RIDER TIME ZI-O Virtual YouTuber (Million01)
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時の王者 2434


自分が書きたかっただけシリーズ(
Vの者、そんなに見れてないけど許して

ストーリーそんなに考えてないけど書きながら考えます



───この世界は何かがおかしい

 

 

 

 

 

自分の住む世界も学園も……。

 

───そもそも自分が通っていたのはこの学園だっただろうか?

 

───ガガッ!と一瞬、自分の見えている世界にノイズが走る。

 

「っ!」

 

突如の出来事に自分は右手で頭を抑えた。

 

「今のは……」

 

「───常磐!早く教室に入りなさい!HRが始まるわよ!!」

 

その立ちくらみも束の間、背後にいた髪の長い女性教師に怒鳴られる。

その怒声にハッと我に返り生徒は再び歩き始めた。

 

 

 

普通の高校生・常磐 ソウゴ。彼は王様になりたいという夢を持っていた。

そして彼の通うにじさんじ学園に謎の怪物達が襲うことをまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

「常磐ー。全国模試の結果、どうだった?」

 

学校の帰り。ソウゴは自転車を手で挽いて階段を降りていると後ろから降りてくる生徒に声をかけられた。

 

「20位!」

 

ソウゴと呼ばれた少年は自慢するかのようにニヤリ、と笑う。

 

「ほんと、常磐はすげぇよな。なんでライバー(・・・・)にはならないんだ?」

 

「え?だって俺、王様になるし」

 

男子生徒に聞かれたソウゴはキョトン、と首を傾げてそう答えた。

 

「はぁ。頭も良いし、ちょっと頭のネジが一つぐらい抜けてる奴ってライバーの適性があるらしいのに……。お前、一応ライバーの適性はあるんだろ?」

 

「うん」

 

「なら、なんでならないんだ?」

 

「え、だってライバーになると王様になれないじゃん」

 

ハッキリと迷いない言葉でそう言い切った。

 

「お前、リゼ皇女の前で同じこと言えんの?」

 

「リゼはまた違うじゃん。王位継承者の資格を元々、持ってるし……それに俺は王様一筋だから!」

 

はぁ、と再び男子生徒達がため息を着くとソウゴから離れていった。

 

ライバー……それはにじさんじ学園に所属する関係者の一部がそう呼ばれている。ライバーは特殊な力を使う事ができるらしい。

先程の男子生徒が言ったとおり頭が良かったり、一般人からしたら「変人」と思われている者が適性が高い(諸説あり)。

 

 

 

 

 

 

「♪〜」

 

そしてソウゴは鼻歌を歌いながら自転車を漕ぎ始める。だが、ソウゴは気付かなかった。

ソウゴの動きを監視している巨大なモノに。それは赤く、まるでバイクを巨大化させたかのような形にも見える。

 

「───うおっ!?」

 

ソウゴがその存在に気付く。驚いて思わず急いで漕ぎ始めた。

 

だが、巨大なモノもソウゴを追いかけるように加速する。

 

『───ソウゴ、なぜ逃げる!?』

 

赤いマシーンから聞こえる男性の声。

 

「え、誰!?」

 

一瞬、何かに違和感を覚えたがそんな事を気にしている暇はなかった。

 

《───タイムマジーン!》

 

そのマシーンはソウゴの行く手を阻むとそのまま変形し始めた。

7メートルはあるかと思われる赤い人形のマシーンはそのままソウゴの方へと近付いた。

 

そしてマシーンの右手が段々とソウゴへと迫る直後、ドォンッ!という音と共にマシーンが横へと吹き飛んだ。

 

「───え?」

 

思わずソウゴは素っ頓狂な声をあげた。7メートルもある巨大なマシーンがまるで見えない何かに衝突したかのように横へと吹き飛んだのだ

 

「───起立!気を付け!こんにちは、月ノ美兎です」

 

そしてマシーンが吹き飛ばされた真逆の方から元気の良い声がソウゴの耳に届く。

 

「はーい。ソウゴさん、大丈夫ですか?」

 

「アンタは……確かライバーのトップの……」

 

「はい、月ノ美兎です」

 

ニコリ、とソウゴの目の前までやってきてソウゴに笑顔を見せる。

 

「うわぁ……美兎ちゃんの言ったとおりじゃん。こういう時は勘が良いんだから」

 

そしてもう一人、黒く長い髪の月ノ美兎は別の人物、白く長い髪を束ねた女子生徒、樋口 楓がやってくる。

 

 

 

 

 

『───新手のタイムジャッカーか?』

 

赤いマシーンが崩した体制を直し、こちらに向かい歩きながら二人の女子生徒を見た。

 

「そういう貴方は何者ですか?新しいVtuberですか?」

 

「いや、流石にこの姿でVtuberちょっと難しいんじゃない?」

 

赤いマシーンを前に二人は物怖じげをせずにやり取りしていく。

 

「まぁ、ちょっとここで戦うのもアレですし。ここは引きましょう。でろーんさん、お願いします」

 

「はいはい」

 

愛称・でろーんこと樋口 楓はそう言うと目を閉じて左手をスッとあげた。

 

「?」

 

『なにっ!?』

 

直後、ソウゴ達の周りに異変が起きる。月ノ美兎と楓、ソウゴの三人の周りを渦巻くように紅葉が取り巻き始めた。

直後、三人の姿が見えなくなる程の紅葉の渦が出来上がるとフッ、と紅葉が地に落ち三人の姿が消えていた。

 

『───なっ!?』

 

赤いマシーンの搭乗者が目の前の出来事に目を凝らした。彼の名は明光院 ゲイツ。

 

『まるでウォズのマフラーみたいだな……』

 

「見事な芸当だね」

 

「もう!二人してそんな事言ってる場合じゃないでしょう!」

 

ゲイツの声に二人の男女が姿を現す。少し変わった服装に黒いマフラーを首に巻き、手には何かの書物を持った青年。

そしてもう一人は純白なワンピースを着ている少女。

 

『そうだな。だが、どうする?ウォズの作戦が失敗したぞ』

 

「いや、失敗はしてないよ。これでいい。きっかけが重要さ」

 

「え、失敗でしょ?だってウォズ、アレで記憶が戻るって……」

 

「それは言わないでくれるかな、ツクヨミ君。確かに失敗だけどそれでもいい。我が魔王とゲイツ君の邂逅……二人が最初に出会った時の既視感を覚えさせられてるかもしれない」

 

「はぁ、そうは言っても……」

 

「安心してくれ、次は私がやろう……我が魔王の為にも」

 

ニヤリ、とウォズと呼ばれた青年がパンと手に持っていた「逢魔降臨歴」と記された本を閉じた

 

 

 

 

 

「あれ、ここは?」

 

ソウゴの意識が覚醒し先程までいた場所とは明らかに違う場所に戸惑いを見せた。

 

先程まで外にいたはずのソウゴが今いる場所は学園の教室。そして生徒用の机にいつの間にか座っていたのだ。

 

「はい。では話を始めていきましょう。起立!気を付け!こんにちは、月ノ美兎です!」

 

「でろーん!でろーん!こんでろーん!どうも、樋口 楓です!」

 

そして教壇の上に立っている女子生徒が二人。先程、ソウゴを助けた月ノ美兎と樋口 楓だ。

 

「えっと、何これ……?」

 

流石に不可解な出来事の連続にソウゴの頭も理解が追いついてないのだ。赤い巨大なマシーンに、そのマシーンを吹き飛ばす月ノ美兎、そしていつの間にか教室へと移動させられた魔法のような出来事。

 

「あ、えーっとですね。一から説明しますと……ソウゴさん。貴方、ライバーになりませんか?」

 

「いや、それ説明になってないじゃん」

 

月ノ美兎のスカウトに即ツッコミを入れるソウゴ

 

「あ、すみません。間違えました。ソウゴさん、貴方にはライバーになれる素質があるんです。貴方もこの学園ではある意味、 有 名 (変わり種)なんですよ」

 

月ノ美兎の言葉にイマイチ、ピンとこないソウゴ。それでも月ノ美兎は話を続けた。

 

「それでですね。本日、貴方をライバーとしてスカウトするために貴方に会いに来たんですね。それがです。来てみれば赤いロボットに襲われているのを目撃したんです」

 

月ノ美兎はクスクスと笑いながらそう言った。

 

「そいでやねんけど、ソウゴはライバーになるつもりないん?もしかしたらだけどあのロボットを倒せるようになるで?」

 

そして楓が身を乗り出すかのようにソウゴに距離を詰める。だが……

 

「俺はライバーにならないよ」

 

キッパリ、とそう断った。その言葉に二人は目を丸くする。

 

「え、理由とかございます?」

 

「うん。だって俺、王様になるから」

 

ソウゴはニヤリと自慢げに笑顔を二人に見せた。ソウゴの発言に二人はポカン、と口を開ける。

 

「えっと、その……ライバーになって王様になるというのは……?」

 

「う〜ん……そういう道もあるかもしれないけどなんか違う気がするんだよね」

 

「そ、そうですか……」

 

「じゃあ、俺、帰っていい?」

 

戸惑う月ノ美兎を気にせずソウゴは軽い口調でそう言った。月ノ美兎は仕方なく頷き教室を出ていくソウゴを見守った。

 

「はぁ。まさか断られるなんて……ってでろーんさん、なんで笑ってるんですか!?」

 

「い、いや……あそこまでキッパリと王様になるとかいう生徒、始めて見たから、つい」

 

「そうですけど……アレはリゼさんとはまた別の感じですかね」

 

「リゼちゃんはちゃんとした王家の子やけど、ソウゴの場合はただの庶民。しかもあんなに自信満々に王様になるとかいう奴そうそういないで」

 

そう言って楓は目を細め、ニヤリと笑う。

 

「ちょっと、でろーんさん。顔が怖いですよ」

 

「───あれは凄いライバーになれるで」

 

その瞳は紅く妖しく輝いていた。

 

 

そして今日はそれ以降、赤いロボットはソウゴを襲ってこなかった。

 

 

 

 

だが、変わった事があったのはその翌日だった。

 

「えっと、なんで俺の部屋の前にいるの。リゼ?」

 

「えっと、これには深い事情があってですね……」

 

長く白い髪の女子生徒。凛とした顔立ち青いメッシュが入っているのが特徴的だ。それに頭にヒヨコを乗せている。

そして一番有名なのはヘルエスタ王国の第二皇女。そして文武両道、人望も厚いと聞く。

 

それが男子寮のソウゴの部屋の前で待っていたのだ。

 

「ちょっと、委員長に頼まれまして……私って委員長に頼まれたら断れないんですよね。それで、ソウゴさんは赤いロボットに襲われたらしくて……また襲ってきたら助けてあげてほしいって……」

 

「え、それなら委員長でもいいじゃん?」

 

「委員長も忙しい身ですし……」

 

「ふ〜ん、けどリゼは皇女なんでしょ?俺なんかの護衛なんてしても大丈夫?」

 

「こ、これもライバーの仕事の内ですし……」

 

そう言ってリゼは視線を泳がした。

 

「ふ〜ん……じゃあ、行こっか」

 

そう言ってソウゴは学校へと向かう。リゼが護衛につくことに何も気にしてないようだった。

 

 

 

学校に登校すると少しだけ話題にあがった。ソウゴが皇女を護衛させてるということで騒動が起きているのだ。

 

「リゼー!」

 

そして学園の帰り、校門の方でリゼを呼ぶ声が響く。そこにいるのは二人。

一人は赤い髪が特徴なボーイッシュ風な女子生徒。そしてもう一人は頭に犬の耳が生えている少女だ

 

「アンジュ、とこちゃん。どうしたの?」

 

この二人はリゼとよく一緒に見かけられることで有名だ。ボーイッシュの少女。アンジュ・カトリーナ。自称・錬金術師だがそれが本当かどうかはわからないらしい。

そしてもう一人の犬の耳が生えた少女。戌亥 とこ。学園の噂によるとケルベロスの獣人らしい。

 

「リゼはんが新しい仕事を始めたらしいからどんなんかなって思って二人で見に来たの」

 

そう言って戌亥はリゼの背後にいるソウゴの方へと顔を向けた。

 

「アレでしょ?ライバーの素質があるっていう。ちょっと変わった生徒」

 

「あ、知ってる。王様になるのが夢ってちょっと変わってるよね」

 

そう言って三人が談笑し始めた。ソウゴは楽しそうに話をしているリゼ達を少し遠くで眺めていた。

 

「随分とご機嫌だね。我が魔王」

 

「───うわっ!?だ、誰!?」

 

ソウゴがいつの間にかいた青年・ウォズの存在に気付き体を飛び跳ねあがらせた。

ソウゴはちらりとリゼ達を見た。だが、こちらには気付かず談笑しているようだ。

 

「私はウォズ。貴方の臣下であり、預言者だ。貴方には王様になってもらわねばならない。『最高最善の魔王』に」

 

ウォズがそう言って懐から何かを出した。それはストップウォッチのようなものにも見える。

 

「これは……」

 

「これは貴方が王様になるために必要なものだ」

 

ニヤリ、とウォズが笑い。それをソウゴに手渡した。

 

ソウゴがウォズからそれを受け取った直後だった。

 

「───きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「───!?」

 

校門の方から悲鳴が聞こえたのだ。ソウゴは無意識にそちらへと視線を写す。

 

そこにいたのは複数の生徒達にそれを襲っている

動くミイラだった。

 

「あれはクズヤミー……丁度いい。我が魔王、今日が貴方を王様に近付ける第一歩の日だ」

 

ウォズがそう言って献上するように謎の機械を取り出した。

 

「これは……」

 

「───使い方はご存知のはず……」

 

ウォズの言葉を聞いて無意識にそれを掴む

 

「うん。前にもこれを使った気がする」

 

掴んだ際に妙にしっくりとする感覚をどこか覚えているソウゴはそのまま校門の方へと向かった。

 

「リゼ!」

 

「ソウゴさん。逃げてください!私達がこの怪物の相手をしますから」

 

そう言ってリゼは何かの取っ手を取り出すと、取っ手を持つを手を力む。リゼの持っている取っ手の先から青い光が伸び、まるで剣のようになる。

 

「はぁ!!」

 

ブォンッ!と光の剣をクズヤミーに振るう。クズヤミーは体を跳ね除け地に伏せた。

 

「っ!」

 

だが、クズヤミーはそのまま起き上がりリゼの方に敵意をむき出し始めた。

 

「リゼ!」

 

だが、リゼを助けるかのように横槍が入る。アンジュがクズヤミーを吹き飛ばしたのだ

 

「ちょっと、面倒臭い怪物だね。これ……」

 

そう言ってアンジュはクズヤミーを睨みつけた。

 

「とりあえずリゼはんはソウゴはんを安全な場所に誘導させないと」

 

「そうですね。ソウゴさんと……えっと、そちらの方もこちらに!」

 

そう言ってリゼがソウゴとウォズを誘導するように走り始めた。だが、リゼ達の行方を阻む者がいた

 

「また怪物!?」

 

茶色い鎧を模したかのような体を持ち、頭部にはある昆虫を示したかのように大きな角を持つ怪物だ

 

「お二人共、下がっててください!」

 

そう言ってリゼが再び光の剣を取り出して構えた。

 

「流石にこれはマズいね……」

 

ウォズがそう言ってニヤリと笑う。急に襲ってきた謎の怪物。それと戦うリゼ達。今、新たに怪物が現れたら他に戦う者がここにいない。

 

「っ!」

 

リゼが目の前の怪物と必死に戦っているのをソウゴ達の目に入る。

 

「ねぇ、俺がこれを使えばこの状況をなんとかできる?」

 

ソウゴは決意したかのように先程、ウォズに渡されたストップウォッチを取り出した。

 

「ええ。貴方の力は史上最強。過去も未来も思うがまま」

 

「わかった。俺は王様になる。世界を全部良くしたい。みんなを幸せにしたい……そう思うなら王様にでもならないと俺の夢は叶わない!」

 

《ジクウドライバー!》

 

ソウゴがそう叫ぶとさらに先程、渡された機械を腰に巻いた。

 

そしてソウゴがストップウォッチのベゼルをスライドさせ、起動スイッチを押し込んだ。

 

《ジオウ!》

 

ストップウォッチから仮面の戦士の名が告げられる。彼方より受け継がれる英雄(ヒーロー)の通称。そしてそれぞれの呼び名。

 

「!覚えてる。俺は最低最悪の魔王にならないように最高最善の魔王になるようにしてたことも……戦兎や永夢。仮面ライダー達にライドウォッチも受け取ったことも!」

 

そしてそれと同時にソウゴの頭の中に正しい記憶が蘇る。

 

そしてソウゴはジオウという名の戦士の力を持つストップウォッチ・ジオウライドウォッチをドライバーの右側のD'9スロットに装填しドライバーの上部のライドオンリューザーを押し込んだ

 

「───変身!」

 

そしてソウゴの叫び声と共にドライバーのメインユニットであるジクウサーキュラーを反回転させる。

 

《ライダータイム!》

 

ベルトから発せられる音声と共に近くで戦っていたリゼも思わずそちらへと視線を向けた。

 

理論具現化装置ジクウマトリクスによって実体化されたライドウォッチのデータを装着される。

 

頭には時計の短針と長針に模したかのようなV字型のアンテナにマゼンタ色の「ライダー」の文字の複眼が付いた仮面。体は近未来を沸騰させるような黒と白、そしてマゼンタの三色で魅せられた鎧を身に纏っている。

 

「───祝え!」

 

ウォズがニヤリと笑い高らかに叫んだ 。

 

「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ。まさに再誕の瞬間である!」

 

まるで台本を読むかのように流暢に叫び、ジオウを祝う。

 

「───これなら行ける気がする!」

 

そう言ってジオウは怪物に向かって走り出すとそのまま拳を突き出した。

 

『っ!』

 

怪物はそのままよろめき体制を崩す。

 

「リゼ、大丈夫!?」

 

「ソウゴさん。それは……」

 

「あー、えっと……後で説明するよ!」

 

そう言ってジオウは怪物の拳を軽い身のこなしで避けるとすぐに拳を食らわせた。

 

「これで決めるよ!」

 

そう言ってソウゴがジオウライドウォッチのスイッチを押してライドオンリューザーを押し込みそしてジクウサーキュラーを回す

 

《フィニッシュタイム!》

 

「はい!」

 

リゼは無意識に返事をした。光の剣を正面に構え、白い翼を大きく広げた

 

 

「はぁッ!!」

 

ジオウが大きく跳躍する。地を蹴り、宙を舞う

同じくリゼも空へと飛んだ。ジオウと平行するように横に並んだ。

 

《タイムブレーク!》

 

「ヘルエスタ・セイバァァ!」

 

怪物の周囲に出現する複数の『キック』と言う文字が一つずつジオウの右足へと収束するし、それと同じくリゼの光る剣『ヘルエスタ・セイバー』がさらに輝いた。

 

そして二人は怪物へと急降下する。顔の『ライダー』と足裏の『キック』が輝き、『ライダーキック』と重なった。

 

刹那、ジオウの蹴りとリゼの剣戟が怪物の体を貫いた。

 

 

そして着地する二人の背後で怪物が爆散する。

 

「やった……」

 

そう言ってジオウはドライバーからライドウォッチを抜いて変身を解除させた。

 

「ソウゴさん、さっきのお姿は……」

 

「え!?あ、えっと……」

 

リゼの言葉にソウゴが言い訳を考えようと必死に目を泳がせる。

 

「ソウゴさんのライバーの能力ですね!?」

 

だが、その必要な事はなかったリゼにとっては『仮面ライダー』という特殊の力も『ライバーの能力』となんら変わりないのだ

 

「あ、うん。まぁ、そんなところ!」

 

アハハハ、と乾いた笑みをあげながらウォズの方へと振り向いた。だが、その人影はもうなかった

 

「あれ?リゼ、ウォズを知らない?ほら、さっきまで俺と一緒にいた人」 

 

ソウゴに言われリゼもウォズの存在を思い出しキョロキョロと見渡した

 

「そういえば先程の人、見当たりませんね。もう避難しちゃったかもしれません」

 

「そっか……じゃあ、俺は帰ろうかな……。リゼはあの二人の所に行っておいでよ。俺は一人でちゃんと帰れるから」

 

「ですが……」

 

「いいから!いいから!」

 

ソウゴはそう言ってリゼの肩を掴むとくるりと反対を向かせ背中を押した。

 

「それじゃあ、気を付けてね!!」

 

そう言ってソウゴは手を振りながらこの場を走り去っていく。その様子をリゼは仕方なく見送り小さく手を振った。

 

 

 

その翌日、ソウゴは前触れもなく唐突にライバーになると宣言しリゼ達を騒がせたのだ。

 

 

 

 





ン我が魔王がVの者だったら。挨拶が「おはジオ〜」とかにいってそう(

ちなみににじさんじのライバーの特殊能力は基本、WIXOSSから
男性のVの能力も考えておかないとな……

ちなみにジオウ組はさんばかと相性が良さそうかなと思った。設定的に

ソウゴとリゼは王様、皇女繋がり
ゲイツとアンジュはただ赤い(テキトー)
ウォズと戌亥はウォズは忠義を尽くすから犬みたいなので(なお夏映画)

後はどちらも三人組の呼び方がジオウトリニティ(・・・・・)さん(・・)ばかとどちらも数字が入ってるので




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煌めくライダー

朝六時ということは一部のVtuberのファンはあのドラゴンのニュースを決めてる時間(
今回はディケイドとホロライブ回(
他の平成ライダー達も出す予定ですので暫しお待ちを(



「これが魔王が創り変えた新たな世界か……?」

 

世界の破壊者という物騒な呼び名を持つ男は高い高層ビルの上で世界を見下ろした。

 

「…………」

 

だが、世界を見下ろす破壊者は黙って見つめた。そして最初の違和感に気付いたのは感覚だった。

青空に一点だけ存在する太陽。髪を靡かせる風。透き通った空気。建ち並ぶ建物。道を歩く人達。

 

どこからどう見ても普通だ。だが、普通すぎて少し怖いくらいだった。

破壊者の勘がそう感じてる。

 

「気のせいか?」

 

そう言って破壊者は視線を落として首に下げている二眼レフカメラに触れた。

 

「あ、いました!士さん。何をやってるんですか!?」

 

「ん?」

 

背後から声が聞こえ破壊者は思わず振り返った。青い髪を大きめのリボンで結んでいる眼鏡をかけた少女が破壊者の目の前までやってきた。

 

「ほら、早く入らないと遅刻扱いになりますよ!」

 

そう言って破壊者の腕を掴むとそのまま何処かへと連れて行く。

 

「…………」

 

この状況を見て破壊者は何かを察したかのようにうんざりとした表情を顕にする。

 

 

破壊者が連れてこられたのは先程の高層ビルの中だ。

 

「ったく、あの魔王。失敗したな?」

 

「?今、何か言いました?」

 

ボソリと呟く破壊者に少女は思わず聞き返した

 

「気にするな。ただの独り言だ」

 

そう言って壁にもたれかかり、事務所の様子を見渡した

 

「みんな、おはよー!」

 

事務所の中を見渡せばどれも少女、少女、少女……

 

「なるほどな、アイドルグループか」

 

破壊者は察したかのようにそう言った。

 

「あれ?知らなかったんですか?」

 

「どうやら、そうらしいな」

 

「……え?」

 

眼鏡をかけた少女は謎の返答に思わず戸惑う

 

「えー、今日も元気にやっていこうね」

 

そんな中、事務所の中心人物であるとある少女が元気に声をかけた

少女の名はときのそら。明るく笑顔が絶えない元気な少女だ

 

「えっと、それじゃあ。この事務所に新しく入って来た人を紹介します!」

 

ときのそらは元気よく喋ると破壊者へと視線を向けた

 

「………………」

 

他の少女達も破壊者へと視線が集まる。

 

「仕方ない」

 

はぁ、とため息をつきながら視線を落とした。

 

「どうやら俺はここでお前達のサポートをすることになったらしい門矢 士だ。覚えておけ」

 

そう言ってパシャリと少女達に向けてカメラのシャッターを切った。

門矢 士と名乗った世界の破壊者は新たな世界で何を写す?

 

 

 

門矢 士の第一印象的は最悪だった。いきなり初対面でカメラを撮るなり、上から目線の物言いということもあってか半分の少女達には牙を向かれたのだ。

 

「アイドルを目指してるんじゃないのか?」

 

ほとんどの少女達がゲームをしてるのを見て思わずそう毒づいた。

 

「えっと、まぁ……そこは色々とあるんです」

 

アハハ、と愛想笑いをして誤魔化す眼鏡をかけた少女・友人Aは目を泳がした。

だが、そんな中やはり目立つのはときのそらだ。皆がゲームをする中、彼女は歌を聞いているのだ。

 

「ある意味、アイツが一番アイドルらしいな」

 

「♪〜」

 

ヘッドホンで音楽を聴きながらリズムに乗りながら鼻歌を歌うそら。

 

「そうですね。そらは良い子ですよ。あ、そういえば士さんはお昼はどうするんですか?」

 

「お昼?」

 

「はい。新入社員の初日は色々あって弁当が頼めないんですが……」

 

「…………」

 

「士さん?」

 

「よし、俺は少し外の空気を吸ってくる。昼までには戻ってくる。何かあれば呼んでくれ」

 

友人Aは察したかのように士を見たが逃げるように事務所の外へと出ていった。

 

 

 

 

 

「───で、なんでお前らが付いてきているんだ?」

 

士は自分の後を付いてきた二人を睨む。一人は青と白を基調としたメイド服を来たツインテールの少女・湊 あくあ。そしてもう一人は頭に猫耳が生えている紫色の髪の少女・猫又 おかゆだった。

 

「え、僕はただのお昼足りないから買いに来ただけだよ?

 

「私はえーちゃんに言われて貴方に付いていったの。だってスマホ持ってないでしょ?」

 

その言葉に士はピクリと体を硬直させた。

 

「それにアンタみたいなやつってサボるかもしれないでしょ?」

 

その言葉に士は思わず顔を引き攣らせてしまう。なぜ、バレたと思わず顔に出してしまう。

 

「まぁ、いい。ほら、行くぞ」

 

士は逃げるように走る速度を上げた。そんな士を見て二人はやれやれといった感じで付いていく。

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

士達はコンビニで買い物を済ませ。再び外へ出る。

 

「おかゆ。お前、本当にそれ全部食べるのか?」

 

士は横目でおかゆの持っているレジ袋を見つめた。中くらいのサイズのレジ袋にぎっしり入ったおにぎり達。思わず士も目を疑った。

 

「うん。そうだよ?」

 

だが、当の本人はそれがどうかしたの?と言うかのように気にしていないのだ。

 

「そんなに食べたら太るぞ?」

 

直後!士の左側から強烈な肘打ちを食らう。

 

「なんだ、痛いじゃないか」

 

若干、体をくの字に曲げながら肘打ちをしてきたあくあに問いかけた。

 

「貴方、女の子になんて事言うの!?」

 

「事実を言ったまでだ。それに減るものもないだろう?」

 

またもや強烈な肘打ち。だが、今度はヒョイとそれを躱した。

 

「おかゆもムカッとしないの!?」

 

「別に僕はそんなしないかな。僕、獣人だからあんま太らないし」

 

「獣人?」

 

士がおかゆが放った単語を聞き返した。その言葉におかゆは首を傾げた。

 

「あれ、知らなかったの?僕やころさんにブブキちゃん、みおちゃん、ぺこらちゃん、わためちゃんは獣人だよ?」 

 

「獣人なんているのか……?」

 

「何を言ってるの?この世界じゃ珍しい事もないでしょう?」

 

当たり前かのようにそう告げてくる。それがどうやらこの世界の常識らしいと士は理解する。

 

「そうだったな。少し頭が寝ぼけていたようだ」

 

「しっかりしてよね」

 

はぁ、とため息をつきながら士が再び歩き始めた。この世界はどうやら思った以上に厄介らしいと士は認識した。

 

そんな中、一瞬で街の雰囲気がガラリと変わる。周りの人達がまるで何かに怯えるかのように士達が向かう反対方向に走っていく。

 

「え、何!?」

 

「…………」

 

「何あれ……?」

 

あくあが逃げ惑う人々を見て周囲を見渡した。そんな中、士とおかゆは自分達が向かう先を凝視していた。

 

黒い霧が士達の方へと向かってくるのだ。

 

「───逃げるぞっ!走れ!!」

 

士が叫ぶように二人の手を取ると引き連れるように後方へと走る。黒い霧も士達の方へと段々と近づいてくる。

 

───走る。走る。走る。

 

三人はひたすらに走った。黒い霧から逃れるように走る。だが、その三人を止めるかのように目の前に何かが降りてきた。

 

「お前達は……!」

 

士が降りてきた存在を睨みつけた。

 

「恐竜……?」

 

「プテラノドン……?」

 

あくあとおかゆは降りてきた存在を見て目を丸くする。紫色の体が特徴で腕の翼で飛行していた怪物が二体。

 

「なるほどな、さっきの黒い霧はお前達の仕業か」

 

「───全てを無に還す!」

 

そう言って片方の怪物が翼を広げる。直後、紫色のエネルギー弾を士達に飛ばしてきた

 

「紫のメダルの特性か。あくあ、おかゆ───」

 

「たぁッ!」

 

士の言葉を遮るようにあくあの雄叫びが耳に届く。バァン、とどこからか取り出した。剣の側面でバッティングするかのように打ち返した。

 

「───は?」

 

思わず、士が呆然とした声を出した。目の前にあくあが割り込みエネルギー弾を弾き返したのだ。

 

「士、おかゆ。大丈夫!?」

 

あくあがそう叫んでこちらを振り返った。

 

「僕達は大丈夫だよ」

 

あくあの言葉におかゆはそう答えた。

 

「二人は逃げて!私はコイツの相手をするから!」

 

「おい、そんなこと言ってないでお前が逃げろ!」

 

あくあの言葉に士がそう叫ぶ。

 

「そうだよ、あくあちゃん」

 

おかゆも士の言葉に同意するかのように呼び止めた。

 

「ここは僕とあくあちゃんの二人が食い止めるべきでしょ?」

 

「はぁ?」

 

だが、士が思っていた言葉を裏切るようにおかゆもあくあの隣に立つ。

 

「いいの?」

 

「いいも何も僕達、仲間でしょ?」

 

「そうだね」

 

そう言ってあくあがビーム状の刃が付いた剣を構えるとそう答える。

 

「いくよ!」

 

そう言っておかゆが跳躍した。普通の人間ならありえない脚力でその場で飛び、怪物である雄のプテラノドンヤミーに飛びかかった。

獣人である彼女だから発揮できる力は怪物に劣らない力。猫の鉤爪でそのまま怪物を怯ませていく。

 

「はぁッ!!」

 

そしてあくあの方ではプテラノドンヤミーの雌の怪物と戦っていた。今のところはそんなに苦戦を強いられている様子もなくあくあの剣技で圧倒しているようにも見えた。

 

「俺の出番はないかもな」

 

戦う二人を見は士は懐に入っているソレ(・・)を触る。世界の破壊者として戦った士にとっては安心感とぎこち無さ芽生えてくる。『世界の破壊者』として忌み嫌われていた士にとって巡る世界ではどれも戦いに巻き込まれてばかり、だが今回は彼女達という存在によって戦わなくていいという可能性が示されている。それは士はこの世界にとって必要のない世界でもあるということだ。

 

「さてと……」

 

士はそう言って彼女達の戦いを観察した。それなりに手慣れた武器の振るい方に戦闘には慣れているのだろう。今のところは加勢しなくとも良さそうだろうと検討していた。

増援が来なければ話だ。何らかの方法で敵が増えるということがなければ彼女達の力でこの場を凌げるだろう。

 

「増援か……」

 

士が思った矢先だ。彼女達が戦う少し奥の方で士にとって見慣れたものが現れた。彼がよく世界や時間を行き来するのに使用する灰色のオーロラカーテン。そのカーテンの奥からさらに怪物が姿を現したのだ。

 

「また恐竜系か……」

 

そして士は現れた怪物の姿を見てため息をついた紫色の体に角が生えた人形の怪物。それは大昔に存在していたトリケラトプスを思わせる造形であった。

 

『───!』

 

怪物が人とは思えない雄叫びをあげるとそのままあくあの方へと突進した。

 

「ええっ!?」

 

あくあは思わず目を丸くして二度見した。

 

「なんか増えたんだけど!?」

 

あくあはそう言って跳躍して新手の怪物トライセラトップス・ドーパントの突進をなんなく躱す。だが、そこであくあはあることに気付いた。

 

「ッ!!」

 

「やばっ!!」

 

跳んだあくあを落すかのように雌のプテラノドンヤミーがエネルギー弾を放った。

 

「くっ!!」

 

なんとか剣の側面でエネルギー弾を防ぐ。だが、衝撃を受け流す場所もなくそのまま後方へと吹き飛ばされる。

 

「あくあちゃん!!」

 

おかゆがあくあの援護に向かおうと駆けつける。だが、そうはさせないように雄のプテラノドンヤミーとトライセラトップス・ドーパントが割り込んだ。

 

「っ!!」

 

トライセラトップス・ドーパントが棍棒で薙ぎ払う。おかゆはその攻撃を見切っているかのようにバックステップで避けた。

だが、そこにさらに二体のプテラノドンヤミーがエネルギー弾で追撃した。

 

「くっっ!!」

 

流石に三対一では分が悪く。もろに攻撃をくらい吹き飛ぶおかゆ。

 

「なんなのこいつら!!」

 

あくあが三体の怪物を睨みつけながら呟き、ゆっくりと立ち上がる。

 

「わからないけど、まだ僕達をやる気らしいよ」

 

おかゆもあくあを見て安心するように立ち上がると構えた。

 

「士は早く逃げなさい!さもないと死ぬわよ!」

 

「そいつはどうかな?」

 

あくあの言葉を聞いて士は三体の怪物の前に立ちはだかりニヤリと笑う。

 

そして士は懐からソレ(・・)を取り出した。マゼンタ色で塗装された何かしらの機械。それは彼が戦士として戦うのに必要な物の一つであり、彼の力の源とも言える代物だ。

 

「お前達がどうしてここにいるかは知らないが俺はコイツらのサポーターなんでな。コイツらにこれ以上怪我されては困るんだ」

 

そう言って機械を腰に当てるとそれはサイドから帯が出現しベルトへとなった。そして士はマゼンタ色のバックルの左右にある『サイドハンドル』を引きバックル部分が回転させる。

 

「何をするつもり?」

 

戸惑うおかゆの言葉を無視して慣れた手付きで左腰にぶら下げていた小冊子のようなカードを保管する『ライドブッカー』を開くと一枚のカードを取り出した。

 

「カード?」

 

そのカードには仮面の戦士の顔と名前が写っていた。

 

「───変身!」

 

そして一枚のカードを怪物達に見せつけるように前に出すとピシッ、とカードを裏返す。そしてそのままバックルへと装填した

 

《 KAMEN RIDE 》

 

ベルトから聞こえる音声を聞いてそのまま士はサイドハンドルを押した

 

《 DECADE 》

 

その音声と共にベルトから複数枚のカードとそれぞれ違った紋章が現れる。そして更には紋章から人の形が出現し、士に重なるとライダースーツが形成される。そしてベルトから出現した複数枚のカードとそのまま彼の頭部へと突き刺さり、彼のスーツをマゼンタ色に染まった。

 

「ええぇッっ!!?」

 

「カードが刺さった!?」

 

あくあとおかゆが驚きの声をあげた。士の姿が変わり二人の視線は士に釘付けになっている。

 

「…………」

 

士こと仮面ライダーディケイドがライドブッカーをガンモードに変形させてそのまま怪人達に撃った。ライドブッカーから放たれたエネルギー弾は全て怪物達へと吸い込まれるようにめり込んだ。

 

「くっ!!」

 

ディケイドは仰け反る怪人達に迫りソードモードへと変えたライドブッカーをそのまま斬り下ろした。

 

「さて、手始めに……」

 

そう言ってディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。そこには左右が丁度、色が緑と紫に別れた仮面の戦士が写っていた。

 

「コイツだ」

 

ディケイドがそう言ってベルトからディケイドのカードを出すとそのまま新たなカードをベルトに装填させた。

 

《 KAMEN RIDE DOUBLE 》

 

《 CYCLONE ! JOKER ! 》

 

新たなカードが読み込まれ、ディケイドの姿が変わっていく。それは真ん中を境に左側が紫色に右側が緑色の仮面の戦士『仮面ライダーダブル』へと姿を変えたのだ。

 

「姿が変わった!?」

 

戸惑う怪人達。だが、それでもトライセラトップス・ドーパントが突進してきた。

 

「フン!」

 

突進してくるトライセラトップス・ドーパントに回し蹴りを放つ。仮面ライダーダブル サイクロンジョーカーはそれぞれ風と切り札の記憶を内包しているガイアメモリの力を利用して戦う戦士だ。

 

風の力を纏った回し蹴りが炸裂する。そしてそのまま左拳のストレートをかます。

仮面ライダーダブル サイクロンジョーカーは高い。右側の体はサイクロンメモリの力を利用しおり風を纏った攻撃を得意としてる。

左側の体はジョーカーメモリを利用してある。ジョーカーメモリの力は使用者の身体能力や潜在能力を極限まで引き出す性質を持つ。

 

だが、ここで一つだけ矛盾しているところがある。それはディケイドの仮面ライダーダブル サイクロンジョーカー。通所・ディケイドダブルにはサイクロンメモリとジョーカーメモリがないのだ。ディケイドが他の仮面の戦士に変身する時、殆ど本物と変わらないが一つだけディケイドの姿と同じところがある。それはベルトだ。

本物の仮面ライダーダブルのガイアメモリはベルトに装填されているのだ。だが、今のディケイドダブルにはそのガイアメモリが装填されていない。

ならば、ディケイドダブルの力はどこから来ているのだろうか。その答えは一つだ。彼のバックル『ネオディケイドドライバー』からだ。

彼のバックルには秘石と呼ばれる『トリックスター』を内蔵する次元転換解放機がガイアメモリの代わりを果たしているのだ。

 

そして左ストレートがトライセラトップス・ドーパントを転ばせた。

 

「これで決めるか」

 

そう言ってディケイドは一枚の黄色いカードを取り出す。

 

《FINAL ATTACK RIDE DO-DO-DO-DOUBLE ! 》

 

その音声と共に風がディケイドダブルの周囲に発生し体が浮遊する。そして

必殺の一撃を決めるかのようにディケイドダブル

の体が真ん中を境に割れる。そう割れたのだ。これは比喩ではなく直喩だ。

 

「わ、割れたぁッ!?」

 

そして真っ二つ割れた体はそのままトライセラトップス・ドーパント目掛けて急降下する。左半身と右半身の蹴りがそのままドーパントへと炸裂しその体を吹き飛ばした。

 

「次はコイツだ」

 

そして更にディケイドダブル新たにカードを取り出すとすぐにバックルに装填する。その後ろではドーパントの体が爆発し消滅していた。

 

《 KAMEN RAID OOO ! 》

 

《タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!》

 

ディケイドダブルの目の前にタカ・トラ・バッタを表した三つのオーラサークルが出現し、それが一つになるとディケイドダブルの姿が煌いた。

そして頭部から足元にかけて赤・黄・緑を基調とした仮面の戦士・仮面ライダーオーズへと変身を完了する。

 

「ハァッ!」

 

ディケイドオーズがその場で跳躍する。ディケイドオーズのバッタレッグはその名の通りバッタのように跳躍力が優れている。そしてそのまま雄のプテラノドンヤミーの頭上に到達する。

 

そして右腕に装着されている鉤爪武器であるトラクローを展開しそのまま振り下ろした。

 

「これを使うか」

 

仰け反ったプテラノドンヤミーを見て新たにカードを取り出し、バックルに装填。そして必殺の音声が流れた。

 

《 FINAL ATTACK RIDE O-O-O-OOO ! 》

 

ディケイドオーズがその場で跳躍する。そしてディケイドオーズと雄のプテラノドンヤミーの間に赤・黄・緑のサークルが設置される。そしていつの間にかディケイドオーズの背には赤い翼が展開されており、そのままプテラノドンヤミーへと目掛けて必殺の蹴りを見舞った。

 

ドォンッ!とその場でヤミーの体は爆発し消滅する。

 

「後はお前だけだな」

 

ディケイドオーズはそう言って再びディケイドへと姿を戻す。直後、ヤミーは逃げるように翼を展開する。

 

「───逃がすか」

 

《 ATTACK RIDE BLAST ! 》

 

ヤミーが飛行する直後、ディケイドはライドブッカーを取り出してすぐに発砲。ライドブッカーから放たれた複数のエネルギー弾はヤミーを追うかのような弾道で追跡し全て命中した。

 

「さて、これで終わりだ」

 

墜落するヤミーを見てディケイドは一枚のカードを取り出すと投げるようにそのままバックルに装填した。

 

《 FINAL ATTACK RIDE DE-DE-DE-DECADE ! 》

 

その音声と共にディケイドとヤミーの間に大きなカードが20枚も出現する。

 

「はぁァァァッ!!」

 

直後、ディケイドが跳躍しそのままヤミーへと急降下する。徐々にそのカード達を突き破り、そのエネルギーがディケイドの右足に集約されていく。全てのエネルギーが集約しそのまま最後のヤミーに炸裂された。

 

「フン……」

 

まるで当たり前かのように鼻で笑いながら変身を解いた。さて、と呟きながら彼女達を見た。

 

「士もライバーだったの?」

 

あくあが警戒しながらそう聞いた。

 

「ライバー?俺は通りすがりの仮面ライダーだ」

 

そう士はいつもの台詞を吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、士の事はホロライブで大騒ぎになる。

 

「ほんと凄い能力だよね。士の能力。本当にライバーじゃないの?」

 

「何度も言わせるな俺はライバーじゃないしなろうとも思ってない」

 

そう言ってあくあの言葉を流し、窓の外を眺めた。

 

「あくあちゃん、こっちで一緒にゲームやろー!」

 

「ゲームってなんのゲームやるの?」

 

「これだよ!バトルロワイヤルのゲーム!!」

 

はぁ、とため息を付きながら士は街の景色を見た。現実と変わらないほどの町並み。だが、ここはジオウ達の世界でもないとつい先程理解した。

 

「……!」

 

士は人々が歩く道を見下ろすと一つの人影が目に入った。表情こそ変えないものの目は細め、その人影を注視した。

 

「───鳴滝」

 

ポツリ、と小さく呟きその人影の正体の名を告げた。コートを着ておりチューリップハットを頭に被り、眼鏡をかけた中年の男。その男が何かを喋っているのだ。

 

「…………」

 

内容や声は聞こえないものの士には彼が皮肉や狂言を言っているのがなんとなくわかってしまう。

彼が口を閉じると彼の目の前に灰色のオーロラが出現し、瞬間移動のように姿を消した。

 

「なるほどな。これから忙しくなりそうだ」

 

そして士はまるでわかったかのような言いぶりで独り事を呟いた

 

 




はい、ということでホロライブ回でした。敵の怪人が恐竜なのはそういうことです(
何か誤字脱字などの指摘があれば気軽にどうぞ!
あと感想も待ってますm(_ _)m


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亜無座宛 負芦威紅蓮


─ モー帝国 ─

石版 1「帝王様。我々、モー帝国に所属していないどっかの特撮で見たことがある怪人共がこのバーチャル世界にて暴れている模様です」

帝王「何、我々以外の怪人だと?」

石版2「はい。なんでもモー帝国の下っ端からの情報だとすでににじさんじ学園やホロライブ本社付近にて暴れていたようです」

帝王「なっ!にじさんじやホロライブ!?その怪人共、正気か!!あそこの大手の企業に所属するライバーに手を出したら炎上ものだぞ!!」

石版3「しかも、さらに下っ端からの情報だとにじさんじ学園にジオウ、ホロライブ本社にディケイドの姿が確認されているようです」

帝王「は?お前ら何を言ってるんだ?この世界に仮面ライダーなんているわけねぇだろ。アレはフィクションだぞ。俺達は子供じゃねぇんだぞ」

石版1「めちゃくちゃ言いますね」

石版2「しかし、帝王様。モー帝国以外の組織がこのバーチャル世界を支配しようとしてる可能性があります。どうしましょう」

帝王「ならば、私達もその乗るしかない。このビックウェーブに!!お前達、近々大手の所に襲撃だ!!」

石版3「はっ!」




前回、モー帝国エリート怪人集団「M4」の一人、ジャンパー・ガソンを倒す事ができた

 

「M4」は残り三人。きっと、強敵揃いなんだろうなぁ

 

だが、正義の心を熱く燃やして全員、倒して見せるぜ!

 

「流石だな。熱木(あつき) 正義(せいぎ)。だが、貴様の物語もここで終わりだ」

 

「誰だッ!」

 

熱木 正義と呼ばれた男が振り返る。

 

「俺は裏の『M4』と呼ばれるたった一人の怪人、亜無座宛(あなざー) 負芦威紅蓮(ふぁいぐれーん)!」

 

熱木が振り返ったそこには熱木と似た姿をした人間?らしき人物。

 

「たった一人なら『4』いらなくね?」

「いきなりダメ出しをするんじゃない」

 

「ア、アナザーファイグレーンだとぉ!?」

「あ、普通にカタカナに戻すんだ」

 

アナザーファイグレーンと名乗る熱木の紛い物はフン、と鼻で嗤うと左腕に装着された機械を見せた。

 

「紛い物って言うんじゃない!」

 

「なっ!?そ、それは……イグニスエンコーダ!?」

 

熱木がアナザーファイグレーンの左腕に装着された機械を見て息を呑む。

 

「どうやら、貴様の目は節穴のようだな。ここを見てみろ」

 

アナザーファイグレーンごニヤリ、と嗤うととある場所を指さした。それは機械にある丸くて赤い液晶だった。そこにはよく見ると黒い文字で『亜』と記されていた。

 

「見にくっ!しかもなんで『亜』!?」

 

「決まっているだろっ!俺はファイグレーンの亜種だからなぁ!!」

「紛い物の癖によく節穴なんて言えたな!」

 

アナザーファイグレーンの笑い声に他の人が入る間もなくツッコミを入れる熱木。

 

「つまり、お前はあれだな。中の国のようなパクリのような奴だな!だが!偽物が本物に勝てるわけがない!!」

 

熱木はそう言って右腕ち装着しているイグニスエンコーダを翳して闘気を燃やした。

 

「炎コード!ファイグレーン!!」

 

熱木が叫ぶと全身から炎を発して姿を変える。まるで、炎のように真っ赤なスーツを装着したバーチャルヒーロー・ファイグレーン。

 

「ならば、私もだ!怨コード!アナザーファイグレーン!!」

 

アナザーファイグレーンも左腕に装着されたアナザーイグニスエンコーダを翳して叫ぶ。直後、全身から蒼い炎を発して姿を変えた。その姿は色違いのファイグレーンと言っても過言ではなかった。蒼いファイグレーンと赤いファイグレーン。お互いが睨み合う。

 

「色変えただけじゃねぇか」

 

バシン、とアナザーファイグレーンの仮面にファイグレーンのストレートパンチが決まり後ろへと吹き飛ぶ。

 

「しかもファイグレーンの癖に紅蓮のような赤じゃねぇし」

 

さらに追い込むようにファイグレーンの拳は止まらない。

 

「お前、仮面ライダージオウを見てるんならせめて色は変えるなよ」

 

「色変えただけってそれ、ただのネガライダーと同じ扱いだからな?」

 

さらにもう一発、さらにもう一発、さらに……とファイグレーンの拳がアナザーファイグレーンにヒットしていく。

 

「!?」

 

そこで突如、ファイグレーンの体に異変が起きる。ファイグレーンの全身にノイズが走り、まるで何かに身体を書き換えられてるようにも思えた。

 

「フッ、そう……これは仮面ライダージオウにも登場するアナザーライダーと同じ力!つまり、お前はもうファイグレーンではなくなるのだ!!」

 

アナザーファイグレーンがそう言ってファイグレーンの腹へと蹴りを入れる。ダシン、と蹴りを入れられ後ろへと吹き飛ばされる。それと同じタイミングでファイグレーンの鎧が光の粒子へと変わり消滅した。

 

「ば、馬鹿な!」

 

「フハハハハハ!これで貴様はゴミでクズで役立たずも同然!!」

「言いたい放題だな!」

 

「喰らえっ!アナザーファイグレーンパンチっ!」

 

ドゴっ、と熱木の頬にアナザーファイグレーンの拳がめり込んだ。吹き飛ぶ熱木にニヤリと笑うアナザーファイグレーン。

 

「ファイグレーンに完全勝利したキィーック!」

 

「ぐぁぁッ!!」

 

そして立ち上がろうとする熱木のお腹に強烈な飛び蹴りが突き刺さる。

 

「これで終わりだっ!熱木 正義!!」

 

そう言ってアナザーファイグレーンの拳に蒼い炎が灯る。蒼炎の拳が熱木 正義に振り下ろされた!

 

 

───ブォォォォン!!

 

直後、大きなエンジン音と共に巨大な影がアナザーファイグレーンと衝突した。

 

「な、何!?」

 

「君、大丈夫か?」

 

アナザーファイグレーンの身体を吹き飛ばし、そのままバイクを降りて倒れている熱木の体を起こして心配そうに声をかける人物。そんな正義の目に映るのはよく知った顔。熱木 正義の師匠でありレジェンドヒーローである

 

「貴様は○ ○之!!」

 

アナザーファイグレーンがバイクに乗って現れた男を見て悔しがるかのように叫んだ。

 

「し、師匠!なんでここに!?」

 

「シショウ?何を言ってるんだ?まぁ、いい。君は早く逃げるんだ」

 

熱木に師匠と呼ばれた男は熱木に肩を貸して体を起こすとそっとは慣れる。男はあるもの取り出してそこにカードを挿入した。

 

「あ、あれは……!」

 

「フン、馬鹿め!そんな単なる玩具なんぞで……」

 

男は取り出したものを腰へと当てた。それがバックルとなってトランプのカードが男の腰に巻き付くようにベルトの帯へと変化した。

 

「なっ!馬鹿なっ!!そんなはずはない!!こんなこと、仮面ライダーの世界でしか……」

 

アナザーファイグレーンが今の光景に狼狽え叫ぶ。だが、その様子を男は気にも止めなかった。

腰を引き、左手を腰の横へと持ってきて右手を前に突き出した。

 

「師匠、まさかっ!!」

 

「───変身!」

 

クルリ、と右手の手首を翻して腕を引く。

 

《─── Tern up 》

 

右腕を弾きながらそのままバックルのレバーを引くとベルトから音声が流れ、男の前にカードのような大きな青いゲートが出現する。

男がゲートに向かって歩き通り抜ける。男の姿が変わり、青いスーツに銀色の鎧を纏った戦士。『仮面ライダーブレイド』へと変身した。

 

「師匠がなぜ、仮面ライダーに!?こ、これは一体…!」

 

熱木が目の前の出来事に狼狽し、目を擦る。だが、それは現実で今、熱木の前には仮面ライダーブレイドが存在しているのだ。

 

「嘘だ……そんなはずはありえん。ウソダドンドコドーン!」

 

アナザーファイグレーンも熱木に続いて叫ぶ。そしてブレイドへと駆け寄りそのまま拳を突き出した。

ヒュン、とブレイドは軽い動きでアナザーファイグレーンの拳を避ける。

 

「ぐぁっ!」

 

そしてそのままアナザーファイグレーンの胸へと拳を突き出した。

そのまま後ろへと押し出されるアナザーファイグレーンを見てブレイドは腰に携えた専用武器『醒剣ブレイラウザー』を手に取るとカードが収納された『オープントレイ』と呼ばれる部分を展開し一枚のカードを取り出した。

 

ブレイドの手に持つカードには蜥蜴にもよく似た生物が描かれており、その角には『♠2』と記されていた。ブレイドはそのカードをブレイラウザーに搭載されたカードリーダーにスライドする。

 

《─── SLASH 》

 

ブレイラウザーから発せられる音声と共に刀身が青く輝く。

 

「ハァっ!!」

 

アナザーファイグレーンへと振り下ろされる剣はそのまま左腕を引き裂いた。

 

「し、しまった!アナザーイグニスエンコーダが!!」

 

左腕に装着されたアナザーイグニスエンコーダから電流が走り唸り声を上げる。ボンッ、と小さい爆発音をあげてアナザーファイグレーンの左腕が跡形もなく爆散した。

 

「くっ、破壊されてしまったとなればファイグレーンの歴史がっ……」

 

「ん?」

 

熱木が右腕のイグニスエンコーダを見た。そこには夕日のように赤く輝くほどの光を放っていた。

 

「師匠、ありがとうございます!!さぁ、アナザーファイグレーン。ケッチャコを着けるぞ!!」

 

熱木が右腕を翳す。

 

「炎コード!超絶完全燃焼!!ファイグレーンッッ!!」

 

「くっ、熱木 正義!そして○ ○之!!許さんぞッ!」

 

「これ程までに体が熱い……まるで俺自身が炎の化身になっているかのようだ……師匠、ここは必殺技で決めましょう!!」

 

「お?ああ!!」

 

《─── KICK 》

 

《─── THUNDER 》

 

ブレイドが新たにカードを二枚取り出しカードリーダーへとスライドさせる。

 

《─── LIGHTNING BLAST 》

 

二枚のカードの力がブレイドの力となる。ブレイドがそのままブレイラウザーを地面へと突き立て、跳躍した。

 

「超・絶!ファイグレーンキィィックッ!!」

 

ファイグレーンもそれに続くように空へと跳ぶ。

 

「ウェェェイッ!!」

 

「ハァァァァッ!!」

 

ブレイドの雷を纏った蹴りとファイグレーンの炎を纏った蹴りがアナザーファイグレーンの身体を突き破った。ズザザザザ、と物凄い音をあげて地面へと着地するブレイドとファイグレーン。その背にはアナザーファイグレーンが倒れ爆発した。

 

「やった!やりましたよ!師匠!!」

 

変身を解いてブレイドへと振り向いた。だが、同じく変身を解いた男は不機嫌そうな顔をして熱木を見た。

 

「なぁ、すまないが俺は君の師匠じゃない。俺は剣崎 一真。君の知る○ ○之って男じゃないんだ」

 

「え、師匠?う、嘘ですよね……まさか……」

 

熱木がそう言ってじしんのスマホを取り出すとどこかに電話をし始めた。

 

「つ、繋がらない……。だ、だけど、目の前にいるのは師匠のはずなのに……どうなっているんだ!?」 

 

「???」

 

冷や汗を掻いて剣崎 一真と名乗る人物を見る熱木。だが、見られている剣崎は状況を呑み込めておらず首を傾げた。

 

「ん?」 

 

熱木の目に一つのものが目に入る。風に吹かれてどこからか飛んできた新聞だった。

 

「こ、これは……!」

 

『にじさんじ学園に謎の生命体現る!?』

 

バン、と表面に大きく出された見出しが熱木の注意を引いた。その見出しに乗った二枚の写真。

一枚目の写真に写っているのはにじさんじ学園に所属するライバーと戦闘しているミイラ姿の怪物だった。熱木にはその姿に見覚えがあった。それは『仮面ライダーオーズ』に出てくる雑魚敵に充てがわれる存在『クズヤミー』なのだ。

そして更には二枚目の写真に写っているのは時計をモチーフにしたと思われる顔にライダーという文字が記された仮面の戦士が甲虫を模した怪人と戦っている姿だ。

 

「仮面ライダージオウにクズヤミー!?い、一体これはどういう……!?」

 

正義がさらに新聞を捲る。そこには先程の記事に劣らない驚きの見出しが書かれていた。

 

『そしてホロライブ本社付近にも謎の生命体現る!?』

 

ドン!と一枚の写真が張り出されそこに映し出されているのは三人の怪物と二人の少女、そしてある仮面の戦士。

もちろん、熱木にはその仮面の戦士の姿にも見覚えがあったマゼンタと黒を貴重とし鎧を来た戦士。それは『世界の破壊者』とも呼ばれる存在『仮面ライダーディケイド』なのだ。

 

「何がどうなっているんだっ!?」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

頭を抱え、目を白黒させる熱木。そんな様子を剣崎が心配そうに肩をのせて声をかけた。

 

「仮面ライダーディケイドにジオウ……まさか、仮面ライダーの世界とバーチャルYouTuberの世界が……融合……している……?」

 

 

 

 

 

とゅーびー

こんてぃ

にゅーど

 





熱木「次回、『敵は仮面ライダー!?』にご期待ください」

剣崎「大丈夫。君は一人じゃない」


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敵は仮面ライダー!?


前回の登場人物

熱木 正義……椿正義チャンネルにて活躍しているヒーローVtuber。ファイグレーンへと変身しバーチャル世界を征服しようと企むモー帝国と日夜戦い続ける熱き男。ある日、新人ヒーローの熱木は自分に限界がある事を自覚しておりますある男に弟子入りを志願した。そしてその男こそがレジェンドヒーロー・○ ○之だった。動画の内容はどれも短い。だが、テンポも早く師匠のボケと熱木のツッコミ、そして怪人のボケとツッコミが面白い。忙しくあまり時間がない人にオススメ。

剣崎 一真……熱木の師匠である○ ○之が演じていた仮面ライダー。アンデッドと呼ばれる怪人と戦い封印し、封印したアンデッドの力を使って戦う戦士の一人。仮面ライダーブレイドは剣とカードを使うことが特徴の戦士。オンドゥル語と呼ばれるちょっと聞き取りにくいセリフが有名でちゃんと聞けばちゃんとしたセリフに聞こえなくもない。剣崎はブレイド本編終了後となっており種族は人間からアンデッドへと変化している。


「あれ、リゼじゃん。どうしたの?また俺の部屋の前で待って……」

 

ソウゴがいつものように部屋を出ると扉の前で待っているリゼを見てキョトンと首を傾げる。

 

「私、ソウゴさんのお目付け役ですので。それにソウゴさん、能力が開花したので経過観察しないといけないので」

 

「ふ〜ん。あ、そういえばリゼ」

 

「なんですか?」

 

ソウゴが思い出したかのように口を開く。

 

「俺、ライバーになるから」

 

「なるほど……え?」

 

突拍子の発言といきなりの心変わりにリゼは思わず耳を疑った。

 

「今、なんと……?」

 

「だーかーらー!俺、ライバーになるって」

 

どういうことだ、とリゼは目を細めた。昨日まではライバーにならないと言っていたのに突然と今日、ライバーになるなどと言い出した。これはさすがのリゼでも人を疑いたくなるほど異常だった。

 

「えっと……なぜ、突然?」

 

「え、だって、俺は王様になるからだよ。俺は世界を良くしたいと思ってる。この力は俺を王様にしてくれる第一歩なんだ」

 

そう言ってソウゴはリゼにジオウライドウォッチを見せた。

リゼにとってはそれはあまり見慣れない代物で、これはソウゴのライバーの能力の一部と認識してしまう。

 

「なるほど、それがソウゴさんの能力。だからライバーになる、と……」

 

そもそもソウゴにとってライバーになるのは王様になる道にある一つの壁らしい、とリゼは理解した。

 

「わかりました。私から委員長に伝えておきます」

 

そう言ってリゼは寮は出ていった。

 

 

 

 

「ライバーの顔合わせか……どんな人たちがいるんだろう」

 

放課後、ソウゴは呼ばれた教室へと目指す。そもそもライバーのことを詳しく知らないソウゴであるが彼の性格故かかなり能天気だ。

 

「あ、ここだ。失礼しまーす!」

 

ソウゴが教室に入った直後、思わず足を止める。教室の中には数十人程度の老若男女がいる。だが、ソウゴでもわかる程の強者の気をどれも放っているのがわかった。恐らくどれもソウゴの知るレジェンドライダーと同様と思われた。

そして教室にいる人物の一部が学園の中で見かけた顔だったり、テレビで見る有名人だ。

ましてや、明らかに人ではないものも存在している。

 

「ソウゴさんも来たみたいですし、それじゃあ始めましょ。起立!気をつけ!こんにちは、月ノ美兎です!」

 

教室の教壇に立っていた三人組の一人である月ノ美兎が号令をかける。

 

「今日、皆さんにお集まり頂いたのは他でもない彼のことです」

 

そう言って月ノ美兎はソウゴに手を向けた。その言葉にみんなの視線がソウゴへと集まる

 

「ソウゴさんは特殊な能力に目覚めてからまだ一日ですが、今朝ライバーになるとおっしゃったので皆さんにお声をおかけしました。ソウゴさん、自己紹介をどうぞ」

 

月ノ美兎に唐突にバトンを渡される。だが、そこでブレないのが常磐 ソウゴだ。

 

「俺は常磐 ソウゴ!俺の夢は最高最善の魔王になること!」

 

そう言ってニッコリと笑い笑顔を向けた。ソウゴの『魔王』という単語にとある少女に注目が集まる。

 

「まぁ、このソウゴさん。昨日、特殊な能力に目覚めたんですけどまだ私もその能力を把握してないんですがそこでいい考えを思いついたんです」

 

その言葉にソウゴは首を傾げる。だが、他の者の大半は顔を歪ませているのがわかる。

 

「この中の誰か一人にソウゴさんと戦闘してもらいます!リゼさんの話を聞けばソウゴさんは戦闘できるらしいので」

 

そう言ってニッコリと笑う委員長。だが、他の者がしーんと反応がない。

 

「あ、じゃあ、僕がやりましょうか?」

 

そしてその静寂を破る少年が一人いた。パーカーを来た優男を感じさせる少年だ。

 

「叶さんですか……私としてはもう少し近接向きの人が良かったんですが……」

 

「じゃあ、葛葉にやらせましょう」

 

「え、俺ぇっ!?」

 

「葛葉かー。確かに葛葉なら近距離も中距離でも戦えるな」

 

月ノ美兎に立っている楓が葛葉を睨む。

 

「葛葉さん。やりますか?」

 

「まぁ、やれなくもないですけど……本当にやるんスか?」

 

「はい。お願いします」

 

その言葉を聞いて葛葉と呼ばれた白髪の少年がため息をついた。

 

「じゃあ、早速始めましょう!ソウゴさんも葛葉さんも頑張ってください!!」

 

「───えっ!?」

 

ソウゴが素っ頓狂の声をあげる。直後、葛葉がソウゴへと向って右手を突っ込んだ。

 

「───ぐっ!!」

 

ガシッ!と首根っこを突っ込まれそのまま扉を突き破り窓を突き破った。

そのまま葛葉とソウゴは建物の外へと飛び出す。

 

「ヤバっ!」

 

ソウゴがいた教室は三階の教室だ。その高さから落ちればソウゴの体は無事では済まない。生身ならば。

 

《ジオウ!》

 

すぐさまジクウドライバーとジオウライドウォッチを取り出して変身の準備を始めた。

 

「っ変身!」

 

《ライダータイム!》

 

変身の合図と共に現れる背後の『ライダー』の文字が飛び出す。

 

「なっ!?」

 

《仮面ライダージオウ》

 

葛葉がライダーの文字に直撃し、そのままソウゴの手を離す。ジオウの鎧を装着しそのままライダーの文字が葛葉を吹き飛ばした『ライダー』の文字がジオウの仮面へと収まった。

 

「───っと!」

 

ジオウが学校のグラウンドに着地し、葛葉を睨み付けた。

 

「へぇー。それがアンタの能力か」

 

葛葉が物珍しそうに呟きながら右手に魔力を収束させる。赤と黒の魔力が段々と形を成していき、最終的には槍と変化した。

 

「何その槍?」

 

ジオウが葛葉の槍を見て唸る。

 

「よっと!」

 

葛葉が疾走し、そのままジオウへと矛先を向けた。

 

《ジカンギレード!》《ケン!》

 

ジオウも自身の武器『ジカンギレード』で葛葉の攻撃を受け止めた。

 

「アンタの力、そんなもん?」

 

「どうだろうね」

 

二人はお互いの力を伺いながら睨み合う。葛葉が飛び、ジオウが距離を取る。

 

《ジュウ!》

 

葛葉の周りに小さな魔力がいくつも収束される。対してジオウはジカンギレードをジュウモードへと変形させた。

 

「ほら、いくぜ」

 

葛葉の周りには無数の魔力の槍が出現する。

 

《フィニッシュタイム!》

 

ジオウはキバの戦士のライドウォッチをジカンギレードに装填する

 

「そらっ!」

 

葛葉の掛け声と共にジオウに向けて無数の槍を射出する。

 

「───っ!」

 

ジオウはそのまま後ろへ飛ぶ。ジカンギレードを構えながら無数の槍ノ合間をすり抜け照準を葛葉へと合わせる。そして、そのまま空中でジカンギレードのトリガーを引いた。

 

《キバ!ギリギリシューティング!!》

 

「なっ!」

 

ジカンギレードの銃口から放たれる水弾がそのまま葛葉へと迫る。葛葉はすかさず右手の槍でなんとかそのジオウの攻撃を弾く。

 

「あっぶねー!」

 

「今の攻撃を弾くの……」

 

葛葉が叫びながら息を吐き、ジオウは渾身の攻撃を弾かれたことに素っ頓狂な声を再び出す。

 

 

 

「にしても彼、あの葛葉の攻撃の中よくエイムを合わせられましたね……」

 

その様子を三階から見ているライバーの一人、叶が呟いた。

 

「え、他の人もできるんじゃないんですか?僕はできませんけど」

 

叶の近くにいた西洋の甲冑を来た金髪の青年がそう呟いた。

 

「いや、さすがの叶くんでもムズいでしょ。相手の範囲攻撃を全て避けながら必殺技を撃つなんて」

 

叶の近くにいる顎が少し尖っている高校生が笑いながら解説する。

 

「本気でやろうと思えばやれますけど?」

 

叶が少しムッとした口調でそう答える。

 

 

 

「さて、と……」

 

葛葉がどうしようかと悩み始める。もう少し力をあげようかそれともまだこの状態で戦って戦闘終了の合図が出るのを待つか、と。

 

だが、その考えを必要ないと言わんばかりに邪魔が入る。

 

「これは……」

 

ジオウは葛葉と自分の間に出現した灰色のオーロラを見て呟いた。そのオーロラは何回か見たことがあった。

世界の破壊者と名乗った仮面ライダーディケイドが使用していたやつだ。

まさか、ディケイドが?とジオウは思う。オーロラから姿を表したのは二つの影。

 

「黒い鎧武に黒いエグゼイド…?」

 

ジオウはオーロラから姿を表した二人の仮面ライダーを見て驚く。どちらも見たことのある形をしている。

仮面ライダー鎧武と仮面ライダーエグゼイド。だが、ジオウの知る鎧武とエグゼイドではなかった。二人ともどこか禍々しかった。

 

「なんだ、コイツらはアンタの知り合いか?」

 

葛葉は黒い鎧武『武神鎧武』と黒いエグゼイド『ゲンム』を睨み付けた後、ジオウに問いかけた。

 

「う〜ん……知り合いに似てるってだけかな」

 

ソウゴも武神鎧武とゲンムを睨みつけながら唸る。

 

「あっそ……」

 

葛葉はそう言ってチラリ、と他のライバー達の方へと視線を向けた。だが、他のライバーからの反応がない。

 

(叶達の方で何かあった……?)

 

葛葉がチッ、と舌打ちしながら目の前の二人を睨み付けた。

 

 

 

 

 

「貴方は一体……」

 

月ノ美兎達、他のライバーは急に目の前に現れた漆黒の宝石の仮面の戦士を睨み付けた。

 

「俺は漆黒の魔法使い」

 

そう言って右手の指輪を見せつけながら手を広げる。

 

「漆黒の魔法使い……?」

 

ライバー達はそれぞれ身構える。ある者は剣を、ある者は銃を、ある者は杖を構えた。

 

「さぁ、ここからが本当のフィナーレだ」

 

《 Connect ! Please ! 》

 

ベルトに手の形をした部分に右手を乗せる。直後、漆黒の魔法使いの目前に魔法陣が出現する。そしてそのまま魔法使いは魔法陣へと手を突っ込み特殊な形をした銃を取り出す。

 

そしてそのまま漆黒の魔法使いはライバー達に銃を乱射する。

 

『───っ!』

 

ライバー達は目を堪えてそのまま魔法使いの攻撃を見切る。

 

「あっぶな……」

 

全員が今の攻撃の能力を認識する。

 

「今の自動追尾の銃弾でしたね……」

 

叶がそう呟いて漆黒の魔法使いを睨み付けた。

 

「…………」

 

だが、そんな言葉を気にせず漆黒の魔法使いはそのまま突っ込んだ。まずは手前にいる高校生・剣持 刀也に剣を振るう。

 

「───!」

 

剣持も彼のターゲットに気付き、背に納刀していた日本刀ですかさず受け止めた。

 

「そこぉ!」

 

「そこです!」

 

《Copy ! Please ! 》

 

楓と金髪の青年・エクス・アルビオがすかさず挟み撃ちをするかのように剣を振るう。それに対して漆黒の魔法使いは出現した魔法陣に手を突っ込むと新たに右手に持っている剣と同じモノを装備する。

 

「───!」

 

そしてそのまま剣持を足で押しやり、楓とエクスの攻撃をそれぞれの手に持つ剣で受け止めた。

 

「先輩方!」

 

そして、三人の女性が前へと出る。そのうちの二人は魔導書のようなモノを持っており、うち一人は銀髪の少女。もう片方は長い金髪の女性だ。

 

「燃やすわ!」

 

そして魔導書を持っていない金髪のロングツインテールの少女が叫ぶ。直後、目の前に魔法陣が出現しそこから漆黒の魔法使いに向けて複数の炎が放出された。

 

《ウォーター!スイースイースイスイー!》

 

漆黒の魔法使いから発せられるドライバーの音声と共に姿を変え、教室の水道の水が彼を炎から守るように防いだ。

 

「水!?」

 

「うわーちょっと面倒くさいですよ。あれ」

 

エクスがそう言って面倒くさそうに呟く。

 

《キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ!》

 

《キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ!》

 

《ウォーター!スラッシュストライク!スイー!スイー!スイー!》

 

《ウォーター!スラッシュストライク!スイー!スイー!スイー!》

 

漆黒の魔法使いが二振りのウィザードソードガンに手をかざす。直後、刀身に水の魔力が集まる。

 

「───ヤバッ!」

 

誰かが呟き、漆黒の魔法使いの攻撃に身構えた。

 

「ハァッ!!」

 

漆黒の魔法使いが気合の声と共に両手の剣を前方に水流を纏った斬撃を放つ。

横一文字が縦に連なる。横二文字の水流の斬撃がライバー達に迫る。

 

だが直後、水流の斬撃が何かに阻まれる。月ノ美兎のホログラムの壁のようなものがライバー達を守ったのだ。

 

「委員長!」

 

「これはちょっとマズいですね……葛葉さんたちの方もどうなったか気になりますし」

 

 

 

 

 

「───!」

 

武神鎧武が大橙丸をジオウへと振るう。ジオウはその攻撃をジカンギレードで受け止める。

 

「アンタも鎧武なの?」

 

ジオウは武神鎧武を睨み付ける。だが、武神鎧武からの反応はない。

 

「───くっ!」

 

そしてジオウを追い詰めるようにゲンムが自身の可変型武器である『ガシャコンブレイカー』を振り下ろす。ジオウはその攻撃をとっさに避けて距離を撮った。

 

「こうなったらっ!」

 

そう言ってジオウは新たに二つのライドウォッチを取り出した。

 

《ディ・ディ・ディ・ディケイド!》

 

そしてマゼンタと黒を基調とした少し変わった形をしたディケイドライドウォッチの起動スイッチを押してそのままジクウドライバーのD'3スロットに装填。そしてそのままライドオンリューザーを押し込み回転させた。

 

《エグゼイド!》

 

そして緑とピンクを基調としたエグゼイドライドウォッチの起動スイッチを押して、先程装填したディケイドライドウォッチに存在する他のライドウォッチを装填できるF.F.T.スロットに装填。

 

《アーマータイム!ファイナルフォームタイム!エ・エ・エ・エグゼイド!》

 

ドライバーの音声と共にジオウが姿を変える。ジオウの姿にディケイドとエグゼイドの力を身に纏う。ただ、それだけではない。

 

「は?二人……?」

 

葛葉が二人のジオウを交互に見た。片方には『エグゼイド ダブルアクション XXR』もう片方には『エグゼイド ダブルアクション XXL』と両肩と胸に記されていた。

ジオウが二人へと増えたのだ。

 

「アンタ達が何者か知らないけどそれほど時間をかけてられないのはわかったから!」

 

そう言って片方のジオウがチラリと三階の方へと視線を向けた。

 

「ハァッ!」

 

『XXR』がゲンムにジカンギレードを振り下ろす。ゲンムもそれに対してガシャコンブレイカーで応戦した。

 

「なぁ、手を貸そうか?」

 

「え、いいの?」

 

「ああ。どうせ叶達も相手してるんだろうし。それにアンタがいくら二人になったところで勝てると決まったわけでもないだろうし」

 

そう言って葛葉は槍を構えて武神鎧武を睨み付けた。

 

「ありがとう!えっと……」

 

「葛葉。葛葉って呼んでくれ」

 

「分かった。葛葉、協力プレイで……」

 

「クリアしてやろうぜ!」

 

ジオウの掛け声と共に葛葉がニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





なんかこう素で書くのが久しぶりな気がします。唐突なんですけど
仮面ライダーとVtuberって言ったら誰を思い浮かべます?
前まではもやしやルチカちゃんを思い浮かべてたんですが最近だと椿正義をが出てくるんですよね。御本人なので。あと、思った以上に面白いんですよね、仮面ライダーネタなどがバンバン出てくるので

まぁ、感想はこんなところです。何かあれば感想や誤字報告を気軽にどうぞ。あと、評価の方も……(小声


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最低最悪のミライ

一部の登場人物解説

常磐 ソウゴ… …『仮面ライダージオウ』の主人公であり最低最悪の魔王にならないように最高最善の魔王になろうとする高校生。本人の時系列は本編の最終回後となる。彼が使えるライドウォッチは現在、確認されたものではジオウ、キバ、ディケイドの三つである。

リゼ・ヘルエスタ……にじさんじ学園所属のライバーでヘルエスタ王国の第二皇女。ヘルエスタ王国から日本の学校へと留学してきたが理由は不明。ライバーとしての力は王家に伝わる宝刀ヘルエスタセイバーの使用、そして天使の翼のようなものを生やして飛ぶことだと思われる。

葛葉……リゼと同じ区にじさんじ学園所属のライバー。銀髪赤眼の吸血鬼。ライバーとしての力は魔力で形成した槍で戦う事が多い。また、吸血鬼なので日の下だと若干、身体能力などが低下する。逆をいえば夜では高い身体能力を誇る。




 

 

即座に無数の槍を展開する。その展開速度は先程よりも早く、比にならなかった。

 

「そらっ!」

 

無数の槍が武神鎧武の頭上に降り注ぐ。

 

《フィニッシュタイム!》

 

武神鎧武が無数の槍を捌きながら段々と回避していくのを見ながらジオウは新たなライドウォッチを装填した

 

《オーズ!ギリギリスラッシュ!》

 

「はァァァァ。セイヤーッ!!」

 

ジカンギレードの刀身が白く輝き、ジオウが武神鎧武に向けて横一文字に薙ぎ払う。

空間を引き裂き、武神鎧武へと斬撃が飛ぶ。

 

『───っ!』

 

武神鎧武がよろめく。だが、撃破できる程の攻撃ではなかったらしく再び立ち上がる武神鎧武。

 

「え、嘘……」

 

必殺の一撃を喰らっても尚、立ち上がる武神鎧武に呆然と呟くジオウ。

 

「おいおい、マジかよ……」

 

葛葉も目を大きくして武神鎧武を見つめた。

 

『───!』

 

「くっ!」

 

武神鎧武がジオウへと駆ける。ジオウは一の太刀を上手く避けて二の太刀をそのままジカンギレードで受け止めた。

 

 

 

 

 

《ランド!ドッドッ!ドドドドン!ドン!ドッドッドン!》

 

漆黒の魔法使いに迫る無数の銃弾。だが、その攻撃も焦らず対処する。

 

《Defend ! Please ! 》

 

詠唱と共に漆黒の魔法使いを守るように土の壁が出現し、銃弾から身を守った。

 

「四大元素ですか……」

 

月ノ美兎が漆黒の魔法使いを睨み付けて呟いた。

 

「仕方ありませんね……鈴原さん。やっちゃって良いですよ」

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

「え、いいの?」

 

「はい。これ以上、戦いを引き延ばしたくないので」

 

《ハリケーン!フーフー!フーフーフーフー!》

 

「やったぁ!」

 

鈴原と呼ばれた少女・鈴原 るるがその言葉と共に漆黒の魔法使いに視線を移した。

 

直後、漆黒の魔法使いが空を駆ける。だが、るるはそれを予測していたかのように漆黒の魔法使いの向かう方へと先回りしていたのだ。

 

『───っ!』

 

漆黒の魔法使いがるるに気付いた瞬間、地面へと魔法使いの体が地面へと叩きつけられていた。

 

「あれ?」

 

るるが墜ちた魔法使いを見て首を傾げた。

 

「さすがですね……」

 

それを見た叶が呟いた。にじさんじのライバーの中でも上位の強さに入る彼女。いとも簡単に漆黒の魔法使いをねじ伏せた。

 

「どうしたんですか?貴方の力はその程度なんですか?」

 

『───ッ!!』

 

魔法使いがるるの煽りに乗せられたかのように立ち上がり距離を取るとそのままドライバーを操作する。

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

「───待て、漆黒の魔法使い」

 

右手をそのままドライバーへと認証させてようとするが魔法使いの隣に現れた謎の男の声によって阻まれた。

 

「今度はなんですか……」

 

月ノ美兎が新たな乱入者を見て大きく溜め息をついた

 

「私は鳴滝。仮面ライダーの歴史を守る者だ」

 

「仮面ライダー……?」

 

誰かがボソリと復唱し、全員が目を細めた。

 

「この電脳世界は仮面ライダーの乱入によって近い未来、世界が破壊されてしまう。私はそれを阻止しにきた」

 

鳴滝という男の言葉にその場にいるライバー達は意味を理解できない

 

「それがこの漆黒の魔法使いさんが私達に攻撃してきたことになんの関係があるんです?」

 

「彼はただの足止めだ。最低最悪の魔王・オーマジオウを排除するまでのだ」

 

「おーま……じおう……?」

 

「嗚呼、常磐 ソウゴ。彼が最低最悪の魔王・オーマジオウとなる者だ」

 

『───っ!?』

 

直後、この教室にいた全員のライバーの体がオーロラに包まれる。

オーロラに包まれ、視界が開けるとそこは崩壊した街並みが目の前に広がっていた。

 

「ここはっ!?」

 

「ここはその近い未来の出来事だ」

 

そう言って鳴滝がある方向へと指を指した。その視線の先にはるると思われる女性が謎の仮面の戦士と戦っているのだ。

 

「あ、私だ」

 

るるがその戦いを見てそう呟いた。

 

「───クロックアップ」

 

《───Clock up 》

 

「───アハハハァッ!」

 

直後、二人の姿が消える。いや、肉眼では視認できなくなる。

仮面の戦士の呟きとるるの狂気の歓喜がその場に残る。

 

「はっやっ!?」

 

ライバーの一人が叫ぶ。周囲には金属同士がぶつかり合う音と火花だけが残る。

 

「へぇー……。強いなぁ」

 

観戦しているるるは肉眼では二人の戦いを捉え、面白そうに観察する。

 

《───Clock over 》

 

「見ぃつけたぁ!」

 

《One...Two...Three...》

 

るるが物凄いスピードで背後を見せている仮面の戦士へと迫る。必殺の一撃を右手の包丁へと込めているのがわかる。

 

「───ライダーキック」 

 

《───Rider Kick 》

 

仮面の戦士の呟きと共に右足に稲妻を纏う。るるの一撃が決まる直後、仮面の戦士がるるの方へと振り向いた。

 

「───なっ!?」

 

月ノ美兎が目の前に広がる光景に息を呑んだ。仮面の戦士へと襲ったるるの上半身が吹き飛んだのだ。

 

「───っ!!?」

 

ライバー達もその光景を目のあたりにする。だが、当のるる本人は全く動じない。なぜなら……

 

「───なにっ!?」

 

吹き飛んだるるの上半身が動く。まるで怨念や執念で動く呪いの人形の如く動いた。

るるの右手から放たれた包丁が仮面の戦士の首元へと突き刺さった。

 

装甲の薄い首元へと放たれた包丁は変身者自身の体へと深々へと突き刺さった。

 

───相討ち

 

誰もがその結果を知る。るる本人も相討ち覚悟で敵を倒せて満足だろう。

 

だが、他のライバー達はそうはいかなかった。これが誰かの妄想であってほしいと思う者もいる。

 

 

 

「なぜ、こんなことに……?」

 

月ノ美兎が恐る恐る鳴滝に聞いた。そして鳴滝はある一人の男を指差した。

 

「あれは……」

 

全員がそのライバーに視線を向けた。その男は先程まで目にしていた人物に似ていた。

 

「───常磐 ソウゴ。彼が自分の世界を破壊し創ってしまったから電脳世界とライダーの世界が融合してしまったのだ。だから仮面ライダーの世界の怪人達もこの世界で脅威となっている」

 

「世界を……破壊?」

 

月ノ美兎がそう言って目を細めた。そしてソウゴの目の前に立ち塞がる者がいた。

 

「ソウゴさん、貴方をここで止めます……っ」

 

「あれは……」

 

「───リゼ!」

 

ソウゴの前に現れたのはリゼ・ヘルエスタ。彼女だ。同期の戌亥とアンジュも驚いている。当の本人は驚いて言葉が出ないようだ。

 

「───リゼ。そっか……そう、なるよね……」

 

そう言ってソウゴが取り出すのはディケイドライドウォッチとはまた別の異様なライドウォッチを取り出した。

 

《ジオウ Ⅱ ! Ⅱ ! 》

 

見たことのないライドウォッチにライバー達は目を細め、ソウゴの手元を注視した。

まるで複数のライドウォッチが重なってできたようなライドウォッチにライバー達の目が怪しくなる。

 

《ジオウ!》

 

そしてソウゴはそのライドウォッチを両端から引き離す。それは二つのライドウォッチへと分離した。そしてD'9スロットに金箔が貼られた黒いライドウォッチウォッチを装填。そしてD'3スロットに通常のジオウライドウォッチと似たライドウォッチを装填した。

 

「───変身」

 

短い一言と共にジクウサーキュラーを半回転。

 

《ライダータイム!カメンライダー!ライダー!ジオウ!ジオウ!ジオウ!Ⅱ ! 》

 

ドライバーから流れる音声と共にソウゴが新たなスーツを身に纏う。新たなスーツはまるでジオウを二つ分も合わせたスーツとも思われた。

その新たな姿を仮面ライダージオウ Ⅱ 。

 

「やはり、その姿ですよね……」

 

リゼの警戒心が一層、強まり新たなジオウを睨み付けた。

 

「ハァッッ!」

 

短い掛け声と共にリゼは一気に駆け抜けた。距離を詰めてヘルエスタセイバーを一気に振り下ろす。それに対してジオウは新たな武器『サイキョーギレード』で対抗した。皇女の剣と時の王の剣が激しくぶつかり合う。

 

「───まだっ!」

 

リゼがそのままジオウを追い詰めるように連撃を繰り出していく。

 

「くっ!」

 

ジオウが押し負け、バックステップで距離を取る。

だが、リゼは攻撃の手を休めない。リゼは白い翼を大きく広げる。

 

「来るっ!」

 

ジオウがリゼを警戒すると同時に仮面の四つの時計の針を模したアンテナがの内、二つの長針が回転し始める。まるで二つの時計を早送りと早戻しを行っているようにも見える。

ジオウ Ⅱ のアンテナは回転することで"起こりうる現象"を観測する事ができる。つまり、未来予知ができるのだ。

 

「そこだぁッ!」

 

サイキョーギレードを一気に振り下ろす。リゼが突進し始めた直接にマゼンタ色の飛ぶ斬撃がリゼを襲った。

 

「───っ!?」

 

リゼの体が後方へと吹き飛ぶ。当のリゼは何が起きたか全くわかっていない。

 

「くっ!」

 

悔し紛れの言葉を呟いてリゼが急加速。目にも映らぬ速さでジオウへと距離を詰めた。

 

《ジオウサイキョー!》

 

サイキョーギレードの文字盤が『ライダー』から『ジオウサイキョー』へと切り替わる。

 

「ぐっ!」

 

ジオウがリゼの神速の突きをギリギリで受け止めた。

 

 

「私の速さはまだこんなものではありませんっ!」

 

リゼが距離を取り更に加速する。先程よりも早く。速く。疾く。

 

「───…………」

 

ジオウの長針が回転し始める。"起こりうる現象"を観測する。リゼの攻撃を先読みするのだ。

 

「───ハァァッ!」

 

ジオウが顔を横へと傾ける。瞬間、ジオウの仮面のすぐ横を一筋の光が通り過ぎた。光速の突きをジオウは避けた。

そしてすぐにサイキョーギレードをリゼへと振り下ろす。一撃、二撃が入り仰け反らせた。

 

《覇王斬り!》

 

「───セイヤァァァァ!!」

 

ジオウがサイキョーギレードを横一文字に振り払う。サイキョーギレードから虹色に輝く覇王の強烈な斬撃が吹き飛んだリゼを追撃する。

 

「くっ!!?」

 

リゼが驚きに目を見開き、瞑った。これで終わりと諦めるリゼ。

 

「───リゼェ!!」

 

リゼの耳に幼馴染の声が響く。金属の壁がジオウの必殺の一撃を防いだ。

 

「アンジュ!?」

 

駆け付けた赤髪の幼馴染を見て驚いた。ジオウも流石に驚きを隠せず、動きを止めた。

 

「───お待たせ。待った?」

 

ボロボロになりながらもアンジュが短く首を傾げリゼに問いかけた。

 

「アンジュ。遅いよ……」 

 

そう言ってアンジュに笑顔を向けるリゼ。そして二人は頷くとそのままジオウの方へと振り向いた。

 

「行こう、リゼ」

 

「うん」

 

二人が戦闘態勢に入ると再び戦火へと身を投げ出した。

 

 

「これが───少し先の未来の世界の話だ」

 

鳴滝が目を閉じて残念そうにそう呟いた。

 

「これが……ですか」

 

月ノ美兎がなるほどと呟いた。だが、どこか解せないこともあると鳴滝を睨み付けた。

 

「なぜ、この光景を私達に?」

 

「君達には一応、知っておいてもらいたいからだ。常磐 ソウゴ。彼は危険だからだ。いや、彼だけではない。あともう一人……」

 

「……?」

 

「そしてもう一人……世界の破壊者『ディケイド』……」

 

鳴滝が恐ろしい形相でそう呟いた。

 

 

 

 

 

時は現代に戻り、ゲンムと敵対していたジオウディケイドアーマーエグゼイドフォーム『XXL』がドライバーのジクウサーキュラーを回転させた。

 

《エ・エ・エ・エグゼイド!ファイナルアタックタイムブレーク!》

 

ベルトが一瞬、光り必殺の宣告がゲンムの耳に届いた。

 

「そらよっ!」

 

そこに葛葉が武神鎧武をジオウ『XXL』とゲンムの間に蹴り飛ばした。直後、虹色のオーラを右足に纏い流星の如く武神鎧武へと突っ込んだ。

 

《エ・エ・エ・エグゼイド!ファイナルアタックタイムブレーク!》

 

さらにゲンムの背後からの必殺の宣告。ジオウ『XXR』が左足に虹色のオーラを纒い流星の速さでゲンムへと突撃する。二人のジオウに挟まれる武神鎧武とゲンムはお互いのジオウの蹴りをくらい武神鎧武とゲンムがその衝撃で衝突する。

そしてさらに二人のジオウはゲームの必殺技の特殊演出かのようにさらにゲンムと武神鎧武へと蹴りを入れる。それを二度だけではなく、何度も何度も……。

 

「ハァァァァァ!ウオリャッァァ!!」

 

そして幾度も繰り出された蹴りの後、二人の仮面ライダーを上空に打ち上げるかのようにサマーソルトキックを最後に繰り出した。

 

「葛葉、後は頼んだよ!!」

 

「任せとけって!!」

 

二人の蹴り上げられたずじょには巨大な槍を構えた葛葉。その槍には葛葉が溜めた魔力が込められている。

 

「あー……技名とかどうしようかな。ま、いっか。───あばよぉッ!!」

 

豪速球で投げ出された槍はゲンムと武神鎧武の体へと突き刺さり二人の身体を持っていきながら地面へと衝突した。

 

───ドォォン!

 

《 GAME CLEAR! 》

 

 

「やっと、倒せたー……」

 

「gg」

 

消えた仮面ライダーを見てジオウが仰向けになって倒れているのを見て葛葉がニッ、と笑う。

 

「あ、そういえばリゼ達の方は大丈夫かな」

 

ジオウが変身を解いてゆっくりと立ち上がる。その言葉に葛葉もハッ、と叶達がいたはずの教室へと振り返った。

 

「葛葉!」

 

叶達がいた教室は一部、やきこげたように炭となっていた。だが、グラウンドの橋の方で叶が葛葉へと駆け寄った。

 

「叶、無事だったか」

 

「まぁね、そっちこそ」

 

葛葉と叶がお互いに拳を合わせた。そしてソウゴの方には月ノ美兎が駆け寄った。

 

「ソウゴさんも大丈夫でしたか?」

 

「なんとかね……それより委員長的には俺の力はどうなの?」

 

「え……まぁ、そうですね。まだ力は未知数な所が多いですが筋は完璧です。ですが、どこでそのような動きを?」

 

「う〜ん……なんでか知らないけど身体が覚えてる気がするんだよね……」

 

なるほど、とソウゴの言葉に月ノ美兎が顎に手を当てて何かを考え込んだ。

 

「委員長、どうしたの?」

 

その様子にソウゴが首を傾げる。だが、月ノ美兎はソウゴの声が聞こえていないのかまるで何かを考えてるかのように虚空を見つめていた。

 

「ソウゴさん、貴方は───」

「まぁ、今回は色々とあったけど皆もソウゴのライバーとしての能力は異論はないな!」

 

月ノ美兎の言葉に覆いかぶさるように楓が大きな声で言葉を発する。

 

『…………』

 

「よし、じゃあ解散!」

 

楓の言葉に周囲のライバー達は何も言わなかった。それを楓は肯定と受け取ったのか解散の合図を出した。

 

「なぁ、ソウゴ。連絡先交換しようぜ」

 

ぞろぞろとライバー達が解散する中、葛葉がソウゴの方に駆け寄って携帯端末を取り出した。ソウゴもいいよ、と呟き自分の携帯端末を取り出す。

 

「ちょっと、でろーんさん。いいんですか?ソウゴさんに何も聞かなくて」

 

そんなやり取りを少し離れたところで見ながら月ノ美兎が楓へと声を掛ける。

 

「いいの、いいの。だって、鳴滝っていうおっさんが言ったことなんて確証はない。それにそれが本当ならソウゴは最低最悪の魔王となってるはず。けど、今のアイツはそんな風には見えへんやろ?」

 

「確かに言われてみればそうですけど……演技という可能性は?」

 

「ないこともないな。けど、それを突き付けて本性が表してもなぁ……。もし、仮に鳴滝のおっさんの言うようにアイツに世界を破壊する力があるんならウチらがいくら束になっても勝てへんよ」

 

楓の言葉に月ノ美兎も確かに、と頷く。そして楓はだから、と言葉を続けた。 

 

「不確定が多い情報にそんな大勢で動くのは得策やない。なぁ、静凜先輩?」

 

楓がニィッ、と破顔一笑すると二人の後ろにいた女性へと声をかけた。声をかけられたダークブルーのショートカットヘアの女性はコクリと頷くと口を開く。

 

「はい。ですから、今回はお二人に動いてもらうことにします。もう先に二人には了承済みです」

 

静凜の言葉と同時に二人の男女が一歩前へと出てくる。

 

一人は桃色の髪の女性、そしてもう一人は青のメッシュが入ったどこか気怠そうにしている黒髪の少年だった。

 

「リリさんに黛さん……」

 

「リリさんは未来人ですからね。先程の未来についてはどう思ってます?」

 

静凜が桃色の髪の女性、夕陽 リリへと声をかける。

 

「そうですね。少し時間の流れを調べたんですけど不安定な状態です」

 

「不安定、と言うとどのくらいですか?」

 

「かなりと言った方がいいです。私の未来からすれば過去に本来の歴史にない事件や事故が起きても歴史の修正力によって生き着くべき未来に収束するんです。わかりますか?」

 

リリの言葉を助言するように黛 (かい)と呼ばれた青のメッシュが入った男が口を開いた。

 

「えっと……なんで同じ未来に収束されるんですか?」

 

「パソコンと同じですよ。皆さんがファイルやアプリを開くことがあるじゃないですか。例えばなんですけどマウスでファイルなどを開くやり方が二通りあるじゃないですか。左クリックを二回押しと右クリックでメニューを開いてそこから『開く』という項目を押すのと」

 

「はぁ……それがなんの関係が?」

 

「要は歴史はプログラムみたいなもんなんですよ。パソコンだってパソコンのファイルやアプリをどのような方法で起動しても結果的には同じように起動するんです」

 

「なるほど、黛さんのおかげでなんとなくわかりました。ならば、問題ないんじゃないですか?」

 

「そうとは限らないんですよ。鳴滝さんの話からする限り怪人と仮面ライダーは元々は別世界の存在……つまりはイレギュラーなんです」

 

「まぁ、そうですが……」

 

「黛さんの例えを使うならばパソコンに侵入してきたバグなんです。バグだって対応のアプリがなければ排除できませんし、排除できなければエラーが起きて不可解な動作を起こしてしまいます」

 

「俺の得意分野……」 

 

黛がボソリ、と呟く、だが、リリはそれを無視して話を続けた。

 

「鳴滝さんの話を例えで話すとバグを残したままパソコンを動かしているとおしゃかになってしまうというわけです」

 

「つまり世界が壊れるというわけですか……それで静凜さん、どうするつもりなんですか?」

 

「二人に調査をお願いするんです。黛さんとリリさんには原因を探ってもらうんです。黛さんは普通に情報収集なのですがリリさんには過去へと干渉してもらってその原因を調べてほしいんです」

 

「静凜先輩、アンジュも着いて行っていいですか?」

 

静凜の指示が終えると錬金術師の女性、アンジュが同行を申し出た。

 

「え、まぁ、いいですけど。唐突にどうしたんですか?」

 

「え、いや……あんまり大声では言えないんですけどリゼがあの近い未来で危険な目に遭う前にちゃんとした未来に戻さないとなって……」

 

恥しそうに呟くをアンジュ見て月ノ美兎や楓、リリがニヤニヤと口元を緩めた。

 

「じゃあ、アンジュさんにはリリさんと一緒に過去へと干渉して原因を探ってもらいましょう。お二人で解決できそうならお願いします。ですが、危険だと思ったらすぐに戻って来てください。分かりましたね?」

 

静凜の言葉にアンジュとリリがそれぞれ返事をしてコクン、と頷いた。

 

「それじゃあ、準備や調査の方は三人に任せます。わたし達はソウゴさんの方に注意を払っておきます」

 

静凜のその言葉に月ノ美兎や楓、リリ、アンジュ、黛はそれぞれ帰路へとついた、

 

 

 




登場人物解説 その2

仮面ライダーゲンム……『仮面ライダーエグゼイド』にて登場する『宝生 永夢ゥ!』で有名な壇 黎斗(神)が変身する姿。その姿は仮面ライダーエグゼイドと同じであるが色が全体的に黒と紫で構成されている。今回、登場したゲンムの変身者は不明でオリジナルであるかは定かではない。

仮面ライダー武神鎧武……映画『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&鎧武 天下分け目の戦国MOVIE大合戦』にて登場した武神の世界の仮面ライダー。その姿は仮面ライダー鎧武と姿が酷似しておりこちらもゲンムと同じく色が鎧武とは違う。甲冑が赤色で複眼には黒い炎が燃え上がっているようにも見える。こちらは元々、変身者は不明であるため正体はわからない。

漆黒の魔法使い……『小説 仮面ライダーウィザード』に登場する仮面ライダー。こちらもウィザードと同じ姿をしているが名前の通り全身が漆黒である。そしてオリジナルのウィザードと違い一つの指輪だけで様々な魔法を発動させる事が可能。小説での魔法使いの変身者はオリジナルの変身者である操真 晴人の影の部分である。今回登場した漆黒の魔法使いの変身者の言動から本人の可能性が高いがウィザードの世界の漆黒の魔法使いかどうかは不明。

鈴原 るる……にじさんじ学園所属のライバー。美大生であり箱入り娘。ライバーとしての能力は非常に高く、複数のライバーが戦って仕留めきれなかった漆黒の魔法使いを一瞬のウチに無力化するほどの強さを持つ。武器は包丁、持ち合わせている特殊能力は今のところは不明である。

鳴滝……『仮面ライダーディケイド』にて登場した謎の人物。仮面ライダーディケイドこと門矢 士を危険視している。『おのれディケイドォォ!』が有名なのはこの人。今回は仮面ライダーの歴史を守るためと言ってにじさんじ学園にゲンム、武神鎧武、漆黒の魔法使いを呼び出した。

仮面ライダーカブト……未来の鈴原 るるが戦っていた仮面の戦士。その名の通りカブトをモチーフとした戦士で『クロックアップ』と呼ばれる自身の全身にタキオン粒子を張り巡らせる事で時間流を自在に行動が可能となる能力を持つ。変身者はその立ち振る舞いや言動からしてオリジナルの変身者である天道 総司かと思われる。




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赤い閃光の救世主

一部の登場人物解説 ディケイド編

門 矢士……『仮面ライダーディケイド』の主人公。様々な世界を旅する仮面ライダーでディケイドにはジオウにも似た特殊な能力を持っており、様々な仮面ライダーをドライバーに読み込ませる事でその仮面ライダーへと変身することができる。スペックも同等と思われる。なお、彼が写真を取るとその殆どが歪んでいる。そのことについては士は「世界は俺に撮られたがっていない」とのこと


湊 あくあ……ホロライブのライバーでありマリンメイド服のバーチャルメイド。おっちょこちょいのドジっ子。能力は不明、戦闘スタイルはどこかのオンラインゲームの主人公の二刀流スタイル(引用:暁の部ブレイカーズコラボから)

猫又 おかゆ……あくあと同じくホロライブ所属のライバー。猫の獣人で素早い身体能力で戦うところが確認された。好物はおにぎりでよく食べるとのこと




 

 

「アンジュさん、準備はできていますか?」

 

にじさんじ学園のとある教室に二人の女性が佇んでいた。

 

「はい。準備万端です」

 

「それじゃあ、行きましょうか。黛さんの情報ですと怪人達が姿を現し始めたのが丁度一ヶ月前という話なのでその時間に跳びます。いいですか?行きますよ?」

 

「はい。大丈夫です」

 

アンジュの言葉を聞いてリリが手に持っている端末を操作する。彼女、夕陽 リリはこの時代の先の未来から来た人間である。彼女が今、起動しようとしてるのは時空転移システムと呼ばれるもので簡単にいうとタイムマシンのようなものだ。彼女はそれを起動するとそのまま周囲が青い光を放ちリリとアンジュを包み込んだ。

 

 

 

「よし、着きましたよ」

 

青い光に瞼を閉じていたアンジュに声を掛ける。その言葉を聞いてアンジュの目の前に広がる光景は先程とほぼ何ら変わりない教室だった。

 

「本当にここが一ヶ月前の世界なんですか?」

 

「そうですよ。さぁ、行きましょう」

 

ガラガラ、とリリは教室の扉を開けて廊下へと出る。更には校舎を抜けて学園の外へと出ていった。

 

「えっと……黛さんの話では確かここら辺に……」

 

リリが先頭を歩きアンジュが後を着いていく。開けた場所に出るとそこには人が賑わっていた。案外、人がおり親子連れやカップルが複数いるのが二人の目にも入っていた。

 

「くっ……」

 

アンジュがどこか悔しそうな顔をして唇を噛み締めた。

 

「どうしたんですか?」

 

その様子にリリがん、と首を傾げた。そんなリリの問いかけになんでもないです、とアンジュは答えると辺りを見渡した。

 

「どこかに怪人とかいます?」

 

「今のところは……特に……」

 

リリは首横に降って広場を歩き始めた。様子を見るかのように歩き他の人を観察するリリ。アンジュもその後を普通に歩いていった。

 

「う〜ん……今のところ問題なさそうですね。少しお茶でもして様子を見ましょう」

 

その言葉にアンジュは頷いてテラス席のある喫茶店へと足を運んだ。お互い、好みの飲み物を頼むとそのまま外のテーブル席へと座る。隣のテーブル席にちょっと変わった黒い服の男性と白いワンピースを来た女性がいたのをアンジュは目にして少し顔を俯かせる。

 

「はぁ。アンジュさんはそろそろ見つけたらどうなんです?彼氏を」

 

「!いきなりですね、リリさん」

 

ブッ、と飲んでいたものを吹きかけたアンジュだがなんとか口元で抑え込み飲み込むと口を開く。

 

「だって、そんなあらか様にカップルを見て悔しがられても困るんですよ、私が」

 

「あ、すみません……」

 

「好みの男性はいないんですか?」

 

「んーライバー達にそういう目では見えないんですよね」

 

「ベルモンドさんはどうなんです?」

 

「まぁ、優しいし好きですよ。ただ、好みかと聞かれるとそういう意味では違うんですよね」

 

「面倒くさいですね。好みのタイプってどんなのでしたっけ?」

 

「攻めるタイプの人、ですかね。こう……オラオラって感じの」

 

「へぇ〜。にじさんじライバーの中にはいないんですか?」

 

「どれもピンと来ないんですよ」

 

とアンジュがそう言ってストローを口に加え、飲み物を飲み始める。

 

「未来人のリリさんならわかるんじゃないんですか?」

 

「私がそういうことに関して口にすると思います?」

 

「あっ……」

 

とアンジュは何かを察したかのように声を漏らし黙り始めた。

 

そんな乙女の会話を終え数十分後、待っていた事が起こった。

人が暮らす街に四体もの灰色の怪人が広場へとやってくる。

 

「うわぁァァァァァ!!」

 

その事に気付いた一般市民が阿鼻叫喚して走り逃げる。その叫びを聞いたリリとアンジュガタ、と席を立って叫びの方向へと降り向いた。

 

「なっ……!」

 

アンジュの目に入ったのは怪人に人々の命が奪われる光景。そして、その亡き人となった身体が灰へと変わり形を無くして行くのだ。

 

「アイツらっ!」

 

アンジュは怒りに震え拳を握る。そして一歩前へと踏み出した。

 

「アンジュさん、待ってください。怪人たちの力は未知数。それでも行くんですか?」

 

リリがアンジュを呼び止める。

 

「何を言ってるんですか、今更。私達はライバーですよ。今まで相手の能力がわからなくても戦ってきた。同じですよ、これからも」

 

アンジュがそう言って足を動かし駆けた。戦うべき相手へとそのまま突っ走り思い切り拳を突きつけた。黄金の鉱石を纏ったアンジュの拳がそのまま灰色の怪人を吹き飛ばす。

 

『……!』

 

吹き飛ばされた怪人を見て他の三体の怪人が警戒してアンジュの方へと振り返る。

 

「まぁ、とりあえずこの怪人達を倒してから調査を続けましょうか」

 

ブォンとリリが桃色の光の剣を取り出すとアンジュの横に立つ。

 

三体の内、一体がアンジュの方へと襲い掛かりそう残った二体がリリの方へと襲いかかった。

 

「っ!」

 

アンジュの左腕から黄金の鉱石が展開し盾へと形成され怪人の拳を防ぐとそのまま右拳を突き出した。そのままよろける怪人に対してそのまま左腕の盾でさらに殴り着けると右腕に纏っていた鉱石が鋭い刃へと変形する。

 

「ハァっ!」

 

短い気合の声と共に刃を振り下ろす倒すとまでは行かないが怪人の体に傷をつけることは成功する。

 

 

 

「二体一はさすがに未来人でも全て対応はできないんですけどねッ!!」

 

リリの方では片方の怪人の攻撃をなんとかライトセイバーらしきもので受け止める。そしてもう片方の方は半透明の青く四角いシールドのようなものを展開して怪人の拳を防ぐとそのまま右足のローキックを叩き込み吹き飛ばす。

 

「ちょっと、おとなしくしといてください!」

 

リリが左手で何かを操作するように虚空を触れる。操作をし終えた直後、吹き飛ばした怪人の身体が地面へと固定された。

 

「とりあえずまずは一体ずつ、ですね」

 

そう言って右手のライトセイバーでなんとか防いでいた怪人の方へと集中する。

 

 

 

状況は今のところ優勢だった。だが、最初にアンジュに吹き飛ばされた怪人は起き上がると雄叫びをあげアンジュへと拳を振るう。

 

「ぐぅっ!」

 

アンジュが左腕の盾へとでその拳をガードする。盾こそ壊れなかったものの衝撃が非常に強くそのまま後ろへと身体が持ってかれる。地面で一回転して転げ落ちる。

 

「……離せっ!」

 

そして怪人はアンジュの首を掴むと身体を持ち上げる。アンジュは右腕の刃で掴まれた腕を切り下ろそうと振り下ろす。だが、もう一体の怪人にその腕を掴まれそのままアンジュの腹に拳をめり込んだ。

 

「こういうの趣味じゃないんだけどなっ」

 

そう言ってアンジュが自身の腕を掴んでいる怪人を睨みつけた。

 

「アンジュさん!」

 

リリがアンジュのピンチを目にして相手をしていた怪人を振り払うとそのままアンジュ達の方へと駆け出す。

だが、そんな彼女の前に現れるとのは先ほど彼女が拘束していた怪人だった。

 

「なっ、何故っ!」

 

拘束していたはずの敵が目の前に現れた事に驚きを隠せず一瞬、硬直する。その隙をついて怪人はリリの頬に裏拳を繰り出した。

 

「カハァッ!!」

 

グルリ、と後ろへ吹き飛ばされそのまま地面に叩きつける。彼女の視線の先には怪人を拘束していたはずの場所が目に入る。

 

「そうか、脱皮を……」

 

彼女の目に映るのはあの怪人の形をした灰色の破られた皮が残っていた。

 

納得したように頷き身体を起こす。そのまま彼女はライトセイバーを構えた。怪人が飛び上がりそのまま彼女へと迫る。殺そうとする怪人の手刀がリリへと迫る。

 

「───変身!!」

 

《ライダータイム!》

 

《仮面ライダー!ツクーヨミー!ツ・ク・ヨ・ミ!!》

 

直後、透き通るような凜とした声と可愛らしい音声がリリの耳に届き手刀を振り下ろす怪人を上段蹴りで突き飛ばした。

 

「大丈夫!?」

 

三日月を模した仮面の女戦士は振り返りリリに声を掛ける。

 

「え、あ、はい。えっと、貴女は?」

 

「私はツクヨミ。訳あってここにいるんだけど話はあと。まだ、戦える?」

 

ツクヨミと名乗った女戦士がリリへと声をかける。リリはコクリと頷いた。

 

「はい。助けてくれてありがとうございます」

 

「流石に二体一は分が悪いでしょうから片方は任せて頂戴。ハァっ!!」

 

ツクヨミはそう言ってそのまま拳を怪人へと突き付けた。

 

「わかりました。気を付けてくださいね!」

 

リリはそう言ってライトセイバーを構えると脱皮した怪人を斬りつける。更にはよろけた瞬間を狙ってそのまま突きを繰り出した。

 

 

 

振るわれる拳にアンジュは目を見開いた。さすがにまずい、と理解するが抗う術が残されていない。死ぬんだ、と小さく呟く。迫る拳を見て頭によぎった親友に謝罪の言葉を述べる。

 

「───変身!」

 

《ライダータイム!》

 

《仮面ライダーゲイツ!》

 

アンジュへと振るわれる拳を『らいだー』と仮面にかかれた戦士がガシリと腕を掴むともう片方の手で怪人を殴りつける。その反動でよろめきアンジュを手から離してしまう。

 

「貴方は?」

 

カハッ、と喉元を抑え息を整えると仮面の戦士の背を見つめて問いかける。

 

「ゲイツだ。下がっていろ。コイツの相手は俺がする」

 

ゲイツと名乗った戦士はアンジュの方に見向きもせずに短くそう答えた。

 

「そういうわけにも行かないんだよな。アンジュにはコイツラを倒すっていう明確な目標があるから」

 

アンジュはそう言ってゲイツの隣へと立つ。その様子を見てゲイツはフン、と鼻で嗤う。

 

「好きにしろ。ただし俺の邪魔はするなよ」

 

ゲイツがそう言って腕に装着されたホルダーからあるものを取り出した。

 

「お前達にはこれがよさそうだな」

 

《ファイズ!》

 

ゲイツの手に握られているのはソウゴが持ってるライドウォッチとよく似たものだ。ゲイツがそれを起動し戦士の名を告げる。

 

夢を守り、灰色の怪人『オルフェノク』と戦う戦士。闇を切り裂き、光をもたらす救世主、仮面ライダーファイズの名を。

 

ゲイツは腰のジオウと同じジクウドライバーのD'3スロットへと装填しライドオンリューザーを押し込み。クルリ、とジクウドライバーを回転させる。

 

《アーマータイム!》

 

《 Complete 》

 

《ファイズ!》

 

目の前に現れる黒き戦士。仮面ライダーファイズの鎧。それはゲイツの鎧となって一体化した。両肩には携帯電話と思われるものが存在し、顔には『らいだー』ではなく『ふぁいず』と表記されていた。

 

「すげぇ……」

 

その様子を隣で見ていたアンジュがボソリと呟く。だが、そんなアンジュを無視してゲイツは灰色の怪人『オルフェノク』へと駆け出すとそのまま拳を振るった。

対するアンジュも負けずと黄金の拳を振るう。

 

「さっきは二体一だったが今度は違うからなぁっ!」

 

さらに黄金の鉱石を纏った右足のローキックがオルフェノクへと叩き込まれる。

 

「んじゃあ、そろそろ決めっちゃおっかなぁ」

 

アンジュがわざとらしくそう言ってオルフェノクに左手の手のひらを向ける。彼女の左手腕とオルフェノクの身体から金色の魔法陣が展開する。

 

「私は錬金術師だからね。得意なのは物質を錬成することなんだよ」

 

「しかも錬成した物質は自然の物質とは違い思いのままに創って操れるわけなんだけど」

 

アンジュがそう言って細目でオルフェノクを睨む。いつの間にオルフェノクの身体には黄金の鉱石が浸食していき肥大化していっているのだ。

 

「そしてもちろん、破壊することもできるんだよね。私の錬成した物質に身体が侵食されてるお前はつまりそういう事───それじゃあ」

 

左手をグッと握るアンジュ。それと同時にバキバキャバキ!とオルフェノクの身体が砕けちり灰、と黄金の鉄塊がその場に砕け散った。

 

 

 

「ハッ!」

 

ツクヨミがそのまま蹴りを繰り出してオルフェノクを吹き飛ばす。そのままツクヨミはD'9スロットに装填されているウォッチを起動させた。

 

《フィニッシュタイム!》

 

そしてそのままドライバーのライドオンリューザーを押して解除しそのままドライバーを回転させた。

 

《タイムジャック!》

 

ツクヨミが跳躍し右足を突き出す。月光の光を纏った彼女の蹴りはそのままオルフェノクを吹き飛ばした爆発させた。

 

「こんなものかしら」

 

ツクヨミがそう言ってそのまま生身の姿へと戻る。あまり、ゲイツに比べると仮面ライダーとしての戦闘経験が少ない彼女。だが、彼女にはそれらに劣らない力を持っている。

 

 

 

「とりあえず彼女が何者かはわかりませんが未来人は貴方を倒す事に宣言しましょう。次は油断しませんからね」

 

直後、いつの間にかオルフェノクと対面していたはずのリリの姿がオルフェノクの背後をとっておりそのまま斬りつけた。

 

「私の力はあんまり目立たないんですが様々な能力を持っていましてね。と言っても殆どが未来の技術なんですが」

 

そんなリリの言葉を無視してオルフェノクがそのまま彼女に拳をつき出した。だが、それはリリには届かずバリアによって防がれる。

 

「それじゃあ、今日はここまでにしましょう」

 

その言葉と共に気付けばオルフェノクの身体には無数のライトセイバーが突き刺さっていた。

そして彼女は何かをオルフェノクに投げつける。それは見えない壁に描かれた絵と言っても納得してしまう「BOMB」と書かれた丸いホログラムが彼へと投げつけられた。

 

ドォォンっ!と、オルフェノクの目の前で爆発が起こる。その爆発はホログラムなどではない。紛れもなく本物だった。

 

灰が崩れ落ちる中、彼女は涼しい顔でその場を後にした。

 

 

 

「フン!」

 

ゲイツがオルフェノクの拳を掻い潜ると懐に向けて拳を振るう。それは当然の如く腹に吸い込まれて後退らせた。さらに追撃をかけるようにその場で飛び上がるとそのオルフェノクに後ろ回し蹴りを食らわせた。

 

「…………」

 

ゲイツはオルフェノクを見て携帯電話を取り出すと「5」「5」「5」「ENTER」を入力する

 

《 LADY 》

 

《 POINTER ON 》

 

電子音声と共にゲイツの右足にある機械『ポインター555』が出現し、装着される。

 

《フィニッシュタイム!》

 

《ファイズ!》

 

そしてゲイツはベルトに装填された二つのライドウォッチを起動させそのままジクウドライバーを回転させる。

 

《エクシードタイムバースト!》

 

ジクウドライバーからなる音声と共にゲイツが構えた。中腰となって狙いを見定める。ベルトから右足にかけて見える赤い線に光が走る。

 ファイズが駆け出し跳躍する。その場で一回転して両足を揃えてポインター555がオルフェノクの身体を捉えた。ポインター555から射出されたマーカーがオルフェノクへと突き刺さり円錐状のマーカーへと展開しオルフェノクの身体をその場に固定した。

 

「ハァァァッッ!!」

 

そのままオルフェノクに向けて硬化するゲイツは赤い閃光を右足に纏いそのままオルフェノクへと蹴りを繰り出す。

 

小さな爆発と共にオルフェノクの身体が吹き飛び地に墜ちる。墜ちたオルフェノクの身体から浮かび出る赤い「Φ」の記号と共に、青い炎を全身から発して灰へと変る。

 

少しだけそちらの方を向いてその様子を確認したゲイツは変身を解除する。すると少ししてからゲイツの元にツクミヨ、アンジュ、リリが駆け寄った。

 

「助けていただきありがとうございます」

 

リリがペコリと丁寧にお辞儀をして頭を下げる。

 

「ありがとう……」

 

その様子を見てアンジュも口を尖らせ顔を横に向けて礼を述べる。その態度を見てリリが彼女の名を叫んで注意をし始める。

 

「気にするな。そんな頭下げられてまで謝ってもらうことじゃないしな。感謝されたくて助けたわけじゃない」

 

「ふ〜ん……そういえば君達のソレ、ソウゴの奴と似てるよな」

 

「……!」

 

アンジュがゲイツやツクヨミが持っているライドシェアを指差して呟いた。その言葉にゲイツとツクヨミがピクリ、と眉を動かした。

 

「お前、名前は?」

 

「え、名乗らないと行けないの?アンジュ、ここら辺にでは美少女で有名なんだけどなぁ」

 

「そうか、アンジュというのか。そっちの方は」

 

しまった、と心の中で舌打ちをするアンジュ。いつもの癖で自分の名前を出してしまったことに後悔する。

 

「あ、私ですか。にじさんじ学園所属の夕陽 リリです」

 

「ウチらも名乗ったんだからそっちの方こそ名乗ってくれないかな?」

 

リリがアンジュを叱るように彼女の名前を叫ぶ。

 

「ゲイツ。明光院 ゲイツだ」

 

「ツクヨミよ。よろしくね」

 

二人が名乗る。そしてゲイツが間一髪入れずに口を開いた。

 

「本題に入るがお前達。この時間の人間ではないな。何者だ?」

 

「ちょっと、ゲイツ!」

 

「な、なんのことかわかんないなぁ」

 

ツクヨミの警告するような声を無視してゲイツはギロリとアンジュとリリが睨みつけた。

 

「嘘が下手か!あっ……」

 

ヤバッ、とリリが口を滑らせ口元を抑えた。その様子にアンジュもあちゃーと後頭部を掻いた。

 

「……見たところ、この時間に来たという事はお前達も原因を探りに来たのだろう」

 

「"も"と言うことは……」

 

リリが恐る恐るゲイツ達の顔を伺うように視線を泳がす。

 

「ごめんね、警戒させちゃって。実は私達もこの世界で起きた異変を調べているのよ」

 

「でも、なんでウチらが別の時間から来たって渡ったの?」

 

その言葉にゲイツが自身のゲイツライドウォッチを彼女達に見せる。

 

「……?」

 

「ソウゴがライドウォッチを手にするのはここから一ヶ月後の時間だ。俺がさっき確認したところソウゴはこの時間ではにじさんじ学園に所属する普通の高校生だ」

 

「ふ〜ん……ん?」

 

アンジュがその言葉を聞いてどこか違和感を感じた。

 

「もしお前達がソウゴの知り合いならソウゴがライドウォッチを持っている時間の人間ではないとおかしいという話になる」

 

「…………」

 

その言葉にアンジュの額に汗が浮かぶ。その様子を見てリリが呆れた視線でアンジュを見つめた。

 

「仕方ありません。全てお話しましょう。と言っても語れることはそんなに多くないですけど」

 

リリはそう言ってゲイツとツクヨミと向き合いこれまでの事を話した。

仮面ライダーの世界とバーチャル世界が融合した現在の状況。近い未来、仮面ライダーとライバーが滅ぼし遭う事。そして常磐 ソウゴが最低最悪の魔王になる事を。

 

「最低最悪の魔王、だと……?」

 

ゲイツが疑うような目で二人を睨む。

 

「確定、とまでは行きませんがそうなる未来がありえるという話ですね」

 

なるほどな、ゲイツが呟き顎に手を当てると何かを考え始める。

 

「アタシらの言葉信じるの?」

 

「最低最悪の魔王っていうのは私達は見たことがあるから。恐らくそれと同じ存在よ」

 

その言葉にツクヨミがコクリと頷く。

 

「あの、ゲイツさん達の目的は原因を突き止めてこの世界を元に戻すことなんですよね?協力しませんか?」

 

その言葉にゲイツとツクヨミはお互いの顔を見合わせた。

 

「私は賛成ね。二人じゃできることが限られてるし人手が増えるのは悪いことではないわ」

 

「……いいだろう。だが、お互いちゃんと情報を共有してくれるのならばだ」

 

「ですよね」

 

とリリが少し笑うように微笑む。リリとゲイツが協力関係を結んだ証に手を握り合う。

 

 

 




今回の主な登場人物解説

明光院 ゲイツ……『仮面ライダージオウ』の二号ライダー。元々、最低最悪の魔王になる常磐 ソウゴを倒すために未来からやってきた。はずだったのが段々とソウゴの人格に惹かれ最後はソウゴを庇って死亡した。だが、ソウゴが創り直したことによって生存してことになる。尚、本編ではゲイツが死ぬ描写が二度もある模様。

アンジュ・カトリーナ……ヘルエスタ王国の錬金術師(ライバーでもある)。リゼの幼馴染。能力は物質を錬成する事で錬成した物質。思いのままに操れる。この能力を使って相手の体内に物質を錬成させて身体を崩壊させることも可能。尚、ことあるごとに危険を感じると「死ぬんだ」と口走る事が多い。

ツクヨミ……『仮面ライダージオウ』のヒロイン(一応)。最初はゲイツと同じく未来から来た女性だが、後に別の世界の人間だった事が判明する。こちらもゲイツと同じく死亡したがソウゴ之力によって生存したことによる。また、仮面ライダーに変身する以前に時を止める能力を持っている。

夕陽 リリ……にじさんじ学園所属のライバー。バーチャル世界の月ノ美兎達からすれば未来の時間からやってきた少女。能力はまだ不明だが、未来の技術を使用して様々な戦い方を見せる。



未来人しかいねぇな(


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馬・面・学・園


やっとアイドル部かけた(
めちゃくちゃ時間かかった。ちょっと、わかりにくいのは許してください(



───私立ばあちゃる学園

 

新年度が始まりばあちゃる学園の体育館にて始業式が行われる。中高生合わせて600は超える生徒が体育館に並んで壇上の方を見ていた。

 

「えー本日も大変お日柄も良く……え、そういうのはいらない?あーはいはいはいはい。皆さん、春休みは如何お過ごしだったでしょうか。まぁ、皆さんがここに来ているということは元気だという証拠なんですけどね。はい」

 

その壇上の中心に立つ馬のマスクを被った青いスーツ姿の男。これが学校の関係者だと言うなら巫山戯てるとしか思えない。

 

「どーもー。私立ばあちゃる学園の学園長。ばあちゃるくんです。ハイハイハイハイ」

 

ばあちゃると名乗った男は両手を上げて体育館にいる生徒たちに手を振った。自らを学園長と名乗るその男は普通の学校ならばこのような態度は許されない。だが、この男はそのような行動を簡単に起こす。そんな学園長の行動を見て生徒達もクスクスと笑う。

何度も見た学園長の挨拶に笑い、怒る者は殆どいなくなった。もはやこれが恒例行事となっているのだ。

 

「はい。えーっとですね。ばあちゃるくんからの話はあんまりないんですけどまずはですねこちらに新しく赴任してきた先生を紹介しようと思います。それじゃあ、どうぞー!!」

 

ばあちゃるくんが声を張り上げて舞台裏にいる彼に手招きをする。手招きをされてやってきた人物の姿に目をギョッと開いた。

全生徒の視線がその人物の上へと吸い込まれる。昭和の不良がするリーゼントと呼ばれる髪型。本来であれば先生がするような形ではない。全生徒が彼の髪型を見て息を呑む。

 

「えっと、彼はですね。新天ノ川学園高等学校からこちらに赴任してきた如月 弦太郎先生です。皆さん仲良くしてくださいねー!」

 

はい、それじゃあ挨拶をお願いします。とばあちゃるが言うとマイクを彼に譲った。

 

「よっと、あー皆聞こえるか。マイクは問題なさそうだな。新天ノ川学園高等学校からこの私立ばあちゃる学園に赴任してきた如月 弦太郎!」

 

ニィっ、と弦太郎が笑う。

 

「この学校の皆と友達になる男だ!」

 

弦太郎がそう言って自身の左腕を軽く二回叩く。そしてそのままその腕を前へと伸ばした。ガチャン、と体育館のスピーカーから大きな音が聞こえる。

 

「あっ……」

 

生徒達がその音にビクッと驚く中、弦太郎はやっべと呟いた。彼の目の前ではマイクが倒れ机に転がっていた。

 

「学園長、すまねぇ!マイク倒しちまった!!」

 

弦太郎がばあちゃるの方に振り向いて両手をパン、と合わせて頭を下げる。

 

「ゲンゲンが謝ることじゃないっすよ。それはねそこに置いたばあちゃる君が悪いんですから」

 

「いや、悪いのは俺だ!俺はそこにマイクがあるのをわかってて腕を伸ばした。だから、悪いのは俺だ!!」

 

「じゃあ、そういうことにしておきましょう。次からは気を付けてくださいね」

 

「うっす。おっと、悪い自己紹介の最中だったな。まぁ、でももう話す事はないんだけどな。まぁ、俺は如月 弦太郎だ。覚えておいてくれ!」

 

弦太郎の言葉と一連の出来事に色んな生徒が笑いを飛ばした。よほど、今の出来事が面白かったようだ。

 

「はいはい、ゲンゲンありがとね。えー無事今学期が始まったんですが最近は何かと物騒な事件が多いんでね。えー特ににじさんじ学園さんとかホロライブさんの近くで現れた変な奴らがこのばあちゃる学園を襲ってくるかもしれないんでね。皆さん、帰りは気を付けてくださいねー」

 

ばあちゃるはメモを見ながら話を続ける。

 

「まぁ、長話はこれくらいにして皆さんちゃんと勉学に励んでくださいねー。あ、それとちゃんと遊ぶことも大事ですよ。勉学ばかり集中してぶっ倒れたら元も子もないんですからねー。以上、ばあちゃるくんの話は終わります。フゥー↑!!」

 

ばあちゃるが謎のテンションの上げ方をするとそのまま一礼をして壇上から降りようとする。そこであっ、と思いだしたかのように呟くとマイクに向かって一言。

 

「えー、始業式が終わったらですね。アイドル部の子達にはお話があるので体育館に残ってくださいね」

 

 

 

アイドル部。私立ばあちゃる学園に存在する部活の一つ。アイドル部に所属してる子は中高生合わせて12人が所属している。活動内容はその名の通り偶像(アイドル)を目指す部活動だ。

 

「それでばあちゃるさん、アイドル部は体育館に残りましたが……」

 

12人もいる少女達がいる中、長い黒髪の少女がばあちゃるを疑うような目で見る。隣の人物も一緒に。

 

「はいはいはーい。皆もね、隣にゲンゲンがいることで察した子もいるんじゃないでしょうかね。そうです!ゲンゲンにはねアイドル部の副顧問をやってもらいます!!」

 

「おう、よろしく!」

 

弦太郎が軽く右手を上げて挨拶する。そんな彼の挨拶を他所に殆どの少女達がばあちゃるの言葉に唖然とした。

 

「馬P、どういうこと!?」

 

ばあちゃるの言葉に巫女服を着た金髪ツインテールの少女が声を張り上げた。

 

「えっーと、ばあちゃるくんはですね。最近、変な事件が起きてるせいで忙しくなってんすよ。それでですね、今後アイドル部の活動に顔が出せなくなることが多いんすよね」

 

そんなばあちゃるの言葉に全員が殆ど顔を出してないだろ、と頭の中で訴えていた。

 

「それに最近、何かと物騒なんでね。みんなに危険な事に巻き込みたくないんすよ。そこでばあちゃるくんは念の為、アイドル部の副顧問をゲンゲンにお願いしたんですよ」

 

その言葉に巫女服の少女がなるほど、と納得する。

 

「その理屈はなんとなくわかるけど、馬P。如月先生で大丈夫なんですか?」

 

赤いドレスを着た銀髪の少し不満のある言い方をしながらばあちゃるに問いかけた。

 

「そこは安心して大丈夫ですよー。なぜならですね、ゲンゲンは前の学園ではなんか凄い部活の顧問だったらしいんでね」

 

「仮面ライダー部のことだな!」

 

ばあちゃるの言葉に弦太郎がニッと笑った

 

「かめん、ライダー……部?」

 

「おう!学園と地球と宇宙の平和を守る部活だ」

 

ドンドンカッ、と自身の胸を叩いて拳を前に突き出して自慢げに話す弦太郎に殆どの少女達が呆れたように彼を見つめた。

 

「まぁまぁまぁ、みんなそんなに不安がる必要はないでしょう。これでもゲンゲンは立派な先生なんですから」

 

そう言ってばあちゃるは弦太郎の前に立つと少女達を宥める。

 

「まぁ、それに話はこれだけじゃあないんすよ」

 

「最近の変な事件、のことですか……?」

 

そこで小柄な紫色の髪の少女がボソリと呟く。

 

「流石きそきそですね。正解です。実は言うとですね見たことない生命体が人を襲ってるようでですね。それでですねアイドル部の子たちには気を付けてほしいというかなんというか……」

 

「見たことない生命体?」

 

「まぁ、そうですね。どちらかといえば怪物(クリーチャー)に近いんすけど。とりあえずみんな気を付けてくださいよー!」

 

「なんで私達だけの話になるんです?他の生徒達にも言わないんですか?」

 

「あんまり言えないんすよ。全生徒を不安がらせてしまって不登校の生徒を増やしてしまったら学園側からしたら溜まったもんじゃないっすからね」

 

少女達の質問を返し終えた馬の動きが急に静かになると少し低めのトーンで再び口を開いた。

 

「まぁ、逆を言えばアイドル部の子たちには少し一仕事してほしいんすよね」

 

「一仕事……?」

 

「はい。もし、生徒が怪物に襲われていたら助けてほしいすよ。ただし無茶は禁物です。これはライバーであるアイドル部の子たちだから頼めるんすよ。それと同時にばあちゃる学園の一生徒なんでものすごい怪我なんてされたらばあちゃるくんやシロちゃんが悲しいんすよね」

 

先程のチャラい感じの雰囲気とは違い、真剣な眼差しでアイドル部の少女達を見つめる馬に全員が息を呑む。

 

「頼んでも大丈夫ですか?」

 

ばあちゃるの言葉を聞いて数秒後の沈黙が流れた後、全員か縦に首を頷かせた。

 

「それじゃあ、解散です。くれぐれも無茶はしないでくださいねー!!」

 

体育館の出ていく少女達を見守るばあちゃるは彼女達の姿が見えなくなったことを確認すると弦太郎の方へと降り向いた。

 

「それではゲンゲン、アイドル部の子たちの事頼みますよ」

 

「任せろ!俺はアイドル部の副顧問、如月 弦太郎だ。ばあちゃる学園の生徒は俺が守る」

 

クイッ、と弦太郎が左手でリーゼントの髪を撫でるとばあちゃるに笑った顔を見せた。その笑顔を見てばあちゃるはどこか安心感を覚えた。

 

 

 

 

 

「───最悪です……」

 

アイドル部の一人である長い黒髪の少女、八重沢 なとりが部室に入ってきて早々愚痴を零す。

 

「なとなと、どうしたの?」

 

先に部室に来ていた巫女服の少女、金剛 いろはが気にかけるように彼女に声をかけた。

 

「いろはさん、聞いてくださいよー。私のクラスの新しい担任、誰だと思いますぅ?」

 

いろはが座っている机に自身の上半身を寝転がすと少し悲しそうな声で喋りだす。

 

「う〜ん……誰だろ?」

 

頭にはてなマークを浮かべて考え込むいろは。だけど、どうやら答えが中々わからないようで言葉が詰まる。

 

「如月先生なんですよー」

 

少し嫌そうに答えるなとり。その言葉にいろははなるほどと納得した。

 

「確かに嫌なのはわかるけど、あの先生。怖そうだったり、悪そうな人には見えないよ」

 

髪型がリーゼントだけど、といろはか彼の第一印象を口にする。

 

「そうですけど、HRの時なんてあの先生。めちゃくちゃ言ってましたからね。青春がどうのとか……」

 

「青春って……昭和じゃないんだからww」

 

なとりの言葉を聞いていろはが自分特有の異様な笑い声をあげる。そんな様子を見てなとりがはぁ、と大きな溜め息を付く。

 

「にやっはろー!」

 

なとりが溜め息を付く中、部室の扉が開けられ複数の少女達が入ってくる。筆頭の猫耳が生えた金髪の少女、猫乃木 もちが元気な声で挨拶をした。

 

「あれ、お米お姉ちゃん。どうしたんですか?そんなごんごんお姉ちゃんの机で寝っ転がって……」

 

その様子を見てもちに続いて入って来た紫色がかかった白髪の少女、カルロ・ピノがひょっこりと首を傾げた。

 

「あーさては。あの噂の如月先生が新しい担任になったとか?」

 

「もちさん、エスパーか何かですか?」

 

「にゃははは、まさか当たるとは。にしてもあの先生、ウチのクラスではすごい話題になってるよ」

 

「あ。その先生、イオリのクラスでも話題になってる。リーゼントの髪型の先生だからかな?」

 

もちが自身の尻尾を振りながら話す。その話題に着物を着た青い髪の少女、ヤマト・イオリが話に入ってくる。

 

「確かにそれはあるかもねー。ちえりとしてはあの先生、アイドル部の副顧問で大丈夫なのか心配なんだけどなぁ」

 

そして茶色髪のツインテールの少女、花京院 ちえりも話に入ってきた。

 

「あー、それいろはもわかる気がする。なにせこの部員、個性が強すぎるもん」

 

能天気に話すいろはに全員の視線がいろはの方へと向けられる。お前もなと言わんばかりの鋭い視線がいろはに刺さる。

 

「うっーす。ここがアイドル部の部室か!!」

 

「お、噂をすればなんとやらだね」

 

そんな視線に気付かないいろはが元気よく入ってきた人物を見た。他の少女達も自然といろはが見ている人物へと視線が移る。

 

「よっ」

 

弦太郎が軽く右手を上げて挨拶する。だが、そんな彼の挨拶に反応する者はいない。

 

「どうした?」

 

不思議に感じて弦太郎が首を傾げる。殆どの者が怪しげな目で弦太郎を見ていた。

 

「先生。さすがにその挨拶はどう返せばいいかわかんないよ、皆」

 

いろはが弦太郎をフォローするようにアドバイスを送る。

 

「っと、すまねぇ。じゃあ、こんにちはでいいか?」

 

「それはどちらかとこっちがする挨拶なんですけどね」

 

「そうか?じゃあ……」

 

むむむ……と弦太郎が頭を悩ませる。そこで誰かが入ってくる。

 

「ん?」

 

と弦太郎がそちらの方を振り向く。彼の目に入ったのは複数の少女達だ。

 

「こ、こんにちは……」

 

緑色の髪の少女、神楽 すずが小さくして入ってくる。その挨拶に彼はおう、と答えた。それに続いてアルパカの耳が生えたキメラの少女、もこ田 めめめが小さく頭を下げる。そしてさらに最後にショートカットの金髪の少女、牛巻 りこが入ってきた。

 

「おー、集まってきたな。1、2、3……9。あれ、あと三人は?」

 

弦太郎が人数を数える。ばあちゃるからの話だと全員で12人いるらしい。だが、あと三人足りない様子だ。

 

「たまさん達は生徒会室に「生徒会室だな!」───って言っちゃった……」

 

ガラガラと扉を開けて弦太郎が部室を去って言った。

そんな光景にアイドル部の少女達は苦笑する。

 

「元気な先生だったねー」

 

「あんな先生っているんだ」

 

「あの先生ってどこから来たんだっけ?」

 

「確か、天ノ川学園……って言ってませんでしたっけ?」 

 

「聞いたことない学園ですね。ちょっと調べて見ませんか?」

 

部室はそんな彼のいた学校で盛りあがっていた。

 

 

 

 

 

「そういえばたまさん、あの新しい先生をどう思いで?」

 

どこか気怠そうな雰囲気を放つ紫色の髪の少女、木曽 あずきが赤いドレスを着た銀髪の少女、夜桜 たまにへと話しかけた。今日の生徒会の仕事を終え、アイドルでの部室へと向かうためにあずき、たま、そしてピンク色の髪のツインテールの少女、北上(きたかみ) 双葉の三人が歩いている。

 

「んーどうって言われてもなー。なんか変わった先生だなって。双葉ちゃんはどう?」

 

そう言ってたまから見てあずきの反対側を歩いている双葉に問いかけた。

 

「んー。元気な先生だなってぐらいだけかな。言い出したあずきちゃんはどうなの?」

 

「あすぎは皆さんがなんでそんなに話題にするのかわかんないなって思います。別にこの学園からしたらそういう人って普通、と思います」

 

確かに、とあずきの言葉に頷く二人。確かに自分の周りの者を思い返すと個性が強いものばかりでそんなに騒ぐほどでもない。

 

「───あのたまさん、双葉さん。少し部室まで競争しましょう。二位とビリはホラゲーやるって事で」

 

「「えっ!?」」

 

唐突のあずきの提案に二人は目を丸くしてあずきを見た

 

「あ、拒否権はないですよ。よーい……」

 

そんな二人の反応にあすぎは気にせず言葉を続ける。

 

「スタート!」

 

ダッ、とあずきの言葉にたまと双葉は二人は一斉に走り出した。そう、二人だけ。

 

「っ!」

 

言い始めたあすぎはと言うと背後へと振り返り、何かと対峙した。生徒会室を出てからずっと自分達を監視していた存在。

 

 いつの間にかあすぎの手には紫色の杖が握られておりその存在をこの目で確認する。

 

「なるほど。最近、例の噂の怪物(クリーチャー)ですか」

 

あすぎは天井を見上げる。そこには人サイズの竜が天井に張り付いていた。その姿形や体制からはどことなく蜥蜴(トカゲ)にも見える。

 

蜥蜴があすぎへと飛びつく。前足を振り上げそのまま彼女へと振り下ろした。

 

「!」

 

あずきが目を見開いてその攻撃を見切る。一歩後ろへと素早く下がって躱す。

 

「なるほど、人型の蜥蜴ですか。興味深いですね」

 

あずきの前で二足で着地する蜥蜴の怪物。少し彼女は怪物の姿に目を細めた。蜥蜴の顔に蜥蜴の肌。太い尻尾。巨大な爪。それだけ見れば本当に蜥蜴の怪物だ。だが、気になるところがある体のあちこちに青の丸いコアが複数ありそれを結ぶ線がある。あずきはそれをどこかで見たことがある。

 

「その紋様、確か……」

 

「!!」

 

あずきが言い終える前に怪物が動き出す。ものすごい脚力で走り込み、そのまま右手の爪を振り下ろす。

 

「!!」

 

あずきが目を再び見開いて両手で持つ杖を動かした。パシン、と杖を棍棒のようにして右手を弾くとそのまま杖を縦に一回転させるとそのまま怪物の右肩に杖を叩き込む。

 

「っ!」

 

怪物が痛みを感じてそのまま後ろへと飛ぶ。だが、感じただけで大したダメージが入ってるようにも見えなかった。

 

(これはまずいと思います)

 

あずきが怪物を眺めてそう感じた。ここは廊下だ。あずきの戦い方では杖を振り回す程の広さではないのだ。ましてや魔法を使おうとしてもまずは距離を取らなくてはならない。

 

(恐らく、スピードはあちらの方が上。あずきち、どうしましょうか)

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「っ!!?」」

 

そんな事を考えているあずきの背後から大きな影が飛び出す。その人物は大声をさびながら怪物の目の前で小さくジャンプした。

 

「おらぁっ!!」

 

その人物、如月 弦太郎が怪物に大きく頭を振り下ろした。ゴツン!と鈍い音と共に怪物が一歩仰け反った。

 

「大丈夫か!?」

 

よっ、と弦太郎が着地すると心配そうにあずきの方へと振り返った。

 

「えぇ、まぁ、はい」

 

「そうか。なら、早く夜桜の所に行け。俺はコイツの相手をする」

 

「え、ですが……」

 

「心配すんな。コイツは俺が倒すからよ!」

 

自身満々に彼は言った。その言葉になぜかあずきは納得してしまう。コクン、とあずきが頷いてそのまま如月が来た方向へと走った。

 

「!」

 

その光景を見て怪物が追いかけるように走り出した。そんな怪物を弦太郎が全身を使って受け止めると気合の入った掛け声と共に押し返した。

 

「その見た目、ゾディアーツだな。悪いがタイマン張らせてもらうぜ!」

 

ドンドンカッ、と胸を二回叩いて怪物を指差す弦太郎。

 

「…………」

 

だが、怪物は弦太郎の事をまるて相手にしていないかのように彼に背を向けて走りだした。

 

「っ。待てっ!」

 

弦太郎はそれを追うように走り出す。

 

「逃げ足の早いヤローだ」

 

後頭部を掻いて辺りを見渡す。だが、すぐに怪物の姿を見失った。

 

 

 

 

 

「あずきちゃん、遅いよ」

 

「心配したんだから」

 

あずきが部室へと入ると先程、先に行ったたまと双葉が心配した表情であずきを見ていた。

 

「すみません。ちょっと奇妙なものを見ちゃって……」

 

「奇妙なもの?」

 

その言葉にあずきが頷いた。

 

「あれ、そういえば如月先生は?確かあずきちゃんの様子を見にお願いしたんだけど……」

 

「えっと、実は……」

 

「おっ、ちゃんと無事に部室に着いたんだな!」

 

先程の出来事を喋ろうとした時、弦太郎が部室に入ってきた、

 

「如月先生、さっきのは……」 

 

「まぁ、待て。まずはお前らの事を知りたい、話はそれからにしよう。自己紹介してくれねぇか?」

 

あずきが言いかけるとそれを止めるように弦太郎が自己紹介を促した。

 

「はいはい!神社にごんごん!金剛 いろはでーす!!」

 

そんな弦太郎の言葉に待ってましたと言わんばかりに真っ先に名乗りだした。

 

「ヤマト イオリだよー!」

 

「もこ田 めめめだよ!」

 

「牛巻 りこです!」

 

「猫乃木 もちでーす!」

 

「花京院 ちえりだよっ!」

 

「カルロ・ピノと申しますわ」 

 

「八重沢 なとりです……」

 

「神楽 すずです」

 

「北上 双葉だよー」

 

「夜桜 すず」

 

「木曽 あすぎ……」

 

それぞれがテンポ良く短く自己紹介をする。

 

「えっと……とりあえずなんとなくわかった!これからよろしくな!」

 

少し覚えきれてないが弦太郎がニカッと笑う。

 

「それで如月先生。あの怪物はどうなったんですか?」

 

あずきの言葉を聞いた他の少女達が首を傾げた。

 

「ああ、そのことなんだがアイツ逃げちまった」

 

「え、ちょっと、二人だけで話すのやめよう?」

 

「あっと、わりぃ。実は……」

 

たまの割り込みでげんは彼女達に先程の出来事を話をし始めた。

 

「それ、本当ですか?」

 

「はい。見たことない。生命体でした。恐らく今朝言ってたばあちゃるさんの怪物かもしれないです」

 

「なるほど。蜥蜴の怪物。蜥蜴が進化したっていう可能性は?」

 

「あずき的にはその可能性は低いと思いますよ」

 

たま、なとり、あずきの三人で話が進んでいく。他の者達は付いていけず、ただ聞くことが精一杯だった。

 

「理由はあるの?」

 

「はい。その怪物、身体に青のコアが複数埋め込まれていました。そしてそれを繋ぐように線があるのも確認済みです」

 

「えっと、それがどうしたんですか?」

 

へぇ、と弦太郎はあずきの観察眼に感心する。一目でそれを見抜く奴はそうそういない。

 

「まぁ、ちょっと書いて見ますね」

 

あずきが紙とペンを取り出してその噛みに何かを書いている。彼女が見たその怪物にあったコアと線を描いていく。

 

「何これ?ジグザグなだけじゃん」

 

いろはが首を傾げる。いろはと同じチームhooseの二人、イオリもめめめも首を傾げた。

 

「たまちゃんはわかる?」

 

「んー、これだけじゃあちょっと……」

 

「じゃあ、もう一つ点をつけておきましょう」

 

そう言ってあずきはジグザグとは少し離れた処に点をつける。だが、その点はどことも線が繋がらなかった。

 

『????』

 

あずきのヒントにますますわからなくなるアイドル部。そこであずきはチラリ、と弦太郎の方へと視線を移した。

 

「如月先生はわかります?」

 

「星座だろ?えっと……」

 

なんだろうな、と弦太郎が考え込む。その様子を見てあずきが溜め息を着いた。

 

「正解は蜥蜴座です」

 

「蜥蜴座?」

 

「あ、ホントだ」

 

あずきの答えを聞いてもちがスマホを開いて検索した画像と見比べた。

 

「よく知ってるね。あずきちゃん。けど、どうしてそれが蜥蜴の進化と関係ないの?」

 

「考えてくださいよ。なんで蜥蜴が進化した姿なのに身体に蜥蜴座のマークがあるのはなんか違いません?」

 

「まぁ、確かにそれはそうですけど……」

 

「あれは蜥蜴が進化した姿と関係ない。そうでしょう、如月先生?」

 

あずきがじっと弦太郎へと振り向いた。その様子に弦太郎がニッと笑う。その表情に全員が身構えた。

 

「すごいな、木曽!俺はアイツ等を見て最初は何もわかんなかったのに!!」

 

「アイツ()ということはああいうのが複数いる、と?」

 

「ああ、その通りだ。俺の知るゾディアーツの情報を教えてやる。だからそう警戒するな!」

 

この警戒された状況でもニッと笑っているところを見ると余程の馬鹿か大物に限る。

 

「ゾディアーツですか……その名前から察するに黄道十二宮(ゾディアック)の造語だと思われますが蜥蜴座は十二宮の一つじゃないですよ?」

 

「そうだな。だが、俺達はそう呼んでいる。あの姿はゾディアーツスイッチと呼ばれるスイッチを押して変身した姿なんだ」

 

「つまり、あれは人間が変身している、と?」

 

「恐らくな。正体は俺も知らねぇからな」

 

「ふむ、なるほど。ですが、なぜ如月先生は彼らの事を知っているんですか?」

 

「それは……「天ノ川学園であった事件だよね?」知ってんのか!?」

 

「先生の学校が気になってちょっと調べたんだ。そしたら怪物の目撃情報が色々と」

 

弦太郎が語ろうとした時、もちが口を挟んだ。

 

「まぁ、そうだよな。詳しい話は俺にはできねぇんだけど……」

 

そう言って弦太郎が自分の学校の出来事を話始めた。学校にゾディアーツスイッチが一部の生徒に手が渡っていたこと。そして学校の校長がスイッチを配っていた人物でそして理事長がそのボスだと言うことも。

 

「先生の学校でそんな事が……」

 

「ですが、急になぜこの学園に手を伸ばしたんですか?」

 

「この学園は俺達の学校と同じようにすごい量のコズミックエナジーが降り注いでるらしいんだ。だから、ここや天高はホロスコープスを覚醒させやすい。恐らくそれが目的だ」

 

「強力な仲間を増やす事が目的ということなんですね」

 

「戦争でもするつもりなんでしょうか?」

 

「わからねぇ。だけど、俺はソレを阻止するためにこの学園に来た」

 

「わかりました。如月先生のこと、あずきは信じます」

 

助けていただいたこともありますし、と付け加えて彼を見据えた。

 

「あずきちゃんがそう言うなら安心だけど、先生はゾディアーツをどうやって倒すの?」

 

「あっ、やっべ……」

 

そう言って溶鉱炉に投げ捨てた事を思い出す。

 

「え、考えてなかったんですか!今までどうやって倒したんですか!?」

 

「それがよ、倒すためのアイテムがあったんだけど……」

 

「「「「「「「「「「「「あったんだけど?」」」」」」」」」」」」

 

「溶鉱炉に捨てちまった」

 

と、短く簡潔に簡単に説明した。そう言っては弦太郎がアハハと笑う。

 

その日、校舎全体にアイドル部の少女達の声が響き渡った。

 

 

 





登場人物解説

如月 弦太郎……『仮面ライダーフォーゼ』の主人公。時系列は』『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&ウィザード MOVIE大戦アルティメイタム』後。髪型がリーゼントという不良チックなアイデンティティを持つ。生身の戦闘能力も高く、まるで天性と言われるほど戦いの勘を持つ程。現在は分け合ってフォーゼドライバーを失っており、変身できない

ばあちゃる……世界初男性バーチャルYouTuber(自称)。そして私立ばあちゃる学園の学園長。そしてアイドル部の顧問。能力は今のところ不明。

木曽 あずき……アイドル部の一人。気怠そうな雰囲気を放つ不思議な少女。星座は山羊座。能力は今のところ杖を具現化させて戦える事が判明した。


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教・師・変・身

 

 

弦太郎がばあちゃる学園に転任して二日が経つ。つまり、始業式の翌日。新入生の生徒以外は午後の授業が始まることになる。

 

「よし、もう昼かー」

 

特に自分が受け持つクラスも問題なく終わり、自身の担当する授業も問題なく終わると弦太郎は職員室で腕を上げて背伸びをすると学校の弁当を持ってそのまま校庭へと出た。

 

「それじゃあ、いただきます」

 

パシ、と両手をあわせて軽く頭を下げるとそのまま弁当の蓋を開ける。白米に様々な彩られた数々のおかずが食べる人の心を揺さぶる。

 

「お、美味そうだな!」

 

弦太郎がそう言って割り箸を割るとそのままおかずを一口。よく噛んで喉を通した。

 

「思ったとおり、この学園の弁当も美味ぇな!!」

 

アムアム、と行儀が悪くならない程度に弁当を食べるスピードが上がっていく。

 

「ごちそうさまでした」

 

そして再び両手をあわせて軽く頭を下げると座っていたベンチの空きスペースに弁当を置いた。

 

「さて……」

 

と弦太郎がんっ、と再び背伸びすると校庭で昼食を摂っている生徒達を見渡した。どれも美味しそうに母の弁当や自作の弁当、学食を食べて顔が綻んでるのがわかる。

 

「良い学校だな」

 

そんな言葉がポツリ、と弦太郎の口から零れた。

 

「でしょでしょ?」

 

そんな弦太郎の言葉を返す言葉が背後から聞こえる。

 

「うおっ!?」

 

そんな言葉に弦太郎がビクリ、と身体を震わせ背後の方へと慌てて振り返った。

 

「こんにちは、如月先生ー」

 

そこには見覚えのある少女。着物を着た青い髪のアイドル部の一人、ヤマト イオリ。

 

「おう、イオリか。今から昼飯か?」

 

「うん。先生、隣座っていい?」

 

「ん、おう」

 

弦太郎がそう言って端へとずれて置いていた弁当を膝元へと置いた。イオリが笑顔で弦太郎と同じベンチへと腰をかけた。

弦太郎がチラリ、と彼女の横顔を見て昨日の話を思い出す。

 

 

 

『ゾディアーツの専門家が戦えないとなれば私達でなんとかするしかありませんね』

 

『俺はゾディアーツの専門家ってわけじゃないんだけどな。どちらかと言うと戦う方の専門家だ。分析は別にいるぞ』

 

『けど、それでも倒せなければ意味がないんですけど』

 

とそこでたまが補足へと入る。確かにそうだ、と弦太郎も思わず納得してしまう。

 

『お前達が戦うって言ってもどうやって?』

 

『如月先生はライバーをご存知ですか?』

 

『ライバー……?なんかどっかで聞いたような気がするんだけど……』

 

どこだっけな、と弦太郎がぼやく。

 

『特殊な力を持った人達の事を総じてライバーと呼ぶんです』

 

そんな弦太郎にあずきが説明する。

 

『ちなみにアイドル部全員ライバーです』

 

え、と思わず弦太郎が驚きの声を上げた。

 

『ですから、もし見つけた場合は連絡してください』

 

そう言って弦太郎達は連絡先を交換して解散した。

 

 

 

「先生、どうしたの?あ、まさかイオリの弁当が食べたいの?」

 

イオリが弦太郎の視線に気付き、自分の弁当の方へと俯いた。

 

「いや、なんでもねぇよ。それよりイオリはどんなすげー力が使えるんだ?」

 

「イオリはねー。髪が鋭くなったりパワーアップするんだー。りこちゃんとおんなじくらい強くなれるの」

 

へー、と弦太郎が彼女を見た。弦太郎はりこの強さを知らないので、なんとなくフォーゼのベースステイツと同じ強さだと頭の中で設定をしておいた。

 

「イオリは怖くねぇのか?ゾディアーツと戦うの」

 

そんな中、弦太郎がなんとなく彼女に聞いた。彼女は戦士ではない。故に聞いておかなければならなかった。

 

「怖い怖くないで言えば怖いかなぁ。でもねでもね、イオリはアイドル部のみんながいるから戦えるよ」

 

「そうか。イオリはすげぇな」

 

ニッカリ、と弦太郎が微笑んだ。

 

「先生は怖くないの?」

 

「俺か?俺は怖いのかもしんねー。けど、それより先にこの状況をなんとかしなきゃって思って身体が動くんだ」

 

「先生って強いんだね」

 

「強くなんかねぇよ。イオリと同じだ」

 

弦太郎の言葉にイオリが首を傾げた。

 

「ダチがいるから頑張れるんだ」

 

再び弦太郎がイオリへと笑うとイオリも笑みを返した。それを見て弦太郎がベンチから立ち上がった。

 

「じゃあ、俺は職員室に戻るとすっか。イオリは午後の授業、頑張れよ」

 

「はい!」

 

イオリが明るく返事する。その言葉を聞いて弦太郎は職員室へと向かった。

 

「中々、やりおるマンですな」

 

「!?」

 

弦太郎が二度目の驚愕。先程のベンチから少し離れたところの茂みから突然、姿を現した少女。

 

「アンタもここの生徒か?」

 

弦太郎が真横から飛び出してきた少女を見た。水色と白のドレスを着た白髪の少女。こんな子、始業式で見れば嫌でも目に入るはずだ。だが、始業式で見かけた覚えがないと目を細めた。

 

「こんにちは、電脳少女シロですっ!」

 

綺麗で可愛い声で弦太郎へと挨拶すると彼をじっくりと観察した。

 

「なるほど、お主が馬の言ってたゲンゲンか」

 

「馬……学園長の知り合いか!?」

 

「むー、シロは馬の知り合いになりたくないのでここはアイドルの子達の先輩と名乗っておくことにします」

 

シロの表情が怒ったり笑ったりと変わる。

 

「先輩?でも、アイドル部は12人のはずだし……あっ、わかった!アイドル部のOBか!!」

 

「…………。まぁ、そんなところです」

 

「それならイオリの方に行ったらどうだ?アイツも喜ぶと思うし」

 

「今日はゲンゲンを見定めにきました!」

 

「俺?」

 

「はい。けど、問題なさそうですね。けど、アイドル部の子達にもし何かあれは覚悟しておいてくださいね」

 

彼女の声が澄み切った低い声へと変わる。

 

「安心しろ!俺はこの学園、全員と友達になる男だ!もちろん、アンタともな!!」

 

ビシッとニカッと笑いシロを指差した弦太郎。

 

「キュイ。良いでしょう。ただし私と友達になりたいならまずアイドル部の子達全員と友達になってからです」

 

イルカの様な鳴き声が彼女の口から聞こえるとすぐに彼女の声が美しい女性の声へと変わった。

彼女がそう言ってどこかへと歩いていく。弦太郎は上等だ、と言わんばかりに笑いその姿を見送った。

 

 

 

 

 

「おっすおっす!」

 

放課後、部室の扉が勢いよく開かれる。部室にいた少女達の視線はめめめへと向けられる。

 

「あれ、いろは達だけ?先生は?」

 

あの元気な先生がもう二日目で来てない事に気付く。

 

「さぁ?なんかやることがあるんだって」

 

「やること?」

 

「へぇー、教師の仕事がまだ残ってるのかな」

 

めめめがそんな事を言うとあ、と思い出したかのようにいろはの方へと振り返る。

 

「ねぇ、ごんごん。駅前のケーキ屋さんに新商品が発売したんだけど食べにいかない?」

 

「いろは知ってるー!あの人気のやつでしょ?行こ行こ!!」

 

めめめはそうと決まればと言わんばかりに席を立つと帰る準備をし始めた。

 

 

 

 

 

少年は廊下で彼女達を待っていた。先日は邪魔が入ったが今日こそは今日こそは必ず潰すと願う。

 

だから、今回はあの先生だって……

 

「よっ、こんな所で何してんだ」

 

「!!」

 

背後からかけられた明るい声。その声は自分もよく知っている。昨日、この学園に赴任してきた先生だ。

少年は咄嗟に振り返りその声の主、如月 弦太郎を睨みつけた。

 

「…………」

 

弦太郎がその少年が握っているモノを見る。黒と銀の装飾が施された物体。弦太郎には見覚えがあった。

 

「お前、そのスイッチ「なるほど、それがゾディアーツ・スイッチですね」───あずき!?なんでここに?」

 

弦太郎が少年の背後から現れた少女の名を口にする。

 

「如月先生と同じですよ。昨日、私達生徒会が襲われた。ということは、相手は生徒会またはアイドル部を狙ってくるというのが妥当です。そして、昨日それを私が阻止しました」

 

あずきが淡々と説明をしてですから、と付け加えた。

 

「まず阻止した厄介な私を狙ってくると思いまして、この時間は私は生徒会室にいるんでその周囲を見張ってたわけです」

 

如月先生もそうでしょう?とあずきが聞いてきた。その言葉に弦太郎は静かに頷いた。

 

「スイッチを渡してくれ。それは危険なスイッチなんだ!」

 

弦太郎が少年に手を向ける。それは無理矢理というわけではなく生徒の意思で渡してくれと言わんばかりだった。

 

「お前らが悪いんだっ!お前らが邪魔をしなければアイドル部を潰せたのにっ!!」

 

《 Last one 》

 

少年の握る手が禍々しいスイッチへと変わる。あずきが眉を潜め、弦太郎が目を見開いた。

 

「やめろ!」

 

カチッ、と弦太郎の言葉を聞かずに少年が躊躇いもなくスイッチを押した。少年の体から溢れる黒いコズミックエナジー。そしてその闇から光を放つ蜥蜴座の光が彼の身体を守る装甲となった。

そして、そのゾディアーツから排出される少年の体が繭となって地面へと倒れた。

 

『まずはお前からだッ!』

 

「っ!」

 

ゾディアーツがあずきへと振り返るとすぐさま彼女の首へと手を伸ばし外へと連れていった。そのまま校庭へと連れて行かれたあずきは杖を構えてゾディアーツと対峙した。

 

「っ!」

 

悔しさに下唇を噛み締めながら彼はハンバーガーを取り出した。とは言ってもそれはハンバーガーを模した機械。そのハンバーガーの真横の差込口に黒いスイッチを挿入してオンにした。

 

ハンバーガーが形を変えて小さなロボットへと変わる。目の様なモノアイはゾディアーツへと向けられる。

 

「賢吾!例のゾディアーツだ!」

 

彼が左手に持っていた銀色のアタッシュケースを地面に置いて開き、そのアタッシュケースの画面に映し出された男へと叫んだ。

 

『ああ、こちらでも確認した。確かに蜥蜴座……イグアナ・ゾディアーツだ。どうやら奴の装甲は龍のような鱗を持つ。ドラゴン・ゾディアーツほどではないがそれでも十分な防御力だ』

 

映し出された弦太郎の親友、歌星 賢吾が淡々と調べた結果を喋りだす。

 

『どうやらイグアナ・ゾディアーツと戦っている彼女では奴の装甲を上回る力はないようだ。恐らくそれよりも上回る子を呼んたほうがいいな』 

 

賢吾にはアイドル部の子達が特殊な力を持っていることを昨日、教えた。だから、こんな状況でも素早く対応できる。

 

「パワーがある奴って事か。えっと、それなら……」

 

なんとなく彼の頭には二人の人物が思い浮かぶ。牛巻 りことヤマト イオリ。誰がどんな力に特化しているのかわからない弦太郎は迷う。そこで弦太郎が仕方ねぇと言ってスマホを取り出した。

 

『させねぇよっ!』

 

「ぐあぁっ!」

 

だが、そこでスマホを持つ弦太郎の腕が蹴られた。赤い炎の様な足で。スマホが遠くへと吹き飛ばされ、弦太郎が地面へと転がった。

 

『なにっ!』

 

賢吾も弦太郎の蹴った存在に気付く。赤い炎を体現したかのような身体に翼が生えた怪物。そして、身体のあちこちに存在するコアと星を結ぶ線。

 

『鳳凰座……フェニックス・ゾディアーツ……』

 

賢吾がその姿を見て絶句する。不死鳥の名を関するゾディアーツが目の前に存在する。

 

「如月先生!?」

 

あずきも新しい怪物の存在に気付く。

 

『っ!?』

 

あずきがイグアナ・ゾディアーツの目の前で杖を翳す。すると杖の先端が強い光を発するとイグアナ・ゾディアーツの視界を奪う。

 

『!』

 

その隙を突いたあずきが棍棒でフェニックス・ゾディアーツの身体を横へと吹き飛ばした。

 

「如月先生。大丈夫ですか?」

 

あずきが弦太郎のそばによると心配そうに彼の顔を覗いた。そして彼は心配するなと言わんばかりに起き上がった。

 

『弦太郎、あの赤いゾディアーツとは戦うな!アイツは恐らく不死身だ!たとえ、フォーゼに変身したところで勝てる可能性は低いっ!!』

 

ディスプレイ越しに賢吾が叫ぶ。

 

『よく分かってんじぇかっ!』

 

そんな賢吾の言葉をバックにフェニックスがあずきの身体を突き飛ばし弦太郎を蹴り出した。

 

「先生!」

 

弦太郎が茂みの向こうへと吹き飛ばされる。あずきの声が遠く感じた。

 

「くぁッ……」

 

身体を地面に打ち付けられ痛みに耐える。

 

「いってぇ……ゾディアーツが二体も……俺が戦えれば……」

 

あずきが二対一をさせずに済むと悩む。ゆっくりと身体を起き上がらせる。自分は生徒を導くためにベルトを捨てた。もう、形も残っていない。自分にはゾディアーツを倒すための力は残っていないと分かっていた。それでもダチを、これからダチになる奴を放ってはおけない。たとえ力がなくとも守る事はできると思っている。

 

「ん……?」

 

弦太郎が不敵に笑うと傍らに落ちていた物体が目に留まる。ストップウォッチのようにも見える白色と橙色の物体。弦太郎は無意識にそれを左手で拾った。

 

 

 

 

 

『潰ス!潰スッ!潰スゥ!!』

 

イグアナ・ゾディアーツが叫ぶ。増幅された憎しみ、歪められた人格によって目の前の少女を消すために拳を振り下ろした。

 

「っ!」

 

あずきが後ろへと跳んでなんとか躱す。だが、その跳んだ先にいたあの赤いゾディアーツが彼女を蹴りつけた。

 

「二対一になるとはあずきは思いもしませんでしたよ……ですが、警戒はしといて正解でした」

 

『は?』

 

フェニックス・ゾディアーツが地面に倒れているあずきを睨みつける。

 

『まさかっ!』

 

フェニックス・ゾディアーツが背後を振り返る。こんな状況でも不敵な笑みを浮かべたあずきの違和感に気付く。

だが、遅い。薙ぎ払われた黄金の斧がフェニックス・ゾディアーツを校舎の壁へと叩きつけた。

 

「やっば!ばあちゃる号に怒られる!!って、あずきち大丈夫?」

 

「はい、大丈夫です。今の奇襲は中々のものでしたよ」

 

巨大な斧を地面に置いてあずきの傍まで駆け寄るりこ。

 

「あれが噂のゾディなんたら…」

 

『ゾディアーツだ』

 

「え、なに今の声……え、何これ?アタッシュケース?」

 

りこの横から邪魔するような声に落ちていたアタッシュケースを覗かせるりこ。

 

『二人共、凄いな。弦太郎は無事なのか?』

 

賢吾がフタリの力を見て驚嘆するがすぐに親友の安否を確認する。

 

「わかりません。茂みの向こうへと飛ばされてしまったので……」

 

『そうか……それなら心配なさそうだな』

 

あずきの言葉になぜか安堵をする賢吾。その様子にあずきは首を傾げた。

 

『アイツはそう簡単に死ぬ奴ではない』

 

フッ、と不敵な笑みを浮かべる賢吾。それを見ていたあずきとりこの背後に人影が迫る。

 

『おもしれぇじゃねぇか。女ァ!!』

 

体から熱を発して二人の背後に現れたフェニックス・ゾディアーツがりこを見下す。フェニックスが燃える右腕をりこへと伸ばす。

 

「───オラァァァッッ!」

 

りこの顔に迫る目前、フェニックスの体に弦太郎のドロップキックがめり込み吹き飛んだ。

 

「「如月先生!」」

 

『弦太郎!』

 

「お前ら、怪我はないか!?」

 

弦太郎がそのまま着地すると二人の安否を確認する。コクリ、と頷く生徒を見て弦太郎はニヤリと笑った。

 

「二人共、赤い野郎を頼めるか?」

 

弦太郎があずきとりこにそう告げる。

 

「ですが、あのイグアナ・ゾディアーツは……」

 

誰が対応するんのですか、とあずきが言いかけた直後。

 

「俺に任せろ」

 

『待て、弦太郎!今の君にはフォーゼドライバーはない!!あのイグアナ・ゾディアーツでさえ倒せないんだぞ!?』

 

あのゾディアーツを相手に戦うなんて無茶だ、と告げる。だが、それでも弦太郎は不敵に笑って見せた。

 

「心配すんな、賢吾。フォーゼドライバーならここにある」

 

弦太郎がそう言って賢吾に見せたのは弦太郎の後輩である時の王者が使うアイテムの一つ。ライドウォッチ。

 

『は?』

 

賢吾が眉を潜め、それを睨みつけた。そのライドウォッチの表面には賢吾と弦太郎の見知った仮面が描かれていた。

 

『確かにフォーゼだが……』

 

それをフォーゼドライバーだと言うのは無理がありすぎる、と付け加えた。

 

「賢吾。お前は俺のダチだ。そしてフォーゼドライバーも俺のダチだ。俺達が信じなくてどうする!」

 

『…………』

 

弦太郎の言葉にかつて自分が呟いた言葉を思い出す。

 

 

『フォーゼドライバーは弦太郎のダチだ。アイツがピンチだった時はいつだってアイツの元に戻ってくる』

 

 

自身の言葉を思い出して息を呑み込むと目を大きく見開いた。

 

『そうだな。俺には弦太郎、フォーゼドライバーを信じよう』

 

「それでこそ賢吾だ!」

 

ニカッ、と笑う弦太郎と賢吾。そんな二人にあずきとりこが首を傾げた。

 

『何をごちゃごちゃと……』

 

「おっと、すまねぇな。だが、安心しな!ここからは俺も本気で行かせてもらうぜ!」

 

弦太郎が左手に握っているウォッチを前へと伸ばす。そして弦太郎がソレを起動させた。

 

《フォーゼ!》

 

ライドウォッチの起動音と共にソレが光の粒子へと変わり彼の腰の周りで別のものへと姿を変えた。

 

『フォーゼドライバー……』

 

賢吾はその姿の名を呼ぶ。レバーと上下四基、合わせて八基のスイッチが取り付けられた白いドライバー。

 

「先生……?」

 

「安心しろ。俺は蜥蜴野郎を倒す。お前達はあの赤い方を足止めしてくれ」

 

カチカチ、カチカチッと弦太郎が下段の赤いスイッチを四つとも下げると身構える。

 

《───3》

 

ドライバーからカウントダウンが発せられ、りこもあずきも何がなんだかわからなかった。

 

《───2》

 

フェニックス・ゾディアーツもイグアナ・ゾディアーツも警戒する。そのカウントダウンを警戒して迂闊に近づけなかった。

 

《───1》

 

そんな中、ディスプレイ越しに賢吾が笑みを浮かべた。それは勝利の確信とかではない。親友の力の復活を喜んで。

 

「───変身!」

 

弦太郎が勢いよく叫んでレバーを押し込み右手を上げた。軽快な音楽と共にドライバーから煙と風が吹き出した。それだけではない。弦太郎の頭上にゲートが開き、神秘な宇宙のエネルギーであるコズミックエナジーが物質化する。

 

煙も風も消え、あずきやりこ、そしてゾディアーツ達も弦太郎の姿を見た。まるでその姿は宇宙服にも似た白をベースとしたスーツ。

 

そして頭はまるでロケットを意識した形をした形だった。

 

ぐっ、と弦太郎もとい仮面ライダーフォーゼがその場で蹲る。

 

『宇宙、キタァーーーーーーッ!!』

 

そしてバッ、と身体を☓字へと広げ電脳世界の彼方まで叫んだ。

 

「「…………」」

 

あずきとりこがフォーゼの姿を見て唖然とする。

 

『仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!!』

 

フォーゼが胸を二回叩いてイグアナ・ゾディアーツに向けて拳を突き出すと、そのままイグアナ・ゾディアーツへと突っ込んだ。

 

『まずはコイツだ!』

 

ROCKET(ロケット) ON 》

 

フォーゼぎそう言ってドライバーの上段にある右腕のスイッチを押した。

フォーゼドライバーに装填されてる上段のスイッチは『アストロスイッチ』と呼ばれるものでコズミックエナジーを利用することでフォーゼの戦闘を支援するマルチユニット『フォーゼモジュール』を物質化することができる。

 

『ライダーロケットパァンチッ!』

 

フォーゼの右腕に現れた橙色の小型ロケットが勢いよくイグアナ・ゾディアーツと衝突しそのまま遠くへと吹き飛んだ。

 

『あずき、りこ!その赤い奴の足止め、頼んだぞ!』

 

フォーゼが小型ロケットで飛びながら彼女達へと叫ぶとそのままイグアナ・ゾディアーツの方へと飛んでいく。

 

RADAR(レーダー) ON 》

 

フォーゼが左腕のスイッチをオンにして小型受信機で賢吾と連絡を採る。

 

『弦太郎、奴には通常の攻撃は効かない。強い攻撃力を使うハンマーを使え!』

 

『おう!』

 

弦太郎が頷くとレーダーのスイッチを取り外すとそこに新たなスイッチを取り付けた。

 

HUMMER(ハンマー) ON 》

 

そしてフォーゼの左腕に現れる黄色いハンマー。ロケットをオフにしてイグアナ・ゾディアーツへと着地するとそのままイグアナ・ゾディアーツへと振り下ろす。5.5tをも持つ重い一撃がイグアナ・ゾディアーツへとダメージへとなる。

 

『まだまだ行くぜ!』

 

CHAINARRAY(チェーンアレイ) ON 》

 

フォーゼが慣れた手つきでスイッチを取り替えて新しいフォーゼモジュールを装備する。右腕の鎖で繋がれた鉄球を振り回して遠心力を利用してゾディアーツを吹き飛ばす。

 

GIANTFOOT(ジャイアントフット) ON 》

 

そして右脚に巨大な足が取り付けられフォーゼはその場で地団駄を踏む。それをジャイアントフットが周囲の重力を増幅させゾディアーツを足の幻影で踏みつけた。

 

『これで決めるぜ!』

 

LAUNCHER(ランチャー) ON 》

 

そして右脚に5連装ミサイルランチャーが物質化される。発射されたミサイルの一部はイグアナ・ゾディアーツに命中しなかったものの付近へと着弾し爆風によって上空へと吹き飛んだ。

 

『オラァッ!』

 

再びフォーゼがロケットモジュールを起動させ、上空へと飛ぶ。そのついでにゾディアーツの真下から小型ロケットでさらに上空へと吹き飛ばす。

 

『これで終わりだ!』

 

DRILL(ドリル) ON 》

 

彼の左脚に現れる黄色いドリルモジュール。そのドリルが回転し始めた。

 

《 ROCKET DRILL LIMIT(リミット) BREAK(ブレイク)

 

吹き飛ぶゾディアーツの頭上を捉えてフォーゼがレバーを押し込んだ。ロケットモジュールとドリルモジュールが最大出力で稼働する。

 

『ライダーロケットドリルキッーーークッ!!』

 

ロケットモジュールを用いてイグアナ・ゾディアーツへと急加速していきドリルモジュールの蹴りを繰り出す。加速と回転を用いた破壊力抜群のその必殺技はいとも簡単にイグアナ・ゾディアーツの装甲を貫いた。

 

 

 

 

 

『チッ、失敗か』

 

上空の爆発を見上げながらフェニックス・ゾディアーツは呟いた。あずきもりこもそれにつられて上空を見上げる。そこには爆発を背に地面へと着地するフォーゼの姿が目に入る。

 

『…………』

 

フェニックス・ゾディアーツはその隙を見計らってその場を立ち去る。二人はそれに気付くフォーゼの元へと駆け寄った。

 

「よっ、赤い奴はどうなった?」 

 

フォーゼが変身を解除してこちらへと駆け寄ったきた二人を見た。

 

「それが逃げられてしまいまして……」

 

「そっか。やっぱりな」

 

「え?」

 

「それはどういう?」

 

「どういう意味って、アイツの目的は恐らくあの蜥蜴野郎の援護。そうでもない限り邪魔をしないし、失敗すれば目的を失う。だから帰った。そうだろう?」

 

「確かにそう考えれば不思議ではありませんが……」

 

「まぁ、この話は後だなっと……」

 

弦太郎がそう言って落ちていたゾディアーツ・スイッチを広い上げるとそれを押した。

 

「「!?」」

 

あずきとりこが目を見開いて警戒する。そして三人の目の前でスイッチは消滅した。

 

「今のは……?」

 

「気にすんな。これでアイツも元に戻るはずだ」

 

弦太郎はそう言って校舎へと戻っていく。だが、弦太郎の言葉にあずきとりこは首を傾げていた。

 

「んっ……」

 

そして弦太郎はイグアナ・ゾディアーツへと変身した少年のもとへと駆け寄った。

 

「立てるか?」

 

弦太郎が少年の腕を掴むと肩を貸して歩き始める。

 

「先生、その人をどうするんですか?」

 

「決まってんだろ。病院へ連れて行く」

 

そう言って弦太郎は彼を支えて廊下を歩く。そんな彼の背をあずきとりこは見つめた。

 

 

 

 

「なんでこんなことをしたんだ?」

 

弦太郎が静かに少年へと聞いた。そんな先生の問いに少年が戸惑うと口を開く。

 

「好きな人がいるんです。その人に告白したんですけどアイドルになりたいから付き合えないって言われて……」

 

「その後、でした。俺の前に怪物が現れスイッチを渡したんです」

 

「あの赤い奴か……」

 

「いえ、それよりも大きく禍々しかったです」

 

「!」

 

「俺はそれを半信半疑で受け取ったんです。『このスイッチはお前の願いを叶えてくれる』と。それを受け取った時からでした。彼女を自分の手にしたくて彼女のアイドル部を壊したくなったのは……」

 

「そうか……」

 

「先生は何も言わないんでか?俺はアイドル部。壊そうと……」

 

「自分で気付いてんなら俺が言う必要はねぇよ。薄々はわかってたんだろう?だから、自分のやっている事をなぜ先生は問い詰めないのか疑問に思った」

 

「…………」

 

「フラレて悔しいお前の気持ちもわかる。自分でもわかっているんだろう?お前のやっていた事はその好きな奴の夢を壊すことだって」

 

「…………っ」

 

「お前、夢はあるか?」

 

「───え?」

 

「失恋しちまったんならその心を埋めるために夢に向かえばいい。たとえ、それで埋められなくても夢を追いかけてる間に新しい恋を見つければいい!」

 

弦太郎が少年へと笑顔を向ける。そんな先生の言葉に自分はなんとなく心が温まる。

 

「俺、夢があります。甲子園に出ることです」

 

「そっか、俺はそれを応援するぜ。お前の青春はまだ始まったばかりだ。甲子園は男の青春だ!」

 

弦太郎が無邪気に笑うと少年もなぜか釣られて笑い始めた。

 

「ほら」

 

弦太郎が少年へと手を伸ばす。少年は先生の手を握る。

弦太郎が少年に二種類の握手を交すと少年と拳を打ち付けた。それは弦太郎の友情のシルシであった。

 

 

 

 

 

 

この一件の後、少年はアイドル部の子達に謝りに行った。彼の処遇はばあちゃるによって三週間の停学処分となった。

 

「いやーさすがゲンゲンですね。お願いしたかいがありました」

 

学園長室にてばあちゃるが呟く。そして机に置かれた写真を見つめる。そこは先日、イグアナ・ゾディアーツと戦っていたフォーゼの姿。

 

「いやはや、まさかもうゾディアーツとやらの手がウチの学園に手が回っていたとは」

 

そう言ってばあちゃるが一枚の写真を摘む。不死鳥の名を持つフェニックス・ゾディアーツが写っている写真。

 

「これは少し厄介な事になりそうですねぇ……」

 

 

 




登場人物解説

歌星 賢吾……弦太郎の親友の一人。宇宙京都大学の大学院の院生でコズミックエナジーなどの研究を日々送っている。また、彼はゾディアーツとの戦闘では分析・指示を出す役割を与えられていた。

牛巻 りこ……アイドル部の一人で明るく活発な少女。星座は牡牛座。彼女の力は巨大な黄金の斧を振り回す程の力とその斧を出し入れする能力だ。

イグアナ・ゾディアーツ……蜥蜴座のゾディアーツ。壁や天井に一時的に張り付く能力を持ち、脚力も高い。そして龍の鱗の様な肌を持ちそれなりに高い防御力を持つがドラゴン・ゾディアーツと呼ばれる龍座のゾディアーツ程の防御力は持っていない。

フェニックス・ゾディアーツ……鳳凰座のゾディアーツ。燃え盛る四肢を体現した姿で背には大きな翼が生えている。賢吾が言っていたとおり不死身のゾディアーツでタフさが売りのゾディアーツだ。(命名はバトルスピリッツの『砲凰竜 フェニックス・キャノン』から)


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