モーレツ宇宙海賊~弁天丸の副船長~ (アスラ)
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モーレツ宇宙海賊~弁天丸の副船長~
主人公の名前に関しては、ツッコミはなしにしてくれるとありがたいです。主人公の容姿を設定したとき、この名前しか浮かばなかったのです。←すでに変えました。
急展開かもしれませんが、そこはおおめに見てくれるとありがたいです。
作者のもう1つの小説、ヨルムンガンドの方は絶賛スランプ中です。
気長に待って頂けると幸いです。
とある宇宙の片隅で、二隻の海賊船が戦っていた。
片方は政府から発行された私掠船免状を持った海賊、ブラスター・リリカ率いる弁天丸。
もう片方は政府非公認の、正真正銘の海賊。
この二隻が戦闘にまで至った経緯はこうだ。
営業を終え、意気揚々と宙域を離脱した弁天丸は正体不明の海賊に襲われた。
これに怒れた梨理香はすぐさま電子せんとうを開始し、敵海賊船に乗り込んだ。
と、こんな単純明快な理由でこの戦闘は勃発した。
「おらおらおら!!早くぶっ倒れろ!!」
そして、敵海賊船内。
梨理香は敵に向かって銃をぶっ放す。
「梨理香。あまり前に出すぎるな」
それをたしなめるのは、旧型の戦闘サイボーグのシュニッツァー。
「解ってる!!心配するな」
そのまま撃ち続けると、弁天丸から通信が入る。
『梨理香さん。敵が白旗通信を寄越してきました。私達の勝ちです」
「そうか。なら引き上げてもいいな」
『はい……、え!?ちょっと待って下さい。……船内の一カ所でのみ戦闘が続けられています。場所は敵船内の格納庫です』
「白旗が上げられているのに、まだ戦闘を続けている奴がいるのか」
「おい!!どーいうことなんだ!?」
「し、知らねぇよ!!」
「嘘つけ!!」
「梨理香。怒鳴っていても何も変わりはしない。早くその場所へ向かうぞ」
「チッ!!解った。行くぞ、シュニッツァー」
リリカとシュニッツァーは格納庫へと向かう。
そして、辿り着いて見ものは驚愕の一言だった。
「り、梨理香さん!!オレらじゃ手に負えませ……ぎゃっ!!」
「くっそぉ!!なんで一発も当たんねぇんだよ!!」
「たった一人の、しかもガキが相手なんだぞ!!さっさと倒すんだ!!」
それは、たった一人の少年兵相手に苦戦させられる弁天丸の戦闘員達。
物陰から見える体躯はまさに少年のもの。肌は浅黒く、髪は真っ白な銀髪。
「おい!!何故少年兵がいるんだ!!」
シュニッツァーは近くに倒れていた敵の胸ぐらを掴んで問いただす。
「ひいぃぃ!!お、おれもよく知らねぇんだ!!お頭がいきなり連れてきたんだ!!」
「チッ!!役に立たんな。どうする梨理香。……梨理香?」
リリかに呼びかけるも、反応がない。
不審に思い、シュニッツァーは振り返る。
リリカは、呆然とした表情で突っ立っていた。
「何故、こんなところに少年兵が……」
しばらく呆然としていたが、表所を引き締め、梨理香は少年兵の元へと歩き始める。
「おい!梨理香、やめるんだ!!」
「梨理香さん!!」
「今すぐ引き返してください!!」
シュニッツァーとクルー達の叫び声が上がる。
梨理香は銃を手放す。
少年兵からの銃撃は続く。足、腕に被弾して血が出るが、たいした怪我ではなかった。
銃撃が止む。どうやら弾切れのようだ。
少年兵はナイフを取り出し、梨理香へと駆ける。
そして、二人が交錯する刹那。
梨理香は、少年兵を思いっきり抱きしめた。
「もう、人を殺さなくていいんだ」
優しく、あやすように語りかけるリリカ。
その顔は聖母のように優しさに満ちていた。
「お前は独りなのか?」
コクン、と腕の中で頷く。
「そうか。なら、私の家族になるか?」
「家……族?」
「ああ、そうだ。嫌か?」
少年兵はふるふると首を横に振る。
「決まったな。私達は今日から家族だ」
「家族……、お母さん……?」
「ああ。お母さんだ」
「お母さん……お母……さんッ!!」
少年兵は梨理香に抱きつき、大声で泣く。
「よしよし。いくらでも泣いてもいいぞ。そういえば、名前は?」
「ぐすっ、名、前。ないッ!」
「そうか。なら、私が付けてやろう。お前の名前は---」
「---真司だ」
それから××年後……
「こら、茉莉香。起きるんだ」
褐色の肌に真っ白な銀髪を持つ男性---成長し大人になった真司がベットにくるまっている少女を起こす。
「う~~ん。シン兄、あと5分待って~~~」
それに答えるのは加藤茉莉香。真司を救った女性、梨理香の一人娘だ。
「待たないぞ。それに、あと少しで朝食が出来る。喜べ茉莉香。今日は私が作った」
「ホント!?なら急いで着替えなくちゃ!!」
勢いよく身を起こした彼女は、慌てて着替え始める。
こんな行動を彼女が取るのには理由がある。
真司の料理は、そこらのレストランより旨い。それこそ、本職の料理人を唸らせるほどに。
彼の料理の虜となった者も多い。
茉莉香も例外ではなかった。
「茉莉香を起こしてくれたのかい?ありがとね」
キッチンへ向かうと、リビングで一人の女性が新聞片手に座っていた。
「梨理香。起きたのか?」
「ああ、美味しそうな匂いがしたものでね。いつもより早く起きてしまったんだ」
加藤梨理香。彼女は既に宇宙海賊を辞めている。
夫であるゴンザエモン加藤芳郎と別れた後は首尾良く姿をくらませた。つもりだが、実際はゴンザエモンが接触を禁止しただけで弁天丸クルーは所在を把握している。
今、彼女は新奥浜空港の管制官をやっている。
「そう言えば、茉莉香ももう16歳になるな」
ちなみに、梨理香は真司が大人になったのを機に敬語を使わせるのを辞めさせている。
「そうだな……。もう話すべきだろうね」
「機会は慎重に窺った方がいい。そんなに軽い話ではないからな」
コトリ、とテーブルに人数分の食器を置く。
3分後。騒がしい音と共に茉莉香が制服姿でやって来た。
「そう言えばシン兄。今度はいつまでここにいるの?」
「何だ。藪から棒に」
朝食の席で茉莉香は真司に質問する。
「いや、シン兄がいつまでいるかで今後の予定が変わってくるから」
「すまないが、今日の昼には出発してしまう」
「ええーーー!!そんな、急だよ!!」
「本当にすまない。お詫びにお土産を買ってくるから、それで我慢してくれ」
「ホント!!ありがと~。シン兄は宇宙船の航海士だからね。良いお土産期待してるね!!」
満面の笑みを浮かべる茉莉香。
「ふむ、そうか。しかし、お土産に期待するのもいいが時計には注意することだな」
「へっ?……うわ!もうこんな時間!!梨理香さん、シン兄!!行ってきまーす!!」
茉莉香は鞄を持ち、慌てて玄関を飛びだしていった。
「騒がしいやつだ」
「まったくだ」
コーヒーを口に持っていく。
その時、真司の胸ポケットに入っている通信端末がメールを受信した。
「む……。すまない、梨理香。もう行かねばならなくなった」
「急な仕事か?」
「そんなところだ」
「そうか。頑張ってこいよ、海賊稼業」
とある宇宙空域。
海賊船『弁天丸』は一人のクルーを迎えていた。
「一週間ぶりの弁天丸だが……、ふむ、変わっていることはないな」
ヨナは黒のライトアーマーを身につけ、その上に赤い外套を身に纏っている。
下半身も同様のライトアーマーを付けており、軍用ブーツを履いている。
これが、彼の仕事着。
自動ドアが開き、仲間達の姿が見える。
「おかえりなさい。副船長」
「ああ。ただいま」
彼の名前は加藤真司。弁天丸の副船長である。
好評なら連載も考えます。
感想、待ってます。
※名前を変更しました。
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