あなたの世界は何色か ~元ブラック鎮守府でおきた奇跡の物語~ (トミザワ)
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プロローグ
着任


どうもトミザワです!しばらくは一作品でやるつもりでしたが、書きたくなったので書きました!
相変わらずのクソ小説なのは変わらないのであまり期待はしないでください笑

※ちなみに不定期投稿です

9月5日 手直し終了


艦娘...突如現れた深海棲艦に対抗手段であり、人類の希望でもある。この艦娘の活躍により、日本近海の制海権は取り戻すことが出来たと言えるだろう。

しかし1年前、ある事件が発生した。それは艦娘を指揮する立場である提督が艦娘に対し性的暴行をすると言う事件が発生した。その後提督は憲兵隊によって逮捕された。

取り調べをするにつれて性的暴行だけではなく、理不尽な暴力や普段は禁止をされている大破しても進撃させる大破進撃など艦娘に対して非人道的な行動をしていたことも判明した。

そしてこの事件が発生したのを皮切りに次々と他の鎮守府でも艦娘に対する非人道的な行動が報告された。

この一連の事件をきっかけに軍関係者らはこのような行為をしてる鎮守府をブラック鎮守府と呼ぶようになった。

 

これに対応すべく大本営はあらたに対ブラック鎮守府のための部隊を設立。

 

 

 

それが海軍特殊憲兵隊である。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふわぁ~」

 

 

眠い。ただただ眠い。最初は軍施設の警備なんぞ楽だと思っていたのだが、逆に暇すぎて眠いと言う地獄の勤務が待っていた。

仕事は簡単。通信施設の正門前で立っているだけ。ね?簡単でしょ?

 

「どうかね?様子は?」

 

 

「ハッ!異常なしであります!」

 

あと少し大変なことと言えば上官がクソだと言うことぐらいかな?ことあるごとに嫌味を言ってくる。

 

「どうだか…。16のクソガキが言う事は信じられん…。」

 

 

じゃあ何で聞いたんだよクソジジイと言ってやりたいところだが、まだ生きていたいので我慢する。

 

 

 

上官に嫌みを言われ、つまらない立哨をする毎日であったが、最近少し興味深いものを見つけた。

 

「池田二等兵、交代の時間だ。」

 

「了解」

 

俺は他の兵士と交代するとお昼ご飯を持ち通信施設より奥にある茂みを抜け、坂道を登ったところに小さな公園があるのでそこへ向かう。ほとんど人が来ないので俺のお気に入りスポットになっている。ここに最近興味深いものがいる。

 

「アッキョウモキタ」

 

「オナカヘッター」

 

「ハヤククワセロ」

 

手のひらサイズの女の子と言うのだろうか?初めて会った時、彼女たちに聞くと自分たちは妖精だと答えた。しかも驚くことに他の人たちには見えないらしい。最初に上官に言ったものの、ふざけてるのか!と殴られた。

マジ上官許すまじ

 

 

「わかった。わかった。ちゃんとお前らの分も用意してあるから」

 

飯を催促する彼女たちに俺は小さなおにぎりを渡す。

 

「ウマイ!」

 

「モットクワセロ!」

 

最近徐々に生意気になってるのが少しムカッとくるが、暇つぶしにもなるのでいいとしよう。

 

「ハイハイ…。ちゃんと用意してあるから慌てずに食え。」

 

妖精たちは俺の作ったおにぎりが気に入ったらしく、最近はこの公園で俺が来るのを待ってるらしい。そして日を追うごとに数が増えているのが、少し怖い…。

 

「キョウモジョウカンニナニカイワレタノ?」

 

一通り昼食が終わったら、今度は愚痴大会が開かれる。大会と言っても愚痴を言うのは俺だけだがな。

 

「オニイサンカワイソウ…」

 

そして何か言うごとに彼女たちは俺の心配をしてくれる。

 

「ナンデジョウカンハワルイヒトニナッチャッタノ?」

 

「なんで上官は悪い人になっちゃったのかねぇ…。」

 

妖精の質問に俺は少し戸惑う。しかし答えはすぐに出た。

 

 

「上官が悪い人と言うよりかは…人間誰しもが悪い人なんだよ。」

 

人間は地球上最も醜い生き物だと思う。優越感に浸り、時に人を裏切り傷つけ…そして残酷である。それに加え知能が高いから余計タチが悪い。

だから俺は人と関わることは極力避けている。関わるのは仕事の時だけで十分だ。

 

「じゃあ俺はそろそろ戻るわ」

 

「バイバイ。アトオニイサンハワルイヒトジャナイヨ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから数日後。どうやら今日は大本営の上官殿が来る らしい…。まぁ警備だから身分を確認して、あとは失礼のないようにすればいいだけだから問題ないだろう。

 

 

そんなことを思っていると1台の車が侵入してきた。

車は俺の手前で停車する。俺は車に近づき、窓をあけるように指示する。

 

「身分証明書を拝見させていただきます。」

 

「貴様に聞きたいことがある。」

 

 

聞きたいことって…。まず身分証明書を見せろって言ってるだろうが。

 

 

「池田信也と言う男はいるか?」

 

 

背筋が凍った。池田信也は俺なんですけど…。俺なんかしたかな?

 

「池田信也は自分であります!」

 

「そうか。なら話が早い。大本営から貴様に呼び出しがかかっている。至急車に乗ってくれ。そちらの上官方には私から話しておこう。」

 

 

そう言われ俺は車に乗せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

大本営前

 

 

車で聞いた話だが、どうやら元帥からの指示で呼ばれてるらしい。

 

一体何の話なのだろうか…。もしかして上官の悪口を影で言ってたの聞かれてた?もしそうだとしたら死刑は免れないだろう。

 

いやよくよく考えたら悪口言っただけで死刑はヤバいだろ........

 

 

 

俺は意を決して扉をノックする。

 

 

「失礼します!」

 

「入れ。」

 

俺は扉を開け、部屋に入る。

 

 

「君が池田君だね?」

 

「そうであります!」

 

元帥は表情一つ変えずに真顔のままだ。さっきから冷や汗が止まらない。わざわざ16のクソガキを呼ぶくらいだ…。とんでもないことを言い渡されるのだろう。

 

「単刀直入に言わせて貰う。本日を持ち池田信也二等兵は海軍特殊憲兵隊に配属とし、明日より第2鎮守府の指揮を任命する。」

 

 

 

ふむふむ…。なるほどわからん。指揮?もしかして俺提督になるの?えっ?嘘でしょ?

 

「その様子だと理解できていないようだな。」

 

「申し訳ありません…。」

 

「構わない。ところで艦娘は知っているかな?」

 

「もちろんです」

 

それぐらいは知っている。深海棲艦に唯一対抗できる人類の希望だ。

 

「なるほど…。まず説明させてもらうと君が入る海軍特殊憲兵隊は対ブラック鎮守府のために創設された部隊だ。」

 

「理解はしました。ですが元帥殿、私は指揮の経験どころか戦術の知識もありません。」

 

そう。俺は指揮経験もなければ戦術に関する知識もない。それどころか鎮守府の運営すらできないであろう。そんな人間がなぜ提督に選ばれたのか疑問が浮かぶ

 

「それはわかっている。艦隊運営については妖精が教えてくれるだろう。」

 

 

妖精?妖精ってまさか!

 

「ゲンスイドノショルイハココデイイデスカ?」

 

妖精たちは書類を元帥の机に置く

 

「と言うことは私を選んだ理由は」

 

「妖精が見えているからだよ。妖精は艦隊指揮に重要な役割を担っている。」

 

マジかよ…。アイツら結構すごい奴らだったんだな。

 

 

「話を続けよう。さっきもいった通り君は海軍特殊憲兵隊に入ることになっている。そして第2鎮守府の指揮。今までの話を聞けばわかるだろうが、第2鎮守府は元ブラック鎮守府である。そこで君の任務はこうだ。次の提督が着任するまでに艦隊の指揮ができるように鎮守府を復興するのが君の任務だ。もちろん我々も全力でサポートするつもりだ。そこは安心してくれ。以上だ」

 

もし誰かに今の気分はどうですか?と言われたらこう言うだろう…。

 

 

 

 

『最悪だ!』と

 

 

 

しかし、一つ確認したい事がある。

 

「元帥殿、一つ質問が」

 

「何かね?」

 

「私の任務は次の提督が着任するまでの復興ですがその後、私の処遇はどうなるのでしょうか?」

 

俺の任務はあくまで復興である。つまり後任が着任すれば俺は用済みになる。その後の処遇が知りたかった。

 

「後任が着任した後、君にはいくつかの選択肢がある。特殊憲兵隊に残るか元いた通信施設に戻ってもらい、前のように警備兵になるかまたは軍を辞めるのも一つの手だろう。決めるのは君だ。」

 

「そうですか...」

 

「質問はそれだけか?」

 

「はい。失礼します」

 

部屋を退室し、廊下をゆっくり歩く。

 

 

 

俺は先ほどとは違い、この複雑な心境をどう片付けて良いかわからないでいた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

翌日 第2鎮守府前

 

 

 

俺は元帥にわたされた第2鎮守府の情報が載った書類を見る。特殊憲兵隊の隊長からも聞いていたが、どうやら相当ひどかったらしい性的暴行や大破進撃のみならず資金の横領もしてたらしい。

 

そして…

 

 

 

「なんだ...この廃墟...」

 

窓ガラスは割れてるところも多々あるし、何より人の気配が一切ない。ここ本当に鎮守府だよな?

 

 

俺は勇気を振り絞り中に入る。中はボロボロ…。前任が逮捕されてからそんなに日は経ってないが、もとからこうだったのだろうか?何にしろ気味が悪い。そして無駄に広い。もう迷子寸前。俺は案内図を見ながら中を歩く。

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

 

角を曲がろうとすると少しだけ衝撃が来た。どうやら誰かとぶつかってしまったらしい。

 

 

 

「ごめんなさい!!」

 

 

 

俺はぶつかったであろう相手に謝る。でもぶつかってきた衝撃からして確実に相手は走ってた。まぁ案内図を見ながら歩いてた俺も悪いんだがな

 

「イタタタ…」

 

どうやら相手は女の子らしい。紫色の髪の毛で年齢は俺と同じくらいかな?おそらく艦娘なんだろう…。

 

「ごめんなs…ヒッ!」

 

その子は謝ろうと俺と目が合う。悲鳴あげられた事にショックを受ける

 

「も、申し訳ありません!お願いです!罰ならいくらでも受けます!ですから嵐たちには手を出さないでください!お願いします!」

 

 

少女は頭を床へ擦り付けて謝る。土下座と言うやつだ。

突然の土下座に俺は困惑した。

 

「頭をあげてください!処罰もなにもしません!むしろ俺が悪いんですから」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

 

土下座を止めさせようとしても少女は言うことを聞かず、ただただ呪文のように謝罪をする。

 

「とりあえず頭をあげてください!本当に何もしませんから!」

 

「ごめんなs…えっ?」

 

「何もしませんから…ね?」

 

「………嵐たちにもですか?」

 

嵐と言うのが、誰だか知らないがとりあえず返事しておこう。

 

「ああ!もちろんだ!」

 

すると少女は謝ることを辞めて立ち上がる。どうやらわかってくれたようだ。

 

「そうだ…嵐。早く嵐を探しに行かないと…。」

 

そう言って少女は今までの事が何もなかったかのようにフラフラと立ち去ってしまう....。

 

 

 

そんな異常な彼女に対して俺は恐怖すら覚えた

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

執務室

 

 

とりあえず執務室までは無事にたどり着けた。俺は執務室に入ると荷物を置き、椅子に座る。

どうやら想像してたのより数倍ヤバそうだ…。一体復興までにどれくらいかかるのだろうか…。想像しただけで寒気がする…。

 

とりあえず資料を見ると、始めに入渠ドックの整備及び艦娘の食事改善が最優先事項と書かれていた…。そもそもまずここの艦娘たちは俺が提督として着任したことを知っているのだろうか?

 

そう考えていると何やら変な音がすることに気がついた。

 

この音…艦載機か!窓を見ると零戦2機が飛行しているのが見える。零戦は旋回し、こちらに向かってくるのが見える。

 

「まずい...」

 

 

俺はその場に伏せる。

すると同時にバリバリと音がし、窓ガラスが割れる。

しばらくすると燃料切れか弾切れなのかはわからないが、零戦が再び襲ってくることはなかった。

しかし機銃掃射を浴びたため、執務室はめちゃくちゃな状態でそこらじゅうに弾痕があった。

幸いケガはなかったものの、恐らくまたこのようなことが起きるであろう。

 

 

「失礼します!」

 

 

コンコンとノックの音が聞こえると和服を着た二人の女性が入ってきた。入室を許可した覚えはないが、そもそも今それどころじゃない。

 

「あなたが新しく入った提督ね?」

 

黄色い和服を着た女性が聞いてくる。まさかのタメ口。

 

 

「ああ、そうだが。」

 

とりあえず彼女の質問に答えておこう。

 

 

「そっか…。じゃあ改めてお願いがあるんだけどさ…」

 

「なんだ?」

 

 

「ウチの鎮守府に提督とかいらないんだよね。さっさと出ていってくれるかな?」

 

まぁなんとなくは予想はしてたがな。恐らく俺を襲ったのもコイツらだろう…。

 

「拒否する。俺に文句があるなら大本営に言ってくれ。」

 

別に俺だって来たくて来てるわけじゃない。大本営が出ていけと言ったら大喜びで出てってやる。

 

「は?殺されたいの?」

 

黄色い和服少女は突然真顔になる。

 

 

「ってことは俺を襲った犯人はお前らだな?」

 

「違いまーす。私じゃありませーん。」

 

黄色い和服を着た女性はわざと俺を煽るような口調で言う。それに変わってもう一人の緑色の和服を着た女性は黙ったまんまだ。

「まぁいい。とりあえずお前らの要望には答えられない。先ほども言った通り、やめてほしければ大本営に言うんだな。」

 

証拠がない以上。勝手に犯人と決めつけるのも悪いので、この件は保留にしておこう。

 

「ふーん。そっかじゃあ死ね。」

 

そう言われた途端、俺の体が宙を舞い壁にぶつかる。一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、すぐに蹴りを入れられたことが分かった。

 

「ウッ…!」

 

起き上がろうとするが、体が動かない。

 

「無様だね。さっきの威勢はどこにいったのやら!」

 

黄色い和服を着た女性は容赦なく俺に蹴りを入れる。

 

「偉そうにしやがって!何様なんだよ!」

 

「…ガッ!ハァハァ…」

 

痛い。苦しい。息ができない。しかし、苦しそうにする俺を見て彼女はさらに蹴りを入れる。

 

「キャハハハハ!」

 

それどころか楽しんでいた。彼女にとって俺はただのサンドバックらしい。

 

「蒼龍もやりなよ?蒼龍だってコイツらにヒドイことされたんだから。」

 

「う、うん。」

 

すると緑色の和服を着た女性が近づいてくる。しかしもう逃げる体力どころか起き上がることすら出来ない。おそらく骨も何本か折れているだろう。

 

「…?やらないの?」

 

しかし、緑色の和服を着た女性は何もしてこない。

 

「はぁ…蒼龍は甘いよ。蒼龍はコイツらに殴られたり、犯されたんだよ?こういうゴミは痛みつけて殺すのが一番なんだよ?」

 

そう言い、黄色い和服の女性は蹴りを入れる。

 

「ちゃんと言うことを聞いてくれれば、こんなことにはならなかったのにね。行こ?蒼龍 」

 

「う、うん。」

 

そう言って彼女たちは部屋を出る。するとブーンと言う音が聞こえてきた。動けない体で窓を見ると、九九式艦爆がこっちに向かってくるのがわかった。

 

 

 

ドゴン!という音とともに目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

続く

 




いかがでしたでしょうか?個人的にはキャラ崩壊がないか心配です。もしよければアドバイスお願いします。

また誤字脱字も多々あると思うので報告よろしくお願いします!

批評、感想お待ちしております


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兵器か人間か

どうも!作者のトミザワです!さっそく一話目から誤字ってしまった…。もし誤字、脱字ありましたら報告よろしくお願いいたします。 




9月5日 手直し終了


「こ、ここは?」

 

目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。どうやらあの爆撃から生き残ったらしい。手や足の感覚もあるので欠損とかもなさそうだ。ただ、左足が固定されているようなので骨折はしてるみたいだ。

 

「うぐっ!?」

 

体を起こそうとすると腹部に痛みが走る、肋骨も何本か折れているようだ。

 

「まだ起き上がらない方がいいですよ。」

 

「うわ!?」

 

突然、話しかけられたため驚いてしまった。

 

「えっと…君は」

 

 

「正規空母の蒼龍です。」

 

よく見るとあの黄色い女の隣にいた緑色の和服を来た女性じゃないか

 

「そうか…。一体ここはどこなんだ?」

 

まぁ何となく病院らしきとこではあるが…。

 

「鎮守府の中にある医務室です。」

 

「ここまで俺を運んできたのか?」

 

どうやら会話した限りでは、あまり敵意はなさそうだ。

 

「はい。本当は病院に行こうとしたのですが、飛龍たちに見つかりそうだったので…。申し訳ありません…。」

 

おそらく黄色い和服の女性は飛龍と言うのだろう。確かに彼女の言うように蒼龍が俺を病院に運んでるのを彼女が見かけたら確実に俺を殺すだろう。それどころか俺を運んでくれた蒼龍も危険だ。

そして蒼龍は飛龍たちと言った。おそらく彼女以外にも俺を殺そうと企てている艦娘がいると言うことか…。

 

「今の時間ってわかるか?」

 

「ちょうどヒトゴーマルマルです。」

 

15時か…。

 

「晩御飯は何時なんだ?」

 

「ヒトナナマルマルからヒトハチマルマルまでです。」

 

晩御飯まで2時間しかないのか…。どうにか今日中に食事改善と入渠ドックの復旧はしたいところだ…。

 

「ちょっと!?どこ行くつもりなんですか!?」

 

俺は痛みに耐えながらベッドから出て松葉杖を持つ。それを見た蒼龍は俺を止めようとする。

 

「執務室に行く。」

 

「無茶ですよ!その体で…」

 

俺は痛みに耐えながら執務室へ急ぐ。食事改善とは言ったものの、そもそも爆撃により執務室がめちゃくちゃになってるかもしれない…。

 

「はぁ…はぁ…」

 

廊下の角を曲がり、執務室の扉を開ける。

 

「なっ!?」

 

驚くことに実務室は何事もなかったようにキレイな状態であった。あんなに機銃掃射や爆撃をくらってるのにも関わらず、弾痕や割れていた窓ガラスもキレイになっていた。

 

「アッ!テイトク!」

 

「ナオシテオイタヨ!」

 

「ハイ!ショルイ!」

 

するとあちこちから妖精さんたちが出てくる。まさか直したのか?これから妖精さんじゃなくて妖精様と呼ぼうと決意した。

 

「ありがとう。」

 

俺は妖精にお礼を言い、書類に目を通す。そこには今まで艦娘に与えていた食事について記載されていた。

 

「なんだよ…これ。」

 

思わず口に出してしまうほどの状態だった。彼女たちに食事として与えていたものは食べ物と言うよりかは燃料や弾薬。もはや食事と言うよりかは補給に近いだろう。

 

「何これ…。これって…妖精さん?」

 

「うお!?」

 

突然後ろから声が聞こえたため驚いてしまう。そのいつの間にか後ろにいるのやめてくれ。

 

「なんで…こんなところに妖精が…。」

 

蒼龍は妖精の存在に驚いているようだ。どこの鎮守府にも妖精っているんじゃないのか?まぁそんなことはどうでもいい。それより早く彼女たちの食事を改善しなければ。

 

「なぁ蒼龍。ここの食事担当は誰が担当してるんだ?」

 

「えっ…間宮さんと鳳翔さんだけど…。」

 

「その二人はどこにいる」

 

「…食堂」

 

「わかった。」

 

俺は食堂に行こうとする。

 

「待って!」

 

しかし、蒼龍は俺の腕を掴み止めようとする。

 

「安心しろ。話に行くだけだ。何もしない。」

 

「違う!提督がそういう人じゃないのはわかってる!」

 

一体何を根拠に彼女はそう言うのだろうか?人間は自分の利益のために誰かを裏切ろうとする。前任も俺も結局は自分が一番かわいいのだ。それを彼女が一番知っているはず。

 

「じゃあなぜ止めた?」

 

「食堂になんて行ったら、道中他の艦娘に会うかもしれないんだよ!?それなら放送で呼び出した方がいいよ!」

 

「放送?」

 

そんなものあったのか…知らなかった…。

 

「う、うん。あの机のマイクで呼び出せるよ。」

 

「そうか。助かる」

 

俺はマイクのスイッチを押そうとする。

 

「……」

 

「どうしたの?そのボタンであってるよ」

 

「やっぱり食堂に行って直接会いに行くわ。」

 

よくよく考えたら、今の状態で呼び出しても来るわけがない。

 

「駄目だよ!」

 

蒼龍は俺を必死に止める。

 

「あと蒼龍、お前も自室に戻れ」

 

「えっ?」

 

「さすがに一緒にずっといるのは危険だ。飛龍たちに怪しまれるぞ。」

 

「そ、そうだね。じゃあ提督。気をつけて」

 

そう言い、蒼龍は部屋から出ようとする。

 

「あと最後にこれだけ言わせて。」

 

「なんだ?」

 

「ありがとう。」

 

そう言って蒼龍は執務室を後にした。ありがとうか…。

 

「礼を言うのはこっちだ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

鎮守府 食堂

 

道中他の艦娘に会わなかったのはラッキーだった。問題ら例の二人がどう出るかだな…。殺意むき出しだったらもう終わり。

 

「すいませーん。」

 

俺は食堂の厨房に入り、声をかける。

 

「ヒッ!て、提督…。」

 

厨房の女性は俺を見た途端に悲鳴をあげる。その悲鳴をあげるのやめてくれ…。地味に傷つく。

 

「えっと…間宮さんですか?」

 

思わず敬語使ってしまった…。

 

「は、はい!そうです!」

 

「えっと…鳳翔さんの方は?」

 

「ち、厨房の奥にいます。」

 

嘘だな。間宮さんの目は泳ぎまくっていた。

 

「じゃあ呼んできてもらえます?」

 

「え、えっと用件なら私がき、聞きますよ」

 

これは確定だな。警備兵をやっているとこういうのはわかってしまう。

 

「嘘ですよね?」

 

「ウッ…グスッ」

 

まさかの泣いてしまった…。他の艦娘に見られたらまずい。俺が泣かしたみたいになってしまう。実際泣かしたの俺だが…。

 

「ご、ごめんなざい…。」

 

間宮さんは泣きながら謝る。

 

「はぁ...鳳翔さんはどこへ行ったんですか?」

 

「グスッ…買い物に行きました…。せめて駆逐艦の子にでも食べさせたいって…。」

 

「お金はどうしたんですか?」

 

「グスッ…提督の金庫から盗みとりました…。ごめんなざい…。」

 

気がつかなかった...。

 

「状況はわかりました。今回の件は不問とします。もとから食費として渡すつもりでしたし」

 

そもそも金庫の金は俺の金じゃない。何の問題もない。それに俺に爆撃をしたどこぞの正規空母に比べたら小さなもんだ。

 

「ほ、本当にいいんですか?」

 

「もちろんです。あと本来渡そうとした食費です。」

 

俺はもとから渡すつもりだった食費を渡す。盗んだと言ってもそこまでの大金ではないはずだ。

 

「しっかりとした額は大本営の経理と話し合うので決まりしだいお伝えします。今渡した分だと1ヶ月はもつと思います。」

 

「ほ、本当にありがどうございます。グスッ」

 

間宮さんは泣きながらお礼を言う。

 

「大本営に報告書を提出しなければならないので17時ごろにまた来ます。」

 

俺はそう言い、食堂をあとにした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

蒼龍side

 

あのあと自室に戻り、飛龍に問い詰められたが、どうにかうまくごまかせることができた。どうやら飛龍の中で提督はもう殺したと思ってるらしい…。

 

「そろそろ補給の時間だ。蒼龍行こ?」

 

「うん。」

 

私は飛龍と共に食堂を目指す。

 

「うん?」

 

食堂に近づくにつれてある異変に気づく。

 

「これ何の匂い?」

 

どうやら飛龍も気がついたらしい。なんと言えばいいのだろうか…。ただ、いい匂いなのは確かである。

 

「何これ…。」

 

食堂に着くとテーブルにあるものがおいてあった。私、知ってるこれ。

 

 

「カレーだ。」

 

「カレー?」

 

飛龍は不思議そうに聞いてくる。それもそうだ。私も実在するとは思ってもいなかった。ただ、噂で他の鎮守府では毎週金曜日に出されるとは聞いていた。本当にあったんだ…。

 

「これって食べていいものなの?」

 

「いいんじゃないの?」

 

他の艦娘も初めての食事に戸惑っているようだ…。

 

「じゃあいただきます。」

 

私はそう言い、カレーを口に運ぶ。

 

「いただきます?」

 

飛龍はまたもや不思議そうな顔をする。

 

「食べる前の挨拶?みたいなものらしいよ」

 

私はカレーを口に入れる。へぇ~カレーってこんな味だったんだ。

 

「美味じいよぉ」

 

中には泣きながら食べている子もいた。

 

「アハハ…みんな泣きながら食べてる。変なの」

 

「そういう蒼龍だって泣いてるじゃん。」

「えっ…あっ…」

 

飛龍に言われ初めて自分も泣いていることに気がついた。

 

「アハハ、変な蒼龍。」

 

そんな私を飛龍は笑う。だけど飛龍も泣いていた。

 

「飛龍もだよ。」

 

「えっ…あれ?」

 

「「プッ…アハハハハハ!」」

 

私たちは泣きながら笑う。きっとこれを幸せと言うのだろう。

 

「......」

 

提督の周りにはたくさんの妖精さんたちがいた。妖精さんは良い人にしか集まらない。それどころか良い人にしか見えないだろう。

 

「…?突然黙ってどうしたの?」

 

「ううん。何でもないよ。」

 

提督のこと信じてもいいのかな?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

池田信也side

 

さて、報告書を書くために食堂に来たのはいいのだが…。正直入りにくい…。入ったら気まずい雰囲気が流れるか、艦娘たちにボコボコにされるかのどちらかだろう。個人的にはこっそり覗きたいものだが…。

 

「よし…。」

 

俺は意を決して松葉杖を床に置き、ほふく前進しながら食堂の中に入る。目の前に机があるので、それを遮蔽にして覗きこむ。

 

「美味しいよぉ…。」

 

艦娘たちは泣きながらカレーを食べている。泣くほど美味しいのか…。まぁそりゃあんなドロドロの燃料を今まで食ってたらそうなるか。

そして報告書のために覗きに来たが、わざわざ食堂まで見に行く必要はなかったと気づく。

それどころかむしろ今この状態を見られた方がヤバい気がする。伏せながら机の横から覗きこんでいるって誰がどうみても変質者だ。

もし見つかったボコボコどころじゃすまない。普通にぶっ殺される…。

 

「うっ……くっ……。」

 

しかし痛くて起き上がれない。どうするんだ…。ほふく前進で執務室まで戻るか?でも以外にほふくでもかなりの痛みを伴う

とりあえずここにいてはまずい…。誰かにばれる前に…。

 

 

「何をしてるんですか……。」

 

 

あっ…終わった。振り替えるとそこには銀髪姿の少女が立っていた。見た感じだと駆逐艦の子らしい?

 

「えっ...いや、皆さんの姿が見たいと思って」

 

駄目だ…。よりによって最悪な回答をしてしまった。

 

 

「はぁ…もういいです。邪魔なんで退いてください。」

 

彼女は深くため息をついたあと、まるでゴキブリを見るかのような目で言ってきた。

 

「すまない」

 

もうここは素直に戻ろう。殺されないだけありがたいと思った方が良い

 

「くっ…」

 

しかし、痛くて立てない。もはや体力の限界か…。補助さえいてくれればだいぶ楽なんだが…。

 

「何をやってるんですか…。早くどいてください。」

 

駄目だ。言い方悪いがこの銀髪使えねぇ…。もとから助けてくれるとは思わなかったが、はやくどいてくださいってギブスついてんの見えないのか!

 

「ふん!…くっ!」

 

あともう少しで立てそうなのに立てない!

 

「あ、あの手伝いましょうか?」

 

声のする方を向くと、金髪の少女が心配そうな顔でこちらを見ていた。銀髪の子と制服が似ているから恐らく姉妹艦ってやつだろう

 

 

「…そんなのほっとけばいいよ舞風」

 

「で、でも……」

 

「いいから…行こう」

 

「う、うん。提督ごめんなさい…。」

 

彼女はそう言って、行ってしまった。どうするんだこれ?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

執務室

 

 

「痛てて…」

 

結局あの後、自力で立ち上がることができた。

大人しく安静にしとけば良かったと今さら後悔している。

 

 

「とりあえず食事はOKっと…」

 

さて、あとは入渠ドックの修理か…。だがその前に重大な問題が発生してしまった。

 

 

 

 

俺の食べるご飯がない。

 

 

 

 

 

 

続く




いかがでしたでしょうか?評価、感想の方よろしくお願いいたします。


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最も嫌いな人間のタイプ

どうも!作者のトミザワです!お待たせして申し訳ありませんでした。

最近、新型コロナウィルスが流行してますね…。
みなさんもお体には気をつけてくださいね。




さて、どうしたものか…。もちろん食堂で食わせて貰えるとは最初から考えてなかったが、まさか初日でケガをするとは思わなかった…。これでは買いに行くことも不可能だろう。

 

「テイトクゴハンナイノ?」

 

妖精さんが心配そうに話かけてくる。

 

「残念ながらな。」

 

「イイコトオシエテアゲル」

 

妖精はそう言うと、壁に貼られている大きな戦略地図を指差す。

 

「コレ。ハガシテ」

 

「わかった。」

 

俺は妖精さんに言われた通り戦略地図をはがす。

 

 

「これは…」

 

戦略地図を剥がすとそこに一枚の扉が現れた。いわゆる隠し扉ってやつだ。

 

「…入っていいのか?」

 

「イイデスヨ」

 

妖精さんに許可をもらい、恐る恐る扉を開ける。

 

「なんだこれ…。」

 

そこにはテレビ、冷蔵庫、ガスコンロなどの様々な電化製品や娯楽用品などがあった。執務室の隣にある提督の私室とは違う自分用の部屋を作ったのだろう。恐らく資金の横領や不祥事がバレないようにわざわざ作ったんだ。

しかも冷蔵庫や棚に缶詰が入ってることから憲兵はこの部屋の事を知ってない。

 

「艦娘はこの部屋の存在を知っているのか?」

 

「シラナイヨ。シッテルノハワタシタチダケ」

 

あんまり汚職のために使われた部屋を利用するのは気が引けるが、仕方がない。俺にとって唯一この鎮守府内でここが安全とだと思われる。窓もないから機銃掃射や爆撃を食らうこともないだろう。

 

しばらくはここで寝泊まりをしよう。

 

「妖精さんにお願いなんだが、しばらくは秘密にしてくれないか?」

 

俺のお願いに妖精さんたちは頷く。

 

「さて、後は入渠ドックか…」

 

出来れば今日中に修理したい所だが、何せ入渠ドッグは本庁舎ではなく艦娘寮にあるらしい。この状態では不可能だろう。仮にたどり着いたとしても高確率で艦娘に会うだろう。

 

「ナオシテコヨウカ?」

 

妖精さんが言う。直せるのか?と疑問に思ったが、そういえば執務室直してたな。

 

「どれくらいかかる」

 

「ジョウタイガヒドイカラサンジカングライ」

 

「3時間か…。まぁとりあえず修理をお願いしたい」

 

「ワカッタ」

 

そう言って一部の妖精さんたちは隠し部屋から出ていった。

 

「さて…」

 

俺は部屋の端にある棚を開ける。そこには大量の缶詰やインスタント食品、水があった。

「どれも保存がきく食べ物ばかりだな」

 

おそらく上に汚職の事がバレた場合ここに潜伏する予定だったのだろう。

 

とりあえず食料、水、安全地帯は確保できた。

 

「あとは艦娘の管理か…。」

 

どうやら前任はかなり大破進撃をしていたそうで、轟沈または行方不明の艦娘も少なくないそうだ。

 

 

俺は大本営から貰った資料を見る。と言ってもこの資料は日本全国にいる艦娘の情報が載ってる資料なだけであってこの鎮守府に所属する艦娘の書類はないらしい。つまり俺はこの膨大な資料の中から第2鎮守府艦娘を探さなければならない。

そして大本営の話によると轟沈、行方不明によって詳しい数が把握できてないようだ。この内から何人がうちの鎮守府所属すらもわからないってことだ。

 

「まぁ今日出会った艦娘ぐらい覚えておくか…。」

 

 

ふむふむ…。俺に爆撃及び暴行をくわえた黄色いバカが飛龍か…でもう片方が蒼龍ね。あと俺をゴキブリを見るかのような目で見てきたのが野分でその姉妹艦があの金髪か…。舞風ね多分覚えた。

で俺と衝突したのが萩風か…。

 

とりあえず危険なのは飛龍かな。直接何かしてくる訳じゃないけど、確実に嫌ってるのは野分。そして一応協力的なのが蒼龍、舞風かな?まぁ初日だから信用はしていない。

そして一番問題なのが萩風だ。あくまで憶測だが、言動を見た限りまともではなさそうだ。

間宮さんと鳳翔さんは不明

 

「提督~?」

 

「!?」

 

考えてる矢先、隣の執務室から声が聞こえた。とりあえず隠し扉は妖精さんに隠してもらったから大丈夫だろう。

 

声からしておそらく蒼龍だろう。

 

「デナクテイイノ?」

 

「相手が蒼龍であろうと油断しちゃ駄目だ。後に裏切る可能性もある。ここがバレたら一貫の終わりだ」

 

「提督?いないの?」

 

俺は隠し部屋でバレないよう息を殺す。

 

「…チッ。」

 

しばらくすると舌打ちのような音が聞こえた。

 

「次は確実に殺してやる」

 

そう聞こえたあと部屋を出た音がした。

 

次は確実に殺してやるってことは声の主は蒼龍ではなく飛龍だろう。もし蒼龍だと思って出ていたら…。考えるだけで寒気がする…。初日にして帰りたいと思った。

 

「コワイヨ…。」

 

さすがの妖精もこれにはビビってるみたいだ。

だがビビってる暇など無い。飛龍がここに来たと言うことすなわち俺が生きてることがわかってしまったと言うわけだ。まぁ提督を爆撃して殺した後、夜飯にカレーが出てくる時点で少し不審ではあるのだが…まさか数時間でバレるとは…。

それと蒼龍の安否も心配だ。もし蒼龍が俺を助けたとアイツに知られればきっとタダではすまされないだろう。

「妖精さん。頼みがある」

 

俺は妖精さんの一人にお願いする。

 

「蒼龍のところに行って執務室に来いと伝えてきてくれ。ちなみに合言葉を決める。池と田んぼだ。他の艦娘が近くにいたら無理して伝えなくていい」

 

「リョーカイ!」

 

妖精さんはそう言って彼女のもとへ向かった。

 

 

 

 

 

しばらく待つと、コンコンとノックの音が聞こえた。

 

「池」

 

「田んぼ」

 

どうやら相手は蒼龍のようだ。

 

「入れ」

 

蒼龍はそっと扉を開け入ってくる。

 

「飛龍たちに何かされたか?」

 

目立った外傷はないから暴行はされてなさそうだが…

 

「問い詰められたりはしたよ」

 

まぁそりゃ怪しむよな。

 

「なんて答えたんだ?」

 

「何もしてないし、何も知らないよって答えておいたよ。」

 

まぁ無難な答え方だな。言い過ぎると口を滑らせる可能性もあるしね

 

「そしたらなんて?」

 

 

「わかったって…。」

 

 

「なるほど。とりあえずお前も飛龍には注意しとけ。あまり信用されてないぞ。」

 

「えっ?」

 

もし、飛龍が蒼龍の言ってることを信用していたら蒼龍の声マネをするわけがない。蒼龍の声マネをすると言うことは飛龍が蒼龍と俺が繋がってると思ってるということだ。

 

「さっき飛龍がお前の声マネをして殺しに来た。」

 

「あ~やっぱりそっちに行ったか~」

 

どうやら心あたりがあるらしい。

 

「廊下でたくさんの妖精さんとすれ違ってね…。それを見た瞬間、問い詰められて執務室の方に向かったから…まさかとは思ったんだけど…。」

 

たくさんの妖精さんか...。おそらく入渠ドックの修理に行った妖精さんを見て生きてると確信したのだろう。タイミングが悪かったな…。

 

「じゃあバレたのは…」

 

「多分妖精さんを見てだと思う。」

 

「とりあえず蒼龍には今知ってる事をすべて話してもらいたい。」

 

「そうだね。でもここで話すのは危なくない?他の艦娘に聞かれたらまずいよ?」

「そうだな…。何かいい場所があればいいのだが…。」

 

「私知ってるよ」

 

そう言って蒼龍は作戦地図が貼られている壁に向かう。ん?ちょっと待って?

 

蒼龍は作戦地図の端を持つと、下に向かって剥がし始めた。

 

 

「お前知ってたのかよ...」

 

「うん。私しか知らないけどね。とりあえず中入ろ?」

 

俺と蒼龍は隠し部屋の中に入る

 

「話したいことはたくさんあるけど、とりあえず提督ケガしてる方の足出して?」

 

「はい?」

 

足出してってどういうことだ?何するつもだ?まさか足をへし折ったりするんじゃあ...。

 

「いいから!」

 

俺は蒼龍に言われた通り、左足を見せる。

 

「じゃあギプス取るね。」

 

そう言って蒼龍はカッターを手にとる。

 

「待て待て待て」

 

「どうしたの?」

 

『どうしたの?』ってギプスって治ってから取るものじゃないのか?

 

「ギプスって治ってからじゃないか?まだケガしてから1日も経ってないぞ。」

 

「だって見ないと骨折かどうかわからないじゃん。」

 

「お前もしかして…。骨折かどうかもわからないのにギプス付けたのか?」

 

「ほ、ほらもし骨折だったら大変じゃん?だから念には念をと思って…。」

 

うん。とりあえずコイツに治療させちゃだめだ。

 

 

「妖精さん!」

 

「ナンデスカ?」

 

「妖精さんって治療とか医療って出来るの?」

 

「デキマスヨ」

 

修理どころか医療まで出来るとは…どんだけ有能なんだよ...

 

「じゃあお願いがある。蒼龍と交代な。」

 

「なんでよ!」

 

蒼龍は不満そうに言う。

 

「じゃあ聞くが、お前医療の資格持ってるか?」

 

「…持ってません…。」

 

「だろ?じゃあわかるよな?」

 

「…はい」

 

「ギプストリマスネ。」

 

その後妖精さんの診断によると足首の骨にヒビが入ってるらしい。歩けるまで3週間かかるそうだ。

 

「キズグチノショウドクモシテオキマス」

 

「私がやる!傷口の消毒ぐらいできるもん!」

 

不安しかない。なんなら傷口開けさせて出血させそう。

 

「なぁ蒼龍」

 

「なに?」

 

蒼龍は包帯を剥がし、ガーゼを傷口に当てる。

 

「お前飛龍とは仲が良いんだろ?」

 

「うん。同じ2航戦だからね姉妹みたいなものだよ。」

 

「姉妹じゃないのか?」

 

「う~ん。実際は違うかな?」

 

てっきり姉妹だと思ってた。

 

「で飛龍についてでしょ?」

 

「ああ。他にも俺を殺そうとしてる艦娘がいるんだろ?」

 

「うん。私も全員知ってる訳ではないけど案外駆逐艦とか軽巡の子もいるとは聞いたことがあるよ。」

 

かなりの数いるんだな...。ただ襲撃してきたのが飛龍だけというのが気になるな...。統制が取れてないのか、何か計画があるのか...。どちらにせよ油断は出来ない

 

「そういえばこの鎮守府には何人の艦娘がいるんだ?大本営は把握出来てないようだが…。」

 

「私にもわからないよ。轟沈しちゃったり行方不明の子もいるから…。ただ50人以上はいると思うよ」

 

確かに前線部隊とは聞いていたが…。だが一つ疑問がある。

 

「でも食堂には20人ぐらいしかいなかったぞ」

 

50人以上いたらさすがに覗いてるときに見つかってるはずだ。実際見つかったが…。

 

「ケガで部屋の外に出れない子とか引きこもってる子もいるからね…。その子たちの食事は私たちで運んでいるよ。」

 

なるほど…。入渠ドックの修理を急いで良かった…。

 

「状況はわかった。入渠ドックについては後三時間ほどで修理が終わるはずだ。終わったら妖精さんを通じて連絡させるが、蒼龍からも伝えてもらえるか?」

 

「放送で伝えないの?」

 

「放送で伝えたら飛龍たちにバレて殺されるだけだ。」

 

「それもそうだね。」

 

蒼龍は苦笑いしながら話す

 

「はい。とりあえず消毒と包帯変えたから。」

 

「すまない。」

 

「全然いいよ。で?聞きたいことはまだあるんでしょ?」

 

「ああ。何故この部屋を知っているんだ?」

 

いくら蒼龍であろうと、この隠し部屋が知られたのはかなりまずいだろう。

 

「昔提督に犯された時にねどうやら酔っ払ってたみたいでそのまま部屋に連れ込まれたよ。」

 

この前任相当バカだな。緊急用の隠し部屋を酔った勢いで艦娘連れ込むって…。

 

「すまない。話したくなかった事もあるだろうに…」

 

「全然いいよ。もう犯されることは日常茶飯事だったし」

 

蒼龍は笑顔なままだった。日常茶飯事か…この人にとって犯される事は日常茶飯事で珍しい事じゃないから話しても構わないってことか…。

 

「つらくないのか?」

 

とっさに声に出してしまった。

 

「うーん…。もう過ぎたことだし今は前を向こうかなって…」

 

「.....っ!」

 

『大丈夫だ!前を向いてれば必ず良いことはある!』

 

 

いつも笑顔でその言葉を言う父を思い出した

 

 

 

「前を向こう』この言葉を使っていいのは過去を乗り越えた者だけだ。だが、彼女はどうだ?この人は過去を乗り越えてなんていない。むしろ過去を忘れて未来に逃げようとしてるだけだ。

 

「蒼龍に言っておく、俺は人間が嫌いだ。」

 

「へ?」

 

蒼龍は驚いたような顔をする。だが、俺は話続ける。

 

 

「自分の利益のためには手段を選ばない。そのためにはすぐ裏切る。優越感に浸り、すぐに傷つける。だから必要以上に会話もしないし関わったりもしない。」

 

「提督だって人間じゃん」

 

「そうだな。他の奴からしたらおかしな話かもしれない。だが、嫌いなのは変わらないさ。そしてその中でも特に嫌いなタイプがいる。それは前任のような私利私欲な人間と俺は私は大丈夫だとヘラヘラ笑って強がる奴の二種類だ。見ただけで吐き気がする。」

 

「……」

 

蒼龍は黙って聞く。

 

 

「因みに今も吐き気がする。」

 

「な、なんで…?」

 

蒼龍は困惑する

 

「お前が俺の最も嫌いなヘラヘラ笑って強がってる奴だからだよ。」

 

 

「べ、別に強がってるわけじゃ…」

 

「強がってるだろ。お前の腕と足にあるその無数のキズややけど跡。今まで気づかなかったがおそらく蹴られたり、根性焼きされたんだろ?それでよく前を向こうなんて言えたな」

 

「私が何を思おうが提督には関係ないでしょ…。」

 

蒼龍の声が震え始める

 

「関係ないな。ちなみに言うと俺は艦娘も嫌いだ。俺関係ないのに暴力は振るってくるし悲鳴はあげられるしな。それに一番腹立ったのがほぼ俺の嫌いな人間そっくりだと言うことだ。上層部にやめてもいいと言われたら喜んで辞めてやる。だからお前が前任にどうされようがお前がどう考えていようと俺には関係ないし、正直どうでもいい。」

 

「じ、じゃあ…」

 

「さっきも言っただろ。へらへら笑って強がってる奴が吐き気がするほど嫌いって。そもそも…」

 

「うるさいな!」

 

蒼龍は泣きながら声を荒げる。

 

「私がせっかく前を向こうとしてるのになんなの!?そもそも会って1日も経ってないのにわかったような口きいてさ!助けられたぐらいで仲良くなったと思わないでよ!」

 

「前を向いて良いのは過去の自分を克服した奴だけだ。お前は克服なんてしてない。むしろ都合よく逃げてるだけだ。」

 

「もういいよ!」

 

蒼龍はそう言うと部屋から出ていった。

 

 

「アーア」

 

「オコラセチャッタ~」

 

「まぁ結局人間も艦娘も変わらないってことだよ。結局どちら都合が良いことしか受け入れられないんだよ」

 

 

 

だが正直まずい状態になった。初日にして自分の考えを押し付けると言う最悪な方法で協力者を失った。

 

だが、言わずにはいられなかった。

 

 

なぜなら

 

 

 

 

 

 

彼女の表情があの時の父にそっくりだったから

 

 

 

 

 

 

続く




いかがでしたでしょうか?深夜に書いてたんで誤字、脱字多めかもです。

感想、評価、アドバイス等ありましたらよろしくお願いいたします。


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視察

お待たせして大変申し訳ありません。

誤字脱字報告してくれた方ありがとうございました。


 

あれから5日たった。あの件以来蒼龍は隠し部屋どころか執務室にも来ていない。もしかしたらもう来ないのかもしれない。

唯一協力的だった艦娘を失った今、もはやどうすることもできない。

 

「余計なお世話だったな…」

 

確かにヘラヘラ笑って強がる奴は大嫌いだが、これでは相手の事情も知らずに一方的に自分の価値観を押し付ける自己中ではないか…。

 

それに....俺の任務はこの鎮守府を復興し、後任の指揮が出来るようにするだけ。過去の出来事については彼女たちがどうするかを決めることであって俺じゃない。

 

「シュウリオワッタヨ」

 

「ありがとう」

 

俺は妖精さんの報告を聞き、リストにチェックをいれる

 

 

 

「とりあえず修理はすべて終わったか?」

 

「ウン」

 

とりあえず、最低限の復旧は出来たと言えるだろう。

 

 

prrrrr.....

 

 

執務室の電話が鳴る。俺は受話器を取り、耳に当てる。

 

「こちら第2鎮守府です。」

 

『特殊憲兵隊 隊長の佐々木だ。』

 

佐々木少尉.....海軍特殊憲兵隊のトップである

 

「どうも。会話するのは1週間ぶりですね。」

 

『そうだな。とりあえず生きてて良かったよ。状況はどうだね?』

 

「食事、入渠ドックはすべて復旧しました。」

 

 

『そうか。艦娘とのコミュニケーションはどうだ?』

 

痛いところを突いてきた。

 

「残念ながらまったく進展していません。なんなら初日に爆撃をくらい負傷しました。」

 

『そうか…。妖精さんから伝言で聞いてはいたが、かなり状況はひどいらしいな。』

 

「はい。」

 

『残念ながら我々には時間がない。第二鎮守府は深海棲艦との戦いにおける最重要基地だ。そしてそれが今は機能していない。他の鎮守府が代わりにそちらの海域の防衛もしているが、はっきり言ってこのままでは一年持つかどうかもわからない。それに君が過激派をどうにかしない限り、増援は送れない。』

 

「わかってます。」

 

『とりあえず君の要望通り、艦娘に関する資料は用意してある。一部資料に関しては届けさせておいた。』

 

「ありがとうございます。すでに手元にあります。」

 

『まぁ資料と言っても他の鎮守府の報告や情報しか載ってない。参考するくらいにしかおすすめしないよ』

 

「いえいえこれだけあれば充分です。」

 

『そうかでは健闘を祈る。』

 

佐々木少尉と連絡をとった後、貰った書類を手にし席に座る

 

「増援は送れないか...。」

 

上層部も犠牲者はあまり出したくないのだろう。飛龍のような過激派の艦娘をどうにかしない限り、増援は期待できない。

 

「ふぅー」

 

俺は深いため息をつく。佐々木少尉が言っていた通り、このままでは日本近海は再び深海棲艦の物になってしまう。復旧が遅ければ遅いほど、他の鎮守府の被害も増えていくだろう。長くても6ヶ月以内には次の提督が指揮できるような状態にしておかなければならない。

 

「と言ってもなぁ...」

 

はっきり言うと何をすればいいかわからない。俺は指揮能力もなければカウンセリング能力もない。施設の復旧が終わった以上これからどうすればいいんだ?

 

「ドウスルノ?」

 

どうするのって言われてもねぇ...。

 

「とりあえず行方不明になってる艦娘を本部と連携して捜索するしかない。」

 

近々海軍特別警察隊も捜査に参加するそうだが、まぁ上層部すら数や詳細がわかってないんだから実際発見できる確率は低いだろう。

 

だが、時間は待ってくれない。もう一つやることが俺にはある。 

 

俺は書類に書かれてる電話番号に電話する。

 

 

『はい。こちら第四鎮守府です。』

 

「第二鎮守府です。吉川務少佐はいらっしゃいますか?」

 

『私が吉川です。上から話は聞いてるよ。』

 

「第二鎮守府提督の池田信也と申します。その件についてお話があります。後日そちらの鎮守府にお伺いしたいのですが.....。」

 

『あー.....その件何だけど今日はダメかい?』

 

「今日ですか?私は構いませんが.....」

 

むしろ仕事とはいえ、一時的に鎮守府の外に出られるんだから喜んで行きますとも

 

『では迎えの車を出すよ。聞いた話だとケガをしてるそうだからね。』 

 

「お気遣いありがとうございます。ですが一点だけお願いがあります。」

 

『なんだい?』

 

「迎えの車は鎮守府に迎えに来るのではなく、近くの駅に来るようにお願いします。」

 

 

鎮守府に直接迎えに来たら、一部の艦娘に襲われそうだからな

 

 

『わかった。ではまた後で。』

 

「はい。失礼します。」

 

俺はそう言って電話を切る。

 

 

「今日わざわざ呼び出すか.....。」

 

こっちとしては鎮守府から出れてラッキーなのだが..........。  

 

 

「着任して約一週間でもう後任探しかよ..........。」

 

俺の任務は鎮守府の復旧だけではない。今後このような事がないように再発防止にも努めなければならない。

 

そこで俺がやることは後任候補の人と面談、鎮守府を運営してるのならその鎮守府を視察し、適性であるかどうかを見極めることだ。

 

だが、実際後任を決めるのは俺ではない。あくまで俺は参考意見として上に報告するだけ。

 

その意見を聞き、別の海軍特殊憲兵隊員が視察をし、その後大本営の監査官が視察をして最終的に大本営が決める流れとなっている。

 

「うーん..........。」

 

俺は視察する鎮守府の情報を見る。

 

 

吉川務 (23)

 

階級 少佐

 

 

提督歴は2年..........。

 

 

電話で話した感じではいい人そうに思えたが..........。

 

とりあえず視察しないことにはわからない。

 

それにいくら良い人でも指揮能力が低ければ意味がない。

 

 

「妖精さん。留守番は頼んだ。」

 

俺はそう言って鎮守府を後にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

第四鎮守府

 

敷地面積は第二鎮守府の半分程度であり、艦娘の数は合計6隻で編成されている小さな鎮守府だ。

 

だが、この鎮守府は日本近海防衛において大きな役割を果たしている。

 

この鎮守府には高速戦艦 金剛、比叡、榛名、霧島の4隻と駆逐艦 島風、雪風の合計6隻で編成された即応艦隊が存在する。

 

この即応艦隊は他の鎮守府の艦隊で深海棲艦を撃破できなかった場合あるいは作戦が失敗し、日本近海の侵入を許した場合や撃ち漏らした敵を撃破する近海防衛の最後の砦となる艦隊だ。

 

 

「お疲れ様です。海軍特殊憲兵隊の池田です。」

 

「話は聞いています。吉川少佐は奥でお待ちです」

 

俺は警備兵に身分証を見せ、正門をくぐり、飛行場地区の横を通る。

 

飛行場を見ると二式大艇やUHー1が駐機されていた。

 

ここ第四鎮守府には即応艦隊以外にもう一つ部隊が存在している。海軍で唯一航空機を保有している海軍航空救難隊である。

 

この海軍航空救難隊は日本沿岸地域における救難事故や船舶事故発生時、ヘリコプターや飛行艇などの航空機を使い救助する部隊であり、深海棲艦の艦載機による船舶襲撃被害が増えている今、期待されている部隊だ。

 

「やっぱり珍しいかい?」

 

声のする方向を見ると20代前半の男がいた。

 

「写真でしか見たことなかったので.....」

 

艦娘の艦載機は何度か見たことはあるが、実際人間が操縦している軍用機を見るのは初めてだ。

 

「まぁヘリコプターも航空機も今じゃ深海棲艦の艦載機の的だからねぇ.....。二式大艇も戦時中使ってた物をどうにか改造して使ってるって感じだよ」

 

 

「紹介遅れました。特殊憲兵隊の池田です。今は第二鎮守府の提督をしています。」

 

軽く自己紹介をする。

 

「艦娘と海軍航空救難隊の指揮をしている提督の吉川だ。上からある程度話しは聞いてるよ。」

 

上層部からある程度聞いてるなら話が早い。

 

「ここで話すのもなんだし、応接室に案内するよ」

 

俺はわかりましたとだけ返事をして少佐についていく。

見た感じ、悪い人ではなさそうだ。 

 

「ここが応接室だ。」

 

そう考えてるとあっという間に応接室に着いていた。

 

「座れるかい?」

 

「ありがとうございます。」

 

俺はお礼を言い、席に座る。

 

「さて、早速後任の件について話していこうじゃないか」

 

「そうですね」

 

俺は机の上に書類を置く。

 

「上層部から聞かれてる通り、吉川少佐は第二鎮守府の後任候補として選ばれました。理由としては艦娘からの評価も高く、アンケートでは満足度が97%でした。これは指揮及び鎮守府生活に満足してると言う結果が出てあり、また士官学校を首席で卒業されてるのが今回選ばれた理由です。」

 

「なるほど。艦娘からの評価と言ったが、残りの3%ってわかるかい?」

 

 

「はい。不満な点としては『走るのが遅すぎる』『最近ティータイムに参加してくれない』『構ってくれない』などです。」

 

いや、何なんだよこれ.....。ほぼ鎮守府運営に関係ないやん.....。

 

 

「あはは.....最近忙しくて構ってられなかったからなぁ...たまには遊んでやるか」

 

遊ぶか...。他の鎮守府もこんな感じなんだろうか...。一応軍の施設だよね?

 

「話が逸れてしまったが、もし仮に私が後任となった場合この鎮守府はどうなるんだい?」

 

「もし後任となった場合は今吉川少佐の指揮下にある即応艦隊は一度解体されますが、ご安心を。」

 

「と言うと?」

 

「今第四鎮守府にいる艦娘たちはそのまま吉川少佐の指揮下に入ったまま第二鎮守府の艦娘となってもらいます。つまり第二鎮守府と第四鎮守府を合併するということです。即応艦隊についてはのちに再編成する予定です。」

 

「なるほど。合併の件については理解した。だが、この庁舎と航空救難隊はどうなるんだ?」

 

「一部施設を取り壊しとなります。航空救難隊においては吉川少佐の指揮下を離れ、現在飛行隊長の飯田中尉が航空指揮官として指揮をする予定です。以降第四鎮守府は航空救難基地として利用されます。まぁあくまでも後任として決定したらの話です。」

 

「とりあえず後任候補の件と流れは理解できた。そこで君に後任候補として今の第二鎮守府の状況を聞きたい。君の状況を見るとあまりよくなさそうだが...。」

 

やっぱり聞いてきたか...。まぁ後任としてなら当たり前か...。

 

「残念ですが、あまり良い状況ではありません。施設の復旧は完了しましたが、現在第二鎮守府では安否のわからない艦娘も多くおり、現在大本営や特別警察隊と連携して探していますが、厳しい状況です。また艦娘の一部には過激派というグループがおり、現在鎮守府付近は警備兵すら近づけない状況が続いています。」

 

 

「そうか...。やはり人間自体を嫌ってる子も多そうだね...。こちらも出来る限りサポートするよ」

 

「ありがとうございます...。」

 

まだ民間人に被害が出てないことやクーデターの兆候が見られないだけマシなのだろう。

 

もしそのようなことがあった場合は鎮守府半径10kmを危険地域として封鎖。武力をもって制圧も致し方なしと書類には書いてあった。だが恐らく制圧出来たとしてもおそらく日本近海の防衛はますます困難となるだろう。

 

たたでさえこの国は島国で他国の貿易がないと成り立たない国である。もし近海が深海棲艦に取られたりすれば、船舶のルートは確保できないそうなれば物資の不足、略奪、クーデター、暴動、政府の崩壊、恐らくこの国は深海棲艦に滅ぼされる前に人々の争いで滅ぶだろう。

 

 

ジリリリリリリ

 

「失礼。電話だ。」

 

 

そう考えてると一本の電話がなる。吉川少佐は席を立ち、受話器を耳にあてる。

 

「こちら第四鎮守府です。」

 

「..........落ち着いて。一回深呼吸をするんだ。」

 

少佐は電話相手に落ち着くよう促す。何かあったのか?

 

「わかった。今変わる。..........君に電話だ。」

 

「俺にですか?」

 

恐らく特殊憲兵隊の佐々木少尉からだろう。電話の会話を見た限り、あまり良い内容ではなさそうだが..........。

 

 

俺は受話器を耳に当てる

 

「お電話変わりました。第二鎮守府提督の池田です。」

 

『て、提督!』

 

予想とは裏腹に少女の声が聞こえた。

 

「すまない。名前は?」

 

『か、陽炎型18番艦の舞風です!』

 

舞風?舞風...あの金髪の子か。

 

『あ、あの!そ、それで』

 

どうやら話し方的に何かあったらしい。あとなんで俺が第四鎮守府に視察に行ってること知ってるんだ?妖精さんにしか言ってないはずなんだが...。

 

「一回落ち着け。何があったんだ?」

 

「スピーカーにしてくれ」

 

俺は吉川少佐の言う通り、スピーカーにする

 

 

 

『は、萩風が!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝手に出撃しちゃったんです!』

 

「..........は?」

 

 

 

 

                   続く




感想、評価アドバイスなどあればよろしくお願いします。


報告、pixivでも投稿を始めましたのでよろしくお願いします。


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無断出撃

どうも作者のトミザワです。いやわかってますよ?何ヶ月待たせるんだと思いますよね?



いや本当にすいません。


多忙なのも一つの理由なのですが、最近スランプ気味でして何を書いても駄目なんですよね...。本当に待ってくれてる方に申し訳ないです


「それは本当なのか?」

 

俺は舞風に事実確認をする。

 

『は、はい...』

 

舞風は弱々しい声で返事をする。

  

「どれくらい前に出撃したかわかるか?」

 

『1時間前ぐらいです....。鎮守府内を探し回ってもいなくて....それで出撃ドックに行ったら艤装がなくて....』

 

一時間前か...。

 

「.....わかった。あとはこっちでなんとかする。」

 

俺はそう言って電話を切る。

 

「まずいことになったな....。」

 

艤装がない事を考えると、無断出撃で間違いないだろう。

 

「とりあえず特殊憲兵本部に連絡します。」

 

とにかくこの件は、俺や少佐でどうにかできるレベルではない。一度本省に指示を仰ぐ必要がある。

 

「わかった。だが、応接室にある電話では上層部に繋がるまで時間がかかる。執務室にダイレクトラインがある。案内するからそれを使ってくれ。」

 

「わかりました。」

 

俺は少佐に案内され、執務室へ行く。

 

本省がどのような対応をとるかわからないが、先日の大規模作戦の影響もあることを考えると、あまり期待しない方がいいだろう。恐らく即応艦隊のみで捜索する可能性も視野に入れなければ.....

 

「ここが執務室だ。私は他の鎮守府に協力してもらえるように連絡するよ。」

 

「お願いします。」

 

俺は少佐にそう言い、受話器をとる。

 

 

『こちら海軍特殊憲兵本部の佐々木です。』

 

「第二鎮守府の池田です。」

 

『池田君か。わざわざダイレクトラインで呼び出したと言うことは.....緊急だね?』

 

「はい。うちの鎮守府に所属している陽炎型駆逐艦17番艦の萩風が無断で出撃しました。」

 

『無断で出撃したのは間違いないのか?』

 

「私は吉川少佐と面会のため第4鎮守府にいるので、はっきりとはわかりませんが、報告した艦娘によると艤装がなかったそうなので無断出撃で間違いないかと」

 

『状況は理解した。一度本省に報告してくる。ダイレクトラインはそのまま繋いでおけ』

 

「了解しました。」

 

萩風の行方がわからなくなったのは一時間前だとすると、場合によっては深海棲艦が目撃されている準警戒区域に入ってる可能性が高い。時間が経てば経つほど、危険区域に入り、危険に晒されるだろう。そうなれば、萩風だけではなく捜索隊も危なくなる。

 

「近くの鎮守府にはすべて連絡しておいたよ。」

 

連絡を終えた少佐が戻って来る。

 

「どうでしたか?」

 

そう聞くと、少佐は首を横に振った。

 

「やはりどこの鎮守府も先日の大規模作戦で補給や修理の関係上、すぐには出せないそうだ。」

 

そうなると今のところ動かせるのは即応艦隊のみか.....

 

「とりあえず即応艦隊はいつでも出撃できるように準備させておいてる。」

 

 

『こちら特殊憲兵隊の佐々木だ。』

 

どうやら本省への報告は終わったようだ。

 

「スピーカーにしてくれ。」

 

俺は少佐の指示通り、スピーカーにする。

 

 

『本省から通達があった。落ち着いて聞いてくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本政府は海上封鎖令を発令することを決定した。』

 

 

「「は?」」

 

 

 

海上封鎖だと?そこまでするほど深刻なのか?

 

「ちょっと待て。海上封鎖と言うことは萩風の捜索はしないと言うことか?艦娘による無断出撃は珍しいことではない。過去にもうちの鎮守府で島風が何度か勝手に出撃したことがあったはずだ。」

 

少佐が質問する。

 

『海上封鎖令が発令されても艦娘は対象外なので問題ありませんが、大規模作戦で他の鎮守府から艦娘が出せない以上、捜索は難しいかと....。それに少佐殿、あれとは状況が違います。一般の鎮守府ならかなり多めに見てますが、第二鎮守府は元ブラック鎮守府です。軍部に対して恨みを持っている艦娘も少なくありません。本省や政府はクーデターだけはなんとか避けたいようです。』

 

やはり政府や本省はクーデターを恐れているようだ。

 

「では何故、池田提督が爆撃された時点で対処しなかった?あれこそ上官に対しての殺害未遂は反乱やクーデターの何者でもないはずだ。それにクーデターを避けたいのであれば萩風を早急に発見し、確保することが最善ではないのか?」

 

 

『....本省から聞きました。』

 

佐々木少尉は答える。

 

 

『第二鎮守府は設計上、艦娘が無断で艤装を装着できることは不可能なんです。』

 

「どういうことだ?」

 

『前任が反乱を恐れ、出撃ドックを改造して提督が暗証番号を入力しないと艤装を装着できない作りになっているらしいです。前任逮捕後も本省がクーデターを阻止するためにそのまま残しておいたそうです。なぜ艤装を装着できたのかはわかりませんが、第二鎮守府の艦娘が暗証番号を知っている可能性があります。』

 

暗証番号を知っている艦娘がいるのならば、第二鎮守府に所属している全艦娘に反乱またはクーデターのチャンスが生まれる。結局、アイツ《前任》も本省も結局クーデターや反乱を避けたいのは一緒ってことか。

 

「それで海上封鎖と言うわけか....」 

 

『先ほどもお伝えした通り、先日の大規模作戦の影響で近場の鎮守府は哨戒してる艦娘を除き、すぐに艦娘を出せないそうです。また北海道第七鎮守府の第一艦隊を向かわせましたが、到着には時間がかかります。その間、即応艦隊と哨戒してる艦娘だけで民間船舶が安全に港に誘導し、第二鎮守府の監視をしなければなりません。萩風の捜索および救出は後回しになります。即応艦隊の指揮などはお二人に任せるそうです。』

 

萩風がどんな理由で出撃したかはわからない。だが、俺が思うに彼女は反乱を起こすようなことは思えない。恐らくではあるが、着任した時の言動を見るからに精神的な理由ではないかと俺は予想している。だが軍人である以上想定外は許されない。

 

「....わかった。即応艦隊を出撃させ、民間船舶の護衛おおよび第二鎮守府の監視任務を行う。」

    

少佐はそう言い、館内放送用のマイクで艦娘に指示を出す。

 

 

『池田君に関しても、吉川少佐の補助をしてもらいたい。それとわかってると思うが、第二鎮守府は当面の間出撃、および艤装の装着は禁止とする。これに関してはすでに第二鎮守府に通告してある。』

 

 

「了解しました。」

 

 

『では健闘を祈る』

 

『俺は失礼します。』と言って電話を切る。  

 

「即応艦隊の出撃準備が整った。これから作戦室に案内する。その前に君に電話だ。」

 

電話?ダイレクトラインではないから舞風からか?

 

「こちら第二鎮守府提督の池田です。」

 

『....提督』

 

電話の相手は舞風よりも少し低めの声だった。

 

 

「お前......野分だな?」

 

 

 

 

 

                   続く




次回はもう少し艦娘出します。今のところ艦娘全然出てきてないけど、一応恋愛あるんですよね...。

 
誤字脱字等あれば報告お願いします。


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萩風救出作戦

どうも作者のトミザワです。

みなさんあけましておめでとうございます(今年初投稿)


本当に申し訳ありません....。全然シナリオが思いつかないんですよ....。


 

「お前....野分だな?」

 

電話の相手にそう問いかけると『はい』と返事をした。

 

「要件はなんだ?」

 

まぁなんとなく予想はつく

 

『単刀直入に言います。萩風を探しに行かせてください!私なら萩風を説得できます!』

 

やはりか....。だが答えは決まっている

 

「駄目だ。許可できない」

 

『....それは上からの指示ですか?』

 

「....そうだ。先ほど本省から連絡をした通り第二鎮守府に所属してる艦娘は出撃及び艤装の装着は禁止だ」

 

俺は野分の質問に答える。

 

『あなたたちは....』

 

すると野分は声を震わせてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたたちは何もわかっていない!!』  

 

 

 

 

 

 

野分の悲痛な叫びが電話を通して部屋に響き渡った

 

 

『許可できない?じゃああなたたちなら萩風を説得出来るんですか!?萩風が何をされたか....どんなにつらい思いをしたか何も知らないくせに!』

 

「「……」」

 

少佐も俺も野分に対して反論する事は出来なかった。なぜなら図星だったからだ。

 

そんな状況の中、少佐が口を開く。

 

 

「池田君....責任は私が取る。彼女を出撃させてやってくれ....。」

 

頭を下げる少佐を見て、俺は考える。_出撃禁止令が出ている以上、野分を出撃させれば命令違反となり、そのうえ日本国民…いや、日本そのものを危険に晒す事になるだろう。

 

『お願いします...。もうこれ以上大切な人を失いたくないんです....。』

 

電話越しから今にも泣きそうな声で懇願してくる野分の声を聞いて、俺は決断し、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「却下だ」

 

 

 

 

『「なっ!?.....」』

 

 

 

「本省からの連絡通り、出撃および艤装の装着は禁止だ。」

 

『な、なんで...』

 

理解が追いついてない野分をよそに俺は冷たく言い放つ。

 

「君や萩風がどんなにつらい思いをしたのかはわからんが、君の勝手な私情で国民を危険に晒すような事は出来ない。あと警告しておくが、万が一君が命令を無視して無断出撃をした場合、君の姉妹艦である舞風にも処分が下る。なんなら陽炎型全員かもな。もし他の艦娘が出撃しようものならば『姉妹艦が大事なら余計な事をするな』と伝えとけ」

 

 

『最低....殺してやる。あなたも....自分勝手な軍部も全員....』

 

 

 

泣きながら殺意をむき出す野分に対してこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

「勘違いすんな。たとえ軍部から出撃を禁止されてなくても君を出撃させることはないよ」

 

 

そう言って俺は一方的に電話を切る。その瞬間、少佐に胸ぐらを掴まれる。

 

「君には人の心がないのか!」 

 

会った時からわかっていたが、やはりこの人は軍に向いてない。

 

「ありますよ。あるからこう言ってるんです」

 

「くっ....!」

 

少佐は掴んでいた手を離す。

 

「確かに我々は軍人だ。君の言う通り国民、そして国そのものを守らなければならない。だからと言って一人の艦娘を見殺しにするのか!」

 

「しませんよ?」

 

俺は少佐の言葉に即答する。

 

「私は野分の出撃を許可しなかっただけです。」

 

「......策はあるのかい?」

 

「完璧ではありませんがね」

 

「わかった。とりあえず作戦室に行こう」

 

 

________________________

 

 

作戦室

 

 

 

 

「でどう探すんだい?即応艦隊だけで探すにも固まって動けば見つける可能性は低くなるし、手分けで捜索した場合、接敵した時が怖いぞ」

 

少佐は作戦地図を開く

 

「ええ、ですから艦娘による捜索は行わず、とりあえず上の命令通り、民間船舶の護衛を行います」

 

「捜索は海軍航空救難隊でやるんだね?だが、かなりの危険が伴うよ。」

 

「それに関しては少佐の指揮次第です」

 

「......わかった。航空救難隊に召集をかける」

 

「それと少佐、一つお願いがあります」

 

 

___

 

 

 

 

 

 

「艦娘および航空救難隊の出撃が完了した」

 

「では作戦開始といきましょう」

 

萩風救出作戦が開始された。

 

「と言っても即席で練った作戦なんですけどもね」

 

「無いよりマシさ。逆によく短時間でここまで練れたなと思うよ」

 

「ええ、あとは飯田中尉率いる航空救難隊次第です。」

 

 

 

 

 

 

作戦はまずUHー1ヘリコプターで沿岸を捜索、第2鎮守府の監視を行う。そして速度、航続距離、防弾性能が高い二式大艇で準警戒区域を捜索し、発見次第即応艦隊が向かうというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

『こちら海鳥1から本部へ』

 

沿岸を捜索してたUHー1から連絡が来る。

 

「どうぞ」

 

『房総半島沖約20キロに艦娘4人を確認した。そのうち二人は天龍型と思われる』

 

「天龍型と言うことは第5鎮守府だね」

 

萩風ではなかったが、どちらにせよ増援はありがたい。

 

 

 

 

 

 

_______

 

 

 

 

 

あれから一時間経過したが、未だに萩風は発見されてない。それどころか脅しが効いたのか第2鎮守府ですら何の動きも報告されなかった。

 姉妹艦を連帯責任にさせる方法は我ながら良かったと思うが、後の事を考えると想像もしたくない。野分に殺されること間違いないんだが......。

 

『大艇2から本部へ』 

 

そんなことを考えていると二式大艇から報告上がる  

 

『単独で行動している艦娘を発見。恐らく捜索目標かと思われます。』  

 

「位置は?」

 

『第四鎮守府より南東200キロ沖です。現在、南に向けて進行中。』

 

「少佐、二式大艇を現空域から離脱させ第四鎮守府南東160キロの位置に向かわせてください」

 

「追跡は行わなくていいのかい?」

 

「おおよその位置さえわかれば大丈夫です。すでに準警戒区域をとびだし警戒区域に入っています。これ以上危険に晒すわけにはいきません。それに追跡を悟られ、進路を変えられると困ります。」

 

「わかった。大艇2は現空域を離脱、鎮守府沖160キロの位置に向かえ。」

 

『了解』

 

「即応艦隊はどうする?」

 

一番不安なのは萩風が即応艦隊を見てどういう動きをするかだ。萩風が逃げ出して警戒区域で追いかけっこになるのが一番怖い。

 

「予想進路を算出し、先回りして待ち伏せします」

 

萩風が無断出撃したのには何か理由があり、目的があるはずだ。

 

「萩風の位置から南に何かありますか?」

 

少佐が地図を見て探す。

 

「あったぞ......。青ヶ島だ」

 

「ではそこに向かわせましょう」

    

「わかった」

 

少佐は即応艦隊に命令を出す。それにしても青ヶ島か......嫌な思い出を思い出すな....。

 

『こちら大艇から本部へ鎮守府沖160キロの位置に到達』

 

それと同時に二式大艇からも連絡が入る

 

「そういえばなぜわざわざお願いしてまで二式大艇に800kg爆弾を装備させたんだ?」

 

「ちょっとした小細工を仕掛けます。二式大艇に民間船舶がいないことを確認させ爆弾を投下させてください」 

 

「本部より大艇2へ民間船舶がいないことを確認し、爆弾投下」

 

『了解。投下』 

 

「しかしなぜ何もないところに爆弾を?」

 

「萩風を探すための名義ですよ」

 

「なるほど」

 

現在、即応艦隊に出されてる命令は民間船舶の護衛及び誘導と鎮守府の監視しか与えられてない。つまり萩風を探すことは命令違反になる可能性がある。そこで爆弾を投下し、深海棲艦の攻撃と見立て民間船舶の護衛と称して萩風救出に向かわせる作戦だ。

 

 

 

___

 

 

「でもいいのかい?さっきの爆弾投下はかなりの問題になるんじゃあ」

 

「いや駄目ですね。でも安心してください責任は私が取りますから。むしろ取らせてください。」

 

あくまでもその場しのぎであるため、調査が入ればバレてしまうだろう。

 

「そ、そうか......ッ!?旗艦である霧島から報告だ」 

 

「スピーカーにしてください」 

 

『こちら霧島』

 

「私だ。どうしたんだ?」 

 

『萩風を発見し説得してるのですが......嵐を探すの一点張りで応じてくれません』

 

やはりか...。説得をし続ければ応じてくれる可能性はあるが、わざわざ身を危険に冒してまで警戒区域で萩風のわがままに付き合うほど、こちらに余裕はない。ならばやるべき事は一つ。

 

「少佐、策があります。霧島と通信してもよろしいでしょうか」

 

「わかった。霧島、今から第二鎮守府の提督に変わる」

 

「第二鎮守府提督の池田だ。今からある命令を出すいいな?」

 

『わ、わかりました』

 

突然、提督が変わったことに少々戸惑ってるようだが、これなら大丈夫そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「撃て」

 

 

 

 

 

 

 

『「は?」』

 

 

 

唖然としてる少佐と霧島をよそに俺は再度命令を言い渡す

 

「萩風を撃てと言ってるんだ」

 

『そ、それは撃って無力化しろと言うことですか?』

 

さすが艦隊の頭脳....理解力がはやくて助かる。

 

「そうだ。気絶させろ」

 

『ち、ちょっと待ってくだサーイ!』

 

だが、横やりが入る

 

「誰だ」 

 

『金剛型一番艦の金剛デース!それよりも私タチの装備じゃ沈んでしまいマース!』

 

「副砲や機銃があるだろ」

 

『デスガ....』

 

やはり消極的か....。ここは飴と鞭作戦で行こう

 

「もし萩風を無事に救助に成功したら吉川少佐がなんでもしてくれるらしいぞ」

 

「えっ」

 

『本当デスカ!?』

 

現金な奴らだ。少佐には申し訳ないが犠牲になってもらおう

  

「池田君....」

 

「本当にすみません....」  

 

俺は吉川少佐に謝罪する

 

「まぁいい。最近構ってやれなかったし、できる範疇でな?霧島、絶対に萩風を沈めるなよ」 

 

 

『了解』

 

そう言って通信が終わる。

 

「頼む....成功してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして再び霧島から無線が入る

 

 

『こちら霧島、萩風の無力化に成功しました!』

 

 

「良かった....」

 

少佐は安堵する。しかしまだ終わっていない。

 

「萩風の状態は?」

 

『一部浸水しているようですが、鎮守府までの距離を考えて無事に帰投できると思います』

 

「とりあえず萩風をいつでも受け入れられるように妖精さんにも伝えておいたよ」

 

「ありがとうごさいます」

 

とりあえず救出作戦は成功したと言えるだろう。だが、やらなければならないことがたくさん残されている。

 

萩風が回復し次第、事情聴取を行って動機そして何よりなぜ艤装が装備できたのかを調べて対処しなければならない。

 それに萩風を無断出撃させてしまった事は俺の監督責任となる。これで提督辞職とかだったらラッキーなことこの上ないが、そうともいかないだろう....。

 

『こちら霧島』

 

そんなことを考えてると霧島から無線が入る

 

「どうした」

 

『航空電探に反応あり!』

 

「何機だ?」

 

『30です!真南の方角から接近中!』

 

「なんだと!?」

 

真南から接近してると考えると友軍の可能性は非常に低いだろう。つまり敵機動部隊がいるということだ。

 

「少佐、本省に連絡を取って第一艦隊の位置とすぐに急行するように伝えてください」

 

30機相手となると、艦載機無しでは守りきれない。とくに萩風を抱えたままの戦闘となるとより危険になるだろう。たしか北海道の第一艦隊には軽空母瑞鳳がいたはずだ。敵を沈めることはできなくても護衛には十分なはずだ。

 

「本省と連絡が取れた」

 

「第一艦隊の現在の位置は?」

 

「津軽海峡だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

「どうやら津軽海峡で起きた船舶事故に対応中らしい....」

 

船舶事故ごときなら駆逐艦の一人や二人で十分だろ...。

 

「本省にかけあってみたが、現状の戦力で対応しろだとさ」

 

どう対応しろと言うんだ....。

 

「少佐、あなたならどうします?」

 

俺は即応艦隊についてはよく知らない。個人個人の能力も含め、ここは少佐の方が詳しいだろう。

 

「金剛姉妹は対空能力は高いが、今の状況を見て撃墜出来るのはせいぜい10機程度だろう。一番効率がいいのは速力が速い島風、雪風に萩風を運んでもらい、金剛たちに時間を稼いでもらうのが一番良いのだが....彼女たちを指揮する人間として誰かを犠牲にしたくはない」     

 

誰かを犠牲にしたくないか....。この人はつくづく指揮官に向いてない。

 

「少佐に提督は向いてないと思います。あなたは優しすぎる」

 

俺は思ったままのことを少佐に言う。少佐は軽く笑いこう言った。

 

「よく言われるよ。君と私じゃ考え方がまるで違う。私は艦娘のために仕事をし、君は軍に忠実に働く」

 

俺は少佐の言葉に笑いながら「これでも憲兵ですから」と言った。そして付け加えてこう言った。

 

「でも今は同じ気持ちです」

 

俺は受話器を持ち、特殊憲兵本部に繋げる。

 

『こちら佐々木だ。』

 

「何度もすみません。池田です」

 

『池田君か。現在の状況は』

 

「即応艦隊が萩風を救助し、現在第四鎮守府に帰投中ですが、深海棲艦の艦載機に狙われてる状態です」

 

『萩風の救助?命令は誘導及び護衛、監視の任務だったはずだぞ』

 

「実は鎮守府沖、約160キロの地点に深海棲艦の攻撃と思われる爆発があり、民間船舶の護衛として急行したところ、偶然萩風を発見したのです」

 

『........そうか。偶然なんだな?』

 

俺は佐々木少尉の質問に『はい』と答える。恐らく隊長も気づいているだろう。

 

『それで?要件はなんだ?』

   

「第二鎮守府の出撃禁止を解除してもらいたいのです...。それと嵐という艦娘を調べて欲しいのです」

 

「そうくるか......」

 

空母が出せないのならウチから出してしまえば良い。出撃することが違反になるのなら出撃禁止を解除させてしまえば良い。_めちゃくちゃな理論だが、この状況を打開するにはこれしかない。

 

『本気で言ってるのか?』

 

「はい。何も全員を解除しろとは言いません。一人だけ信用できる奴がいるんです」

 

『その艦娘は本当に信用できるんだろうな?』

 

「ご心配なら哨戒任務に当たっていた他の鎮守府の艦娘を監視にあてます」

 

『しかし、それでは......』

 

「池田君、変わってくれ」

 

渋る少尉に痺れを切らしたのか少佐は受話器を奪う。

 

「私だ。時間がないから一方的に言うぞ。現状は聞いてると思うが、鎮守府沖数百キロで深海棲艦の艦載機が飛行している。これはあまりにも異常だ。第二鎮守府が機能しなくなってから警戒網に穴が空き、今では空母すら侵入を許してしまっていることになる。もしこの作戦が失敗したら日本は終わる。頼む...どうか解除してくれ」

 

『わかりました...。ただし出撃させるのはその一艦だけです』

 

「了解」

 

 

とりあえず本部からの了承は得た。_だが問題はここからだ。

 

「池田君、その艦娘はちゃんと指示にしたがってくれるのか?」

 

少佐の質問に俺は押し黙る。_もちろん信用はしている。だが向こうが俺を信用してくれてるとは限らない。

 

「....なんとかしてみせます」

 

俺はそう言って受話器を取り、今度は第二鎮守府へかける。 

 

『はい...舞風です....』

 

数秒待ったのちに受話器から舞風の声が聞こえ、電話の相手が飛龍や野分ではないことに安堵する。

 

「俺だ。急で申し訳ないんだが、蒼龍を呼んで来てくれ」

 

舞風の『はい』という返事が聞こえた後、保留音がなる。

 

もしここで蒼龍が拒否すればすべてが水の泡となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、保留音が消える。

 

 

「蒼龍か?」

 

『......うん』

 

とりあえず蒼龍が電話に出てくれたことに胸を撫で下ろす。

 

「......聞いてるかもしれないが、萩風たちが敵艦載機の脅威にさらされてる。今、彼女たちを救えるのは君しかいない」

 

『....』

 

「それと....この間はすまなかった....」

 

『ほんとだよ...。会って1日も経ってないのにわかった口きいてさ』

 

「本当にすまない....」

 

『まぁいいや...時間がないんでしょ』

 

「そうだな....時間がない。いけるか?」

 

『飛龍も連れて行っていい?』

 

「勘弁してくれ」

 

深海棲艦を沈めるついでに俺も沈められる....。

 

『冗談だって!』

 

「冗談言う前にさっさと出撃ドックに行け。通信の周波数は31.0だからな?」

 

『はいはい....』

 

「よし切るぞ」

 

『あっ!待って!』

 

「なんだよ....」

 

『私も謝りたいことがあるからさ....この件が終わったらちゃんと話さない?』

 

「死亡フラグたてる前にさっさと準備しろ。そして必ず萩風と即応艦隊を救ってこい」

 

そう言って俺は電話を切る。

 

 

頼んだぞ....蒼龍

 

 

                  

                    続く




本当にいつもこんな作品を読んでくださりありがとうございます。

次回で萩風編は終わりとなります。

アドバイスや誤字脱字などあれば報告お願いします。

あと近々、アンケートとるかも


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萩風という少女

どうも作者のトミザワです。約5ヶ月ぶりの投稿になります。

今回は登場人物が急激に増えるので実験を含め、台本形式にして見ました。

アンケートの結果を見て、他の話も修正するつもりです。

あっ!前回のアンケートに答えていただいた方、ありがとうございます!戦闘シーンは少な目でいきたいと思います

※アンケートの結果このままでいきたいと思います


9月5日 直し終了


あれから3日後、俺と少佐のあの事件の責任を追求する査問委員会が開かれた。

 

 

だが....

 

 

大本営 会議室

 

 

「貴様の噂は聞いてる!賄賂や大破進撃....それどころか艦娘への性的暴行したそうじゃないか!」

 

「噂は噂だろ~?第三鎮守府の大将さんよ」

 

 

俺と少佐の処遇の話は一切出さず、まったくの別件を問い詰める穏健派代表の大将とそれに対して煽る過激派中将........。関係者曰わく、いつもこんな感じらしい。

 

「あの....これいつ終わるんですかね?」

 

「さぁね....というか池田君はすごいね....。どんな罰を受けるかわからないのにこんな時に読書とは....。」

 

「こんな事で時間を無駄にしたくありませんから。それに....結果はもうわかってますし」

 

そう言って、読者を再開する。

 

「それはどういう....「おい貴様!査問委員会で読書とはどういうつもりだ!」

 

穏健派大将に怒鳴られ、俺は仕方なく本をしまう

 

「失礼しました。時間の無駄だと思ったので」

 

 

「池田君....」

 

少佐は挑発する俺を制止させようとするが構わず手を上げ、ある事を提案する。

 

「委員長、これ以上関係のない質疑応答をするなら時間の無駄です。退席してもよろしいですか?」

 

「何だと!?そんな事が許されると...」

 

「認めます」

 

「「!?」」

 

しかし、委員長はすんなりと俺の提案を受け入れた

 

「では少佐殿、行きましょうか」

 

俺は少佐を連れて会議室を出ようとする。

 

「待て」

 

だが、過激派中将に呼び止められる

 

「...なんでしょう」

 

「お前、名前は?」

 

「海軍特殊憲兵隊の池田信也と申します」

 

「歳は?」

 

なんなんだ....この質問は....。

 

「今は16ですが、来月17になります」「ほう....。ではそんな憲兵さんに聞きたい事がある。俺は艦娘は兵器であり、道具だと思っている。君はどうだ?艦娘は人間か?それとも兵器か?」

 

「ちょっと待ってください。今回の件に関してその質問は一切関係ありません。」

 

さすがにまずいと思ったのか少佐が間に入る

 

「吉川、お前の意見など聞いていない。それに元ブラック鎮守府に憲兵が着任する事は初めてだ。その第1号がどんな人間か知っておきたい」

 

「池田君、答える必要はない」

 

さっきとは逆に少佐が俺を会議室から連れ出そうとする。

 

「いえ、答えます」

 

「池田君!あの人は過激派代表で政治家の息子であり、前任とも共謀してた噂もある。目をつけられたら終わりだぞ!」

 

少佐は中将に聞こえないように小声で俺に警告する。というか政治家の息子なのか........。どうりで大将に強く出れるわけだ。

 

「質問にお答えします。まず艦娘は人間か兵器かでしたが、私個人の意見として人間だと思っています」

 

俺は少佐の警告を無視し、質問に答える。

 

「ほう?」

 

「ですが、そこにいる穏健派大将のように特別扱いするつもりはありません」

 

「というと?」

 

「艦娘は当然ながら海軍に所属しています。軍に所属してる彼女らは兵士なのです」

 

「つまり一般兵士と同等に扱うという事だな?」

 

「はい。穏健派の鎮守府では艦娘とのコミュニケーションを良く取っていると聞いていますが、鎮守府は懇親会をする場所ではありません。軍隊にとって連携や信頼関係は大切ですが、仲良くする事とは別です。私は彼女らにとって憲兵であり、そして上官でもあります。ですから違反をすれば厳しく処罰し、反乱を起こそうものなら武力を使って制圧します。それが私の考えです」

 

「クックック....面白い考え方だ....。お前は将来優秀な軍人になるだろう」

 

過激派中将は不気味に笑う

 

「お褒めいただき光栄です。では失礼いたします」

 

そう言って俺と少佐は会議室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「池田君!君は自分が何をやってるのかわかっているのか!」

 

大本営を出るや否や少佐からお叱りを受ける

 

「ええ、わかっていますよ」

 

「だったら何故!」

 

少佐の怒りは収まらない。まぁ第三者から見れば穏健派代表の意見を否定し、過激派代表に擦り寄るように見えたのは間違いない。

 

「少佐、私はあんなマヌケな大将に付くつもりはありません。それに私はあくまでも中立的な立場を取っていくつもりです」

 

あの大将....軍人でありながらも一時的な感情でしか動いてない。あれが穏健派代表なのか?だとしたら他の穏健派たちが不憫で仕方がない。

 

「だとしてもだ....。あの過激派中将は政治家の息子で悪い噂がたくさんある。というかそもそも査問委員会で退席とかどんな処罰を受けるかわからないぞ」

 

「噂は噂ですよ。もちろん証拠が揃えば、逮捕しに行きますけどね。」

 

「....」

 

「それと査問委員会に関しては処罰はないので安心してください。あと私は用事があるので、別の車で寄り道してから第四鎮守府に行きます」

 

「何故、結果も出てないのにそこまで言い切れるんだ」

 

俺は少佐の言葉に対して『いずれわかりますよ』とだけ言い、車に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

海軍特殊憲兵隊 正門前

 

「お疲れ様です。」

 

俺は後部座席の窓を開け、警備兵に身分証を提示する

 

「確認がとれました。」

 

警備兵はゲートを開け、敬礼する。車は敷地内に入り、司令部前で停車する。

 

「お待ちしておりました」

 

車を降りると、一人の男が立っていた。

 

「はじめまして。海軍特殊憲兵隊、池田信也です」

 

「海軍特殊憲兵隊、警備班の桜木誠一です」

 

桜木と言う男....見た所、20代前半だろう....あと警備班とかあるのか...。班がある事自体はじめて知った。俺は一体どこの班なんだ?

 

「佐々木少尉がお待ちです。ご案内しますが、車椅子は必要ですか?」

 

どうやら佐々木隊長から負傷してる事を聞いてるらしい

 

「ご心配ありがとうございます。骨折等はしてないので車椅子は大丈夫です」

 

「了解しました。」

 

なんだろう.......年上にここまで気を使われると申し訳ない気持ちになってしまう....。

 

「運転手の方、奥に駐車場があるのでそちらをご利用ください。」

 

桜木さんの答えに駐車場の方を見ると、見た事もないような車両や装甲車がそこにはあった。

 

「では、ご案内いたします」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

俺は桜木さんに案内され隊長室の扉をノックする

 

「入れ」

 

「失礼します。」

 

「査問委員会は?」

 

「第三鎮守府の大将と過激派中将が言い争いをしてるだけだったので途中で退席しました」

 

「だと思ったよ。まぁそれはいい。萩風と蒼龍の状態は?」

 

「蒼龍は中破で第四鎮守府で入渠して回復してます。萩風の場合は意識不明で入渠の場合溺れる可能性があるので点滴を投与してますが、依然として意識は回復してないです。」

 

「そうか....。そういえば、この基地に来るのは初めてだったな」

 

「はい。駐車場に見たこともないような車両がありましたが、あれは?警備兵も最新の短機関銃のような物を持っていましたが....」

 

俺は駐車場にあった装甲車について質問する

 

「米国とドイツから購入したんだ。わざわざカナダ、アラスカを経由してそこから海上輸送をしたんだ」

 

さすが、欧米の技術は凄い。日本より10年先を行ってる。

 

「この国も世界最強の軍艦や戦闘機を作れたんだがなぁ....資源がなければ何もできないか....。」

 

「欧米諸国と比べても仕方がありません。むしろ島国で貿易もままならないのによくここまでやってますよ。この国は」

 

「まぁ無駄話はこれぐらいにして....駆逐艦嵐についてだったよな?」

 

「はい」

 

「では捜査班の所に案内する」

 

俺は佐々木隊長に連れられ、隊長室を出る。

 

「そういえば、この部隊にはいくつかの班がありますが、私はどこ所属なのですか?」

 

「鎮守府の復旧を担当する人間は君しかいない。よって所属はないが、復旧後は機動班か警備班に割り振るつもりだ」

 

そんな事を話してると捜査室前に着く

 

「ここからは捜査班長の高木という男が担当する。」

 

「了解しました。」

 

俺はそう言って捜査室に入る

 

「待っていたぞ。」

 

そこには大柄な男が立っていた

 

「第二鎮守府の復旧を担当している池田信也です」

 

「特殊憲兵隊捜査班、班長の高木だ。よろしく。さっそくだが本題に入るぞ」

 

「はい」

 

「前任から押収した、戦歴書類や戦闘記録を確認した結果....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ながら青ヶ島沖で轟沈してる事が確認された」

 

 

 

 

 

 

 

 

「....そうですか。原因は?」

 

「深海棲艦による魚雷攻撃が原因だ。だが、その30分前に任務が完了し帰投する事が報告されている。」

 

「つまり待ち伏せにあったと?」

 

「まぁこれを見ろ」

 

すると一枚の書類を俺に渡してくる

 

「これは?」

 

「前任さん、艦娘たちが逃亡しないように艤装に発信器やマイクを付けて逐一、陣形や交信内容を確認してたらしい。この書類は当時の陣形と作戦状況について書かれてる。」

 

「書類だと戦闘の途中で空母赤城と加賀が被弾して大破してますね」

 

「ああ、だから赤城と加賀を守るように輪型陣で帰投している。それで魚雷がきたのはこの方向からだ。」

 

高木は陣形の図に矢印を書く。

 

 

 

 

 

 

魚雷が向かった先は

 

 

 

 

 

 

 

萩風の所だった。

 

 

 

「.....つまり嵐は萩風を庇ったと?」

 

「そういう事だ.....。萩風と実際に会った事はないしあくまでも推測だが、大切な姉妹艦を失った悲しさや自責の念がこの事件の原因だと俺は思っている。萩風が罪滅ぼしに深海棲艦と戦って沈みたかったのか......もしくはストレスのせいで本気で嵐が生きていると思い込んでるのか俺にはわからん」

 

信也「......」

 

どういう反応をすればいいかわからなかった。もし萩風が目を覚まし、解体......いや、自沈処分あるいは深海棲艦と戦って沈みたいと言われたらどんな回答をすれば良いのだろうか......。

 

「もしですよ。大事な部下が死にたいと言ったら班長はどうしますか?」 

 

俺の質問に班長は『うーん......』と考え、こう言った

 

「わからん。組織や社会の一員としては止めるのが正解だが、本人の立場に立ってみると話は別だ」

 

「そう....ですか....。」

 

するとコンコンコンとノック音と共に佐々木隊長が入ってくる。

 

「失礼するよ。池田君......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「萩風の意識が戻ったと吉川少佐から連絡があった」

 

 

 

 

 

「なんでこのタイミングに......」

 

 

「さぁどうする?」

 

 

俺は目を瞑り、深呼吸をする。

 

「車を司令部前に回してください。第四鎮守府へ向かいます。それと佐々木隊長、お願いが」

 

「もう嫌な予感がプンプンするけど、なんだね」

 

俺はあることを佐々木隊長にお願いした

 

 

 

「......まーた査問委員会が開かれるぞ」

 

「構いません」

 

「......わかった。ただ吉川少佐の許可が出たらの話だ。まぁあの人が断る事はないだろうが......」

 

「ありがとうございます」

 

「おい。もし、その方法を取るならこれを持ってけ」

 

そう言って俺にアタッシュケースを渡す。

 

「捜査資料だ。きっと役に立つ。」

 

「ありがとうございます」

 

俺はお礼を言い捜査室を出て、車に向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

第四鎮守府 医務室前

 

「遅れて申し訳ありません。萩風の状態は?」

 

「意識ははっきりしているが、かなり怯えてる。」

 

「わかりました。それからもうすぐ到着するそうですが、いきなり医務室に入れずに私と萩風の会話を聞かせてください。」

 

「わかった......。」

 

俺は医務室のドアを開ける。

 

「し、司令....」

 

そこには俺の顔を見て怯える萩風と

 

「て、提督!?」

 

驚く蒼龍の姿があった

 

「おう、蒼龍。まだこの鎮守府にいたのか」

 

「いるよ!てか私、本来出撃禁止の所を即応艦隊の監視があったから出撃できた訳で多分帰りも一人じゃ帰れないんだけど....」

 

そうだった....。なにかしらの方法で移動手段を確保しないと

 

そう思いながら蒼龍の座ってる横に立ち、彼女の方を見る。

 

「えっ....何?」

 

「いや....邪魔。医務室から出てくれるか?」

 

「いやいや....椅子を他の所から持ってくればいいだけでしょ」

 

そういう意味で言ったんじゃねーよ

 

「萩風と二人で話がしたい」

 

「っ!?」

 

俺の言葉に萩風は身体を震わせる

 

「でも萩風ちゃん怯えてるよ?私がいた方が落ち着くんじゃないかな?」

 

「頼む」 

 

「うっ....」

 

「お願いします....一人にしないで....。」

 

「うっ....」

 

板挟み状態に蒼龍は困惑する

 

「お願いだ」

 

「....わかったよ。15分だけね?それ以上は駄目。わかった?」

 

「助かる。ありがとう」

 

「へぇ~....直接お礼とか言えるんだ」

 

蒼龍はニヤニヤしながらそう言う

 

「....お前明日の夕ご飯、無しな?」

 

「じ、冗談だって!」

 

「いいから早く出ろ」

 

「はーい」

 

蒼龍が医務室を出る

 

「ご、ごめんなさい!」

 

すると萩風が頭を下げ、謝罪する。

 

「どんな処罰だって受けます!だから姉や妹たち、他の艦娘を巻き込むのはやめてください!お願いします!」

 

「萩風、お前ら姉妹同士って仲良かったりするのか?」

 

「えっ....」

 

突然の質問に萩風は驚きと姉妹たちが何かされるのではないかと言う驚きと不安が入れ混ざった顔をしていた。

 

「いいから答えろ」

 

「....昔は仲良かったです。」

 

「昔は?今は違うのか?」

 

「....はい。半年前に野分と舞風が泣きながら喧嘩してるのを見たんです。それからお互いに変わったというか....」

 

「そうか....。原因はなんだと思う?」

 

「わかりません....。ただ喧嘩する数分前に野分が『舞風はいいよね』みたいな事を言ってて」

 

「それで気づいたら喧嘩してたと?」

 

「...はい」

 

「俺はなんで喧嘩したのかわかるぞ」

 

「えっ?」

 

「陽炎型駆逐艦17番艦萩風、おまえが原因だよ」

 

先ほどよりも低いトーンで話す。

 

「わ、わたしが?」

 

「そう。お前がいつまで経っても姉の死を受け入れられずにウジウジと逃げてばっかりいるからだ」

 

「なっ!?嵐は沈んでいません!」

 

「なんでそう言い切れるんだ?嵐は鎮守府にいなかったのに」

 

「声が聞こえたんです。私を呼ぶ声が...だから生きてるんですよ!」

 

「それで無断出撃したのか?」  

 

俺の質問に萩風は頷く。はっきり言ってめちゃくちゃな理論だ。

 

「去年の六月、旗艦赤城を主軸とする第一機動部隊は青ヶ島近海をうろついてる敵機動部隊撃滅のために出撃した。そして嵐やお前も参加し、逃亡や反乱を防ぐために前任は姉妹艦や部屋班の艦娘を人質としたため、舞風と野分が作戦に参加する事はなかった。」

 

「やめて」

 

「敵機動部隊との激闘の末、勝利するも赤城と加賀が大破。帰投の際は赤城と加賀を守るように輪型陣をとった」

 

「やめて!」

 

俺は萩風の言葉を無視し、続ける

 

「だが、敵潜水艦が潜んでた事に気づかずに挙げ句の果てに直前まで魚雷を撃たれてる事にすら気がつかなかった」

 

「嫌っ!聞きたくない!聞きたくない!聞きたくない!」

 

萩風は耳を塞ごうとする。だが.....

 

 

 

 

 

ガシャ!

 

 

「あぁ.....言い忘れてたけど、暴れないように手錠付けてるから」

 

「そ、そんな.....嫌だ.....嫌だよ」

 

「そして嵐はお前を庇い、魚雷が命中。その後お前は必死に曳航を試みるが、浸水を防ぐ事が出来ずにお前の目の前で沈んでいった。」

 

「違う.....違う.....違う」

 

「そうか.....違うか。」

 

俺は萩風の耳元でこういう

 

「思い出せ。お前のせいで沈んだんだ」

 

「あ.....」

 

「お前が敵潜水艦に気づいてればこうはならなかった。」

 

「お前が早く雷跡に気づいてれば、嵐はお前を庇う必要はなかった。違うか?」

 

泣き出す萩風に俺は大きくため息をつく

 

「その後、お前は部屋に閉じこもり挙げ句の果てにあの事件どころか嵐の死もなかった事にしようとした。だが、出来なかった。何故なら目の前で沈んだ記憶は消せなかったからだ。だから壊れた役を演じるのも苦痛に感じる。そしてお前は決意する。せめて深海棲艦を道連れに自分も死のうと」

 

「グスッ.....」

 

時計を見ると10分が経過してた。そろそろ畳みかけるべきだな

 

「.....司令」

 

「なんだ?」

 

「私を殺してください.......。解体でも雷撃処分でもなんでも構いません。」

 

「正当な理由が無ければ許可できない」

 

「私は潜水艦も発見できないようなポンコツ艦です.....それに私には何も残ってませんから.....。」

 

「そうか.....」

 

 

 

 

 

 

 

バチンっ!

 

 

俺は容赦なく、萩風の頬を叩く

 

 

 

「本当はこんな事したくなかったが、あまりにもお前がマヌケ過ぎてな。」

 

「.....」

 

「なぁ萩風、なんで姉妹艦を沈めて部屋に閉じこもったポンコツ艦を前任は見逃したと思う?」

 

「.....っ」

 

「野分や舞風が身代わりになかったからだよ。舞風はほぼ毎日好きでもない男の夜の相手をし、野分はストレス発散のためにサンドバックのように殴られた。そりゃイライラもするし、喧嘩もするわな。でもなそんな状況でもお前の事を心配してくれてるんだ。無断出撃の時だって危険を顧みずに捜索に参加すると言ってきた」

 

泣く萩風に対して俺は容赦なく言う。

 

 

「それを何も残ってない?ふざけんな!そんな事も考えられないお前はポンコツ艦どころかただのゴミと一緒だ!まだ米国で開発されてる迎撃システムの方がまだ賢いわ!」

 

俺は萩風に対して怒鳴りつける。  

 

「解体だと?責任を取らされる俺の気持ちを考えろ。ゴミはゴミらしくゴミ捨て場に行って野垂れ死ぬのがお似合いだ。」

 

するとバンっ!と扉を開ける音が聞こえたと同時に背中に衝撃が来る。吹き飛ばされた俺はようやく跳び蹴りされた事に気づく

 

「このクズが!よくも萩風を叩いたなぁ!」

 

倒れ込む俺に対して野分は思いっきり顔に蹴りを入れる。

 

「ぐふ.....」

 

口の中は鉄の味がし、意識が朦朧としかけていた。

 

「野分!」

 

「いや、気が済むまでやっていいぞ。ただし殺しは無しだ」

 

舞風は止めようとするが、少佐は止めなかった。野分はしばらく俺を殴った後、萩風の元に行く。

 

「野分.....舞風.....なんで.....」

 

萩風は突然の出来事に唖然とする

 

「萩風、聞いて欲しい事がある。嵐が沈んだのは萩風のせいじゃない!そもそも補給も入渠も無しに無理進撃をしたアイツが悪いの!だから私のせいとかせめて道連れにして死のうとかお願いだからやめて.....」

 

「毎日夜の相手をさせられたり、つらくてのわっちとも喧嘩した事もあるけど、私は後悔はしてないよ。だって嵐に続いて萩風を失いたくないもん!」

 

「わ、私.....二人の事、全然考えられていなかった.....。本当にごめんね.....」

 

3人が泣いてる中、吉川少佐は倒れてる俺の下へ来る

 

「.....立てるか?」

 

「大丈夫です」

 

俺は一人で立ち上がり、医務室を出ようとする。

 

「まぁ君のシナリオ通りなんだろうが、あんまり女性を泣かすなよ。後、もう一発くるから気をつけろよ」

 

 

 

 

バチンっ!

 

医務室を出た途端、頬に痛みが走る。そこには泣いている蒼龍の姿があった。

 

「これは萩風ちゃんの分ね」

 

「......なんでお前が泣いてるんだ」

 

 

「人のやり方に口出ししたくはないけど、提督がつらそうな顔で悪口を言って、野分ちゃんや他の艦娘に殴られたり蹴られたりするのはもう見たくないよ.....」

 

「........」

 

「........ごめん。頭冷やしてくる」 

 

泣きながら走り去る蒼龍に俺は何も言えずにその場に立ってる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

俺は軍医に手当てをしてもらい、第二鎮守府へ帰る事となったのだが........。

 

 

(なんで同じ車なんだ........)

(なんで同じ車なの.....)

 

てっきり即応艦隊の監視のもとで海上ルートで帰るのかと思っていたが、艤装の装着は認められなかったのか同じ車で帰ることになった。

 

「....」

 

「....」

 

依然として車内には気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのは蒼龍だった。

 

「ねぇ........提督」

 

「.....なんだ」

 

「はっきり言うけど、この件で第二鎮守府の艦娘たちの提督への評価は最悪だよ」

 

「.....だろうな」

 

「だからこそお願いがあるの.....」

 

蒼龍は声を震わせる。

 

「もう二度とあんな事しないって約束して.........」

 

「.....すまない。それは無理だ.....」

 

「あっ........」

 

泣き出す蒼龍をよそに俺は窓からの景色を見る。色々とトラブルはあったが、鎮守府復旧計画は順調に進んでいる。

 

 

俺は.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前らに構ってる暇はないんだ........

 

 

 

 

                 続く           




いかがでしたでしょうか?かなり長くなってしまった気がする........。

アンケートのご協力のお願いとアドバイス、誤字脱字報告の方よろしくお願いいたします。


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