ベリアル…彼を前にして、この話をするのは得策ではない。けれど、彼には真実を知る義務がある。

きっといつか酷い形で知るくらいならば、今知るべきなのでしょう。

 

「貴方は調べている…私の前任者であるクレーリア・ベリアルに起こった事件の真相を。そうでしょう?」 

 

「!…その確信めいた物言い、隠し立ては出来ないか。そうだ、私はクレーリアの身に何が起こったかを知りたい。教会の戦士と恋に落ちたことで粛清されたなど、納得できる内容ではない。

それに…突拍子が過ぎる理由だ、何かあるんじゃないのかと探り続けてきたが、掴めぬままだ。」

 

「その真相、私が教えると言ったら?」 

 

「り、リアスさん!?それは…」

 

「ちょっと待ちなさい、リアスさん。それは証拠もあるんでしょうけど…今一度整理するべきよ。ディハウザーさんに誤った真実を教える訳にはいかないし、それに…それを教えるのはリアスさんにも危険があるでしょ。」

 

「ええ、そうね。悪魔の上層部の力が働いているのは間違いない。情報操作もあちらがやってるのでしょう…勘の良い輩は適当な理由をでっち上げて始末すればいい。…でも、決めたのよ。ネプテューヌのようにそういった悪いものも呑み込んで進むって。だから、危険が迫ることになろうと…私は私の理想のために動くわ。」

 

ただ、イリナの言う通り…見落としが無いかを見直すのは大事ね。

今一度整理しましょう。まず、クレーリア・ベリアルは何かと関わってしまった。そして、クレーリアには丁度いい事に愛し合う男性、教会の戦士である八重垣 正臣がいた。

当時を考えれば敵同士の繋がりは許されない…確かに、それで粛清はあり得ること。だけど、浅慮が過ぎる。

その関係を咎めて、家に連れ戻すなりしようと思えば出来た筈。

それをせずに眷属ごと粛清した、八重垣も含めて。

 

これはミカエルとの話で食い違いがあった。

まず、八重垣は離反した。教会の戦士でなければ、という考えもあっただろうけど…まあそこは考えなくていい。

次にクレーリアは何を知った?即粛清、だなんてよっぽどの事があった筈。何かを知ったか、してしまったか。けれど、何かをしたのならそれは公表できる。知ってしまったのなら…隠し通さないといけない程の物。

 

「クレーリアは何かを知り、それを隠蔽するために殺された。」

 

「何か、とは…?冥界にある物なのか?」

 

「悪魔の粛清となると、冥界側に不利なものでしょう。」

 

「酷い話ね、冥界に不都合になったから名家の人だろうと消すなんて駒みたいな物よね…」

 

「はい、クレーリアさんも八重垣さんも救われません…」

 

駒?…駒、そう、駒よ。

なんで気付かなかったのかしら。

あまりにも突拍子のない事かもしれないけれど、私も疑問に思ったこともなかった。浸透していたから…それが当たり前だった。

 

「その顔、どうやら何か分かったらしいね。」

 

「ええ…繋がりました。知られたくない不都合は数あっても…クレーリアが調べそうな事といえば、これしか思い当たらない。

ディハウザー様、訊いてもよろしいかしら?」

 

「ああ。…もし、知っても悪魔を裏切ることはないと約束しよう。

君のような優しい者もいると分かった…それだけでも、私は嬉しいよ。」

 

ディハウザー様は覚悟をしている。

なら、私もしっかりと訊くべきを訊かないと…ここにずっといるわけにもいかない。

 

 

 

「何故…レーティングゲームに『王』の駒は無いのでしょうか。」

 

思えば、女王はあっても王の駒はない。

上級悪魔を王に見立てるのがレーティングゲーム…けれど、駒がないのはどういうことか。魔王の一人、アジュカ様なら仕様が違っても作れる筈。それをしないなんて、あるのだろうか。

ゲームに関しては凝り性だと噂されるあの方が。

 

ディハウザー様は、顎に手を当てて目を閉じた。

思い当たる、といったところかしら。

 

「いや、ある。関係無いだろうと思って胸の内に留めておいた事だが、『王』の駒は実在する。冥界の裏を探る上で、偶然知ったことではあるが…その駒は単純な強化、2倍などではない10倍、100倍の強化だ。それ故に禁止された、と…」

 

「それです。それを知ってしまったクレーリアは知るべきではないを知った者として粛清された。」

 

「そんな、駒を知っただけで?」

 

「違うわ、駒を知ったからよ。確かに駒を作ったのはアジュカ様だし、禁止したのもアジュカ様でしょう。

けれど、最もその駒の力を恐れて、利用しているのは上層部よ。

きっとレーティングゲームでの不正にも使われてるでしょうね。」

 

「…確かに…以前より格段に力が上がったと感じた相手もいたが、まさかそういう事だったとは。つまり、クレーリアも、恋人の八重垣君も上層部の勝手な都合で消されたのか…」

 

暗い表情のディハウザー様に掛けられる言葉は少ない。

どっちにしたって、もう過ぎてしまったことだからだ。

けれど、これからを変えることは出来る…私は変える側でありたい。

 

「いつか、これを公表しましょう。それが一番の仕返しになるはずですわ。」

 

「…そうだね、私もクレーリアと、その恋人である八重垣君の為にも明るみにすべきだ。この手を悪に染めない方法で、ね。」

 

「ほっ…」

 

ネプギアの安堵の声はもっともね。リゼヴィムに利用されていたかもしれなかったと思うと気が気でないもの。実力はそれこそ魔王に迫る程だろうし、尚更ね。

これで私のやることは一つ終わって───

 

 

 

 

 

「──酷いなぁお嬢ちゃん。儂ちゃんも仲間に入れてくれないと~」

 

「リアスさん!」

 

「ッ!」

 

ネプギアが私の後ろを守るようにして、飛んできた魔力を剣で弾いた。それと同時にイリナがディハウザー様を庇うようにしており、剣を抜く。

コツ、コツ、と小気味のいい音が鳴り、こちらへと姿を表す。

 

ヴァーリによく似た銀髪に、嘲るような目…リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが防がれちゃった、と残念そうにしながらも大して気にしていない様子でやって来た。

 

「こそこそやってるみたいだけど、儂ちゃんも一応お貴族様なものでして、そういうのは分かっちゃうんだなぁ…」

 

「そう、それにしては対応が遅れたじゃない。邪龍の方は片付けられちゃったのかしら?」

 

「ウフフフ、中々お転婆だねぇ!それも紫ちゃんのお陰かな?まあいいや。ディハウザーちゃん、儂ちゃんと手を組む気はないかい?」

 

「無い。貴方の手を組む、は利用するだけして捨てる体のいい駒を欲してるだけでしょう。」

 

「ええっ!そんなことないよん!儂ちゃん、すっごく誠実な悪魔だからさ!協力の暁には…ほら、これでね?」

 

「それは!」

 

リゼヴィムが懐から取り出した物を見て、イリナが声をあげたのは当然ともいえる。だってそれは私達が奪還すると決めているものの一つ。

 

幽世の聖杯(セフィロト・グラール)…」

 

「そうそう、邪龍だって蘇らせる事が出来る超便利アイテム!

何とこれを使って君の愛しい愛しいクレーリアちゃんを蘇らせてあげましょう!どうよ、最高のお礼じゃん?」

 

「クレーリアを……」

 

ディハウザー様はそれを聞いて、動揺しているようだった。

目が揺れていたし、何よりクレーリアを家族として愛していただろうディハウザー様にとって、それは正しく悪魔の囁き。

世界を敵に回す代わりに生き返らせるという甘言。

 

分かってはいたけど、死者の蘇生すら手札にする…とんだ下衆ね。

いえ、それは…私達悪魔全体に言えたこと、か。

 

「ディハウザーさん!駄目です!そんなのクレーリアさんは望んでませんよ!」

 

「望んでないっていうのはさ、生きている君たちの勝手な言い分じゃん?死人に口無し、好き放題言えるのは生者の特権だけどね。

でも知りもしない奴の事で望んでないです~っていうのはちょっと勝手すぎないかねぇ、次世代の女神ちゃん。」

 

「そ、それは…」

 

「ネプギア、いいのよ。」

 

狼狽えるネプギアの肩に手を置いて、前に出る。

勝てるとは思っていない…いえ、私一人でリゼヴィムを倒すことは出来ないでしょう。悪魔としての格差、経験の差…勝てる道理がないといっていい程に。

 

でも、啖呵切っちゃいけないとは言われていないわ。

 

「勝手な都合、勝手な言い分…私達は確かにそうかもしれない。

でもね、死んだ者に縋り続けるのを黙って見るくらいなら自分勝手に止めさせて貰うわ。あなたのその勝手な言い分を叩き壊す為に、私達も勝手な言い分をぶつけさせて貰うわ。」

 

「…へぇ…へ~~ぇ!いいねぇ…その目、その表情…!やっぱりあの紫ちゃんは特異点だ。自分の意思と関係無く善悪を引き寄せて、虜にする。()()に乗ってよかったよ!君達のその諦めない目…その希望を手放さない表情、意思!素晴らしい!ブラボー、ブラボー!」

 

ケラケラと笑ったと思えば惜しみ無い賞賛を送りながら拍手をしてくる。

やはり、分からない。上層部の老人の方がまだ分かる。

権力にしがみつく姿は滑稽そのものだ。

でも、目の前の悪魔は分からない。何を欲しているのか暗く閉ざされたその先の真実が見えない。

 

それに、誘い?ここに来たのは誰かに誘われた?それとも…リゼヴィムすら利用する誰かがいて、リゼヴィムはそれに気付いているけど何もしていない?…駄目ね、憶測が重なるだけだわ。

 

「いやはや…良いものを見せて貰った!本当に、本当に素晴らしい…だからこそ残念だよリアス・グレモリー。君は来るべきじゃなかったんだよ。」

 

「…言っておくけど、そう簡単にくたばるつもりは無いわよ。」

 

「いやいやいやいや!違う違う!儂ちゃん、ここに用は無くなっちゃった。だから儂ちゃんは大人しく退散させて貰うってハナシ。

流石に次世代の女神ちゃんと戦うのは時期尚早だからさ。」

 

撤退宣言。

それを聞いて私は困惑した。

戦ってこっちの戦力を少しでも削いでくるかと思っていたけど…それだけディハウザー様やネプギアがいるこちらと戦うのは割に合わないと踏んだのかしら。

 

そう思っていた私にリゼヴィムはニンマリとした笑みを向けた。

 

「真実を明らかにする…確かに素晴らしい行動だ。

君のその探求心は君を助けるかもしれないし、殺すかもしれない。とはいえ考えることをやめた者に価値はない。君は正しい選択をしたよリアス・グレモリー。確かに僕はディハウザー・ベリアルに目を付けていた。」

 

「あら、捨て台詞?」

 

「まあそうなっちゃうのかなぁ…置き土産もしようと思うけどね!」

 

「置き土産…皆、構えて!」

 

「今度は何をする気!」

 

「面白い作品が出来たから一足先に見せてあげるって事さ!殺しても良いけど、出来るかなぁ!うひゃひゃひゃひゃ!」

 

高笑いをしながらリゼヴィムは何処かへと転移し…代わりに暗がりから現れたのは何度か見た顔で。

白髪に人を小馬鹿にしたような笑み、神父気取りの服装…ネプテューヌがシェアを失くした一件でようやく捕まえたはぐれエクソシスト。

 

フリード・セルゼン…!

脱走した?いえ、リゼヴィムが手を貸したのね…!

 

幽鬼のように立ち、顔を俯かせるその様子からは正気を感じられないし、何より人間らしくない。

ようやく顔をあげたと思えば…焦点は合ってなく、けれど私達を見て嬉しそうに嗤う。

 

「ヒ、ヒヒハハハァ!やっと…やっト糞悪マをぶチ殺せルぜぇェえ!!」

 

「っ、早…くぅ!?」

 

「イリナ!この…!」

 

「遅い遅イ遅すぎルんだよぉぉぉぉ!」

 

声が人のそれとは違い、ノイズが入り混じったような不快な物で。

イリナに飛び掛かってきたと思えば見るだけでゾッとする黒いオーラを纏った剣を振るった。

剣で防いでいたけど膂力が強いのか後退し、私が魔力を放ち…弾いたと思えば軽々とした身のこなしで後ろへと跳んだ。

 

もう誰かの判別も出来てない…いえ、彼の場合は悪魔と関わってれば同罪だったわね。

 

「ハははぁ!ウゼェ黙れよぉ!…はは、殺してやる!殺してやるぜぇ!やっとざらついた感覚が取れてきやがった!」

 

「その力…君には過ぎたものだ!」

 

ノイズが消えてきたと思えばやっぱり狂った様子で斬りかかってきて…ディハウザー様が避けながら一瞬にしてフリードを囲うように魔法陣を展開して魔法を放つ。

 

「うざってぇんだよぉおぉぉ!!」

 

「きゃぁ!?」

 

「これは…!」

 

「リアスさん、イリナさん、ディハウザーさん!退いてください!」

 

フリードを中心に黒いオーラが弾けたと思えば魔法が()()()

行使した本人は力に酔ったかのように恍惚とした表情であり…ギロリとこちらに視線を向けた。

衝撃だけでも背筋が凍るような…何なの、あれは!

気持ち悪いと心の底から否定が溢れる…そんな力。

 

ネプギアは私達を守るように前に出て、女神化すると共に退くように言う。

 

「これは良くない力です!女神としての力が…シェアがあれを拒んでいる…私自身、あれに直撃すればどうなるか分かりません。」

 

「シェアが…?つまり…あれもそれと同じ系統の力?…いえ、ネプギア。ここは全員で退くべきよ!今から動きを止める…指示通りに!」

 

「…分かりました!」

 

「私はどうすればいい?」

 

「撹乱はできる?」

 

「問題ないわ。それじゃ早速!」

 

イリナは頷いてフリードの方へと駆けて、拳銃を取り出して二、三発放つ。フリードは当然のように剣で弾き、イリナへと意識を向けるけど…今のフリードはイリナ程の技がない。

あれなら凌げそうね。

 

「リアスさん、指示を!」

 

「壁を…あそこ、あそこを破壊して!上は私が壊すわ!」

 

「なら、私も手伝おう。」

 

「助かります!」

 

イリナが時間を稼いでいる内に逃げ場を用意する。

魔力を集め、上を向く。

ディハウザー様も手伝ってくれるなら心強い。

…『無価値』の力があるディハウザー様だけど、それを使わないってことは()()()()()()ね。

 

ネプギアもMPBLの溜めが終わったようで私の方を向いて頷く。

 

「イリナ、離れなさい!ハァァァッ!」

 

「フッ!」

 

「そういうことだから…じゃあねっ!」

 

「ヌガ、ぁぁあこの、アマぁぁぁ!」

 

合図と共に特大の魔力を天井へと二人で放ち、壊す。

壊れた天井が瓦礫となって落ちてきて、フリードへと降ってくる。

イリナは斬り結んでいたようで最後に蹴りを腹に入れて離脱して来た。

後はネプギアね。

 

 

「MPBL、往きます!貫いて!」

 

銃口から放たれたビームは壁の方へと突き進み…見事に破壊した。

それを見届ける前に私達は駆け出して、ネプギアも飛翔する。

フリードは天井に気を取られていたようで私達の方へ来る気配はまだない。対処が忙しいでしょうね!

 

「クソ、くそクソ糞…!俺から逃げやがったなクソ悪魔がぁぁぁぁぁっ!!」

 

そんな怒りの声が聞こえたと思えば瓦礫が地面へとぶつかる音が聞こえた。これで終わり、とはならないでしょうね…陰鬱だわ。

無事に破壊した壁の穴から出てきて、すぐにここに来た際に使用した転移の魔法陣へと向かう。

 

「気狂いが更にレベルアップしたって訳?質が悪い!」

 

「しかし、彼のあの力は危険だ。負を詰め込んだような…あれに触れ続けていればどうなっていたことか。」

 

「はい…余波だけでも辛かったです…」

 

「…特に女神のネプギアへのダメージが高いみたいね。リゼヴィム…一体何をした…いえ、一体…何を見つけたというの…」

 

分からない。フリード自身、まだ慣れていない様子だったから助かったけど…あの力はディハウザー様の言う通り危険ね。

あんなのに触れていたら気も狂うわ。

 

辿り着いた魔法陣に乗って、転移をして安全圏に来て…ようやくやって来た疲労感に従うように地面に座り込む。行儀は良くないけれど、流石に肝が冷えたわ…他の皆も同じようで、ネプギアは冷や汗をかいて、イリナはため息をついた。ディハウザー様は首都の方をじっと見ていて、まだ警戒を解いていなかった。

 

(この事は、ネプテューヌ達とも共有しないと。

…それにしても、結局……)

 

 

誰が暗躍しているのか。…リゼヴィム以外に。



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休むのも戦士の何とやら!

お久し振りです。
無事卒業&就職できたのでこちらの編集に専念致します。
イリスちゃんのお話も投稿頑張りますので待っててください。




ぐるぐる、ぐるぐる。

渦巻くような感覚がそこにはあった。

否、感覚ではなく…感情か。

揺蕩うには浅く、立ち上がるには深い。

ただ暗く、そこにあるのは闇だけで…それと目が合う。

 

─立っているだけなのに目眩がして、吐き気がして、脱力感に襲われる。

それが目の前の存在の本質。

プラスの要素は微塵もなく、マイナスで構成された存在。

 

邪龍よりも邪で、赤子よりも純粋で、神よりも残酷。

 

そんな存在を目にして、口元が嬉しげに吊り上げるのを自覚した。

手を差し伸べて、伝える。

 

「ハッピーバースデー、今日が君の誕生日だ。」

 

君の手で、憎い世界を滅茶苦茶にしようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

───

─────

───────

 

 

 

 

 

何とか邪龍達の進行が止まった。

被害は少し出ているけど幸い死傷者はいない。これも曹操達のお陰だね。頼もしい助っ人だよ、本当。

でも、参ったなぁ…これ、まだ本番じゃないんでしょ?おっちゃんが言ってたヤバい邪龍はまだ姿を見せてこないし。リゼヴィムも出張ってこない。これじゃジリ貧になりかねない。どこかで本丸を叩かないとだ。

 

とはいえ…

 

「つ、疲れたぁぁぁ…」

 

「そこらじゅうの邪龍を叩いた後に巨大化したのと一戦だからな。疲労も溜まる。…大丈夫か?」

 

「うん~、このまま甘やかしてくれていいんだよ!」

 

「仕方ないな。」

 

基地の端でクタクタな自分を膝に乗せたヴァーリが頭を撫でる。

おー、これは…心地いいなぁ…これが人をダメにするってやつかぁ。

ふにゃりとなっていくのを自覚しながら撫でられていく。

 

「結婚しよう(たるみすぎるなよ、お前が崩れたら俺だけじゃない、周りも悲しむ。)」

 

「はぇぇ!?」

 

「おっと、心の声が…」

 

「そういうのはもっとしまい込もう!?ねぷ子さんもビックリだよ!」

 

「まあそう言うな。いつ言えなくなるか分かったもんじゃない。」

 

「もーやめてよねそういう話。皆無事に終わる!それしか認めないんだから!」

 

縁起でもない事を言わないで欲しいよね。ただでさえ、自分もそう思ってしまう時があるんだから。邪龍の合体した姿を見て、もし間に合わなかったらどうしよう、皆やられたらどうしようって考えが過った事は…言わないでおこう。

こういう時、重い。色々と背負っている…そんな気がして、自分に不釣り合いな信頼だって思ってしまう時がある。そんなことはないって分かってるんだけど…やっぱり、ネプテューヌで在りきれない自分に辟易とする。きっとネプテューヌなら、私なら、もっと上手く動き回ってたかもしれない。

 

嫌だなぁ、ゆっくり出来るとマイナス思考で嫌だなぁ。

そっと、体重を預けて、目を閉じる。

疲れているんだと思って、考えを放棄する。考え続ける事はあるけど、今考えても暗くなりそうだから、放棄する。

リゼヴィムの掌の上…とは思わない。被害はずっと抑えられているし、何なら言葉通り冥界にしか戦力は来てないみたい。

あれより強い邪龍がいる筈なのに、本当に最初は軽かった。

いやまあ、軽くないけどね?

 

「ネプテューヌ。」

 

「なーにー?癒されてるねぷ子さんに何か用?」

 

「用も何も俺の膝を使っておいて良く言う…ネプテューヌ、次は間違いなく来るぞ。どう編成する?」

 

「…今回で分かったことって、何個かあるんだよね。」

 

「やはり、龍だからこそアスカロンのような特効のある武器は刺さるな。」

 

「そうそう。だから、おっちゃんが懸念している三体の邪龍に対抗して、こっちもそれぞれに特効武器をぶつけよう!って話。」

 

いーすんが前に教えてくれた。この世界は概念っていうのが強い世界なんだって。それは当たり前のように見えるけど、逆転するみたいな状況は余程がないとあり得ない。

例えるなら二倍じゃなく、百倍。サヨナラホームランってところかな?龍であるなら龍殺しは必ず効く。効かない事は、龍を捨てること以外あり得ない。

けど、邪龍が、リゼヴィムがそれを考慮してないとは思えない…何かあるのかもしれないから、戦力に偏りは入れちゃ駄目だよね。

 

「妥当な判断だ。兵藤一誠のアスカロン、頼光のサマエルの毒、ジークのグラムか。パンドラの鏡写しを使えば増やせるが…」

 

「それは難しいかな。パンドラが先にダウンしちゃうし…何より、あの子にはもう任せてること多いし。」

 

「そういえば何をしているか知らないな。」

 

ああ、そういえば言ってなかった!こういう報連相を怠ると負けに繋がっちゃうから言っておかないと…ヴァーリ以外にも伝えておかないと。

 

「パンドラは道を作ってくれてるんだ。鏡を経由すれば何処にでも行ける神器…だからこそ、後方に徹するんだって。」

 

「道、か。確かに万が一の脱出経路は必須だろうな。」

 

パンドラはもう頑張りすぎてるから…あんまり無理はさせられない。自分達の面倒は自分達で見ないとね。

まあそれに元ボスキャラな皆もいるし平気平気!ボスキャラは仲間になると弱体化する法則は今のところ働いてないしね!

自分も負けてられませんなぁ!

 

「まあ他にもあるんだけど…確証はないし、黙っておこうという探偵ムーブ!」

 

「全滅したら知らないからな。」

 

「で、でも確証ないし…無いしー…」

 

変な情報で混乱を招きたくないのは誰だって同じだよね?おっちゃんもそうだし…何なら曹操は理解してくれる筈!

 

「だよね曹操!」

 

「曹操なら他の連中の様子を見に行ったぞ。」

 

「哀れねぷ子さんをフォローする存在はいなかった。

テッテレー、ネプテューヌ の 強気 が2減った。」

 

「俺が肯定してやる。これで減らずに済むか?」

 

「強気が10上がった~!」

 

「それで、話す気には?」

 

「うーん…ごめん!まだちょっと考えさせて。おっちゃんとかと共有したいし…」

 

「そうか。」

 

ヴァーリはそれだけ言って、これ以上追求をしてこなかった。ありがたやありがたや…自分には勿体無い彼氏だね。

でも、それはそれとして皆疲れてる。

宣言の時と違ってリゼヴィムがいつ仕掛けてくるか分からないし、油断は出来ない。しばらく帰れないかも、と思うと気が滅入っちゃうな。

 

でも邪龍を倒して、リゼヴィムを倒せたら…少しは楽になるよね。

 

「でも、不思議だよね…今差し向けたら割と辛いのにそれをしないなんてさ。」

 

「楽しんでいる…のかもしれないな。あいつの事だ、どうせそんなところだろう。」

 

そうかな?と思う自分と違うよと思う自分が半々いて、でも確証もないから頷くだけにしておく。

休めるのなら休むべきだ。冥界に差し向けられる分にはこちらで対処できる…けど、もし次人間界の方に進行していたら阻止出来るかな?

何処かで煮え湯を飲まされる…そんな予感がする。リゼヴィムは何を考えてるか分からない。卑怯な行為をしたと思えば、誠実な対応をしてくる。自分、というものが無いように思えるくらいには。

 

ヴァーリの膝の上に座りながら、思考に耽っていると駆ける音が聞こえる。

こっちに向かってきている?

 

「お姉ちゃん!」

 

「ネプギア?それにリアスちゃん達…と、誰?」

 

大慌てでネプギア達が戻ってきたと思えば白髪のイケメンを連れてきた!?も、もしかして…

思い至った自分は立ち上がってズビシと人差し指を向けた。

 

「お姉ちゃんは認めませんよ!」

 

「いや違うから、そういうんじゃないわネプテューヌ。」

 

「はぁ…この方はディハウザー・ベリアル。レーティングゲームのトッププレイヤーよ。」

 

「初めまして、ネプテューヌさん。紹介に預かったディハウザーです。お疲れのところ、申し訳無い。」

 

「え、あぁいやこちらこそ…友達がお世話になりました!」

 

「いえいえ、こちらは助けて貰った方ですので…」

 

(あの、リアスさん。お姉ちゃんがあんなに丁寧に対応してるの初めて見ました…)

 

(奇遇ね。きっと大人のオーラっていうのに当てられたのね…)

 

(幼馴染みの私は知ってたけどねー、ふふーん!)

 

(イリナ、そんなことでマウント取っても仕方ないと思うのだけど…)

 

何やらこそこそ話をしている三人は放っておいて、目の前のディハウザーさんはネプギア達に助けられたらしいね。

でもレーティングゲームのトッププレイヤーなのにそう簡単にやられるのかな…?

 

「ネプテューヌ、彼はリゼヴィムに勧誘されるところだったのよ。」

 

「え、リゼヴィムに!?」

 

「どういう事だ、グレモリー。彼があいつの側につくとは思えないんだが。」

 

「いや…そうでもないよ。彼女達が先に来ていなかったら、きっと彼の側に着いていたかもしれない。」

 

神妙な顔でそう言ったディハウザーさんはとても冗談のように感じなかった。きっと、それだけの甘言だったに違いないね。

リアスちゃんからしっかりと事の顛末を聞いた自分とヴァーリは二人して考える。

クレーリアさんと八重樫さんの恋愛の結末、ディハウザーさんの家族への愛情、リゼヴィムの誘い、フリードの変貌…特に気になるのはフリードの使った謎の力。

女神が忌避する、ってことは遂に自分達の特効が出来た?

 

いや、待った。

遂にじゃない…何故なら自分はそれを嫌という程実感している筈だから。

 

「フリードの力って、もしかしたら私のシェアを遮断したのと同じ力なんじゃないかな。」

 

「…奇遇ね、私も説明してて思ったわ。カオスの力とはまた違う…けれど同じ負に属する力ね。」

 

「ネプテューヌ、遮断された時ってカオスの力も使えなかったのよね?」

 

「うん。説明したから知ってるとは思うけど、私のカオス化はシェアを通じての変身だから…一応、試しにカオスの力単体でやろうとしたんだけど無理だった。」

 

「お姉ちゃんのそれより、強いってことなんでしょうか…」

 

「…ふむ、となると、あの力はネプテューヌさんのカオスの力…だったかな?それよりも上位の力ということになる。

言ってしまえば、混沌よりも純粋な負か。」

 

「分かりやすく、マイナスエネルギーって名付けよう!これは皆に共有しないとね!ありがとう、リアスちゃん、イリナちゃん、ネプギア!それと…無事でよかったよ、ディハウザーさん!今はゆっくり休んで!」

 

自分はそう話を終わらせて、皆に休むように言った。

おっちゃんやいーすん…だけじゃないか。本当に皆に共有して、対処法を練らないと。立ち上がって、いーすん達の方へと駆けていく。

次から次へと新しい問題!まるでテストみたいだぁ…主人公サイドが強くなると敵サイドも強化される現象って奴だね…分かるってばよ!

 

ゆっくり休みたいもんだよね~!

 

おっちゃんといーすん、それにパラケことパラケルススもいるからそこに突撃!

 

「たのも~!」

 

「どうしたねぷ子、お前休むっつってたよな?」

 

「しっかりとした休養を、ネプテューヌさん。」

 

「そ、そうです女神様。戦ってお疲れでしょう?」

 

「いやそれがそうもいかないんだな、これが!ネプギア達が戻ってきて、色々教えてくれたから共有の時間だよ!」 

 

「共有だぁ?また面倒が増えたか?」

 

「まあそういうこと。」

 

リゼヴィムの事やディハウザーさんの事、加えてフリードが得たマイナスエネルギーについて三人に共有した。

おっちゃんは顎に手をやって考え始め、いーすんは検索しているのかじっとしてる。パラケは…ブツブツと独り言を始めた。これが頭脳派集団…!

 

「マイナスエネルギー…シェアのように信仰に近い高純度の力?だとすると魔力等での対抗は難しいし仮にシェア同様の多様性がある場合は何が起きてもおかしくない。加えて聞く限りだと女神に対する特効のような物があって女神様達をぶつけるのは得策じゃないとなるとぶつけるべきは─」

 

「おーい、おーい?」

 

「しかし検証も済んでいない状況でぶつけたところで返り討ちに遭う可能性は極めて高い。数的有利の状況下で撤退を選んだということはそれだけの力があったか未知ゆえの撤退…」

 

「おーい!」

 

「パラケルスス、呼ばれてんぞ。」

 

「─はい!?も、申し訳ありません女神様!女神様を無視するなんて罪深い事を…つ、償いなら何でも致します!」

 

「いや何もしないでいいよ…?えっと、三人とも何か分かることない?」

 

涙目にすらなってるパラケに自分は何もしないと落ち着かせる。おっちゃんは溜め息をついていて、苦労が伺える。

パラケって自分を慕ってくれるけどここまで来ると最早信者だよ…あれ、となるとペルセウスもそうだよね?ううん、どうしたものか。

取り敢えず今は三人の見解を聞こっかな。

 

「今は何も結論は出せねぇな。ちとリアスの所に行ってくるぜ、幾つか訊かねえとな。」

 

「私も行きます。女神様、どうかご自愛くださいませ。」

 

「あ、はーい。いーすんはどう?」

 

「…システムのデータベースにもありませんね。新しく発生した物でしょうか…しかし、不自然な空白がありました。」

 

「空白…?それってゲームで決まる世界で頑張る兄妹の話?」

 

「いえ別に異世界モノの話はしてませんね(-_-;)

まあ、要するに…何かを秘匿しようとしていた可能性が高いです。残すことすら恐れた何かを…」

 

さらっと流された上にまたまた新事実が出てきて自分は頭がどうにかなりそうだよ。システムってことは神様の記録だよね?だとすると…うん、確かにおかしいかも。

空白って所が特にね。

 

「いーすんにも分からないかぁ…」

 

「お役に立てず、申し訳ありません。」

 

「ううん、そんなことないよ!頑張ってくれてありがとういーすん。おっちゃん達が何か気付くかもしれないから、それに来たいかな!」

 

「そうですね…取り敢えず、休みを取るべきかと(;・ω・)」

 

「はーい…分かったよ。じゃあちゃんと休むとするね。心配かけ続けるのも良くないもんね。じゃあ、お疲れサマンサー!」

 

「はい、お疲れさまでした。」

 

休んでる間に進展があればいいなぁ。

とにもかくにも、だよね…フリードがリゼヴィムの手下になってるなら、いずれ全部分かる。そんな気がしながら戻って、束の間の休息を堪能する。



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