エースの栄光 (雲路)
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出撃

『メビウス部隊出撃準備をお願いします。』

 

「お、遂に出撃か?」

 

放送に反応した隊長は少しウキウキしながら立ち上がる。

 

「よし!お前ら!これが俺達の初陣だ!気合い入れていくぞ!」

 

隊長を入れて6人のこの小隊で隊長の掛け声に反応したのは士官学校を卒業したばかりの新米の兵3人だけだった。

俺ともう1人ナガセケイ少尉は特に反応せず格納庫へ向かった。

 

格納庫に着くとそこにはザクI通称旧ザク五体とMS-06AザクIIが隊長機として置かれていた。

 

「ハルート中尉お聞きしたい事があります。」

 

先程までずっと無言だったナガセ少尉が話しかけてくる。

 

「なんだ?」

 

「中尉はこの作戦には賛成ですか?」

 

やはりナガセ少尉もやはりこの作戦に不信感を抱いているのか

 

「…………」

 

「私は反対です」

 

だろうな

 

そして俺は黒色に染められた黒いザクIを見上げながら答える

 

「俺もだ……だがあまりそういう事をここで言うなよ誰が聞いているかわからん。」

 

「……失言でした。」

 

失敗したという表情で謝ってくるナガセ少尉

 

「いい。」

 

そして俺達はそこから自分のモビルスーツに乗りOSを立ち上げ各部の診断を始める。

 

「MS-05B 出力安定、各部異常なし」

 

「よし!お前ら!俺らドズル艦隊の威厳を見せるぞ!連邦軍など蹴散らすぞ!」

 

隊長は意気揚々とカタパルトに乗り出撃して行った。次に2番機である俺がカタパルトに乗るとオペレーターから通信が入る

 

「ハルート中尉。」

 

「どうかしたか?ゲルン伍長?」

 

「絶対生きて戻ってきて下さいね!」

 

ゲルン伍長とは士官学校からの付き合いだから同期に死んで欲しくないのか心配してくれた。俺はそれに少し微笑んで答える

 

「ありがとう」

 

俺は気持ちを入れ替え

 

「ザクI!ハルート・エル!出る!」

 

…ブリッジ

 

そこでは椅子の上で体育座りをして赤くなった顔を隠しているゲルン伍長の姿があった。

 

「羨ましいねー!あのニブチンでお馴染みのハルート中尉にあんな顔をさせるなんて!」

 

「うるさい……」

 

「でもやっぱり天然の女たらしだよね」

 

「……確かに」

 

「この艦最近入ってきた新米の男女問わず人気だし噂ではあのナガセ少尉も狙ってるとか!」

 

「ウソ!」

 

「ほんとよ?こないだ食堂で一緒に食べてるのを見かけたのよ?しかもナガセ少尉は今までにないくらい楽しそうだったし」

 

「そ、そんなー」

 

それを聞き落ち込むゲルン伍長だったがそこに艦長が一声かける

 

「恋バナもいいけどそろそろ仕事もしてね?」

 

『は、はい!』

 

その一声によりブリッジのオペレーター達は再度気を引き締め仕事に取り掛かった。



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弔い

 

「こちらハルート中尉。隊長、敵戦艦を目視。サラミス級5 マゼラン級7」

 

「大量だな!」

 

隊長はそれだけ聞くとノロマな戦艦や戦闘機だけと油断して敵に突っ込んで行きそして新米達もそれに続いて行ってしまった。

 

「!待て!クソ!ナガセ!俺達も追いかけるぞ!」

 

「は、はい!」

俺の制止も聞かず4人は敵に突っ込んで行くのを俺とナガセ少尉は追いかけていく

 

 

 

 

「隊長!突っ込みすぎです!これでは新米達が危険です!」

 

「大丈夫だ!あいつらは士官学校ではかなり優秀だったと聞いている!それにこの程度敵など倒せなくてはジオン兵としてはダメダメだ!」

 

「そうですよ!ハルート中尉!俺達だってやってみせます!」

 

「……わかった。ただしヤバいと直ぐに引けよ」

 

『了解!』

 

「流石漆黒の悪魔様だ。新米共は俺なんかより英雄様の言う事ばっかり聞きやがる。」

 

「その呼び名やめてください。あと拗ねてる暇あったら新米達の援護して下さい。」

 

「はいはい。」

 

全くなんでこんな人が隊長になんかしたんだ上は?

いくら人員不足でもあれは部下を殺すだけだ。

 

そう思いながらエルはマシンガンを連射して的確に敵戦闘機を撃墜していく。

この時点で既にエルの撃墜数は10を超えている

話しながら次々撃墜していくエルにナガセは唖然と眺める事しかできないでいた。

 

(私ももっと頑張らないと!ハルート中尉にもっと近づく為に!)

 

そして意気込んだナガセはヒートホークを持ち戦闘機を撃墜する。

 

「これじゃあ埒が明かない!俺は敵の本丸に行くぜ!新米共!スコアを稼がしてやる!俺に着いてこい!」

 

隊長は倒しても倒しても湧いてくる敵の戦闘機に嫌気がさしたのか新米達を引き連れ敵艦隊に突っ込む。

 

「やめろ!」

 

制止を聞かず敵戦闘機の母艦に攻撃しようとするが敵戦闘機がそれを見過ごす訳もなく敵戦闘機は決死の覚悟で隊長に神風特攻を仕掛ける。

 

「宇宙人共の好きにやらせてたまるかー!!!!」

 

完全に舐め腐っていた隊長はそれに反応する事は出来ず呆気なく撃墜されてしまう。

そしてまさかの隊長の死により新米達は完全に混乱し敵の攻撃を躱す事が出来ず3人共死んでしまう。

 

「そ、そんな……」

 

絶望するナガセ少尉

当然だろう。恐らく初めて目にする仲間の死に普段クールなナガセ少尉でもこれには動揺を隠せないようだ。

 

「少尉」

 

「は、はい」

 

「動けるか?」

 

「はい」

 

「なら母艦に戻るんだ」

 

「中尉は?」

 

「俺はここで敵を殲滅する」

 

そう言って俺は空になったザクマシンガンを捨てバックパックの横にマウントしてあった対艦ライフルを持つ。

 

「無茶です!そんなの!私も残って「ダメだ」何故です!」

 

「正直今の君では足手まといだ。」

 

下手な嘘はナガセ少尉には通じないと思った俺は正直に話すとしばらく黙ったあと俺にせめてもと俺にザクバズーカを渡し一言だけ言うと母艦に戻っていった。

 

「必ず生きて帰ってきて……か。」

 

さっきナガセ少尉に言われた言葉を復唱し思わずニヤケてしまった顔を叩き直してザクバズーカをさっきまで対艦ライフルがあった場所にマウントする。

そして俺は敵に突っ込む。

そめてもの弔いとして勝利の栄光をお前達に!

そう決意して

 

 

 

 

 

 

あれから10分程がたち俺は敵の戦闘機を全滅させた。

 

まず突っ込んでくる戦闘機のコックピット部分を蹴りで潰したりヒートホークで叩き割ったりと弾を使わない戦いをした。

途中危ない部分もあったがなんとか乗り切った俺はいよいよ大本命である敵の母艦へとモノアイを向ける

 

「ふっ……ジークジオン……てな」

 

そして俺は対艦ライフルを構え敵艦の燃料タンクであろう場所を狙撃すると見事的中し敵艦は炎上し爆発する

目標は別の艦へかわり俺は艦の死角に潜り込み下からライフルを乱射そして敵艦は爆発し沈黙。

そこからの俺はなんだか凄かったと自分でも思う。

なんだか敵の場所が目で見なくてもわかった人間の五感とはまた別の第六感とでも言うようなものを感じた。

敵艦を沈める度に敵の声が聞こえた。

俺への恐怖。憎しみ。そして家族や恋人、友人を想う思い等が聞こえた気がした。

だけど俺は止まらず敵艦を落としていった。

今になって思うとこれがジオン・ズム・ダイクンが唱えたニュータイプってやつだったのかな?

いや……そんな訳ないか……

そして俺が覚えているのはここまでだった。

その後俺が目を覚ますと俺は母艦の医務室のベットの上だった。

あの後の事をナガセ少尉達に聞くと、あの後ナガセ少尉達があの宙域に着いた時には敵艦隊は全滅し残っていたのは連邦軍の艦だったものの残骸とボロボロではあったが五体満足の俺の旧ザクだけだったそうだ。

ライフルとバズーカの残弾はゼロ、推進剤も無いに等しかったそうだ。

 

そしてこの戦いは後に漆黒の悪魔を語る上で欠かせない1ページとなるのだった。



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昇格

この小説は皆さんの誤字報告によって成り立っています。


U.C.0079.1.12

 

あの戦いから2日後俺が目が覚めたのはコロニーが地球に落ちた後だった。その間すごく夢を見ていたのは覚えてるだが、内容は金髪の少女と長い間話していたそしてその少女は見た目が幼なじみに似ていたが性格はあまり似ていなかったという事だけ覚えていて、その話の内容などは全く思い出せずにモヤモヤしているとそこにナガセ少尉が入ってきて俺が眠っている間の事を話してくれた。

あのあとコロニーはジャブローへは落ちず地球のシドニーという都市に落ちたという。

そして死者はあまりにも多く今なお二次災害により地球のあちこちで死者は増え続けているという。

 

「負けだな。」

 

俺はナガセ少尉しかいない部屋で呟く

 

「どういう事ですか?」

 

「俺達ジオンは負けだって意味だ」

 

「何故です?ジオンは今も連邦軍を」

 

「そういう事じゃないさ。俺達は自分達の住む場所であるコロニーを武器にして守るべき一般市民を殺したのさ。もうこの戦いに勝ったところで意味は無い」

 

「それなのに上は戦いを続けるんですね。」

 

「ザビ家……いやギレンは何がしたいんだろうな。」

 

「……」

 

完全に重たい空気になってしまった

 

「そういえばドズル中将から中尉の目が覚めたら通信するように言われていたんです」

 

「中将から?」

 

「はい。今繋ぎますね。」

 

そして少尉がパソコンをいじって少しすると目の前のモニターにドズル中将がデカデカと映る

心臓に悪い。

 

『久しぶりだな。ハルート中尉』

 

「はっ!お久しぶりです!ドズル中将」

 

ドズル中将が映る画面に向かって敬礼をする

 

「今回の作戦での活躍見事だったぞ。本国の兄さんも関心していた。」

 

「光栄であります。」

 

「それでだ、今回の活躍におおじて貴様を二階級特進少佐に任命する。それと同時にこれから新しく新設する小隊……と言っていいかわからんがとりあえず新しく創設する部隊の隊長に任命する。」

 

「部隊でありますか?」

 

「ああ。今回の作戦で寄せ集めではあったが貴様の隊は貴様とナガセ少尉以外は全滅だ。だが今はどこも人手が足りず新しい人員を確保出来ない。そこで貴様ら2人構成の特殊部隊だ。」

 

おいおいそれってどうなのよ。

 

「……我々2人だけでありますか」

 

「ああ。正直言って俺は貴様1人だけでも中隊1個分の戦力はあると思っている。だが貴様はあまり指揮が得意という訳でもないだろう?」

 

「……はい。」

 

「そこで貴様をよく知るナガセ少尉であれば貴様も動きやすかろう」

 

確かにあまり人が多くても俺では扱いきれない。だがナガセ少尉なら安心して背中を任せられる。

 

「お気遣い頂きありがとうございます」

 

「うむ。ああそれと貴様の機体に関してザクIIを専用にチューンした物をそっちに送った。もう納品してあると聞いているが?どうだ?」

 

「それでしたら昨日届きました。」

 

横からナガセ少尉が言う。

 

「そうかならよかった。ならばそのままルウムへ向かってくれ。」

 

それだけ言うとドズル中将は通信を切りまたナガセ少尉と2人の空間になった。

 

「とりあえず昇進おめでとうございます。少佐」

 

「ありがとう。」

 

昇進は普段なら嬉しいとは思うが今はあまり喜べないな。

隊長は仕方ないにしても新人3人を死なせてしまったのは俺の責任だしな。それに連邦軍を倒した時に直接頭に響く連邦軍人の断末魔、あんなのをまたルウムでも聞くのか。

 

「とりあえずそのザクを見に行こうか」

 

「はい。隊長!」

 

俺は今作れる限界の笑顔を見せて格納庫に向かった。

 

 

……………………

 

 

 

あの事件から2日が経過しやっと中尉が…いや今は少佐だったわね……

まぁ今はそんな事はいい。今は彼が目を覚ました事が何よりよかった。

少佐の顔はどこか暗く何かとても辛そうだった。

それに格納庫に新型のザクIIを見に行く時に見せてくれた笑顔もどこか無理をしていてそして直ぐに壊れてしまいそうだ。やはり私では彼の支えにはなれないのだろうか。

この間の戦いだってそうだ。少佐は私は足でまといだからと言って私を艦に戻し自分だけで敵部隊に突っ込んだ。結果的には彼は部隊を全滅させたけれど彼は数日意識を失い死んだように眠った。

私はそんな隊長の支えになりたい。

 

 

U.C.0079.1.14

 

あれから数日が立ち俺達はルウムに到着するとドズル中将の艦に合流した。

 

「よく来たな。ハルート少佐」

 

「お久しぶりです。中将」

 

「どうだ?新型のザクは?」

 

「はい。やはりザクIとは違いますね。ですがやはり私的にはもう少し機動性が欲しいですね。」

 

「ガハハハハ!そうか!確かに貴様にはあれでも役不足かもな!」

 

「いえ。ワガママをお許し下さい。」

 

「なに!気にするな。それと今回も頼んだぞ!」

 

「ハッ!」

 

話はそこで終わり俺は自分の艦へと戻る途中にシン・マツナガとすれ違い少し話をして別れた。

 

U.C.0079.1.15

 

格納庫

 

『ラーズグリーズ隊出撃準備をお願いします』

 

「よし。少尉行くぞ。」

 

「はい。」

 

少尉はかつての俺の旧ザクをに乗る。そして少尉と同様に左肩にはヴァルキリーの一柱ラーズグリーズが描かれ脚部とバックパックのスラスターを多数追加、強化された漆黒のザクIIに俺は乗り込む。

 

「MS-06FR ハルート・エル少佐!出るぞ!」




パーソナルマーク募集
FR型…ハルート少佐専用にF型を高機動に改造した仕様


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