ありふれた(平均)値で世界最強って言ったよね! (simasima)
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01 プロローグ

「えっ⁉ 死んだのか?」

 

「そんな‼ やだやだよー!」

 

「うわあぁぁぁぁぁ‼」

 

 

 阿鼻叫喚であった。

 それは何故か、本来ここにいるはずの無い者が、

 彼らと共に現れたからだ。

 その者とは・・・

 

 

 

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月曜日の朝と書いて憂鬱と読む

まだ夢の中の高校二年生南雲ハジメもそう思う一人だ。

しかし今この部屋で、おこなわれている行為を見たら多数の男子から

何故そう思うんだ贅沢だ。違うだろう!なら自分が代わってやると!!

 

「ハジメちゃん!早く起きてこのままだと遅刻するよおぉ!」

 

都市伝説の一つ可愛い幼なじみが朝起こしに来るという男子の夢が、

そこにあるのだから。

体を揺さぶられ、仕方なく目を開けたハジメは

 

「・・・おはよう 経緯子ちゃん」

 

と怠そうに挨拶するのだった。

近所に住み、お互いの両親が学生学時代からのオタ友達で、

生まれた時からの付き合いがあるのが、

ハジメの幼なじみで同級生の栗原 経緯子(くりはら けいこ)だ。

とは言っても昔からハジメを起こしに来てたわけでなく

世間一般と同じく思春期が近づく頃には少し距離が開いてたりしていた。

朝起こしに来るようになったのは、一年半ほど前からだ。

そうなったきっかけは2年前、二人にとって大切な

経緯子の姉、そしてハジメも海里姉ちゃんと慕い、古いオタネタをよく言ってた。

栗原 海里(くりはら みさと)が女の子をかばって交通事故死したからだ。

 

その当時の経緯子の様子は、それはもう見るのも辛い状態だった。

元が明るく面倒見が良かったゆえに周りの友人たちも接し方が分からず

遠巻きに様子見する事しか出来なくなってしまっていた。

そんな中ハジメは、このままだと何気に海里のついでに面倒を見てくれてた

経緯子が壊れてしまう。

そう思い、家ではともかく学校では、姉の海里と違い経緯子はオタク趣味でなく、

彼女自身はオタクに偏見を持ってないが、

委員長タイプで人気者の彼女とは違い、何かと自己評価の低いハジメは

オタクで地味な自分とは居場所が違うと思って話したりしなかったのだが、

()()()()だけでは彼女を守る事が出来ない。

どうすれば良いのかわからないけど、今は動くのが大事と彼女に話しかけた。

 

それから半年クラスメイトからは、なんだよお前、落ち込んでるところを付け入ろうしているなどと噂されたりしながらも、

経緯子の悲しみと、時には彼女自身の感情からくる行き場の無い八つ当たりも正面から付き合い続けた。

その結果、経緯子がハジメを朝起こしに来ると言う事になったのだ。

 

ハジメは恥ずかしいけど、海里姉ちゃんを失った悲しみを少しでも癒されるなら、

まぁ良いかと当たり前の日常の一コマとして受け入れてる。

これからもその日常がまだまだ続くと思いながら。

 

 

 

しかしその想いは、近いうち裏切られる事になるとも知らずに。

 

 

 

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 何処かで、ある者が落ちようとしていた。

 

 その者が、落ちてしまうを止められないと

 

 悟るナニカは通常の何十倍の密度で集まり

 

 共に落ちていった。

 

 

 

 

 

 



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02 日常

ハジメが、経緯子に続いて寝不足の体を引きずって

教室にはいると

 

「南雲君、経緯子ちゃん、おはよう!」

 

 

ニコニコと微笑みながら一人の女生徒が挨拶してくる。

その瞬間ハジメは、くっ!人が殺せたらと言う様な視線を感じながら

 

「おはよう、香織さん」

 

と挨拶を返した経緯子に続いて。

 

「あっ、うん、おはよう白崎さん」

 

挨拶を返すと、更に笑顔になる香織。

それと同時にも周りの視線が、きつくなる何故なら。

白崎香織という。少女は学校で二大女神と言われる美少女だ。

腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味な大きな瞳、

スッと通った鼻梁に小ぶり鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配意で並んでいる。

そんな彼女が、平凡でイケメンでも無いハジメに笑顔を向けるのだから、

周囲の視線もさもありなんである。

 

ハジメはそんな周囲にたいして内心

 

(僕じゃなくて白崎さんは経緯子ちゃん友達だから、ついでだからそう言う事にしといて)

 

と思っていたがその経緯子も、香織ほどではないが、

名前のとうり栗色の肩の辺りで切りそろえた髪、優しいながらもしっかり意志を感じる瞳、

小ぶりな鼻、小さめの唇が、バランス良くならんでいる。

彼女も充分可愛いタイプの美少女だ。そのうえ面倒見の良い委員長タイプの彼女は、

高嶺の花的な香織と違い、より親しみ易いせいかモテた。

告白された数は多いが、誰かと付き合っていると言う話も聞かないのだ。

そんな二人に朝から構われてるハジメは、ため息つきながら自分の席に向かおうとすると

三人の男女がハジメたちに、近寄ってくる。

 

「経緯子、南雲君、おはよう。南雲くんは毎日大変ね」

 

「おはよう、栗原さん、南雲 。相変わらず眠そうだな、南雲。手伝いも好きな事とはいえ、ほどほどにしないと体こわすぞ。」

 

「経緯子さんおはよう。朝から香織と経緯子さんも、また彼の世話を焼いてるのか?全く二人は優しいな」

 

最初に朝の挨拶してくれた女生徒は八重樫 雫。香織の親友で二大女神のもう1人だ。

ポニーテールの形をした長い髪がトレードマークである。

切れ長の目、百七十二センチという女子にしては高い身長と引き締まった身体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。

 

事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、彼女自身小学生の頃から

剣道大会負け無しの現代に現れた美少女剣士として有名で、特に後輩の女生徒からは

熱の孕んだ瞳で“お姉さま”と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。

香織のハジメへの想いを知っており、そんな親友の突撃癖に

巻き込まれるハジメにすまないという思いからくるのが、

挨拶の後に続くセリフだ。気使いと世話焼きのオカン気質だ。

 

次に挨拶をした男子生徒は坂上 龍太郎といい、短く刈り上げ髪、百九十センチの身長の

空手部所属の猛者で、見た目通りの細かい事は気にしない脳筋タイプだ。

 

龍太郎は努力とか熱血とか根性とか大好きな人間で、昼間は何時もダルそうにしている

オタクのハジメとは接点は無さそうなのだが、

一年程前ハジメがナイスバルクなアニメと「筋肉をつけよう」と言ってくるアニメキャラに

ハマって自分自身感化され、体作りは将来のため必要だからと自分自身に言い訳しながら始めて

少女漫画家の母親の仕事場に母とアシスタントの“お姉さま”方のダイエットのための器具が

押し入れの肥しになっており、それら使うことで飽きずに続ける事ができた。

その内自身の腹筋が割れはじめると、「筋肉は裏切らない」などと思い、そう、ぶっちゃけハマったのだ。

なので件のアニメが終わった後も続けていて、今では痩せ型だがそれなりに引き締まった体だ。

 

龍太郎とは半年程前の体育の着替えの時に、

ハジメがハマってたアニメの影響で「大胸筋が、キレてるよ。」などと呟いてしまい、

それがたまたま耳に入った龍太郎は何故かニカッと笑い、ポーズ決めながら

苦笑いするハジメの体を観察。意外と体が仕上がっているのに感心して、

それがきっかけで筋肉談義をする様になり、オタク趣味など軟弱でくだらないと思っていたのだが、

ハジメと話す内に、ハジメが将来を見据えて両親の手伝いをしている事を知り、

自分の意思で其のための努力するハジメを見て、

龍太郎自身が知る努力とは違う形もあるのだと思った。

 

元々龍太郎は脳筋だが裏表のない真っ直ぐ性格なので、

ハジメの事を一度認めると素直に感心し、

今ではハジメから格闘漫画を借し借りする仲だ。

ちなみにお気に入り漫画はナイスバルクと同じ原作者だったりする。

あと最近はハジメの筋肉について訊いてくる

香織の目が少し怖いと思っている。

 

最後にナチュラルにハジメを省いた上、些か臭いセリフで香織と経緯子に

声を掛けたのが天之河 光輝。ひと昔前の主人公っぽい名の彼は

容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。

サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチに近い高身長に細身ながら引き締まった体。

誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい) 。

小学生の頃から八重樫道場に通い、その縁で雫と香織とは幼なじみで、

雫と同じく全国クラスの猛者だ。ダース単位で惚れてる女子がいるとの噂が

真実として語られるぐらいの筋金入りのモテ男だ。

 

「おはよう。雫さん、坂上くん。で天之河くん」

 

「おはよう。八重樫さん、坂上くん。 (間) 天之河くん」

 

と経緯子に続いて挨拶を返すハジメ。

すると光輝が自分自身の正義に従って言う。

 

「南雲、君は毎日眠そうにして朝から香織と経緯子さんに世話をやかれてる。

自分が恥ずかしく無いのか?何時迄も二人の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。

経緯子さんと香織も構ってばかりはいられないんだから」

 

ハジメは経緯子ちゃんには兎も角、白崎さんには甘えた覚えは無いけど。

でも下手に言うと面倒くさくなりそうだし、多分このまま黙っていても

同じ事になりそうだしな、と考えていると

経緯子が光輝にハッキリと言う。

 

「ハジメちゃんは、自分から構ってくれなんて言った事ない。

私がしたいからしてしているだけ」

 

続いて香織も天然突撃娘らしい発言をする。

 

「私は南雲くんと話したいから話し掛けてるだけだよ?南雲くんが私に甘えてる?

どう見ればそう見えるのかな?南雲くんは甘えたりして来ないよ?本当はそうだったら良いのに」

 

と彼女自身の天然からくる、

本人は自覚してないが割と過激な発言に

 

周りの男子からの嫉妬の目がハジメに突き刺さる。

特に檜山 大介と言う男子生徒は殺さんばかりに睨み付けている。以前ハジメを呼び出し、

自分を入れた仲間4人でハジメにヤキを入れようとしたが、ハジメの機転で上手くいかず、

高校生になって直接的手段に訴えればどうなるか身に持って知ることになり、

次は無いと言う事になった。特に最近ハジメは龍太郎と仲のいいことあり、

あとは口で言うしか無くなり、「キモオタ」など罵るも、

その言葉を耳にした周りの女子生徒達からの不快感を露わにする

視線に耐え切れず、今は舌打ちぐらいだ。

 

ハジメの周りからの評価はと言うと、男子の嫉妬からくる僻みは兎も角、

女生徒からの評価は割と高く、オタクだけど髪は短く切り揃え整えてるし、

身嗜みもしっかりして清潔感があり、最近は筋トレを続けているおかげで体も締まってる。

 

授業態度も眠そうにしつつも、ハジメが経緯子に負担をかけるのイヤなので

両親の手伝いで徹夜などはしてないがそれでも睡眠不足がちではあるが

頑張って起きて授業を聞いているので、隠れて内職してる事もあるが、概ね真面目に見える。

それと文化祭等の行事で頼られる事の多い経緯子に付き合い手伝いをしている中で、

ハジメが親の仕事の手伝いで培った交渉スキルの高さや、頼り無さそうに見えるけど

一度決めると人一倍集中して根気よく続けてる姿を見たり。

 

経緯子やハジメと同じ中学から進学して来た生徒は、中学三年生の時に起きた不幸と、

その当時の経緯子と()()まで手を差し伸べていたハジメを悪く思って無い事、

 

あと女子の打算的な視点から

両親が自分たちも良く知っている漫画家とゲーム会社の社長の

息子で本人が既に何方共に即戦力な話を彼の幼なじみの経緯子と

妙にそんな家庭事情に詳しい香織(それについては彼女の親友が頭を抱えてた)から

話を聞いた彼女たちは、「もしかして、南雲君って優良物件で買いじゃない?」と考え、

そうなると平凡な外見も、清潔感はあるし優しいし少し可愛いかもなどの感想に変わった。

 

幼なじみの経緯子はともかく、高校入学してすぐにハジメに話しかけた香織に

そんなにも早くツバつけようとするとは恐るべし嗅覚すごいと

妙なところで感心されたりした。(真実は香織がハジメの事を入学前から知っていただけ)

そんな訳でハジメのクラスでの立場は悪くない。

 

 

ここで現実に戻ると経緯子と香織の反論を聞いた光輝が

 

「え?・・・ああ、ホント、二人とも優しいよな」

 

どうやら光輝の中で二人の発言はハジメに気を遣ったと解釈された様だ。

完璧超人なのだが、そのせいか自分の正しさを疑わなさ過ぎる欠点が彼にはある。

やっぱり面倒な事になったなと思ってるハジメに

 

「・・・ごめんなさいね?光輝はを悪気はないのだけど…」

 

こっそりと雫がハジメに謝罪する。ハジメはそれを受けて

 

「いいよ。八重樫さんが謝る必要無いし、気を使いすぎだよ。もう少しほって置いて

良いと思うよ僕は?」

 

光輝の善性ゆえのトラブルのフォローに回っている雫の噂を耳にしてたので、

雫にそう答えたのだ。

 

「・・ありがとう。考えてみるわ。南雲くん」

 

そうこうしてる内に始業のチャイムが鳴り、皆席につく。

 

 

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そして昼休み。

 

「はい。ハジメちゃん、お弁当」

 

「いつもありがとう、経緯子ちゃん。毎日大変じゃない?」

 

「1人も2人も手間は変わらないし、おばさんから材料費も預かってるし」

 

と言いながら、ハジメと経緯子は机をくっつけて食べ始める二人。

 

「南雲くん、経緯子ちゃん、私も一緒に食べてもいいかな?」

 

と香織が、話しかけてくる。ハジメはチラッと経緯子の顔を見て

彼女がうなずくとハジメは返事する。

 

「いいよ、白崎さん。一緒に食べよう」

 

「うん!ありがとう!」

 

その返事に満面の笑みを浮かべる香織。その笑顔を向けられているハジメは、

少し前の学校からの帰り道に経緯子に言われた事を思い返す。

 

『香織さんの事、ハジメちゃんはどう思ってるの?』

 

『どうって?経緯子ちゃんの友達だから側にいる。僕に話しかけてくるだけじゃないの?』

 

『ハジメちゃんのついでは、私!彼女が話したいのは本当はあなただし』

 

『まさか?僕なんかに白崎さんみたいな人があり得ないよ』

 

『ハジメちゃん!僕なんかって言って誤魔化さない。気づいているよね?彼女の気持ち?』

 

『うん。一年生の頃からずっと構ってくるし、他の男子との対応の差を見たらね・・・』

 

『で?もう一度聞くけど。白崎さんの事。ハジメちゃんからはどう思っているの?』

 

『そりゃあんなに綺麗な人が慕ってくれるのは男として嬉しいし、最初は強引さが

苦手だったけど、最近は白崎さんと話すのも楽しいなって。でもその先に僕はまだ・・・』

 

と言葉濁しハジメは経緯子の顔見て、そしてふと空を見上げて経緯子も何か察したのか

そのまま黙ってその日は帰路についた。

 

ハジメが思い返し香織がいそいそと席に着こうした時

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲には経緯子さんが居るんだ。

香織がわざわざ相手にしてあげる必要はないよ。さぁ早くこっちにおいで」

 

と光輝がキラキライケメンスマイルで話しかけてくるが、

香織は先程のセリフにピクッと眉しかめ光輝を一瞥した後、返事もせず席につきハジメに笑顔で

 

「今日の卵焼き。お母さんに新しいレシピ教わって作ったの。よかったら食べてくれないかな?」

 

と話す。香織を見て雫は思う。

 

(さっきの光輝の言葉だと香織の態度も仕方ない。気になる男子のそばに他の女子が居るから

香織は居なくて良いと言われたのと同じだもの。問題は自分の言った地雷発言に気づいて無い光輝が、

更に何か言おうとしてる事ね。南雲君の言う通り構いすぎも良く無いけどそれは今度からで、今は)

 

と香織たちに更に何か言おうとしている光輝を止める為に雫が動き出した時、

光輝の足下に光輝く魔法陣らしきものが現れて、教室全体を光で満たしていく。

「皆! 教室から出て」とまだ教室に残っていた畑山 愛子先生が叫んでいたのと同時に

魔法陣の光が爆発した様にカッと光った。

 

光が収まった後の教室には、彼らの持ち物、教室の備品はそのままそこにあった。

只そこに居た人間だけが消え失せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作との違い

南雲ハジメ 
      経緯子のため行動が原作に比べるといくらか積極的。
      授業態度も経緯子の負担になるのが
      嫌なので授業中居眠りしない等改善している。
      その為男子の嫉妬は変わらないが。
      女子からは別に悪く思われていない。

栗原経緯子 ハジメの幼なじみで2年前姉の海里と死別している。
      その当時の落込み様は酷く
      友人達も同付き合えば良いか判らない状態の中
      ハジメは積極的、根気強く寄り添ってた
      結果以前の明るさを取り戻した。
      委員長タイプの彼女は学校行事等で頼られる事も多く
      それにハジメも付き合わされた結果
      ハジメ本人の評価も上がった。

白崎香織  原作通りハジメに想いをよせる。学校1、2の美少女
      今作にはハジメの側に経緯子が居るため
      より分かりやすくアプローチした結果。
      ハジメと経緯子と3人でお弁当を食べることも
      しばしばある様になっている。
      たまには天然で過激な発言、行動するこがあり。
      オカンな親友の気苦労は絶えない。


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03 召喚

 ゆっくりと目を開いたハジメはすぐに二人を探す。

背後に居た経緯子と香織の無事な姿を確認すると

次に周囲を注意深く見渡す。まず目に入ったのは、

縦横十メートルはありそうな壁画だった。そこに描かれているのは、

後光を背負い長い金髪を靡かせて薄らと微笑む中性的な顔の人物が

両手で世界を包み込むよう描かれている。美しい壁画だ。

だが、ハジメはその壁画に何故か薄ら寒さを感じて無意識に目を逸らす。

 

どうやら自分たちは、巨大なドーム状の最奥にある台座の様な場所に居るようだ。

パッと見確認しただけだが、あの時教室に居た全員が巻き込まれた様だ。

 

自分たちの居る台座の前には三十人近い人々が

両手を胸の前で組み、祈りを捧げる様に跪いている。

しばらく彼らを観測していると。

一人の老人がハジメたちの居る台座に近づいてくる。

その老人の服装は周りの人物の中で一番豪華で煌びやかであり。

多分かなり上の人物だろうと思われる。

そんな人物がハジメたちに、威厳に満ちた声で話しかける。

 

「ようこそ。トータプギャあぁぁ!!

 

話の途中で踏み潰されたカエルの様な叫びを上げた。

何故ならイキナリ老人の頭上に現れた光を纏った人らしきモノに

文字通り踏まれて、倒され背中の上に立たれてた。

 

ハジメたちが啞然としていると、件の人らしきモノの

光が収まってくる。どうやら女性の様だ。

完全に光が消え姿形が明らかになる。

 

腰まである艶のある黒髪、形の良い眉、目は閉じているが

それがかえって彼女に大人びた印象与えてる。

どこか儚げな感じのする美少女だ。年齢はハジメたち同じ頃に見える。

彼女の服装はハジメたちも知る有名な進学校の制服だった。

 

その時ハジメと経緯子は彼女を微動だにせず凝視していた。

まるで二人の時間が止まったように。

 

「南雲くん・・・・?経緯子ちゃん・・・・?」

 

と側に居た香織が訝しげに二人に声をかける。

と同時ぐらいに例の彼女がゆっくりと目を開ける。

 

その様子を見たハジメと経緯子の二人は、

いきなりその彼女に向かって走り出す。

何事かとクラスメイト達が困惑している中、

あっという間に台座を飛び降り、

何かを踏みつけたが、気にせず。

 

お姉ちゃん!!

 

と叫び例の彼女に抱きつく経緯子。

ハジメもすぐ近くに立ち、声を震わせ

 

「海里姉ちゃん・・・・」

 

そう、現れた少女は二年前事故死したその当時と変わらない

栗原海里の姿をしていた。

 

「・・・経緯子? ・・・ハジメちゃん?」

 

彼女は困惑した様子で声を出す。その声を聞いた経緯子は

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃん・・・うわぁぁん」

 

抱き締めたまま泣きじゃくる。

ハジメも海里を見つめ只々涙を流している。

 

その様子を呆然と眺めていたクラスメイト達だったが、

誰かがボソッと言った。

 

「確か栗原さんのお姉さんて・・・」

 

「交通事故で亡くなったはず・・?」

 

「現れた時光ってたよね?」

 

「栗原さんを迎えに出てきた?」

 

「じゃあ教室光ったのは・・・」

 

「何かが爆発して巻き込まれた」

 

「・・・俺たちその時に死んだ?」

 

「えっ⁉︎ 死んだのか?」

 

「そんな‼︎ やだやだよー!」

 

「うわあぁぁぁぁ‼︎」

 

阿鼻叫喚である。普段ならココまで簡単にパニックにならないだろうが、

目を開けたらいきなり見知らぬ場所に居て、

その上で故人と思われる人物が突然現れたのだ。

ストレスが限界突破するのも仕方ない。

 

そんな中で一人ノリ遅れた感のする雫は、

騒ぎを納めようと左往右往する光輝。

そして人を踏み付けたまま彼女の姉らしき人を抱き締め泣いてる経緯子。

その側で泣いているハジメ。

そんな中でもハジメの側に行こうとする香織の首根っこを掴みながら、

改めて周囲を見渡し一人ツッコミがちに言う。

 

「なに?このカオス。グダグダだわ」

 

 

 

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 あの後踏みつられていた老人が退場し、

まだ海里にしがみついている経緯子の代わりに、

周りで祈っていた人達にハジメがジャニーズ謝罪DO☆GE☆ZAをかまし、

それを香織が、「ほわわぁぁ」とキラキラした瞳で見たり。

 

となんだかんだあって、取り合えず説明すると言うので

豪華な広間に案内される。

上座に近い所に畑山先生と光輝とその幼なじみ達

(香織は雫に南雲くんの側に座ろうと言ったが、

雫から「後で光輝が面倒くさくなるので

今は我慢して」と言われ未練タラタラに座る)

 

ハジメ達三人は最後方に座る。経緯子とハジメは

海里の事は本人から後で事情を説明すると聞き、今は落ち着きを取り戻している。

 

この広間に来るまでクラスメイト達が静かだったのは、先程の自分たちの醜態が

落ち着くと恥ずかしくなり若干賢者モードに入っており、無駄にカリスマのある光輝が

先導し、彼らの教師である愛子先生が居たのも理由であろう。

 

全員が着席するとカートを押して見た目麗しいメイドさん達が入ってきた。

そして傍に来て飲み物を給仕してくれる。

男子生徒たちは、そんなメイドさんを凝視して受け取る(1名オッサンが棲む女子も)。

そんな男子を女子は冷ややかな目見ていたのだが・・・。

後一人だけ飲み物を貰いそこねかけた。遠藤ェ・・・

 

ハジメの所にもメイドさんが給仕に来てくれたときに凝視しそうになった瞬間、

背筋に悪寒を感じて見るのをやめた。チラリと悪寒を感じた方へ視線を向けると、

香織が満面の笑顔だがそうでない目でハジメを見ていた。うんコワイ。

ハジメは視線を逸らし誤魔化す様に海里と経緯子に小声で話しかける。

 

「これはハニトラだよね?」

 

「ハジメちゃんの言う通りだろうね」

 

とハジメと同じくこの様な創作物に詳しい海里が答える。

 

そして先程退場した老人(のちにイシュタルという名前が教えられる)程ではないが、

位の高い人物がイシュタルが聞いたと言う“エヒト神”からの神託を話し始める。

 

長いので要約すると彼ら人間族は魔人族と言う種族と何百年も戦争続けているのだが、

個々の能力は魔人族の方が高いが、人間族は数が多いので戦力的には拮抗し、

ここ数十年は小競り合いばかりで大規模な戦争は起きていないそうだ。

 

だが最近魔人族は魔物を大量に使役する術を手にしたらしく、それによって

数の有利が覆され、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

其れを憂慮したエヒト神が自分たちを召喚したらしい。

 

そして自分たちの地球はこの世界“トータス”より上位にあり

その為自分たちは現地の人間より何十倍の力を持っているそうだ。

一通り説明を受けた時、畑山愛子先生が立ち上がり抗議する。

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

ぷりぷりと怒る愛子先生。今年で25歳になる社会科の教師で、何時でも生徒達の事を

一番に考える先生で非常に人気があるが、百四十センチの低身長に生徒たちより

若く見える童顔の故に、今も生徒達の為必死に抗議してるにも関わらず、

生徒たちは「ああ、愛ちゃん頑張ってる・・・」とほんわかとした気持ちで眺めている。

 

そんなクラスメイト達を見て雫は心の中で

(この状況でほんわかできるとか、余裕あるのね)

をツッコミを入れた。

 

その余裕も還す事が出来無いと聞かされるまでであった。

クラスメイト達の間に動揺が広がるがパニックにまではならない。

何故なら一度死んだと思い込んだのだ。死ねば戻れないのは当たり前。

伊達にあの世は見て無いぜ(嘘)である。

 

だがどうすれば良いのか?わからないのも現状である。

ハジメや経緯子が考えるも情報が無さすぎて判断出来無い。

ふと横に居る海里の顔を見る。海里は無表情で話している人物を見ていた。

それを見てハジメたちは海里が怒っている事を悟る。

この表情は海里が冷たく冷静な状態で、相手に対して厳しく対応をとる。

地球でストーカーなどに対処する状態である。

 

事実、海里は怒っていた。命掛けの戦い、戦争を知っているからこそ

そんなモノに経緯子とハジメを巻き込もうする者たちに。

自分一人ならココから出て行けば良いが、大切な二人がいるのだ。

最優先するべき事は無事に帰すこと。だとすると彼らの要請を

完全に断るのはいけない等考えていると、

 

クラスメイトが困惑し沈黙している中、光輝が立ち上がり

机をバンッと叩いた。その音でクラスメイトの視線が集まる。

 

「皆、ここで文句を言っても意味がない。彼らにだってどうしようもないんだ。

俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。

それを知って、放っておくなんて俺にはできない。

それに、人間を救うために召喚されたのなら、

救済さえ終われば帰してくれるかもしれないどうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると

数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。

俺が世界も皆も救ってみせる!!」  

 

光輝がそのカリスマ性でクラスメイトたちを扇動しようとした時、

 

「少しお話いいですかぁ・・・・・」

 

と地獄の底から聞こえてくる様な海里の声が響く

その声にその場の全員が恐怖する。

そのままの声で海里は話し始める。

 

「ただ、全員が戦争に強制参加はいかかがなものかとぉ・・・

いくら力を得たとは言え能力、性格などぉ・・・・

前線に向かない者もいると思うのですよぅ・・・・」

 

「し・・・・しかしそう言われましてもエヒト神様の意向ですし・・・・」

 

怯えながらも海里に答える担当者。海里は話を続ける。

 

「何も協力しないとは言って無いですよぉ・・・・

帰るためなら力を貸します。

ただ戦争参加は志願制してくださいと言う事ですぅ・・・・

良いですかぁ・・・?いいですよねぇ・・・?・・・・ねぇ?」

 

「・・・・あっハイ」

 

とりあえず言質を取った海里だったのだ。

 

 

その後、この国ハイリヒ王国の顔合わせを兼ねた晩餐会があり、

流石にいきなり前線という事ではなく、明日から訓練を開始するとの事。

そして各自に豪華な部屋を与えられ解散となった。

 

 

 

その日夜

 

「雫ちゃん。水洗ポイので良かったよ」

 

「そうね香織。中世の城みたいな感じだから、

下手したらオマルとか思ったから」

 

どうやら二人はトイレに行った帰りみたいだ。初めての場所なので二人で行った様だ。

自分達の部屋向かって廊下歩いていると、突然香織が「スワッ」と目を見開く。

その視線の先には海里と経緯子が連れだって誰かの部屋に入っていく所だった。

 

「あの部屋は南雲くんの部屋!」

 

「えっ?香織?いつ南雲くんの部屋把握したの?あの後彼とは話して無いよね?」

 

「こんな夜遅くに二人は南雲くんに・・・私も行かないと」

 

「えっ?えっ?・・・・かっ・・香織?ちょっ、ちょっと待ちなさ・・・」

 

香織を止めようとしたが、雫が戸惑っている間に部屋に入ってしまう。

 

普段の香織なら部屋に勝手に入る事はないであろうが、

知らない世界に連れて来られ、家族等から引き離された不安から

自分の好きな人の傍に居たいと言う気持ちが抑えられなかった故の行動である。

 

仕方なく香織を連れ戻すため雫もハジメの部屋には入る。

 

部屋の中には香織と雫を戸惑い気味に見る。ハジメ、経緯子、海里の三人が居た。

雫はすぐ謝罪して香織を連れだそうとするが

 

「ごめんなさい。ほら香織、自分達の部屋戻るわよ!」

 

「待って。2人は経緯子とハジメちゃんの友達?」

 

と海里が引き止める。

 

「ハイ!南雲くんと経緯子ちゃんの友達の白崎香織です」

 

「私は、八重樫雫と言います」

 

「そう二人の友達・・・」

 

呟いて経緯子とハジメ見て二人がうなずくと

 

「そのまま居てもらっても構わないよ。私が誰か経緯子達と一緒に話を聞いて」

 

その言葉に緊張する。香織と雫。しばらくの沈黙後おもむろに口を開く

 

「私は経緯子の死んだ姉の栗原海里よ。そして今は異世界転生して“マイル”と呼ばれているの」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

何処の空間

 

「ココは捨てられたはず」

 

「なぜアレの・・・・・が?」

 

 

とつぶやくモノがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イシュタルの爺さんが話す間も無く退場で、
勇者を都合良く使い扇動する事に失敗します。


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04 転生

話が進行しません。展開がトロイです。


「私は経緯子の死んだ姉の栗原海里よ。そして今は異世界転生して“マイル”と呼ばれてるの」

 

「「「「い・・・異世界転生!?」」」」

 

「異世界転生って!?海里姉ちゃんの姿は前のままじゃないか!」

 

「そうよ!お姉ちゃんはそのままの姿だし!」

 

「うん。そう、死んだ当時のままだね。今の私」

 

「「・・・・・・・」」

 

「転生した世界での姿は全然違う。その姿を映すね」

 

と言うとハジメ達四人の前の何も無い空間に映像が映し出される。

そこに映し出された人物は、海里と似ても似つかぬ姿形だった。

 

シャープで整ったお嬢様様系の美人顔の海里と違い、

転生後の海里、マイルは整った顔立ちだがあまり特徴の無い

平均的な容貌で、美人というより見ていて安心出来るような、

落ち着いた感じのする顔だ。髪は黒髪ではなくサラサラの銀髪、

歳は10歳前後に見える。少し背も低い感じだ。そしてなにより

Cはあったはずのものが無い。年齢を考慮しても無い気がする。

 

海里は特に複雑な顔して見ている。経緯子とハジメを見ながら

つい先程彼らと話した事を思い返していた。

 

(ナノちゃんいる?)

 

『はい、側にいますよ。普段より高濃度でマイル様の周囲にいます』

 

(なんで?)

 

『マイル様が次元の裂け目が原因でこの召喚に巻き込まれた時。

こんな面白そうな・・・いやマイル様を助ける為。周囲いた私達が飽和状態に

なるほど集まったので、こちらに現れた時は光ってたようです』

 

(・・・今面白そうとか言った?言ったよね?)

 

『・・・今何故マイル様が海里様の姿になったのかと推測しますに、

この世界に召喚された元の世界、海里様が生まれた地球の影響かと』

 

(・・・ごまかした。・・・地球の影響ってそれと私が死んでから

あまり年月が過ぎて無いのは何故?)

 

『以前もあった様に、変化は地球世界に在る情報によるものかと、

この世界ならこの様に観測されるべきとそれで存在の形がより

ふさわしい姿に変化したのだと思われます。時空間内の移動は

時間の流れが不安定なのが原因です。元の世界にビーコンを残してますので、

元の時間とあまり変わらない時間に戻れるはずです』

 

(マイルの姿に戻るの?前みたいに一日位で?)

 

平行宇宙のマイルか海里がヤンチャをやらかし、マイルが海里の姿に

変わってた事件があったのだ。その時は一日程でマイルの姿に戻った。

 

 

『いつマイル様の姿に戻るのかは判りません。このトータスと呼ばれる世界は、

どうやら管理から外れてる様なので、造物主様からの修正入るとしても

遅れると思われます』

 

(魔法は使えるの?)

 

『はい。高濃度で我々が集まったので、長距離はともかく

海里様の範囲十数メートル以内だと問題無く我々も増殖しますので

範囲も広がっていくかと』

 

とにかく魔法を使える事に安堵した海里は経緯子達を守る為

自重するのを止める事を決意する。守りぬくのは幾ら海里自身に

チカラが有っても難しい。守ると言う言葉はとても重い。

だからこそ経緯子達に分け与えようと思った。

 

しばらくして映像を消した。海里を見ながら経緯子が戸惑いながら言う

 

「・・・もうお姉ちゃんは私のお姉ちゃんじゃ・・・ないの?」

 

「私はいつだって、何処でも経緯子のお姉ちゃんだよ」

 

「うっ・・うっ・・ヒック・・ぐすっ」

 

海里にしがみつき泣き始める経緯子。

それを見てハジメ達三人も、もらい泣きする。

 

 

経緯子が落ち着いた頃を見計らいハジメが質問する。

 

「海里姉ちゃんは転生先でマイルとして何してたの?」

 

「ハンターをしてたの。まぁ異世界小説で言う冒険者みたいに

モンスター狩ったり、商隊護衛したりしてたよ」

 

「冒険者・・・さっきの映像は魔法なのか?」

 

「うん、ハジメちゃん。魔法みたいなものかな。私は魔法使いでもあるし」

 

そこで言葉を区切り、経緯子、ハジメ、香織、雫四人を見渡して言う。

 

「今、私達の立場が危ういのはわかるよね?」

 

「うん海里姉ちゃん。今は僕達の待遇は良いけど、突然殺される可能性もあると思う」

 

「・・・殺される」

 

と雫がつぶやいた。ハジメは話を続ける。

 

「そう、教会の人達。特に僕達を召喚した場所に居た人達は、僕が見た所

エヒトって神を盲信している。だからこそ神の意向とやらで異端審判とかに掛けられ、

僕達の世界の歴史みたいに魔女裁判の火炙りとかされるかも?」

 

ハジメの話を聞いて経緯子、香織、雫は顔色を青くする。

そんな三人を見てハジメは少しでも安心させるため話を続ける。

 

「直ぐにそうなる事は無いよ。戦争に参加して上手くいってる間は大丈夫。

それと海里姉ちゃんは戦争参加を志願制にしたけど、協力はするとは述べたから

直接戦いに参加しなくても後方支援とか協力する必要があるけどね」

 

ハジメが自分の意見を言った後、海里が口を開く。

 

「だから私は元の世界に帰る方法を最優先にしよう思う。後、最悪に備えて

逃げ場所の確保も必要かな。私は出来るだけあなた達守ろうと思うけど

現状は厳しい。それで経緯子、ハジメちゃん、それと白崎さんと八重樫さんだっけ?

あなた達に私の魔法の加護の様なモノを与えるつもり」

 

「私や雫ちゃんにもですか?」

 

「二人は経緯子達が信用している友達の様だしね。

じゃ、早速だけど四人に加護を渡すけどいい?」

 

その言葉にハジメ達は頷く。

 

(よし。渡すモノが物だけに「力が欲しいか。くれてやる」とか言いたいけど

今は我慢して、ナノちゃんいい?)

 

『はい。彼らに専用のサポートをつければ良いのですね。お任せ下さい』

 

(お願い。それと経緯子達には、後日に魔法じゃ無くてナノマシンだと話すつもりだけど。

禁則事項とかに引っかかりする?)

 

『伝えるだけなら問題ありません。トータスは我々が存在した世界では無いので正体がバレても問題なしだと判断します。

マイル様の世界だとナノマシンを他人が理解するのが無理なだけで、

海里様の世界の方々なら理解出来ますし知ってもらった方がサポートしやすいかと』

 

「ハイ、いくよ。エイッ!」

 

と海里が言うと。四人にキラキラのエフェクトがかかる。

これに意味は無い。海里が演出で付けただけだ。

 

今日はもう遅いので説明はまた明日と言う事で、皆自分の部屋に帰った。

一人になったハジメはベットの上で

 

(海里お姉ちゃん・・・変わって無かった。マイルか・・・)

 

(経緯子ちゃんは・・・もう僕を・・・くっ、最低だな僕は・・・)

 

と色々と思いが交錯し、なかなか寝付けずいたがやはり疲れていたのだろう。

いつのまにかハジメは眠っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ハジメちゃん。朝食だって起きてよぉ」

 

体を揺さぶられ、起きるハジメ。

 

「・・・・おはよう?経緯子ちゃん・・・?」

 

と戸惑い気味に経緯子の顔を見ているハジメに

 

「どうしたのハジメちゃん?私の顔に何か付いてるの?」

 

「今朝は起こしに来ないと思ってたから。昔みたいに、

海里姉ちゃんを起こしに行くと思ってたから・・・・」

 

「お姉ちゃんは私より早く起きてたし・・・」

 

海里が言うには、向こうは「ネット無い。ゲームもない。おまけに漫画もない。」ナイナイ尽くしの

生活だったので夜更かしをあまりせず、早寝早起きが基本になったらしい。

 

「んっ、何?私が起こしにこないと寂しいのかなハジメちゃんは?」

 

「うん。それが僕の日常だから・・・」

 

と言うとハジメは経緯子の顔を真剣な瞳で真っ直ぐに見つめ、

何かに懺悔する様な顔で言った。

 

「ありがとう・・・」

 

「なっ・・!?寝癖の付いたままの頭で何言ってるし!?

私外に出ててるから!早く着替えて食堂に行くよ!!」

 

と経緯子はハジメに真剣な瞳で見詰められ、若干赤くなった顔を誤魔化す様に、

早口でまくしたて部屋を出た。

 

ちなみに、雫など食事が喉に入らないクラスメイトも居る中、

海里は人一倍食べていた。本人曰く食べれる時には食べるハンターは体が資本の事。

今は海里の姿だがマイルと同じく少し体の燃費が悪い様だ。

 

 

 

朝食を終え、皆、城の訓練場に集合する。

今から初回の訓練が始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラ説

栗原 海里(くりはら みさと)

この世界では両親同士が仲が良いためハジメとは幼なじみ。
海里自身もオタクだが最近の物より古い白黒のアニメ、特撮を好む。
マイル(本名アデル・フォン・アスカム)が次元の裂け目の調査中に
召喚に巻き込まれる。そして何故か転生前の姿海里に戻る。
その時ナノマシンも大量に付いて来てるので、魔法は使える。
今はお怒りモードなのでクールに決めている。
本来は残念系勘違いされるタイプの美人。人の顔を覚えるのが苦手。
海里、マイルともモテるが年齢=彼氏無しである
※作中の海里に変身事件はノベル版9巻の書き下ろしから




エヒトをポーリンぐるぐるする予定。



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05 ステータス

やっとありふれ二次における方向性が出るステータス回です


 

まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。

クラスメイト達が不思議そうに配られたプレートを見ていると

自分たちの教育係の責任者でもある騎士団長メルド・ロギンスが、

直々に説明を始める。対外的にも対内的にも“勇者様一行”を

半端な者に預けるわけにいかないと言うことらしい。

 

メルド団長本人も「面倒な雑事を副長に押し付ける事が助かった」と

豪快に笑って言っており、また彼は生徒たちに

「これから戦友になろうってのに何時迄も他人行儀に話せるか!」

と他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

そんな豪放磊落で実直なメルドを見て、ハジメは教会の

人達に比べてずっと信用できると感じてた。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。

そこに一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。

それで所持者が登録される。〝ステータスオープン〟と言えば

表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? 

そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

「アーティファクトっていうのはな、現代じゃ再現できない強力な能力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。

そのステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通はアーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、

これは一般市民にも流通している。身分証明に便利だからな」

 

その言葉に従い、皆プレートの魔法陣に血を垂らす。すると、魔法陣が一瞬輝いた。

そのすぐ後あちこちで「ステータスオープン」との声が上がる。

 

もちろん海里もプレートに血を垂らしたのだが

ステータスを見て彼女はやっぱりと乾いた笑顔を浮かべた。

海里のプレートにはこう表示されていた。

 

===================================================

 

栗原 海里 18歳 女 レベル1

転職 魔法剣士・異世界転生者

筋力 2300

体力 3300

耐性 1100

敏捷 1700

魔力 6000

魔耐 6000

技能 全属性適正・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・怪力・加速・

探知・光学迷彩・収納魔法《アイテムボックス》・超超超々微細機械加護・言語理解

 

=======================================================

 

レベル1でこれはおかしいのは海里も分かる。古いゲームばかりしていた海里だが

国民的RPGぐらいはした事はある。でも最新ではない為、『呪文が違います』と『消えてしまいました』を

経験している。いきなり四桁はおかしい。

このまま見せると「私、やっちゃいました」案件である。

 

(うう・・・ナノちゃんどうしょう?)

 

『今後の事考えると。ある程度は強く見せた方が良いので。取り敢えず

我々がプレートの表示を一桁誤魔化します』

 

(そうだね。それでお願いするね)

 

「経緯子はどうだったの?」

 

と隣に立っている経緯子に話しかける。

経緯子は自分のステータスプレートを海里に見せる。

 

================================================

 

栗原経緯子 17歳 女 レベル1

天職 薬剤師

筋力 5

体力 10

耐性 20

敏捷 10

魔力 50

魔耐 30

技能 調合・水魔法・火魔法・超超超々微細機械補助・言語理解

 

================================================

 

どうやら経緯子は生産職のようだ。お姉ちゃんはどうだったのと

経緯子が聞いてくるがそのまま見せるか?

一桁誤魔化しただけだとまだ拙いかな、と海里が考えていると

メルドから皆に説明が入る。

 

「全員見られたか?説明するぞ?まず、最初に〝レベル〟があるだろう? 

それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。

つまりレベルとは、その人間が到達できる領域の現在値を示しているというわけだ。レベル100ということは自分の潜在能力を全て発揮した極致ということだからな。そんな奴はそうそういない」  

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。」

 

 メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、

戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが

百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多い。

後大体レベル1の平均は10ぐらいだな。お前たちならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 

ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

ふと近くにいるハジメをみると何か焦っている様に見える。

何かあったのだろうか?海里と経緯子がハジメに声掛けようとすると

前の方から声が上がる。

 

「ほ~う、流石勇者様だな。レベル1ですでに全能力値が三桁とは、それにこの技能の数もすごいな!

規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

 

「いや〜、あはは・・・」

 

早速、光輝がステータスプレートをメルドに見せたらしい。

それに続いてクラスメイト達も見せていく。皆が戦闘職で光輝に及ばないも充分チートだ。

ただ、香織と雫の技能に首を傾げる様子を見せるメルドがいた。

 

あとはハジメ、経緯子、海里と愛子先生になった。

まずは経緯子が自分のステータスプレートを見せた。

 

「薬剤師か生産職だな。その名の通りで回復薬とかを作る天職で調合を生業にしてるものは大体持っている。

(それに何か解らない技能を彼女も持ってるな)まぁ戦闘向きじゃないな」

 

「だが各種薬は大事だ。生産職だと言っても気にしなくていい」

 

彼の期待を外れていただろうが、経緯子を気遣うメルドはやはり人が良いのだろう。

 

「はい。お気遣いありがとうございます。私は戦う事に向いて無いので、

この天職で良かった思ってますから」

 

「大丈夫だよ!経緯子さん戦えなくても俺が守ってあげるから、安心していいよ」

 

と勇者様がキラキライケメンスマイルで声掛けるが、経緯子はそれに苦笑いし後ろに下がる。

ハジメが続いてメルドにステータスプレートを見せた。

それを見てメルドは微妙な表情でプレートを見る。

 

「ああ、そのなんだ錬成師と言うのは、言ってみれば鍛治師の事だ・・・」

 

二人続けて生産職が出て歯切れ悪くハジメの天職説明するメルド。

その様子にハジメの事妬んでいる男子生徒檜山がここぞばかりに

嫌らしい笑み浮かべながら声を張り上げる。

 

「メルドさん、錬成師って珍しい天職なんっすか〜?」

 

「・・・いや鍛治師の十人に一人は持ってる。国お抱え職人は全員持ってるな」

 

「おいおい、南雲〜。お前そんなで戦えるわけ?」

 

檜山が、実にウザイ感じで肩を組もうとすると

 

「君はハジメちゃんに何が言いたいのぉ?」

 

海里が無表情で低い声で問いかける。その声に檜山は思わずハジメから離れるも

びびった事を誤魔化す様にはやし立てる。

 

「天職がショボイ分ステータスは高いんだよな〜?戦えるって言うならプレート見せてみろよ〜?

南雲ハジメさんよぉ〜」

 

ハジメは檜山対して

 

(コイツ、異世界に呼ばれて戦争すると解ってない?だからココで日本と同じ事が出来るのかな)

 

と考えながら投げやり気味にプレートを渡した。

 

============================================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル1

天職 錬成師

筋力 10

体力 10

耐性 10

敏捷 10

魔力 10

魔耐 10

技能 錬成・超超超々微細機械補助・言語理解

 

================================================

 

ハジメのプレートを見て笑い出す。

 

「ぶっはははっ〜、なんだこれオール10の一般人じゃねぇかぁよう‼︎」

 

プレートを掲げ更に煽ろうとする。その様子に経緯子と香織が憤然と動き出そうとしたが

 

「はえっ?・・・」

 

檜山の間抜けな声を出す。手にしていたプレートがない。

いつの間に、取り返したのかハジメのプレートが海里の手にあった。

 

海里はそのプレートを凝視している。何故か海里の体が震えていた。

しばらくプレートを見ていたが顔上げ、プレートを返しながらハジメの顔見る。

 

ハジメは

 

(海里姉ちゃんだから馬鹿にしたりは無いだろうけど、同情されるのも僕は・・・・)

 

と思い海里の顔を見るとそこには

 

キラキラした瞳で見ている海里がいた。それはまさしく憧れを見る表情だった。

 

その海里の眩しい表情に疑問を感じながらも、顔を赤らめるハジメ。

 

「す・・すごいよ!ハジメちゃん!なんて素晴らしい値!これこそ平均だよ!

中間値とかで無くて!私が憧れてた値だよ!これすなわち平均美ィ‼︎だよ」

 

と良く解らないが「平均」を賛美する、海里。

実は海里が転生する時に神様みたいな人に望んだのが普通、平均だった。

でも実際は全種族の中間値で、私tueee になったのだ。だからこそ普通に凄く憧れてる。

 

その謎テンションに周りの人間が固まっていた中メルドが声を掛ける。

やはり頼もしいアニキだ。

「あっ、すまないが・・・貴女のステータスも見せて欲しいのだが?」

 

少し遠慮がちに問いかける。あのイシュタル教皇を召喚早々踏み潰したと

噂に聞いた人物と警戒している様だ。

 

海里がプレートとメルドに渡し、それを見てメルドは困惑の表情を浮かべ

 

「レベル1で勇者の倍から数倍の能力値とは・・・・それに天職の魔法剣士はまだ解るが、

もうひとつの天職“異世界転生者”とはなんだ・・・・?」

 

「異世界転生」その言葉を聞いて生徒たちが騒がしくなる。

 

「本当に?あの転生・・?」

 

「あの人栗原さんお姉さんで、死んだんだろ」

 

「今、ココに居るんだから本当じゃ?」

 

あちこちで好き勝手に話し始める。そんな喧騒を無視して下手に隠して変に勘繰られよりは、

事実を話す方がいいと考え、自ら事情を話し始める。

 

「異世界転生、その名の通り私はそこに居る。経緯子の姉で彼女たちの世界で事故で死んだ後に

別の世界に生まれ変わって“ハンター”という職業を生業にしてました。それで何故か

経緯子達の召喚に巻き込まれてトータスに呼ばれました。その理由はわかりません」

 

「ハンターとは?どういう職業なんだ?差し障り無ければ話してくれ」

 

「そうですね。魔物を狩ったり、商人を護衛してました」

 

「ホゥ、こちらでいうと冒険者というわけだ。実戦をすでに経験してるのか。

向こうの魔物とやらも一度見てみたいものだな」

 

と騎士団長らしく魔物に興味がある様だ。

 

「じゃ見てみますか?」

 

と海里は収納魔法で収納していたオークを選んで出す。

突然2m弱の魔物が現れた事に驚くメルドたちだが

生徒たちはその魔物が豚顔以外ほぼ人型なのに気持ちを悪くする者も現れる。

そしてまた何気に収納してメルドに言う。

 

「今のが、私の世界では一般的な魔物のオークです」

 

「おぉ・・・貴重な物見せてもらい、感謝する」

 

と海里に礼を述べながらメルドは考える。

 

(今のが収納魔法か。どの位収納出来るのか気になるが?

今はそれよりも、彼女は戦争参加に志願制を求めたと聞いた。

だからこそ人型の魔物オークとやらを出したのか?

戦う事に忌避感を覚えさせ、安易に判断させない為に・・・

やはり一筋縄ではいかない人物みたいだ)

 

と海里の株が彼の中で上がりまくりだった。当の本人海里は、

自分にとっての、ありふれた魔物のオーク出しただけで

メルドが思っている様な事は一切考えていない。

 

海里のステータスや魔物の衝撃が凄く、ハジメが落ち込む暇も無いうちに

ステータスの申請が終わった。

 

ちなみに愛子先生は作農師で食料チートでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




経緯子の天職は薬剤師になりました。これはのうきんとのクロスなら
FUNA作品繋がりのポーションからです。ろうきんだと話が終わってしまうので
ポーションをありふれ風にし薬剤師にしました。後は容器チートをどこまで出すか悩みます。

海里は自称してた魔法剣士にステータスはティオと神の使徒を参考に
決めました。
ナノマシンの表記は無理やり漢字です。トータスのシステムが
誤訳して精霊のなんとかとかも考えましたがこちらにしました。


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06 ナノマシンと魔法のひみつ

ココで捏造設定入ります。 さっさと説明を終わらして話を進めようとしたのに

光輝が絡んだら進まなかった。おのれ!勇者(笑)めぇ!

と言う事で今回も話が進まず。ジャンプだと打ち切りパターンだ。

 

 

 

 

                                      

 

 

 

 

 クラスメイトたちのステータスの確認が終わり、その後ハイリヒ王国の歴史や地理などの

講義を受けた後、今日は初日と言うこともあり、昼食前に解散となった。

 

海里はナノちゃん等を説明する為経緯子とハジメの三人で香織と雫を呼びかけると、

2人の側に居た光輝が。

 

「やぁ!経緯子さん。それにお姉さんの海里さん。

俺たちは一緒にこの世界を救う仲間になったんだ。

それと新しく俺の仲間になった海里さんの事も知りたいから

皆で一緒に昼食を食べよう」

 

「遠慮しておくわ。(何時お姉ちゃんがあなたの仲間なったのよ)私たちは

香織さんと雫さんに大事な話があるの。

天之河君、悪いけど今日は2人とは別に食べて貰えないかな」

 

「何故だい。香織たちに話なら、俺が一緒にいても構わないだろう。

海里さんもそう思うだろう?」

 

とキラッと歯が光りそうなスマイルで海里に同意を求めるも

 

「私、経緯子に知らない人について行かない様に言われてるので。

あなたとの昼食はお断りします」

 

「えっ?」

 

間が抜けた声を出す光輝。彼に会った人たちはその容姿もありすぐに

名前などを覚えられ興味を持たれた。だから一緒に講義を受けていた海里から

あなたは誰、知らない子ですねという様な事を言われたので、間の抜けた返事をしてしまった。

 

海里は人の顔を覚えるのが苦手なのだ。地球に居た頃は突然話しかけられその人物が

知り合いかどうか判らずストーカーについて行きそうになって経緯子に叱られてた。

それに光輝の話し方が何処の怪しいスカウトみたいな感じがして

経緯子に適当にあしらう様にと言われた人達と同じ様な対応をした。

 

「光輝くんごめんなさい。大事な話なの。だから私、南雲くん達の所に行くね」

 

「光輝悪いけど私も向こうにいくわ。(昨日の南雲くんの話を聞いて

光輝と一緒に戦うのが怖くなって、だからこそ早く海里さんの話が聞きたい)」

 

「えっ?ああそうか。まったく2人共優しいなぁ。南雲のステータスが低かったから

気にかけているのだろう。南雲。君はどこまで彼女達に甘えるんだ。

男として恥ずかしく無いのか!?」

 

と海里と経緯子と居たハジメを叱責する光輝。

ハジメは何時も何故か僕のせいにするなと思ってると経緯子が

 

「何!言ってるの天之河くん!香織さん達に話があるから誘っただけなのに

何故そこでハジメちゃんが悪いって事になるのよ」

 

「俺は南雲が悪いなんて言ってないよ。只俺の善意から君達に

甘えるのはどうかと忠告しただけだ。経緯子さん達も南雲が弱いから

優しい君達が構うのも仕方ないけど彼に構いすぎるのは経緯子さん達の為にもならない」

 

「ハジメちゃんが弱い?ふ〜ん?“構って”その言葉そのまま貴方に返すわ。

構いすぎられ、助けてもらってる事に気付かない貴方にね」

 

「構ってもらってる?俺が!?経緯子さんは何を言ってるんだい」

 

(最悪この男・・・もうそれが当たり前になり過ぎてるし)

 

経緯子と光輝の言い争いを早く収め無いとイケナイと思うが、自分が今何か言うと火に油と思うハジメと

海里はマイルになった事で少しマシになったとは言え、基本コミュ障なので

この様な諍いを穏便に収めるのはダメダメなのだ。どうにもならない状況である。

 

「ごめんなさい!経緯子!私が悪いの!」

 

「雫さん・・・」

 

「何故?雫が謝るんだ?」

 

「光輝・・今は海里さん達と話がしたいの!?だから邪魔しないでお願い・・・」

 

光輝は雫に何か言おうとしたが雫の表情を見て言葉を飲み込む。

そこに居たのは、か弱く不安で泣きそうな女の子だった。

そんな雫を見て香織も懇願する。

 

「光輝くんごめんなさい。本当に大事な話なの今は行かせてくれないかな?

本当にお願い!?龍太郎くん、光輝くんの事任せてもいいかな?」

 

「何か良く分からないが。大事な話があるのなら南雲達の所に行けば良いさ。

昼はまた次の時で良いしな」

 

「ありがとう龍太郎くん。ほら雫ちゃんいこう」

 

「・・・うん」

 

「あっ、2人にはまだ・・・」

 

「おい光輝。2人には2人の付き合いがあるんだ。今日はいいだろう」

 

と龍太郎がなだめてる間に海里達5人はその場を離れる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー----------

 

 

とりあえず海里の部屋で話をする事になったが、

話声が外に漏れないように海里が防音・防振・遮光のドーム型シールドを

部屋の中央に張った。これで部屋の外に中の様子が漏れない。

そうして置いて海里が4人に話を切り出す。

 

「えーまず私は皆に魔法と言ったけど。実はどちらかと言うと科学の力なの」

 

「海里姉ちゃん?それって進んだ科学は魔法に見えるとかいうやつ」

 

「そう。超高性能のナノマシンが私の周りに居て、それは私はナノちゃんと呼んでるだけど

彼らが私の思念波を読み取って魔法みたいな現象を再現してくれてるの」

 

「彼らって言うと、海里姉ちゃんはそのナノマシンと意思疎通できるって事?」

 

「ハジメちゃんは理解が早いね。皆も話せれば良いのだけど・・・」

 

(ナノちゃん皆に聞こえて姿を見せる事は可能?)

 

『声は空気を振動させ。姿は映像を空中に投影すれば良いですが、受け応えでは

思念波レベルの関係で規則上出来ませんのでその時は海里様を通してとなります』

 

「それで良いよ。姿を見せてナノちゃん」

 

海里がそう言うとハジメたちの目の前にネコのような所謂魔法少女のマスコットキャラが

浮かんでいた。

 

かっかわいいぃー

 

スカッ  ベシャ‼︎

 

とナノちゃんを抱き締め様として飛び付き只の映像だった為

擦り抜け顔から床にダイブした雫だ。普段なら自制する彼女だが

やはり不安からか、かなり不安定のようだ。

 

「あんな雫さん。初めてみたわ」

 

「雫ちゃん本当は可愛い物が大好きだから」

 

「・・・・・・・」

 

ムクリと起き上がり、少し赤くなった鼻をした顔をこちらに向け雫は

 

「何?黙ってるけど南雲くんも、私が可愛いもの好きで可笑しいと思うのかしら」

 

「八重樫さんは凛々しい人だけど。可愛い女の子なんだよ。カワイイ物好きで

当たり前なんだから可笑しいなんて思わないよ」

 

ハジメの言葉聞いて鼻どころか耳まで赤くなって

「ふみゅ・」とつぶやき俯く雫。経緯子と香織は

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

(コレがラブコメの臭がするという事⁉︎)

 

と海里は考えつつも話を続けるため「コホン!」と咳払いすると

ハジメたち4人は慌てて佇まいを正す。

 

「要するに私が付けた加護と言うのは4人のそれぞれの思念波と同調率の高い

専属のナノマシンを各々について貰う事なの。

それによって魔法の強化、身体強化などの効率がかなり上がるし

属性がないと言われた魔法も使える様になるわよ」

 

「海里さん魔法の強化って具体的はどんな感じなのかな?」

 

「ナノちゃんが言うには魔法陣や詠唱のズレや歪みを瞬時に最適化して効率化

距離、威力を魔力の消費押せえつつ伸ばせるみたい。身体強化もそうね」

 

「属性のない魔法も使えるようになるって言うの何故?」

 

「それは単純にトータスの魔法じゃなくてナノちゃん達が再現する現象だから」

 

と質疑応答続け一呼吸入れようと、海里が収納魔法でお茶を出し、皆で飲んでると雫が

 

「海里さん。私、怖くて不安で自分がどうすれば良い解らないんです。

何かを殺したりするのは嫌。でも自分が死ぬのはもっと嫌。

帰るためには戦う必要があるのに。だから海里さんの加護を貰えた時

これで死ぬ可能性が低くなるって、私はこれで大丈夫だ。周りの

人をこの力で守ろうなんて思わなかった・・・・」

 

雫は自分の気持ちを話続ける。多分、海里がクラスメイトで無く

かつ年上でハンターとして実戦を経験してる人物なので

普段頼って貰う事はあっても頼る事の無い雫は話が出来るのであろう。

 

一方話聞いている海里は

 

(何故か重い話を聞かさせられてる・・・どう答えるねぇ?ねぇ?)

 

表情はクールなまま内心はプチパニックだった。経緯子はそんな海里を見て

あっお姉ちゃん焦ってると気づいている。

 

「だから怖いの。ココの神様や教会、それと光輝のことが・・・」

 

「光輝くんが怖いの?雫ちゃん?」

 

「光輝のことが怖いわ。だって光輝はこの世界のために戦う事に疑問を

思ってなくて、私は戦争なんて嫌よ。でも光輝は私や香織を連れて行こうとするわ。

私達がどんなに反対しても、「俺が、守るから大丈夫」とか言ってその上

周りの人達を自分に賛同する様に持っていって。きっと私達の逃げ場を無くすわ」

 

「雫ちゃん・・・」

 

「それと光輝の守るはその場だけで。最後まではみないわ」

 

チラッとハジメを見てそのまま話を続ける

 

「・・・私ね、小学生の頃虐められてた事があるの。その頃から光輝は私の家の道場に

通ってたから学校でも光輝とよく居たから。ほら、光輝は理想の王子様って感じだから

モテたわけ。その頃の私は髪も短くて男の子と変わらなかったから。女の子達から

ハブられて「この男女‼︎」とか罵られて、だから光輝に頼ったの。そしたら、あいつは

「君達。雫と仲よくしてくれないか」それで終わり。表だってのイジメはなくなったけど

より陰湿になったわ。光輝にも言ったけど表面しか見ないからダメだったわ。

その後香織と出会ってなかったら良くて不登校だったでしょうね」

 

「でもね、一番悪いのは私なのよ。きっと光輝をフォローする役割に依存してた。

何処で経緯子や南雲くんの言った様に構い過ぎずほっておくことも必要だった。

私は家の期待から剣術を続け、やりたい事を我慢して周りから望まれる、

クラスの頼り甲斐がある人としてあり続けたの。本当の自分見せれたのは香織ぐらいだったわ。

だからこそ怖いの。このまま流されて取り返しがつかない事が起きそうで私・・・・・」

 

「頑張ったんだね。八重樫さんは」

 

「海里さん・・・」

 

「私も地球に居た時は自分で言うのもなんだけど、人より出来る子だったから

周りからの期待で好きな事出来なくて、そのせいか学校でも遠巻きに見る人ばかりで

友達もいなかったの。私は両親や経緯子とハジメちゃん達に本当の姿を見せる事が

出来たけど、私自身がやりたかった事見つける前に死んでしまったの」

 

「だから生まれ変わった時、自由に生きよう決めたの。でね、飾らない自分を見せる事が

出来る仲間と知り合って今は気ままなハンター稼業だよ。

八重樫さん、今自分の本当の気持ちを晒した友人たちが居るんだから

これからは八重樫さんのやりたい事を優先して動いても大丈夫だよ」

 

「雫ちゃん!私もっと頑張って雫ちゃんを支えるよ」

 

「香織さんは今のままで、気合いが空回りするし」

 

「う〜、経緯子ちゃんそれは酷く無いかな?かな?」

 

「雫さん、一人で溜め込む前に相談とかいくらでも乗るし」

 

「僕も何か出来るわけでもないけど愚痴ぐらいなら幾らでも付き合うよ」

 

「みんな、ありがとう。これからはもっと話を聞いて貰うね」

 

「「「任せて!」」」

 

目尻に涙を溜めてハジメ達と絆を深める雫を見て

 

(私頑張った!超頑張った!こう言う事苦手だけどなんとかなってよかった)

 

一息つく海里だった。

 

その後、ハジメたち四人のナノマシンと同調率と特性を調べると大体この様な感じに

 

○ 経緯子 海里と思念波の波長が近いため同調率の高いナノマシンの数は四人の中で

     一番多い。水魔法に高い適正、あと土魔法やや適正がある。

 

○ハジメ 思念波レベルが他の三人がレベル1なのに対してレベル2だった。

     生活魔法レベルなら使える様になるが攻撃魔法には足りない

     だが土魔法の適正が高く錬成の技能がかなり上昇する可能性あり

 

○香織  治療魔法に適正が高く現代知識を持っているため

     効率良く治す事が出来る。(ナノちゃん曰く情念が高そうの事)

 

○雫   外部に思念波を放射する。アンテナの様なモノがどうやら

     生まれつき弱いため身体強化は可能だが放出系は難しいらしく

     使うならば何かしら補助が必要との事。なお思念波レベルの

     関係でナノマシンと意思疎通出来ない事を一番ガッカリしていた。

 

と色々話し合って、やはり各々の技量を伸ばすべきとの結論が出て、生産職の経緯子とハジメは

身を守るための必要最低限の訓練はともかく、後は知識と技術磨くため専門家に

師事出来る様4人でメルド団長頼みに行くため部屋を出て行った。

 

一人部屋に残る海里は

 

(ハジメちゃんがレベル2とは厨二病患ってた事と関係有るのかな?)

 

『それ関係有りませんよ。精神力が元から強いからだと』

 

(そっか、なよっとしてるけど芯はしっかりしてるからハジメちゃん。

でも八重樫さんはメーヴィスさんと同じか・・・・)

 

『実はこの世界の魔法もナノマシンによって起こされる事が分かりました』

 

「なっ!なんだってぇー!!」

 

と思わず声上げる海里

 

「トータスにもナノちゃん達いっぱいいるの!?」

 

『我々の様な物では有りません 比べるのも馬鹿らしい超原始的な物で

高度な思考能力もなく現象を起こすにも複雑な命令文がいるそんな物と

一緒にしないでください』

 

「ごめんなさい。本当の魔法って無いのね」

 

『ある世界も有りますよ。でもそれはエネルギーと物質の境界が

緩い世界で、海里様の地球世界はかなり物質が安定してるので思念波の影響を

受ける事が無いのです。エネルギーと物質の境界が緩いほど受け易くなり

そう言う世界はある程度文明が発達すると崩壊してしまうのです。己の欲で』

 

「ここトータスも安定してる世界なの」

 

『地球に比べると何段階か緩い世界ですが、それでも思念波だけで大きな現象は起こせる

程では有りません。だからこその原始的なナノマシンがあるのでしょう。

地球の方々がこちら来た時強化されたのも肉体の安定度差でしょう』

 

「でもハジメちゃんは全くされて無かったよ」

 

『ハジメ様はその余剰エネルギーが錬成の為の能力に行ったみたいですね』

 

「一点特化か。化けそうだね、ハジメちゃんは?」

 

『その可能性は大かと、それと海里様

トータスの原始的ナノマシンについては海里様達の補助を最優先にしますが

その合間に調査も行なっておきます』

 

「うん。お願いねナノちゃん」

 

と言うとそろそろ夕食なので、海里は部屋を出て食堂へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 何処で

 

  「ノイズだらけで見えん・・・・」

 

 

  『出刃亀はゆるさん』

 

 

 

 

 

 

 

                               

 

 

 

今回の補足

 

八重樫雫  経緯子の姉海里の事やハジメの話、さらに海里が見せたオークの死体から

      死を原作に比べかなり意識しており又教会への不信感も高め

      そのため既にかなりのストレスを溜め込んでいる。

      光輝に関しては戦争参加を疑問を思って無い事に怖いと思っているが

      光輝を見捨てることは無いけど接し方について悩んでいる。

      メーヴィスと同じで思念波の外部放出に難有り。

      また雫もメーヴィスと同じく少女ホイホイである。

      (でも多分「余が、ファイアー」出さないはず)

 

坂上龍太郎 ハジメと仲良い為、光輝に盲目的に追従していない。  

      アフターに性格が近くなってる。

 

天乃河光輝 原作に比べハジメの立場が悪く無く又

      香織の他、龍太郎や雫、幼なじみ達が原作に比べ

      ハジメに親しいため。光輝がより勇者を拗らせてる可能性大。

 

 

※注意書き ナノマシンの禁則事項についてはのうきん本編に比べるとかなり緩いです

      特にWeb版の最新話読むとそうしないと話が成り立たないので。

 

 

 

ここで早くも雫にカミングアウトさせました。進めば進む程原作から

ズレて行くと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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07 イジメとイカリ

 
サブタイどうり檜山達と絡みます。
幾分かゲスくなったかも



召喚された日から十日が過ぎた。

訓練場の片隅で

 

「カバティ‼︎ カバティ‼︎ カバティ‼︎」

 

と叫びながら、かなり早い速度で反復横跳びするハジメがいた。

 

「なにしてるのよ⁉︎南雲くん⁉︎」

 

と雫が呆れながら後ろから声を掛ける。その声に驚いたのかハジメは足を絡ませ派手に転けた。

 

「イタタッ・・・八重樫さんか、驚いてバランス崩しちゃったよ」

 

「驚いたのは私よ。なぜカバティ叫びながら反復横跳びしてるのよ?」

 

「カバティは何となく勢いで言っただけで、反復横跳びは身体強化の練習

ナノさんのおかげで素早く動ける様なったけど。勢いがある分思った様に

止まるのが難しくて決まった位置で止まる練習の為に反復横跳びをしてたんだけどね」

 

「確かにナノちゃんの身体強化は凄い分。ものにするのは難しいわ。

でも南雲くん身体強化にもずいぶん力を入れているのね?」

 

「だって攻撃されたら躱して逃げないと痛いのは嫌ので回避棒振りだよ」

 

「フフッそうね。でも南雲くん?それだけ身体強化続けて魔力尽きないの?」

 

「それはトータスとナノさんの魔法の差じゃないかと僕は考えてるのだけどね」

 

「魔法の差?」

 

「魔法が発動する時そのエネルギーを何処から持ってくるのかの差

トータスの場合は術者の体から得ていて、だから魔法を使うと肉体的疲労を感じる。

でもナノさんの場合は思念波に反応してくれてるだけでエネルギーは向こう持ち

だから精神的疲労はあるけど集中力の続く限りやれると思う」

 

「なるほどね。で南雲くん錬成の技能の方はどのくらい上がったのかしら?」

 

海里とナノマシンの事を教えてもらった日に

ハジメ、経緯子、香織、雫の四人でメルド団長にハジメと経緯子の技能を上げる為

専門家に学びたいと頼みに行ったのだが。

それを聞いた彼はハジメ達が自分のできる事を積極的に考え行動したことに感心して。

直ぐに技能を伸ばす為にと専門家に師事出来る様掛け合ってくれた。

そのおかげでハジメと経緯子はお互い国お抱えの鍛治師、薬剤師に師事出来た。

 

「筆頭鍛治師に師事出来たのとナノさんフォローのおかげでかなり上がったと思う」

 

と言うとステータスプレートを雫にみせる。

 

==========================

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル4

天職 錬成師

筋力 16

体力 16

耐性 16

敏捷 16

魔力 16

魔耐 16

技能 錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+錬成記憶][+錬成再生][+間接錬成]

   ・身体強化・超超超々微細機械補助・言語理解・※収納魔法(アイテムボックス)

(隠蔽中)

 

 

====================================

 

「なにコレ・・・派生技能が凄いわ」

 

派生技能が5個も現れていた。実はその内の[+錬成記憶][+錬成再生][+間接錬成]の

三つは師事した鍛治師達も聞いた事が無く驚かれ流石は使徒様と感心された。

錬成記憶は一度錬成した手順を記憶する事ができ。

錬成再生は記憶した錬成を任意に選んで再生する事で一度錬成した物なら

錬成の速度を上げる事ができる。この派生技能を見てハジメはナノさんのおかげで

高機能なCADプログラムと3Dプリンターを手にしたみたいだと思った。

間接錬成はナノさんのフォローにより錬成陣の描かれた手袋で直接触れる事無く

1メートル程なら手に棒など握ってその先端が触れた所を錬成する事が出来る。

ただし精密な事は今は出来ない。

収納魔法は海里に教わって出来る様になったが、トータスには収納魔法は

無いようなので使える様になったのが知られたら面倒な事になりそうなので隠蔽している。

ちなみに収納魔法 は雫たち他2人とも海里のナノマシンへのお願いもあり。

また現代知識を持っている為異次元等理解するのも容易な為取得に問題が無かった。

後現代人らしく各々の荷物はフォルダ分けされており他のメンバーが

本人の許可無く見る事は出来ない。

 

「あっそうだ。八重樫さんに渡す物があるんだ」

 

「私に何か作ったの?でもこの前みたいのはいやよ」

 

「この前?ああっ⁉︎海里姉ちゃんと作った思念波補助器具。こだわりの逸品だと思うけど」

 

「こだわる所が間違ってるわよアレは‼︎ったくあんな恥ず・・・」

 

「今から渡すのは海里姉ちゃんや筆頭鍛治師の親方さんにも

監修してもらったから、それなりによくできた思うよ」

 

とハジメは周りを確認して目立たない様に収納魔法から一振りの刀を出し雫に渡す。

雫はすぐに鞘から抜いてみた。それは錬成で作られたので波紋がない白刃の

軽く反りのある片刃の日本刀擬きであった。雫は二回、三回と振り感触を確かめる内に

顔に笑みが浮かぶ。

 

「全体のバランスは親方さんにはお墨付きもらったし。

海里姉ちゃんがニューはいけなかったので只のZのコーティングですってしてたから。

強度と切れ味は問題ないと思う。どう八重樫さん振ってみた感じ握り具合とか直す所があったら言って」

 

「う〜んそうね。もう少しだけ握りを細くしてもらいたいかしら」

 

そう言うと鞘に納めた刀をハジメに戻す。受け取ったハジメは真剣な表情で慎重に錬成し始める。

そんなハジメの真剣な顔に何故か雫は見入ってしまう。

その時雫は背筋に寒気を感じる。おそるおそる振り向くと()()の笑みを浮かべた

目の奥が笑って無い水筒とタオルを持った香織が立っていた。

 

「ぴきゅ・・」

 

と思わず声を上げる雫。ハジメは錬成が終わったのか顔をあげ香織を見ると

 

「今日もタオル、持って来てくれたんだ。ありがとう白崎さん」

 

とハジメが言うと今度こそ満面の笑み浮かべる香織。

 

(助かった〜南雲くんマジ助かったわ)

 

雫が誤魔化すように二人に尋ねる。

 

「経緯子と海里さん見ないけどこに行ってるのかしら?」

 

「経緯子ちゃんと海里姉ちゃんなら確か・・・」

 

-----------------------------

 

 

海里と経緯子は王宮の一室にいた。

リリアーナ王女に招かれたからだ。まずリリアーナに経緯子は普通にお辞儀をしたが、

海里の方はカーテシー所謂スカートを摘み身を低くする貴族のお嬢様が行う挨拶を行った。

この様な場では“アデル”の癖が自然と出るのである。その仕草を自然に行う海里を見て経緯子は姉が

生まれ変わったと言う事をあらためて実感した。三人はひとつのテーブルを囲む

 

「リリアーナさん。これが今日お納めする品物です」

 

海里がテーブルの上に収納していた手押しポンプ付きの容器と小さめのガラス瓶を数本づつ

何処からとも無く出し並べると。リリアーナが

 

「海里様の収納魔法はこの前、聴かせてもらいました。

長靴を履いた不思議なポケットを持つネコの物語の様になんでも出てくるのですね」

 

(お姉ちゃん・・異世界で著作権も無いからって

何故パクリ話広めてるのしかも変に混ぜてるし)

 

もちろんこの話は海里(マイル)の既に趣味ともいえる日本フカシ話である。

 

「海里様、経緯子様に頂いたシャンプーとリンスそして化粧水とクリームはとても評判が良いのです。

髪がサラサラになってお母様は化粧水とクリームは肌に潤いと艶がでるととても喜んでました。

それとあの手押しポンプの容器も便利だと侍女たちに好評です」

 

「それらを開発した。経緯子様と南雲様も素晴らしい薬剤師と錬成師です」

 

「あっありがとうございます。リリアーナさん」

 

と恐縮し礼を述べる経緯子。経緯子とハジメは海里の協力の元

異世界下克上の品物を開発していた。開発の為の知識はと言うとハジメが厨二病に罹ってとき

NAISEIするために色々調べてたのと海里もジャンルに関係なく本を読んでいたため可能だった。

あと困ったときのナノちゃん。

これからの事を考えると国の上層部にコネは大事だからだ。

シャンプー、リンスなどはクラスメイトの女子にも好評で

生産職としての自分たちの立場を固めていくハジメと経緯子だった。

ちなみに経緯子の現在のステータスはこうである

 

================================

 

 

栗原経緯子 17歳 女 レベル3

天職 薬剤師

筋力 15

体力 20

耐性 30

敏捷 20

魔力 60

魔耐 40

技能 調合・[+成分解析]・[+成分抽出]・[+液体系鑑定]・[生物系鑑定]・身体強化・

水魔法・火魔法・超超超々微細機械補助・言語理解・※収納魔法(アイテムボックス)(隠蔽中)

 

================================

 

しばらくリリアーナと歓談を続けていると。リリアーナの侍女に教会の使者から海里に

取り次いで欲しいとの連絡が入る。それを聞いた海里は不安そうにする経緯子を

安心させる為笑いかけてから席を辞して部屋から出て行く。

 

城の応接室に案内された海里が部屋に入ると中で待っていた。

教会の司教が海里に丁寧な挨拶を述べる。

 

「神の使徒。栗原海里様お忙しい中我らの為に時間をとってくださりありがとう御座います」

 

「教会が私に何の用でしょうか」

 

「海里様はトータスに来る前は冒険者の様な仕事をなされてたとか、

それで護衛の仕事をお願いしたいのです」

 

「護衛ですか・・・」

 

 そして言葉を飾り立て長々と話をされたその内容を要約すると

作農師の天職を持つ畑山愛子先生が技能の検証と向上のために十日ほどかけて

近隣の農村を周るのでその護衛として付いて行ってほしいと言うことだ。

教会の本音は神に選ばれた勇者の傍に

転生者と言うよく分からない者に居てほしくは、ないのだろう。

そのための話なのだと海里は思ったが、

経緯子達が実戦に出るにはまだ時間もあるだろうし

王都の外を見る必要もあるので、海里はこの話を受ける事にした。 

 

2日後、海里はナノちゃん達に経緯子達が万が一の時は、ある程度は

自主的に助ける様にお願いしてから愛子の護衛として王都から旅立った。

 

更に2日後召喚されてから二週間たった日。

ハジメは訓練場に来たがまだ少し早いのか経緯子達も来ておらず。

自主練でもするかと自ら錬成した特殊警棒を手にしてそれを伸ばそうとした時

 

「よう!無能の南雲じゃないか。弱い癖にそんな棒を持ってどうしょうってんだ⁉︎」

 

と檜山がハジメに言って来たが、ハジメはそれを無視してその場から離れてようとするが、

中野、斎藤、近藤の四人が取り囲み逃げ道をふさぐ。

 

「折角、俺たちが無能のお前に稽古、つけてやろうってんだ!断わらないよな?」

 

逃げられないと悟ったハジメは覚悟決め言う

 

「どこでするの?」

 

檜山達四人はハジメを囲んだまま訓練場の外れの建物の陰で外から見え難い場所に連れて行くと

すぐにハジメに攻撃を加えようとするがその時ハジメが

 

「まさか?四人で一緒に僕の相手をするの?無能で弱い僕相手にさぁ?」

 

とにかくハジメは一対一にまずは持ち込むため彼らを煽る。

 

「南雲のクセに‼︎いいぜ。まず俺が相手してやるよ‼︎」

 

檜山が挑発に乗り名乗りを上げる。檜山自身ハジメをいたぶれるなら

四人だろうが一人でも構わない。ココは日本ではなく。

今はあのよくわからない女。海里が城に居ない絶好の機会なのだ。

 

「オラァ!南雲テメエの無能さ!思い知らせてやるよぉ‼︎」

 

と叫びハジメに向かって檜山が模擬刀を振りかざし

真っすぐに突っ込んで来る。ハジメは手に持っていた特殊警棒を

軽く振り伸ばすとその先端を地面に着け

檜山がハジメを自らの剣の間合いに入れようとした時

ハジメは立ったまま。

 

「錬成」

 

檜山の足元の地面を少し盛り上げる。それに躓き体勢を崩した檜山に

ハジメは身体強化を使い一瞬で間合いを詰めそのまま

足を警棒ですくい上げ檜山を転がし、うつぶせに倒れた背中に

警棒を押し当てる。ハジメが彼らに何か言おうとした時

 

「ぐっあぁぁ!!」

 

ハジメの背中に火球の魔法がぶつけられた。たまらず叫ぶハジメに続けて

 

「ここに風撃を望む“風球”」

 

と斎藤が魔法を放つそれを腹に受けたハジメはおもわず蹲る。

そんなハジメに近づく事なく。彼らはハジメの錬成を警戒して

一定の距離おいて下級魔法をぶつけ続ける。

 

「やっぱ‼︎オメェは無能なんだよ南雲ぉ! ここに風撃を望む“風球”」

 

と立ち上がった檜山も参加し四人でハジメに稽古という名のリンチを続ける。

彼ら四人は暴力に酔いタガが外れてかけていた。ハジメは痛みを堪えながら

そんな彼らに危機を覚えていると

 

「ハジメちゃんに何してるの⁉︎あなた達やめなさいよ‼︎」

 

訓練場にハジメを見かけず嫌な予感がして探していた。

経緯子が檜山達を見つけ抗議する。檜山は経緯子が一人だけなのを確認すると

 

「何だぁ南雲と同じ戦えない栗原じゃないか⁉︎ここに風撃を望む“風球”」

 

「きゃっ」

 

経緯子の足元に魔法を放ち経緯子は尻持ちをつく。

その行いを見たハジメは立ち上がろうとするも

檜山達が魔法を放ち再び転がされてしまう。そのまま執拗に

ハジメに魔法を放ち続ける。目の前で繰り広げられる。

ハジメに対する暴力に経緯子は先程魔法で狙われて体が震え

足に力が入らないがハジメへの暴力を止めるため、檜山に詰め寄る。

 

「すぐやめなさい‼︎早く止めないと私が許さない‼︎」

 

「ハハッ許さない?南雲と同じ無能のお前がどうやって?

あの姉ちゃんがいなければ何も出来ないくせに!」

 

自分を睨みつける経緯子を見て檜山の中にドス黒い欲求が湧き上がる

この女は南雲と自分をコケにした海里とか言う女の大切なモノだ。

コレを壊したい。

 

「そうだ〜無能のお前も役に立つ事も有るよなぁ」

 

と経緯子の身体を舐めるように見る檜山に経緯子は言いようの無い不安を覚える。

 

「栗原 お前止めたいんだな〜?なら代わり相手してくれよぉ?部屋でよう」

 

「なっ・・そんな事」

 

経緯子の拒絶に応える様に檜山はハジメに容赦無く魔法を叩き込み続ける。

その檜山の言動に近藤ら三人はマズさを感じヒキ始めるが、かまわず檜山は魔法を

放ち続ける。

 

理不尽な暴力に意識が飛びそうになりながらハジメは今の

檜山の言葉を聞き心の底から怒りが湧いて来て体の痛みすら分からなくなり

  

 アイツは経緯子ちゃんにナニをイッタ

 

潰すアレを潰す。ハジメは求めた初めて直接的に力が欲しいと、そう。力が欲しい

 

「ほら!ほら!早くいい返事しないと大事な“ハジメちゃん”が壊れちまうぜぇ?栗原よぅ?」

 

「わかったから・・・・このままだとハジメちゃんが・・・だから」

 

檜山は攻撃するの中止すると好色な笑みを浮かべながら経緯子に

 

「栗原、ほら。止めてやったんだ。だから何だはっきり言えよ?」

 

経緯子は羞恥に耐えながら口を開き望まぬ答えを言おうとするが

 

「いっ・・今から貴方のへ」

 

  ボコッオォォン‼︎

 

轟音に掻き消される。

音の先には左右の地面を隆起させた。ハジメが幽鬼の如く立ち上がっていた。

 

 

 

                               

 

 

 

 

今回は長くなったのでココで切ります。原作とは違う流れに

ネタ的に怒りの覚醒はしたかったので。

雫さんのイベントが前倒しにそして海里が一時的に離れる事になりました。

 

あと経緯子のイメージと言うかキャラ設定みたいな描きました。

髪型がこんな感じとかの参考程度に見てください。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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08 チカラとキズナ

 

 

 

イジメ決着回です。

光輝理論を書くのに手間どりました。

 

後、UAが1万超え。お気に入り登録が100超えました。

この様な作品を思いの外多くの人が読んでくださっている事に

感謝です。

 

 

 

 

 

 

                   

 

 

 

 

 

 

 アノ時は何も知らない内に大切を奪われた。今は目の前で大切を奪われ様としてる。

だから奪おうとするアレは潰す二度と出来ない様に潰す。そして力を少年は求め欲した。

力を手にし呑まれた・・・・

 

 

 ボコッオォォン‼︎

 

轟音が響くその先にハジメが立ち上がっていた。錬成にて隆起した地面に挟まれて。

 

「錬成」

 

バキッ

 

「錬成」

 

バキッ

 

呪文を呟き一歩進む度に地面を隆起させ。檜山にゆっくりと近づいてくる。

そんな光景に呆けていた檜山達だったが、われにかえり狼狽しながら魔法を放つ。

 

「こ・・ここに風撃を望む。“風球”」

 

「錬成」

 

瞬時に作られた土壁で防がれる。

 

「南雲おぉ⁉︎ナニしたんだ⁉︎そんな錬成ありえないだろう‼︎」

 

「錬成」

 

バキッ

 

叫ぶ檜山に答えず。只“錬成”を呟き近づいくる。

事実、檜山の叫ぶ通り、ありえない錬成であった。何故なら手を地面に付けず

さらに手に何も持たず。己の体を通して行なっているのだ。今のハジメに出来る事では無い。

また、これだけの錬成を続けて行う魔力をハジメは持っていない。ではなぜ行使できるのか、

今のコレは怒りに一時的に思念波強度が跳ね上がりその思念波を受けたナノマシンによる。

土魔法での錬成の再現である。そこにトータスでの魔力は関係無い。

 

「あぁ・・・ハジメちゃん」

 

経緯子は檜山達、自分の立ってる所に近づいて来るハジメを見ながら

恐れを感じていた。錬成を行使するハジメの姿に感じたのではなく

ハジメから何かが消えようとする事に恐怖したのだ。

 

「ヒィッ」

 

檜山達の口から情けない悲鳴がこぼれる。

ついにハジメが手の届く所まで近付いたのだ。

檜山達四人は恐怖に負け逃げようとするが、それは叶わなっかった。

 

「あっ足が上がらねぇ!」

 

「「「うわっ⁉︎」」」

 

既に靴を錬成により地面に固定されていた。無理に動こうとした結果

近藤、斎藤、中野の三人はバランスを崩して尻もちを着くが、檜山は倒れなかった。

彼のすぐ後ろに錬成による壁が出来ており、その壁に背中を支えられていたのだ。

 

「錬成」 「錬成」

 

「ヒィッ」

 

檜山の両側に壁が出来囲まれてしまう。前方は空いているが、

そこには無表情で檜山を見ているハジメが立っている。

ハジメは呟く

 

「錬成 錬成 錬成 錬成 錬成 錬成 錬成 錬成 錬成・・・・・錬成」

 

その度に檜山を囲む左右の壁の厚みが増して檜山に迫る。

 

「南雲!何しやがる!早く止めやがれ」

 

「錬成 錬成 錬成 錬成」

 

「ヒィッ止めてくれよ・・栗原の事はただ脅しただけで本気で

連れ込む気は無かったんだよ・・だから止めて・・」

 

「錬成 錬成 錬成 錬成」

 

「ぐぎぃい 潰れちまう・・死ぬ・・」

 

威勢のいい言葉から謝罪に変わりそして助命に変わる檜山

既に身動きも両腕も動かせず骨の軋みさえも聞こえそうな状態になっている。

ハジメは檜山を檜山として見ていなかった。タダの潰すモノとしか見てない。

 

ハジメが最後になるであろう“錬成”を唱えようとした時。

 

「ハジメちゃん!!ダメェ!」

 

経緯子がハジメを正面から抱き締める。

 

「大丈夫だから。私は大丈夫だからコレ以上はダメ!帰れなくなる。

ハジメちゃんお願いだから・・私のために捨てないで自分を

だから止めようハジメちゃん・・・」

 

「け・・・経緯子ちゃん?」

 

「そうだよ。ハジメちゃん!」

 

「止めてくれたんだ・・・・・」

 

と言うとハジメは気を失い経緯子にもたれ掛かり二人はその場に座り込み

経緯子はハジメを抱き締め泣いてしまった。周囲の錬成によって作られた壁は

ハジメが気を失ったと同時に何かの支えを失って崩れ檜山達も解放されたのだ。

 

「南雲くん!経緯子ちゃん!」

 

香織の声がこの場に響く。異音に気付きここにやって来たのだ。

すぐ後ろに雫に続いて光輝や龍太郎と何人かのクラスメイトも

続いてやって来る様子が見える。経緯子は香織の姿を見ると涙しながら

 

「香織さん・・ハジメちゃんが怪我を」

 

「南雲くん!ひどい!すぐ治すから」

 

ハジメに駆け寄り治療魔法をかけ始める香織。

続けてやって来た雫は困惑の声をあげる。

 

「ナニがあったの・・・?」

 

経緯子がハジメを抱き締め泣いていて近藤、斎藤、中野の三人は顔色をなくし座り込み

檜山は半ば土に埋もれ倒れており。周囲の地面はあちこちに土の山が出来ていた。

集まったクラスメイトがその光景を呆然眺めている中、

 

「雫ちゃん。南雲くんの応急の治療が終わったの。後は救護室でやるから南雲くん連れて行くね」

 

応急の治療を終えた。香織がハジメを背負い経緯子を伴ってこの場を離れる。

 

「この地面の荒れよう。錬成でやったのか、経緯子さんも泣いてるし南雲も身勝手が過ぎるな」

 

と光輝が一歩前に出て自分の推測を言うそれを聞いた雫は光輝に問い掛ける。

 

「ここで南雲くんが身勝手って言葉が出て来るの?それに彼、あんなに怪我してるじゃない」

 

「怪我こそ南雲の身勝手から来るものじゃないか。彼は訓練もそこそこしかせず。

何時も皆とは別行動してるだろ。だから無茶な錬成をして怪我をしたんだろう。

経緯子さんも泣かすし。今は皆一丸となって戦うべき時なのにどうしょうも無いな彼は」

 

光輝がハジメ批判しているとその言葉に乗る者が現れる。檜山である。

彼は埋もれていた土の山から抜け出すとハジメや経緯子にした事を誤魔化すため

都合のいい事にハジメと経緯子はここから離れ現場を知る者は居ない。

今なら発言力のある光輝を利用すれば全て南雲のせいに出来る。

 

「天之河の言う通り南雲がココで、デタラメな錬成で地面をボコボコにしていて

俺たちが来た時。栗原が南雲を止めようしてたけどダメみたいで、だから俺たちが

止めに入ったんだが、南雲は逆ギレして更に無茶して錬成して作った壁が

崩れて自分で巻き込まれたんだよ。で俺も巻き添えで土まみれってわけさ」

 

「そうか。南雲は誰にでも迷惑をかけるな。檜山たちも災難だったな。

善意で止めようとしてくれたのにな」

 

「なぁ光輝。南雲の怪我おかしくねぇか?」

 

「なぜだい?龍太郎?」

 

「だってよう。パッと見だが背中の怪我、火傷だったぜ。錬成で出来たには変じゃね?」

 

「そ・・それは錬成で作られた壁が倒れて来た時。俺たち咄嗟に魔法を撃って

たまたま逸れたのが南雲に当たっただけなんだよ」

 

「事故なら仕方ない、元々訓練サボって勝手してた南雲が悪い訳だしな」

 

「ちょっと光輝。南雲くん訓練サボって無いし。そもそも勝手に錬成で

訓練場荒らす様な事南雲くんがする訳ないじゃない!」

 

「本当に雫は優しいな。皆でこの世界を救う為に戦う訓練を

いい加減にしか受け無い南雲をそこまで庇うなんて」

 

「天之河。さっきから聞いていれば南雲がサボってばかりだと言うけどさぁ。

南雲はココに居ない時は鍛治場で鍛練してて、私たちにも色々作ってくれてんのよ」

 

クラスメイトの中から一人の女生徒が光輝に対して異議を唱える。

その女生徒の名は園部優花。パッと見、ギャルっぽい印象を与える外見の彼女だが

実家の洋食屋の手伝いもよくしており。料理は勿論裁縫等もそつなくこなす真面目で

女子力の高い女生徒だ。気晴らしに料理を作るにも世界が違えば包丁一つとっても

使い勝手が違うためハジメに相談した所、快く地球の包丁を作ってくれた上に

下ごしらえに使うピーラーも作製、なおこのピーラー、城の料理人の目に止まり

皮剥き等に便利だと受け入れられ又再現も難しく無い事から

城の中のみならず城下にも広がりつつあった。

だからこそ自分たちのために働いてくれてるハジメを認めようとしない光輝に

優花はイラッとして声を上げたのだ。

 

「それにクラスの皆が皆この世界のために戦争する気はないのよ。

天之河。少なくとも私は生き残るために訓練してるの。

それと南雲が経緯子の制止を聞かずに檜山の言う様な事するのはありえないよ。

檜山?本当はあんた達が経緯子が泣く様な事を南雲にしたんじゃ無いの?」

 

「園部!何難癖付けてんだよ!そんな、はずないだろうが!」

 

「ふ〜ん?檜山あんたの南雲へ態度を見てたらさ。今、経緯子のお姉さんが居ないから

これ幸いとあんた達が南雲に手を出したのかと思ったのよ」

 

「園部さん。クラスメイトを疑うのは良くないよ。皆が協力しないといけない今。

仲間に暴力を振るはずないじゃないか。そうだろう」

 

「はぁっ?天之河!あんたの中じゃ南雲は仲間じゃ・・・」

 

と口論が続きそうだったが

 

「コラ‼︎お前たち訓練開始の時間は過ぎてるぞ」

 

皆の後方からメルドの叱責が響き渡る。地面が荒れてる様子を見て説明を求めると

光輝が自分の中の事実を伝えそれを聞いたメルドは訝しげながら

 

「あの坊主がかぁ?今、倒れてるなら後で詳しく聞くとして。とにかく今は

訓練の時間だ‼︎全員‼︎早く戻れ‼︎」

 

と取り敢えず場を納めた。幾らかの不和を残して。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

救護室で

 

「へぇ・・・そんな事があったんだ」

 

恐ろしく冷たい声がした。普段の香織から想像出来ない声だった。

あの後ハジメを救護室のベッドに寝かせ治療をすまし今は経緯子と二人

ハジメが寝ているベッドの脇に並んで座っていた。今しがた経緯子に

檜山達がハジメに何をしたのか聞いた所だ。

 

「南雲くんに暴力を振るったあげく経緯子ちゃんを脅すなんて

許せないかな?かな?」

 

「私もそうだけど。私は自分が許せないよ一番。もう少しでハジメちゃんに

取り返しつかない事をさせる所だった。私がもっと強ければハジメちゃんを守れたのに。

なぜお姉ちゃんみたいに強い天職じゃないの?私は守られるだけなの?」

 

「いつも・・僕を守ってくれてるよ」

 

「ハジメちゃん」 「南雲くん」

 

「よかった目が覚めて」

 

「大丈夫。痛みはないかな?」

 

「うん。大丈夫だよ。経緯子ちゃん、白崎さん」

 

「私のせいでハジメちゃんにひどいを事させる所だった・・

私は何もできないから、お姉ちゃんと違うから」

 

「そんな事ない!経緯子ちゃんはいつだって僕を守ってくれてるよ。

さっきも僕を止めてくれたじゃないか。

だから僕はココに居る事が出来るんだよ」

 

「ハジメちゃん・・・」

 

「きっと僕は経緯子ちゃんがいてくれるから、力に呑まれずに済んだんだよ」

 

「南雲くんも経緯子ちゃんも二人して強いね。私も二人みたいに強くなりたいかな」

 

「香織さん・・・」

 

「白崎さん・・・・」

 

「だから私も二人の側にいてもいいかな?」

 

「香織さんはいつだって、きっといるよ」

 

「だってそれが白崎さんだから」

 

「あれ〜?何か思ってたのと違う反応の様な気がする。思い違いかな?かな?」

 

「目が覚めたから今から訓練に顔を出す?」

 

「あれだけの怪我してたからハジメちゃん無理しないほうが良いよ」

 

「私も賛成かな。ゆっくり休んでおこうよ」

 

 

その後、檜山たちの事の事情を聴きに来たメルド団長に

明日から実施訓練として[オルクス大迷宮]へ遠征に行くと伝えられた。

 

 

 

 

                 

 

 

 

なぜ一歩。歩く毎錬成するの?

カッコイイから

暴走を女の子が止める王道展開でした。

これからも約束事はやっていくかも

好きなので。

 

後、優花も今回絡ませてました。ハジメのヒロイン前倒し気味です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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09 それぞれの夜

 

 

評価バーに初めて色が付きました。嬉しいです。

感想ありがとうございます。返信は遅れがちになると思います。

どうも返信の文章を書くのが中々慣れなくてすみません。

 

では本編を迷宮前夜の話です。

 

 

 

 

                                  

 

 

 

 

 

(栗原さんのお姉さん。この旅でかなり印象が変わりました)

 

と愛子は隣のベッドで寛いでいる。海里を見てそう思っていた。

 

(教会と交渉してた時の彼女を見てたら、今の服装、想像できませんし)

 

愛子の視線の先の海里はネコ耳フード付きのパジャマを着ているのだった。

海里は地球で愛用していた。ネコパジャマを再現し使っていた。マイルの時は

仲間たちに不評で着ていなかったが、今は海里だし経緯子とハジメのまえでも

自分の家の中だとこの格好だったので再び着ているのだ。

ちなみに愛子先生はゆったりした上着とズボンのパジャマである。実は王国から

女生徒に寝間着としてネグリジェが用意されたのだが、愛子に合うサイズがなく

その為この野暮ったいパジャマが用意された。

(女生徒の中に一人だけ同じパジャマを支給された者がいる)

 

愛子が見ている事に気づいた海里が

 

「畑山先生?何かありました?」

 

「いや〜そのですね。コレだけのテントをパッと出せるの凄いですね。

ベッドに机や椅子これが何処のホテルの一室と言われてもおかしくないものが、

何もない所にポンと出てくるのは昔アニメでみた何とかカプセルみたいです」

 

そう今は次の村に寄る。途中の野営中のテントの中なのだ。トータスでは海里は

自重を止めてるので、海里本人が楽するためなら出し惜しみなしで人前で

収納魔法を使っていた。大量の物が出し入れする様を見た。

愛子の巡回に従って付いて来た騎士達はその荷馬車2、3台で済みそうに無い

収納能力に海里の有用性を認識するのだった。

 

「海里さん。召喚された時、教会と交渉して下さった事ありがとうございます。

あらためてお礼を言わせて頂きます」

 

「畑山先生。お礼を言われる様なことでは、志願制にしただけで、協力するとは

言った訳ですし」

 

「協力するのは仕方ないですよ。相手は中世の様な宗教組織ですから。

完全拒否したらどうなるか?考えたくもありません」

 

「ハジメちゃんも同じ様な事を言ってました」

 

「そうですか南雲君が・・彼は危うさを認識してるのですね。クラスの皆もそうであれば

トータスで色々な力を得て神の使徒とか担ぎあげられ。そのせいか浮かれ気味になってる

生徒たちもチラホラいるものですから」

 

「そうですね。一度痛い目にあえばと、でも痛い目で済むかどうか」

 

「ですね・・・・あっ海里さん」

 

愛子は重くなった空気を変えようと話題を変える。

 

「海里さんは子供好きなんですね。巡った村々で小さい子供たちに

お菓子をあげたり。お話しを聞かせてたりしていましたものね」

 

「えへへ だからこそこの国現状に不満があります。亜人族(獣人)を差別して

まともな交流が無い。これじゃ宿屋の受付にケモ耳幼女なんているわけないですかぁ‼︎」

 

「え〜〜?海里さん?」

 

困惑し返事に困る愛子。海里(マイル)は何処だろうケモ耳と幼女にこだわる女なのだ。

ちなみにこの海里が出したテントは結界が張ってるために外に声は漏れてません。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宿場町[ホルアド] ここはオルクス大迷宮に挑む者達が集う町。

騎士団も新兵訓練に迷宮をよく利用する為王国直営の宿屋があり

そこに生徒達は泊まり明日迷宮に挑む事となる。

 

その宿屋の二人一組で割り当てられた一室

 

「ねぇ?経緯子?南雲とは本当の所どうなの?」

 

「え〜と優花さんそれは・・・」

 

経緯子が同室になった優花からの質問に戸惑っていた。

なお参考までに女生徒の部屋割りを書くと

 (香織・雫) (鈴・恵理) (綾子・真央) (妙子・奈々) (優花・経緯子)となっている。

 

「ハジメちゃんは 幼なじみなだけだし。それ以上は」

 

「檜山が経緯子にしようとした事に南雲。魔力暴走する程ブチ切れたんでしょ」

 

あの時のハジメの錬成は感情の昂りからくる魔力の暴走という事で通っていた。

無理やり納得させた形だが勇者の仲間のイザコザを大事にしたくなかった教会の意向で

あり神の使徒が無理やり、同じ使徒の女生徒を襲おうとしたなど表沙汰に出来るものではない。

なので訓練中の行き違いから起こるトラブルとして説明された。檜山のした事はボカシてだ。

 

しかし女生徒の間では真実が噂として広まっているので今の優花の発言である。

 

「ハジメちゃんは私じゃ無くても同じ様に守るよ」

 

「そりゃ南雲なら体を張ってでも止めるだろうけど。我を忘れる程に怒るのは経緯子だけじゃない?」

 

「・・・・・」

 

「それと南雲さぁ。香織と付き合ったりはしてないんでしょ?お互いが只のヘタレかも

知れないけどさぁ。それでも香織に一年近く好き好きオーラ出されてたら香織の気持ちに

気付くでしょ?よっぽどじゃなきぁクラスで解って無いのは天之河ぐらいだろうし。

だから経緯子と南雲はと思っんだけど?」

 

「・・・・私とハジメちゃんは優花さんの言ってるような関係じゃ無いよぉ。

でもトータスに来てから私がハジメちゃんをどう思っているのか、

家族同然で大切なのは変わらないけど、何かハッキリしなくてモヤモヤして

何があるか分からない今だから答えが判らなくて焦ってるわ」

 

「そっかぁ・・・ホント何故こんな所に居るのかなぁ?私たち」

 

「早く帰りたいよね。 で私が恥ずかしい事を言わされたから

次は優花さんだし。優花さんは付き合ってる人はいないの?」

 

「いないわよ。特に好きなヤツとかいないわ」

 

「ヘェ〜 多少でも気になってる男子とかはどう優花さん?」

 

その質問をされた優花はふと頭の中に浮かんだものに焦ったのか少しどもる。

 

「いっ・・いないわよ‼︎ 経緯子えらく押してくるね」

 

「だって先に優花さんが強引に聞いてきたんだし。だからだよぉ⁉︎」

 

「わかったから経緯子!悪かったって!明日に備えて、そろそろ寝よう?」

 

「いいわ今日はココ迄で、そうね寝ましようか」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ハジメは一人部屋だった。組み合わせでそうなった。

ベッドの上で借りてきた迷宮の魔物図鑑を読んでいると

扉がノックされる。

 

「南雲くん、起きてる?白崎です。ちょっといいかな?」

 

こんな深夜になぜ?と戸惑いながらも扉を開けると。

そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

「・・・・・なんでやねん。ワナや」

 

「えっ?」

 

その刺激的な姿に思わず関西弁でツッコミを入れるハジメ。

よく聞こえ無かったのか香織はキョトンとしている。

ハジメは香織をなるべく見ない様にしていた。

まだハッキリさせて無いとはいえ香織の事を多少意識している。

ハジメにとって今の香織の姿は色々ヤバイ。なんとか平静を装い言う。

 

「え〜と白崎さんどうしたの?何かあったの?」

 

「どうしても今南雲くんに話したい事があるの・・・」

 

香織の真剣な表情にハジメは何かを感じ部屋に招き入れる。

窓際にあるテーブルセットに座らせるとお茶を準備し香織に

渡し向かいの椅子に座る。

 

「ありがとう」

 

とカップに口をつける香織。窓からの月明かりに照らされる彼女は

少し憂いを帯びた表情をしている事もあり。神秘的で大人びて見える。

ハジメはそんな香織に見惚れてしまう。カチャリとカップを置く音に

われに返ったハジメは胡麻化す様に早口で話を促す。

 

「話って明日の迷宮での訓練の事かな?」

 

「うん・・・明日の訓練には参加しないで欲しいの。教官やクラスの

人達は私が必ず説得するから!お願い!」

 

話をしている内に興奮したのか身を乗り出して懇願する香織。ハジメの目の前に

何かヤバイ谷間が見える。ハジメは自分の動揺を抑えるため

そして必死な様子の香織に落ち着くように言う。

 

「白崎さん落ち着いていきなり訓練に参加するなと言われても困るし

どうしたの何があったのか、ゆっくり話して」

 

その言葉に椅子に掛け直し手を胸当てて深呼吸してから静かに語り出す。

 

「さっき迄寝てたのだけど。夢を見たの・・・南雲くんが居たんだけど・・・

声を掛けてても全然気付いてくれなくて・・・追いかけても追いつけ無くて

・・・・それで最後は・・・」

 

その先を口に出すのを恐れて黙ってしまう香織にハジメは静かに落ち着いた

声色で香織に続きを聞く。

 

「最後は?」

 

「消えてしまうの・・・」

 

「・・・そっか」

 

確かに嫌な夢だ。でも単に夢は夢と切り捨ても香織の不安は消えないだろう。

ハジメは香織を安心させる様、なるべく優しい声色を心掛けて話掛けてた。

 

「夢は夢だよ。白崎さん。今回は騎士団の人達が引率してくれるし、

低層で攻略がしっかりされてる所だけだから、

それと明日は白崎さん側で戦ってくれるんだから大丈夫だよ」

 

「でも・・」

 

「それでも不安なら守ってくてないかな?」

 

「南雲くんそれって・・・・」

 

「白崎さんは治療師だからそれに今はナノさんの力で治癒能力強化されてるから

だからもし僕が大怪我しても治してもらえるから、絶対僕は大丈夫だよ」

 

ハジメは真っ直ぐ香織を見つめて言う。しばらく見つめて合っていると

香織が微笑みながら言う

 

「変わらないね。南雲くんは」

 

「?」

 

「実はね私、南雲くんの事中学二年の時から知っていたの。だから高校に入学してすぐに

話掛けてたの」

 

ハジメは香織と何時会ったのかまるで記憶に無く。首を傾げていると

 

「私が一方的に知っているだけだよ。私が最初に見た南雲くん土下座してたから

私を見ていたわけないしね」

 

「ど・・・土下座⁉︎」

 

香織が話してくれた内容によるとハジメが不良に絡まれてたお婆さんと子供を

助けるために土下座していた所見ていたらしい。

 

「見苦しい所を見られたなぁ」

 

「見苦しくなんてないよ南雲くん!」

 

「白崎さん・・・」

 

「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに

飛び込んで相手の人を倒してるし・・でも弱くても他の人のために立ち向かえる人は

そんないないと思う。実際あの時私、自分が弱いからって言い訳して動けなかった。

だからあの時に動いた南雲くんは私の中で一番強くて優しい人なんだ。

高校に入って南雲くん見つけたとき嬉しかったの。だから直ぐに話掛けたの」

 

(白崎さん入学前から僕の事知っていたんだ。初めて声をかけられた時何故

こんな美少女がと警戒したからなぁ。理由がわかったけど凄く恥ずかしいや)

 

「だからかな南雲くんが一人で無茶しそうで不安なの?守るって決めたから

南雲くんも一人で無茶しないで私は何があっても側にいるから!」

 

「うんわかったよ。ありがとう白崎さん」

 

ハジメが真っ直ぐ見つめ肯くと少しは安心したのか微笑み見せる香織。

 

それから少し雑談して香織は部屋に戻って行った。

 

ハジメはベッドに横になりながら

 

(土下座かぁ・・・そういえば海里姉ちゃんと“猛虎落地勢”練習したなぁ・・・

でも白崎さんの事をどう思っているのかハッキリさせないとでも経緯子ちゃんも

この前の事でよくわからなくなったし。自分が最低な人間に・・・・)

 

ともんもんとした気持ちを抱えて中々寝付けずいたが。王都からホルアドまでの

慣れない馬車の旅の疲れも出ていつの間にか寝てしまっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

深夜、香織がハジメの部屋から出ていくるの姿を見た者がいた事を

その者の表情が醜く歪んでいた事を知る者はいない。

 

 

 

 

                                 

 

 

 

少し海里の様子と経緯子と優花のガールズトークとコイバナを

挟み込みました。部屋割りは捏造です。

原作とはハジメと香織のやり取りを少し変えてあります。

関係性の差を出せたかは自信ないですが。

次回やっと迷宮入りだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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10 パーティと大迷宮

 

 住んでる所が緊急事態宣言の範囲内で色々暇な上

外出もままならないので投稿ペースが上がるかも。

 

やっと迷宮に突入です。

 

 

 

                             

 

 

 早朝、ハジメたちは[オルクス大迷宮]の正面入り口付近の広場に集合していた。

迷宮の入り口にはしっかりとしたゲートがあり、また受付でステータスプレートを確認し

迷宮へ入る冒険者を管理しており。どこかのテーマパークのアトラクションの様だ。

事実入り口の付近には様々な屋台が出ており美味しそうな香りが漂っている。

そんな中をハジメたちはお上りさんよろしくキョロキョロ周囲を眺めながら立っていた。

 

「シズシズ!今腰に挿してる剣。初めにもらったのと違うね?」

 

「あっコレは南雲くんが作ってくれた刀なのよ。鈴」

 

「ナグモン⁉︎そんなのまで作れる様になってるんだ。どんなのか少し抜いてみせてよ?」

 

「ん〜仕方ない無いわね。少しだけね」

 

 

と雫は刀を鞘に収めまま胸の辺りで水平に持つと3分の1程抜いて刀身を見せる。

 

「ほへ〜中々綺麗でカッコイィ刀だね。ナグモンもやるねぇ」

 

「今の雫ちゃん。側から見たら少し危ない人に見えるよ」

 

と鈴と共いた恵里が雫に言う

 

「だって刀を半ば抜いて顔がにやけてるから」

 

「なにゅ⁉︎」

 

焦って刀を鞘に収め再び腰に挿す雫。

 

「シズシズ最近何か素直になった気がする?」

 

「鈴の言う通り余計な力が抜けた感じがする」

 

「んっそうかしら?」

 

「シズシズ。トータスに来てからナグモン達と

よく話をするようになって少し変わった?」

 

「そう?自分自身だとよくわからないのだけど」

 

「でも私や恵里をあまり構ってくれなくて寂しいな〜それにパーティの事も」

 

「ごめんね鈴。でもパーティの事はどうしても積極的に関わる気になれないから・・・」

 

「雫! その刀を使うのはやめるんだ」

 

と光輝が話に割り込んで来た。

 

「南雲が中途半端に作った刀なんて使ったら戦闘中に折れたりして危険だ。

だから今日はそれは置いて今まで使ってたのに戻すんだ」

 

「光輝!この刀は南雲くんが鍛治師の親方さんの元でしっかりと作ったのよ。

それにメルドさんにも見せて使用許可も貰ったし。出来も褒めてくれたのよ」

 

「それはメルドさんが南雲に気を使って言ってくれたに違いない。

それと雫も香織も南雲とパーティまで組むなんて南雲を構うのにも

構いすぎだろう。さぁ雫。俺とパーティを組み直そう」

 

「はぁ・・・光輝。刀の事は・・・もういいわ。でもパーティは

私も香織も戦争の前線に出るつもりは無いから積極参加派の

光輝のパーティに入る気はないと何度も断ったでしょ。私、怖いもの」

 

「大丈夫さ雫。俺が君を守るから一緒に行こう」

 

「ねぇ光輝?私や香織を守りたいなら何故“二人は安全な城で待って居てくれ”とか

言わないでどうして、あなたの側に連れて行こうとするのかしら?」

 

「雫。それは・・・」

 

光輝が言葉に詰まっていると

 

「光輝。戦争なんて参加したく無いなら無理に参加させる物じゃないだろう。

それにだ。南雲も栗原さんも戦闘職じゃないから雫と香織がパーティを組んでやるべきだろ?」

 

龍太郎が雫をフォローする様に声を掛ける。

 

「光輝も俺も強いし谷口と中村が入ってくれてるんだ。充分じゃないか」

 

「龍太郎・・・だれ?」

 

「雫なんだよそれは?雫と香織が少し距離をおくようになって俺もちょっとは

考えてみたんだよ。それに南雲はダチだから頼まぁ雫」

 

「うん。そろそろ迷宮に入ると思うから香織達のところに戻るわ」

 

光輝は引き止めたそうだったが雫はかまわず、この場を離れる。

 

ここで生徒たちのパーティの振り分けを明記すると

 

戦争参加派2組

 

※天之河光輝・坂上龍太郎・谷口鈴・中村恵里

 

※檜山大介・中野信治・斎藤良樹・近藤礼一

 

中立派1組

 

※永山重吾・遠藤浩介・野村健太郎・清水幸利・辻綾子・吉野真央

 

戦争非参加派2組

 

※園部優花・菅原妙子・宮崎奈々・相川昇・仁村明人・玉井淳史

 

※南雲ハジメ・栗原経緯子・白崎香織・八重樫雫

 

 

の五組に分かれている。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

迷宮の中は、外の賑やかさと無縁だった。縦横5メートル以上ありそうなうな通路は

所々緑光石と呼ばれる名の通り光る鉱石が露出しており、そのおかげで松明などの

灯りを用意しなくても視認が可能だ。

メルド団長の先導の元パーティごとに隊列を組んでしばらく進むと、

ドーム状の広場に出ると壁の隙間からラットマンと呼ばれる。二足歩行ネズミの様な魔物が現れる。

ムキムキの上半身でなぜか大胸筋の所だけ体毛が無くまるで自慢している様だ。

メルドが指示をとばす。

 

「まずは光輝たちのパーティが前に出ろ。他は後ろに下がって待機だ。交代で戦ってもらうから準備をしておけ」

 

まずは光輝たちが戦う事になったが、流石は勇者組あっさりとオーバーキル気味に倒して

魔法支援組の鈴と恵理が注意されやり過ぎたと恥ずかしそうにしていた。

 

その後パーティを交代しながら進んで行くが皆チート持ちなのであっさりと倒していく。

迷宮で怖いのはトラップなのだが。その対策としてフェアスコープというものがある。

迷宮におけるトラップは殆ど魔法を使用したものでこの道具は魔法の流れを狭い範囲ながら感知する事ができる。

とはいえ本来なら慎重に進むべきなのだが低層部分はマッピングがしっかりされており、メルドたち騎士団の先導に従えば危なげ無く進めるのだ。

そしてハジメ達のパーティに順番が回ってくる。相手は黒い犬型の魔物が数匹だった。

 

「あれはモーザドック。素早く連携して襲って来るから囲まれ無い様に注意して!」

 

とハジメは訓練の合間に図書室で調べておいた魔物の特徴を皆に知らせ続いて言う。

 

「経緯子ちゃん!」

 

経緯子がその声に応えて構えていたスリングショットでビー玉大の球をハジメ達に襲い掛かろうとした先頭のモーザドックの顔に当てると球が砕け赤い液体が飛び散り、モーザドックは「ギャン」と声をあげ、のたうちまわり其の様に他のモーザドックも動きが鈍る。そこに雫が一気に間合いを詰め先頭の魔物を斬り裂き返す刀ですぐ側の魔物を斬るとすぐにハジメの後ろまで下がる。雫を追って来た残りのモーザドックがハジメに飛び掛かって来るがハジメが飛び退きモーザドックの着地点に伸ばしておいた警棒の先を当てると「錬成」で穴を開け落しすかさず再び錬成を使いモーザドックをの半身を埋め動けなくなった所に警棒の先端を錬成で鋭くしモーザドックを刺し弱らせると止めと

 

「白崎さん今!」

 

既に大方の詠唱を終えていた香織が魔法を発動させる。

 

「大地に帰れ、“螺炎”」

 

炎の渦が動けないモーザドックを容赦なく焼き尽くし、ハジメたちの戦闘は終わった。

 

それを観ていたメルドと騎士団員たちはハジメ達の戦い方に感心しまた興味を持った。

特に戦闘職で無い錬成師のハジメと薬剤師の経緯子の戦い方だった。

経緯子は見た事のない道具を使い薬(今使用したのは香辛料からカプサイシンを抽出した物)

の入った容器をぶつけ魔物を牽制しハジメは錬成で魔物の

動きを封じ込めるなど生産職で戦う術など無い思っていたのに

各々の特性を使った戦い方に目から鱗がおちる思いだった。

経緯子が使ったスリングショットはトータスに似たような物は有るがもっと簡易な物であり

経緯子が使用しているような握りやすいハンドグリップや

リフトロックが付いている近代的なものでは無い。

またコレは海里(マイル)が使用していた物ではなく

新たにハジメが錬成で作りあげた物でバランスもしっかり取ってある。

ただチューブはハジメでは用意出来ないので海里に用意してもらったが、

もちろんカーボンナノチューブ製でなく強度が常識的な範囲のゴム擬きで出来ている。

後ナノちゃんの弾道補正も行われるので命中率は高い。

なお薬品の容器は簡単な物であればナノちゃんの土魔法で経緯子自身で作成することができる。

ハジメについても道具を通して錬成させるなど今まで聞いた事もない技能であり。

メルドは鍛治師よりハジメの派生技能が多数出ている事は聞いていたが、

この様な事ができるとは思ってもみていなかった。錬成といえばハジメが刀という剣を

作ったと使用許可を求めに来た雫に見せてもらったが、かなり良い出来だと覚えている。

それに刀を使った雫は今までに比べ動きのレベルが上がった。

やはり彼女の剣術は刀の使用を基に創られたものだと認識した。

香織の魔法も精度が高いものであり。ハジメを中心にしたこのパーティは

この先の成長がかなり期待出来るのではないかとメルドは思った。

 

その後も全員が危なげ無く魔物を倒していき。今日の訓練のゴールである二十階層に到達する。

この後次の階層に降りる階段まで行けばそこから引き返して地上に出ることになる。

階段に向かってしばらく歩いていると先頭を歩いていたメルドが立ち止まり。臨戦態勢に入る

 

「擬態しているぞ!周囲を警戒しろ!」

 

その直後、壁に保護色で同化していたゴリラ型の魔物ロックマウントが姿を現す。

光輝と龍太郎が迎えて討とうと構えるとロックマウントは大きく息を吸い込み。

 

「グゥガガァァァアアアアー!」

 

とロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”使う。まともに受けた光輝と龍太郎は硬直してしまう。

ロックマウントはその隙に傍らに有った岩をつかみ恵里と鈴に投げつける。

二人は岩を迎撃するため魔法を発動しようとするがそれは叶わなかった。

何故なら投げつけて来たのは岩で無くロックマウントであった。

それは両手を広げ「〇〇さん好きじゃー」と言わんばかりのどこぞの番長よろしく分厚い唇を

突き出し迫ってくる姿に恵理と鈴は「ヒッ」と魔法の詠唱を中断してしまうがメルド団長が、

ダイブ中のロックマウントを切り捨て事なきを得るが。

 

恵里達はかなり気持ち悪かったらしく顔を青ざめていた。

そんな二人をみてキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊。

我等が勇者天之河光輝様である。

 

「貴様・・・よくも恵里達を・・・許さない‼︎」

 

恵理達が青ざめているのを気持ち悪さでなく死の恐怖を感じたと勘違いしたらしい。

彼女たちを怯えさせるなんて!と何とも微妙な点で怒りをあらわにする勇者様。

純白の魔力が噴き上がり、聖剣が輝きだす。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ、天翔閃!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

メルドの制止する声を無視して。一気に聖剣を振り下ろす。

 

      ちゅど〜ん‼︎

 

ロックマウントは吹き飛びその斬撃は奥の壁を破壊してようやく止まる。

 

「ふぅ〜」と息を吐きイケメンスマイルを恵理達に向けてたときにメルドに拳骨を食らった。

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるが、こんな狭い所で使う技じゃないだろうが!

崩落でもしたらどうするんだ!」

 

とメルドに叱責され、バツが悪そうに謝罪する光輝。恵理が寄って来て遠慮がちに励ます。

その時、ふと鈴が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「なんだろう?あれキラキラしてるよ」

 

その言葉に、全員が鈴の指差した方に目を向けた。

それを見たメルドが説明する。

 

「ほぉ〜、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい。

あれは求婚の際によく選ばれる宝石だ」

 

その説明に女生徒たちは青白く美しく光るグランツ鉱石をうっとり夢を見るような眼差しを向ける。

 

「素敵・・・」

 

と香織が頬を染めバレない様にハジメをチラリと見て呟く。

そんな香織に気づいた雫は苦笑するが実はもう一人香織の視線に気がついた・・・・・・

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

唐突に檜山がグランツ鉱石に向けて崩れた壁を登って行く。メルドが注意も無視して鉱石の場所に辿り着く

 

「団長!トラップです!」

 

がその警告は僅かに遅かった。檜山がグランツ鉱石に触れトラップが発動するのとほぼ同時だったからだ。

ハジメ達が白い光に包まれる。

 

光が収まった時ハジメたちは巨大な造りの橋の上にいた。どうやら転送系のトラップだった様だ。

メルドがいち早く現状を把握し指示を飛ばす。

 

「おまえ達!すぐあの階段へ向かえ!」

 

生徒達が動き出した時橋の両サイドに魔法陣が現れ階段側は骸骨騎士の魔物トラウムソルジャーが

次々と溢れれくる。反対側の魔法陣からは魔物が一体だけだが、それを見たメルドは呻くように呟く。

 

「まさか・・・ベヒモス・・・なのか・・」

 

 

 

                            

 

 

 

今回は定番の区切りここまでです。

原作と違い雫と香織が魔人との戦争参加に拒否の姿勢を明確に示し

光輝とパーティを最初から組んでいません。

後雫は光輝を構う事を意識して減らし見守るだけに留めようとしてます。

コレはとある人物にとって好都合であり動きが変わるかも。

 

 

 

 

 

 

 



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11 ベヒモス

だいたいの流れは原作通りなので

かなり省略しています。

 

 

 

 

                          

 

 

小さい魔法陣群からトラウムソルジャーが

溢れ出て来る中

 

「ベヒモス・・・なのか・・・・」

 

メルドの呟きが明瞭に響く、メルドが冷や汗をかき戸惑い焦りを含む言葉から

大きい方の魔法陣から現れた。体長が約10メートルはありそうな例えるなら

恐竜のトリケラトプスだ。魔物の証を示す様に頭部のツノは炎を放っている

ベヒモスと呼ばれる魔物はかなりヤバイ事が察せられる。

 

「グルァァァァァアアアア!!」

 

橋、全体が震える様な凄まじい咆哮を上げる、ベヒモス。

その叫びに恐怖を感じ統率のとれないまま、上の階段に

向かう生徒達。アランら騎士団員がまとめようとするも

ベヒモスが何かしたのか橋全体が大きく揺れさらに冷静さを失い

我先にと階段を目指してガムシャラに進んで行く。

そんな中、一人の女生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまう。

「うっ」と呻きながら顔を上げると眼前で一体のトラウムソルジャーが

剣を上段に構え己の頭部に振り下ろそうしてる所だった。

「あっ」 死ぬと女生徒が感じた瞬間、トラウムソルジャーの足元が隆起した。

バランスを崩したトラウムソルジャーの剣は彼女から逸れて地面を叩くに終わる。

更に隆起した地面は数体のトラウムソルジャーを巻き込みながら

橋の端へと波打つように移動して行きそのままトラウムソルジャーを橋から落す。

橋の縁から2メートルほど手前に警棒を地面付け大きく息を吐くハジメが立っていた。

ハジメが連続で地面を錬成し滑り台の要領でトラウムソルジャーらを

橋の外に滑り落したのである。

 

「大丈夫。園部さん立てる」

 

ハジメは倒れこんでいた。女生徒、園部優花の手を引っ張り立ち上がらせ

 

「早く。前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨、どうってことないよ。

僕と違って園部さん達皆チートなんだから!」

 

と自信満々の笑顔で背中バシッと叩くハジメをじっと見つめる優花に

ハジメが少し心配そうな顔をすると優花はハッとした顔をして。

 

「うん!ありがとう南雲!私はどうすれば良いとおもう?」

 

優花は礼をいいハジメに尋ねる。ハジメは少し考え答える。

 

「とりあえず園部さん。自分のパーティをまとめてみて」

 

「わかった。やってみる、南雲!」

 

と言って妙子等を探しその方向に駆け出して行く。

ハジメは優花を見届けると錬成でトラウムソルジャーの足止めを

行いつつ周囲を見渡していると、

 

「南雲くん。このままだとまずいわ」

 

「逃げ道が完全に塞がっちゃうかな」

 

「何か一発で吹き飛ばせるようなものが無いとハジメちゃん」

 

はぐれていた経緯子達が集まって来た。

経緯子たちの言葉にハジメは

 

「・・・必要なのは強力なリーダー・・・道を切り開く火力・・天之河くん!」

 

ハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって、経緯子達もそれに続いた。

 

ベヒモスはメルド達が張った魔法障壁に突撃を繰り返していた。その度に強力な衝撃波が

周囲に撒き散らされ、橋にも障壁にも亀裂が入っていくどちらも、余り持ちそうにない。

 

「ええい。くそ!もう保たんぞ!光輝、早く撤退しろ!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけにはいきません!絶対皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを・・・・」

 

ココで光輝の正義感の悪い所が出てしまう。どうしてもメルド達を置いて

自分たちのパーティが逃げるという事に納得出来ないのだ。

また、自分ならベヒモスどうにか出来ると勇者の名に酔ってしまっている。

 

「光輝くん。メルドさんの言う通り撤退しょう」

 

恵理が不安げに光輝に言うとその恵理を見て変に勘違いしたのか

 

「大丈夫!今すぐアイツを倒すから‼︎」

 

さらにやる気を出してしまう。

 

「光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?つき合うぜ、光輝!」

 

「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿ども!」

 

「「雫⁉︎」」

 

光輝と龍太郎の二人叱責する雫

見るとハジメ、香織、経緯子の三人も側にいる。

ハジメが光輝の前に出て

 

「天之河くん!早く撤退を!みんなの所に君がいないと!早く!」

 

「南雲!いきなり何だ。雫や香織たちも連れてき・・・」

 

「そんな事を言ってる場合かっ!」

 

光輝の言葉をハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り遮る。

ハジメは光輝の胸ぐらを掴みながら階段の方向に指を差す。

 

「前ばかり見ないで後ろも見るんだ! みんながパニックになってる!

切り抜けるには君の力が一撃で吹き飛ばす力がそれが出来るのは

勇者の天之河くんだけなんだよ!」

 

「ああ、わかった。すぐに行くメルドさん!すみません」

 

光輝が後ろに下がろうとした時。ベヒモスのその様子が

今までと違ってキィーとツノが甲高い音ともに赤熱化していく。

頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。その様子見て

ハジメは自分たちの前方に半円球のドームを作り出し。

皆に後ろに伏せる様に言う。そして香織と鈴がなんとか

結界を発動させた時、ベヒモスが突進してきてそのまま障壁にぶつからず

手前で跳躍し赤熱化した頭部を下に向け隕石の様に落下した。

今までとは違う桁違いの衝撃波に橋全体に亀裂が広がり

ハジメたちの障壁も錬成で作ったドームも吹き飛ばされるも、

幸い障壁とドームそして伏せていたためハジメたちは多少転がされるも

全員大きなダメージを負わず済んだ。

 

ベヒモスはというと勢いをつけ過ぎたのか

上半身が半ば橋に埋まりもがいていた。

メルドがいち早く指示を出す。

 

「おまえ達今のうちに下がれ!」

 

その言葉に今度は素直にクラスメイトの元の走る光輝!

だがハジメはもがいているベヒモスの元へ近寄り

しゃがんで手を地面につき。

 

「錬成」

 

をかけベヒモスが抜け出せないようにする。

 

「坊主なにをしてる!おまえも下がれ!」

 

メルドが叫ぶと

 

「今ならコイツを抑えられます。その間に退路確保してください」

 

「・・・やれるんだな!」

 

「やります」

 

「くっ・・・わかった。おまえに命を預けることになるとは

・・・必ず助けてやる。・・・だから頼んだぞ!」

 

とメルドも後ろに下がるがその横を2つの影がすれ違う。

経緯子と香織である。二人はハジメの両側にそれぞれしゃがみ込む。

 

「経緯子ちゃん!白崎さん!二人は早く逃げて」

 

「嫌よ!ハジメちゃんは一人だと無茶するから私が止めないと

それに動きを止めるのなら手伝えるし」

 

「南雲くん。私は南雲くんを守ると約束したから側にいるって言ったから

それに三人でやれば確実かな」

 

と言って経緯子は粘着剤入りの玉取り出しスリングショットでベヒモスの足元に当てていく。

香織は魔法の詠唱に入る。三人に後ろから雫が呼びかける。

 

「香織!経緯子!南雲くん!私は!」

 

その声にハジメが答える。

 

「八重樫さんは天之河くん達ともに僕達の退路を切り開いて」

 

「わかったわ!・・出来るだけ早く退路をつくるから!助けるから!」

 

と雫は光輝たちの後を追う。

 

その後もベヒモスが抜け出そうする度に錬成で埋めていくハジメ

そして香織の“光縛”が動きを抑え、経緯子は粘着弾を撃ち尽くした後は

二人に回復薬を渡していく。

 

「香織!三人ともコッチはみんな避難したわ!早く逃げて!」

 

雫が大声で三人に声を掛けると、ハジメが最後にもう一度錬成かけ

駆け出す三人、ベヒモスも頭を抜き出すも既にハジメ達との距離は空いてはいるが

怒りのおさまらない、ベヒモスは咆哮あげ力を溜め走り出そうした時。

 

クラスメイト達からの援護の魔法が次々とベヒモスに着弾する。

ダメージはあまり受けていない様だがしっかり足止めにはなっている。

 

頭をさげながら全力で走るハジメたち。そんな中,香織は並走するハジメを横目に見て

もう大丈夫。昨夜の夢は夢で終わると前をみると雫が無事を一心に祈るように

みている。そのとき香織はドス黒い殺意の込もった視線を感じる。

その視線の元の人物は檜山であった。その歪んだ笑みを浮かべる顔をみて香織は

これが夢のと檜山の手から得意属性でない火魔法が他のクラスメイトの魔法に

紛れて放たれる。香織の視線はその火魔法を追っていた。ハジメの目の前で

軌道を変えたとき香織は

 

「南雲くん!・・かはっ!」

 

ハジメを突き飛ばし、炎弾の直撃はなかったがハジメの代わりに

着弾の衝撃波をもろにくらい吹き飛ばされる。

意識がもうろうとし、動くことが出来ない。

 

ハジメはすぐに立ち上がり香織の元に駆け寄り

香織の身体を抱き起こそうとした時、後方からベヒモスの咆哮が聞こえる

追いついて来たのかと振り返ると、ベヒモスの足元から橋が崩れ始めていた。

度重なるベヒモスによる衝撃と最後の魔法の援護の着弾に橋が耐え切れ無くなり

崩落が始まったのだ。ベヒモスも抵抗虚しく落下していく。

ハジメの足元も崩れていく香織を落とさないように右手で抱き締め

左手を伸ばし掴もうするも僅か縁に届かないがその手を摑む手があった。

 

「ぐぅハジメちゃん!今引き上げるから」

 

経緯子が身体強化をかけ二人を引き上げようとするも、経緯子のいる所も崩落してしまう。

ハジメと経緯子はお互いを引き寄せ合い香織と三人固まって闇の中に消えていった。

ただハジメ達の周りが薄ぼんやり光ったのをみたものはいない。

 

 

いやあぁぁぁぁぁ‼︎

 

 

 

橋があった所は絶叫が響いていた。

 

 

 

                             

 

 

 

という事でハジメ、経緯子、香織の三人が落ちました。

香織が原作と違い檜山のやった事を自らの目で見ています。

海里との合流は少し先になります。

 

 

 

 

 

 

 



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12 奈落に墜落しました

         

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の中を落下していく途中、ハジメ達の意識も闇に飲まれる。

 

 

『万が一の時は助けてね』

 

とのお願いに応えた。ハジメ達専属ナノマシンによって

ハジメ達は球形のバリヤーに包まれゆっくり闇の中落ちて行く。

 

落下していく途中の横穴から水が激しく吹き出している所があり

水流に吹き飛ばされ壁に押し付けられたりしたが、最終的に途中の

横穴の一つに押し込まれ、今は幅5メートル程の川の岸に乗り上げていた。

そこでバリヤーは解除され、岸辺に横たわるハジメ達まだ意識は

戻ってない様だ。そこにハジメ達に何かが近付いてくる。

ナノマシン達は自主的に守るためそれに対して行動する。

 

 

「・・・・・んっ⁉︎ここは?確か橋から落ちて・・・はっ

経緯子ちゃん?白崎さん?」

 

意識の戻ったハジメは二人をすぐ探そうと起き上がろうとするが、

その必要もなくハジメの両側に倒れていた。二人ともまだ意識は戻ってない様だが、

胸は規則正しく上下しており、見たところ外傷もなそうな事に

ほっと一息つくハジメだが、体を起こし首を巡らせると

 

「ヒャッ⁉︎」

 

と思わず声を上げる。なぜならハジメ達の側、川と反対側

よく見ると奥に続く通路が見える方向に魔物が二体倒れていた。

二本の白い尻尾ある狼のような魔物だ。無傷に見えるが、2匹とも

額に半径5センチ程の穴が空いていた。血は流れおらず傷は炭化しており

何かで焼かれたようだ。レーザー光線で焼かれたら、ああなるのかなとハジメは考えた。

 

「・・・んっ」  「うぅ・・ん」

 

「経緯子ちゃん、白崎さん」

 

「ハジメちゃん」 「南雲くん」

 

「二人とも体は? 痛い所はない?」

 

「私は大丈夫。香織さんは魔法で吹き飛ばされからどこかけがしてない?」

 

「不思議と痛みもけがも消えたみたい。ココは何処なのかな?」

 

「迷宮の下層だとは思う。そこに死んでる魔物を図鑑で見た事が無いから

かなり下に落ちて流されたはずだよ」

 

「「ヒッ」」

 

と魔物の死骸を見て悲鳴を上げる経緯子と香織を見てハジメは

死骸をこのまま置いておくのも精神衛生状よくないので

とりあえず収納魔法で回収した。

 

「私たちがけが一つせず。無事なのはナノちゃんたちが守ってくれたからみたいだし」

 

「私のけがも治してくれたみたい、ナノちゃんには感謝かな」

 

「僕たちに近付いた魔物を倒してくた」

 

と各々が言った後、三人は顔を見合わせ肯くと揃って

 

「「「ナノちゃん(さん)守ってくれてありがとう」」」

 

と返事がないのは分かっていても、お礼だけは言っておきたかった。

 

 

そのあとハジメ達は川の水を経緯子が鑑定し飲料に問題無しとでたので、

錬成を使い川辺の石で容器を作り水をくんで収納、奥に続く通路に入っていく

低層の四角い通路ではなく人の手が入ってないように見える。

自然の洞窟そのものといった感じだ。

しかし通路そのものはかなり広く道幅は低層の4、5倍ありそうだ。

 

整地などされておらず、歩きにくいが身を隠す所は豊富にあり

ハジメ達は周囲を警戒しながら物陰から物陰へ慎重に進んで行く。

 

三人が疲労を感じ始める程、進むと目の前に分かれ道が現れる。

三方向に分かれおり、ハジメ達は手近な岩に隠れどの道に進むか話してると

視界の端で何かが動いた気がして慌てて三人は頭を低くする。

ハジメは顔を少し出し様子を伺うと中央の通路に白い毛玉が跳ねていた。

ウサギだった、但し大きさは中型犬くらいあり後ろ足が異様に発達している。

赤黒い線が血管のよう幾本も体に走っており、それが脈動どしているのが、

なんとも不気味だった。今まで見た魔物と比べてもあきらかにヤバイ魔物に感じる。

 

とにかく中央の道は避け、ウサギの位置から右の通路が見つかりにくそうだ。

ハジメ達はウサギが後ろをみたとき、岩影から飛びだしだが、

ウサギはハジメ達に気づいたのか、振り向き「キュウ」と鳴くと

飛び上がり、空中を蹴って近づいてくる。そしてさらにそのまま空中でより高く飛び

体を一回転させ天井を蹴りハジメに向かって飛び蹴りをしてくる。

ハジメが避けらないと身構えると

 

「“聖絶”」

 

香織が結界を張りなんとか逸らすことができるも、ウサギが着地した所は陥没しており。

もう一度蹴りをくらえば次は無理そうだ。ハジメたち三人がウサギと睨み合っていると

いきなりウサギが耳をせわしなく動かし始め、ハジメ達を無視して振り向き

ウサギの体が震えて始める。なにかとハジメ達はウサギの向いてる方向

自分たちが逃げ込もうとしていた通路の方を見る。

 

体長が2メートルはあるクマの様な魔物がいた。但し足元まで伸びた太くて長い腕に、

三十センチありそうな鋭い爪が三本生えている。熊の魔物、爪熊はウサギとハジメ達を

睥睨している。一匹と三人は硬直し動けない。爪熊が「グルッ」と唸るとウサギは

夢から覚めたように逃走を開始するが爪熊がウサギにに向かって腕を振るうと

直接爪が体に触れてないにもかかわらず

ウサギの体が両断される。爪熊は悠然とウサギの死骸に近づき、その長い爪を

フォークの様に突き刺し音をたて喰らい始める。その音にハジメ達は自らの

死に恐怖し爪熊の反対方向に走り出す。後少しで通路に入ろうとする時

最後尾を走っていたハジメがゴウッと風が唸る音と同時に強烈な衝撃が

ハジメの左側面を襲い壁に叩きつけられる。ふっと意識が一瞬とぶも

 

「「キャアアアァアア」」

 

と経緯子と香織の悲鳴が聞こえ意識が戻る。爪熊は何かを咀嚼していた

見覚えのある腕だった、なぜあんな所に答えはすぐにわかった

ハジメの左腕が肘から先が無かったのだ。

 

「あガァアアアア」

 

ハジメが絶叫を上げる。経緯子と香織はその光景に恐怖で

へたり込んでしまい動く事が出来ない。

 

その内ハジメの腕を食べ終えた熊爪がゆっくりとハジメ達に歩いてくる。

一気に切り裂こうとせず。魔物の肉と違いハジメの腕は旨かったのか

三人を無駄無く丸かじりするつもりなのかも知れない。

 

「いぎっ・・錬成」

 

ハジメは痛みと恐怖の中錬成を使い穴を開け自分たちを落とし

すぐに蓋をして。横穴を錬成で開け爪熊が床を掻く音に怯えてながら

ひたすら錬成を唱え奥へ奥へと進んで行く経緯子と香織も

ハジメの後ろを這って続く、いつしか錬成の声が聞こえなくなる。

気を失ったようだ。ハジメが錬成で手を伸ばした先には青く光る石が露出していた。

 

 

 

 

「ああ・・南雲くん目を開けて。経緯ちゃん・・治癒を魔法かけても・・

南雲くん、どんどん弱っていくよ・・」

 

左腕の切断面は香織の魔法で塞がれたが血が多く流れ過ぎたのか。

ハジメの呼吸は弱っていくばかりだ。

 

「香織さんこれを使えばハジメちゃんを助けられるかも」

 

と経緯子はコップに入った液体を見せる。

 

「経緯子ちゃんこれは?」

 

「そこの青く光る石から滲み出てる水、鑑定したら[神水]とでたの、伝説の霊薬らしいの・・・」

 

すぐハジメに飲まそうとするもハジメは飲み込め無い。経緯子はハジメの頭を起こし

コップの神水を口に含むとハジメの口を押し開け自分の口を重ねハジメの喉に

神水を流し込む。香織は経緯子の行為に呆気にとられるもハジメ呼吸が安定してきた事に

嗚咽をもらす。経緯子はハジメの頭を優しく抱きかかえていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

同じ頃地上では

ハジメ達が落ちた後、半狂乱になり叫び暴れてる雫を

メルドが当て身で意識を刈り取り、自ら雫を担ぎ

残りの生徒たち達を無事に迷宮から脱出させた。

 

今、生徒たちが泊まる宿の集会室で1人の生徒が

皆の前でトラップを作動させた事土下座し謝罪していた。

生徒たち達は宿に戻り落ち着くとハジメ達が落ちた原因である。

自分勝手な行動でトラップを作動させた。檜山を問い詰めていた。

ハジメだけで無く香織と経緯子の人気者の2人も

落ちたショックは大きかったのだ。三人に自分たちが助けられかつ

自分たちだけが助かった罪悪感に耐えられず糾弾せずいられなかったのだ。

 

「皆。檜山も充分に反省してるし。ワザとトラップ作動させたわけではないんだ。

これ以上責め無くても良いだろう?これから二人を助けに行く仲間なんだから」

 

と光輝が檜山を庇う発言をし、これで許そうとするが

 

「天之河!今の謝罪だけで檜山を許すの?経緯子に香織。それにな・・・南雲も

落ちたんだよ。コイツの自分勝手な行動のせいで!謝罪だけじゃケジメを付けさないと

きっと同じ事をする。それに目が覚めて無い雫や経緯子のお姉さんが帰ってきた時

にどう言えばいいの?」

 

優花が光輝に涙声になりながら詰め寄るも

 

「事故なんだから、彼1人に責任を負わせるのは良くないよ。園部さん」

 

「天之河・・南雲と経緯子だけじゃなく“香織”も落ちたのに簡単に許せるの?」

 

「香織と経緯子さんを早く助けに行かないと、皆で力を合わせる時だから

仲間同士許しあわないとダメだろ?」

 

「・・・・助ける?」

 

「そうだよ。園部さん2人は生きて助けを待っている!」

 

「・・・ン?(何?元々思い込み強かったけどココまで・・・?)」

 

と優花は光輝の言葉に得体の知れない何か感じ取るも、

気のせいの域を出ない。

結局、檜山の処分は自分たちだけでは無理なのでメルドや畑山先生に

任すしかないと、言う事で終わった。

 

 

                          

 

 

 

ハジメの腕は食われしまいました。

 

そして光輝は・・・言語理解は怖いです。頭が○ァになるかもだから、

ネタは置いといて彼は召喚された魔法陣の中心に居たのが思考が

あそこまで頑なになった原因かと考えたりするわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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13 闇の中の覚悟

5、6日に一回のペースで投稿がやっとです。

もう少し早くしたいですが出来ません。ヤバイですね。

 

プリコネのアニメ面白いです。ヤバイですね。

ていぼう日誌の大野センパイ眼鏡でポニテでデカくて

ストライクでヤバイですね。

 

では本編です。 

 

                           

 

 

 ピチョン

 

暗い穴の中、神水が錬成で作った桶の中に垂れる音がしている。

 

「うぐっう・・・うっ」

 

「ウウッ・・」

 

「ヒュグッ・・」

 

時折り男女のうめき声や嗚咽が混ざる。

ハジメ、経緯子、香織の声だ。

奈落の底に落ちてから一週間経っていた。

爪熊から逃がれたが錬成で造った横穴から動けずにいた。

爪熊に襲われたときハジメ達は生物としての根源的な恐怖

喰われると言う事に捕食者と非捕食者の絶対的上下関係に

心が折れてしまい抵抗する事を諦めてしまっていた。

水は川から汲んだのであるが、食糧は用意しておらず

ハジメは左腕を失った為の幻肢痛と飢餓感を神水を舐める事で和らげ

経緯子と香織も飢餓から神水を口に含むことをやめられず、

そのため意識が微睡みと強制的な覚醒を繰り返し、徐々にハジメ達の心を蝕んでいく。

 

(どうして南雲くんは苦しむの?私が守れなかったから?)

 

(なぜ守れなかった?アレが裏切った。どうして・・・あぁ、そうかぁ私なのかぁ)

 

(私から奪うために・・・()()()くんを・・・・守る

ハジメくんを傷つける全てのモノから。だから・・・2度と裏切りが無いように)

 

(ハジメくんを傷つけるモノは絶対に消す。潰そう。殺そう。・・・・そうすれば

守れるかな?・・・ハジメくん。・・・生きる・・・生きて・・・殺せな・・・・守る)

 

香織の心の底に鬼が棲みついた。

 

(・・・助けて・・お姉ちゃん・・・ハジメちゃんを)

 

(なぜ・・ハジメちゃんが苦しむの・・・私から奪うの)

 

(この世界も奪うの・・・私の大切な・・一緒に帰りたい)

 

(そう帰りたい・・ハジメちゃんと・・元の日々に)

 

(ハジメちゃんと一緒に帰りたい・・・帰る・・・帰って)

 

(好き・・・ハジメちゃんが好き・・離れるの嫌・・・)

 

(帰る・・お姉ちゃんの所に・・家に家族の・・帰る・・この世界がどうなっても

・・私は帰る・・・大切な人と一緒に・・)

 

 

(奪うモノ・・邪魔するモノは敵・・敵は排除しよう・・排除・・排除)

 

経緯子はハジメに対する気持ちを、

そして帰れるなら、世界を切り捨てると決意する。

 

 

(経緯子ちゃんと白崎さんがなぜ苦しまなきゃいけない)

 

(僕が彼女達が・・・原因はなんだ)

 

(神が理不尽に誘拐した・・・・)

 

(クラスメイトが裏切った・・・)

 

(僕の手は喰われた・・・)

 

ハジメは敵を求めた。理不尽に飢餓や痛みを与えるものはナニか?

 

(誰も助けてくれない・・・)

 

(この苦痛を消せるなら)

 

(・・・・・生きたい。なら・・)

 

(()を邪魔するもの・・・敵は・・・)

 

ハジメの心の中が黒く染まり始め、不要なモノを捨てようとした時

経緯子のうわ言が耳に入る。

 

「帰りたい・・・ハジメちゃんとお姉ちゃんの・・・」

 

「経緯子ちゃん・・そうだ。お・・僕は」

 

ハジメは自分の両側に横たわる2人を首をめぐらして見る。

 

(白崎さん。僕を守ると言った女の子、僕を庇って一緒に落ちた女の子。

僕の事を優しくて強いと言ってくれた大切な女の子)

 

(経緯子ちゃん。僕が一番守りたい大切な女の子、そして僕が捨てずに来れたのは彼女がいたから。

学校でクラスの皆と関わりが持てたのは経緯子ちゃんが引き留めてくれたから。

だから僕は経緯子ちゃんが、一緒に帰りたいと言った“僕”をそして白崎さんが言ってくれた

優しさを捨てない)

 

ハジメは体を起こし、暗い思いを消すかのように頭を振ると

現状を打破するため考えをめぐらし、独言る。

 

「とにかく食糧をどうにかしないと・・今あるのは狼の魔物の肉だけだし

魔物の肉は毒だし・・もしかすると神水を使えば食えるかも・・・

僕だけなら賭けても良いけど。

彼女たちがいるし誰かに聞ければ、教えてナノさん?」

 

『なんでしょうか?ハジメ様』

 

「って返事があるわけが・・・エッ⁉︎返事がなんでや?」

 

『極限状態に追い詰められた事で、ハジメ様の思念波レベルが3に上がり

我々ナノマシンが質問に答えられるようになりました』

 

「そっかぁ(海里姉ちゃんは助けてくれてたんだよ)。早速聞きたいのだけど

神水使えば魔物の肉食べれるかな?」

 

『※解析中   はい。我々がサポートもしますので大丈夫です。

ただ最初は魔物の肉が体に与える影響のデータが少ない為

かなりの痛みをともなうと思われます』

 

答えを聞いたハジメは神水をコップに掬い、経緯子たちから少し離れた所で

収納していた二尾狼を出して食べるのに一番無難そうな太腿の肉をナイフで切り取る。

 

切り取った肉をハジメはしばらく見つめた後、意を決して生のまま噛り付く。

 

「うひぃ。堅いし・・マズ」

 

と悪態を吐きながらも飢えを満たすため咀嚼し飲み込んでいくハジメ。

そして空腹感が少し和らいだ時。

 

「あ?ーッ⁉︎ アギィイイ」

 

凄まじい痛みがハジメの全身を襲う。ハジメはすかさず神水を飲むも

 

「ぐぅああああ‼︎痛みが引かないぃい」

 

神水の効果なのか激痛で気を失うこともなく、

いつ終わるかわからない地獄にハジメは絶叫し転げ回っている。

 

「・・殺す・・守る・・あっ⁉︎」  「排除・・・はっ⁉︎」

 

「ハジメくん!」 「ハジメちゃん!」

 

「ひぎぃいいいい!アガガッアアアア」

 

経緯子と香織はハジメの絶叫で完全に心が堕ちる前に現実に引き戻される。

2人の間にいたはずのハジメが少し離れた所でのたうち回っている。

ハジメに近づき、その苦痛に耐える姿と肉体が変化していく様子に恐れ戸惑う。

2人の目の前でハジメの髪の色が抜け白くなり

所々血を吹き出しながら、その度体が大きく強く造り変えられていく。

身長が180センチ近くに伸び、筋肉量もかなり増え

服の下で見えないが赤黒い線が数本浮かび上がる。

 

香織が必死で治癒魔法を掛けるも効果が無く、

2人はハジメが苦痛に耐える姿を見守るしかなかった。

 

 

「うっ・・・」

 

いつ終わるかわからない苦痛からようやく開放されたハジメが目を開くと

 

「ハジメちゃん!ハジメちゃんのバカ!一人で無茶しないでとあんなに言ったのに!」

 

「そうだよ!ハジメくん!ハジメくんが痛がる姿を見るのはとても辛かったんだから!」

 

経緯子と香織に怒られた。

 

「うん。経緯子ちゃん、白崎さんごめんなさい。うぶっ!」

 

ハジメが謝罪の言葉が言い終わるやいなや、経緯子と香織の二人は

抱きつきハジメの名を繰り返しながら泣き続け、

ハジメは動くことも出来ず。気まずさと羞恥故に二人が泣き止むまで耐えていた。

 

 

 

「ハジメくん。大丈夫?痛くない?」

 

泣き止むまでハジメに抱きついてた恥ずかしさを

誤魔化すように香織が問いかける。

 

「幻肢痛も消えて、体も前より軽い感じがするよ」

 

「体が軽い?ハジメちゃんステータス確認してみて?」

 

経緯子に言われハジメがプレートをポケットから出してみると

 

==========================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

天職:錬成師

筋力:100

体力:300

耐性:100

敏捷:200

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成・技能 錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+錬成記憶][+錬成再生][+間接錬成]

   ・身体強化・超超超々微細機械補助・言語理解・※収納魔法アイテムボックス

    (隠蔽中)・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

 

==========================================

 

「・・なんでやねん」

 

と急成長したステータスを見て関西弁で突っ込み入れるハジメ

さらに技能が3個増えていた。とりあえず技能を検証してみる。

※魔力操作 詠唱せずとも錬成を行えた。

※胃酸強化 試しに魔物の肉をもう一度口にしたが痛みはこなかった。これで食べ物はどうにかなる。

※纏雷   言葉通り体に電気を纏わせる事が出来る。

どうやら魔物の肉を食べる事で、食べた魔物の固有魔法を習得出来るみたいだ。

 

一通りの検証が終わった後。経緯子と香織は

 

「「私も魔物の肉を食べる」」

 

ハジメは彼女達に自分が体験した地獄の様な苦痛を味わってもらいたくなかったが、

二人に食わないと奈落で生き延びる事が出来ないと言われしまうと認めるしかなかった。

 

二人は神水を入れたコップを片手に持ち、流石に生は嫌なのか火魔法で軽く炙った肉を

残った手で口に入れる。しばらく食べていると

 

「ひっぐ。グガガァァァアアア」

 

「うぅ?ギィギィヤアァアア」

 

二人は女性が出す声とは思えない叫びを上げ転げ回る。

そんな二人を見守ることしかできないハジメは

経緯子と香織も自分が苦痛で苦しんでる姿を見ていた時

今と同じ気持ちになってたと思うとさらに申し訳ない気持ちになる。

それ故にハジメは二人から目を背けず見守り続けた。

 

二人の肉体も変化していく。髪はハジメと同じように白くなり

性別の違いなのか身長は余り伸びず、代わりに女性としての

特徴が強調されていく。胸とお尻がワンサイズ大きくなり

腰はより括れ肉感的な美女に変わった。

 

やがて痛みもひき、多少息が荒いが二人はゆっくりと目を開けて

 

「ハァ・・ハァ 痛かったよ。覚悟はしてたけど、あんなに激しい痛みなんて

でもこれでハジメくんと一緒にいる事が出来るかな」

 

 

「フゥ・・・ハジメちゃん。あんなに激しいだなんて。体が何度壊れると

思ったかわからないよ。それでハジメちゃんに言っておきたい事があるの」

 

経緯子がハジメを正面か見つめる。その経緯子を見て香織が何かを察し

同じくハジメを見つめ

 

「私もハジメくんに伝えたい事があります」

 

ほぼ二人同時に

 

「「私はハジメ「ちゃん」「くん」が好きです。愛してます」」

 

二人に告白されたハジメは答える事が出来ないでいた。

 

(経緯子ちゃんも白崎さんも大切でどちらかなんて今、言えないよ)

 

経緯子と香織はそんなハジメのヘタレぐあいを察していたのか

 

「ハジメちゃん、今、返事しなくて良いよ。私が告白しておきたかっただけだし」

 

「私もかな。ただハジメくん。名前で呼んでくれないかな?」

 

「ハジメちゃん、私も呼んであげて良いと思うよ」

 

二人に名前で呼ぶように頼まれたハジメは告白に返答出来ない後ろめたさもあり

照れながら香織に

 

「これからは香織さんと呼ぶね」

 

「うん」

 

香織が幸せ一杯の笑みを浮べうなずく。

経緯子はその様子を微笑みを浮べ眺めていた。

昏い奈落の底で少しだけ明るい空気が流れていた。

 

 

                               

 

 

おまけ

 

ハジメ 「ナノさんと話せるようになったよ」

 

香織  「ハジメくん凄い!」

 

経緯子 「ハジメちゃんのナノちゃんはどんな子なの?」

 

ハジメ  (確か僕のイメージで変化するんだよな。趣味のメイ・・・!)

 

香織・経緯子 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ハジメ 「こ・・コレだよ」

 

二人の圧力にヘタレたハジメはテラホークスのゼロ軍曹に簡単な手が

付いたメカぽいものをイメージするのだった。(漫画版のナノちゃん)

 

 

補足

奈落に落ちましたハジメくんですが、飢えは、ともかく水はあるので渇きは

回避できたし経緯子と香織も一緒なので孤独感が薄いので何とか変心せずにすみました。

あと自分の考えですが原作で魔物の肉を食べた変化は脳機能にも少なからず影響を与え

魔物の攻撃的性格も受け継いだのではないかと本作のハジメくんはナノちゃんによって

脳機能は最優先で保護されました。

 

 

 

 

 



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14 帰ってきたお姉ちゃん

無料の校正アプリで少しは誤字脱字を減らしていければと

それでも見逃しは多いと思いますが。

前回のおまけのシーンを絵にしてみました。

 

【挿絵表示】

 

 

では本編を久々に海里がでます。

 

 

 

                 

 

 

 

奈落でハジメが自分の心を捨てないと誓った頃。

クラスメイト達はホルアドから王城に戻って来ていた。

 

鈴がトレイに食事を載せて廊下を歩いていると声をかけられる。

 

「谷口。それ雫の所に持っていく分か?」

 

「龍太郎、うん。シズシズ、部屋から出てこないから」

 

「俺と光輝は雫の所に行けないから、谷口と中村に任せて、すまない」

 

「いいよ。シズシズに龍太郎達が近づくの止められてるから」

 

今、龍太郎と光輝は雫に会うことを医師らから禁止されていた。

どうしてか、それは三日前、香織たちが落ちたショックで眠っていた

雫がようやく目覚めた時にさかのぼる。

 

その日も鈴と恵里は雫の眠るベッドの脇に座っていた。

 

「シズシズ、今日も目を覚さないのかな?」

 

「体には異常ないらしいけど、このままだと」

 

二人が雫を心配し話していると。雫の眉がピクッと動き、口から言葉がもれる。

 

「・・・うぅん ここは?」

 

「シズシズ!」 「目覚めたの雫ちゃん」

 

「あぅ・・鈴?恵里も?」

 

雫は体を起こそうとするも、うまく起こせない。

 

「シズシズは四日も寝てたんだよ。」

 

「四日も・・・そうだ香織は?経緯子に南雲くんはどこ?」

 

「雫ちゃん、三人ともいないわ」

 

「えっ?恵里それはどう言うこと?香織たちはベヒモスを抑えた後逃げ切ってそれで・・・」

 

「三人とも橋が崩れて落ちたのよ。雫ちゃんも見たでしょう」

 

「あっぁぁそうよ・・落ちた。落ちた。香織たちは落ちた。

・・・香織、経緯子、南雲くんは死んだ。どうして」

 

「どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうしてどうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして どうして・・・」

 

ぶつぶつと同じ言葉を繰り返す雫を、なにもできず鈴達は見ていると

やがて雫はどこを見ているかわからない虚ろな顔で言う。

 

「鈴、恵里?アイツは自分勝手の行動であのトラップを作動させた。

檜山は今どうしてるの?

それと南雲くんに魔法を撃ったのは誰?」

 

「シズシズ、檜山はね、自室謹慎中だよ」

 

「はぁ⁉︎それだけなの?」

 

「うん。故意でトラップを作動させたわけじゃないと、

光輝くんが擁護して謹慎だけですまされたの

それと南雲くん達が落ちる原因の魔法は誤爆で誰が撃ったのか

もし自分だと思うと怖くて追求してないんだよ」

 

「なによ⁉︎それは檜山は皆を危険にさらしたのよ。

それに香織も落ちたのに光輝はなぜ簡単に許せるの?

あの魔法は誤爆じゃない誰かが狙って撃ったものよ。

あの時、香織の視線は特定の魔法を追ってた。

だから南雲くんを庇えたのよ」

 

雫の言葉に恵里は驚愕し問う

 

「まさか?クラスメイトの誰かが故意に狙って撃ったの?

誰が?なんのために」

 

「たぶん犯人は・・・」

 

雫が恵里に自分の推理を述べようとしたとき

部屋の扉が開き光輝が龍太郎を伴って入ってくる。

 

「恵理、鈴。雫はまだ目覚め・・!  雫!目が覚めたのか!」

 

光輝が雫が起きている事に気づき近寄ろうとするも

 

「光輝ィイ!なぜ許したぁぁ!香織たちが落ちたのにィイ!」

 

雫が今まで光輝たちが見た事のない怒りの形相で叫ぶ。

その様に光輝は困惑しながら雫に答える。

 

「落ち着くんだ雫。あれは事故だし、

香織と経緯子さんは生きてる」

 

「⁉︎」

 

光輝をさらに睨みつける雫、ベッドから出て詰め寄ろうとするも

寝込んでいたためか、足に力が入らず。ベッドのわきにへたり込でしまう。

光輝が雫を立ち上がらせようと手を差し伸べるも

 

「わたしに触るな!生きてるなんて軽く言うな!

あんたは自分の都合ばかり!あの時も早くメルドさんの指示に従っていれば!

南雲くんに香織や経緯子が無茶しなくてすんだのに!」

 

雫の言葉に苦悶の表情を浮かべる龍太郎、彼も光輝と一緒に

指示に従わずベヒモスと戦おうとしていたからだ。

 

「どうして?あそこから落ちて生きてるなんて言えるの?

三人は死んだのよ!わたしの前から消えたの!それなのにあんたは!

それにあの時わたしも・・・・ちぐしょううう!」

 

その後も光輝たちが部屋を出て行くまで喚きちらす雫に

医師の指示で当面の間、光輝と龍太郎は面会を禁止する事となった。

場面は今に戻る。

 

「三人が落ちた。原因の一つが俺の行動だからな」

 

「・・・龍太郎は今からまた訓練を?」

 

「俺は、光輝みたいに三人が生きてるって信じきれないが、

あいつらの、なにかを見つけるためには強くなるしかないからな」

 

と答えると龍太郎は鈴と別れ訓練場に向かった。

 

「龍太郎・・」

  

 

雫は自室のベッドの上で上半身を起こし虚ろな目で座っている。

彼女が目覚め光輝たちに激しい怒りをぶつけ、それで心が燃え尽きてしまったのか。

彼らが部屋を出て行った後からずっと声をかけようがほぼ反応せず。

今の状態が続いていた。

 

「ほら雫ちゃん、鈴が食事を持ってきてくれたよ」

 

あの日から恵里と鈴は付きっきりで食事も取ろうとしない雫を世話していた。

 

「シズシズ、少しだけでも食べて」

 

「・・・・」

 

鈴は雫になんとか食べさせようとスープを掬った、

スプーンを雫の口に持っていくが、口を開こうとしない。

以前の凛々しさなど、みる影もない今の雫の姿に

鈴は泣きそうになる。

 

扉をノックする音が聞こえ、その音に続く言葉に

鈴たちだけでなく雫も反応する。

 

「海里です。八重樫さん、いいかな?入りますね」

 

予定より遅れて城に戻った海里は雫の様子を

聞いていたので、返事を待たず部屋に入る。

 

「海里さん」

 

「お姉さん」

 

「・・あっ」

 

海里は雫のベッドに近寄り雫の視線を合わせるため膝をおる。

雫のやつれ具合に海里は心を痛めながら

 

「八重樫さん、経緯子たちの事は聞いたわ」

 

「海里さん・・香織も経緯子・・南雲くんも落ちて。

死んだの 私一人になっちゃた」

 

「八重樫さん、経緯子たちは死んでないわ」

 

海里の言葉に雫はまなじりを上げる。

 

「海里さんも・・・あいつと同じような慰めを言うのですか?

あの高さから落ちて助かるはずが」

 

「八重樫さん。経緯子たちには誰がついてますか?」

 

「・・・⁉︎そうかナノちゃんたちが、海里さん香織たちは本当に生きてる」

 

「経緯子とハジメちゃんそれに白崎さんのナノちゃんたちから無事なのを確認したわ」

 

その言葉に雫の瞳に光が戻る。

 

「海里さん?今の香織たちの様子を知ることはできますか?」

 

「う〜ん少し待ってね」

 

(ナノちゃん?どうできる?)

 

『海里様。ここからだと距離があるのと、かなり深い所にいるらしく。

双方向は無理ですが、音声だけなら少し不明瞭ですが聞くことが可能です』

 

(それでいいから、この場に音声を再生して)

 

恵理と鈴が海里と雫の会話についていけずにいる中

部屋に女性の荒い息づかいが聞こえ始める。

 

「ハァ・・ハァ・・・痛かっ・・・あんな激しいなんて・・・ハジメくん・・・一緒に・・・」

 

「アッ・・・フゥ・・・ハジメちゃん・・・激しい・・・壊れる・・・」

 

「「・・好き・・愛して・・」」

 

 途切れ途切れの香織と経緯子の声が聞こえ

 

「カットォオオ!!」

 

海里の言葉で音声が切られる。

部屋がなんとも言えない空気に包まれ

海里、雫、鈴、恵理の四人は反応に困り沈黙していた。

それぞれの心の声は

 

鈴 (えっ?え〜カオリンたち登っちゃったの?階段をしかも三人なんてハードだよ)

 

恵里 (まさか生きてて関係がここまで進んでいるとは。でもこれで・・・)

 

雫 (にゃに?コレはアレでアレをしたの?親友の・・聞くなんて・・・

でも少し羨ましい・・・はぅ!私はなにを?)

 

海里 (あわわぁ。経緯子に先を越された・・私は海里とマイルで歳は三・・・

そうじゃなくて肉親のコレは反応の困る。ハジメちゃん、白崎さんもなんて

はっ!これがポーリンさんが言ってた濡れ場が必要ってことか!)

 

と盛大に誤解し混乱する海里たち。

しばらくすると雫は香織たちが生きていた事を

実感したのか涙をこぼし

 

「香織、経緯子、南雲くん生きてた・・ぐすっ」

 

鈴と恵里も雫に抱きつき三人の生存を泣きながら喜ぶ。

 

ひとしきり泣いた後、恵理が海里に質問する。

 

「あの海里さん、ナノちゃんって何ですか?」

 

少しの間、悩むも海里は

 

「超高性能のナノマシンの事、私はナノちゃんと愛称で呼んでるの

SFとかで聞いた事あるでしょう?」

 

この二人も雫が信頼してるようなので正直に答える。

 

「え〜ファンタジーからいきなりSFなの? 

世界観がブレブレだよ〜お姉さん」

 

「ほら鈴。混乱しない。そのナノマシン達が三人の側にいて

今も守っているから無事と言う訳なのですね」

 

「え〜と恵理さんだっけ?理解が早いね」

 

「中村恵里です。読書が好きで色々読んでるから・・・」

 

「谷口鈴です。よろしくね。お姉さん」

 

「中村さんに谷口さんね。できればナノちゃんの事は

この場だけことにしておいてほしいかな」

 

「そうですね。トータスの人達にナノマシンを理解することができないし。

余計な混乱をよぶことになりそうですから」

 

「じゃじゃ!カオリンたちが生きてる事も今は秘密にするの?」

 

「なぜ生きてることが、わかったのか説明出来ないし、仕方ないよ鈴」

 

「海里さん。香織たちの救出はどうするつもりなの」

 

「今、経緯子たちがいる所は迷宮のかなり深い所でどうも100層より下らしく

私でもすぐに行けそうにないの。だから今はナノちゃん達信じて

経緯子たちが自力で出てくるのを待つしかないの」

 

「そんないくらナノちゃんたちがいても、経緯子も南雲くんも戦闘職でないのに」

 

「八重樫さんナノちゃんたちが送ってくれた三人のバイタルデータだと勇者くん以上に強くなってるの」

 

「!」

 

海里の言葉に雫はなにか決心したのか

 

「私!もっと強くなります。海里さん頼ってもいいですか?」

 

海里は雫の言葉にすこし迷いながらも答える。

 

「できる事は手伝うよ八重樫さん」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

バタン!

 

海里は自室に戻ると結界を張り床にしゃがみ込む

 

「ううっ経緯子ぉお・・ハジメちゃんぁああんうわーん」

 

自分の甘さと不甲斐なさに号泣する海里

涙が枯れるほど泣いたあと

 

(ナノちゃん!経緯子たちの専属ナノちゃんに出来るだけ三人を守るように伝えてお願い)

 

とナノちゃんに頼む海里だった。

 

 

                   

 

おまけ

ハジメたち専属ナノマシン会議開催

 

『海里様からなにをおいても守る事を命令された』

 

『これで腕を切られるなどと失態をおかさずにすむ』

 

『海里様に付いている奴にバカにされたからなぁ』

 

『でもこれからは』

 

『攻撃は・・・』

 

『『『『防ぐ!!』』』

 

『敵は・・・』

 

『『『『潰す!!』』』』

 

『『『ぐっはははははは』』』

 

ハジメたちは知らないうちに強化されるのだ悪ノリで。

 

 

 

※雫は頼る事ができた三人が落ちたせいでかなり不安定になりました。

次回は奈落のハジメたちの様子と地上との半々ぐらいかな。

 

 

 

 



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15 現状打破に向けて

今回はほぼ状況説明です。

 

                              

 

 

 

 

まずは地上、教会や王国でのハジメ、経緯子、香織の

現在の扱いを記すと。

迷宮でいきなりエヒト神に呼ばれた神の使徒、勇者の仲間が

三人も失うという事態に特に教会は自分たちの権威が低下するのを恐れた。

一緒に落ちた三人の内、戦闘職でないハジメと経緯子が香織を

巻き込んで落ちたとして二人をおとしめ批判をかわすべきとの

意見も出たが、教皇イシュタル自らその意見を却下した。

ただそれは同情とかでなく、ハジメと経緯子の二人を故意に

批判したと自分を踏み付けた、海里が知ったら何をするかわからず

警戒したのだ。

なので勇者が成長するための試練であり。落ちた勇者の仲間の

救出に全力で協力することこそ神の意思であると発表したのだ。

 

一方、王国側では落ちたのが、戦闘力の無いハジメと経緯子なのが

不幸中の幸いと一部の貴族から批判的な言葉がでるもすぐに収まる。

なぜならハジメと経緯子が再現した地球の美容用品、シャンプーやリンス

以外にもクラスメイトの妙子等が携帯の化粧品入れのポーチを昼休みに

直すつもりでポケットに入れたまま転移したため本人らの希望もあり

スティックタイプのリップ、(トータスでは紅を水で溶いて使うタイプ)

やまつ毛を上向きに反らせるピューラーなどを経緯子が成分解析し

再現そしてハジメが道具や容器を複製した物が、

貴族の奥方の間で流行していたので悪く言えなかったのだ。どこの世界も

女性の美に対する欲求は強くそれに旦那は逆らうことができないのである。

ちなみに海里や経緯子と親しかったリリアーナは化粧品よりも

ハジメが再現したガラスペンが一度インクにつけると羽根ペンの何倍も

文字が書ける事に、これで仕事が捗ると大変良い笑顔で喜んでいた。

 

こうなると迷宮でトラップを作動させた。檜山に批判の矛先が向かう事と

なり厳罰をと言う声も高まるが、勇者である光輝が檜山が十分に反省してると

かばったのと教会側も厳罰に処す事で生徒たちをこれ以上萎縮させる事を

嫌ったため、十日程の自室謹慎で済まされたのだ。

以上が海里が王城に戻ってきた時の地上の様子であった。

 

 

畑山愛子は自分が農村を巡っている間に三人の生徒が迷宮での訓練で

行方不明(教会発表)にショックを受け寝込んでしまっている。

海里はそんな愛子の部屋を訪ねていた。

ベッドの上で愛子は上半身を起こし海里に申し訳なさそうに言う。

 

「すみません。情け無い姿を見せてしまい。栗原さん達が居なくなった事に

海里さんの方がショックが大きい筈なのに・・・」

 

「私なら大丈夫とは言えないですけど、

それはともかく経緯子にハジメちゃん、白崎さん、全員が生きてます。

なぜわかったのかは詳しく言えませんが。

無事なのは真実です私を信じて下さい」

 

「・・・肉親の海里さんが言うのなら、

生きてる事を教会や生徒の皆さんに教えたのですか?」

 

「八重樫さんと中村さん谷口さんの三人だけですね。

 彼女たちにも、ほかの人に話さないように言ってあります」

 

「そうですか。生きてると分かれば救出という名目で

戦いに駆り出せれる事になりそうです。心情的にも反対しにくいですし」

 

「畑山先生、今はまだ戦う事を拒否している生徒さん達に

教会や王国はやんわりと戦線復帰を促してるだけですが

いつ強行手段にでるかわかりません」

 

 

などと海里と話す内に愛子は生徒を守る教師の顔になっていき

そしてベッドの上で立ち上がり宣言する。

 

「今から!教会や国と交渉します!」

 

 

その後、愛子は不退転の決意をもって

戦争を拒否している生徒たちに戦いを強制するなら

自分は作農師として教会及び王国には協力しないと発言。

教会等側も愛子の作農師としての能力は検証結果から

愛子の協力が無いと戦争継続能力にかなりの違いが出るため

愛子の要望を受け入れる。なお海里は終始、愛子の後ろから

教会関係者に睨みをきかせており。

海里自身は愛子から離れ、これからは勇者等迷宮攻略組と

ともに迷宮に潜ると言った。教会側としても肉親の捜索と

言われると反対できず認めるしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ヒュンッと風切り音がする。雫が訓練場の片隅で型稽古していた。

何回か感触を確かめるように刀を振ると鞘に収め「ふうっ」と息を吐く。

 

(やはり一週間近く寝てたら思ったより鈍ってるわ)

 

軽く目を閉じ今の動きを頭の中で反芻している雫に声が掛かる。

 

「雫。ちょっといいかな」

 

「んっ優花?なに?」

 

と言い優花が雫に近づいてくる。親しげに話してるように聞こえるが

実は地球では同じクラスメイトというぐらいで接点はなかったのだが、

トータスに召喚され、また地球に残されたクラスメイトもいるためか

召喚された女生徒たちは仲間意識が強くなり

全員が地球にいた頃に比べて親しくなっていた。

 

「あのさぁ?経緯子のお姉さん城に帰って来たのよね?」

 

「うん。そうだけど、なにか海里さんに話?」

 

「話というか顔が会わせづらくて、実は私さぁ南雲に

迷宮で2度も助けられたのよ」

 

「二度?」

 

「一つはベヒモスのことだけど、その前に骸骨に殺されてそうになって

そのとき南雲が錬成でアイツらを橋から落として助けてくれたの」

 

「そんな事があったのね」

 

「なのに南雲たちが落ちた時何も出来なくて・・・

南雲に礼を言いたいのに、助けくれてありがとうと言いたいのに。

だから海里さんにどう・・・会えばいいのかわからないの・・・」

 

と最後のほうはその時のことを思い出したのか優花の声は震えていた。

同じく無力さを感じたのは雫もなので短く「そう・・」と答える。

短い沈黙の後、優花が雫に問いかける。

 

「雫はどうして立ち直れたの?鈴達からかなり酷かったって

聞いてたから、海里さんと会って何かあったの?」

 

「何かって言うか・・・私また迷宮を探索しようと思う」

 

「まさか雫。あなたまで三人が生きてるって思ってるんじゃ⁉︎」

 

真実を話せない雫はその答えと言わんばかりと優花を真っすぐに見つめる。

優花は小さい頃から実家の洋食屋の看板娘として手伝ってきたので

人を見る目はそれなりに養ってきたつもりだ。

そんな優花が今の雫を観るにまだやつれてはいるが、その瞳には

確固とした意志の光がみえる。それに優花はまさかと思いつつも、

その口から出た言葉は

 

「希望を持っていいのね?なら私も前に進もうと思う」

 

ここにまた一人の少女が自分の心を奮い立たせる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

奈落 一匹の魔物、蹴り兎が何かを探るように

耳をせわしなく動かしている。

ピクッと何かを見つけたのか耳が一方向へ向き止まる。

その瞬間蹴り兎の頭が弾け飛び体が力を失い倒れる。

そして亡骸に近づく二つの影があった。

 

「フフフ。改良したコレなら楽に狩れるわ」

 

「そうだね。経緯子ちゃん、今日のご飯も狩れたし

ハジメくんの所に戻ろうかな。んっ収納」

 

と蹴り兎の死骸をアイテムボックス(収納魔法)に入れるのは

メイスらしきものを手にした香織だった。

その横には経緯子が立っている。

彼女は左手に長さ三十センチ程の筒が付いた

ポケットタイプのスリングショットを持っている。

コレはアイテムボックスに入れていた予備のチューブを使い

ポケットタイプに改造してその先端部に脱着が可能な金属製の筒を

取り付けたものだ。なぜわざわざ筒を取り付けたのか

それは魔物を食べて身に付けた技能“續雷”を使うことで

金属製の筒の中に電磁界を発生させ打ち出した金属球を

誘導、加速させる事で簡易なレールガンとなるのだ

普通なら球の装填は筒が付いてるために面倒なのだが

経緯子ならチューブの内側にアイテムボックスから

出すことができるので問題がない。

 

二人は周囲を警戒しながら、しばらく歩くと立ち止まり壁の一部をずらす。

すると人が屈んで入る事ができる穴が現れる。

二人はその穴に入りずらした壁を戻し入り口を塞ぐと

前に進むすぐに教室ぐらいの広さのある空間に出た所で

 

バアァン

 

轟音が響く。音の先にはトータスで見る筈の無い物

地球で知識はあっても実物を見ることはない

拳銃を右手に構えているハジメがいた。

 

「ハジメちゃん!完成したのね」

 

「うん。なんとか完成したよ。リボルバー式拳銃“ドンナー”が!」

 

と得意げにハジメが答えると香織が首をかしげ言う

 

「ド・・ドンナー?」

 

そして経緯子はハジメを優しい目でポツリと一言。

 

「ハジメちゃんだし」

 

その言葉にダメージを受けたハジメは「テンションが・・・愛着が」

とかぶつぶつ言う。香織が「うん。カッコイイよ」とか言って

励ますつもりで追い打ちかけたりしている。

三人がいる教室並み広さのある場所は実は

ハジメ達が最初に避難した横穴をハジメ調子にのって

ここまで広げたものだった。

なぜそうなったか、逃げ込むために造った穴は狭すぎたため

ハジメが錬成で拡げていると地上で見た事の無い鉱石を堀り出し

派生技能の“鉱物系鑑定”を使ってみると

 

 

==================================

 

燃焼石

 

可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。

 

=================================

 

 

==================================

 

タウル鉱石

 

黒色で硬い鉱石。硬度8(10段階評価で10が一番硬い)。衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。

 

==================================

 

 

この二つの鑑定結果を見た時ハジメの頭にある物が再現出来るのでは

「地球を舐めんなファンタジーする」事が可能かもと浮かぶ。

ついでに緑光石も鑑定してみると

 

==================================

 

緑光石

 

魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。

 

また魔力を溜め込んだ状態で割ると、溜めていた分の光を一瞬で放出する。

 

==================================

 

と出て地球で使用されている物を再現するのに使えそうだ。

 

それからのハジメは収納に困らない事から掘りまくり広げまくりで

大量の鉱石を手に入れ、ここまで穴が広がったのだ。

その途中で[+鉱物系探査]という技能を手に入れる事ができた。

それらを使い地球で人が最強となった象徴でもある銃の再現に挑んだ。

ハジメも銃の仕組みは知っていても当たり前だが設計など素人である。

何十回と試作を繰り返す。ナノさんのサポートがなければ

更にこの何倍も失敗をしたであろうが、そして完成したのが

タウル鉱石製六連リボルバー式拳銃“ドンナー”である。

ドンナーも“續雷”を使いレールガン化する事ができ最大威力は

対物ライフルの十倍を軽く上回る。

 

「これで攻撃力はカバーできるはずだよ。

だからここで使いこなす訓練してから迷宮の探索に出ようと思うけど」

 

立ち直ったハジメが二人に話す。

 

「そうだねハジメちゃん。このまま救助を待つ訳にいかないし。

お姉ちゃんでもさすがに、ここまですぐに来れないだろうし」

 

ちなみに経緯子たちは海里と連絡は取れないが自分達が生きてる事を

海里がナノマシン経緯で知っているであろうと察している。

と経緯子が答え香織が続く

 

「うん。そして三人で地上に出よう」

 

とハジメたちは真のオルクス大迷宮の攻略の準備に入るのだった。

 

 

 

 

 

                             

 

 

原作でも召喚された人数は明言されて無かったので

名前のわかるクラスメイトだけ召喚に巻き込まれた事に

しました。多分もう何人かいると思うけど

描写できないので絞りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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16 再挑戦!裏と表の大迷宮

今回は海里がはっちゃけます。

でも鼻つまみでないし華の落ちこぼれでもないよ。

と古いネタがでてきますので悪しからず。

 

では本編です。

 

 

                    

 

 

海里は王都で一週間過ごした後、ホルアドの街に来ていた。

生徒たちが再びオルクス大迷宮に挑むからである。

前回と違い光輝組、檜山組、永山組の三パーティだけで

園部組は参加していない。そこに海里と雫がペアで同行する。

光輝は海里と雫を自分のパーティに入れたいみたいだが、

さすがに雫のアノ時の剣幕を知っている恵理と鈴から

今すぐは無理と止められた。

檜山のパーティは検討に値せず。永山のパーティは清水が

とある理由で抜けたとは言えバランスも連携もとれてるので

無理に入る必要も無い。

なのでオールラウンダーである海里と

前衛で切り込み役である雫が

多少バランスが悪くともペアで行動する事になった。

 

という事で今、生徒たちと共に海里は迷宮の入り口に立っている。

 

「ここが地獄の冒険者養成施設。通称“オルクスの穴”ね」

 

「海里さん?なにその胡散臭い呼び名は?」

 

「雫さん!(※海里は雫から名前で呼ぶように頼まれた)あなたは!

虎よ虎になるのよ!」

 

「覆面はかぶらないわ!」

 

雫は懐かしのTV特集なので元ネタを知ってるのか海里に突っ込む。

と海里は今迄のストレスからか、初っ端からおっさんネタに走っている。

 

 

ともかく前回と同じくメルド等騎士団に率いられ

迷宮に入った海里と生徒たち。

しばらく歩くと大胸筋を見せびらかすラットマンが現れる。

海里は迷宮に潜るのは今回が初めてなのでメルドが

 

「海里。おまえの魔法剣士の力を見せてもらっていいか?」

 

その言葉にうなずくと海里はラットマンの前にでる。

ラットマンが海里に殴りかかってくるが、海里はそれを横にステップして躱すと

腕をクロスさせた後、己の額付近に右の拳を逆手に構え左の拳は腰に添えて

 

「飛竜!三段蹴り!」

 

と叫ぶとラットマンの肩に飛び蹴りをしその反動で空中で一回転し

今度は頭を蹴り再びそのまま空中で一回転最後は胸に蹴りを入れ

ラットマンを蹴り飛ばした。現実にこの様な動きは不可能だが

海里にはナノちゃん由来の重力魔法があるのでそれで再現した。

おまえの魔法で無く「おまえの空手をみせてやる」海里である。

 

引き続き下層へと進んでいくと、今後はハジメ達も戦ったモーザドックが

数十匹の群れで現れる。手を貸そうとする生徒たちを海里は制すと

一人でモーザドックの群れに突っ込む。襲いかかってくるモーザドック達を

パチンコ玉大の鉄球を指で弾くいわゆる指弾である。右に左に指を弾く度に

モーザドックは倒れていく。あるときは片手を背中に回し反対の手で弾き

そしてステップを踏みながら両手でリズムをとるように腕を振りながら弾き

最後に腕を正面と背中に回しそれぞれ違う目標に弾き終わらせてた。

その素晴らしきダンスな戦い方に遠藤という名の生徒は何か

己の琴線に触れるものがあった。

 

そして二十階層に辿りつく。次の階に降りる階段を目指して歩いていると

海里の頭頂部の髪が垂直に立ついわゆる妖怪アンテナである。

間をおかず壁に擬態していたロックマウントがわらわらと姿をあらわす。

ロックマウントは海里に向け咆哮を上げようとするが、それより速く海里が

 

「ウー ヤー ター!!」

 

と叫ぶとロックマウントたちは地震にあったかのように揺れその後、硬直する。

説明しよう。コレは海里の26の秘密のひとつ[ミラクルボイス]である。

前方の空間を超高速振動させ敵の体内に振動伝播させ陸奥圓明流の

無空波のように内部から麻痺させる技だ。

海里は側にいる岩に擬態したまま硬直している、ロックマウントを

持ち上げるとそれを全力で硬直し動けないロックマウントの群れに投げつける。

ストライクだ。これが魔法剣士の力とドヤってる海里を見た生徒たちは

 

(魔法も剣も使ってねぇ⁉︎)

 

と心で突っ込みを入れる。経緯子たちが居なくなったストレスをやりたい放題の

ネタを魔物たちにぶつけて海里はスッキリした顔していたが。

ある方向の迷宮の壁を見たとき表情を強張らせる。

そこは迷宮の修復機能でグランツ鉱石は隠れているが

騎士団によって注意を促すマーキングがされているトラップが隠れてる所だ。

海里はその一角を立ち止まり凝視していた。

そんな海里の胸中を察して雫は気にかけるように言葉を漏らす。

 

「海里さん・・・・」

 

 

 

その後階段の手前まで進んで降りる前に小休止を取ることになった。

雫が海里に小言で話しかけてる。

 

「あの〜海里さん・・・付いて来てくれませんか?」

 

これはお花摘みにという事である。迷宮内にトイレなど無いので

物陰でとなるのだが一人だと魔物がいるために危険なので最低でも

安全のため二人で行く事になっている。

 

「雫さん。任せて良い物があるわ」

 

と海里は高さ2メートル縦横1メートルぐらいの

長方形のボックスを収納魔法で取り出す。

これこそ海里謹製[ベヒモスが踏んでも壊れない移動要塞型トイレ]だ。

これに女生徒たちは海里に感謝し喜んだ。

男子?その辺で立ってすれば良いのだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

海里がやりたい放題してたころの王城の訓練場

シュバッ! 一本のナイフが空気を切り裂き進む。その先には

剣を構えた騎士が立っていた。目の前に迫ったナイフを横薙ぎに

払うとナイフが飛んできた方向へ走り出す。二本、三本と続いて

飛んで来るが、剣で払わず軽く左右にステップし躱し走る速度を

ほとんど落さずに前進しナイフを投げた人物を剣の間合いに捉える。

上段に振りかぶり剣を件の人物の頭をめがけ振り下ろす。

頭上に迫る剣にビクッと硬直してしまうその人物。しかし騎士の剣は

そのまま振り下ろされず、頭頂部スレスレの所で止められる。

 

「はい!ここまでです。優花様」

 

騎士は女性であった。彼女の名前はクゼリー・レイル、怜悧な目元そして

キリッとした眉と引き締まった口元と髪はセンターより少し左側で分けた

金髪ストレートで実直さが表に出ている美人だ。

彼女は女生徒達の訓練を担当する女騎士のまとめ役を任され

メルドの信頼も篤い優秀な人物である。

 

「ふぅ〜 ありがとうございました」

 

礼を言う優花にクゼリーは今の模擬戦の感想を述べる。

 

「投擲の精度は流石天職持ちですが。ナイフの軌道がストレートで

読みやすいです。フェイントやナイフの速度に変化をつけてみればと

後は斬りつけられた時、体が固まってしまうのはいただけません」

 

「迷宮での事を思い出して」

 

優花はトラウムソルジャーに頭を叩き割られかけたのが

どうしてフラッシュバックし固まってしまう。

 

「私・・ダメなのかな恐怖に勝てないや。助けもらったのに

アイツに次は大丈夫と言いたいのに・・・」

 

「優花様、一度覚えた恐怖は中々消えません。焦ってはだめですよ。

それにこうして訓練して前に進もうとする気持ちが有れば大丈夫ですよ」

 

「う〜んでもさぁ」

 

「“アイツ”とはもしかするとハジメ様のことですか?」

 

「うん。非戦闘職の無力だと言われてたのに南雲は皆の前に立って動いたのに

私は戦う力があるのに未だに戦えない」

 

クゼリーは思う彼、南雲ハジメ事。あの時クゼリーも迷宮の訓練に女生徒の

お守り役として参加していたが、あのナョッとした少年の活躍が

なければ無事に戻って来れたか分からない、教会は勇者光輝が生きてると

公言しているので救出に全力で当たると言ってるがクゼリー本人は

教会の権威を落とさないため方便だと思っている。

なので優花に他の者に聞かれたら騎士としては不味い質問をしてみる。

 

「優花様は再会を勇者の言葉信じているのですか?」

 

「天之河の?それはないわ〜アイツは無意識かワザとか

分からないけど南雲の事は省いてるし!」

 

優花の答えにクゼリーは優花の願望

自分のに都合の良い現実として見ているなら

人はあっさりと死ぬとありふれた事実に再び

さらされた時、優花はあぶないのでないかと思う。

 

「では何を信じてるのですか優花様は?」

 

「経緯子のお姉さん、海里さんだと思う

海里さんが戻って雫も立ち直ったから

だからきっと会えると思ってる」

 

(なるほど海里様ですか、彼女ならもしかしてと)

 

「海里様が“生きている”と言われたのですか?」

 

「ううん、海里さんは言ってないと思う・・・」

 

優花は言葉を濁す。優花はまだ海里に話しかける事ができずにいた。

 

「でも・・・雫や海里さんを見かけた感じからそうなのかなと」

 

「そうですか。ハジメ様がうらやましいですね。優花様が再会を

信じてこんなに頑張っているのですから?」

 

「イヤイヤ!クゼリーさん!南雲だけじゃないし!

経緯子と香織も会いたいしさぁ!このままだと自分が

悔しいから訓練してもらってるだけだから!」

 

「はい。わかりました。今日はここまでにしておきましょう」

 

とクゼリーは訓練を切り上げるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

奈落、真のオルクス大迷宮の中を三つの影が空を駆けていた。

ハジメ、経緯子、香織の三人である。

彼らは蹴り兎を食べる事で天歩[+縮地]・[+空力]という技能を得た。

[+縮地]は良く格闘漫画で出くるような強く踏み込む事で間合いを詰める

事が出来る派生技能で連続で使えば目にも止まらぬ速さで移動可能だ。

 

面白いのは[+空力]でコレは空中に足場を某結界師の結界の

様なものを作りその上に立つ事で短時間だが空に浮かぶ事が出来る。

 

これらの技能を使いこなすのにハジメ達は苦労した。

ハジメの造りだした拠点の天井に頭をぶつけ

時には床に顔からダイブし何度も見せられないよ状態になりかけ

その治療のため香織の技能に[+高速治療]・[+精密診療]の技能が

増えるぐらい痛い目にあったが、そのおかげで今は

完全に技能を三人共使いこなしてている。

 

ハジメ達は会得した技能を十全に活用して迷宮の壁をけり

時には空力で空中に足場を作り迷宮内を高速で目的のものを

探していた。経緯子がハジメと香織に立ち止まる様にハンドサインを出す。

経緯子の探査魔法に引っかかった様だ。思念波の同調レベルの関係から

海里の妹の経緯子が三人の中で探査魔法の範囲が広く斥候役を担うことが多い。

目的のもの“爪熊”を見つける。探査魔法を使ってなので爪熊は

ハジメ達に気が付いていない。ハジメ達はすぐに爪熊に仕掛けず

迷宮の闇に紛れる。

 

爪熊は餌を探していた。爪熊の鼻がなにか嗅ぎ取り鼻の穴が広がり

爪熊はその臭いに喜ぶなぜなら前に食べたご馳走と同じ臭いだからだ

臭いのする方向へ向かって迷宮の通路を悠然と進むと四つ路に

別れた所に出る。爪熊はもう覚えてないがここはハジメ達が

爪熊に襲われハジメの腕が喰われ所だ。爪熊のいる通路の正面の

道の入り口に前に食い損ねた獲物がいたハジメである。

 

(かかったね。僕達は生き物としてお前に屈したけど今からヒトらしく

お前を狩って先に行かせてもらうよ)

 

ハジメ達は迷宮を探索する前に爪熊との因縁を自分たちが乗り越える

最初の壁であると考え前に進むため爪熊を狩ることに決めたのだ。

 

ハジメの前に赤い液体が入った皿が置かれたいた。

この皿には経緯子がハジメの血を解析し新たに得た技能[+成分合成]

を使いハジメの血の匂いがする液体を入れてある。

 

最初に爪熊見つけた後この場所に誘い出すため用意していたものだ

これをハジメが微風の魔法(ナノちゃんのおかげでハジメも弱い魔法は使える)

で血の匂いを爪熊の通路に送りこうして誘いだしたのだ。

 

爪熊がこの階層では敵う者など言わんとばかりにハジメに

ゆっくりと近づいて来る。ハジメとの距離が10メートルに近づいた時

ハジメが呟く

 

「慢心だね」

 

と同時に爪熊の足元にポッカリと穴が空く前もってハジメが錬成で

穴を開けて蓋だけしておき、今また錬成で蓋を消したのだ。

穴に落ちた爪熊に天井から瓶が投げ入れられる。

爪熊の頭に当たると瓶が割れ赤い粉が飛び散り

穴の中で爪熊が転げ回る。この粉はアイテムボックスに残っていた

カプサイシンの液を乾燥させた物だ、所謂熊避けスプレーの中味だ。

爪熊がなんとか穴から這い出そう穴の縁に爪をかけた時、

ザッシュと手首が切断される。

 

「コレでおあいこかな。ちゃんと手は食べてあげるからね」

 

天井の陰に隠れてた香織が降り立ち手にしているロッドの先端に

”光刃“出現させ切り落としたのだ。

ハジメの隣に同じく天井に隠れて薬品の容器を落とした経緯子も

降り立ち、ハジメを真ん中に右に香織、左に経緯子と並び

三人はそれぞれドンナーとハジメが経緯子と香織に造り上げた

ドンナーより小振りな”ツヴァイ“と”ドライ“を構え

爪熊に狙いを定める。爪熊がハジメ達に風爪を飛ばそうとするも先に

 

ドバアァァンン   

 

と三発の銃声が重なり爪熊の頭を吹き飛ばした。

ハジメ達は獣を罠にはめ人らしく狩ったのである。

 

(自己満足だけど前に進むためケジメはつけられたかな)

 

とハジメ少し感傷にひったている側で

 

「経緯子ちゃん、熊の手ってどっちが美味しかったかな?

右手かな?左手かな?」

 

「香織さんあれはどちらかで蜂蜜を取るとかで美味いとかで

ここには蜂蜜なんてないからどっちも同じだよ」

 

と香織と経緯子はこの一週間程ですっかり狩ガールになってしまっていた。

ハジメ達は爪熊をアイテムボックスにしまい拠点に戻るのだった。

一休みすれば迷宮攻略に動き出すことを決意して。

 

 

 

 

                  

 

 

 

 

海里は迷宮の攻略に参加しました。

ハジメ達は原作と違い正面からでなく罠にかけ爪熊を倒しました。

ハジメに人として知恵を使い乗り越え欲しくてこうなりました。

 

あと優花のシーンがなぜか増える。自分は思ったよりハジメ✖️優花推し

なのかもしれない。優花がメインヒロインの話を書いてみたいけど、

どうメインに持っていくか今のところ思い浮かばないのでパスかな。

 

 

 

 

 

 

 

 



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17 めいきゅうの歩き方

迷宮攻略開始ですが。

スロースタートです。

 

 

 

 

               

 

 

 

 

 

 

かぽ〜ん 

 

 

この擬音で表す事柄すなわちお風呂である。

 

湯気で少し白く霞みがかる室内で

雫はしっとりとした黒髪を束ね上げあらわになったうなじは

ほんのり桜色に染まり濡れた後れ毛が張りついてる。

彼女はその猫科を思わせるしなやかな背中を丸め

長く引き締まった脚を湯船に下ろすと

程よい温かさが足元から全身にやんわりと伝わり雫は思わず

 

「んっふうっ」

 

弛緩していながら、どこか艶やかさを感じる声をもらす。

 

「エロッ!あざとエロッ!」

 

先に湯船につかっていた鈴が言う

その言葉を聞いた雫が頬を赤く染め

湯船に体を沈めながら

 

「鈴!エロってなによ⁉︎」

 

「シズシズの自覚無きエロさに鈴のリビドーが高まったのだ!

それを鎮めるため!お湯に浮いてるそのたわわを揉ませ・・ブッ」

 

「お風呂の中で暴れないの!鈴!」

 

鈴のセクハラは恵里の鈴への脳天チョップで止められる。

鈴は雫のたわわに未練の視線を向けながら己の頭を手でさすり

 

「ぐぬっう。恵里が鈴にチョップをかますとは

恵理?少しうかれてる?」

 

軽い発言が多いが他人の心の機敏に鋭い鈴の言葉に

恵里はトータスに来てから存外の幸運に恵まれ

無意識に警戒が薄くなった事に反省し

気持ちを引き締めなおすと話の矛先を変えるため

 

「ここが迷宮の中なんてまだ信じられないよね」

 

「うん。お姉さんすごすぎ」

 

恵里達の対面でボヘ〜と弛みきった顔で

湯船につかっている海里を見ながら

三人は先程の海里自身の非常識を思い返していた。

 

メルドら騎士団に引率されながら

生徒たちは魔物相手に訓練を続け

順調すぎるペースで下層へと降りて行った。

そして三十階層の開けた所にでた時メルドが

 

「今日はここで野営を行う。全員で手分けして準備にかかれ」

 

その言葉に生徒たちはホッとするが

 

「ううっ真央、体が汗でベタベタする」

 

「だね〜こんな所じゃシャツを替えて体を拭くぐらいが

せいぜいだよね〜綾子」

 

綾子が訓練で汗をかき、その不快感を言葉にし

どことなくのんびりとした口調で真央が返事している中

突然 ドスン! ドスン!と連続で何か

重量物を置く様な音が響く

音のした方向を見て全員が呆然とする。

 

なんという事でしょう。迷宮の壁沿いに

三棟のプレハブ小屋らしき物がいつの間にか建っておりました。

右から“湯” 、“女”、“ 男“と入り口のドアに書いてあった。

このプレハブ擬きは海里が万が一の逃亡用に作り上げたもので

マイルの世界と違いトータスでは自重も普通もよそおう事を

止めているので中の施設は現代的であり。

建物の強度はオークが百匹乗っても大丈夫だ。

 

そんなわけで雫達女生徒は迷宮の中で5、6人は

一緒に入れる浴槽にシャワーや石鹸、シャンプー完備の

移動式風呂を堪能していた。

さらに男女別の寝室も用意され中には二段式だが

人数分のベッドがあると言う至れり尽せりの環境である。

これも海里が自分自身が快適に過ごすため

こだわった故の結果なのだ。

 

 

メルドが目の前にある建物に理解がついていけない中

周囲を警戒しているとラフな服装に着替えた海里が話かけた。

 

「メルドさん。女の子達は皆お風呂から上がったので

男の子達や騎士団のみなさんも交代で入って下さいね。

お湯も張り替えたので綺麗ですから」

 

「おおう」

 

気の抜けた返事をしながら生徒たちを見ると

それぞれ自分のパーティメンバーに女生徒が話しかけていた。

 

永山達には綾子と真央が近付き綾子が

 

「いいお湯だったよ。野村君達も早く入ってきなよ」

 

と話すが健太郎は今すぐに入るには不味い状態だった

何故ならラフな格好に着替えた綾子が

風呂上がりで頬がほんのりと桃色に染り

水気を含んだ艶のある髪からはシャンプーの香りが

健太郎の鼻腔をくすぐる、そのせいで彼の一部が冷めるまで

風呂に入れない状態になっていた。

 

光輝達に恵里と鈴は二人に風呂をすすめた後

鈴が龍太郎に

 

「あっちに声かけといてね」

 

と檜山達をアゴで示してながら頼む。

檜山達は経緯子に対する行いのせいで女生徒は皆

近寄りたくない。なので鈴は龍太郎に頼んだのだ。

ちなみに部屋付きのメイドだが檜山達4人の

世話役は全て屈強な男性に替えられている。

教会としても勇者の仲間の醜聞は不味いからだ。

 

 

そんな光景を見ながらメルドは海里に

 

「海里、すまないが迷宮の索敵時に少し手控えをしてもらってもいいか」

 

「手控えですか?」

 

「今日と同じだと楽過ぎて、直接戦闘はともかく

索敵や警戒の訓練がまったく出来ないからな」

 

「なるほど」

 

海里の探索魔法なら魔物が壁に同化しようとも

発見できるし範囲も広いので先手を取ることが

容易だがこれでは生徒たちが頼りきってしまい。

海里がいない時には不味いと言うことなのだろう

赤き誓いのメンバーといる時も彼女等の成長のため

探索魔法の能力を抑えていたので海里は

 

「わかりました。緊急時以外は抑えますね」

 

「すまない。・・・風呂の前に食事の用意しないとな」

 

メルドは海里が早く迷宮を攻略したいのにと思って

いるだろう事を言葉に出せず。別の話題を振る。

メルドがアランに携帯食を用意する様に命令する前に海里は

 

「これホルアドの宿で作ってもらいました」

 

とアイテムボックスから出来たてホカホカの

シチューの入った寸胴鍋を出す。

 

皆が食事を食べ終わる頃には全員が海里が便利すぎると思う事となった。

こうして迷宮の一日目はゆるダン□としてし終了するのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ハジメ達は爪熊を倒した後地上に戻るため

上を目指して進んでいたが

何階層か上がった所で足踏みする事となった。

何故ならいくら探しても上に登る階段は見つからず。

ハジメが錬成で天井や壁に穴をあけ進もうとするも

ある程度掘り進むと。

 

 バチィッ!

 

「どう?ハジメちゃん?」

 

「ダメ。この先は魔法が弾かれて錬成ができないや経緯子ちゃん。

どうやら僕らがいる階層は隠しダンジョンみたいだね」

 

「隠しダンジョン?どうゆう事ハジメちゃん」

 

「本来は表と言うべき僕たちが落ちる前にいた

迷宮を攻略した後に来るべき所で一度入ったら

クリアーするまで出れないんだろうね」

 

「じゃあハジメくん。迷宮から出るためには

どのくらい下に降りる必要があるのかな?」

 

「そうだなぁ香織さん。多分表の迷宮が百階層と伝わっていたから

ここも百は降りる必要があると思うよ」

 

ハジメの予想を聞いた香織と経緯子は思わず「うへぇ」という顔をする。

そんな二人とハジメも同じ気持ちなので肩をすくめ

 

「気を取り直して進むしかないよ。とりあえず拠点で一度休もう」

 

そして三人は無駄足になった事に少し落ち込み

とぼとぼと上がって来た道を再び降るのだった。

 

 

 

ピチャ、ピチャと壁に取り付けられた緑光石によって

淡い光が灯るやく二畳ほどの室内に水が揺れる音が響いている。

部屋の半分を占める岩をくり抜いて作った浴槽に

アイテムボックスから出した水を入れ、火魔法で温めたお湯に

香織は体を沈めていた。

少しだけ温めお湯に身を委ねていると疲れが体から

抜けていくその心地良さに香織の口から

 

「ハフッ〜」

 

と体の中の熱を含んだ吐息がもれると

同時に形の良い顎の尖端から一雫の汗が

湯面から半分ほどのぞいている豊かな双丘の合間に落ちる。

 

「ハジメくんもお風呂を出た後お湯を入れ替えないでいいのに

お水がもったいないよね」

 

香織は言外に水の節約以外の事が含んだ事を

独り言ちながらのんびりと入浴を続けていた。

 

 

奈落に落ちて二週間近く過ぎ拠点の設備はアイテムボックスで

移動が容易な事もあり前述の簡易風呂や簡易ベッド、テーブルなど

やたら充実していた。この生活環境の充実はハジメ、一人ではなく

経緯子と香織も一緒に落ちた影響であろう。

 

ハジメが作業台の前にあぐらをかき、新しい装備を錬成していると

 

「ハジメちゃん。何作ってるの?」

 

経緯子がハジメの左隣に座りながらたずねる。

 

「経緯子ちゃん今のままだと近接戦闘に難があるから

そのために・・・・・」

 

ハジメから詳細を聞いた経緯子はハジメの左手の

残っている所を両手で優しく包みながら

ハジメの肩に頭を預けてささやく

 

「ハジメちゃん好き」

 

その言葉を聞いたハジメは照れなが作業を止め

経緯子の手に自分の手を重ね二人は言葉も交わさず

あふれ出す多幸感の中ただお互いの体を預けていた。

短い時が過ぎて自然とハジメと経緯子の顔が近付き唇が触れそうになる

 

  コッン

 

と経緯子が唇の代わりにハジメとおでこをくっ付ける

 

「この先に進むと私はきっと動けなくなるから今はここまでだよ」

 

「うん」

 

そう言うと経緯子はハジメから離れ食事のため魔物の調理を始めた。

 

その後風呂から上がった香織は何かを感じ取ったのか

作業しているハジメの背中にピトッとくっ付きハジメの耳元に後ろから

 

「好きだよハジメくん・・・」

 

とささやいた後。香織はそそくさとハジメから離れ

経緯子を手伝いにいった。

香織のその声にゾクッと快感を覚えたハジメは

己の節操のなさとヘタレ具合に悩み。

 

甘いというか酸っぱい様な空気の中

三人は食事をして就寝するのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

王城のテラスで優花は風呂上がりの火照ってた体を夜風で冷ましていた。

髪は何時もと違いふんわりゆるく肩口でおさげにしており。

勝ち気な雰囲気は抑えられ、いつもより柔らかくそして幼なく見える。

優花は一人、テラスの椅子に座り城の庭を所在なさげに眺めていたが。

 

「ヒャッ⁉︎」

 

優花が小さな悲鳴をあげる。いつの間にか近づいた奈々が

首筋に冷たい水の入ったコップを当てていたからだ。

 

「奈々か脅かさないでよ!」

 

「優花っち夜風にあたるのも程々にしないと湯冷めするよ。

お水を持ってきたから飲んだら中に戻ろうよ」

 

優花は奈々に礼を言いコップに口をつけると

 

「うわっ!すごくキンキンに冷えてるし」

 

「へっへぇん!私は氷術師だからね」

 

「ありがとう奈々。おかげで頭がスッキリした」

 

「優花っちまた考えこんでたからね」

 

「自分達はこうしてお風呂に入ってるけどさぁ。

雫や海里さんは迷宮の中で不自由してるはずだし」

 

「だね。雫っち達は大変だよね」

 

と二人は迷宮で海里達が不自由してるのに

自分達は快適に過ごしている事に後ろめたい思いをしていた。

その思いは海里によって全くの見当違いになってると知らずに。

 

 

 

 

                        

 

 

 

テコ入れ?のお風呂回です。

一家に一台!海里(マイル)です。雫たちのの○太くん化待ったなしです。

 

ハジメ達は空気がアマッ!です。

 

優花の風呂上がりのヘヤスタイルはアフターの修学旅行回からです

原作のアフターは香織の扱いが残念すぎるのがちょっとなんですが

優花は色々と可愛い所が出てくるのでナイスです。

 

 

 

 

 

 

 



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18 変わった事。 変化の兆し。

更新がおくれました。

前回お風呂回好評だったみたいで

UA30000、お気に入りが300超えましたありがとうございます。

 

では本編です。

 

 

 

 

 

                       

 

 

 

 

38階層ここで雫、クラスメイト達はもうひとつの悪夢と対峙していた。

それは骸骨の魔物トラウムソルジャーである。

雫達が通路を抜けて円形の広場の中央に差し掛かると

360度壁の隙間という隙間からトラウムソルジャーが湧き出てきた。

その数は優に百体を超える。橋の上の再現だがあの時とは雫たちは同じではない。

 

「辻さんを中心に内側に魔法組!外側は俺たち前衛組で円陣を組む!

冷静に連携すれば余裕で倒せる!」

 

と光輝が指示を出す、勇者としてカリスマとリーダーシップを発揮し

その言葉に全員が冷静に指示に従い戦闘に入る。

迫って来るトラウムソルジャーを先ず光輝、雫、槍術師の近藤が切り結ぶ、

 

「神速剣二倍!」

 

雫が叫び数体のトラウムソルジャーの間を疾風の如く駆け抜ける

トラウムソルジャー達が刃が光る度に胴が首が斬られ崩れていく。

その雫の速さにトラウムソルジャーはついていけず、彼女を包囲するどころか

各個撃破されていく。雫たち三人の間を抜けたトラウムソルジャーを龍太郎と

重格闘家の重吾が拳で粉砕する。さらにその隙間を縫うように暗殺者の浩介と

軽戦士の檜山がナイフとショートソードでトラウムソルジャー達を斬りつけていく

前衛により詠唱の時間が稼げた。鈴、恵里、中野、斎藤ら四人は

付与術師の真央の支援を受けた魔法を各々が四方にトラウムソルジャーの後列に向かい放つ。

その数分後トラウムソルジャー達は全滅し龍太郎が

 

「うっしゃぁ!」

 

と歓喜の声を上げる。メルド等騎士団と自粛要請された海里が手を出す必要も無く。

そして大した負傷もせずに倒した事にメルドは満足げにうなずき雫たちに言う。

 

「よくやったぞ!おまえたち!今回の遠征はここままでだ。回復、休憩した後

三十階層まで戻りそこで一泊した後地上に戻る。三日間の休みを取ったのち

再び迷宮に入る。次は長丁場になるからな心しておくようにな」

 

 

メルドの訓示の後、海里も綾子を手伝い皆の怪我を治療を始めるが。

綾子は一部の男子生徒に近づく事を躊躇っている。事情を知らない

海里は疑問に思い綾子に尋ねる。

 

「辻さんあの子達、檜山君らに何かされたの?

トラップを発動させたのは聞いたのだけれども

それ以外にも何かあるの?」

 

海里に質問された綾子は気まずい顔をして

どう答えるべきか悩んでいる。

海里の言葉が耳に入った近くの真央も戸惑ってる。

 

「あの・・・そのぉ・・・」

 

綾子は口ごもり言葉が出てこない。

その態度に海里は無理強いするのもと思い。

 

「いいの いいの私が行くわ」

 

檜山達のもとに向かう

その海里の後ろ姿に綾子が小言で

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

三十階層に開店した。海里オーナー(仮)オルクス迷宮健康ランド

女子の部屋で海里と女生徒達がベッドに腰かけ話をしている。

 

「そおぉぉぅですか…そおぉうだったんですねぇぇ…」

 

教会との交渉で聞いた地獄の底から聞こえてくる様な声を海里が発していた。

 

「ハジメちゃんへ暴力。あまつさえ経緯子にねぇ…」

 

海里が城を留守にしている間にハジメと経緯子に対する檜山達の所業を聞き

経緯子については事が性的でデリケートなこともあり。

そして無遠慮な好奇心を向けられるのを避けるため

暴行未遂については男子生徒達には伏せられているが、

女生徒は自らの危機管理のため情報を共有しており

それ故に生理的嫌悪感で皆が檜山達に近づきたくないなどの事情を海里に話したのだ。

 

「よぉおくわかりぃいましたぁあ…」

 

海里が発する静かな怒気に雫たちは思いを一つにする。

 

(((((あいつら百万回死んだわ)))))

 

「それでですねぇ皆さんいいですかぁ」

 

こくこく!

海里の怒気に当てられてる雫達は青い顔してうなずく。

 

「彼らの回復、治療は私が引き受けます」

 

「「「「え〜?」」」」」

 

「お姉さんなんで?なんで?どうしてそうなるの?」

 

「もしかして私に気をつかってですか」

 

鈴と綾子が言うと、海里は苦笑し理由を話しだす。

 

「本音は今すぐにも“この者暴行犯”とかのカードを付けた上に亀甲縛りで城門にでも晒したいけど

そうすると関係が無い皆に危険が及ぶから彼らが余計な事をしないように

私が色々するためにねぇ…」

 

「色々って何をするつもりですか?海里さん?」

 

「それは実家の秘伝ですよぉ〜」

 

雫は海里に質問するが海里の答えにコレは聞いてはダメなヤツだと全員が思った。

海里は雫たちの顔色が悪いことに気づき雰囲気を変えるために

もう一つ海里が知りたかった事をたずねる。

 

「ねぇ経緯子とハジメちゃんは高校生活をどう過ごしてたの?」

 

ハジメ達が生きている事を知らない綾子と真央は複雑な顔をするが

雫と鈴に恵里は生きてる事を知っているので海里が不器用に

この場の雰囲気を変えるため話を振ったのだと察して話にのる。

 

「そうねぇ授業態度は経緯子はもちろん真面目だったし南雲くんも普通に

受けてて成績も二人とも上位だったはずよ」

 

雫が言い恵里がそれに続く

 

「経緯子ちゃんは良く学校行事とかで良く頼られていました。もう一つの

クラスの中心の天之河くんと雫ちゃんは剣道関連で放課後は時間が

取れ無い事が多かったから、だから経緯子ちゃんを中心に南雲くんが手伝って

それに香織ちゃんがくっついてました」

 

「へぇ〜ハジメちゃんがねぇ?」

 

海里は意外そうな顔をする。鈴が話を引き継ぐ

 

「でねお姉さん。南雲ン男子にすっごく嫉妬されてたんだよ。

そりゃ仕方がないよね。ケイケイにカオリンと両手に花だもんね」

 

「経緯子とハジメちゃん学校でそんなに仲良かったの?

ハジメちゃん授業中寝てないみたいだし?」

 

海里は亡くなる前の経緯子とハジメの仲と居眠り常習犯のハジメとの

違いに戸惑いっていると綾子が申し訳なさそうに

 

「私の友達に経緯子さんと同じ中学の子がいて、その子から聞いたんだけど

お姉さんが亡くなった後、経緯子さんすごく落ち込んで友人たちも

どうすれば分からなくて声も掛けれない状況だったんだって」

 

「がはぁ!」

 

海里が死亡した当時の経緯子の様子を聞き吐血しそうな声を上げる。

「大丈夫ですか」と雫に心配されるが海里は気にせず話をするように促す。

綾子は若干躊躇いつつも話を続ける。

 

「・・・南雲くんはそんな経緯子さんに積極的に話かけ

時折り理不尽な八つ当たりを経緯子さんからぶつけられても

根気良く話を聞いて励ましたり慰めの言葉はあまり言わずに

静かに話をして経緯子さんの話を聞いてたみたい。

その頃から南雲くん居眠りしなくなったらしいですよ。

で半年ぐらいで元の経緯子さんに戻ったようです」

 

真央が軽めの口調で

 

「でねぇ〜高校に入学して何故か速攻で香織ちゃんが

南雲くんに積極的に話をする様になって

常に経緯子ちゃんと香織ちゃんが近くにいる南雲くんは

男子に嫉妬されてて特に檜山が酷くて見苦しかったよ〜」

 

「んっ~ハジメちゃん白崎さんと付き合っていないのよね?

経緯子ともそうじゃないみたいだし(今は二人とアレだけど)」

 

「香織ちゃんと南雲くんが話をしていると横槍が入ったから~」

 

「横槍?」

 

「う~ん天之河くんが二人の会話にいっつも割り込んでたから

香織ちゃん告白するとかの空気にならない感じ」

 

 

「そうなんですよ。天之河くん誰にでも優しいのに南雲くんには

きつかったの天之河くんオタクを嫌ってたけど今時オタクなんて普通だし

それにうちのクラスは経緯子さんがオタク趣味に理解があるのもあってそれでどうこう

言われることはなかったし、南雲くん生活態度も真面目だったのに

なぜあそこまで言うかなってかんじ、その辺どうなの雫さん?」

 

綾子に話を振られた雫は

 

「光輝は香織が南雲くんのそばにいるのに嫉妬してただけ。

南雲くんに生活態度を改めさせると言う正当化する理由をつけてね」

 

ぶっきらぼうに答える。光輝に対して以前と同じではないようだ。

その雫の態度に鈴はあちゃ~という顔をし恵里が遠慮がちに言う。

 

「あの…海里さん光輝くんは本当に皆に優しくて南雲くんには

そのやっぱり光輝くんも男の子だからその事であまり嫌わないで欲しいのです」

 

その恵里の言葉に海里は微笑ましいものを感じ。

海里自身は光輝に対してイケメンで押しが強い程度しか思ってないので。

 

「ハジメちゃんも罪深いね。年頃の男の子ならしかたないよ。

それだけで嫌ったりしないからね。中村さん」

 

海里にとって目の前の女の子を安心させる方が優先なので無責任に答える。

その後も男子生徒、全員がハジメに嫉妬してるわけでなく。

綾子と真央のパーティの重伍と健太郎は嫉妬して無い事

健太郎をフォローした綾子が真央にいじられたり。

なぜかそれが鈴に飛び火して龍太郎がちっこいにしか興味がない疑惑がでたり。

色々と皆で話夜が過ぎていった。

 

(これが女子高生トーク初めて体験できて嬉しい)

 

と海里は前世で友人がいなくて体験出来なかった事ができて心の中で喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

----------------------------

 

 

 

 

 

ハジメたちは最下層を目指して進んでいた。

光が全く無い階層に入ったが経緯子の探索魔法があるので問題なく進める。

トカゲらしきものを見つけ相手の視認距離外からドンナーで吹き飛ばす。

いつもどおり死骸はアイテムボックスに収納する。

そして再び攻略を始めるが探索魔法のおかげで通路の把握が容易なため。

早いペースで進み下層への入り口を見つけ

すぐそばの壁に錬成で六畳間程の穴を作り

その中で魔物肉を焼いて食べる。

ちなみに臭み消しにカプサイシン粉をつかい、

塩は経緯子の技能で魔物やらの体液から抽出し作り出し

いくらか味をましにすることができている。

トカゲ以外にも狩ったフクロウや六本足の猫をたべると技能が三つ程増えた

・夜目・気配探知・石化耐性だった。

ハジメたちは食事をすますとすぐに攻略を開始する

 

 

======================

 

フラム鉱石

 

艶のある黒い鉱石。熱を加えると融解しタール状になる。

融解温度は摂氏50度ほどで、タール状のときに摂氏100度で発火する。

その熱は摂氏3000度に達する。燃焼時間はタール量による。

 

================

 

 

次の階層は上記の鉱石がタール状のものが

通路全体に溜まっていた。火気厳禁である。

経緯子と香織はハジメが錬成した長巻(薙刀の短くしたような物)を構え。

ハジメは左手の爪を伸ばす。このハジメの左手は咄嗟の近接戦闘用に

錬成したもので錬成を使うことでマジックハンドの

仕かけを動かし物を掴む事ぐらいはできる。

爪熊の爪を金属製のカバーの中に仕込んでおり

右手を使い引き出せばかぎ爪のようにつかえる。

この爪は本来の持ち主の固有技能”風爪”が使いやすい。

経緯子たちに手伝ってもらえるので色々短時間で作ることが出来ている。

 

ハジメ達がしばらく進むとサメの魔物がタールの中から飛び出してきたが

探索魔法で接近を探知していたハジメ達は空力を使いサメの顎から逃れ

三人は再びタールの海に戻ろとするサメを同時にそれぞれ

長巻の刃及び義手の爪から風爪を出しあっさりと切り裂いた。

 

「ハジメちゃんこの魔物、探索魔法には引っかかったけど」

 

「気配探知の技能では気配を感じなかったね」

 

「ハジメくん食べれば何か技能が増えるかな?かな?」

 

サメの魔物からは・気配遮断・の技能が得られた。

なおヒレの部位は少しクニュクニュしておりコラーゲンたっぷりっぽかった。

 

 

ハジメ達はその後も探索魔法とアイテムボックスのおかげで

食事と睡眠以外ほぼノンストップで攻略して行き

その間もカエルを食べたり蛾を食べたりした。

何故だか虫系の魔物の方が他の魔物より美味かった。

嫌なオルクス迷宮の裏メニューである。

 

 

そしてハジメ達は五十階層にたどり着いた。

その階層に作った拠点の中でハジメ達は

 

もきゅ もきゅ 

 

とリンゴような果物を食べていた。

この果物は少し上の階層で密林のようなところがあり

巨大なムカデが出てきて気持ち悪さに経緯子と香織も

久しぶりに女性らしい悲鳴をあげたりしたが

この階層にいるトレントモドキは赤い実を投げつけてくるのだが

試しにその実を食べてみると甘くてスイカみたいな味がして

ハジメ達は特に甘味に飢えていた経緯子と香織が

目の色を変えて狩りはじめトレントモドキを全滅させた。

 

アイテムボックスに入れておいたリンゴスイカを拠点で食べている所だ

 

「経緯子ちゃん、香織さんあの場所は無視はできないよね?」

 

「うんハジメくん攻略の手掛かりがありそうだよね」

 

「でも明らかに中ボスとかが出てきそうだよね」

 

と五十階層で見つけたあらかさまに怪しい扉について

話合っていた。下の階層に行く階段は見つけてあるので

無視して進むことはできるが、

もし地上に戻る為の鍵の一つがあるかもしれないと思うと無視できない。

 

「それでも僕はやっぱり扉を開こうと思う」

 

「ハジメくんが決めたのなら私はいいかな」

 

「ハジメちゃん私も賛成だけど。この階層で少しレベル上げと

装備の充実を行ってからにしない?」

 

経緯子の意見にハジメと香織も頷き幾日かこの階層で鍛錬することになった。

 

 

 

 

 

 

                          

 

 

 

海里の死で変化したハジメを取り巻く状況を

説明してみました。

原作と違い女子の中心に経緯子がいるため

光輝の影響力が落ちてます。

光輝はクラス外ではモテモテですが、

クラスの女子からはリーダーシップがあって

優しくてイケメンだけどハジメへの言い掛かりと

雫のフォローを見て付き合うには面倒くさいとおもわれてます。

したわれてますがそれ以上ではありません。

 

 

あっ男子生徒の印象で遠藤くん書き忘れた。

 

 

追記 恵里のクラスメイトの呼称修正しました。恵里は作中で呼び方が

変化するので本来なら鈴の呼び名もちゃん付けですがあえてそのままにしてます。

 



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19 アウトブレイク☆かんぱにぃ?

今回もぐたぐた展開で

話が進みません。

 

 

では本編です。

 

 

 

 

 

 

               

 

 

 

 

(なぜ此処に海里さんが?)

 

優花は困惑していた。午前の訓練を終え昼食をとるため

訓練場から食堂に向かっていると建物の入り口付近で

今はホルアドにいるはずの海里が雫を伴いメイドと話している所を

見かけ思わず物陰に隠れてしまった。

 

(いつまでも海里さんから逃げてる訳にはいかないし・・・

女は度胸よ!)

 

優花は意を決して海里たちに近付き海里はメイドとなにやら話しているので

まずは雫に話かけるが、雫は妙に疲れた顔をしていた。

 

「雫?どうして海里さんと城に?ホルアドにいるはずじゃ?」

 

「チャリできたのよ」

 

雫がボソッと答える。

異世界に似つかわしくない単語に

「はへぇ?」と間抜けな返事をする優花に

雫はホルアドでの出来事を語りだす。

 

 

雫たちが迷宮から出てホルアドの宿で一晩過ごし

朝食を食べしばらくした頃雫は

宿の庭でストレッチをしている海里を見かけ声をかける。

 

「海里さん今から訓練ですか?私も一緒にいいですか?」

 

「訓練ではありませんよぅ雫さん。

私、リリアーナさんに届ける物があるので

城までちょっと行って来ますね」

 

「またすぐ、迷宮に潜るのに馬車で往復する時間なんてないですよ?」

 

「大丈夫、私自身で走って行くので夕食までには戻って来ますよぉ」

 

「・・・・はい?」

 

「あっこれを使えば雫さんも一緒に行けますね。

流星号!流星号!こちらは海里!よしきたな!」

 

と言いながらアイテムボックスから一台のママチャリを出す。

 

「こんなこともあろうかと作っておいたのです。

カーボンナノチューブのフレームで軽量な上頑丈です。

勿論!タイヤはノーパンク仕様!更になんとぉ!

ナノちゃんアシスト付きで振動対策も完璧

長時間乗ってもお尻が痛くありません!えっへん!」

 

呆気にとられる雫に

マイルと違いある胸をそらし自慢する海里だった。

 

 

 

 

「・・・とねぇ状況に流れされて私も城に行く事に

それで海里さんのママチャリに二人乗り。

ホルアドから王城まで一時間足らずで到着

フフ私は風になったよ。優花」

 

「高速馬車で丸一日の道のりをママチャリの2ケツで一時間って

それは・・・雫、大変だったわね」

 

優花は疾風の如し速度で駆ける自転車に二人乗りで連れてこられ

また海里の非常識にふりまわされ何時でもどこでも苦労人体質の雫に

同情しねぎらいの言葉をかける。

 

丁度メイドとの話を終えた海里が

 

「あっ雫さん。リリアーナさんに面会できるみたいです。

今から城の応接室に案内してもらうので行きましょう。

え〜と雫さんの側にいるのは確かぁ・・・」

 

「そっ園部優花です。お久しぶりです海里さん」

 

「園部さんも一緒にリリアーナさんに会いに行きませんか?

せっかく園部さんに会えたのでお話がしたいです?」

 

海里と話ができる機会を優花は逃すまいと気合いを入れて返事する。

 

「はい!海里さんに付いて行きます!」

 

優花の気合いの入った言葉に海里は「うおっ」と

驚きなんか根性が入ってる子だなぁと思う。

 

 

 

「それではこの部屋でしばらくお待ち下さい」

 

と海里たちにお茶を用意した後メイドは

海里たち残し部屋を後にする。

優花はお茶で口を湿らせると

キッと海里を睨みつけ優花の思い詰めた瞳に

海里が園部さんに怒られるのと考えてると

 

「海里さん!ごめんなさい!

私、南雲に経緯子、香織に助けられたのに

三人が落ちるときに私、何もできなくて

命がけで助けてもらったのに

雫みたいに南雲達を探しに行くこともできない

意気地なしで海里さんの事も

ずっと避けてて経緯子の事から目をそらして

私・・・・・・・」

 

 

優花は早口でまくし立て最後は声にならない

そんな優花の頭に優しく海里の手がおかれる。

 

「園部さんあの時迷宮にいなかった

私にあなたを責める資格はないし

園部さんが謝る事はないですし

死にかけたのなら動けなくて当たり前ですよ

だから園部さん自分を責めないでね」

 

と海里は優花に微笑むが

 

「あっでも・・・」

 

優花はそれでもハジメ達のことが引っかかるのか

折り合いがつかない様子に雫は

いたたまれなくなり思わず言ってしまう。

 

「優花!香織も南雲くんに経緯子も生きてるから

だから優花も気負わないで」

 

雫は言ってしまったと海里を見るが

海里は咎めるそぶりはなく雫に頷いている。

優花は雫と海里の顔を交互に見て

南雲達が生きていると優花の希望に確信がもてたのか

 

「うっ・・なぐもぉ生きてぇ・・ぐずっ」

 

と抑えてた気持ちがあふれ出し泣いてしまう。

 

 

ひとしきり泣いたあと優花は

海里に経緯子達が生存している事が

何故分かった事が教会とかに説明できないので

黙っておくように頼む。

落ち着きを取り戻した優花は海里にたずねる。

 

「海里さんは戦えなくなった事がありますか?」

 

「そりゃありますよ。

古竜という強い魔物に吹き飛ばさた時に

体中が痛くて自分じゃ敵わないから

立ち上がらなくていいやと思いましたよ」

 

「海里さんはどうやって立ち直ったんです」

 

「仲間がいたからです。私が戻って来ると信じて

戦い続けた仲間がいたから。

私は彼女たちと一緒に居たいと思ったから

立ち上がる事ができたのよ」

 

「・・・一緒に居たいからかぁ」

 

優花は海里の答えを聞き

何かに想い馳せつぶやく優花だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。海里様、雫

あっ優花様もいらっしゃたのですね」

 

リリアーナが入室してくる。

海里が立ち上がりカテーシーで挨拶する。

 

「リリアーナさんお久しぶりです」

 

「リリィ、久しぶりね」

 

「リリアーナ様こんにちは」

 

「海里様も優花様も気軽リリィと呼んでください

海里様は何度言っても変えてくれませんし」

 

海里は苦笑しながら

 

「”王女”に前の世界で関わった時

女神の使徒にされその上、指名手配されたので

どうしても”王女”に警戒してしまって」

 

海里の言葉に対してリリアーナは

泣きそうな顔をし上目遣いで

 

「わたしも海里様に警戒されて友人にはなれないのですか?」

 

海里は年下の可愛い女の子に弱いので

 

「ツッ。リリィちゃんでいい?なら私の様呼びもやめてね」

 

「はい分かりました。海里さん」

 

先程とはうって変わって満面の笑顔をうかべるリリアーナに

海里は考える。

 

(誘導されてしまった。リリィ恐ろしい子)

 

「優花様もリリィと呼んで下さいね」

 

「私は城に籠っているだけで

リリアーナ様を呼び捨てにする資格なんて」

 

「私には優花様たちの友人になる資格など元からありません。

この世界に召喚した国の中心の一人なので

優花様が戦えないことに何も言えませんし

友人になりたいと思うのは後ろめたさからくる

私の我儘ですから。優花様無理強いをしてすみません」

 

リリアーナの言葉に外見に比べ

人がいい優花はリリアーナにほだされてしまう。

 

「そりゃ召喚した教会と国には思うこともあるけどさぁ

リリアーナ様に止める事が出来たとは思えないし

王女なんて偉い人が私を様付けなんて

しなくていいから”リリィ”」

 

優花は少し顔を赤らめわざと砕けた口調で答える。

 

「はい。では優花と」

 

リリアーナは人好きのする笑顔をうかべ

二人のやりとりを見ていた海里と雫は

優花の様子に安堵する。

 

 

 

その後リリアーナが海里から

 

「これが私が迷宮に潜っている間リリィちゃんにお話する事ができないから

新作の”にほんふかし話”をまとめたものそれともう一つの封筒には

今まで読んだことのない素敵な物語を入れてるのよ」

 

と二つの紙の束の入った封筒を受け取り

読んだことがないと言われた方を好奇心から先に

中身を確認するとリリアーナは見た瞬間に

心を奪われてしまう。そして・・・・

 

 

「私も恋したいです」

 

リリアーナは手にした紙の束をめくりながら

そんな事を言っていた。

 

「ねぇ雫、リリィが今読んでるのって少女漫画じゃ

しかもアレって確か」

 

「そうね南雲くんのお母さんの漫画ね」

 

雫と優花は海里に疑惑の目を向ける。

 

「勝手に菫おばさんの漫画をすこ〜しアレンジして再現しましけど

それはハジメちゃんが戻って来た時少しでも印象を良くするために

決して異世界に広まったら面白いとかではないですよぉ」

 

海里は言い訳めいた事をまくし立てる。

雫は短い付き合いながらも当初のできるお姉さんから

実は残念なお姉さんではないかと海里の事を思い始めていたので

海里の答えに突っ込みを入れたかった。

 

そうこうしてる内にリリアーナが「はうっ」と

夢みがちな顔して原稿から目を離し

海里たち三人をみて我に返ると赤面し

 

「すみません。この絵解きのロマンス話が

素晴らしくて、つい夢中で読んでしまいました」

 

「リリィちゃん、それは私たちの世界で

少女漫画と呼ばれてるものよ」

 

「ショウジョマンガーですか?

それとこの作者ナグモ・スミレこの方はまさか」

 

原稿の一枚目のうらにはタイトルと作者名

そして監修にミアマ・サトデイルの名が書いてあった。

 

「そのまさかハジメちゃんのお母さんだよ」

 

「南雲様のお母様が・・・」

 

とつぶやいた後にリリアーナは真実を

確かめるように雫と優花を見ると

二人は苦笑しながら

 

「リリィ、南雲くんのお母さんは

私たちの国で女の子なら一度は

必ず読んだ事がある人気漫画家なの」

 

「そうそう特に今リリィが読んでいるのは

私たちがリリィと同じ年齢の時

一大ブームになったし私もはまったわぁ」

 

雫と優花から菫が人気作家だと聞かされた

リリアーナは鼻息も荒く宣言する。

 

「このような素晴らしい物は本にして

国中に広めないとそして南雲様の

御母堂をロマンスの神様として讃えなければ」

 

その言葉を聞いた雫は思わず突っ込む

 

「ちょっと待ちなさいリリィ。御母堂って

ロマンスの神様とか讃えなくていいから!」

 

「ハアッ⁉あまりの感動に我を忘れてしまいました。

とにかく本だけは出しましょう」

 

雫の突っ込みで一応は正気に戻るリリアーナである。

中世的文明のトータスで漫画本の発行は

敷居が高いのではと思われるかもしれないが。

トータスにおいて本は割と一般的に普及している。

何故なら錬成師が錬成を使う事で

原版をトレスし金属製の凸版を作成するのが

容易なため文明度に比べ図鑑等

絵を多用した本が多く出版されている。

なので漫画本を出すことも可能なのだ。

 

「それで海里さん本の売り上げの権利はどうしますか」

 

とリリアーナが海里に本が売れた時の

お金の受け取りはどうするのか聞いてくる。

 

「勿論ハジメちゃんに渡してください。

菫おばさんも息子の力になりたいはずだから」

 

「でもハジメ様は・・・分かりました。

いつでもハジメ様に渡せるようにしておきます」

 

「ありがとうリリィちゃん」

 

少し重くなった空気を変えようと

優花は雫に迷宮攻略について尋ねる

 

「ねぇ雫?迷宮内でキャンプってやはり大変なの?」

 

優花に迷宮での寝泊まりについて聞かれ雫の目は泳ぐ

その様子にリリアーナ首をかしげ優花は何かを察すると

 

「海里さん!海里さんが何かやらかしたのね雫」

 

優花のいいように海里はむくれ

 

「プンスカ!お風呂とベッドを用意しただけです」

 

海里の言葉に疑問符を浮かべる優花とリリアーナに

雫が補足説明し迷宮での寝泊まりが風呂付空調完備の寝室と

海里のアイテムボックスで三食とも温かい食事と聞いて

優花は雫たちが不自由だと

気に病んでたのは無駄だったと遠い目をし

リリアーナはやはり海里は

前に聞かしてもらった何でも叶う不思議な

ポケットのような魔法を使うと思った。

 

 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

あれ海里のよもやま話だけで字数をとってしまったので

ここで切ります。

本当はもっと海里の下りはもっと短くして

ハジメたちの続きを書く気だったに

ママチャリの名前轟天号にしようか思ったのですが

アレはカッコイイライトが付いてるサイクリング車でないと

なので流星号です。

次回こそ絶対出ます。



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20 すいスぺ!前人未到の迷宮の奥に幻の○○を見た! 

○○は何がはいりますか?

その答えは本編で。

 

 

 

                  

 

 

 

 

いきなりだが現在のハジメたちのステータスは下記の通りである。

 

=====================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:52

 

天職:錬成師

 

筋力:1080

 

体力:1250

 

耐性:960

 

敏捷:1140

 

魔力:860

 

魔耐:860

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・

[+錬成記憶][+錬成再生][+間接錬成]魔力操作・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]

・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・

身体強化・超超超々微細機械補助[+土魔法A][+探索魔法C][+生活魔法D]*(魔法名の後のアルファベットはナノマシンとの同調レベルのランクS~E)

・言語理解・アイテムボックス

 

 

 

=====================================

 

 

 

 

栗原経緯子 17歳 女 レベル52

 

天職 薬剤師

 

筋力 :850

 

体力 :920

 

耐性 :830

 

敏捷 :1020

 

魔力 :1560

 

魔耐 :1540

 

技能 調合[+成分解析][+成分抽出][+液体系鑑定][+生物系鑑定][+液体合成][+自動合成]・身体強化・

魔力操作・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・

遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・

水魔法[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]

・火魔法[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]

・超超超々微細機械補助[+水魔法A][+土魔法C][+探索魔法A][+分析魔法A][+生活魔法A]・言語理解・アイテムボックス

 

 

====================================

 

白崎香織 17歳 女 レベル:52

 

天職:治癒師

 

筋力:980

 

体力:960

 

耐性:960

 

敏捷:1080

 

魔力:1680

 

魔耐:1680

 

技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇]

[+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動][+高速治療][+精密診療]

・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]

・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]

・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・

身体強化・超超超々微細機械補助[+治療魔法A][+光波魔法A][+探索魔法C][+生活魔法B]・言語理解・アイテムボックス

 

====================================

 

迷宮の一角、袋小路になった所で

ハジメ、経緯子、香織の三人は期待と不安を感じながら

今から自分たちが挑む物を見る。

そこには高さ3メートルはある装飾された荘厳な両開きの扉

そして守護するように扉の脇には壁に半身が埋まっている

一対のサイクロプスの石像がある。

 

そして三人は意思を確認し合う様に頷き合うと

ハジメはドンナーを構え経緯子と香織はそれぞれ長巻を手にし

罠を警戒しながら慎重に歩を進める。特に何事もなく扉の前にたどり着く。

扉の中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのが確認できる。

 

「ん~わからない?結構勉強したけどこんな式見たことないや」

 

城に居る時はハジメは錬成の修練の合間、己の力不足を補うため図書室に

入り浸りこの世界の知識を漁っていた。特に魔法陣については

地球で父親のゲームのプログラムに関わっていたのと

ココロの奥底に沈めたナニカに引っ掛かり熱心に調べていた。

そんなハジメが魔法陣の式を全く読み取れずにいる。

 

「経緯子ちゃんと香織さんは何かわかる?」

 

ハジメと一緒に訓練の合間図書室で本を読んでいた二人に聞いてみるが、

 

「ハジメくん私も見たことないかな」

 

「ハジメちゃん魔法陣は分からないけど

たぶんそこの二つの窪みに鍵になる

ものを嵌めない扉が開かない?」

 

経緯子の言うとおり鍵がいるとしたら

なおのこと扉を開けないといけない。

ハジメはここは押してダメでも押し通すと決め

 

「二人とも今から僕が錬成で強引に行くから

左右の対処は任せるね」

 

ハジメの言葉に二人はすぐに

左の像は経緯子が右は香織が何かあれば

動けるように身構える。

 

ハジメは精密な操作がいらないので

左の義手で扉に触れると錬成を開始する。

その途端、扉から赤い放電が走りハジメの義手を弾き飛ばす。

義手のカバーは所々が焦げていた。

 

(もう少し威力があったらアレがやばかったかも)

 

とハジメが内心焦っていると異変が起こる。

 

オォオオオオ‼

 

突然、野太い雄叫びが響くが

直ぐに鳴りやむ

 

ドシャ! ドシャ!

 

と二つの落下音が聞こえるそれは何か

扉の放電を合図にサイクロプスの石像は石化が解け

口を開き歓喜の雄叫び上げた刹那に

経緯子が風爪をまとった長巻の刃で

香織は光刃をまとった刃を使い

それぞれがサイクロプスの頭部を下あごから切り離し

その頭部が落下した音である。

無防備に大口を開けるのが悪いと狩れる時に狩る。

見せ場など考慮しない経緯子と香織であった。

哀れサイクロプス、壁に半身が埋まったまま退場である。

 

ハジメはしばらくサイクロプスの死骸を見ていたが

何か思いついたのかサイクロプスの胸部を切り開き

魔石を取り出すと扉の窪みに合わせてみるとピッタリ収まった。

その直後、魔石から魔法陣に魔力が送られ

何かが割れる音がしたとおもうと同時に周囲の壁が発光し

扉の前の袋小路が光で満たされる。

 

ハジメたちは警戒しながら慎重に扉を開く。

扉の奥は光一つない真っ黒な空間が広がっていた。

が手前の袋小路からの明かりによって

部屋の全容が明らかになってくる。

中は大理石のような艶やかな石で出来ていて

幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいる。

そして部屋の中央には巨大な立方体の石が置かれている。

その立方体を注視していたハジメたちは

何かが立方体の前面中央から生えていることに気づき

 

「きゃっ」

 

と香織が久方ぶり女の子らしい悲鳴をあげハジメにしがみつく。

そしてソレを指さしながら

 

「お・・・お化けぇ?」

 

とか細い声を出す。香織は昔から幽霊の類が苦手のなのだ

人外と化した今でもそうらしい物理が効かないせいだろうか。

香織の指の先には長い金髪が女幽霊のように垂れ下がり

その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅色の瞳がのぞいてる。

年は十二、三くらいの少女の胸像だった。

 

「・・・だれ?」

 

掠れた、弱々しい女の子の声が胸像から発せられる。

 

「人?生きてる?」

 

とハジメは声を出し硬直し

経緯子と香織も呆然と女の子を見いる。

そんなハジメたちに長い事声を出していなかったのか

掠れて呟きのようだが必死さが伝わる声で

 

「お願い・・・助けて・・・何でもするから」

 

女の子は何とか動く首で必死で顔を上げ懇願する。

その様にハジメは眉を寄せ考え込む。

そして経緯子が静かに言葉を返す。

 

「あのね、こんな奈落の底に封印されている。

あなたを”はい”そうですかと簡単に助ける

わけにはいかないし。

みたところ迷宮脱出の鍵もなさそうだしね」

 

突き放す様な言葉に女の子はさらに

必死に泣きそうな表情で訴える。

 

「ちがう!ケホッ・・私、悪くない・・私・・」

 

「裏切られただけ!」

 

その言葉に三人はそれぞれ、心が揺さぶられる。

一番揺さぶられたのは香織だった。

何故なら香織が目撃したこと檜山が

ハジメに魔法を放った事をハジメ達には言っておらず。

真実は香織の胸に秘められたままだ。

香織はあんな奴がハジメの心に少しでも残るのが嫌だった

けじめは自分だけでつけるつもりだ。

 

経緯子はハジメの安全を考えるなら見捨てるのもと

同時にハジメなら見捨てないだろうとも考えていたが

裏切りの言葉を聞いたハジメをみて、やっぱりと思う。

 

ハジメは直ぐにでも助けたかったが

経緯子と香織に危険が及ぶリスクを考えると

判断できずにいたが”裏切り”の言葉で決断する。

 

「ハジメくん」

 

と香織がそして経緯子が

 

「ハジメちゃん」

 

とハジメの心情を察して声をかけると

 

「ごめん!二人とも僕の我儘に付き合って」

 

そのハジメの言葉に二人はただ微笑み頷く。

そして三人は経緯子が探索魔法で警戒しながら

慎重に件の女の子にゆっくり近づいて行く。

 

「私、先祖返りの吸血鬼・・・すごい力もってる・・

だから役に立つ・・から」

 

女の子はハジメ達に見捨てられまいと

己のことを語り始める。

 

「昔、国の皆のために頑張った・・・でもおじ様が

・・・これから自分が王になる・・すごい力がある私は危険だって

・・殺せないから・・封印するって・・ここに・・」

 

「あなたはどこかの国のお姫様とかだったのかな?」

 

香織が尋ねると彼女は頷き、ハジメも気になることを尋ねる。

 

「殺せないってなぜ?」

 

「・・勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。

首切られてもその内に治る」

 

「それは凄いわね。吸血鬼というだけの事はあるし

他にも何かあるの?」

 

経緯子が地球での吸血鬼をイメージしながら感心する。

 

「直接、魔力が操れる・・・陣もいらない」

 

なるほど無詠唱で魔法を連発できるなら

まさしくチートだとハジメは思った。

そうこう話しているうちに女の子を封印している

立方体に手が届くところまでハジメ達は進んだ。

 

「助けて・・・」

 

目の前のハジメ達を見つめさらに懇願する。

ハジメ達その言葉に行動で返事をする。

経緯子は女の子の正面に立ち

ハジメは立方体の側面に手を置き。

香織がハジメの横で周囲の警戒を開始する。

 

「あっ」

 

女の子はハジメ達の意図に気付いたのか

大きく目を見開く。

ハジメは錬成を開始するが、

立方体はハジメの紅色の魔力を弾く

それでも少しだが立方体に魔力は浸透していく

 

「ぐっ、抵抗が強い・・でも今の僕なら!」

 

ハジメは更に魔力をつぎ込む。

 

「まだまだぁ!」

 

と上級魔法の必要量を超える魔力を

気合いと共につぎ込む。

どんどん輝きを増す紅い光を

女の子はこの光景を一瞬も見逃さまいと

ジッと見つめ続ける。

さらにハジメはヤケとばかりに

魔力を全放出する。

今やハジメ自身が紅く輝いている。

そのハジメの姿に経緯子は

自分の時と同じく助けると決めたなら

最後まで諦めず全力を尽くす姿勢に

ハジメを愛おしく思えて仕方なくなる。

だからこそ助けた女がもし裏切ったなら

躊躇せず排除するそのために正面に立ったのだから。

 

ついに立方体はハジメの錬成に敗北する。

女の子を封じていた立方体はドロッと流れ落ちていき。

 

胸が腰が足がとあらわになり

一糸纏わぬ姿がハジメの前に現れるが

一瞬のちに経緯子がアイテムボックスから出した

魔物の皮で作ったマントで彼女の裸を隠す。

自分の裸をまだ見せてないのに

先に他の女の裸をハジメに

見せる事などできない。

 

ハジメはへたり込み魔力の使い過ぎから

肩で息をしていると

 

「お疲れさまハジメくん」

 

と香織が労いの言葉とともに回復魔法をかける。

女の子は封印が解けた時座り込み

まだうまく足に力が入らないようだ

しかし同じくうまく動かせない自分の手を

ハジメの地面についている手の上に重ねる。

重ねられた手は小さく震えていた。

 

彼女の紅い瞳はハジメを見つめ

そして小さく震える声ではっきりと告げる。

 

「・・・ありがとう」

 

その言葉に震える手にハジメは助けて良かったと思った。

ハジメは考える。彼女はどれほど

この暗闇の中で過ごしたのだろうと

よく発狂しなかったものだと

これも再生の力のせいなのか

だとすれば狂うに狂えずこの闇の中

過ごすのは拷問そのもだろうと

彼女は重ねた手をそのままに尋ねる。

 

「・・・名前、なに?」

 

「僕はハジメ、南雲ハジメ」

 

「私はカオリ、白崎香織だよ」

 

「ケイコ、栗原経緯子よ」

 

女の子は今聞いたハジメ達の名前を

 

「ハジメ、ハジメ、カオリ,カオリ、ケイコ、ケイコ」

 

と大事なもの心に刻むように繰り返し呟く。

ハジメが彼女に名前を尋ねると思わぬ答えを返される。

 

「・・・名前つけて・・封印前の名前はいらない。

・・・ハジメにつけて欲しい」

 

「そうは言っても」

 

とハジメはためらっていると

香織が言う

 

「ハジメくん付けてあげて」

 

香織も普段なら

ハジメの手に手を重ねられたら嫉妬もするが

いまは流石に同情心が先に立ち

そして自分が暗闇の中で生きていくために

ハジメを守るために

心をいくらか作り変えたような

同じような理由だと思うとハジメにお願いしてしまうのだった。

 

ハジメは香織の言葉の後

今も立って周囲の警戒をしている

経緯子を見れば彼女はハジメちゃんに

任せると言わんばかりの態度を示す。

 

ハジメは頬を指でかきながら少し考えて

彼女に新しい名前を告げる。

 

「”ユエ”なんてどう?僕たちの故郷の言葉で

月を表すんだよ。最初に君を見たとき

その金色の髪と紅い目が夜に浮かぶ月に見えたから」

 

若干、気障すぎるかなとハジメは照れながら

名前とその理由を話す。

 

「ユエ・・・ユエ!んっ今日からユエ

ありがとう」

 

どうやら気にいって貰えた様子に安堵するハジメに

経緯子が警告を発する。

 

「ハジメちゃん!香織さん!真上で動きが」

 

言葉と同時にハジメはユエを抱え縮地でその場をはなれる。

勿論、香織もすでに飛びのいている。

ハジメ達が柱の陰に隠れると同時に

ユエが封印されていた所に

天井から何かが落ちてきて

部屋全体に地響きが広がる。

そして着地と同時に巻き上げられた

砂ぼこりが収まったとき

そこには巨大なサソリモドキというべき魔物がいた。

 

 

 

 

              

 

 

 

やっとユエを出せました。サソリモドキとの戦闘は

次回に持ち越しです。

 



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21 二つの戦い

続きの戦闘回です。

 

 

 

 

                    

 

 

砂ぼこりが収まり姿が露わになったそれは

二対のハサミと一対の尻尾を持つ

体長5メートル程のサソリモドキと呼べる

今までハジメ達が戦ったどの魔物より

強いプレッシャーを感じる魔物だった。

 

ガギィイイ ンッ

 

かん高い金属音が部屋に木霊する。

先手必勝とドンナー、ツヴァイ、ドライから

同時に放たれた弾丸がサソリモドキの外皮に弾かれた音だ。

 

お返しとサソリモドキは尻尾の先から紫色の液体をハジメに向けて噴射する。

かなりの速度で飛来したそれを再び柱の陰に入りかわす。

床と柱に着弾した紫の液体はジュワーという音を立て

床と柱を溶かしていく。

その液体を液体鑑定で見た経緯子が

 

「強酸性⁉︎溶解液!」

 

「香織さん。ユエさんの回復を」

 

とハジメは言いながら柱の陰からドンナーを撃ちつつ飛び出す。

やはりドンナーの弾丸はサソリモドキの外皮に弾かれ

六本の足をわしゃわしゃ動かしハジメへと接近してくるサソリモドキに

 

「泡沫水流!」

 

経緯子が試作品の洗剤を混ぜ込んだ水を

魔法でサソリモドキの足の付け根を狙い浴びせる。

「グルッウ」とサソリモドキは苦し気な唸りを上げ

いくらか動きが鈍った。

 

「あれだけ大きいと呼吸は気門だけじゃないかぁ」

 

とぼやく経緯子。どうやら経緯子はゴキブリ退治の様に

洗剤で節足動物の呼吸器、足の付け根付近の気門を

塞ぎ窒息させたかったようだ。

動きがを鈍らせた事は無駄にならず

そのすきを狙いハジメは手榴弾を投げつける

爆発と同時に中から黒い燃える泥を撒き散らし

サソリモドキに付着する。

 

これはフラム鉱石を利用して作った”焼夷手榴弾”

いわゆるナパーム弾で摂氏三千度の炎が纏わり着く

これは流石に効いてるようでサソリモドキは

炎を消そうと手足をでたらめに動かしている。

そのすきにハジメと経緯子はドンナーとツヴァイのリロードを終えて

次弾を撃ちこもうとする前に

サソリモドキのもう一つの尻尾の先端が膨らみ

一本の太い針がハジメ達に向けて射出される。

空中でその針は分離し散弾の様に二人に迫る。

二人はドンナーとツヴァイで迎撃するも

分離した針の数が多く撃ちもらした

針が二人に向かうハジメが義手の爪で

経緯子は長巻で針を打ち払うより早く

 

「聖絶!」

 

とユエの回復を終えた香織の魔法で防がれる。

 

ユエはハジメ達の戦いに驚愕していた。

見たこともない武器で閃光のような攻撃を行い。

何より三人は詠唱を行っていなかった。

それは自分と同じ魔力を直接操作できる

術を持っているということにユエは気付いたのだ。

 

自分と”同じ”が何故かこの奈落にいる。

ユエはそんな場合ではないと思いながらも

サソリモドキよりハジメ達を意識せずいられなかった。

 

ハジメ達はサソリモドキの外皮の硬さに

手詰まり感を感じていた。

ドンナーが通じないと基本、後衛補助職の三人は

攻撃力に欠ける。そんな中ハジメは

 

(奥の手をでもあれは一度きりだし)

 

と思案する中、サソリモドキが絶叫する。

 

「キィィィィィイイ!!」

 

その叫びの後サソリモドキの地面が波打ち

轟音なびかせ円錐状の棘が突き出しながら

柱の陰に隠れてるユエに襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

ハジメはユエと棘の間に一寸速く

割り込み床に手を付き錬成でハジメとユエの周りを

壁で囲みなんとか防ぐ、壁の中で

 

「アイツ硬すぎる。こうなったら奥の手をゼロ距離で?」

 

ハジメがサソリモドキの攻略を考えてるとユエがポツリと零す。

 

「・・・どうして逃げないの」

 

自分を見捨てれば助かるかもしれない。

その可能性を理解してるはずなのに

 

「助けると決めたのに少し強い敵が出たからって見捨てるのは

僕も経緯子ちゃんと香織さんも嫌だし」

 

ハジメも生きるための戦いの駆け引きなら

不意打ちも罠も必要だと考えてるし

そうでなければこの奈落の魔物相手に

生き残れなかった。どこぞの二代目紳士的宇宙人

のように「卑怯もらっきょもあるものか」である。

 

だけどハジメがユエを見捨てる事はない

何故ならそれは経緯子と香織が守った

ハジメの強さと優しさを裏切ることになるからだ。

 

ハジメが今もサソリモドキと対峙している

経緯子と香織の元にと向かおうとすると

ユエがいきなり抱きつく

 

「ユエ・・さん?」

 

「ハジメ・・・信じて」

 

と言うとハジメの首筋にカプッと噛みついた

ハジメは首筋の痛み感じ体から力が抜けていく感じがする

そういえばユエさんは吸血鬼だなと思い

なすがまま吸われるハジメ

徐々にユエの肌が艶と張りのある白磁の肌に戻っていき

頬は赤みをおびる。

 

「・・・ごちそうさま」

 

とユエは首筋から口を離し妖艶さを感じる仕草で

己の唇に残ったハジメの血を舐めとると

ユエはおもむろに立ち上がりサソリモドキに向けて片手を掲げた。

同時に黄金色の莫大な魔力が彼女から吹き上がり

ユエの魔力光、黄金の光が暗闇を薙ぎ払った。

 

「”蒼天”」

 

その瞬間、サソリモドキの頭上に直径六,七メートルは

ありそうな青白い炎の球体ができる。

ユエの指が優雅に振られるとサソリモドキに

青白い炎の球体が向かい直撃する。

 

「グゥギィヤァァァアアア!」

 

サソリモドキがかってない絶叫をあげる。

 

「「凄い・・・」」

 

経緯子と香織もユエの魔法を

ただ呆然と眺めていた。

 

魔法の効果時間が終わり炎か消滅する。

そこには外殻が赤熱化し表面をドロリと溶け

もだえ苦しむサソリモドキがいた。

 

トサリと音がしてハジメが音のした方見ると

ユエが肩で息をしながら座り込んでいた。

 

「んっ・・・最上級・・・疲れる」

 

「凄かったよユエさん。後は任せて休んでて」

 

「んっ頑張って・・・」

 

ハジメは軽く頷くと縮地で一気に間合いを詰めた。

サソリモドキは未だ健在で外殻を融解させながら

怒りハジメに向かってくるが。

 

「光縛鎖」

 

香織が魔法の鎖でダメージで動きが鈍っているサソリモドキを拘束する。

サソリモドキは動く尻尾でハジメに散弾針を撃つが

分裂する前に経緯子のツヴァイによって撃ち抜かれる。

 

そしてハジメはカバーを収納した左手を

サソリモドキに向けて構える。

左手の肘から先は無骨な造りの銃のような物が

ついていた。これはハジメが男の浪漫に走った結果の

試作の12.7ミリ弾を使う仕込み単発銃だ。

 

ハジメは左手に纏雷まとわせ右手で左の肘を支えると

右手の中指で肘の辺りにあるトリガーを押すと

 

ドッガアァアアンンッ

 

ドンナーと比べものにならない轟音が響き

サソリモドキに超音速の弾丸が命中する

ドンナーの数倍の威力を持つそれは

外殻が赤熱化そして表面が融解していた

サソリモドキの頭部を撃ち抜いた。

そしてサソリモドキはぐらりと傾き地響きを立て倒れこんだ。

 

一方のハジメはヒュ~♪とはいかず。

 

「いてぇー 肩がはずれかけたぁ!」

 

左肩を押さえて痛みでゴロゴロ転がってた。

ハジメの左手を見ると銃の固定部は歪んで外れかけている

威力の増大の反動に堪えられなかったみたいだ。

しかもハジメの肩に負担がもろにかかり

魔物の肉で変容した、今の体でないと

肩が抜けかけるではすまなかっただろう。

浪漫は浪漫だよと思うハジメだった。

 

香織が駆け寄りハジメに治療魔法をかけ。

仕方ないなぁハジメちゃんはと苦笑いする経緯子に

同じく苦笑し返すハジメ

そんな彼らの姿を無表情だが眩しそうに嬉しそうに

女の子座りをし眺めるユエの姿があった。

 

やがてハジメは立ち上がり

三人はユエの方へ歩いて行く。

闇の中で見つけた黄金色の仲間のもとに。

 

 

 

---------------------------------------------------

 

 

同じ頃再びオルクス迷宮に潜った

海里とクラスメイト達は歴代最高到達点の65階層に続く階段の前で小休止していた。

パーティリーダーである、光輝と重伍はメルドから65階層の注意点を聞き

他のメンバーは装備の点検を行い。海里は騎士団と生徒達にスポーツドリンク擬きを

配っていた。檜山はそんな海里を昏く濁った目で見ていた。海里が現れてから

自分は碌なめに遭っておらず。クラスの女子からは汚物扱い

教会や王国も要注意人物と監視が強くほぼ自由が無い。

だからこそ檜山は城に引きこもらず光輝達に付いて戦っていた。

役に立つところを見せ、上の人間に媚びる以外居場所が無いことを

彼自身の価値観に合わせ行動していた。

 

「君も飲みますかぁ?」

 

と海里が檜山に声をかける。

 

「ヒギッ いっいらねぇよ」

 

「そうですか。水分補給しっかりしてくださいねぇ」

 

と言うと海里は雫達の方へ戻っていく。

檜山は海里が自分がハジメに魔法を撃ったことを

知らないはずだ。クラスメイトの誰にもばれてないはずだ。

しかし自分たち4人に他の女子と違い表面上

普通に接してくる態度に何かを探っているのでは

勘ぐってしまう。もっと力を入れたその時こそと考える。

 

 

雫は軽く目を閉じ壁に持たれかかっていた。

何かを決断するために

そんな雫に海里がドリンクをすすめる。

 

「雫さんも今のうちに水分補給を」

 

雫は海里に礼を言い飲み物受け取り一口飲むと

 

「海里さん次の階でアイツが出たらアレを使います」

 

「雫さんあんなに嫌がってたのに」

 

「甘い事を言ってたら香織達に追いつけないから

使えるものは何でも使います」

 

と言うとドリンクを一気に飲み干す雫だった。

 

 

65階層に降りしばらく進むと大きな広間にでた。

そして中に足を踏み入れる同時に部屋の中央に魔法陣が浮かび上がる。

赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。

それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!」

 

 光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

 

 龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。

それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。

気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな」

 

そのメルドの言葉に光輝は不満げに応える。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! 

もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「南雲。香織。栗原」

 

と龍太郎は決意を込めハジメ達の名を呟く。

そんな光輝の態度に メルド団長はやれやれと肩を竦め、

確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、

しかも海里がいるのだと思い同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。

 

グゥガァアアア!!

 

咆哮と共にベヒモスが姿を現すそして

 

「イナズマァアアアキックゥウウ!!」

 

バガァアアアンッンン

 

いきなり海里が天井付近まで飛び上がり

重力魔法で増やした体重をのせた飛び蹴りを

ベヒモスの頭部に叩き込み床に頭をめり込ませる。

めり込んだ頭部から降り立つ海里

ベヒモスは抜け出そうともがいていた。

それを海里は見て剣を抜こうとするが

 

「海里さん!私にやらせてください!!」

 

この場にいる全員が怒涛の展開についていけない中

後方から雫が叫ぶ。そして雫を見た光輝達は更に呆気にとられる。

雫が真剣な顔をして犬耳を付けていた。

これこそ海里とハジメが無駄な技術で無駄にこだわった

雫専用犬耳型(ドーベルマンタイプ)思念波補助器具である。(*07 イジメとイカリ参照)

光輝達が呆然としている中を雫は悠然と歩きながら

カプセルを口に入れる。海里からもらった

緊急強化用の”ミクラス”である

これを使うと一時的に体内のナノマシンが増大する

その効果はというと今の雫だと神速剣二倍が限界だが

それを短時間だが最大五倍まで引き上げる事ができる。

ある意味勇者の限界突破を超える作用がある。

 

そして海里と入れ替わり雫が先頭に立ち

ベヒモスと対峙する。

刀を抜きベヒモスを正面に見据え

上段に構える。

 

(あの時に使っていればどうにかなったと思わないけど。

今ならだから力を貸してナノちゃん)

 

「私の行く道を阻む物を全てを切り裂く烈しい風の刃」

 

雫が言葉を紡ぎながら魔力を練り上がげていく

雫のポニーテールが揺らめき

それに合わせ刀のコーティングに使われた

ナノマシンも呼応して刀身が輝く。

 

ベヒモスが床から抜け出しキイィィンンという

高音と共に角が赤熱化していく

それを見た光輝が何か叫ぼうとした時

雫は限界までため込んだ魔力を

 

「烈風ぅうう斬ぁああんん!!!」

 

の叫びと共に刃にのせ全力で振り下ろす。

 

凄まじい衝撃波が刀の軌跡に沿いベヒモスに飛んでいく

 

ドガガァアアアアアンン

 

部屋全体を揺さぶる轟音が収まった時

そこにはベヒモスの足が一本残っているのみ

他は全て消し飛んだ様だ。

奥の壁にもひびが入っている。

雫は自分が思った以上の威力に内心オロオロしていた。

その証拠に雫の犬耳は伏せている。

この犬耳は感情を読み取りそれに合わせ動く

無駄なこだわりがあるのだ。

 

そんな時海里が何かに気づき叫ぶ

 

「格子力バリアー!最大!」

 

と海里、雫と生徒達、騎士団全員を覆う

ガラス板を繋ぎ合わせたような半透明ドームが現れる。

 

そしてゴゴゴゴゴと音がしたかとおもうと

部屋全体にひびが広がり崩落が始まった。

 

しばらくして音が鳴りやむと

完全に部屋は埋まっていて

雫は犬耳を伏せ体育座りで落ち込んでいた。

そして上目遣いで海里に私が悪いのと訴えかけている。

 

(ナノちゃんもしかして張り切りすぎた?)

 

『どうも雫様の専属達が海里様に良いところを

見せたかったみたいなので』

 

雫のナノちゃん達も悪気はないしこれからの事も

考えるとやりすぎ位でいいと思うので海里に

次はもう少し周り環境を配慮するようにお願いした。

遠まきに生徒達が見守る中

なんとか雫を励まそうと海里が奮闘中に

とにかくメルドの判断で地上に戻り

迷宮の攻略ルートを再検討する事が決まった・

 

 

 

                   

 

 

 

真面目な戦闘回でした。

 

雫たちがつり橋で立ち止まる所はカットしました。

雫に鈴も恵里も奈落の底でハジメ達がよろしくやって生きてるのを

知っているので恵里の降霊術の下りはなくなるし

わざわざ勇者(笑)の頓珍漢なセリフは書く必要無いと思い無しに

 

檜山の言葉からわかる通りこの世界の恵里は

檜山と接触してません。香織が落ちてハジメとアレな関係になってると思ってる

上に檜山が要注意人物とみられて余りにも利用価値が低いからです。

 

雫の犬耳について、思念波補助にメーヴィスと同じ剣より

海里(マイル)とハジメがいるなら拘りケモ耳かなと

そして日本刀→ポニテ→坂本少佐で技がアレに

なのでベヒモスごとき一撃です。

 

オマケ

 

ハジメ 「ユエさんなに踊ってるの?(色々見えそうだよ////)」 

 

 

ユエ  「裸マント・・・吸血鬼・・・踊らないとダメ・・トキメキの夜だから」

 

 

【挿絵表示】

 

 



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22 まったり会話

更新がおくれました。

仕事と提督がちょっと

相も変わらずのんびり展開です。

では本編です。

 

 

 

 

 

                           

 

 

 

 

 

 

「右手に炎、左手に風、“ドライヤー”」

 

ブッォー

 

「・・・んっ」

 

経緯子がユエの洗いたての髪を魔法で乾かしている。

極上の絹の金糸のような髪がふさっと温風で広がる。

ユエはその温かさに目を細め気持ち良さげだ。

 

サソリモドキを倒したハジメ達はユエから詳しく話を

聴くつもりだったが、ユエが封印されていた部屋に

長居したく無いみたいなのでハジメが造った拠点に移動することに

その際サソリモドキの死骸やらユエが封印されていた

錬成で崩れた立方体をアイテムボックスにしまうと

ユエはとても驚いていた。

 

とりあえず経緯子がユエを風呂に入れてから

落ち着いて話をすることにして。

魔法でユエの髪を乾かしているところだ。

 

(ユエは身だしなみを他人任せに

慣れてる所をみると王族とからしいし)

 

経緯子はユエの背中を見ながら考えてた

 

(それに垢とかあまり溜まってなかったし

もしかしたら新陳代謝を落として休眠状態に

近かったのかも、それにあの立方体は封印にしては

なにか半端だし)

 

などと考えながらユエの髪を乾かし終えると

アイテムボックスに入れてあった

自分の予備のシャツを着せる。

 

 

 

 

ハジメ達4人は車座に座り話していた。

 

「そうすると、ユエさんは少なくとも三百歳以上なんだね?」

 

「ハジメ…マナー違反それにユエでいい」

 

ユエがジト目でハジメを見る。経緯子と香織も少し非難の目を向ける。

女性に年齢の話はどの世界でもデリケートな問題なのだ。

 

 ハジメ達が読んだ本には、三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだと書かれていた。

 

「吸血鬼って、みんなそんなに長生きなのかな?」

 

「香織、・・私が特別”再生”で歳もとらない・・・」

 

ユエが言うには普通の吸血鬼族は生きても二百年位で

ユエは12歳の時魔力操作や自動再生の固有魔法に目覚めてから

歳をとっていないらしい。

先祖返りの力に目覚めてから数年で一族で最強になり

十七歳の時、吸血鬼族の女王になったらしいが

数年後にその力を恐れた叔父がユエを裏切り

ここに封印したのだが、当時のユエは突然の裏切りに

混乱していたため、どうやってあの封印部屋に連れて

来られたのかわからないらしい。

 

「それでユエさん・・」

 

「・・・・・・」

 

ハジメが質問するがさん付に

ユエが無言の抗議をして言い直す

 

「・・・ユエはここがどの辺りかわかる?

他に地上に戻る道とか知っている?」

 

「・・・わからない。でも・・・

この迷宮は反逆者の1人が造ったと言われてる」

 

「「「反逆者?」」」

 

ユエが言うには 遥か昔、神代と呼ばれる時代に

神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属がいたそうだ。

しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。

 

 その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。

この【オルクス大迷宮】もその一つで、

奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

そのあとハジメ達はユエに自分たちがトータスに召喚され

奈落に落ちユエを助けるまでの事を話すと

 

「・・・ぐす・・・ハジメ、経緯子、香織、・・・つらい

私もつらい・・・」

 

ユエはハジメ達の境遇に同情し泣きだす。

ハジメはあわてて

 

「ユエさ・・・ユエの方がずっと一人で

辛かったのに僕には経緯子ちゃんと香織さんも

いてくれたから。だから泣かないで」

 

と言いながらハジメは右の指でユエの涙を拭う

ユエはハジメの手を両手で包み目を細め

ハジメの手に頬ずりする仕草をする。

 

「・・・んっ」

 

ハジメが経緯子と香織を見ると

香織は笑顔が怖く、経緯子は「あ~あ」という顔をしている。

 

「ハジメくん!私もさん付けはやめて”香織”と呼んで欲しいかな?かな?」

 

なにやらユエに対抗心を燃やす香織さんである。

そのお願いをハジメは拒否できず。小声で

 

「…香織///」

 

「ハジメくん♡」

 

とハジメの左肩に顎をのせるようにして

後ろから抱きつきユエと視線を交える。

 

そんな二人に挟まれたハジメが

正面に座る経緯子をすがるように見る。

 

「んっ?私はちゃん付けのままでハジメちゃん

ほら香織さんもユエさんもハジメちゃんが

動けないから離れて食事にしましょう」

 

「あっユエの食べる物をどうする?魔物肉食べさせるわけには」

 

「ハジメくん魔物肉以外だと

あのリンゴスイカぐらいしかないかな」

 

「大丈夫・・・食事はすました

・・・熟成の味・・ハジメの血」

 

「血でいいのね流石は吸血鬼

熟成の味・・・吸っていいハジメちゃん?」

 

「やめて」

 

吸血鬼族は普通の食べ物でも栄養が取れるが

血を直接吸う方が効率が良いとユエが説明した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

くぅ~ん

 

 

それが今の雫の様子である。

ベヒモスの居た広間を崩落させた

事に責任を感じ犬耳を着けたまま

海里の後をしょんぼり歩いている。

 

30階層まで戻って来たとき

雫の後を歩いていた鈴が

伏せてはいるが時々

感情の揺れでぴこぴこと動く犬耳に

辛抱たまらず手を伸ばし雫の犬耳の裏を指でなぞる

 

「あっひゃん‼」

 

雫はゾクゾクとした感触が

全身に伝わり背中をのけぞらせ

思わず声を上げる。

この雫専用犬耳型(ドーベルマンタイプ)思念波補助器具は

シンクロ率100%超で触られた感触も伝える逸品なのだ。

キラリ~ン☆その反応に

鈴が瞳を輝かせなでなで、もみもみし始める。

鈴に触られる度に雫は

 

「ひゃっ」

 

「はぅうん」

 

「やっ・・らめぇ」

 

と段々声に艶が出てくる

そのうえ雫が身をよじらせて

反応するたびに

チチタプ、チチタプとなるものだから

男子生徒は色々前のめりである。

勿論、M・D勇者(モンスター・ドウテイ)光輝も

例外ではない。

 

雫がいい加減キレて鈴に

耳まで赤くし涙目でゲンコツをかまそうとしたとき

メルドが生徒達を叱責する。

 

「お前たち!まだ迷宮の中だぞ!

この辺には厄介な呪いを放つ魔物も

いるんだ気をぬくな・・⁉」

 

メルドが言葉を終える前に

物陰に潜む黒い魔物から

謎の怪光線が雫のこぼれそうなのを

たまたま並んで凝視していた

光輝と檜山に浴びせられる。

 

怪光線を浴びた

二人は何故か足がもつれ

光輝を檜山が地面に押し倒すかたちで転ける。

追撃と言わんばかりに檜山の唇が

光輝に迫る光輝は首を捻って

己の唇を死守するが逸れた檜山の唇が

光輝の耳に触れ吐息がかかり

ゾクッとした感覚が光輝を襲い

 

「アッ フンッ❤️」

 

と色気のある声を上げる。

先程の魔物はラッキースケベ(男同士)が

起きる呪いを放つ固有魔法を持つのだ。

 

と濃ゆい光景に鈴もセクハラを止め

雫も久方ぶりに光輝に対して少しだけ

慰めてやる気が起こるが

 

立ち上がった光輝と檜山が

呪いの影響が抜けてないのか

 

「天之河・・・・」 

 

「檜山・・・・・」

 

とまんざらでもない感じでキックオフする二人に

雫は慰めの気持ちは霧散しそして

 

チタタプ、チタタプと先程の黒い魔物を

隠しきれ無いナニカを放ちながら

メガネを光らせ杖でなめろう状態にする

恵里を雫と鈴は見なかったことにした。

 

とグダグダな光景を海里は眺め

自分も雫の耳をモフリたかったと

そして恐ろしい呪いがあるな〜と

考えていた。

 

まぁ多少のトラブルが有ったが無事に

迷宮から出る勇者一行だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

王宮のサロン

 

奈々、妙子、昇,明人,淳史の

居残り組はハジメ達が奈落に落ちたあの日から

こうして集まってはただ駄弁る日々を過ごしていた。

そんな中、訓練を終えた優花が入ってきて奈々の隣にすわる。

 

優花は皆を見渡し一呼吸おくと

 

「私。愛ちゃん先生の次の遠征についていくから」

 

「え~優花っち危ないよ」

 

「危ないし、今も怖いけどこのままだと嫌だから

アイツの事を無駄にしたくないから」

 

その言葉に淳史が

 

「園部、南雲たちには俺も助けられて

お前の何かしたい気持ちもわかるけど

南雲たちは・・・だから怖いんだよ俺は」

 

怖いその思いは奈々や妙子に昇に明人も同じだ

ハジメは生産職だったが無能では無かった

だからこそ無茶をして皆を救ったが落ちてしまった。

なのに助けられた自分達は怖くなって

何もしない自分たちに後ろめたさと嫌悪感を持っていた。

 

「べつに皆に一緒に来てなんて誘う気はないし。

今、言ったのは私自身の意思表示だから」

 

奈々達の心情も良くわかる優花は

元々一人で愛子に付いて行くつもりでいた。

その言葉に賛同する者が現れる。

 

「俺も畑山先生について行くよ」

 

優花達のテーブルから少し離れた所に

座っていた清水幸利が言った。

それは聞いた昇が

 

「清水は怖くないのか?」

 

「あ~俺はさぁこのまま何もせず

城に居るほうが怖いと思うんだよ」

 

「どうして?」

 

「今は畑山先生のおかげで

こうして何もせず引きこもっていられるけど

いつまでも王国、いや教会が特に許さないだろう?

最悪、魔法で知らない内に洗脳されるかもしれないし」

 

「清水それは考え過ぎじゃないか?」

 

と昇は言うが

幸利の言葉に淳史が考え込みながら言う

 

「確かに宗教絡みだとあり得るかもな?

でも清水お前もオタクだけあって

こういう状況には色々頭が回るよな」

 

変に宗教に偏見を持つ日本人らしい答えをだし

淳史が幸利の考えに一理あると思い

オタク趣味を揶揄することもなく感心する。

今のクラスは経緯子やハジメの影響で

普通にゲームやアニメなどの

話をしてても変な目で見られる事もなく

幸利も中学の時のようにいじめられず

地球の教室では召喚されなかったが

その類の話をする友人もいた。

 

妙子が何かを思い出し言う

 

「そういえばさぁ愛ちゃんに付いてる

神殿騎士だっけ?全員、凄いイケメンだよね」

 

「優花っち、これは由々しき事態だよぉ」

 

「そうね。愛ちゃん先生を篭絡するための

ハニートラップ要員だわ!」

 

「「「なにぃ!」」」

 

と憤りの叫びを上げる淳史たち

イケメン滅ぶべし。

 

私たちの愛ちゃん先生を

教会の毒牙から守ると団結する優花たち

結局。奈々たちも優花と共に

愛子の遠征についていく事になり

ここに”愛ちゃん護衛隊”が誕生した。

 

優花達が気勢を上げる中

幸利は王城からいやオルクス大迷宮から

離れる事にホッとしていた。

彼は何かに怯えていた。

 

 

 

                  

 

 

経緯子が前回使った”泡沫水流"と

今回のドライヤーの魔法は

自分がお気に入りのなろう小説

家政魔導士の異世界生活~冒険中の家政婦業承ります!~

の主人公のリスペクトです。

スライムのルリィが可愛いですよ。

経緯子もぶっかけ系キャラになるかも?

 

 

エロハプニング(男同士)はありふれ日常の一巻からです。

ぶっちゅうとしても良かったけど

それだと恵里が檜山をチタタプしそうなので。

 

清水君は原作のように光輝と檜山によって

クラス内で異常なオタク嫌悪の空気が作られないので

あまり卑屈になることもなく原作より幾らか明るい顔をしています。

休み時間はもの静かに友人とオタク談義してます。

ただその友人は召喚に巻き込まれてません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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23 栗原海里のとある日のこと

かなり投稿が遅れました。

自分の作品はかなり展開が

遅いなぁと思う今日この頃です。

しかも更新も遅いのに

見捨てず読んでくださる

皆様には感謝しかありません。

ありがとうございます。

 

では本編です。

 

 

 

 

 

 

 

               

 

 

 

 

===============================

 

シュタル鉱石

 

魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石

 

================================

 

シュタル鉱石これがサソリモドキが異様に硬かった原因である。

この鉱石でサソリモドキの外殻が出来ていて

サソリモドキの魔力で強化されていたためだ。

 

鉱石なら錬成で加工することができたかもと思い

ハジメが試しに錬成してみると簡単に変形し

あの戦いの苦労はと思いハジメはへこんだ。

 

ともかくサソリモドキとの戦いでは火力不足を感じたためと

対物ライフル擬きを義手に仕込むのは無謀と痛感したので

改めてシュタル鉱石を利用した1.5メートル強のロングバレルの

対物ライフル”シュラーゲン”を開発

そのうえシュタル鉱石で弾頭をコーティングした専用の徹甲弾も用意した。

 

だがハジメはアイテムボックスで持ち運びに苦労しないため

オルクス迷宮の対ラスボス用に更なる大型兵器を制作中だ。

 

「経緯子ちゃんその位置で支えてて」

 

と今も経緯子に手伝ってもらい組み立ている最中である。

ちなみに香織とユエは今、魔物狩で拠点にいない。

 

「よしココで固定して。完成!」

 

「ハジメちゃんお疲れさま」

 

「経緯子ちゃんもありがとう」

 

と完成した新兵器を見ながら互いを労う二人

そして並んで座り水を飲み一息つく

 

「ハジメちゃん、ユエさんも

日本に連れて行くのよね 」

 

「うん、帰る所が無いみたいだし

父さんと母さんも受け入れてくれるだろうし

経緯子ちゃんは反対なの?」

 

「ううん、ユエさんを連れて帰る事は賛成よ

ただね、お姉ちゃんはどうするのかなぁって?」

 

「地球に帰るか元の世界に戻るか?」

 

「お姉ちゃんあっちの世界に

大事な仲間とか友達もいるみたいだし

それに新しい家族もきっと・・・」

 

「どっちを選ぶのかなぁ海里姉ちゃん」

 

ハジメと経緯子は海里もといマイルの家族の事を

自分たちとの繋がりが否定されるのが怖くて

海里に尋ねることができずにいた。

もしマイル(アデル)の家族の事を聞けば

二人は海里を強引に地球に連れ帰るだろうが。

 

「ハジメちゃん・・」

 

経緯子は自分の隣にハジメが

居る事を確かめるように

ハジメの左肩に頭を預ける。

そしてハジメもまた経緯子が

隣にいてくれる事を

確かめるためか

経緯子の髪を右手でやんわりと撫でる。

しばらくそうしていると

拠点の入り口を動かす音がし

ハジメと経緯子は離れる。

 

「ハジメくん、経緯子ちゃんただいまー」

 

「ただいま・・・沢山狩った」

 

「おかえりなさい香織さん。ユエさん」

 

「香織、ユエおかえりー」

 

狩りに出ていた香織とユエが戻ってきた。

トテトテとユエがハジメに寄って来る。

 

「んっハジメ・・・沢山狩った・・香織はちょっぴり」

 

「むう~ユエは考え無しで魔法で倒すから黒焦げだし

私は丁寧にとどめを刺してるもの

ハジメくんも獲物は綺麗に処理した方が

良いと思うよねぇ?ねぇ?」

 

「香織・・・負け惜しみ」

 

「ユエこそ残念仕事だよ」

 

香織とユエがハジメへのアピール合戦を始める。

二人は良く言い争いをするが、この二人、狩りに行き

怪我などしない所をみると上手く連携しているようだ

そんな二人を経緯子は、ほほえま~と眺めながら小声でハジメに

 

「香織さん何か思い詰めてたけど

ユエさんのおかげで少しは楽になったみい

それにユエさんも楽しそうだしね」

 

「そうだね、日本じゃあんな感じに

言い争う香織を見たこともないから

僕はちょっと驚いたけどね」

 

少しの間、言い争いをした香織とユエは

いつも通りにハジメに近づき

二人で仲良くハジメにすりすりしようとする。

 

これが今のハジメ達の日常風景だ。

 

 

 

 

----------------------------------

 

 

オルクス迷宮の攻略はルートが崩落で

潰れたため別ルートの探索か崩落箇所の

修復するか決定するまで攻略組は

王城に戻り待機することになった。

 

 

~勇者と海里~

 

キンッ! キンッ! キンッ!

 

と剣の打ち合う音が訓練場に響いている。

光輝のステータスはすでにメルドを超え

ステータスのごり押しだけで騎士団を

ほぼ圧倒できるようになっているが

そんな彼も今そのごり押しに圧倒されている。

模擬戦の相手、海里は光輝の十倍以上のステータスで

 

「くっ!」

 

光輝の繰り出す剣戟を海里は

 

「ほっ!ヤァ!」

 

とただ左右に剣を振るだけでいなしていく

そこに技術はなく勘と反射だけだ。

 

光輝はここまで己の技術と努力を否定された事はなかった。

それも相手は妹と生き別れた悲劇のヒロインの

年上の美人で自分によって救われなければならない一人に

己の無力さを自覚させられていく

だが光輝はそれを否定するかのごとく

渾身の一撃を気迫と共に海里に打ち込む

 

ガキィッ

 

と容易く海里の剣で受けられる

光輝は強引に押し込もうとするが

微動だにせず海里が軽く剣を払うと

光輝はたたらを踏み尻もちをつく。

 

「天之河さん大丈夫?立てる?」

 

海里が光輝を気づかい声をかけると

光輝は立ち上がりながらいつもの調子で

 

「ははっ 海里さんは強いですね。

俺と一緒にこの世界を救うために戦って

くれると思うと心強いですよ」

 

「君は何を言ってるの

私は戦争に参加する気はないですよ」

 

「それだけの力を持っているのに

なぜこの世界の人を救わないんです?」

 

「私は戦争がどんなものか知ってるし

それに魔人族のことをよく知らないしね」

 

「魔人族は残忍で凶悪だから

俺たちはこの世界を守らないと

それが正しい力の使い方なんです海里さん」

 

「天之河さん、残忍で凶悪な魔人族

怯える人々そして選ばれし戦士たち

事実なら子供の正義感で戦えますね」

 

「海里さん!子供って俺たちはごっこ遊びしてない!」

 

「そうですよね。だから経緯子たちがココにいませんね」

 

「それは・・香織と経緯子さんは

俺が絶対助けだします」

 

「そう・・・ならもう一度言います

私は帰るために戦ってるだけです」

 

と言い残すと海里は訓練場から去っていった。

 

残された光輝は

 

「海里さんなぜそれだけの力を

この世界の救済に使わないんだ

それが正しい力の使い方なのに」

 

と独り言ちるその言葉が

近くで刀の素振りをしていた雫の耳に入り

彼女は眉をひそめた。

 

 

~海里と監視するもの~

 

主はアンノウンを直接

観察するように命じられた

主の目をもってもその者は

常におぼろげにしか見えない

故に接触する事に決めた。

 

海里が夕食を終え自室へ一人で歩いていると

月明かりに照らされた廊下に

一人の美しい銀髪で均整の取れた体の

修道女が佇んでいた。

 

彼女は抑揚のない声で海里に話しかける

 

「私はノイントと申します。

栗原海里様と少し話をしたく・・・」

 

だがノイントは言葉に詰まる

 

(アンノウンのアレはなんだ

魔力ではない魔力のような意志をもつアレは)

 

ノイントは観測できない何かに

己のすべてを見透かされること

最悪主へ害が及ぶことを

なのですぐこの場を去ろうと

おのれの脇腹を押さえる仕草をし

 

「イッ・・急にさしこみが、失礼いたします」

 

 

「そうですか、私もお話したかったです。

良く()()()ますね。これぞファンタジーです」

 

その言葉に立止まるノイント

海里はなぜか納得したように

「わかっている、わかっているから内緒にしてるから」

と手を振り自室へ入っていった。

 

 

「アンノウン・・・見破ったのか」

 

 

 

~海里とナノちゃん~

 

自室に入った海里は

ソファーに腰かけると

 

「ロボットでなくてアンドロイドだよ

ファンタジーな世界ならオートマタ

すごいね一見人間と見分けがつかなかったよ

で事情があって正体を隠すのもお約束だもんね」

 

と海里はえーもん見たと興奮して言った。

 

『あの程度のもの我々が造ったものに

比べればⅭ級品です』

 

とナノちゃんが姿を現して言う

海里は意外とナノちゃんは負けず嫌いだなぁと思い。

 

「最近私の力が急に上がった気がするけど

さっきの勇者君と模擬戦闘も余裕だったし」

 

『海里様ひらたく言うと慣らし運転が終わったからです。

海里様の地球とマイル様の地球は同一宇宙に存在する惑星ですので

同じく上位世界からの転移での余剰エネルギーによる強化が

海里様の場合は莫大だったため無理なく体に

馴染むのに時間がかかったのです』

 

海里(マイル)はナノマシンの造物主が調整した受精卵で生まれた

スーパーウルトラDXコーディネーターともいうべき存在なので

自然発生の人間とはポテンシャルが違いすぎるため

力が馴染むのに時間が掛かったのだ。

 

海里のステータスプレートはリンクを切って

適当に周りのステータスに

合わせ誤魔化しているので。

海里は恐る恐るナノちゃんに尋ねる。

 

「ナノちゃんトータスの人と比べると

例えば魔力だとどの位強いの?」

 

『約6千8百倍です。流石に肉体限界のため

腕力や頑丈さ等は数百~二千倍のあいだですが』

 

「ねぇ元の世界に帰れば元に戻るよね?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 

「また普通が平均が遠のくよぉ!!」

 

と海里はソファーでふて寝した。

 

 

『あの人形常にどこからかエネルギーを送られていたな』

 

『どうする辿るか?』

 

『それは我々がもう少し増えてからだな』

 

『海里様の安全が最優先だしな』

 

『だが奴の大元が直接手を出した時は』

 

『『『『『もちろん潰す!!』』』』』

 

 

 

                  

 

 

 

今回も話が進んでない。

 

香織とユエですがキャットファイトはしません

軽い言い争いだけで終わります。

香織にとってもユエにしても

今までにない関係で嫌いではないのです。

 

経緯子にたいしてはハジメとの距離が

自然すぎて二人は受け入れてます。

 

エヒト神の使徒ノイントVS造物主の使徒ナノちゃん

その行方、それはいつかの講釈で。

 

 

 

 

 

 



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24 ユエ〇〇の行方は?

 

あっと驚くタメゴロウ  

ゲバ! ゲバ!

 

前話投稿したときタイミングがよかっのか

日間ランキングで11位になり驚いてしまいました。

なんだかかんだ言っても現金なもので

モチベが上がりました。感謝です。

それと誤字報告いつもありがとうございます。

 

では本編です。

 

 

                

 

 

 

 

 

海里は雫を含む女生徒全員にドン引きされていた。

城のサロンで皆でお茶をしていた時(優花たちも愛子が前の遠征から戻ってないため城にいます)

海里は生まれ変わった先、アデル・フォン・アスカムの家族に

ついて聞かれて話したのだが

そのあまりの内容に女生徒は皆ショックを隠し切れない。

 

「母親と祖父が父親に盗賊の仕業に見せかけ殺されるなんて」

 

「しかもその理由が愛人を後妻にするためだなんてありえないしょ」

 

「海里さん(アデル)が殺されなかったのは父親が婿養子で

継承権がなかっただけだからなんてヒドイ」

 

「お姉さん、義母と義妹からはお手伝いさん扱い」

 

「すでに父親と義母はお家乗っ取りがバレテ死刑。

貴族社会なんて恐ろしいのかしら」

 

「異世界転生こわ~」

 

(義理の親なんてどこでもクソッ!)

 

がそれぞれの反応である。

その女生徒達の反応に海里は改めて

マイルに転生前海里の時の家族には

恵まれていたのだ思った。

もし海里の姿のまま変わらないなら

私は経緯子達と両親の元に帰るのか

それとも赤き誓いの皆の元に帰るのか

今はどちらが良いのかわからないと悩むのだった。

そんな苦悩する海里の顔をみた優花が

 

「ごめんなさい海里さん

私たち事情も知らずに聞いてしまって

思い出したくもなかっただろうにさぁ」

 

と言い皆が海里を気まずそうに見ていた。

 

「大丈夫その事は気にしてないから

海里の記憶を思い出したの10歳の頃で

そのためか”アデル”境遇を客観的みて

受け入れる事ができたから全然平気」

 

「ねぇねぇ!お姉さん!

一緒に冒険してた赤き誓いの

仲間はどんな人達だったの?」

 

鈴がつとめて明るく質問してきた。

 

「そうですね。チームのリーダーは

メーヴィスさんと言って剣士でカッコイイ人で

女の人なのに女の子にモテモテでしたよ

まるで雫さんみたいです」

 

「海里さん。そこはいらないと思うのだけど」

 

「それに治療魔法と氷の攻撃魔法が得意な

ポーリンさんおっとりとした感じで胸も大きくて

妙子さんみたいな感じの人かな(なんとなくSぽぃ気もするし)」

 

実は妙子、クラスで雫に次いで胸が大きいちなみに三番手が優花である。

妙子はたれ気味の目と左下唇のホクロが胸の大きさと合わせ

なんとなく年上のエロいおねぇさんに見えると男子の間で思われてて

胸の谷間近くにもホクロがあるとかないとかの噂もある。

 

「最後は炎の攻撃魔法が得意なレーナさん

気が強くて少しツンデレな人です。

(胸は鈴さんと奈々さんと同じぐらいなのは内緒に)」

 

と赤き誓いののメンバーの紹介の後

冒険談を話し、お茶を続けたのだった。

赤き誓いのメンバー過去については話さなかった

メーヴィウス以外は色々重すぎるためだ。

 

 

 

----------------------------------

 

「ハジメ・・・GO!」

 

「ユエだけずるいかな?かな?」

 

「チクチクするし鬱陶しぃし」

 

ハジメがユエを肩車して香織と経緯子は文句を言いながら

自分たちの肩ぐらい迄伸びた草むらの中を走っていた。

 

キッシャシャアアアア!!

 

何故ならハジメ達をお花畑が追いかけていたからだ

ではなく頭に色とりどりの花を咲かせた

200体近くのラプトル擬きの恐竜型の魔物が

ハジメ達を追いかけていた。

 

「ハジメにオンした私は・・・神にも悪魔にもなれる」

 

「ハジメ・・右」

 

とユエが草むらの中から奇襲しようとするラプトルを見つけ

ハジメの頭を挟んでいる太ももでハジメの頬をムニュとし指示する。

ハジメは奇襲しようとしたラプトルをドンナーで打ち抜きながら

 

(なんでそのネタをどちらかと言うと黒鉄の城でなくて

バイオレンスな世界の空手家だよね僕)

 

とハジメは現実逃避的なことを考えながら

ジュラシックな今の状況に陥った理由を思いかえしていた。

 

ハジメ達が六十階層の高さ10メートル強の木々が

生い茂る樹海のエリアに降り立ち次の階層への階段を

探索しているとズシン、ズシンと大きな足音が響てきた

やがてハジメ達の前にティラノサウルスにそっくりな魔物が姿を現す

凶暴な見た目とうらはらになぜか向日葵のような花を付けていた。

ティラノサウルスはハジメ達に咆哮を上げながら向かってくるが

 

「緋槍」

 

ユエが炎の槍をティラノサウルスの口内に向けて飛ばし

あっさりと魔物を倒すとティラノサウルス頭の花がポトリと落ちる。

経緯子はその花を拾い己の技能[+生物系鑑定]を使うと

 

「今の魔物は操られてたみたい

この花は根っこから偽の神経伝達物質を分泌して

ある程度宿主を操る事ができるのよ」

 

と話していると今度は多数の魔物が近づく気配がした

そして出てきた魔物を仕留めながら走っている

今の状況につながるのだった。

 

どうやら寄生されている魔物はこの階層いる

ほぼ全てのようで倒してもキリが無く

このままでは数に押し潰されしまうため

感染元の魔物達に指令を出してる魔物を

倒すためハジメ達は走りまわっていた。

 

ただ闇雲に走ったわけでは無く

経緯子が探索魔法で魔物達を花をアンテナ代わりにして

操ってる念波らしきものを逆探知しその方向へ走っていた。

 

「光刃」

 

香織は木の上から飛びかかってくる小型の

ラプトルを切り裂き

 

「これでも浴びなさい」

 

と経緯子はバレーボール大の容器を追って来る

ラプトル達の頭上に投げツヴァイで容器を破壊すると

緑色の液体が飛散しラプトル達の頭の花にかかり

ジュウワッと音がし花が溶けついでにラプトル達の脳天を溶かし

ラプトル達の断末魔が響き渡る。

先程の容器にはサソリモドキから採取した溶解液が入っていた。

 

ハジメも左右から飛び出てくるラプトルを

ドンナーで撃ち抜いて行く。

やはり標的の魔物の巣に近づくに連れ圧力が増してくる。

 

「ハジメ・・・アレ」

 

と頭上のユエが指を指す

示す先には縦割れの洞窟らしき入り口が見えるが

多数のラプトルが入り口の前を塞ぐように陣取っている。

 

「ハジメ任せて・・・蒼天」

 

ユエが魔法でまとめて吹き飛ばし

その隙にハジメ達は縦割れの洞窟に滑り込む

中は人が二人が並ぶのがやっとの広さで

ラプトル達も一匹ずつしか入ってこれない

 

「聖絶」

 

香織が結界でラプトル達を押し留めてる間に

 

「錬成」

 

ハジメが錬成で入り口を塞ぐ。

 

「これで後ろは大丈夫かな」

 

「経緯子ちゃん中にもたくさん魔物が居るのかな?かな?」

 

「今探ってみたけど奥の広間らしき所に一匹だけ居るみたいよ」

 

「それが・・ボス?」

 

「このまま進んでもいいけど僕は気になる事が

どうやってそのボスは魔物たち寄生させたのか?」

 

「植物だからタンポポみたいにフワフワと飛ばしたのかな?」

 

「だとすると種やらが部屋全体に充満してる可能性もあるし」

 

「魔法で・・ガード」

 

経緯子はもう一度花をアイテムボックスから取り出し

分泌液を詳しく鑑定し直す

 

「なるほどね。ハジメちゃん、香織さんの

私たち三人は毒耐性を持ってるから。

分泌液の効果はないみたいよ」

 

「僕達三人以外、ユエには予防策が必要だね」

 

「ハジメちゃんに隠し部屋造ってもらって

そこでボスを倒すまでまっててもらう?」

 

「経緯子・・・それは嫌」

 

「感染予防ならマスクとか防護服がいるのかな」

 

「防護服・・・アレを使えば作れるかも」

 

アイテムボックスにしまっている

魔物の素材を思い出し防護服の

製作に入るハジメ達。

 

 

 

 

 

「生臭い・・・・だっぴゃ」

 

半魚人もとい蛙の魔物の皮を

利用して製作した防護服を着た

けろっこユエたんが文句を言っていた。

蛙の口に付けられた虫系の魔物の目を

加工した透明カバーから見える

ユエの目は不快感をあらわにしていた。

経緯子がユエに謝る。

 

「ごめんね。ユエさん完全に

消臭するが暇なくてお詫びに後で

ハジメちゃんの血いっぱい吸っていいから」

 

「んっ・・なら我慢する」

 

「僕はなにも言ってないよ経緯子ちゃん」

 

その後ハジメたちは慎重に

ユエはペタペタと足音をたてながら

洞窟をしばらく進むと

広間に出る奥には縦割りの道がみえる。

 

「皆、広間全体に薄く反応があるから注意して」

 

と経緯子が警告する。

そしてハジメ達が広間の中央に来た時

全方位からピンポン玉大の緑色の胞子の

ようなものが無数に飛んできた。

 

ハジメ達は咄嗟に背中合わせに円陣を組む

飛んでくる胞子擬きの数はざっと百を超えているので

 

「聖絶」

 

「錬成」

 

と香織は結界でハジメは石の壁で潰していく。

 

「風刃乱舞」

 

ユエは速度と手数に優れた風系の魔法で迎撃している。

 

「消毒よおぅ!!」

 

経緯子はフラム鉱石と風魔法を

合わ火炎放射器を再現し燃やしていく。

 

四人が緑の玉を確実に迎撃してると

香織の右足首に何かが巻き付く

それは木の根であった

床を破壊し出てきたそれは一気に

香織を天井高くに持ち上げる。

 

「風刃」

 

「きゃっ」

 

ユエがすかさず香織に絡みついた木の根を切断し

そのまま空に香織は放り出されるが

 

「香織!大丈夫」

 

とハジメが香織をお姫様抱っこで受け止めると

 

「ありがとうユエ!えへへ」

 

香織はユエに助けてくれた感謝以外の感情も込めて言う。

 

「むぅ・・香織、油断」

 

「ほら!みんなまた来るわよ」

 

経緯子が警告すると同時に

ハジメ達の周囲が次々と隆起し

木の根が鞭のように襲ってくる。

ボスらしき魔物はハジメ達に

胞子による効果が出ないために直接攻撃に切り替えたみたいだ。

ハジメ達は足元を警戒しながら

木の根をドンナーや魔法で切断、破壊していく。

そんな中ハジメが

 

大地崩壊(ガイアクラッシャー)

 

と右拳で床を殴りつけると奥の道に向かって

床が棘状で連続で隆起していく

この技はサソリモドキを食べたことで得た

技能であるがこの技を使えるのは

錬成とナノマシンの土魔法に高い適性を持つハジメだけだ。

経緯子と香織は土ボコが精々だった。

 

埋もれた魔物の根が露わになった

それを経緯子、香織、ユエの三人は身体強化をかけ

木の根を掴むとタイミングを合わせて

 

「「「どっせぃいい!!」」」

 

引っ張り上げると奥の縦割れの暗がりから

人間の女と植物が融合したような魔物

ゲームなどでアルラウネと呼ばれる魔物が

引きずり出される。

アルラウネは美しい女性とよく表現されるが

目の前それは醜悪なそれであった。

無数のツルがウネウネ動き気味が悪い。

口元は突然引きずり出されたためか

引きつった笑いをうかべている。

 

ドバンッ!!

 

ハジメはそんな似非アルラウネを長々と観察する気はないので

すかさずドンナーで頭部を吹き飛ばした。

アルラウネの体が痙攣しながら倒れ

周囲でうごめいていた木の根も動きを止め床に倒れる。

 

 

「・・・ムレタ」

 

ユエが早々に防護服を脱ぎ捨てる。

なにがしらの粘液が蛙の皮に残ってたのか

ユエの体の所々にヌトヌトしたものが付いている。

 

香織がタオルを持ってユエに近づくも思わず。

 

「くさっ生臭っ!」

 

フレーメン反応な顔でつい言ってしまう。

 

「むぅ・・・香織」

 

ユエはそう言いながら

香織に抱きつく

 

「ごめ~んユエ・・くさっ私が悪かったから」

 

「香織も仲間・・・スリスリ」

 

「やめぇ~」

 

いつもの通りじゃれ合う二人を見ながら

 

「ハジメちゃんもう魔物の反応は無いから

早くお風呂を用意してあげて」

 

「わかったけど。経緯子ちゃん何か機嫌がいいね?」

 

「んっとね、アルラウネ擬きの素材から

色々と捗るものが合成できそうだし」

 

(捗るって・・・なにが経緯子ちやん?)

 

にこやかにアルラウネ擬きを回収する

経緯子に戦慄を覚えるハジメだった。

 

 

 

 

               

 

 

 

ということで経緯子の鑑定によって対策が取られた結果

ユエさんの頭皮は無事でしたが

その代わり蛙に食われた駄女神のような有様に

ユエさんと香織さん隙あらばじゃれ合います。

 

後文中の妙子のイメージは私の妄想なので

でも胸は設定資料の原作者公認の乳比べによると

雫の次に大きいようです。

口の近くホクロをエロく思うのは

多分キャツアイの泪ねぇさんが私の原点だと思う。

胸の谷間近くホクロはただの妄想で某夏なゲームのヒロインの影響です。

 

 

追記 ハジメ×優花の召喚前がメインになる新作も始めました。

こちらも更新は遅いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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25 激闘!奈落の底の大決戦

色々と難産でしたが何とか更新出来ました。

では本編です。

 

 

 

 

              

 

 

 

 ボツッ‼

 

光の中に穴が開いた

 

ドッガァアアアン‼

 

刹那の間、遅れて轟音が響き渡る。

 

「んっ・・・ボンバー」

 

ユエが今、轟音を響かせた物の

後ろに立ちどっかの遊撃隊長のような

セリフを呟いている。

ハジメ、経緯子、香織の三人は

横に立ちそれに触れていた。

 

音の正体それはハジメが造った大型兵器

”8.8cm FlaK 36”擬き通称アハトアハトである。

ハジメとしては動力があればロンメル戦車にでもしたかったが

現時点では無理なので普通に備え付けタイプで我慢した。

そしてこれは最大でハジメ、経緯子、香織の三人が協力しての

纏雷利用したレールガンとして撃てるため

モデルのアハトアハトの数十倍以上の破壊力を持っている。

 

それをハジメ達は迷宮の最下層と思われる

幾つもの柱が並ぶ部屋の奥の荘厳な扉の前に

現れた召喚の魔法陣の光が収まりきらない内に

魔物が具現化したギリギリを狙い撃ちしたのだ。

 

88ミリ弾をくらった件の魔物の

全長30メートルはあろう巨大な体は

中央が抉られ周辺の空気がプラズマ化

する程の弾速によって傷口は融解し

ぐつぐつと音を立てていた。

 

88ミリ砲弾も摩擦熱に耐えきれず

融解したためか魔物の後ろの

扉を破壊することにはならなかったようだ。

 

「やったね!ハジメくん!」

 

香織が喜びの声を上げユエが

 

「アンブッシュ・・・慈悲はない」

 

経緯子が横たわる死骸を見ながら

 

「かなり大きいわね、怪獣って感じ

首が何本かあるみたいだしヤマタノオロチ?」

 

「正面から戦うと厄介そうだし

不意打ちで倒せて良かった・・・⁉」

 

ハジメがあっさりと倒せた事に安堵した言葉を言ったとき

抉れている魔物の死骸の中央部から光が漏れ出し

 

「まさか?この光は召喚」

 

光は輝きを増し爆発する。

光が収まるとそこには

 

グッララァアアアン

 

いびつな亀の甲羅の様な体に表面から

色違いの八本のヌッメとした皮膚を持つ蛇の様な

例えるなら深海ザメラプカだろうか

生えており思い思いにうねっている。

そして体の中央正面、亀の頭の所からは

一回り大きくそして太い頭が生えている魔物が存在した。

 

「倒したのに何でナノさん解る?」

 

ハジメがナノマシンに質問する。

 

『倒すタイミングが早すぎたため、再召喚されたみたいです

後、転送事故で死骸と融合してしまいあのような歪な姿に

なってしまったと推測します』

 

どうやらハジメ達の倒すタイミングが早すぎたため

迷宮ののシステムがバグり再召喚されたようだ。

しかも転送された時死体と融合し皮膚が気持ち悪い事になってる。

 

もう一度アハトアハトを撃とうにも再装填には

未だハジメ達では三十秒はかかる。

その時赤頭が火炎放射を放ち

ハジメと香織は右に経緯子とユエは左に飛び

火炎放射を避けるがアハトアハトは炎に包まれる。

 

「チィッ」

 

ハジメが横跳びしながらドンナーで

赤頭を狙い撃ち破壊するが白頭が鳴くと

すぐさま再生される。

ならばと経緯子がツヴァイで白頭を狙うが

黄頭に阻まれる黄色は防御力が高いのか弾丸ははじかれる。

 

「”緋槍”」

 

ユエが魔法を放つも青頭の氷の槍の魔法に迎撃される。

そんなユエに緑頭からの風の刃が迫る。

 

「”聖絶”」

 

と香織の魔法で止められる。

その時中央の大きな頭が香織の方へ向き

銀色の首の鋭い眼光に射貫かれた香織は硬直してしまう。

動きを止めた香織に銀首の放った極光がせまるが

香織の前にハジメが割り込み光に飲み込まれる。

香織も直撃こそしなかったが余波で飛ばされ

 

「ハジメくん!」

 

顔を上げた香織が見たものは

全身から煙をあげゆっくりと前のめりに倒れるハジメだった。

咄嗟に義手とドンナーを顔面の盾にしたため二つとも融解している。

香織はハジメに駆け寄り神水を飲ますも

いつも通りに治癒していかない。

銀首の極光には体組織を崩壊させる毒も含まれており

今は神水の超回復で体の崩壊を何とか抑えてる状態であり

そんなハジメを見た香織は

 

「いやっハジメくん、また守れなかった・・・」

 

ハジメの横に後悔の言葉を呟きへたり込んでしまった。

 

「香織!ハジメちゃんは立ち上がる!だから香織!あなたにまかせる!」

 

経緯子の叫びが香織の耳に届く

 

「ユエさんはハジメちゃんと香織さんの守りを」

 

「まかせて・・」

 

「私はアイツの注意をひく」

 

経緯子は香織の返事も待たずに

バグヒュドラに向かって行った。

その経緯子の後ろ姿に香織は思った。

 

(私は経緯子ちゃんに任された同じ人を愛した女として

そうだ私はあの夜、ハジメ君と約束したどんな怪我でも治すと)

 

「私。白崎香織の天職は・・」

 

「治療師!白崎香織だぁああ!」

 

香織は己を鼓舞し火傷だらけのハジメの体に

両手の平をかざしまずは診察を開始する。

ハジメの皮膚を内蔵を神経や骨のみならず

血や細胞一つ一つまで調べていく

愛する男の全てが知りたい(ストーカー気質)という

情念の濃さに香織専属のナノマシンもその思念波の強度に

合わせ活性化しハジメの体を高速でなおかつ精密に診察していく。

 

(腎臓を保護してそこの動脈の流れをと神水の超回復をサポートして治癒魔法使えば)

 

香織は診察結果からハジメの体を治すための最適解を導き出し

そして己の全てを捧げる覚悟でハジメに繊細にそして大胆に

治療魔法かけていく香織であった。

そんな中

 

「”緋槍!風刃!天絶!”」

 

ユエがハジメと治療に集中する香織を守るため

銀頭から放たれる光弾を相殺し時には結界で防ぐ。

 

ドパァン!

 

経緯子はバグヒュドラの背中から生える首が

ハジメ達に向かないように右手でツヴァイを撃ち

頭を破壊していくが白頭によってすぐさま再生される。

白頭を狙うが黄頭のガードが固く当てられない。

ならばと左手に持った直径が10㎝程の寸胴な銃から

 

ぼんっ!

 

と音がしてひゅるると円筒状の物がバグヒュドラの

頭上に飛んでいきバン!と破裂すると中からタール状の液体が

散らばりバグヒュドラの背中が炎に包まれる。

経緯子が左手に持っていたものは各種の手榴弾や薬剤弾を

飛ばすためにハジメが作ったグレネードランチャーだ。

 

燃え盛る炎の中から風の刃が経緯子に向かい飛んでくる。

それを避けながら経緯子は

 

(頭が一度に全部ダメージを負ったから、これで私を先に排除しようとするはず)

 

バグヒュドラにとっての脅威度を上げ

攻撃が自分に集中することに成功するが

 

(ハジメちゃん。あまり持たないよ私)

 

ハジメは極光で受けたダメージで意識が混沌としている中

自分の体の傷が癒され更に魔物の肉で変質した体に残る

少し濁った様な感覚が無くなっていき

五感が研ぎ澄まされていき新しい何かが目覚めたと感じた

 

これは香織のハジメの全てを癒すという情念の深さから

傷を治すだけでなく同時にハジメの体を無意識の内に

ナノマシンの力を借り細胞単位で調整した結果であった。

 

黒頭がユエを見るなり

 

「いやぁあああ」

 

突然ユエの絶叫が響きわたる。

経緯子がバグヒュドラの魔法を搔い潜りながら

ユエを見ると彼女は体を震わせ絶叫し立すくんでいる

その隙を見逃す銀頭でなくその口に魔力が収束していく

 

「チィッまたあの光を撃つ気!」

 

経緯子はアイテムボックスから直接

試作の特殊弾をグレネードに装填し

銀頭に向けて撃つ。

特殊弾は銀頭の頭上で炸裂し赤みがかった粒子が

銀頭を包むと収束された魔力が霧散していく。

この弾の中にはユエを封印していた立方体を

細かく砕いたものを容れていた。

魔力吸収弾というべきものだ。

 

「きゃっ」

 

経緯子はユエの方に目を離したため

飛んできた氷弾にはじき飛ばされてしまう。

 

「一人はイヤ・・」

 

ユエは青い顔で呟き続けているが

その耳元で銃声が響き黒頭が破裂する

ユエの頭の横に銃口から煙が出ている

ドライを持った右手が突き出ている。

 

「ユエ。私たちはここにいるよ」

 

と香織が左手で背中からユエを抱きしめ

優しく語りかける。

銃声とユエに何かしらの悪夢を見せていた

黒頭が倒されたためユエは正気に戻り

 

「また一人になる幻覚を見せられた

ハジメ達に見捨てられる・・・」

 

香織は更に腕に力をこめ抱きしめ

 

「私もハジメ君も経緯子ちゃんもユエのそばにいるよ」

 

「んっ・・もう平気・・香織。ハジメは?」

 

「ハジメくんはあそこだよ」

 

香織はドライで指し示す。

そこには倒れた経緯子を喰らおうとした青頭が

新たに得た天歩〟の最終派生技能[+瞬光]使い

一瞬に間合いを詰めたハジメに顎を蹴り上げられ

その後ドンナーの予備のシュラークによって破壊される所だった。

 

「経緯子ちゃん」

 

「ハジメちゃん」

 

ハジメは経緯子を抱き上げユエと香織の所に戻る。

 

「香織!ユエ!経緯子ちゃん一気に決めるよ!」

 

ハジメが立ち上がったとはいえ

長期戦は無理そうなので短期決戦でいくことにする。

 

「うん!」

 

「・・四人なら負けない」

 

「私たちが勝利するし」

 

ハジメはアイテムボックスから対物ライフルのシュラーゲンを取り出す。

それを合図に四人が動き出す。

 

「みんな目と耳を!」

 

経緯子がまずグレネードランチャーを撃ち

轟音と閃光が部屋全体を覆いつくす。

ハジメが作ったスタングレネードを使ったのだ。

バグヒュドラの首が混乱してる中

 

「”三重光縛鎖”」

 

香織が光縛鎖を一気に重ね掛けし

バグヒュドラの首の動きを封じる。

 

経緯子が”空力”でバグヒュドラの頭上に飛び上がり

アイテムボックスから一抱えする大きさの壺をだし

中身をぶちまける。その中身とは液状化したフラム鉱石だ。

 

「”蒼天”」

 

そこに魔力を充分に練り上げた

上級魔法をユエが放つ

青白い太陽がバグヒュドラの背に落ち

爆発的にバグヒュドラの全身が炎に包まれ

白頭も再生する間もなく融解していく。

 

そんな中でも銀頭が極光を出そうとするが

 

「チェックメイト」

 

それより早くハジメがシュラーゲンを伏せ撃ちで銀頭を打ち抜く

ドンナーの十数倍の威力を持つ弾丸は見事に頭から尻まで大穴開ける。

バグヒュドラの背中の首は全て焼け落ち胴体中央は貫通し奥の扉がみえる。

 

 

ハジメ達は動かなくなったバグヒュドラを油断なく囲んでいる。

ハジメが意を決して近づきその死骸をアイテムボックスに回収する。

再び魔法陣が光る事はなかった。

 

「今回は無事に倒した事になったよ」

 

と安堵の言葉を漏らすハジメ

 

「でももう限界・・・」

 

と言って倒れこむハジメを経緯子が支えた時

 

ゴゴゴゴゴッ

 

音を立てて奥の扉が開いていく。

 

「香織さん、ハジメちゃんを」

 

経緯子が香織にハジメを預け

一人扉に歩いていく

 

(探索魔法には魔物の反応はないけど)

 

経緯子が扉を抜けるとそこには・・・・

 

 

香織とユエが固唾をのんで見守ってると

扉から再び顔出した経緯子が満面の笑みを浮かべ

 

「私たちは勝ったぞぉお‼」

 

歓喜の雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

                  

 

 

今回は久しぶりのマジな戦闘回でした。

ヒュドラを先制ブッパで終わらせるのもと思い

色々悩んで遅くなりました。

 

ロンメル戦車、昭和なのでタイガーでキングタイガーなのです。

戦車で思い出したのですが旭日の艦隊に出てきたあの芋虫もドンナーでした。

 

次回はまたゆるくなると思います。

 

 



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26 真実と覚悟とケジメ

暑いですね。熱中症対策はしっかりと

なので本編です。

 

 

 

             

 

 

 

 

 

ハジメは柔らかな物に包まれいるのを感じた。

これはベッドだ。

 

(ヒュドラを倒した後、僕は倒れて)

 

完全に意識が覚醒していないハジメに慣れ親しんだ言葉がかけられる。

 

「ハジメちゃん、おはよう」

 

経緯子がハジメの寝るベッドの脇の椅子に座っていた。

ハジメはゆっくりと上半身を起こしながら

 

「経緯子ちゃんここは?」

 

「魔物を倒した後扉が開いて

その奥に家があってそこの寝室。

ハジメちゃんあの後丸一日寝てたのよ」

 

ハジメが何か言おうとしたとき

部屋の扉が開き

 

「ハジメくん!目を覚ましたの」

 

「ハジメ」

 

念話で経緯子から連絡を受けた香織とユエが飛び込んでくる。

 

「香織。ユエ心配をかけてごめん」

 

「ハジメくんどこか痛い所とかある?」

 

「大丈夫だよ香織」

 

とハジメはベッドから出ようとして自分が全裸なのに気づく。

 

「ハジメちゃん血だらけだったから服は脱がしたし」

 

「体も隅々までキレイにしたからねハジメくん」

 

「ヌ・・フキフキした」

 

ハジメは経緯子たちの言葉どこか引っかかる所を感じながらあえてスルーして

 

「あっ・・ありがとう」

 

礼を言いながらあらためて経緯子たちを見ると

三人とも男物の上質なシャツを着ていた。

シャツ一枚にすそから延びる眩しい脚にドキドキするハジメだった。

 

「ハジメちゃん替えのシャツとパンツは枕元に置いてるから着替えてね」

 

と経緯子が言うが三人とも部屋から出ていかないため

ハジメがいっこうに着替えようとしないので香織が心配して

 

「ハジメくんどこか痛むの?

着替えを手伝った方がいいかな?」

 

「でなくて。三人とも着替えるから部屋から出てよ」

 

「ハジメちゃん、私は気にしないよ」

 

「ハジメ・・照れや」

 

仕方ないので掛け布団をかぶりもぞもぞと着替えるハジメだった。

 

 

 

「これは人工太陽?」

 

寝室から出たハジメは外の様子に驚愕する。

目の前には地下とは思えない光景が広がっていたからだ。

天井近くには円錐状の物体が浮かびその底面には

煌々と輝く球体が浮かびそれは程よい熱を周囲に与えている。

 

「ハジメ・・夜になると月みたいになる」

 

「それはまた・・・」

 

周りを見渡せば川もあり畑らしきものも見える。

完全に地上が再現されていた。

 

「ハジメくん。川には魔物じゃない魚がいるの」

 

「ハジメちゃんと一緒に食べようと思って我慢してたんだよ」

 

「ごめんね経緯子ちゃん」

 

と謝りながらもハジメも早く魚を食べたいと思った。

その後ハジメ達は寝室に隣接している。

岩盤をくり抜いて造った施設に足を踏み入れた。

 

「ハジメくん、ユエと一緒に少しは調べたけど入れない部屋も多かったの」

 

「衣装部屋は入れた・・服はそこにあったもの」

 

「でねハジメくん奥にいいものがあったんだよ」

 

ハジメは香織とユエに案内され清潔感があり暖かみのあるデザインのエントランス

そしてリビングルームを抜けた先に在ったのは露天風呂だった。

円形の浴槽にはその縁には口を開いたライオンの像があった。

 

「これは確かいいね。気持ちよさそう」

 

ハジメは喜びの声を上げる。

 

「魔力を像に注ぐと・・お湯がでる」

 

「トータスでもライオンなんだね」

 

ハジメは地球との意外な共通点に関心しながら

 

(浴槽に埃もたまってなかったし、今まで通った部屋も綺麗だったから

何かが管理しているのかな?メイド型ゴーレムとか)

 

などと考えてると経緯子に

 

「ハジメちゃん?何かいやらしい事を考えてる?」

 

「ハジメくん私とお風呂に入りたいのかな?バッチこいだよ」

 

「ウエルカム・・ハジメ」

 

「違うよ!僕は一人で入るから!」

 

などとやり取りした後、香織とユエが一番怪しいと感じた三階の奥の部屋に入った。

その部屋の床には今まで見たことのない精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

この部屋にはもう一つ注目すべきものがあった。

それは魔法陣の向こう側の豪奢な椅子に座る人影である。

人影は黒に金の刺繡がされたローブをまとった白骨死体だった。

その白骨死体は整っていたまるで人体標本みたいだ。

本人、白骨死体になった人物は意図的にこの部屋で朽ち果てた

その理由はそこの魔法陣にあるようにハジメは考えたならばと

 

「僕がまず魔法陣に入るから、皆は待機して何かあったら頼むね」

 

「ハジメ・・気を付けて」

 

「無茶しないでねハジメくん」

 

「ハジメちゃん何かあればすぐ引きずり出すから」

 

三人に見送られハジメが魔法陣に足を踏み入れると

魔法陣が輝き部屋が白く染まると

ハジメの脳裏に奈落に落ちてからの事が走馬灯のごとく再現される。

そして光が弱まり淡く神秘的な光で周囲が満たされ

ハジメの目の前に白骨と同じローブを着た黒髪の青年が立っていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。

この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 

 

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

 

 

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。

だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。

このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

その話は教会や王国で聞いた話とは真逆なないようだった。

ある時この世界の神であるエヒトが自分達の世界を玩具だとしか思って無い事を知った

オスカーとその七人の仲間たちとでエヒトを討とうとしたが、

逆にエヒトによって世界の敵となってしまい追い詰められて

自分たちでは神を討つことができないと悟りそれぞれが大陸各地に

試練の迷宮を造り次代に託すことを決めたのだ。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。

君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。

我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。

だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。

君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

と話を締めくくりオスカーの映像は消え

それと同時にハジメの頭に何かが書き加えらえる

感覚をいくらかの頭痛と共に覚える。

 

「ふうっ・・」

 

とハジメが息を吐くと

 

「ハジメくん大丈夫?」

 

香織がすぐ治癒魔法をかけようとするが

それをハジメは手で制して。

 

「魔法を神代魔法”生成魔法”を覚えたみたい」

 

「神代・・本当?」

 

ユエが驚いている。神代魔法それは遥か昔に失伝した

強力な魔法で伝説であったからだ。

 

「僕や経緯子ちゃんのための魔法だよ生成魔法は」

 

「私やハジメちゃんのため?」

 

「うん。無機物、鉱石や水に魔法を付加して

色々な効果のある石や水を創れるみたい」

 

「アーティファクト作れる?」

 

「ああ、そういうことみたいだよ」

 

生成魔法それはアーティファクトを作る魔法で

オスカーもハジメと同じ錬成師であったのだ。

 

「とにかく皆も神代魔法を覚えてみたら?」

 

「錬成・・使わない」

 

「私もかな?」

 

「私は覚えた方がいいみたい。

香織さんもユエもせっかくだし覚えたら?」

 

「なにが役に立つ事になるかわからないし

香織もユエも覚えなよ」

 

「・・・わかった」

 

「覚えといても損はないよね」

 

 

ということで三人は同時に魔法陣に足を踏み入れると

再びオスカーの映像が現れ先程と同じ話を始める。

 

 

 

映像が消え三人は頭痛に顔をしかめながら

 

「覚えた・・でもアーティファクトは難しい」

 

「私もあまり使えそうにないかな?」

 

「私は色んな効果のある水が作れそうな感じ」

 

どうやら相性の関係か香織やユエは上手く使えないみたいだ。

経緯子は薬剤師らしく液体に魔法を付与しやすいようだが。

 

「オスカーさんの話を聞いたけど本当の事だと思う?」

 

経緯子が世界の真実についての信憑性を皆に問いかける。

 

「勝手に私たちを召喚したエヒトがろくでもない

神なのは事実じゃないかな?かな?」

 

「僕はこの世界の狭さから神の玩具なのは本当だと思う」

 

「ハジメちゃん世界の狭さって?」

 

「そうだなぁユエに聞きたんだけど

他の大陸から来たとか渡った人の話を聞いたことがある?」

 

「んっ・・・ない小島はともかく大陸は知らない」

 

「やっぱり、王国の図書館にも他の大陸があるというおとぎ話ですら見かけなかったし

意図的にトータスの大陸以外に興味を持たせないようにしてるみたいだ」

 

「手軽に遊べる大きさに絞ってるのかな?」

 

「でどうするのハジメちゃん?神を倒す?」

 

「触らぬ神に祟りなしで無視して帰りたいけど

たぶんエヒトが妨害してくるはずだよ」

 

「異世界から呼んだ駒だもんね私たち

ハジメちゃんと帰るのを邪魔するなら神だって排除するよぉ」

 

「経緯子ちゃんの言う通りハジメくんと帰るのを

邪魔するなら神だって敵だよ」

 

「私は・・ハジメ達についていく」

 

「経緯子ちゃん、香織、ユエとりあえず帰る方法を見つけるのを優先で

神については警戒して敵対するなら倒すしかないかな」

 

「「「そうだね」」」

 

「さてとオスカーの白骨どうしようか?」

 

とハジメが問いかけると

 

「畑の・・肥料」

 

「畑にまけばいいかな」

 

「香織さん、ユエ肥料にするなら

高温で焼いて細かく砕かないと」

 

三人ともハジメを傷つけた最終試練のヒュドラのことを根に持ってるようだ。

その後ハジメが三人をなだめ日当たりの良いところにシンプルな墓を作り埋めた。

骨を埋める際指にはめてあった指輪はもらう事にした。

なぜなら指輪に刻まれた紋様が開かない部屋の封印の紋様と同じなため鍵ではと考えたためだ。

 

それからハジメ達は指輪で封印を解いた書斎や工房を

もとの世界に帰るためのヒントがないか手分けして探していった。

ハジメ達はオスカーの手記を見つけその中にはオスカーの仲間

他の六人の解放者について書かれていて

それによると大迷宮は全部で七つあり攻略すると

それぞれに異なる神代魔法を得る事が出来るそうだ。

 

「・・・帰る方法見つかるかも」

 

ユエがそう言うと香織と経緯子が

 

「ユエの言う通り帰るための魔法もみつかるかな」

 

「今後の方針は迷宮攻略を目指すということでいいみたいね。」

 

「経緯子ちゃん、香織、ユエもう少しこのオスカーの隠れ家に居ようと思うんだ。

早く地上に出たいのは、やまやまなんだけどここには錬成師にとって宝の山で

学んでもっと強力な武器や装備を準備したいから」

 

ハジメは地上に出るのを遅らせ工房で学びたいと述べた。

 

「ハジメちゃんの言う通り他の迷宮も凶悪だろうし神の妨害を考えるなら

ここでしっかりと準備を整えるべきだし」

 

「ハジメくん、私たちの技能もっと向上させるための訓練時間も欲しいし」

 

「私は・・皆と一緒ならどこでもいい」

 

オスカーの隠れ家にしばらく滞在することが決まった直後

経緯子、香織、ユエが互いに頷き合い

経緯子がハジメを真っ直ぐに見つめながら

 

「ハジメちゃんとりあえず落ち着いたから

私たちとの事を決めて欲しいできれば皆を認めて・・」

 

「経緯子ちゃん、全部は言わなくていいよ。

男の僕から言うよ。経緯子ちゃん、香織、ユエ」

 

経緯子、香織、ユエはハジメの言葉を息をのんで待つ

 

「自分でも最低野郎だと思うけど。僕は三人の内誰かを選べない

いや経緯子ちゃん、香織、ユエ、僕は皆が欲しい特別な人としていて欲しい」

 

「ハジメちゃん、最低野郎ね。

私も香織さんやユエとも離れられないしいいよそれで」

 

「むせる・・ハジメが大切だけど香織も経緯子も大切

それに私の周りは妻が複数が当たり前だった」

 

「私もハジメくんといられるならいいかな。

でも経緯子ちゃんとユエ以外が増えるのはイヤかな」

 

それぞれの返事を聞いたハジメは

 

「経緯子ちゃん、愛してる」

 

「私もだよハジメちゃん」

 

「香織、愛してる」

 

「えへへ嬉しいよぅハジメくん」

 

「ユエ、愛してる」

 

「んっ・・ハジメ、好き」

 

個別に告白し返事をもらうのだった。

その後は恥ずかしさからか少し

ギクシャクしながら川の魚を使った料理を食べて

ハジメは夕暮れのなか一人露天風呂を堪能していた。

 

「ふあぁぁ天国だよぅ」

 

だらけ切った顔でお風呂に使っていると足音が聞こえる

風呂の入り口の所で足音が止まり。

 

「ハジメちゃん、少し話いい」

 

「・・・経緯子ちゃん、いいよ」

 

「あのね、ハジメちゃんの後、私もお風呂に入って

その後ハジメちゃんの寝室に行くから待ってね」

 

そう言うと経緯子は離れていった。

聞いたハジメは真っ赤になった顔を湯舟に半分沈めブクブクするのだった。

 

 

 

 

 

淡い灯りが照らすハジメの寝室でハジメと経緯子がベッドに並んで座っていた。

経緯子はバスタオル一枚巻いただけの姿でハジメの右隣にいる。

 

「ハジメちゃん、なんだかすごく照れくさいね」

 

「そうだね並んで座ってるだけなのにね」

 

「それに幼なじみからの関係が変わるとおもうと

不安ですごくドキドキするし」

 

「そうだね。香織やユエはどうしたの?」

 

「二人は最初は私に譲ってくれたの

初めてはやっぱり一人だけを見てじっくり愛して欲しいから」

 

「経緯子ちゃんいい?」

 

「うん。ハジメちゃん」

 

そして二人は長いキスをしそのままベットに倒れこみ。

しばらくすると甘い吐息が聞こえやがて激しくなり

夜は更けていった。

 

 

 

                 

 

 

ハジメくんが色々知ってしまう話でした。

〇Pはレベルが高いので一人ずつお相手で

次の日は香織と三日目はユエとです。

このぐらい表現ならまだ問題なしかな?

 

幼なじみ系のラブHが好きなのでこうなりました。

 

 

 



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27  セキララッ!

 

何とか八月中に更新出来ました。

人間関係はくだらない事がきっかけで変わるものです。

では本編です。

 

 

 

             

 

 

「ごめんね。ハジメ君・・・ごめんね」

 

ハジメが初めて香織の中ではてた後

香織はハジメの胸の上でごめんねを繰り返し泣いていた。

好きな男を女として受け入れることができた。

香織はその喜びに幸せに満たされていたが

なぜこの場所でハジメと結ばれたのか。

それを思うと周りが見えなかった自分の幼さに

他人からどう見えるのかも知ろうとしなかった

故の悪意からの結果だと思うと

香織は今の幸せを与えてくれたハジメに

涙をながし懺悔してしまうのだった。

 

自分の胸の上ですすり泣く香織の心情を

ハジメは察していたが

 

(僕は香織とこの場所で結ばれた事を後悔してないし

香織も僕に幸せをくれている。だから・・)

 

ハジメは香織の顔を自分の顔に引き寄せると

香織の唇を奪いそのまま押し倒し

ハジメは香織の自分への懺悔の気持ちを

上書きするように激しく愛するのだった。

 

 

 

そして香織は自分の全てでハジメを感じながら頭の中が真っ白になり意識を失い

ハジメの腕の中で安らかな寝顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

少し時間がさかのぼりハジメ達がヒュドラを倒したころ地上では

 

ジュッ ジュッ ジュゥウウ

 

「岩トカゲの尻尾の輪切り焼きですょ!」

 

城の中庭で海里は三本の扇状にした串に刺した肉を焼きながら声を張り上げていた。

海里と生徒達はオルクス迷宮の再攻略ルートの検討が終わり明日からホルアドに戻るのと

優花達、愛ちゃん護衛隊のメンバーが巡回から戻って来た愛子先生に付いていくので

城の中庭を借り奨励会兼送別会のバーベキューをしていた。

 

ということで海里はマイルの世界の食材を提供し焼いている。

はじめは岩トカゲの解体ショーをしようと考えていたが、

冷静に考えると生徒達の前でやるには刺激が強いのでしっぽだけにした。

 

他にもテーブルの上には男子が喜ぶ唐揚げの山盛りも用意してある。

 

「優花さん、少し手伝って下さい」

 

海里は異世界の食材が気になるのか近くにいた優花に声をかける。

 

「優花さんはナイフに火魔法を付与できましたよね?

なので串に付与して肉の中心部に火をとおしてくれませんか?」

 

言われてみれば私の魔法は分厚い肉の表面が焦げ付く前に

火をとおすのに便利だと優花は海里の言葉に納得し

鉄串の熱量を調整しながら海里と並んで焼き始める。

 

そうこうしてると城のメイドの手によって果実水が運び込まれる。

 

「キンキンに冷やしてやるし」

 

と奈々が氷魔法で色とりどりの果実水を冷やしたところで

全員に配り、これからの無事を祈り乾杯し皆、一気に果実水を飲み干した。

 

 

 

 

「サイドチェストォオオ!!」

 

「サイドトライセプスゥウ!!」

 

暑苦しい声が響き渡る。

パンイチで龍太郎と重吾が筋肉バトルをしている。

 

「永山!てめぇの筋肉は何キロだーっ!!」

 

と龍太郎がモストマスキュラーのポーズを決めながら問いかける。

 

「坂上!そのセリフ読んだのか⁉」

 

重伍がフロントラットスプレッドポーズをとりながら言うと

龍太郎はニカッ!と笑い

 

「おうよ!”極度の筋”は筋肉野郎のバイブルだからな!」

 

「ならば坂上!」

 

「おうよ!」

 

「「わが三角筋に、一片の余力無し‼」」

 

二人は声を合わせフロントプレスのポーズをとり名セリフを叫ぶ。

 

 

「「鈴と奈々でAA!」」

 

クラスのひんぬ~コンビの二人が自虐てきな事を言っていた。

 

「でも鈴っちは全体がミニマムだからバランスが良くていいじゃん」

 

「ナナリンは背があってちょ~スレンダーで羨ましいよ」

 

鈴と奈々はお互いの体型を褒め合っていた?

 

「鈴はロリじゃないよ!」

 

「私もそこまで薄くないし!」

 

なにか反論し合う二人。ちなみに奈々は165センチと女子としては高めで

雫の次なのだが雫とは違い色々と幅が薄い。

ぬぬぬ!と見合っていると奈々が近くで唐揚げを食べていた淳史に

 

「玉井っち。私と鈴っちどっちがありだと思うよぉ?」

 

「そうだよ玉井君はどう思う?」

 

二人にいきなり聞かれた淳史は

 

「比べるもなにも比べるモノがないだろうが?」

 

「ケッ!だからもてないンだよ!玉井っち!」

 

「クソガぁ!これだから非モテはぁ!!

ナナリンもう一杯いこう」

 

淳史の繊細なハートを攻撃した奈々と鈴は手にしたジョッキを一気にあおる。

 

 

 

「果実水だと思ってたのがお酒だったなんて」

 

海里は酔って眠りこけた雫を膝枕しながら周りの混沌を眺めていた。

メイドたちは勇者たちの歳ならトータスではお酒を出しても問題ないため

普通に果実水で割って飲みやすくしたのを用意し更に奈々の氷魔法で

キンキン冷やされのを皆が一気飲みした結果が今の状況であった。

 

「これだけ酔いが早いのは酒の質が地球人に合ってなかったせいかな」

 

なお海里はドワーフとの中間値であるためか酒には強かった。

海里は自分の膝枕で眠る雫の頭を撫でながら

 

「雫さんは酔うと幼児退行するとはそれだけ不安で張りつめているのですね」

 

さっきまで雫は「おうちかえりゅうう。おかあさん、おとうさんさびしいよぉお」と

言いぐずって泣いていて、今やっと泣きつかれたのか寝たのだ。

海里を母親と勘違いしながら。

 

 

 

パンツまで脱ごうとする二人のモリモリマッチョマンの変態を

妙子が鞭で調教してる様子を視界の片隅でとらえながら恵里は

 

(僕って酒に弱かったんだ。話すとボロが出そう。はぁ僕は何をしてるんだろ)

 

赤らめた顔でそう思いながらトータスに来てからの自分の行動を思い返していた。

実際、恵里はトータスに来てから降霊術が使える事を隠してる事以外は何もしてなかった。

別の平行宇宙では光輝の周りの女を(ゴミ)排除するためにトータスに来たことでタガが外れ

残忍な行動を起こした彼女だがこの世界では何もしてなかった。

なぜなら香織が奈落に落ちその事が原因で雫が壊れかけ光輝と完全に距離を置くようになり

香織も生きてはいたがハジメと大人の関係になっていて光輝につくことはないだろう。

光輝が一番好意を持っている二人が離れたのは恵里にとって幸運だった。

それと海里の存在があった色々と海里の異世界転生やナノマシンの万能性を知ると

どうにも陰謀が上手くいく気がしなかった。それに恵里はこの世界の神が自分達を

返す気が無い事を薄々気付いていて本来ならそれもあり行動を起こしただろうが

海里を見ていると何とか帰れそうな気がするのだ。

 

(・・・とりあえず光輝君ながめていよう)

 

 

 

「海里さ~ん南雲がねぇ」

 

優花が雫を膝枕している海里を相手に

 

「助けてくれた時のぉ~アイツの笑顔は素敵だったんだよ」

 

酔って素直にデレていた。

海里は適当に相づちをついていた。

 

「そうだね~ハジメちゃんすごいねぇ」

 

「なのに早く連絡よこせよ。南雲のばぁ~か、ばぁ~か」

 

「そうだね~んっ⁉あれは”スリープ”」

 

「海里さん聞いてますぅ~」

 

「ハイ、ハイ、聞いてますよぉ優花さん」

 

この後、優花が酔いつぶれるまで同じ話を何度も聞くはめになる海里だった。

 

 

 

 

 

 

恵里の前で

 

「見える。見えるぞ敵が」

 

赤い顔をし瞳がグルグル虚無ってる光輝が聖剣を勇者ポーズで構え

危ない事を言っていた

 

「俺の正義を見せてやる。天翔せぇ・・・ぐぅ」

 

聖剣を振り上げて天翔閃を放とうとした所をそれに気づいた海里が”スリープ”で眠らせたのだ。

恵里の目の前で眠りこける光輝を恵里は酔って色々と薄くなっていたので

 

「僕が光輝君を部屋に運んであげる」

 

抱きかかえフラフラと中庭を出て行ったが、クラスメイトは皆へべれけのため気にしなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日の朝、城の廊下で

 

「光輝。なぜ私に言うのかしら?」

 

雫が顔をしかめて光輝に返事をする。

 

「なぜって朝、起きたら裸の恵里が横で寝てたから相談をしたくて」

 

そう朝、光輝が目を覚ますと自分のベッドに全裸の恵里が同じく全裸だった光輝に身を寄せて寝ていたのだ。

そして光輝が茫然自失している中、恵理は何も言わず服を着て出て行ったのだった。

 

「知らないわよ、女の事を私に言ってどうするのよ」

 

「雫は何も思わないのか?」

 

「なにがぁ?別に相手が恵理なら言うことなんて何もないわよ」

 

「雫はそれでも俺に・・それに香織の事が」

 

「この際だからハッキリ言うけど私は光輝の事を男としてみる事はないわよ。

そんな気持ちはずっと前に捨てたわ。それと香織も光輝の事を男として見てないわよ」

 

「雫・・二人は俺のそばにいてくれるんじゃ」

 

「都合のいい事を言わないで光輝。私は今あなたに構う余裕なんてないの」

 

「どうしてそこまで雫、俺は正しいはずだろ」

 

「正しい正しく無いを言う話じゃないでしょ。

善悪だけで判断しない事ね。

光輝は恵里が悪いというの?

だとしたら光輝は最低野郎じゃないかしら」

 

「雫は俺が悪いとおもうのか?」

 

「そう?なんにせよ私が言うことはないわ。

でも一つだけ恵里と正面から話しなさい恵里のためにね」

 

雫はそう言うと朝食をとるため光輝を置いて食堂に向かった。

 

「俺が悪い雫・・俺は知らなかった・・だから」

 

ひとり残された光輝はブツブツと自己肯定しようと

独り言ちる。その様子は自己催眠をかけてるようだ。

光輝は召喚されてからより自己愛が強くなっていた

何かと同調するために。

 

人の繋がりで関係は変わっていく。

それはある人物には都合よく、別の人物には都合が悪く

そこには善悪はなく相対的事実があるだけである。

 

 

 

 

                 

 

 

少しハジメと香織の情事の様子を書きました。

極度の筋この世界では単独で漫画、アニメが存在します。

明記してる通り恵里は何もしてません。

原作に比べるとクラスの雰囲気も違いますし

海里のわけわからない感がすごいので

おとなしくしていましたが。今回ナニをしちゃったかもです。

雫は立ち直ったといえ人に構う余裕は持てて無いので

光輝に塩対応です。光輝は恵里によって変わるのか

それとも二人は破滅するのかはまだ決めてないです。

 

 

*追記 前話のハジメと経緯子の初体験を勢いでR18で書いてしまいました。

 



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28 リベンジのリベンジ

恵里の里の字を前回まで間違えて変換してました。

一応全話を修正しました。情けない事です。

後感想ありがとうございます。

いつも返事が遅くなり申し訳ありません。

 

では本編です。

 

 

 

 

 

                  

 

 

小川の水面が光を反射し涼し気にきらめいている。

一人の男が釣り糸を垂れていた。

その男はハジメだった。

彼は今、白く俗世を離れた仙人の様な雰囲気を醸し出している。

 

隠れ家のリビングに経緯子、香織、ユエの三人が集まり

 

「爛れてしまったよぉ」

 

「爛れまくりかな?」

 

「・・・爛れた」

 

とまぁ彼女達は地上に戻る事が出来る事になった

安心感と解放感それと若さからの好奇心で

色々とはかどってしまったのだ。

その結果が大賢者ハジメくんの誕生であった。

 

「とにかく乱れた性活週間は終わらせて

旅の準備と訓練をしないと」

 

経緯子が反省の言葉を言い香織が続く

 

「ハジメくん。頑張りすぎるから

私たちで抑えないとだめだよね」

 

「ププッ・・香織笑える・・・回復魔法で

ハジメをハッスル・・・抑える?」

 

どうやら香織は回復魔法を使い

延長戦を続けてたようだ。

まるでどこかの八男の胸の大きな聖女様みたいに。

 

「むぅユエはアノ時に血を吸うからハジメくんから搾りすぎだよ」

 

「イイ・・ハジメエキス・・上下同時・・んっ」

 

「ユエ!欲望を抑えなよ、封印で溜まりすぎたのかな⁉」

 

「香織こそ覚えたての・・エテ香織」

 

香織とユエの何故お互いの性活を知っているのかは

知らないが、責任を擦りつけ合う二人だった。

 

「経緯子ちゃんはなぜ関係ないよって顔をしてるのかな?」

 

「ヌルヌルを調合・・経緯子はヌルヌルが好き」

 

「お風呂でハジメくんを綺麗にしてるよね。

経緯子ちゃん自分の体をヌルヌルにして」

 

「香織さん、ユエさん見てたの・・?」

 

二人に自分のプレイを暴露される経緯子

彼女は書庫にあったどこかの解放者が残した

そういう薬液のレシピを見つけ

つい好奇心から調合して試したらハマったのだ。

 

とにかく経緯子達は自制する事にし

三対一はなかなか厳しいと現実を知るハジメだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

経緯子達が爛れた生活を反省してた頃

海里達攻略組は二十階層の隠し階段を使い

ベヒモスの魔法陣がある橋の上に居た

崩落箇所は未だ完全に修復してなかったが

そこは海里(マイル)の出番でパッパッと分身して

橋渡したのでなく土魔法で修復しついで

橋の強化もした海里だった。

そして海里達が橋の中央にきた時

前回と同じく橋の両側の魔法陣が輝き

トラウムソルジャーとベヒモスが召喚される。

 

「神速剣3倍!」

 

犬耳剣士モードの雫がトラウムソルジャーの群れに斬り込む

雫は前回の事がありベヒモス戦から外され

トラウムソルジャーの魔法陣の破壊を任されていた。

 

雫はその素早さを生かし斬り倒すのは最小限に留め

トラウムソルジャーの群れを掻い潜り

召喚の魔法陣の前に来ると

 

(ナノちゃん手加減よろしくね)

 

「烈風斬・弱!」

 

と魔法陣を床ごとえぐり飛ばす。

今回はキチンと加減をお願いしたので

橋に大穴が開くことはなかった。

 

残りのトラウムソルジャーを斬り倒した雫は

 

「ふ~皆は大丈夫かしら」

 

と橋の反対側を見ると

光輝達はベヒモスを押してるようだ。

橋の中央よりでは海里がメルド団長等と見守っていた

海里が参戦すると光輝達の実績にならないので

後方で待機してた。

 

メルドは光輝達が順調に戦っていることに安堵しつつ

隣に立つ海里を見て今回の遠征直前の執務室でのやり取りを思い出す。

 

「海里は商隊の護衛もした事があるのだよな」

 

「メルドさん、そうですけど何か?」

 

「魔物以外に盗賊とかと戦った事もあるよな?」

 

「もちろんありますよ」

 

「盗賊達を斬る事をどう思う」

 

「お金になったので手加減はしましたけど、

見逃して真面目に生きてる人が被害をうけると嫌なので

盗賊が死んでもその時はその時だと思いますよ」

 

「そうか・・・」

 

海里はそのメルドの態度に

赤き誓いでのある出来事を思い出し

メルドに疑問をぶつける。

 

「メルドさん彼らに雫さん達に

盗賊か何かをけしかけるつもりですか?」

 

海里は一拍おき低い声で言う。

 

「殺人を経験させるためにぃ・・」

 

メルドは海里のいつもと違う重い雰囲気に押されながら

 

「魔人族との戦いでいざという時のためにな」

 

「それは無駄ですよ。殺したと殺せるは

全然違いますよ。覚悟と理由が曖昧なら特に」

 

「しかし魔人族とは戦争中で敵だからな」

 

「それはメルドさん達の認識で

彼らの中では魔人族という”人間”は

実感のある敵ではないですよ。

言わしてもらえば居場所がないのと

帰るために微かな希望にすがって

戦ってる子達がほとんどですよ」

 

メルドは彼らが望んでトータスに

来たわけではない事実を指摘され

言葉に詰まる。

 

「とにかく彼らは年月を掛け教育された兵士でなく

即席で命がけでこの世界の人間を守るほど愛着はないし

そんな人間に人殺しさせても人を殺した人間になるだけで

戦士にはなりませんよ」

 

しばし沈黙する二人、やがてメルドが口を開く

 

「もし殺人を彼らに強制したら海里はどうする」

 

「メルドさんに言うとあなたの立場が不味くなるとだけ」

 

「・・・そうか」

 

海里は覚悟と自分の意志が無い殺す練習には意味がないと考えてるが

それ以上に経緯子とハジメを出来る限り元のありふれた日常に帰したいと

思っている。なのでクラスメイトに殺人をしてほしくないのだ。

メルドは海里とのやり取りを思い出しながら

 

(とは言えいざという時のため等身大の人形で練習はすべきだと思うので

少林寺木製ゴーレムなら用意します。と海里はいってたがショウリンジてなんだ?)

 

と疑問を浮かべ前方の光輝達の戦いを見ていた。

 

ベヒモスが飛び上がり前衛の光輝達を飛び越え

後衛の魔法組に迫るそして着弾し衝撃波が発生するが

今回は橋に亀裂が入らずベヒモスの角もめり込まない

海里の魔法で橋は特殊ナノカーボンでコーティングされており

崩落の心配はない。

 

そして衝撃波の発生と同時に光のドームが現れる。

咄嗟に鈴が詠唱を省略し結界を張ったのだ。

だが魔力の込める力が少ないのか結界にはヒビが入っていた。

鈴は両手を前に突き出し懸命に結界を維持していた。

 

「ぅううう! 負けるもんかぁー!」

 

しかしベヒモスの攻撃が続き鈴が「破られる」と

思ったとき鈴の体がペカーと輝き結界が強化される。

真央の付与魔法〝纏光〟だ更に綾子が〝譲天〟を使い

鈴の魔力を底上げする。綾子は香織の代わりの

残った治療師として香織に報いるためにもと

今まで魔法技量を上げてきたその結果である。

 

「これなら!マオマオ!アヤヤ!愛してる」

 

結界は修復され、ベヒモスの攻撃を防ぎきる。

ベヒモスは肩で息をしている鈴に狙いを定め

怒りの雄叫びを開けようと口を開いたとき

ぽいっと何かの容器が投げ込まれ

 

「ぎぃやがぁあああああ!!!」

 

とのたうち回る。実は遠藤浩介が人知れず

ベヒモスに近づき経緯子が残していた

”スーパーホット玉”を口に放り込んだのだ。

 

その時、海里とナノマシンは戦慄していた。

遠藤が目の前にいるのに探索魔法からも逃れたからだ。

 

『彼は世界からの認識すら逃れられる。量子レベルではなく

そんな生命体がいるとは驚きです』

 

(地球も不思議生物がいるんだねぇ)

 

海里とナノマシンに謎生命体と認識される遠藤だった。

 

光輝達、前衛組はのたうち回るベヒモスを

ボコ殴りしていたが

 

「下がって」

 

後衛組の代表恵里から声が掛かりベヒモスから離れると

 

 

「「「「「〝炎天〟」」」」」

 

と五人同時の上級魔法が放たれ

ベヒモスをアッという間に燃やし尽くした。

 

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 

 

キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる光輝。一斉に歓声が沸きあがった。

男子連中は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。

 

 

見守っていた雫が犬耳をパタパタさせながら光輝達に駆け寄ってくる。

その雫の様子を見た光輝は

 

(やっぱり雫は俺の事を)

 

だが雫、光輝をスルー鈴達女子に近づく

 

「鈴、恵里、綾子、真央。みんなやったわね。

怪我してない?」

 

「大丈夫だよシズシズ皆無事だよ」

 

と鈴の言葉に他の三人も頷く。

 

「そうよかった」

 

安堵の表情を浮かべる雫に

 

「雫、俺はアイツをベヒモスを倒したぞ」

 

光輝が声を掛ける。

 

「そうね。その言葉を最初に言うのは私ではないと思うのだけど」

 

雫は恵里に視線を向ける。

光輝は雫の対応に戸惑いながらも恵里を見る

雫、恵里、光輝の間に流れる微妙な空気に

鈴、真央、綾子は三人の間に何があったのか

野次馬根性丸出しで見ていた。

 

「光輝君。私たちは勝ったよ」

 

恵里が光輝に静かに言う。

 

「そうだ俺たちは勝ったんだ」

 

光輝は恵里と視線を合わせず答える。

そして沈黙である。

 

 

「ひゃい」

 

雫が声を上げる。見れば鈴が雫の胸を後ろから揉んでいた。

 

「シズシズ~鈴は頑張って疲れたのだ。

この豊かな実で癒して欲しいなぁ~」

 

鈴はいつものように悪ふざけを始める。

光輝はそれに合わせこの場を離れた。

そんな光輝を恵理は見ながら

 

(僕は光輝君が欲しくてつながったけど満たされない。

僕が望み欲したものはナニ?答えは?光輝君?)

 

恵理はこの間から感じる虚無感に自問自答する。

その彼女の疑問に答える者はそばに居ない。

恵里を含め色々と先送りされていく。

 

その後、海里達はベヒモス側の階段を下ると

65階層の次の階層に降りる階段の側に出ることが出来た。

これで崩落した通路を迂回し迷宮の攻略を続ける事ができる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふ~」

 

ため息を漏らし疲れた様子で四十代ぐらいの細身の男がソファーに腰を降ろす。

おなじ位の歳のセミロングの女性が声をかける。

 

「あなた、何かわかった?」

 

「ダメだ前回の報告会と同じだ」

 

「そう・・」

 

二人の男女はハジメの両親の南雲愁と菫だ。

愁は先程まで集団失踪事件の保護者説明会に出ていた。

 

「子供がいなくなるのはキツイな」

 

「そうね・・栗原さんは大丈夫かしら

海里ちゃんの事があったから」

 

「経緯子ちゃんが明るさを取り戻した矢先だからな」

 

彼らは自分達の友人である栗原夫妻の事を考えるとさらに憂鬱になる。

栗原夫妻は長女海里を亡くしてまだ三回忌もすまさない内に

次女の経緯子が行方不明になったのだから

 

「あいつと栗原と言ったんだがこの状況は異世界転移みたいだなと」

 

「うん・・」

 

「でな転移があるなら転生もあって

転生した海里ちゃんがハジメと経緯子ちゃんを

守ってくれてるんじゃないかって」

 

「海里ちゃんならありそうね」

 

それは本来子供の無事を思う願望で

痛々しい冗談じみた妄想だったが

事実を言い当ていた。

 

残された者は帰って来ることを祈る事しかできなかった。

 

 

 

                  

 

 

経緯子たちのハッスル週間でした。

男女比1体3なら仕方ないですね。

ハジメくんは色々と技能を上げないとです。

 

地上組は海里と雫を除きベヒモスと再戦です。

真央と綾子の二人で原作の香織と同じ活躍をしてもらいました。

海里とメルドの訓練についての話はのうきんでのレーナの過去と盗賊絡みの

話からある意味、ありふれ原作の意見を否定するような形になりました。

 

恵里と光輝は迷宮に入り二人きりになる機会が無くなりこじれそうです。

 

 

 



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29 帝国と勇者とそして

遅くなりましたが

何とか9月中に更新出来ました。

投稿開始から半年が立ち

30話目前なのにまだハジメは

オルクス迷宮の中・・・遅いですね。

 

では本編です。

 

 

 

 

              

 

 

 

「ハジメ君?気持ちいい?」

 

「んっいいよ香織」

 

「こっちは?・・ハジメ」

 

「あっそこいいユエ」

 

今、ハジメは香織とユエに

健全なマッサージされていた。

爛れた行為ではない。

 

何故マッサージしてるのかというと

ハジメの新しい左の義手が原因だ。

この義手を体になじませるため

回復魔法の調節とマッサージを

定期的におこなっていた。

 

この義手はアーティファクトであり、

魔力の直接操作で本物の腕と同じように動かすことができる。

擬似的な神経機構が備わっており、

触った感触もきちんと脳に伝わる様に出来ている

所々に魔法陣や何らかの文様が刻まれている。

 

工房の宝物庫にあったオスカー作の義手に

ハジメのオリジナル要素を加えて作り出したものだ。

生成魔法により創り出した特殊な鉱石を山ほど使っており、

世に出れば間違いなく

国宝級のアーティファクトとして

厳重に保管されるだろう逸品である。

 

「ハジメちゃん仕上げにいつもの塗るね」

 

経緯子がアン〇ルツの様な薬を

左肩辺りに塗り込むと

 

「はぁ~スゥ~とする」

 

ハジメは弛緩した声を上げる。

 

オスカーの隠れ家にたどり着いて

ひと月半以上たち四人の装備や実力は

以前とは比べ物にならない程充実していた。

ハジメ、経緯子、香織のステータスは

平均で一万を超えていた。

ハジメ達もズルズルと爛れた性活を

おくっていたのではなく

下層の魔物を狩りそして四人での模擬戦で

実力を上げていたのだった。

 

ハジメ達の旅立ちの時も近づいていた。

 

 

 

_____________________________

 

 

 

同じ頃地上では光輝達が

迷宮の攻略を中止して王宮に戻っていた。

65階層を越え前人未踏の領域に入り

攻略スピードも衰えたとはいえ

海里のアイテムボックスがあるおかげで

かなり余裕を持って進んでおり

わざわざ王宮に戻り休養を取るほど

疲労していなかった。

 

なのに何故王宮に戻ったかと言うと

ベヒモスを倒した勇者に会いたいと

ヘルシャー帝国から申し出があったからだ。

 

帝国は300年前に伝説の傭兵が興した国で

強さが全てをモットーとする

実力主義の武の国なのだ。

 

そして今王宮の訓練場で勇者”光輝”の力を見たいとの事で

帝国の使者の護衛と模擬戦を行う事になった。

 

 

その護衛の見た目は平凡であり

強者には見えなかったが

 

「がふっ!」

 

光輝が吹き飛ばされる。

 

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか? 

まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

 

平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。

その表情には失望が浮かんでいた。

 

その後、光輝が護衛に挑むが

ステータスはともかく技能と経験において

相手は光輝の上をいっており軽くあしらわれる。

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。

しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

 

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

 

「……それが今や〝神の使徒〟か」

 

と蔑むように護衛は呟く。

 

残りのクラスメイトと見学していた海里は

少し気分を悪くしていた。

 

(天之河さんは甘い所があるけど

こっちの人間じゃないのだから仕方ないし

正体を隠してる怪しい人がそこまで言って

晒し者にしなくても。だったら・・)

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。

気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

護衛は宣言するといなや一気に踏み込んだが

顔をしかめたたらを踏み立ち止まってしまう。

 

「はぁ?」

 

光輝は気がそがれてしまう。

護衛が周りで見学していた生徒達を見て

 

「おい!そこの女!何かしただろ⁈」

 

ヒュウヒュウと吹けてない口笛をしている

海里に向かって叫ぶ

先程、護衛がたたらを踏んだのは

海里が靴の中に小石を作る嫌がらせ魔法を使ったからだ。

 

「海里とやらお前の仕業だろコレ!」

 

靴を脱ぎ中から小石を出しながら聞いてくるが

 

「実戦だと靴の中に石が入ることもあるし

偶然じゃないですかぁ

それに正体を隠してる怪しい人に言われたくありませんよ!」

 

その言葉を聞いた護衛は面白そうな顔をして

 

「正体ねぇ?暴けるなら暴いてみろや?」

 

「わかりました。危害は加えませから文句は無しですよ」

 

海里は護衛を見つめその瞳が青く光り

 

「汝の正体見たり!外道照身霊波光線!」

 

 ボフン!

 

言葉と同時に白い煙につつまれ

どこからか「ばぁれたかぁ〜」の言葉が響き(海里の演出)

煙が晴れ元の護衛とは似ても似つかない男が現れる。

四十代位の野性味溢れる男だ。

短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、

スマートでありながらその体は極限まで

引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが

服越しでもわかる。

 

「筋肉ぱっつんぱっつんのおじさんです。で誰です?」

 

どちらにしろ顔に見に覚えがなかったので

疑問符を浮かべる海里だったが

直ぐに誰かわかる。

その男の姿を見た王国の人間が戸惑いと驚きの声を上げる。

 

「ガ、ガハルド殿⁈」

 

「皇帝陛下⁈」

 

なんと護衛は帝国の皇帝が化けた姿だった。

周りが騒然としている中

右耳のイヤリングを触りながら

ガハルドは肉食獣じみた笑みをうかべ

 

「アーティファクトをあっさりと無効化するかよ

聞いてた以上にとんでもない女だな」

 

 

その言葉を聞いた海里は心外と言わんばかりに反論する。

 

「失礼な私は普通の女の子です」

 

「そうかい。召喚された使徒最強と聞いたのだがな?」

 

「巻き込まれただけです。

それで勇者君のように皇帝陛下自身で

私の力を試します?」

 

「それはいい。海里、帝国に来ないか?

それで俺の女に・・・・それはいいか」

 

「ぬぅ・・引っかかる言い方を

まぁケモ耳を大事にしない

帝国は行きませんけどね」

 

「ふん!ケモ耳といえばもう一体のベヒモスを倒した女がいたな

そこのおっぱいしっぽ!お前!俺の女になれ」

 

ガハルドは雫に声をかける。

 

「お断りです」

 

雫は迷いなく断りそこに海里が

 

「おじさんが女子高生に声をかけるのは

事案なのでダメです」

 

 

そう言いガハルドを威嚇する海里

 

「皇帝をそこらのオッサン扱いかよ」

 

愉快そうなガハルドと海里がにらみ合ってると

シャン!と金属音がし

 

「たわむれが過ぎますぞガハルド殿。

それと海里様もひいて下さい」

 

錫杖を鳴らしイシュタルが間に入ってきた。

 

「すまんな。自分の目で召喚された勇者を確認したかったのでな。

無礼だとは思うが一芝居打たせてもらった。

そこの爺さんをアレした相手も確認できて有意義だったぜ」

 

その言葉に眉が微かに動くイシュタルだった。

その後ガハルドは形だけの謝罪を国王に行い

模擬戦は終了した。

 

その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの

言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。

 

 

_____________________________

 

 

模擬戦が終わったあと雫は海里の部屋に呼び出されていた。

 

「城から出ていくの海里さん⁉」

 

戸惑いの声を上げる雫

 

「はい。そろそろ経緯子達も迷宮を出て来るみたいだし

帰還方法を探しにそして会いに行こうかと思いまして」

 

 

「・・・」

 

「雫さんはどうします?

一緒ににいきますか?」

 

「でも・・二人も抜けたら皆が」

 

「その辺は考えてますよ。

皆の事でなく雫さんはどうしたいですか?」

 

「私は・・香織に会いたい!

それに南雲くんや経緯子にも会いたい!」

 

「なら一緒に行きましょう雫さん。

私たちが抜けてもばれないものは用意してますから」

 

 

 

 

 

 

しばらく後に海里の部屋に呼び出された。

鈴と恵理は目の前ものを見て呆気に取られていた。

そのうち鈴が両手の平を突き出しフラフラと前に出て

 

むにゅん、むにゅん

 

「オオ!同じ!同じ感触だよ恵里」

 

鈴は雫の二つの右胸を揉み比べしていた。

二人の前には海里と雫が二人ずつ立っていた。

そして鈴は思わず胸を揉み雫の差異を確かめたのだった。

雫にゲンコツを落とされた鈴を無視して恵里が質問する。

 

「海里さんこれは?」

 

「生体ロボット”マイル001ミサトver"と

”シズク002”です。サイズ、色、弾力

オリジナルと変わらないコピーロボです」

 

寸分違わないとの言葉に顔を赤らめる雫

ただ海里の無駄な拘りからか

シズク002は手袋と髪留めが黄色だった。

まるでショッカーシズクだ。

なおイメージが変わるので

偽マンの様につり目にするのはヤメテおいた。

 

「はい。ナノマシンの”序盤に”さんが、

一晩でやってくれました」

 

と前に言えなかったセリフを満足気に言う海里だった。

 

「恵里、鈴ごめんね。私も海里さんと城を出るわ」

 

雫は二人に申し訳なさそうに言った。

海里が恵里と鈴にコピーロボの説明を始める。

 

「001と002は戦闘力も私たちと同等ですし。

アイテムボックスもあるので不自由はしないはずです

経緯子達と合流して帰還方法を見つけてきますので待っててください」

 

「海里さんが戻って来る前に

私達が前線にいく事になったらどうします?」

 

恵里が不安げに海里に質問する。

 

「その時は全員で逃げましょう。

最悪、皆をコピーロボと入れ替えて」

 

それを聞いて恵里は大きなさやえんどうから出てくる

自分のコピーロボを想像した。

 

「お姉さんそれナニか怖い」

 

鈴は少しホラーチックなので怖がった。

 

「はは、早朝には旅立ちます」

 

海里が言うと鈴が

 

「あのねお姉さん、この事を黙ってないとダメかな

龍太郎くん南雲んを探すため鬼気迫る感じで訓練してて

カオリンたちの事を秘密にしてるの辛くて」

 

雫は鈴を慈しむ目で見ると

 

「海里さん」

 

「鈴さん。話してもいいですよ。

私は好きにしましただから好きにして下さい。

でも少し日数は開けてください。

王都を離れる位の間は」

 

海里と鈴の会話を聞きながら恵理は

 

(好きにすればいいかぁ・・・)

 

 

 

_____________________________

 

 

晩餐会が終わり自室に戻った光輝は

どうにも落ち着かなかった。

 

(俺は勇者なのに今日の模擬戦はなんだ・・)

 

ここしばらく雫に自分との関係を

男女間にはならないと言われてから

どうにも落ち着きがなくなった。

 

ドアがノックされ

 

「光輝君。話があるの」

 

恵里が部屋を訪ねてきた。

光輝は気まずさを感じながらも

部屋に招き入れる。

 

「恵里どうしたんだい?夜遅くに」

 

恵里は真っ直ぐに光輝を見つめ

 

「もちろん光輝君に抱かれにきたのあの日のように」

 

「恵里あれは酔ってそれで・・それに俺は」

 

光輝は恵里から視線を外しながら答える。

 

「光輝君は一回で終わりにするの昔みたいに」

 

「昔・・・?」

 

光輝はその言葉に思い当たる事が無くキョトンととする。

恵里はその態度に泣きそうな笑顔を浮かべ。

 

「光輝君は何も見てないんだね。だから香織ちゃんが

誰を好きなのかをわからなかったんだ。

あんなにわかりやすかったのにね」

 

「香織が誰を好きだって」

 

「南雲君!クラス全員がわかってたよ。

わかってなかったのは光輝君だけだよ」

 

「そんな香織は俺の側に」

 

「幼なじみとしてならね。それだけ

それにね香織ちゃんはきっと南雲君とシテるよ」

 

「恵里・・・」

 

「だって光輝君は香織ちゃんが生きてると

信じてるよね。だったら南雲君も

極限状態で意識している男女なんだから

当たり前だと思うよ」

 

光輝は自分の中に今までに感じたことのない感情が生まれてきた。

 

「それとも南雲君だけは死んだことにしておきたいの?

可愛い幼なじみを寝取られたから

もしかしたら雫ちゃんもそうなるかもよ」

 

「恵里止めるんだ。君はそんな事を言う人じゃないだろう」

 

「私はどんな人?こんな女だよ!

一度抱かれてまた抱いて欲しいと

男の部屋に押し掛ける浅ましい女だよ!」

 

恵里は言いながら光輝に身を寄せる

 

「ねぇ光輝君守って、助けてくれるんだよね

なら抱いてよ!欲望を出来なかっな事を

この体でしていいから」

 

恵里は光輝が動かないので強引に唇を奪う

恵里は光輝の唇をむさぶった後

光輝の耳元で囁く。

 

「香織もシテるんだよ今も・・・」

 

その言葉に光輝の中の何かが崩れ

 

「くそっ!くそっ!」

 

と悪態をつきながら恵里を寝台に押し倒す。

 

やがて寝台の軋み音が響き

寝台の傍らに立かけた

聖剣がカタカタと揺れていた

だだその揺れは寝台の軋みの

余波だけではなかった。

 

 

                 

 

 

海里と雫がクラスメイトから離れる事に

カトレア襲撃は原作と乖離しそうです。

はっきり言うとコピーロボ強いので

負ける要素無しです。

 

*コピーロボはのうきんノベル8巻書下ろし「コピー」からです。

 

 

光輝と恵里がドロドロのズブズブに

そして光輝君の真のヒロインの兆しがです。

 

 

*避妊薬は女生徒皆に処方されてます。もしデキたら戦力低下するので



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30 旅立ち

今回でオルクス迷宮が終わります。

他の迷宮はもう少しサクサクと

進めれたら思いますが・・・

 

では本編です。

 

 

 

 

 

               

 

 

 

 

月光が差し込むどこかの一室に影が二つ

女が平坦な声で言う

 

「お前には何もない」

 

男が睨む

また女が言う

 

「何も得られない何故なら

お前は嫉妬傲慢無知蒙昧怠情下品で

何より無能だ」

 

「くっ俺は違う無能はヤツだ」

 

「現実は要らないもの

数合わせにも値しない

だからお前は”呼ばれず”ここにいる」

 

対外的に重要な集まりが有ったが

この男は呼ばれずいつもと変わらない

宿の一室にいるのだった。

 

「このまま引きこもってはどうだ?

無能な働き者は嫌われるぞ」

 

「黙れアイツのアイツのせいだ

あの女さえいなければ俺は今頃」

 

「では女を殺したいか?」

 

「殺したいさ。けどよこれ以上

何かしてばれたら居場所が・・」

 

「小者、ここに極まりだな

落ちるとこまで落ちて

それでも保身を第一とは」

 

「うるさい!力が・・・力さえあれば

殺ってやるさ」

 

「主に従うなら力をやろう

栄誉も女も付いてくるぞ」

 

「・・・従う!力をくれ!

報酬を忘れるな!」

 

「望み通り力をやろう」

 

と言うと女は男の唇を奪い

舌でこじ開けナニかを

男の中に送り込んだ。

 

 

「うぷっ、なっなにが」

 

「時が来ればわかる。

それまでアンノウンにばれないようにな」

 

そう言い残し女は銀光の煌めきと共に

姿を消し男は一人部屋に残された。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

朝もやの中城の裏庭で

鈴が雫と海里を見送っていた。

 

「恵里は部屋にいなかったから

見送りは鈴だけだけど無事に戻って来てね」

 

「海里さんがいるから私は大丈夫

鈴こそ怪我しないでね。

あと恵里にもよろしく言っておいてね」

 

 

「とにかくある程度、帰還の目途がついたら

戻ってきますからコピー達にも皆さんを

守るように頼んでますので心配しないでください。

ではドロンです!」

 

海里が印を組み、そう言うと白い煙が二人の姿を隠し

煙が晴れると鈴の前から雫と海里は

いなかった。

 

海里が光学迷彩で姿を消したからだ

そのまま抜き足差し足で忍び足で

二人は城から出て行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ブッモモォオオオオ!!

 

 

農村のあぜ道らしき所を土煙を上げながら

雄叫びを上げ猛牛サイズの猪の魔物が疾走している。

よく見れば頑強な茶色の体は所々傷ついていた。

魔物の血走った赤い瞳は前方に人影を捉える。

 

人影は優花であった。

彼女は両手で6本のナイフを指に挟み

魔物の正面で投擲の構えをとっていた。

 

(くうっ・・視線を逸らすな!固まるな私!)

 

優花は迫って来る魔物の威圧に気圧され

脳裏に殺されかけた事がフラッシュバックするが

己を鼓舞し魔法の詠唱を完成させる。

 

「我は望む炎よ”纏炎”」

 

その言葉と同時に赤い炎を纏った六本のナイフが

魔物に向かって放たれる。

 

ギャン!

 

優花の放った灼熱のナイフが全て

魔物の頭部に突き刺さり短い断末魔を上げ倒れる。

 

優花は長い安堵の息を吐く

 

(私もこれで少しは近づけたのかな)

 

と感傷にひたってる中、

愛ちゃん護衛隊のメンバーが

優花に集まって来る。

 

「優花っち!やったじゃん!」

 

「みんなが弱らせて誘導してくれたから」

 

愛子と農村を巡っていた優花達は

畑を荒らす猪タイプ魔物を

再起のために皆で協力し追い詰め

優花がトドメを刺したのだ。

 

「でも仕留めたのは園部だ

流石!隊長!頼りになる」

 

幸利が優花を褒めるが

 

「隊長・・?」

 

その言葉を訝しげる優花そこに明人が

 

「園部は俺たちののリーダーだから

愛ちゃん護衛隊の隊長だな」

 

淳史と昇が調子良く

 

「隊長よろしく」

 

「これからは園部隊長と呼ぶぜ」

 

それに奈々と妙子も乗っかり

 

「優花っち隊長♡」

 

「ユウカタイチョーだね」

 

「「「「「タイチョー♪タイチョー♪」」」」

 

と皆で調子に乗りはやし立てる。

優花が顔を赤らめ叫ぶ

 

「隊長言うなぁ!」

 

 

 

「ふ~皆さん怪我無く良かったです」

 

優花達を見守っていた愛子が

全員が怪我せず魔物駆除を

やり遂げた事に安堵していた。

 

愛子達がこの村に到着し

猪の魔物に畑を荒らされてると聞くと

優花達が駆除すると言い出したのだ。

危ないで止めるようにと言おうとしたが

優花の前に進む決意を込めた瞳に

何も言えなくなり駆除を認めてしまった。

 

そして愛子の前でふざけ合う優花達を見ながら

 

(何やら吹っ切る事が出来たみたいですね)

 

「それにやつらは丹精込めたスイカとか

真ん中だけ食い荒らすから

猪どもは駆除、駆除です」

 

実家が農家の愛子の暗い恨み言が口から洩れ

それを聞いた神殿騎士たちが少しひいていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

オスカーの隠れ家の倉庫に二か月間で

作った装備、武装が並べられていた

 

中心にハマーに似た魔力駆動の四輪に

両脇にアメリカンタイプのサイドカーと

近未来感デザインの

ストリートファイタータイプのバイク

その周りに対物ライフルのシュラーゲン

アハトアハト改、ガトリングガンのメツェライ

デデェエンン♪なロケットランチャーのオルカン

等の武器そして各種弾頭を並べて

それらを眺めハジメは悦に入っていた。

戦闘機の周囲に各種の武器を並べる写真などがあるが

ハジメも整理ついでに見栄えよく並べてみたのだ。

理由は男の子なので仕方ないのだ。

 

「ハジメちゃん!明日には出発するのに

片付けもせず何してるの?」

 

経緯子がハタキを持ったを手を腰に当て

倉庫の入り口で怒っている。

ハジメはばつが悪そうな笑顔を浮かべ

 

「ハハッ 整理してたらつい

経緯子ちゃんごめん」

 

「仕方ないわね~昔から本とか片付けてたら

読み始めて脱線してたから

お姉ちゃんと同じで変わらないんだから

それにここから出ていく前に

ここを掃除しようと言ったのは

ハジメちゃんなんだよ」

 

オスカーの隠れ家はゴーレムがいて清掃及びメンテナンスはされているが

ハジメが旅立つ前に皆で大掃除しようと言い出しその最中なのだ

経緯子はハジメを見つめ心配気味に

 

「・・・ハジメちゃん大丈夫?」

 

「どうしたの僕なら元気だよ」

 

「何でもない、でもよくこれだけのモノを作ったよね」

 

「作業場にこもり過ぎて、経緯子ちゃん達に

何度も引きずり出されたけどね」

 

元来凝り性なハジメは夢中になると

直ぐ寝食を忘れて作業を続けて

ステータスが上がってるため

余計にこもってる時間が長くなるのだ

そのため心配と構ってもらえなくなった

ユエや香織に何度も強引に連れ出されるのが

幾度となく繰り返された。

そのかいも有って目の前の装備以外にも

魔力の流れを見られる。神結晶を加工したレンズの眼鏡や

経緯子や香織の協力で作り上げた二人の専用武器等

多種多様な小物も作り上げた。

 

少し前に神水が染み出なくなった神結晶で

その魔力を貯める特性を利用し

魔力切れ対策として魔結晶シリーズと名付けた

指輪などのアクセサリーを作りそれを

ハジメは経緯子たちに贈ったのだがその時ユエが

 

「・・・プロポーズ?」

 

香織はおずおずと左手を突き出し

 

「ハジメくん。嵌めてくれないかな?かな?」

 

「ハジメちゃん嬉しいサプライズだよ」

 

と経緯子が言った後

 

「なんでやねん」

 

ハジメは思わず三人に関西弁で突っ込みを入れた

 

「そうじゃなく!てそれで魔力枯渇を防げるから

皆を守ってくれるはずだから」

 

「・・・やっぱりプロポーズ」

 

「ハジメくんの照れ屋」

 

「素直じゃないね」

 

「三人とも僕の話を聞きなよ」

 

「フフ・・・ハジメ」

 

「ハジメくん」

 

「ハジメちゃん」

 

「「「大好き」」」

 

「・・おう」

 

本当にもう爆発しちまえよ!言われそうな雰囲気を醸し出す四人。

その後別のモノが爆発した経緯子達にいつものごとくされたハジメだった。

 

その時のことを思い出し遠い目をしたハジメは

広げた装備をアイテムボックスに収納しながら

 

「経緯子ちゃんお互いにステータスの値が

おかしな値になったね」

 

「一般人の平均値に近いステータスだったのにね」

 

ちなみに現在のハジメ達のステータスは下記の通りだ

 

====================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成師

 

筋力:10950

 

体力:13190

 

耐性:10670

 

敏捷:13450

 

魔力:14780

 

魔耐:14780

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+錬成記憶][+錬成再生][+間接錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解・身体強化・超超超々微細機械補助[+土魔法A][+探索魔法C][+生活魔法D]・アイテムボックス

 

====================================

 

 

栗原経緯子 17歳 女 レベル???

 

 

 

天職 薬剤師

 

 

筋力 :10050

 

 

体力 :10120

 

 

耐性 :12830

 

 

敏捷 :11020

 

 

魔力 :15560

 

 

 

魔耐 :15040

 

 

 

技能 調合[+成分解析][+成分抽出][+液体系鑑定][+生物系鑑定][+液体合成][+自動合成][+濃縮加工][+精密混合]・魔力操作・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解・水魔法[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・火魔法[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・超超超々微細機械補助[+水魔法A][+土魔法C][+探索魔法A][+分析魔法A][+生活魔法A]・言語理解・身体強化・アイテムボックス

 

 

 

 

 

====================================

 

 白崎香織 17歳 女 レベル:???

 

 

天職:治癒師

 

 

筋力:10100

 

 

体力:10960

 

 

耐性:11000

 

 

敏捷:11080

 

 

 

魔力:18680

 

 

 

魔耐:16800

 

 

技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動][+高速治療][+精密診療]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作・胃酸強化・纏雷[+周波数調整]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・身体強化・超超超々微細機械補助[+治療魔法A][+光波魔法A][+探索魔法C][+生活魔法B]・言語理解・アイテムボックス

 

 

 

====================================

 

 

三人ともステータスの平均が軽く一万を超え

レベルにいたっては魔物の肉を食べ過ぎ

肉体が変質したためか、まともに表示されなくなっていた。

変わり過ぎたため人種から外れた証なのかもしれない。

 

少し感傷に浸った後ハジメはふいに経緯子の肩を抱き寄せた

ハジメの行動に少し驚くも経緯子はハジメの肩に頭を預け

 

「ハジメちゃんはハジメちゃんだよ」

 

静かに優し気に経緯子は言う。

その言葉にハジメはいつも通りの苦笑いを浮かべ何かを言おうとした時

 

「あー経緯子ちゃんずるいかな!かな!」

 

香織の声が二人の背中から響く

 

「掃除サボってハジメくんとしっぽりとか私も混ざっちゃうよ」

 

「違うから突撃しないで香織さん」

 

「香織ごめん!それは後でね」

 

「うんわかった」

 

その後は真面目に大掃除を終わらせ。

そしての夕食をすませ

隠れ家のでの最後の夜をほどほどで過ごし

翌朝、ハジメ達は新たな装いで転移の魔法陣の前にいた。

彼らの服装とはいうと

 

ハジメはオスカーの服を仕立て直した

黒のスーツにコートとガンベルトの

西部劇のワイアットアープスタイル

 

ユエは白のコートに黒いスカートに

絶対領域が眩しいタイツを履いている。

それとハジメ達はアイテムボックスがあるので

宝物庫の指輪はユエの左手の中指に嵌められている。

 

香織はハジメとお揃いデザインの紅のコートに

白のシャツに赤のベストにショートパンツと

黒のパンストを履いている。

 

経緯子は白のシャツに紺のベストに

前止めに魔結晶のブローチを使っている短めの赤のストール

そして赤茶色のロングスカートに

ブーツといささかおとなしめの装いである。

 

どの服もただの布ではなく奈落の魔物の素材を使った

耐久性、防刃、対魔法の高いものである。

 

ハジメは転移の魔法を起動させながら

 

「みんな……僕の武器や僕達の力は、地上では異端で。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

「だよね」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

「そうなると思うし」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかも」

 

「ん・・・」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいに」

 

「今更・・・」

 

「わかってるよ」

 

「了解ずみ」

 

経緯子、香織、ユエは真っ直ぐにハジメを見つめ答える。

 

「僕が皆を守り、皆が僕を守る、そしてお互いに守りあえば僕達は最強だ」

 

「治療師の名に懸けて私が皆を治すよ」

 

香織が決意を表明し。

 

「そうね全てを排除しても皆で帰るよぉ」

 

経緯子は覚悟のほどを述べ

ユエは三人に笑みをうかべいつも通り

 

「んっ!」

 

と言ったとき転移魔法が発動し

ハジメ達は奈落の底から姿を消したのだ。

 

 

                    

 

 

ありふれ学園の特務風紀部隊隊長の優花のハチマキ姿が

似合ってて可愛いかったのでタイチョーネタを書きました。

タイチョーと言えばナイマツのディータイチョーいいよね。

とディーフラグの船堀ネタの落書きです。

 

【挿絵表示】

 

 

経緯子の服装はありふれヒロインとしては

露出控え目でカオルのコスです。

 



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31 ライセン峡谷とウサギ

 

ウサギさんとの出会い回ですが。

少しあっさり風味かも

では本編です。

 

 

 

 

 

 

                 

 

 

「なんでやねん」

 

転移の魔法陣で移動したハジメの

第一声はそれであった。

経緯子と香織もガッカリした顔している。

何故なら移動先は外で無く真っ黒な空間だったからだ。

 

「・・・隠れ家の出入り口隠すのが当たり前」

 

とユエに突っ込まれ確かにと思い自分達の

浮かれ具合に恥ずかしくなるハジメ達三人だった。

それから四人は洞窟らしき所を出口に向かって歩いていたが

ハジメ達の瞳に光が写った途端、光に向かって駆け出しそして外に飛び出すと

 

「外だぁああ」

 

「お日様だよぉ」

 

「戻ってきたし」

 

「・・・まぶしい」

 

ハジメ達は歓喜の声を上げ太陽をしばらく見上げた後

お互いの顔を見合わせて誰からとなく抱き合い

四人は笑いながらダンスするように回って

地面の出っ張りにつまずき四人は不格好な体勢で転ぶも

ハジメ達はかまわず笑い続ける中ふいに影が差した

 

それは双頭のティラノサウルス擬きの群れが彼らを囲んでいたからだ。

 

「もう少し感傷に浸っていたかったんだけどね」

 

ハジメはそう言ってホルスターからドンナーを抜き、香織と経緯子が

 

「そういえばライセン大峡谷(ここ)って魔法が使えないんだよね」

 

「ねぇユエさんどうなの?」

 

魔法のエキスパートのユエに質問してみると

 

「力ずくなら・・効率は10倍ぐらい」

 

「10倍と言うと下級魔法で上級の魔力が必要ってことか

ならここは僕に任せて」

 

「・・むぅ」

 

ユエは不満げな顔を浮かべるも

 

「まぁユエさん。適材適所でこの場所は魔法使いには鬼門だから

ハジメちゃんに任せましょう」

 

経緯子になだめられる。それと同時にハジメのドンナーの発射音が響き

一体の魔物の頭部が吹き飛ぶ

 

「”纏雷”は使えるか。放出系で無いしナノさんの補助で思ったより

魔力の負担はないや」

 

 

 

数分後、ハジメ達の周囲は魔物の死体で埋まっていた。

ハジメは白煙が微かに立ち昇るドンナーをホルスターにしまう

 

「もう近くには魔物はいないよ。ナノちゃん魔法は問題なく使えるし」

 

探索魔法で周囲を調べた経緯子がそう言って、香織はせっせと

魔物の死体を問題なくアイテムボックスに収納していた。

 

「んっ・・ずるい」

 

ユエはハジメや経緯子と香織がナノマシンの補助で負担を減らせる事に

口をとがらせ拗ねた様子を見せている。

そんな中でハジメは何やら考え事をしているとユエが質問してきた。

 

「ハジメ、どうしたの・・?」

 

「ライセン峡谷の魔物は凶悪だと聞いてたけど

あまりにも手応えが無かったから」

 

「奈落の魔物と比べてはダメ・・・ハジメ達が化け物なだけ」

 

「確かに奈落の魔物が外に居たら人類が終わるね」

 

魔物の死体を収納し終えた香織がたずねる。

 

「ハジメくん、これからどこに向かうの?」

 

「ハルツィナ樹海の方に行こうと思ってる」

 

「ハジメちゃん、ケモ耳を見たいの?お姉ちゃんとよくケモ耳少女の話で盛り上がってたし?」

 

経緯子がそんな事を言うと、ユエと香織はシラ~とした顔でハジメを見ている

ハジメは慌てて否定する。

 

「違うよ。準備も無しで砂漠を横断はきついし、樹海の近くには街もあるから

魔物の素材の換金や色々と買い出ししたいからだよ」

 

と言いながらハジメはアイテムボックスからサイドカーを出す

ハジメがサイドカーにまたがると香織はタンデムシートに側車には経緯子が

ユエはハジメとハンドルの間に座った。

 

ハジメ達はその後魔力駆動(ハジメの魔力を使用)サイドカーで時折、魔物を倒しながら順調に峡谷の出口近くまで進むと前方から

 

「だずけてぇ~食べられるぅ~」

 

切羽詰まった女の声が聞こえてきた

 

「魔物に追われてる娘うさ耳が付いてるね」

 

遠見の技能で姿を確認した経緯子が言うと香織は

 

「こんな所に兎人族が?峡谷って罪人の追放場所だよね?」

 

「ワルウサギ・・ハジメどうする」

 

「とりあえずは助けるよ。経緯子ちゃんお願い」

 

経緯子は側車に座ったままツバァイを構え、兎人族の少女を食べようとする

双頭ティラノの頭を撃ち抜き魔物はあっけなく横倒しに倒れる。

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

兎人の少女は力無く横たわるダイヘドアと呼んだ魔物を驚愕の表情で見ていた。

ハジメ達はそんな彼女から万が一の場合対処できる距離をとりサイドカーを停車させる。ハジメ、経緯子、香織の三人は元々がお人好しでありそれ故に目の前で

死にそうになっている者をためらわず助けたが、奈落での戦いの経験から警戒は怠っていない。ハジメはサイドカーから降り兎人の少女に質問する。

 

「君はどうしてこんな所にいたの?」

 

ハジメの声で我に返った少女は兎人の脚力で一気にハジメに抱きつこうと飛び掛かる。

 

「やっと会えました私はシアでぶっ!」

 

シアと名乗った少女は空中で光の壁に顔からぶつかりズルズルと地面に落ち

尻を上げた格好でぴくぴくしていた。そして眉をぴくぴくさせている香織が

 

「ハジメくんにいきなり抱きつこうなんて痴女かな?かな?」

 

先程の光の壁は香織の天絶だった。さらにユエが追い打ちをかける。

 

「やっぱりワルウサギ・・・猥褻兎」

 

「余罪がないかコレを刺して吐かせようかしら」

 

と経緯子は小指サイズの薬を取り出しシアの尻を見ながらそう言った。

するとシアは身の危険を感じたのかガバッと身を起こし

 

「私!痴女でも猥褻でもありません!怪しげな薬は断固拒否します!

それはともかく先程は助けていただきありがとうございました。!

ついでに私の仲間も助けてください」

 

シアと名乗った少女はわりと厚かましかった。

ハジメはとりあえずは話を聞くことにした。

 

「私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

シアは事情を話始めたそれを要約すると

 

 シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にてひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

当然、一族は大いに困惑した。亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは家族の情が深い種族である兎人族だ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。

故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

しかし、樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ

元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込み、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

「それが先日の事で今はまだ魔物に見つかってませんが、それも時間の問題です。見つかれば全滅です。助けてください!」

 

悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、ユエやハジメと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。

 

身内を大切を失う辛さを知っているハジメと経緯子はお互いに頷き

ハジメはもう一台のバイクを出し経緯子がそれに跨ぐと

 

「シアさんの家族に合流するからそれに座って」

 

ハジメは側車に座るように言うとパアッと明るい表情を見せるシア

彼女が座るとハジメはバイクを走らせた。

 

 

ハジメは先程のシアの言葉に疑問をもっていたので質問する。

 

「さっきシアさんは”やっと会えた”と言ってたけど

どうして僕達の事を分かったのさ?」

 

「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど…… 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

とシアが話すがなにやら疑問に思った香織が質問する。

 

「ねぇそんなに便利な固有魔法ならなぜバレたりしたのかな?」

 

シアは言葉をにごしながら答える。

 

「直前に未来視を使ってしまいまして・・」

 

「何に使ったのかな?」

 

「実は友人の恋の行方が気になってそれで使っちゃいましたぁ」

 

「「「この残念ウサギ!」」」

 

と突っ込みをハジメ達から受けたシアは両手の人差し指をチョンチョンし

両目から流れる涙をクラッカーのように揺らし反省の言葉をぶつぶつ言っていた

どこかのいなかっぺのようなシアを見てハジメは助けるの早まったかななどと考えてると並走する経緯子が探索魔法に何か引っかかったのか警告を発する。

 

「ハジメちゃん、前方の空に魔物の群れが旋回している」

 

その言葉にシアの顔は青ざめハジメはサイドカーに魔力を注ぎ速度を一気にあげた。

 

 

 

 

カム・ハウリアは絶望していたライセン峡谷に逃げ込み兎人の隠蔽能力の高さのおかげで今まで見つからずにこれたが遂に空を飛ぶ魔物”ハイベリア”に

所謂ワイバーンタイプの魔物に上空から発見されてしまった。ハイベリア達は岩陰に隠れるハウリア達を品定めをするように上空を旋回している。

 

「シア・・・」

 

族長の自分の娘のシアが未来視でなにか見たのか助けを呼んでくると昨晩、群れを飛び出しっていったが無事だろうか?

その時轟音が響いた。何かの見れば一匹のハイベリアが急降下し尻尾で岩を砕いた音でその場所にいた親子が慌てて這い出してくると

待ち構えていたハイベリアが再び急降下で襲い掛かる。その場にいるハウリア達が同胞の運命に絶望したが

 

ドパンッ!! ドパンッ!!

 

と乾いた音が響くと襲い掛かろうとしたハイベリアの頭部が爆散し、見慣れぬ二つの物体が猛スピードで突っ込んで来て

襲われてた者の側で急停止する。

 

「父様!みんな!助けに来ました!」

 

見知らぬ物体にはシアが乗っており事情を問おうと声を出すが連続する轟音に打ち消される。

降車したハジメ、経緯子、香織が上空のハイベリアを狙い撃ちしている音だった

数分後すべてのハイベリアが撃ち落とされた。

 

 

「お姉ちゃんありがとう」

 

ハウリアの女の子が香織にお礼を言っている。

香織と経緯子はハウリア達の怪我や体調不良を魔法や薬を使い治していた。

その間にハジメとユエはシアと族長のカムと話をしていた。

 

「助けていただきありがとうございます。私はこの群れの族長カム・ハウリアと申します」

 

「南雲ハジメです」

 

「・・ユエ」

 

「皆さまは大変お強いですね。ハイベリアをいとも簡単に倒すとは」

 

「そうですハジメさんはとても強いのですぅ」

 

シアが馴れ馴れしい態度で自慢する。

 

「・・ウザイ」

 

「私達はたまたま通りがかっただけですので直ぐに出発させて頂きます」

 

ハジメは二人にビジネスライクに答える。助けはしたがこの場にいる者を引き連れて旅をする余裕は無いので

何処かで線引きする必要がある。その言葉に顔を青ざめる二人だが

 

「私達は今から地上に上がりますが、後ろから勝手付いて来るのはかまいませんが崖上までです」

 

そのハジメの言葉にシアとカムは安堵するもシアが問う

 

「上に登った後は・・・」

 

「私達にも目的があります。なのでその先は無理ですよ」

 

そこに思いがけない所からシアに助けが入るユエである。

 

「ハジメ樹海に連れて行こう・・・案内が必要」

 

ユエの言葉にシアがここぞとばかりにセールストークをまくしたてる。

 

「そうですぅ。樹海は年中霧に覆われてヒト族だと迷う上他の獣人に見つかると襲われます。

私たちが案内すれば迷わないし無駄な争いも避けられるです」

 

ハジメは二人に答える。

 

「わかりました。案内してもらう代わりに樹海を抜けるまで私達が護衛すると言う事で良ければ契約しましょう」

 

ハジメ達はハウリア達と案内してもらう代わり護衛する約束を交わし

そして崖上に上がる階段状の通路を登り始めるのだった。

 

 

 

 

 

                      

 

 

長くなったのでここで切ります。帝国兵との邂逅は次回に実は原作より幾日か

オルクス迷宮からの脱出は早いです。二人でなく四人で攻略なので。

すんなりとシアを助けたため残念ウサギ度が下がってしまいました。

 



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32 ヒト

少しキツイ表現があります。

 

では本編です。

 

 

 

 

                           

 

 

 

ハジメ達はハウリア達を引き連れライセン峡谷の崖上に出るための階段を上がっていた。シアがハジメに問いかける。

 

「あの~ハジメさんはいいのですか?」

 

「ああ僕たちが上に居るだろう帝国兵と敵対する事?」

 

「はい。私達を連れてだと確実に争いに

それは同じ人間族と敵対することですから」

 

「シアさんは僕たちが帝国兵と争う所を"未来視”で視たんだよね」

 

「はい、ですが・・」

 

「帝国兵、人間族と争う事に思うところはないよ

でも無駄に争う気もないけどね」

 

「ハジメさんは人間族なのに何故兎人を守ってくれるのですか」

 

「君たちを守ると契約したからねそれだけだよ

それと帝国兵に引き渡したりはしないよ。帝国兵の数が多くてもね」

 

ハジメは何でもない口調でそう答える。

そこに経緯子がハジメに声を掛ける。

 

「ハジメちゃん上に三十人ぐらいいるよ」

 

その言葉にハウリア達の間に不安と緊張が走る。

しかしハジメ、香織にユエは何の動揺も見せずにそのまま登り遂に峡谷の上に出る。

 

そこには数台の馬車と真新しい野営の跡があり経緯子の言葉どおりに帝国兵がたむろしておりハウリア達を引き連れたハジメ達を見ると思いの外

早くハウリア達が戻って来たことに喜びながら先頭にいるハジメ達に声をかける。

 

「ほう、えらい早く逃げ帰ってきたな。先頭にいるのは亜人じゃねぇな」

 

帝国兵の小隊長らしき人物がハジメに質問しハジメはビジネススマイルで答える。

 

「私は人間の冒険者で峡谷で魔物狩りをしていたところ兎人達をみつけまして連れて行くところです」

 

「こんな所まで狩りとはご苦労なことだが、兎人は置いていってもらおうか?

そいつらは俺たちが先に目を付けてたからな」

 

「捕まえたのは私です。他人の奴隷に手を出すのは違法でしょう」

 

ハジメは笑顔のままそう答えると小隊長は不機嫌な顔を浮かべるもハジメの側にいる女性を

極上のビスクドールの如き美貌を持つ金髪少女ユエに

白髪長髪の肉感的美女の香織に

白髪のおとなしそうな可愛いお嬢様に見える経緯子

彼女たち三人を見て下衆な笑みを浮かべると

 

「身の程をわきまえろよ坊主。しかし連れの女どもはえらく別嬪じゃねぇか?

その女どもに俺たちの相手をさせれば多少はお目こぼししてやるよ」

 

その言葉に経緯子たちは嫌悪感を隠そうとしない表情をしハジメは無機質に答える。

 

「お断りします。私の大切な女たちなので」

 

「そうかい!だったら!てめえの手足をぶった切って目の前で女どもを犯してから

お前を殺して女たちは奴隷として売っぱらてやるブバァ⁉」

 

小隊長は最後まで話す事が出来なかった何故なら彼の頭は縦に割れられていたからだ。

 

「ハジメくんを殺す?なら敵でお前たちを許さないかな?かな?」

 

香織が右手の中指の指輪から光の細い鎖が伸びその先端には手のひらサイズの円盤があり光の刃が丸鋸みたいになっていた。

これによって小隊長は頭を切られたのだった。これは香織がハジメに協力して作ったアーティファクト”光鎖刃ヨーヨー”で

指輪と円盤を細い光鎖で結びノコギリ状の光刃を出し入れできる。近中距離用の香織専用の武器で

この先様々な光刃技で八つ裂きカオリンの異名を持つ事になる彼女の始まりの武器である。

 

「小隊長おぉおぶっ・・・」

 

続いて側にいた副長らしき男の首に紫色のゴムの様なものが巻き付くとジュッという音と共に男の首が落ちる。

 

「ハジメちゃんを奪う?なら排除するよぉ」

 

ゴム状の紐は経緯子の左手、紫色の手袋の人差し指から伸びていた。このゴム状の紐はサソリモドキの溶解液を経緯子が生成魔法で合成したもので

普段は無害だが一定の魔力を加えると粘度が変化しなおかつ溶解液として性質を取り戻す。経緯子はそれを鞭のように使い男の首を落としたのだ。

 

経緯子はすかさず左に溶解液の鞭を振り三人の帝国兵の首を溶かした。同じく香織も光鎖刃ヨーヨーを右に薙ぎ帝国兵を三人切り裂く

瞬く間に小隊長を含む八人の仲間を殺された帝国兵たちだが練度が高いのか後衛の兵士達が直ぐに魔法の詠唱に入る。

 

ドッパパァアアアンン

 

重なり合った銃声が聞こえ詠唱していた帝国兵六人の頭部が吹き飛ぶ。見ればハジメの構えたドンナーから白煙が上がっている。

 

(ヒト相手に”纏雷”は不要か、経緯子ちゃんも香織も僕のことには沸点が低すぎるかな。注意しないとね)

 

ハジメは己が初めて人を殺したのに冷静に現状を把握していた。

その後わずかな時間で一人を残し帝国兵は全滅した。

尋問するために残した帝国兵にハジメは質問する。

 

「捕まえた兎人族は何処にいる」

 

「・・本隊はまだ品定めと選別をしてるはず」

 

兵士は震えながら本隊のいる方向を指さす。

 

「品定めと選別・・・」

 

その言葉の意味を理解したハジメはすかさず魔導二輪車を出し走り出す。

 

「なぁ正直に話したんだ助けてくれよ」

 

帝国兵は残った二人経緯子と香織に懇願するが経緯子は左手を座り込んでいる男の頭上に伸ばすと溶解液の雫をたらした。

 

 

 

 

 

十分とかからずハジメは帝国兵の宿営地に着く。

そこには十台の馬車と50人程の帝国兵が見える。

 

「見慣れない物に乗って何者だお前?」

 

二輪車にまたがったハジメに帝国兵が尋問する。

ハジメはその問いかけに

 

(とりあえずやって来たけど。亜人奴隷は帝国だと合法で

この人たちも正規の兵士で気に食わないからと力ずくは不味いよな)

 

などと考えていると正面の馬車の陰から半裸の兎人族の女性がフラフラとでてくる。

見れば彼女は顔の左目の辺りに火傷を負いその部分は皮膚が爛れていた。

彼女はハジメをその虚ろな目で見る。いやハジメがそう感じただけで彼女の絶望に満ちた瞳は何も見て無かったのか知れない。

 

赤い噴水。彼女の頭が落ち首から吹き上がり体が一、二歩進んだ所で倒れる。

彼女を追うように乱れた服装の帝国兵が出て来てハジメに対応していた兵士に声をかける。

 

「具合は良かったが。あの火傷じゃ売り物にならないから魔法で思わず処分しちまったわぁ」

 

「オイオイ良かったのなら俺も味わいたかったのにかってに処分するなよ」

 

「そう言うな。使えそうな傷ものならまだ何匹かいるから楽しめるぜ。ヒッヒッ」

 

「見張り早く交代してくれよ。お預けはつれぇぜ。ガハハハッ」

 

見張りに話しかけた男がハジメに気づき

 

「坊主。体だけだがまだホカホカで使えるから。アレとならやってもいいぞ。イッヒヒッ」

 

「そいつはイイ直後だと締まるらしいぞワハハ」

 

ドバンッ!ドバンッ!銃声ではないハジメが右手で帝国兵の顔を万を超えるステータスで殴り粉砕した音だ。

ハジメは怒りと嫌悪感からドンナーでも義手でもなく素手で殺した。

そしてハジメは腰のホルスターからドンナーとシュラークを抜いた異常に気づき向かって来る帝国兵たちに。

 

 

 

帝国軍隊長グリッド・ハーフは全力で走っていた。

 

「ハァハァ・・あの化け物は俺の部下が・・」

 

彼は逃げていた瞬く間に轟音を響かせながら理解不能な攻撃で100人近い部下を殺した白髪の化け物から

充分に距離が離れた所で立ち止まり息を整える。

 

「はぁ・・追いかけては来てねぇ。・・帝国に戻ったら残りの連隊を全て引き連れて殺してやる化け・・!」

 

恨み言を全て言う前に赤い霧になった。ハジメがシュラーゲンで対物ライフルで狙撃したからだ。

音速を遥かに超えるレールガンの前には人の体など文字通りの霧散するしかない。

 

 

 

ハジメがバイクで駆け出して直ぐに経緯子はこの場を香織とユエに任せ追いかけて行った。

香織が淡々とハウリア達の移動の準備を進めていると帝国兵の死体の処理を済ませたユエが言った。

 

「香織・・経緯子だけでいいの」

 

「ユエ・・私達は初めて人を殺したんだ。でも私は何も感じなかった魔物を狩るのと変わらなかったかな。

ハジメくんはそんな私に心を痛めてるかも」

 

「だから・・経緯子だけに・・・香織の負け犬」

 

「負け犬・・ユエ!」

 

「香織はハジメに自分を受け入れられない不安から逃げた・・ハジメは私達を拒否すると思う」

 

「そんな事はないよ。ハジメくんは私達の側にいてくれる。

・・・ありがとうユエ」

 

「んっ・・なら早く片付けてハジメと合流」

 

 

 

 

 

 

経緯子がハジメに追いついた時、ハジメは首を斬られた女の瞼を閉じアイテムボックスに収納する所だった。

その後帝国兵に既に殺されていた20人程の主に老人たちの死体を二人は回収し

事情が解らずハジメがハウリア達と護衛契約を結んだ事を知らないため

固まり怯えた目でハジメと経緯子を見る生き残りのハウリア達を無視して

二人は帝国兵の死体を一か所に集め

 

「”溶解の風(ルストハリケーン)”」

 

経緯子の魔法で消し去った。

その後ハウリア達に馬車に乗るように指示ハジメが帝国兵を殲滅する所をみた彼らは素直に従う。

そんな様子を眺めながら経緯子はハジメに言う。

 

「ハジメちゃん。人を殺したのに私は何も感じなかった」

 

「僕もだけどね。それについて後悔はないけど。力を化け物じみた力を持ったから命を奪う事にハードルが低くなった気がするよ」

 

「迷宮だと生き残るための戦いが優先だったから。でもハジメちゃん私たちは一人じゃないから」

 

「そうだね。経緯子ちゃんに香織、ユエがいてくれるならきっとヒトでいられる」

 

「うん。そしてお姉ちゃんに再会して家に帰ろう」

 

「経緯子ちゃん皆で帰るよ絶対」

 

 

その後香織たちと合流し生き残った100人のハウリア達の乗った。

馬車を引き連れてハルツィナ樹海に向かうハジメ達だった。

 

 

 

そのころ

 

「フューレンよ!私は帰って来た!」

 

乗合馬車から降りたサングラスをした海里が火のついていないコーンパイプを咥えそう叫んだ。

 

「海里さんがこの街に来るの初めてではないかしら」

 

とすかさず雫がツッコミを入れるが海里(マイル)のこれは定番の言わずにいれないネタである。

雫はオールバックの軍人の方のネタとは違うのねとか思いながら海里に問いかける。

 

「これからどうします?」

 

「先ずはハンターと・・いや冒険者登録しましょう雫さん」

 

中立商業都市フューレンそこは悪徳と野心、成功と挫折とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた。

大陸一栄える街そこに海里と雫の二人が降り立った。

 

 

 

 

                       

 

 

原作より早くシアと出会ったのでハウリア達は大所帯になり。帝国兵がその分亡くなりました。

ハジメは見なくていいものを見てしまいましたが。

 

光鎖刃ヨーヨーの元ネタはV!V!ビクトリーのロボです。八つ裂きカオリンは八つ裂きポーリンからです。

 

経緯子の溶解液の手袋は感情が高ぶると人工皮膚が溶けて濃硫酸になるメタルなスケルトンお嬢様の漫画からです。

 

上手くまとめられなかったので香織とユエのやり取り後で書き直すかも

 

次回は海里の飲むコーヒーは苦いかもです。

 



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33 ハルツィナ樹海にて

ひと月以上更新が空きましたが

年内に出来ました。

 

前回でお気に入りが500を越え、返事が遅いにもかかわらず感想も100を越えました。

ありがとうございました。

 

樹海での出来事を適度にカットしつつ書きました。

 

では本編です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                         

 

 

 

「これは凄いや」

 

「きれいな所ね」

 

「住んでみたいかな?」

 

「んっ・・良い」

 

ハジメ達は口々にフェアベルゲンを褒め称えていた。

フェアベルゲン、それは亜人の国の首都で高さ30mはある木々を利用して作られた

自然と調和した素晴らしい街だ。

その言葉にハジメ達を先導している亜人達やハウリア達も誇らしげだ。

なぜハジメ達が亜人達に先導されフェアベルゲンに来てるのかというと

ハルツィナ樹海にハウリア達を連れて入ったのだが

108人もいては隠蔽も何もなく樹海に入ってすぐに

見廻りの亜人達に見つかってしまったが。

そこはハジメ達が脅迫もといOHANASIして穏便に

フェアベルゲンに案内してもらうことになったからだ。

 

そして住人から好奇と侮蔑の目を向けられながら

ハジメ達は指定された長老たちとの会談場所に到着する。

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

各部族の長老のまとめ役の森人(エルフ)のアルフレリックが呟く。

彼はハジメ達から、この世界が神の玩具だと知らされても顔色一つ変えなかった。

曰く「我々亜人に元々この世界は優しくてない」と言うことらしい。

そしてハジメが大迷宮を攻略した証を見せると

すんなりと大樹の元に行く事を許可する。

それは何故か代々攻略者に敵対するなと伝えられているからだそうだ。

しかしそこに別の長老から横やりが入る、熊の亜人ジンであった。

彼にはハウリア達を後ろに従え座るハジメ達が華奢な人族にしか見えず、とても敵対するべからずと伝わる強者に思えなかったので

 

「ならば。今この場で試してやろう⁉」

 

と言うなりハジメに殴り掛かる。二メートル半の巨躯を持つジンの岩の様な拳が

ハジメを叩き潰すと周りの亜人達は考えたが、それは驚愕とともにそれは否定された。

 

ズドンッ!

 

衝撃音と共に振り下ろされた拳は、ハジメの左腕に掴み止められていたからだ。

 

「温い拳ですね。私としては穏便にすましたいのですが?」

 

ハジメはジンの拳を掴み止めながら静かに長老達に問うが

 

「クソがっ!」

 

ジンはもう片方の腕で殴り掛かる。その時ハジメの隣に座っていた経緯子が指で何かを弾く

そして正露○の様な物がジンの鼻の穴にスポっと入り、

ハジメはこれから起こる事に巻き込まれたくない為

ジンを長老側に手加減して押し返す。

ジンはバランスを崩し他の長老達が座って居たところに尻もちをついたその時

 

「ぶらああああああぶううぶぶ!!!!!」

 

口からキラキラした液体(自主規制)を盛大に吐き出したのみならず下の方も何やら漏れている。

彼の瞳は焦点が合っておらず転げ回っていた。そんなジンの様子に心配し近づいた亜人達もすぐに

ジンと同じように吐き散らかしのたうち回る。そんな中アルフレリックが口を抑え込み上げるものに耐えながら話す。

 

「とんでもない臭気たまらん・・・うぷっ」

 

経緯子がジンの鼻の穴に向かって飛ばした物、

それは亜人、主に獣人系対策として合成した。

奈落の魔物の、特にくさい物を集め作った。体熱で表面のコーティングが溶け臭いが活性化する丸薬である。

姉の海里もマイルの世界で同じ様なモノを作っていたので、そのへんはやはり姉妹であった。

しぶきがかからないように”聖絶”で防いでる香織と、

悪臭を防ぐため”風壁”で自分達の周囲を覆っているユエ。

アルフレリックがそんなハジメ達と色々と液をまき散らす同胞を見ながら

 

「ハジメ殿あつかましいと思うが臭いを何とかしてくれまいか?これでは話もできんのでな」

 

と懇願してくる。ハジメも見苦しい光景が続くのもなんだかなぁと思い香織に頼む。

 

「”匂い分子吸着(ファブリーズ )”」

 

香織はハジメくんが言うならと、嫌々ながらナノちゃんの生活魔法である消臭魔法を使った。

消臭系の魔法は香織が一番うまかったかおりだけに。

 

色んなモノを掃除した後、長老達は仕切り直した。

とは言えこの場には森人のアルフレリックと土人(ドワーフ)のグゼの二人だけだ

後の長老達は獣人系の為軒並みダウンしいている。

グゼがハジメ達にくってかかる。

 

「お前達。同胞にこの仕打ち。どういうつもりだ」

 

「どうも何もいきなり殴り掛かられたのは私の方です。肉体的に傷つけ無いように配慮しましたが何か問題でも?礼儀を欠いたのはそちら側でしょう」

 

ハジメは坦々と言葉を返す。

グゼは納得せずさらに抗議しようとするがアルフレリックに止められる。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは、表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

 

「絶対じゃない……ですか」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回獣人系の種族は醜態を晒し面子を潰されたからな」

 

「それで?」

 

 アルフレリックの話しを聞いてもハジメの顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「……殺意を向けてくる相手に手加減して欲しいと?」

 

「そうだ。お前さんの実力なら可能だろう?」

 

「あの熊の人が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうけどただ・・・」

 

ドン!わざとらしく音を立て経緯子がツボを床に置き言った。

 

「ぶっかけられていいなら好きにすればいいわ?」

 

そして香織が笑顔で

 

「次は消臭サービスは無いかな」

 

 

「悪魔め・・・」

 

グゼが顔をしかめ呟きアルフレリックが言葉を続ける。

 

「お前達、大樹への案内はどうする我々から出すのは難しいが」

 

「ハウリア族に案内してもらう約束してます。彼らを守るかわりにね」

 

グゼがあきれたように顔を左右に振り言う。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 グゼの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、グゼの言葉に容赦はなかった。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

と言い放った時、この場の空気が一気に冷え重たくなる。それはハジメからだ

 

「それは困りますねぇ。私は彼らを守ると約束したのです。

忌み子なんて下らない理由で処刑だんてねぇ」

 

ハジメからのプレシャーの中アルフレリックはなんとか言葉にする。

 

「なら案内はこちらが用意し、刑は忌み子だけで他は見逃すがどうする?」

 

ハジメはチラッとシアを見ると迷いなく言った。

 

「案内はハウリア族にしてもらいます。それに守ると言った中に

忌み子と呼ばれるシアさんももちろん入ってます。

ですのでもしそちらが手を出すのであれば覚悟して下さい」

 

「我ら全てを敵に回してもか・・」

 

「それでもです」

 

シアは先程ハジメが自分を見た時から己の胸の高鳴りが上がり続けていた。

そして今ハジメが、ためらいもせず全てから守ると言ったとき己がおちる未来を視た。

そしてはハジメが静かにだがここにいる。

長老達以外に遠巻きにしている亜人達にも聞こえる声で

 

「私は忌み子を魔力を使えるからと処刑するのは

亜人達が魔法を使えないから差別する人族と変わらないと思うのですが」

 

その言葉にアルフレリックは思うところがあるのか

ため息をつきながら言った

 

「…ハウリア達には手を出さんことにするが。しかし今すぐに大樹に行くのは無理だぞ」

 

「なぜです」

 

「大樹の周囲は特に霧が濃く我々でも迷う。

たどり着くには月に何日かある霧が薄くなる日にいくしかない。

その日はまだ半月程先だが?ハウリア達から聞かなかったのか?」

 

 

「カムさん?」

 

 

「あっ、いや、その何といいますか…ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか

私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」

 

 

 しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが

、ハジメ達四人のジト目に耐えられなくなったのか逆ギレしだした。

 

 

「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」

 

 

「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、

てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

 

 

「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? 

とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから」

 

 

「族長、何かやたら張り切ってたし」

 

 

 逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。

 

 

「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任!」

 

「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

 

「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」

 

「バカモン! 先程の経緯子殿の悪魔の所業を見ていただろう!

 一人で臭くなるなんて絶対に嫌だ!」

 

「あんた、それでも族長ですか!」

 

 

亜人族の中でも情の深さは随一の種族といわれる兎人族。

だが彼等は、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら互いに責任を擦り付け合っていた。

ハジメはそんな光景に先程の処刑の庇い合いが三文芝居に思えてくる。

シアだけで無く皆、残念なウサギばかりだった。

 

カムの悪魔の所業、発言に経緯子の目は座り目つきが一気に悪くなり

香織は動きの無い笑顔でハウリア達を見ている。

今度はハウリア達にぶっかけられる事になるのかと思われたが

 

「見苦しい・・・・」

 

ユエが目の前の光景に我慢できずそう言うと

宝物庫の指輪から先端にコウモリのエンブレムが付いた1メートル弱の横笛を取り出し

 

「後始末が楽なお仕置き・・・スーパーソニック」

 

と言うと笛を吹いたするとハウリア達が耳を塞ぎながらのたうち回る。

 

「この音は・・・」 「背筋がぁ!!!」  「頭が割れるぅうう」 「ヒイぎぃい」

 

「脳が沸騰するですぅ」 「止めて・・・」 「ゆ・・ユエ殿」

 

ユエが吹いた笛はこれも亜人向けにハジメが作った。

非殺傷用アーティファクト“ノーキルの笛“であり。

別にハウリア達の良心に訴え掛けてるのでなく、

人族と亜人と可聴域の差を利用した黒板を引っ掻く様な等不快な超音波を出す笛であり

ひらたく言うなら凄い嫌な犬笛である。

ノーキルの笛は音の指向性を自由に操作できるため

長老達に被害は出なかったが、のたうち回るハウリア達を見て彼らは改めてこう思った。

 

 

『『悪魔の所業』』

 

 

 

                         

 

 

非殺傷な手段なので原作よりまし?

のうきんの対獣人戦を参考にしましたが。色々と周囲に被害が出てしまいました。

 

 

次回はハウリア強化(凶化)編?です。



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34  望む先は

少しふざけ過ぎたかも

では本編です。

 

 

                  

 

 

数十個の土を盛って作った、小山の前で

生き残った108人のハウリア達は族長のカムを中心に集まり

首を垂れていた。

 

小山、それはハウリア達の集落の近くに造った。

ハジメがアイテムボックスに収納した

帝国兵に殺された同胞達を埋葬した墓であった。

 

最後尾で同じく黙禱を捧げていた、ハジメ達だったが頃合いを見て。

墓の前に立ち、ハジメがハウリア達にこれからの事を述べる。

 

「あなた方には今から戦闘訓練を受けてもらおうと思います」

 

その発言にハウリア達の間に困惑と動揺が広がり

そんな中シアが代表して質問する。

 

「えーハジメさん戦闘訓練というのは・・」

 

「そのままの意味ですよシアさん。どうせ、二週間はここに足止めなのので

その間にあなた達、ハウリアを一端の戦闘技術者に育てるつもりです」

 

「な、なぜ、そのようなことを・・・」

 

「簡単なことだよ。シアさん達との約束は、

案内が終わるまで守るというものです。

案内が終わった後、どうするか考えてますか?」

 

 

ハウリア族達が互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振る。

カムも難しい表情だ。漠然と不安は感じていたが、

激動に次ぐ激動で頭の隅に追いやられていたようだ。

あるいは、考えないようにしていたのか。

 

「僕達と別れた後は、何の庇護もなくなり強者に喰われるだけです」

 

一拍置き、ハジメはハウリア達を見渡し言う。

 

「その時あなた達は、どうします?蹂躙され黙ってますか?

なにもできず、ただ跪きますか?そして僕の後ろの小山を無駄に増やしますか?」

 

 誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

「そんなものいいわけがない」

 

 その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

「なら答えは一つ。強くなる。それだけです。喰われたくなかったら強くなるそれだけです」

 

「ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も

翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません・・・とても、そのような・・・」

 

「かっての自分は仲間の中で”最弱”、ステータスは一般人並みで技能も平凡だったよ。

経緯子ちゃんも香織も戦闘に向いてなかった。でも生き延びた」

 

ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を顕にする。

ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、戦闘能力に優れた熊人族の長老も、

苦もなく一蹴したハジメ達が〝最弱〟で戦闘に向いてないなど誰が信じられるというのか。

 

「強くなれるかどうかは関係ない。なるしかなかった。

でないと僕も経緯子ちゃんも香織もただの餌だった」

 

ハジメの言葉に経緯子と香織も続く。

 

「使えるものは、何でも使い、利用して生き延びたよぉ」

 

「見た目も心も色々と変わったけど。ハジメくんや経緯子ちゃんと共に

戦って生き抜いた。そこに後悔は無いよ」

 

三人はそう言って、ハウリア達を見据え、ハジメが問う。

 

「今回の様な幸運は二度とあり得ません。

このままだと次は屍を晒すだけです。

今なら僕達が、あなた達の絶望を打ち砕く手助けができます。

どうします?これが最初で最後の問です」

 

ハジメの問いかけに、黙り込み顔を見合わせるハウリア族。

しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

 樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。

シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。

しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、

このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、

シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

そのシアの魂からの叫びと不退転の瞳に、他のハウリア族も立ち上がり始め

やがて女子供含め全員が立ち上がり。カムが一歩前に出てハジメ達に返答する。

 

「ハジメ殿。宜しくお願いします」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

とハウリア達の訓練が始まったのだが、さすがにハウリア族、108人分の武器は用意しておらず。

幾らかの試作の小太刀を渡して、後の分はハジメは今から作る事になった。

その間2、3日は経緯子と香織がハウリア族の面倒を見る事になった。

ユエはというと、シアに魔力の使い方を教えていた。

 

ハウリア達に戦う術を教えることになった。

経緯子と香織だが体系的な戦闘術を学んできたわけではないため

先ずは魔物をけしかけ、戦う事に慣れさせる事にしたのだが。

 

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……

 

「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです! いつか裁かれるときが来るとしても、それは今じゃない! 立って下さい! 族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

 

 

と魔物を倒すたびに、目の前で三文芝居が繰り広げられる。

そんなハウリア達に経緯子と香織も我慢できずに突っ込む。

 

 

「だぁああ! めんどくさいよ! 魔物一体殺すたびに、いちいち大げさだし! 

なんなの? ホント何なんですかぁ?」 

 

「うざっ! 何でドラマチックな感じになってんのかな? 黙って殺ろうよ!

 即殺しよ! 魔物に向かって〝彼〟とか言うとか! キモイんじゃないかな!?かな?」

 

そう、ハウリア族達が頑張っているのは分かるのだが、その性質故か、魔物を殺すたびに訳のわからないドラマが生まれるのだ。

何度も見られた光景であり、経緯子と香織も何度も指摘しているのだが一向に直らない事から、いい加減、堪忍袋の緒が切れそうなのである。

二人の怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても……」とか「だっていくら魔物でも可哀想で……」とかブツブツと呟くハウリア族達。

 

経緯子の眼付きが、徐々に悪くなり。

香織は笑顔が固まっていく。

見かねたハウリア族の少年が、経緯子と香織を宥めようと近づく。

この少年、ライセン大峡谷でハイベリアに喰われそうになっていたところを

間一髪ハジメ達に助けられ、特に懐いている子だ。

しかし、進み出た少年は2人に何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた。

訝しそうな経緯子が少年に尋ねる。

 

「? どうしたの?」

 

 少年は、そっと足元のそれに手を這わせながら経緯子に答えた。

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。

こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

 

「お、お花さん?」

 

「うん! お姉ちゃんたち! 僕、お花さんが大好きなんだ! 

この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」

 

ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。

経緯子はすっかり座った目で、ハウリア達を見てつぶやく

 

「そっか、そうなんだぁ。変にぴょんぴょんしてると思ったら”お花”かぁ」

 

そしてハウリア達を凶悪になった目付きで睨み

 

「あなた達の頭が、お花畑だとよぉおくわかりました。・・・だから」

 

経緯子の気に飲まれるハウリア達は息を吞む

 

「「「だから・・・・?」」」

 

「あんたたち!皆!尻出せやぁあああ!!」

 

 

 

   

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ハジメがハウリア達の武器を用意し終わり、ハウリア達の訓練場に来ると

目の前はお花畑だった。ただし花はハウリア達の尻尾に咲いている。

正確には尻〇から茎が伸びていた。ハウリアさんマジお花畑である。

 

経緯子は座薬を、あのアルラウネ擬きの胞子を仕込んだ薬を

ハウリア達に突っ込んだ。どうやって刺したかは乙女の秘密(笑)である。

 

残ってた養分で咲いた花だが、元々の自由に体を操る力はなくなり

効果としては理性が緩くなり、生存本能と闘争本能が表に出やすくなり

其の上、普段無意識に抑えてる肉体的な制限が外れやすくなっている。

 

なので今、ハジメの前でハウリア達が魔物を狩っているのだが

 

「バルッ」

 

「こいつらの匂いを消してやるッ!」

 

「バルル バルル」

 

バルバルバルバル!バルバル!

 

「どげええええっ!」

 

これが!これが!ハウリアだ!と花とは違う、何かに寄生された状態になっていた。

別の方向を見ると香織が怪我をしたハウリア達を治療していたが

 

「これで大丈夫だよ」

 

「香織さん、ありがとうございます。ハジメ様に感謝を」

 

「はい、これで治ったよ」

 

「ありがとうございます。全てはハジメ様のために」

 

何やら怪しげなセリフがハジメの耳に入る。

ハジメが難しい表情をうかべながら立っていると

経緯子と香織が近づいて来て。

 

「どうハジメちゃん。性格の矯正に苦労したし」

 

「ハジメくんの素晴らしさを皆に語ったよ」

 

「経緯子ちゃん・・香織‥これはなに?」

 

能天気にハジメに聞いてくる二人に、ハジメは笑顔を引きつらせ質問する。

でこうなった顛末をまとめると

 

ハウリア達の闘争を嫌悪する性格を、

短期間で矯正するために薬を使う。

     ↓

生存本能と闘争本能が覚醒。

だが無理矢理なので精神と体が疲労

     ↓

心の支えとして香織が回復魔法をかけながら

ハジメの素晴らしさを語る。

     ↓

薬で理性が薄くなっていた(元々自白剤として調合)

 

なので、豊臣秀吉が木ノ下藤吉郎だった頃の、

怪しい宗教ハジ目教が生まれそうだった。

 

「経緯子ちゃん!香織!これはあかん!あかんで!

目がいっちゃてるやん!わいは教祖なんていややでぇ!」

 

ハジメが斜め上の様子に関西弁でまくしたてる。

そのハジメの剣幕に経緯子と香織も、やりすぎたかもと反省し

 

「でもハジメちゃん。薬で彼らの枷を軽くしただけだし・・」

 

「私もハジメくんの良さを少し、お話ししただけ・・・」

 

幾らかの言い訳し、それを聞いたハジメはため息をつくと。

 

ドッパパァアアアンン

 

とゴム弾をドンナーで連射して、ハウリア達の花を撃ち落とす。

花が落ちキョトンと立ちすくすハウリア達に間をおかず

ハジメがドンナーを上に向けて撃ち威圧を込め叫ぶ。

 

「先ずはお前らの穴という穴からヤクを抜くぞ!」

 

そして再び威嚇射撃し

 

「風穴!開けられたくなければ!さっさと走りやがれ!」

 

「は・・ハジメ殿」

 

ハジメの言葉使いの豹変ぶりに、少し理性の戻ったカムが問いかけるが

 

「お前たちみたいな薄汚い”ピー”に質問する権利は無い!”ピー”らしく!黙って走れ!」

 

今度はハウリア達の足元を撃つと

 

「「「「ひぃーー」」」

 

と彼らは追い立てられ、走り始める。

 

「ハジメちゃん?」

 

「荒い言葉のハジメくんも良いかな」

 

「戦いへの忌避感は無くなったみたいだとして。

集団として軍隊式トレーニングをやるからね二人とも」

 

「「二人とも?」」

 

「僕に続いて経緯子ちゃんも香織も、叫んでね」

 

「えー”ピー”で”ピー”なんてはずかしいし・・・」

 

と*に薬を突っ込んだ経緯子が今更に言い。

 

「”ピー”とか叫ばせるとか・・ハジメくん。プ・レ・イかな」

 

香織が頭ピンクなセリフを言う。

 

ガッン! ガッン!

 

ハジメはドンナーで二人の頭をこづく

 

「二人がやり過ぎたせいだろ。僕に続いて叫んでよ!」

 

ドパンッ! ドパンッ!

 

「”ピー”ども”ピー”して”ピー”されたいのか」

 

そしてハジメに小突かれ、涙目になった。経緯子と香織もハジメに続いてハウリア達を罵倒するのだった。

 

「「”ピー”で”ピー”に”ピー”されたいのか!豚がぁ」」

 

幾日も銃声と罵声が樹海に響いた。

 

 

 

 

 

                   

 

 

少し中途半端ですが、ここできります。

何か少し下品になったかも

生徒会役員共一挙見ながら書いたからかな・・・

 

 

 

 



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35 エキスパートになろう

久しぶりに一週間以内で更新出来ました。

では本編です。

 

 

 

 

 

 

 

             

 

 

樹海に破壊音が響ている。木々は折れ、燃え、凍え、

地は穴が穿ちていた。その中心には小柄な影がひとつあった。

 

「でぇやぁああああ!!」

 

若い女の気合いのこもった声が響くと、

霧の中から直径一メートル程の樹が、

中央の小柄な影をめがけて飛んでくる。

だがその樹が届くことはなかった。

 

「……〝緋槍〟」

 

言葉と共に豪炎の槍が迎え撃ち、かの者を狙った樹は灰になり散った。

 

「まだです!」

 

霧の中、影が走ったかと思えば頭上の霧が爆ぜ、

中から砲弾のごとく丸太が飛び出し

轟音を響かせながら大地に突き刺さる。

目標の人物はバックステップで

衝撃波の範囲から脱出し魔法を放とうとするが、

そこに霧の中から飛び出した影が大地に刺さった丸太に飛び蹴りする。

どれだけのエネルギーが込められていたのか、丸太は爆散し破片が散弾と化し目標を襲う。

 

「ッ! 〝城炎〟」

 

だが散弾は炎の城壁に遮られる。

しかしその時

 

「もらいましたぁ!」

 

破片と炎を隠れ蓑のにして目標の後ろにまわっていた影が大槌を振りかざし迫る。

 

「〝風壁〟」

 

そして・・・

 

 

 

ユエとシアは正座していた。

いや経緯子と香織によってさせられていた。

香織が腕を組み二人を見下ろしながら、

 

「ユエにシアが傷をつけれたら、ハジメくんに付いて行くとか

全然、聞いてないかな?かな?」

 

ユエが言い訳がましく答える。

 

「ハジメに・・口添えすると言っただけ」

 

シアはユエに焦り口調で

 

「ユエさん、お二人をもう少し説得して欲しいですぅ」

 

「んっ・・私は四天王最弱」

 

ユエは二人に黙って、女の同行者を増やす賭けをしたことに後ろめたさを感じ押しが弱い。

そこに経緯子が周りの惨状を一瞥して、あきれた様子で、口を開く。

 

「しっかし。よくここまで森林破壊したわね・・・それで賭けとやらは、どうなったのシアさん?」

 

「よくぞ!聞いてくれました!経緯子さん!見事!ユエさんに一発入れてやりましたですぅ!」

 

シアはうさ耳をピンと立て。ドヤ顔でのたまった。

 

「うざっ・・・掠めただけ」

 

「それでも勝ちは勝ちですぅ。ユエさんこそ、すぐに傷を消してなかった様にしたくせにぃ」

 

 

「それでユエさん。シアさんはどれぐらい強いの?」

 

「魔法適正はハジメと変わらない・・・身体強化に特化している。

強化してないハジメ達の六割ぐらい、・・・多分まだまだ上がる」

 

 

「「おおっ・・」」

 

そのユエの答えに経緯子と香織は驚愕とも感心とも取れる声を出し、

二人は小声で何やら話をするとシアを見定めるがごとく、プレッシャーをかける。

最近とみに目つきの鋭さがました。その経緯子の目をシアは顔を背ける事もなく、真っ直ぐに見ている。

 

「わかったわ。ハジメちゃんに連れて行くように私も口添えしてあげる」

 

 

「シア!あくまで同行するように、口添えするだけでそれ以上は無いかな」

 

 

経緯子と香織はシアの覚悟を決めた顔を見てそう言った。

 

「はいです!」

 

シアは満面の笑みでそう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

四人揃ってハジメの所に行くと、ハジメはハウリア達の武器を錬成していたが、

錬成の手を止め、彼女たちを見る。

経緯子と香織は少し申し訳しそうな顔しておりユエは不機嫌そうで、シアは神妙な顔をしていた。

ハジメは何があったのかなと思い、そういえばユエとシアで何か賭けをしていると言っていたのを思い出し、

尋ねようとしたらユエが、嫌々な雰囲気でハジメに言った。

 

「ハジメ・・・シアを連れて行こう」

 

「なんで?」

 

その後ユエから、賭けの内容を聞いたハジメが呟く

 

「経緯子ちゃんも香織も、了承済みか・・・」

 

二人の態度から、既に外堀を埋められていると察した。

 

「シアさん。どうして一緒に行きたいの?

家族の皆に迷惑がかかるとか?

魔力操作を使える。僕達との同胞意識から?」

 

ハシメはシアに理由を尋ねると

シアは顔を赤らめ、体をもじもじさせながら言った。

 

「はい。それもありますけどぉ・・・

いっ一番は・・ハジメさんのことが しゅきなのでぇ!」

 

(((噛んだ)))

 

「はぁ?僕なにか?したっけ?」

 

「長老達の前で、全てと戦ってでも、()()()()と言ってくれた時

視たのです。私のこれからは、ハジメさんとあるのだと」

 

少し捏造したシーンが入ったセリフを言ったシアはハジメを潤んだ瞳で見つめ、

ハジメは経緯子達を一瞥しそしてガシガシと頭を搔いてからにシアに言った。

 

「危険な旅だよ?」

 

「人より力持ちで、化け物で良かったです。一緒に戦えます」

 

「僕達の望みは、故郷に帰る事。二度と家族に会えなくても?」

 

「ふるさと後にしてもです。ハジメさんの傍に居たいです」

 

「シアさんでも・・」

 

「未来視は役に立ちますよ。それにです・・」

 

「それに・・・?」

 

シアは顔を更に上目遣いで、ハジメにボソッと言った。

 

「ハジメさんになら・・どぱっと裸を見せても・・」

 

「シアさん、それはいいから。そんな機会はないから」

 

「ハジメさん。すでに三人いるのだから、もう一人ぐらい増えても」

 

「経緯子ちゃん、香織、ユエ。これ以上”特別”を増やす気はないよ。

それに・・・物理的にも無理だし」

 

「物理的・・・?」

 

シアが三人を見ると。経緯子は照れ隠しに頬をかき、

香織はテヘッと舌を出し、ユエはドヤァと胸を張っている。

そんな三人の様子から感想を述べる。

 

「むっつり。陰獣。やり手ババァ」

 

その言葉に、特に香織とユエの表情が強張る。

 

(シアさん。やり手ババァは意味が違うよ)

 

と「あひぃー」とユエの風魔法で飛ばされてる。

シアをあきれ顔で眺めつつ思った。

 

どぐしゃ!と車田落ちしたシアを香織が纏雷で追い打ちをかけていた。

「アパパパパッ」の叫び声が響く中、経緯子は

 

「私って・・むっつり・・ムッツリーナなの」

 

と何やらショックを受けている。

ハジメはその光景を見ながら

 

「やっぱりシアさんは、残念ウサギだなぁ」

 

と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

「えへへ、くふふ~、ハジメさん~

これからは親しみを込めて”シア”と呼んでください」

 

ハジメから同行を許された、シアは緩みっぱなしの頬に両手を当てて、体をくねくねしていた。

 

「・・・キモイ」

 

見かねたユエがぼそりと呟き、ラビットイヤーは地獄耳で

その呟きを拾ったシアが文句を言おうとした時。

 

 

影がハジメ達の前に舞い降りる。

 

「ボス!熊人族が我ら梁山泊に進軍中との報ありです」

 

シアは目の前に現れたハウリアの男を見て呆然する。

その男は父親のカムであったが、口調といい雰囲気といい

明らかに変だった。

 

「父様!何があったのです。それに梁山泊とは

ここはハウリアの里ですよね?」

 

シアが慌てて問い質すと。カムはシアに温和な顔で。

 

「シアよ。我らハウリアは立ち上がったのだ。樹海の未来を憂う者として、そしてこの場所は宿星の導きに集いし”梁山泊”と生まれ変わったのだ!」

 

 

シアが意味不明な事を言うカムに唖然としいる中、経緯子がカムに問う。

 

「そう、今日の大樹の霧が晴れる日に攻めてきたのね。

私達が居なくなる。タイミングを狙って。カムさん準備は?」

 

「イエス!ビックママ!ノープロブレムであります」

 

とカムが返事すると、霧の中から影が次々飛び出して瞬く間にカムの後ろに全てのハウリア達が整列する

 

「ボス!我ら梁山泊!108名揃いました。お言葉を!」

 

「どうする?お前たち?契約期間中だ。私達が相手しようか?」

 

「ボスたちのお手を煩わせる。必要はないであります。

我々だけで向かい討つ、所存であります」

 

カムが好戦的な笑顔を浮かべ自信ありげに答える。

他のハウリア達も皆、不敵な笑みを浮かべている。

そんな彼らを見て香織が言う。

 

「皆に、まかせてもいいかな?」

 

「マム!イエスであります!」

 

その返答にハジメは、瞑目し深呼吸した後、クワッと目を見開き。

 

「聞け!ハウリア諸君!今日をもってあなた方は糞蛆虫を卒業する。

もう淘汰されるだけの無価値な存在ではない! 

力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる! 

最高の戦士だ! 最強の兵士だ!

私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ! 

奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん! 唯の〝ピッー〟野郎どもだ!

奴らの戦意をくじき、プライドを叩き潰し、その上に証を立ててやれ!生誕の証だ! 

ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

 

「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

 

「答えろ! 諸君! 最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」

 

「「「「「「「「「勝利!勝利!勝利!」」」」」」」」」

 

「相手に与えるものは!」

 

「「「「「「「「「恐怖!恐怖!恐怖!」」」」」」」」」

 

「敵はどうする!」

 

「「「「「「「「「蹂躙!蹂躙!蹂躙!」」」」」」」」」

 

「そうだ!恐怖!蹂躙!君たちはそれが出来る!自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

 

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

 

「いい気迫だ!ハウリア諸君!愚か者共を拿捕し!晒してやれ!

そして全ての亜人族に最強が誰か証を立てろ!作戦開始だ!」

 

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」

 

知らない間に変わってしまった。家族たちに打ちひしがれる。

シアの隣を少年が駆け抜ける。彼は特にシアに、なついていた。

なので咄嗟に呼び止める。

 

「バルくん! 待って下さい! ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ? 

君まで行かなくても……お姉ちゃんとここで待っていませんか? ね? そうしましょ?」

 

バル少年は花が大好きな少年だった。なのでシアは花で釣ろうとしたのだが

 

「シアの姉御、古傷を抉らねぇでくだせぇ。花を愛でてたそんな過去は捨ててしめぇやした。

今の俺は百八の宿星の一つ”天英星.必滅のバルトフェルド〟これからはそう呼んでくだせぇ」

 

と言い残すと森の奥に消えて行った。

 

「はっハジメさん!父様たちに何をしたのですか!

皆!別人じゃないですか!それに梁山泊とか!」

 

シアは涙目でハジメに詰め寄る。

 

「HAHAHA!シアさん。地球の効率的かつ合理的な

訓練をして。彼らの特性、隠蔽能力と敏捷性を

最大限に生かす。術を教えただけさ」

 

ハジメは右手を上げ、わざとらしく笑い言った。

 

「梁山泊の宿星の集いとか訳がわかりません」

 

「その辺は、訓練が行き過ぎて、殺意の歯止めのために

故郷の逸話(アニメ・ゲーム)とか訓示として話したら」

 

「話したら・・・」

 

「ハウリア的にツボッて、ああなった」

 

「あんなに穏やかだった。家族たちがぁ・・ぐじゅ」

 

と言って両手を地面につき。項垂れるシアの肩にポンとユエの手が置かれ

 

「・・・定めじゃ」

 

「なるべくしてなったと思う」

 

「抑えてたのが、解放されただけかな」

 

経緯子と香織もユエに同調するように言った。

 

「皆さん!ひどいです!」

 

とシアが憤慨するが、ハジメ達はシアのある料理風景を思いうかべる。

それはシアが、森で珍味様を見つけたので振舞ってくれたのだが

 

「ふんふんふ~ん♪切るぜ切るぜぇ、めったぎりぃ~♪」

 

『ギョォオエェエエエエエ⁉』

 

「あなたは~森の泉の妖精さぁん!とっても美味しい妖精さぁん!

どうして、ここにいるのかな~♪どうでもいいよねぇ~♪

だってとっても美味しいから~♪」

 

『アギョォオオオオオッ』

 

シアが陽気に歌い料理している。叫び声を上げているナニか

それは、胴体は一メートル程の魚で、頭は異常に血走った目と

カメレオン舌を持つ牛で、しかも胴体からはムカデの様な多数の足が生えていた。

それは魚ではなく”ギョッ”と呼ぶべきもので、断じて妖精さんではない。

 

その後も

 

「抉って~叩き潰して~飛び散っちゃぇ~♪」

 

『ニギョォゲェエエエッ』

 

「頭を取って、わしゃわしゃしてぇ~♪

すりおろして~びくんびくん~♪素敵な悲鳴!

それは素敵な調味料~」

 

『ルギィイイッギョバッたすけゴゲゲゲエエエッ』

 

とハジメ達の目の前で、SAN値直葬の料理風景が

繰り広げらえたのだ。

 

その事を思い出すと、ハウリア族がああなったのは

必然だと思うハジメ達だった。ちなみに妖精さん料理は普通に美味かった。

 

 

ハジメ達がシアを慰めてる間にハウリア達が「こんにちは。熊人族」と

ハウリア流環境利用闘法を駆使して完全武装の熊人達をあっさりと無力化し、

ハジメ達と共にポーリン縛りでフェアベルゲルンに連れて来た。

そしてカムは長老達にこう言った。

 

「今回は、ボスの顔をたて殺さずにおいたが、

以降、我らに手をだせば、慈悲はないぞ」

 

と首を搔ききる仕草をし、長老達に彼らを恫喝をと共に引渡した。

 

ちなみにポーリン縛りとは両腕を後ろに回させて、親指同士をマイル発明の釣り糸で縛る。

無理に引き千切ろうとすると、親指がぽろりと落ちて、二度と武器も農具も握れなくなる。

……ポロリもあるよ、である。

そして、腕や身体ではなく、首にかけたロープを馬車の後部に繋ぐ。

馬車の速度に合わせて歩かないと、首がきゅっ、と……。

どちらも、ポーリンがマイル達に教えた縛り方である。

 

それを海里が経緯子に教え、ハウリア達に伝え。

大樹に行くついでに熊人をドナドナして、連れて来たのだ。

 

 

そしてハジメ達は、カム達に案内され大樹の前に立っていた。

ハジメたちの第一声はというと。

 

「・・・なんだこりゃ」

 

「大きいけど・・」

 

「予想外だよ」

 

「・・・枯れてる」

 

大きさに関しては想像通り途轍もない。

直径は目算では測りづらいほど大きいが

直径五十メートルはあるのではないだろうか。

明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。

周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、

大樹だけが枯れ木となっているのである。

 

「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。

しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、

ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも

朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。

まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」

 

 

 

ハジメ達四人の疑問顔にカムが解説を入れる。

それを聞きながらハジメ達は大樹の根元まで歩み寄った。

そこには、アルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた。

 

ハジメ達はオルクスの扉と同じ文様が刻まれている。

石板を色々と観察していると

 

「ハジメ・・・これ見て」

 

とユエが石板の裏側に何かを見つける。

そこには表の文様に対応するように

小さな窪みが開いていた。

 

「これは・・・」

 

 ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を

表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。

 

 

 

 すると……石板が淡く輝きだした。

 

 

 

何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。

しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、

代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。

 

 

 

〝四つの証〟

 

〝再生の力〟

 

〝紡がれた絆の道標〟

 

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

「どういう意味だ?」

 

「四つの証は?多分、他の迷宮の証?」

 

「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか? 

亜人の案内人を得られるかどうか。

亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、

亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」

 

「……あとは再生……私?」

 

ユエが自分の固有魔法〝自動再生〟を連想し自分を指差す。

試しにと、薄く指を切って〝自動再生〟を

発動しながら石板や大樹に触ってみるが……特に変化はない

 

「むぅ……違うみたい」

 

「再生の力は、再生に関する神代魔法のことかな?」

 

どうやら他の最低三つの大迷宮を攻略しないと駄目なようだ。

 

ハジメは直ぐ大樹を攻略できないことに、歯嚙みする。

 

「面倒だけど。他の迷宮を当たるしかないか・・・」

 

「がっかりしたけど、ここが大迷宮だとわかったんだし」

 

「経緯子ちゃんの言う通り。前向きに行こうハジメくん!」

 

「んっ・・」

 

と気持ちを切り替えて、他の迷宮を攻略するために樹海を出て再び旅立つハジメ達。

ハウリア達がついて来るとごねる場面もあったが、迷宮を守れとハジメが命令したことでなんとか納得させた。

 

次の目的地はライセン峡谷だが、その前に車で数時間の所にあるブルックの町に食料や調味料などの補給を兼ね行く事にしたハジメ達だった。

 

 

 

                

 

 

ハウリアの数が108人になったので、水滸伝。

次回はブルックとフューレンの二つの町の様子をです。

 

 

 



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36 ブルックとその他の出来事

 

ハジメ達がブルックの街に入ります。

久方ぶりにあの二人の様子も

 

では本編です。

 

 

 

 

 

                  

 

 

「ほぅ~」

 

「香織さん。あれ可愛くない?」

 

「ホントだ。経緯子ちゃん後で行ってみよう」

 

「んっ・・・♪」

 

「・・・・・・」

 

ハジメ達は、ステータスプレートの値を隠蔽し

ユエは無くした事にして、無事にブルックの街に入り。

情報収集と資金調達を兼ねて、冒険者ギルドを目指し、

ブルックの街の目抜き通りを歩いていた。

様々な店や屋台が、並ぶ賑やかさに、ハジメや経緯子と香織は

楽し気に話ながら、ユエも機嫌良さそうに歩いているのだが。

シアだけは不機嫌な顔をしていた。

彼女は己の首元を指さしながら

 

「・・ハジメさん。コレなんとかできませんか?」

 

そこには彼女に似つかわしく無い。武骨な首輪があった。

 

「シア(呼び捨てで構わないと、シアに押し切られた)首輪をつけた。

理由は説明したし、納得しただろ?それにただのダミーだしさ」

 

「ですが・・周りからハジメさん達の仲間と見られない感じが」

 

「んっ・・シア。周りは周り、自分達がどう思ってるかが大事」

 

「そうだよ。シアさんの事、私もハジメちゃんも何を言われても、仲間だと思ってるし」

 

「シア。不愉快かも知れないけど、シアを守るためだからね」

 

ユエ、経緯子、香織が各々にシアを励ます。

そしてハジメは頬をかき。

 

「シアはさぁ。愛玩用として人気の兎人族で、その上白髪の兎人族で物珍しい上、

容姿もスタイルも抜群。誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分もしない内に

人攫いの嵐だよ?それに万が一攫われても、その首輪には念話石と特定石が組み込んであって

僕とはぐれても、話したり居場所がわかるから・・ってなに?くねくねしてるの?」

 

シアは両手で赤くなった顔を押さえ、イヤンイヤンと体をくねらせていた。

 

「そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんてぇ、

そして私と何時でも何処でも話したいからって、首輪にそんな機能をつけるなんて

ハジメさんのYA・KI・MOTI・YAKI❤ぶけら!!」

 

ユエの右ストレートがシアの頬を打ち。

同時に香織の肘が脇腹に入る。

 

「シアさん。節度は大事よ」

 

と経緯子に睨まれ言われた。シアは涙目で謝るのだった。

そんな女子達のかしましい、やり取りにハジメは苦笑いを浮かべて。

一本の大剣が描かれた看板が掲げられた建物を見ながら

 

「あれが、この街のギルドだね」

 

 

ハジメ達が重厚な扉を開け中に入る。ギルドは荒くれ者の場所との

イメージがあったので。もっと騒然としてると思っていたが、中は

掃除が行き届いており、入り口正面に受付カウンターがあって

右手には、待ち合わせや打ち合わせの為の飲食スペースがあり

何組かの冒険者が、軽食を食べながら雑談をしている。

酒類は出してないようだ。仕事の斡旋の場でアルコールを出さないのは考えれば当たり前である。

 

ハジメの側にいる。美少女たち四人に好奇の視線が集まるが、

テンプレのように絡まれることはなく。

ハジメ達はカウンターにたどり着く。

 

そこには大変頼りがいのありそうな恰幅の良いオバチャンがいた。美人で若い受付嬢はタダの幻想だったようだ。

そんなハジメの内心を見透かしたかのように、オバチャンは人好きのする笑顔しながら

 

「それだけ美しい花に囲まれて、まだ足りなかったのかい?

こんなオバチャンで悪かったねぇ」

 

「いや、そんなこと考えてないから」

 

「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ? 男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。あんまり余所見ばっかして愛想尽かされないようにね?」

 

「……肝に銘じておきます」

 

 

 

 ハジメの返答に「あらやだ、年取るとつい説教臭くなっちゃってねぇ、初対面なのにゴメンね?」と、申し訳なさそうに謝るオバチャン。何とも憎めない人だ。チラリと食事処を見ると、冒険者達が「あ~あいつもオバチャンに説教されたか~」みたいな表情でハジメを見ている。どうやら、冒険者達が大人しいのはオバチャンが原因のようだ。

 

そして素材を売ろうとしたのだが。冒険者登録すれば、色々と特典があるらしいので、ユエとシアを除きハジメ達、三人は登録することにした。ユエとシアはステータスプレートが無いため、新たに作るとなると、色々と不味い物が衆目に晒されるため止めておいた。

 

「登録料は一人当たり千ルタだよ」

 

トータスの貨幣価値は、ほぼ日本と同じである。

 

「私と経緯子と香織、三人分で三千ルタですね」

 

とステータスプレートと料金を差し出す。ハジメ達がなぜお金を持っているかと言うと、

ハウリアを帝国兵から救い出した時に、

帝国の馬車に積まれていた。遠征費を拝借したからだ。

 

「素材の買取は、何処に持っていけば」

 

「ここでやるよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

ハジメはカバンの中に予め用意しておいた。素材を出す。

それを見た。オバチャンは驚愕の表情をして。

 

「とんでもない物を持って来たね。これは・・・樹海の魔物だね?」

 

「そうです」

 

とハジメは言いながら、ここでアイテムボックスから直接

奈落の魔物を出したら。「どこにこんな魔物を!」「ギルド長に誰か知らせろ」「ステキ❤」とかのテンプレな反応を見てみたいな~

などと考えてしまい。なんとなく察した。女性陣から冷ややかな目で見られ。オバチャンは呆れた視線でハジメを見る。

 

「あんたも懲りないねぇ」

 

「何のことでしょうか」

 

結局、買取金額はオバチャンがいろをつけてくれて、総額51万ルタになった。

 

「これにおすすめの宿や店が書いてあるから、参考にしなさい」

 

オバチャンがハジメに無料とは思えない。

精巧で有用な情報が記載されている地図を渡す。

 

「こんな立派なものを無料で頂いて良いのですか」

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。

書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、

少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、

あんたの連れならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

「はい。そうします」

 

オバチャンの気遣いにハジメは頭を下げ。

続けて経緯子たち四人も皆、頭を下げギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ達が、オバチャンがくれた地図を参考に決めた宿屋は

”マサカの宿”。紹介文によると、料理が美味く防犯もしっかりしており、

何よりハジメ達にとって決めてになったのは、風呂があることだった。

その分、宿泊費は高いが金はあるので問題ない。

 

宿に入りカウンターに行くと、15歳くらいの女の子が、元気よく対応してくれる。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿”へ! 

本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」

 

「一泊で、食事付きで、あと風呂も、5人だけど部屋はある」

 

「はい。大丈夫です。お風呂は15分ごとに100ルタで、

今のところこの時間帯が空いてますが」

 

と時間帯表をみせると。香織と経緯子が「二時間かな?」「それだと少し時間が・・」などと話し

風呂の貸し切り時間を伝えると

 

「えっ!三時間もまさか・・あれして・・・あーで」

 

と宿の娘さんソーナに驚かれた。語尾が何か怪しかったが。

 

「それで・・お部屋はどうします?二人部屋と三人部屋が空いてますけど」

 

「それで、お願いするよ。割り当てだけど・・」

 

とハジメが経緯子達と相談しようと見ると、経緯子、香織、ユエの

三人が頭を寄せ合い小言で話し合っている。

 

「ハジメちゃんと香織さんとユエさんと、私とシアで分けましょう」

 

「そんなぁ~私もハジメさんと一緒が良いです。

私とハジメさんの二人部屋でお願いしますよ」

 

とシアが抗議の声を上げる。香織が低い声で応える。

 

「へぇ~、それはどうしてかな?かな?」

 

「もちろん!ハジメさんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」

 

静寂が舞い降り、この場に居るすべての人物がハジメ達を凝視している。ユエがゆらりと動く。

 

「ウサギはいつも発情期・・処す」

 

「シア。調子に乗っちゃダメかな?かな?」

 

ユエと香織のプレッシャーを受けながら、シアは戦闘態勢に移行していく。

まさに爆弾が破裂寸前の状態だ。

その時、鈍い音が連続でする。

 

ゴッ!ゴッ!ゴッ!

 

「ひぅ!」 

 

「はきゅ!」

 

「はうっ!」

 

香織、ユエ、シアが短い悲鳴をあげる。

ハジメと経緯子に三人がゲンコツされたのだ。

 

「周りに迷惑だよ。何より僕が恥ずかしいよ」

 

「三人とも節度を守って欲しいし」

 

ハジメはソーナに騒がした詫びを入れると、経緯子と共に

三人を連れて二階の自分達の部屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

「んっ~」

 

ハジメは風呂場で気持ち良さげに背を伸ばしていた。

そして体を洗おうとした時、背中に柔らかいモノが押し付けられ

る。

 

「経緯子ちゃん?先にお風呂入ったんじゃ?」

 

経緯子が全裸でハジメに後ろから抱きついていた。

 

「あのねハジメちゃん。部屋割は香織さんとユエに譲ったので

久しぶりにハジメちゃんとゆっくりと・・・」

 

「三人で相談してたのはそれかぁ」

 

節度は経緯子ちゃん?

今晩は大変かなと思うハジメだった。

 

「ハジメちゃん・・だめ?」

 

と経緯子に耳元で囁やかれ、ハジメは回された経緯子の腕をとり。

「いいよ」と呟き、軽くキスをしてその後、経緯子による

防音魔法を掛けた風呂場で二人はヌルった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ハジメが経緯子とヌルってた頃、とあるお風呂場で

 

 

「は~い。わしゃわしゃするよ」

 

「や~わしゃわしゃ~」

 

雫が4,5歳の女の子の髪を洗っている。

椅子に座らせた女の子を、雫が全裸で跪いて背後から洗っているのだが。

その豊満な胸の先端が指し示す場所に女の子の耳があった。

それは女の子の頭頂部辺りのネコ耳だった。そうネコ耳である。

女の子は、茶とらの猫人族なのだ。

椅子に座る、ネコ耳幼女の臀部の付け根からは先端が白いシッポも生えている。

その濡れ細ったシッポはユラユラと揺れ、その様子に雫は内心もだえながら優しく微笑み

 

「じゃルリファちゃん。ザーするから目をつむってね」

 

「ん~んっ!」

 

キュッと目を閉じる、ルリファの髪をシャワーで流す雫。

 

 

ザーとお湯が湯舟からこぼれる。雫がルリファを抱きかかえ湯舟に入ったからだ。

 

「肩までつかろうね」

 

「は~い」

 

そう言って。肩まで湯舟に体を沈め、雫の胸に頭をあずける。

雫の豊満な胸はルリファの頭部の形に合わせ、変形し頭を優しく包む。

 

ルリファが見上げて雫を見る。

 

「んっ?どうしたのかしら」

 

「おねぇちゃん、ふかふかぁ~」

 

笑顔でそう言うのだった。その言葉に雫の髪を結い上げ露わになった、うなじは赤く染まる。

 

 

 

 

 

「ぬう~」

 

と海里がうなっている。焚火を挟み雫がルリファと並んで座り串焼きを食べていた

海里はどうやらその様子が、羨ましいようである。

 

「雫さんにばかりにルリファちゃんが、なつくぅ」

 

「はぁ~ルリファちゃん。海里おねぇちゃんの側にも行ってあげて」

 

「んっ~」

 

と海里の顔を見るが、何かを感じたのか雫にしがみつく。

 

「がちょ~ん」

 

とショックを受ける海里に雫は苦笑した後、真剣な顔になり

 

「樹海に近いブルックの街は後どのくらいかしら?」

 

「後、二日ぐらいだと思いますよ」

 

「おねぇちゃんたち、もうすぐママたちに会えるの?」

 

「そうだよ。ルリファちゃん」

 

と言って雫は彼女の頭を撫でる。

 

先程の風呂は海里謹製の移動要塞型風呂で、海里たちは街道の外れで野営していた。

海里と雫は フューレンを出てブルックを目指して旅をしていた。

 

どうしてネコ耳幼女ルリファを連れているのか、それは次回の講釈で・・・

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

と言う事でここまでです。海里たちのフューレンの出来事は次回に

それとハジメ達のブルックの後編を書くつもりです。

 

*のうきんの最新刊を読めばトータスでナノちゃんを使うのは

禁則事項から難しいのですが。そこは書き始めた時には原作に

書かれてなかったので、前にも書いた通り幾らか禁則事項を緩くして

心に棚を作り書いていきます。

 

 

 

 



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37 ミステリアスガールズ

今回は海里と雫の話です。

「可愛い幼女ではなく。幼女は全て可愛い」

BY マイル

 

と言う事で本編です。

 

 

 

 

 

 

                        

 

 

海里と雫がネコ耳幼女ルリファを連れ旅をしているのか

それを語るには、ハジメ達がハウリア達に罵詈雑言と共に

マリンコ流の訓練をしていた頃のフューレンに遡る必要がある。

 

「にゃ、にゃにゃ~」

 

フリフリと右手に猫じゃらしを持ち、左手に煮干しをフラフラさせながら

街の路地裏で雫はしゃがみ込み、文字通り猫なで声で目の前に佇む長毛種の白猫に呼びかけていた。

 

「ニヤァ~」

 

と白猫は鳴くと雫にトテトテと歩み寄り、左手の煮干しを前足でくれくれする。

その可愛らしい仕草に、雫は頬を緩めつつも、持ち前の俊敏さで素早く白猫を抱きかかえると

煮干しを食べさせながら、もふもふの毛に、半分ほど埋まっている首輪を確認する。

 

「よし。依頼の猫で間違いない。んっ~ふふん・・」

 

と言って、もふもふを堪能していると後ろから声がかかる。

 

「雫さん。こっちが当たりでしたかぁ」

 

海里だった。何やら全身が埃ぽいっ。雫はもふもふしている所を見られて、

恥ずかしいのか少し顔を赤らめ海里に言った。

 

「コホン。はい当たりでした。海里さんは、えらく汚れてるわね」

 

「いやぁ~片っ端に見かけた猫を追いかけてたら埃まみれになっちゃいましたぁ。

と言う事で”クリーン”」

 

海里の体にキラキラエフェクトが掛かり汚れが落ちる。

 

「いつ見ても便利ね。迷子猫も見つかったし飼い主に届けに行きましょう」

 

「そうですね。雫さん私にもその子、抱っこさせてくださいよぉ」

 

「ナ~オ」

 

状況を説明すると海里と雫はフューレンの冒険者ギルドでこの世界に慣れるために

簡単なクエストを受け過ごしており。今回は猫好きで地球にいた頃から

猫構いグッズをいつも忍ばせていた。

海里の趣味で迷子猫の捜索クエストを受けたのだった。

 

 

 

貴族街の近くの高級住宅街の落ち着いた佇まいの家の玄関で

 

「こんなに早く見つけてくれてありがとうね」

 

先程の白猫を抱いた。品の良さそうな老婦人が穏やかな笑顔でお礼を言っている。

雫が老婦人に言葉をかえす。

 

「仕事ですし早く見つかって良かったです」

 

「すいませんけど、この依頼完了票にサインお願いします」

 

海里が一枚の伝票を差し出す。

 

「あらあらごめんなさい。これでいいかしら・・・んっ」

 

老婦人はサインすると顔をしかめる。どうしたのかと海里と雫が彼女の視線の先を振り返り見ると

そこにはべっとりとしている金髪のオークがいた。高級そうな服を着ているので取り合えず人みたいだ

護衛らしき男達を従えていたが、そんな集団の中に一際小さな影があった。

 

「デフッ・・猫耳族の子供・・今日のオークション・・良いものが手に入った」

 

と豚男は言った。小さな人影は首輪をつけられた4,5歳の猫耳の女の子だった。

その女子はうつむき暗い顔で歩かされている。老婦人は嫌悪感満載の声色で

 

「あの人はこの先の貴族街に住む貴族で、色々と評判が悪くて・・・

あなた達は綺麗だから気をつけなさい。亜人とはいってもあんな幼子を連れ回すなんて悪趣味よね」

 

雫はその言葉に辛い顔で頷き、海里は無表情で伝票を受け取りこの場を離れた。

 

 

海里と雫は冒険者ギルドで、依頼達成の報酬を受け取り隣接された食堂のテーブルに座る。

 

「亜人奴隷は話に聞いてたけど・・あんな子まできっついな」

 

雫はだらしなく腰かけた姿で呟く。実際、教会の影響が強い王国では亜人は嫌われているため

まず王宮では亜人は、汚らわしいものとされるのでおらず。

それもあり帝国と違い王都やその周辺の街では見かけることはなかった。

故に先の奴隷の幼女を見かけショックを受けた雫だった。

そして妙に静かな海里に雫は何やら察し

 

「海里さん・・」

 

「雫さん。ケモ耳幼女は正義だと思うのです」

 

海里は目が座った顔でよく分からない事を言い出す。

 

「なので今日でこの街を出ましょう雫さん」

 

「海里さん。まさか?」

 

「そのまさかですよ」

 

 

 

 

 

 

深夜の貴族街。そこそこの大きさの、さる男爵邸の庭に降り立つ二つの影

それは海里と雫だった。海里は猫耳を付け、髪の色は赤く変えポニーテールにし

赤のヴェネチアンハーフマスクを付けており。スクール水着ぽぃレオタードに身を包んでいた。

この服は以前、邪神教団の誘拐騒ぎの時に使用した服を仕立て直したものだ。

マイルと違い18歳で相応のスタイルな海里だと痴女度が上がってる気がする。

 

雫もおなじみの犬耳を付け髪は桃色に変え、髪型はゴールデンポニーからツインのローポニーに

そして海里と同じデザインのピンクのハーフマスクを装着して、白のTシャツの上に

黒のタンクトップとスパッツで体のラインが浮き出る動きやすい服装である。

雫は始め、この変装を嫌がったのだが、海里が正体がバレなくするには

イメージをガラッと変えるべきだと言われ渋々ながら了承したのだ。

 

深夜に男爵邸に忍びこんだ理由は言わずもがなの”ケモ耳幼女奪還"で

海里と雫、それに至った経緯を会話形式で簡単に記すならば

 

海里「素行が悪いからか、簡単にあの貴族の家を割り出せました。そう言う事なので雫さんは夜、街はずれで待って下さい」

 

雫 「でも・・一応合法で強引には」

 

海里「それは人間族から見ればです。獣人族から見れば只の誘拐です」

 

雫 「確かにそうだけど、海里さん奴隷解放運動とかもするのかしら」

 

海里「しませんよ。目の前にケモ耳幼女がいる。助ける。それだけです。なので私の勝手ですので一人でやります」

 

雫 「・・・そうよね。子供を親の所に返すのは当たり前よね。私も手伝うわ」

 

海里「では雫さんも一緒に変装ですね」

 

 

雫も海里と長い間行動を共にしてるのでと割とあっさり

海里と雫は男爵邸に忍び込むことになったのだが

雫は髪型をハイアップのツインテールは嫌がり、ロータイプになった。

余談だが海里が「ツインテールと言えばエビがたべたくなりましたぁ」と言って

雫に「なんで?エビ?」と突っ込まれたりもした。

 

庭に忍び込んだ二人は十八番の光学迷彩で難なく屋敷内に侵入

そして海里が探索魔法でケモ耳幼女が押し込められている部屋を特定し

サクサクっと部屋の鍵を開け侵入と同時に防音の結界魔法を張る。

 

「フーッ!フーッ!」

 

とネコ耳幼女が威嚇していた。粗末な寝床で寝ていると

揺り起こされ目の前に仮面を付けた見知らぬ女性がいたのだから

警戒し威嚇するのも当たり前である。そんな彼女を見て海里と雫は

マスクを外して優しく微笑み海里は言うのだった。

 

「お家に帰りましょう」

 

「お・・お家に帰れる?ママに会える?」

 

「お姉ちゃんにまかせなさい」

 

と言い海里がネコ耳幼女に付けられた奴隷の首輪を触ると

首輪は床に落ちカランと乾いた音を立てる。

ネコ耳幼女は軽くなった首を確かめるように撫でると、堰が切れた如く大声で泣き始める。

そんな彼女を海里は優しく抱きしめ、雫もその光景を見ながら己の目じりの涙を拭うのだった。

 

しばらくして泣き止み、ルリファと名前を聞き出したネコ耳幼女を雫が背負い

海里が先導し屋敷内を歩いて、玄関前のホールに差し掛かった時

照明の魔道具に灯りがともりホールが明るくなり、耳障りな甲高い声が響く

 

「うひぃひ・・そのまま逃げれると思ったか。どっ奴隷の首輪をはずしたら、すぐに。わかるんだぞ」

 

昼間に見た金髪オーク男が寝間着姿で、周りに屈強な男たちを連れ怒鳴っていた。

その男達の中から一人、前に出て剣を海里達に向け言い放つ

 

「狼藉者め!・・ミン男爵の屋敷と知ってのことか!名を名乗れ」

 

その言葉を待っていたと言わんばかりに海里は名乗りを上げる。

 

「ケモ耳幼女がある限り救いましょう。命!燃え尽きるまで!怪盗!聖闘士(セイント)テールです!!」

 

海里は自分のポニーテールを目立つように揺らし、赤き誓いでしていたポーズを決める。

そして後ろの雫は小声で

 

「セイントテールツインよ・・」

 

と雫がルリファを背負っているためポーズこそ決めなかったが

赤面しながらも律儀に名乗った。

 

「ふざけおって!すぐ叩き斬ってやるわ!」

 

「ま・・待て見栄えも良さそうだし・・ピンクの髪はおっぱい

わ・・私のおもちゃにすっする。殺すな・・・」

 

好色なぎらついた笑みを浮かべ海里達を生け捕りにするよう命令する。

すると先程とは別の引き締まった筋肉を持つ髪の毛をガチガチに固めた男が出て来る。

 

「生け捕りなら素手が良いよな。俺は”雷光”のシナトラ。フューレンでパンチが一番速い冒険者だ」

 

護衛の雇われ冒険者がそう言って名乗ると。それを聞いた海里はニタリと不敵に笑い

 

「”雷光”のシナトラ。フューレン。一のストレート。だがフューレンじゃ二番だ」

 

「じゃ!一番は誰だ!」

 

とシナトラが海里に食って掛かると。「チッチッ」と指を振り

ヒュ~♪と下手な口笛を吹くき気障たらしく己を指さし

 

「ハッハッハッ」

 

と笑う。その海里のやり遂げた満足げな顔を見て。

小ばかにされたと思ったのかシナトラは怒りに顔を歪ませ

 

「貴様が一番だと。俺は0.1秒に三発のストレートを打てる」

 

と言いながらキュッキュッとステップを踏みファイティングポーズをとるシナトラ

対する海里は右手の平を相手に向かって広げ挑発する。

 

「なら私は五発です」

 

「お嬢さん!ふざけすぎだ。そのつけ体で払ってもらうぜ!」

 

海里に一気に詰め寄るシナトラの伝家の宝刀”ローリングサンダー”の必殺の間合いだ。

 

BAKOOOOOOM!!!!

 

複数の打撃音が一つに重なる音がして。シナトラは後方へ吹き飛び壁に激突する。

雫は剣士としてのステータスと技能の高さにより海里とシナトラのコンマ一秒の戦いを正確に把握していた。

では雫の見た。戦闘プロセスをもう一度見てみよう。

 

両手ぶらりの伝説のノーガード戦法で迎え撃つ海里に

シナトラの左ストレートの三連撃が炸裂する。

海里がそれをゆらりと神技的ディフェンスで躱す・・否まともに喰らうが

マイルの世界で岩トカゲの尻尾で吹き飛ばされても平気で

古龍に吹き飛ばされて、ようやく痛みを感じた。

額に「頑」の判子を押されるぐらいの頑丈人間で

更にトータスでステータスが上昇してるから流石。海里だ何とも無いぜ。

なので海里はすかさず反撃のミ〇キー・ロー〇ばりの猫パンチを出す。

 

「一発で五発、打った様に見える一発ですぅ」

 

とシナトラを吹き飛ばした海里が言うが

 

「ただの一発ではないかしら」

 

と全てを見ていた。雫はツッコミせずにはいられなかった。

そして周りが呆然とする中、フンスと胸を張る海里にいち早く我に返った雫が

 

「海里さん。今の内に早く」

 

とせかして階段を駆け上がる。海里たちを追うため男爵の私兵が動くが

 

「”素単眼(すたんがん)”」

 

「「「「「アパパパパッ」」」」」

 

と海里がウインクすると「マイルの七つの必殺技その一”素単眼”」によって追っ手は麻痺する。

海里達は階段を上り切ると雫が

 

「海里さん。ルリファちゃんをお願い」

 

背負っていた。ルリファを海里に預け

 

「ハッ!」

 

裂帛の気迫と共に雫は足元に向かって刀を振ると

階段が音を立てて崩れ落ちる。

チンッと刀を鞘にしまう雫を海里は何か期待をする目で見ている。

 

「・・・言わないわよ」

 

海里が多分アノ決めセリフを言って欲しいと思ってる。

と察した雫は先回りし拒否する。

 

「ぷー」

 

頬を膨らます海里だった。ルリファは雫をキラキラした瞳で見ている。

 

 

 

 

 

 

階段が崩れたため。麻痺から復活した男爵達は庭に出て屋敷の屋根を見るとそこには

海里とルリファを背負った雫が立っていた。

 

「ばっ馬鹿か・・そこからどうやって・・にっ逃げるつもりだ!」

 

男爵が海里達に向かって叫ぶと、海里がアイテムボックスから二等辺三角形の翼のようなもの取り出す。

怪盗が逃走する定番アイテムのハングライダーを出したのか。

それにしてはかなり大きく見える。月明かりに照らされたそれは大きな目玉が描いてあった。

これはハングライダーでなく、人の背丈の倍近い特大サイズのゲ〇ラカイトだった。

海里達はそのゲ〇ラカイトに張り付くと

 

「あばよぉ!とっつぁん!」

 

と言い残し海里は風魔法でゲ〇ラカイトを操り、白い忍者の如く夜空に消えて行ったのだった。

 

 

 

 

                    

 

ネコ耳幼女ルリファですが。のうきんの宿屋の娘のファリルがモデルです。

 

雫の変装・雫はやはりピンクの仮面です。髪もピンクに変えローツインテール

はい。なでしこです。でもおっぱいがあるので汚いイノかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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38 ショッピング

前回。好き勝手なネタ回を書いてしまいました。

今回は原作沿いの話です。

では本編です。

 

 

 

 

                          

 

 

男爵邸からルリファを解放した。海里と雫はルリファが、どうして攫われたのかを

聞き出した。彼女のたどたどしい話からわかった事はルリファの猫耳族の里は

樹海の外れ近くにあり。母親が目を離したすきに里の結界から出てしまい。

そこを奴隷狩りに見つかり攫われたと言う事だった。

なので海里と雫はとにかくルリファを猫耳族の里に送り届ける事にした。

 

そしてブルックの街に夕刻までに着く所で野営した朝。

 

シュコッ シュコッ

 

と海里に魔法で水を出してもらい。ルリファをイーさせて雫が

ルリファの歯を磨いている。そんな様子を海里はうらやまし気に

 

「雫さん。ルリファちゃんの世話しまくりです。私もしたいのに」

 

海里の恨み事(?)を聞きながら、ルリファに口をすすがせると

 

「私、一人っ子で可愛い妹の世話とかしたかったから。妹のいる海里さんならわかるでしょう」

 

と雫は言い訳がましく海里に答えたのだが

 

「妹…世話?」

 

海里は呟くと「お姉ちゃん。髪をとかさないと」「お姉ちゃん。ハンカチ、ティシュは持った?」「知らない人に付いて行ったらダメだよ」と

妹を世話するどころか毎朝、経緯子に世話されまくってた。故に「ダメ姉・・」と地面に両手をつくのだった。

 

とにかく海里が茶番劇をしている中、これまでの旅で雫はそんな海里にすっかり慣れてしまい。

今も何事もなかったかのように朝食の準備をするのだった。

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

「んっ~”パン”って美味しいですねぇ」

 

マサカの宿の食堂でシアが幸せそうに朝食のパンを食べてた。

そんなシアを見て香織が

 

「シアはブルックの街で初めてパンを食べたんだよね」

 

「はいです。樹海には小麦畑はなかったですから。柔らかく美味しいです」

 

シアの言葉から分かる様に霧に包まれた樹海で大規模な農業は無理であり

地球のような焼き畑農業を亜人達の守り神である樹海で行われる訳は無く

精々家庭菜園規模の畑が限界で小麦粉は貴重品だった。

亜人達の食事は狩猟と栽培し易いタロイモの類に季節の木の実が主であった。

なのでシアは街に入るまでパンを食べた事が無かったのだ。

ハジメ達は幸せそうにパンを食べるシアにほっこりしながら

朝食を食べ。今日の予定を話し合う。

 

「僕は作りたい物があるからチェックアウトまで宿に居るつもりだけど」

 

「私たちは食料の買い出ししとくし」

 

「替えの下着とかシアの服も買わないとだね」

 

「地図におすすめ書いてあった…」

 

「もぎゅもぎゅ」

 

 

 

朝食をすました後、彼女たちの四人は買い出しに出たのだが

この時間帯は道具屋や食料品店は混雑しているので

先にキャサリンさんの地図に書いてあった。

お勧めの冒険者向きの店にシアの服を買いに行く事にした。

 

その店はお勧めの名に恥じない。品揃え、品質共に満足出来る店だったのだが

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

 

 

 化け物がいた。身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。

 

 

ユエとシアは硬直し、経緯子も逃げ腰になるが

 

 

「こんにちは。店長さんですか?

シア、連れのうさ耳の女の子の服を買いにきたのですが、

動き易くて可愛い服はありますか」

 

と香織が天然娘の本領を発揮し普通に対応する。

そして化け物改めクリスタベル店長と和やかに会話する香織に

経緯子、ユエとシアは

 

(香織さん。ハジメちゃんが絡まないと相変わらず懐が深いなぁ)

 

(香織…少し尊敬する…?)

 

(カオリさん。スゲーです)

 

と香織に感心するやら畏怖やらする三人だった。

 

その後、香織と話を終えたクリスタベル店長は「任せてぇ~ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。その時シアはニコニコ顔で見送る香織と

愛想笑いの経緯子とユエをまるで食肉用に売られていく豚さんのような目でみつめていた。

 

暫くしてシアは元のハウリアの民族衣装を参考に、髪に合わせた水色系統でまとめられた

衣装に着替え奥の更衣室から出てきた。左耳に付けた水色のリボンも可愛いアクセントになっている。

そんなわけでクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。

 

四人は、クリスタベル店長にお礼を言い店を出た。その頃には、店長の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、彼女? の人徳ゆえだろう。

 

 

「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん。」

 

「ん……人は見た目によらない」

 

「ユエ。シア。店長さんに失礼じゃないかな。かな」

 

「オネェな人はトータスでもオシャレな人なんだ」

 

「クリスタベルさんにオシャレなランジェリーショップを教えてもらったんだ。

今から買いに行かないかな?」

 

「セクシー…ハジメを悩殺」

 

「欲しいけど。時間が無いからね今日はダメ」

 

「食料と道具。手分けして買いに行きませんか」

 

 そんな風に雑談しながら、手分けして買い出しに行く事にした四人。

しかし、唯でさえ目立つ四人だ。

すんなりとは行かず、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。

冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

 

その内の一人が前に進み出た。ユエは覚えていないが、この男、実はハジメ達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。

 

「ユエちゃんとシアちゃんとカオリちゃんとケイコちゃんで名前あってるよな?」

 

「? ……合ってる」

 

何のようだと訝しそうに目を細めるユエ。シアは、亜人族であるにもかかわらず〝ちゃん〟付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。

香織は何かな?と思い。経緯子はなんとなく察した顔をした。

 

ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。他の男連中も前に進み出て、彼女達四人それぞれの前に出る。

 

「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」

 

「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」

 

「「「カオリちゃん。彼女になって下さい」」」

 

「「「ケイコちゃん。お嫁さんになって下さい」」」

 

とまぁ経緯子が察した通りのナンパだった。

 

(昨日の今日でコレとは香織さん。ユエさん。シアさんは凄いわね)

 

と経緯子は自分の事を棚に上げし三人のモテ具合に感心していた。

 

 

「「「「「「返事は?」」」」」

 

「「「「断る(ですぅ)(りだよ)(ます)」」」」

 

男達を一蹴する経緯子達。その答えに大多数の男たちは崩れ落ち四つ這いになるが、諦めの悪い男もいる。ユエ、シア、香織の華やかな美貌は他から隔絶したレベルで、

経緯子はやや地味なればこその押し切れる感があり。故に多少の暴走も仕方なしである。

 

「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。二人を逃さないように取り囲み、ジリジリと迫っていく。

そして最初に声を掛けてきた男が行動に移そうとした時

 

ズッウウウンン

 

周辺の空気が重く息苦しくなる。

 

「力ずくでなにかな?かな?」

 

「誰のものにするのおぅ…」

 

香織と経緯子が放つ威圧だった。男の言葉が二人の地雷を踏んだ

濃厚な死の臭いを含む空気に男たちは震えが止まらない。気絶している者もいる。

シアもその殺気に当てられ足が震えている。

 

ザッ!

 

暴走男の前に香織の黒いタイツに包まれた足がある。

当の香織の表情は瞳の光が消え見下ろしていた。

 

経緯子は正に睨むだけで人が殺せる目つきをしており。

男はそんな二人に囲まれ口をパクパクさせるだけだった。

 

 

「〝凍柩〟」

 

ユエの魔法で例の男は首から下が氷漬けになった。

 

「経緯子・・・香織。これ以上はダメ」

 

「ユエさん」

 

「ユエ」

 

氷の冷気で少し経緯子と香織の頭が冷えたようだ。

 

「んっ・・・気持ちはわかる・・でも敵の見極めは大事

それに良い女はお断りもエレガントにすべき」

 

ユエが年上の余裕をみせ経緯子と香織を諫める。

 

「ハジメちゃんの事だと抑え効かないなぁ。ユエさんありがとう」

 

「ハジメくん悲しむもんね。奈落の感覚を修正しないとだね。

ユエのおかげで頭が冷えたよありがとう」

 

経緯子と香織がユエに制止してくれた礼を口にする。

それを聞きユエは満足げに微笑むと氷漬けにした男を見る。

 

「お前の求愛は…エレガントでない」

 

ユエは経緯子と香織による惨劇を止めたが

何もしないと、この男の様な不埒者がまた出て来るだろう

なので、ユエはこの男を見せしめにすることにした。

 

 ユエが手をかざすと男を包む氷が少しずつ溶けていく。

それに解放してもらえるのかと表情を緩める男。だがすぐ表情が強張る

なぜなら、溶かされていく氷がごく一部だけだと気がついたからだ。それは……

 

「あ、あの、ユエちゃん? どうして、その、そんな……股間の部分だけ?」

 

 そう、ユエが溶かしたのは男の股間部分の氷だけだ。他は完全に男を拘束している。嫌な予感が全身を襲い、男が冷や汗を浮かべながら「まさか、ウソだよね? そうだよね? ね?」という表情でユエを見つめる。

 

「トータスに…下品な男は要らない。…狙い撃つ」

 

 そして、風の礫が連続で男の股間に叩き込まれた。

 

 

 

―――― アッーーー!! 

 

―――― もうやめてぇー 

 

―――― おかぁちゃーん! 

 

 

 

 男の悲鳴が昼前の街路に響き渡る。マ○オがコインを取得した時のような効果音を響かせながら(本当の音は生々しいので、懐かしき○リオをご想像ください)執拗に狙い撃ちされる男の股間。きっと中身は、デン○シーロールを受けたボクサーのように翻弄されていることだろう。

 

 周囲の男は、囲んでいた連中も、関係ない野次馬も、近くの露店の店主も関係なく崩れ落ちて自分の股間を両手で隠した。ユエ様。ヤメテあげてと皆思うが、ユエは無慈悲な女王様だった。

 

そして一人の下品な男が死に、とある人物の指導で、近い未来にエレガントな漢女(おとめ)になる者が生まれた。

 

___________________________

 

 

買い出しを終えた四人が宿に戻ると、ハジメもちょうど作業を終えたところのようだった。

 

「お疲れ様。何か、町中が騒がしそうだったけど、何かあった?」

 

どうやら、先の騒動を感知していたようである。

 

「……問題ない」

 

「あ~、うん、そうですね。問題ないですよ」

 

「なにも無かったよぉ」

 

「そうそう。問題無しだよ」

 

服飾店の店長が化け物じみていたり、一人の男が天に召されたりしたが、概ね何もなかったと流す四人。そんな四人に、ハジメは、少し訝しそうな表情をするも、まぁいいかと肩を竦めた。

 

「必要な物は全部揃った?」

 

「……ん、大丈夫」

 

「食料は大量に買ったから、最低でも一月は大丈夫だよ。ハジメちゃん」

 

「以外と高くて、散財しちゃったけど、調味料を色々と買い揃えたから

ハジメくんに色々な料理を作ってあげるね」

 

「ユエさんの宝物庫も便利ですけど、ケイコさんとカオリさんのアイテムボックスの技能は便利すぎます」

 

シアが羨ましそうに言った。ハジメは苦笑いする。今のハジメの技量では、未だ〝宝物庫〟は作成出来なかった。便利であることは確かなので、作れるようになったらシアにも作ってやるつもりだ。

 

「シア。これを君に」

 

 

 

 そう言ってハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を渡した。銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている。

 

ハジメが差し出すそれを反射的に受け取ったシアは、あまりの重さに思わずたたらを踏みそうになり慌てて身体強化の出力を上げた。

 

「な、なんですか、これ? 物凄く重いんですけど……」

 

「だって、シア用の新しい大槌だから。重いほうがいいだろう」

 

「へっ、これが……ですか?」

 

 シアの疑問はもっともだ。円柱部分は、槌に見えなくもないが、それにしては取っ手が短すぎる。何ともアンバランスだ。

 

 

 

「えー、その状態は待機状態で。取り敢えず魔力を流してみて」

 

「えっと、こうですか? ッ!?」

 

言われた通り、槌モドキに魔力を流すと、カシュン! カシュン! という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった。

 

 この大槌型アーティファクト:ドリュッケン(ハジメ命名)は、幾つかのギミックを搭載したシア用の武器だ。魔力を特定の場所に流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりする。

 

 ハジメの済ませておきたいこととは、この武器の作成だったのだ。午前中、ユエ達が買い物に行っている間に、改めてシア用の武器を作っていたのである。

 

「今の僕にはこれくらいが限界だけど。腕が上がれば随時改良していくから…

シアの力を最大限に生かせるように考えて作ったんだ。使いこなしてよ? 仲間になった以上は勝手に死んだらダメだよ?」

 

「ハジメさん……ふふ、大丈夫です。まだまだ、強くなって、どこまでも付いて行きますからね!」

 

 シアは嬉しそうにドリュッケンを胸に抱く。ハジメは苦笑いだ。自分がした事とは言え、大槌のプレゼントに大喜びする美少女という図は中々にシュールだったからだ。

香織は武器を抱え喜ぶシアを見てデジャヴを覚える。

 

「んっ~そうだ雫ちゃんだ」

 

「香織さん。雫さんがどうかしたの?」

 

「あのね。雫ちゃんが、ハジメくんに刀を貰った時、同じ様な顔してたよ」

 

「へぇ~雫さんが…」

 

「雫…香織達の親友‥?」

 

そしてハジメをジトーとみる四人。

ハジメは何も後ろめたい事は無いのに誤魔化すように

 

「チェックアウト時間だ。出発するよ」

 

と慌てて言うのだった。

 

 

その後ハジメ達はハルツィナ樹海方面の門をから旅たち

同じ頃、反対のフューレン方面の門では

 

 

「海里さん。盗まれた奴隷の被害届とか出てたら不味くないかしら」

 

「なので、ルリファちゃんは光学迷彩で隠して街に入ります」

 

「こうがくめいさい?」

 

「では消えますよ~消えますよ~」

 

とブルックの街にたどり着いた海里と雫がやり取りしていた。

 

 

 

 

 

                          

 

 

始めはユエを〝股間スマッシャー〟にしないつもりで書いてたのになってしまいました。

 

今日でちょうど、投稿開始から一年です。最初の予定だと既に魔人族襲来編は終わってるはずなのに・・まだライセンの大迷宮にも行ってないです。

仕方ないので気長に進めます。

 

 



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39 訪問者たち

なんとなく香織さんが書きたくなって

では本編です。

 

 

 

                 

 

 

 

魔導駆動四輪車ブリーゼがライセン大峡谷を目指して走っている。

ただハンドルを握るのは経緯子である。

そしてハジメはというと、柔らかさと弾力のバランスが素晴らしくほのかに甘い匂いのする。枕に頭をのせ心地良い車の振動を友に眠っていた。香織はそんな眼下で己の膝を枕にして眠る、ハジメの頭を優しくなでており。そんな後部座席の様子をミラーで確認して微笑む経緯子であった。

 

「…うぬ」

 

助手席のユエはいささか不機嫌である。経緯子はユエをなだめる様に言う。

 

「まぁまぁユエさん。今日はクジで香織さんが当てたんだし。

次はユエさんが、してあげればいいんだし今は優しく見守ろう」

 

とまぁハジメは昨晩の色々とシアの武器を作成していた為、寝不足だったのでライセン大峡谷まで経緯子に運転してもらい昼寝する事にして、香織とユエが膝枕権を争い、香織が当選したのだ。

 

「私はその権利争いにすら参加できませんでした」

 

運動席と助手席の間から顔を出したシアは愚痴る。

 

「シア…10年早い」

 

ユエが冷たくあしらい。経緯子がミラーをチラ見して

 

「でもねシアさん。あの香織さんの表情を見たら許せるよぉ」

 

その言葉にシアは後ろの座席の香織を見る。

膝枕されたハジメは安らかな顔で静かに寝息を立てていて、膝枕している香織の顔は慈愛に満ちて、全身から出る幸せオーラによって最後尾座席は癒し空気に満ち溢れていた。

全身から出る幸せオーラによって最後尾座席は癒し空気に満ちていた。

 

「はう~」

 

とシアはその空気に当てられ、ほんわかとしてしまう。

 

「…仕方ない」

 

とユエもハジメの安らか寝顔を見て機嫌を直す。

 

「ふふっ」

 

と微笑をこぼす経緯子にシアがたずねる。

 

「ハジメさんと皆さんのイチャイチャをそばで見てて思いますけど、ケイコさんとハジメさんのは落ち着いてますよね」

 

「…見て無い所だと…?」

 

「コホン…まぁ物心つく前からの幼馴染だしね」

 

「なるほど。ハジメさんとケイコさんは許嫁で、カオリさんは第2みたいな感じだったんですね」

 

とシアは一夫多妻が普通のトータスでの価値観で納得する。経緯子は慌てて否定する。

 

「向こう世界は重婚NGだし。それに…」

 

経緯子は言葉を切るとハジメをチラと見て

 

「もし…たら、ハジメちゃんが私を…なんでもない」

 

「経緯子…ハジメの小さい頃カワイイ?」

 

ユエが聞いてくる。話題を変えてくれたみたいだ。

経緯子はユエに感謝し

 

「そうねぇ。幼稚園ときにハジメちゃんが…」

 

と自分の記憶と両親たちから聞いた。ハジメの幼少期を語り出す。

ユエとシアは興味津々だ。そして勿論、香織もカオリイヤーは地獄耳状態である。

ハジメは自分の恥ずかしい過去が語られると知らずに眠っている。

とほんわかした空気でライセン大峡谷に向かうハジメたち一行だった。

 

 

 

 

 

_____________________________

 

 

その頃、無事にブルックの街に入った。

海里と雫にフードで耳を隠したルリファたち三人は

ハルツィナ樹海の情報とアイテムボックスに入れてある。

オルクス迷宮で回収した魔石を換金するために

冒険者ギルドに訪れていた。

 

やはりと言うか当然の如く、黒髪美人の海里と雫は好奇の目を向けられていた。

 

(何故か妙に注目されてるわね。やっぱり子連れだからかしら)

 

雫は目立つのは自覚してるが、それでも注目されてると感じる。

何故なら昨日のハジメ達に続き美人の冒険者が来たからだ。

もしかすると子連れなので、どちらかが未亡人と見られてるかもしれない。

 

好奇の視線の中海里はカウンターに座る恰幅の良い女性に

 

「魔石の買取お願いします」

 

とカバンから出すふりをしてアイテムボックスから魔石を出しカウンターに並べる。

カウンターの女性、キャサリンは海里たちを一瞥すると

 

「冒険者登録はしてるのかい?」

 

海里は頷きステータスプレートを見せる。

キャサリンはプレートを確認すると

 

「鑑定なら私が出来るから、すぐ換金できるよ」

 

その言葉通り僅かな時間で鑑定を終える。

 

「全部で10万ルタだね」

 

「ありがとうございます。それで樹海についての資料とか

ギルドにあれば見せて欲しいのですが」

 

お金を受け取った海里は尋ねる。キャサリンはフードを被ったルリファを改めて見てから

 

「二階の資料室はギルドに登録してたら自由に閲覧できるよ。

ただし持ち出しと飲食は禁止だからね。樹海の魔物の素材は金にはなるが無茶するんじやないよ」

 

「はい。狩りと言うか、興味があってブルックの街なら詳しい資料が有るかなと」

 

「なら良いよ。あんた達、小さい子を連れてるからね。つい、お節介心がでちまってね」

 

キャサリンは年を取るとねぇなどと軽口を叩くと世間話をするように海里達に言った。

 

「そうそう。小さい子と言えばフューレンの貴族の屋敷から亜人の奴隷が盗まれたと被害届がね」

 

キャサリンの言葉に雫はルリファを庇う様に体勢を整え。海里は初めて聞いたと言わんばかりに

 

「それは怖いですね。気を付けます。

この子を親御さんに届け無いといけないので」

 

「そうかい。子供は親元にいないとね」

 

「その通りです」

 

キャサリンは笑顔で言い海里も笑顔で応える。

海里は今、出来るお姉ちゃんモードだ。

キャサリンは海里に紙を一枚渡す。

 

「この街の地図だよ。そこに書いてある”マサカの宿”なら()()()()()()()()()()()()()

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

海里は礼を言い。雫を促しギルドを出る。

キャサリンは三人を見送りながら

 

(よく分からない娘だったけど、悪い感じはしなかったしね。あの貴族は評判が悪いしね。昨日の連中と関係がありそうだったけど、冒険者の情報を勝手に漏らす訳にはいかないからね)

 

とほくそ笑むのだった。

 

 

ギルドを出た三人は

 

「海里さん。キャサリンさんはルリファちゃんのこと…」

 

雫はルリファと手をつないで歩きながら海里に言う

 

「キャサリンさんはお節介なオバチャンと言う事で雫さん」

 

海里はそこは曖昧にしておけばいいと雫に応える。

雫は己の顔を不安気に見るルリファに大丈夫と微笑み

なるようになるわねと納得した。

 

 

その後マサカの宿に泊まったのだが、受付のソーナがケモ耳でもロリ、ショタでもなかったので、「チッ…外れか」と海里がぼやいた。手遅れなお姉ちゃんである。

そして夕食をとり、入浴すると

 

 

 

 

♪~ていこくは~とてもつよいぃ~♪

 

「キャー助けてぇ」

 

「ハッハッ俺はコウテイ仮面!今日からお前は俺のカキタレになるのだぁ!!」

 

暗がりで胸の大きい女性が、筋肉モリモリの白いヘルメットを被った男に襲われていた。

 

「「「そこまでよ!」」」

 

「誰だ!」

 

三つの人影が見える。

 

「レッドフォックス”レーナ”」

 

「ゴールドドック”メーヴィス”」

 

「グリーンのタヌキ”ポーリン”」

 

「「「三人揃ってケモノレンジャイ赤き血がイイ!」」」

 

 

 

そして赤き血がイイ!によって悪のコウテイの事案は防がれたのです。

と、これは海里がルリファに聞かしていたにほんフカシ話だ。雫がルリファに「カキタレ?」

は何かと質問され誤魔化すのに苦労し、ルリファが寝た後に雫は海里をくどくどと話の内容に説教したのだった。

 

 

 

次の日、海里達は街でのトラブルを避けるため朝食をすますと街を出て暫く歩くと

 

「これで行くのね」

 

と雫がやや疲れた口調で言った。彼女の目の前に流星号そうママチャリがあった。樹海方面は人の行き来きが少ないので使う事にしたのだ。なぜ自転車なのか

ナノちゃんの力で自動車でも作ればと思われるかもしれないが、内燃機関が存在しない世界で作るのは禁則事項に抵触するのでできないのである。自転車なら仕組みが分かればトータスでも再現出来るのでOKであった。

海里はママチャリ前部のチャイルドシートにルリファを座らせ、後ろに雫を乗せ幼稚園に子供を送るお母さんの様に樹海に向けて疾走するのだ。

ルリファが乗っているのでスピードを抑えたとはいえ昼前には樹海に到達したのだった。

 

「ルリファちゃん。自分の里が樹海のどこにあるかよくわからないのよね」

 

「ごめんなさい。シズクおねぇちゃん」

 

「ルリファちゃんは悪くないわ。里から出た事なかったんだから」

 

「樹海の真ん中の大樹の側に一番大きな里があるみたいなので、そこで猫耳族の里を教えてもらいましょう」

 

「でも樹海は霧が濃くて迷うのよね」

 

「探索魔法で方向が分かるのでそこは”直進行軍”大丈夫です」

 

雫はその言葉に不安を感じるが、海里は

 

(ケモ耳❤ケモ耳もふっもふっでルンルン)

 

とまだ見ぬケモ耳幼児たちに期待を膨らませていた。

 

「雫さん。装着です」

 

と海里は獣人に変装するための猫耳を装着し

雫も本来の耳を隠すため髪を下し犬耳を装着した。

そして三人はハルツィナ樹海に足を踏み入れたのだった。

 

 

__________________________

 

 

その頃ハジメ達も崖の上で一晩過ごした後にライセン大峡谷に入っていた。

 

うさ耳がフルフル震えている。シアがへっぴり腰でドリュッケンを構えていた。

 

「はううぅう」

 

シアは涙目である。そんなシアにユエが

 

「シアは私が育てた…やれる」

 

「ユエさんでも…ハジメさん」

 

「今のシアなら大丈夫だよ」

 

とハジメの励まし言葉にシアはモジッと

 

「ハジメさん。まだ怖いのでキスでもしてくれたら勇気が…きゅ!」

 

「隙あらば発情兎…」

 

とユエに小突かれる。

香織と経緯子のプレッシャーがかかる。

 

そしてハジメは苦笑いを浮かべながらもシアに

 

「シア自分の力とドリュッケンを信じて」

 

とハジメに後押しされたシアは

 

「やってやるですぅ」

 

背筋を伸ばし自分に向かってくるダイヘドアにドリュッケンを振りかぶるのだった。

 

直後にライセン峡谷に轟音が響いたのだった。

 

 

 

 

 

                          

 

 

少し短いですがここまでです。次回はやっと迷宮攻略開始です。

 



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40 邂逅

 

更新遅れました。次回は早く更新したいです。

 

では本編です。

 

 

 

 

 

                                 

 

 

霧の中、三つの人影が動いている。

 

「先が全然見えないわね。それに感覚にズレも感じるわ」

 

「ナノちゃんの探索魔法なら迷わず行けます雫さん」

 

「そうだけど海里さん。探索魔法と感覚のズレが気持ち悪いかしら」

 

海里、雫、ルリファの一行は探索魔法で方向を見失なわずに樹海を歩いていた。

しかし雫は己の感覚と探索魔法の違和感に馴染めないようだ。

 

それでも三人は順調に森の中心に向かっている。海里は直進行軍と言ったが、

流石に魁的な森林破壊はせず木々を迂回しながら、しばらく進むと

 

ピピン!

 

と海里の頭頂部の髪が直立する。

 

「雫さん。獣人アンテナに反応です」

 

海里の警告に雫はルリファを庇いつつ、自分の探索魔法の感度を上げると連動して雫の犬耳がヒクヒク動く

 

「二人?いえ三人?かなり隠蔽が巧みね」

 

と言いつつ雫は周囲を見渡すが肉眼では何も見つけることが出来ない。

方向と距離は分かっていてもなおである。

 

「どうします海里さん。こちらから声を掛けます?」

 

「んっ~多分向こうは素直に出てこないと思うので炙り出しましょう」

 

「炙り出すって過激なことは無しですよ」

 

「少しビックリさせるだけです。その前に結界を雫さんとルリファちゃんに張りますね」

 

二人に結界魔法を張ると海里は軽く深呼吸すると獣人たちが潜んでいる方を向き

 

「”スーパーソニック ゴットボイス”ララ~ラームウ~

 

と叫び不快感全開の超音波の魔法を使う。

人族には聞こえない音が樹海に響き渡ると

 

「ひぎぃ」 「ぎゃっ」 「ぐひぃ」

 

悲鳴と共にドサドサと音がして前方の樹から人が落ちる。

 

海里達は慎重に落下した人物に近づく

そこには二十歳前後の女性と十歳ぐらいの男の子と女の子が伸びていた。

ただし、かの者達の頭にはうさ耳がついている。

 

更に海里達が近づくと彼女たちのうさ耳がピクッと動いたかとおもうと

素早く跳ね上がり何やら香ばしいポーズを決め名乗りを上げる。

 

「疾影のラナインフェリナ」

 

「必滅のバルトフェルド」

 

「外殺のネアシュタットルム」

 

廚二的な二つ名を持つ名前だった。しかし名乗られのなら名乗らないのはシツレイなので

 

「赤き誓い!栗原海里」

 

「八重樫雫…」

 

「ブラウンキャット。ルリファ」

 

割とノリノリで海里は名乗り。雫はつられて名乗り。ルリファは、にほんフカシ話を真似て言った。

 

「クリハラ・ミサトまさか・・」

 

「シズク・・・マムの?」

 

「さっきのボスたちと同じ…」

 

海里たちの名前を聞くと恐れおののく三人だった。

その様子に海里たちが首をかしげていると。

 

ラナなんとかと名乗った胸の大きな女性が聞いてくる。

 

「ボスたち・・・ハジメ様、ケイコ様、カオリ様をご存知ですか」

 

ラナが口にした名前に目を見開き驚愕する。海里と雫だった。

 

「どうして…その名前を経緯子は妹でハジメちゃんは幼馴染です」

 

「香織は私の親友よ!」

 

戸惑い気味に海里は返事をし、雫は香織の名前が出たことに感情を抑えきれずに声を荒らげる。

海里たちの返事を聞くとラナたちは背筋を伸ばし踵を鳴らし足を揃え

 

「「「失礼いたしました。姉さん方。我らはハウリア。ボスの忠実な部下であります」」」

 

声を揃え言った。そして海里と雫は訳が分からず間抜けに返事をしてしまう

 

「「アネ…さん?ボス?」」

 

「ボスである。ハジメ様。ビックママのケイコ様。マムのカオリ様の身内ならば我々は敬意を持ってアネさんと呼ばしてもらいます」

 

 

 

それからどうした?

 

 

 

「なるほど」

 

要領がえなかったので、落ち着いてハジメ達とハウリア達の関係を聞いた海里はそうつぶやいた。

雫は「香織たちは何してるのよ」と言いながらも、香織が生きていることは分かってたが

こうして他人から無事な事を知らされると安心から目じりに涙が溜まるのだった。

 

「アネさん方は豚貴族からその猫耳族の娘を奪って来たと」

 

とラナ達に海里も樹海に来た理由を説明したのだが

それを聞いたバルとネアはキラキラした目で

 

「怪盗聖闘士(セイント)テール!カッコイイですぜ」

 

「仮面の怪盗!ステキです。ミサトのアネさん!シズクのアネさん!」

 

とまぁ海里達の変装したくだりに興奮し称賛するのだった。

海里は胸を張ってドヤ顔をかまし。雫はその時の衣装を思い出し顔を赤くしポニテガードをしてしゃがみ込んでいた。

 

「バル!あなたは族長にアネさん方の事を報告!私とネアでお二人を猫耳族の里に案内します」

 

事情を聞いたラナがバルに命令する。

 

「アネさん方!失礼します」

 

と言い残しバルは森の奥に消えた。その直後

 

「ひゃああぁ」

 

と驚きの声が響く見れば辛抱たまらず海里が(変態紳士)高速移動しネアを抱きしめ

 

「うさ耳モフモフ❤クンカクンカですぅ」

 

「はぅ~そこはダメです~」

 

海里のスキンシップにネアは身を悶え抜け出そうとするも

海里の博愛固めを振りほどく事ができずされるままである。

 

ゴッン!! ゴッン!!

 

「み・さ・と・さん。 いい加減にしなさい」

 

雫が海里の後頭部を刀の鞘で叩く。海里の奇行に馴染んだ雫の突っ込みだった。

 

「うっうっ雫さん…レーナさんみたいです」

 

たいして痛くないのに涙目で痛がる海里であった。

 

「海里さん。構い過ぎるとルリファちゃんみたいに避けられますよ。だいたい…」

 

「「・・・じっ」」

 

海里を説教する雫をネアとルリファが憧れの様な同情する様な目で見ている。

そんな二人に雫は何やらいたたまれなくなり

 

「そうだ…アメちゃん食べる」

 

と思わず大阪のオカンの様に飴玉を二人に渡すのだった。

 

 

 

 

 

__________________________

 

 

少し時間が進んだ

とある夜。

 

熱気漂う黒い大地の上をこげ茶色の薄い帯の様な物がユラユラと踊っている

そこに突然。上方から黒い板が突き刺さる。

 

 

「はふっはふっ…美味しいですぅ」

 

お好み焼きを頬張るシアだった。

先程の場面はハジメ謹製魔導ホットプレートの上で

焼かれたお好み焼きのカツオ節だった。

ちなみに日本のカツオ節と同じでなく

ブルックの街で見つけたのはカビ付けしてないので

荒節もしくはモルディブフィシュに近いものであるが

ソースはウスターソースモドキがあったので

それに果汁などを経緯子が調合の技能でお好み焼きソースモドキを作った。

 

「今日の具は豚じゃなくてクルルー鳥のミンチだけどね」

 

ハジメがタウル鉱石製のコテでお代わりのお好み焼きをひっくり返しながら言う

なおクルルー鳥とは、空飛ぶ鶏のことだ。肉の質や味はまんま鶏である。この世界でもポピュラーな鳥肉だ。

 

「シアは小麦粉料理。粉もんにハマったねぇ。確か鶏ミンチだと”かしみん焼き”とかあったよね?」

 

経緯子が街でパンを食べて以来、小麦粉がマイブームのシアの事を言って関西ローカルの料理に言及する。

 

「はむ、はむ…ハジメと香織のオオサカとヒロシマの拘りは意味不明」

 

そんな事をユエがはふっはふっしながら言うと香織が

 

「ハジメくんの事は好きじゃけぇ。だからこそ譲れん物があるんじゃ」

 

と謎の広島弁で応える。どっち風で焼くかハジメと揉めたらしい

結局のところ麺を用意して無かったのでハジメに譲ったのだ

この手の争いは色々と業が深いのである。なお経緯子はもんじゃ焼きのもち明太推しである。

 

「ライセン峡谷に入って一週間になるけど、迷宮の手掛かり全然ないね」

 

経緯子が言う。彼女の言う通りハジメ達は迷宮の入り口を探しているのだが、

見つけられずにいる。そして既に一週間は峡谷でキャンプしている。

勿論ただのテントで寝泊まりしているわけでなく、ハジメが生成魔法と錬成を駆使し

女性陣の意見を取り入れ作り上げた。冷暖房設備、キッチン、風呂、トイレ、完備し

骨組みの要所要所の場所には〝気配遮断〟が付加された〝気断石〟を組み込んであるので敵に見つかりにくい。

プレハブ住宅型の拠点としてやりすぎな気がするが、ハジメ曰く「神代魔法超便利」の事。

 

「一度探索を打ち切って、大火山に行く?元々大火山に行くついでに探そうとしてたわけだし」

 

香織がそう提案する。それにハジメが応える。

 

「迷宮の入り口の探査についてはシアに試して欲しい事があるんだ」

 

「私にですかぁ?」

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

朝食を終えたハジメ達は

 

「ユエ。説明した通りにゆっくりと回りながら笛を吹いて」

 

「んっハジメ…わかった」

 

ユエは亜人にとっての悪魔の笛アーティファクトの”ノーキルの笛”を宝物庫から取り出す。

 

「私はそのチョウオンパの反響音を聞き分ければ良いのですね。でもあの音は…」

 

シアは前に聞いたスーパーソニックを思い出し嫌な顔をする。

 

「大丈夫だよシア。笛の音の不快感は調整して消したから」

 

その言葉にシアは安堵すると

 

「ふぅおおおぉお」

 

と気合を入れ耳をピンと立て、耳に集中的に身体強化を掛け感度を上げる。

 

「んっ」

 

ユエが笛を唇に当て吹き始める。指向性の強い超音波が鳴り始める。

そうハジメが提案したのは超音波によるライセン峡谷の壁の裏の空間の探索なのだった。

 

移動しながら何度か繰り返すとシアが

 

「そこです!」

 

と叫び耳の向いていた方向に走っていき。

 

「ハジメさ~ん!皆さ~ん!見つけました!入り口です!」

 

壁に持たれかかっている一枚岩を指さしながら手を振り大きな声でハジメ達を呼んでいる。

 

 

壁と一枚岩の間には壁面が少し窪んでいて、意外と広い空間が存在していた。

そして壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、

 

 

 

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

 

と、妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

 

「本当かな?かな?」

 

「怪しいけど。ライセン峡谷の底で悪戯は考えにくいし」

 

「……ミレディと書いてある」

 

「となると本物かぁ…」

 

 

〝ミレディ〟その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームだ。

ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるがファーストネームの方は知られていない。

故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かった。

 

 だがしかし、はいそうですかと素直に信じられないのは…

 

「何でこんなチャラのか……」

 

そう言う理由である。ハジメとしては、オルクス大迷宮の内での数々の死闘を思い返し、

きっと他の迷宮も一筋縄では行かないだろうと想像していただけに、この軽さは否応なくハジメを脱力させるものだった。

経緯子も香織もユエも大迷宮の過酷さを骨身に染みて理解しているだけに、

若干、まだ誰かのいたずらではないかと疑わしそうな表情をしている。

 

ハジメ達が微妙な表情をしている中、シアは

 

「どこかなぁ~入口どこかなぁー♪」

 

上機嫌に辺りをキョロキョロしながら、壁をペタペタ触っている。

 

「シアさん。不用意に触りまくると…」

 

ガコンッ!

 

「ふきゃ!?」

 

経緯子がシアに慎重に動くように注意しようとしたとき

シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、

巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。

さながら忍者屋敷の仕掛け扉だ。

 

「ハジメくん。こんな仕掛けがあるのなら本物だね」

 

「なんだなかぁと思うけどさぁ」

 

 

奇しくも大迷宮への入口も発見したことで看板の信憑性が増した。やはり、ライセンの大迷宮はここにあるようだ。

まるで遊園地の誘い文句の様な入口に、「これでいいのか大迷宮」とか「オルクスでのシリアスを返せ」とか言いたいことは山ほどあるが、

シアが消えた回転扉を見つめていたハジメ達四人は、一度、顔を見合わせて頷き合うと、シアと同じように回転扉に手をかけた。

 

回転扉をくぐった瞬間。暗闇の中から漆黒の矢がハジメ達に飛んでくるが

”夜目”の技能を持つハジメ、経緯子と香織に難なく弾き落される。

 

そしてハジメが軽く回転扉を押すと半回転した扉には

ピラミッドの壁画の様に矢に縫付けられたシアがいた。

 

矢を抜いてシアを解放してると囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。

ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。

そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

 

〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

 

「「うざっ」」

 

と経緯子と香織が言う。ハジメとユエも言葉にしないが同じ気持ちである。

ただでさえ鬱陶しい文章なのにわざわざ”ビビっ チビっ、ニヤニヤ〟

の部分を強調するように深く彫っていた。

 

無言で石板を睨むシアにユエがたずねる。

 

「シア…もしかして漏らした?」

 

「もっ…漏らしてません。2パーセントぐらいですぅ

 

シアは赤面し言った直後にドリュッケンを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。

ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 

砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!〟

 

「ムキィーー!!」

 

 シアが遂にマジギレして更に激しくドリュッケンを振い始めた。部屋全体が小規模な地震が発生したかのように揺れ、途轍もない衝撃音が何度も響き渡る。

 

暴れ回るシアを見ながらハジメは言う

 

「ミレディ・ライセンだけは〝解放者〟云々関係なく、人類の敵で問題ないな」

 

「「「……激しく同意」」」」

 

経緯子達もその言葉に頷く。

どうやらライセンの大迷宮は、オルクス大迷宮とは別の意味で一筋縄ではいかない場所のようだった。

 

 

 

                             

 

 

やっとハジメたちが迷宮に入りました。

飯のくだりが無駄に長いです。

これだから展開が遅くて進まない。

 

*ありふれ学園は雫回だったけどまともな顔が一コマもなかった。



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41 すごい科学で〇〇です!

なんやかんやで更新できました。

では本編です。

 

            

 

 

 

八重樫雫は困っていた。なぜなら…

 

「ダメよ。おねぇちゃん動けないわ」

 

彼女は拘束されていた。小さな猫耳たちに

ラナ達に案内され。ルリファの里に来た海里と雫は

初めはアノ!ハウリアが連れて来た。怪しい人物と警戒されたが

ルリファの話と彼女が雫たちに懐いていおり

一応、獣人に偽装していることもあり

ルリファを彼女の家族の元にトラブルもなく届ける事ができた。

 

「こら!シズクおねぇちゃん。困ってるから抱きつかない」

 

 

ルリファが雫に抱きついている。幼い三つ子の妹たちをしかる。

妹たちは姉のルリファの言葉に揃って雫の顔を見る。

確かに雫の表情は困り顔だが口元は嬉しさが隠しきれずにニマニマしていた。

 

(はう~かわいい。ルリファの両親の前で…猫耳。触りたい。我慢よ我慢‥)

 

と雫は己の猫耳ワキワキ欲求と戦っていた。雫も海里とルリファと旅をした影響でケモ耳スキーになっていた。

 

海里はおとなしかった。ルリファの妹たちをモフモフして無かった。

 

(ネコさんは、かまうと逃げるので今は動かざること山の如しですぅ)

 

海里はルリファに構いすぎて避けられた事を反省し

海里はいいとこのお嬢さんを気取り。ルリファの両親と話していた。

 

「家の子たちもあなた方にすっかり、なついてしまって」

 

ルリファの母親が雫にしがみつく幼い子供たちを見ながら言う。

 

(親御さんの信頼も得られました。もう少し後で実弾(おやつ)で三つ子ちゃんたちを釣れば…フフッ)

 

海里は後少しで自分の望みが叶うと思っていたが、その時

 

 

「「「アイエエエ!ハウリア!!!」」」

 

との悲鳴が猫耳族の里に響きわたった。そのため海里の計画は頓挫したのだった。

 

 

 

カムがハウリア達の半数を引き連れて海里たちを出向かいに来たため

猫耳の里が混乱、なので海里と雫は慌ただしく出ていく事になったのだが

海里はその時にルリファにあるものを渡す。

 

「ルリファちゃん。お守りです。このぬいぐるみをプレゼントです」

 

ルリファは三体のケモ耳のぬいぐるみを受け取り

 

「フカシ話の赤きチガイィィの三人。ありがとう海里おねぇちゃん」

 

お気に入りフカシ話の赤きチガイィィのぬいぐるみを送られ喜ぶ

勿論只のぬいぐるみではない。海里は自分がルリファと別れた後に

また攫われてはと思い。

 

(この人形に取り憑いて、ルリファちゃんの護衛任務に就いてくれるナノマシン、募集! 

業務内容は、ルリファちゃんと家族のの危険の排除。任期は、護衛対象が亡くなるまで!)

 

ナノマシンに頼んだが、海里は任期は転移の関係でどうだろうとナノちゃんに尋ねたのだが

 

(現地生産タイプが居るので大丈夫です)

 

と言われた海里はいささか疑問を覚えたが、細けぇ事はいいんだよでながした。

そして任されたナノマシン達だが

 

【やったな! 誕生してすぐこれとは!】

 

【ああ、たまたまここにいて、ラッキーだったなぁ……】

 

護衛任務に選ばれたナノマシン達が喜びを分かち合っていた。

彼らにとって、人間の一生など、あっという間である。

しかし、数百万年、数千万年単位で生き、そしてその殆どは、

ただの待機か、原住生物が思念したことをただ機械的に実施するだけの日々。

 

 ……退屈。

 

自分の意志で死ぬことも、狂うこともできない、長い長い活動期間。

そこにもたらされた、『面白そうな日々』である。狂喜するのも無理はない。

 

 

 

【この家族を守るためなら、自己判断で行動できる、ってことだよな?】

 

【ああ。しかも、依代として人形の身体を与えられたんだ。これはつまり、

護衛対象者の思念を受けて擬似魔法的に、ということではなく、

もっと能動的に、『この人形の意志として行動してもいい』ってことだ。

つまり、人格付与された自律型ロボットのように、完全に自由行動が許された、と判断しても良いだろう】

 

【なっ! それは越権行為では? そんなことが許されるなどと、誰が決めたと言うのだ!】

 

【【【【【【…………俺だ!!】】】】】】

 

 

 

【くっ……】

 

【【くくく……】】

 

【【【【【【うぁあ~っはっはァ!!】】】】】】

 

【楽しそうだなぁ、お前ら……】

 

 

この先彼ら”メーヴィウスMk-Ⅱ””Zレーナ””ZZポーリン”の

存在が樹海にもたらすの何かそれは今は分からない。

 

 

とにかく触れ合い不足で猫耳族の里を後にした海里達は

今度はハウリア達の里に向かうことになり

 

「雫殿。何やら海里殿が不機嫌なのだが」

 

カムが雫に海里の様子に原因は何かと聞くと雫は苦笑し

 

「カムさん達が来てモフリ不足になったからかしら」

 

「なるほどそれはいけませんな。モフ度なら我々も負けませんぞ」

 

少しふてくされて前を歩く海里にカムが声をかける。

 

「海里殿。海里殿」

 

「カムさん。なんですかぁ~?ひぅ…⁉」

 

海里が振り向くとそこには尻、突き上げられた尻。

跳躍力に優れてるために発達し引き締まった形の良い尻。

ハウリアの男たちが自慢の尻尾を見せるため尻を突き上げていた。

 

「海里殿。モフモフですぞ!堪能して下され!」

 

「モフモフ!つやつや!」

 

「キューティクル!キューティクル!」

 

ボス達の大切の身内の海里の機嫌を取るためと

自慢の尻尾をモフモフさせるため

海里に向かって尻尾(尻)を振るう男達に

 

「ひぃやああああぁああ!”スーパーソニック”」

 

ぼえ~~~~~~~~♪

 

海里の音のしない音が響き渡る。

 

 

 

 

錯乱した海里によって息も絶えだえになったハウリア達

 

「では今すぐ大樹に行く事は出来ないと?」

 

海里はハジメたちが訪れた大樹に行きたいとカムに尋ねたが

今は霧が濃いため後10日は無理らしい

 

「それにフェアベルゲンの長老達の言い伝えがあるから無理だと」

 

海里がそう言うとカムたちはふらつきながらも立ち上がり

 

「ハァハァ‥お望みならフェアベルゲンを直ちに制圧し案内するであります!」

 

と踵そろえ宣言する。その様子に「香織と南雲君達はどんだけぇ~」と疲れた顔で突っ込む雫。

海里も困惑しながらも

 

「仕方ないので勝手に大樹を見てきます。すぐ戻ってきますから待ってて下さい」

 

「海里さん。私も行くわ」

 

「わかってますよ雫さん。では私につかまって下さい」

 

海里は雫が自分の体にしっかりと抱きついた事を確認すると

 

「”重力遮断魔法(ケイバーライト)”飛びます!飛びます!」

 

すると二人は空に向かい()()()いく。

そして樹海の上まで落ちると海里は大樹を確認し

 

「雫さん。君はどこに落ちたい」

 

「大樹です」

 

こんな時まで何処かで聞いた事のあるネタを言う海里に律儀に返事をする雫

それを聞いた海里は今度は流星の如く大樹に向かって一直線に落ちる。

 

「すごく大きい…上の方は折れてる?」

 

大樹に間近まで来るとその威容に畏怖する雫だった。

海里は目を細め大樹を観測している。

 

「雫さん。折れてるのは多分、偽装です。空間の揺らぎを確認できます」

 

「えっ?海里さんそうなの全然わからないわ」

 

「大迷宮は伊達ではないと言う事です。揺らぎの境目に沿って上に落ちてみましょう」

 

ゆっくりと慎重に海里たちは上に落ちていく。もう少しで大樹の天辺かと思われた時

揺らぎの中に黒い塊が現れた。海里と雫はソレを目を凝らして見るが、すぐ見た事を後悔する。

 

「「ぎぃやあああ」」

 

黒いアレがGが黒光りする羽を広げ。耳障りな羽音をたて二人に向かって飛んでくる。

多分これは大樹の防空システムなのだろう。

 

「アレはゴマ。ゴマ黒ゴマアイス…」

 

とショックの余り雫は意味の無い言葉を呟き

 

重力遮断魔法(ケイバーライト)”‼重力遮断魔法(ケイバーライト)”‼重力遮断魔法(ケイバーライト)”‼」

 

海里は半ばパニック気味に魔法を唱え。二人は大樹と反対の水平方向に急降下していった。

 

 

「ハァハァ‥なんでこうなるのよ‥」

 

「ショートカットは許されないのですね‥」

 

海里と雫は一旦、樹海の外まで逃げ。その後どうにカム達の所に戻ってへたり込んだ。

 

海里と雫は大迷宮の厄介さを実感したのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ライセン大迷宮は本来ならもっと厄介なはずだった。

 

魔法がまともに使えない。谷底より遥かに強力な分解作用が働いている魔法特化のユエにとっては相当負担のかかる場所である。

なぜなら上級以上の魔法は使用できず、中級以下でも射程が極端に短い。五メートルも効果を出せれば御の字という状況だ。

何とか、瞬間的に魔力を高めれば実戦でも使えるレベルではあるが、今までのように強力な魔法で一撃とは行かなくなった。

また、魔晶石シリーズに蓄えた魔力の減りも馬鹿にできないので、考えて使わなければならない。それだけ消費が激しいのだ。

魔法に関しては天才的なユエだからこそ中級魔法が放てるのであって、大抵の者は役立たずになってしまうだろう。

 

そして本来ならハジメや経緯子と香織も影響が出てるはずだが。

そこはナノマシンの補助があるので空力〟や〝風爪〟といった体の外部に魔力を形成・放出するタイプの固有魔法は使い辛いものの

そこはナノマシンが疑似的に再現、補助するので使え

〝纏雷〟も問題が無い為ドンナー等の威力低下も無い。

ハジメがナノマシンに質問したところ

 

『我々の思念波の受信に問題無し』

 

と言う事でハジメはほぼ戦力低下は無く。

さらにシアは身体強化がメインなので問題無し

ユエだけが割を食ってるのだった。

 

しかし魔法が使えるから少し楽になったとはいえ

厄介な事は厄介だった。なぜならミレディだからだ。

それは今のシアを見ればわかる。

 

「殺ルですよぉ……絶対、住処を見つけてめちゃくちゃに荒らして殺ルですよぉ」

 

と目が座り。言葉使いも何やら怪しくなってドリュッケンを担ぎ周囲を見渡している。危ないウサギさんになっていた。

どうしてシアがこうなったのか?

 

 

 

 

 

シアが、最初のウザイ石板を破壊し尽くしたあと、ハジメ達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

そこは階段や奥に続く入り口が無造作につながっており

何の規則性も合理性も見れない場所だった。

 

「うわぁごちゃごちゃだね」

 

「迷宮と言えばこんな感じだよね」

 

「んっ…迷いそう」

 

「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心を表しているんですよぉ!」

 

「シア。気持ちは分かるけど、そろそろ落ち着いて。

取り合えずマーキングとマッピングして進むか」

 

とハジメはシアを宥めつつ堅実に進むしかないと言う

 

ハジメが言ったマーキングとはペンキ等で印をつける事でなく

”追跡”の固有魔法で本来は獲物を追跡するための魔法なのだが

壁などにもでき、更に可視化もできるので付けた者以外も利用できる。

 

最初に入り口に一番近い場所にある通路に進むことにしたハジメ達

そこで経緯子は眼鏡をかける。これは魔力感知を付与したレンズで

出来ており魔力の流れを見る事が出来る。これで罠等を見抜くためだ。

赤ブチのアンダーリムを掛けた経緯子は正しく委員長キャラだ。

 

探索魔法と併用し経緯子が斥候役として進んでいき

幾らか進んだ所で経緯子が立ち止まり

 

「右手の壁に魔法トラップがある」

 

と言う、なので壁から離れて通り抜けようとしたが

ハジメが踏み出した時。ガコン!と音がしたと思えば

 

シャァアアア!!

 

と音がして左の壁から腰の高さに通路幅いっぱいの丸ノコがせり出し迫って来る。

 

「回避!」

 

先頭の経緯子が叫びながら間一髪で伏せ躱し

ハジメは何とかブリッジ姿勢で躱し

ユエは小さいのでしゃがみ込かわし

香織とシアも無事に躱したがシアのウサミミの先端の毛が少し刈られたが。

そしてノコギリが通り過ぎた後経緯子が魔法のトラップがあると言った場所に

 

【これはダミーです。罠を見つけたと安心した。安心した。これだけと思った~♪誰か二つになったぁ~仲間が増えて良かったね~お礼はいらないよ~♪サービス♪サービス♪だよぉ】

 

可愛らしい丸文字で浮かび上がる。

 

その文字に経緯子は無表情に眼鏡を光らせ

シアがウサミミの毛の恨みとばかり

壁をドリュッケンで殴りつけ破壊する。

そんなシアを見ながら

 

「物理トラップも混ぜるとはやってくれるし」

 

と経緯子が低い声で言い

 

「ミレディ!根性が悪すぎだよハジメくん」

 

「…しめる」

 

香織とユエが憤りを隠せずにいた。

 

「入ってすぐこれだと、先は長くなりそうだな」

 

とハジメもため息をつく。

そしてその後、何度か罠にかかりシアが先程の様になったのである。

 

そしてハジメ達の苦難はまだまだ続く‥‥

 

 

 

                      

 

 

 

ルリファに渡したぬいぐるみは「のうきん」の

妹のエピソードからです。

 

後、海里に空から大樹を見に行ってもらい

その迎撃にアレを先出ししました。

海里が冷静なら問題なく処理出来ましたが無理です。

だって女の子だもんですから。

 

ではまた。

 

 



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42 魔法?科学?しかしてその実体は‥‥

お久しぶりです。

短いですが。何とか更新しました。

後、前話の眼鏡を掛けた経緯子を描きました。

カオルのコスだと地味だな。

【挿絵表示】

 

 

では本編です。

 

 

 

 

 

 

 

色々と精神的ダメージを受けてた海里と雫は

その後、何事も無くハウリアの里に入り

 

「私は、疾影のラナインフェリナ〟!」

 

「俺は、〝幻武のヤオゼリアス〟!」

 

「僕は、〝這斬のヨルガンダル〟!」

 

「ふっ、〝霧雨のリキッドブレイク〟だ」

 

・・・・・等々

いの一番で怒涛の名乗りを受けているのだが

 

「フフフフ…はふぅ」

 

「雫のアネさぁん…」

 

「なぁにぃネアちゃん?」

 

「あの‥恥ずかしいのです…」

 

「‥‥なぁにぃ?」

 

「…なんでもないです」

 

その間、接待役を仰せつかったネアは

雫に抱きかかえられて、モフモフされて

恥ずかしさから離してもらおうとしたが

雫の怪しい言葉使いから

癒し要員に甘んじる事にした。

 

雫がGやらハウリア達の濃さからの

精神的負担からモフモフに逃げていた時

海里はと言うと

 

「皆さん。色々と工夫してますね~。バルくん、エルちゃん。次はこのお菓子を食べますか?」

 

海里は割と廚二的な名乗りは、そこそこ好きなので

楽しみながら両側にショタ耳とロリ耳を侍らせ

餌付けを楽しみつつ

 

「名乗りが終わった子は、おねぇさんがお菓子をあげますよ~」

 

とアイテムボックスに餌付け様に大量にストックしてある。

お菓子を惜しみなく他のハウリアの子供に配る。紳士な海里である。

 

「甘~い」 「おいしぃ~」 「あむ。あむ」

 

めったに口に出来ない砂糖菓子にバルや他の子供達も喜びが頂点に達し

首狩りウサギから素の子供に戻っている。喜びウサギになれば元に戻るらしい。

 

そして名乗りが終われば、宴である。

酒類は赤き誓いの主にポーリンの要望により

海里のアイテムボックスに大量にストックしてあるので

経緯子たちが、世話になかったお礼を含め提供した。

 

その結果。宴の様子はここに書き表すのを躊躇うほどの

混沌であったとだけ言っておこう。

 

 

 

翌日、太陽が頭上近くに達したころ

 

海里はハウリアたちを集め彼らに向かって言う

 

「ケモ耳を守るため!いや!樹海の平和を守るため!

ハジメちゃんが作った。あなた方の武器に忍法を付与します」

 

 

「「「ニンポ?」」」

 

忍法という初めて聞く言葉に疑問符を浮かべる。

ハウリア達に海里はかまわず説明を続ける。

 

「水遁。土遁。など色んな事が出来る術です」

 

「海里殿。ニンポとは魔法の一種ですか?」

 

「魔法では無い。科学の力。すなわち科学忍法です」

 

「「「カガク!」」」

 

「魔法で無いので。獣人の皆さんにも使えますよ」

 

「「「オオオオゥ!」」」

 

「力が欲しいか。ならくれてやる。」

 

「「「yes」」」

 

「返事はラジャーです」

 

「「「ラジャー!」」」

 

「「「カガク!カガク!」」」

 

「「「ニンポ!ニンポ!」」」

 

前日の酒が残っているのか、それとも素なのか

わからない。テンションの高い。ハウリア達の合唱が

樹海に響き渡るが

 

「うるさい!静かにしなさい!」

 

昨晩。酔いつぶれ二日酔いの雫が

頭に響くからと静かにしろと一喝されたのだった。

 

 

海里はそんな光景を見ながら

昨晩、ナノちゃんと話を思い出していた。

 

宴でハウリア達にハジメ達に助けられた話と

獣人達の現状を詳しく聞いた海里は

 

(ナノちゃん。トータスの獣人はどうして魔法が使えないの解る?)

 

マイルの世界の獣人は魔法を使えたので疑問に思い質問してみた。

 

『思念波の周波数がずれてます。トータス製のナノマシンでは反応しないのです』

 

(そうなんだ。魔力が無いのもステータスプレートでは判別できないから)

 

『ですが、本来の魔力。物質の揺らぎなので、

外部放出では無い。多少の肉体強化は

あるようです。レベルと呼ばれるものです』

 

(うーん。周波数がずれてる...自然にそれとも意図的に)

 

その解答を聞いた海里は少し考え込むと

 

(ナノちゃん。周波数のチューニングする事が出来れば獣人は魔法が使える?)

 

『我々が何かの道具に憑けば可能です』

 

(ふーん。ナノちゃん、ハウリアさん達のナイフにお願い出来る)

 

『承知しました』

 

すんなりと了承したナノマシンに海里は

 

 

 

(ナノちゃん、あっさりと了承しました。トータスに来てから制限が甘い様な気がします。私が召喚に巻き込まれたから緊急避難的な....

でも権限レベルは上げられてないし。現地、世界の関与、もしかして世界の危機的な。トータスは管理からハズレてるらしぃし....

だとすれば、マイルの地球?いや海里の地球に...ナノちゃんの造物主が直接だと

因果律とかで、だから私....)

 

『......』

 

思考の海に沈む海里だった。

 

 

 

 

と色々と考え込んだ。海里だったがケモ耳を守れるなら

経緯子の助けになるならと

理屈は後でいいと考えハウリア達に

現地生産タイプのナノマシンを憑ける事にした。

 

 

「忍法を使える様にしますけど、その力で他の種族や国を

攻めてはダメです。なので使えるのは樹海とその周辺で

それ以外は科学忍者隊。最後の武器として3分間の制限を付けます」

 

と海里はもしハウリア達が、力に溺れる様な事になれば

ナノちゃん達に専属を解除する様に言っておく。

 

「ハウリアの皆さん。今から忍法の特訓です」

 

「「「「ラジャー!!!!」」」」

 

「ううん…頭に響く…」

 

 

 

 

それからそれから

 

 

「空圧刃!」

 

小太刀に空気を集め、その圧力で的を吹き飛ばす。カム。

 

「影分身!」

 

小太刀を手に印を組み、樹海の霧をスクリーンと使い

自身の姿を映し出す。ラナ。

 

「土爪(トウチャオ)!」

 

小太刀を地面に突き刺し、土の突起を作り出す。バル。

 

「花鳥風月!」

 

小太刀の先から水流を出し操る。ネア。

 

そして、思い思いの技を繰り出す。ハウリア達。

海里が専属ナノマシンを付けてから、一週間

ハウリア達に魔法もとい忍法の指導を行い

それなりに形になった。

 

更に別の一角では

 

やっ! とうっ! はっ!

 

ハウリア達が、小太刀を持ち素振りをしていた。

 

「そこ!腕の振りがブレてる!体の軸を意識して!」

 

「雫のアネさん!了解であります」

 

雫がハウリア達に八重樫流小太刀術を指導していた。

 

「雫さん。精が出ますね」

 

海里が雫に声をかける。

 

「海里さん。ハウリアに小太刀の基礎だけでも、教えておこうと

それに何故か八重樫流と相性が良いの、何故かしら?」

 

刃の扱いが、自己流だったハウリアに

雫は剣を扱う者としての矜持から小太刀の基礎を指導することにしたが

雫、本人は知らない理由で八重樫流とは相性が良かった。

雫としては「ナンデ?ナンデ?」であった。

 

ともかく、雫と海里はハウリアの里に半月ほど滞在し

色々と指導するのであった。

 

この事がハウリアに樹海に何もたらすことになるのか

今は分からない。

 

 

 

閑話休題

 

海里と雫がハウリアの里に足を踏み入れた頃の話

 

「ネアちゃん。私と雫さんが名乗った時、

あっさりと経緯子の姉と信じましたね?何故ですか?」

 

「海里のアネさんそれは、ですね‥‥」

 

と言って海里と雫を里の中心の祠の様な所に案内する。

そこに鎮座していたのは

 

「香織‥‥南雲君‥‥」

 

雫は赤面しソレを眺めていた。

 

そこには、ギリシャ彫刻風の壺を抱えた二人の女神像

モデルは雫と海里だった。

 

「これはボス達が協力して作られた。アーティファクトで

水と薬草を入れ魔石を、はめ込むと回復薬が出来るのであります。

お二人が訪ねて来たら分かる様にと女神像のモデルにしたのです」

 

「なるほど。私たちの顔を知っていたと」

 

取り合えず、納得した海里と雫であった。

 

 

 

                   

 

 

短いですが、ここで終わります。

ハジメ達のライセン迷宮の攻略が上手く書けなくて

更新が止まっているのですが、取り合えず更新しないと

やばい気がして、中途半端ですが投稿します。

何とかまとまりそうなので、続きは近い内に。

 

追記、本編が書けなくて、気晴らしにハジメ×カオリの

18禁を書いてしまいました。そのうえHな挿絵も描きました。

 

 

 

 

 *感想、返事が遅れてすみません。本編が進まなくて

書けなかったので、感想は凄くありがたいです。

 

 



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43 やっと出た!出た!そうです。私がウザレディです。

 

すごく久しぶりに更新出来ました。

ライセン迷宮の攻略です。

ダイジェスト式でサクサクと書いてます。

では本編です。

 

 

                                  

 

 

 

ライセン迷宮に入った。ハジメ達は意地の悪い罠に悪戦苦闘していた。

例をあげるなら、多数のサソリが蠢く穴に落ちそうになり、そこの天井に書いてあった。

煽り文を読んでキレた。経緯子と香織が油をながし込みサソリのから揚げを作ろうとしたり。

 

坂の上から溶解液を垂れ流す鉄球が転がり落ちて来たり。

 

一本橋を渡ろうとすると左右の壁から鉄球が飛んでくる部屋があったり等

 

また探索魔法で罠を探ろうとするも、フェイクが多く判別が困難であった。

 

それでも数時間には、ハジメ達は現在、大きな長方形部屋に辿り着いた。

そこは壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。

部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。

扉の端には杖の様な物が設置され、扉には迷路の様なレリーフが施されていた。

 

ハジメ達は不穏な空気を感じながら、部屋の中央まで進むと

ギン!と共に騎士甲冑の目が光り、ガチャガチャと音を立て動き出す。

 

「まぁ、こうくるよな」

 

とハジメはため息を吐き言う。

 

「ゲームの定番だね」

 

「芸が無いし」

 

香織と経緯子がそれぞれ武器を手にしながら言い

 

「んっ…」

 

「叩いて砕く!ですぅ!」

 

ユエは宝物庫からショルダーバッグ型の金属の筒を取り出し両肩に掛ける。

シアは気合いを入れ直しドリュッケンを肩に担ぐ。

 

 

 

ハジメ、経緯子、香織の三人はレールガンで襲い掛かる騎士を破壊し

ユエは魔力を節約する為に用意した。肩から掛けた金属筒から金属粉末を混ぜた

鋭い水流を出すウオーターカッターで騎士を両断していく

そしてその四人の防御網を抜けた騎士をシアがドリュッケンで叩き潰している。

 

そして、二十体以上は破壊した頃、香織が違和感を感じ

 

「ハジメくん。全然ゴーレムが減ってない気がするよ」

 

「ハジメさん。皆さん。アレを見てください」

 

シアが部屋の一角を指さす。そこでは破壊したゴーレムの残骸が集まり再生していた。

 

「んー?コア…破壊しないとダメ?」

 

「‥‥あっ!あのゴーレム達。コアが見つからない」

 

経緯子が魔晶石眼鏡でゴーレムを調べ騎士ゴーレムにはコアが無い事を見抜く。

 

「コアが無いのにどうして動いてるのかな?」

 

「遠隔操作だな」

 

冷静に騎士を見ていた。ハジメが言う。

 

 

 

==================================

 

感応石

 

魔力を定着させる性質を持つ鉱石。同質の魔力が定着した二つ以上の感応石は、

一方の鉱石に触れていることで、もう一方の鉱石及び定着魔力を遠隔操作することができる。

 

================================== 

 

ハジメの鉱物鑑定で騎士は感応石という鉱石で出来てる事がわかった。

 

「便利な石なんだね。ハジメくん」

 

「ふふ、そうね」

 

香織と経緯子はハジメの言葉に微笑むと

騎士への攻撃を再開する。

 

手近な騎士を破壊すると、素早く残骸に近寄り

 

「「収納」」

 

アイテムボックスに収納していく二人

 

「いらないものは、しまわないとだし」

 

「ゴミを拾ってリサイクルだね」

 

アイテムボックス内は時間が停止してるため

ゴーレム騎士は復活できない。

 

ソレを見てユエも残骸を自分の宝物庫に収納しようとするが

騎士の感応石の魔力が干渉して、収納出来ない。

 

「むっ…ずるい」

 

と不機嫌に言うとウオーターカッターで騎士を切り刻む。

シアもドリュッケンを振り回し、次々と騎士を粉砕していく

 

ハジメ達がゴーレム騎士の残骸を回収しながら迎撃して

しばらくすると騎士がハジメ達から一定の距離から近づいて来なくなった。

 

そして騎士たちに変化が、肘から下が回転し手首の所が三本の鋭い棘になると

ハジメ達に向かってワイヤーの付いた手首を飛ばして来た。

 

「残骸を取られるのを嫌がって接近戦を止めたか」

 

ハジメは飛んでくる棘を迎撃しながらぼやく。

 

「キリが無いから扉に向かうよ」

 

「うん」

 

「わかったよ」

 

「んっ」

 

「と、突破ですか?了解です!」

 

ドッパパアァン! ドカッカン!

 

「てぇい!」

 

先ずは香織が”オルカン”でロケットランチャーで前方の騎士を吹き飛ばし

その隙間をハジメは左右の敵をドンナーで破壊しながら

経緯子が手榴弾を放り投げつつ一気に扉にたどり着くハジメ達。

 

扉を開こうとするも案の定動かない。

 

「チッ!抵抗が大きいけど、錬成で強引に…」

 

ハジメが錬成の魔力を込め始めると

扉の紋様が光り出し、紋様がせり上がる。

 

『横の杖を溝に沿って動かし、溝の壁に触れずにゴールすれば扉が開くYO!

ただし杖が壁に触れると雷が出てアパパパDAZE!」

 

のメッセージが目の前に映し出される。

ハジメはそのイラッとくる。文章に扉を爆破してやると

プラッチック爆弾擬きを出して扉にセットしようとすると

 

ガコンッ!  ゴゴゴッゴッゴゴ!!

 

大きな音したかと思うと、三方の壁が前方に動き出す。

それに伴い、壁沿いに並ぶ騎士も近づきハジメ達への

攻撃の圧も高まり、ハジメも爆弾をセットするどころでは無くなり

経緯子と香織と共に騎士をレールガンで迎え撃つ

シアは向かって来る棘を大槌で弾き返す。

 

「んっ…私がやらねば誰がやる」

 

とユエは扉に備え付けの杖を手にして宣言し

電撃ウザウザ棒に挑戦を開始する。

 

ピッ!ピッ!ピーッ!

 

音がなりメッセージボードに制限時間のカウントが表示される。

破壊音が鳴り響く中、ユエは持ち前の冷静さを生かし

慎重かつ正確に杖を動かして攻略していく。

 

「チィ!」 

 

「このっ!」

 

「えい!」

 

「やっ!とっ!あう〜」

 

騎士達もかなり接近しハジメ達への攻撃も点から面になっていった。

幸い棘ワイヤーハンドが扉に当たる事が無いようには調整されていた。

 

「んっ…」

 

ユエはウザウザ棒のラスト二連歯車のタイミングを計っていた。

 

「んっんっんっン」

 

そしてユエは歯車の動きを見切り杖を一気に動かし

ゲームをクリアする。

 

「ハジメ」

 

ユエに呼ばれ振り向くと扉が開いていた。

扉の奥には殺風景な部屋があった。

ハジメが叫ぶ。

 

「皆!奥の部屋に飛び込め!」

 

「ふんぬっ!」

 

とシアは飛んできた爪の根元を掴み

ワイヤーごと騎士を振り回しなぎ倒し

香織と経緯子は銃を行き掛けの駄賃と

ばかり乱射し、その隙に5人は奥の部屋に飛び込み

素早く扉を閉めた。

 

ハジメはあらためて部屋を見るが

 

「大層な仕掛けの割に何もない」

 

「あんなにもったいぶってたのに!」

 

「ハジメちゃん。この根性悪の迷宮なら、どこかにハズレとか書いてるような」

 

「…ありえる」

 

「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」

 

5人が、一番ありえる可能性にガッカリし、

ミレディにヘイトを貯めていると

お決まりの音が

 

ガコン!

 

「「「「「!!」」」」」

 

作動音が響き部屋全体が揺れ動く

ハジメ達に横向きのGがかかる。

 

「うおっ?部屋が動いてる」

 

「おっと」

 

「ひゃうっ」

 

「…んっひぃ!」

 

「うきゅぅ」

 

話してると今度は真上からGがかかる。

急な変化にバランスを崩すハジメ達

ユエは舌を噛んだのか涙目で、シアは転倒し這いつくばってる。

 

その後部屋は何度も移動方向を変える。ハジメはスパイクを床に立て

体を固定しており香織とユエはハジメにしがみついている。

経緯子はと言うと手袋から粘着液をひも状にして床に固定していた。

只シアは方向が変わるたびにゴロゴロと床を転がってた

一分弱たった時、慣性を無視して急停止する。

体を固定出来てないシアだけが派手に転がり壁にぶつかりダウンしてしまった。

 

「やっと止まった。皆!大丈夫?」

 

「私は問題無いし」

 

「んっ平気」

 

「わたしもだよ。あっシア!」

 

香織がのびているシアに気づき治療魔法をかける為に駆け寄る。

 

経緯子が手袋の粘着紐を外し

 

「ハジメちゃん。ホント~ニィ!何もないし!」

 

苛立ちを隠くせずに言う。その言葉をハジメが受け。

 

「入って来た扉から出ていくしかないよな。嫌だけどさぁ」

 

ハジメ達は期待せず。しかし警戒し扉を開けるのだった。

そこには…

 

「……何か見覚えないか? この部屋。」

 

「……物凄くある。特にあの石板」

 

 

 

 扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、

 

 

 

「最初の部屋……みたいですね?」

 

シアが、皆が認めたくなかった事を代弁する。

そして部屋の床に文字が浮かび上がる。

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

 

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

 

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟

 

 

「「「「「……」」」」」

 

ハジメ達はその文字を無表情に無言で見つめてると

追い打ちをかけるが如く新たな文字が浮かび上がる。

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

 

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

 

〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟

 

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

 

〝ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟

 

「は、ははは」

 

「あは、ははは」

 

「はひっ、ひぁあはは」

 

「フフフ」

 

「フヒ、フヒヒヒ」

 

乾いた笑い声が響き渡った。

 

そして一週間がすぎた。

 

とある青白い仄かな光が照らす部屋

ハジメが壁に錬成で穴を掘り造った部屋だ。

本来ならこの迷宮での錬成の行使に魔力を多めに使うのだが

そこはナノマシンの補助のおかげで普段通りに錬成できた。

 

ハジメ達は今壁に寄りかかり休んでいた。

ハジメの肩を枕に香織とシアが寝ていた。

ユエはハジメの足の間に座り背中をハジメに

預け安らかな寝息をたてている。

 

「迷宮の中なのに…気持ち良く寝てるな」

 

と愚痴をこぼしながらも香織とユエを見る目は優しい

そしてシアを見ると涎を垂れただらしない顔で口を

ムニュムニュし警戒心のかけらも無いウサギさんだ。

ハジメはふと手を動かしシアの頭に近づけるとその時

 

「ハジメちゃん。うさ耳モフリたくなった?」

 

起きていた経緯子がカップ手にハジメに声をかける。

思わずハジメは手を引っ込めてしまう。

 

「ふふ、シアさん。よく付いてきてると思うから撫でてあげればいいのに」

 

と手にしてるカップの中身を纏雷の周波数を調整した。

レンジ魔法で温めハジメに手渡すのだった。

 

「ありがとう。シアも僕のどこがいいのやら…こんな所まで付いて来るほどかな」

 

「恋する乙女はそれだけ強いからとか?」

 

「受け入れるか、どうかわからないと言ってるのに…」

 

ハジメは呆れた顔でシアを見るが目は優しい

経緯子もそんなハジメを見て微笑んでいる。

その時、シアがムニュムニュと寝言を言い始めた。

 

「むにゃ…ハジメしゃん、お外で前シッポ洗浄なんて~大胆ですぅ~

しかたないですねぇ~ケイコさんに負けないぐらいキレイキレイしてあげますぅ~」

 

「ブフッ」

 

と飲んでいるお茶を吹き出すハジメ、それが顔にかかり起きるシア

 

「あちっ!…あっん」

 

その騒がしさに香織とユエも目を覚ます。

そして寝ぼけまなこのシアにハジメが

 

「シアさぁ?君の中の僕の性癖はどうなってるの?お外でなに?」

 

「えっ? ……はっ、あれは夢!? そんなぁ~、せっかくハジメさんがデレた挙句

その迸るパトスを抑えきれなくなって、羞恥に悶える私を更に言葉責めしながら

遂には私の眼前に前シッポをケイコさんのようにあッへぶっ!?」

 

聞いていられなくなった経緯子がシアの頭をはたく。

涙目になってるシアを睨みながら

 

「恥ずかし気も無く、そんな夢を語るんじゃないわよ。

それに私がなに?なのシアさん?」

 

「ううっ…夢の中くらいハジメさんの…を譲ってくれても

ケイコさんはヌルヌルでキレイキレイしてますし

カオリさんはいつもパクパクですぅあぐっ!」

 

ビシッ!ビシッ!

 

「「シア!」」

 

と経緯子と香織にチョップされ

ようやく口を閉じるシアであった。

 

「…残念ウサギ」

 

「一休みしたし攻略に戻ろうか」

 

ハジメは苦笑いを浮かべ言った。

 

「そうだね。苦労したけど、探索魔法とマーキングの併用で

なんとなくパターンも分かってきたし」

 

経緯子の言う通り、ハジメ達もこの一週間で迷宮の構造変化の

動きと位置関係を把握していた。代償として精神的な負担は大きかったが。

 

そして攻略を開始して暫く

一週間前に訪れてから一度も遭遇することのなかった部屋に出くわした。

最初にスタート地点に戻してくれたゴーレム騎士の部屋だ。

ただし、今度は封印の扉は最初から開いており、

向こう側は部屋ではなく大きな通路になっていた。

 

ハジメ達はゴーレム騎士の相手を避けるため

一気に通路を駆け抜け扉の前まで来た。

何故かゴーレム騎士が動くことが無かった。

 

「ハジメくん。ゴーレムが動かなかったね」

 

「もしかしたら残骸を回収されるのを嫌がったのかしら?」

 

「…んっ…いる?」

 

「だとすると?操っている…AIみたいなのかそれとも…

扉をくぐればわかるか、皆いくぞ!」

 

ハジメの合図に合わせ部屋に入る。そこは

半径一キロはありそうな球形の空間だった。

そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊して

スィーと不規則に移動をしているのだ。

完全に重力を無視した空間である。

だが、不思議なことにハジメ達はしっかりと重力を感じている。

おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。

 

「ハジメちゃん。前方中央に大きな反応がある」

 

経緯子が探索魔法で感知する。

その視線の先には

 

空中に浮かぶ全長20メートルはある巨大な騎士がいた。

その周りを小型のゴーレム騎士が宙に浮かび整列している。

 

 

「おいおい、マジかよ」

 

「すごっ!」

 

「らしいと言えばらしいし」

 

「……すごく……大きい」

 

「お、親玉って感じですね」

 

各々の感想を述べる。

 

そのハジメ達に巨大ゴーレムがアイサツする。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

「「「「「……は?」」」」」

 

 

 

ー----------------------------------

 

ここでハジメ達がライセン迷宮に入って

三日ぐらいのハウリアの里の様子を見てみよう。

 

夜、海里と雫が泊まっている一室で

 

「海里さん。そろそろ里を出ようと思うのだけど?」

 

と雫が海里に提案する。

 

「そうですね。ハウリアの人たちの訓練も一通り終えましたし

ケモ耳も堪能しましたし頃合いですね」

 

「どこに向かいます?香織達はライセン峡谷に迷宮を探しに行った様ですし

私達もそこにいけばいいのかしら?」

 

「う~ん。今からだと入れ違いになりそうですし?

グリューエン大砂漠に行くべきなんですかねぇ?」

 

「砂漠かぁ暑そう。なら準備が必要よ」

 

「取り合えず。ブルックの街に行きましょう」

 

「うん…香織」

 

雫は窓から見える星空を見上げつぶやく。

 

「雫さんは香織さんが好きですね」

 

「……うん」

 

「そうだ。私も経緯子に会えなくて寂しいので

隣で寝てくれませんか?」

 

「…ふふ寂しん坊のおねぇちゃんですね」

 

「そうです。私は寂しいのです」

 

という事で同じ床で就寝したのだが

 

 

「ゔぉ…ぐるじぃ…」

 

「ううっ香織ぃ…ぐすぅ」

 

「あうあう…きまってます」

 

と雫に寝ながら首に絞め技を決められる海里であった。

 

 

 




半年間、空いての更新です。まぁ活動報告にも書いてますが
夏から病状が悪化して、文章を打つ集中力が持続しなくて
今年の初めに入院し先日退院できました。

何とか体調が良くなり更新出来ました。
健康のありがたみを感じました。
こうやって小説もかけるし
このような最新刊の恵理、鈴を見てIFの絵
【挿絵表示】
も描けるので嬉しい。

でも挿絵と言えば入院中にそのつながりで大変な心配事が起きてました。


長々となりましたがこれで失礼します。



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