ご注文は長男ですか? (鬼松竹梅)
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第一羽 前編

 俺はパン屋の長男!竈門炭治郎だ。

 訳あって幼馴染みのココアと木組みの家と石畳の街に引っ越して来たのだが…下宿先が見つからない。

 

「きれーいかわいい街!ここなら楽しく暮らせそう!」

 

 能天気に街を探索するのは幼馴染みのココアだ。

 

「確かに綺麗だ!じゃなくてこの道であっているのか?」

 

「大丈夫だよ!たぶん」

 

 不安だ…心配だからついて行って欲しいと言われたが、俺は初めて都会にきている。俺は長男だ!長男は挫けない!頑張れ炭治郎。

 

「喫茶店…ラビットハウス」

 

 ココアが目に止まった喫茶店の看板を読む。

 うさぎとコーヒーカップのロゴが特徴的な看板だ。

 

「ラビット…入ってみよう!」

 

「ココア、待ってくれ」

 

 ココアは俺を置いて店に入っていく。

 ココアを追って俺も店に入ると店員さんが出迎えてくれる。

 

「いらっしゃいませ」

 

 見た目は幼いがおとなびた雰囲気を感じる少女だ。そして、頭に乗っている毛玉が気になる。

 

「うさぎ!うさぎ!うさぎが、うさぎがいない、うさぎがいない!」

 

 店に入ってうさぎを探すココア。うさぎ目当てで入ったんだな?店員さんから動揺の匂いがする。このままじゃ店員さんの迷惑になる、止めないと。

 

「やめるんだココア!店員さんが困っているだろ!」

 

「だってウサギがいないんだよ!ラビットハウスなのに」

 

 たしかにココアの言いたいこともわかる。ラビットハウスにしてはうさぎ要素がないな。もしや、店員さんがうさぎなのでは?

 

「店員さんがウサギかもしれないだろう!」

 

「うちはそういう店ではないので」

 

 凄く冷たい声で言われた。

 

 

 

 

 なんやかんやでここが下宿先の香風家だと分かった。これからここで働きながら高校に通うのだろう。みんなでいろいろな思い出を作ることを想像すると楽しみだ。

 

「私はチノです。ここのマスターの孫です」

 

「俺はパン屋の長男!竈門炭治郎だ。長い間お世話になるがよろしく頼む」

 

 練習した通りの自己紹介ができて、つかみはバッチリだ。

 

「私はココアだよ。よろしくねチノちゃん」

 

「はい。炭治郎さん、ココアさん」

 

 無事に顔合わせが終わり、仕事について聞こうとしたがチノに先手を越される。

 

「家事は私一人でなんとかなってますし、お店も十分人が足りてますので…何もしなくて結構です」

 

 いきなりの戦力外通告に出鼻を挫かれてしまった。

 

「いきなりいらない子宣言されちゃった」

 

 ココアは落ち込み肩を竦める。

 

「ココア、挫けるな俺たちはできる奴だ!チノ、とりあえず挨拶したいんだがマスターさんは何処にいるんだ?」

 

「そうだね炭治郎くん!」

 

「祖父は去年…」

 

「そっか、今はチノちゃん一人で切り盛りしてるんだね…」

 

 言いづらいことを聞いてしまった。チノは一人で働いているのか偉いなぁ。

 

「いえ、父もいますしバイトの子がもう1人…」

 

 二人でチノを抱きしめる。チノが妹みたいに感じた。

 

「「私(俺)を姉(兄)だと思ってなんでも言って!(言ってくれ!)」」

 

「だからお姉ちゃんって呼んで」

 

「俺のことも兄ちゃんって…」

 

「ココアさん炭治郎さん」

 

「お姉ちゃんって呼んで」(食い気味)

 

「兄ちゃんって…」

 

「ココアさん炭治郎さん」

 

「お姉ちゃんって呼んで」(真剣)

 

「ココアさん炭治郎さん、早速働いてください」

 

「「任せて(任せろ)」」

 

 

 

 夜はバーをやっているらしく、俺の制服は、バー用の制服だ。ココアはチノの制服と色違いでなかなか似合っていると思う。

 

「ココア似合っているよ」

 

「ありがとう炭治郎くん、かわいいでしょ!」

 

 褒められて、嬉しそうに飛び跳ねているココア。

 

「で君は誰なんだ?」

 

 知らない少女が後ろでじっと俺を見ている。さっきチノが言っていたバイトのが人だろう。

 

「炭治郎さん、彼女はここのバイトのリゼさんです。リゼさん、彼はココアさんと同じで今日から下宿する炭治郎さんです。」

 

「よろしく炭治郎」

 

「こちらこそよろしくリゼ

 

 綺麗で気の強そうな少女だ。しかし、何故に銃を手にしているのだろうか、危ない子かもしれない。

 

「リゼさん、先輩として炭治郎さんとココアさんにいろいろと教えてあげてください」

 

「きょ、教官ということだな」

 

 嬉しそうな匂いがする。先輩として頼られるのが嬉しいのかな?

 

「嬉しそうですね」

 

「この顔の何処がそう見える」

 

 照れ隠しするリゼ。

 

「よろしくねリゼちゃん」

 

「リゼ、その銃はなんなんだ?」

 

 危ないから銃をしまって欲しい。

 

「教官に口を聞くときは、言葉の最後にサッーつけろ!」

 

 強い口調で命令するリゼは完全に教官になりきっている。

 

「落ち着いてサッー」

 

「銃が気になるサッー」

 

 やっぱり、危ない子じゃないか。




天元「第一印象が大事だ。もっと派手に入店しろ!」
炭治郎「宇髄さんだったらどう入店しますか?」
天元「音の呼吸 壱ノ型 轟で派手に入店だぁ!」
炭治郎「なるほど!俺も水の呼吸で好印象を」
チノ「やめてください」


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第一羽 中編

「じゃあ、このコーヒー豆の入った袋をキッチンまで運ぶぞ」

 

 そう言って袋を指差す。コーヒーを入れたり接客の練習をするかと思ったけど、これなら簡単だ。

 

「うっうん」

 

「任せてくれ」

 

 力には自信があるからな全集中の呼吸…よし一気に運ぶぞ。

 

「おっ重い…これは普通の女の子にはきついよ。ねぇ、リゼちゃん」

 

 弱音を吐くココア。

 

「あぁ、確かに重いな。うん、無理だ。普通の女の子には無理だ」

 

 それに賛同するリゼから焦りの匂いがする。ここは、俺が頑張らないとココアたちでは大変だ。

 

「ココアたちは小さい袋を運んでくれ、大きい袋は俺が運ぶよ」

 

「さすが男の子!たよりになる」

 

「すごいな。私でもそんなに持てないぞ」

 

「毎日、鍛えてるからな」

 

 前世と同じ修行をしたからな、家族を守るために。

 

 

 

 

「ココア、炭治郎、メニュー覚えておけよ?」

 

「うん、ありがとう」

 

 リゼにメニュー表を渡された。カタカナが多くて覚えるのに時間が掛かりそうだ。

 

「コーヒーの種類が多くて難しいね」

 

「そうか? 私はひと目で暗記したぞ? 訓練しているからな」

 

「「すごいっ」」

 

 二人で驚いてしまった。リゼは頭がいいんだな。

 

「チノなんて香りだけでコーヒーの銘柄を当てられるぞ?」

 

「それならできるかも。俺は鼻が効くんだ」

 

「試してみますか?」

 

 チノがコーヒーを二種類を出してくる。

 

「望むところだ」

 

「この上品な香りはぶるーまうんてん」

 

「正解です」

 

「この優雅な香りはきりまんじゃろ」

 

「正解ですがカタカナ苦手なんですか?」

 

「うっ」

 

 すごいってところを見せようと思ったのに行動が裏目にでてる。カタカナは読みにくいじゃないか!文字数も多いし。

 

「それにしたってすごいな。炭治郎はコーヒーが好きなのか?」

 

 リゼに聞かれて考える。俺は洋風より和風の方が好きだと思う。

 

「いやっ抹茶の方が好きかな」

 

 コーヒーは嫌いではない、匂いが好きなんだ。

 

「どうしてわかったんですか?」

 

 チノに聞かれてココアとコーヒーについて勉強したことを思い出す。懐かしいな、どっちがよりコーヒーに合うパンを作れるか勝負したんだっけ。

 

「前にコーヒーに合うパンを試作したことがあって、ココアとコーヒーを勉強したんだ。」

 

「えっ?そういえばそんなこともあったかな?」

 

 ココアは首を傾げる。

 

「ココアさんは忘れやすいんですね」

 

「そんなことないもんっ!」

 

 ココア、忘れていたのか。

 

「ココア、炭治郎がめちゃくちゃ凹んでるぞ」

 

「ごめんね〜炭治郎くん!」

 

 いいんだ。幼いときのことだから覚えている方が珍しい。

 

 

 

 

 客足がなくなり静かになった店内、暇を持て余している俺はチノに尋ねる。

 

「チノはなにをしているんだ?」

 

「春休みの宿題です。空いた時間にこっそりやっています」

 

 俺はも空いた時間にできることを探そうか。と考えてるとココアも話し混ざってきた。

 

「へぇ〜偉いなぁ」

 

「へぇ〜どれどれ」

 

 ココアとチノのノートを見る。

 

「あ、その答えは128で、その隣は367だよ~」

 

 ココアは計算が得意だもんな。リゼとチノから驚いた感情が匂う。

 

「ココア、430円のコーヒーを29杯頼むといくらだ?」

 

 リゼがココアに質問する。

 

「12470円だよ」

 

 間髪入れずにココアが答える。

 計算とか禰豆子にまかせっきりだったからな〜俺もココアに負けてられないな勉強しよう。

 

「はあ、私も皆みたいに何か特技があればなぁ~」

 

 自分の特技に気づいていないココア。

 

 

 

 

「リゼちゃん、なにやっているの?」

 

 ココアが不思議そうにリゼに質問する。俺も気になって近寄る。

 

「ラテアートだよ。カフェラテにミルクの泡で絵を描くんだ。この店ではサービスでやっているんだ。描いてみるか?」

 

 らてあーと?コーヒーに絵を描く?どういうことなんだ。

 

「絵なら任せて!これでも金賞をとったことあるんだから!」

 

「懐かしいな小学生低学年のときだっけ?」

 

 ココア、凄く喜んで自慢しにきたもんな。

 

「ギクッ」

 

「わかりやすいなぁ。まあ、手本としてはこんな感じに…」

 

 リゼが次々に、ラテアートを描いている。すごいな、こういうの見るとうちの店でもやりたくなる…猫かわいい。

 

「おぉ!すごいうまい!」

 

「そんなにうまいか?」

 

「リゼは絵が上手なんだな。もっと見たい」

 

「ねぇ、もう一個作って!」

 

「しょ、しょうがないなぁ、特別だぞ」

 

「「ほんとぉ!?」」

 

「ちゃんとやり方も覚えろよ!」

 

 次はなんだろう犬だろうか。リゼがすごい動きをしている、透き通る世界で観察しよう。

 

「できたー!」

 

 リゼがコーヒーに書いたラテアートは戦車だ。

 

「うまーい!!いやっ上手ってレベルじゃないよ」

 

 これはすごい!人ができる域を超えてる。

 俺にリゼの動きを再現できるだろうか?前集中の呼吸 よし!

 

「俺も描きます!リゼみたいにできるかわからないけど」

 

「が、頑張れ炭治郎!」

 

「俺と禰豆子の絆は、誰にも 引き裂けない!」(言いたいだけ)

 

 ここで汚名返上して見せる!禰豆子、力を貸してくれー!!

 

「できた!これが兄弟の絆だ!!」

 

 渾身の出来!禰豆子の似顔絵!これは柱!

 

「すごい!禰豆子ちゃんの似顔絵だー!」

 

 驚くココア

 

「発想がすごいけど誰なんだー?!」

 

 リゼは分からないよな。この自慢の妹を。

 

「妹です!!」




禰豆子「はっ!お兄ちゃんが私の話をしている気がする!」
モカ「ココア、しっかりやってるかしら」
禰豆子「きになるな〜お兄ちゃん電話使えないし、手紙早く届かないかな〜」
モカ「ココア成分が足りないよー!」


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番外編 パン屋

 引っ越す前です。


 生まれ変わって10年、この世界には鬼がいない。しかも大正ではない。

 この平和な世の中で俺はパン屋の長男。

 

「今日も美味しいパンを焼くぞー!」

 

「お兄ちゃん、今日は会計をしたいって言ってたよね」

 

 工房から話しかけて来たのは、妹の禰豆子だ。

 そして昨日、約束したことを思い出した。しかし、工房を禰豆子一人に任せるのは少し心配だ。

 

「大丈夫か禰豆子?」

 

「心配いらないよ!昨日お父さんが生地を作ってくれたから焼くだけ」

 

 さすが父さん。クーポン券とポイントカードの準備万端っと。

 

「今日も一日頑張れ炭治郎!!」

 

 営業開始だ!

 

 

 

 

 土曜日ということもあって忙しい1日だった。そろそろ看板を下ろそうっと思っていると店の扉が開かれる。

 

「いらっしゃいませ!こんにちは!」

 

「ヒィィ…ッ」

 

 来店したお客さんに見覚えと嗅いだことがある匂いがする。その金髪も汚い高音も俺は知っている。

 

「善逸じゃないか!再会できて嬉しいよ!!」

 

「ぃいやあぁぁ!な、なに?なんで俺、男に抱きしめられてるのぉ!?なんで俺の名前知ってんるのぉ!?コワィィ!!」

 

「お、落ち着いてくれ善逸!」

 

 動揺する善逸を俺はなだめる。

 

「な、なんで名前知ってんだよ!ストーカーなの!?男のストーカーはいらないよぉ!!」

 

 善逸は鬼殺隊のときの記憶がないんだな。名前を読んだのは不味かったかな。

 

「同姓同名の古い友人に似ていたから感極まって抱きしめてしまった」(嘘をつくときの顔芸)

 

「なにその顔!絶対嘘じゃん!音でわかるからなっ!?」

 

 今世でも善逸の耳は物凄いみたいだ、これはまいった。

 

「お兄ちゃん、お店が騒がしいけどココアさんが来たの?」

 

「禰豆子、いいところに来た!」

 

 工房から顔を出す禰豆子。

 

「え、なにその子!めっちゃカワイイ!!結婚して下さい!」

 

「えっなに?どうしたのこの状況?」

 

 禰豆子のおかげで話をあやふやにできた。

 

 

 

 

「お会計は以上です」

 

「あのさぁこのクーポン券の量はなに?多くない」

 

「また来てくれよ善逸!」

 

 話をそらす。

 

「来るよ!クーポン券貰わなくても来るよ!あとお前の名前教えろよ!なんで俺だけ知られてるの!」

 

「パン屋の長男!竈門炭治郎だ!これからもよろしく」

 

「じゃあな炭次郎!また来るよ禰豆子ちゃん!」

 

 いつもの調子で店を後にした。

 

「「ありがとうございました!」」

 

 善逸が帰っていく。この世界では善逸も平和に暮らしているんだな、よかった、よかった。

 

「お兄ちゃん、あの人と知り合いなの?」

 

 禰豆子が聞いてくる。

 

「あぁ!善逸って言って優しくて強い奴だ」

 

「へぇ〜善逸さんかぁ」

 

 もしかしたらこの世界には善逸だけじゃなく伊之助や義勇さんもいるかもしれない。いるとしたら会いたいな、善逸、次はいつ来てくれるだろう。また考えていると店の扉が開く。

 

「すみません営業終了してしまって」

 

「遊びに来たよ炭治郎くん!」

 

「ココアか」

 

 お客さんかと思ったらココアだった。

 

「はいこれパンのおすそ分け」

 

 どうやら売れ残ったパンを持ってきてくれたみたいだ。

 

「珍しいな。売れ残るなんて」

 

「いや〜多く焼きすぎちゃってね」

 

「何かあったのか?」

 

「半々羽織の無口そうな、お兄さんが沢山買っていってね。それで多く焼いたの」

 

「そんなことが」

 

 半々羽織で無口…義勇さんかもしれない。

 

「それって臙脂色と特徴的な模様が入った半々羽織じゃなかったか?」

 

「え、そうだけどなんでわかったの?教えて!」

 

 やっぱり義勇さんだ!この世界にいるのか会いたいな。

 

「そのお客さん知り合いなんだ」

 

「そうなんだ!」

 

 驚くココア。

 

「また来たら、うちの店も進めてくれないか?」

 

「うん、いいよ!」




義勇「全種類(を一個ずつ)貰いたい」
ココア「???」
しのぶ「言葉が足りませんよ。そんなだから皆んなに嫌われるんですよ」
義勇「俺は嫌われてない」
ココア「全種類ってどういうことですか?」
しのぶ「店のパンを全部欲しいって意味です」
義勇「(そんなこと)いってない」


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第一羽 後編

 少女着替え中…

 

「ココアと炭治郎は今日からここで寝泊まりするんだよな?」

 

「うん、そうだよ」

 

「チノ、この家ってそんなに部屋余ってたか?」

 

「炭治郎さんは物置部屋を使ってもらいます」

 

「私と同じ部屋でもよかったのにね」

 

「さすがに無理があるだろ男女同じ部屋は」

 

「えーそうかなぁ?それよりチノちゃん、今日の夕食一緒に作ろうね」

 

「一人で出来ますよ」

 

「えぇ、私も手伝って炭治郎くんより良いところ見せたい!」

 

「チノちゃんのハートを掴んでお姉ちゃんって呼ばれたい!」

 

 

 

 

 

 物置部屋っていってもすごく綺麗に掃除されてあるなぁ。とりあえず荷物の整理だ。

 

「木刀、羽織り、家族写真、着替えはここにしまうとしよう」

 

 なにか忘れているような。

 

「はっ!着いたら手紙を送ってと言われていたな!危ない思い出した」

 

 ごめんよ〜こんなお兄ちゃんで写真沢山送るからな。っと、カメラはどこにしまったかな?母さんに使い方を教わったからな完璧だぞ!

 

「ここが電源ボタンで後はここを押すだけ」

 

 パシャッ

 

「いい自撮り!これは柱」

 

 待てよ…。

 

「これをどうやって紙にするんだ?」

 

 ※その後、チノに教わるのだがそれはまた別の話。

 

 

 

 整理を終えてリビングに降りてくると、チノとココアが夕食を作っているようだ。

 

「今晩はシチューです」

 

「俺にも手伝えることないか?」

 

「いえ、一人で大丈夫です」

 

「なんでも手伝うぞ!」

 

「じゃあ、シチューの野菜を切ってもらえますか?」

 

「任せてくれ!試したいこともあるんだ」

 

 検証!水の呼吸で野菜は切れるのか?今まで台所に立ったことがないから楽しみだ。

 

「チノちゃん、私は?」

 

「さっき、ココアさんは包丁を天井に刺したじゃないですか」

 

「ヴェアアアアアアアア!ごめんねーチノちゃん!!」

 

「気にしてません。それより炭次郎さんはなにをするつもりですか?ココアさんと同じ危なさを感じるんですが…」

 

「大丈夫だ!心配いらない台所に立つのは初めてだが刃物にはなれているからな!」

 

「それはそれで不安です」

 

 野菜たちを宙に投げる。けして食べ物で遊んでいる訳ではない!これは調理だ!

 

「今からお前を斬る!水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!!」

 

 いくつもの波が勢いよく押し寄せるように複数回も野菜を斬る!包丁が短い分より速く斬撃繰り出せる。

 

「すごい!でも炭治郎くんは仲間(料理下手)だと思ってたのにー!」

 

「どうだ!チノ」

 

「これじゃあ、せん切りですね。サラダにしますね」

 

 ついやってしまった。加減が難しいな、これから特訓していこう。

 

「ごめん。チノ」

 

「大丈夫だよ!ようこそ、こっち側の世界(料理下手)へ歓迎するよ!!」

 

 誰かがノックしてリビングに入ってくる。この人はきっとチノのお父さんだ。チノと似た匂いがする。

 

「なにもの?」

 

「こちら父です」

 

「君たちがココアくんと炭治郎くんだね。この家も賑やかになるなぁ、今日からよろしく」

 

「「お世話になりますっ」」

 

「こちらこそ、チノをよろしく。じゃっ」

 

 そう言ってチノのお父さんはリビングを出た。

 

「「は、はい」」

 

 そっか、ラビットハウスって夜になるとバーになるんだったな。

 

「うちの父さんに雰囲気が似てる」

 

「確かに、炭治郎くんのお父さんもクールだもんね!」

 

「そうなんですか?」

 

「クールというか病弱というか。でも頼りになるよ」

 

 

 

 

 

 風呂から上がり寝床に着く。

 いろいろあったけど無事に一日が終わった。

 

「明日も頑張るぞ炭治郎!」




チノ「炭次郎さん、ご飯かパンどっちにしますか?」
炭治郎「ご飯で頼む」
チノ「意外です。パンの方が好きかと思いました」
炭治郎「よく言われる。俺はパンよりご飯派だ」


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第二羽 前編

 竈門炭治郎の朝は早い。日の登る前に炭治郎は起きる。

「俺、長男なんで早起きは慣れてます。この時間帯が一番修行しやすいんだ」そう語ると日々の日課に向かう。

 

 公園で一人、木刀を握り構える。

 兎に角、ヒノカミ神楽 全ての型を繋げる。一度も途切れず日が昇るまで。

 

「ふぅ、日輪刀じゃないぶん余裕があるな」

 

 明日から学校だからもう少し鍛えようか。その前にご飯だ!引越し前に貰ったサンドイッチを持ってきたんだ。

 

「禰豆子ありがとう!いただきます」

 

「美味しい!さすが禰豆子、いいお嫁さんになるな!」

 

 サンドイッチをムシャムシャしてるとうさぎが一羽よってくる。

 

「どうぞ禰豆子特製サンドイッチだ。味わって食べるんだぞ」

 

 かわいいうさぎ。なでなでなで、よしよしよし。うさぎを可愛がっていると一羽一羽とどんどんよってくる。

 

「うおっ凄いことになってる。この街のうさぎは人慣れしているんだな」

 

「おいでー、おいでー」

 

 驚いたうさぎに混じって女の子が餌をあげてる。

 

「あのぉ、うさぎって栗ようかん、食べるんですか?」

 

「うちのあんこは食べるのに」

 

 あんこがようかんを食べるって共食いじゃないか。どういうことなんだ?

 

「あんこって誰ですか?」

 

「あんこはうちの店の看板うさぎよ」

 

「なるほど、うさぎか」

 

「ほらおいでー、おいでーあら?」

 

 パクッ

 栗ようかんに寄ってきたのはうさぎではなくココアだった。

 

 

 

 

「ココアちゃんに炭治郎くんね。私は千夜よ」

 

「千夜ちゃん、深みを感じる名前だね。炭治郎くんも偶然だね」

 

「驚いたよ。ココアなんで制服を来てるんだ?」

 

「あっー!入学式に遅刻しちゃうよぉ!」

 

「ココアちゃん、私たち同じ学校だと思うの。だから今日は…」

 

「二人とも急ぐよ!早く」

 

「待ってくれ、ココア!」

 

 ココアに手を引から連れてかれる。

 

「あれれ?戻ってきちゃった…」

 

「ココア、入学式は明日だぞ」

 

「えっ?」

 

 ココアに手を引かれて公園を出たのに公園についた。自分でもなに言ってるかよくわからない。

 

「ココアちゃん、入学式は明日よ」

 

「うわあああ!恥ずかしいぃ」

 

「おもしろい子…そうだ、ココアちゃんが迷わないように、今から学校を下見に行きましょう。炭治郎くんもいいかしら?」

 

「女神様ぁ」

 

「いいと思う!一度学校の匂いを覚えておけば迷わないからな」

 

「炭治郎くんもおもしろいわ」

 

 千夜に案内されて学校に着く。

 

「ここが、明日から通う学校よ」

 

「私の新しい学びやかぁ、見てるだけでワクワクしてくるね!炭治郎くん」

 

「千夜、中学校って書いてあるんだけど」

 

「あ…ここ中学校だったわ。卒業したの忘れて間違えちゃった」

 

「私の感動をかえしてえぇ!」

 

 その後、俺たちは高校に向かった。匂いもしっかり覚えることができた。これで俺もココアも迷うことはないはずだ。

 

 

 

 

 チノが学校から帰ってきた。

 

「ただいま」

 

「「おかえり」」

 

「高校のほうはどうでしたか?」

 

「この街ってかわいい建物が多くて素敵だよね」

 

「そうですか。高校はどうでしたか?」

 

「ココア、入学式が明日って知らなくて…」

 

「言わないでえぇ!恥ずかしいよぉ」

 

「そうですか。炭治郎さんは朝早くからどこへ行ってましたか?」

 

「俺は公園で日課の素振りを…部屋に書き置きしてなかったか?」

 

「すみません。そこまで確認してませんでした」

 

 優しいなチノ、日課のこと言い忘れててごめんよ。

 

「そっか、せっかく朝食作ってくれたのにごめんな」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「炭治郎くん、毎朝素振りしてるの?」

 

「あぁ、言ってなかったか?」

 

「初耳だよ!私も明日から早起きする!」

 

「ありがとう。でも無理しなくていいぞ、ココアは朝弱いからな」

 

「ココアさん今朝、寝ぼけてケチャップとマヨネーズを間違えてましたよ」

 

「ふぇえ!?」

 

「まったく、しょうがないなココアは」

 




千夜「今日ね新しい友達がてきたわ」
伊之助「そうか!そいつはうめぇのか?」
千夜「食べ物じゃないわ」
伊之助「じゃあ、強いのか?」
千夜「晩ご飯、なにがいいかしら?」
伊之助「天ぷら!!」


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第二羽 中編

「大きいオーブンならありますよ。お爺ちゃんが調子に乗って買ったやつが」

 

 ティッピーが頬を赤く染める。

 ティッピーって普通のうさぎじゃないよね。鎹鴉みたいに喋るからな。

 

「ほんとぉ?今度の休みの日に、みんなで看板メニュー開発しない?焼き立てパン美味しいよぉ」

 

「いい考えだ。パンのことな俺に任せてくれ!」

 

「話ばっかしてないで仕事しろよ」

 

 ぐう〜っとリゼの腹が鳴る。

 

「焼き立てって美味しいんだよ!」

 

「そんなことわかってる」

 

 また鳴る。

 

「リゼ、顔赤いけど大丈夫か?」(追い討ち)

 

「うぅ…」

 

 リゼの機嫌がすごく悪くなった。

 

 

 

 

 

 休日、看板メニュー開発のためにラビットハウスに集まった。

 

「同じクラスの千夜ちゃんだよ」

 

「今日はよろしくね」

 

「チノちゃんとリゼちゃん」

 

「「よろしく(です)」」

 

 顔合わせが終わり、早速パン作りだ。

 

「炭治郎くんも実家がパン屋よね?」

 

「あぁ、美味しいパン作りの極意を骨の髄まで叩き込む!ココアが」

 

「任せて!これでみんなもパン大好きフリスキーだよ!」

 

「なんか、不安になってきた…」

 

「私もです」

 

「うふふ、楽しくなりそうだわ」

 

 今日集まった目的がズレてる気がするけどみんな楽しそうだからいいよね。

 

 

 

 

「各自、パンに入れたい材料提出!私は新規開拓に焼きそばパンならぬ焼うどん作るよ」

 

「私は自家製の小豆と梅と海苔を持ってきたわ」

 

「冷蔵庫にいくらと鮭と納豆と胡麻昆布がありました」

 

「俺はタラの芽を持ってきた!これでみんなも丈夫になる」

 

「これってパン作りだよな?」

 

 

 

 

「先ずは、強力粉とドライイーストを混ぜて」

 

「ドライイーストってパンをふっくらさせるんですよね?」

 

「よく知ってるねチノちゃんえらいえらい。乾燥させた酵母菌なんだよ」

 

「攻歩菌?うっ」

 

 チノから恐怖の匂いが…安心させないと。

 

「大丈夫だチノ、怖がらなくていい。働き者で凄い菌なんだ!」

 

「ヒィッ…そんなに危険な物入れるくらいならパサパサパンで我慢します」

 

「余計怖がらせてどうする!?」

 

「はい、ドライイースト」

 

「ああっ…」

 

 ココアが躊躇なくドライイーストを入れるとチノの顔が絶望したような表情になる。

 絶望するな、そんなのは今することじゃない。

 

 

 

 

「パンをこねるのって凄く体力がいるんですね」

 

「腕がもう動かない」

 

「リゼさんは平気ですよね」

 

「な、何故決めつけた」

 

 確かにリゼはいい筋肉の付き方をしている。(透き通る世界)

 

「千夜ちゃん大丈夫?手伝おうか?」

 

「うぅん、大丈夫よ」

 

「頑張るな?」(感心)

 

「千夜、無理しなくてもいいんだそ」

 

「ここで折れたら武士の恥ぜよ!息耐えるわけにはいかんきんっ」

 

「千夜ちゃん、炭治郎くんみたいなこと言ってるよ」

 

「頑張れ炭治郎頑張れ!俺が挫けることは絶対に無い!」

 

「確かにそうだな」

 

 

 

 

 各々、好きな材料を入れて形を整えて、後は焼けるのを待つだけだ。

 

「チノ、そんなにたのしいか?」

 

「どんどん大きくなっていきます。お爺ちゃんがみんなに抜かれていきます。リゼさんだけ出遅れてます、もっと頑張ってください」

 

「私に言うなよ」

 

 そうして、みんなのパンが焼き上がった。

 

「「「いただきます!!」」」

 

「美味しい!」

 

「ふかふかです」

 

「サクサクだ。さすが焼き立てだな」

 

「美味い!いやこれは…かなり美味い!!」

 

「これなら看板メニューにできるね!」

 

「この梅干パン」

 

「この焼うどんパン」

 

「この焦げたお爺ちゃん」

 

「このタラの芽羽織メロンパン」

 

 今回は自信作!メロンパンに俺の羽織と同じ柄を着色、さらに中身はタラの芽が入っている。もう、完璧!究極のパンの完成だ。

 

「どれも食欲をそそらないぞ。特に炭治郎」

 

 ガーンッ!長男は折れない!凹まない!

 

「じゃーん!ティッピーパンも作っておいたんだ」

 

「まぁかわいい」

 

「おお…」

 

「店にあっていてぴったりだ」

 

「看板メニューはこれで決定だな」

 

 中身はなにが入っているのかな。気になるけど、食べるのが可哀想に思ってしまう。

 

「中身は真っ赤なイチゴジャムね!」

 

「なんか、エグいな」

 

「ごめんよ、ティッピー」

 

「炭治郎さん、泣きながらティッピーを食べないでください」

 

「そうじゃ!そうじゃ!」(ティッピー)

 

「中身は変えましょう」

 




リゼ「なんでココアに任せたんだ?いつもなら、自分からやりたがるのに」
炭治郎「俺は教えるのがすっごく下手なんだ」
リゼ「へ〜。試しにパンの作り方を説明してみて」
炭治郎「なんかこうグワーッてガーッてとかググーッて」
リゼ「うん、わかった」


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第二羽 後編

「この辺りだと思うんだけど」

 

 俺たちは千夜に「パン作りでお世話になったお礼にうちの喫茶店に招待するわ」と言われ、お邪魔することになった。

 

「どんなとこか楽しみだね♪」

 

「なんで名前の喫茶店ですか?」

 

「たしか、甘兎庵って言ってたぞ」

 

「甘兎とな?」(ティッピー)

 

 ティッピー、何か知っているのか?

 

「お爺ちゃんの時代に張り合っていたと聞きます」

 

「好敵手ってことか」

 

「そんな生ぬるいものじゃないわ!」(ティッピー)

 

「チノちゃん、ほんとに腹話術なの?」

 

「みんな、ここじゃないのか?」

 

 到着したようだ。和風な店でいい雰囲気だ。

 

「看板だけやたら渋い。おもしろい店だな」

 

「オレ、うさぎ、あまい?」

 

 俺、甘兎庵って言わなかった?

 

「甘兎庵な」

 

「「「こんにちは」」」

 

「あらみんな、いらっしゃい」

 

 店に入ると千夜が出迎えてくれる。っとこの懐かしい匂いは誰だ?

 

「よくきたな!みんな、俺の子分にしてやるぜ!」

 

 店の奥から伊之助がやってきた。

 

「凄くキャラの濃いのが出てきた」

 

「なにもの?」

 

「伊之助!伊之助じゃないか会えて嬉しいよ!」

 

「炭治郎じゃねぇか!猪突猛進!猪突猛進!」

 

 伊之助に思いっきり頭突きされた。伊之助も再会できて嬉しいよな…意識が遠のいていく…。

 

「あらあら」

 

「炭治郎くんが吹っ飛んだよ」

 

「しっかりしろ!権八郎」

 

 名前を間違える癖、治ってないんだな…。

 

「気絶してますね」

 

 

 

 

 

 目が覚めると知らない天井。どうやら気絶した後、寝室まで運ばれたみたいだ。

 

「大丈夫?炭治郎くん」

 

 ココアが見てくれていたのか。

 

「大丈夫だ、ココアありがとう。伊之助は?」

 

「大丈夫だよ。伊之助くんなら千夜ちゃんのおばあちゃんに叱られてるよ」

 

「そうか。伊之助は悪くないよ」

 

「わかってるよ!伊之助くん、炭治郎くんに会えて嬉しそうだったから」

 

「ありがとう。みんなのところに戻ろう!」

 

「うん!」

 

 ココアに案内され、みんながいるテーブルに戻る。

 

「炭治郎さん、大丈夫でしたか?」

 

「平気だ!心配してくれてありがとう」

 

「それで誰なんだ?あの猪は」

 

「伊之助は気は強いけどとっても仲間思いのいい奴なんだ!さっきも嬉しくて頭突きしてきたんだ」

 

「それはそれで怖いですが」

 

「安心してくれ!伊之助は俺が丈夫なことを分かっているから」

 

「信頼し合える仲ってことね。羨ましいわ」

 

 千夜がお盆に品をのせて戻ってきた。

 

「炭治郎くん、ココアちゃんと同じ品でよかったかしら?」

 

 グラスに抹茶アイスやあんこやたいやき!こんなも贅沢盛りがあっていいのだろうか!

 

「全然、大丈夫だ!美味そう」

 

 美味い!かなり美味いぞ。

 

「気に入ってもらえて嬉しいわ」

 

「美味しいでしょ!」

 

「ああ!これはなんて名前なんだ?」

 

「黄金の鯱鉾スペシャルだよ」

 

「すごい名前だ」

 

「普通の反応でよかったです」

 

「さっきは悪かったな炭治郎!かわりに、この親分が鍛え直してやる!」

 

 伊之助も戻ってきた。

 

「伊之助、ありがとう!俺も、もっと鍛えないとな」

 

「二人はなにをめざしてるんだ?」

 

 伊之助の腕は上がっていて、頭突きに反応できなかった。もっと精進しないとな。

 

「伊之助、場所を変えて話さないか?」

 

「いいぜ」

 

「炭治郎くん、どうしたの?」

 

「いや、少し男同士の話をするだけだ」(嘘をつくときの顔芸)

 

「ココアさん、久しぶりの再会を邪魔したら悪いですよ」

 

「そうだね♪」

 

 俺たちは少し離れたテーブルに座った。

 

「伊之助は鬼殺隊の仲間に会ったか?」

 

「あってねぇぞ!お前が初めてだ!」

 

「俺は善逸に会ったけど俺たちのことは覚えてなかった」

 

「紋逸にあったのか!?」

 

「ああ、ほかにも義勇さんらしき人も」

 

 伊之助がほわほわして嬉しそうだ。そうだよな今まで自分のことを知って人がいなかったんだもんな。

 

「伊之助、こんど善逸を連れてくるよ」

 

「ほんとかぁ?楽しみだぜ」

 

 

 

 

 

 俺たちか話し終わる頃にはみんな帰っていったみたいだ。

 

「俺もおいとまします」

 

「またきてね」

 

「きます!伊之助もまたな!」

 

「次は俺様からきてやるぜ!」

 

「ああ!ラビットハウスに来てくれ!」

 

「わしをつれて帰ってくれ!」(ティッピー)

 

 どうやらチノがあんこを持って帰ってしまったみたいだ。




しのぶ「ねぇ、義勇さん、ねぇ?」
義勇「なんだ?」
しのぶ「鬼殺隊って知ってます?」
義勇「知らん。用件はそれだけか?」
しのぶ「知らないなら知らないでいいんですよ」
義勇(なんだこいつ)


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第三羽 全編

ごちうさ三期決定おめでとう


 ココアの提案でカップ専門店に来た。ココアいわく、いろんなカップがあった方がお客さんが楽しめると。

 いい考えだと思うし、気にいるものがあればお土産に買いたい。

 

「かわいいカップがいっぱい!」

 

「あんま、はしゃぐな?」

 

 はしゃぐココアを注意するリゼ。

 案の定棚にぶつかるココア。

 

「危ない!ココア」

 

 咄嗟に棚を支える。リゼがココアを抱えて、チノが棚から落下してくる写真立てを両手で掴む。

 

(((予想を裏切らない)))

 

「えへへ、ごめんね」

 

「気をつけてくれ、ココア」

 

 ココア昔から危なっかしいからな、心配になる。見てないうちになにかやらかしそうでハラハラする。

 

「おお、かわいい」

 

 チノが手にした写真立てにはコーヒーカップの中にすっぽり、うさぎが入ったかわいい写真が入れてある。

 

「ティッピーも入ってみたら注目度アップだよ」

 

「もしかしたらティッピーが流行の最先端になるかも」

 

 満更でもないティッピー。

 

「そんな大きなカップはないだろ?」

 

「ありました」

 

 チノが丼ほどあるコップを持ってきた。これならティッピーも入れるな。

 

「あるのかよ」

 

 チノがティッピーをカップに入れる。

 しかし、写真のようなかわいさをティッピーから感じない。

 

「なんか違う」

 

「ご飯にしか見えないです」

 

「俺は面白いと思うぞ。かわいくはないけど」 

 

 ティッピーがムスっとした。勝手にやっといてその反応はなんだと言いたげな表情だ。

 

 

 

 

 小さくうさぎのロゴが入ったカップが目につく。このカップなんか店に合っていいんじゃないか。

 

「みんな、これなんてどうだ…」

 

 手に取ろうとすると誰かと手が重なる。右を向くと絵本に出てくるような金髪のお嬢様と目が合ってしまった。えっ外国人?どうする炭治郎。

 

「は、はろーあいらぶゆー?」

 

「へぇあ!?」

 

 あれ?なにか違ったかな?

 

「炭治郎さんが急に告白しましたよ」

 

「知ってる言葉を言ってるだけだろ」

 

「炭治郎くん!?なに言ってるのかな?」

 

 英語なんて話せないんだ。ココア、助けてくれ!ってココア、すごい怒ってる匂いがするぞ!!

 

「待って何かの勘違いだココア」

 

「私、心に決めた人がいるので…」

 

 この子なんで照れてるんだ?というか日本語上手だね。

 

「あれ?シャロじゃん」

 

「り、リゼ先輩!?どうしてここに?」

 

「リゼ、知り合いなのか?」

 

「私の学校の知り合いのシャロ。ココアと同い年だ。あと炭治郎、シャロは日本人だからな」

 

「そうなのか?すまないシャロ!外国人だと勘違いした」

 

「いきなり呼び捨てなの?距離近い離れて!」

 

「え、リゼちゃんって年上だったの?」

 

 ココアが驚く。

 

「いまさら!?」

 

 俺も同い年かと思っていた。

 

「先輩はどうしてここに?」

 

「バイト先の喫茶店で使うカップを買いに来たんだよ。シャロはなにか買ったのか?」

 

「いえ、私は見てるだけで充分ですので」

 

「見てるだけ?」

 

「えぇ、この白く滑らかなフォルム」

 

「「それは変わった趣味ですな(趣味だな)」」

 

「お前たちが言う?」

 

 この街は変わった子が多いな。

 

「二人は学年が違うのにいつ知り合ったのです?」

 

「たしかに気になる」

 

「それは、私が暴漢に襲われそうになったところを助けてくれたの」

 

 こんなに穏やかな街なのに災難だったな。いや、少し嘘の匂いがするぞ?

 

「へ〜かっこいいなぁ」

 

「違う!本当は道を塞いでいた野良うさぎを追っ払っただけだよ」

 

「う、うさぎが怖くて、悪い?」

 

 チノとココアがあからさまにがっかりしてる。シャロに助け舟を出そう。

 

「誰にだって苦手なものはあると思うぞ!俺は悪くないと思う」

 

「あ、ありがとう!そうだ、このティーカップなんてどう?この形、匂いがよく広がるの」

 

「へ〜カップにもいろいろあるんですね」

 

「こっちは持ち手の触り心地が工夫されているのよ」

 

 シャロが教えてくれたカップをココアと一緒に触れる。

 

「あぁ、気持ちいい」

 

「心地いい、シャロはカップに詳しいんだな」

 

「上品な紅茶を飲むにはカップにもこだわらないとね」

 

「「なるぼど」」

 

「うちもコーヒーカップには丈夫でいいものを使っています」

 

「私のお茶碗は実家から持ってきたこだわりの一品だよ」

 

「俺の耳飾りも…」

 

「なに張り合っているんだ」

 

 言い終わる前にリゼに塞がれた。

 

「でもうち、コーヒーの店だからカップもコーヒー用じゃないとな」

 

「え、そうなんですか?リゼ先輩のバイト先、行ってみたかったのに」

 

「あれ?もしかしてコーヒー苦手?」

 

 シャロがうなずく。

 コーヒーは好き嫌いが別れやすいよな。

 

「砂糖とミルク、いっぱい入れると美味しいよ」

 

「苦いのが嫌いじゃないのよ」

 

「ではなにが?」

 

「カフェインを取りすぎると異常なテンションになるみたい」

 

「コーヒー酔い?」

 

「そんな酔いがあるのか?」

 

 コーヒーで酔うところ、見てみたいけどシャロに悪いよな。

 

「自分じゃよくわからないんだけど」

 

「飲めなくてもいいから遊びにきなよ」

 

「はいっ!絶対いきます!」

 

 リゼに誘われて嬉しそうにシャロが返事をする。

 

「よかったな、シャロ」

 

「そうだね!炭治郎くん」




千夜「ココアちゃんたちに会ったのね」
シャロ「私がこんなボロ家に住んでること絶対に内緒にしてよ!」
千夜「慎ましやかでいい家だと思うけど」
伊之助「よくきたな!金髪うさぎ!」
シャロ「その呼び方やめて!」
千夜「この二人、面白いわ」



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第三羽 中編上

短め


 ラビットハウスのバイトも慣れてきた。客足が少なくてこの店は大丈夫なのかと思う今日この頃。

 勢いよく扉が開かれる。

 

「シャロちゃんが大変なのー!!」

 

「何事!?」

 

「千夜、そんなに慌てて、どうしたんだ?」

 

「シャロちゃんがこんなチラシを持ってきて…きっと如何わしいお店で働いているのよ!」

 

 千夜が持つチラシを見ると、うさぎの格好をした女性がロゴになってる。 

 こんな格好をしてシャロは働いているのか…ラビットハウスよりラビットしているじゃないか。

 

「負けてられないな!俺たちもうさぎの格好を…」

 

「ティッピーで十分です」

 

 チノに却下された。

 

「どうやってシャロちゃんを止めればいいの?」

 

「仕事が終わったらみんなで行ってみない?」

 

「潜入ですね」

 

「潜入!?お前らゴーストになる覚悟はあるのか!?」

 

 出た!たまになる張り切リゼだ!

 

「ちょっとあるよ」

 

「…また女装するのか」

 

 俺は嘘を吐くのが下手だ…炭子になるのも勘弁して欲しい。

 

「潜入って性別まで変えるの!?」

 

「潜入を甘くみるな!炭治郎を見習え、女装する覚悟があるぞ!」

 

 シャロのためだ長男に不可能は無い!!潜入だって完璧にやってみせる!

 

「「「サッー!」」」

 

「よし、私について来い!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

「炭治郎さん、女装まだする必要は無いと思いますよ」

 

 ところで俺たちはどこへ潜入するのだろう。シャロの働いてる店は、なんていう店なんだ。

 

 

 

 

 俺たちはシャロの働いてる店の窓際に隠れている。

 チノのおかげで女装を免れたが俺だけ男でバレやすい。一応、厄除の面を付けていよう。

 

「いいか、慎重に覗くんだぞ」

 

 リゼに言われた通り、慎重に覗くとそこには…

 

「いらっしゃいませー!」

 

 あのうさぎの格好で接客の練習をするシャロがいた。

 いい笑顔だと感心しているとお面越しに目と目が合ってしまった。

 

「ぃいやあぁぁ!変態!変質者!」

 

 なんか懐かしい感覚。善逸をおもいだすなぁ。

 じゃなくて誤解を解いてシャロを安心させるためお面を外す。

 

「俺だ炭治郎だ。潜入にやって来た!」

 

「炭治郎さん、すごい速さでバレましたよ」

 

「みんな、なんでいるのー!?潜入ってなに?」

 

「バレてしまったー!不甲斐ない兄ちゃんを許してくれチノ」

 

「ずるい!チノちゃんのお姉ちゃんは私だよ!」

 

「二人とも煩いです」

 

 チノに叱られてしまった。

 

 

 

 

 

「ここはハーブティーがメインの喫茶店よ。ハーブは体に良い色んな効能があるの。大体、勘違いしたのは誰?」

 

「私たちシャロちゃんに会いに来ただけだよ」

 

「シャロが心配で来たんだけど元気そうでよかった」

 

「そ、そう…ありがとね」

 

「千夜さん、如何わしいってどういう意味ですか?」

 

 チノの質問に目を泳がす千夜。

 

「こんなことだろうと思った」

 

「その制服すてき!」

 

 シャロの手を握る千夜。

 

「こいつかぁ!」

 

「でもシャロちゃんかわいい♪うさ耳似合う!」

 

「店長の趣味よ」

 

 リゼがじっとシャロの制服を見てる。

 

「リゼ、制服が羨ましいのか?」

 

「なっ、いいなぁなんて思ってないからな!」

 

「リゼ先輩なら絶対似合いますよ!」

 

「うぐっ…」

 

 リゼが顔を真っ赤にして照れている。

 リゼにも女の子らしいところがあるんだなぁ。




伊之助「俺の出番はまだか?」
炭治郎「後編まで我慢してくれ」
伊之助「我慢…我慢」
炭治郎「伊之助なら我慢なんて余裕だな」
伊之助「当たり前だー!!」


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