頂点にして原点 (赤いラムネ)
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1話

始めまして。
赤いラムネです。

拙い文章ですが、よろしくお願いします。




「くっ!なかなかに辛いな。これで大半は撃墜したが。」

 

《次のミサイルの方向は二時の方向、三発だよ!》

 

「わかった。」

 

 

 

国会議事堂付近上空。

一人、いや一機の機体がその圧倒的な機動力により向かってくるミサイルを撃墜ししていた。

何故このような事態が起こっているのか、それはこの機体ー《Infinite Stratos インフィニット・ストラトス》通称IS の開発者である篠ノ之 束(しのの たばね)、彼女に起因する。

 

彼女はその常人とは思えない頭脳を用いてこれを開発した。

その後、日本政府、学会に発表したのだが、如何せん彼女はまだ幼い。年上の研究者達は相手にしなかった。

そこで彼女は自身の持てる頭脳を使い、世界各国のコンピュータをハッキングし、ミサイルの発射権限を奪取した。

無論、ミサイルともあろう兵器が一人の少女如きに発射権限を奪取されることなどあり得ないのだが、篠ノ之束にはそれを可能にするだけの力があった。

 

篠ノ之束によって支配されたコンピュータにより、世界各国のミサイルは日本の国会議事堂に狙いを定めた。その数およそ2881。

日本政府、国民ともに絶望に包まれ、お手上げ状態だった。

 

そんな中、その絶望を掻き消すような純白の騎士が現れ次々とミサイルを撃墜していった。

その機体の搭乗者である織斑 千冬(おりむら ちふゆ)はこの事態の根源である篠ノ之束の同級生で幼馴染の友人であった。

その友人に自身の技術であるISを扱い、彼女が仕掛けたミサイルを撃墜するように頼まれたのだ。いや、頼まれたというのは少し語弊があるかもしれないが。

勿論当初は戸惑ったのだが、剣道に関しては随一の才能を持っていることがわずかな自信となり、何より、弟達一般人の命もかかっていたので了承した。

 

そして、今の事態ー自作自演であるがーに至るのである。

 

先刻の束の報告通りに二時の方向から向かってくる三発のミサイル。

通常の人間の動体視力であれば、それを視認することすら困難であるのだが、ハイパーセンサーと呼ばれるISに機載された物があればそれも可能となる。

 

「ふん。この白騎士があればその程度造作もない!」

 

《さっすがちーちゃん!残りは後56発だよ!頑張ってね~。》

 

呑気に通信してくる束。ちなみにちーちゃんとは千冬の束によるあだ名である。

千冬も束もその機体の性能性によっているのか随分と余裕である。

 

「ところで束。この様子は世界中に中継されているのだろう?私の素性がバレることはないのか?」

 

《そこんとこは問題なしだよ~!ここ一帯の監視衛生は束さんが掌握してるし。それ以前にフルスキンなんだから顔バレとかないでしょ?》

 

「いや、大丈夫ならいい。もし、私の素性がバレると一夏にも迷惑をかけてしまうからな、心配だっただけだ。」

 

《ぐふふ~。やっぱりちーちゃんはブラk「何か言ったか?束?」なっなんでもないよ!?本当だよ信じてちーちゃん!》

 

有無を言わさぬ圧力に屈した束。いかに天才にして天災である束でも恐怖という感情は持ち合わせているようだ。

しかし突如、ハイパーセンサーによって捕捉されたミサイルによって和やかな空気は一変する。

 

《え!?なんで!?予測ではこんなに早くにこないのに!しかも56発同時に!?あり得ない!!》

 

本来、56発のミサイルと脅威な数とは言え、白騎士の敵ではないのだが自身の思い通りにいかない事に焦りを隠せない。

束の慌てふためく様子に巻き込まれないように、千冬は自身を落ち着かせる。

軌道はさすがと言うべきか、束の開発した技術によりほぼ正確に捉えられている。

数は56。

(決して無理ではない数だ。これで最後だ。行くぞっ!!)

そして瞬く間にミサイルは撃墜されて行く。45、44…30。そして残りが15発になった時、最悪の事態が起こる。

 

「っ!?まずいっ!五発逃した!どうにかならないか束!」

 

《無理だよ!私は現場にいないし!こうなったら五発で最小限の被害で済むことを祈るしかない。》

 

「くっ!!」

 

自分の不甲斐なさに歯噛みする千冬。幸い国会議事堂付近の非難は政府が既に行っている為、少なくとも死者の心配は無いであろう。

それでも千冬はそんな無力な自分が許せなかった。

間に合わないまでも、残りの10発を撃墜し、見逃した五発に向かって機体を走らせる。

 

しかし、やはりと言うべきか、間に合わない。もう少しで国会議事堂に衝突しそうになる。

もうダメか。そう諦めかけたその時、

 

「全く。この程度見逃すとはその剣ははりぼてか?」

 

救世主が現れた。

 

突如として現れたその人物は、一人の少年だった。

瞳の色はルビーのような透き通った赤色。その赤眼にかかる何もかもを吸い込むような漆黒の黒髪。身長は180cm以上はあるだろう。

 

何故、少年の容姿が分かるのか。それは少年が何も纏っていないからである。勿論、服はきているのだが。

そう、何も纏っていないのに空中に浮かんでいるのである。

千冬はISスーツを着ている為、空中にいることには説明がつくが、この少年はそうではない。

その事に二人は驚いた。

 

しかし、そんな事も束の間。

ハイパーセンサーでさえ捕捉するのが困難な速度で瞬く間にミサイルに肉薄し、少年はなんと己の拳で五発のミサイルをいとも簡単に破壊した。

 

「なっ!?」

 

《っ!?》

 

突然目の前で起こった非現実的な出来事に困惑と驚愕の表情を隠せない二人。

しかし、千冬はフルスキン、束はモニターか何かを通して見ているようなのでその表情が少年に悟られることは無かった。

 

「そこの人?後は任せたぞ。俺は帰る。」

 

そう言って、危機を救った少年は去ろうとする。

 

「待てっ!」

 

「なんだ?」

 

つい反射的に呼び止めてしまった千冬。

聞きたい事は沢山あった。一体この少年は何者なのか。どうして私を見ても驚かないのか。ミサイルをどうやって破壊したのか。

しかし、少年は面倒くさそうな顔をしたため、千冬は一言だけいう事にした。

 

「おかげで助かった。ありがとう。」

 

 

 

◇◆◇◆

 

千冬と束は自宅の前でとまっている黒い立派なリムジンを見つめていた。

 

「おい、どういう事だ束。こんなに早く政府にばれたのか?」

 

「そんな事はあり得ない。束さんの情報操作は完璧なんだよ?」

 

「ならば何故目の前に政府の役人と思われる奴がいるんだ?」

 

「さ、さあ!?」

 

「よし、ならば貴様だけ生贄として差し出そう。ISの開発者となれば価値は十分あるだろう。」

 

「ひどいっ!ちーちゃんは唯一無二の大親友である束さんのを売ろうっていうの?うえーん!いっくんに言いつけてやる~」

 

わざとらしく泣き真似をする束をみて、千冬ははぁ、と溜息をつく。

まさかこんなに早く正体がばれるなんて。一夏になんて言えばいいんだ!

そう思っていた時に、リムジンから20代後半くらいの、メガネをかけた青年が降りてきた。

 

「こんにちは。あなた方お二人は篠ノ之束さんと織斑千冬さんですね。私の名前は峰崎 光輝(みねさき こうき)です。

見ての通り、今回の白騎士事件の事について当事者のお二人に話があって来ました。」

 

峰崎と名乗った胡散臭い男の当事者という言葉に、二人は自分達の正体がばれているのだと悟った。

 

「…どうしてわかったのかな?周りの監視衛生は機能してないし、情報操作もされていたはず。それに今回の事件。

日本政府の上層部は落ち着きすぎている。不明な点が多すぎるよ。」

 

束は目の前の男への不快感を隠そうともせずに自身の疑問を投げかける。

束がしゃべった事に男はワザとらしい演技で「なんと!」と驚いた仕草をする。

 

「篠ノ之さんは無口な方と聞いていたので私の様な者に話しかけていただけるとは、光栄です。さて、何故織斑さんが白騎士の正体だとわかったかですね。

簡単ですよ。あの事件以来、わずか三日前の事にもかかわらず篠ノ之さんはISの開発者として有名です。

そんな有名人の交友関係を知りたくなるのは一般人の性でして、情報操作なんていっても所詮人の記憶は消せないのでね。」

 

束はその情報を漏らしたクソ人間には死んでもらおうと考えつつ、千冬をどう守ろうか考えていた。

そこで千冬が口を開く。

 

「何の様だ。」

 

その声音は聞く物すべてを威圧した。目つきはいつも以上に鋭くなっている。

隣にいる束もその有様に震えていた。

しかし、そんな事はどこふく風と言わんばかりに、峰崎は張り付けたような薄っぺらい笑みでいた。

 

「あなたがたがお会いした少年についてです。」

 

「なに?」

 

「!?」

 

ピクっと束の頭に着いているウサミミが揺れる。

その反応に峰崎は口角を釣り上げて、

 

「まあ立ち話もなんですので、車の中でお話しましょう。」

 

と言った。

最初は乗る事に戸惑っていたものの、結局乗る事にした二人は外見通り中身も広々としたリムジンに驚く。

峰崎が向かい側にある座席に座ったので、手前の座席に腰を降ろす。

するとリムジンは走り出した。

 

「ああ、心配しないでください。()のところへ行くだけですよ。」

 

彼と言うのは恐らくあの少年の事であろう。二人はそう納得した。

 

「まず、今回の白騎士事件ですが。我々日本政府は極めて冷静でした。とは言っても首相とその他上層部の人間だけですが。」

 

二人はこれには驚愕を隠せない。仮にも世界中のミサイルが日本に降り注ぐところだったのだ。

冷静でいられるはずがない。そう思った。

 

「理由は単純明快です。日本は約2800発のミサイル程度どうとでもなるような戦力を保有していたからです。それこそ、あなたがたのISの様な。

それが彼です。彼の存在は現在世界中の国々の一部の上層部にしか知られていません。そして、その国々の大半と個人的に、非公式ではありますが、不可侵条約を結んでいます。」

 

「なんだと!?」

 

「あり得ない」

本日何回目であろう驚愕が二人を襲う。個人的に不可侵条約?そんなことあり得るはずがないのである。

 

「私も最初は驚きましたよ。ですが、これはれっきとした事実です。彼の存在が公になったのは1904年、日露戦争の時です。」

 

「それはおかしい。それが本当だとすると今の年代から見積もっても軽く100歳は超えている事になる。でも私がみたのはどうみても十代の少年だった。」

 

「それもそのはず、彼は不老不死なのです。にわかに信じ難い事ですが、これもまた事実です。

我々が保有している彼の情報では、確実に1904年にはあの姿で写真に写っています。現に様々な刺客が毒、刃物、銃などによる方法を試しましたが、毒は効果がなく、刃、銃弾

は皮膚によって砕かれています。まあきいていないだけでは?とは思いますけどね。」

 

「公にはなっていませんが日露戦争の際、彼は10万のロシア軍を拳一つで退けたそうです。その戦力に危機を感じた日本、ロシアはその存在を隠しました。

しかし、彼に目をつけたアメリカの仲裁により、日露戦争は終結しました。アメリカは彼を分析する為、アメリカに連れ去ろうとしましたが、その圧倒的な力でねじ伏せられて

しまい、断念。その事実が各国トップに知られ、今に至ります。

大抵の人はこれを言っても信じませんが、あなたがたは彼の力の一端をみたのでしょう?」

 

あまりにも規模の大きな話に頭を痛めるが、事実彼の力を目の前で見ているので信じる他ない。

 

「まさかそんな人物がいたとはな。信じ難いが、目の前で見せつけられたんだ、信じよう。」

 

「わかったよ。でもなんでそれを私達に話すかな?秘密なんじゃないの?」

 

「彼が接触してしまった以上、話すしかないという判断です。それに彼はISに興味を抱いていたのでね。

ちょうどいいから合わせてやろうって魂胆です。

おっと。どうやら着いたみたいです。いやはや楽しい会話は時間を忘れるものですね。」

 

三人が降りた目の前には一般的な家が建っていた。

 

 

◇◆◇◆

 

いや~それにしても焦ったね。いきなり黒服の人達が家に押しかけて来て頭を下げてくるんだもん。

今はミサイルが飛んでくるから危ないから早く避難しなきゃいけないって言うのに。

 

しかもミサイルを何とかして欲しい?無理だよそんなの。

俺はただの一般ピープルなんだ。長生きなのは認めるけどだからって人を人外見たいに見ないでくれ。

ただ長生きしてるだけなんだよ?モルモットになりたくないからゆっくり過ごしているのに困るよな。

 

だからこう言ってやった。

 

俺はお前らが思ってる様な力はないんだよ。それと俺は今から急いでやらなくちゃならない事(避難)があるんだ。

お前らもとっとと避難したらどうだ?

 

そしたら何か礼を言われた。何で?

 

それで何か逃げようとしたら道に迷った。本当にしゃれにならない!やばい。

よく見たらここ国会議事堂!?やばい!ミサイルに狙われてるところじゃん!

絶対死ぬ!翌日の新聞の見出しに『住民避難により全員無事!(一名をのぞく)』とかやられそう!

なんか俺長生きしてるから政府とかによって死亡したのもみけされそう!

って思ってたのよ。

でも気づいたら家に帰ってたわ。きっと警察とかが保護してくれたんんだろうね。

しかもなんかISっていう奴がテレビで話題になっているらしい。

すげー!ついにロボットの時代キタコレ!

そう峰崎さんに話したらにっこりと微笑まれた。ちなみに峰崎さんはなぜか俺に構ってくる変人だ。

もしかしたらホモなのかもしれない。迂闊に家に上がらせられんわ。

 

っていうか俺本当に気絶する事多いわ。日露戦争の時も兵役で駆り出されたと思ったら変なアメリカンに保護されてたっぽいし。

保護されたと思ったら日本に返されたし。ひどいよね全く。

あと長生きしてるからっていろんな国々の大統領の人が興味を持っているのか家に来るし。めづらしいもの見たさに日本に来るとか、職権乱用ですよ。

まあ大抵の人は気楽に話してくれる。通訳の人が。

でも俺だって大統領なんかすごい人とはお友達になりたいから、

仲良くしてください。もしなにかあったら(暇があったら)あなたの国に遊びにいかせてもらいます。

って言ってたら海外旅行に無料でいかせてもらえるようになった。

うん。持つべきものは友達だよね。

 

あと今日は峰崎さんが友達を連れてくるらしい。女だそうだ。

まさか峰崎さんに彼女が?ありえん!!奴はホモ。そんな事はありえん!…

とりあえず、連れて来たのが美人だったら峰崎さんだけは追い返そう。

 




とりあえず主人公の名前は次に発覚します


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2話

すみません。いろいろと書き方を模索していたら、更新が遅くなってしまいました。


……はい。

とうとう峰崎さんが来たんですが。俺は今ひじょーーに機嫌が悪い。いや、ある意味では嬉しいんだが。

 

「私の名前は織斑千冬だ。あの時は世話になったな。改めて礼を言う。」

 

「……篠ノ之束。」

 

突然だが、この二人、美少女である。織斑千冬さんはスタイルの良いモデルのような黒髪美少女。篠ノ之束さんもこれまた可愛らしいお顔である。だがそんなことはこの際どうでもいい。俺が怒っているのはそう、お前だ峰崎!!

なんでこんな美少女達と知り合いなんだよ!いつも男一人の俺の家にくるような非モテ野郎だと思っていたのにい!とんだ詐欺師じゃねえかこの野郎!あれか?長年生きているけど彼女いない歴=年齢の俺へのみせつけか!許せねえ。この裏切り者め!日本よ!これが童貞の嫉妬だ!

 

「ああ、俺は佐々木紅蓮だ。というか、いきなりお礼とか言われてもこまるんだが。」

 

「?ああ、そういうことか。あの時は私は顔を隠していたしな。束に至っては音声のみ且つ佐々木には聞こえていなかったな。つまりは事実上は初対面か。」

 

「そういうことか。」

 

え?何か適当に答えちゃったけれど、あったことあるのに初対面?なにそれ怖い。

あ!もしかして俺があの時気絶してた時に助けてくれた警察だか救助隊的な人達なのかな?うん、きっとそうだ。だってこの織斑千冬さんって人、めっちゃ強そうだもん。強者のオーラでてるもん。それにこの妙に緊張して強張ってる篠ノ之束さんは音声っていってたし、現場にインカムで指示でも出してたってところか。大抵そういう人は屋内勤務だし、人と話すのに慣れてないんだろう、この人は。だから緊張してるのかな。ああ、それなら峰崎さんのような非モテ野郎にもこんな可愛い子達と知り合いだったことにも、その子達を連れて来たことにも合点がいくわ。

まあ、いきなりお礼を言われたことは驚いたけど、せっかくの美人からのお礼だ。身に覚えがあろうが無かろうが貰っておくのが男ってもんだろう?

 

つまり、あの事件に巻き込まれた俺への事情聴取ってところかな?峰崎さんも一応は政府の役人らしいし、偶々俺と知り合いだったから彼に白羽の矢が立ったってところか。

何かそう考えると峰崎さんへの怒りがおさまってきた。彼何か顔色悪いな…。ごめんよ、峰崎さん。同志である君を疑った僕を許しておくれ。

 

「まあ織斑さん達の迅速な行動で助かったんだ、俺も感謝してるよ。」

 

「…そうか。優しいんだな、佐々木は。あと私のことは千冬で構わない。無論、束もだ。」

 

「ええー!?私まだ何にも言ってないのに勝手にひどいよ!ってことで束さんも君のことぐーくんって呼ぼうっと!」

 

助けて貰った御礼をしたら名前で呼ぶことを許されたでござる。あと、束さん?そのぐーちゃんってのやめてくれませんか?あ、いえダメならいいんです。しかし、急に元気になったな笑顔が可愛いのでむしろ俺としては嬉しいんだが。相方の千冬さんが俺と話しているのを見て警戒を解いたのかな?

 

「それでは、御三方の自己紹介も済んだ事ですし、そろそろ本題に入らせていただきます。皆さんご存知の通り、ISの台頭によって従来の軍事バランスが崩れ世界はIS中心に物事を考えことを余儀無くされました。そこで…」

 

ここからの話はほとんど理解不能だったので聞き流していたが、ようやくすると、何かISのパイロット育成機関作るから協力しろって事らしい。なんで俺なんだ。ISは女性しか動かせねんだぞ常識ですよ峰崎さん(笑)とか思ってたら、俺は教師枠として入る事になるらしい。

なんでも、俺は元軍人だし、戦争経験もあるのでそれを活かして戦闘訓練を訓練生に教えてくれってことらしい。

 

「ちなみに拒否権は無いの?」

 

「いやですねえ紅蓮さん。拒否権もなにも、人類皆平等ですよ?すべては貴方の意思次第です。我々の意見など気にする必要など最初からないんですよ。」

 

あるんかい!こういうのは『無いです』って即答されて『ですよねー』って苦笑いしながら答えるのが定型文だろう。まあ、あるにこしたことは無いんだけどね。あとそのオーバーリアクション一々ウザいな。毎回やるけど。

 

「ならやらせて貰うことにするよ、あんなロボットを真近で見られる機会なんてそうそうないしね。」

 

「そうですか!ありがとうございます!私、これでも結構な立場なので、できる限り仕事環境は良くするよう取り計らわさせていただきます。」

 

べっ別に合法的に女の子と戯れられるからやるんじゃないんだからねっ!勘違いしないでよね。ただロボットが見たいだけなんだから!

…それと俺今政府から生活費もらってるからもし断ったらお金もらえくなりそうだから…。

 

「では、私達はこれから佐々木の教え子ということになるな。よろしく、紅蓮先生?」

 

「よろしくね~って言っても束さんはちーちゃんみたいに肉体派じゃないから、遊びに行くだけだけどね~」

 

「そうか、なら私の握力と貴様の頭、どちらが強いか試してみようか。」

 

「痛い痛いいたーーーい!頭って物理的にじゃないかーーー!」

 

千冬さん…俺が教えること何もないくらい強そうなんすけど…。

 

 

◇◆◇◆

 

峰崎とか言うどうみても怪しい男に連れられて、私と束は例の謎の青年の家に来ていた。

どこにでもあるようなごく普通の一軒家。しかし私にはわかる。この周囲の家の人々は全て政府の監視の為に派遣されている者達だ。明らかに雰囲気が常人のそれでは無い。

そんな風に視線を周囲に向けていると峰崎さんが扉を開けて中に入って行ったので慌てて追いかける。…勝手に入っていいのだろうか。

束め。一言くらい声をかけてくれてもいいだろうに。

まあ、あいつも謎の青年に興味津々だったみたいだし、無理も無いか。あいつは興味があるものとないものでは態度がまるで違うからな。

 

「紅蓮さーん。客人を二名ほど連れて来ましたよー。」

 

「今いくから待っててくれ。」

 

峰崎さんが少し大きな声で呼びかけると、すぐに返事が帰ってきた。おそらく二階にいるのだろう。今私達がいる居間には大きめのテレビと高そうな黒革のソファーが二つあった。

 

「ッ!?」

 

突然部屋を満たした重圧感に私は身を強張らせる。峰崎さんは相変わらず胡散臭い笑みを崩してはいないものの、顔を蒼くしていた。

何だこの殺気は。私はまだ武術をやっていたころに、師範に扱かれた経験があるので何とかなるが、束は完全に萎縮してしまっている。

 

「峰崎さん…この人達、誰ですか?」

 

気配もなく目の前に現れた青年が、峰崎さんに問う。その声音には警戒心が強く含まれているように感じた。

正直逃げ出したいと思ってしまった。それほどまでに濃密な殺気だった。

 

「え…ええ。ですから…以前申し上げた通り、御客人です…。」

 

そうか、と呟く青年。何やらひどく私達を警戒しているようだが、とりあえず自己紹介をすることにした。

 

「私の名前は織斑千冬だ。あの時は世話になったな。改めて礼を言う。」

 

「……篠ノ之束。」

 

完全に萎縮してしまっている束は声を出すのがやっとというところだろう。私も普段通り振舞っているんだ、貴様も我慢しろ。

 

「ああ、俺は佐々木紅蓮だ。というか、いきなりお礼とか言われてもこまるんだが。」

 

成る程。この青年は佐々木紅蓮というのか。覚えておこう。

御礼を言われても困る、というのはどういうことだ?そういえば私と出会った時、私はフルスキンだったから、顔をみてないのか。

ということは彼はまだ私をあの時のISだと気づいていないということか。

 

「?ああ、そういうことか。あの時は私は顔を隠していたしな。束に至っては音声のみ且つ佐々木には聞こえていなかったな。つまりは事実上は初対面か。」

 

「そういうことか。」

 

そういって佐々木は殺気を解いた。一気に身体の力が抜けるのがわかる。束も峰崎さんもようやく落ち着くことができた様だ。

全く、ミサイルを生身で撃破したり、佐々木は本当に人間なのか。

というか、100年も前から生きているのだから、人間というよりはむしろ化け物か。

 

「まあ織斑さん達の迅速な行動で助かったんだ、俺も感謝してるよ。」

 

助かった、とは勿論一般人の事をいっているのだろう。

普通なら佐々木が助かったと受け取ってしまうところだが、私達は彼の強さを知っている。あれだけの力を持ちながら、一般人の事を気にかけていたとは…。佐々木の事を化け物扱いしていた私が恥ずかしい。私は愚か者だ…。

 

「…そうか。優しいんだな、佐々木は。あと私のことは千冬で構わない。無論、束もだ。」

 

「ええー!?私まだ何にも言ってないのに勝手にひどいよ!ってことで束さんも君のことぐーくんって呼ぼうっと!」

 

束も殺気が解かれたのでいつもの調子を取り戻した様だ。というかぐーくんって、相変わらず貴様のネーミングセンスは皆無だな。

私も千冬の名前の頭文字からちーちゃんなどと呼ばれているが、あまり好いているあだ名ではない。

しかしまあ、こいつも一応は親友…だからな。認めてやらん事もないが。

というか峰崎さん、どんだけ喋るんですか。長すぎませんか。

佐々木も退屈してるだろうに。束に至ってはPCを弄くり始めたぞ。

それにしても、IS学園か。

私達も生徒として入学することになっているわけだが、束ってIS製作者なのにはいる必要ないのではないか?まあ、本人は『束さんは適当にちーちゃんと紅蓮君の活躍みたら雲隠れしちゃうから平気平気~!』と言っているので、後から大騒ぎになることは確実だ。

この事を教えてやってもいいのだが、親友を最初はバカにしていていたくせに手のひらを返してきた日本政府に対するせめてもの意趣返しとさせてもらおうではないか。

 

 

◇◆◇◆

 

佐々木との話が終わった後、私達は行きと同じ様に車の中で峰崎さんと会話をしていた。

 

「で?どうでした、紅蓮さんは。」

 

「最初はどうなる事かと思ったが、話してみると案外気さくなやつだったな。あれだけの力を持っていてなお、優しさも兼ね備えいるとは恐れ入る。」

 

「最初はとーーっても怖かったぁ~!!ちーちゃんよく平気だったねあれ。」

 

平気だと?とんでもない。内心は冷や汗ダラダラだったさ。

 

「そうですか。いやあ、最初は私も焦りましたよ。ですが彼は一応、私の大切な友人ですので、気に入ってもらえてなによりです。」

 

「その大切な友人を、IS学園に教師として働かせるんだ。…ねえ、もしかしなくても紅蓮君をりようしてるでしょ?」

 

「まさか!そのような事するわけないじゃないですか!彼は友人ですよ?私、友達は大事にする主義です。」

 

結局それからはたいして話す事もなく、家に着いた。

束も気づいていたようだが、峰崎さん、いや日本政府は確実に佐々木を利用しているな。

わざわざ佐々木を雇わなくても、近接戦闘くらいその道の専門家に鍛えさせればいい。それをしないのはやはり…。

 

「そうだね。日本政府はIS学園に佐々木紅蓮という人間兵器を投入する事で、抑止力としようとしている。アラスカ条約で若干日本が不利になった分、他の世界各国がこれ以上調子に乗らないようにするためだろうね。」

 

「やはりそうか。しかし、いいのか?佐々木の存在はトップシークレットなのだろう?近接戦闘を教えるとなれば嫌でも奴の人間離れした力をみることになるだろう。」

 

「んー。IS学園の卒業生は大抵国家代表とか研究者への道を進むし、女尊男卑のこのご時世だし、少なくとも気軽に口を開ける立場ではなくなるだろうし平気だと思うよ。閉口令的なものも敷かれるだろうしね。」

 

これから私達はIS学園に入学することになるのだが、束はわずか二ヶ月ほどで姿をくらましてしまった。

 




少し量少なめです。


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