ちっぽけなふたりの小さな世界 (link)
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ちっぽけなふたりの小さな世界
コロナよりウナきり流行れ。
タイトルはボトルシップとどっちにするか迷った。
私の世界はちっぽけだ。
一辺がおおよそ270センチメートルの空間、畳四畳半が私の部屋で私の領域で私の世界だった。
どうして引きこもっているのか。
その理由はとうに忘れてしまったが、酷くどうでもいい事だったような気がする。
けれども、当時の私にはとても大事な事で、それが傷つけられたからこうして引きこもっているのだろう。
「うそつき」
私の心はちっぽけだ。
もし、心というものが形ある物として取り出せたのなら、この狭い私の世界を埋め尽くすのにすら、何千何万と必要になるだろう。
どうしてそう思うのか。
それは、私が拒絶することしかできないからだ。
外に出ることを拒絶し、繋がることを拒絶し、家族の優しささえも拒絶する。
傷つけられたくないから拒絶して、同情されたくないから拒絶して、失望されたくないから拒絶する。
「ひきょうもの」
そんな私に生きている価値はあるのだろうか。
自分では無いと思ってる。
だからといって死ぬことも出来ない。
私の心はちっぽけで、勇気なんて大きなものが入る余地はなかった。
そんな私に生きている意味はあるのだろうか。
自分には無いと断言できる。
けれども姉達にとってはあるのだろう。
こんな私にも優しくしてくれて、あたたかいご飯を作ってくれる。
こんな私にも優しくしてくれて、冷めた心を温めるように抱きしめてくれる。
ちっぽけな私のちっぽけな拒絶なんて無いようなものだった。
そしてそれを心地よいと感じてしまう程の小ささだった。
ちっぽけな私のちっぽけな世界なんて無いようなものだった。
強い風が吹けば飛んでいってしまうような小ささだった。
風が吹いた。
「どーしたんだ? とーほくー」
「昔の日記を見ていました」
「何て書いてあるんだ?」
「痛々しい事ばっか書いてます。完全に黒歴史ですね」
「見せては…」
「いくらウナちゃんであろうともダメです」
「だよなー」
「それより今日は何をします?」
「天気がいいから外に行くぞ!」
「えー、天気がいいなら家にいましょうよ」
「なら、ゲームでもするかー?」
「そうですそうです、そうしましょう」
「とーほくの好きなゲームでいいぞー」
「さすがウナちゃんですね、ありがとうございます」
私の心は小さくなった。
もし、心というものが目に見えるのなら、海のような広さと言われていた私の心は、今では水たまりのような小ささだろう。
それは、私が受け入れる心を一人に絞ったからだ。
応援してくれる心を受け入れず、見守ってくれる心を受け入れず、私の心を受け入れさせない。
側にいる人間を絞って、繋がる人を絞って、優しくする相手を絞った。
人気が落ちるのは当然だった。
「それで良かった」
私の世界は小さくなった。
一辺がおおよそ270センチメートルの空間、畳四畳半の部屋にいる人の隣が私の世界になった。
どうしてそうなったのか。
それに小難しい理屈は無くて、言葉で表すのがもったいない程大切な事だった。
だからこそ二つの世界を天秤に掛けたとき、躊躇うことなくもう片方を蔑ろにしたのだ。
「それで良かった」
そんな私に生きている価値はあるのだろうか。
世間では未だに追い風が吹いている。
だからこそ閉ざすことにしたんだ。
私の心は小さくなって、大きな風が吹けば飛んでいってしまうだろうから。
そんな私に生きている意味はあるのだろうか。
自分ではあると断言できる。
なぜならあの子が笑ってくれるから。
こんな私にも優しくしてくれて、あたたかい笑顔を見せてくれる。
こんな私にも優しくしてくれて、壊れそうだった私を慰めるように抱きしめてくれる。
小さくなった私の小さくなった世界はそれで充分だった。
そしてそれを心地よいと感じるほど私は小さかった。
小さくなった私には大きな世界なんて不必要な物だった。
ビンの中の帆船のように風の無い世界で充分だった。
風が止んだ。
誰が何と言おうとこれはウナきり。
側から見て何も問題ないように見える二人だけど、別の方向から力が加われば全てが瓦解するような関係っていいですよね。
………冗談です。
自分はハッピーエンドが好きなのでこの後の二人は
普通の生徒として普通の学校を卒業して、普通に就職して、普通に同棲をし始め、死ぬまで一緒にいます。
ハッピーエンドですね。
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