ありふれたチートで世界最強 (漆屋)
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プロローグ

 月曜日。それは一週間の始まりの日。それに憂鬱を覚える者も少なくないだろう。南雲タツヤ(なぐも)南雲ハジメ(なぐも)もその例に漏れない。朝から眠そうにして教室に入った二人に教室中から視線が向いた。

 

「よぉ、キモオタ兄弟!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしていたんだろう?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜なんてマジキモイじゃ~ん~」

 

声を掛けてきたのは檜山大介(ひやまだいすけ)といい、毎日飽きもせず日課のようにタツヤ達に絡む生徒の筆頭だ。近くで下品な馬鹿笑いをしている斎藤(さいとう)近藤(こんどう)中野(なかの)の四人でタツヤ達に絡む。タツヤは小悪党四人組と秘かに読んでいる。

 

 檜山の言う通りタツヤとハジメはオタクだが、世間一般で言うとこのキモオタの部類に入るとととは言い難く身だしなみや言動が見苦しい訳でない。髪は切り整えており寝ぐせもない。コミュ障という訳でもなく。タツヤは積極的でハジメは大人しいいというだけで陰気さはない。単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画が好きなだけだ。

 

 世間一般ではオタクに対する風当たりが強いがこの四人も褒められた人種でもないのに二人をあざ笑うのは理由がある。

 

 その答えが彼女である。

 

「タツヤくん、ハジメくん、おはよう!」

 

 ニコニコと笑顔で話しかけてくる彼女の名は白崎香織(しらさきかおり)、学校で二大女神と言われ男女問わず人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く艶やかな黒髪。少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁にこぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な位置に並んでいる。

 

 

 いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見が良く責任感も強いため学年問わずよく頼られている。それを嫌な顔一つせず真撃に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の広さだ。

 

 

 そんな彼女が二人を構うのだ当然よく思わない男子が大勢いる。

それで、檜山達は二人を貶めるためにキモオタのレッテルを張り暴言を吐いている。

その姿勢で香織を始め全女性徒から敬遠されがちだ。

 

 

「おはよう、香織」

「おはよう、香織さん」

 

 二人が返事をすると男子達から殺気が浴びせられた。

なんであいつらがとでも思っているのだろう。

自分達は苗字なのになんであいつらだけ名前で呼び合ってるんだという訳だ。

実際は二人とも南雲だとややこっしいからお互いに名前で呼ぶようになったからだ。

ハジメだけは当初、名字で呼んでいた。

 

 

「また、徹夜?程度にしないと身体に悪いよ?」

「済まないな、つい夢中になってな。」

「あはは、右に同じ」

 

 香織は毎朝二人に構ってくるのだ、当然それを羨む男子は多い。徹夜のせいで普段眠そうにしている二人は不真面目な生徒と思われている(成績は常に上位)、生来の面倒見の良さから香織が気にかけていると思われている。

 

 

 さすがに授業中居眠りは無いがそれ以外はほぼ寝ている二人の態度は改善されない、それでも香織に親しくされている男子には堪ったもんではないのだろう。ハジメがイケメンなら許容されるだろうが生憎ハジメの容姿は極平凡であり[趣味の合間に人生]を座右の銘にしているハジメの態度は改善されない、方やタツヤの容姿は極めて良くサラサラの黒髪に鋭い目、百八十センチメートル近くある長身に引き締まった体でイケメンの部類に入り香織と同じく面倒見の良さと思慮深さ、成績優秀、スポーツ万能、とあって人気があるがハジメと同じくオタクでどの部活にも所属せずとも負け知らずといったこともあってかえってやっかみを受けている。

 

 

 そんな二人が香織と親しくしているのが、男子には我慢ならないのだ。女子の場合は香織をとうして二人の人となりを知っているので半ば呆れた感じだ。

 

 

 タツヤは毎日不思議でならなかった。なぜ、学校で一にを争う美少女が自分たちに構うのか。タツヤの目には、香織には性分以上の何かがあるように思えてならないからだ。

 

 正直、香織とは高校からの間柄でしかなくタツヤ自身、自惚れる訳でもないが自分に恋愛感情をもっているとは思えず其れなりに親しくなったが香織自身の事を考えれば見てくれだけで言い寄ってくる類でもない。もしかしてハジメに気があるのではと思いながらもいまだ聞けずにいる。

 

 まぁ、もしそうだったらでハジメが襲われる等の面倒になるから聞かないが・・・・

 

 

 そうしていると、三人の男女が近寄って来た。

 

「タツヤ、ハジメくん。おはよう。毎日大変ね?」

「香織、また二人の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんな奴らには何も言っても無駄だと思うけどなぁ」

 

 三人の中で唯一朝の挨拶をしたのは女子生徒の名前は八重樫雫(やえがししずく)。香織の親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じれるため、冷たいと言うよりカッコイイという印象を与える。

 

 百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿させる。

 

 事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学校の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士と雑誌でも取り上げられるほどで熱狂的なファンが多い。後輩の女子生徒からは[お姉さま]と慕われよく頬を引きつらせるのを目撃されている。

 

 因みにタツヤは過去に八重樫流に在籍しており雫とはその縁で顔見知りであり剣道界では名を知られている。

 

 

次に、臭いセリフで香織に声を掛けたのは、天之河光輝(あまのがわこうき)。如何にも勇者ぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人(笑)だ。

 

身長と体格はタツヤと同じくらいで鋭い瞳のタツヤと対照的に優しい瞳をしている。誰にでも優しく、正義感も強いが、思い込みが激しく自身の都合の良い解釈しかしない。

 

 彼も八重樫道場に通う門下生で、全国クラスの猛者だがタツヤには敵わない。雫とは幼馴染である。高校入学時タツヤに勝負を挑んだが手も足も出ず負けた過去がある。その際剣道部から勧誘が来たがタツヤは断っている。

その言動と容姿でダース単位で惚れる女子がいるが、いつも一緒に行動している香織や雫に気後れして告白に至っていない。それでも、月二回以上学校に関係なく告白を受けている。

 

 

 

 最後に、投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)といい、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせた瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目道理の細かいことを気にしない脳筋タイプである。空手部に所属している。

 

 龍太郎は努力とか根性とか熱血が大好きな人間なので、学校では寝てばかりでやる気のなさそうなハジメや、実力と才能を持ちながら部活に所属せずやる気のないタツヤが嫌いなタイプらしい

 

龍太郎もタツヤに勝負を挑んだが、タツヤが勝ちその際にも勧誘がきたが断った。

趣味の時間が惜しいから帰宅部のはやる気のないやつと思われているようだ。

タツヤ自身、努力と根性、熱血は好きだが表立って表さないだけである。

 

 

「おはよう、雫、天之河、坂上」

「おはよう、はは、まぁ自業自得だから仕方ないよ。」

 

雫達に挨拶をし苦笑する二人

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか?いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ?香織は君らに構ってばかりはいられないんだから」

 

 光輝は二人に注意する。光輝の目にも二人は香織の厚意を無下にする不真面目な生徒に映るのだろう。 

 

 二人としてはべつに甘えた積りはない普通にクラスメートと話をしていただけだ、だがたとえ反論しても光輝自身思い込みが激しいので反論しても無駄だと思い何も言わない。

 

 

 それに「直せ」といわれても、二人は趣味を人生の中心に置くことに躊躇がない。なにせ、父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家であり、将来に備えて父親の会社や母親の作業場でバイトしているくらいだ。

 

 特にハジメは既にその技量は即戦力扱いを受けており、趣味中心の将来設計は出来ており、何れはプロの世界で活躍するだろうとタツヤは思っている。

 方やタツヤはハジメほどでは無いが即戦力扱いを受けており、両親の紹介でアクセサリー制作やジュエリー制作のバイトもしてプロの職人から太鼓判を押される程でまたプロゲーマーとして億単位の賞金を稼いでおりそれをもとに株や投資で儲けており資産は途方もない。(冗談でなく)

 

資産云々は伏せているが香織と雫には話しておりそれを通じて女子には知れ渡っている。其れも在ってか敵意は持たれなくても半ば呆れられている(関心を通り越して)

因みに男子は知らない理由は二人がやっかみを買いたく無いので伏せてもらっているから。

 

光輝が知っても下らないと一括するか二人に出来るわけないと否定するのは明らかなのであえて言わないし理解できるかも怪しい(特に龍太郎)

 

檜山達が知れば寄り僻みが激しくなるか集るのが目に見えている。

 

 

 二人自身、趣味のため色々と切り捨てている自覚があるから多少の事ではへこたれない。

 

「? 光輝くん、何言っているの?私は、私が二人と話したいから話しているだけだよ?」

 

 

男子達はギリッと歯を呪い殺さんバリに二人を睨んだ。

 

 

「え?・・・ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 

 光輝の中では香織の発言は二人を気遣ったものだと解釈されたようだ。完璧超人(笑)だが、そのせいか自身の正しさを疑わないという欠点があり、実態を知るものからは半ば諦められている。故に完璧超人(笑)

 

ホント面倒な奴と二人は思った。

 

 

「・・・・ごめんね?二人共悪気はないのだけど・・・」

「大丈夫だ。気にするな。」

「あはは・・・」

 

 この場でも最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそり二人に謝罪する。それにタツヤは答えハジメは苦笑いするだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

昼休み

タツヤ達は教室を見渡した何人かの生徒は購買に向かったが三分の二の生徒は残ったそれに加え四時間目の社会科教師であ畑山愛子先生(二十五歳)が教壇で数人の生徒と話していた。

 

二人は栄養ゼリーを取り出して一気に飲み干した。

 

  じゅるるる、きゅぽん!

 

午後のエネルギーを補充し睡眠に入ろうとしていた。

 

そこへ我らが女神が声を掛けてきた。

 

「二人とも、それだけじゃ足りないでしょう?お弁当を作ってきたから一緒に食べよ」

 

香織だ。

再び男子達から殺気を向けられる。

 

タツヤは下手に断る理由は無いので厚意を受けることにした。断ったら後が怖い

 

「いいのか?・・・じゃぁ折角だから御馳走になろうか?ハジメ」

「僕は、いいよタツヤだけ行ってきたら」

 

(こいつ、逃げる気だな、もしかしたら香織はお前に気があるかもしれないのに)

タツヤは内心そう思っていると。

 

「もぉう、ハジメくんも遠慮しないでちゃんと二人の分も作ってきたから」

「・・・そう、それじゃあ、ご馳走になるよ」

 

 逃げ口を塞がれた、これで断ったら後が怖いそう思ったハジメだった。

 

そこへ我らが勇者(笑)が来た。光輝だ。

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。折角の香織の美味しい手料理を寝ぼけながら食べるなんて俺が許さないよ?二人の分は俺が戴くよ。」

 

よくそんなセリフが吐けるものだとタツヤは内心思った。

 

 爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルもセリフは効果内容だ。

 

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの? これは二人のために作ったんだよ?」

 

「「ブフッ」」

 

 

素で聞き返す香織に思わずタツヤと雫が噴出した。

光輝は困ったように笑ってあれこれと話す

 

 

(どんだけ食い意地張ってんだよ。・・・いや、これは独占欲か?・・・何というか主人公の出来損ないって感じだな)

 

 光輝の普段の言動を聞いていると如何にも主人公ポイが何処か自分に酔っている感じだ。悪い奴ではないのだが

 

 

 

(これで、ラノベだったら周りを巻き込んで異世界に召喚されて勇者に祭り上げられてかませ犬で終わるだろうな)

(まぁ、それだと巻き込まれた奴がかわいそうだ、どうせ巻き込むなら坂上と檜山達だけにしてもらいたいもんだ)

  

 非現実的だと分かっていても冗談で非情なことを考えているタツヤだった。

 

(更に、贅沢を言えば連中が男同士の愛に目覚めてくれればいいんだが・・・人数も丁度だし)

 

 更に非情な事を考えていた。

 

 タツヤがそんなことを考えていると・・・・

 

 凍りついた

 

 

 光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。俗に言う魔法陣だ。

 

(おい!、冗談だろう)

 

 突然のことに周りの生徒たちは金縛りになったように硬直する。

 

 魔法陣は徐々に大きく成って教室全体に拡大した。

 

「皆!教室から出て!」

 

 愛子先生が叫ぶと同時に魔法陣の輝きが爆発したようにカッ光った。

 

 

 光が収まった教室には食べかけの弁当と転がるペットボトル、教室の備品はそのままに人間だけが消えた。

 

 

 この事件は白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだった。



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異世界召喚

 タツヤが目を開けるとまず目に飛び込んできたのは、巨大な壁画だった。

縦横十メートルはある壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらとほほ笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

 

背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。だが、タツヤには胡散臭く感じる。

 

 周りをよく見渡すと、どとうやら自分達が巨大な広間にいるらしいことが分かった。大理石のような光沢滑かな白い石作りの建物のようだ。これまた美しい彫刻が彫られた柱に支えられ、天井はドーム状になっている。如何にも大聖堂という感じの広間である。

 

タツヤ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。周りにはタツヤと同じように呆然と辺りを見渡すクラスメイトがいた、その中にハジメと香織と雫がいた。三人の無事を確認しこの現状を説明できるであろう台座の周囲にいる者たちの観察に移した。

 

 少なくても三十人近い人々が祈りを捧げるように跪いている。

 金の刺繍をした法衣の様なものを纏った其の集団のの中で特に豪華で煌びやかな衣装を纏った七十代くらい老人が進み出てきた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いております。イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後宜しくお願い致しますぞ。」

 

 そう言ってイシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 現在、タツヤ達は、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通された。

 

 この部屋も例にももれず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵や壁紙が職人芸の粋を集めたモノだと分かる。

 

上座に近い場所に畑山愛子先生と光輝達四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。タツヤとハジメは最後方だ。

 

 

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が、入ってきた。そう、生メイドである!

地球産の某聖地のエセメイドや外国のでっぷりとしたおばさんメイドではない。正真正銘、男子の夢を体現したような美女・美少女メイドである。

 

 こんな状況でも、思春期男子の飽くなき探求心と欲望は健在で男子の大半がメイドさんを凝視している。もっとも、それを見た女子の視線は、物凄く冷たかった。

 

 タツヤとハジメも飲み物を給仕してくれたメイドさんを思わず凝視・・・しそうになって悪寒を感じ正面に視線を固定した。

 

 二人は悪寒を感じる方に視線を向けると、何故か満面の笑みで香織がジッとこちらを見ていた。二人は見なかったことにした。

 

 

 全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話をし始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まず私の話を最後までお聞きくだされ。」

 

 

 そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもなく勝手なものだった。

 

まず、この世界はトータスと呼ばれている。トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の樹海でひっそりと暮らしていると。

 

 

 この内、人間族と魔人族は何百年も戦争をしている。

 

 

 魔人族は数では人間には及ばないもの個人の力は大きいらしく、その力の差に人間は数で対抗していたそうだ。

戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年は起きていないが、最近になって異常事態が多発しているという。

 

 魔人族による魔物の使役だ。

 

 魔物とは通常の野生動物が魔力を取り込み変質した異形の事だと言われている。強力な固有魔法を使える強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

 今まで本能のまま活動する魔物を使役できる者はほとんど居なかった。出来ても一二匹程度だったその常識が覆ったのである。

 

 これの意味することろは、人間族の数というアドバンテージが崩れたのこと。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

 

「あなた方を召還したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を作った至高の神。恐らく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚れた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前にエヒト様から信託があったのですよ。あなた方という救いを送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人類を救ってい頂きたい。」

 

 イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。信託を受けた時のことを思い出したのだろう。

 

(エヒト様の御意志の下ねぇ~)

 

 

 イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信者らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく教会の高位の地位に就くらしい。

 

 

(その神託はだれが証明するのだか・・・・悪魔の証明だな)

 

 タツヤは神の意志を疑うこともなく、それどころかイキイキと従うこの世界の歪さに危機感を覚える。

 

 そんな中、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

 愛子先生だ

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を帰してください!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

(愛子先生がんばっているな)

 

必死に抗議してる愛子先生に生徒たちは「ああ、また愛ちゃんががんばっている」と和んでいる。

 

 彼女は今年で二十五歳になる社会科の教師で非情に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら生徒の為に走り回るその姿は微笑ましく、いつも一生懸命な姿と大抵から回ってしまう残念さのギャップに庇護欲をかぎ立てる生徒は少なくない。

 

 

 そんな愛子先生にイシュタルが言い放った

 

「お気持ちは察します。しかし・・・あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちる。

 

 

「ふ、不可能って・・・ど、どういうことですか!?喚べたのだから帰せるでしょう!?」

 

 

「先ほど言ったように、あなた方を召還したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉する様な魔法が使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかも、エヒト様の御意志次第ということですな」

「そ、そんな・・・」

 

 イシュタルの言葉に愛子先生は脱力し椅子に腰を落とす。それと同時に周りも騒ぎ始めた。

 

「うそだろ?帰れないってなんだよ!」

「いやよ!何でもいいから帰して!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけるなよ!」

「なんで、なんで、なんで・・・・」

 

(エヒト様の御意志ねぇ・・・)

 

 

 生徒達がパニックを起こす中、タツヤは平然としながら飲み物を口に運び思考を巡らせた。

 

 タツヤはオタクである故にこういう創作物を何度も読んでいるので幾つかのパターンを予想していた。その中でのパターンの一つは勇者達を奴隷扱いというものだが、イシュタルの発言で最悪のパターンを想像した。それは、神によって全て仕組まれたモノというパターンだ。よくある物語で神が遊びで人の人生を弄んだり、信仰を得るための自作自演等だ。そうだとすると、今の自分たちでは抗うすべは皆無だろう。

 

「ハジメ、どう思う?」

「うん、やっぱり怪しいよ」

「だよな」

 

 

 小声でハジメと話しイシュタルをみる。

 

 皆が狼狽える中、イシュタルは「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」と言う

 

 

 パニックが収まらない中、我らが勇者(笑)が口を開いた。

 

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言って意味がない。彼にだってどう仕様もないんだ。・・・俺は、戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って放っておくことはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済が終われば帰してくれるかもしれない。・・・・イシュタルさん?どうですか?」

「そうですな?エヒト様も救世主の願いを無下にしますまい。」

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲ってる感じがします。」

「ええ、そうです。この世界の物と比べるとざっと数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界と皆を救ってみせる!!」

 

 光輝の遺憾なく発揮されるカリスマで絶望的だったクラスのみんなの顔は活気と冷静さを取り戻していった。

 光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子の半数以上は熱っぽい視線を

送っている。

 

(なにが、大丈夫だ・・・皆を落ち着かせるための止む得ない判断ならいざ知らず・・・安直過ぎるぞ)

 

 タツヤは内心毒づいた。其れもそのはずこの世界の事をよく知りもせず尚且、自身の力程を理解せず戦争に参加するというのだ光輝の事だからそういった考えなど皆無だろう。

 

(・・・ともあれこうなった以上腹をくくるしか無いか・・・)

 

 

「へっ、お前ならそう言うだろうと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。・・・俺もやるぜ?」

(馬鹿追加)

「龍太郎」

「今のところ、それしかないわよね。・・・・気に食わないけど・・・私もやるわ」

(そうだな、今はそれしかないよな)

「雫」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織」

 

賛同する三人、後は当然の流れとしてクラスメート達も賛同していく。愛子先生は涙目で反対したが光輝の作った流れは止まらない。

 

 

 結局、クラス全員で戦争に参加することになった。おそらく、クラスの殆どは戦争に参加することの意味を理解していないだろう。崩れそうな精神を支える為の現実逃避かもしれない。

 

 

 

 タツヤはそんなことを考えながらイシュタルを観察した。彼は実に満足そうな笑みを浮かべている

 

 

 タツヤは気づいていた。イシュタルが事情を説明する間、光輝を観察していたことに。

 

 正義感の強い光輝が人間族の悲劇を語られた時の反応は分かりやすかった。さらに、魔人族の冷酷非情さや残酷さを強調するように話していた。イシュタルは見抜いていたんだろうこの中で誰が一番影響力を持っているか。

 

 油断ならない人物だろうとタツヤは頭の中のリストに加えた。

 

 



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ステータスプレート・勇者以上のチートその1

長くなるので二つに分けます


 戦争に参加することになったタツヤ達は戦う術を学ばなければ成らなくなった。其の為に聖教教会の総本山にである。【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

 創成神エヒトの眷属であるシャルム・バーンが建国した国だそうだ。

 

 タツヤ達は下山の為、教会の正面門にやって来た。

 

 教会は【神山】頂上にあるらしく、凱旋門が如き荘厳な門を潜ると雲海が広がっていた。

 

 息苦しさは、感じない。おそらく、魔法で環境を整えているのだろう。

 

 イシュタルに促されて進み、柵に囲まれた円形の大きな白い台座に乗った。

 

 

「彼の者に至る道、信仰と共に開かれんー『天道』」

 

 

 イシュタルが何か唱えると台座が動き出し、ロープウェイのように地上に向けて斜めに下っていく。

 

 

 如何やら先ほどの詠唱で台座に施された魔法的な仕掛けを発動したのだろう。

 

 

(成程、大した演出だ)

 

 タツヤは内心で皮肉った。

 

 天より降りたる神の使徒という構図そのままである。

 

 何となくタツヤは地球の歴史を思い出した。政治と宗教が密接に結びついていた時代の事だ。それが後に様々な悲劇をもたらした。この世界は更に歪だ。なにせ、この世界には異世界に干渉できる程の力を持った超常の存在が実在する。文字通り神の意志を中心に世界は回っているからだ。

 

 自分達の帰還の可能性と同じく、世界の行く末は神の胸三寸なのである。

 

 

 (これは、気を引き締めていかないとな・・・)

 

 徐々に見えてくる王都を見下ろしながらタツヤは気を引き締めた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

王宮に着くと、タツヤ達は真っ直ぐ玉座の間に案内された。

 

 

 玉座の間では、覇気と威厳を纏った初老の男性が玉座の前で立ち上がって待っていた。

 

 

 その隣には王妃と思われる女性。更にその隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の金髪碧眼の美少女が控えていた。他にも騎士や文官と思われる者たちがざっと三十人以上並んでいる。

 

 

 イシュタルは国王の隣に行きおもむろに手を足しだすと恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。

 

(どうやら、教皇の方が立場が上のようだな。こりゃあ、国を動かすのは教会・・・若しくは神で決定だな)

 

 とタツヤは内心で呟く。

 

 あとは自己紹介だ。国王はエリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃はルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、金髪美少女はリリアンナ王女ということだ。

 

 

 あと他には、騎士団長や宰相等の高い地位の者の紹介がなされた。因みにランデル王子が香織をチラチラと見ていた事から香織の魅力も異世界で通用するようである。

 

 

 

 その後、晩餐会が開かれた。

 

 異世界料理は地球の洋食とほとんど変わらず。ピンク色のソースや虹色の飲み物も美味だ。

 

 その際に王宮では衣食住の保証がされている旨と訓練における教官達を紹介された。

 

 

 

 晩餐が終わり、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。

 タツヤはベットに横になりこれからの事を考えた。

 

(明日から訓練らしいが、どうしたものか・・・・天之河はともかく他は都合よく力が有るかが問題だ)

 

 今回の召喚は光輝を狙ったモノだろうもし。現に魔法陣は光輝を中心に展開された・・・だとするとタツヤ達は巻き込まれたという形だ。

 

(イシュタルは数倍から数十倍の力と言っていたが、あくまでイシュタルの考えであり厳密には証明されていない)

 

 恐らく、エヒト神に何かされたとタツヤは思った。理由は、言語だ皆気づいていないが普通異世界で日本語が通じているのは可笑しいものだ。今回みたいな異世界召喚モノだと二通りある召喚魔法の力によるものだった場合と

その世界の神によるものだ。タツヤ達を呼び出したのはエヒト神・・・となると何かされたということだ。そうなると力云々も神によるものだろう。光輝辺りは勇者らしい能力与えられているだろう、問題は他のメンバーだ。

数倍の力はあるとして、果たして戦争をやっていけるか?相手の力や自分たちがどれ位の事が出来るのか・・・・抑々この人数の素人が数倍から数十倍力が有るからと言って呼ばれるのが可笑しい上位世界の住人だからというのなら其れなりの人物を呼ぶものだ。もし、本当に救済が目的なら異世界人を呼ぶのは可笑しい、直接現地の人間に力を授けるなり神獣的な使いをよこすのが普通だ。神が現世に直接介入出来ない話は良くあるが・・・となると、光輝を狙って召喚したという仮説が正しいだろう。

 

(まぁ、兎にも角にも明日になったら力のことは分かるだろう・・・頑張らないとな皆で帰る為にも・・・)

 

 コンコン

 

 タツヤが考えているとドアからノックが聞こえてきた

 

「タツヤ、私よ起きている?」

 

 聞こえてきた声は雫だった。タツヤは雫を返事をし部屋に招き入れた。これが、他の男子に見られたら嫉妬の炎に狂うだろう

 

「今日の事で相談したいんだけど」

「戦争の事だろ?」

 

 雫の言葉にタツヤが答える。自分の正しさを信じて疑わない光輝は先ず無理として龍太郎は論外、他の男子も論外となると、道場で顔馴染みのタツヤに頼ってきたのだろう。

 

「ええ、そうよ」

「・・・あくまで俺の考えだが他の奴に特にこの世界の住人には言うなよ?」

 

 タツヤは先ほどの考えを含め自分の考えを述べた。

 

 今回の召喚は光輝を狙っての事で自分達はそれに巻き込まれた可能性

 言語を含め力についてはエヒト神に何かされた可能性

 この戦争は種族戦争もしくは宗教戦争で相手は種族は違えど人であること

 

「・・・・驚いたわ、そこまで考えていたなんて、やっぱり光輝に賛成したのは間違いだったかしら?」

「いや、あの場では最善の選択だろう、現に教皇が言っていたろ「エヒト様に選ばれてなぜ喜ばないのか?」ってあの場で拒否し続ければ最悪、奴隷か処刑なんてあり得る。こういっちゃなんだが天之河の発言は最適だった。狙ったわけじゃないだろうが・・・・」

「そうね、光輝じゃぁ、そこまで考えてないでしょうね」

 

 確実に光輝はこの戦争を勧善懲悪の物語に捉えているだろう・・・要は人を殺す事を自覚していない。

 

「そうだな、相手が人だという事と自分たちが死ぬかもしれないという事を自覚していない」

 

 これは、ハジメや愛子先生を除いた皆にも言えた事だが・・・

 

「それに、帰還の話も信用できない普通、自分達の都合で呼び出した以上帰す義務があっても、帰す条件が在るのは可笑しいそれに、それは、教皇が言ったのであって神自身が言ったわけじゃ無い」

 

 そう勝手に呼び出しておいて帰す事が褒美なんてまず可笑しいそれに、エヒト神はこの世界の神であって俺達の世界の神でないいくら俺達が帰還を望んでもこの世界の人々が拒めばそれを優先される可能性がゼロじゃない。

帰してほしかったら言うことを聞けなんて誘拐犯の言い分だ。

 

「タツヤこれから、どうすれば、いいのかしら?」

 

 不安げに尋ねる雫、その顔は普段の凛としたものではなく年相応の少女のものだった。

 

「そうだな、先ずは知ることだこの世界の事、自分達の事を」

「そうね、どんな力が有るか分からないけどそれを知らなきゃ何も出来ないわね。」

「ああ、それと、雫にはクラスの皆の事を頼みたい」

「皆が暴走しない様にでしょ?」

「ああ、女子の皆を通して頼む」

 

 いきなり平穏な日本から素人の学生が魔法という力を手にするんだハシャギたくもなるのも必然だろう。ここは武術の心得のある雫が適任だろう。

 

「まあ、仕方ないでしょうね。」

「悪いな苦労を押し付ける形で・・・」

 

 元々色々と溜め込みがちな雫は時々タツヤに相談しにくる。皆のまとめ役として色々とあるのだろう

 

 

「今に始まった事じゃないからいいわよ。」

「じゃぁ、皆の保護者を頼むよ」

「誰が、保護者よ」

 

 軽口を挟みながらいつもの凛とした表情に戻った雫はタツヤの部屋を後にした。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 まず、集まった生徒達に銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長のメルド・ロギンスが

が直々に説明を始めた。

 

 騎士団長が訓練に付きっりでいいのかと思ったタツヤだが、対外的にも対内的にも勇者一行を半端者には任せられないらしい。

 

 

 メルド団長自身も、「むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由が出来て助かった」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが・・・・

 

 

「よし、全員に配り終ったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自身の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これが在れば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽なしゃべり方をするメルド「これから戦友になろうっていうのにいつまでも他人行儀に話せるか!」

ということだ。他の騎士団員にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

 

 タツヤとしても、その方が都合がよい、遥か年上の大人に畏まれても居心地が悪いしクラスメート達もかえって変な自尊心が付いても困る。

 

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう?そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所有者が登録される。ステータスオープンと言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

 アーティファクトと聞きなれない単語に光輝が質問する。

 

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現出来ない強力な魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、この世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんだが、これは、一般市民にも流通している。身分証に便利だからな。」

 

 

(なるほどね~まるでゲームみたいだ。)

 

 そう思いながらタツヤは指に針を刺した。

 

=====================

南雲タツヤ 17歳 男 レベル1

天職:魔導師

筋力:700

体力:700

耐久:700

敏捷:700

魔力:700

魔耐:700

技能:全属性適正・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・魔力操作・想像構成・高速魔力回復・威圧・魔力変換・縮地・隠業・金剛・創造魔法・干渉魔法・回復魔法・魔眼・錬金術・先読・房中術・幻術・限界突破・気配感知・魔力感知・剣術・斧術・槍術・棒術・盾術・格闘術・投術・???・具現魔法・魔力供給・付与魔法・魔力侵食・固有結界・体得・兄弟の絆・言語理解

=====================

 

(へぇ~レベル1でオール700か・・・やっぱり言語理解と言うのがあったな)

 

 

 自らの予想通りに言語関連の能力が在ることを確認し自身のステータスを眺めるタツヤ。他の生徒達も自分マジマジと自分のとステータスを見る。

 

 

  メルド団長から説明がなされた。

 

「全員見れたか?説明するぞ?まず、最初にレベルがあるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在地と思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮したという極地ということだからな。そんな奴はそうはいない」

 

 

 如何やらゲームの様にレベルが上がるからステータスが上がることではないらしい。

 

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスが高くなる。詳しいことは分かってないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助していると考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ、救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

 

 ゲームの様に魔物を倒しただけではステータスが上がるわけでないらしい

 

 

「次に天職ってのがあるだろう?それは言うなら才能だ。末尾にある技能と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦闘系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦闘系も少ないと言えば少ないが・・・・百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴は多いな」

 

 

 タツヤの天職は魔導師、如何やら魔法に適した才能のようだがステータスを見れば技能の中に剣術や格闘術がある。

 

(また、内容からして色々有るな・・・才能というが、多分エヒト神に弄られただろうな。それにしても房中術ってエロゲの主人公かよ)

 

 

「後は・・・各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 

 この世界のレベル1は平均は10らしい。タツヤのステータスは七十倍、正しくチートである。

 

 

 他はどうだろうと周りを見ると一人を除いて皆、顔を輝かせていた。そう、ハジメを除いて・・・・

 

 

「ハジメ、どうした?何かまずいモノでも表示されたか?」

「たっ、タツヤ~」

 

 タツヤが小声でハジメに語り掛けるとハジメは汗をかきながら絶望的な表情をしながらプレートを見せた。

 

=====================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐久:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・兄弟の絆・言語理解

=====================

 

 ・・・・何というか見事に平均的だった。

 

(悪意を感じるな・・・・それに、この兄弟の絆って?)

 

そんな時、光輝が自身のステータスを報告し前に出た。そのステータスは

 

=====================

天之河光輝 17歳 男 レベル1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐久:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適正・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読み・高速魔力魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

=====================

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か・・・・技能も普通は二つ三つなんだがな・・・規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは・・・」

(俺はそれ以上だがな・・・・)

 

 団長の称賛に照れたように頭をかく光輝。因みに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後この世界でトップレベルの強さだ。それに対してレベル1で三分の一の光輝は十分にチートであるがタツヤはレベル1でそれを超えている。

 

 

(不味いな、なんか出しにくい)

 

 

 ハジメの手前、勇者以上のステータスと技能が表示されたタツヤは出すのが気まずくなった。無論その内容も含めて。国や教会のにとって勇者というブランドは絶対でなければ為らないだろう、そうなると勇者以上の存在など目の上のたん瘤下手すれば暗殺されかねないだろう

(どうするべきか・・・・天之河を立てようにも誤魔化せないな・・・・)

 

 そして、次々と他の連中も自身のステータスを報告しだした光輝に及ばないが十分にチートだった。誰もこれも戦闘系天職ばかりだったので余計に気まずい。

 

 ハッキリ言って空気が読めない程のチートはかえってやっかみを買いかねない。

 

 そうこうしているうちにハジメの番が来た。今まで、規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の顔はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでの事だろ。

 

 その団長の表情が笑顔のまま固まり、「見間違えか?」とあれこれ確認すると、「これは!?」と一瞬驚いたもののもの凄く微妙な表情でプレートをハジメに返した。

 

 

「ああ、その、なんだ、錬成師というのはな、まぁ言ってみれば鍛冶職のことだ。鍛冶するときに便利だとか・・」

 

 歯切れ悪く説明をするメルド団長。

 

 その様子にハジメ達を目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。

 

 檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦闘系か?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「・・・いや、鍛冶職の十人に一人が持っている。国のお抱え職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前そんなんで戦えるわけ~?」

 

 檜山がそう言うと周りの生徒・・・男子達がニヤニヤと嗤っている。

 

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータスを見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

 

 メルド団長の表情で察してるくせに、ワザワザ必要に聞く檜山。取り巻きの三人もはやし立てる。強いものに媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。本当に嫌な性格をしている。事実、香織や雫を始めとした女子たちは不快げに眉をひそめてる。

 

(香織に惚れているくせに、なぜそれに気づかないのか・・・・)

 

 タツヤは不快感を顔に出して檜山を見ていた。

 

 そして、ハジメのプレートを見た檜山達は下品に笑い出す。

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒァハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」

 

 次々と笑い出す男子達これには流石のタツヤも怒りを覚えた

 

「・・・聞きましたかメルドさん此奴らがこう言ってるんで俺とハジメは生産職に徹したいんで国のお抱え職人を紹介してください。」

 

 突然話を振られたメルド団長は疑問な表情だった。

 

「ん?別に構わないがどうしてだ?」

「俺とハジメは元の世界で生産職に関わていましたその過程で武器に関する資料を目にする事も在ったのでもしかすれば再現出来るかもしれないんです」

「ほぉ、異世界の武器か」

 

 タツヤの言葉にメルド団長が興味を示した。

「はい、俺達の世界では魔法が無い変わりそれに依存しない技術が進歩してます。刀と言う丈夫でよく切れる剣や銃・・・って言っても分からないでしょうから簡単に説明しますと指程の鉛や鉄の弾を音速で撃ち出す武器で鎧でも真面に当たれば貫通する武器で物によっては、遥か遠くの敵を攻撃できる物もあります。全く同じ物でなくてもそこのとこは魔法多で何とかなります多少コストが掛かるかもしれませんが」

「ちょと、タツヤ!いきなり言われても困るよ!」

 

 突然の事に戸惑うハジメにタツヤは言う。

 

「いいか、ハジメ俺達はこの世界の人たちより才能が有るんだろ?それは、別に戦闘力に限った事じゃない生産職も立派な才能だ。それに加えお前には知識もセンスもある。ちゃんとした人の下で学べば不可能じゃない。それに戦争は前衛だけじゃ成り立たない武器の整備をする後衛もちゃんとした戦力だ。」

「ほぉ~、分かっているじゃないか、よし!上には俺が掛け合おう」

 

 関心した様子で言うメルド団長

 

「・・・・タツヤがそう言うならやってみるよ。」

 

 タツヤの言葉にハジメはやる気を見せた。他の男子もその言葉の意味を理解してか嗤うのをやめた、そこに、檜山達が横槍を入れる。

 

「へっ、腰抜けが戦うのが怖いんだろ?」

「どうせ、南雲なんかが、造ったもんなんて大したこと無いだろ」

「俺、南雲の作ったもんなんて死んでも使いたくないわ」

「ぎゃははは、言えてる。」

 

 また下品な笑いが響く、流石に他の男子は状況を理解してか嗤っていない、女子たちは汚い物を見るような目をしている。そしてメルド団長を始めとした騎士達も不快そうな顔をしている。

 

「だから、お前達は無知なんだ。いいか、俺達の天職は生れ付きの才能じゃない全てエヒト神からの貰い物だ、各々の才能に合った力を授けられたにすぎないそれを侮辱するのは神への侮辱と同じ仮にお前らが練成師だったとしてモノづくりが出来るか?あ!出来るわけないか馬鹿だもの、それに、人を肉壁にする奴らとなんて一緒にいても命が幾つあっても足りない、あ!?皆も気負付けろよ戦場で盾にされるぞ」

 

 その言葉を聞き皆の視線が檜山達に向いた。檜山以外の三人はその視線にたじろいだ。だが檜山がキレて

 

「てめぇ!!捨て子の癖に!!」

「「「「「「!?」」」」」」

 吐かれた言葉にその場にいた全員が凍り付いた

「だ、大介流石にそれはまずいって」

「ああ?、捨て子に捨て子って言って何が悪い大体こいつらは血のつながりの無い赤の他人だろう!!気持ち悪いんだよこいつらの兄弟ごっこは!!」

(・・・・うん、此奴は潰す)

 そう、タツヤとハジメは実の兄弟じゃないタツヤが赤ん坊の頃に両親と死別して他に身寄りがいないところをハジメの両親が引き取ったのだ。檜山の言う捨て子はまったくの出鱈目であるがタツヤを快く思わない檜山にとってはどうでもいい血のつながりが無いその事実がすべてである。檜山達は四人は過去にそのことで二人を馬鹿にしてタツヤに酷い目に合されたので禁句としていたが、檜山だけはそのことを忘れていた。

 

 その言動に香織や雫が文句を言おうとすると・・・・

「取り消せ」

「ああ?、南雲~?今なんて言った」

「取り消せって言ったんだよ!!タツヤは捨て子なんかじゃ無い僕の大事な家族だ他人なんかじゃない!!」

「何が家族だ、毎晩エロゲで徹夜しているキモオタが」

「うるさい!誰がキモオタだ、お前なんか人生負け犬の只の小悪党じゃないか!!」

「何だと!!誰が負け犬の小悪党だ!!」

「タツヤは父さん達からは即戦力て言われているし他のバイト先でもそうだ。他にもプロゲーマーとして10億以上稼いでいるし株や投資で更に増やしているんだお前なんかタツヤの足元にも及ばない生粋の負け犬だ!!」

(あぁぁ~言っちゃったよハジメ)

 檜山の言葉に普段温厚なハジメがキレて色々とカミングアウトしていた。

そこへ香織と雫が続いた。

「そうだよ!タツヤくんとハジメくんは毎日、お家の仕事を手伝って将来の為に一生懸命努力しているんだよ!!」

「そうね、お金の事は初耳だけど毎日徹夜をしているのは別に遊んでいたわけじゃ無いし普段の言動や身嗜みだって問題ないわ。」

 

「白崎?それに、八重樫まで・・・なんでそんなキモオタを庇うんだよ?」

 

 二人の言葉に檜山は理解出来ないといった表情をした。そこへ、我らが勇者(笑)が降臨した。

 

「そこまでだ、二人とも南雲達なんかの為に嘘をつく必要は無い」

 

「ちょっと!光輝くん私達別に嘘なんか言ってない!」

「そうよ、光輝、私達が言っていることは事は本当の事よ!」

 

 二人は光輝の言葉に抗議すると

 

「二人は優しいなでも大丈夫、俺がついている。」

 

 臭い笑顔で歯を輝かせる。

 

「南雲タツヤ!!自分達が安全なとこにいる為にメルドさんを騙し仲間の輪を乱し、その上優しい香織と雫に嘘をつかせたことを俺は許さないぞ!!」

 

 と、指をさしポーズを決める我らが勇者(笑)がいた。

  



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ステータスプレート・勇者以上のチートその2

犯人はお前だと言わんばかりにタツヤに指をさす光輝

(はぁ~、また何時もの思い込みか・・・)

「何が許さないだ、俺は、当然のことを言ったまでだ。大体、天之河、俺が何時メルドさんを騙した?」

「騙そうとしたじゃないか、南雲ハジメなんかが、武器を作れるわけ無いだろ、それに、俺達が喚れたのはこの世界の人たちを救うためだ。遊ぶためじゃない」

「へぇ~、後衛の仕事が遊びだと」

「そうだ、俺達のこの力は力なき人のためにあるんだ自分達だけ安全で楽な仕事するんじゃない!!」

(後衛の人たちが聞いたらどう思うだろう・・・)

 

「それに、神様を出しにして檜山達を馬鹿呼ばわりした挙句皆の才能を貶め仲間の信頼関係を崩そうとした。」

(神様を出しにしたのは事実だが人の才能を貶めたのは檜山達だし肉壁の事については正論だろうが)

 

 香織と雫が止めようとしたがタツヤが手で制した。

 

「先にハジメを馬鹿にしたのはこいつらだ、それに、皆の才能を貶めた覚えはない、大体人を肉壁にしようとする連中に対して皆に注意して何が悪い?第一ハジメの天職は生産職だステータスが低いのは戦闘職じゃないからだろう」

 

「それは、南雲ハジメが普段から不真面目だからだ、ステータスが低いのがその証拠、他の皆は普段から努力しているからステータスが高いんだ、お前達とは違う」

 

(・・・・わぁ~、本気で言っているよ。こいつ・・・・)

 光輝の発言にタツヤは呆れた。その言葉は自分達を見下したものだった。

(これで、本人は正義のつもりなんだよなぁ・・・・)

 

「ふん~、じゃぁ不真面目なら何を言ってもいいと?・・・肉壁にしてもいいと?」

「そんなことは、言っていない確かに檜山達の言い方は問題あるがだからっと言って嘘を言ってメルドさんを騙していいわけない、それに仲間に不信感を与えていい理由にはならない。」

「だったら、お前が止めればよかったろ。お前なら直ぐに止められたはずだ。」

 タツヤの言葉にたじろぐ光輝

「そ、それは・・・」

「それともなにか?お前も他の連中と同じくハジメが馬鹿にされるとこを嗤っていたのか?」

「ち、違うそんな事はない!」

 

「それに、生産職のハジメだからこそ出来ることを言っただけだ。それを騙すなんて人聞き悪い。」

 

「そんなの、無理に決まってる南雲達なんかに武器を作れるハズがない、現に南雲ハジメは嘘をついて香織と雫に嘘をつかせた。」

「へぇ~、どこが嘘だ?」

「全部だ、親の仕事を手伝っている、即戦力扱い、ゲームで10億稼いでいる、株や投資、出来るわけないオタクのお前に、他人に育てはてもらてるくせに遊んでばかりいるお前なんかに」

 

 この発言には、香織と雫を始めとした女子達も不快な顔をした。

 

「お前なぁ・・・」

「いい加減にしなさい!天之河くん!!」

 

「先生?いきなりなんですか?」

 

「何ですか?じゃぁ、ありません!!南雲くん達の事を嘘つき呼ばりして、挙句の果てに他人に育ててもらって遊んでばかり?なんてことを言ってるんですか二人に謝りなさい!それと檜山くん達も捨て子とは何ですタツヤくんは捨て子じゃありません謝りなさい!!」

 

 プンプンと小柄な体で精一杯怒りを表す愛子先生

 

「先生?何を言って、なんで俺が謝らないといけないんです?寧ろ二人が皆に謝るべきだ」

「はぁ~、先生、別にいいですよ。此奴に何を言っても無駄だから」

 

 タツヤの呆れた表情を見た愛子先生は察したようで。

 

「・・・・そうですか。わかりました。二人とも気にしないでください先生だって非戦闘職系でステータスも大体平均ですから。」

 

 そう言って自身のプレートを見せる愛子先生のステータスは

=================================

 

畑山愛子  25歳 女 レベル1

天職:作農師

筋力:5

体力:10 

耐久:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

 

 

=====================

 

 

 生産職でステータスは低いが十分にチートだった。

 

 

「作農師だと!?まさかじつざいしたとは・・・!急いで教会に連絡を!!この世界の食料関係が一変するかもしれん!!」

 驚愕するメルド団長はすぐさま騎士団員に指示をだした。

 

 方やハジメは死んだ魚の様に遠くを見つめた。

 

「あれぇ~?」

(愛子先生、悪気は無いだろうな~)

 相変わらずの一生懸命さに見事な空回りにクラスメイト達はほっこりする。

 

(さて、俺は、どうしようか・・・・出しそびれた。)

 ハジメへの嘲笑を止める事に気をまわして自分のステータスの事を忘れていたタツヤだった。そこに、メルド団長が・・・・

 

「よし!お前で最後だな見せてみろ。」

「・・・はい、どうぞ。」」

 流石、騎士団長見逃さなかった。タツヤは気まずそうにプレートを出した。

「何だと!?魔導師!?で、勇者の七倍だと!?それに、この技能の数は・・・・錬金術だと!!」

 

 今まで以上に驚くメルド団長の声に周囲が反応した。

 

「えぇ~、魔導師ってそんなに珍しい職業なんですか?後、錬金術って?」

 

 

「ん!?ああ、魔導師って言うのは魔法士の最高職だ、様々な強力な魔法を使うのに特化しているそれに、技能のほうの錬金術は伝説級の天職、錬金術師だけが、持っている技能だ、錬金術ていうのはな薬師以上の魔法薬を作れたり物質を作り替えたりできる生産職の万能技能だ。昔は稀にいたらしいが今では確認されていない。それに、この豊富な技能の数・・・戦闘系の技能が勢ぞろいで、尚且つレベル1で勇者の七倍、いやぁ~お前が居れば心強い!」

 愛子先生の時以上に興奮するメルド団長。

 それを聞きハジメは蹲ってしまった。

 

「・・・・・石になりたい・・・」

 

(やべぇ!!止めを刺した!!)

 

「め、メルドさん!!それじゃあ、聞きますが、この兄弟の絆って技能は?ハジメにもありましたが・・・」

 

「ああ、これはな・・・」

 

 メルド団長曰く【兄弟の絆】と言う技能は、双子に現れる技能で互いに意思疎通が出来たり、魔力の共有が出来るだそうだ。尚、双子だからと言っても必ず持つことがない幻の技能だそうだ。

 

 昔、ある双子の兄弟がいて、片方は高いステータスを持ちもう片方は平均だったそうだ。そして、その双子の持つ技能が【兄弟の絆】でその技能で魔力の共有をしてる間はステータスが向上し尚且つ成長率もお互い向上し平均値の弟のステータスは常人の数倍になったそうだ。

 

(へぇ~、そうなんだ。双子の技能か・・・・)

 タツヤとハジメは同じ日の同じ時間同じ病院で産まれたある意味双子と言っても差し支えない

 

「最初、そっちのボウズの技能を見たときはまさかと思ったが、さっきのお前の話を聞く限りお前たちの力はエヒト様からの授かりものというのも噓じゃなさそうだな。いやぁ~良かったなボウズ!頑張りしだいではこの中でも化けるだろうな!」

「っは、はい!」

 石の様に蹲っていたハジメは希望を取り戻したようだ

「ああ、メルドさんそのことなんですが・・・」

 

 タツヤは今後の事を考えメルド団長に自分の生い立ちを説明した。無論檜山、檜山の捨て子と言う言葉を訂正するためだ。そのことを説明すると一部を除いて周囲の皆が涙ぐんでいた。

 

「それで、今の両親は娯楽関係の仕事をしていて、俺とハジメはその仕事を学びながら手伝っているんです。」

 

「・・・・そうか、そんなお前達だからこそエヒト様はこの技能を授けたんだろうな・・・」

 

 涙ぐんで納得した感じのメルド団長を始め皆しんみりとした感じだ。

 

 その中で檜山達は居心地の悪そうにしていたここで不用意に発言すれば全員を敵に回す事になるからだ。そして、光輝はタツヤを睨みつけていた何か言いようとしたが雫が「空気を読みなさい」止めていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 その後宝物庫に案内されたこれから使う装備を選ぶためだ。金品は他の場所にあるのだろうかここには色々な武器が納められた。

 

「よし!この中からそれぞれの天職や技能に合った装備をえらんっでもらう。」

 メルド団長がそう言うと様々な武器や装備が運ばれた。先ず勇者(笑)である光輝の番だ。

「これは、神剣と神玉と言い嘗て神が地上にいた際に使用していたと言われているアーティファクトだ。」

 

 神剣は黒を基本色に紅い石が埋め込まれ金の装飾が施された物だ。そして、神玉は紅い球が埋め込まれた金首飾りだ。神剣は、今まで使用できたものはおらず選ばれた者だけが使える剣だそうだ。神玉も同じく選ばれた者だけが使え使い手の能力を増幅するそうだ。どちらも、今まで使えたものがいないそうだ。

 

「これが、俺の武器・・・・」

 

 まるでゲームの様に選ばれし勇者が伝説の剣を手に取る場面である。

「これは、今まで誰も抜けなかった物だが神に選ばれし勇者なら抜けるはずさぁ、抜いてみろ」

 メルド団長の言葉に光輝は神剣を取りいざ抜こうとしたが・・・・抜けなかった。その際に「へぇ?」という声を出し周りの空気が止まった。それから、何度も試したが全くとしてびくともしなかった。

 

「すみません。ぬけません。」

「・・・・まあ、気にするな!今まで誰も抜けなかったんだ。気にすることはない!それよりこっちを着けてみろ」

 そういってメルド団長が差し出したのは神玉だった。光輝は差し出された神玉を受け取ろうとすると今度はバッチンと閃光が出て光輝の手からはじかれた。周囲の視線は光輝に集中していたのもあってかまた空気が止まった。

 

「・・・・・・気にするな!これだって誰も使えなかったモンだ!」

「そ、そうですよね!誰も使えないものなら仕方ないですよね!?」

 

 そして、光輝に選ばれたのは聖剣と呼ばれる剣と聖鎧と呼ばれている鎧だ双方とも無駄にキラキラしている。これは、問題なく使えたようで光輝は満足したようだ。

 

「それじゃぁ、気を取り直していくぞ。」

 

 それかは、問題なく武器選びは進んでいった。ハジメのは錬成師用の装備が無いので後で用意するそうだ。そして、タツヤは、まだ武器が決まっていなかった。

 

 

(さて、俺の天職の魔導師は魔法に適したもんだが、技能には剣術とかあるが、どうしたらいいか・・・)

 

 タツヤの技能には魔法関連の技能以外にも剣術、斧術、槍術、棒術、盾術、鞭術、格闘術、投術と戦闘系の技能が八つもある。魔導師なら杖をと勧められたがどうも、シックリこない

 

(ここは、技能的に槍斧なんかが、無難だが剣も捨てがたい武器をしまえる魔法具があれば万事解決なんだが。)

 

 タツヤの前には様々な武器が並べられている。どれも、国宝のアーティファクト迷うのも無理はない、選択次第で今後の生死に関わる慎重に選ばなければ為らない。

 

(・・・ン~迷うな~・・・)

 

 悩むタツヤそして、フッと在るモノに目がいった。先ほど光輝が抜けず放置された神剣だ。

 

(試してみるか・・・・)

 

 タツヤは神剣を手に取った。それを、見ていたクラスメイト達の注目が集まった。

 

「おいおい、南雲~、それは、誰にも抜けない欠陥品だぞ~?」

「天之河が抜けなかったんだぞ。」

「無理無理、南雲なんかに抜けるわけない」

「いや、寧ろ南雲には欠陥品がお似合いかもな」

 

 檜山達が懲りずに野次を飛ばしてきた。

 

「さて、どうだかな・・・・」

 そうしているとその場にいた者の視線はタツヤに集まりだした。

 

 みんなの視線が集まる中、気にもせずタツヤは神剣の柄を掴み軽く力を入れたすると・・・

 

「「「「「おお!!」」」」」

「うん、いい感じだ。」

 

 剣は鞘から抜け見事な輝きを放っていた。剣が抜けた事に周りが驚いた。香織からは「タツヤくん凄い」と聞こえた。タツヤは剣を鞘に戻したすると、先ほど剣が抜けなかった我らが勇者(笑)がもの凄い剣幕で詰め寄ってきた。

 

「おい‼南雲タツヤ‼お前いったい何をした‼」

「何って?ただ剣を抜いただけだ。」

 

 光輝の問いにタツヤが答えた。

 

「だから、何故お前が抜けるんだ勇者の俺が抜けなかったのに‼何かしたんだろ‼よこせ、俺が抜くさっきのは間違いだ」

 

 光輝はタツヤから神剣を受け取るとすぐさま抜こうとしたがびくともしなかった。それでも、光輝は諦めず力いっぱい顔が赤くなるほど何度も試したが抜けなかった。

 

「・・・どうしてだ?南雲が抜けたのに、勇者の俺が・・・」

 

 軽く放心状態の光輝からタツヤは剣を取ると今度は他の男子が群がって来た。そして、我こそと言わんばかりに挑戦したが誰も抜けなかった。

 

「じゃぁ、メルドさん俺は、これにしますね?」

「あ、ああ良いだろう・・・ついでだこれも、着けてみろ。」

 

 そう言ってメルド団長が差し出したのは神玉だった。タツヤは差し出された神玉に恐れることなく手を伸ばした。その手は光輝の時の様に弾かれる事なくすんなりとタツヤの手に渡った。そして、神玉を首に掛けるすると、神玉が光を放った。それには、全員驚いたが、光は直ぐに治まった。この展開からするとタツヤが神玉に選ばれたのだろう。

 

「うむ、神玉もお前を選んだ、これも、お前のものだ。」

 

 流石に今度は誰も来なかったが光輝と檜山が物凄く睨んでいた。

 

 こうして装備選びが終わった。

 

 



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