神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者) (くろから)
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設定集(随時更新予定)

せってい書いてみた、随時更新します


人物紹介

南雲ハジメ

原作主人公、今作では魔王にならなかったため、ゆくゆくはパーティーの良心となっていく

風間未来

オリキャラその1にして前世軍人の転生者、彼の世界はゆくゆくは作者の別の小説で描かれる予定である、光輝とは親友で、彼らのツーマンセルは雫の父親に食い下がるほどの連携を見せる、優花に弁当を作ってもらうなどリア充全開だが当人は全く好意に気付いていない、ふざけんなお前。光輝の性格を無意識に矯正しているある意味すごい人。元ネタは「ゼノブレイド」よりシュルク、作者は誰かに「おすすめのRPG」を聞かれると必ずRPGー7か、ゼノブレイドをあげるくらいには好き、ザンザ許すまじ

壬無月刀覇

オリキャラその2、現在植物状態の不憫な人、ブラック恵理を知ってた人、詳しくは恵理の項目で。ただし彼が目覚めた暁にはその類稀なる覚悟を持ってエヒト討伐に力を貸すだろう

エヒト

みなさんご存知偽りの神、他の世界に干渉して光輝たちを召喚したため

光輝たちの世界の神の不況を買い、未来と刀覇に殺害依頼を出された

神武天皇

刀覇と未来にエヒト殺害の依頼を出した神、そのまま送り込まなかった理由としては、くろからの描く世界全般(神が存在しない世界などは除く)の神は相互不可侵が古代法としてあるためである、他の世界から生物を自分の世界に持ってくることもご法度だが、今回は特別なある事件がとある世界で起こったため、その古代法が曖昧になっている

園部優花

ウェステリアの看板娘、未来は親が居なく、一人暮らしであり、(学費は誰かが払い続けている)金がないためウェステリアで働いている、よくお客に未来との関係を茶かされては顔を真っ赤にして否定している、実際普通に未来に好意を持っているが、恥ずかしくて言い出せない、弁当を作っていく時点で周りにはバレバレだが、可愛いので誰も指摘しない

中村恵理

今作では光輝に助けられたところは変わらずだが、小学校時代に不良に絡まれた時刀覇に助けられてから、刀覇と親しくなる、刀覇との関係は毒親に耐えられなくなった時の避難所、といったところ、その度に愚痴を刀覇にぶちまけていた、寝食を共にすることもままあるので(流石に同衾はしない)、申し訳なく思っていたので学校の弁当は勝手に作っていくようになった、所謂通い妻状態だがクラスメートはそのことを全く知らない、トウラムソルジャーに襲われた時に刀覇への恋心を自覚、植物状態になった刀覇を目覚めさせるために迷宮探索への参加を申し出るなど心の拠り所を持ったためか、原作よりもアグレッシブである、

天之川光輝

原作から全然変わった人、多分性格矯正が早かった場合こんな感じだろうとゆう作者の妄想、ただし若くて未熟な面が多いため、ベヒモス戦で戦犯をやらかした、正義感が強いことは変わってない結局現在は原作に近いのかもしれない。未来とは祖父が死去した時に出会う、その後親のいない未来と兄弟のように過ごした

原作と解釈が変わっている天職など

勇者

多分原作と1番遠い職業、今作では英雄とゆう職業があるために、原作よりは弱い、作者の認識的に勇者とは?というところが多分原作者と異なるためである。

性能は防御よりで、連携を強化するようなものを多く持つ、ステータスは最初はオール100にしておいたけど、防御寄りに成長していく予定、それでも味方を守る、とゆうことにおいても、魔法においても、剣術においても専門職を上回ることはないので、それで思い悩んでもらいたい。

 

モナドについて

ゼノブレイドとは少し違うが機能に関しては似通っている、魔力に干渉する神剣、

モナドアーツ

ゼノブレイドまんまだけど、オリジナルもあるためここにあげておく

モナド『斬』

所謂必殺技、例えるならΖガンダムの極長ビームサーベル

モナド『盾』

所謂バリア、一回だけ攻撃を完全に防ぐことができるが、強力すぎると貫通する

モナド『鎧』

盾とは違って魔法ダメージを塞がず軽減する、ドラクエのマジックバリア

モナド『魔』

所謂攻撃強化、ドラクエのバイキルト

 

英雄

攻撃に寄った職業、単独でも破格の戦闘力を発揮する技能を多く持つ、近接なら最強、



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異世界転生

外伝になります、本編との関係はあまりありませんがね


第八次世界大戦『火の7日間』その戦いの中彼らは死んだ筈だった、尋常ではない大きさの爆発に巻き込まれ時空転送装置が故障し世界の狭間に取り残された、

 

 

 

はずだった

そこには白い世界が広がっていた

真っ白い地面に自分の体躯が転がっているのが分かる

「おい起きてるか?」

隣には馴染みの顔があった

「どこだここ」

「ここはワシの世界じゃよ」

すると虚空から白い髭を蓄えた好々爺が現れた

「えっ神?」

驚くのも無理はない、彼らの世界は神を巻き込み破滅に向かったのだから

「死んだはずじゃ・・・」

その問いに老人ら微笑みながら答える

「違う世界の神じゃ、お前らを転生させようと思うてな」

少年が疑問を投げかける

「何故だ?俺たちは何億って人を殺してきた、そんな俺たちをなんで転生させようと思うんだ?」

その問いに、神は流れるように回答した

「それはな、君たちが強いからじゃ、聞いたことはないか?一人殺せば殺人鬼だが万人殺せば英雄じゃ、お前さんたちのようになれば欲しがるものもおるわ」

そして顔を少し曇らせ、声の調子を落として言う

「それに目に余る行いのものがあるのでな、止めて欲しいのじゃよ、

少し驚いた顔でまた少年の口から素朴な感想がこぼれる

「神にもクズっていたんだな」

「恥ずかしいことじゃが、な、それはともかく転生には特典がつく、

お前さんたちは何を望む?壬無月 刃、風間 未来」

肩をすくめてため息を吐くと、老人は二人の少年の望みを尋ねる

未来はこう答えた

「じゃあ刺青を残したまま記憶を消して、才覚はそのままにしてくれ」

刃もまた、同じ考えで答える

「俺も同じく、あんな記憶忘れたいんだよ」

少し意外そうな顔をして老人が問う

「ならば何故刺青を残すのじゃ?」

二人は遠くを見ながら答える

「消したら大佐に申し訳がたたない」

「俺たちの戦った証であり、抗った証だから」

「そうか・・・最初の設定と記憶はこちらで弄らせてもらうぞ、」

老人は納得したようで、そのまま話を進める、神の仕事など毛ほども知らない彼らは口を揃えて

「「任せる」」

と答えた

老人は静かに頷くと持っていた杖で地面をトン、叩いた

すると二人の足元に魔法陣が現れ、光に溶けるように二人ごと消えた

「さて、エヒトのやつはどうなるのかの、全く他の世界に自分の娯楽のために干渉するとは、予想外じゃったわ、とんでもない非礼と今までの罪、償ってもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ありふれた町〜

ひどい雨の日だった、まるで泣いているかのような雨だった、いや、違う、多分泣いていたのは僕の心だったんだろう、お爺さんが死んでしまった、僕のヒーローが死んでしまった、正しい人だったのに殺されてしまった何故だかわからないああ、お爺ちゃん・・・・

 

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

「お爺ちゃんが死んじゃったんだ、正しい人だったのに、なんでだよ・・・・悪人が・・・」

「僕も家族がいないんだ、そうだよな、家族がいなくなるのは、辛いよなぁ、でもさ、世の中悪人も善人もないよ、良いことをするか悪いことをするかだ」

「そっか、僕は、良いことをする側になりたいなぁ・・・・君の名は?

「僕?僕はさ、風間 未来って言うんだ、君は?」

「僕は、天之川 光輝」

 

 

 

 

 

 

「ん・・」

光輝は少し浅い微睡の中から覚醒する

「大丈夫か?光輝」

「ああすまない、未来、昔を思い出してた」

未来は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ありふれた始まり

フハハッ
書きたいことが書ききれてないんだぜ
恵理と刃の関係、未来と優花の関係はどっかに無理やりつっこむかも


〜幻想郷、博麗神社、宴会にて〜

「君らの話もしなよ」

酒が入った赤髪の少年がハジメに話を振る

それに紫髪の長身の少年がそれに乗っかる

「そうだな、なんか未来にも刃にも嫁がいるし、気になるぜ」

光輝がちびちびとビールを飲むハジメに発言を促す

「南雲、ここは僕たちが話すところじゃないのかな?」

少し赤い顔でハジメが言葉を零す

「めんどくさいよー」

白と赤の巫女服を着た少女が重ねて質問する

「あんたたちもそれなりに激動の人生だったんじゃないの?龍牙の仲間だったんだし」

「ごもっとも」

話の槍玉に上がった少年がドヤ顔で答える

「刃と未来と光輝の転生に巻き込まれただけなんだけどね、僕たちは」

二人が少し目を逸らす

「月が綺麗だね」

「そうだな」

「話すよ、でもお君たち話してね・・・。」

〜ありふれたとある街で〜

 

 

 

 

月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 

 

壬無月 刃と風間 未来も例外ではない、二人は朝の課題をこなしながらクラスメートがそろうのを待っていた

「最後に来るのは誰だと思う?俺は清水に二千円」

机から乗り出して賭けにのる刃

「乗った!南雲に千円」

数分後、清水幸利が教室に入ってきた

「よっしゃ!俺の勝ち!」

「ちっ!おら、二千円」

「やったね♪」

その更にあと、南雲ハジメが始業チャイムぎりぎりに登校し、ふらふらと席に着いた。

その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。

女子生徒はもはやこのクラスの高齢となっているので関心を向けはしない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。

 

 

 極力意識しないように自席へ向かうハジメ。しかし、毎度のことながらちょっかいを出してくる者がいる。

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

いったい何が面白いのかゲラゲラと笑う

「お前らほんとに毎日毎日・・・・不快なんだよ、フ・カ・イ」

「お前こそ文句あんのか?壬無月」

「こっちのせりふだぞ、檜山ァ!」

「うっ・・・このくらいにしといてやる」

「キミ、よく南雲君に助け舟出すよね」

刃「いや、後ろでさ?毎日毎日あんなムードになられるとさすがに精神やられてくるし」

恵理「いやまあ、彼女のせいなんだけどね」

香織「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとに歩み寄った。この事態の原因である。

 

 

 名を白崎香織という。学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

 いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。

 

 

 そんな香織はなぜかよくハジメを構うのだ。徹夜のせいで居眠りの多いハジメは不真面目な生徒と思われており(成績は平均を取っている)、生来の面倒見のよさから香織が気に掛けていると思われている。

 

 

 これで、ハジメの授業態度が改善したり、あるいはイケメンなら香織が構うのも許容できるのかもしれないが、生憎、ハジメの容姿は極々平凡であり、〝趣味の合間に人生〟を座右の銘としていることから態度改善も見られない。

男子のハジメに対する認識は「ゲームが上手くていい奴」と言う認識で檜山達以外は平たく言えば悪ふざけ半分である、なので原作と違って放課後ハジメはクラスの誰かと遊ぶこともある(特に清水)、因みに女子に関しては、会話すればただただいい人で優しいので悪く思われてはいない、どちらかと言えば檜山達の方が軽蔑されている、当の檜山達は全く気がついていないが、

 

 

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

 

未来「スワッ、殺気か?」

ハジメの頬が引き攣っらせて挨拶を返す

それに嬉しそうな表情をする香織。

刃、恵理、((いや、なぜそんな表情をする!))

ハジメは、更に突き刺さる檜山からの視線に冷や汗を流した。

刃「なーんで学園一の女神様が南雲にかまうのかねぇ」

恵理「いやわかんないの?キミ、」

刃「へ?」

恵理「・・・・・・そういうとこだよ」

刃「っていうか白崎はこの殺気の視線にきずかないのかね?」

未来「いやー、あいつ鈍いしなぁ、天然だし」

恵理「そういうところも香織の魅力だよね!」

未来「あー、光輝だ」

刃「この流れ何回目だ?」

 

雫「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

 

光輝「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

 

龍太郎「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 

 雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。檜山の「てめぇ、なに勝手に八重樫さんと話してんだ? アァ!?」という言葉より明瞭な視線がグサグサ刺さる。雫も香織に負けないくらい人気が高い。

 

 

未来「(おほっ怖っ)そこまで言うことないだろ、光輝」

光輝(じゃあどうすればいいんだよ!前に「南雲が迷惑してる」って言ったらものすごい目で見られたんだぞ!?)

未来(あー・・・・・ウン、あれはやばかった、後ろになんかみえたし)

優花「毎度思うのだけどその間は何?」

未来が園部優花に耳打ちする

未来「視線で会話してる」

そんなやり取りが交わされる中、われらが女神が特大の爆弾を落とす

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

未来、雫、光輝(((なぜそうなる!)))

 

 ざわっと教室が騒がしくなる。男子達は最早恒例行事となった彼らのやりとりを面白そうに眺め、檜山達四人組は昼休みにハジメを連れて行く場所の検討を始めている。

 

 

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

引き攣った顔で光輝が言う、ここで下手に反論するとスタンドが現れるため反論できない

ハジメは刃と未来に助けを求めるが触らぬ女神に祟りなしといわんばかりに二人は目をそらす、

ハジメ涙目である。

 

 そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、いつものようにハジメが夢の世界に旅立ち、当然のように授業が開始された。

 

 

~~~~~~~

刃「おらっ!起きろ居眠り常習犯!」

ハジメが寝ている間に昼になっていた

恵理「よく寝ててその成績維持できるね・・・」

南雲「割と何とかなるモンだよ」

ハジメは十秒チャージできるゼリー飲料をごそごそと取り出しながら言う

――じゅるるる、きゅぽん!

南雲「壬無月くんは・・・・」

恵理「僕と一緒に食べるんだよねっ!」

刃「いつも別に俺の分まで造ってこなくていいって言ってるだろ」

恵理「いいのいいの~どっちかって言ったらボクの方がお世話になってるんだからさ」

そんな全国の非リアに呪い殺されそうなやり取りを聞いた後、もう一眠りするかと机に突っ伏そうとした。だが、そうはさせまいと我等の女神が、ハジメにとってはある意味悪魔が、ニコニコとハジメの席に寄ってくる。

恵理(あーあー捕まっちゃった、いつもは目だたないとこで寝てるのにね)

刃(どうせ徹夜でもしたんだろ、さて、邪魔しないように俺らはおいとましますかね)

恵理(がんばれ!カオリン!)

香織(恵理ちゃん、刃君ナイス!)「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」

 

 再び不穏な空気が教室を満たし始める中、ハジメは心の裡で悲鳴を上げる。いや、もう本当になしてわっちに構うんですか? と意味不明な方言が思わず飛び出しそうになった。

 

 ハジメは抵抗を試みる。

 

南雲「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

 そう言って、ミイラのように中身を吸い取られたお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。断るのも「何様だ!」と思われそうだが、お昼休憩の間ずっと檜山の殺意の中にいるよりは幾分マシだ。

 

 しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり女神は追撃をかける。

 

香織「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」

 

(もう勘弁して下さい! 気づいて! 周りの空気に気づいて!)

 

 

 刻一刻と増していく圧力に、ハジメが冷や汗を流していると救世主が現れた。状況を見かねた光輝達だ。

光輝「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

未来(うわ、くせぇ)

香織「え?何で光輝君の許しがいるの?」

優花と雫がふきだす

未来(こうかはいまひとつのようだwwwww)

光輝は困ったように笑いながらあれこれ話しているが、結局、ハジメの席に学校一有名な五人組+一人が集まっている事実に変わりはなく視線の圧力は弱まらない。

未来(あーもうこいつ異世界召還とかされないかな?これだけ受難体質なら異世界転生したってなんの不思議も・・・・)

刹那、空気が凍りつく

 

光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れたからだ。その異常事態にいち早く気づいた刃と未来が恵理と優花の手を引っ張り教室を出ようとするが、扉が開かない、それ以外の生徒は金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

 その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

 自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

 

 

 




かけなかったときのための保険でさわっとかいときます、
恵理と刃はよく家で一人である刃の家に恵理が家出して駆け込んでたりする(ただし現時点では恵理は光輝ラブです)
未来と優花は優花の家の店(名前なんでしたっけ?)でよく未来がアルバイトしていて面識がある、といった感じ
7月二日、クラスのハジメに対する認識を変更します、前のままだと、ハジメがクラスに戻ろうとする理由が薄いので、


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異世界転移

ハジメが出せない( ^∀^)


地獄を見ていた

肉片が飛び、血が吹き出し、人が人を喰らう、死闘に次ぐ死闘、負け戦に次ぐ負け戦

刃・未来「「なんだよ・・・これ・・なんだよ!こんな記憶俺は知らねえ!」」

 

 

 

刃・未来「ハアッ!、」

恵理「大丈夫?刃」

優香「どうしたの?未来」

刃「ああ、大丈夫、ちょっと嫌なもんを見ただけだ」

未来「ここどこだ?」

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

 

 背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。

優香「広間・・・かしら?」

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

〜〜〜〜〜〜〜〜

優花「何かのきらびやかな作り・・・・」

未来「晩餐会でもやるとこなんじゃないか?」

恵理「誰も何にも喋らないね・・・」

刃「現実に頭がおっつかないんだろ、それでもパニックを起こさせないのはさすが光輝だな」

光輝「何もしてないけどね俺は・・・」

全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。そう、生メイドである! 地球産の某聖地にいるようなエセメイドや外国にいるデップリしたおばさんメイドではない。正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである!

 

 こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在でクラス男子の大半がメイドさん達を凝視している。もっとも、それを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだが……因みに刃と未来は全く興味を示さない、それどころか警戒してすらいた。

未来(色仕掛けとはまた古風な)

刃(まあ、俺らガキだからなぁ)

その隣では優花が他の女子とはまた違った気持ちでみらいに氷柱(氷と言うにはいささか尖りすぎていた)の視線を送っていた

なおハジメも傍に来て飲み物を給仕してくれたメイドさんを思わず凝視……しそうになってなぜか背筋に悪寒を感じ咄嗟に正面に視線を固定したことをここに書き記しておく

優花「味は素人なんだね」

未来「そりゃそうだ、大方このためだけに呼んだんだろ」

恵理「えっそうなの?」

刃「いやあ、わかりやすくて助かる」

恵理「みんな見事に引っかかってるけど・・・」

 

全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

未来・ハジメ・刃「テンプレだな」

 

 

イシュタルの話を要約するとこうだ

 

まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

 この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

 魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

 今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

 これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

イシュタル「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

刃(狂信者か)

未来(従わないと面倒そうだな)

刃と未来が今後の方針について考えていると突然猛然と抗議する者が現れた

愛子先生だ。

 

愛子「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

 

 〝愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。

 

 今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

イシュタル「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

愛子「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

 愛子先生が叫ぶ。

 

イシュタル「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

刃(マジかよ)

未来(奴隷よかましだろ、丁度初めも同じ様なこと考えてたらしい)

パニックを起こしかける生徒達とは裏腹に、ハジメは冷静に構えていた

未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

光輝「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

それを聞いて未来が立ち上がる

未来「ちょっとまて光輝テメェ、俺たちで戦争に参加するつもりか」

光輝「そうだ」

未来「俺や刃ならまだいい、だがここにいる全員を人殺しにするつもりか?

光輝「それ以外に帰る道が思いつくのか?!!」

未来「志願制にするなりいくらでも・・・!!」

イシュタル(その場合は心苦しいですが異端認定させていただきますが)

イシュタルが頭に直接話しかけてきた

未来は歯がみする、異端認定されればどんな扱いになるかしれている、奴隷としてこき使われる

未来「わかった」

引き下がるしかなかった

光輝「ありがとう、未来」

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

未来は目線でメッセージを送る

未来(生き残って帰る保証はあるのか?)

光輝(自分達のステータスを信じるしかない、人を殺す覚悟ができるのかもわからない、でもこれが僕の選んだ最善だ、)

未来(こんなところで人生最大のバクチするはめになるとはな・・・)

結局、全員で戦争に参加することになってしまった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう。崩れそうな精神を守るための一種の現実逃避とも言えるかもしれない。

その光景を見てイシュタルは心底満足そうにしていた

光輝(結局思い通りに運ばれてしまったけど、次があれば思い通りにはさせない)

未来、光輝、刃は一連のやり取りから、ハジメはイシュタルの反応から彼を要注意人物としてきおくするのだった




そういえば今まで言ってなかったんですが感想いただければ励みになります!参考にもします!ご自由に書いてくださいお願いします!


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ステータスプレート

フハハッ
クソなげえ
あっできました


seidハジメ

戦争参加の決意をした以上、自分達は戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言っても、元は平和主義にどっぷり浸かりきった日本の高校生だ。いきなり魔物や魔人と戦うなど不可能である。

 

 

 しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

 

 王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神――創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物が建国した最も伝統ある国ということだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さが分かるだろう。

 

 

 ハジメ達は聖教教会の正面門にやって来た。下山しハイリヒ王国に行くためだ。

 

 

 聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、凱旋門もかくやという荘厳な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。

 

 

 高山特有の息苦しさなど感じていなかったので、高山にあるとは気がつかなかった。おそらく魔法で生活環境を整えているのだろう。

 

 

 自分達は、太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れた。

 

 

 どこか自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。大聖堂で見たのと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。

 

 

 台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。

 

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

 

 その途端、足元の魔法陣が燦然と輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。

 

 

 どうやら、先ほどの〝詠唱〟で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は正しくロープウェイなのだろう。ある意味、初めて見る〝魔法〟に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎだ、何故か光輝や刃は険しい目でそれを見つめていた

 

ハジメ(光輝くんも自分がこれから何をするかはわかってるみたいだ)

 

 やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、否、国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

 

 

 皮肉げに素晴らしい演出だと笑った。雲海を抜け天より降りたる〝神の使徒〟という構図そのままである。ハジメ達のことだけでなく、聖教信者が教会関係者を神聖視するのも無理はない。

 

 

 なんとなしに戦前の日本を思い出した。政治と宗教が密接に結びついていた時代のことだ。それが後に様々な悲劇をもたらした。だが、この世界はもっと歪かもしれない。なにせ、この世界には異世界に干渉できるほどの力をもった超常の存在が実在しており、文字通り〝神の意思〟を中心に世界は回っているからだ。

 

 

 自分達の帰還の可能性と同じく、世界の行く末は神の胸三寸なのである。徐々に鮮明になってきた王都を見下ろしながら、言い知れぬ不安が胸に渦巻くのを必死に押し殺した。そして、とにかくできることをやっていくしかないと拳を握り締め気合を入れ直すのだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~

居心地が悪そうに、最後尾をこそこそと付いていくことにした。

 

 

 美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

ハジメ(はあ、光輝君がまさか戦争に参加しようと思うなんて、未来君が反論していたけどあっさり引き下がってしまうし、)

イシュタルは、それが当然というように悠々(ゆうゆう)と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

 

 扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っていた

ハジメ(王様かな?隣にいる人は王妃様かな)

その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

王宮では、ハジメ達の衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

 

 晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋てんがい付きベッドに愕然がくぜんとしたのはハジメだけではないはずだ。ハジメは、豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とした。

(そういえば風間さんと壬無月さんはほとんど料理に手をつけてなかったな)

〜〜〜〜〜〜〜〜

刃は天蓋付きのベットのある自室で刀の素振りをしていた、何故か眠ることができないのである、先の晩餐会も顔には出さなかったが頭痛がせいでほとんど貴族やクラスメートの話に集中できなかったし、料理もほとんど手をつけていない、お陰で恵理を心配させてしまった。

そんな訳で汗をかけば眠くなるだろうと三十分ほど前から無刀て素振りをしていたが

刃「なんの成果も得られませんでしたっと、仕方ない、目だけ閉じてるか」

某進撃の有名なセリフを言った後、刃はベットの上で目を閉じた

翌日から訓練と座学が始まった、

まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

恵理「騎士団長って相当偉いひとだよね?そんなひとがつきっきりで指導にまわっていいのかな?」

刃「対外的にも対内的にも、半端には扱えないってことだろ、一応勇者一行な訳だし」

メルド「そうだな、むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!今から説明するからちゃんと聞いてくれよ?」

 

刃「すみません、騎士団長」

メルド「そう固くなるな、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

未来「副団長に丸投げするのは職務怠慢なのでは・・・・」

 

メルド「小さいことは気にするな!」

 

優花「えぇ?」

 

「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告している。

彼は豪放磊落な性格らしい

 

恵理「そのほうがいいよね、」

刃「まあ、年上に慇懃な態度で接せられても戸惑うだけだしな」

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

光輝「アーティファクト?」

メルド「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属けんぞく達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。

刃と未来は躊躇いなく指を噛み、出てきた血を魔法陣にすり付けた

〜〜〜〜〜〜〜〜

壬月月 音也 17歳 レベル1

天職 人斬り

筋力:100

体力:150

耐性:30

敏捷:200

魔力:20

魔耐:20

技能 斬人剣 剣鬼 刀剣術 暗殺術 精妙の一刀 剛の一刀 言語理解 縮地 高速気力回復 先読み

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

風間 未来 17歳 レベル1

天職 英雄

筋力:150

体力:150

耐性:50

敏捷:150

魔力:50

魔耐:50

技能 限界突破 神剣の心得 未来視 技の一刀 孤軍奮闘 連携の極み 言語理解 縮地 魔力感知 気配感知 高速気力回復 先読み 全属性耐性

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

刃「まるでゲームのキャラクターにでもなった気分だ」

未来「そうだな、優花は」

優花「えっ?私はこんな感じ」

刃「恵理は?」

恵理「ボクは・・」

そうしてステータスを見せ合おうとしたが、丁度メルドの説明が始まった

メルド「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

未来「ゲームの様にはいかないか、」

早速、光輝がメルドにスタータプレートを見せる

〜〜〜〜〜〜〜〜

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

 

 ちなみに、技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が〝派生技能〟だ。

 

 これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

 

 光輝などが特別かと思ったら他の連中も、光輝に及ばないながら十分チートだった。それにどいつもこいつも戦闘系天職ばかり、

光輝「第一関門突破ってところかな?」

未来「そうだな、とりあえずちゃんと鍛えて覚悟さえあればみんな戦える」

そう言いながら未来もステータスを見せに行く

メルド「ほう!英雄か神剣の心得ってのはわからんが勇者に防御は劣るが攻撃においては勝ると言われている職業だな」

刃「じゃ、俺も」

メルド「・・・:人斬りか、名前の通りだの職業だ、この斬人剣ってのはわからんが対人戦において無類の強さを持つとされている」

その後、ハジメの天職とステータスだけ普通なことがわかり、愛子先生がトドメを刺すというアクシデントが起こったが、それ以外何事もなく、一行はハイリヒ王国の宝物庫に自分たちの装備を見繕うために訪れた、当然、勇者である光輝は聖剣と呼ばれる両手持ちのバスターソードに選ばれた、しかし、刃と未来は何かに呼ばれる様に奥へ奥へと進んでいく

そして刃は一振りの刀を手に取った

雫「あっ、刀、あったんだ」

メルド「あーそいつはやめておけ、それは使いにくい上に使用者が全員非業の死を遂げてる妖刀だ」

刃「多分刀に認めてもらってもいないのに使ったからでしょうね」

メルド「そんな危険な剣を渡してますます死なせるわけにはいかん、ほかの武器を選んでくれるか?」

刃「試してみましょう、こいつが・・・赤鋼怨獄丸が俺に使わせてくれるのかどうか」

そういうと刀を鞘から抜き放ち真上に放り投げ腕を出す、

メルド「んなっ!!?!?!」

メルドが止まる間も無くクルクルと回転しながら落ちてきた龍哭は刃の腕を切り落とすことなく、床に深々と突き刺さった

メルド「あーっ!わかった!そこまで言うならそいつを使え!」

恵理「なんてことしてるの!?」

刃「ん?あー怪我してないんだから別にいいだろ?」

優花「あれ?未来は?」

未来はさらに奥で金貨の山に刺さった不思議な形をした剣を見ていた

メルド「そいつは!使いこなしたものが未だないものじゃないか!?」

未来は吸い寄せられる様に近づいていくが、メルドが止める、

メルド「怪我だけじゃ済まないぞ?腕が使えなくなるかもしれない、前任の騎士団長、俺の師匠だった方だが、世界最強の人間だったあの人ですらそのモナドは持つことすらできなかった」

未来「やらせてください、あれはたぶん、俺にしか使えません」

そう言って未来はどんどん突き進みその剣を引き抜く

???(全く、かなり待ったんだよ?)

バチっと一瞬青白い電流の様なものが流れたと思うと、刀身が割れ、光の刃が現れる

その時、未来は自分たちが天使の大群と戦っている光景を見た

メルド「まさか、普通なら弾き飛ばされるはず・・・・」

未来「こいつは俺が使います」

メルド「あ・・・あぁ」

 

 

 




次回はもっと短くまとめます
あっ
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訓練といじめ

できた!


クラス全員のステータスが判明してから二週間が経った

刃や未来、光輝はと言うと・・・・

メルド「今の突撃は無謀すぎる!勇敢と無謀をはき違えるな!」

未来・光輝「「はいっ!!」」

光輝と未来はメルド相手に訓練していた。最初は軽くあしらわれていたものの、メキメキと実力を伸ばし、最近ではメルドにも遠慮がなくなってきている。

刃は丁度同じ様な戦闘スタイルになると思われる八重樫 雫と鍛錬し、暗殺の技術などはクラス1影の薄い男、遠藤浩介と試行錯誤を繰り返す。

そして休憩中

刃「ハジメ、どうだ?レベル」

ハジメ「全然ダメだ、天之川くんの5分の一程度しか成長してない、錬成も戦闘じゃ役に立たないし、僕は完全な戦力外だね」

刃「それは違うぞ、工房の人たちは筋がいいって言ってたし、錬成だって落とし穴作ったりして援護に使えるだろ、使い方しだいだ、それにお前単純な喧嘩ならそうそう負けないと思うぞ、経験が違う」

ハジメ「そうかなあ、」

刃「だから、図書館にばっかりこもってないで訓練にもちゃんと参加しろよ?頼んだことは調べてくれたか?」

ハジメ「ああ、調べたよ、魔人族と人間族が争っている理由は単に崇める神の違いからみたいだね」

刃「やっぱそうか、宗教戦争じゃなく独立戦争ならまだやる気にもなるんだけどなぁ」

ハジメ「その感覚はどうかとおもうよ・・・・」

刃「あっそろそろ時間だな、訓練行くぞ」

ハジメ「ああ、うん」

檜山「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

斎藤「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

中野「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

檜山「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

 一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 

中野「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

檜山「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

 そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。それに刃や光輝達以外のクラスメイト達は気がついたようだが見て見ぬふりをする。

刃や光輝は訓練という名の模擬戦に夢中である

「いや、一人でするから大丈夫だって。僕のことは放っておいてくれていいからさ」

 

 一応、やんわりと断ってみるハジメ。

 

近藤「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 そう言って、脇腹を殴る檜山。ハジメは「ぐっ」と痛みに顔をしかめながら呻く。

 

 檜山達も段々暴力にためらいを覚えなくなってきているようだ。思春期男子がいきなり大きな力を得れば溺れるのは仕方ないこととはいえ、その矛先を向けられては堪ったものではない。かと言って反抗できるほどの力もない。ハジメは歯を食いしばるしかなかった。

 

 やがて、訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来ると、檜山はハジメを突き飛ばした。

 

檜山「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

 檜山、中野、斎藤、近藤の四人がハジメを取り囲む。ハジメは悔しさに唇を噛み締めながら立ち上がった。

 

ハジメ「ぐぁ!?」

 

 その瞬間、背後から背中を強打された。近藤が剣の鞘で殴ったのだ。悲鳴を上げ前のめりに倒れるハジメに、更に追撃が加わる。

 

中野「ほら、なに寝てんだよ? 焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――〝火球〟」

 

 中野が火属性魔法〝火球〟を放つ。倒れた直後であることと背中の痛みで直ぐに起き上がることができないハジメは、ゴロゴロと必死に転がりなんとか避ける。だがそれを見計らったように、今度は斎藤が魔法を放った。

 

斎藤「ここに風撃を望む――〝風球〟」

 

 風の塊が立ち上がりかけたハジメの腹部に直撃し、ハジメは仰向けに吹き飛ばされた。「オエッ」と胃液を吐きながら蹲る。

 

 魔法自体は一小節の下級魔法だ。それでもプロボクサーに殴られるくらいの威力はある。それは、彼等の適性の高さと魔法陣が刻まれた媒介が国から支給されたアーティファクトであることが原因だ。

 

檜山「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ~、マジやる気あんの?」

 

 そう言って、蹲うずくまるハジメの腹に蹴りを入れる檜山。ハジメは込み上げる嘔吐おうと感を抑えるので精一杯だ。

 

 その後もしばらく、稽古という名のリンチが続く。ハジメは痛みに耐えながらなぜ自分だけ弱いのかと悔しさに奥歯を噛み締める。本来なら敵わないまでも反撃くらいすべきかもしれない。

 

 確かに刃があった通りハジメは刃に半ば強制的に「いじめくらい自分で何とかできる様にしろ」と無理やりか訓練を受けていた、しかし、小さい頃から、人と争う、誰かに敵意や悪意を持つということがどうにも苦手だったハジメは、誰かと喧嘩しそうになったときはいつも自分が折れていた。自分が我慢すれば話はそこで終わり。喧嘩するよりずっといい、そう思ってしまうのだ。

そんなハジメを優しいと称賛する人もいれば、ただのヘタレだと嘲る人もいるだろう、本人にもわからない

そんなハジメを優しいとい言う人もいれば、ただのヘタレという人もいる。ハジメ自身にもどちらかわからないことだ。

 

 そろそろ痛みが耐え難くなってきた頃、突然、怒りに満ちた女の子の声が響いた。

 

「何やってるの!?」

 

 その声に「やべっ」という顔をする檜山達。それはそうだろう。その女の子は檜山達が惚れている香織だったのだから。模擬戦にを終えた光輝と龍太郎もいた

いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」

「南雲くん!」

 

 檜山の弁明を無視して、香織は、ゲホッゲホッと咳き込み蹲るハジメに駆け寄る。ハジメの様子を見た瞬間、檜山達のことは頭から消えたようである。

 

「特訓ね。それにしては随分と一方的みたいだけど?」

「いや、それは……」

「言い訳はいい。いくら南雲が戦闘に向かないからって、同じクラスの仲間だ。二度とこういうことはするべきじゃない」

「くっだらねぇことする暇があるなら、自分を鍛えろっての」

 

 三者三様に言い募られ、檜山達は誤魔化し笑いをしながらそそくさと立ち去った。香織の治癒魔法によりハジメが徐々に癒されていく。

 

「あ、ありがとう。白崎さん。助かったよ」

 

 

 苦笑いするハジメに香織は泣きそうな顔でブンブンと首を振る。

 

「いつもあんなことされてたの? それなら、私が……」

 

 何やら怒りの形相で檜山達が去った方を睨む香織を、ハジメは慌てて止める。

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから! 大丈夫だから、ホント気にしないで!」

「でも……」

 

 それでも納得できなそうな香織に再度「大丈夫」と笑顔を見せるハジメ。渋々ながら、ようやく香織も引き下がる。

 

「南雲君、何かあれば遠慮なく言って?」

 

真剣な顔をして香織が言う。ハジメは礼を言う

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

光輝「来たか・・・・・誰も何もなければいいけど、結構前途多難だな」

未来「そこまで気にしても仕方ない、なるようにしかならんさ」

 




さて、次どうしよう


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月下の語らい

いつのまにかUAが千こえた?!ご愛読ありがとうございます?なのかな?


【オルクス大迷宮】

 

 それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 

 にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

 魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末にし、刻み込むなり染料として使うなりした場合と比較すると、その効果は三分の一程度にまで減退する。

 

 要するに魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的ということだ。その他にも、日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われる。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのである。

ハジメ達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

未来「久しぶりに普通の部屋を見た気がするな、」

そう言うと未来はモナドを立てかけ、ベットに体を投げ出した

未来(明日は二十層までか、ハジメに合わせてくれるなんてな)

未来と光輝はいざとなったらハジメを全力でサポートするつもりでいた

未来(話を聞いてた限り、二十層くらいなら自分で何とかできるようになってもらわんと困るな、光輝は心配してたが、あいつちょっと過保護なんだ・・・・・)

ドアの外に気配を感じた

未来「どうぞ」

優花「きずいてたんだ・・・」

そこには優花がネグリジェ姿で立っていた

未来「oh・・・・」

優花「どうしたの?」

優花はキョトンとした顔で立っている

未来(今のは優花の無頓着さに驚いただけだ!決してちょっと思った以上に可愛くて見惚れていたわけではない!)

心の中て必死に言い訳しながらも顔に動揺が出ないようにする

未来「いや、大丈夫だよ、取り敢えず入った入った」

部屋に入った後、優花が話を切り出した

優花「未来・・・・明日の迷宮での訓練、未来には参加しないでほしいな」

未来「・・・・お前俺の立場わかってるよな?」

未来は日本にいた頃はあまり人の前に立つようなことはしなかったのだが、今は光輝と共にクラスを引っ張る立場になっていた、そして何より

未来「そんなことはできない、光輝と俺は二人で一人、そんなことはできない」

そう、光輝と未来は出会った時から本当の兄弟のように接してきた、剣道をやるときもいつも一緒で、二人でかかれば雫の父親も油断できないほどの実力を持っていた

優花「わかってるけど、私見たの、未来が奈落の底に落ちていく夢を、

妙にリアルで鮮明で、不安なんだ、私」

未来「ははは、そう言うの優花は信じてなかったじゃんか?それに」

優花「それに?」

未来は不敵な笑いを浮かべていった

未来「たとえ奈落に落ちたとしても俺は帰ってくるよ?」

しばらく二人は見つめ合う

優花「何それ」

どこかおかしくて、くすぐったくて

優花、未来「アハハハハハハハハ」

二人は笑った

ひとしきり笑った後、優花が微笑みながら言う

優花「そうだね、戻ってきてくれるよね、未来なら」

優花「なんか安心した、おやすみ、」

未来「ああ、おやすみ」

優花が部屋から出ていく

未来「さてと、あんなこと言ったんだ、尚更無事で帰ってこないとな」

〜一方その頃〜

ハジメ「あー疲れた、ここ最近いろんなことありすぎたよ・・・・」

そう言ってベットに倒れ込む、

その時ドアをノックする音が聞こえた

ハジメ「あっ、はいどうぞ」

刃「入るぞ」

ハジメ「なんだ、刃か、」

刃「誰だと思ったんだよ?」

ハジメ「白崎さん」

刃「あいつもそこまで心配症じゃないと思うぞ・・・・」

ハジメ「君はなんできたのさ?」

刃「ああ、檜山のことだよ」

ハジメ「え?」

刃「あいつはお前に嫉妬してる、理由はわかるよな?」

ハジメ「白崎さんに構ってもらえるから?認めたくないけど」

刃に「少し違うと思うが大体あってるからいいか、檜山がなにするかわからんから気をつけろって警告に来たんだ、お前を殺そうとするかもしれない」

ハジメ「ええ?!まさか、檜山くんもそこまではしないでしょ」

刃「そうか?だといいんだが、どっちにしろ俺らはみんな一人もかけることなく日本に帰りたいと思ってる、だからそんなことなけりゃいいんだが」

ハジメ「そうだね」

その時部屋のドアがノックされた

怪しげな深夜の訪問者に、すわっ、檜山達かっ! と、二人は、緊張を表情に浮かべる。

 

 しかし、その心配は続く声で杞憂に終わった。

 

香織「南雲くん、起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」

刃「なんだよ香織か、」

香織「刃くん?」

刃「ああ、いいよ、俺の用は終わったから」

刃「じゃあな、ハジメ、おやすみ」

そう言って刃は香織とすれ違いにハジメの部屋を出た

刃「ふー、ピンク空間の中にいるのはゴメンだからな」

そう言って歩き出す

 

 

 

しばらく歩き食堂にいた、なんのことはない、ただそこに足がむいただけだが

そこには恵理がいた

刃「んん?恵理か?どうした?」

恵理「え?いや、ちょっとね、・・・・・・・」

恵理「あるところに一人ぼっちの少女がいました、」

刃「?いきなりどうした?」

恵理「いいから黙ってて、少女は、恋をしていました」

恵理「ですがそれは叶わぬ恋でした、少女の恋の相手は最中に無王子様だったのです、少女は王子様が振り向いてくれないことがわかっていてもに追いかけ続けましたとさ」

刃「・・・・・それがどうした?」

恵理「いやなんでも?」

刃「・・・・・・・・俺はさ、王子様にはならないけど、お前の友達にならなれるぞ」

恵理「え・・・・・-?」

刃「お前の初めての友達だろ?俺は、愚痴が言える奴の一人でもいれば、気楽なんじゃないか?それに、お前は一人でいるわげじゃないだろ?俺がいるから」

恵理「・・・・そうだね、ボク、一人じゃなかったね、ありがとう」

刃「もう寝るぞ、夜も遅い、明日に影響する・・・・・・パーティーは違うけど、怪我すんなよ」

恵理「ありがと、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 




次回から迷宮にはいりますよぉ!


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トラップ

できた!


 現在、クラスのみんなで【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

 ハジメや刃としては薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

未来「なんか・・・・・」

刃「思ってたんと違う」

光輝「そうなのか?」

 なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置である。

 

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

 ハジメ「浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気がみたいで人も自然と集らしいし、馬鹿騒ぎした人が勢いで迷宮に挑み命を落としたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたみたいで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したんだって、入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれらしいよ、」

光輝「やけに詳しいな」

ハジメ「伊達に図書館に篭ってたわけじゃないよ」

 クラスのみんなは、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

未来「へー、結構明るいんだな」

刃「ハジメ曰く、緑光石っていう鉱石を掘って作られてるらしい」

一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

 と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が2匹湧き出てきた。

メルド「よし、あれは・・・・」

ハジメ「ラットマンだ!すばしっこいけど、みんなならそんなに苦戦しないと思う!気をつけて!」

メルド「ほう・・・・・」

ハジメは戦闘に期待ができない分、刃のアドバイスから魔物について鉱石と同じくらい学んでいた、それこそメルドに並ぶほどに

未来「ラジャ」

刃「了解ー」

モナドに『魔』の文字が浮かび上がり、光の刃が形成される

その刃でラットマンと呼ばれたネズミのような魔物を一突きに殺す

もう1匹のラットマンは刃の上段からの唐竹割りで真っ二つに引き裂かれた

メルド「フォーメーションの確認がしたかったんだが・・・・ハジメまさか俺より情報の開示がはやいとわ・・・」

ハジメ「いえいえ、メルドさんの役目をとってしまって・・・・」

メルド「いや、戦闘において情報は早いほどいいんだ、ハジメの方が早いならハジメが受け持った方がいい、安心しろ、足りない部分は俺が捕捉してやる、」

ハジメ「ありがとうございます」

ハジメ「にしても、あの二人は別格ですね」

メルド「いや、ステータス的には光輝たちと変わりない、おそらく他の面々とちがって命を奪うことに躊躇いがないんだろう、あれだけの速度で反応することは俺たちでも難しい、あの二人には何かそういうことをやっていたような経験があるのか?」

ハジメ「いいえ、僕たちと同じです」

そこからは特に問題もなく、未来と刃の反応するが一番早いものの、刃と未来が獲物を残して魔物のヘイトを取ることで順調に階層を下げていった

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

 ハジメ達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。

 

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

 この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

 従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

ハジメは何度か自分に飛ばされてくる弱った魔物を、某錬金術師のように錬成で動きを止め、確実に仕留めていた

 再び、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし……地道に頑張ろう……)

 

 魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。

 

 実を言うと、騎士団員達もハジメには全く期待していなかった。ただ、戦闘に余裕があるので所在無げに立ち尽くすハジメを構ってやるかと魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。

 

 騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛冶職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。

因みに、当然アイデアのもとは某鋼のである

ハジメ(まさかオタクであることが役に立つ日がくるとわね、まあ、アルとは比べるまでもない小規模なものだし、他のみんなに比べれば役立たずであることに変わりはないけど)

その後も順調に進んでいたがふとメルドが足を止める、

 

メルド「擬態しているな、よーくみておけー」

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。

ハジメ「ロックマウントだ!馬鹿力と威圧の咆哮っていうスタン技に注意して!」

ハジメの声が響く、

ロックマウントがドラミングを始めた

未来と刃が先陣を切るのが流れになっていたが、メルドが止める、

メルド「今回は光輝たちに任せてみよう」

未来・刃「「了解」」

光輝「わかりました、いくぞ龍太郎!」

龍太郎「おう!!」

飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

 香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

 しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

刃「おい!ボサッとすんな!」

慌てて刃がダイブ中のロックマウントを切り捨てる

香織たち「ごめんね」

謝ったものの相当気持ち悪かったらしく、まだ顔が青ざめていた

それを見てキレたものが一人

「よくもみんなを!」

どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

未来「おい!なにやってんだ!」

 

 メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 

 その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

 パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、笑顔で迫っていた未来の鉄拳制裁を食らった。

 

「へぶぅ!?」

未来「アホ!気持ちはわかるけどな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!」

ハジメ「それに、こんな狭いところであんな大技を使ったら崩落するかもしれないし、消耗も無視できないでしょ、もう少し冷静になって、天之川くん」

 未来軍曹のお叱りとハジメの注意に「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。

 

 その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

ハジメ「へぇ~、あれはグランツ鉱石だね言わば宝石の原石みたいなもので、特に何か効能があるわけではないけど、その輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気で、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしいよ、求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。」

 

香織「素敵……」

香織はハジメにその宝石で作った結婚指輪をもらう想像をしてうっとりとした顔で誰にも気づかれないようにハジメに目を向ける

檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。当然渡そうと思っているのは香織である。

 

メルド「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

騎士団員「団長! トラップです!」

メルド「なにっ!?」

美味しい話には裏がある。世の常である。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

 

メルド「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

 尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

 ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

メルド「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるハジメの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

――まさか……ベヒモス……?……

 




光輝のアレに関しては覚醒していても経験がないので光輝ならああなるかなぁと思って入れました、


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ベヒモスと覚醒

クソほど長くなってしまった・・・・


橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。

 

 小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。

 

 しかし、数百体のガイコツ戦士より、反対の通路側の方がヤバイとハジメは感じていた。

図書館の図鑑でも最も危険な魔物として記録されていた、かつて最強と言わしめた冒険者ですら敵わなかった正真正銘の怪物『ベヒモス』と呼ばれる魔物と気味が悪いほど容姿が酷似していた

こちらを補足したベヒモスは大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

「ッ!?」

 

 その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 

メルド「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

光輝「待って下さい!メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も加わります!」

「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ、!」

光輝「ですが!」

 

 どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。

 

 そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

 

カイル・イヴァン・ペイル「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」

二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!

 

 衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。

 

 トラウムソルジャーは三十八階層に現れる魔物だ。今までの魔物とは一線を画す戦闘能力を持っている。前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に生徒達は半ばパニック状態だ。

未来と刃もパニックを起こし、狂ったように敵を倒し続けている

 隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。騎士団員の一人、アランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。

 

 その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

あるところに寂しい少女がいた、五歳の頃に父親が自分を庇って事故死した。

 割とありふれた出来事、本人からしたら冗談ではない出来事だが、万人からの視点では何処にでもありそうな悲劇に他ならない。

 母親はちょっとしたお嬢だったらしく、父親と熱愛の結果として家族の反対を振り切って結婚した。

 

 故に依存のレベルで父親とはベッタリである。

 

 そんな母親は父親の死に耐えられず、だから“夫を殺した娘”に当たった。

 

 恵理はこう考えた。

 

 自分が悪かったのだ。

 

 だから耐えた、耐えるしかないと思っていた。思っていなければ胸が張り裂けてしまいそうだった。

 

 所詮は自分など母親にとって、父親のオマケに過ぎなかったのだから。

いつか終わると思っていた、父親が死ぬ前の日常が戻ってくると信じていた、

だが現実は残酷でそんな日常は戻ってはこなかった

そう確信したのはいつの頃だったか

そうだ、後から母親が連れてきた父親に犯されそうになった時、悲鳴を聞きつけたご近所さんが警察に通報して事なきを得たが、重要なのはそこではない、その後の母親の反応だった、

「私の旦那を誑かすなんて・・・・その年で男に言い寄る事を覚えたのかい?」

どの口でそんな事をのたまえるのか、どうすればそのような思考に行き着くのか全く理解できなかったが、恵理は一つの確信を覚えた

『この人にとって私は邪魔なんだ』

全てに絶望し終わらせようとして家を出た、父親が事故で死んだ交差点で終わらせようとしたが、ある少年に止められたしつこく事情を訊いてきた少年に、端折りに端折った事情説明をする。

 

 少年は自分の信念に従い可哀想な少女に言う。

 

『もう一人じゃない。俺が恵里を守ってやる』

 

 絶望して壊れ掛けていた少女に、そんな少年の言葉は強烈であったろう、少年のお陰で少女が学校に行けば、沢山の誰かしらが話し掛けてくれた。

 

 全てが少年のお陰で。

 

 こうなれば少女の心は、少年に対して堕ちる。

 

児童相談所が少女の母親の素行から虐待を疑い調査を開始した際、場合によっては少年から引き離されるかもと、『母親大好きな娘』を反吐が出そうになりながらも演じた。

 

母親が引き攣り恐怖する表情を見ても少女は何も感じなかった。

 

その反吐が出そうになる体験を吐き出せる相手もいた

 

 少女にとって少年は正に王子様となる、それが勘違いだったと、そう悟るのは間も無くの事だった、

 

 ヒーローがモブを救い、称賛されるというちょっとしたルーチンワーク。

 

 自分が救われる“お話し"は少年にとって、終わった出来事に過ぎなあと悟った。

 

 守ってくれると言った。

 

 独りじゃないと言った。

 

 だけどならどうして?

 

 ヒーローにヒロインとは付き物だが、自分は少年のヒロインではなかったのだと気付いてしまう。

 

 トウラムソルジャーに斬られようとしている少女……中村恵里は走馬灯を視ながらヒーロー――天之河光輝を見つめながら思う。

 

恵理(助けて光輝君)

 

 手を伸ばしながら請う。

 

恵理(死にたくないよ、怖い、助けてよ光輝君!)

 

 だけれど、天之河光輝の視線は既に落ちた白崎香織に向けられており、自分にはチラリとも向けてない。

 

 知られない侭に落ちて死ぬのが堪らなく怖かった。

 

 特別にはなれなかった、ありふれたモブが命を落としただけ、そんなありふれた結末でしかない。

 

 涙を零した中村恵里は、一言だけ呟いた。

 

恵理「嘘……つき……」

 

 守ってくれなかったし、独りぼっちにしたじゃないか……と。

 

 奈落に落ち逝く中村恵里は目を閉じて、現実の全てを拒絶するのであった。

あれ、それだけだったっけ

 

刃「恵理!!」

 

その時壮絶な頭痛とともに神にかけられた記憶の封印が綻び、すべての記憶が頭を駆け巡る、悲しみも、怒りも、憎しみも、そして最悪の記憶の断片が魂に深く刻み込まれた経験と技術を呼び覚ます

瞬く間にトウラムソルジャーと恵理の間に割って入る

ザシュッ

 

恵理「・・・・・・え?」

そこには一番親しい親友が、どんな愚痴も嫌がらずに聞いてくれた、

大抵のわがままを聞いてくれたたった一人の人が

刃「生きるのを諦めるな、中村恵理、昨日言ったろ?おまえには、俺がいる」

少女を庇っていた

背中は肩口から大きく切り裂かれおびただしい血が流れていた

刃「フッ」

振り向きざまに魔物を切り伏せると口から吐血した

刃「ガッハ」

恵理「刃!」

刃「大丈夫だ・・・このくらいどうってことはない」

恵理「そんなわけないでしょ?!喋らないで!」

刃「見ろよ、クラスの奴ら、陣形もへったくれもありゃしない、あれじゃそのうち死人が出る、だから・・・・健を切られちまったから片手しか使えねーけど、俺が行くしかない」

恵理「なんで刃じゃなきゃいけないの?!」

恵理「こんな状況でついこの間まで一般人だった奴らが冷静になれるわけがない、それにこれは・・・俺のせめてもの償いだ」

そういうと刃はトウラムソルジャーの一番大きな集団の中に入っていった

恵理「バカ・・・・!」

しかし刃の予想をいい意味で裏切ったものが一人、今作の本当の主人公

南雲ハジメである、ハジメは誰も彼もがガムシャラに戦っているのを見て

ハジメ「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」

 

 ハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。

 

 

 

 

 ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

 障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。

 

ハジメ「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

光輝「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」

ハジメ「くっ、こんな時にわがままを……」

 

 メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

 この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。

 

 しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。

 

 その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。

 

 まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

雫「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

 雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

龍太郎「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

未来「やられっぱなしもシャクだしな」

光輝「龍太郎、未来……ありがとな」

 

 しかし、龍太郎と未来の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

雫「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

香織「雫ちゃん……」

 

ハジメ「天之河くん!」

光輝「なっ、南雲!?」

香織「南雲くん!?」

 

ハジメ「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」

光輝「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は……」

ハジメ「そんなこと言っている場合かっ!」

 

 ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。

 いつも苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。

 

ハジメ「あれが見えねーのか!? みんなパニックになってんだよ! リーダーがいないからだ!」

 

 刃以外は訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。効率的に倒せていないから敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さと刃の奮戦が命を守っているが、それも時間の問題だろう。

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだよ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけだ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見ろ!」

光輝「ああ・・・・そうだな、すまない、南雲」

「下がれぇーー!」

 

 〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。

 

 暴風のように荒れ狂う衝撃波がハジメ達を襲う。咄嗟に、ハジメが前に出て錬成により石壁を作り出すがあっさり砕かれ吹き飛ばされる。多少は威力を殺せたようだが……

 

 舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。

 

 そこには、倒れ伏し呻き声を上げる団長と騎士が三人。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。光輝達も倒れていたがすぐに起き上がる。メルド団長達の背後にいたことと、ハジメの石壁が功を奏したようだ。

 

光輝「ぐっ……未来、龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。団長たちが倒れている以上自分達がなんとかする他ない。

 

龍太郎「やるしかねぇだろ!」

雫「……なんとかしてみるわ!」

未来「言われなくても!」

 三人がベヒモスに突貫する。

 

光輝「香織はメルドさん達の治癒を!」

香織「うん!」

 

 光輝の指示で香織が走り出す。ハジメは既に団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。気休めだが無いよりマシだろう。

 

 光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

 

光輝『神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!』

 

 詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。

 

 先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 

 龍太郎と雫は、詠唱の終わりと同時に既に離脱している。ギリギリだったようで三人共ボロボロだ。この短い時間だけで相当ダメージを受けたようだ。

 

 放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。光が辺りを満たし白く塗りつぶす。激震する橋に大きく亀裂が入っていく。

 

光輝「これなら……はぁはぁ」

龍太郎「はぁはぁ、流石にやったよな?」

雫「だといいけど……」

未来「傷くらいはおったはずだろ」

 

そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。

その中から無傷のベヒモスが突進してきた!

一同「「「「!!!!!!!」」」」

脳を一気に走馬灯が駆け巡る

未来(ここで死にたくない!何か打開策は!?)

そう思った時、頭を戦争の記憶が駆け巡った自分の持つ最悪の記憶、紙に封印されたはずの記憶の中から生き残る方法を導き出す

未来「モナドォォォォ『(シールド)』!!」

一同を光のバリアが覆い、ベヒモスの突進を受け止め、弾き飛ばす

その間にハジメはメルドにある提案をした

メルド「だめだ!危険すぎる!死にに行くようなものだ!」

それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。

未来「そうだ、確実に成功する保証もない、俺も参加する」

光輝「だめだ!それなら俺も!」

未来「おまえまで残ったら誰がクラスをまとめるんだ!」

 

メルド「……やれるんだな?」

「「やります」」

 

 決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくるハジメに、メルド団長は「くっ」と笑みを浮かべる。

 

メルド「まさか、お前さんに命を預けることになるとはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

「「はい!」」

 

 メルド団長はそう言うとベヒモスの前に出た。そして、簡易の魔法を放ち挑発する。ベヒモスは、先ほど光輝を狙ったように自分に歯向かう者を標的にする習性があるようだ。しっかりとその視線がメルド団長に向いている。

 

 そして、赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。メルド団長は、ギリギリまで引き付けるつもりなのか目を見開いて構えている。そして、小さく詠唱をした。

 

メルド「吹き散らせ――〝風壁〟」

 

 詠唱と共にバックステップで離脱する

それを確認した後、未来はベヒモスに会いたいしながらいう、

未来「ハジメ、俺が奴のバランスを崩す、合わせろ」

ハジメ「わかった」

未来「じゃあミッション開始だ!モナドォォォォ『昇斬(エア・バスター)』!!」

長くなったモナドの刃で切り上げ、ベヒモスの体制が崩れる

名称だけの詠唱。最も簡易で、唯一の魔法でありながら、彼の最大の武器、

 

「――〝錬成〟!」

ベヒモスの体が数メートル沈み込み、身動きを取れなくする

 トラウムソルジャーの方は、どうやら幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めているようだ。立ち直りの原因は中村恵理である

 

香織「待って下さい! まだ、南雲くんがっ」

 

 撤退を促すメルド団長に香織が猛抗議した。

 

メルド「坊主の作戦だ! ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! もちろん坊主がある程度離脱してからだ! 魔法で足止めしている間に坊主が帰還したら、上階に撤退だ!」

香織「なら私も残ります!」

メルド「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

香織「でも!」

 

 なお、言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる。

 

メルド「坊主の思いを無駄にする気か!」

香織「ッ――」

 

 メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなく光輝である。少しでも早く治癒魔法を掛け回復させなければ、ベヒモスを足止めするには火力不足に陥るかもしれない。そんな事態を避けるには、香織が移動しながら光輝を回復させる必要があるのだ。ベヒモスはハジメの魔力が尽きて錬成ができなくなった時点で動き出す、未来もいるが、どのくらい食止められるかわからない以上進むしかないのだ、

トラウムソルジャーは依然増加を続けていた。既にその数は二百体はいるだろう。階段側へと続く橋を埋め尽くしている。

 

 だが、ある意味それでよかったのかもしれない。もし、もっと隙間だらけだったなら、突貫した生徒が包囲され惨殺されていただろう。実際、最初の百体くらいの時に、それで窮地に陥っていた生徒は結構な数いたのだ。

 

 それでも、未だ死人が出ていないのは、ひとえに騎士団員達と刃のおかげだろう。彼等の必死のカバーと奮戦が生徒達を生かしていたといっても過言ではない。代償に、既に彼等は満身創痍で刃に至っては傷だらけでほとんど死に体だったが。

 

 騎士団員達のサポートがなくなり、続々と増え続ける魔物にパニックを起こし、魔法を使いもせずに剣やら槍やら武器を振り回す生徒がほとんどである以上、もう数分もすれば完全に瓦解するだろう。

 

 生徒達もそれをなんとなく悟っているのか表情には絶望が張り付いている。中村恵理の呼びかけで少ないながらも連携をとり奮戦していた者達も限界が近いようで泣きそうな表情だ。

 

 誰もが、もうダメかもしれない、そう思ったとき……

 

光輝「――〝天翔閃〟!」

 

 純白の斬撃がトラウムソルジャー達のド真ん中を切り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。

 

 橋の両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていく。斬撃の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。

 

光輝「皆! 諦めるな! 道は俺が切り開く!」

 

 そんなセリフと共に、再び〝天翔閃〟が敵を切り裂いていく。光輝が発するカリスマに生徒達が活気づく。

 

メルド「お前達! 今まで何をやってきた! 訓練を思い出せ! さっさと連携をとらんか! 馬鹿者共が!」

 

 皆の頼れる団長が〝天翔閃〟に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と打ち倒す。

 

 いつも通りの頼もしい声に、沈んでいた気持ちが復活する。手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、香織の魔法の効果も加わっている。精神を鎮める魔法だ。リラックスできる程度の魔法だが、光輝達の活躍と相まって効果は抜群だ。

 

 治癒魔法に適性のある者がこぞって負傷者を癒し、魔法適性の高い者が後衛に下がって強力な魔法の詠唱を開始する。前衛職はしっかり隊列を組み、倒すことより後衛の守りを重視し堅実な動きを心がける。

 

 治癒が終わり復活した騎士団員達も加わり、反撃の狼煙が上がった。チートどもの強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。凄まじい速度で殲滅していき、その速度は、遂に魔法陣による魔物の召喚速度を超えた。

 

 そしで敵の一番の密集地で戦っていた刃が叫ぶ

 

刃「皆! 続け! 階段前を確保するぞ!」

 

 光輝が掛け声と同時に走り出す。

 

 ある程度回復した龍太郎と雫がそれに続き、バターを切り取るようにトラウムソルジャーの包囲網を切り裂いていく。

 

 そうして、遂に全員が包囲網を突破した。背後で再び橋との通路が肉壁ならぬ骨壁により閉じようとするが、そうはさせじと光輝が魔法を放ち蹴散らす。

恵理「刃!」

刃「なん・・・とか・・・なったか」

恵理「もう喋らないで!」

そういうと刃に肩を貸す

 クラスメイトが訝しそうな表情をする。それもそうだろう。目の前に階段があるのだ。さっさと安全地帯に行きたいと思うのは当然である。

 

「皆、待って! 南雲くんを助けなきゃ! 南雲くんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」

 

 香織のその言葉に何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。そう思うのも仕方ない。なにせ、ハジメは〝無能〟で通っているのだから。

 

 だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメの姿があった。

 

「なんだよあれ、何してんだ?」

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

優花「未来!?」

刃「ハハッ、すげーじゃねーか南雲」

 次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。

 

「そうだ! 坊主達がたった二人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だ。しかし、団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場へと戻った。

その中で一人、小さな悪意があった

 

その頃、ハジメはもう直ぐ自分の魔力が尽きるのを感じていた。既に回復薬はない。チラリと後ろを見るとどうやら全員撤退できたようである。隊列を組んで詠唱の準備に入っているのがわかる。

 

 ベヒモスは相変わらずもがいて、片足が既に自由になっている

未来が押し留めているが、それもすぐに限界を迎えるだろう

 額の汗が目に入る。極度の緊張で心臓がバクバクと今まで聞いたことがないくらい大きな音を立てているのがわかる。

 

 ハジメはタイミングを見計らった。

 

 そして、数十度目の亀裂が走ると同時に最後の錬成でベヒモスを拘束する。同時に、一気に駆け出した。

ハジメ「もう十分だ!逃げよう!」

 ハジメ達が猛然と逃げ出した五秒後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。その眼に、憤怒の色が宿っていると感じるのは勘違いではないだろう。鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵を探し……

 

 ハジメを捉えた。

 

 再度、怒りの咆哮を上げるベヒモス。ハジメを追いかけようと四肢に力を溜めた。

 

 だが、次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。

 

 夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。

 

 いける! と確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走るハジメ。すぐ頭上を致死性の魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がそんなミスをするはずないと信じて駆ける。ベヒモスとの距離は既に三十メートルは広がった。

 

 思わず、頬が緩む。

 

 しかし、その直後、未来の表情が凍りついた。

 

 無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

 

 ……ハジメの方に向かって。

 

 明らかにハジメを狙い誘導されたものだ。

 

未来「だれだ!?くそっ!」

 

 はじめも気付き、咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。直撃は避けたし、内臓などへのダメージもないが、三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまった。

 

 フラフラしながら少しでも前に進もうと立ち上がるが……

 

 ベヒモスも、いつまでも一方的にやられっぱなしではなかった。ハジメが立ち上がった直後、背後で咆哮が鳴り響く。思わず振り返ると三度目の赤熱化をしたベヒモスの眼光がしっかりハジメを捉えていた。

 

 そして、赤熱化した頭部を盾のようにかざしながらハジメに向かって突進する!

 

 フラつく頭、霞む視界、迫り来るベヒモス、遠くで焦りの表情を浮かべ悲鳴と怒号を上げるクラスメイト達。

 

 ハジメは、なけなしの力を振り絞り、必死にその場を飛び退いた。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。

未来「まずい!」

未来が助けに入る

 

 その瞬間遂に……橋が崩壊を始めた。

 

 度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。

そして、ハジメと助けようとした未来が奈落のそこに落ちてゆくのが見えた

優花「未来ー!!!」

爆音を立てて橋が崩れ、その煙の中から

 

 

 

ベヒモスが現れた

なんとすんでのところで這い上がってきたのだ

メルド「そんなばかな・・・・」

もう魔力も切れかけのパーティーに対抗する術はない

誰もが、メルド団長さえ絶望したその時

刃が前にでた

刃「さてと、万事休すか、」

刃「シィィッィィィィィッィィィィィ」

呼吸音と共に刀を担ぐように構え、集中する

雫「ッッ!!」

身を切り裂くような剣気に身震いする

剣気が高まりつずけ

雫「あれは・・・・・・鬼?」

高まった剣気が鬼を幻視するほどになってもなお高まりつずける

無限一刀流 極意 無双剣

刹那、担いでいた刀を下段から振り上げるとそのあまりの剣速に爆風が巻き起こり土煙が立ち込める

土煙がはれると体を真っ二つに引き裂かれたベヒーモスがいた

メルド「刃!よくやっ」

ブシャァァァァァァァ

刃の体中から血が噴出す

恵理・光輝「「刃!」」

刃「こ・・・き・・恵理を・・頼んだ」

 

 




次回はもっと短くします・・・


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悪夢の後

やっとできた!
難産でした・・・・


恵理「刃!刃!起きて!おきてよ!ねぇ!」

光輝「中村さん!早く脱出しないと!」

恵理「うるさい!うるさいうるさいうるさい!嘘つき!嘘つき!オマエがちゃんと引いていればこんなことにならなかったんだ!オマエガッ!!!!!」

そう一気にまくしたて、恵理は光輝に掴みかかる、そして首を締める、

光輝「カッ・・・・・・!」

一体その小さな体からどうすればステータスさを覆すほどの力を出すことができるのか、だが、このままでは光輝が死んでしまうのみならず恵理も壊れてしまうだろう、しかし、龍太郎や雫などの生徒たちはどうしていいのかわからず、オロオロするばかり、

その時、メルド団長がツカツカと歩み寄り、問答無用で恵理の首筋に手刀を落とした。ビクッと一瞬痙攣し、そのまま意識を落とす恵理。

 

 ぐったりする恵理を抱きかかえ、光輝がキッとメルド団長を睨む。文句を言おうとした矢先、雫が遮るように機先を制し、団長に頭を下げた。

 

「すいません。ありがとうございます」

「礼など……止めてくれ。もう一人も死なせるわけにはいかない。幸い刃の息はある、全力で迷宮を離脱する。……彼女を頼む」

「言われるまでもなく、僕がクラスを引っ張らないと」

 

目の前でクラスメイトが一人死んだのだ。クラスメイト達の精神にも多大なダメージが刻まれている。誰もが茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺めていた。香織は「もう嫌!」と言って座り込んでしまった、優花は光のない目で未来とハジメが落ちた穴を見つめていた。

 

 ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なのだ。

 

 光輝がクラスメイト達に向けて声を張り上げる。

 

光輝「皆! 今は、生き残ることだけ考えるんだ! 撤退するぞ!」

 

その言葉に、クラスメイト達はノロノロと動き出す。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない。

 

 光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。

 

 そして全員が階段への脱出を果たした。

 

 上階への階段は長かった。

 

 先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、感覚では既に三十階以上、上っているはずだ。魔法による身体強化をしていても、そろそろ疲労を感じる頃である。先の戦いでのダメージもある。薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るものだ。

 

 そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。

 

 クラスメイト達の顔に生気が戻り始める。メルド団長は扉に駆け寄り詳しく調べ始めた。フェアスコープを使うのも忘れない。

 

 その結果、どうやらトラップの可能性はなさそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのもののようだ。

 

 メルド団長は魔法陣に刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む。すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた。

 

 扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。

 

クラスメート「帰ってきたの?」

クラスメート「戻ったのか!」

クラスメート「帰れた……帰れたよぉ……」

 

 クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす。中には泣き出す子やへたり込む生徒もいた。光輝達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ。

 

しかし、ここはまだ迷宮の中。低レベルとは言え、いつどこから魔物が現れるかわからない。完全に緊張の糸が切れてしまう前に、迷宮からの脱出を果たさなければならない。

 

 メルド団長は休ませてやりたいという気持ちを抑え、心を鬼にして生徒達を立ち上がらせた。

 

メルド「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」

 

 少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げて封殺する。

 

 渋々、フラフラしながら立ち上がる生徒達。光輝が疲れを隠して率先して先をゆく。道中の敵を、騎士団員達が中心となって最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ。

 

 そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も立っていないはずなのに、ここを通ったのがもう随分昔のような気がしているのは、きっと少数ではないだろう。

 

 今度こそ本当に安堵の表情で外に出て行く生徒達。正面門の広場で大の字になって倒れ込む生徒もいる。一様に生き残ったことを喜び合っているようだ。

 

 だが、一部の生徒――未だ目を覚まさない恵理を背負った雫や光輝、その様子を見る龍太郎、鈴などは暗い表情だ

 

 そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長。

 

 二十階層で発見した新たなトラップは危険すぎる。石橋が崩れてしまったので罠として未だ機能するかはわからないが報告は必要だ。

 

 そして、ハジメと未来の死亡報告もしなければならない。

刃は今すぐに治療が必要だろう。

 

 憂鬱な気持ちを顔に出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった。

ホルアドの町に戻った一行は何かする元気もなく宿屋の部屋に入った。幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの生徒は真っ直ぐベッドにダイブし、そのまま深い眠りに落ちた。

 

 そんな中、檜山大介は一人、宿を出て町の一角にある目立たない場所で膝を抱えて座り込んでいた。顔を膝に埋め微動だにしない。もし、クラスメイトが彼のこの姿を見れば激しく落ち込んでいるように見えただろう。

 

 だが実際は……

 

檜山「ヒ、ヒヒヒ。ア、アイツが悪いんだ。雑魚のくせに……ちょ、調子に乗るから……て、天罰だ。……俺は間違ってない……白崎のためだ……あんな雑魚に……もうかかわらなくていい……俺は間違ってない……ヒ、ヒヒ」

 

 暗い笑みと濁った瞳で自己弁護しているだけだった。

???「やっぱり、貴方だったのね、」

檜山「?!」

優花「わたし、見てたのよ?貴方が南雲に魔法を放ったのを」

園部優花が光のない瞳で言った

優花「どさくさまぎれでクラスメート二人を殺した気分はどう?」

檜山「あいつが間違ってたんだよ・・・・・・白崎に近ずきさえしなければ・・・・・風間だってそうだ・・・・あんなゴミを助けようとするから巻き添えを食らうんだ・・・・俺は悪くない」

優花「ふざけるな・・・・」

檜山「あぁ?」

優花「ふざけるなっていってるのよ・・・・・!」

優花がナイフを取り出し檜山に向ける

檜山「ヒッ・・・・」

優花「なに?二人も殺しておいて、あんなにお粗末なやり方で、しかもみんながいる中でやっておいて、のうのうと生きてられると思ったの?目には目を・・・・・歯には歯を・・・いのちには命を・・・ハンムラビ法典にあるでしょ?」

檜山「おい・・・・まて・・・早まるな!俺を殺したらお前も・・」

優花「もうどうでもいいのよ、未来は一人で逝ってしまった。香織と恵理はふさぎこんでる、刃はまだ起きてない・・・誰かが裁かないなら・・・・・私が裁く」

檜山「くッ」

優花「そうそう、魔法を使おうとしても意味ないわよ、、私の天職は『投擲師』この距離ならナイフのほうが早い」

優花「よかったわ、みんなが早々に寝静まってくれて、誰にも邪魔されずにあなたを殺せる」

優花がナイフを構える

メルド「まて!」

優花「!?」

メルドと騎士団の数人が優花をとりおさえる

優花「やめてっ!そいつは未来を殺したの!私が殺してやる!」

メルドは問答無用で優花に手刀を落とし、気絶させる

檜山「ありがとうございます、優花が南雲と未来のことについて俺に言いがかりを・・・」

メルド「事の顛末は聞いている、他のクラスメートからも申し出があった、檜山、おまえを南雲ハジメ、風間未来殺害容疑で拘束する!」

それを合図に騎士団の数人が檜山を拘束する

檜山「そんなぁ!俺は間違ってない!」

〜〜〜翌日〜〜〜

次の日、クラスに未来とハジメを落とした犯人が檜山だったことが告げられ、檜山には禁固刑が言い渡された、殺人を犯したのにもかかわらずこの程度の罪で済んでいるのは光輝と愛子の要望あってのことである、

光輝曰く、「罪を償う機会は与えられるべきだ、」と。

そして、刃は起きることはない、と言われた、ベジタティブ・ステイト、そんな残酷な言葉は誰が考えたのだろう、刃は香織が全力で治療を行ったが、その命を繋ぎ止めるにとどまり、その後到着した王宮最高の治癒師をして「手の施しようがない、奇跡を信じるしかない」と言われ、その魂はいつ起きるとも分からない眠りについてしまった。

メルド団長の報告を受けた王宮は大騒ぎとなっていた、人類最高戦力となるはずの者が初めての実戦訓練で二人が死亡、一人が戦闘不能に陥ったのであるしかも死亡したのは、パーティーを引っ張ると思われた天職『英雄』の持ち主である、貴族が騒然となるのは当然のことであった、逆に、『無能』の錬成士は話題に上がることすらなかった、むしろ無能が消えてくれてせいせいした、という意見さえささやかれるほどだった。

しかし、イシュタルが勇者に悪い印象を持たれては敵わないとそういう貴族たちを注意したため、表立ってハジメが罵られることはなくなった、当のイシュタル本人は自分を疑っていた人間を始末することができて内心安堵していたが。

そして、

 〜〜〜side優花〜〜〜

優花「・・・・・・・」

優花は取り押さえられてからというものなにも飲まず食わずな状態で、

完全に意気消沈してしまっていた

メルド「・・・・・入るぞ」

優花「ん、どうぞ」

ガチャ

優花「メルドさん、なんのようですか」

メルド「未来から迷宮に行く直前に渡されていたものだ、受け取ってやれってくれ、それと、厳しいことを言うようだが、未来は、あの男はお前に塞ぎ込んでいて欲しいとは思っていないと思うぞ、経験から言っておく、これからお前たちはそういうことも起こり得る、そういう世界に来てしまったんだ、申し訳なく思う、すまない」

優花「そんなこと言われたって」

メルド「まず、それが未来の残したものだそいつを読んでどうするかは自分で決めるんだ」

優花「・・・・・」

メルドがいなくなると、優花はおもむろに手紙を開いた、

『よう、元気か?な、わけないか、取り敢えず、居なくなってごめん、この手紙を読んでるってことは、俺は迷宮でヘマをやっていなくなって、優花は塞ぎ込んだってとこか?でも、気にすんな、俺は必ず帰ってくる、地獄の底からだろうが奈落の底からだろうが必ず返ってくる、だから、俺を信じろ

さて、優花に頼みたいことがあってこの手紙を書いてるんだが、俺がいなくなったとすれば、光輝がクラスメートを訓練に参加する奴と参加しない奴にわけるはずだ、その時に、お前は愛子先生の護衛に入ってくれ、愛子先生は戦争において一番脅威になる天職だから、かならず魔神族側に狙われるはずだ、それあやって理由付けすれば光輝の意見も通りやすくなる筈だ、いなくなっておいて図々しいかもしれないけど、頼む』

優花「そっか・・・・・かえって、来るんだ・・・・・しんじて、みようかな、」

優花「それにしても、愛子先生の護衛しろって・・・・・人使いが荒いんだから」

優花「そうと決まれば、後は待つだけね」

side out

side恵理

恵理は刃が眠っている場所にいた、

恵理「刃・・・・なんで今まで気がつかなかったんだろうね、ボクは、キミに支えられて生きてきたのに、なんであんな奴のことが好きだったんだろう」

恵理「これからボクは君を助けるために生きるよ、私が君のことが好きだって、直接伝えたいから」

当然なにも帰ってはこない、だが、恵理の目には確かな決意の炎があった。

そうして部屋を出ようとした時、テーブルの下に手紙が落ちていることに気づいた

恵理「なんだろ、これ」

『壬無月 刃から中村 恵理へ

俺にもしものことがあったときのためにこれを書き残しておく、恵理、もしも俺がいなくなったら光輝を頼れよ、お前あいつのこと好きなんだろ?あいつはお前の思いに答えられなくても、出来るだけ助けてくれる筈だ、あと、俺の刀、赤鋼怨獄丸は恵理に譲る、お前にはでかいけど、お守りと武器くらいにはなる筈だ、最後に、死んでごめんな、恵理』

恵理「・・・・・・キミはまだ生きてるよ、刃、だから、ボクが助けてみせる」

二人の少女が決意を新たに歩みを始めた

 

 



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奈落の底

はー!できた!


 ザァーと水の流れる音がする。

未来「グッ・・・・ガァッ・・・・アァァァア!!!!!」

未来「アッ!?なんだ・・・・・ここ・・・・って冷たっ!」

未来はびしょ濡れになっていた

未来「葉山のヤロー、こっちを打ってきやがった、まあ、光輝に任せるか」

未来「肋骨が何本か逝ってやがる、それに肩が」

ブラーんと動かない左腕を弾いて、外れた肩を元に戻す

ガコンッ

未来「痛ッツぅ!でモナドはしっかり握ってましたと、だけど、離せねーな」

どうやら薄れゆく意識の中でしっかり握りしめすぎたらしい、強張った右手を解きほぐす

その時、未来の頭に映像が流れ込んできた

でかい熊が襲いかかってくる!

未来「ッ!!!モナド『盾』!!」

しかし、ベヒモスの突進をはじき返したバリアでも守りきれず、吹き飛ばされる

未来「ガハッ!!!マジかよ!モナド『疾』!!」

足に緑色の光が宿り、未来はそれを確認すると、一目散に逃げ出した、

あまりの速さに熊は追い付かず、そのまま逃げ切られてしまった

未来「ハアッ、ハアッ、『盾』でも防げないとなると、戦闘は不意打ちだけでし止めなきゃいけないのか」

〜〜〜〜一方の頃〜〜〜〜〜

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 

 周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、ハジメの下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。

 

「そうだ……確か、橋が壊れて落ちたんだ。……それで……」

 

 霧がかかったようだった頭が回転を始める。

どうやら穴のどこかに水の流れがあって、それにたまたま乗れたらしい

「よく思い出せないけど、とにかく、助かったんだな。……はっくしゅん! ざ、寒い」

 

 地下水という低温の水にずっと浸かっていた為に、すっかり体が冷えてしまっている。このままでは低体温症の恐れもあると早々に川から上がるハジメ。ガクガクと震えながら服を脱ぎ、絞っていく。

 

 そして、パンツ一枚になると錬成の魔法を使った。硬い石の地面に錬成で魔法陣を刻んでいく。

 

「ぐっ、寒くてしゅ、集中しづらい……」

 

 望むのは火種の魔法だ。その辺の子供でも十センチ位の魔法陣で出すことができる簡単な魔法。

 

 しかし、今ここには魔法行使の効率を上げる魔石がない上、ハジメは魔法適性ゼロ。たった一つの火種を起こすのに一メートル以上の大きさの複雑な式を書かなければならない。

 

 十分近くかけてようやく完成した魔法陣に詠唱で魔力を通し起動させる。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 ……う~、なんでただの火を起こすのにこんな大仰な詠唱がいるんだよぉ~、恥ずかしすぎる。はぁ~」

 

 最近、癖になりつつある溜息を深々と吐き、それでも発動した拳大の炎で暖をとりつつ、傍に服も並べて乾かす。

 

「ここどこなんだろう。……だいぶ落ちたんだと思うけど……帰れるかな……」

 

 暖かな火に当たりながら気持ちが落ち着いてくると、次第に不安が胸中を満たしていく。

 

 無性に泣きたくなって目の端に涙が溜まり始めるが、今泣いては心が折れてしまいそうでグッと堪える。ゴシゴシと目元を拭って溜まった涙を拭うと、ハジメは両手でパンッと頬を叩いた。

 

「やるしかない。なんとか地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

 自分に言い聞かせるように呟き、俯けていた顔を起こし決然とした表情でジッと炎を見つめた。

 

 二十分ほど暖をとり服もあらかた乾いたので出発することにする。

ハジメ「どの階層かはわからないけど、上よりずっと広くて、暗い本当に何回層なんだろう、ここは」

しばらく考え込んでいると、視界の端で何かが動いた気がして慌てて岩陰に身を潜める。

 

 そっと顔だけ出して様子を窺うと、ハジメのいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

 ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。物凄く不気味である。

 

 明らかにヤバそうな魔物なので、直進は避けて右か左の道に進もうと決める。ウサギの位置からして右の通路に入るほうが見つかりにくそうだ。

 

 ハジメは息を潜めてタイミングを見計らう。そして、ウサギが後ろを向き地面に鼻を付けてフンフンと嗅ぎ出したところで、今だ! と飛び出そうとした。

 

 その瞬間、ウサギがピクッと反応したかと思うとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

ハジメ(やばい! み、見つかった? だ、大丈夫だよね)

 本来自分のような雑魚が来るべき階層ではないのだ、「気がつかれたら絶対に死ぬ」と、表情に焦燥を浮かべながら無意識に後退る。

 

 それが間違いだった。

 

カラン

 

 その音は洞窟内にやたらと大きく響いた。

 

 下がった拍子に足元の小石を蹴ってしまったのだ。あまりにベタで痛恨のミスである。ハジメの額から冷や汗が噴き出る。小石に向けていた顔をギギギと油を差し忘れた機械のように回して蹴りウサギを確認する

 

 蹴りウサギは、ばっちりハジメを見ていた。

 

 赤黒いルビーのような瞳がハジメを捉え細められている。ハジメは蛇に睨まれたカエルの如く硬直した。魂が全力で逃げろと警鐘をガンガン鳴らしているが体は神経が切れたように動かない。

 

 やがて、首だけで振り返っていた蹴りウサギは体ごとハジメの方を向き、足をたわめグッと力を溜める。

 

ハジメ(来る!)

 

 ハジメが本能と共に悟った瞬間、蹴りウサギの足元が爆発した。後ろに残像を引き連れながら、途轍もない速度で突撃してくる。

 

 気がつけばハジメは、全力で横っ飛びをしていた。

 直後、一瞬前までハジメのいた場所に砲弾のような蹴りが突き刺ささり、地面が爆発したように抉られた。硬い地面をゴロゴロと転がりながら、尻餅をつく形で停止するハジメ。陥没した地面に青褪めながら後退る。

 

 蹴りウサギは余裕の態度でゆらりと立ち上がり、再度、地面を爆発させながらハジメに突撃する。

 

 ハジメは咄嗟に地面を錬成して石壁を構築するも、その石壁を軽々と貫いて蹴りウサギの蹴りがハジメに炸裂した。

 

 咄嗟に左腕を掲げられたのは本能のなせる業か。顔面を粉砕されることだけはなかったが、衝撃で吹き飛び、再び地面を転がった。停止する頃には激烈な痛みが左腕を襲う。

 

ハジメ「ぐぅっ――」

 

 見れば左腕がおかしな方へ曲がりプラプラとしている。完全に粉砕されたようだ。痛みで蹲りながら必死で蹴りウサギの方を見ると、今度はあの猛烈な踏み込みはなく余裕の態度でゆったりと歩いてくる。

 

 ハジメの気のせいでなければ、蹴りウサギの目には見下すような、あるいは嘲笑うかのような色が見える。完全に遊ばれているようだ。

 

 ハジメには、尻餅をつきながら後退るという無様しか出来ない。

 

 やがて、蹴りウサギがハジメの目の前で止まった。地べたを這いずる虫けらを見るように見下ろす蹴りウサギ。そして、見せつけるかのように片足を大きく振りかぶった。

 

ハジメ(……ここで、終わりなのかな……)

 

 絶望がハジメを襲う。諦めを宿した瞳で呆然と掲げられた蹴りウサギの足を見やる。その視線の先で、遂に豪風と共に致死級の蹴りが振り下ろされた。

 

 ハジメは恐怖でギュッと目をつぶる。

 

「……」

 

 しかし、いつまで経っても予想していた衝撃は来なかった。

 

 ハジメが、恐る恐る目を開けると眼前に蹴りウサギの足があった。振り下ろされたまま寸止めされているのだ。

 

 まさか、まだ遊ぶつもりなのかと更に絶望的な気分に襲われていると、奇妙なことに気がついた。よく見れば蹴りウサギがふるふると震えているのだ。

 

ハジメ(な、何? 何を震えて……これじゃまるで怯えているみたいな……)

 

 〝まるで〟ではなく、事実、蹴りウサギは怯えていた。

 

 ハジメが逃げようとしていた右の通路から現れた新たな魔物の存在に。

 

 その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えているが。

 

 その爪熊が、いつの間にか接近しており、蹴りウサギとハジメを睥睨していた。

 

 辺りを静寂が包む。ハジメは元より蹴りウサギも硬直したまま動かない。いや、動けないのだろう。まるで、先程のハジメだ。爪熊を凝視したまま凍りついている。

 

ハ「……グルルル」

 

 と、この状況に飽きたとでも言うように、突然、爪熊が低く唸り出した。

 

ハジメ「ッ!?」

 

 蹴りウサギが夢から覚めたように、ビクッと一瞬震えると踵を返し脱兎の如く逃走を開始した。今まで敵を殲滅するために使用していたあの踏み込みを逃走のために全力使用する。

 

 しかし、その試みは成功しなかった。

 

 爪熊が、その巨体に似合わない素早さで蹴りウサギに迫り、その長い腕を使って鋭い爪を振るったからだ。蹴りウサギは流石の俊敏さでその豪風を伴う強烈な一撃を、体を捻ってかわす。

 

 ハジメの目にも確かに爪熊の爪は掠りもせず、蹴りウサギはかわしきったように見えた。

 

 しかし……

 

 着地した蹴りウサギの体はズルと斜めにずれると、そのまま噴水のように血を噴き出しながら別々の方向へドサリと倒れた。

 

 愕然とするハジメ。あんなに圧倒的な強さを誇っていた蹴りウサギが、まるで為す術もなくあっさり殺されたのだ。

 

 蹴りウサギが怯えて逃げ出した理由がよくわかった。あの爪熊は別格なのだ。蹴りウサギの、まるでカポエイラの達人のような武技を持ってしても歯が立たない化け物なのだ。

 

 爪熊は、のしのしと悠然と蹴りウサギの死骸に歩み寄ると、その鋭い爪で死骸を突き刺しバリッボリッグチャと音を立てながら喰らってゆく。

 

 ハジメは動けなかった。あまりの連続した恐怖に、そして蹴りウサギだったものを咀嚼しながらも鋭い瞳でハジメを見ている爪熊の視線に射すくめられて。

 

 爪熊は三口ほどで蹴りウサギを全て腹に収めると、グルッと唸りながらハジメの方へ体を向けた。その視線が雄弁に語る。次の食料はお前だと。

 

 ハジメは、捕食者の目を向けられ恐慌に陥った。

 

ハジメ「うわぁああーー!!」

 

 意味もなく叫び声を上げながら折れた左腕のことも忘れて必死に立ち上がり爪熊とは反対方向に逃げ出す。

爪がその巨大に見合わない速度で襲い掛かる!

未来「ハジメェェェェェェェェェェ!!」

未来「モナド『鎧』!」

ハジメの周りに黄色いバリアが形成される

ブォン!!

ハジメ「アベシッ!」

ハジメは地面を鞠のように弾んで壁に激突する

ハジメ「グハッ」

かなりのダメージを負い、左手の感覚がないが、生きていた

しかし、ハジメの目の前には爪熊が迫っていた

未来「ハジメ!逃げ・・・・」

ハジメ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!錬成!錬成!錬成ェ!」

あまりに連続した恐怖に、ハジメはたまらず逃げ出した

爪熊はハジメを追いかけようとする

未来「オイコラ熊公、お前の相手はこの俺だ」

そう言いながら熊の肩にモナドを突き刺す

熊「ガァァァ!!」

未来は体重差で振り落とされるが、気を引くことには成功した

未来「モナド『魔』!!」

絶望的な戦いが始まった

一方その頃

いく。

 

「うぁあああーー! 〝錬成〟! 〝錬成〟! 〝錬成ぇ〟!」

 

半ばパニックになりながら少しでもあの化け物から離れようと連続して錬成を行い、どんどん奥へ進んでいく。

 

 後ろは振り返らない。がむしゃらに錬成を繰り返す。地面をほふく前進の要領で進んでいく。既にズタズタになった左腕の痛みのことは頭から飛んでいた。生存本能の命ずるままに唯一の力を振るい続ける。

 

 どれくらいそうやって進んだのか。

 

 ハジメにはわからなかったが、恐ろしい音はもう聞こえなかった。

 

 しかし、実際はそれほど進んではいないだろう。一度の錬成の効果範囲は五メートル位であるし(これでも初期に比べ三倍近く増えている)、何より左腕の出血が酷い。そう長く動けるものではないだろう。

 

 実際、ハジメの意識は出血多量により既に落ちかけていた。それでも、もがくように前へ進もうとする。

 

 しかし……

 

ハジメ「〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝れんせぇ〟 ……」

 

 何度錬成しても眼前の壁に変化はない。意識よりも先に魔力が尽きたようだ。ズルリと壁に当てていた手が力尽きたように落ちる。

 

 ハジメは、朦朧として今にも落ちそうな意識を辛うじて繋ぎ留めながらゴロリと仰向けに転がった。ボーとしながら真っ暗な天井を見つめる。この辺は緑光石が無いようで明かりもない。

 

 いつしかハジメは昔のことを思い出していた。走馬灯というやつかもしれない。保育園時代から小学生、中学生、そして高校時代。様々な思い出が駆け巡るが、最後の思い出は……

 

 月明かり射し込む窓辺での香織との時間。約束をした時の彼女の笑顔。

 

 その美しい光景を最後にハジメの意識は闇に呑まれていった。意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと頬に水滴を感じた。

 

 それはまるで、誰かの流した涙のようだった。

 




ハジメは左手を失いません、魔王化も多分しません(ネタバレ)


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決意

ハジメの魔王化はしませぬ


 ぴちょん……ぴちょん……

 

 水滴が頬ほおに当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは意識が徐々に覚醒していくのを感じた。そのことを不思議に思いながらゆっくりと目を開く。

 

ハジメ(……生きてる? ……助かったの?)

 

 疑問に思いながらグッと体を起こそうとして低い天井にガツッと額をぶつけた。

 

ハジメ「あぐっ!?」

 

 自分の作った穴は縦幅が五十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。

 

しかし、左腕は動かない、おそるおそる見てみるが、火傷でもしたように赤い以外はなにも異常はない

 

そしてハジメは爪熊の一撃を食らったことを思い出した

 暗くて見えないが明かりがあればハジメの周囲が血で赤黒く染まっているになっていた。左腕の状態から考えてありえない出血量だった。

 

 ハジメが右手で周りを探れば、カサブタを触るような感覚が返ってくる。やはり、大量出血したことは夢ではなかったようだし、血が乾いていることから、気を失ってそれなりの時間は経っているようである。

 

 なのにズタズタにされた左腕の傷が治っている、ハジメが疑問を感じていると再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。それが口に入った瞬間、ハジメは、また少し体に活力と魔力が戻った気がした。

 

「……まさか……これが?」

ふらつきながら再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。

魔力を回復してくれる不思議な液体のおかげで魔力が尽きない

 

 

 やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。

 

ハジメ「こ……れは……」

 

 そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

 

 その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 

 ハジメは一瞬、見蕩れてしまった。

 

 そして縋り付くように、あるいは惹きつけられるように、その石に手を伸ばし直接口を付けた。

 

 すると、体の内に感じていた鈍痛や靄がかかったようだった頭がクリアになり倦怠感も治まっていく。

 

 やはり、ハジメが生き残れたのはこの石から流れる液体が原因らしい。治癒作用がある液体のようだ。幻肢痛は治まらないが、他の怪我や出血の弊害は、瞬く間に回復していく。

ハジメはその意思が既に伝説と化した『神結晶』と言う伝説の鉱物であることを知らない

ようやく死の淵から生還したことを実感し、ハジメはそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。

 

 そして、死の恐怖に震える体を抱え体育座りしながら膝に顔を埋めた。既に脱出しようという気力はない。ハジメは心を折られてしまったのだ。

 

 敵意や悪意になら立ち向かえたかもしれない。助かったと喜んで、再び立ち上がれたかもしれない。

 

 しかし、爪熊のあの目はダメだった。ハジメを餌としてしか見ていない捕食者の目。弱肉強食の頂点に立つ人間がまず向けられることのない目だ。その目に、自分を餌としか見ていない獣の目を向けられ、ハジメの心は砕けてしまった。

 

ハジメ(誰か……助けて……)

 

 ここは奈落の底、ハジメの言葉は誰にも届かない……

 

side out

side未来

未来はなんとか爪熊に食い下っていた

 

未来(こいつの技は爪を振った時に1メートルまで射程を拡張、腕の振りから考えてインターバル0.2秒と言ったとこか、種がわかればやりようもある!)

既に時間にして4日間に及ぶギリギリな戦いの中で爪熊の固有魔法を看破した未来は爪熊が腕を振り切ったタイミングで残り少ない魔力で自身の最強の技を放つ

未来「モナド『斬』!!」

光剣が光り輝き、延長された刃は爪熊の右腕を切り落とした

爪熊「ガァァァァア!!、!」

爪熊は右腕を切り落とさると、未来を警戒し、ジリジリと下がり始めた

未来「まだやるか?熊公?え?」

そう言うと威嚇するようにモナドを向ける

爪熊はこれ以上は危険と判断したのか闇の中へ消えていった

未来「ハアッ、ハアッ、くっ」

緊張の糸が切れた未来は崩れ落ちるように倒れた

魔力の使いすぎで薄れゆく意識の中で未来はモナドを地面に突き刺さした

未来「モナド『隠』」

そう唱えると未来の体を半透明な膜がおおい、それきり未来の視界は暗くなった

side out

 どれくらいそうしていただろうか。

 

 ハジメは、現在、横倒しになりギュッと手足を縮めて、まるで胎児のように丸まっていた。

 

 ハジメが崩れ落ちた日から既に七日が経っている。

 

 その間、ハジメはほとんど動かず、滴り落ちる神水のみを口にして生きながらえていた。

 

 しかし、神水は服用している間は余程のことがない限り服用者を生かし続けるものの空腹感まで消してくれるわけではなかった。死なないだけで、現在、ハジメは壮絶な飢餓感に苦しんでいた。

 

ハジメ(どうして僕がこんな目に?)

 

 ここ数日何度も頭を巡る疑問。

 

 痛みと空腹で碌に眠れていない頭は神水を飲めば回復するものの、クリアになったがためにより鮮明に飢餓感を感じさせる。

 

 何度も何度も、意識を失うように眠りについては、飢餓感に目を覚まし、苦痛から逃れる為に再び神水を飲んで、また苦痛の沼に身を沈める。

 

 もう何度、そんな微睡まどろみと覚醒を繰り返したのか。

 

 いつしか、ハジメは神水を飲むのを止めていた。無意識の内に、苦痛を終わらせるもっとも手っ取り早い方法を選択してしまったのだ。

 

ハジメ(こんな苦痛がずっと続くなら……いっそ……)

 

 そう内心呟きながら意識を闇へと落とす。

 

 それから更に二日が日が経った。

 

 ピークを過ぎたのか一度は落ち着いた飢餓感だったが、嵐の前の静けさだったかのように再び、更に激しくなって襲い来る。飢餓感はハジメの精神を苛み続ける。まるで、端の方から少しずつヤスリで削られているかのような耐え難き苦痛。

 

ハジメ(まだ……死なないのか……あぁ、早く、早く……死にたいな…)

 

 ハジメは既に死を望み、神水にも一切口をつけていなかった、支離滅裂なうわ言も呟くようになった。

しかし、死ぬことはなかった

さらに翌日

ハジメが最後見たときよりさらにズタボロになった風間未来が姿を現した

ハジメ「嗚呼・・・・未来くん・・・・僕を殺して」

ハジメの目に光はなく完全に精神が崩壊してしまっていた

未来「おい!しっかりしろ!」

ハジメ「殺して・・・・」

未来「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!お前は1人じゃないだろ?!お前が死んだら家族はどう思う?!白崎はどう思うんだ!?」

そう言うと神水を無理やり喉に流し込む

その時、ハジメ頭に香織との約束が蘇ってきた

太陽のように明るい少女の笑顔、そして、学校内で話すことはあまりないが、放課後はよく遊ぶクラスメート達

 

「私が南雲くんを守るよ」

 

 ハジメはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。

 

「ありがとう・・・でも」

そしてハジメも誓ったのだ

ハジメ「もし僕が地獄に落ちたとしても、必ず白崎さんの元に帰ってきて見せる」

ハジメ(白崎さんはこんな僕を愛してくれたそれに・・・・・・・『必ず帰る』なんて約束しておいて帰らないなんて・・・・馬鹿みたいじゃないか)

ハジメ「そうだ・・・僕は誓ったんだ・・・必ず帰ると!約束したんだ!」

ハジメの目に光がともる、心に実に十日ぶりに火がくべられた

ハジメ「ありがとう未来」

未来「俺はなにもしてないよ、殺してくれなんてもう言うな」

ハジメ「わかった、それとこれを飲んでみて」

未来「?!傷が」

ハジメ「エリクサーみたいだよね」

未来「だなー」

グゥー

ハジメ「あ」

未来「まあ、だよな俺も腹減って死にそうだしってなわけで」

未来が後ろから生き物のしたいを持ち出す

ハジメ「それってまさか・・・」

未来「外の狼の肉」

ハジメ「しょうがないか」

未来「ほんじゃま、焼きますか」

未来「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 」

ハジメ「よく恥ずかしがらずに言えるね・・・・」

ハジメ・未来「いただきます」

十日ぶりの食事をした、味はまあ酷いものであったが、この際味など関係ないと咀嚼する

そして腹が膨れてきた頃、体に異変が起きた

 

 

ハジメ・未来「あ? ――ッ!? アガァ!!!」

 

 突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

未来「ぐぅあああっ。な、何がっ――ぐぅううっ!」

 

ハジメ「あの水を・・・」

2人は痛みに耐えかねて神水を口にするが痛みは一向に治らない

ハジメ「ひぃぐがぁぁ!! なんで……なおらなぁ、あがぁぁ!」

 

そのうちに2人の体に変化が起こり始めた

筋肉や骨格が徐々に太くなり体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

ハジメの髪は色が抜け落ち、白く染まってゆき、未来の髪は金髪に染まってゆく

超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象だ。骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。今、ハジメ達の体に起こっている異常事態も同じである。

そして痛みが治った時はじめはやっと思い出した

ハジメ「……そういや、魔物って喰っちゃダメだったか……アホか僕は……まぁ、喰わずにはいられなかっただろうけど……」

未来「先に言え・・・・・」

しばらくして未来は体の中にも違和感を覚えた

温かいような冷たいような、どちらとも言える奇妙な感覚。意識を集中してみると腕に薄らと赤黒い線が浮かび上がった。

 

未来「うわぁ、き、気持ち悪い。なんか魔物にでもなった気分だ。……洒落もなってねーぞ」

ハジメ「そうだ、ステータスプレートは」

 すっかり存在を忘れていたステータスプレートを探してポケットを探る。どうやら失くしていなかったようだ。現在のハジメのステータスを確認する。体の異常について何か分かるかもしれない。

 

==================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

天職:錬成師

筋力:100

体力:300

耐性:100

敏捷:200

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

==================================

風間未来 17歳 男 レベル24

天職 英雄

筋力 2,500

体力 3000

耐性 1500

敏捷 2500

魔力 1,000

魔耐 1000

技能 限界突破 神剣の心得 未来視 技の一刀 孤軍奮闘 連携の極み 言語理解 縮地 魔力感知 気配感知 高速気力回復 先読み 全属性耐性 魔力操作 纏雷 胃酸強化

 

「……なんでやねん」

 

 いつかのように驚愕のあまり思わず関西弁でツッコミを入れるハジメ。ステータスが軒並み急増しており、技能も三つ増えている。しかもレベルが未だ8にしかなっていない。レベルはその人の到達度を表していることから考えると、どうやらハジメ達の成長限界も上がったようだ。

 

未来「魔力操作?」

 

 




因みにハジメの左腕が動かなかった理由は神経を断ち切られていたからですね
神水と言えども本人の回復力が地の文から見てベースになってると思うので神経断ち切られたら再生できないかなと
あと、魔王化の回避が雑になってしまったァァァア
いや、復讐鬼になるルートもあったんですよ、でもそうなるとユエを助けるビジョンが湧かなくて、ボツになりました
流石にユエを無視はできん


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覚悟の証

やっとできた・・・リアルが忙しすぎんよー


未来「なるほど、わからん」

ハジメ「確か魔力操作って、魔物の技術じゃなかったかな?」

未来「じゃあ、この『纏雷』ってなはさっきの狼の固有魔法か?」

ハジメ「たぶん、おそらく」

未来「字面からして、雷を纏うイメージか?」

そんなイメージで指先に意識を集中すると指先からパチッという音とともに赤い電流が流れた

ハジメ「なるほど、魔力が直接操作できるとイメージで魔法が使えんだね」

ハジメは拠点に戻るとすぐに鍛錬を始め、未来は上に出る出口のようなものを探しでマッピングを始めた

はじめの技能は順調に成長し、その中でも錬成に変化があった。なんと派生技能が付いたのだ。それは、〝鉱物系鑑定〟である。王都の王国直属の鍛冶師達の中でも上位の者しか持っていないという技能だ。

早速、ハジメは周囲の鉱物を片っ端から調べることにした。例えば、緑光石に鉱物系鑑定を使うとステータスプレートにこう出る。

 

==================================

緑光石

魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。

また魔力を溜め込んだ状態で割ると、溜めていた分の光を一瞬で放出する。

==================================

 

 なんとも簡易な説明だ。だが、十分にありがたい情報である。

 

 ハジメはニヤリといたずらを思いついた子供のように笑った。それからもあちこち役立ちそうな鉱物を探して彷徨さまよっていると、遂に、ハジメの相棒にして切り札となる武器を作るために必要な鉱物を発見した。

==================================

燃焼石

可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。

==================================

 

 ハジメはこの説明を見た瞬間、脳内に電流が走ったような気がした。

 

ハジメ「これは・・・・火薬がわりになるかも!」

 

 ハジメは興奮した。作製するには多大な労力と試行錯誤が必要だろうが、それでも今まで自分を幾度となく救ってくれた錬成で、遂に攻撃手段を得ることができるかもしれないということが堪たまらなく嬉しかったのだ。

 

 そして、寝食を忘れてひたすら錬成の熟達に時間を費やした上、何千回という失敗の果てに、ハジメは遂にとある物の作製に成功した。

 

 音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を撃破する現代兵器。

 

 全長は約三十五センチ、この辺りでは最高の硬度を持つタウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。弾丸もタウル鉱石製で、中には粉末状の燃焼石を圧縮して入れてある。

 

 すなわち、大型のリボルバー式拳銃だ。

 

 しかも、弾丸は燃焼石の爆発力だけでなく、ハジメの固有魔法〝纏雷〟により電磁加速されるという小型のレールガン化している。その威力は最大で対物ライフルの十倍である。ドンナーと名付けた。なんとなく相棒には名が必要と思ったからだ。

 

「……これなら、あの熊も……脱出だって……やれる!」

 

 ハジメはドンナーの他にも現代兵器を参考に作った兵器を眼前に並べて薄らと笑った。

 

 ただ、剣や防具を上手く作るだけ、そんなありふれた天職〝錬成師〟の技能〝錬成〟が、剣と魔法の世界に兵器を産み落とした瞬間だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

==================================

タウル鉱石

黒色で硬い鉱石。硬度8(10段階評価で10が一番硬い)。衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。

==================================

 

一方未来は上に出る場所を探していた

しかし、一向に出口が見えてこない、マッピングはほとんど全て終えたはずだが、下に行く穴のようなものは見つけたが、上に行く出口を見つけることはできないでいた

未来「まさか出られないんじゃないだろうな」

そんな懸念を口にする

未来「結構な時間だな、戻るか」

〜〜〜〜〜〜

未来は上に行く出口は見つけられなかったことを話した

ハジメ「そっか・・・・でも、下に行けば外に出るワープポイント的なものはあるでしょ」

未来「ここが本当にまだ迷宮の中ならな、」

ハジメ「悲観しないで行こう」

未来「そういえばさっきから落ち着かないぞ?どうした?」

ハジメ「実はね・・・・銃を作れたんだ!」

未来「なんだって?!火薬とかどうしたんだよ」

ハジメ「そこら辺に落ちてた鉱石で代用した」

未来「さすがファンタジー、なんでもあるんだな」

未来「そういえば、ウサギを取ってきたんだ」

未来「〜〜〜火種」(めんどくさいんで詠唱省略しますby作者)

ハジメ「兎肉と言っても酷い味だね・・・・」

未来「ホント、ないよりマシってだけか」

ハジメ「そういえばステータスはどうなったかな?」

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12

天職:錬成師

筋力:200

体力:300

耐性:200

敏捷:400

魔力:350

魔耐:350

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解

風間未来 十七歳 男 レベル26

天職 英雄

筋力 2,800

体力 3200

耐性 1600

敏捷 2750

魔力 1,100

魔耐 1300

技能 限界突破 神剣の心得[+未来視][+モナドアーツ] 技の一刀 孤軍奮闘 連携の極み 言語理解 天歩[+空力][++爆縮] 魔力感知 気配感知 高速スタミナ回復 先読み 全属性耐性 魔力操作 纏雷 胃酸強化

未来「なんだ?技能が統合されたのか?」

ハジメ「そんなことがあるんだね、縮地はわかりやすいけど、空力と天歩ってなんだろう」

その後2人でうんうん言いながら考えた結果、ハジメが兎が空中を足場にしていたことを思い出し、それに関係する能力なのではないかと言うことになった

その後、2人は眠り、起きてから鍛錬を開始した

未来は新しく手に入れた技能を使いこなすため、ハジメは自分1人でも戦えるようになるために

ハジメとしては未来と並んで戦えるようになりたいらしい

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

迷宮の通路を、姿を霞かすませながら高速で移動する影があった。

 

 ハジメと未来である。〝天歩〟を完全にマスターし、〝縮地〟で地面や壁、時には〝空力〟で足場を作って高速移動を繰り返し宿敵たる爪熊を探していた。

ハジメ「未来くんは手を出さないでくれる?」

未来「なんでだ?」

ハジメ「どうしても自分でやりたいんだ、僕の右腕をこんなにしたわけだし・・・他にも色々と思うところがあるんだ」

未来「もうその腕使い物にならないもんな、わかった」

数分後、爪熊を見つけた未来に切られた傷はすでに塞がっていたが、手負いの獣特有の危険な雰囲気が漂っていた

爪熊は未来を見た途端に敵と認識して襲い掛かった

しかしその前にハジメが立ち塞がる

ハジメ「今回は僕が相手だ、もう僕は怯えてるだけの餌じゃない」

爪熊「グルルァ!」

爪熊が咆哮と共に腕を振るう、その瞬間ハジメのいた地面が抉り飛ばされた、爪熊の固有魔法は腕を切り落とされ、死の淵にたったことで強化されていたのである

しかし、巻き上がった土煙が晴れた時、そこにあったのは見る影もなくズタズタになったハジメの腕だけだった

ハジメ「これで決まりだよ」

ハジメは自分の役目を果たさなくなった腕を瞬時に引きちぎり、囮りにしたのである、

爪熊を飛び越えて後ろに立ったハジメがドンナーを向けながら言う

ドパン!

爪熊の頭は吹き飛ばされた

未来「おい!何やってんだ!」

ハジメ「ごめん、でも、本当はこうなるべきだったと思うんだ、もしあの時、未来が援護してくれなきゃ僕は確実に左腕を喪ってた、しかもあの場から僕は逃げ出した、だから、ここで引きちぎってしまうくらいの覚悟がないとこれからも未来くんに依存してしまうと思ったんだ」

未来「過去との決別ったったってもっと他にやりようあっただろ!?何考えてんだ?!」

ハジメ「ごめん・・・・」




いやー最近、自分の文を見直す機会があったのですが、結構矛盾してますね、僕、でも今更話の流れも変えられるわけでもないんでそのまま行きます、あと、恵理の一人称って自分の名前でしたね、完全に僕っ子だと思ってました、でもこれもこのまま行きます、なぜなら作者が僕っ子好きだから


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奈落の底の吸血姫

お久しぶりです、くろからです、誠に申し訳ない、少し設定を書き直したことで非常に遅れてしまいました、ではどうぞ


その後ハジメと未来は快進撃を続け、殺した魔物を喰らいながら下へ下へと進んだ

ハジメ「またきたよ!」

未来「よしきた!モナド『魔』!」

ドパン!

ドドパン!

未来「様になってきたな、」

ハジメ「未来に当てるわけにはいかないからね」

そこからさらに三十五階層ほど進んだところで

 

周囲から明らかに浮いた雰囲気の扉を発見した

脇道を抜けた先に高さ三メートルほどの装飾が施された荘厳な両開きの扉があり、その扉の脇には二対の一つ目の巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していた。

二人はその空間に足を踏み入れたとたん悪寒が走るのを感じ、いったん引いたのである、もちろん準備を整えるためで避けるつもりは毛頭なく、そのようやく現れた”変化”を調べようとしていた。

未来「さてと、鬼が出るか蛇がでるか」

ハジメ「まるでパンドラの箱だね」

未来「だったら希望をなんとしても勝ち取ってやるぜ」

自分たちの持てる技術と武器、そして技能を一つ一つ確認した、コンディションは万全、確固たる覚悟を持ってハジメがドンナーを抜く、

ハジメ「僕たちは・・・・・何があろうともみんなのところへ帰る!」

 

 

扉の部屋にやってきたハジメたちは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にやってきた、近くまでやってきたので以前とは違って細かい装飾や中央にある窪みをみつけた。

ハジメ「結構勉強したつもりだけど・・・・・こんな式は見たことがないよ」

ハジメは地上にいたころ、自らの能力の低さを補うために座学に力を入れていた、もちろん全ての課程を終えたわけではないが、一切読み取れないのはいささかおかしい

未来「相当古いってこった、モナド『斬』!」

ハジメ「ええっ!?!」

ズドォォォン

重厚な扉が光の刃によって切り裂かれ、大きな音を立ててゆっくり崩れ落ちる

ハジメ「ええ・・・・頑張って解読するとかじゃないの?雰囲気的にさ」

未来「俺にそんな趣味はない、さっさと行くぞ!」

〜〜〜〜

完全に扉が開け放たれているため、手前の部屋の明かりで部屋の全容がわかる、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

 その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

???「・・・・・だれ?」

かすれた、弱々しい少女の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

ハジメ「人……なのか?」

 

 〝生えていた何か〟は人だった。

 

 上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

 流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメをジッと見つめていた。見惚れていたとも言う、その様子を見ていた未来は決然とした表情で告げた

 

未来「すみません。間違えました」

ハジメ「ちょっと待った?!」

未来「やだね」

ハジメ「ハア?」

未来は鬱陶しそうに語った

未来「あのな、そこら辺にある野良猫拾うのとは訳が違うぞこんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。という訳で……」

未来が初めの襟首を引っ掴んで引っ張って行こうとしたその時

「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裏切られただけ!」

その言葉が未来の心を動かした

どうやら、同じような境遇の少女を見捨てない程度の良心は残っていたらしい

少女は呆然と2人を見つめていた

未来「おい、さっさと言え、早くしないとでてくぞ」

ハジメ「おい!」

 

ハッと我を取り戻し、女の子は慌てて封印された理由を語り始めた。

 

???「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ハジメは尋ねた。

 

ハジメ「君は、どこかの国の王族だったかい?」

???「……(コクコク)」

ハジメ「殺せないってなんだい?」

???「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

未来「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

???「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

 ハジメ「なるほどな~」

 

 ハジメも魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 

 ただ、ハジメの場合、魔法適性がゼロなので魔力を直接操れても巨大な魔法陣は当然必要となり、碌に魔法が使えないことに変わりはない。

 

だが、この少女のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。何せ、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、勝負にならない。しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも勇者すら凌駕りょうがしそうなチートである。

 

???「……たすけて……」

 

 ハジメが一人で思索に耽ふけり一人で納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。

 

ハジメ「……」

 

 ハジメはジッと女の子を見た。女の子もジッとハジメを見つめる。どれくらい見つめ合っていたのか……

未来「おい、ハジメ」

見かねた未来が声をかけると

ハジメ「もし止めるのなら僕は君と戦わなくちゃいけない」

未来「そうか」

そしてハジメがおもむろに立方体に手をかける

 

???「あっ」

 

 少女がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。

 

 ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、いや濃い紅色の魔力が放電するように迸る。

 

 しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるでハジメの魔力に抵抗するように錬成を弾いた。迷宮の上下の岩盤のようだ。だが、全く通じないわけではないらしい。少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っていく。

 

ハジメ「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の僕なら!」

 

 ハジメは更に魔力をつぎ込む。詠唱していたのなら六節は唱える必要がある魔力量だ。そこまでやってようやく魔力が立方体に浸透し始める。既に、周りはハジメの魔力光により濃い紅色に煌々と輝き、部屋全体が染められているようだった。

 

 ハジメは更に魔力を上乗せする。七節分……八節分……。女の子を封じる周りの石が徐々に震え出す。

 

ハジメ「まだまだぁ!」

 

 ハジメは気合を入れながら魔力を九節分つぎ込む。属性魔法なら既に上位呪文級、いや、それではお釣りが来るかもしれない魔力量だ。どんどん輝きを増す紅い光に、少女は目を見開き、この光景を一瞬も見逃さないとでも言うようにジッと見つめ続けた。

 

 ハジメは初めて使う大規模な魔力に脂汗を流し始めた。少しでも制御を誤れば暴走してしまいそうだ。だが、これだけやっても未だ立方体は変形しない。ハジメはもうヤケクソ気味に魔力を全放出してやった。

 

しかし、全力で魔力を放っているわけではない、たしかに未来の言い分も理解できたからだ

 

助けられないのか

そう思った時、未来が口を開いた

未来「助けるって決めたんだろ?なら、俺のことなんか気にせず突き進めよ、迷うな、南雲」

 

ハジメ「そうだね」

ハジメが目を見開くと、ハジメ自身が紅い輝きを放ち始めた。正真正銘、全力全開の魔力放出。持てる全ての魔力を注ぎ込み意地の錬成を成し遂げる!

 

 直後、女の子の周りの立方体がドロッと融解したように流れ落ちていき、少しずつ彼女の枷を解いていく。

 

 それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力がないらしい。

 

 ハジメも座り込んだ。肩でゼハーゼハーと息をし、すっからかんになった魔力のせいで激しい倦怠感に襲われる。

荒い息を吐き震える手で神水を出そうとして、その手を少女がギュッと握った。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。

 

 ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

 そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

???「……ありがとう」

 

未来「雰囲気を壊して悪いが、お客さんだぜ?」

ハジメ「!!」

未来「おそらくはその子が万が一自力で逃げ出した時のための保険ってとこか、全く用意周到なこった」

そう言いながら真上を見上げる

ハジメは少女を抱えて全力で縮地を行使する

???「あっ・・・・」

さっきまで自分隊がいた場所には5メートルほどの尻尾が二本に分かれたサソリがいた

???「あの人は」

ハジメ「大丈夫、・・・・未来はびっくりするぐらい強いから」

未来「いやぁ、なかなかだな、こいつ、ハジメ、手出しすんな、」

ハジメ「えっ・・・」

未来「運動するにはちょうどいい」

そこにあったのは元々の端正な顔からは想像することができないほどの獰猛な笑みだった

 




次回はサソリもどきと未来の戦いからですね


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封印部屋の化け物

激烈長くしてみた、遅れたし


未来「モナド『疾』!」

未来のアーツが発動したのとサソリもどきの尻尾から液体が発射されたのはほぼ同時だったかなりの速度で飛来するそれを余裕を持ってかわす、着弾した液体はジュワーだと言う音を立てて床を溶かしている、強酸性の液体のようだ

未来はそれに目もくれずに大きくかがんで、一気に飛び上がった

未来「シッ!!」

そこからは謎の少女の目にはもちろん、魔物の肉を食ったことでステータスが間違えるほど強化された筈のハジメの目にさえ映ることはなかった

ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

封印部屋に未来の踏み込みの音だけだ不気味に鳴り響く、そして流石のサソリもどきも反応できないのか、困惑しているように見える、そうこうしているうちにサソリもどきの足が一本切り飛ばされた

サソリもどき「ギィィィィィィ!?」

サソリもどきは苦痛の叫びを上げ、ハサミを振るがそれは虚空を切り裂くのみ、

そこからはさほど時間はかからなかった、徐々にサソリもどきの足が切り飛ばされていき、尻尾も切り飛ばされると、おびただしい量の紫色の血を噴水のように吹き出しながらダルマになったサソリもどきは果てた

???「なに・・・あれ・・・」

ハジメ「うわっ・・・本気でやったらこうなるのか・・・すごいな」

未来「大分硬かったけど、それだけだな、爆縮と『疾』で合わせればかなりのスピードになるなー、ちょっとクラクラする」

ハジメ「いや、それだけで済むのはおかしいでしょ・・・」

???「名前・・・・なに?」

未来「そーいやまだだったな、俺は風間未来、んでこっちは」

ハジメ「僕は南雲ハジメ、君は?」

少女は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

???「……名前、付けて」

ハジメ「え? 付けるってなんだい?まさか忘れたとか?」

 

 長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、女の子はふるふると首を振る。

 

???「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

ハジメ「……はぁ、そうは言ってもなー」

前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。この少女は自分の意志で変わりたいらしい。その一歩が新しい名前なのだろう。

 

 少女は期待するような目でハジメを見ている。ハジメはカリカリと頬を掻くと、「うーん」とうなると、少しためらいがちに彼女の新しい名前を告げた。

 

ハジメ「〝ユエ〟なんてどう? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるけど……」

???「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

未来「月か」

「そう、ユエって言うのは、僕の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、君のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんだ…どう?」

思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

ユエ「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

未来「おう、取り敢えずだ……」

ユエ「?」

 

 礼を言う少女改めユエは握っていた手を解き、着ていた外套を脱ぎ出す未来に不思議そうな顔をする。

 

未来「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……」

 

 そう言われて差し出された服を反射的に受け取りながら自分を見下ろすユエ。確かに、すっぽんぽんだった。大事な所とか丸見えである。ユエは一瞬で真っ赤になるとハジメの外套がいとうをギュッと抱き寄せ上目遣いでポツリと呟いた。

 

ユエ「ハジメと未来のエッチ」

未来・ハジメ「……」

 

 何を言っても墓穴を掘りそうなのでノーコメントで通すハジメと未来。ユエはいそいそと外套を羽織る。ユエの身長は百四十センチ位しかないのでぶかぶかだ。一生懸命裾を折っている姿が微笑ましい。

 

未来「・・・・ゴホン!さて、取り敢えずこいつ拠点に持ち帰るか」

サソリモドキを倒したハジメ達は、サソリモドキの素材やら肉やらをハジメと未来の拠点に持ち帰った。

 

 その巨体と相まって物凄く苦労したのだが、最上級魔法の行使により、へばっていたユエに血を飲ませると瞬く間に復活し見事な身体強化で怪力を発揮してくれたため、二人がかりでなんとか運び込むことができた。

 

 ちなみに、そのまま封印の部屋を使うという手を未来が提案したのだが、ユエが断固拒否したためその案は没となった。

無理もない。何年も閉じ込められていた場所など見たくもないのが普通だ。消耗品の補充のためしばらく身動きが取れないことを考えても、精神衛生上、封印の部屋はさっさと出た方がいいだろう。

 

 そんな訳で、現在ハジメ達は、消耗品を補充しながらお互いのことを話し合っていた。

 

未来「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

ユエ「……マナー違反」

 

 ユエが非難を込めたジト目で未来を見る。成る程、女性に年齢の話はどの世界でもタブーらしい。

 

 

 記録によると、三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていたはずだ。実際、ユエも長年、物音一つしない暗闇に居たため時間の感覚はほとんどないそうだが、それくらい経っていてもおかしくないと思える程には長い間封印されていたという。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょっとということだ。

 

 

未来「へー、結構若いんだな」

ユエ「・・・・普通は二百歳くらいで死ぬ、私が特別、再生で歳もならない・・・」

ハジメ「感覚おかしくないかい?」

未来「いや、吸血鬼って500年くらいはサクッと行くものかと」

 聞けば十二歳の時、魔力の直接操作や〝自動再生〟の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。

 欲に目が眩んだ叔父が、ユエを化け物として周囲に浸透させ、大義名分のもと殺そうとしたが〝自動再生〟により殺しきれず、やむを得ずあの地下に封印したのだという。

 

 ユエ自身、当時は突然の裏切りにショックを受けて、碌に反撃もせず混乱したままなんらかの封印術を掛けられ、気がつけば、あの封印部屋にいたらしい。

 

 その為、あのサソリモドキや封印の方法、どうやって奈落に連れられたのか分からないそうだ。もしかしたら帰る方法が! と期待したハジメと未来はガックリと項垂れた。

 

 ユエの力についても話を聞いた。それによると、ユエは全属性に適性があるらしい。

ハジメ「なにそれどんなチート?」

ユエ「・・・接近戦は苦手、逃げ回りながら連射するくらいしかできない」

未来「じゃあやりようあるな」

ハジメ「いや、そんなことないでしょ?!」

 〝自動再生〟については、一種の固有魔法に分類できるらしく、魔力が残存している間は、一瞬で塵にでもされない限り死なないそうだ。逆に言えば、魔力が枯渇した状態で受けた傷は治らないということ。つまり、あの時、長年の封印で魔力が枯渇していたユエは、サソリモドキの攻撃を受けていればあっさり死んでいたということだ。

 

ハジメ「それで……肝心の話だが、ユエはここがどの辺りか分かるか? 他に地上への脱出の道とか」

「……わからない。でも……」

 

 ユエにもここが迷宮のどの辺なのかはわからないらしい。申し訳なさそうにしながら、何か知っていることがあるのか話を続ける。

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

 

 聞き慣れない上に、なんとも不穏な響きに思わず錬成作業を中断してユエに視線を転じるハジメ。見張りをしていた未来も振り向く、ハジメの作業をジッと見ていたユエも合わせて視線を上げると、コクリと頷き続きを話し出した。

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

 ユエは言葉の少ない無表情娘なので、説明には時間がかかる。ハジメとしては、まだまだ消耗品の補充に時間がかかるし、サソリモドキとの戦いで攻撃力不足を痛感したことから新兵器の開発に乗り出しているため、作業しながらじっくり聞く構えだ。

 

 ユエ曰く、神代に、神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属がいたそうだ。しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。

 

 その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。この【オルクス大迷宮】もその一つで、奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

未来「……そこなら、地上への道があるかも……」

ハジメ「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことね」

 

 見えてきた可能性に、頬が緩むハジメ。再び、視線を手元に戻し作業に戻る。ユエの視線もハジメの手元に戻る。ジーと見ている。

 

ハジメ「……そんなに面白いかな?」

 

 口には出さずコクコクと頷くユエ。だぶだぶの外套を着て、袖先からちょこんと小さな指を覗かせ膝を抱える姿はなんとも愛嬌があり、その途轍もなく整った容姿も相まって思わず抱き締めたくなる可愛らしさだ。

 

ハジメ(だけど、三百歳。流石異世界だね、ロリババアが実在するとは……)

ユエ「ハジメ、今何か変なこと考えた?」

ハジメ「え?!あっ、なにも?」

とぼけて返すハジメだが、ユエの、というより女の勘の鋭さに内心冷や汗をかく。黙々と作業することで誤魔化していると、ユエも気が逸れたのか今度はハジメに質問し出した。

 

ユエ「……ハジメと未来、どうしてここにいる?」

 

 当然の疑問だろう。ここは奈落の底。正真正銘の魔境だ。魔物以外の生き物がいていい場所ではない。

 

 ユエには他にも沢山聞きたいことがあった。なぜ、魔力を直接操れるのか。なぜ、固有魔法らしき魔法を複数扱えるのか。なぜ、魔物の肉を食って平気なのか。左腕はどうしたのか。そもそもハジメと未来は人間なのか。ハジメが使っている武器は一体なんなのか。

未来「俺の武器については聞かないのか?」

ユエ「その剣は知ってる、今聞こうと思ってた、その剣は世界と人間を創った巨神の剣、魔神との戦いに使われた、その剣をなんで扱える?」

未来「こいつが俺を選んだから」

ユエ「・・・・それじゃ説明になってない」

未来「それ以上の説明はできないなぁ」

ユエ「・・・・じゃあそれでいい」

未来「次はおまえの番じゃないか?ハジメ」

ハジメ「え?ああ、うん」

ハジメが、仲間と共にこの世界に召喚されたことから始まり、一部から無能と呼ばれていたこと、ベヒモスとの戦いでクラスメイトの誰かに裏切られ奈落に落ちたこと、魔物を喰って変化したこと、爪熊との戦いと願い、ポーション(ハジメ命名の神水)のこと、故郷の兵器にヒントを得て現代兵器モドキの開発を思いついたことをツラツラと話していると、いつの間にかユエの方からグスッと鼻を啜るような音が聞こえ出した。

 

未来「いきなりどうした?」

ユエ「……ぐす……ハジメ……つらい……私もつらい……」

 

 どうやら、ハジメのために泣いているらしい。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。

ユエ「ハジメと未来は・・・クラスメートを恨んでないの?」

ハジメ「うーん、どうなんだろう、でも未来が言うには」

未来「多分恨む必要がない、火球を打ったやつ、多分檜山だろうが、光輝がこってり絞ってるはずだし、少し心配だが、光輝と刃がいりゃ大丈夫だろー」

ユエ「・・・2人とも、強い、じゃあ、ここを出たら仲間のところに戻る?」

未来「まあそうだ」ハジメ「違う」

未来「え?」

ハジメ「僕たちは力を持ちすぎたんだ、多分異端認定される、だからクラスメートとは別口で元の世界に戻る方法を探そうと思う」

未来「おまえそんなこと考えてたのか」

ハジメ「初めは香織さんのところに戻ろうと思ってたけどね」

ユエ「・・・誰?」

ハジメ「・・・僕と友達になろうとしてくれた人だよ、とても優しくしてくれた」

未来(おい、こいつ気付いてねーのか?)

ユエ「・・・そう、帰るの?」

ハジメ「うん? 元の世界にかい? そりゃあ帰るよ。帰りたいよ。……色々変わっちゃったけど……故郷に……家に帰りたい……」

ユエ「……そう」

 

 ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

ユエ「……私にはもう、帰る場所……ない……」

未来・ハジメ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「じゃあ、一緒に来るかい?」

未来(おい、戸籍とかどうする気だこいつ)

 

ユエ「え?」

 

 ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、なんとなく落ち着かない気持ちになったハジメは、少し顔を赤らめた

 

ユエ「いいの?」

ハジメ「今言ったじゃないか」

キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微笑んだ。思わず、見蕩れてしまうハジメ。呆けた自分に気がついて慌てて首を振った。

 

 なんとなくユエを見ていられなくて、ハジメは作業に没頭することにした。ユエも興味津々で覗き込んでいる。但し、先程より近い距離で、ほとんど密着しながら……

 

 ハジメは気にしてはいけないと自分に言い聞かせる。

 

ユエ「……これ、なに?」

 

 ハジメの錬成により少しずつ出来上がっていく何かのパーツ。一メートルを軽く超える長さを持った筒状の棒や十二センチ(縦の長さ)はある赤い弾丸、その他細かな部品が散らばっている。それは、ハジメがドンナーの威力不足を補うために開発した新たな切り札となる兵器だ。

未来「ほーん、対物ライフルか」

ハジメ「そう、ドンナーはもう見せたよね?アレの強化番だよ、球も特別製、」

ハジメ「まず口径を大きくして、弾を大きくして、銃身を伸ばしてみたんだ、装填数は一発だけど、理論上はあのロシアのKSVKよりも威力が出るはずなんだ、弾丸には」

ユエがキョトンとしていた

未来「おい、落ち着け」

ハジメ「あっ、ごめん」

 説明が途切れてしまったがこの新たな対物ライフル――シュラーゲンは、理屈上、最大威力でドンナーの更に十倍の威力が出る……はずである。

 

 素材はなんとサソリモドキだ。ハジメが、あの硬さの秘密を探ろうとサソリモドキの外殻を調べてみたところ、〝鉱物系鑑定〟が出来たのである。

 

====================================

シュタル鉱石

魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石

====================================

 

 どうやら、サソリモドキのあの硬さはシュタル鉱石の特性だったらしい。おそらく、サソリモドキ自身の膨大な魔力を込めに込めたのだろう。

 

ハジメ「そーいえば、錬成したら割と簡単に加工できたよ」

未来「あれ?俺の戦い時間の無駄だった?」

ユエ「・・・・そう言うことになる」

未来の精神に痛恨の一撃!!!

未来は流れるようにorzした!

これはそっとしておいた方がいいだろう

ハジメ「そういえばユエは飢餓感とか感じないのかい?」

ユエ「感じる、でももう大丈夫」

ハジメ「大丈夫? 何か食ったの?」

 

 腹は空くがもう満たされているというユエに怪訝そうな眼差しを向けるハジメ。ユエは真っ直ぐにハジメを指差した。

 

ユエ「ハジメの血」

ハジメ「ああ、俺の血。そっか、吸血鬼は血が飲めれば特に食事は不要か?」

ユエ「……食事でも栄養はとれる。……でも血の方が効率的」

 

 吸血鬼は血さえあれば平気らしい。ハジメから吸血したので、今は満たされているようだ。なるほど、と納得しているハジメを見つめながら、何故かユエがペロリと舌舐りした。

 

ハジメ「……その舌舐めずりはなに?」

ユエ「……ハジメ……美味……」

ハジメ「び、美味って・・・・僕の体なんて魔物の血肉を取り込みすぎて不味そうな印象だけど……」

ユエ「……熟成の味……」

ハジメ「……」

 

 ユエ曰く、何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような濃厚で深い味わいらしい。

 

ハジメ( そういえば、最初に吸血されたとき、やけに恍惚としていたな)

 

 ただ、舌舐りしながら妖艶な空気を醸し出すのはやめて欲しいと思うハジメ。こういう時、ユエが年上であることを実感してしまうのだが、幼い容姿と相まって、なんとも背徳的な感じがしてしまい落ち着かない事この上ないのだ。

 

ユエ「……美味」

ハジメ「……勘弁してくれ」

 

 いろんな意味で、この新しい仲間はヤバイかもしれないと、若干冷や汗を流すハジメであった。

 

 

 

 




おまけ(本編とは何の関係もありません)

香織「……チッ」
雫 「!? か、香織? 今舌打ちを……」
香織「え? どうしたの雫ちゃん」
雫 「い、いえ。なんでも……」
香織「……泥棒猫め」
雫 「香織!?」
香織「フフ、大丈夫だよ、雫ちゃん。ちょっと自分のポジションが脅かされているような気がしただけだから」
雫 「それは大丈夫とは言わないと思うわ……」



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地上では

はい、あまりに長くなりそうだったんで切りました


〜ハジメ達がユエと出会った頃、王都にて〜

メルド「明日、もう一度『オルクス大迷宮』に潜る、かなりメンバーが減ってしまったが、気を引き締めておけ」

光輝「はい、わかりました」

犯人は判ったものの、ハジメの死が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまった。〝戦いの果ての死〟というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

 

当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生と光輝だ。

 愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。愛子がいれば、糧食問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。

 

 そんな愛子はハジメの死亡を確認してからショックのあまり寝込んでしまっていたが、残った生徒を必ず地球に返すためにこれ以上戦えないと言う生徒を戦場に出すわけにはいかなかったのである。

光輝は、愛子先生の責任感の強さに感嘆しながらも、未来との計画を実行に移した。

それはクラスメートを迷宮攻略を通して訓練を続けるチームと愛子の護衛をするチームに分けることである、愛子の天職「作農士」はこの世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである、故に、国中を回って農地改革をする予定であった

光輝は、兵站を愛子1人の能力に頼ろうとしている今の状況で、もうほとんどの騎士団員よりもステータスにおいて勝り、気心もしれている自分達転移者のほうが護衛に向いているはずだと熱弁したのだ。

 

愛子先生と転移者で最強の戦闘能力を持つであろう光輝との関係の悪化を避けたい教会は渋々了承した。

 結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。

しかしここで原作と違う点が一つ二つ

鈴「エリリン?無理しなくていいんだよ?」

恵理「ううん、大丈夫、奥に行けば、何か刃を目覚めさせるきっかけになるようなアーティファクトがあるかもしれないしね」

鈴「うん、エリリン、変わったね」

恵理「そうかな?僕は僕だよ」

恵理はその背中に自分の身の丈より長い太刀、「赤鋼怨獄丸」を背負いながら親友の鈴と話していた。

恵理は自分のパーティーメンバーが愛子護衛組に行ってしまったため、永山重吾のパーティーに入って迷宮攻略に参加することになっていた。

刃を助けるためには、強くならなければならないと思った結果である。

ちなみに彼女のステータスは

中村恵理 十七歳 レベル15

天職 巫女

筋力:80

体力:100

耐性:110

敏捷:80

魔力:200

魔耐:130

巫術 巫剣 降霊術[御霊降し]闇属性適正[降霊術連動]光属性適正[]回復魔法[回復効果上昇]結界術適正[効率上昇]神憑き 影憑き ■■■■■

彼女もまた、記録にない天職だったが、試行錯誤しながら鍛錬を重ね、様々な派生技能を手にしていた

恵理「そーいえば、この文字化けなんなんだろう・・・・刃が眠ってから見てみたらこうなってたんだよね・・・神憑きとか影憑きとかもまだ効果わかんないし、僕ちゃんと戦えるかなぁ」

鈴が行ってから、若干不安になる、彼女の心にもまた、最初の攻略で影が落ちていた

恵理「・・・・・ううん、こんなので不安になってたら、刃に笑われちゃうね」

恵理「ほんと、こう見てると、すぐ起きてきそうな感じなんだけどなぁ」

刃は、相変わらず眠りについていた、起きる気配はないが、恵理は毎日この部屋に来ていた

恵理(寝てるんだし、ちょっとくらい・・・)

恵理「・・・・ううん、起こしてからちゃんと言うんだ、だからこれはまだ取っておかなくちゃね、刃・・・必ず起きてもらうから、覚悟しといてね、行ってくるよ」

〜〜〜〜〜〜

メルド「優花はこの探索が最後なのか」

優花「すみません、無理を言ってしまって」

メルド「構わないさ、檜山の本質を見抜き、未然に防ぐことができなかった俺たちにも非はあるからな」

優花「すみません、もう一度だけ迷宮に入りたいなんて言ってしまって・・・」

優花はもう一度迷宮に潜り、そのあと先に発った愛子達多いかける予定だった、優花たっての希望である、今回は六十五層まで挑戦すると聞いて、いてもたってもいられずに申し出た、「もう一度潜らせて欲しい」と、その理由はベヒモスを倒すため・・・とはいかなくとも一矢報いるためである

〜7日後〜

現在の階層は六十層、最高到達点まであと五層、そして、クラスメートに深い傷を残した場所である、そこにはあの悪夢を思い出させるように断崖絶壁に吊り橋がかかっていた、そしてそこには立ち塞がるように迷宮の機能によって復活したベヒモスが立ち塞がっていた

優花「今度は・・・・」

恵理「援護は任せて、倒しても刃が戻ってくるわけじゃないけど、倒す」

鈴「さーて!未来くん達を探すためにもさっさと倒しちゃおうか」

光輝「作者さん、その台詞はぼくが言うべきでは・・・」

うるせえ野郎が言ってもロマンがねーんだよ!

ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!

雫「何言ってるの光輝?さっさと行くわよ!」

そうこうしているうちにトウラムソルジャーや、この階層の他の魔物達

も集まってきた

龍太郎「成る程、こいつがここの主ってわけか!光輝!雑魚は任せろ!

背中は任せたぜ!重吾!」

重吾「あいわかった、任せろ」

光輝「鈴、あっちの援護を頼む、」

鈴「あいはーい♩」

光輝「行くぞ!」

光輝「万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃〟!」

曲線状の光の斬撃がベヒモスに轟音を響かせながら直撃する。以前は、〝天翔閃〟の上位技〝神威〟を以てしてもカスリ傷さえ付けることができなかった。しかし、いつまでもあの頃のままではないという光輝の宣言は、結果を以て証明された。

 

「グゥルガァアア!?」

 

 悲鳴を上げ地面を削りながら後退するベヒモスの胸にはくっきりと斜めの剣線が走り、赤黒い血を滴らせていたのだ。

光輝「よし!後衛は魔法詠唱開始!高位で頼む!前衛はベヒモスを撹乱!足を攻撃して自由を奪え!」

雫「様になってるじゃない」

光輝「いつまでもウジウジしちゃいられない!こんなところで立ち止まらないから」

その時光輝と雫に向けられた敵意を感じ取り、2人はその場から飛び退く

スガァン!

迷宮の床を抉るほどの怪力に臆せずパーティーは立ち向かう

雫「全てを切り裂く至上の一閃 〝絶断〟!」

 

 雫の抜刀術がベヒモスの角に直撃する。魔法によって切れ味を増したアーティファクトの剣が半ばまで食い込むが切断するには至らない。

 

雫「ぐっ、相変わらず堅い!」

メルド「任せろ!爆砕!」

 メルド団長が飛び込み、半ばまで刺さった雫の剣の上から自らの騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に腕力をも強化した鋭く重い一撃が雫の剣を押し込むように衝撃を与える。

 

 そして、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた。

 

ベヒモス「ガァアアアア!?」

 

 角を切り落とされた衝撃にベヒモスが渾身の力で大暴れし、永山、龍太郎、雫、メルド団長の四人を吹き飛ばす。

 

香織「優しき光は全てを抱く 〝光輪〟!」

 

 衝撃に息を詰まらせ地面に叩きつけられそうになった四人を光の輪が無数に合わさって出来た網が優しく包み込んだ。香織が行使した、形を変化させることで衝撃を殺す光の防御魔法だ。

 

 香織は間髪入れず、回復系呪文を唱える。

 

香織「天恵よ 遍く子らに癒しを 〝回天〟」

 

 詠唱完了と同時に触れてもいないのに四人が同時に癒されていく。遠隔の、それも複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ。以前使った〝天恵〟の上位版である。

 

 光輝が突きの構えを取り、未だ暴れるベヒモスに真っ直ぐ突進した。そして、先ほどの傷口に切っ先を差し込み、突進中に詠唱を終わらせて魔法発動の最後のトリガーを引く。

 

光輝「〝光爆〟!」

ベヒモス「グガァァァア!」

ベヒモスは苦しんでいるがまだ致命傷には至っていないそれどころか全身に血の筋を浮かび上がらせ怒り狂っていた

雫「めちゃくちゃ怒ってるわね・・・・ほんとに効いてるの?」

光輝「かすり傷ひとつつけられなかったあの時に比べればマシだ!あいつも生きている以上!攻撃を与え続ければ勝機はある!」

ベヒモス「グガァァァア!」

怒り狂ったベヒモスは頭を赤く光らせ突進してきた

光輝「回避!」

ベヒモスの愚直なまでの突進を、散開することで回避した一行は次なる一手を打つ

優花「そこっ!」

ベヒモスの頭が迷宮の外壁にめり込み止まる、その気を見逃さず優花がナイフを目に向かって投げる

ベヒモス「ガァァァァァァァァァァァァ!」

見事ベヒモスの目をつぶし、痛みの悲鳴を上げる魔獣

恵理「ありがとう、巫剣頭封斬!」

恵理のステータスではかすり傷しかつけられないが、この技の真価はその効果にある、この技能は巫剣に属するもので、魔力の流れを阻害し、頭に関する技能を封ずるものである

すなわち

ベヒモス「グガ?」

振り返ってもう一度突進しようと身構えても、体の魔力は霧散する、

ここでベヒモスの敵意が優花と恵理に切り替わる、傷としては雫が切り飛ばしたツノに及ぶべくもないが、己の体の機能を奪い去ったことが、彼に2人の少女を最大の脅威として認識させた

ベヒモス「グガァァァア!」

力任せに振り抜かれた巨腕は華奢な体を木の葉のように吹き飛ばした

光輝「!!!!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

刹那、光輝の体が魔力光で光かがやく、

技能『限界突破』

魔力の出力を一時的に上昇させることでステータスを膨れ上がらせる技能、反面効果が切れたあとは相応の対価を伴う

雫「光輝!ああ、もう!」

彼らは後戻りのできない戦いに突入した

 




はい、恵理は原作よりも結構状況が違うんで天職変わりました、元にしたのは世界樹の迷宮のドクトルマゲスです、他にも色んなキャラの天職変わったり、ステータス振り変わったりしてます


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隠し部屋

どーも、オリキャラのヒロイン2人を強化します


吹き飛ばされた場所は、少し大きな部屋で、数多の武器が散乱していた、

恵理「んん・・・ここは?あっ!・・・あーぁ・・・」

事前に巫術 皮硬化を使っていたことと、咄嗟に剣を盾にして威力を弱められたことで助かったらしい、全身がバラバラになりそうなほど痛かったが、しかし、国の宝物家からもらった剣は見る影もなくひしゃげ、ところどころにヒビが入っていた、これではもう使い物になりそうにない

恵理「うわぁ、これは・・・」

なんの思い入れもない、むしろ刃が倒れてからは何故か使いにくかったが、王国の人には申し訳ないと思った、武器が壊れてしまっては戦えないので、痛む体に巫術をかける

恵理「巫術 『胎動』」

少し頭が和らいだ

恵理「いてて・・・やっぱり香織ちゃんみたいにはいかないか・・・」

恵理「優花ちゃんはどこに行ったんだろう?」

その時、後ろから巌のような声が響いた

???「其方のような女子がこのような場所に何用か」

恵理「え?」

???「兄者、可憐な娘にそのような硬い喋り方をしてどうするのだ、」

???「お前もいえたものではない、弟よ」

恵理「ええっと・・・どこ?」

何もない場所から声が聞こえた、幻聴か?と思った矢先、答えが返ってきた

???「目の前におる」

恵理「え?まさか・・・これ?」

喋っていたのはありの目の前に突き刺さった巨大な二対の半月刀らしい、刃は鋸のようになっており、つかの先に顔のような装飾が施されている

???「いかにも、ところで其方、武器が壊れてしまったようだな」

恵理「え?まあ・・・」

???「我らを使ってはくれまいか?」

恵理「え?うーん、ぼくには大きすぎるよ」

???「問題ない」

そう言うと半月刀は恵理にも使いやすい大きさに縮んだ

恵理「なんか、ゲームみたいだなぁ、でもなんで?ぼくなんかに」

???「なに、其方のような小柄な娘で、しかも、最近闘いを知ったとなれば、心配になるものだ、老婆心のようなものよ」

恵理「そんなことまでなんでわかるの?」

???「何千年と生きてきたのだ、色々な顔を見るのよ」

恵理「そんなものかい?まぁ、わかったけど、多分、うまく使えないよ?」

???「なに、其方が為そうとしていることに比べれば、安いものよ」

恵理「・・・・調子崩れるなぁ」

???「ふふふ、そうか、だが、礼を言いたい」

???『我々は長い間待っておったのだ」

???『そう、待っていたのだ』

???『われらを使うにふさわしきものを』

???『覚悟を持ったものを』

???『我が名アグニ』

???『我が名はルドラ』

アグニ『我らを使うがいい』

アグニ・ルドラ『『我ら兄弟が其方の刃となろう』』

恵理「わかった、でも一つ条件をつけさせて」

アグニ「なんじゃ」

ルドラ「言ってみろ」

恵理「ぼくの目的は秘密にしてね?」

アグニ・ルドラ「よかろう、汝がそれを望むなら」

ズッ

恵理はアグニとルドラを引き抜いた

アグニ「ほう・・・」

ルドラ「兄者、これは・・・」

恵理「どうしたの?」

アグニ「我らは良い使い手に巡り会えたらしい、」

ルドラ「娘、我らを振うてみよ、その心の赴くままに」

その言葉とともに体が浮いたような感覚に襲われる、まるで鬼に抱かれているようだ、だが不思議と気分が良い

恵理「あぁ・・・・」

恍惚とした表情で剣舞が始まる、

剣閃が武具を薙ぎ、風が空を斬る、火炎が焼き焦がす

心地よい、あぁ、心地よい、

魂の赴くまま剣を振る

それは舞、火炎と風爪が焼き裂く巫女の舞、それは彼女が愛する鬼に捧げられる激しくも哀しい虚な舞である

ひとしきり待った後、恵理は双剣に問うた

恵理「なんで・・・?ぼく、武術なんてやったことないよ・・?」

アグニ「ふふふふふ・・・其方は愛されているな・・・・」

ルドラ「何、疑問に思うことはない、それが望んだ結果とは違えていようが、貴殿の目標の助けになろう」

〜〜〜〜〜少し時を戻して〜〜〜〜〜〜

優花「いったぁい、でも、恵理のおかげで助かったわね」

優花「恵理は・・・・別の場所か、」

優花の目の前には悪魔の翼の様な意匠のおかしなものがあった

優花「えぇ・・・何この悪趣味なデザイン・・・」

そして興味本位でそれを触ると

優花「ヴっ?!」

魔力回路を別の魔力が駆け巡る

別人の魔力が体を駆ける不快感に耐えていると、徐々に不快感が引いていった

完全に不快感が収まると、自分の背中に重みを感じて首を後ろを向けると、背中に先ほどのおかしなものが背負われていた

優花「えぇ?!これってどうゆう・・・!」

「どうゆうこと」と言い切る前に、何かが頭に流れ込んできた

その映像は赤い外套を着た青年が背にあるものから細剣を次々に取り出し、投げていく映像だ、映画なので、何を言っているのかわからないが、その動きは大人の遊びのような妖艶さがあった

優花「ふぅん、私に使えってことね?」

こんこんと壁を叩きながら1人ごちる

向こう側は空洞になっているようだ

優花「あの人みたいには行かないけど、私にはピッタリの武器かもね」

その言葉とともに背中の魔具『無尽剣ルシフェル』が翼のように展開し、そこから鍔の無い簡素な剣が飛び出した

優花はそれを取り出し壁に向かって次々と投げる

剣がダーツのように飛んでいき深々と突き刺さる

優花「これでいいかしら」

そう言うと優花はおもむろに指を弾いた

すると小気味良い音を立てて剣が爆発し、壁に大きな穴が空いた

その先には魔法陣と、恵理がいた

優花「うん、上出来ね」

恵理「カッコいい・・・・!」

 

 




デビルメイクライより『炎風剣アグニ・ルドラ』と『無尽剣ルシフェル』が登場、優花は、もう一つのアレを持たせても良かったんですが、なんか違うと思ってやめました


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トラウマを超えて

おひさー!


「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

怒りのままに放たれた光輝最大の技がベヒモスを飲み込んだ

ベヒモス「ご・・・ガ・・・・」

限界突破で強化された神威に耐えきれず、ベヒモスは倒れた、

光輝「はぁっ・・・・はあっ・・・・優花と恵理は・・・瓦礫を退けて・・・必ず助ける・・・もう誰も死なせるわけには」

ふらふらになりながらも優花と恵理が吹き飛ばされた方向に向かおうとする

雫「だめ!光輝は休んでて、その体じゃまともに動けないでしょ、」

パーティー総出で捜索していると、声が聞こえてきた

恵理「みーんーなー」

雫「!よかった!」

そうして汗だくになりながら掘り起こすと、メルド団長が声を上げた

メルド「よし!これで今回の攻略はここまでだ!上に戻るぞ!」

~~~~迷宮入り口~~~~~

光輝「くそ・・・・こんなんじゃダメだ・・・・もっと強くならないと・・」

メルド「そう焦るな、確実に強くなっているぞ」

鈴「その剣はなあに?エリりん?」

アグニ「見ての通りすこし喋れるだけの剣だ」

ルドラ「その通り」

鈴「うわぁ!」

ルドラ「そう驚くな」

メルド「その剣は・・・魔具か」

恵理「え?そんな呼び方あるんですか」

メルド「ああ、神代のアーティファクトにそう呼ばれるものがいくつかある」

恵理「じゃあ、優花ちゃんのも・・・」

優花「えぇ?いやよ恥ずかしい」

鈴「ぇえ?なに何?鈴さんすっごく興味がありますよ?」

キラキラした目で見つめられた優花は、照れ臭そうに顕現させた

鈴「おぉ〜」

優花「はぁ・・・・やっぱり呪いの武器なんじゃないの?こんな悪趣味な見た目で」

恵理「そんなことないよ、壁壊した時の優花ちゃんすっごくかっこよかったもん!」

優花「そうかな・・・」

鈴「それに雰囲気も少し変わったよ?なんか・・・大人っぽくなった」

雫「言われてみればそうね」

鈴「大人の色気で未来くんもイチコロだね!」

優花「なんでそこで未来が出てくんのよ!」

メルド「こら、遊んでないで宿に戻って休養だ、しっかり休まんと身体が持たんぞ」

〜〜〜裏迷宮〜〜〜〜〜

未来「ヘックシ!!」

ユエ「・・・・・うわさされてる」

ハジメ「君たちすっごいお気楽だね?!今囲逃げてるんだけど?!」

なぜ彼らが絶賛逃走中をしているのかというと・・・

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 二百体近い魔物に追われているからである。

ここに至るまでの経緯を綴ろう。

 ハジメ達が準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調に降りることが出来た。ハジメの装備や技量が充実し、かつ熟練してきたからというのもあるが、ユエの魔法が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。

 

 全属性の魔法をなんでもござれとノータイムで使用し的確にハジメを援護する・・・ときに未来を巻き込みながら、明らかな悪意を感じるが、未来が『盾』で防ぐために不発に終わっている

未来「あ!正面から新手だ!ここは俺が・・・」

ユエ「・・・緋槍」

未来「うお!!?」

頭に可憐な花を咲かせたティラノの頭が吹っ飛んだ

未来「いい加減俺ごと撃つな!」

ユエ「・・・・未来はこのくらい確実に避ける、問題ない、囮としては優秀」

ハジメ「最近僕の出番がないなぁ」

そして最近はユエがいち早く魔物をシュンコロするため2人の出番がない

ユエ曰く「……私、役に立つ。……仲間だから」

要約すると2人の援護だけしているのが我慢できなかった、とゆうことだろう

その時は、ユエが、魔力枯渇するまで魔法を使い戦闘中にブッ倒れてちょっとした窮地に陥ってしまい、何とか脱した後、その事をひどく気にするので慰める意味で言ったのだが……思いのほか深く心に残ったようである。

南雲「はは、いや、もう十分に役立ってるって。ユエは魔法が強力な分、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は僕たちの役目だ」

ユエ「……ハジメ……ん」

 

 ハジメに注意されてしまい若干シュンとするユエ。

未来「おい、そこの夫婦、新手だ」

ハジメ「ちょっと!」

ユエ「夫婦・・・・いい響き」

十体ほどの魔物が取り囲むようにハジメ達の方へ向かってくる。統率の取れた動きに、二尾狼のような群れの魔物か? と訝しみながらユエを促して現場を離脱する。数が多いので少しでも有利な場所に移動するためだ。

 

 円状に包囲しようとする魔物に対し、ハジメは、その内の一体目掛けて自ら突進していった。

 

 そうして、生い茂った木の枝を払い除け飛び出した先には、体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。

 

 頭からチューリップのような花をひらひらと咲かせて。

 

ユエ「……かわいい」

未来「……流行りなのか?」

 

 ユエが思わずほっこりしながら呟けば、未来はシリアスブレイカーな魔物にジト目を向け、有り得ない推測を呟く。

 

 ラプトルは、ティラノと同じく、「花なんて知らんわ!」というかのように殺気を撒き散らしながら低く唸っている。臨戦態勢だ。花はゆらゆら、ふりふりしているが……

 

「シャァァアア!!」

刃渡り二十センチはある鉤爪の攻撃を3人は左右に散開することで回避し、「空力」で三角跳びをしたハジメの銃撃でチューリップが四散した

 

 ラプトルは一瞬ビクンと痙攣けいれんしたかと思うと、着地を失敗してもんどり打ちながら地面を転がり、樹にぶつかって動きを止めた。シーンと静寂が辺りを包む。ユエもトコトコとハジメの傍に寄ってきてラプトルと四散して地面に散らばるチューリップの花びらを交互に見やった。

 

ユエ「……死んだ?」

ハジメ「いや、生きてるっぽいけど……」

 

 ハジメの見立て通り、ピクピクと痙攣した後、ラプトルはムクッと起き上がり辺りを見渡し始めた。そして、地面に落ちているチューリップを見つけるとノッシノッシと歩み寄り親の敵と言わんばかりに踏みつけ始めた。

 

ハジメ「え~、何その反応、どういうこと?」

ユエ「……イタズラされた?」

未来「いや、そんな背中に張り紙つけて騒ぐ小学生じゃねぇんだから……」

未来がそう答えながらラプトルの首を切った

ハジメ「えぇ〜」

ユエ「・・・・・未来、鬼畜」

未来「あ、悪い、隙だらけだったもんで、つい」

ハジメ「いやまぁ、いいんだけど・・・」

未来「エヘぇん、まあ、あれではっきりしたな、あの花で操ってる魔物がいるらしい」

ハジメ「そうだね、この数を相手にするのも面倒だし、頭だけ叩いちゃおうか」

ドトドドドドドドド・・・

 

ハジメ「えーっと・・・」

未来「マジかよ」

ユエ「・・・・どうかした?」

未来「生命反応が二百体ほど接近中・・・」

ユエ「・・・わかりにくい」

ハジメ「二百強の敵がここに向かってる!」

ユエ「・・・・それは大変」

未来「冷静か?!にげるぞ!」

こうして3人は二百体強の魔物を引き連れて迷宮を爆走することになる

時を戻そう

 

未来「やけに必死だな!」

ハジメ「多分親玉に近づいてるんだ!このままいこう!」

ユエ「・・・・ん、美味しい」

ハジメ「定期的に吸血しないで!」

 こんな状況にもかかわらず、ハジメの血に夢中のユエ。元王族なだけあって肝の据わりかたは半端ではないらしい。そんな風に戯れながらもきっちり迎撃し、ハジメ達は二百体以上の魔物を引き連れたまま縦割れに飛び込んだ。

 

 縦割れの洞窟は大の大人が二人並べば窮屈さを感じる狭さだ。ティラノは当然通れず、ラプトルでも一体ずつしか侵入できない。何とかハジメ達を引き裂こうと侵入してきたラプトルの一体がカギ爪を伸ばすが、その前に未来がモナドを突き刺して阻止する。そして、すかさず錬成し割れ目を塞ぐ。

 

ハジメ「ふぅ~、これで取り敢えず大丈夫」

ユエ「……お疲れさま」

ハジメ「そう思うなら、そろそろ降りてくれないかな?」

ユエ「……むぅ……仕方ない」

未来「もう俺は何も言わんぞ・・・」

 ハジメの言葉に渋々、ほんと~に渋々といった様子でハジメの背から降りるユエ。余程、ハジメの背中は居心地がいいようだ。

未来「さて、ここでビンゴだといいんだが」

ハジメ「とりあえず先に進もう」

しばらく道なりに進むとやがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。もしかすると階下への階段かもしれない。ハジメは辺りを探る。〝気配感知〟には何も反応はないがなんとなく嫌な予感がするので警戒は怠らない。気配感知を誤魔化す魔物など、この迷宮にはわんさかいるのだ。

 

 突然全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。ハジメとユエは一瞬で背中合わせになり、未来はモナドを抜刀し飛来する緑の球を迎撃する。

 

 しかし、その数は優に百を超え、尚、激しく撃ち込まれるのでハジメは錬成で石壁を作り出し防ぐことに決めた。石壁に阻まれ貫くこともできずに潰れていく緑の球。大した威力もなさそうである。ユエの方も問題なく、速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃している。

 

未来「ユエ、おそらく本体の攻撃だ。どこにいるかわかるか?」

ユエ「……」

ハジメ「ユエ?」

 

 ユエに本体の位置を把握できるか聞いてみる未来。ユエは〝気配感知〟など索敵系の技能は持っていないが、吸血鬼の鋭い五感はハジメ達とは異なる観点で有用な索敵となることがあるのだ。

 

 しかし、未来の質問にユエは答えない。訝しみ、ユエの名を呼ぶハジメだが、その返答は……

 

ユエ「……にげて……ハジメ!」

突然の攻撃にハジメは目を見開く、回避しようとするが、急増のバリケードの中は3人いるため回避するには狭い

未来「おい!『盾』!」

未来がシールドを展開しハジメを守る

未来「オイコラユエてめぇ!」

ハジメ「待って!おそらくあの緑玉だ!」

そう言いながらハジメは先ほどと同じように花を撃ち抜こうとしたが、操る側も学んでいたらしい、花を守るように上下に激しく運動し始めた。

ハジメ「ダメだ!これじゃ頭ごと撃ち抜いちゃう!」

 

ユエ「ハジメ……未来、うぅ……」

 

 ユエが無表情を崩し悲痛な表情をする。ラプトルの花を撃ったとき、ラプトルは花を憎々しげに踏みつけていた。あれはつまり、花をつけられ操られている時も意識はあるということだろう。体の自由だけを奪われるようだ。

見かねた未来が切り落とそうと接近するが、突然ユエが片方の手を自分の頭に当てるという行動に出た。

 

未来「……やってくれるじゃねぇか……」

 

 つまり、ハジメ達が接近すればユエ自身を自らの魔法の的にすると警告しているのだろう。

ユエは再生できるが、一瞬で塵にされて仕舞えばその限りではない、2人が攻めあぐねていると、奥の割れ目から地球で言うドライアードやアルラウネのような姿の魔物が現れた、その醜悪な香織は勝利の愉悦に笑っていた

未来「おそらく俺らには耐性系の技能のおかげであのクズの胞子は効かない、ハジメ、お前が撃て、助けたのはお前だ、」

ハジメ「そんなこと言ったって・・・・!」

未来「これは物語でもなんでもないぞ、撃てないなら、俺がユエごと斬る」

そうこうしているうちにユエが風を放ってきた、

 風の刃を回避しようとすると、これみよがしにユエの頭に手をやるのでその場に留まり、サイクロプスより奪った固有魔法〝金剛〟により耐える。

 

 ハジメがこの状況をどう打開すべきか思案していると、ユエが悲痛な叫びを上げる。

 

ユエ「ハジメ! ……私はいいから……撃って!」

 

 何やら覚悟を決めた様子でハジメに撃てと叫ぶユエ。ハジメの足手まといになるどころか、攻撃してしまうぐらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな意志を込めた紅い瞳が真っ直ぐハジメを見つめる。

未来「・・・目つむっとけ」

ハジメ「ダメだ!!!!」

未来が爆縮を使って接近しようとする前に、ハジメは銃を持った腕を野球のサイドスローのように振りかぶると、腕を全力で振り抜きながらドンナーを発砲した、するとユエと一直線上に立っていたはずのアルラウネもどきの頭だけが爆砕した。

ユエ「え?・・・」

ユエは不思議そうな顔をしている

未来「まさか・・・・曲げたのか?」

ハジメ「多分・・・必死だったからよく覚えてないや」

ユエ「・・・・ありがとう」

そう言うとユエ顔を赤くしながらはハジメに抱きついた

正直ユエ自身、最終的には自分ごとやられるだろうと思っていたのだが

、それでも彼女も女である、多少の夢を見て、少し躊躇ってもらえれば十分だったが、ハジメは自分を無傷で解放してくれたのである、現実は小説より奇なり、といったところであろうか。

ハジメ「うん、無事でよかったよ」

かくして、そこは夫婦2人の空間になってしまっていた

未来「俺、なんか悪いことしたか?」




次回はいつになるんでしょう、僕にもわからん


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最奥の主人

ヒュドラ撃破!結構ここまで長かったです


ハジメ「ついにきたね」

未来「・・・・そうだな」

ユエ「・・・これで最後?」

ハジメ「これでちょうど99層・・・・順当に行くなら次が最後だろうね」

未来「ハジメの装備の点検も終了、ユエの回復もバッチリ、いよいよだな」

ユエ「・・・・どう言うこと?」

ハジメ「多分、最後の強敵があると思うんだ、」

ユエ「・・・・成る程、ラスボス」

ハジメ「なんでそんな用語知ってるのかな・・・」

未来「さてと、降りるぞ」

その階層には無数の柱に支えられた巨大な空間が広がっていた柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

 ハジメ達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。ハッと我を取り戻し警戒するハジメとユエ。柱はハジメ達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

ハジメ「正に、って感じだね」

未来「ここが・・・・なんだっけ」

ユエ「反逆者の住処」

そう話しながら進んでいくうちに最後の柱を越えた

その瞬間、扉とハジメ達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

 

 ハジメは、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、ハジメが奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

ハジメ「これは・・・!あの時と同じ!」

未来「おいおい・・・でかいぞ!」

魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとユエ。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

 

 体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

未来「裁きでも与えるってか?」

モナドを構えながらそう愚痴る

ハジメ「神様に背くようなまねをした覚えはないなぁ」

ドンナーを構えながら言う

 

同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

三人は左右に分かれて回避し反撃を開始する、

ハジメのドンナーの射撃が赤頭を吹き飛ばした

ハジメ「まず一つ」

其のすぐ後白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。白頭は回復魔法を使えるらしい。

少し遅れて未来とユエがそれぞれ頭を破壊するが同じように回復されていく

念話で未来が伝える

未来”ダメだキリがない!”

ハジメ”白いのから狙おう!”

ユエ”ん、わかった”

ユエ「緋槍」

燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし直撃かと思われた瞬間黄色い頭が肥大化して魔法を受け止めた

未来「『魔』」

ドパン!

『魔』のかかった銃撃でも破壊できない、

ハジメ「あれタンク役か!」

未来「ヒーラーにタンクとはバランスの良いことだな」

ハジメ「だったら火力で押し通る!」

未来「だそうだ!最上位いけ!ユエ!」

ユエの反応がない

ハジメ「ユエ!しっかりして!」

ハジメの呼びかけにも答えず一点を見つめてガタガタと震えるユエ、ハジメがその視線の先に目をやると黒頭がじっとユエを見つめていた

ハジメ「黒いの精神系の状態異常だ!」

未来「分析はいいから行ってやれ!」

ハジメはユエの元に向かおうとするがそれを邪魔するように赤頭と緑頭が炎弾と風刃を無数に放ってくる。

未来「突っ切れ!『鎧』!」

モナド『鎧』は一回どんな攻撃も防ぐ『盾』と違ってダメージを軽減する代わりに効果時間が長い、

ハジメがユエに駆け寄ると未来が頭の攻撃を引きつける

ハジメ「ユエ!しっかり!」

ペシペシとユエの頬を叩く。〝念話〟でも激しく呼びかけ、神水も飲ませる。しばらくすると虚ろだったユエの瞳に光が宿り始めた。

 

ハジメ「ユエ!」

ユエ「……ハジメ?」

ハジメ「うん、ハジメだよ、大丈夫? 一体何された?」

 

 パチパチと瞬きしながらユエはハジメの存在を確認するように、その小さな手を伸ばしハジメの顔に触れる。それでようやくハジメがそこにいると実感したのか安堵の吐息を漏らし目の端に涙を溜め始めた。

 

ユエ「……よかった……見捨てられたと……また暗闇に一人で……」

ハジメは何も言わずにユエを抱きしめる

そうするとユエはふわりとした綺麗な笑みを浮かべた

ユエ「・・・・・・もう大丈夫」

そう言われてハジメはユエを解放した

ユエ「ん、許さない、蒼天!」

ユエは指示どうりに黄色頭に最上級魔法を放つ

直撃した

無傷とはいかないようだが、黄色頭を破壊するには至らなかった

ユエ「むう・・・・硬い」

ハジメ(シュラーゲンを使おう、接近する援護よろしく)

ユエ(・・・・・ん)

未来(りょーかい、外すなよ)

未来「出し惜しみなしだ!!『鎧』!」

未来がモナド『鎧』を起動し、一気に接近する黒頭がこちらを見つめるが、不思議と何も感じない

ユエ「ん、いい陽動」

そう言いながらユエは3色の頭と同格に渡り合う

 

 一方、ハジメは三つの首がユエに掛かり切りになっている間に、一気に接近する。万一外して対策を取られては困るので文字通り一撃必殺でいかなければならない。黒頭が未来に恐慌の魔法が効かないと悟ったのか、今度はハジメにその眼を向ける。ハジメの胸中に不安が湧き上がり、奈落に来たばかりの頃の苦痛と飢餓感きがかんが蘇ってくる。だが……

 

ハジメ「もうそれは関係ない!」

 

 そう、それはとっくに耐え切った過去だ。今更あの日々を味わったところでどうということはない。

未来「お前の相手は俺だ!」

よそ見した隙をついて未来が黒頭を破壊する

 

白頭がすかさず回復させようとするが、その前にハジメが〝空力〟と〝縮地〟で飛び上がり背中に背負っていた対物ライフル:シュラーゲンを取り出し空中で脇に挟んで照準する。

 

 黄頭が白頭を守るように立ち塞がるが、そんな事は想定済みだ。

 

ハジメ「狙い撃つぜ!」

 

 ハジメが〝纏雷〟を使いシュラーゲンが紅いスパークを起こす。弾丸はタウル鉱石をサソリモドキの外殻であるシュタル鉱石でコーティングした地球で言うところのフルメタルジャケットだ。シュタル鉱石は魔力との親和性が高く〝纏雷〟にもよく馴染む。通常弾の数倍の量を圧縮して詰められた燃焼粉が撃鉄の起こす火花に引火して大爆発を起こした。

 

ドガンッ!!

 

 大砲でも撃ったかのような凄まじい炸裂音と共に赤い弾丸が、更に約一・五メートルのバレルにより電磁加速を加えられる。その威力はドンナーの最大威力の更に十倍。単純計算で通常の対物ライフルの百倍の破壊力である。異世界の特殊な鉱石と固有魔法がなければ到底実現し得なかった怪物兵器だ。

 

 黄頭もしっかり〝金剛〟らしき防御をしていたのだが……まるで何もなかったように弾丸は背後の白頭に到達し、そのままやはり何もなかったように貫通して背後の壁を爆砕した。階層全体が地震でも起こしたかのように激しく震動する。

 

 後に残ったのは、頭部が綺麗さっぱり消滅しドロッと融解したように白熱化する断面が見える二つの頭と、周囲を四散させ、どこまで続いているかわからない深い穴の空いた壁だけだった。

ハジメ「フッ・・・任務完了」

未来「戦闘中に遊ぶなよ」

一度に半数の頭を破壊されたため、呆然とハジメを見つめるヒュドラ、しかしそんな隙を見逃す未来ではない

未来「モナドォォォォォォォ『斬』ァァァァァァ!!!!!」

延長された光の刃を振り抜き一気に三つの頭を破壊する

ユエ「・・・・・・美味しいところだけ持っていった」

ハジメ「今のは譲るところでしょ」

未来「ええ?!悪いの俺か?!」

その直後、

 

「ハジメ!」

 

 ユエの切羽詰まった声が響き渡る。何事かと見開かれたユエの視線を辿ると、音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり、ハジメを睥睨へいげいしていた。思わず硬直するハジメ。

 

 だが、七つ目の銀色に輝く頭は、ハジメからスっと視線を逸らすとユエをその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。先ほどのハジメのシュラーゲンもかくやという極光は瞬く間に1番近くにいたハジメに迫る。

未来「『盾』!!!」

咄嗟にモナド『盾』を発動しながら未来は爆縮を使いユエを助け出す

ハジメは極光に飲み込まれ、眩い光が収まるとハジメは全身から煙を上げながら前のめりに倒れた

ユエ「ハジメ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

未来が間髪入れずにユエの頬を叩く

ユエが訳もわからずに未来を見ると、その顔は凄まじいまでの憤怒の形相で

未来「ハジメを助けて離脱しろ」

ユエ「でも・・・・」

未来「俺が理性を保ってられる間にとっとと消えろ!!!」

ユエ「・・・・・わかった」

ユエがハジメに近づくのを銀頭が妨害しようと光弾を放つが

未来「『疾』」

ユエに『疾』をかけると自分は爆縮で2人の前に立ちはだかり全て切り飛ばした

未来「おい、これ以上怒らせるな」

未来「モナド『撃』!」

モナドの刀身が赤く輝く、

未来「楽に死ねると思うなトカゲ野郎・・・・!」

ヒュドラ「クルルァァァァン!!!!」

銀頭の鳴き声とともに破壊したはずの首が全て再生した

三色の魔法が雨霰と降り注ぐが、「孤軍奮闘」でステータスが五倍まで膨れ上がった未来からしてみればあくびが出るほど遅い攻撃でしかない

未来「遅い!」

魔法の間を縫って接近し、黄色頭が反応する間も無く三つの頭を破壊する

接近したのに合わせて銀頭が極光を放つが、未来の姿は既にない、ヒュドラの反応するよりも前に未来は離脱していた

2回目の大技に部屋が耐えきれなくなったのか、部屋が崩壊を始める

しかし、一撃でかの龍を葬る術は彼に焼き付いている

未来『其れは我が魂を鍛えし無垢の刃、与えるは憤怒、纒うは必殺、総てを切り裂く我が戦技を受けよ!モナドォォォォォォォ『斬』ァァァァァァ!!!!!!」

思い出すように、夢を見るように詠唱が綴られ、もはや忌避するほどに赤く染まった刀身がヒュドラに向かって振り下ろされた

刀身が光の奔流となってヒュドラを飲み込み、消滅させる

過剰な負荷がかかった未来はその場で気絶した

ハジメ「未来!」

神水で回復したハジメが未来を担ぐ

ユエ「早く!」

階層が崩壊する中を走り抜け、部屋に駆け込む、

ハジメ「あ・・危なかったー」

ユエ「ん、ぺしゃんこになるところだった」




感想くれれば投稿頻度上がる・・・・かも?


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反逆者の住処、

できたよ!大変だったよ!


未来は、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。

未来(天国か・・・・?)

そう思いながら目を開けると迷宮らしくない明るさに目が眩んだ

未来「うっ・・・・眩しっ・・・・」

目を瞑って手探りをすると、少し前まで人がいたかのような暖かさを感じた

未来「んん?」

理解できずにさらに混乱する未来、いい加減目も慣れてきたので目を開けると、そこはパルテノン神殿の中央のような空間だった

未来「おいおい、本当に死んだんじゃないだろうな」

すると部屋の奥からカッターシャツ一枚のロリが現れた

未来「ユエも死んだのか?」

ユエ「・・・・死んでない」

未来「そうか」

ユエ「・・・・・」

未来「?どうした?不服そうな顔して」

ユエ「・・・・未来は、何も思わない?」

未来「なにがだ?」

ユエ「・・・・つまんない」

未来「だからなんで不機嫌なんだよ!」

ユエ「もういい、ついてきて」

 

 ベッドルームから出た未来は、周囲の光景に圧倒され呆然とした。

 

 まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称したのである。

 

ユエ「……夜になると月みたいになる」

未来「マジか……」

ハジメ「あっ、起きたんだ」

未来「俺どんくらい寝てた?」

ハジメ「うーん?ざっと僕が起きてから二日くらい?」

ユエ「・・・・ハジメが起きるのに1日かかったから、かなりのねぼすけ」

未来「悪い」

ハジメ「すごいところだよ、多分此処が『反逆者の住処』なんだろうね、大体の部屋は調べて置いたんだ」

ユエ「・・・開かない部屋も結構あった」

未来「扉ごとぶっ壊しゃよかったのに」

ユエ「・・・私もそう言った」

ハジメ「そんな空き巣みたいな真似できないよ・・・」

未来「ま、だろうな」

ハジメ「でも少し気になる部屋があったんだ、3階の奥なんだけど」

未来「まずいってみっか」

 

 三人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようで。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

 しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

 その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……

 

ユエ「……怪しい……どうする?」

 

未来「・・・・・成る程、」

ハジメ「どうしたの?」

未来「いや、取り敢えず入る」

そう言うと未来はおもむろに魔法陣の中に入った

純白の光が爆ぜ、部屋を白く染め上げる

 まぶしさに目を閉じる未来。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。

 

 やがて光が収まり、目を開けた未来の目の前には、黒衣の青年が立っていた。

中央に立つ未来の眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

 そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだったため、ユエとハジメは目を見開いている。

オスカーの話をまとめるとこうだ

①  神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。お互いを神敵

②自分たちは『解放者』何百年と続いた戦乱に終止符を撃たんとする集団である

③神は戯れに魔人と人間を争わせているだけである

④神に操られた魔人と人間に神敵とされ敗北し、大陸の果てに迷宮を作り潜伏することにしたこと

ハジメ「なんか・・・・すごいこと聞いちゃったね」

未来「悪いお知らせがひとつ」

ハジメ「いいお知らせない?」

未来「ない」

ハジメ「ぇぇ・・・」

未来「俺は2回目、転生者だ」

ハジメ「は?」

未来「俺は他の世界で死んだ後にハジメたちの世界の神に依頼を受けた

『この世界の神を殺せ』と、」

ハジメ「そんなこと急に言われてもわかんないよ・・・・」

未来「本人に聞くか?」

ユエ「・・・・え?」

未来「そこで見てんだろ」

神「バレておったか」

そう声が聞こえると何もない空間から白い髭を蓄えた老人が出現した

ハジメ「なんか・・・・ゲームっぽいね」

神「む、そういえば名乗っておらんかったわ、我が名は神日本磐余彦、まあ、世に言う神武天皇じゃな、」

ハジメ「ええええええええええええ!!!!!!!」

ユエ「誰?」

未来「えっそれ神じゃない・・・・・」

神武「まあ、言うなれば半神じゃな、まあ、ほとんど神みたいなもんじゃ、兄と同じく母上の血をよく受け継いだものでな」

神武「さて、本題に入ろう、この世界の神、エヒトルジェじゃな、がやっていることはオスカーが言っていた通りじゃ、此処までなら見過ごせる、古代法にそのような記述はないからのう、じゃが、あやつは他の世界に手を出した、これがいかんのじゃよ神々はお互いの世界に基本的に不可侵の取り決めとなっておるでな」

ハジメ「それって、神同士で決着つけるものなのでは」

神武「わしが出てしまうと全てが焼け野原になってしまうでな、それに今は油断ならん状況が続いておっての・・・・他の世界に侵攻する余裕などないのじゃよ、エヒトはきずいておらんようじゃが、自分の世界を守ることで手一杯じゃ」

未来「・・・・そう言うことか、それで俺たちに」

神武「掬い上げたのは2人だけじゃがな」

未来「そう言うわけで、どうする?俺はこう言うわけで絶対に神を殺さなきゃならない、正直、厳しい戦いになると思う付き合うか?」

ハジメ「・・・・・」

ユエ「ハジメ・・・・」

ハジメは難しそうな顔をして考えている

ハジメ「やるよ、どうせぼくたちだけ帰っても今度はもっと強引な方法で連れ戻される可能性の方が高い、そうですよね、陛下」

神武「見抜いておったか、確かに、彼奴は君たちが死ぬまで駒にし続けるだろう」

ハジメ「一つ条件が」

神武「なんじゃ」

ハジメ「もしエヒトを殺したら、ぼくに世界を自由に渡る権利とユエが僕たちの世界で生きる権利をください」

神武「いいじゃろう」

神武「さて、そろそろエヒトにバレるやもしれぬ、貴殿らの旅路に幸あらんことを・・・」

そう言うと神武天皇は光になって消えた

ユエ「・・・・どう言うこと?」

ハジメ「ユエに、帰る場所はないんでしょ、なら一緒に生きよう、僕たちの世界で」

ユエ「・・・・ありがとう」

未来「そーいえば、魔法もくれたな、ハジメ、お前にピッタリの魔法だぜ」

ハジメ「えぇー・・・・」

ユエ「・・・・未来、今は黙ってるところ」

ハジメ「・・・ぼくも乗ってみようか」

ハジメが魔法陣に乗ると、ハジメの頭の中にも膨大な情報が流れ込む

ハジメ「これは・・・・神代魔法?」

ユエ「……ホント?」

 

 信じられないといった表情のユエ。それも仕方ないだろう。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。ハジメ達をこの世界に召喚した転移魔法も同じ神代魔法である。

ハジメ「生成魔法・・・・確かに、錬成師のためにあるような魔法だね、鉱物に魔法を付加して特殊な鉱物が作れる」

ユエ「もしかして・・・・アーティファクト作れる?」

 そう、生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法だったのだ。まさに〝錬成師〟のためにある魔法である。実を言うとオスカーの天職も〝錬成師〟だったりする。

 

未来「ユエも覚えたらどうだ? 何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられるんじゃないか?」

ユエ「……錬成使わない……」

ハジメ「まぁ、そうだろうけど……せっかくの神代の魔法だし? 覚えておいて損はないんじゃないかな?」

ユエ「……ん……ハジメが言うなら」

そうしてユエも生成魔法を習得し、

ハジメ「さて、と」

未来「穴掘るか」

ユエ「ん、肥料」

ハジメ「いやそうじゃなくて!!!」

未来「え?違うのか?」

ハジメ「いや、墓穴だよ、曲がりに多分、この人ぼくの先輩だからね、敬意を払いたいんだ」

未来「ああ、そーゆーことかそーゆーことなら本人にやるか?」

ハジメ「どういうこと?」

未来「こーゆーこと、『析』」

未来はモナドをオスカーの死体に当ててつぶやく

未来「でもって、よっ」

いつからもっていたのか神結晶の欠片に生成魔法で文字を刻んだ

ユエ「何をしたの?」

未来「ん?この人の遺伝子情報を刻んだ」

ハジメ「と言うことは・・・」

未来「ホムンクルスが作れるな」

ハジメ「それ、大丈夫なの?体の一部持っていかれたりしない?」

未来「どこの国家錬金術師だよ、それ、つか真似しといて言うか?」

ハジメ「これ以上欠損するのはごめんだよ・・・」




解放者復活フラグが立ちました、あれ?おかしいな?ウチに零ないしこれ以上小説買う金はないぞ?あれ?


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旅立ち

あれから、オスカー・オルクスの復活に取り掛かったが、早々に壁に当たったため、装備の充実に取り掛かることにした

体は問題なく作れたのだが魂の呼び方がわからないのである

ハジメ「はぁー」

未来「どうした?」

ハジメ「いや、あれだけ張り切って体を作っておいて、まさか魂の呼び方がわからないことに気づかないとは思わなかったよ」

未来「そーだなー、そもそも、精神が魂に付随するものなのかって言う疑問もあるからなー」

そう言いながら未来は頭をかく

ハジメ「その手の天職を持ってる人に手伝ってもらわないといけないかもね」

ユエ「むー」

ユエが不満そうな顔で部屋に入ってきた

未来「どうした?そんな不満そうな顔して」

ユエ「もう三日目」

未来「え?」

ユエ「もう三日も食事もとってない、お腹すいた、・・・あと、少し臭い」

ハジメ「ああ・・・ごめん、切り上げようか」

ユエ「まずお風呂に入って、」

ハジメ「わかったよ」

未来「俺は片付けてるから、先に行ってこいよ」

ハジメ「ありがとう」

〜〜〜〜5分後〜〜〜〜

天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。奈落に落ちてから、ここまで緩んだのは初めてである。風呂は心の洗濯とはよく言ったものだ。

 

「はふぅ~、最高だぁ~」

全身をだらんとさせたままボーとしていると、突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。完全に油断していたハジメは戦慄する。一人で入るって言ったのに!

 

 タプンと音を立てて湯船に入ってきたのはもちろん、

 

ユエ「んっ……気持ちいい……」

 

 一糸まとわぬ姿でハジメのすぐ隣に腰を下ろすユエである。

 

ハジメ「……ユエさん?一人で入るって言ったよね?」

ユエ「……だが断る」

ハジメ「ちょっと待って! 何でそのネタ知ってんの?!」

ユエ「……」

ユエ「……せめて前を隠してよ。タオル沢山あったでしょ」

ユエ「むしろ見て」ハジメ「……」

ユエ「えい」

ハジメ「……あ、当たってるんだが?」

ユエ「当ててんのよ」

ハジメ「だから何でそのネタを知ってんだ! ええい、俺は上がるからな!」

余裕を無くして声を荒げるハジメ

ユエ「逃がさない!」

ハジメ「ちょ、まって、あっ、アッーーーーー!!!」

 

未来「・・・・・ハジメの霊圧が消えた?なんで?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

未来「・・・・何か弁解は?」

ユエ「我が人生に一片の悔いなし」

ハジメ「強敵よ・・・・!」

未来「なんで知ってんだ、あとハジメ、乗るな」

ハジメ「ははは、いや、まあ、全くわかんなかったんだけど、」

未来「奈落の底から助けて?それで『僕たちと一緒に行こう』?とか言っちゃっといて?ないわー、こいつないわー」

未来がドン引きする、何故か頭にブーメランが刺さっている気がするが見なかったものとする

未来「香織はどうするんだ?」

ハジメ「ううっ、言わないでよ、ああ、考えるだけで憂鬱だよ、刺されたりしないよね?」

未来「自分でなんとかするんだな」

ユエ「カオリ?ってだれ?」

未来「こいつに恋するスタンド使い」

ユエ「・・・・ふふふ、渡さない」

その頃の香織

 

香織「あれ? 何か急に殺意が……」

雫「香織!? 背後に般若が見えるわよ!?」

 

未来「そんなことは置いといて、」

ハジメ「他人事ッ!?」

未来「黙れ、天然女たらし、左腕どうすんだ?エドよろしく義手にするか?」

ハジメ「そうだね、片腕なのもこれから不便だと思う」

ユエ「・・・・・また、2人で研究室に篭る?」

上目遣いでユエが聞いてくる

未来「いや、オスカーが残してた奴を改造していくから、そこまで籠ったりはしないよ」

ユエ「よかった」

ハジメが上目遣いに固まっている間に未来が答えた

ハジメ「なんで平然としてられるのさ・・・」

未来「俺はお前みたいにロリコンじゃないから」

ハジメ「僕だってロリコンではない!ユエは未来の思うよりずっと・・・ずっと・・・」

未来「ベットの上での話はするな、泣くぞ」

ユエ「未来も私とする?」

未来「斬るぞ」

ハジメ「喧嘩しないでよ?それはそうと、義手はどこにあったっけ」

未来「あー、多分、埋もれてるな、大量のアーティファクトの中に」

ユエ「・・・まず探すとこから?」

ハジメ「そうだ、ついでに使えそうなアーティファクトも探しておこうよ」

未来「そうだな」

三人は倉庫に向かい、山のようにあるアーティファクトを漁り始めた

 

〜〜〜〜〜一時間後〜〜〜〜〜〜〜〜

未来「よし、これで位置はオッケーだな、神経接続するぞー」

ハジメ「うん」

バチっ

ハジメ「イデッ?!」

未来「はいオッケ、ちゃんと動かせるか?」

ハジメは指を曲げ伸ばしたりして動作を確認する

ハジメ「うん、問題ないよ、でも繋いでるところに少し違和感あるかなな、やっぱり、すぐには馴染まないね、マッサージとかすればいいんだろうけど、まあいいか」

ユエ「私がマッサージする」

ハジメ「え?ありがとう・・・」

未来「なあ、お前らナチュラルでイチャイチャするのやめて?お兄さん泣いちゃうよ?」

ユエ「・・・・大丈夫」

未来「なんでさ」

ユエ「いつかできる」

未来「慰めか?慰めなのか?それは」

義手はの開発目処が立ったところだが、他にもいろいろと作ったり見つけたりしている、が、原作と違うところは一つだけハジメの右目が失われていないことだけである、今作のハジメは片目義眼になっていないので原作より幾分か厨二な見た目ではない

 

 

 それから十日後、遂にハジメとユエは地上へ出る。

 

 三階の魔法陣を起動させながら、ハジメはユエに静かな声で告げる。

 

未来「ユエ……俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

ユエ「ん……」

ハジメ「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きいね」

「ん……」

ハジメ「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれないし

ユエ「ん……」

未来「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな、巻き込んですまない」

ユエ・ハジメ「「今更……」」

 

 ハジメとユエの言葉に思わず苦笑いする未来。ハジメは真っ直ぐ自分を見つめてくるユエのふわふわな髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに目を細めるユエに、ハジメは一呼吸置いてから言葉を紡ぐ

 

未来「行こうか」

 ハジメの言葉を、ユエはまるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。返事はいつもの通り、

 

ユエ「んっ!」

 



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クラスメートside 皇帝と

ハジメがヒュドラとの死闘を制し倒れた頃、勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。

 

 道順のわかっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだ。

 

 もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。

原作通り帝国からの使者である

平凡そうな男、その正体はハルシャー帝国の皇帝との模擬戦をすることになった、もちろん皇帝であることは光輝は知る由もないのだが。

刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかったが、

後期は彼の「凄み」をひしひしと感じていた

光輝(師範やメルド団長みたいな人だ・・・全然隙がない・・・・)

足取りを悟られぬようジリジリと間合いを保ち、隙を伺う

相手の隙を伺う目線でのやり取り、だが数秒立っても隙らしい隙を見つけられず、逆に自分に責められ致命傷を負う未来しか湧かない。

光輝は動いていないなとか変わらず冷や汗を流していた

光輝(技能を使って無理やり攻めるしかない!)

光輝はそう考え走り出す、技能は使わず間合いのギリギリまで行き、相手の剣が動いたタイミングで『縮地』を発動し後ろに回り込み、残像ができるほどの速度で剣を逆袈裟に振り抜く

しかし男はまるで予測していたのかのように受け止めた

光輝「なっ・・・・!」

思考が固まる

その隙を逃さず、男は光輝の剣を弾き、首元で寸止めする

皇帝「敵の実力を見る能力、作戦は及第点をやろう、だが素直すぎる、お前の右が空きがちだったが相棒でも死んだのか?」

光輝はキッと男をにらみつける

皇帝「やめておけ、死んだのならその程度のやつだったということだ、生き急ぐやつほど戦場で真っ先に死ぬんだ」

光輝「未来は死んでない!」

そう反論しながら顔に向かって突きを放つ

皇帝はそれをこともなげに弾いた

しかし目の前に光輝はいない

皇帝「っつ!?」

皇帝はその莫大な経験で反射的に防御の構えを取る

縮地で視界から消えた光輝の殴打を剣で防ぐと、みぞおちを思い切り蹴った

光輝「ガッは!」

イシュタル「・・・・お戯れが過ぎますぞガハルド殿」

ガハルド「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

イシュタルが発動した光り輝く障壁で水を差された〝ガハルド殿〟と呼ばれた護衛が、周囲に聞こえないくらいの声量で悪態をつく。そして、興が削がれたように肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

 

 すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。

 

 四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

 

 その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

エリヒド「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

 

ガハルド「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

 謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド陛下。

光輝は伸びてしまっていたが、その後の晩餐会で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成された。

しかし、その晩、部屋で部下に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

ガハルド「ありゃまだダメだな、まあついこの前まで学生だったにしちゃいい技だったが、それだけだ、人を率いるにゃまだまだ未熟だ、責任感ばかりが選考して周りが見えなくなってる乗り越えりゃ更に強くなるんだろうがな、それと教皇に気をつけろ」

 

一方そのころ

檜山は王城の独房で独りぶつぶつと恨みつらみをつぶやいていた

檜山「クソ・・・・香織がほしい・・・ホシイ・・・」

???「キミの望みがかなうようにしてあげるといったら?」

檜山「なんでもやってやる!あんな屑よりも馬鹿よりも!香織は俺と一緒になるべきなんだ!」

???「ならば、私のところに着なさい・・」

檜山「へえ・・・いいよ、悪魔の手先になってでも、香織が手に入るのなら・・・・」

その日、皇帝と共に檜山は深き闇へと消えた



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脱出

できた、残念ウサギはまだ出てきません


魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

 

 

 やがて光が収まり目を開けたハジメ達の視界に写ったものは……

 

 

 

 洞窟だった。

 

 

 

未来・ハジメ「「なんでやねん」」

 

 

 

 魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたハジメは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。未来が大きくため息をつく、正直、めちゃくちゃガッカリだった。

 

 

 

 そんなハジメの服の裾をクイクイと引っ張るユエ。何だ? と顔を向けてくるハジメにユエは自分の推測を話す。慰めるように。

 

 

 

ユエ「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

ハジメ「あ、ああ、そうか。確かに。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないね」

 

 

 

 そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと赤面するハジメ。未来も頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、三人とも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 

 

 途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。三人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメと未来はこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

 

 

 ハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

 

 

 近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。ハジメは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

 

 

 そして、三人は同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下は魔力が霧散し魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が跋扈する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断する寝台よりもさらに太古、創生の時代につけられた傷跡を人々はこう呼ぶ

【大剣の渓谷】と

ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

たとえそこがどこであろうと、地上であることに変わりはなく、

少年少女は太陽を一身に浴びる喜びを分かち合った

人々が地獄と呼ぶ場所に似つかわしくない笑い声が響き渡る

途中、地面の出っ張りに躓つまずき転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、三人してケラケラ、クスクスと笑い合う。

 

 

 

 ようやく二人の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。

未来「無粋な奴らだなー」

ハジメ「ここでは魔法が使えないはず、ユエ、大丈夫?」

ユエ「ん、分解される、でも力ずくで行く!」

その言葉に心配になったハジメは聞き返すように聞く

ハジメ「・・・・・効率は?」

ユエ「・・・・十倍くらい」

ハジメ「初級を打つのにも上級の魔力が必要だね、それ」

未来「じゃあ、俺らでやるか、ユエは自衛だけでいい」

ユエ「むー」

不服そうに頬を膨らますユエ

ハジメ「ここは魔法使い系の転職にとって鬼門だね、任せてよ、ユエ、しくじらないから」

ユエ「・・・ならいい」

渋々といった感じで引き下がるユエ、地上にでて初めての戦闘で戦力外通告され拗ねてしまったようだ。

ハジメ(これは後が大変だね・・)

未来「さぁて、物は試しだ、奈落の魔物とどっちが強いか賭けるか?」

ハジメ「いや賭けるものもないのに何言ってるのさ、まあ、ドンナーが通じないことはないと思うけど」

そう雑談している獲物にしびれを切らしたのか、一体の恐竜型の魔物が襲い掛かってきた、

ドパン!

纏雷が迸り、ドンナーの銃口が赤く輝く、

奈落での激しい戦いと訓練により必中必殺となった奈落の魔弾が魔物の頭部を吹き飛ばした

そのあまりにも自然な動きに、魔物の動きが静止する、しかして彼らの野生としての本能が全力で警鐘をかき鳴らす

 

 

今すぐ逃げろ、さもなければ死ぬぞ

未来「おお!いいね、練習のかいあったじゃないか」

ハジメ「君一回も勝てたことないのにそんなこと言われてもなぁ」

それまで一体倒せただけで歓喜する人間たちしか見てこなかった彼らの認識とあまりにも乖離した雰囲気、「こいつらは俺たちより強い」

魔物たちはここにきてやっと自分たちの置かれた状況を正確に理解する

そう、今この瞬間彼らは捕食者から弱き虐げられるもの・・・・被捕食者に変わったのだ

未来が視界から消える、と同時に虐殺が始まる、

しばらく刃が肉を断つ音と銃声と魔物の咆哮、いや断末魔の悲鳴が峡谷にこだまし、すべての音が深い峡谷に吸い込まれたとき、残ったのは生物の焼けるにおいとむせ返るような血の匂い、そして奈落から這い出た

錬成使と吸血姫、そして神剣に選ばれし英雄がそこにはいた



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見たくなかったもの、何処の世界に毅然として存在するもの

ガチクズ注意


ハジメと未来は、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、ハジメの二輪に後ろにユエが横乗りしてハジメの腰にしがみついた。

 

 地球のガソリンタイプと違って燃焼を利用しているわけではなく、魔力の直接操作によって直接車輪関係の機構を動かしているので、駆動音は電気自動車のように静かである。ハジメとしてはエンジン音がある方がロマンがあると思ったのだが、未来に「そんな素人が精密な作業して前みたいに上手く行くわけねーだろ、単純化しろ、俺も乗るんだからロマン求めたら殺す」と言われて泣く泣く魔力操作式にした、ちなみに速度調整は魔力量次第である。でそれにより構造を単純化できたため、特に未来のものは整備も簡単で頑丈な作りになっている。まぁ、ただでさえ、ライセン大峡谷では魔力効率が最悪に悪いので、あまり長時間は使えないだろうが。

断崖に沿って進んで行くと、樹海に差し掛かるところで、馬車を見かけた。

ハジメ「旅人か、行商人かな?」

未来「だろうな、近くの町でも聞いてみるか」

ハジメ「久しぶりに人と話すなぁ」

ハジメは人と話せることにも感動を覚えていた

未来「おっそうだな、これに乗ったままじゃ違和感がすごいから降りていくぞ」

感傷に浸る同級生の言葉を適当に流して二輪から降りる未来

ハジメも、降りる意図は十分に理解できるので何も言わずに降りる

森の中を進むと、そこにはムチで叩かれるうさ耳の獣人の姿があった

奴隷商1「オラオラァ!さっさと歩け!」

うさ耳「ひいっ!」

ハジメ達か見たものは、奴隷狩り、この場合は獣人狩りだろうか、啜り泣く声と共に喘下卑た笑い声も聞こえる

ハジメ「ひどい・・・・」

未来「邪魔しちゃ悪い、引き返すぞ」

ハジメ「見なかったことには・・・」

未来「お前王国の図書館で何を学んだんだ、獣人はこの世界で地位が低い、このくらいは、慣れろ」

ハジメ「でも・・・」

未来「奴隷を全て助ける気か?ただでさえゆくゆくこの世界そのものを相手取ることになるとはいえ、なんの準備もなく敵を増やす気か?」

ユエ「ん、未来の言う通り、今はそんな余裕ない」

頭ではハジメもわかっている、だが心がこの光景を許容できない、奴隷制度などない日本で生きてきた高校生にはこの光景は強烈すぎた

奴隷商2「おい、この女、魔力直接操作なんてもってやがります!」

奴隷商1「ああ?そんな奴は商品にならん、薬漬けにしてヤリ潰すなり捌いて食うなら好きにしろ」

奴隷商2「へへへ、獣人の肝臓は高値で売れるんだ、これで来月のぶんのヤクが買えるぜ」

奴隷商3「おい、ヤクなんてやってんのか、早死にすんぞ」

奴隷商2「お前もやってみろよ!天国に行った気分みたいな気分になれるし、女の股にぬってやりゃ馬鹿みたいに喘ぎまくってさいっこうだぜ」

奴隷商3「どうしょうもない奴め」

奴隷商1「それで?そこの兄ちゃん達はいつまでそこに突っ立ってんだ?荷物持ちでも欲しいのかい?」

未来「ああ、すみません、人では足りているので」

奴隷商2「おおっ!中々かわいい娘を連れてるじゃないか、どうだい、一つ、俺と一緒に来ないかい?イイコト教えて・・・」

ドパンッ!

奴隷商の1人の頭が弾ける、

未来「おい!ハジメ!」

未来が振り返ると、そこには無表情で奴隷商達にドンナーの銃口をむけるハジメがいた

ドパンッ!ドパンッ!

立て続けに銃弾が放たれ、奴隷商の頭が柘榴のように弾ける

ハジメ「・・・汚い柘榴だね」




規約に引っかかりませんように・・・


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