巨人の狩場で暴徒は踊る (蛇ヤミー)
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RiotFeast

RiotFeast用の話です。
私では、ライオットブラッド単体の話を書くことが出来なかったので、ライオットブラッドメインにして、他の要素と組み合わせて書きましたが……これでも大丈夫でしょうかね?

とりあえず書けたので。
ライオットブラッドは合法ですが、用法用量は守ることを推奨します




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



3:15 AM

      :ふむ……もうあと一歩足りてない

3:30 AM

      :おやすみ

7:05 AM

      :その選択もありだ

2:10 PM

      :悪くない気分だよ

7:00 PM

      :近くのコンビニに行くと上客に出会えるよ

7:22 PM

      :――本当に、それでいいのか?





 ――ガキンッ

 

 俺の機衣人(ネフィリム)が持っていた武器である破壊槌を落とし、大破する。

 

 

 ネフィリム・ホロウ。

 

 俺が今やっているこのゲームは、ストーリーやゲームシステム、戦術性やゲームバランスなど、多くの良さを持つゲームなのだが、なにぶん操作性が悪すぎて一般受けしてないゲームだ。

 

 とはいえ最近は2の発売決定、それととある人物たちの宣伝で割と賑わってる。

 このネフホロは割と長いこと続けてるので、俺も一応ランカーと呼ばれたりもする。

 

 まあ、トップテンに入れないあたりをウロウロしてる程度のものだが。

 

 

 

「あー……うん、流石にそろそろ眠くなってきた感あるな……負けも続いてるし、トゥナイト切れてきたか」

 

 前日の仕事終わりからライオットブラッド・トゥナイトを飲んで始めたネフィリム・ホロウだったが、二徹目も過ぎてきた頃合い。

 

 トゥナイトの効果切れといったところだろう。

 今は……三時半、か。

 

「明日も割と早出だし、そろそろ寝るか……」

 

 

 そして俺はゲームをやめ、眠りにつく。

 

 

 ~~~~~~~~

 

 

 朝七時、アラームの消してから、枕元に常備してあるライオットブラッド・クァンタムを一気にあおる。

 

 やはり朝はこれに限る。

 

 

『迅速にあなたの脳を覚醒させる……』

 

 

 そのキャッチコピー通り、迅速に脳を覚醒してくれるから、寝起きといえばクァンタムだろう。

 

 時間帯の安定しない接客業で働いてるので、即座に頭を働かせなきゃならんのだ。

 

 

 他の奴がクァンタムをどう扱ってるのかは知らないが。

 準備をしてさっさと出勤しよう。

 

 今日もこなすだけの一日が始まる。

 

 

 

 

 

 十四時、ようやく昼飯だ。

 

 昼時は忙しくなりやすい。

 ゆえに昼飯は早くても大体こんなもん。

 

「んー……残り仕事時間はあと半分。ここは爆発力が欲しいから、バックドラフト……と行きたいところだが、売り切れてたので、まあオリジナルでいいだろう」

 

 個人的に味はオリジナルが一番好きだしな。

 

 ――カシュッ

 

 グビグビと飲みながらふと思う。

 合法堕ちするのはどういう感覚なのだろうか、と。

 

 俺は、ライオットブラッドを飲むとき、日に三本を守っている。

 企業がそう推奨しているならそれに準ずるべきだと。

 

 だから簡単に合法堕ちするような奴はダメだと思っている。

 

 最近の若い奴はあっさり合法堕ちするらしいが、覚悟も無しに堕ちたところで、聖人たちのように活躍など出来はしまい。

 

 ……もちろん、何本飲もうが、覚悟があろうがなかろうが、合法であることに変わりはないのだが、なんというか……気持ちの話だ。

 

 

 ライオットブラッドは合法。

 

 

 気持ちとして、企業が推奨はしていない三本以上の服用や、アンデッドを死体に近づけるなどはしてはいけないという、俺なりの信念だ。

 

 

 ただ、その信念を超えてくるほど、合法堕ちへの興味は尽きない。

 

 

「……アホなこと考えてないで飯食ってwikiでも見るか。新しいネフィリムの組み合わせも気になるしな。……後、そもそも死体に近づく機会がないわ、何考えてるんだ俺」

 

 

 

 

 

 

 

「もう七時過ぎてんじゃん……」

 

 少し長引いた仕事も終わって家に帰る途中、いつものコンビニに立ち寄る。

 俺が個々の常連ということもあり、ライオットブラッドはいつも箱で用意してくれてる優良店だ。

 

「バックドラフトと……トゥナイトもそろそろ切れるんだったか……」

 

 そう言ってレジに行こうとしたとき、何となく通常売り場コーナーに目を向ける。

 

 

「……ぁ……リボルブランタン」

 

 

 リボルブランタンはシリーズで一番新しく出たもので、前に飲んだ時の感想としては、効力は完全に短期決戦向けのブースターといった感じだった。

 

 俺は、趣味(ゲーム)はダラダラと続けるたちなので、それ以降買う機会はなかったが、何気なく目に入ったそれは、俺に前見た番組を思い出させた。

 

 

 二度にわたり、大物プロゲーマーを相手に、大立ち回りを見せた謎のゲーマー『顔隠し(ノーフェイス)』。

 

 番組で見たそいつは、俺のような一般ゲーマーでさえ素の実力は高く柔軟性や思考力に優れたゲーマーなのだろうとわかった……が、それに加えて、ライオットブラッドの力を最大限に引き出した戦い方をしているように見えた。

 

 そしてその戦いの後、彼の放った言葉は、ずっと頭に残り続けてる。

 

 

 

『ライオットブラッドを飲めばプロゲーマーにも善戦できます』

『ライオットブラッド・リボルブランタンのお陰でここまで来ました!』

 

 

 

 紛いなりにもゲームを趣味とし、壁を越えられないながらも長年一つのゲームにこだわり続けてる俺は、その言葉に惹かれるものがあった。

 

 もしかしたら、だからこそ昼間みたいな思考に陥ったのかもしれない。

 

 

 

「…………いやいやいや、落ち着け俺、疲れてるんだ。そもそも顔隠し(ノーフェイス)自身はギリギリを突いて合法堕ちまではいってないだろうが……」

 

 俺は頭を振り、リボルブランタンから目を逸らす。

 

 

 そうだ、これ以上進めば戻れなくなる。

 

 

 これでいい。

 

 

 

 

 ――本当に、それいいのか?

 

 

 

 

「!?!?」

 

 な、何だ今の……?

 どこから聞こえてきた?

 というか、なんというか頭の中に直接言われてるみたいな……。

 

「…………………………」

 

 いや、この際どこから聞こえたかはいい。

 

 ……今の声の通りだ。

 

 本当にそれでいいのか?

 

 確かにゲームは趣味だ。

 だが、趣味だから勝てなくてもいいのか?

 

 いや、俺は勝ちたい。

 もっと、強く……たとえ趣味でも、上を目指していける奴でありたい。

 

 

 その為に何が必要だ?

 

 

 

 

 ――ライオットブラッドだ。

 

 

 

 決意を固めた俺の後ろから、奇妙な偶然か必然か、声をかけられる。

 

「ひっひっひ、そこのお兄さぁん? ライオットブラッドをお探し?」

 

 振り向くと、目元を髪で隠した怪しい風体の女が立っていた。

 声から察するに割と若そうだ。

 

 

「私の店なら、海外製のライオットブラッドも沢山置いてるけど、どうするぅ? ……まあ? 見たところお兄さん、かなり摂取してる感じあるから、体の保証は、しないけどねぇ……?」

 

 

「貰おう」

「えっ」

 

 何という渡りに船。

 当然即答だ。

 

 

「買うといった。店はどこだ? 近いのか?」

 

 

「え、え、あ、ちょ、え、も、もうちょっとくらい悩んだら? お兄さんそれ、かなりヤバイ決断だと思うんだけど!? 後、自分で言うのもなんだけど、私今ものすっっっごく怪しいと思うんだよね!」

 

 

 先ほどの妙な雰囲気を漂わせた話し方とは打って変わって、随分と軽い口調になったな。

 そっちが素か?

 

 まあどちらでもいい。

 

 

「とりあえず店に案内してくれ」

 

「うぅ……なんか頭に響く声に従ってここまで来たけど、大丈夫なのかなぁ……」

 

 

 こいつも声に?

 

「……なんでもいいか。買うものは決まってるんだ」

 

「何? 大丈夫だと思うけど、一応在庫と照らし合わせるよ?」

 

 

 

「ああ……バックドラフトとトゥナイト、それと…………リボルブランタンだ」

 

 

 

 

 

 家についたのは二十時半。

 

 

 俺は帰るなり買ったばかりの海外製バックドラフトと手持ちにあった秘蔵の海外製クァンタムをミックスする。

 これで疲れた脳を再び覚醒させて、それを爆発的に使えるようになるはず。

 

 

「……ミックスは二本を一本分に配合する手法……海外製ではあるものの、実質一本分。朝と昼に飲んだ分を合わせてちょうど三本……だな」

 

 

 俺はミックスを飲み干す。

 

 

 これでガトリングドラム社が推奨している上限には達した。

 

 後は……。

 

 

 

 俺は急いで準備をし、ゲームを立ち上げる。

 そして始める直前、ヘッドギアを付ける直前に、海外製リボルブランタンを取り出し。

 

 

 ――カシュッ!

 

 

 躊躇わず、一気に飲み干した。

 

 

 

「さ、いくかぁ……!」

 

 

 

 

 

 ネフホロにインした俺は、迷わずある場所へ向かう。

 

 そこは、このネフィリム・ホロウで長年ランキング一位を保持し続けている相手が常駐するドッグだった。

 

 

 ランキング一位に挑戦状をたたきつける。

 

 通常であれば鼻で笑われるかもしれないが、このネフィリム・ホロウのランキング一位である緋翼連理(ひよくれんり)を操る不死鳥(フェニックス)――ルストは、この手の挑戦を歓迎している。

 

 それと、一応ランカーと呼ばれるだけあって、多少は顔を覚えてもらえていたらしい。

 

 

「あなたは……確かランキング十二位の」

「覚えてもらえてて光栄だ」

 

「あなたの構築は印象的」

「だろうなぁ……」

 

 俺の機衣人(ネフィリム)は最近では珍しい『近接型』だ。

 それも射撃系統をすべて取っ払った『完全近接構築(ビルド)』。

 

 そんなのネタですら作るやつがいないくらいだ。

 なんでそんなの作ったかは単純。

 

 破壊槌(ラム)をメインに据えたかったんだよ。

 

 

 

「それで? オペレーターはどうする?」

「有りに決まってるだろう。最強のあんた()と戦いたいんだよ」

 

 緋翼連理(ひよくれんり)は単体でも強い。

 だが最強たる所以は、オペレーターのモルドがついてこそ。

 

 

 こいつらは二人で最強の一体なんだ。

 

 

 このネフホロ内ではこいつらは既にプロゲーマーと呼んでもいい実力がある。

 実際、ネフホロ好きを公言するプロゲーマーは多くいるが、未だランキング一位はルストなのだから。

 

 

 そして俺はそれに勝ちに来た。

 

 

 俺の言葉を聞いたルストは、ニヤリと笑い一言。

 

「……いいね。あなたはわかってる。……行こうモルド」

「え、ちょ待ってよルスト!」

 

 

 

 

 

 そしてスタート位置につく。

 そのまま目を閉じる。

 

 開始の音が聞こえた……どうせすぐに最強のオペレーターが俺を補足する。

 

 

 だったら俺は準備を整えるだけ。

 その場で座禅を組む。

 

 

 

 集中しろ……。

 

 

 

 瞑目し……瞼の裏に宇宙が広がるイメージを創る。

 

 その星の海をまっすぐ……一直線に突き進む。

 

 目的の何か(もの)を見つけるまで。

 

 まっすぐ。

 

 まっすぐ。

 

 まっすぐ。

 

 まっすぐ…………。

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 ――――――見つけた。

 

 

 

 

 

 俺の中で何かが噛み合う。

 暴徒の血が騒ぎだす。

 

 目を開けば、視界に入る距離に緋色の機体が見える。

 

 

 

「……上等、叩き潰す」

 

 

 俺は、メイン武器の破壊槌(ラム)を大きく振りかぶる。

 

 

 

 

 ――そしてこの日、俺はネフホロ最強の機衣人(ネフィリム)をあと一歩の所まで肉薄することに成功した。

 

 

 

 

 ~~~~~~~~

 

 

 一戦だけ終えて、一度機体から降りて一息つく。

 まだ一戦しか終えてないが、この一戦はかなり消耗した気がする。

 

 もちろんまだまだ頭は冴えてるので、何戦でも行けるが。

 それにしても。

 

「あー……さすがに、付け焼刃じゃ勝ちを奪うまではいけなかったか」

 

 やはりランキング一位は伊達ではなかったな。

 

 だがそれでも、顔隠し(ノーフェイス)の言ったとおりだと思った。

 

 

『ライオットブラッドを飲めばプロゲーマーにも善戦できます』ってさ。

 

 

 ほぼプロゲーマーみたいな緋翼連理(ひよくれんり)に善戦できたんだから。

 

 

 

 

 はぁ……やっぱり――。

 

「――ライオットブラッドは最高だぜ!!」

 

 

 




8:34 PM

ブレインアイ:ようこそ、こちら側へ


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ちなみに作中の瞑想のイメージは、ほぼ私のものです。



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