エイトビート (明日死ぬ)
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Le plus important est invisible

ラップ初心者なので初投稿です。語録はありません。


神曰く、始めに言葉ありき。

 

言葉は神と共にあり、言葉は神であった。

 

そしてサムライ8があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は星の王子様というアニメを見た。

 

『大切なものは、目に見えない』とキツネは言う。でも俺にとっては、目に見えるこの小さな世界が全てだ。最初王子は自分の星で咲いた一本の薔薇を、棘はあるけど美しく貴重なものだと思った。その後別の星で数千本の薔薇を目にして本当はありふれたものであると知った。このシーンが印象に残ったのは、自分が薔薇みたいだと思ったからだ。俺は装置に繋がれているけれど、父ちゃんは違う。王子みたいに、喧嘩別れしたら、逃げ出せる。父ちゃんは俺のことたった一人の息子として可愛がってくれてるけど、もし俺以外の子供が居たらどうなるんだろうって。

 

 

「ほら、アニメなんかみてないで、点滴の時間だ」

 

「ねぇ父ちゃん」

 

「何だ?」

 

「隠し子とかいないよね?」

 

「……………………少し出かけてくる」

 

「えっ」

 

 

その言葉自体は何回も聞いたけど、答えてくれなかったのが少し辛かった。因みに王子は蛇に噛まれるらしい。何故だか嫌な予感がする。だとして、何にも出来ない。強くなりたい。侍みたいに。

 

「俺は (auai) つまり 危ない(auai)~」

 

武士は強くて屈強な人がなれる。その中でも武神に選ばれた人を侍という。つまり凄い存在。侍になればサイボーグになって身体が傷ついても再生する。だから倒すには刃じゃなく言の葉が必要だ。といっても、俺には必要ない。父ちゃんを、自分を傷つけることしか出来ないし。

 

 

何となく空を見上げたら、見たことのない男が降ってきて、生命維持装置が壊れた。

 

「お前が八丸か」

 

身体が死に向かっていく感覚。誰かは知らないがお供のホルダーと刀を持っている――侍。痣だらけの父ちゃんの顔が映し出された。

 

「お前の心臓に童子切高綱の侍魂が隠されている」

「切腹するんだ。運が良ければ、侍になれる」

「もしお前が侍になれれば、内から侍魂が生まれ金になる。そうすれば父親は助けてやる」

 

 

 切腹することで、侍になれるらしい。なれるとは思っていない。でもやらなきゃ父ちゃんが死ぬ。どのみち、俺は数分で死んでしまう。

 

「八丸!」

 

 この命を、何かのために使えるなら、それは父ちゃんのために。

 

 

 

 

 

 

 

……身体が軽い。生きている。

 

「……侍になったか」

 

「勝負だ。父ちゃんを――」

 

「逃げるつもりはない。やり方は解るか?*1

 

早太郎(ホルダー)が俺の腕に飛び込み、(マイク)に変わる。そして空気が変わる。侍はラッパーになる。

 

「先行は俺だ」

 

推奨 BGM(バトルビート) 流星

 

 

始まるル軽あしらう 介錯してやる恥かく

体格八丸アーメン 負け味わうまでやる情け 

吐き出すバース まずロウと苦 バックボー無ければ嘘だろう

立場を知り端役*2 You know what I'm saying?*3

 

 

 

音と音が繋がり、その強さが増す。言葉が重しとなって俺を拘束する。後で知ったが、韻力というらしい。そして音に対する乗り方をフロウと言う。後攻である俺は、この内容に対してアンサーを行う必要がある。

 なのに、言葉が出ない。音ゲーをやってきた、乗り方は大丈夫。でも、俺には人生(バース)が無い。何を言えばいいんだ? アニメとか漫画とか、それが俺の全てなのに。

 

「 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、違う。『大切なものは、目に見えない』。何が大切かどうかというのは、心が決める。俺がどう思うかが重要なんだ。

 

 

 

ミカエルクローニン*4のように見返すもうじき これは無差別攻撃火つけるからwarning

マジック&マッシュ ルーム303 パニック&バグ 狂う アンデッドアンラック

首降らす鎌麒麟*5ローリング あちこちwalkingしつつ  パロディ仕掛ける坂田銀時

つまりは白夜叉阿修羅の八部衆 アクタージュみたく役者が違う

 

 

「少しはやるようだが、所詮子供。」

 

 

 

分かってないらしいな誇りあるのか どっちが音に乗り飛びますか

俺はノトーリアスB・I・G*6 一対一なら負けなし

お前のラップはリアリティないからイマイチ びた一文もやれないし

さっさと摘み取る侍魂 ダンクシュートぶち込む桜木花道

 

「負けるかっ!」

 

考えるんだ。侍魂⇒危ない話 相手の言葉を拾え イマイチ⇒ピカイチ アンサーしろ バカボンド*7⇒パワーボンド*8 何を言えばいい? B・I・G⇒死体に 話を纏めろ しかしどう繋げる?

『お前の心臓に童子切高綱の侍魂が隠されている』『もしお前が侍になれれば、内から侍魂が生まれ金になる』これだ。即興で組み立てろ!

 

 

言う事お金で失う 舞え卍解白霞 

育ててくれた父ちゃんのおかげでtop of the head*9宇宙へ

ここで散体刀狩 落ち武者解釈頭わりぃ 

今日からMC*10サムライエイト お前八つ裂きにするちぇりお!*11

 

 

武神による審判で勝敗が決まる。

 

「バカなっ……この俺がこんなガキに」

「俺のラップに飽きたとでも?」

「こんな恥晒し、耐えられない」

「ぐわぁあああああああ」

 

 

 侍は、散体した。

 

「……父ちゃん、助けにいかなきゃ」

 

居場所は、ご丁寧に映し出してくれた、今の俺なら手が届く。目を閉じて、思い浮かべろ!

 

「転移(ジョウント)」

 

目を見開いたら、父さんがいた。

 

「侍だ、逃げろっ!」

 

「八丸……」

 

「これからは、俺が父さんを守るよ」

 

*1
先行か後攻を選び、音の上で規定の拍数の間言葉を紡ぐ。これを何回か繰り返す

*2
早く

*3
言ってる意味分かる?

*4
ワールドトリガーに登場する技術者

*5
ワンピースに登場するカクというキャラクターの技

*6
ジョジョの奇妙な冒険に登場する能力名 元ネタはラッパー

*7
スラムダンクの作者である井上雄彦氏の宮本武蔵を主人公とした漫画

*8
遊戯王における機械族融合モンスターを対象とした魔法カード

*9
即興

*10
ラッパーのこと。MCネームは芸名

*11
ライトノベル刀語の登場人物とがめの口癖




幻想再帰のアリュージョニストを参考にして、
ジャンプ作品をラップで引用する八丸を書きました。


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ヒステリックナイトガール

2話に合わせて、1話の内容を修正してます。


居場所がない奴ってのはどこにでも居る。

真面目そうな委員長も喧嘩に明け暮れる不良も人気のアイドルも総理大臣も、多分どこかで居場所を探している。ボクみたいなどうしようもない人間も、同じだ。

宇宙よりも広いネットの海で、どうしようもない僕らは引き寄せられる。

 独り言よりかはマシだろう? 

 

今日は違った。

 

「今日はやけに機嫌がイイね」

 

「聞いてくれ、俺は侍になったんだ」

 

「……え?」

 

 輝かしい姿だった。喜ばしいことだと思う、だけどボクは素直に祝福出来なかった。嫉妬か? 世の中の最底辺のボクが同類だと思った相手に? それもある。

 

「だったら、ここを出ていきなよ」

 

「何だよいきなり」

 

「……不死の身体を手に入れた君は転移(ジョウント)をリスクなしに扱うことが出来る」

 

転移(ジョウント)は原理は不明なのに出来ると思った人は出来る、不思議な力だ。これによりゲームのラグは残っているが人々は一瞬で行き来する歪な文化が形成され、争いが起こった。それを止めたのは侍だ。死なない侍は全ての暴力的な争いを無意味なものにしてしまう。転移(ジョウント)を下手に使うと宇宙や石の中に飛ばされてしまうから、常用している人は少ない。侍は不死という特性でこれらのデメリットを無視できる。だから侍だけは、敵対してはならない。目につけられたが最後、燃やされようが凍り付こうが追ってくる。

 

それだけ、侍というものは神聖視されている。

 

「こんなくだらないところでお喋りする身分じゃない」

 

「は? なんだよ身分って。くだらなくなんかないよ」

 

「今は自覚していなかもしれないけど、侍ってのは凄い存在で」

 

彼は中々解ってくれない。

 

「だったらお前も侍になればいいだろ」

 

「何を言っているんだ、大体君だって先端恐怖症だったんじゃないのか?」

 

「そうとも言えるしそうでないとも言える」

 

「何だよそれ」

 

 言い争っても、決着はない。ボクたちはそういう時、ラップで決める。侍に憧れたから。

VC(ボイスチャット)を開く。侍は己の身体からコードを出すらしい。イヤホンを耳に取り付けた時、自分が侍みたく思えた。

 

「じゃあ、先行はボクから」

 

推奨BGM(バトルビート) Keep It 100

 

「意志薄弱なクリミナルガールズ 半罪人は捧ぐ無機質なラブ

いつか自分を好きになるはず と履いたけどぶかぶかな黒スキニーパンツ

こんな風にイキり出す奴には罰を 死にたくなるけど覚悟もないよ

君はユビキタスな存在 スピリタスのような刺激的 だからボクとやったってクリティカル」

 

「偏在し全開で限界はない現在 天才の連載は健在これ善哉

繊細な剣先向けるジェダイ 見解の変化コペルニクス的転回  

天涯孤独でも咲かす椿 スイッチオン・見せてくFreakyなFlow

ゼンマイを巻くAT Lady! オトナチックになれない二人」

 

6Fの遅延を超えて刺さる言葉。

 

「俺の負けだ」

 

「侍なのに、かい? 散体は?」

 

「いや、お前の方が才能あるから」

 

馬鹿々々しい、侍になんかなれるわけないのに。

 

「サイファーやってたのは。俺たち二人、侍に憧れてたんじゃないのか?」

 

「……そうだよ」

 

「だったら」

 

「君とボクは違う」

 

「目と目合わせれば、分かり合えるよ」

 

「何を……」

 

いや、それで満足するならいいか。

ボクは昔から存在感が薄い、掲示板の名無しでしかない。何かの間違いでボクを見かけることがあっても、個人情報を晒すリスクは0だ。カメラを起動する。

 僕の顔を見た彼はすぐに消えた。

 

『やっぱり気持ち悪いって思われたんだ』

『そんなことないわ ナナシはかっこいいもの』

 

 独り芝居。君と話している時は、たった一人で居られたのに。

 

 

 

転移(ジョウント)

 

「腕が!」

 

欠損した腕がにゅるりと再生。侍という名の異形。

 

「思ったより早く着いた。俺たち、思ってたよりもずっと近くに居たんだな」

 

 確かにボクの部屋を認識すれば出来るかもしれないが、無謀だ。

 

「どれだけ掛かるかも判らないのに。宇宙で朽ちてたかもしれない」

 

「それでも侍なら何時かは着くだろ? 俺は今行かなきゃって思ったんだ」

 

「………………」

 

「やろうぜ、バトル」

 

推奨 BGM Don't you want me

 

「死屍を鞭打つ桐条美鶴 女帝も処刑の時刻と気づく

空は朧月 靄を大掃除 振るうほのおのムチ 作る常世の国

俺の体たらく? 変化ある? お前は掛かってるぜテンタラフー

結果泣いても喧嘩するだけ まずコンセントレイト 呆然としてんぞ?」

 

「don't be afraid 混乱してない 白と黒のボーダーライン

使い分ける斑鳩 乱すならば ひたすらに開き直り続ける二枚舌  

今井リサの弟みたく 自ずと消える定め  change the rules of the game

きらきら星目掛け BanG BanG BanG Dream! I don't wanna be friends」

 

「斑鳩使い分け陰陽変華 切らす腹その先は沈丁花 

お前が侍になって真骨頂 発揮すべきこれが俺の心情です

いざ忍転身 目指す新天地 お前をM&A やろうぜコンビで

let's to be continued play the game 秘伝忍法 絶華鳳凰閃」

 

「ボクは群れない剥けない膠も無い奴 人生も暗い 胸もないんだ

語り掛けてくる天使と悪魔と小柳  被害妄想が止まらない限り

いや小柳って誰なんだ お邪魔虫は消えてくれ 柳生十兵衛も切り裂く始末剣

脳細胞侵食する紅梅色 まがいもんの剣紅桜 アサシン岡田仁蔵 ならない評価対象」

 

侍同士のバトルじゃないから、武神は裁かない。

 

「ボクの負けだ」

 

「なら……!」

 

「侍になれるならなりたい、その気持ちは今も変わらない。でも、なれるとは思わない。それが答えだ」




魔改造タグはつけることにしました。


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