青薔薇と天才少年のコンチェルト (カトポン)
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序章 全ての始まり
プロローグ 日本への帰国
以前、pixvで未完成のままそのまま放置していた小説をリメイクして出す事にしました。内容はオリ主と燐子の恋愛です。
ある意味、自分の処女作なので不安ですが、これからよろしくお願いします。
「ふぁぁ〜やっと着いた。ったく、時差ボケで眠い・・・」
時差ボケに苦しみながらスーツケースを引っ張っている俺は神谷悠人。元々この町で育っていたんだが訳あって4年前からイギリスに留学し、今年からまた日本に戻る事になり今まで住んでいた町に帰って来たという訳だ。
だが、空の旅と時差ボケでくたくたになっており、俺の頭の中は早く寝たいと睡眠欲に染まっていた。
早く寝ようと歩いていると前から2人の女子がやって来た。
「りんりーん、今日のクエスト手伝って」
「うん、良いよ・・・あこちゃん。10時からで、良いかな・・・?」
何故だろう。髪が紫色でツインテールに結んでいる人には見覚えがないが、その隣にいる黒髪ロングの人には凄く見覚えがあった。
(いやいや、そんなまさか。確かにそっくりだけど、きっと寝ぼけてそう見えてるだけだって)
恥ずかしい思いはしたくないので、そのままスルーを決め込もうとしたが向こうから声を掛けられた。間違ってるかもしれないけど俺も勇気を出して聞いてみるか。
「あ、あの・・・!」
「どうしたんだ?燐子」
「!・・・その声・・・悠、くん・・・?悠くんなの?」
「そうだよ。久し・・・いや、ただいま燐子」
「おかえり、悠くん。・・・会いたかった・・・会いたかったよ・・・」
燐子はそのまま俺の胸に飛び込んできた。いつもの燐子ならこんな事はしないだろうが、かれこれ4年ぶりだからな。恥ずかしさよりも嬉しさの方が勝っているらしい。
(ま、俺も会えて嬉しいしな・・・)
「りんりん、この人と知り合いなの?」
「うん、この人は・・・私の・・・幼馴染、なの」
「初めまして、俺は神谷悠人。君は?」
「宇田川あこ。あこで良いよ」
「分かった。よろしく、あこ」
「はい、よろしく悠人さん」
いきなり、タメ語か。見た目通り随分とフレンドリーな性格のようだ。コミュ力高そうだし燐子とは正反対だな。
「それじゃ俺はそろそろ行くよ。帰って来たばっかで眠いから」
「そっか・・・じゃあね、悠くん・・・」
「バイバイ、悠人さん」
燐子とあこに別れを告げ、再び歩き出した。やがて、一つの一軒家の前で足を止める。
そこは、一般の一軒家にしては少々でかい家だった。この家が俺がイギリスに留学する時まで住んでいた。
(あの頃と全く変わってないな・・・)
俺は門を開けると玄関まで行きカードキーをスライドし暗証番号を入力する。玄関のロックが解除されると扉を開け家の中に入った。
だが、この時の俺はまだ予想だにしていなかった。この出会いが頂点に咲き誇る青薔薇の軌跡の始まりである事を・・・。
如何でしたか?
まぁ、オリ主の設定を殆ど明かしていないので何のこっちゃって思う人もいるかもしれませんが、これから明らかになっていくので気長にお待ち下さい。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第1話 Neo Fantasy Online
今回はタイトルから分かる通りネトゲがメインです。
それでは、特に話す事も無いので第1話をどうぞ。
帰って来てから一休みした俺はネトゲをプレイする為にこの家に放置されていたパソコンの電源を付ける。
ネトゲを始めたのは、イギリスに居た時からだが、その時使っていたパソコンはとある理由で処分している。
(あの時の事は・・・思い出したくもないしな・・・)
自室のパソコンにネトゲのデータ引き継ぎした俺はゲームにログインした。
今、俺がやっているネットゲームの名は『Neo Fantasy Online』、通称『NFO』だ。配信開始から話題を呼び今、最も注目を集めているMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)だ。
そして、俺はこのゲームを始めてから殆どソロプレイに徹していた。理由としては、自由に行動が出来てパーティープレイよりも効率が良いからだ。後はネトゲの交友関係なんて信じる事ができないというのもあるかもしれない。
そんな感じで誰ともパーティーを組まずソロプレイを続けていった結果、NFO内で顔の知れたプレイヤーとなり、いつしか『
(さ〜てと、今日は素材集めでもするか)
自分のホームタウンからフィールドへと出て目的のダンジョンへ向かう。途中でエンカウントしたが構わず愛剣の一閃でモンスターのHPを削りきった。
そのまま特にハプニングなんかも起きずに必要かな素材が全て手に入った俺は一旦街に帰ろうと出口に向かっている時だった。
奥の部屋でモンスターが普通ならあり得ないくらい密集していた。
(トラップか?いや、こんな場所にトラップなんて無かった筈だが)
となると、誰かが此処までトレインでもしたのか?でも、あの部屋は小さいし行き止まりだからそこに逃げたって元も子も無いのに。
(まぁ、俺には関係ないか。流石にあの数を相手にするのは面倒だし)
と、面倒ごとは避ける為にダンジョンから出ようとしていたのだが・・・
「誰か・・・助けて・・・」
聴き逃してしまいそうな程小さな声で助けを求めていた。一応《索敵》スキルを使い確認すると奥に2人のプレイヤーが囲まれていた。
(あんなの聞いたら放っておける訳ないだろ)
俺は背中に吊った愛剣を鞘から引き抜くとフリスビーの要領で投げ飛ばす。
「伏せろ!!」
奥にいるであろうプレイヤーに伏せさせると投げ飛ばした剣はクルクルと猛スピードで回転し、モンスターの体をギロチンで斬られたかのように腰から真っ二つにばっさりと斬られてエフェクトを撒き散らしながら消滅した。奥に居たモンスターも同様に消滅した。
剣はそのままクルクルと回転しながら奥の壁に突き刺さり止まる。
その瞬間、部屋に居たプレイヤーもモンスターも一斉にこっちを向いた。さっきので、部屋に居た全てのモンスターのタゲを取ったらしい。
部屋に居るモンスターには目もくれず俺の方へと押し寄せて来た。
「さて、久しぶりに暴れますか」
俺はメニュー画面を開きサブとしてつかっているもう一つの愛剣を取り出す。とりあえずこっちに来たモンスターを斬り伏せるとあっという間に部屋に居たモンスターは全滅した。
とりあえず、壁に刺さったままの愛剣を回収すると、さっきまで使っていた剣をしまう。
「あ、あの助けていただいてありがどうございます」
「お礼を言うのはまだ早いと思うが」
「「え?」」
「そこに隠れてる奴出てこいよ」
俺がとある一点を見つめるとそこから数人のプレイヤーが出て来た。
「まさか、俺達のハイドを見破るとはな」
「俺の索敵スキルを舐めるなよ。まだ隠れてる奴出てこいよ」
「チッ。お前ら出てこい!」
するとまたゾロゾロとプレイヤーが出て来た。
「え?え?何が起こってるの!?」
俺は先程助けたプレイヤーの方に向いた。
「あ〜お前ら二人ともコイツらに嵌められたんだよ」
「じゃあ、さっきのって!?」
「コイツらがモンスターをトレインしてお前らに擦りつけたんだ。所謂MPKってやつだ」
それを聞いた二人は驚きで固まっている。
「ったく。せっかく良いカモが釣れたと思ったのによ。お前のせいで台無しだ」
「MPKまでしてお前達は何をしたいんだ?」
「決まってんだろ。俺は・・・いや、俺達はな!絶望した顔を見るのが大好きなんだよ!!」
「・・・そうか。見事なまでに性根が腐ってて気持ち悪いからご退場願おうか」
「はっ?舐めてんのか!?退場するのは貴様の方だ!お前達やれ!」
性根が腐った連中が一斉に俺に襲いかかるが・・・
「フッ!」
襲いかかって来た連中とは比べものにならないスピードで近づくと攻撃する暇を与えずに次々と倒していく。
「なっ!?」
驚いているがその間にもどんどん数は減っていきあっという間に一人になった。
「な、何なんだよ・・・お前は一体何者なんだよ!!」
「今から死ぬ奴に教えたって意味ないだろ」
そのまま俺は一刀両断すると相手のHPは0となりアバターは光の結晶となって四散した。
俺は剣を背中の鞘にしまうとここから立ち去るべく一歩踏み出す。
「あの、もし良かったら一緒に行きませんか?」
そんな事女性プレイヤーから言われたら断りにくいじゃないか。あぁ〜もう、此処まで来たなら最後まで付き合ってやる。
「構わないよ」
「ありがとうございます。え〜と・・・」
「あ、まだ名前を言ってなかったね。俺はイアリ」
「え!?イアリってあの『
「まぁね」
「だから、あんなに強かったんですね・・・あ、申し遅れました。私はRinRinって言います」
「聖堕天使あこ姫です」
これが俺と彼女達の出会いとなった。
如何だったでしょうか?誰が話してるか分かりにくかったらすみません。それは、作者の力不足なのでこれから少しずつ直していきます。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第2話 オフ会は序章を終える鐘である
サブタイトルが長文になったのは、何も思い浮かばないからこんな風になってしまいました。
それでは、第2話をどうぞ。
結局、俺は彼女達と一緒にパーティーを組む事が多くなった。
そして、春休みもあと2日で終わろうとしていた時だった。
「そう言えば、イアリさんって都内に住んでますか?」
オンライン ゲームでリアルな事はタブーじゃなかったか?別に住所教える訳じゃないから良いか。
「都内に住んでるけど?」
「実は明日、あことりんりんで遊びに行くんですけど、イアリさんもどうですか?」
あ〜この2人、リアルでも仲が良かったんだ・・・じゃなくて!会って間もない人とオフ会ってどんだけ警戒心無いの?
「いや、会って間もない人とオフ会って大丈夫なの?」
「イアりさんなら大丈夫ですよ」
「私も、イアリさんなら信じられるかな」
あこ姫とRinRinは人を疑うというのを知らないのか?将来誰かに騙されたりしないか凄く不安だよ。
さて、あこ姫とRinRinの心配もそうだが、行くかどうかをめなければ。となるとネカマの可能性もあるから、今から確認してみるか。
「今から、ボイチャ出来るか」
これで出来ないって言ったら確実にネカマだな。さて、どう出るか。
「分かりました。準備しますね」
「あこも準備します」
チャットから連絡が来た。俺もボイチャの準備を始める。
「あ〜あ〜、聞こえる?」
確認の為に話してみると・・・
「え?・・・ゆ、悠くん・・・?」
その声には聞き覚えがあった。というか、日本に帰って真っ先に聞いた声だった。
「え、燐子?RinRinって燐子だったの?」
確かにあの時もあこが燐子の事をりんりんって呼んでたような・・・
て事は
「イアリさんって悠人さんだったの!?」
「あこ姫は、やっぱりあこだったか・・・何処に集合なんだ?」
もう、疑う必要も無いのでさっさと聞いちゃおう。
「10時に○○駅前広場なんですけど大丈夫ですか?」
「10時に○○駅前広場ね。大丈夫だよ」
「りんりんも大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ、あこちゃん」
「じゃあ、明日は10時に集合で、お疲れ、りんりん、悠人さん」
「お疲れ様、あこちゃん、悠くん」
「お疲れ、燐子、あこ」
セーブしてパソコンの電源を消した俺は大きく伸びをする。
「世間って案外狭いもんだな」
そんな事を呟いて、俺はベットの上で横になるのだった。
〈翌日・○○駅前広島〉
約束の時間より少し早めに俺は集合場所の駅前広場に着いた。
燐子とあこはすぐに見つけると、2人の居る場所へと急いで向かう。
「ごめん、待ったか?」
「ううん。・・・私達も・・・今、来た・・・所、だよ」
「そっか。とりあえず、何処か行きたい所とかってあるか?」
「あこ、カラオケ行きたい」
「んじゃ、カラオケ行くか。燐子もそれで良いか?」
「うん・・・良いよ」
「分かった。それじゃあこ、案内宜しく」
「任せて!それじゃ、レッツゴー!」
あこの号令と案内の元俺達はカラオケに向かった。
〈カラオケ店内〉
受付で支払い(勿論俺が燐子とあこの分も支払いました)を済ませて部屋に入る。
「誰から歌う?」
「じゃあ、あこから」
「分かった。はい」
あこに端末を渡すとあこはすぐに曲を決め、歌い出した。
『t's Show Time!
あなたとリボンカットして
そのままハートに結んで
未来が始まる
オープニングセレモニー
近頃いつもdaydreamer
2人でリアルにしようよ
サイコーへの入り口
Welcome to my party. 』
点数は93点だった。あこ、普通に上手いな。
「ねぇ、悠くん・・・この曲、知ってる・・・?」
燐子から端末を受け取り確認する。
「この曲なら知ってるし歌えるよ」
「悠くん・・・一人だと、不安だから・・・一緒に、歌って欲しい・・・」
「分かったよ」
燐子が端末からモニターに送信し二人で歌い始める。
『薫る夏風に誘われて霞む死神も泣いていた
始まりの合図が轟いて咽ぶ飛行機雲
閉塞と千の世迷言で回る膿んだ世界が終る前に
夢の中さえもずっと、焼きつけたいの』
俺は余り目立たないように低音で低く歌っていたがそんなの抜きにしても普通に上手かった。
勿論点数も高く、98点だった。
「じゃあ、俺も入れますかね」
端末を使って曲を決めて俺も歌い始める。
『ほら あなたにとって大事な人ほど すぐそばにいるの
ただ あなたにだけ届いて欲しい 響け恋の歌』
自分で点数とか言いたく無いが、99点でした。
その後も、色々歌い、3時間カラオケを思う存分満喫した。
〈ファミレス〉
カラオケ店を出た俺達は今、ファミレスで昼食を食べていた。
「それでね、おねーちゃんとドラムが凄くて。あこもお姉ちゃんに憧れて始めたんだよ」
「素敵なお姉さんなんだね」
「はい!最高のおねーちゃんです。そういえば悠人さんって楽器とか弾けるの?」
「ギターとベースとキーボードとドラムとピアノとバイオリンが弾ける」
「そんなに弾けるんですか!」
「一応ね。バイオリンとピアノは親から、それ以外は知り合いの人達に教えてもらった。まぁ、ピアノとキーボードなんて殆ど変わらないからカウントしていいのか分からないけどな」
「それだけ、じゃないよ・・・。悠くんは・・・絶対音感を、持ってるよ・・・」
「絶対音感ってあの絶対音感!?」
「それ以外にどの絶対音感があるのか知らないけど、ある音を単独で聞いた時に音の高さを認識できる絶対音感だよ。まぁ、俺の絶対音感は少し特殊なんだけどな」
「特殊・・・?」
「絶対音感は単独で聞かないと音の高さを認識出来ないんだけど俺は単独じゃ無くても認識出来るんだ。認識出来るのも五つぐらいなら同時に出来る」
「凄い!こう、バーンとした闇の力を感じる」
バーンとした闇の力?何の事かさっぱり分からない。
「さて、そろそろ出ないとな」
「そう、ですね・・・」
「俺、ゲームセンターに行きたいんだが良いか?」
「あこは、いいよ」
「燐子は大丈夫か。人混みの中」
「あこちゃん、と、悠くんが・・・いるなら、大丈夫、だよ」
「ゲームセンターは確かショッピングモールの中にあった気がするから行きますか」
「はい!行きましょう」
「うん、行こあこちゃん、悠くん」
俺たちは、ファミレスで会計を済ませ、ショッピングモールに向かっていった。
〈ショッピングモール内のゲームセンター〉
結論から言わせて貰うと、ゲームセンターはマジで楽しかった。
クレーンゲームですごい大はしゃぎし、某太鼓のリズムゲームで俺と燐子が最高難易度でフルコンしまくり、たまたまあった格闘ゲームで対戦した結果、あこも凄かったものの、俺と燐子が一進一退のハイレベルな戦いをしまくった結果、沢山の人だまりを作り、お互い次の攻撃が決まれば勝つという状況で機械がオーバーヒートしてぶっ壊れるという見ていた人たちも後味の悪い結果になってしまった。
機械の弁償金はとりあえず俺が全額負担する事にし、その後は、適当に三人でショッピングモール内をぶらぶら歩きながら買い物したりして帰っていった。
〈帰り道〉
「今日は楽しかった〜!」
「ああ、オフ会に参加して良かったよ」
「私もだよ。心残り、なの、は・・・ゲームで、決着が、付かなかった、事・・・だけど・・・」
「あれは本当に後味が悪い結界に終わったな。でも、次は燐子に勝つから」
「私も・・・だよ・・・」
「あこも、2人にはまけませんよ。それじゃあこは、こっちの道なんで。バイバイ、りんりん、悠人さん」
「バイバイ、あこちゃん」
「またな、あこ」
あこは此処から俺達とは別の道で帰るようなので此処で別れた。
暫くの間沈黙が続いたが、燐子が沈黙を破った。
「そう言えば、悠くん、学校、どう・・・するの?」
「花咲川に編入するよ。もう、理事長には会ってるしね。しかも、俺の事知ってたみたいで話が早くて助かったしね」
「でも、それ、って・・・良い、の?悠くん、の事・・・あんまり知られ、たく無いん、じゃ無かった?」
「まぁね。でも、苗字で勘付く人も居るだろうし理事長も黙ってくれるようだから」
「そっか・・・また、学校・・・一緒だね・・・」
「そうだな。理事長にも要望あるかって聞かれたから燐子と一緒のクラスにしてくれって頼んだから燐子と一緒のクラスになれるかもよ」
「そうだと・・・良い、な・・・」
歩きながら談笑していたが、気づけば燐子の家の前に来ていた。
「もう燐子の家の前か。バイバイ、燐子」
「うん。・・・またね、悠くん・・・」
俺は燐子と別れて自分の家に帰ったのだった。
如何でしたか?今回あこ、燐子、悠人が歌った曲は
・あこ
オープニングセレモニー
作詞: 永原さくら
作曲: 佐久間きらら
歌: 櫻川めぐ
・燐子
とても素敵な6月でした
作詞: Eight
作曲: Eight
歌: 初音ミク
・悠人
小さな恋の歌
作詞: Kiyosaku Uezu
作曲: MONGOL800
歌: MONGOL800
となっております。あこは完全に中の人繋がりで燐子は自分の好きな曲から選びました。悠人の曲は悠人のイメージCVになるであろう人が歌っているのを聞いてそれにしたといった感じです。
さて、今回で序章は終わり次回からいよいよ第1章が始まり、残りのRoseliaメンバーも出てきます。
それでは、次回もお楽しみに。
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第1章 青薔薇と黒きシャウト
第3話 編入先は元女子校
此処から序章が終わりいよいよ本編です。
それでは、第3話をどうぞ。
春休みも終わり今日から学校生活が再開するという誰もが憂鬱となっている今日この頃・・・え?楽しみ?そんなのリア充だけだろ!しかも俺の場合編入だぞ編入。知り合いなんて殆ど居ないから憂鬱だわ!
とまぁ、イギリスから帰って来た俺が今日から編入するのは花式川学園。去年から共学校になった元女子校らしい。
別に此処までなら此処まで憂鬱になったりしない。
なんでこんなに憂鬱なのかだって?それは理事長と会った時の事だった。
「悠人君。君は4月から編入するんだろ?しかも入学式に」
「?そうですけど・・・」
「君、帰国子女だしせっかく入学式の日に編入するんだから生徒の前で挨拶してくれないか?」
「 ウソダドンドコドーン」
「オンドゥル語なんか使ってどうしたんだい?」
「貴方がオンドゥル語を知ってるのはともかく、なんで俺がそんな事しないといけないんですか!」
「君の事を黙って置くんだ。神谷財閥長男並びに神谷ゲーミング株式会社代表取締役社長、神谷悠人君」
「はぁ・・・何で俺の事知ってるんですかね?」
「何でかな?因みにOKかYESと答えなければどうなるか分かってるよね?」
「・・・分かりましたよ。やらせて頂きます」
「悠人君ならそう言ってくれると思ってたよ」
「言わせたの間違いじゃないですか?」
「何の事かな?」
「・・・性格悪いですね」
「それは私にとって最高の褒め言葉だよ」
こんな事があった訳だよ。思い返したら余計憂鬱になったけど。
ピンポーン
インターホンが鳴り確認してみると燐子だった。
俺は扉を開け外に出る。
「どうしたんだ?燐子」
「悠くんと、一緒に・・・、学校に、行きたいな、と思って・・・駄目、かな?」
「駄目じゃないよ。荷物取って来るから待っててくれ」
一旦家の中に戻ると荷物を取り、戸締りも確認して外に出る。
「お待たせ。行こうか」
「うん」
俺と燐子は花咲川学園に向かって歩き出した。
「そう・・・言えば、悠くん、みんなの、前、で・・・挨拶・・・するん、だっけ?」
「・・・なんで・・・知ってんの?」
思わず燐子の「・・・」が移っちまったよ。あの理事長、俺が編入すんの公表したのか!性格悪いにも程があるだろ!!
「編入生、が、来る・・・こと、は、有名、だった・・・よ。まさか・・・悠くんとは・・・思わなかった、けど・・・」
「なんで知られてんだろ・・・?俺日本に帰って来たばっかだぞ」
もうやだ。お家帰りたい・・・。
「悠くん・・・その・・・頑張ってね・・・」
「あぁ。噛まないように頑張るわ」
編入初日から笑い物になるのだけは勘弁だ。
そんな事を話している内に俺達は花咲川学園に到着していた。
「俺、この後理事長室に行かないと行けないから。クラス一緒だと良いな」
「うん、一緒・・・だと・・・良いね。それじゃ、また・・・ね」
「ああ、またな」
俺は燐子と別れあのクソ理事長が居る理事長室に向かう。理事長室の前に来ると覚悟を決め扉をノックする。
「神谷悠人です。中に入ってもよろしいでしょうか」
「悠人君か。入りたまえ」
「失礼します」
扉を開け理事長室の中に入る。理事長は部屋の奥にある社長椅子に座っていた。
「相変わらず此処は広いですね。理事長1人しか居ないのに勿体なくないですか?」
「会って早々それかね。君は本当に私の事を嫌っているね」
「ご自身の胸に手を当ててこれまでの行動を思い返してから言ってください」
この人の場合これまでの行動を思い返しても反省しないだろうけど。
「ところで俺を此処に呼んだ理由はなんですか?」
「君に伝える事があるからだよ」
「それでその伝える事とは?」
「まずは、君の要望通り白金燐子君とは同じクラスにしたよ。こちらの要望を聞いてくれたんだからな」
「聞いてくれたって言うより貴方が勝手に決めましたよね?」
「君は『分かりました』と言って引き受けてくれたじゃないか?」
「無理矢理言わせたようなものじゃないですか。俺が了承しなかったら俺の秘密をバラしそうですし」
なんならSNSとかで広めたりしそうだ。
「当たり前じゃないか。勿論SNSにその情報を流すよ」
・・・当たっちゃったよ・・・。この人本当に人間ですか?悪魔や魔王って言われても信じるくらい性格悪いよ。
「まぁ、冗談はこれくらいにして先程の続きだが・・・」
「とても冗談には聞こえなかったんですが、まだあるんですか?」
「君の秘密を知っている人物が私と燐子君以外にも居るんだ」
「え?」
「実は、弦巻こころが今年花咲川に入学するんだ」
え?アイツ入学此処に入学すんの?
「すみません。今から転校先変えて良いですか?」
「無理だね」
「なんで教えてくれなかったんですか!?」
「私も先程知ってね」
「もうダメだ・・・おしまいだぁ・・・」
「○ジータのマネが上手いがそのネタを使う程かね?」
「えぇ。アイツは頭のネジが何本か行方不明なので何をしでかすか分かりません」
「・・・目立たないように気をつけたまえ」
「貴方のせいでこれから全生徒の前で挨拶するのにどうやって目立たないようにすれば良いんですか!」
「黙れ小僧!」
「開き直っちゃったよ!俺に投げやりされても困るんだよ〜!」
花咲川学園入学式早朝、理事長室から悲痛の叫びが響き渡るのだった。
という訳で第1章が始まりましたがどうでしたか?
深夜テンションで書いたらギャグ回みたいになってしまいました。これを投稿した後にキャラ崩壊のタグ付けておこう。
という訳で、次回もお楽しみに。
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第4話 神谷悠人は高スペック
前回、オンドゥル語とかベジータのネタを使ったらお気に入りがあんまり増えなくて若干ショックでした。
そして、今回のタイトル・・・何も思い浮かばずこうなってしまった・・・。
そ、それでは、第4話をどうぞ。
理事長室で叫んだ後、理事長室を後にした俺は全速力で走っていた。理由?放送で呼び出されたからだよ!
という訳で入学式が行われている体育館に急いで向かう。バレないように体育館の舞台袖に入り、一度息を整えるとステージの上にある演台の前に立つ。
「遅れてしまい申し訳ありません。4月から新たに編入する事になった神谷悠人です。今年日本に帰って来た帰国子女とかいう奴です。この学校については全然知らないのもあって不安な事だらけですが、これからよろしくお願いします」
挨拶を終えて舞台袖に帰る。噛まずに言えて良かったが走ってた時間の方が長かったな。
「悠人君は2年B組に編入します」
どうやら俺は2年B組に編入するようだ。燐子とは一緒だろうけどそれ以外は全く知らない人達だろうからな。ぼっちにはならないと良いが・・・。
そんな事を思っていると、2年B組の担任であろう教師が俺に近づいて来た。どうやらクラスでも自己紹介(さっきより詳しく)して欲しい事を伝えに来たようだ。2回も自己紹介する意味あるかと思った人。安心しろ、俺もだから。
あの後、後片付けを手伝い俺は2年B組の教室の前に待機している。
「それでは、先程の編入生を紹介します。入って来てください」
と言われたので中に入る。なんか、教室ザワザワしてるけど俺に変な所でもあるのか?
「さっきよりも詳しく自己紹介しろと言われたのでちょびっとだけ詳しく紹介します。名前は神谷悠人。4年間、イギリスで留学し今年帰ってきました。趣味は楽器演奏。好きなものは、甘いもの全般とブラックコーヒー。嫌いなものは辛いもの全般です。これから、このクラスで一年間よろしくお願いします」
「自己紹介ありがとう。悠人君の席はあそこね」
俺の席は真ん中の列の後ろから2番目の所だった。その右隣が燐子だったのは偶然なのか仕込んだのかどっちなのだろうか?
「悠くん・・・お疲れ様。これ・・・から、よろしくね・・・」
「よろしく。燐子」
「それでは、今からの時間は自由時間です」
と言って先生は出て行ったけど自由時間って何すりゃ良いんだ。他の人は勉強したりしてるけど筆箱とファイル以外持ってないし・・:そういや俺は受けないけど今日課題テストあるんだっけ?
って事は、今から勉強する人が大半だろうから・・・俺、帰っていい?絶対邪魔だと思うんだけど・・・
すると、前の席に座っていた男子が俺に声を掛けて来た。
「悠人だったか?俺は有村晴翔。よろしくな」
「神谷悠人だ。これからよろしく」
「悠人ってイギリスで留学してたんだよな。って事は英語って得意なのか?」
「Oh well」
「凄えペラペラ。てか、なんで意味だ?」
「まぁまぁ」
「・・・こんだけペラペラでまぁまぁはおかしいだろ・・・」
晴翔の言う通りである。事実、神谷悠人は全国模試で全教科1桁台の順位であり総合順位は1位という化け物なのだが神谷家の人間はスペックがおかしい事もあり、基準が一般人とズレてしまっているのだ。
本人曰く、『ギリギリ順位が1桁なんて得意とは言えないだろ』との事。以上、作者からでした。
なんか、作者が居たような気がしたが気のせいか?
「まぁ、それはともかく勉強しなくて大丈夫なのか?この後、俺は受けないがテストあるんだろ?」
「自習の時間は別にあるから問題無いぜ。それよりそんなに英語をペラペラ話せるなら教えれるか?」
「範囲の場所を教えてくれれば」
「サンキュー悠人」
晴翔からテストの範囲を教えてもらう。
なるほど、本当に課題からしか出ないのか。それなら問題集さえ見せてくれれば大丈夫だな。
「ねぇねぇ」
「ん?」
晴翔に英語を教えようとしていた矢先、俺の左隣に座っている髪がピンクなのが特徴の女子が話しかけて来た。
「私は丸山彩。私にも英語を教えて欲しいんだけど・・・」
「あぁ、良いぞ」
「ありがとう、悠人くん」
「私も・・・良い・・・?」
「あ、あぁ。大丈夫だ」
「ありがとう・・・悠くん・・・」
3人ならまだなんとかなるな。これ以上増えるとキツイから早く教えようとしていると、今度は後ろにいるエメラルドグリーンの髪が特徴の女子が話し掛けて来た。
何故だろう。凄く嫌な予感がする。
「初めまして、氷川紗夜です。あの、英語で少し分からない所があるのですで教えて欲しいんですが・・・」
「少しだけなら・・・」
「ありがとうございます」
大丈夫、4人なら分からない所の量にもよるがまだ何とか・・・
「あの、私にも・・・」
「俺にも・・・」
なると思っていた時が俺にもありました。
ここぞとばかりに私にも俺にもと声を上げる。そして、この時俺は・・・
プツン
何かが切れる音と共に此処で俺の記憶は途絶えた。
気がついた時には、俺はチョークを持っており黒板に英語や日本語訳がビッシリと書かれていた。この状況からこれをやったのは俺以外居ないんだろうな。
その後、帰って来た先生が「なぁにこれぇ」と驚いていた。先生安心してください。張本人であろう俺もそんな感じですから。
とりあえず、帰っていいと言われたので黒板を綺麗にしてから、荷物を纏めて俺は帰宅したのだった。
如何でしたか?なんか、もう凄い事になってますがお気に入りがあんまり増えないのにも納得出来てしまう。
次回は、Roselia以外のキャラが登場予定です。
お気に入り、感想、評価などもお待ちしております。それでは、また次回お会いしましょう。
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第5話 羽沢珈琲店と山吹ベーカリー
第5話です。新キャラは何が出るかはサブタイトルで分かると思います。
それでは、第5話をどうぞ。
帰宅した俺は着替えを済ませると仕事に取り掛かる。学生である俺は基本的に家で仕事をしている。
しばらくの間、部屋の中でキーボードが叩かれる音が響く。やらなければいけない仕事はあらかた終わらせると大きく伸びをした。
「昼飯・・・何にしよう・・・」
と思って冷蔵庫を開けるが、中は空に等しかった。
「・・・外で食うか」
ついでにその時に買い物も済ませよう。
俺は手早く支度を済ませると外に出る。久しぶりに帰って来たから何があるか分からんが歩いてたらなんかあるだろ。
そう思いながら、ブラブラと歩いていると・・・。
「此処の商店街・・・まだ残ってたんだな」
今のご時世商店街は廃れがちだが此処の商店街は多くの人で賑わっていた。
何かないかなと商店街を歩いていると、1つの喫茶店・・・いや、珈琲店が目に入った。
「羽沢珈琲店・・・」
営業時間を確認するとまだやっていた。珈琲店ならサンドイッチとかあるだろうし此処で昼飯を済ませよう。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
中には時間帯が時間帯だったのか客は誰もおらず俺と同年代の少女が1人で働いていた。アルバイト?だとしても1人で大丈夫なのか?
「おしぼりです。それと、ご注文は?」
「コーヒーとカツサンドを一つで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
と言って少女は厨房の方に消えて行った。本当に彼女1人しか居ないのか?
それから程なくして・・・。
「お待たせしました。コーヒーとチョコレートケーキです。コーヒーは熱いのでお気をつけください。砂糖とミルクはこちらにあります」
「ありがとう」
コーヒーとカツサンドを受け取り食べ始める。
カツサンドもコーヒーも普通に美味しかった。
「ご馳走様でした。美味しかったよ」
「ありがとうございます」
「そういえば従業員が君しか居ないけど大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。この時間帯は人があまり来ないので」
「そうか。でも、アルバイト1人に任せるのってどうかと思うけど」
「私、アルバイトじゃないですよ」
「・・・え?」
アルバイトじゃない?って事は・・・。
「失礼だけど名前聞いていい?」
「羽沢つぐみです」
なるほど。そういう事か。
「此処はつぐみの親が経営しててつぐみは親の手伝いって訳か。アルバイトが淹れたコーヒーにしては美味いかったのはそういう事だったのか」
「そう言って貰えると嬉しいです。この店は初めてですか?」
「えぇ。つい最近まで海外に居たので」
「か、海外!?何処に居たんですか?」
「イギリス」
「そ、それって留学ですか?」
「まぁね。元を辿れば親の仕事の都合だけど」
その後もしばらく話し込んでいたが此処に居続けるのも迷惑なので会計を済ませて出て行こうとする時だった。
「あの、名前を聞いても良いですか?」
そういや、あんなけ話し込んどいてまだ名前を言ってなかったな。
「神谷悠人だ。またな、つぐみ」
「はい。またのお越しをお待ちしてます、悠人さん」
俺はそのまま、羽沢珈琲店を後にした。
羽沢珈琲店を後にした俺は商店街をブラブラと歩いていた。コロッケ屋とか色々あるが俺の目に止まったのは・・・
「山吹ベーカリー・・・」
朝ご飯はパンが多いし、買って行こうかなと思い中に入ると・・・
「いらっしゃいませ・・・あ、悠人先輩こんにちは」
会った事もない女子に名前で呼ばれました。いや、待てさっき
「花咲川の新入生?」
「そうですよ。今日編入して来た悠人先輩ですよね?」
「・・・俺ってそんなに有名なの?」
「はい。私のクラスどころか学校中で有名ですよ。遅れてやって来た王子様とか普通の英語教師よりも教えるのが上手いイケメン高校生とか」
「・・・ふざけるなあぁぁ!」
俺の理性が吹き飛んでしまった。きっと理事長と話したあの時から溜まっていた物が爆発してしまったのだろう。
「なんだよ、最後のやつ色々とおかしいだろ!俺は王子様でもイケメンじゃねぇ〜!!」
嘘である。この男神谷悠人はそれこそ10人が10人、100人が100人認めるイケメンである。しかもただのイケメンでなく王子様系イケメンなのである。尚本人には自覚がない模様。
「大丈夫ですか?悠人先輩」
「・・・ハッ。すまない。店内で大声出したりして」
「い、いえ大丈夫です。悠人先輩と私以外誰にも居ないので。それより、なにかあったんですか?」
「あったな。朝から色々と・・・」
俺の遠い目に察したのかそれ以上は何も聞いて来なかった。
それからは俺はパンをトレイに乗せてレジに向かう。
「そう言えば、まだ名前を言ってなかったですね。私は山吹沙綾です」
いや、落ち着け神谷悠人。これはきっと気のせいだ。そんな二回も同じ事ある訳・・・
『その幻想をぶち殺す!』
誰だよ今と○るの不幸体質ハーレム主人公の決め台詞言った奴。
『私だ』
作者かよ。それで何しに来たんだ。
『尺稼ぎ』
ぶっちゃ過ぎだろ。なにサラッとメタ発言してんの!
『だってネタ思いつかないし』
頑張れよ。頭の中捻り出してでも思い浮かべろよ。
『とりあえず、沙綾に思った事口にして話進めてね。それじゃ』
そう言ってどっかに行っちまったよ。自分勝手過ぎんだろ。こんなんが作者でいいのかよ・・・。
とりあえず言われた通りするか・・・。
「此処、沙綾の親が経営してんの?」
「はい。私は手伝いですね」
つぐみと同じパターンであった。デジャブってこういう事を言うんだろうな。なんなく予想してたけど。
レジで会計を済ませると、山吹ベーカリーを後にするのだった。
如何でしたか?
後半はもう無茶苦茶になってますが、言った通り何も思い浮かばなかったです。
お気に入り登録や、感想、評価をお待ちしております。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第6話 Destiny
突然ですが、番外編でRoseliaのステイホームの模様を書こうかどうか迷っているので、アンケートを実施します。簡単にポチッと押すだけなので参加していただけると助かります。
それでは、第6話をどうぞ。
山吹ベーカリーを後にした俺はスーパーで買い物を済ませだ俺は家に帰り仕事を再開していた。
カタカタとキーボードが叩かれる音が響くが、しばらくしてキーボードが叩かれる音とは別の音が聞こえてきた。
音の発生源はスマホからだった。確認したらあこからメッセージが届いていた。
『この後りんりんと会うんだけど、悠人さん来ます?』
お誘いのメッセージだった。今日は会社に行かなければいけないような日ではないし、仕事も追加されたりしなければ問題ない・・・よし、行くか。
『行くよ。何処で待ってればい?』
『それじゃあ、前と同じ所でいいですか?』
『大丈夫だよ。じゃあ、また後で』
支度を済ませて外に出ると前の集合場所だった駅前広場に向かう。そういや、時間を聞くの忘れてたけど待ってるぐらいなら別にいいかとか思っていた時だった。
曲がり角からもの凄いスピード走って来た女子とぶつかってしまった。
どうにか俺は踏ん張れたが飛び出して来た子は倒れそうだったので、手を伸ばして彼女の服の袖を掴むとそのまま引っ張って立たせた。
「大丈夫か?怪我とかない?」
「なんとか。前見てなくてゴメン。私は今井リサ。リサって呼んで。貴方は?」
「俺は神谷悠人。それでリサはなんで猛スピードで走ってたんだ?」
「幼馴染を追いかけてて・・・って、いけない!このままだと友希那を見失なっちゃう!ゴメン、アタシ急ぐね。バイバイ悠人」
「あ、あぁ・・・」
そのままリサは猛スピードで去っていった。一体何があったらあんな猛スピードを出せるのだろうか。
その後は特にイベントも起こらず、駅前広場に到着した。
あこは探しても居なかったので、近くのベンチに座りタブレットを使って仕事をしているとあこがやって来た。
「悠人さん待ちましたか?」
「いや、そんなに待ってないよ」
タブレットを仕舞い、ベンチから立ち上がる。
それと同じタイミングで燐子もやって来た。あこは咳払いしながら燐子に近づく。これはあこの決め台詞が炸裂するのか?
「・・・はるかいにしえの時より、我と共に戦いし魔道士よ・・・今宵、火と闇の封印が解かれし暗黒の地にてあいまみえん!・・キマった!お待たせっ、りんりん。やっぱり、りんりんの考えてくれたセリフが、最高にカッコイイよ!」
「こんにちは、あこちゃん。・・・うん・・・今日も・・・カッコ、いいね」
「えへへ、ありがとうりんりん」
「・・・悠くんも・・・また、会ったね・・・」
「あぁ。また会ったな」
まさか、もう一度会う事になるとはあこに誘われるまで思ってもみなかった。
「りんりん、悠人さん。そろそろ行こうよ」
「うん・・・行こっ・・・か」
「あぁ。・・・っと」
後ろから来た人の背負っていたギターケースに当たりそうなので、慌てて躱す。
「すみません。ケース当たって・・・って、神谷さんじゃないですか」
「あ、紗夜だったか。ギターケースには当たってないから大丈夫だ」
「そうですか。話は変わりますが英語を教えていただきありがとうございました」
あぁ、あれね。記憶が吹っ飛んでたからどんな教え方だったのか知らないけど。
「・・・そうか。まぁ、また分からない所あったら教えてやるよ」
その時はあんな大人数でない事を願うがな。
「ありがとうございます。では、私はこれで」
「あぁ、またな」
紗夜はギターケースを背負って足早に去って行った。
「ギターケース持ってるって事は、バンドやってるのかな?あこもバンドやりたいなぁ・・・」
(バンド・・・私には、想像もつかない世界だなぁ・・・)
「あ、今日はスケジュール厳守で行きたいんだった。早く行こ、りんりん、悠人さん」
「うん・・・分かった、よ・・・」
「了解」
俺達はあこの目的地に向かって歩いて行った。
時は悠人と燐子とあこが集合し紗夜と遭遇した時に遡る。
この時悠人が駅前広場に向かう途中で衝突した少女、今井リサはあの時追いかけていた人物と合流し彼と同じ駅前広場に来ていた。
「友希那は、テストどうだった?アタシのテストの点数聞きたい?聞きたいでしょ?」
「・・・今はテストの点数より、気にすることがあるから」
リサの隣に居る人物は湊友希那。リサの幼馴染であり、巷では孤高の歌姫として話題になっている歌手だ。
「いくら、忙しくても赤点は無しだよ。一緒に卒業出来ないなんて、切なすぎるし」
「安心しなさい。赤点なんて取ったら音楽活動に支障が出るから、そんな馬鹿な真似はしないわよ」
「はは・・そっか、そうだよね。でも、毎日いろんなライブハウスに行って、ホント忙しそうだね」
「まぁ、そうね」
「元々、ライブハウスで歌ってたけど毎日出演してるわけじゃ無いんでしょ?」
「・・・・・・・」
「・・この話したくないのは分かってるけど、まだバンドのメンバー探してるの?」
「当然よ。今年の『フェス』に向けたコンテストの受付は始まっている。条件は、三人以上。今年こそ見つけみせるわ」
(そして、お父さん達も実力と才能を認めた彼も・・・『神谷悠人』も見つけてみせる)
「でもさ、そーゆーのって・・・!」
「私はやるわ。お父さんの為にリサだって知ってるでしょ。メジャーに行ったお父さんのバンドがどうなったのか」
「それは、私も知ってるけど・・・」
「私は、あの『フェス』で、FUTURE WORLD FES.で、必ず私の音楽を認めさせるわ」
「・・・アタシも、友希那のお父さんは辛かったと思うよ。でも、でもさ・・・ううん。だからこそかな、アタシは友希那には、音楽で辛い思いをして欲しく無いんだよ」
リサは苦痛な表情で友希那に訴える。自分の大切な幼馴染が傷つく所を見たくないから。
「ほら、私だってベースは多少やってたし?私も音楽やる気持ちは、それなりに分かるっていうか?あんまり、自分を追い詰めないで欲しいんだ。ま〜アタシは友希那みたいにストイックじゃ無いし、高校に入ってネイルしたいからってやめちゃったレベルだけどさ〜・・・」
「私はただ、自分のしたいことをしているだけよ」
「で・・でも」
「私は真剣なの。やるからには全てを賭ける。妥協のない完璧なバンドをつくるには、楽しさなんて必要ない。じゃ、ライブハウスに着いたから。リサは、アクセサリーショップに行くんじゃないの」
友希那はライブハウスの中に入って行く。リサは、それを見ている事しか出来なかった。
大ガールズバンド時代を支えるとあるバンド。
そのメンバーである湊友希那、氷川紗夜、今井リサ、白金燐子、宇田川あこ・・・そして、彼女達を陰で支える神谷悠人。
この6人が、同じ時間、同じ場所に居たのは運命だったのかもしれない。
如何でしたか?今回は最後の文章の為に、悠人視点から3人称視点に変化という特殊なパターンをやってみました。
とりあえず、これでRoseliaメンバーは全員出したので早いとこバンドを結成させたいですね。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第7話 アイツがやって来た
前回からお気に入りが1個しか増えなくて36という数字が嫌いになった作者による第7話です。
タイトルのアイツが誰なのか皆さんで予想してみてください。それでは、第7話をどうぞ。
俺達はあこに連れられて連れられてゲームセンターとかに行ったりしていた。またゲームセンターかよとか思った奴言わなくていいからな。
そんな、俺達は今オープンカフェに居る。隣の建物から音が漏れてるがライブハウスなのか?
「ねぇ、あこ・・・ちゃん。・・・この音・・・って」
「ふふっ。気づいたね、りんりん。悠人さんは気づいてたぽかったけど、りんりんは、このカフェの横にあるの何だと思う?」
「・・・え・・・?」
「りんりんってさ。ライブハウスって分かる?」
燐子はこういううるさい場所とか人混みとか苦手だから知らないでしょ。
♪〜♪〜♪
いきなり俺のスマホの着信音が鳴り出す。相手を見たら俺の秘書からでした。・・・嫌な予感しかしない。
二人に事情を説明してカフェの敷地から出ると電話に出る。
「もしもし、一体どうしたんですか遙さん」
俺が今電話と話している人は俺の秘書である八木遙さんだ。
『悠人社長大変です!』
「落ち着いてください、遙さん。何があったんですか?」
『・・・が・・・が社長室に!』
社長室で何かが起きたようだが一体何が起きたのだろう?
「遙さん聞こえないです。はっきり言ってくれませんか?」
『だからGが社長室に出現したんです!』
G?もしかしてゴキの事か?
「・・・・・・・・・・・・」
『悠人社長?』
「そんなんで電話してこないでください!」
『そんなんってなんですか!GですよG!人類の敵であるゴキが出現したんですよ!!悠人社長今すぐ来てください!』
「なんでそんなもんの為だけにわざわざ会社に行かないといけないんですか!休憩室に○キジェットがあったでしょう!それをシュッとすれば終わりですよ!終わり!」
『無理です!ヤツが入り口の近くに居て取りに行けません!』
「副社長に退治させろ!」
『駄目です!副社長室にもヤツが出現して副社長と副社長秘書は逃げ出しました!!』
「何やってんだよあの人達!」
確かに副社長もその秘書も遙さん程じゃないが虫が苦手だけどGが出現して逃げ出すって神谷ゲーミング株式会社はどうなってんだよ!?社長の顔が見てみたいわ!って社長俺じゃん!
『と、とにかく悠人社長早く来て退治してください〜!』
これは俺が行かないと駄目だな。一般社員にそんな事をやらせる訳には行かないし。
「ハァ・・・分かりました。今すぐ会社に向かいます」
『ありがとうございます!!』
「んじゃ、もう切りますから。大人しくしててください」
遙さんの通話を切り、俺の祖父である爺やにスーツと車を用意するよう頼むと燐子とあこに急用が出来たから一旦別行動をする事を伝える。幸い二人は了承してくれたのでカフェから出ると今度は副社長に電話をかける。
『もしも「副社長、早く帰って来てください!」断る』
「どこぞやの兵長の真似しなくていいですからマジで帰って来てください」
『嫌だ!行きたくない〜!!』
「今からゴキ退治の為だけに会社に行く俺の身を考えてもらえます?」
『殆ど会社に行かない悠人社長には言われたくないです!』
それ言われると言い返せないな。どうやって連れ戻そうか。
「分かりました。今月の給料とボーナスをカットされても良いなら帰って来なくていいですよ」
『なっ!?』
「副社長は給料とボーナス多いですから痛くも痒くもないでしょうしあカットした分で社員達の給料とボーナスを増やすので一石二鳥ですね」
『UWAAaaaa!』
副社長の断末魔の叫びが電話越しから聞こえるのはきっと気のせいだろう。
そうこうしていると爺やが運転する車がやって来た。
「それじゃあ、今から会社向かうのでカットされたくなかったら早く帰ってきて・く・だ・さ・い・ね」
「は、はい・・・」
「それとこれは隣に居るであろう貴方の秘書も同じだと伝えておいてください。それでは」
通話を切り、爺やが運転している車に乗る。
「爺や、スーツは?」
「こちらにございます」
「ありがとう。それじゃあ、神谷ゲーミング株式会社まで送ってくれ」
「かしこまりました。帰りはどうしますか?」
「すぐ終わらせるから待っていてくれ。帰りも此処で下ろしてくれ」
「かしこまりました」
爺やからスーツを受け取り急いで着替える。さっきまで着ていた服は後日家に送ってくれるらしい。
神谷ゲーミング株式会社には車を走らせて10分で着いた。やっぱり、車は楽だね。いつも、家から自転車で此処まで来てるから結構大変なんだよ。・・・二輪の免許取ろうかな。
とりあえず、車から降りて休憩室から○キジェットを持って来ると社長室の扉を開ける。
『やっはろー』
Gは本当に扉のすぐ近くに居た。すぐに○キジェットをGに狙い定めてすぐに発射する。
○キジェットを 浴びたGは数分後にポックリと逝った。だが、まだ終わっていない。Gは死ぬ時に卵を産み落としているかもしれないので慎重に対処しないといけない。
社長室にあるティッシュでGを何重にも包むとそのまま手で握り潰す。そのままティッシュをトイレにシュート!ティッシュごとGを流して超エキサイティング!
手を念入りに洗い、俺を此処に呼んだ張本人の遙さんは社長室の来客用の椅子にへなへなと座り込んで居た。
「遙さん、もう大丈夫ですよ。社長室にヤツは居ません」
「ありがとうございます。悠人社長」
「副社長室のGを退治したら、帰りますけどまた来るので」
「分かりました」
社長室を出ると○キジェットを手にして副社長室に向かう。
さっきと同じように対処すると、手を念入りに洗い神谷ゲーミング株式会社を後にし、爺やの車に乗り込む。
「すまん爺や。待ったか?」
「いえ、むしろ早かったのですが、よろしいのですか?」
「ゴキ退治に時間かけるなんてアホらしいだろ。それよりも、さっきの場所まで送ってくれ」
「かしこまりました」
俺を乗せた車はゆっくりと走り出したのだった。
という訳でサブタイのアイツはGだった訳ですが如何でしたか?
お気に入りと評価してくれる人を増やしたいので前回とは違ってギャグ路線で行きました。
それとアンケートですが、15対3でRoseliaのステイホーム模様を書きます。
お気に入りと評価をよろしくお願いします。それでは、また次回お会いしましょう。
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第8話 翡翠のギター
今回は、G騒動を終えてからです。翡翠とは誰を指しているのは、皆さんなら分かるかと思います。
それでは、第8話をどうぞ。
爺やの車が先オープンカフェに到着すると俺は車から降りる。服は着替えるのが面倒臭いからスーツのままだ。
燐子とあこは隣のライブハウスに居るらしい。人混みが苦手な燐子にライブハウスなんて地獄と大差ないと思うんだが、無事なんだろうか?
ライブハウスの中に入り二人を探しているとドリンクカウンターの近くに顔を真っ青にガクガク震えている燐子と燐子をなんとか落ち着かせようとしているあこがいた。
「燐子、大丈夫か?」
「・・・悠、くん・・・?」
「あぁ。俺だよ、大丈夫か?」
「・・・う、うん。なんとか・・・」
「そうか。あこ、一番見たいやつを見たライブハウスを出るぞ」
流石にこの状態の燐子を最後までライブハウスに居させるのは危ない。
「分かってますよ。あこが見たい人を見たら帰るつもりでしたし。それより、悠人さんは用事を終わらせたんですか?服もスーツになってるし・・・」
「それは後にでも説明する」
そうこうしているうちにステージではバンド演奏を開始しようとしていた時だった。
てか、紗夜いるじゃん。バンド組んでたんだな、どれくらい上手いんだろう?
聞いて思った事・・・このバンドギター以外なってないな。
ギターのレベルに他のメンバーが追いついてないと言った感じだ。だから、派手なパフォーマンスで誤魔化している。
だが、ギター・・・紗夜に関しては正確性は俺よりも上だな。ミスも殆どない。強いて言えば、ラストの曲のアウトロでコードチェンジが僅かに遅れたのと、サビに入る直前で音がほんの僅かずれていただけだ。前者はともかく、後者に至っては俺みたいな特殊な絶対音感でもない限り本人でも気付けないぐらいごく僅かにだった。
普通に練習しただけでは絶対に身に付けれないぐらい基礎のレベルが高いから、相当努力をして来た事が容易に想像出来る。
と、いけないいけない。完全に燐子の事を忘れてた。
燐子の方を見ると顔が真っ青になっていた。燐子は1回ライブハウスから出た方が良さそうだな。
「燐子、一回外の空気を吸ってきた方が良い。あこ、燐子と一緒にライブハウスから出てくれるか?」
「悠人さんは?」
「此処に残る。あこが一番見たい人は始まる前に連絡するから」
「分かりました」
「あと、なんかあったら呼んでくれて構わないから」
「はい。あ、これも渡しますね」
あこから渡されたものはプログラムだった。
「あこが見たい人は『湊友希那』って人なので!」
「分かった」
「じゃあ・・・行こ、りんりん」
「・・・うん」
あこと燐子がライブハウスから出て行った。
「まさかあこの一番見たい人があの人の娘だったとはな」
俺は湊友希那を知っている。実際に会った事はないがあの人から話は聞いていたからだ。
それでも、あの人の娘がこんな所に居るのはやっぱり・・・
「・・・『フェス』なのか?」
そう思いながら俺はプログラムに目を落とすのだった。
私は湊友希那。今はフェス』に出場する為のメンバーを見つける為にライブハウスに居るわ。でも、どれも駄目だわ。そういえば次のバントがもうそろそろで始まるわね。このバンドには『フェス』に出場する為に必要なメンバーは見つかるのかしら。
そう思い、私はこのバンドの演奏に耳を傾けたが・・・
(このバンド、ギターだけ上手くて、あとは話にならない。バランスが悪過ぎるわね)
でも、あのギターの子、あのフレーズが弾ける技術もそうだけど土台になる基礎のレベルが尋常じゃないわ。明らかに普通に練習しただけでは身に付くレベルじゃ無いわ。一体毎日どれだけ練習しているの?
「・・・ありがとうございました」
「紗夜ーーーっ!最高ーーーッ!」
あの、ギターの子紗夜って名前らしいわね。
「ねぇ、あれ友希那じゃない?・・・近くで見ると迫力あるね」
「しっ。聞こえるよ。友希那は気難しいって有名なんだから」
「・・・・・・・」
「あ!友希那さん、この前はどうも・・・」
「・・・・・・・」
「あれ、・・・行っちゃった。話し掛けたの気づかなかったのかな?」
「知らないの?友希那って『レベルの合わない人間とは話さない』んだって」
「え、そうなの?確かにめちゃくちゃ上手くて凄いけど、ちょっと酷くない?」
「スカウトの話も良く来るらしいし、あたし達アマチュアとは、違うと思ってるんじゃない?」
何と言われようと思われようと、別に構わないわ。私はやるべきことをするだけよ。
そう思いながら私はロビーに向かうと、騒いでる人達が居るみたいだけど何かあったのかしら?
「もう無理!貴方とはやっていけない!」
「・・・私は事実を言っているだけよ。今の練習では、先が無いの。バント全体の意識を変えないと・・・」
どうやら、あのギターの子、紗夜とそのバンドメンバーが言い争っていた。どうやら、バンドに関する事で揉めているみたいね。
「いくらパフォーマンスで誤魔化しても、基礎のレベルを上げなければ、他のバントに追い抜かれるわ」
「でも・・・いくらそうでも!貴方が入ってから、私達まだ高校生なのに、みんな練習と課題で寝る時間も無いのよ・・・!」
「・・・ねぇ、紗夜。貴方の理想はわかるよ。でも、貴方は、バンドの技術以外に大切なものは無いの?」
「無いわ。そうでなければわざわざバンドなんてやらない」
「・・・っ!酷いよ!私達は確かに、いつかプロを目指して集まった。でも・・・みんな、仲間なんだよ!」
「仲間・・・?馴れ合いがしたいだけなら、楽器もスタジオもライブハウスも要らないわ。高校生らしく、カラオケかファミレスにでも集まって、騒いでいれば充分でしょう」
この子の考え方・・私と似ている。しかも同じ高校生・・・。
「・・・最低・・・もういい!こんなバンド、解散よ」
「落ち着きなよ。何も私達がバラバラになる事無いよ。この中で考えが違うのは一人だけ。・・・紗夜、そうだよね?」
「・・・そうね。私が抜けるから、貴方達は、バンドを続けて。その方がお互いの為になると思う。今までありがとう」
どうやら、揉め合いは紗夜がバンドを抜ける事で決まったらしいわね。
「はぁ・・・っ!・・・ごめんなさい。他の人がいたのに気づきませんでした」
紗夜は溜め息を吐いていたけどすぐに私に気づいたみたいね。
「さっき、貴方がステージで演奏しているのを見たわ」
「・・・そうですか。ラストの曲、アウトロで油断して、コードチェンジが遅れてしまいました。拙いものを聴かせてしまって、申し訳ありません」
「!確かに、ほんの一瞬、遅れていたわ。でも・・・ほとんど気にならない程度だったわ」
あれが、ミスだと言うのなら、相当な理想の高さね。・・・この子となら・・・もしかしたら。
「紗夜って言ったわね。貴方に提案があるの。・・・私とバントを組んで欲しい」
「え?私と貴方で・・・バント?・・・すみませんが、貴方の実力も分かりませんし、今はお答え出来ません。それと、私はこのライブハウスは初めてなんですが、あなたは常連の方なんですか?」
「そうね。私は湊友希那。今はソロでボーカルをしてる。FUTURE WORLD FES.に出る為のメンバーを探しているの。貴女ぐらいなら、聞いたことない?」
「! 私もFUTURE WORLD FES.には、以前から出たいと・・・でも、フェスに出る為のコンテストですらプロでも落選が当たり前の、このジャンルでは頂点と言われるイベントですよね。私はいくつもバンドを組んできました。けれど、アマチュアでもコンテストに出られるとは言え、実力が足りず、諦めてきた・・・」
(私は『あの子』と比べられない為に、必死でやってきた。でも、いつも肝心のバンドが私についてこない。もうこれ以上、時間を無駄にしたくない・・・)
紗夜は少し悩んでいたけどすぐに口を開いた。
「ですなら、それなりなりに実力と覚悟のある方となければ・・・」
「貴女と私が組めばいける。私の出番は次の次。聴いてもらえば分かるわ」
「待って下さい。例え実力があっても、貴女が音楽に対してどこまで本気なのかは、一度聞いたくらいでは分かりません」
「それは、私が才能があっても、努力をせずにあぐらをかいている人間という事かしら?私は、フェスに出る為なら全てを賭けると誓ったわ。貴女の音楽に対する覚悟と目指す理想に、負けていると感じていないわ」
「・・・分かりました。ただし、一度だけです」
「良いわ。それで充分よ」
私は、紗夜とバンドを組む為に自分の思いと覚悟を全て込めて歌う。彼女とバンドを組む為に。
全ては『フェス』に出場する為に。
如何でしたか?後半は会話が多くて読みにくかったかもしれませんが、作者の力量ではどうする事も出来ませんでした。
次回は友希那さんのターンになりそうです。それでは、次回をお楽しみに。
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第9話 孤高の歌姫
小説投稿をしているこのiPhone6Sを先日誤ってトイレに落として水没させてしまった作者でございます。
今の所は大丈夫だけど、いつ不具合が出たらどうしようと気が気でありません。
これからどうなるか分かりませんが、第9話をどうぞ。
友希那の前の人のライブがそろそろ終わりそうなので、あこに連絡し二人を呼び出す。
程なくして、あこと幾分か顔色が良くなった燐子がやって来た。
「燐子、大丈夫か?」
「うん。・・・外の空気を、吸えたから・・・」
良かった。これで駄目だったら正直お手上げだった。
「悠人さん、次は友希那ですよね?」
「あぁ。もうそろそろで始まると思うが・・・」
そうこう言っているうちに友希那と思われる一人の女子がステージに立つ。それだけで、客席から多くの歓声が響き渡った。
そして・・・
「ーーーーー♪♪」
友希那が歌い出した。
(なんだよ・・・これ・・・)
俺は友希那の歌声を聞いて驚いていた。
もう、上手いとかそんな次元の話じゃない。会場一帯を包み込むかのように歌声がライブハウス全体に響き渡っていた。言葉1つ1つが音にのり情景が浮かんでいく。こんな歌声を聞いたのは初めてだった。
あこが一番見たいと言ったのも分かる。今日、このライブハウスに出演している人達の中で友希那より凄い奴なんて居ないだろう。
それから俺達が友希那の歌声に感動し、しばらくぼーっとしているのに気づいたのは3分後のことだった。
湊さんの歌を聞く為に私は今ライブハウスに居ます。湊さんはというと、ステージに立ち準備をしている。
「・・・友希那・・・!」
それにしても凄い熱気だわ。湊さんはこんなにファンがいるの?
しかもその人達は騒がずに、あの子が歌うのを今か今かと待っていた。
「燐子、大丈夫か?」
「うん。・・・外の空気を、吸えたから・・・」
あの人・・・確か同じクラスの白金さん?彼女も湊さんのファンなの?それに隣には神谷さんも居る。何故か服がスーツに変わっているけど、彼もファンなの?
そんな事を思っていた時だった。
「ーーーーー♪♪」
(!何・・・この、歌声・・・)
こんなの聞いた事がない。言葉一つ一つが・・・音にのって、情景に変わる・・・色になって、香りになって・・・会場が包まれていく・・・。
「・・・本物・・・だわ・・・。やっと・・・見つけた・・・」
私は湊さんの歌に聞き惚れていた。
そして、この人ならと期待に胸を躍らせていた。
「・・・どうだった?私の歌」
「何も・・言う事は無いわ。私が今まで聴いたどの音楽よりも・・・貴方の歌声は素晴らしかった」
この人の歌声はそれ程までに素晴らしかった。
少なくとも、私がギターを始めるきっかけとなり、目標でもあるあの音と同じぐらいに・・・。
「貴方と組ませて欲しい。そして・・・FUTURE WORLD FES.に出たい。貴方となら、私の理想である頂点を目指せる」
「なら、改めて聞くわ。私とバンドを組んで欲しい」
「はい、此方こそ宜しくお願いします」
こうして、私は湊さんとバンドを組む事になった。
「そういえば、メンバーは私以外に決まっている人は居るんですか?」
「まだ誰も決まってないわ。ベースとドラムのリズム隊、それにこのジャンルにおいて重要なキーボードも」
「後・・・3人ですか・・・。メンバーの候補となるような人は居ないのですか?」
「1人だけ居るわ。なんとしてでもメンバーに加えたい人物が・・・」
湊さんをそこまで言わせるなんて一体どんな人なのかしら?
「それは一体誰なんですか?」
湊さんは一息つくと静かに口を開いた。
「・・・私が探している人物の名前は神谷悠人。私達と同年代の高校生よ」
湊さんから語られた人物は私と同じクラスであり今日、編入したばかりの男子生徒の名前だった。
如何でしたか?
出来る事なら評価をしていただけると嬉しいです。評価バーに色を付けたい(切実)。
さて、本編ではやっと友希那と紗夜がバンドを結成した訳ですが、もう9話(プロローグ含めて10話)です。Roseliaが結成される頃には何話になっているんでしょうか。
それでは、スマホが壊れない事を祈りつつこんなこの辺で。
次回をお楽しみに。
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第10話 歌姫と翡翠の少女と天才少年
さて、本日6月17日は私の誕生日(誰も聞いてないし死ぬ程どうでも良い)な訳ですが、誰からも祝って貰えず、さらにはパシリにされて胸糞悪い今まで最悪な誕生日となりました。
これでも高校生なのに親からも祝って貰えない・・・まぁ、慣れちまったが・・・。
そんな事は宇宙の彼方にでも置いといて今回はいよいよ、友希那と悠人が対面します。
それでは、記念すべき第10話をどうぞ。
湊さんの探していた人物は今日編入してきた神谷さんだった。
「私達がFUTURE WORLD FES.に出場する上で彼は絶対にメンバーにしたいわ」
湊さんにそこまで言わせるなんて・・・確かに趣味は楽器演奏といっていましたが・・・。
「神谷さんでしたらこのライブハウスに居ましたよ」
「!?それは本当かしら!?」
「え、えぇ。私の近くで湊さんのライブを見ていましたし」
「すぐに探すわよ!」
湊さんはそう言って観客席の方へ急いで向かう。私も湊さんを見失わないよう追いかける。
「そういえば、紗夜は彼を知っているような口ぶりなのだけれど・・・」
「実は、私の通っている学校に神谷さんが編入したんです。どうやら去年までイギリスに居たようでして・・・」
「それで、今まで探しても見つからなかった訳だわ」
私達が観客席に着いた頃はあれだけ居た観客の大半が居なくなっており、神谷さんの姿は見当たらなかった。
「居ませんね」
「此処に居ないとなると外に居る可能性が高いわね。紗夜、急ぐわよ」
「分かりました」
私達は観客席を後にする。外に向かっている間に私は神谷さんの事を聞く事にした。
「湊さんはどうして神谷さんをそれ程までに求めているのですか?」
「そうね。貴女にも話しておいた方が良いわね」
湊さんは一息ついて口を開いた。
「私が神谷悠人を求めている理由は彼の音楽の才能よ」
「才能・・・」
『才能』という言葉に私は苦い気ものが込み上げてくるのを感じた。
まるで、あの娘の事を聞かされるような気分だ。
「えぇ。彼は音楽に愛され・・・いえ、愛されすぎでいるのよ」
「どういう事ですか?」
「まず、彼は様々な楽器を扱う事が出来る。少なくともバンドに置いて必要とされる楽器は全て弾く事が出来るわ」
バンドに置いて必要とされる楽器。それはギター、ベース、キーボード、ドラムの4つ。
神谷さんはそれら全ての楽器を弾けるというの?
「しかもただ弾けるだけじゃないわ。どの楽器であろうとプロとなんら変わらないわ。その証拠に彼は『International Guitar Championship』という世界一のギタリストを決める大会で最年少で優勝しているわ」
私はその言葉に言葉を失ってしまった。何故なら神谷さんが私がギター始めたきっかけであり目標となった人物だったからだ。
私がギターを始めた理由はあの娘の事もあるけどたまたまテレビで私と同年代に男の子が弾いていたギターに魅力されたからだ。
「神谷さんがそれほどの人だったなんて・・・」
「それだけじゃないわ。彼は特殊な絶対音感を持っているの」
絶対音感とはある音を単独で聞いた時に音の高さを認識できるといったものですが、湊さんは
「特殊な絶対音感とは一体どのようなものなのですか?」
「紗夜は絶対音感を知っているのよね」
「はい、知っています」
「絶対音感は単独で音を聞いた時にその音の高さを認識出来るものだけど彼の絶対音感の場合複数の音を聞いていても音の高さを認識出来るのよ」
そんな絶対音感は今まで聞いた事がない。
ここまで聞いて思ったが、湊さんが言った事は間違いなどではない。神谷さんの音楽の才能は有名な音楽家となんら変わらないものだと思わせるものだった。彼はそれ程までに音楽に愛されているのだ。
「彼の事を話している内に外に出たわね。紗夜、彼は居るかしら」
湊さんにそう聞かれた私は辺りを見渡す。
外は既に薄暗かったが、オープンカフェで白金さんともう一人の女子と喋っているスーツを着た同年代の男子がいた。あの人が神谷さんで間違いないだろう。
「あそこのスーツを着ている男子が神谷さんです」
「分かったわ。紗夜、行くわよ」
私と湊さんは神谷さんの方へと歩きだして行った。
友希那のライブが終わった後、俺達はライブハウスの隣ににあるオープンカフェでのんびりしていた。
「あそこにいるの友希那じゃない?」
あこが指を指している方を見ると友希那と何故か知らないが紗夜が居た。
「あこちゃん・・・あんまり・・・人に、指を指さない方が・・・良いよ・・・」
燐子があこに注意する。それに関しては俺も燐子と同じ考えだから何も言わないが・・・
(友希那と紗夜が俺達の方に来ていると思うのは気のせいか?)
そう思っていたが、二人は俺達の方にどんどん近づいて行き俺達の前まで来ると足を止めた。
なんで、俺達の方に来たのかさっぱり分からん。紗夜なんて今日知り合ったばっかだし、友希那に関しては名前こそ知っているが直接会うのは初めてだ。
とりあえず此処に来たわけを聞こうとしたが、俺より先に友希那が口を開いた。
「貴方が、神谷悠人かしら?」
「・・・あぁ」
一瞬しらばっくれようかなと考えたが、友希那が凄まじい程の圧をかけてきたので正直話す事にした。
流石、中の人が圧が強い相羽あいなさんなだけあるな。
「訳の分からない事を言わないでくれるかしら?今から話す事はとても大切な話なのだから」
なんで心読んでんだよとツッコミたいがそんな事をしたら俺の生命活動が停止しそうな圧を出しているので心の中に仕舞っておく事にした。
もはや、脅迫に等しいとかそんな生温いものではなく脅迫そのものである。
「分かった。で、俺になんの用だ湊友希那」
「そうね。まずは私と紗夜の演奏の評価をしてもらえないかしら?」
なるほど。友希那は俺の特殊な絶対音感を知っているのか。それで自分と紗夜の演奏を評価してもらいたいって訳か。
どうして自分だけでなく紗夜の演奏も評価するのか、そもそもバンドを組んでいた紗夜がメンバーとではなく友希那と一緒に居るのかは分からないが2人の間に何かしらの繋がりがあるのだろう。
とりあえず、俺は2人のライブを思い返しながら2人の演奏を評価すべく口を開いた。
「紗夜は基本的に正確に弾いてるから、ミスが殆ど無いんだが、強いて言うなら、ラストの曲のアウトロでコードチェンジが遅れてたのと、これもラストの曲だけど、サビに入る直前でほんの僅か音がずれてた。それで友希那は聞き入る程の歌声だったが、声の伸びがもう少しあったら良かったのと、歌い始めで少し遅れてちょっとずれてたってところだな」
「流石ね」
「私もコードチェンジが遅れたのは分かりますが、サビの直前で音がずれてたのは気づかなかったです」
「あれは絶対音感とかもってない限り気づかないような微々たるものだからな。気づかない人の方が多い」
こんな感じで2人の演奏を評価した訳だが、一体友希那は何が目的なのかさっばり分からない。
「で、目的が終わったのならさっさと帰ってくれないか?俺はこの後しなくちゃいけない事があるんだから」
「なら手短に伝えるわ。神・・・いえ、悠人。私達とバンドを組んで欲しい」
「
「何を言っているのかしら?紗夜が居るじゃない」
どういう事だ。紗夜は友希那とは別のバンドのメンバーだった筈だ。掛け持ちなんて出来ないだろうし・・・まさか。
「紗夜、お前あのバンドを脱退したのか?」
「えぇ。私と他のメンバーとの意見が違ったので脱退するの事になりました」
そこを友希那がバンドの話を持ちかけてメンバーになった訳か。紗夜が所属してたバンドも勿体ないことしてるな。いくら意見が違うからって紗夜があのバンドを支えていたようなもんなのに。
「それで、悠人は私達とバンドを組んでくれるかしら?」
「悪いが、それは出来ない」
「・・・理由を聞いても良いかしら?」
僅かな間があったが友希那がそう聞いてきた。
「今の俺を見たら察しがつくと思うだろうが、働いているんだよ。それに家庭の事情もあるからやめる事も出来ないし、信じてもらえないだろうがそれなりに高い役職だから休む事だって難しい」
「アルバイトって訳じゃないんですよね・・・」
「只のアルバイトがこんなスーツ着るか?」
今の俺が着ているのはそれなりの値段がするスーツだ。少なくとも高校生が着るようなものではないとは分かる筈だ。
「仕事を休むって事が出来ない以上練習や下手したららライブなんかにも参加出来ない。そんなのは、いくら演奏技術が高くても邪魔だろ?だから、友希那達とバンドを組む事は出来ない」
「・・・そう。なら、マネージャー兼コーチとしてならどうかしら?仕事とかでいけない日は休んで貰って構わないわ」
「本当にそれで良いのか?」
「貴方が私達とバンドを組んで貰えるなら構わないわ。ただ、休んでいる日の対策はして欲しいわ」
「分かった。これからよろしく友希那、紗夜」
「よろしくお願いします」
「えぇ。で、悠人。これからしなくちゃいけない事があるって言ってたげど大丈夫なのかしら?」
友希那にそう言われて腕時計で時間を確認する。最後に確認した時(燐子とあこと喋っている時に一度確認した)からだいぶ時間が経っていた。
「そろそろ行かなくちゃいけないな。燐子、あこ。またな」
「・・・うん、またね・・・」
「さよなら、悠人さん」
「友希那と紗夜もまたな。今後の予定はとりあえず紗夜を通して教えてくれ」
「分かったわ」
「分かりました」
友希那と紗夜が了承したのを確認して俺はカフェを後にしたのだった。
如何でしたか?友希那としては悠人は何がなんでも自分のバンドに加えたいので最大限譲歩しマネージャー兼コーチとして自分からバンドメンバーにしました。
まぁ、悠人は一企業の社長ですから普通ならライブハウスなんかに行ってる暇なんて無いでしょうがそこは有能秘書(G騒動でポンコツキャラと思われるかもしれませんが本来は優秀な秘書なのです。虫とかが極度に苦手ですが・・・)が上手い事スケジュールを管理してくれていると思っていて下さい。
宜しければ、お気に入りと評価をお願いします。そして、長瀬楓さん、☆9評価、でっひーーさん、☆10評価ありがとうございます。お気に入り登録してくださった方もありがとうございます。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第11話 彼が居なくても物語は動き出す
評価バーが赤色で(今は橙ですが)驚きました。評価してくださった方本当にありがとうございます。
今回は、燐子視点→友希那視点となっております。字数は千文字ちょいとだいぶ短いですが、タイトルにあるように主人公はで出来ませんし、あくまで次のステップへの幕間といった感じですので。
前置きは置いといて、第11話をどうぞ。
悠くんがやらなくちゃいけない事(たぶん、仕事)の為にカフェから去った後、友希那さんと氷川さんもカフェから去ろうとした時でした。
「あの、友希那・・・さんバンド組むんですか?」
「そうね、その予定よ」
「・・バンド・・!!あ、あこっ、ずっと友希那さんのファンでした・・っ!だから、お願いします。あこも入れてっ!」
「!?・・・あこ・・ちゃん・・・?」
私はあこちゃんの言葉に驚いた。あこちゃんがドラムを叩けるのは知っていたけど、バンドを組みたいとは知らなかった。
「あこ、世界で二番目に上手いドラマーです!一番はお姉ちゃんなんですけど!だから・・・もし、もし・・・一緒に組めたら・・・!」
「ちょっと貴女。私達は本気でバンドを・・・」
「遊びはよそでやって。私は2番であることを自慢するような人間とは組まない。紗夜、行くわよ」
「えぇ」
友希那さんと氷川さんはそのままカフェテリアを去って行く。
あこちゃんの方を見ると、バンドを組むのを断られて落ち込んでいた。
「・・・あこちゃん・・・大丈夫・・・?」
「・・・うん。友希那さんが認めて貰えるまで、あこ、諦めないから!」
あこちゃんの落ち込んでいた顔が、みるみる熱意に満ちた顔に変わっていく。私と違ってあこちゃんは本当に強いな。
私とあこちゃんはNFO関連の話をしながらカフェを後にしました。
私と紗夜は歩きながら今後の打ち合わせをしていた。
「明日から、早速スタジオの予約を入れたわ。時間は、4時からだけど大丈夫かしら?」
「大丈夫です。私としても早く練習がしたいので」
「そう。悠人への連絡も大丈夫かしら?」
「それについても問題ありません。神谷さんとは同じクラスですので」
「なら、良いわ。ああ言ったけど、出来れば来て欲しいわね」
「それについては同感ですが、神谷さんの着ていたスーツは高級スーツに分類されてもおかしくないものでしたからこれるかどうか怪しいですね。湊さんは神谷さんが働いているのを知らなかったのですか?」
「えぇ。私も初めて知ったわ」
少なくともお父さんから悠人が働いているなんて聞かされた事はなかった。
今になって思い返せば、悠人の事を私は音楽以外で知らない気がする。
「メンバーに関しても神谷さんがマネージャー兼コーチですので、ステージには立てませんよね」
「そうね。ボーカルは私、ギターは紗夜で良いけどベースとドラムのリズム隊、このジャンルにおいて重要なキーボードも決まってないわね」
「後3人ですか・・・急いで探さなければいけませんね」
「そうね。それじゃ明日の練習で」
「えぇ。明日の練習で会いましょう」
私と紗夜は別々の道を歩み始める。
私のバンドに馴れ合いはいらない。FUTURE WORLD FES.に出場する為になら私は全てを捨てる事になったとしても構わない。
この時は、そう、思っていた・・・
如何でしたか?
これを書いて思ったのはあこのメンタルが凄えなと思いました。友希那にあんな断られ方したら私はハートが砕けますね。友希那さんのフェスへの覚悟も尋常じゃないですし・・・
それではまた次回お会いしましょう。
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第12話 ドタバタな学校生活
リアルの事情で遅くなりましたが、今回は悠人の学校生活をお送りします。
それでは、前置きもここまでにして第12話をどうぞ。
翌日、俺は朝食と弁当を作っていた。
購買のパンでも良いが、昼にパン1個だけは、足りない自信しかないからな。
ささっと朝食と弁当を作り、作った朝食を食べ終え、制服に着替えるなど諸々の事が終わった時にインターホンが鳴った。
一応確認すると、インターホンを確認したのは予想通り燐子だった。
俺は急いで学校の用意を持って外に出る。
「悪い。待ったか?」
「待って・・・無いよ。一緒に・・・行こ?」
「勿論」
「そこは・・・もちのロン、じゃないの・・・?」
「燐子さん?俺にいつの時代の言葉を使わせる気ですか?」
もちのロンっていつの言葉か知らんが、少なくとも平成の言葉ではない。今は平成ですらなく令和だ。そんな時代に少なくとも平成以前の言葉を使ったら『ぷぷっ、まだそんな言葉使ってんの?』って思われるだろ。
あの燐子が朝とはいえ、ボケ側につくとは思わなかったが俺達は学校に歩き始める。
「そう、言えば・・・悠くん、昨日、バンドに・・・誘われて・・・入ったよね。どうして・・・入った、の・・・?」
「まぁ、あそこまで頼られると断りづらいし、友希那の歌には感動したからな。あんな条件を出すとは思わなかったが・・・」
仕事がある日は対策をしてくれれば休んで構わないと言ったんだ。
マネージャー兼コーチが練習に直接来れないマネージャー兼コーチなんて誰もが要らないと思うだろう。そこまでして頼まれたらいくら不本意な人でも容易に断る奴なんて居ないだろう。
「燐子は友希那の歌を聞いた時どう思ったんだ?」
俺は話を変えて燐子に聞いてみる。
これは単純に俺が気になったのと、これ以上さっきの話題で話を続ける事が出来ない(作者が)からだ。
「私も、聞いた、時・・・凄いと・・・思った、よ。言葉・・・じゃ、上手く・・・表せ無い・・・けど」
燐子も俺と大体同じ事を思ってたんだな。
今更だが、ソロであんな歌声だとバンドのメンバーが揃ったらどうなるのか怖くなってきた。勿論良い意味としてだが
そうこうしている内に俺達は学校の校門に来ていた。
「教室の場所何処だっけ?」
「こっち、だよ・・・」
「悠くん、覚えて・・・無いの?」
「入学式に色々あったせいで全く覚えてない」
本当あの日は凄く濃い1日だったな。教室の場所を忘れる程のインパクトが強いイベントが山盛りだったもんな。とても前のように思い返してるけど昨日の事だったわ。
教室の場所が頭から抜け落ちた俺は燐子の後ろをついて行きながら自分の教室に向かう。まさに、燐子と同じクラスで良かったと思った瞬間である。
「おはようございます。神谷さん、白金さん」
教室の扉を開けると、紗夜が自分の机の上に教科書や参考書や問題集を広げて勉強していた。
机の上の状態を察するに、俺達が来るよりもずっと前に来たのだろう。いくらなんでも早すぎるし、よく校門が開いていたな。
「おはよう、紗夜」
「おはよう・・・ござい、ます。・・・氷川さん」
「神谷さん、バンドの事で話が・・・」
「なんだ?」
「今日から練習があるのですが、今日はこれますか?」
「ちょっと待ってろ」
俺は背負っていたリュックからスケジュール帳を取り出し確認する。
「今日は7時から、明日は4時から仕事だから今日は行けるけど明日は無理だな」
「分かりました。練習に来れない日の対策はどうするんですか?」
「ちゃんと考えてあるしそれに必要なものも練習で渡すから」
「分かりました。湊さんにもそう伝えておきますね」
「あぁ」
紗夜とバンド関連の話し合いを終えると自分の席に座り机の上にノートパソコンを置き起動させる。
「一応言っておくが、理事長には許可を得てあるから没収するなよ」
「それなら良いですが、仕事関係ですよね」
「勿論」
「それなら、教室ではなく空き教室でやった方が良いのでは?」
言われてみたらそうだな。
SNSが発達した今のご時世だとバレたらあっという間に拡散されてしまうだろう。
「そうだな。空き教室でも借りて来るか。紗夜、ありがとな」
紗夜に礼を言った俺はノートパソコンをバッグに仕舞うと教室を出て職員室に向かい空き教室の鍵を受け取る。
鍵を使って中に入り、誰も入ってこないよう教室の扉に鍵を掛けてノートパソコンを取り出して起動する。
40分程経ったのだろうか。そろそろ教室で自分の椅子に座っていないと遅刻扱いにされそうなので空き教室から出て鍵を職員室に返し自分の教室に入る。
教室にはもう殆どの生徒が居たが、俺の前と左隣の席が空いていた。この時間で来てないって遅刻になるんじゃないかと思っていた時だった。
「そこどいて〜!」
「へ?」
後ろを振り返っても何もないと思っていたらもの凄いスピードで教室に向かってくる彩が現れた。
俺は咄嗟に横に跳んで彩を躱す。彩が通り過ぎたのを確認して自分の席に向かおうとするが・・・
「悠人、危ねぇ」
「お前もかよ!」
今度は晴翔がさっきの彩の数倍は早いであろうスピードで俺に突っ込んで来た。机があるのでさっきみたいに横に飛んで躱すこともできない。なら・・・
「朝から激しい運動をさせんじゃねぇ〜!!」
ノートパソコンが入っているバッグを落とさないようにしっかり抱えてバク宙で晴翔を躱す。
頭がぶつかりそうになったが、なんとか当たらずに済みノートパソコンが入っているバッグも落とさずに済んだ。
「あっぶねぇ〜。何とか間に合った」
「あっぶねぇ〜じゃねぇよ!もっと早く来い!!」
全くあんなにぶつかったら俺の体吹っ飛んでたぞ。誇張とかでなく割とマジで。
「スマン。前日に学校の用意をせずに寝坊しちまって・・・」
「私も・・・」
「今日みたいな事があるんだから、準備は前日にしろ。それから起きれないなら、アラームを使うなり増やすなりしろ」
「「はい・・・」」
彩と晴翔がシュンとしながら自分の席に座るとチャイムが鳴ると朝のSHRが始まった。
朝のSHRからも色んな事があった。
晴翔は寝坊したくせに大半の授業を寝ていたし、彩は弁当を忘れ(急ぎ過ぎて忘れたらしい)色んな人からおかずを貰い、午後からの授業は睡魔に抗えず寝ようとするとシャーペンで首を刺され(そのせいで首から軽く出血しました)、なんとか帰りのSHRになった。これらの出来事を全て描写するといつ投稿出来るか分かったもんじゃないとの事なので全てこのような説明になってしまったが、少なくとも穏やかな学校生活とは言えないだろう。
「この後、神谷くんと氷川さんは残ってください」
はて?俺は何がやらかしたのだろうか?
俺と紗夜が残される・・・もしかして、シャーペン事件?いや、そんな事で残される事はないだろうし。
皆んなが荷物を持って教室を出て行き、教室には俺と紗夜と先生が残った。
「神谷くん。学校にはもう慣れた?」
開口一番に先生が言う。身に覚えが無いのに怒られずに済んだとホッとする。
「いえ全然慣れません」
「有村くん達と仲良さそうだったけど」
「仲は良いですけど気は休まらないですね」
「そうですか。教室の場所は覚えれた?」
「燐子が居なかったら迷子になってました」
別に方向音痴な訳じゃないんだがな。
「やっぱり。氷川さん、神谷くんに学校案内を頼んでも良い?」
「分かりました。神谷さんは私について来て下さい」
「了解」
こうして紗夜の案内の元学校案内が始まった。
紗夜の説明は分かりやすく紗夜が弓道部に所属している事も武道館を案内する時に教えて貰った。
ただ、何か忘れているような気がするのは気のせいだろうか?必死に頭の中で考え込み俺は何を忘れていたのか思い出した。
「紗夜、練習って何時から始まるんだ?」
「言ってなかったですか?」
「あぁ。聞いた記憶はない」
「4時からです・・・が・・・」
俺も紗夜も時計を確認する。
嘘だと思いたかったが時計の針は3時35分を示していた。これが幻覚じゃなかったら、急がなければ遅刻してしまう。
「神谷さん!またスタジオで会いましょう。練習は昨日と同じスタジオですので!!」
紗夜はそのまま荷物を持って教室を足早に出て行った。
「なんで俺の学校生活はこうドタバタなんだよ〜!!」
俺の叫びは教室に虚しく響き渡るのだった。
如何でしたか?
作者も一応高校生ですが、ボッチなのでこんな学校生活は送った事ないですね。
面白かったらお気に入りと評価をしていただけると嬉しいです。目指せ、評価が赤バー!
それでは、次回もお楽しみに。
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第13話 あこの心は砕けそうで砕けない
サブタイが某有名漫画に似ていますが、そこは気にしないでいただけると助かります。
プライベートも、リアルの事情が少しは落ち着きそうですので投稿頻度も少しは上がるかもしれません。作者が基本マイペースなのでなんともいえませんが・・・。
それでは第13話をどうぞ!
学校からダッシュで家に帰り、必要な用具を持って昨日と同じスタジオまで全力疾走。友希那が予約したスタジオを受け付けの人に教えてもらい、スタジオに入る。
時刻は3時55分。なんとか遅刻せずに済んだ。
「遅かったわね、悠人。紗夜もまだ来て無いけど何かあったのかしら?」
「俺が来る事は知ってたのか?」
「えぇ。紗夜から今日は来れると聞いたわ」
「紗夜の奴、あんな状況でよく連絡出来たな」
「すみません。遅れました」
その紗夜もスタジオに到着した。
「紗夜も悠人もどうしてこんな時間ギリギリなのかしら?」
俺と紗夜は放課後の出来事を話す。
「そう・・それなら仕方ないわ。さぁ、時間も余り無いのだから早く練習するわよ」
友希那は俺と紗夜の事情を理解してくれたのでそれ以上は何も言わなかった。
俺も背負っているケースからギターを取り出す。
「それが神谷さんの使っているギターですか?」
「あぁ。コイツが俺の一番の相棒だな」
「そのギターはもしや『International Guitar Championship』で使っていたものですか?」
「良く知ってるな」
俺のギターはESPシリーズのHORIZONのオーダーメイドだ。
黒と紺のシンプルなギターだが、世界で1本(展示品を除けばであるが)しかないギターだ。名称は『Revolution HORIZON』。意味は『革命の地平線』だ。
「ですが、何故神谷さんがギターを持って来ているんですか?」
「こういうのは実際に弾いて教えたりする方が良いからな。で、友希那。今日は何すんの?」
「まだ曲が出来上がってないから私の歌う曲を使って練習するわ」
「その曲は?」
「これよ」
友希那から音源を渡される。イヤホンを付けて再生すると昨日友希那が歌っていた曲『魂のルフラン』が流れ始めた。
「この曲はいずれカバー曲にしたいのだけれどどうかしら?」
「良いと思うぞ。バンドの方向性によってはアレンジを加える事も考えて置いた方が良いが」
「貴方にそれはできるの?」
「あぁ。作曲とかアレンジは一応出来るぞ」
「なら、この曲のアレンジとこの作曲を任せても良いかしら」
友希那から数枚のルーズリーフを渡される。何故ホチキスとかで止めたりしないのかは気にしてはいけない。
ざっと、ルーズリーフに書かれているものを流し読みする。
「出来るかしら?」
「あぁ。出来たら連絡する」
「分かったわ。それと練習で使うTAB譜よ」
友希那からTAB譜を受け取り頭の中に叩き込む。
「大体覚えた。2人とも始めてくれ」
俺の合図で練習がスタートし、友希那は歌い紗夜はギターを始めた。
俺の役割は2人がフルで演奏した後絶対音感で気づいた所を指摘し、駄目だった所を重点的に個人練習で指導といった感じだ。紗夜のギターを見つつ、友希那の歌を聴くというのはしんどかったが2人の飲み込みが早いのでそこまで苦にならなかった。
練習してから2時間程経ち、俺がそろそろ会社に行かなければいけない時間になった。
「友希那、悪いんだが・・・」
「えぇ、分かっているわ。今日の練習は此処までにしましょう」
「すまない」
「気にしなくて良いわ。そこを踏まえて貴方をメンバーにしたもの。それより明日は来れないようだけれど何か対策はあるのかしら?」
「あぁ。紗夜、これをお前にやる」
俺はギターケースからタブレットを取り出し紗夜に渡す。
「俺が来れない日はそれを使って練習を撮影してくれ。そこには俺の連絡先が既に入っているから」
「しかし、動画は最大まで5分までしか送れませんが」
「安心しろ。昨日俺が動画を5分毎に自動で保存されるようにする為だけにアプリ作ってそのタブレットに入れたから」
練習している時に5分毎に撮り直したり調整するのは面倒だろうと思い俺が携帯端末に最初から入っているカメラアプリをベースに自動で5分毎に保存されるように改良したアプリだ。
因みにこのアプリを作り正常に作動するか確認していたら朝になっていたので今日の俺は一睡も出来なかった(学校でも寝ようしたが、授業の合間は煩く、授業中も紗夜に寝ようとするたびにシャーペンで刺された為寝ていない)。
「宜しいんですか?タブレットなんて高価な物を頂いて」
「構わんよ。タブレットなんて家に腐る程あるし、家で放置されてるよりも誰かに使われている方が良いだろ」
「分かりました。有り難く使わせて頂きます」
「別にそこまで畏まらなくて良いし、撮影とかでデータ量が圧迫されていくだろうから撮影以外に出来る事は少ないけどな」
「それでも私にくれるんですよね?」
「まぁな」
「でしたら、しっかり感謝は伝えるべきです。ありがとうございます」
「そういう事なら、どういたしまして」
とりあえず紗夜のお礼を返して、俺達は片付けてスタジオを後にする。
スタジオの予約をし、外に出た時だった。
「友希那さん、あのっ」
「帰って」
「うぐっ」
何かを頼もうとしたあこが一瞬で断られた。
そのままあこは大人しく帰っていく。
出オチって二次元だけじゃなんだなと頭の隅で思いつつ俺は仕事の用意をする為に一度家に帰った。
〈数日後〉
「よ、よしっ。今日こそっ!友希さん、あのっ」
「帰って」
「はうっ」
〈数日後〉
「今度は絶対・・・友希那さんっ!!バンドに・・・」
「そろそろ諦めてください」
友希那さんのバンドに入れてもらう為にあこは何回も頼んでるけど今日も駄目だった。
「ぐぬぅっ!今日もダメぇ〜?諦め無いもんっ!あこ本気なのに・・・何で伝わらないのかなぁ?」
友希那さんに断られたあこは落ち込みながら家に帰る。
どうしたら友希那さんのバンドに入れるんだろう。
「ただいま〜。はぁ・・・もうやんなんちゃうよぉ。りんりんに話聞いて貰おう・・・」
りんりんにメッセージを送るとすぐにりんりんからメッセージがかえってきた。
『言葉だけじゃ、伝わらないかもしれないね』
『?じゃあどうしよ?』
『友希那さんの歌を好きになった瞬間みたいに、音で伝えられたら、良いのになって思った』
「・・・音、で・・・」
『私も、あの音を聞いた時、凄いと思ったから。あの感覚は、言葉だけじゃ上手く現せないと思う。バンドって、そういう感覚で繋がるってことかなって』
りんりんのメッセージを見て、なんかちょっと分かった気がする。
「ただいま〜。・・・ってあこ、その顔。今日も不発だったみたいだな。『あこだけのカッコイイ人とバンドやる作戦』は」
あことりんりんがメッセージの遣り取りをしている間におねーちゃんが帰って来た。
おねーちゃんの名前は、宇田川巴って言ってあこの自慢のお姉ちゃんなんだよ。
「おねーちゃん、お帰り!そーなのっ。とくに、ギターの紗夜・・・さんがすっごい防御力なんだけど、認めて貰えるまで頑張るんだ!」
おねーちゃんはあこの頭を優しく撫で始める。
「そうかそうか、頑張れよ・・・って紗夜さん?まさか湊さんとバンド組んだっていう紗夜さんの事か?」
「え?おねーちゃん知り合いなの?」
あこの言葉におねーちゃんは笑い出した。
「おねーちゃん?どうしたの?」
「あこは知らなかったんだな。湊さんはうちの学校の高等部で、よく校内でもすれ違うよ。そうか、あこのカッコイイ人って湊さんだったんだな」
「そうなの!ライブで見た時にビビビッって来ちゃって!すっごくすっごくカッコイイんだ〜」
「湊さんなぁ・・・手強いだろうけど頑張れよ」
「うん!ありがとう、おねーちゃん」
「どういたしまして。そういえば、あこは知ってるか?湊さんはうちのダンス部のリサさんと親友だって」
「・・・えぇ〜!リサ姉の『親友』の話、あこ、よく聞いてるよーっ!!」
リサ姉とは同じダンス部なので良くその話を聞いてた。誰かは今まで聞いた事がなかったけどそれが友希那さんだったなんて。
「リサ姉に友希那さんの事聞いてみようかな?」
「あこのしたいようにすれば良いんじゃないか?」
「うん!おねーちゃんの言うようにしてみるよ!!」
絶対絶対友希那さんのバンドに入ってみせるんだから。
如何でしたか?
あこのメンタルは本当にダイヤモンドで出来てるんじゃないかと思うほど硬いですよね。
宜しければ、お気に入り登録と評価をしていただけると嬉しいです。
それでは、次回をお楽しみに。
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第14話 陽だまりの選択肢
今回はタイトルから分かると思いますが、今まで出番が少なかったあのキャラが出てきます。そして、サブタイが久しぶりにシンプルと思いきや、12話が割とシンプルだった・・・自分の小説なのに覚えてないってどうなんだろう?
そんな事はともかく、第14話をどうぞ。
あこが友希那達にバンドに入れて貰えるように毎日頼み込んで来るようになった。
ここまで頼み込んで来るならメンバーにしても良いんじゃないかと思うが、それを決めるのはバンドのリーダーである友希那であって俺じゃない。
珍しく仕事もないのでコーヒーを飲もうと俺はコンビニに来ていた。
何故コンビニなのかと思う人もいるだろうが、コンビニのコーヒーは意外と馬鹿に出来ないのだ。味は羽沢珈琲店には劣るが、値段が安い割に旨いのである。コスパだけを考えればコンビニのコーヒーは間違いなくトップに分類されるだろう。
「すみません。ホットのブレンドを1つって・・・リサ?」
コンビニに入り、早速レジでコーヒーを頼もうとするとレジに居たのはあの日、俺とぶつかった今井リサだった。
「あ、悠人。久しぶり〜それでホットコーヒーだっけ?」
「あ、あぁ」
こんな形で再開するとは思っていなかっただけに言葉が詰まってしまった。
「サイズは?」
「Lで」
「180円になります」
あんまり小銭を持っていない俺が奇跡的に180円持っていたのでそれを渡す。
「丁度お預かりします。お待たせしました。このカップをマシンにセットして下さい」
リサからカップを受け取りレジの近くに置いてあるマシンにセットする。
「ねぇ、悠人。アタシ、後数分でシフト上がるからバイト終わったご褒美に何か買って欲しいな〜」
「良いぞ。何が欲しい」
「え?良いの?冗談で言ったんだけど・・・」
「冗談なら帰るぞ」
コーヒーを淹れ終わったのでマシンから取り外してコンビニから出ようとすると・・・
「じょじょ、冗談じゃないから。何か買ってよ悠人」
あまりの止め方に俺は向きを変えてレジに戻る。
「はぁ・・・何が欲しいんだよ」
「良いの?」
「良いから、さっさと決めてコーヒーを飲ませてくれ」
早くしてくれないと、せっかくのコーヒーが冷めちまう。
「えーっと、シュークリーム?」
「質問に疑問で返すな」
「そこは質問に質問で返すなー!じゃないの?」
「お前は『?』が付いてりゃ全部質問だと思ってんのか」
「流石のアタシでもそれぐらい分かるよ」
「むしろ、分かってなけゃ高校生としてヤバイだろ」
「いや〜アタシの知り合いにそれを知ってるかどうか怪しい人が居るから」
「マジかよ」
ソイツ、国語の成績大丈夫なのか?そんな事も分からないとか赤点でもおかしくないだろ。
「まぁ、さっきの事は置いといてシュークリームで良いのか?」
「うん。お願い」
商品棚からシュークリームを探してレジに持って行く。
会計を済ませ、外でコーヒーを飲んでいるとバイトが終わったリサがやって来た。
「お待たせ、悠人」
「バイト、お疲れさん」
リサにシュークリームを渡し、コーヒーを口に含む。
「にしても、こんな形で再会するとはな」
「そうだね。あの時はアタシのせいでぶつかってごめんね」
「気にすんな。アレは俺の不注意でもあった訳だし。それよりも、お前は友希那に追いついたのか?」
「え?何で知ってるの?」
「知ってるも何も友希那を見失うって普通に言ってたぞ」
「アハハ・・・急いでたから全然覚えてないや」
それにしても、リサが追いかけいた友希那はあの友希那なんだろうか?少し知りたい事もあるので、揺さぶりをかけてみよう。
「なぁ、リサが追いかけていた友希那って人は湊友希那なんだよな」
「!友希那を知ってるの?」
「まぁな。といっても友希那本人と面識があった訳じゃないがな」
「どういうこと?」
「俺はギターやベース、ドラムやキーボードを弾けるんだがそれらは全て友希那のお父さん・・・師匠が組んでたバンド・・・『Bule Trajectry』のメンバーから教えられたんだよ」
音楽の基礎知識や歌は友希那のお父さんから、それ以外はそれぞれの楽器担当の人から教えて貰った。キーボード担当だった人にはピアノも教わっていたので、バイオリンを除けば全て『Bule Trajectry』のメンバーから教わった事になる。
「実の事を言うと、リサの事も師匠から聞いている。リサ、ベース弾けるんだろ?それに、師匠からはリサと友希那は良く一緒に居るって聞かされたけど、リサは友希那と一緒に居たのにライブハウスには行かなかった。それはどうしてなんだ?」
「悠人が友希那のお父さんの事を知ってるなら、友希那とお父さんのバンドがどうなったか知ってるよね」
「あぁ。事務所の意向によってメジャー受けをする曲を作ることを強要され、強要された曲でFUTURE WORLD FES.に挑んで負け、売れなくなって解散した」
それを聞いたのはイギリスに居た頃だったが、その時の俺は自分の事に手一杯で他の事を思う余裕がなかった。ある程度、心に余裕が出来てもモヤモヤとした感情が渦巻くだけではっきりと言葉に出来なかった。
事務所の意向も一経営者として分からなくもない。ノルマだってある訳だし、そのノルマを達成させようとあれこれ注文なんかもするだろう。だが、『Bule Trajectry』への考慮もせずにあれこれ注文するのはどうだろうと思った。この考えは、きっと一経営者として見れば甘い考えなんだろうがどうしてもそう思ってしまった。
「おそらくだが、友希那はFUTURE WORLD FES.に出場する為にバンドのメンバーを集めてるんじゃないのか?師匠の音楽を認めさせる為に」
「・・・そこまで知ってるんだね・・・」
「友希那にバンドのメンバーになって欲しいって頼まれたからな」
「!悠人はメンバーになったの?」
「一応な。ただ、色々と事情があるからマネージャー兼コーチとしてメンバーに入ったよ」
「そっか。なら、友希那の事をよろしくね」
リサはそう言っているが、その顔は何処か寂しげで悲しみを帯びていた。
そんな顔をされると、何とかさせてあげたいと思う。
(仕方ない・・・背中を押してやるか)
「それは、リサにも言えるんじゃないか?」
「え・・・?」
「リサは本当に今のままで満足してるのか?」
「どういうこと?」
「このまま遠くから友希那を遠くから見守るだけで良いのかって事だ」
「それは・・・」
「リサには今、2つの選択肢がある。今までと同じように遠くから友希那を見守るか、ベース担当として友希那を隣で支えるか。それを決めるのはリサだ」
俺はコーヒーを飲み干してゴミ箱に捨てると、コンビニを後にしようとする。
「どの選択を選ぶかは自由だが、後悔だけはしないようにな」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「悪いが、俺に出来るのは此処までだ。じゃあな」
俺は一度も振り返る事なくコンビニを後にした。
如何でしたか?リサが登場したり、悠人に関する事が新たに明らかになったり、割と重要な回なんじゃないでしょうか。
そろそろリサとあこもメンバーに加わりそうで、Roseliaの結成も少しずつですが近づいています。何話で第1章が終わるか分かりませんが(因みにリメイク前では13話で終わっていて、第14話の内容はリメイク前の9話ですので、第1章だけで20話いっても全然おかしくない・・・本当に何話で終わるんだ?)少しずつ進めて参ります。
よろしければ、お気に入り登録、評価をしていただけると幸いです。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第15話 Ture thoughts
タイトルの意味は「本当の思い」。オールリサ視点でございます。
それでは、第15話をどうぞ。
昨日、悠人に言われた言葉が頭から離れずに学校に居る間ずっとモヤモヤしていた。
(アタシの本当にしたいこと・・・一体なんなんだろう?)
自分の事の筈なのに自分にはそれがなんなのか全く分からない。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら友希那と一緒に帰ろうとするとその友希那から衝撃の一言が放たれた。
「えっ!?今の話ってマジ!?」
「本当よ。バンドを組んだわ、紗夜と悠人って子と。まだギターとボーカルとマネージャー兼コーチだけだけど、コンテストに向けて、新しい曲も出来上がってきてるわ」
友希那がバンドを組んでるのは知ってたけど改めて聞かされると寂しく思ってしまう。
(あれ、なんでアタシ寂しいなんて思ってるんだろ。友希那と会えなくなる訳じゃないのに)
「そっか、悠人からバンドを組んだってのは聞かされたけどギターも決まったんだ」
「リサ、なんで悠人の事知ってるのかしら?」
「あはは・・・この前友希那と一緒にライブハウスまで行った時置いてかれたでしょ。その時、追いかけようとして人にぶつかっちゃって。その人が悠人だったんだよ。それで昨日悠人にバイト中に会ってバイト終わった後ちょっと話してその時に友希那がバンドを組んだ事を知ったんだよ」
「そう・・・でも、私は・・・本気だから。私も紗夜って子もFUTURE WORLD FES.に出たいという目標が一致したから組んだだけよ。悠人にはまだ伝えて無いけど彼の能力は私達が頂点を目指す為に必要だからっていうだけ」
能力ってそんなゲームじゃあるまいし・・・って思いかけたけど悠人ならなんか出来そうだと思っちゃう。悠人ってなんでも出来そうだし。
「友希那、それってどういうものなの?」
「彼には5つまでなら同時に音の高さを認識出来る絶対音感を持ってる事、バンドに必要な楽器を全てプロのレベルで弾ける事よ」
悠人、ヤバすぎない。バンドに必要な楽器って事は少なくともギターやベース、ドラムなんかを弾けるって事でしょ。しかもプロレベルだし。おまけに絶対音感(普通1つだけなのを5つ)を持っている。
悠人、ホントに人間?実はアンドロイドとか言われても納得出来ちゃうよ。
「そっか、悠人ってそんなに凄かったんだ。あ、悠人だけどFUTURE WORLD FES.に友希那那達が出たいって事知ってたよ」
「そう、なら私達の目標はメンバーが全員揃ってからで良いわね・・・」
「目標はともかくアタシは嬉しいよ。友希那と一緒に、練習してくれる仲間が出来たって事だし♪」
アタシの胸がチクリと痛む。まるで、本心ではそう思っていないかのように。
「でもさ、どーすんの?FUTURE WORLD FES.のコンテストって三人以上が条件じゃなかった?悠人はステージで演奏しないんでしょ。なら、どうするの?」
「・・・バンドを組む事、止めないの?」
「友希那は、アタシが止めたら、辞めるの?」
「友希那は、アタシが止めたら、辞めるの?」
「リサ・・・」
「ゆ、友希那さん、お願いしますっ!!」
「ん?あれ?あこじゃん。どしたの?」
「・・・リサ、知り合いなの?」
「お願い!お願いお願いお願いしますっ!絶対良いドラム叩きます!お願いします!!」
「・・・ちょっとちょっと。話が見えないんだけどっ。あこ、ドラムやってるんだっけ?友希那のバンドに入れて貰いたいの?」
「うん!でも、何度も断られちゃって・・・どうしたらあこの本気が伝わるかなって考えてそれで・・・えっと・・・!友希那さんの歌う曲、全部叩けるようになって来ました!いっぱい、いっぱい練習して来て・・・!その・・・お願いです!一回だけ!一回だけでいいから一緒に演奏させてください。それで・・・それでダメだったらもう諦めるから!」
あこが必死に懇願してる。しかし、友希那は・・・
「何度も言ってるけど・・・遊びじゃ無いの」
冷たくあこを引き離していた。しかし、それを見ていたアタシはある事に気づいた。
「まぁまぁ、友希那。一回くらい良いじゃん。それに、ほら・・・」
アタシはあこの持っているものを取る。
「わわわ、何するのリサ姉!?」
「・・・?」
「あこの使ってるスコア・・・こんなにぼろぼろになるくらい、何度も何度も練習したって事でしょ?」
「・・・っ!」
「ね?友希那。あこは同じ部活だし知ってるけど、やる時はやる子だよ?」
メンバーが揃う事が良いことか本当の意味でアタシにはまだ、分かんない。でもこんなに本気になってるあこ、初めて見たから。そんなあこを見てたら、応援したくなっちゃうよ・・・。
「・・・はぁ。・・・分かったわ。一曲セッションするだけよ」
「!ほ、本当ですか!!・・・本当!?やったぁ・・・っ!リサ姉、ありがとう!」
「やったーっ☆よしっ。ねぇ、友希那!アタシもセッション見学していい?」
「別に・・・良いけど。どうしたの急に。スタジオなんて、随分来て無いのに」
「えっ。ど、どうって・・・別に〜?ライブハウス以外で歌ってる友希那も、たまには見たいじゃんっ?」
本当は、何でアタシがこんな事言ってるのか分からない。無意識に見学したいって言っちゃったから。
「そ、それに、紗夜って子がどんな子が気になるしさ〜」
「・・・そう。好きにしたら」
「やったっ♪」
なんだろ?アタシ・・・今までは遠くから見るだけで良かったのに、悠人と話したあの時から・・・何でこんなに友希那のバンドが気になるんだろ・・・。
そう思いつつアタシ達はライブハウスに向かって歩いて行った。
さて、何故こんなに遅れたのかといいますとこれとは別の番外編を書いていたんですが、結局お蔵入りになりましてこれを書き上げたのです。
今後も不定期ですが投稿しますので今後とも「青薔薇と天才少年のコンツェルト」をよろしくお願いします。
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第16話 コレがアタシの選択
今回もオールリサ視点でございます。悠人の言葉で絶賛お悩み中の彼女ですが、果たして彼女はどの選択を選ぶのか!・・・って書いても原作知ってる人なら分かりますよね。
それでは、第16話をどうぞ!
「懐かしいなぁ〜。このスタジオーーって感じの空気☆最後に入ったの、中2の夏休みだっけ?」
スタジオに着いたアタシは久しぶりに来たスタジオに懐かしさを覚えていた。
「中1よ。忘れたの?中2の時は、海にばかり行ってたじゃない」
「えっ。海って友希那さんも行ったんですか?ま、まさかビーチでライブしたり・・・?超カッコイイ・・・」
「私は行ってない」
確かに友希那はいなかったね。アタシとしては一緒に行きたかったんだけど。
スタジオの部屋の前まで来ると、友希那は扉を開けて中に入る。
「神谷さん。ここはどうやったら・・」
「あ〜。ここか。ここはこうして・・」
スタジオの中には、悠人とおそらく、紗夜って子がいた。どうやら、ギターを教えていた所らしい。
「湊さん、この人達は?」
「友希那どうしたんだ?あことリサを連れて」
「あ、挨拶が遅れちゃってゴメンね!悠人は知ってるだろうけど、アタシは今井リサ。友希那の幼馴染で、今日は見学に来ましたっ♪」
「悠人さんは知ってるけど、宇田川あこですっ!今日はドラムのオーディションをしてもらいに来ましたっ!」
「・・・オーディション?」
「ごめんなさい、リサが・・・あ、いいえ。私がその・・・彼女のテストを許したの」
「・・・ということは・・・実力のある方なんですよね?」
「・・・努力はしているらしいわ。勝手に練習時間を使ってごめんなさい。5分で終わらせるから」
「俺は大丈夫だ。実際メンバー集めは難航してたし丁度良いだろ」
「私も湊さんの選出なら構いません。・・・ただ・・・少し・・・意外です。貴方はどんな形であれ、音楽に私情を持ち込まない人だと思っていたから」
「その価値感は合致しているつもりよ。二人とも実力が無ければすぐに帰って貰うわ」
「はい、分かってます!」
「えっ?アタシも?」
「見学は終わり。紗夜の顔ならもう見たでしょう。・・・リサ。昔、遊びで入ってた時とは違うの」
「・・・あっ。そ、そうだったね。あはは、ごめんごめん!その時はすぐ帰るって♪なんか・・・アタシ一瞬、昔に戻った気になっちゃったな〜」
「リサ姉!あこ絶対合格するように頑張るからっ」
「ん、そうだね。よしっ、あこファイト☆」
「オーディションですが、ベースをどうしますか?出来れば、ベースもいると、リズム隊として総合的な評価が出来るんだけれど・・・」
「そうね。悠人、貴方ベースも弾けたわよね。頼んでもいいかしら」
「分かった。受付で借りに行ってくるからその間に準備しといてくれ」
悠人はドアノブに手をかけ、受付に向かおうとしている。
それを見ていたアタシは言いようのない物が込み上げてきた。このままだと確実に後悔する・・・ふいにアタシはそう思ってしまった。
けど、何に・・・ううん、アタシはもう分かってる。このままだと友希那はアタシの手に届かない所へ行ってしまう事を。
それを自覚した瞬間、アタシの本当にしたい事を理解した。
アタシは・・・アタシは友希那の隣に居たい。友希那の隣で演奏したい!
悠人も言っていた。『どの選択を決めるのかはアタシ自身。どれを選ぶのは自由だが、後悔だけはしないように』って・・・。
なら、アタシは友希那の隣に居る事を選ぶ。例え、この選択が間違っていたとしても後悔はしない。
他の誰でもないアタシ自身が選んだ選択なのだから!
「あ、あのさっ。アタシが弾いちゃダメかな?」
「リサ?」
「えっ、リサ姉ベーシストだったの!?」
みんな驚いている。ただ、悠人は予想通りというかアタシが弾く事を予期していたのか余り驚いていない。
「昔ちょっとやってたんだよね。だから、アタシが弾きたい。駄目かな?」
「俺は構わない。。リサがバンドに入るなら、ドラムとベースのメンバーが早く決まる可能性もある訳だし。ただ、これは実際にステージに立つ友希那と紗夜が決めてくれ」
「湊さん。今井さんは経験者何ですか?」
「一応。譜面で一通り弾く事は、今でも出来ると思う」
「一通り・・・ね・・・」
「あ、このネイル?大丈夫、大丈夫!アタシ、指弾きはしないから」
「分かりました。私はあくまで宇田川さんのテストなら、問題ありません」
「私も構わないわ」
「ありがとう二人とも。待ってて、ベース借りてくるから!」
アタシはスタジオを出て、受付でベースを借りると急いでスタジオに戻る。
久しぶりにやるチューニングを手早く済ませ、準備が終わった事を友希那に伝える。
「悠人、審査をお願いしても良いかしら?」
「了解」
「それじゃいくわよ」
友希那の言葉で、アタシ達は演奏を始める。
(・・・!なに・・・?)
(・・・この感じ・・・?見えない力に引っ張られるみたいに、指が・・・!)
(・・・凄い!練習の時より、もっと上手に叩ける。・・・って、あれ?でも、何か不思議な・・・?)
嘘・・・アタシしばらく弾いてないのに。指が音に惹きつけられるかのように動いてく。
そのまま最後まで自分の意思では無い何かによって演奏していった。
「「・・・・・・・・・・」」
「あの・・・さっきからみんな、黙ってるけど・・・あこ・・・バンドには入れないんですか?」
「・・・悠人どうだったかしら?」
「そうだな・・・。まず、あこだけど、周りを合わせようとしてたんだけど全体的にちょっと走ってたかな。リサは、ブランクがあるからかミスタッチが所々あった。だけど、友希那達も感じたはずだ。技術とはまた違う何かを」
「ええ」
「私も感じました」
「あの、あこは・・・バンドに入れるんですか?」
「入れるか入れないかは友希那達が決める事だ」
「そうね・・・。合格よ。紗夜の意見は?」
「いえ、私も同意です。ただ・・・その・・・」
「いやったぁーーーっ!!!それにしても、なんか、なんか、凄かった!!!初めて合わせたのに、勝手に体が動いて!!」
「!アタシも・・・!あこもそう思ったんだ。これが、悠人の言ってた技術とはまた違う何かなのかな?」
「多分、リサやあこの感じたもので合ってるぞ。それと、友希那と紗夜もか」
悠人は友希那達の方を見る。
アタシも悠人に釣られて2人を見ると、2人ともアタシと同じくらい驚いていた。
「もしかして、2人も・・・?」
「そうですね。これは・・・」
「その場所、曲、楽器、機材、メンバー・・・。技術やコンディションでは無い、その時、その瞬間にしか揃い得ない条件下でだけ奏でられる『音』・・・」
「バンドの・・・醍醐味とでも言うのかしら。ミュージシャンの誰もが体験出来るものではない・・・雑誌のインタビューなどで見かけた事があるけれど、まさか・・」
「言うならば『バンドのキセキ』だな」
「『バンドのキセキ』。うん、あこもそんな気がする」
「うん。マジック!って感じ♪」
「その言い方は肯定できないけれど・・・でも、そうね。皆さん貴重な体験をありがとう。後は、ベースとキーボードのメンバーさえいれば・・・」
「え、ベースならここにリサ姉がいるじゃん!」
「いや、アタシは、その・・・ヘルプ・・・で弾いただけで〜・・・」
確かに、アタシは友希那の隣で演奏したい。
だけど、それはもっと上手くなってからじゃないと駄目だとも思っていた。
「今井さんはあくまで宇田川さんのオーディションに付き合う為に弾いただけ。そうですよね?」
「でもバンドメンバーを探してるんだよね?こんな良い演奏出来たのに、何でメンバーにしないの・・・?」
「・・・確かに、技術的にはまだ、メンバーとは認められ無いわ」「あ・・・、そ、そりゃそうだよね。はは・・・」
自覚はしてたけど、面と向かって言われるとグサリと心に刺さる。
「ただ、・・・足りないところはあるけど、確かに今のセッションは良かった。紗夜もそれは認めるでしょう?」
「私は・・・!確かに今の曲だけに限れば、良かったですが・・・」
「俺は、リサをメンバーに加えるべきだと思う。確かに、リサはまだ技術的にはメンバーとは認められ無い。けど、こんなに良いセッションを出来る人がいるとは思えない。足りない所は俺が教えて埋め合わせる」
「なら、バンド組もうよ。この5人で!」
「・・・・・・リサ、私達とバンド、組まないかしら?」
「え?・・・マジで?」
アタシは友希那の言った事が信じられずにこんな返答になってしまった。
だって、夢だとは思いたくないけど本当に現実なのか疑ってしまう程にアタシは困惑してしまっているのだから。
「ただし、これからの練習次第よ」
「うん、アタシ頑張る。友希那の隣に相応しい演奏が出来るように頑張るよ」
こうして、アタシとあこは友希那のバンドに入る事になった。
友希那のバンドのメンバーは残す所キーボードだけ。友希那の夢は着実に近づいていった。
如何でしたか?これで、あことリサがRoseliaメンバーとなり残るはりんりんだけどなりました。やっとあと1人の所まで来ました。ここまで16話、20話を目処に第1章を終わらせたいですが、どうなることやら。
少なくとも1話1話が短いのもありますが、Roseliaを結成させるのに20話近く使うのはこの小説ぐらいでしょうが、そこには目を瞑っていただきたいです。
さて、宣伝になりますが、此方の別次元でな物語となる『少年と少女の決闘生活』を投稿中です。不定期ですが、見ていただけると嬉しいです。
感想、評価、お気に入り登録などをしていただけると作者のモチベーションがupします。どんなコメントも待っていますので沢山のコメントが来るのを待っています。
それでは、また次回お会いしましょう。
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第17話 想いと不安そして決意
今回はRoseliaメンバー全員と新たな登場人物が登場します。果たして誰が登場するのか楽しみにしていてください。
それでは第17話をどうぞ。
リサとあこがバンドのメンバーに加わり、明日も練習(俺、仕事で来れない)とある事を告げ、その日は解散となった。
「リサ、俺は明日来れなくてな・・・」
「えぇっ!?友希那には言ったの?ていうか、友希那が許可くれるの?」
「言ってないけど、後で連絡するし俺がメンバーに加わる条件で仕事がある日は休んで良い事になってるんだよ」
俺の言葉にリサは目ん玉が飛び出るんじゃないかと思うくらい目を見開く。
「へ?仕事?アルバイトじゃなくて?」
「バイトじゃない。そもそもアルバイトだったらバンドに加わる時にたぶん辞めてる」
「高校生で働いている人初めて見たよ」
「まぁ、高校生で働いている奴は希少種だろうな」
その癖一企業の社長である俺は希少種の中でも最高レアリティだろう。
「まぁ、そんな事は置いといてだな。明日は来れないから。とりあえず明日は友希那の指示に従ってくれ。で、此処からが本題だが俺と連絡先交換しないか?」
「良いけど何か理由はあるの?」
「メンバーなんだから連絡は取り合えた方が良いだろうと思って。リサ以外とは全員連絡先交換したし」
「確かにそうだね。それじゃパッパッと済ませちゃお」
お互いスマホを取り出し、連絡先交換する。
「そういえば、リサってベース弾く時指かピックどっちでやるって言ったけ?」
「悠人、聞いてなかったの?アタシ、基本的に指弾きはしないよ」
「そ、そうか・・・」
「どうしたの?」
「い、いや〜なんでもないよ〜」
どうしよ。ベースとかピック使った事無いんだけど大丈夫かな?
俺はこの先ちょっと不安になってしまった。
「じゃ、じゃあ俺は帰るから。またな、リサ」
「またね」
リサが居なくなったのを確認すると大きなため息をひとつ。
「はぁ・・・。大丈夫かな、俺・・・」
その呟きは夜の住宅街に消えていくのであった。
〈白金家 燐子の部屋〉
『でね!あこもリサ姉も加入して良いよって言われて!今日の事は一生忘れない!!!』
『オーディション合格おめでとう!あこちゃんの努力が認められたんだね』
私は今、自分の部屋であこちゃんとメッセージアプリでメッセージを送り合っています。
『でも、努力だけじゃ無いかも』
『どういうこと?』
不思議に思った私はあこちゃんにそうメッセージを送る。
『曲が始まったら、勝手に体が動いたの!すっごく上手に叩けて、リサ姉はマジック。悠人さんは『バンドのキセキ』って言ってて、あこも悠人さんと同じ風に思ったんだよ。他のメンバーも、いつもより上手く演奏出来たって。友希那さんもそう言ってたんだよ!みんなそう思ったんだよ!凄くない!?』
『そんな事があるんだ。うん、バントって凄いね』
『凄いよ!やっぱりバンドって最高!みんなで演奏するのって楽し過ぎる!今までずっと一人で練習してたから、超感動したよ!』
「・・・みんな・・で・・・」
私は3歳の頃にピアノを始めた。その理由は悠くんのピアノを弾く姿に憧れだからだ。
お父さんとお母さんに頼んでピアノを買ってもらって悠くんとも一緒に連弾したり、悠くんの弾くバイオリンとセッションしたりしたけど、それは誰かと一緒に弾きたいというよりも悠くんと一緒だからっていう気持ちの方が大きかった気がする。
そう思うと、今まで誰かと一緒になんて考えた事は今までなかったかもしれない。
『みんなで集まると、何が起こるか分からない!キセキって、たぶんこーいうことだよ!』
「・・・キセキ・・・」
『バンドきっと成功するね。私も応援する』
『ありがとう、りんりん!本当に嬉しいよ!りんりんも何か音楽始めてみたら、この感じが分かるよ!』
そういえば、あこちゃんにピアノを弾ける事まだ話してなかった。
『バンド名はまだ決まって無いんだ。りんりん何が良いと思う?』
バンド・・・一体どんなものなんだろう・・・。
『りんりん?もしかしてもうゲーム、インした?なら我も出陣するのでしばし待たれよ!』
「・・・あっ」
考え事をしてたせいであこちゃんのメッセージに気づかなかった。私は慌ててあこちゃんにメッセージを返す。
『まだ、インしてないよ。その前にもう少し、あこちゃんのバンドの話を聞いたら駄目かな?』
『任せよ!今宵は一晩中語り明かそうぞ!』
『ありがとう。嬉しい』
「・・・バンドの話・・・不思議だけど・・・聞いてる、だけで・・・凄く・・・楽しい・・・」
私はあこちゃんのバンドの話を一晩中聞いた。この時、私がバンドに興味を持っていると知らずに・・・。
〈氷川家 紗夜の部屋〉
私は今日のセッションを振り返りながら、ある事を調べていた。
「おかえり〜!・・・おねーちゃん、何見てるの?」
「!日菜。スマホ覗き込まないでって言ってるでしょ!」
私は急いでスマホの画面を変える。
私のスマホを覗き込もうとしたのは私の双子の妹である氷川日菜。私と違い努力せずになんでも出来てしまう天才少女です。まるで神谷さんと同じように。
神谷さんにも普通の人には持ち合わせていないような物を持っています。5つまでの音の高さを同時に認識する絶対音感。練習中に言ってましたが、彼があれだけの楽器を弾けるのは少なからず彼の絶対音感のおかげらしいです。彼の事だから努力はしているでしょうがそれでも日菜と同じ特別なものを持っている。そして、私はそんな日菜にコンプレックスを抱いており、神谷さんの事も若干苦手意識があります。
「さっきの何のサイト?確か・・・FUTURE WORLD FES.って書いてあった気がするけどロックのイベント?」
「これは私の事で、日菜には関係無い」
「・・・そっか〜。関係無いか。じゃーさ、じゃーさ、リビング行かない?おねーちゃんの好きなわんこの番組、お父さんが見てるよ」
「録画してあるから、後で見るわ。今忙しいの。大体、日菜は犬、別に好きじゃないでしょ」
「でも、おねーちゃん好きじゃん?あたし達双子じゃん?たまには一緒に何かしても・・・」
紗夜「いつもあなたは、一緒の事ばかりするじゃない」
私は日菜の『たまにはに一緒に何かしても』という言葉を聞いて自分の感情が口から溢れ出た。
「・・・!おねーちゃん、あたしは・・・」
尚も私の言葉は止まらない。激流となって言葉を紡ぎ出す。
「同じ日に生まれて、私の方が少しだけ先に生まれたからって、何で同じ事をされないといけないの?もう高校生なんだから、お互い干渉しないって決めたでしょう。はやく、自分の部屋に帰ってちょうだい。私はやる事があるの」
「・・・分かった。・・・あの。・・・ごめんね?」
日菜はしょんぼりとした様子で私の部屋から出て行った。
これだけは日菜に知られたく無いのだ。もし、『フェス』の事が日菜に知られたら、私の真似をして、必ず自分も出ると言ってくる。そして今までしてきた事のように、私の努力を、軽々と才能で追い抜いていく。
「比べられるのは、もうたくさん。・・・必ず、頂点を獲ってみせる・・・」
そして、『フェス』とは別に私はある事を調べる。
それは神谷さんの事だ。神谷さんとライブハウスで会った時に着ていたスーツ。あれは高校生が手に入る代物・・・いや、そもそもの段階で
「神谷さん・・・貴方は、何者なんですか・・・」
私は、神谷さんの事について調べ始めた。その先に衝撃的な事実が待っているとは知らずに・・・
〈今井家・湊家の前〉
アタシ達は、あのセッションが終わった後みんな、ライブハウスを後にした。悠人は凄い顔をしてたけど多分大丈夫だろう。
「いや〜〜、なんか驚きの展開だよね☆友希那とバンドか。うん、アタシ頑張んなきゃ!」
「リサ、本当にバンドに入って良かったのかしら?確かに、あの時のセッションは良かったけど、技術的にはメンバーとして認められ無いのよ。いくら、悠人がリサの足りない所を埋め合わせるといってもリサにとって相当過酷なものになるわ」
「ん、分かってる。でもさ、アタシ・・友希那をほっとけないから。アタシには友希那を一人にさせないっていう使命があるからね。だから、バンドもやる」
「バンドは、そういうのと関係・・」
「うん。バンドはバンドで良い。アタシはそんな友希那の近くにいたいの。これは、自分で選んだ事だから」
悠人が自分の選択肢は自分で決める事を教えてくれなかったら、自分の思いに気づかないままでいたかもしれない。仮に、気づいたとしても今も迷っていた事だろう。だから、自分が友希那の隣で演奏する事を選んだ事は後悔はしていない。そして、いつか友希那がちゃんと昔みたいに笑えるようになるまで隣で支えたい。
「・・・ついてこれなくなったら、幼馴染でも・・・抜けてもらうから」
「はーいっ!そのために、練習頑張りまーすっ!」
「バンドメンバーが揃ったら、FUTURE WORLD FES.出場の為の為のコンテストに出る。それは、ちゃんと分かってるの?」
「うん・・・そうだね。分かってる」
「メジャーで『売れる音楽』を強要され、苦しんでいたお父さんを、『今の君達の音楽は要らない』と切り捨てたあのフェス・・・お父さんは、そのせいで音楽を辞めた。ずっと、憧れていたステージに拒まれて・・・だから、絶対に失敗は許されない。許さないから」
「うん。アタシはブランクもあるし、みんなより技術もない。でも、頑張るよ」
友希那がそんな顔をしているうちは、離れるわけには、いかないから。
「・・・なら、好きにして」
「うん!!」
アタシと友希那はそれぞれの想いを胸に秘め、家の中に入った。
如何でしたか?
新たな登場人物は日菜ちゃんでした。そして、燐子がピアノを始めた理由が幼馴染の悠人に影響されて始めたというオリジナル設定が判明しました。
燐子と一緒に連弾・・・羨まし過ぎるだろ。
おい、悠人そこ代われと書いた私はそう思います。
宜しければ、評価、お気に入り登録、感想をお願いします。どれか1つでもしていただけると作者のモチベupなので。
それではまた次回お会いしましょう。
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第18話 無茶をする陽だまり
これを書いて第1章を20話以内で終わるのは無理だなと確信してしまいました。
それでは、第18話をどうぞ。
あのセッションから数日が経ったある日。
俺は会社で社長として業務に当たっている。
「悠人社長よろしいですか?」
「どうしたんですか?」
キーボードを打つ手を止め秘書である遙さんにそう聞く俺。
「お電話がございまして」
「誰から?」
「神谷コメスティックの社長からです」
「姉ちゃんから?」
突然だが、俺には姉と妹がいる。
妹の事はまた今度話すとして俺より2つ上の姉、神谷瑠菜は大手化粧品メーカー神谷コメスティックの社長をしている。因みに神谷コメスティックと俺が社長の神谷ゲーミング株式会社は神谷グループの子会社であり、神谷家がとんでもなく大富豪なのも神谷グループの年収がヤバイからである。正確な年収は知らないが兆はあるんじゃないかというのが俺と姉ちゃんの見解だ。
「もしもし」
『もしもし、悠人かしら』
「あぁ、俺だよ。それでわざわざこの時間に掛けてきたけど何かあった?」
『貴方が日本に帰ってきた事だし、莉菜と貴方と私の3人で』
「分かった。いつかは決まっているのか?」
『今週の日曜にしようとしているのだけれど大丈夫かしら?』
「ちょっと待ってくれ」
遙さんに今週の日曜日の予定を聞く。話を聞くぶんだと多分大丈夫だろう。
「今の所行けると思う。時間は?」
『詳しい時間はまだ決まってないから後日伝えわ』
「了解。で、本題は?」
『・・・どうして気づいたのかしら?』
「今日のこの時間に俺が仕事なのを知っている姉ちゃんがプライベートな事で電話してくる事は無いと思って」
『正解よ。実は・・・』
その後の話は姉ちゃんは自分の会社の相談だった。
なんでも、特定の人だけいつも残業しており、偶に休日出勤している人もいるようなのだ。
姉ちゃんの会社は残業が殆ど無い事で有名なので、これには俺も疑問を感じた。
「とりあえず、残業をしている人の労働状態を確認して、労働時間が超過しているようだったら有給を与えたら?」
『そうね。ありがとう、悠人。相談に乗ってくれて』
「これくらい何とも思わないから気にすんな。それじゃ」
俺は通話を切る。
それからは特に何事もなく業務を終えて会社から出た時だった。
スマホの電源を付けると着信履歴があった。一体誰からと思うとあこからだった。
気になった俺はあこに通話してみる事にした。
「もしもし」
『あ、悠人さん。やっと繋がった』
「仕事でスマホの電源切ってたから分からなかったけど、どうしたんだ?」
『リサ姉がネイル全部剥がしちゃって爪がボロボロになってて』
「マジかよ・・・」
バンドをやる上でネイルを剥がすのは懸命な判断ではあるが、昨日まで付けていたネイルを全部剥がしたって事は絶対ペースを守らず剥がしたんだろう。
「あこは今、いつものライブハウスに居るのか?」
『はい、居ますよ』
「そこにリサは?」
『リサ姉も居るよ」
「今から俺がそっちに行って応急処置するから帰らせないでくれ」
一方的に通話を切り、急いで薬局に向かう。
必要なものをすぐさま買って、ライブハウスまで全力で自転車を漕ぐ。やっぱり二輪の免許取ろうかなとか思いつつ、10分以上全力で漕いでやっとライブハウスに着いた。
「ハァハァ・・・リサ、何処?」
息が切れ切れになりながらリサを探す。リサとあこは外のカフェテリアに居た。
「ハァハァ・・・ま、待たせたな・・・」
「悠人!?しかもその姿って事はそのまま来たの?」
「・・・誰のせいで会社から此処まで全力で漕いで来たと思ってんだ。とりあえず、指、見せろ」
「え?そんな大した事ない「良いから見せろ」・・・分かった」
有無を言わせずに見せろと告げるとリサは自分の指を見せてきた。
あこがボロボロと言っていたが想像以上に酷かった。ここまで酷いと今からやるケアでも完治するのに結構かかりそうだな。
薬局で買ってきた浸透補修液をリサの爪に塗り始める。これは爪の縦すじ、二枚爪、割れやすい、薄いすじを改善させる事が出来るものだ。
こんな事が出来るのも、爪がボロボロになるまで演奏した時に師匠がこの方法で爪のケアをしてくれたからだ。じゃなかったら、絶対浸透補修液とか絶対使わないし知りもしないだろう。
「一応聞くが、今日はリサ何やってたんだ?」
「皆は音合わせしたたけど、アタシは悠人が居た時にやったチューニングと軽いピック弾きの練習かな。その爪じゃ音合わせは無理だって」
流石の友希那もこの状態で音合わせをさせるほど鬼じゃなかったようだ。
「まぁ、そうだろうな。けど、応急処置はしてないでしょ?」
「い、いや〜それぐらいちゃんとしたよ〜」
ダウト。目が泳いでいるし動揺しまくりだ。
「あこ、本当は?」
「リサ姉は応急処置なんてやってません」
「なんで分かったの?」
「動揺しまくってるし目が泳いでたら誰でも嘘だって分かるだろ。後、ネイルをペースを守らず剥がしただけでここまで酷くなんのかと疑問に思ってな」
まぁ、男の俺はネイルなんてした事ないから詳しい事どころか基本的な事も知らないけど。
「で、リサ。なんでこんな無茶をしでかした?」
「それは・・・」
「別に怒ったりする訳じゃないから。正直に言って」
リサが言い淀んでいるのを見かねた俺は怒る事はないとリサに告げる。
リサは、それで決心が付いたのかポツリポツリと話し始めた。
「少しでも上手くなりたいなって思ったんだ。ほら、アタシみんなより下手でしょ。それに、技術も足りないって友希那達に言われたし」
「それで焦ったのか・・・」
「確かにそれもあるんだけどさ」
「まだなんかあんのかよ」
どうやらリサが無茶をした原因は焦りからきたものだけではないようだ。
「悠人がさ、一度だけ練習に来た時に見ちゃったんだよ。ベースをピック弾きで死に物狂いでやってるとこ」
「なっ・・・」
今度は俺が驚く番だった。確かに俺は機材のチェックを終えたらベースのピック弾きの練習をしていた。
それこそリサの言う通り死に物狂いでだ。如何んせんベースのピック弾きなんて殆どやんないのでマジで焦ったのだがコードは知っていたので何とかなったのだ。それでもギリギリだった。
「それを見てさ、悠人にこれ以上迷惑を掛けたくなったんだ。悠人は仕事があるから忙しいし、アタシ以外の練習も見なくちゃいけないからさ」
「確かに俺はベースをピック弾きなんて殆どした事ないから不安だったし死に物狂いで練習した。それを見て迷惑をかけたくないって思ってくれるリサの優しさはありがいたいけど、リサは自分の事だけに集中してくれ。俺は大丈夫だから・・・」
「けど、悠人が・・・」
「自慢じゃないが音楽に関しては才能ある方だから気にすんな。リサは自分の事に集中してくれれば良い」
「分かった。じゃあピックから指に・・・」
「しなくて良い。今までピック弾きだったんだろ。それにそんな指でやったら悪化するだけだ。だから、リサはピック弾きで自分のペースで上手くなっていけば良いから」
「悠人がそう言うなら」
そうこうしている内にリサの全ての指の爪に浸透補修液を塗り終えた。
「これで良し。とりあえず、2週間これ塗って」
「いつ塗ればいいの?」
「基本朝起きた時に塗って。ただ、これ水に弱いから水仕事した後と風呂に入った後にまた塗って」
「マジかー」
「マジだ。2週間後に1回見せてくれ。最悪2週間じゃ治らないかもしれねぇからサボるなよ」
リサに浸透補修液を手渡す。
「じゃ俺は帰るから。リサもあこも早く帰れよ」
「バイバイ、悠人。また、練習で」
「悠人さん、じゃあね〜」
「あぁ、またな」
俺はライブハウスを後にするのだった。
如何でしたか?
あこが空気と化していましたが、作者があこを書ぐのが苦手なのもあるかもしれません。あこ推しの皆様、真に申し訳ございません。
それでは次回もお楽しみに。
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第19話 神谷家の3兄弟
今回は、前回登場した悠人の姉と名前だけ登場した妹が登場します。
それでは、第19話をどうぞ。
〈白金家 燐子の部屋〉
私は今日もあこちゃんとメッセージアプリで会話してます。内容はあこちゃんのバンドの事です。
『って感じで、まだちょっと怒られはするけど、認められるようになってきた!』
『バンドとして息が合ってきたんだね。あこちゃんのドラムも、どんどん上手くなってるんじゃないかな』
『ふっ・・・これくらい造作もないことよ!』
「・・・ふふ。・・・最近バンドの話一色・・・本当に、楽しいんだ・・・」
あこちゃんのメッセージを見て私は微笑みながらそう呟く。
今まではNFOとかの話ばっかりだったのにここ最近はあこちゃんのバンドの話しかしていない。
『では特別に、我が同朋、りんりんにだけ、演奏中のバンドを見せてしんぜよう』
あこちゃんから、そのメッセージが届いた後、しばらくして
「え?・・・動画・・・?」
あこちゃんから送られてきたのは1本の動画だった。
試しに動画を再生してみると
「・・・すごい。あこちゃんが、友希那さんと・・・」
『ありがとう。すごいね!全員で一つの音楽を作り上げてる。みんなでって、こういうことなんだね!』
『・・・・・・・・・・』
「・・・あれ?」
既読はついてるのに、返信が無い。どうしたのかな?
『あこちゃん?』
やっぱり、既読はついてるけど、返信が無い。あこちゃんは既読したらすぐ返信するので寝落ちしちゃったのかな?
〈宇田川家 リビング〉
「ぐ〜〜〜〜・・・むにゃむにゃ・・」
燐子の推測通りあこは寝落ちしていた。
涎が垂れかけているもののその寝顔はとても気持ち良さそうであった。
〈白金家 燐子の部屋〉
あこちゃんが寝落ちするなんて滅多にない事だった。バンドの練習で疲れちゃったのかな?
それに、この動画・・・・何だか身体が引き寄せられる感じがする・・・。
「・・・たとえば・・・もし・・・」
もし、本当にあくまで、仮にだけれど、私のピアノをあこちゃんのドラムのように友希那さんたちの演奏に重ねたら。
「・・・どう・・・なるんだろう」
動画に合わせてピアノを少しだけ、少しだけ弾いてみたらどうなるのか。気になった私はピアノを準備し、動画に合わせて少しだけピアノを弾いてみた。
「・・・・・・・・・・・!!」
なに・・・これ・・・私・・・ずっと前から、こうやってたみたいに・・・すごく・・・楽しい・・・!
そのまま、私は夢中にピアノを弾いていた。バンドの音楽にピアノを重ねて・・・
〈とある日曜日の夜〉
俺は今、とある回転寿司のお店で人を待っている。もうそろそろで来ると思うんだが・・・
「お兄ーちゃんー!」
俺より頭ひとつ以上低い背。セミロングの癖のない艶やかな黒髪を三つ編みハーフアップにした俺に勢いよくハグしてきた少女の名は神谷莉菜。俺の妹であり神谷家の末っ子だ。
「久しぶりだな、莉菜」
「うん!久しぶり、お兄ちゃん!」
俺の方が身長高いから莉菜が上目遣いで見てくる。莉菜は俺より2つ下の現在中3で俺や姉ちゃんみたいに会社を経営とかはしてないが、JCモデルとして活動している。
莉菜が俺の胸に顔をスリスリさせてくるのでだんだん愛玩動物に見えてくる。
気づけば莉菜の頭を撫でていたが、妹だし嫌がってないから大丈夫だろ。
「悠人、久しぶりね」
「久しぶり、姉ちゃん」
今度は背中の真ん中まで伸びた癖のない艶やかな長い黒髪をストレートロングにした女性がやって来た。
この人が俺と莉菜の姉ちゃんの神谷瑠菜だ。
「立ち話もなんだし、店内に入らない?」
「そうね。そろそろ呼ばれるだろうし」
「もしかしてお兄ちゃん。予約してくれたの?」
「まぁな。日曜の夜は混むだろうし」
「さっすがお兄ちゃん。顔も心もイケメンだよ」
「そんなに褒めたって寿司しか出てこんぞ」
「そんなの最高じゃん!」
店内に入るとすぐに呼ばれ、俺達はテーブル席に座る。
「何食う?」
「「鉄火巻」」
息ぴったりな姉妹である。今日においてここまで息ぴったりな姉妹は居るのだろうか?
「じゃあ、3皿注文するわね」
「ん?何で3皿?」
「悠人も」「お兄ちゃんも」
「「食べるでしょ?」」
ついでに俺の事も手に取るように分かる姉妹だった。
「まぁ、食べるけどさび抜きも食いたいから1皿追加で」
レーンを通っていたわさびを2つ取って一つ姉ちゃんに渡す。
姉ちゃんはというと、合計4皿の鉄火巻きを注文した。
「そうそう、悠人に電話で相談した件。無事に解決したわ」
「そりゃ良かった。で、原因は・・・」
「とある部の部長だったわ。元々余り良い噂は無かったけど、色々調べたらパワハラやらセクハラやら色々出てきたわ」
「それでクビにしたのか?」
「いえ、平社員として飼い殺しにしたわ。クビなんて生温いもの」
姉ちゃんが飼い殺しってその部長は一体何をやったんだろう。
「お兄ちゃん、パワハラって嫌がってるのに体に触れたりする事だっけ?」
そうだった。莉菜は神谷家に於いては珍しいアホの子だった。
「いや、莉菜が言ってるのはセクハラで、パワハラってのはパワーハラスメントの略で自らの権力や立場を利用した嫌がらせって事だ」
「なにそれ!最低じゃん!!」
そりゃパワハラは最低以外の何物でもないからな。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはそんな事してないよね?」
「勿論してないわ」
「あぁ、俺もだ。と、鉄火巻き来たぞ」
鉄火巻きが4皿来て俺は最初に取った2皿を莉菜と姉ちゃんに渡し、残る2皿も取る。
1皿にはわさびを付け、醤油をかけて口に放り込む。やっぱり寿司は美味い。
残りの一皿にはわさびを付けず鉄火巻きを味わった。
「やっぱりお寿司は美味しいね」
「そうね。今まで頑張ってきて良かったと思えるわね」
「そうだな。今日の寿司で英気を養っておかないとな」
この後も仲良く談笑しつつ久しぶりの外食を楽しむ俺だった。
如何でしたか?
妹の莉菜は神谷家では珍しいアホの子という設定です。因みに声は鬼頭明里さんがしゃべくり007の時に披露したロリな妹がイメージです。皆から愛されるアホの子となるよう頑張ります。
それでは次回をお楽しみに。
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第20話 ウチのバンドリーダーはポンコツだった
去年の12月を最後に投稿が無かったですが、大学受験も無事終わったので投稿再開です。
久しぶりに書いたので、若干口調なんかはおかしいかもしれませんが、第20話をどうぞ。
あれから2週間経った。リサの爪は無事完治したのだが、別の問題が発生していた。
それは、メンバー・・・キーボード担当が見つからない事だ。リサやあこが入った当初はこの調子でキーボード担当のメンバーもすぐに見つかるんだろうなと思っていた。
今になって思う。こんなに早く5人も揃ったのは奇跡だと。
「はぁー・・・」
「どうしたんです、神谷さん」
「キーボード担当のメンバーが見つからないなーと・・・」
「・・・そう、ですね・・・」
紗夜も少なからずメンバーが見つからない事を気にしていたようだ。
「悠人、紗夜。貴方達も早く来てちょうだい。話したいことがあるわ」
「分かりました」
「了解」
友希那はスタジオを出てカフェテリアに向かう。俺と紗夜は友希那の後ろをついて行く。
カフェテリアには既にあことリサが居た。
「で、友希那。話したい事があるってなんだ?」
「ライブが決まったわ」
友希那が開口一番そう言った。何故だろうか、最も有り得ない事が聞こえた・・・気がした。
「はははっ・・・俺、結構疲労が溜まってんのかな?なんか最も有り得ない事が聞こえた気がした。友希那、もう一回言って?」
「ライブが決まったわ」
友希那がもう一回そう言った。『ライブが決まった』やっぱり、そう聞こえた。
「やべぇ・・・何か本格的に幻聴が聴こえた。それか、深刻な耳の障害か・・・あるいは、俺が狂ったか」
「貴方には、何て聞こえたのかしら?」
「ライブが決まったって聞こえたんだが」
「さっきから、そう言ってるのだけど」
「・・・おいおい、悠人、落ち着け、冷静になれよ。ライブが決まったって?・・・まさか、そんな訳無いだろ。だって、まだメンバー揃ってないどころかバンド名だって決まってない。まだ完成してない曲だってキーボードがいる事前提で作られてる・・・あれ?とてもライブが出来る状態じゃないんだが・・・」
俺は脂汗を垂らしながら肩を竦め、口を開く。
「ははっ、ナイス・ジョーク。友希那さん、今ならちょおっっと遅いエイプリルフールという事で許してやるから本当の事を言えよ」
「悠人は何を言っているの?さっきからライブをするって言ってるじゃない」
友希那の一言に俺は沈黙し
「ちょぉおっと待てぇええええーーー!?」
屋外で叫んでしまった。しかも割と住宅街のど真ん中で。
まさかこんな事になってしまうとは・・・もしかして俺がフラグを建築してしまったからか?それなら、今日から俺はフラグ建築士兼回収士1級を名乗るべきなのか!?(現実逃避中)
「どうするんだよ!お前、ライブ決まったって言ったってキーボード居ないんだぞ!曲出来てないんだぞ!どうするつもりなんだよ!!」
「それは・・・考えてなかったわ」
おいおい友希那よ。お前、バンドリーダーだろ。
俺は、友希那が音楽以外は実はポンコツなんじゃないかと思い始めてきた。
「そうだ。悠人さんピアノ弾けるからキーボード担当になれば良いんだよ!」
「いや、それだ風に言うんじゃない。俺は仕事があるからステージに立たないマネージャーやコーチをやってるんだよ」
「でも、有給とかあるじゃん。悠人、なんとかならないの?」
「そう簡単に有給は取れるもんじゃない」
しかも、俺は有給を与える立場だ。社長に休みなんて殆どないし本来なら今も働いてなきゃいけないのを秘書である遙さんや副社長を初め従業員が頑張ってくれているおかげである。
「それなら、ライブやるまでに見つけるだけだわ。誰か、キーボードやピアノを弾ける人を知っていないかしら?」
どうしよ?1人だけ弾ける人知ってるけど性格上無理かもと思って除外してたんだよな。けど、そんな事言ってられる状況じゃないし頼むだけ頼んでみようかな。
「ピアノだが1人だけ弾ける人を知ってるんだが・・・」
「コンタクトが取れないんですか?」
「全然。むしろ、紗夜もあこも知ってる人だぞ」
「「え・・・?」」
2人とも驚いている。紗夜はともかくあこは知ってると思ってたんだが、この様子だとあこにピアノを弾ける事を打ち明けていないようだな。
「あ、あこ、キーボードを弾ける知り合いなんていませんよ」
「誰なんですか?その人は?」
「・・・ピアノコンテストジュニア部門で、無名のまま出場し有名コンクールで優勝、入賞したピアノ界の天才や新星と言われた・・・」
「・・・白金 燐子だ」
如何でしたか?
字数は少ないですが、次回からは徐々に増やしていこうと思っています。
それでは、また次回お会いしましょう。
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番外編 Extra Memory
Roseliaのステイホーム
今回は番外編としてRoseliaのステイホーム模様をお送りします。それでは、初の番外編をどうぞ!
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続きスタジオ練習も勿論中止が続いていた。
そんな状況が続くなか俺、神谷悠人はとある準備をしていた。
タブレットにある緑のコミュニケーションアプリを起動させ既に始まっているグループ通話に参加する。ビデオ通話にすると、見知ったバンドメンバー達が写っていた。
『あ、悠人。やっと来たね』
「さっきまで仕事してたんだよ。俺はこんなご時世でも普通に仕事あるんだから」
新型コロナウイルスが感染拡大しようが仕事がなくなる事はないのだ。
『じゃあ、悠人も来た事だしオンライン飲み会始めよ。友希那、乾杯の音頭よろしく』
『分かったわ。皆、用意はいいかしら。それじゃあ、乾杯』
「『『『『乾杯』』』』」
それぞれ用意したドリンクを持ち上げる。オンライン飲み会とは言っても俺達は未成年なのでドリンクは勿論お酒などではなく炭酸飲料とかジュースとかだ。
「前々からやろうってなってたけど、俺のせいで遅くなっちまったな」
『仕方ないですよ。神谷さんは仕事がありましたから』
前々からやろうとしていたのに、今日まで出来なかったのは仕事がいつも以上に立て込んで中々時間取れず今日やっと落ち着いた時間を取る事が出来たのだ。
『そうですよ。それにこうやって悠人さんも参加出来てるから良いじゃないですか』
『あこの言う通りよ悠人。貴方がこうして参加している。それで良いじゃない』
「・・・そうだな」
『でも・・・珍しいね。・・・ここまで・・・忙しいって」
「学校ないからな。仕事量はいつも以上だったよ」
お陰で改めて働く事の大変さを認識した。
「そういう皆はどうやって過ごしてたんだ?」
『自習練と勉強してますね』
如何にも紗夜らしい答え。
『作詞をしているわ』
友希那もまぁ、納得出来る答えなのだが・・・
「勉強は?」
「・・・してるわよ」
今の間からして絶対にやっていないな。まぁ、学校ないから勉強しない人も、多いだろうが友希那に学校がなかったらテストが赤点パラダイスになる未来しか見えないからな。此処は1つ釘を刺しておこう。
「してるならいいが、お前が1番危険だからな。地獄を見たくなかったら少しでもいいからやっとけよ」
「・・分かったわ」
友希那は顔を真っ青にして答えた。これで少しは勉強するだろ。
『あこはりんりんと一緒にゲームしたりしてたよね』
『・・・そう、だね』
あこと燐子も大体想像通り。やっぱりこの状況でも高校生はいつもと同じ事をやってる人が多いんだな。
『アタシは、編み物かな』
「・・・なぁ、リサ」
「どうしたの?』
「編み物は冬にやるイメージが強すぎて春とかにやるのがおかしく思える」
『確かに私も編み物は冬ってイメージが強いのですが・・・』
「確かにそう思えても仕方ないよね。でも、編み物って春夏でもやる人はいるんだよ。例えばこれとか』
そう言ってリサが見せてきたのは白いショールだった。
「え!?これ、リサが作ったのか?」
『そうだよ』
「凄く上手いな」
趣味が編み物なだけあって普通に上手い。なんなら店に出しても問題ないレベルだ。
『そう?』
「店にあっても違和感ないぞ」
『悠人の言う通りよ』
紗夜とあこと燐子もうんうんと頷いている。
『皆、ありがとう』
お礼を言われるような事じゃないと思うが、そんな野暮な事を言うつもりはない。
「さてと、夕飯作るか」
『悠くん・・・まだ・・・食べてなかったの?」
「あぁ。誰かが作ってくれる訳じゃないからな。気づけば夕飯食わずに仕事してた」
「悠人さん気をつけてくださいよ』
「言っとくが、いつもこんなんじゃないぞ」
俺はタブレットを持ってキッチンへ向かうと、タブレットを料理の邪魔にならない所に置き、冷蔵庫から必要な食材を取り出すと皆と喋りながら料理する。因みに俺が作っているのはカルボナーラだ。
『悠くんって・・・料理、上手いよね・・・』
『少なくともアタシよりは絶対上手いと思う」
「そりゃあ、いつも自炊してるからな」
茹で終わった麺と具を皿に盛り付けテーブルに持っていく。ついでにタブレットもテーブルの上に移動させた。通話しながら食べるのは行儀悪いだろうが今日ぐらいはいいだろう。
「いただきます」
手を合わせて言うと、フォークを持ってカルボナーラを食べ始める。
凄く美味しそうと口を揃えて言うので機会があれば作ってやると約束すると凄く喜んでいた。
あっという間にカルボナーラを食べ終えた俺は皿洗いをしていると
『そうだ、リサ姉皆で何かやらない?』
『お、いいね』
「別に構わんが俺は皿洗いしてるから無理だぞ』
流石に皿洗いしながら何かするのは無理だ。
『じゃあ皿洗い終わった後だったら大丈夫だよね』
「あぁ」
『じゃあ、悠人さんが皿洗ってる間は悠人さん以外で何かやろ』
一人暮らしだから洗う量少ないからすぐ終わるんだけど。とりあえず皿洗いしてる間は会話に参加せず一人で黙々と皿洗いする。
皿洗いを終えテーブルに戻るとあこ達は何をするか悩んでいた。
「あ、これまだ悩んでる感じ?」
『そうなんだよ。悠人、なにかいい案ないの』
「んな事言われたってこの状況だと出来る事少ないぞ』
なんせ、全員同じ場所に居ないのだから。
『あ、人狼ゲームとかどうです?』
「無理だろ」
『どうしてですか?』
「作者がルール分かんないから」
『さりげなくメタ発言するわね』
『ですが神谷さんの言う事にも一理あります。ルールが分からないといつ投稿されるか分かりませんから』
『紗夜もさりげなくメタ発言してるんだけど・・・』
と頭を抱えるリサ。紗夜がボケ側にまわるとは思っていなかったようだ。
『・・・鬼ごっこなんてのはどうかしら?』
「外出自粛中なんだから家でやれる事を考えろよ」
『そういう悠人はなにか案はあるのかしら?』
「全員別々の場所で出来る事・・・テレビゲームとかか?」
とはいえ、ゲームやるのは俺と燐子とあこぐらいだし紗夜はNFOにあれ以降どハマり(本人は隠しているようだがバレバレ)してるがテレビゲームは流石に・・・
『○Witchならあるわよ』
『湊さんと同じくです』
『アタシも〜』
「なんで〜!!!」
『お父さんが買ったから』
確かにあの人はゲームが好きだった気がする。まさか○Witchを買っているとは思わなかったが。
『湊さんと同じくです』
紗夜はそれしか言えないのか?他にもなにか言えるだろ。日菜が欲しいから買ったとか・・・あれ?日菜ってゲームするっけ?
『アタシはあつ○やりたくて』
確かにアレは凄い人気だからな。そのおかげで○Witchの供給が追いついてないみたいだがな。
「俺と燐子とあこも○Witchは持ってるから何か出来るんじゃね?』
『アタシ○リカーやりたい』
「私もやってみたいわ』
「じゃあ、それで良いか?」
他のメンバーも構わないとの事だったのでこの後皆で楽しくマリカーをするのだった。
如何でしたか?
なんか、後半すげー雑になっちゃった気がする。次回は本編を進めるので楽しみに待っていてください。
それでは、また次回お会いしましょう。
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