ヤク中三馬鹿が勇者って本当ですか?? (ヤク中三馬鹿)
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ヤク中、敵を消し炭にする。
はい
突然だが、我々の御国に結界を貼り付け護ってくれている神樹様は、一体何が大好きなのか知っているだろうか。
まず神樹様って何?っていう的はずれな事を聞かないでくれ、そもそも質問をしているのはコチラだしね。
さぁ、なんだと思うかな。言い換えてみれば神樹様にとって何がお気に入りだろうか。ニュアンス的にはどちらも遠からずも、という感じではあるが。
さて、正解は。
可愛い女の子だ!!!
言い回しをもっともらしい感じにして、さらに堅苦しくかつ少しばかり包んで言わせてもらえば、『純真無垢な少女』となる。なるほど神樹様とやらはロリコンのクソ野郎なのか、と思うかもしれないがそれはちょっと違う。というより残念ながら説明は難しいのだが。
神樹様がそれらを好むその理由としては、分からない。ただその純新無垢な少女でしか世界を救う事が出来ないと神樹様自体は知っているから、それしか無いと分かっているから年端もいかない少女達を『勇者』という護国の象徴として仕立て上げた。
さて。
その声を神託として聞き受けて、その通りに物事を実行に移している組織として『大赦』というものがある。かの組織は現代で言うところの行政府のようなモノで、当然国家としての方針を決める場所である。それと同時に勇者をサポートであったり、先程も言った通り神樹様の代わりに神託を実行する組織。大まかに言ってしまえば基本的には神の庇護の元、人類を生存に導く事を目的とした組織である。
がしかし、大赦も一枚岩では無い。ただただ神樹様の言うことに頷いて、はいそうですかと言う事を聞いているだけではなく、神の力を受け入れながらも人間としての尊厳を保ちつつ、いずれは大いなる存在たる神からの脱却──つまりは以前の、西暦の時代のように神に頼らずに生きていく事を目的に動く一派もあった。
いずれは人間の力で神の介入を跳ね除けて、本来の青き清浄なる世界を齎す為──大赦の内に怪しげな影が蠢き始める。
具体的な事と言えば潜在的な勇者の力を持った『男』を生み出す事だった。神樹様が『純真無垢な少女』しか選ばない事は当然知っている。しかし過去、歴史を作り上げて来たのはほとんどが男で、身体的な面でも男の方が女よりも優れているのは明白。
となれば、『女の勇者よりも男の勇者が強いはず』というのは自明の理であろう。しかしだ、性別は変えることが出来たとしても『純真無垢』という部分がどうにもならなかった事は、これまでの成果から既に回答を得ている。
有志の少年たちを集め、法に触れない範囲を維持しつつ薬物による強化や後天的に女性にする為のホルモン注射、果ては男性器の切除まで行って男性勇者の作成に努めるも、悲しい事に神樹様はこれを拒否。流石の神樹様もこんなものを純真無垢な女の子です!キャピ!みたいな感じにはどうしても見れなかったらしい。
──よくよく考えれば、おクスリキメたり男の象徴を切り落として何が純真無垢、何が男性勇者だって感じはするが……。
しかし度重なる実験と、その結果として今回完成品となる3人を生み出す事が出来た。
なるほど確かに女性勇者よりも男性勇者の方が能力値も高ければ、メンタル的な強さも女性を超えるものがある。
晴れて実験は成功だ!という訳でさっそく量産体制を整え……、とは残念ながら進まなかった。
暗部の密行が表沙汰となり計画は凍結、これまでの実験データから何やらまでは全て焼却処分。幸い三人の素体は産まれているのでやりたい事はやり尽くした感の暗部。表の大赦としてもさすがに野放しには出来ず、なくなく勇者として扱うしか無かった。
──表の大赦も男性勇者の力に興味が無かった、とは言ってはいないが。
名前の移り変わりがあったものの、大赦という組織が形成されてから約3世紀が経つ頃──神世紀286年に男性勇者の誕生という、ようやくの悲願が叶ったのだった。
時は流れて、神世紀298年。
それぞれ成長を遂げた三人の男性勇者の初陣──というより本当に有用性があるのか未だに疑心が残る大赦の意向により、実戦テストが行われる事になった。
物語はここから動き始める。
向かってくる水の巨塊を二人の少女は慣れない動きながらも回避すれば、それは樹海の大地に直撃し弾け散った。樹海が傷付けばそれだけ現実の世界にも被害が及んでしまう……とは聞いてはいるが、まずは勇者たる自分たちの身体が大事なのは仕方の無い事だ。
割り切れないと、次にやられてしまうのは自分達なのだから。
左右に別れて跳躍する赤と紫の装備を纏った少女。その後方に控えて矢を番える青の少女。
──鷲尾須美、乃木園子、三ノ輪銀。世界は、この小さな三人の少女にその命運を託しているのだ。
その三人を悠然と迎え撃つ異形の怪物。
──神樹へたったワンパン入れるだけでこの世界を滅ぼせる、どうしようもなく分が悪い戦い。
だかと言って易々と滅ぼされてたまるもんか、銀は怪物──バーテックスの上に飛び上がり両手に持った剣斧を叩き入れようとする。
だが次の瞬間には、銀はさらに高空で水の玉に呑み込まれていた。
「──!ミノさんっ!?」
「三ノ輪さん!?大丈夫!?」
二人の心配する声が上がるが、銀は自分を覆う水玉を飲み干すことで難を逃れる。
「うへぇ……まずぅ……」
「三ノ輪さん!!すぐに吐き出しなさい!ペって!!」
「そうだよミノさん〜!危ないよ〜!?」
「や、どこもおかしくないし大丈夫だって」
とりあえず銀が大丈夫そうで安心した二人ではあるが、その間にも怪物バーテックスは着々と神樹は向かって前身を続けている。
私達の世界を滅ぼされてたまるものか、三人の意思は同じ場所へと向いている。それならば、後は改めて作戦を立て実行するだけだ。
一分ほど話し合った結果、三人の中で一番瞬間火力が高い銀がフィニッシャーとなり、その前を走るのは園子。そして背中を須美が引き受け、牽制射撃を加える算段になった。
バーテックスから見て神樹に到達するまでまだまだ距離がある、焦ることは無い。園子、銀、須美の順番でバーテックスへと距離を詰め──
「オラァァァッ!!」
甲高い掛け声とこれまでに聞いたことも無いような音と共に。
あの須美の矢でも効果的なダメージにはならず、園子の槍も届かず、銀に至っては接近すらできなかったあのバーテックスが。
次の瞬間には緑と赤の光軸にその身体を穿かれていた。
あーキミ達……現実世界に影響があっては困るので、なるべく樹海だけは壊してはいけません。もちろん、分かっていますね?
それと、怪物がどのような形をしているのか、ワタシ達には分かりません……。もしかしたら人間の形をしているかも……、なんてね。
妙に耳に残る変にたるい声のお目付け役はそう言い残していた。
彼ら三人にとって正直、これからもしかしたら死ぬかも知れないという状況なのにそんな事気を付けられるか、という面持ちではあったが。
──少なくとも、樹海に入るまでは全員がなるべく被害を出さないように立ち回ろう、という考えも少しはあったのだが。
「オラァァァッ!!」
織我の放ったエネルギーの奔流が正面に迫り来る怪物の身体を穿いた。
不思議な程に何の手応えも無く、怪物の肉体のようなものは被弾した部位がドロドロに溶けてしまっている。
為す術もなく撃ち抜かれたヤツを見た三人の考えは見事に一致。
「なぁ、コイツさぁ……」
「……うん」
「うひひひっ……!!」
『コイツ弱ェッ!!!』
「ヒャハハハ!!舎二!黒鳥!お前らは前!!」
「フンっ!」
「ですね!」
織我の武装はバズーカから肩にマウントしたキャノン砲など銃火器を多数携行していて、実弾もあれば現実には無いようなエネルギーの武器まで取り揃えている大盤振る舞い。
黒鳥の装備は手持ちの機関砲と時代錯誤も甚だしい、ワイヤーで繋がれたハンマー。さらに背中には一対の翼を保有しており、本来勇者でも飛ぶことは出来ない空中飛行が可能になっている。また飛行している場合のみ、織我のモノと同じようなエネルギー砲が姿を表す。
舎二には特徴的な兵装として両肩にある装備を展開することで、飛んでくる攻撃の軌道を変えることが出来るという反則的なモノがある。しかしそれ以外は、これまた時代錯誤な鎌とバックパックに装備さるた二連レール砲に加えエネルギー砲を持ち合わせている。
女性の勇者は基本武装は一つしか持たないのに対して、男性勇者は複数を持ち合わせている。これによりあらゆる状況に対応し易くなるだろう、が。
射撃地点を変えずにバカスカ肩のキャノン砲とバズーカを撃ちまくる織我。
翼を展開して機首に装備されたエネルギー砲と機関砲で空から攻める黒鳥。
地上を這うように進みレール砲で牽制しつつ鎌で怪物の身体を傷だらけにしていく舎二。
三人の猛攻にとうとう耐えきれなくなった怪物の身体は突如として爆散、光の粒子となって散り散りに消えてゆく。
「もう終わりかよ……」
「つまんない」
「ま、いいんじゃないですか?」
三者三様の反応を零すも、これで今回の御役目は完了。
じきに元の世界へ帰ることになるだろうが、そんな時だった。
「あ、貴方達は……一体何者ですか!?」
大きな弓を持った青い服を着た女子が声を荒らげて聞いてくる。聞くというより、吐かせるという感じではあるが。
そしてその後ろには赤色と紫色が同じように困惑した表情でこちらを見ている。
「おい織我……」
「……なんだよ黒鳥」
ここで三人にはひとつの思考が浮かび上がる。お目付け役は確かこう言っていた筈だ。
「怪物がどんな形をしているのか分からない、人間の形をしているかもでて……」
「あー……、コイツらも?」
静かに舎二は鎌を正面に構える。
「かもしれねぇ……なぁ!!」
もしかしたら仲間、なんて思考は頭の中には完璧に無く。織我は女性勇者三人に対して、ノータイムでバズーカを撃ち放った。
初投稿でした。
気が向いたら更新します
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三勇者、困惑する
つまり何が言いたいかというと、遅れてごめんなさい。
そういうことです
女性勇者が三人集まってようやくバーテックスと上手いことやり合える、そう思っていた。実際大赦の方もそれを前提とした立ち回りを勇者達に求めていて、初陣の最中ではあったがそれぞれがそれぞれの特徴を理解し、ようやく勝ちを獲りにいける……。
そのハズだった。
そのバーテックスが自分たちとは違う、明らかに違った三人の勇者によって半ば嬲り殺されている。武器の種類やら纏っている装備の数々、そんな事すら気にならなくなってしまう程の違和がそこにはあったのだ。
大赦は──神樹様は『純新無垢な少女』でなければ勇者として相応しくないと、そういうことを神託として下した。
しかし事実として、今三人の勇者の前では有り得ない事が起こっている。神樹様が虚偽の神託を下す筈など万に一つの可能性も無いのだから。
──女性勇者しか存在しない、その筈なのに。
それなら……、たとえ一人であったとしてもバーテックスを圧倒できるだろう力を持った
両肩にキャノン砲のようなものをマウントした緑の少年が、手に持ったバズーカを躊躇無く撃ち放つ。
三人の勇者達はなぜ攻撃されなければならないのか、全く分からないけどとりあえず避けないと不味い、という事はしっかりと認識出来ているらしい。
三人はそれぞれ散らばるように距離を取って、
「おいお前ら! 一体何者なんだよ!?」
先程須美が投げつけた疑問とほぼ変わらないモノを、銀が再び投げつけた。
「それはこっちのセリフだよ」
「なにぃっ、くぅっ!?」
砲撃に気を取られた銀の目の前に、両肩の盾が特徴的な緑髪の少年が鎌を持って肉薄する。
──ガギィッ!
銀の双剣斧と少年の鎌、互いの得物がぶつかり合って、ガリガリと火花を散らし。そのまま三回、四回……と剣戟を結ぶ。
「ミノさんっ!! こっち──!!」
競り合いが十回を数えた頃に、後方から園子の声が掛かる。チラと見てみれば園子は片手で槍を持って手招きしていて、須美もその近くでチャージが終わり、後は放つだけになっている弓を構えている。きっと、銀の離脱を見計らって撃つつもりだろう。
「園子ッ!? ──分かった……よぉッ!!」
「っぐぅ……!」
打ち合いが十回を数えた所で背後から園子の声が掛かる。相手もなかなかの手練で余裕などほとんど無いが、チラと後ろを見てみれば槍の穂先を円盾のように展開した槍を片手に手招きをする園子。
それとフルチャージの済んだ弓をこちらに向ける須美の姿があった。どうやら離脱の援護を受け持ってくれるらしい。
ならさっさと合流しなきゃな! と、銀は双剣斧での追い込みを掛ける。長柄と双剣では距離による有利不利が当然あるが、超至近距離なら──文字通り懐に潜り込んでしまえば、長柄を振るうスペースなど最早どこにもない事を銀は知っている。
緑髪の少年も相当強いのだ、双剣の手数の多さにも屈せず攻撃を受け流し続けるが──体制が崩れた、そんな所に──
「今だっ、須美ィ!」
「ええぃっ……!」
最後に銀は渾身の蹴りを浴びせて、その勢いのまま合流を図る。体制の崩れた少年はまともに食らってしまい吹っ飛んでいく──所に。
光速に到達する勢いまで、限界まで引き絞られた閃光が迸る。
吹き飛ばされながらも、咄嗟に少年は両肩のシールドを構え──
「──っへ……」
渾身の力を込めて放たれた一撃は目標を穿つことなく、空高く舞い上がっていく。そのままエネルギーは自壊、それに伴う強烈な光と衝撃波が巻き起こる。
奇しくもその直後、怪物が倒れた事による樹海化の解除──すなわち、鎮花の儀が起こり花びらが舞い落ちていった。
「……あの人達、一体何者だったのでしょうか」
「うーん、アイツらがバーテックスを倒しちまったのは、まだ良かったけどなぁー」
「今度は私達〜? 力も強かったし、もうめちゃくちゃだよ〜……」
(大赦が隠していた勇者……? それはおかしいよね〜、だって神樹様が女の子しか勇者には成れないっていう神託だってあったんだし〜……)
正体不明の敵? が、園子達勇者の敵であるバーテックスを撃退してしまったと思ったら。
そのまま今度は勇者にも攻撃を仕掛けてきて……。ちょうどよく鎮花の儀で元の世界に帰って来れて……。
園子達勇者三人はイネスの中に出店されているジェラートを味わいながら、今日起こったことをもう一度振り返っていた。が、駄目……、なにも分からない。
そもそも男の勇者は居ないはず、だけどそれならバーテックスと敵対する理由が無い。
バーテックスを倒した、という事は奴らとも敵対している。なのに、大赦印の勇者とも交戦を始めた……。
考えれば考えるだけ謎が深まってしまい、同時にジェラートを勢いよく掻き込んでしまった三人は、文字通り頭が冷えてしまった。
「キミ達ィ……、やってしまいましたねぇ……」
「どういうことだよ村田」
「確かにボク達は、あのバーテックスとかいうバケモノを殺っただけですよ?」
「女の子の形した三体は逃がしちゃったけど」
「それがいけないって言ってんですよ」
場面は変わるがこちらもイネス。なんだかんだコイツらも組織なので、反省会……のような物を行っていた。村田としては釘を刺す意味でも、あの女性勇者達の事は伝えておかなければならないのだ。
「キミ達が戦って
「おい舎二! てめぇ僕が育てた肉取ってんじゃねぇよ!!」
「アァ? 知らねーよそんなのチンタラしてんのがいけないんじゃん」
「飯くらい静かに食えねぇのかおめェらは……」
村田は丁寧に説明していたが、肉のひとつでギャンギャン騒ぐ彼らを見て馬鹿馬鹿しくなってしまい、自分もそそくさと織我の育てた肉をかっぱらっていった。
「てめぇ村田!! 何俺の肉持ってってやがる!! 返せコラァ!」
「食事くらい静かに出来ないんですか? まったく……」
まぁ少なくともこんな焼肉の場でするような話でもないか、村田はそう締めくくる。
ただ今後の彼らの事でもう一つだけ話をしておかないとならないので、村田は肉と米を飲み込んでからもう一度口を開いた。
「そうそう、明日からの予定ですが。キミ達には明日から神樹館小学校にに通ってもらいます」
「はぁ? なんで?」
舎二のあからさまに嫌そうで気だるげな問い。それもそのはず、彼らには既に小学校レベルはおろか、中学校で習うほとんどの学問は習っているのだ。今更通う理由も無いと思うのも普通の事だろう。
「いやね、その学校にさっきの三人の女性勇者が通っているんですよ。キミ達には是非とも
「バカ言ってんじゃねぇよ、今日殺りあっちまったんだぜ?」
「そうだよ! 今更仲良くしろって言ったってムリだね!」
強く反抗する三人ではあるが、既に編入手続きは済んでいるのでそれこそ今更である。
「まぁまぁ、もう決まっている事なんですよ。──そこで、話しておきます。そしてキミ達が編入する第六学年にはクラスが三つありまして、そこに一人ずつ入ってもらう事になるんですよ。彼女達勇者は一つのクラスに纏まっている。──言いたい事、分かりますね?」
「おいまさか……」
「ええ、そのまさかです。一人は女の子に囲まれて楽しい学校生活……。羨ましいですねぇ……」
──ここに血を血で洗う、クジ引き選手権が開催してしまったのだった。
結果は……、お楽しみにね。
次がいつになるかは全く分かりません。基本的に気分で動いておりますので。
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