気ままな短編集(二次創作) (久遠ノ語部)
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お題1:しーくれっとのーと

お題:ぐだ子の夢ノート(ぐだ子主人公のカルデアイケメンサーヴァントからモテモテ学園ラブコメ)を見つけたジーク君


 「マスター……おや、居ないのか」

 

数多のサーヴァントを従える我がマスターだが、普段の姿は数多の英霊を従えるというより一人の友人として、家族として共に過ごしている。だからだろうか、俺のようなホムンクルスにも良くしてくれている。有り難い限りだ。そんなマスターからマイル―ムに来て欲しいと呼ばれたので来てみたはいいが、どうやら別件で外しているようだ。数多の英霊に好かれる稀有な我がマスターのことだ。きっと他の英霊と話しているのだろう。

 

 「……よし」

 

ならば、待つことにしよう。幸い、読みかけたまま放置された本が数冊部屋に散らばっている。時間が余れば、それを読みながら待てばいい。

 

 マスターのマイルームに置かれた数冊の本を纏めていると、あるタイトルに目が奪われた。

【ニーベルンゲンの歌】

 「──これは」

 

かの大英雄、ジークフリートの伝説だ。今、自分がこうして居られるのは、全てあの大英雄のお陰だ。万感の思いで息を吐く。何しろ、そのジークフリートもこのカルデアに居るのだ。また出会える時があるなど、それこそ奇跡と言えるだろう。例え、あの時の大英雄では無いとしても、ジークフリートであることは変わりない。

 

 気を取り直して、数冊の本をタイトルが見えるように机へ置き、椅子へ座る。

 

──思ったより、マスターの戻りが遅い。

 

気がつけば、ニーベルンゲンの歌を手に取っていた俺だが、目的はマスターからの呼び出しだ。探しに行こうかとも思ったが、それではマスターと入れ違いになると考えて踏み止まる。ふと、マイルームの扉からマスターのベッドへ目を移す。

 

 「──ん?」

 

よく見ると、ベッドの下に一冊の薄い本が落ちていた。

 

 「俺としたことが、見落としていたか」

 

拾ったそれは、マスターの日記だろうか。タイトルも何もない、だけど使い込まれた形跡のあるそれは、長い間大事に持っていたことが分かる。きっと、このカルデアにて出会った様々な経験、英霊やマスターとして勉強したことをこのノートに書き残しているのだろう。大変、勤勉なマスターだ。

 

 「我がマスターは──」

 

大英雄、ジークフリートをどう思っているのだろうか。この部屋にあるということは、最近ニーベルンゲンの歌を借りたのだろう。ならば、最後の頁に載っているのではないか。大英雄、ジークフリートについて話し合いたい、そんな軽い気持ちでノートを開き──人間の新しい一面を知った、いや、知ってしまった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 「──はー、思ったより時間かかっちゃった」

 

ジーク、待っているだろうな。まさか、赤いオカンから部屋の整理がなっていない、と捕まるとは。確かに、最近は忙しくしていて、部屋の片づけをサボっていたのは認めます。けれど、30分もの説教は疲れるのです、何だかんだ掃除してくれたり、美味しいご飯を作ってくれるのは本当に有り難いけど。ああ言えばこう言うあの無銘の英霊は、アーチャーでありながら別の何かではないかとよく思う。

 

──料理人のサーヴァント?母度の高いサーヴァン……いけない、それは別の何かだ、忘れよう。

 

人を待たせていると聞いて、詫び代わりのお茶請けをスムーズに用意してくれたのは流石である。

 

 「ごめんねジーク、待たせちゃったね」

 「──」

 

何かを読んでいる。憑きものが付いたように、何かを、真剣に。

 

 「ジーク?」

 

嫌な予感がする。最近は、忙しくて部屋の整理も出来ていなかった。それに、つい先日赤いオカンが整理をしたばかりだ。タイトルが見えるように置かれた本が数冊。借りてきた本はあれで全てだ。では、あれは何だ。

そ、それにしても、ジークから返事が無いのも珍しい。恐る恐る、ジークが何を読んでいるか覗き込んで──

 

 「い、いい、いやぁあああああああああ!」

 

硝子の心が砕け散りそうになる。それは、それだけは誰にも見られたく無かったというのに……!

 

 「マ、マスター……来ていたのか。済まない、気が付かなくて」

 

驚きながらも謝ってくるサーヴァント、ジーク。気兼ねなく話せるサーヴァントの彼に見られてしまうとは……不覚!

 

 「そうだ、マスター。一つ言っておかなければならないことがある」

 

畏まって何を言うのだろうか。待たせてしまったことだろうか。予め机に置いておいたお陰で被害を受けなかったお茶請けだろうか。しかし、ジークは私と秘密のノート、そしてタイトルが見えやすいように置かれた本に目を向けていた。

 

 「かの大英雄、ジークフリートは」

 

ああ、彼は今、私に晩鐘の鐘を鳴らそうと言うのか、無自覚のまま。次に口を開く時が怖い、瞬きのようなこの一瞬が、永遠のように感じられる。

 

──汝の首を断つか。

 

ハッ、私は今、何を考えた。サーヴァントであり、友人でもあるジークがそんなことを言う訳が……

 

 「マイルームでも、このノートに書かれたように、同じクラスメイトとしてマスターに甘い声、というものを掛けているのだろうか」

 

おお、神よ、どうして私にこのような試練を……いや、神霊いるんだけど。いけない、こういう時は、柳生さんに倣って……我が心はふ、浮動。し、しかして自由に、自由に在らねばならぬ。

 

 「それと、他のサーヴァントも同じように言っているのだろうか。この【カルデア高校、私と七色のサーヴァント!】にはそう書いてあったが。もし、他のサーヴァントもマイルームで言っているのならば、俺もその甘い言葉、というのを言わねばならないな。いや、しかし、俺にはルーラーが……」

 

──死告天使

 

ああ、あの鐘の音が聞こえ、

 

 「マスター、どうしたんだ。マスター」

 

 この後のことはよく覚えていない。

──令呪3画を使ってコンティニューしますか?

いや、そんな選択肢あったらとっくに選んでいるわ!




実は、これが初めての二次創作だったりします。

人物描写の練習になりそうなので、もしこんなお題で何かを書いてほしい……そんなことがあれば感想欄までお願いします。m(_ _)m


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お題2:君と二人で、星を見る

お題:マシュ24歳、ぐだ26歳でカルデア関係のごたごたがやっと落ち着き、郊外の静かな公園でこの先どんな未来を歩もうか、と話をしているぐだとマシュ。


 人が疎らになった公園にある噴水の前、それが彼女との待ち合わせ場所だ。

少し夜風が冷えるが、厚着をしているから問題はない。問題は、彼女が体を冷やしてしまわないかどうか、だ。手持無沙汰から夜空を見上げると、満天の星が夜空を埋め尽くしている。

周囲に誰も居ない時、草の匂い、一面の海、そして、青空や夜空。一面を埋め尽くす光景を

その昔、何度も僕たちは見てきて来た。

 

──誰の記憶にも残らない開拓者、僕達のことを呼んだのは誰だったか。

周囲に誰も居ない時、あの日々の後から物思いに耽ることが多くなった、仕方のないことだと思いたい。

──その昔、長い、長い旅をした。一度の人生では間違いなく経験できない程の貴重な、されども凄惨な旅をした。それは人理を巡る大冒険、明日を焼かれた僕達が最後に足掻いたあの場所で、僕達は人理を守る戦いに身を投じた。

 

フランス、ローマ、オケアノス、ロンドン、アメリカ、ブリテン、そしてウルク。

その地その地で様々な人に助けられ、様々な人に裏切られ、そうしてまた、僕達の次の旅へ赴いた。それは、この先の人生にも言えるのだろう。この旅に終わりなんてない、この足が動かなくなるまで。僕達という旅人は今という時間を飛び続けているのだ、世界が回っている限り。

 

 「──懐かしいな」

 

あの頃に戻りたい、とは口が裂けても言えない思い出だけれども、今から思えばあの日々はあまりに輝かしく、そして、生きることに必死だった。これからも、この先も、生きることがこれほど大変だ、と思った日々はこの先もないだろう。

あの頃の拠点──カルデアは既に解体され、僕達も他のレイシフト適性者と共にカルデアを去った。まぁ、僕達に関しては、カルデアにいた皆が上手く逃がしてくれた、と言うのが正しいのだけど。そうして懐かしく、だけども懐かしさを忘れてしまった実家に戻った後、見たことのない金額が口座に振り込まれており、顎を落としたのは今でも思い出せる。

というか、未だに実感が湧かないことすらあるほどだ。まぁ、その時こそどうしようか焦ったものだったが、その辺はダヴィンチちゃんが上手く誤魔化してくれていたらしい。流石は世紀の大天才だ。それと、変わらない笑顔を浮かべて、もう一つおまけだよ。と言って彼女が僕に託したのが──

 

 「先輩!」

 「マシュ、久し振りだね」

あの時と変わらない、けれど以前とは比較にならないほど眩しい笑顔を向けるマシュ。

 「はい!」

 カルデアから出た彼女は今、考古学を専攻しており、将来は様々な時代の文化財の保護に携わることをしたい、と言っていた。勿論、それらは僕たちがレイシフトで見たモノではないけれど、マシュはドクターや様々な時代の英雄達が大事にしてきたモノを守りたいのだ、と意気込んでいる。あの人が見たら、和菓子を落としてしまう程に泣いて喜ぶのだろうか。

 「それにしても先輩は凄いですね」

彼女に褒められるとどうも照れ臭くなる。こればかりはあの時から変わらないらしい、顔に熱が集まるのがよく分かる。

 「国籍を問わず、様々な子供たちに向けた授業を世界に行っているじゃないですか」

 

きっとそれは、あの時の世界の命運を賭けた大冒険が無かったら、考えすらしなかった道だろう。

 

 「それは大袈裟だよ、マシュ。普段と変わらない授業を色んな子供たちが見て、世界ってこんなに面白いんだ、って思って欲しくて色んな所で授業をしているだけなんだから」

 

僕達の世界は広く、未知に溢れたものだと思う。だけど同時に、厳しく、残酷で、特に人はあらゆる手段を使っても表現できない程の多面性を一人一人が持っている。

 

 「それに、さ」

 「どうしました、先輩?」

夜空に輝く星を想う。生きるために、星を求めた日々を想う。

 「あの時から、僕たちは沢山の人に助けられて此処にいる。色んな人が様々な思いをしているから、今があるんだ」

 

そして、それは一般の人に限った話だけではない。

 

──民を愛したフランスの王妃と憎悪に濡れた聖女、古代ローマを作った男装(?)の王と未来のローマを愛した神祖、海を踏破した女海賊と世界に悪名を轟かせた海賊、父に深い執着を見せながら、叛逆ではなく守る為に力を奮った円卓の騎士、人々の治療にその生涯を歩んだクリミアの天使、その多くが武人として生きたケルトの英雄達、王に最期の忠義を果たした騎士と守るがため、非情に徹した円卓の騎士達とその王、ウルクを統べる王と三女神、そして、原初の母であると共に世界を壊すことしか出来なかったティアマト。そして、僕達を守るために全てを捨てたドクターと魔術王、ゲーティア。

 

 あの日々を忘れることなど出来ないだろう。あそこでは、様々な出会いと別れがあった。そうした出会いと別れを繰り返し、こうして生きていられるのは様々な奇跡の積み重ねなのだ、と思うと共に、この世界の一瞬一瞬が替えの効かないものなのだ、と噛み締めることが多くなった。

 

 「先輩、それは──」

マシュも俺が何を思ったか気付いたんだろう。二人で一緒に、星を見る。

終わらない命なんてない、そして、死者は還ってこない。今はこの時しかないのだ。だから、今、この時を生きている、その事実を大切にして欲しい。それは、あの旅が終わり、還ってきて暫く経った後から、強く、強く思うようになった。例え、その先に何が起ころうとも、それは、それだけは変わらないだろう。

 「ねえ、マシュ」

 「何でしょうか、先輩」

一つ、聞きそびれていたことがあった。

 「そろそろ卒業する、って聞いていたけど」

 「はい、皆さんのお陰で無事に卒業出来そうです!」

 「じゃあ、何処に行くかも決まっているんだね」

用意のいいマシュのことだ、その辺は心配していない、ないのだけど……何故かマシュの顔が赤い。

 「えっと……そのですね。幾つか誘われたんですが、お断りしました!」

 「えっ!?」

これは、予想外だ。ただ、決まっていなかった場合のことを一応考えたことがある。

 「で、それでですね、先輩……」

 「マシュ」

恥ずかしそうに顔を下げるマシュの顎を上げ、視線を合わせる。これはこれで恥ずかしい。

 「ちょうど、古い文化財とかを子供たちに教える人が欲しいなって思っていたんだ」

マシュの顔に笑顔が戻る。ああ、やっぱりマシュには笑顔が一番だ。

 「もし、良かったら手伝ってくれるかな」

まぁ、こう聞いておきながら、一つだけ分かっていることがある。

 「はい、はい!」

──思い出したことがある。彼女の手を取ったあの日から、僕の世界は変わったのだ。

 「先輩、これからもよろしくお願いします!」

だからこれからも、二人で手を取って歩いて行くこと。そう、あの日と変わらずに手を握って。

 




後からお題を見返すと、カルデア関係のごたごたが落ち着いてから時間が経っている件について。
2部の終わりが分からないため、1部終了時点でカルデアを出た、という設定です。
郊外の静かな公園でこの先どんな未来を歩もうか、と話をしているぐだとマシュ。


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お題3:【サボりと食事は適切に】

アルジュナとおっきーが昼下がりに相席


 「あーあーあー、原稿が終・わ・ら・な・い~」

お昼ご飯を食べる為に作業場を出たのはいい、だが、直ぐに部屋へ戻るつもりはない。姫らしくないって。そりゃあそうですよ、何故なら炎を纏った蛇がいるからだ。怖い、戻りたい訳がない。そりゃあ、予定より少し遅れているとは言え、まだ鐘に籠る必要はないはずだ。

何処かで彼女と同じものを、と聞こえた気がしたが、気のせいだろう。嫌だ。まだ時間はある。たまたま先の展開が浮かばないだけなんだ。だから、休憩と言って作業から逃げ……食堂に行けばマーちゃんも居るかなーと思ったけど、現実は甘くないらしい、とほほ。マーちゃんさえ味方につければ何とかなると思っていたんだけど。今はもう、殆ど食べ終えてしまったカレーを掬う素振りで誤魔化すことが精一杯だ。

 「済みません。こちら、宜しいでしょうか」

 「え、あ、その、はい」

あ、新しいイケメンがいるー! そういえば最近、マーちゃんが目を真っ赤に染めて虹色の石を虚空から引き出していたけど……こういうこと?

 「驚かせたならすみません。まだ全員に挨拶が出来ていないようでした」

白ランに褐色肌、い、今までのカルデアでは見たことないタイプ……!

 「私はアルジュナ、アーチャーのサーヴァントです」

わ、わ、姫に自己紹介!?

 「よ、よ、よろしくお願いします~。私はお、刑部姫でーす……」

イケメンオーラが眩しい! というかその匂い、とても辛そうなのですが……

 「オサカベヒメ……マスターの出身のサーヴァントでしょうか。よろしくお願いします」

何このイケメン紳士サーヴァント! 白ラン着ててイケメンとか生徒会長か!

 「カレー、ですか」

 「ええ、スパイスの効いた食事を、と聞いたところカレーならどうか、と言われまして」

なるほど、それでカレー。それにしても、姫が食べていたカレーよりも遥かに辛そうなカレーを汗もたらさず食べるとは。カレーの黄ばみが取れないことが悩みの生徒会長とか思ったが、そんなことは無さそうだし。って、あっと言う間に半分を食べ終えた……?

 「……そういえば、先程」

 「は、はい。何でしょうか」

何故だろう、背筋に悪寒が走る。え、背中に蛇でもいる……?

 「清姫でしたか、確かあなたを探していましたよ」

白ランのイケメンサーヴァントさん、今、あなた何て言いました?

 「確か、休憩が長すぎる……とか。何か知っていますか。オサカベヒメ」

涼やかに聞いてくるな、このイケメン。きよひーが私を探しているのだから、何も知らないはずが無いでしょう。ということは……私は既にきよひーという蛇に睨まれた蛙なのでは。まさか、まさか、ね。水着剣豪の時みたいなことは早々……

 「ああ、こんな所にいたんですね」

ブルっとした。あれかな、あれかナ。きよひーに見つかったお坊さんもこんな気持ちだったのカナ。助けてマーちゃん。

 「お昼ご飯を食べに行くと聞いておりましたが、どうやら既に食べ終えていた様子ですね。ところで、今まで何をされていたのです」

白ランのイケメンサーヴァントさん、私を助け……って、いつの間に食べ終えているんですけど!?

 「いやぁ~、ちょっとね。気分転換もしたくて、ね」

 「それにしては、随分と時間が経っていると思いません?」

時計を見れば、午後の2時30分。やばい、確か、1時には戻るときよひーに言っていたんだった。は、はわわわ……この状況を脱出する為には……

 「い、いや。あのね。ちょっと詰まっていたから、ネタを考えていてね。それでさっきさ、思いついたんだけど、白ラン着た生徒会長とヒロインの物語っていうのはどう、どう?」

あ、目が笑っていない。姫、終わった……

 「あらあら、やる気があるのはいいですね。それじゃあ、早速始めましょうか。もう昼食も終わったのでしょう?」

このままでは、鐘の中で原稿を作るハメに……それだけは避けなければ。ってあれ、何時の間にイケメンサーヴァントはブーディカと話をしているの……?

 「ええ、先程彼女も食べていたというカレーも美味でした。あなたの時代でもこのような食事があったのですね」

 「いやー、実はここに来て知った、というか。さっきのカレーはエミヤくんって言うサーヴァントに作り方も教えて貰ったものなんだ。昼頃にマスターと一緒に出掛けちゃったけど、彼の料理は皆から人気でね。直ぐに無くなっちゃうことも少なくないんだ」

 「そうですか。是非彼の料理も味わってみたいものです」

 「そうねー。そこにいる刑部姫もそのカレーを食べていたし、お願いすれば作ってくれると思うよ」

……あ、姫、死んだかも。

 「しかし、私一人の為だけにそのような……」

 「マスターもエミヤのカレーが大好きだからね。今日は別の料理を食べていたから、お願いすれば、その内作ってくれると思うよ。彼、何だかんだマスターに甘いからね」

 「なるほど、ではその時を楽しみにしましょう。それはまた今度頂くとして、もう一杯カレーを頂いても良いですか?」

 「お、気に入ってくれたかな。お姉さんサービスしちゃうよ」

ああ、SOS、SOS。マーちゃん、きよひーの顔が怖いです。

 「おっきーに質問です。わたくし、怒っているように見えますか?」

 「あ、あわわわ……」

 「……懲りないですね、おっきーも」

ああ、どうかあの鐘だけは勘弁を。マーちゃん、助けて……

 「ご想像の通り、これからおっきーには道成寺鐘に籠って原稿に専念していただきまーす♪」

 「ぞん゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 「おや、オサカベヒメは何処に行ったのでしょうか。まだ物足りない様でしたので、二皿用意したのですが。折角ですので、私のガラムマサラの感想を聞きたかったのですが……」

 

きよひーに連行されて食堂から去る時に、残念そうに呟く声を聞いた気がした。

 



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呼び名

特にお題を貰った訳ではないが、エミヤとブーディカで何か書きたいので書いた、以上。

料理面は前段として軽く済ませるつもりだったんだけどなあ……


 槍の修練場に行き忘れていた、と叫んだマスターがたまたまその場にいたセイバーだけを連れて、慌てて修練場へ飛び出したのは午後九時を回った頃。

 

唐突に姿を消して、戻ってきたマスターに小言を並べようとしたものの、直ぐにミーティングがあると言って、マシュと一緒にミーティングルームへ行ってしまった。こればかりは仕方ない。夕食時も終わり、片付けも殆ど終わった所で明日の仕込みをブーディカと二人で行おうとしていた時だ。疲れたように小さくため息をつきながら、誰かが食堂に入ってきた。

 

 「ふぅ、思わぬ出撃でした」

 「や、どうしたの、アルトリア。珍しいじゃない、こんな時間に」

 「いえ、他の職員の手伝いをしていたら、マスターが急に修練場に行かなきゃと叫ばれて、慌てて出撃することになったのです」

ブーディカがお疲れ様、と水を渡す。

 「あぁ、だから夕食の時間にも居なかったのか」

 「はい、職員の方も忙しそうにしていましたし、私は英霊の身。一度や二度、食事を抜いた所で倒れる訳ではありませんから」

 「では、どうしてここに来たんだ、セイバー」

これは純粋な疑問と興味からだ。彼女であれば、そのようなことがあれば翌日に顔を出すことが多い。

 「そ、それは、ですね」

 「ん?」

何故かセイバーが物言いたげな顔を浮かべは、振り払うように小さく首を振っていた。

 「ええ、修練場の報酬が思った以上に良かったことを喜んだマスターが、今日の食事のお陰だろうか、と」

 「確かに食事で精神的な充足を得ることはあるだろうが、食事で幸運が付くかと言われると……」

その理論で言うのならば、幸運Eの私の料理をマスターが食べることで、マスターの幸運値も下がるのでは。いや、それは相反するか。食材に私のような幸運値が付かないことはマスターが証明しているからな。

 「とにかく、今日の食事がとても美味であった、とマスターが言っておりまして……それで」

強情な彼女のことだ。話を聞いてしまったが為に気になってしまったのだろう。ふと、ブーディカと目が合う。彼女もまた、セイバーを気にかけている人物だ。

 「色々手伝っているアルトリアが食べられないのは可笑しいからね」

互いの目的が合致したことを確かめるように、同時に頷く。

 「生憎、今日の分は殆ど残っていないがね。だがまぁ、在り物だからこそ出来るという料理もある。少し時間を貰うが構わないか、セイバー」

 「はい、あなた方であれば間違いなく美味な料理でしょう」

その信頼、応えて見せよう。ブーディカの視線が生温かい気がするのはきっと気のせいだろう。

 

広々としたキッチンで、ブーディカがこちらに目を向ける。

 「ところで何を作るんだい、エミヤ」

 「健啖家の彼女であれば、この時間でも夕食時のメニューで構わないがね。時間も時間だ。軽いものがいいだろう」

出汁を加えた水を鍋で沸騰させた後、一口サイズの豆腐を鍋へ投入。弱火で3分ほど煮た後、とろみを付けた後に溶き卵を少しずつ注ぐことがポイントだ。

 「ふむふむ、簡単だけど風邪の時にも良さそうだねえ」

夕食の残り物を上手くあり合わせたブーディカがこちらの様子を見に来たようだ。

 「ああ、本当はもう少し手を加えたい所だがね。この時間であれば、この位がちょうどいいだろう」

残っていた白米を小さめの丼へ盛り、其処に先程の鍋の中身をこちらへ移す。仕上げに青ネギを少量加えて完成だ。

 「へぇ、それも和食なのかな」

 「ああ、豆腐にも諸説あるが、大豆から作られて、生で食べる豆腐はマスターの母国、日本のものだな」

 「本当に色々知っているねぇ、お姉さんも勉強が足りないなぁ」

とても、そうは思えない。近代のシステムキッチンを始めとした家電製品は料理の上では便利だが、使い方が分からず四苦八苦する者も少なくないはずだ。何かを作ろうとして失敗したサーヴァントが何騎いたのやら。

 「いえ、貴方はとても勉強されていますよ。私は元々、近代のサーヴァントである為に知っていただけなのですから」

 「またまたぁ~、謙遜しちゃってぇ。知っていても出来ない人だって多いはずよ。っと、アルトリアに持って行ってあげないとね」

お盆に料理を載せてブーディカがセイバーに料理を渡す。

 「おお、これは……」

セイバーが料理に気を取られている間に、後片付けをするとしよう。

 

 

 

 ふむ、大体片付いたな。明日の仕込みも十分だろう。後は最後の利用者の食器を片付ければ完了だ。

 「遅い時間に来てしまったのに、料理を作って頂いてありがとうございました。ブーディカ、アーチャー」

両手を合わせ、セイバーが満足げに礼を言う。

 「後片付けを手伝いましょうか」

 「ああ、大体終わっているからね。任せておいて」

 「分かりました。重ねてありがとうございました」

今度こそ、セイバーが食堂を後にした。

 

 後片付けも終わり、食堂の清掃も終えた所でブーディカに茶を勧められる。私としても断る理由がないので、紅茶を二人分用意して席に座る。暫くはマスターのことや明日の献立について話していた中で、先程セイバーへ振る舞った料理の話をしていた時だ。

 「どうしました、ブーディカさん」

今でこそ慣れたが、召喚された当初こそMrs ブーディカと呼んでいた。しかし、気安く呼んで欲しいと言う本人の要望もあり、以降はブーディカさんで通している。私のような掃除屋が偉大な英霊に対して敬称を付けないのは失礼だろう。キャスターやランサーはどうなんだ、だと。何のことだ。

 「いやねぇ、どうしてアルトリアは君のことをアーチャーって呼ぶんだろうって」

理由など、言うまでもない。彼女が聖杯への望みを失っていることには驚いたものだが、あの忌々しい未熟者の影響なのだろう。

 「さて、どうしてだろうな」

 「とか言っているけど、君も君だよ、エミヤくん。君だって他にも沢山のセイバークラスのサーヴァントがいるのに、アルトリアだけはセイバー呼びするんだから」

流石にここの食堂で長く共にした間柄ではないようだ。ウインクしながら言う様は、親戚の姉のような接し易さがある。

 「星の祈りが込められたかの聖剣、エクスカリバー。その聖剣を扱う騎士王を真名で呼ぶなど、マスターでもない限り軽々しくは出来ないさ」

 「ふぅん、それにしては距離が近い気がするけどねぇ。まぁいっか。話を戻すけど、あれの作り方を教えて貰うことは出来るかな」

 「問題ない。今回は丼にしたが、単品でも消化のいい一品だし、うどんと併せてあんかけ風にすることも出来る。他の品との相談にはなるが、比較的相性のいい食材は多いはずだ。近日中にやってみるとしよう」

 「おお、これで私のレシピに新しい一品が追加される訳か。また教えて貰うよ、エミヤくん」

 「承知した。それに、私も未熟な所がまだまだある。野外調理時の火加減を見る時などは貴方には到底及ばないさ」

 「またまたぁ~」

ふとブーディカが時計を見ると、その短針はもう11時を回っていた。

 「すっかり話し込んじゃったねえ。そろそろ休もうかな」

既に茶の片付けは終わっている。ならば後は休むだけだろう。

 「マスターはもう就寝しただろうか」

 「相変わらず過保護だねえ、と言いたい所だけど……」

思う所があるのか、ブーディカが嫌なことを思い出すように顔を顰める。

 「いつの間にか部屋に忍び込まれているのは怖いからねえ」

 「この前も、マシュとマスターが血色を変えて私の部屋に来たからな。以前にも、貴方の所に来たのではなかったか」

 「うん……そうだったね」

 

そんな話をしていたこと自体がフラグだったのか、未だ灯りが付いている食堂に飛び込む人物が現れたのは、別の話。

 

 

 



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